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1974-03-05 第72回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十九年二月二十七日(水曜日) 委員会において、設置することに決した。 二月二十七日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       井原 岸高君    奥田 敬和君       黒金 泰美君    田中 龍夫君       田中 正巳君    藤井 勝志君       安宅 常彦君    赤松  勇君       辻原 弘市君    青柳 盛雄君       小沢 貞孝君 二月二十七日  藤井勝志君が委員長指名で、主査に選任され  た。 ————————————————————— 昭和四十九年三月五日(火曜日)     午後二時五十二分開議  出席分科員    主査 藤井 勝志君       井原 岸高君    奥田 敬和君       田中 龍夫君    田中 正巳君       安宅 常彦君    上原 康助君       中川利三郎君    安里積千代君    兼務 倉成  正君 兼務 井上 普方君    兼務 大出  俊君 兼務 山口 鶴男君    兼務 吉田 法晴君 兼務 新井 彬之君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房審         議官      奥田 真丈君         文部大臣官房会         計課長     三角 哲生君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君         文部省管理局長 安嶋  彌君         文化庁長官   安達 健二君         文化庁次長   清水 成之君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君     ————————————— 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   青柳 盛雄君     田代 文久君   小沢 貞孝君     安里積千代君 同月五日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     山本 政弘君   辻原 弘市君     田邊  誠君   田代 文久君     中川利三郎君   安里積千代君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     赤松  勇君   田邊  誠君     上原 康助君   小宮 武喜君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     辻原 弘市君   竹本 孫一君     安里積千代君 同日  第一分科員山口鶴男君、第三分科員井上普方  君、  第四分科員大出俊君、新井彬之君、第五分科員  倉成正君及び吉田法晴君が本分科兼務となっ  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算文部省所管  昭和四十九年度特別会計予算文部省所管      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が、本分科会主査をつとめることになりましたので、何とぞよろしくお願いをいたします。  本分科会は、外務省、大蔵省及び文部省所管につきまして審査を行なうこととなっております。  審査の方法は、お手元に配付いたしております日程により進めたいと存じます。あらかじめ御了承を願いたいと思います。  昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、文部省所管を議題とし、政府から説明を求めます。奥野文部大臣
  3. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 昭和四十九年度文部省所管予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、文部省所管一般会計予算額は一兆七千七百四十一億八千五十一万円、国立学校特別会計予算額は五千七百四億四千四百七十五万円でありまして、その純計額は一兆八千九百六十五億七千三百八十九万円となっております。  この純計額を昭和四十八年度の当初予算額と比較いたしますと、三千九百五十億五千七百三十八万円の増額となり、その増加率は二六・三%となっております。  以下、この文部省関係予算の主要な事項につきましては、分科員各位のお許しを得まして、詳細な説明は省略さしていただきたいと思います。  よろしく御審議くださいますようお願いいたします。
  4. 藤井勝志

    藤井主査 この際、おはかりいたします。  ただいま、奥野文部大臣から申し出がありました、文部省所管関係予算の主要な事項につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤井勝志

    藤井主査 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
  6. 藤井勝志

    藤井主査 以上をもちまして、文部省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 藤井勝志

    藤井主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は、これを厳守され、議事進行に御協力を賜わりますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、答弁はできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。  質疑申し出がございますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  8. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 文部大臣お尋ねしたいと思うのです。  まさに最近のわが国経済は、狂乱物価というようなことばに象徴されますように、きわめて異常な状態であります。特に、昨年問題となりました石油危機が、わが国経済に非常な大きな影響を与えたことは、御存じのとおりです。  私は、ここでこの問題について議論をするつもりはございません。ただ私は、文部大臣として、あの石油危機わが国経済危機、これにあたって、一体どういうお考えを持たれたのか。一国の文教行政責任者といたしまして、あのような異常な経済危機わが国がおちいった、そういう中で、わが国文教行政あり方は一体どうしたらいいかという観点で、いろいろものごとをお考えになったのではないかと推察をするのであります。その点から、まずお伺いいたしましょう。
  9. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話しのように、いろいろ考えさせられる点が多かった、こう思っております。  特に、戦後三十年近い間の教育、これは戦前の教育反省の上に立って進められてきたと思います。どちらかといいますと、超国家主義教育、その反省の上に立って行なわれた教育が、ある意味においては超個人主義的な教育になったともいえる、こう考えるわけでございます。正しい個人主義が発展いたしませんで、どちらかというと利己主義に堕してきた、社会全体のことを考えない、そういうことが、消費者あるいは企業等々の面についても、今度の混乱にあたりましては目についたような感じがいたします。  そうしますと、やはりこれからの教育にあたっては、過去三十年の教育反省の上に立って、教育充実、刷新をはかっていかなければならない、こんなことをいろいろと考えてもおったところでございました。
  10. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 ただいまお考え方を承りましたが、その点では、もうちょっとさらに進んだお考え方があってよかったのではないかという気がするのであります。  結局、あのような経済危機石油危機に際しまして、もうわが国は、ドルさえ出せば安い石油はじゃぶじゃぶと幾らでも入ってくる、その石油を使って公害をたれ流し、わが国だけが異常な経済高度成長を遂げている、こういった経済あり方は、もう無理ではないのかということは、だれしもがやはり感じた点ではないかと思うのです。結局、わが国経済大国であったかもしれないけれども、この経済大国は、いわば資源は外国からたよるという、そういった前提の上に立った経済大国でしかなかった。いわばそういう意味では、資源が入ってこないということになれば、わが国経済というものは、ちょうど砂上の楼閣のように、きわめてもろい立場にあるんだということだろうと思います。  ひるがえって、それではわが国資源は一体何だろうか。要するに、わが国には資源というものはきわめて乏しいわけであります。結局、わが国経済を今日までささえてきたものは一体何かといえば、これはやはり世界に冠たるわが国教育普及率、それから生まれるわが国の一億国民頭脳、そしてまた勤労を愛する気持ち、こういうものが、やはり今日のわが国をささえてきたんじゃないかと思います。  そういうことを考えれば、文部大臣として、いまこそわが国教育が一番大切なんだ、わが国がこれから進むためには創造性豊かな人材を養成していく、そして勤勉性豊かな国民というものをつくっていく、こういうことがやはり必要ではないだろうか。そのことが、いまほど強調されるときはないと思うのであります。  そういう点については、一国の文教行政を担当される大臣として、お考えになりませんでしたか。
  11. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が、過去三十年の反省の上に立って新しい教育考えていかなければならない、その一つとして、個人主義利己主義に堕している、こう申し上げました。やはり社会の中における個人日本の中における個人、同時にまた日本世界の中における日本、こういうことを考えていかなければならないところにつながっている、こう思っているわけでございます。  教育改革は、今日、世界に百四十六カ国あるわけでございますけれども先進国発展途上国教育改革に非常な熱意を燃やしておるわけでございます。今日の日本の現状にかんがみますと、より一そう教育充実発展に対しまして、特段の力を注いでいかなければならないと思います。  そういう意味で、予算の問題につきましても、私は常日ごろ、文化のかおり豊かな予算にしてくださいよということをお願いし続けてまいったわけでございまして、今後とも、そういう気持ち努力をしていきたいと思っております。
  12. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 教育改革というところに力点を置かれて御答弁をされたのですが、私は、やはり教育というのは、制度の上からいろいろ改革をすることも、これは場合によっては必要かとも思います。しかし、やはり教育現場は、きわめて創造性豊かな自由な雰囲気の中で切磋琢磨する、何か他の行政機関のように、行政優位であってはいけないのじゃないか、もっと教育というところに力点を置いた現場づくり努力をしなければいけないのじゃないかという気がいたします。  同時に、予算の点についてもお触れになったわけでありますが、ことしは別ですが、従来の文教予算を拝見いたしますと、一般会計の規模の中に占める文教予算の割合というのは、年々低下一途をたどったわけですね。このことは、私は非常に残念なことではないかと思います。本年は一兆七千七百四十一億円、昨年に比べまして二四・九%、一般会計伸びが一九・七%でありますから、まさに久しぶりにこの文教予算伸び率が国の一般会計伸び率を上回った、こういうことだと思います。まあ、ことしはいろいろな事情もあったと思いますが、私はやはり、従来低下一途をたどった文教予算というものを、この際、先ほど申し上げたような観点から、わが国はやはり教育が一番大切なんだ、他に資源はないじゃないか、やはりこの創造性豊かな国民頭脳というものを養成していく、このことが、わが国にとって一番大切なんだという観点に立って、これからは、一般会計伸び率文教予算伸び率は常に上回るんだ、こういった方向を打ち出す必要があると存じます。この点に対する、奥野さんの御決意を承っておきましょう。
  13. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 全く同感でございまして、四十八年度予算のときも私はそういうつもりで努力をし、大体希望しておったものが予算化できたものですから、当然上回っているものだと思っておりました。しかし、結果的に見ますとそうでございませんで、たいへんがっかりしたわけでございまして、やはり経済成長などに力点を置きますと、公共事業、そういったものが特段に大きくなってきて、文教予算人件費が多いものでございますので、ああいう結果になったのかなあと、こう思っておるわけでございます。  それにしましても、今後は特に、予算の中に占める文教予算の比率が年々高まっていくというような注意をしながら、実質がさらに十分になりますように努力をしていくべきものだ、かように考えております。
  14. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 この問題は、あとでまたこまかく議論をしてみたいと思います。  次に、具体的な問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  それは、去る二月二十二日、衆議院会議におきまして、参議院から回付をされました教職員人材確保に関する法律案参議院修正どおり衆議院で同意をいたしまして成立をいたしました。二月二十五日付の官報を拝見いたしますと、二月二十五日付でこの法律が公布をされたということも承知をいたしているわけであります。  さて、そこで、これに関係する財源について具体的にお尋ねをいたしたいと存じます。昭和四十八年度予算におきましては、昭和四十九年の一月から三月まで一〇%の給与改善措置をとるということで財源措置がございました。百三十五億円程度だったと思います。これは二分の一国庫負担でありますから、当然これに見合う地方負担というものが、地方財政では必要なわけであります。この点につきましても、当時自治省お尋ねをいたしましたら、これに対する地方裏負担分につきましても財源措置をしてある、こういうお答えでございました。  問題は、それでは高等学校のほうは一体どうなんだろうかというお尋ねを、当時自治省にもいたしたわけであります。自治省のほうは、この法律成立の推移を見て考えたいと、こういうような御答弁を昨年はなされておったわけであります。現実にこの法律成立をいたしました。同時に、参議院附帯決議におきましては、「高等学校幼稚園並びに盲学校聾学校及び養護学校高等部及び幼稚部教育職員給与についても、義務教育学校教育職員給与改善との均衡を考慮して同時に必要な措置を講ずる」という趣旨の附帯決議がなされておるわけでございます。  そこで、自治省お尋ねしますが、昭和四十八年度、これから四十九年度のことはお尋ねいたしますが、その前提として、四十八年度義務教育学校のこの百三十五億に見合う地方負担、あわせまして、この高等学校幼稚園、これらの学校教育職員、これらの方々の改善措置が、当然私は人事院勧告ということでなされるのじゃないかと期待をいたしております。なされました場合の財源措置は、この昭和四十八年度地方財政計画の中では考えておるのかいないのか、また、当然それについては措置をしてあるのか、この点をまずお伺いをしておきたいと思います。
  15. 森岡敞

    森岡政府委員 義務教育職員につきましては、いま御指摘のように、国家予算におきましても百三十五億円計上いたしております。地方財政計画におきましては、それの地方負担分百四十五億円を合わせました二百八十億円を計上いたしまして、すでに普通交付税算定基準財政需要額に算入いたして配賦いたしております。  高等学校ないしは幼稚園教員につきましては、事柄の順序といたしまして、人事院勧告が出される、それに基づいて給与改善措置が講ぜられるということに相なろうかと考えるわけでございます。しかし、それがまだ出ていないわけでございます。そういう意味合いで、私どもといたしましては、その分を、現段階で、まだ的確に計算する状態に相なっておりません。できないわけでございます。  ただ、御案内のように、地方交付税の中で特別交付税も、昨年末の補正でかなり増加いたしました。そういう特別交付税増加分を勘案いたしまして、どの程度金額になりますか、まだ私ども明確にいたしておりませんけれども、それらの措置ができますような財源措置は十分なし得る、かように考えておるわけでございます。
  16. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 昭和四十八年度特別交付税は、本年の二月二十八日すでに配分を決定しているわけですね。そうしますと、いまの御答弁によりますと、すでにこの配分を決定いたしました昭和四十八年度特別交付税で、たぶん八十億円くらいかかるんじゃないかと思いますが、それに相当する財源の手当ては、すでになされておるというふうに受け取ってよろしいわけですか。
  17. 森岡敞

    森岡政府委員 本年度は、御承知のように、財政をめぐる環境が非常に激変いたしました。たとえば、小中学校建設費にいたしましても、保育所建築費にいたしましても、たいへんな上昇をいたしたわけでございます。国の予算におきましては補正もされました。また、それに見合う交付税増加あるいは地方債増額というようなこともいろいろやってまいったわけでございますが、なお建設物価の騰勢がやまないというふうなこともございますので、二月末に配分いたしました特別交付税算定にあたりましては、そういう物価騰貴問題も含めまして、私ども包括算入ということばで申しておりますけれども、包括的に一定の金額特別交付税計算基礎に入れております。それを活用いたしまして、十分高等学校なり幼稚園給与改善財源は確保できるものと、かように考えております。
  18. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 わかりました。昭和四十八年度の、すでに配分決定いたしました特別交付税で、高等学校幼稚園の分については措置し得るんだ、そういう要素を含めて包括算入して特別交付税配分がなされておるんだということでありますから、この点は了解をいたします。  そこで、次に昭和四十九年度の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  昭和四十九年度につきましては、本年の予算におきまして、義務教育学校給与改善措置につきましては二分の一国庫負担金の対象になるわけでありますから、当然措置しておられると思うのでありますが、一体、何ぼ措置してございますか。
  19. 岩間英太郎

    岩間政府委員 本年度分といたしまして、一〇%の引き上げが可能なような予算措置が行なわれたわけでありますが、その平年度化分といたしまして、公立学校分として六百五十六億三千四百万円、国立学校分といたしまして六億八千二百万円、これは平年度化分でございますが、さらに教職員給与引き上げの二年度分といたしまして、一〇%の三カ月分の相当額公立分としまして百五十九億二千万円、総額百六十億八千八百万円の予算措置をいたしておるような次第でございます。
  20. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 わかりました。  自治省お尋ねいたしますが、当然これに対する地方費が必要なわけであります。本年行なわれる予定の一〇%を平年度化したものが六百五十六億。そうしますと、これに見合うところの地方費が当然必要であります。さらに、昭和五十年の一月から三月まで一〇%の給与改善措置を講ずる、これが約百六十億円ということになりますと、これに見合いますところの地方費も当然必要になると思うのでありますが、その経費は、この地方財政計画の中で具体的にどのような形で措置されておられますか、お尋ねをいたします。
  21. 森岡敞

    森岡政府委員 明年度義務教育教員給与改善経費は、全体で、本年度の平年度化分明年度新たに一−三月実施いたします分、これを一〇%と考えまして千六百九十三億円でございます。国費が、先ほど文部省から御説明ございましたが、合計八百十六億円でございます。地方費が八百七十七億円ということに相なっております。この一般財源所要八百七十七億円につきましては、地方財政計画義務教育教員給与費に計上いたしております。  さらに、地方交付税算定にあたりましては、小学校費ないしは中学校費基準財政需要額に算入いたしまして、的確な財源措置を八月算定の際にいたす、かように考えております。
  22. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 さらに具体的にお尋ねしますと、この給与関係費義務教育関係職員経費の中に入っているということですね。それはわかりますが、さらにこの地方財政計画によりますと、歳出概要という項がございます。この歳出概要第8表に、昨年度に比べて本年度増減事由がずっと出ております。この増減事由の中に、1給与関係経費総額で九千五百八十七億円、地方費として七千六百三十億円、以下内訳といたしまして、給与費(ア)人事院勧告に伴う給与改定の増、(イ)昇給等に基づく増、(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)、さらに(キ)その他を分けましてa、bとありますが、具体的にはどこに算入されておりますか。たぶん推察をいたしますと、最後の用その他のbその他、総額で千九百七億円、地方費で千二百二十七億円、昨年に比べてふえる。この総額の中には、先ほどお話のございました千六百九十三億円に見合うものが当然入っており、地方費の中には、いまお話のございました八百七十七億円が千二百二十七億円の中に含まれておる、かように推察をいたすのでありますが、そのとおりでありますか。
  23. 森岡敞

    森岡政府委員 そのとおりでございます。
  24. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 わかりました。義務教育学校の面につきましては、このように明確に財源措置がなされておる。了解をいたします。  そこで、先ほどお尋ねいたしました高等学校幼稚園先生方給与改善に要する経費であります。  文部省お尋ねいたしましょう。高等学校先生方給与改善措置、これも当然行なわれるものと文部省期待しておられるだろうと思うのです。現在の先生方給与体系は、大学先生方、それから高等学校先生方義務制小中学校先生方、それぞれ別個の給与体系になっておりますね。いわゆる三本立ての給与体系といっております。したがいまして、同じ大学を卒業し小中学校におつとめになった場合と、高等学校におつとめになった場合は、若干給与高等学校先生方は高いわけです。そういう点があります。しかし、義務教育職員給与を四十八年度に一〇%改善する、それから四十九年度に一〇%改善する措置をやっていけば、これはむしろ小、中の先生方のほうが高等学校先生方、あるいは大学講師あるいは助手等先生方よりも、同一学歴、同一勤続年数において高くなるという状態が出てくるということは、私は当然だろうと思うのです。とすれば、当然この点を考慮いたしますならば、この不合理を是正するといいますか、逆転したものを、せめて義務教育先生方の水準に持っていくという程度改善措置は、私はなされなければならぬだろうと思います。  そういたしますと、これに関係いたします高等学校幼稚園先生方改善に要する経費はおよそどのくらいであり、また国立学校先生も、私がさっき申し上げたように、教授、助教授クラスはどうかわかりませんけれども、それ以下と言っては恐縮でありますが、講師助手等先生方の場合、同一学歴、同一経験年数でいって義務制先生方よりも著しく不均衡だというようなことでは、私はよろしくないと思います。そういった改善措置も、当然文部省として期待をしておるのではないかと思いますが、そういった経費については、およそどの程度必要であるというふうに概算をしておられますか。
  25. 岩間英太郎

    岩間政府委員 先ほど自治省審議官からお答え申し上げましたように、いま人事院のほうで具体的に作業を進めているようでありまして、私どもも内々の連絡はときどきいたしておりますけれども、まだほんとうにはっきりきまっていないような状況でございます。  したがいまして、その算定の結果がどうなるかというのは、ちょっとここで申し上げられるような段階ではございません。さっき先生から、八十億というふうな数字が、一応目安としてお述べになられておりましたけれども、見当としまして、大体そういうところになるかもしれません。まだ給与体系の問題、それから高等学校引き上げの率の問題、そういう点について結論が出ないようでございますので、私ども、ちょっとどれくらい財源が必要なのか、まだはっきり申し上げられない段階でございます。
  26. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 大臣お尋ねします。高等学校先生方幼稚園先生方は、給与費につきましては、国庫補助の対象になっておりませんですね。ですから、義務制先生方の場合は、当然国費として計上しなければならない。高等学校幼稚園の場合は、特にそういう必要はないといいますか、国費として計上せずともよろしいわけですね。ですから、先ほど局長が言ったような、のんきなことを言っておられるのじゃないかと思うのですが、しかし、現実の問題として、自治省だって、先ほどお答えがあったように、四十八年度地方財政計画に、高等学校幼稚園先生方給与改善については包括的に、そういう財政需要があるものとして、特別交付税に計上して流しておる、こういうふうに言っておられるのですから、当然大臣としては、特に、地方財政に非常に詳しい奥野さんとしては、当然この高等学校についても、本年はおおよそどの程度のものが必要である、幼稚園についてはどの程度のものが必要である、とすれば、当然地方財政計画にこの問題については見ておいていただかなければならぬというくらいのお考え方はあっただろうと思うし、また、当然そういう立場から、自治省に対しても御要請をしてきておるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  27. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話しのとおり、大蔵当局にも自治省当局にもお願いをしているわけでございます。大蔵当局としては予備費支出をしよう、こう言っていただいております。自治省当局のほうでも、それなりに計画の中で考えていただいているようでございます。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 おおよそその金額はどの程度必要ですか。要するに、ただ考えてくれ考えてくれというのじゃ、全く自治省のほうで、幾ら必要かということを算定しようもないでしょうから、当然文部省としては、幾ら程度が必要であると、概算的なものであってもけっこうだろうと思いますが、一応の目安はつけておられるだろうと思うのです。高等学校幼稚園、それぞれどの程度必要であるとお考えになって、大蔵省、自治省等と折衝されましたか。
  29. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほどもお話がございましたように、結論は人事院勧告にゆだねているわけでございます。  ただ、小中学校について初任給を引き上げると、その結果高等学校の上に出てしまう。それは当然高等学校の初任給も引き上げていかなければなりません。そういうようなことで、荒っぽく私たちは、小中が一〇%であれば高等学校が六%、大学が四%ぐらいじゃないかなという、かってな推測をいたしております。  しかし、かってな推測でございますので、財政当局にも、これでやってください、こう申し上げているわけじゃございませんで、人事院勧告、その結果大学にまで及んでいくことを私ども期待しているものだから、そういうようなことが現実の問題になった場合には、財源の拠出ができるようにひとつ御協力をいただきたい、こういうことでお願いをしているわけでございます。
  30. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そのおおよその六%でけっこうですから、大体国庫負担金の対象にならない、いわば交付税措置しなければならない高等学校幼稚園高等学校は言うまでもなく学校費の中の高等学校費、それからさらに市町村分の中の学校費の中の高等学校費、それから幼稚園につきましては、市町村の教育費の中のその他の教育費というところで当然措置をしなければならぬのですから、大臣に聞くよりは局長さんに聞いたほうがいいと思うのですが、大臣もそういうふうにおおよそ見当をつけているなら、一体何ぼくらい必要であるのか。それが若干移動したなんと言って、あとで文句は言いません。見当だと言っているのですから了解しましょう。およそ幾らくらいの見当をつけて、大蔵省なり自治省のほうと折衝されたのですか。
  31. 岩間英太郎

    岩間政府委員 従来から、給与費につきましては、私どものほうで自治省と、折衝するというよりは、自治省のほうで、むしろ仕事もずいぶんなれておりますから、計算をしていただいて私どもが知らしていただく、そういう関係でございます。  いま、高等学校給与費総額が四千四百五十七億というふうなことでございまして、扶養手当等を除きますと約四千億で、その六%というふうな大臣の御発言がございましたが、六%といたしますと大体二百六十五、六億ということでございまして、その三カ月分にいたしますと七十億程度でございます。それから、平年度化いたしますと、いま申し上げましたように二百六十五、六億というふうな数字になろうかと思います。
  32. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 今度は自治省のほうにお尋ねしましょう。  昭和四十八年度につきましては、特別交付税措置をされた高等学校幼稚園、その昭和四十九年度の必要経費については、この地方財政計画の中で、一体どこでこの高等学校先生方、これは府県の経費と市町村の経費と両方見なければいかぬと思いますが、どこでこの考慮をしておられるわけでありますか。また幼稚園につきましては、市町村の経費に属するものだと思いますが、これにつきましては、どこで措置をいたしておりますか。その額につきましては、むしろ自治省のほうがなれておって、文部省のほうにお話があるというお答えを聞きましたから、自治省のほうとしては、一体何ぼぐらい必要だという見込みでこの計入をされておりますか。森岡さんにお尋ねしましょう。
  33. 森岡敞

    森岡政府委員 いまの件につきましては、地方財政計画の策定にあたりまして、文部省から強い御要請がございます。ただ、私どもといたしましては、先ほど来お話が出ておりますように、人事院勧告を待って確定する事項でございますので、これを地方財政計画にストレートに計上するということはできないわけでございます。  そういう意味合いで、非常に頭を悩ましたわけでございますが、たいへん激動いたしております経済情勢のもとでございますので、地方財政も、御承知のように、来年度当初はたいへん引き締め基調で計上いたしておりますけれども経済環境の変化などに対応して、機動的、弾力的に動いていかなければならぬという面が、かなり出てくるんではないかという予測をいたしたわけでございます。  したがいまして、そういう各般の情勢変化に対応して、弾力的、機動的に動くということと、それから、文部省から御要請のございました高等学校なり幼稚園教員給与改善経費、これらをあわせまして、地方財政計画歳出の中に土地開発基金等という新たな項目を設けまして、土地開発基金を千四百億円、これは公有地の拡大の資金として積み立てておるわけでございますが、そのほかに、千三百億円の財政調整資金という新たな項目を計上することにいたしました。  先ほど来るる申し上げましたような、いろんな情勢の変化に対応いたしますと同時に、あわせて、高等学校ないしは幼稚園教員給与改善経費は、人事院勧告が出ました場合に、そつなく対応できるようにこれを活用したい、かように考えておるわけでございます。
  34. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そうしますと、この土地開発基金等に、財政調整資金千三百億円ですね。承りますと、県と市町村の配分は七百億円対六百億円だ、こう聞いておるわけです。この県の七百億の中に、県立高等学校先生給与改善経費、それから市町村六百億の中に、市町村立の高等学校先生方給与改善経費幼稚園先生方給与改善経費が含まれておる、こういうことだろうと思います。それでよろしいわけですね。  そこで、お尋ねいたしますが、これは当然普通交付税措置するものだというふうに思います。としますと、普通交付税として府県市町村に流す場合は、当然この交付税法のしかるべき単位費用でこれを措置しなければならぬだろうと思います。とすれば、その単位費用は、一体どういう形でこの経費を算入することにいたしておるのか、どの項目でこの経費を算入して府県市町村に交付税として流そうといたしておるのか、この点も、あわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 森岡敞

    森岡政府委員 この千三百億円は、先ほど申し上げましたように、財源留保という考え方を現段階ではとっております。そこで、人事院勧告が出まして、高等学校なり幼稚園給与改善の内容が確定いたしましたならば、その中で必要な財源所要額は、小学校につきましては、小学校費教職員数を測定単位とする単位費用、中学校費用につきましても同様に、教職員数を測定単位とする単位費用、それからその他教育費、これは生徒数なり児童数を測定単位とするもの、この単位費用の中に所要額を算入いたしまして、的確に普通交付税配分をする、かようにすべきものと考えております。  なお、全体として千三百億の留保を持っておるわけでございますが、これにつきましては、人口を測定単位とする一般的な留保財源として各地方公共団体に配分をしていきたい、かように現段階では考えております。
  36. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そうしますと、小学校費中学校費については、教職員数を測定単位とする単位費用で措置する、それはわかります。  ただ問題は、財政調整資金の千三百億、これは留保財源である。そうして、人事院勧告が出た際に、それを勘案して、人口数等を測定単位とする単位費用で見よう、こういうことでありますが、すでに交付税法の改正案は国会に提案されておりますね。去る日、衆議院会議でもすでに質問があったわけです。そうすると、交付税法によって単位費用の改善はもうきまっておるでしょう。きまっておるものを、今後留保財源として、人事院勧告を見てから措置するということでは、私はどうもなじまない気がするのですね。ちょっと不合理ではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  37. 森岡敞

    森岡政府委員 ちょっとお答えが混乱いたしましたので、訂正を含めて申し上げたいと思います。  義務教育教員につきましては、いま申しましたように、小学校なり中学校教職員数を測定単位とする単位費用で計算いたしております。それから留保財源につきましては、御指摘のように、人口を測定単位とする新たな単位費用を設けておりますので、これで配分をするという考え方で、すでに地方交付税の改正案を御提案いたしております。高等学校なり幼稚園につきましては、そういう財源配分によって措置をするという考え方を持っておるわけであります。その配分によって、高等学校なり幼稚園の必要な給与改善費は十分まかなえる、かように考えておるわけであります。
  38. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 それでわかりました。   〔主査退席、奥田主査代理着席〕 特に、地方財政に詳しい奥野さんが文部大臣でできました法律でありまして、しかも、財源措置自治省のほうで相当見なければならぬわけでありますから、それは奥野大臣としては抜かりがなくて、十分きちっとした措置ができているものと期待をするわけであります。  そこで、さらにお尋ねをしたいと思うのは、私立学校の問題であります。私立学校につきましては、参議院で付されました附帯決議によりまして、「私立学校教職員給与改善について、国は財政上の措置を講ずること。」こうなっております。私立学校職員の給与費につきましては、いろいろな経過がございましたが、昨年は、運営費の四〇%を助成するという形で、あるべき姿の給与単価というものを想定して、そうして私立学校職員の給与費の四割を助成する。ただ形は、府県に対する交付税でその点は措置をいたしまして、だから府県の基準財政需要に算入をいたしまして、そうして府県がその額を、当該府県にあります私立学校に対してそれぞれ助成をするという形で来ておったと存じます。  したがいまして、ことしは、この経費につきましては、昨年は地方財政計画におきまして、一般行政経費のうちの国庫負担金を伴わないもの、この経費の中に二百九十一億円算入されておったということを承知いたしております。本年はこれが五百十九億円に増額になったということをお伺いいたしているわけでございますが、確かに、給与単価も上がっておりましょうが、この四割を助成したものが二百九十一億円である。ことしは五割の助成にこれが高まったということを考慮いたしましても、当然、この二百九十一億円から五百十九億円に増額した、この伸び率考えれば、ある程度私学の先生方給与改善措置が行なわれることを期待して、この五百十九億円というものを算定したのではないかというふうにもとれるのでありますが、この点は自治省文部省との間で相談があって、どっちのほうから相談をかけたのか、どっちのほうが相談を受けたのか知りませんが、自治省文部省、どちらでもけっこうでありますから、積極的にこの相談をかけたほうの側から、ひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。大臣からでもけっこうです。
  39. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま御指摘のような問題もございますし、また同時に、私学の助成を強めていきたいということもございますので、国庫予算の場合にも、また地方財政の運営の上におきましても、いろいろと改善をお願いしてまいりました。その中で、対象率というんですか、地方財政の場合には、高等学校以下でございますけれども、七〇%にしておったのを八〇%と上げていただいたわけでございまして、国の場合にも、それに準じた改善をしていただきました。  同時にまた、給与単価の推定でございますけれども、いままでは前年の五月の五%増しをとっておったわけでございますけれども、四十九年度は一〇%増しをとっていただきました。そういうことを通じて、いまのような御指摘の問題やら、従来よりさらに改善に一歩を進めるというようなことにさしていただいたわけでございます。もちろん、四割を五割に上げたことは当然のことでございます。
  40. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 対象を七〇%から八〇%に引き上げ、それから給与引き上げ率も五%から一〇%に引き上げたというようなことで、もちろんこの四割の助成を五割の助成に変えたという増も含めて、二百九十一億が五百十九億になったということだろうと思います。趣旨はわかりました。あとでこの引き上げの根拠、具体的に資料としていただきたいと思います。時間の関係がありますので、それでお願いしておきましょう。  そこで、お尋ねいたしますが、私は、交付税はひもつき財源でない、したがって、府県なら府県がみずからの必要に応じてその財源を使ってよろしいということになっていることは百も承知です。しかし、参議院文教委員会でつけた附帯決議、あるいは現在私学の助成を強化してもらいたいというこの国民的な要求等々考えました場合、やはりこれが府県において現実に五百十九億、あるいは府県によってもっと私学助成を強めたいという場合は、これは当然ふやしてけっこうなわけでありますが、少なくとも財政計画で一応見たこの助成経費は、現実に私立の助成に充てられていくという形が私は望ましいと思います。そういうことについては、文部省として十分しかるべき機会を通じて指導をいただきたいことと、同時に、今回のこの私学助成の額の引き上げにあたっては、給与改善措置についても考慮しているんだということについて、十分私学に徹底できるような措置をとってもらいたいという意味が、私は、この附帯決議の中に込められているような気がいたすのであります。そのような努力をしていただけますかどうかということと、また明年におきましては、さらに、当然この給与改善措置が私学にも徹底されるような形で、より十分な私学助成の財源措置をとることが必要ではないかと思いますが、この点に対する考え方も、あわせて聞いておきたいと思います。
  41. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御意見、同じような気持ちでおるわけございます。同時に、今後も一そう私学助成の充実が行なわれますように、努力すべきものと考えております。
  42. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 次に、学校事務職員の問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  参議院附帯決議でも、学校事務職員の給与改善についても配慮することとうたっております。同じ学校の屋根の下に、校長先生もおられるし、いまのところ、法律の根拠はなくても教頭さんもおられるし、それから教諭の方もおられるし、助教諭の方もおられる、養護教諭の先生方もおられるし、さらにまた学校給食の栄養士の方もおられる、そしてまた事務職員の先生方もおられるわけですね。そうなってまいりました場合に、私は、この事務職員の先生方についてもこの給与改善措置を講じてもらいたいという要求は、いまのような教育現場の実態から見れば当然ではないか、かように存じます。  ただ問題は、今回人事院がこの勧告をするのは、教育職員の俸給表についてのみ勧告をする、人事院勧告する対象にこの事務職員の先生方給与表というものはないわけですね。現実に一般職の給与表をお使いになっている。ただ、府県ではそういうものを勘案して、この事務職員の給与体系はどうあるべきかという形で、具体的には措置をしておられるだろうと思うのです。とすれば、私は、この先生方給与改善措置が講ぜられるその場合に、事務職員の給与についても配慮するような行政指導を、文部省が府県の教育委員会におやりになることは、私は大いにけっこうではないかと思うのですね。  そういった意味で、この行政指導を文部省としてはどのような形でおやりになるか。またそうなれば、将来当然、給与費経費についてもある程度地方財政計画の中で見ていただくという必要もあるかもしれません。そういうことについては、文部省としては一体どういうお考え方であるか、あわせてお聞きしておきましょう。
  43. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまのお話の中にもちょっと出ましたように、今回は教員給与を、一般の公務員に比較して優遇されなければならないという大前提をきめていただいて、それに基づいて行なわれる措置でございますので、事務職員とは別個のものだと思います。  ただ、学校に勤務しておられる事務職員につきましては、現行俸給体系の中で、もっと処遇の改善をはかっていくべきではないかという問題を、従来からかかえておるわけでございます。そういうこともございまして、少なくとも四等級までは格づけできるようにしたいというようなことで、付属学校などにつきましては人事院とも話し合ってまいってきておるわけございますし、また地方につきましても、そういう意味での要請をしてきておるわけでございます。今後とも、そういう意味での格づけを引き上げていくということで努力をさせていただきたい、かように思っておるわけであります。
  44. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 いまの御答弁でありますが、格づけを四等級に引き上げるように今日までも努力してきた、そういう趣旨の指導も各府県の教育委員会に対してやってきた、また人事院に対してもいろいろ要請をしてきたというようなお話でありますが、ただ、やはり同じ学校の屋根の下に勤務する職員である。ですから、四等級までの格づけをするように努力いただくことはもちろんけっこうだと思うのでありますが、法律からいえば、これは義務教育学校先生方を優遇していくというのが、法律をずばり読めばそういうことですね。しかし、それとの均衡で、高等学校あるいは幼稚園先生方、あるいはひいては国立大学先生方についても、均衡を考慮して措置をしなければならぬということでありまするならば、そういう趣旨からいって、やはり学校事務職員の先生方改善についても、これは教育に全然関係ないとは言えないと私は思うのですね。やはり教育というのは、その学校全体が教育の場だろうと思うのです。そういう趣旨からいって、私は、やはり給与改善措置を何らかの形で進めていく。四等級格づけを大いに進めることけっこうでありますが、全体の事務職員の先生方の待遇改善もある程度進めていくというくらいのことは、私は、文部省としておやりになっておかしくはないと思うし、また、当然おやりになってしかるべきではないかと思うのでありますが、その点はいかがですか。
  45. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 問題のけじめをはっきりしていきませんと、私は、肝心の教員の処遇改善ができなくなってしまうと思います。同じ屋根の下だから、事務職員も同じような考え方を適用して引き上げていくということになってきますと、肝心の教員の処遇改善ができなくなってしまう。  ただ、現在におきましても俸給表はあるけれども、事務職員をどこへ位置づけるかということになってまいりますと、もっと向上させたいな、こう考えるわけでございまして、そういう意味合いにおいて努力をすることが筋道ではなかろうか、こう思っておるところでございます。
  46. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 一般職ですよ、給与の体系からいえば。学校先生方給与改善措置を行なうに至った一つの経過は、一般職の公務員の方は、係長から課長補佐、課長、部長、局長というような形で等級が上がっていく。ところが、学校先生方の場合は通し号俸であって、三十五、六歳になりますと、同一学歴、同一勤務年数でいって、一般職と先生方の場合は、初任給は先生のほうがいいけれども、逆転をする。やはりそういうことであってはならないのではないか、この点は改善をすべきじゃないかということが、今回の改善措置の一つの根拠だったろうと思うのです。事務職員の場合も同じように、他の公務員として他の現場の職種におつとめであれば、当然さっき言ったような、係長あるいは課長補佐というような段階で昇給昇格が行なわれるかもしれない。ところが、学校の事務職員の場合は、そういうポストというものはないわけです。ある程度みなしで昇給昇格をやっていくというかっこうだろうと思うのです。だから、四等級格づけということもお話になるのだろうと思うのです。そういう点で、一般職の他の市役所とかあるいは県庁とかにおつとめになった場合に比べて、ポストの関係で不利だという点はあるだろうと私は思うのです。それならば、そういう点の改善措置、いわば教職員給与改善措置の根拠の一つであったこの改善の一つの考え方というものくらいは適用しても、私は理論上おかしくないというふうに思います。この点は、時間もないですから、そういう考え方だけ申し上げておきましょう。  最後に、私が申し上げたいのは、いまの教育予算というのは、国の予算だけを見ては私はわからぬと思うのです。大学には国立あり、公立あり、私立がある。公立については、昨年から普通交付税措置することも実現いたしました。それから高校学校も、これは国立もあるでしょうし、府県立もあるし、市町村立もある。幼稚園については、市町村立が多いだろうと思います。そういう中で、もちろん私立の幼稚園もあれば、小中もあれば、高等学校もありますが、そういったもの全体を見て初めて、私は、わが国学校予算というものは明確になるだろうと思うのです。  特に、地方の占める割合というのは大きいと思いまして、私は「地方財政の現況」というのをずっと拝見いたしました。国の予算教育予算の割合が逐次低下したと同じように、府県の決算の中における教育費の割合というものも、残念ながら年々低下一途であります。私は、これは非常に残念だと思います。ですから、教育予算というのは文部省予算だけを見てもわからぬ。地方予算を見なければならぬ。さらに私立学校もある。そしてまた、先ほど来申し上げたように、交付税で見て市町村に助成するというものもある。こういうものを総括して、わが国学校教育予算は一体どのくらいなのか、これの方向が年々どのように推移しておるかということについて、私は明らかにする必要があるだろうと思うのですが、今日まで文部省は、いま申し上げたような趣旨で、年々学校教育予算というものがどう推移しておるか、国費、地方費、それから私立学校等を含めて、どのような推移になっておるかということについて、統計等はおつくりになっておられるのですか。
  47. 奥田真丈

    奥田政府委員 文部省におきましては、毎年学校教育費関係の調査をやっております。その調査結果につきましては、年次報告を出しております。
  48. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私は、それは知っています。その報告書はずいぶん間違いだらけとか、いろいろな議論をいたしましたが、学校教育全体の経費が、年々どう推移しておるかというような資料については、寡聞にして文部省からいただいたことがないのですよ。だから、せっかく財政に強い奥野さんが文部大臣に就任された、こういう機会に、わが国学校教育予算全般がどのような状況になっておるか、どのような推移をたどっておるかということについて、国民の方々にわかりやすいような資料を示すことが、奥野さんとして必要ではないだろうか。それが、せっかく奥野さんが文部大臣になった意味で必要じゃないだろうかというふうに思います。その点だけお伺いしまして、質問を終わっておきましょう。
  49. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま御指摘のようなものを中心に考えますと、五年ごとに発行する教育白書を、わが国教育水準としておるようでございますけれども、これにそういうことを書いておるのだそうであります。  しかし、いずれにしましても御指摘の点たいへん大切な問題でございますので、もう少し国民にわかってもらいやすいような方向でくふうしてまいりたいと思います。
  50. 奥田敬和

    奥田主査代理 井上普方君。
  51. 井上普方

    井上(普)分科員 御承知のように、数年前に大学紛争がございました。その発端は、医学教育にあったことは御存じのとおりです。このたび、地方大学医学部あるいは医科大学をおつくりになるという点につきまして、大学紛争が教訓としていかに取り入れられているか、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。  まず、この問題につきましては、私は、研究と教育体制についてどういうような新しい面をお持ちになっておられるのか、この点をお伺いしたいと思うのです。
  52. 木田宏

    ○木田政府委員 大学紛争を、医学教育の中でどのように考えておるかというお尋ねだったかと思います。  今回、旭川、山形、愛媛に続きまして、浜松、滋賀、宮崎等に医科大学をつくっていきますにつきましては、これまでの医学教育あり方を、それぞれの大学ごとに創意くふうをこらしながら改善をしてみたいということで、単科の大学で設置をしていくことを考えておる次第でございます。  そのことに伴いまして、大学の学部あるいは病院との関係というものをもう少し緊密に一体化する。また医学教育の進め方につきましても、四十八年度国立学校設置法等の一部を改正する法律によりまして、進学課程と専門課程とを分けないでもいいという学校教育法の改正もしていただきました。六年間の一貫教育という方途もとれるようにしておる次第でございます。さらに、今後の整備をいたしていくにつきましては、臨床教育充実を、これまでと全く違うという意味ではございませんが、違った形で少し充実させたいというところから、関連教育病院という制度を大学発足の際から取り入れることにいたしました。そして医科大学に協力してくれます地域の関連病院に対しまして、あらかじめ設備費等の助成も大学側から行ないまして、地域病院と大学病院との緊密な連携をとり、臨床、実習その他に備えるという体制で取り組んでおる次第でございます。
  53. 井上普方

    井上(普)分科員 それで大学紛争が、医学部の改革の教訓として生かされていないと私は思うのであります。特に、教育研究体制はどうなっておるのかということを私はお伺いしておるのであります。いまのお話でありますと、関連病院であるとか、あるいはまた単科でいくなどというようなことをお話しになりましたが、ひとつ単科の医科大学をつくることの弊害について申し上げましょう。  医学というものは、幅広い科学の集約でなければなりません。そういう意味において、総合大学の中で自由に学術の交流ができるところに、医学の進歩もあり研究もできるんだと私は思うのです。これを単に単科大学にして、医学部というただでさえセクトにこり固まろうとする大学の体制、この中において単科大学が、はたして時代に合った教育ができ、研究ができるとは私は思わないのであります。文部大臣いかがでございますか。やはり広い知識というものを集めたところに、初めて医学の進歩というものがあり得るんだ、単科大学として進めるやり方については、一考する必要があると私は思うのですが、大臣はいかがでございましょう。
  54. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 それぞれに特色があるんじゃないか、こう私は思います。総合大学の中で医学部を設置する、そういうことによって、おっしゃいますような幅広い研究を進めていくことが可能だということになろうかと思います。  ただしかし、今日のような学部割拠の大学の自治の中で、どこまでそれが期待できるだろうかということは考えなければならないと思います。同時にまた、単科大学にすることによって、いま申し上げますような妙味は期待できないわけでございますけれども、反面、それなりの特色を発揮する場合には、発揮しやすいんじゃないだろうかというふうに思うわけでございまして、多少それぞれ一長一短があるのじゃないだろうか。だから、どちらかにきめてしまわないで、それぞれの地域の状況に応じまして、ある場合には医学部を設置する、ある場合には単科医科大学を設置するというような方向でいきたいというのが、いまの考え方でございます。
  55. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣のいまのお話、単科大学考えられるいいところを全然お話しにならなかったのです。私は、いままでのセクトにこり固まったやり方、これに対しては大いに変えなければならぬと思います。しかし、各学部の学術の交流、研究の交流あるいは教育の交流ができるようなものを残すためには、総合大学のほうがいいんじゃないだろうか。もちろん、いまの体制のままではいかぬということはわかる。そういう面からするならば、この単科大学にする御意図は、単に大学紛争の発火点が医学部であるんだ、これが他の学部に波及するのをおそれるのあまり、単科大学に限定してしまおうという考え方があるのじゃなかろうかと私は憂えるのであります。日本の学術研究に、将来大きな支障を来たしはしないかということを私は憂えるものであります。  大臣は、単科と総合大学でそれぞれいいところがあるとおっしゃいましたけれども、どうも私は、いまの単科大学だけではいい面が見当たらないのであります。この点、御所見を承る時間がはなはだ少のうございますので、ひとつお考え合わせ願いたいと思うのでありますが、単に大学紛争をおそれるあまり、医科大学を単科大学にしようという発想は、私は慎むべきであると思いますが、どうでございましょう。
  56. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 必ずしもそういう見地ではございませんで、御承知だと思うのでございますが、戦後の大学改革、一県一大学ということでいろんな学校をみんな合わせてしまいまして、そして大学それぞれ学部ということにしたわけでございまして、それまで、たとえば工業専門の学校でありますと、それなりにエンジニアの特別なカラーを私は出しておったと思うのでございます。それぞれの専門分野ごとに、それなりの気がまえというものが、かなりあふれておったということは言えると思うのでございます。  総合大学にした結果、そういう意味のいろんな特色というものが失われたんじゃないだろうかということを私は心配をするわけでございますし、また、違ったものが寄り集まって、はたして一体となった研究、教育の環境をつくり出せるかということになりますと、若干問題もあるようでございます。同時に、あまり大きな大学になりますと、これもいかがなものだろうかな、こう考えられるわけでございますので、そこは、やはり地域地域の状況に応じまして、ある場合には単科大学、ある場合には総合大学、何も医科に限りませんで、そういう方向にいったほうがいいんじゃないかな、こんなことを思っておるところでございます。  同時にまた、研究所の場合でも、学部付属の研究所というよりも、場合によっては共同利用の研究所、各大学がそれを利用するという研究所が好ましいのじゃないだろうか。したがいまして、単科大学でありますと、それぞれの医学関係者との交流というものもわりあいにやりやすいのじゃないかと思うのでございますが、そういう意味で片寄らずに進んでいきたい、こう思っております。
  57. 井上普方

    井上(普)分科員 どうも大臣お話を承っておりますと、それは職業人を育てるとするならば、私は単科大学をたくさんつくることがいいだろうと思う。しかしながら、いま求められておるのは全人的な人格の形成というところ、そこにあるし、また、学術のうんのうをきわめるのが大学ということになっておる以上は、あらゆる科学というものは日進月歩、学術は日進月歩です。しかも、狭いところに閉じ込められておったならば、私は、新しい研究体制あるいは教育体制というのはできないのじゃないだろうか、このような危惧を持つものであります。御一考願いたいと思います。  さらにこの問題につきまして、教育体制について、いまの局長お話でございますというと、依然として講座制をおとりになっておられると思います。ところが、講座制それ自体大きな問題点をはらんでおるのであります。明治から百年の間続いてきた、ここには新しい進歩なんというものは私は考えられない。むしろ講座制に乗っかかった日本の学術の保守性があると思うのです。ここらを改革するのこそ、大学紛争の教訓ではなかろうかと私は思うのでございますが、大臣いかがでございましょうか。——大臣、私がお伺いしておるのは、一官僚の考え方というのじゃないのです。そういうのでありましたならば、私はこういう大まかな質問はいたしません。重箱のすみをつついたような質問をします。政治家奥野さんとしての発想を、ひとつお伺いしたいのです。
  58. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 あまりそういう点について詳しくございませんので、できれば政府委員と思って、政府委員に答弁してもらおうと考えたわけでございます。  講座制の問題につきましても、いろいろ検討が行なわれているようでございまして、いずれまた国立大学協会におきまして結論を出してくれるだろう、かように考えるわけでございます。そういう結論につきましては、できる限りそれを尊重して対処していきたい、こう考えておるわけでございます。
  59. 井上普方

    井上(普)分科員 大学紛争すでに七年になります。しかも発端が医学部なのであります。ところが、この講座制あるいは教育体制、その研究体制そのものに対して、一指だに文部省は手をつけようとしない。あるいは大学におきましても、各種の改革案なるものが出てまいりました。しかし、実際それが表面に実効をあらわしておらないと思うのです。大学紛争というものはあれだけのエネルギーを使い、あるいは一時学術の研究までストップするという国民的なエネルギーを費やしたものです。したがいまして、この大学紛争の教訓というものは生かされなければならない問題だと思います。ただ単に表面を糊塗し、大学の紛争をおさめれば事足れりじゃ、私は済まない問題だと思う。  あの当時、学生諸君が提起した問題は、私らがいろいろと考えさせられる点があると思う。あの原理的な問いかけに対して、やはり政治というものは答えを出さなければならない時期が来ておると思うのです。ところが、いまだにこれに対して、各大学内の研究教育体制それ自体も、新しくつくる大学でありながら、これに対して方向づけがなされていないのははなはだ遺憾に思う、大臣、いかがでしょう。
  60. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 大学紛争にかんがみまするいろいろな改革は、それぞれの大学においても、積極的に取り上げていただくように強く求めておるわけでございますし、国といたしましても、筑波大学のような新しい方式を考えましたのも、教育なり研究なりそれぞれを強化したいということでございました。医学教育の問題につきましても、六年一貫の教育を進めるということにいたしましたのも、紛争の反省にかんがみた措置でございまして、新しくつくりました大学につきましては、すべて、二年の進学課程、三年の専門課程ということじゃなしに、最初から専門的なことについても教育に当たってもらおう、こうも考えておるわけでございます。講座制の問題につきましては、かなり広い幅で研究、教育が行なわれるような方向で検討が進められている、こう伺っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、問題はかなり深いわけでございますので、それぞれについてそれぞれの大学が、対応した課題を解いていってもらうということを期待しておるわけでございます。
  61. 井上普方

    井上(普)分科員 大学紛争の後、出た諸改革案、奥野さんも東大でございましょう、東大の改革案も出ました。分厚いものが出ております。しかし、これがまだ実行に移されておりません。あらゆる大学においても、あの当時の改革のエネルギーというものは失っておるように私には思われてならないのであります。  そこで私は、古い大学あるいはずうたいの大きくなったのはなかなか身動きがつきにくいと思うのです。したがいまして、そういう中において新しい大学をつくるという際には、しかも身軽な大学、そういうときには、ひとつ講座制をどういうようにするとか、あるいは研究体制をどういうように改革するとかということを、ひとつあの時点に立った改革案を実行していただくことが私は望ましいのじゃなかろうか、このように思うのです。これが政治が、あの大学紛争を率直にすなおに取り入れた方法じゃなかろうかと思います。いまの文部省の案でありましたら、いかにして紛争がないように、そればかりにこだわった改革といいますか、改正であって、実際、原理的な大学あり方それ自体にメスを入れたやり方ではないと思うのです。大臣、いかがでございますか。
  62. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いろいろな点があろうか、かように考えるわけでございますけれども、基本的には、大学人自身が積極的に改革案をつくっていかなければならない。国が一つの方式を押しつけるよりも、各大学がそれぞれ、いまお話しのような気がまえで努力していかなければならない、かように考えておるところでございます。  同時にまた、一般的な問題については、先ほど申し上げましたように、大学人自身がお互いにそういう考えを持って努力をしているところでございます。同時にまた、いままである大学につきましても、大学が出してきました問題については、医学に限りませんけれども予算措置、立法措置、そういうものは積極的に御協力申し上げているつもりでございまして、今回の中でも、医学部ではございませんけれども、広島大学でありますとか、北海道大学でありますとか、大学改革構想をそのまま実現させるということで努力をしてきているところでございます。  同時にまた、大学が学のうんのうをきわめるという式のお話がございましたが、私たちは、そういう問題になると大学院の問題だろう、こう考えておるわけでございまして、その大学院の充実ということも、いま取っ組んでおるところでございまして、むしろ修士課程、博士課程、並列的に考えたほうがいいのじゃないだろうか。しかもまた、大学にしても大学院にしましても、一定の年限で拘束することはいかがなものだろうか。やはりそれだけの正課をおさめれば次に進んでいけるような仕組みを考える、形式的な年限だけで縛っていくことはいかがなものだろうか、そういうようなことも考えておるところでございまして、ぜひ来年度からは大学院の改革も実現させてもらいたい、こう思っておるところでございます。
  63. 井上普方

    井上(普)分科員 私が申し上げるのは、大臣のおっしゃるように、大学人自身の改革の決意に基づいて大学改革というものはなされなければならないと思います。しかしながら、それが遅々として進まない。しかし、今度新しく文部省大学医学部というものをつくるのです。あるいは医科大学というものをつくるのです。その際には、もう少し大学紛争の経験を、単に紛争を押えるというのじゃなくして、あの当時問題になった諸問題をひとつお考えになって大学というものはつくるべきじゃなかろうか、私はこのように思うのであります。と申しますのは、私は一つの例示をいたしましょう。  新しく医科大学をつくる際には、学閥というのが依然として残っておるようです。大学教授をつくるのには、一体どうやってつくるのかといいますと、有名な大学のほうから医学部長なり何かがやってきまして、それが、あれはいいだろう、これはいいだろうというのを選定して教授にしておるようであります。おそらく、このたびの予算案に出されております大学の中におきましては、もうそういう作業が進んでおるでしょう。見てみますと、依然として学閥が残っておるのです。これではやがてまた起こりますよ。起こるのみならず、はたしてそれがほんとうの大学あり方だろうかという点に、私は疑問を持つからであります。  いまですと、どうも文部省が、大学何やら審議会なるものが、あれが学長にいいだろう、あるいはこれの補佐には、これがよさそうだというのを二、三人出しているようです。その出身大学を中心にしてどうも教授を選定している。もうすでにできているのですよ。こういうように、文部省が発表するときには、おそらく今度の国立の大学には、あるいは旭川の大学には、何科の教授はどこそこから来るのだということがきまっている。こんなことでは困ると私は思うのです。広くほんとうに人材を集めた新しい大学をつくっていただかなければならないと思いますので、私は申し上げておるのです。  それには、やはりいまの基本的な問題として、講座制というのはいかにあるべきか、こういう問題をひとつ考える必要があるのじゃなかろうかと私は思うのであります。いまの文部省の新設大学の設立に対する考え方については、私ははなはだ不満足なものを感ぜざるを得ないし、やがてまたここに、大学とは一体何だという原理的な闘争が起こる芽ばえを包蔵しておることを大臣に申し上げたいと存ずるのであります。いかがでございますか。
  64. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま学閥のお話がございました。現在、新しく大学をつくりますときには、特定の大学の出身者が、教授陣の中で三分の一以上占めないというような方針で、大学設置審議会が内容を検討しているようでございます。私から言わせますと、優秀な方々ばかりなら三分の一をこえてもいいじゃないか、こんな感じを持っておりましたけれども、いまおっしゃいましたような学閥的なものの発生を避けるという意味で、それが厳格に審議されているのだろうと思います。  同時にまた、大学をつくりますときに、学長でありますとか、医学部長とか、病院長でありますとかいうような方々が、同一大学に属さない、それぞれ別の大学の出身者をもって充てるような配慮も行なわれているようでございまして、できる限りそういうような方向で、学閥的な運営にならない用心はしていきたいと思います。
  65. 井上普方

    井上(普)分科員 実際につくられておるのは、それは三分の一というワクはございますけれども、しかし、ぎりぎり一ぱいまできていますよ。そしてそこにいわゆる学閥が蠢動するし、やっておる事実を私はたくさん見るのであります。そして大学がつくられるといいますと、もうすでに、いまごろですと大体人選は何々と内々にはきまっておるでしょう。いまの学閥というのはそれほどひどいのです。ここらあたりも、もう少し厳重にお考え願いたいと思います。  私は、時間がございませんので、あとまた大学問題も申し上げたいのでございますが、ひとつほかの問題についてお伺いしようと思います。これは、大臣はあまり御存じないと思いますが、留学生の問題についてお伺いをしたいのでございます。  留学生は国費、私費の留学生制度というものができておりますが、私費制度に対しましても、医療補助であるとか、多少の補助が出されております。しかしながら、いまの留学生の受け入れ体制が十分でないがために、日本に留学しても、日本に対しましては非常に恨むといいますか、ありがたがらない、こういう結果を見ておるのは、先日のインドネシアあるいはタイにおいて、あるいはシンガポールにおいても明らかだろうと思うのであります。そうかといって、私、この国連の調査なんかを見てみますと、どうもおかしいのでございまして、国連の調査を見ますと、韓国から来ておる人も留学生に入れておる。ところが、文部省のほうは、韓国の人を留学生として認めていないような調査結果にもなっております。そして、日本では一体どれだけ留学させておるのか見てみますと、留学生の数は、世界各国と比べまして、日本は十五番目か十六番目くらいになっておるのです。あるいはまた、国費の留学生の補助制度にしましても、これまた一人当たりの単位費用にいたしますと、世界の十四、五番目くらいになっておるのであります。  大臣日本はあくまでも諸外国と友好関係にあらなければならない、これは大原則なのです。そのためには、若い諸君に、ほんとうに日本に学んでよかったという気持ちを起こさせなければならぬと思うのです。それには、国がもう少し国費制度、あるいはまた私費の留学生にしましても、手厚い手を差し伸べる必要があると思うのでございますが、いかがでございましょう。
  66. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 おっしゃっておりますように、外国から日本に留学してくる方々に、日本に留学してよかったなという気持ちで帰ってもらう、これはたいへん大事なことだと思います。  国費留学生につきましては、一応の処遇をいたしておるわけでございまして、これはまあこの程度のことかなという感じを持っておるわけでございます。しかし大多数は、八割近い者が私費留学生でございます。こういう方々に対しましては、医療費補助を今回は八割まで高めるようにさせていただいたわけでございますけれども、住居の問題、あるいはそういう方が日本において生活していく場合のいろいろな相談の仕事の問題などにつきまして、従来以上の努力をしなければならぬのじゃないかな、かように考えておるところでございます。  より以上に大事なことは、社会全体がアジアの留学生を受け入れる気持ち、これにつきまして、欧米の人たちを受け入れると同じような気持ちで処遇するように、もっと啓蒙していかなければいけないのじゃないかな、こんなことも私としては、あわせて心配しているところでございます。
  67. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、いまの御答弁は、その場で思いつかれたおことばじゃございますまいか。それよりも社会に対して欧米の人たちと同様にとおっしゃいますが、それを範を垂れるのは国じゃございませんか。国のこの留学生に対する受け入れ体制というものが全然なっていない。ここに表がございます。これをひとつごらんになっていただきたいと思うのです。日本の国費留学生に対する奨学金の支給率、実にこれは何番目ですか、十五番目です。インドよりも低いのです。あるいはまたオーストラリアなんかよりも低いのです。スペインよりも低いのです。スペインのおそらく三分の一でしょう。こういうことでは、日本でせっかく学びながら、日本に対しまして、日本はいい国だという感じを持たずに、インドネシアあるいはまたシンガポール、タイのような事件が続発すると私は思います。これはひとつ一大改革をやらなければならないと思うのです。どうでございましょう。
  68. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国費留学生が、全体の留学生の中の二割くらいいるようでございます。同時に、国費留学生の場合に、大学院に勉強をする方でございますと、下宿の補助を合わせまして、月十万円ということにしているわけでございまして、この金額につきましては、そう他の国に劣るものではないだろう、こう考えておるわけでございます。  先ほど社会のと、こう申し上げましたのは、タイやインドネシアでああいう事件がありましてから、アジアの留学生の世話をしておりますホテルのボーイさんが見えまして、やはり向こうの人たちの一番不愉快に思っているのは差別観ということですよと、こう教えられたわけでございます。そんなことないよ、こう言うたら、胸に手を当てて考えてみなさいよと、こう言われた。なるほど、そういうことで思い起こしてみると、下宿を頼んでも、欧米の人間なら簡単に受け入れてくれるけれども、アジアの人間だということになると、なかなか受け付けてくれないのだという話を聞いたものですから、あんなことを申し上げたわけでございます。  私費留学生につきまして、どこまで国費でお世話するかということになりますと、国費留学生とは違いますだけに、ある程度の限界はあるのじゃないか、こう思うわけでございます。それにしましても、先ほど申し上げたような方向で、なお一そうのお世話をできる限りしていきたいな、こう思っておるところでございます。
  69. 井上普方

    井上(普)分科員 時間がございませんので、私はこの問題について詳しく申し上げる機会がないのでございますが、この留学生を受ける際に、いま国費の留学生については、宿舎は大体できております。しかも、これも留学生ばかりを一ところに固めているのですね。日本人との、日本の学生との交流、生活を通じての交流がない。したがいまして、日本人に対する、日本というものに対する認識もはなはだ薄くなりがちであります。これをひとつ改革する。宿舎をもう少したくさんつくって、国費の留学生だけは入れるけれども、私費の留学生は入れないというようなことは、ひとつおやめになったらどうでございましょう。そして数多く、もう少し国が、この留学生の宿舎なんかをおつくりになる必要があるのじゃありませんか。どうです。
  70. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たとえて申し上げますと、千葉などにもそういう宿舎を設けているわけでございますが、そういうところは余ってきて、東京のところが足りないというような、地域によってかなりそういう集中の度合いが違うようであります。  いずれにいたしましても、一番大事なことは宿舎問題ではなかろうか、こう考えているわけでございまして、今後もそういう点については力を入れていきたい。単に国の宿舎だけでなしに、民間でもそういうことについて、御協力いただけるような姿を助成していきたいな、かように考えておるところでございます。
  71. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、それよりもむしろ、留学生ばかりを一ところに集めるということではなくて、日本人の学生との交流をさせるという必要があるのではございませんか。どうでございます。——もう時間がございませんので、この点は、大臣もうなずいておられますので、さらに御努力を私はお願いいたしたいと思います。  いろいろと文教関係につきまして申し上げたいこともございますが、いずれあらためて申し上げたいと存じます。
  72. 奥田敬和

    奥田主査代理 次に、中川利三郎君。
  73. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 私は、公立小中学校の統合の問題についてお聞きをするわけでありますが、三十一年の通達に比べまして、昭和四十八年、昨年の九月二十七日に出した通達によりますと、これまでの小学校、中学校の統合合併について、いろいろな留意事項がついているわけですね。たとえば、「学校規模を重視する余り無理な学校統合を行い、地域住民等との間に紛争を生じたり、通学上著しい困難を招いたりすることは避けなければならない。」こういうことが書いてあるわけでありますが、このことは、そういう留意事項、つまり避けなければならない事項がたくさんある。そういうふうな状態に該当する場合は、学校統廃合をしないのだ、やめるのだ、こういうことに理解してよろしいかどうか、お聞きしたいと思います。
  74. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 やめる、やめないという問題は、これはきわめて具体的な問題でございますから、個々のケースに即していろいろ判断をしなければならないかと考えますが、文部省の指導方針は、ただいま御紹介がございましたようなことでございまして、そうした方向で指導してまいりたいというふうに考えております。
  75. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 つまり、文部省の指導方針は、学校規模を重視する余り、無理な学校統合を行なうことは避けなければならない、地域住民等との間に紛争を生じたりすることは避けなければならない、通学上著しい困難を招いたりすることは避けなければならない、こういう行政指導だと理解してよろしいかどうか。
  76. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そのとおりでございます。
  77. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 実は、私の郷里でありますが、秋田県の大館市に真中小学校という小学校がございまして、この地域は大館市といいながらも過疎、豪雪地帯なわけです。ここではこの真中と二井田小学校というものと、もう一つ杉沢小学校というものの三校統合の問題が昭和四十六年から起こっておりまして、これはもういまたいへんな紛争の種になっているわけであります。もともと、この経過をいいますと、最初は真中小学校というのは何にも予定にはなかったのでありますが、杉沢小学校と二井田小学校が合併するという際になかなか話が進まない、一たん進んだ話がこじれた、こういう関係の中で、それならいっそ真中小学校もひっくるめてしまったらいいじゃないか。つまり当初の二校の統合のしりぬぐいを真中小学校がかぶった、そういうかっこうで、そんなばかなことがあるものか、おれのほうは除外してもらうのは当然だということで、いまそういう経過の中でたいへんな紛争が起こっているわけであります。おたくのほうの通達から見ましても、この実態はあまりひどい、無理な統合なんですね。  どういうふうに無理なのかといいますと、たとえばその真中地区の住民の署名なんかを見ますと、その地域には有権者が千四百九十六人いるわけでありますが、その中の千五十六名の方々が署名に参加して、私たちはそういう不当なことには参加するわけにはいかないんだ、こういっているわけなんですね。またその地域には十七の部落があるわけでありますが、この十七の部落におきましては、全部の部落会が、区長やら副区長を含めまして、全員で決議して、このような不当な学校の統合には賛成するわけにはいかないのだ、こういう激しい決意に燃えているわけです。たとえば、一つの板沢部落の反対の決議文を見ますと「当部落で臨時総会を開いた所あくまで反対すると議決致しました よって再度議会を開いて真中小学校を三校統合から削除するよう求めます もし受け入れられない時は最悪の事態となる事を申し添えます」と、ある部落が全部で決議文を上げておる、こういう状況もあるわけですね。あるいは地元の一つしかない、影響力のある新聞なんかも、県民世論のあるところを、社説でこの問題を取り上げている。  そういうことでたいへんなわけでありますが、こういう事例から見ますと、これは通達の趣旨に沿って、確かに学校規模を重視するあまり無理な統合だということが一つ、地域住民との間に紛争が起こっているということが一つですね、その他いろいろありますけれども、やはり避けなければならないという部類におたくの行政指導をする必要があるのではなかろうか、このように思いますが、どうですか。
  78. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 御指摘の学校統合につきまして紛争が起こっておるということは、私どもも何回か陳情を受けて承知をしておるわけでございますが、一方大館市の市議会におきましては、正規にこの学校の統合についてすでに議決をされておるようでございます。各部落あるいは地区におきまして御指摘のような反対運動があることは私ども承知はいたしておりますが、一方、市の正規の機関におきまして、教育委員会の正規の提案を受けてそうした議決が行なわれているということでございますと、やはりそれは地元自体の問題として、円満に解決をしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。文部省といたしましても、先般出しましたような通達の趣旨もございまして、大館市に対しまして秋田県を通じまして、円満な事態の解決を慫慂しておるような事情でございます。具体的に補助申請がございました場合にどういうふうに扱うかということにつきましては、まだ私どもとしては結論を出しておりません。現段階では秋田県当局に対しまして、地元における円満な解決のために努力をしてもらいたいということを指導しておる段階でございます。
  79. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 いま、議会で正規の手続を経た、こういうことでありますが、地域民主主義といいますか、その原点であるそこの地域住民のほとんどが反対しているわけですね。議会はそれを押し通したわけですね。それを不当だということで、その後に地域住民の方々は直接請求で条例改正を請求したわけです。このときはどういう状況かというと、千五十名あれば法定数を満たされるわけでありますが、実際に集まったのは四千四名、四倍集まっているんですね。それでもなおかつまたやられたわけですね。そうすると一たんおさまるかに見えるわけですけれども、実態はそうではなくて、今度は、そういうことをするならばわれわれは登校を拒否するのだ。今度は四千人の署名ではなくて一万人の署名運動、これもいま大体そろっている状況。そういう議会の云々ということでやれば、ますます火に油を注ぐというかっこうで紛糾を重ねているというのが実態なわけですね。  そこで大臣にお伺いするわけでありますが、この前、この問題は地元ではらちがあかないということで、大臣に直接地元の方々が大挙して押しかけて、何とかしてくれないかということで陳情があったと思うのです。その陳情に対して大臣はどうお答えになっておるのか、その後どう措置したのか、ひとつお知らせいただければありがたいと思います。
  80. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話しのように、真中小学校の関係の方々がいらっしゃいました。  私は、県、市から文部省へ補助申請が行なわれない限り、文部省が単独で補助金を決定するというようなことはありませんよ、地元で解決をしてくださいよと言うたことが一点でございます。もう一つは、私に対するお話の中で、まず杉沢と二井田とが合併をして、その次に適当な期間を置いて真中が入る、こういう合併をしたほうがいいと思っているんです、こういうお話がありました。同時に距離のお話も出たりいたしまして、ちょっといま正確に覚えておりませんが、一番遠いところで四キロぐらいじゃなかったかと思うのございます。そういうこともございますので、統合ということになるとなかなかそれぞれの地域の反対があって大騒ぎになるのですけれども、真中の場合にはそれほど遠い距離じゃありませんね、こういうことは申し上げました。しかし、いずれを選ぶか皆さんたちでよく御相談をしてほしいけれども、三つ統合するということも一つの考えですな、しかしまたいろいろな事情もあるわけでしょうから、私はなるたけ仲よくきめてくださいよと言うしかありませんな、ということでお別れをしたところでございました。
  81. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 これは地元の問題だから地元で円満に話し合えばいいじゃないか、先ほどそういうお答えもありましたが、円満に話し合うということは確かに必要なことだと思うのです。ただ状況がそういう状況でないということです。たとえば大館市当局も確かに円満に話し合うということは私にも言いましたよ。そう言いながら、地域の住民がだれ一人知らない間に、今度の四十九年度、新年度予算学校の用地買収費、建築費含めて計上することになって、きのうかおととい予算内示を行なったんですね。そうなりますと、一方で話し合いをしましょうと言いながら、実質的に次々と積み上げていくわけですから、住民から見ましたらこれはもう挑戦なわけですね。話し合いのような状況ができるという前提がないわけなんです。したがって、こういう事態のあり方自体、問題ですが、私は、国はこういう紛争の間は起債だとかあるいは国庫補助を、今度要請するだろうと思うのですけれども、認めるべきではないというふうに思います。いかがでございましょうか。
  82. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 繰り返しになりますが、文部省の指導方針は先ほど先生から御指摘のあったようなことでございます。ただいま大臣からもお答えをいたしましたように、まだ補助申請が来ていないわけでございますし、地元で、県を中心でございますが、せっかく円満に解決するような努力も行なわれているようでございます。かつまた、この補助の手続といたしましては、市が県を経由して文部省に申請するわけでございまして、その際、県当局がこの補助について意見を述べるようなことにもなっております。県当局の意見も私どもまだ具体的には聞いていないわけでございまして、そうした申請があり、かつ県当局から正規の副申がついてまいりました段階で、その内容等を検討いたしました上で、本件についての具体的な判断をいたしたいと考えております。現段階では先ほど申し上げましたように、県、市における円満な解決をさらにお願いをする、そういうことでございます。
  83. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 そうすると、おたくで、このような事例については学校統合を避けるべきだ、強行すべきじゃない、こう言うが、いまのような事例はこういうことに当てはまらないのですか。ただ地元の問題だからといったところで、県の姿勢も問題なわけでありますが、そういう既成事実を一方的に積み上げて、県はそれをうのみにしておたくのほうへ申し込めば、おたくではそれによって判断するということですが、いずれ、いまの状況の中で、おたくはそういう書類が出てきたら補助を認めるのですか、それとも差しとめて、あなたが円満な解決云々と言うからには、そういう状況を見たあとで措置するのか、この点やはりあなたの責任ではっきりさせる必要があると思うのです。どうですか。
  84. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 円満な解決ができるかできないかということが今日の課題であるわけでございます。したがいまして、できなければということは一つの仮定の御質問にもなろうかと思いますが、私どもは円満な解決をはかってもらいたいということで指導をいたしておるわけでございますから、その結果を見まして判断をいたしたい。これは一般論といたしましては、こういう紛争のある学校統合というのは好ましくないと考えますが、しかしさらに今後努力を続けられて円満に話し合いがつけば、またそういう対応もいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  85. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 一般論としては好ましくないけれども、円満に解決することを望む、それはそのとおりですね。ただ、いまどういう事態に発展しているかというと、逆に、登校を拒否するんだと、ますます事態の紛糾が拡大してきているというのが実態なんですね。そういう場合はそうすると、文部省はそういうことを静観しておった、秋田の県教委も静観しておった、登校拒否という事態になれば、一体だれが責任をとるのですか。この時点で文部省なりが態度を明らかにして、通達と違うじゃないかということで強い指導をすることが私はひとつ大事なことだ、こう思うわけであります。決して統合そのものに反対じゃなくて、真中をそういう歴史的経過からいたしましても除外せよと言っているわけですから、文部省がこういうことについてただ現地の状況を見てからということよりも、いまその現地がどうにもならないから、大臣のところまで大挙して来ているという、住民の泣きほえする叫びを聞いていただきたいと思うのです。私、せんだって行ったら、汽車に乗る一時間前に現地に連絡したから、連絡がおそく行ったから現地であまり集まらないと思ったら、公民館が割れるくらいの人が来て、私たちは死んでもこれには反対するんだと、あそこら辺のうちといううちには全部反対のポスターを張ったり、もう長老から若い人から、おかあさんからおばあさんから、みんなそういうことで結集しているんですよ。だから、不測の事態が起こったときだれが責任を持つかということも含めてのあなたの御発言なのか。やはりこの際文部省が乗り出して、こうだというそれをやっていただかないことには、教育に対する文部省の責任、があえて問われるのじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  86. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私も陳情の方々に二度ばかりお会いをいたしまして、かなり時間をさいていろいろ伺ったわけでございます。したがいまして、その地区の方々のお気持ちあるいは主張はよくわかっておるつもりでございますが、先ほど申し上げましたように、これは大館市におけるきわめて個別的、具体的な問題でございますから、これにいかに対応されるかということは、大館市の教育委員会あるいは教育委員、教育長、市長、市議会の皆さま方が第一次的には最大の努力をされるべき課題だと思います。登校拒否云々のお話もございましたが、それはもちろんきわめて好ましいことではございませんけれども、そういう事態を回避するということは、ただいま申し上げましたような行政当局の責任、第一次的にはその責任であろうと思います。それに対しまして、県教委の主管課等がさらに円満な解決をはかるべく指導いたしておるわけでございまして、文部省もそういう努力がさらに積極的に行なわれることを期待もいたしておりますし、またそういう方向で指導を続けてまいりたいというふうに考えております。
  87. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 あなたのお話を聞きますと、第一次的には地元の責任だ、地元が円満に措置すべきだ、こういうことでありますけれども、現実にますますそういう紛争が拡大している状況ですね。しかも、だれも態度を発表する人はいないんだ。態度というか、行政当局が、そのことについては話し合いすると言いながら、実質的には予算を計上する、土地買収費を計上する、こういう積み重ねを行なっていくわけですね。まことに非教育的なやり方ですね。あるいはおたくに聞いても、現地が円満にいかないとどうにもならないということですね。そうすると地元の人たちの悲しみや嘆きというものはずっとこれからも続いていくわけですね。したがって、そういうことでは教育自体が破壊していく道筋をたどるだろうと思うのです。そういうことであってはならないから、一応いまの紛争がある間は、やはり文部省として国の助成、補助あるいは起債、こういうものは好ましくないと思うか、あるいはそういう状況があっても文部省はおやりになるつもりなのか。ただ一般論でなく私は具体的にお伺いしているわけですから、この場合はどうなんだということでお答えいただきたいと思うのです。
  88. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 繰り返しになりますが、私どもはその紛争を円満に解決をしていただきたいということを申しておるわけでございます。文部省といたしましては、県教委を通じましてさらに市当局の積極的な努力が行なわれますよう、さらに指導をいたしたいというふうに考えます。
  89. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 だから、さらに努力することはわかります。指導することはわかりますけれども、いまの紛争がある間は、文部省としては助成したり、申請が来た場合に早急に措置することがあるのかないのか、この点だけはっきりしてください。時間がないですから、何回も同じことでなく……。
  90. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私も同じお答えを繰り返すほかないわけでございますが、紛争が解決しなかったならばどうかということについては、これはいわば仮定の御質問になろうかと思いますが、私どもは現段階では、紛争を解決してそして文部省に申請をしていただきたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。(「申請がないのに予算を書くのか」と呼ぶ者あり)
  91. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 いま隣からそういう意見も出ていますな。申請がないのに地元では予算を組んでいる。おたくの国庫補助を当てにしているんだな。県に出したのを見ますと、ちゃんと国からの国庫補助四千五百四十五万円、起債三千四百万円というのを出しておる。そして今度新年度予算を出しておるのです。これをこのまま見のがすということは……。おたくでは、ただそういうものが明らかにならないうちははっきりさせないと言いながら、下にいけばこういうことになっているのですよ。こういうことに対してどう思いますか。
  92. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 自治体が予算措置をします場合に、一々文部省に補助金が出ますか出ませんかということを聞くわけではございません。これは大館に限らずどこでもそうでございます。ですからそういうことはしばしばあることかと思います。
  93. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 あなたはいま真中小学校の例だと言いましたが、秋田県にはまだまだたくさんこういう例がある。ちょっとひどい例ですから申し上げますが、秋田県の平鹿郡の増田という統合中学校がある。去年統合されたところですが、ここでは去年統合して、ちゃんと送り迎えするというようなことでしたが、あるいは統合した中心地に寄宿舎をつくる、こういうことを言っておったが、もう五、六年もすれば県道がりっぱになるから寄宿舎なんかつくらなくていいんだということで、そういう約束で統合したのに、寄宿舎の用地を町の誘致工場に売ってしまった、そういう問題があるわけだ。そのほかに、スクールバスに乗ろうじゃないかと思ったら、豪雪でみなとまっちゃったのだな。どうしたかというと、生徒を町の旅館に、あの一般の公衆が泊まる、あるいは連れ込みも泊まるかもわからない、そういうところへ、二月十二日から三月七日の卒業式まで全部住まわせたわけですね。そのほかに、いま物価が高くなっているから、生徒一人につき一万円ずつ支払えということで父兄に請求が来ているわけですね。統合中学の中でこういう状況が起こっているんですよ。あるいは白岩という、秋田県の角館というところの近所の統合のもので、みんな新聞の記事になって問題が起こっているのですね。  文部大臣に申し上げますけれども、あなたは四キロ以内はたいしたことないなんて言いますけれども、過疎地、豪雪地帯、特に豪雪地帯の四キロというのは、小学生の足だと夏の道でも一時間かかるのですよ。まして大雨が降ったとか大雪が降ったとか、そういうときはバスはもちろんとまりますし、たいへんな状況なんだな。だから一般論じゃなくて、文部省の基準が全国一律に四キロだとか四・五キロなんていったって、豪雪地帯の小学校の子供がそういうことに耐えることができるのかどうか、こういうことを十分勘案していただきたいということと、現にこの真中地区には統合した南中学校という学校があるのですが、ここでは痴漢があらわれるということで、大館の警察署の刑事が張り込んでいるんですよ。まして長い距離では、小学校の上級学年になればやはりからだも大きいからそういう事態が起こらないとも限らないし、いままでは雨が降れば家からすぐ迎えにも行けたのですが、あるいはぬれながらでも帰ることができたのですけれども、そういう特殊な地域において一律にものを考えることは誤りじゃないか、この際ひとつ文部大臣も実態に即した見直しをすべきではなかろうか、こういうふうに考えるが、どうです。
  94. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 管理局長はどちらかの味方になっているようにとられることを心配しながら答えていることが私にはよくわかっておったわけでございます。いずれにいたしましても、混乱のままで市から県に申請書を上げ、そして県から国へそのまま出してくるという例はあまりないようでございます。同時にまた、市としては統合したいわけでございましょうから、予算を組んでかかって、その間に真中の方々と話をつけようというようなこともあり得るわけでございますので、私は善意に解釈したいなという気持ちを持ちます。同時に、真中の皆さん方とお話ししておったときも、永久に統合反対だとはおっしゃっておりませんでした。若干の時期をおいてもらえばいいのだ、こういうことをおっしゃっておったわけでございます。そういうこともありますので、これは条件で話がつくんじゃないかなというような気持ちも持ちまして、そしてたしか三キロぐらいじゃなかったかと思うのですけれども、四キロまでだと、そのとき私も豪雪地帯ということが頭の中にございまして、そうすると季節的に寄宿舎を開設するというようなことも考えられるのかなと、言うたか言わなかったか覚えておりませんけれども、いろんな条件の折り合いだってあり得るわけでございますので、そんなことをいろいろ考えておったわけでございます。ですから、住民が反対のままで押し切るということじゃなしに、住民を説得して、住民の反対とされている点についての解決をはかって統合に持っていくということだってあり得るわけのものでございますので、できる限りそういう意味において話し合いが円満に実ることを期待したい、こう思っておるところでございます。
  95. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 大臣、そうしますと、当然ものの道理として、円満に話し合いするためにはその前提条件がなければなりません。というのは、円満に解決しよう、話し合いしようと言いながら、予算を計上して既成事実を積み上げる、このことは教育的なあり方だと思いますか、あなた。
  96. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま申し上げましたように、市としてはあくまでも統合したいわけでしょうから、統合の予算を計上しておいて、その中でさらに条件を詰めていって必要なものを追加計上するということだってあり得る、どういう立場でその予算計上を判断するかによって違ってくると思うのであります。善意に解釈すればそういうことだってあり得るのじゃないだろうか、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  97. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 私、頭が悪いものだからよくわからないけれども、まあとにかくいまの紛争がある間は、これはもう一回確認ですが、おたくは県がそういう書類をよこすべきじゃない、こういう指導だということでよろしいですね。
  98. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 具体的なケースといたしましては補助申請が出ていないわけでございますので、公式な意見は述べる時期ではないわけでございますが、紛争の解決にさらに努力をしていただきたい。文部省といたしましては申請が出ました段階で、県の副申等を十分参考にいたしまして態度を決定いたしたい、かように考えております。
  99. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 それなら、そのときにひとつ県からそういう申請が出たらそれをお見せいただけますか。事実と、実態と非常に違うということがあるのですよ。なぜそうなるかというと、秋田県の教育当局は、大館市役所が住民にまいた合併のチラシですけれども、このことは何でもみんないいことなんだ。つまり、通達の趣旨なんというものはまっこうからネグっておって、この合併こそは、この統合は文部省、県教育委員会の指導方針に沿うものですと書いてあります。あの通達を出されたあとですよ。そういう住民の圧倒的な、そこの地域の九〇%もが反対して、各部落がみな決議を上げているときに、これは文部省、県教委の指導方針に沿うものだという、そういう方向で書いているわけですね。ですから、大館市役所が住民に配ったのはまさにトラの威をかるというか、県や文部省の威光をかりて住民を納得させようという、そういう強硬姿勢なんですね。こういうふうに悪用されているということについてあなたはどう考えますか。  同時に、県教委はこの通達を三十一年通達と——今回の通達というものはいろいろな反省の中に生まれたと思うのですが、基本的には同じなんだ、こういう言い方なんだな。通達の趣旨は少しも変わらないなんていって、特に一月十日に県教育委員会は、真中小学校問題について、文部省通達に違反するものではありませんという新聞広告を出している。こういう態度は、あなたの言う、県教委はそういうことじゃないとかなんとか言いますけれども、こういう姿勢の中では、住民の願いだとかそういうものは一方的に踏みにじられていくだろう、そういうことでいいのかどうか、その事実をあなたは御認識になっていますか。
  100. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 秋田県教育委員会は、文部省から昨年の九月出ました新しい通達をそのまま県内に流しておるわけでございます。特に今後の学校統合はこの方針でやってもらいたいということを申しておるわけでございます。ただいま御指摘の、新聞にそうした広告をしたということは、私も初めてただいま伺ったわけでございます。さらに県当局につきまして事情を聴取いたしまして、適切な指導をいたしたいというふうに考えます。
  101. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 新聞に広告というか、新聞にそういう意見表明をしたということです。それで、私、時間がないからやめますけれども、このような紛争が現実に起こっているのだな。秋田県からそういう書類が来た時点でも起こっているかもわからないのだ。そのときでもあなたは——仮定の問題だと言って答えないのではなくて、そのときでもあなたはそういう申請が来ればやるのかやらないのかということだな。紛争が起こっておるという状態の中で申請が来たらどうしますか、この一つだけはっきりしてください。
  102. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほど申し上げましたように、その際は秋田県教育委員会から何らかの意見表示があるわけでございますから……
  103. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 文部省としてどうするかということを聞いているのです。
  104. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文部省といたしましては、その意見を十分検討いたしまして補助するかしないかを決定したいと考えております。
  105. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 やめようと思ったけれども、住民はこれで紛争が起こっているのですよ、自治体の中に。秋田県はこういう姿勢ですからどう言ってくるかわかりません。そうすると、住民の意見は、あなたのほうの判断なり何なりによれば全く圧殺されるということでしょう。あなたはまことにそういう教育的でないものを押しつけるということになるでしょう。そういう紛争があるという状態の中では、あなたのほうではやはり補助、起債は出さない、こういう態度でなければ、ほんとうに通達の趣旨も、ほんとうに民主的な地域の教育も確立できないのじゃないですか、どうです。
  106. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 住民の意見というお話でございますが、先ほど申し上げましたように、市議会におきましてそうした議決も行なわれているわけでございます。そうした点もやはりしんしゃくをして判断をしなければいかぬかと思います。
  107. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 住民のことをどう判断するの、そういうことで。このあとにまた詰めますけれども、いま時間が参りましたので、これで質問をやめます。
  108. 奥田敬和

    奥田主査代理 新井彬之君。
  109. 新井彬之

    新井分科員 私は、文化財の保護行政につきまして若干の質問をさせていただきます。  文化財の保護につきましては、これはもう大事なことであるということは私も重々認識をするところでございまして、これは今後法律に基づいたことできちっとやってまいらなければならない、こういうぐあいに思うわけでございますが、この文化財の保護に関しましては、やはり多くの方々の協力を得ていく、そこには当然私権の制限であるとか、財産権の問題であるとか、そういうようなことがあるわけでございます。そこで、私は、そういうことがあればあるほど法律をきちっと守って、そして、だれが聞いてもだれが見てもおかしくない、納得するような文化財保護の行政というものをやっていかなければならない、このように思うわけでございますけれども、初めに文部大臣文化庁長官の御所見を賜わりたいと思います。
  110. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話しのように、文化財の保護につきましては住民の理解、協力が得られなければならないことは申し上げるまでもございません。したがいまして、これまでも史跡の指定等にあたりましては、住民の意見を十分聞いた上で告示をするという方式はとっておるわけでございます。今後ともそのような考え方で運用してまいりたいと思います。
  111. 安達健二

    ○安達政府委員 ただいま大臣のお述べになりましたと全く同一の方針で考えておるわけでございます。
  112. 新井彬之

    新井分科員 いま大臣は、地域住民の御意見もよく聞いてとおっしゃいましたね。そういう御答弁をなさいましたですね。それで、地域住民の声を聞いて今後やっていくということについてはわかるわけですが、いままではどのようにやられておったのですか。
  113. 安達健二

    ○安達政府委員 史跡の指定につきましては、一般住民の方々の御理解を得て行なうというのが当然でございますが、実際の指定等の問題の際におきまして、一人一人の方々の意見を聞くということが事実上困難なような場合もございます。こういう場合におきましては、当該市町村長あるいは県の教育委員会というようなところと十分相談をいたしまして、当該市町村長等が住民との間の関係につきまして調整をしていただくというような形で実際上の運営をいたしておるわけでございます。
  114. 新井彬之

    新井分科員 その件はその件でおいておきまして、先ほど私は、法律を厳密に、厳格に適用していかなければならない、こういうことで、そのことについての答弁はなかったのですが、これは厳格にやっていくべきだということで了解したいと思います。  昭和三十一年十一月二十六日付の官報に、昭和二十七年三月二十九日付をもって文化財保護委員会告示第七十号で史跡姫路城趾に史跡の追加指定を行なっており、また同日、三十一年十一月二十六日付をもって告示七十一号で同時に特別史跡にしておるわけでございますけれども、これをそういうぐあいに指定した経過について簡単に御説明願いたいと思います。
  115. 安達健二

    ○安達政府委員 この姫路城の指定につきましては、従来からたびたびの指定の段階がございまして、最初に指定いたしましたのは昭和三年でございます。それから十六年と二十七年に追加指定をする、こういうような段階になり、三十一年に特別史跡の指定がある、こういう段階になっておるわけでございます。  先ほどお述べになりました、その指定の際にさかのぼった日付をもって指定をするというような告示がございます。これはその当時の先例等でそうしたのだろうと思うわけでございますけれども、その日付は審議会で決定のあった日というふうでございまして、指定の効力が生じますのはその告示のあった後と解するのが適当である、かように考えておるわけでございます。
  116. 新井彬之

    新井分科員 聞かれないことまで答弁をしていただく必要はないと思います。  文化財保護法は昭和二十五年に制定されておりまして、その後、昭和二十九年に同法は一部改正されまして、指定の手続もそのときに改正されておるわけでございます。すなわち、改正前の昭和二十五年制定の旧法では、史跡、名勝及び天然記念物の指定は、法第六十九条一項の規定により文化財保護委員会がこれを指定するとあって、第三項にこれらの「指定をしたときは、委員会は、その旨を官報で告示し、且つ、指定されたものの所有者及び権原に基く占有者に通知しなければならない。」、こういうことになっております。その前に二十一条では、史跡及び特別史跡等の指定にあたっては、あらかじめ文化財専門審議会に諮問し、専門審議会はこれを受けて、これらの事項についての専門的及び技術的事項を調査審議して、保護委員会に建議するように定められておるわけでございます。したがいまして、この姫路城址の史跡追加指定は昭和二十七年三月二十九日付でございますので、その当時の旧法、すなわち昭和二十五年制定の法律第二百十四号に従って史跡に指定されたものと思いますが、いま言ったような法律的手続に従って指定されてきたのかどうか、この件についてお伺いいたします。
  117. 清水成之

    ○清水政府委員 ただいまの件でございますが、文化財専門審議会にはかるということは当然でございまして、昭和二十七年の三月二十八日付諮問第二十一号で諮問をいたしました。   〔奥田主査代理退席、主査着席〕 文化財専門審議会としましては、同日史跡部会を開きまして、そしてこれを指定するということに可決をしたわけでございます。そして、この天然記念物を所掌しております第三分科会が同日開かれまして、そこでやはり可決をいたしまして、翌日の二十九日の文化財専門審議会の総会におきまして可決をするということで答申をいただいておる、こういう手続でございます。
  118. 新井彬之

    新井分科員 そうしますと、その諮問であるとかあるいはまた審議会のそういう答申であるとか、そういうものの資料はちゃんとあるわけですね。
  119. 清水成之

    ○清水政府委員 ただいまの件でございますが、諮問いたしました当時の記録としましては、諮問しますにつきましてはかくかくの理由で指定したいという理由書をつけて出しております。そういうものがございます。
  120. 新井彬之

    新井分科員 そうしますと、もう一つ抜けていますけれども、そこで結局その理由書に従って審議をされた、それにおいてこういうわけだからこれは文化財に指定すべきであるという答申が出てくるわけでしょう。それはちゃんとありますね。
  121. 清水成之

    ○清水政府委員 ございます。
  122. 新井彬之

    新井分科員 私はここでも一つの大きな問題があると思います。ということは、諮問をされて、同日付で決議されて、そういうようなことで、現地調査であるとか具体的なそういうものがほんとうに全然やられていない、そういうことでどんどん史跡に指定される。こういうことについて文部大臣、どうですか、先ほどの話と関連して。
  123. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 一般的には、書類を出す前に事実上の話し合いが行なわれて、そして話のついたところで書類の交換が行なわれるということもあるわけでございます。そういうこともなしに、いま話が出ましたように、ただ非常に形式的に扱うということはなるたけ避けたほうが好ましい。ある程度納得をしてもらって進めていくというほうが本来の行き方であろう、こう思っております。
  124. 新井彬之

    新井分科員 お願いでありますけれども、この諮問と理由書ですね、それから先ほどの答申の資料をいただきたい、このようにお願いしたいと思います。
  125. 藤井勝志

    藤井主査 文部省、いいですか。——いいですね。
  126. 清水成之

    ○清水政府委員 けっこうでございます。
  127. 新井彬之

    新井分科員 昭和三十一年十一月二十六日の官報告示第七十号を見ますと、その内容は、「文化財保護法の一部を改正する法律昭和二十九年法律第百三十一号)による改正前の文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第六十九条第一項の規定により、昭和二十七年三月二十九日付をもって、史跡姫路城跡(昭和三年文部省告示第二百四十八号及び昭和十六年文部省告示第七百四十二号)の地域に次の地域を追加指定した。昭和三十一年十一月二十六日 文化財保護委員会委員長高橋誠一郎」こういうことで、あとにその地域が示されておるわけでございますが、ここでまず初めに聞いておきたいことは、昭和三年文部省告示第二百四十八号の内容はどんなことになっていますか。——おわかりになりませんか。
  128. 清水成之

    ○清水政府委員 昭和三年の告示につきましては、第一回目の指定でございまして、本丸地区、それから内廓の指定の関係でございます。
  129. 新井彬之

    新井分科員 ここに文部省告示第二百四十八号があります。その内容は、「鳥取縣西伯郡米子町女子技藝學校ノ名稱竝修業年限ヲ昭和三年四月ヨリ左ノ通變更ノ件認可セリ 昭和三年四月四日文部大臣水野錬太郎」、これは間違いありませんか。
  130. 清水成之

    ○清水政府委員 ただいまの点でございますが、この点、現在訴訟になっておるケースでございまして、いまちょっと、とかく申し上げるのは私自身としましてはどうかと思うのでございますが、この文部省告示第二百四十八号が鳥取県の学校の問題であるということは確かなようでございます。当時のあれからいきますと、内務省所管の時代でございまして、内務省告示の記載誤りがあったのではなかろうか、こういうふうにいまの時点では思われるわけでございます。
  131. 新井彬之

    新井分科員 その件は、この告示はこれは一般の方、みんな見ようと思ったら見られるわけですからね。そしてどういうことでなったんだろうということでみんながやはり関心を持っているわけですね。したがって、そういうふうないいかげんなことであってはならない、こういうように思うわけです。  それからその次に、文化財保護法の一部を改正する法律昭和二十九年法律第百三十一号による改正前の文化財保護法を改正後に適用したということについては、何の法律を根拠にやられたのですか。
  132. 清水成之

    ○清水政府委員 先ほど長官もお答えの中でその点に若干触れたかと思うのでございますが、最近はこういうことはいたすことはないわけでございますが、当時ここに引っぱりましたのは、旧法の二十九年改正前に文化財専門審議会があった、それの決定、答申を得た、それが旧法時代でございましたので、それを引っぱって決定の時期を明らかにしたものだ、こういうふうに理解せざるを得ない、かように考えております。
  133. 新井彬之

    新井分科員 何の法律によってやったかということです。私、さっき文部大臣にお伺いしましたけれども、やはり厳正に法律をきちっとしてやっていくのがいまのたてまえになっておりますね。したがって、それをはっきり答弁願います。  それからもう一つつけ加えますけれども法律にないようなことをやっているということは違反ということですよ。
  134. 清水成之

    ○清水政府委員 先ほどもお答えしましたように、現行法でまいりますならばまた別の条文になろうかと思いますが、当時、文化財専門審議会それから文化財保護委員会、ここが決定しました当時の条文を引っぱりまして、決定のあった時点が旧法時代であったということでこれを引っぱった、こういう理解をしておるわけでございます。
  135. 新井彬之

    新井分科員 あなた、基礎的なことがちょっとはっきりされてないと思うのです。とにかく官報に載ったということであれば、その官報に載った時点の法律を適用するのが当然でしょう。それをこういう法律を適用した、わざわざ悪意的にやられたということですね。これは何の法律によってやられたのですか。
  136. 清水成之

    ○清水政府委員 何の法律というと、ちょっと私もお話しの点がよくわからないのでございますが、追加指定を文化財保護法によってやった、こういうふうにお答えせざるを得ないと思うのでございます。
  137. 新井彬之

    新井分科員 あなた、そんないいかげんなことを言って逃げちゃいけないじゃないですか。これを私がさっきから二回も読んでいるのです。そしてこの内容を私が明確に言っているわけです。これについては、本来ならば二十九年に一部改正された法律、それを当然適用されるべきでしょう。違うのですか、どうなんですか、その辺は。
  138. 清水成之

    ○清水政府委員 まことに苦しいところでございますが、いま御指摘のように、現在でございますならば、率直に昭和二十九年に改正になりました現行法を適用しまして昭和三十一年に告示をした、かように思うのでございますが、当時のことでございますのでさだかではございませんが、先ほど申し上げたような趣旨でこれを引っぱったのではなかろうか、こういうふうに理解するわけでございます。
  139. 新井彬之

    新井分科員 文部大臣、昔のことだからさだかでないからわかりません、こんなような文化財の保護行政というのがあるのでしょうか、お答え願います。
  140. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ちょっと事情を知らなかったもので……。  いろいろ伺いながら、多少複雑な手続の問題もあるようでございます。二十七年に決定して三十一年に指定した、その間に法律改正などがあったものですから、引用条文が若干前後しているということのようでございます。むしろ積極的に私としても調査したいなということを、いま伺いながら感じておったところでございます。
  141. 新井彬之

    新井分科員 これは調査というよりも、いま私が言ったとおりでございまして、明らかに法律にないことをやっておるわけですよ。そうでしょう。そういうふうなでたらめなことで結局文化財の行政ということがやられているところがありますから、私はやはり協力を求めるべきものは求め、そしてまた、文化財を大切にするところはするのだけれども、そういう厳密な法律というものを適用して、だれが見てもおかしくない、内容においてもあるいはそういう手続上においても瑕疵があってはならないということですね。したがって、私はいまの答弁を認めるわけにはいきません。全くこの告示自体は無効ですよ。けれども、その件についてはもうそれ以上答弁が出ないと思いますので、じゃもう一つ、逆の意味でまたお伺いしていきたいと思うのです。  今度指定されましたときに、旧法の指定でいけば、六十九条の三項では、結局官報で指定された場合にはその所有者及び権原に基づく占有者に通知をしなければならないということになっておりますね。そのことはやられましたか。
  142. 清水成之

    ○清水政府委員 当時の事情を調べてみますと、告示をいたしましたのが昭和三十一年でございまして、この辺はちょっと一貫しないところもあるわけで、その点の御指摘かと思いますが、現行法の六十九条の三項でございますが、それによりまして、官報告示と同時に所有者及び占有者に通知するという規定がございます。なお、所有者、占有者が多数の場合におきましては、市役所あるいはその他適当なる掲示場に公示をして所有者、占有者に対する通知にかえることができる、こういう規定がございまして、当時としまして、調べてみますと、それを適用いたしまして、三十二年の二月に姫路市において掲示が行なわれた、こういう手続に相なっております。
  143. 新井彬之

    新井分科員 そこもおかしな話ですね、このあれからいきますと。だから、ほんとうにきちっとされたことがやれてないわけです。私が一番初めに申し上げましたように、この法律自体がきちっと守られてやらなければだれも納得できないですよ。特にこの前も、文化庁のほうから部長さんが見えて、姫路城趾の、白鷺町の地域の方々でございますけれども、それこそいろいろと質問をされて、その中でほんとうに考えさせられたというようなことがあると思うのですね。そういうようなことについては、時間がありませんからもうこれ以上長々とやりませんけれども、一体長官はそういう点についてどのようにお聞きしているのですか。あと、この件については帰って長官にも文部大臣にもお話をするというような意向だったと思いますけれども、長官と文部大臣のその件についての御見解を聞いておきたいと思います。
  144. 安達健二

    ○安達政府委員 姫路城の特別史跡、姫路城跡の地域内における現状変更の処理の問題、これはわれわれとしても非常にむずかしい問題でございまして、住民の方々の意向、あるいは市の意向、県の意向、あるいは建設省、大蔵省、そういう関係のところが非常に多うございまして、私どもといたしましては、できるだけ話し合いで、うまくこの特別史跡、姫路城跡が守られ、そしてまた住民の方々も御協力いただけるような線を見つけようということで非常に心を砕いているつもりでございます。ただ、われわれが微力で、なかなか十分な御同意までまだ得られない段階でございますけれども、われわれといたしましては、できるだけその点、基本精神に沿いまして努力を続けてまいりたい、こういう趣旨でございます。
  145. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 姫路城の史跡の保存につきましては、保存という点だけを考えていきますと、住民の現状を変えていかなければならない無理がずいぶんあるようでございます。したがいまして、極端な無理なことにならないように、そしてまた姫路城の史跡を保存していくという目的が達せ得られますように、十分留意していかなければならないと考えておるところでございます。
  146. 新井彬之

    新井分科員 先ほど大臣も、地域住民の方々の御納得をいただくような行政をしなければならない。いままではそういうことではなくて、市町村とかあるいは県だとか、そういうところからお話を伺っておったというようなことがあるようでございますが、現在では先ほど大臣答弁のあったようにやっていただきたい。  この問題については、長官はなかなか御納得がいただけないとかいろいろ言っておりますけれども、納得されるような、やはり誠意ある態度と内容というものを示さない限りにおいては、だれも納得できないと思うのです。実際問題、あの地域というのは前は練兵場でしょう。そこに防空壕がものすごく掘られておった地域でしょう。それで終戦後には公営住宅というものが建ってやってきたのを、こんなようないいかげんな、ずさんな指定でもってだあんとやられた。そのために非常に迷惑をこうむっておる。生活をやっておる上にいろいろ具体的な問題があるわけでございますから、どうかそういうことをきちっと踏まえて、長官みずからがそういう解決に乗り出して、ほんとうに納得してもらうのだ、これが今後の文化財保護行政でなくてはならない、こういうことを強く要望しまして、質問を終わります。
  147. 藤井勝志

  148. 倉成正

    倉成分科員 私は、情報化社会における教育についてお尋ねをいたしたいと思います。したがいまして、お答えは必ずしも大臣でなくても、一番よくおわかりの方でけっこうだと思います。  いまここに参りまして、文部省所管予算案概要説明を拝見しておりますと、八ページの終わりから七行目に「情報科学」ということばを一つ見受けたわけであります。私はこのことばを非常に興味深く拝見をしましたけれども、非常に大事な情報問題についての教育の取り組み方がまだ不十分ではないか、そういう観点お尋ねをしたいと思うのでございます。  現代におけるコンピューターの出現というのは、御案内のように、二百年前の動力機械あるいは蒸気機関の出現にも匹敵するような非常に深刻な変化をもたらしておるわけでございます。もしコンピューターがなかったら月の世界への旅行もできなかったでありましょうし、ここから見えます霞が関ビルもあのような短時日には完成しなかったでございましょう。いわば、原子力が人間の肉体的な能力の拡大というふうに理解するならば、コンピューターは人間の知的能力の拡大、すなわち無限の可能性を知的能力について与えたものということができると思うのでございます。しかし、この輝かしい可能性と同時に、最近問題となっておりますプライバシーあるいは管理社会というような危険性がある、すなわち陰があるということも事実でございます。最近、国連の報告書の中にもプライバシーの問題が取り上げられ、またアメリカのニクソン大統領が、副大統領を委員長とするプライバシーの委員会を設けたということも最近の新聞で伝えられているとおりでございます。  そこで、私はそういう観点に立って、情報化社会ということがよくいわれるわけでありますけれども文部省として、情報化社会というのはどういう社会であると理解しておられるか、ちょっとお伺いをしてみたいと思います。したがって、かた苦しく、あげ足をとろうとか、そういう意味じゃございませんし、問題を明らかにするという意味お尋ねしておりますから、非常にフランクに、フリーにお答えをいただけばけっこうだと思います。
  149. 木田宏

    ○木田政府委員 いままでの社会は、物の生産ということを中心にいたしまして、具体的な素材を合成しながら製品につくり上げていく。そういう物を中心にした生産の社会から、その基盤をささえておりますいわゆる情報でございますが、情報の流れというものを積み上げていって、新しい情報をつくり出し、人間社会意味のある機能として、新たな意味をそこにつくり上げていく。これらがわれわれの社会生活の中でかなり重要な役割りを持ってくる。物の生産に対しまして、そういう情報の生産、流通ということが非常に大きな役割りを持ってくる社会、これを私どもは情報化社会と——私どもというよりは、私自身がそのように考えておるところでございます。
  150. 倉成正

    倉成分科員 ただいまお話がございましたように、物質、エネルギー、情報、この三つを並列して考えますときに、物の重要性、また最近石油危機でエネルギーの重要性が叫ばれるようになりましたけれども、物質やエネルギーよりも情報、いわゆる無形のものがだんだん価値を持ってくるようになってきた、そういう世の中であるというふうにお答えになったと思うわけでありまして、私もまたそのように考えるわけでございます。  そこで、この情報化社会にはどういう特色があるとお考えになりましょうか。それも端的に、感じでけっこうですから、お答えいただきたい。
  151. 木田宏

    ○木田政府委員 端的に申しますと、私は、情報化社会をささえるものは、その社会の構成員の知的水準が非常に高まっていく、そういう高学歴、高水準の社会ではなかろうかというふうに考えます。
  152. 倉成正

    倉成分科員 高学歴、すなわち大学の卒業者が多い、あるいは高等学校の進学率が一〇〇%に近いものになってくる。もちろんこういう社会が実現するためには、ある程度の所得水準がなければならないということを前提としてのお話であろうかと思います。そういうとらえ方も一つの大きなとらえ方であろうかと思いますが、私がもう一つ御指摘申し上げたいのは、非常に変化が激しい、すなわち技術、知識が陳腐化するという問題であります。  いわば、率直に申しまして、今日の日本教育大学教育を含めて、どちらかというと知識の詰め込み教育、すなわち、大学の入学試験あるいは企業の就職試験、いろいろな試験制度一つをとってみましても、どちらかというと暗記ということ、そして知識を詰め込んで暗記力の強いものがそういう試験に合格するという傾向があることは否定できないわけでございます。ところが、これだけ変化が激しくて、技術、知識が陳腐化していくということになりますと——ただいま局長は、知的水準の高さ、それはいろいろな意味での水準のことをお話しになったと思いますけれども、率直にいって、日本の今日の社会において、大学を出たものが社会においてある程度の待遇を受ける、すなわち卒業証書を持って回る、何年卒業で何年の年次ということは、官庁においては特に強くそれがついて回る。しかし今日の知識の陳腐化、技術の陳腐化ということを考えてまいりますと、率直にいってそういう卒業した人たちが絶えず勉強し、知識を更新し、技術をみがいておるという前提に立てばいいわけでありますけれども、卒業したあとあまり勉強しないということになりますと、極端なことばで表現しますと、だんだんばかになっていく、だんだん知識が役立たなくなっていく。そういう人が上のほうにおりまして今日の社会を指導していくということになると、さか立ちしておるということになるわけであります。そういう問題を考えてまいりますと、これから先の教育ということを考えてまいりますと、根本的に日本教育制度、教育あり方ということを考え直していかなければならないのじゃないか、そういう認識に私は立っておるわけでございます。  そこで、その問題に入ります前に「情報科学」ということば文部省説明の中にただ一行だけ私は拝見したわけでありますけれども、いまコンピューターの設置台数というのはかなりふえておりまして、日本では過去十年をとりますと、大体年率三〇%くらいの増加を示しておるわけでございます。今後もおそらく増加率は、多少減るかもしれませんけれども、少なくとも二〇%以上の比率で伸びていく。爆発的にコンピューターがふえていくということになりますと、まず一つの問題として、情報処理技術者、そういうコンピューターを扱ったり情報を処理する技術者というのが非常に問題になってくるわけでございます。これは現在のところ、大部分といってもいいかもしれませんが、企業がその技術者の養成を担当しておるわけでございます。最近になってだいぶ大学その他がその分野を受け持つようになってきたわけでありますけれども、こういう情報処理技術者の需要というのは将来どの程度を見込んでおられるのか。これもいろいろな前提が要りましょうから、あまりかたくならないでお答えいただいたらけっこうだと思います。
  153. 木田宏

    ○木田政府委員 文部省大学学術局で情報処理技術の将来につきまして相談を進めました際に、一応通産省の産業構造審議会の答申等を考えながら、昭和五十五年に、大ざっぱに申しまして大体五十万人くらいの、情報処理オペレーター、プログラマー、システムエンジニアの三種類等を含めまして、養成をする必要があるというふうに私ども理解をして、仕事に取り組んだ次第でございます。
  154. 倉成正

    倉成分科員 かりにいまの五十五年の五十万という数字を前提といたしますと、それだけの情報処理技術者が必要だという場合に、文部省としてはそういう技術者の学校教育に対してどの程度の役割りを果たそうとされておるのか、ひとつそれを承りたいと思います。
  155. 木田宏

    ○木田政府委員 こうした概数五十万でございますが、その中には、かなり高度にハードウエア及びソフトウエアにつきましての専門的な技術者を含みますと同時に、一般的には、どういう専門領域に進んでおる者でありましても、情報処理についての基礎的な知識を持っておる必要があるということを考えましてこの五十万人の養成計画を立てました場合には、ちょっと正確な数字をいま記憶しておりませんが、いわゆる純粋の専門家五、六万人ぐらいの計算を立てたかと思います。それ以外はできるだけ広く、大学に学ぶほどの者は、高等専門学校の学生もそうでございますけれども、卒業までにかなり幅広い情報処理についての教育を身につけて社会に出る、こういうことが必要であろう。その観点から、文部省では今日まで大学では二十学科ほどつくってまいりました。短期大学では三学科ほどつくり、特にまた、情報処理が大学院のレベルで各専門領域のものを受け入れるということが必要だというふうに考えまして、学部に足のない大学院の情報処理専攻をいま五専攻ほど設けた次第でございます。これらと同時に、大学の中には学生教育用のコンピューター教育センターを設けまして一般の学部の学生の教育に幅広く対応できる、こういう姿勢でコンピューターの導入並びにその教育体制を進めておるというところでございます。
  156. 倉成正

    倉成分科員 いま大学、高校に導入されておるコンピューターの台数というのはどの程度でありましょうか。それからオンラインでどの程度つないでおられるか。ちょっと承りたいと思います。
  157. 木田宏

    ○木田政府委員 ちょっといまストックの数字を、たいへん恐縮なんですが、持ち合わせておりませんので……。
  158. 倉成正

    倉成分科員 それじゃけっこうです。あとで調べて……。
  159. 木田宏

    ○木田政府委員 あとで御返事をさせていただきます。
  160. 倉成正

    倉成分科員 そこで先ほどの問題に戻るわけであります。非常に知識が陳腐化してくるということを申しましたけれども、すなわち学校を出てそのまま社会人になる。そうすると、社会人になりましてさらに新しい知識を得ようとするときに、今日の大学の制度というのは門戸が開かれていない。また同時に知識が非常に拡散していく場合に、東京大学を一つ例にとりましても、東京大学の教授が定年になって私立大学その他の教授になるということは考えられましても、東京大学の教授がどこか私立の大学の教授を兼任するというようなことは現在の制度では、不可能じゃないかもしれませんが、非常にむずかしい。非常に閉鎖されておる。これだけ変化が激しい、知識が陳腐化する時代に、どうも今日の大学というのが閉ざされたものである。また日本には企業アレルギーというものがありまして、企業と大学とが多少密接にいろいろなことをやろうとすれば、なかなかいろいろな反発が出てくるというような問題がありまして、今日の大学というのは形の上では非常に整っておるけれども、その中身においてはたいへん陳腐化された、たいへん古ぼけた教育が行なわれているという感じがしてしようがないわけです。この点についてどのようにお考えになっておりますか。
  161. 木田宏

    ○木田政府委員 御指摘の点はまことに痛い問題点をついておられると思います。私どもも、これからの社会が変化に対応できる、そのときそのときの知識を学び得るような社会でなければならぬ。いままでの教育体制が教える体制であったのに対して、これからの教育体制は学ぶ者のための体制に変わっていかなければならない。そのための取っかかりといたしまして、私ども先ほど五つと申し上げましたが、大学院の段階をできるだけ幅広く開かれたものにつくりかえていきたい、そして専門のいかんにかかわらず、常に学びたいと思う者が入ってこれるような大学院を構想したいと考えております。情報処理につきまして五専攻、北大、東北大、東大、名大あるいは東京工大等につくりましたのはそういうことの取っかかりでございます。筑波大学大学院、これは将来にできることになりますが、これもまたやはり社会人を対象にした大学院にしたい。そういう考え方で、いま手きびしい御批判のありました大学問題というものを、できるだけ常に学ぶ人のために開かれた大学に持っていく、こういう方向で一歩一歩進めてみたいものだ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  162. 倉成正

    倉成分科員 非常に前向きのお話がございましたけれども、そのためには、高校、大学教育から社会教育を含めて根本的に洗い直してみる姿勢、現在の制度を洗い直してみる必要があるのじゃなかろうか。これはなかなかがんじがらめの制度になっておりまして、またいいところも確かにあります。ありますけれども、今日の時代に、生涯教育という点から考えると適応しなくなっているのではないかということで、これは十分御検討いただきたいと思います。大臣に特にお願いしたいと思います。  それから、いまお話がちょっとございましたけれども、将来の教育も必要ですけれども、現時点でどういう教育をするかということになると、教育者の再教育を基本的に考える必要があるのじゃなかろうかと思います。文部省でこれらの問題を取り扱っておられる課はおそらく情報教育課ですか、どういう課になっておりましょうか。それから何名ぐらいのスタッフがおられるか。そういう方々はこれらの勉強をどの程度の期間やっておられるか。たいへん恐縮ですがひとつお知らせいただきたい。
  163. 木田宏

    ○木田政府委員 大学レベルにつきましては、技術教育課で情報処理の関係のことを担当いたしております。課員が全体で十二、三名だったかと思うのでございますが、その中で情報処理に明るい者がおるかという御指摘を受けますと、たいへんお恥ずかしいことでございますけれども数えるほど——数えるまでもなく一人、二人という状況でございまして、十分な教育ができておりません。初等中等教育におきましては、職業教育課におきましてこの情報処理の仕事を進めております。  教育者の再教育という点はまさに大事なことでございますので、大学院を整備いたしておりますのもそういう気持ちでございますし、また高等専門学校あるいは大学の情報処理の学科をつくっていきますためには、どうしてもそれを担当できる教師のトレーニングをしなければなりませんので、その意味で、これは大学の関係者、あるいは特に情報処理に明るい技術を持っておられる専門家の方々を集めまして、長期の講習会に参加させるような措置をとっておる次第でございます。そして、この必要な教官がそろいましたところで大学に情報処理関係の学科をつくっていく、こういう措置をいたしておるものでございますから、毎年心がけてはおるのでございますが、今日まで二十学科程度の整備ができたということでございます。一ぺんに拡大するということができないものでございますから、気持ちの上ではあせっておるのですが、心がけて進めておるとところでございます。
  164. 倉成正

    倉成分科員 先ほど、五十万の情報技術者が必要であり、これについてかなり文部省も育成について役割りを果たすというお話がございました。情報化社会というのは、これから管理社会の問題、プライバシーの問題いろいろな問題を含んでいる重要な問題です。そういう社会がこれから出てくるわけですが、そのときに教育がどういう役割りを果たすかということになりますと、いわば文部省のこの仕事をしておられる方々の責任というのは非常に重要であると思うのですね。率直なお話がございましたからこれ以上申し上げませんけれども、担当の方々がその課に行ったので急速勉強を始めた、そしてアメリカかヨーロッパぐらいを回ってきて、しろうとを相手にすれば若干知識は上だということはあるかもしれませんけれども、少なくともこれだけ重要な問題を担当するにしてはいささか貧弱だということを率直にいわざるを得ないと思うのですね。プログラム一つかけない人たちが情報化教育を担当する、そしてわずかな人数でやっておる、それらのことを理解する人は、大学局長は幸い御理解になっているかもしれませんけれども文部省の中ではなかなか通用しないということになると、これはたいへんなことになると思うのであります。  教育はあらゆるものの中心である。すなわち、教育については、これは大臣はじめ皆さん方のような専門家を前にして釈迦に説法でありますけれども、結局教えることと育てること、この二つから成り立っている。すなわち、育てるということは、子供に食物を与えたりよい環境を与えながらどんどん大きくしていくということで、人間だけでなくてすべての動物がやっておる。教えるということは、どちらかというと知識の伝達、過去のおとなの持っている知識、周囲の現象、事象、ことばとして定着したものを、知らない若い世代の人にことばとして新しく伝えていく。この二つの役割りがあると思う。教育というのは保育と知識の伝達という二つの面があるわけでありますけれども、これからコンピューターが教育に果たすべき役割りということを考えてまいりますと、いままではどちらかというと知識偏重ということでありましたが、だんだんコンピューターがいろいろなことをやるということになりますと、逆に今度は知識を非常に軽べつをするようになってくるという世の中が出てくるかもしれません。早くいえば、われわれの学生時代は、授業に出ていまして、先生が講義をしだすと子守歌のように、居眠りをして快く眠ったわけですけれども、コンピューターの教育という時代になってくると、そういうことをしていたら機械が言うことを聞きませんから、授業が絶えず緊張し、疲れやすくなってくるかもしれません。それと同時に非常に論理的になってくる。そうなると、今度は逆に、日本の文化というか日本の特色というか、東洋的な文化というようなものにまで大きな影響が出てくる性質のものです。  そういうことを考えてまいりますと、コンピューターを教育の中にどの程度取り入れていくことができるのか、いわゆるCAI、コンピューター・エーデッド・インストラクション、こういうものについてどのような評価をしておられるか、お伺いしたいと思うのです。  もっとふえんして申しますと、たとえば歯科大学一つつくりたいといいましても、大学のキャンパスあるいは予算をとることはできても先生がいないという問題が出てきますね。そうなると、これからまた大学生の数が爆発的にふえてくる、一体これに合わせて、文部省が意図せられておるような、真の大学にふさわしいような教師が得られるかどうかというようなことを考えてまいりますと、ただ机の上で理想を追いましても、現実は全く逆の現象が出てくる。これは、現実に日本大学と名のつくものは多いけれども、その中でどのような教育が行なわれているかということをしさいに点検すれば明らかなことであります。そういうことを考えるとCAIはやらなければならない。どの程度やっていくか、どういう点に留意してやっていくかということを、文部省としてどの程度考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  165. 木田宏

    ○木田政府委員 申し上げるまでもございませんけれども、コンピューターというのは、私は主として情報の流通、二次処理について有効な役割りを果たすものだというふうに考えておるのでございまして、まず基本に、第一次情報の生産、人間の知的生産活動そのものがどこかになければなりません。それを非常に大量にあるいは広範な地域にわたって迅速に処理をするという点で、コンピューターというのは非常に大きな役割りを果たしておると思います。そこで、先々オンラインでいろいろなシステムがコンピューターを中心にでき上がっていくということになりますと、個々の端末におきます学習者が、その生産されて流れてくる知識をみずから勉強し得るという主体的な役割りを持たなければならない。コンピューターというものはその意味では、教育の課程の中でみずから学び得る主体的な青年、学生あるいはおとなを期待する、こういうことであろうかと思うのであります。  いずれにいたしましても、情報量が非常に大きくなり、世界的な規模におきます流通と集約とその円滑な処理ということを考えてまいります場合に、今後の教育の場でコンピューターを使ったそうした教育内容の流通、処理という問題は非常に大事だと考えておりますから、教員養成大学の中にありましても、だんだんと教育工学センター等を設けまして、コンピューター・エーデッド・インストラクションの授業その他の実験にも取りかかっておるところでございますし、大学の中のキャンパスをいろいろとつなぎまして、大学教育自体につきましてもコンピューターの利用ということを進めていきたい。しかしそのことは、教育の本旨が、機械が人間を教えるのじゃなくて、むしろ人間が主体的に学び得るような、そういう基礎の姿勢というものを教育関係者に持ってもらわなければならぬ、このように考えております。
  166. 倉成正

    倉成分科員 いまCAIについてはお話がございましたけれども、CAIは三つの段階を経ているのです。最初は非常に大きく期待された。第二の段階は、期待されたほどうまくいかないという失望の段階。第三の段階にいま入って、そういうことをいろいろ考えながら、ちょうど皆さん方が家で壁にくぎを打つときには金づちを使うでしょう、そのようにコンピューターという便利な道具をうまく使っていく。そういう意味でこれから先、これだけ情報過剰の過密時代になってまいりますと、これを教育の中にどううまく取り入れていくかということが一つの大きな課題だと思うのです。  それから、一つ御紹介申しておきますけれども、すでに御存じと思いますが、アメリカにダートマス大学というのがあります。ここではコンピューター教育というのが非常に肩が張らないでやられておる。すなわち、ダートマス大学では、GEと一緒に開発したベーシックというプログラム言語を二進法と一緒に二時間ぐらいで教えまして、そのあとはコンピューターセンターで、学生たちが自由に行って、経済学、医学あるいは社会科学その他いろいろ、必要なときに応じてコンサルタントによってコンピューターを使う、いわばコンピューターと遊んでおる、そういう教育がなされている特色のある大学なんです。  これはコストの問題、経費の問題予算の問題がありますけれども日本の場合も、情報科学とかいろいろのかた苦しい学問も必要かもしれませんが、これから先のコンピューターというのは、あらゆる意味で大きな、いわば蒸気機関やその他の発明に匹敵するような変化がわれわれが気づかないうちにどんどん出てきておるということを考えると、やはりそういう意味教育ということもお考えいただきたいと思いますし、いま局長がいみじくもお話しになりましたように、コンピューターはあくまで道具であって、人間が主人公である。したがってそういう意味でこれから先の教育はやっていかなければならないということを具体的にどうやっていくかということが問題でありまして、答弁やあるいは講演やそういうことではいろいろそういうお話がありましても、現実にはそれを保証するいろいろな手だてというのが要るわけであります。これだけ大きな文部省わが国教育というのはおそらく世界に冠たる組織を持っておるかもしれませんけれども、しかしこれだけ大きな変革期に、もう一度教育の原点に返って、新しい時代の教育、また日本の伝統や東洋的なものを生かしながら新しい技術をどのように取り入れていくかという、まさに一つの革命期に来ておると思うのですけれども、最後に大臣ひとつ、いままでの局長と私とのやりとりをお聞きになっておって御感想があればお聞かせいただければけっこうだと思います。
  167. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 お話、たいへんごもっともなことだと伺っておったわけでございます。情報化社会に対応できますように、文部省の体質もあるいは学校の体質も即応できるように革新を続けていかなければならない、かように考えるわけでございます。先ほど来大学学術局長が申し上げてまいりましたようなことはやっておるわけでございますけれども、まだまだ不十分だろう、こう思います。同時に、教育という場合には、御指摘のように生涯教育、生涯学習に奉仕できるようにしていかなければなりませんので、学校だけの問題ではなしに、社会教育、家庭教育全体を通じまして、いま御指摘のようなことが全うされるように努力していかなければならない、かように考えておるところでございます。積極的な努力をあらゆる部門について払っていきたい、こう思います。
  168. 倉成正

    倉成分科員 終わります。
  169. 藤井勝志

  170. 吉田法晴

    吉田分科員 冒頭に文部大臣お尋ねをいたしますが、これはことしになりましてから、月ははっきり覚えておりませんけれども、中国の漁業代表団が西日本に来られた。まだ一カ月たってないと思います。おそらく一月の末か二月の初め——ちょっと、手帳を見るとわかります——一月の下旬です。下関の漁網をつくっております工場に視察に行かれる予定でしたが、そこの会議室の壁にかけてあります地図に、台湾の地図の色が違っておったということでそこに訪問をすることをやめられたことがあります。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕 どうして中国の漁業代表がその漁網をつくっております会社を訪問しなかったか、これはなぜであるかは文部大臣として御理解がいただけておりましょうか、お伺いをいたします。
  171. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 一昨年、中華人民共和国と国交を持つようになったわけでございます。御承知のように、台湾につきましても、また中華人民共和国のほうにつきましても、いずれも中国は一つだというたてまえをとって、その上に立ってのことでございますので、おそらく、中共から来られた方々は台湾も中華人民共和国の領土だという意識を持っておられたところからそういう感情が出てきたのではなかろうかと推測をするわけであります。
  172. 吉田法晴

    吉田分科員 そのとおりでございますが、お答えの中に、たいへん恐縮でございますけれども、中共ということばがございましたが、中共というのはレッドチャイナの翻訳で、中華人民共和国はさしませんので、日本文部大臣が中華人民共和国を中共と言われるようなことはたいへん残念なことでございます。ひとつそれは御訂正をいただきたいと思います。
  173. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 訂正さしていただきます。
  174. 吉田法晴

    吉田分科員 その点を除きますと、共同声明の二項と三項とが御理解をいただけておったということで解釈いたしますが、ところが、あの問題が起こりましたときに私は話をしておりましたら、それは下関の漁網をつくっておる工場のことだけではございません、日本学校で教えられております教科書の中にもまだその二つの中国が残っております、こういう話でございます。そこできょうの分科会の質問にその問題を取り上げたいと思って取り寄せようといたしました。実は現場で使っておられます教科書をと思ったのですけれども、それが手に入りませんで、専門調査室から取り寄せていただきましたら、ここに二つございますが、その二つともやはり、少なくともこの三月まで使われておりました教科書の中に、この二つの中国がまだ出ております。おそらく三月まで使われました中学の社会科の教科書は全部そうであったのではないかと思います。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕 そうすると、いま文部大臣から御説明がございましたようなことでなくて、もうちょっと顔を赤くしなければならぬ実情であったと思うのです。  東京書籍株式会社が発行しております「新しい社会」、その一九二ページ、台湾のことが書いてございます。「台湾の大部分は亜熱帯気候である。」云々と書いてございますが、その中に「米作やさとうきびの栽培は、日本領であったころにさかんになったものである。」これは田中総理のいつかの答弁、問題になりました答弁を思い起こさせますが、その次、「中華民国政府になってから、工業の育成に努力したため、最近では、製糖業をはじめとする各種の工業が急速に発展している。」こう書いてございます。これは前のほうもあとのほうもたいへん問題なところだと思います。それから清水書院から出ました「日本の国土と世界」という教科書、その二〇一ページの中くらいのところに「中華民国(台湾)」そして、「台湾は日本の領土であったが、現在では中華民国政府が治め、タイペイ(台北)を首都としてる。」これには日本の領土であったときによくなった云々ということは書いてありませんけれども、しかし「台湾は中華民国政府が治め」云々ということははっきりまだ残っております。どうしてこういうことが起こりますのか、承りたいと思います。
  175. 岩間英太郎

    岩間政府委員 中華人民共和国と一昨年の九月二十九日に国交が回復いたしましたことはたいへん喜ぶべきことであると思いますけれども、教科書の点から申しますとたいへん時期の悪いときでございまして、四月から使用いたします教科書につきましては、ちょうど小中学校の分は印刷が終わったというふうな時点でございます。それを四月から子供に使わせますためには、そこで刷り直しをするというふうなことができないような時間的な制約がございました。そこで小中学校の関係につきましては前のままの記載というふうなことになっておったわけでございます。高等学校につきましては、これは部数も少のうございますし、一部、訂正が間に合ったところがございますけれども、しかし、それに間に合わなかったところもあるわけでございます。  そこで、私どもは、新しい事態に即応いたしまして、正誤によりまして、それが教育上訂正されるように配慮をするということ以外に方法がなかったわけでございまして、御指摘のような事態の起こっておるという点は、まことに恐縮でございますが、そういうふうないきさつがあったということを、御説明申し上げたいと思います。
  176. 吉田法晴

    吉田分科員 それでは、ちょっとお尋ねをいたしますが、先ほど文部大臣が引き合いに出されました共同声明は、いつ調印をされ、日本政府は、その日からだと思いますけれども、一つの中国ということをお認めになったのはいつで、そして年度の途中だという話でありましたけれども、昨年の四月一日から使った教科書にもまだ残っておるというのは、いまの説明では納得できませんが、どうでしょうか。
  177. 岩間英太郎

    岩間政府委員 共同声明が出されましたのは、一昨年の九月二十九日でございまして、そこに、ただいま御指摘になりましたように、「日本政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」というふうな部分があるわけでございますが、ちょうどその四十八年の四月から使います教科書を、すでにそのときは印刷が終わっており、そうして、それを刷り直す余裕がなかったということでございます。教科書は、手をつけましてから子供たちの手元に渡るまでに、約一年近くかかるわけでございまして、小中学校の児童生徒の数は千四百万おります。これを、日本の津々浦々まで四月一日までに間に合わせるということにいたしますと、それぐらいの準備が必要なわけでございます。でございますから、共同声明が出されました時点で、すでに四十八年、つまり今年度の四月一日から使う教科書が、もう印刷が終わっておったということを申し上げておるわけでございます。
  178. 吉田法晴

    吉田分科員 おととしのことですから、おととしも間に合わなかった。それから、その翌年の四十八年に使う教科書も印刷してあったというお話。先ほどの一番最初の御説明は、七二年の九月二十九日、おととしのことだから、おととしの教科書はもうすでに配付をしておって、これは間に合わなかった。これはわかります。そこで正誤表、それから去年の、四十八年に使う教科書は、これは正誤表でなしに、取りかえばできませんでしたか。年度の途中では正誤表で刷るしかないということもわかります。しかし、その当時の外務大臣の記者会見でいいますと、「日中国交正常化の当然の前提である中華人民共和国の承認については、第二項で日本政府の意志が明らかに述べられている。また、台湾問題に対する日本政府の立場は第三項に明らかにされている。」として、カイロ宣言とポツダム宣言を受諾した経緯に照らせば当然であると書かれています。そうすると、年度の途中ではしようがないから、正誤表で末端までこれは通知をする。しかし四十八年も正誤表しかなかったのですか。そこのところは納得できません。
  179. 岩間英太郎

    岩間政府委員 共同声明が出されましたのが四十七年の九月二九日でございますから、四十八年の四月までに六カ月しか期間がなかったと私どもは申すわけでございますが、その六カ月の間に発送をし、全国津々浦々まで配るわけでございますので、すでに九月二十九日の段階では印刷が終わっておった。それから製本いたしまして、それから発送するというふうな手順を踏むわけでございますので、六カ月という期間は、教科書にとりましては非常に短い期間でございまして、どうも動きがとれないような期間でございます。もしこれが七月でございますとか、六月でございますとかいうことになりました場合には、印刷が間に合う。印刷が間に合えば、四十八年の四月一日からの教科書の中には新しい記載でもって教科書ができるということになるわけでございますが、ちょうどその印刷が終わったところでございまして、訂正がきかないために四十八年度も正誤で間に合わせざるを得なかったということで、その点は、私どもたいへん遺憾であったということを申し上げるわけでございます。
  180. 吉田法晴

    吉田分科員 四十七年の年度の半ばであったから、四十八年度に使用する教科書についても刷り直しがきかなかった、いまこういう御説明です。実際にはどうされたのですか。この共同声明を、文部省でいかがすべきかということについては、おそらく省議か何か持たれたでしょう。そして通牒を出されたでしょう。  いまお話しの正誤表によるしかないということですが、実は先ほど内閣委員会で外務大臣にも聞いたのです。そうしたら、これは文部省文部省で通達をいたしました、こういう話もございましたが、どういう指導なり、あるいは通達をされたか。それでなお訂正ができなかった。いま聞きますと、正誤表という話であります。それじゃ、その正誤表が末端まで届いて指導がされておるかどうかという話になりますと、私も一々教育現場まで行って見てはおりません。見てはおりませんけれども、下関の問題が起こりましたときに聞きましたら、それは下関だけの問題ではございません。各学校教育をしております教科書も昔のままでございます。別なことまで聞きませんでしたけれども、あるいは正式な集会等に使われます万国旗等は、万国旗をつくる会社がございます。あの中に、少なくとも国交が回復されるまでは、やはり台湾の青天白日旗が残っている。この青天白日旗という問題は、日中航空協定でもたいへん問題になっているところですが、しかしそれが教科書で、義務教育の場でなされておったということになると、これは正誤表が間に合いませんでした、金の問題でございましたというわけにはいかないものがあるだろうと思いますだけに、お尋ねをしておるわけであります。
  181. 岩間英太郎

    岩間政府委員 御指摘のとおりでございまして、その点はたいへん恐縮に存じておる次第でございます。  御案内のとおり、教科書は現在検定制度をとっておりますものですから、これは私どものほうでこういうふうに直せということは、これは言えない立場にございます。したがいまして、各教科書会社から著作者に対しまして、新しい事態に即するような記述に内容を変えるということを指導し、実際に著作者が教科書会社を通じまして文部省に、こういうふうに正誤したいという申し出がございまして、私どものほうでそれを認める、そういうふうな手続になっておるわけでございます。私どもは、新しい正誤は、これは末端まで届いているもの、こういうふうに考えております。  それからなお、地図につきましては、青天白日旗は、これは今後記載しないようにというふうなことで検定をするという方針をきめておるわけでございます。
  182. 吉田法晴

    吉田分科員 そうしますと、文部省からは、教科書の著作者あるいは教科書会社を通じて正誤で通知するしかないから、その正誤通知は出した。それで著作者の発意によって訂正されれば別問題だけれども、使っておる教科書についてどうこう指示をするわけにはいかぬ、こういう御説明のようでございますが、実際にどういう通牒やあるいは連絡をされたかということをお尋ねしているのです。いまは正誤表ということですが、正誤表だと、正誤表が著作者に全部届けばいいですけれども、届かなければ、著作者から教科書会社を通じて、教科書の正誤表を学校まで、あるいは学校から子供の持っておる教科書を訂正するまでには至らぬと思います。実際にはどういうことがなされたのですか、それをお尋ねします。
  183. 岩間英太郎

    岩間政府委員 著作者からは、教科書会社を通じまして正誤の申請が、これは漏れなく出ております。文部省でその中身を調べまして、その正誤を許可をいたしております。それが教科書会社を通じまして各学校のほうに渡っておる。それから私どもも、指導部課長会議等を通じまして、新しい事態に即するような教育を行なうように別途指導をいたしております。まあその二つの方法で、両々相まって、現場におきましては混乱なく教育が行なわれるというふうに考えておる次第でございます。
  184. 吉田法晴

    吉田分科員 それでは、教科書は昔のままに残っておったけれども現場における教育は、その正誤表によって間違いなく行なわれたと思う、こういう御答弁ですね。はたしてそうでしょうか。末端まで正誤表が正誤表ということで行ったかどうか、そういう疑問がございますからお尋ねしておるわけです。  それからもう一つ、新しい年度からはどういうことになるんでしょうか、それをお尋ねします。
  185. 岩間英太郎

    岩間政府委員 私どもも一々、末端で確かにそういうふうな教育が行なわれておるかどうかを確かめたわけではございませんが、これは間違いなくそういう教育が行なわれると申し上げてもよろしいんじゃないかと思うわけでございます。  なお、新年度からの教科書につきましては、新しい記述で教科書が編集されますように、これは強力に指導をいたしているというところでございます。
  186. 吉田法晴

    吉田分科員 そうしますと、四十九年度の四月から使われる教科書については、従来の教科書にあった間違いというのはちゃんと訂正をされて出るはずだ。これはいままでつくられまして、何月ですか、昨年の何月かに検定を受けました教科書で、全部その点は確保されている、こういうことですか。
  187. 岩間英太郎

    岩間政府委員 教科書の検定は現在三年ごとに行なっておりますものですから、その検定の時期に当たらないものは、いままでのものを訂正をしてそうして新しい教科書を編集をし、子供たちに送るというふうに、これはもうそうなると思います。
  188. 吉田法晴

    吉田分科員 そうするとちょっとわかりませんが、下関でも地図は——これは地図をつくる会社で刷ったものでしょう。下関で発見をされましたが、それは下関の地図だけではありません。地図をさがして回ったわけではありませんけれども、おそらくことしの一月の末、まだほかにもあったと思います。それから教科書にも現にございますよということで、教科書を取り寄せてみると、まだやはり残っておる。そうすると、三年ごとの検定で、教科書自身についていえば、これは四十六年の印刷です。四十七年、四十八年のことしの印刷もあるいは直っていない、検定がまだ三年経過いたしておりませんから、ということになりますが、そうだと、一番最初言われましたけれども、金の問題で、せっかく印刷をしているから、教科書会社のために印刷をし直すことは命じなかった、正誤表でいった、こういうことになって、いわば国際間の信義の問題もあります。それから、先ほど申し上げたけれども、単に正誤表で済む問題ではないと私は思うのですけれども、それらの問題は、教科書会社が刷ってしまったから、そこで正誤表でいくしかないということでは済まぬ問題ではなかろうかと思いますだけに、ことしからはどういうことになりますのか、もう一ぺん重ねてお尋ねします。
  189. 岩間英太郎

    岩間政府委員 正誤表では済まない問題であることは御指摘のとおりでございます。私どもも、そういう形でやりたくはなかったわけでございますけれども、単に印刷が間に合わないあるいは印刷したものがむだになるということだけではなくて、四月からの教科書の使用に間に合わないというふうな大事な問題がございますものですから、これはやむを得ず正誤という形をとったわけでございます。  来年度からの分につきましては、新しい記述でもって、新しい教科書を去年の六月ごろから編集をし、八月、九月ごろ印刷をし、そうしていま各地に発送いたしている段階でございます。それは正しい記述で書かれました教科書が四月からは子供の手に渡るということを意味するわけでございますから、もうこれから、四月から使うものにつきましては、そういうふうな正誤というふうなことが起こらないものと考えております。
  190. 吉田法晴

    吉田分科員 そうしますと、教科書については、四十七年の九月に共同声明が出ましたから、四十六年に使っているものも間に合わなかった、それから四十八年に使うものも、すでに刷り上がって配付が済んでおったことだから、正誤表でいくしがなかった、こういうことで、正誤表で済まぬのだけれども、四十八年度についてはそれ以外になかったからやむを得ず云々ということでしたけれども、しかしその結果が、冒頭申し上げましたような、地図やあるいはその他についてもまだ間違ったままでおられるということになったわけですから、やはり教科書がどうなっておるかということが中心だと思いますからお尋ねをしたのですが、四十九年度からは間違いなく新しい教科書で行なわれる。そこは安心しました。  安心しましたが、あわせてお尋ねいたしますが、地図、これは学校で使う地図ではもちろんありません。しかし、教科書における記述や、それから、昭和四十七年の九月の末から去年の八月ですか九月ですか、新しい教科書が刷られるまでの間違いがやはりほかに影響したということだと思います。そうすると、地図あるいは万国旗——これは、あの会場に張る万国旗については法律は何もありません。ありませんけれども、やはり文部省の、学校で使う教科書が基準になるというのは、これも事実問題だと思います、実際の問題。そこで、その他の問題についても、直接の御指導の問題ではないかもしれませんが、影響がありますだけに、地図その他の点については、文部省としてはどういう指導をしておられるか。これは社会教育にも関連をいたします。社会教育の場面等にどういうぐあいに御指導をいただいているか、それを承りたいと思います。
  191. 岩間英太郎

    岩間政府委員 一般の地図等につきましても教科書と同じようなふうに表示をされますように——私ども直接指導ができない場合もありますけれども、出版元等で、たとえば教科書会社と同じ会社が地図を出しておるというふうなものもございますから、教科書と同じような表示がなされますように、私どもの権限の範囲内でできるだけのことはいたしたいというふうに考えるわけであります。また、具体的な授業の中でもそういうことは徹底をするということは、これは当然のことだと思います。
  192. 吉田法晴

    吉田分科員 時間がなくなりましたから、最後に文部大臣に御答弁いただきたいと思いますが、これは初中局なら初中局の通達だけではない問題だと思います。先ほど来教科書の問題について、教科書会社を通じて著作者にも云々というお話がございましたけれども、正誤表でと言われますについては、まだ多少不十分な部面があろうことを考えますだけに、これは文部省文部大臣の責任において、そういう間違いのないように指導する決意がなければならぬと思いますが、重ねて最後にお尋ねをいたします。
  193. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日中国交正常化に伴います台湾の取り扱いにつきましては、外務省と協議いたしました結果、その当時、国名の表示あるいはまた地図の境界線や色別などについて、具体的な方針をきめて示したところでございました。それに基づいて正誤が行なわれたわけでございますけれども、いずれにしましても、基本的な線を示したわけでございますので、それに違っているものにつきましてはいろいろな異論が出てくる。したがいまして、企業におきましては、国としてこうあるべきだとされている線に従って今後は当然地図の作製等も行なわれていくものだ、かように考えておるわけでございます。違ったものが出てまいりませんように、文部省として力の及ぶ範囲においては努力を積極的にいたしてまいりたいと思います。
  194. 吉田法晴

    吉田分科員 終わります。
  195. 藤井勝志

  196. 上原康助

    上原分科員 私は、学校の施設設備の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  御承知のように、学校教育法の施行規則で、いわゆる望ましい学校の規模ということがうたわれておるかと思います。しかし、年々都市化がされていく、あるいは人口の過密化等に伴って、これは沖繩のみならず本土全体をいま申し上げているわけですが、文部省なりあるいは教育法で定められた望ましい学校規模をこえるマンモス校というのが小中学校に多くなってきていると思うのですね。そういう意味で、いま教育問題、教育行政はいろいろな面で議論がなされているわけですが、特に、望ましい学校の規模ということに対して、文部省としても新たに再検討を要する段階に来ているのじゃないかと思うのですね。そういう意味で、一体学校教育法の施行規則で定められている学校規模よりはるかに超過をする小中学校というのは、全国的にどの程度あるのか、そういった面の御説明をまずいただきたいと思うのです。
  197. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 学校教育法施行規則において、小中学校の標準的な規模は十二学級ないし十八学級というふうに定められておりますが、施設整備に対します補助金等の執行につきましては、おおむね三十学級程度までは補助対象にしておるような実態でもございます。これは地域の状況によって非常に違うと思いますが、最高限度がどれくらいかということにつきましては、法令上もあるいは実際の指導上も、特にこの学級以上は好ましくないといったような明確な基準があるわけではございませんが、実際の扱いといたしましては、ただいま申し上げましたように、三十学級程度までの学校統合につきましては、実際問題といたしまして補助金を支出している例がございます。  それから実態でございますが、この刻み方がいろいろございまして、必ずしもただいま申し上げましたような区切りに対応いたしておりませんが、本土の場合でございますと、五学級以下が全体の二三%、六学級から十一学級までが三七%、十二学級から十七学級までが一五%、十八学級から二十三学級までが一〇%、二十四学級から三十五学級までが一一%ということでございまして、三十六学級以上になりますと二・三%、約二%ということになります。これは小学校の場合でございます。沖繩の例を申し上げますと、沖繩では一学級から五学級までが一八%、それから六学級から十一学級までが三二%、十二学級から十七学級までが一五%、十八学級から二十三学級までが一二%、二十四学級から三十五学級までが一三%、三十六学級以上が七・八%ということでございます。先ほど申し上げました本土の場合でございますとこれが二・三%でございますから、沖繩の場合は、構成の比率から申し上げまして、三十六学級以上の学校がかなり多いということがいえるかと思います。  次に中学校について申しますと、本土の場合は、八学級以下が四二%、九学級から十四学級までが二六%、十五学級から二十学級が一六%、二十一学級から二十六学級までが九%、二十七学級から三十二学級までが三%、三十三学級以上が一・七%でございます。ところが沖繩の場合は、八学級以下が五二%、それから九学級から十四学級までが一六%、十五学級から二十学級までが一二%、二十一学級から二十六学級までが六%、二十七学級から三十二学級までが六%、三十三学級以上が六・六%でございます。本土の場合が一・七%でございますから、沖繩の場合はかなり大規模な学校が構成比から見まして多いということがいえるかと思います。
  198. 上原康助

    上原分科員 いまこまごました点まで御説明があったのですが、私が申し上げておきたいことは、義務教育というのは少なくとも国の立場で推進をしていくべきだと考えるわけです。で、いま補助対象が、三十学級までは補助対象にしているのだということですが、少なくとも一定の基準というものが定められて、望ましい学校規模はこうこういうものなんだということが教育法でうたわれ、施行規則で定められているわけです。それをはるかにオーバーしている小中校というのが今日全国的にふえてきている。それは確かに過密の問題あるいは過疎化の問題、都市化の傾向で物理的にあるいは人為的にやむを得ないという限界もあろうかと思うのです。しかし、今日のこの小中校のマンモス化ということは、望ましい教師像とかあるいは望ましい学校教育とか、いろいろなことが議論されておりながら、基本的な施設設備というものが充実化していないということを抜きにしては考えられない点ではないのか。ですから、これだけの学校を適正規模に分離をしていくあるいは新しい小中校をつくるという場合は、それ相応の財政が伴うということも理解をいたします。しかし全般的に、適正規模の学校というものは一体どういうものなのか、年次計画で方針を出して、超過密のマンモス校については分離をしていく。あとで述べますが、最も困難を来たしているのは用地の確保の問題なんですね、学校を新しくつくっていく場合に。そういう面を含めて、文部省として五年計画なり十年計画というものを打ち出さないと、私は解消しないのじゃないかという気がいたします。そういう御方針は文部大臣はないのかどうか。これは当然この段階で洗い直してみて、適正規模の小中校というものは一体この法律でうたわれているとおり実際には行なえない状態に来ているわけですから、基本的な施設整備ということで学校づくりということをやらなければいかぬ問題じゃないか。特に大事な義務教育の件ですから、その方針をまず伺っておきたいと思うのです。
  199. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほど申し上げましたように、補助金の執行といたしましては十二学級ないしは十八学級が標準的な規模だということを申しておるわけでございますが、上限につきましては三十学級程度というふうに考えております。ただ、三十学級以上の学校をすべて三十学級以下にするために特別な措置を講ずるということは現在考えておりません。三十学級以上の学校が先ほど申し上げましたようにかなりあることは事実でございますが、しかしそれはいろいろ事情があってそうなっておるわけでもございますので、これを国の方針として、補助政策までとって小規模にするということは、ほかにもいろいろ解決すべき課題が多い時期でもございますので、そこまでは現在は考えていないということでございます。ただ沖繩につきましては、先ほど申し上げましたように、本土に比べて著しく過大学校が多いわけでございますから、そうした沖繩の特殊事情に対しましてはやはり特別に対応することが必要であろうというふうに考えております。本土につきまして、特別な補助政策をとってまで小規模化をはかっていくということは、現在は考えておりません。
  200. 上原康助

    上原分科員 これは各地方自治体との関係なり、いろいろあると思うのですね。そういう面も勘案をした上で御方針を出さなければいかぬということはわかるわけですが、最初に申し上げましたように、学校の適正規模はこうこういうものなんだということで、都市化されるに従ってそういう要求は、単に沖繩だけではなくして全国的に私は出てきていると思うのです。少なくとも、検討を要する面については補助金を出してまでというお考え、そういう消極的な立場でなくして、やはり学校教育、小中校教育という面で、マンモス化をしていく学校の適正化、分離化をはかっていくという、これは用地の確保また教員の確保、いろいろ波及的な問題もあるわけですから、そういう面は絶えずチェックをしていくという姿勢はあってしかるべきだと私は思うのです。その点を申し上げておきたいと思うのです。  そこで、いま、これとの関連で沖繩の件も出されたわけですが、いま御説明があったように、両極端が多いわけです。いわゆる五学級から十学級程度のものは沖繩のほうが本土よりもむしろ低い。これは過疎的な小さい小中校があるという証拠だと思うのです。しかし反面、適正規模は、いま大体説明ありますように十二から十八なんだ、これが本来は基準だと思うのですね。しかしいろいろな事情で三十学級までは上限を拡大をしてきているということですが、その上限になると本土の三倍以上のパーセンテージになっているわけですね。それだけ学校の生徒数が多い。生徒数が適正な基準よりも上回るということは、いろいろな面で、施設全体あるいはそこで学んでいる児童に対する悪影響があるということが裏返しにいえるわけでしょう。  そういうことを考えてみました場合に、沖繩の学校施設の充実化あるいはいま言う適正規模の面で改善をしていくということで、最も考えていただかなければいかぬのは用地の確保の問題だと思うのです。その点については何度か要望も申し上げまして、お尋ねしたこともあるのですが、特に那覇市の場合ですと、与儀小学校あるいは識名小学校とか、第二与儀小学校を前から与儀ガソリンタンクのあと地につくるというようなことも、大臣文部省もいろいろお骨折りをいただいたのですが、現実にあと地利用ができないということで、本来、昭和四十九年の四月を目途にしてやろうということで主として進めてきたのだが、実際はできない状態になってきているわけです。したがって、いま二千五百名を上回っている状況になっている。こういう問題も単に県や市の教育委員にまかすということではいかないと思うのです。これを具体的にどう政府としても指導助言をしていかれようとしておるのか。しかも、もう資料をあえてめくって申し上げるまでもなく、現に間仕切り教室でやっているわけですね。この対策は一体どういうふうにしようとしているのかという点。  いま一つは、上山中学校のように老朽化された校舎の点があるわけですね。ちょっとした地震なりあるいは台風でも校舎全体がつぶれる。これも県の教育長あたりが調べた資料によりますと、沖繩全県的には危険校舎というものが小学校で九十四、中学校で三十七もあるといわれております。しかし、政府の御説明なりあるいは予算を見てみますと、次年度は上山中学校だけしか、いわゆる改修、改築といいますか、改修工事はやらないのだというようなスローモーでしかないわけですね。これなどももっと前向きに検討をしていただかないと、マンモスである上に、雨漏りをするというような状況下で義務教育をさせるということは、政府が今日まで、少なくとも復帰をしたら教育の格差をまずなくしていくのだということを強調されてきたことからいって、もちろんそれなりの努力はなさっているということを全面的には否定はしませんが、いま指摘をしたようなことに対して今後どうしようとしておられるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  201. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 最初の与儀第二小学校の問題でございますが、これは御承知のとおり、昨年の八月二日付で沖繩振興開発特別措置法の施行令が一部改正になりまして、義務教育学校でありますところの小中学校等の学校用地に対しましては、国有財産の無償譲渡が可能だという政令が出ておるわけでございます。したがいまして、与儀第二小学校用地に対する国有地の無償譲渡につきましては、こうした方向によりましてその道が開けたわけでございますが、ただ具体的には、御承知のとおりガソリンタンクのあと地で、将来の都市計画等に備えまして区画整理をするという現実の作業があるわけでございまして、これがおくれておるために、学校用地としての取得が、現実にはおくれておるというような状態でございます。都市区画整理の事業は、第一次的には、たしか市、この場合は那覇市でございますが、その事業であろうかと思いますが、那覇市を中心にいたしましてこの事業が促進されまして、早急に当初の目的に従って学校用地として譲渡されることを、文部省としても希望いたしておる次第でございます。  それから、学校の改築のお話でございますが、上原先生承知のとおり、沖繩におきましては木造校舎が非常に少ないわけでございまして、全体の一%程度でございます。大部分が鉄筋コンクリートないしはブロック造でございますが、ただ、鉄筋コンクリート造の校舎の中で、かなり破損のはなはだしいものがあるというふうに伺っております。その理由は、建築に際しまして、施工の技術が必ずしもよくなかったというようなこと、あるいはその材料といたしまして、海砂を使ったために強度に問題があるといったようなこと、それから自然条件等によりまして、その腐朽と申しますか、それが進んでおるといったような関係で、鉄筋校舎のうちの不適格分の改築という必要が、所々に起きておるわけでございます。  私どもは、予算上の措置といたしまして、これに対応したいというふうに考えておるわけでございますが、沖繩県当局の説明を聞きますと、四十九年度には、ただいま御指摘の上山中学校の改築が計画されておるということでございます。私どものほうで、特にこの上山中学一校に押えたということではございませんで、地元の計画が、四十九年度においてはここだということでございますので、ここにつきましては、前向きに対処いたしたいというふうに考えております。なお引き続いてその後の計画があるようでございますから、それぞれ事情を伺って、必要な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  202. 上原康助

    上原分科員 そういたしますと、四十九年度緊急に改築をしていかなければいけない校舎の建築計画については、県側から、とりあえず上山中学校という指定があったので、そういうふうに取り扱いをしたんだ、もしそのほかにも、県が追加をするということであるならば、政府としてもそれに対応していく。そうすると、これは予算上どうなるんですか。ややむずかしいことになると、いつも県側に何か責任をなすりつける、とまでは私は申し上げませんが、そういう感を受けるんですが、少なくともそのほかにも本部小中学校、あるいは先ほど言いましたように、小学校で九十四、両先島も含めて、あるいは離島の、どうしても早急にこれは改善をしていかなければいけない。それはもちろん優先順位はあると思いますが、そういう実態調査については、政府は全然御存じないんですか。県側が何らか計画なり方針を出してきて、それを受けてやるという立場にしかないということですか。いま少し明らかにしておきたいと思うのです。
  203. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 沖繩関係の予算総額は、御承知のとおり、四十九年度は約五十八億でございますが、この中におきまして各種の対応をするということでございますが、ただいま御指摘の本部中学につきましては、五十年度に改築の予定だというふうに聞いております。その他の学校につきましては、沖繩県の公立文教施設整備期成会の委嘱によりまして、東京工業大学の黒正教授ほかが調査を行なっておりまして、その調査結果によりまして、関係市町村でも改築の計画を練っておられるということでございます。県としては、こうした資料を基礎にいたしまして、今後の整備計画を立てたいということでございますので、文部省もそうした結果を待ちまして、今後の対応を考えてまいりたいというふうに考えております。
  204. 上原康助

    上原分科員 ちょっと私が承ったこととは、いまの御答弁は違う面もあるのですが、危険校舎あるいは老朽化した校舎の改修工事、実質的には新築の面が多いのじゃないかという気もいたします。それは上山中学校の場合は、すでに当面プレハブ校舎をつくって、現にその校舎は利用していないわけですね、那覇市のほうは。それほど危険だ。ですから、それは早急にやらなければいかぬ。その場合の補助単価の件なんですが、具体的にはどういうふうに進めようとしておられるのか、あらためてお伺いをしておきたいと思うのです。
  205. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 補助単価でございますが、四十九年度の沖繩の補助単価は、鉄筋コンクリート造の場合、六万五千四百円にいたしたいというふうに考えております。これは対応いたしまする本土の単価は六万一千七百円でございまして、約六%沖繩の単価が割り増しになっておるわけでございますが、さらに実行上若干の配慮をすることも、なお検討してみたいというふうに考えております。
  206. 上原康助

    上原分科員 確かに、いまの御答弁の内容は、私も別の委員会でも承ったのですが、本土と比較して補助単価を幾ぶん上げているのだ、六%上のせしてあるのだからいいんじゃないかというお考えかもしれません。三・三平米で六万五千四百円の単価ですね。しかし、市の教育委員会など、現在の建築単価からして、これだけではとてもじゃないが校舎建築はできないという要求も強いと思うのですよ。少なくとも八万円程度の単価に持っていかないと、どうにもならないというのが実情なんです、実勢単価としては。それは本土とて別ではあり得ないでしょうが、しかし、先ほど言いましたように、危険校舎である、あるいは老巧化している、またマンモス校が多い、そういうような面、いわゆる格差の根本是正ということを考えた場合に、補助的に幾ぶん上のせをしてあるということだけで、この問題の解決は前進をしないと私は思うのです。  いま、六万五千四百円なんだが、それに幾ぶんかのアルファの補助も考慮したいということですが、県側あるいは市教育委員会、市から要求が出ている八万円実勢単価というのはぎりぎりです。海洋博の関連工事やらいろんな面で、どうにもならないという状況なんですね。そういった客観的な状況なども考慮に入れた場合に、校舎建築の基準単価というものは、もっと真剣に考えていただかないと、この上山中学校の問題だって解決するのはおぼつかないのじゃないか、私はそういう気がするわけです。  これについて、では、具体的にはアルファというのはどの程度をお考えになっているのか。また、大臣も先ほどからいろいろ聞いていらっしゃると思いますので、そういった校舎建築の面あるいは用地確保の問題等含めて、文部省としても特段の御配慮というものをやるべきじゃないのかという気がいたします。それに対する具体的な、中身のある御回答をこの際いただきたいと思います。
  207. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 単価を、実行上さらに上積みをすることを検討したいと申し上げたわけでございますが、どの程度上積みをするかということにつきましては、これは四十九年度の執行でもございますので、もう少し様子を見て検討をさしていただきたいというふうに考えております。  ただ、実勢単価というお話がただいま出ておったわけでございますが、これは沖繩の場合だけではなくて、本土の場合におきましても、標準的な設計仕様を前提にした単価でございます。したがいまして、実勢単価そのままをとってこれを補助単価にするというそういう基本的な考え方には立っていないわけでございまして、その点は、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  208. 上原康助

    上原分科員 まあ、四十九年度だからまだ少し間があるからということのようですが、私は、特に沖繩だけ特別に、実勢単価にしなさいという趣旨のことを言っているわけじゃないのですよ。先ほどから言っておりますように、学校建築の問題は、本土だって各地方自治体は、いろいろな面で非常に四苦八苦しているわけです。しかし、そのことを踏まえながらも、なおかつ考慮をしなければいけない問題があるということを強調しているつもりなんですよ。ですから、六万五千四百円の単価では、上山中学校の改修校舎だってできっこないのです。それはぜひ、市の要求なりあるいは県側の関係者とも十分打ち合わして、要望に沿えるように、あらためて要求をいたしておきます。  時間が来ましたので、最後に、これは大臣にぜひお答えいただきたいんですが、沖繩大学の問題ではたいへんお骨折りをいただいて、まあ、一〇〇%満足のいくということではありませんでしたが、何とかめどづけされたことに対しては、敬意を表しておきたいと思います。  しかし、御承知のように、みなす大学の間に卒業できない大学生がいるわけですね。百名程度、調べてみるといる。これは昨年入学した一年生の問題とは別ですよ。そのみなす大学の間のいわゆる単位が足りないとか、そういう学生に対しては、やはり十分な措置をやっていただかないといけないと思うのですね。  そしてもう一つ、もう時間はとりませんが、せっかくここまで苦労していろいろやっていただいたんだから、昨年の一年生、聴講生とかそういうような扱いじゃなくして、これを前向きにりっぱにやることが、県民に対しても、やはり文部省としてもそこまでお考えになったかという評価になると思うのですが、あわせてひとつお答えをいただきたいと思います。
  209. 木田宏

    ○木田政府委員 沖繩大学は、四十九年度から新沖繩大学としての認可を見るわけでございまして、これは一年生から学生を受け入れるということになっております。昨年は、学生を募集すべきでないということをいろいろと申し上げました。聴講生として旧沖繩大学に在学をしたのでございますが、これは新大学の学生としての期間通算等は、できないかと考えております。
  210. 上原康助

    上原分科員 いや、聴講生じゃなくて、現に二年生からいるわけですよ。私が言っているのは、聴講生の意味じゃないのです。途中で単位が足りなくて、みなす間に卒業できない在籍者がいるわけですから、それは少なくとも沖繩のみなす大学、名前は違っても沖繩大学ですよ。そういう面での何のあれも、政令的にも今度の措置でもされていないわけでしょう。そのことは十分できますねということなんです。
  211. 木田宏

    ○木田政府委員 お尋ねを取り違えておりまして恐縮いたしました。みなされております間の大学は、やはり学生が正規の大学の学生として在学をしております。所定の期間内に卒業できない者の扱いについては、旧大学と新大学の御相談によって処理が進むことと、このように考えます。
  212. 上原康助

    上原分科員 終わります。
  213. 藤井勝志

    藤井主査 大出俊君。
  214. 大出俊

    大出分科員 たいへんおそい時間なので、かえって恐縮でございますけれども、この文部省通達をめぐりまして、ある町を二分する傷害事件まで起こった争いがなお続いております。子供に与えるたいへん大きな影響も一面ございますので、きょうは短い時間ではございますが、文部省の責任というものを明らかにしていただきたいという観点で、御質問をいたします。  場所は、山梨県の県境にきわめて近い、もちろんこれは神奈川県でございますが、津久井湖を囲みまして、裏丹沢に広がっております藤野町という町がございます。ここには三つの中学がございまして、藤野中学校という中学がまん中にありまして、両方に佐野川、牧野という中学がございます。  ところで、問題の発端は、四十六年の三月にこの藤野町の町議会が、文部省通達を受けまして佐野川、牧野両中学を藤野中学に統合する。統合する限りは、もとの佐野川、牧野両中学は廃校になるわけであります。ここで、つまり藤野町の町議会が統合に関する条例を強行して成立をさした。もちろん、この背景には、県当局を通じて統合促進を強く町の教育委員会にものを言っている背景がございます。これは御存じだろうと思っております。  そこで、四十六年三月以来、反対派、賛成派に分かれまして、特に反対運動が起こりましたのは藤野中学の学区の中であります。ふしぎなことに、両側の佐野川、牧野の中学の学区で起こったんじゃないのであります。統合して一緒になるまん中のこの藤野中学校の学区の中で、藤野町を明るくする会という会ができまして、ここが統合反対の急先鋒になりまして、町じゅうに広がっていったわけであります。そして、反対派の方々が最初は勝ちを占めまして、四十六年九月の町長選でございますが、反対派の森下健治さんという方が町長に当選をいたしました。また町議会議員選挙でも、反対派が、一名でございましたのが七名にふえました。そして佐野川、牧野の両校を分校として残すということで、一時まとまるかに見えた時点があったわけであります。  ところが、いろいろな圧力がまた上からかかってまいりまして、町の教育委員会は何べんか町民との約束を、つまり反対派の方々が、統合反対の方が町長になり、町議が七人もふえたわけでありますから、約束をしては破り、また約束をしては破りということが続きました。この中で、条例をたてにとりまして賛成派の方々が、警察の機動隊に守られて藤野中学へ強行就学をする、こういう事件が実は起こりました。さらに町の教育委員会が、藤野中学への入学通知書の発送をした。反対派の方々は、就学通知の無効と執行停止を求める裁判を起こす、こういうことが重なってまいりました。さらに、この統合賛成派の方々が、執行停止処分の上に立って、逆に町長のリコール運動をやったわけであります。そこで議会が解散をされまして、町を二分する争いが起こりました。リコール合戦の結果、今度は統合賛成派が勝利を占めまして、足かけ二年間にわたりました、傷害事件まで起こしているこの問題の決着がつきかかった。  ところが、さてここで、文部省から昨年、四十八年十月二日でありますけれども、新通達が出されてきたわけであります。この通達を、私も何べんも読み返してみましたが、どう考えても前の通達とは全く違う趣旨のものであります。念のために読んでおきますが、旧通達、これは三十一年十一月十七日に、文部省が各都道府県教育委員会あてに出している通達であります。中心だけ読みますと、「小規模の学校では、一般に教員の適正な配置や施設設備の充実を図ることがむずかしいため、教育効果の向上を図ることが困難であるばかりでなく、」まずここには、一つの物質的な面と精神的な面がありまして、はたしてこの表現が妥当かどうかという問題もあります。だが、「教育効果の向上を図ることが困難であるばかりでなく、」と書いてある。「学校経費も割高となっている。この問題の重要性にかんがみ、中央教育審議会に諮問し、別紙のような答申を得た。学校統合の意義に十分の考慮を払い、地方の実情に即し答申の趣旨を参考として、」明確にここに「統合の推進を図るとともに、」こう書いてあるわけであります。「市町村に対して趣旨の徹底をお願いする。」つまり小規模学校の統合の推進をはかる、これが主題になっているわけであります。別紙がございまして、中教審の答申が載せられております。その中心の一は、「国および地方公共団体は、学校統合を奨励すること。」これが正面にうたわれているわけであります。そしてただし書きがつきまして、「ただし、単なる統合という形式にとらわれることなく、教育効果を考慮し、土地の実情に即して実施する。」実施するというのは、学校の統合を実施することです。それから二番目に、「住民に対する学校統合の意義についての啓発にはとくに意を用いること。」統合がこれまた中心であります。三番目に、「統合する際の規模は、十二学級−十八学級を標準とする。」四番目に、「通学距離は、小学生四キロ、中学生六キロを最高限度とするのが適当と考えられるが、各教育委員会は、さらに地域の実情に即した通学距離の基準を定めること。」こうなっていますね。あくまでもこれは統合の促進であります。  ところが新通達、四十八年十月二日であります。各都道府県教育委員会あてであります。「公立小・中学校の統合は、昭和三十一年の通達によって市町村への指導を願ってきたが、その後の実施状況をみると、なお下記のような事項に留意する必要があると考えられるので、市町村の指導について一層の配慮をお願いする。一、学校規模を重視する余り、無理な統合を行い、地域住民等との間に紛争を生じたり、通学上著しい困難を招いたりすることは避けなければならない。」たいへんこれは変わっているわけであります。「また、小規模学校には教職員と児童・生徒との人間的ふれあいや個別指導の面で教育上の利点も考えられるので、」まるっきり違うわけであります。私が指摘いたしましたが、はたして教育というのは何なのかという点が問われなければならぬ重大な問題が前の通達にはございます。小規模学校では、教育効果の向上をはかることが困難だというわけだ。教員の立場からすれば、教育効果の向上というのは一体何だということになるわけでありますが、あとの通達では、特に、「小規模学校には教職員と児童・生徒との人間的ふれあいや個別指導の面で教育上の利点も考えられるので、総合的に判断した場合、なお小規模学校として存置し充実する方が好ましい場合もあることに留意すること。」この新通達が出まして、これは町当局などにすれば、また今度は、逆に賛成派の方々にすれば、にっちもさっちもいかないことが実はでき上がっておりますね。  これは、一片の画一行政に基づくたいへんな、これは市町村民のみならず、特に幼い小中学校の学童も、道を歩っても口をきかない。私も小学校へ行って聞いてまいりましたが、全くもってそれは人間的に耐えられぬ争いが二年間続いているんですね。一体、これはだれが責任を負うのだということになる。  しかも、時間がありませんから言ってしまいますけれども、とうとうこの通達が出て、町長を反対派がとったり、賛成派がとったり、その間に機動隊が入ったり、傷害事件が起こったり、子供同士のけんかがあったり、こうなっているわけでありますが、こういう二年間のたいへんな血で血を洗う争いが起こってしまって、おそらく、どっちになるにしたって、大きなしこりがこの町には孫子の代まで残る。教育どころじゃない。それこそ憎しみ合いの醸成でございます。そういうところまでやって、その上に、小規模校のいいところを今度の通達は指摘している。特に特記している。先生と生徒の人間的な触れ合い、こういうことでございますから、それならそれで、新聞にございますように、この通達で補助金を出すというわけで、補助金をもらってたいへんりっぱな校舎ができた。校舎はりっぱになります、特別教室もりっぱなものができます、体育館もできます、全村の生徒がここに集まることは仲間もふえるんです、なんということが、このときに一ぱい書いてある。  ところが、丹沢山の裏地でほんとうに貧乏町ですからね。それで学校へ通うといえば、佐野川、牧野の両方からこの藤野町に通うのには、交通機関を使うなら、山梨県まで出てバスに乗らなければ行けないんですよ。隣の県へ行くのですよ。だから、このまん中の藤野中学へ行くのには、遠い所の人は十五キロかかる。しかも、丹沢の山を越えて行かなければならぬ。そういうばかげたことをあえて統合促進でやったって、そんなことはできはせぬ。だから反対運動が起こる。それで今度は、両方もとのままにしたり、ただこれはとりあえず分校にしておくより手がない。もとの佐野川、牧野は分校、とにかくそういうことにするならば、今度は文部省は、それは統合ではないから補助金はやれないというわけです。  こんな貧乏町が、こんな争いまで起こして、町当局は一生懸命——町の教育委員会文部省の意に沿わなければならぬ、県の教育委員会の意に沿わなければならぬ、促進しろというんだから。一生懸命やった結果、せっかくいいものが建った。だが、争いが二年続いてあとの通達でもとに戻る。そうすると、さあ困ったのは新築した校舎の補助金、これらのものはくれないという。一体この責任はどこにあるか。あまりといえばこれはひど過ぎる。  この種の争いは、私は調べてみましたら幾つかある。神奈川県の松田町、これは四十三年、統合計画への反対が起こって、町長のリコールに発展して町長が辞職して、統合計画は白紙になった。栃木県の田沼町、山の中の中学校五校を一校に統合するというんですね。四十五年十一月、二地区の住民から猛反対が起こって、独立校の復活を要求して生徒の同盟休校まで起こっている。四十八年六月、去年の六月ですが、三年間に限って両地区に分教室を置くということで、とりあえず休止している。休火山みたいなものですけれども、またこれは爆発します。茨城県関城町では、小学校二校を統合して一校にするという計画に、住民の反対運動が起こって、四十六年十二月、統合条例可決をきっかけに同盟休校、四十八年六月に、四年生以上は統合校舎へ、三年生以下は旧校舎へ、こういう分離統合の妥協案がまとまった。これはまとまったって、その間に起こる、こういう統合を主張する地域でございますから、それは生徒に与える影響なり両親に与える影響なり、違った意味の住民感情がありますね。こういうふざけたことが世の中にあっていいはずがない。私はたいへんな義憤を感じている。  これで、時間がありませんから、私のほうから全部申し上げたのですけれども大臣、いま私が申し上げたことに誤りがあればおっしゃっていただきたいのですけれども、そうでないとすれば、これは一体、私は画一行政の国民に対するたいへんな、文部省にあるまじきことであると思いますので、念のために申し上げておきますが、おたくの課長さんが、前の通達とあとの通達、変わったことはない。変わったことはなくはない、全く変わっている。変わったことがなければ、住民なんというのははだでみんな感じるのですから、読めばわかるのですから、この問題の決着について、泣くに泣けない町の教育委員会ですが、こぼしはしませんですよ。この辺のところについて、まず文部省としてはどういう責任をおとりになろうとしておるのか、まず承りたい。間違いがあればお答え願います。
  215. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま大出先生御指摘のような、各地の学校統合をめぐるトラブルがございまして、それに対応して、昨年の九月に新通達が出たわけでございます。これが、前の指導方針とどう違っているかということが第一あるわけでございますが、前回の通達には、「学校統合の手引き」という指導書が同時に出されておりまして、その指導書の中の一、二をちょっと御紹介をしたいと思います。  第三章の第一に、「統合計画の基本」という節がございまして、そこではこういうことを述べております。「すでに述べたところで明らかなように、学校統合は、小規模学校を適正規模にまで統合することが目的であるけれども、小規模学校の中にも、教育効果がじゅうぶんあがっており、通学条件その他を考慮すれば、必ずしも統合の必要がない学校もあろう。また統合を奨励するといっても、過大規模の学校が設けられることは、財政上はともかく、教育上は必ずしも望ましい効果を期待できないので、学校統合は、第一義的には、あくまで教育的見地に立って、考慮すべきである。」こういうことを述べております。  それから第二に、学校統合は、「町村合併に伴う政治的な処理により、あるいは一部の地域住民の利害や力関係によって、目先の問題解決のため適正を欠く統合を実施すべきではない。」ということを述べております。  それから第三に、「統合の実施と運営を円滑に行うためには、地域住民の理解と協力を得ることがきわめて重要な事がらである。学校が地域文化の中心として果してきた役割と、住民の精神的結合の基盤としての学校の地位を考慮するとき、統合に対する住民の理解がじゅうぶんでなかったり、あるいは利害感情の対立があるような場合、これらを無視して統合を実施することは、新市町村の建設の将来にも多大の支障をきたすことになるのである。したがって、統合の実施にあたっては、住民の啓発には特に意を用い、その理解と協力を得るよう最善の努力を払うべきである。」ということを述べておるわけでございます。  したがいまして、先生御指摘のとおり、前回の通達と今回の通達はやや違った点がある点はございますけれども、こうした点をかなり強調しておるわけでございます。  また、ただいま御指摘の具体の問題でございますが、お話がございましたように、昭和四十六年度の藤野町の町議会におきまして、全会一致でこの統合が決定されたというふうに文部省は聞いております。したがいまして、四十六年度補助金をつけました際には、私どもこういう事態がある、ないしはなろうとは全く予想しなかったわけでございまして、適正な手続あるいは住民の協力と理解のもとにこの事業が進められておるという前提で、二千四百四十二平米につきまして四千七百万円の補助金を、すでに交付をいたしたわけでございます。  しかし、その後、ただいまお話しのような紛争が起きまして、私どもたいへん驚き、かつ、遺憾に存じておるところでございますが、現状といたしまして、町当局の意向を聞きますと、四十九年度も両地区の分教室ということになっておるわけでございますが、これを引き続き存続させながら、話し合いを継続していきたいということでございます。現在は、一応表向きの紛争はないようでございまして、町の内部におきまして、引き続いて話し合いを継続するということでございますから、文部省といたしましては、その経過を見守ってまいりたい、かように考えております。
  216. 大出俊

    大出分科員 いまの四十六年の町議会のいきさつなども、詳しく調べてありますし、いまの手引きも読んでおりますが、統合というものは、それをごらんになればおわかりのように、統合ということが主題なんです。統合にあたっては、次のようなことを気をつけろというのです。そうでしょう。これは統合の推進なんです。だから、町の当局にすれば、あるいは町の教育委員会にすれば、県の教育委員会から統合促進がきまったのだ、やりなさいというのだから、その間の言われたとおり説明するわけですよ、町議の皆さんに。それは早い話がお上意識だ。文部省がそういっているのです。中教審の答申が出ているのです。統合しなさいというわけですから、そのかわり補助金は出しますというわけですから、だから、これは町の意見を聞いたわけでも何でもない。  全会一致とおっしゃるけれども、ここに幾つも書いてありますけれども、新聞にも出ていますけれども、全くその町の意見は聞いていない。てっぺんからやれということだからやるということですよ。そうなるのですよ。文部省がということで通達が出る、県の教育委員会がということで指導するとなれば、それが統合という主題だから、その際、こういうことを気をつけなさいというわけです。気をつけなさいといったって、中身に入っているものじゃないのですね、教育効果があがっているかいないかは。  手引きに書いてありますが、教育効果であるといったら、しからば何だ。先ほど来申し上げておりましたように、大きな学校ができた、あるいは体育館ができた、はたしてそれが教育効果か。遊ぶところは山のようにあるのですよ、まわりはみな山なんだから。そうでしょう。そうなると、あなた方がいみじくもあとから出した通達、問題の焦点はここなんですね。こんなことは前の通達には、手引きにも何も書いてない。あとから出されている皆さんの通達にはちゃんと載っている。これは気がつかれたのだろうと思うのですけれどもね。あとの通達には、さっきすでに読み上げまししたけれども、小規模学校というものは一体どういうものなんだ、小規模学校にはそれなりに、教職員と児童生徒との人間的触れ合いや個別指導の面では教育上の利点が考えられる。確かにこれは人間的触れ合いはありますよ。個別的指導もあります。だから、そういうことを考えて小規模学校として存置し、充実するほうが好ましい場合もあることに留意せよ。これは今度は統合促進といっていないのだ。  つまり、あなた方が画一的な統合促進を出して、きわめて非教育的な手引きを出してやらせた。結果的にこういう結果になった。あなた方はそれに対して、今度はそのことを、いま言ったところを特に強調して、小規模学校で残すものは残したらいいということになる。そうなれば、一体町当局はどうするのだ、町の教育委員会は、じゃ、どうするのだということになる。まさにこれはまことに相すまぬということになる。  教育委員会も町当局も、責められてあやまっちまった。あやまっちまったから、賛成派も反対派も黙っちゃったわけだ、しようがないから。そうでしょう。それじゃ二年間一体何をやってきたんだ、われわれは一体二年間何をやってきたんだという反省が幾つも載っていますよ。文部省の一片の画一行政、画一通達に踊らされて、とんでもないことをやってきた、これは町じゅうの反省です。だが、この間に感情的に残ったものは消えない。これはそこの問題です。  だから、一様に言っているのは、文部省に責任があると言っているのです。もちろん県の教育委員会にも責任がある、住民サイドから言わせれば、賛成派も反対派も。私は、こういう問題は、一片の言いわけでは事済まぬと思う。できた現実があるのですから。  そこで、通学距離の基準なんといったって、さっき私が申し上げたように、バス路線というものは、山梨へ出なければ入れないのですよ。なぜこんなになるまでおっぽっておいたんだということになる。そうでしょう。親にすれば、山梨県まで行って戻ってくるようなバスの路線で行かせたくはない。いなかの子ですから、そうなれば、山を越えていかなければならぬということになる。そうすると、親にすれば、そんなところにとても行けないということになる。あたりまえですね。  大臣、幾ら何でもこの二年間、地元がやっているわいということで、腕を組んで見ていたわけでもなかろうとは思いますけれども、それを四十八年になってから、前の通達には一ぺんも触れていない小規模学校のいいところというのを——それは確かにいいんですよ、その点は。あとの通達にあるとおりなんですね。個別指導もできるでしょう、数が少ないのですから。藤野町というのは二千人ぐらいの町なんですから。町民二千人ですよ。そうすると、それは個別的な触れ合いもあれば指導もできるし、体育館がなくたって、まわりは山なんだから、そっちへ行って幾らだって何だってやれるのですから、そういう自然の中で教育をするといういいところはたくさんある。  だから、町の先生方の言っていることは、教育とは何ぞやという問い直しをしているわけですね。町民の方々に言わせれば、このいろいろな運動が起こった中心には、学校先生方の影響がたいへん大きかった。それは、画一的に、校舎がよくなります、体育館ができますと言って統合しろと言った。教育効果という問題は、じゃ、そういうりっぱな校舎に入らなければ教育効果は出なかったのか。つまり、個々の先生方は、われわれは小規模学校で苦労してきた、苦労してきたが、それなりに確信を持って教育効果をあげていた。このことを先生方が言い出したところに、実は藤野町のまん中から反対運動が起こったのですね。これは教育者としては当然のことですよ。通達に反発した。ちょうどあとの通達に書いてあるようなことを先生方は言っておるのですね。これは教育の問題だから、われわれ先生が黙ってはいられないというので相談をした。教育効果とは何だ、学校がりっぱになることでもなければ、体育館が大きくなることでもない、全町の生徒が一つに集まって友だちがふえることでもない。そうではなくて、われわれは個別指導もしたし、数少ない子供さん一人一人に一生懸命人間的なつながりを大切にして教育してきたはずだ、その意味教育効果が、一片の通達で否定されるのか、そんなことはないはずだという、これは討論なんです。そのことが表に出てきた。だから、藤野町を明るくする会というのができて、反対運動がぽんと、こう出てきた。もっともなことです。そのことをあとから皆さんが追認しているわけです。  だから、私はこの点は、こんなおそい時間にこれ以上申し上げる時間もないかもしれません。しれませんが、どうもそう簡単に、前の手引きでこうでございます。そんな手引きなんというのは町の人はみんな知っているのですよ。これで二年間やっているのですから。先生方も一々ものを言っているのですから。町の教育委員会も言っているのですから。あとになって言いわけでは済まぬ。統合促進を大上段に振りかぶった通達なんですから。  私は、そういう意味で、これをこれから一体どういうことにするのかという点を考えていただきたいのです。これは大臣に御意見をいただきたいのですがね。
  217. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 昨年の国会におきましても、統合をめぐる紛争をずいぶん聞かされたわけでございます。そういうようなところから、やはり若干無理な統合の進められている地域があるなと、こう判断をしたわけでございます。そういうことを踏まえましてあとの通達が出ているわけでございますけれども、当然この通達によって、振興途上の地域においてはかなりな迷惑をかけるなという判断は、私にもございました。ございましたが、しかし、あえてその通達を出さなければ、従来の統合をめぐる紛糾がますます多くなってくるだろう、こう考えたわけでございます。  そこで、従来の方針は方針として、その上に立って注意を喚起しなさい。だから、大出さんの御指摘になりますように、たいへん矛盾があるといえば、おっしゃるとおり矛盾があるのです。しかし、従来の方針は変えませんよ、その上に立っての小規模校のよさの認識ですよ、こういうたてまえをとらしていただいたわけでございます。  私、いまお話を伺いながら、たいへん御迷惑をかけているなという感じはいたします。精神的な問題は、これはぬぐえませんけれども経済的な問題でありますならば、文部省としてできる限りお世話はしていかなければならない、かように考えるわけでございます。
  218. 大出俊

    大出分科員 そこでこれは、いまのところは分校という形になっておりまして、町の条例は生きているわけです。だが、もう一つここで問題は、国庫補助金返還という問題がある、統合できなかったわけですから。そこらのところは、具体的に言うとどういうことになりますか。
  219. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 統合するというて統合できなかったわけだから、補助金返還というようなことは、形式的に考える場合には出てくるだろうと思います。統合がいいのか、いや、統合しないほうがいいのか、これは今後の結論にまたなければならないと思いますけれども、いずれの結論にきまりましても、経済的な問題につきましては、文部省としてできる限りのお世話はすべきことだろうと考えております。
  220. 大出俊

    大出分科員 これは、賛成をした方々にも、それなりの理由があったんだと思うのですね。実はこの地域から、皆さんの党の方でございますけれども、神奈川県議会の議長をやっておられる方もお出になっておるのですね。私も親しい方でございますけれども。ただ、この方も、どっちにもものを言えないというわけですよ。県会にお出になって長くやっておられ、県会議長をやっておられる方ですけれども、自分の選挙区だからものを言えぬというわけだ。それはそうでしょう。ほんとうに両方真剣にこうなっちゃっていると、やはり政治的に考えている方ならばどちらにも手が出せぬ。ただ非常に心配しているのですね。大体、この一片の通達、こういうことをするからだと、やはりその方も言っておる。  だから、新通達は問題を解決する、つまり静めるという意味でお出しになったというならば、あるいはその効果があったのかもしれない。しかし、振り返って、おっしゃったとおりに、こんな矛盾があっていいはずはないという悔いがみんなに残っておる。それだけにあと処理は、いま大臣が口にしましたから、それ以上詰めたことは申しませんが、子供を含めてのことでございますから、ひとつできるだけ町民感情に沿うような形でお願いをしたい。せめてそのくらいのことはお考えいただきたい。まあ一部には、分校にしないでやはり佐野川、牧野両中学のままにしてもらいたいという意見もたくさんあります。そこらはひとつ、十分地元の相談なり何なりに時間をかけていただいて、めんどうを見ていただきますようにしてもらいたい。何しろ小さい町でございまして、負担力もないわけでございますから、この点は最後にお願いいたしまして、時間でございますので、終わりたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  221. 藤井勝志

    藤井主査 次回は、明六日午前十時より開会し、外務省所管について審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十八分散会