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1974-03-06 第72回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月六日(水曜日)     午前十時三分開議  出席分科員    主査 湊  徹郎君       植木庚子郎君    笹山茂太郎君       羽田  孜君    松浦周太郎君       松岡 松平君    井上  泉君       岡田 春夫君    金瀬 俊雄君       野坂 浩賢君    松浦 利尚君       湯山  勇君    高橋  繁君       林  孝矩君    小平  忠君    兼務 井上 普方君 兼務 土井たか子君    兼務 楢崎弥之助君 兼務 荒木  宏君    兼務 梅田  勝君 兼務 瀬崎 博義君    兼務 岡本 富夫君 兼務 田中 昭二君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁長官         官房参事官   有松  晃君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業大臣官         房長      増田  実君         通商産業大臣官         房会計課長   大永 勇作君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省機械         情報産業局長  齋藤 太一君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         中小企業庁長官 外山  弘君  分科員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   仲田 嘉夫君         環境庁大気保全         局企画課長   山崎  圭君         大蔵省銀行局総         務課長     米山 武政君         林野庁指導部長 松形 祐堯君         水産庁研究開発         部長      松下 友成君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      田口健次郎君         通商産業省生活         産業局紙業課長 村岡 茂生君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      斎藤  顕君         建設省計画局建         設振興課長   高比良和雄君     ————————————— 分科員の異動 三月六日  分科員示啓次郎君は、委員長指名で第三分  科に所属を変更された。 同日  第三分科員植木庚子郎君は、委員長指名で本  分科所属を変更された。 同日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     松浦 利尚君   湯山  勇君     井上  泉君   矢野 絢也君     林  孝矩君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     湯山  勇君   松浦 利尚君     野坂 浩賢君   林  孝矩君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     金瀬 俊雄君   沖本 泰幸君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   金瀬 俊雄君     岡田 春夫君   渡部 一郎君     松尾 信人君 同日  辞任         補欠選任   松尾 信人君     高橋  繁君 同日  辞任         補欠選任   高橋  繁君     矢野 絢也君 同日  第一分科員楢崎弥之助君、荒木宏君、梅田勝  君、瀬崎博義君、第二分科員井上普方君、第五  分科員土井たか子君、岡本富夫君及び田中昭二  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算通商産業省所管  昭和四十九年度特別会計予算通商産業省所管      ————◇—————
  2. 湊徹郎

    湊主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、通商産業省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。通産大臣中曽根康弘君。
  3. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昭和四十九年度の通商産業省関係予算案及び財政投融資計画について御説明申し上げます。  詳細につきましては、お配りいたしております「昭和四十九年度通商産業省予算案等について」をごらんいただくようお願いいたしまして、概略御説明申し上げます。  まず、昭和四十九年度の通商産業省一般会計予定経費要求額は、二千五百五十二億一千四百万円でありまして、前年度当初予算に対し、四百五十億二百万円、二一・四%増となっております。  次に、重点事項別予算内容を御説明申し上げます。  第一に、物価の安定と消費生活充実につきましては、対前年度比四〇・九%増の十八億六千八百万円を計上しております。まず、主要基礎資材等需給安定策流通合理化促進対策消費生活改善対策等充実をはかるとともに、繊維産業の新しい構造改善対策を行なうこととし、このための経費として六億六千三百万円を計上するとともに、中小企業振興事業団への出資の中で九十一億一千三百万円をこれに充てることとしております。  また、わが国の伝統的工芸品産業振興をはかるための経費一億一千八百万円を計上しております。  第二に、無公害社会建設環境保全推進につきましては、対前年度比五四・九%増の三十三億九千八百万円を計上しております。  まず、重要技術研究開発費補助のうちに新たに窒素酸化物対策技術ワク六億円を計上しております。  また、産業公害総合事前調査資源再生利用技術システム開発等拡充をはかるとともに、発電所立地に伴う環境審査等を新たに行なうこととしております。  さらに、故紙の有効利用推進するための経費一億七千百万円を計上しております。  また、休廃止鉱山等鉱害対策につきましては、十二億九千六百万円と、大幅に拡充するとともに、金属鉱業坑廃水対策等調査費を新たに計上しております。  第三に、中小企業対策につきましては、対前年度比二六・六%増の八百二億一千百万円を計上しまして、施策全般にわたり充実をはかっております。  中でも、四十八年度に創設された小企業経営改善資金につきましては、貸し付け規模を三百億円から一千二百億円に拡大し、また、貸し付け条件改善を行なうこととしており、このために必要な予算百四億八千四百万円を計上しております。  また 小規模事業対策を大幅に拡充し、百十二億二千三百万円を計上しております。  さらに、中小企業振興事業団事業運営につきましては、四百十四億四百万円を計上するとともに、商工組合中央金庫につきましては、五十億円の出資金を計上しております。  第四に、資源エネルギー安定供給確保につきましては、二百二十四億七千六百万円を計上しております。  まず、省資源省エネルギー広報費石油需給適正化法施行費を計上するとともに、金属鉱床精密地質構造調査補助率引き上げを行ない、また、新たに地熱発電開発のための精密調査費を二億八千二百万円計上しております。さらに、原子万につきましては、核燃料サイクル事業調査費一億百万円を計上し、また、水資源につきましては、造水促進対策費三億七千四百万円を計上しております。  第五に、国民福祉のための産業活動調整につきましては、百八億一千三百万円を計上しております。まず、企業行動適正化をはかるための調査研究を実施するとともに、製品安全性確保対策特定化学品安全確保等対策充実することとしております。  また、工業配置促進対策拡充をはかるため九十八億九千万円を計上するとともに、工場環境整備促進対策費として二億五千二百万円を計上しております。  第六に、高度産業社会創造につきましては、九百四十億九千九百万円を計上しております。  まず、電子計算機産業等振興対策費として百九十六億五千五百万円、次期民間輸送機開発事業費として二十一億二百万円を計上しております。  次に、西暦二〇〇〇年を目途に太陽エネルギー地熱等の無公害の新エネルギーを開発するサンシャイン計画を発足することとし、二十二億七千万円を計上しております。  さらに、沖繩国際海洋博覧会につきましては、準備に万全を期すべく百九十七億二百万円を計上しております。  第七に、国際協調による世界経済への貢献につきましては、百六十三億七千二百万円を計上しております。  まず、日本貿易振興会に対する補助を七十一億二千五百万円に増額しております。  経済協力につきましては、まず、発展途上国の要請に応じた中小企業海外投資推進するため十一億一千七百万円を計上しております。  また、発展途上国産品開発輸入を促進するため、これに関連したインフラストラクチュアの整備などに二十三億七千五百万円を計上しております。  以上の一般会計のほか、特別会計といたしまして、アルコール専売事業特別会計は、歳入百四十三億三千三百万円、歳出百四十一億四千七百万円、輸出保険特別会計歳入歳出六百十九億一千三百万円、機械類信用保険特別会計歳入歳出二十二億六千二百万円を計上しております。なお、輸出保険特別会計につきましては、為替変動保険を創設することとしております。  また、石炭及び石油対策特別会計につきましては、歳入歳出とも他省所管分を含めまして、一千四百七十五億八千百万円を計上しております。  このうち、石油対策分は、三百三十六億五千四百万円を計上し、石油開発公団機能拡充探鉱投融資規模拡充等を行なうこととしております。  また、石炭対策につきましては、一千百三十九億二千七百万円を計上して、第五次石炭対策推進をはかるとともに、新たに産炭地石炭火力発電所建設石炭ガス化技術開発等を行なうことといたしております。  さらに、発電所立地を促進するため、電源開発促進税を財源とする電源開発促進対策特別会計を創設することとし、発電用施設等の所在する市町村及び周辺市町村公共用施設を設置するための費用の交付等を行なうこととし、歳入歳出とも百一億円を計上しております。  引き続きまして、昭和四十九年度の通商産業省関係財政投融資計画につきまして御説明申し上げます。  総額は、二兆四千三百二十八億円でありまして、前年度当初計画二兆一千四百四十一億円に比べ一三・五%の伸びとなっております。  この伸び率は、財政投融資計画全体の伸び率一四・四%を下回っておりますが、新規項目を中心に資金重点的配分をはかることにより通商産業政策の新しい目標に沿った施策を実施し得るものと考えております。  四十九年度計画における新規政策及び重点施策概要は、次のとおりであります。  第一に、物価の安定と消費生活充実につきましては、日本開発銀行流通近代化ワク充実をはかるほか、中小企業金融公庫国民金融公庫についても流通近代化貸し付け、製品安全性貸し付け等充実をはかるとともに、新たに伝統的工芸品産業振興するため、所要融資を行なうこととしております。  さらに、繊維産業の新構造改善対策に関連して、日本開発銀行新規融資ワクを設けるほか、中小企業振興事業団からも融資を行なうこととしております。  第二に、無公害社会建設環境保全推進につきましては、日本開発銀行公害防止ワク資金量充実する一方、水銀汚染問題を抜本的に解決するため苛性ソーダの製法転換を早急に実施することとし、日本開発銀行及び北海道東北開発公庫から合計四百六億円を特利融資することとしております。  さらに、四十八年度より実施されております金属鉱業事業団からの金属鉱害防止貸し付けにつきましては、前年度の二倍の二十二億円を確保しております。  第三に、中小企業対策の全面的な展開でございますが、政府関係中小企業金融機関普通貸し付け規模につきましては、四十八年度当初計画に対し二一%増の二兆二百三十三億円を確保する一方、沖繩振興開発金融公庫についても百六十億円(四十八年度百四十六億円)の中小企業等資金ワク確保することとしております。  このほか、一般会計についてすでに御説明申し上げましたとおり、小企業経営改善資金融資制度につきましては、貸し付け規模拡充貸し付け条件改善をはかることとしております。  第四に、資源エネルギー安定供給確保でございますが、まず、石油につきましては、今日の石油危機等事態にかんがみ、石油探鉱開発積極的推進を行なうため、石油開発公団機能拡充するとともに、探鉱投融資規模大幅拡充(四十八年度三百七十七億円から四十九年度八百億円)、融資金利の引き下げと弾力化等を行なう一方、日本開発銀行から特利による融資を行なうこととしております。  次に、石炭につきましては、産炭地域振興のため、国土総合開発公団において、引き続き進出企業に対する融資土地造成等事業推進することとしております。  次に、鉱物資源開発につきましては、金属鉱業事業団の業務に関し新たに海外探鉱プロジェクトのうちの大規模プロジェクトに対する出資機能付与等を行なうこととしております。  第五に、国民福祉のための産業活動調整につきましては、工業の適正な再配置をはかるため、国土総合開発公団工業配置部門について七百億円の事業規模確保するとともに、日本開発銀行等からも工場の移転に伴う資金について引き続き融資を行なうこととしております。  第六に、高度産業社会創造につきましては、電子計算機産業自由化対策の一環として、日本開発銀行日本電子計算機に対する電算機購入資金融資拡充を行なうこととしております。  また、沖繩海洋博覧会開催準備を促進するため、これに関連する宿泊施設等建設する事業者に対し沖繩振興開発金融公庫から所要融資を行なうこととしております。  第七に、国際協調による世界経済への貢献につきましては、日本輸出入銀行の貸し付け規模を七千九百億円と拡大するとともに、特に輸入及び海外投資のための融資につきましては、資源エネルギー確保等の観点から、三千百五十億円と前年度比三五・二%増の資金量確保しているほか、新たに、国際収支事情等に対処して弾力的な資金運用をはかるため調整費として六百億円を計上しております。  以上をもちまして、通商産業省関係予算案及び財政投融資計画についてその概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほど、お願いいたします。
  4. 湊徹郎

    湊主査 以上をもって、通商産業省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  5. 湊徹郎

    湊主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林孝矩君。
  6. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 私は、石油製品値上げに関する問題について質疑をいたしたいと思います。  田中総理が、五日の閣議後に開かれた石油関係閣僚会議で、石油製品値上げ時期について、通産省早期値上げの主張は聞いておくが、すぐに、いつ値上げするときめるわけにはいかない、そのように、中曽根通産大臣早期値上げの方針に待ったをかけたという報道が昨日あり、きょうの報道では、さらに、その待ったということもゆらぎ始めているのではないかというような推測記事等々、この石油製品値上げに関する問題が、いま非常に重大な関心となって国民の中にあるわけであります。しかし、一部、そうした内容報道機関によって報道されているだけであって、いま国会に対して、国民に対しての説明というものは今日までございません。  そこで私は、この予算分科会を通して通産大臣に、大臣早期値上げ案というものはいかなる内容のものなのか、その点に関して明らかにしていただきたい。その点をまずお伺いする次第であります。
  7. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題は、目下自民党並びに内閣内部におきましていろいろ慎重に検討している段階でありまして、まだここで御報告を申し上げるまでに成熟していないのを遺憾に存ずる次第でございます。  大体、石油値段は、十二月の水準と一月以降の水準で、原油価格におきまして一万円強の落差が出て、いま日本としては、物価政策に協力する意味におきまして、また、暮れにかけての石油産業便乗利益と思われるものを吐き出させる、そういう意味もありまして、十二月の水準で凍結しておるわけであります。  ところが、十二月に最後にストックとして残った旧石油が次第に枯渇して、高い石油がどんどん入ってきて、それがもう使用されて、ほとんど全部それに切りかわっているのが現状であります。したがって、凍結しておりますから、石油企業におきましては、いろいろ落差はございますけれども、すでにかなり赤字が出てきておるという現状であります。  これに対して、財政投融資金融措置するか、あるいは、価格上昇を認めて適正な企業が行なえるようにするかという問題点。それから、イギリスやフランスやドイツのような外国は、すでに一月中旬から二月下旬にかけて、ほとんど八千円から一万一千円ぐらい値上げをしておる。私の聞いた範囲では、値上げしないのは、日本とベルギーだけであります。そういう面から、日本の六〇%以上の石油供給しているいわゆるメジャーズが、供給すればするだけ損が出るところへはどうしても供給を渋りがちで、結局、供給すればもうかるほうへ石油供給していく、これは経済の論理であります。  そういう面から、日本に対する供給に不安がつきまとってきておりまして、その点も、われわれとしては大いに心痛しなければならぬ事態に立ち至りつつあります。外国からの石油供給が削減されて、そのために、また国民心理的パニックを起こして、物価騒動みたいなものを起こすということは、再び繰り返してはならぬ、私はそういう確信を持っておるわけであります。  そういうこととか、あるいは民族糸会社外資系会社では企業力が非常に違っておりまして、民族系会社は、原油について、これは大体DDオイル等を買ってきておりますから、キロリットル四千円以上の高い原油を買ってきておる。そういう面から、企業採算から見ますと、民族系がまず非常な困難に遭遇して、外資系は余力があるという状態が、ある時点にはできるわけです。そうした場合に、日本経済自主性を強めるために民族系を育成してきたわが政府の努力というものは、政策のいかんによっては、水泡に帰するということも心配せざるを得ない段階であります。  もう一つ考えなければならぬことは、公害問題でございまして、ローサルファ石油値段が高いわけです。たとえばミナス原油は、この一月の時点において、たしかバーレル十ドル八十セントでありましたけれども、最近私が聞いた情報では、十二ドル前後に値上げしてきたということであります。十ドル八十セントでもかなり高いのが、そう上がってくると、十二月水準で凍結されておると、そういう高い原油を買ってくる会社は、さらに赤字が累積して損が大きくつくわけであります。必然的にローサルファ石油を購入することをやめて、安い、サルファの強いものを買ってくるという傾向が発生せざるを得ないということも心配すべき点です。これは公害問題上、ゆゆしい問題が出てまいります。そういうような諸般の点を考えてみて、石油値段調整せざるを得ない事態にいまきておると思います。  しかし、この問題は物価政策にも影響するところでありますから、もはや一通産省の問題ではないのであって、内閣全体あるいは自民党全体——まあ責任政党としていま政権を担当している自民党全体、内閣全体の責任において、大局的に処理すべき問題になっておるのでございます。そういう意味において、各般の慎重な検討をお願いしておるというのが現状でございます。
  8. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 国民の立場に立って考えるときに、私はこのように思うわけであります。それは、いま通産大臣から石油値上げに関する条件というものについてお話がございました。ところが、一つは、今日まで通産省は、山下次官の発言にもあったように、石油業界やらずぶったくり商法というものを批判しつつ、そして通産大臣も、予算審議の過程において、同じく、石油業界便乗値上げ超過利潤についてきびしい態度で臨むと表明されてきたわけであります。そういう経過を国民はいろんなマスメディアを通して知っておる。そういう中でいま急に再値上げという動きがある。こういうことに対して国民の気持ちは非常に唐突な感じを抱いていることも事実であります。  そういうことを考えるときに、いまいろんな条件を話されましたけれども、値上げをしなければならないということに対して、国民に対する納得を得られるようなことを通産省はやってきたかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  9. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いろいろないまのような事態につきましては、国会におきましても私は御説明申し上げましたし、また、新聞報道関係につきましても、記者会見その他の機会に申し上げてきたところでございます。できるだけ国民の広い御理解を得て、そうしてこの問題を円滑に解決するように、今後とも努力してまいりたいと思っております。  国民感情としては、昨年の暮れにかけて、石油産業便乗値上げをした、あるいはもうけた、そういう不信感が非常に強いおりから、やはり国民感情に合うような政策措置をとらなければならぬと確信しております。この点につきましては、予算委員会でも御答弁申し上げましたが、もちろん、昨年暮れにかけましてもうけた便乗利益は全部吐き出させる、それからさらに、三月期の決算は、無配ないし減配を石油産業は行なうことが適当であると思う。それから役員賞与等についても自粛をする、それから内部留保もできるだけ吐き出して、そして国民の皆さんが、なるほど石油産業も出血して、それだけつとめたかということを理解できるような措置をやってもらうことが正しいと思っております。  ただ、われわれは自由経済をやっておりますから、そういうことを強制することはできませんけれども、そういう考えが正しいと私は思って、石油産業に対してそういう指導をいたしたい、そういうふうに考えております。
  10. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 それでは伺いますが、たとえば、その石油製品値上げ条件の中に、大臣が触れられておりました九ドル原油の問題です。  大臣の話によりますと、一月二十日ごろから九ドル原油輸入されておる。そして、その高い油によって、通産省の推定によりますと、一日約八十億円のコストアップになる、こういうことが伝えられておるわけであります。これは、一月二十日以前の原油の備蓄が全然ゼロの時点である、そういう仮定に立った話でなければ納得できない。大臣は、いま、国民納得ということ、理解という問題をあげられましたが、この点に対する大臣考え方はどうなのか。国民納得できるかどうか。それから、二月二十日の予算委員会通産大臣は、いま会社ごとにどの油を幾らで引き取っているか、それが会社ごとに全部で幾らになるか、全部当たっている、そのように答弁されているわけであります。  私はこの際、その実態を各企業別報告を願いたい。これがなければ、石油製品値上げするという一つの理由になっておりますところの高い油の実態というもの、こういうものに対して国民納得できない。明確にしていただきたいと思います。
  11. 山形栄治

    山形政府委員 お答え申し上げます。  いま先生のおっしゃいますように、古い油がある間はその古い油でやるべきであるというお考えは、国民感情としても、非常に当然のことだと私は思うわけでございます。  十二月末のいわゆる古い油の在庫というのが約五十日分あったわけでございまして、中東からの航海日数を考えますと、一月二十日ごろから新しい油が入るわけでございますが、古い油の在庫日数を換算しますと、三月十日ごろまでは古い油が使えるということに相なるわけでございます。逆算からいたしますと、古い油は三月十日ごろまでしかないわけでございます。それ以降は新しい油に相なるということでございます。ただし、各企業の決算の在庫評価のしかたは、いろいろなやり方をやっておりまして、古い油が全部なくなって、それから新しい油で計算するということで在庫評価をしている会社は、日本の場合にはほとんどございませんで、日本の大部分の会社は、いわゆる平均法というかっこうで在庫評価をいたしておるわけでございます。これは世界的にいいましても、メジャー系というのは、むしろあと入れ、先出し法ということで、古い油よりは新しい油のところで計算する。これは上がりますとすぐ上がりますが、下がるときはすぐ下がるというような方法もとっておるわけでございますが、しかし、われわれといたしましては、あくまで古い油をなるたけ使い果たして、それから新しい油に入るということを計算するほうが国民感情であろうと思います。  われわれの考え方といたしましては、現在通関統計によりまして、到着ベースで、中東から日本に入るまで二十日、それからインドネシア等の東南アジアからは十日で入るという前提のもとで通関統計を分析いたしますと、十二月の日本に入りました油の総平均が四ドル四十五セントでございます。これはバーレルでございます。これをCIFのキロリットル当たりの円に直しますと、八千八百四十円に相なるわけでございます。これが二月段階におきましては、バーレル当たりほぼ十ドルになっておりまして、キロリットル当たり円で一万九千五百円ぐらいに相なっておるわけでございます。したがいまして、キロリットル当たりを円で申し上げますと、十二月に比較しまして、大体一万円ないし一万ちょっとこえたぐらいの高い計算に相なるわけでございます。  われわれといたしましては、こういうことを踏まえ、いま御質問にございましたように、関係会社の一船別の詳細な分析をいたしておるわけでございますが、いま申し上げましたように、これを集合計いたしました数字は、そういうことでございまして、これの決算のしかたはまた別でございますが、実際に入っております入着ベースの油は、そういう高い油になっておるわけでございます。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの答弁に補足いたしまして、石油会社の仮決算、これは石油会社が言ってきた、査定していない数字を試みに申し上げますと、民族系四社におきまして、十月から三月末においてどうなるかというと、千百七十四億五千九百万円の赤字になる。それから外資系八社、メジャー系八社が六百六十四億一千三百万円の赤字になる。それから、その中間にあるのは一社で三百六十五億の赤字になる。いずれもこれは赤字でございますが、民族糸外資系によって、これで、かなりの力が違うということがわかります。  これは会社から申し出さした数字を無査定で申し上げたのでございますから、これはもちろん査定しなければなりませんけれども、一応一つの参考資料として申し上げる次第であります。
  13. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 いま無査定という話がございました。これは非常に重大なことでありまして、先ほどエネルギー庁長官のほうからの話は、いわゆる油を輸入するという段階での話であります。その輸入された油が製品となっていくわけでありますが、その過程において、古い油と新しい油という問題が起こってくるわけなんです。その実態というものを正確に掌握するというのが、去る二月二十日の予算委員会における通産大臣の答弁ではなかったのか、私はそのように思うわけであります。  通産大臣の答弁は、会社別にということを言われて、そして、どの種類の油を幾らで引き取って、そして会社がいま持っているのは幾らになるのか、いわゆる備蓄の実態、これも全部当たっているのだという通産大臣の答弁であった。これは、なさなければならないと思います。企業からの報告というものを通産省が受けて、そして赤字はこれだけだ、いまもう古い油はないのだ、新しい油を買っているからとんでもない状態になってきた、だから値上げをしなければならない、こういうふうな発想そのものが、非常に問題じゃないか。  実際、先日来、物価集中審議のときに参考人で来た石油業界の代表の人たちが、あの質疑の中でどのように話をされておったかという一部始終を議事録で見てみると、よくわかります。入ってくることはわかる。その量はどれくらいかわかる。ところが、それから先のことについては、社長の立場にある人でも、わかりませんと言って、はっきりと答えておった参考人もおったわけであります。  そういう備蓄の実態というもの、これをどういう形で調査をされておるのか。私は、企業別にそうした実態をはっきりと掌握をしなければ、いま、ほんとうに値上げが必要なのかという点について、さらにあとでも質問いたしますが、非常に納得できない、そういう感じを持っているわけです。これは国民の声だと私は思います。  したがって、通産省はいまどういう調査をされておるのか。調査したというならば、その実態企業別に、はっきりさしてもらいたい。古い油、新しい油というものをそう簡単に考えてもらって、赤字が多いから値上げするというのでは、国民納得できない、このように思うわけであります。
  14. 山形栄治

    山形政府委員 まず、油の値段の問題でございます。  これは御存じだと思いますが、いわゆるインボイスを出しまして、通関をいたすわけでございますが、税関におきまして、これがまずチェックされるわけでございます。実績といたしましては、われわれは、このインボイス統計といいますか、通関統計を一船ごとに全部チェックいたしております。  なお、今後の原油の見通しにつきましては、一部には、若干下がるというサウジアラビア等の見方もございますけれども、また一部には、すでにメジャー系等から、現在の輸入価格は仮仕切りでやっておりまして、その追徴分が、すでに予備通告的に出てきているのもあるわけで、これは非常に数は少ないわけであります。  それから、先ほど大臣からお話がございましたように、インドネシアのミナス原油等につきましては、近くこれを大幅に値上げするという動きもあるわけでございますが、われわれといたしましては、物価政策上の観点も踏まえまして、現在の段階で、一応輸入価格というものは、これ以上の値上げは見込まないということにいたしておるわけでございます。  そういう意味で、現時点におきますインボイスのチェックを税関当局とも相談いたしまして、これを確認いたしておるのが一つでございます。これは各社別にやっております。  ただ、これを各社全部出すということは、どこの地域から、いつどんなものを入れているかというのは、これは企業の秘密的な要素が非常に強いものでございますので、これをわれわれは全体でつかみ、加重平均いたしまして、先ほど来申し上げましたようなチェックを行なって、原油輸入価格をはじいているわけでございます。  それから各社別の備蓄でございますが、これも各社別からわれわれは報告を受けまして、これを月ごとにフォローして、供給目標的にも、十二月末の備蓄が、原油で二十四・五日分、製品、半製品が二十九・三日分、合計五十三・八日分、一月末は、同じく原油が二十四・二日分、製品、半製品で二十八・二日分、合計五十二・四日分、それから二月末が原油で二十三・九日分、製品、半製品で二十六・六日分、合計五十・五日分、これは各社の集計でございますが、当然に、この前提といたしましては、各社の在庫の把握を前提にしての集計をいたしておるわけでございます。
  15. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 私に与えられた時間がありませんので、要約してさらに質問を続けていきますが、いまの企業からの報告に対して、実態調査をやられましたか。
  16. 山形栄治

    山形政府委員 輸入価格につきましては、先ほど言いましたように、(林(孝)分科員輸入じゃなしに、備蓄のほうです」と呼ぶ)証拠書類がありますので、それでチェックいたしておるわけでございますが、備蓄につきましては、大がかりな実地調査につきましては、年に一回、通産省の在庫統計に基づいてやっておるわけでございます。それがいわゆる原票といいますか、でございまして、それに応じて毎月の報告を受けて、現場には行っておりませんですけれども、それでフォローしておるわけでございます。  なお、従来日本は備蓄の増強政策をとっておりましたので、この備蓄の設備の増強につきましては、開銀の融資なり、また運転資金につきまして石油公団の手当て等も行なっておりますので、そういう物的な設備の把握につきましては、そういう政策のうらはらということで、われわれのほうは非常に明確にこれをつかんでおるわけでございますが、日々の備蓄はどのくらいかということは、先生の御質問のとおり、現場へ行っての実地調査はいたしておりません。
  17. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 私はいまの答弁を聞きまして、あまりにも値上げの根拠が薄弱である。国民感情からして、そういうふうな実態を調査しないで、いまどうして値上げをしなければならないのかということを国民納得させられるのか。はなはだ残念に思うし、また、そうした通産省の姿勢そのものは私は問題だと思う。全く国民の感情とは遊離した、そういう姿勢ですよ。備蓄の実態というものが、今国会予算委員会において重大な問題になったわけであります。最近の決算の報告というものを見ますと、石油業界の黒字というものが大々的に報道されております。そして、昨年末からのいわゆる石油パニックというこういう問題を通して、業者が便乗値上げをした、超過利潤を得た、こういうことに対しても、予算委員会において審議をされてきたわけであります。そして、原油の値上がりが石油製品にどういう形で便乗値上げをされてきたかという具体的なデータをもって、そして実態調査の上に立って質問したのは、わが政党でございます。  このように、この石油の問題に対して、ほんとうに国民生活に与える影響が東天である、国民の生活を防衛する上からも、そこまで突っ込んだ議論というもの、審議というものを予算委員会はやってきたわけであります。その中で浮き彫りにされてきたのが、いわゆる石油業界便乗値上げ超過利潤というものであったわけですね。そして、そのときに通産大臣はこのような答弁をされております。  「石油関係の企業は、昨年十一月、十二月の値上げ等につきまして非常に国民からの疑惑を受け、公取からの調査も受けておるわけでありますから、これらの疑惑を国民の前に解明して、そうして納得する状態にしなければ、値上げすることは非常にむずかしい。行政的にも、われわれとしては慎重にしなければならぬところであると思っております。したがって、昨年の十一月、十二月におけるもうけというものを全部吐き出させる、そうして石油会社国民と同じように苦労し、努力して、同じような苦労を味わっているということを国民納得させなければ国民は許さないだろう、」まさしく大臣の答弁のとおりであると私は思うわけです。その国民納得できる状態と、重ねて大臣がおっしゃっておることは、石油業界が昨年末来便乗値上げをし、そして不当超過利潤を得た、それを吐き出すということが、国民納得を得ることである、そのように大臣考えられておったんだ、私はそのように思うわけであります。であるならば、納得させる状態をはたしてつくり出したかどうかということが問題になるわけであります。  これだけを全部吐き出したということを納得させるためには、またそれが真実であるかどうかということを議論しなければなりません。そういう状態、背景というものをつくり出していくために通産省はこういうふうにやりました、これで国民納得してもらえるはずですというくらいのことをやってきたのかどうか。それを全然国民に示さないで、そして便乗値上げという問題に対して、吐き出しも完全にぬぐい去れないまま新しい値上げの問題が起こっておる。これでは、大臣が答弁された趣旨とは全然逆方向に進んでいるわけでありますし、また国民納得できない。この便乗値上げで得た黒字を吐き出すという問題と、それから新しい原油が値上がりしておるから、企業が非常に赤字をかかえるようになっていくという問題とは、これははっきり分けなければならない問題だと私は思うわけであります。でなければ国民納得できない。それを、二つを相殺して、ずるずると値上げの方向に持っていこうということでは、納得できないのです。  もう一つは、これは重大な問題でありますけれども、便乗値上げで不当利潤を企業が得ているときに、この原因によってどれだけ諸物価が値上がりしたか、そのことによって、国民はどれだけ混乱した生活、不安定な生活に追いやられたか。その状態のまま現在に来て、さらに値上げの問題が起こっておる。このときに、新たに国民に与える影響、国民生活に与える影響というものは、想像もつかないような狂乱状態におちいるのではないか、このように憂えるわけであります。  そうなってきますと、今度は、政府によってつくられた石油危機という問題を指摘せざるを得ない。こういう状態を通産大臣はほんとうに感じて、石油行政を適正、かつ国民納得する状態にしていかなければならない。そうでなければ、大臣予算委員会での答弁は、全く政治的な発言ということになりますよ。どうでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全くあなたと同じ気持ちでやっております。それをいかに行政的に反映させ、そういう結果を出すかということで鋭意努力しておるわけです。吐き出すということは、いま申し上げた計算上からもはっきりしておりますけれども、三月期の決算が出てくるのは五月ころになりますが、三月期の仮決算というのは、三月の下旬くらいにはわかるだろうと思います。そういうものも明らかにしたいと思っておりますし、それから、いま申し上げましたような石油企業の自粛措置につきましても明らかにしていきたい、そう思うわけであります。
  19. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 いまの答弁では納得ができません。それならば、石油製品値上げという問題、いまそうした動きをするべきではないと思います。  私の時間が来ましたからこれで終わりますが、この問題に対して考え直さなければならない問題がもっともっとたくさんある。石油行政全般に対する行政指導の問題だとか、あるいは法的根拠限界、そうした問題に対してもやらなければなりませんし、いろいろございますが、きょうはまずその第一点として、石油製品値上げの問題を、国民的立場から通産大臣に指摘をいたしまして、あとの問題は、また他の委員に譲りまして、私はこれで終わりたいと思います。
  20. 湊徹郎

    湊主査 これにて林孝矩君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦利尚君。
  21. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 私は、時間が三十分でありますから、あまり意見を言わずに、政府の姿勢をただしたいと存じます。  いま林委員からも指摘がありました九ドル原油輸入に伴う新価格体系、この問題は短時間で結論の出るものではありませんから、別の機会にこの問題についてやらせていただきたいと思います。  ただ、新価格体系に移るときに一番大切なことは、国民のコンセンサスだと思うのです。いま林委員からも指摘されたように、通産行政が、ほんとうに国民の立場に立って、姿勢が正しいかどうかということが、その基本になると私は思うのでありますが、その国民的なコンセンサスを得るための努力というものを、通産大臣としてはどのようにされようとしておられるのか、その抱負をまずお聞かせいただきたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 基本は、やはり通産省自体のやり方が、国民的公正を求めて誠実にこれを実行していく、そういうわがほうの主体的な態度を明らかにすること、それを実行することが大事であると思います。  それと同時に、現在の石油事情というものを、国民の皆さま方にできるだけ広く御理解願うように周知徹底させる、そして国民の御納得を得る。その上に立って、どういう措置をしたらいいでしょうか、われわれはこういう考えを持っております、そういうことで国民の批判を受け、また各政党の批判を受ける。いま松浦さんが御質問しているのも、そういう批判の一つであるとわれわれは謙虚に承りたいと思っております。そういうような過程を経て、合理的な処置を決定していきたいと思っております。
  23. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 率直に申し上げて、いま、国民通産省を擁護する立場にないと私は思いますね。予算委員会で、参考人等を通じて通産行政そのものもいろいろと批判をされてきたと思うのでありますが、そういった意味では、私は、いま国民の中で不満を持っておる灯油の問題に限定をして、一体こういう指導が正しかったのかどうかということについて、エネルギー庁長官もおられますから、長官が事務的なことをされたはずでありますから、長官の過去の指導経過等も踏まえて、具体的にお聞かせをいただきたいと思うのです。  その第一点は、四十九年一月十四日に通商産業省資源エネルギー庁が、「一般消費者に販売される灯油及び液化石油ガスの標準価格の設定及び指導について、」指導通達をされておるわけであります。  これは一体どこに指導通達されたのか、どこに出した文書なのかを明らかにしていただきたいと思うのです。
  24. 山形栄治

    山形政府委員 これは御存じのとおり、実際の標準価格の実施その他につきましての権限を、都道府県、市町村に委任しておるわけでございますので、その実施が円滑にはかられるようにということのための通達でございまして、都道府県及び市町村に出したものでございます。
  25. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 そうしますと、都道府県並びに市町村に出したこの通達が石油業者の手に渡っておるということは、どういうことになるのですか。その内容が、すべて事前に石油を扱う業者にわかっておるということは、一体どこでそういうことになるのですか。都道府県、市町村指導したはずの通達文書が相手側にすでにもうわかっておる、これは一体どこから漏れると思っておられますか。そういうことはないと思われますか。
  26. 山形栄治

    山形政府委員 私のほうから業界、業者にあれするようなことは、絶対いたしておりません。どういう経路でそれが渡ったのか、私はわからないのでございますけれども、しかし、これは各業者ということでなく、通牒というものは、都道府県及び市町村に出したものでございますが、関係の、たとえば国会の先生、及び一般的なそのほかの通産省内部の者等には、監視及び実施の運営基準でございますので、これは秘密にする必要もないということで、そういう向きには当然これをお渡ししておるわけでございますが、私のほうから個々の業者に対して、これを積極的に配ったというようなことは絶対ございません。
  27. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 私は、積極的に配ったと言ってはおらないのです。これが事前になぜ業界に漏れるかということですね。通産省が業界にやったと、私は指摘しておるのじゃない。一体、これはどこに出した通達なのか。漏れるはずがないのだな。指導監督するところだけが必要な文書なんだ。それが事前に業界に知れておる。しかも、事前に業界がこの通達を知って操作しておる。  かりにそういう事実があったら、あなたはどう思われますか。そういう行政は、通産行政として正しかったと思われますか。そういう事実が現にあったら、正しかったと思われますか。どうですか。
  28. 山形栄治

    山形政府委員 この指導通達の裏をかくようなことをするということは、もう許しがたいことでございまして、われわれはそういうことを一番おそれておったわけでございますが、府県、市町村等との連絡におきましても、その後この指導通達につきまして、いろいろとこまかい解釈等の問題もございましたけれども、現段階におきましては、都道府県、市町村には周知徹底がはかられております。裏をかくというようなことは、今後も絶対にないようにいたしたいと思います。
  29. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 具体的な事実を指摘したいと思うのですね。  これは、参考人で伊藤忠の社長を予算委員会に呼んだときに、その経過措置として、二月二十八日に、伊藤忠商事のエネルギー部長、常務取締役の金井さん、この方は通産省の局長をしておられた方です。この方が私に対して、「関係会社伊藤忠燃料(株)の民生用灯油のご質問に関する件」として、私文書でございますが、回答文書を正式に寄せられた。この中にこういうことが書いてある。「その後四十九年一月十八日から民生用灯油の小売標準価格を設定するにあたり、一月十四日附の通産省の通達の説明文中に、……三百八十円のモデル計算においては、小売仕入価格は、二百六十〜二百八十円程度を想定し、……という表現がありましたので、一リットル当り十五円五十銭を上回るものは十五円五十銭に改訂値下げいたしました。」改定値下げしたのは、二百七十九円だ。二百六十円から二百八十円の最高値の二百八十円に近い二百七十九円をとった。なぜとったかというと、この通達でとりましたという文書なんです。明らかにこの文書がいっておるということでしょう。これがなければそんなことはわからないし、そういう表現はされておらないはずです。それが、こういうことが表現されておるということは、明らかに通産省自身の通達文書が石油業界に漏れておるということでしょう。  こういうことに対して、国民は、通産省はたいへん癒着しておると言うのだ。しかも、たいへん迷惑をしたのは、国民なんですよ。だから国民通産省を信用しないのですよ。  そういう事実について、長官認めるでしょう、ここに書いてあるのだから。書いてあること自体については、これとの関連以外の何ものでもないと認めざるを得ないでしょう。どうですか。
  30. 山形栄治

    山形政府委員 伊藤忠の金井常務のその文書は、私は見たことがございませんが、至急その辺を確かめたいと思いますが、いま先生の御指摘のとおり、この指導通達が関係の業者の手に渡り、それがいま先生がお読み上げになったようないき方で悪用されたということは、非常に遺憾だと私は思います。至急に実態を調べたいと思います。
  31. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 大臣、こんな小さなところは、おそらく通産大臣はお気づきにならないと思う。ただエネルギー庁が通達を出したことに了解をする程度だと思うのですね。しかし、実際には、この通達が業界にわかるように流されたと国民がとっても、私は決して言い過ぎじゃないと思うのですよ、現実にそういう文書があるわけだから。こういうところに通産行政のずさんさがある。逆に言うと、この間で、ひとつ高いところでもやったらどうか、適当にうまくやりなさい、こういうふうに、事実そういうことを言っておるのじゃないけれども、結果的に、そういうことをやらすような文書に終わってしまっておるという事実は、明らかなんですよ。  こういう業界の指導のあり方、こういう標準価格設定にあたっての通産省指導のあり方、こういう点について、ひとつ明確に、国民に対して、正しかったのかどうか、間違っておればどういうふうに直していこうとするのか、そういう点を、やはりこの際、大臣のほうから明確にお答えいただきたいと思う。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 エネルギー庁長官が申し上げましたとおり、やはり文書の流通経路あるいは保管というものは、その文書の性質に従って、適正に、かつ適確に行なわれるべきであると思っております。  われわれは物価の引き下げのために全力を尽くしておるのでありますから、そういう目的を達成するために、今後ともいろいろ注意していきたいと思います。
  33. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 それで大臣、この伊藤忠のエネルギー部長通産省の局長が天下っておるという事実が、逆に言うと、わかってはならない文書が事前にわかる、そういうこともあるのじゃないですか。同じかまのめしを食ったのが常務でおるんだから、聞いてきたら、ひとつこの分だけ教えておこう、そういう気持ちも通産官僚の中に働くのがあるのじゃないですか。やはり、通産省からそういう職域に行くなとは言わないけれども、そういう天下りをすることが、逆に言うと通産行政と企業とを癒着させる、そういう疑惑を国民に与えると思うのですよ。たまたま金井さんという人は、元通産省の繊維局長だった人ですね。  大臣、こういう点についてあなたの御感想はどうですか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 公務員もやはり国民の一人でありますから、法律、規則の許す範囲内において、再就職の権利と自由は持っておらなければなりません。  大体、役人をやめるときは、ちょうど子供が大学を出るとか、結婚するときで、やはり生活の問題も考えなければならぬ。われわれとしても、同じ国民ですから、そういう面については、われわれも考えなければならぬと思いますが、それはやはり法律、規則の許す範囲内でやるべきである。  ただ問題は、そういうことがあったからといって、癒着とか誤解を受けるようなことがあってはならぬ。私は、通産省がそういう文書を渡したということばないと確信いたしております。おそらくいろいろな方面からそういうものが流れたり、その文書自体が、機密にして、省内だけに保管しておいた文書じゃなくて、所要の向きには配った文書でありますから、そういうものが流れていくとか、見せてもらうとかということはあり得る。全部通産省責任であると言われても、ちょっと迷惑だと思います。  ただ、しかし、いまのように通産省出身の人間が、たまたまそういうような誤解を受けるような手紙を書いたということは、遺憾なことでありまして、これは役人のディシプリンとしても、またOBのディシプリンとしても、われわれとしては戒めていかなければならぬと思います。
  35. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 この際、大臣に要望しておきますが、このことが一事が万事だとは私は思いませんけれども、この際はっきりしておるわけでありますから、この金井常務が、どこからこういう文書を入手したのか、その点を私は明らかにしてもらいたいと思います。  そして、その入手経路に従って、このことが国民にたいへんな迷惑を与えておるわけでありますから、これについては、通産省として明確な処置をとっていただきたい。今後二度とこういうことが起こらないように明確にしてもらいたい、この点について、お答えいただきたいと思います。
  36. 山形栄治

    山形政府委員 ただいまの御趣旨に沿いまして、早急に実態を調査いたします。  なお、これを機会に、そういう誤解を受けるようなことが起きませんように、もう一回、庁内はもちろんのこと、通産省内全体で、その辺の取り扱いにつきましても検討いたしたいと思います。
  37. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 いや、私は、そのことがまた通産行政の秘密行政に結ぶことを言っておるわけじゃない。利益を得るものにこういう文書が流れないようにやってもらいたいということでありますから、その点はひとつ間違わないようにお願いをしておきたいと思うのです。  そこで、これは大臣に私はぜひお答えをいただきたいと思うのでありますが、昨年の灯油ですね。  せっかく通産省が一生懸命、九月末現在で、十三社平均で一万二千八百円という灯油の元売り価格をきめた。小売り末端価格は三百八十円できめた。ところが、その段階において、卸については野放しにしてしまったために、小売り価格がたいへん混乱をしておるのです。  そのことは、同じように金井さんがそういうことを言っておられる。この人はどういうことを言ったかといいますと、「四十八年十一月下旬に通産省より民生用灯油の指導価格が示されました。これによりますと、小売業者の店頭渡し価格十八リットル当り三百八十円と、元売業者の仕切価格を九月の価格に据置く、の二点のみで、中間卸売業者から小売業者への卸価格についての指示がありませんでしたので、当時の取引価格から見て上限一リットル当り十六円程度が妥当であろうと、伊藤忠燃料の現地店が判断」したんだ。元売りがきまっておって、小売りがきまっておって、流通は一つも変更しておらないのに、中間の卸がきまっておらないから、適当に上げろといって、十八リットル当たり二百六十一円の価格を二百八十八円にぽんと上げたわけですよ。それも通産省指導が、卸価格をきめておらなかったからやった、こう言っておるのですよ。  確かに、卸売り価格が複雑であることは事実ですよ。しかし、複雑であっても、流通機構というのは、複雑は複雑なりに、短絡なものは短絡なりに変わるはずはないのですよ。全然変わるはずはない。それをあたかも変わるように想定をしたところに、通産行政の失敗があったと思うのです。従来の卸ルートの価格を維持しなさいという指導一つ入っておれば、こういうばかげた回答はしておらないはずだ。逆に言うと、この金井さんは、通産省指導の裏側をやったわけですよ。こういう指導のあり方も、実は国民の批判を受けておるのですよ。たいへんな批判を受けておる。急ぐということはわかりますよ。急ぐけれども、ほんとうに国民の立場、消費者の立場に立つなら、もっときめこまかくやるべきじゃなかったか。複雑だろうが何だろうが、流通機構というのは、もう末端においてはその流れ以外にないわけなんです。  だから、中間の卸も変えてはならないという一項が入っておれば、指導する側も指導がしやすかったと思うのですね。これも、私は灯油価格の指導のまずさだと思う。直接指揮をされた長官、こういう点については、反省しておられますか。
  38. 山形栄治

    山形政府委員 いま先生の御指摘のとおり、卸のところは触れなかったわけでございますが、当時、市場に灯油価格の高騰等もございまして、いまこれも御指摘ございましたが、非常に急ぎましたのが、一つの大きな理由であったわけでございます。  御存じだと思いますが、民生用灯油の流通におきましては、特約店が二万四千軒、それから薪炭問屋という問屋さんが二千二百ぐらいございまして、その下に小売りが三万六千七百、それからまた薪炭の小売りが六万ということになっておるわけでございます。この問屋もまた一次問屋、二次問屋というふうに分かれておりまして、非常にその流通経路が複雑であったわけでございます。  したがって、早急の間で、元売りの凍結と小売りの指導価格の設定ということに踏み切ったわけでございますが、いま先生の御指摘のようなこともございましたので、先般、先ほど来出ておりました通牒におきましては、卸段階はリットル当たり十四円五十銭ということを、各都道府県及び市町村に対しまして、一応の指導のめどということで通牒をいたしたわけでございます。現在その線で末端におきましては指導が行なわれておるわけでございまして、御指摘のとおり、制度の発足にあたりましては、若干その辺のきめのこまかさが欠けておりましたことを私は認め、反省いたしておるわけでございます。
  39. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 それで、複雑であるということはさっきから言っておるように、私が申し上げたとおりです。しかし、末端の薪炭であろうと何であろうと、もう流通は一定しておる。複雑な流通は複雑な流通なりに変わらない。短絡的なものは短絡的に流通は変わらないのですよ。それを、あたかもまた新しい流通に変わるだろうと発想したところに、卸売り価格をきめなかった最大の原因があるのでしょう。流通は、末端のほうは全然変わっておらないわけなんだから。一次問屋、二次問屋を通してきたものは、一次問屋、二次問屋を通してもらうわけですよ。だから、そういう点では反省をされたので、私はこれ以上ここでは申し上げません。  そこで、私は大臣にこの際お願いをしておきたいと思う。  それはシェルが扱う灯油についての問題点です。四十八年十二月十八日に十八リットル当たり三百四十二円だったのです。ところが、四十八年十二月二十三日に十八リットル当たり三百九十六円、四十九年一月一日に四百五十円、こういうふうにきめてきたのです。これを扱ったところは、東京シェルパック株式会社。シェルの直売店ですね、代理店。これもやはり伊藤忠燃料と同じことだと思うのですよ。元売りと小売りが凍結されておる段階で、価格がこんなに三べんも移動するわけですからね。しかも、四十八年十二月十八日付のこれでは、四十九年一月一日より一リットル二十五円にいたします、配達料込み、こういうふうに書いたチラシが全家庭に行ったのだそうです。そこで、たくさんの何万軒という小売り業者があることは事実です。  しかし問題は、元売り十三社から出ていくものについて、一体中間卸はどうだったかということを、移動があったのかどうかということを早急に調査してもらいたい。そして、ほんとうに通産省が期待をしたような指導に従っておったのか、それとも、通達の裏側をやったのか、そういう点が、国民にとっては非常にわからないのです。その点を、おもなものだけでも、すぐ流通をチェックして、卸売り価格の移動がその間あったものはあったように発表させる。そしてそれが通達に従っておらなかったものは国民に還元させる、そういう具体的な処置をとらないと、私は国民から通産行政の信頼をかちとることはむずかしいと思うし、現に、いつの日か、新価格体系に移行するというそのことも、国民のコンセンサスを得ることは非常にむずかしいと思うのです。  そういう作業を、たいへんむずかしい作業ではありますけれども、国民の立場に立ってやろうという意思があるのかないのか。これは政策的な意味もありますから、ひとつ、通産大臣からお答えいただきたいと思うのです。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全部やるということは、とても膨大な仕事ですから、サンプリングみたいにしてやってみたいと思います。
  41. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 そのやられた結果については、国民に発表していただけますか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 結果がわかり次第、報告いたします。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 それでは、もう時間がなくなりますから、簡単に、最後の問題に触れさしていただきます。  その一つは、実は、紙の値段が非常に変化をして、なかなかつかみにくいという状況です。進学児童が、あるいは進学した子供さんが雑誌社と雑誌の契約をする場合に——実は、これは事前に通産省のほうにも調査をお願いしておきましたから、正確に御返事いただけると思うのでありますが、小学館、これは一つの例であります。小学館だけがこうやっておるという意味じゃありませんよ。これは小学館を一つの例として申し上げるのですが、四十八年に定価が二百九十円、一年分の予約が三千四百八十円だったわけです。だから二百九十円の十二カ月分の三千四百八十円を納めておった。ところが、四十九年の四月号から月当たり単価三百円、一年分が四千三百円という値段なんですね。ですから、十二カ月にすると三千六百円でいいはずなんですが、紙の値上がりその他で、七百円よけいに契約者からもらう、こういうことになっておるのですね。さらに、途中で物価の変動等があった場合には、追徴金をもらいます、もっと上がったときには、追徴金をもらいますよ、値段が下がることはないですが、かりに下がったときには、よけいもらった分は払い戻しますよ——この分はいいのですね。この契約は、変動があったときの操作ですからいい。  ただ問題は、この予約をとるために、たいへんりっぱな景品をただで提供するわけです。その一つは、特製アルバムといって、りっぱなアルバムを契約した者にくれる。そして、交通災害保険の十万円のものをつけてくれる。ところが、この小学館の本を買おうとする人、あるいはそういう年間契約をしようとする人は、子供さんの教養の足し、あるいは学校の補助的なものとして年間契約をする。その場合に、価格の移動があることよりも——もし価格の移動などがかりに発生するとすれば、こんなりっぱな景品は要らぬ。この景品だけでも相当な値段ですからね。こんな景品は要らぬ、そういうふうなやり方をしてもらえぬだろうかという希望が、実は消費者のほうから出されておるのです。これからおそらくこういう形態というのは、たいへん出てくると思います。現に、大きなものでは、住宅ローン等を通じての住宅建設等で、請負契約の単価の関係の問題でトラブルが起こっていますね。そういったトラブルのもとになるという危険性があるのではないかという危惧を私はしておる。  こういうものについて、通産省としては、これからどういうふうに指導されようとするのか、もう時間がありませんから、その点だけをひとつお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 森口八郎

    ○森口政府委員 御指摘のとおり、小学館におきましては、現在年間予約ということで、四十九年度のものにつきましては、四千三百円ということで年間予約をとっております。これは、やはり用紙の事情が不安定でございますので、そういうような点で、若干の余裕をとったというように申しております。  それから、第二の御指摘の点の景品でございます。景品につきましては、先に金を消費者に納入してもらうということの見返りとして、景品を出しておるというように言っておりますが、先生御指摘のように、実質的に値段を下げるとか、そういうような方法はないかどうかという考え方もあるわけでございますが、雑誌界の慣行もいろいろございまして、実は同じようなO社におきましては、やはり年間予約をしておりまして、四千六百円ということでやっておりますが、これも万年筆というようなものを、年間購読者についてサービスをいたしておるということでございます。  いずれにいたしましても、この年間購読料は、毎月の定価の合計額を年間購読料としてもらうということで、年間購読料を先にいただくということの見返りとして、まあこういうサービスをしておるということでございますが、先生の御指摘のように、実質的に概算価格に反映することができるかどうかということについて、さらに、もう少し出版社側とよく話し合って、指導してまいりたいというように考えます。
  45. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 大臣、いまちょっと所用で離席されておりましたが、いま話がありました。  しかし、問題は、これからすべての問題についてこういう傾向があらわれてくると思うのです。非常に価格が不安定だ、特に新価格体系に移行する前ですから、非常に不安定なもので年間契約をするという形が、あらゆる分野で出てくると思いますね。そういった問題については、ただ年間契約の賞品だから、景品だからという解釈だけでは、こういう時代には問題の解決にならないと思うのです。早急に、通産省としてこういう年間契約に対する指導方針、指導のあり方、こういったものについては、ぴしっとした方針を国民の前に示していただきたい。その点についてのお約束を大臣からしていただきたいと思うのです。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 雑誌のような文化的材というものは、やはりかなり創意くふうと、それから質的については、バラエティに富んだものがうんと出ることが私は望ましいと思うのです。そういうようなものについて、あまりがたぴしやり過ぎると、やはり統制的なにおいも強くなってきて、ひいては、やはり国民の教養や教育の面で、長い時間かけると悪い結果が出てくる、そういう危険性があります。だからできるだけそういう内容その他については創意くふうをこらして、バラエティーに富んだものにしていくことが私はいいと思いまして、干渉や何かということはできるだけ避けたい。文化的所在についてはそういう基本方針を私は持っております。  ただ、しかし、こういう物価がいろいろ動揺するときに、便乗値上げであるとか、この機会にもうけようとか、そういうことは許してはならない。しかし、景品とかそういうものについて、子供は非常に好奇心を持っていますからね。だから、私らの子供のころは、幼年倶楽部とか少年倶楽部というのがあって、あなたも買ったと思いますが、景品が楽しみで買ったというところもあるわけですよ。そういう子供の夢もまた考えてあげなければならぬ。だから、この辺はそのさじかげんが非常にむずかしいところですけれども、しかし、父兄にそういう意味で迷惑をかけないように、便乗値上げとかその姿勢や何かが商業利益を目的にして行なわれないような注意はしていきたいと思います。
  47. 松浦利尚

    松浦(利)分科員 大臣の言われた後段は賛成ですが、前段は、私は内容のことを言っておるのじゃないので、ちょっと意見の相違、食い違いがありましたけれども、いずれにしても、私はこういった景品、価格の不安定なものを年間契約させるという、そういう行為が、逆に言うと、後段の便乗値上げとかあるいは契約の不履行の問題等のトラブル、こういったものに発展する危険性が多分にある、かように思います。したがって、くどいようですが、通産省指導体制を確立されるように希望だけ申し上げて、これは後刻また質問させていただくことにいたしまして、質問を終わります。
  48. 湊徹郎

    湊主査 これにて松浦利尚君の質疑は終了いたしました。  次に、梅田勝君。
  49. 梅田勝

    梅田分科員 日本共産党・革新共同の梅田勝でございます。  政府の通産行政につきまして質問をいたしたいと思います。  現在、わが国の中小企業は、大企業がつくり出しました石油や資材の不足、価格高騰によりまして、その経営はきわめて困難な状況に追い込まれております。   〔主査退席、羽田主査代理着席〕 また、加えまして、最近の高金利、金融引き締めによりまして、中小企業の倒産はふえるばかりでございます。  しかるに、昭和四十九年度の予算案における中小企業対策費は千二十億八千三百万円、非常にわずかでございます。全予算のわずか〇・五九%でございます。ところが、日本独占資本の海外進出には手厚く予算を組み、一般会計における経済協力費は千六百五十九億八千万円と、中小企業対策費の一・六倍の予算を組みまして、特別会計財政投融資を含めますと、約一兆三千億円に近い巨額に達しているのであります。御承知のように、日本は発達した資本主義国ではありますが、同時に、中小、零細企業がきわめて多く存在しているのがその特徴であり、その中小企業に対する国家予算がこのようにきわめて小なく、大企業に手厚いというのは、差別待遇もよいところでありまして、絶対私どもは容認することができないのであります。  私は、このような深刻な危機に直面をしている中小企業の問題、中でも伝統工芸、伝統産業といわれる、国の保護、育成を必要とされている中小零細企業がかかえている若干の問題につきまして、政府改善策を要求し、中小企業の悩みを少しでも解決するために、具体的に質問をいたしたいと思います。  まず第一に取り上げたい問題は、歩引き撤廃の問題でございます。  通産省にお伺いいたしますが、京都は御承知のように西陣織りや京友禅あるいは丹後ちりめん、こういう日本国民がひとしく愛して着用いたします着物の原材料を生産する産地でございます。そういう繊維産業が盛んでございます。しかし、この産業は、近代的な工場も若干はございますが、大部分が零細企業であります。ところが、これらの産地における取引におきましては、いまなお歩引き制度が根強く残っております。御承知のように、歩引きとは、代金決済の際問屋が業者に対し強制的に一定率を割り引いて支払う行為であり、これは取引成立の際に行ないますいわゆる値引きとは質的に異なるものでございます。このような前時代的な制度は一掃されなければならないと思いますが、近年この歩引きは、業者の自主的運動によりましてある時期は減少したのでございますが、最近また不況で復活をしてまいりまして、特に零細な業者になればなるほど、これはほとんど復活しておるのでございます。歩引きという名称にかわりまして、反引きあるいは協賛引き、販売促進引き、宣伝引き、金利引き、仕入れ利息引き、保険料引き、こういうさまざまな名称によりまして、事実上歩引きが行なわれておるというのが特徴的でございます。  まず、こういう状態に対して、通産省といたしましてはどういう対策を持っておられるか、御所見を承りたいと思います。
  50. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  御指摘なさいましたとおり、西陣、丹後等のいわゆる絹、人絹の着尺産地の一部におきましては、いわゆる歩引き等と称せられます慣習があるというふうに聞いております。これは相場の変動に対しまして損失補てんをするとか、あるいは臨時出費に対する積み立て金だとかいったような性格を持つというふうにいわれておるようでございますけれども、契約の中には定められておらない、決済のときに歩引きが行なわれているといった明朗でない面があるように聞いております。  通産省といたしましても、新しい繊維工業の構造改善の中で、取引条件改善について重点的に検討していきたい。その一環としてこの問題につきましても、実情を調査いたしまして、より公平な条件で取引が行なわれるよう業界を指導してまいりたいというふうに考えております。
  51. 梅田勝

    梅田分科員 いろいろ通産省はそのようにおっしゃっておりますが、実際は、京都におきましては、歩引きというものが、先ほど申し上げましたように事実として復活しているのですね。たとえば、西陣の織物工業組合の関係におきましても、産地問屋の場合には、年間を通じまして二分程度の歩引きというものが行なわれております。あるいは友禅の関係でございますが、友禅の協同組合の調べによりましても、歩引きは一%からひどいのになりますと一〇%というのも行なわれておるわけでございます。このような歩引きは、明らかに独禁法の第二条第七項の不公正な取引方法、これに該当するということは明らかであり、独禁法の第十九条によって明確に禁止されておるものであります。また、下請代金支払遅延等防止法、これによりましても、その第四条第一項第三号によりましても明確に禁止されております。御承知のように、そこには下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずることは、親事業者の順守すべき事項として歩引きは禁止される、これは当然だと思うわけであります。そして私どもはこういった問題につきましては、通産省に対しまして一貫してきびしく要求をしてきたわけであります。昨年の予算委員会分科会におきましても、わが党の谷口善太郎議員がこの問題を質問いたしております。そのときに高橋公取委員長は、全体としてはこれはもうやめさせていただきたい、こうおっしゃっております。しかし具体的な措置になりますと、公取の権限だけでできないことはありませんけれども、しかし直ちに排除するという法的措置はとらずに、いわば行政指導でやっていく、かように言っておられたわけであります。  そこで、通産省のほうで調整規程で自主的にやめるように指導するとおっしゃっておりますが、昭和四十五年に九月三十日付の取引条件適正化委員会の通産省企業局長あての文書ですね。「取引条件適正化推進について」という文書でありますが、その中で「小幅呉服の取引条件適正化指針」というものを出されて、そして「本商品の取引に特徴的な「歩引き」については廃止すべきである。」かように出されたことが過去にあったわけでありますが、これ以後私どもは具体的にどのような措置をしたかということを聞き及んでおらないわけです。一体どういう指導をされたのか、具体的にお答えを願いたいと思います。
  52. 田口健次郎

    ○田口説明員 御指摘のように取引条件適正化指針におきまして、歩引きについては廃止すべきであるということで行政指導はしてきておりますけれども、最近景気の下降とともに一部でまた歩引きが復活しておるということは遺憾に存じております。
  53. 梅田勝

    梅田分科員 それでは結局何もしてないじゃないですか。通産大臣、いまお聞きになりましたように、これは早くから問題になって、昭和四十五年には、通産省はそういう通達でもお出しになって厳重にやるとおっしゃっても、実際はもうどんどん復活しておる。今日の大企業のいわゆる悪徳商法がまかり通っておる状況のもとでは、三月危機といわれておりますが、ほんとうに零細企業というものは非常に困っておるわけであります。どうですか、そういうことは許さないという指導を強力にやられる御決意はございませんか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 契約の自由ということがいまの自由経済の基本にありまして、それはやはり尊重していかなければなりませんけれども、独禁法の精神から見て、優者が劣者に対して強制する、そういうことが事実上行なわれるということは、これは好ましくありません。この事件がそういう事件に該当するか——たぶん該当する性格を持っておるような感じがいたします。したがいまして実態をもう一回よく見きわめて、もしそういうものであるならば厳重に取り締まるようにしたいと思います。
  55. 梅田勝

    梅田分科員 それではそのように厳重にやっていただくということを確認をいたしまして、この際公正取引委員会はこういった問題について調査をして、法的にも厳重な措置をするということをお約束していただけませんか。それからいろいろ名称を変えて、協賛引きやとか宣伝引きやとかいろいろなことを言いますね。そういうことの名称のいかんにかかわらず、そういうことは一切認めないということで厳重にやるということのお約束をいただけますか。
  56. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 歩引きの問題につきましては、これは古くからある慣行と申しますか、そういうふうにいわれておりますが、確かにうちの公取委員長が昨年の三月五日の分科会で、全体としてはこれは自粛を願ったほうがいい、しかしこれを個々の問題として、一体独禁法にすぐ触れるかどうか、これは個々的に見ていかなければならないし、非常にむずかしい点もある。いわゆる正当な理由があるかないかというような点で、公取としてもなかなかそこまで目が届かない、むしろ全体として自粛を願ったほうがいいのじゃないかという趣旨の答弁をしておられるわけでございますが、公取といたしましても、これは下請法に明らかに触れるものもございます。つまり製造委託というようなことをやっております場合は、先ほど先生のおっしゃいましたような四条三号の不当減額というのに触れるおそれがあるわけでございます。過去におきましても、四十五年度七件、四十六年度十二件、四十七年度六件の指導を、これは大阪事務所管内でございますが、指導してやめさしております。それからまた最近でございますが、京都市内にある繊維の卸売り業者四十五社の下請事業者に対する調査を実施いたしまして、これは書面によってまずやったわけでございますが、調査期間は四十八年の十月から十二月までの三カ月間。調査をいたしました下請事業者は三百九十六業者でございます。一応、書面による調査の結果としましては、歩引きをしている親事業者十二社ということが判明したわけでございますが、いま申し上げました十二社につきまして、ただいま大阪地方事務所でさらに実態調査をやっております。その結果によりまして措置をしていきたいというふうに思います。  それから、下請に入らない、いわゆる一般の売買関係の優越した地位の乱用に当たるかどうかという問題、これが一般指定の十の「自己の取引上の地位が相手方に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照して相手方に不当に不利益な条件で取引すること。」に該当するかどうかということでございますが、これは個々的にケースを見まして、はたして正常な商慣習に照らして不当な不利益な条件で取引しているかどうかを見きわめていかないといけないと思いますが、これについても前向きに検討していきたい。ただ、人手の関係もございまして全部に目が届くかどうかという問題はございます。結論的にはやはり全体としてこれはやめていただいたほうがいいのじゃないかというふうに考えております。
  57. 梅田勝

    梅田分科員 そんななまぬるいことを言っておったら業者はおこりますよ。大体京都でもどこでもそうですけれども、生産機業者は、ここはものをつくるだけですよ。それは流通に乗せるためには大きな商社、産地問屋、そういうところを通過しなければ品物は乗っていかない、そういう仕組みであることは百も承知だと思うのです。それを彼らは利用して、つまり独禁法の第二条第七項第五号「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」まさにそういう立場で歩引きというものを押しつけているわけです。  具体的に商社の名前はあげませんけれども、例をあげますと、たとえばここに年商四億円ぐらいしているかなり大きい機業、生産工場、それが歩引きが年に二%あるというのですよ。八百万円はまるまる取られておる。それからまたある機業では、手形の場合だったら二%、現金の場合だったら九%取られている。これは具体的実例ですよ。そういうものがあるわけでありますから、公正取引委員会としては厳重にそこは規制する、法的手段を使うということをしっかり約束していただかないと、業者はおこりますよ。もう一度御答弁ください。
  58. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 おことばを返すようでございますが、先ほど先生おっしゃいました二条七項の五号でございますか、これは指定がないと動かない規定でございまして、私が先ほど申し上げましたこれの具体化が一般指定の十で「正常な商慣習に照して相手方に不当に不利益な条件で取引する」ということでございますので、これに該当するかどうかという問題でございます。しかし、先生おっしゃいましたように、これは積極的に私どもとしては取り組んでまいりたいというふうに考えます。
  59. 梅田勝

    梅田分科員 きわめてなまぬるい答弁で、ほんとうに承知ならぬわけでありますけれども、この問題とあわせて、最近の不況化が進行する中で下請加工業者の間で重大な問題になっておりますのは、加工賃の手形サイトが非常に長いという問題でございます。西陣でも友禅でもあるいは丹後ちりめんにおきましても、大体百五十日から百八十日という非常に長い手形が出されております。その上、こういう零細なところでは、製品を納めてから、それから手形を実際に振り出していただくまでの間がまたかかるということで、これまた二十日から三十日くらいからかかっておるわけであります。そうなりますと、非常に長期寝かしておかなければならないという点で資金繰りが非常にきびしい、こういう状況でございます。  もともと私は考えますのに、こういう委託加工でありましても、これは基本的に賃労働の性格を持っていると思います。そうしますと、はっきりした賃労働ということになりますと、これは労基法の第二十四条第一項によりますと「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」という条項に触れるということは、もう明白でございます。ところが、性格があいまいだということで、そこのところは従来なおざりにされてきた。しかし、零細な企業であればあるほど、実際は労働者と何ら変わらない生産の仕事の形態をしておるということを勘案するならば、このような手形による、また長期の手形というものは零細業者いじめになるのではないか、かように思います。そこで、下請代金支払遅延等防止法の二条の二第一項によりますと、「六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において」支払うことを親事業者に義務づけております。こういう趣旨からいきますと、当然かように長期にわたる手形というものは規制されなければならぬと思うわけでありますが、こういうような状況に対して改善すべく施策をお持ちかどうかお伺いしたいと思います。
  60. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 代金の支払いを現金にかえて手形で払う場合の規定は、下請法の第四条の第二項「親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、次の各号に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。」というので、その第二号「下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の」——「支払期日までに」というのは六十日ということです。「一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付する」、つまり六十日の期間内に割り引き困難な手形を交付することによって、下請業者の利益を不当に害してはならないという規定がございます。私どもとしては、これによってやっているわけでございます。繊維につきましては、九十日という標準サイトを内部的にきめておりまして、それをこえるものについては指導によって直させております。
  61. 梅田勝

    梅田分科員 通産省も実際にいま言われていますけれども、事実はそうではないわけですね。あなた、そういうふうに言うけれども、実際行ってごらんなさいよ。長い長い手形を出しているのだから、ひどいときになればお産手形とかなんとかいろいろ言うていますけれども、実情はそうなんですよ。通産省どうやっているのですか。
  62. 田口健次郎

    ○田口説明員 絹、人絹の着尺につきましていろいろ流通過程を見ますと、いろいろ例がございますけれども、大体機屋さんが糸を買って自分で染めて、デザインをして製品を賢い継ぎ商のところに持っていく。買い継ぎ商がそれを預かっておって西陣なりあるいは東京の堀留なりの岡屋さんに売る。売れたときに代金を機屋さんに払う。その際に、先ほど御指摘ございました歩引きの問題でございますとかあるいは手形サイトの問題でございますとか、こういう問題が出てくるというふうに考えております。  そこで、独占禁止法なりあるいは下請代金支払遅延等防止法なり違反に当たるものは、調査の上取り締まるべきことは当然でございます。取り締まりたいと思います。ただ、下請という定義に当てはまるのかどうか、法律違反ということがいえるのかどうか。しかし、力関係を考えてみますと、機屋さんのお立場が弱くていわゆる取引条件が適正妥当とはいえないのじゃないか、こういった領域の問題が非常にあるのじゃないかというふうに私ども考えておるわけでございます。  そこで、今国会にお出ししてございます特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案でございますけれども、これもたとえば三条におきまして、繊維工業の構造改善のための基本指針の大きな柱の一つとして、「取引関係の改善に関する事項」というものを入れまして、同じくまた第八条におきまして、こういったことについて指導、助言をする。それから、一応取引改善協議会といったようなものもつくる。それから中小零細の方々のいわゆる取引条件を強くするために、運転資金のあっせん等も極力してまいりたいということで、新しいといいますか今度の改正後の構造改善におきましては、取引問題の改善ということに非常に力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  63. 梅田勝

    梅田分科員 要するにいろいろの施策を講じて、とにかくこういう違法行為については厳重に取り締まるということを確認させていただきたいと思います。  そこで、時間がなくなりましたので最後の質問をさせていただきたいと思いますが、現在、国会には五党共同提案によりまして、伝統産業の振興に関する法律案が出ておりますが、伝統産業の保護育成は重要な問題でございます。いまその中で、商社を中心とした伝統繊維産業における韓国への技術輸出と製品の逆輸入の問題、これがきわめて重大になってきております。すでに大島つむぎは大きな打撃を受けておりますし、西陣や友禅におきましても影響は小さくないのであります。低賃金によります安値とともに、きわめて類似製品をつくり出しているために、業者の不安は大きいのでございます。  そこで、まず通産省にお伺いいたしますが、韓国への技術輸出あるいは製品の逆輸入実態、どのようにつかんでおられますか、簡単にお答え願いたいと思います。
  64. 田口健次郎

    ○田口説明員 韓国産のいわゆる西陣織りと類似の織物の輸入についてでございますけれども、これは現在のところ通関統計によって見ますと、韓国からの絹織物の輸入量、絹織物全体として見ますと、日本の全体の絹織物輸入量の中の韓国からの割合というのが約二〇%を占めております。その韓国からの絹織物の輸入の中で、西陣という実は統計上のカテゴリーがないわけでございますが、西陣織りが含まれると思われます紋織りの分類について見ますと、韓国からの輸入絹織物の中の約七%、もう少し具体的に申しますと、昨四十八年一−十一月の期間で申しますと、六・八%が紋織りというふうになっておりまして、西陣がこれに含まれる。入っておりますけれども、数量的には国内に与える影響はそれほど大きくはないのではないだろうかというふうに考えております。
  65. 梅田勝

    梅田分科員 しかしながら大蔵省の貿易統計によりますと、昭和四十七年度の韓国からの絹織物は通関実績におきまして金額で百二十七億円、これは非常に大きな額でありまして、そういう関係産地は実際脅威を受けておるわけであります。こういう事態に対処してやはり適切な対策を講ずるということは、中小、零細企業の経営の不安に対する必要なことだと思うわけです。  そこで、韓国で実際つくりながら日本へ逆輸入して、そしてそれに対して西陣織り等の表示をするということは、これは明らかに不当表示の取り締まり法規である不正競争防止法、これに触れると思うのですが、どうですか。
  66. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 不正競争防止法ではなくて、不当景品類及び不当表示防止法でございます。それで、外国製品を国産品と見誤りやすいような表示をしたりあるいは国産品を外国製品と見間違うような表示をしたものについての規制でございますが、これは景品表示法の第四条第三号の規定に基づきまして、昭和四十八年の十月十六日に「商品の原産国に関する不当な表示」を指定いたしまして、本年の五月一日から施行されることになっております。織物につきましては先染め、これは糸を染めてあとで織る先染めの場合は、製織された国が原産国であるというふうに考えております。  いま申し上げました告示の中で、外国製品につきましては「その商品の原産国以外の国の国名、地名、」あといろいろございますが、地名が表示されていて、「その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの」を不当な表示として指定をしているわけでございます。したがって、いま先生おっしゃった場合のように、外国製品に日本の地名を表示している場合であって、その外国製品の原産国が判別できるようにされていない場合、これは不当な表示として規制されることになるわけでございます。
  67. 梅田勝

    梅田分科員 私が先ほど申し上げたのは、不正競争防止法の第一条の第一項第一号、それから第三号、この関係でいきましても当然取り締まりの対象になり得る。なぜならば、原産地の誤認を生ぜしめる行為というものはちゃんと規制の対象になっておるわけですね。だから、西陣のものを韓国でつくって、そして西陣のものであるかのようにやるということは原産地を誤認せしめる行為ということになって、この法律でも取り締まれるということを私は言っているんだ。あなたの言っている不当景品類及び不当表示防止法、これでももちろん先ほど言うたように取り締まりをしなければならぬし、あなたの言われたようにいよいよ五月一日から施行になる告示ですね、この「商品の原産国に関する不当な表示」というものをようやく出されたわけでありますけれども、しかしこういうものを出すまでもなく、この不正競争防止法というのは昭和九年につくられた法律なんですよ。そしてこれに違反したら、第五条の罰則規定があって「商品又ハ其ノ広告ニ其ノ商品ノ原産地、品質、内容、製造方法、用途又ハ数量ニ付誤認ヲ生ゼシムル虚偽ノ表示ヲ為シタル者」は「三年以下ノ懲役又ハ二十万円以下ノ罰金ニ処ス」というのがあるわけですから、これを使ってばっと告発したらそういうことは未然に防げるということを申し上げているわけです。  まあしかし、時間がありませんので、外国製品と非常にはっきりしているものについては、西陣織りあるいは大鳥つむぎ、丹後ちりめん、京友禅というような名称は禁止されるということでございますね。これ、はっきり確認してよろしゅうございますか。あとのことだけちょっと答えてください。
  68. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 不正競争防止法は、これは通産省の所管でございます。うちの所管ではございませんので、先ほどそう申し上げたわけです。  それから、あとはそのとおりでございます。
  69. 梅田勝

    梅田分科員 そうしたら通産省はどうですか。大臣、いかがでございますか。
  70. 森口八郎

    ○森口政府委員 不正競争防止法は、被害を受けた者の申告によって罰せられる法律であって、官庁が取り締まる法律ではないというように了解をいたしております。したがって、被害を受けた者が裁判所に救済を求める制度であるというように私どもは一般的に了解いたしております。
  71. 梅田勝

    梅田分科員 そうしたら、実際に地域の方々が、その零細企業が、そういう大商社が向こうが賃金が安いというのでどんどんどんどん出して逆にやってくるというようなやり方に対して告発をしたら、通産省はそれを支持しますか。
  72. 森口八郎

    ○森口政府委員 通産省に訴えるべき問題ではなしに裁判所に救済を求めるというふうに了解をいたしております。
  73. 梅田勝

    梅田分科員 それはわかっていますよ、あなたに聞かなくても。国民が、零細企業がそういうことで要求を突きつけてきたときには、政府として、通産省として、あなた方の言うていることはもっともだ、この法律違反のことが起こっておる、これに対してもっときびしく行政指導をやるというぐらい言うていいじゃないですか。
  74. 森口八郎

    ○森口政府委員 そういうような不当な表示の問題がありますれば、当然通産省としてそういうものに対して指導し得るところでありますれば指導いたす所存であります。
  75. 梅田勝

    梅田分科員 告発をやることができるのですよ。政府の行政として、そういう法律違反のことが起こったら、これはもう民事裁判ではなしに刑事裁判できるんだから、告発もできるんだから、行政指導の当局として、けしからぬということで告発するですか。どうです。それぐらいの決意がなかったら、悪徳商社なんか取り締まれませんよ。
  76. 森口八郎

    ○森口政府委員 実態によりまして告発はできると思います。
  77. 梅田勝

    梅田分科員 大臣、とにかく零細企業は困っているわけですから、そういう点についてきびしい行政指導をやるというお約束いただけませんか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 実態に応じてきびしい取り締まりをやりたいと思います。
  79. 梅田勝

    梅田分科員 最後に公取の方にもう一度お伺いして質問を終わりますが、そういう外国製品とそれから国内産の区別が、類似製品でなかなか見分けにくいという状況があるわけでありますから、その国内産の実際の銘柄、それの産地のものについては適当に行政指導していただきまして、繊維の場合にはその一端に表示を織り込むとかいうことをやって区別をするというようなことをお考えではないですか。どうですか。
  80. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 現在繊維につきましてはまだ——それは大体私どものほうでは公正競争規約というものを指導によってつくらしまして、その中にそういうことを織り込ませるというのが景表法のたてまえでございますので、現在まだそういうことはやっておりませんけれども、この点については前向きにひとつ指導してまいりたい、考慮してまいりたいというふうに考えます。
  81. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  実は、国内に入りましてから取り締まるということをいたしますよりは、日本に非常にまぎらわしい表示の外国産のものが入ってこないということにするのが一番大切なことだと思います。  そこで、関税法の第七十一条に、原産地につきまして直接、間接に偽った表示をする、あるいは誤認を生じさせる表示がなされているといった外国貨物につきましては輸入を許可しないという規定がございます。それで、御所管は大蔵省でございますけれども、大蔵省関税局と協議いたしまして、近くこの関税法七十一条によりまして、原産地について誤認を生じさせやすい表示が付されている貨物については輸入禁止の措置をとるということといたしておりますので、実効があがると思います。
  82. 梅田勝

    梅田分科員 前向きに公取もやると言われておりますし、近く通産省もそういう点について輸入禁止も含む厳重な措置をとるということを言われておりますので、その実行を期待をいたしまして、私の質問を終わります。
  83. 羽田孜

    ○羽田主査代理 これにて梅田勝君の質疑は終了いたしました。  次に、田中昭二君。
  84. 田中昭二

    田中(昭)分科員 時間もたいへん制約されておりますから端的にお尋ねしますので、ひとつ要領よくお答えいただきたいと思うのです。  まず、通産省で、三月の石油輸入量でございますが、石油事情の好転見込みということから電力の消費規制を大幅に緩和する方針を一応出されたわけでございますが、実際にその成果を見ましたところ、今度の電力規制を見ると、基本的にはあまり変わっていないようでございます。最初に打ち出されました方針とはだいぶん違ってきているわけですが、何かこれは見込み違いがあったのでしょうか。いかがでしょう。
  85. 岸田文武

    ○岸田政府委員 三月以降の電力の使用制限につきましては、前提となりますわが国をめぐる石油供給事情がなお流動的でございまして、その動向を慎重に見守る必要がございます。したがいまして、基本的には従来の基本方針を堅持しながら規制を続けることにいたしております。ただ当面、御承知のような物価高騰の問題がございまして、これを解消するために物資供給の増加をはかる必要があるという見地から、これらの物価対策に必要な電力についてはその使用制限率について緩和をはかるというような方針をとったわけでございます。なお、ネオンサイン等につきまして、従来は全面的な制限を行なっておりましたが、時間制限に切りかえる等の措置もあわせて実施をいたしました。  以上でございます。
  86. 田中昭二

    田中(昭)分科員 このことはまたあとでお聞きします。  次に移りますが、そこで端的にお伺いいたしますが、電力規制を、電気事業法二十七条を発動して使用の規制を行なおうとしておりますが、実際電気はあるのですかないのですか。
  87. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいまの電気の供給の形態を見ますと、その供給総量の約八〇%が石油火力に依存をいたしております。それ以外は水力及び原子力が若干ございます。私ども電気供給の立場からいたしますと、一番基本的には油の動向ということがいまの供給構造からして問題でございます。油の供給の面につきましては、石油担当部局とも打ち合わせしながら極力量の確保をはかるという方向でいっておりますが、それにしても、私どもが自由に使えると予想される場合の数量にはまだ満たない現状でございまして、それを前提として先ほどのような規制を実施しておる次第でございます。
  88. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そんな自由に使えるとかなんとか抽象的なことを聞いているんじゃないのです。簡単に、あるかないかということを聞いたのです。今後答弁を注意してください。  電力事情は、打ち出した方針のように好転しているのではないでしょうかね、おたくが出されたのですから。その見通し、いま聞いたようなものですけれども、もう少しお聞かせ願いたいと思います。
  89. 岸田文武

    ○岸田政府委員 石油危機が到来する以前に四十九年三月の想定といたしまして、需要電力量は二百九十六億キロワットアワー、対前年伸び一〇%を前提といたしておりました。その際必要とされる石油の量は、おおむね五百六十七万キロリットルを想定をいたしておったわけでございます。しかしながら三月の電力用の石油供給量約五百二十六万キロリットルでございまして、これを前提といたしますと、需要電力量が二百七十八億キロワットアワー、対前年伸び率三・五%になるものと予想されております。
  90. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そこで、今回のこの規制は一五%、一〇%、五%、ゼロと、こういう四つの区分で緩和処置が出たわけですが、ここで私お断わりしておきますが、私は決して業界の代表の立場ではないのです。このことによりまして生活にたいへん困っておる庶民の気持ちを心に入れながらいまからお尋ねします。  すなわち、先ほどの三月の緩和処置でございますが、この中で、ネオン関係については十キロワット以下は夜六時から九時までは緩和することになっておりますね。これは一体何を根拠にこういう規制をしたのですか。
  91. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ネオンサインは、電力供給量からいたしますと非常に少量でございます。ただし、事の性質上からしまして非常に目立ちやすいものである。また、物資の供給のように物価に影響するという面がないわけでございます。以上のような考えから、今年一月十六日に電力に関する法的な規制を発足させます際に、まずそういった部門については率先的に制限を行なおうという考え方で実施をいたしました。しかしながら反面、業界の実態を見てみますと、大部分が、零細企業であるというような事情もございまして、ネオン等の製造業者あるいはその下請にある各種の、零細業者、これらの実態を見ておりますと、このような全面的な制限をあまり長く続けることは、これらの業界への影響ということもあわせて考えなければならない。このような考え方に立ちまして、三月の規制において若干の緩和をはかったという経緯になっております。
  92. 田中昭二

    田中(昭)分科員 ほんとうに何を根拠にしたかと私聞いたのですが、よく理解できないですね。そういうことでばたばたやられたら、零細企業はそれこそみんな死ななければならないですよ。大臣、この辺ひとつ零細業者の立場に立っていろいろいまからまた御判断いただきたいと思います。この十キロワット以上を禁止したのですが、その結果、全国的にその業者の八〇%以上、実際はもう一〇〇%の人がダウン、一〇〇%ダウンに近い現状なんですよ。十キロワットにしたことが、零細企業を助けることにならないのです。ないよりもいいでしょうけれどもね。御存じのようにこの業界は昨年から全面的に仕事がないのです。とまっておるのです。関係者にとってはもうこれは死活の問題なんです。これが政府の総需要抑制の一環策としていま言われたようにただ何となくいけないからという、そのはなやかなネオンを消すことによって節電ムードを盛り上げる効果をねらっていることは、それはわかりますよ。一番目につきますしね。しかし、いまそちらからおっしゃったように、全国のネオンの電力消費量というものは、全電力消費量の〇・〇六八%です。そういうふうに私は聞いております。簡単に、ネオンなどを消せばいいというような、それでその規制によって受けるダメージは、他の電気業界と違いまして一〇〇%ですよ。実際消えているのですから。仕事がないのです。この規制で全国二万五千人の従業員、家族を入れますと約十万人、さらに関連産業、下請業者まで入れますと、その数は約三十万人の人が生活を奪われておるのです。こういう状態は、ある人は、天災よりもひどい、人災だ。そうですよね、大臣。食えなくなるのですから。どうでしょうか。そこで、そういう当同の規制が私は対策としてはたいへん不十分であるということもつけ加えて、ひとつ大臣の御見解をいただきたい。
  93. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ネオン業者につきましては、ほんとうにお気の毒であると思っております。われわれとしても、一番電力の政策について直撃を受けておるお気の毒な業界でございますから、できるだけの措置をして前途に光明が出るように今後も継続して努力していきたいと思っております。ただ、この規制を始めるときに諸外国が全部ネオンを消しまして非常に暗くいたしました。その当時の国民世論はネオンとマイカーが日本はひど過ぎる、銀座を見ろ、そういうことを非常に強く指摘されまして、各政党からも、自局党はもとよりそういう非常に激しい声がありまして、やはり精神的引き締めの一つのシンボルとしてもそういう面もやらなきゃいけないというので、実はネオン業者にはお気の毒でございましたけれども、やらざるを得なかったのであります。しかしそれに対するいろいろな諸般の手当ては、われわれとしては今後とも誠心誠意努力してやっていきたいと思っております。
  94. 田中昭二

    田中(昭)分科員 ことばでこう言って大臣がここでおっしゃると、たいへん気の毒な人たちに対してお考えを持ってやることはわかるのですけれども、実際ネオンが消えたのは去年の十月の終わりからでございまして、そういう資源庁のほうから連絡があって、そこでそういう状態。それから外国の例ではそうだというようなことをおっしゃいますけれども、それはわかると言うのですよ。それをやるならば、それの対応策をまず考えて、そしてやるべきじゃないかというのが一点です。これはいまお答えが私あまり納得できませんが……。ですから私は天災よりもひどい、人災だ、言うことは少しオーバーかもしれませんが、現状はそういうことを理解しなければいけない。  そこで、いまのこれに対する処置ですけれども、簡単にいえば特別融資の二十億、それといま言った何にもならぬような規制をさらに緩和したということ。この二十億の金融処置も、ほんとうは私から申し上げる前に皆さんがあたたかい行政の手を差し伸べなければならないのです。私が申し上げる前に、ことしになって初めてそういう融資の処置の通達を出した。通達は出ておるけれども現場に全然そういうものは来ておらない。大臣そうなんですよ。私、大蔵委員会でこの問題を大臣に来てもらって聞いてもらいたいと思っておったのですが、御都合であれでしたけれども、その点十分お聞きになったと思います。  もう少し状況を申し上げますが、昨年十二月でこの人たちはもう注文が全然だめなんです。十二月で平常時の三七%、ですからもう七割近いダウンです。ことしの一月から三月までの見込みは大体計画も含めてですけれども、九〇%に近い落ち込みです。仕事がなくなってしまっているのです。三月で若干何にもならぬような規制が緩和されたと言いますが、こういうことは、先ほど大臣もおっしゃったようにムードがたいへんだということで、そこで各産業界も四月から新年度の屋外広告をネオンからポスターボードに切りかえる、こういうことをやってネオンの増設、新設の予算は全然組んでいないのです。組まないですよ、それは。そういうわずかな電力の節電をして、いかにも節電しているというような態度を示したいんですからね。大企業なんかは特にそうなんです。悪徳商法をいま追及されているときに、うちはこうやってやっていますよと、そういうふうに言いたがる。そういう状況の中で大臣、少々の融資があったとしましても、これは電力の事情が好転しない限り、また経済事情がよくならない限り、仕事はなくなってしまって見通しが立たないのです。今後のそのような暗い見通しの業界に対して、政府のいわゆるほんとうにきめのこまかいものが足りない、心ない行政処置の犠牲になっておるのがこの人たちなんです。そこで二十七条の適用にあたっては大体この点を考えて処置をされたのかどうか、もう一ぺん聞きます。
  95. 岸田文武

    ○岸田政府委員 昨年十月以降、電力の自主的な消費規制が進行いたしました。その間にありまして、ネオンが当面問題になりました。私どもとしても、ネオン業界のこれからの行き方をどうすべきかというようなことを部内でいろいろ検討いたしておりまして、たまたま昨年の暮れでございますか、ネオン業界の方から非常に影響が大きい、今後の救済策について抜本的な方策を立ててほしいという要望がございました。私どももそれを受けまして、具体的な金融対策の詰めを行なっておったところでございます。先ほど申し上げましたように一月十六日から法的制限が施行されましたのを追いかけまして、二十四日に中小企業金融公庫政府関係金融機関に対しまして、特段の融資に関する配慮を要請をいたしました。それに続きまして、中小企業機関に対する特別の融資制度を発足させたことは、先ほど御指摘のとおりでございます。さらにまた、政府関係金融機関になじみのない零細業者の立場も考えまして、民間金融機関に対しても特別に低利の融資を行なうよう要請をした次第でございます。これらの措置につきましては、通産局の認定等も順調に進んでおりまして、現実の融資も順調に行なわれるものと思っております。  ただ、以上のような当面の金融対策と並びまして、長期的にネオン業界のあり方いかんということは、私どもも所管業種といたしまして今後十分考えていかなければならない問題を持っておるように思います。先ほど御指摘のございましたように今後の広告媒体としてネオンをどう考えるかという点について、特に大企業等を中心としていろいろ議論がかわされておる、こういった実情からいたしますと、これからネオン業界がどう進んでいくべきかということにつきまして、もっとざっくばらんに業界と話し合いをいたしまして、できるだけの手を講じていくということが私どもの役目であろうと思っております。
  96. 田中昭二

    田中(昭)分科員 追い打ちをかけるようで申しわけないのですけれども、大臣、これは実情をもう一回私申し上げるのですけれども、そういう規制をするという話、節電というようなことが出てから、昨年十月ごろからこれははっきりしています。十月の二十八日ですか。資源庁のほうからその節電のやり方を検討中というようなことが業界のほうに電話連絡があって、去年だけでも十数回ですよ。関係の方と何べんも会って話し合って、その間に大臣もお会いになっているようです。一月明けてからも十数回です。そういうときにいまおっしゃったようなことが手を打たれてないということを、ひとつ大臣もおわかりいただけるでしょうか。一つ一つ申し上げていいですよ。だれがどう言ったかを。
  97. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題と屋内広告灯の問題はいろいろお話もあり、私も非常に心配をして、私から直接関係部局に対して手厚い対策を講ずるように、それから関係業者に会って要望をよく聞いてその要望を満たすように、またこちらの事情も説明を申し上げるようにと指示して、その報告も聞いておりましたが、大体関係業者の皆さん方と納得の上でいろいろ政策を進めるようにやらしてきたつもりです。まだいろいろ御不満があれば十分お聞きいたしまして、できるだけその願いをかなえるようにしながらやっていきたいと思っております。
  98. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そうおっしゃいますけれども、このことについてはいろいろな新聞報道等にも、この業界がたいへん零細であるために、実力のある大臣であるあなたなり大蔵大臣等に陳情しても全然受け付けられなかった。いろいろなその間の事情もありますけれども、いまの大胆のことばをひとつそのまま信用してもう少し、この二十七条の発動ということがいかに弱い人をいじめるかということが現実として起こってきているわけですから、その辺のことを詰めておきたいと思います。  この電気事業法の二十七条の適用にあたって、電気使用制限規則第三条——一月の第二次規制では事実上全面禁止ですね、これまで。三月の規制では少々の緩和をされておる。定められた法に従い仕事をしておる事業者ですから、こういうことが発動されるということは、そういうことになります。そういう人が一時的にも禁止されるというからには、それの裏づけとして当然金融処置、それもたいへんおくれたのですけれどもそういうことと同時に、私はここで何らかの補償といいますか、いわゆる禁止するのですから、二十七条で。この禁止も新聞等で報道されるように一〇%とか一五%、そういう問題じゃないのですから。一〇〇%近いダウンを受ける。そういう人たちに対しては何か補償とか救済措置もきちっとしておかなければ、私はたいへんこの行政の立場からもさらに心配なことが起こるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  99. 岸田文武

    ○岸田政府委員 当面の金融措置以外に転業のために必要な融資制度を考えるべきではないか、あるいは補償を考慮してほしいとか、さまざまな要求は私ども承っております。ただ私どもとしては、これから電力規制がどの程度まで続くかということは、いまの段階では予断を許さない状況でございますし、またネオンサイン業界自体差しあたって転業をはかるというようなところまで追い込むまでもなく、いわばいまの規制の運用によって自主的にカバーしていきたい、その間必要があれば融資で応援をしていくというのが基本的な方向ではないかと思っております。
  100. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それじゃ全然切り捨てごめんで、生活もできないようになった人はそのままで行くんですか。法律で禁止した業態を行政府はそのままほっておくんですか。いままでのわが国のなまぬるい行政の中でも、法律で禁止したものに対してはちゃんと補償しているじゃありませんか。大臣、そうでしょう。お米でも、都合によって減反させられた場合には補償金出るでしょう、そのほかのお塩でも。これは当然人間として実際自分がそのものでめしを食っておった、それが政府の方針によってできなくなった、どうしますか。それじゃあ片方にはそういう政府が法律によって禁止した事業に補償金なり補助金を出す、片方は全然出さない、こういう不公平は私は許されない。大臣、いかがでしょうか。
  101. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私も、法律の内容はよく存じませんけれども、一般的な形としては、所有権を、財産権を奪うというような形になりましたときに補償の問題が出てくるかというふうに思われます。ただし今回の場合におきましては、いわば営業は続けられ得る体制にございますので、法律上補償を要するというふうに判定することは困難ではないか。むしろ融資等による実質的な応援ということによってカバーするという方向で考えていきたいと思っております。
  102. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、お聞きします。これは少し実情を——いま所有権が云々なんか言いますけれども、米の減反政策の補償金は、米の所有権がなくなったから補償したんですか。業者は仕事が少しできなくなったというんじゃないでしょう。年間二、三百万円の、下請けなんかいったらかわいそうなものですよ。あのネオン管を曲げまして、手でやって、一人か二人でやって数百万の水揚げしかあげないで、利益が百万か百五十万かあって、税金でも相当納めている実情の人を知っていますよ。その人がいま食えないで、自殺寸前ですよ。それのよってきたところは、電気事業法二十七条じゃないですか。それに対してあくまでも補償など考えないという態度ですか、通産省は。いかがでしょう、大臣
  103. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり法律の命ずるところによらないと公金を出すというわけにはまいらないので、いまのような場合はまことにお気の毒でありますけれども、補償ということはむずかしいんではないかと思います。したがいまして、それ以外のあらゆる方法によりまして、援護措置を講じていきたいと思います。
  104. 田中昭二

    田中(昭)分科員 法律つくればいいじゃないですか。ほかの禁止したものに対しては補償金を出しているのだから、法律をつくればいいじゃないですか。つくるべきじゃないですか。いかがですか。
  105. 岸田文武

    ○岸田政府委員 結局問題は、ネオン業界がただいまどういう状況にあり、これからどういう方向に進もうとしているのかという中身をよく詰めまして、その影響の程度によって救済策を講じていくということであろうかと思います。その意味におきまして、先ほども申しましたようにネオン業界と当面の対策については一応の手がかりができたわけでございますが、長期的な対策を含めまして私ども勉強いたしたいと思います。
  106. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そういうことを言うのだったら、だんだん姿勢が後退しておるのですね。そうでしょう、大臣。私のことばがちょっと悪いかもしれませんけれども、ほかは法律をつくって出しているのだけれどもこれは法律がないから出せない。それじゃその二十七条の禁止の法律もはずせばいいじゃないですか。実情をいまからよく検討するなんといいますけれども、何月何日にあなたたちがどういう資料をとってどういうことを話しておるか、日にちと責任者を申し上げましょうか。全部ありますよ。そういうことを言わなければならなくなりますよ。決算書、納税の資力の調査、抽出して詳しい話を聞いているじゃないですか。いまの大臣も含めてそういう御答弁は、ほんとうにそういう姿勢で今後この法律によって規制なり禁止なりしていくということについては、これは今後も起こり得ることでありますから、徹底的に論議しなければいけないと思います。  ただ、限られたわずかな時間でございますから、それじゃもう一つ別な面から申し上げましょう。いま私は零細業者の立場に立って申し上げたわけですけれども、その反面を考えてみますと、この節電を政府が音頭をとってやっているときに、九電力の中でも一番大きな電力会社は、いままでにない電力を食う温水器をどんどん生産、販売している。ネオンなんかに比べれば、この温水器というものはたいへんな量を食う機械です。そういうものを、大企業の電力会社だけにその製造を許して販売さしておる。また家電業界でもそうでしょう。トップメーカーでこのたび悪徳商法でやられた、その人たちのやっている生産の実態は、ものすごい電力を食う電熱器を大増産して、便乗値上げに乗ってさらにその販売をあおっておるじゃないですか。そういう面での電力を使うことを考えれば、いまのネオン業界のこととうらはらじゃないですか。全然逆じゃないですか。なり規制をすべきところをゆるめておって、あたたかい手を差し伸べなければならないところをほったらかしにしている。そういうことでいいでしょうか。最後に大臣のお答えを聞いて終わります。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題につきましては非常にお気の毒な事情でもありますから、関係業界とさらにいろいろ懇談を重ねまして、御要望に沿ってできるだけ努力をいたします。
  108. 羽田孜

    ○羽田主査代理 これにて田中昭二君の質疑は終了いたしました。  この際、午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後一時八分開議
  109. 湊徹郎

    湊主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。楢崎弥之助君。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 まず冒頭に、去る二十三日の一般質問で私は通産省に調査をお願いしておったのですが、例のペンタゴンから日本の約三十社に発注をやっておる。各社について私は一覧表を差し上げて調査をお願いしておったですが、その調査はどうなっておりましょうか。
  111. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの文書をいただきまして、いま各会社ごとに調べております。何ぶん会社の数が非常に多いものでございますから、もう少しお待ち願いたいと思います。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 文部省のほうは、昨日できたようであります。明日の分科会で明らかにしてもらいたいと思っているのですけれども、通産関係は数が確かに多うございますから……。そこで、わかっただけでも、ひとつ、委員会でなくてもいいですからお知らせをいただくと、たいへん整理がしやすいと思いますので、お願いしておきます。  それでは質問に入りたいと思いますが、例の密田石連会長発言の問題であります。この問題の本格的な論議は、いずれ総括その他でやることになりますが、きょうは時間が限られておりますので、事実関係だけちょっと確かめておきたいと思うわけです。  公取のほうにお伺いをいたしますが、四十六年の例の石連のやみ価格カルテル、現在審判係属中でございますけれども、これの争点はどういう点であるか、簡単明瞭にひとつお願いをします。
  113. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 争点でございますが、昭和四十六年の二月二十二日の会合、これは石連の営業委員会、ここで価格の決定をしたということになっておりますが、その二月二十二日の会合は、石油連盟の営業委員会ではなくて、有志の会合であり、決定ではなくて、意見交換をしただけであるという点が第一点。  第二点は、四十六年の三月の下旬ないし四月の二十二日に通産省指導を受け、それから後は、それに従って値を上げておるので、二月の決定に従っているのではないという点でございます。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは抗弁書のような形で、はっきり出されておるわけですか。
  115. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 準備書面とか最終意見陳述とかいう形で、この内容が出ております。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 二十六日の集中審議の際に、密田氏が本件について答弁をされたわけですが、あの答弁は、公取としては、事実と違うことを答弁していると思っておられますか。
  117. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 私、直接その席に出て聞いておりませんので、どういうふうな答弁をされたか直接のあれではございませんけれども、このときに、もし密田氏が二月二十二日の決定の前に通産省指導があったというふうに答えられたとすれば、それは事実と違うということでございます。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いや、そういうことは密田さん言っていないのですよ。  それでは通産大臣にお伺いしますが、いかなる理由で謝罪文を密田会長に出させられたんですか。
  119. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは、通産省の見解と異なる間違った発言を国会の答弁でしまして、世の中に非常に誤解を与えております。通産省としても、行政が公正であったという、無実の罪を公にする必要がありますので、石連会長に対して、事実と違うということを私が言って、君らのほうでそれを調べて、もし違っているなら、是正措置を講じてもらいたい。これは通産省という官庁としての名誉を維持するために、また社会からも誤解を受けないために、当然の行為であると思っております。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 密田答弁のどこが謝罪に値するのですか。
  121. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 謝罪というようなことばは、私は言いませんでしたけれども、あの答弁の中で、価格カルテルについて、通産省の行政指導があったというような答弁をしたところであると思います。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 大臣は、議事録で密田答弁を確かめられましたか。
  123. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの答弁を速記録で早速書かせてきまして、それを私は見ました。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ほんとうですか。——失礼ですが、それはどなたが議事課に行って筆写されましたか。
  125. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 「楢崎弥之助質疑応答、カルテル指導」ということで、大体サマリーを私のところへ持ってきまして、それによって私は読んだところであります。  「楢崎氏「過去四回の公取の勧告を受けたにもかかわらずカルテルを行なっている。特に」云云。密田「石油業界としてはカルテルとは思わない。行政指導によるものである。」楢崎氏「価格についてのMITIの行政指導があったのか」  密田「あった」(議場騒然とする) 熊谷「指導は行なっていない」」こういうことでございます。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは、いつ筆写されましたか。
  127. 山形栄治

    山形政府委員 ちょっとはっきりしないところがございますけれども、これは非常に大きな問題でございますので、先生の御質問の趣旨が全新聞に出ておりました、その全新聞を全部読み合わせまして、一応これをサマライズいたしたわけでございます。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、いまの大臣の御答弁は違いますね。議事課に行かれて筆写をされたものではない。各社の新聞を全部読まれて、それをサマライズした、そういうことですね。
  129. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は議事課へ行ってとってきたものだと思って、誤解しておりました。訂正いたします。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私はどうしてこれを重視するかというと、密田答弁をまず正確に見る必要がありますよ、謝罪されるなら。それを確かめないで、新聞の——新聞は紙面が限られておるから全部は書けませんし、また、若干わかりやすく書くときもあるでしょう。だから、それは不正確な部分があると思うのですね。だから私は、あの密田答弁はちっとも間違ってないと思っているのです。日にちのことを全然触れてないのですよ。公取の事務局長も聞いておってください。  さっき、もし四十六年二月二十二日以前に通産省指導があったと答弁されたとすれば、それは事実と反するということですが、日にちは全然言ってないのです。だから、間違いの個所はないのです。だから、どこが間違いかと私は聞いておるのです。  あの答弁のどこが間違いで、そして謝罪を求められたのか。新聞の印象が悪いから謝罪を求められたのですか。
  131. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの当時、熊谷石油部長は委員会に出ておりまして、密田答弁も聞き、自分もそれは間違っていると答えておるわけで、その報告を私聞きまして、直接関係している者が言っておるものですから、これは是正しなければならぬ、しかし、念のために持ってこい、そう言って、このサマライズを持ってこさせたものであります。  それから、どこが違反しているかという点については、私らの考えでは、二月二十二日についてはもちろん関与していない。それから四月二十二日に行政指導はした。価格を一々どうするかというようなことについては、油種別にはもちろん言っていない。それで、OAPECの値上げに対して自粛せよ、そして、これはみんなで泣け、消費者にできるだけ迷惑をかけるな、そういう意味で、公益を守るために、公権力の発動としていまのようなことを会社に対して、企業に対して直接やった。  それで、社会党の先生方が問題になさるのは、三月の末にそれを当時の密田石連会長に言ったではないかという点が一つ問題のようでありますけれども、あれは通産省は、石油会社考えているように全部上げることは認めない、いずれこれは通産省としての考えを明らかにする、そして、大体方向としてはこういう方向であるということを、まあ石連というのは、石油会社の連絡機関でありますから、そういうわれわれの考え、インテンションをまず言って、そして正式の行政指導というものはあらためて各社別にやるが、そういう考えを持っているぞということを、それに対するわれわれとしての考え方をあらかじめ石連に伝えて、知らせた、そういう伝達として石連会長というものを使った、そういうふうにわれわれは解釈しているところであります。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 石油部長が来られておりましたね。  あの密田答弁のどこが事実と違うのですか。
  133. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 私はこの間の楢崎先生の御質問にお答えいたしましたのは、あの四十六年のやみカルテル事件につきまして、通産省がカルテルを指導したということがあるかどうかという御質問がございました。カルテルは指導いたしておりません、ということを申し上げたわけでございます。  密田会長があの席で通産省指導によったということは、私はカルテルを指導したということに理解いたしまして、これは、そういう事実はありませんということをあの席で申し上げたわけであります。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それで密田さんを呼ばれて、密田さんは、あの答弁のどこが間違っておったと言いました。
  135. 山形栄治

    山形政府委員 密田会長といたしましては、いろいろと自分の表現もまずかったということをまず言っておりましたわけでございますが、四十六年二月二十二日、石油連盟営業委員会におきまして、価格引き上げのカルテルを行なったとして公取から勧告され、目下審判中の問題、その問題に関しまして、自分の表現で、通産省の行政指導によってこれが行なわれたとするごとき印象を与える答弁をしたことは、私の陳述に不十分な点があり、真意が伝わらなかったことを非常に恐縮いたしておる、上記二月二十二日の審判にかかっておるカルテルの件に関しては、通産省が何ら関与いたしておりませんということを、はっきり表明いたしまして、いわゆる陳謝の意を表したわけでございます。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は、石油部長お聞きのとおり、あのとき二度念を押したのです。そして、あなたも議事録は読んでない。  人間の記憶というものは、そう正確ではないんですよ。私どもは、だからもう一ぺん議事課に行って、私は確かめたんです、わが党。あなたの聞いた印象だけで、大臣報告する。しかも、エネルギー庁は、新聞の寄せ集めでサマライズして、それを大臣報告する。非常に私は不正確であると思うのですね。正確に覚えていますか、あなた。あのときにどういう答弁したか、語句まで。私はあれはちっとも間違いでないと思うのですね。つまり、密田会長の通産省との関係の印象は、その印象のとおりあの人は正直に答弁しているのです。  そして、これは公取の審判開始決定書でありますけれども、この四十六年事件、この中で問題は、会合をやった、それだけじゃないんですよ。いいですか、問題になっているのは。ちょっと読みましょうか。「会員元売業者は、前記決定に基づき、それぞれ石油製品値上げ額を定め、これを取引の相手方に通知し、所定の期日から、おおむね石油製品の販売価格を引き上げている。」。実行行為をむしろ問題にしているのですね。そして実行行為、二月二十二日は、かりにおっしゃるとおり関係がなかったとしても、三月下旬、内示をされておりますね。そしてその内示の内容は、まさに社会党が発表したとおりです。だから、その引き上げに、実行行為に加担された。われわれが指摘しておるとおりなんですね。  そこで、これは本格的にやります、論争は。事実だけ確かめたいから。それで、議事録をもとにしないで、相手を呼びつけて、そして国会の外で取り消させるというのは、私は、ちょっとこれは中曽根大臣にも似合わない軽はずみな行為ではなかったかと思うのですね。  しかも、私はもう一つ残念に思うのは、ここは、いわゆる審判において問題になっている個所ですね。しかも、聞くところによると、もう双方の言い分の調査は済んで、あとは審決を待つだけになっている。はたして密田会長が言っているのがあやまちかどうかは、これは審決がきめる一つ問題点でしょう。その審決が下される前に、その通産省指導が問題になっているのに、石連会長を呼びつけて謝罪をさせるという行為は、私はこれは公取の審決に対する挑戦であろうと思うのですね。審決が出る前に、そういうふうに一方的に、密田会長の言っていることが間違っていると言ってきめつける。そうして、もう一つ、もし密田さんの答弁に誤りありとすれば、これは参考人招致の中で出てきたことばだから、謝罪文を書かせるということよりも、まず通産大臣は、国会でもう一ぺん機会を設けて、訂正するところがあったら訂正しなさいという指導をむしろなさるべきではなかったでしょうかね。
  137. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その辺は、野党の楢崎さんと、政府当局の責任を持っている私らとの立場の相違があると思います。やはり、国家の行政機関として行政を公正に行なう責任の衝にある者は、われわれが間違った答弁をしたと、そう思ったときに、それが、国民に対して非常な悪い、間違った印象を与えるということは、これは行政機関としても是正することが大事であろうと思います。そういうものはできるだけ早く、間違ったものは間違ったものとして明らかにするということが、国の行政機関の仕事である。それをほうっておくということは、かえって誤解を深めるばかりで疑惑を深めるばかりである、そう私は思いました。  私は、密田氏の通産省がカルテルに参画したというような印象のおことばは間違っている、そう思っておりますから、それは改めなければならぬ、そう思っておるわけであります。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 さっきから言っているように、議事録、いまだかつて読まれていないのでしょう。だから、間違っているかどうかも、議事録を中心に明確になさってないのに、間違っているという判断を下されたのは、軽率ではないかということを私は最初に申し上げている。
  139. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 しかし、その場で立ち会っていた、そしてまた答弁もした本人が報告してきておることでございますから、私はそれを信用する立場にあるわけであります。もちろん、議事録を確かめるということは大切なことであるかもしれません。しかし、現に立ち会って、そばで聞いた者の実証性というものは、また尊重すべき要素である、そう私は思います。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私が意地の悪い言い方をしたら、あなた、いまから言ってごらんなさい、私が議事録を持ってですね。繰り返せますか、密田さんが言ったとおりに。非常にあの答弁というのは含みのある答弁です。あなたは印象だけで言っているのでしょう。大臣報告したのでしょう。私は頭が悪いから、私は質問の当事者だけれども、ちゃんと議事課に行って写さしてもらった。それで確かめているのです。あなた、それだけの自信があるのですか。そんな不正確な印象だけで報告してはだめですよ、あなた。責任持ちますか。
  141. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 私はあの席におりまして、その事実につきましては大臣に御報告申し上げたわけで、いま大臣のおっしゃったとおりでございます。その後、議事録の点も担当のところでさらに検討いたしまして、内容につきましては、私どもの理解に間違いはなかったと考えております。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 あなた、いつ議事録を点検しましたか。
  143. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 日にちは正確に覚えておりませんが、あと、議事録につきましても検討をいたしたわけでございます。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 違うですよ。あなた、だめですよ、私は議事課に行って確かめているのだから。  いつ、だれが、何時に筆写してきたですか。はっきりしてください。もしそれがうそだったら、どうします。ちゃんと議事課は、だれが、いつ、どの点で議事録を見に来たと、ちゃんと名簿があるのですよ。私は確かめている。はっきり言いなさい。
  145. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 私の理解が間違っているかもしれませんので、その点、お許しいただきたいと思います。  ただ、先ほど大臣からもお話がございましたように、当日、密田会長と会見されましたときに、密田会長の真意というものを大臣からお聞きになったと思いますし、その点につきまして……(楢崎分科員「私の問いに答えてください。議事録の点を答えてください。」と呼ぶ)議事録の点については、取り消しをさせていただきます。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 政府委員室の人が行っていますよ。行っているのは、あなたの、その当時の大臣はだれであったかという私の質問に対して、あなたがどう答えたか、田中さんと、あのとき答えましたね、そのくだりだけを見に行きました。私はちゃんと聞いているのです。そのほかのことは見てないのです。だから、あなたは報告できるはずがない。そんなでたらめ言っちゃだめですよ、あなた。それははっきりしてください。
  147. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 私の誤解でございました。その点、おわびいたします。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 つまり、いまはっきりしたことは、いまだ議事録をだれも読んでいない、そして、印象によって大臣報告し、大臣は、部下のことですから、まあ信憑性があると思われたのはやむを得ないかもしれない、軽率さはあっても。それをもとにして、国会で答弁されたことを国会の外で取り消させ、謝罪文まで出させるのは間違いじゃないかということを私はさっきから言っておるのです。正確な議事録を見もしないで印象だけ。時間がないから、私はこの問題をいずれ総括かどこかでやりたいと思いますけれども、この点はひとつ明確になったと私は思うのですね。それで、院外で間違いだときめつけて、印象だけできめつけて、そして謝罪文まで出す——大臣、謝罪文は出たのですか。出させたのですか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ともかく、私は国会の発言を聞いてみると、通産省が、あたかもやみカルテルに参画したような印象を世間に与えておる、それは間違いであると思う、あなたの見解はどうか知らぬが、もう一回当時の状況を調べてみて、もし間違っておるならば、是正する措置を講じてもらいたい、そういう発言をいたしました。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 何か文書を出させなかったのですか。それに対する釈明文か何か。世の中では謝罪文となっていますが。
  151. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それに対してこれが出てきたわけです。いまのが……
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの——。では、それを資料としてひとつ出していただけますか、その文書は。
  153. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いいですよ。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ではお願いをしておきます。  この問題は、先ほどから言っておりますように、いずれ継続する問題ですから。  次に、石油危機のときに、いわゆる情報不足のためにつくられた危機ということが盛んにいわれた。情報というのは大切なものです。  で、つい最近のメジャーの供給削減の問題が、中曽根大臣の発言も一、二点訂正されたようでありますが、結局どういうことだったのですか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、昨日の朝の記者会見におきまして、朝の新聞に出ておる、二五%メジャーズが削減するというのはどういう事情だ、ほんとうか、そういう質問を私、受けたと思います。それに対して私は、はっきりはしないが、たしか、山形長官から、立ち話でそれに類することは聞いておる、二五%という数字かと言うから、いや二五%ということはさだかでないが、まあそんな見当だったというような記憶があると。それから何社だったという話がありましたから、これはメジャーは一、二社じゃなかったかと思うという、記憶がさだかでないということを前提にして、いまのような答弁を申し上げたということです。  それで、それを答弁するについて、私の中に、日本石油会社はメジャーズとは長期安定供給契約をやっているわけです。ところが、その長期安定供給契約に対して、削減した数量でいま送られてきておる。それが一〇%であり、一五%であると、そういうようなことをかねがね聞いておりましたから、その事実をそれは意味していると、一つ考えておりました。それからもう一つは、エクソンからやはり石油部長に対して、三月からたしか一五%カットする、そして、これは十日ごとにチェックし直しますと、そういうような話があったということを、同じく山形長官から耳にしておったと思うのです。  そういうことが頭にありましたから、そういうことを総合して、さだかな話ではないが、ということで、以上のような話をしたわけでございます。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっと確かめておきたいが、これはやはり、情報というのは正確でなくてはいけませんよ。すでに大臣がおっしゃったことを、ばっともう大きく、二五%削減かというようなことが最初載ったりして、非常に影響するところが大きいのですが、その情報を与えたエネルギー長官は、その情報はだれから得られたのですか。
  157. 山形栄治

    山形政府委員 最初に申し上げておきますが、昨日の新聞に出ましたのは、われわれの知らないところでございまして、これはどこからニュースソースがあったのか、それは私は全然知らないわけでございます。  私は、熊谷部長のところにエクソンのほうから、いま大臣が申し上げましたように、三月の国内の生産、出荷につきまして、こういう状況、大幅な赤字に直面している現状にかんがみまして、製品、ひいては原油供給も押えなければいかぬということを、おととい実は聞いたわけでございます。で、大臣にそのことは御連絡を申し上げたわけでございます。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 だれから聞かれたのか。
  159. 山形栄治

    山形政府委員 それはうちの石油部長がエッソ石油責任者から聞いたわけでございます。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それはいつ聞かれたのですか。
  161. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 三月四日、月曜日でございます。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 エッソの副社長は、三月四日にそういうことを言ったのを否定しておりますね。
  163. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 メジャー、エッソなり、あるいはその他外資系企業との関係におきましては、私どもも情報収集という観点もございまして、先方との間の話を聞くことがございます。私は、いまああして出ておりますように、エッソ石油の内部者からその話を聞いたことは事実でございます。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 四日に話をしたというのは、否定をしていますよ。最近のことではないと言っていますよ。どうもあなたのあれは不正確ですね。はっきりしてくださいよ。いつ聞いたのです。
  165. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 エッソの副社長である八城さんは、私にそういう連絡をいたしておるわけですが
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いつです。
  167. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 これは三月四日にそういう連絡がございました。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 否定しているじゃないの。
  169. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 その否定は新聞の関係で出ておるかと思いますが、エッソとしては、その事実はその後否定をしているはずでございます。つまり、事実があったことは認めているはずでございます。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃあ四日の日に聞かれたというわけですか、会われたんですか。
  171. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 電話での話でございます。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 間違いないですね。何回も念を押しますが、四日に間違いないですね。
  173. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 間違いございません。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 どうもいまの情報源のあれは、たぐってみると、どうもあやふやなんですね。大臣が部下を御信頼になるのは当然だと思うけれども、どうも情報源が不確かで、あいまいで、そしてそれを聞かれて大臣がすぐ表に出される、こういうことが、いわゆるつくられた危機というふうになってくるのですよね。それで値上げをしたいものだから、わざとそんなことを言っているんじゃないかというような憶測まで飛ぶようになるんじゃないかという気がするのですがね。だから、私はその辺は、ほんとうにしっかりしてもらわぬと困ると思うのです。  もう時間がありませんから、午前中も出たようでありますけれども、二点だけ大臣に聞いておきたいと思うのですが、一つは、いずれ値上げせんならぬだろうその時期について、田中総理は慎重であるということは新聞の報ずるとおりであります。  通産大臣としては、その時期をいつごろと考えておられるのか、まずそれは通産大臣としての考えでけっこうです。それが一つ。  それから油種ごとにお考えになるのかどうか。たとえばガソリンとか灯油とか、すぐ影響するわけでしょうが、そういう点の値上げの問題はどのように処置なさるおつもりであるのか。
  175. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 時期については、なかなかデリケートな問題でもあり、売り惜しみや、またストックが出るという危険性もなきにしもあらずでありまして、これらはすべて党との調整及び内閣総理大臣の決断等にかかっておることで、通産省以上の、もっと大きな内閣全体、自民党全体の問題としてこれは検討してきめていただきたいと考えております。  それからもう一点は何でございましたか。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 油種ごとに……。
  177. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのきめ方につきましても、同じようであります。時期、幅、それから内容、これらはすべて自民党との調整及び総理大臣のお考え等、そういうことによってきまると思います。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 非常に国民は関心を持っているのですね。この点で、せんだっても新聞も報道しておりましたけれども、物価鎮静策として、通産大臣は、石油供給がもし緩和できたら緩和して、そのことによって物価を鎮静したほうがいい、大蔵大臣は、いや、そうではなくて、やはり供給は制限したままで、総需要抑制ということで物価を下げたほうがいいという考え方の違いが新聞で報道されておったようでありますが、その点はどうですか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たいした差はありません。両方とも上州生まれでありますから、片っ方は明治で片っ方は大正だという差はありますから、若干フィーリングの差はあるかと思います。しかし、われわれのほうは、できるだけ生活関連物資あるいは国民経済上緊要物資、こういうものはふやしたほうがいい、やはりいろいろ議論はあっても、物を豊富にしておくということが、物価を鎮静させる一番ポイントだ、これが不足するという気配が出るとパニックが起こる、そういう面から見て、できるだけ豊富にそろえさせる、特に生活関連物資や重要基礎資材はそうである。そういう考えに立って、その辺についてはできるだけ増配をする。その点については大蔵大臣も同感である……。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 どこが違うのですか。
  181. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 違う点は、締めるほうをもう少しふやせと、そういうわけで、たとえば自動車のようなものは、われわれは少し増配するほうに入れようと思ったわけです。しかし、自動車とか、あと一、二、家電、そういうようなものは、大蔵省その他の意見も入れて一五%に残しておいた、そういう差であります。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これでやめますが、引き続いて例の行政指導の問題をやりたいと思います。  それから、実はネオン業者の問題についてお伺いしたがったのでありますけれども、時間がありませんから、文書で出しますから、ひとつ文書で御回答をいただきたい。  それじゃ、これで終わります。
  183. 湊徹郎

    湊主査 これにて楢崎弥之助君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  184. 野坂浩賢

    野坂分科員 それでは、いまも楢崎委員のほうからお話がございましたが、石油値上げの問題が昨日新聞で、あるいはきょうの新聞でも報じられております。いま通産大臣がお話しになりましたように、この値上げ問題につきましては、非常に閣内でも慎重に討議をするという姿であります。  そこで、通産大臣にお尋ねをしたいと思いますが、いまお話がありましたあなたと大蔵大臣との関係で、若干のフィーリングの相違はあるけれども、大勢に影響はないというお話がございました。昨日の夕刊の中に、福田大蔵大臣が、物価抑制という観点を第一に考えなければならぬ、石油値上げしても、他の物価の抑制がうまくやれるように目張りをしなければならぬ、こういう発言が新聞に載っております。したがって、通産大臣としては石油値上げ問題、そういう問題につきましては、慎重に、いまのお話でありますが、総理の決断なり、あるいは責任政党といいますか、自民党とも相談をするということでございますが、他の物価についての抑制策でありますが、その中で本委員会でも予算委員会でも内容が明らかにされ、補強されました調査官等の設置によって、物価抑制策が具体的にどのように進んできたのか、あるいは、その実効ですね。今日までの実効が、通産の関係のもので、調査官によって大要どの程度の実効があったか明らかにしていただきたい、こう思います。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国会で問題になりました五条調査はかなり進行しておりまして、たしか私の記憶では、きょうかあしたくらい報告が私のところに来ることになっておりますが、三十カ所以上やったろうと思います。しかし、いわゆる売り惜しみ、買い占めに該当するようなものは非常に少なかった、たしか、そういうような報告であったと思います。  それから、物価抑制のためには、通産関係では一番大きな仕事をやっていたのは設備投資の抑制でありまして、これは去年の秋からことしの春にかけて、大体三千五百億円程度の設備投資の抑制をやって、特に自動車そのほか、エネルギー多消費産業についてきびしくやってきたところです。この設備投資の抑制は、今後もある程度続けなければいかぬ、そう思っておりまして、その方面から需要がかなり削減されてきておることは事実であります。そういうような面から、次第に物価は需要よりも供給面がふえつつあって、鎮静しつつある。それからもう一つは、石油値段を凍結しておりますから、そういう意味で、次第に物が多くなり、かつお金がしぼられて来、要するに、金が少なくなって物がふえれば物価は下がるわけでありますから、そういう方向に極力通産省としても協力して進めてきたところであります。
  186. 野坂浩賢

    野坂分科員 私は、時間もありませんから、きわめて庶民があずかっておる問題、特に、ことしの四月は新入学の機会でもありますし、そういう点にしぼってお尋ねしたいと思っておるのです。  石油危機から今日まで、金が少なくなり物が豊富になれば安くなる、こういうことは理論的にはわかりますが、このとおり実行されておるかどうか、そういう動きが経済界の中にあるかどうかという点については疑問なしとはしない。確かに疑問があります。  だから、私が申し上げますように、町には便乗値上げというものがはんらんをしておると言っても過言でないと思います。そのことは、通産大臣はお認めになるでしょうか。
  187. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 かつてありました。いまでもそういう残滓はあるかもしれません。しかし、極力それを起こさないようにいま努力しているところであります。
  188. 野坂浩賢

    野坂分科員 学用品につきまして、大臣から業者をお呼びになって、一〇%程度あるいは二〇%下げろという話があって、それからの措置はどのようになっておりますか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 学用品につきましては、国会でも御指摘がございましたが、その前から、私は、一月にイラン、イラクへ行く前から、学用品の問題はたいへんな問題だから行政指導をきびしくやるようにと言って、文部省と連絡をとって私の留守中に仕上げしておけ、そういう指示をして、関係責任者が文部省とも連絡をとって、まず第一にノート、それから上がり始めてきたクレヨン、それからランドセル、それから学校の机、それからズックのくつ、こういうものについて一々指導いたしまして、上げられたものをある程度引き下げた、そういう効果があると思います。  具体的に申し上げますと、クレヨン、クレパスは二月一日に指導いたしましたが、クレヨン十二色細巻きが二〇%引き下げ、以下二〇%ないし一〇%、一四%程度の引き下げをやらしております。  それから運動ぐつについては二月一日、小中学生用の運動ぐつ、ビニール前ゴムぐつ、バレーシューズ、アップシューズの無地スタンダードものについて、現行小売り価格の二〇%の値下げを指導いたしました。その結果、二月中、下旬から値引きが実施されております。  それから学習帳、ノートについて、二月八日、A5判学習帳九十円というのを六十五円ないし七十円に下げさせる、それから6号(B5判)ノート百十円を七十五円ないし八十円に、6号ノート百四十円を九十五円ないし百十円にやらせまして、末端では二月十二日から値下げが実施されておる。  学習用スチール机、二月八日、全品目について、在庫品も含め、現行小売り価格の一〇%を引き下げるように指導して、二月十五日から実施されております。  それから学校教育用ざら紙、これは一月三十一日、学校教育用に優先確保をはかるべく業界を指導して、学校長または教育委員会等からの申し込みに対して、各都道府県に所在する幹事卸商から低廉供給すべくあっせん体制を確立した。それで価格は千枚七百二十円プラス運賃、一月三十一日からこれは実施されております。  なお、二月四日から八日まで、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、日本セルフサービス協会、日本ボランタリー・チェーン協会等に対して、学用品の仕入れ価格の値下がりを直ちに小売り価格に反映させるよう指導し、二月十日以降、準備の整ったところから順次実施に移されている、こういう状態であります。
  190. 野坂浩賢

    野坂分科員 それと同じようなことになりますが、この間、二月十五日以降といいますから、私は買いにいったのです。みんなシールが上に張ってありまして、これをはぎますと、こういうところがあります。百八十円が二百五十円でいまだに売られております。鉛筆は三百六十円ですが、これは二百四十円。歩いてみられたらまだ幾らでもあるのですが、これ以上買ってもしようがないですから……。おっしゃるように、絵の具等も五十円というふうにありますが、これをはぎますと三十円。みんなあるのです。三十円が十五円。全部ですよ。これはどういうふうに指導されたのか。  それで聞きますと、こう言っておるのです。たとえばトンボ鉛筆というのがありますが、「当該セットは旧価格による仕切を適用させて頂きますので、何とぞよろしく」ということが最後に書いてあって、だから、もうけさせてやるから新価格で販売せよ、こういうことが書いてある。ちゃんと株式会社の本社から出ておる。そのあと、あなたがおっしゃるようなことがあるかと言っても、現場では知らない。全部ありますよ。どこでもあります。これは東京を歩かれても大阪を歩かれても、どこを歩かれてもそうです。準備ができたところから進んでいると言っていらっしゃいますけれども、全然進んでいない。私が歩けば、これもこれもあります。まだ部屋にはたくさんありますが、まだ全部シールが張ってありますよ。そのままで売られておる。だから、あなたがおっしゃるように効果はあがっていない。学生なんかが買うレコード等に至りましては、全部ですよ。あなたがおっしゃるようなことには一つもなっていない。それは大臣、歩いてごらんになりましたか。だから、新価格のシールをちゃんと入れて送ってあるのです、こういうふうに張れと。張れといって得意先に回っております。それをはいでない。  だから、百貨店等でも学習机が一〇%なり二〇%下げられて、それは消費者に返すと言っておりますけれども、調査官等が六百人もできて具体的に調査をした、そういう実効はあるとおっしゃるけれども、庶民生活にとって実効があるとはいえません。ひとつもあがっておるような効果はないように思う。その点はどのようにお考えですか。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 調査官は、いま倉庫の五条調査を全部手配してやっておりますから、おそらくそっちへ手が回らないのだろうと思います。いまの点は、実地について、ひとつ調べてみます。
  192. 野坂浩賢

    野坂分科員 現物がありますから、調べられぬでも、全部ただで差し上げます。だから、よく調査をしてもらって——子供たちは現実にもう入るのですから、学用品を買わなければならぬ。それを調査をするというようななまぬるいことではなしに、中曽根通産大臣らしく、もっとてきぱきと処理してもらいたい。話し合いができて、文書を出して指導ができて、二月十日ごろから実施をしておるといっても、きのう歩いてみてもこの状態。そんなもので実施ができていない。しかも、通達は値上げのときには各本社から流されて、得意先あてに全部入っておるのです。なぜこういうふうなものが入っておるかというと、こういうことが来たからシールをかえましたと言っている。みんな来ておるんじゃないですか、価格改定シール在中というかっこうで。それを張ったままにして売られておる。だから、通産省の行政指導も十分にやられておるというのは、私が知る範囲ではうそだ、こう言わざるを得ないわけです。不徹底だとおっしゃるかもしれませんが、早急に、もう四月一日からは入学期を迎えるわけですから、全国的に徹底をしてもらいたい、こういうことをひとつ申し上げておきたいと思うわけです。  それから、通産大臣は、おっしゃるように、価格の下げを具体的にやられるわけですから、二〇%でもやられる。そうしますと、大手の企業の皆さんは非常に原価の公開というのをいやがっていらっしゃいますけれども、この間通りました国民生活安定法案の三条を見ましても、いわゆる標準価格とは何ぞやということになりますと、仕入れ価格なり輸入価格、それに適正な利潤をプラスをしたものが標準価格だということになれば、通産なり、あるいは皆さんは、その原価というものは知る権利がありますし、また、皆さんが知るということになれば、即、国民の代表でありますから、国民もそれを知っていくということになれば、ものごとがはっきりしてくると思うわけです。こういうものでも、十八円のものが五十円になったり、二十四円の絵の具が五十円になったりしておる。こういう実態では、われわれとしても納得ができない点がたくさんあるわけです。  町を歩いてみますと、みんなそう言うのです。だから、そういう点については、原価を公開をさせていくということが、私は、いま物価安定なり悪徳業者を排除するためにも必要ではなかろうか、こう思うのです。その点については、やらせ得ますか、あなたのお力ならばできると思うのですが……。
  193. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 なかなかむずかしいと思います。  これは企業によって千差万別でもあり、また、原価を公開して規制するという形になると所得政策につながる。その中の労務賃が幾らだ、そういう関係にもなります。そういういわゆる統制経済のはしりみたいな影響も与える危険性もあります。そういう面と、やはり企業一つの経営上のいろいろ秘密やら、そういうものもあるだろうと思います。したがって、公開することはむずかしいですけれども、われわれが内部でそれを立ち入って見きわめて、妥当であるかどうかチェックすることは、やる必要もあり、やれると思います。
  194. 野坂浩賢

    野坂分科員 この安定法案には「輸入価格又は仕入価格に標準的な販売費用及び利潤を加えて得た額、」こういうふうに書いてありますね。そうしますと、しろうとがこの法律を見ますと、原価にいろいろなものをかけて出すんだ、これが標準価格だ。通産のほうは、そういうことを詳しくチェックができるわけですか。業者の言うとおりになる可能性があるんじゃないでしょうか、言うなれば、くろうととしろうとの関係ですから。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 標準価格をつくるときの思想は、原価計算を厳格にやってやるという思想ではなくして、上がりそうだという前に、前の安定的な値段というものを基準にして、それで、なたでぶった切るように押えておく、そういう意味で、灯油でもLPGでも、上がる前に千三百円とか三百八十円で押えた。前の安定的な値段というものが一つの基準になっておるので、必ずしも正確な原価ではない。正確な原価の場合には、相当な人間と時間がかかる。それでは間に合わぬ。そういう場合に、標準価格という思想が出たので、これが物統令によるマル公的な価格とちょっと違うところであります。
  196. 野坂浩賢

    野坂分科員 この標準価格が出ましてから、こういうどこの——たくさんありますがね、私がもらってきたのは。このごろは政府ににらまれると思って、下のほうの名前は書かないんですね、切って送ってくるのです。それで、全部標準価格ということばを最近使っておるのです、こういう学用品でも。この標準価格というのは、あなたがおっしゃるこの問題とは違っておるわけですね。すべて標準価格ということばが入っております、標準価格はこうですよと。だから、その原価計算をするんではなしに「製品価格改訂のお願い」というようなことで、上がったから「標準価格を改訂せざるを得ない情勢となり何分とも事情ご賢察の上ご諒承賜ります様」こういう標準価格ということばが、どの商品にも使われ出したという点については、どうお考えですか。
  197. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 標準価格でないものを標準価格という名前を使うことは間違いであると思いますので、直さなければいかぬと思います。
  198. 野坂浩賢

    野坂分科員 それは業界等に指導されるわけですか。
  199. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 どの業界でそういうことがありますか、お知らせいただけば直させます。
  200. 野坂浩賢

    野坂分科員 これはあげます。あなたがいまおっしゃったノートにもあります。  それでは、時間がありませんから、公取の方、おいででしょうか。ごく簡単に質問だけをいたします。  これも委員会等で問題になっておりますが、洗剤等は——再販制度の問題ですね。再販価格の問題でたくさん消費者団体が、再販価格を廃止をさせよという声があったことはよく御存じのとおりであります。それにこたえて、各業界は、再販価格の存続の意義というものをあなたのほうに出していますね。その後にあなたのほうから、十月の十八日ですか、再販制度の改正についての文書が流されておりますね。  この再販について、当初業界は、メーカーも問屋も小売り商も消費者も、非常にメリットがあるという、そういう見解を述べておりますね。それであなたのほうは、不当廉売防止のことを含めて、この通達を流されておる。特にその中で、いいということを言いながら、それらの業界、たとえばライオンとかサンスターは、自己の利益を拡大するためにこの再販制度をおりた。しかも、それは利潤をさらにということでおりて、直ちに値上げをしておる、こういうことは御案内のとおりです。それで、悪用したといっても私はいいと思いますが、そう思われますか。
  201. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 再販制度、再販の指定が、これは石けん、洗剤、化粧品、医薬品等にございます。商品として指定してございますが、それについて、従来まで契約を結んでいたものが、明らかに値上げのためと認められることのために契約をやめていく、その後で値上げをしておるというのは、これはまさに再販制度を悪用した、非常にけしからぬことというふうに思います。
  202. 野坂浩賢

    野坂分科員 悪用しておるという事実はお認めになったわけですから、これについての処置等は、行政官庁ともいろいろと連絡をされたと思いますが、どういう結末がこの人たちには下ったわけですか。
  203. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 再販契約を廃止した商品につきましては、これは一カ月以内に廃止届けというものが参ります。廃止届けが参って、そのあとで関係各省庁に連絡して、これは再販から離れますと、私どものほうで指導ができないものですから、それで値下げ方を指導していただいております。
  204. 野坂浩賢

    野坂分科員 そのことを受けて、通産では具体的にそれらの業者をお呼びになったと思いますが、どういう措置をされて、それについて警告なり注意をされたと思いますが、そしてその効果は、具体的に今日どのように進行しておるか。
  205. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 公取のほうから御答弁がございましたが、合成洗剤、石けん、歯みがき、化粧品等につきまして、昨年末からことしの初めにかけまして、再販を取り下げて、値上げをしたケースが非常に多いわけでございますけれども、私ども、個々の業界の実情につきまして、事情を聴取して調べましたところ、やはり過大な値上げがかなりあるという認定をいたしまして、大臣からの御指示によりまして、二月の十三日に、化粧品及び石けんメーカーを通産省に呼びまして、それから十四日には洗剤メーカーを呼びまして、十五日には歯みがきメーカーを呼びまして、再販取り下げの機会に値上げをしたもの、並びに昨年の末からことしの初めにかけまして大幅な値上げをしたものにつきまして、極力値上がり前の状態に戻すように努力をしてもらいたい、それから、原料の値上がりその他のいろんな事情もあるわけでございますが、特に値上げ幅が二〇%をこえる異常な大幅値上げのものについては、これを重点的に価格引き下げをやる必要があると考えまして、二〇%以上値上げをしたものについては、これを二〇%以内に圧縮するようにということを非常に強く要請をいたしたわけでございます。その結果を、それぞれの業界に対しまして、一週間以内に、通産省に対して、検討の結果を報告してもらいたいということを申し上げたわけであります。  現在までのところ、ほぼ回答が出そろっておりますが、それによりますと、合成洗剤につきまして、ごく特殊な用途に使うものを除きましては、二〇%以内の値上げ幅の中に全部おさめてまいったわけでございます。それから石けんにつきましては、実はこれは五割、六割、七割というふうな大幅な値上げもあったわけでございます。牛脂あるいはヤシ油というような原料が主原料でございますが、これの値上げが、昨年の六月以降非常に大幅だったわけでございますので、どうも現下の事情を検討してみますと、極力圧縮といいましても、そう大幅な圧縮というのは困難だという事情も私どもはわかりますが、これは大体値上げは四割以内のところにみんなおさめてきたわけでございます。なお、化粧品につきましては、非常に数が多うございますけれども、これにつきましても、かなりの品目のものにつきまして二〇%以内に圧縮をしてきたわけでございます。歯みがきにつきましても大体そうでございます。  それから、特に化粧品につきましては、実は先般の各社値上げの際に、化粧品の五大メーカーというのは値上げをいたしておらないわけでございますけれども、これは将来化粧品の名前を変えたりなんかする際に値上げをするという危険性もないわけではございませんので、この五大メーカーに対しましても、私のほうからマークアップというような名目で値上げをするようなことのないようにということを強く指導した次第でございます。
  206. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がもうありません。したがって、いま御答弁をいただいたわけですが、それらの交渉の経過と、今日、町を歩いてみて、先ほど私が——もっとよけい持ってくればよかったのですが、行き届いておるかどうかは非常に疑問がありますよ。疑問がありますから、それらにつきましても、十分効果があがっておるかどうかを、資料として提出をしていただきたい、これをお願いしておきます。  あとまだ二分ありますから、公取にお願いをしておきますが、この十月十九日に、再販の制度の改正を出されておりますね。化粧品は千円以下のもの、あるいは練り歯みがき、石けん、洗剤、それから医薬品は五十四品目のうちの二十三品目をやる、こういうふうにおっしゃっておりますが、その後どのようになり、具体的にどのような推移になっておるのか。また、あなたの考え方は、いつこれを具体的に実施をするのか、お聞きをしておきたい。見通しもあわせてお願いします。
  207. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 昨年の十月十九日の告示改正で、先生おっしゃいましたとおり、化粧品は一容器当たり千円をこえるものは指定を取り消す、それから医薬品五十四品目のうち二十八品目を取り消す、それから石けん、洗剤、歯みがきにつきましては、指定を取り消す、これは実施はことしの九月一日からということになっております。その後はそのまま推移しておりますが、今後の問題としましては、昨年の八月二十九日に発表いたしましたとおり、再販制度というものは、段階的に縮小、廃止に持っていきたいという方針でございます。これはまだいつかということはきまっておりません。
  208. 野坂浩賢

    野坂分科員 いつかということはわかりませんが、段階的に廃止をする。見通しとしては、最終年度はどの程度にあなた方はお考えですか。計画を立てるのなら、その年度等についても当然検討されたと思うのです。
  209. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 それはまだ私どもの委員会での決定はございません。委員長国会で答弁されておりますように、いますぐということではなくて、先、いつまでということではなくて、廃止の方向に持っていきたいということを申しておりますので、いま、いつまでということはちょっときまっておりません。
  210. 野坂浩賢

    野坂分科員 方針としては、廃止の方向である、しかし年次別にはわからない、こういうことですか。
  211. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  212. 野坂浩賢

    野坂分科員 それでは、いずれまた質問をさせていただくことにしまして、これで終わります。
  213. 湊徹郎

    湊主査 これにて野坂浩賢君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬崎博義君。
  214. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私自身が中小企業の経営者の一人といたしまして、現実に中小零細企業の困っている状態を政府に反映し、やる気があれば可能な金融面での対策を求めたいと思います。   〔主査退席、羽田主査代理着席〕  一般的にいって、大企業の繁栄とは対照的に、中小零細企業は、どんな経済状態のもとでも、常に不安定な経営をしいられていることは、御存じのとおりであります。特に、毎年三、四月になりますと、決算期、決済期、納税期が重なって、危機が叫ばれるわけであります。それに加えて、ことしの場合は、昨年十一月来のつくられた石油危機と大企業便乗値上げがつくり出しました異常な経済状態によって、中小零細企業の困難は、想像を絶するものがあるわけなんです。  それは第一に、原材料、卸物価の急騰によって、だれでもわかることですが、運転資金の増大を招きました。特に、年末需要に備え、無理な仕入れを承知でせざるを得ないこと、取引先の大企業の圧力で現金支払い率をふやさざるを得なかった事情などから、この急増に要した運転資金は、金融機関からの三カ月程度の短期の借り入れ、手形借り入れにたよらざるを得ないような事情にあったわけであります。三月下旬というのは、そのちょうど返済時期に当たってまいります。  第二には、年末に急増いたしました支払いを手形支払いの増加で切り抜けた企業もあるわけなんですが、私ども、もちろんずいぶんと手形の発行高をふやしたわけでありますが、これらの手形サイトが九十日ないし百二十日中心になっておりますから、これの決済時期もまた三月、四月に集中してくるわけであります。  第三に、中小零細企業は、各地方自治体の行なっております制度融資、特に年末融資に殺到いたしました。この年末融資の返済期も、御承知のとおり大体三月下旬になっているわけであります。  第四に、こうした事情の三月、四月を迎えまして、実質的な売り上げ、つまり、いやおうなしに値上がりしてふくれあがった売り上げ金額ではなしに、数量です、その落ち込みがなく、また売り掛け金が順調に回収されるという事情があれば、ある程度決済資金改善がつくわけでありますが、御承知のとおり、建築建設業などを筆頭にいたしまして、実質的な売り上げというのは落ち込んでいるわけであります。また、一部では大企業値上げ予告が早くから行なわれたことや、また一種のおどかしもありまして、いやおうなしにかかえ込んだ高値在庫、これを持っている企業もあるわけです。さらに、倒産の急増による信用不安も手伝いまして、通常の営業の方法、つまり営業取引の中から必要な決済資金確保するということがむずかしいという逆の事情が生まれてきておるわけです。  第五に、そこで今度は金融機関のほうなんですが、年末の短期借り入れの書きかえ継続とか、あるいは銀行独自の融資で自治体の年末融資の返済に対応するというふうな態度が金融機関でとられるならば、これまたやりくりがつくのでありますが、逆に、書きかえに応じないとか、制度融資は一たん返済しろ、こういうふうな態度に銀行のほうが出てきているわけです。こういう状態は、政府としても十分調査もされ、認識をしておられるとは思うのですが、以上のようなことしの三、四月の特別苦しい中小零細企業の状態というものはお認めになりますか。
  215. 外山弘

    ○外山政府委員 今回の中小企業を取り巻く環境の金融情勢、物資情勢に関する状況の把握につきましては、私どもも非常に慎重に念を入れて見てまいりましたが、ただいま御指摘のような事態、つまり手形の決済期の問題、あるいは総需要抑制の結果からくる需要の減退の問題、そういった点が特にこの三月、四月を中心にして、業種によってはかなり強く出てくるのではないかというふうな懸念を私どもも持っております。したがいまして、それに対応するような措置を実は先般もとったわけでございまして、一般的に申しますと、いま御指摘のような事情の推移を注意深く見守っているというのが現状でございます。
  216. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 昨日通産省がお出しになった、いま言っておられる緊急対策がはたしてそういう深い認識の上に立ったものかどうかはこれから論ずるところといたしまして、もう一つ加えておきたいことがあるわけです。  それば狂乱物価のもとで、それでなくても低水準にあります中小企業労働者の大幅賃上げの問題です。これが当面やはり中小企業にとっては急務になっているわけで、中小の経営者も、物価高騰、インフレの共通の被害者といたしまして何とかこの労働者の要求にはこたえたい、財源捻出に頭をひねっているわけであります。大企業の場合は、もう国会でも明らかにされているとおり、文字どおりこの石油危機に便乗して大もうけしたわけであります。蓄積があります。ところが、その犠牲になった中小企業は結局財源を何らかの借り入れに依存せざるを得ない状態に立ち至っております。また、家族だけで一つ事業に打ち込んでいる小零細企業の場合には、自分たちの生活費の高騰を所得によってではなしに、これはどんぶり勘定になっている場合が多いですからはっきりと区分けはできませんが、資金繰り、つまり借金の中から生み出しているような場合が多いわけであります。これにいまおっしゃった政府の総需要抑制なるものが、全国民的に見れば、日本列島改造関連の事業は温存しながら下水道事業などの生活関連とかあるいは国民福祉のほうがカットされている。これが、中小企業の置かれている立場で見れば、大企業の仕事や製品のはけ口は保証されているけれども、中小零細企業の仕事が大きく奪われているという、こういう結果も生み出しております。ですから、そういう意味では中小企業は減産資金的な、あるいは営業縮小資金的な、こういうものの借り入れの必要にもいま迫られております。  ですから、以上申し上げておりますような融資の必要性は全く一時的な潤滑油にすぎないこと、これはわかり切っているのではありますが、といって、当面それがなければ中小企業の営業は焼けついてしまう、こういう状態なんです。まさにせっぱ詰まっております。  こういう意味で、私は先ほど、特に例年にない苦況にあることを認識していただいておりますか、それに見合った対策をとっていらっしゃいますか、こうお聞きしたわけなんですが、いま申し上げましたような状態に照らして、政府がとっている緊急対策が十分であるとお考えですか。
  217. 外山弘

    ○外山政府委員 先ほども申し上げましたように、手形の問題、あるいは需要の減退の問題、あるいは賃上げの問題、こういった現象がいつもとは違って中小零細企業に対して大きな影響を与える情勢にあるということは、もう御指摘のとおりだと思います。私自身もいままで一月、二月、慎重に見てまいりましたけれども、やはり三月は一、二月に比べると問題の多い月であるというふうな判断から、とりあえず三月用に追加をお願いしたわけでございますが、問題はさらに御指摘のような事情は四月以降にも注意深く見守らなければならない状況の変化だろうと思います。したがいまして今後も、四月以降も含めまして、いろいろな先ほど御指摘のような事情も含めて、よく中小企業の業種別の実態、全体だけではなくて個々にやはりいろいろ問題が起きておるわけでございますから、そういう点はよく見詰めながら適時適切な措置を四月以降も十分対応してとってやきたい、こう考えている次第でございます。
  218. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 中小企業庁としては、従前とは違った困難な状態、特別な事情のもとに中小企業が置かれ、したがって特別な対策を今後とも必要とするということはお認めになったわけですね。  現実に業者はどういう状態でこれをしのいでいるかと申しますと、一つは、一応業者がいろいろと団結して運動も起こしまして、地方自治体によっては、経済変動緊急対策資金的なものを新設いたしまして、これで対処しているという面があります。しかし、これは資金量から見ればきわめて少ない部分だと思います。  二つには、これは最も好ましくない傾向でありますが、町の金融業者が繁盛する。つまり高利貸しへのかけ込みがふえ、この高利金利は狂乱物価以上の高騰をいま示しているわけです。  三つ目には、やはり一番多い道でありますが、市中銀行へ借り入れをふやすべくお百度を踏んでいるという状態なんです。ですから、この市中銀行に対しての政府指導がどうであるかということも、今日の中小企業金融には大きな影響を及ぼすわけでありますが、具体的に、この緊急対策に書いてあるようなより一そう円滑をはかるという、こんな抽象論ではなしに、具体的に中小企業向け貸し出しの基本方針、あるいは基準等について政府は銀行にどういうふうな指示、指導をしていらっしゃいますか。
  219. 米山武政

    ○米山説明員 金融が非常に逼迫しておる際に、そのままほっておきますと、どうしても弱い中小企業がしわ寄せになるという懸念がございますので、そういう際には相当強力に指導いたしております。特に年末には各金融機関に対しまして、引き締め下にもかかわらず、前年以上に融資するように、これは全体として三兆近いワクを年末には確保するようにという指導をした事例がございます。現在のところ一応相当強い引き締めをしておりますので、市中銀行は非常に資金繰りが苦しくなっておりますが、その中でもできるだけ中小企業に対するシェアを落とすことのないようにというふうに指導しております。
  220. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 いまの御答弁でいきますと、年末とは違った三、四月独特のきびしい状況に中小企業が置かれているという事情の反映によって新しく指導を加えたという事実はなさそうですね。銀行の状態はまずきょうは論じませんが、表面金利がおおむね中小企業に対して年一〇%をこえ、高いところになりますと十二、三%を示しております。これに保証料が多くの場合は追加されるという状態、さらに実質的な拘束預金、主たるものは歩積みと両建てでありますが、これが増加いたしまして、いまおっしゃっているのとは全く反対の現象、つまりわれわれ業者側から見るならば預貸率がきわめて悪化してきているのであります。これは事実であります。さらに銀行へ手形割引をお願いに行きますと、銘柄選別が非常に強化されまして、持っていった手形がそのまま受け取られるということはまれであります。これら拘束預金と手形割引における選別問題、こういう点については十分な御認識を持っていらっしゃいますか。
  221. 米山武政

    ○米山説明員 ただいまの歩積み両建ての問題でございますが、この点につきましては、先生御指摘のとおり、金融がつまってきますと、どうしてもこの歩積み両建てが増加するという傾向が従来ございました。私どもは、御承知のように三十九年にきびしい自粛の通達を出しておりまして、これは五月と十一月には拘束預金の現状について報告をとることにしております。この報告によりますと、この十一月には半年前の五月に比べましてさらに減少して、引き続き減少の傾向をたどっております。しかしながら、私どもはこの銀行の報告をそのままうのみにするわけではございませんで、銀行検査の際には必ずその支店ごとに歩積み両建てだけを特別に検査するということを行なっておりまして、それによりますと、やはり報告どおりではございませんで、なかなかきれいごとを言っているようなところを実態を調べてみますとそうでないような事実がございまして、そうした事実を検査で見つけますと、その銀行の全支店に対しまして再調査をするというふうにしてこれを減らすように努力しております。現在確かに報告は全貸し付けに対して八%程度の拘束預金と、こういうことになっておりますが、これは実態はもう少し多いというふうに認識しておりまして、この実態検査のつど厳重にその辺を調査しております。  それから、いまの手形の銘柄の件でございますが、銘柄選択、こういうことでございますが、中小企業についてはこの際なるべくそのシェアを落とさないようにというふうに努力するようにしておりますが、やはり非常に悪い手形はともかく、いま申しましたようにこういう引き締め下でもできるだけ中小企業に配意するようにという指導をしておりますので、この際従来と比べて特にきびしくなったというふうには私どもは考えておりません。
  222. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 八%という数字をあえてここであげられていること自身がやっていらっしゃる調査がまゆつばものであるということを示していると思うのです。私のようにれっきとした共産党の国会議員が経営をやっている企業ですら、とても八%どころの預貸率ではないわけなんです、銀行側はずいぶん遠慮していると思いますが。私たちも常識的な線で対応しておりますが、同時に個々の支店ごとに調査をして具体的に指導しているとおっしゃいましたが、じゃ過去その指導にひっかかった銀行の名前をあげていただけますか。
  223. 米山武政

    ○米山説明員 ただいまの八%の問題について、ちょっと簡単に……(瀬崎分科員「その問題はいいです」と呼ぶ)現在銀行を調査する場合に、大体支店の二割ぐらいを検査することにしております。その中で大体五支店ぐらいは歩積み両建てを中心に検査する、こういうことにしております。  なお、その具体的な名前につきましては、検査の問題でございますので、ちょっと名前は申し上げられません。
  224. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 検査の問題じゃないのです。具体的に行政指導したというのですから、その行政指導した銀行の名前だけ言ってください。これは一種のそういう悪徳商法をやっているわけですから明らかにする必要があるでしょう。でないとまた国会に呼ばなければならぬことが起こるじゃないですか。
  225. 米山武政

    ○米山説明員 検査は年間に相当やるわけでございます。いまのは検査の過程でそういうことをしているということでございます。大体四十七年度には八十行やっております。
  226. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 検査を何ぼしたかを問題にしておるのではなくて、実際に政府が調査した結果発見した歩積み両建てに対して、どの銀行をどのように具体的に指導したのか、これを聞いているんですが、言えませんか。それだから実際にはあとを断たないわけです。  とかくのうわさのあります関西糸のある相互銀行で次のようなケースがありました。資金を借りた業者自身の要請で、私も実際にその支店に行きまして事情をつぶさに調べました。驚きました。一昨年十一月二十八日クリーニング業のAさんは、この相互銀行の支店で十八年返済、年利九%の住宅ローン二千万円を借りたわけであります。借り入れの四日後の十二月二日には借り入れ諸経費等建築契約金として支払う六百五十万円を除いた一千三百四十九万二千二百円を全額定期預金に銀行はとってしまっているのです。強い立場の貸す側の銀行のおそらく貸し出し条件一つだったと思われるのです。  建築資材高騰の昨年の状況は御承知のとおりです。建築業者から支払いをせき立てられましたために、Aさんは二百万円とか三百万円とかの定期預金を今度は担保にして、もう一度銀行から借りて払う羽目になったわけです。昨年五月一日五百五十万円だけの定期預金は払い戻しされましたが、残りの七百九十九万二千二百円は十一月三十日期日の定期預金として留保されたのであります。そこでまた定期担保でAさんは支払い必要金額を借り入れることになりました。まさに二重に借りているかっこうなんですね。  十一月三十日になりました。ぜひ定期預金全額払い戻すようにとAさんは支店長に懇請をされたわけであります。そのころはちょうど建築単価の高騰が極に達し、第一建築資材そのものの確保が現金を持っていてもむずかしいという状況でした。契約どおりの支払い条件で工事の進捗するはずがありません。ところが、支店長は銀行の方針ということで十一月三十日の定期満期日に、それまで定期担保で借り入れになっていた三百五十万のみを相殺して預金から落とし、残額の元利とも四百六十万八千二百三円なるものを再び今年二月二十八日期日の定期預金にしてしまったのであります。  これについて私が立ち会って話を聞いている限りでは、Aさんと銀行との了解は全くなかった模様であり、少なくとも私のただしたところでは預金証書は本人にわたっておりません。預金証書の預り証も銀行は発行しておりません。担保の差し入れ証もありません。また、先ほどおっしゃった十一月五日に発行する拘束預金通知書についても発行したという確言は銀行からありませんでした。  いまずいぶんと綿密な調査をしているようなお話だったけれども、具体的には銀行名を発表なさらなかった。そういうことだから、事実こういう金融難の時代になると、こういう全く反社会的行為としか思えないような事例が起こってくるのです。ひとつ政府の正式な見解として、こういう事実に対してどう対処されるのか、見解を聞かしていただきたいのです。
  227. 米山武政

    ○米山説明員 いまのお話まことに申しわけないことであると思います。特に私どもの指導ではいまの点で二点非常に問題の点がございます。第一点は貸し付けに当たって即時にそこで担保等を設定したり、即時にそこで貸し付けを預金に一部を振りかえることは絶対してはいけない。これは即時両建てといいまして、私ども最もいけないとしていることです。先生の御指摘には、そこがどうもあったようでございます。これは非常に遺憾なことだと思います。  それからその次は、歩積み両建ての場合も、やむを得ない歩積み両建てがあるわけでございます。ただ、先生の申されましたように、そういう場合には必ず本人にその旨を、両建て、そういうものはしているんだ、こういう目的で拘束しているんだということを必ず相手に通知し、それ以外のものはいつでも自由に引き出してけっこうです、こういう通知をしているはずになっております。いまの先生のお話ですと、拘束はしているという通知が来ていないということは、これはいつでも引き出せる。こういうことになっているにもかかわらず引き出しさせないというのは、これは私どもの指導に違反をしているわけでございます。そういう例は非常に少ないと思いますが、事実がありましたら、厳重にそういう点をなくするように指導したいと思います。
  228. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 事実は少ないがと言われたところに問題があるので、こんなものはたまたま一例として出てくるわけで、それが出てくる背景には、相当悪徳ぶりをその体質として持っている銀行というものがあるわけなんです。  私があえていま銀行名と支店名をあげなかったのは、当日支店長が不在であって、次長と担当者としては一応何らかの埋め合わせを考えなければならないと言っております。これは決して担当者の責任でないと思うから、そういう意味で名前を明らかにしていないことと、私どもが大体において敬遠している、とかくのうわさのある、しかも相当広範囲に営業区域を持った関西系の相互銀行なんです。調べる気があれば、これだけのお話をしておけばどこの銀行かわかるはずなんです。ですから、そういう意味では、政府側の調査が誠意あるものであるのかどうか、これの試金石としても私はこの際は名前をあげないでおきたいと思います。ひとつその調査の結果と指導のお手並みを十分に拝見したいと思うのです。  さて、五月、十一月に一応両建て等について調査をしているとおっしゃいましたが、これは発表はいつでありますか。
  229. 米山武政

    ○米山説明員 五月、十一月に全国の銀行から財務局を経由して本省へ参りますので多少時間がかかりますが、大体五月の分は七月初め、十一月の分は一月初めにはまとまっておりますので、特に積極的に発表はしておりませんが、数字はいつでも御報告できるようになっております。
  230. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 通産省にもその通知は来ていると思うのですが、通知をその時期に受け取って、それは何らかの役に立てておりますか。通産省の立場から、意見を言うべきことは言っておりますか。
  231. 外山弘

    ○外山政府委員 通知と申しますか、資料としてはいただいております。そうしてやはり、その内容によってはさらに大蔵省あるいは公正取引委員会、両方に対していろいろ私どものお願いを申し上げる機会は常にございます。
  232. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 時間がないからはしょりますが、いまのお話からいってもわかるように、おそらく抽象的な報告で、あまり実際の中小企業政策金融政策に役立つものとは私は思えない。必要なことは、銀行という、つまり表玄関からの調査だけでは、これはきれいに飾ってありますから、大体ぼろは出にくいと思うのです、むしろ金を借りているほう、お台所のほう、中小企業者がどんなに両建てあるいは歩積みで四苦八苦しているかをなまに聞いていただく必要がやはりあろうかと思います。  この点では、いろんな業者団体等に自主的な調査等も依頼されまして、そういうことと、いまやられている銀行調査などを突き合わせられることが非常に必要であろう。これはひとつどちらの省がということではなしに、政府としてお考えをいただきたい点であり、これは中曽根大臣にお伺いしたいのです。両建て歩積みをほんとうになくするために、ひとつ業者側から実情をよく報告を受けるというふうなことも考えていただけないかということであります。
  233. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は中小企業庁等を中心にしていままでも調べておりまして、私はその報告をかつて聞いたことがありますが、いま金融逼迫がこれから出てくるというおりでございますから、なお一そう努力いたしたいと思います。
  234. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 たいへん抽象的ですが、やむを得ません。  特に、たとえば三月末になると、われわれのところへは支店長あたりがやってこられまして、月内に手形を割り引いて、月末はひとつ預金に置いていただけませんか、こういうあいさつがあるのです。これはなかなか断われないものなんです、借りる立場からいえば。そういう点では、具体的には行政指導だけで片づかない問題もあって、その方法というのはやはり政府系の金融機関を中心とした制度融資拡充になってくると思うのです。  さて、今度一定の資金量政府系三行に追加されたようでありますが、去年の円フロートが行なわれた場合の三行に対する貸し出しワクの増加と比べて、どういうふうな関係にありますか。
  235. 外山弘

    ○外山政府委員 昨年のたしか三月の半ばだったかと思いますが、ドル・ショックに対する対応策として三百二十億の追加ワクを設定したかと思います。
  236. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 三行全部でそんなに少なかったですか。
  237. 外山弘

    ○外山政府委員 政府系三機関に対する貸し出し増加として、三月の時点措置した点はそれだけだったと思います。
  238. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それとことしと、つまり資材の高騰とかインフレの状況を勘案して、さっきからいろいろ述べてまいりました深刻な状況を加えて、はたして五百億で、いま国民金融公庫等にたまっている融資申し込みが第一はけるのかどうか、また、新年度に移るまでの間、つなげるのかどうか、この点については中曽根大臣にお聞きしたいのです。  昨年十月、大津で開かれました中小企業団体中央会の大会で、そのときは年末融資についてでありましたが、大臣は、私にまかしておけ、ずいぶん大みえを切っていらっしゃったように思うのですね。その大臣にしては、この苦しい年度末の対処資金として五百億円、私はどうもみみっちい感じがするし、また同時に、四月に相当資金が必要であることも見込まれるわけですから、四十九年度分についても相当やはり上期に繰り上げて貸し出せるような配慮が必要なんじゃないかと思うのです。その点についてのお考えも聞いておきたいと思うのです。
  239. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年の秋、大津でやりましたときに私は演説いたしましたが、そのときはたしか年末のことで、三千四百二十億円でしたか、かなり思い切った融資ワクを大蔵省と談判して設定しまして、十分ではないけれどもまあまあというラインを言って、皆さま御了承してくだすったと思います。  年度末になりましてとりあえず五百五億やりましたが、また、新年度にもなりましたら、その情勢によりましていまお話しのように繰り上げということも考えていいと思っております。
  240. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 新年度につなぐに、さらに不足があるというふうな状態は、年度内においての追加ということも考えていらっしゃいますか。
  241. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 年度内はむずかしいと思うのです。すでに五百五億やっておりまして、それで四月から新年度に入りますから、新年度の情勢等を見きわめまして措置したいと考えます。
  242. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 最後に、特に業者の数の面で最も多く利用されている国民金融公庫について、一応これは内部の指導の面だと思うのですが、三百万が限度になっている無担保融資ですね、これを、保証協会が無担保で保証する限度五百万円と同じように引き上げる必要がある。なぜなら、増加運転資金を必要としている中小業者に担保余力がないということ、さらには国民金融公庫でも受け取り手形担保の融資を認めてほしいこと、これは先ほど言いましたように、市中銀行が選別するからであります。同時に、経営悪化企業の返済猶予措置を昨日付の緊急対策でうたっておられますが、これだけではだめなんです。加えて、これにとりあえずの倒産防止の緊急融資がくっつかないと、せっかく返済猶予をしても、企業の立ち直りをささえることはできないわけです。その意味で、別ワクで緊急融資制度を国金の中にも設けるべきではないか、私たちはこういうふうに思うわけなんですが、こういう点で、ひとつ政府のほうで実行する気がないかどうかお尋ねをしておきたいと思います。
  243. 外山弘

    ○外山政府委員 まず第一点の無担保貸し付けの問題は、今回中小企業信用保険法の改正法律案といたしまして、三百万を五百万に上げることを内容とした御審議をお願いしているわけでございます。したがいまして、それが通過いたしますと、いま御指摘の問題点は五百万までできるというかっこうになるわけでございます。  それから、国民金融公庫に別ワクを設けてやったらどうかという御指摘でございますが、今回は、やはり緊急に必要な運転資金確保ということで、とりあえず三月に国民金融公庫に二百五十億のワクを設定したわけでございます。他の機関に比べて国民金融公庫に特別の配慮をしたつもりでございますが、やはりできるだけ多くの人にそういった緊急救済の措置が行くようにということも一つの配慮でございまして、別ワクということではなくて、債務償還の猶予が必要なものについてはそれを具体的に指導するように、それから新たな貸し付けとしまして、限度のワク内でその二百五十億が有効に使われるということをもう一つ指示したわけでございまして、別ワクで同じ人に集中して融資が行くというふうなことについてはいまのところ考えておりません。  第二番目の受け取り手形担保の問題につきましては、まだ今後検討さしていただきますが、なかなかむずかしい問題ではないかと思います。
  244. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 ぜひこれは、行くところまで行きついている中小企業の救済策として、受け取り手形を国民金融公庫でも一定担保とみなすような制度を検討してほしいと思うのです。同時に、融資はあくまで潤滑油でありまして、これが即中小企業の経営を健全にするすべてではありません。その点では、資材の高騰とかあるいは大企業製品の暴騰、こういうことこそ中小企業にとって一番困る問題であります。こういう点で、すでに政府も悪徳商法と認められている大企業の悪徳ぶりをほんとうに規制していただいて、そのことでほんとうの意味での中小企業の繁栄を守るように政府に要請して、私の質問を終わりたいと思います。
  245. 羽田孜

    ○羽田主査代理 これにて瀬崎博義君の質疑は終了いたしました。  次に、金瀬俊雄君。
  246. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 私は主として通産行政について御質問いたしますが、与えられた時間が三十分でございますので、要点のみ質問いたします。答弁は簡単でけっこうでございますので、結論だけお願いいたします。  東京湾の京葉工業地帯で最近大きな工場災害が続いて起きています。このことについては御存じのことと思います。  チッソ石油化学千葉工場、丸善石油千葉製油所、出光興産千葉製油所、宇部興産千葉工場等でございますが、特にチッソ石油化学五井工場は続いて二度の爆発事故を起こしております。私はこのことに関連いたしまして質問申し上げます。  チッソの二度目の事故について、通産省が千葉県側とともに現場の調査をきわめて慎重に厳重に行なったようでございますが、事故の原因がどうであったか、前の事故と関連して、そのことについていま発表できるとしたらそれを発表していただきたいと思います。
  247. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 ただいま御指摘のとおり、チッソにつきましては、昨年の十月八日たいへんな事故がございました。さらにこの二月十四日に再度事故を起こしておりまして、たいへん遺憾なことと存じております。  二回目の事故の原因につきましては、千葉県と私のほうの通産局並びに学識経験者数名によりまして、目下検討中でございますが、ただいま現在でわかっておりますところは、チッソのアセトアルデヒドの反応塔におきます触媒を再生処理する工程で、酸素を注入する装置がございます。その装置の中に逆どめ弁がございますが、その逆どめ弁の不良からガスが逆流をして、それが酸素と化合いたしましてああいった高度の熱を出す、それでパイプが破裂する、一名の火傷を出すというふうな経過をたどっております。いまの段階ではその程度でございまして、引き続きもっと的確な、周到な調査、原因究明を進めたいと考えております。
  248. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 操業再開の問題ですが、これはいまお話がございました、原因がはっきりつかめて、その上で重ねて改善対策とかいろいろな調査研究が済んだ上で許可するのか、あるいはすぐ許可するのか。私どもとしますと、少なくとも地元の人たちに将来不安の念を起こさせないようにいろいろと配慮してほしいということでございますが、いまあなたのほうで考えている再開の見通し、あるいはこの爆発による企業責任というものをどういうふうにとらせるのか、そういうことについて御説明願います。
  249. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 ただいま申し上げましたような、原因が、使いました触媒の再生処理を酸素注入によって加速的に行なおうという工程で起きた事故でございます。実はこの工程は、本来もともと設計されましたときにはなかったものでございまして、その後、ただいま申しましたような工程の迅速化という見地からつけられたものでございます。したがいまして、関係者が寄りましてその原因、特にだれが原因かというような問題は別といたしまして、技術的な原因のプロセスといたしましては、その酸素の工程を撤去いたしまして本来もともとの設計で操業する分には差しつかえないという判断で関係者は一致いたしております。そういう判断に基づきまして、三月四日付で知事の名前ですでに再開を許可いたしております。  企業責任につきましては、ただいま、そのもともとの部分に付加いたしました触媒迅速処理装置の設計あるいはその扱い方等をもっと検討してから、責任の所在を明らかにしてまいりたいというふうに考えております。
  250. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 このチッソの工場の近くの住民が、たび重なる爆発とかあるいは公害とか、いろいろなことで集団移転をしたいということを強く希望しまして、いま地元の市とか県とか国に対して陳情をしておるわけですが、これに対します通産省の対策についてお伺いをしたいと思います。
  251. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 ただいま先生の御指摘のように、付近に百七戸の民家がございます。たいへん不安な状態に置かれているということは早くから私どもも承知いたしております。この問題を抜本的に解決いたしますためには、一つは、企業側に保安距離を十分とらせるという措置ではなかろうかと思っております。したがいまして、昨年すでに、現在の省令できめられております二十メートル以上という距離を、新増設の場合には二百メートル以上、それから既存の工場の場合には民家との距離において、少なくとも百五十メートル程度という指導方針を明確に打ち出しております。この線で関係の未達の企業を鋭意行政指導いたしておりまして、それに従って、すでに着手をした工場も出ておるような状況でございます。抜本的に、なおこういった暫定行政指導でなくて、規則でどうするかという問題は、現在高圧ガス審議会において検討中でございまして、ここ数カ月のうちに科学的な公正な結論が期待されるところでございます。  問題は、地元におきましてただいま先生御指摘のような不安がございます。工場外の問題は、現在の高圧ガス取締法によりますと知事の権限になっております。したがいまして工場外の問題は、高圧ガス取締法では法域外になっております。一般的な知事の仕事の範囲内の問題としてすでに扱われておりまして、現在の問題につきましては、地元の希望に従いまして土地区画整理事業という形で、現実に千葉県庁のほうで市と一体になって具体的に進めておられる状況でございます。移転の地籍の測量だとか代替地の選定だとか、あるいは暫定的な居住先の選定といったような問題が進んでおります。私どもといたしましても、化学工場の周辺の住民の方々の不安解消には常に重大な関心を持っておりまして、自治体及び建設省に対しまして、積極的にそういった意向が早く実現するように働きかけてまいっておりますし、さらに企業に対しましても、地元と融和するという見地から、極力協力するように現在までも、さらに今後とも指導する所存でやっております。こういう方法でチッソのケースにつきましても、千葉県庁それから建設省に対して協力要請をしてまいった状況でございます。
  252. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 こうした事故を起こした場合、工場側、事故を起こしたほうの側は、端的にいうと加害者ですね。そうすると、そこに住んでいた住民というのは被害者になるわけです。こうした場合、移転費用とかそれにかかる費用というのは加害者が出すというのが、これは事故発生源であるし当然だと思います。そういうような考え方は通産省にありませんか、加害者が出すべきであると……。
  253. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 爆発あるいは火災によります付近住民の方々に対します加害の態様でございますが、家が焼けたとかそれからそれが直接原因でけがをしたというふうな分につきましては、明らかに加害者でございますから、一〇〇%の責任企業側にございます。ただ非常に心理的に不安を与えたということだけでもって、この移転費用を企業が全部見るというふうな形のものではないと考えております。  一般に、化学工場の周辺に工場設置と前後して、あるいはその後におきまして、人家が立て込むというケースがかなり全国で見られるわけでございます。そういった状況が、したがって爆発を契機にして不安問題が起きるというふうなケースもございますが、そういう場合は通常、県あるいは市町村等自治体においてどうするかというふうに問題を扱っておられまして、その際に、企業も地元と融和していくという見地から、可能な限り協力申し上げるというふうな形でございます。私どもも、そういう形における強力な行政指導をいたしておる状況でございます。
  254. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 熊本の知事が来て、三木環境庁長官とチッソのことについて話し合って、チッソは金がないから国で立てかえてやるということをはっきりと新聞で発表になっている。これはそうですか。
  255. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 いまの先生御指摘の問題は、熊本のチッソの水俣湾しゅんせつ問題にからむ問題かと思っております。(金瀬分科員「ヘドロ処理だ」と呼ぶ)はい。この問題は、実は環境庁が所掌してやっております。私どものほうはまた聞きでしか存じ上げておりませんが、三木長官が最近見えました地元の漁民の陳情団に対しました御返事といたしましては、三月中にこの知事と会って決着をつけるというふうな形でお答えになったというふうに聞いております。
  256. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 これ、同じチッソ、同じ工場ですよ。千葉のチッソ工場も熊本のチッソの工場も同じ会社ですよ。一方は水銀を出す、要するに国でめんどうを見るというんでしょう。一方は全部県や市費でやれ、これはおかしいじゃないの。同じ工場ですよ、経営者は同じだ。ですから、これは移り住んできたんじゃなくて、昔からここへいるところへ、移り住んできたのはチッソのほうだ。住民が移り住んできたんじゃない、チッソが移り住んできたんだという。あなたのお考えはたいへんおかしいよ、そういうことでいうならば。そう思いませんか。
  257. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 水俣湾しゅんせつに伴います費用につきましては、県なり国がかわってめんどうを見るというふうな話があったというふうに、ただいま先生のお話ございましたが、私どもはそういうふうに聞いておりません。
  258. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 これはチッソが払うのが当然だけれども、チッソに金がないので国が立てかえるとはっきり発表していますよ。立てかえじゃないの、テレビでもちゃんと言っている。
  259. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 その問題は、私ども所掌外のことでございますが、私どもが事務的に向こうの事務方から聞いておりますところでは、そういうふうには聞いておりません。
  260. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 新聞にはこう書いてありますよ。三木長官と沢田知事が会って、それで工事は県がやるけれども港湾局に委託してやる。それで費用はチッソの工場で出す。その出す間のめんどうは国で見るといっている。そういうふうにはっきりいっているよ。
  261. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 現在のチッソの経理状況からいたしますと、期間の収支からいいましても赤字でございます。さらに五井工場がかせぎ手でございますが、これが爆発で長くとまっておるというふうなことから、なお一そう悪い。したがいまして、現在の金融の仕組みからいたしますと、しゅんせつの費用をチッソが出し得る状態だとは考えられません。そこで、しゅんせつに伴います費用の責任は主たる原因者である——あるいは唯一かもわかりませんが、主たる原因者であるチッソが負担すべきものである。これには主として負担すべきものであり、その根拠法規としては費用負担法あるいはその他の関係の公害諸法規があろうかと思われます。問題は、ただいま先生が御指摘のように、金がないので一時国もしくは県が立てかえるということでございますと、私は、そういう情報はいま先生から初めて伺ったのですが、もしそういうことだといたしますと、それは融資になるわけでございます。したがいまして、チッソの責任を国が立てかえたことにはならなくて、振りかえで受けたことになりませんで、つなぎの融資のめんどうを見たということかと思います。化学工場におきますそういった融資はやはりございまして、出光の工場の爆発を契機といたしまして、周辺に四十数戸の民家がございます。この移転問題が再び起こりまして、地元の市が中心になりましてその移転をはかる。その際、公害防止事業団あるいは建設省の緩衝緑地促進の助成費といったようなものを援用してそれを進める、こういうケースはございます。
  262. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 あなたの話を聞いていると、環境庁の話とあなたのほうの話が、同じ政府でたいへん食い違っているのですよ。総理大臣は同じだと思うけれども、非常に食い違っている。片方は確かに立てかえですよ。あなたは金がないと言っているけれども、興銀がついている。   〔羽田主査代理退席、主査着席〕 興銀が千葉のチッソに金を貸すときに、どういう貸し方をしているとか、貸した金をどういうふうに運転しているとか、土地売買でどういうふうなことをチッソがやっているとか、興銀の下請けである不動産屋がどういうことをやっているかということは、あらためて国会で問題にしようと思うけれども、あなたのそういう考え方はおかしいと思うんだ、これは明らかに企業責任だ。あなたの話を聞いていると、県と市が責任があるような話だよ。爆発した。そして近所の人がおつかなくていられなくなった。きょうの新聞にも出ている。五千世帯の人が要求すると書いてある。チッソから出てくるいろんな廃棄物でトタン屋根がみんな腐っちゃったと書いてある。はっきりきょう書いてある。そういう状況まで出ているんだよ。爆発だけでなくて公害も出ているし、大気汚染とかいろんなことが出ている。昔から住んでいる人は漁師ですよ。きょうの新聞にちゃんと書いてある。屋根にさわっているじゃないの。そういう状況であるから、これは当然加害者であるものが負担すべきなんですよ。加害者であるものが負担すべきであって、千葉県とか市は被害者でしょう。あなたの話だと、被害者が被害者に出すような話ですよ。それはチッソ擁護であって、住民追い出しと同じことだと思うのです、あなたの話を聞いていると。チッソという工場をあなた方は守る、住民を追い出すことを市とか県に強制するような話だ。これについては、時間がないので、あとでまた論議したいと思いますが、あなた方も環境庁その他と、熊本県と千葉県と同じ会社ですから、どういうふうに取り扱うべきかということについては十分検討してほしいと思います。  それから、先ほどあなたのほうから話があった、私が質問しようと思ったら、保安距離の問題について二十メートルということでいままでやってきたわけですね。今度は、新しい施設については二百メートル、それから既存のものについても百五十メートルになるように指導する、これは間違いございませんね。
  263. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 すでにこの行政指導方針は昨年秋に方針をきめまして、実行に入っております。問題は、これは省令できめるべき事項でございます。具体的に省令でどうきめるかという問題につきましては、ただいま申し上げましたとおり、高圧ガス審議会において検討中でございます。
  264. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 これは昭和二十六年に制定したのですね。そうすると、終戦直後ですね。そうすると、新鋭工場とかコンビナートとかいう工場のなかったころですよね。そうでしょう。全然なかったころでしょう。そうすると、その間ずいぶん爆発事故とかいろんなことがあった。いままで何で二十年間もこの法律を改正しなかったのか。怠慢と言わざるを得ないのですよ。いままでの二十メートルの法律では、竹やりで戦車に向かうような法律だ。そうでしょう。おかしいと思うけれども、いままでどうしてやらなかったのか、改正しなかったのか、その点についてお伺いいたします。
  265. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 高圧ガス取締法の制定は、ただいま御指摘のとおり、昭和二十六年でございます。日本石油化学コンビナートができました第一号が昭和三十三年でございます。したがいまして、それ以前の法律に基づく保安距離ではないか、したがいまして、コンビナートのような規模が大きくなりまして危険が累積化してくるようなものを規制する距離ではないという御指摘でございますが、実はコンビナートというものにつきましての安定的な保安の見解がなかなか定まりません。特に、当初は御案内のようにほとんど導入技術でございました。したがいまして、自主的な保安規則を別途通牒によって定めまして、それに従って実行していく、こういう形をとったわけでございます。  結果として申し上げますと、省令規則が二十メートル以上というふうな形にはなっておりますけれども、事実は百メートル以上あるいは千数百メートルというふうな形になっております。ただし、昨年の夏、秋にかけましての大きな事故を契機にいたしまして、とりあえず少しでも実体的な解決をはかろうということで、省令によらないで、行政指導という形で、この保安規則を、ただいま申し上げましたように、エチレンセンターの場合でございますが、新増設が二百メートル、既存のものは民家との距離で約百五十メートルというふうな方針をきめて、実行に入ったわけでございます。  いずれにいたしましても、保安距離問題は、企業が付近住民に対して、企業サイドとして、爆風圧とかあるいは輻射熱等々で災害を与えないためにきわめて重要な問題でございますので、目下そういう趣旨に即して、科学的に中立的に公正な結論を出すべく審議会で検討願っておる状況でございます。
  266. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 保安距離の問題は、なるべく早い機会にひとつ法制化して出していただきたい、さように強く要望いたします。  それから、これはほんの小さい問題ですが、コンビナートを形成する大型プラントの許可手数料、工場の許可手数料ですね、これは九千円ですか。これは間違いありませんか。
  267. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  268. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 そうすると、LPガスの小さな販売店の開設手数料というのがあるのですが、これが一万一千円ですよ。そうなってくると、これは問題は小さいことですが、こういう小さいことまで大企業通産省が癒着しているということの一つの証明になるわけだ。ほんの小さいLPガスの許可が一万一千円ですよ。チッソのような大きなコンビナートが九千円、非常に矛盾しているというふうに思われますが、これについてはどうですか。
  269. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 手数料問題につきましては、いろいろな段階で手数料がかかっておりまして、事業許可、あるいは製造設備の完成検査、あるいは販売所の開設にあたりましての許可等々、いろいろな段階がございます。したがいまして、同じ段階で比べてみないとなかなか、はたして差別的であるかどうか、公正かどうかということは判断がつきかねるわけでございます。  ただいま御指摘のLPガスの販売店の場合でございますが、これは法律で最高一事業当たり四万円になっております。高圧ガスでは六千五百円、これは法定の上限でございます。したがいまして、この法定された上限で比べますと先生の御指摘のとおりでございますが、実際は販売所ごとに手数料をとるというふうな形になっておりまして、それで比べてみますと、これは政令できめるわけでございますが、LPガスの場合は六千円、それから高圧ガスの場合には五千円というふうな形になっております。  それから、手数料のきめ方がアンバランスでございますが、このアンバランスは、一がいに中小企業に片寄って重いというような形ではございませんで、実は製造設備の完成検査という次元で比べてみますと、高圧ガスは四千円でございますが、ガスが七万円、電気が十万円というふうな形になっております。むしろただいま検討しております高圧ガス取締法の保安体制等々の扱い方の改善点といたしまして、この手数料につきましても、御指摘のようなアンバランスが見られますので、改めたいというふうに考えております。
  270. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 これはこういう大型のコンビナート工場の中間検査なんか、無料になっているのですよ。いろいろこまかく出していくと、明らかに不公正だということがわかるですよ。それから自動車が一番高いですよ。自動車の車検は十万円以上かかっていますよ。自動車の車検が、保険とかいろいろな手数料を加えると十一万円で、工場が九千円というのは、これはいかにもおかしいというふうに一般の人は感じますので、この点については十分御検討をお願いしたいと思います。  それから、時間がありませんので、最後にもう一つ、東京湾の袖ケ浦地区に東京瓦斯がLNG基地をつくっていますね。この基地の安全性についてお伺いしますが、一昨年ですか昨年ですか、ニューヨークで大きな爆発事故が起きたわけですね。これは御存じだと思いますが、管轄違いますか。ニューヨークで大きな爆発事故が起きたのを知っていますか、わかりませんか。
  271. 岸田文武

    ○岸田政府委員 一昨年、御指摘のような事故があったと聞いておりますので、私ども調査団を派遣いたしております。
  272. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 大きな事故が起きた。いま袖ケ浦地区にたくさんガスが入ってきている、そういうことで、地元の人がチッソが爆発してから、あのガスタンクが爆発したらどうなるのだということで非常に心配しているわけですよ。だからあの安全性について絶対だいじょうぶならだいじょうぶ——あそこの油は地元で使ってないのです。全部東京に運ばれてきているのですよ。今度は海底を通して東京に揚げる、根岸に揚げるとか、あるいは陸上を通って全部東京都にきているのですよ。千葉県で使っているガスじゃないのですよ。東京で使うガスのために千葉県側が被害だけ受ける、おかしいじゃないかという地元の人の声もありますので、この安全性についてだいじょうぶなのかどうかということをはっきりひとつ伺いたい。
  273. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま袖ケ浦地区ではLNGのタンクがすでに三基稼働中でございます。なおそれに加えまして二基が建設中でございます。またその基地を中心といたしましてLNGの輸送導管の建設が進められておりまして、一部稼働中という状況でございます。これらの施設につきましては安全性ということを特に私ども留意をいたしまして、ガス事業法に基づく各種の検査を実施いたしておるところでございます。具体的内容は、ガス事業法によります技術基準に適合しているかどうか、あるいは主任技術者の選任あるいは保安規程の確認、これらの手段を通じて安全性の確保に留意をしておるところでございます。
  274. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 時間がありませんので最後に大臣に質問いたしますが、千葉県の火力発電所はほとんどガス発電に切りかえる準備が進んでおるし、ほとんどまた終わっておるわけですが、約九百万キロが全部終わりますとガス発電になるわけですが、その意味におきましては通産省の努力あるいは企業の努力によって公害が少なくなる、亜硫酸ガスなりあるいは窒素酸化物が少なくなるということについては敬意を表する次第ですが、この場合に、資源確保という意味でガスが十分確保できるのかどうなのか、そのことについて、大臣は世界各国を回ってガス資源なり石油資源の確保のために努力されたようですが、このガス資源の確保ということについてはどうなのか、御説明願いたいと思います。
  275. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま御指摘のように、無公害という見地あるいは資源の多様化という観点あるいはカロリーの見地から、ガス事業及び電気事業につきましてLNG化の計画が進められております。これらの資源の確保につきましては、たとえば東京瓦斯の場合でございますとブルネイのLNG、これらにつきまして長期契約を結んでおりますし、また今後の問題につきましては、ダス島のLNGの導入計画もかなり現実化してまいっております。このように、これから逐次LNG化を進めていくために必要な原料の確保につきましては、長期契約の形で現地と話し合いを進めながら安定的な供給確保できるような準備をいたしております。
  276. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 この中で田中総理がインドネシアに行ったときに、政府が窓口になってガスを日本の国に輸入するということをきめてきましたね。それは御存じですか。その点についてどうですか。
  277. 山形栄治

    山形政府委員 インドネシアのLNGの導入につきましては、御指摘のとおり先般総理がインドネシア訪問の際に調印をしてきたわけでございます。
  278. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 そのガスはどういう形で入るかわかりませんが、地域的に見て一部分だけにそのガスが入るようになっていますね。それは御存じですか。
  279. 山形栄治

    山形政府委員 お答え申し上げます。  このインドネシアのLNGは、インドネシア側からいたしましても、長期に一定数量の確保というのが向こうの条件に相なっておりまして、先般来引き取りにつきましては関西電力、中部電力、大阪瓦斯、九州電力、新日本製鉄等が一応長期的にこれを引き取るという前提で、年間大体七百五十万トンだったと思いますが、長期的な契約の前提で話を進めたわけでございまして、その意味で先生の御質問に応じているかどうかわかりませんが、一応長期引き取りの相手をきめながら具体的な計画を進めているという次第でございます。
  280. 金瀬俊雄

    金瀬分科員 このガスはどういうわけで関西だけに持っていって関東のほうに持ってこないかということを質問したいわけですが、別に政府のほうにいま発表できない事情があればけっこうですが、これは政府が窓口になってやるとすれば、一地域に限定したような輸入のしかたとか、あるいはそれの利用のしかたということについては相当疑問があるということを言っている人が多いのです。だからその点については、時間が参りましたのでここでお答えくださらなくてもけっこうです。あとで文書でなぜ輸入のしかたが一方的に偏しているかということについて御説明いただきたいと思っております。この点は文書でけっこうです。  時間が参りましたのでこれで打ち切ります。
  281. 湊徹郎

    湊主査 これにて金瀬俊雄君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子君。
  282. 土井たか子

    ○土井分科員 私がここに持ってまいりましたのはトイレットペーパーの包装袋でございます。ひとつ参考までに持ってきてみました。この包装袋にはJISマークがございます。通産大臣、ひとつごらんいただいてまずお聞きしたいことがあるのです。  この包装袋には百十四ミリ掛ける六十五メートル、四ロール、二枚重ね三二・五メートルとございますが、このトイレットペーパーはいま幾らで売られていることが通産大臣のお立場からするとよいとお考えでありますか。
  283. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たしかあれは二つあって、二百二十円と二百四十円と二つきめたと思いますが、それは二百四十円の口じゃないかと思います。
  284. 土井たか子

    ○土井分科員 これは二百四十円です。やはり二百四十円で売っている店でこれは買い求めたわけでございます。  ところで通産大臣お伺いしたいのですが、これが百十四ミリじゃなくて百七ミリであって、六十五メートルじゃなくて六十一メートルである場合は値段幾らになるでしょう。
  285. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたように、標準品目としては六十五メートルのものをとっておるわけでございます。したがいまして六十一メートルというのは標準価格違反でございます。
  286. 土井たか子

    ○土井分科員 この標準価格が出まして、それからあといろいろな問題が渦巻いているわけですが、特に消費者の立場からしますと、ここに表示してあるとおりの中身であるかどうか、それからさらにやはり何といっても問題になるのは価格でございますから、価格というものがほんとうに小売りの店先で守られているかどうかというのは関心の的なんですね。それで消費者がそれぞれ手分けをして、あれこれ調べるということがいまあっちこっちでございます。特に自治体でも、このことに対して熱心に取り組んでおられるところはかなり詳しくいろいろな具体的な事例に当たりながら調べておられます。兵庫県に生活科学センターというのがございます。通産大臣も御承知だと思いますが、ここで過日、これは二月の一日に標準価格が出て以後、トイレットペーパーの中身をいろいろと現物に当たって調べるという作業が進んでいるのです。その中で一つ判明をしていることをきょうは申し上げて、通産省とされてはこういう問題に対してどのように今後お考えになるかをひとつお聞かせいただきたいのです。よろしゅうございますね。  それで、大体兵庫県下の店について調べをいたしまして、一般小売り店、スーパーに当たってみたところ、大体二十点を抽出してまいりましてそうして調べました結果、ここに書いてあるのが五十五メートルという場合、五十五メートルあるかどうかというのを現物に出たって調べてみたのです。五十五メートルと書いてあるのが六十メートルあったら、これは大歓迎であります。五十五メートルをこえること、幾らこえたってこれは大歓迎なんですが、調べてみて五十五メートルの表示に達しない、つまり五十一メートルくらいしかないというのまで含めて、中身がこの表示とは違う。それもよい意味で違っていればいま申し上げたとおりいいのですよ。表示に偽りがあるということがはっきり言い切れるのが二十点のうちの五点。全体からするとこれは二五%です。たいへんに私はこれは大きな数字だと思うのですよ。こういうことが事実具体的になっているのです。判明しているのですが、こういう問題に対してはどういうふうにお考えになりますか。
  287. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 きわめて遺憾なことと思います。したがいまして、さらに監視を強化すると同時に、何度かにわたって一斉調査を実施する。その結果不届きなものがありました場合には、厳重に警告すると同時に、その店舗名等の公表を考えております。
  288. 土井たか子

    ○土井分科員 いまこういうトイレットペーパーなんかはメーカーで製造して、そして卸元から小売りに行くまでの流通過程を通じて消費者の手に渡る。その間、表示に偽りあるかないかというのはどこでどういうふうにお調べになるのですか。
  289. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 現在も計画いたしておるわけでございますが、試買テストなるものを実施したい。現在計画中のものは、この三月の八日から十二日にかけまして全国の通産局を使いまして、トイレットペーパーについてはそれぞれ三十点、ちり紙については十点、これは抜き取り、急襲的に試買いたしまして、関係機関と申しますか、工検あるいは消費生活センターその他の権威のある信頼の置ける公共機関にテストを依頼いたしたいと思っております。
  290. 土井たか子

    ○土井分科員 全国でトイレットペーパーを製造しているメーカーというのは大体三百十六社くらいですね。大手は十四社くらいでしょう。
  291. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ちり紙を含めまして大体全国で二百社程度かと思います。そのうち大手筋は御指摘のありましたように十社前後と記憶いたしております。
  292. 土井たか子

    ○土井分科員 ならば、それはメーカーの段階で、それくらいの数ならば調べがつくのじゃないでしょうか。いままで標準価格というのをお出しになったのは、これは通産省の行政措置としてなされているわけですから、やはり標準価格ということをお出しになる場合の標準品に適合しているかどうかということに対してのお調べは責任がある問題なんですよね。それが何としり抜けであるということだと思います、いまも申し上げた事例というのは。  それだけでなしに、なおかつ、これはあげていきますといろいろ出ますよ。標準価格にきめられる際に目安重量というのがございましょう。目安重量というのも調べてみますと、目安に足りなかったというのが同じく二十点中六点もございます。それからJISマークが付してあるわけでございますから、JIS規格に合っていなければ困るのですね。このJIS規格というのは、これははっきり規格の中身がきまっているわけでありまして、長さ、幅、坪量、張りの強さ、吸水度、白色度等等あるわけですね。これについても少し検査を進めてみますと、二十点のうち半分以上がJISマークを付しながらJIS規格に合わないという事実があります。大きいですよ。こうなってまいりますと、これは消費者の立場からすると、JIS規格というのは信用マークでございますから、したがいまして、JIS規格があるものとないものと同じ価格で売っている場合には、JISマークのついているほうに手は参ります。そういうことからしますと、いま申し上げたような事例からすれば、一体何のためのJIS規格かということにもなってくるわけでありまして、いま先ほど申し上げた表示のメートルに足りない中身を売っていたということについては、申しわけございませんとおっしゃって、即刻やはり全国に網を張ってお調べになる模様ではありますけれども、もう一つ、それと同時にJIS規格について、いま現にどういうふうなこれに対しての検査がなされているのかということもあわせてお聞かせいただきたいのです。
  293. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 幾つか御指摘になったわけでございますから、順を追ってお答えいたします。  初めに流通段階のみならず、メーカーに立ち入って表示を調査したらどうかという御趣旨でございます。そういう方法も一つの方法かと思います。ただ、そういった段階で調べる以上に、流通段階で表示を誤って出しておる、こういった場合のほうが消費者に対する影響度が高いと考えますので、先ほどお答えしたようなことで十分に監視を続けてまいりたい、かように考えます。  それから第二点の重量の不足の点につきましては、これは先ほど先生も御指摘になりましたJISの問題といたしましては、長さ、重量あるいは吸水度、白色度といろいろな規格を書くことになっております。しかし、今回トイレットペーパーとちり紙につきまして標準価格を設定するにあたりましては、いわゆるそういった紙の性格としてエセンシャルなもの、本質的なものをJIS規格の中から取り出しまして、その代表的な品種を選び、標準価格を設定いたした、かようなことになっておりますが、それに関連いたしまして、重量につきましては、県並びに府県当局に対する指導通達の中に目安量も書いてございますので、それに従って指導監督をさせる、こういう手はずになっております。  それからJISについての問題でございますが、御指摘のようにJISにつきましては工業標準化法、別の法体系がございまして、その法律に基づきまして、わが省の工業技術院で随時立ち入り検査あるいは試買検査等をやることにいたしておりますし、かたがたJISにつきましては、表示許可工場制度をとっておりますので、悪質なものについては表示許可を取り消すといったような厳罰主義をもっても臨み得る体制になっておりますし、その方向で工業技術院当局が行政に当たっておると私は信じております。
  294. 土井たか子

    ○土井分科員 この重量の問題については、通達で各府県に対して行政指導をなすったというお答えでございますか。行政指導を受けられた自治体のほうは、重量検査をやって、重量が合わなかった節は、これに対して何らかの措置を講ずる権限ございますか。ないと思うのですよ。それは、重量というものはこういうふうにきめられておりますというだけの意味しかないと思うのです。それをもって県のほうはどうこうしろといったって、権限がないのですから、何とも意味のない行政指導だと思うのですね。通産省のほうからもう少しこういうふうな点についてやはり抜本的に標準価格をおきめになる、これは行政責任があるわけですから、また現にもうおきめになった行政責任があるわけですからね。あとそれは価格の問題は言うまでもありませんが、価格をきめるに際して中身を問題にしておきめになっているわけですから、中身がそれに適合しているかどうかということに対しての監視、監督は十分にされなければこれは困るのです。全然この辺がなされてなかったということの一語に尽きると私は思う。したがいまして、この点についての、これからどういうふうにこの問題に対して対処なさるのであるかということをもう一たびお伺いしたい。
  295. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のとおり重量につきましては指導通達事項にいたしておりますので、直ちに処分という問題にはならないかと思います。ただし、そういった事例がある場合におきましては、本省等に連絡の上その氏名を公表する、あるいは他の店よりもひんぱんに立ち入り調査をするといったようなことで社会制裁的な立場でもって対処していきたいと考えておりますし、かたがた先ほど申し上げました試買テストによりましてそういった実態を把握してまいりたいと考えております。
  296. 土井たか子

    ○土井分科員 これは試買テスト、サンプル抽出テスト等々いろいろございましょうが、これに対してどういうふうな機構を通じてどれだけの人員がどれだけの予算でお当たりになるということでありますか。
  297. 村岡茂生

    ○村岡説明員 試買テスト、一般論で申し上げますと、通産省の消費経済課というところに予算をプールしておりますが、年度間でほぼ四千万円程度の予算を持っております。試買テストの実行方法でございますが、いろいろなやり方がございますが、そのおもなやり方を申し上げますと、各通産局の職員がメーカーその他に黙った形で抜き打ち的に小売り店に買いに行きまして、それを資料として予定された数だけ買い集めます。それを工業品検査所あるいはその他の公共的な検査機関においてテストをいたします。そのテスト結果の事後措置でございますが、これはすべて公表をいたすとともに、必要がありますれば当該製品の回収その他の措置を命じております。
  298. 土井たか子

    ○土井分科員 なかなかここでの御答弁は巧みなんですがね。実際問題なかなか機能的に動かないところが問題なんですよ。そこへもってきて御答弁では確かによい御答弁を私たち聞くわけでありますが、実際問題それが消費者の立場からすると自分たちの生活にじかに響くような動き方をしないところが問題なんですね。今回、いままでにない画期的なそれはやり方だというふうに通産省としては自負されるやり方であるかどうか、その辺いかがです。
  299. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 画期的なものとして自負するかどうかということは別といたしまして、いままでにも試買テストというものは実施しております。ただ、今日の情勢というのは過去の、当時に比べましてきわめてシビアな状況にございますし、また御指摘のように消費者も非常に物価高に悩んでおるわけでございます。したがいまして、従来も採用した試買テストではございますが、この回特にそういった消費者サイドに立って試買テストの趣旨が十分に生かされるように、またそれが行政経験に反映されるように覚悟を新たにして対処いたしたいと考えております。
  300. 土井たか子

    ○土井分科員 いままでにも実行されてきた試買テストをおやりになるわけでしょう。いままでにもなさっていた中で、いま、先ほどから私が申し上げたような事例が現にあるわけですから、いままでと同じようなやり方じゃだめだということがここで申し上げることができると思うのです。そこで、今回思い切ったやり方でひとつやっていただかなければ困るわけですが、通産大臣、もしその結果これは不良品と申し上げていいと思いますよ、表示に合わない、まあ表示からいうと不当表示ということになると思うのですがね、そういう製品というものが具体的にあがってまいりますと、それに対しての措置をどうおとりになります。
  301. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはそれ相応の品物による制裁措置を講じなければならぬと思います。情勢によってはJISマークをはずさせるとか、また情勢によっては会社を呼び出してしかりつけてその矯正を命ずるとか、また情勢によっては不当にもうけた金を返させるとか、いろいろその場合その場合に応じてやる必要があると思います。
  302. 土井たか子

    ○土井分科員 まだまだそれは標準価格というものをおきめになった立場からすると、どうもそれば手ぬるいということが私たちからすると言えると思うのですが、ただしかし、現にこれはトイレットペーパーでも表示に違反した中身を標準価格を守っておりますという顔をして売られておるという事実があるわけですから、消費者からすると、よほどこういうことに対して調べようということでないと気がつかない問題ですよ。しかし、これは小さなことのようであって、大きな目で見てまいりますると、いまの標準価格そのものが一体どういうふうな問題をいま消費者の生活の中に呼び起こしていったかということを物語る氷山の一角だと思うのです。現に何種類とあるトイレットペーパーの中に標準価格をわずか二つ設定なすったわけですね、二百二十円と二百四十円という。この二百二十円と二百四十円という標準価格に合致していればよいということで、中身は合致していない商品を売るということになってくれば、これはそういう点からすれば、私はいわば実質的な便乗値上げだと思うのです。実質的な意味便乗値上げだと思うのですよ。したがいまして、単にJISマークをはずすとか、メーカーを呼びつけてきつくおしかりになるとかいうふうなことじゃどうも済まないのじゃないか。やはりこれについては手きびしい措置を講じられる必要があると思いますけれども、こういう問題については、標準価格について責任をおとりになる通産大臣なんでありますから、どのようにお考えかということをお聞かせいただきたいです。
  303. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり何個それを売ったか調べて、そうしてその分だけ利益は出ているのですから、それを何かの形によって吐き出させる、消費者に還元することが非常にむずかしい場合には、今度ば五メートルも十メートルも長い商品をつくらせて、そうして同じ値段で売れ、そういうコンペンセーションをやれ、そういうことも考えられると思います。
  304. 土井たか子

    ○土井分科員 そういうふうな措置を講じられた場合には、ひとつ消費者にもはっきりわかるような方法もあわせて考えていただかないと困ります。それは通産大臣と業者との間でそういうふうに措置をいたしましたということだけを聞かされて、さようでございますかでどうも済まないように思いますから、ひとつはっきり消費者の目にあざやかにわかるようにそういう善後措置というものを明示していただきたいと思いますね。それにはいろいろな方法があろうと思いますが、ひとつそのことを申し上げたいと思います。  さて、この標準価格の問題なんですが、通産省のほうが公表をなすっているところによりますと、この標準価格というものは、まず標準的な製造コストを積算して、そうしてメーカー出し値をきめて、これに卸と小売りの流通マージンを加えて算定なすったというふうに理解いたしておりますが、これに偽りございませんですね。
  305. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 およその線御指摘のとおりでございます。
  306. 土井たか子

    ○土井分科員 そこでこういうことによって閣議でいろいろ了解をされ、そうして決定をされたのは一体いつでございました。
  307. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 一月の二十五日と記憶いたしております。
  308. 土井たか子

    ○土井分科員 それは一月二十五日というのは閣議で正式に決定された日ですか、内定をした日ですか、いずれでございます。
  309. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ちょっといま手元に数字を持ち合わせませんが、閣議決定になった日と記憶いたしております。
  310. 土井たか子

    ○土井分科員 そうしてその閣議決定を二十五日になすって、二月一日からこれを実施するということで公にされた。そのときに、全国にある小売りの方々は、必ずその線でやっていけますというふうに考えられていたとお考えですか、いかがですか。
  311. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 それ以前に高く仕入れたものについては自信がなかったろうかと思いますが、今回の標準価格決定にあたりまして、当方といたしましても、メーカー出し値等の計算もいたしております。そういった価格で出る限りにおいては、小売り商でもその価格を順守し得るものと考えております。
  312. 土井たか子

    ○土井分科員 ある新聞社が全国にわたって小売り店についてこの調査をしてみたのです。アンケート方式で調査をしてみたわけですね。そうしますと、全国まんべんなく四十七小売り店にこれは無差別で抽出して当たってみた結果、そのうちの十三が、守れない。中にははっきり、困難だ。もう一ついくと、もう売らないというのまであるのですよ。これはたいへん大きな問題です。二百二十円、二百四十円は守れないときっぱり言っているのから、もう売りませんというのまであるんです。こういうふうな事情について、こういう標準価格をおきめになってからあと、実態をどの程度調査なすっているか、お聞かせいただきたいのです。
  313. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま申し上げましたように、十三軒の人たちが、守れない、あるいは困難、あるいは販売しないといったような感想を漏らしておりますのは、その以前に、故紙等の値上がりから、メーカー出し値あるいは最終卸価格が非常に上がっておる。その上がっておる価格を頭に置いて判断なされたのではなかろうかと思います。  当方といたしましては、先生御承知のとおり、小売り価格だけを標準価格として設定いたしたわけでございますが、反面、そういった小売り価格が標準価格の線で守り得るように、メーカー出し値あるいは最終卸価格等についても指導いたしております。  具体的に申し上げますと、小売り業者が標準価格で十分販売し得るように、少なくとも最終価格の一五%のマージンが第一線の小売り商によって確保されるように、卸売り等も指導いたしておるわけでございます。そういったところから、その後、現実に小売り商について、守れるか、守れないかといった調査は個別にはなしておりませんが、先日、二月二十五日にも、全国一斉調査をやっておりまして、これは小売り店のみならず量販店も含めまして、価格なり表示等の順守状況について調査いたしておるわけでございます。一部違反しておる者もございましたが、そういった者に対しては強力に行政指導いたした結果、現在ではそういった人たちも標準価格を順守しておるもの、かように考えております。
  314. 土井たか子

    ○土井分科員 これはもう全国的な現象なんです。ちょうど一月二十五日に閣議で正式決定がなされる以前、私、先ほど質問の中で、通産省が標準価格を出される前に、積算基礎としてどういうことを置かれていたかということをお尋ねし、確認をしましたね。その過程の中で、標準的な製造コストというのを積算してメーカー出し値をおきめになるくらいの段階のころからであろうとおぼしき時期から、小売り店に対しては、卸元からおろされるトイレットペーパーの値がずっと高くなっていっているわけです。ある東京の小売り店の方は、一パック四ロール二百八十円で品物を持ってきたと思ったら、数日後にはもう三百円、メーカー出し値が上がっているとしても、問屋の卸値のつけ方はでたらめ過ぎやしないかという発言がございます。また私自身のところにも電話やはがきや手紙のたぐいが小売りの方から参りましたが、私、ここにきょうは参考までに一つ手紙を持ってまいりました。そこでどういうことを言われているかというのを少し原文に即応して御披露したいと思うのですよ。   トイレットペーパーが十一月からパニック状態になってから我々小売業者は消費者が望まれる量も確保できず、入荷しても少々で、しかも卸価格(原価)が暴騰し)「この値段ではお客さんに気の毒で売られへんわ」なんて卸業者に文句をつけても「メーカーが上げてくるもん仕方おまへんわ。よろしかったらもって帰りまっさ」という売手市場の状態で売ってもらった状況でした。   一月に入りようやく紙製品の需給が落着したかと思うと入荷のたびに卸価格が上り、中旬以降になるとうそのように注文もしないのに入荷があり、丁度一月二十五日と記憶しているんですがNHKテレビでトイレットペーパーの標準価格決定というニュースを聞いて、はじめて最近入った紙類の価格(標準価格より高い原価)は「どないなるんやろ」と茶の間で主人が申しておりました。   考えて見ますと標準価格決定というニュースが紙製品メーカーないしは一次卸問屋ぐらいは前もってわかっていたように思うのです。だから中旬以降から発注もしないのに配送されてしかも現金拂いです。   あすから標準価格実施という一月三十一日に一月中に入荷した価格が標準価格より高いので問屋に連絡すると「しょうまへんな、メーカーにも話してますがどないなるやわからしまへん、みな損してでも標準価格で売っとくなはれ、こっちもかないまへんわ」という回答であぜんとしたわけです。   せめて標準価格までの差額(原価で販売)を問屋ないしはメーカーでもってくれてもよいと思うのは無茶でしょうか。全部引取ってくれといってもそうはいかないということで、メーカ一、問屋はそれなりに利益を上げていますが、我々末端の業者だけが原価で販売するならまだしも赤字(一個四十五円から百三十円)で販売するということが納得がいかないのです。   店に来られるお客さんも一月から始まった標準価格が「安うなりましたなあ」と喜こんでもらっていますがこちらは多く売る程赤字です。 こういうことが書いてあるんですよ。これは小売りの方が損をしないように売ろうとすると、消費者は高い値のトイレットペーパーを買わなければなりません。きめられたとおりの価格で小売りが売ろうとすると小売りに赤字のしわ寄せがまいります。一体この間はだれがこの赤字を補てんするということになるのか。これはこの一軒だけじゃございませんで、実はこれはもう消費者とじかに結びついている零細な小売り業者の方々からの声であります。ひとつこの点についてどういうふうに措置されるかということをお尋ねいたします。
  315. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になった中で、昨年末にはさような事態も遺憾ながらあったかと思います。と申しますのは、色上だとか模造といったいわゆる故紙でございますが、これが二倍から三倍と非常に高くなってまいりました。その結果、製品も高くなる。われわれがこういったトイレットペーパーにつきまして標準価格の設定を急いだというのも、そういった製品高をできるだけ早く押えたいといった気持ちから作業をやったわけでございますが、昨年の暮れには御指摘のようなことがあったと思います。  ただ、二番目の問題といたしまして、注文もしないのにメーカーのほうからあるいは卸問屋のほうから小売り店に対していわゆる押し込み販売をしてきたといったようなケースも私たち耳にいたしております。あるいは、高値で仕入れたために小売り店がお困りであろうということも耳にいたしております。そのそれぞれにつきまして、たとえば注文もしないのに押し込み販売してきたものにつきましては、ケース・バイ・ケースに値段を下げさせて返済させるように指導いたしております。それから、押し込みと申しますか、注文をした結果入ってきておった。ところが、二十五日以降二月一日の標準価格実施時点までの間に高値で仕入れてしまったといった小売り店につきましても、これは一般的に申し上げますと、商業取引でございますから、当事者間で話し合いをすべきだという理屈もあるかと思います。ただ、特に小規模零細な小売り店については、そういった口頭だけの話では解決がつかない、さようなこともございましたので、私たちといたしましては、卸問屋あるいはメーカーに対しまして、そういった高値で仕入れた零細小売り店の立場に立って、その応分の負担を自分たちでもいたしなさい、かようなことで指導をいたしたわけであります。  一つ例を申し上げますと、これはある一部でございますが、一月の二十一日から一月の三十日まで発送したものにつきましては、一月二十一日にさかのぼりまして、標準価格ベースでの仕入れ価格に改めさせる、さような指導をいたしておりますので、そういった対象になった小売り店については、先生御指摘のような問題は一応私たちとしては解決しておるものと思っておりました。ただ、まだそういった対策の対象に入っていない人たちに対しましても、今後ともそういった方向で指導してまいりたいと考えております。
  316. 土井たか子

    ○土井分科員 ずいぶん漏れているのがあるのですね、現にこういう声でございますから。いま業者に対して指導なすったということでございますが、いままでどういうふうなお話し合いで指導なすったんでしょうか、それとも通達の形式をもって指導なすったんでしょうか。
  317. 村岡茂生

    ○村岡説明員 具体的には和紙の連合会の役員とそれから各地域の代表者を通産省に招致いたしまして、こういう問題が発生している、ついては、先ほど局長が申し上げましたように、メーカー及び卸問屋相携えて、零細な小売り店だけでございますが、その在庫損というものを救済してほしいということを要望したわけでございます。したがいまして、通達、つまり文書による指示ではございませんでした。
  318. 土井たか子

    ○土井分科員 どうも口約束というのはとかく忘れられがちでございまして、特に紳士協定というのは、紳士によって結ばれた場合には守られるんですけれども、紳士でない人によって紳士協定が結ばれても、これは意味をなさないのであります。したがいまして、そういう点から申しますと、やはり口約束とかそれから御相談の上でということでは、徹底しないと思うのですよ。いままだ、こういうふうな手紙を出したり、はがきでいろいろ通告をしたり、それから通産省のほうも直にこういふうな申し入れを電話で何件となくお受けになっているはずでありますが、こういうことをおっしゃる方々は全体の中の一部であります。そういう点を考えますと、やはり徹底した行政指導というのはなされるべきじゃないでしょうか。その点からしますと、いかがでございましょう、少なくとも文書通達というのは——いろいろ形式が好きなお互い特性を持っているようでありますから、そういう点からしますと、こういうことがあるのにという客観的な証拠ともなるようなものをひとつはっきりさせていただきたいという意味も込めまして、この節、そういうことに対して要望したいと思うのです。
  319. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 通達による指示等も含めまして、できるだけ周知徹底の方法を前向きに検討いたしたいと考えます。
  320. 土井たか子

    ○土井分科員 どうもこれは役所用語らしいので、検討、検討というのが次々に出てくるわけですが、この節、するのならすると、はっきりお答えいただいて、私終わりにしたいと思います。
  321. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 通達いたします。
  322. 土井たか子

    ○土井分科員 はい、けっこうです。  終わります。
  323. 湊徹郎

    湊主査 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。  次に、岡本富夫君。
  324. 岡本富夫

    岡本分科員 最初に通産大臣に、石油価格の問題について、石油価格が上がるといろいろな物資に反映するのじゃないかということですが、端的に申し上げますと、石油価格の抑制は、原油が上がってきておるというわけで、大体めどとしていつまで可能なのか、通産省としての意見を伺いたい。
  325. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点はけさも御答弁申し上げましたが、なかなか影響も大きく、かつ、いま内閣及び自民党内部において調整中の問題でございますので、いつということをここで明言することは非常にむずかしいと思います。
  326. 岡本富夫

    岡本分科員 そこで、この石油価格について、原油はどのぐらいの程度のところを想定しておるのか。要するに入札でいままでのあれを見ていますと、十一ドルで入札したとかあるいはまた八ドルでしたとか、いろいろありますけれども、私は、アメリカの代替燃料ですか、オイルシェール、こういうようなのが大体八ドル見当で採算が合うということでありますから、そんなにむちゃくちゃに原油は上がらないのではないかという考えですが、原油を大体どのくらいのところに想定したコストをきめる考えをしておるのか、これについてひとつ……。
  327. 山形栄治

    山形政府委員 原油の価格につきましては、御存じのとおり、一月以降高い油が入っておるわけでございまして、これをわれわれとしましては通関の統計によりましてチェックし、かつ、一船ごとに、仕向け地といいますか、船積み地別に、油別に、これを現在集計いたしておるわけでございますが、二月の段階で大体バーレル当たり九ドル五十から十ドル程度の実績が確認されておるわけでございます。  いまお話しのオイルシェール等につきましては、先生御指摘のとおり、非常に技術開発が進みまして、一応のカロリー換算等をやりますと、一説によりますと八ドル五十とか十ドルというような話もございまして、それが油とのバランスの点であるということもよくいわれておるわけでございますが、何ぶんにもまだ世界的に技術開発もそう進んでおりません。それから、オイルサンド及びタールサンドにつきましては、この処理したあとの残滓の問題等、油に比較しまして、いわゆるエネルギーとしての効率の面で劣る点もあるわけでございまして、現時点においては、そういう開発が進んでない段階でございますので、私のほうの見方といたしましても、油がやはり当面はエネルギーの大宗であるという考え方に立っておるわけでございます。
  328. 岡本富夫

    岡本分科員 これは新聞で報ぜられたのでありますけれども、いま日本石油業者が八ドル台で入札をするように申し込んでおりますね。かりに九ドルから十ドルというようなところを想定した場合、それより安い原油が入った場合は価格を下げさすことができるのか。この点についてひとつ念を押しておきたいと思います。
  329. 山形栄治

    山形政府委員 いま先生のお話に出ましたのは、おそらくクウェートの入札の問題かと思うわけでございますが、産油国はいわゆるDDオイルの入札をとっておりますが、ごく最近まではこれが十七ドルとか、場合によっては二十二ドルという高値が出ておったことは事実でございます。ごく最近、非常に画期的なことといたしまして、クウェートで日本及び西欧諸国の入札が九ドルぐらいの入札値が出て、現在再入札中ということに相なっておりますが、もちろんこういうかっこうでの今後の油の価格の低下というのは、当然に油全体の価格の低下に関係するわけでございます。  ここで一つ申し上げておきたいのは、われわれがよく言います八ドル程度の油といいますのは、中近東のサルファの高い油でございまして、日本では公害対策も含めてインドネシア等から約二割近い、非常に低サルファの油を入れておるわけでございますが、この値段は現時点におきましても十ドル八十セントでございます。近くこれが十二ドル程度に上がるという通報等があるわけでございます。日本に入ります油というのは、こういう油を全部加重平均いたしまして、先ほど私が申し上げました価格形成が行なわれておるわけでございまして、現在九ドル五十ないし十ドルぐらいの日本に人君の油の価格に相なっておるわけでございます。
  330. 岡本富夫

    岡本分科員 これは通産大臣に特に要求しておきますけれども、原油は、いまのところはいろいろなことがあると思いますけれども、将来こういったアメリカの代替燃料というものができますれば、私はそんなに世界的に高くならないんじゃないかということも考えられるわけです。したがって、原油が下がればコストをダウンさせていくというような指導が必要であろうと私思います。したがって、価格決定にあたりましても、ただ石油業者が高いものを買ってきたから高くするんだというのじゃなくて、安く買えるように努力さしていく、それが日本物価対策であろうと私は思うのです。これは要求しておきます。  次に、今度は廃油ですね。どんどん仕入れるばかりでなくて廃油の活用というものが私は大事であろうと思うのです。私の調査によりますと、大体、これは神戸の石商の調査でありますけれども、ガソリンスタンドが神戸市内で千六百軒ある。一軒当たり一カ月約六百リットルから千リットルの廃油が出る。そうしますと、これをよく見ますと、兵庫県のガソリンスタンドだけでも大体三千軒あります。六百リットルを掛けますと一カ月千八百キロになり、膨大なものになるわけです。  それから、これはガソリンスタンドでも出るのですけれども、エンジンを洗ったり、そういう洗い油といいますか、洗い油にはケロシンなどを使っておるわけでありますけれども、これが自動車のサービス工場、マツダ、トヨタ等、大手二百三十二軒では五百リットルから六百リットル出る。小型では三百七十軒で三百リットルから三百五十リットル出る。兵庫県の場合を見ますと、大型で千二百三十軒、小型の自動車サービス工場が二千二百二十軒でありますから、大体一カ月合算して六千キロリットルから一万キロリットル。それからその他の工場で相当出ているわけですけれども、この廃油がいまどうなっているかと申しますと、ガソリンスタンドあるいは工場ではそれをためておいて、前は集配屋がいましてそれをお金を出して買っていったというのです。最近では一回三千円ぐらい出して集めてもらっておる。その集めた廃油はどうしているかというと、神戸市内では妙賀山という焼却場に持っていって焼いているというのですね。私はこんなもったいないことはないと思うのですよ。もしもこれを全部集めて火力発電所に持っていきまして、全部の三日分出たとしますと、それだけ電力を削減しなくてもいいんじゃないか。これについては、どうしたらいいかと申しますと、各地方自治体にこういった廃油を集める場所をつくって、ここへ捨てなさいというようにすれば、みんなそこに捨てに来る。各地方自治体の適当な場所にこういう廃液捨て場の建設を提唱する考えはないか、ひとつお聞きしたいのですが、いかがですか。
  331. 山形栄治

    山形政府委員 いま先生の御指摘のとおり、廃油につきましては、従来、大体三つのグループから廃油が出てくるわけでございまして、一つは油の輸送のタンカーのときのバラスト、ビルジ等の廃油類、それから製油所のタンクの底のスラッジ、これがわりあいに大きなわけでございます。それから自動車の潤滑油の廃油、これはガソリンスタンドで処理することに相なっておるわけでございますが、確かに先生の御指摘のとおり、いま非常にむだに焼却等にされておるわけでございます。現在われわれといたしましても、各地の石油の販売組合等と連絡をとりまして、この再生利用について話を進めておるわけでございますが、その前提といたしまして、公共団体に集配場所といいますかそういうようなものが適切にありますれば、こういう業務も非常に円滑に進められるんじゃないかと思いますので、全石商とも相談し、各府県、市町村とも相談をしながら、そういう方向で前向きに考えていきたいと思うわけでございます。
  332. 岡本富夫

    岡本分科員 大臣、これはエネルギー庁だけでは無理だと思うのですよ。通産省として建設省あるいは各地方自治体にも呼びかけて——いま全然ないのです。わが国はこういった廃油を利用して有限な資源の再利用ができるようにしなければならない、そういうときが来たのではないかというように私は考えておるわけですが、大臣考え方をお聞きしたい。
  333. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 資源の利用に関する非常に適切な御助言をいただきまして、まことにありがたく思う次第です。御助言の筋に沿いまして、廃油の活用について、地方自治体その他とも連携をとって活用してみたいと思います。
  334. 岡本富夫

    岡本分科員 提案はそのくらいにしておきまして、物価の狂乱あるいはまた石油のこういった不足の問題も出ておりますけれども、忘れてはならぬのは、私は人の命を大切にするところの公害対策であろうと思うのです。これは公害対策委員会であるいはまた環境庁にお伺いすればいいわけでありますけれども、なぜ私、当分科会でこの問題を取り上げたかと申しますと、環境庁は実施機関でない。そのためにどうしても適切な指導あるいはまた適切な対策ができない。調整機関のようでありますから、あるいは勧告したりするぐらいなものでありますから、どうしても通産大臣に一ぺん出てきてもらってということなんですが、なかなかあなたも来てくれない。それで、ひとつきょうはこの問題を取り上げていきたいと思うのですが、通産大臣はこの公害対策についてどういう決意を持っておるのか、まずお聞きしたい。
  335. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は就任の当初から、無公害社会建設ということを通産行政の大きな目標の一つに入れまして、その目標に向かって一生懸命努力しておるところでございます。
  336. 岡本富夫

    岡本分科員 実は私、昨年の公害委員会で取り上げましたのは、あまりにもひどいので取り上げたわけですが、これは兵庫県の伊丹のダイハツ工業、自動車工場です。この自動車の工場が何をやっているかと申しますと、エンジンなんかの鋳物をやっているわけですね。鋳物工場です。この工場から約四メートルぐらいの道をはさんで、この辺はずっと住宅地帯であります。  いまここに大臣に一ぺん見てもらおうと思って持ってきたのですが、これは四十八年の十一月九日に集じんした粉じんですね。これは四十八年の十一月二十一日の粉じん。この工場が操業をしてない休みの日ですと、こういう粉じんは出ないわけです。こういうことになっているわけです。この地域の人は、約二十年間これに苦しんでいるわけです。  そして、どういうことを訴えているかと申しますと、粉じんの中には、種々な公害病の原因となる有害物資が相当含まれておる。これはまだ分析はしていないわけでありますけれども、この工場の建て屋から盛んにこういう粉じんが朝から晩まで出てくる。そして、この地域の家の中にガス状態になって入ってくるわけです。バケツに水をくんで表に置いておきますと、この粉じんが数分間で一ぱいたまる。のどが痛くてしかたがない。日曜日、この工場が操業しない日はほっとする。午前八時半から猛烈な悪臭とともに、この付近の住宅に襲いかかるような状態です。これについて、あまり時間がありませんから、ぼくは前の委員会の論議については差し控えますけれども、あまりにもひどいので、公害委員会でぼくはこれを取り上げました。  大臣、これは日曜日の全然操業してないときにはきれいなんですね。操業しているときは、ずっとこういうようになる。だから、排煙脱硫装置だとか、いろいろなことをいいましても機械の一部から出てくるのじゃなくして、工場全体からもうもうと出てくるわけですね。それで私は、一ぺん調査してもらいたいということを、実はあなたのほうの当時出てもらった方に話をしました。行きますということになっておったのですが、いまだに何の音さたもないということです。  こういうようなことについて、ひとつ、大臣はお聞きになったのかどうか、一ぺんあなたから答弁していただきたい。
  337. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 ダイハツ工業の伊丹工場公害問題につきましては、昨年の十二月下旬の本院の公害対策特別委員会におきまして岡本先生から御指摘もございましたので、私どもとしましては、直ちに会社責任者を通産省に呼びまして、実情を詳細に聴取いたしますとともに、地域住民に納得の得られるような適切な公害対策を早急に立案をして、それを県当局並びに市当局に御説明をして、直ちに実施に移すように会社に指示したのであります。この指示に基づきまして、会社のほうでは、二月の六日に、伊丹工場環境保全対策計画というものをつくりまして、二月六日に兵庫県と伊丹市に提出をいたしました。現在、県並びに市で並行してその内容を御審議願っておるところでございまして、県、市の御了承を得次第、工事の実施に移したい、こういう予定でおります。  なお、現地調査の件につきましては、御指摘のように、まだ担当官が現地に参っておりませんけれども、なるべく早く担当官を派遣いたしまして、実情を調査いたしたい、かように考えております。
  338. 岡本富夫

    岡本分科員 公害対策基本法には「国は、国民の健康を保護し、及び生活環境を保全する使命を有することにかんがみ、」ちゃんと、こういう使命があるということが明らかになっておるわけです。そして環境基準も、きょうは環境庁からも来ておりますけれども、時間がありませんからそこまで言う必要はありませんが、環境基準もはるかにオーバーしているのです。しかも、この付近の人が、毎日毎日朝から晩まで、こうして煙、粉じん、悪臭、これと戦っているわけですよ。それに、非常にやり方が手ぬるい、このことを私は指摘せざるを得ないわけであります。  これは、通産省がどうしても企業寄りだという姿勢が、いままでも盛んに巷間伝えられたところでありますけれども、あなたのほうから、ただ兵庫県あるいは県あるいは市に依頼しておるだけではなくして、県や市というのは、この会社に対しては非常に弱いのです。しかも、こういった一流の大きな会社に対しては非常に弱い。ですから、実施機関であるところの通産省指導力というものは非常に大きいわけですから、大臣、あなた、先ほども公害対策について、私は公害のない世の中をつくる、要するに、国をつくることに対しては非常に力を入れているのだと言いますけれども、これは約二十年、こんなに苦しんでいる。それで、私が指摘したから、そういうふうにやってありますという先ほどの答弁がありましたけれども、ほんとうならば、この付近がこんなに困っているのですから、ちょっとでも行って、そして指導して——私は、この工場を全部密閉しまして、そして少しも出ないようにするのは、おそらく不可能であろうと思うのです。四メートルくらいの道路ですからね。そこで鋳物をやるわけですから、ああします、こうしますという会社のそういったあれが適切であるかどうかということは、おそらく私は適切でないと思うのですよ。その間に住民はずっと困っている。それが、結局訴訟だとか、あるいは住民運動だとか、いろいろなものにひっかかって、世の中がおかしくなってくる。住民運動が悪いというのではありませんけれども、しかも、いつも私たち、この国会でいろいろと論議をし、要求もし、やっているわけですけれども、たとえば航空問題にしましても、私四十二年から相当やかましく言ってきた。しかし、住民がああして訴訟をやったりして、初めて政府は腰を上げるというんでしょう。そうなったころにはおかしなものになっているわけですね。国会議員なんか要らぬじゃないかというわけです。だから私は、この点についてわれわれがここで発言し、また答えてもらったことは実施していただかなければならぬ。住民の皆さんがやかましく言うて、裁判に訴えたり住民運動をして、ああいう旗を立ててあばれて、初めてそれから実施するというようなことでは、これは国会議員要らないですよ。政府と住民だけでいいじゃないですか。それでは議会制民主主義も何もかもこわれてしまうのではないですか。私はこの点を非常に指摘しなければならない、だから、現在の民主主義というのは、全然世の中がおかしくなってしまう。この点について、私はきびしく反省を求めたいと思います。大臣、それについていかがですか。
  339. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまお話を承っておりますと、相当ひどいように私も感ぜられます。いろいろ聞いてみますと、地元におきまして、会社及び地方団体等で対策は講じておるようでありますけれども、しかし、じんぜん日を延ばすことは許しませんから、至急係官を派遣いたしまして、休みの目じゃなくて操業中、これを知らせないで、ぱっと行ってみて、実態を把握して、そうしていま計画していることが適切であるか、さらに、もっとやる必要があるか、そういう点を詰めさせて、至急解決するようにいたしたいと思います。
  340. 岡本富夫

    岡本分科員 大臣の前向きな答弁は了としますけれども、大臣、向こうへ行って、向こうの計画が適切であるかどうか、こう仰せられますけれども、現実に、この工場の全部におおいをかけてしまうとか、不可能なようなことを計画するのであれば私はよろしいんですけれども、ただ一部の脱硫装置とか、あるいはまた排煙装置、煙突の部分、そんなことでは、この工場自体が、そこのいまちょっと見ると、向こうに映っているように粉じんにおおわれている、こういうふうになるわけですから、相当な考え方でなければならないし、また対策がなければならない。できれば私は、こういう工場は、この住宅の中になくして、どこかへ移転をしていく、そこまで強い指導でなければ、私はほんとうの根本的な対策にならないと思うのです。それに対しては、それは防止事業団から融資をするとか、いろいろ必要であろうかと思いますけれども、そこまでの強い姿勢で、ぜひひとつ対策を立ててもらいたい。ずいぶん何べんもやかましく言うたけれども、いままで全然できていないのですから、おまけとしてやかましく言うておきます。
  341. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 このダイハツの伊丹工場は、過去数年、毎年一億円以上の公害防止投資をいたしまして努力はいたしておったようでありますけれども、先生御指摘のように、まだ不十分な面があったようでございます。  今回は抜本的な対策ということで、三つあります工場の中の第二、第三工場につきましては、完全密閉式にいたしまして、工場全体を密閉をして、工場の粉じんを工場の一部から全部抜きとる、建物自体は、全部開放式をやめまして密閉してしまう、こういうふうな抜本的な公害防止対策を立てておりますので、これが実現すれば、公害防止上はたいへん効果があるんじゃないかというふうに考えます。
  342. 岡本富夫

    岡本分科員 それ以外に悪臭、それから何かというと、いまあなたの答えを聞いていると、いかにもまともにきちっとやっているように言われますけれども、フェノールですか、あるいはこういうような薬品をだいぶ使っているわけですよ。ですから、そういった対策も重ねてよく検討をして、そしてこの付近の住民を完全に救っていく。最初大臣が答えたような、そういう姿勢で検討して、一日も早く、できれば移転に持っていく。こんなところで鋳物工場なんかやるのは大体間違っておるわけですから、ひとつそこまでの強い行政指導を要求いたしまして、きょうは時間ですから終わります。
  343. 湊徹郎

    湊主査 これにて岡本富夫君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  344. 井上普方

    井上(普)分科員 中曽根大臣は、私が十二月にお伺いいたしました際、物価問題については、ひとつ自由経済社会を守るために価値ある挑戦をやるのだと、まことに華麗なるおことばを駆使されまして御答弁になったのであります。その華麗なる挑戦の結果どうなっておるか、ひとつお伺いいたしたいと存ずるのであります。特に私は、その際にも小型丸鋼について質問をいたしました。ところが、その小型丸鋼につきましては、依然としてどうも価値ある挑戦の戦果があらわれておらないような結果と思いますが、いかがでございますか。
  345. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれは大いに努力いたしましたが、われわれの努力にもかかわらず、十分なる成果があがっていないことをまことに遺憾に存じます。  われわれの考えの基本は、やはり価格のメカニズム、あるいは市場機能、そういうものを生かしながら自由経済の長所を善用しつつ、それによって物資をできるだけ豊富にしておく。物資が豊富であるということが、心理的パニックを起こさない一番の要因である、そういう考えに立ちまして、できるだけ物資を豊富にするという基本的観点から、あまりぎしぎしした統制はやらない。あまりきびしくぎしぎしした統制をやり過ぎますと、物資は必ず影をひそめてしまう。役人よりも商人のほうが頭がいいですから、必ず裏をかかれてしまう。これはわれわれが戦時統制経済で痛感したところであります。そういうような面から、また、われわれの経済政策に対する基本理念からいたしましても、また緊急の間に合う政策をやるという面からいたしましても、やはり統制経済をやるとなると、通産省だけでも五千人くらい全国に人間を動員しなければできないし、それをやるだけの人間もいないし、また、それが結果がいいかというと、必ずしもうまくいかぬ。結局、経済警察をやるとか税務署が直接出動するというような、陰険な険悪なやり方に堕するという危険性がある。そういう面から、必ずしも万全ではないけれども、人間の善意を信じて、できるだけ物資を豊富にしておくほうがよろしい。多少そごがあって、われわれがしかられても、それでも物資が豊富であったほうがいいのだ、そういう考えに基づきまして、いろいろ諸般の政策をやり、必要な基幹部分については、政府が、ある程度自由を拘束しながら規制していくという方策をやってきたわけです。  しかし、裏をかかれた部面がかなりありまして、御迷惑をおかけした点は、はなはだ遺憾でございますが、しかし、物資はやはり出てきていると思うのです。その点については、いま出てきている現状を見れば、ある意味においては、われわれの目的は部分的に達成されている、そう思います。
  346. 井上普方

    井上(普)分科員 その価値ある挑戦も、どうも戦果はあまりあがらなかったようであります。  ただいま大臣は、商売人のほうが役人よりも頭がいい、こうおっしゃいましたけれども、まあ価値ある挑戦なんというおことばを自由に駆使される政治家中曽根さんというのは、ことばだけはあらゆる人種よりもすぐれておると思うのです。ここらあたりに政治家に対する不信も出てくるのじゃなかろうかと思いますので、ことばは、ひとつなるべく素朴なことばをお使いになっていただくようにお願いしたいと思います。  そこで、小型丸鋼ですが、この価格の動向につきましては、大臣御存じでございますね。十二月にあなたにお伺いしました際には、小型丸鋼は昨年一年、特に九月からはものすごい高騰をしておる、これに対してチェックしなければいかぬ、たしか、大臣はこう言われたと思うのです。ところが、さっぱりその効果があらわれていない。一体、どこに原因があるとお考えになりますか。
  347. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 丸棒は、しかし最近は下がってまいりまして、かつては十一万円という値段がついたことがありますが、現在は七万円台に落ちているのではないかと思います。最近は建設業も非常に不振で、総需要のカットがきいておりますから、たしか七万七千円とか七万五千円台に落ちてきているように記憶しております。
  348. 井上普方

    井上(普)分科員 どうも大臣の御記憶は間違いではございますまいか。
  349. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 間違いないです、丸棒は。
  350. 井上普方

    井上(普)分科員 小型丸鋼ですよ、十九ミリの場合。少し下がってはおりますけれども、大臣の言うような値段に私はなっていないと思うのです。
  351. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いや、七万円台に落ちましたよ。
  352. 井上普方

    井上(普)分科員 それでは、あとでその状況を私の資料とまた突き合わせたいと思いますので、ひとつお願いいたしたいと思います。  しかしながら、いずれにいたしましても、この丸棒に対しましては、何か手をお打ちになったのですか、政府としては。
  353. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはあっせん所をつくりまして、そして中小土建その他についてはあっせんをやった。それから緊急増産をやってもらった。特に銑鉄の手当てをしてあげた。丸棒が上がった一つの原因は、銑鉄が非常に高くなったという要素もあるわけです。そういう面もありまして、緊急増産がきいてきた。もう一つは、総需要カットによって需要が減ってきた。そういう相乗効果が生まれてきたように思います。
  354. 井上普方

    井上(普)分科員 その資料を見まして、いずれまたあらためて機会を得たいと思います。  それでは、続いて建築資材について、私は特にきょうお伺いをしたいと思います。  ビニールの電線の場合、四十五年から比べますと三倍以上になっているのですが、この事実は御存じで、いかなる措置をとられておるのか。ついでに申し上げます。ビニールそれから塩化ビニール管、こういうものはいかがでございましょうか。それからまた木材製品というのは——製材の製品はおそらく通産省の所管内ではなかろうかと思うのですが、ここらあたりに対する対策はどういうようにしてやられておられるか、ひとつお伺いしたいと思うのです。
  355. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 塩ビ電線も昨年の夏、非常に暴騰いたしまして、御迷惑をおかけいたしましたが、これも増産につとめてまいりまして、かなりの思い切った増産をやってもらいました。したがって、塩ビ電線も正常化してきたはずであります。  それから塩化ビニールのパイプ類もこれはなかなかしぶといもので、一番下がりのしにくいものでありました。それから、たしかこれはカルテルなんかがあったと思います。そういういろいろな情勢もありまして、これも最近は横ばいから下がり目にきているのではないかと思います。
  356. 井上普方

    井上(普)分科員 ビニール電線なんかは、大臣、去年の夏といいますよりも、むしろ十月以降ではございませんか。
  357. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 十月以降下がってきた。
  358. 井上普方

    井上(普)分科員 十月、高くなったのですよ。
  359. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 下がってきたのです、暮れ近くからずっと。十月で一番高かったですね。
  360. 井上普方

    井上(普)分科員 あなたのおっしゃるのは——ビニール電線は、私の持っておる資料によりますと、去年の八月には、比率にいたしますと二三八という指数を出しております。ところが、十二月になりますと二九七という指数を示しております。一月になりますと三〇一という指数を示しておるのであります。あるいはまた塩化ビニール管などを見てみますと、去年の八月では一四四という指数であり、十一月は一八九になり、十二月には一九三になり、ことしの一月では二三八という指数になっておるのであります。これは、私は建設省が出しております建設月報から抜き出した資料なのであります。通産省の資料と違うのでありましたら、同じ政府の出された資料におきまして違ってくるので、非常に問題はあると思うのですが、いかがでございましょう。
  361. 増田実

    ○増田政府委員 最新の資料がございませんであれですが、塩ビ電線につきましては、メートル当たりの私の手元の資料で見ますと、八月が百十円、それから十月に八十円に下がりまして、それから十二月に九十円、一月にまた下がりまして八十五円、その後、二月の数字がちょっと手元にございませんが、そういう経緯を示しております。
  362. 井上普方

    井上(普)分科員 私の建設月報の資料と通産省の出されておる資料と、えらい違うようでございます。しかし、私らが末端の電線屋さんなんかに聞いてみますと、やはり高くなっておるという話を聞いておる。それは、あなたのほうはメーカー渡しの値段なんですか。どうなんです。
  363. 増田実

    ○増田政府委員 メーカーの出荷値段です。
  364. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、私のほうは、建設月報は末端の価格なんです。  ここらあたり、大臣、どう考えたらいいでしょうか。もう下がってくると考えていいでしょうか。
  365. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 よく調べてみます。  しかし、末端価格も、かつて、昨年の夏から秋にかけて非常に騒がれたような事態は、いまのところ、われわれのところには建設業者等からも入ってきておりません。ですから漸次鎮静にきているのだろうと思っております。特に、最近は総需要カットで建設関係の仕事がなくなってきておりまして、そういう面も響いてきておるのではないか。かえって中小土建の倒産をいま心配しておるという状態になってきていると思います。
  366. 井上普方

    井上(普)分科員 中小企業の倒産の危険があることは私も存じております。総需要抑制の効果も徐々にあらわれつつあることも私も認めます。しかしながら依然として高い。大臣、これは見ていただいてもよろしゅうございます。これは建設月報からのあれでございます。末端の価格がそのように依然として高いということは、私は問題があるのではなかろうか、このように思うのであります。  そこで、大臣はいま、生産者の価格は下がってきたと仰せられますから、その効果があらわれることを私は期待いたすものであります。  材木はどうでございましょう。あるいはセメントはどうでございましょう。
  367. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 材木も弱含みですね。材木は下がってきつつあるようです。ただ、ベニヤは、去年の秋から見ると高いようです。それ以外は大体横ばい、ないし下がりぎみです。これはやはり総需要のカットと、建設関係が鎮静してきているということ。それからセメントは、一、二月は高うございました。しかし、三月の半ばごろから、もう需要がだんだん少なくなってきて順次ゆるんでくるだろう、そう思っております。いままでは高かったのは事実でありますけれども、順次ゆるんでくる。これは増産がずっときいてきているところと、需要が減ってきている、両面が出てきていると思います。
  368. 井上普方

    井上(普)分科員 弱含みであると申しますが、それは去年の十一月、十二月に比べて弱含みであり、去年の夏相場なんかと材木を比べますと、依然として高い水準にあることは御承知のとおりだろうと思うのです。これに対して、総需要抑制があるから、ほっておけば需給関係で自然に下がるのだという考え方は、私はいかがかなものだろうかと思うのですが、どうでございますか。
  369. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり値を下げるということは、一面においては金をしぼるということ、一面においては物をふやすということ、両方がうまくいけば、値が自然に下がってくる。そこで、いま総需要カットで金を減らしておる。それから増産については、木材等についても農林省でいろいろ努力をされて、そして、特に総需要カットということがやはり非常にきいてきて、横ばいないし弱含みの方向に動いてきているのだろうと思います。
  370. 井上普方

    井上(普)分科員 それは大臣、すべてがいま需給関係だけで動いておるのであれば、去年の末のようなパニック状況は、私は起こらなかったと思います。実際問題として、供給のほうは十分に生産がなされておるにもかかわらず、片方においては、末端におきましては、物の不足を来たすというような状況が生まれてきたことは御承知のとおりです。  そこで私は、やはり一番必要なのは心理的な影響だろうと思うのです。あるいはまた、政治に対する信頼というものがあって初めて、需給関係というようなことが大きく物価に作用するのじゃなかろうか、このように思うのであります。  しかし、この木材にいたしましても、見てみますというと、これはやはり、大臣いま御安心になるような指数を示しておらぬのじゃございませんでしょうか。といいますのは、製材の場合、角材は四十七年の一月を一〇〇といたしますと、ことしでは杉の角材一五六。四十八年の末におきましては、いかにも一六六という数字でございましたけれども、現在では一五六、五割六分だけの値上がりを二年間にいたしておるのであります。しかもその値上がりの状況は、杉の角材の場合なんかを見てみますというと、依然として、上がっておるのは、四十八年の八月以降上がっておるのでありまして、どういうメカニズムがといいますよりは、ここらにも、私は流通機構に対するメスを入れる必要があるのじゃなかろうかと思うのです。
  371. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先生からいただいたこの資料を見ましても、たとえば木材の場合は、杉の正角が基準になっていますが、杉の正角が四十八年一月、去年の一月は立米七万一千円ですね。それがことしの二月上旬は五万六千円、指数にして二二五から一七八に落ちていますね。(井上(普)分科員大臣、それは違う」と呼ぶ)この数字を見ますと、そうなっております。
  372. 井上普方

    井上(普)分科員 数字はそうなっています。しかし、これは御承知のように、おととし田中内閣が出現いたしまして、列島改造論によるところの景気のブームによって起こったのが十二月、一月、そして去年の二月ごろまで続いた指数じゃございませんか。
  373. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それにしても、杉の正角の値段は、九月が五万七千円、十月が五万六千円、十一月が五万五千円、十二月が五万二千円、一月が五万七千円で上がって、二月が五万六千円、大体横ばいないし弱含みの方向に動いておると思います。
  374. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、いずれにいたしましても、杉の角材にいたしましても、四十七年の一月と比べますと五割増しになっておるわけです。それは中曽根さんのおっしゃるように、調整インフレを導入する必要があるというのであれば、効果はあらわれておるでしょう。しかしながら、家を建てたいという庶民大衆の願いからいたしますというと、建築資材がこのように五割も二年間に上がることによって、庶民大衆は非常に苦しんでおるわけなんであります。ここらあたりを考えていただかなければならぬと私は思います。どうでございましょう。
  375. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 確かに、これは高水準の安定であるわけでありまして、もっと低水準に持っていかなければ、庶民の皆さまには耐えられないことであるとよく感じます。そういう意味において、さらに引き下げをやらなければならぬと思っております。
  376. 井上普方

    井上(普)分科員 その引き下げようとする努力です。どういうようにやられるのか。ここらあたりが、私は通産行政の今後の使命だろうと思うのです。ただ需給関係にまかしておけばいいというような問題ではないのではないか、私はこのように思うのですが……。
  377. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大蔵大臣が、かつて、いま価格じゃなくて相場だ、こういうことを言ったことがあります。かりに相場であるなら、必ず相場というものは戻るものです。それで相場的なものは、いまや総需要のカット及び鎮静によって大体戻りつつある。価格に返りつつある。価格とは何ぞや。そうなると、それは原価プラス利潤、それに、そのときの需給関係がプラスアルファとして作用していく、これが自由経済下における価格というものだろうと思うのです。  そういうような機能を生かしながら順次下げていくということにしますと、一つは、需給関係によって、いまのプラスアルファを減らしていく、それからもう一つは、全般的な原価プラス利潤の、原価の部分を減らしていく努力をしなければいかぬ。これには、外材である場合には、輸入価格であるとか、国内においては、電力代であるとか労賃であるとか、いろいろな利子であるとか、そういう部面を全面的に下げるように努力していく、そういう総合的な努力が必要であろうと思います。
  378. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣のお話は、いま大蔵大臣の、価格じゃなくて相場だというお話でございますが、私の党の中にも、現在の状況は、インフレ経済じゃなくて、ギャンブル経済だと言った人もあります。しかし、それを起こしたのは一体何なのかということなんですね、問題は。やはり政治に対する信頼を失ったがためではなかろうかと私どもには感じられるのであります。そこで、華麗なことばをお慎しみになって、素朴なことばによって、国民納得せしめるような方向に通産行政を進めていただくことを強く、要求いたしておきたいと思います。  続いて、時間がございませんので、私、ちょっと問題のあるものを一、二申し上げて、今後の通産行政の指導に資していただきたいと思うのでございます。  まず、過疎地帯が現出いたしまして、そして過疎地帯におきましては、児童数あるいは中学校の生徒数も少なくなったということのために、学校なんかやめようじゃないかということで、廃校にしておるところがたくさんございます。そういたしますと、その廃校の学校の敷地と建物をねらいまして、そしてあとからもうけをねらいます。しかし、その過疎地帯の人々は、善意をもって、このような過疎地帯においては、雇用を増大すれば過疎地帯は解消するのだといって、企業にその小学校、中学校を安く提供して事業を始めるというケースは、山村至るところに見られる現象でございます。ところが、その小学校、中学校におきまして事業を進めておる連中が、自分の都合によって、突如としてその事業を停止し、その土地を売っ払ってしまうというようなことが現に起こっております。山村あるいは過疎地帯の住民、あるいは町村当局の善意というものを踏みにじったケースがたくさんあらわれておるのであります。  私は、徳島県におきまして、板野町の船井電機というのにこれを見るのでありますが、これは不動産を取得しましても、親会社が全部登記をしておる。そして会社を運営しながら、労働争議があったというためのみと私は思うのでございますが、これはいろいろ議論があるところでございましょう。いずれにしましても、倒産を突如としてやった。そして親会社はその学校の敷地を安く手に入れたまま持っておるというケースがあらわれておるのですが、これらに対して、公共建物を企業に渡すこと自体にも、一つ問題はあったと思うのですが、ともかく、町村当局にいたしますれば、非常な善意でもって、労働力を、稼働人口をふやそうという善意からあらわれたと思うのです。ところが、そういうようなことをやるわけなんですが、これらに対して、通産行政としては、何らかの手は打てませんか。
  379. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 徳島船井電機の解散については、いろいろいま調書を拝見しておるところでございますが、解散については、ドルショックの原因で採算が悪化したとか、労使協調がうまくなくなったとか、不当労働行為の申し立てがあって、そういうために経営がぎくしゃくしてきた、そういうことから解散に至ったようであります。県議会においても、四十七年十二月に問題になって、退職者の転職あっせん等に留意する旨の答弁が理事者からあったようであります。また、組合側から徳島地裁に四十七年十二月に仮処分の申請が出されて、現在審理中の山であります。  これは労使関係のことでもあり、われわれとしても、あまり中に介入することは適当でない事件でありますが、ともかく過疎地帯に——これは県からも誘致を受けて設立された会社のようでありますが、この設立の趣旨に反して閉鎖されるということは、非常に遺憾なことでありまして、こういうことがないように、われわれとしても積極的に指導したいと思います。このことは、もうすでにあった事件でありますから、まことにやむを得ないところでありますが、新しい問題については、できるだけ早目にわれわれとしてはこういう問題をキャッチしまして、県当局と連絡を密にして、あっせんしたり、そのほかの処置によって、操業継続、あるいは逮捕者が出ないように、今後努力してまいりたいと思います。
  380. 井上普方

    井上(普)分科員 その御答弁でありましたら、まことにもっともと思います。しかしながら、中学校を、ともかくそういうようなところに譲って——その敷地それ自体も、この船井電機という会社じゃなくて、親会社の船井という電機屋さんがやはり依然として大阪にあるのですが、それが持っておる、こういうケースなんです。  言いかえますというと、ともかく金目になるものはみんな親会社が最初から確保しておいた。そして雇用関係がぎくしゃくしたとか、あるいはまた、ドルショックとかなんとかいいますけれども、実際は徳島県には船井電機の同じ資本で同じにつくっておるのが三つほどあるのです。依然としてそのあとの二つは事業を継続いたしておりますので、ドルショックなどということは言い得ないのであります。とするならば、労使間のぎくしゃく関係ということが大きな原因になるでしょう、会社側の言い分からしますというと。そのために、その土地に住んでおる労働者というものも職を奪われてしまう、あるいはまた中学校の敷地も、解散しますというと、自然にその敷地はそのまま親会社のほうに全部行ってしまうということなんであります。これは、済んだことだからしようがないといって済まされる問題ではないと私は思います。農村の、あるいは山村の善意のある町村当局がやった仕事に対して、先ほどの大臣の、商売人は頭がいいから、役人の考えつかぬことを結局やるんだということば一言で済む問題じゃないと私は思うのです。これはやはり考えなければならない問題ではなかろうかと思うのですが、大臣、いかがでございます。
  381. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり船井電機の問題は、県があっせんして誘致してできて、そういう小学校なんかのめんどうまで見ているという話でありますから、これはやはり県がその問題について立ち入って、種々さらにあっせんをつとめることが望ましい。われわれ通産省が労使関係まで入っていくということは適当ではない、そう思います。
  382. 井上普方

    井上(普)分科員 県はもちろんやっておりますけれども、どうもらちがあかない。そこで、過疎地帯に工場を持っていくということは、通産行政のいま大きな題目の一つではありますまいか。  そういうような点からいたしますならば——田中さんの列島改造論もそこから出てきたのではなかろうかと私は思うのですが、そういうような点からいたしますと、やはり通産行政として、一歩ふん切る必要があるのじゃなかろうかと思うのでございます。  もう時間が参りましたのでこの程度にいたしますが、いずれ、あらためてこの問題につきましては、大臣の所信をひとつ聞いてみたいと思う次第でございます。  終わります。
  383. 湊徹郎

    湊主査 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に、井上泉君。
  384. 井上泉

    井上(泉)分科員 いまほど、国民が政治に期待を寄せておることはないと思いますが、とりわけ、国民生活の大半を扱っておられます通産省の行政に対しての国民の政治への期待というもの、そういうものを背負って立っておられるいわゆる大物である通産大臣が、国民の期待にこたえられるような行政が進められるかどうか、そういうことを今日までの国会審議を通じて見てみますというと、何かしら、そういう国民の期待にこたえる強いものが感じられずに、まあそのときそのときの状態を糊塗する中で経過をしておる、こういうふうに考えられてならないわけであります。  そういう点から、通産大臣に期待をする国民の一人として、私は幾つかを質問したいと思いますけれども、わずか半時間でありますから、多くを申し上げる時間はありません。端的に申し上げまして、幾つか指摘をいたしたいと思いますが、いま井上普方君の質問に対して、総需要抑制の効果が非常にあらわれてきた。なるほど、いま鉄筋も下がっております。セメントも安くなっております。あるいはまた、その他の建設資材も安くなっておりますけれども、これは二月から三月へ入っての状態であって、一番使ったところの昨年末の状態というものは、まさに狂乱の物価状態で困ったわけであります。  だから、総需要抑制の一番の犠牲になった層は、どういう企業が一番犠牲になっておるのか、そのことを通産大臣はどう把握をしておるのか、その見解を承りたいと思います。
  385. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最大の犠牲者は、いわゆる国民大衆、特に恩給生活者とか、あるいは身障者とか老人であるとか、そういう方々であると思います。それから商売の関係から見ますというと、第一線の零細企業者、こういうところに圧力が来た。しかし、わりあいに問屋とか、小売り関係でも流通関係の方面にはかなり現金が滞留しておる、こういう要素もあるようであります。
  386. 井上泉

    井上(泉)分科員 確かにその点は同感でありますけれども、流通関係を除いて、一番総需要抑制の中であおりを受けておるのは、けさの新聞にも載っておるのですが、三月は倒産が記録的に出はしないか、その倒産の大半は中小建設業者だ、こういうことがいわれておるわけでありますが、そういうふうな認識はしておられるのでしょうか。
  387. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど井上さんにもお答えしましたとおり、よく認識し、かつ心配をしております。
  388. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、その認識をし、心配しておることを行政の面でどういうふうにされようとしておるのか、その点。
  389. 外山弘

    ○外山政府委員 先ほどもお話がございましたように、今回の経済環境の中小企業への影響というのは、かなり跛行性はございますけれども、御指摘のように、建設業等を中心といたしまして、かなりの影響が早目に出てくるような感じがいたします。したがいまして、すでに年末にいたしました財政投融資のワクの増加ということのほかに、今回はいつもと違って、年度末に対してもそういうことに対する配慮を金融上やるべきであろうというふうな判断に立ちまして、つい最近も三月用に年度末融資の増加を行なったわけでございます。さらに今後四月、五月、六月と、事態の推移によりましては、総需要抑制の効果がいろいろな面に出てくると思います。その辺の状況をよくにらみながら、今後の情勢にも適宜、適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  390. 井上泉

    井上(泉)分科員 融資という問題についての配慮もさることながら、やはり零細な中小企業者、特に建設業の関係者というものは、雇用しておる労働者に仕事をあてがうことができない、そういう状態の中に置かれておる。つまり、金詰まりもあるし、労務対策もあるし、いわば中小企業建設業者というものは八方ふさがりの状態にあると言っても過言ではないと思いますが、その点について、建設省からおいでになっておると思いますが、建設業者の一番の元締めである建設省としては、どういうふうな対策を立てておるのか。
  391. 高比良和雄

    ○高比良説明員 お答えいたします。  第一に、公共工事の繰り延べ等によります中小建設業者の受ける影響をできるだけ緩和するために、一つとして、大型公共工事を極力押えつつ、公共工事への依存度が高い地域に対しましては、できる限り事業量の確保につとめるとともに、工事発注にあたりまして、極力中小企業のワクを確保するようにつとめるほか、協同企業体等の組織化を推進いたしまして、工事の共同受注の推進につとめてまいりたいと思います。  それから、建設資材価格高騰等の影響の緩和をはかるために、公共工事の請負契約につきまして、第一にスライド条項の適用、第二に発注単価の適正化、第三に前金払い制度の積極的活用等につとめております。  さらに、中小建設業者の受注減による運転資金不足対策といたしまして、先ほども中小企業庁長官のほうから御答弁がありましたように、政府は、建設業を含む中小企業向けの年度末融資として、昨日政府関係中小企業金融機関からの貸し出しワクとして五百億円の追加を決定いたしました。閣議に報告されたわけでございますが、これらの資金の十分な活用をはかっていきたいと思います。  それから、中小建設業者の信用力を補完するための信用保証協会による債務保証の積極的活用をはかるようつとめておりますし、また、一般市中金融機関に対しましても、特別の融資を行なうよう、要望をしておるところでございます。
  392. 井上泉

    井上(泉)分科員 対策として、そのことがそのまま素直に行なわれれば非常にけっこうだと思うわけですけれども、現実の姿というものは、そう素直に行なわれないのが普通であります。建設省所管の仕事をやるような業者というものは、地方でも案外強いのです。これはもう御案内だと思うわけですが、ところが、建設省の仕事もやれない、つまり、地方自治体に関係する仕事等に従事しておる業者というものは、比較的弱いわけです。そういうふうな弱い業者が多数依存しておる地方公共団体の仕事というものに対しても、総需要抑制の形で、建設省としては早期発注を差し控えるという方針で臨んでおるのかどうか、そのことをお伺いします。
  393. 高比良和雄

    ○高比良説明員 ただいまのは補助事業の関係だと思いますが、これにつきましても、先ほどお答えいたしましたように、大型公共工事を極力押えつつ、公共工事への依存度が高い地域に対しまして、できる限り事業量の確保につとめるという趣旨につきましては、直轄、補助を問わず、そういう比較的小さい工専というものを優先してやっていきたい、そういう趣旨でございます。
  394. 井上泉

    井上(泉)分科員 優先してやっていきたいというのは、早期発注という形で工事の施行はやっていきたい、こういうことですか。
  395. 高比良和雄

    ○高比良説明員 おっしゃるとおりでございます。
  396. 井上泉

    井上(泉)分科員 建設事業というものは、単に橋をつくる、道をつくるという仕事だけではなしに、その仕事に関連をしたいろいろな業者が仕事というものにくっついておるわけでありますので、これが総需要抑制の形で、中小企業者は受注するものが少なくなってくる、あるいはとだえるということになると、それに関連する業者というものもたいへんな痛手になるわけです。  そこで、中小企業対策と一口にいっても、私は、通産省の窓口だけでは、とても対策というものは打ち立てることができないと思います。  一例をあげて建設関係のことを申し上げたのですが、きょうの新聞に、栃木県では、政府の総需要抑制の政策と相反するかもしれないけれども、公共事業を早期発注して一零細な中小企業者の倒産を防ぐ、こういうことが書いてあったのですが、こういう行為というものは、ほめてしかるべきであるのか、あるいは、建設省としては苦虫であるのか、あるいはまた、苦虫でもなければほめもしないが、まあそのまま黙過するのか、どうですか。
  397. 高比良和雄

    ○高比良説明員 現在、具体的な発注のしかたにつきましては、建設省におきまして検討しているところでございますが、やはり姿勢といたしましては、先ほども申し上げましたように、大型の工事を極力押え、できる限りそういう依存度の商い地域に対して事業量の確保につとめるという趣旨でございますので、新聞の意図が、私、はっきり存知しておりませんけれども、もしそういう趣旨であれば、われわれの趣旨と同じではないかと思うわけでございます。
  398. 井上泉

    井上(泉)分科員 建設省の趣旨と同じであると理解をするならば、私は、このことで地方の公共団体は非常に悩んでおると思います。これは「栃木県は五日、県議会本会議で県内の中小建設業者を救済するため、四十九年度の公共事業のうち中小業者向けはできるだけ四、五月に早期発注する方針を明らかにした。」それで、いろいろ書いてあるわけですけれども、こういうことは、中小企業に対する対策という面からも、いまあなたもけっこうだと言われたのですが、私はよいことは各府県にやらせたらいいと思うのです、建設省の言うことは、地方自治体はよく聞くわけですから。そういうふうな通達を建設省は出すつもりはないですか。栃木県のようにやれというふうに……。
  399. 高比良和雄

    ○高比良説明員 通達につきましては、私、一課長でございますので、はっきりお答え申し上げられませんけれども、一応そういう方向で検討しておるわけでございます。  したがいまして、どういう意思の決定になりますか、はっきりと通達という形が出るかどうかは、ちょっといまの段階では申し上げられませんけれども、先ほど申し上げましたような大型公共工事を極力押えながら、依存度の高いところにつきましては、できる限り事業量の確保につとめたいというふうな趣旨につきましては、変わりはございません。
  400. 井上泉

    井上(泉)分科員 中小企業庁長官にお尋ねするわけですが、お尋ねというよりも、むしろ見解をお聞きしたいのですけれども、いま私が建設省の課長に御質問申し上げておるように、中小企業者対策というものは広いのだから、私はとても通産省のワクだけではできないと思います。  それで、そういう点についての一例として、たとえば建設業の中の中小企業者、これに対する対策としては、それを早期発注さして救済する。資金の借り入れをしようといったって、現実に、銀行では選別融資という形で、建設業者は貸し出しの対象としてはなかなかむずかしいのです。だから、仕事をあてがうことによって、業者の経済的な苦痛を救済することができるし、あるいはそこで働いておる労働者に安心感を与えることができると思うのですが、そういう点について、他の省庁の監督下にある中小企業対策というものについて、どうお考えになっておるのか、承っておきたい。
  401. 外山弘

    ○外山政府委員 一口に中小企業と申しましても、業種、業態、非常に多様でございます。また、御指摘のように、通産省で所管している業種もございますれば、他省の所管している業種もあるわけでございます。  私どもといたしましては、中小企業に対する一般的な不利の補正対策、振興対策ということを打ち出すと同時に、業種、業態に即して、その業種に固有の問題を中小企業対策の点からとらえて、いろいろ要望を申し上げるし、また、その対策を要請するということもやっておるわけでございます。その点は、通産本省にある業種と、他省にある業種とは別に区別はございません。それから、逆にまた、私どもに各省からもいろいろお願いに来られますし、本省の業種についても同じように考えておるわけでございまして、これはいま申しましたような考え方で、中小企業庁といたしましては、中小企業業極の全部にわたりまして、一般的な対策と個々の業種に対応する振興策というものを、私どもとしては常時進めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  402. 井上泉

    井上(泉)分科員 悪徳業者が、これは建設業に限らず、すべてに当てはまるわけですけれども、悪徳業者が得をし、そうして悪徳業者を取り締まるために、善良な業者が苦しむということのないような対策というものは、忘れてはならないことであろうと私は思います。  そこで、もう一つ中小企業庁長官にお尋ねをしておきますが、商工会とか商工会議所で経営指導員という方が現在約五千二百人おる。そして四十九年度はこれを一千十八人増員する、こういうことになっておるわけですが、やはり専門的な面とかいうような意味において、たとえば建設業者に対する経営指導員とかというようなものもこの中に含まれておるのですか。
  403. 外山弘

    ○外山政府委員 小規模企業者に対しての振興策といたしまして、経営改善指導ということは、非常に基本的、かつ大事な仕事だと思っておりますし、その面で、いまも御指摘のように、人数もどんどんふやしていくということをやっておるわけでございます。同時に、その量の拡大ももちろん大事でございますが、質の点でも非常に大事だと思いまして、いろいろな点でその点の充実もはかるようにつとめておるわけでございます。  しかし、いまおっしゃいましたような小規模企業と申しましても、業種、業態、非常に多様でございます。したがいまして、はたして専門家の経営指導員がそれに合った、バランスのとれたあり方をしているかということになりますと、今後もそういう点にはつとめてまいらなければいかぬと思いますが、やはり一般的な経営改善指導ということについての人が多い。そして特殊専門にわたるような知識を兼ね備えているという人はやはり少ないだろうと思います。業種、業態がいろいろあるわけでございますから、質の充実の一環として、いま御指摘のような点についても、今後努力をしていかなければいかぬと思います。
  404. 井上泉

    井上(泉)分科員 ややもすれば、こういう経営指導員が官僚的になって、業者の相談を、身近な、あたたかい温情のある態度で相談を受けるとかということではなしに、非常に冷たい、きびしい、冷酷な態度で接せられるということもよく聞くわけでありますが、せっかくこういう指導員が五千二百人もおり、今度六千人になるわけでありますから、六千人の経営指導員というものが、質がほんとうに高くなっていきまするならば、これは昨年年末からのあの物価の大動乱の状態の中においても、もっと使命を果たすものがあったと思うのですけれども、そういう面における経営指導員の使命というものが、私は全くうかがい知ることができなかったので、非常に残念に思うわけです。やはり中小企業に対する指導、育成をしていくところの一つの核的な存在に経営指導員というものを考えていただきたいと私は思うわけですが、それについての大臣の見解を承りたいと思います。
  405. 外山弘

    ○外山政府委員 経営指導員が重要であることは、私も先ほど申し上げましたとおりでございまして、ただいま御指摘のように、単なる個別企業の経営指導だけにとどまらず、そういう人たちの置かれている状況を通じて、施策に対する意見を述べるとか、あるいは地域の振興全体をはかるとか、そういった面にやはり中小企業政策のきめのこまかい施行といいますか、発展と申しますか、そういった点に役立つような経営指導員が一人でもよけいにふえてくるということが、私どもの期待でございます。また、実態の把握につきましても、非常に大事な使命を持っておると思います。両面合わせまして、経営指導員には今後も大いに期待をしてまいりたい、またそういうふうな充実を、人間の上でもはかってまいりたい、こう考える次第でございます。
  406. 井上泉

    井上(泉)分科員 私が大臣に質問したことは、大臣はやはり政治責任がございますから、私は大臣にお答えを願いたいと思います。  いまの私の質問は事務的な問題でなしに、やはり指導員をどう位置づけるかという政策的なものもあるので、大臣を特に指名をしてお願いをしたわけです。大臣、どうですか。
  407. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経営指導員は、非常に重要な役目を持っておると思います。いままで、ややもすればこの役目柄が軽視されて、待遇におきましても、機能におきましても十分でなかったことを、われわれは今回改めようとしておるわけであります。  中小企業、零細企業に対して血の通うような指導をし、税務においても金融においても、あるいは経営方針においても、やはりほんとうにたよりになるような指導をする者として経営指導員というものを考えておるわけでありますが、それが何か、書記みたいな仕事になっているということは、非常に間違った使い方でありまして、講習会とか、そのほか諸般の政策を通じて改善していきたいと思います。
  408. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは次に、いま石油の価格の問題が連日新聞をにぎわしておるわけですが、これの価格がだいぶ先になるとか、あるいはもう今月の中旬だとか、こういうふうな話がされておりますが、大体、きょうの新聞に載っておる、たとえば九千百円前後、こういうことを予想した場合には、通産省がさきに試算をしておりまする原油輸入価格上昇に伴う各産業の価格上昇率の試算、この試算では大体十ドル当たりに見ておるわけですけれども、九千百円ということになると、だいぶ十ドルを切ることになるわけですが、かりに九千百円ということになれば、原油の価格値上がりのはね返り分というものは、あなたのほうの役所でつくった試算とは、そうたいして試算を上回るということはない、こう理解をしておっていいでしょうか。
  409. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原油の価格問題は非常にデリケートな問題で、どうどうというふうな数字がかりに出ますと、すぐ売り惜しみや買い占めがはやったり、思わぬ影響を内外に与える要素がありますので、これはきわめて慎重にやっておるところでございます。まだ党あるいは内閣が未調整で、どういうふうになるか決定しておる段階ではございません。したがって、この問題については発言を留保させていただきたいと思います。
  410. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、石油の価格の問題についてはさておくといたしまして、石油基地というものが、これからの日本にこれ以上まだ必要とお考えになっておるのかどうか、その点、ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
  411. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろん必要であります。
  412. 井上泉

    井上(泉)分科員 必要ということは、どの程度まで必要とお考えになっておるのか。現在の保有量、現在のいわば備蓄できる量と、そして安定的な一つの備蓄量、そういうようなものを考えて、現在のものと、率でいえば何%ぐらいのものが必要だ、もっとふやさなければいかぬ、こうお考えになっておるのか。
  413. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 次の段階は九十日分のストックを持てるようにしたい、そういう次の段階考えております。
  414. 井上泉

    井上(泉)分科員 現在が六十日で、九十日ということは五割増し、こういうことになるのですか。
  415. 山形栄治

    山形政府委員 CTSにつきましては、いま大臣のお話ししたことと本質は同じでございますけれども、CTSは、日本では現在まだ非常に数少ないわけでございます。これは日石の喜入基地、それから沖繩のターミナルというものが主たるものでございますが、このCTSというのは、もちろん備蓄の能力があると同時に、輸送コストの大幅低下等が可能でございますし、それから船舶交通の緩和等にも非常に寄与するものでございます。したがいまして、今後日本においては、やはり石油がまだ相当程度必要でございますので、そういう合理化的な要素も含めまして、適正にこのCTSの建設を進めていくのが必要であろうかと私は思うわけであります。先生の御質問のとおり、どのくらいの程度が必要であるかという計量的なものはちょっとむずかしいのでございますけれども、日本におきまして今後CTSは着実に伸びるべきであると考えておるわけでございます。しかし、この場合、一番大事なことは、地元との調整及び公害対策との調和という問題が大前提でございますので、そういう要請が確認された段階を前提にいたしましてこのCTSの建設を進めるべきである、こう考える次第でございます。
  416. 井上泉

    井上(泉)分科員 備蓄量をふやすためにCTSが必要である、こういうふうに理解をするわけですけれども、石油の消費量というものは、これは総需要抑制の中では、石油を押えれば、全体がずっと押えられるから一番手っ取り早いと思うわけですが、経済の成長の速度を押えても福祉政策を優先さすということを考えるならば、石油の消費量というものは、四十八年度からそうふえるというふうに考えなくてもよいのではないかと思うのですが、その点について、大臣、どうですか。
  417. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 四十九年がことしの会計年度でございますが、やはり石油を無限大に入れるという思想から、省資源、省エネルギーへ転換し、また、かなりの備蓄を持つ、そういう思想に転換していきたいと思っております。  したがって、四十九年度における石油輸入量というようなものも、一応二億七千万トンと考えておるのでありますが、若干これは異同があるだろうと思います。いずれにせよ、われわれとしては、これだけの思い切った総需要の抑制をやっておるわけでございまして、それらはまた石油の需要にも非常に響いてくるところで、そういうような面からも、ある意味において省資源、省エネルギーへ前進していくモメントにもしたいと考えておるわけです。
  418. 井上泉

    井上(泉)分科員 その二億七千万トン、これは四十九年度にそれを想定されておる、予定されておる。四十八年度に比較して、今年度は、四十九年度はどれだけ輸入量はふやすというおつもりですか。私は勉強していないのでわからぬのですが……。
  419. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体四十八年度は二億八千九百万トン程度ではないかと一応予想しております。したがって、今年度よりは一応減る、そういう思想、数字になっておるわけです。
  420. 井上泉

    井上(泉)分科員 昨年よりは減る、そして将来においても、省エネルギーの問題を考えて、石油の消費量は大体押えていく、こういう傾向の中で、備蓄をするためにCTSをつくる、こういうことに論理は帰着すると思うのですが、これは山形長官、そうなんですか。
  421. 山形栄治

    山形政府委員 先ほども申し上げましたとおり、現在、いわゆる輸入原油は直接にそれぞれの製油所のタンクに入るわけでございます。このCTSというのは、それを一括大量に入れまして、それを小さな船でまた輸送する、こういうものでございまして、われわれといたしましては、そういう流通面、輸送面、それからもちろん備蓄面のそういう効果を考えまして、CTSの建設は着実に伸びるのが、日本経済にとって有効であろう、こういう考え方であります。
  422. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、流通面、輸送面、そういうような面で、もっとCTSが重視をされなければいかんということで、たとえ石油輸入量が減っても必要である、こういう論理の落ちつきになったわけですが、そこで私は、そういうとき、長官が、地元の反対とか、いろいろな地元の理解、協力というような話をされたんですが、たとえば、何回か問題になるわけですけれども、高知県の宿毛湾の石油基地構想というものは、まだ通産省は構想の中に描いておるのですか、それとも、これはもうあきらめておるのですか。
  423. 山形栄治

    山形政府委員 いまお話の出ました宿毛湾のCTS計画につきましては、目下地元とのコンセンサスが得られておらないということでございます。  私の感じといたしましては、この地元とのコンセンサスが完全にできない以上は、この計画の着工というのは、それはおかしいじゃないか、あくまで前提としては、地元との調整、環境との調整というのがはかられるべきである、こう考えております。
  424. 井上泉

    井上(泉)分科員 地元との調整が得られれば、ことばを返せば、やる、こういうことになるわけでしょう。  それなら、地元というものに対して、これに通産省なり、あるいはしかるべき石油会社等がいろいろな形で働きかけをするということはあり得ると考えていいですか、地元との意見の調和をはかるために。
  425. 山形栄治

    山形政府委員 これはあくまで、いまのCTS計画を持っております企業と、その具体的なる計画に即した地元との調整がはかられるべきでありまして、われわれのほうで地元説得とかいうことをするつもりはございません。
  426. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは、企業が出て行くならば、別にどうこうわれわれが容喙すべきことではないという、これは一つの理屈としては成り立つわけです。成り立つわけですけれども、やはりあれだけ強い住民の反対の意思があって、それでそれが立ち消えになって、やっとやれやれこれからこのところを漁業基地として、また観光地として開発をはかっていこうとする中で、その背後に石油資本がCTSを設けようというような幻想のようなものをちらつかすと、住民としては非常に惑うわけですが、そこら辺を通産省は、もうそんなことをするな、宿毛湾はだめだぞ、こういう指導はできないものであるかどうか、これをひとつ大臣の見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  427. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 CTSができるだけ適正量でできることをわれわれは希望しておりますから、宿毛湾につきましても、地元と完全に御了解願ってCTSができることを希望しております。
  428. 湊徹郎

    湊主査 これにて井上泉君の質疑は終了いたしました。  次に、荒木宏君。
  429. 荒木宏

    荒木分科員 いま火力発電所の建設に伴って公害防止、環境保全が各地で問題になっておりますけれども、私は関西電力の多奈川第二火力発電所の場合を例にとりまして、新しい工場建設に伴う公害防止、環境保全、こういったことについて通産大臣にお尋ねしたいと思います。  この点については、すでに電気事業法にその規定がありますし、また、先般のいわゆる四日市判決で裁判所の判断も示されておりますが、この関西電力の多奈川第二火力発電所についても、候補地の決定にあたって、企業はもちろんですけれども、国としても公害防止また環境の保全について、事前に慎重な総合的な調査、検討をする責務があるというふうに考えておりますが、大臣のお考えはいかがでしょう。
  430. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府としては、電源開発の重要性にかんがみまして、水力、火力、原子力の発電政策を積極的に推進したいと考えております。しかし、これらはやはり公害問題等に対して適切な処理を行ない、かつ、住民の皆さんの御協力を得るという体系でなされることが適当である、そう考えて、多奈川第二発暗所の問題についても、いま推移を見守り、いろいろ調査をしておるところでございます。
  431. 荒木宏

    荒木分科員 まず、健康被害の点でありますけれども、環境庁にお伺いしますが、一応企業側で予定地としております大阪府泉南郡岬町の健康被害状況の進行については、どのようになっておりますか。
  432. 山崎圭

    ○山崎説明員 たいへん申しわけございませんが、直接の担当者がおりませんので、至急調査をいたしまして、御回答申し上げたいと思います。
  433. 荒木宏

    荒木分科員 四十七年の六月に大阪府のほうで調査をいたしました結果では、慢性気管支炎の有症率が六・六%ということになっております。これは近隣の府下の他の市町村と比べても、有症率が訂正数値でほかよりも商い状況であります。たとえていいますと、守口市ではこれが四・七%、あるいは吹田市では六・四%、こういったようなことであります。しかも歴年の経過を見ますと、三十七年から四十一年までの大阪市を中心とする調査、その当時に比べて二・三%有症率が高くなっていることが推定される、こういうふうな結果が出ております。したがって、この企業側で当該予定をしております地域の、いま申し上げた有症率、それからその推移、さらには広域的な有症率に対する調査、検討、これが当然考慮されなければならぬと思うのでありますけれども、大臣のお考えはいかがでありますか。
  434. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 住民の健康保持ということは非常に大事なことでありまして、できるだけ広範囲にわたって住民の健康を管理し、かつ被害がないような措置を講ずることが適切であると思います。
  435. 荒木宏

    荒木分科員 環境汚染の点でありますが、たとえて申しますと、府下の光化学スモッグの発令回数も年を追ってふえております。四十七年と四十八年の対比で申しますと、これが予報段階で三十一回から四十八回、注意報の段階では十八回から二十六回、そして被害者の数も千六百人から約三千百人というふうにふえてきておるのであります。こういった環境汚染の状況とその進行の程度、これももちろん候補地の決定にあたって考慮、検討されなければならぬ要素だと思いますが、大臣のお考えはいかがですか。
  436. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一つの要素ではあります。
  437. 荒木宏

    荒木分科員 汚染物質の点でありますけれども、これは申すまでもなくさまざまな排出物質があります。しかし、中でもいまいろいろ注目されておりますのが窒素酸化物であります。この点について、環境庁のほうではどのような現状を把握しておられますか、お答えをいただきたい。
  438. 山崎圭

    ○山崎説明員 現在大阪湾地区全体の中に占めます、特にこの立地が予定されております近辺の泉大津という測定局が一番近いところにございますが、二酸化窒素の数値といたしまして、〇・〇二八PPMということが四十七年度の年間平均値として、私ども調査の結果としてとらえております数字でございます。
  439. 荒木宏

    荒木分科員 それは国の環境基準からしてどうなんでしょうか。
  440. 山崎圭

    ○山崎説明員 二酸化窒素としての国の環境基準は一日平均値で〇・〇二、これを年間平均値にいたしますと、いろいろな見方がございますが、九八%値をとりますと、〇・〇一が相当する、かように考えておるわけでございます。
  441. 荒木宏

    荒木分科員 ですから、どうなんですか。
  442. 山崎圭

    ○山崎説明員 したがいまして、年間平均値が環境基準では一応〇・〇一に相当すると考えておりますので、この大阪湾の南にございます泉大津の測定局では〇・〇二八という年間平均値が測定されております。
  443. 荒木宏

    荒木分科員 だから、基準を越えているんじゃありませんか。
  444. 山崎圭

    ○山崎説明員 おっしゃるとおりでございます。
  445. 荒木宏

    荒木分科員 いま泉大津という地域の測定結果について御報告があり、これが環境基準を越えている、こういう御報告があったわけですけれども、問題の当該予定地であります岬町にもやはり二酸化窒素の測定装置がありまして、これが自治体の手によって測定をされ、その結果が報道されておるわけですけれども、この点については環境庁はどうごらんになっていますか。
  446. 山崎圭

    ○山崎説明員 その点については、現在データがございませんのでお答えできないのでございます。
  447. 荒木宏

    荒木分科員 では、環境庁のほうで、泉大津よりもさらに予定地に近い当該の地域で自治体が実施しておる数値を把握していただいて、これもまた同じように環境基準の点から越えているかどうかの点の御報告をいただけますか。
  448. 山崎圭

    ○山崎説明員 御報告申し上げたいと思います。
  449. 荒木宏

    荒木分科員 その正式な報告はあらためて別の機会にいただくといたしまして、いま新聞で報道されております数値、それからまた私のほうで自治体のほうからいただきました数値によりますと、当該予定地では、たとえば昨年の九月には〇・〇三、十月には〇・〇三六、十一月には〇・〇二三、いずれも単位はPPMでありますが、先ほど環境庁のほうでおっしゃった国の基準をオーバーしておるわけであります。  ですから、こういった現状も踏まえて、候補地の決定にあたっては汚染物質の排出状況を考慮、検討すべきであるというふうに考えますが、大臣のお考えはいかがですか。
  450. 岸田文武

    ○岸田政府委員 お説のとおり、発電所の建設にあたっては、公害のない発電所の建設ということが私どもの目標でございまして、それを実現するために、いまの汚染状況はいかがであるか、あるいはこれから建設される発電所について公害防止のためにいかなる施設なり努力が予定されておるか、これらを慎重に見た上で判断すべきものと思っております。
  451. 荒木宏

    荒木分科員 なお、この地域には第一火力発電所がすでに十数年間稼働中でありますが、その温排水によりまして漁業に対する影響が取りざたされておるわけであります。水産庁に伺いますけれども、この温排水による現在の被害状況、これはいかがでありましょうか。
  452. 松下友成

    ○松下説明員 多奈川の第一発電所につきましては、私どもまだ状況を把握しておりません。
  453. 荒木宏

    荒木分科員 これからさらに従来の既設発電所の六倍にものぼろうかという大きな規模の建設が取りざたされておるわけでありますから、既設の第一火力の温排水による影響も調査をしていただいて、その結果を検討されるべきだ、こういうふうに思うのでありますが、まずその点を調査して御報告をいただけるかどうか、水産庁に伺いたいと思います。
  454. 松下友成

    ○松下説明員 調査につきましては、従来関係の府県の水産試験場その他の機関に調査をお願いしまして、水産庁といたしましては、そういった調査の企画立案、それから結果の取りまとめの評価といったものにつきまして助言、指導するたてまえをとっておりますので、いま先生の御指摘の点、そのように関係府県に指導してまいりたいというふうに思っております。
  455. 荒木宏

    荒木分科員 それでは報告もいただけるわけですね。
  456. 松下友成

    ○松下説明員 大阪府のほうの報告が参りましたら検討いたしまして、御報告申し上げたいと思います。
  457. 荒木宏

    荒木分科員 いま健康被害、環境汚染、汚染物質、さらには漁業被害等について伺ってきたわけですけれども、これらの諸点について検討する場合に、私はその地域の広域的な影響というものは非常に重要だと思うのです。この予定地周辺につきましては、政府もよく御存じのように、和歌山共同火力発電所がありまして、これは三十万キロワットです。海南の火力発電所は二百十万キロワットであります。そして従来第一がある上に、今度は大規模な第二火力発電所が予定をされている。しかも、北のほうには堺泉北臨海工業地帯があるわけであります。  そういう点から考えますと、先ほど来お尋ねをいたしました幾つかの要素について候補地決定の前に考慮、検討する必要があるということはお認めいただいたと思いますが、そのほかに、汚染源と汚染状況との関係、さらに汚染と被害との関係、また歴年の傾向と循環系としての総合的な検討、こういったようなことが必要だというふうに思いますが、通産省のほうのこれに対する御意見を伺いたいと思います。
  458. 岸田文武

    ○岸田政府委員 多奈川第二火力発電所は、申請されたのがたしか四十五年十月であったかと思いますが、その後その前提となっております公害防止対策について、大阪府の公害対策審議会を中心として数次にわたって検討が加えられ、それらの結論を受けて四十八年八月でございますか、当初六十万キロワット発電機四台という計画を持っておりましたのを、当面六十万キロワット二台という形に改め、それに対応いたしまして公害防止対策についてもさらに強化をするという措置が打ち出されました。この改定された公害対策につきまして、さらに大阪府を中心にしていろいろ検討が続けられておる。一応中間的な答申が出されましたが、それをさらにいろいろ検討が続けられておるというふうに聞いておるところでございます。私どもといたしましては、これらの大阪府を中心とする公害対策の検討の結果を見守りながら、同時に私ども自身といたしましても、国の立場における公害防止対策の検討を並行して進める必要があるだろうと考えております。この考え方に立ちまして、昨年秋以来通産省の中に設けております環境顧問審査会の学識経験者の意見を聞きながら、私どももいま鋭意検討を続けている過程でございます。
  459. 荒木宏

    荒木分科員 そこでお約束をいただきたいのでありますが、いま申し上げました幾つかの点、これらの点について慎重な総合的検討を経た後に候補地を決定する、このことをお約束いただきたいのでありますが、いかがでしょうか。
  460. 岸田文武

    ○岸田政府委員 発電所の建設に際しましては、事前の手続といたしまして、経済企画庁に設けられております電源開発調整審議会の議を経ることになっております。その電源開発調整審議会におきましては、従来から事前に都道府県知事の意見を求めるという手続を用意をいたしております。私どもはこのような形で都道府県知事の意見の固まるのを待ちながら、同時に私どもとしても先ほど申し上げました環境審査を極力進めてまいりまして、それらの意見の固まりました段階で電源開発調整審議会に付議するという形で進めてまいりたいと思っております。
  461. 荒木宏

    荒木分科員 いま手順について二つのことをおっしゃったのですが、知事の同意、これは一応自治体の問題としてあとでお尋ねいたしますが、国の態度として、私がいままで申し上げた幾つかの点について、事前の慎重な調査、検討を経た後に候補地を決定する、このことはお約束をいただけますか。
  462. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど御指摘になりました、たとえば温排水の影響であるとか窒素酸化物の防止対策であるとか地域の環境条件、これら御指摘になりました諸問題につきましては、私どもも十分勉強いたします。
  463. 荒木宏

    荒木分科員 勉強はもちろんしていただかなければならぬわけであります。そのことはまた当然のことであります。いま申し上げておりますのは、候補地の決定にあたり、その調査、検討が十分なされたその後に初めて候補地がきまる、これが事の道理だと思うのですが、いかがですか。
  464. 岸田文武

    ○岸田政府委員 候補地の決定自体は、いわば電力会社が行なうことでございますが、私どもはそれを現実の形で電気裏業法なりあるいは電源開発促進法に乗せる段階で、いま御指摘のような研究問題点を詰めました上で進めてまいりたいと思います。
  465. 荒木宏

    荒木分科員 いま電源開発調整審議会の議題に乗せるなりというふうにおっしゃったのですけれども、私はそこの過程のことを言っているのですよ。実務上の段階として、電源開発調整審議会が開かれる前に幹事会というのがありますね。その幹事会で候補地というものがきめられる。もちろん企業側のいう候補地とこれは意味が違いましょう。私の伺っているのは国の行政サイドの問題でありますから、国として、通産省として候補地をおきめになる、そしてそれを幹事会に提示をなさる、幹事会できまって審議会の議案になる、こういう手順でありますが、通産省として幹事会に持っていく前にいままでの検討を全部終わるべきだ、その上で通産省として幹事会に持ち出すべきだ、このことを言っておるわけであります。このことのお約束はいただけますか。
  466. 岸田文武

    ○岸田政府委員 これは経済企画庁のほうでその辺の進め方をまとめておられますが、実際の手続といたしましては、一番最初に各省の連絡会がございます。各省連絡会ではいま問題となる候補地点はどんなところであるのかということで、わりあい幅広く候補地点が検討対象になるわけでございますが、その中である程度各省の意見が固まったものが幹事会にあげられる。さらにその審査を経た上でほんとうの審議会にかかるという段取りを経ておるわけでございます。したがいまして、連絡会の段階はわりあいに自由にいろいろな発電所の問題か討議されますが、幹事会の段階ではスクリーンをして進めるというたてまえになっております。
  467. 荒木宏

    荒木分科員 尋ねたことにお答えをいただきたいのですが、私は経過のそういうプロセスを伺っておるのじゃないのです。幹事会に臨むのは、通産省もその一人になっているわけでしょう。いいですか、通産省の幹再会に臨む態度として、これだけ問題になっておる環境の問題、公害の問題、いま幾つかあげた要素の検討を終わって、よろしいということになって初めて通産省としてはこれが候補地として適当でありますという態度をとるべきだ、こう言っておるわけであります。
  468. 岸田文武

    ○岸田政府委員 従来から大体御意見のような形で運営をいたしておったようでございますし、今後ともそのようにいたしたいと思っております。繰り返しますが、事前に私どもの環境面でのチェックを終わった後に幹事会へ付議するということにいたしたいと思います。
  469. 荒木宏

    荒木分科員 それでは確認をさせていただきますが、当該地域の健康被害、それから環境汚染、汚染物質の排出状況、さらに漁業被害の状況、汚染源と汚染状況の関係、汚染と被害の因果関係、そしてそれについてのたとえば和歌山県、奈良県を含む広域的な検討、そうして歴年の傾向と循環系としての総合的検討、以上のことを申し上げてきたわけであります。検討を終わった段階で初めて幹事会にかけるというのは、いま申し上げた事項が当然含まれると思いますが、これは確認させていただいてよろしゅうございますね。——答弁を求めたのは通産省であります。
  470. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど申し上げましたように、連絡会及び幹事会は、関係各省がそれぞれの所掌事務の範囲内で検討した結果を持ち寄って討議をするということになっております。したがいまして、先ほど御指摘の問題点につきましては、それぞれの所管官省ごとに調査が進められ、その結果を連絡会で討議をして進め方をきめていきたいと思っております。
  471. 荒木宏

    荒木分科員 通産省の態度を伺っているのですよ。環境顧問審査会なるものがある、こうあなたはおっしゃっております。その環境審査の中で、通産省としてこれらのことは当然検討なさるべきでしょう。だって大臣は、その点も公害という点で検討する、こうおっしゃっておるのですから。他の省庁のことはあとで伺いますから、あなたの所管しておられる通産省の態度を伺っているのです。幹事会にいく前に態度をきめるでしょう。これらのことを全部検討して、それが終わって幹事会に初めて候補地として出す、このことをひとつはっきりとおっしゃっていただきたい。
  472. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもの環境顧問審査会では、ボイラーの廃ガスの環境に与える影響、それから温排水の環境に与える影響、騒音による影響等を中心として検討をいたしております。いまお話にございました中で漁業被害等の問題は、別途補償の問題として処理すべきものではないかという感じがいたします。私ども先ほど申し上げましたような点につきまして、審査をした上で進めるということはお約束いたします。
  473. 荒木宏

    荒木分科員 私が申し上げた確認をする諸要素は、これは通産省で調査、検討するんでしょう。するかしないか、それを言ってください。
  474. 岸田文武

    ○岸田政府委員 御指摘の問題の中で健康被害の問題、これはいわば過去の発電所ないしその他の施設の結果として生じた事項でございまして、発電所の新しい建設の問題とは切り離して考えるべきではないかというふうに思います。それから他の一般的な既汚染の状況、これらにつきましては、事前に私どもとしてチェックした上で判断をいたしたいと思います。
  475. 荒木宏

    荒木分科員 そうすると、健康被害の点だけは通産省は調査、検討の対象には入れない、そのほかの環境汚染、汚染物質の排出状況、以下繰り返しは省略いたしますけれども、私が列挙をした要素は、調査、検討を終わってから幹事会にかける、これは間違いないですね。
  476. 岸田文武

    ○岸田政府委員 もう一度列挙の範囲を復習してみませんと正確なお答えになるかどうかわかりませんが、健康被害の問題、それから漁業被害の問題、それから……
  477. 荒木宏

    荒木分科員 それじゃ一問一答でいきますから、イエスかノーか言ってください。  環境汚染の状況は調査しますね、もちろん。
  478. 岸田文武

    ○岸田政府委員 調査いたします。
  479. 荒木宏

    荒木分科員 汚染物質の排出状況、これも調査しますね。
  480. 岸田文武

    ○岸田政府委員 調査をいたします。
  481. 荒木宏

    荒木分科員 それから汚染源と汚染状況の関係、これももちろん検討しますね。
  482. 岸田文武

    ○岸田政府委員 そのようにいたします。
  483. 荒木宏

    荒木分科員 汚染と被害の因果関係、これも調査しますね。
  484. 岸田文武

    ○岸田政府委員 それはすでに生じた被害の問題であれば、これは別問題ではないかと思います。
  485. 荒木宏

    荒木分科員 そこで、そういった調査、検討がどのようになされたか、そのことについて広く民主的な保証を担保する、こういった意味で調査結果を検討して、候補地を決定するという前に御報告いただきたいと思いますが、よろしいですね。
  486. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもの所見を取りまとめて御報告させていただきます。
  487. 荒木宏

    荒木分科員 それでは、その御報告をいただくまでは、通産省としての候補地決定には至らないということを確認をさせていただいて、いま通産省が所管でないと言われた健康被害状況、それから汚染と被害の因果関係、この点について、環境庁としてこの幹事会に臨む前に態度決定をするにあたり十分調査、検討する、こういうお約束はいただけますか。
  488. 山崎圭

    ○山崎説明員 直接の担当でございませんので、明確なお答えは保留させていただきますけれども、一般的に申し上げまして、当該企業の立地によりまして、それの汚染の寄与、こういうものの中には当然にいままでのさような問題が背景になって含まれているということは申し上げられる、かように思うのでございます。  ただ、具体的に過去の健康被害の状況そのものは、もちろん私ども考えてまいりますけれども、直接この分野につながるかどうか、それはお答えを保留させていただきたいと思うのです。
  489. 荒木宏

    荒木分科員 しかし、皆さんは環境を守るという立場で仕事をなすっているのでしょう。そこへさらに汚染源がもう一つ大きなものがよけい追加されようとする。だとすれば、環境保全、そして健康保全の上からどのような影響があるかということを調査することは当然の責務じゃありませんか。そのことをお認めになるのなら、幹事会に臨む前に環境庁として調査をして、そしてその結果を報告する、こういうお約束をしていただきたい。
  490. 山崎圭

    ○山崎説明員 結局、私どもの大気汚染から申し上げますと、大気につきましての環境基準が、人の健康を守る上で維持することが望ましい基準と定められておりますので、環境基準と直接のリンクを持っての調査、検討は当然のことだろうと思っておるわけでございます。
  491. 荒木宏

    荒木分科員 いま違反しているとあなたおっしゃったんだから……。
  492. 山崎圭

    ○山崎説明員 そういうことの関連におきまして、過去の被害状況もその限りにおいては当然に調査の対象になる、かように考えております。
  493. 荒木宏

    荒木分科員 報告していただけますね。
  494. 山崎圭

    ○山崎説明員 ちょっと所管外ではございますが、持ち帰り、そのような方向で検討させていただきたいと思います。
  495. 荒木宏

    荒木分科員 経済企画庁に伺います。  この審議会は企画庁の所管でありますが、幹事会でいろいろ審議会の事前のお繕立てをなさる場合に——いま通産省はお約束をいただきました。環境庁もお約束をいただきました。水産庁もお約束をいただいた。その態度を確認し、かつ国会報告をされておるということを確認をした上で幹事会で候補地の決定をする、こういうことをひとつお約束をいただきたい。
  496. 仲田嘉夫

    ○仲田説明員 私どもは従来より、電源開発調整審議会を開くにあたりましては関係各省の意見を十分に伺いまして、それぞれの分野の問題点を摘出し、そこでいろいろ問題を煮詰めた上で幹事会にかけるということにいたしておりますので、今後ともその辺慎重にやってまいりたいと思います。
  497. 荒木宏

    荒木分科員 最後に大臣にお伺いをいたします。  まず一つは、先ほど質問を保留しました地方自治体の意向でございます。地方自治体、この場合は大阪府知事、大阪府議会でありますが、その同意があるまでは候補地決定をしない、このお約束をひとついただきたい。  それからもう一つは、単に多奈川第二火力発電所の問題だけじゃなくて、こういった火力発電所あるいは汚染が問題になっておる新しい工場建設、稼働については、先ほど来申し上げておりますような同じ態度、方向で処理をする、こういったことを御確認いただきたいと思います。
  498. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 環境の確保に関する地方自治体の意向というものは、極力尊重いたすべきものと考えます。  なお、そのほかの地点につきましても、環境を破壊しないように、住民の健康被害を与えないように最大限の注意をして行なうべきものと考えます。
  499. 荒木宏

    荒木分科員 いま大臣が総括的におっしゃいましたが、関係各所管の省庁ではいまお約束いただいたことを必ず守っていただくということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  500. 湊徹郎

    湊主査 これにて荒木宏君の質疑は終了いたしました。  次に、高橋繁君。
  501. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 私は、採石の問題について質問をいたしたいと思います。  この採石の問題については、あまりいままで問題になっていなかったんではないかと思いますが、日本全国の採石の現場を調べてまいりますと、現在七千九百八十二カ所という膨大な採石の現場になっておる。これを見てもおわかりのように、日本全国がたいへんに禿頭病的な存在になっておる。そのほかにまだ砂利の発掘であるとか陸砂利、山砂利、そのほか土砂の採掘、これは法的にはありません。そうしたことを数えますと、全く日本全土が掘られているといっても過言ではないと思います。そうした採石について至るところでかなりの紛争も起きておりますし、あるいは災害も起きておる。  そういうことで、この採石に関する通産省の一切の責任は、都道府県に四十六年から移管をされた。しかしながら、採石法の第一条にもありますように、この採石に関して通産省としての責任というものはどの程度感じておるのか、またどのように考えておるのか、まずそれから通産大臣にお伺いいたしたいと思います。
  502. 山形栄治

    山形政府委員 採石法は、いま先生のお話しのとおり、四十六年に改正されまして、都道府県の権限に相なったわけでございます。御存じだと思いますが、採石につきましてはいろいろな問題が起こる可能性が多いわけでございます。したがいまして、採石の採取計画につきまして都道府県知事の認可を、まず認可制にこれをいたしまして、公共の福祉に反すると認める場合には、法律の三十三条によりましてこれを認可してはならないということをはっきりとさしておるわけでございます。なお、その後におきましても、都道府県知事といたしましては変更命令を出すこと、また災害防止措置を命ずること等が法律上に明記されておるわけでございます。われわれといたしましては、常時都道府県と担当官会議も定時的に開いておりますし、具体的な紛争の発生にあたりましては、地元の通産局の機能も活用いたしまして、法律に規定されております目的が達成されますように行動をとるように、本省と通産局と県と三者が協力してこれに当たるような体制をとっておるわけでございます。
  503. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 確かにお答えはりっぱでありますが、実際問題として七千九百カ所の現場を一体一々チェックできますか、いまの体制で。あなたはちゃんとチェックしてやっておると言いますけれども、実際チェックしてやっておりますかどうか、その点。
  504. 山形栄治

    山形政府委員 先生のいま御指摘のとおり、採石の許可を持っておりますところは非常に数も多いわけでございます。われわれといたしましては、これを全部常時見るということは非常に無理であるわけでございますが、問題の発生しておりますところは数もおのずから限られておりまして、そういうところにつきましては原則として県が月に一回その現場を立ち回る。そしてなお必要がございましたら、土木事務所が、もうちょっと数多く、たとえば月に二、三回現場を見回るというような措置をいたしておるわけでございます。
  505. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 時間がないかち簡潔にお答えください。  そこで、三十三条の四に従って、いままでの採石現場で一体全体公共の福祉に反すると認めたときに認可をしてならないとか中止をしたという事例がありますか。
  506. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 そういう事例は数多くございます。手元にその具体的な資料は持ち合わしておりませんけれども、具体的に採掘停止命令等を出したことはございます。
  507. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 実際にありますか。
  508. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 ございます。
  509. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 あればまたあとで資料をいただくことにして、この採石が七千九百カ所、需要に伴って、これはこの前もちょっと質問しましたが、だんだんふえる可能性があります。川砂利がなくなってきていると同時にこの採石というものはますますふえつつある。ということになりますと、今後の採石の認可の問題でたいへん問題になる点が出てまいりますので、一つの例を引きながら質問を進めてまいりたいと思います。  まず第一に——きょう農林省は来ておりますか。——保安林の解除の問題で、これは最終的には農林大臣の認可ということになると思いますが、これは間違いないですか。
  510. 松形祐堯

    松形説明員 農林大臣の権限におきまして解除いたしますものと、県知事に委任いたしておりますものと、二種類ございます。
  511. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 全国にもそういう例がありますが、静岡県の大久保山という場所は実は大正元年に保安林に指定されておった。ところが、昭和三十八年にこの保安林の解除の申請が出ておる。この保安林の指定の目的は、土砂の防備ですね、いわゆる土砂の流出の防備という目的で保安林に指定された目的の個所である。ところが、この解除の理由がその指定理由の消滅ということになっておる。確かに解除の理由はそうであるけれども、この場所が採石の現場になるということで解除が出されたということは、私は間違いない事実であると思うのですが、その辺のチェックというものは実際問題として農林省としてはやっているのかどうかということですね。
  512. 松形祐堯

    松形説明員 ただいま御指摘の場所は、沼津市の獅子浜の保安林ではないかと思っておりますが、御指摘のとおりに当保安林は大正元年に指定いたしております。解除申請が出てまいりまして、二回に分けて保安林を解除いたしておりまして、三十八年の八月と十一月に、二回に分けまして約五・五ヘクタール程度の解除をいたしたわけでございます。その解除理由といたしますと、御指摘のように指定理由の消滅ということでございまして、私その場所を具体的に知っているわけではございませんけれども、書類上から見ますと、県道に面しまして落石の危険があるために指定された土砂の流出防備保安林でございまして、土石の採取を行ないましてのり面が整備されて危険防止ができるというようなことで、指定理由の消滅ということで解除いたしたような次第でございます。
  513. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 片方の十一月の解除の申請の理由は、そういう理由が何もないのです。ところが、事実土砂の流出というものは当時あった。これは私も知っています。そこでその次の解除の理由は、土石の採取を行ない、のり面を別図のとおり整理して石積みをして危害の防止をするということがありますが、そんな事実は一つもありません。それを目的にして採石をじゃんじゃんやってさらに危険を及ぼしておる。その下には民家もありますよ。県道もあって、夏などはレクリエーションで、レジャーでものすごい込み方です。そういう場所を保安林解除されて採石がどんどん行なわれている。私はここに非常に問題があると思う。  ただ県から申請を出せば、ノー文句で、現場をチェックしないで書面で許可してしまう。これはこれから採石の場合あるいはゴルフ場の場合、かなりたくさん出てくると思うのです。私はそうした保安林の解除の問題に今後非常に問題を残すということを言いたいのです。ですから、採石の業を営む場合あるいはその場所で採石をするという場合に、それがはっきりわかった場合は、今後そうした保安林の解除ということを一体やるのかどうかということをお聞きいたしたい。
  514. 松形祐堯

    松形説明員 ただいま御指摘のように、山砂利等を採取いたします場合、保安林を解除する場合とこれが普通林である場合と二つあろうかと思います。保安林の場合につきましては、ただいま御指摘のものは昭和三十八年と十年以上前でございまして、一応現在の実態と合わない面もあろうかと思いますけれども、私どもこういう保安林の解除につきましては、今後とも慎重に対処してまいりたいというふうに考えております。その場合、きわめて重要性の高い保安林につきましては原則としては解除しない。しかし、当然必要な場合がございますので、その場合にいたしましても、なるべくその土地をはずれまして、もっと保安林の機能の低いところでそれをやっていただくように指導いたしますと同時に、必要最小限の面積にいたしたいということを指導いたしております。  なお、採石のために被害を下方に及ぼすというような場合には、それの被害の及ばないような代替施設をつくるということを条件といたしまして指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  515. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 そうしますと、いままでのような大久保山に見られるような採石の場合には認可をしないということで確認してよろしいですか。
  516. 松形祐堯

    松形説明員 ケース・バイ・ケースと私、思っておりますけれども、非常に人家が多いとかあるいは下を国道が走っている、県道が走っているというような重要な意義を持った保安林の場合は、なるべく、私どもは原則としてでもこれを厳重に取り締まってまいりたい、かように考えております。
  517. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 そういういま言ったような問題があるわけですね。  そこで、当時は通産省の認可の案件であったと思うのですが、通産省として、そういう採石の認可申請が出てきた場合には、私はそこまで考えて許可をしたんじゃなかったのだろうと思うのですが、その辺はどうなんですか。そこまで考えて採石の認可をいたしたのですか。
  518. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 この採石場は、昭和四十一年東京通産局に届け出るという行為によりまして採石業務を開始いたしております。四十一年のことでございまして、その後採石のいろいろな公害であるとかあるいは災害問題等発生いたしまして、監督の強化ということが必要になってまいりました。法改正等に伴って徐々に改善しておる現状でございます。
  519. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 いまのような場合、認可の場合には、保安林であるという場所については、今後は厳重にチェックいたしますか。
  520. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 そういう方針で、具体的に許可にあたってはチェックいたしております。
  521. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 いまは都道府県の許認可の事項になっております。ところが、最終的には通産省もこれには責任を持って指導もし、福祉の向上のためにこの採石業務をやるということになりますが、四十八年六月六日のこの大久保山採取計画認可申請書の中には、実は解除になっていない保安林があるわけですよ。この件については一体どのように考えておるか、農林省に最初にお答えしてもらえますか。
  522. 松形祐堯

    松形説明員 ただいまの昭和四十八年の作業許可ということで行使いたしておりまして、二つの会社がございまして、双葉建設、作業許可面積が二ヘクタール、日付はちょっと違っておりますけれども、四十八年でございますが、松庫海事というのに作業許可面積約〇・九ヘクタール、こういうことになっておるわけでございます。
  523. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 それはなっておるということはわかりますけれども、その認可書の中に保安林で解除になっていない部分があった場合に、一体この認可は農林省としては黙って見のがすのか、これでいいのか、そういう点を聞きたいのです。
  524. 松形祐堯

    松形説明員 作業許可という制度は、森林法の三十四条の二項にございまして、一時軽易な形質変更で作業いたしまして、作業が終わりますと復旧いたしまして森林にするということを前提として作業許可をする、こういうたてまえになっておりまして、現実にこの場所が森林にならないということでありますと、当然保安林解除手続をすべきである、こういうように理解をいたします。
  525. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 通産省にお聞きしますが、いま農林省の見解はそのとおりでありますが、これは県の段階でありますので、通産省指導すべき立場としてこの問題についてはどういうように考えていますか。
  526. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 計画の認可にあたりまして、そのような保安林の解除等の法的手続がとられておらない場合には、許可をすべきでないというふうに考えております。
  527. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 時間がありませんから次に進みます。  次に、採石方法についてお伺いをいたしたいのでありますが、この採石方法は、いわゆる採石の基準というものが、指導要綱がたしか通産省から出されていると思います。一体全体この採掘の方法がそうした基準どおりに行なわれておるか。全国四カ所くらい私、調べましたが、ほとんどなされていないというのが現状です。この現状はどう把握しておりますか。
  528. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 法律が変わりました三年前、許可が都道府県に移行いたしました際に、私ども採掘の技術基準をつくりまして、監督の立場にある県の技術向上ということと、認可の基準ということの参考に資するために、そのような基準を設けたわけでございますが、逐次改善されておると思います。現場の状況が逐次改善されたということは、災害発生件数ということで把握するのが一つの方法だと思いますが、災害発生件数は逐年たいへんな減少を示しております。
  529. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 災害発生件数が減っているということは、何も通産省や県がチェックを厳重にしたからではないと私は確認します。これは住民が騒いだから、住民がこの問題について関心を持ってきているから災害が少なくなってきている。たとえば一番多いところで香川の三百四十カ所。それじゃ一体三百四十カ所のチェックをすることができますかどうか。たとえば静岡県に例をとりますと、砂防課の庶務係が兼任でやっております。長野ではこれも同じであります。調査管理係が他の業務と兼務をしてやっております。広島では専門官が置いてありますが、これも人数はきわめて少ない。そうした人数の中で、そうした採石基準がせっかく通産省で定めてあるにもかかわらず、その基準というものが守られていない。それをチェックする職員というものはきわめて少ない。それで災害が減ったという理由には私はならないと思うのです。  ただ、この報告書を見ると、確かにベンチカット方式でやりますとか、角度は六十度以内となっておりますが、現場に行ってみれば全然違うのです。六十度どころかかえって百度ぐらいになっておる。ベンチカット方式も守られておらない。そこで災害が起きているのです。都道府県の許認可になったからといって、都道府県にただまかせきりで、通産省がもっと厳重なチェックをこれにしないところに問題があるというふうに感じますが、その辺いかがですか。
  530. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 災害の発生と職員の数等の関係につきましては、先ほど私どもの資源エネルギー庁長官がお答え申し上げたとおりでございます。  なお、現場の状況が守られているかどうかということにつきましては、地元からいろいろな問題がありましたときには、県と通産省と一緒に検査をするというふうに、できるだけ機会をとらえまして現場の改善を、通産省の経験もあるいは県に伝えまして、できる限りの努力をしておるのが現状でございます。
  531. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 現場のチェックの問題で、これは実際立ち入り検査も県の職員あるいは通産省の方々がしているわけです。ところがこの立ち入り検査を見ると、全部計画どおりなされているというような報告が来ておるわけですね。これを見ればおわかりになりますが、そのように間違って虚偽の報告をしておるところに私は問題があると思う。それで問題がない、計画どおりやられている。あるいは通産省のほうは県から報告をとる。その報告書はまさしく事故なくやっている、間違いなく計画どおり進められているという報告だけ見て、よしとしているところに私は問題があろうかと思うのです。この点についての厳重な今後のチェックを望むわけですが、今後の決意というかそうした考え等について、できれば通産大臣からお聞かせを願いたい。
  532. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近日本の各地において採石の現場がふえておりますけれども、一面においては自然の破壊、それから住民の生活の保護という面から、われわれとしては深甚の注意をもって見守り、かつ保護しなければならぬところが多々あるように思います。私の県にもずいぶんあります、群馬県ですから。そういうことからいたしまして、法規、行政規則を厳格に守って、採石の行為というものが自然を破壊しないように、また住民の生活に被害を与えないように、私たちとしてはくれぐれも心がけて監督しなければならぬと思っております
  533. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 私は今後の採石等全部ひっくるめて質問しておるわけですが、あそこの個所は、このように写真がありますけれども、このうしろに富士山があるわけです。この写真は全世界に富士のすばらしい景色を紹介されておる。その百四十一メートルの山がなくなるんですよ。しかもこの下には民家があるし県道がありますし、しかも富士山を背景にした駿河湾の最大の景色の場所なんです。これがなくなっていく。しかもこちらの住家のあるところはハッパの振動で現在土砂が落ちて、しかもそちらの側の山は木が枯れつつある。ということは、あの採石の基準にありますように、頂上で、隣のこちら側の山との間は五メートル以上ですか、それは何ら守られておらない。ていさい的に網をかけてありますけれども、そんなものは何の用にも立たない。そこに住んでおる住民というものは毎日不安な生活をしておる。一時あぶないということで避難しました。ところが、避難したけれども、生活上非常に都合が悪いということで心配ながらまた戻ってきておる。その企業との間で避難のうちをつくってありますけれども、実際問題としてそんなものは住めるうちじゃないですね。そういう自然の問題かららいって一つ。  それから、この山があることによって、江浦港というのは最良の自然港なんですね。山のこちらにある港というのは避難港なんです。その避難港が、この山がなくなることによって気象条件がまるきり変わるということが予想つくわけであります。特に沼津は、五十年の測候所の記録から見ると、五十年間で南西の風が約六〇%、もろにこの風がこの自然港へ、もうすでにそこにつないである船の綱が切れたとかいろいろ出ておりますが、これが完全になくなりますと港としての機能もたいへんな問題になってくる。付近の住民は不安にかられておる。だけれども、そうした問題が何一つ解決をされていない。  これから住民の期成同盟会も結成されてやっていくようでありますが、そうした採石の問題、これは採石の中でも特例だと思うんですね。そうした場所について、今後あと処理をどうするとか何年間で打ち切るとか——これは採石業者にとって一番いいところです。山からけっころがしてすぐ海ですから、船が待っておるのです。その船にのっければ、こんな業者にとって最良の場所はない。そういうことを考えますと、住民の怒りというものはたいへん強いわけです。  一例を私、大久保山にとって申し上げましたが、これは明らかに人災であるということがはっきり言えます。これから雨季に入りまして、鉄砲水等あった場合、集中豪雨等があった場合はくずれていくことは当然です。そういうことを考えた場合に、今後の採石に関しての厳重なもう一度の総点検なりチェックをぜひやらなければならない、こう思いますが、通産省考えをお聞きします。
  534. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 大久保山の採石場では反対期成同盟と当事者の事業者との間で、四十六年十二月に採石事業に伴う諸問題についての協定を締結しております。なお、この協定の範囲内で沼津市のあっせんを受けまして、地元住民の了解する範囲内において操業を続けていくということを県は認可の基本的態度としております。  先生御指摘のように、ここはすでに採掘されました状態におきまして、むしろ安定したところまで山を下げるべきか、あるいはこういうふうな状態の中でそのまま作業を中止すべきかというふうなことが議論の中心になっておるわけでございますが、それも現在地元住民代表と沼津市長さんとのあっせんによりまして、県がそれらにつきましても近く技術的な判定を下すことになっております。  なお、気象条件の問題でございますが、過去の気象条件の追跡と、もし必要であるならば採石業者に風洞実験等もいたさせまして、それらによって確実なデータが得られた後に初めて認可ということに踏み切るというふうな考えも県としては持っておるようでございます。私どももそれは妥当な考えであるというふうに思っております。  なお、この地域について厳重な巡回検査をこの際やるべきでないかというふうな御指摘の点は全く同感でございまして、近く通産省も県と一緒になりまして、再度巡回いたしまして、必要な問題点がございましたら県を通じて厳重に監督させ、あるいは場合によりましては一部事業の変更等もいたさせるつもりでございます。
  535. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 時間がありませんから……。とにかく私一番心配なのは、災害の防止ですね。住家があるのです。民家がその下に毎日不安な生活をしておる。確かに協定書はありますが、その協定書も読んでみれば問題もあるようです。ほんとうにあそこに住んでいる人の声を聞かれて——私は決して一企業をつぶすとかそういう考えではありません。ただ、あの人たちが毎日安定し安心した生活ができるように特段の監督を強く要求いたしまして、終わります。
  536. 湊徹郎

    湊主査 これにて高橋繁君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日木曜日午前十時より開会いたしまして、引き続き通商産業省所管予算について質疑を行なうこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十七分散会