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1974-03-09 第72回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月九日(土曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 渡辺 栄一君       塩谷 一夫君    戸井田三郎君       大出  俊君    多賀谷真稔君       八木 一男君    石母田 達君       木下 元二君    三浦  久君       石田幸四郎君    小川新一郎君    兼務 阿部 昭吾君 兼務 芳賀  貢君    兼務 村山 喜一君 兼務 山本 政弘君    兼務 吉田 法晴君 兼務 小沢 貞孝君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         内閣官房長官 大村 襄治君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         厚生省医務局長 滝沢  正君         労働大臣官房長 北川 俊夫君         労働大臣官房会         計課長     水谷 剛蔵君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君  分科員外出席者         法務省人権擁護         局調査課長   加藤 泰也君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     別府  哲君         厚生省児童家庭         局企画課長   松田  正君         労働省職業安定         局審議官    岩崎 隆造君         自治省行政局振         興課長     田中 和夫君         日本国有鉄道職         員局能力開発課         長       秋山 光文君         日本電信電話公         社厚生局長   小沢 春雄君     ————————————— 分科員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     戸井田三郎君   多賀谷真稔君     大出  俊君   木下 元二君     石母田 達君   山田 太郎君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   戸井田三郎君     塩谷 一夫君   大出  俊君     岩垂寿喜男君   石母田 達君     東中 光雄君   渡部 一郎君     松本 忠助君 同日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     多賀谷真稔君   東中 光雄君     津金 佑近君   松本 忠助君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   津金 佑近君     三浦  久君   石田幸四郎君     小川新一郎君 同日  辞任         補欠選任   三浦  久君     木下 元二君   小川新一郎君     山田 太郎君 同日  第一分科員山本政弘君、吉田法晴君、第二分科  員芳賀貢君、村山喜一君、小沢貞孝君及び第五  分科員阿部昭吾君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算厚生省労働省  及び自治省所管  昭和四十九年度特別会計予算厚生省労働省  及び自治省所管      ————◇—————
  2. 渡辺栄一

    渡辺主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、労働省所管を議題といたします。  この際、政府から説明を求めます。長谷川労働大臣
  3. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 昭和四十九年度一般会計及び特別会計予算労働省所管分について、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管一般会計歳出予算額は、一千九百九十三億七千六百二十七万二千円で、これを前年度当初予算額一千六百八十八億一千七百八十六万七千円に比較いたしますと、三百五億五千八百四十万五千円の増加となっております。  次に、労働保険特別会計について御説明申し上げます。  この会計は、労災勘定失業勘定及び徴収勘定に区分されておりますので、勘定ごと歳入歳出予定額を申し上げます。  労災勘定は、歳入歳出予定額とも五千四百七十五億二千四百七十三万七千円で、これを前年度予算額四千二百七十七億九千二百三十三万二千円に比較いたしますと、一千百九十七億三千二百四十万五千円の増加となっております。  失業勘定は、歳入歳出予定額とも五千八百六億七千九百二十二万四千円で、これを前年度当初予算額四千七百五十一億五千八百九十四万四千円に比較いたしますと、一千五十五億二千二十八万円の増加となっております。  徴収勘定は、歳入歳出予定額とも八千百三十四億三千五十五万五千円で、これを前年度予算額六千六百十一億三千三百四十一万八千円に比較いたしますと、一千五百二十二億九千七百十三万七千円の増加となっております。  最後に、石炭及び石油対策特別会計石炭勘定中、当省所管分としては、炭鉱離職者援護対策等に必要な経費として百二十億九千九百一万八千円を計上しておりますが、この額は、前年度予算額百九億四千七百六万七千円に比較いたしますと、十一億五千百九十五万一千円の増加となっております。  以下、この労働省予算重点事項につきましては、委員各位お許しを得まして説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  4. 渡辺栄一

    渡辺主査 この際、おはかりいたします。  ただいま長谷川労働大臣から申し出がありました労働省所管関係予算重点事項につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡辺栄一

    渡辺主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  以上をもちまして、労働省所管についての説明を終わりました。     —————————————
  6. 渡辺栄一

    渡辺主査 質疑に先立ち、念のため申し上げます。  質疑者が多数おられますので、質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  なお政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に要領よく、簡潔にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  7. 大出俊

    大出分科員 春闘を前にいたしておりますから、関連をする幾つかの問題を承りたいのでありますが、きょうはいささか声わずらいをいたしておりまして、たいへんお聞きいただきにくい質問になりますので、お許しをいただきます。また、大臣の顔を見ると、あんまり質問がしにくくなるのですがね。昨年末はたいへんお世話になりました。たいへん御尽力をいただきました。御礼を申し上げておきます。  ところで、昨日の新聞に、この国の労働者実質賃金低下に関しまする労働省月例報告みたいなものが出されております。つまり、ここでいう四%の実質賃金の減というのは、昨年の十二月あるいはいまからいうと昨年の一月ごろからの毎月勤労統計に基づく傾向値としてどういう趨勢をたどって四%減になったのかという、それをひとつ御説明いただきたいのであります。ただ四%ではわからぬわけでありまして、そこはいかがでございますか。
  8. 道正邦彦

    道正政府委員 四十八年一月におきましては、名目の賃金増加率が一六%でございまして、これに対しまして消費者物価上昇率が六・二%、したがいまして、実質賃金増加率は九・三%であったわけでございます。以後毎月、若干の出入りはございますけれども、四十八年平均では八・九%、それから昨年の賃金改定期以降の四十八年四月からの平均では一月までを含めまして七・二%であったわけでございますが、一月分につきましては四%の対前年同月比マイナスになったわけでございます。
  9. 大出俊

    大出分科員 ここにエコノミストが編集した毎月勤労統計中心にして、昨年の一月から今年の一月にかけての実質賃金の推移というのを表にしております。これはいみじくも企業利益、これは営業利益中心でありますが、この上昇の度合いというのを同じく表にして一つの表に二つ上下に並んでいるわけです。端的にあらわれておりますが、まず毎月勤労統計中心にしてみますと、昨年の一月の前年対比でいうところの労働者実質賃金上昇率は、この表によりますと一二・二%あったようであります。これがずっと物価上昇とともに下がってまいりまして、昨年の十二月に五・七%。つまり昨年の一月に一二・二%の実質賃金上昇が見られたものがどんどん下がってまいりまして、十二月には五・七%に落ち込んだ。それが昨年の年間平均物価上昇全国で一一・七%でありますが、それがこの表で見ますと、いまの一月に入った段階計算をいたしますと、労働大臣がお話しになっている四%の実質賃金のさらに減、こうなるわけであります。  そうなりますと、念のためにもう一つ承りますが、これは東京の速報だと思いますけれども、二月の消費者物価上昇、これは二四%あるように思いますが、いかがでございますか。二四%になりますと、傾向値としてさらに実質賃金は二月に低下する、そういう傾向を、時間がありませんからこまかく言いませんが、この表を論理的に推してまいりますと、どうしてもさらに落ち込む傾向を持っている。つまりこの傾向は、いまの物価上昇が解消しない限りは変わらない。だからたいへんな家計費に対する圧迫になっている、こう見たいわけであります。見なければならぬわけでありますが、このところはいかがでありますか。
  10. 道正邦彦

    道正政府委員 対前年同月比で四%のマイナスになりました原因につきましては、いろいろ技術的な問題もございます。しかしながら、主としては消費者物価上昇の強まってきたことによる影響でございますので、私どもといたしましては先行きについて、物価動向いかんにより楽観はできないものと考えております。
  11. 大出俊

    大出分科員 楽観ができないということは、物価がおさまらなければさらに実質賃金低下傾向が続く、こういうことになると思うのですが、大臣、そうでございましょう。
  12. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 物価をいかに押えるかということはいま最大な命題でございまして、国会の御審議もそういうところにあると思っております。でありますから、物価を押えることに重点を置きながらも、一方いまのような消費者物価勤労者に及ぼす影響については、深甚の注意をしながら見守っているところであります。
  13. 大出俊

    大出分科員 片や企業利潤は、この表によりますと、ちょうど昨年の三月期が一九八・九ということでピークにあります。これは当然、不況から回復したときですから。ずっと見まして、一番落ち込んでいる九月でも六〇・四あるんですね。まさに対照的に企業はかせぎ過ぎているが、毎月勤労統計にあらわれておりますように、労働者家計というのはたいへんな苦しい状態にある。しかもそれが二月期の消費者物価の二〇・四%に及ぶ上昇で、さらに傾向値としては落ち込みが続きそうである。こういう時期に実はいま春闘が行なわれようとしている、こういうわけであります。  だから、もう一点つけ加えておきますが、四十八年の労働者つまり家計費というものを中心に一点、例をあげさしていただきますが、この四十八年に年収百五十万の人、この人の家計費は八割見なければなりませんから百二十万であります。これは若い御夫婦に子供さん二人の標準世帯であります。年収百五十万、家計費が八割でございますから百二十万。ところで年間平均で一一・七%、全国消費者物価が上がっている。そうすると百二十万の家計費に一一・七%を掛けなければなりませんから、掛けますと年間十四万四百円という数字が出てまいります。つまり、一年前と同じ家計費つまり同じ生活をしようとすれば、十四万四百円の家計費についてのプラスがなければ同じ生活程度は維持できない。これが厳密な数字のあらわしている実態であります。  もう一つ、私、大蔵省に求めまして、昨年の十二月の、これは衆議院議員大出俊要求資料、こう書いてありますが、正確な国民全体の貯蓄総額を出してみましたら、ちょうど二年ばかり前は五十八兆でございましたが、べらぼうなふえ方をいたしまして、百二十七兆八千五百三十九億円あるのですね。ところがこの国民の貯金、この中にはこまかく見ていくと法人預金も多少ありますから総額はもうちょっと落ちるとは思いますけれども、二・七%の物価上昇、逆にこれは一一・七%預金が減価するわけでありますから、よけい払わなければ買えぬのですから、計算をいたしますと、この預金総額百二十七兆八千五百三十九億円の減価額は、掛ける一一・七、十八兆一千四百六億円、これだけ減価しているのですね。預金が十八兆減価している。一億の国民で割りますと、一人当たり十八万一千四百六円になる。  さらにもう一点申し上げておきますが、税金であります。かくのごときインフレの時期には富のたいへんな落差ができますが、本来税金が調整する役割りを果たすべきなんですが、そうなっていない。時間がありません、一つだけ申し上げますが、いま申し上げた年収百五十万円の人の昨年の減税は何と年間九千百三十二円しかない。〇・六%であります。これは話にならぬ。そこへもってきて、大蔵省試算によりますと、これはモデル試算でありますが、四十七年に年収二百五十万円の標準世帯の方の税金を納める総額、これが二十三万四千百五十五円。この二百五十万の年収の人が昨年、経済企画庁の経済見通しに基づく一五%の平均個人消費支出上昇があった、つまり一五%賃金が上がったと見て、大蔵省試算でありますが、二百五十万が一五%上がりますと二百八十七万、つまり三十七万円ふえたわけであります。となりますと、同じ人間税金総額は二十八万三千九百六十四円になる。差し引き何と同じ人間で一五%上がっただけで税金が四万九千八百九円年間でふえている。増税であります。明らかに日本の税制はインチキであります。かつ逆進型であります。こういう状況でございますから、だれがどう算定しても、この数字を詰めてまいりますと、ことしの賃金要求というのは三〇%をこえざるを得ない。陰のほうでしきりに二三%、二五%ぐらい出して落とすところは端から落としちゃったらなんというようなことを政府内部方々が、あなたと申し上げませんけれども、四月十日ごろにはまとめてなんというようなことを——四月十日にはまとめてのほうはおたくのほうの考えでしょうが、とてもそんなことでまとまる状態にない。そこで小坂さんに私は聞いたんですけれども、ストライキをやるといったら処分をする、それだけで事済むか。そうしたら小坂さんは、あなたの出ている席上での話が新聞に載っておりましたが、いやその席で言った覚えはない、ないが、考え方を申し上げる。力と力の対決などという時代は過ぎ去ったんだ。何よりも話し合いをして、そこでどれだけ目減りをしているかということもしさいに検討してフランクに、政府統計だけでものを言わずに、インフレ下でございますから、何とかひとつ生活が成り立つような、そういう詰め方をやっていかなければならぬ時代である。ストライキを打たれたから処分する、そういう時代じゃないということを、スト権の問題を離れて話しておりました。大臣、ひとつ所管大臣でございますから、この春闘に臨むまず基本的な姿勢、いま私が申し上げたような実情にあって、労働省実質賃金低下は御存じである。となると、一体そのところを、あなたは基本的に小坂さん以上のことを言っていただかなければ困る。総務長官はいま、皆さん話し合いスト権担当なんですよ。皆さんがそれを含む春闘舞台裏で舞台を回される責任者でございますから、基本姿勢をひとつこの際明らかにしていただきたい。まず第一点であります。
  14. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、いま大出さんがおっしゃったように経済情勢その他たいへんな、このたびの春の賃金改定は第二の国難とさえ実は申し上げているわけであります。ですから、そういう総合的な大事なときでございますから、まさに労使国民的視野に立ちながら、そして円満なうちに話し合いがつくようにやってもらいたい。そのためにこそ、いまだかつてないことだと言われておりますが、昨年就任以来、労働団体方々と総理に会っていただき、あるいは各大臣にいろいろ会って実情を、もちろん国会の御議論が中心でございますが、そういう方々が申し上げるいろいろな問題等もフランクに聞いてもらう、そういう話し合いの中に問題を煮詰めてまいりたい、こういう考えでやっていることを御理解いただきたいと思うのです。
  15. 大出俊

    大出分科員 話の場所でございますが、関係閣僚という名がつきますように、つまり春闘要求を出しておりますですね、これは国民春闘という意味で。こういうインフレの時期には、弱いところにしわが寄るのが原則であります。だからそこを上げていこうというのは、これはあたりまえであります。かつ労働組合だって、企業の側が国民からインフレ利益という形で価格転嫁をしてしぼり上げたたいへんな利益労使間で団体交渉で分け合って春闘が終わったんじゃ、国民から吸い上げた利益労使間で分け合って終わりですというんじゃ、これは運動にはなりません。社会責任を負う労働組合の立場じゃない。だから国民春闘にならざるを得ぬ必然性を持っているわけであります。だからこれは四つに取り組んでいただきたいし、取り組み始めていただいていることは評価をいたします。だが、このあたりでやはり関係のございます閣僚を集めていただいて、そういう形での舞台をつくった話し合いは私は必要なのではないかと思う。そのあたり大臣はなかなかはっきりものをおっしゃらぬように、新聞紙上で見る限りでは受け取れるのでありますが、まず第二番目に、その辺のところは社会的に責任のある、企業もそうでございましょうが組合もそうなんですから、しかも異常な春闘ゼネストを五日、六日やられたら、去年の四・二六、二七だって横浜の食糧倉庫には米が半日分もないのですよ。たいへんなことになってしまいますよ。あのときに北海道のジャガイモが出てこないだけで後遺症が三カ月も続いている。これは田中内閣の存立にもかかわりかねないです。だからそういう意味ではきちっと話し合いの漏れのない舞台をおつくりいただき、専門的にとおっしゃるならばその中に専門の部会でもつくっていただいて、早く話が進むようにお考えいただきたいのでございますが、その点いかがでございますか。
  16. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 心配している面は先生と私も同じでございます。そういうことからしますというと、やはり米の食糧倉庫問題一つにしましても、海、陸、空全体のゼネストなどということになったら、これは人心のいらいら、さらにまた一番憂える物価の高騰、こういう問題などがありますから、これはその方々と直接——要求をいれるとかそういうことじゃなくても、国会皆さん方が御議論いただくので、議会政治の国でもございますし、そして有力な御意見がこうして出ることでございますから、そういう問題の中に全体の雰囲気として何とかこれを円満にいくようにしてみたい。それにはどんな方法があるのか。向こうの方々が言うことをただ全部のむこともあり得ないこともあるのです。それをよくうしろのほうで腕だけ振り上げて、こっちを向かなければ絶対、絶対でも困る。そういう意味のゆるやかな話の中に何とかじょうずにみんなを持っていくという姿勢こそ、一方私はまた御指導願いたい、こう思います。
  17. 大出俊

    大出分科員 いま妙なことをちょっとおっしゃいましたが、わからぬわけでもないからいいのですが、ただやはり施設の人だとか母子家庭だとか身障者だというところに二千円というようなばかなことを、財源は百二十億でしょう、官房長官に私が聞いたら。迎賓館があそこにできるというわけだ。幾らだ。百億だ。あんなものをつくらぬだって、いま外国のお客さんを接待しているのだ。そうでしょう。ばかみたいにあんなものに百億かけるのだったらこの国の低所得階層に、寝たきり老人に、やらにゃならぬことは山ほどありますよ。それはおたくのほうがそこらあたりは底上げするような考え方をお持ちにならぬと、厚生省サイドだけでは事務的には進みませんですよ。そうでしょう。だからやはりそこらのところは、こういうときには大胆に、フランスのカルチェ・ラタン闘争じゃないけれども、ドゴールさんずばっと前に出た。ずばっと出なければ世の中渡っていかないのですよ。  そこで、ストライキ権の問題について承りたいのでありますが、さて、この春闘の中の一つストライキ権回復の問題がある。あるいは郵政省のように、全逓との間のように、これは公労協の分野ですから大臣のほうですけれども、実損回復という問題が一つある。これはILO最終報告にも、全逓の百七十九号事件で明らかになっている。しかもこれは昨年、表に出ているやっと、もう一つ裏念書と、そのもう一つ裏口頭了解とこうある。念書以下は念のためにないことにしておくとあなたは言うのだけれども。つまりここまでの問題があるので、一つスト権の問題、総務長官の権限だけでは済みません。基本的に一体どうお考えか。ILOの中身は詳しく言いません。それが一つ。もう一つ損回復。ゼロというふざけた話はないのであって、ここらは一体どうお考えになるか、基本的にお伺いしたい。
  18. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 スト権の問題は、昨年の公制審答申を受けて立って、内閣内部にいろいろな連絡会議などをつくり、私も就任以来、作業がどうなっているかということをずっとフォローしてみました。しかし部長課長いろいろな会合を十五回とか何回かやったということでございましたが、これはたいへんむずかしい問題であることは、七年間かかって公制審が出した、それがまたいろいろ並列とか三つ並べられたという事態もございますので、むずかしいことはわかります、企業の内容とか経営の問題とか国会審議予算問題等とかありますので。しかし時期が時期でございますから、それをひとつ前進させるというふうな意味で、二月二十七日かに第二回の連絡会議を開き、そういう手配を続けている。ただしかし、いまいつの時期にこうするというふうなことはなかなかむずかしいということは御理解いただけると思っておりますが、研究はこういう機会をきっかけにして絶えず進めるような段階であるということは御理解いただけると思います。
  19. 大出俊

    大出分科員 総務長官じゃございませんで長谷川労働大臣ですから、実は私が注文つけようと思ったことをあなた先にお答えになった。ここに八年間かかった公制審答申がございますが、「可及的すみやかに争議権の問題を解決するため、」こううたっているわけですね。これがみそなんです。だから満場一致にしたわけです。ところがとたんに政府のほうは、これはストライキ権を差し上げるなんということを意味しないと、いきなりこう言う。小坂さんは私に、組合ストライキ権に足がかかったというじゃないかと先に言うから、政府だって、そんなことを言えば、これはストライキ権意味しないということを官房長官談話で先に発表するじゃないか、それが間違いなんだ。両方そうなっていたんではドライヤーの言うように不信感は深まるばかり。だが、スト権問題に足を入れるのはきっかけがなければできない。これだけ大きな国民を動かす春闘だからこそ、政府のほうも例年とは態度が違う。一つ間違うとえらいゼネストに発展する社会情勢生活情勢にあるから態度が違う。力と力の対決じゃ事済まぬということになった。この時期にこの問題を少なくとも前に進める土台ときっかけをつくることにしなければ、労使関係のいままでの不信感の累積をもとに戻そうなどということはできない。これはほかならぬ労働省労働大臣責任であろう、仕事であろう、私はこう思うわけであります。きっかけをつくる、この方向で御努力を願いたいのですが、いかがでありますか。
  20. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私もILO委員会の前文に書いております相互理解、そういう雰囲気を高めるというのが前文の大きなテーマだと思っています。いまの日本で大事なものはやはり千三百万の勤労者、こういう方々日本の生産の大きなもの、そして生活をしょっている、こういうのを守りもし、向上させるのが労働省本来の仕事だ、こう思っておりますので、おっしゃるとおり、あなたの御希望のとおりいついつどうこう、すぐということはありませんけれども、そういう前向きの姿勢であることは御理解いただきたいと思います。
  21. 大出俊

    大出分科員 私の、きっかけをつくっていただきたいという質問に前向きな姿勢で取り組む、こういうことでございますから、中身に触れると時間が長くなります。  もう一点承りたいのですが、この春闘の中で、政府組合との交渉の中で、実は昨年の四・二六、二七のストライキのときに陰に隠れた部分——私は総評の大木君と兄弟分の仲です。机を並べて全逓の執行委員を一緒にやってきた仲です。彼が結んだ中身を即刻私はそのままリコピーでとってここに持っている、いまだから言うんですが。これは原文ですよ。山下元利さんと大木君のやりとりした文章、ここにちゃんとマル印となっている。これは印です。そのままとっている。表に出ている覚え書きは別にあります。これはILOの報告の載っているこれです。だが、もうこれは実は私どもはやみだと思っていない。山下元利君とも話しましたが、いやいろいろあるんだが、この際は大出さんかんべんしてくれと言う。それでやみじゃない。これに基づいて口頭了解がある。この口頭了解の中に実損回復の問題がちゃんと触れている。「過去の処分に伴う昇給延伸の回復の問題について引き続き協議する。恣意的に差別は行なわない。」、この「恣意的に差別は行なわない。」ということを解釈し合っているわけです、大木君と山下君と。山下君が官房長官のところに飛んで行っているわけです。「恣意的な差別というのは特別昇給を持ち込まないという意味である。」こういうやりとりを最後にしてあるわけですよ。政治ですから、こしらえても腹におさめて、ないと言う場合も必要でしょう。関係閣僚会議の席上で一ぱいたたかれたから黙ってしまって何も言わない、これも政治です。官房長官と私も個人的に話しております。いろいろなことがありますが、非公式な話ですからここでは言いません。言いませんが、私の希望は、話し合って判こまで押してあるこの問題をこの春闘の過程でもう一ぺん表に出すべきであるという考え方を実は私は持っているのです。いろいろなことがありましたが、情勢が去年とは違う。閣内の皆さんだっておわかりを願えると思う。このまま表へ出すといって出せなければ、別な角度でいいから、文章は違ってもいいが、ここに書いてある中身は非常にいいことを書いてある、山下元利官房副長官と総評の大木君以下のスタッフとで徹夜で話したのですから、煮詰まっているのですよ。だから、これをもう一ぺん表に出す努力をしていただきたい。いまここで認知しろとは言わない。言わないが表に出す努力をしていただければ全逓の実損回復問題でも片づく。最後にこの点を一点お伺いしたいのだけれども、時間がありませんから、いまの一点ともう一点だけ。  実は昭和三十三年、いまの田中角榮総理大臣が郵政大臣のときに、彼に私は首を切られたわけですが、これが全逓処分の第一号であります。ところが三十三年ですから足かけ十六年、ILOは、ストライキをやって処分をした、だが身分上の不利益取り扱い、主任になれぬとか課長になれぬとかという取り扱い、賃金上の、金銭上の損失、これが長い期間ついてまわるということはよくないと何べんも何べんも勧告しているわけですね。十六年間続きっぱなしであって、実損回復はゼロであるという郵政省と全逓関係というのは、国際的な常識といわれるILOの勧告からいけば話にならぬ状態なんです。きのう原田郵政大臣に聞いたら、おとなげないことだけれども特別昇給をあわせてやらしていただきたいと言わざるを得ないと言う。重ねて聞いたら、おとなげないことと申し上げているのですから、私の真意はそれで以心伝心おわかりいただけると思うというので、特別昇給をやるということを言っているのはおとなげないことだ、だからそのおとなげないことをいただきましょう、以心伝心伝わってきたこのことを認めましょうということで別れているのですが、技術的な問題じゃなくて、実損回復が十六年間ゼロであるということは、ILOで何べんも言っていることに照らして特別昇給はしないなんてことは言いわけであります。やらなかったということが事実として残る。そうすると、さきのこの問題を一ぺん表に出す努力を——同じものでなくてもいいけれども、真意が同じようなことになるものを出して話を詰めていくという努力と、あわせて最後に残る一つの実損回復の問題を言えば、足かけ十六年ゼロであるという手はなかろうという点についてどうお考えかをお答えいただきたいと思います。これも春闘をまとめる一つであります。
  22. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 前段のものは、実を言うと理解というとおかしいが、直接私なんか関係していないことなんで、あなたのお話のとおり、よく当時の話を聞くとタマムシ色とかコガネ色とか、両方の解釈でそうなっておる。内容はわかりませんが、そんなことと私は理解しておるわけです。いま新しい話を聞いたようなわけでして、あとの問題につきましては郵政省、これは昇給延伸の問題等々については労使の間で進んでいるような話を聞いているのです。しかしながら、何かなかなか妥結しないような話なども聞くので、ことに郵政関係全逓関係はあなたは詳しいので、きょうあなたから話を聞いたことを、将来問題が起こったときの重大な参考にして見守っていきたい、こう思っています。
  23. 大出俊

    大出分科員 進んでいるように聞いていると大臣はおっしゃった。実は私が田邊君と二人で昨年末政治的にまとめたものですから、私自身がまとめたものですから、一番よく知っている。知っているからこそここでものを言っているのですから、おたくのほうに一枚かんでいただかぬと、旧来の歴史がありまして踏み切れない立場におる官僚の方々もおいでになる。私のほうも殺されちゃ困るのです。だからその意味では、公労協関係というのはいろいろな意味労働省所管官庁でありますから、だからそこらは一枚かんでいただいて、公労協内部一つ残った問題があって、だからこの念書云々の問題についても時間がかかったわけですから、だから口頭了解の中に入れて、また解釈までつけているわけですから、つまりそれはそこにネックが一つあったから、公労協全体がまとまりにくいから、そういうことでございます。だからどたんばにいってこの問題は出てまいりますので、あらかじめ大臣にその心証をという意味で申し上げたわけであります。  そこで道正さんに一つだけ承っておきたいのですが、タマムシ色ということばによくあらわれている。非常に都合のいいことばでございます。だからタマムシ色、どっちから見てもこう見えるというそのことについて、落とすところはここだというのがそのときにあるのです。あるがそれが出てきてはまずいからタマムシにしておくわけですから、それがここに落ちるはずだったタマムシが、こっちにおっこってしまっては困るのです。そういう意味で、昨年の念書云々の問題等については、ひとつその中身をもう一ぺん読み直していただいて、この春闘の中でポイントになっているものは、同じものがたくさんあるわけですから、生かす御努力を願いたいのであります。いかがでありますか。
  24. 道正邦彦

    道正政府委員 私は実はほんとうに念書なるものを知らないわけでございます。しかしながら七項目の合意、これはよく存じております。それから、それに基づきまして誠心誠意やっているつもりでございます。御指摘のように三公社五現業、いろいろ内部事情が違います。一番問題があるのは郵政関係だと思っております。しかしながら、本来労使の問題でございますから、労使が誠意をもって話し合いをされる性質のものでございますけれども、側面からお手伝いすることがあればさせていただきたいと思っております。
  25. 大出俊

    大出分科員 これで終わりますが、なかなか、アリの一穴というのがありまして、ものごとがまとまりそうになって、ぱっときれいにいきそうだというときに、一つ石ころがころがっておりますとがったり横にいってしまったりする、そういうことになりますので、用心深く詰めるものは詰めておく必要があるという意味で申し上げているので、御留意をいただきますようにお願いをいたしまして終わります。
  26. 渡辺栄一

  27. 村山喜一

    村山(喜)分科員 大出君の質問と非常に関連があると思うのですが、きわめて重要な問題でございますので、このスト権の問題を中心に、労働大臣に私は話を詰めてもらいたいと思っているわけでございます。きのうの夕刊を見てみますと、物価上昇率実質賃金を上回りまして、一月の労働者賃金は四%事実上減になった、ダウンをしたということが発表されておりました。これは朝鮮動乱以来のことであります。昭和二十九年そういうようなことがあって以来、初めてのできごとだと報道をしているわけでございます。そういう中から三・一ストライキが行なわれました。そうしてこれは、インフレ阻止と国民生活要求を掲げての非常に整然としたストライキが行なわれたと私は思うのです。インフレ弱者に対するところの措置とスト権回復というのがこの春闘の大きな柱になっておる、私はそう思うのであります。   〔主査退席、戸井田主査代理着席〕 これについて政府に対して国民からどういうような反応があったのかわかりませんが、労働者側のほうに対しましては、かねてある苦情というものはほとんどない。それよりもむしろ激励のことばが返ってくる。これはやはり国民ストライキに対して、それぞれ要求を持っているわけだけれども、その要求に対するいわゆる表現のしかたというものが自分たちではできない、だから彼らがやってくれたんだというような形の中で終わっているのではなかろうかと私思うのでありますが、労働大臣はあのストライキ回避のために一人残って非常に御努力をされたことも、私も知っております。しかしながら、政府全体の姿勢の中で、はたしてそういうような、ストライキはどんなことがあっても回避するのだという積極的なかまえがこの前あったのであろうか。私はそのことを疑いたいのであります。疑いたくないわけでございますが、客観的に見ればストライキやらしてみろ、その結果世論がどういうふうに反応するか見てみようじゃないか、こういうような態度にさえ出てきておるのではなかろうかと思うのでありますが、あのストライキをごらんになりまして、客観的にどういうふうに受けとめていったらいいというふうに、いま大臣はお考えになっていらっしゃるのですか。
  28. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 こういう時代ですから、日本全体に交通ストライキみたいなものがあったのでは、雪が降っただけでも東京では野菜が高くなるということですし、しかも人心のいらいらが起こったらたいへんなことだということと、もう一つは、やはり政治ストということははっきりしておるのですから、そういうことはぜひおやめいただきたいという感じは内閣全体、私はそう思うのです。国民もそうなんです。でありますから、そのことを四団体方々あるいは各団体の方がおいでになりますと、お願い申し上げた。しかし御要求の中には、底辺の方々に対する御同情の御意見もありました。これは、その方々に直接御要求におこたえしたということでもありませんが、国会の御審議もあり、政府考えておることでございましたから、百三十億、六百八十五万人にああいう手当てができたのですが、百三十億では足りない、三百億だというふうな御意見などもありまして、あれが回避できなかったのは残念だと思います。   〔戸井田主査代理退席、主査着席〕 しかし一方、やはりこういうときでありますから、いらいらがあまりなくて、ごたごたがなくて、そしてその日の、ことに受験生のことなども非常に心配したのですが、おくれたところは大学では試験をさせるとか、ある場合には誘導をよくやったとか、いろんなことで当時ごたごたがなかったということは、まず非常によかったのではないか。利用者の忍耐やらいろんな問題があります。しかし、こんなことがたび重なれば物価の高騰もございましょうし、また不測の事態でもあったらたいへんなことになるということで、いまから先もそういうふうなことのないようにお願いしたいという感じを持っております。
  29. 村山喜一

    村山(喜)分科員 二月の二十一日に総理が労働団体の代表に会われた。全閣僚も一緒に出席をされたようでございます。その後二十五日の春闘共闘委員会と労働大臣、あるいは労働団体と経企庁長官労働大臣、厚生大臣、大蔵大臣の交渉、そして総評と小坂総理府総務長官との会見。二十七日に春闘共闘委員会がまた労働大臣と交渉した。二十八日には労働大臣、厚生大臣小坂総務長官、この三人が政府を代表して会われている。その中から生み出されたものは、いま大臣がおっしゃったような一人二千円の三カ月分の百三十億、これを予算措置をいたしましょう。その二番目には、公制審答申を尊重いたします。しかし、これ以上には出ていないわけですね。そして小坂長官は、きょうは出席を求めておりませんが、スト権の問題をめぐっては、非現業については現行法制でやりましょう。三公社五現業はよく考えろと書いてあるのだ、だから話し合いをしたい。しかし、簡単にはきまりませんよ。解決というが詰まっていない。何にも具体的な答弁というものがないわけですよ。そこで、第三次公務員制度審議会の答申というのは、九月の三日に出ている。もう半年。スローモーであったことは小坂長官自身も認めておいでになる。そして、ILOの結社の自由委員会の第百三十九次報告ですね。これも十一月の十六日に理事会で採択をされているわけです。そういうような状況の中で、会ってみたら具体的に何も詰まっていない。これで、政治ストだ、違法ストだからやめなさい。これでは官房長官が談話を出されましても、労働者を納得せしめることだけではなしに、政府は誠意をもっていままで努力をしたということを国民に印象づけることさえもできないのではないだろうか、私はそういうふうに指摘をせざるを得ないのであります。労働大臣労働運動について非常に理解を持っていらっしゃると思うのでありますが、私は、やはりこれは政府全体から見たら怠慢であった、非常に消極的な姿勢ではないか、こういうふうに指摘せざるを得ないのでありますが、ストライキをかまえなければそういうような具体的なものが前進しないというのでは、私はおかしいと思うのであります。大臣、これから前向きに対処願うと思うのでありますが、国民が怠慢ではないかというふうに思っている、そのことについて反省はございませんか。
  30. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御案内のように、昨年の九月三日に公制審答申が出ました。そのあとで政府のほうで連絡会議等々を開いて研究していることもわかっておりましたが、国会の場においても、ILOの結社の自由委員会のいろんな問題が論議されるときに、この問題についての御議論のあったことも私たちは承知しております。  さて、こうした公共企業体のスト権の問題ということになりますと、何といっても片一方の公制審が三者構成でありながら八年もかかったという実態、そうすると、おくれるというのはただ怠慢でおくれたのか、事務的な諸君だからおくれたのかという問題が一つあると私は気づいた。なぜかなれば、問題が非常に大きい問題ということですね。たとえば争議権の有無が労使関係に及ぼす影響なり、国民生活に及ぼす影響というものがありましょうし、それから当事者能力という問題が出ております。それから予算に対する国会審議権の関係、さらには経済原則によるところの争議行為の抑制力の欠如という問題がテーマとなっております。その他経営形態等事業全般のあり方、こういうものを含めて検討するというのが一つのテーマでございますから、これらを、去年の九月に答申が出たから、すぐにこれ全体ということはなかなかできなかったのではないか。しかしながら、こういういろいろな問題のときにそれがクローズアップされて、ほんとうにお互い考えなければならぬチャンスであったということは、私は一つのメリットとして認めます。また、それらを受けて立つ、あなたの御質問などもこうしていただく、それは受けて立って議論をする中に、私たちが前向きの姿勢なり、また、できるものからやろうとするなら、どれをやるかとか、いろいろな問題が出てくる。しかし、そういうふうな一つの前進というものは当然こういう議論の中から出てくる。そういうことにおいていまから先も進めてみたい、こう思っているわけであります。
  31. 村山喜一

    村山(喜)分科員 この二月二十五日の労働大臣春闘共闘委員会の交渉の模様を私も聞いたのですが、労働大臣が、エキサイトしないでやってくれ、肩の力を抜いてやってくれ、スト権の問題については十分に対処したいんだというお気持ちを言われておる。石黒次官が、スト権の問題については、窓口は総理府だけれども、実質は労働省なんだというごとも言われた。私はそのことを考えますと、窓口をどうするかという問題がいま一番大事な問題ではなかろうかと思うのであります。ゆうべの七時のニュースを聞いておりました。そうしたら、きのう何かまた春闘共闘委員会の幹部の人たちと大臣お会いになったそうでございますが、窓口を設けよということについての要求に対しては、君たちのほうも総理府総務長官にも同じようなことを言うてくれということで、結論をお出しにならなかったというふうにニュースは報道しておりました。それはやはりそういうような配慮も必要でありましょう。しかしながら、労働省というのは少なくとも労働者の味方だ、そういうふうに労働者の人たちは考えているわけです。だから労働者のために労働省というのはあるのだというとらえ方をしている。しかも労働大臣は、私も昔から知っておるのですが、非常に人情味のある方だと思うし、理解がある方だと思っているのです。しかし、あなたが、石黒さんが言うように、実質的にスト権の問題を処理をするのは労働省なんだという立場に立って問題の処理を考えるとするならば、当然労働大臣が積極的に閣議の中でイニシアをとる、このことがなければ前進はしないと私は思うのです。  そこで、春闘共闘委員会は、これは各省間にまたがる問題でもあります。三公社五現業関係はいままでのいきさつから、また現在のいろいろな法令の関係から労働問題については労働省、それから国家公務員等についての基本的な労働権の問題は総理府、私たちもそういうふうに受けております。実際の窓口もそういうふうになっているようであります。とするならば、今度は自治省や文部省やその他にも関係がある、あるいは運輸省にも関係があるというような省庁があります。そこに内閣責任を持つという姿をとるならば、そして三月の下旬には再び大きなストライキをかまえての戦いが展望される。その中において、それを避けるために政府としてはこういう窓口をつくってそれに対する受け答えをする、そして誠意を見せる、窓口をつくりましたぞということを示さなければ、労働者だけではなくて国民からも、また政府ストライキについては声だけは大きいけれども、実際に問題を前進をし、解決をしようというかまえはないではないかというふうに見られることになる、そういうような意味においてはやはり内閣総理大臣が一番望ましいわけですが、総理大臣をそんなにしょっちゅう引っぱり出すわけにもいかないでしょうから、二階堂官房長官あたり中心になってもらって、そしてあなたと総理府総務長官が両翼になって問題の処理をするという、そういう窓口設定をお考えになるべきではないだろうかと思うのでございますが、労働大臣いかがでございますか。
  32. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 村山さんからおほめいただいてありがとうございますが、私はおっしゃる気持ちはよくわかります。また肩から力を抜いて、ひとつあんまりエキサイトしないでやろうじゃないかという気持ちでございます。でありますからきのうも、お見えになればお待ち申し上げてお目にかかるというかっこうです。で、味方のつもりでございますけれども、おいでになる方の中には味方と思ってない人もなかなか多いようなので、実はお手伝いをしてもこれはなかなか理解してもらえないかなあという気持ちもなきにしもあらずです。しかしながら大きな問題でございますので、労働省だけでできるものでもございませんけれども、御意見を拝聴しながら何かしらお手伝いできる、そして日本の全体の労働行政の将来の発展のために前進するものがあるというかまえで、理解したときには懸命にひとつお手伝いを申し上げたい、そんな感じでございます。
  33. 村山喜一

    村山(喜)分科員 何か前に前提条件がたくさん並んでいるようでございまして、どうもすっきりしない答弁、長谷川さんらしくない答弁が返ってきたのですが、あなたが労働大臣としての立場から、一番中心的に責任をもって推進をしていただかなければならない人だと私は思っている。国民もそう思っている。組織労働者の人たちも、中には雑音もありましょう、しかしあなたを信頼をしているわけです。そういうような意味においては、あなたが中心になって、田中内閣の閣議においてそういう窓口をつくることに努力をする、正式に受け答えができるような窓口をつくって一本化した体制の中で前進をはかっていくのだということにならなければ、形式的には総理、実質的には労働相、これでは私はおかしいと思うのですが、この点は大村官房副長官にお答え願いたい。
  34. 大村襄治

    ○大村政府委員 官房長官がほかの分科会に出席しておりますので、かわりにお答え申し上げます。  公務員制度審議会の答申につきましてはい現在総務長官主宰のもとに関係各省庁の事務次官をメンバーとする公務員問題連絡会議を設け、鋭意検討中でございます。昨年の九月上旬に答申が出て以来今日まで局課長レベルを含めますと十七回にわたる会議を開いて検討中でございます。ただいま御指摘のありましたとおり、今回の答申の内容が複雑多岐にわたっておりますため、検討する問題に応じ、必要があればそのつど関係閣僚の会合を行ない、対処していくという方針で臨んでおるわけでございます。ただいまのところ常設機関としての閣僚会議などをつくるということは考えておらない、こういう次第でございます。
  35. 村山喜一

    村山(喜)分科員 大村さんのおっしゃることは、事務的にはそのとおりだろうと思うのです。しかし、ストライキの処理というものは事務的な処理ではございません。大きな社会の運動の流れの中で問題の処理をしていかなければならないことでして、そのためにはやはり閣僚である政治家としての判断が、私は一番大事なことだと思うのです。非常にしつこいようでございますが、労働大臣がやはり閣議の中で事実上の推進役になってもらわなければ——それは全体的ないろいろな団結権の問題とか団体交渉権の問題とか登録の問題とか、そういうふうなものは総理府でやられてけっこうですよ。そこを窓口にされてもいいです。しかし石黒事務次官も認めているように、スト権の問題については実質的にも労働省中心なんだ。総理府は窓口にはなっているけれども、それは形なんだ。そのとおりなんです。とするならば、一番私はこの際解決をしなければならないものは何かということを詰めていけば、直ちにスト権の問題をあすからこういうふうにしますと言うことはできません。しかしながらあなたが春闘共闘委員会の代表の諸君に言われたように、自分としてはそれは考えているのだということをおっしゃっているわけですから、閣議の中でもう一回あなたがそういうような事実上の進推役として、きちんとしたものをつくろうじゃないかということで、これについてはおれにまかせろというようなことで、問題処理を願う方向で努力することを約束はできませんか。
  36. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 逃げるわけではございません。それだけ御期待いただいて非常に私はありがたいと思うのですが、いま大村官房副長官も言われたような経緯などもあるので、私は皆さん方からそれほど期待されているということを胸に含めながら、問題の所在というものをはっきりさせつつ、前進にお役に立つことがあるならばやるということをひとつ御理解いただきたいと思うのでございます。
  37. 村山喜一

    村山(喜)分科員 非常に慎重な発言でございまして、前進に役に立つようなことがあるならば努力をさせてもらう。やはり前進するために御努力を願わなければ、また、そういうふうな事態が三月の下旬には残念ながら出てきます。四月の段階には、このまま放置していくならば、大幅なゼネストまで発展をするおそれがあるわけであります。私はそういうような事態が国民生活の上から見まして決して好ましいことであるとは思っておりません。だからそれをだれが解決をするのか。もう公務員制度審議会はないわけです。政府のほうにボールは渡されたわけですから、そのボールを、国民が見ている前で、ILOの第百三十九次の報告の内容にもこたえながら、これをどのように近代化した形でルールをつくるかということは、あなた方政府がもうすでに責任を持たなければならない立場にあるわけです。だから逡巡は許されない。やはりこれは前向きの形の中で決断をしてもらわなければならない時期にきている。私はそのことを重ねて大臣に要請をしておきたいと思うのであります。  そこで、大村副長官にお尋ねしますが、あなたは政務次官会議の座長格でやっていらっしゃるように新聞で見ているわけでございます。ところがこの前、夕刊を見ておりましたら、どうも青嵐会のメンバーが政務次官にたくさん入っているからかどうか知りませんが、非常にタカ派的な発言が多くて、どうも新聞の記事そのものから見ますと、ドライヤー勧告がありました以前にさかのぼるような、あるいはもっと旧帝国憲法時代にさかのぼるような発言のものが新聞の記事に出ております。一体、政務次官会議の結論というものは、正確には何だったのか。われわれが見ているところでは、どうも政務次官の人たちは公制審答申についても、あるいはILOの一三九次報告についてもごらんになっていないのではなかろうかという気がするのですが、政務次官の人たちは、大村さんを含めて、ILOの第一三九次報告をごらんになっておりますか、いかがでございますか。
  38. 大村襄治

    ○大村政府委員 ほかの方もごらんになっておると思いますが、私も読んでおります。
  39. 村山喜一

    村山(喜)分科員 おそらく私は読んでいらっしゃらない人が大部分だと思うのです。読めば読むほど、公務員制度審議会が八年の月日を費して、そして答申を出しました内容よりもさらに進んでいる。私は、そのことを考えますと、もう時間があまりありませんので申し上げる時間的な余裕もそうありませんが、この林野庁の問題でございます。全林野の組合から出されました七四三号議案ですね。これの第一三九次の報告の一二四項、これを見てみると、二年後に賃金諸手当の回復が行なわれて、ストライキをしたら処分はいつでも不可避であるという、しかもその処分は一年後において処分がされるという、そういうやり方は納得ができない、こういうことが指摘をされて、報酬の永続的な不利益だけではなく、労働者のキャリアに対する不利な諸結果をもたらすようなことのないように、従来の諸提案を想起するように政府に勧告をする、こういうふうに指摘をされているわけですね、労働大臣もお聞きいただいておると思いますが。ところがここは、私も内閣委員会にありましたときに定員内繰り入れの問題でやかましく言って、たとえば機械要員の場合にはこれを定員内に繰り入れました。しかし、定員内に繰り入れる、そういうような仕事もやりましたが、常用、定期の作業員が残っているわけですね。この常用、定期の作業員というのは、一カ月に二十二日以上働かないともうだめになるというような制度でありますし、そういうような人たちが三万人も一律に減給、カットをされているわけですね、処分で。言うならば、公務員であるのかないのかわからないような、そういう身分的にも不安定な人たち、この人たちが賃金カットをされている。この状態を見ますときには、これでいいんだろうかということを考えなければならないような状態のときに、あの政務次官会議の結論は一体何ですか。もっと厳重に処罰をしなさいというのが結論でしょう。こういうような国際的に日本の官公労働者に対する弾圧が指摘をされて、実害の損害回復について指摘をされている、勧告をされている。国際的な恥さらしをしているにもかかわらず、それに逆行するようなことをきめようとする。私はそこに反動的な政治の姿勢を読みとらざるを得ないのであります。こういうようなことはまことに残念なことです。ですから、この問題については私は注意を喚起をしておきたいと思います。  そこで、もう時間が参りましたので、これでやめますが、何としてもこれからの労使間のトラブルを解消をしていくためには、労使間の信頼関係回復するという問題が一番大事だと思うのであります。しかしそれには、先ほど申し上げましたように小坂長官が分類をされました、答申の線で実施ができるもの、それから詰めていけば実現可能なもの、むずかしいもの、三公社五現業のスト権に関するもの、この四つに分類をされて問題ごとの項目を整理をされているようであります。ではお尋ねをいたしますが、この四つの分類についてはどういう時点においてこれが解決を目ざしているのか、人事局長もお見えになっていらっしゃるわけでございますから、その点を最後にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  40. 大村襄治

    ○大村政府委員 政務次官会議のことにつきまして、ちょっとだけつけ加えさせていただきたいと思います。  政務次官会議は連絡調整の機関でございまして、決議をする場所ではございません。先週及び今週の政務次官会議におきまして、最近における公務員の違法ストによる処分はどう行なわれているか、その状況を知らしてもらいたい、また損害賠償の請求の事例があればそれを知らしてもらいたいという要求がございましたので、各省庁から資料を出してその説明をした。その際に、最近処分の件数が減っているという点についてどういうわけかという質問がございまして、それにつきましては、御指摘のILOの勧告もあり最近は減ってきているのだというふうな説明がございました。賛否両論いろいろな意見があったわけでございますが、決してもっと厳重にしろとかそういう決議をしたわけではないということを御了承願いたいと思います。  御質問につきましては、人事局長からお答えいたします。
  41. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 公制審答申のうち、四つの項目に分類をして検討なり対処を進めておるということでございますが、制度の改正をまたないで主として運用によって善処できるのではないかと考えております項目は、非登録の職員団体、これとの交渉については合理的な理由がなくて拒否はしない、こういうことを指摘されておるわけであります。この問題は運用上できるのではないか。  それからその次に、管理運営事項に対していろいろ議論があったわけでございますが……
  42. 村山喜一

    村山(喜)分科員 時間がありませんから、一はいつまで、二はいつまで、それだけでけっこうです。
  43. 渡辺栄一

    渡辺主査 人事局長、簡潔に要点だけ。
  44. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 それでは、運用によって処理できる事項が四項目ほどございます。これは、直ちにその趣旨を徹底をさせております。さらに若干の制度的改正をつけ加えていきたいということで検討をいたしております。  それから、具体案の作成に努力すべき事項という点につきましては、できるならば今国会に出したいということで鋭意検討を進めておったわけでございますが、現在のところまだ成案を完全にまとめ切るまでに至っておりません。  それから第三の項目のうち、将来検討を要する問題、これにつきましては現在のところまだその時期等の見通しを得るに至っておりません。  それから四の争議権の問題につきましては、非常に広範な検討項目が課されておりますので、それぞれ所管省庁が中心になりましていま検討中でございます。
  45. 村山喜一

    村山(喜)分科員 時間が参りましたのでこれでやめますが、労働大臣、いままでのなにを聞いておりましても非常におくれている。テンポがおそいです。世の中のテンポは早いのですから、労働大臣、そのテンポに合わせるように行政のほうでも対応していただくように、ひとつよろしくお願いしておきます。
  46. 渡辺栄一

    渡辺主査 村山君の質疑は終わりました。  阿部昭吾君。   〔主査退席、戸井田主査代理着席〕
  47. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 労働大臣にお伺いいたしますが、私どもは、これは若干主観的な面も含めまして、わが国就業構造の六十何%を占めておる労働者を保護する、これが現在の労働省の任務だ、こういう認識をしているのであります。いま労働災害などが起こる、ところが起こった労働災害に対応する労働省の、たとえば監督署の活動、これが必ずしも十分ではない。私どもの調査によりますると、監督署には機動性が非常にないのであります。全国の監督署の中で車などを持っておらない役所が非常に多い。この目まぐるしい現代の車社会の中において、監督署あたりに自動車の一台も配置されておらないという状況のところさえもあるのであります。こういう状況を労働省においてはどのように掌握をしておられて、これを将来どのように改善していこう、機動力をどういうふうに強化をしようとしていらっしゃるのか。たとえば事故が起こる。労働省の下部機構の監督署の対応のしかたがおそい。そこでいろいろ調べてみますると、たてまえからいうと、労働災害などにあった側から申請というか報告というか、これを出すように指導してある、こういうのでありますが、その指導は必ずしも徹底しておらない。ほかのところはみんなものすごいスピードで動いておるときに、労働省だけは何かたいへん手ぬるい、間の抜けた動きになっておるように思うのですが、そういう現状というものを労働省においてどのように把握をされておって、どういう改善をされようとしておるのか承りたい。
  48. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働基準監督機関の活動を効率的に行ないますために、私ども、自動車その他の機動力の増強につきましてはできるだけ努力をいたしておるところでございまして、現在全部の監督署につきまして最低一台は車が配ってございます。大きい署、忙しい署等につきましては、状況に応じさらに追加の車も配っておるところでございます。ただ、事業場等も非常にふえておりますし、基準局のいろいろな監督活動の面もふえておる、あるいは事故などの問題が同時にあちらこちらで起きる場合等につきまして、それらに全部対応し得るか、いまの機動力で十分かどうかという点は、私ども決して十分だとは思っておりませんので、今後とも自動車の配置その他機動力の増強につきましてはできるだけ努力をいたしてまいりたいと考えております。  なお、事故が起きました場合等につきまして、もちろん届け出するように法令に規定はいたしてございますけれども、これは、すべての事業場を直ちに監督署等で把握することが困難な場合もありますので、さような法令の規定を設けておるわけでございまして、決して届け出を待って監督署にすわっておるということではなしに、重大な事故が起きましたような場合には、そういうことをキャッチして積極的に現地に出かけ状況を調べる、そして自後そういうような災害を繰り返すことのないような指導監督等もいたすように努力をいたしておるところでございます。
  49. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私の質問のしかたが間違いましたが、自動車というのは自分で動く軍であります。労働省では動かぬ車をあっちこっちに配っておるようであります。中古みたいなものを相当配っておるようなんですね。これは監督署のみならず、安定所などでも動けない車が相当あるようであります。ぜひひとつそういう面は改善をしてもらわなければいけない。何か政府全体からいうと、労働省というのはあまり重視されない役所なんではないか。そこで長谷川労働大臣、就業構造の六十何%を占める日本労働者が、今日日本社会において果たしておる役割りはまことに大きい。そういう意味で、この労働者の立場に立った労働省の行政をもっと拡大してもらわなければいけないわけでありますが、私どもずっと回ってみますると、動かぬ自動車を持っておる役所などが相当あるのであります。改善されるように要望しておきます。  それから、労災保険の料率の問題であります。  これは長谷川大臣、林業に関する料率が非常に高い。いま正直いって山元の零細な——四十年、五十年たたなければ金にならない山であります。この山を零細にやっておる山元の農民の皆さんが、山の仕事に定着をするという情勢が非常にゆらいできております。四十年、五十年先まで待たねばならぬ山などをやるよりは、人並みに元手要らずの出かせぎにでも行ってといったような雰囲気が非常に農山村で強いのであります。そこで、だんだん調べてみると、山で働いても、出かせぎよりも収入がはるかに悪い。冬場になると、山の仕事は中断せざるを得ない。そこで、この山元の零細な、たとえば伐木とか搬出とか集材とか地ごしらえとか植えつけなどをやっておる林業従事者は、ある意味でいうと、自分たちで事業をやっておると同時に労働者なんです。これが、たとえばいま基準が千分の八十ですか、この千分の八十の料率というのは、私はちょっとべらぼうな料率じゃないかと思う。確かに山の仕事は危険な仕事であります。ところが、たとえばこの辺で地下鉄の工事をやる、あるいはビルディングの基礎工事などをやっておる皆さんの料率、あるいは一般的な相当危険だと思われるような職種の料率に比較して、林業に従事をしておる皆さんの料率——これは事業主負担だからいいじゃないかというのでありますが、実はこの事業主というのは、即労働者でもあるのです。零細な山をやっておる皆さんの状況は、労働者兼林業という事業をやっておる人なんです。これが料率の高い掛け金で、なかなか四苦八苦しておる。だから方々調べてみますると、掛け金の未納、掛け金がおくれておるというような状況が、零細な林業の中で非常に多いのであります。私は、この林業に関する料率というものはやはり見直すべき時期ではないかというように思います。これはいろいろいままでも歴代の基準局長さんと議論をいたしましたが、いや林業というのは実は事故が多いんだ、そこでどうにもならぬのだ、もっと高くせいという議論さえもあるんだというむちゃなことを言うのであります。私は、わが国の山というのは、政策的に見ますれば、経済合理主義のワク組みの中だけで判断してはいけない、環境の問題あるいは国土保全という問題、いろいろな意味の政策的課題を持っておると思う。そういう意味で、林業というものをもっともっと重視していかなければいけない。その意味では、いまのこの高い料率というものは再検討されてしかるべきだ、こう思うのですが、大臣いかがですか。大臣の感じをまず聞きたい。それが先です。
  50. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も、山林地帯が自分の地方でございまして、ほかの産業もそうでしょうけれども、とにかくその諸君が一番力こぶを入れて仕事をしておるということ、そして収入もさることながら、そういう山の中にはなかなか嫁の来手がないということ、これがいつでも訴えられることであります。それから災害率の多いこともわかっております。そして、何さま二十年、三十年後の日本の国土をつくる諸君でございますから、やはり再造林する意欲というものと働く喜びというものを感じさせなければならない。今日のように環境がやかましい時代に、緑を保全し、拡充していくりっぱな諸君だという意味での見方をしていることを御理解いただきたいと思います。
  51. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 そうすると大臣、私の提案の趣旨は十分理解できる、したがって、そういう方向で努力する、こう認識してよろしいのですね。——大臣はうなずいておるようでありますから、これはひとつ確認しておきます。事務当局におかれまして、いまの大臣のお気持ちというものを踏まえて、私はちょっと高過ぎると思うので、林業に関する料率の再検討について、ぜひひとつ努力してほしい、こう考えます。  それから大臣、いま私の県では年間七十三億、これは昭和四十七年のくくりじゃないかと思う。青森県で百四十何億、秋田県が七十何億、こういういわゆる失業保険、この問題で大臣のところに各方面からたくさんの陳情や嘆願やあるいは直談判やいろいろなものが来ておると思います。きのうも私のところに山形県市長会のほうから、たいへんに分厚い資料と非常にきびしい口調の要望書が届きました。各農業協同組合や農業委員会やあるいは市町村議会から、超党派的にたいへんに深刻な陳情や訴えが来ておるのであります。これは大臣も、この前の総括質問の際に、さすがは私とすぐ並びの選挙区の、宮城の農山村に長い長い政治的な根をつちかっておられる政治家としての大臣の見識だと、私はたいへん心強く思いました。  そこで、あのときに大臣は、農村の皆さんに実損を与える、さようなことはいたしません、こういう答弁をされておるのであります。農民の皆さんに実損を与えないというこの具体的な中身は、一体どういうことなのであろうかということであります。気持ちは十分わかります。実損を与えないということを大臣はあの際、国会を通じて国民の前に明らかにされたのであります。その以降、いま閣議決定をされておりまするあの内容等を見ますと、とにかく実損を与えられるものであることは明らかなんです。ある意味では、大臣もここはハムレットのような心境ではないかとも思います。思いますが、あの際大臣が言われました、農民の皆さんに実損を与えない、この大臣の一言に対して、東北農民はこれを唯一のよりどころとしていま期待をしておるわけであります。実損を与えないということは、いまの閣議決定をされました法案の中身と一体どういうかかわりを持つのかということをぜひお伺いしたい。
  52. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 前回先生からの御質問があったときに、私は季節的受給者についての給付と負担の面での公平という話を実は申し上げてあります。そして実損を与えないように努力したいということを申し上げたわけであります。これは御承知のとおり私たち出かせぎ地帯は、帰ってきて保険金をもらっている間仕事ができません。もし地方での給料が少なくても、失業保険をもらっておることがわかると働くわけにいきません。そういうことからいたしますと、一時金を出すことによってあとはどんな仕事にでもその地方で働ける、農林水産全体にワクをかけるという新しい面からいたしましても、一時金であと自由に、そして気がねなしに働けることが地方の労働の需給にも役に立つのじゃなかろうか、私はこういう感じ方をもって申し上げたわけでありまして、国会の場において、だんだんの御審議の中にいろいろいい結論をお出しいただくことが国会の立場だというふうにも信じているわけであります。
  53. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 大臣国会でだんだんの御論議を通じてやること、それはもちろん当然であります。しかし、少なくとも大臣が、実損を与えない、こう言っておったのです。しかし、いままで私の地域では、とにかく六カ月間出かせぎに出れば九十日間の失業保険の給付をほとんどの皆さんが受けてまいりました。そのかわり私ども職業安定所当局に対しても大いに協力をしてきた。いまここにこういう求人の申し込みがあるという場合には、その失業している皆さんの意思にある程度沿わないような業種や職種に職業あっせんされました場合でも、つとめてそれに対して応ずるような努力をしてきました。あるいはまた出かせぎ者の相当部分は、ささやかなりといえども農業を持っているのであります。この農業に従事する期間はちゃんと安定所に対して正確な報告を出す、こういう考え方等も私どもは広めてまいりました。いずれにせよ、われわれの地帯では従来九十日間失業保険を給付されておったのであります。これが今度の改正案によりますと、三十日間の一時金。大臣、私は単純にものを考えるほうであります。政治活動、政治運動というのは簡明直截でなければいけないと私は常々思ってきました。   〔戸井田主査代理退席、主査着席〕 九十日間給付されておったものが三十日の一時金にされて、これで実損を与えないなどということは、日本語のどこをどう組み合わせてみても出てこぬのであります。どうも今回の雇用保険法の考え方はむちゃであります。私は撤回されてしかるべきだと思うのですが、なかなか大臣もつらい立場だとは思います。だんだんの論議を通じていろいろに変えていってくれ、こういう御意味でしょうか。先ほどの御答弁は非常に意味深長な含みのある御発言というふうに受け取ったのでありますが、だんだんの御論議を通じてあとは国会の御意思におまかせする、こういう御意味でございましょうか。
  54. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 阿部さんには、雇用保険法というのは保険理論としてはなかなかりっぱなものであるという御理解をいただいておると思います。いまから先、日本は老人社会になるときに、七十歳まで生き延びたときに、そこまで働くためにはどういう訓練をするか、いろいろなことがあると思います。そういうことからしますと、いままでは失業対策という消極的な面とするならば、今度のものは積極的な雇用関係の改善策ということで、保険理論として審議会等々で非常に御議論いただいて今日まで出てきたので、私はそのメリットというものは非常にある。その中において、いまのような問題が部分的に出てきたところに、私たち御同情いただく問題もあるのであります。しかもそういう中においてさえも、今度国会に法案を提出いたして御審議いただくのでございますから、そういう議会尊重の意味において、政府としてはこういう法案を出します、一時金として出しますというところを御理解いただきながら、議会尊重の意味においての御審議の過程においてまたどういうことになるかということは、それぞれの、そのときの模様になるのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。
  55. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 あまり歯切れのいいお答えだとは思われません。  そこできょう、職業安定局長、急におかぜか何かで倒れられたそうでありますけれども、いま失業保健特別会計の累積黒字、これは今年末には大体どの程度に達する見込みですか。
  56. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 お答え申し上げます。  今年度の末までまだわかっておりませんが、現在で申しますと四千二百億でございます。
  57. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 それはいつのやつ……。
  58. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 現在の時点でございます。
  59. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 現在というのは三月の……。
  60. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 二月末現在でございます。
  61. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 間違いありませんか。——大臣、お聞きのように、たいへんな累積黒字であります。この失業保健特別会計の財源がいま失業対策事業団、このあたりで各方面にこの財源というものを展開さしておる。この展開のしかたが私は、ずいぶんむだなことをやっておるなというふうに思われてなりません。きょうは具体的なことは指摘をいたしませんが、この失業対策事業団のやっておられる業務、事業、これはぜひひとつ厳格にもう一ぺん見直してみる必要があろうかと思います。このことを要望いたしておきます。  そこで大臣、今度のこの雇用保健法というもののあれが、阿部、おまえのほうも基本的にはいい制度だと思っているじゃないかなどといった意味の御発言がありましたが、それはとんでもありません。残念ながら私と大臣とは——私も今度は、予算委員会終わりますと、社会労働委員会のほうにひとつ出向させていただいて、大いに議論を戦わせなければならない、こう思っております。  そこで、この間の答申段階で、率直にいって最も決定的な、いままで得ておったメリットというものを失うものは、季節出かせぎ農民である。今度の審議会、あの中に、出かせぎ者を代表する意思は全く反映されていない。私は、本来審議会というような性格のものは、最も利害のかかわりのある人たちの代表というのが、当然に参加をしておらなければいけないものではないかと思います。多分に、相当強引にあの審議会もやられたというふうに私どもは思っております。  そういう意味で、今度のこの雇用保健法という基本的な生まれ方、中身、これに対しては私も納得がいかぬのでありますけれども、なぜこの間の審議会で——たとえばそれこそ参考人でもいいと思うのであります。そうして出かせぎ者の代表の意見を聞くとか、いろいろなことがあってしかるべきじゃないかと思うのです。その辺はどうでしょうか。
  62. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 私どもが御意見を伺いました職業安定審議会の中には、労使、公益、三者構成になっておりますので、労働者代表として総評、同盟の組織の代表者の方々が入っておられます。その組織の中には、出かせぎの方々が組織している組合も総評、同盟の傘下にそれぞれありますので、間接的ではございますけれども、そういう形で御意見が反映されているというふうに考えております。
  63. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 ちょっとそれはむちゃじゃありませんか。出かせぎの組織ってどこですか。総評にどの出かせぎの組織が入っていますか。
  64. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 出稼労働組合でございます。
  65. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 どこの出稼労働組合ですか。
  66. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 お答えいたします。  出稼組合連合会の意見が総評の意見の中に反映されている、こういう意味でございます。
  67. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私は、そういう議論はちょっとむちゃだと思うのです。全国出稼組合連合会という組織が明確にあるのであります。その代表は秋田県の栗林三郎さん。私は、それが審議会の成員になれないならば、参考人として呼ぶとか、あるいは特に出かせぎの多い東北各県から、何らかの方法で代表を参考人として呼んで意見を聴取する、このくらいのことは当然あるべきなんじゃないでしょうか。大臣、そこはどう思いますか。大臣考え方も聞きたい。
  68. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も御承知のとおり、昨年の十一月労働省に入った者でありますが、この雇用保健の問題は農林水産関係で数年前から、全体のワクをはめ込むというふうなことやらで、職業安定関係審議会等々では前々から問題になっておったことでございますので、役所のほうはいまのような方々を委員にしておれば、おそらく全部意見が、前々からの議論であるから、話がずっと通っておったというふうなことで御審議を願った、こういうふうに私は理解しております。
  69. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 大臣、私は役所の皆さんの意見を聞いているんじゃなくて、大臣の所信として、少なくとも出かせぎ者、現実に出かせぎをしておる者あるいは直接その団体の代表を、審議会というのがちゃんとあるわけですから、その成員としてはできないならば、参考人としてでも呼んで、率直な、直な意見を聞くべきではなかったのか。あの皆さんに、いま決定的な打撃を加えようとしているんですよ、労働省は。その皆さんの直な意見を聞かぬなんということは、私はおかしいと思うんです。この私の意見を大臣はどう思うか、聞く必要はなしと——総評がどうして農民の意見をそのまま直で反映できるんです、できるわけないじゃありませんか。いろいろ違うんですよ。どうでしょうか。
  70. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 組織の問題になりますと、前々からの組織でございますから、そのところがどういうふうな運営をしているか。独立機関というふうなかっこうで、そこの審議というものを私たちのほうは権威あるものとして、受けて立っているという形でございます。御意見とすれば、いまのような先生の御意見も、それは成り立つということも私はわかります。ただ、組織としてそういうふうにずっとやっておった。しかもその中には、突然起こった問題じゃなくして前々からのことであるから、おそらくそういう御意見がずっと吸い取られた。ただ、直接的に固有名詞として栗林さんという名前が出ておったら、その方が呼ばれていないのがいかぬということになりますと、これはまた問題が別ではなかろうか、こう思う次第でございます。
  71. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 わきでいろいろ悪知恵をつけるものですから、君側の好というのはよくないのでありまして、今後これは社会労働委員会において大いに論議をさらに展開したいと思います。  時間がございませんので、これできょうの段階は終わっておきます。
  72. 渡辺栄一

    渡辺主査 阿部君の質疑は終わりました。  次に、石母田達君。
  73. 石母田達

    石母田分科員 私は、きょう初めに未組織労働者の問題についてお尋ねしたいと思います。  いま全国に、組合に組織されていないという労働者は二千万をこえるといわれております。しかも、そういう人たちの大部分が中小の零細業者で働いておられる方、あるいはまた臨時工、下請、社外工、日雇い、季節工、パートタイマー、または家内労働者というような形で、雇用関係においてもきわめて不安定な、そしていろいろな社会保障や賃金の問題でもきわめて劣悪な状態のもとで働いておる方が大部分であります。  この未組織といわれている労働者は、その賃金の低いということは皆さん方から得た資料によっても明らかであります。ここに資料がございますけれども、いま雇用労働者の中で賃金を比較いたしますと、五万円以下の賃金の者が約三〇%、それに比べて十万円以上というのは二一・二%と非常に格差が開いておる。しかも、この五万円以下の賃金、低所得というのが、これまたほとんどといっていいくらい未組織労働者です。つまり、規模別に見ると、三十人以下とか百人以下というきわめて零細なところに多いわけであります。ここで規模別の平均賃金及び平均年齢という資料をもらっておりますけれども、これによりましても、十人から二十九人つまり三十人以下、平均年齢が三十八・九歳、そして現金支給類ということになりますと、きわめてまた低い。この三十人から百人以下になりますと、平均年齢が三十六・九、百人以上になりますと平均年齢が三十三・四ということで、平均年齢はだんだん規模が小さくなるのに高くなっている。逆に、きまって支給される現金支給額はだんだん低くなってくる。年齢が高くなるのに低くなってくるというのが実情であります。こういう状況のもとで、いまの物価高あるいは社会保障の関係を見ましても、事業主の関係で失業保険に入っておらないとか、あるいはまた、国保とか政管健保に入っておられますから、組合健保に比べて非常に条件として悪いというふうな、社会保障の状況でも非常に劣悪な状況にある。こういう未組織の労働者の人たちに対する国の対策というものについて、私は率直に言って、きわめて貧困である。こういう人たちを何とかしていかなければならぬじゃないかということを痛切に感じているわけですけれども、これについて、まず労働大臣から基本的な見解をいただきたいと思います。
  74. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も、企業が伸びるに従って大企業に働いている諸君は非常にいいということは一般的にいえると思います。そして、それらがだんだんしみ渡って、いま人間の需給関係が逼迫しているということからして、中小企業方々の給与もいささか上がりつつあるというのが状況でございます。いずれにいたしましても、未組織の方々、いわんやそういう方々の地位といいますか、生活が悪いというところにお互いほんとうに目をつけて施策としてやっていかなければいかぬということは、お互いの最大なる命題であろう、こういうふうに考えているものであります。
  75. 石母田達

    石母田分科員 こういう未組織労働者、いま言われたような人たちに、国はいわゆる最低賃金法によって、最低の生活を保障する賃金額を示しているわけであります。このデータによりますと、いま労働大臣が言われたようなことがはたしてほんとうなのかどうかということを疑いたくなるような数字でございます。ここにそのデータがございます。まず私は、この最低賃金額の全国平均というものはどのくらいであるかということについてお尋ねしたいと思います。
  76. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 最低賃金の額につきましては、先生も御承知と思いますが、一月以降、四十八年三月以前のものにつきましては、中央最低賃金審議会の一月八日の答申に基づきまして、賃金決定後の物価上昇率等を基準として、いま緊急に各都道府県最低賃金審議会において改定作業を実施中でございますので、ただいま現在の状況は……(石母田分科員「現行でいいです」と呼ぶ)つまびらかにいたしませんけれども、四十八年の十二月現在で申しますと、四十八年四月から十二月に決定いたしましたものにつきましては、業種別の最低賃金は、中位数で千六百四十六円、地域別の最低賃金につきましては千四百四十二円と相なっております。
  77. 石母田達

    石母田分科員 いま発表されたとおりに、きわめて低額にあるわけですが、私の資料によりますと、その中で一番最低のは、昨年四十八年の二月に愛媛県で決定されたものは、日額で千十五円、月にいたしますと二万五千三百七十五円、これが一番最低になっておりますけれども、これはどうですか。  それから、ついでに申しますと、一番最近きめられた昭和四十九年の二月二十二日、沖繩でのものは日額千二十四円、二万五千六百円、こういうふうになっておりますけれども、これはどうでしょうか。
  78. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 ただいま先生がおあげになりました数字は、そのとおりでございます。
  79. 石母田達

    石母田分科員 先ほど労働大臣が言われた、非常に情のこもった未組織のこういう人たちに対する国の政策を賃金であらわしたものがこういうものである。もちろんこれは、これ以上のものということでございますから、最低でありますけれども、これが最低賃金法でいう最低の生活を保障する賃金ということになるのかどうか。一体この賃金で食えると思っているのか、生活できると思っているのか、こういう点について私は労働大臣にはっきりとお伺いしたいと思います。
  80. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさに、大企業とかそういうところと違って、そうした方々が非常に低いということは私たちも認めております。制度的に最賃となりますと、これは御承知のように地域別とか業種別とか、みな区分けしながら縦横の線で三者構成の方々審議いただいて、そしていま先生のおっしゃった沖繩の数字やら出ているわけでありまして、それをもとにしながら労使の間で働いていただくということでございまして、その数字そのもので生活がどうのこうのというのとちょっとまた感じが違ってくるんじゃなかろうか、こういうふうな感じ方を持っているものであります。
  81. 石母田達

    石母田分科員 あなたは最低賃金法を知っておられると思いますけれども、第一条にはっきりと、そういういろいろな職業の種類とか地域に応じてそういう差別はあるけれども、賃金の安い労働者について「賃金の最低額を保障することにより、」——しかもこれは中央では労働大臣、それから地域においては基準局長ですか、それが審議会の意見を聞いてきめることになっているわけですね。国の賃金に対する考え方、こういう人たちに対する生活を保障する、最低額を保障するというものの基準がこのように月二万数千円。幾ら愛媛県や沖繩県で大都市とは違うといっても、このようないまの状況で一体人間が最低生活ができるのかどうか、この点について私は労働大臣に、——あなたはこの間、失対賃金について数字についてだけ見ればそうだということを言われた。前の加藤労働大臣は私の質問に対して、きわめて困難な答えにくい質問でございます——むずかしいことはありゃしないのです。二万五千円で食えるか食えないかということを聞いているのに、きわめて答えにくいむずかしい御質問でございますと言って、あのとおり、えへらえへらと笑ってごまかしちゃったんです。それにすれば私はあなたは率直だと思って聞いたんだけれども、それは他の党の議員の質問に答えて言った答弁なので、これは失対賃金よりもっと低い賃金でございますから、この賃金が最低生活を保障する、これでできるというふうに考えておられるのかどうか、労働大臣に再度御質問します。
  82. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 最低賃金法の一条では、「賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資する」こういうふうに書いてあるわけでございまして、そして実際にきめるのは、三者構成の最低賃金審議会の意見を聞いてきめることに相なっておるわけでございます。その基準としては、「生計費、類似の労働者賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」かように相なっておるわけでございまして、それぞれの最低賃金はそれぞれの最低賃金審議会におきまして、地域あるいは類似の業種の労働者賃金あるいは生計費あるいは事業の支払い能力等を考慮されまして、三者構成できめられておるわけでございまして、きめられました最低賃金は、それ以下を支払いますれば罰則をもって担保される、そういう意味では、賃金の最低額を保障しておることになっておるわけでございます。またそれぞれきめられましたものによりまして、大体一割とか八%とか、それぞれの場合若干の違いはございますが、やはりある程度の、労働者の方はそういう最低賃金がきめられたことによって賃金の引き上げがはかられておるわけでございますので、もちろん高いことが望ましいことではございますが、実情に応じて改善をしていく、こういう考え方でおるわけでございます。
  83. 石母田達

    石母田分科員 とにかく、あなたのそれは何べんも耳にたこができるほど聞いているわけですし、あなたに質問すると、往復の時間に私の時間が入るので、きわめて簡潔にイエスかノーでやってください。  私はいま労働大臣賃金のきめ方を聞いているのではなくて、この数字ではたして最低の賃金を保障したことになるのかどうか、生活を保障することになるのかということについて私はまず聞いているのですから、あまり先走らないで、労働大臣、率直に、最低生活でも何でもいいから、二万五千何百円というだけで食えるかどうか……。
  84. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 食う食わぬの問題はそれぞれのやり方もありましょうけれども、ここでの御議論は最賃という法律に基づいての御議論なので、それで二万円で食えるか三万円で食えるか十万円で楽か。十万円とっても楽じゃないという者も最近多いような形でございますので、一対一でやりとりされましても、ちょっと私も、廊下で言うのとこういう委員会で言うのとは違うこともありますので、その辺は御理解いただきたい。
  85. 石母田達

    石母田分科員 それでは抽象的に聞きましょう。二万数千円でいま食えますか。二万数千円で生活できますか、あなた。沖繩とか愛媛県等で、大都市と離れていたとしても、こういうところで生活できますか。
  86. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いまの時代に二万数千円というのは、たいへんなことだと思っております。
  87. 石母田達

    石母田分科員 はっきり言いなさいよ。そういう、そばにいるからといってあまり遠慮することはないんだ。できないことはあたりまえですよ。渡邊基準局長だってできないでしょう。そんなことははっきりしているんだ。いま基準局長が先に言って、第三条で、この賃金をきめたのは、生計費と類似の労働者賃金及び通常の事業の賃金支払い能力、三者を考慮してきめたとなるのだけれども、この中で特に生計費、こういうものを考慮してきめたというんだが、だとすれば、どこにこういう数字が出るのかということが私にはわからない。そこで、生計費を考慮したということは、他のたとえば国家公務員や地方公務員のように、標準生計費をその地域ごとに東京とか全国計算して、それを算定してきめたとか何とかという、具体的な生計費を考慮したという、その根拠について私はお聞きしたいのですけれども、どうでしょうか。
  88. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 それぞれの最低賃金審議会がいろいろなやり方でやっておられますので、一律には申せませんが、たとえて申しますと、それぞれの県で人事委員会等が標準生計費、多くの場合は十八歳の方の標準生計費等を発表されております。そういうようなものは、多くの審議会で審議の材料にされております。それからまた物価の動向等も、最低賃金審議会で御審議の際にはほとんど常に考慮されておるところでございます。
  89. 石母田達

    石母田分科員 そういう答弁をするだろうと思って、私は先回りして、今度は標準生計費と最低賃金額の比較をやってみたのです。これはたいへんな作業でして、自治省の方にはたいへんな御苦労をかけて全国に聞いていただいた。たとえばいま愛媛県が出ました。単身者十八歳、標準生計費が三万三千七百七十円です。同時期に同じところに対応する最低賃金というのは二万五千三百七十五円。それから沖繩ですが、これはやはり単身十八歳で三万七百二十三円。これはちょっと高く出ておりますけれども、どういうわけか知りませんけれども、こういう数字が出ております。そして、これに対応するのは二万五千六百円、こういうふうになっておるのですけれども、こまかい数字は別として、これは大体間違いありませんか。
  90. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 愛媛県なり沖繩なりの人事委員会等が出しました生計費の額までは私ちょっと正確には承知いたしておりませんが、おそらく先生がお述べになりましたとおりであろうと存じます。
  91. 石母田達

    石母田分科員 こういうことで、全部私はあげてもいいけれども、考慮されたなんというものじゃない。あまりにも開きが多過ぎるということについてぜひ御検討願いたい。そして、最低賃金法の中にはそういう規定はございませんね。標準生計費を計算して算定しなければならぬというのは、他の国家公務員とか地方公務員と違って、ありませんね。この問題については、だからやらないというのじゃなくて、実際やっているという話ですけれども、いまの、標準生計費を人事委員会でやったものを参考にしながらやっているんだということでいいわけですか。簡単に。
  92. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 ただいま申しましたとおり、自分では標準生計費の調査までは普通の多くの審議会ではやっておりませんけれども、県の人事委員会等が出されましたものは、審議いたしまして、十分考慮しておると思います。ただ、人事委員会等が出しておりますのはあくまでも標準でございまして、きめるのは最低賃金をきめるわけでございますから、標準即最低ということには必ずしもならないのではないかと存じます。
  93. 石母田達

    石母田分科員 そんなことを言っているのじゃないのです。実際あなた数字を見てから言ってください。開きが多過ぎるからです。何も私はすぐそのままやれなんということは一言も言っていませんから。  それでこの最低賃金というのは、あなたたちがさっきから最低、最低ということだから、これを下回ることはしない。これはもちろん失対労働者もそうだと思います。そうしますと、失対賃金がこの最低賃金より下回った場合はどうなるんですか。
  94. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 最低賃金法は失対事業労働者にも適用になりますので、もしそういう場合にはやはりきめられた最低賃金以上を支払わなければならないことになるわけでございます。もちろん最低賃金は大体一日八時間ということで計算をいたしておりますので、そういう前提ではございますが、そういうことに相なるわけでございます。
  95. 石母田達

    石母田分科員 いま全国で、失対賃金の日額、それから最低賃金はあれは八時間でやっているのですか、そういうことで最低賃金を日額に直した場合、これを比較いたしまして、全国で失対賃金のほうが最低賃金より下回るというようなものが一カ所でもございますか。
  96. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 失対賃金全国各地まで私詳細に承知いたしておりませんが、私が聞いておりますところでは、現在のところ、きめられておる最低賃金を下回るところはないというふうに聞いております。
  97. 石母田達

    石母田分科員 失対賃金は、これまたここでも再三論議されて、緊急失対法にも明らかなように、第十条の二で、労働大臣がこれを定める。もちろんこれは審議会の意見を聞かなければならぬということになりますけれども、労働大臣がきめる。つまり、国がきめるということですね。最低賃金額も中央の場合は国できめる。それから失対賃金もそうだ。こういうことになりますと、失対賃金が最低賃金を下回った場合は必ず上げなければならぬし、そんなことはあり得ない。これは確かに、いま全国のを調べてみましたけれども、一つもございません。下回っているのはない。そうすると、逆に、失対賃金よりも最低賃金はいつでも下回っている、こういうことになるわけですけれども、失対賃金も最低賃金も国がきめるということになれば、失対賃金は最低賃金額を下回ってはならないというような一つの方針があるのかどうか。これは昨年の春闘共闘との交渉のときに、渡邊基準局長が、失対賃金が下回るときには失対賃金を上げるというようなことを言っておられる。そういう点で、最低賃金というのは、その地域の失対賃金の必ず下でなければならぬ、上だったらおかしくなる、そういうことになるわけですね。
  98. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 別に失対賃金を上回ってはならないというような方針を最低賃金の決定についてとっておるわけではございませんで、最低賃金の決定は、あくまでも最低賃金法に基づきまして、先ほど申しました諸要素を考慮しながら、労、使、公益三者構成の審議会で御決定をいただいて、そのとおりを基準局長あるいは労働大臣が決定をいたしておるわけでございます。
  99. 石母田達

    石母田分科員 これはまた記憶が違ったり何かするから労働大臣に聞きますが、あなたがきめるわけだからね。審議会や何かの意見を聞いてとか、そういう過程は別にして、あなたが最終的にきめる場合に、いま言われたように、失対賃金がもし最低賃金より下回ったということが出てきた場合には、そこの最低賃金より上回るようにしなければならぬじゃないか。これは当然そうですね、法に基づいて。そういうことでやりますと、方針としてはやはり失対賃金、最低賃金をきめる場合に、いろいろの過程はあるけれども、失対賃金は最低賃金を下回らぬようにする。どの賃金でもそうですけれども、労働大臣、そういう方針で臨むわけでしょう。失対賃金が下回ってもいいのだというような方針は出さないわけでしょう。その点どうですか。
  100. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 失対賃金が最低賃金より上になっているように現在やっているわけです。しかも、あなたの御質問のように、全国を見てもとにかく一つも下がっているものはない。こういう実績を踏まえているということを御理解いただきながら、そのとおりいまから先も見ていこうということでいいと思うのです。
  101. 石母田達

    石母田分科員 そうしますと、いま失対賃金の日額の平均は幾らですか。
  102. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 日額は千五百十四円でございます。平均でございます。
  103. 石母田達

    石母田分科員 これまたきわめて劣悪な、とてもあなたが先ほど言ったように——失対賃金というとまたかまえるからいけないけれども、これだけ数字を話せば、とても生活できるような賃金じゃないのです。それはそうですね。同じでしょう、先ほど答えたのだから繰り返しません。そうしますと、私これまた全国各県を全部調べてみました。失対賃金と最低賃金の比較表。よく似ているのです。よくまあこれほどあまり差の——失対賃金をうんと高くきめ過ぎたのだということがないように、大体これはそろっていますよ。しかし最低賃金よりは下回らない。逆にいえば、最低賃金を上げようとして失対賃金よりもよけいにしたいと思っても、これは逆にできないわけです。そうでしょう。失対賃金よりもよけいにきまったら、また失対賃金を上げなければならぬから。そういうことはあなたのほうがもとなんだな。そのもとのところで、労働大臣のところで調整しなければならぬわけですね。こういうことで、最低賃金をきめる場合に、そこの失対賃金を上回らせないために、なかなか決定が長引いてしまって、そして、失対賃金が上がるという見通しがついて、それより上回らないというときに最低賃金が上がるようになっているのですよ、実際の経過を見ますとね。それは当然そうでしょう。あなたがさっきのそういう方針とすれば、それよりも下回る。そういうことを今後もあなたが方針として、そういう失対賃金が最低賃金より下回らないという方向で臨むということになれば、結果として、最低賃金を押えるか失対賃金を押えるか、とにかく賃金というものに対して一つの統制をすることになる。そうでしょう。これ以上上げちゃならぬ。そこで生計費ですが、たとえば最低賃金千五百円じゃとても食えない、こういう問題が出て、二千円、三千円ほしい。しかし失対賃金はそれ以上高くなっていないのだから、最低賃金のほうはこれ以上上げるわけにはいかぬ。さっきの方針から見れば、こういうことになるでしょう。だから実態から見て、もし最低賃金が失対賃金をどんどん上回るように、実際に生計費を考慮してきめなければならぬという場合になったときには、どういたしますか。
  104. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは私のほうで押えるとか押えないの問題じゃなくて、これは事務当局の話もありますように、公益はじめ三者構成できめているのでして、そこで押えろとか、ここでこういうふうにチェックしろというふうな話はしておりません。
  105. 石母田達

    石母田分科員 渡邊基準局長、さっきから何か悪知恵、私はそういうことばを使わないけれども、あなた再三ここでやっているように、審議会の意見を聞かなければならぬというのは緊急失対法なんです。最賃法のほうは、審議会に聞くけれども、そこできめるのじゃないのですよ。労働大臣がきめるわけです。——局長大臣は知っているのだから、そんな一々教えることはない。うしろで見ている人が、大臣そんなに知らないのか、一々答えを教わらなければだめなのかと思ったら、大臣の権威が下がるから。だいじょうぶ、あなた心配しなくたっていい。法律では、いろいろな意見を聞いても、大臣がきめるのです。その大臣が、さっき言った方針で、最低賃金は失対賃金を上回らないような方向できめると言ったわけでしょう。そういう方針でやっているから下回っていないわけだ。下回った場合にはすぐ失対の賃金のほうを上げるわけだ。そうしなければ法律違反になるわけだから。そういうことになると、結局、最低賃金額が実際にうんと必要だという意見が審議会で出た場合に、労働大臣つまり国が、これは困る、失対賃金より高くなっては困る、いま失対のほうよりも最低賃金のほうが高いといったって、労働大臣はそれは尊重できませんということになるわけでしょう。そうだと言えばいいのです。労働大臣に聞いているのです。
  106. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 法律の規定の関係がございますので、私からお答えさせていただきます。  最低賃金法の十五条におきまして、「労働大臣又は都道府県労働基準局長は、」「最低賃金審議会に諮問し、その意見を尊重してこれをしなければならない。」という規定がございまして、さらに、「労働大臣又は都道府県労働基準局長は、」「最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を附して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。」となっているわけでございまして、再審議も求めることなしに審議会の意見を無視することはできないことに法律上もなっておるわけでございます。
  107. 石母田達

    石母田分科員 そうじゃないのだ。そういうときに認めがたいと何で出てくるか。たとえば最賃のほうが失対を上回った場合には、さっきの方針から見ると、それじゃ困るわけでしょう。そういうことなんですよ。だから大臣、そういう意味で私がここで強調したいことは、時間がないから——渡邊基準局長にほんとうに時間を費されて半分以上損したけれども、結局それがあなたの役目か何か知らぬけれども、こういう未組織労働者、二千万人以上の人たちがすでに適用されている最低賃金法、これを失対賃金との関係でいいますと、だれが見たって、国がきめるのですから、ほかの民間の労働者賃金と違うのだから、国が責任を持っておるのだから、幾ら審議会でやるといったって、尊重してきめようがきめまいが、その決定権を持っているあなたが、先ほどあなたが言っているような、その数字だけ見ると食えないような、生活するにはたいへん困難な、そういう賃金をきめるということ自体が、日本の全体の賃金や国の労働者賃金生活というものに対してどういうふうに考えているかということのバロメーターになるのですよ。そういう点で私は、未組織労働者といわれるこうした人々に対する社会保障あるいは生活の問題も含めて、最低賃金額の引き上げ、さらにそれを上回らなければならぬ失対賃金においても、ここで再三強調されたように、国の抜本的な改善を強く要求して、大臣の決意を承ってこの質問を終わりたいと思いますので、よろしく答弁願います。
  108. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 審議会に対して、それがいけませんとかなんとかということは、過去一回も申し上げたことがございません。要するにその審議会というのは、地方においても中央においても、三者構成で、それぞれの資料をとって、広く資料を集められたその上の判断と思って、私は、そうした方々にいまから先の問題等々によく関心を持ちながら御審議いただく、それを御信頼申し上げまして、やはりいまから先の社会保障の問題はほんうに大事なことですから、そういう面での御審議があることを信頼いたしまして、それを尊重してまいりたい、こう思っております。
  109. 石母田達

    石母田分科員 政府のやることは、えてしてそういう審議会の、自分たちの都合のいいところだけ尊重して、そのとおりしない。これはあとでまた述べる機会がありますから、そういうことのないように、あなたたちが決定権を持っているのですから、あなたたちが納得いくような——いかなかったらどんどん審議会にも意見を出す、それくらいの決定権は持っている。国で、法律で保障されているのですから、それこそ責任をもってやっていただきたいというふうに思います。  さて、第二の質問でございます。私はきょう、大企業の中での不当労働行為の問題について御質問したいのですけれども、その前に労働大臣に伺いたい。いま企業内でも、憲法や労組法よりも、あるいは労働基準法よりも就業規則のほうが優先するんだということをはっきり言っている人がいるのですね。もっと露骨なのは、憲法は通用しないんだ、こういうことまで言っている経営者もいるのです。こういうことについて、労働大臣企業の中でも憲法とか労働組合法、労働基準法が優先するんだということを、あなたの口からまず基本的な態度として答弁を願いたい、こういうふうに私は思います。
  110. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 原則論といたしまして、労働基準法第九十二条は「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と規定しておりますから、憲法無視のような話をかりにしておったとするならば、それはいけないことでございます。各家庭においても、いまでも、亭主関白とかいろいろな話など、けしからぬことでございますが、これは日常の話でして、原則論はけしからぬ、これだけははっきりしておきます。
  111. 石母田達

    石母田分科員 あなたもだんだん基準局長にかぶれてきて、少しことばが……。家庭のほうまで聞いてない。そういうよけいなことはみんなはしょって、きちんと簡潔に答えてください。  そうだろうと思います。ところが、最近、大企業の中で憲法じゅうりんと思われる行為が続発しているのです。そうしてどんどんそれが、いま告発されたり何かしているのです。告発というのは、私どもの民主的な勢力も含めてですよ。たとえば川崎重工の大阪工場というところで勤労課長が、組合役選で共産党が選ばれたのは残念だ、しかし三年以内に共産党を追っぱらって変えてみせると言っている。それから日立製作所の日立工場で、門前で活動家がビラ配りをしておったところが、従業員でありながら日本共産党の名前で行動したことは遺憾だ、君はほんとうに党員か、役割りは何か、なんというようなことで、これまた抗議を受けている。あるいは住友化学の新居浜工場に至っては、研究部の材料課の職制が党員に対して、どうだ、転向しないか、この辺で自分の将来を考えたらどうかということで、週二、三回尾行しているという。それから東京電力の鶴見火力では、党員や民青同盟員に対して、慰安旅行に参加してはいけないんだと言っている。あるいはまた日清紡の名古屋工場では、課長が党員活動家あるいは民青同盟員を応接室に長時間閉じ込めて、民青同盟からの離脱の強要をしている、つまりやめろということですね。そして活動しないという誓約書を書けという事件も起きておるわけです。このように、明らかに憲法で保障されている思想、信条の自由というものが大企業のこうした実態の中でどんどん侵されている。これはあなたの先ほどの原則的な立場からいっても許されないことだと思うのです。  きょう私がお話しするのは、あの有名な松下電器なんです。松下電器でもこのような思想、信条による差別が行なわれておるのです。私はこれを聞いて非常に憤慨にたえない。それは何といっても、いまから読みます九名の人はすべて共産党員あるいは民青同盟員あるいは支持者という方であります。この人たちが何年間かにわたって、そういう思想を持っている、そういう活動をやっているという理由で不当な賃金の差別を受けているのです。これは明らかに労基法の第三条に違反する行為だと私は思っておるのです。たとえば由布勝喜さんという三十六歳、勤続二十年、ラジオ事業部の方ですけれども、賃金は本給七万七千三百円で、同期の入社者に比して本給約四万円、役付手当を含む月収では四万七千円も低くされているそうです。一時金の差額を含めると年収で九十九万七千円、約百万円少ない。同期の入社者は四、五年前までにほとんど班長あるいは主任職になっているのにいまだに平社員に据え置かれておる。  松本逸郎さんは三十六歳、勤続二十年、労働組合活動を始めた昭和三十六年ごろから昇給、一時金の考課査定が常に最低にされ、現在の本給は七万七千百円、これは同期の入社者に比して四万円以上も少ない。役付手当を含むと月収で四万七千円以上も少なくなる。  こういうことで、以下、名前とその差額だけ述べますと、中山惟行、三十三歳、勤続十六年、ラジオ事業部、同期入社者はほとんど班長職以上になっているが平社員、本給は七万八千五百円で同期の者に比べて本給で約二万二千円、役付手当を含むと月収で約二万七千円少ない。一時金の差額を含めると年収で五十四万三千円。  斉藤武、三十六歳、勤続二十年、ラジオ事業部、同期入社者は班長、職長以上になっているが平社員、本給は八万一千百円、同期の入社者に比して約三万六千円、役付手当を含む月収で四万三千円、年収で九十二万五千円。  斉藤秀吉、四十三歳、勤続二十年、テレビ製品開発研究所、本給で同期入社者に比して五万円、役付手当を含む月収で七万円以上低くされている、一時金の差額を含めると年収で二百七十八万円。  それから小東房枝、三十二歳、勤続十四年、茨木テレビ事業部、昭和三十七年ごろより労働組合の活動をするようになってから昇給は常に最低、そして本給は七万二千円で同期入社者に比して一万三千五百円、一時金を含めて年収二十五万円。  宮里嘉久、二十八歳、勤続十一年、茨木テレビ事業部、本給で一万四千円以上低くされ、年収で二十五万円。  山口義一、三十四歳、勤続十六年、松下電子工業、本給、役付手当を含めて月額三万円以上も低くされている、年収で約五十万円。高卒同期入社者は主任職で中には課長にもなっているが、平社員のまま。  中村暢宏、三十四歳、勤続十六年、テレビ製品開発研究所、この人は同期の人たちは主任職にもなっているにもかかわらず平社員。そして月額三万円以上も低くされており、また年収では五十六万三千円少ない。こういう状況なんです。  これは先ほども言いましたように、その査定のときに、たとえば勤務状態とかいろいろなことがありますわね。この中で見ると非常に優秀な人もきわめて多いのです。特に斉藤さんという方は、部長にもなるような人だということですけれども、斉藤さんは共産党だから昇進させられない、外国転勤でしばらく日本を離れれば昇進させる道も開ける、こういうようなことをいわれているのです。特にひどいことは、山形県の米沢、この方の故郷まで行って、そして会社の職制が親戚、知人を集めて外国転勤に応じるよう説得を依頼した。こうなってきますと、一体このような差別は人権的にも許されていいのかどうか。  そして由布さんという人に対しても、なぜ低いのだと質問したところ、会社の方針に合わない考えを持っているから、昇給が低いのはあたりまえだ、こういうふうに村橋副長というのは言ったという。君らのような民青に入っている者をやめさせるごとができないようでは役付はつとまらぬのだ、こういうことを公然とうそぶいたというのです。  また、中山惟行さんに対しては、中山は思想的にも異端者だ、だから予備員のポストからもおろす。賃金の差別について昭和四十一年質問したところ、課長は、仕事はよくやってくれるが、その思想を持っている限り会社は困るんだ、こういう説明をしたというのです。また班長は夕会で、中山は共産党の活動をしているからつき合わないほうがいいのだ。  小東房枝さんの場合には、昭和四十四年、テレビ配線職場から準備職場に配転が出されたとき、その理由の説明を要求したところ、職長が、君は民青のような考えを持っている。よくがんばって働いても、考えていることが悪いからだと言っており、昭和四十七年夏、一時金が最低である理由を質問すると、思想が悪い、考えが悪い、こういう答えだったというのです。  こういうことで思想、信条というもので、自分が正しいと思っている活動、そういうことを人間がやっている場合に、何年間もつとめた人あるいは若い女性に対して、おまえがそういう考えを持っているから悪いんだということをいって、ほかの人に比べて年収で何十万、毎月何万という差をつけられるということが、どんなに本人やその家族を含めて重大な打撃であるか。こういうことについていま九人の方が勇気をもって申告されているそうです。この問題については守口とそれから茨木監督署に申告してありますので、十分に審査をしていただきたいということを私は労働大臣にお願いしたいわけです。
  112. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働基準法では第三条におきまして「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」という規定があるわけでございます。で、いま先生御指摘の松下電器の例につきましては、私も先生いま申されました詳細は存じませんけれども、守口及び茨木の監督署に基準法三条違反ということで申告が出ておるということは承知いたしております。現在、それらの監督署において、申告に基づきまして調査中であるわけでございます。
  113. 石母田達

    石母田分科員 大臣もちょっと。
  114. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 原則論は局長が申されたとおりでございますが、私たちはやはり先ほど御答弁申し上げたように、労働基準法第九十二条の「労働協約に反してはならない」というふうなことからしますと、いまのような具体的な例をこの席上おっしゃっていただいたことをよく研究、審査といいますか、そういうことをやらしたい、こう思っております。
  115. 石母田達

    石母田分科員 その審査をやる場合に、特に事実を二、三申し上げておきますので、これも十分に考慮に入れてやっていただきたいのです。  まず第一に、松下電器の副社長という人は大阪の公安委員長なんですね。この人が一九七一年十月十二日、大阪府議会に、共産党に対して陳謝にきているわけです。この事件というのは、松下電器の岡邑洋介君という人に対して——早朝職場で共産党のパンフレットを配っていた。勤務時間中に部長が呼び出して、一体入党しているのかと、いろんなことで思想調査をしたわけなんです。この問題について問いただされて、ここで謝罪をしているわけです。こういう事実、聞いていますか。
  116. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 そのことは聞いておりません。
  117. 石母田達

    石母田分科員 もう一つあるのですがね。松下電器のセラミックという事業部の職制がやったことですけれども、これは一九七三年です。去年のことです。三月十九日、赤旗を読んでいた民青同盟員の大ケ谷明君という人に対して、その職場の職制が、おまえとおれの話だという前置きをして、他のものに影響があるから読むな。それから翌十九日にはわざわざ枚方市にある自宅に来て、両親や弟も交えた席上、民青同盟から脱退しなさい、こういうことを言った。そして、おれのことも考えてくれ、上役からおこられるのだ、君の考え方は会社では通用せぬ、こう言って、両親に対して、親の許しを得て民青同盟に入っているのかどうかということを聞いて、そして詰め寄った。また他の職場の人に対しては、大ケ谷は民青に入っているから気をつけろ、おれが言ったと言うな。ある仲間には、大ケ谷を首にするということでいま調べておる最中だ、こういうことを言った。この問題について共産党や民青同盟の機関から追及をされまして、この結果、五月八日、松下電器のセラミック事業部の小林文雄事業部長が大阪府庁に参りまして、共産党の代表、民青の代表に対して、はっきりとその非を認めて、迷惑かけたことについてはあやまるというふうに非を認め、会社の指導の不行き届きの結果であるから、以後十分に注意するというふうに言っているわけです。これは監督署のほうから報告きておりますか。
  118. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 それにつきましても、別に報告はきておりません。
  119. 石母田達

    石母田分科員 もう一つ。これもまた松下電器の例。これは一九七二年ですから、おととしの事件ですけれども、松下電器の職制が、朝会ですね、朝礼みたいにやるのでしょう、この席上で、共産党の家庭訪問に気をつけろと言って、ステレオ事業部の小倉という管理課長が二百人くらいのそうした労働者の前でいろいろ話をしたあと、最近共産党の人が家庭訪問して赤旗日曜版をすすめている、対話を口実にしているが、注意して深入りしないように、こういうことを訓示したそうです。これに対して憤慨した労働者が、課長の話したことには問題があるのだ、訂正すべきだと抗議すると、当然のことを言っているのだと言って、発言訂正を拒否したそうです。その後やはり共産党の機関から抗議を受けまして、そして七月の十一日、楠神事業部長、人事部長らが地区委員会を訪れまして、申しわけない、今後注意すると言って全面的に陳謝して、それを朝会の参加者にも明らかにしたそうでありますけれども、この点については報告がきておりますか。
  120. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 報告を受けておりません。
  121. 石母田達

    石母田分科員 これは私は非常に重大なことだと思っているのです。ただ、労働監督署の方がこういう人たちを呼んだらしいのです。呼んだというのは、先ほど個人的にやった……。ところがみな、やらないと言うわけですよ。やはり、私が法律違反やったなんて言う人はいませんよね。ところが監督署はそれ以上追及して、おまえ、うそを言っているのだろう、こう言うわけにはいかないわけですね、警察ではあるまいし。いまの監督署に対して、これを黒白を明らかにしろとか立証しろとか、立証責任を負わせるのはきわめて困難な状況にあるのです。ことに相手は松下という大企業でございます。監督署の中だって人員がそれほど十分だとはいえない。そういう事件の申告がどんどん多くなってくるという中でたいへんな苦労をしているということは、私も現地の基準局のほうにも電話して聞いておるのです。なかなか調査結果も出ないわけです。なかなか出るはずはないと思うのです、証拠がつかめませんから。おかしいなという疑いがあっても、証拠がつかめないと、やはり基準監督署としてもはっきり何かの処置をとることができないというような仕組みになっているわけですね。  そこで私はこの問題について——こうしたことが次から次へと行なわれている、またこういう陳謝してきた事実があるということから見て、決して偶然的な、偶発的な事件ではない。やはり会社の方針の中に、思想、信条によって差別をつけるような体質というか方針というものがある中で、こうした職制の方々が出されて、こういう事件が出てきているのだ、つまり必然性があるのだということなんです。こういうものについては十分常日ごろの監督が必要だ。この監督の行政が強化されておりませんと、出てきてから事件の黒白を明らかにするということでは、ほんとうにいまの監督署は幾つあっても足りないと私は思うのです。  そこで、私、きょう、こういう基準法三条違反の問題についてどのくらい申告があって、どのくらいにそういう処置をしておるかということを聞きましたら、昭和四十四年がゼロ、四十五年がゼロ、四十六年がゼロ、四十七年が一件、これはつまり基準法の三条の思想、信条とか、そういうものの差別をしたということでやったのが、送検されたのが一件ということですが、これは全国の調査だろうと思いますが、そうですか。
  122. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 いまの数字全国数字でございます。
  123. 石母田達

    石母田分科員 私は労働大臣に聞きたいのです。あなたは原則的な態度をりっぱに述べられたから……。特に大企業、こういうところで起きている。非常に困難なんです、こういうふうに送検するのが一件しかないということなんだから。大企業に対しては特にいま国会審議の中で、物価の問題あるいはいろんな問題で、いまの自民党政治の政治姿勢が非常に疑惑を持って見られている。多額の政治献金をもらっているから取り締まりに手心があるのじゃないか、こういうことを言われて、田中総理は、いやそんなことはありません、政治献金はもらうけれども手心は加えませんという。私どもから見ると、そういうことができるのなら非常にいいことだな、なるほどうまいことやっているな、こう思う。しかし、いま、大企業に対するこの告発というもの、これは物価だけじゃなくて、そこで働いている労働者がこのような民主的な権利、基本的な権利を奪われ、そしてその思想、信条の自由まで奪われている。職場では憲法は通用しないのだ、こういうことまでいわれている実態に対して、その上に立って、松下側のようなぼろもうけをしている、こういうものについて、私は、大企業だからこそ特別にそういう点での国のきびしい処置が必要だと思うのです。そういう点で、国民の中にあなたたちに対するそうした疑惑があるのです。私自身も持っています。そういう点で、労働大臣がこのような大企業の違法行為あるいはそれに類似した行為については、証拠はあげにくいけれども、きびしい態度で臨む。そしてこうしたところにも、職場に憲法をというものをやっている私どもの考え方に対して、あなたの決意を表明していただきたいと思います。
  124. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まあ石母田さんの話をさっきからお伺いしておりますと、党活動が御熱心だということに対して、たいへんすばらしいことだと思うのです。朝早くずっと赤旗を配ったり、入党を勧誘する、なかなか、ほんとうにしっかりやっているな、ほかの党はどうしているかな、自分の党はどうしているかなということさえ、実は感じたぐらいでございます。これはまさに、こういうときにこそ、第二の国難は国民の連帯感で乗り切ってもらいたいという気持ちでございまして、何といたしましても、私たちが保護されているものは、労働基準法三条の「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」、これが私たちの基本であり、これはまた皆さん方が御賛成していただいて、毎日私たちがやっていることであります。私たちのほうの大企業べったりの話なども出ましたけれども、私も、けさ若い諸君で、四月一日から入社をして活躍する諸君が三十名ほど集まったときに申し上げた。諸君は、大学を出て、会社に入って、いまから先、職場に行くだろうけれども、世界各国を歩くときに、やはり日本の青年とし、あるいはまた企業体の一人としてエコノミックアニマルとかいろいろなことを言われないような、そういうすばらしい青年になって動いてもらいたい、こういうことを申し上げたのでありまして、まさに法の前には平等でございますから、いまおっしゃるようなところ、大企業であろうと小企業であろうと、それぞれがエゴを捨てながらこの国難を乗り切ってもらいたいということで、懸命にやってまいりたいと思っておりますことを御理解をいただきたいと思います。
  125. 石母田達

    石母田分科員 これで質問を終わりますが、私は、最後に、こうした問題については、わが国の憲法をほんとうに国のすみずみまで生かしていくという労働者の権利を守る立場から、民主主義を守る立場からも、今後とも国会の内外でこうした問題については、徹底的に追及していきたい。私ども、昨日、労働組合との間にできております国会連絡会議におきましても、今後こういうことをどんどんこの国会に持ち込んでいただいて、私どもも国会の中でこれを提起して、そしてこのような大企業の職場における不当な、憲法をじゅうりんし、そして基本的な権利をじゅうりんするようなやり方に対しては追及していきたい、こういう決意を述べまして、私の質問を終わりたいと思います。
  126. 渡辺栄一

    渡辺主査 石母田君の質疑は終了いたしました。  午後一時に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午後一時四分開議
  127. 戸井田三郎

    ○戸井田主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働省所管について質疑を続行いたします。石田幸四郎君。
  128. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それでは労働大臣に所見を承るわけでございますが、私が取り上げます問題は、中小企業退職金共済制度の問題でございます。  実はちょうど一年前の去年の分科会におきまして、加藤さんが労働大臣のときにこの問題を取り上げたわけでございます。実情をちょっと申し上げますと、この共済制度に加入をいたしておりますのは、四十八年度末におきまして企業数が十五万二千七百七十六、それから被共済者数、いわゆる労働者の数は百四十一万七千百九十名という大きを数えておるわけでございます。そこで、これは中小企業退職金共済制度でございますので、中小企業につとめている人たちに対する退職時のいわゆる退職金を出すという制度でございますけれども、この掛け金をかけているのは、言うまでもなく企業者であるわけでございます。ところが、この実態をいろいろ調べてみますと、最近特にそういう傾向が強いようでございますけれども、この退職金共済制度というのは、就職後一年を経過しなければ退職金がもらえない、こういう制度になっておるわけでございます。これはいままでの社会通念からいきましてやむを得ない措置かと思います。ところが、かけている人は企業者でございまして、たとえば十一カ月でやめたといたしますと、かけた掛け金は共済制度の中に吸収されてしまうということになっておるわけでございます。これは非常に不満がございまして、と申しますのは、たとえば労働省の雇用動向調査、こういうものを見ましても、退職した者を一〇〇というような数値で換算をしてみましても、いわゆる百人以下の企業、たとえば九十九人から三十人までの場合は、六カ月未満で二四・八%、それから一年未満のものは、退職者百名としますと一七・四%、これを両方足しますと、退職者を一〇〇として一年未満にやめてしまう人が四十二人もおる、こういうことになっておるわけでございます。それからまた三十人以下の企業というのを見ましても、百人のうち四十一人は一年未満でやめてしまう、こういう状況でございます。そうしますと、企業主のほうは、十一カ月未満の場合は退職者にももちろんお金がいかないのでございますけれども、完全にかけ捨てである、こういう状態になっておるわけでございます。  ところが、最近の状況をいま数字で申し上げましたけれども、たとえば運送トラック会社、こういうところも、免許なんか持っておりますものですから、非常に簡単に移動するわけですね。雇用条件が気に食わないといってやめてしまう。それから中小企業あたりでも一生懸命お金をかけまして、やっと地方へ行って三人なり五人なりの人たちを引っぱってくるけれども、どうも話と違うではないか、生活環境、雇用条件等が違うというので、簡単にやめてしまうというのはどこにでも見られる現象であるわけなんです。そういうようなことを考えますと、企業者側のほうにも非常に不満があるわけでございます。最高限度は、去年の場合は四千円でございますか、四千円の場合は、たとえば五人かけたといたしますと、相当な額になるわけでございますね。一カ月二万円でございますから、十一カ月かければ二十二万円というようなことになってしまうわけでございます。そういうところでしばしば中小企業主からも陳情がありまして、どうも納得ができない。確かに共済制度というのはそういう制度でございますので、加入者全体の相互扶助であるということはわかるけれども、退職者にもお金がいかないし、かけた人にも金は返ってこないし、ちょうどこの制度の中に没収されてしまうような印象を受けてしかたがない。われわれとしては、いわゆる退職引き当て金みたいなものをつくってやればいいのだけれども、なかなかそこまでもお金が回らぬのでこの制度を利用しているのだけれども、どうもそういう矛盾を感じてならないのだということの陳情がしばしばあるわけでございます。実はこれをいろいろ去年加藤さんが労働大臣のときに話を詰めたのでございますが、一つは法律の上におきましてそういった掛け金を没収する、あるいはことばが悪ければ吸収するというような条項というのはどこにもないわけでございます。ただ、全体のいわゆる共済制度というそういう相互扶助の精神からいって、かけ捨てもやむを得ないんだということになっておるわけでございます。しかし、当初はそうであったでございましょうけれども、昨今の損害保険を考えましても、満期になれば返すというような状態がございます。たとえばマルマル保険というような、かけたものはまるまる返ってくるというような、そういうような保険も相当ふえておるわけでございますので、これは考えてもらわなければならぬのじゃないかと思っておるわけです。去年の議事録を読んでみますと「一年未満の人には退職金を払わないという規定がございまして、もちろん事業主にも返すという規定もないわけでございます。そうして、そういう上に立って掛け金の月数に応じた退職金の額が法律によってきまっておるわけでございますので、やはりそういうかけ捨てになったものも含めた全体としての金の運用に」なっているんだ、こういうような意味ですね。「こういう思想の上に現在の法律は成り立っておるわけでございます。しかし、御指摘のような御気分が事業主のほうにあられるということもよく理解できますので、さらにこの退職金共済制度の全体を今後どうしていくかということを検討してまいりたい」というふうに昨年度は実はお返事があったわけなんでございます。  私どももそういうわけで、かなりこの改善について期待をしておったのでございますけれども、寡聞にしてその後の変革の状況もわかりませんし、陳情はしばしば受けるというようなことでございますので、この改正というものができないものかどうか、大臣にお伺いをしたいわけなんでございます。
  129. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 石田さんが共済制度をよくおわかりになっておって、一年未満はかけ捨てみたいになって、そしてまた長くつとめておる方々にその金が積まれていく、この制度としてはよくわかる。それから中小企業者であるから、自分で退職金をなかなか出せないところにこういう制度がある。そこで一年未満の者がだいぶやめる者があるから、何かかけ損みたいになるんじゃないか、といって制度そのものをこわすというのもこれも困るが、しかしその諸君に何かかわるもので、そんなものがこないだろうかという非常に建設的な御意見だと私は思いますが、昨年、前の大臣に御質問されたことなども私も踏まえながらだんだん調べてみますと、やはりそれを全部ただですぐ一年未満の方に渡すということになれば、共済制度そのものの基本が全部くずれるわけですね。くずれますので、非常にむずかしいということは御承知おきのとおりでございますが、ことしは中小企業退職金共済法のちょうど五年目に検討する時期にあたっております。そこで次の通常国会に改正案を出す場合に、いままで御指摘のあったような御意見なども含めながら、制度全般にわたってどういう形になるかわかりませんけれども、制度全般についてひとつ検討してみたい、こういうのがいま役所の姿勢である。だから昨年よりは一歩進んでそういう検討の時期に入っておる。しかし共済制度そのものの基本はやはりくずしてはいかぬというのがお互いのあれでございますが、そういうことも含みながら考えていくということを御理解いただきたいと思います。
  130. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 特に労働大臣にお願いを申し上げたいのは、退職者に対して退職金がいかないというのはいままでの社会通念上これはやむを得ないということも考えられます。しかし、昨今の情勢もいろいろ勘案していただかなければならぬわけですが、何といいますか、中小企業主の人たちが非常に遺憾に思っている点は、そういうものに対してのかけ捨てというものはどこにも明文化されてないわけですね。あらかじめ明文化されておるのであるならばそのときに気がつくわけでございますから、入るか入らないかは判断をするわけなんですね。ところが入る人はほとんどそれがわかっていないわけなんです。それで実際に一年未満で退職した人が出たときに、その人たちの退職金何がしか、これはいまこういう時代でございますので、全然やらぬというわけにもいかぬわけでございますので、考えなければならぬ、そうだ、共済制度があったかなというので見てみれば、これは自分のところに返ってこない金であるということが初めてわかる、こういうようなものがあるのでございます。ですから、私としては明文化よりもかけ捨てにならぬような制度にしていただきたいということを特にお願いをしたいわけでございます。  特に先ほど申し上げたように、損害保険にいたしましても、五年なら五年という時期を経過すれば掛け金が全部返ってくるような形になって、またかけていく、新たにかけるというような、保険の制度そのものがいま大きく方向転換を徐々にしておるわけですね。そういうものと非常に合わないわけです。その点もひとつ勘案してお願いをしたいわけですが、それはいつごろ、来年の通常国会には改正案が出せるでしょうか。
  131. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 中小企業退職金共済法の九十八条で、五年目ごとに保険の数字全体を検討することが規定になっております。ちょうど四十九年度が五年目でございますので、私ども審議会にもお願いして、近く研究組織等も審議会の中に設けて全般的な検討に着手する予定にしております。その結果によりまして、私どもできれば来年度の通常国会には同法の改正案を提出したい、かように考えておるわけでございます。  その中で、先ほど大臣も御答弁がございましたように、先生の御意見も十分に検討の事項にいたしてまいりたい、かように考えております。
  132. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 局長さんにもう一つ伺いたいわけでございますが、この掛け金の、何といいますか、最高四千円ということになっておりますけれども、貨幣価値そのものが大きく変わっておるわけでございますね。五年もすれば、特にインフレ状態でございますので、これでは退職金も思うように出せないわけでございますけれども、ここら辺も当然改正の眼目になっている、こう理解してよろしゅうございますか。
  133. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 それらも当然に検討事項の重要な項目に相なると存じております。
  134. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 もう一点、大臣にお伺いしたいのでございますが、五年ごとに見直しをしていくということでございますが、最近の物価の騰勢非常にきびしいわけでございますけれども、こういうものに対しての物価のスライド的な措置というものが制度上とれないものかどうか。
  135. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 終戦直後非常にインフレで失業者、引き揚げ者、工場が全部こわれておって、みんながめしが食えない時代にスライド制というものがいろいろありましたが、最近そういうことばも出ておりますけれども、こういう制度にすぐスライド制がはたしてどういうものか、そういう基本についていままで検討したこともございませんが、せっかくのお話でございますので、五年目に洗う、こういう大事なときに、調査会などができるときの一つの話題ということにして研究してみたい、こう思っております。
  136. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それでは、この問題はちょうど改正の時期にもなりましたし、基本的な問題からもう一ぺん改正の考えを持っておるという御返事でございますので、これだけにいたしておきます。  それからもう一つは、ぜひこれは大臣考えていただきたいのは、いわゆる田中総理が中国に行かれまして日中友好の実はいろいろな角度から着々とあがっておるわけでございますが、最近特に小さなところで問題になっているのは、いわゆる中国からの引き揚げ者の問題なんですけれども、これは人数が非常に少ないわけなんです。四十四年に八人、四十五年に百三人、四十六年に四十五人、四十七年に六十二人、四十八年に九十九人、こういうふうになっております。それで厚生省援護局の話によりますれば、いま厚生省がつかんでいる引き揚げ希望世帯は大体三百三十世帯あるそうでございます。大体二倍といたしまして六百七、八十人というところでございましょうか。私もちょうど一年前に中国のお医者さん方のお供をして一カ月ばかり日本を御案内したのですが、そのときに問題になり、さらに最近聞いたことには、この引き揚げ者の方は、戦後三十年を経過しておりますので、ほとんど現地になじんでしまって、日本語そのものをもう忘れてしまっておるわけでございますね。それで、引き揚げてくるわけでございますけれども、ことばが通じないわけでございます。最近もある中国人から私、その人の住宅、就職、それから子供さん、幼稚園でございますけれども、入れてもらいたいというようなことを頼まれまして、いろいろ奔走をいたしまして、何とか就職のほうもめんどうを見たわけなんでございますが、中国のお医者さんを御案内して日本各地を歩きましたときにも、日中友好協会のほうからも実はそういうような御要望があったわけなんです。若い人もおります。日本に来ると、まず一番生活の基本である就職ですね、これが、ことばが難解というよりはほとんど理解できません、聞く程度はできてもしゃべれぬというようなことでございますので、非常に難渋をいたしておるわけでございます。ひどい人になりますと、来てから生活保護を受けてやっていく以外に方法がない、こういうことでございますので、この間中国人からもずいぶんハッパをかけられました。せっかく日中友好関係が進んでおるんだけれども、日本は中国から引き揚げた日本人そのものをめんどう見てくれない、そういう姿勢はどうかというような抗議も受けたわけでございまして、何とかこれの受け入れ体制を明確にできないだろうか。特に大臣にお願いをするのは、生活の基本は就職でございますので、就職のあっせんまで、各県の下部機構におきましてもどこか窓口を明確にしていただかないとどうにもならぬわけです。いかがでございましょうか。
  137. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 おたくの竹入委員長も中国においでになり、皆さん方もおいでになって、非常に日中国交回復に御努力されていることは敬意を払います。私自身も実は十二、三年前に参りまして——引き揚げの問題が出ましたから私のほうから申し上げますと、終戦直後、海外から約二、三百万の者が引き揚げるために、国会の中に海外同胞引揚特別委員会というのが生まれまして、私もそこの委員をしたり理事をしておりました。ところが、戦後は終わったということで、委員会がなくなったでしょう。しかし、ソ連にもまだいるし、樺太にもいるし、中国にもいる、東南アジアにもまだいるわけですよ。だから、当時一緒に委員会でいささかお世話をした人々だけの有志で集まりまして、国会に全然関係ありませんけれども、私、実をいうと未帰還問題協議会の理事長をしておるのですよ。でありますから、中国から帰ってくる方々についても——最近私などはあまり中国にお呼ばれしませんけれども、香港の経過などはよくわかる。でありますから、西安に四十年おったという家族の方々が東京にようやく戻ってはきたものの、さて就職ができない。子供が大学に入れない。国立大学に入るには日本語ができない。私立大学に入るのには銭がかかる。何とかしてくださいという問題やら、それからことばができないために生活保護——しかしながら、特殊の技術もあるから、それを個人的にお世話申し上げて、いろいろなところに就職のごあっせんなどもやっているものですから、あなたが個人的に御苦心されている模様が非常にわかるような気がするのです。ほんとうに御努力ありがとうございました。  私がその際に申し上げて一つ成功したゆえんのものは、いま日本は中国ブームである、だからあなたはそのことばで——日本は英語塾といえばみなはやるわけですよ。このごろはアラブといったらまたアラブの塾がはやったり、外国語学校にもアラブの科が設けられたりする。どうぞそういう意味で、中国語関係で何か塾を開くならひとつごあっせんしますというふうなこともありましたが、まず第一に、やはり個人的にお世話する方々が非常に多くなければいかぬということでございましょうね。私のほうとすれば、やはり地方の職業安定所やらに対しまして、ひとつ入念にこういう方々をお世話申し上げるように、まず住宅の問題等もございます。それから私は、わが国内に三、四十年ぶりにほんとうに裸一貫で帰ってくる諸君だから、日本も変わっているし、その辺ひとつしんぼう強くがんばってもらいたいというような激励などもしておりますが、まさに私たちのほうでできるだけのことはひとつ、いい御発言をいただきましたので、いままでもそれぞれの地方には連絡しておりますが、そういう関係機関にさらにあらためて推進するように督励したい、こう思っております。
  138. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 そうすると、職業安定所等へ行きますとこれはかなりやっていただけるということでございますね。
  139. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 いま大臣からも御答弁申し上げましたが、従来とも海外からの引き揚げ者の就職あっせんにつきましては、安定所で個別に職業相談あるいはまた特別な求人開拓等をして就職あっせんにつとめてまいったわけであります。従来の例で、韓国の関係の引き揚げ者につきましてやりましたときのように、あらかじめ帰還希望者を外務省でつかんでいただきまして、それを私ども外務省から通知を受けましくその具体的な方々の帰還先の職業安定所を通じまして、県、職業安定所一体となりまして、いま申し上げたような個別のきめこまかい就職相談、就職あっせんをするように努力してまいりたい、こういうように考えております。
  140. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 確かに制度そのものはそうなっておるようでございますが、引き揚げ時におきまして、そこのところが本人たちに理解されておらないということが非常に問題であろうと思いますね。ですから外務省で掌握なされて、実際にこちらへ来るときに、これは外務省にまた申し上げますけれども、特に労働省のほうでもそこら辺の問題をきちっと掌握をして、こまかいめんどうを見るようにひとりお願い申し上げたいと思うのでございます。  それからもう一点、大臣も御存じのとおり、中国からいろいろなケースの人たちがいま来日しておるわけでございますけれども、どのグループを取り上げてみても日本語を非常に濶達に、自在に使われますね。私ども上海舞劇団なんか見に行きますと、日本人よりうまい日本語をぺらぺら言う。これから各方面にわたって日中友好関係、こちらからも行くような時代が来ると思うのでございます。ところが、中国語をしゃべれる日本人の状況というものはきわめてお寒い状況でございまして、そういったこともやはり政府の仕事の一環として、積極的にそういう中国語を濶達にしゃべれるようにする組織をつくらなければいかぬのじゃないだろうか。まあそれぞれいろいろな立場で仕事をしておったわけでございますから、これをうまく分類していけば、今後の日中友好関係にも相当役立つであろう。あるいは政府の機関におかれましても順次そういう者を活用していくということができるのではないかということで、この面も行政の一つのやり方としてお考えいただけないものだろうか。こんなふうに希望しておるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  141. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、これは直接先生の御質問にはあれですけれども、引き揚げてくるときに問題が一つあると思っておるのです。それは、香港におきまして船便を待っておる、船便がなければ三十日も四十日もあそこに置かれることがあります。子供を連れた方々がすぐ故国に帰れるというのにかかわらず、三十日も四十日も香港に置かれる。その間のいらいらというのはたいへんです。でありますから、あそこにいる日本人あるいは総領事館などがあっせんして洋服を寄贈してみたり、あるいは食べものをあれして気持ちをなぐさめたりというふうなことなどもやっておるようでありまして、やはりそういう場合には、直接労働省所管でありませんが、飛行機で帰すとかいうようなことなども考えるべきじゃなかろうかということが一つ。  もう一つは、これはほんとうにお互い恥ずかしい話ですが、ことばについては、日本人というのは非常にへたな民族でございます。御承知のように、中国から来る方々は非常に日本語がじょうず、と同時にソ連の方々も大使館員はほとんど日本語をしゃべる。日本方々もかつては東亜同文書院とか、上海とかそちらのほうにそういう大学があったり研究所があったりして、そういうところでことばを習った諸君が中国に行ったと思うのです。何も戦前のそういう制度がいいという意味ではなくして、そういう意味でも機構なども考えることが、先生の御質問に直接直ちにあれするわけじゃありませんけれども、日中友好の大事な問題じゃなかろうかというふうに感じていることもつけ加えてお答えしたいと思います。
  142. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それではこれで私の質問は終わります。ひとつよろしくお願いいたします。
  143. 戸井田三郎

    ○戸井田主査代理 石田幸四郎君の質疑は終わりました。  八木一男君。
  144. 八木一男

    ○八木(一)分科員 労働大臣はじめ政府委員の皆さんに御質問を申し上げます。  まず国民春闘関係をした問題で、労働大臣に主として御質問したいと思います。二月の二十一日ですか、労働団体政府の、総理はじめ各大臣がお会いになりました。その前の日に、私は、よく状態を把握されまして、社会保障制度審議会の建議等も熟読をせられて、それに対処していただきたいと要請をいたしました。対処をされましてある程度の方針を決定されたこと自体はまあまあいいのですけれども、内容が非常に乏しいということで、これではほんとうの対処にならぬと思うわけであります。実はそのことについて政府にぜひ急速に考え直して、国民の期待に沿うようになっていただかなければならないということで、私もそういう立場から、予算分科会方々質問をいたしました。実は一昨日、主たる担当者である厚生大臣にはほんとうに熱心に質疑を申し上げたのですが、対応の気持ちがやや不十分でございましたので、非常になまいきでしたけれども、こっぴどく痛烈にやっておきました。それから昨日は大蔵大臣にこの問題を質問し、本日午前は、官房長官総務長官質問いたしました。経過はとにかくといたしまして、各大臣とも閣議で——私はあした閣議を開いてと申しましたけれども、とにかくそのためにあした閣議を開くとはおっしゃいませんでしたけれども、もよりの閣議でその問題を熱心に協議をするということをお約束いただいたわけです。   〔戸井田主査代理退席、主査着席〕 これは非常に大事な問題でございますが、政府側とすれば、財源その他の問題でなかなか重たいというような在来の気分がある。そういうことはもう必ず脱却をして対応していただきたいと思うのですが、その点について、ぜひ長谷川労働大臣に閣議で、その問題で御推進を願いたい。五大臣に約束をしましたから……(長谷川国務大臣「だれだれですか」と呼ぶ)実は厚生大臣、大蔵大臣官房長官総務長官、四人でございました。今度労働大臣を入れて五大臣ということになるわけでございます。ですから、正直な誠意のある政治家だったら出されると思うのですが、必ずしも四名が全部その問題を提起されるかどうかはわかりませんので、率先してひとつ、これから申し上げてからでけっこうですから、労働大臣から積極的に提起をされて、国民の負託にこたえるようにやっていただきたいと思うわけであります。内容はこれから申し上げますけれども、総括的に、ひとつ積極的な御姿勢を聞かしていただきたいと思います。
  145. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、社会労働委員会あるいは予算委員会、その他の場合もそうでございますけれども、先生が終始一貫社会保障について非常に御熱心な態度で御推進されている議論には敬意を払っているものであります。政府もやろうとはしております、それだけの官僚機構も用意しております、また財源もそのあんばいのために苦労することもありますが、時代時代の推移というものは、お互いのように地方を歩いて、人心あるいは生活を見ている者が吸い取る率が大きいわけでございます。そういうことからいたしますと、やはり国会の議論というものはほんとうに聞くものがある、建設的なものは聞くものがあるという感じ方で私はいままでも対処してきたつもりでございます。予算委員会における先生の先日の社会保障に対する特に御熱心な御議論などというものは、ほんとうにきわ立ったものだと、私は敬意を払っているわけであります。  そこで、このたびの春の賃金改定あたりまして、かつてないと人は言いますが、総理大臣はじめ全閣僚が懇談をやりましたときも、そういう労働組合皆さん方からも、弱者というか、社会保障に関係する者にひとつ目を注げということは非常に大きく力説され、国会には前々から、ことにこういう時代であるからなおさらというものがありましたので、額はなかなか御賛成いただけなかったけれども、あのとき百三十億、数字にすれば六百八十五万人、私のほうの失対もそれに応じて十二万八千人という形になりました。いまから先も、私は日本の場合には社会保障の問題というのは非常に大事な時期だろうと思いますので、そういう問題が出る場合には、よその閣僚に負けないだけの発言をし、ある場合には推進を申し上げたい、こういうふうに感じておりますことを御答弁申し上げます。
  146. 八木一男

    ○八木(一)分科員 積極的な御答弁で、その点気持ちとしては非常にうれしく思います。ただ具体的に、実際にほんとうのものを実現していただきたいわけです。  この間予算委員会の総括、一般でも繰り返して申し上げましたけれども、なかなか異例なことをやった、金額を出した、それをまたうんとふやせということについては、閣僚の中にわからなくて、そんなにとか、そういう空気があろうと思います。それをやはり乗り越えていただくためには、いろいろな数字なり論点が必要だと思います。何回も申し上げましたのでかいつまんで申し上げて、大蔵大臣にも厚生大臣にも申し上げておきましたので、ちょっとなまいきですけれどもお聞き取りいただきたいと思います。  たとえば労働省では、労働大臣が言われましたように、失対の問題については少なくとも就労日数をふやすということで対処された、これは存じ上げております。内容も存じ上げております。問題の一番焦点は、これは生活保護世帯だと思います。それは、憲法で保障された、健康で文化的な最低生活を保障するためのものが生活保護法でありますので、一番根底になります。もちろん失対労働者もそれからその他の身体障害者も原爆被害者も、難病者も母子家庭も、みんなそれと同様に必要でございますが、逃げられない議論は生活保護世帯ということになると思います。  それで申し上げますと、実は厚生大臣は一級地に一人二千円——一級地二千円ということばかり出ておりますが、四級地が千四百円ということはおっしゃいませんので、世の中で、宮崎県の方も二千円手に入ると思って、実際はがっかりなさる方があると思うのです。ああいう宣伝のしかたはよくないと思いますけれども、とにかく一級地一人二千円。そのことは月六%に当たって、一、二、三で、一八%上げたというようなことを答弁でおっしゃるわけです。それの数字だけは間違いありません。一八%、ずいぶん上げたように見えて、それは三月分の足した分であります。一月六%。だから前に五%上げているし、年末に二千円プラスアルファしているし、ずいぶんやって、これがせいぜい限度で、これで御了承願いたいということばかり方々で言われるわけです。  ですから閣議で、厚生大臣がそういうふうにほかの大臣に言われますと、もっとしっかりやらせなければいかぬといっても、担当大臣がこれだけこういっているんだからしようがないだろうというふうに、おそらく関係のない外務大臣だとか、そんな連中はうんと言っちゃうだろうと思う。そんな理屈もわからないで、うんと言った連中の人数まで入って、長谷川先生とそれからほかの熱心な先生方が四、五人主張されても、わけのわからぬ連中が七人ほど賛成したら、もうしかたがないというふうになっちゃいますから、そういうわけのわからぬ連中を爆砕するためのひとつ理屈を、という点で聞いていただきたいと思うのです。  実は昨年度は、経済見通しは、五・五%消費者物価が上がるということで、予算も政策も組まれていたわけであります。四月から五・五%よりもずっと多く上がっておるわけであります。十月に五%、生活保護世帯の基準が上がりました。これにならって労働省のほうも、失対賃金を五%お上げになりました。ならってというより、自主的に上げて、労働省のほうが先かもしれませんけれども、とにかく同時にそういうふうになりました。  そこで、実は五%上げたというなら、何か非常に緊急に即応したように見えますけれども、五%上げたのは、九月二十一日に決定したことでございます。これは八月の末の全国消費者物価指数を基準にしてやったことでございまして、それは七月の全国消費者物価指数の平均なんです。厚生大臣はそのとき、五・五上がる予定のところを一〇・八上がったから、五足したから、大体対応している。それは足せば一〇・五と一〇・八ですから、大体似ています。そういう弁解で通られるのですが、それは七月の現在なんです。十月のときは、それよりもはるかに上がっているわけです。  それから生活保護世帯の予定された生活が、ぐっと実際には四、五、六、七、八、九と詰まり、十月上げた時点でもまた詰まり、十一月、十二月詰まり、一月から二月まで詰まり、三月も詰まろうとしているわけです。そういうことですから、それを全部計算しますと、この前推定数字を申し上げましたけれども、一月、二月の末の統計はまだ出ておりませんでしたので、そのとき推定で申しましたら、大体当たっておりました。  もう時間もありませんから申し上げますと、とにかく生活保護世帯であります。四万円以上補てんをしないと、生活保護で予定された生活が維持できていないということになるわけです。ときどき、厚生省の変な理屈では、一カ月ぽっきりでもう限りがついている。だからそれはもう考える必要はないというようなことを言う人が、そういう冷酷むざんなことを考える国家公務員が、十人に一人ぐらいいるわけです。へ理屈をこねて、もう七月は決着つけたんだから、これから考えるのは先でいい。そういうようなことは許されないことであって、結局生活は、金の面ではしぶしぶ決着つけさせられていますけれども、そのときに食べるものも食べないから、からだがそれだけ栄養分が少なくなって、栄養失調のほうに寄っている。からだが弱くなる。そういうことで問題が残っているわけです。ですから、それを埋めなければならないわけです。  前に申し上げましたように、一番ひどいところは一食が六十数円、そんなところで一割も二割も減ったら、これは飢餓線に達するわけです。そういうことで全部四万円になりますので、一世帯四万円であれば一人一万円になる。政府の予定された二千円とこんなに違うわけです。ですからそういう基準、それに合わして、もちろん失対賃金その他の年金の人たちに対する手当て、そういうことも全部やられたことはいいのですが、金額が少な過ぎるので、これを検討し直してふやす。そして、しょっちゅうお話し合いをしていただいておるわけでございますが、そういう低所得者階層の気持ちを代表して、熱心に政府と交渉しておられる春闘共闘その他労働組合の代表と積極的に話し合われて、国民の負託にこたえた解決をやっていただきたいと思うわけであります。それをやっていただくことによって、政治に対する国民の不信がやわらいでくると思います。政治を国民が信頼しないというのは、非常に不幸なことです。ぜひやっていただきたいと思います。予備費をほとんど使い果たしたということをよくいわれます。しかし昭和四十八年度には、自然増収が何千億と出るはずであります。それからほんとうにやる気であれば、予備費なんかなくたって、あしたでも補正予算出して、そうしたらこれは与野党協力しますから、衆議院は二日で上がって参議院は二日で上がる。もっと強力に要請されたら、一日で上がって一日で上がる。われわれは協力いたします、そのための補正予算を組まれるならば。やる気だったらできるわけでございますから、そういうことを強力に、それから内容は十分に、そうしてそれを急速にしないと間に合わない、急速に御推進いただきたいと思うわけでございます。ぜひ国民のために、長谷川労働大臣内閣の中で御推進になるように強く要請をしたいと思います。ひとつ積極的な御答弁をお願いいたします。
  147. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先日は、御期待に沿えないというおしかりなどもありましたけれども、国会の先生はじめ熱心な方々の御論議、さらにはまた金を出そうという場合には、総理はじめ私たちもお目にかかりまして、ひとつ百億以上何とかしようじゃありませんか。これは多いことがいいにきまっていますけれども、といって予備費の問題等々もあって、しかしそれを出すにあたりましても、従来社会保障のことについて非常に御心配いただきました大河内先生あるいは馬場啓之助さん、中川善之助さん、こういう方々の学者としての制度の問題、状況等は最近御報告ありましたけれども、こういう時期においてのお考えはいかがなものでございますかということをあらためて聞いた上で、ああいう発表になったわけであります。  そこで、いまから先の問題といたしますと、私は、これはひとつぜひあらためて御理解いただきたいと思いますが、組合方々に、私労働大臣ですから、どんなことをされても私はおこらない、どういうことがあっても私はパイプになろう、こういう気持ちで肩から力を抜いてひとつお会いしましょう。しかし、それは団交とかなんとかというふうなことじゃなくして、ずっと常日ごろも懇談しようというふうなかまえでありまして、やはり国会の場というものが一番大事なものじゃないかという感じ方で、先生はじめ皆さんの御議論、その中にああいう方々もまたその問題を取り上げているということを参考にしながら、社会全体の雰囲気の中にやっていくという気持ちであることを御理解いただきながら、もう一つはいまから先の問題でございますから、あなたにこういうふうにして数字を教わったことなども胸に含めて、そういう議論が出た場合には、社会情勢あるいは国会審議等々もある場合には考えましょう。そういう話が出た場合には、ときには私のほうからも出しましょうけれども、大いにひとつPRというとおかしいんですが、御期待に沿うような姿勢でやってまいりたいということをお答え申し上げます。
  148. 八木一男

    ○八木(一)分科員 たいへん積極的な御答弁で、感謝をいたします。出た場合にはというのは少し不満でしたが、私のほうからも出しましょうということで、積極的に出されるということで確認をして、そういうふうに理解いたします。  それからその次に、実は大蔵大臣ときのう確認したことでございますが、四十九年度予算案は、これはもう簡単に申しますけれども、経済見通しを十二月の十九日の閣議できめられて、予算編成方針をつくられて、それから一月の十九日にやられたときに、経済見通しも変えないし予算も変えなかったわけです。経済見通しは、卸売り物価のほうだけ変えたわけです。これは非常に何か産業優先のように見えて、消費者物価があれだけ上がっているのを変えないのはほんとうに不当なことだと思う。産業は大聖だから、卸売り物価のほうは変えた、それで国民生活は二の次だから、こんなに上がっているのに見通しも変えなかったというのは、たいへんどうも不当だと思うのですが、その議論は時間がかかりますから別にしまして、これは経済企画庁の長官と大蔵大臣にこてんこてんにやっておきましたが、それは別にしまして、大蔵大臣に、そういうことで見通しを変えて予算を変えなかったことは不当である。ですから、四十九年度予算案は与野党が話し合って修正すべきだろう。これは提案者の中枢ですから、私はこの予算はいいと思いますと言われました。それはわれわれ努力して、予算案を変える、修正する努力は国会でいたします。修正した予算案になろうと、政府原案のまま通ってしまおうと、とにかく予算ができます。できましたときに、われわれの場合はもっとよくするつもりですが、現在の予算案でも、二千六百億円の予備費が四十九年度にある。予備費というものは、通常、災害その他のために備えているのですが、これは前年よりも予備費がふえたのは、福田さんもそれを考えてやったんだろうと思いますが、狂乱物価に対処しなければならないものが多いということで予備費のワクをきめたんだと思います。予算の見通しを変えなかったことに、幾ぶん、十分の一ほど対処する中にもそういう予備費があるから対応できるという点があったんではないかと思います。これをきのう突き詰めまして、物価が急騰したときに予備費を充当することをどんどんやらなければいけない、二千六百億を十二カ月に分けるような考え方ではいかぬ。もちろん物価がとまれば、使わなくて済めばいいけれども、四月、五月に狂乱物価がまだ続く、対処をしなければならない。たとえばいまの生活保護費を予定よりあげるときに金が要りますね。失対賃金の場合でもそうだろうと思います。それを労働省厚生省がやろうと思っても、大蔵省がうんと言わなければやりにくい。そういうことで、予備費を使うことを主張いたしました。それを福田さんは了承されました。月割りじゃなしに、必要があったら四、五、六にばあっと使う。予備費が足りなくなったら補正予算をまた積めばいいのですから。そういう点で大蔵大臣は了承しておられますので、それをひとつ腹に置かれて、労働省関係のものについて対処をしていただきたいし、厚生省関係についても、広く国民労働者を守る立場から、厚生大臣と協力して進めていただきたいと思うわけです。これは失対賃金とかあるいは厚生省生活保護だとか、行政措置で毎月できるのですから、いわゆるスライド問題の中でこれが一番楽なんです。毎月改定できるわけですから、何も法律改正も要りませんから、失対賃金については、そういう状況があれば毎月対応する。金のほうも大蔵大臣は承知しておりますから、その他の面についてもそういうことを推進するという積極的なお考えを伺わせていただきたいと思います。
  149. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いまの一般的なお話、大蔵大臣、企画庁長官に先生が御質問された模様はお伺いしたことでございます。それらの話を踏まえながら、いまから先、私のできる問題について懸命にやりたいと思っております。  いまの予備費の問題等々は、先生からお伺いしたので、閣内で私まだ何も聞いてないからというかっこうのあることも御理解いただきたいと思います。
  150. 八木一男

    ○八木(一)分科員 きのうですから、それから閣議がないのかもしれません。それは断じて福田大蔵大臣は明快に答えていますから、あの人はりっぱな政治家ですから、できることは、しなければならぬことは、うんと言ったことは、あとで知らぬとかできないとかそういう政治家ではないと思いますから、確信を持って予備費の支出を要求してやっていただきたいと思います。  それからその次に、スライドの問題であります。スライドの問題で、いま事務的に伺いますが、失業保険及び労災等で、労働省関係のスライドはどういうふうな規定になっているか。すぐわかりますから、長ったらしい話でなくて、簡単に事務当局から御答弁願いたい。
  151. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 失業保険金につきましては、先生御案内のとおり、離職直前の賃金水準を反映して給付水準をきめるように相なっているわけでございますが、賃金水準が変動いたしました場合には自動変更規定がございまして、日額の改定を行なうようになっております。最近やりました日額の改定は、昨年の十月改定をいたしております。
  152. 八木一男

    ○八木(一)分科員 変動が何%きたらいつやる、それが聞きたい。
  153. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 二〇%だと承知しております。
  154. 八木一男

    ○八木(一)分科員 二〇%でしょう。それがいつ対応するんですか。一年一回じゃないですか。期間ごとにすぐできる。
  155. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 二〇%の水準になったときということでございますから、昨年の十月やったばかりでございますから、まだ時間的には余裕があると思います。
  156. 八木一男

    ○八木(一)分科員 労災はどうですか。
  157. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労災につきましては、休業補償は四半期ごとにやはり二〇%スライドをとっております。年金は年の単位で二〇%スライドをすることに相なっております。  なお、今回国会に出しました労災法の改正では、従来やっておりませんでした一時金、障害補償や遺族年金の一時金についてもスライドをとっております。
  158. 八木一男

    ○八木(一)分科員 労働大臣、お聞きになったと思います。御就任まぎわですから、そのパーセンテージまで御存じないと思いますが、二〇%というのはたいへんな値上がりです。スライド規定は賃金スライドでなかなかいいようなシステムになっているけれども、二〇では話になりません。厚生省のほうのスライド、あれが物価で五%増されている。年金の問題を去年やったが、厚生省はてんでスライド規定がなくてなまけていましたけれども、去年ともかく出してきた。それでできた五%、これは一年単位でずれていますからよくありませんけれども、とにかく五%。労働省は先にスライドを設けられたのはいいんだけれども、二〇%でとまっているわけであります。ところが、二〇%というのはスライド規定があってもなくても同じだということになる。少なくとも、これは五%に下げられないとスライドがよくないということになるわけです。これは至急に改正していただきたいと思います。いま言っていまですから、ちょっと御相談の時期がありますから、あれだけの改正を至急にやっていただくという方向だけひとつ御決意のほどを伺わせていただきたいと思います。
  159. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 失業保険金は、先ほどちょっと御説明いたしましたが、失業保険制度は短期保険でございますので、そういった観点で二〇%というような考え方ということでございます。
  160. 八木一男

    ○八木(一)分科員 変える必要が絶対にあるのですよ。時間が五分しかないから、絶対にやっていただくということでひとつ確認をしておきたいと思います。  それから、実はこれは大事な問題ですので、聞いて参考にしていただきたい。たとえば年金その他のスライドですね。失対賃金は一月ごとにやっていただけるからいいのです。インフレ、狂乱物価だから、とにかく短期間にスライドをしなければいかぬという問題点があるわけです、大河内さんのやった制度審議会が出しているように。ところが、それを厚生省が抵抗するわけです。厚生省が抵抗するのは、いま社会保険審議会の厚生年金部会で、去年の年金のスライドを実際どうやるかということをやる前に聞けということを言われたからそれで出した。これは去年のベースで、こんなになってないベースでやっているわけです。これが五月までかかる。それから計算すると、何百万人だから半年どうしてもかかるということを言っているわけです。きのうそれでかんしゃくを起こして、めちゃくちゃに追及したわけですが、それはそれでいいのです。一年ごとに変えるんだから、賃金読みかえがあるから、それはむずかしい作業があるから、十一月でいいのです。いまぽんぽん上がっているのですから、年金の実質価値が減るから予定生活が減るのですから、それは物価でけっこうです。たとえばいまの四月の分は、ずっと一年ほど上がった分をすぐスライドする、四月から以降は、四月から六月までの分に対して、今度は五、六が上がったら上がっただけ上げる、そういうことで対処をしていかないとできないわけです。それをできないというわけです。できないというのは、賃金読みかえなんかで、何百万人全部を計算して、電気の計算機を使ってもできないというわけです。それはできないかもしれない。いま金額はだれだれにどれだけ支給するかというのは、年金でも失業保険でもわかているわけです。それをたとえば二〇上がったと仮定します。そうしたら一・二をかければ数字が出る。その算術ができないような日本国民はほとんどいないのです、子供以外は。それを国家公務員の優秀な人ができないと言うのです。専門家の彼らができないと言えば、年金はむずかしいからそうかいなと思って、しなければならないというところもあきらめてしまう。そういうとんでもないことはない。しなければいけないし、できるはずのことをできないと言って、年金局や社会保険庁が厚生大臣を牽制し、厚生大臣もそれをちゃんと批判するだけの力がなくて、受け売りをして、閣議にもできません、国会を通じて国民にもできません。そんな公務員の怠慢のために年金生活者の予定された生活がダウンしているんです。政府もほんとうにやる気があるかどうか知らないけれども、とにかくやろうとしているわけでしょう。国民はぜひやってもらいたいというでしょう。国会でもやらなければいけないという空気があるのに、ただ計算がめんどくさいからできないという、その連中のためにスライドがとまる、あとで取り返しがつかないわけです。そういうことはもってのほかで、けしからぬことだから、そういうことをこれから一言でも言えば、年金局も社会保険庁も全部配置転換をしてやれということを申し上げたわけです。ぜひそういう意味でスライドの問題も閣議でひとつ論議を願いたい。これは門外漢であると言われましたけれども、二階堂官房長官にもはっきり申し上げておきました。次の閣議で提起をしてくれ、厚生大臣も大蔵大臣も申し上げておきましたから、先ほどと同様に、労働大臣は非常にこの問題に重要な地位におありになるので、積極的に対処をしていただきたい。あと時間がなくなって残念だけれども申し上げておきたいと思います。ひとつ積極的な御答弁を伺いたいと思います。
  161. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 だんだんの生活保護世帯の具体的な問題、やり方等についてお教えいただいたわけであります。所管は、何さま国務大臣といいながらも、向こうはちゃんと厚生大臣が持っているものだから、そういうところになかなかむずかしい問題がありますが、私も問題の所在を理解するに非常に役に立ったことをお礼申し上げました、そうした話などが出た場合には、直接所管でございませんけれども、いろいろ議論をしながら前向きの姿勢をとるように進めてみたい、こう思っております。
  162. 八木一男

    ○八木(一)分科員 もう時間ですから、一問だけにいたします。  ですから、実はそこで異論が出ると思うのは、上がってばかりでたくさん金が要るのじゃないかというけれども、そんなことはないわけです。スライドというのは、物価が上がったら受け取る分もふえますけれども、物価が下がったら減っていいんです。ですから、政府が一生懸命物価安定にすれば発動しない。物価下落まで持っていけば下げることだってできるわけです。ですから、そういう心配はなさらずにやっていただきたいということであります。しかも、それはいまインフレ共闘していますけれども、インフレで気違いじみて上がっていますから、先々一生懸命考えなければならないといったら臨時立法でもかまいません。また、将来の問題に備えてしっかり考えたらいいんで、いまは臨時立法ですぐそれをやっていただく必要があるということを、ひとつ御理解をいただきたいと思います。  さらにあとまとめて申し上げますが、同和問題で、実はこれを申しますと、上屋については国庫補助が出ていますが、下の土地には国庫補助が出ていないという状況があるわけです。労働省あまりありませんが、職業訓練施設か何かでそういうことがあると思う。これを確認事項と違反しているとずっと追及して、そのときの確認をした。そのときの大蔵大臣の福田さんに確認をして、去年はまた総務長官の坪川氏に確認をして、政府の怠慢だった姿勢を直すということになったわけです。大蔵大臣に昨日確認して、その要求が出たら通すということを言われたわけです。各官庁はそのことで足りるわけです。きょうは法務省と厚生省に、その要求は絶対出せといったら、一つはすぐ出す、一つは出すように努力しますと言ったからしかりつけました。出すように努力するということは、国の方針をおまえさんが怠けていることになる、要求は必ず出すという返事をすべきであると言って、要求を出すと言いました。労働省についても、上屋の下の土地に国庫負担が出ていない分については、国庫補助の要求を五十年度には、ことしじゃありません、五十年度には出すというお返事をいただきたいと思います。  その他、同和対策について、同和対策の一番大事なものは就職の機会均等であります。労働省が一番その点は責任重いわけです。この二、三年来、ある程度の努力をしておられることはわかりますけれども、それについてさらに一段と積極的に問題を推進される必要があろうと思います。  まとめていま申し上げたことは、事務局に御相談になる必要はありません。大蔵大臣承知して、各省全部承知しましたから、まとめてひとつ、労働大臣もそれをやられる、それから努力のほうは積極的にやられる、そういう御答弁をひとついただきたいと思います。
  163. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 同和対策につきましては、先生がそこまでお話しのあることでもあり、五十年のことでもあり、私のほうでも内容を精査しながら御期待に沿うように推進したい、こう思っております。
  164. 渡辺栄一

    渡辺主査 八木君の質疑は終了いたしました。  次に、芳賀貢君。
  165. 芳賀貢

    芳賀分科員 長谷川労働大臣にお尋ねいたします。  質問の要旨は、職業病問題の中における特に林業労働者の最も憂うべき職業病である白ろう病といわれる振動病、並びに最近非常に多発しておる腰痛症の問題等について、重点的にお尋ねをいたします。  まず第一は、すでに白ろう病は職業病に認定されておるわけでありますが、そこで、昭和四十七年並びに四十八年を通じまして、国有林並びに民有林における白ろう病の認定者の数についてお尋ねいたします。
  166. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 国有林のほうは、ちょっといま私どものほうは現在のところ掌握いたしておりませんが、民有林の関係について申しますと、昭和四十九年一月末現在、労災保険において白ろう病で療養中の者が二百八十二名でございます。
  167. 芳賀貢

    芳賀分科員 これは四十七年並びに四十八年を通じての認定者の総数ですか。
  168. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 数字のことでありますから、局長をして答えさせます。よろしく。
  169. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 これは一月末現在の療養中の者の数でございまして、ちょっといま手元に年次別の認定の数を持っておりません。
  170. 芳賀貢

    芳賀分科員 これはあらかじめ本日の質問要旨というものは伝えてあるわけですが……。
  171. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 至急調査いたします。
  172. 芳賀貢

    芳賀分科員 民有林については、四十六年末には一年間で三十九名の白ろう病認定者ということに政府から報告されておるわけです。いま明らかな数字が出てから具体的にお尋ねしますが、そこで、振動病の原因をなすのはやはり作業機械でありますが、政府の統計によりましても、民有林と国有林の作業の振動機械の台数について申しますと、まず民有林についてはチェーンソーの台数が約十二万七千台、刈り払い機の台数が約十一万六百台ということになっておるわけであります。国有林につきましては、チェーンソーが約六千百台、刈り払い機が一万五百台。そこで、労働省のほうでは、国有林労働者の白ろう病認定者の正確な数については不明のようですが、私の調査によりますと、国有林関係では千四百名余の白ろう病の認定が行なわれておるわけです。だから振動機械の台数からいっても、おそらく民有林の林業労働のほうが、労働条件においても機械作業の制約条件においても、非常に劣悪な状態の中で働いておるわけですから、むしろ国有林よりも民有林のほうが白ろう病に実際悩まされておる数が多いというふうに判断しておるわけであります。そこで、できるだけ的確に、認定者の数字についても関心を持って掌握すべきであると思います。
  173. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先生おっしゃるように、国有林関係がわかっておりませんので、そういうことは非常に残念でございましたが、こういう大事なことでございますから、いまからずっとフォローさせるように私のほうからもつとめます。
  174. 芳賀貢

    芳賀分科員 次にお尋ねしたいのは、腰痛症の問題は、単に林業労働者だけにかかわらず、最近の産業労働者の場合には機械作業がだんだん増加しておるわけですから、総体的に、機械作業員、機械要員の腰痛症に苦しんでおる数は相当大きな数に及んでおると思うわけですが、この実態はどうなっていますか。
  175. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 昭和四十七年度中に、休業四日以上で労災の補償の対象になりました者は、腰痛症については、業種別にはとっておりませんが、機械作業ばかりでない全部だと思いますが、三千二百七十六人でございます。  なお、先ほど調査すると申しました白ろう病につきましては、四十七年度中だけいま数字がわかりましたが、これも休業四日以上のものだけでございまして、通院等を含んだ数字まではとっておらないそうでございますが、四十七年度中の認定いたしました者は五十六人でございます。  なお、昨年の年度末、三月末に労災で白ろう病で療養中であった者がたしか百四十名ほどでございましたので、ことしの一月末現在が二百八十二名ということでございますと、昨年の四月以降、約百四十名ぐらいの者が認定されて増加しておる、こういうことに相なると存じます。
  176. 芳賀貢

    芳賀分科員 大臣に申しますが、これは昨年当委員会においても私から指摘した関係もありまして、だから、そのせいというわけではないですけれども、従来は職業病として取り上げておるにかかわらず、労働省が、特に民間の山林労働者の白ろう病の認定等については全く熱意がなかったといっても差しつかえないと思うわけです。今後十分実態というものを積極的に掌握して、一度かかるとなかなか回復しがたい難病でありますから、労働省としても人間尊重の立場から十分な施策を講ずべきであるというふうに思うわけであります。  そこで次には、こうした気の毒な白ろう病認定者等に対して、一つは白ろう病にかからないための予防的な措置というものは、就業の中においても完全に講ぜられる必要があると思うのですが、万一白ろう病になった場合は、当然これはその治療とか療養とか、そういう当然の処置、さらにまた今後就業する場合においても、そういう経過がある場合においては、再発することのないような適当な職場への転換とか、そういうような点についても最大の配慮を講ずべきと思いますが、まず、その予防とか治療対策等については、どういうお考えですか。大臣から……。
  177. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御心配の白ろう病の予防につきましては、たいへんなことでありまして、いま、先生御承知のとおり、一日に二時間作業をさせるようなかっこうにして、そういうことがなかなかこないようなかっこうもとっております。そういう意味の時間の制限、それから健康診断を内容とした予防対策をやっております。そしてこれをまたさらに指導してまいりたい。  治療につきましては、専門家の意見を聞いた上で、早急に治療方針を定めたいと思っております。  また一方、振動の測定が大事だと聞いておりますので、その統一的な基準を、これは国際会議においてさえも検討を進めている段階でございますので、その状況を見ながら、適正な機械の基準をきめるというふうなこともつとめていくというかまえでおります。
  178. 芳賀貢

    芳賀分科員 大臣から振動機械についての基準を設定するというお話ですが、結局これは白ろう病の起きる原因ということになれば、いま大臣が言われた振動機械に起因するわけですから、この点がわが国においては、林業に限らず、機械作業というものは非常に分野が拡大されておるわけですが、それはあくまでも能率主義を基礎にするわけでして、その機械を使用することによる労働者あるいは人体に対する被害、影響というものを第二義的にして、能率が上がる機械を開発、製造して、人命は軽んずる。これがいままでのわが国における大事業をはじめ企業者の態度で、またそれを自民党政府が助長するような形で今日まで施策を進めてきたわけですが、今後こういう道は改めなければならぬと思うのです。  そこで大事なことは、機械を開発、製作する場合に、その時点において、振動作業機である場合は、この作業機を実用化する場合において、はたして労働者の人体に対してどういうような影響が生ずるかということを、国の審査機関等を設けてそこで事前に十分に審査して、この程度の振動係数であればこれは実用化しても差しつかえない、こういうような振動係数の高い機械は実用化を認めないという、製作段階における事前のチェックというものがないと、どんどん実用に供されてからそこで基準をきめるということでは、もう手おくれだと思う。この点が非常に大事だと思いますが、それはどう考えていますか。
  179. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 おっしゃるように、チェーンソーの予防につきましては、振動数の少ない機械を開発することが重要だと思っておりまして、そういう機械の開発につきましては、私どもから通産省のほうにもお願いをいたしておるところでございますが、ただ、現在、どのような振動であれば害が少ないかといったような振動の基準につきましては、学問的にまだ非常にむずかしい問題でございまして、労働省でも労働衛生研究所等で研究をいたさせておるわけでございますが、国際機関におきましても、ISOという機関がございまして、ここで数年前から何回か国際会議を開きまして、そういう基準の中心になる測定方法等の検討がされておりますが、まだ結論を得ていないと聞いておる段階でございます。わが国におきましても研究を進めまして、できるだけ早くそういう基準になる振動の測定方法を定めて、それによって有害でない機械の基準をつくるようにしたいと考えております。
  180. 芳賀貢

    芳賀分科員 いま局長が、国際機関において認定の基準というものが明らかになっていないということですが、たとえばソビエト連邦においては一九七二年に法律を連邦議会が制定して、その法律に基づいて振動機械等の製作段階における事前の審査というものを国の機関によって厳格に行なっておるわけです。まだ世界的に完全な、人体に被害のない振動機械というものは完成しておらぬが、やはり次第にそれは完成の領域に近づいておるわけです。日本においてもやる気でやればできるわけでして、先ほど言った企業優先、能率優先の立場からいくわけですから、この点の規制、審査というものは全然放任されておるというのが現状であります。これは長谷川さん、ぜひ製作段階で十分な審査をして、そこで可否の認定を行なって、それから実用を認める場合には認める。しかし、その段階で振動機械の場合は審査の結果振動の係数というものがわかるわけですから、この機械の場合においては一日に何時間以内の使用時間でなければならぬ、この機種については一日の使用時間を何時間に限定する、そういう明確な指導というものを国が責任を持って行なうというところまでいかなければ、振動病の今後の予防あるいは絶滅をはかることはできないと思うので、ぜひこれは労働省中心になって、通産省あるいは厚生省にも問題を提起して、政府として実行すべきだと思いますが、いかがですか。
  181. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ソ連、カナダのような森林国はやはり進んでいるというふうに私も感じます。そういうところで使って効果のある機械ということになりますと、それらを参考にしながら、先生のおっしゃったことを胸に含めて、いまからの白ろう病を予防して、国が林業労働者というものを守る方向に持っていく。私たちの役所は働く諸君に安全に働いてもらって、福祉の向上というところが念願でございますから、そういう対策をとってまいりたい、こう思っております。
  182. 芳賀貢

    芳賀分科員 次に、労働省においても、いまだに振動機械を使用する民間あるいは国有林もそうでありますが、そうした作業員に対する年に一回とか二回の定期診断等はやっていないでしょう。他の社会主義国等においては、必ず定められた時期に定期診断を行なう。そうすれば、白ろう病にかかっておるかどうかというようなことは、その他の症病もそうですが、正確にわかるわけです。その場合、治療、療養を要する場合にはすぐそのほうにそれを回す、あるいは職種の転換等によって労働継続が可能であるという場合にはすみやかに職場転換等を行なうということを行なっておるわけですが、やはりわが国においても、労働者に対する作業状態に基づいて、定期的な健康診断あるいは適性の診断等を行なう必要があると思うのです。何にもやっていないわけですからね。
  183. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 健康診断につきましては、安全衛生法で年一回の健康診断は義務づけられておりますが、さらに四十五年以来指導通牒をもって、林業のチェーンソー使用労働者には年二回健康診断をやるよう指導をいたしております。  さらに、それらの健康診断につきまして、どのような健康診断をしたらいいかということが明確でございませんでしたので、専門家の委員会をつくって検討いたしておりましたが、昨年の十月にそれらの専門家からの御答申に基づいて、チェーンソー等を取り扱う業務にかかる特殊健康診断につきまして通達を出し、詳細な検診の実施手法等も指示をいたしておるところでございます。  なお、四十八年におきましては、特に林業労働者のために、約六千人につきまして特別の巡回健康診断をするように、林業災害予防協会に委託をいたす等、チェーンソー使用労働者の健康診断については、特に努力をしておるところでございます。
  184. 芳賀貢

    芳賀分科員 国有林の場合には、国の企業体ですから当然これは国がやるわけですが、大事なことは、民有林の労働者に対して、全国の各事業場に対しましても、単に労働基準局長の一片の通達だけでは、これは完全を期することはできないですから、この点は大臣におかれても十分留意をして、これが完全に徹底するようにしてもらいたいと思います。  それから参考までですけれども、白ろう病の効果的な治療とか療養対策として、温泉を利用した、いわゆる水中療養というものが相当成果をあげておるわけです。たとえば温泉でなくとも、塩分を含んだ温水の中に患者を入浴さして、そして刺激を与える。あわを沸騰させるような状態とか、あるいは浴槽の中に空気を送り込んでそうして人体に刺激を与える、あるいはまた浴場で、ポンプ状のもので効果がある液状のものを噴射させて、これもやはり人体に刺激を与えてやるような、そういう水中マッサージというか、温湯療法というようなことが、白ろう病の症状から見てもなるほどとうなづけるような、そういう療養手段というものがだんだん開発されておるわけですから、こういう問題についても先見性の上に立って、国有林の場合にはこれは林野庁あり、また地方に営林局があるわけですし、幸いにまた国有林の中には温泉地帯も多いわけだから、国の総合的な施設として、あるいは国有林の施設としてこれを実行する。また民有林関係についても、療養ということになれば厚生省所管でありますが、こういう点についてもこの際十分な予算を確保して、すみやかにこういう施設を完成さして、そして一たん振動病にかかった労働者の諸君とかあるいは腰痛症患者等についても、やはり健康回復ということについて十分な努力をすべきと思いますが、この点はどうですか。
  185. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 厚生省関係する温泉でございましょうけれども、やはりそういう意味では、そうした諸君を守るために総合行政というのが大事じゃなかろうかと思っております。労働省としてはそういう総合行政のたてまえから、いままでかりに五やったものなら、七、八、九というふうに推進してまいりたい、こう思っております。
  186. 芳賀貢

    芳賀分科員 次にお尋ねしたいのは、やはり民有林の関係でありますが、全国の森林組合のもとに森林組合労務班というものが、これは森林組合の事業の労務担当の組織が、これは農林省の指導で育成されておるわけですが、現在全国で各森林組合の中におおよそ六千の労務班が設置されておって、人員についてはおおよそ六万人を数えておるわけです。これは非常に民有林にとっては貴重な労働力ということになっておるわけですが、そこで、労働省として労務班の実態というものについてどの程度掌握しておるか。もちろんこれは一定の賃金によって作業をする形態もあるし、あるいは森林組合の事業の一部を下請の形で請け負わせて、そうして労務班が作業をしているというような、多様性は持っておりますが、いずれにしても労働を提供して作業をやっておるわけです。これは当然労働者としての社会的な位置づけというものが必要である。また団体協約の問題にしてもあるいは労働災害の問題にしても、こうした特殊ケースではあるが、森林組合に所属する労務班対策というものについても、単に林野庁だけの指導とか育成にまかせるということになれば、労働省の、労働者の今後の処遇に対する方針と全く背反するような結果が生まれるおそれもあるわけですからして、この際、労務班なるものに対しての実態をどの程度長谷川労働大臣として認識されておるか。これを正しい労働組織として十分に育成して、確保することについてもどう考えておるか。その点いかがですか。
  187. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いまの労務班のことは、私も自分の地方に山もございますし、ときどき陳情なども聞くわけでございます。基本的には、作業員の常勤化については国家公務員の体系にかかわるなかなか困難な問題などもあることは御承知のとおりでございまして、慎重な検討を進めながら農林省と話し合っているわけであります。  一昨年の十二月に山添さんが会長をされている林政審議会から総理大臣あてに出された答申の中で、御承知のように、基幹的な要員については、その常勤的勤務状態にふさわしい身分上の取り扱い等を可能とすることについて、継続して検討する必要がある、というふうに御指摘いただいているわけでありまして、これによりまして昨年の十一月から同審議会に設けられた林業労働小委員会において現在検討が進められておるわけでありますが、その結果を待って私たちのほうでも対処していきたい、こういうふうに考えております。
  188. 芳賀貢

    芳賀分科員 ただいま大臣の発言された内容は、これから私が質問する問題について先取り答弁ということになるわけで、いま聞いておるのは森林組合のいわゆる労務班組織に対する認識いかん、労働者としての位置づけの上に立ったこれに対する育成対策というものをどう考えておるかということを聞いておるわけです。
  189. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 私どもが承知いたしておりますところでは、現在労務班数は、四十六年の数字までしかございませんが、七千八十一、労務班員である労働者の数が六万二千七百五十四人というふうに承知をいたしております。これらの労務班に所属する労働者につきましては雇用関係が必ずしも明確でない、近代的でない、こういった問題もありますし、労働条件についてもいろいろな問題がございますので、私どもこの近代化をはかりますためには、雇用契約を明確化する、森林組合にも就業規則等を明確に定めさせる等によりまして、雇用の近代化をはかり、労働条件を明確化し、近代的な労働関係を確立するように指導してまいりたい、かように考えているところでございます。
  190. 芳賀貢

    芳賀分科員 この点は、大臣、先般衆議院農林水産委員会において継続審査に付された森林法の改正並びに森林組合の合併促進の期限延長のそれが一部修正で成立しておるわけです。森林法の中に森林組合の規定があるわけでして、この審議の中においても、林野庁が育成しておると称する労務班の問題については、労働者に対する近代的な施策と相当反する面があるので、この点については十分に留意すべきであるという指摘を行なっておるので、これは労働者の立場から、正確な山林労働者としての位置づけの上に立った施策というものを適正に講じていくように、六万人の民有林の基幹労働者を守るということは国の政策上からも非常に大事な点であると思うので、十分配慮してもらいたいと思います。  最後に、昭和四十六年の三月二十五日に、衆参両院の農林水産委員会において、林業振興に関する特別決議を、これはいずれも委員長提案で議決をしておるわけです。この内容は六項目にわたる相当広範なものでありますが、この中で先ほど大臣が触れられました国有林の基幹労働者である常用作業員、定期作業員三万一千人の常勤化の問題等についても的確な指摘をしておるわけであって、この決議の実行を踏まえて、四十六年四月十三日に政府側から統一見解というものが出されておるわけであります。その中で、三万一千名の基幹労働者の全面的な即時常勤制ということについてもいろいろ政府の見解を述べておるわけでありますが、実際問題としては国有林経営上の大事な基幹労働力でありまして、これはいずれも、日給制であっても国の公務員の立場に置かれておるわけでありますから、こういう不自然な、不合理な国有林労働者状態というものについても、労働大臣の立場から見ても、政府労働政策推進の立場からも、こうした不合理是正については明確な方針を打ち出して、そうして各担当の所管省に対しても、あなたの仲間の各閣僚に対しても、適切な機会にひとつ強力な発言をして、これが前進的に解決するようにつとめるのがあなたの任務だというふうに考えておるわけですが、この点はどうですか。
  191. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、年によって常用化の人員が違いますが、先生の御指摘あるいは国会の附帯決議の趣旨に基づいて前進もさせておりますし、私も委員会その他の会合のたびに農林大臣等とも話をして、前向きにやってもらうようにお願いもし、私のほうも推進していることを御理解いただきたいと思います。
  192. 渡辺栄一

    渡辺主査 芳賀君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田法晴君。
  193. 吉田法晴

    吉田分科員 第一は、頸肩腕症候群のことについてであります。  従来の国会での審議、それから電電公社のプロジェクトチームの報告書あるいは全電通労働組合の調査報告書等も拝見をいたしました。地元北九州において同様の病状を訴えております諸君にも会ってまいったり、事情については一応私として勉強したつもりであります。その上に立ってお尋ねをいたしたいと思います。  時間がございませんから、要点だけお尋ねをして御答弁をいただきたいと思います。  まず電電公社にお尋ねをいたします。  プロジェクトチーム云々というのが労使の間でだいぶ問題になっておりますから、そのプロジェクトチームの調査のほうから先に拝見をいたしまして、そして頸肩腕症候群調査分析報告書という労働組合の調査報告を見たのですが、両者対比をしながら、電電公社が従業員の職業病の問題あるいは労働災害を防止するために環境の調査、そしてその原因である環境改善のために努力をするという方向もさることながら、若干ないことはございませんが、プロジェクトチームのこの報告の中には、労働条件が悪い、だから頸肩腕症候群が発生したという点には目を向けてはおられると思いますけれども、原因を患者のいわば心理的な状況に求められておるかのごとき感がいたします。たとえば初めのほうの「人間関係」あるいは「作業機器」「物理的作業環境」等々の中に見られますけれども、不満が原因であるかのような理解をしておられます。これは科学者の態度であるとは思えませんが、一々申し上げておりますと長くなりますから申し上げませんが、それは労働組合の調査に見られますように、客観的な労働条件が、あるいは労働の強化が、作業の態様が頸肩腕症候群という職業病の原因であるということは、これは国会の論議あるいは引き合いに出されました郡山の労働条件等をみても明らかだと思うのでありますが、電電公社は職業病に対して、その職業病が再発しないようにあるいは原因であります労働条件を改善するために取り組まれるべきだと考えるのですが、少なくとも、その医学的究明についての中にございます心理的な原因に求められております態度は改めらるべきだと思いますが、電電公社の所見をお伺いをいたしたいと思います。
  194. 小沢春雄

    小沢説明員 お答えいたします。  先生御指摘のプロジェクトチーム答申の中で、心理的な問題あるいは作業機器とか物理的作業環境等の問題、私どもは並行的に取り上げられておると思います。作業環境につきましては、従来とも私どもとしてはでき得る限りの力を入れてまいったつもりでございます。職場の温度とか照明あるいは作業環境、休息室等につきまして、労働組合のほうとも話し合いながらその要望にこたえて、逐次整備してまいっておる所存でございまして、決して作業環境等についておろそかにしているということはございません。
  195. 吉田法晴

    吉田分科員 そうしますと、本症の原因である作業環境あるいは労働の態様、あるいは労働の強化、そういうことが問題になって、それを解決することが、いわば頸肩腕症候群の原因を取り除く、いわば労働条件と労働環境あるいは労働の態様等について改善を加えることが、私は電電公社のとられるべき態度だと思いますが、そういう観点から考えて、両者を比較しながら原因を客観的に求め、これを改善する方向に電電公社は努力さるべきだ、こういう点はお認めいただけますね。
  196. 小沢春雄

    小沢説明員 先生のお手元にございますプロジェクトチーム答申の中で、先生が御指摘になりましたのは、「発症要因」の第二章のところだと思いますが、一〇ページの第三章に「対策」という項がございまして、この中には、次のページあたりに「作業内容の検討」とか「疲労回復のための労働医学的検討」、作業形態、作業設備、作業環境、そういうふうなことが相当力を入れて書かれてございますが、私たちはそうした対策にのっとりまして、今後御指摘のように十分努力してまいりたいと思っております。
  197. 吉田法晴

    吉田分科員 基本的な態度が違いますと、いろいろな面で違いが出てきますが、一つ顕著な例は、この認定のしかたあるいは認定数あるいは認定機関について問題があるように思います。症状を訴えておりますのは千何百名、ちょっと数字がいま手元にありませんが、その中で認定を申請されたのが数百名、認定をされたのが十五名と承ります。あまりにこの症状を訴え、そして頸肩腕症候群だと考えられるものが——私も数名の小倉の患者さんに会いました。明らかにこれは頸肩腕症候群の病状を呈しております。そしてそれについて医者の証明も得られる。あるいは町のお医者さんだけでなくて、労災病院も診断をしております。ところがそういう人たちが、申請はしているけれども、まだ認定をされた患者ということにはなっていない。そうすると、申請をされた人の中から認定された人がいかにも少ない。これはもうだれが見ても明らかなことだと思うのですが、そういう結果になりますが、今後認定もふやしていこうし、それからその対策も強化をしていくという点については御異存はなかろうと思いますが、いかがですか。
  198. 小沢春雄

    小沢説明員 そのとおりに存じております。
  199. 吉田法晴

    吉田分科員 そうしたら次は労働省にお尋ねをいたしますが、先ほど申し上げますように、客観的な事実から、現に労働災害あるいは職業病としての頸肩腕症候群という病気が出ておるわけでありますが、それに対しての体制がややおくれておるという感じがいたします。いまの認定の数から見ましても、この認定医療の機関、それから法制的にも多少問題があろうかと思いますが、いまや頸肩腕症候群という職業病があるということは客観的に間違いのない事実。そしてそのことを通達の中でも認めて出しておられる。ただ、まだ基準法の施行規則三十五条十三号には「電信手、」云々と書いてございまして、電信手はほとんど現在見当たらないような状況ですが、「タイピスト、筆耕手等」という表現になっております。そのあとの「手指の痙攣及び書痙」というところの問題だと思いますが、少なくともこの規則の、次に掲げる業務上の疾病の中には電話交換手等、一番多いのは電話交換手であるということは間違いないところだと思いますけれども、これを変えるあれはないかどうか。  それからもう一つ、ついでですが、これを実施すべき通達については「キーパンチャー等手指作業にもとづく疾病の業務上外の認定基準について」という通達が出ております。これはまあ「等」の中に入っているわけでありますが、十三号の現状に応ずる変更と相対応して、この労働省通達についても「等」の中に入れて、これは三号ですか、解説の一部に入っているところでありますが、頸肩腕症候群という相当広範に拡大しようとする職業病の防止のためには、十三号の改正とあわせて指導通達についてお考えなさるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  200. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 頸肩腕症候群につきましては、先生がいま御指摘になりました基準法の施行規則三十五条十三号には、御指摘のように「電信手、タイピスト、筆耕手等の手指の痙量及び書痙」という規定がございますが、手指のけいれんや書痙の症状を呈します者は、この十三号に該当するとして取り扱っておりますし、それ以外の頸肩腕症候群、そちらのほうが最近は非常に多いわけでございますが、それにつきましては、その規則の三十五条三十八号「その他業務に起因することの明かな疾病」ということで、業務上疾病としての取り扱いをいたしているところでございます。  これを改正するかどうかというお尋ねでございますが、頸肩腕症候群の中にはいろいろございまして、業務上の事由に基づいて発症するものもございますし、業務外の理由でそういう病気になられる方も非常に多いわけでございます。そこで、認定基準が非常に問題になるわけでございまして、医学的に見まして業務上になるものを限定して規定することができるかどうか、この辺が規則の改正をやるかどうかの問題点でございまして、この辺をいま専門家等の御意見も聞きながら検討いたしておるところでございます。  それからなお、通牒でやっております認定基準あるいは作業管理基準等におきまして「キーパンチャー等」ということばを使っておりますのは、当初多数発生いたしましたのがキーパンチャー等でありましたためにこういうことになっておりますが、さらに最近では、スーパーマーケットのチェッカーなどにもそういう人が出ておりまして、それにつきましては昨年別個の通達を出しております。なお、近ごろ、いろいろな従来なかったような分野にも頸肩腕症候群が出ておりますので、昨年、従来からきまっております認定基準を再検討いたしますために、専門家委員会を設置いたしまして、最近の状況、医学の進歩にかんがみまして、再検討に着手をいたしておる段階でございまして、その結果によりまして、さらに認定基準についても改善をいたしていきたいと考えております。
  201. 吉田法晴

    吉田分科員 いまの答弁にある経緯は存じております。現状からするならば、十三号の電信手というのはほとんどおられないようでありますが、「等の手指の痙攣及び書痙」と限定をされて、その他の頸肩腕症候群は、「その他業務に起因することの明かな疾病」、これで処理をしている。それでは足らぬではないかということを申し上げておる。  そこで、一つ別な例を引きますが、これは別な機会に論議をいたしますが、北九州で小野田化学といったと思いますが、弗素中毒が出ております。そして、その弗素中毒の取り扱いについてあるいは補償について、先般工場に参りまして相談をいたしましたが、同じ条文の二十六号、前は略します。「弗素、石炭酸又はそれらの化合物、その他腐蝕性又は刺戟性の物に因る腐蝕、潰瘍及び炎症」と書いてあります。したがって、内臓の疾患といいますか、内臓の機能の障害等は少なくともこれに含まれております。それがどこに入るかというと、いまの理由でいいますと「その他業務に起因することの明かな疾病」、こういうことになるわけであります。同じ弗素中毒あるいは弗素の化合物による中毒というものがここでも二つに書き分けられて、二項に分けて取り扱いをしなければならぬという不便が出てまいります。そのことは、小野田化学に参りましたときに折衝いたしておりまして、弗素による、ここに書いてありますものについては、これは職業病ではっきり書いてございますけれども、その他のことについては書いてございません、こう言うのです。これは現に書いておかないと、弗素の化合物による、ここでいいますと腐蝕、潰瘍、炎症で、その他のものは、いまのお話のように三十八で取り扱っておる、こう言われますけれども、文章に書いてないものだから、どこかでのがれようとする人にはのがれの口実になる。作業環境あるいは労働条件を改善するために御努力願うとしても、逃げ口上にならないようにちゃんと明らかに書くべきではないか。それから電信手はもうすでにない。それから二つに分けて対処するというやり方はやはりぎくしゃくいたします。それだけに、これは専門家会議の意見も聞いてという点はわかりますけれども、実際に当たってみて改善すべきことを感じますから、ぜひ改善を考えてもらいたい。こういうことを申し上げるわけでございますが、労働大臣、大事な問題ですから御回答を承りたい。
  202. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 どんどん技術が進歩し、機械が進歩しますと、前に認定されたそういう病気がなくなることもありますし、あるいはまた新しく出てくる問題などもありますので、専門家会議にかけまして、そういうものを精査しながら時代の進展に即応したい、こういう前向きの姿勢であることをお伝え申し上げます。
  203. 吉田法晴

    吉田分科員 労働者の健康、生命の保護のために、安全衛生規則等で衛生管理者、衛生管理者がおらぬ場合には衛生管理者の免許を有する保健婦の活用等が指導されているようであります。これらの点についても改善すべきものがあるように考えますが、どういうように考えられますか。
  204. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 安全衛生法におきまして、先生いまお話しのように、衛生管理者を一定の事業場には義務づけておるわけでございます。さらに一昨年の安全衛生法では、それ以上の一定の規模につきましては産業医の設置等も義務づけておるところでございまして、それら事業場内における労働衛生の管理組織を確立いたしまして、職場の職業病の予防、健康管理を充実していくべく努力をいたしておるところでございます。
  205. 吉田法晴

    吉田分科員 この問題について最後にお尋ねをしたいのは、先ほど北九州の例も申し上げましたが、診療と研究についていまだ不十分な点が多々ございます。それで、九州労災病院は九大の整形外科の主任教授をした人が院長をしておられて、これは西日本では権威です。そこにお願いして診断にも協力を求めました。診断に協力願えるだけでなしに、職場に来て患者さんも見るだけでなくて、作業環境も見、そして講演もしてくださったり、この問題についてたいへん熱心に協力をしてくれているそうです。しかし善意だけにたよっているわけにいきませんから、島本議員を通じて、研究費の助成についてはぜひ労働省から出されるように四十九年度予算でとお願いしたのです。難病対策等もございまして、どの程度に計上されたかはっきりいたしませんが、全国的に診療、研究の機関の拡充が必要だと私は思います。それから予算上の助成が必要だと思います。水俣等について特殊病院の要求もあり、また私どもも、それをつくるというお話についてたいへんけっこうなことだと思います。これらの点については、思い切って出さるべきだと私は思うのです。労働大臣として、診療、それから研究機関の充実と、それに対する予算的な助成について、思い切って措置をしていただきたいと思いますが、最後に、大臣の決意をお願いしたいと思います。
  206. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 日本が重化学工業になった今日、いろいろそういう問題が出ておりますので、労働省といたしましては、労災病院の拡充、ことに北九州の労災病院が非常に評判のいいことは、私たち喜んでおります。しかも、今度は、北九州に産業医科大学というものを労働省がつくりまして、日本の重工業に対する予防医学、診療、そしてリハビリテーション、こういうものなどは、おそらく国際的な反響——そういう先生方もお呼びしなければならぬのではないかということで、労働者諸君を守るために、万全の対策を、予算の措置なり、深い配慮をしながらやっていきたい、こう思っております。
  207. 吉田法晴

    吉田分科員 ありがとうございました。時間がございませんから、次の問題に移らしてもらいます。  失対労働者賃金についてであります。昨年、異例のことですけれども、二度にわたって賃金水準を改定をしてもらったことは多といたします。しかし、一五%、あとで五%、二〇%ですけれども、物価上昇があまりにひどいものですから、生活の困難を訴えて、手元に、きのう、きょう参りました陳情書を持ってきたのです。事実、二日間にこれだけ来ております。もっとたくさん来ておりますが、時間がございませんので、その中から一、二引き出してみますけれども、これは産炭地域でございます。田川市内の東ブロックの責任者、女の方ですけれども、手紙が参りました。「私達も田川の三井炭坑で働いて、国の政策で失業した者です。」これはエネルギー政策の転換で田川の炭鉱もつぶれて、失対で働くようになったのですね。「先生、これから先も失対労働者は、地元住民のよろこぶ仕事を一生けん命致しますので、どうか先生達力をかして、私達がうえ死をしないためがんばって下さい。よろしくおねがい致します。」と書いてあります。手紙を出すように申し合わせをして書かれたものだと思いますが、その一つ一つに、これは幾つも読み上げたいほど真情を込めて手紙をくれています。その中に「朝早くより弁当持って出勤しても、現在保護者の人より安い賃金です。今私達の賃金は、皆様御存じ通り一日平均千三百円内外で、一カ月二十二日就労で月三万円内外の所得です。今の賃金では六万円位賃上げして貰いたい。失対労務者には預金とか節約などは夢の様で、其の日共の日の生活を家族と共にかろうじて生活を続けています。」こう書いてあります。一日平均が東京で千五百円、改定をされて予算単価には千七百円と書いてございますが、昨年の単価は千五百円、産炭地でいいますと千三百円そこそこにしかならないわけです。二十二日働いて三万円そこそこですが、これでどうして食っていけるのか。食っていく方法をひとつ教えてもらいたい。
  208. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 産炭地あるいは北九州の失対就労者の方々から先生にもそういう手紙も来ておりましょうが、昨年年末に三日分働いてもらうワクを出しました。私のところにも七千枚ほど、飯塚地方のそういう方々から手紙が来ておりますのは、よく年末にやってもらった、ありがとうございました、いまから先もよろしくお願いしますという手紙が来ているわけであります。何といっても、物価を押えることが第一番でございますが、この年度末にあたりましても、三日分働いてもらうワクを今度取ったわけでありまして、将来ともに、これで事情が変更した場合には、いろいろこちらのほうも前向きに考えていきたい、こういうふうに感じておりますので、生活保護世帯と失対労務者との関係等々については、数字については、事務当局からあらためて御説明をさせたいと思います。
  209. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 先生よく御案内のとおり、失対賃金は、失対法の賃金決定原則に基づきまして、いわゆる労働者であるということのたてまえできまっておるわけでございます。一方生活保護につきましては、世帯を単位といたしまして、その生計費を考慮して算定されておるわけでございますので、これらを単に直接比較することは、非常に適当でないと私ども考えておるわけでございます。ただしかし、生活保護法にいたしましても、失対の就労者にいたしましても、いずれも生活に困っておられる方々であるということは、よく理解をいたしておりますので、私ども毎年十月でございますが、日雇労働者の実態調査を実施をいたしておるわけでございます。その調査によりますと、昨年の十月の調査でございますが、平均世帯人員は二・二人でございまして、その平均の収入も、見てみますと、生活保護世帯よりは若干上回っておるというような状態にあるわけであります。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、失対就労者の賃金につきましては、「類似の作業に従事する労働者」云々という法律の規定がございますので、それらの規定に基づきまして、少しでも改善するよう、私どもとしては私どもなりに努力をいたしておるわけでございます。ただいま対前年一九・二%という賃金アップの予算で御審議をわずらわしておるところでございます。大臣の御答弁もございましたことでもございますし、十分事情の推移は見守りながら、今後とも努力はいたしてまいりたいと思います。
  210. 吉田法晴

    吉田分科員 先ほど大臣も言われましたけれども、十年ぐらい前になりますか、私も参議院議員を長くいたしましたから、生活保護基準と、それから失対労働者賃金とが、そうあまり違わなかったことを覚えております。現在では、どういう理由か、わかりませんけれども、ほとんど半分近くになっておる。それでどうして食えるだろうか。緊就、特開という炭鉱地帯、産炭地域で、別の制度もございます。これも二千何百円、ほとんど半分です。そこで、結局どうして食っているかというと、二・二という数字も出ましたけれども、夫婦が表面上夫婦別れをして、そして生活保護を受けるとか、あるいは失対に働きながら生活保護を受けるとか、あるいは北九州まで、朝早く、五時ごろ起きて、出かけていくと二千何百円もらえる。これは厚生省労働省には言えぬ話でありますが、食うためには、そういう仕事をしかたなしにやっておる。だから、働いたら食えるだけの賃金はやはり保障してやるのが労働省責任じゃないでしょうか。  時間が来たということですから、終わりますけれども、答えだけはいただきたいと思いますが、最低生活の保障は、これは何人にもあるはずであります。憲法のもとにおいては、これは基本的な人権として保障されております。憲法の条文を言うひまはありませんけれども、御存じのところだと思うのです。  それからもう一つ、失対賃金をきめる方法について私も知っております。知っておりますが、ことしの一般失対のアップ率は、いまお話しのように一九・二%、それがどういうぐあいに展開されていくかはこれからの話ですが、三省協定というのがあります。これは同じような仕事をしております——すぐそばでいえば産炭地での三省協定が実際には参考になるわけです。それでこのごろ聞きますと、二九%から三〇%のアップであろうということがいわれておる。これは建設省なんかでの実際のいまの作業で結論は出ていないと思いますけれども、これは物価の値上がりあるいは民間賃金のアップ等が反映をしておると思うのです。そこで一九・二%だけれども、一九・二%ではこれからの物価の値上がりに対応することはできぬ、これははっきり言えますね。そこで手紙が来ております……
  211. 渡辺栄一

    渡辺主査 簡潔に願います。
  212. 吉田法晴

    吉田分科員 みな千五百円ぐらい上げてくれぬか、あるいは級地の引き上げについては何とかしてくれぬか、こういう陳情が来ておるわけでありますが、ひとつ簡単に答弁をお願いいたします。
  213. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ほかの業種は労使賃金をきめるわけであります。こちらのほうの失対就労者の場合には、北九州の市長をされたあなたもおわかりのとおり、三者構成でいろいろな問題を検討しながら、その基準によって賃金をきめるわけでありまして、それが今日一九・二%になるわけでありますが、いずれにいたしましても、将来いろいろの推移を見ながら私のほうも対処していきたい、こういうことを考えております。
  214. 吉田法晴

    吉田分科員 どうもありがとうございました。
  215. 渡辺栄一

    渡辺主査 吉田君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢貞孝君。
  216. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 冒頭に大臣にお尋ねをしたいと思いますが、雇用保険法ということで制度の大改正があるわけであります。これはまだ本会議での趣旨説明等も終わっておりませんが、きょうは入り口の問題だけで大臣の所信を伺いたいわけであります。  およそ福祉社会にということで、施政方針演説——日本あげて高度経済成長から福祉国家へということが国民の合意だと思います。したがって、こういう制度を改正する場合には、従来あった制度を大幅改悪しておいて、そしてやっていこうというようなことは、およそ私は不可能なことではないか、こう思うわけです。どうも巷間伝えられるところによれば、入り口で、こんなものはだめだ、労働省自体もまあこれはだめかなあぐらいなつもりで出しているように聞いているのだけれども、一体大臣どうでしょうか。
  217. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それは労働省にそういう不都合なものがあったら承知しません。それから長い間審議会にかけて、そしていままでの失業保険の制度というものは消極的であるから、こういう高度社会、しかも高年齢層が出てくる時代においては、積極的な雇用政策ということで審議会の皆さんに長い間御審議願い、この際ぜひひとつ皆さんの御賛成を得たいので、本会議にまだ上程されていないことは残念に思っておるわけでありますけれども、悪いものではないということだけはひとつ御理解願いたいと思います。
  218. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 これは新聞等にも、「国会で難航必至」「野党、阻止の構え」これは朝日のいまから二十日ばかり前のものですが、こういう大々的な見出しから始まって、そして中身においては先ほど申し上げたように、もう改悪部分がたくさんあるというわけであります。東北地方なんか知事を先頭に、こういうことでは困りますというような陳情もあるわけであります。農林水産業の人にとっては、掛け金はふえるわ、給付は三分の一以下に減らされてしまうわみたいな、こういう大改悪部分もあったり、それから三十歳未満の給付については三分の一にさせられるような点があるわけです。こういう改悪部分を置いても全体を通じて改善部分があるし、いまの経済社会の変化に対応してやろうとする意欲だとか意味は理解できないことはないわけであります。だからこういう大幅改悪部分を置きながらこの法案の改正をしても、これははたして通るであろうか。もう失業保険法はたしか二回だか何回か出しては流れ出しては流れしたから、またお役目に出しては流れの一部にするのではなかろうかということもあるわけですし、もう一つは有沢失業保険制度研究会の手前もあって、出さなければならぬから出したのだ、こういうこともいわれておるわけです。だからこの辺、ほんとうにやろうとするならば悪い部分は根本的に修正をする、こういうような態度がなければ、とてもじゃないが、これはまともに国会審議にならぬみたいな感じを受けるわけです。大臣、どうでしょう。
  219. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は有沢さんあるいは岩尾さん、こういう方々が、従来の審議会とかあるいは調査会といいますと、机の上でいろいろなものを練ってもらうだけというふうに話に聞いておりましたが、ほんとうに自分で足を現場に運びながらずっと精査してもらった結果、りっぱな法案がここに積み重ねられたという自信を持っておるのでありまして、諸先生方がそれぞれ、あるいはまだ法案を提出しておりませんので、条項によっては御理解いただけない面があるのではないか。そういうものを、こうしたときに御理解いただくチャンスをいただきまして、ぜひひとつ御審議の間に御議論をいただきながら、りっぱな法案としてこれを通過させていただき、いまから先の日本の非常に多様化するところの雇用問題についての大きな指針にしたい、こういう意欲を持っておるわけでありまして、だんだんの御理解をひとつぜひお願い申し上げたいと思います。
  220. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 これは入り口論議ですから私はきょうは深くやろうとはしませんが、いい部分があるのですから、最初から絶対反対、阻止とは、私たちは議会主義の立場からは言わないわけであります。したがって、この悪い部分を直して、いい部分をさらに伸ばしていこう、こういう立場で私たちは審議をしたいと思いますが、悪い部分を直すには、あまりにも抜本的な、あまりにも大幅な修正が必要ではなかろうか、こう思うのです。いまの大臣の御答弁の中で、国会論議等を通じてというあたりは、そういうことについて大臣自体も、大幅に修正という国会の合意が得られたならば応じよう、こういう態度が見受けられるわけですが、そこのところはいいでしょうな。
  221. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 大幅が困るのでありまして、御審議の間に話の出た問題についての問題でありまして、大幅というと、どこが大幅かわからない、具体的にどこということはないのですから。しかし、やはり議会政治でございますから、だんだんの御議論の中に、ときには誤解していたものが理解される問題もあるでしょうし、そういう意味で御審議をお願いして、ぜひ通していただきたい、こう思う次第であります。特にのっけから法案反対、阻止じゃなくて、議会政治を尊重される小沢先生に敬意を払っておりますので、よろしくお願いいたします。
  222. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 大幅か小幅か中幅か、これは大いに論議する余地があると思いますが、まず修正の用意はあり、こういうぐあいに大臣の答弁から私は理解できるわけです。いままでの話をそういうように理解してよろしゅうございますか。
  223. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 原案を出したものといたしましては、どうぞひとつ原案どおりお願い申し上げたいというのが、これは本音でございます。
  224. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 どうも逆戻りしてしまったわけです。国会の論議の中からまた合意が得られるならばという意味は、私たちは修正には応ぜざるを得ない、こういうようにいままで理解をしていたのだけれども、念を押したら後退してしまったようなことで、どうも感心しないのですが、そこはどうでしょうか。
  225. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは提案者の立場であることも先生ひとつ御理解いただきながら、御審議をお願い申し上げたいと思います。
  226. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 それでは先に進ませていただきます。  これの具体的な内容に入ろうというわけじゃないのですが、この中にも「雇用改善事業」というのが載っているわけであります。私は、これは修正をするというよりは、勤労婦人福祉法というのが四十七年七月ですかできたばかりです。だからこれとの関連で、あるいは独立をしてひとつ立法化していただくこともいいのじゃなかろうかと思いますが、勤労婦人福祉法第十一条だと思います。「育児に関する便宜の供与」、こういうことをこれからは重視をしていかなければならないのではないか、こういうように考えます。去年の厚生白書では、昭和三十五年に、これは非農林業でありますが、働く婦人百六十九万が、昭和四十六年の実績では約三倍になって四百七十九万、こういうわけであります。またこの表紙にも出ておりますが、昭和三十八年には四百六十七万のものが、昭和四十七年には一千百二十万と、こういうぐあいに働く婦人がたいへん多くなってきたわけであります。そういうこととも兼ね合わせて、昭和四十七年に勤労婦人福祉法というのができたのであろうと思います。その中に先ほど申し上げた「育児に関する便宜の供与」、こういうことがあるわけであります。失業保険制度研究会の有沢先生の報告の冒頭にもこういうような分析が載っているわけであります。「受給者の年齢別構成をみると三十歳未満の若年者が半数近くを占めている。女子の場合は、特に若年者の比率が高く、失業保険給付の対象は大きく女子に偏っている。この女子受給者には、結婚・出産・育児等に伴う退職者が多く」と、こういうようになっておるわけであります。若い者が多い。特に女性が多い。その中で、結婚、出産、育児に関して退職する者が多い。これは決定的な大きな分析になると思います。  そこで私は、出産、育児、こういう期間に休業手当というようなものを出す制度を進めてはどうだろうかと常に考えておるわけですが、そういうことについて御検討いただく御用意があるでしょうか。
  227. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 私から勤労婦人福祉法関係の観点から申し上げます。  先生御指摘のように、動労婦人福祉法には「育児に関する便宜の供与」という規定がございまして、働く婦人が出産いたした場合、基準法による休業期間を経た後も、本人が望むならば一定期間育児に専念するために休むということを認める育児休業という制度を事業主が導入することをこの法律は要請いたしておるわけでございますが、御案内のように、この法律には、その間の婦人自体の所得についての言及はないわけでございます。したがいまして、子供を育てるために休んでいる間収入がないという状態も当然想定されるわけでございます。そのようなことではやはりなかなかこの育児休業制度というものも利用しにくいのではないかということで、何とかこの期間中の所得というものを保障できる手当が要るのではないかということで、これはかねてから育児休業研究会といった機関を省内に設けまして、こちらでいろいろな角度から検討をお進めいただいているところでございます。目下その専門的な御検討の結果を待って何らかの手当の——手当と申しますか、援助の方策を制度的なものとして実現いたしたいと考えているところでございます。
  228. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 たいへん前向きな御答弁で感謝を申し上げるわけであります。この第十一条は「事業主は、その雇用する勤労婦人について、必要に応じ、育児休業(事業主が、乳児又は幼児を有する勤労婦人の申出により、その勤労婦人が育児のため一定期間休業することを認める措置をいう。)の実施その他の育児に関する便宜の供与を行なうように努めなければならない。」まことにうまいことをうたっているわけであります。具体的にいえば、いま局長の言われたように、その休業の間手当を出してもらう。これが私は、仏つくってこのままでは魂入らず、こういうかっこうだと思いますので、この育児休業研究会で結論が出次第、この法律を直すのか、どういうようにするのかは別として、ひとつ御検討をいただくようにお願いをしたいと思います。  というのは、これは事務当局に突然の質問で申しわけございません。旧来の失業手当、十八歳で就業して六年ぐらいつとめておった。二十四歳で結婚してやめてしまう。こういうことになると、従来は失業手当を二百十日支給するわけです。二百十日いままで出しておったということは、七カ月は出していた、ということになるわけです。だから、あとで御質問しますけれども、企業の中に保育所をつくって、十カ月も休業さしておいて、そしてその間手当を出していて、そしてつとめるようになったならば、保育園に子供を連れながら行く、こういうことになると、そんなに保険財政の負担がなくして、これは具体的にできるのではないか、こういうように考えるわけです。そしてまたその休業中に、いまの失業保険七カ月出す分プラス企業から出させる、こういうような方法を講ずれば、そんなに財政負担なくして、あるいはむしろもうかるかもしれません。負担なくして休業手当はできて、そうして企業にとっては婦人の雇用関係は、私はこうなると思います。若いときはずっとふえていって、結婚、育児なんというときにはやめていってしまって、そろそろ子供がいいわという時期にまたつとめる、こういうことになりますから、企業にとっては前になれた者が続いてやってもらうほうがいい、こういうことになります。だから保険財政もよければ、企業もよければ、本人もよければ、もう三者悪いところはないわけであります。その辺の財政の問題もかねてちょっと御答弁を願います。
  229. 岩崎隆造

    ○岩崎説明員 ただいま先生仰せの育児のために——現在の失業保険法ですと、育児のためにやむを得ずやめるという場合、これが失業保険金の受給要件である働く意思があって、働く能力があって、かつ就職の機会を得られないということのいわゆる失業という要件に該当するかどうか、これが現在、一つは安定所の窓口でよく問題になるわけであります。その関係は、やはり育児をしていると、どうしても育児に専念したいということから、働く意思、能力がないといいますか、そういうことで、実際には失業保険金が支払われないという場合があります。今回の雇用保険法案では、その点は、育児、出産等のためにやむを得ず、いわゆる今度の法案でいいます求職者給付でございますか、それが受けられないという場合には、一定期間、これは四年間を予定しておりますけれども、その事由がやみましてから、安定所に、働けるということで出てまいった場合に、従来の受給資格に基づく給付を受けられるように措置はしております。  それから、いま先生もう一つおっしゃったのは、育児休業という場合に、もし手当を出すというようなことが制度化されるならば、それを今回の雇用保険法案の中の雇用改善事業というような中でそれが見れないかというお話かと思いますけれども、現在、先ほど婦人少年局長からお答え申し上げましたような研究会で、その育児休業中の生活保障の取り扱いにつきまして御検討いただいておりますので、私どもはその結果を待ちまして、それを雇用改善事業給付として行なうのか、あるいはその他の措置として行なうのかというような点を検討いたしたいというふうに現在は考えておるわけでございます。
  230. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 これは大臣から御答弁いただきたいが、私はこの雇用保険法案が日の目を見ない心配も実はあるものだから、大臣に冒頭に言ったわけです。勤労婦人福祉法はおととしせっかくできたわけであります。それから「育児に関する便宜の供与」という項もとってあって、その終わりのほうの条文に、福祉施策だか何かもうたってあるわけであります。みんな仏だけはつくっておるけれども魂が入らないで、予算が何もないような法律で、精神訓話みたいな勤労婦人福祉法であります。だから、そちらのほうを直してでも、この問題は財政的にはさして影響はない、私はこういうように考えますので、ひとつ大臣からぜひこれを積極的に進めていただくようにお願いしたいと思います。
  231. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 何といいましても、いまからは勤労婦人が数がふえますし、またそういう皆さん方が安心して働けるようにいろいろ手当てをすることが必要でございます。そんなことで、いまの雇用保険法案の問題の中に、先生が御提案されたことなども私たちはよく理解しながら、法案の審議の間に、どういうふうになっておるか、だんだん聞きながら研究してまいりたい、こう思っております。
  232. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 大臣、雇用保険法がどうも心配なので、もしだめならば、勤労婦人福祉法、せっかくできたばかりです、そっちのほうだってこれは組み込めると思います。事務当局、どうでしょうか、それはいいわけでしょう。
  233. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 先ほど申しましたように、育児休業中の援助の方法につきましては研究会の研究待ちということでございますので、ただいまの段階では、それをどのように制度化してまいるかということにつきましても、ちょっとまだお答えいたしかねます。
  234. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 いずれにいたしましても、仮定のことで論議していてもしかたがありませんから……。私の要望するのはどちらでもいいわけです。具体的にそれが実現できるように、強くお願いをしておきたいと思います。  そういう制度をつくりながら、休業で手当を出している期間を短くするためには、工場、事業場、企業のところに——労働省は託児所というのですか、一般にわれわれは保育所というわけです。企業の中に保育所をつくるのが適切ではないか、こういうふうに常に主張してまいったわけであります。昨年も予算分科会厚生省を相手に、齋藤厚生大臣だと思いましたが、そういう要望を申し上げておきました。子供には、労働省の子供だとか、厚生省の子供だとか、文部省の幼稚園だとか区別はないわけであります。ところが、大臣が三人あるおかげで、子供が区別されるみたように、私たちが客観的に見ているとそう見えてしまってしようがないわけであります。したがって、いまの保育園というものは、市町村長が認めて措置をする、そして適切な保育所、一定規模の保育所へ入れる、こういうようになっておるわけです。だから企業において——私たちが地元でいまたいへん相談を受けるのは、精工舎の若い女の人たちが結婚をする、もうやめなければいけない、これなんかは、保育所というものが企業の中にできぬものでしょうか。付近にはあるけれども、そこまで預けに行ってきて、そうしてつとめに行って、どうだか心配なのでまた帰っていって何かやるなんて、これはたいへんなことであります。朝通勤のときに、乳児でもよし、幼児でもよし、これは幾らでもできる。そのほうが、いま申し上げた育児休業の場合に、失業手当を出しておるのを短縮もまたできる。そういうことから、どうしても企業の中に保育園という、厚生省でやっておるものと同じ制度のものがそこに生まれてしかるべきだ、こういうように考えるわけであります。いまの制度だってできるはずであります。ある会社が適切な施設をつくって、それは厚生省の基準なり何なり、床面積幾らだ、園長はどうだ、保母の資格はどうだ、給食はどうだという適切な規格があればいいはずだと思います。市町村の中にあるのだって、私営でやっておるのがあるわけですから、Aの市から通っている者はAの市の市長さんが措置すればよろしい、隣のB村から通っている者はBの村の村長が措置児童だといって認めてくれれば、そこへおかあさんが朝連れてきて、その中に保育園ができて、そこで保育をする、こういうようにやっていくことがいま非常に重要な、大切なことではなかろうか、私はこういうように考えるわけであります。うまくいかないということが、いまでもどうしても私はわからぬわけであります。大臣からひとつお答えをいただいたり、また厚生省からも御答弁をいただきたいと思います。
  235. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 事業主によって、そういう事業内の保育施設をやってもらうように私のほうではお願いもいたしておりますし、また雇用促進事業団によってその設置あるいは整備を促進してつくってもらっているところもあります。いずれにいたしましても、文部省の子供、厚生省の子供、労働省の子供という区別は困ることでして、ほんとうにそういう施設がどんどんできる方策というものをやっていくのが一番大事なことじゃなかろうかと思っております。
  236. 松田正

    ○松田説明員 保育に欠ける児童につきましては、本来児童福祉法の措置によりまして、保育所に入所させて適切な保護をするというのが最も適当かと存じております。ただ最近、一般の企業におきましても、非常に婦人労働の量が増加をしてまいりまして、したがって、一部の企業におきましては保育施設を設けて、労働者の子女の保育に当たるという実態がございます。ただこれは、やはり婦人労働力の確保、こういったような見地も含めましての施設でございますので、一般の保育所とはいささかその性格を異にしておるというふうに考えておるわけでございます。しかし、その施設で行なわれます保育の実態、これはやはり適切な保育が行なわれなければならないということはもちろんでございますので、私どもといたしましても、これらの施設の保育の内容の指導につきましては従前もやってまいっておりますし、また昭和四十九年度におきましても、都道府県にこの指導に当たらせる、こういうことで、保母養成の訓練あるいは企業におきます施設の保育の運営の指導、こういったための必要な補助金を計上いたしたわけでございます。  なお、先生の御指摘の点につきましてはさらに検討を進めたい、かように考えております。   〔主査退席、八木(一)主査代理着席〕
  237. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 厚生省でも、企業の中に託児所だとか保育園ができた場合に、いろいろの、保母さんの指導や何かをやってくれる予算を組んでいる、たいへん前向きでありがたいわけであります。ただ私たちが厚生省労働省も離れて考えれば、市町村の中には国で建築費を補助し、それから措置費を出す保育園がある。ところが市町村の子供たちがあちこちから集まってきて、ある市町村の一部の場所へつくる場合には、それは雇用促進のためだからいけない、こういうことはないわけであります。市町村のまん中にあって、市町村が経営していようと私営であろうと、そういうところもやはり子供を預けて雇用の促進にも役に立っているわけです。もっともっと便宜なのは、企業の中にあれば、あっちの村、こっちの村から子供を連れて通ってきたほうがより保育のためになる、私はこう思うわけです。去年の私の質問に対しても、厚生大臣は、それは無理からぬことだ、十分研究いたしましょう、こういうわけです。長谷川大臣に齋藤厚生大臣と相談をいただいて、こんな矛盾したことはないと私は思いますから、企業の中なら、雇用促進のためだから建築の補助金は多少減らしてもいい、いまは一般にやっているのは厚生省は補助金をたくさん出していますから、企業の場合には半分企業が持て、それでもよろしい、だけれども一般の保育においては措置費も何も同じようにやれば、これは企業の子供ではなくて国の子供なんだから、子供に区別があろうはずはないと思うわけで、こんな矛盾した話はないと思いますから、これは大臣、ぜひひとつ厚生省と研究をいただいて、労働省厚生省だ文部省だ、そんな区別をつけないで、いまここで論議をされているような、勤労婦人がより安んじて休業ができ、あるいは再就職ができる、こういうような体制をつくっていただきたい、こう思います。大臣どうでしょうか。
  238. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 役所がいろいろ競合することによってときに問題が進んだこともございますが、ある一定の段階になりますと調整の必要もあろうかとも考えます。先生の昨年からおっしゃっているその議論など、まさにそういう時期であろうと思いますので、私のほうの関係者が、あらためて厚生省あるいはほかの役所とも相談し、さらにまた私が厚生大臣とも、こういう御議論が出たことでもあるからということでこの問題を研究してみたい、こう思っております。
  239. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 時間が参りましたが、私はこの点は長年の主張です。どうも労働省厚生省と、そんな子供が区分されることは、どうしてもおかしい、こう思います。そしてまたいまの児童福祉法でそれができないはずはないわけであります。どうにでもできるはずであります。どうしてもいけなければ、二、三カ村にまたがっていて地方自治体が経営をするほうがいいというなら、一部事務組合をそのものにはつくってもいいわけであります。措置は幾らでもできるわけであります。だから、いままで婦人少年局は、労働省としての要求は何だ、託児所という名前でやったでしょうが、それがそもそも誤り。厚生省のやっている保育所と全く変わりない。企業の中での私でもよろしい、あるいは一部事務組合でもよろしい、そういう立場で要求をして、国家の同じ子供ですから、平等にひとつ保育ができるように、そしていま私が最初から申し上げているように勤労婦人福祉法、この法律に規定されたようなことがきちっとできるように、こういう要望を最後にして終わりたいと思います。
  240. 八木一男

    ○八木(一)主査代理 多賀谷真稔君。
  241. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 先般私は、わが国における雇用の二重構造について質問申し上げたわけでございますが、どうも大臣も十分理解がなくて、臨時工の話をかなりされた。私は主として下請社外工にポイントを置いて質問をしたと思うのですが、そこで食い違いのまま時間がなくなりまして質問が中途はんぱになりましたので、あらためて質問をいたしたい、こういうように思います。  今日の日本経済の状態を見ますると、私は、今日のような高度成長になりつつあるのに、雇用構造の面はむしろあと戻りをしておるといいますか、後進性を拡大をしておるという面が非常に多いということを危惧するわけです。第一に最も国際競争力のあるといわれます鉄鋼や造船において、下請という形の労働者が非常に多いということであります。あるいはまた最近は、国鉄をはじめとして公企体が経営が困難であるという理由から、要するに部門を民間に委託をさすという形で、むしろ労働者の低賃金政策でこの危機を乗り切ろうとしているといいますか、経営の合理化をしよう、こういう形があらわれておる。また市町村にも最近はずいぶん委託の労働者というのがあらわれてきた、こういうように思うわけです。そこで、個別企業から見ますると、確かに経理の改善にはなります。しかし、労働行政全般を見ますると、これはまさに逆行しているのではないかというように感ずるわけであります。  そこで、この点について大臣はどういうようにお考えであるか、御所見を承りたいと思います。
  242. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 産業構造とすれば、多賀谷先生のおっしゃるような面が日本一つの組織になっているということは、私も認めざるを得ないと思っております。そういう中において、大企業の諸君に社外工のような諸君が、しかも危険な作業もありましょうし、ある場合には比較すれば安い賃金などもございます。そういう問題をどうレベルアップさせるか、安全を守るかというところに私たちの悩みと申しますか、ただ法律でぱっとやるわけにいかぬところに問題があるわけでして、そこにひとつ、いまから先重大に考えなければならぬ、こういうように私も認識をしております。
  243. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 先般、労働安全法をいわば基準法から別個にされた。そのときに、いわば同じ作業場内にある下請の労働者の災害について、親企業のほうにも管理責任を設けさせたわけですが、これによって効果がどのくらいあらわれていますか。
  244. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先生御指摘のように、一昨年の安全衛生法で親企業とその下請企業が一緒に混在して作業する場合には、親企業にそれを統轄する義務も課したわけでございます。直ちにその規定による効果がどうこうというところは、ただいままで数字的にはまだ把握いたしておりませんが、昨年、一昨年、安全衛生法を制定いたしましたころから災害は逐次減少をいたしておるわけでございまして、四十四、五年当時、年間労働災害の新規発生件数が労災で百六、七十万件ございましたのが、四十七年は百四十万件強くらいになっております。四十八年はまだ全体の数字は把握いたしておりませんが、好況で産業活動がかなり活発であったにかかわらず、大体横ばいの百四十万件程度で昨年も終わっていると私ども見ておるわけでございまして、そういう意味で、労働者の増を考えますと、災害率はその当時から逐次減少しており、安全衛生面の効果はあがってきておると考えております。
  245. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 それは全体的なトータルとしての話です。私はやはり下請企業は、先ほど大臣がおっしゃいましたように、かなり危険な場所が下請企業に落とされておる、こういうところにやはり問題点があると思うのです。あぶない個所は下請でやるという、こういうところに、何といいますか本工員さえよければという、そういうところに問題があると思うのですが、とにかく私は、数字が少なければそれほど大きな問題でないかもしれませんけれども、とにかく数字が大きいですね。たとえば造船業にしても、あなたのほうで親企業と下請の災害率の比較の統計を出していただいているのですが、ここにあらわれております団体で、親企業が十六万五千八百五十五に対して下請が八万一千七百九十三、あるいは化学工場において親企業が十一万三百九十一に対して六万七千四百八十九、鉄鋼が二十三万二千八百七十四に対して、これは下請が十五万五千六百八十二。そうして災害の度数率を見ますと、造船で親が五・六六、下請が一二・二五。それから強度率で見ると、親企業が〇一九九、下請が一・八三。それから化学工場を見ますと、親企業が度数率で二・七九、下請が五・七一。強度率で見ますと、親企業が〇・五二、それから下請が一・二七。鉄鋼が親企業が度数率で二・三七、下請が三・四九、強度率を見ると親企業が〇・七二、下請が一・四三、こういうふうに度数率も強度率も非常に高いですね。そして給与は御存じのように六割から七割です、率直に言いますと。これはどうも私は不公正だと思うのですよ、一般的に考えてみても。災害の多い場所で、しかも給料が安い。これは大企業でありますが、私はかなり抜本的な改革をしなければならないんじゃないか、こういうように考えるわけです。  そこで大臣、これについてはどういうようにしたらいいとお考えであるのか。いままでどおりでいいと——この前、総理大臣が、なかなか博覧強記ですからいろいろおっしゃいましたけれども、結論的にいうと、そんなことができるならおれは何も政治家になってなくて学者になっているよ、こういうお話をされたわけでありますけれども、やはりこれは日本的な特徴ですよ。しからば、いままでこの改正が不可能でないのかといいますと、少なくとも昭和二十七年に職業安定法の施行規則並びにその解釈を変えない前はこういう状態はなかったんですよ。それは職安法は変えておりません、本法は。しかし、施行規則を変えた、そして解釈例規を変えたんですよ。労働省が変えた。それは戦前はありましたよ。しかし、戦後なかった下請というものが、それから一斉に出てきた。あれだけ納屋制度があった炭鉱も——戦前はありましたよ、しかし戦後はいわば下請という制度はなかったわけです。そして、鉄鋼や造船がやり出して、炭鉱が経営が苦しくなって、昭和三十五、六年から組夫というのが入ってくるようになった。ですから、従来でもやれたわけです。それが労働省の指導が変わったことによって、今度は下請が雨後のタケノコのごとく出てきたわけですね。そして今日のような状態を惹起しておる。経営の合理化といえば、最近みな下請か委託ですよ。これはどうしてもどこかで歯どめをしなければならないんじゃないか、こういうふうに思うのですが、大臣、どういうようにお考えですか。
  246. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 従来の沿革などがよくわかりませんけれども、まさに農村でも二重構造であり、アジア的構造といわれたわけですね。昔は猪俣津南雄さんあたりの論文、私たちはそういうものを読んだのです。経済学的に申し上げるわけじゃありませんけれども、西ドイツなどはずっと一本の系例で、名前は中小企業であるけれども、形は中小企業であるけれども、スペシャルな品物をつくっておるから絶対よそから侵されないという、形においては完全に独立しているというふうな姿などもあり、これはまさに先生おっしゃるとおり、日本的なものの中からここまでの経済成長ができた。その場合に私たちの非常におそれることは、何と申しましてもいろいろな数字、ここであげられたようなもの、その危険率やらあるいは安全をどう守り、どう向上させるのに対策をとっていくかというのが私たちの役割りだ、こう考えておるわけでございます。
  247. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 局長は、たいへん熱が高いのに出てきていただいて非常に恐縮に存ずるわけですけれども、そこで、ちょっと具体的にお聞かせ願いたいと思うのですが、自治省見えていますか。——自治省は、最近民間委託というのを盛んにやられておるわけです。ことに、福祉行政が拡大をするにつれて、そういう施設たとえば建物は市で建てます。しかし、経営は民間の団体に委託をしますとか、あるいは地方公営企業法にあるからといって、集金業務なんというのはみな委託にされる。そうして、その集金業務の委託の労働者というのは、一人で委託されている。ですから、この人は事業主なんですよ。事業主ですから社会保険の外にある。しかも、税金のほうはなるほど所得税でいっている。事業税ではいっていない。所得税でいっているのですけれども、こんな労働者をつくっていいのかどうかですよ。福祉行政や労働行政を預かる自治省が率先をして委託をやる。それは地方財政の財政状態からいえばいいでしょう。しかし、この労働者は何の社会保険もないのですよ。第一、雇用関係がないのですよ。こういうことが一体自治省として許されるかどうかですよ。どういうようにお考えですか。
  248. 田中和夫

    田中説明員 御承知のように、地方団体は住民にサービスをする機関ですから、その地方団体が住民にサービスをいたします場合に、すべての業務を全部直接地方公共団体がみずからやらなければならぬということはないので、住民に対するサービスをよりよく向上するとか、あるいは効率の点からもそのほうがいいとか、いろいろな場合にこれは委託したほうがいいというものについては委託をすることのほうが、地方公共団体としての事務を進める上でいいのではないかという判断でございます。
  249. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 事務を進める、あるいは財政が節約される、その面はいいでしょう。しかし、地方自治団体の大きな業務である国民の福祉の面からいうと、これは非常に困ったことなんですよ。いままでは市役所の職員であった者が今度は委託ですよ。そして、カードを何枚集金をすれば幾らという請負ですよ。この労働者を見てごらんなさい。ボーナスもないですよ。やっと交渉して——その交渉団体も認めないというのを、やっと交渉して、期末手当が五千円程度です。大体、こういう労働者をつくっていいのかどうかです。しかも、その業務は地方自治の一環ですよ。はなはだしきは国民健康保険税までついでにやらしておるわけです。国民健康保険税といえば税の一翼ですよ。それをみな委託に落としておるわけです。しかもそれは団体委託じゃないのです。個人と個別契約をしておるのです。ですから、社会保険の充実がいわれておるときに、あるいは社会保障の充実がいわれているときに、一体そういう社会保険の恩恵に全然浴さないような労働者をつくっていいのですか。この労働者というのは、何もないのですよ。これは事業主なんですよ。  しかもまだ言いますと、学校の管理をする人、この人まで委託をしておるのです。学校管理、これは地方自治の責任ですね。これをその人に委託をしておるのですよ。たいへんな施設の管理をする人を委託労働者にしておるのです。自治体と委託契約をしておるのです。それを自治省が指導しておる。問い合わせがあったら、法律違反じゃ、ないからよろしい。——それは法律違反であるかどうかという形式論理からいえば違反でないかもしれないけれども、精神を没却しておるでしょう。どういうようにお考えですか。
  250. 田中和夫

    田中説明員 いま先生がるるおっしゃったような観点から委託すべきかどうかをきめておるわけではないと思います。それぞれの地方公共団体が、その実態に即して、これは委託したほうがいいかどうかというその判断は、地域の住民のためにこれがいいのか、地域のそういう民間の仕事をやる人たちの実態がどうであるか、あるいは効率の面がどうであるかといういろいろな、総体的なと申しますか、総合的ないろいろな判断を加えて、個々の地方公共団体についてそれは委託してもいい。  いま例としておっしゃいました学校の管理等につきましても、もちろん学校の管理の責任は校長先生にあるわけでありましょうが、そうでない、学校がないときの管理とか、夜間の管理とか、夜間の不審火、いまの先生方の勤務の問題もいろいろあると思います。いろいろなことを総合的に勘案して、それぞれの地方公共団体が委託すべきかどうかという判断をしており、先生がおっしゃるような立場からの判断で、だから委託をしているんだということではないのではないかと思います。
  251. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 ですから、私が言うような見地からはもちろんやっていませんよ。そういう見地が抜けておるということを私は言っているのですよ。そういうものが欠除しておるのじゃないかと、そういうものを含めて検討をすべきではないですかと、こう言っておるのですよ。ですから、ただそこの経費が職員よりも安いとか、これだけですよ。職員よりも経費が安いから委託契約にする、こういうことから学校の管理をする管理人を委託しておるのです。最近の自治省の合理化というものは、一体どういうように指導しておるのですか。あなた方は、そういう要素は全然含めないでやっておるのですか。自治省は、そういうことに対してどういう指導をしておるのですか。
  252. 田中和夫

    田中説明員 この委託のことにつきましては、地方制度調査会の答申もございまして、それを受けて委託を適当とするというような場合には、それは地方公共団体の判断で委託することが適当だというような指導をいたしておりますが、その含みは、先ほど私が申し上げましたように、いろいろな角度から、それぞれの地方公共団体が判断すべきことだということは、申すまでもないことでございます。
  253. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、非常に残念に思うのですよ。アメリカの例もいろいろ批判する点もありますが、いい点もあるのは、たとえば契約をやる、たとえば最低賃金なら最低賃金をつくろうとすると、官公需を発注する場合に、その受注産業について最低賃金をまずやらしてみるのです。そしてそれが大体うまくいったころに、いま日本でいう基準法をつくるのですよ。ですから、労働行政については役所が率先をしてやるのですよ。まず役所がやってみる。そうしてそれを民間に従わす、こういう方式できておるわけですよ。日本は、逆にもう役所のほうが労働行政からいくと逆行したような形をしておるのですよ。私は、そういうことは許されないと思うのですね。私の質問に対してあなたがお答えになった。ですから私は、振興課長ともあろう者が、実に認識が不足だと思う。自治体というのは、やはり全般的な行政の一線の責任者ですから、それがそういう低賃金政策を指導するようなら、最低賃金の指導なんか要りませんよ。ほんのわずかな給料ですよ。そうして、それだけの責任がある者に、何らの社会保険もないのでしょう。自治省はそういう労働者をつくるべきでない。  次に私は、さらに厚生省——これはあなたのところではないのですがね、医務局長はあとの問題ですけれども、最近非常勤の職員を非常に置いておるのですね、婦人相談員とか。これは初めから通達で、非常勤にせよという通達を出しておる。それで月に二十日、こう書いておるのですね。ですから二十日しか手当をやらぬ。全くそれは非常勤だ。そしてそれはかなり高度な経験を要する。そういうのを全部非常勤にしておる。そして非常勤の指導をやる。ホームヘルパーも問題になったから、最近はホームヘルパーについては比較的常勤務にするようにと、こういっておる。しかし、みんな低賃金政策ですよ。永続的雇用関係のないようにないようにしておるのです。そういう点が全体私は非常に大きな問題だと思うのですよ。労働行政というのは労働省がやるだけじゃないのですよ。国全体としてやってもらわなければ困る。それを各省がみんな労働行政とは逆な方向にいっておるのですよ。  運輸省見えておりますか。運輸省も最近国鉄の合理化というのはみな委託合理化です。大体駅の委託というのはどういうことですか。駅の委託というのはどういうところに利点があるのですか。
  254. 秋山光文

    ○秋山説明員 先生御指摘のように、国鉄におきましては駅舎の清掃でありますとか、あるいは車両の清掃、さらには閑散線区における駅業務の委託等を行なっておりますが、あくまでもこれら業務の外注にあたりましての基本的な考え方は、国鉄職員の要員運用といたしましては輸送業務に直結する業務、さらには繁忙業務等にこれを重点的に充当すること、そういった半面で、比較的技術を要しない業務でありますとか、きわめて高度の技術を、また特殊な技術を要するもの、こういったものにつきましては、一般的な部外能力を活用することによりまして、全体としての要員の能率的な運営がはかれるというふうに考えまして、現在外注を進めているところでございます。したがいまして、先生がいま閑散線区における駅業務の委託ということについてどうかという御指摘がございましたが、このような線区につきましてただ観念的にやるということでなく、十分その駅業務を分析した上で、そこに職員を置くよりは、その職員は繁忙業務であるとか輸送直結業務のほうに職員を運用し、むしろ現地におきましてその地域に非常に明るい方で、しかも業務量が比較的閑散であるというところにつきましてその委託を行なっておるというのが実例でございまして、もちろん先生御指摘のような国鉄業務だけの能率性とかいうことではなくして、全体としてその業務がうまく運営されるかということを勘案して、私どもとしては業務の委託をやっているつもりでございます。
  255. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 閑散の駅ならば、駅の任務として、繁忙な駅とは違うのですか。
  256. 秋山光文

    ○秋山説明員 やはり利用者の非常に多い駅におきましては、その量的なさばきがどうしても技術的な面を有してくる部分がございますので、もちろん個々の切符を売る行為とかということにつきましては、その作業としては同じでございますが、何といっても一日に何人という場合と何万人という場合では、かなり違ったことになると私は考えております。
  257. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 ぼくは、どうも委託をしなければならないという理由が明確でないと思うのですよ。ただ仕事が少ないからそれは委託をするのだ、繁忙の駅ならばそれは本職員でやるんだ。どうもそれなら全部駅は委託してもよさそうなものですよね。どうも仕事の区分というのがきわめて明確でない。仕事の内容は同じ仕事でしょう。そして事故があった場合には、やはり同じ責任をとらなければならぬのです。それなのになぜそういう場合に、委託という要因が入ってくるのかですね。私は、そこは結局安い賃金で使おうという以外にはないのじゃないかと思う。  一体この委託駅の職員の給与はどうなっているのですか。普通の職員の給与の何割ぐらいなんですか。
  258. 秋山光文

    ○秋山説明員 ただいま御質問のございました前段のところにつきましては、限られた要員を運用するわけでございますし、そういった面からいたしますれば、どうしても国鉄職員でやらなければならない部分と、比較的現地のその駅区に非常に通暁した方に駅業務をやっていただく場合と、その限界は、一応そういった限られた要員の合理的運用という面から出しております。  なお、駅業務におきましてどのような賃金でやっておるかということにつきましては、現在ちょっと資料を持ち合わせておりませんが、若干安いことは事実であると思います。
  259. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 若干程度ですか。どのくらい……。
  260. 秋山光文

    ○秋山説明員 現在数字を持ってまいりませんでしたのでお答えできないわけでございますが、安いことは安いです。
  261. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 大体あなたのほうでは、共済年金をもらっている人を使っている。ですから前の賃金と大体同じ収入になるように、まず共済年金の額を見てその差額を賃金として払っておるでしょう。それで一方、国鉄の共済は赤字で火の車だ、こういっているのです。どうもやることがきわめてこそくですよ。この共済には今度国鉄の会計から補てんをしておるわけです。その共済の金を一応退職した職員にやって、いままでの賃金の差額を今度給与として出してくる。こういう点、それはどこに問題があるかというと、結局は政府労働者の金で使っておる、こういうことになるのですよ。労働者の掛け金と政府の掛け金を含めたもので給与のかわりに使っておる、こういうことになるでしょう。ですから、国鉄の共済が一番赤字なんですよ。火の車なんだ。まさにこれは賦課方式の典型的なものだ。こういう形になっておるでしょう。なぜ、日本の公企体ともあろうものがそういうこそく的なことをやるのか、かように考えるのですが、どうですか。
  262. 秋山光文

    ○秋山説明員 退職者がそのような業務に入る場合に、その給付している賃金との関係について見ますれば、退職後の年金をその生活の元手にしていることはまず実態であると思うのでございますが、ただ私どもとしては、単純にその差をもって給与とするということではなく、と申しますのは、全体的には三省協定に基づきまして労働者賃金の標準を作成し、使用もしてございますので、ただ、そこだけを重点的に、差し引きでもって払うというところを基本として運営しておるということではないわけでございますので、その点については御理解をいただきたいというふうに考えております。
  263. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 ひとつ厚生省も、それから運輸省、それから自治省も、こういう委託とか非常勤という労働者の実態をぜひ書類で出していただきたい、こういうように思います。  そこでこの問題は、昭和二十七年のときに改正になった規則の部分と、一番問題は、やはり行政解釈によりまして従来資材あるいは施設は自分で持たなければならなかったのを、親会社と賃貸契約でよろしい、あるいは使用契約でよろしい、こういうようにして資材とか機材を持つ必要がなくなったのですね。これが下請がだあっと入ってきたゆえんなんです。それで、解釈で、そういうように何も資材も要らないんだ。結局何かといいますと、専門的な経験だけなんですよ。専門的な経験、これだけにしてしまったのですね。ですから、いま言うように日本の雇用構造が非常に乱れた、こういうように感ずるわけであります。  この前、私がイタリアの例を引きましたけれども、イタリアではやはり同一労働、同一賃金だということをはっきり法律に明記している。しかもその下請の労働者の雇用契約は、親会社も連帯をして契約の当事者になっておる。こういう法律できわめて明快に出しておる。ですから、日本でもそういうふうにしなければならないのではないか。いまの現実にあるものをもとに返すということは不可能であるとするならば、何らか労働条件の規制というものが必要ではないか、こういうように思うのですが、これは大臣から御答弁を願いたい、補足があれば局長からお願いしたい、こういうふうに思います。
  264. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 日本の産業全体に通ずる大問題でございます。そしてまた、一方労働省のものとすれば、何といったって災害が、そういう業種、そういう関係者にあまりないようにしてもらいたいということと、またそういう諸君が特に不安定なものであれば常用化して安定した就職ができるように推進したいというふうなことですが、先生のおっしゃっていることは、産業構造全般の基本的な問題ですね。そういうふうなことでございますから、これは慎重にひとつ勉強させてもらいたい、こう思っています。
  265. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、もう今日のような状態になってもとへ返すというのはなかなか困難でしょう。そういう企業をなくせといったって困難でしょう。だから今度は逆に労働条件のほうから規制していったらいいじゃないか、こう言っているわけですよ。ですから、その職種に見合う賃金ですね、ただ本工員であるから、あるいは下請であるからという理由で区別をされるのではなくて、その職種に見合う賃金をやはりやるべきではないか、そういうように法律で規制をむしろすべきではないか、こういうふうに考えるわけですが、どうですか。
  266. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ひとつ私も研究させてもらいます。
  267. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 それからもう一つは、官公庁にやはり委託とかいう不安定雇用をつくるべきでないと思うのですよ。それは財政事情からいうならば、もう委託にするのが一番いいですよ、責任がないから。しかし、そんなことをすれば、官公庁でもやっておるのに、民間があたりまえじゃないかということになるわけですよ。これは指導も何もできっこないですよ。ですから、これは官公庁のそういう委託労働者あるいは下請というようなことについて、ひとつデータを出してもらいたい。そして私どもが一つ一つチェックをしていきたい。これはほんとうに委託というものが必要であるのか、ただ財政的理由からであるかどうか、こういうことをしたいと思いますので、ひとつ各省、どうですか。自治省、厚生省、運輸省、よろしいですか。
  268. 八木一男

    ○八木(一)主査代理 自治省、運輸省、厚生省、資料を提出することをすぐ即刻お約束を願いたい。
  269. 田中和夫

    田中説明員 いま私どものほうは、地方公務員の実態については掌握しておりますけれども、地方自治体の仕事の委託先の労働関係というようなものについては把握をいたしておりませんので、その点は御勘弁いただきたいと思います。
  270. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、その把握しておらぬというのは大体けしからぬと思うのですよ。そんな簡単な問題でないのですよ。地方の財政が困るから、それは委託をするのだというような問題ではないのですよ。人権の問題ですよ。こんなに多くの社会保障の充実したときに、社会保障の恩恵にあずかれぬような労働者をどんどん自治省がつくってたまるものですか。君は首をかしげておるが、そうなんです、現実に。この労働者がけがをしてごらんなさい。たとえば集金の途中でけがをしたらだれが見ますか。これは労災じゃないですよ。自分は事業主です。その労働者が集金の途中で災害にあった、こういうような場合に、一体だれが見てくれますか。いまの日本の制度にはないでしょう。あったら答弁してください、自治省。
  271. 八木一男

    ○八木(一)主査代理 自治省、多賀谷委員の要請のとおり、資料がないというなら資料をつくって急速に提出するように、御返答なさい。
  272. 田中和夫

    田中説明員 これは、先生御指摘のように、労働行政全般の問題だと思うのですが、私どものほうは、現在はどういうものについて委託が行なわれているかというものを把握いたしておりませんので、現在、いまこの場でちょっとお答えできないような次第でございます。
  273. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 早急に調べて、照会をして出してください。非常に大きな問題です。私は、民間がやっている場合は、労基法違反あるいは職安法違反でなければそれほど言う気持ちはないのですよ、政府が指導している、許しておるのですから。しかし、自治省や厚生省や各省がそういうことを指導しておる。問い合わせがあったら、よろしい、こう言っておること自体がけしからぬと思うのですよ。そうして、最近の自治省にはそういう傾向が非常に強くなってきた。いままで職員であった者を、今度は臨時にする、臨時から委託契約にする、そういう事例がどんどん出てきたということですよ。ことに福祉行政が拡大をすれば、なおそうなんですよ。福祉行政が拡大をすれば拡大をするほど、そういうものは全部委託にする。ですから団体の場合もあるし、個人が委託される場合もある。こういう行政は、私は労働省としても、いな政府としても慎まなければならない問題じゃないか。まさにざるですよ。日本の行政はざる。幾ら労働省が太鼓たたいたって、自治省がみずから指導しておったらどうにもならぬでしょう。さっき私が言いました学校の当直や管理委任の問題だって、これは自治省に問い合わせたのですよ。自治省はよろしいと言っているのです。それは法律違反じゃない、やってよろしい、そういう現実なんですよ。ですから、早急に調べてもらいたい。私は、率直に言うと、その調べることにまた意義があるのですよ。そういう実態をあなた方が把握するところに意義があるわけです。調べるということが仕事なんですよ。ですから私は、データ出しなさい、こう言っている。では、答弁ができなければ答弁のできる人をここへ連れてきなさい。
  274. 田中和夫

    田中説明員 可能な限り把握するようにいたします。
  275. 八木一男

    ○八木(一)主査代理 全力を尽くして把握するように至急なさい。それで提出をなさい。
  276. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいま御要望の委託あるいは非常勤の実態の関係でございますが、特に委託につきましては、確認しておきたいと思いますが、本省直轄の関係の諸機関等だけでよろしゅうございましょうか。地方の関係一般という……
  277. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 地方の場合は自治省のほうでやっていただくことにして、あなたのほうは、この予算を出すときに、これは非常勤である、月に二十日分なんと言って出しているでしょう、いろいろな福祉施設に。この婦人相談員は大体二十日程度、これは非常勤とする。ですから、各地で常勤にしようとしても、厚生省から通達が来ておるわけですよ。これは非常勤にせよという通達が来ております、こう言うわけです。ですから常勤にできない。現実は、それはかなりの高度な仕事なんですよ。教育もあり、そして技能もなければできないような仕事をさすのに、非常勤にしておる。ですから、非常に困っているんですよ、現実は。しかし、役所から通達が来ておるわけです。そういうものについてひとつデータを示してもらいたい。  それから、あなたのほうで指導しておるものに、たとえばホームヘルパーなんかもありますから、それらを含めてお願いをいたしたい、こういうように思います。
  278. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 わかりました。
  279. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 運輸省はいいでしょう。出すでしょう。
  280. 八木一男

    ○八木(一)主査代理 運輸省、提出しますね。
  281. 秋山光文

    ○秋山説明員 はい。御趣旨に沿うように努力いたします。多少時間がかかるかもしれませんが、全力を尽くします。
  282. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 ではひとつ具体的にいまの委託の問題で、数年来問題になっております病院の給食委託についてお聞かせ願いたい。  実は具体的な問題が起こりましたのは、北九州で病院給食を委託するという問題が持ち上がりまして、そうして国会において地方行政委員会あるいは社会労働委員会でかなり論議をされた問題であります。そこで私は、この問題についてその後の解決の方法等についてお聞かせ願いたいと思いますが、時間もありませんので要約をして申し上げておきたいと思います。  この病院の給食委託の問題は、一つは医療法との関係がある。それから職安法との関係がある。そこで医療法に忠実になろうとすると職安法違反になる。職安法に忠実になろうとすると医療法違反になる、こういう問題になるのです。そこで私どもは、これはきわめておかしいではないかということを言ったわけです。私どもが問題にしましたのは、従来幾つか通達が出たわけです。   〔八木(一)主査代理退席、主査着席〕 その通達が現実に職安法違反ではないか、もし職安法違反でないとすれば、これは医療法違反になるのではないか、こういうように追及をしたわけであります。そうして最終的な段階に参りまして、当時の若松医務局長は次のように答えております。要するにあくまでも直営が原則でございます、原則の中で一部委託ということがあるわけです、ということに対して、それは例外処置と考えてよろしいかということを質問いたしましたところが、例外処置が認められるということではなしに、直営というものの中に解釈の幅があるわけです、こういう答弁をしているんです。あくまでも原則はくずしていないんで、直営なんです、直営の中に解釈の幅として一部分認めていくんです、こういうような答弁をしておる。  ところが、現実にその後四十四年の一月十七日に出された通達を見ると、まさに委託を認めた、例外処置を認めたという通達になっておる。これは私は、昭和四十三年の三月十四日の社会労働委員会の会議録に記載してある事項と、あなたのほうが出された、四十四年の一月十七日の、医務局長が都道府県の知事に出した病院経営管理指導要領の改正についてというのとは相反しているではないか、こう考えるわけですが、どういうようにお考えですか。
  283. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 経過は全く先生のおっしゃるとおりでございまして、若松局長が三月のときにお答えしました段階では、病院の指導要領も、係長が指導監督のもとにということでやれば直営とほぼ同じ責任が持てるというような指導要領でございました。その後四十三年の十一月、先生はじめ関係者の方々から職安法違反の問題が指摘をされまして、そして四十四年労働省からもこの問題につきましては職安法違反の疑いがあるという見解が出まして、急遽検討されました結果、四十四年一月の先生ただいまおっしゃいました職安法に抵触しないということで、係長を置いて直接指導監督という形でなくて、要するに委託する先に全責任を持たせて、病院は医療の立場からの給食における内容の確保、特に具体的には献立基準の作成あるいは特別食等の指導あるいは実際に衛生上、管理上の契約事項の違反がないかどうか、こういうようなものをもって医療法に抵触しないで、先生おっしゃるようにぎりぎりの線として、職安法に違反しないという措置を向こうに全責任を持たしたということと、患者給食というものを病院側が責任持つ、内容の上で具体的に指示をいたしましてもうおっしゃるとおりぎりぎりの線ではあると思います、形の上では。しかしそういうことで、指導要領の改正をもって職安法違反でない、病院医療法上の給食の責任もこれによって果たし得る、こういう解釈にただいまは立っているわけでございます。
  284. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 労働省が言うならわかるのですよ、あなたのことばは。厚生省が言うなら聞き捨てならぬことを言っておるわけですよ。というのは、まさに今度のこの四十四年の通達は医療法違反なんですよ。あなたのほうは労働省からやかましく言われて、これはいかぬと思って今度は職安法に合わした。合わしたところが、完全な医療法違反をしておるわけです。というのは、前の通達でも、若松局長は、例外処置ではありません、これはあくまでも直営が原則です、例外処置は認めないのです。もし認めれば、そのあと大臣が何度も言った小の虫を生かそうとして大の虫を殺すことになる。あなたのほうでこういうことをやれば、全国の病院はみな委託しますよ。そういう形になるのだ、今度のこの四十四年の通達を見ると。そうでないんですか。従来は、これは医療法違反をしないために、たとえば材料の購入は病院みずからやるんです、献立の作成も病院みずからやるんです、こう言ったでしょう。それは医療法違反をしたくないからです。ところが、献立もやる、購入もやるならば、下請業として業となっていないじゃないかというので、職安法違反と言われた。そうしたら、今度あなたのほうはがらっと後退をして、いや献立をつくるのじゃありません、献立をつくる基準を明示するんです、購入材料の状態を確認するんです、こう言ってきたわけです。そうすると、一体どこが直営と言えるか。直営の原則はくずしてないというのですから。若松局長は、直営の原則はくずしません、こう言っておるのですから。ですから四十四年の一月十七日の通達というものは、完全な医療法違反になるじゃないですか。ぎりぎりじゃないんですよ。いままでわれわれはこれは医療法違反じゃないかと言って指摘をしておったよりもずっと医療法違反は拡大されたんですよ。職安法違反のほうは、これは労働省ががんばったから、その分にはこれはなくなったかもしれませんけれども、完全な医療法違反の範囲に入ってきたわけですね。ですから医務局長が答弁をするのはおかしいじゃないか、そんなことをしたら全部の病院みな委託しますよ、こう言っている。
  285. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 若松局長が当時お答えしました中では、率直に申しましてその職安法という問題を意識しない中で、病院の給食の委託の形は、そういう責任者を置いて給食を実施することによって、直営とほぼ同様の形をとれるという解釈のもとに当時はお答えしておった。それが職安法違反の御指摘を受けまして、それで十分検討して、医療法の二十一条に施設を用意しなさい、それから健康保険ではみずから調理するということでありますけれども、やむを得ない事情のときにその患者に対するサービスの実体が確保できれば、これは保険としても支払いをするという考え方にその後一連になりまして、私は先生の御指摘のように、経過全体からは医療法の問題をめぐっての後退あるいは違反というような御指摘がございましたけれども、現状の解釈あるいは一部判例等によりましても、違法性はないというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、先生の御指摘のように、病院がどんどん委託するようになるということについては、私実態もそうでないと思いますし、また今後この問題についてはやむを得ない事情の限界があるわけでございますから、事実私はまだ正確な数字は把握しておりませんけれども、このような御指摘もございましたし、私は過去の厚生省医務局のとってきた全体の経過を見ますと、この段階で医療監視の機会にやはりこの実態を把握しておく必要があるというふうに痛感いたしておりますので、四十九年度の医療監視の重点事項に給食のこの問題を取り上げまして、全国の実態を明らかにしたいと思いますが、私の承知している範囲では、八千になんなんとする全国の病院数の中で、おそらくいまいろいろ情報で集めた範囲では、委託という形をとっている病院が大体一%前後であろうと推定いたしますが、四十九年度の医療監視の際、この実態を明らかにしたいというふうに思っております。
  286. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 自治体では幾らですか。自治体病院では何カ所やっているのですか。
  287. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 自治体では北九州の六カ所を除いた以外に、四カ所程度があるのではなかろうかということで、担当者から至急先生の御質問に応じて調べさした情報では、自治体病院協議会が出している資料には全面委託が四カ所程度、五百幾つの病院の調査の中で四カ所程度あるように私はいま資料としては持っております。必ずしも正確ではございません。
  288. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 これはストライキが起こって抵抗したからですよ。びっくりしちゃって、どこもやろうと思ってやめちゃったのです、現実は。これは大ストライキになったわけですよ、委託をして首を切られる諸君が。そこで、こんな騒動を起こされてはたまらぬというので、みなその様子を見ておるというのがいまの現状なんですよ。それでとまっておるのですよ、これは。これは唯々として労働者が受け入れたら、どこだってやるのですよ。あなたのほうの通達からいって困難ないんですもの。委託することは困難ないんですよ。それで職安法のほうはいいわけですよ、これで。職安法違反は免れておる。一体医療法がみずから給食をしと書いておるのを、そして病院をつくるとき、みな施設をあなたのほうは見るわけでしょう。必須条件でしょう。そして特別食もあるわけでしょう。みんな患者によって、食事療養ですから違うわけでしょう。そういう場合に、材料の購入だって品物によるのですよ。そういう材料の購入でも、最初出された通達は、すなわち、病院自身が材料は購入しなければなりませんよ、調理はそれは下請にまかすけれども、材料は重要な問題ですから、材料はみずから購入をしなければなりませんよと通達が出ておった。労働省から職安法違反だ、こう言われたものだから、今度は後退して、そして材料の購入も下請業者がやってよろしい、ただあとから確認をするんだ、こういう後退をした線をやっておれば、医療行政は前進しないとぼくは思う。これは先ほど申しますように、自治体の一つの下請化の合理化です。それはまさに国鉄がやっておる。ことに公企体あるいは自治体というのが最近はどんどんやっているのですね。ですから、こういうことが行なわれれば幾ら労働省ががんばってみても、まさにざるになってしまうのです。こういうように考えるわけであります。  そこで私は、現実にあなたのほうは、これは何か公的な機関に委託をしなければならないという指導をされておるが、それは公的機関になりましたか、現実の北九州における給食下請業者というのは。
  289. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 北九州の市立病院六カ所の委託の先でございますが、門司、小倉、戸畑、松寿園は財団法人西日本産業衛生会、いわゆる法人化が行なわれまして、これに委託しておりますけれども、八幡と若松病院は、この間の事情はつまびらかにいたしませんが、製鉄給食株式会社というものに現在委託して実施いたしておるのが実情であります。
  290. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 西日本産業衛生会というのは、あとからその業者が財団法人をつくったわけです。製鉄給食株式会社というのは、製鉄に弁当を送っておるのですよ。ですから、これはまさに株式会社です。製鉄の構内にどんどん弁当を送っておる。ですから、どうも国会であなた方が約束をされたことと現実に行なわれておることとが違いはしないか、ことに、われわれ社労の委員がちょっと油断しておるうちに、まあ率直に言うと。一年もたっておるのですよ、論議をしてから。昭和四十二年の十二月ごろ論議をした。そして昭和四十三年の三月ぐらいにはっきりした答弁をなさった。それから通達が出たのはみんなが忘れたころ、四十四年の一月に出しておるのですよ。この間、河野正君に会ったら、そんな通達が出ておったか、それをおれが知っておったらやかましく言うのに、こう言ったのですけれども、われわれがうっかりしておる間に、忘れたころ、ぽっと通達を変えておるのですね。続いて四月、五月のときに論議をして、出したのじゃないのですよ。それはわれわれの監視の目が届いておるから、そういうことはしない。みんながちょうど忘れたころになって、ぽんと通達を変えている。実に役所としてけしからぬと私は思うのですね。  これはひとつ、社労の委員会であらためて質問をしたいと思いますが、大臣、要は、低賃金のためのそういうような下請あるいは委託化というのは、労働行政全般としては、何とか防がなければならぬ、こういうふうに思います。産業構造といわれますけれども、こういうように親企業組合は、週二日制あるいは賃金も上がっていくでしょう。しかし下請の労働者は、災害は三倍ある、あるいは二倍ある、しかも賃金は六割だ、こういう労働の雇用形態を残しておくこと自体が非常な後退ではないか、こういうふうに私は思います。そこで、ひとつ十分これについては、前向きに検討をしていただきたいと思うのですが、最後に御答弁をお願いいたしたい。
  291. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これだけ多様化された社会、それからいろいろな変化をする社会でありまして、ほんとうに応接にいとまなしという感じです。その中に、多賀谷先生御指摘のような具体的な問題が出るに従って、いかに私たちの仕事が大事であるかという感じ方を持つわけであります。地方で日直あるいは宿直など、地方地方の実情がありまして、学校などにそういうものが行なわれておる姿などを見ますが、一がいに政府だから弁解するわけではありませんが、ときには法解釈の差異もございましょう、あるいは地方のいろいろな実態などの変化などもありましょう、いずれにいたしましても、私たちとしますと、最近だんだん所得の、収入の格差が減りつつある世の中であります、しかし、大きなところは非常にすばらしい収入を得るのですが、一方においてはその差が詰まるというものの、それをますます格上げしながら、そして安全を確保するところにつとめるということを感じております。
  292. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 大臣の答弁は、いままで私が質問をしたのを一挙に否定したような答弁じゃないですか。私は、専門化を言っておるのじゃないのですよ。社会の進歩に従って、それが専門化されるということを言っておるのじゃないのですよ。きわめて封建的なものの考え方の中に残存をし、それが拡大をしておると言っておるのですよ。ですから、これは当然検討してやらなければ、労働省は要りませんよ、率直に言って。それは……
  293. 渡辺栄一

    渡辺主査 多賀谷君、時間が経過しております。簡潔に願います。
  294. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 わかりました。  その点は、十分考慮をしておかないと、これは一番大きい問題ですよ。もう一回御答弁を願います。
  295. 渡辺栄一

    渡辺主査 簡潔に願います。
  296. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 多賀谷さんのおっしゃるような趣旨において十分検討してみたいと思います。
  297. 渡辺栄一

    渡辺主査 多賀谷君の質疑は終了いたしました。  三浦久君。
  298. 三浦久

    三浦分科員 長谷川労働大臣にお尋ねいたします。  特に、特定地域開発就労事業、それから炭鉱離職者緊急就労対策事業、産炭地域開発就労事業、この三事業の事業費単価の増額の問題についていろいろ御質問をさしていただきたいと思います。私のところにも、事業主体である地方公共団体や、また請負業者の団体、また労働者団体から、いろいろと陳情が来ているわけです。労働大臣のところへも、同じような陳情が来ているのだろうと思うのですね。これらの陳情に共通な点というのは、大体資材費がアップした、また労務費がアップした、地方公共団体は、いままでもたくさんの超過負担をこの三事業の施行にあたって負担をしてきたけれども、この物価上昇の中で、もっともっと大きな超過負担をしいられるようになるのじゃないか、こういう不安ですね。それからまた業者は、事業経営が成り立たなくなってきている、こういう問題があります。また労働者は、毎年度、きまっただけの賃金で一年間ずっとやらされているわけで、そういう意味では低賃金が固定化されてしまって、物価上昇の犠牲を一身に受けている、こういう状況があると思うのです。ですから、どうしてもこの三事業、いわゆる特開、開就、緊就といわれているこの三事業についての事業費単価をアップしてほしい。こういう要求というのは、これはもっともな要求だと思うのですね。今年度の予算を見てみますと、確かに特開では三千九百円から四千六百円に上がっております。それから緊就でも三千八百円から四千六百円に上がっているのです。それから開就でも六千二百円から七千円に上がっておるのですね。ですから、それぞれ一七・九%、二一・一%、それから一二・九%と上がっているわけであります。しかし、これではやはりさっき言ったような地方公共団体や業者や労働者の現在の実情が打開されないのだ、こういうことで、一生懸命陳情されておるのだろうと思うのです。ですから思い切って、この事業費単価を大幅に上げる、そしてこれらの人々の要求にこたえる、そういう意思があるのかないのか。これをお聞きいたしたいと思います。
  299. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まあ大事な御質問ですから、私の役所にも同じような趣旨の陳情といいますか、請願が来ております。そこで、お答えいたしますけれども、いまおっしゃった三事業の四十九年度の予算単価においては、資材費が上昇しておる状況も考えまして所要額を計上して、御審議をお願いしておることは御承知のとおりであります。これらの事業は、いずれも失業者吸収事業であることに特別に留意をいたしまして、就労ワクを確保しながら事業の継続実施をはかることが最も必要であると考えておりまして、事業の実施にあたっては、就労者の実態に即しながら、事業費単価に見合った事業種目の選定を行なうなど、事業の円満な継続実施が確保できるように、関係事業主体と指導してまいりたい、こう思います。
  300. 三浦久

    三浦分科員 おっしゃるとおりで、これは失業者にとっては、最後のよりどころみたいな事業でありますから、これを継続実施するということは、たいへん重要なことだと思うのですね。そういう意味では、いまの大臣の御答弁には、私は、何も反対をするわけではございません。しかし、これを継続実施できないというような状況が現在出てきているんですね。たとえば、請負業者はこんな単価では請け負うことはできないというようなことを労働者団体との団体交渉の中でもすでに言明している、こういう状況が来ているわけですよ。  私お尋ねしたいんですけれども、確かに今年度よりは来年度四十九年度のほうが、先ほど言ったようにアップしておりますね。しかし、このアップの根拠、これは何を勘案してこういうふうにアップをされたのか、お尋ねをしたいと思うのです。
  301. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 今般予算審議をわずらわしております上昇額でございますが、先生御指摘のとおり、従来の例から見ますと、私どもとしましてかなり努力をいたしたつもりでございます。その根拠をお尋ねでございますが、一般の公共事業とは異なりまして、大臣もお答えになりましたが、これら三事業はいわゆる就労者を吸収する、就労者の生活を保障するために就労の場を与えるということが目的でございまして、それらの観点から、過去の実績もございますし、それら事業を従来から実施いたしておるわけでございますので、その中で占めてまいっております資材費の状況、労務費の状況というようなものも勘案しながら、予算といたしましては公共興業と異なりまして、労務者一人につき幾らという予算の積算になっていることは御案内のとおりでございますが、それらを総合勘案いたしまして予算要求をいたし、予算として決定をいたし、御審議をわずらわしている次第でございます。
  302. 三浦久

    三浦分科員 そうすると、昨年来の物価上昇というものも、当然考慮の中に入っていると承ってよろしいわけですか。
  303. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 資材費の上昇等の事情は、予算編成の時点、さらに最近いろいろな事態がございますが、予算を要求する時点、その後大蔵省当局と折衝いたします時点における状況等は、折衝にあたりまして配慮いたしてまいったつもりでございます。
  304. 三浦久

    三浦分科員 そうしますと、たとえばこの一年間で、特に一月時点で比較してみて、この三事業で多く使うであろうと思われる資材、セメント、これなんかは五一%も上がっているのですね。それから生コンなんかは三一%も上がっているのですよ。それから労務費ですけれども、まだ三省協定はできていないようですけれども、またできても表向き発表できないものだそうでありますけれども、この三省協定をつくるにあたって、基礎的なデータをお調べになりますね。毎年九月の中旬から十月の中旬にかけて賃金をお調べになると思うのですけれども、日刊建設工業新聞の二月の上旬号なんですけれども、これに、二月の五日の日に全国建設業協会が第十七回全国建設労働問題連絡協議会というのを開いた。この席上に建設省計画局の建設資材労務室長大森さんという方が出席になりまして、そしてこの実勢賃金を調査した結果こうだったということを発表されている記事が載っているのですよ。それを私見てみますと、全職種でもって大体二〇%から三〇%の上昇率を示している。そういう上昇が、各職種に二〇%、三〇%の割合いで分散している、こういうことが載っておりました。それでは、四十八年度と四十七年度を比べてみるとどうかといいますと、四十八年度の場合には四十七年度に比べて一〇%から一八%の分散だ、こういうふうに記事に載っておるのですね。そうすると、これは九月上旬から十月上旬にかけての労務費で二〇%から三〇%ですから、現在はあの物価上昇の最大の山場といいますか、まだ山が続くんでしょうけれども、あの異常な物価高騰を迎えたあとですから、これは二〇%、三〇%の上昇ではなくて、もっともっと大幅な上昇になるのではなかろうかというふうに思うのですね。ですから、その時点での時差修正を入れたら二〇%、三〇%ではもうとても間に合わない賃金だろうというふうに思うんですよ。  それからまた、消費者物価の問題についても御承知のとおりに、三月一日の総理府の発表によれば、一月の全国の消費者の物価指数というのは前年同月比で二三・一%でしょう。二月の東京都の区部の消費者物価指数というのは、前年同月比でもって二四%をこえておる、こういう状況ですね。そうすると、資材費や労務費また一般の物価上昇、こういうものから見て四十九年度の三事業の事業費単価のアップ率というのは少し低過ぎるのじゃなかろうかというふうに思うのですが、いかがでしょう。
  305. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 先生御指摘の資材費の上昇の状況また一般の労務費の動向等、私ども十分注意をしながら見守っておるわけでございますが、先ほどお答え申し上げたように、一般公共事業におきましてはいろいろな措置が行なわれるわけでございまして、予算の範囲内、公共費でございますと、たとえば百メートルの道路の舗装を行ないます場合に、資材費の上昇等に応じまして事業量の縮小をはかることが可能なわけでございますが、私どもが実施をいたしておりますこれらの事業につきましては、就労機会を与える、労働者を吸収していただくという観点もございまして、公共事業と同様に措置することが困難な事業であります。就労ワクを削減しないでどのようにして事業を継続実施していくかということにつきましては、昨年の暮れあたりにもいろいろな問題が出てまいりまして、陳情もございました。何とか労働者生活にかかる問題であるし、ひとつ事業主体また施工主、現実には建設業者の方々でございますが、そういう方々に、いろいろな問題はあろうと思うけれども、労働者生活にかかわる問題であるのでというような懇請をいたしまして、現在まで工事を継続して、少なくとも四十八年度については工事継続の結果を招いてきておるわけでございます。  四十九年度の問題につきまして現時点の判断でのお尋ねでございますが、私どもの立場といたしましてやはり就労者を吸収していくというたてまえから申しまして、事業費単価について十分であるかというお尋ねがありますと、現在の実勢、現時点で判断いたしましていろいろ問題はありますけれども、そこは先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、事業種目の選定等につきまして十分配慮し指導することによりまして、事業の継続をお願いするという形で、ただいま事業主体の自治体また施工主体の方ともいろいろと御相談をいたしておるわけでございます。そういった結果になりますと、契約が不調じゃないかという疑問もさらに出てまいるわけでございます。(三浦分科員「あまり先走って答弁されなくてもいいですよ」と呼ぶ)では、その辺のところで……。
  306. 三浦久

    三浦分科員 そうすると、物価がどんどん上がっても、最初にきめた事業費単価というのはもう上げないのです、一年間はそれでやっていくのです、こういうようなお話に受け取られるのですね。それはそういうふうに承ってよろしいのですか。
  307. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 予算の編成は年に一回でございますので、政府におきまして諸般の事情を考慮いたしまして、補正予算を組むというような異常な事態が出ますれば、就労者を吸収する事業でございますので、私どもといたしまして当然大蔵省当局に要求し努力いたしますが、政府の方針としてその判断に至らないという時点におきましては、やはりきめられた予算の範囲内で事業の運営を確保するよう諸般の努力をしていく以外にないのじゃないか、現段階ではかように考えております。
  308. 三浦久

    三浦分科員 いま公共事業の話が出ましたけれども、これは一回、二回、三回と物価の変動に応じてスライドさせているわけでしょう。そしてこの三事業についてだけは何の措置もとられていないというのが現実なんです。いまのあなたのお話によると、公共事業というのは年度の予算のワクの中でいろいろ公共事業をやりくってそうやっているのだ、こういうお話ですね。ところが三事業の場合には、就労させなければならないから、そういうやりくりができないのだ。まあ十二カ月予算——十カ月組んでいるのもありますが、それを八カ月で終わらせて遊ばせておくわけにいかぬ、それはそうでしょう。しかし、それは予算をつければできることなんですね。事業費単価のワクを広げればできることですよ。予算をつければできることですよ。補正予算でもなんでも、いまあなたのおっしゃったとおり。それをなぜやらないんですか。それをなぜやっていただけないのかということなんです、大臣。たとえば公共事業であろうと、この失対事業であろうと、三事業であろうと、物価値上がりの影響を業者がかぶるという点においては全く同じなんです。そうでしょう。ただ、公共事業の場合には事業を減らすとか、また工期をおくらせるとか、いろいろなやりくりをして、当初年度の予算の中でいろいろやりくって単価を上げていけるのだ、こういうことなんですが、それは政府部内でのやりくりの問題なんです。その事業を請けているいわゆる請負業者から見れば、そんなことは関係ないことなんです。資材の値上がりをもろに受けるのは業者です。また地方公共団体です。それからまた物価がどんどん上がっても一向に賃金が上がらないという犠牲をこうむるのは労働者じゃありませんか。そういう意味では、公共事業の請負業者とまた公共事業に働いておる労働者、こういうものと三事業に働いている労働者とか業者というのは全く区別する理由はないと思うのですが、この点いかがお考えですか。
  309. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 建設省で私が先ほどお答え申しましたような形での措置が講ぜられたことも承知をいたしております。ただ、私どもの立場といたしましては、政府全般の方針として本年度は補正は組まないという形で対処されておりますので、その線でございます。四十九年度の問題につきまして、ただ、そういう事態に対応しまして、たとえば事業主体と御相談をいたしまして計画変更をするといったような形で努力を現在までいたしておるわけでございますが、来年度の問題につきましても、現在は計画審査の段階でございますし、先ほどお答えいたしましたように、事業種目の選定等にも幅を持たせまして対応できるよう現在鋭意努力をいたしておるわけでございます。先生から補正予算の御指摘があったわけでございます。確かに御指摘のとおり、予算措置を講ずればこれは不可能なことではございませんが、現段階は、来年度のいわゆる当初予算審議をいただいておる段階でございまして、私どもの立場といたしましては、政府で決定いたしました予算事業費単価の中で何とか事業を遂行するという懸命の努力をいたしておるわけでございますが、そういった事態には対応できるようないろいろな形というものは私どもとしても考えていかなければならぬということでございます。
  310. 三浦久

    三浦分科員 大臣、いまの御答弁を聞いていますと、ことしのような異常な物価高でも補正予算は組まないのだ、政府のほうの方針が組むということになればそれに従うということなんです。それで最高責任者である大臣にお聞きするのですが、去年からことしへかけての物価高というのは、日本国民があの米騒動のときに味わった、また終戦後のあの異常なインフレ、あのときに味わった以外は味わったことのないほどの異常な物価高なんですよ。まさに異常事態なんです。ですから公共事業の問題についても異常な措置がとられているし、また失対事業の場合にも十月に五%引き上げるとか、また生活保護費についても五%引き上げるとか、また失対労働者については三日間また就労日数をふやすとか、こういう措置がとられているわけでしょう。これは政府が全くそういう措置をとらなければならないんだ、それほど異常な事態なんだということをお認めになっているからだと思うのですね。かつてないほどのこういう異常事態を目の前にしても、この程度の異常事態、異常な物価上昇の程度では三事業についての事業費単価はいじらないのだ、こういうことになりますと、今年度たとえば、さっき言いましたように若干上がりまして四千六百円と七千円になりましたけれども、ことしこれできまって、一年間どんな異常な物価上昇があっても、ことし並みぐらいの、去年からことしにかけての物価上昇では全然この事業費単価はいじらないんだ、もしこんな方針になれば、これはさっき言いましたように、もう業者は請け負いませんよ。自治体だって、そんなに財政の負担をこうむってまでこんな事業はやらないといって放棄することだって考えられると思うのですね。そうなれば、労働省設置法に定められているいわゆる労働省の任務ですね、労働者が職業を確保するとか、福祉を向上させるとか、そのために失対事業をやるのだというふうにちゃんと目的、任務に書かれてあるわけでしょう。もし地方自治体もほうり出し、業者も請け負わないなんということになったら、これは大臣が先ほど御答弁になりましたように、この事業を継続していくというようなこと自体ができなくなってくるのじゃないかと思うのですね。ですから、私は、やはり物価にスライドした、そうした事業費単価のアップというものをやるべきじゃないかと思うのですが、大臣の御所見を承りたいと思うのです。
  311. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 継続するということがまず第一前提だと、先ほどの答弁に対して御同感いただいたわけであります。問題は、どういう事態でも固定じゃございません。私は、やはり全体の問題としていろいろよく注目しながら、事態の推移を見守りながらやっていきたい、こう思っております。
  312. 三浦久

    三浦分科員 これは自治体も業者も労働者も、とても深刻な問題なんですよ、大臣。それで私、そういう抽象的な答弁ではちょっと納得がいかないという点があるのですね。  それで一つお尋ねしますが、去年からことしにかけてのこの程度の物価上昇があったら、またこれに準ずる物価上昇があった場合に事業費単価のアップの予算措置をおとりになるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  313. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いろいろな御意見がございますけれども、私、こういう非常事態であることは認めております。いわんや、そういう意味でこそ物価抑制というのはそれこそ超党派的、政府はもちろんのこと、超党派的で御審議いただいていることであり、また労働省の立場においても、各現場の役所に対して、物価抑制、それから労働者生活必需物資、そういうものについては持別に値下げなりスローダウンするようにということをお願いもしているようなことでございますから、将来の問題としては、どれをどれだけアップするとか、そういうふうな具体的なことはいまここで申し上げるわけにはいきませんけれども、そういう変化に対応していくという姿勢については御理解をいただきたい、こう思います。
  314. 三浦久

    三浦分科員 私、いまの御答弁に全面的に賛意を表し満足しているというわけじゃありませんけれども、時間がありませんので、次に進ましていただきます。  大臣は、昨日の経済関係閣僚協議会で、大幅な物価上昇によって労働者生活というものが非常に圧迫されているということを報告なさったそうでございますね、これは昨日の新聞で私、拝見したわけなんですが。そして労働省も経済企画庁のほうも、その調査並びに報告で、一年前に比べて労働者賃金は実質四%ダウンしておる、こういうことでございますね。そうすると、やはり労働者賃金をいまよりもっと上げていかなければならぬというお気持ちを抱いていらっしゃるだろうと思うのです。私、これは労働省のほうからちょうだいいたしたものなんですけれども、「業発第三号」というもので、昭和四十九年一月二十九日付の労働省職業安定局失業対策部業務課長名で、各県の労働主管部長あてに出された、これは通達ではなくて内簡なんだそうでございますが、この内簡に「事業の設計積算について」という項目がありまして、そこに労務費単価の積算のやり方が書いてあるわけなんです。この中には「就労者のうち、無技能者に係る」これは普通の一般土工だと思いますが、「無技能者に係る労務費単価は、男子については、災害査定設計単価表(以下「三省協定単価」という。)」こう書いています。ですから、三省協定「に基づく単価によることとし、女子については、男子の労務費単価に〇・八二を乗じて得た額とする。」こうなっているわけですね。従来はこの三事業について積算をする場合には三省協定の賃金でやっておったわけですね。ところが今度は三省協定よりも低い額でもって積算をしろ、こういうふうになっているわけなんです。そうすると、これは男子率と女子率が五分と五分だといたしますと、〇・九一、いわゆる九一%、三省協定の九一%でもって積算をしろ、こういうことになるわけなんですね。そうすると、労働者生活をもっとよくしなければならないという労働省が、去年よりもっと下げろ、こういうような内簡を出しているということですね。このことについてどういう意味なのかお尋ねしたいと思うのです。
  315. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 御指摘の三省協定の問題が出たわけでございますが、これは積算上の発注単価でございまして、これら三事業に就労されておられます方々賃金は、いわゆる労使の自主的な話し合いで決定されておるわけでございます。御指摘のございました業務課長名の内簡でございますが、いわゆる工事の設計に用うべき単価としていまお話のございましたような数字を示したわけでございますが、これは三省協定自体は男子の一人前の賃金を表示しているように私ども理解しております。これら三事業の実態は、かなりの年数も経てまいっておりますので、就労者の実態、年齢なり男女別の構成というようなものを考えまして、こういう算定方式をとった次第でございます。
  316. 三浦久

    三浦分科員 大臣、いま年齢というようなお話がありましたけれども、私、労働省からお聞きしているのですが、緊就は平均五十四歳、開就は四十九歳です。特改は五十三歳です。特別老齢だということはないのですね。それと、いまこの賃金というのは業者と労働者との団体交渉できまるのであって、こういう三省協定とか積算の基礎というのは、これは直接影響ない、こういうお話なんですが、しかし例年は三省協定でもって見積もっていたのですよ。でしょう。そうして、ではその三省協定というのは賃金決定にあたってどういう機能を果たしているのかといいますと、この三省協定というのは、ほんとうは秘密なものです、積算の基礎ですから。しかし実際には業者みんな知っています。労働者団体も全部知っています。私のところにもこんな表が何枚もあります。その表にはちゃんと部外には秘密にすることと書いてある。しかし実際の現実はみんな知っているのです。そして労働者と業者が地域別に集団的に賃金の交渉をやります。そのときにこの三省協定が基準になっていくのです。ですから、たとえば原資がなければ業者は出せないわけです。ですから、三省協定でも賃金はこうなっているじゃないか、これ以上は出せないじゃないか、こういうことで折衝が繰り返されていっているわけなんですね。結局そこで三省協定が基準になって労働者賃金がきまります。きまった場合には、男子の場合には三省協定の賃金よりも高くなるわけです。そして女子の場合には三省協定の賃金よりも低くなるのです。そして平均すると、三省協定の線に大体近いところで落ちつくように大体毎年きまっているのですね。こういう機能を持っているわけです、現実的には。それを今度は男子については三者協定賃金だ、女子についてはそれに〇・八二かけるのだ、下げるのだ、こうなりますと、先ほど言ったように労働者と業者が団体交渉をやる場合に、賃金原資というのは三省協定賃金の〇・九一しかございませんよと、こうなるわけですね。それを基準にして交渉が行なわれておるわけですから、当然例年よりも低くなるということは間違いがないのです。これは表向きに言うと、こんなものは労働者も業者も知らないものだからと、こういうふうになるわけですけれども、しかし実際に果たしている機能というのはそういう機能を果たしているということをひとつ御理解いただいて、そしてこの通達、内簡ですか、これを私は撤回するなり内容を変えて例年どおりとするというふうにしていただきたいと思うのです。せめてそのぐらいのことをしてくれなければ労働省血も涙もないんじゃないかというふうに言われてもやむを得ないのじゃないかと思うのですね。この点ひとつ大臣御答弁いただきたいと思うのです。
  317. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 この席上で御議論の中から私もひとつ勉強いたしました。この場でどうこうということもちょっと言いかねますけれども、そういう新しい事態の起こったことを発見もし、議論の中のあなたの御意見などもよくわかりましたので、よくひとつ考えさせていただきたい、こう思います。
  318. 三浦久

    三浦分科員 もうちょっとお尋ねしたいのですが、時間がもう来ましたので、あと一問だけお尋ねします。
  319. 渡辺栄一

    渡辺主査 簡潔に願います。
  320. 三浦久

    三浦分科員 労働省は、緊就の存続について今年度予算計上しているわけですから、四十八年度の閣議決定終わったからといってやめるつもりじゃないと思います。しかし、四十九年度だけで終わるということでもない、その後もずっと続けていくおつもりだと思うのですが、その点ちょっと確認しておきたいと思います。
  321. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは従来いろいろ皆さんからのお話もありましたのですが、今度も政府予算で計上して御審議をいただいていることは先ほども御答弁申し上げたとおりです。しかし、従来は閣議決定によって期限の延長をはかっておりました。このたびの事業継続の方式については関係各省と協議してまいりたい、こういうふうに継続してまいりたい、そのために各省と相談していきたい、こういう考えでおります。
  322. 三浦久

    三浦分科員 もう一問、そうすると……。
  323. 渡辺栄一

    渡辺主査 もう時間ですから、あとお待ちですから。
  324. 三浦久

    三浦分科員 では、やめましょう。
  325. 渡辺栄一

    渡辺主査 三君の質疑は終わりました。  小川新一郎君。
  326. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 ただいま私がこれから質問いたしますことは、非常にデリケートな、青少年の、特に義務教育者のタレントの問題になりますので、大臣、そういう問題でございますので、名前はあえて申しませんし、個々の名前は御答弁の中に入れないでいただきたい。これをまずお答えの前に私のほうで御注文を出しておきます。これは、将来ある若い人たちに傷がついてはならないし、またいろいろなそういう問題は社会的に指導的立場に立つ私たちおとなの任務でもございますので、まずこの点をはっきりさせてから申し上げたいと思います。  最近、テレビ、ラジオ番組に若者のアイドルとして若いタレントが数多く活躍しております。しかし、そのタレントの中でも特に小中学校の児童生徒の活躍は目をみはるものがあります。そこで、私は社会人の一人として、おとなとして、政治家として老婆心ながら、この児童、年少者タレントの健康管理や義務教育を受ける権利が十分に保障されているかどうか心配している者の一人であります。また訓練中の子供の家庭から、将来のこと、学校のこと、これらについて心配の電話が二、三かかってまいりましたので、この問題をあえて取り上げさせていただいたわけでございます。ここに某、ある月刊の、はっきり申し上げますが、明星という雑誌がございます。この明星の二月号の中にこういうものがついております。これは「さあ、きょうはここでスターに会いましょう」という特に若い人たちの人気タレントの一覧表であります。これをいまちょっと一例をあげて読み上げますから、御判断いただきたい。  これは小学生を含むタレントでございますが、この人たちの一カ月間のスケジュールを申し上げます。  「一月二十四日フジTV木曜リクエストスタジオ、二十五日NTVお昼のワイドショー、二十六日冨士市、二十七日長岡市立劇場、二十八日TBS銀座ナウ、二十九日MBSヤングおーおー、三十日NTVスター誕生(名古屋)、三十一日フジTV木曜リクエストスタジオ、二月一日フジTVゴールデン歌謡速報、二日東京・日本橋三越TBSラジオ、三日日本ランド、四日TBS銀座ナウ、五日日劇、六日NETやっちゃおう・チータ、七日未定、八日フジTVゴールデン歌謡速報、九日TBSラジオヤンタン東京、十日未定、十一日TBS銀座ナウ、十二日TBS火曜歌謡ビッグマッチ、十三日NETやっちゃおう・チータ、十四日−十七日沖繩、十八日TBS銀座ナウ、十九日未定、二十日NETベスト30歌謡曲、二十一日フジTV木曜リクエストスタジオ、二十二日TBSスター今週のベスト10、二十三日TBSヤングタウン東京」  これが一月二十四日から二月二十三日までの小学生のスケジュールでありますが、休養もなければ何もない。おとながこれだけ組んでも、これはたいへんなハードスケジュールだと思うのです。そこで学校に問い合わせてみましたならば、私は驚いたわけでございますが、二月のスタースケジュールの中から、児童年少者タレントの現況の中の学校教育の状況を見ますと、ほとんどの児童年少者タレントは、四十八年十月は二十五日中十日間欠席、十一月は二十四日中十一日欠席、十二月は十三日中四日欠席、四十九年一月は二十四日中十日欠席、こういう結果が出ております。  そこで、まず文部省にお尋ねいたしますが、就学させる義務、子女使用者の義務などを定めた学校教育法上、この点を見て問題があるのかないのか、まず所感を承ります。
  327. 別府哲

    ○別府説明員 お答え申し上げます。  満六歳から満十五歳までは義務教育でございまして、小学校ないし中学校に就学させる義務がございます。そういう意味におきまして一部の児童生徒が相当長期にわたって欠席をし、あるいは遅刻、早退が相当に多いというこのような事例は、学校教育という観点から見てたいへん問題があろうと思うわけでございます。
  328. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 学校教育法第十六条「子女を使用する者は、その使用によって、子女が、義務教育を受けることを妨げてはならない。」と、学齢子女使用者の避止義務を規定しておりますが、この規定は、憲法第二十六条にいう教育を受ける基本的人権に基づき、教育基本法第四条、学校教育法第二十二条、同法第三十九条等に展開するところの重要な法規であって、明白な本条違反に対しては、学校教育法上珍しい罰則規定、つまり三千円以下の罰金に処する規定すらあります。私は十分にこの精神を生かすべきであると思いますが、労働大臣所管が違いますが、聞いておって、この点はどうお考えになっておりますか。所管が違うようですが、お尋ねしたいと思います。
  329. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それぞれの者はそれぞれの行き方をいたしますけれども、義務教育というものは非常に大事なことだと思っております。そういうことからしますと、労働省の問題よりは文部省に対する御質問のようでございますけれども、いま文部省からの答弁がありましたように、学校をあまり休んでもらうということは、私も一人の親として、はなはだ遺憾なことだ、こう思っております。
  330. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 テレビ、ラジオ等で活躍するタレントは新人歌手の約一%にも満ちません。これはほんとうの氷山の一角であります。その底辺には数倍、数十倍の第二のスターを目指したタレント候補がおります。これたちがいま問題になっております。わずか一、二の有名人だけではない。その、そこまでに到達する、たどりつくまでの問題が私は問題提起をしているのだと思うのです。  ここに相撲協会の「日本相撲協会寄附行為施行細則」がございますが、この中の第五十四条に「力士を志望する者は、義務教育を終了した男子で、師匠である年寄を経て、協会に親権者の承諾書、戸籍謄本または抄本をそえて力士検査届を提出し、」云々とあります。相撲協会も、義務教育未満の者をいままで募集しておったのが、今回からは義務教育者は除く、こう規定されておる。  そこで、私は労働省にお尋ねしたいのでございますが、こういった義務教育就学児童生徒、子供タレントの出演契約は、雇用契約なのか請負契約なのか、それとも両者の混合契約であるのかがまず伺いたいのであります。定義をお知らせ願いたいのであります。
  331. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働者の定義につきましては、先生も御承知と存じますが、基準法の第九条で「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、前条の事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」かように相なっております。賃金につきましては「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」かように相なっておるわけでございまして、契約の形態もさることながら、実態等から見てこれに該当すれば労働者であり、これに該当しなければ労働者でない、こういうことになるわけでございます。  お尋ねのそういうタレントのような場合におきまして、私どもも全部につきまして詳細な調査をしているわけではございませんけれども、非常に有名なタレント等について二、三調べたところによりますと、中学校あるいは高等学校ぐらいで、同年齢の者で普通の就労をしている労働者の五、六倍から十数倍の所得を得ているような人たちがかなりあるわけでございます。そういうようなことになると、この人たちの所得というのは賃金と言えるであろうか、むしろそれは基準法にいうところの労務に対する対価というようなものでなくて、いわばタレント性に対する報酬と社会的に見られるのではないか、かように考えられるわけでございまして、私どもが若干調べたところによりましても、税法上も、それらの人につきましては、勤労所得税ということでなくて、個人事業所得というようなことで課税がされておるということでございますが、税はともかくといたしまして、社会的に見て賃金とは言えないのではないか。そういうようなところになりますと、そういうことからいって労働者とは言えないという場合が多いと存じます。ただ、それ以外のいろいろの場合につきましては、実情がさまざまであろうと存じますので、必ずしも十分的確に把握いたしておりませんので、個々に十分実情を調べまして判断をすべきであろうと考えております。
  332. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 これは大事な個人の人権の問題、職業の選択の自由、またこれらのお子さんを持った親御さんの督監、学校教育の立場、いろいろまた複雑な問題がからみ合い、将来ある子供の有能な才能をおとながある法律に従って芽をつむということは、私は不賛成なんです。でありますから、この問題を取り上げるにはずいぶん私もちゅうちょしました。考えました。しかし、この問題が野放しになっている状況にいまある。特に日本の場合は海外にない特異性の中で、テレビ、マスコミのこの状況の中で、いやしくも子供の人権を、子供の自由意思を、もうけるため、金もうけのためにおとなが利用するようなことではならないのじゃないか。こういう立場に立って、私は大乗的な見地からきょうはお尋ねしているのでございますので、慎重な御答弁をお願いしたいのです。  これは労働省から提出された資料であります。ある十八歳の私立高校の三年生、名前を言えば皆さんがあっと気のつくような有名な方でございますが、給料が六十六万六千六百六十六円。その次、十七歳の、これはある東京の私立の中学を二年中退されたお嬢さん、月給二十万円。現在公立中学三年生の十五歳のあるお嬢さん、月給二十万円。これも三年生、三十万円。ある小学生を含むグループのものは全部で二十万円。これは労働省が調べていただいた。これらを月給と見るか、それぞれの立場の雇用契約なのか、自由契約なのか私はわかりませんので、労働省はこういった実態について調査したことがあるのですか。私が調査を依頼してから初めて出てきた資料ですよ。そういう問題がはっきりしないのに労働基準法違反とかまた学校教育法第何条とかいうことを即断ができないでしょう、私たちはおとなとして、政治家として。一部の十人や十五人の方々じゃないのです。あるテレビでは、不特定多数の方々から募集することさえ番組の中に織り込んで、そこから多数の者が合格したことによって不幸になっていく例さえ電話で報告されてきている。野放しにできない状態になってきたから私はいまやっているのです。労働省はこういった。プロダクションとか経営者の指導、立ち入り検査、雇用契約等、見たことがありますか。
  333. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先般先生からそういう御指摘がございまして、全般ではございませんが、若干の。プロダクション等を調べただけでございます。全般の問題については、われわれもいままでのところ十二分に把握しているということは申せない段階でございます。
  334. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 それは昭和四十九年の何月から調べられたのですか。
  335. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 本年の二月に若干調べたものがあります。
  336. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 労働大臣、二月以前は何も調査がない。これははたしていいことなんでしょうか、悪いことなんでしょうか。大臣としてこれからこういった問題にどういう……。これは非常に問題があると思う。取り締まってくれとは私は申しません。また、有能なタレントをこの私の質問が犠牲にするような契機になって、テレビの出演を断わられるようなことがあってはならないのであります。これは非常にむずかしい問題なんです。ではあるけれども、ここに何らかのくさびというものを……。おとなが、政治家が、また政治の場が、これらの問題を野放しにこのままにしていいとも思えない。この辺のところは私は追及ではありませんので、十分ひとつ有能な労働大臣の御判断の中から御答弁いただきたい。
  337. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 芸術というものはなかなか一朝一夕にして生まれないものであります。先ほど先生のおっしゃったように、大ぜいがそこを指向しても、その中から将来成功するということは、いままでも世の中においてなかなか芸術家はむずかしゅうございました。それをお取り上げいただきながら、こうして御議論いただくということ、これもまた私はまさにあなたの勇気に感じ入るものであります。これはほんとうを言えば文部省の仕事だろう、こういうふうな感じ方もします。それを労働者と見る場合には労働省所管になりますけれども、一人の親として考えますと、ほんとうに何人がその中からすばらしくなるだろうか。また何人が学校も出ないで、あるいは出席もしないで、そしてまた非常な多額な金などを取って、これが自分の才能に役に立つようになっていればいいが、時にスポイルされるようなかっこうになって、その人間がだめになるようなことになったらこれもたいへんだ、非常にむずかしい問題があります。  いずれにいたしましても、固有名詞をお出しにならないでこういう風潮について国会の場で御発言いただいたということが、すばらしいものをしてさらにすばらしく発展をさせ、あるいは環境の悪い者をしてその環境を取り除かせ、そしてまた自重するという者をして自重させるというところに本日の御論議があるのじゃないか。役所が労働省である、あるいは文部省であるということじゃなく、そういうたてまえじゃなくて御論議いただいたところに敬意を払う次第でございます。
  338. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 結論として、その行動については、文部省と労働省の今後の問題については、いま私がそういったむずかしい問題の背景の中からさらに追い打ちをかけるようなことはまことに酷なのでありますが、このままでいいというわけにもいかないでしょうから、たとえていえばプロダクションを指導するとか、たまには、年に一回はいろいろと実態表を出させるとか、調査をするとかということで、おとなの立場で、おとなの責任の立場でこれを処理していかなければならぬのじゃないかと私は思うのです。先ほどから毎回繰り返しているように、子供を傷つけてはならない、そういう立場に立って、どうされるかということであります。
  339. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさにおっしゃるとおり幼い子供でございますから、子供心がおとなの発言によって非常なショックを受けるということはあろうかと思います。しかし、あたたかい気持ちで話をし、あるいは指導してやるということが国全体として大事なことだろうと思います。御発言の機会に、お互いいろいろな問題もたくさんありますけれども、その次に伸びる国民の問題について、こういうふうな話の中からいい措置、いい方向に持っていかれるような空気をつくるところに一つ意味があるのじゃなかろうかと私は思っております。
  340. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 教育の立場からはどうでございましょうか。
  341. 別府哲

    ○別府説明員 従来、文部省におきましても、長期欠席者の実態ということを把握してまいりましたけれども、その原因の分析あるいはその対策等につきましては、とかく病気あるいは経済的事情による長欠あるいは家庭のいろいろ複雑な事情といったような点に主として重点が置かれておりまして、いま先生から御指摘をいただいておるような点につきましては、十分な把握がなされておりませんでした。そういう点で、このような社会情勢にもかんがみまして、このような点についても、各県あるいは各学校において生徒指導を担当しておる者との連絡協議会も常に開かれておることでございますので、今後そういった会合を活用いたしまして、十分適切な措置をとるべく連絡をとっていきたいと考えておるところであります。
  342. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 ここに法務省に報告された事例が一つあるのです。これは法務省からいただいた資料ですが、「未成年タレント等とプロダクション間の契約について、低賃金又は労働問題等で告訴された事案はないが、人権侵犯として申告されたものは一件あり、その概要は左記のとおりである。」とあるのです。一件だけ申告されております。法務省から来ていらっしゃれば、御見解をちょっとお尋ねしたいと思います。
  343. 加藤泰也

    ○加藤説明員 先ほどからの先生の御質問を伺っておりますと、労働の条件という面からとそれから義務教育を受けるという面から、少年タレントといいますか、これについては十分な保護が必要だと思います。先ほど先生御指摘の件が一件だけタレントの問題としてはございましたけれども、私どもとしてそのほかに最近取り扱った例としては、小学生の少女が週刊誌にヌード写真を載せたということで、これは多少親の売名的な動きの結果そういうことになったのでありますが、それについては事件として取り上げまして、親に対して十分な説得行為をして、そういう非を認めてもらったという事例がございます。  それからもう一件、これは四、五年前になりますが、新聞などで御承知かと思いますが、相撲の少年力士が義務教育中に場所に出て、地方巡業をしていたために学校に行かれなかったというケースにつきまして、これは人権擁護委員を中心に取り上げまして、そういうことをやめるようにということで、現在、先ほど先生の御指摘にもありましたけれども、やめるようにしております。  このように、法務省といたしましては、申告がございますればもちろんでありますけれども、新聞記事その他報道から、そういう少年タレントの人権侵犯問題が起きました場合には、直ちに調査しまして、適切な処置をとりたいと思います。
  344. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私、最後にお願いしたいことは、この問題は今後悪いほうに進まないように、いいほうに健全に進みますように心から期待してやまないものであります。どうか、文部省も労働省もそういう建設的立場に立って、千人に一人出るか一万人に一人出るかわからない有能な方々の健全な育成のために、政治が介入するというのでなくして、指導的見地に立った立場、御決意を披瀝してもらって、私は質問を終わらせたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  345. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まあ役所的立場から申し上げますれば、私のほうは労働者と見ていないという形もございます。文部省からしますと、義務教育はよく受けてもらいたいということもございましょう。法務省からいえば、いまのような事件があればそれを警告することもございましょう。そして何といってもいまから伸びる青少年ですから、それが傷つかないようにするという配慮が社会人全体としてほんとうにあることが一つ。またそういうプロダクションの経営者などもそういう育てる意味でやっていただきたいということ。もう一つは、親御さんのお話がありましたが、親御さん自体も、こういう場合に広く問題を考えられて、まあ時流に乗るといいますか、そういうことのないように、慎重な御配慮こそが深い親心じゃなかろうか、こういうふうに感ずるものであります。
  346. 別府哲

    ○別府説明員 先生も先ほど御指摘なさいましたように、本人の才能を伸ばすということはたいへんに大切なことであろうと思います。また一方では、義務教育段階の子供でございますので、知育、徳育、体育それぞれバランスのとれた勉強をして、将来の人間形成の基礎をつちかうという意味での学校教育でございますので、それらが十分に行なわれて、その人たちが将来さらに才能を伸ばす基礎が十分に学校でつちかえるように、なお関係者とともに努力をいたしてまいりたいというふうに考えます。
  347. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 あと三分ばかりございますので、まず違う問題で一つお尋ねいたします。  インフレから国民生活を守るための春闘共闘委が、生活保護世帯や身体障害者など社会的に弱い立場にある人のためのインフレ手当を要求しております。これに対して政府はどのように考えているのか。生活保護者に対する特別一時金、社会福祉施設入所者の処遇改善のための特別一時金、心身障害者、母子世帯に対する給付金、全体で一人当たり最高幾らになるのか、こういった問題について概略お尋ねしたいと思います。(長谷川国務大臣厚生省来ておりません」と呼ぶ)  そうですか。それじゃちょっと問題が違ったようですが、私は山谷の労働者方々の問題を取り上げたいのですが、この問題の実態と対策についてお尋ねしたいのでございます。
  348. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 山谷地区の労働者の問題でございますが、私どもといたしましては、山谷地区に私ども労働省の出先でございます労働出張所もございます。また東京都が設けました無料の職業紹介機関もございます。これらの機関の連携によりまして、これらの地域に居住されておられる方々の就労あっせんに努力をいたしておるわけでございますが、御指摘のございました山谷地区等の日雇い労働者の対策につきましては、福祉の問題、住宅の問題、医療等、こういった関係機関の協力を得ながら総合的な対策を進めてまいる必要があると私ども考えておるわけでございます。特に労働対策の関係につきましては、健全な労働市場を形成いたしまして民間雇用に就職すること、これが基本でございますので、私どもといたしまして、先ほど申しましたような無料職業紹介機関の設置、また国の機関でございます労働出張所等を活用して就職あっせんに努力をいたしておるところでございます。  現在の実態でございますが、最近において日雇い求人数が若干減少したというようなことがございますけれども、ことしの年始め、いろいろな問題があったことは私ども十分注意をいたしてまいったところでございます。私どもといたしましては、今後これらの地域、山谷だけではございません、釜ケ崎とかいろいろございますので、このような地域に対しては、安定機関の総力を結集いたしまして求人開拓を強化するということで、その就職あっせんに万全を期してまいりたい、かように考えております。
  349. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 実態を見ますと、正月の六日の場合は、求人わずかに四名であり、あぶれた人は二百二十七名、失業保険法の適用はゼロでありました。また三月二日の例をとりますと、求人は五百七十三名にふえたというものの、あぶれた人は百二十一名、失業保険法の適用を受けられなかった人が八十四名にのぼっております。  これは、現行の失業保険法第三十八条の九に定める失業保険金の認定の基準が、今日のような異常なインフレ、緊縮財政、金融の引き締めのもとではきびし過ぎるのではないかという考えを私は持っておりますが、この問題について失業保険法の適用基準を緩和する考えがございますかどうか、大臣、この問題、いかがでございますか。
  350. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 日雇い失業保険の受給要件は、先生御案内のとおり、前二カ月間に二十八日の就労、月に十四日の印紙が張られておれば前二カ月二十八日ということになりまして、あぶれた場合に日雇い失業保険金を受給できるわけでございます。この月十四日、十四枚の日雇いの失業保険の印紙、二カ月を通じて二十八日というのは、保険制度といたしましては無理のない最低限度の要件でございまして、通常の日雇い労働者の就労日数というもの等勘案してみまして、決して無理のない数字でございまして、保険制度としては最低限の要件だと私ども考えておる次第でございます。
  351. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 時間がまいりましたのでこれで終了いたしますが、二カ月間で二十八日間働けた人のみが対象になっておりますが、総需要の抑制、公共事業のストップ、石油危機の問題等からからみ合わせて、いまの基準がはたして妥当であるかどうか。失業保険の問題には非常に敏感に反映してまいる日数の問題が出てまいります。働きたくても働けない問題が出てきますので、この点についてお尋ねして、終わらしていただきます。
  352. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 山谷地区につきましては、特に無料職業紹介所の付近におられます労働者方々の中には、日雇い失業保険の手帳をまだ受け取っておられない方もおるわけでございます。そういった面から、まず失業保険の手帳を受け取っていただいて、あぶれた場合、私ども現在いわゆる適用拡大といいますか適用促進を努力しているのが一点でございます。  それから東京都は非常に広い地域でございまして、安定機関はお互いに連絡をとっておりますので、ある安定所での状況というものでその地域の求人を振り向けるというような形で現在努力をいたしておるわけでございまして、これによって私どもは何とか失業保険の受給要件を満たさないという事態は出ないであろうということで鋭意努力をしている実情でございます。
  353. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 終わります。どうもありがとうございました。
  354. 渡辺栄一

    渡辺主査 小川君の質疑は終了いたしました。  次に、山本政弘君。
  355. 山本政弘

    山本(政)分科員 大臣すでにお聞き及びのことと思いますけれども、公社、公団、これの当事者の能力の問題については毎国会ごとに議論をされておるわけです。私どもと少なくとも大蔵省との間には、若干の見解の相違がある。昨年お伺いしたところによりますと、労働省のほうは実はたいへん理解のある見解をお示しくださいましたけれども、いままで法人の理事者というのは予算のワクによって自主解決というものが規制されている、簡単に言えばそういうふうになっておるわけです。そういう論議に対しては、実は私は反論があるわけでありますけれども、一つは、参議院の法制局が特殊法人の「予算等の統制」についてということで見解を出しております。それによりますと、特殊法人に対しては国はできるだけ関与しないことが法人設立の趣旨に合するゆえんである。その予算案に対するチェックは大綱だけにとどめるべく、個々具体的な問題については国の関与が排除される、こういっている。これは参議院の法制局の昭和四十四年の「調査研究集」の中にあります。  もう一つは、大蔵省当局であります。大蔵省当局自体は、国民金融公庫法第十二条の改正にあたって次のように説明しておる。大蔵大臣には一般的な監督権があるが、それは業務上の監督を主体としたもので、給与その他内部の身分関係については総裁の権限の問題である。給与規程そのものについては主務大臣の委任というほかはない。これは第十二回の国会の参議院の大蔵委員会における答弁であります。したがって、国の予算制度のワクの中に組み込まれておるとはいうものの、公庫の労働者賃金というものは大蔵省その他の制度の制約を受けるはずがないと私は考えておるのですけれども、どうもいままでの大蔵省の御答弁というのはそういうふうなものではない。同時に、内示について、政府は、内示は命令ではない、こう言っておるのですよ。また、拘束力は持っておらない、行政措置である。これはたしか私の質問に答えての御答弁であったと思います。しかしながら、実際にはそういうふうになっておらぬということであります。  もう一つ、これは中労委の解釈であります。これは石井さんが中労委の会長をなすっておられたときに、使用者には管理運営の権限上かくあるべしとの判断を持つべき責任がある、こう言っておるのです。そういうふうになると、当事者能力の問題では公社、公団、つまり政府関係特殊法人等の理事者とその労働者との間に自主交渉、自主解決というものができるはずだけれども、できておらない。この点について、まずいかにあるべきかという労働省の見解、それから大蔵省の見解を聞かしていただきたい。   〔主査退席、八木(一)主査代理着席〕
  356. 道正邦彦

    道正政府委員 この問題は非常に毎回御指摘いただきまして、私ども関係省庁、検討を続けておる問題でございます。非常にむずかしい問題でございますが、一般的に申しまして、給与等の労働条件は労使が自主的にきめる、これが望ましいことは言うまでもございません。ところが、政府関係特殊法人は、その事業の特殊性あるいは公共性から見まして、政府または地方公共団体の出資等によって設立されて、その運営につきましても、政府の交付金であるとかあるいは補助金等に負うところが大きいわけでございます。従来からこれらの職員の給与の改定は、国家公務員の給与改定に関する人事院の勧告に準拠して行なわれているわけでございますが、私どもといたしましては、このことはやむを得ない措置ではないかというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、御指摘のように、当事者能力の拡大の問題につきましては、従来から御指摘もございましたので、一昨年来、労働、大蔵両省が中心になりまして、関係省庁の御協力も得まして、政府関係特殊法人の労使双方に対してアンケート調査を行なうとか、あるいはヒヤリングを行なう等、給与改定の基本問題について慎重に検討を行なっている段階でございます。
  357. 山本政弘

    山本(政)分科員 大蔵省のほう、簡単に答えてください。
  358. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 先生御案内のとおり、特殊法人につきましては、たとえば行政管理庁設置法で規定がございまして、端的に申しますと、ほかの法人と違いますところは、国が直接に設立する。したがいまして、実質上は行政機関に準ずる機関であるけれども、行政機関がみずからやるよりは、特別の組織体をつくって能率的にやったほうがよろしい、こういう性格の法人でございます。したがいまして、特殊法人につきましては、他の商法上の法人とかあるいは民法上の法人、それから特別法に基づくいわゆる認可法人というのがございますけれども、これは民間が自主的につくる法人でございますが、これに比べますと、はるかに業務上それから財政経理上のきびしい主務官庁の監督下にある、こういうたてまえになっておるわけです。   〔八木(一)主査代理退席、主査着席〕 これは当然のことだと思うのでございますけれども、さしあたって当事者能力の問題というのは、私どもの立場から見ますと、財政面から特殊法人の理事者が制約を受けているのじゃないか、こういう問題に相なるかと思うのでございますけれども、いま申しましたような特殊法人の性格、それから費用負担と申しますか、財源面から見ますと、これらの特殊法人の人件費、運営費等は一般会計、特別会計、いろいろ内容がございますけれども、いずれにいたしましても、一般の国民の負担によるものでございます。したがいまして、民間企業のように、そのときどきの情勢、経営の内容、賃金支払い能力によって自主的に賃金がきめられる、そういうシステムをとるのはあるいはむずかしいのではないか。現状においては、国家公務員につきまして第三者の公平な機関である人事院の勧告に準拠して予算統制をやらざるを得ないということでございます。
  359. 山本政弘

    山本(政)分科員 憲法と労働三法によってきまっておるわけでしょう。そして、労使双方が自主交渉をやってよろしいということが労働三法に言われておるはずなんです。そして、いつもあなた方がおっしゃるのは、予算上といまおっしゃったような言い方でやるわけです。  それからもう一つは、先ほど話があったように、特殊法人については、要するに行政効果の面から考えてというお話がありました。そうすると、そういうことで官僚というものの天下りが公社、公団には特に多いということになるのですか。その辺はどうなんです、大蔵省
  360. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 公社、公団に対する天下りの問題につきましては、私の記憶違いかと思いますが、昭和四十二、三年ごろに閣議決定、閣議口頭了解で、厳に自粛する。官房長官が特に役人については御調整になるという制度、取りきめがあるように思っております。この問題につきましては、大蔵省は別に所管しておりませんので、天下りの問題と当事者能力の問題とは、全然関係がないと思っております。
  361. 山本政弘

    山本(政)分科員 私は、いままでに四回ぐらいこの問題についてはずっと話をしてきたのです。そして、この委員会で回を経るごとに、いわば私どもの主張のほうがだんだんと了解をされたというのか、労働省の見解もだんだん私どもの見解に近づいてきている、こう言って差しつかえないと思うのです。ところが大蔵省態度というのは一貫して変わらない。大蔵省の人たちは、官僚の天下りと関係はないと言うけれども、私はどう考えても官僚の天下りと関係があるような気がしてならぬわけですよ。民間の人たちを登用しないで、そして官僚の人たちだけが——だけがという言い方は語弊がありますけれども、そういう人たちがほとんど公社、公団の役員というものを占拠している。あえて言いますけれども占拠している、こう言っていいのです。  たとえを申し上げましょう。労働省、担当だから申し上げますよ。雇用促進事業団は、十一の役員のポストがあるうちに民間登用一人であります。十一のポストの中にただ一人。労働福祉事業団、七人のポストのうちに民間の人は一人。中小企業退職金共済事業団は、七人のうち全部官僚であります。厚生省もほとんど大なり小なり同じであります。大蔵省といえどもその例に漏れない。しかも二月十九日だったと思う。労働大臣も御出席だと思いますが、田中総理は、公社、公団の役員人事は三選を避ける、こうおっしゃったと思います。昭和三十九年九月の臨時行政調査会からは、「公社・公団等の改革に関する意見」として、特殊官僚の特殊法人への天下りについてというものが取り上げられております。「官庁との人事交流は、創設時を除いて原則として行なわない。」「広く人材を求めるため、官庁の都合本位による役員人事をやめて、役員は部内外からも積極的に登用する」こういっております。昭和四十四年の六月には、特殊法人の役員の給与等の基準に関する法案というものが出てきた。これは世論を喚起したから出てきたのであります。しかしながら、あえて申し上げますけれども、これはつぶされた。「官庁との人事交流は、創設時を除いて原則として行なわない。」ということならば、雇用促進事業団、中小企業対策事業団、労働福祉事業団あるいはその他の公社、公団の創設時はいつかということであります。労働福祉事業団は三十二年、中退金は三十六年ごろだと思います。私の推測であります。雇用促進事業団は三十六年にできている。自来何年たったかということであります。自来何年たっているか。  しかも、一九七〇年の五月から去年の十月の間に就任した役人のうち官僚の天下りというものは、建設省が九四・七%、農林省一〇〇%、経済企画庁一〇〇%、労働省一〇〇%、厚生省も一〇〇%、外務省は八三・三%、運輸省一〇〇%、環境庁一〇〇%、こういう実態ですよ。この中で、予算関係からいっても、高級官僚がおったときに、大蔵省の締めつけといいますか、大蔵省がおることによって、予算というものが、私は自主交渉、自主解決という路線は、昨年の私の質問によっては、それが本来のあり方であろうという答弁を私は得ているつもりであります。うそならば、ここに速記録がある。本来のあり方としては。しかし、なぜできないのかというと、予算関係とまさしく官僚というものが公社、公団を締めているからじゃありませんか。  それじゃ、大蔵省にお伺いしますよ。日本蚕糸事業団の人件費の予算は八千九十二万円。大蔵省予算であなた方はそうするとそういうことをちゃんとお許しになっているのか。役員の給与はその中の三千七百十九万円、まさしく半分近いじゃありませんか。大蔵省予算の査定というのは、そういうことをやるのですか。つまり、そういう中から実は当事者能力というものは失われていくのですよ。  ちょっとお伺いしますが、昨年の春闘平均の賃上げ率は幾らですか。
  362. 道正邦彦

    道正政府委員 労働省の労政局で調査いたしておる数字といたしましては、二〇・一%に当たります。
  363. 山本政弘

    山本(政)分科員 昨年、四十八年の四月の公社、公団の役員は、総裁、理事長に関していえば一八・八%四月に上げられておる。しかも、十一月にもう一ぺん一五・八%上げられておるのですよ。副総裁、副理事長については六・八%、これは四月でありますが、もう一ぺん十一月には一四・九%上げられておる。つまり、前者は三七・五%、そして後者は二二・七%上げられているということになっているじゃないですか。平均賃金よりはるかに大きいじゃありませんか。つまり、そういうことが一体許されるのかどうかということであります。これじゃ、当事者能力というものは、発揮しようにもし得ないというしかけになっておるということでしかないじゃありませんか。まさしく仕掛け人はだれかということですよ。人事院の方、来ておられますか。——そういうことに対してどうお考えです。
  364. 中村博

    ○中村(博)政府委員 天下りの件につきましては、私どもの所管は、退職した国家公務員が営利企業に行く部面につきまして、法律にお定めになっております点を厳正に執行いたしておることでございまして、その他の部分はいたしてございませんので……。
  365. 山本政弘

    山本(政)分科員 そうしたら、これ所管は一体だれなんですか。所管は一体どこなんですか。人事院はそういうことについては御存じでしょう。大蔵省はお金のことかもわからぬけれども、人事院はそのくらいのことは御存じじゃないのでしょうか。あなたの所管でなければ一体どこの所管なんですか、これ。しかも、考えなければならぬことは、六十一法人の役員総数のうち、これが三百八十四名のうちで天下り官僚三百三人、まさしく八〇%以上じゃありませんか。どこに半分は民間の人あるいは内部の登用をしなさいということが生かされておるかということなんです。どこに生かされておるのです。あなた方だれでもいいですから答えてください。
  366. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほどお答えいたしましたように、いわゆる春闘相場は二〇%であったわけでございますが、人事院の勧告におきましては、民間の実態を調査して平均一五・三九という勧告が去年八月出されたわけでございますが、その内訳といたしましては、いわゆる役所式に申しまして指定職その他いろいろあるわけでございまして、公社、公団等の役員の給与をきめる場合には、そういう人事院勧告の内容の詳細を検討の上、それぞれに見合ったものを基準におきめになっているものと私は理解いたしております。
  367. 山本政弘

    山本(政)分科員 中身のほうを、要するに公団の内容というものを考えながらおやりになるということであるならば、当然上のほうに薄くて下のほうに厚いというのがあたりまえじゃないのでしょうか。つまり、自主交渉、自主解決というものができないから、九月になっても十月になっても解決できないという政労協の特殊法人の実態があるじゃありませんか。それは労働省が一番よく知っていると思うのですよ。解決してないでしょう。何でそれは解決しないのだろうか。つまり、そういう考え方で上のほうはたいへん厚いのですよ、ぼくに言わせたら。そして下のほうに薄いから、しかもそれが天下り官僚として出てきているから、政労協の労働者というのは納得をしないという気持ちがあるのじゃないだろうか。給与を申し上げましょうか。ぼくは申し上げることを遠慮しているのですが、幾らお取りになっているかあなた方御存じなんですか、その人たちは。六十六万円ですよ、総裁、理事長は。副総裁、副理事長は五十四万円ですよ。理事が四十四万円。ぼくはかなりな金額だと思いますが、いかがでしょう。これは大臣に一ぺんお伺いしましょうか。そういう実態の中で一体どうあるべきかということですよ。
  368. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさに華麗なる第二の人生、そういうふうに考えます。
  369. 山本政弘

    山本(政)分科員 大蔵省の方はそういうことに対してどうお考えなんですか。それをもってしても、当然要するに内示とやらがあって、自主交渉、自主能力で解決ができないとあなた方はまだおっしゃるのかどうか。つまりぼくがこの前お伺いしたときには、千円をこしても、それは要するに公団の総裁、理事長の範囲を越える問題だ、こう言ったのです。そしてみだりにということばの解釈についていろいろ論議があったのです。きょう私はみだりにということについて広辞林もちゃんと引いてきていますがね。少なくとも大蔵省の答弁のようなそういうみだりにということではないのですよ、みだりにということばは。ただの一銭も自主交渉の中で上げてはいかぬなんて、そういう解釈にはならぬですよ。大蔵省の御理解なしには一円たりとも上げていかぬという話だったのです。そうすると、公団なんというのはまさしくロボットにしかすぎぬのだろうと私は思うのです。その中で、一体あなたのおっしゃるように行政効果というものがあげられるのかどうかということなんです。その点をひとつお聞かせ願いたい。
  370. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 まず第一点の、公社、公団、事業団の役員の給料が高過ぎるのではないかという問題でございますけれども、これは御判断の問題でございまして、現実には国家公務員の指定職並びに特別職の俸給改定に準拠いたしまして、改定時期に、それぞれ事業団、公団、ランキングはございますけれども、一定の方式に従って改定が行なわれております。  それから第二段の問題でありますけれども、答弁の繰り返しのようなかっこうになりましてまことに恐縮ではございますけれども、現在の特殊法人に対する制度のたてまえからいたしまして、各事業体まちまちの改定が行なわれるということは、財源の基礎が国民全体に求められるという以上、民間の自由企業と同じような考え方ではたしていいのかどうかということは、非常に大きな問題でございまして、現在やっております公平な第三者機関である人事院の勧告に従って、それに準拠して給与改定を行なっておるというのは、現行のたてまえのもとでは、次善と申しますか、最善のあり方であろうというふうに考えております。
  371. 山本政弘

    山本(政)分科員 時間がないようですけれども、もう二、三分お願いしたいと思います。  いいですか、職員の場合は高卒の三十年勤続の退職金が三百十五万円ですよ。総裁、理事長は一期四年やって千四百万もらえるじゃありませんか。ぼくは、労働大臣がまさしく華麗なる第二の人生だと言ったのは、そのとおりだと思いますよ。それを、ただきまった問題だから、きまった事柄だから、きまったように上げていいというのだったら、なぜ直す気にならないのですか。  それから、あなたは国民全般からという話だったけれども、たとえば首都高速道路公団というものは利用者から要するに徴収をしているわけでしょう。住宅公団も利用者から徴収をしているわけでしょう。その範囲でやりくりができるはずじゃありませんか。全部が全部あなたのおっしゃるような国民税金から云々ということじゃないじゃありませんか。そうじゃないのですか。
  372. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 御指摘のように、特殊法人と申しましても千差万別でございまして、ある程度独立採算で自己収入でもって相当部分をまかなっておるという機関も確かにございますけれども、その数は少のうございまして、大部分の特殊法人につきましては、一般会計なりあるいは特別会計から人件費のほかに経常費の補助等を行なっております。
  373. 山本政弘

    山本(政)分科員 最後の質問です。それならば、あなたのおっしゃるように、全部じゃありません。できるところからやれるはずじゃありませんか。つまり、自主交渉の範囲というものを一つあるいは二つ、できるところからというふうに風穴をあけていくことはできるはずじゃありませんか。それをなぜおやりにならないのですか。あなたは先の御答弁といまの御答弁とは違っておるのですよ。先の御答弁は、全般的に国民税金ですか、そういうものからやっていく、こういうお話だった。二回目は、私の反論によってあなたは御答弁を違えたわけですよ。違えたなら違えたという答弁をなすってほしいのです。前言はそうだったけれども、一、二違うということをはっきり私は言ってほしいと思います。前言を訂正してほしいと思います。その上で私がさらにお願いしたいことは、そういうところへなぜ風穴をあけることができないだろうか。それをお伺いします。
  374. 渡辺栄一

    渡辺主査 簡潔に願います。
  375. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 はい。私が最初申し上げましたことと最後に申し上げましたこと、本質的に変わっておるとは考えておりません。問題は、特殊法人というのは全般的にそういう基盤の上に立っておるものでございますから、おのずからその間でバランスの問題も必要でございますし、先生のおっしゃるある一つのものに風穴をあけてどうのこうのということで、はたして全体として特殊法人の制度の運営が円滑にいくかどうかというのは非常に問題があろうかと思います。いずれにしても、冒頭に労働省のほうから御説明ございましたように、非常に問題を含んでおる問題であるということは私どもも承知いたしております。
  376. 山本政弘

    山本(政)分科員 私は社会労働委員会における一般質問でこれをもう一ぺん深めていきたいと思います。  きょうはこれでやめますが、大臣、華麗なる人生というものがあるという反面に、十数年たってなおかつ言われてきていることが守られておらない。少なくとも民間の人たちあるいは内部の人たちは半分は登用しましょう、あるいは登用しなければならぬということがあるわけですね。そうすると、それがほとんどの公団、これはほとんどと言っていいと思う。あるいは全部と私はあえて言っていいかもしれぬと思います、全部を調査したわけではありませんが。いま申し上げた各省については言える事柄でありますけれども、そういうことについてやはり姿勢を正していかなければ国民は納得していかないとぼくは思うのですよ。その辺について、労働省関係のことについては労働大臣の御決意があるだろうと思いますが、それをひとつ聞かしてください。
  377. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 特殊法人の場合には、やはり専門的な知識とか、あるいは経験とか、学識とか、いろいろなものが要求されておるものですから、そういう人たちが入るということは考えられるわけです。労働省にいたしますと、同時にやはり内部から登用するということは大事なことじゃなかろうか。私が調べたところによりましても、六名ぐらいが内部から登用されて役員にされております。それから労働省の場合には、労働組合の幹部の方も役員にお願いしておるものもある。こういうふうに、数はまだ少のうございますが、そういうふうな気持ちで見ているということを御理解いただきたいと思います。
  378. 山本政弘

    山本(政)分科員 終わります。
  379. 渡辺栄一

    渡辺主査 以上をもちまして、昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、労働省所管に対する質疑は終了いたしました。  これにて本分科会における質疑は全部終了いたしました。
  380. 渡辺栄一

    渡辺主査 この際、おはかりいたします。  昭和四十九年度一般会計予算及び昭和四十九年度特別会計予算中、厚生省所管労働省所管及び自治省所管に対する討論採決は、先例によりまして予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  381. 渡辺栄一

    渡辺主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。     —————————————  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段なる御協力によりまして、本分科会の議事が無事終了することができましたことをここに厚く御礼を申し上げます。  これにて第三分科会を散会いたします。    午後六時二十分散会