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1974-02-15 第72回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十五日(金曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    片岡 清一君       北澤 直吉君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    塩谷 一夫君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       田中 正巳君    塚原 俊郎君       中山 利生君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    羽田  孜君       藤井 勝志君    前田 正男君       松浦周太郎君    松岡 松平君       松野 頼三君    湊  徹郎君       渡辺 栄一君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    岡田 春夫君       北山 愛郎君    辻原 弘市君       楢崎弥之助君    松浦 利尚君       村山 富市君    八木 一男君       湯山  勇君    青柳 盛雄君       田代 文久君    増本 一彦君       岡本 富夫君    安里積千代君       小平  忠君  出席公述人         成蹊大学教授  肥後 和夫君         名古屋市立大学         教授      松永 嘉夫君         総評主婦の会全         国協議会事務局         長       塚本スミ子君         中央大学教授  川口  弘君  出席政府委員         内閣官房副長官 大村 襄治君         防衛政務次官  木野 晴夫君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         環境政務次官  藤本 孝雄君         法務政務次官  高橋文五郎君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         文部政務次官  藤波 孝生君         通商産業政務次         官       森下 元晴君         自治政務次官  古屋  亨君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   倉成  正君     片岡 清一君   西村 直己君     中山 利生君   根本龍太郎君     羽田  孜君   赤松  勇君     北山 愛郎君   多賀谷真稔君     村山 富市君   中澤 茂一君     松浦 利尚君   荒木  宏君     田代 文久君   増本 一彦君     松本 善明君   矢野 絢也君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     増本 一彦君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 井原岸高

    井原委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名により、私がその職務を行ないます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を行ないます。  この際、御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。この際、各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において、貴重な参考といたしたいと存じる次第でございます。  何とぞ、昭和四十九年度予算に対しまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと願う次第であります。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず肥後公述人、次に松永公述人順序で、一人約三十分程度意見をお述べいただき、その後、委員から質疑を願うことといたします。  それでは、肥後公述人にお願いいたします。
  3. 肥後和夫

    肥後公述人 浅学非才で、皆ざまのような練達の方々の前で意見を述べるということは、非常に恐縮なんでございますが、御要請がありましたので、一応私個人の意見を率直に申し上げたいと存じます。時間が限られておりますので、なるべくその要点だけを申し上げたいと思います。  昭和四十九年度予算案、財政投融資計画、それから、財政政策関連地方財政についても触れることをお許しいただきたいのですが、及び地方財政計画を通して表明されている政府財政政策の大綱のできばえは、「国民生活の安定と福祉充実に配意しつつ、厳に抑制的なものとするとともに、今後の経済情勢の推移に対応し得るよう機動的、弾力的な運営を行なうことを基本」とするという予算編成基本方針に、おおむね合致しているものと、一応高く評価すべきものと考えております。  言うまでもなく、今日のような先進諸国の中でも飛び抜けて大きな地価、卸売り物価並びに消費者物価暴騰を招いた一半の要因といたしまして、ここ数年来国際収支黒字幅が急増するという第一次大戦景気以来、あるいは明治百年以来ともいうべき新事態に当面いたしまして、情勢の判断と、それに対処すべき財政金融政策運用が適切でなかったことが災いしているということは、衆目の一致するところであろうかと思います。  たとえば、国際収支黒字幅の一方的な増加に伴って、国際間で調整が必要になったわけでありますが、為替レートの弾力的な調整という考え方には、当時、政府経済界ともになじみが薄かったために、三百六十円レートに固執し過ぎたことが、過剰流動性をつくり出す結果になり、この過剰流動性が、土地をはじめとして、生活関連物資に及ぶ投機的な買いあさりに伴う物価狂乱の原動力になったと、一般にも指摘されているとおりでございます。また、必要以上に商品を安く、大量に外国に輸出しようとつとめる伝統的なやり方が、国際的な摩擦を大きくしているという事態に直面いたしまして、従来のやり方に対する反省が、次第に国民一般に強まりまして、生産性上昇の成果を輸出努力だけに傾注するのをやめて、その一部を国民生活の向上に振り向けるべきであるという点で、国民的合意が成立していると理解しているわけでございますけれども、このことから、経済政策の路線も、経済社会基本計画に見られますように、民間投資主導型の生産第一主義から財政主導型の国民福祉優先へと転換がはかられているわけでございまして、四十八年度の国と地方予算規模大型になりましたのも、その内容についてはともかくとして、以上のような考え方が背景にあったということは確かであります。  しかし、財政主導ということは、民間投資を押えるか、少なくとも民間投資が過大にならないことを前提として成立する政策でありますので、総需要の総花的な拡大にはおのずから限界がありまして、政府支出民間投資もというわけにはいかないわけでございますが、これに対応する過剰流動性吸収策法人税負担引き上げ投機抑制のための細心な規制措置等を、事前に十分に準備していなかった以上、大型予算も、国民生活優先という意図に反する結果になってしまったということは、経済の論理として当然というべきであろうかと思います。  ただし、わが国の予算制度は、曲がりなりにも弾力的な運営の幅のある制度でありまして、年度途中に公共事業費繰り延べや起債の抑制金融引き締め等によりまして、新しい事態への対処に努力が払われていることは否定できないのでありますが、これにも限度があり、すでにオイルショックの始まる以前から、インフレマインド定着化を心配する声が聞かれるようになっておりました。オイルショックは、この危機を増幅したにすぎないともいえると思います。  これらのことを考え合わせますと、四十九年度政府財政金融政策は、物価鎮静を第一の目標に置いて総需要抑制をはかるという点で、国及び地方財政政策金融政策を通じて、一応首尾一貫しており、その限られたワク内で、国民生活文教関連分野への予算上の配慮につとめている点でも、苦心のあとが見受けられ、予算の効率的、重点的な運用という点で、従来にない特徴を持っていると考えられますが、なお、細部にわたる私見は、次のとおりでございます。  第一、四十九年度政府原案における一般会計予算財政投融資計画地方財政計画及び政府財貨サービス購入規模の、前年度当初のそれに対する伸び率は、それぞれ一九・七%、一四・四%、一九・四%、一四・九%と、四十八年度におけるそれぞれの対前年度伸び率よりも大幅に抑制されております。国民総生産予想名目成長率一二・九%に比較いたしますと、一般会計予算政府財貨サービス購入伸び率は、景気抑制型予算としてはなお過大であるのではないかとも考えられますが、国民総生産名目成長率は、一般に、政府見通し段階においては、実績よりも低目に見積もられているのが普通でありますので、この点は、一応論外に置くことを許されると思います。特に、公共投資関連予算については、生活関連社会資本に特別な配慮を行ないつつも、全体としての規模において抑制がはかられ、公共事業費名目額での据え置き事業ベースでの四十七年度水準への削減がはかられたほか、既定の長期計画の進度の調整、新幹線、本州四国連絡橋新規高速道路等大型建設事業繰り延べ財投関連事業についても同様な措置がとられているほか、国の財政規模と肩を並べる地方財政についても、総需要抑制について同一の歩調がとられているという点、総需要抑制への政府姿勢が首尾一貫して、明確に打ち出されている点は、一応評価されてよいと思っております。  なお、需要抑制型の予算編成におきましては、一般支出抑制と並んで増税公共料金引き上げが行なわれなければならないとも考えられるわけでございますが、逆に、税金分野では、法人税負担引き上げで約二千百十億円、自動車関係諸税引き上げで千七百八十億円、印紙税九百億円、総計四千七面九十億円の増税ははかられておりますものの、他方で、初年度一兆四千五百億円の大幅な所得税減税がはかられておりますために、正味約一兆円の減税計画されております。所得税減税で約一兆五千億円という減税幅は、昭和三十二年度における一兆円予算のときの千億円減税に比肩すべき大幅減税であります。また、公共料金につきましては、昨年産米に関する生産者米価引き上げとの関連引き上げなければならなくなった消費者米価、及び、すでに決定を見た国鉄運賃改定等の実施が半年延期されることになりました。  減税や改定されるべき公共料金据え置きは、家計の可処分所得引き上げて、消費需要増加し、消費者物価上昇を促進する作用を持つことも、論理的には否定できないのでありまして、減税をどのように評価すべきかということについては、いろいろな意見があるわけでございますが、現在のような、おそるべき消費者物価暴騰に打ちのめされて、生活の不安におびえている一般国民大衆にとりましては、米や国鉄運賃等がともかく安定していることが、唯一の安堵感になっているのではないかとも考えられる次第でございます。所得税減税についても、インフレに伴う社会的不公平に不満といら立ちを覚えている国民にとって、大幅なサラリーマン減税は、政府姿勢として、国民に対する幾ぶんの申しわけになっているのではないか。  このように考えますと、減税公共料金据え置きは、総需要抑制政策斉合性という点では問題であるとしても、国民生活感情を考慮に入れれば、やむを得ない政策であったと考えている次第でございます。  このようにして、需要抑制政策体系の中で穴のあいた分は、金融引き締め、その他行政措置等を通じる需要抑制政策物価引き上げ抑制によって、目標の貫徹につとめるべきものと考えます。  第二に、なお物価の安定につきましては、超過需要を削り取るための財政金融政策が重大な中心的役割りを果たすべきことは言うまでもありませんが、なお、市場が独占的であることによる面も小さくありません。抑制的財政金融政策を適度にとどめて、というよりも、不必要に抑制的財政金融政策にしわ寄せをすることによって、スタグフレーションを引き起こすという危険性を未然に防止するというためにも、すでに欧米諸国でも経験済みのように、特に大企業中心にして、そのカルテル行為をきびしくチェックし、買い占め、売り惜しみによる価格引き上げを防止するよう、独占禁止法及び、いわゆる買占め防止法などの積極的な運用を期待したいと考えております。  第三に、予算におきましては、経済安定政策のみならず、所得分配の公平を維持するための配慮が重視されるべきであると考えます。  この点で、このたびの所得税の大幅な改正は、給与所得者減税中心としており、かつ、消費者物価指数による所得階級区分によるインフレ下自然増税調整をはかるなど、斬新かつ均斉のとれたものとなっております。クロヨン、トーゴーサンなど不公平の最たるものと見られていた所得税の過重な負担を、給与所得者中心として大幅に軽減することは、税制公平感を高める上で、大きな寄与となったことは疑いありません。  税制には、公平性観点から問題にすべき点が、なお大いに残されておりますが、高度成長政策の裏打ちとして、明治以来百年をかけて構築されてまいりました資産所得軽課勤労所得重課、並びに企業優遇型の税制を脱皮するための一歩前進として、今回の法人税引き上げサラリーマン減税を見ることができますならば、なお残された税制上の不公平性の問題は、今後とも時間をかけて解決していけるはずだと、将来に期待している次第でございます。  最後に、今回の改正で、所得税課税最低限が、西欧福祉国家水準はもちろん、社会保障のおくれているアメリカのレベルをも凌駕するに至りましたことは、社会保障や住宅の水準が低く、所得分配上も次第に貧富の格差が開き始めております日本の現状におきましては、一応の明るいニュースとして、すなおに喜びたいわけでございますが、長期的な観点から見ますと、はたして手放しで喜んでよいかどうかということは問題であります。所得税の控除よりはタックスクレジット、突き詰めていえば、社会保障給付のほうが、低所得階層にははるかにプラスになるはずであります。十万円の減税は、一〇%の税金負担している階層では、わずかに一万円の実質的な可処分所得増加にすぎないわけであります。したがいまして、所得税、ひいては税金一般負担社会保障給付水準上昇関連づけて考えることを、国民が次第に受け入れるようになることが、社会保障の長期的な充実発展のためには、望ましいと考えている次第でございます。  社会保障関連につきましても、このたびの予算では、他の費目に比べて大幅な伸びを示しているわけでございますが、これはあくまでもインフレに対するあとからの調整、不満足な調整にすぎないわけでございまして、物価の安定が社会保障の基盤にならなければならないことは言うまでもありませんが、今後さらに、社会保障給付水準西欧先進福祉国家水準並み引き上げるということを課題として考えます場合には、必然的に租税負担及び社会保険料負担の総合的な負担は上がらざるを得ないわけでございまして、現在のような社会保障給付水準改正していく間には、当然増的な予算増加が、予算編成にとってかなり大きなシェアを占めてくるものと思います。  この中で、新しい政策的な方向づけを行なっていくためには、長期的には、負担増加というものが考えられていかなければならない。そういう意味で、現在は、むしろその前提となるべき社会的な負担調整の過渡的な段階として、課税最低限引き上げというものも評価したいと考えている次第でございます。  簡単でございますが、以上をもって意見の陳述を終わりたいと思います。(拍手)
  4. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  それでは、次に松永公述人にお願いいたします。
  5. 松永嘉夫

    松永公述人 昭和四十九年度予算につきまして、私の印象お話ししたいと思います。  来年度予算につきましては、一応総需要抑制型であるとか、あるいは耐乏型であるとか、あるいは非常時予算であるとか、あるいは短期決戦型であるとかいうようなレッテルがつけられているわけであります。確かに現在は、インフレの進みぐあい、あるいは国際収支事情、石油の問題等々を勘案しましても、まさに非常時でございますので、そういうレッテルにつきましては、私は全く異議を差しはさまない、そうあるべきだと思うわけであります。しかし、ほんとうに腹を据えた抑制型予算になっているであろうか、この点を問題にしたいわけであります。  確かに、現実にインフレはものすごいスピードで進行しております。したがって、恵まれない人たち生活を守るために、予算インフレ補償的な性格をかなり盛り込まなければならないことは確かであります。そしてインフレ補償的な予算というものとインフレ抑制型予算というものとは、本来は両立が非常にむずかしい二つのものだと思います。二つの両立しがたい性格を持たせようと、あまりにも、したというのかどうか知りませんけれども、どうも私は、印象としまして、どっちつかずの結果になっているのではなかろうかという感じがするわけであります。いろいろ検討してみますと、もっとインフレ補償を手厚くして、しかもインフレ抑制を強化する、これが不可能でなかったというふうに思えてならないわけであります。  以下、若干詳しくお話ししたいと思います。  先ほど肥後さんからお話がございましたように、来年度一般会計予算は、前年度当初予算に比べて一九・七%の増加になっている。それから財政投融資が一四・四%、そこら辺の二つぐらいを足しまして合計しましても、全体でも一八%ぐらい予算がふえているわけであります。確かに二〇%を切ったということは、前年度予算及び前々年度予算伸びがいずれも二〇%をこえておりましたので、それと比較しますと、抑制型ということになっているわけであります。しかし、前年度予算編成された当時の状況あるいは前々年度予算編成された当時の状況と現在とでは、状況が非常に違うということを指摘しなければならないと思います。  四十八年度予算編成時というのはどういう状態であったかといいますと、卸売り物価上昇はしかけておりましたけれども、現在のようなむちゃくちゃな形にはなっていなかった。そして、国際収支は依然として黒字基調で、円の再切り上げ防止についての国民的要望があった。設備投資もそのころ上昇しかけてきておったわけですけれども、まだ不況と好況の境目のような状態であったわけであります。当然石油問題も今日のような形ではあらわれていなかった。それから、四十七年度予算編成された当時というのは、四十六年の終わりごろでありますけれども、これはいわゆる円ショックドルショックで、国民がすべて将来についての自信を非常に失っていた状況であります。そして景気も必ずしもよくなかった。どちらかというと不況だったわけです。そういう状況に組まれた予算が、たとえば四十七年度予算につきましては、これはその前に比べて二一・八%ふえていた。それから前年度予算は二四・六%ふえていた。それに比べて二〇%を切ったということでは、抑制型とは必ずしもいえないのじゃなかろうか、状況が百八十度ひっくり返っているという感じがするわけであります。  先ほど肥後さんのお話に出てまいりましたけれども、政府の来年度経済についての見通しによりますと、名目GNPは一二・九%の増ということです。これは政府見通しですから、一般見通しよりも若干低目になっていることは確かでありますけれども、ここで一つ問題になりますのは、国民とそれからいろいろな企業政府がわかち合うべきGNPという、パイというのかケーキというのは、物価上昇でかなりふくらんでおりますけれども、そのふくらまし粉が入りましても、一二・九%程度しかふえないというわけであります。それなのに政府財政支出が、一般会計でいいますと、一九・七%というふうに平均を大幅に上回るような計画で、はたして国民に対して、政府節約貯蓄を呼びかけてこられましたけれども、そういう呼びかけに説得力があるだろうか、そういう感じがするわけであります。  もちろん、そういう疑問に対しまして予想される回答は、来年度予算の前年度第一次補正後の予算に比べての伸び率は一二%になっている、要するに、来年度GNP伸びの一二・九よりも押えられている、平均以下に押えているというような回答が予想されます。しかし、二つの点で、そういう考え方は問題だろうと思います。  第一に、補正後の予算と比べてみましても、一般会計予算GNP比率GNP全体に占める比率は、四十八年度一三・一%、四十九年度はそれが一三・〇%と、わずか〇・一%低下しているにすぎません。やはり私は、率先して需要抑制耐乏型予算を組んだ、こういうのであれば、せめてGNP比率を、四十五年とか四十六年当時の一一%台ぐらいに落とす必要があったのではないかと思うわけであります。それと、補正後の予算と来年度の当初予算とを比較するというのは、やはり比較がおかしいという感じがするわけです、もしそういう比較をするとするならば。すなわち、比較すべきは、前年度補正後の予算と来年度、あるいは予想される補正後の予算とを比べるべきであります。第一、補正後と当初予算では一年も経過しておりません。そういうことからしまして、私は、いわゆる抑制型という呼びかけにかなりの疑問を持つ次第であります。  それから、同じようなことを別のサイドからまた申しますけれども、財政収支についてであります。  政府の見込みでは、財政資金の対民間収支はといいますと、一般会計の散超は、前年度繰り越し金の四千五百五十億円だけであります。そして外為会計の五千五百五十億円の揚げ超とか等々含めまして、全体では三千五百億円程度揚げ超になるという説明になっております。したがって、この面からも需要抑制が期待される、こういう印象を与えております。  しかし、当然そういろ対民間収支には公債が入っておりません。公債につきましては、前年度に比べて多少減額になっておりまして、二兆一千六百億円でありますけれども、その公債の二兆一千六百億円を前年度剰余金と加えまして、いわゆる財政赤字幅はどれくらいかと見てみますと、来年度は二兆六千百五十四億円ということになります。これはどうかといいますと、前年度赤字額が二兆五千五百九十六億円でありましたから、需要を真剣に抑制しなきゃならないこの時期において、財政赤字は、むしろ若干ともふえているわけであります。ここでも、国民節約を呼びかけ、貯蓄を呼びかけながら、国民貯蓄をしたものを政府が使わしてもらうという形になっておりまして、どうもちょっとまずいのじゃなかろうかという感じがするわけであります。  公債は、赤字公債ではなくて、民間から集めた場合には、それを支出しても、確かに対民間収支には関係ありません。しかし、集め方にもよりますけれども、概して、民間の不活動資金が集められる、そして財政支出によって活動化されるということになりますと、やはり公債発行ということは、これは景気刺激的であります。私は、やはりこういう時期、公債発行をもっと控え目にすべきだろうと思うわけであります。  公債発行額を少なくするためには、当然歳出の伸びをもっと押える。それからもう一つは、租税面でもっと収入をふやすということだと思う。来年度は一兆四千五百億円の所得税減税計画されております。これは確かに、これだけインフレがきついと、われわれ国民というのは、やはり減税でも期待しなければということでございますけれども、長期的な視点及び論理の上からしますと、こういう時期というのは、需要抑制ということだけ考えますと、やはり減税ははなはだまずいと思うわけであります。ただし、インフレ補償ということも考えなければならない。  そこで、私は思うのですけれども、自然増収ということもありますし、インフレ補償ということも考えまして、減税をおやりになることは非常にけっこうでありますけれども、ある所得水準以上につきましては、たとえば一九七〇年に西ドイツが導入しましたような景気付加税のようなものを、法人税の超過利得税と並びまして所得税についてもかける、そしてこれは、インフレがおさまったらまた還付するというようなことが考えられないか、そして全体としては増税の形にしておく、これがすっきりさせる秘訣だろうと私は思うわけであります。いわゆる、低所得層あるいは中所得層につきましては、インフレ補償的な意味で減税を行なう、そして高所得層については、景気付加税をかけて、むしろ増税にするという形で、かりに全体として増税にならなくても、所得税減税が全体としてなければ、公債発行額は大体四分の一に減ると思うのです。その上に、インフレ抑制ということで、いろいろなところの歳出をもっとお削りになれば、この時代の予算として、私は非常にすっきりしてくるという感じがするわけであります。  それから、このむずかしい時代、流動的時代、初めから予算を確定するということは、大体が無理なことだろうと思うわけであります。かりに全体で三十数%社会保障費がふえたとしましても、これだけインフレがきつくては、やはり将来に不安を覚えます。現実にも不安を覚えておる。それからさらに、金融引き締めとか等々によりまして、中小企業の倒産、失業、社会不安ということも予想されないことはないわけであります。そういう、あるいはという事態に備えて、臨機応変の財政措置ができるように、予備費といいますのか、あるいは補正財源というのか、これをもっと多くしておく必要があったのではなかろうかと思うわけであります。  確かに、予備費は若干ふやされております。しかし、総予算のうちに占める割合はわずかに一・五二%であります。しかも、前年度一般会計予算全体に占める予備費の割合と比べますと、むしろ低下しているわけです。前年度予算における予備費の割合というのは一・六一%であったわけです。むしろ窮屈になっておるわけです。硬直的になっておるわけです。  私は、なまいきなことを言うようでございますけれども、予算当局の方々も、もう少し、変動する経済情勢に対して謙虚な態度であってほしいと思うわけであります。もっとも、できるならば、要するに歳出を押えて、そして、たとえば景気付加税とか等々もかけて、財政収支をよくして補正財源を多くすれば、予備費という形で初めから組み込む必要はないのであって、そうしておいて、議会審議を経て、いつでも弾力的に動けるようにしておくということが、こういう時代には必要であったのではなかろうかと思うわけであります。私は、要するにインフレ抑制型といっても、抑制がちょっと不足している、こういう印象を述べたわけであります。  それでは、一体どこが削れるかということであります。インフレ補償ということも考えますと、たとえば社会保障費とか、あるいは恩給費であるとか、あるいは中小企業対策費であるとか等々は当然に削れないわけであります。しかし、それ以外のところといいますと、たとえば防衛予算にしましても、あるいは、すでに減額になっております公共事業費にしましても、あるいは経済協力費にしましても、まだまだ削れるのではなかろうかと思います。非常時という意識があれば削れるのじゃないかと思います。  たとえば、経済協力費であります。確かに、経済協力関係というのは、最近非常にむずかしい局面になっております。したがって、経済協力のあり方をもっと考え直さなければならない時期に来ております。しかし、この国内の物不足基調の状態国際収支は非常に悪い、しかも石油の価格の騰貴とか等々によりまして、国際収支見通しは一そう暗い、こういう状況に、経済協力費を前年度に比べて二八・九%も、はたしてふやす必要があったろうかということであります。確かに、GNPに対する政府援助の比率は、一九七一年の数字でいきまして〇・二三%にすぎません。そしてこれは、UNCTADとか等々で合意されておりますGNPの〇・七五%という公的援助の割合に、まだほど遠いわけであります。それから日本の政府援助の比率というのは、他の先進諸国に比べてもまだ至らない、したがって、それを引き上げていかなければならないということは確かでありますけれども、時期が悪いんじゃなかろうかということです。せめてこういう時期は、まあGNPに対する比率が低下するようでは困りますけれども、GNP比率を現状維持というくらいの線でもよかったんではないかと私は思うわけです。まあ、諸般の事情をあまりよく知りませんので、かってなことを言いまして間違っているかもしれませんけれども、そう思うわけであります。  それから、国際収支赤字見込みについてであります。  財政資金の対民間収支の見込みによりますと、外為会計では、四十九年度先ほど申しましたように五千五百五十億円の揚げ超というふうに見込まれております。五千五百五十億円というのは、これは現在の為替レートで換算いたしますと、大体十八億ドルから十九億ドルということになります。はたしてそれぐらいで日本の国際収支赤字がおさまると考えておるのか、あるいは、そこまで減ったら、いわゆるクリーンフロートに移りまして、どんどんと切り下げを重ねるというおつもりか、私は非常に疑問に思うわけでありますけれども、現在の公的外貨準備――公的というのは、隠しがあるそうでございますので、隠し外貨を除いた公的外貨準備、これが大体百二十億ドル弱としますと、そこから十八ないし十九億ドルという政府の見込み額を引きますと、大体百億ドルという線が出てくるわけであります。百億ドルというのは、一般に、これはここまで減ったら切り下げるのではなかろうかというふうに見込まれている線であります。したがって、こういう数字をお出しになるということは、為替投機家を支持するような結果になりはしないかと私は懸念するわけであります。  それから、最後に、財政金融政策との関係について、一言私の意見を述べたいと思います。  私は、金融引き締め、インフレ対策としての金融引き締めにかなりの疑問を持っております。金融引き締めの結果としまして、もうすでに最近そういう傾向が出てきておりますけれども、設備投資が減ります。まあ、設備投資を減らすことが意図でもあるわけですけれども、設備投資が減ってくるわけであります。しかし、設備投資が減りますと、これは当然に物資の供給能力の伸びに関係してまいります。と同時に、設備投資伸びというのは、これは生産性の上昇率とも深い関係を持っております。そうしますと、こういうふうに金融引き締め基調が続きますと、将来、生産性の伸びが落ちてきてコストインフレがきつくなる、物資の供給能力の伸びも落ちてきて、ひょっとすると、需要をある程度押えていても物不足基調は解決しない、こういうことが懸念されるわけであります。  そういう状況でありますので、ますます財政の役割りというのは大きいだろうと思うわけであります。財政のほうでよほど心してインフレ抑制型にしないと、さっき述べましたような金融政策の、いわゆる副作用というのか、こういうものが表面に出てまいります。それを消すくらいのつもりでやらないとまずいのじゃなかろうかという感じがするわけでございます。  簡単でございますけれども、私の意見、これくらいにしたいと思います。(拍手)
  6. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  7. 井原岸高

    井原委員長代理 これより両公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。岡本富夫君。
  8. 岡本富夫

    ○岡本委員 両先生には、たいへん早くから御苦労さまでございます。貴重な御意見を拝聴いたしましたが、若干御質問を申し上げたいと思います。  そこで、まず肥後先生にお聞きいたしますが、先生は先ほど、今度の政府提案の予算には大体賛成のような御意見でありましたけれども、そこで、先生お話しになった中で、一つは税制の不公平、これについて、現在も非常に税制が不公平だ、こういうようなことをおっしゃいましたが、私たちもそう思っているのですが、これを改めるにはどういうように変えればよいのか、これが一つと、それから、大法人の超過利得ですね。これに対してどういうふうに徴収するのか、先生の御意見があったらお伺いしたい。これが一点でございます。  それから次が、先生のお話の中で、社会保障、米国をしのいでおるというようなことでありますけれども、しかし、西欧諸国に比べると非常に低い。たとえば、現実の問題を取り上げますと、老人年金ですか、これが三千五百円から五千円になったわけであります。最近の物価の狂騰、これから見ますと、とてもこれでは生活できない、こういうことでありますが、これをふやそうとすると、何といいますか、給付をふやそうとすると、どうしても掛け金をよけい取るとか、税金をよけいかけるとか、こういうようなお話でありましたが、これは積み立て方式の場合であります。われわれが主張しておりますのは賦課方式。すでに八兆円から九兆円近いところの年金の原資があるわけですから、これを賦課方式にすれば、決して増税をしたり、あるいはまた負担を大きくするということにはならないのじゃないか。したがってこの際、非常に物価狂騰して、きのうの公述人の先生のお話の中では、何といいますか、もうほんとうに暴動が起こるのではないか、こういうような際でありますから、国をやはり安泰にするためには、ここに思い切って社会保障制度を変えなければならぬのではないか。私、チャンスじゃないかというようにも考えておるのですが、先生の御意見。  それから、もう一つは防衛予算。私たちは、こんなときですから少し削ったらいいのじゃないか、こういうように考えておるのですが、なるほど防衛予算の中でその半分は人件費でありますから、現在自衛隊があるのですから、これはどうしてもしかたがないのですが、あとの防衛予算は何とかして削って、そして社会保障にでも回していくとかいうような、あるいはもう少し減額していくとか、そういった面を考えておるのですが、先生の御意見がありましたら、まず肥後先生からお聞きしたいと思います。
  9. 肥後和夫

    肥後公述人 どうもたんねんな御質問をいただきまして、かえって恐縮しております。  第一点の税制の不公平の問題を、一般的にどのように改正するかということでございますが、先ほども申しましたように、日本の税体系というものを、国も地方もあわせまして、あるいは国だけでもけっこうでございますが、ずっと見てみまして、個人課税の税金企業課税の税金とに分けることができると思いますが、その個人にかかっている税金については、先ほども申しましたように、資産所得軽課勤労所得重課になっている、あるいは個人消費を抑制し、貯蓄を優遇するというような形になっている。それじゃ資産所得優遇という点ではどのような点があるかと申しますと、これにつきましては、たとえば利子及び配当所得の分離課税の問題があります。ですから、配当でまるまる同額の所得をもらっている人に比べまして、給与所得でもらっている人は、ずいぶん負担が重くなっているというような面があるわけでございます。  それから、株の値上がり益と土地の値上がり益に対して、特に株の値上がり益に対しては、効果的な税制は現在ないと思います。土地の値上がりにつきましては、昨年土地税制改正があったわけでございますが、そして、まだ私個人としては、税制だけで土地の値上がりを抑制できるとは確かに思わないわけでございますけれども、税制分野でもいまよりはもっとやれるのじゃないかと思っておりますが、こういう点があります。それから、株式の値上がり益に対しては、全く有効な税制はありません。証券取引税だけでまかなっているという状態でございます。それから、その他給与所得に対しては、クロヨン、トーゴーサンというような批判もあるというわけでございます。  こういう問題について、特に、たとえば株式及び利子配当所得等に対する効果的な課税の方法はないか。株式の値上がり益に対する有効な課税手段が、現在の情勢ではまあない。たとえば、外国並みにタックスコードナンバーでもつけるということを国民が承知されれば、有効な課税の方法もありましょうが、いまではありませんから、それにかわるものとして、利子配当所得の分離課税の税率を上げ、将来は総合課税にもっていくというようなことが、一つの課題として考えられるのではなかろうかというふうに考えております。土地の値上がり益についても、私個人としては少しきびしくやれるのじゃなかろうかというような感じを持っております。  それから、超過利潤税につきましては、国会でもいろいろ御論議があるというふうに伺っておりますが、私個人の感触からいきますと、なかなか技術的にむずかしいというふうに、財政学の教科書では一般に指摘されておりまして、何を基準にするかとか、あるいはその税金をかければ、どうせ税金で取られるぐらいなら何らかの形で、たとえば人件費に回すとか、交際費に回すとか、いろいろな経費の必要以上の乱費になるとか、ほんとうに企業努力によってもうけた利益と投機的な利益との区別がなかなかつかないとか、業種によってもいろいろ差があるとか、いろいろな問題がありまして、やるとすれば、一律な課税のほうが望ましいというようなふうに考えるわけでございますが、外国で所得政策等を実際実施しているアメリカなりイギリスなりといったような国々を見てみますと、かなり超過利得税的なものも関連してやっているわけでございます。日本も、過去にそういう経験を何度か持っておりますけれども、国民感情の問題として、やはりこのインフレ利益を得ている企業を黙視できないという世論が高まれば、超過利得税は、あるいは設けなくちゃならなくなると思いますが、その場合、一般的な付加税率、一般的に税率を上げる方法をやり、むしろそういう超過利得を、要するに売り惜しみ、買い占めで価格をつり上げることによって超過利潤を発生させているような、特に市場のカルテル行為というものをもっと積極的に抑制することのほうが、むしろ基本的なあれではなかろうかという気もしているわけでございます。そういう意味で、たとえば独占禁止法なり、その他緊急生活安定法関連のその法律の積極的な行使ということを、むしろ基本にしまして、もし必要ならば、その上に、一般的な税率による超過利得税を設けるというふうな感触ではなかろうかと私は考えているわけでございますが、まあ、研究不足かと思われますので、むしろいろいろとお教えをいただきたいと思います。  二番目の問題でございますが、私は、課税最低限が、社会保障の進んでいる、たとえば西ドイツやイギリスやフランス、スウェーデンといったような国々よりも、日本の所得税課税最低限が非常に高いというだけじゃなくて、社会保障のおくれているアメリカよりも課税最低限が、三百円レートで計算しますと、今四十九年度所得税改正で高くなっている。これは一応、日本の現在のように年金も十分でない、あるいは住宅事情がよくない、あるいは税負担等にも必ずしも公正を欠く面がかなりある、こういうような事態でありますので、一応サラリーマン減税というのは、社会的な税制の公正という点からは、数歩の前進かもしれないとも思うわけでございますが、先ほど松永さんも御指摘になりましたように、私も申しましたが、一応需要抑制政策関連からいきますと、これは一つは問題があるわけですが、問題は、経済安定政策だけじゃなくて、所得再分配政策という観点も重要なんだという点からは、一応すなおに喜んでもいいのではなかろうか。クロヨン、トーゴーサンの問題の解決に数歩前進を見たという点で、そう思っているわけでございます。  先ほど、年金の問題について一応取り上げられましたけれども、日本の社会保障給付水準の中で、年金の占める割合は非常に小さいわけでございまして、ヨーロッパの国々が社会保障給付水準の中で、医療と年金はほぼ半々、あるいは年金のほうが大きいという実情から見て非常に問題であり、今後充実をしなければならないわけでございますけれども、ただ、その方向として、賦課方式のほうが望ましいということは、私も全く同感でございます。ただ、積み立て金がなくなってしまいますと、直ちにその年金保険料の負担が大幅に上がるという事態が一応の計算で出ていると思います。もしその年金保険料の大幅な引き上げをしなければ、逆に、今度は国庫負担を相当にふやさなければならない。ところが、これは一年ではなくて、長期にわたってそうなる。社会保障給付その他の消費関連財政支出というものは、非常に伸び縮みがありませんで、一たんふえたら直線的にふえていくという傾向がありますので、長い目で見たその財源負担に、十分に耐えられるということが一応保証されなければならない。  そういう点で、先ほども申しましたように、日本の税負担社会保険料負担を合わせますと、西ドイツあたり、あるいはフランス、イギリス、こういう国々が、国民所得の大体半分近くを税金社会保険料負担にさいているという実情に対しまして、日本の場合には二三%ぐらいのものでございますから、これは要するに、全体としてこういう社会保険料や税金負担がふえるという――どういう形でふえるかは別ですが、ふえるということについての国民的なコンセンサスというものがなければ、なかなかたいへんな問題が起こってくるんじゃないか。そういう意味で、なしくずし的に、いままで高度成長をささえてきた人たちがこれから老境に入ってくるという意味で、十分に社会的にこれらの人々の労に報いなければならない。そういう意味で、年金給付の改善ということは必要だと思うのでございますが、その財源面の慎重な配慮というものを、むしろ国民一般に理解していただきたい。  福祉国家を建設するということは、なまはんかな覚悟じゃできないということを、やはり先ほどから訴えているわけでございまして、そういう意味で課税最低限を上げる、税金が軽くなるということは、給与所得の場合には、それはそれとして意味があるわけでございますけれども、税負担一般という点から、税負担が軽くなるということを手放しで喜ぶということは、福祉国家の建設がそれだけおくれるということにもなりますので、長期的な観点からいったら、課税最低限だけを引き上げていくという税制改正の方向が、はたして手放しで喜んでいいものやらどうやらという意見を、先ほどは申し上げたわけでございます。  三番目の防衛予算でございますが、これは、現在予算の中に占める割合はかなり低い。一割に満たない。七、八%であろうかと思っているわけでございますが、その中の人件費を除きますと、さらに小さくなるわけでございまして、これから大きくなるところの社会保障関連の経費を、それを削れば、それで十分まかなえるという程度のしろものではなかろうと思いますので、社会保障充実ということについて腰を据えようとするならば、やはりその程度の財源ではとても足りない。長期的に足りないということになりはしないか。防衛費を全くなくすべきかどうかという点については、それぞれの立場について意見の違いがあろうかと思いますが、一応財政技術的に見て、そんなものではとても足りないのではなかろうかと考えている次第であります。
  10. 岡本富夫

    ○岡本委員 先生の御意見の中で、超過利得の課税、これに対して、それよりもやみカルテルをもっと摘発したり、あるいは売惜しみ買占め法でもっと十分やればいいじゃないかというような御意見だったのですが、それはこれから先のことでありまして、いますでに昨年から国会でまた非常に問題になっている。こんなことがもう一度行なわれるというようなことは、社会情勢として許されないと思いますから、おそらく今後はないのではないかと思いますけれども、これはわかりませんが、すでにこうして巨額な利得を得ているわけです。特に大商社、大法人、これはたいへんな利得を得ていまして、分配のために大入り袋なんか出したり、あるいはこれを隠すために、今度の三月決算では相当苦労しなければならぬというようなことですから、これは交際費に使ったり、むちゃくちゃに使うのではないかというような話でありますけれども、そこのところは、いまからやはり警告をして、そうではなくして、まあ、これは大蔵省の分野になりますけれども、やはりそういった超過利潤をきちんと取るということが一つは大事ではないかと思うのです。  それからもう一つは、先生は、福祉国家にしようとすると非常にむずかしいんだというお話でありますが、その中で、大体八兆、十兆、大方十兆近いこの年金のプールがあると思うのです。これはなぜこんなにふくらむかと申しますと、ことしだけでも大体一兆二千億ぐらいの年金が集まっておりますね。これと、それから約八兆から十兆、ちょっと数字があれですが、たとえば九兆でもよろしい。これは財政投融資でみんな安い金利で貸しているわけですけれども、この金利だけでも約五千億くらいあると思うのですね。まず一ぺんにいかなくても、たとえばその一兆二千億とそれから利子ですか、この五千億を足すと一兆七千億ですか、これだけでもまずお年寄りに渡せば、六十五歳以上で約二万円は渡せると思うのです。そういうようにして老後が安定するんだ、こういうことになれば、私は、若いとき年金をかけるのも少しも惜しまなくなってくると思うのです。  ぼくはヨーロッパへ参りましたが、税金を払うのはあたりまえだ、あるいはまた、そうした負担をするのはあたりまえだ、そのかわり老後はこう安泰になるんだという政治に対する信頼がありますね。わが国では、どっちかというと、税金というと、取られる、取られるという感じですね。あと、何に使われているかわからない。この税金の監視が行き渡っていないといいますか、出すまでは国民もみんななるべく出さぬように、出したあとは知らぬ顔しているというのが非常に多いわけですが、ということは、やはり国民が政治に対する信頼を持っていないところに問題がある。ですから、私はやはり政府が信頼を取り戻すような政策をここでとらなければならぬのではないか。巷間伝えられるところによると、政府が打ち出すと、それに対して反対をやれば大体もうかるのだとか、うまくいくのだとか、そういうような非常に不信感がある。したがって、私は、一ぺんに福祉国家にはいきませんけれども、その一つの前提として、全部の年金の基金になっておりますから、これをプールしてあるのをすぐこわしてしまうわけにはいかないと思いますけれども、そこらからやっていくというようないい機会ではないか、こういうように考えるのですが、もう一ぺん先生の御意見、ありましたら伺いたい。
  11. 肥後和夫

    肥後公述人 その福祉国家では、税金というものは、やがて自分のところにまた戻ってくるのだという信頼感があるというお話でございましたが、私もスウェーデンへ行きまして、ごく平たい町の人たちに聞いてみて、その感がありました。税金は重いけれども、いずれ自分のところへ返ってくるというあれでございます。そういう意味で、先ほど税制税負担の公正とか、支出をもっと国民生活優先の方向で支出するとか。もちろん日本のような資源のない国では、今後とも、やはり輸出ということを軽視するわけにはいきませんけれども、それも程度の問題でありまして、やはりもっと国力に応じて国民生活に還元していいんじゃないかと思っておりますので、全くお説については同意見でございます。  それから、申すまでもありませんが、ヨーロッパの年金は大体みんな賦課方式になっておりまして、その年の老人に対する年金の給付は、その年の働いている人たちの年金保険料なり、税金なり、そういったものでまかなわれているわけでございまして、できるだけ方向として、いま老境に入りつつある人々についての福祉充実をはかっていく、年金給付を引き上げていくという方向で問題を進めるという点では、先生のお説に私も全く同感でございます。  技術的な問題につきましては、準備をしませんで申しますと、あとでまた、おまえは何も知らないのに無責任なことをしゃべったと、専門家からまたおしかりも受けますので、その方向で考えたいという点では、私も全く同じ意見でございます。
  12. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、松永先生にお聞きいたしますが、来年度の世界経済は、各国とも一様に景気の後退がするんじゃないか、相当景気の落ち込みがあるのではないかというようにもいわれておりますが、もちろん、これは原油問題がからんでいるわけだと思いますけれども、先生は国際経済学者ですから、世界経済見通しと、それからわが国の、現在外貨の準備高は、大体先ほどお話しのように百二十億ドルですか、これが現在ある。しかし、百億ドルを割るとクリーンフロートになるのではないかというようなお話でありましたが、そこで、世界経済見通しと、それからもう一つは外為会計ですが、たとえば早い話いいますと、六十億ドルあるいは四十億ドルに下がっても、円の切り上げというようなことにはならないのじゃないかというような点について、まあ、これは昭和四十年、四十一年、四十二年、この線から一ぺん見通されて、ひとつ御意見を承りたいと思うのです。  それが一点と、それから、先ほど税制の不公平ということがありましたけれども、税金についてですが、先生は、低所得者に対してはインフレ補償ということで大幅減税が必要だ、しかし、大法人あるいは高額所得者に対しては増税すべきであるというように主張されておりましたが、私もそのとおりだと思うのですが、中所得者、これはどの程度の所得というように考えておられるのか、これが一点、それに対する御意見がありましたら伺いたい。  それからもう一つ、公共料金について、政府は米価あるいは国鉄運賃引き上げを半年延ばしたということでありますけれども、私は、少なくともインフレが鎮静するまでは、公共料金引き上げは行なうべきではないのではないか。公共料金というものが物価上昇に非常に大きな役割りを果たしますので、これについての御意見。  それから、先ほど防衛費予算について話を聞きましたが、その程度ではというのが肥後先生の御意見でありましたけれども、私は、先ほど先生の話を聞いておりまして、この際まず物価を下げる、インフレ抑制するという、こういう予算でありますから、あらゆる不急なもの、そういったものを押えるために、そうして、もう一度補正予算で何とかするとか、そういったためには、この点についての、私は大幅に削減したほうがいいんではないかというような考えを持っておりますので、この四点について先生から御意見を承りたいと思います。
  13. 松永嘉夫

    松永公述人 まず第一に、来年度の世界の景気見通しでございますけれども、これは先のことですので、またどういうことが起こってくるかわかりませんので、なかなか見通しは立てにくいのが普通だろうと思います。しかし、もう現在すでにアメリカにおいては失業率がかなり高まってきている。そして西ドイツあたりにおいても失業率が高まってきている。したがって、両国とも金融緩和に転じつつある、こういう状況であります。したがって、アメリカにしましてもあるいはヨーロッパ諸国にしましても、もうすでにスタグフレーションというのが、要するに、物価は上がり、景気は悪いという状況になっているのではなかろうかと思うわけであります。そうして金融緩和の方向に向かってきておりますけれども、御指摘のように、石油の問題がございますので、そう思い切った緩和ということもできないということでありますと、要するに景気は、そういう金融緩和とか等と、要するに失業率の問題はアメリカのアキレス腱だものですから、これは何としても低めなければならないということで、アメリカの景気は、何カ月か後には若干上向いてくるだろうと思います。  それからもう一つ、アメリカもあるいはそうかと思うのですけれども、ヨーロッパ諸国には、こういうコストインフレーション、スタグフレーション、これを解決する方法は、結局は、ある程度の成長の刺激であるという考え方が広まってきているようであります。国際収支事情とか等々で、イギリスあたりはそういう考え方を持ちながらも思うようにできない、それから石炭ストとか等々でできないという事情はありますけれども、たとえば、フランスあたりもそういう方向をとってくるのではなかろうか。そのために、私は、ヨーロッパ共同変動相場制、ここからフランスが離脱した一つの原因があるのではなかろうか。そうしますと、再び世界経済は、何カ月か後には上昇してくるだろうと思うわけであります。  しかし、当分はどうかといいますと、これは第一の質問の中の二つ目にあたる外貨準備の問題にからんでくるわけでありますけれども、日本の国際収支はどうかといいますと、当分は――向こうが景気がよくなってくれれば、国際収支もよくなってくるわけでありますけれども、しかし、当分はやはり日本の国際収支は悪化の一途だろうと思います。もっとも、石油関連以外の原材料は、いわゆる世界経済のある程度の縮小化によりまして、国際価格が低下するということも考えられたいわけではないわけです。したがって、石油関連以外の原材料の輸入額というのは、伸びが少なくとも低下してくるということが考えられないわけではないのですけれども、何ぶんにも原油価格の高騰、それから日本の国内の卸売り物価のものすごい高騰、外国に比べてのですね。そういうことで、輸出競争力も今後失われてくるのではなかろうかという感じがします。したがって、国際収支は当分悪いという感じがしてしようがないわけであります。  そういう状況において、当然に為替レートの問題が出てくるわけであります。国際収支が悪ければ、為替レートは現在一ドル三百円弱でありますけれども、これが一そう切り下がってくる、こういう感じであります。しかし私は、こういう状況でありますので、要するに、国内のものすごいインフレーションという状況において、やはり切り下げはできるだけ回避していただきたいと思うわけであります。一月七日の日に二百八十円レートから三百円レートヘと変えられましたけれども、あれにつきまして、私はどうも十分に理解できないわけであります。切り下げによりまして、当然に輸入原材料、石油も含めましてますます輸入価格が高くなる、食料品も高くなる、その他輸入品も高くなる。その他輸入品も高くなれば、当然にそれによって国内の競争産業が値上げしやすくなるということがございます。それから、切り下げによりまして、あの程度の切り下げで輸出が一そう促進されるかといいますと、国内のインフレを考えますとかなり疑問でございますけれども、やはり輸出がふえますと、それだけ国内の物不足に負担がかかる、こういうことで、世界の切り下げ競争、いわゆる世界的な不況が予想される、あるいはもうすでに海外においてはそうなっている状況で、切り下げ競争の先べんを切るということで、海外からの非難も受けますけれども、国内の事情を考えてみましても、切り下げはぜひとも避けるべきだと思うわけです。  そこで、外貨準備が百億ドル、この百億ドルというのが普通の見方であります。百億ドルに行ったらおしまいと言えばおかしいのですけれども、切り下げだ、また切り下げだということですが、こういう百億ドルという考え方を改める必要があるのではなかろうかと私は思うのです。  外貨準備というのは、いわば国を一つの大きな世帯と考えますと、われわれの世帯のたくわえ、貯金のようなものであります。われわれはなぜ貯金をしているかというと、将来どんなことがあるかもしれない、そのときにあわてふためかぬでもいいようにというところで貯金をしているわけであります。要するに、非常時であったら思い切って貯金は使うべきものだと思うわけであります。したがって、外貨準備が百億ドルの線に行ったらおしまいだという考え方は非常におかしいと私は思うわけであります。  大体、日本が円の切り上げを最初に行ないました一九七一年、昭和四十六年の初めに、日本の外貨準備はどれくらいであったかであります。もうすでに黒字がずっと何年も続きまして、一部では円の切り上げということが相当うわさにももちろんなっておりましたし、円切り上げをむしろ早くやったほうがいいという考え方も相当にあったわけです。その状態においてどうであったか。外貨準備は六十億ドルにすぎませんでした。それから考えてみても、百億ドルで不足するというのは理解できないと思うのです。百億ドルというのは、大体日本の現在の経済規模からして世間並みの水準というところだろうと思うのですね。まあ、確かに世間並みの水準以下にたくわえが減るということは、これは心配なことでありますけれども、しかし、現在はいわば日本経済非常時であります。切り下げればさらにインフレが加速される、こういう状況では少しでも現在のレートを守るべきだろうと思うわけであります。  先ほど四十六年の初めに六十億ドルと申しましたけれども、四十三年の春、これは四十二年の国際収支赤字を受けまして、四十三年の春には日本の外貨準備は二十億ドルを切りまして、十九億ドルも切っていたわけであります。十八億ドル台であったわけです。こういうこともあったわけです。そう何年前でもない、六年くらい前であります。まあ、そのときはさすがに海外でも円の切り下げのうわさが出ました。そして、その当時、たしか国際金融局長をやっておられました柏木さんが、われわれの学会でおっしゃったことは、せめて三十億ドル外貨準備が持ちたい。われわれは三十億ドルも必要ないだろうということを言ったわけであります、二十四、五億あればいいだろうと言いましたら、せめて三十億ドルぐらい持って、多少通貨当局にゆとりを持たしてほしいとおっしゃったわけであります。それからまだ数年しかたっていないわけです。その二十億ドルの五倍もの外貨準備がどうしても必要だというのは、これは言えないと思うのですね。そういうことですから、私は、隠し外貨もあるという話でございますので、できるだけやはり現在の円のレートを維持してほしいと思うわけであります。  私は、まあインフレというのは国内の問題であるから、国内の対策で処理すべきであるという考え方が一部の学者の間にありますけれども、インフレはできるならば、国内の対策でももちろん一生懸命やるべきでありますけれども、為替政策とか等々も利用すべきだ。現在のインフレの原因はいろいろありますけれども、一つは、外から入った外貨が原因になっております。したがってそれをもとへ戻すと、七一年当時に戻すとしましても、まだまだ相当戻さなければならないわけであります。これが要するにかなり大きな原因にさかのぼった対策であろう、そういう意味で、為替政策というのを、インフレ対策として、もっと重視すべきだろうと思うわけであります。  それから第二に、インフレ補償ということも考えまして、低所得層については大幅な減税、そして高所得層については、たとえば景気付加税のようなものを加えまして、こういうインフレ時代に増税にするというのが、そして全体として増税になるようにするのが、いわゆるこういう時代の筋であろうと私が述べたことに対しまして、一体低、高というけれども、その中間の中所得層というのはどこら辺であろうかということでありますね。これは非常にむずかしい問題でして、私はそれほど専門ではございませんので、肥後さんにお聞きになったほうがむしろいいかと思いますけれども、おそらく学問的には答えの出てこないあれだろうと思います。要するに、感じで言うよりしょうがございませんけれども、私自身まあ中所得層だろうと思います。そう考えますと、大体、こういうものすごい物価上昇で、ほんとうに生活が脅かされているのは、いわゆる低所得層ですね、これは年間所得三百万円以下というところだろうと私は思います。そしていわゆる中所得層というのは、いままで多少ゆとりがあったわけですから、そのゆとりがかなり狭められたということで、それほどまだ被害を受けていないと思うのですね。これは私大体三百万から五百万という線だろうと思います。  そこで私は、非常に大ざっぱな議論をしますけれども、たとえば所得減税を各所得層について一斉におやりになる、そして中所得層については景気付加税でそれを帳消しにする、高所得層については、減税分以上に景気付加税をかけるというようなあり方が一つ考えられるのではなかろうかと思うわけであります。非常に大ざっぱな印象みたいなことを述べまして申しわけございません。  第三番目に、公共料金の問題でありますけれども、財政学の教科書を読みますと、たとえば以前にOECDが勧告した内容の中で、インフレ対策として公共財の値段を上げる、そうやって消費需要を押えるというような提案が載っておりました。したがって、今日の日本における考え方とまるで反対の考え方であります。しかし、日本の場合はどうかといいますと、やはり公共料金の値上げというのが一番国民の注目の的になるわけであります。そして、公共料金の値上げによりましてインフレムードがますますあおり立てられるというのが日本の現実であります。そういうことからいいまして、岡本先生がおっしゃいましたように、やはり公共料金はできるだけ押える。米価及び国鉄料金あるいは郵便代、こういうものの値上げを引き延ばされるわけですけれども、もっともっと延ばしていただきたいというのが、やはり国民の願望であろうと思います。  そのためにはどうかであります。以前にある人が言っておりましたけれども、今日のようにインフレがこういうふうにパニック状態になっていないころであります。インフレ対策としてどうしたらいいかということを話しておりましたときに、こうおっしゃった人がおります。要するに公共料金を上げなければいいんだ、そして公共料金、要するに公共財、公共サービスというものを提供する企業というのは、政府資金に大きく依存している、したがって、その金利を安くすれば、公共企業というのは値上げをしなくでも済むのじゃなかろうか、こういうことをおっしゃったことがございます。私、先ほどの話の中で、最後に金融政策についての疑問をちょっとお話しましたけれども、金利を下げる、これがインフレ対策につながるということも、ある程度は考えなければならないのじゃないかと思います。  それから四番目、インフレ抑制ということを第一に置いて、たとえば防衛関係費とか等々、もっとそういった不要不急のものはこの際は削っておくべきだ。また状況が変わって、インフレがおさまり、そして国内の景気も悪くなれば、またまたふやしていいのかどうか知りませんけれども、ふやすということも考えられるから、この際は削っておくべきだということにつきましては、私もそのとおりだと思います。そして、不要不急のものをできるだけ削って、そしてそれを補正財源として一応とっておく、これがこういうインフレ時代において、いわゆるインフレ補償をより充実するためにも必要なことだろうと私は思います。
  14. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもありがとうございました。
  15. 井原岸高

    井原委員長代理 八木一男君。
  16. 八木一男

    ○八木(一)委員 肥後先生と松永先生から貴重な御意見を伺わせていただきました。心から感謝をいたします。簡単に御質問をいたしたいと思います。  最初に、肥後先生にお伺いをいたしたいわけでございますが、先ほど超過利得といいますか、超過利潤といいますか、それについての課税をすべきであるということを御議論になっておりました。各政党でもいま研究をしておるわけでございます。方法論については懸命に考えていかなければならないと思いますが、それが実現をいたしましたときの国庫に対する収入、これはそのような超過利潤を取られるような行動をしたものたちのために、国民が非常に生活を圧迫されているということから考えて、それで吸収をされた金は、生活を破壊された人たちのために当然使うべきものであると私は考えているわけでございますが、それについて肥後先生の御意見を伺わしていただきたいと思います。
  17. 肥後和夫

    肥後公述人 超過利得税を取って、それでインフレから被害を受けた人々に対する給付財源に充てろというお説を伺ったわけでございますが、どうせ、こういう異常事態インフレが続きますのは、そんなに長くない時期であってほしいと思うわけでございますが、そうであるとしますと、一般にそうでありますように、超過利得税は臨時的な税金になって、おそらく一年か二年で終わってしまうということになろうかと思います。  これについては、これを吸い上げて凍結するという、いわゆる経済安定に使う考え方と、それからいま御指摘のように、所得再分配の手段として使うやり方と両方あると思いまして、それはまず、いずれもけっこうであろうかと思うのでございますが、超過利得税をかけて一体どれぐらい有効に取れるかというところが、私、必ずしも十分に確信を持ちませんので、非常特別の税金として、社会的な公正の期待にこたえるために必要であるというようなことはわかりますが、これはたとえば累進課税がいいのか、あるいは、かなり業種別に選別してやるのか、あるいは、一般的な付加税率の引き上げといったような形でやるのか、これらについては、私は教科書をフルに、一般的には一般税率のほうが技術的にはいいというふうにいわれていることぐらいしかお答えできないわけで、その使い道については両方ありまして、その両方とも十分にあれだと思います。  ただ、日本の予算制度は、御承知のように単年度予算になっておりまして、吸い上げたものをいつまでも必要な間凍結しておくということはできない仕組みになっておりますが、これはフィスカルポリシーのロジックだけからいえば、そういうふうに一応必要である間は、取った税金が凍結できればやはり一番いいのではなかろうかと思うわけでございます。ただ日本では、たとえば増税しても、それを、結局あるからといって使ってしまえば、むしろ増税しない前よりも需要を刺激するのじゃなかろうかというような考え方もかなり根強くありまして、だから一兆五千億の所得税減税はいいんだという考え方も、この抑制型予算が出る前にはかなり強力にあったことを覚えている次第でございます。ちょっと蛇足になりました。
  18. 八木一男

    ○八木(一)委員 私は、総需要抑制してインフレを食いとめなければならないということは大事だと思うわけであります。それは全体で、いま両先生からお話が出たような、当然担税力のある者から税金を取るというような形とか、あるいはまた、不要な公共投資等や、あるいは防衛費に金を回すというようなことをやめるとか、そういうようなことを軸としてやるべきだと思うわけであります。ところが、いま考えられている超過利得、超過利潤に対する課税のもとは、そういう大資本や大商社やその中の悪徳なものが隠匿あるいは買い占め、売り惜しみ、便乗値上げをやって国民を苦しめておって、苦しんでいるのはまあ国だといえるかもしれないが、直接苦しんでいるのは、特にぎりぎりの生活をしている人が苦しんでおるわけであります。ですから、当然それは時期的なズレがありますから、松永先生からもお話があって、また肥後先生からもお話があったと思いますが、すぐに、たとえば四十八年度補正予算で対処をするとか、あるいは四十九年度で対処をするということは時期的なズレがありますけれども、しかし、それで徴収した財源は、時期的のズレはほかのほうで調整するとしても、これは生活を圧迫をされた人たち生活を確立するために使うということが当然ではないかと思うわけです。一応それだけはやはり吸い上げるわけですから、総需要抑制のほかにさらに需要抑制するように吸い上げるわけですから、それが生活を圧迫された方に使われても、別な面の総需要抑制するということに、少しずつの時期的なズレがあったとしても、それは対応できると思いますので、当然そういうものは、生活を圧迫される人たちのために使う財源として考えていかなければいかぬと考えておるわけですが、もう一回ひとつ伺わしていただきたいと思います。
  19. 肥後和夫

    肥後公述人 社会的な公正を前進させるという先生のお考えは、それとして筋の通ったものだと私は理解いたします。
  20. 八木一男

    ○八木(一)委員 肥後先生から社会保障をもっと伸ばすべきであるという御意見を伺いまして、非常に力強く存じておるわけでございますが、実は、社会保障は今度いささか伸びたようなかっこうをしておりますけれども、私どもの理解では、全く程度の低いものであるというふうに考えておるわけであります。  いまインフレが問題になり、総需要抑制が問題になっておりますので、問題が少し見失われがちでございますけれども、昭和三十七年に社会保障制度審議会が出しました大きな勧告では、昭和三十六年度を基準といたしまして、昭和四十五年に、十年前の昭和三十六年の先進諸国水準に追いつく計画を出したわけです。非常におくれた計画であります。その計画ですら、昭和四十五年度には、一般財政支出の中の少なくとも二割五分は社会保障費として出さなければならない――少なくともでございます。それが、いま社会保障費が伸びたようなかっこうになっておりますけれども、それから比べると、はるかに少ないわけであります。そういうことのために、非常に実際的なものがおくれているわけであります。  たとえば、一番底辺の社会保障の基盤であります生活保護費については、昭和二十六年、七年、占領行政からそうでない行政に移るときに、普通の生活水準の五四%、ところが今度二〇%生活保障を上げると称して上げた結果、まだ五二、前より減っているわけであります。  でございますから、その中で、政府が主観的に努力をしたということは考えられますけれども、国民の立場、社会保障の立場、特に憲法第二十五条で規定されておる日本国憲法の立場から見れば、社会保障費は、この予算の中でたいへん少ないというふうに私どもはかたく信じておるわけでございますが、肥後先生の御見解をひとつ伺いたいと思います。
  21. 肥後和夫

    肥後公述人 先生は社会保障について非常にお詳しいということは、前から伺っているわけでございます。  御承知のように、現在の社会保障長期計画で見ましても、一応五十二年度までに、たとえば振替支出で見まして、国民所得の現在の六%台から八・八%、そこまで上げなければならないということでございますが、過去の例について見ますと、国民所得に対する振替支出の比重、あるいはこれは社会保障給付比率でもけっこうでございますけれども、これを一%上げるのに十年くらいかかっているかと思います。  そういう意味で、社会保障をかりにこの長期計画の一応の水準まで上げるというためには、かなり従来とは違った、思い切った発想というか積極的な姿勢をとらなければならない。もちろん、年金等の成熟の度合いが違うという点もありましょうが、おそらくそうであろうかと思います。そして、その率でいきますと、このように物価が騰貴いたしますと、分母の国民所得の名目価値がどんどんふくれていきますから、比率としてはなかなか上がらないのではなかろうか。一時、日本のように成長率の高い国では、むしろ率よりはやはり額なんだ、率で考えるのは、実情に合わないというような意見が出たこともありますが、一応現在の給付水準なり振替支出率で見て、西欧福祉国家のほぼ三分の一にしか当たらないという現状からいきますと、やはり経済大国の国力にふさわしい社会保障給付水準国民の最低限の保障ということは必要かと思うのでございますが、とにかく、なまなかではこの基準目標にはなかなか到達できないという感じが私もしておるわけであります。  ただ、私、そういう意味でも申し上げたわけでございますが、社会保障給付水準を上げるのには、西欧の例で見ましても、たとえば社会保険料負担でも日本の三倍近く、あるいは三倍以上になっている国も、西ドイツなりフランスなりあると思います。税金まで――社会保険でやる国もありますし、あるいは政府のサービスとして公営で行なっておるところもありますので、税金社会保険料負担とあわせて考えなければならぬと思いますが、そういう意味でも、長期的な観点からいえば、税金が軽くなるということを喜んでいるというだけでは、問題はなかなか大きくは前進しないだろうと思っておりますので、先ほど所得税課税最低限引き上げについても、現状では一応喜ばしいニュースではありますが、長期的には、なお問題が残されているということを申し上げた次第でございます。
  22. 八木一男

    ○八木(一)委員 松永先生にお伺いをいたしたいと思います。  実は本年度予算案が決定された日が一月の二十一日であったと思います。そのときに閣議決定がされて、その前に十二月の末に閣議了解がされておるわけであります。その了解をされた事項が、経済見通しをもとにして予算を作成されているわけでございますが、それが、一月の末に幾ぶんかのものが、見通しが変えられているわけであります。もちろん、石油の価格その他から変わっているわけでございます。鉱工業生産指数なども変わっておりますけれども、特に卸売り物価について見通しを一月に変えて、それをもとにして予算案を決定しておられるわけであります。  ところが、消費者物価の十二月の全国の平均が発表されたのが、少し時間的なズレがありますが、一月の二十五日でございました。同時に一月の東京の区部の消費者物価指数が発表になりましたが、ともに異常な高騰を示しておるわけであります。これは四十九年度経済見通しでございますから、政策努力でどうなるこうなるという説明を無理やりにつけようとしているわけでございましょうけれども、この異常な高騰が起こった以上は、経済見通しが変わらなければならない。したがって、それをもとにしてつくった四十九年度予算案も考え直さなければならないということになろうかと思うわけであります。特に、卸売り物価についてはこれを訂正して考える。ということは、何か産業界については非常に熱心に考える。石油とそれから鉱工業生産指数、卸売り物価というようなことだけの見通しを変えておる。しろうとでございますけれども、このような感じがします。消費者物価について状態が変わったのに、見通しを変えないのは――消費者物価が変わったならば、そのような消費者物価上昇によって生活に困る人に対応の予算に変えなければならないというようなことになるわけでございますが、時期的なズレは少しあっても、そういうことを踏んまえたならば、そういうように消費者物価が急騰した状況見通しを変え、そして予算案を組み直すということが当然ではないかと思うわけであります。  そこで、先生が予備費のことをおっしゃいました。見通し得る国民生活を守ることについては、予備費じゃなくて対処すべきだろうと思います。しかし、そのようにどんどん物価なりいろいろなものが変わってくるわけでございますから、そういう意味で、予備費を国民生活防衛のためにとっておくということも必要であろうと思いますが、それが前年度より比率が落ちているというお話でございました。  そういうことを考えますと、四十九年度予算案は、こういうときでございますから、予算編成した政府としては、主観的にいじくりたくないということがあっても、このような変動期に、国民負担を考えたら、そのような変なメンツは捨てて、しっかり予算を考え直す、与野党相談して予算を組み直すということが当然なされるべきものであろうと思いますが、松永先生にお考えを伺いたいと思います。また、肥後先生にもひとつお考えを伺いたいと思います。
  23. 松永嘉夫

    松永公述人 とにかく十一月から十二月にかけての卸売り物価上昇の様子は、一月に入りましてから日銀から発表されたわけです。一月の間に七・一%上がった。これは年率にしますと、瞬間スピード一二七%以上、要するに一月の間に年率で三倍近い物価上昇ということがわかったわけです。こういう状態が、異常な買い急ぎであるとか売り惜しみであるとか、いわゆる仮需要とか、そういうものによって起こったものであって、その後、国がおやりになっておりますいろいろな売り惜しみ防止のための施策等々によりまして、こういう異常な物価上昇は当然落ちてくるだろうと思いますけれども、やはりそう急に勢いが減ずるというものではないだろうと思うわけでございます。  そのように、年率にしまして三倍近い、昨年十二月の、前年十二月に比べての上昇率でも三〇%に近い、こういうことですね。こういう状態でありましたら、当然に一九・七くらいの一般会計予算増加では間に合わないということは言えるだろうと思います。したがって、当然、こういう状態が今後ともある程度続けば、完全に予算の考え直しということが、どうしても必要にならざるを得ないだろうと私は思います。しかし、現在、こういうインフレ状態に置かれている状況での予算としましては、要するに国民一般に与えるPR効果ということもできるだけ重視しまして、当初予算は押えておくべきだろう、そう思います。
  24. 肥後和夫

    肥後公述人 予算政府原案ができる前には、一般会計予算規模は、二〇%をこえて二二%ぐらいが考えられていたと思うのですが、これは、いままではふやす予算だけになれていた際に、思い切って公共事業費を削減したということは、予算編成での上向きの圧力というものを考えますと、これは、やはりかなり努力をされたものだというふうに、つい評価せざるを得なくなっているわけでございます。  先ほども申しましたが、松永さんもおっしゃられましたけれども、ほんとうに経済安定を考えるならば、やはり増税も考えるべきだ。そういう意味で、確かに、西ドイツでやっておりますような付加税をかけて、取ったものを凍結しておくぐらいの手段が講じられれば、さらにいいんだろうと思います。  ただ、実際にいろいろ見ておりますと、景気刺激の予算編成は非常にやさしいけれども、景気抑制予算編成というのが、いかにむずかしいかということをよく痛感しますので、とすると、このぐらいのところが、いまのコンセンサスでは、精一ぱいのところかなというような早わかりをしてしまいまして、一応、政府努力は評価できるのじゃないかと考えた次第です。  御承知のとおり、実際には、いろいろ繰越明許費やら国庫債務負担行為やら、予備費あるいは財投での若干のすき間のほかに、制度自体としてそのような運用もありますので、締めるということについても、あるいはふやすということについても、特に公共事業を中心にする場合には可能であると思います。この物価高騰に対応して消費関連政府支出面について、たとえば手直しをすべきであるかどうかという点につきましては、このインフレで一番被害を受けた階層は、やはり生活保護なり年金なりで生活している人たちであったということを考えましても、物価の安定という点に当面最大の重点を置くというのが、適当なのではなかろうかというふうに考えている次第でございます。  経済見通しというのは、あれは一応こういうふうにありたいから、予算は、民間投資あるいは個人消費あるいは国際収支の動向等を考えれば、この程度でなければならないというような形に落ちつく努力目標でございますので、要するに、卸売り物価消費者物価の見込みが、かなり実際よりも甘いんじゃないかという点は、御指摘のとおりでございますが、まあ、そうありたいというような一つの、非常にことばが悪いのですが、ある意味では、作文になっておりますので、この際は、むしろそれにこだわりなく、とにかく当面物価の安定に努力をすべきではなかろうか。そういう面では、過去にありました過剰流動性等は、これまでの努力と、それから今後の努力、それから国際収支赤字になったこと、その他によってむしろ底をつきかけているというような感触もありますし、公共事業の抑制もきくのには、やはり半年から十カ月近くはかかると思いますので、これからがむしろ景気抑制政策のきき目のあらわれる山場ではなかろうか。  そういう点で、地方財政面でも、やはり地方財政需要というのは非常に緊迫しているのにもかかわらず、この際はかなり政府抑制政策に歩調を合わせている、そういう点で、やはりきき目がこれから出てくるのではないかというふうに考えております。先ほども申しましたように、減税政策公共料金据え置きは、可処分所得増加させるという点では、需要抑制政策にはなりませんけれども、その点は、金融政策やあるいは売り惜しみ、買い占めの防止等に、直接的な規制の積極的な発動等をまぜましてカバーしていくということで、もう少し見ていてもいいんじゃないか。いま、ようやくその分かれ道に、峠に差しかかってきているのではないかという感触もあるわけでございます。
  25. 八木一男

    ○八木(一)委員 十二時を過ぎておりますので、簡単にあと伺いたいと思います。  いま、両先生の御意見を伺いました。経済見通しというのが、ある程度目標とか心理的効果がある、そういう希望を持って国政に当たるという点で、それはそれといたしましても、予算というものは、現実にやはり国民に直接関係がありますから、ほんとうに直接に一番いい政治ができるような予算を組むということが必要ではないかと私ども考えるわけでございます。  そういう点で、両先生の御意見を伺っておりますと、私どもがいま考えていることと同じではないかと思うのですが、インフレ抑制しなければならないから、総需要はふやしてはならないという一つの原則、しかし、それの負担について、歳入面では、いろいろの点で負担能力のあるものは負担をするのがあたりまえだ、支出面では、インフレが促進するような公共事業費とか防衛費とか、そういうものは押えて、そして国民生活がほんとうにしっかりできるような支出、それについて当然対応していかなければならない、そういうお気持ちであろうと、私、理解をさしていただきました。  そういう意味で、総需要抑制という線を守りながら、物価の安定とインフレの抑止、それから国民生活の確立という点で、総需要抑制するという中で予算を組みかえて、考え直す必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。その点について、端的に両先生からひとつお答えをいただきたいと思います。
  26. 松永嘉夫

    松永公述人 私、やっぱり御指摘のとおりだろうと思います。これだけインフレが続いておりますと、所得の低い人とか、あるいは年金所得者であるとか、生活保護を受けている人とか、これは、ほんとうに毎日毎日が不安だろうと思います。したがって、幸いにも――幸いというのは、ちょっと問題ですけれども、一般会計予算伸びが一九・七でも、物価はそれ以上に上がっている。したがって、公共事業費とか防衛費とか、あるいは経済協力費等々も、かなり目減りしている、目減りするだろうということですね。したがって、あとはできるだけ財源をつくって、いわゆる社会保障関係とか文教予算が必要であればそちらに回すとか、あるいは中小企業対策に回すとかいうことが、不幸中の幸いにもできる状態ではなかろうかと思うのであります。
  27. 肥後和夫

    肥後公述人 予算の組みかえにまでいくべきかどうかという点については、私、結論的な意見を持っておりません。ただ、やはり通貨供給というものをふやさないで、そして、政府のそのような抑制的な政策というものが続けられていくならば、物価上昇それ自身が、一種の大衆課税になっておりますので、一応ある水準にだんだん収斂していくものであると思いますが、一般のそういう国民が、もうインフレによって重大な被害をこうむっているということは申すまでもありません。  そういう意味で、でき得れば、それは、なるべくさらに物価上昇配慮して、手厚い手当てをすべきではないかということも、それとして十分に理解できるわけでございますけれども、先ほども申しましたように、それが一種のインフレ促進剤であることも、また事実でございますので、どこかで線を引かなくちゃならない。  これがどこまで続くかという点でございますが、たとえば現在、外国の財政学者の間では、西欧インフレーション、これは日本のインフレーションよりはもっとマイルドなものでございますけれども、このようなマイルドなインフレーションが続くとすれば、いままでは、インフレに対してどう抑制するかということだけを考えていたのであるけれども、今後は、インフレによって生ずるところの負担のひずみをどう調整するかということが必要だ。そういう意味で、一種の物価スライド制というものを考える。今度の国際財政学会は、ちょうどスペインのバルセロナでありましたが、そのときには、そういう意味で、たとえばインフレで名目所得が上がったときに、これを調整しないでそのままにしておくと、税金の取り過ぎになるから、むしろ消費者物価指数でその名目所得を調整する。たとえば消費者物価が二倍になった、名目所得も二倍になっているならば、その消費者物価指数で、一〇%なり二〇%なりの税率に対応する所得階級区分を、物価が二倍になったら二倍にすれば、ちょうど前と負担は同じになる、こういうような考え方が出ておりました。おそらくこれからの問題としていろいろな面に、このような一応物価スライドというような考え方が出てくるのではないかと思うのでございますが、インフレに対してやはり調整をする、給付なり負担なりを調整しなければならないという考え方が、まだ日本ではわりになじみが薄い。今度の所得税減税では、そういう方式を一つはっきりとったと思うのですが、そういう意味で先生の御指摘のような問題、広くいえば、要するにインフレに対する物価調整をやれというようなことにもなろうかと理解できますけれども、日本のインフレーションは、いまマイルドなインフレーションではありませんで、スーパーインフレーションでございます。やはり国民福祉にとっては、このインフレを押えることが、まず第一番に重要なのではなかろうかということを考えますと、はたしてその適切な線はどこであろうか、なかなか御返事に迷っている次第でございます。
  28. 八木一男

    ○八木(一)委員 ありがとうございました。
  29. 井原岸高

    井原委員長代理 肥後松永両公述人には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十七分開議
  30. 井原岸高

    井原委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席の公述人の各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席をいただきましてまことにありがとうございます。この際、各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において貴重な参考といたしたいと存ずる次第でございます。  何とぞ、昭和四十九年度予算に対しまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと願う次第であります。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず塚本公述人、次に川口公述人の順序で、お一人約三十分程度ずつ一通りの御意見をお述べいただき、その後、委員から質疑を願うことといたしたいと思います。  それでは、塚本公述人よりお願いを申し上げます。
  31. 塚本スミ子

    ○塚本公述人 ただいま御紹介をいただきました、総評主婦の会の事務局長をやっております塚本スミ子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  昨年秋の石油不足を口実とした物価の値上がりは、年を明けて一そう深刻になってきております。主婦の会の私たちが家計簿を調査しておりますその中より、諸先生方に、一言私たちの苦境を訴えたいと思ってきょうここに参りました。  値上がりは、単に石油関連物資の商品にとどまっておりません。これは皆さんがよく御存じのことと思います。生活の必需品をはじめ、あらゆる物資にまで影響しております。家計簿は赤字の連続、そして国民生活は、まさに破壊の寸前に立たされております。  昨年十二月、東京都区部の消費者物価指数は一九・五%と上昇しております。当初の政府予算の五・五%をはるかに上回っております。しかも、物価は下がるどころかますます上昇する傾向にありまして、物不足と価格の高騰の中で勤労者の家計簿は訴えております。また叫んでおります。もうこれ以上はがまんができない、やりくりはもうできませんというふうに、家計簿の中では主婦が訴えております。いまのおとうさんの給料では、私たちは一カ月のうち半分しか生活はできません、そのために私たちはやりくり算段をして、そして内職やパートで奔走しておりますというように訴えております。悪性インフレ、石油危機がもたらした政治的、経済的失敗の責任を政府は明らかにせず、洗剤、灯油、トイレットペーパーなどの物不足は、主婦の買い占めによるものであるとしておりますが、逆に、国家危機説などを振りまいて国民にその責任を転嫁し、危機を乗り切ろうとしているではありませんか。日経連、経団連など資本家団体は、労働組合が賃上げを要求するから物価が上がるのだ、自粛すれば物価が下がるようなことを言っていますけれども、値上げ値上げの攻勢の中で、私たちが春闘の中で三万円以上の賃上げを要求するのは、決して不当ではないと思います。  皆さんのお手元にもうお配りしてありますので、別表に示してある表をよく見ていただきたいのですが、総収入の割合なんです。おとうさんの賃金の項目を見ていただきたいと思うわけです。  四十三年の三月の家計簿の月例賃金は、おとうさんの給料が五五%です。それからおとうさんの賃金は、これは五五%と一〇%になっております。そして六五%ですが、このほかに補う賃金として、主婦の内職、パートがございます。それから借入金が二五%です。そして今年度、四十八年の三月には、月例賃金が五七%、残業賃金が四%となっておりますけれども、これを合わせて六一%になっております。これは全体に比較しますとこれが六一%になるわけですが、それから主婦の収入が一一%、借入金、預金の引き出しが二八%というふうに、私たちの家計ではこのような数字になっているわけです。  そして、いまの表を見ていただくとわかるわけでございますけれども、どの年を見ても夫の収入が、四十五年の収入では七七%、四十六年の七五%を除き、あとはほとんど六〇%台にとどまっております。そして四十八年は、きっちりと六〇%と最も低いのを見ても、異常な物価上昇を物語っているわけです。夫の収入、妻の収入、預金の引き出し、借入金というように、家計を維持するのにほとんどの家庭で、妻が内職やパート収入で生計の一端をになっているという状態なのです。また赤字補てん分として、年末手当などいただきましたものは、必要な品を買ったほかはほとんど全部貯金をしておきます。そして月々の不足分にあてがっているというような家庭の状態なのです。そういう家庭が非常に多くなっております。四十八年度を見ますと、貯金の引き出し、あるいは借入金などによる赤字補てん分が、いまも見ていただいたとおりおわかりになるわけですが、いかに物価上昇で家計に与える影響が大きいかを物語っています。  四十三年の家計支出を見ますと、お手元にあるから、その支出の構造を見ていただきたいと思うわけです。平均実収で九万三千二百八十六円の支出の中身です。食料費が二五%、住居、光熱費が九%、保健医療費が五%、教育費が二八%、被服費が八%、そして雑費が一七%、あと税金社会保障が八%、そして繰り越しが六%、貯金が六%というふうに、四十三年では出ております。また四十八年三月では、同じように支出の項目を見ていただければわかりますが、支出高は十七万三千三百八十九円と大幅に上昇しております。しかしながら、食料費はその全体の収入の中から二〇%といって非常に低いわけです。それはなぜかといいますと、住居、光熱費の増大、教育費、被服費そのほかの雑費の中の項目が非常に多く出ているわけです。  こういうようにいろいろと見ておりますと、エンゲル係数でいいますと、このうちの食料費は二万三千四百五十七円で、消費支出に占める比率、つまりエンゲル係数は三一・二%が四十三年の年でした。そして四十八年になりますと、エンゲル係数は二四・六%といって非常に低くなっております。エンゲル係数の法則は、食料費のみ中心になって置かれていますけれども、生活を維持しようとすれば、食費以上に緊急を要する経費があります。そのために、食費をさいても他の費用に支出することになっております。勤労者世帯にとっては住居費、教育費、職業費の負担が大きく、そのことが、食費をはじめとしてその他の費目を圧迫するものとなっているのです。食料費は生活費の最も基本的な支出ですけれども、現実の勤労世帯の消費構造は、住居費や教育費、職業費負担のしわ寄せが食費に最もよくあらわれています。  特に、費目で見て、魚や肉類から加工食品、調味料に至るいわゆる副食費の支出の低水準、現実の値上がりにとっても追いついていけないわけです、こういう特にひどい中で。それが指摘されます。また、食生活の向上の一端を示すお菓子、くだもの、それから酒類、飲料水、外食など、勤労世帯の実際における支出は非常に低いわけです。食生活の向上のおくれは、依然として大きな問題とされています。現在のような値上げ攻勢の中では、消費量を減らすことより、少しでも安い物を買う努力や、また安い品物への代替がきびしく行なわれています。  このようなことは、エンゲル法則の停止現象となっており、主婦の会の家計簿に如実に明らかにされております。労働者の一日の食費は、皆さまも、いま数字だけで示したのでおわかりにならないと思いますけれども、たとえていいますと、四十三年で一日の食費が六百五十一円です。そして一人当たりの食費に換算しますと百五十一円となって、非常に低い金額を示しております。また四十八年の一日の食費代は八百九十二円、一人当たりの食費は三百十二円というふうに、非常に低い額で押えられているのです。これでは、栄養改善普及会で示された、いま現在三百二十円ですか、それとほど遠いものがあります。決して栄養の価値を金額の点で換算しようとは私は考えておりません。主婦の栄養をとる状態を調べますと、赤黄緑といって、それぞれの栄養を、十分にとはいわなくても、安いものの中から補えるように配慮して食費を考慮しているという実態が出ております。そういうようなことを皆さんにぜひ、主婦がこうだから、主婦が買いだめするからだというようなものの言い方を、決してなさらないでいただきたいと思うわけです。  昨年の二月に、牛乳が二百ccで四円上がりました。そして十二月には八円の値上げをしました。そしてこの牛乳というものは、お米だとか麦の次にくる国民の栄養食ということで主食の役割りを持っているものが、一年に二回も値上げを許されているのです。このようなことは、私たちの家計の中でほんとうに残念でなりません。  現在私たちは、昨年の九月、十月、十一月の家計簿集計をして、きょう間に合わなかったのが非常に残念ですが、その家計簿の中をちょっと見ましても、一人の人が三カ月ずつ全部つけております。それぞれ三百人余りの人がつけた家計簿の中で、これは単に二、三人の人の集計を見たわけですが、パン一斤が九月で四十円だったものが、十月は六十円、十一月が七十円、そして今年度に入って九十円というふうに上がっております。またラーメンの玉ですね、それが九月には二十五円、十月には三十円、十一月には三十五円、そしてお正月になって四十円というふうに、このように上がっております。私は、決してここでこの値上がりを皆さんに御披露するのではなくて、ここに矛盾をひとつ皆さんに提言したいと思います。  麦の値上がりは、一体いつからなさっていると思いますか。十二月一日現在で麦の値上がりが政府として認められたと思います。それにもかかわらず、もう十月の時点で小麦類は全部上がっているわけです。  そういうような中で、私たちはその家計簿の実態の中からいえることは、非常に主婦が苦労している、そして、生鮮食料品を中心としてあらゆる物資が破竹の勢いで上がっているということ、そして東京都区部の報告を見てもこれがおわかりになると思いますけれども、二百十九品目が二割以上も上がっております。その他の値上がりの商品で、小麦粉、ベニヤ板、タオル、化粧石けんなどが六割以上、あんパン、油あげ、サケ、ゴム長ぐつ、運動ぐつ、砂糖などは五割以上、このほかに三割以上、四割以上の品物が続々と続いております。  主婦の会では、このような物価上昇の中で、もう耐え切れないというので、そうして主婦の物資監視員を二十三区に配置しまして、それぞれの区の中で区の物価上昇の監視をしております。代表者は五十人ぐらいですが、もちろん、主婦の会の会員がそれぞれ協力して、そして物価対策について考えております。  そうして、この人たちの調査の中で一番考えさせられることは、もう毎日続々と上がっておりますが、十日ほど前に買ったキャベツが百五十円だったものが、昨日は三百八十円でしたというような報告がきのう入りました。そういうように、生鮮食料品が非常に高騰しております。  そのために、皆さんも御存じと思いますが、学校給食がその影響をすでに受けております。一週に五日だったものが、四回なり二二回なりに減らされるというような状況に追い込まれています。そういう中で主婦は、子供に支給されない日にはお弁当を持たせる、これもまた家計の赤字です。そうして、このことは、私はほんとうにもう社会的な問題だと思います。給食が休まれるなんということは、非常に大きな問題ではないでしょうか。  また、私立高校の入学金の値上げは、昨年は五万七千七百十一円であったものが、ことしは七万円にはね上がっております。それから授業料が、平均月額六千六百七十七円が八千円に値上げと予想されています。都立高校の授業料が八百円といっておりますのに、その格差が非常に激しいということ、ほんとうに格差が開くばかりです。また私立の幼稚園にしても同じで、入園料が平均一万円から三万円になっております。保育料が四千五百円から六千円と大幅に上昇、こういうことが打ち出されております。  また医療費にしても、二月一日から一九%の値上げが実施されています。これでは、私たちはほんとうにうっかり病気にもなれないわけです。いま家計簿の中で示されております医療費は、ほとんど売薬、大衆保健薬ですね、そういうようなもの。それからへかぜを引いてもかぜ薬でがまんをする、そのかぜ薬さえも倍以上にはね上がっているということです。これでは、勤労者はうっかり病気にもなれないという状態です。  このような私たちの家計簿から出た生活実感と、総理府統計局から出る物価指数とは、現実にはひどくかけ離れているということを私たちは痛切に感じます。私たちの生活に最も関係の深い統計でありながら、生活実感とかけ離れた指数であることが、従来から私たちの論議の的になっていました。  このほど、主婦の会の家計簿から勤労世帯における消費者物価指数を試算してみました。勤労世帯における消費者物価指数の試算によりますと、消費者物価指数生活実感のズレは、一つには税金社会保障費など、非消費支出が実支出の一〇・五%を占めています。勤労世帯の大きな負担になっているわけです。税金社会保障費ですね。それから雑費のうち、夫の小づかい、そういったものの支出が非常に多い。そのことが雑費全体を大きくしているということになります。おとうさんの小づかいといいましても職業費で、これは非常に大切な費用ということで、どの家庭でもその捻出に苦労をしております。それから社宅、寮などの居住世帯が主婦の会では非常に多いわけですが、全体として家賃、地代の支出が、かなり総理府統計局のほうでは小さくなっていることが見受けられます。  そして、この三項目のうち特に税金は大きな負担となっています。二兆円減税が原案どおり税制調査会で決定しましたけれども、人的控除の引き上げに五千億、給与所得控除の頭打ち解除に一兆二千億、三百万以上の高所得者の税率緩和に三千億という配分は、金持ちに優遇、大衆切り捨ての減税ではありませんか。大型減税とはいうものの、かけ声ばかりで、所得税減税されても――所得税で確かに今年は減税されています。けれども、住民税で増税されたのでは、差し引き幾らも私たちサラリーマンは恩恵に浴さないわけです。現在の税率は名目賃金にかかっているので、賃金が二倍になれば、税率は四倍になるという仕組みになっているのです。私たちは、物価・賃金スライド制が導入されなければ、減税減税といっても、結果的には実質増税ということになっています。私たちは、基礎、扶養などの諸控除及び所得税率など、税制の仕組みは現行のままでも、物価上昇による税の負担増をやわらげるインフレ調整減税をしてくださいと皆さんに要求します。  四十九年度予算は、物価に重点を置き、十分な予算を計上するべきであります。生鮮食料品の円滑な流通をはかり、物価の安定に資するためにとうたってありますが、生鮮食料品の流通の改善合理化と、地方公共団体に対する卸売り市場の施設整備補助の大幅増額、野菜価格の安定など、盛りだくさん計画は練られていますけれども、いま現在、異常な物価高騰に悩んでいるときにあたり、予算計上のしかたが少ないのではありませんか。住宅対策費を見ても同様のことがいえます。住宅に困っている国民が多数いること、特に現在、若い人たちの間で話し合われていることは、結婚しても子供がつくれないということが一つの最大の悩みだということを言っております。それはなぜでしょうか。やっとさがして見つけたアパートも、子供ができれば出ていってくださいと言われるような社会情勢です。それでは安心して結婚をして子供を産むこともできません。もっと国民の要求する住宅建設に力点を置いていただきたいと思うわけです。若い人たちが安心して子供を産めるような社会にしたいものです。  また、インフレを反映して、四十九年度は幼稚園から大学までの授業料、入学金など、さきに申し上げましたように大幅な値上がりをしています。生徒の約五割が私学に通学しているというのに、その助成はありません。私たち、ほんとうに親として、子供の希望するとおり最高の教育をつけたいと思っても、また保育園に入れないし、幼稚園にと思っても、あまりに入学料、授業料そして入園料、保育料が高過ぎて、親としてほんとうに子供の要求を満たしてやれないような情勢です。  私たちはそのことについて、ここ数年、私学の中で授業料値上げ反対運動を学生がしているのを見まして、私たち親の気持ちとして、ほんとうに授業料の値上げはさせたくないというふうに思います。してもらいたくありません。ですけれども、私たちの願いと反対に、ここ数年の間にはどんどんものが値上がりしていきます。特に、遠隔地から学生を東京に送る人には、本代、文房具代、それから下宿代などの値上がりは、もう一カ月に七万円ぐらいの予算を計上しなければならないというように聞いております。そのようなことでは、ほんとうに勉強をしたい子供に思うように学問をさせてやれないという親心、それももっと皆さんにお考えいただいて、そして私学に国の特別助成金を計上していただきたいというふうに考えております。  また、さきに国鉄、米価が値上げ決定されましたけれども、政府の英断で半年先に凍結されましたけれども、私たちはここでお願いしたいことは、すべての公共料金を二年間凍結していただきたいと、主婦の会では主張したいと思います。  そして、家計簿の上に立っていろいろと公述をいたしましたけれども、最後にもう一つ、これはいま申し上げました公共料金についてですけれども、私どもは毎年三月と十一月に、もし公共料金が上がったら、私たちの家計にどういうふうに影響するだろうかということを調査しております。そして、ここで皆さんにお考えおきいただきたいのは、いまから申し上げますけれども、私どもは四十七年の三月に、もし公共料金が、政府が予定されているように、また新聞紙上に出ているようなものが上がっていったら、家計簿にどれだけ影響を及ぼすだろうかということを試算しました。そして、たとえば試算のしかたですが、これは昨年の十月現在ですから、アップ率が違っておりますけれども、米価が一九・五%といって新聞に出されました。それを家計支出にアップ額をかけて算出し、それぞれ麦、パン類、ガス代、電気代、交通費、それから家賃地代、電話代、通信費、教育費、関連教育費、医療費、社会保障費など、これら公共料金のパーセントでかけ合わせてみました。そして四十七年の三月には一万四千四百七円という数字が出たのです。ところが、四十八年の三月の家計簿を開きますと、一万四千四百七円の数字をはるかに上回って、三万四千三十円の支出増になっているわけです。私どもは、いままで四十五年、四十六年とさほど試算に狂いはなかったわけですが、四十七年の試算は、あまりにもけたはずれに違うので驚いたような次第です。そして昨年の三月分の家計簿でまた試算をしてみました。そして、当時主食費はずっとアップ率が下がりましたけれども、それぞれのアップ率をかけ合わせて、そしてやったものが二万二千六百三十四円という数字が出たのです。ですけれども、いま現在公共料金が上がったらこれだけ上がるのだという私たちの試算にもかかわらず、それよりもほかの物資がもう軒並みに値上がりをしています。そういう中で、私どもは、もしこの公共料金が上がったらというだけで試算したのが二万二千六百三十四円、これが皆さんのおっしゃるように、今後また続々と公共料金の値上げが決定されたならば、またいまの諸物価にはね返るおそれは十分にあります。このことを予算委員会の中で十分にお考えいただきまして、公共料金を二年間凍結するということをぜひ皆さんで打ち出していただきたい。また、そのように予算委員会の中で取り計らっていただきたいように思います。  これ以上物価上昇しましたら、私どもの家計はもうやっていけません。そして、先ほども申し上げましたように、ほんとうに労働者の栄養状態を考えますと、一番労働をする夫たちに、ほとんど満足に栄養を与えることもできませんし、発育盛りの子供にも、ほんとうに戦中と戦後のような食費状態になるのではないだろうかというように考えております。決して金銭で栄養云々は申しません。ですけれども、やはりそれぞれが家計の中で苦しんでいながらも、一生懸命主婦がやっているという実情をよく御賢察の上、そして何もかも主婦の責任に転嫁するようなことがなく、たとえば洗剤それから灯油など、何かあたかも石けん類やなんかは主婦が買いだめしたからのようなことを言われておりますけれども、決してそうではないということを、皆さんで自覚をしていただきたいように思います。  もう時間になりましたので、ここでやめさしていただきますが、いま一つの例を申し上げますと、確かに標準価格が出されまして、灯油は三百八十円ということになっております。そしてお店のところでも十八リットル三百八十円と出ております。ところが買いに行きますと、おたくへ配達をいたしますということを必ず言われます。そうすると、主婦が、では配達料を取られるのですかと言って聞きますと、配達料込みで四百五十円あるいは四百八十円、四百九十円という値段を請求されます。そうして昨日の電話では、お店で売ってくださいと言ったところが、その三百八十円の灯油は、店頭売りの表示があるにもかかわらず売っていただけませんでした。そうして、私どもはいつでもこれはお願いしたいのですが、いま高値安定ということがいわれておりますけれども、実際にそうなんです。トイレットペーパー、ちり紙をきめる場合でも、もっと町の中には安い品物がありました。それにもかかわらず政府で高い金額をきめたために、その翌朝に行きましたら、その値段に変更されていたというような事実があります。そういうようなことのないように、標準価格をおきめになるのでしたら、一番最低の価格をきめていただきたいというふうに思います。  最後に、これはお願いなのですが、この物価水準をぜひ昨年の四月ごろまでの値段にしていただきたいように思います。それでもその昨年の四月のころの物価上界は家計簿の中にも如実にあらわれていますが、いまの高値安定よりもはるかにいいというふうに考えております。ぜひその点に御協力をいただきたいと、かよう考えております。  ぜひ慎重審議の上、国民のためになる、そして国民生活向上のために、皆さんの絶大なる御審議をいただきたいと思います。よろしくどうぞ。(拍手)
  32. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  それでは次に、川口公述人にお願いをいたします。
  33. 川口弘

    ○川口公述人 中央大学の川口でございます。  たいへんなインフレになりまして、いま主婦を代表する公述人から家計の苦しさをるる訴えられたわけでありますけれども、そういう庶民の非常な苦しい状態、これは与野党を問わず、皆さんも真剣にお考えくださっておられると思います。  そこで、私は財政学の専門家というよりは、むしろインフレ問題を専門に現在研究しておりますので、主としてインフレとの関連で、できるだけ予算案との関連にしぼって、私の意見を申し上げてみたいと思います。  現在必要なことは、言うまでもなく、昨年末以来非常に準激化しております異常なインフレをできるだけ短期間に押え込む、こういうインフレ抑制の問題と、それからこのインフレによって非常なしわ寄せを受けて苦しんでおる庶民の生活を守っていく、生活防衛、この二つ観点が必要なんだと思います。さらに、そのインフレ抑制という問題について考えますと、もちろん、ここで卸売物価が前年同月に比べて三四%も上がる、こういう異常事態をできるだけ早く押え込まなければならない。これは言うまでもないことでありますけれども、さらに振り返ってみれば、われわれ日本の庶民は昭和三十六年以来、年々消費者物価が年率六%近く上がり続ける、こういうようないわば持続的なインフレ、忍び寄るインフレの中で暮らしてまいったわけであります。そうして、私見によりますと、そのような忍び寄るインフレを避けがたくした一番根本には、いわゆる寡占といわれるような大企業の価格決定のしかた、これがあったと思うのです。  ところが、最近のドルショック以来、四十七年末には大手商社の投機行動が非常に問題になって、国会でもこれが取り上げられたわけでありますが、さらに今年度になりますと、石油危機に便乗したやはり大企業を先頭にいろいろと便乗値上げの実態が次々に明るみに出されているわけであります。  私は、何も企業性悪説を唱えようとは思っておりませんし、企業が適正な競争の中で適正な利潤をあげていくということは当然のことだと思っておるのですけれども、それにもかかわらず、四十六年以降、われわれの目の前に展開されてきた大企業の行動については、どうしても納得できないものがあるわけです。つまり、過去の十数年の間には、大企業が下がるべき価格を下げないできた、こういう形で問題をはらんでおったわけでありますが、最近の二年間には、上げられる機会があれば価格を引き上げよう、こういう行動が露骨にあらわれておるわけであります。そのあらわれ方は違いますけれども、いずれも大企業の価格決定政策のあり方に関連している、こういう点では共通であると思うわけであります。  そういう意味から申しますと、ここでインフレ抑制を考えます場合に、単に総需要抑制すればよいということではなくて、その中で、このような大企業の価格決定のしかたを規制する政策、規制する措置をとっていくということがどうしても必要である。これは単に、いまの短期的な非常に激化したインフレを押え込むという上に必要なだけではなくて、そのあとにおそらく残るであろう持続的なインフレの、いわば従来に比べたレベルアップ、これをできるだけ押し下げるという点でもどうしても必要なことであると私は思っております。  なお、現在はもちろん、短期決戦ということで短期のインフレ抑制に重点を置かれているということは、これは私は当然のことであると思いますけれども、その中で、将来の国民生活の安定と非常に関連のあるような、しかも、長期的なインフレ抑制する上でどうしても必要な産業政策、産業構造を転換していく政策、いままで生産性の上がり方の低かった農業や、あるいは消費財を生産している中小企業、こういうところの生産力を拡大していって、そして賃金の上昇、あるいは原材料の価格の上昇からくるコストアップを生産性の向上で吸収できるような、そういう体質に改善していくという、このような産業政策も、ここで短期の問題に目を奪われる余り、全く無視してしまうことは許されないだろう、このように考えておるわけでございます。  こういうような短期、長期の観点からインフレ抑制する、そしてその中で、インフレによる庶民の生活の犠牲をできるだけ排除していく、こういう観点から、今回の予算案について私の意見を申し上げてみたいと思います。時間もございませんから、各項目についてきわめて簡単なコメントになると思いますけれども、まず問題は、予算の総額と、そして予算の中身というふうに二つに分けて考えたいと思うわけです。  予算の総額につきましては、言うまでもなく総需要抑制、この観点から今回の予算総額が適切であるかどうか、こういう評価になってくるわけであります。言うまでもなく、一般予算伸びを二〇%を下回るようにきめ、さらに財投の伸びも大きく押える、あるいは一般予算の中の公共事業費伸びをゼロにする、こういうような措置がとられたわけでありまして、それはそれなりに私は評価したいと思いますけれども、しかし、それで十分であるかどうかということになりますと、まだかなり不十分ではないか、このように私は感じるわけであります。  大体、財政面からの総需要の引き締めが非常にタイミングがおくれている。金融政策の発動もタイミングがおくれたわけでありますけれども、しかし、昨年の四月以来金融政策はきびしい引き締めに変わってまいりました。ところが、金融政策だけにしわを寄せる引き締めを続けてまいりましたから、今日では、中央銀行の金融引き締めのやり方が、いわば差別的な引き締めと申しますか、業種別に非常にきめのこまかい引き締め措置をとったり、あるいはまた、公定歩合の引き上げでは十分な効果があげられないというので、窓口規制をきわめて強めている。従来に例がないほど強めている。こういうように、金融政策はすでにできる限りきびしく引き締めが行なわれ、その面から中小企業などにかなりな問題が起きそうな形勢になっておるわけであります。そういう状況でございますから、したがって、この際は、財政面での引き締めをもっときびしくしなければならないだろう、このように思うわけであります。  一般会計伸びを見ますと、確かにその伸びは押えられておるわけでありますけれども、しかし、だからといってこれが小さな伸びである、一九・七%という対前年度当初予算比が小さな伸びであるというふうには、どうも考えられません。昭和四十年度から四十九年度までの間を調べてまいりましても、四十七年度、四十八年度に次ぐ伸びの高さであります。さらに、GNPに対する比率を見ましても一三%でありまして、これは四十八年度の場合とほとんど変わりがない。すでに四十八年度予算が、いわゆる十四兆の超大型予算、これが調整インフレを起こすのじゃないかということで、われわれが批判をしてまいったわけでありますけれども、まさにその憂慮のとおり、その後のインフレの激化が起こってしまった。そういう大型予算であったわけでありますから、その大型予算に比べて一九・七%という伸び、これは当然増が相当入っておるということを考慮に入れましてもなお過大ではないだろうか、このように感じるわけであります。  財政投融資伸びということになりますと、これは前年度伸びの約半分ぐらいまでにきびしく押えられた、こういうことであるわけですけれども、しかしこれでも、やはり四十八年度の財投が非常に大型予算であったということを考慮に入れ、さらに四十八年度には諸般の事情から、計画工事量がかなり繰り延べになっておるはずであります。私はこまかい数字を知りませんけれども、たしか昨年の九月段階では、予定の四分の一ぐらいしか実施ができなかったというような新聞の報道を見た覚えがございますけれども、そういう昨年度繰り延べ分、この工事量を含めて財投の伸びを考えるということになりますと、おそらくかなり大きなものになるのではないだろうか。こういったような点から総額の伸び、これがやはり現状では過大ではないだろうかという疑いを持っておるわけであります。もう少しきびしく抑制すべきであろう、こう考えておるわけであります。  次に、中身の問題に入りたいと思います。中身の問題は、大体大きく分ければ問題が三つあるのではないでしょうか。  つまり一つは、現在の総需要抑制、これとからみまして、できるだけインフレ刺激的な費目を押える、こういうような観点が必要であるというふうに思います。それから二番目には、生活防衛の観点を貫くということが大切である。三番目には、産業政策の問題を考慮に入れるということが大切であります。私は三つと言いましたけれども、さらにもう一つつけ加えますと、単に総需要抑制するというだけでは足りないことは、先ほど申したとおりでありますから、大企業の価格を規制する、そのための諸措置関連して、やはり予算措置が必要ではないだろうか。この点をつけ加えて申し上げたいと思います。  さて、そういう観点から内容を見てまいりますと、第一に歳入の面で、公債金が昨年よりは減らされたと申しましても、なお二兆数千億予定されておるわけであります。私は、公債発行ということが、インフレ抑制するという議論があるのですけれども、これは間違った議論であると思うのです。たとえば、西ドイツの安定国債のように、収入金を凍結してしまう、こういうことであれば、明らかにインフレ抑制の効果がある。しかし、収入金をそのまま全く財政支出に回すということでは、その面からは何らのインフレ抑制効果はないわけであります。ただ、これを大部分金融機関に消化させるわけでありますから、銀行の貸し出し余力を押える、そういう効果があるかのように見えるわけであります。しかし、銀行の貸し出しを通じて出ていくお金を財政を通じて出していく、そういう違いだけでありまして、しかもわが国の銀行は、すでに資金ポジションが非常に悪化した中で無理に公債を買わされるということになりますと、これは一年後にはどうしても中央銀行に買い取ってもらうか、あるいはこれを担保として中央銀行から借り入れ金をする、こういう行動に出ざるを得ない。そして、実はそのことを前提にいたしますと、銀行としては、何も一年たってから貸し出しを拡張するのではなくて、それよりも相当前に貸し出しを拡張することになります。なぜかといえば、貸し出し拡張からだんだんに現金の引き出しが生じてくるのは、かなりタイムラグがあるわけでありますから、したがって、一年間銀行の貸し出しを押えるという意味の効果も期待できない。やはりこういうインフレ時には、歳入の源泉をできるだけ租税収入によってまかなう、こういう観点が必要であると思うわけであります。  ところが、この租税の面に目を転じますと、ここでは、従来から見まして、かなり大型所得税減税が行なわれている。私は、一般の近代経済学者の方とは少し違いまして、確かにインフレを、総需要抑制するという観点からいえば、減税はすべておかしいという話になりますけれども、先ほど来申しましたように、一般勤労者、庶民がインフレによって非常にきびしい影響を受けているという段階では、所得税減税はどうしても必要であったし、むしろ今回の減税規模は、なお過小ではないだろうかというふうに考えております。その意味では、この減税を実行されたことを評価いたしますけれども、その中身についてはかなり問題がある。  つまり、所得税減税を、庶民の生活を守るという観点から行なう場合には、基礎控除や配偶者控除、扶養者控除のような人的控除の額を大幅に引き上げるという形で減税をはかっていくのが当然であると思います。それを、給与所得控除の大幅な引き上げ、こういう形をとったことは、サラリーマンには有利なように見えますけれども、決して所得税減税の正当な方法であるとはいえないわけであります。サラリーマンが源泉徴収の結果として、徴税上で実質的に不平等な扱いを受けている、こういう問題点があることは私も知っておりますけれども、それは本来徴税技術の改正ということで解決すべき問題でありまして、やはりこういうような減税のしかたをすることによって、今度は勤労者と他の庶民との間の不平等を促進するというようなことがあっては好ましくないわけであります。とりわけ、この給与所得控除の関係では、従来ありました限度額を撤廃する。もちろん、インフレが進行しておりますから、限度額を引き上げる必要はあったと思いますが、その結果として、さらに税率緩和も加えまして、先ほどの公述人も言われたような、年収一千万円以上の高所得者に非常に大きな減税をするというような、金持ち減税という結果になっておるわけであります。現状では、そのような必要は私は全くないと思う。やはり中低所得者に重点を置いて思い切った減税をする、こういう考え方が必要であったと思います。人的控除の引き上げ不足に関しましては、たとえば、障害者控除その他非常に気の毒な人たちへの控除も、きわめてわずかしか引き上げられていない、こういう点がたいへん不満であります。  それでは、そのような大型所得税減税をやって、総需要抑制のほうはどうするのだとお考えになるかもしれませんが、私は、法人税の増税が全く不十分であるというふうに考えております。その不十分であるという意味は、法人税率の引き上げ方が小さい、あるいは配当軽課の引き上げ方が小さい、こういうような問題ももちろんあるわけであります。先進国に比べれば、税率が引き上げ後でも明らかに低い、こう申してよろしいと思いますけれども、それ以上に、かねてから税制調査会その他でも問題にされておりますように、わが国の大規模な租税特別措置、大企業や高所得者に非常に有利な形の租税特別諸措置による減税、免税分、これが問題であると思うわけであります。私は、これらの措置を大規模に改廃いたしまして、それだけによって数千億の法人税増徴が可能になる、こういうふうに考えておりますので、こういう形で法人税はもっと思い切って取るべきであった、こう考えております。その法人税の増徴によって浮く分だけは、公債金の発行を押えることができたのではないか、こう思います。  それから、税金のことでありますから、それと関連して申し上げますと、現在問題になっております、いわゆる便乗値上げその他による超過利得についての特別な課税、これはぜひともやっていただきたいと思う。このことば、どういう立場に立つ者であろうとも、庶民ならば全体がこのことの実現を望んでいる、こう思います。  確かに、税制の技術的な点ではいろいろむずかしい問題があることは、私も承知しております。いろいろな案が出ておるようでありますが、たとえば、通常の法人税を累進税率にする、こういうような考え方も、超過利得という概念をきめることがたいへんむずかしいという問題がありますから、私はそれなりの筋があると思う。私自身は、むしろシャウプのような法人擬制説に立った現在の法人税制には疑問を持っておりまして、将来は、法人税についても、もっと累進税率を導入すべきである、こういうふうに考えております。しかし、それには現在の法人税制を根本から考え直すというむずかしい問題が入ってまいります。したがって、ここでどうしても早急にこのような不当利得を吸い上げなければならない、こういうことになりますと、やはり臨時に超過利得税を時限立法で設置する、こういう考え方のほうがベターであるというふうに思います。  ところで、そのような考え方の一つとして、本日の朝刊に自民党の税制調査会の案というものが紹介されておりました。私は新聞を拝見しただけでございますから、あるいは内容に誤解があるかもしれませんけれども、それを拝見した限りでは、日本経済新聞の批評がもっともであるというふうに感じたわけであります。つまり、過去三カ年間の平均所得を一九五%も上回った分だけ、それを超過した分だけが課税の対象というようなことになりますと、実際上、こうした課税の対象になります企業はごく限られてしまう、これでは、ほんとうの意味での超過利得税にはならないのではないかという感じがするわけであります。こまかい問題でありますけれども、その一九五%という算定のしかたは、過去三カ年間におけるGNP上昇率が五五%ぐらいになっている。このことを上積みして一九五%、つまり九五%のうち五五%は、GNP上昇した分は法人所得の増大も当然である、こういう観点で計算されたというふうに、これは朝日新聞の解説でありますが、読みました。しかし、これはおかしいです。その論理を一応認めたといたしましても、法人の所得のほうは三カ年の平均所得をとっておる。それならば、GNP上昇率も当然三カ年の平均GNPをとって、それと四十八年度のそれを比較しなければならない。そうすると、私の計算では四〇%になります。つまり、一五%はサバ読みが入っているのではないだろうかというのが私の疑問であります。  いずれにしましても、こういうやり方、しかも一千万円は控除する、こういうようなやり方では、ほんとうの意味の超過利得税にはなりかねると思うので、もっときびしい形で超過利得のかなり大きな部分を吸い上げる、こういうことが必要である。その際、超過利得の厳密な定義にあまりこだわる必要はないと思うわけです。だれが見ても、最近の大企業のぼろもうけということは明らかなんですから、国民感情からいいましても、かなり大胆に超過利得の観点をきめて、そして思い切って税金を吸い上げる、これが時限立法でありますから。私は、いろいろ税制上、税法上の問題があるということは承知しておりますけれども、あえてそういう方針を望むわけであります。  さらに、それにあわせまして、これはたぶん共産党であったと思いますけれども、資産税の新設を提案しておられる。これも私は賛成であります。これは四十七年度以来、大手商社、大企業の土地投機、株式投機がたいへん問題になっております。和光証券の調査によれば、四十六年度末で、土地と株式の両方の含み資産益が六十四兆円に達する、こういうことが、一部上場会社でありますが、いわれているわけです。こういうような、国民生活に直接響くような形の投機でもって、たいへんな含み資産益を得ているというのが実情でありますから、したがって、この資産の増加に対して、過度の増加に対して税金をかける、こういうこともぜひやっていただきたいと思います。  次に、歳出の問題に移ります。  歳出の問題では、中身の問題でありますが、第一に、本予算の眼目である社会保障関係費の伸び率が三六・七%で、一般会計予算伸び率を大きく上回るようにきめられた。この点は、それなりに評価はいたしますけれども、しかし、中身を見てみますと、どうも不十分である。この大幅な社会保障関係費の伸びのかなりな部分、社会保障関係費の五三%を占める社会保険費の四八・二%という伸びによってもたらされているわけであります。しかし、社会保険費の伸びの大半は、医療費の一七・五%の伸びによってもたらされているわけです。医療費の一七・五%の引き上げというのは、実質的には、国民に対する医療給付の増大を意味しないわけです。従来の医療給付が、その報酬が不足である、こういうことによって医療費の値上げが行なわれるわけでありますから、そういうふうに見てまいりますと、これは名目的なふくらみであって、実質的なふくらみであるというふうには考えられない。  同時に、厚生年金や国民年金がかなり改善されたというふうに考えられておるわけでありますけれども、その物価スライドによる大幅な引き上げというのは、厚生年金は四十九年十一月から、国民年金は五十年一月から、こういうことであります。しかし、インフレがいま激化して生活に苦しんでいる、それは現在の問題である。このようなずっと先になって一四%程度の改善を約束される。これでは、これらの年金によって生活している庶民は、インフレの中で健康を破壊され、生活を破壊され、中には命を失う者も出てくるのではないでしょうか。私は、この物価スライド制は、ヨーロッパ諸国でやっておりますように、たとえば三カ月に一ぺんというような形で、そのときどきの物価上昇に対する措置をとっていく、こういう改善をどうしてもしていただきたいと思うわけであります。  また、生活保護費の生活扶助基準額も前年度当初より二〇%引き上げることになっておりますが、すでにそのうちの五%は四十八年の十月に引き上げられております。これは四十八年度予算における当初見込み、物価上昇率の見込みが不十分だったということで昨年の十月に改正されたわけでありますから、したがって、本年度引き上げ分は正味一五%である。こういうことになりますと、これは非常に不十分だといわざるを得ません。しかも、現在のこのような引き上げを経たあとでも、生活扶助費の中の食費分が一食九十七円というのでは、これは厚生省で試算している必要カロリー量の半分しかとれない、そういう低額であります。その他保育所の幼児や乳児に対する一食分の増加額も、現在の物価上昇ということから見ますと、全く問題にならないくらいのわずかな額にすぎない、こういうようなことであります。私はこまかいことは申し上げませんが、社会保障制度の抜本的な改正、特に老齢年金制度を直ちに賦課年金制度に転換する、こういうような措置を望みたいと思います。  関連して、社会福祉費についても、伸びは大きいですけれども、しかし、現在の物価上昇前提にいたしますと、各種の社会福祉施設の運営がきわめて困難になることを免れないと思いますので、こういう点も御配慮をいただいて、大幅に引き上げていただきたいと思います。  続いて、文教費、科学振興費に移りますと、これも伸び率はかなり大きいわけでありますけれども、その中で、たとえば学校施設費の四〇・三%の伸びというようなものも、建築費の上昇ということを考慮しますと、きわめて不十分といわなければならないわけであります。  さらに、私の関係しております私立大学の立場から申しますならば、私立大学の経常費助成、これは自民党の文教制度調査会でもその必要を認められて、五カ年計画のようなものをお立てになったわけでありますし、文部省におきましても、政府の全体の政策とはなっておりませんが、昭和四十五年以来、五カ年計画で人件費についての二分の一補助を実現するというふうにいわれてまいったわけであります。今回は、文部省の概算要求の、まあ八〇%弱が予算案として認められたわけでありますが、その中で、専任教員については一応人件費の二分の一補助が実現することになっております。けれども、これは形式的な面からだけでありまして、相変わらず対象率を平均八四%にしぼっておられますし、さらに、基礎になる教員給与を、四十八年五月の給与をベースにしておられる。これでは一年のズレがあるわけであります。こういう点から申しますと、専任教員に対する人件費の補助も、とうてい実質二分の一というわけにはいかないわけであります。  さらに、私学は専任教員の比率が高い。これは専任教員を使うことのほうがコストの面で非常に安くつくからでございますけれども、当然そのことは、教育内容の低下に結びつくわけであります。やはり専任教員の人件費補助率をもう少し大きく引き上げていただいて、実質二分の一、ないしはそれを上回る程度引き上げてもらいませんと、専兼比率の改善をすることも困難である。まして、専任職員の人件費については、わずかに五分の一の補助が実現しただけであります。このような状態では、大学生の八〇%近いものを担当して教育しております私立大学が、とうてい今後十分な研究、教育を行なっていくことがむずかしい。  そして、本年も多数の大学が学費をどうしても値上げしなければならなくなっておりますが、日本経済新聞の分析によりましても、今日、家庭における教育費の負担はたえがたい程度に達しておるわけであります。一人の子供を大学までやりますと、この試算は非常に不十分な試算でありますけれども、それでも二百四十万円はかかるのだ、こういうことでありますから、やはりこの際は思い切って私学助成費を大幅アップしていただきたいと思うわけであります。  続いて、中小企業対策費は二七・一%の伸びでありますけれども、一般会計中の構成比は〇・六%で、四十八年度とほとんど変わっておりません。道路整備事業費の金額に比べてみますとその九・九%、海外経済協力費の金額に比べてみますと六一・五%というふうに、大体大企業に有利な予算規模に比べますと、全く少ないといわなければならないと思います。中小企業は、インフレによって非常にしわ寄せを受けるところでありますから、私は、もう少し思い切った対策費の増加をはかっていただきたいと思うのです。  公共事業関係費については、伸び率ゼロということを評価いたしますけれども、依然として産業基盤整備関係が半分ぐらいになっております。この際は、生活環境施設整備費のようなものを、これは一〇%を割っておりますけれども、こういうものを大きく伸ばして、そして国民生活改善をはかっていただきたいと思う。  これに関連しまして、地方交付税交付金が実質的に削減されておりますけれども、この交付金は、地方財政の自主的原資としてきわめて重要なものであります。大体、こういうような生活防衛が必要な場合には、生活に密着度の高い地方財政伸びは、総需要抑制といってもある程度は認めなければならぬ、私はそう思うのですけれども、それが総需要抑制の名できびしく押えられて、交付税交付金まで削られる、これは適当ではないと思います。地方財政との関連で、特に、自治体の超過負担を直ちに解消していただくような措置をとっていただきたい。  次に、防衛関係費の伸び率でありますが、伸び率は一六・八%で、全体の予算伸び率より下回っておりますけれども、これは前年度伸び率とほとんど変わっておりません。ところで、御承知のように、防衛関係費というのは、再生産過程から財を引き抜いてしまう、そういう意味では、最もインフレ刺激的な支出であると考えなければなりません。勤労者の消費は、これは勤労者の労働力の回復に役立つわけでありますけれども、防衛費というのは、そういう意味では全くインフレ刺激的、こういうふうに考えなければならないわけです。なるほどGNP比率は〇・八%とまだ低いのですけれども、しかし、自由社会で世界第二位といわれる大きなGNPの〇・八%でありますし、また、年々の軍事費の上昇率という点から見ますと群を抜いて高い。私どもは、平和国家であって、しかもこのインフレ抑制が非常に重要だというこの現時点において、なぜこのような一兆円をこえるような防衛費を計上しなければならないか、この点がどうも理解に苦しむわけであります。  次に、公共料金の問題に移りますが、公共料金凍結が半年ということは非常に不十分である。先ほど二年凍結というお話がありましたが、私は、少なくとも一年は凍結して、その間に公益事業のあり方を根本的に考えていただきたいと思います。つまり、シビルミニマム的な意味を持った公益サービス、これは独立採算制、受益者負担原則を大きく再検討して、そして低料金でその供給を保障しなければならないと思います。エネルギー対策との関連で申しましても、電力、石炭を合わせました総合エネルギー公社というようなものをつくりまして、私企業にまかせないで、エネルギーに関する国民生活基本的に必要なサービスの給付を、低料金で行なうような体制を考えてもらいたいと思うわけであります。  次に、こまかい問題になりますけれども、物価対策費がたいへん少ないのではないか。私は、財政の専門家でありませんのでこまかい検討はできておりませんけれども、たとえばこの予算委員会でも、先ほども問題になりました価格調査官の専任者を置くという体制、これは直ちに政府が応じられたわけでありますけれども、それにしてもまだ不十分であるし、さらに、それについての予算がどういうふうに措置されているかということも明らかでない。また、地方に価格監視権限を委譲しても、それに伴って当然必要になるはずの財政についての措置が、何もとられていないように思います。  また、公取予算も抜本的拡充が必要であると思う。公正取引委員会の最近の積極的な活動は、庶民としても大いに拍手を送りたいと思っておりますけれども、聞くところによると、人的スタッフの点でも、あるいは調査を行なう部屋数が足りないというような問題まである、こういうことでございますが、公正取引委員会の抜本的な拡充をはかっていただきたいと思う。当然、それは現在の独禁法の改正ともつながって、実現していただきたいというふうに思うわけであります。  さらに、財投の問題にまいりますと、ここで庶民のために必要な住宅建設戸数が大幅に削減されているという問題、これは何としても見のがしができない問題であると思います。こまかい数字は皆さんのほうが御承知でありますけれども、一体、今日、改善された財産形成貯蓄の住宅貯蓄をやりましても、われわれが十年も住宅貯蓄をやって、そして住宅金融公庫から借金をして、それを合わせて十年先に家を買おうと思ったって、とても買えないというのが実情であります。したがって、私はここで公的な、低家賃の、しかも質が悪くない、そういう住宅を大量に供給していくということが、どうしても必要な事柄であり、それはインフレ下であるからといって、ないがしろにはできない問題でないのではないか、このように考えておるわけであります。  財投の内容については、こまかく立ち入ることはいたしませんが、その財源の配分という点でも非常に問題がある。大体、コストゼロの産投特別会計の資金というのは、その九〇%が貿易、経済協力に振り向けられ、さらに、低利のそして庶民の貯蓄に立脚した運用部資金、この運用部資金も、その一〇%は貿易、経済協力に振り向けられ、二二%は産業基盤投資に関係の深い支出に振り向けられるというふうに、どうも原資の配分の点でも、かなり問題があるように私は感じておるわけであります。  農業予算については、これも一点だけ申し上げておきたいけれども、将来のインフレ、持続的なインフレとの関連で申しますと、どうしても農業の生産力を高めていかなければならぬ。しかも、従来の食糧政策考え方が根本的に見直しが必要だということは、これは政府もお認めになっているところだと思います。国民生活の基盤になるようなそういう重要な物資を、ただ一時点で、コストが安いからといって大きく海外依存に切りかえるということは、非常に問題のある政策であって、私どもは、かねてからそれに反対の意向を表明してきたわけでありますが、昨年の大豆騒ぎでもって、その問題点がきわめて明らかになったわけであります。これは単に海外の不作とか、あるいは海外のコスト高とかいう問題のほかに、こういう生活必需品のようなものが、大手商社の手を通じて大量に一括輸入されるという体制になりますと、そこに投機が入ってくる。こういうことははなはだ好ましくないわけであります。続いて、これは食糧とは若干意味が違いますが、エネルギー源として基本的な石油についても同じ問題が起こってきた。こういう点から申しますと、食糧政策についてもエネルギー政策についても、国内資源を重視して、国内自給率を高めるという方向がとられなければならぬ。  ところが、農業につきまして、その生産力の拡充政策が次々に破綻を来たしてきた大きな理由は、米だけに食管制によって曲がりなりに必要な労働報酬を補償する、そういう体制がありましたけれども、その他については、全く十分な価格の安定措置がとられないで、あってもきわめてつけたりのような措置にすぎませんで、そのために、農民が絶えず豊作貧乏に苦しんでいる、こういう事態が、農業生産力の拡大を妨げる大きな理由であったと思うわけであります。したがって、抜本的に価格安定措置を、基本的な農産物全体に体系的に導入するというようなことが考えられるべきであると私は思っておるわけであります。  最後に、預金金利の問題について一言申し上げたい。  御承知のように、今日、日本の国民貯蓄の大半は個人の貯蓄でありまして、そしてその大半は、また預貯金というインフレ目減りの形態に集中しておるわけであります。その貯蓄を庶民がどういう気持ちからやっているかといえば、日銀の世論調査結果を見ましても、ここ十年来、病気、災害の備え、年をとってからの生活の保障、子供の教育費、結婚の資金、そしてマイホームを手に入れるための資金、こういう四項目が、ずっとトップの圧倒的な比率を占めてきておるわけであります。これらは憲法で保障する国民基本的な生活権、これに属する動機だと私は思っております。本来、それは先進工業国においては、かなりの程度社会保障政策と文教政策でカバーされております。  社会保障のことは、皆さんよく御承知だと思いますが、私は一昨年一年間スウェーデンに参りまして、しみじみうらやましいと思ったことがある。授業料は、小学校から大学に至るまで全くただ、大学生はすべて一定の単位履修の条件を満たせば、月額五万円ほどの金が政府から出る、そのうち一万円は給費で、四万円は貸費でありますけれども、これは卒業後五十歳までに返済すればいいわけであります。これはもう所得のいかんにかかわらずだれでも大学まで行けるという、教育の機会均等を完全に保障した制度であると思って、しみじみとうらやましく思ってきたわけであります。  ちなみに、スウェーデンにおける同年齢人口中の大学進学率は二五%でありますから、わが国と大差がない。スウェーデンでできることが日本でできないはずがないだろう、こういうふうに思っております。こういうようなことが十分に行なわれないから、個人の努力で額に汗して貯蓄をする。その貯蓄インフレでどんどん目減りをするというのでは、これは一刻も放置できない問題ではないでしょうか。しかし、預金の利子を全面的に消費者物価騰貴率に合わせて引き上げるということは、これは金融市場の構造を考えましても、技術的にたいへん困難であります。私は、貸し出し金利、預金金利とも、かなり大幅にレベルアップすることが、今日必要だと思っておりますけれども、しかし、消費者物価上昇率までそれを上げるということはとてもできない。そうだとすれば、少額の、たとえば一世帯百五十万円というような程度でよろしいと思いますけれども、少額の預貯金についてだけ、完全な物価スライド制を導入するというような措置をとっていただきたい。そして、たとえば一〇%をこえる部分については国家がそれを保障する。こういう問題になりますと、それは当然予算の問題になってくるわけであります。この程度のことはやろうと思えばできるはずだ、こう思います。  まだいろいろ申し上げたいことがありますが、時間がだいぶ超過いたしましたので、たいへん荒っぽい話でございましたけれども、私の考えを申し上げまして、どうぞそういう線に沿った改正を実現していただきたいとお願いして、私のお話を終えたいと思います。(拍手)
  34. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  35. 井原岸高

    井原委員長代理 これより両公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  36. 湯山勇

    ○湯山委員 いろいろお尋ねいたしたいことがございますけれども、質問をする他の方もたくさんおありのようですから、私は塚本さんにお尋ねいたしたいと思います。  非常に主婦らしいこまかい資料を御提示いただいて、非常に参考になりました。しかし、あの時間では、とても直接お感じになっていること、御体験になったことの全部は公述いただけなかったと思います。そこで、御公述に関連してお尋ねしたい点を一括して、三、四項目になるかと思いますが、お尋ねいたしますから、ひとつ、まとめてお答えをいただきたいと思います。  第一点は、生活費をうんと切り詰めて食料費を何とか操作しなければならない。エンゲル係数が少なくなるということは、本来ならば、小さくなるほど生活内容がよくなっているというのが常識でしたけれども、その常識を打ち破るような今日の状態であるということはよくわかりました。御指摘になった点もありますけれども、消費者物価の、特に食料品の中では中心になる消費者米価、これは十月からの値上げの問題にはお触れになりましたが、さて、今日の状態でなかなか標準価格米が買えないとか、それから自主流通米が異常に値上がりしているとか、こういうこともよく聞かされます。特に学校給食が、さっきのように、一週間に一回なり二回なりお弁当ということになると、その子供さんだけでなくて、その兄弟もお弁当を持っていく、では、おとうさんもお弁当を持っていくというようなことになると、消費者米価の問題はなかなか簡単に見過ごせない問題なので、これらの点についても、お気づきの点があればお述べをいただきたい。  同時に、流通それから卸売り市場等についても、いまの予算では少ない、もっとしっかりやってもらいたいという御指摘がありました。これは内容がどういう内容なのか、もしその流通機構、それからいまの卸売り市場の問題についても、何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。これが第一点です。  それから第二点は、入学金が私立の学校では非常に高くなった、授業料もたいへん高くなった、運動ぐつ等も値上がりしてきている。そうすれば、当然ノートとか、そのほか新学期になって買わなければならないものがたくさんあると思います。それらを含めて、いまあなた方の御主人は年度末手当というのを要求しておられます。年度末手当というのは、たしか、新聞等で見ますと、三万円とかいう御要求と理解しておりますけれども、一体、主婦の立場から、この年度末を越すためには、特に教育費等を中心にしてお考えになって、どのくらい年度末手当があったらいいか、ぜひこれくらいは年度末手当がほしいというのがあれば、ひとつそれをお述べいただきたいと思います。  それから第三番目、これはお示しいただいた資料によりまして、御主人の収入では大体六〇%から七〇%、家計を維持するのにはその程度しかない。そこであとは切り詰める、あるいはまた内職、パート、外へ働きに行くというようなこと等でお埋めになっていることが非常に多い。これもつい先般、どなたかあなた方の仲間の方ですけれども、かぎを締めて勤めに出るときには、何か二十六考えなければならぬことがある。ガスを締めたか、水道を締めたか、あるいはどこへどうやったか、あとどうとかいうことを項目別にして、とにかく主婦がかぎを締めて外へ出るのには二十六考えなければならぬことがある。あと、私がほかの人にそれを示してみましたら、いや、これぐらいじゃない、もっとあるということでした。こういうことが非常に主婦の健康に影響があるのではないか。  農村等も、出かせぎのために農村の婦人の七〇%は農婦症、農家の婦人の病気というのにかかっておりまして、いま皆さんが乳児の健康診断を無料で、医療無料という運動をしていらっしゃいますけれども、いま働く婦人の間、あるいは勤労者の家庭から、主婦の健康診断というものを無料でやるという制度をつくってほしいという御要望がたくさん参っております。主婦の健康診断を無料にするということの必要を、私どもも私どもなりには感じておりますけれども、主婦のお立場から、その必要なことについて、なおお述べいただければ非常に参考になると思いますので、お願いいたしたいと思います。  それから最後に、今日の異常なインフレを控えまして、買占め売惜しみ防止法というような法律もできましたし、今度、石油にからんでの値上げ防止の法律もできました。いろいろこの委員会でも取り上げてまいりましたが、先ほど、総理府の生計の統計と主婦の方々の、はだに感ずる実感とは非常に隔たっておるということでした。あの法律が適用になって、その後新聞等でいろいろなことが報道されておりますが、あの法律で、いまのようなやり方で、はたして主婦の方々が納得できるような物価抑制ができるとお感じになっておるか、それじゃだめだ、もっとこういうことをしっかりやらなければだめだというふうにお感じになっているか、そういう点でお感じになっている点、お気づきの点があれば、ひとつお述べをいただきたいと思います。  なおちょっと、ついでといいましたら恐縮ですが、川口先生、さっき新聞紙上で、自民党のほうでお出しになった今度の大企業の不当超過利得に対するあの中に、給料等によけい出しておるのは、やはり対象にするのだというようなことがあったと思うのです。いま、塚本さんからお述べの中に、資料をいただきますと、大体月々四万幾らずつは、給料じゃ足りない。四万九千円もあって、一万円ぐらいはいろいろあるでしょうけれども、とにかく家計がたいへんだ。現在、労働組合の皆さんの要求しておるのは三万円程度だと思うのですが、その程度や、それを多少上回って出したからといって、それはけしからぬという筋合いのものではないというように思うのですが、ひょっとすると、そういうところが、いまの所得政策への導火線になりかねないという感じを持ちましたので、さっきそれについての先生の御批判がございましたので、このことだけひとつ先生にはお尋ねいたしたいと思います。
  37. 塚本スミ子

    ○塚本公述人 お答えいたします。  いろいろと四項目ぐらいの御質問がございましたけれども、まず第一点の食料品のことについてでございますけれども、特にいま御指摘になりました標準価格米、子供たちの給食費を切り詰めて、給食の回数が減ってお弁当ということになりますと、非常に台所に大きなしわ寄せが来ます。ことに、いま標準価格米ということについては大きな問題になっております。と申しますのは、各地からの報告によりますと、標準価格米は当然店頭に置いていなければならない。ところが、置いていないお店が非常に多くなってきているということです。いままで、私どもはいろいろとお米の調査をしました。主婦の会では特にお米の調査をしておりますけれども、各地からあがってくるいろいろな報告を見ますと、非常に自主流通米の価格が暴騰しております。先ごろ米価審議会の中でも、四千円のお米があるではないかという指摘をいたしましたけれども、そのことにつきましては、それはある一部的なものだと思います。各地からあがってきますのは、いま平均して十キロ当たり二千八百円前後がほとんどでございます。  ところが、いま主婦の会の家計簿を見ましても、標準価格米を利用する人が非常に多くなってきているのです。政府統計では、標準価格米を利用する人が非常に少ないというように表には出ておりますけれども、実際に私たち労働者の中では、標準価格米を食べていかなければほかに――先ほど申しましたように、家計費を切り詰めるという点におきましては、お米がまず一番初めにやり玉に上がるわけです。そうしてほんとうに家計が安定できるような安いお米を希望しているのが実態です。それにもかかわらず、十月には米価が値上げということに決定しましたが、こういうような事態で、先ほども申しましたように、半年据え置かれたというだけのことでございます。  それにつきまして、お弁当を持たせるにしましても、お野菜からはじめ、全部上がっているわけです。  たとえていいますなら、先ほどちょっと申しましたけれども、十日前に百五十円で買ったキャベツが昨日買ったときには三百九十円。ホウレンソウが、一月ごろ一時下がりまして百円だったものが、いま二百円です。そして、私が昨日買いました大根一本が二百五十円というふうに、非常に生鮮食料品が上がっております。  こういうような状態の中で、ほんとうにやりくりはたいへんなわけですが、先ごろ私は物価調査、追跡調査をいたしまして倉庫を急襲いたしました。そのときに感じましたことは、倉庫の中に立ち入りをして調べたわけですが、四十六年の二月ごろの品物がまだ入っております。私は、倉庫法のことなどはよくわかりませんけれども、その中におきまして、一応四十五日間の保管ということを聞いております。それにもかかわらず、四十六年二月の品物が入っているということ。そして四十六年、四十七年、四十八年とありますけれども、そういうことを質問いたしましたときに、倉庫の中で業者同士で売買をなさるということを聞きました。そういうこと自体が、倉庫の中で、たとえば丸紅から岩井へ売るというようなことになりますと、そこで価格が上がっていくのではないだろうか、しろうと判断ですが、そういうように思いました。  そして私たちは、いま流通市場の問題ということを言われましたけれども、それぞれの流通の中で、いままでいろいろと指摘してまいりました。それはいまさらここで申し上げるまでもないと思います。ところが、そういうような一つ一つの実態にぶつかりますと、倉庫の中で売買される、そして四十六年の品物が、現在四十九年で倉庫の中に眠っているというようなこと、その倉庫の中に入っているうちにどんどん価格が上がっていくということを非常に疑問に思います。そういうことの是非を追及していただきたい。私どもではできないことなんです。ですから、皆さん方にこういうことは、ぜひお願いしたいと思います。  それから、入学期を控えて、御指摘のとおり品物は非常に上がっております。たとえて申し上げますならば、ノートですけれども、ノートが五十円であったものが、いま現在九十円です。それから運動ぐつですけれども、月星印という運動ぐつがありますが、私が調べましただけでも、これは昨年のうちに四回値上げされました。それからアキレスという運動ぐつのメーカーがありますが、それは三回値上げ、それからアサヒ靴の場合には六回値上げしております。この六回の内容を申し上げますと、十四センチから二十一センチ、そのサイズを全部統一してみましたから、その値段だけいいますと、昨年の一月に三百二十円だったものが、二月には三百四十円、四月には三百六十円、七月に三百八十円、十一月に五百三十円、十二月に六百五十円です。そしてことしの二月ですか、先ごろ買いましたときには、昨日報告がありましたのによりますと、八百円ということになっております。  こういうように、一つの例をとりましても非常に上がっていること。そして小さいことを言うならば、消しゴムが一個十円だったものが二十円というふうに倍額になっております。それからノート、もう一つ学校の制服ですけれども、制服の中で女の子の白ネクタイなのですが、これをおかあさんが前に買っておきたいということで、十一月に買ったのは百五十円だったのです。それが、もう一枚洗いがえということで一昨日買いに行きましたところ、そうしましたらもう二百円に上がっていたというように、入学期を控えて非常に物が上がっているわけです。もちろんランドセルから、もうそれこそクレヨン、鉛筆の類に至るまでほとんどが倍近い値段で売られております。  このようなことの中で、年度末手当が三万円ではどうかという質問がありましたけれども、私どもでは、三万円ではこのような状態だったら絶対に足りません。新年度の入学金だとか、いろいろと合わせますと、非常に家計の中は火の車もいいところです。いままで過去――ここにいま四十三年度から三月を出しましたけれども、三月の月ほど支出の多い月はないわけです。と申しますのは、子供の入学期を控えて、そして家計のやりくりに追われるから、主婦も内職、パートに一生懸命になる月なんです。主婦の会では三月と十一月に家計簿調査をしておりますけれども、十一月と三月の支出では支出の高が違うわけです。ですから、三月になりますと、主婦はもうねじりはち巻きということがいまの実態です。で、年度末手当は三万円ということですが、私どもの家計の中からでは、十万円いただいても足りないのじゃないかというようにも考えております。この家計簿は、みんな平均で大体四・二人になっておりますけれども、四十五年だけは五人世帯になっております。  その中で、私たち、先ほど婦人の無料健康診断というようなことをおっしゃっていましたけれども、これはもう十年も前から要求をしております。と申しますのは、働く婦人が非常にふえて、そしてそれも内職、パートのように無権利な状態に置かれております主婦は、非常に健康がそこなわれております。私どものほうでは、内職、パートで年に一回ずつ大会を持ちますが、その前にアンケート調査をいたします。その中で、主婦の健康診断ということで状態を調べる項目がございますが、ほとんどの主婦が病気にかかっているというような状態です。病気といっても、それは寝るほどの病気ではないということ。それは、たとえば長いことすわってやっている人が腰の痛み、そしてそれから頭痛、目まい、いろいろなからだの疲労度から来るあらゆるこまかい病気がたくさんにあります。そういう中で、私どもは主婦の無料健康診断ということを労働省のほうにも要求をしております。業者が業者の費用で健康診断をさせるようにというようにいままでは要求しておりました。それとあわせて政府のほうにも要求をしております。ですから、ぜひこの主婦の健康診断ということは踏み切っていただきたい、かよう考えております。  加えて、先ほども申し上げましたけれども、医療費の値上がりはほんとうに、一回行きますと軽く七百円から千円飛びます。それは最低の料金です。私、この四、五日前に目まいがしまして医者に行きました。そして支払ったときには、何と二千八百円取られたわけです。もちろん、注射やらレントゲンの軽いのを一枚くらいとりましたけれども、そのように一回行って千円から二千円、三千円というふうに取られますと、家計に響く影響は非常に大きいものですから、主婦はできるだけ医者に行かないというような人が多いようです。  そういうようなことをいろいろ考えますと、特に四十代、三十代以上の主婦の健康診断は必要だと思います。日本の婦人が血液が薄いといわれること、そのようなことについても、やはり自分はまずいものを食べても、子供や夫にせめておいしいものを食べさせたいという発露からであると思いますし、いろいろと私どもの中では――この中で私は特に申し上げたいと思いますけれども、私のところに今月の初めこのくらいのはがきの束が参りました。それはいろいろと回ってきたらしいのですけれども、市川議長のところにあてた文書でして、そしてその中の訴えとしては、それぞれの家庭の主婦が、私たちの生活はもうやっていけません、私はこれと同じ手紙を田中総理にも出しました、だけれども、私たちの生活を守ってくれるのはあなた方だと思うから、せめて、春闘には私たちの声を基礎にして要求を取ってください、七四春闘では、私たちにぜひ五万円以上の要求額を取ってくれるようにというようなはがきがたくさんに、北海道の果てからも来ておりまして、それがいま全国的に盛り上がっております。もうやり切れないという主婦の声、そして私たちの中で、やはり生活対策費というものを予算の中で、先ほども川口先生がおっしゃいましたけれども非常に少ない、もっと増額してもいいのじゃないかというようなお話がありましたけれども、私は、もっともっと私たち国民生活を守るために予算を大幅にふやしていただきたい。  それと、ここにもう一つあわせてお願いしたいことは、先ほどお話しいたしましたけれども、私学の特別助成金の計上を大幅にしていただきたいというふうにお願いをして、以上、御質問の内容で、あとどういうのでしたでしょうか、済みませんが……。
  38. 湯山勇

    ○湯山委員 現在やっておるいろいろな対策ですね、売り惜しみや買い占め、そのほかについて、いまやっておる対策でいいものか。
  39. 塚本スミ子

    ○塚本公述人 肝心なことを忘れまして済みませんでした。  売り惜しみ、買い占めということですけれども、私たちにはそれが非常に不満というよりも、怒り心頭に発しているわけです。そして、何かつくられた物不足、そしてほんとうに業者間の中で――私たちは昨年の二月業者を呼びまして、民間公聴会を開きました。そうしてマグロの一船買いをしているじゃないかとか、いろいろな各業者を呼びまして追及しましたけれども、のらりくらりで、のれんに腕押しです。そうしてそのときに言われたことばなんですが、そのときに木材がだいぶ不足をしているということで、そしてこの秋には紙がなくなるでしょうということを言われたんです。木材がないということは、パルプ即ちり紙だとかトイレットペーパーだというふうに私たちは思いました。ですけれども、まさかこのような状態で私たちのところにしわ寄せがくるとは思いもよらなかったのです。ですから、去年の二月に、私たちの民間公聴会の中で、ある業者がちょっとことばをすべらしたことが、いま現実になってあらわれたのだと私は思います。  そういうことを思いますと、これがもうそのときからつくられたものですね。売り惜しみというより買い占めのほうにあると思いますけれども、そして私は、小売り業者が少しばかりの品物を売り惜しみをするというのではなくて、これは大もとの大企業のほうでこれをやっているというふうに判断しますが、どうもいまやっている政治は、企業優先の政治のように思われます。そういうことに非常に反発を感じておりますので、ぜひ、企業優先ということではなしに、やはり国民優先の政治にしていただきたい、私たちはそのように強く要求したいと思います。
  40. 川口弘

    ○川口公述人 私へのお尋ねは、超過利得税構想との関連で、利潤を押えるなら賃金も押えるべきだというような考え方があるけれども、最近の、たとえば春闘で大幅賃上げを要求していることは、そういう考え方の対象になるようなものかどうか、こういう趣旨に理解してよろしゅうございますか。――私は、不当超過利得税というもので対象にするのは、通常の企業の競争の中から生まれてくる利潤ではなくて、まさに不当な行為によって生み出される超過利得、これを対象にするものだと思います。ところが、賃金について、それに対応するような不当な大幅賃上げというものがなされていると私は思っておりません。したがって、超過利得税は、いわゆる所得政策として考えるべきではなくて、現在の異常な事態における企業の行動を是正する、こういう観点からなされるべきもの、こう考えております。  ところで、いわゆる三〇%大幅賃上げが、はたして物価との関連で大き過ぎるかどうかという問題でありますけれども、昨年七月現在で、賃金は平均で二〇%賃上げを反映しまして、ふえておりましたけれども、その段階ですでに消費者物価が、対前年同月で一四、五%上がっております。さらに、いろいろな社会保障関係の保険料負担がふえておりますから、これを差し引きいたしますと、おそらく昨年の七月で、昨年の四月に実現しました二〇%賃上げは全部吹っ飛んでおる。その後の大幅な物価の値上がりの中で、昨年の四月の実質賃金よりも大きく実質賃金が低下しているんだ、私はそういうふうに理解しております。  そのことを考慮に入れ、さらに本年度に予測される物価上昇のことを考慮に入れますと、三〇%上げても労働者の実質的な手取りは必ずしもふえないだろう。そういう意味では、物価の値上げの結果減った分を取り返すというのが三〇%賃上げの要求である、このように思っております。したがって、所得政策の対象になるような賃上げでもないし、また、そのような賃上げを実現したからといって、それが物価値上げの原因になるとも思っておりません。  その点について一言だけつけ加えますと、例のわが国の労働分配率がきわめて低いという問題がございます。したがって、生産性上昇率以上にこの際賃金を上げましても、そのことが値上げの当然の理由になるものとは思っていません。  以上でございます。
  41. 湯山勇

    ○湯山委員 終わります。
  42. 井原岸高

  43. 増本一彦

    増本委員 川口先生に八つほど、たいへん多岐にわたりますけれども、お伺いしたいと思うのです。というのは、先生のお話予算全般にわたっておりますので、できるだけ先生のおっしゃったことに合わせまして、さらにコメントをいただければたいへん幸いだと思うのです。  一つは、寡占価格の規制をたいへん力説されました。私たちもおっしゃるとおりだと思います。特に、今日のように売り惜しみ、買い占め、便乗値上げ、これが大企業中心にして行なわれているし、それから政府の、総理府の統計でも、今日の物価値上がりの中での物価値上げの寄与率を見ますと、大企業製品が六〇%をこえるという事態。そこで、どのようにしてこの寡占価格を押えるかという問題があると思うのです。一つは、私たちは、いまこの国会に常設の機関をつくって、そして大企業の経理や原価を調査して、不当なもうけがあれば、それを削らせるような仕組みをつくっていくというようなことを含めて検討をしていますけれども、先生のお考えはいかがかという点、これが第一点です。  それからもう一つは、公共事業関係費、そしてまた公共事業投資が前年並みに押えられたというようにいわれているわけですけれども、いまこのインフレーションのもとで、国民生活をほんとうに守っていくという上では、この公共事業費の使い道をもっと根本的に検討し直すということが必要だと思うのですね。政府がつくりました社会経済基本計画によりますと、産業基盤整備と生活環境整備は二対一で産業基盤整備のほうが大きいという、この仕組みが、現在のこの予算案でも変えられていない。私たちはこの方式は逆転させて、住宅や下水道その他の生活環境整備にむしろ重点を置くべきだというように考えるのですが、その辺について具体的なお考えをお持ちかどうか、お持ちであれば明らかにしていただきたい。これが二番目。  三番目は、先ほどから法人税の増税、租税特別措置の大企業本位の内容を検討する、それから超過利得、臨時資産税というようなお話がございましたし、その御趣旨は私たちも大賛成であります。いま便乗値上げをいろいろの大企業がやって、内部留保が非常に高まっているわけですね。この内部留保にやはりメスを入れて、取りくずさせていくということが非常に重要だと思うのです。その点で、租税特別措置の準備金、引当金その他についての取りくずしや、それをやめさせていく方向の検討が非常に重要だと思いますが、その点でもう少しお話を伺えれば幸いだと思います。  また、法人税の増税は今度の改正案で四〇%になる、配当軽課が二八%が三〇%になるというような状態ですけれども、これは、私たちはさらにもっと法人税率そのものを引き上げるべきだと思いますが、その点での先生の具体的な税率についてのお考えがあればお伺いしますし、またこの超過利得について、私たちがさきに臨時資産税とともに提案をしておりますけれども、先生の具体的なその点でのお話があれば教えていただきたい。  それから四番目の問題は、公共料金のきめ方の問題です。シビルミニマムについては受益者負担をなくして、一般会計その他国費で見ていくべきだというお話がありましたけれども、この点について、さらに公共料金のきめ方自身ももっと国会の審議を経るとか、国民の意思が反映できるようにするとか、いろいろ仕組みがあるだろうと思うのです。その辺についていかがお考えか。  それから第五点は、先ほど公共事業投資の関係で、先生はインフレ刺激的なものを押えていくというお話がありましたが、予算全体を見ても、私はインフレ刺激的な費目を削ったり押えていくという、そういう面でのもっと、もう一つ大きな検討が必要だというように考えるわけです。先生の御指摘になりましたように、国債は二兆一千六百億円という非常にまだ大きい。私たちはこれを三分の一くらいに削ってしまえというように主張しているのですが、先生はその点についていかがお考えか。  それからもう一つ、その関係で防衛費をこれも削るべきだ、インフレ抑制のために削るべきだという、そういうお話がございましたけれども、この具体的な内容を、たとえば四次防をやめるという、そういうお考えなのか、あるいはもっとほかに具体的なお考えがおありなのか、その点について明らかにしていただきたい。  それから、その関係で今度の予算案を見ますと、経済協力関係費が、特に国際対象事業として占める地位もかなり高くなってきている。そうしてまた全体としてふくらんできている。この経済協力費の増額が、財貨が国外へ行くわけですけれども、これが今日のインフレーションのもとでどういう影響を与えるのか、その点について御示唆をいただければ幸いだと思います。  それから第六点ですが、先ほど公共料金との関係で、先生のおことばから、総合エネルギー公社のようなものをつくって、そうして国民に安く確実に安定してエネルギーの供給がはかれるようにすべきだというお話がありました。私たちも電力その他重要なエネルギー源は、これはやはり国が管理をする、そうしてエネルギー公社として進めていくべきであるというように考えているわけですが、その点についての先生のお考えがお伺いできれば幸いだと思います。  それから七番目は、生産性の非常に低い中小企業、農業に対して、もっと財政的にも大きな援助をすべきである。おっしゃるとおりであると思うのです。そして、いまのような大企業本位の、非常にバランスのくずれた、全然不調和な日本の経済、これを、やはり調和のとれた、つり合いのとれた経済に変えていかなければならない、これはたいへん重要な問題だと思うのです。その意味で、この中小企業、農業関係について、いま具体的な手だてとして、この第一歩としてどういう手だてを打つべきなのか。今日のこの予算案は、非常に総花的で、重点というものがないし、しかも、その総額も低いという先生の御指摘に私も同感なんですが、その点で、先生のお考えを御教示いただければ幸いです。  それから、最後にですが、現在、総需要抑制、金融引き締めということが、にしきの御旗で言われておるわけですけれども、この中で金融引き締めが、特に大企業向けの融資が、まだまだしり抜けになっているというように私たちは考えるわけです。政府当局も、そういうことから大口融資の規制を考えているのですが、いま必要なのは、大企業へ締めることと中小企業に対する融資を充実させる、こういうことが重要だと思いますが、その辺での先生のお考えを承りたいと思います。
  44. 川口弘

    ○川口公述人 たいへん多くの問題で、特に具体的な内容について御質問をいただきまして、問題によりましては、十分なお答えができないものもあるかと思います。  第一点として、寡占価格の規制を強調するが、一体どうやって押えていくのか、こういうお話でございました。私は、独禁法を活用した公取の活動も、最近の積極性は評価することを申し上げたわけでありますけれども、しかし、公取の本来の任務というのは、やはり価格規制そのものというよりは、集中排除というところにあるわけでございますから、したがって、やみカルテル協定の破棄を勧告することとあわせて原状復帰、そういう趣旨で協定以前の価格に値下げをさせる、この程度の命令権を公取に与えることはけっこうだと思いますが、それだけでは、寡占価格の規制という観点からいいますと、非常に不十分だと思います。したがって、たとえば国会の物価問題特別委員会のような機構を常置委員会といたしまして、そして、これに強いいろいろな調査権、勧告権のようなものを持たせる、さらにスタッフもふやして、そして、その下には調査能力を持った事務機構、調査機構をつける、こういったような思い切った措置が必要であるというふうに考えておるわけであります。この点では、野党各党が、物特委の権限強化を要求しておられることに基本的に賛成でございます。当然、これには予算措置も必要になると思っております。  さらに、いままで、四十七年以来でございますが、大企業は何も悪いことをやっていないんだ、いないんだという弁護論がある中で、そばから全く弁解のしようのないような事態が次々に明らかになっているわけであります。しかも、たとえば先日、予算委員会で商社の脱税問題が指摘されましたその直後に、当の商社が新聞記者会見でもって、脱税などやっていないという否定をいたしました。そのあと予算委員会で、国税庁長官のほうから、脱税の事実はほぼそのとおりあったのだ、こういうような御回答があったということで、予算委員会でも問題を取り上げられたと思いますけれども、大企業の態度がそういう態度である限りは、やはり国会で、予算委員会あるいは物特委において、大企業の首脳の方たちを証人喚問して、そして宣誓の上、その企業の経理の実態、原価構成の実態、さらに石油危機に乗じてどういうような価格決定を行なったか、それらの資料を、はっきりと国民の前に明らかにしてもらう、その上で、もちろんやむを得ない値上げというものもあると思うのですけれども、そういう実態をしっかり把握した上で、値下げをすべきものは値下げさせる、こういうような措置が必要だと私は思いますので、これもまた、野党各党が要求されておりますような証人喚問、これに賛成をいたしたいと思います。  将来に向かっては、これはたいへんむずかしい問題があるのだと思いますけれども、実は、十九世紀の資本主義で、農産物と工産物の相対価格が変化しながら、なおかつ物価水準が大幅に下がった。これはなぜかといいますと、技術革新が進む工業分野で価格の値下げが進んだからであります。ところが、第二次大戦後は、技術革新が最も進む大企業分野で価格が十分に下がらない。このことが、相対価格の変化が物価上昇を結果しなければならないという仕組みを生んできているわけでありますから、将来に向かっていえば、技術進歩の速度に合わせましてこの分野の価格を下げさせていく、そういう措置も必要であろうか、こう考えております。第一点につきましては、その程度でかんべんしていただきたいと思います。  第二点につきまして、公共事業関係費の中身が、産業基盤投資的なもの二、生活関連的なものが一というような割合になっているのは逆ではないか、こういう御指摘でございますけれども、全くそのとおりだと思います。四十六年以降、経済運営を、従来のような大企業中心の高度成長の方向から国民福祉重視の方向に転換しなければならない、こういうようなことは、かなり国民的なコンセンサスになってきていると思うのでありますけれども、そのような中で、公共事業関係費の構成が以前と変わらないということは、やはりおかしいのではないか。ただ私は、その逆転をすべきだと申しましても、何対幾つがいいかというようなところまでは、具体的に詰めておりませんので、お答えいたしかねます。  それから三番目には、便乗値上げによる内部留保につきまして、内部留保が非常に大きくなっているということについて、どういう措置を考えているのか具体的に、こういうふうな御指摘でございますが、租税特別措置の中には、御承知のように、減価償却の早期償却を認めるとか、その他諸準備金の特別な積み立てを認めるとかいうような措置がたくさんあるわけでございます。私はいま、ここに資料を持ってまいりませんでしたから、具体的に一つ一つの名前をあげて、これをどうすべきかというようなお答えはいたしかねますけれども、そういう具体的な内容については、国会で十分御討議をいただいて、このような特権的な減免の措置は、できるだけ廃止をしていただきたいと思う。同時に、内部留保の増大というのは、これは株価に反映をしていくわけでございますから、株式所有者などについての、いわゆるキャピタルゲイン税の新設というようなことも、当然考えてもらいたいと思います。  さらには、先ほどちょっと触れましたような資産税の新設も、いわゆる資産投機、資産関係の投機によりまして不当な利益を得、しかも、それを含み利益というような形でかかえ込んでいる、こういうような大企業の実情に対して御検討をいただきたい、その程度でとどめたいと思います。  それから、法人税率の引き上げでございますが、これは四〇%という基本税率の引き上げが、国際的に見て必ずしも十分ではないというふうに考えております。スウェーデンでは、御承知のように五〇%でございまして、そういう点から、国際比較から見ましても、もう少し引き上げの余地があると思います。それについては、将来は、やはり累進税率という制度を考慮すべきだ、私は、このように考えております。  それから、超過利得税でございますけれども、この具体的な内容につきまして、私は、それほど詳しく考えておるわけではございませんが、今回の事態におきまして、非常な超過利得を手に入れたのは、何といっても大企業でございます。同時にまた、中小企業は便乗値上げをやった面もあるわけでございますけれども、中小企業が独自にそのような便乗値上げをやるという力を持っておらないわけで、大企業がやると、その上に乗っかって、それこそ零細な小売り店までいろいろなことをやる、こういうことが出てくるわけでございます。したがって、この超過利得税の対象は、中堅企業以上の大きな企業に限定をすべきであろう、これが一点であります。  それから、先ほどちょっと触れました、けさ新聞に出ておりました程度の、過去三年間の平均所得の二倍近いものをこえる、そういう形では、ほんとうの不当利得を、超過利得を十分に捕捉するということは困難であると思います。過去の何年間をとればいいかということは、私も、はっきり詰めておるわけではございません。ただ、好況、不況、両方の期間をある程度含む、そういう形で過去の平均所得を計算して、それをせいぜい二〇%か三〇%程度上回る、これをこえた部分というふうに考えてよろしいかと思うわけです。そして、この分については、累進税率を適用するのが適当ではないかと思います。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば、先ほどの自民党案で過去三年間を問題にしておられる、そうすると、その三年間のGNP平均と四十八年度GNPとの比較をいたしますと、四〇%の上昇ということになっておりますが、もし過去の二カ年間をとるとしますと、その比率はもっと下がるわけですね。せいぜい三〇%ぐらいだろう、これは計算しておりませんけれども。そういたしますと、過去の二カ年の平均を基準にするということならば、二〇%から三〇%の範囲の超過額までは認めて、それをこえる分について、かなりきつい累進税率をかけてよろしいのではないだろうか。この程度にしか私は考えておりません。  それから、公共料金のきめ方の問題でございますけれども、これは考え方の問題ではなくて、きめる手続の問題を御質問いただいたというふうに思います。現在、国鉄料金は国会審議を経る、こういうことになっておりますけれども、それ以外の料金については、そういう手続を経ておりません。公共料金の範囲をどういうふうにきめるかということは、今後検討していただかなければならないわけでありまして、一般的に公共料金と呼ばれているものの中にも、そのシビルミニマムという観点からいいまして、程度の違いがあるわけでございますから、そこのところは適当に検討していただきまして、いまよりはかなり広範な公共料金の決定を、国会審議を経るという形にしていただきたいと思います。  その場合の国会の審議機構でございますが、国会審議に回る以前に、たとえば運輸審議会のようなところで検討が行なわれておりまして、その運輸審議会の委員の構成を見てみますと、必ずしも消費者代表とか、労組代表とか、あるいは国鉄を輸送の面で非常に利用する農民や中小企業の代表というような委員が参加しておりませんけれども、やはり公共料金というものが、国民基本的な生活に大きな影響を持つものだということになりますと、そういうような生活に直結した面の代表の委員を入れて、民主的に検討してもらうというような機構を考えてほしいと思います。  それから、第五点でございますが、インフレ刺激的な費目を抑制するということとの関連で三点御質問がありました。国債を三分の一に削減すべきではないか、こういう御指摘でありますけれども、私も、その金額を、どこまで削減するかということを詰めて考えておりません。要するに、租税特別措置法の改廃を通じて法人税をかなり増徴することになれば、それに見合った国債の削減が可能ではないか、この程度にしか考えておりません。  防衛費に関連してでありますけれども、私は、軍事問題の専門家でございませんから、四次防がどうしても必要か必要でないかということを、専門的に判断する立場にはございません。しかし、庶民の一人として考えますと、今日の平和国家、そして国際情勢、そういうことを前提にいたしまして、これ以上の軍備の充実ということがどうして必要なのかということには、素朴な疑問を持っております。したがって、そういう意味では、四次防が提起されました段階でも、それには個人的に反対でありましたけれども、しかし現状で、私は、インフレとの関連で問題を限定して考えたいと思いますので、その意味で、先ほど述べたような防衛費のインフレ刺激的な性格からいって、少なくともここ一年は、四次防に関する費用は凍結したらどうか、こういうことを申し上げたいと思います。  それから、経済協力費とインフレとの関係でございますけれども、経済協力費の全体を私は不要だとは思いませんが、この経済協力費が、海外で、たとえばそれぞれの国の庶民の利益とは違った方向に使われるということがいままでありまして、それが日本に対するいろいろな国際的な反感の種になっている。こういった点で、この協力費の内容は考え直す必要があるだろう。さらに、開発輸入というふうな関連からも、この費用がふやされておると思います。私は、農産物その他についても、完全な自給を直ちにはかるということはむずかしいと思いますし、そういう意味で、開発途上国の農業生産などに対して援助をするということはけっこうだと思いますが、しかし、それは日本の利益のためというよりは、将来、それらの国の民生の向上に役立つような形でなされなければならないし、また、日本の食糧が、そのような開発輸入に大幅に依存するということになりますと、将来、大豆危機とか石油危機であらわれましたのと同じような事態が起こってくる、こういうことを十分に考えてやってもらいたいと思います。  なお、インフレとの関連でありますが、これは、ちょうど輸出の増加と同じように、協力費は、結局ひもつきでわが国の物資が外に出ていく、そして、その費用というのは、大体そういう物資の売り上げ金として、国内にお金として流れていくわけでありますから、そういう意味では、やはりインフレ刺激的な役割りをするであろう、このように考えております。  それから、六番目の公共料金の問題でございますけれども、実は、国鉄料金などにつきましては、第一に、料金体系を合理化して、シビルミニマム的なサービスの供給部分については、経常費の一部を料金として利用者に負担させるという程度の低料金にすべきではないだろうか。一方、貨物については、従来、赤字が出ておるわけでありますから、そういう貨物輸送料金については、もう少し引き上げても差しつかえはないだろう、こういうようなことを考えておりますが、基本的には、経常的な費用については、そういう料金で負担するということは、やむを得ないだろうと思うのです。むしろ大規模な投資については、国が財政資金負担するということが将来の方向であろうかと思います。  ただ、その場合に、国鉄などについては、独算制と受益者負担の原則を、そういう意味で変えていけばよろしいのですけれども、たとえば電力などにつきましては、今日、一応私企業体制という形になっております。私企業体制のままでそういう方針を貫くということはできないわけでありますし、それと、石油危機にあらわれました従来のエネルギー対策の破綻、これを組み合わせて考えてみた場合に、総合エネルギー公社というようなものが構想として浮かび上がってくるわけであります。そのほか、そういう形で公社体制に持っていって、国または地方財政負担をかなりする、そういう公益事業の範囲を、どこまで広げたらいいかということが一つ問題になります。これを無制限に広げるということは、必ずしも適当ではないと私は思っております。  それから、第七点でありますけれども、中小企業と農業に対する援助を、もっとふやさなければならない、こういう点でございます。当面、私は、中小企業につきましては、何よりもここでインフレとの関連で中小企業に一定の危機状態が起こっているわけでありますから、その危機状態に対する援助、そういう意味の対策費に重点を置かなければならないと思います。それから将来は、中小企業の内部構造が当然変化するべきだと私は思います。かつて低賃金に依存してやっと成り立っていたというような、そういう業種まであくまで温存しなければならないというふうには必ずしも考えておりません。したがって、そのような現状に合った産業構造に中小企業の構造を転換させていく、そういう意味の長期的な政策が必要であろうかと思います。  農業につきましては、工業の場合と違いまして、これを一たん国外に出してしまいますと、その回復が非常に困難になるわけであります。今日、大豆について特別な援助が予算の中にも計上されておるわけで、奨励金のような形で計上されておりますけれども、この程度のことで大豆の自給率を、十分に高く引き上げるということは困難であろうかと思います。私は、農産物につきましては、貿易自由化の方向をチェックして、そして国内で農業の生産力を拡大する措置がどうしても必要だと思うのですが、その際、何を一番中心にすべきかということになりますと、大体二つぐらいあるのではないだろうかと思います。  一つは、農業基盤整備、この投資を積極的に助成するという点でありますし、第二は、米だけではなくて、基礎的な農産物のかなりな範囲を含んでの価格安定措置を講じる、こういうことであります。現在も、野菜などについて、そういう措置はあるわけですけれども、そこで補償されている部分が非常に低いということから、農民は、絶えず豊作貧乏に追い込まれている。つくったキャベツを畑に放置して、踏みにじって捨てなければならない。これは単に労働力がむだになる、コストがむだになるということだけではなくて、生産者としての農民の心も、むざんに踏みにじることだと思います。したがって、短期的には、このような安定措置をとることが、かえって農産物の価格の上昇につながるというようなことがあるかもしれませんけれども、長期的に農業の生産力を、ほんとうに農民の生産意欲をかき立てて、それを通じて上げていく、こういうことが実現いたしますれば、将来における農産物の価格の上昇を押えることができるであろう、そんなふうに考えておるわけであります。それから、総需要抑制でございますけれども、確かに金融引き締めが、いろいろきびしい形で行なわれているにもかかわらず、大口融資が依然としてはびこっていて、大企業の手元流動性は、業種によってばらつきがありますが、なおかなり高い。それが、たとえば先ほどの為替危機の際にも、投機的に動いたというようなことがございます。したがって、大口融資の規制を行なうということは必要であろうかと思います。これは、資本主義国でありましても、各国で、たとえば自己資本の一〇%というような規制を行なっている例がかなりあるわけでございまして、決して不当なやり方ではないだろう。  ついでに申しますと、たとえば貸し出し金利を引き上げ、預金金利を引き上げるというような金利レベルの引き上げということも、金融面を通じての総需要抑制の一つの手段であるわけでありますし、現在の物価上昇率から見ますと、いまの金利水準は、なお低いと思いますが、ただその際、非常に注意を要しますのは、貸し出し金利の引き上げは、差別的に中小企業に強く響いていく、それから預金金利の引き上げは、差別的に中小企業金融機関に強く響いていく、こういうように現在の金融市場の構造が非常に差別的になっておりますから、その面から言いますと、そういう金利を大幅に引き上げるということには限界があるだろう、こんなふうに思っております。  以上でございます。
  45. 増本一彦

    増本委員 どうもありがとうございました。
  46. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、岡本富夫君。
  47. 岡本富夫

    ○岡本委員 お二人の先生方には、たいへん御苦労さまでございます。  私、午前中に、公述人の御参考の意見を聞きましたが、あと聞きたいことは、先の方がだいぶ聞かれましたので重複を避けまして、まず川口先生にお聞きしたいことは、先生も、忍び寄るインフレに今度は石油危機が大きな導火線になった、こういうお話でありました。同時に、また先生は、自由経済を否定していないんだというようなことでありますが、私も、そうだと思うのですけれども、その上に立って、一番問題になりましたのは、過剰流動性資金ですね。これが、前のドルショックのときに相当な、巷間伝えらられるところによりますと、約四兆円とかあるいは六兆円、確かにこの大きなお金が大企業、大商社――私も調べますと、九州の鹿児島まで行きましたら、こんな小さな植木ですね、こういうようなものまで買い占められておるというようなことでありますから、まして生活物資、私たちの生活の必需品まで買い占められるということも疑わざるを得ないわけでありますし、また、私たちの調査でもそうでありますが、この過剰流動資金をどうやって回収するか、これにまず手をつけないと、どうしようもないのじゃないか。融資を押えると申しましても、それよりも、まずそっちのほうに手をつけなければならぬと思うのです。これが一点。  それから、きのうの公述人の先生方の中では、公取の機能、権限の充実、これは、先生もおっしゃいましたのですが、きのうのお話では、ジェット機一機を削減すれば、十分できるんだというような御意見もございました。そうしますと、今度の予算案は、やはり組みかえをして、そして公取の機能、権限の充実をするということも必要ではないか、これが二点であります。  それから三点目は、減税、サラリーマンの減税が、百五十万まで基礎控除が上がった、こう申しますけれども、私は、日本の税金は非常に不公平だと思うのです。たとえば配当所得ですと、私ども調べますと、二百五十万までは無税だということでありますし、同時に、それだけの減税をしたからといっても、決して物価騰貴の、要するにインフレの原因にならないと私は思うのです。なぜかならば、生活はいまぎりぎりだと思うのです。ですから、決してそれにならないということが一つ。その御意見……。  それから、高額所得者に対して、これは、もう累進税の上限をなくする、こういうふうにしなければならないと思うのですが、この四点を先生にお聞きしたい。  それから、塚本さんに聞きたいのですが、学校給食の問題がありましたが、確かにこれは家計を圧迫する。同時に、私は、ある私立学校の寮に行きましたのです。そうしますと、みんな勉強が終わりますとふとんの中に入って寝ているのですね。どういうわけかと聞きますと、食料費が高くなったために灯油も買えなくなったというのですね。そういうことで暖房装置がない、だからみんなふとんの中に入って寝ているというのですね。そういうようなことを考えますと、あなたが出されたこの資料によりましても、教育費というのは非常に高い。これは私、いままでの税金――税金というのは申告制度になっておるわけですから、各家庭、家庭によって違うと思うのですよ。子供六人あるところ、三人あるところ、だれもいないところ、ということでありますから、教育費の控除、これが当然必要であろうと思うのです。その他いろいろたくさんあなたにも聞きましたから、それも含めて、このことについてあなたからお聞きしたいと思うのです。  以上の御意見をお聞きしまして、終わりたいと思います。
  48. 川口弘

    ○川口公述人 最初に、たいへん申しわけないのですけれども、私は耳が悪くて補聴器をつけておりまして、先生の御質問がたいへんお声が大きいものですから、かえって響きまして、第二問と第四問がよくとれませんでしたけれども、第二問はどういうことでございましたか。
  49. 岡本富夫

    ○岡本委員 第一問が過剰流動性でございましたね。  第二問は、要するに公正取引委員会の機能を完全にするための予算。これはきのうの公述人の先生のお話では、防衛予算の中のジェット機一機を削減すれば、これは機能が完全にできるんだ。だからこの予算を組みかえるべきである、こういうように私は考えておるのですが、先生の御意見。  三点目が減税の問題で、四点目は、あなた先ほど法人税に対してはもっと税率を上げるべきである、こういうようなお話でありましたけれども、中小企業と大企業の差があります。中小企業は非常に基盤が弱いわけですから、大企業並みの税率の増加というのは私はまずいと思うのですが、この点について。
  50. 川口弘

    ○川口公述人 お答えいたします。  第一点の過剰流動性の問題でございますけれども、四兆ないし六兆円の過剰流動性が発生したというのは、出発点におきましては、例のドルショック以後でございますね。ここでの対策は、日銀は一応都市銀行の日銀借り入れ金を実質的にほとんど全部返済させる、それで約三兆円ぐらい吸収する、さらに手形オペないしは国債オペ等を通じて五、六千億でしょうか吸い上げる、こういうような措置をとって、その当時、ほぼ適正な措置をとったんだというふうにいわれております。しかしながら、ここには二つ問題が残っておるわけでございます。  一つは、そういうふうな銀行の手元に入りましたお金を吸い上げましても、最初に外為を売った大法人の手元の流動性は変わらないわけです。そこでこの場合に、たいていの大企業は両建てで、大きな銀行借り入れ金を負っているわけですから、したがって、その預金の増加で銀行の借り入れ金を返させる、こういう指導が行なわれたならば、かなりの程度相殺できたわけでございます。ところが、そういうことはなされなかった。そして、企業がお金を返したいと思いましても、銀行は将来の取引のことを考えて拒否する、こういうことが一年ぐらい続きました。これが企業の手元にお金がだぶついて、投機的に動く一つの理由になったというふうに思います。  それからもう一点と申しますのは、日本の都市銀行は長い間オーバーローンで信用拡張をやってまいりましたし、そのようなオーバーローンは、当然であるというふうな考え方一般的にもあったわけでございます。そこで、日銀借り入れ金を都市銀行が完済いたしました段階では、都市銀行の資金ポジションは非常によくなったわけでございますが、本来ならば、常にそういう資金ポジションで行動すべきが銀行の経営原則でありますけれども、先ほど申しましたような歴史的事実がございまして、都市銀行としては、そういうふうに資金ポジションがよくなればさらに貸し出しを拡張してよろしいと、こういうような形で貸し出し意欲が非常に強まるわけでございます。したがって、その時点で日銀当局が、今後は、事態が変わったのだからオーバーローンは認めないぞ、こういうきびしい立言をすれば、あるいは効果があったかと思いますが、そのことがなされなかった。その結果として銀行貸し出しが非常に膨張いたしまして、それが過剰流動性の一因になったと、このように考えております。  そこで、現時点で過剰流動性をどのようにして吸収するかという問題でございますけれども、その点で、特に私は、先ほどの超過利得税あるいは租税特別措置法の全面的な改廃、こういうようなところを通じて法人税徴収を大きくふやす、これが一番適当な方法ではないだろうかというふうに考えております。  それから二番目の、公取委の拡充に必要な予算措置をすべきではないかという御質問ですけれども、これは私の公述の中で申しましたように、公正取引委員会の活動は高く評価しておりますし、それが、現在は非常にスタッフも足りませんし、施設も足りない、こういう状況でございますから、ぜひ飛躍的な拡充をしてもらいたい。それに幾らかかるかということは私は知りませんでしたけれども、ジェット機一台で済むのでしたら、ジェット機一台削ってぜひ回していただきたい、こういうふうに思います。  それから、三番目の減税の問題でございますが、標準家族、夫婦と子供二人で最低課税限度が百五十万円まで引き上げられる、しかし、これでは低いのじゃないかという御指摘は、まことにそのとおりだと思います。たとえば人事院の計算結果などによりましても、やはり標準家族の月額生活費は、しばらく前で十五万円ぐらいはかかる、総評の計算は三十一万というのでありますけれども、それがどちらが正しいかわかりませんが、人事院的に十五万円と考えて、その後の物価上昇を考えてみると、それを年収入というふうに換算してまいりますと、やはり二百二十万円前後は最低必要である、これは最低必要な生活費という意味で課税からはずすべきだ、こう考えますので、今回の引き上げ程度は、まだ不十分であるというふうに思います。なお、その程度まで課税最低限度を引き上げましても、おっしゃるように、実質的にインフレで押えつけられた所得を取り返すということがおもな内容になってまいりますから、それがインフレ刺激的には必ずしもならぬ。ただ、この場合、先ほど触れましたように、今回の所得税減税給与所得者については、年収一千万円以上の層までかなり大幅な減税になるというような形になっておりますが、これは余分だと思います。むしろインフレ刺激的な要因になるかもしれません。  それから、四番目の法人税についてでありますけれども、これはまさにおっしゃるとおり、私は、将来は累進税率という考えをとらなければならぬ、こう思っております。ただ、現在の税制前提にした場合に、基本税率をどうするかという御質問でありましたが、今度の税改正でも、中小企業基本税率は据え置かれておりますし、対象を拡大しておりますね。そういう点では、中小企業に対しては一定の配慮がある。そうすると、それ以上の法人税の基本税率、それが四〇%で十分であるかどうかということに対しまして、もっと引き上げるべきではないだろうかというふうにお答えしたわけで、将来のあるべき法人税の姿としては、むしろ累進税率を導入しまして、大企業に重く中小に軽い、そういう体制に持っていくべき、だと思っております。
  51. 塚本スミ子

    ○塚本公述人 申しわけないのですが、さっきの質問内容の最後のことばが聞き取れなかったのですが、ちょっとすみませんが……。
  52. 岡本富夫

    ○岡本委員 私の最後の結論としては、要するに、税金の中から教育費控除というものが全然いまないのですよね。こういうものが必要ではないかということを言ったのです。それは一律にというわけにはいかないと思うのです、各家庭によって違いますから。だから、それはやはり申告になるだろうと思うのですがね。その点についてあなたから……。
  53. 塚本スミ子

    ○塚本公述人 もちろん、私どもの考え方としましては、それを最も要求したいと思っております。先ほども御指摘があったように、学生生活はもういまほんとうに窮乏というのですか、私も何人か学生さんをお預かりしているのですけれども、せっかく受験ができて入学をしました、ところが一年くらいたって、どうしても学資が続かないということでやめられる方が非常に多いわけです。さもないと、それでもアルバイトを御自身でやっていらっしゃるのですが、そういうような状況におりますので、やはり税金の面で減額をしていただければ――教育費についての減額ですね、そういうことがはたしてどのようにできるか、私もまだ考えてもおりませんでしたけれども、そういうことで家計費の一助になればありがたいというふうに考えておりますので、ぜひ御協力いただきたいと思います。
  54. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 北山愛郎君。
  55. 北山愛郎

    北山委員 川口先生に、インフレ問題で一問だけにしぼってお尋ねいたしたいのです。川口さんの著書とかあるいは論文を拝見しまして参考にしておるものですから、きょうお目にかかってぜひお尋ねをしたいと思ったのです。  ということは、実はインフレが最近になって、特に田中内閣になってから、投機インフレというものになったんじゃないか、こう私は思っておるのです。為替変動に便乗した投機とかあるいは土地、株、それから今度の商品投機もまた一つのその広がったものだというふうに考えております。  そこで、実は土地の問題なんですが、去年の十一月に不動産金融研究所というのが発表しました、それによりますと、全国の土地の時価評価というものが三百六兆円だ、そしてその七割、二百十七兆円というのは宅地である、また一年間の土地の取引額は十兆円くらいだ、こういう発表があったわけです。このことは、もう御承知のように、土地の値上がりは昭和三十年ごろから約三十倍くらいに上がっておるのですが、したがって三百何兆円というのは、大部分はその十数年間の土地の値上がりによるものなんですね。そうしますと、そこから、たとえば一年間に二〇%土地が値上がりをすると、平均して上がるとすれば、もう六十兆円、土地の値上がりによって不労な所得といいますか、潜在的な所得を得るわけですね。またこれを売れば、ばく大な譲渡所得が得られる。しかも、その富やあるいは所得というものは価値の生産を伴わない、物資やサービスの生産を伴わない、言うならばまぼろしの富の増大であり、それから所得である。こういうふうな、いわゆる擬制資本というか、実体経済と離れた富や所得の増大という部分が非常に大きくなってきておるということは、これは非常に重大ではないかと私は考えるわけです。そしてそのことが、すなわちインフレの根源をなしておるのじゃないか。この三百兆、何百兆という土地を担保にしてどんどん金を借りる、その金でまた土地を買う、またその土地を売った人はばく大な譲渡所得を得る、いずれも実体経済と離れたところで貨幣、所得を得られる、財産はふえる、こういうことなんですね。  そうすると、このもとを締めなければインフレをとめることはできないのじゃないか。よく労働者の賃金が大幅な賃上げをすると、個人消費がふえて、そしてインフレになるのだ、こういうことをいいますけれども、現在三千五百万の雇用労働者が、平均してかりに二〇%上がったとしても、十兆円そこそこなんですね。土地の値上がりでもって六十兆円も片っ方ではもうける。また売ったやつは、その十兆円の中の大部分というのは、これは不労所得なわけですね。そういうものによって生み出される過剰流動性といいますか、そういうところからどんどん流動性が出てくるのであって、一方のほうのまじめにものを生産し、サービスを生産している労働者の賃金を押えていたって、そっちのほうの穴がふさがれなければ、大きな、言うならば過剰流動性インフレのプールみたいなものが、ガンみたいなものが体内にあるのだ。それをそのままにしておったのでは、これはインフレの解決にならぬじゃないか、それどころじゃなくて、富と所得の不平等がますます激化するだけだ、このように思うのです。  そこでひとつ、この私の評価についての先生のお考えを聞きたいということと、もう一つは、これに対しては、この国会でもほとんど何らの対策がとられておらないのです。しかも御承知のように、昭和四十四年来の土地の特別税制ですね、分離課税で非常に安い分離課税をかけるという特別措置、毎年毎年たくさんの土地成金を生んでおる、こういうことについてはさっぱり手がついてない。そういうことをしなければインフレのもとはとまらぬじゃないのか。あるいはまた何百兆という値上がりの、零細なものは別としても、大きな地主とか、それからたくさん持っておる企業であるとか、そういうものの土地については、再評価をして資産税を取るとか、そういうことが必要ではないのか、こういうふうに思うのですが、この点についての先生のお考えを聞きたいのであります。時間がおそくなりましたから、一点だけにとどめておきます。
  56. 川口弘

    ○川口公述人 お答えいたします。  おっしゃるように、土地等についての投機が非常に行なわれまして、特に地価の値上がりが、一部の大企業とかあるいは大きな地主とか、そういう人たちの手に集積されている、これは事実でございます。御指摘のように、昭和三十年代の後半から土地の買い占めが広がってまいりまして、例の笠信太郎先生が「花見酒の経済」というようなことで、それが、当時から始まった基調としてのインフレの動力になっている、こういうような御指摘があったわけです。ただ私は、これはたいへん大きな問題だと思っているのですけれども、しかし、そういう投機利益が発生するというのは、基本的にすでにインフレが進行する体質があって、その上に立って咲くあだ花だというふうに考えております。それが、今日のような状態になった場合には非常に大きな力を持ってくる、これは事実だと思いますから、そういう不労所得、これについては当然きびしく吸い上げをする措置をとらなければならないと思うわけです。  そのために必要な方法といたしまして、一つはキャピタルゲイン税を新設すべきではないだろうか。大体、わが国の税制はシャウプ勧告に基づいてつくられたわけでございますが、その際、法人につきましては法人擬人説がとられました。しかし法人擬人説に立てば、内部留保のふくらみによって株価が上昇する場合に、当然これはキャピタルゲインということで吸収していくという措置が必要になってきたわけでありますけれども、今日、そのキャピタルゲイン税が見送られている、こういうことがございます。そこで、土地まで含めまして、キャピタルゲイン税を新設するということが一つの方法であろうかと思います。  それから、土地については、現在でも保有資産税その他が課されているわけでありますけれども、現在程度では非常にゆるくて、なかなか土地の放出を促すというふうにはなっておらないと思いますから、これらの税制を、もっと強めるということで考えていくべきではないかと思います。それでさらに、この膨大な土地保有のまた非常に大きな部分が、やはり大企業にかかえ込まれている、そして、それが生産的に利用されないままになっている、こういうことがございますので、非常に過剰な部分につきましては、これを適正な価格で放出させて宅地に転化する、地方公共団体ないしは公共的な機関によって宅地に転化するというような措置を講ずべきではないだろうか。たいへん不十分でございますけれども、そういうふうに考えております。
  57. 北山愛郎

    北山委員 ありがとうございました。
  58. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 塚本、川口両公述人には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。    午後四時二十二分散会