○安宅
委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました
昭和四十九年度
一般会計予算、同
特別会計予算及び同
政府関係機関予算三案に反対し、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の四党が共同提案いたしております、
昭和四十九年度予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成の討論を行ないます。
昭和四十九年度予算編成にあたっての最大の課題は、インフレの
抑制、収束にあることは言うまでもありません。
今日の
物価の暴騰は、
福田蔵相みずから
狂乱物価と言わざるを得ないほどのすさまじさであり、
国民生活はかつてない破局的な危機にさらされているのであります。
言うまでもなく、今日の重大な
事態を招いたのは、何よりも
政府が計画的なインフレ
政策による大
企業中心の高度成長
政策をとり続け、独占資本の利潤の増大をはかり、日本列島改造計画を背景として、みずからインフレと投機をあおってきたからであります。
今日の悪性インフレは、したがって、明らかに政治インフレであり、
角榮インフレであります。これに対し、
田中内閣は内心周章ろうばいし、動揺しながらも、異常な
物価の暴騰を招いたみずからの失政を何ら反省することなく、安易な総
需要抑制策を通じて勤労
国民の消費を抑圧し、官僚統制と結びついた所得
政策の導入すら進めようとしており、断じて許すことはできません。
しかも
政府は、
物価上昇の原因を
海外物資の高騰や、みずからあおったはずの国内
需要の増加、さらには労働者の賃上げにあるとして、その責任をこれらになすりつけ、さらに加えて、独占
価格の形成、混乱した流通機構を極度に悪用した商品の買い占め、売り惜しみ、いわゆるつくられた
石油危機を口実とした、独占みずから広言をしている千載一遇の好機とばかりの
便乗値上げを放置するどころか、マッチ・ポンプばりの高値安定
政策でこれを支持し、彼らからの膨大な政治献金を背景とする癒着関係からとしか
考えられないようなやり方、すなわち、わが党をはじめとする野党各党の憲法、国会法等に基づいた道理にかなった大
企業代表の国会証人喚問すら、強行採決をもって拒否して、その利潤拡大に奉仕しているのであります。
わが党の楢崎
委員によって追及された
石油連盟密田会長らの国会内外の言動、さらにまた、あわてふためいた
通産省の態度、さらには、いわゆる
物価安定法の適用の意思さえさらさらないことなどでわかるように、これらのことを余すところなく暴露しているではありませんか。公共料金の
値上げストップも、消費者米価の
値上げ延期も、参議院選挙をおもんばかったゼスチュアだけの、わずか半年間にすぎません。
つまり、もともと四十九年度予算案は、経済
見通しも立たないままでっち上げた砂上の楼閣、単なる腰だめによる計算数字の羅列にすぎない、古今未曽有の合理性も権威もないごまかし予算と言っても過言ではありません。
まず第一に、日本列島改造計画を下敷きにした
昭和四十八年度超大型インフレ予算が、とどまるところを知らないインフレの急進展と、土地問題や資材不足がからんで、完全に消化不良におちいっているということであります。
しかも、二けたに及ぶ卸売り
物価の暴騰によって暗礁に乗り上げ、末期的症状の中で、
田中総理は、沈没しかけた日本列島改造計画と、それを裏づけるための国総法にいまなお固執し、何らの反省もないということであります。
福田大蔵大臣も酷評し、明らかに閣内不一致の列島改造計画の撤回を明確にし、真に経済財
政策の根本転換をはかることなしには、引き続きインフレ路線を進むことは明らかであります。
予算規模を一九・七%増に押えたといっても、内容は、地方交付税交付金を千六百八十億円削減し、地方財政の圧迫と地方自治侵害によって、かろうじて二〇%ラインを割ったにすぎず、一九・七%という予算規模増は、高度成長
過程における予算の伸びと比較しても、最高の
水準を示すものであります。
第二に、国債発行は、
昭和四十八年度補正後発行予定額一兆八千百億円を上回る二兆一千六百億円もの巨額の発行を予定し、国債依存率も、前年補正後予算の国債依存率一一・八%を上回る一二・六%となっているのであります。まさにインフレ刺激的な措置といわねばなりません。
第三に、税制面については、インフレによって生活の危機に直面している勤労
国民のための大衆減税を行なわなければならないのでありますが、他方でインフレ
抑制策として、大資本に対する積極的な増税
政策を組み合わせる必要があります。
このたび、法人税率は若干の引き上げを予定してはおりますが、悪名高い租税特別措置をはじめ、法人税の仕組みそのものが大法人に有利になっており、大法人の実際の税率は表面税率の半分以下にしかなっておりません。わが党が主張する法人税付加税あるいは広告費の課税、交際費の課税強化など、取るべきものは幾らでもあるのであります。
第四に、一般公共事業費も、昨年に比べ削減されたわけではありません。災害復旧事業費が昨年の災害額の減少によって減ったものであり、緊縮予算というならば、まっ先に削減されるべき防衛費がついに一兆円の大台をこえ、聖域扱いとなっていることは、
国民の世論を無視した暴挙であるだけでなく、まさにインフレ
対策に逆行するものといわなければなりません。
しかも、膨大な財政投融資計画の弾力条項によって、さらに五〇%までの規模拡大がはかられるのであり、この財投の内容を明らかにすることにより、この予算こそ、実質的にはインフレ予算であることが暴露されるしかけになっているのであります。
昭和四十九年度予算のもう
一つの大きな課題は、インフレの進行に伴う社会的不公正の拡大を是正し、今日、命と暮らしが危険にさらされている、弱い
立場の人々を救済することであります。
しかし一方では、インフレによって笑いのとまらぬ者がいるのであります。大
企業の借り入れ金は、
物価の上昇によってなしくずしに減らされ、五十兆円の借り入れ金ならば、二〇%の
物価上昇で十兆円の借金棒引きとなり、返済負担が大きく軽減されることになります。それだけでなく、勤労大衆は
物価値上げで苦しんでいるというのに、大
企業は
物価値上げを製品
価格の
値上げに便乗転嫁し、ますます肥え太っているのであります。
今日の政治の急務は、この格差と社会的不公正を排除し、不当な利得を得た者の負担で、インフレの被害者を救うことでなければならないのであります。
しかるに、四十九年度
政府予算の基本的性格は、明らかに弱者の犠牲によって、政治経済の危機を切り抜けようとする弱者切り捨て、不公正拡大予算であるということであります。
第一に、福祉充実のごまかしであります。
政府は、立ちおくれた社会保障費を増額したと言っていますが、その中身は、年金予算で、老齢福祉年金が月額七千五百円に引き上げられたのでありますが、これは
物価値上がりを四%台と見込み、五十年には一万円年金にすることが昨年の二月から約束されており、新たな施策ではありません。しかも十月実施で、支給も三カ月後一括あと払いという、よくもまあ福祉年金などと言えたものだというしろもので、国のために働き抜いた年寄りをなめ切った、世界に恥をさらす涙金とでもいうべきものでありましょう。
生活保護費なども二〇%アップとなりましたが、今日の異常な
物価高騰のもとで、実質減額となることは必至であり、厚生年金、
国民年金の緊急スライドは、ついに見送られてしまっております。予算増額の大部分が、福祉予算総額の六割以上を占める社会保険費の当然増であり、つまり、昨年の医療費一九%引き上げを含む医療費の上昇をカバーすることに使われているのが、偽らざる中身であります。昨年、わが党の要求にこたえて約束した一人暮らし老人の電話設置費用は、わずかに四千二百万円つけられたにすぎず、何が福祉かという怒りが、全
国民の間にほうはいとしてわき上がるのも当然のことであります。
第二に、いわゆる二兆円減税のごまかしであります。
初年度一兆四千五百億円に削られたなどとけちなことは申しませんが、その実態は、インフレ、
物価高に苦しむ勤労大衆の救済を内容とするものではなく、給与所得控除の最高制限の撤廃高額所得層の税率軽減など、明らかにインフレ便乗の重役減税であり、金持ち減税だということであります。
第三に、住宅予算についても、公営、公団住宅の建設予定戸数は四万五千戸減少し、これも土地をはじめ諸
物価高騰で計画達成の保証もないわけでありますが、しかも、相変わらず公共事業費の三八・六%は道路整備費が占めているのであります。
農業予算についても、食糧自給度の向上と農業再建に対する
対策を欠き、逆に世界の食糧事情から見て、かえって高くつき、しかも、できもしない
海外食糧依存の体制を強め、依然として減反
政策を継続し、農業予算の伸びが予算全体の伸びを下回っていることでもわかるように、国家百年の大計を誤る農業荒廃促進予算であり、特に、農用地確保の名目で農用地開発公団を設置することとしてみたり、他方でまた三十万ヘクタールの農地の転用を強行しようとしたりの、ネコの目農政どころか、めくらのネコの顔に紙袋をかぶせたような、
見通しのない、民族の将来にとってゆゆしい
事態を招く亡国農業予算といわなければなりません。
また、引き締めと金融難、雇用問題の深刻化の中で、中小零細
企業は重大な危機に直面しております。しかも、いわゆる
石油不足や原材料の暴騰にも見舞われ、二重、三重の打撃を受け、昨年の暮れからは倒産も激増して、自殺者も多く出ている
状態であります。
これに対する中小
企業予算はきわめて貧弱であり、全予算の〇・六%以下の、スズメの涙、二階から目薬のたとえそのままであり、大資本の
要請にこたえた中小
企業切り捨て
政策が進められていることを、如実に物語っております。
これに対し、防衛費は一兆円の大台をこえ、緊縮予算だなどと言いながら、軍事予算の伸び率は世界でもトップクラスであり、四次防は、さらに
物価暴騰と相まって、その総額が膨張しつつあります。これらは、四次防の修正を許さないとする制服組や、いわゆるタカ派の暴走を、軍事産業と結びついた
政府が押え切れない現状を見るとき、日本軍国主義の完成、ファシズムへの道をたどるきわめて危険な側面を浮き彫りにしているといわなければなりません。
しかも、この問題とからんで、資源問題の深刻化に対応して、資源外交を強化するという名目で、
海外経済
協力費を大幅に増額し、インドシナ復興計画援助や
石油資源確保などを中心にし、従来からのなりふりかまわぬ対韓援助等の強化を含め、日本独占資本の多国籍
企業化、帝国主義的経済侵略の水先案内の役割りを果たそうとしていることは、きわめて危険なことであります。資源小国としての日本帝国主義が、その膨張のために
石油や原材料の安定供給を確保するには、開発途上国を中心とする
海外に依存するしかないという発想に立って、日本独占資本と国家のジョイントベンチャーがより組織的につくられつつあることはまことに重大な問題であり、紙・パルプ・化学・鉄鋼・繊維など広範な分野で、資源略奪のための動きが見られるのであります。
しかし、
田中総理の東南アジア訪問の先々で、日本の経済侵略反対のデモや暴動に直面したことでもわかるように、新植民地主義的進出に対する各国人民の反感は根強いものがあり、日米安保体制のワク組みの中でアメリカ帝国主義からあれこれの指図を受けながらの、にわか仕立てのわが国のいわゆる援助に、警戒の念をさらに深くするであろうことは明らかであります。根本的な改革を強く要求いたします。
最後に、地方交付税の国への借り上げ強制措置をとったことであります。
福田蔵相は、四十四年当時、今後は
政府の借り上げ措置は避けると、自治省と覚書をかわした張本人であります。またしてもこれが破られたことは、
福田財政の常套手段とはいえ、
物価の暴騰で苦しむ地方財政を一そう圧迫し、地方自治を侵害するものであり、断じて容認できません。
以上、私は
政府案反対の理由を述べてまいりました。
先ほどわが党の
松浦利尚委員から詳しく説明されました、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の共同提案になる
昭和四十九年度予算の編成替えを求めるの動議の具体的な内容こそが、今日悪性インフレから
国民生活を守り、真の社会福祉を実現し、日本の政治経済を正しく発展させるための緊急最低必須のものでありますことは、すでに賢明な皆さんの御理解を得たことと存じます。全
委員の賛成を
要請しながら、
政府案が予算の名に値しないほどの矛盾をはらんでいること、そういうことから
国民が政治不信におちいり、生活の困窮にいらいらしながら政治の革新を求めているそれらの人々とともに、私は、この
国民不在の
政府予算三案に断固として反対し、
政府が
昭和四十九年度
一般会計予算、同
特別会計予算及び同
政府関係機関予算を撤回し、直ちに編成替えをすることを要求して、討論を終わります。(拍手)