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1974-03-12 第72回国会 衆議院 予算委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十二日(火曜日)     午前十時五分開議   出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       小沢 一郎君    片岡 清一君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    笹山茂太郎君       塩谷 一夫君    住  栄作君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       田中 正巳君    塚原 俊郎君       中村 弘海君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       松岡 松平君    松野 頼三君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    辻原 弘市君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       松浦 利尚君    八木 一男君       湯山  勇君    青柳 盛雄君       浦井  洋君    田代 文久君       土橋 一吉君    松本 善明君       新井 彬之君    大野  潔君       岡本 富夫君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)        (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局経済部長 熊田淳一郎君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 田代 一正君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁長官         官房長     吉瀬 維哉君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局次長     藤岡眞佐夫君         国税庁次長   吉田冨士雄君         厚生省医務局次         長       宮嶋  剛君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   三善 信二君         食糧庁次長   森  重弘君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君         消防庁長官  佐々木喜久治君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     矢野 絢也君   小沢 貞孝君     安里積千代君 同月十二日  辞任         補欠選任   大野 市郎君     中村 弘海君   灘尾 弘吉君     片岡 清一君   前田 正男君     住  栄作君   松浦周太郎君     小沢 一郎君   岡田 春夫君     松浦 利尚君   青柳 盛雄君     浦井  洋君   金子 満広君     松本 善明君   増本 一彦君     土橋 一吉君   岡本 富夫君     新井 彬之君   矢野 絢也君     大野  潔君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     松浦周太郎君   片岡 清一君     灘尾 弘吉君   住  栄作君     前田 正男君   中村 弘海君     大野 市郎君   松浦 利尚君     岡田 春夫君   浦井  洋君     青柳 盛雄君   土橋 一吉君     田代 文久君   新井 彬之君     岡本 富夫君   大野  潔君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  本日、日本銀行総裁出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより締めくくり総括質疑を行ないます。山田太郎君。
  5. 山田太郎

    山田(太)委員 いよいよ本日で、当予算委員会審議も大詰めを迎えたわけでありますが、締めくくりの意味において数点の問題をただし、明快な答弁をお伺いしておきたいと思います。なお、総理はじめ関係閣僚にお願い申し上げておきますが、的をはずした答弁でなく、的確に御答弁をお願い申し上げておきます。  さて、当委員会におきまして、わが党の委員から、大手商社数社の海外取引を利用した不正所得及び脱税、脱漏の指摘をしてまいりました。まあ、その他の問題も多々あるわけでございますが、昨日来の審議過程から、あえて通告しておりませんでしたけれども、この問題をまず取り上げてまいりたいと思います。  そこで、最初に国税庁長官にお伺いいたしますが、一般的に、海外取引を利用した不正所得手口というものは、いかなる方法でなされておりますか、その点をまずお伺いしておきたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 国税庁長官が見えておりませんので、お答えいたします。  これは国内で大体調査します。それで疑義があるというものにつきましては、わざわざ現地へ出張させる場合もあります。本年度あたりは、数名の者を海外に出張させまして事情の調査等をさしておる、こういう状態でございます。
  7. 山田太郎

    山田(太)委員 手違いで、国税庁長官おいでになっていないようでございますが、至急呼び寄せるようにお取り計らいをお願いしたいと思います。
  8. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 承知しました。
  9. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほど大蔵大臣から、一般的な御答弁があったわけであります。  そこで、私が国税庁より入手しております、いわゆる大手商社等の「海外取引にかかる不正計算態様」それを見ますと、このように書いてあります。  一つには、輸出価格過小計上。これは海外法人等への輸出価格を過小に計上する、これがまず第一であります。二つには、輸入価格過大計上。これが一番大きな問題でございますが、海外法人等からの輸入価格を過大に計上する。三つ目には、輸入手数料等の除外。すなわち、輸入先である海外法人等から受け取る手数料収入、仕入れ割り戻し金、クレーム弁償金等収入を除外する。四つ目には、輸出手数料等架空計上等海外法人等に支払う代理店手数料あるいは仲介手数料等の経費を過大にあるいは架空に計上する。こういうふうな態様になっておりますが、大蔵大臣御存じでございますか。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ、いろいろの手口がありますことは承知しております。その手口の全部について調査することは、非常に困難な事態があるのであります。  つまり、在外外国法人が介在する場合がある、そういう際におきましては外国政府協力を得なければならぬ、こういう問題もありまして、その間、非常にむずかしい問題があるのでありますが、しかし、内地における調査状況にかんがみまして、必要がある場合には現地へ係官を派遣させまして、そして、場合によりますれば、外国政府協力も得る、こういう努力をいたしております。
  11. 山田太郎

    山田(太)委員 これは一般的なことでございましたので、いまここまで質問してまいりましたが、やはりこれからの段になりますと、国税庁長官がどうしても必要でございますので、いつごろ国税庁長官は参りますか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 出席要求を承っておりませんものですから、まだ見えておりませんが、直ちに参ります。
  13. 山田太郎

    山田(太)委員 では、この問題は国税庁長官おいでになってから、今度は具体的な問題が入ってきますので、それから質問を続けてまいりたいと思います。  そこで、昨日の質問、まあ一般質問も通してですけれども、ことに昨日の締めくくり総括等質疑を通しまして、石油製品値上げの問題が論議されてまいりました。そこで、国民がこの石油製品値上げによって一番心配するのは何かといいますと、何といいましても、昨年の九月、十月以降、あるいは一月、あるいは二月の初めに至るまでの石油ショックを原因とした、それまでの基礎的インフレ要件の上に石油ショックが加わって、これに先取り便乗値上げ等々の大きな悪徳商法がからんで狂乱物価を来たしたのは、御案内のとおりでございます。このようなことが再びありはしないかという心配と、もちろんそこまではいかないであろうけれども、やはりこの物価高騰の趨勢が相当じりじり、どんどん強くなるんじゃなかろうかということを一番心配しております。したがって、この対策にいかなる方法で臨まれるか。  報道されること、あるいはきのうの審議等過程を通じてみて、大きな柱に分けますと、やはり値上げ事前通告制一つであるようです。もう一つは、百貨店あるいはスーパー等協力を得ての、真の価格凍結ではないけれども、この凍結をしていこうというふうな、大きな柱が二つあるようでございますけれども、まず、石油製品値上げ云々の時期等の問題はさておいて、やはり国民の一番心配するところに、政府はこたえていくべき責任があると思います。  したがって、この点について、この対策について、関係閣僚がまず具体的にお述べになって、そうして、どの程度、あるいはどの期間この価格が騰貴するのを押えることができるのか。ことに、基礎的資材あるいは生活必需関連物資等はどうしても押えていかなければならない、これは至上命題がございます。単なる、このようにしてやっていきますというだけでは、国民は納得できないのでございます。したがって、どの程度、どの期間、どのような金額で押えられていくかというところまで、明快に述べていただきたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石油製品価格は、早晩値上げをせざるを得ないという状況にいま追い込まれつつあることは、御指摘のとおりでございます。  しかし、これをやるという場合には、昨年の暮れ以来石油業者便乗値上げをやったという、その利得を全部吐き出させる、そうして内部留保も払い出す、重役賞与も辞退する、無配ないし減配を行なう、そういうところまで石油業者国民皆さま方に対して反省を示し、協力をするということを実現した上でやはりやる必要がある、こういう考えに立って、いまいろいろその施策を検討しておるところでございます。  ただ、石油値段については、まだ不安定な要素が残っておりまして、第一番は、為替相場の問題がございます。それから第二番目には、OAPECの通告してきた値段が、あれが最終価格ではなくて仮払いの値段になっておる。したがいまして、たとえばミナス原油のようなものは、十ドル八十セントといわれておったものが、十二ドル以上にも追加されてきておる。けさの新聞にも、アラ石のあの値段カフジ原油についても追加徴収というようなことが出ておりました。そういうような事態が、メジャーからきておる石油につきましても多々ありまして、まだこの点は、最終値段ということには落ちついておらないのでございます。  また、もう一つわれわれ考えなければなりませんのは、将来にわたってOAPEC動向がどういう態度をとるか。これは政治要素も含んでおりまして、あるいは将来にわたって値下げ動向も出てくるかもしれません。それも、政治情勢を見詰めながら検討している一つの材料になっております。  そういうような情勢から、標準価格というような形で固まった価格にすぐすることは、きわめて危険な情勢がございます。朝令暮改というようなことになる危険性一つあることと、それによって固定しますというと、石油は、御存じのように得率がございまして、もし低い値段で固定された場合には、その石油が出てこない、店頭から姿を消す、そうしてよけい出てきたものの価格は、今度は値下げをささえてしまう、下ささえになるという危険性もなきにしもあらずでございます。したがいまして、行政指導価格によって油種別にある程度きめて、そしてそれがどの程度水準に落ちつくかということも検討しながら、逐次標準価格に移行していく、そういうほうが行政的には穏当であり、品不足が出てこないという政策的なプラスもあるのではないかとわれわれは考えております。そういうような配慮をもとにいたしまして、ある時点において石油価格が上げられました場合に、これがほかの物価値上げに及ぼされないように、いま全力をあげて各省で努力しておるところでございます。  まず第一に、石油製品につきましては、石油関連企業についても、通産省からすでにいろいろ要請をいたしまして、そして最終値段を上げない、そういうことで、いろいろな了承をいま取りつけておるところでございます。たとえば、石油が上がればナフサが上がります。これはもうガソリンと同じような性格のものでありますから、上げざるを得ない。その場合に、ポリバケツまで上げないように途中で吸収しなさい、これは、ある程度便乗値上げでその分まで入っておるではないかという立場通産省としてはとって、ポリバケツは上げてはならない、そういうような要請を強くしておるところでございます。  それから、丸棒であるとかセメントであるとか、そのほかの国民生活関連物資の重要なポイント、あるいは国民経済運営上の重要なポイント結節点につきましては、同じく行政指導によりまして、企業ごとに個々別々に指導して、そうして値上げを回避する、そういう措置について、実際努力しておるところでございます。  なお、流通過程におきましては、先週の土曜日に、私はデパート、スーパー、それから小売り店の三団体代表者に集まってもらいまして、われわれの政策のゆえんをつとに説明して、値上げをやらないように、政府政策協力してくれるようにと、協力を求めたところでございます。それらの諸団体も、政府に対して協力いたしましょう、そういう回答もいただきました。これらは、いずれまた個別的にわれわれとしては監視もするし、指導もしていくつもりでございます。  そういうようなあらゆる努力をするとともに、全政府の機構をあげて、今度は物価監視値上げ抑制ということに次の段階は取り組むべきであり、この点につきましては、そういう将来の時点において、国民皆さま方からの積極的な御協力も仰ぎたいと思っておる次第でございます。
  15. 山田太郎

    山田(太)委員 なお、関係閣僚から御答弁をいただきたいと思いますが、とりあえず通産大臣に、先ほど私がお伺い申し上げたのは、その辺は昨日もやや同じような御答弁があったようでございます。そこで、やはりどの期間値上げを押えていけるか、この見通しというものが、国民が一番不安に思っているところなんです。それに対しての答弁は、ひとつずらさないでやっていただきたいと思います。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近の模様を見ますと、総需要抑制ということが非常にきいてまいりまして、セメントなんかも弱含みになって、むしろ値が下がる傾向が出てまいりました。丸棒も、七万円台も下値のほうに落ちてまいりました。そういうようにして、総需要カットがかなりきいてきておりますし、また、生産がある程度持続しておりますから、在庫品もある程度余裕が出てきておる、こういう状態でございます。  したがいまして、物価抑制政府として全力をふるってやれば、ある程度これは可能である。あの十一月、十二月のようないわゆる狂乱物価が出て、物不足とか、品物不足による恐怖心が起こっている時代とは、まるっきり事態がもはや変わってきておる。そういう変化というものを的確にとらえましてわれわれはやっていきたい、こう思っておるわけでございます。
  17. 山田太郎

    山田(太)委員 私がお伺いしたのは、その点もございますが、いろいろな価格が下がってきているのは承知しておりますが、しかし、いまの通産大臣のおっしゃったことによって、ほんのしばしの間で、たとえば四月になったら、あるいは五月になったら、あるいは六月になったら上がるのじゃなかろうかというふうな、何といったって恐怖に近いような心を抱いているのが国民の無理からぬ心配でございますから、どの程度までの期間は押えていけるんだという、そういう見通しも立てないでは、国民は安心するわけにはいかないじゃないですか。その点を答えていただきたいのです。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 どの程度までと言われますと、当分の間とお答え申し上げます。じゃ、当分というのはどれぐらいかといえば、やはりこの狂乱物価が鎮静する、それまでは押え続けていく、そういうような基本的考えに立ってやっていく、その間におきましても、外国の仕入れの値段が高い、輸入値段が高いというような、特殊の例で上げざるを得ぬというようなものが出てきた場合には、山田委員も御指摘のように、事前審査で、届け出、そして制限的に、審査の上でこれをどうするかということをきめる、そういう形で、できるだけ押えるということをやっていこうと思います。  ここで一つ問題になるのは、電力にどう影響が出てくるかという問題でございます。石油電力代に占める比率を見ますと、かって二〇%ないし二五%ぐらいでありましたのが、最近は、原油代が上がりましたために、四〇%をこすという情勢になってきているわけでございます。だから、電力会社はほとんど赤字、また赤字に近い情勢になって、決算すらできないという情勢に追い込まれておるのが実情でございます。しかし、やはり物価を押えるという大きな目的から見ますと、電力につきましても極力これは押える、それが政府としての立場でございます。それで、極力これは抑制するという基本方針をもって進みたいと私は考えております。  そして、石油が将来上げられましたときに、どういうような均衡状態国民経済の上に、生産部門において、及び消費部門において起きてくるか、そういう諸般の情勢、新しい水準形成状況をよく見つつ、この電力の問題につきましても、内閣をあげて取っ組んでいく、しかし、基本方針抑制していく、そういう基本方針で進みたいと思っております。
  19. 山田太郎

    山田(太)委員 厚生大臣並びに農林大臣、簡単に関係物資について……。
  20. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農林物資は、御存じのように、大ものはことごとく食管でございます。そのほか、みそ、しょうゆ、ラーメンとか食用油、これは当分の間値上げしないでもらいたいという話で、その当分の間というのは、まだ日をきめておるわけではありませんが、一月の末から二月にかけてやりまして、まず私どもは、三月一ぱいは当分の間に属すると思っておりますが、そのときになりまして、状況変化があればまた様子を見て相談する、こういうことであります。
  21. 山田太郎

    山田(太)委員 厚生大臣にも答えてもらいますが、農林大臣、いまのお答えの中に、当分の間とは三月一ぱいということになりますが、というようなお話がありました。そうすると、もうすぐですよ。きょうはもう十二日です。あともう十八日たてば三月は終わっちゃうのです。そんな当分の間ということで国民が納得できますか、あるいは心配せずにおれますか。そういうふうな不誠実な答弁では、国民はやはり失望いたします。何らそういうことも考えないで、いまも通産大臣も、やはり明確なめどというものが、何カ月間は、あるいは何月までは、あるいはこれをずっと続けるとか、そういうふうな御答弁はなかった。農林大臣に至っては、当分の間とは三月一ぱいのことです。国民を愚弄するにもはなはだしいと私は思うのです。  その点について、ひとつ答弁を訂正してもらいたいと思います。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私のことばが足りませんでしたけれども、先般来、たとえばラーメンというものが急に上がったというふうなときに、大手の上げたものを呼びまして相談をいたしました結果、これは間違いでありました、下げますということで、六十円に上げたものを五十円に下げた。そういう機会に、当分の間はこういう価格を維持してくれ、こういうことでありますが、四月になれば上げると言っているわけではありませんで、さらに月末になりましたならば、ひとつ相談をいたしましょうということで、私どもは、できるならばこのままに進めてまいりたい、こういうことであります。
  23. 山田太郎

    山田(太)委員 ラーメン、ラーメン言うと……(「ラーメン大臣だよ」と呼ぶ者あり)ラーメン農林大臣なんです。すぐわかりやすいからということかもしれませんが、やはりこれを当分の間はずっとあと続けていきたい、こういうことですね。確認をとっておきます。  それから厚生大臣にも、簡単に答弁してください。
  24. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 医薬品につきましては、先般、再販を取り下げて値上げをしたりする動きがありましたので、それを撤回させるとか値下げをするとか、そういう行政指導をいたしておるわけでございまして、ここしばらくこういう姿で自粛を指導してまいりたい、かように考えておる次第でございます。  しかし、御承知のように、医薬品というのは国民医療上絶対これは欠かせないものでございますから、どうしてもという場合には、事前によく相談をしていただく、こういうふうな仕組みで行政指導を強化してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  25. 山田太郎

    山田(太)委員 これもどうも明確ではないようですね。  総理大臣、いまの各大臣の御答弁をお聞きになっておっても、やはり一番の国民心配している点に答えていないようでございます。明快に、ひとつ国民が安心できるように、もし石油製品価格が上がったなら、やがては、あるいはたちまち、あるいは必ず上がるであろうというその心配に対して、国民の皆さまに総理から、こうこうですから心配ありませんぞと、具体的な例をあげて、あんな散文的な、当分の間だとか、しばらくだとか、そんなものじゃ国民は安心できないのが当然じゃないですか。ひとつ総理から明快に御答弁をいただいておきたいと思います。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価には三つの要因があるわけでございまして、この三つの要因を十分把握して、完ぺきな対策をとっていかなければならぬわけであります。  一つは、国際的な物価要因ということがございます。これは原料が上がれば製品価格は上がるということは当然のことでございまして、そういう実態を無視して物価を押えるといっても、国民が理解をするはずはありません。ですから、まず国際的物価高に対しては、可能な限り最大の政策努力をしなければなりません。そのためには、開発輸入を行なうとか、経済協力を行なうとか、長期輸入契約を行なうとかいう問題を、まず第一に進めておるわけであります。  第二の要因は、石油問題であります。石油問題に対しては、量と質の問題があります。量に対しては、私はおおむね見通しがつけ得るような状態ではないか、こういうことを考えます。そうすると、問題が残るのは質の問題、すなわち、原油価格はこれからもなお上がるのかどうかという問題がございます。それから、私は質の問題に対しても、二年、三年という長期的に見通しがつかなくとも、少なくともこの半年間、一年間というものに対する山は見えたのではないかというような感じがいたします。そのためには、外交努力やさまざまな問題、これはとにかく御承知のとおり、DDオイルを引こうとすれば、十ドル、十二ドル、十三ドル、十五ドルの国際価格がついておるわけでありますから、そういうものを引いて日本の製品価格を下げるわけにはまいりません。しかし、ある国のように何億ドル、十何億ドル、二十億ドルという要求もありますが、そういうような製油工場をつくるとか、また、お互いが経済協力政府間ベースで行なうというような具体的な問題を片づけることによって、そのうちの何十%を固定的な価格輸入するということができるわけでありますから、そういう問題を、外交的にも経済的にも、順次一つずつ固めてまいりたいということであります。  第三は、国内的要因であります。国内的要因につきましては、石油価格をきめるということが一つの問題でしょう。石油価格をきめれば、一割や二割上がったんじゃないですから、キロリットル当たり一万円ないし一万一千円も上がっておるのでありますから、いままでの二倍も三倍もということでございますので、これを一年前、二年前の製品価格でもって押えるということは、物理的にむずかしいことであります。しかし、その間に、いい悪いは別にしまして、先高を見越して上げてしまったという問題があるわけです。ですから、石油業者に対しては、上げたものは吐き出してもらわなければなりませんよ。また、上げたときに、これは三百億とか六百億とか千百億とかいっておりますが、いずれにしてももうかっておる。もうかっておるものを、どういうふうに運用したかという問題もあるわけです。土地になっておる、株になっておる、それが一体時価評価で幾らだか……(山田(太)委員「それはよくわかっておるのです」と呼ぶ)いや、そういうことをよくわからぬで、ただ、いつ物価を押えようといったところで、それは答弁になりません。それならやめてもいいですが、これは答弁になりませんよ。(山田(太)委員「御答弁は長くなくて、簡単に」と呼ぶ)いや、それはしかし国民が聞いているのですから、これは重要な問題ですよ。
  27. 山田太郎

    山田(太)委員 それはいままでよくおっしゃっておるのです。いいですか、いま国民心配しておるのは、石油製品価格の引き上げがあった場合には上がるであろう、どのように上がるかしら、あるいは政府はちゃんとこれを、いつまでぐらいは押えてくれるんだろうか、それまでは鎮静しておるまま、ちゃんと見通しを立ててやっておるのだろうか、その見通しというものを……
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それをいましゃべるのです。
  29. 山田太郎

    山田(太)委員 早くそこへいってください。
  30. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そんな、日本の経済が、あなた、はいそうですかと答えられるようであれば、こんな質問しないで済むじゃありませんか。そうじゃない。ですから、最後の一番重要な問題ですから。石油問題でしょう。  そうすると、石油というのは、三百億とか六百億とかいいますけれども、それが何に化けているかということは、やっぱりいま通産省が全部押えているわけです。そうすれば、それだけのものを吐き出させることによって、一万一千円上がっているというけれども、一万一千円は認めませんよということで、だんだんと、一万円にできるのか、九千円にできるのかという、石油業界の過去にもうけたものを、少なくとも半年でもうけたものを、まだ一体どこまでもうけが続いておるかということをびっしりとしぼって石油価格をきめる、こう言っているわけです。  これをきめた以上、今度はすぐその翌日から、電力をとにかく値上げをしなければならぬということになりますが、それはやっては困るから、過去の含みを食いつぶしても、電力は待てるだけ待ってください、こういうふうに押えている。ですから、電力が七月まで待てるのか、六月まで待てるのか、八月まで待てるのかということは、いま通産省で各社別で調査をしています。  そうしてその間に、もう一つ第三段目に、一番の問題は、石油が上がったら、計算をすれば石油製品価格はこうなります、しかし、過去に上げておるのがここまで上がっておるから、少なくとも石油が上がっても、過去に上げた価格との差額はこれまでしかありませんよ、ですから、この部分だけは税制で見られるのか、金融で見られるのか、値上げをどうしても認めざるを得ないのか。しかし、それよりもなお上がっているものありとせば、この部分との操作をして、そして灯油だったら灯油は据え置こう、しかし、上がったものがあるなら、それは高値安定ではなく、この線まで引き下げようという作業を、いま通産省も経済企画庁も大蔵省もやっているわけです。  ですから、そういうふうな見通しをつけて、究極的には、これはとにかくどうしても食管のように、全部国民の税金でまかなうわけにはまいりませんから、ですから、鉄道運賃でも、赤字があっても十月一日まで延ばしましょうということを、現に予算で認めていただくようにいま審議をいただいておりますから、その中で、国民生活にほんとうに密着しておるものは、どういう政策によって救済をするかということを、いま品目別に自民党でも詰めておりますし、各界の協力要請しております。政府自体も、一つずつの製品価格を詰めているわけです。  そうすると、じゃ、そんなに安くなるなら、将来上がるから抱いていようかというから、流通経路における水ぶくれの金融を全部切ってしまうということまでやっておるのですから、それが全部見通しがつくときには、石油というものの値段をきめよう、こういうことをいまやっているわけでありますので、政府は一日でも長く物価というものを押えなければいかぬし、上がり過ぎたものは一日も早く押えたい、こういう広範な問題をやっているのでございまして、何月何日までいまの価格を押えるのかということは、非常にむずかしいことでございます。  しかし、参議院選挙もあるのでございましてね、私たちも、物価を上げようなんということは全然考えていないのです。押えるだけ押えてやろう、ほんとうにそうなんです。まあ参議院選挙というのは——これは国民要請ですから、これはやっぱり参議院選挙でわれわれは国民と会うのですから……(「選挙が終わったら上げるのだろう」と呼ぶ者あり)そんなことありません。一体国民の必需品を政府はどこまで押えるのか、どこまで自信があるのかと、政府はちゃんと答えなければなりません。  そういう意味で、われわれもまじめな意味で正面から取り組んでおるというのでございまして、あなたがいま六月までか、九月までか、十二月まで押えるのかということは、石油価格をどうして、電力はどこまで押えられるかということをいま精査をしておる段階であるということで、ひとつ政府の非常に積極的な施策、皆さんとともに、与野党を問わずこの物価問題を鎮静せしめよう、こういう意欲のあるところを、ひとつ御理解をいただきたい。
  31. 山田太郎

    山田(太)委員 総理大臣、ちょっと答弁の時間を……。いま十五分もかかったです。それで、答弁なさったところを見ると、具体的な問題は何らないということになる場合が多いのですからね。といって、いまの御答弁では、参議院選挙のために、それまで押えるというふうなニュアンスが感じられた点は、これはもってのほかだと思います。あとで否定はなさいました。しかし、やはり口がすべるということは、この中にあるということじゃないですか。  そこで、時間が経過しますから、先ほど総理をはじめ通産大臣のお答えでは、やはり行政指導でやっていこうというわけです。ところが、この行政指導というものは、強制力はもちろんありません。やはり協力を得るということが基本でございましょう。その点から、もし業者が守らなかったらということは、これはやはりいいことじゃございませんけれども、そういうことも推察されるわけです。  そういう点と、もう一つは、昨日の審議の中で、公正取引委員長高橋さん、いらっしゃいますね。——行政指導であっても独禁法違反にはなるというふうな明快な御答弁でございました。ところが、政府首脳のほうでは、これはカルテルではない、縦で各企業ごと指導するのだから、カルテルではないというふうな判断をしておられるようです。もう一つは、通産省あるいは農林省あるいは厚生省、各設置法でこれを片づけよう、それを法の論拠にしようという意見もあるようでございます。ここに非常に食い違いがあるわけです。  この点について、ひとつ明快に答弁を、どなたでもいいですからやってください。
  32. 吉國一郎

    吉國政府委員 カルテルと行政指導に関する問題について申し上げます。  まず第一に、価格は、本来市場における需給関係を基準として、事業者の自由な競争によって定まるべきものでございますから、事業者がカルテルによって価格操作を行なうことは、独禁法二条六項の不当な取引制限に該当して、認めるべきでないことは当然でございます。  第二に、一方、最近のように物価抑制が最大の国民的課題となっておることを考慮いたしますならば、物資所管官庁が、価格抑制の観点から価格に関する行政指導を行なうことは、必要やむを得ないものと考えられるのでありまして、その根拠は、各省の設置法に求めることができます。たとえば、通商産業省設置法でございまするならば、その第三条第二号、石油につきましては第三十六条の七の第一号にその規定がございます。  第三に、ただ、価格に関する行政指導が認められるとは申しましても、指導を受けました事業者が、さらに共同して価格操作を行なうというようなことがあれば、先ほど申し上げましたと同様に、認めるべきでないことは当然でございます。
  33. 山田太郎

    山田(太)委員 いまのは、法制局長官の法的解釈というものを含めて言われたわけですが、すなわち、行政指導価格引き下げをやる場合は独禁法違反ではない、こういうふうな見解です、そういうことですね。
  34. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法制局長官は法律論を展開したわけでございまして、これは非常に重要なことを、いま御答弁を申し上げたわけでございます。  まず、物価抑制方法から簡単に申し上げますと、独禁法違反という問題があれば、独禁法の適用を受けることは当然でございます。それからまた行政指導も、各省設置法をもとにしまして、これは、政府国民の生活の安定を守らなければならない、また低廉、安定した物資を供給しなければならない、こういう政府の任務があるわけでございますから、この権限が発動されることは当然でございます。しかし、これは強制力がないということはわかります。強制力がない場合どうするか。その場合は、石油に関しては石油二法がございます。その他国民生活安定法がございますから、安定法の中にこれを吸収していくということは考えられるわけでございます。まだそれでもなお事態が急であるという場合には、新規立法をもってこれを吸収するという方法もあるわけでございます。  ですから、各般の施策を総合的に運用することによって、物価抑制という問題に対して政府全力を傾けてまいりたい、こう考えるのが原則でございます。  それから第二の問題として、独禁法との問題でございますが、独禁法は、業者がみずからの企業を守り、みずからの利益を追求することによって共同行為を行なうことを禁止しておるわけでございます。ですから、そういう問題が起これば独禁法が適用されることは当然でございます。  そうすると、政府は設置法に基づいて行政権を行使するということが、今度の石油をきめるというようなことで、これは各社、百社、五十社でも全部呼んで、石油は一万一千円とか一万三千円とか言って、一万三千円ということを要求するかもしれませんが、それはそんなわけにいきません。とにかく一万円以下で、九千円で、八千円で、五千円で押えてくれということを言ったときに、向こうが、石油各社が、政府行政指導でございますからやむを得ません、国会はもっと下げろ、こういう機運の中で国民生活を守るために、われわれはやむを得ぬ、これはのみましょう、こう言ったときに、独禁法に基づく共同行為と同じくないか、政府自体も独禁法の共犯として、告訴、立件される相手方にならないかということがすぐ起こってまいります。これは、起こらないということをいま申し上げておるわけであります。  それは、行政権の行使によって、設置法の目的とする国民生活安定のために、行政権の正当な行使が行なわれるわけでございますから、独禁法の共犯になるわけはない。しかも、それは強制力を持たない。独禁法はあくまでも、先ほど申し上げたとおり、企業を守り、企業の利益を守ることによって、国民に不利益を与えてはならないというために、独禁法で共同行為を禁止しているわけでございますから、民間が自発的に、みずからの企業や利益を守るためにやった行為は、独禁法から免れることはできない、これは当然でございます。  政府が、石油価格をきめたり、新聞紙なども大体そうなると思うのですよ。新聞紙は各紙によってみな違うと思うのです。五百円上げる、七百円上げる、千円上げなければならぬというものもあるでしょうが、三百円でがまんしてくださいということを、経済企画庁長官は必ずやがてやらなければいかぬと思うのです。そういうときに、経済企画庁長官要請をして新聞紙を三百円上げたということで、新聞各社が全部これにならったということが、独禁法違反であるということは全くあり得ないことである。これは、法律の定めは厳密に適用されるべきでございまして、政府の持つものは、あなたがいま言ったように、ちゃんと法定をした品目に指定をすれば強制力を持ちますが、行政指導は、あくまでも行政上の権能の行使であって、独禁法の中で、政府が共犯とか、政府が独禁法の対象として取り調べを受けるとか、立件の対象になるとか、そういうものでは絶対にない。これはすなおな法律解釈であって、何びともこれに対して異論を差しはさめるものではない。(「行政府の見解だ」と呼ぶ者あり)そのとおりです。
  35. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほど総理からの御見解があったわけでございますが、行政指導によって、これは言うならば指導価格ですね。標準価格によらないで値段をきめるわけです。こういう場合、公取委員長……。
  36. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 一言だけ。これは言わずもがなでございますが、野党の皆さんもみんな私と同じ考えを持っていられると思うのです。そうでなければ、いままで長いことここで御質問されたことが平仄が合わなくなるわけです。  政府は何で一体物価を押えないんだ、行政権の権限が適切でないことを指摘されて、遺憾の点もございました、もっと業界を呼び、業界の協力を求め、政府行政指導を強化すべきでございました、タイミングを失ったことははなはだ遺憾でございます、今度はしっかりやります、こう答えているのですから、行政権が、いまのようにすべてが制肘されて、行政権の権限行使が行なえないとしたら、物価に対する政策は何も行なえないということになるのであって、目張りなどは何も行なえなくなります。  目張りというのは、石油は上がっても、石油製品価格は上げないように、ビニールパイプは上げないように、もっと下げなさい、こういうことが、全部政府が独禁法違反をやるということになったら、行政権は行なえないことになるのであって、そんなことはないのです。それは全く法律の初歩であって、これこそ行政権が制肘されることであって、行政権が行なえないということになるのであって、そこらは、もう皆さんも腹の中にあるから、行政がもっとびしびしやりなさい、なぜ一体政府はびしびしと取り締まらないのですか——これは、いま参考人としてお呼びになっていることでも、いろんなことをやっても、税法上違法行為があれば、それは税法の違反として追徴を受け、立件される。これはあたりまえのことですが、商行為としてどんなものを出しても、これは憲法上自由な行為として許される、しかし、道徳的に許されないということで制肘を受けていると同じように、それは行政が法律を読み違えてやっているのではなく、行政府に与えられた国民生活を守るための行政権の権限行使は、法律として当然の、これは認められるというよりも、法律が行政府に要求しておる法律の使命である。こう理解をしていただきたい。
  37. 山田太郎

    山田(太)委員 物価引き下げは、当然願うところでございます。これは全国民の願望でございます。いままでは行政が怠慢であった、あと追いであった。あるいは行政と業者との癒着云々の問題さえ出てきたわけです。ここでも論議されました。また同時に、投機取締法とかあるいは国民生活安定法とか、その他の法律もありながら、いままであまりにも利用しなかったという点を、私自身叱責した一人でございます。とはいえども、この点は統制経済を願う者でありません。一言申し上げておきます。  しかし、先ほど、独禁法と、行政指導によって価格をきめる関係について、法制局長官、それを確認して総理の御見解があったわけでございます。しかし、この点においては、公正取引委員長の見解もあわせてお聞きしておく必要があると思います。  昨日は相当大きな差異があったと思う。それを変えられるのかどうか、公正取引委員長から明快に答弁していただきたいと思います。
  38. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この問題をめぐりまして、遺憾ながら政府側見解と——私も、それは政府でないとは申しませんが、法律上の独立機関として、どうしても裁判所的なものでございますから、そこの見解というものは、やはり独自に持ってしかるべきものだと思います。  そういう点で、私は昨日も申し上げたのでございますが、つまり行政指導によるか法律によるかという点からいえば、法律によれば、その法律によってきめられる限り、独禁法の適用はありません。しかし、そうでなくて、行政指導によるという点について、それがやむを得ない事由によるものであるという先ほどの見解のように思いますが、やむを得ない、非常に重要な事項であるから、一般行政監督権に基づいてもいいのだという論拠のようでございますが、重要ならばよけい、そのためにわざわざつくられた法律がございます。それを使わない理由は、先ほどのように、事態がいろいろ流動的である、原油値段が一定しないというふうな実体的な理由もございましょう。  しかし、はっきり申し上げて、標準価格というものは、皆さんがあまりきびしく追及するとできない。標準的な生産費とか標準的な販売経費及び利潤、こういうものをもとにしてつくれということになっておりますから。しかし、バルクライン方式をとって、たとえば四分の三は入れるけれども、四分の一は切ってしまうというような方式をとれば、これは納得され得るのでございまして、それに対して、その内容をすべて公表しろといったら、これはできません。たいへん労苦を要するものであるという説明を聞いております。エネルギー庁としては、これをつくるためには非常に骨が折れる仕事で、耐えられないという実態は聞いております。しかし、行政指導価格ならば、いとも簡単にできて、簡単とは申しませんが、標準価格ならばできないというのも、ちょっとその辺に矛盾があるのではないかという実体論でございますから。さらに、行政指導によって価格が設定されないことは、私はきのう詳しくは申しませんでしたけれども、もとをさかのぼっていけば、これは憲法論だと思うのです。  財産権は、これを侵してはならない。しかし、その財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律で定めるということになっていますから、財産権は絶対不可侵ではないので、法律で定めればこれを制限することができる。ある人の所有しているものを売る値段を、これ以上で売ってはならないという制限を加えることは、法律では可能であるが、行政指導では価格を設定されないという論拠はそこにあるのでありますから、行政指導によって価格の設定は行なわれない。設定するのはだれかといったら、事業者自体である、こういうことになります。  ですから、事業者自体が全然相互の話し合いをしないで、各個撃破といいますか、各個にやって横の連携は全くないという、ほとんどなさそうなことを前提にすれば、私のほうも、それは事実判断の問題でございますから、その場合はカルテルがないというきわめて異例な事態考えられる。  参考のために、ちょっと時間をおかりしまして、これは私ども委員会の見解でございますが、これは前に公表したものでございますが、金沢教授、この方は、東大から現在は成蹊大教授に移っておられまして、いま独占禁止法研究会の会長でございますが、その方が昭和三十七年に書かれた論文のほんの一節を読ましていただきます。一つの御参考として申し上げるのでございますが、「たとえ、共同行為が行なわれた動機が、行政庁という権威あるその筋の勧告にあったとしても、それにもとづく共同行為そのものの行為態様は、独禁法の禁止するところなのであるから、他に特別の適用除外の立法的解決の途が開かれていないかぎり、独禁法の適用を受けるものと解せざるをえないからである。勧告にもとづく共同行為の場合、それが勧告にもとづいて行われたということは、情状酌量の事由となるとしても、違法性阻却の事由にはならない」という問題です。  それから、証拠につきまして、もう一言申し上げます。「以上のことは、勧告にともなう行為につき、行政庁対業者の関係だけが存在し、業者対業者の関係が存在しない場合のことであり、実際問題としては、行政庁対業者の関係のかげに、業者対業者の関係がかくされているという場合も少くないように思われる。この点は、主として、証拠の如何にかかってくるであろう。不当な取引制限における合意は、黙示の合意で足るということは、すでに公正取引委員会の審決及び裁判所の判決で示されているところでもあり、表面的には、ただ、勧告を中心とする行政庁対業者の関係があるにすぎないように見えていても、実は、そのかげに、業者間の黙示の合意が存在するという場合も少くない」黙示の合意ということは、実は私どもが見解を取りまとめたあとで、私はこれを読んだのです。ほかにも全く同じような趣旨の、独禁法学者と称せられる方の論文は幾つもございます。
  39. 山田太郎

    山田(太)委員 公正取引委員会委員長の御解釈、御答弁は非常に明快でございます。個々に勧告しておろうとも、暗黙のうちにということも、いま明快にお話があったとおりです。ただ私は、この法律論議をしようと思ってやっているわけではございません。もちろん、物価引き下げの一番の目的を忘れてはならぬとは思います。  しかし、大事なのは、独禁法によって、国民の生活なり国民の利益を守らなければならない公正取引委員会は、独立した機関としての根本的、一〇〇%という意味じゃありませんが、しかし、その使命は果たしてもらいたい。公正取引委員会政府との見解に大きな差が出てきたことは、いま歴然としたわけです。まだそうじゃないと言いたいような顔をしているけれども、これを多く論じようとは思いません。  そこで、この公正取引委員会の使命は非常に大切です。これは総理大臣も、この委員会において何回も答弁なさっていらっしゃいます。やはり独禁法を改正しよう、あるいは前向きにどんどんやっていこう、やはり物価引き下げの要因の一つになるならばこれもどんどんやっていこう、こういう前向きの答弁でございましたが、その問題もおいておきます。  やはり独禁法改正についてのまず総理大臣の意欲というもの、できれば、今国会において改正しようというふうな意図があるやなしやということが一つと、もう一つは、どういう状況変化があろうとも、いまの経済状況変化があるのは当然予想されるところでございますが、やはり景気とかあるいは経済状況変化しても、あるいは業者のあるいは業界の反対があろうとも、この独禁法を改正していくというこの初志は貫徹なさるおつもりかどうか、その辺、疑念は持っておりませんが、確かめておきたいと思います。
  40. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 独占禁止法の改正案につきましては、現在公取を中心にして検討中でございますので、この成案を待って、政府は措置したいというふうに考えております。政府も勉強いたしておりますが、公正取引委員会を中心にしての成案を得るのを待って、国会の審議にゆだねるということが正しいという考え方をとっておるわけでございます。  この国会に出せるかどうかという問題は、これは公正取引委員会における審議がどのようになるかという問題にもかかっておりますし、いまいろいろな問題が出ておりますので、それらも勘案しながら、成案を得つつ努力中であるということでありますので、大事な問題として、この国会で審議を仰げるかどうかという問題に対しては、さだかに申し上げられないということであります。  それから、念のためにもう一言だけ申し上げておきますが、いま高橋公取委員長が述べたことと、私が述べたこととの間には変わりはないんです。高橋君は、変わりがあるようなニュアンスで述べたようでございますが、私はないという立場に立っておりますから、ここでもって申し上げます。  私も立法府の議員でありますから、これは簡単に申し上げますが、私的独禁止法というのは何かというと、総則の第一条によって「この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止」するためにつくられておるものであります。政府の行なう行政権の行使は、国民生活安定のために、しかもこの独禁法の第一条の目的と同じラインに沿って、なおその上に行政権の行使によって、国民生活の安定と正常化をはからんがための行政権の行使であって、これは全くそこには背反するものはないということが一つ、もう一つは、これもいま高橋君が述べられた学者の解釈でございますが、これは政府の行政権の行使による勧告、強制力を持たない勧告であっても、それが一定の価格要請し、これを受諾するにあたって、独禁法の禁止をする共同行為、すなわち共同謀議や共同行為が独占禁止法で禁止をするような行為があって、しかる土台の上に政府の勧告を受け入れて実施をした場合、独占禁止法の適用除外を免れることはできない、こういうことであって、私はそうだと思います。それはそのとおりだ、高橋君の言ったとおり法律を解釈すべきだと思いますが、しかし、政府の勧告に対して、また共同謀議をして、そして不公正な取引を行ない、私的独占の実をあげるために再び共同行為を行なって、政府の勧告を受諾するということは、事実としてあり得ないわけでありまして、政府勧告が、私的独占禁止のために設けられたこの独占禁止法の適用の範囲に入る、こういう事態は起こり得るはずがない。そこに行政権と独禁法との競合は起こり得ないということを……(「勧告操短はどうしたのだ」と呼ぶ者あり)勧告——これは、ですから再び政府の勧告に対して、そしてそれも、いま勧告があったとしても、立件をされたものであっても、最終的にはこの独禁法の第一条の規定によって、業者に私的独占や、この独占禁止法の禁止をする意思が存在しない限り法律的な制裁を受けることはない、こう、これは立法府の議員としての発言としてでも御理解をいただきたい。こういうことを明確にしておかないと、行政権の権限行使が田中内閣のときに行なえなくなったといったら、これはえらいことになりますから、それを明確にしておきます。
  41. 山田太郎

    山田(太)委員 総理が、私の求めないことまでも積極的に、意欲的に答弁なさったその意欲は多とするも、やはり公取との意見の大きな差があるということは、衆目の一致するところであります。先ほど不規則発言がありましたが、やはり勧告操短の場合、いわゆる触れたために操短、不況カルテル等々に切りかえたのは、もう天下周知のことであります。しかし、ここで多くの法律論をかわそうとは思いませんので、この点については、また次の機会に論じていきたいと思います。  そこで、いま私が聞きそびれたかもしれませんが、次の国会において、今国会のことはいまお伺いしましたが、よしんば今国会にできなくても、来国会には必ずやるという初志は貫徹していただけますかという点について、御答弁があったかもしれませんが、お伺いしておきます。
  42. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは公取でもいま勉強中でございますから、その勉強の結果を待たなければ、政府としては言えないわけでございます。しかし、公取といえども、これは政府機関でございますから、公取と政府と一緒になって勉強するということで、できるだけ早く成案を得たい、これは検察庁法と同じことで、いわゆる十四条で個々の事件を指揮することはできない、その部分に対しては、これは司法だといわれておるわけでありますが、検察は行政権の一環であることは申すまでもありません。公取といえども四権ではないのですから、立法府ではない、司法でもない。司法としての部分は、審決に関する部分に関しては、これだけは司法権を持っているというのであって、その他の部分は、三権の中でいずれに属するかといえば、行政権に属することでございますから、政府としては公取の勉強を重視をしながら、法制局でもまたいろいろな各所管省もございますし、起こった実態というものがたくさん国民の前に明らかにされておりますから、新しい法律がどう整備されるべきかという問題も詰まると思いますので、できるだけ勉強を進めてまいりたい。  来国会に提出できるかどうかというのは、もう作業の実態の問題でありますので、私からはいま申し上げられません。しかし、公取委員長がどのくらい勉強しておるかということで、私のほうの案は大体いつごろできますが、という答弁があれば、公取委員長から答弁してもけっこうです。
  43. 山田太郎

    山田(太)委員 ちょっとニュアンスが、トーンが落ちたのじゃないかというのは私のひがみかもしれませんが、やはり独禁法改正の意欲は当然おありですね。——はい。  そこで公取委員長に、きょうは相当時間もとって次々と段階的にお伺いしたかった。その予定を持っておりました。しかし時間の関係で少々はしょらせていただきますが、公取委員長として、この独禁法の改正は、今国会には間に合うか間に合わないかという点が一つ。それから来国会には改正は必ずしたいという御答弁があったのは、私、記憶しております。  そこでその内容についてでございますが、一つは、価格引き下げ命令というものができるような法改正がどうしても必要じゃなかろうか。この点については、三月十五日に独禁研で結論が出るやに聞いておりますが、この問題についてのお答えと、それからもう一つは、当然企業分割ということが必要になりゃしないか。これは政府といたしましても、物価を引き下げるという大きな要因の一つになることは当然御承知のはずでございますが、いま公取委員長に聞いておりますので、その点はさておいて、企業分割の面は、やはり改正法案の中に入れるべきではなかろうか。  もう一つは、これから時間があれば、この総合商社のことについてまた触れていきたいと思いますけれども、この総合商社については、特殊指定を考えるべきじゃなかろうか。専門的なことで詳しく申し上げないので、聞いていらっしゃる方々の中にはおわかりないかもしれませんが、やはり要点だけを時間の関係で申し上げさしていただいて、公正取引委員長の御答弁をいただいておきたいと思います。ひとつ積極的に意欲を持って、非常に重大な局面でございます。その点に留意されて御答弁をいただきたいと思います。
  44. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いつ改正をするか、提出時期はいつかという点につきまして申し上げますと、私ども公正取引委員会の側の希望としましては、次の通常国会に間に合うように成案を得たいという考えでございます。したがいまして、大体九月から十月、おそくも十月ごろまでには、行なっております独占禁止法研究会における検討を終えていただきたいというふうに考えております。しかし、これはもちろん政府・与党の御承認を得た上でなければ立法は行なえないわけでございますから、その点は私どもがどのように望みましても、やはり問題はそこにかかっておるということでございまして、私どもの希望だけを申し上げた次第でございます。これは十分そういう点については了解を得るように最大の努力を払ってまいりたいと思います。  それから、いまおっしゃいました中で問題点が幾つかございましたが、価格引き下げ措置、これはその問題の中にぜひ含ましめたい。これは非常にむずかしい問題をたいへん含んでおります。(山田(太)委員「少し具体的に言うてください、価格引き下げの面で」と呼ぶ)価格引き下げについて、これはいまの破棄勧告というもの、あるいはその審決は協定を破棄すれば足りるのでありまして、実際の経過を見ていますと、少しも価格面に影響が出ておりません。むしろ逆に、上がる趨勢にあるときは、どんどん上がっているというような状態です。そうすると、これは平常時におきましても、カルテルというものが行なわれるわけでございまして、そういう場合に、違法な行為によって引き上げられた価格、それをそのままほうっておくということは適当でないじゃないか。私ども、すべての面にこういう統制的措置を、暫定的にもせよ、とるということは好ましくないのでございますけれども、しかし、価格効果の全くない勧告というものはナンセンスでなかろうか、そういうことをいままでずっと続けてきたんです。  この際、私どもはそれを反省しまして、それは経済効果を伴うということが大事ではないかということから、引き下げを——しかし、もともとの原点に戻り、協定前の状態に戻すことが本則でございます。本則としてはそうでございますが、勧告というものは、いままでの例で見ますと、半年ぐらいかかっておるし、最近非常に早くするようにしておりましても、二、三カ月はかかる場合が多いわけです。そうしますと、その間にいろいろな条件変化が起こってくるという場合に、その実情にかかわらず、その後、たとえば輸入価格が大幅に上がったという場合、しかしその協定前の価格にやれということは、これは非常にむちゃな要求になりますから、こういうことはめったにないのですけれども、その裁量権を与えていただきたいという点がございます。  ただし、その裁量権とは一体何であるか。先ほど申しましたように、私は、この点について、違法なカルテルについては公取が、変な話ですが、価格設定権を持つということでないと、それは守られないわけですね。あるいは法理的におかしいことになる。もとへ戻れということはいいです。しかし、途中の段階までは認めるぞということになると、これは一種の価格設定になりますから、これは法律に明記しなければならないというふうに感じておりますし、それから、それらがすぐにその効果を発揮しないとどうするか。もう価格設定をもとへ戻れというようなよほどきびしい引き下げ命令を受けました場合、事業者あるいは事業者団体は非常につらいことでございますから、審判を請求し、裁判に持ち込んで、そうして何年でもかけてやる、そのほうが安上がりでございます。弁護士費用を払ってもなおかつ得だという計算になりますから、そういうことをいかにして防止するか、これがたいへんな一つの課題であり、法律技術上、一体どうすればいいのかというたいへんむずかしい問題でございまして、これについては問題が非常に複雑でございます。しかし、十分これは検討していただくという予定になっております。  それからちょっと、課徴金の問題であるとか、いろいろ公明党の……(山田(太)委員「それを言うてください」と呼ぶ)課徴金の問題なんかにつきましては、これはすでに過ぎ去った期間について、そのよけいに取った、要するに不当な値上げでもうけたという分を国に納めろ、こういう趣旨でありまして、これはそういう罰則と同時に、今回の改正に絶対に入れるかどうかは確約できませんが、十分検討するということにしております。罰則の強化とこの課徴金の問題ですね。罰則は、たとえば罰金の場合でしたら、いま一番重いもので五十万円以下でございます。これが法人の場合にもそうでございますから、これは問題にならない。で、課徴金というものと罰金というものと、これは違います。一方は行政罰といいますか、行政措置でとれるわけですから、まあそちらのほうが裁判所をわずらわさなくていいけれども、しかし、やはり行政事件になるということはあり得るわけでございますから、十分その辺を考えていきたいと思います。  それから、不況カルテルの認可要件を厳格化する、これは申すまでもありません。ただ、法律の改正は必要がなくて一私どもとしては運用でやり得るというふうに考えております。  それから、公明党案の、再販を著作物以外はみな禁止するというふうにするという案になっておられますが、この点は、私どもも実はちょっと考えさしていただく。この再販の縮小を昨年はかりましたときに、たいへんな私ども物理的な抵抗もございまして、これをやっている間、ほかの仕事は手につかないというふうになりますので、これをこの法律改正に含ましめないで、残る二品目については、自然に成り行きを見た上で解決をはかったほうが穏やかでないか。ほんとうは、このために法律案が引っかかってしまうというのはたいへん残念なことでございますので、これは今回は留保ということにさしていただきます。  なお、そのほかに企業分割の問題は、私ども、これは独占禁止懇話会のほうで昨年やりましたときに、ほとんどの皆さんが、これは置くべきである、実際にそれを適用することの運用については十分慎重でなければならぬが、法律上は、もうどうにもならなくなった独占にひとしい企業の場合には、この分割の規定が必要なんじゃないか。非常にこれは狭い意味で、その点につきましてはもうちょっとその分割の範囲を拡大すべし、分割し得る対象を広げるという御意見もございましょうが、私どものいま考えておりますのは、比較的狭い範囲で、一定の事業分野の中で圧倒的な地位を占めている企業について分割以外に方法がない場合、ない場合には、それを適用し得るような規定を置くべきであるというふうに考えております。  なお、そのほかに商社等の株式保有の問題については、これは検討といいますか、できるならば法律改正案の中に取り込みたい、商社に対していま有効な手段は、これが一番ではないか。その方法はまたいろいろございます。個別の規制というふうにするか、そうじゃなくて総量規制にするかというような点は、まだこれからの検討に待つわけでございます。  それから、商社について特殊指定を行なうべきじゃないかというふうに、この案はそうなっておられます。特殊指定ということで、御要請がそうございますけれども、確かに内容的に見ますと、優越的な地位を乱用するという場合も、裏からはちゃんとうかがわれます。しかし、表ざたにならないという欠陥を持っております。まあ発見すれば、それはやめさせるということにしたらいいのですが、おそらくこれは特殊指定ではなくて、いま一般指定というのがございますが、一般指定については、私どももかねてからできがよくない、非常にわかりにくいといいますか、にわかづくりのものだそうでございまして、ちょっと問題がある。一般指定を練り直す場合に、こういう商社の問題なんかを頭に置きながら、特殊指定というのじゃなくて、一般指定によってこれを規制し得るというふうにいたしたいと考えておる次第でございます。  大体の要旨は以上のとおりであります。
  45. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一点、管理価格ですね。これも懇話会の場合には、管理価格はこれはやめるべきじゃなかろうかというふうな意見が、結びのところに書いてありましたね。これについてはどうですか。
  46. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 管理価格というのは、これはまことにやっかいなものです。それは、要するに比較的高度の寡占状態にある業界でございます。ですから、先ほど圧倒的なシェアを持っているというのに対しまして、シェアはそれぞれ、たとえば三分の一ずつでありましても、三社でほとんど全部をまかなっているというふうな場合でございますね。これは先ほど私、論文を読んでいる場合に黙示の合意と言いましたが、それ以下の、ほんとうに外からわからないような合意で価格を一斉に引き上げている。そこで私どもは、この管理価格に対する対策としては、やはり企業経理の公開といいますか、管理価格であるということを認定した場合には、値上げの際にディスクロージャーの義務を負わせる。これは外国でもそういう案はあったのですが、実現したかどうか忘れました。何回も同じような行為を繰り返す、何回繰り返すかという、これは過去を振り返ってみて、いつも似たような時期に全く同じような値上げをする、やがて、結果は同じ価格であるというふうな場合には、それぞれの会社の原価といいますか、私どもが指定する項目について、値上げの理由の説明になるようなディスクロージャーを行なわせるというのがいいのではないか。ただし、これについては、さらに進めば、そのものについても、もう一種のカルテル、みなしカルテルとして、価格そのものを何か規制するというふうにしたらどうかという強い考えもございます。しかし、いずれにしても、私どもは、そういう場合こそディスクロージャーという方法抑制的な措置をはかる必要がある。何を公表するかはこちらできめる。寡占であるか管理価格であるかないかは、公正取引委員会が、過去の行為によって認定する、こういうふうな考え方をとっています。
  47. 山田太郎

    山田(太)委員 いま公正取引委員長から私の質問に対して、少々時間がかかりましたけれども、具体的なお答えがあったわけです。総理もこの先ほどの前向きな御答弁、やはりこういう点も十分意に体せられまして、ひとつ必ず改正の初志は貫徹してもらいたいと思います。  そこで、最初に国税庁長官おいででなかったので、問題を次の問題に移したわけでございますが、国税庁長官はお留守で、吉田国税庁次長が見えているようでございます。  そこで、先ほど大蔵大臣にお伺いいたしましたが、具体的なお答えがなかったので私から申し上げましたのが、大商社の海外取引を利用した不正所得、その手口態様について、大蔵大臣からは一般的なお答えがあった。もう一度、念のために確認の意味において、国税庁からその点をお答えしておいてもらいたいと思います。
  48. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 お答えいたします。  いろいろなやり方がございますが、大きく分けて、輸入で操作を加える場合と輸出で操作を加える場合とございまして、まず、輸入で操作を加える場合には、輸入価格を過大に計上する場合と、それから輸入の手数料、これを除外する場合とございます。輸出で操作を加える場合には、輸出価格を過小に計上する場合と、それから輸出手数料の架空計上、こういう四つの場合が一番典型的な例と考えております。
  49. 山田太郎

    山田(太)委員 いま私が確認の意味で、もう一度国税庁から御答弁いただいたわけでございますが、そこで、このような海外取引を利用して十大商社、六大商社の中でも旧財閥の御三家といわれる三菱商事、三井物産、住友商事が、大口脱税及び脱漏所得によって追徴税額が課せられ、国庫に収納した事実があるかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  50. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 個別の企業の資料はいま手元にございませんし、守秘義務の関係もございますが、過去の不正発見の事実はかなり多うございまして、毎年毎年、四十六年には十二件、あるいは四十七年には十七件、四十八年には四十九件と、だんだん増加しております。
  51. 山田太郎

    山田(太)委員 国税庁としては、守秘義務があるので御答弁できかねるという面もあるのは一応了解いたします。しかし、国税庁次長がお答えできないようでございますから、私から、その三社が脱税しておった事実を申し上げておきたいと思います。国税庁、聞いておいてくださいよ。  実はここに三社の資料がある。これは更正通知書でございます。この資料は、それぞれの商社から出た更正通知書のコピーでございます。そこで、時間がないから、簡単にこれをトータルしたのを読み上げておきたいと思います。先ほど申し上げた大手三商社の脱税及び脱漏所得に対する追徴税額のこれが実態でございます。  まず三菱商事。これは四十、五年の四月一日から四十七年の三月三十一日、以上四期の合計でございます。まず最初に脱税分を申し上げたいと思います。その脱税分、本税は以上四期の合計八千百九十六万三千円、重加算税二千四百五十八万七千円、この合計、脱税合計は一億六百五十五万円でございます。次に脱漏分、本税五億五千五百四十九万二千円、これに対する過少申告加算税二千七百七十七万三千円、合計五億八千三百二十六万五千円。すなわち、脱税分など、更正による追徴税額の合計を申し上げますと六億三千七百四十五万五千円、加算税は五千二百三十六万円、合計六億八千九百八十一万五千円です。簡単に申し上げました。  次に三井物産。これは四十五年四月一日から四十五年九月三十日、四十五年十月一日から四十六年三月三十一日、四十六年十月一日から四十七年三月三十一日、以上三期の合計でございます。やはり脱税分から最初申し上げます。脱税分、本税五千三百五十二万七千円、重加算税千六百五万七千円、脱税合計が六千九百五十八万四千円。次に脱漏分です。八億六千四百十七万九千円、過少申告加算税四千三百二十万八千円、計九億七百三十八万七千円。すなわち、脱税分など更正による追徴税額の計、本税九億一千七百七十万六千円、加算税、これは重加算税と過少申告加算税の合計五千九百二十万五千円、合計九億七千六百九十七万一千円。  もう一つ住友商事を申し上げておきます。これは四十五年の四月一日から四十七年九月三十日の五期の合計でございますが、まず最初に、やはり脱税分を申し上げます。本税一億五千七百四十四万円、重加算税四千七百二十二万八千円、合計二億四百六十六万八千円。次に脱漏分一億三千三百五十六万四千円、過少申告税六百六十七万六千円、計一億四千二十四万円。すなわち、脱税分と更正による追徴税額二億九千百万四千円、加算税五千三百九十万四千円、計三億三千四百九十万八千円でございます。  ただいま申し上げましたのが、更正通知書の内容のピックアップでございますが、これに間違いございませんか。
  52. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 通常、商社あるいは普通の会社におきましても、実地調査をやりますと、ほとんどが更正決定を受けておりまして、その場合には脱漏部分、いわゆる所得を申告から漏らした部分、それからさらに仮装隠蔽で漏らした分、いわゆる重加算税の対象になった分というのはかなり多く発見されておりまして、実地調査をやりますと、私の記憶でございますが、大体七割から八割のものについてはそういうものがございますので、それぞれおっしゃいました会社についても、実地調査を実施しておりますので、そういうことはあるかと思います。
  53. 山田太郎

    山田(太)委員 ちょっと待ってください。私は三社で言うたのです。これをちょっと見てください。
  54. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 ただいま拝見いたしました更正決定通知書、それぞれの税務署長の名前の入っておりますリコピーでございますので、それはそういうものであろうと存じております。
  55. 山田太郎

    山田(太)委員 いま国税庁から御答弁があったとおりでございます。これは、先ほど答弁の中にありましたように、この脱税の手口が、仮装隠蔽で行なわれた重加算税がついた、きわめて悪質なものが含まれておるのでございます。したがって、この追徴税額でございますから、これから逆算するならば、不正所得はいかに多額であるかということはおわかりのとおりでございます。  このような、日本経済の大きな発展の基盤の使命を持っている大商社であることは、私は否定いたしません。資源の少ない日本において、九七%と、もう日本ではどうにもならぬような資源もどんどん海外から入れてくる、あるいは、つくったものを出していく、その商社の使命というものは大切だということはよく承知しております。しかし、大きな商社のマイナス面というものが、このたびの物価高騰については、海外商社と海外法人とを利用し、いま国税庁から四つあげられましたけれども、ああいう海外取引を利用して、あの四つの態様価格の操作を行なった、そしてそれを隠匿する、そのことの脱税事案は、これはこの国会で云々じゃありませんでしょう。しかし、このことが、ひいては国民物価高に大きくしわ寄せされてくるという、この悪い商社の面というものが、非常に強く出ているのが現在でございます。  その点について、大蔵大臣はどのような御見解をお持ちになりますか、お伺いしておきたいと思います。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま国税庁当局から御報告申し上げたように、大商社で重加算税を徴収される、そういうような税務申告をしたことは、まことに残念なことであります。しかし、国税庁当局はよく精査いたしまして、とにかく脱漏、隠蔽、こういうものを摘発いたしておるわけであります。  なお、物価が年末非常に混乱した、そういう状態で、商行為をなすものが相当利益をあげておるであろう、そういうことに対しまして、特に厳重に調査する方針をもちまして、ただいま鋭意その手続を進めておる、そういうことでございます。  なお、これは申し上げるまでもないかと思いますが、一般的に超過所得を一体どういうふうに処置するかということにつきましては、ただいま各党間において御相談を願っておる、かように御了承願いたいのであります。
  57. 山田太郎

    山田(太)委員 大蔵大臣から超過利得税の問題まで含めて御答弁がありました。その問題も触れたいところでございますが、時間がありませんので、次に通産大臣にお伺いいたします。  本委員会で、トーメンあるいは丸紅、日商岩井の大手商社の脱税問題を取り上げ、さらに輸入木材の価格操作を指摘してきました。その際、中曽根通産大臣はこのように答弁されております。読上げておきましょう、大事なところです。「国税庁とよく連絡をいたしまして、そして事態を的確に把握して、そして商社の責任者を呼び出しまして事実をよく究明いたしまして、そしてその商社はもとよりのこと、ほかの商社につきましても、そういうあやまちなきように、厳重にこれを取り締まるつもりでおります。」こういうふうにおっしゃっています。早急にどのような処置をなさったのですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あれからあとで、通産省の貿易局長が商社の代表を呼び出しまして、事態を詳しく尋ね、そして、商社のほうも遺憾の意を表しました。今後を強く戒めまして、警告を発したところでございます。
  59. 山田太郎

    山田(太)委員 あなた、そういう通り一ぺんの答弁で済むと思うのですか。価格操作の問題を木材の例をあげて、この木材の騰貴は、おととし、去年、物価狂乱の大きなはしり、前駆的な木材高騰だったわけでしょう。これは大切なところですよ。この物価狂乱、物価高騰の引き金ともいわれているのですよ。その問題について、通産大臣が、自分でやるのが当然であるのにもかかわらず、局長にそういうふうなことをやらせた。ただ単なるこの国会答弁の責任のがれのような、そういう感じでございますよ。  こういう物価狂乱の引き金になったこの価格操作について、通産大臣はどうなさったのですか。これをはっきりしてくださいよ。
  60. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 脱税問題、そのほかの点につきまして、貿易局長から警告を発したところでございますが、木材の所管は農林省なんです。しかし、商社としての取り締まりは通産省の所管でございますから、いまの、あなたがおあげになった三つの商社につきましても、実情をよく聴取して、そして強く警告を発して、将来を戒めたところでございます。
  61. 山田太郎

    山田(太)委員 木材の所管が農林省ということはわかっているのです。しかし、商社は通産省でしょう。通産大臣がやると言っているんじゃないですか。いま読んだところじゃないですか。何を言っているのですか。あなたは、次期か、その次期か、その次期か知らぬけれども、総理大臣になろうかなんというのでしょう。言うたことぐらい、自分で守りなさいよ。そういう単なる逃げ答弁でこの問題が済むと思うのですか。反面、考えるならば、通産省と業者、商社との癒着ということまでも、その裏には推測されたってどうにも文句の言いようがないじゃないですか。強くきびしく申しました、何ですか、それは。どういうことをやったんですか。ここで具体的に言うてくださいよ。それでなければ国民は納得しませんよ。物価狂乱のはしりだったですよ、これは。どうするんですか。  また、きのう参考人を招致しての審議が当委員会でございました。そのときも日商岩井の社長がおいでになっております。ちゃんと、言うならば価格の上のせ、四ドル、十五ドルあるいは百五十ドルの上のせも認めました。そうして、このような価格操作をしたということも、きのうはかちっと認めております。そうして、それを何らかの方法で社会還元をしていきたいとも答えております。その責任についても、何とか処置していきたい、どのような方法かで処置していきたいということは、この前の参考人のときにちゃんと答弁しております。  通産大臣として、この物価狂乱の大きな引き金になった木材を取り扱った商社のことについて、あなたがちゃんと答弁しているんです。責任をどうするんですか、通産大臣の責任は。そういうものじゃありませんよ。総合商社というものは、いま国民の生活のすみずみまでも握り込んでいこうとしているんでしょう。輸入、輸出だけでなく、国内の販売経路まで、あるいはメーカーまで、製品まで操作していこうとしているんでしょう。しかも、日本で一番貸し付け高の多い第一勧銀の四兆数千億よりも、まだ多いのがこの六大商社でしょう。たしか七兆四千億円の貸し付け金まであるんですよ。そういうふうに、全日本国民の生活物資に至るまで握っていこうとしておるんだ。そういうものに対して、そういう片々たる局長で——片々とは失礼でございますが、通産大臣がみずからどのように具体的に処置したということがなくては、通産大臣の責任は果たされないと思うのですが、いかがでございましょうか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 商社を直接監督しておるのは貿易局長でありますから、貿易局長が呼びまして、内容もしさいに聞いて、そして向こうも、間違っておるという遺憾の意を表せるところは表させ、そして将来をきつく戒めた、ただいま御報告申し上げたとおりでございます。
  63. 山田太郎

    山田(太)委員 それでは通産大臣としての責任は果たされないじゃないかと言うんだ。口をすっぱくして言うたでしょう。これからどうしますか。その局長にまかすというんですか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 さらに、きのうも国会でそのような答弁がありましたから、そういうような約束を確実に実行するように監視、監督を強化してまいります。
  65. 山田太郎

    山田(太)委員 御自分の責任はどうなさいますか。国会で答弁なさっていらっしゃるんですよ。局長がそういうふうに言うとるから、それでいいわというところでございますか。そういうふうな中曽根通産大臣ではないと私は存じておりますが、その辺はどうですか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘の点もございますから、さらに私、みずから監督を強化して、約束したことを実行させるようにいたします。
  67. 山田太郎

    山田(太)委員 もう時間がわずかになりましたので、最後に、総理大臣にお伺いしておきたいと思います。  さっきから聞いていらっしゃったとおりでございますが、このようなことは氷山の一角と言ってもいいような事柄でございます。  したがって、多くを申し上げませんが、商社の使命と責任の上からいって、先ほど申し上げましたとおり、大商社といえども、その使命と責任は大事でございます。その点はよく承知しておる上での話をしているわけです。したがって、このような大商社の行動を規制するといいますか、国民の生活に大きくプラスになるために、自主行動基準なんかつくったんですけれども、発表はしましたけれども、あれなんか発表したというだけじゃないですか。ことばがあるだけじゃありませんか。その口の裏からどんどん破っているじゃないですか。  したがって、総理としては、商社なり、あるいは商社の行き過ぎた行動を規制する、そういう法的措置をお講じになるお考えはございませんか。その点をお伺いしておきたいと思います。
  68. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 商社法をつくるという問題に対しては、世の中に議論が存在することは承知をいたしております。また、政府部内や自由民主党の間でもいろいろな勉強をしておるということも事実でございますが、商社法をつくるというような方向が定まっておるわけではありません。政府は、現時点において商社法を提案するという考えにはなっておりません。  これは、現象が起きますと、だんだん法律でがんじがらめになってしまって、どうも機動性を欠くということもあるのです。とにかく、経済力集中排除法、独禁法に対しての御指摘が先ほどございましたが、確かに、その後いろいろな現象が起こって、いろいろな制約を法律的にしなければならぬなということで、石油二法や国民生活安定法などをつくっていただきましたが、法律は最小限でなければいかぬ。というのは、お互いに民主主義、新しい憲法の精神を大前提として、国民の自由な意思の発露というものをいかにうまく誘導するかというところに、政治も行政も焦点を合わしておるわけでありまして、現象にとらわれて、あまりにそのものを制限してしまうと、ぎこちなく、官僚統制のようになる。こういう弊害は戦前、戦中、戦後のある時期に、国民もいやというほど知っているわけでございますから、私は、今度の国会などでいろいろな御指摘を受けたり、いろいろな調査を受けることによって、行き過ぎは相当程度是正されるということで、国会御審議のメリットというものは相当大きいものだと信じております。  いま、銀行法はございますし、また証券取引法もありますし、電気事業法もありますが、最も大もとになっている電波法というのがあるのです。いわゆる民放を免許するときには、電波法、放送事業法、放送法の三本立てにしなければならぬという議論があったのですが、私はその当時、十六年ばかり前でありますが、この三法を国会に提案したのです。したと思います。しかし、やはりそういう法律はつくるべきじゃない。いまこれだけの大きな会社でも、電波法一つによって免許されているわけですし、放送法は名前は放送法ですが、実態は日本放送協会法であります。NHK法であります。  だから、そういう問題を国会でもってずっと審議をした過程においても、占領が終わると同時に、経済力集中排除法というものは直ちに廃止したわけです。廃止をした二十九年から三十九年まで一〇・四%の成長というものが遂げられ、それからずっと約二十年間、外国からの原材料の輸入や輸出は、すべて商社の手によってきたわけでありまして、そういう意味では、あなたも御指摘になっているように、商社の功というものは十分認める。それはそうでしょう。二十年間、とにかくやってきた功績は大きいのです。ただ、現時点において、わずか半年か三カ月の間だが、九仞の功を一簣に欠くようなことをやったなということで、国会でおしかりを受けておるのでして、これは行政権の発動やそういうもので、柔軟な姿勢で経済運営はやらないとたいへんなことになるということもあるのです。  ですから、銀行が証券業務をやるかやらぬかというのは、世界的な問題であって、西ドイツは銀行等は証券業務を併設をしておりますが、日本は銀行と信託銀行へ全部分離をしたという方向、経済力集中排除法や財閥解体という精神でやってきましたが、限界はやはり昭和二十年代であったということで、昭和三十年からは統制は排除しようという姿でずっと来ておりますし、国会の審議も、真にやむを得ざる場合以外は、法律によって縛ることはあまり望ましくない。だから、やる場合には憲法の精神どおり租税法定主義でやり、どうしてもやる場合には法律でやれ、こういう精神になっておるわけでありますから、いまの事態があったから、すぐ商社法というものをやるということはむずかしいと思うのです。これは、銀行法と証券取引法六十五条というのが長いこと、戦後二十五年間も議論をされながら、証券取引法による六十五条で、銀行には証券業務を兼営させないということで議論をしておりますが、これでも学問的には相当な議論があるのですから、銀行法のように商社法を制定するということになると 必ずしもにわかに賛成できない。  これはもうやはり、自由民主党は自由経済の立場に立っておりますからというだけのことではなく、何でもかんでも、みな、農協法のように法律で縛ってきた場合、どのような状態になるかということがありますので、ここらはもう与野党の別なく、商社の悪いところは、行政でも、場合によれば国民生活安定法でも、物資を指定すればできるのですから、引き下げ命令でも何でもできます。ですから、そういうようなことを考えながら、直ちに商社法をつくるというようなことは、これは多少飛躍論だ。しかし、飛躍論だからといって勉強していないのじゃないのです。商社というものの功罪の罪のほうをとるためには、どうしなければならぬかということを十分いま検討しておりますから、どうぞひとつ、勉強していますから、検討じゃなく勉強していますから、そこらでひとつ御理解をいただきたい。
  69. 山田太郎

    山田(太)委員 時間が参りましたので、質問を終わりますが、先ほど総理の御答弁は、現在の総合商社の巨大化、そうして独占的、垂直的系列化のいかに国民生活にマイナス面が多くなっているかという点をよく御認識ないようでございますので、その点を一つ強調申し上げて、質問を終わります。
  70. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて山田君の質疑は終了いたしました。  次に、小平忠君。
  71. 小平忠

    ○小平(忠)委員 昭和四十九年度の予算審議もいよいよ大詰めを迎えまして、私は、民社党を代表いたしまして、締めくくりの意味で若干の質問を行ないたいと思います。  日本を取り巻く内外の情勢は、きわめて重大な局面を迎えております。反面、いま国民の前に、国会の審議審議としてやはり国民の眼に映ずるし、また心情として、非常に喜びと、また悲しみにむせぶような問題も惹起いたしております。すなわち、本日は午後四時、フィリピンのあの孤島で三十年の長い年月の間を過ごし、そしていま祖国に三十年ぶりで元小野田少尉は帰ってこようといたしております。このようなビッグニュースもあるかと思えば、過日、トルコ航空のエアバスがフランス郊外のあの墜落によって、その中には、日本の若いエリートが四十数名むざんな犠牲を受けたのであります。その遺族たちは、昨晩、何らその遺体に接することもなく、そして悲しみのうちに羽田空港に帰ってまいりました。  私は、この際政府にお伺いいたしたいのは、この若いエリート組がむざんな犠牲となって故国に帰ってきたのであります。しかし、その人たちは、入社は決定いたしておりますけれども、まだ正式社員でない。したがって、これに対する補償は、非常にめんどうな問題があるようにうかがわれます。すなわち、トルコ航空に対し、あるいはトルコ政府に対し、政府はこの犠牲者に対し、遺族に対しどのような交渉をされんとするのか、また補償を考えておるのか、まず、私は劈頭にお伺いをいたしたいと思うのであります。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先般、本委員会でも御報告申し上げましたとおり、トルコは航空関係の国際条約には加盟していない国でございます。したがいまして、補償問題は、トルコ航空が発行いたしました乗客切符にうたわれてある契約によって履行するのが、まず考えられる道であると思うのでございます。   〔委員長退席、井原委員長代理着席〕 これにつきましては、先方が委嘱いたします弁護士と、当方の遺族側で委嘱される弁護士との間に交渉が進むことを期待いたしておるのでございまして、政府といたしまして、まずそういう手順を踏む場合に、できるだけの御協力を申し上げたいと考えております。  トルコ航空に対しましては、トルコ大使館を通じて、トルコ政府並びにトルコ航空に対しまして、緊密な連絡をとっておるわけでございます。
  73. 小平忠

    ○小平(忠)委員 今後、このような事故が絶無だとは考えられません。どうかこのような事故がないように、また、今回のこのような問題に関しましては、外務省当局も運輸省当局も、私はこの犠牲者遺族に対しまして、補償やその処置に対して、あたたかい万全の処置をとってもらいたいと思うのであります。  同時に、このエアバスにつきましては、いろいろ問題があります。現に、全日空が沖繩へのエアバスに近い飛行機の運航をすでに行なっていることから、これに対する羽田周辺の住民の問題もいろいろ起きておりますが、どうか、このようなことに関しまして、政府におきましても、事前の万全の措置を講ずべきであると私は思うのであります。  本論に入りたいと思いますが、まず、内政問題の最初に、やはり何といっても今日の狂乱物価、悪性インフレに対処する政府の腹がまえであります。  今日、国民生活を脅かす物価狂騰の最大の要因は、何といっても石油ショックであることは、いまさら言うまでもありませんが、その石油危機は、昭和四十八年の輸入実績約二億八千九百万キロリットルが、対前年比、すなわち昭和四十七年に比較いたしまして二〇%増であるというこの事実から、まさにつくられた石油危機であるということが暴露したのであります。石油危機がこれほど国民生活を大混乱におとしいれた最大の要因は、やはり通産省が、原油輸入の見込みはもとより、原油処理量、販売量、さらに備蓄量などについて、全く石油業界の情報に依存し切ってきたことにあると私は断ぜざるを得ないのであります。  通産大臣は、このつくられた石油危機に対する政治責任、今後このようなあり方に対して、いかなる姿勢と決意をもって臨まれるのか、まず、主管大臣である通産大臣に所見を承ります。
  74. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年の、暦年における石油の需給関係を見てみますと、上期、下期に分けて考えますと、上期は、供給計画一億三千百万キロリットルに対して、実績は一億四千五百万キロリットルで、一一%増であります。しかし下期は、四十八年十月時点計画の一億六千万キロリットルに対して、実績見込みは一億四千四百万キロリットルで、千六百万キロリットル減、一〇%減であります。さらに十一月、十二月について見ますと、十一月は、当初の計画が二千八百万キロリットルでありましたが、実績は二千三百三十万キロリットルで一六・七%減です。十二月は、当初計画は二千七百六十万キロリットルに対して、実績は二千五百万キロリットルでありまして、九・六%減であります。  このように、十一月、十二月の時点におきましては、石油輸入量というものは予定計画に対して著しく減っておりまして、これは、十月戦争勃発、十月の十六日からのOAPECの五%制限、それからさらに十一月に入りまして、四日になって二五%削減、さらに毎月五%ずつ削減、そういうOAPEC側の通告がありまして、そういうことがこの十一月、十二月の数字にも響いてきておるわけでございます。  でありますから、いまになってつくられた石油危機ということばが出てまいりますが、当時におきましては、世界じゅうが騒然となって、日本におきましても、これはたいへんだ、通産省、なぜもたもたしているか、もっときびしく規制をしろと、非常に激しい叱咤激励を、国会からもあるいは国民の皆さんからもいただいた状況で、つくられた石油危機と私たちは解釈したくはないのであります。あのときは、たいへんな事態になるというので、みんな真剣になってこの事態を乗り切ろうと考えておったのでございます、しかし、結果的に見ますと、日本の三木副総理が中近東へ行ったり、そのほかの外交政策も相まちまして友好国になりまして、そういう経過からも、石油は十二月ぐらいから少しふえてき、一月ぐらいからも少しずつふえてまいりまして、需給は次第に緩和されてきたのでございます。  しかし、いずれにせよ、あの時点におきまして、政府並びに通産省政策が必ずしも万全ではなかったと、いまから反省する点もございます。それらの点につきましては、将来強く戒めて、再び繰り返さないように努力していきたいと思う次第でございます。
  75. 小平忠

    ○小平(忠)委員 通産大臣が率直に反省をされております点は認めるのでありますが、これは主管省として通産省の、いわゆる昨年秋以来のこの石油ショックに対する行政措置のずさんさ、その態度について、私はその責任を明確にすべきであることを申し上げたのでありますが、もちろんかかる要因は、わが国政府の中東外交の誤りに端を発していることは、いまさら申し上げるまでもないのであります。  そのような石油ショックをもろに受けた日本が、今日狂乱物価といわれておりまするこの物価対策に、政府は異常な決意で取り組むと言っておるのに、石油製品のいわゆる再値上げを行なうという腹をきめておるということでありますが、これは一体何たることでありますか。  石油製品の再値上げを、総理、ほんとうにすぐやるのですか。
  76. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 石油が上がっておるということは事実でございます。上がっておる石油を押えるための方法というのは、国が税金で補てんをするか、それから利用者に負担をしてもらうかということしかないわけでございます。政府も与党も十分検討いたしました。  きのうも御質問、御指摘がございましたように、三月三十一日まで石油を全部押えた場合に、一体幾らかかるのか、半分の値上げで済ませるには幾らかかるのかということで、最小限でも二兆円ぐらいの金を入れなければいかぬなというような計算も、試算もしてみました。そしてそれを一兆七千億にし、一兆五千億にする場合、一体どうなるのか、一兆円にする場合、一体どういうものが上がって、どういうものだけ押えられるのか、農林用とかいろいろなものを押えるためにどうするのか、生活必需物資を押えるためにどうするのかというような計算をしてみましたが、最低でも一兆四、五千億の金は必要だということになるようであります。  そうすると、減税を全部やめてしまう、一年間延ばすということが一つ方法でございます。しかし、それはなかなかできないということが考えられる。もう一つは、じゃ、特別に公債でも発行して一年間やり得るかということで、公債の発行ということも考えてみたわけですが、これはなかなかいろいろな功罪が出てくるわけであります。プラス、マイナス面が出てまいります。そういう意味で、場合によっては行政費の、いわゆるいま御審議いただいておる予算を、その中でほんとうに一兆円、一兆五千億はじき出せるのかどうか、相当な広範な勉強をしてみておるわけでありまして、ですから、すでに去年の十月上げ、十一月上げ、十二月も、高いところでは一万一千円も上げておるわけであります、ヨーロッパ諸国は。しかし、依然として一日八十億円ずつも赤字が出ておるにもかかわらず、石油値上げは、とにかく政府と相談ができるまで待ってくれ、こういうことで、とにかく一部民族資本系は、もうどうにもならぬから政府の言うことを聞けない、だから一方的に値上げをする、こういうことも言っておりますが、それさえも押えておるわけでございます。  そういうわけで、結論はじんぜん日を延ばすわけにはまいらない。いずれにしても、最終的な結論は早急に判断をすべきである。新聞の論調を見ても、社説を見ても、いろいろな経済原則を全く無視したやり方というものは必ずしも成功しないということと、やるならば、一日でも、いっときでも早いうちにしなければならない。しかし、物価を押えろ、しかも先高を見越して便乗値上げしたようなものは全部吐き出させて、そして、なお過去においても含みがあるなら、その含みの一部分を取りくずしてもやむを得なかろう。それでこれから当分の間無配に転落しても、少なくとも役員の給与が減殺されるような状態が招来されてもやむを得なかろう。そういう事態をしさいに検討した上で積み重ねを行ない、国民の理解が得られるような状態石油価格は早急にきめるべきだ。きめなければ、大体来年度四月一日からの予算の組みようもないという会社や、第一、お互いの生活そのものも一年間の年次計画も立たない、こういうことでございますので、石油に対しては宙ぶらりんにしておいてはならない。だから、ガソリンは一体幾ら上げるのか、それから灯油は絶対据え置くのか、新聞紙は一体どのくらい上がるのかということがきまらなければ、どうにも来年の予算の立てようがないから、だから政府は、そういう心情はわかるが、事実は事実としてこれを認めて、ちゃんとした結論を出すべきだというのが、世論として醸成されつつあるようでございます。  これは世論を待っているのではありません。そんな人のせいにしているわけではないのです。そうでなく、ほんとうに、さっきからあなたが指摘をされているように、また便乗値上げとか、石油が上がったらまた上がるよということで売り惜しみが行なえないように、中間における金融も全部締めて、そして必ず経済ベースによって品物が流れるという体制をとっておるわけでありますので、いま端的に、税金でまかなえばいいのだ、何かをやめてやればいいのだ、そう単純に割り出せないということで苦慮しておるわけでございます。
  77. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間が限られておりますから、総理、ひとつ要点を簡潔に御答弁願いたいと思います。  それでは、いつから値上げされる予定ですか。いつから値上げを実施されますか。
  78. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いつからというのは、まだ私の手元まで参ってないわけです。これは通産、大蔵、経企、農林、厚生、運輸、これは直ちに影響がございますので、そういう問題はひとつ、まず事務ベースで非常にこまかくやっておりまして、そして、少し時間があれば、とにかく関係閣僚でもってやってもらう、そして関係閣僚がやれば、党、内閣との間の会議もございますし、こういうものにかけて、最終的にといえば、いずれにしても、そんなに延ばすことは国民のためによくない。いずれにしても、はっきりと明確にしなさいというのが大方の世論でもございますから、これにこたえなければいかぬ。来年などというわけにまいりません。来月というわけにもまいらないと思うのです。これはほんとうに早く、やはりいずれにしても早くきめなければいかぬ。早くというのは、いつか、当分の間というので、百年も当分でございますという議論もありますが、そんなつもりじゃございません。  明確にお答えしますと、とにかく今月一ぱい、いままでのように、慎重に慎重にと言っていることはよろしくないという考えでありまして、第一旬は過ぎたわけでありますので、第二旬に入っておりますから、第二旬中にはどうするかというぐらいの結論は出すべきだろう。これは私のいまの立場でございまして、まだ私のところに詳細な報告が届いておりませんから、そういうものが届いたら、また私は私なりに勉強もいたします。時間は多少いただきたいと思いますが、タイムリーに決定をしなければならぬだろう、こう思います。
  79. 小平忠

    ○小平(忠)委員 一部の報道では、三月十五日という報道があります。本日予算が衆議院において通過する、その後三、四日見て、三月十五日という報道がなされておりますが、あり得ますか。
  80. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 三月十四、五日などというところまで私は聞いておりません。衆議院の予算が通ってからなんということじゃないのです。ほんとうなら、やるなら通る前にやるべきでありまして、そういう政治的な配慮は全然しておりません。これは全く積み重ねでございまして、純経済的に、ほんとうに国民生活にどういう影響があるか、どこで押えられるかということに日夜寧日なく苦労しておるというのが実際でございまして、初めからいつきめよう、そんなことは全然ありません。そういうことはございません。ですから、そこのところを、二旬に入ったということでございまして、だんだん積み重ねてきて、いま関係閣僚でもって話し合いが続けられるという状態にまでなっておるということで御理解をいただきたい。
  81. 小平忠

    ○小平(忠)委員 上げ幅はどのくらい考えておりますか。報道では、キロリットル当たり九千円前後というようなこともありますが、そのようなことですか。
  82. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、外国では八千四、五百円から一万一千円までということでございます。通産省が出しておる数字というのは九千百六十円から九千百七十円ですか、これは新聞によって見たものでございまして……(「ずうずうしいな」と呼ぶ者あり)ほんとうですよ。まだ私のところに来て説明するというところまでいっていないのです。いままでの各省に説明しておるものが、こういうふうな日程で説明をしておりますというのですが、まだ、農林省が軽油を押さえるとか、航空用の燃料をどうするとかいう問題が相当ございまして、まだ各省間の意見がきまっておらぬということで、事務当局が試算をしたものが九千百何十円であるということでございますから、正確な数字、通産省の事務当局の数字が必要であれば、通産大臣から答えます。
  83. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、総理御自身が、かりに値上げをするといたしましても、三月一ぱい値上げをしないことは、たびたびあなたは言明をされておりますね。そして、いまの御答弁だと、もうなるべく早いほうがいいから、数日後にも値上げを断行しかねないという御答弁の意思であります。同時に、値上げ幅につきましてもまさに大幅なものであります。かりにこのような石油製品の再値上げを断行した場合に、今日の狂乱物価にどのような影響をもたらすかは、私はいまさら申し上げるまでもないと思うのであります。  この数日来の本委員会における質疑を見ましても、所管大臣である通産大臣は、これに対していろいろあれこれと、便乗値上げに手当てをしていると言いますけれども、もしこの値上げを断行した場合には、単に狂乱物価だけではなく、革命物価へと発展しない保証がどこにありますか。この際、総理自身がはっきりした見通し物価に対する歯どめ、これらの見通しがつくまでは、断じて値上げを行なわないというき然たる態度こそ、今日の狂乱物価に対処する姿勢ではないかと私は思うのであります。  したがって、そういう見通しかつくまでは、そういう措置がされるまでは、断じて再値上げを行なうべきでないと思いますが、総理、いかがですか。
  84. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も、あなたと同じことを考えておるのです。先ほども述べましたように、石油が、とにかく便乗値上げというもののきっかけをつくったということは、間々指摘をされておるわけでございまして、政府がこれ以上の物価という問題に対して、無関心でいるわけはありません。これはほんとうに、政府も死命をかけての問題であるというぐらいに、深刻な問題として考えておるのです。  ですから、いやしくも石油価格が改定をされたとしても、それが一体電力料にどうはね返るのか、電力の発生量にどうはね返るのか、それが国民生産にどう影響して、物価にどう反映するのか、そういう問題と、いままで流通経路にあると思われる品物を把握して、これを一体どうするのか。いま一部暴落の状態でもございます糸などは一時相当退蔵されたということで、これが一斉放出が行なわれているために、今度は値くずれで、中小企業は糸の代金が半値になったと同時に、倒産相次ぐという状態も起こっているわけです。  ですから、そういう中間流通経路にある品物も全部把握しなければなりません。それが全部市中に放出されたときに、これは上がるときには買いますけれども、さて下がるといったら今度は買い控えますから、土地と同じくなるのです。ですから、そういう事態でもって土地を売ろうとしても、金融は締められる、土地を売りなさい、売って月給を払いなさい、こう言っていますから、実際土地を売ろうとしても売れない。売れないから地方庁に殺到しておる。しかし、地方にそういう金を出せば、とにかくこれだけ引き締めておる総需要抑制はしり抜けになる。だから、相当きびしいことをやっているわけです。  これだけの全体の問題をつかまずして、数字や何かをつかまずして、観念的に、これを上げても物価は上がらぬでしょうなどということで、政府は踏み切れるわけはありません。ですから、一部においては、法律がないんだから、石油をとにかく指定品目にすれば別ですが、そうでなかったら、われわれは上げますよ、会社がつぶれるから上げると言ったら、ほんとうに上げてやっていけるならやってごらんなさい、このくらい不退転な決意を持ってやっているわけですから、そんな簡単な意味で石油価格を改定しようなどとは思っておりません。  だから、目張りを全部やってからでなければやりません。その目張りをやろうとすれば、今度全部独禁法違反だ、こういわれて、政府も共犯だといわれてはやれないじゃないですか、こういうのでさっきから答弁しているわけでして、私はほんとうに一生懸命なんです。懸命な努力を続けておるというのが事実ですから、これはひとつ、与野党の別なく、国民として御声援のほどをお願いしたい。いいかげんなことで石油価格を改定しようなどと考えておりません。
  85. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま総理答弁のとおり、無定見な値上げを行なった場合の混乱を予想いたしまして、やはり石油メーカーはもちろんのこと、消費者、全国民が真にこの物価の影響を考慮して、そのめどのつくまでは断じて上げるべきでないということを私は、強く政府総理に要求いたしまして、次に移りたいと思います。  次は、物価高騰による零細な庶民の預貯金に対する金利の物価スライド、あるいは預貯金の目減りについて伺いたいと思うのでありますが、この問題につきましては、昨年二月三日、本委員会で私が日銀総裁に質問をいたしました。その際あなたは、預貯金金利のスライド制は、確かに一つの検討に値する問題であるから真剣に検討してみたい、こういう御答弁をされておるのであります。ちょうど一年たったのでありますが、検討の結果、どのような結論が得られましたか、お伺いいたしたいと思います。
  86. 佐々木直

    佐々木参考人 昨年の二月、小平先生の御質問に対しまして、当時すでに物価が上がってきておりました関係で、預金者の利益を守るための方策をいろいろ検討しておるということから、いまのスライド制の話に進んでまいったと記憶いたしておりますが、さっそくその後検討いたしまして、結果といたしましては、現実に実行がなかなかむずかしいということに相なりましたのは、はなはだ残念でございます。  その理由の一つは、だんだん問題を突き詰めてまいりますと、預金の金利だけをスライドするということでは、他のいろいろなものとのバランスがとれない。そのバランスをとるためにだんだん広げてまいりますと、非常に広い範囲に及んでまいりまして、総体としてすべてのものが、すべてというのは言い過ぎかもしれませんが、相当多くのものが物価と一緒に動いてくるということになりまして、物価に対するものの考え方の基礎に、問題を起こすようなことに相なるという点にあるわけでございます。この点は、外国の例についてもいろいろ検討してみましたが、外国の例で、それがみんな結局はやめられておりますが、やめられた一番大きな原因は、いまも申し上げましたような点にあるようでございます。  それからもう一つの点は、やはり何と申しましても、預金金利を物価につれて上げますと、その金のもとといいますか、支払い資金のもとは、金融機関としましては、貸し出しの金利の引き上げにまたざるを得ない。個人預金を中心として進めております中小金融機関には、特にその影響が強いということで、またその貸し出し金利の上昇が、物価に影響を及ぼしていくというような点も考慮しなければならない。こういうことで、結局、物価スライド制ということは無理であるということに相なったのでございます。  しかしながら、いまの物価上昇の中で、できるだけ勤労者の預金を守るという考え方は非常に大事でございます。そういうことで、昨年の四月以来、私どもとしては、四回にわたって、全体の金利と一緒に預金金利も引き上げてまいりました。今後とも預金の優遇につきましては、できるだけの考慮を払っていきたい、こう考えておるのでございます。
  87. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは端的に申し上げて、昨年の二月私がここで質問いたしましたその当時から一年たったことしの二月で、消費者物価は二四%上がっている。そうしますと、かりに昨年二月五十万円預金した人は、ことしの二月で、一年で十万円以上損をしている、こういう結果になるのです。このようなことで、先般全繊同盟では、この預貯金の目減りに対します請求訴訟を起こしております。これは日銀総裁、あなた、そのようにいろいろ外国の例も調べてみたけれども、めんどうだということで片づけられる問題でないと私は思う。現に、第一次欧州大戦直後にドイツでは、この預貯金の目減りに対する最高法廷院判決で金銭の債権再評価を行なっている例もあるし、さらに、フィンランドでは一九五七年から物価スライド制を創設して、その状態が一応緩和したから一九六八年に廃止いたしております。外国に例がないわけではないのです。あなたはいま、しかし放置できないから預貯金者に優遇措置を講じたい、こう言うけれども、どういう優遇措置がありますか。
  88. 佐々木直

    佐々木参考人 優遇措置につきましては、目下検討いたしておりまして、できるだけ早くその結論を出したいと思って急いでおる段階でございまして、いまここで、具体的に内容を申し上げるまでにはまだ至っておりません。
  89. 小平忠

    ○小平(忠)委員 福田大蔵大臣も、昨年再度大蔵大臣に就任されましてから、本件に関しましては、預金者に優遇措置を考えたいということを言明されておりますが、大蔵大臣はどのようにお考えですか。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 預金者優遇問題につきましては、考え方としては、大体いま佐々木総裁が申し上げたとおりです。  お話を承るまでもなく、こういう物価情勢の中で、預金者の立場をどうするかということになりますと、非常に私も深刻に考えておるのです。ただ、スライド制を採用せい、これはかねての民社党の皆さんの御意見でございますが、一体その財源をどうするんだ、そういうことになれば、これは金融機関の貸し出しの利率を引き上げるということになる。そういうことになりますれば、日本経済全体の貸し出し金利水準を引き上げる、こういうことになる。わが日本は資源小国である。世界各国に対して強い通商態度をとらなければならぬというときに、わが日本のそういう金利高の状態が、一体どういうふうに響いていくのだろうかということも考えておかなければならぬ、また、企業側の運営というものにどういう影響があるか、これも甚大なものです。  民社党の一部には、政府がその金利差を負担したらどうだ、こういうお話もありますが、政府が負担するということになれば、これはそれだけの金を調達しなければならぬ。ばく大な金です。その金を一体どうするか、そういう問題もございますが、結局、これは公債の発行を増額せざるを得ないということにもなり、これはいまの物価対策から見まして、きわめてむずかしい問題なんです。  私は、それにもかかわらず、零細な預貯金につきましては、何とか特別な配慮ができないかと思いまして、日銀総裁とも相談をいたしておる。まだその相談の結果は、非常にむずかしい問題がありますので、ここで御披露するという段階まで来ておりませんけれども、いろいろ対策考えてはおりますけれども、結局、きめ手は、一刻も早くこの異常な事態を克服する、それ以外にはないと思うのです。そういう中においてスライド制というような金利の処置ですね、これは物価対策にかなりの影響のある問題です。そういう考え方は、一応は考え得る問題であるにしても、ここでこれをひとつ差しとめておかなければならぬ。それより、一刻も早くこの狂乱状態を克服する、この状態を断ち切る、それに全力を尽くす、これがほんとうに預金者の立場を保護するゆえんではあるまいか、そういうふうに考えております。
  91. 小平忠

    ○小平(忠)委員 やはり真剣にこのことを考えませんと、もちろん、もとである狂乱物価を押えるということは当然のことでしょうけれども、現に、自民党内閣田中内閣になってからも、これは口がすっぱくなるほど言っているけれども、だんだん長引いて、見通しがつかぬ。こういう現状からするならば、やはりこの際、最小限度の、国の負担ももちろんさることながら、具体策を講ずべきである。民社党は、そういう見地に立ちまして、すでにこの預貯金金利の物価スライド制の創設の一案を対外的に公表いたしておりますが、方法はないわけではありません。この民社党の案につきましても、大蔵大臣、日銀総裁、検討していただけましたか。ぜひこれは、前向きの姿勢ですみやかに結論を出していただきたいと思うのであります。  それから、総理にお伺いしますが、全繊同盟がこの預貯金の目減りに対します損害補償の請求訴訟をいたしておりますが、これは総理大臣、どのように受けとめておられますか。
  92. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 訴訟をやるということに対しては、最終的には裁判所の判断をまたなければならぬわけでございますが、非常にむずかしいことであって、私はすなおに言うと、これは判例として出すこと自体がむずかしいケースの問題だろうと思います。  これは現にいままでもあったわけです。郵便貯金を、戦後のインフレ状態において一体どうするのかという問題もございましたし、また、いろいろな状態において、戦後の終戦における賠償というようなときに、旧円で郵便貯金しておったもの、簡易生命の払い込み金というものを、当時の時価で換算をして返還すべきものだという国際的な問題のあったことも御承知のとおりでございます。そういう意味で、物価にすぐスライドするということは、制度的に預貯金というものはなかなかむずかしい問題もあるわけです。  そういう意味で、一体どうするのかということになりますと、預貯金の優遇ということに対しては、少額非課税制度というようなものをとりましたり、いま大蔵大臣が述べているとおり、どこに線を引くかということはむずかしいことでございますが、日銀総裁と話し合いをしながら、少額の貯蓄というものに優遇策はないかということで、いま検討中であるという発言があったとおりでございます。  しかし、物価にスライドをするということになりますと、月給を物価にスライドしなさいという問題もあるし、年金のスライドという問題があります。年金は、これは生きていかなければならない問題でありますから、スライド制がまず認められて、その次には預貯金ということになるわけです。そういうところに問題があるのですが、これを、いまの金利というようなものの中で全部片づけようとすると、なかなかむずかしいのです。  その意味で、全然別な政策として考えられないかということで、一つ取り上げられておるのが労働者財産形成で、この問題だけは、これは預貯金の金利というのではなく、別な政策目的をとっておるので、土地を給付するか、相当なものを金利の上のせをして、少なくとも十年たったら三倍になるというくらいにできるじゃないか、西ドイツは現にやっておるじゃないかということが、いま検討されておることは事実でございます。  それからもう一つは、いま大蔵大臣が言ったように、インフレが押えられれば、物価が安定すれば、そういう問題はなくなるのだから、物価を安定するということで、いわゆる消費抑制という意味でやるには、これはやれるということで、その間に、無税国債論というのが出ているわけです。そのかわり五年以上拘束しなければいかぬというのであって、五年以上とか三年以上とか——いつでも引き出せる預貯金を、とにかく金利を上げれば、それがまたいろいろな波動を起こして、物価抑制とは逆な面に影響するということもあるので、預貯金の保護をしながらも物価抑制しなければいかぬ、それには時間的に三年とか五年とかの時限で移動できない。これは税金を納める場合ならいいですが、それ以外に流通をしないというような制約がないと、なかなか無税国債も発行できないということで、いろいろなことを検討しておりますし、あなたのものもよく読んでいますから、そういう意味で……(小平(忠)委員「読んでいますか」と呼ぶ)そういうのは何でも読んでいるのです。そういう意味で懸命な努力を続けておるという、政府も勉強をしているんだということを、ひとつどうぞ御理解いただきます。
  93. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いや、それを研究されておるなら、いまのような長い答弁にならぬと思うのです。  これは憲法第二十五条、第二十九条の財産権、国家賠償法第一条、第四条の損害賠償請求権、さらに民法七百九条の不法行為、これらのいわゆる憲法並びに法律によって、必ず今後これは長引いていく重大な問題でありまして、いまのような問題が起きるということは、これは政府・与党の政治責任だと私は思うのです。ですから、真剣に取り組んでいただきたい。これを強く要請いたしまして、時間がありませんから、次に移ります。  次は、食糧問題であります。  農林大臣に伺います。昨年一月から十一月の通関統計によりますれば、農林水産物の総輸入額は、百六億八百万ドル、すなわち百億ドルの大台をこえております。しかも、前年度に比べまして七六・八%増となっておりますが、この数字は間違いありませんか。
  94. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話がございました四十八年の農水産物でありますが、六十八億ドル、これは前年対比一七・九でございます。
  95. 小平忠

    ○小平(忠)委員 百六億八百万ドルという数字は間違いありませんね。間違っていますか。
  96. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ちょっと百を見落としました。通関統計によりますのは、四十八年に百十八億八千二百万ドル、これでございます。前年対比は、失礼しました、七六%増加しております。これの事情につきましては、御存じのとおりでございます。
  97. 小平忠

    ○小平(忠)委員 前年対比七六・八%もふえておるわけです。私は、この数字は非常に深刻だと思うのです。いま日本の外貨準備が百億万ドル台を割ろうとしておる。そのときに農林水産物の輸入額が百億ドルを突破するということは、何を意味しているかといえば、つまり、この状態を放置するならば、近いうちに必ず、外貨の面でも、この食糧輸入という問題がきわめて重大な暗礁に乗り上げる、その結果は、当然食糧危機に見舞われるということであります。  このように、農産物が国際収支の、いわゆる外貨準備に与える影響というものは、きわめて重大であろうと思うのであります。このような見地に立って、農林大臣、いかがお考えでございますか。
  98. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お説のとおり、農産物の輸入額はふえておりますけれども、私、先ほど申し上げましたように、全体の中で占めております輸入のパーセンテージというのは、総貿易額の中で例年とあまり変わらっておりません。一七・九と申し上げたのは、そういうことでございます。  したがって、私どもといたしましては、貿易全体がふえてまいるわけでありますし、それで昨今、御承知のとおり、新聞等でも報道されておりますように、輸出はかなりわが国でも堅調になっておりますので、国際収支全体の中で、それは輸入の金額がふえないことは好ましいことでありますけれども、そういう状態でありますので、そのために、不安であるとは思っておりません。
  99. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、いまの農林大臣答弁は、とうてい受けとめられません。  従来のわが国の貿易政策、特に食糧問題については、外国食糧が安いのだから、足らざるは安い外国食糧を輸入して補えばいいというこの考え方、いわゆる外国食糧依存政策。しかし今日では、外国食糧も急騰いたしまして、国内食糧よりも高いという場面がいまあらわれている段階においては、この貿易の国際収支という面において、食糧というものがどのような影響を持つかということは、もう少し、主管大臣である農林大臣、私は真剣に受けとめてもらいたい。  そういう面において、いま既定計画に基づく輸入食糧がストップした場合に、一番困るのは日本の畜産です。事実、いまでさえ、えさの高騰で畜産が危機に瀕しております。さらに木材や水産物の面でも、重大な影響を受けるでしょう。このことは、結果的に国民の衣食住が危機にさらされるということであります。  こういう国民生活、国民の生命に関するような衣食住の問題に関しましては、やはり私は、従来われわれが主張いたしております食糧については、国内の自給度を高める、自給体制を確立するということが最も重要であろうと思うのでありますが、この際、いわゆる農政の転換を強く叫ばれておりますときに、総理大臣、基本的な考え方はいかがでございますか。
  100. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国民食糧の確保ということは、どこの国でも一番大切な問題でございます。いかなる場合でも、国民食糧の自給自足体制ということが大前提にならなければならないということは当然でございます。その意味で、米は食管法というものが戦前、戦中、戦後を通じて維持されておる、この一事をもってしてもわかることでございます。  しかし、この食糧問題に対しては、二つの問題がございます。  一つは、国際的な南北問題ということで、これは、もう国際分業化。何でもかんでも全部自給自足をするということになると、工業国までが、農産品まで一切自分で自給するということになれば、一体、一次産品国である開発途上国はどうなるのだ、そういう意味で、世界の平和を維持するためには、やはり国際分業化を推進することが望ましい。これは世界的な合意に達しておるわけでございます。その意味で、一次産品に対しては、無関税でもって世界各国は入れなければ人類滅亡の危機になる、こういうことでございますから、これは、そういう意味で南北問題として、全世界がニューラウンドの推進をしておるということも事実である。しかし、そうでありながらも、まず自国の主食というものや、それに類似するものは、段階をつけながらも、自給自足率を上げるということの調整をはからなければならぬというのが、各国の農業政策に対する基本的な問題でございます。  日本としては、特に地形、地勢、気候上の制約がございまして、国民食糧の質が変わってまいりまして、どうしても日本において大豆を全部つくる、それから飼料を全部つくるというわけにはまいりませんので、そういう意味では、国際分業化というものに日本が前向きであり、しかも、日本の国内の自給体制というものも確立をし、そして、なお、開発途上国との間に開発輸入というようなことを行なうことによって日本の備蓄にもなり、その国の食糧の自給自足にも貢献をし、第三国に対する援助の基地にもしようというような総合的にバランスをとったものにするということが、やはり日本の農業政策の根幹をなさなければならないということでございます。  ただ、ここで最終的に申し上げるのは、いずれにしても、日本としても制約はあっても例外ではなく、あなたが指摘されたように、ただで品物が入ってくるわけはないのです。百億ドル以上も外貨を支払わなければならないということでございますので、これからまだ二百万ヘクタールに近い農用地に提供できるものが存在するわけですから、そういう実態も見ながら、農業政策に遺憾なきを期するということが、当面する日本の農業に対する基本的な考えである、こう理解されたい。
  101. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いまの最後の総理答弁は、これは、きわめて前向きな答弁でありまして、真にそういう決意が必要な段階になってまいりました。総理の最後の答弁のように、真剣に前向きに取り組まなければならぬ段階であると思うのです。そうして石油ショックでこれだけの打撃を受けているのです。  いまの日本の食糧というものが、すなわちここ数年、国際的な穀物のいわゆる不足、こういう現象で大きな変動を来たし、そして数年前までは、麦においても米においても、外国の外麦や外米が国内麦、国内米よりも半値以下という、そういう時代はあったけれども、いまは逆転してしまいました。したがって、そういう輸入食糧に依存するということだけでいかなくなってきました。  そうした場合に、さあ、いまのえさはもちろんのこと、国民の主要食糧である米に次ぐいわゆる粉食であるパンなどの現在の値上がり、そして小麦粉が、外麦が思うように入ってこないという場合に、国内の生産は伴わない、その食糧危機に当面した場合に、これはたいへんなことだと思うのです。その時期になってからあわててもいけない。したがって私は、いま総理が最後に述べられたような食糧の自給度を高める、自給体制を確立するということが刻下の急務であろうと思うのであります。  私は、総理自身がそういう前向きな姿勢と同時に、この際、主管大臣である農林大臣の決意を承りたい。
  102. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 総理が申し上げたところが政府の方針でありまして、したがって、四十九年度予算でも、御承知のように、必要なものの自給度を高めるための施策を講じておるところであります。
  103. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農林大臣に伺いますが、本年度の米価は、いつごろ決定する予定ですか。
  104. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米価は、御存じのように、毎年六月ないし七月にきめておるわけでありまして、ただいまのところ、別にいつと考えておりませんけれども、御存じのように、やはりなるべく米価決定は、その時期に近い経済情勢その他のデーターを集めましてやるわけでありますから、大体、ただいまのところは、例年やっております時期にやったらどうか、こう思っております。
  105. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、この例年の六月、七月という時期が根本的に誤っていると思う。  たとえばメーカーとか、あるいは商取引を行なう場合でも、物は、値段をつけて売買されるというものでありますから、結局、田植えで作付してしまってから値段をつけるというようなことは、きわめて不合理だ。たてまえから言うならば、田植え前にその年度の生産者米価をきめるというのが、私は常識だと思う。そういう根本的な考え方を持つ必要はありませんか。
  106. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 専門家のあなたに向かってことばを返すのは失礼だと思いますけれども、米づくりというのは、ことしは米が安いからやめておこうというふうな、そういうのではないのでありまして、ずっともう何代か続いて米をつくっておられるのでございまして、しかも、これは食管法で米審の意見を聞いてきめるわけでありますので、米審を開いて、学者、専門家たちの意見を徴するための資料は、なるべく最近のものが一番親切ではないか。そういうことを考えてみますと、いまは、御存じのように何にも資料がきまっておりません。  そういうことでありますので、私どもといたしまして、やはり例年のがいいのではないかと思っておりますが、まだきめておるわけではございません。
  107. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いま、米審の話が出ましたが、現在の米審なんというのは、これは御用米審で、倉石さん、米審なんというそんな言いわけしなさんな。ほんとうに生産者の立場考えるならば、生産意欲を持たして、大いにやろうぜという体制が必要であるし、特に本年は参議院選挙が目前に控えておる。したがって、そういう意味からも、政治的にも参議院選挙の前にぴしゃっと生産者米価をきめて、生産者にも国民にも信を問うという姿勢が、政治的な面から考えても私は必要だと思うのですが、時間がありませんから、それ以上伺いません。  次は、外交問題でありますが、北方領土の問題について、私は政府の所信をただします。  北方領土の変還については、昨年、総理がソ連を公式訪問されて、確かに前向きの姿勢、さらにその方向への努力をされていることは、われわれ認めるのでありますが、ついては、北千島を含めた全千島列島をあくまでも返還しなければ、その方向が確実にならなければ、平和条約の締結をしないというのであるか、あるいは、全千島、すなわち千島列島全島は日本固有の領土であるという、この領土権の放棄はしないけれども、少なくとも歯舞、色丹、国後、択捉の四島は、平和条約締結の前提であるというようにお考えなのか、私はその基本的な考え方を、まず総理にお伺いしたいと思います。
  108. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 北千島を含めて、全島というのでは政府はありません。これはサンフランシスコ平和条約で放棄をしたものは含まないということでございまして、政府が、祖国復帰、日本の固有の領土と言っておりますものは、歴史の上でもいずれの国にも属したことのない地域、すなわち歯舞、色丹、国後、択捉の四島に限ると、こういうことでございますから、この四島は、当然日本の領土である、とこういう立場に立ってソ連側との交渉に対しては、この四島に早期に日本の行政権か及ぶように——いまは及んでおらぬわけてあります。非常に不自然な状態が続いておるわけでございます。でございますので、北千島は、列島を放棄したわけでございますから、これにつられてこっちのほうまで、四島までみんなというような状態が続いていることは事実なんです。ですが、それは私のほうのものでございますからと、そこまでは放棄したものじゃございませんのでということを、私はるる述べておるわけでございます。  沖繩も、放棄をしたものが返ってきているわけであります。ですから、放棄もしない四島が異常な状態、不自然な状態にあることは、国民としてこれを認めることはできないし、これは全日本人の悲願である。私は、訪ソの前提として四島の返還ということ、前段に衆参両院において満場一致で四島返還ということが決議をされていることをもって、日本国民の真の叫びであることを理解されたい、こういうことを述べておるわけでございますので、あなたがいま述べられたとおり、北千島全島を含めてということを政府はとっておりません。これは明確にしておきます。四島は祖国復帰、日本の固有の領土であるので、早期返還が望ましい、それで、これに早期に日本の行政権が及ぶような状態が一日も早く来ることを国民は熱願をしておるのであって、その上に日ソ平和条約が結ばれることも、また望ましいことである、こう述べておるわけであります。
  109. 小平忠

    ○小平(忠)委員 四島はわかりましたが、そうしますと、いわゆる全千島列島の固有の領土権を放棄したわけではないということですね。
  110. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いまも明確に述べましたとおり、千島列島の中にある四島は、固有の領土でございまして、これは放棄はしておりませんので、これは日本の行政権、支配権が及べるように、不正常な状態からできるだけ早く正常な状態にしてほしい。(小平(忠)委員「北千島」と呼ぶ)北千島は、サンフランシスコ条約において、これは日本の支配権を放棄したわけでございますから、日本の支配権を及ぼさないということで、連合国側に提供することを承知したわけでございます。連合国が、これをどういうふうにさばくかは別にしまして、いずれにしても、日本が北千島、四島以外の地域に対して領土権を主張するということはできない。これはできないし、いま、そういう考えはないということは明確にしておきます。
  111. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これは、四島が平和条約締結の前提であることについては、われわれも理解できますが、しかし、いま北千島について、総理が明確に領土権を放棄したんだということについては、非常に問題がありまして、これは今後の問題に譲りたいと思います。  そこで、この返還交渉のいわゆるプロセス、方法でありますが、昨年、あなたがソ連を公式訪問の際、共同声明の中に、「一九七四年の適当な時期に両国間で平和条約の締結交渉を継続することに合意した。」とありますが、この「一九七四年の適当な時期」とは、いつごろをさしておりますか。
  112. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、十二月三十一日まであるわけでございますが、早いほどいい。こちらは四島問題がございますし、早いほうがいいと、こういうことで、雪解けになったらひとついらっしゃいよ、こういうことをほんとうに祈りを込めて私は述べているのです。まあ三首脳のうち、とにかくポドゴルヌイ評議会議長は、前に大阪の万博のときに来られる予定だったわけです。事情のために来られなかったわけですから、とにかく、どなたでもいいからおいでいただきたい、そのときには四島をぶら下げてきてくださいよと、こういうほんとうに、公私のあらゆる場所でそういうことを言っているわけです。向こうは黙して語りませんけれども、あまり木で鼻をくくったような顔じゃないのです。  いずれにしても、これは日ソ両国における懸案であって、これが解決しない限り——お互いというものが、真に心の底から信じ合えるようにするためには、四島の返還というものが絶対動かすことのできないことであります、それで、どうぞひとつできるだけ早くと、こういうことを言っているわけですが、これらは両国の都合もありますから、外交ルートでもってきめましょうということになっているわけです。ですから、今度私が参りましたから、向こうから来ていただくということか、こちらのほうは四島の返還ということがありますから、こちらが出かけていっても、一向差しつかえないということも向こうには述べてあります。  特に、接触を非常に密にしなければならないということで、国情の相違を感じましたのは、あなたは、きのう提示をして、きょう返せとは何ですかと言うから、十七年前から明確にしているじゃないですかと言ったら、十七年前に一回言われただけである。新聞にも出ているじゃありませんか、こう言ったら、新聞は別だと言うのです。これは国情の違いだと思うのです。これは明確に、代表として文書をもって、お互いの会談によって交渉をするということでないと、なかなかこの問題——だから、私は、大平外務大臣とグロムイコ外務大臣とも去年やっているわけですから、三回目か四回目だという気持ちでもって話を詰めようとしたのですが、正式な要請は、これが鳩山訪ソ以来二回目である、こう言う。それは、お互いそういうところは外交でありますから、そういう意味でも、やはり正式な会談を積み重ねていくということの必要性ということを感じたわけです。
  113. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その会談は、田中・ブレジネフのトップ会談と理解してよろしゅうございますか。
  114. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私が、また再度向こうへ参るということになれば、これはもう首脳会談になるということは事実でございますし、向こうからは、どなたがおいでになっても、これは私は当然お会いをするということになります。  ただ、外務大臣ベースで第一回をやり、第二回は首脳会談になり、第三回目があるわけでありますから、首脳会談になるか、外務大臣が出かけていって交渉するようになるか、向こうのグロムイコ外務大臣の来訪を待って会談を行なうようになるかは、外務省ベースで連絡をするということになっておるわけであります。
  115. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、北方領土の返還こそ、わが国戦後の重大な、いわゆる処理事項の一つであると同時に、北方領土の返還なくして、日本の戦後は終わったとは言えないと思います。かつて佐藤前総理が、沖繩の本土復帰なくして日本の戦後は終わらないのだという名言を吐かれたのでありますが、私はさらに、北方領土の返還なくして日本の戦後は終わらない、こう思うのであります。  これは今日、日ソの親善友好を深めるという意味からも、どうかすみやかにこの領土問題の解決を見て、平和条約の締結へ踏み切ってもらいたいということを、この際強く総理に私は要請いたします。  関連いたしまして、尖閣列島の帰属について、現在どのように処理し、外交交渉されておりますか。所管大臣でけっこうですから、大平外務大臣に伺います。
  116. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外交交渉をいたしておりません。大陸だなの資源帰属問題につきましては、これから関係国と協議する場合が予想されるわけでございまするけれども、あの海域につきまして、交渉はまだ持っておりません。
  117. 小平忠

    ○小平(忠)委員 尖閣列島は、日本固有の領土であると断定してよろしゅうございますか。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国の立場は、仰せのとおりでございます。
  119. 小平忠

    ○小平(忠)委員 特に、沖繩の本土復帰の際も問題になりまして、本委員会、国会においても、尖閣列島の問題は取り上げられたのでありますが、これは、日中の親善友好という面においても、この問題に、もし外交面で不手ぎわなことをしますと、非常な外交上の一つの暗礁に乗り上げるような問題になろうかと私は思うのであります。どうか政府におかれては、特に外務省におかれましては、尖閣列島こそ、わが国固有の領土であるという観点に立って、将来、領土問題についての国際紛争なきよう、事前の万全の措置を講ぜられたいことを、特に要求いたします。  最後に私は、田中内閣の政治姿勢についてお伺いいたします。  私は、今日のこの困難な政治情勢をもたらした最大の原因は、田中内閣の政治姿勢そのものにあると思うのであります。  すなわち、田中内閣は一昨年七月、佐藤内閣のあとを受けて、国民の圧倒的な支持を受けて、あなたは庶民宰相、野人宰相としてはなばなしく登場いたしました。しかるに、自民党政権多年の悪政が生んだ、物価、インフレ、公害、土地、住宅、交通禍などの問題は、一向に解決を見ておりません。私は、これはまさに歴代保守党内閣の政治責任であるということを痛感するのであります。  特に、田中内閣になりましてから、第一に、経済見通しの誤算であります。第二は、悪性インフレの招来と物価の急上昇であります。第三に、無責任な日本列島改造論構想であります。第四に、石油危機の直撃であります。第五に、日ソ共同声明や天皇訪米をめぐる錯覚ミス外交であります。このようなもろもろの問題が、今日大きな政治不信となっておると私は思うのであります。  特に、最近の田中内閣の実態を見ますならば、何かあなたの総理大臣としての、いわゆるリーダーシップが欠如しているような感がいたします。その例としては青嵐会。このようなことを考えてみますときに、いまこそあなたは、えりを正してこの難局を切り抜ける、政治の危機を乗り切る体制をみずからおつくりになることが、絶対の要件じゃないかと私は思うのであります。  民主政治確立の道というものは、なかなか険しいのであります。終戦直後政権を担当されました吉田茂さんが、ワンマン宰相といわれながらも、私の最大の任務は、政権を交代し得る健全なる反対党の育成だと、よく述べておられました。私は、今日のようなこの政治の危機、政治の混乱、これを考えるときに、あなたは、真に日本の民主政治をどうすれば確立できるか、どうすれば今日の狂乱物価を押えることができるか、こういう点に立って、私はあなたの確固たる信念を、この際承りたいのであります。
  120. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も、新憲法下初の選挙に議席を得てから、もうまる二十七年を過ごしたわけでございます。  私は、戦後の混乱期から今日まで、おおむね政府・与党の一員とし、また閣僚の地位にもありました。だから、功罪両方問われるとすれば、そのいずれも受けなければならない立場にあるものだと考えております。また、現在このような重要な地位におるのでございますから、その責めを免るることはできない、私はこう考えております。  戦後の足かけ三十年の歴史を見ますと、戦勝、戦敗の両方に立つ国々はあるわけでございますが、その中で、日本人の英知は民主政治という新しいものを育てながら、いずれにしても前進を続けてきたことは事実だと思うわけでございます。全く無資本、無財産ともいうべき状態の中から、四半世紀近い間にこれだけのお互いをつくり得た、しかも血で血を流すような、血の犠牲も見ずして民主政治体制というものは前進を続けてきたということは、私は、人類の歴史の中で、やはり評価すべき一ページだったと思います。  そういう意味で、いままでは、ある意味において、戦勝国の例に徴してみてもわかるとおり、恵まれ過ぎておったという面もあると思います。国際的な要因もあるし、日本人の勤勉さがもとであったと思います。しかし、とにかく今日まで築き上げてきたわけでございますが、この半年、一年の間に、もろもろの、動あれば反動あり、私はそう思っております。もろもろのものが一挙に火を吹いてきたという感じがいたします。しかしそれは、やはりある時期において避けがたき一つの定めだとも思うわけであります。これは、もう振り子論を申し上げるわけじゃありませんが、そんなにいいときだけあるわけはないのです。しかも、全くこれだけの経済成長の土台をなすすべてのものを海外に仰がなければいかぬ。国破れて山河あり、人あり、こういって、お互いに国民に訴えてきた四半世紀前のことを考えてみますと、やはり国際的波動というものが全然ないとは思いません。  私は、じっと、ほんとうにまじめに考えてきたわけでございますが、二十年おきに戦争があったというような歴史、しかし今度は、ベトナム問題を契機に戦争はなくなった。これは非常な人類の英知だと思います。しかし、中近東における石油問題そのものは何か。これは、考えれば、過去には戦争になったわけであります。しかし、これがお互いの話し合いによって何とか片づけようというような状態で動きつつあることは、私はやはり人類の英知だと思います。戦争だったなら、お互いにその波動に影響を受けないことはありません。  そういう意味で、どこの国でも受けなければいけない一つの節目を迎えておるんだ、私はそういう考えの中で、水ぶくれがあるなら水ぶくれをとればいいんだと思うのです。そういう意味で、私はほんとうにまじめに、じっと深夜考えておりますと、病気で、もうやせ衰えておるからめしを食わせろ、とにかく栄養をとらせろと言っているうちに、みんな糖尿病みたいになってしまった、これを健全なものにするのがいま世界の情勢である、それは、私は日本も例外たり得ない、こう考えておるのです。  ですから、そういう時期に、私もこの重き任を負うたのでありますから、この責めを免れることはできないし、全精力を傾けることによって、正常な日本というものを築く第二のスタートにしなければならない、こういう公の責任を心から感じております。これは私だけじゃありません。内閣も、政府・与党たる自由民主党も、すべてをあげてこの重き任を完ぺきに遂行しなければならない、こう考えております。
  121. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、そのような抽象論をお伺いしようと思ったのではございません。もっと具体的な、国民が納得する所信を承りたかったのでありますが、それでは私が提示いたします。  私は、現下の政治危機を乗り切る道は、ただ一つ、政治の流れを変えることだと思うのです。それは、先ほど申し上げましたように、終戦直後、吉田さんがワンマン宰相といわれながらも、民主政治確立の道は、ほんとうに政策で競争し得るようなほんとうのライバルだ、反対党を育成することだ、これが民主政治の道だ。しかるに、その後、四半世紀にわたって自由民主党が、いわゆる政権のたらい回しをやって、反面、独裁政治にひとしい形をとってきた。政権を交代し得るような健全な反対党の育成がされなかった。私は、いまこそこの考え方に立つべきではないか。  そのためには、私は、やはり根本的に現在の選挙制度がいけないと思います。現行の選挙制度で何回衆議院を解散いたしましても、それは同じことです。無意味です。  具体的に申し上げますならば、まず定数においてもアンバランスです。それから、選挙運動そのことだって、非現実的な選挙運動の実態ではありませんか。特に金のかかる選挙です。こういうようなことを放置しておいて民主政治が育つものですか。政治資金規正法の改正やなんかも、何回与野党間で話しましたか。結局その結論は、むずかしいから、むずかしいからと言って、そしてその結果は、極端なる右翼、左翼の台頭を許しているじゃありませんか。私は、このような狂乱物価国民の現状を考えるときに、いまこそえりを正して立ち上がらなければならぬと思うのであります。この根本的な選挙制度の改正、このあり方について、総理はどのように考えますか。  時間が参りましたから、私はもう一言申し上げますが、選挙制度の改正というと、あなたはすぐ小選挙区制に走るのでありますが、日本のように、まだ先進国に比較して国民全体が政治意識が低いという現段階において、一挙に小選挙区制度は間違いです。段階が必要であります。そういう意味で、そういう一党独裁の政治を、一党独裁のあり方を強化するというような小選挙区制度ではなくして、現実にマッチするような選挙制度の根本的な改正によって、この際、日本の民主政治、そして政策で互角に、対等に競争できるような二大政党、こういうことに総理自身が真剣に取り組む考えはないか、このことを承りまして、私は質問を終わりたいと思います。
  122. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 選挙制度、それから政治資金規正法、そういうものに対して絶えず検討を続け、民主政治を育成しなければならないということは、御説のとおり私もそう考えております。  それから、有力な野党があり、しかもお互いが切磋琢磨し、政権交代ということが前提であれば、真の民主政治が育つということは、吉田さんの例を引くまでもなく、それはもう当然のことでございます。しかし、どこの国でもちゃんと政権の交代が行なわれておるにもかかわらず、日本でなぜ四半世紀余にわたって政権の交代が行なわれなかったか。片山・芦田さんとの連立内閣というのが二十二年から一年半ばかりありますが、その後は自由民主党、もしくは自由民主党の前進が、四半世紀以上にわたって政権を維持しておるわけであります。それは選挙制度の問題とするのは、私は間違いだと思うのです。  いまの中選挙区制度というのは、世界に例のないような中選挙区制度であります。これは御承知のとおり、私が言うまでもなく、政友会、民政党はこれによって政権が移動できるような中選挙区であったのです。中選挙区というのは、政権移動には一番いい選挙法であります。確かに小党分立になるおそれはあります。小党分立になるおそれはあるけれども、政権移動には一番いい選挙区であるということで、明治二十三年から八十年余こ歴史のうち、九十九%この中選挙区制度がとられてきた。占領軍が大選挙区連記制をとっても、たった一回でやめて、二十二年からまた現行選挙法に返った。  その中で、なぜ政権が移動しないかということを、私はすなおに一言で申し上げますと、これはアメリカの共和党や民主党、またイギリスにおける労働党、保守党でもなぜ政権が移動するのかというと、基本政策が変わらないということによって政権は移動すると思うのです。外交政策、国防政策、治安政策、文教政策が全く相反しておるというところに、自由民主党一党が政権を推持しなければならぬという、ある意味において、私は悲劇があると思うのです。  そういう意味で、私は小選挙区制を、自分だけで、ただ答申を得たから出そうとか、そんなことではありません。私の信念もそこにあったのです。小選挙区法というのは、出せば、こんなに物価が上がってこんなに論議があるなら、がらっと変わりますよ。一回や二回、野党はほんとうに半減するかもしれません。しかし、三年後、五年後には、自由民主党にかわって政権をとれるということは、小選挙区以外にないと私は思うからこそ、小選挙区の提案をあえて企図したのであります。それは第一、昭和二十二年までは、いまよりも社会情勢がもっと悪いときにさえも、野党に政権はいかなかったわけでありますから、それらを考えないで、いまの選挙制度や政治資金規正法や、その他定数の問題だけを是正すれば、これは片づくというような考えは、どうも首肯できないのであります。  そういうような問題に対しては、お互い与野党という自分の政党のことだけ考えないで、ほんとうに真の民主政治をつくるにはどうあるべきかということを私は考えるべきだと思うのです。その場合に、自由民主党が一回は何もなくなったっていいですよ。そういうことまで考えて、私は、小選挙区法を二十何年間検討してもらったものを提案しようとすれば、提案するに及ばずということで、これはもういかんともなしがたきところもございますから、そこらは、ひとつお互いにもっと胸襟を開いて、千年のためといわず、百年、五十年の将来に向かって、日本の政治をほんとうに民主政治を確立しよう、あに政府の責任のみならんやということで、ひとつ御理解いただきたい。
  123. 井原岸高

    ○井原委員長代理 これにて小平君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後一時二十分休憩      ————◇—————    午後二時四分開議
  124. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中武夫君。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 いよいよこの四十九年度の予算三案についての最後のバッターとして、締めくくり総括質問を行ないます。  すでに当委員会で論議せられた問題も多いし、したがって、二番どころか、何番せんじの感じもある問題が出てまいります。しかし総括最後の締めくくり質問者の任務は、十分に詰められなかった問題を詰めていく、こういうことも役目の一つであると思いますので、まずその点から入りたいと思います。したがって、総理以下各閣僚は、いままで繰り返されたような答弁はなるべく控えていただいて、できるだけ核心に触れた御答弁をお願いいたしたいと存じます。  そこで、まず緊急な問題といたしまして、実は私も知らなかったんですが、那覇の空港でいわゆるハイジャックがあって、どうも日本人がしておるとかおらぬとか、そういうようなことも聞いております。そして、燃料とかの補給を要求しておるというようなニュースのようですが、これも私、いまちょっとメモをもらった程度で、見ておりませんのでわかりませんが、その点について、現在わかっている状態でけっこうです。運輸大臣から要点だけをひとつ述べていただき、これに対する批判とか、そういうことは、また事態が明らかになった時点で適当なところで行なうであろうとして、ただ報告だけを願います。
  126. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 ただいまの御質問の点は、きょう十時四十五分羽田発、一時四十五分那覇着の予定の日本航空のボーイング747型SR、いわゆるエアバスといわれているものでございますが、午後一時十八分、沖繩の上空におきまして、学生風男一人に、われわれの命令に従えという英文で書いた紙を突きつけられた。そして、ただいま沖繩上空を旋回中であるということでございます。——ただいま沖繩の空港に着陸したそうであります。乗員は四百六名でございます。  以上でございます。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 エアバスについては、先日のパリ郊外における事故等から、日本でこれを採用することには相当問題があるといわれておる。この問題は、私はやろうと思いませんが、日航のエアバスというと、就航して間もないものじゃないですか。そういう点について、もう一点だけ……。
  128. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 日航のこのボーイング747型SRというのは、昨年から就航しているものでございます。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは質問に入ります。  まず第一番は、当委員における当初の質問者である社会党の石橋書記長質問、それに引き続いて私が関連をし、あるいは保留分を行ないました問題でありますが、つくられた石油危機、これを証明するために、四十八年十一月十三日の石油審議会答申を中心に質問をいたしたわけであります。そして、私が二月四日、このあとを受けまして、通産大臣は、明確に、この答申は凍結する、そうしてあらためて審議会に諮問をし直す、このような答弁があったはずです。ところが、東亜共石の名古屋精油所では、答申に基づいて二万バーレルの割り当てがあったからということで、従来十万バーレルですが、すでに十五万バーレルの機能を持つ設備が完成しておると聞いております。これは石油業法七条の許可を受けてやったとするならば、通産大臣の先日の答弁はうその答弁になります。もしそうでなかったとするならば、無許可、無届けの設備拡張というか、増設だと思います。石油業法第七条の違反であります。  この点、通産大臣、許可をしたのかしないのか。していないとするならば、第七条違反の増設行為であり、まあ罰金といっても三十万円以下ですからたいしたことはないが、これは告発をするべきだと思いますが、このような点についてはどうなっておりますか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ここでお答えいたしましたように、当分凍結するということで、凍結しております。それで、再検討すると申し上げたのは、需給計画について再検討する、こう申し上げたわけであります。  御質問の東亜共石名古屋精油所は、現在、原油処理能力十万バーレル・パー・デーで操業しておりますが、昨年十一月十三日の石油審議会において、昭和五十二年十月完成で二万バーレル・パー・デーの増設許可答申がなされておりますけれども、これにかかる工事は一切行なっておりません。  新聞に出ました東亜燃料工業清水精油所の分は、現在原油処理能力四万三千五百バーレル・パー・デーで操業しておりますが、昨年十一月十三日の石油審議会において、昭和五十一年十月完成で、十一万五千バーレル・パー・デーの増設許可答申がなされましたが、増設工事はまだ行なわれておりません。ただし、この増設工事とは直接関係のない東亜燃料工業としての備蓄用原油タンク四基は、これに先立ち昭和四十八年三月から九月までの間に消防法上の許可を受け、昭和四十八年八月から昭和四十九年一月までの間に完成を見ております。これらのタンクは、国の備蓄政策に沿って建設されたものでありまして、今回の凍結措置とは関係がございません。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 聞かない清水精油所のことまで答弁せられたですが、次に聞く予定だったのです。  そこで、これは私も現地を確認はいたしておりませんが、地元からの報告では、十月ごろから始めて、もう完成し、やっておるというのです。ただ、いまの通産大臣答弁が正しいとしても、問題が残るのは、あのとき指摘いたしましたように、審議会の答申はあくまで答申である。これがすでに答申の段階で許可があったかのごとく考えられるというか、考えてきたところに問題がある。それが行政の一つの欠陥ではないか。  ここに、それに基づいての割り当ての明細書もございます。しかも、完成予定の年月日、能力とかが書き込まれておるわけなんです。こういう点はどうなんです。あのとき指摘したように、あらためて第七条の許可をやらなければ、こういうものは出ないわけなんですよ。答申はあくまでも答申、石油業法は何のためにつくり、七条は何のためにあるのですか。あとからも触れますが、あまり中曽根大臣をつるし上げるつもりはありませんが、各省それぞれで法律を無視した行政が行なわれておるが、最近焦点になっておるのは、通産省が多いのです。法律をつくっておりながら、法律でないことをやっておる。この点について、いかがですか。
  132. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点は、この前も御答弁申し上げましたように、審議会からは、各企業ごとに、許可しかるべしという答申が出てきておりますけれども、通産省として、いつ工事に着手してよろしいという許可は、まだしておりません。これはあのときお話申し上げましたように、当分凍結する、そういうことでございます。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、国会において凍結するという答弁をなされた以後、何らかの手を打たれましたか。ただ、ここで凍結をいたしますと言っただけで終わっておるのか。それとも、各関係の製油所あて、あるいは会社あてに何らかの手を打っておられるのかどうか。
  134. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 先般の許可書凍結のあった後、直ちに各製油所に対しまして、大臣が申し上げましたように、凍結措置につきまして連絡をいたしました。それから審議会の各先生方につきましても、その点を御報告を申し上げまして、御了承を得た次第でございます。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、この件に関して、何らの工事あるいは新設、増設等はやっていないと断言できるわけですね。
  136. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  いま先生御指摘の東亜共石の件につきましては、十万バーレルの原油処理能力以上に、新しく審議会で追加が議論されました二万バーレルの件は、全く工事はやっておりませんで、現在の十万バーレルの能力が稼働している、私どもそういうふうに了解しております。この点は、私どもの十二月の原油処理実績、これはバーレルにいたしますと八万でございまして、一月、二月とも、そういう実績の報告が参っております。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど大臣、次に聞くことまできのうレクチャーしたのでお答えになったのですが、東亜燃料の清水工場の増設計画、この処理自体、私、問題にはしておりません。これにはすでにもう工事ができておるというか、許可をもらったという上に立っての書類なんですね。これは大体が、公害の協定あるいは保安、安全についての問題に関する点でありますが、ただ、その中で「去る十一月通商産業省より、原油処理能力十五万八千五百バーレル」、一日ですが、既設は四万三千五百バーレルですが、「十五万八千五百バーレルの設備許可を頂きましたので、ここに当工場の増設を行ないたく存じます。」云々という文章、あるいは同じようなことが書かれて、「つきましては、次の基本方針に従い、当社の公害防止計画を策定しましたので、市ご当局をはじめ関係諸機関のご審議を載きたく、よろしくお願い申し上げます。」もうすでに許可をもらった——工事はやっておるのかやっていないのか知りませんが、これなら、工事はできて、もうすでに公害協定あるいは安全、保全についての消防その他に対する市の関係者に対する書面が出ておるわけですね。しかも、明確に、許可をいただきましたと書いてあるのです。  こういう点につきましては、どうですか。これは書類を持っていますがね。
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 工事が終わっておるというのは、石油のタンクだけでありまして、それ以外については、工事は全然行なわれていない。石油精製設備については、全く行なわれていない。  それで、タンクにつきましては、七号、八号、九号、十号とありまして、みな五万キロリットルの容量のもので、工事着工許可日は、四十八年三月二十三日、四月六日、九月三日、九月三日というようなことで、その前のこととして、これは備蓄用のものとして容量の拡大が行なわれているわけでございます。
  139. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題をせり合っておっても時間の空費です。したがって、こちらも一度工場へ行って見てまいりたいと思っています。  そこで、こんな裏話を聞いておるのです。まさかほんとうだとは思わぬし、また、大臣もこれを肯定せられるようなことはないと思うのです。しかし、おそらく二月四日の私の質問にあたってのことであろうと思うのですが、大臣が役人に、どこかその辺にうろちょろしている連中ではないかと思うのですが、凍結ということばを使わしてくれ、それに対して、いや、もうどうせ工事は予算委員会が終わったころから始まるんですからけっこうです、そんなことがあったとは、まさか肯定できないでしょう。しかし、これがもしほんとうとするならば、予算委員会が終わったら、その時点から工事をするんだからということなら、何のための予算審議か、国会答弁かということが疑わしいのであります。  ほんとうに皆さん、そんな気持ちなんですか。ともかく二時間何ぼで田中は終わる、めでたしで、あとは討論、採決と考えておられるようだったら、こちらもそのつもりでこれから参りますが、いかがです。
  140. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのような事実は、全くございません。
  141. 田中武夫

    田中(武)委員 それは肯定はできぬわな。肯定はできぬけれども、それに近いようなことはあったのじゃないですか。(中曽根国務大臣「全然ない」と呼ぶ)そうですか。それはそうだ。実力大臣にきずがつきますからね、そういうことを言ったとすれば。それじゃ、この点はこの程度にします。  次は、いまの大きな問題の一つです。いろいろと私も用意をしました。しかし、すでに午前中の公明党の山田君の質問でも、この点をだいぶやられたようですが、したがって、できるだけ重なったところは省略していきたいとは思っております。  この問題に対して、四十六年のカルテルについては審判進行中である、あるいは告発を受けたのは、もうすでに検察庁へ移っておるというような問題をも含めまして、このことについてそれぞれの意見が違っておる。私は、公正取引委員会と行政府の意見が違うのは当然だと思いますが、まず、公正取引委員長は、私もそういう意見ですが、法的根拠のない行政指導によるカルテルは、独禁法の適用がある。当然です。その姿勢はくずさないでおってもらいたいと思います。通産省は、いわゆる行政指導によるのはカルテルではない、独禁法に触れるような行政指導はしていない、こういう態度です。違っておればお答え願いますが、二回にわたる石連会長の密田君の参考人としての意見のここにおける開陳、質問、繰り返して浮き彫りになっておるのも、問題はこの点なんですよ。取り消したとか、あやまったとか、いや、それはどうだったとかいうことは、まさにこの点にあるわけなんです。  ことに私が不愉快に感ずるのは、最高検というか、検察庁側の見解がすでに一部新聞に出ておるということ。それは、行政指導があれば、形式的にはカルテルであっても、可罰性はない。いわゆる行政介入によって、カルテルとしての法律上の違法が阻却せられる。とんでもないことです。しかも、何か言えば、捜査中でありますからというようなことで、ものを言わない検察庁が、そのような重要なことを、まさか記者会見で言ったのではなかろうと思いますが、そういうことがすでに新聞に出ております。  こういうことは、一体何なんです、どうなんです。私は、検事総長または次長の出席を要求いたしました。ところが、造船疑獄のときに証人として出席したような事例はあるが、そのほかは前例もなし、準司法官であるから云々ということで、出席を求むることができないというのが、与党理事諸君ないし政府側の見解のようであります。  申し上げます。検察官は、検察一体の原則といって、指揮権を持っております。裁判官の独立性とは違います。三権分立からいっての司法というのは、裁判官だけです。したがって、準司法的な権能を有すというなら、公正取引委員長も同じです。(「違う」と呼ぶ者あり)いや、違うことはない。何なら討論をやりましょうか。準司法的権能を持つことにおいては、変わりありません。違うことは、刑事訴訟法によるのと独禁法に基づくとの違いがあるということはありますが、基本的には変わらない。  ここでひとつ、国会として、今後このような場合には、検事総長をも呼び得るような手を、ともに考えるべきではなかろうか。まず、その点についてはいかがでしょうか。委員長、どうです。きょうは委員長代理ですが……。
  142. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 田中君にお答えいたします。  委員長代理といたしましては、きわめて重要な事項でございますので、与野党を通じて、理事会において真剣に協議をいたしたいと思います。
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 いまのとおり、さっきの裏話ではないが、どうせ予算が通ったらそれでしまいだということでなくて、これは国会対行政の問題として、なお引き続き理事会等で論議を詰める、このことだけは確認をいたします。よろしいか。
  144. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 承知いたしました。
  145. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、もうあらためて意見を聞くまでもないと思うのだが、いま申しました点について、通産、法務——これは法務大臣が言ったわけじゃありませんが、検察庁が言ったことは、やはり法務大臣が責任を持ってもらわなければいけない。  公正取引委員長、一口でよろしい。いろんなことを言われると、演説ぶつくせが、総理をはじめだいぶありますから演説を聞くんじゃありません。私も演説しません。一口でいいから、私の言ったことに間違いあるのかないか、確認だけいたします。
  146. 中村梅吉

    中村国務大臣 ただいま可罰性があるとかないとかということでございますが、いやしくも検察当局が、予断を持ってさようなことを言うはずは絶体ないと思います。また、私ども全然聞いておりません。それから、けさは、検察庁としまして、告発事件について、六十五カ所ほど強制捜索を行なっております。かような発動から見ましても、さようなことは絶対にあり得ないことだ、私はさように思っております。
  147. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私もあり得ないと思います。
  148. 田中武夫

    田中(武)委員 あり得ないって、あなたのほうは違うのだよ。いままでの通産省のこの問題に対する見解は、間違っていないかということです。
  149. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 簡単に言えと言われましたから、そのことだと思いました。  独禁法と行政指導との関係につきましては、けさ総理から明快に申されたとおりでございます。
  150. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 行政指導と独禁法の問題に関しましては、けさ述べたとおりでございます。  なお、検察庁の問題につきまして、私どもは検察庁におまかせいたしました以上、一切これに口を差しはさむようなことはしなくて、協力を求められれば、喜んで応ずるという態勢でございます。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 形式的にはカルテルであるが、可罰性がない、そういうカルテルはあるんですか、法制局長官。
  152. 吉國一郎

    吉國政府委員 その新聞の記事というものを私、直接存じませんので、田中委員のいまおっしゃいましたような、形式的にはカルテルであるけれども、可罰性がない——それは、まあカルテルとして、外見的には共同行為のような形態を持っているけれども、それが独禁法に反するものではないという意味で、可罰性がないという意味に理解しなければなるまいと思いますが、現実にそういうものがあるかどうか、これは私、実体のことでございますので、存じません。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 私が先日来の当委員会における質疑応答等々を聞いておりまして、一番不愉快に感じ、理解に苦しんだ点は、なぜ法律があるのに法律でやらないのか、行政指導で行なっておるかということなんです。後刻二、三の点についてこの点に触れますが、通産省が行なうところのいわゆる行政指導の根拠は、通産省設置法の三条及び四条だと思います。そこにも明確に、法律によらなければ、カッコして、政令を含むというような文句があったはずです、ここには持っておりませんけれども。しかし、もうすでに石油緊急二法、あるいはその前のいわゆる投機規制法と特にいわれておる、防止法といわれておる買い占め売り惜しみ緊急措置法等々があります。にもかかわらず、なぜ——たとえば買い占め売り惜しみ防止法を例にあげましょう。何回かここで論議せられたように、五条の法律に基づく立ち入り検査を直ちに行ない、それに基づいて四条の放出命令を出す、この措置をとっておるならば、昨年の秋から年末にかけてあのような大騒動はなかったと思います。この前にも申し上げましたが、これは国会でなく討論会だったですか、ともかく成立したのが七月、ここで赤松委員指摘を受けるまでは居眠りをしておったことは事実です。何のための緊急措置法です。また、国民生活安定緊急措置法について、あとで触れますが、すべて緊急措置法だといって、国会、すなわち国民の意思によってきめられた法律を使わずして、なぜ行政指導でやろうとするのか、その点が理解に苦しみます。いかに行政指導が介入しようとも、独禁法は厳然としてある。  したがって、総理から、もう一度政府の統一見解なるものを聞いてもよろしい。しかし、そのことはそのこととして、あとで、それを聞いてから申し上げます。総理、午前中にも読み上げられたようですが、統一見解を申してください。
  154. 吉國一郎

    吉國政府委員 価格カルテルと行政指導に関する見解として申し上げます。  第一に、価格は、本来市場における需給関係を基準として、事業者の自由な競争によって定まるべきものでございますから、事業者がカルテルによって価格操作を行なうことは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二条第六項の「不当な取引制限」に該当いたしまして、認めるべきでないことは当然でございます。  第二に、一方、最近のように、物価抑制が最大の国民的な課題となっておりますことを考慮いたしまするならば、物資所管官庁が価格抑制の観点から、価格に関する行政指導を行なうことは必要やむを得ないものと考えられまして、その根拠は各省設置法に求めることができます。たとえば通商産業省設置法第三条第二号、石油につきましては第三十六条の七第一号でございます。  第三といたしまして、ただ、価格に関する行政指導が認められるとは申しましても、指導を受けました事業者がさらに共同して価格操作を行なうことがございまするならば、先ほど一に述べましたと同様に、認めるべきでないことは言うまでもございません。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 石油製品値上げというか、この問題については、後ほど触れます。  そこで、むしろ順序を変えて、独禁法の改正とあわせて申し上げたほうがいいのではなかろうかと思うのです。  これも午前中話があったようであります。そこで、そういう点は、あるいは同じことを申し上げるかもわかりませんが、現に、公取では独禁法の改正を考えておられる。そうして、次の国会にと言っておるのですが、そういうことでなく、この国会にお出しなさい。そうすれば、われわれは直ちに賛成をします。——ちょっと待ってください。社会党では、すでに独禁法改正の特別委員会を持って、社会党案をつくっております。  一口に申し上げますならば、独禁法を制定当時に戻せ、あるいは二十四年、二十八年の改正前に戻せ、こういうことです。なお、二、三の点を申し上げますならば、カルテルをかりに破棄さしても、高値は残る、したがって、物価引き下げ命令が、カルテル破棄と同時に出せるような改正を行なう。時間の関係で理由はあまり申しません。それから巨大企業に対しては、いわゆる今日の一番の悪い原因、悪徳商法の中心は、寡占状態が多く存在しておる、あらゆる面において寡占状態があるという点です。したがって、この寡占体制をなくし、自由な競争が、公正な取引ができるように、巨大企業に対して、公正な取引確保のために企業の分轄の命令が出せるようにする。さらに、商社等がもうけ過ぎたり、脱税をしたり、その金を隠すのに、株式、いわゆる株を保有いたしております。ところが、現独禁法では、金融機関に対しては制限があります。だが、商社その他に対してはその制限がない。したがって、商社等にも、金融機関と同様、株式保有の制限を行なう。九条の持株会社は禁止するという規定があるが、これは株式会社にとどまっております。したがって、先日、当委員会において問題となった出光の松寿会、これは形式は東京都の許可を得た財団法人であります。社団であろうが財団であろうが、その形式のいかんにかかわらず、その機能の大部分が持ち株会社と同じ機能を行なっておるものに対しては、これを禁止できるような措置をとる。さらに、一般犯罪に対しては、何びとといえども、刑事訴訟法においてこれを告発することができることになっておる。独禁法違反に対しましても、消費者をはじめ、一般国民が独禁法違反の行為ありと見た場合には、告発できるような道を開く。まだ相当持っております。こういう資料等も持っております。制定当時、二十四年改正法、二十八年の改正法、その他持っておりますが、もう理屈は申しません。  私の言ったようなことを入れた独禁法改正を出しなさい。公正取引委員長、いかがですか。そうしないと、いま政府が統一見解を述べたが、あなたはそういうことにはこだわらないと思いますが、いわゆる公正取引委員会の独立性を害される、あるいは独禁法がゆがめられてくることをおそれるわけであります。したがって、改正法とともに、政府の行政解釈が入るような道を防ぎ、入らないようにすることが必要だと思うのです。いかがです。
  156. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま田中さんの述べられました幾つかの条項、これはその大部分につきまして、私どものほうですでに検討を予定しておるものでございます。  しかし、ではこの要綱の全部がさっそく取り上げられるかといいますと、これはたいへんむずかしい問題がございまして、すでに私どもが予定しているものにつきましても、法律技術上、たいへんむずかしい面がある。ですから、今国会に間に合わせろというふうなことは、いかに何でもこれは無理な相談であろうと思います。  それから、たとえば告発というような問題について、一般人に告発権を与えたらたいへんなことになります。その辺は、法律に詳しい田中さんはよく承知で言っておられると思いますが、私どものほうが告発したものにつきましても、検察庁はきわめて慎重に——しかし、きょう私どもの予期したといっては変だけれども、立ち上がって強制捜査に踏み切ってくださいましたので、そういう点では、非常に私どもこれの結果に期待しておりますが、だれでもが告発できるというふうな点とか、それから、そのほかこまかい要綱の中には、部分的に私どもがちょっといかがかなと首をかしげる点がございます。  この際、くだらない陳情みたいになりますけれども、公取を強化する。それで、いまの事務局を、事務所の部長のようなもの、非常に格の低いものになっているものを、局に昇格させるとかいうふうな点については、私どももぜひそうしなければ、公取の権威にもかかわるし、職員が発奮して働くのに役に立ちますから、そういう点はやりたいと思いますが、あと巨大企業の分割という点は、巨大企業だから直ちに分割するというわけにはいきません。それは寡占といいますか、独占にひとしいような状態の場合ということでございますから、全体としては、これらの、あるいは公明党の案もそうでございますが、私どもが要望しているものよりも苦干幅広く、強くなっているというふうな感じを申し上げておきます。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどの政府統一見解というか、法制局長官がお読みになった点でも触れられておりましたが、通産大臣、あなたのほうでやるいわゆる行政指導というか、これは設置法に基づくものである。しかし、三条、四条、何条と、こういうことで——四条は触れられなかったか、法律によらなければ、ということがちゃんと明記してあるのですね。そういうことがあるのに、行政指導によって、法のワクを越えてまでなぜ通産省の権限をふるおうとせられるのか。そんなことはないとおっしゃられるでしょうが、あとからまた触れますけれども、いかがでしょう。
  158. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通商産業省設置法第三条第二号等に、たしか物資の流通、調整云々ということばがありまして、その条文等に基づいて行政指導を行なっているわけであります。  御存じのように、立法権、司法権、行政権、国に三権がございますが、行政権は内閣に属するとあって、いわゆる行政行為というものは、内閣が中心になって行なわれるようになっております。その行政行為の中には、たとえば中小企業のめんどうを見るとか、あるいは国際経済関係を処理するとか、いろいろ事実上の行為も含めてあるわけでございます。その中には、経済が非常に微妙で複雑で、であるがゆえに、法律を硬直的に直ちに使用するのは、いいのもあるし、あるいは悪いのもある。そういうのは行政庁の認定によって、裁量によって行なえる分野があると思うのです。それがいわゆる行政行為、行政官庁の分野であると私たちは思っております。  そういう面からいたしまして、たとえば、すべて法律を使う、標準価格にすぐ移行してやるというような形になった場合には、それが非常に硬直性を持っているがゆえに、情勢によっては、品物が出てこなくなって、店頭から姿を消すということもありますし、あるいはさらに、その標準価格自体が即座にきめることが行政上むずかしい、適当でないという場合があります。   〔発言する者あり〕
  159. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 御静粛に願います。
  160. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たとえば原油価格がまだ不安定であるとか、あるいは、仮払いの価格になっているとか、そういう場合もございます。そういうような場合に、とりあえず行政指導という形によってその価格のガイドラインを守らせる、そうして、それが安定してきた場合にこれを標準価格に移行していく、そういうことは、行政行為としても私は考えられる行為ではないかと思うのです。これは灯油あるいはLPGの場合にそういうことをやりました。初めにやはり行政指導価格でやりまして、それから標準価格に移行したわけであります。そういうことは、いまの場合といえども、また考えられるわけでございます。石油の問題のみならず、ほかの問題についても、将来考えられるだろうと思うのであります。  そういう行政権としての裁量の範囲内における分野を全く認めないという形になると、行政行為自体が萎縮して、機能を発揮できなくなる、そういうように私たちは考えます。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 だいぶ飛躍した答弁だと思うのです。  それはそれとして、たまたま石油製品値上げ問題が出ましたので、この点に入っていきたいと思います。  この石油製品値上げの問題について、総理にまかしてくれ、あるいは総理は、十五日ごろにきめる、こういうようにおっしゃっておる。これはあくまでも行政的な措置できめるということ、そういう場合は、あえて申します。これは業界主導型の何らかの形によるカルテルです、行政指導価格をきめたとしてもですね。まずそのことを申し上げます。なぜかというと、結局は事前届け出制をとる、行政指導価格凍結というか、あるいは、統制ということばは強いかもわかりませんが、やるということは、結局カルテルになる、先ほど言ったとおりであります。  だが、すでに申しましたように国民生活安定法には、標準価格を法律できめるようになっておる。なぜそれでやらないのか。しかも、いま申しましたように、緊急立法としてつくったわけであります。行政でやるなら法律は要りません。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)そうでしょう。これは結局は、いまうしろで発言がありましたように、立法府と行政府の問題であります。やいのやいのといって法律をつくっておりながら、なぜその法律を使わないのか。その点が、われわれとしては一番理解に苦しむと同時に、国民の側からいっても、たいへん不安というか不愉快というか、疑念を持っておる点であります。  総理、この件について、総理の見解を承ります。
  162. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほどもお答えをいたしましたが、国民生活安定法がすでに成立施行されておりますので、この法律で指定をすれば、法律の目的どおり国民生活安定に資するということは、そのとおりでございます。  もう一つは、行政指導ということで今度の石油価格をきめたい、こう言っておるのでございますが、これはどういうことかと申し上げますと、いま通産大臣が述べましたとおり、まだ、石油価格そのものに対して、法律で定める、いわゆる国民生活安定法による指定物資として明確な規定をして指定をするには、いろいろな不確定要素というものがございます。国際的な情勢その他、いろいろなものがございますので、現在の段階においては、行政指導で行なうということの方針をきめておるわけであります。  この違法性ということについて焦点を合わされて御論議があるわけでございますが、これは国民生活安定法で指定物資として指定をするということになれば、法律的に全く問題はありません。  この法律があるにもかかわらず、行政指導でやれるのかやれないのかということでございますが、これは私は、やり得るということは、もう当然のことだと考えております。これは、いままでの国会の御論議を全部見てもわかるとおり、行政府国民生活安定のために行政権の発動をなぜ早くやらぬのかという、もう全部がそういう方向で国会では御論議いただいておるのでございますから、法律は、三権のもとで行政権を発動しなければならぬということは当然でございます。ただ、法律で標準価格を指定をすれば、これは法律的拘束力を持つことは言うまでもありません。ただ、行政権で行なう場合には、この国民生活安定法で指定物資として指定をされるほど強制力を持たないということは、これは事実であります。そういう違いはございます。ございますが、しかし、石油そのものを、全部指定物資として国民生活安定法による特定物資に指定をするということの前に、行政権限の発動によって、指導価格によってこれを守らせるということも、私は、現事態における石油というものに対しての政府の行政権発動がより効率的であるということを考えているわけです。  なぜかと申しますと、石油だけではなく、すぐ次に付随するものもあるわけです。石油が上がれば、すぐ電力も上がる。そうすると、石油を、少なくとも国民生活安定法によって特定物資に指定して、価格を明確にきめれば、自動的に電力料金の算定ということを当然なさなければならぬわけであります。しかし私たちは、石油も一万一千円上げるといっても、いままで石油がどのくらい便乗値上げをしてもうけたのか、過去に累積蓄積が幾らあるのか、また、これから政府があらゆる行政を付加することによって、どの程度で押えられるのかという行政的な柔軟性をもって、少なくとも一万一千円上げるというつもりじゃないのです。そうではなく、それよりも低く押えよう それに付随して起こり得るであろう電力の料金についても、電力会社の内容を全部精査をして、国民生活の安定、物価抑制ということに貢献できるように、あらゆる角度から押えていこうという立場に立っておるだけに、国民生活安定法による特定物資として指定するよりも、現段階においては、行政指導をやるほうが、より効率的である、こう判断をしておるのであります。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうような、あるいは生産等々について行政が介入したときは、これは不況カルテル的な生産調整の問題やら、それは結局高値につながるんです。行政が介入することによって、物の値段を下げた例がありますか。いまここで私があえて言うのは、政府の権威というか、そういうことで業界ににらみをきかすという点で、まず行政権でやる、そのあとで、必要ならば安定法四条の発動をする、二段がまえですよ。したがって、もう一度値上げがあると解釈するんです。違いますか。首を振っておるが、そうじゃないんですか。あなた、それだったらぼくと討論やりますか。どうなんです。法律をつくっておりながら、やらない。  先ほど来言っておる。これはもう明らかになりましたから申しませんが売惜しみ、置占め防止法、これだって、三条でやるんだったら法律要らないのですよ。五条でやって四条を発動するところに、法律の価値があったわけなんです。それを、あのような狂乱の時期に使わなかったということは、怠慢です。これはまさに、こういうことばはあまり使いたくないのですが、三権に関する基本的な問題であります。言いかえるならば、国会の立法したものに対する行政の挑戦というか、サボタージュというか、あるいは行政と業界との癒着をより強めるためのものである、こう言わざるを得ません。  どうです、総理、長々としゃべって、時間来るまでやりましょうか。いかがです。
  164. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法律の運用に対しては、柔軟、妥当な運用をしなければならぬことは申すまでもないことであります。法律をつくっていただいたということは、それなりの理由があって法律を御審議いただき、立法化したわけでございます。この運用は慎重でなければならないし、より的確に行なわなければならない。法律の運用も、硬直的な運用をなすべきでないことは申すまでもありません。  ですから、もう言うまでもなく、あなたは法律家ですから、そういう意味では、私よりもはるかにうんのうをきわめておられますから、私はあえて釈迦に説法的なことを申し上げたくありませんが、法律の運用というのは、これは、あるから一番高い法律をいつでも適用しなければならぬことはありません。これはもう事態に適応して、柔軟に効率的な運用をはかるということは当然なことでございます。そうでなければ、とにかく起訴猶予も何もないわけです。これは法律を適用するといっても、起訴猶予もあるし、おしかりもあるし、以後やるなということもあるのだし、とにかく……(田中(武)委員「刑法まで論議を進めるのですか」と呼ぶ)あなたとそういうことを議論しようというのじゃありませんが、行政府の長として、法律の運用を問われておるから、問われて答えていわくと、こういうことでありますので、そこらを理解してもらわなければ話にならないじゃありませんか。国会の論争というのは、そういうものだと思いますよ。  そういう意味で、いわゆる国民生活安定法という法律をつくっていただきましたよ。これはそれなりの理由があってつくっていただいたのですが、そうではなく、いろいろな流動的過程にあるものに対しては、他の法律の運用も行ない、行政権の発動によって調整も行なうということは、行政上、当然あるべきことだ、こう理解はしていただけると思うのです。
  165. 田中武夫

    田中(武)委員 ここでいろいろとほかの面にわたってまで論争しようとは思いませんよ。しかし、何といったって、私の言っていることは間違いないと思うのです。法律家といっておだてたって、私は国会議員の一人としてここでやっておるのです。立法府の一人として、立法権に対する行政との関係をやっておるのです。これは与野党を通じての問題であります。この点は、なお詰める必要があります。これは、当委員会あるいは国会全体として法律をつくっておりながら、この法律を使わずに、行政指導でやる。何のための法律か。(田中内閣総理大臣「使っておるのですよ」と呼ぶ)使っていないじゃないですか。それなら廃止法でも出しなさい。  物価に入りましたから、ついでに物価の面で一、二伺っておきますが、この物価の問題に関連いたしまして、いわゆる公共事業とか公益事業が法的に義務づけられておるもの、たとえば私鉄料金、電力、ガス等の料金は、法律的に認可制をとっておる。これらの国民生活へのサービス事業は、今回の石油値上げをもろにかぶるところが多いわけです。  これら、公益ないし公共料金については、どのように考えておられるのか。これも、片や法律によってきめる、それを行政指導でやろうとするのかどうか、そういう問題が残ります。さらに、国鉄運賃と消費者米価、これは半年据え置くことになっておりますが、一方は法律、一方は行政措置です。これを半年後どうするのです。むずかしく言うなら、この条件というか、六カ月という期間は、解除条件なのかあるいは停止条件なのか。もし解除条件とするならば、期限が来ると、法律できめられた国鉄運賃はそのまま発動するわけなんですね。その辺のところはどうなんです。
  166. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国鉄運賃は法律事項でございますから、法律では四月一日から国鉄運賃の改定は認めておるわけでございますが、しかし、物価情勢もございますので、これを六カ月間延期するということであります。延期するには、政府の行政的な権限だけではできませんので、国会に法改正案を提出、御審議をいただいておるわけでございます。この法律が通過をするということを前提にして、六カ月間延長ということでありますので、六カ月後に、すなわち十月一日からは、運賃は法律どおり改定が行なわれるということでございます。ただ、この法律の審議中に、もう六カ月間延長せよという議決があれば、それは議決に従わざるを得ませんが、いずれにしても、政府が提案しているのは、六カ月間実施を延期するということでございますので、これは六カ月後には自動的に国会の意思決定どおり、十月一日から運賃は、四月一日に改定すべかりし金額に改定が行なわれるということは、申すまでもありません。  それから米価は、四月一日からということであっても、これも延ばしておるわけでございますが、これは、答申を受け、これに対して政府は決定をしたわけでございます。しかし、これには六カ月間延長するだけの予算措置が講じられておりますので、この予算が通過をしなかったなら、それは今度上げなくちゃならぬかもしれませんが、これはもう、予算を通過させていただければ、六カ月問は上げないということになります。  他の公益料金、公共料金等については、いま審議会で議論をしてもらっておるものもございますし、これからどうしても上げなければならないといわれておる電力料金等ございます。ガス料金も同じでございますが、これらに対しては、答申を待ち、慎重に審議をしてまいりたい、こう考えます。
  167. 田中武夫

    田中(武)委員 まだまだ論議をいたしたいのでありますが、たくさんありますので……。  まだ詰まっていない一つに、いわゆる各企業から役所に出向しておる社員の……。
  168. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国鉄運賃は三月三十一日であります。四月一日でなかったので、これは訂正しておきます。
  169. 田中武夫

    田中(武)委員 各企業から役所に出向しているところの、いわゆる天上がりというのか、この件につきましてまだ論議が十分詰まっていないと思います。  そこで、まとめて意見を申し上げますが、去る二月七日に、まず楢崎委員が取り上げてまいったのであります。これは言うならば、産業界と政府との癒着の大きなパイプになっておる。言いかえるならば、企業側からの役所に対する、行政に対する、使いたくはないが、スパイの役目を果たしておるかもしれない。どろぼうの子分に十手を預けたようなものです。楢崎質問に対して、廃止とは逆に、公務員の非常勤として制度を変えると言っておるのです。ところが、昨年の六月、参議院のやはり社会党の上田哲君の質問に対し、当時の小坂経済企画庁長官は、すみやかに廃止する方向で検討しておると、全く逆なことを言っておるのです。どうですか、経済企画庁長官、人は減らすが、制度化していく、全く逆なんです。それと同時に、そういうような非常勤公務員制をもしとるならば、その社員は二重国籍というか、当然、本来の企業との縁を切ってくるのかこないのかという問題もあります。と同時に、一面においては、定員法の関係等も出てくるのではなかろうか、こういうようにも考えられます。  この制度について、政治というよりか、むしろ行政と企業の癒着のパイプであると国民及びわれわれは見ております。どうやるのか、総理の見解を重ねて明確にしていただきたいと存じます。
  170. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本件については、間々両院において御質疑があるわけでございますが、この問題に対して小坂前経済企画庁長官答弁をしたことは、指摘をされましたから承知をいたしております。  しかし、これを直ちに廃止するということがいいのかどうかという問題に対しては、議論の存するところでございます。これは経緯があることは、あなたも御存じのとおり、経済安定本部というのができました当時からの問題でございまして、これはただこれだけの問題ではなく、地方事務官制度との問題、それから地方庁から民間に対する出向、民間から地方庁に対する出向、また地方公共団体と中央との人事の交流、それから各官庁におる人たちの公社、公団、特殊会社への出向、これらの問題がみなからみ合っておる歴史的な重さを持つ制度なのでございます。  それで、あなたもそういうつもりでおっしゃっておるのじゃないのですが、どうも国民との間に——行政も立法もそうでございますし、司法もそうでございますが、それは明確な区分があり、秘密を守らなければならないということは事実でありますが、どうも国民がどろぼうであるというようなそんな感じ……(発言する者あり)まあまあ、そうじゃなく、いろいろ国民との間に、非常にテンポの速い広範な行政を行なう場合に、民間の英知を取り入れなければいかぬ、民間との間に人事の交流を行なわなければならないというのは、これは社会的、国際的な一つの方向でもございます。ただそのときに、公務員制度や公務員の規律保持、身分上の問題、それから秘密保持という問題に対して行政がゆがめられないようにしなければならないというのが、制度上指摘をされておる問題であります。  だから、本件に対しては、歴史的に長い経緯を持つものでありますので、慎重に検討して結論を出したいと思いますと、そういうのが原則であり、しかもその間において、身分もおかしいじゃないか、出向させておった月給も払ってない、また、公務員としての服務規律も全くゆるやかである、こんなことはおかしい、そういうところからくる弊害のほうが大きいという御指摘でありますから、今度予算に計上して、身分も給与も国で見るようにいたしたいと思いますと、こう政府一つずつものを解決しようということになっておるわけでございます。  ただ、あなたが言われるのは、やはり公務員制度というものは厳格にすべきであって、民間との交流は一切遮断する、それをやるならば、これにちゃんと国家公務員、地方公務員としての身分を確立して採用すべきである、そうすれば直ちに公務員法の適用を受ける、そういうことに明確にすべきだという御議論だと思いますが、そういう問題については、毎国会議論をしながら結論の出ないのは、やはりそれなりに理由があり、必要がある……(「必要ない」と呼ぶ者あり)いや、それは世界的な趨勢じゃありませんか。日本だけが例外であるというような議論……(田中(武)委員「だれに答えている」と呼ぶ)いや失礼。そういう議論だけが通るわけはありませんよ。そうでなければ政府はやめますよ、こんなこと毎年毎年あなたに質疑をされておって。必要なければやめちゃうのですよ。そうでなく、やめないというのには、国際的な情勢や、いろいろなメリットがあるからこそ今日にきておるので、マイナスだけあって、国民の生活のために無用の長物であれば、これは直ちにでもやめます。そう言えないところに問題があり、それなりのメリットがあるんだということで、もうしばらく、かすに時をもってしていただきたい。
  171. 田中武夫

    田中(武)委員 先日来の総理答弁を聞いておると、いわゆる民主主義、国民の意見を聞く、けっこうです。それでなくてはいけないのですが、その国民は、何かといえば、企業である、業界である。そういう意味であなた言っておられる。これだけは指摘をしておきます。  やめられない原因にもいろいろあるでしょう。われわれは、やめられない原因は、癒着の関係だと見ます。この点について議論をやっておると、切りがございません。首を振っておるが、どうなんだ。あなた聞いておるのか、何で首振っておるの。
  172. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ほんとうにやめたほうがいいなら、やめたほうがいいと思うのだが、どうなんだ、こういっても、非常にテンポの速い情勢でありまして、民間との——主権在民である新憲法の精神を説かれたときから、これは占領軍メモによって始まった行為でありまして、その残滓がずっと残っておるのですが、経済安定本部をつくったころのような情勢じゃないので……(田中(武)委員「経済安定本部は何べんも聞いておる。」と呼ぶ)だって、それは事実なんですから、事実は事実。千万べん言っても、事実は事実であります。ですから、そのようにほんとうに要らないものなら、やめちゃえと私は思うのです。  ですから、これを機会に、このメリットはどういうふうなのか、これはメリットはないのか、あなたの言うように、秘密が守れないルートになっておるのか。そういうものについて、政府部内で、行管の意見も聞きながら、これはひとつ至急に結論を出します。行政監理委員会もあるんですから、そういう専門家の意見も聞いて、世界の例も全部調べて、そしてそういう意見を聞きながら、しかるべき結論出します。何か、こんなことばかり説かれていますと、政府が民間との水を流すパイプを持っているように思われて、ほんとうに心外である。こういう意味で、まじめにひとつ考えます。
  173. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、何か、いまの総理の発言に関して、行管長官としての保利さんの御意見があれば伺いたい。  と同時に、委員長に提案いたします。  行管が監察をする、けっこうです。同時に、これは国会でも大きな問題になったから、これは予算委員会という点でもけっこうですが、もっと国会として、そのパイプが、いわれるようなものであるのかないのか調査する必要があると思う。その点を委員長に提案をいたします。まず保利さんからお答え願います。
  174. 保利茂

    ○保利国務大臣 先般、楢崎委員からお取り上げになりまして、私の考え方を申し上げたわけでございますけれども、重ねて申し上げたいと思います。  総理が御答弁になっておられますから、その線で行政府としては対処していかなければならぬと思いますけれども、やはり行政運営の要諦は、公正を保ち、中立性を確保してまいるということでなければならぬ、これはもう当然のことです。  そういう上からいきますと、あんまり公正中立だと言っていると、また硬直、保身に徹すると、非難も出てまいりますから、そこで、絶えず民間の知識、経験、そういうものも行政府の内部に導入するということも、また必要である。そこで人事の交流という必要もあろうかと思いますけれども、この問題は、いま総理が言われるように、安定本部創設以来の長いいきさつから、わずかの人でございます。そうたくさんの人じゃありません。現在も百十九人、新しい年度になれば百七人。これは予算措置も講じて、そして国家公務員として適用していく、非常勤職員として任用してまいる、そして国家公務員としての規律のもとにやっていただくということになっております。だんだん、国会の論議もございますし、そのことが、行政と業界の癒着だというように非常に大きな誤解を招く、そんな誤解を招いてまでこれを残しておかなきゃならぬというふうには、私は考えていない。したがって、各省庁においてそれだけの方がどうしても要る、定員のワク内において必要であるということであれば、これはまた十分行政管理庁としても御相談に乗っていかなきゃならぬのか。要は、今回の措置は、総理府人事局を中心に、人事院と行政管理庁、三者で御相談をして、国会論議のあとにかんがみて、こういう措置をとらしていただこうというのが、百七人の扱いをいたしておる次第でございます。できれば、こういうことは早くなくしたほうが私はいいんじゃないか、そういうふうに考えております。
  175. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの件、それから先ほどのカルテルと行政権の介入の問題、これ、すべて立法府と行政府との関係の問題なんです。民主主義の根底である三権に関する件でありますので、国会においても、真剣にこの点を検討するような方策を、これは予算委員会だけの権限ではないとは思いますが、ひとつお願いします。  と同時に、いまの出向社員の件について、各省別の一応の資料はいただきました。それがどんな仕事をしておるのか、各省全部、一人でもそういうのを受け入れておるところは——私はこの質問が終わるまでといったような無理は申しません。(「通産省」と呼ぶ者あり)通産省もあれば経済企画庁もある。全部そういうやつを予算委員会理事会へまず提出していただく、それからどうするかを検討したいと思います。いかがでしょう。
  176. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 お答えいたします。  資料要求につきましては、理事会においてよく御相談をいたしたいと思います。
  177. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、出すか出さぬか聞いてください。出てから相談する。
  178. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 それでは、申し上げたことをちょっと手直しをいたしますが、各省に対して提出するように求めたいと思います。  なお、田中委員の先ほどの御提案は、本委員会だけのものかどうか、いろいろ問題もございますから、これは理事会で御相談をいたしたい、このようにお答え申し上げます。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 田中武夫

    田中(武)委員 次に、一つの現代的な問題として、いわゆるスト権の問題があります。  スト権奪還といわれておるが、本年の春闘は、国民春闘として、幅広い階層と問題を掲げておる。その解決のために、労働界と政府とのいわゆるトップ会談なるものも行なわれております。このスト権の問題に関しましては、すでにILOからの勧告があります。したがって、政府は、これを解決せねばならない時点に立たされておるわけなんです。ところが、公務員制度審議会ですかで、これを論議するというかっこうで、いわばこれを隠れみのとしておる。こういう問題も含めて、いま政府代表とそれから労働界代表が話し合いというか、やっております。  これは、私は何も小坂総務長官が云々というわけではございませんが、総理みずからが窓口になる、あるいはそれは、総理は忙しいから官房長官がかわって窓口になって、そして関係閣僚を網羅し、いろいろな問題を直ちに話し合い、解決できるような、いわゆる政府内の体制固めを考えてもらいたい。もうすでにできておりますが、なお強化するというか、受けざらを考えていただきたい。そのことについて、御意見を伺いたいと存じます。さらにまた、二十六日に交通ストがあるかと聞いております。そういう問題をも合わせて、ひとつ早くそういった体制固めを、政府側が交渉する体制を強化してもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  180. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答えします。  政府における窓口というものは、一応私が主宰いたしております連絡協議会、各省次官をもって構成する連絡協議会を受けざらにしたいと考えております。なお必要があるならば、関係閣僚協議会を開いて対処していくという方向で進みたいと思っております。
  181. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、どうです。
  182. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 労働関係問題については、労働省、労働大臣が窓口、それから公務員制度に関しては総務長官が窓口ということは、これは法制上きまっておるわけでございます。そして、今度は総務長官が内閣の中心になって、文部省、郵政省また厚生省、運輸省というような各般の問題もありますので、そういう会議を主宰してもらうようにも依頼をしてあるわけでございます。官房長官は政治的な立場でたいへん多忙でございますが、しかし官房長官も、必要があれば、随時会議出席をするということになっておりますし、閣議でこれらの問題に対しては随時報告を徴しながら、閣議全体で考えていこうということになっておるわけでございますので、差し迫った問題解決のためにも、内閣をあげて取り組みたい、こう考えております。
  183. 田中武夫

    田中(武)委員 もうすでに三分の二以上は、いわゆる積み残しの問題で費やしました。次にまいります。  総理は、本国会冒頭の施政方針演説で「正直者がばかをみることのないよう、社会的公正を確保し、」云々と言われておる。また福田大蔵大臣は財政演説において、物と金の支配する時代は過去のものにしたい、公正と連帯の中で、生きる喜びを感ずるような社会を、ということを言っておられます。  そこで、総理福田大臣、社会的公正というのは、どのように把握をしておられ、どのように理解をし、そしてその実現のために具体的にどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。総理、ここであなたの演説を聞くつもりはないのですから、的確に、要点だけをお願いいたします。
  184. 福田赳夫

    福田国務大臣 社会的公正というのは、これはずいぶん使われることばでございますが、使う人によっていろいろ意味があるのだろうと思います。  私が言う場合におきましては、社会的弱者を含めまして、国民の皆さんが国家繁栄の成果をこぞって享受し得ること、そういうことであります。  それじゃ、そのためには何をすればいいかというお尋ねでありますが、つまり、そのためには政治を公正にやる、こういうことだろうと思います。つまり世の中は、ほうっておきますれば、優勝劣敗というか弱肉強食というか、そういう事態になります。そこで、政治がその中へ割って入りまして、弱きをささえる、強きを戒める、そういうことだろうと思うのです。社会的公正並びにそれを実現する方途いかんというお尋ねに対する私の答えは、そういうことでございます。
  185. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 演説をしないで、簡単に答えろということになりますと、一言。私もうらはらに申し上げておるように、日本人であり、日本の国土に生まれ育ち、やがて死ななければならない、この日本人全体が、この国に生まれたことを真に喜び合えるような社会構造をつくりたい、そういう政治を前進せしめたい、そういう施策を強化していきたい、この願いが四十九年度予算であり、これからいろいろ御審議をいただいていく法律案その他もその一環である、こう理解願いたい。
  186. 田中武夫

    田中(武)委員 あとで申し上げようと思っておったのですが、この予算は弱者切り捨ての予算なんだ。  そこで私は、きわめて常識的に、公正な社会とは、富と所得、また自由などの基本的な社会財産というか、社会財の分配が公平に行なわれるような社会、言いかえるならば、弱者の利益がどのようにして守られるかという問題であろうと思います。ことに、石油危機以来のいわゆる物価狂乱、これを千載一遇のチャンスとして値上げややみカルテル、買い占め、売り惜しみ等々の不当な利得を得たもの、いわゆる悪徳商法が横行したことは、先日来の物価集中審議等々を含めて明白になっております。中には、もうけた金を海外の支店とかなんとかを利用して、脱税をはかっておるもの、いろいろあります。したがって、経済的強者と経済的な弱者との、これは大企業、中小企業、労働者、消費者、いろいろありますが、格差はますます拡大をした、こう見るべきであろうと思います。したがって、この格差をどうして埋めていくのか。  そこで、いま一つの論議となっておる不当利得の吸い上げというか、これをやらすということ、あるいはやるということが一つの問題だと思うのです。先日の参考人の中には、もうけた、また不当とは言わなかったが、利益は還元いたしますと言ったのが二、三おります。しかし、これはせいぜい系列の小売り商までくらいだと思うのです。実際損をした消費者等々、個々にはどうしてこれを還元するのかという問題が残ります。  先ほど言ったように、総理とは観点が違いますが、首を振るだろうと思いますけれども、来年度の予算は、まさに弱者切り捨て、福祉軽視の予算であると断定いたします。(「それは違う」と呼ぶ者あり)それは意見の違うのは当然です。同じだったら自民党に入ります。また、どうして物価を引き下げるかということも、まだ的確な答えが出ていない。端的にいって、もうけたやつから取って、経済的に強いあるいは不法な利益を得たものから取り上げて、これを社会に、あるいは経済的に弱い層の人々に返すというか、これが政治だと思います。  そこで、不当利得の吸い上げの問題については、各党ともにいろんな案を持っております。いまここでこれを論議しようとは思っておりません。社会党は、いわゆる法人税の体系という点で、臨時利得税をかけるというような考え方を持っておる。各野党それぞれ長短あろうと思いますが、案を持っておられます。自民党もようやく先日きめられたようでありますが、これは新聞記事を見る限りにおいては、相当当初の原案から後退をしておるというようにいわれております。問題は、やる気が政府にあるのかないのかということです。もはやこのことは、いわゆる不当利得の吸い上げをし、痛められた人たちにどうして還元するのかということは、論議の段階ではございません。実行の段階です。最近、わかったわかったの、失礼ですが角さんが、困った困ったの角さんに変わったというような——一国の総理に角さんなんて失礼ですが、お許しを願いますが、そういうようなことが巷間いわれております。庶民宰相としてはなばなしく登場をした、登壇をしたといいますか、おどり出た田中角榮総理大臣、いまこそ、あなたの庶民的感覚によって、弱い層にいかなる善政を施すか、この不当利得を吸い上げて、そしてこれを公平に分配するという点についての決意と、そうして具体的案があるならば具体的案、それの実行を要請します。いかがです。
  187. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四十九年度予算の中にもございますとおり、弱い人たち、日の当たらない人たちに対しては、社会保障の拡大、二兆円減税、さまざまなことをやっているわけでございます。それだけではなく、今度の値上がりその他に対して一体どうするのかということでございますから、ですから、最高に計算をしても千百億、最低に計算すれば二、三百億といわれておる石油企業でも、もうけたもののすべてを吐き出してもまだ足らないというような状態でも、まだ石油はいつ上げるかわからないと言っておるわけでございますから……(発言する者あり)いや、そういうことが、ちゃんと対策なんです。あなたは聞いているんですから、これはこちらの対策を述べているので、あなたの言うとおりというと、私は社会党へ入らなければいかぬということになるんですから。(発言する者あり)いや、それは御冗談でしょう。そうはいかぬでしょう。ですから、やっぱりそれはあなたの発言に私はここで耳を傾けているのですから、飛行機を心配しながら。世の中にはいろいろなことが起こるのです。幾ら政府がやっても、飛行機を乗っ取る人もあるし、いろいろあるのです。そういう事態に対処して的確に行政をやらなければいかぬ、国民生活を守らなければいかぬ。ここらが行政府政府の責任だと思います。そういう責任の重さを考えながらやっております。  ですから、確かになまぬるいことがあった。とにかくそういうことに対して的確性を欠いた。時間的にタイミングを失した。ですから、今度は失しないように、もう一日八十億円ずつ損をしているといっても、これは上げませんよ、こういうことをやっているわけです。それだけではなく、いままでのものを、どれだけ一体便乗値上げがあったのか、党も政府も毎日のようにこれを追跡しておるわけです。そしてこれを全部吐き出して、なお累積の蓄積があれば、それも吐き出してもらえるような価格をきめよう、こう言っているのでございますから、これは少なくとも政府が真摯な態度で、国民の生活擁護のために全力投球を行なっておるのだ、これはひとつ考えていただきたいと思うのです。少しまだ効果が上がるのがおそいなというぐらいはいいですけれども、何もしていないのだという考えでは、ほんとうに叱咤激励にはなりませんから、どうぞひとつ、これは大いに応援をしていただきながら、真に政府が企図しておるような行政効果があがるように、ひとつお願いしたい。
  188. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、自民党案も臨時利得税といいますか、ともかくも税金の形式をとっております。ともかくも、持てるものから取って、ことに、不当な不法なもうけ方をしたものからごっそり取って、それを弱者というか、経済的に弱い層に持っていく、これが政治。したがって、社会福祉制度等、あるいは公的年金等について、これは根本的に考え直す必要がある。抜本的な施策をとる必要がある。そういう点から、ひとつ長期的な福祉の関係、あるいは社会保障の関係を検討するような方法をおとりになってはどうか。わずか何%とか、月何千円上げたからといって事が済むものではございません。そういうようなことをあわせて提案をいたします。厚生大臣でなくて、総理から答弁をいただきます。
  189. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御質問に答えて間々申し上げておりますとおり、経済社会基本計画が策定をせられました過程に、この中における社会保障のウエートを明らかにしておるわけでございます。しかし、その当時と違って、年率九%というような恒常的な国民生産の拡大は企図できないかもしれないという情勢にはなりましたが、しかし、その中で計画をしておる社会保障という面については、たとえ国民生産が減ってもこれを縮めないように、社会福祉の長期計画を立てて、これだけは実行したいという熱意をもって、いませっかく作業中でございます、こう申し上げておるわけでございます。
  190. 田中武夫

    田中(武)委員 だんだん時間が迫ってまいりましたので、はしょって申し上げます。  四十八年度の、いわゆる本年度の補正予算については、昨年十二月に審議をいたしました。成立を見ました。しかし、その後あなたが言われるような急激な変化が起こっております。歳入の面においても、当時予想したよりか、なお二千億円に近い税のいわゆる自然増収があるといわれております。数字はさだかでございませんが、また、一方においては、労働省の統計なんか、もう読みませんが、昨年度に比べて、実質賃金がマイナスになっておるということも明らかであります。また、そういう点からくるいわゆるインフレ手当、あるいは給与の問題、あるいは生活保護者に対する手当増額等々、こういうことを含めて、本年度の第二補正予算を当然考えるべきであると考えております。それとあわせて、これはここでは言えないと思いますが、ここへくれば、暫定予算を考える必要があると思うのです。この点については、まだここでは言えないだろうから、あまり深くは申しませんが、第二補正予算、暫定予算等について、どのように考えておられますか、お伺いをいたします。
  191. 福田赳夫

    福田国務大臣 昭和四十八年度の第二補正を組むか、こういうお話でございますが、いまお話しの社会的弱者ですね、それに対しましては、四十九年度において、かなり手厚い対策をとっておることは御承知のとおりでございます。いま、もう三月も十二日を経過した。もうすぐ昭和四十九年度が開かれるわけであります。そういう際でありますので、そのつなぎを一体どうするか、こういう問題もありましょうが、そういうつなぎといたしましては、過日、七百万人の社会的弱者と申しますか、そういう対策をとっておる、こういうことでございますので、すみやかに昭和四十九年度予算を成立させていただきまして、その予算を使用し得る状態に一日も早く置いていただきたい、かように考えております。  暫定予算を組むかどうかという問題につきましては、私は、その必要がないように、切に、参議院の良識に期待をいたしておる次第でございますが、参議院の良識がどういうふうになりますか、今後の事態の推移を見てその態度をきめたい、かように考えます。
  192. 田中武夫

    田中(武)委員 実は、これからが私のほんとうの勉強したところなんですが、もう時間が十五分しかなくなりました。そこで、はしょって申し上げます。  理由はいろいろ書いておりますが、一口に言って、公正な税の徴収が行なわれているのかどうか、あるいは租税特別措置法によって、その資料等も持っております。これだけ私がいろいろな資料を用意したことはほとんどないのですが、これはみな租税特別措置法における大企業に対する減税措置についての、あるいは法人税の通牒、所得税の通達、これはみんな調べておるのですが、これは別にします。こういうことを含めて、いわゆるもう一目でわかるような、国民に税金のとり方、あるいは不公正でない、公正なものである——これはいまは不公正ですが、そういう点、言いかえるならば、公正な税の徴収、国民に納得さすための租税白書といいますか、税金の白書、これを私はこれだけ持って、その内容についても、その総論、各論、あるいはどういうことを入れるのか。国税の部と地方税の部とに分けて、これは全部実は検討したわけなんです。これはたしか、四十六年かなんかに民社の竹本君がちょっと触れておられるようですが、その後、この問題はあまり問題になっておりませんので、具体的な租税白書の発行に関して、その内容に触れながら質問をするつもりであったのですが、時間の関係がありますので、そういう租税白書なるものをつくる気があるのかどうかをお伺いいたします。
  193. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、これは個人の立場で申し上げますが、どうも白書という形の政府の文書というものに、多少抵抗を感ずるのです。少しむずかし過ぎる。あれだけのものをつくるにはたいへんな精力を使わなければならぬ。そこで、もっと簡単に国政をPRしたほうがいいじゃないか、そういうふうに思うのです。  そういうような立場から、国税庁においても税のPRをする、それは大事なことでありますので、白書というようなかみしもを着たものじゃありませんけれども、たとえば私たちの税金、こういうような形において広く国民の理解を求める、またこんな厚いものじゃありませんけれども、租税教室というような形におきまして、精力的に御理解を求めておる、こういう状態でございます。  御趣旨はまことにもっともなんでありますが、しかし、白書というよりは、もっと国民にわかりやすい形で努力いたしていきたい、かように考えます。
  194. 田中武夫

    田中(武)委員 これについても議論をしたいのですが、もうあと十分、こういうことで、いままで真剣にこの委員会の運営を協議してきた一人として、あまり時間を多くとりたくはありませんので、あとはまとめて申し上げます。  その一つには、商品取引所といわゆる物価の関係、投機的なものと、それがことに穀物、食糧品でも、大豆、アズキあるいは通産省関係では繊維、ことに化繊の問題等について、私はこれは必要ない、こういう感じを持っておりますが、あの狂乱物価のときに、はたして商品取引が何らか物価安定に寄与したのか、いや、逆にいろいろな面において、私は、もうけたものやら、投機的なことでなおさら国民を困らしたと見ておるのですが、その点について。  次に、私は、企業の社会的責任ということについていろいろ論じたいと考えておりました。ここに商法とか、いろいろな法律、その中における企業の保護あるいは税金の減免等を含めて、大企業保護のための立法をこれだけ条文を用意しております。しかし、これは一々読み上げることは不可能ですが、何らかの機会にこれを発表したいと思います。  ともかく、いまや企業は、いわゆる利益追求の器ではなくて、社会的機能を果たす公器、公のものであると考えております。そういう面から企業の社会的責任をいろいろな面から伺ってまいりたいと思っておりましたが、時間がございません。  そこで、今日の状態になったのは、私は一々あげておりますが、高度成長経済から始まる経済政策の中における国際競争力とかなんとかかんとかということで、政府のとった産業経済政策あるいは大企業の保護政策、これが大企業をして増長せしめた。その結果が、今日のような大企業の経営者のいわゆるモラルの欠如、これにつながると思っております。  そこで、具体的なものとしては、私は、法務大臣、商法を改正して、その中にひとつ経営監視委員会を置く、こういう構想を持っておるのです。それは一つの条件、これは株式会社であることとか、あるいは資本金がどうだとかいうような定義を置く、そうして国民の金である財投で幾ら以上借りたもの、現に借りている表も持っておりますが、そういった企業、大企業に対しては、地域住民を代表する者とか、あるいは労働者、消費者、学識経験者等々を含めた経営監視委員会なるものを置いて、取締役会の活動をチェックするような方法考える。  もう一つは、いわゆる商法を改正し、定款の必要的記載事項の中に、その企業が社会的責任を果たすことを定款に明記せしめる、そして、この期においてどのような社会的な貢献をしたかということを総会に報告せしめる。たとえば、利益金の何%を何々福祉協会に、施設に寄付したとか、あるいは公害等の問題について、このようなことをいたしましたとかいうことを報告さす義務を負わす。  さらに、これは通産省も検討しておられるようですが、総合商社というか、商社の活動規制法をつくる。その内容についてもいろいろ提言を行ないたい、このように思っておりました。しかし、もう時間がないのでこの程度でおきますが、ひとつ、総理なり通産大臣、法務大臣から、簡単に御意見を伺います。  もう一つは、いわゆる企業の秘密と公共の福祉の関係、この点についても、いささか私見を述べて伺いたいと思う。これはいかなる場合においても、私は、憲法の十一条、十二条、十三条ですか、吉國さん、その根拠になるのは。企業側からいえば、二十二条の職業選択の自由とか、上十九条二項の財産権の項だと思うのですが、それは、いずれも公共の福祉のもとにおいては、となっておる。  こまかいことは申しませんが、そういった企業秘密と公共性の関係等々含めまして御答弁をいただいて、終わります。
  195. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 企業は、自由経済のもとに濶達な企業活動を行なうことができるということは、これはもう憲法の定めるとおり当然のことでございます。  また、個人や企業の秘密を侵してはならないということも、また当然のことでございます。しかし、これは法律の定めのない場合のことでございまして、法律の定めがある場合には当然、国民生活安定法の例をまつまでもなく、社会的要請にこたえて、法律の制約を受けることもまた当然でございます。  また、第三の問題として、企業は社会的責任を持たなければならぬことは、私人とともに例外たり得ないということは当然でございます。これは、自由が許されておるからといって、自由放任の自由というのではなく、これは社会のために裨益をし、貢献しつつ自由を享受するという私人の権利と同じように、社会活動上おのずからの限界があることもまた当然でございます。  国会でもって審議をせられた過程において、いろいろ企業のモラルの問題また便乗値上げ指摘をされる問題、遺憾な点がございます。これらは、政府行政指導を可能な限りしてまいりたいと思いますし、企業の社会的責任の自覚をまって、これは国際的にもまた国内的にもすばらしい、社会のために貢献する企業というふうに育てるべく、せいぜい努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  196. 中村梅吉

    中村国務大臣 御承知のとおり、現在商法改正案を御審議中でございますが、この内容は、企業の経理の適正化をはかることが目的でございますが、御指摘の点につきましては、今回の改正によって、純然たる第三者である会計監査人の監査によって適正を期する努力をいたしまして、その成果を見た上で、なお商法改正については今後とも検討を続けてまいりたい、かように思っています。
  197. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど御指摘がございましたように、いわゆる企業秘密については、現在の自由競争を前提といたします経済基調のもとでは、当然保護されるべきことは原則であろうと思います。  その憲法上の根拠としては、第二十二条の職業選択の自由、あるいは第二十九条の財産権の保障に求めることができると思います。また、御指摘のように、これらの保障なり自由なりも、公共の福祉によって制約されることは言うまでもないわけでございまして、公共の福祉の要請に基づいて、ある場合には公的な規制の対象として取り上げられることもありまするし、その限度において、企業の秘密として企業の内部にとどめておくことができないという場合があり得ることは、もちろんのことでございます。  具体的な公開の必要性の判断にあたっては、企業秘密を公開することに伴う公益の程度企業側の不利益の程度等を総合的に、慎重に、個々具体的な場合に判断して決すべきものであろうと思います。
  198. 田中武夫

    田中(武)委員 反論をいたしたいのですが、時間がございませんから、社会党代表としての質問は終わります。
  199. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  この際、理事の協議により、野党各党共通の問題について、あらためて田中武夫君の質疑を特に許します。田中武夫君。
  200. 田中武夫

    田中(武)委員 私の質問中に、まだ詰めが足りない、そういうことで野党、与党の理事間で話し合いができて、野党の意見をまとめたので、ここでこれを私から読め——読めというか、聞け、こういうことでありまして、若干の時間を許していただいて、今度は、野党の連帯の立場に立ちまして質問を続けることをお許し願います。  石油製品をはじめ、国民の生活に必要な諸物資の価格について、政府行政指導を行なう、それに基づいて行なわれたカルテルは、独禁法のやみカルテルにならない、こういうように答弁せられております。一方、公正取引委員長は、たとえ政府指導があったとしても、価格協定をした場合はやみカルテルとなる、すなわち独禁法の適用は厳に行なう、これが正しいと思います。また、法的拘束力を持つ法律に基づく価格指定を行なうべきであるのに、これを単に行政指導というあいまいなことをいっておることは、明らかに行政と企業の癒着に道を開くものである。このことについては、先刻の予算委員会理事会において、野党共通の深い疑惑であることが表明された。行政指導価格指導ができるならば、何のために電気料金を電気事業法で、ガス料金をガス事業法できめるようとしたのか。今後、電気もガスも国鉄も全部、行政指導でやっていくとでもいうのか。  法制局長官は、通商産業省設置法第三条の、この「生産流通及び消費の増進、改善及び調整」の規定により価格行政指導ができると言うが、最も国民生活に重要で直接的な影響を持つ価格決定は、本規定の内容とはならず、当然法律によらなければならない。したがって、私はあらためてその立場で、この問題に限り質問をいたします。  政府行政指導があった場合、それを機会に値上げを行なった場合には、独禁法にいうやみカルテルに絶対ならぬというのか、政府、その最高責任者である田中総理と公正取引委員長の責任ある答弁を重ねて求めます。
  201. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 行政指導によって価格の調整ができるかできないか、これはできるということを私たちは申し述べておるわけであります。  ただ、これは法律でもって明定をするときには拘束力を持ちますが、この行政指導というのは、法律の特定物資に指定するように、拘束力を法律的には持たないということは事実でございますが、しかし、現実問題として、行政指導というのには、国民企業も理解を示し、社会のために公正な企業活動を行なうために現実的に効果をあげておるということは、これは行政の妙として評価ができることは申すまでもありません。でありますから、衆参両院における国会においても、国民も、政府は何をしておるのだ、政府はもっと価格の引き上げに対して押えるべきである、行政権の発動がおそ過ぎたという議論がずっと続いておるのは、そのような根拠に基づくものでございます。  また、石油製品価格行政指導の法的根拠は、ここにちゃんとございます。ちょっと読みましょうか、念のためでございますから……(発言する者あり)じゃ、けっこうです。けっこうですが、法律に根拠がなくて……(「読んでください」と呼ぶ者あり)よろしゅうございますか。
  202. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。
  203. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 委員長、よろしゅうございますか。
  204. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 読む必要はありません。
  205. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ちょっと、短いです。
  206. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 簡単に願います。
  207. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、衆参両院におけるこの種の質問に対する一つの見解でございますから、申し上げます。  石油製品価格行政指導の法的根拠について申し上げますが、通商産業省設置法第三条第二号において、通商産業省の任務として、「鉱産物及び工業品の生産、流通及び消費の増進、改善及び調整」と定められており、これを受けて、各物資原局等の所掌事務として、たとえば、「石油及び可燃性天然ガス並びにこれらの製品の輸出、輸入生産、流通及び消費(農林畜水産業専用物品の流通及び消費を除く。)の増進、改善及び調整を図ること。」(設置法第三十六条の七第一号)と定められている。今回の石油製品価格等に関する行政指導は、これらの規定に基づくものと考えている。  次をお読みします。通商産業省設置法第四条第二十六号に、「所掌事務に係る物資に関する価格等の統制を行うこと。」の規定があるが、この規定は、経緯的には、経済安定本部所管の物価統制令に関する権限を移してきたもので、もともと公定価格による価格統制を背景に設けられたものであることを考えれば、今回の価格抑制行政指導のごときものについては、右の規定でなく、通商産業省設置法第三条第二号の規定を行政指導の根拠とすると考えている。   〔「価格はないじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  208. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 静粛に願います。
  209. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それから、いまの野党の統一的な見解に対して、公正取引委員長政府側との見解の相違があるのではないかという御質問に対してお答えをいたします。  政府は、価格について行政指導があったという理由だけで独禁法違反でなくなると言っているのではなく、指導を受けた事業者が、さらに共同して価格操作を行なうことがあれば独禁法違反になり得ることを認めておるのであるから、基本的に、政府の見解と公取委の見解が異なっているとは思えないわけでございます。  また、価格に関し行政指導を行なうとことによって処理することと、法律に基づく標準価格等によることと、いずれが適当かの問題につきましては、政府と公取委の間では、若干評価が違うようでございますが、公取委も、今日の事態において、価格に関する行政指導を行なうことが、最小限必要であることは認められると思うわけでございます。  なお、価格に関する行政指導が行なわれた場合に、実際問題としてカルテルが存在することになるかどうかにつきましては、政府としては、必ずしもそうならないと推量しておりますし、公取委は、ほとんど常に存在することになると推量しておることは、御承知のとおりでございます。この点は、事実認識の問題でございますが、万一カルテルが存在することとなれば、当然独禁法の問題となることは言うまでもなく、その点については、政府の見解も一に述べたとおりであり、公取委員長との間の見解の相違はないわけでございます。  でございますので、政府行政指導を行なって、そして石油価格等をきめた場合、その後にこれらの問題を受ける、受けない、またこれを是正するような場合に、共同行為が存在すれば、独禁法の違反になることは事実でございますが、そうではなく、政府の一方的な勧告を受け入れて、独自の立場においてこれを守ったということをもって、独禁法を適用されることはないということは当然のことでございます。
  210. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私は、いまお答えするにあたって、むしろ枝葉末節に近いほうから申し上げます。  いま、価格に対する行政指導が、値下げの方向で行なわれているのが幾つかあります。行なわれたことがあります。それが効果を発揮するしないは別として、ともかく、その方向について業界を指導しているという事実は認めます。ですから私は、いかなる場合においても、われわれの解釈をしゃくし定木に適用しようという考えはありませんが、原油価格の引き上げに伴う石油製品の大幅な引き上げというものは、これは国民生活にとって重大な問題ではないかと思います。  したがいまして、その場合に、行政指導によって価格が形成されるということは、これはお認めになっておらない。行政指導によっては価格の設定はできない。ですから、これを受け入れる側がそれを受け入れれば、そこで価格設定になるわけでございます。  そこで、その場合に、ここにありますような、「指導を受けた事業者が更に共同して価格操作を行うことがあれば、一に述べたと同様に認めるべきでない」こうありますが、「更に共同して価格操作」私はこの意味がよくわかりません。ですから、指導を受けた、そして、さらにその指導とまた違った価格操作をやるのか、そのままずばりを受け入れるのか。むしろこれをそのまま受け入れた場合でも、カルテルに非常にまぎらわしい事態が起こる。ということは、個別に事業者を一人一人説得していそして同じ上げ幅の価格を設定させることはできるでしょう。しかし、それらの個別の業者が、全然横を振り向かないで応ずるという考え方は、少し不自然じゃないでしょうか。そういう点が、私どもとしては非常にまぎらわしくて、黙示の合意でも足りるといわれている判例がございますから、そういうふうになるべくならば——公取としては、立場上非常にまぎらわしくて困る。といって、政府がきめたものに対して、直ちにカルテルだといって受け入れすることに、私どももある程度のちゅうちょはせざるを得ません。これは、何も私は独立性を放棄するつもりはありません。ありませんけれども、せっかく政府がきめた、そしてこうやったんだといっているときに、それが違反だという、まっこうからそれを排撃するような態度はとりたくないんです、心情といたしまして。  ですから、そういう方法を避けて、もし暫定的に、万やむを得ない簡囲で行なわれるとかいうことで、直ちに、できる限り標準価格に移行されるとか、要するに、この前灯油の場合にやっておりますように、一時は指示価格であった、しかし、法律ができたら直ちにそれは標準価格に変えているわけです。ですから、石油製品については標準価格でやる。しかし、たとえばナフサが上がりまして、ナフサが上がれば相当上がるわけですから、これは石油価格に影響を及ぼします。その場合、その原価計算まで全部追いかけておれないから、その分については暫定的に行政指導をやる。あとから、おもなるエチレンとかプロピレンとかいうものについて価格を設定するというやり方が正しいのではないか。  凍結というような問題は、私は、いまいいとも悪いとも申し上げませんが、凍結ということ自体は、横の関係は認めていないわけですね。初めから凍結だということはカルテルじゃないんで、違った価格のままで凍結するという原則でございますから、これについては、私どもとやかく申しません。行政指導でそういうことをおやりになりましても、それをカルテルだとは思いたくありませんから、それはけっこうでございます。  しかし、いま申しましたような石油について、これだけ注目を浴びているのでございますから、なるべくならば、御苦労ではございましょうけれども、標準価格でいっていただく、その他については暫定措置で行政指導でおやりになっても、それは申しわけが立つのではないだろうか、こう考えております。
  211. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一問……。  先ほど総理は、行政指導の根拠についておあげになりました。しかし、そのときにうしろから不規則発言があったように、価格については根拠はございません。そこで、行政指導による指導価格は、政府の介入による事業者の価格カルテルを誘発することになる。もし、政府がみずからやみ価格カルテルを認めるならば、独禁法は完全に空洞化することになると思います。  さらに、かつて四十六年、四十七年当時、通産大臣として鉄鋼、石油化学製品などの不況カルテルを認め、独禁法に風穴をあけようとすることに成功した田中総理は、ここに再び、行政指導という名の勧告価格操作によって独禁法の骨抜きをはかり、今回の石油値上げを合法化しようとする態度は、まさに独禁法に対する田中内閣の挑戦であり、立法府としては断じて容認できないものであります。  総理並びに公正取引委員長の双方から、この二点につきまして明確な御答弁をお願いいたします。
  212. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 独禁法に風穴をあけようなどという意思のごうもないことを、まず明らかにいたしておきます。  また、独禁法を改正しようとして努力をしておられることについても、公正取引委員会の成案を得るまでは、政府は、政府の意見を入れないように慎重な態度をとっておりますという、謙虚な態度をとっております。そして、いま公正取引委員会は懸命な努力をして、独禁法の改正案を審議いたしております、これをあたたかく見守っておりますと、こう言うのですから、世人は、私の独禁法や公取に対する態度いかんということは、十分に理解されると思うわけでございます。  それから、行政権の行使によって、価格の問題を行政権が云々できないということはないのです。これはきめるということになれば、法律でなければ強制力はないということでございます。ただ、政府が上げないように、いや、これだけ上がらなければいけませんと言うのに、これで押えてくれないかという要請をすることは、これはもう行政権の範疇である。価格の決定権というものは、拘束力がないことでありますから、政府の意思を述べるだけであって、相手がこれを聞かないということになれば、これはもう強制力はないということは、先ほどから間々申し上げているとおり。ただ、行政権の行使の中で、価格に触れてはならないということにはならないのです。  だからこれは、いままでなぜ押えなかったか、押えなかったかと言って、去年の何月かからずっと物価を上げたのは、政府が行政権を発動するのがおそきに失したために、物価が上がり国民が迷惑をされておるのだということを指摘されておるのですから、価格の問題に触れない行政権の行使などというものが、実効をあげ得ないことは申すまでもありません。ただ……   〔「何のために法律があったのだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  213. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 静粛に願います。
  214. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いや、ですから最終的にはその法律で指定をすれば強制力を持ちます。しかし、流動的なものに対しては、行政権が介入をし、行政権の行使において物価を押える努力をするというのは、行政の責任であるということであります。  第三点は、カルテルの問題でありますが、これは政府が一方的に、このような価格を守ってほしいと言ったときに、これは政府勧告の過程においても、相手が共同行為を行なえば、当然独禁法の対象案件になる、これはもう当然のことでございます。ただ、政府が勧告をし、要請をしたものにこたえて、上げることはやめましょう、無配になっても一年間待ちましょうということは、これは独禁法には何ら関係がないと、明確に申し上げておるわけであります。
  215. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたの通産大臣当時のやつは……。
  216. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 通産大臣当時の話でございますが、それは御意見として承りまして、私が答弁の限りではないと、こう思ったわけです。品が悪くなりますから……。そんな人間であるかないかは、二十数年の田中角榮の議員歴が物語っておる。それはあなたも十分おわかりなのです。それは、私を知っておるあなたが言うのではなくて、それは四党の共同案であるから、あなたも読んだだけであって、あなたがそんなことを考えているとは思いませんから、あえて答弁に至らなかった次第であります。
  217. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 簡単にお答えします。  不況カルテルにつきましては、公正取引委員会側にも多少の落ち度があったと思います。ですから、厳正なる運用を今後期するということで、お許し願いたいと思います。  それから、いまの行政指導価格の問題をもう一ぺんちょっと申したいのですが、勧告操短は、明らかにいまは違法とされております。それはちゃんと審決例もあります。  勧告操短というのは、政府側が勧告、指導して、形の上では、少なくともそれで操短をさせたわけですね。これは、ほとんど相互の意思がはっきりしたものなんかないような状態でも、これは違法であるというふうになっておるのですが、勧告価格は違法でないということになりますと、適用除外の法律とかいうものは一体どうなっちゃうのか。これが、ですから私ども委員会が相当、これはもう政府の御意にさからって頑強に主張しているのは、そういう理由なんです。勧告操短がよくて勧告価格はいいんだという、何ともこれは説明のつかないことであります。しかし、暫定的にやむを得ない緊急避難的な行為としておやりになることについてまで、私どもはしゃくし定木には申しませんが、できるだけ法律によってやられることをあくまで期待したい、こういうのが私どもの考えでございますので、よろしくお願いします。
  218. 田中武夫

    田中(武)委員 理事会の決定による野党の立場としての質問でございますので、これ以上申しますと私個人の意見になりますから、これで終わります。  しかし、最後に田中に戻りまして、公取委員長、がんばれ、これだけ申しまして、終わります。
  219. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、締めくくり総括質疑は終了し、昭和四十九年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  220. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 昭和四十九年度総予算に対し、田中武夫君外二十名より、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる昭和四十九年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議がただいま提出されました。
  221. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、提出者の趣旨弁明を求めます。松浦利尚君。
  222. 松浦利尚

    松浦(利)委員 われわれ野党四党は、政府予算案を一カ月余にわたって詳細に検討してまいりましたが、その内容は、真に国民生活向上のためのものではないとの結論に達しましたので、ここにあらためて予算の組みかえ動議を提出いたしたいと思います。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕  提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党が共同提案いたしております昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につきまして、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  すでに動議の案文はお手元に配付いたしてありますので、御参照いただきたいと思います。  まず、動議の主文を朗読いたします。   昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算については、政府はこれを撤回し、少なくとも左記の点を含めて速やかに組替えをなし、再提出することを要求する。    右の動議を提出する。  最初に、昭和四十九年度予算の編成替えを求める理由を申し上げます。  理由の第一は、見せかけのインフレ対策予算だということであります。  今日の異常な物価高騰、インフレの高進は、国民生活をかつてないほどの深刻な危機におとしいれております。こうした事態は、政府・自民党の大企業中心の高度経済成長政策と対米追従の外交政策によってもたらされたものであり、とりわけ、日本列島改造計画に基づく経済、財政政策の破綻を示すものであります。しかるに、昭和四十九年度予算は、依然として日本列島改造計画を撤回せず、消費者米価、国鉄運賃などの公共料金の据え置きもわずか半年間にすぎないなど、インフレ促進予算となっているのであります。しかも、総需要抑制といいながら、巨額な国債発行を行ない、相変わらず高い水準の産業基盤投資を続け、また、防衛費を一兆円の大台に乗せております。  一方、予算圧縮を理由として地方財政に大きな圧迫を加えております。さらに、石油危機を口実とした大企業便乗値上げを野放しにし、大企業代表の国会証人喚問すら拒否するなど、政府物価安定短期決戦のかけ声にもかかわらず、この予算は、物価安定とはほど遠いものであります。  理由の第二は、弱者切り捨て、福祉軽視の予算となっていることであります。  政府の福祉重点のかけ声にもかかわらず、生活保護基準も福祉施設入所者の措置費も二〇%の引き上げにとどまり、老齢福祉年金は十月以降やっと月額七千五百円になるにすぎません。これでは年率二〇%をこえる消費者物価の上昇のもとでは全く焼け石に水であり、福祉の一そうの低下は避けられないのであります。  しかも、健保家族と国保加入者の患者負担がふやされ、保険料率の引き上げも予定されております。これらは、とりわけ老齢者、生活困窮者、障害者あるいは障害児、難病患者などの生活を塗炭の苦しみに追いやるものであります。また、公共住宅建設戸数を四万五千戸削減するなど、まさに弱者切り捨て、福祉軽視予算となっているのであります。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  理由の第三は、不公平と格差の拡大をもたらす予算となっていることであります。  いわゆる二兆円減税も、インフレ、物価高に苦しむ勤労大衆の救済を内容とするものでなく、給与所得控除の上限撤廃、高額所得層の税率軽減など、減税の重点を高額所得層に置いております。この政府案は、すでに総合累進課税体系が崩壊し、高額所得層ほど税負担が低下している逆累進の傾向をますます助長し、税の不公平を一そう拡大するものであります。  農業予算についても、食糧自給度の向上と農業再建に対する抜本対策を放置しています。また、総需要抑制による引き締めと石油危機を口実とした大企業の横暴のもとで、中小零細企業の経営の困難が一そう深まり、倒産がふえているにもかかわらず、中小企業予算は相変わらず予算の〇・六%にすぎないのであります。  理由の第四は、地方財政を圧迫し、地方自治を侵害する予算となっていることであります。  国の予算規模縮小のための操作として、四十九年度地方交付税のうち一千六百八十億円の削減を強制したことは、物価高の中で超過負担と福祉財源に苦しむ地方財政を一そう圧迫し、地方自治を侵害するものであります。これは、昭和四十四年度予算編成の際に、今後、政府は、地方交付税の借り上げ措置は避けると約束したことを破るものであります。  理由の第五は、四次防推進の予算であることであります。  防衛関係費が前年度に比べて千五百七十六億円もふやされ、初めて一兆円の大台をこえ、依然として四次防の強行がはかられていることはきわめて重大であります。これは平和を願う国民にとってとうてい承認できないものであり、インフレ対策にも完全に逆行するものであります。  また、さきの総理の東南アジア訪問の先々の諸国での、わが国の経済侵略反対の反日デモにも見られるように、自民党政府の東南アジア政策に対する批判がますます強くなっているにもかかわらず、政府はそれに根本的な反省を行なわないまま資源外交強化を名目として、経済協力費を大幅にふやしているのは問題であります。  以上に述べましたような国民生活軽視の予算を容認することはできません。政府予算、財政投融資計画を根本的に再検討し、国民生活、福祉優先の予算に編成し直し、国民の期待にこたえるべきであります。  次に、編成替えに関する要求の概要を申し上げます。  予算は、国の内外政策の全体にかかわる問題であり、その編成につきましては、各党それぞれの見解を持っていますが、国民生活擁護の緊急問題について、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党はここに共同して、政府昭和四十九年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算を撤回し、少なくとも次の点を含め編成替えをすることを要求するものであります。  組みかえ要求の第一は、歳入関係であります。  その一つは、大衆減税と税の公平化についてであります。  物価高の中で勤労者の税負担の緊急大幅減税を行ない、生活費非課税の原則を貫くため、所得税は四人家族年収二百十五万円まで無税とするよう、世帯構成に応じた税額控除を行ない、低所得層中心の減税を行なうべきであります。なお住民税もこれに準じて大幅減税する必要があります。中小零細事業者に対しては、法人税率の引き下げなど大幅な税の軽減を行なうことです。また、印紙税の引き上げ、自動車関係諸税の引き上げ、電源開発促進税の創設は取りやめるべきであります。さらに、大企業の法人税率を四二%以上に引き上げ、法人受け取り配当の益金不算入、支払い配当税率軽減措置は廃止すべきであります。加えて、大企業、資産所得、高額所得者に対する負担を強化し、各種の特権的な減免税措置は廃止するとともに、大企業の交際費課税の強化、広告費課税の新設、さらに有価証券の取引、譲渡所得に対する課税を強化すべきであります。また、土地税制を改革し、法人所有の土地譲渡所得の完全分離、高率課税及び大法人所有の土地の適正な評価等による土地課税の強化を行なうべきであります。さらに、大企業に対し、臨時の法人利得課税を行なうべきであります。  二つには、国債の削減についてであります。国債の発行は大幅に圧縮すべきであります。  第二は、歳出関係についての要求であります。  その一つは、インフレ、物価高の抑制であります。  消費者米価、国鉄運賃、家庭用電気料金、小口電力料金など公共料金の値上げをストップし、消費者米価の物統令適用を復活すべきであります。また大企業便乗値上げを押え、生活必需物資の優先確保、価格及び需給安定のため、買占め売惜しみ規制法の運用の強化、専任価格調査官の増強と権限委任に伴う地方自治体への国庫負担の増大をはかるとともに、大企業の管理価格に対する規制と監視機構の強化、公正取引委員会の強化、充実をはかるべきであります。さらに、生鮮食料品の生産増強、流通対策費を大幅増額し、消費者保護行政の強化、生活協同組合への助成などの措置を講ずるべきであります。  その二つは、社会保障、福祉の拡充についてであります。  各種社会保障給付の賃金、物価自動スライド制を創設し、そのため、各年度の各種社会保障給付額の引き上げは、年間平均賃金の上昇率に見合って引き上げ、また、短期的には緊急物価スライド制を採用し、物価上昇率に見合って給付額を引き上げるべきであります。老齢福祉年金、障害、母子・準母子年金を大幅に増額し、厚生年金、国民年金については、従来の積み立て方式を賦課方式に改め、同時に、支給額の大幅な引き上げを行なうため、制度の抜本的改革を行なうべきであります。生活保護費、老人福祉費、児童手当、心身障害児、心身障害者対策、難病対策等社会福祉関係費を大幅に増額すること。また、公費医療制度を拡大し、すべての難病者、老齢者六十五歳以上、三歳以下乳幼児の医療費を無料にするとともに、健康保険料率の引き上げをやめ、医療保険に対する大幅な国庫補助を行なうべきであります。さらに保育所、老人施設、心身障害児、心身障害者施設等、社会福祉施設及び医療施設の緊急整備をはかり、福祉施設の措置費を増額し、社会福祉従事者、各福祉施設職員、医療従事者の増員と待遇改善をはかるべきであります。被爆者援護法を制定し、医療の無料化、被爆者年金、遺族年金の新設、介護料等の大幅な引き上げをはかることも必要であります。  以上のことを含む社会保障、福祉の拡充をはかるため、早急に社会保障長期計画を立て、財政対策を確立すべきであります。  三つには、土地、住宅、環境保全対策についてであります。  従来の産業基盤整備を重点とした投資のあり方を全面的に転換し、公共投資、財政投融資とも、住宅、環境衛生、社会福祉施設、病院、学校などの整備を優先して集中投資すべきであります。さらに公共賃貸住宅を大幅にふやし、民間自力建設依存の政策を転換し、地価を抑制し、生活関連、公共用地を確保するため、大企業、大地主の買い占め土地の放出、地価の凍結、土地税制の改革等土地緊急対策を強力に実施し、公害防止、環境保全の対策を強化することが必要であります。  四つには、労働者、農業、中小企業対策についてであります。  まず、労働者の実質賃金の引き上げ、週休二日、週四十時間労働制など労働条件の改善、雇用の安定、失業対策の充実をはかるとともに、失業保険の改悪は行なうべきではありません。また、おもな農畜産物の自給率の向上と備蓄制度の確立、価格補償制度の改善充実をはかり、農地三十万ヘクタールの転用をやめ、休耕地の復元、主要農畜産物の生産奨励対策の拡充等を強化すべきであります。さらに、中小零細企業の資材と資金の確保、経営の安定のための予算を増額し、金融面では政府関係金融機関の貸し出しワクの増大、融資方法の改善をはかるべきであります。  五つには、資源、エネルギー政策の確立についてであります。  資源、エネルギーの安定的供給を確保するため、石油のメジャー依存の供給体制を改め、自主的エネルギー政策を確立し、炭鉱の一方的閉山を中止して、石炭対策と新エネルギー源の開発政策の強化及び資源浪費型産業構造の転換をはかるべきであります。  六つには、教育予算の充実であります。  義務教育完全無償化を進め、教職員の定数改善、小中高校等の学校教育施設の国庫負担の増額と超過負担の解消をはかるとともに、幼稚園、保育所の大幅増設と施設費公費負担の増額、高校入学希望者全員入学の保障、私学への財政補助の拡充をはかるべきであります。  七つには、地方財政の拡充であります。  地方財政充実のため、シビルミニマムを保障するに足る自主財源を付与し、超過負担の完全解消をはかる。また、地方交付税千六百八十億円の削減は取りやめることとし、地方債の起債ワクを拡大し、財政資金割合を高めるべきであります。  八つには、いわゆる列島改造計画の撤回についてであります。  日本列島改造計画、新全総、経済社会基本計画を中止し、大企業中心の産業基盤整備の公共投資を縮減することとし、これに伴い、新幹線、高速道路などの大型プロジェクトを凍結または大幅縮小し、新たな大規模工業開発を再検討すべきであり、国総法は直ちに撤回すべきであります。  九つには、防衛費の削減であります。  四次防をとりやめ、兵器装備などの防衛費を削減して、これを生活福祉関係費に回すべきであります。  最後に、財政投融資計画の国民本位の運用についてであります。  財政投融資計画は、資金配分のあり方を根本的に改め、大企業への低利融資や産業基盤投資を削減し、大蔵省資金運用部資金をはじめ、開銀、輸銀等の資金運用の詳細を国会に報告させ、審議することとし、国民生活の向上に役立てるべきであります。  以上、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党が共同して提案いたしました昭和四十九年度政府予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議の提出理由及びその概要を申し述べましたが、その内容は、国民生活擁護のため、緊急を要する最低限度の要求であります。  政府は、今回の予算を撤回し、国民立場に立った組みかえを行ない、再提出されるよう強く要求いたしまして、趣旨弁明を終わります。(拍手)
  223. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして、動議の趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  224. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより討論に入ります。  昭和四十九年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求める動議を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。まず、細田吉藏君。
  225. 細田吉藏

    ○細田委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十九年度一般会計予算外二案に賛成し、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党のこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議に反対の討論を行なうものであります。  言うまでもなく、現在わが国の当面する課題は、総需要抑制により物価を早期に安定させるとともに、長期的には、国民福祉の政策を進め、均衡ある経済の発展につとめることであると考えるものでありますが、政府においても、この観点に立って今回の予算を編成したものでありまして、まことに適切な予算であると思います。  以下、政府原案に対し、簡単に私見を述べることといたします。  まず第一点は、予算の規模とその弾力的運用についてであります。  四十九年度予算が、一般会計において対前年度当初予算の伸び率二四・六%に比し、一九・七%と大幅に下回ったことは、総需要抑制の見地から、景気に対し最も波及効果の大きい公共事業関係費を、昭和四十八年度当初予算と同額以下とし、事業量において四十七年度予算と同程度としたこと、道路等長期諸計画の進度を調整したこと、本四架橋、新幹線鉄道等大型プロジェクトの事業費を極力繰り延べたことによるものであります。  また、財政投融資計画においても、四十八年度当初計画の二八・三%の伸びに対し、来年度は一四・四%とその規模を圧縮するとともに、公債依存度を前年度当初予算の二八・四%から一二・六%と低下させたことなど、経済の正常化をすみやかに達成するための措置として高く評価するものであります。  また、この予算の実施にあたっては、これが弾力的、機動的に運用できるよう、前年度に引き続き、公庫等にかかる政府保証債または借り入れ金の限度等について措置を講ずることとし、さらに一般会計において、使途を特定しない国庫債務負担行為の限度について増額し、特別会計においても新たに同様な制度を設け、その機能が十分発揮できるように措置しています。  第二点は、国民負担の軽減とその適正化についてであります。  最近の経済情勢にかんがみ、国民の負担を軽減することは、物価上昇を押えることとともに重要なる課題であります。  所得税減税については、今回、特に給与所得者の負担軽減に重点を置き、中小所得者の負担軽減と税制の明確化をはかるとともに、福祉政策の見地から、心身障害者、老年者、寡婦等への控除の引き上げなど、きめこまかな施策を行なっています。  この結果、課税最低限は、たとえば夫婦子二人の標準世帯について、現行百十五万円を平年度百七十万円に、約五〇%引き上げることとなり、ともすれば暗くなりがちな今日の経済事情の中にあって、この大型減税は、人心を明るくするための政策としてきわめて妥当な措置であります。  また、法人税に対する増税は、主要諸外国水準並みに近づいたものであり、一方、中小法人に対する負担を現状のまま据え置く措置をとったことは、まことに時宜を得たものとして評価するものであります。  第三点は、重点的、効率的な資源配分についてであります。  前述のとおり、公共事業費が前年度の水準を下回ることとなったのは、昭和三十一年度以来のことでありますが、社会福祉達成のために、最も緊要な国民生活関連事業、すなわち下水道、対前年比増二一・五%、公園等、同二四・六%、環境衛生、同二〇・五%等の事業について、今回も補助率等の増加の措置を行なったことは、心強い限りであります。  財政投融資計画においても、住宅、生活環境、厚生福祉、文教施設、中小企業、農林漁業等に対する融資に重点を置いてこれが措置されたことは、長期的展望に立った予算の効率的な運用を示すもので、賛意を表するものであります。  また、本年度予算規模の伸び一九・七%の中にあって、社会保障関係費三六・七%、文教及び科学振興費二五%と大幅な予算の伸びを示したことは、福祉予算の性格を強調するものとして、資源配分をここに集中したことは、まことに特徴的であります。  特に、今日の物価動向にかんがみ、その影響を受けやすい老人、心身障害者、母子世帯等に対する生活安定と福祉の向上について配慮しております。  たとえば、生活保護世帯に対しては、生活扶助基準を二〇%引き上げ、老齢福祉年金の支給月額を五千円から七千五百円に引き上げるとともに、厚生、国民両年金に対し、物価スライド制の適用をはかっていることは、今後の年金制度の質的改善に有効な役割りを果たすことと考えるものであります。  第四点は、物価対策についてであります。  今回の物価上昇は、名目的な総需要の急増に対し、実質的な供給が十分に即応し得なかったことに基因するもので、これに加え、世界的規模による石油危機と、これに便乗した企業の悪乗りも手伝い、国民に心理的恐慌を生じさせたことなど、多くの要因が複合的にからみ合った結果であると考えられます。  政府においては、昨年六月のいわゆる買占め売惜しみ防止法や、同じく十二月成立の国民生活安定緊急措置法並びに石油需給適正化法、あるいは独占禁止法等既存の法律を含めて、その運用により物価抑制の措置をとることとなるのは当然でありますが、その運用等、行政の立ちおくれについて、当予算委員会で多くの指摘を受けたことはきわめて遺憾であります。  また、三日間にわたる物価問題についての集中審議において、多くの委員により、商社、銀行及び企業等の社会的責任とそのあり方、物不足による便乗値上げによる利益の消費者への還元、やみカルテル等の規制、流通部門を含めた適正利潤のあり方等々について真剣に論議が行なわれ、これが国民の前に明らかにされたことは、まことに大きな意義があったものと存じております。  政府においても、物価を安定させるためには、財政、金融政策の運用はもちろんのこと、これらの論議をも参考として、自由競争の原理を維持しつつ、長期的また短期的両面から、行政が対処すべき措置について一そうの検討を加えるとともに、国民のための機動的、効果的な行政が迅速果敢に実行されることを希望するものであります。  本予算においては、一般、特別両会計を合わせ、物価対策関係予算一兆五千億円余が、低生産性部門の生産性向上、流通対策、住宅及び地価安定対策等、長期的展望に立った諸施策として措置されております。  また、国鉄運賃、米価引き上げ並びに郵便小包料金等、公共料金の六カ月延期措置が講ぜられていることは、今日の経済情勢から見て、当を得たものとして賛意を表するものであります。  終わりに、一言つけ加えて政府に要望いたしたいと思います。  それは、本予算案が実施に移されましても、その運用にあたっては、景気や物価動向その他を十分勘案し、機動的、弾力的に措置されることでございます。これを強く要望いたします。  最後に、本予算に対し、撤回のうえ編成替えを求めるの動議についてであります。  本案で要求されていることの大部分は、本年度予算案にすでに盛り込まれた事柄についてその増額を求めているものでありますが、限られた国家財政の中において、福祉社会への政策を維持する考え方と予算的裏づけは、政府原案にもよくあらわれていることは前述のとおりであります。  たとえば、財政投融資等においても、国民生活に密着した住宅、文教、厚生施設、中小企業等に対する本年度計画のシェアは六一・三%となっており、決して、野党の言われるような、組みかえ動議にあるような、大企業優先とはいえないと思うのであります。  要求事項の一つ一つについて反論することは、時間の関係もありまして省略いたしますが、ただ、これら諸要求事項は、福祉社会建設には国民負担の増大もある程度考えなければ、将来、国家財政の維持はできないということも、お考えを十分に願う必要があると思います。  また、今日の石油危機等からくる極端な物価上昇に対しては、政府においても低所得者層等に対して、一時金の支給や融資上の措置を講ずるとともに、特に、春闘の賃上げ要求についても、政府は労働団体と精力的に会合を重ね、その解決に努力していることは御承知のとおりであります。  一方、地方財政については、国と同じような予算規模を持つ立場からも、景気に対する影響が大きいことから、国の総需要抑制政策協力を願うことは当然のことと存じます。  しかしながら、反面、社会福祉政策に基づく重要施策については、重点的配分を考慮し、その実現のため、たとえば地方債計画に占める政府資金比率を六〇・三%とするがごとき措置を講じております。  さらに、防衛費の増大を組みかえ案は指摘しておりますが、その内容を詳細に見ますとき、人件費の割合がきわめて大きいことを注目する必要があります。国家防衛に対する認識は、野党四党とは根本的に異なるものがありますが、平和国家維持のための最低限の予算措置であると思うのでございます。  以上の諸点を考察の結果、残念ながら四党共同提出にかかる動議には反対せざるを得ません。  政府原案に賛成をいたし、四党共同提出の動議に反対の意思を明らかにして、討論を終わります。(拍手)
  226. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、安宅常彦君。
  227. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました昭和四十九年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算三案に反対し、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の四党が共同提案いたしております、昭和四十九年度予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成の討論を行ないます。  昭和四十九年度予算編成にあたっての最大の課題は、インフレの抑制、収束にあることは言うまでもありません。  今日の物価の暴騰は、福田蔵相みずから狂乱物価と言わざるを得ないほどのすさまじさであり、国民生活はかつてない破局的な危機にさらされているのであります。  言うまでもなく、今日の重大な事態を招いたのは、何よりも政府が計画的なインフレ政策による大企業中心の高度成長政策をとり続け、独占資本の利潤の増大をはかり、日本列島改造計画を背景として、みずからインフレと投機をあおってきたからであります。  今日の悪性インフレは、したがって、明らかに政治インフレであり、角榮インフレであります。これに対し、田中内閣は内心周章ろうばいし、動揺しながらも、異常な物価の暴騰を招いたみずからの失政を何ら反省することなく、安易な総需要抑制策を通じて勤労国民の消費を抑圧し、官僚統制と結びついた所得政策の導入すら進めようとしており、断じて許すことはできません。  しかも政府は、物価上昇の原因を海外物資の高騰や、みずからあおったはずの国内需要の増加、さらには労働者の賃上げにあるとして、その責任をこれらになすりつけ、さらに加えて、独占価格の形成、混乱した流通機構を極度に悪用した商品の買い占め、売り惜しみ、いわゆるつくられた石油危機を口実とした、独占みずから広言をしている千載一遇の好機とばかりの便乗値上げを放置するどころか、マッチ・ポンプばりの高値安定政策でこれを支持し、彼らからの膨大な政治献金を背景とする癒着関係からとしか考えられないようなやり方、すなわち、わが党をはじめとする野党各党の憲法、国会法等に基づいた道理にかなった大企業代表の国会証人喚問すら、強行採決をもって拒否して、その利潤拡大に奉仕しているのであります。  わが党の楢崎委員によって追及された石油連盟密田会長らの国会内外の言動、さらにまた、あわてふためいた通産省の態度、さらには、いわゆる物価安定法の適用の意思さえさらさらないことなどでわかるように、これらのことを余すところなく暴露しているではありませんか。公共料金の値上げストップも、消費者米価の値上げ延期も、参議院選挙をおもんばかったゼスチュアだけの、わずか半年間にすぎません。  つまり、もともと四十九年度予算案は、経済見通しも立たないままでっち上げた砂上の楼閣、単なる腰だめによる計算数字の羅列にすぎない、古今未曽有の合理性も権威もないごまかし予算と言っても過言ではありません。  まず第一に、日本列島改造計画を下敷きにした昭和四十八年度超大型インフレ予算が、とどまるところを知らないインフレの急進展と、土地問題や資材不足がからんで、完全に消化不良におちいっているということであります。  しかも、二けたに及ぶ卸売り物価の暴騰によって暗礁に乗り上げ、末期的症状の中で、田中総理は、沈没しかけた日本列島改造計画と、それを裏づけるための国総法にいまなお固執し、何らの反省もないということであります。福田大蔵大臣も酷評し、明らかに閣内不一致の列島改造計画の撤回を明確にし、真に経済財政策の根本転換をはかることなしには、引き続きインフレ路線を進むことは明らかであります。  予算規模を一九・七%増に押えたといっても、内容は、地方交付税交付金を千六百八十億円削減し、地方財政の圧迫と地方自治侵害によって、かろうじて二〇%ラインを割ったにすぎず、一九・七%という予算規模増は、高度成長過程における予算の伸びと比較しても、最高の水準を示すものであります。  第二に、国債発行は、昭和四十八年度補正後発行予定額一兆八千百億円を上回る二兆一千六百億円もの巨額の発行を予定し、国債依存率も、前年補正後予算の国債依存率一一・八%を上回る一二・六%となっているのであります。まさにインフレ刺激的な措置といわねばなりません。  第三に、税制面については、インフレによって生活の危機に直面している勤労国民のための大衆減税を行なわなければならないのでありますが、他方でインフレ抑制策として、大資本に対する積極的な増税政策を組み合わせる必要があります。  このたび、法人税率は若干の引き上げを予定してはおりますが、悪名高い租税特別措置をはじめ、法人税の仕組みそのものが大法人に有利になっており、大法人の実際の税率は表面税率の半分以下にしかなっておりません。わが党が主張する法人税付加税あるいは広告費の課税、交際費の課税強化など、取るべきものは幾らでもあるのであります。  第四に、一般公共事業費も、昨年に比べ削減されたわけではありません。災害復旧事業費が昨年の災害額の減少によって減ったものであり、緊縮予算というならば、まっ先に削減されるべき防衛費がついに一兆円の大台をこえ、聖域扱いとなっていることは、国民の世論を無視した暴挙であるだけでなく、まさにインフレ対策に逆行するものといわなければなりません。  しかも、膨大な財政投融資計画の弾力条項によって、さらに五〇%までの規模拡大がはかられるのであり、この財投の内容を明らかにすることにより、この予算こそ、実質的にはインフレ予算であることが暴露されるしかけになっているのであります。  昭和四十九年度予算のもう一つの大きな課題は、インフレの進行に伴う社会的不公正の拡大を是正し、今日、命と暮らしが危険にさらされている、弱い立場の人々を救済することであります。  しかし一方では、インフレによって笑いのとまらぬ者がいるのであります。大企業の借り入れ金は、物価の上昇によってなしくずしに減らされ、五十兆円の借り入れ金ならば、二〇%の物価上昇で十兆円の借金棒引きとなり、返済負担が大きく軽減されることになります。それだけでなく、勤労大衆は物価値上げで苦しんでいるというのに、大企業物価値上げを製品価格値上げに便乗転嫁し、ますます肥え太っているのであります。  今日の政治の急務は、この格差と社会的不公正を排除し、不当な利得を得た者の負担で、インフレの被害者を救うことでなければならないのであります。  しかるに、四十九年度政府予算の基本的性格は、明らかに弱者の犠牲によって、政治経済の危機を切り抜けようとする弱者切り捨て、不公正拡大予算であるということであります。  第一に、福祉充実のごまかしであります。  政府は、立ちおくれた社会保障費を増額したと言っていますが、その中身は、年金予算で、老齢福祉年金が月額七千五百円に引き上げられたのでありますが、これは物価値上がりを四%台と見込み、五十年には一万円年金にすることが昨年の二月から約束されており、新たな施策ではありません。しかも十月実施で、支給も三カ月後一括あと払いという、よくもまあ福祉年金などと言えたものだというしろもので、国のために働き抜いた年寄りをなめ切った、世界に恥をさらす涙金とでもいうべきものでありましょう。  生活保護費なども二〇%アップとなりましたが、今日の異常な物価高騰のもとで、実質減額となることは必至であり、厚生年金、国民年金の緊急スライドは、ついに見送られてしまっております。予算増額の大部分が、福祉予算総額の六割以上を占める社会保険費の当然増であり、つまり、昨年の医療費一九%引き上げを含む医療費の上昇をカバーすることに使われているのが、偽らざる中身であります。昨年、わが党の要求にこたえて約束した一人暮らし老人の電話設置費用は、わずかに四千二百万円つけられたにすぎず、何が福祉かという怒りが、全国民の間にほうはいとしてわき上がるのも当然のことであります。  第二に、いわゆる二兆円減税のごまかしであります。  初年度一兆四千五百億円に削られたなどとけちなことは申しませんが、その実態は、インフレ、物価高に苦しむ勤労大衆の救済を内容とするものではなく、給与所得控除の最高制限の撤廃高額所得層の税率軽減など、明らかにインフレ便乗の重役減税であり、金持ち減税だということであります。  第三に、住宅予算についても、公営、公団住宅の建設予定戸数は四万五千戸減少し、これも土地をはじめ諸物価高騰で計画達成の保証もないわけでありますが、しかも、相変わらず公共事業費の三八・六%は道路整備費が占めているのであります。  農業予算についても、食糧自給度の向上と農業再建に対する対策を欠き、逆に世界の食糧事情から見て、かえって高くつき、しかも、できもしない海外食糧依存の体制を強め、依然として減反政策を継続し、農業予算の伸びが予算全体の伸びを下回っていることでもわかるように、国家百年の大計を誤る農業荒廃促進予算であり、特に、農用地確保の名目で農用地開発公団を設置することとしてみたり、他方でまた三十万ヘクタールの農地の転用を強行しようとしたりの、ネコの目農政どころか、めくらのネコの顔に紙袋をかぶせたような、見通しのない、民族の将来にとってゆゆしい事態を招く亡国農業予算といわなければなりません。  また、引き締めと金融難、雇用問題の深刻化の中で、中小零細企業は重大な危機に直面しております。しかも、いわゆる石油不足や原材料の暴騰にも見舞われ、二重、三重の打撃を受け、昨年の暮れからは倒産も激増して、自殺者も多く出ている状態であります。  これに対する中小企業予算はきわめて貧弱であり、全予算の〇・六%以下の、スズメの涙、二階から目薬のたとえそのままであり、大資本の要請にこたえた中小企業切り捨て政策が進められていることを、如実に物語っております。  これに対し、防衛費は一兆円の大台をこえ、緊縮予算だなどと言いながら、軍事予算の伸び率は世界でもトップクラスであり、四次防は、さらに物価暴騰と相まって、その総額が膨張しつつあります。これらは、四次防の修正を許さないとする制服組や、いわゆるタカ派の暴走を、軍事産業と結びついた政府が押え切れない現状を見るとき、日本軍国主義の完成、ファシズムへの道をたどるきわめて危険な側面を浮き彫りにしているといわなければなりません。  しかも、この問題とからんで、資源問題の深刻化に対応して、資源外交を強化するという名目で、海外経済協力費を大幅に増額し、インドシナ復興計画援助や石油資源確保などを中心にし、従来からのなりふりかまわぬ対韓援助等の強化を含め、日本独占資本の多国籍企業化、帝国主義的経済侵略の水先案内の役割りを果たそうとしていることは、きわめて危険なことであります。資源小国としての日本帝国主義が、その膨張のために石油や原材料の安定供給を確保するには、開発途上国を中心とする海外に依存するしかないという発想に立って、日本独占資本と国家のジョイントベンチャーがより組織的につくられつつあることはまことに重大な問題であり、紙・パルプ・化学・鉄鋼・繊維など広範な分野で、資源略奪のための動きが見られるのであります。  しかし、田中総理の東南アジア訪問の先々で、日本の経済侵略反対のデモや暴動に直面したことでもわかるように、新植民地主義的進出に対する各国人民の反感は根強いものがあり、日米安保体制のワク組みの中でアメリカ帝国主義からあれこれの指図を受けながらの、にわか仕立てのわが国のいわゆる援助に、警戒の念をさらに深くするであろうことは明らかであります。根本的な改革を強く要求いたします。  最後に、地方交付税の国への借り上げ強制措置をとったことであります。福田蔵相は、四十四年当時、今後は政府の借り上げ措置は避けると、自治省と覚書をかわした張本人であります。またしてもこれが破られたことは、福田財政の常套手段とはいえ、物価の暴騰で苦しむ地方財政を一そう圧迫し、地方自治を侵害するものであり、断じて容認できません。  以上、私は政府案反対の理由を述べてまいりました。  先ほどわが党の松浦利尚委員から詳しく説明されました、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の共同提案になる昭和四十九年度予算の編成替えを求めるの動議の具体的な内容こそが、今日悪性インフレから国民生活を守り、真の社会福祉を実現し、日本の政治経済を正しく発展させるための緊急最低必須のものでありますことは、すでに賢明な皆さんの御理解を得たことと存じます。全委員の賛成を要請しながら、政府案が予算の名に値しないほどの矛盾をはらんでいること、そういうことから国民が政治不信におちいり、生活の困窮にいらいらしながら政治の革新を求めているそれらの人々とともに、私は、この国民不在の政府予算三案に断固として反対し、政府昭和四十九年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算を撤回し、直ちに編成替えをすることを要求して、討論を終わります。(拍手)
  228. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、林百郎君。
  229. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の昭和四十九年度予算関係三案に反対し、野党四党の政府提出予算につき撤回のうえ編成組みかえを求める動議に賛成の討論を行ないます。  まず、政府提出予算に反対する第一の理由は、物価安定短期決戦予算のかけ声にもかかわらず、この予算からは物価安定、インフレ抑制を期待することは決してできないという点であります。  すなわち、この予算は前年度の補正後のそれを三千五百億円も上回る二兆一千六百億円もの赤字公債をかかえ、しかも圧縮といいながら防衛関係費は一六・八%も伸ばし、ついに一兆円をこえ、また、産業基盤中心の公共事業費は、四十八年度と同額の二兆八千四百七億円にのぼり、四十八年度の繰り延べ分を合わせますと、実に三兆円に迫ろうとしているのであります。  また政府は、物価暴騰の引き金となり、国民的批判にさらされておる日本列島改造計画を、この期に及んでもなお本心ではあきらめようとしておりません。ただ一時的にスローダウンさせているにすぎません。  たとえば、高速自動車道路に五千億円、新幹線建設には約三千六百億円の巨額をつぎ込んでおります。さらに、苫小牧東部の大型工業基地の建設計画も、住民の強い反対を押し切って進めようとしています。消費者米価や国鉄運賃など公共料金の凍結も、わずか半年間という、これはごまかしにすぎません。  こうしたことは、大企業の買い占め、売り惜しみや価格つり上げの野放しと相まって、本予算が物価安定とはほど遠く、国民生活を一そう困難におとしいれるものであることは明らかだと思います。  反対の第二の理由は、この予算は福祉重点を唱えながらも、実際には、逆に国民の負担を強め、生活難を促進するものであることであります。  これは各委員からも指摘されましたけれども、たとえば、老齢福祉年金は引き上げられたとはいえ、月額わずか七千五百円であって、しかも、その実施は十月以降に引き延ばされておるのであります。  生活保護基準も、昨年十月の五%増を含めても二〇%の引き上げにすぎません。このインフレのもとでは、全くこれは焼け石に水といわなければなりません。  さらに、健康保険家族と国民保険加入者の患者負担がふやされ、保険料の値上げも予定されております。  政府は、社会保障関係費を三六・七%ふやしたということを盛んに宣伝していますが、わが国の社会保障の国際的な劣悪な内容を思うときに、依然としてそれが根本的に改善されておらないままであることは明らかであります。  鳴りもの入りで宣伝されました二兆円減税も、初年度では一兆四千五百億にすぎません。しかもその内容は、高所得者層の税率は緩和され、給与所得控除の上限の撤廃がされまして、高所得者優遇のいわゆる重役減税といわれておるものであります。  一方、自動車重量税の二倍化とか、付加価値税導入の布石とも思われる印紙税の増税がはかられております。  また、住宅、下水道、環境衛生、公園など、生活基盤整備は、公共事業圧縮の名で低い水準に押えられております。たとえば公共住宅の建設戸数は、低家賃住宅を中心に前年度より四万五千戸も削減されております。家賃と分譲価格の大幅な引き上げも予定されるなど、国民の住宅難は一そう激化せざるを得ないことは明らかであります。  また、第四次下水道整備五カ年計画、これすら見送られまして、事業量は四十八年度を大幅に下回るというような実情であります。  一方、住民生活に密接なかかわりを持つ地方財政に対しても、すでに指摘されておりますように、膨大な超過負担の解消とはほど遠い、この解消をはかるどころか、国と同一の基調により歳出を極力圧縮するという方針を押しつけまして、地方交付税の千六百七十九億円も、大蔵大臣の一方的な措置によって削減するという暴挙を行なっております。こんなことで、どうして福祉重点予算などということができましょうか。  反対の第三の理由は、国民生活が深刻な破綻に追い込まれている中で、憲法違反の自衛隊のための防衛関係費は、前年度に比べて実に千五百七十六億円も増額され、締めて一兆九百三十億円というばく大な額に達しておるのであります。  さらに、アメリカの帝国主義的なアジア侵略に協力して、日本の独占資本の帝国主義的な海外進出を推進する海外経済協力費なるものが、南ベトナムなどインドシナ地域援助を中心に、千六百五十九億円という大幅な増額がなされております。  第四に、自主的、総合的エネルギー政策立場からの石炭産業の復興が緊急不可欠となっているにもかかわらず、政府は石炭産業取りつぶしの政策である第五次石炭対策を依然として続ける予算を組んでおります。  第五には、百九十六億円にものぼる電算機振興対策費をはじめとして、外航船舶建造の利子補給など、大企業のためには惜しげもなく補助金を計上しております。さらに、税制面においても、依然として大企業に対する特権的な減免税には手を触れておりません。逆に、公害対策費などの名目によって、租税特別措置の範囲を一そう拡大しようとしているのであります。  日本共産党・革新共同は、以上のような国民生活の破壊、大企業擁護の予算に強く反対するとともに、四党提案の本予算撤回と組みかえの動議に賛成すると同時に、とりあえず政府が、四十九年度予算を文字どおり物価の安定、異常なインフレからの国民生活防衛を最大の重点にして、四次防の中止と軍事費の大幅削減、列島改造計画の文字どおりの中止と、公共投資の産業基盤中心から生活基盤中心への転換、福祉の向上、農漁業、中小企業への積極的な援助、自主的エネルギー政策の確立、対米追随と新植民地主義的外交の転換など、経済、外交政策の根本的転換への第一歩を踏み出す予算を組むように強く要求するものであります。  最後に、いま国民生活は、インフレ、物価の狂乱によって破綻に瀕しております。すでに明らかにされたように、その根源は、前代未聞の悪らつな手段によって物不足をつくり出し、便乗値上げを行なって膨大な利得をほしいままにしてきた大企業、大商社であり、これらの代表を国会に証人として喚問し、徹底的に事態の真相を解明すべしとの声は、いまや圧倒的な国民の世論となっているのであります。  さらに、これら大企業に対する行政の癒着が一そう問題となっているときに、与党自民党はあくまで証人喚問に反対してきたのであります。このことは、財界と自民党政府の底知れぬ癒着ぶりを示すと同時に、憲法が国会に保障する国政調査権の重要な柱である証人喚問権をみずから放棄し、これをじゅうりんするものであり、断じて許すことはできません。  われわれは、今後とも国民生活を守り、国会の民主的運営のために、断固としてただいま申し上げましたような要求を貫徹するために奮闘するものであります。  以上をもって、私の討論を終わります。(拍手)
  230. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、岡本富夫君。
  231. 岡本富夫

    岡本委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十九年度予算政府三案に反対し、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党が共同提出した予算組みかえ動議に賛成の討論を行ないます。  最初に私は、予算案を編成する政府の基本的な姿勢について指摘したいのであります。  今日の物価狂乱の事態は、政府・自民党が長年強引に推し進めてきた産業優先の高度経済成長と、これによってどん欲な利潤追求をほしいままにしてきた大企業が、石油危機にあたっていよいよこの本性をあらわし、国民生活の深刻な不安を逆に利用した便乗値上げに狂奔したことにあるのであります。いま、政府の決断しなければならないのは、これまでの政策の誤りと失敗をすなおに反省し、同時に、大企業との癒着を断ち切り、大企業の横暴をきびしく規制することであります。  しかしながら、本予算委員会審議でも明らかにされたように、これには何ら答えようとしないばかりか、逆に野党の反対を押し切り、大企業代表者を証人として呼ぶことを多数決で拒否して参考人とするなど、これまでの政策や姿勢を踏襲し、ちまたにあふれている庶民の苦悩と怨嗟の声を全く無視しているではありませんか。われわれは、このような基本的姿勢を許すことはできないのであります。  以下、政府三案に反対するおもな具体的理由を申し述べます。  第一には、政府案は、見せかけだけのインフレ、物価対策しか講じていないことであります。  予算規模の圧縮も、地方交付税の操作によるものであり、内容的に見ても、公債の巨額な発行、さらに防衛費が一兆円台に乗せたこと等から見て、決して政府のいうような総需要抑制型予算にはなっていないのであります。  しかも、消費者米価、国鉄運賃の据え置きもわずかに半年間にすぎず、大企業のやみ価格協定や管理価格を排除するため、国民が期待している公正取引委員会の予算も、わずかに一六・六%の伸びにすぎないのであります。  第二には、インフレ、物価高の被害を最もこうむる社会的に弱い立場に置かれた人たちの生活を守るということや、あるいは、進んで国民福祉の向上という国民の要望にこたえていないということであります。  年率二〇%をこす消費者物価の上昇のもとで、老齢福祉年金は、十月以降、月額、これまでの五千円から七千五百円に引き上げられるのにすぎません。また、生活扶助基準も、福祉施設入所者の措置費も二〇%どまりという程度であります。生活保護世帯、老人、身体障害者等の生活を守るためには、物価高騰を押えることとあわせて、生活権を保障するに足りる社会保障関係費の手当てがなされなければならないということはいうまでもありません。同時に、西欧先進諸国に比べて著しくおくれているわが国の社会保障を充実するために、早急に社会保障長期計画を立て、これを実施する必要があるのであります。  第三には、税制改正案についてであります。  政府案では、四十九年度において、夫婦子供二人の標準世帯で所得税の課税最低限を百五十万円に引き上げようとしているにすぎません。また、今回の所得減税は、給与所得控除の上限をなくしたり、高額所得者の累進税率を緩和するなど、上厚下薄の減税となっており、国民要請とは反するものであるといわざるを得ないのであります。  さらに、大法人の税率は、ようやく四〇%に引き上げたにすぎず、その他利子、配当所得に対する優遇措置を温存してしまっているのであります。  第四には、政府案は、地方財政の困窮に何ら配慮をしないどころか、一千六百八十億円の削減を強制していることであります。国に交付税を貸し付けた措置については、四十四年の約束を破るものであり、余裕のない地方財政を圧迫するものであります。さらに、超過負担解消に努力しない政府の態度は、認めることはできないのであります。  第五には、政府の軍事増強に反対する国民の意向を無視し、しかも、一方では総需要抑制を強調しながら、防衛関係予算を一兆円台に乗せ、四次防を優先強行しようとしていることであります。  私は、政府に対し、防衛関係予算を大幅に削減し、国民生活を防衛するために財源を振り向けることを強く主張するものであります。  以上、四十九年度予算政府三案に反対するおもな理由を申し上げ、四野党の組みかえ動議に賛成し、政府予算三案に反対する討論を終わります。(拍手)
  232. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、安里積千代君。   〔委員長退席、井原委員長代理着席〕
  233. 安里積千代

    ○安里委員 民社党を代表し、議題となっております三予算案に対し、一括して反対しますとともに、野党四党が提出いたしました編成替えを求める動議に賛成する態度を明らかにしたいと思います。  異常なインフレ、物価高の中で、国民の不安を除き、経済危機に対処し、国民生活の安定を裏づける重要な予算案であります。今日のインフレ、物価高は、多年にわたる自由民主党政権のもとに、大企業優先、高度経済成長を目ざす施策の推進、特に、田中内閣のもとにおいて、日本列島改造論の構想を推進したことの誤りに基因するものであり、たまたま中東紛争に端を発する石油ショックに悪乗りした、いわゆる便乗値上げ、大企業の買い占め、売り惜しみがこれに輪をかけてきたことが顕著であります。その結果は、必需物資の物不足狂乱物価によって庶民、特に弱い者、正直者の上にそのしわ寄せが強く押し寄せてきております。原因あって結果があります。政府の内外情勢見通しの誤り、場当たり的な施策や、多年にわたり安易に経済大国を誇った物質中心の政治経済社会の情勢をつくってきたこの責任は免れないものであります。  このような重大な時期に対処いたしまして、本予算案は、政府国民に対する責任を果たす道にほど遠く、さればこそ野党四党は、それぞれ基本的な立場に違いはありますけれども、共同して予算案の組みかえ要求動議を提案し、国民生活の安定を目ざすと同時に、国民の福祉の向上をさせようと真剣に政府に迫っているものであります。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕  わが党が政府案に反対する第一の理由は、本予算案が、インフレを抑制せずに、依然としてインフレ促進の予算であるということであります。  なるほど、インフレを押さえるために、まず総需要抑制一つとして公共事業費を押えております。しかし、公共事業は四十八年度からの繰り延べ分は、一般会計で約一千五百億円、財政投融資で約八千五百億円、合計で約一兆円が四十九年度分にプラスされており、四十九年度の公共事業費は依然として抑制されておらず、テンポはゆるやかになったとはいえ、政府の予算案は、なおかつ日本列島改造構想を目ざしていることを物語っております。  また、政府が真剣に物価抑制をはかろうとするのでありますならば、まず、政府みずから、公共料金を少なくとも三年間凍結し、物価鎮静の先導者たる役目を果たすべきであります。しかるに、消費者米価、国鉄運賃などの公共料金値上げの据え置きは、わずかに半年間にすぎないのであります。  第二の理由は、福祉関係予算がきわめて貧弱だということであります。  社会保障関係費は、前年度比で三六・七%近くの伸び率であります。しかし、消費者物価が前年度比二〇%以上も上昇している今日にありましては、実質においては、対前年度比において一〇%の伸び率ぐらいにしかすぎないのであります。  また、本年度においては、健康保険家族と国民健康保険加入者の患者負担がふやされ、同時に、保険料率の引き上げも予定されております。このことは、とりわけ老齢者、生活困窮者、身体障害者、難病患者などの生活を窮地におとしいれるものであります。社会的な弱者に対しては、国が責任をもってその生活を保障すべきであります。それが政治の使命であり、福祉国家建設への第一歩であります。本予算は、それにはなはだしく遠いものであります。  また、公団、公営住宅などの公共住宅の建設戸数は、四十八年度よりも四万五千戸削減されております。現在、三百万世帯が住宅難に苦しんでいるといわれておりますが、これらの大半の世帯は、劣悪な狭い木賃アパートの生活を余儀なくされております。政府は、宅地開発公団の創設によって、庭つき一戸建て住宅を国民に与えるという夢のみを与えようとしており、当面する公共住宅の建設が大幅に削減されていることは、国民の期待に逆行するものであるといわざるを得ません。  第三に指摘しなければならないのは、国民の不公平をさらに拡大するものであるということであります。  政府のいわゆる二兆円減税については、当初夫婦子供二人の標準世帯では、年間百七十万円までが非課税でありましたが、これから大幅に後退し、今回の予算では百五十万円にまで引き下げられているのであります。すなわち、二兆円の減税が一兆円減税に大幅に縮小されているのでありまして、今日のようなインフレ状況におきましては焼け石に水であり、実質的には減税にはなっておりません。  そればかりでなく、給与所得控除の上限撤廃、高額所得層の税率軽減など、減税の重点が高額所得者に置かれているのであります。物価高騰で一番被害を受けているのは低額所得者の庶民であり、政府の減税措置は本末転倒もはなはだしいものであり、こうした措置は、逆累進課税への傾向をますます助長するものであり、所得の不平等分配をさらに拡大するものであります。  また、農林漁業の予算については、わが国の第一次産業の近代化をはかっていくという基本的な施策については、何ら新しいものを見出すことはできません。  中小企業の予算についても、大企業の横暴のもとに倒産がふえている今日にありながら、これに対する配慮はなされていないのであります。  第四には、地方財政を圧迫する予算であるということであります。  国の予算規模が縮小されたために、四十九年度の地方交付税のうち千六百八十億円の削減を行なうことは、地方財政を窮地におとしいれるものだといわなければなりません。  諸物価の高騰、地価の暴騰によって、公営住宅、下水道等の建設や福祉施設の建設、運営も行き詰まりつつあるのが地方自治体の現状であります。福祉国家の建設は、地方自治体の福祉財源を確保することが大前提となるのであります。そのためには、地方交付税の削減は取りやめるべきであります。  第五の反対理由は、防衛費の増大をあげたいと思います。  昭和四十九年度の防衛費は一兆円をこえ、四次防も第三年目を迎えようとしております。国民は、政府の防衛力増強計画に対しまして深い危惧の念を抱いております。わが党は、自主防衛の必要性を認める立場に立ちながらも、国民的合意が成立しない現状においては、四次防のごとき防衛力増強計画だけが独走することは、断じて許しがたいと考えております。  この際、わが国が率先して防衛費の削減をはかることこそ、アジアの緊張緩和を一そう促進し、ひいては、わが国の安全と平和を確立する道であると信じます。  最後に、私は、政府が真に大企業優先、生産第一主義から国民生活優先への転換をはかろうとするのでありますならば、四野党の組みかえを求める動議の趣旨に沿うて、いまからでも予算案を編成替えされんことを切望し、政府提出の三予算案に対する反対、野党四党の共同組みかえ動議に賛成する討論を終わります。(拍手)
  234. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、田中武夫君外二十名提出の昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算昭和四十九年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  235. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、田中武夫君外二十名提出の動議は否決されました。  これより、昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  236. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立多数。よって、昭和四十九年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  238. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて、昭和四十九年度総予算に対する議事は、全部終了いたしました。      ————◇—————
  239. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、国政調査承認要求に関する件について、おはかりいたします。  すなわち、予算の実施状況に関する事項並びに予算制度等に関する事項につきまして、議長に対し、その承認を求めることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  241. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る一月二十六日、総予算の審議を開始いたしまして以来、終始真剣なる論議を重ね、慎重な審議を尽くし、本日、ここに審査を終了するに至りました。これは、ひとえに委員各位の御理解と御協力のたまものでありまして、委員長といたしまして、衷心より感謝の意を表する次第でございます。  ここに、連日の審査に精励されました委員各位の御労苦に対し、深く敬意と謝意を表しまして、ごあいさつといたす次第でございます。ありがとうございました。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十四分散会