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1974-02-06 第72回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月六日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    塩谷 一夫君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       田中 正巳君    塚原 俊郎君       灘尾 弘吉君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       前田 正男君    松浦周太郎君       松岡 松平君    松野 頼三君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    辻原 弘市君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       八木 一男君    湯山  勇君       青柳 盛雄君    荒木  宏君       田代 文久君    松本 善明君       岡本 富夫君    鬼木 勝利君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局経済部長 熊田淳一郎君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 田代 一正君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省理財局次         長       井上 幸夫君         大蔵省証券局長 高橋 英明君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         水産庁次長   安福 数夫君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         中小企業庁長官 外山  弘君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君  委員外出席者         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         日本開発銀行総         裁       石原 周夫君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月六日  辞任         補欠選任   田代 文久君     荒木  宏君   不破 哲三君     青柳 盛雄君   坂口  力君     鬼木 勝利君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、本日外交問題を中心に、大体三つの柱で御質問をいたしたいと思います。  三つの柱とは、いわゆる日韓大陸だな条約の問題が第一の柱、第二の柱は、総理東南アジア訪問、第三は、政府のいっている政府主導経済協力とは一体何か、この三つを柱にして具体的にお伺いをしてまいりたいと思います。ひとつ、簡明直截な御答弁をお願い申し上げます。  まず第一点でございますが、先日調印されましたいわゆる日韓大陸だな協定に対して、一昨日、中国は、主権侵害であるからこれを容認できないという通告をいたしてまいりました。これに対して大平外務大臣は、日本政府としては十分配慮しているつもりである、このような記者会見を行なったのでありますが、十分配慮したということは、一体具体的にどういうことをなさったのでございますか。まず外務大臣に伺いたい。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 調印前後を通じまして、中国政府に対しまして、この内容につきまして詳細に説明をいたしてあるわけでございまして、日本政府といたしましては、中国政府主権を侵すことのないように配慮いたしたつもりでございまして、今後とも、先方要請がございますならば、十分説明を尽くして御理解を求めてまいるつもりでございます。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 十分説明をした、調印前後において。  そこで伺いますが、それでは、説明をなさっただけで、協議申し入れをなさったことはございますか、どうですか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の間の問題として処理すべき問題と存じまして、協議を当方から申し入れた事実はございません。
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 協議申し入れた事実はないとするならば、昨年ジュネーブで行なわれました海洋法国際会議準備会においても、その場合における日本態度とも違うし、また国際法規定にも私は反すると思う。国際法、ここにございますが、  一九五八年に締結をされた大陸棚に関する条約第六条、「相対する沿岸を有する二以上の国の領域に同一の大陸棚が隣接している場合には、これらの国に属するその大陸棚境界は、それらの国の間の合意によって決定するものとする。合意がない場合には、」簡単に言いますけれども、それらの国の等距離に基づくところの「中間線とする。」このような国際法上の規定がある。したがって、中国沿岸国であり関係国であることは間違いないのですから、日中間においてまずこの点について協議を行なう、そして、幸いにして合意があれば、その合意に基づく境界線によってきめるべきであり、また合意に達しない場合に初めて中間線をとるというのが、国際法上の規定であります。しかるに、関係国である中国に対して協議すら申し入れず、合意か不合意かも明らかでないままで、一方的に南朝鮮との間で協定を結ぶということは、明らかに国際法趣旨に反すると思う。  だから、中国側から主権侵害といわれても、その非は日本側にあるといわなければなりません。そういう点で、外務大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の一九五八年の大陸だな条約はわれわれも承知をいたしておるわけでございまして、海を隔てて存在する二つの国がある場合におきまして、特別な合意がない限り、中間線をとるということのように承知いたしておるわけでございまして、私どもといたしましては、そういうラインに沿ってやったつもりでございます。  したがって、岡田さんのおっしゃるように、国際的な協議をするという手順もわからないものではございませんけれども、われわれといたしましては、本件経緯と問題の性質にかんがみまして、十分先方説明をいたしまして、そして中国主権を侵すというようなものでないということについて、御了解を十分とっておくという努力を重ねてまいることが実際的であろうという判断で、今日までそういうラインで対処してきておるわけでございます。  中国側は、大陸だな自体に自然延長説をおとりになっておるように抗議の趣旨から拝察できますし、また、関係国協議ということになりますと、朝鮮半島において二つ政府があるわけでございまして、これを協議の場にのせるということになった場合の処理につきましてもたいへん困難な問題もございますので、日本政府といたしましては、中間線の中で、中国主権にかかわりのない領域で、日本側海域につきまして共同開発という差し迫った仕事について支障のないようにいたすのが、実際的な判断でなかろうかと配慮いたした次第でございます。
  9. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、そうおっしゃるけれども主権であるかないかを判断するのが、関係国との大陸だな問題に対する前提じゃありませんか。昨年、しかもここにも出ているけれどもジュネーブ日本側から、相対する国の場合は、等距離で、合意によって中間線を決定しようと、こういっておるじゃありませんか。合意のための協議さえ行なわれないで、それでかってに、これは日本主権でございますと、こう言ったって、あなたの一方的な判断であって、それの主権であるかどうかをきめるのが、これが協議合意の問題じゃありませんか。協議合意をしないで、少なくとも合意に達せない場合の以前においても協議もしないで、一方的にきめるというのは、これは相手の国から主権侵害といわれてもしかたがないではありませんか。どうなんですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題は日韓間においてもあるわけでございまして、御承知のように、日韓におきましても、大陸だなの自然延長説中間説と、とる双方立場というのはすでに食い違っておるわけでございます。したがって、この条約にも書いてありますとおり、双方の権利に支障のないという前提で、とりあえず共同開発についての合意を盛り込んだものでございます。  仰せのように、中国との間におきましても、そういう大陸だなという問題につきまして論議がありますことば、私も予想しないわけではないわけでございまして、そういう問題につきましては、先方から要請がございましたならば、われわれはお話し合いに応ずる用意はあるわけでございまして、それを回避しようとするわけではございません。  ただ、この条約を署名するにあたりましての経緯を問われた場合に、日本政府としては、そういう見解で、あらたまった協議という形でなくて、こういう配慮で行なったものであるということについて御了解を得ておくということでどうだろうかという判断で、協議という形をとらなかったわけでございますが、今後におきまして、中国政府におきましてこの問題についての協議要請がございますならば、私どもはそれをこばむつもりは毛頭ありません。
  11. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま外務大臣は、中国側から協議申し入れがあれば、これは協議を拒否はしない。しかし、問題は日本のほうから起こったのですから、日本のほうから協議申し入れるのがあたりまえじゃないですか。了解工作の話をしているくらいならば、説明をするくらいならば、なぜ協議をなさらないのですか。協議をする申し入れをなさったらどうなんですか。協議申し入れて、合意ができなかった場合には、国際法上の規定に基づいて、あなたのほうの中間線の話が出せるじゃありませんか。  なぜ協議なさらないのですか。協議申し入れをなさったらどうですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 日本側立場は、申し上げておりますとおり、中国主権を害するものでないという十分の配慮を加えてこの問題の処理をやろうということでございまして、それについて、先方側の御了得を得ておく必要があると考えて、協議という姿でなくて、説明という姿において接触を持ってまいったわけでございます。  しかし今後、この問題につきまして、日本といたしましては、中国主権を害しておるものとは考えていないわけでございますけれども先方からの御要請がございますならば、協議に応ずるということについて、私はこばむつもりはございません。
  13. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題にあまりかかわっておりましてもあれですが、少なくとも協議に入る場合に、当然協定実施は、これは実施をしてはいけないと思う。国際法の精神からいうと、まず協議を行なって、合意するか合意しないか、その上において協定実施をきめるべきなんです。私は協議をやるべきであると強く要求します。同時に、この協定実施は、協議のあとまで、協議結論が出るまでこれは実施してはならないと思う。あなた、そんなことをおっしゃっておるけれども、ことしラテンアメリカである海洋法国際会議で、この問題きまりますよ。その場合、実行しようとしたってできないのですよ。実施について、どのようにお考えになっていますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 これは数年前からの問題でございまして、韓国側におかれまして、開発につきましていろいろな措置がとられる気配が出てまいりまして、この会議におきまして、石油並びに天然ガス開発につきまして乱脈な事態が出てきては困るということで、そこにある種の秩序をつくっておかないと困るという配慮から出たわけでございまして、私どもといたしまして、この問題をこのまま放置しておきますと、あの海域におきまして、韓国側による開発が一方的に行なわれるという事態は、決して好ましい事態ではないと考えるのでございまして、これはどういたしましても、日韓の間で一つ秩序を確立しておく必要があると考えておるわけでございます。  したがって、岡田さんがおっしゃるように、基本的な海洋法上の問題の決着がつき、関連各国理解が十分得られて、というまでこの状態をほっておく、このままの状態で放置しておくということにつきましては、これは確かに御提案の御趣旨はよく理解できますけれども、実際的でない面もあわせて政府としては考慮しなければなりませんので、いま直ちに、それまでは、かりに署名いたしましても、私どもこれを実行に移すことはひとつ考え直したいということを申し上げるには、まだ私はそう申し上げる決心はついていないわけでございまして、この条約考えました経緯、現状にかんがみまして、実際的な措置として何がいいかということにつきましては、政府として十分考えておかなければならぬ問題であるということも、あわせて御理解をいただきたいものと思います。
  15. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうも大平さん特有の歯切れの悪いところがまた出たわけですが、この点だけひとつ伺っておきましょう。  国際法に反してまでは実施しません、国際法に反しても、なおかつ実施しますというようなことは言いません、これはそう理解してもよろしいでしょうね。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 私ども、現在の国際慣習法の中で許されるという範囲の中で処置しておるつもりでございます。
  17. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国際法に反してまでは協定を実行しません、そういうことですね。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 一般的な問題として、日本政府として、国際法に反してまでやるというようなことはできません。
  19. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうも次の問題に入りにくいのですが、この問題については、私はまだ納得できません。いずれ外務委員会その他で伺ってまいります。  次は、総理東南アジア訪問について、若干伺ってまいりたいと思います。  まず第一点は、総理東南アジア訪問に出発されるに際しまして、タイクラ運河についてたいへん関心をお持ちになった。出発前には研究もされて、期待を持ってお出かけになったようでございますが、その結果はいかがでございましたか。
  20. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 東南アジア訪問に際しまして、クラ運河に対して特別な関心を持って参りませんでした。
  21. 岡田春夫

    岡田(春)委員 たいへん簡潔な御答弁で、私も喜んでおりますが、しかし、新聞報道によりますと、マレーシアラザク首相からクラ運河反対意見があったのに対して、総理は「各国関心を持っているので出方を注視している。日本としていま意見は言えないと即答を避けた」、これは、クラ運河の問題については、関係諸国意見がまとまっているならば、日本態度を明らかにした、できるならばこれに賛成をしていきたいというお考えで、まだ関係各国意見がまとまっておらないから態度を留保したというように、私は新聞報道を受け取ったのでございますが、こういう点については、いかがでございますか。
  22. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 クラ運河に対しては、世界的なプロジェクトの一つとして存在をするということは承知いたしております。しかし、これはなかなかめんどうな問題であるということも承知しておるのです。  これは世紀の大事業であるということが一つあります。それから、この地域というのはゲリラ地域でございまして、なかなかそう簡単にやれるようなところでもないということも、おぼろげながら知っております。それから、これは各国の利害が相当複雑にからみ合っているものであるということも承知しておるわけです。  ですから、この問題に対しては、その程度のことは承知しております。また、東南アジアへ出かけるわけですから、こまかい問題は知らなくとも、シンガポールに行けばどの程度の反応があるということも、まあ予測できますし、それからマレーシアに行けばどういうふうな答えが返ってくるのかということも、政治家ですから、そういう面は大体わかるんです。  問題は、本拠であるタイが一体どういう考えなのか。こっちもこういう問題は聞きもしなかったんです。ですから、私も聞かなかったし、向こうからも、さすが全然出しませんでした。タイ側からは、本件に対してば全然触れておりません。ですから、五カ国訪問の中で、クラ運河ということでは全然ないんです。クラ運河ということには触れないで——これは隣国の問題ですから触れないで、マレーシア首相が、パイプライン敷設計画がございます、こういうものが計画段階を脱するようなときがあれば、日本の応分の技術的協力を得たい、こういう話、技術的な協力を得たいというような、そういうような——そこまで明確にいかなかったようです。とにかくパイプライン計画がありますということに対しての発言がありました。ありましたが、これに対しては、勉強はしなければならない問題だと思います、という程度のものであって、五カ国訪問に際して、クラ運河に対しては具体的には全く出なかった、こういうことです。
  23. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまクラ運河について、総理はある程度知っている。それはゲリラ地区である、それから関係国でもいろいろ意見がある、こういうことで、政治家常識としては知っているんだ。  それじゃ政治家常識として、もう一点伺いますが、水爆を使うということについては、あなたは御存じですか。
  24. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは水爆を使うというところまではこまかく承知しておりませんが、運河掘さくの一方法として、核爆発というものによって開発されるという一つ考え方があるという程度のことです。これは百三キロばかりにのぼるクラ地峡という——いや、これは政治家承知するくらいのことであって、あなたほど詳しくはございません。これはほんとうに新聞や雑誌に書いてあることをそのまま申し上げるのですから、これはそういうことです。百キロ以上ということですから、幾らあるんだいと言ったら、百三キロです、そういう程度です。そうして、百キロばかりのもので六八億ドルくらいかかるのではないかということのようです。
  25. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理政治家としてやはりもうちょっと御勉強願いたい。これはクラ運河の、英文ですが、宣伝パンフです。(田中内閣総理大臣「もうちょっと知ってます」と呼ぶ)知っているでしょう。知っているのならば、もっと伺います。  そのパンフの中にも水爆を使う区間が書いてあります。水爆を使う区間——しかも、昨年の九月  一日のタイ政府に提出をした予備調査報告書の中に、第五点として「基本的な結論」、これに二つ項目がある。第一の項目ではこのように書いてある。これは英文でここにあります。第一の点は「運河普通工法技術的に建設可能である。しかし運河の西部をすでに開発されている技術核爆発工法プラウシェア)によって開さくすることはまた可能であり、真剣に検討する十分な理由がある。」また、第六「核の選択」、この項目がある。この中には「部的に核爆発工法を受け入れることは、運河の融資にとり重要な意味を持っている。部分的核爆発の使用は経費の四〇%軽減を意味し、ゆえに動員される資本の軽減を意味する。この大幅な節約は、この案」いわゆる核爆発工法「を最も真剣に検討することを正当化させる」、このように書いてある。原文はここにある。ここまで書いてあるのですから、核爆発以外にはやらないのですよ。核爆発によるところの工法でやるということを、あなたのほうが御存知であって、これについての御意見をあなたはお持ちにならないのですか。どうなんですか。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、いまあなたが指摘をされたところまで勉強しておりません。勉強しておりませんが、百キロ余に及ぶ地峡の開さくでございますから、その中で掘さく方法もございますし、それから両側の海水に落差があれば、自然流下によってだんだんと幅を広げていくという工法もありますし、人為的にやれば、いまのように核を使うということも、技術的には考えられるわけでございます。  まあ、そういう意味で、膨大な費用と歳月を要するものであるということで、そういうような一つの案が提案をされておるという程度承知でございます。
  27. 岡田春夫

    岡田(春)委員 核を使うのがいいかどうかは、またあとで伺います。伺ってまいりますが、昨年の七月の十日から三日間、東京の帝国ホテルでこのプロジェクトの推進体の第四回目の会議が行なわれた。この第四回目の会議が最終的な会議であった。この会議には原水爆の関係者が非常にたくさん出ている。たとえば、アメリカから水爆の父といわれるテーラーという博士、ノーベル賞をもらったりリビーという博士、これらの人々が出て、日本からも出ているのですが、これはあとで伺います。  この会議によってまとめられたものが、水爆工法によるものです。この水爆工法によるもの、こういう報告書が政府のところへも来ているはずだが、総理大臣に、こういう報告書が来ているかどうかというのを聞くのはあれだから、二階堂官房長官でけっこうです。あるいはそのほかの大臣でもけっこうです。この報告書は、政府のどこに来ているのですか、知っておられる方がおありならば。……。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう報告書を日本政府としては承知しておりません。
  29. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その報告書を承知してないというのは、来てないという意味ですか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘の、昨年七月に東京で民間の国際会議が行なわれたことは、御指摘のとおりでございます。これは、日欧米の調査機関に、タイの民間会社が、タイの許可を得まして調査を依頼して、その調査機関の代表らが、技術面、資金面の問題につきまして報告を聴取する会議が七月末東京で行なわれたということでございます。この会議は、民間の国際会議でございまして、政府は直接関与いたしていないのでございます。  しかしながら、政府といたしまして、この運河開さく計画につきまして、将来どういう問題が提起されるかもしれないと存じまして、オブザーバーといたしまして外務省の係官をこの会議に派遣いたしまして、一切発言はいたさせませんでしたけれども、この会議の様子は、一応聴取せしめておりますことは事実でございますが、この会議といたしまして、日本政府に報告すべき性質のものというようなものとは承知していませんで、全く民間レベルの国際会議でございまして、もし報告することがありとすれば、タイ政府にやるべき性質のものであろうと思います。
  31. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ伺ってまいりますが、政府は関係ない、民間の会議である。民間の会議ならどこの会社が日本から出ておりますか。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 日商岩井が、タイ石油会社からの調査委嘱を受けておると承知いたしております。
  33. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日商岩井だけですか。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 それだけ承知しております。
  35. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だれか知っていませんか。日商岩井以外にどこか出ていますか。
  36. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日商岩井から日本工業立地センターというところに委託調査がありまして、それで日本工業立地センターというところでその調査をしたことがあります。それから、前に商工中金の副理事長をしていた渡辺君とかというのが、個人の資格で、その会議に出たかどうか知りませんが、それに参画しておるということを聞いております。
  37. 岡田春夫

    岡田(春)委員 政府は関係がない、民間企業の裏で政府が促進させているという事実もない、こう断定してもよろしいですか。
  38. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 よろしいです。
  39. 岡田春夫

    岡田(春)委員 報告書は政府の中にあるはずです。あとで申し上げます。報告書は五分冊で六〇〇ページあるが、この第四分冊は原爆、水爆の爆発工法が詳しく述べられている。  この内容についてどなたか御存じだろうと思うが、通産省、わかっているんじゃありませんか。——答弁がないようですから、ちょっと地図もつくってきました、あなたにおわかりになるように。——クラの場所はもうおわかりですね。クラというのは、マレー半島の、しかもマレーシアに近いところです。これがあなたのおっしゃった百三キロ、この部分に運河をつくります。その運河の開さく法は、ごらんください、百三キロの中で四十五・五キロ、ここを原爆でやるのです。赤くなっているところを原爆でやるのです。これは約半分が原爆でやる。原爆でやる場合に放射能がどのように出るか。これは何か朝日ジャーナルやなんかにも書いておりますが、あれは正確じゃありません。放射能はこのように出るのです。ニコバル群島に及ぶのです。その放射能は、飛んでスマトラを通って、そして日本方面に流れるわけです。  要点を申し上げますと、いま資料を配付しましたから、ごらんください。  まず第一に、原爆を使う場合こういうことになります。原爆を使う以外にないのですが、このクラ運河の規模は五十万トンタンカーの運航可能な水路をつくる。この水路は一水路型と二水路型とある。工事期間と費用は、まず工事期間は、普通工法によれば十年ないし十二年、水爆を使う場合には六年ないし十年。一水路型の場合の経費は、普通工法の場合に五十六億ドル、水爆を使う場合には三十五・四億ドル、二水路型の場合には、普通工法は百十億ドル、原爆工法は六十二億ドル。  それから出資はどのように予定されているか。出資は公的金融機関として世界銀行、アジア銀行。日本も関係していますよ、アジア銀行。アラブのオイル資金、それから日米欧の政府金融機関、それから民間銀行は日米欧の約二十の民間銀行、これが出資の予定である。  水爆の使用は、先ほど申し上げたタイ政府に出された報告書にはっきり出ているが、東京会議で最終的に決定された。  水爆を使う区間は、いま言ったように四十五・五キロ。  水爆の使用量、そこに書いてあります統計の一番上を見てください。一水路型の場合には百七十六個水爆を使う、二水路型の場合には百三十六個使う。ですからこれは、朝日ジャーナルその他の新聞に出ているのは正確でありません。これが正確です。  エネルギーの総量は、一水路型の場合には四十二メガトン、二水路型の場合には百五メガトン。四十二メガトンというのは、広島で使った原爆の二千百倍です。二水路型の場合には、百五メガトンですから五千二百五十倍です。こういうおそるべきことを考えている。  そして水爆による影響。どういう影響があるか、それはまず地震です。一回五メガトンの水爆をやりますから、それを一日に三回やるんですから、三回地震が起こるのです。  第二、放射能の死の灰ですね、降下灰。これはどのように及ぶか、これはここに書いてある。この地図のうしろを見てください。人間が許容されるラジウム、それは最大限度〇・一七Rというのを受けると、これは人間は死ぬのです。その〇・一七Rを受けるのが一番外側の線です。この地図のうしろ、このように放射能が出る。しかもこのような放射能がすぐ近くのニコバル諸島に及ぶのが十五時間、スマトラ島に及ぶのが三十六時間。もし水爆の実験をやれば、このような形で死の灰が降ってくる。しかもそれに、そのような場合にこの部分から立ちのきする人口は全部で二十一万五千、この地域人口の約四割五分が立ちのきしなければならない、立ち入りの禁止期間。この禁止期間は非常に不確定ですが、一応第四分冊の報告書に書いてあるのは、六カ月ないし一週間と書いてあります。しかしこれは正確ではありません。もっと六カ月以上です。こういう実態です。  これほど重大なことが東京会議できめられているのですが、外務省ではだれか出ておったそうだけれども、これほど重大なことを外務大臣知りながら、これは民間の会議ですから私は知りませんで済まされますか。どうですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 これはもともとタイ石油会社の社長がタイ政府の許可を得て調査をいたしておるもので、その調査にあたりまして、日本の企業も委嘱を受けておるという性質のものでございまして、政府として全くまだ関知していないところでございます。  この計画自体につきまして、いま政府が公式の見解を述べるなんということをやりますと、おまえは何という不注意なやつであるということで、おしかりを受けるに違いないと思います。
  41. 岡田春夫

    岡田(春)委員 政府が関知しないとおっしゃるけれども、これはあとで具体的に伺います。  それじゃ、外務大臣、だいぶん御答弁をしたがっておられるようですから伺いますが、部分核停条約がありますね。部分核停条約、これは日本が一緒に調印して加盟国になっておるが、部分核停条約の第一条一項bに基づいて、放射能が爆発国の領域以外に及ぶ場合には禁止されていると思いますが、どうですか。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 条約問題、条約局長から説明させます。
  43. 松永信雄

    ○松永政府委員 部分核停条約第一条におきましては、aでもって「大気圏内、宇宙空間」「並びに領水及び公海を含む水中」というのがございまして、地下は触れておらないわけでございます。(岡田(春)委員「bに該当する」と呼ぶ)bにはいまの御指摘の点は該当すると存じます。
  44. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま条約局長がはっきり言いましたね。いま言ったように、荒舩委員長もなるほどたいへんだなという顔をされたのだが、放射能がニコバル群島にまで及ぶような、こういうことは禁止されているのですよ。これは禁止されていることは、大臣、間違いございませんね。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 条約局長から申し上げたとおりでございます。
  46. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃその次、昭和四十二年三月二十二日の予算委員会で、平和利用の核爆発と原子力基本法との関係について横路節雄君が質問をして、三木外務大臣答弁している。こういうように言っている。横路節雄君「外務大臣、一体いま日本に原子力の平和利用のための核爆発の権利がありますか。」三木外務大臣は「これはいまのように平和利用と軍事利用が区別のつかないときに、平和利用という名のものに核爆発の装置を開発する権利があると考えることは危険な考えであると私は思っております。」また続いて「これはもうやらぬということ、そういう権利があると考えることはこの際危険であるので政府はとらぬ、こう申し上げておるのです」、三木さんはこう答えておる。これに対して、私はこの考え方は現在も変わらないと思うが、森山さん、どうですか。
  47. 森山欽司

    ○森山国務大臣 原子力基本法によりますと、原子力の研究、利用、開発を平和目的に限るとされております。そして、平和目的ということの中に核爆発ということも、これは法文上は平和利用ならば禁止されてないという解釈も可能でございますけれども、先ほど御引用がございましたように、当時の三木外務大臣が御発言されましたように、平和の目的と軍事目的の区別が非常にむずかしいという段階でございますから、これは好ましいことではございませんし、かつまた、わが国として、そういう装置を開発するということはいたさないという方針になっております。
  48. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ森山さん、続いて伺いますが、さっきから御説明しているような水爆による運河の開さく、それは日本政府としては、こういうものはとるべきではない、いまの解釈からいくと、そういうように考えますが、いかがですか。
  49. 森山欽司

    ○森山国務大臣 ただいまお話しのように、核爆発装置を用いて運河を海外において開さくするという事柄について、日本人が関与いたしますことは、先ほど申しましたと同様の理由をもって好ましいことではないと考えております。
  50. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうです。民間人であっても好ましくないと言っていますよ。  そこで、もう一つ部分核停条約の第一条第二項。いいですか、条約局長、読んでおいてください。この中に、全体を読むと長くなるから簡単に言いますが、「他の核爆発実施を」——「他の」というのは、原子兵器の場合以外の爆発です。「他の核爆発実施を実現させ、奨励し、又はいかなる態様によるかを問わずこれに参加することを差し控えることを約束する。」だから、唯一の被爆国である日本が、条約の加盟国として、たとえ民間企業といえどもこのような行為をもし行なったとするならば、これは第一条二項に該当して、条約の義務違反である、部分核停条約の違反である、こういう点は条約局長お認めになるでしょう。
  51. 松永信雄

    ○松永政府委員 お答えいたします。  第二項では、「1に掲げるいずれかの環境の中で行なわれ、又は1に規定する結果をもたらす」云々とございます。したがいまして、その1に掲げますところの態様のもとにおきます核爆発について参加することを差し控えることを約束するということであろうと存じます。
  52. 岡田春夫

    岡田(春)委員 条約局長、それは私の言ったのと同じだ。さっき言った1のbも、放射能が及ぶ場合にはこれは認めない。したがって、こういう場合の実験をやるということを奨励したり、参加するようなことは差しとめなければならない、こう書いてある。二項はそのとおり書いてある。
  53. 松永信雄

    ○松永政府委員 そのとおりでございます。
  54. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでいいんです。  それじゃ、こういうようなことをもしやったとするならば、部分核停条約にも違反する。外務大臣、どうですか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 いま本計画は、タイの一会社がタイ政府の許可を得て調査をしておると承知いたしておるわけでございまして、公式にも非公式にも、日本政府には何らの接触がいままでのところないわけでございまして、こういう計画がなるのかわからないのか、なるとして、どういう方法で行なわれますものか、それに対しまして、できた場合に、日本政府はこういうことに協力するのかしないのか、かりに協力するとして、どういう形で態様で協力することになるのか。そういうことは、全くいま未知の問題でございます。いま条約局長にお尋ねのように、核防条約から申しますと、そういう規定になっておるということは、私もよく承知いたしております。
  56. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、こういうことを現実に東京会議でやっているんじゃないですか。しかもあなた、報告書の中にそう書いてありますよ。報告書を見ないでそういうことを言われたら、話にならない。報告書を出してください。報告書は政府の中にあるはずです。あとで言います、場所はどこにあるかも。  まあそれはあとでやりますが、もっと進みますよ。さっき外務大臣と通産大臣、二人で答えられたが、この水爆の開さくによるところのクラ運河、これに対しては、日商岩井だけではない。さっき答弁のあったように、財団法人日本工業立地センター、会長は石坂泰三、これは昨年の五月二十八日にセンターの中に、運河計画推進委員会を設けた。そして委員長には鈴木雅次、これは文化勲章受章者、委員には同センターの理事長伊藤俊夫ほか八名、事務局長には飯島貞一常務理事、こういう人が委員会をつくってこの推進をやっておる。昨年の七月の東京会議においては飯島貞一氏が参加している。しかもそれだけではない。さっき御答弁がなかったが、中曽根さん、どうですか、東京タンカーの社長壷井玄剛、この人も出ている。丸善石油も出ている。この事実をお認めになりますか。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは推進ということではなくして、フィージビリティースタディ、つまりシンクタンクとしての機能で調査をしておる、こういうものであると承知しております。  それから壷井玄剛君あるいはそのほかの人は参加しているかもしれません。その点は私のほうはまだ調査未済であります。
  58. 岡田春夫

    岡田(春)委員 はっきりしています。そればかりじゃありません。さっきも御答弁になりましたが、政府の関係者として具体的にお話しします。政府は関係ないと言っているけれども政府の機関である商工中金が、なぜその代表として渡辺誠氏を東京会議に出席さしたのですか。しかもこの点は、きょう大蔵大臣がいないが、総理大臣、伺いましょう。(「青嵐会……」と呼ぶ者あり)いや、青嵐会じゃ聞いても始まらぬ。この会議の出席にあたって、渡辺誠氏は、大蔵省の承認を得て出席をしたということを本人が言っておる。政府は関係あるじゃないか。どうなんですか。
  59. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 渡辺誠君は、御承知のとおり国際金融局長の前歴を持ち、商工中金の副理事長の職にあったと思います。現在はその職を退いておると思いますが、その当時、商工中金の副理事長として出席をしたのか、それから職を退いた後出席をしたのかは、私はよく承知しませんから、大蔵省当局から調査の上、お答えいたします。
  60. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほどの御質問にございまして、大蔵省が渡辺誠氏の出席について了承したという事実は承知しておりません。  ただ、私ども承知しておりますのは、当該グループから、商工中金の理事長に対し参加させてほしいという申し出がございまして、これが商工中金の業務に支障がない、かかわりないことであるということで了承を与えた、かように承知しております。
  61. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかも、東京会議だけですか。そうじゃないでしょう。渡辺誠という人は、これはちょっと説明が要りますけれども、このプロジェクト推進体には常設的な国際機関がある、この国際機関が二つある。一つは上級審査団、これはSRGという。もう一つ技術顧問団、、TAGという。このSRGは五人で構成されておる。タイのサラシンという元首相、それからアメリカの前の財務長官のアンダーソン、それ以外に三人の人がいるが、その中の一人として渡辺誠氏が商工中金の副理事長の資格で前から参加している。こういう事実、はっきりしていますよ。いま答弁した人、どの人か知らぬが、それは認めますね。
  62. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 渡辺誠氏がいま御指摘の事実に参加しておったかどうかは、さらに私、具体的に確認させていただきます。承知いたしておりません。
  63. 岡田春夫

    岡田(春)委員 調査してください。  それ以外にあります。いいですか。今度は総理に直接関係する問題だ。安芸皎一さんは、対外経済協力審議会の委員、首都圏整備委員、その他の有力な委員です。この人は、日本地域開発首相顧問、首相顧問の肩書きで出席をしている。あなたは、関係ないなどとおっしゃれないですよ。その証拠に、ごらんください。いま配付をした資料の中で、この一番下の英文をごらんください。英文の一番下に安芸皎一と出ている。しかもそのうしろに、地域開発首相顧問になっている。これは首相顧問の肩書きで出ている。これは正式の報告書です。しかもこの人は、三月に行なわれたオークランドの第二回目の会議、この二回目の会議では、安芸さんは水爆の問題の研究のために出席をしている。ネバダの実験にも参加しているはずだ。東京会議にはもちろん出ている。しかもこれは首相顧問になっているじゃないですか。これはどうなんです。
  64. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 安芸皎一氏が、わが国を代表できるくらいの国土開発とか地域開発の権威であることは、これはもう申すまでもない事実でございます。まあ学者でもありますし、行政の経験もございますし、斯界の権威であるということは私も承知しております。しかし、首相顧問というのは、そこに書いてあるかもわかりませんが、そういう制度はございませんし、制度のないものを任命するはずもございません。任命もしておりませんし、首相顧問ではありません。
  65. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではクラのプロジェクトは、詐称したわけですか。タイ政府に出した正式報告書の中に出ていますよ。これは報告書のサマリーですが、この一番うしろに出ておりますよ。これは詐称したということになりますね。
  66. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 その書類がどのような状態でつくられたかわかりませんが、制度上は首相顧問はありません。閣議でもって決定した事実もございません。私が任命したことも全くありません。どういう経緯でそういうふうな肩書きがついたのか、これは全然わかりません。
  67. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたはそうおしゃるけれども、こういうことを言っている限りは、国際的にはこれを信用しますよ。タイ政府は正式の文書をもらっているのですから、あなたの顧問であるということははっきり向こうは思っていますよ。私設の顧問であるか、公的な顧問であるか、それは私は知りませんよ。  それだけじゃない。さきに、もう外務大臣が正直に言われたのだけれども、東京会議には外務省と通産省が出ている。大蔵省も出ているといわれている。外務省、言いましょうか。外務省の名前は、柳博という人が出ている。それはお認めになりますね。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 だれが出たか、承知していませんけれども、オブザーバーとして出たということの事実は聞いております。
  69. 岡田春夫

    岡田(春)委員 すぐ調べてください。調べて御返事いただきたい。アジア局から来ているから、アジア局の……。
  70. 中江要介

    ○中江説明員 東京会議に外務省から出席いたしましたのは、御指摘のアジア局の南東アジア第一課の柳博事務官でございます。
  71. 岡田春夫

    岡田(春)委員 通産省からも出ている。通産省からは通商政策局の小久保寿一、この人が出ている。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はそのことを承知しておりません。それから、いま立地公害局長に聞きましたら、知らないという返事でありました。調べてみます。
  73. 岡田春夫

    岡田(春)委員 調べてください。大体、小久保氏は報告書まで出している。知らないなんかで済みません。私がきょう、クラをやることはみな御存じのはずだ。外務省のほうはちゃんと調べてある。通産省だけが調べてない。どういうわけです。通商政策局長は来ていますか、委員長
  74. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 来ていますか。
  75. 岡田春夫

    岡田(春)委員 こういう不謹慎だから困るのですよ。私がクラをやることは知っているはずなんです。
  76. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。どうですか。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 電話で聞いています。
  78. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 電話で聞いているのだから……。ひとつ早くやれ。——どうですか。わからぬかな。  それでは、次のことを聞いてください、電話で聞いているところだから。どうですか、岡田君、次の質問をしてください。
  79. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 小久保という事務官が傍聴で出たそうです。
  80. 岡田春夫

    岡田(春)委員 小久保寿一という人が出た。報告書も出ておりますね。
  81. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 報告書は私、承知しておりません。それも調べてみます。
  82. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その報告書の中には、水爆をやる膨大な計画であるという報告も出ているはずです。この点は御存じですか。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 オブザーバーとして出たそうですが、報告書は出ていないそうです。
  84. 岡田春夫

    岡田(春)委員 出ています。はっきり出ています。来ていないなどという、うそをおっしゃってはいけません。下僚に、通産大臣は誤らせないようにさせなければだめですよ。出ています。もう一度お調べなさい。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これを担当しております南アジア東欧課の課長から聞きましたら、課長の手元には出てないということであります。
  86. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはおかしいじゃありませんか。外務省はオブザーバーで出ておって、報告書が出ている。通産省は、同じように傍聴で出ておって報告書が出ておらない。もし出ておらないとしたら、通産省、職務怠慢じゃないか。外務省は出しているというのに通産省は出していない。遊びに出したの。報告書が出てないなんてうそですよ、見ている人があるんだもの。課長、もう一度調べなさい。  次へ行きます。外務省は、アジア局の地域政策課で昨年の十一月二十一日、マル秘文書として、秘密文書として、クラ運河について文書をつくった。各官庁に全部配付している。どうです。答弁してください。
  87. 中江要介

    ○中江説明員 アジア局では、本計画が現在では民間ベースで進んでおりますけれども、その規模の大きさ、その他内容の複雑さにかんがみて、常時研究いたしておりまして、その報告書は随時つくっております。  で、いま御指摘のものがあるかないかについては、上司の御許可がないと申し上げることができません。
  88. 岡田春夫

    岡田(春)委員 上司の許可がなければと、これは一体何ですか。ばかにしなさんな。上司の許可がなければとは何だ。そんなことなら私はもうやれない。やめます。   〔発言する者多し〕
  89. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 どうぞお静かに願います。
  90. 中江要介

    ○中江説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の文書は、アジア局の地域政策課で研究してつくっている幾つかの文書の一つでございまして、存在いたしますが、それをどこの官庁に配ったかということは、さっそく調べて御報告いたします。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 それを御報告できるものであるかどうかは、私はそれを見ていませんので、一応見た上で、考えさせていただきたいと思います。   〔「ではこのまましばらく待ちましょう」と呼び、その他発言する者あり〕
  92. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 大平外務大臣、ただいまのを御報告願います。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 私どものアジア局の地域政策課で研究いたしておりまする資料につきましてのお尋ねでございまして、これを外務省以外の各省のどこまで配っておるのかどうなのかという点を、いま至急調べております。  それから、その内容でございますが、国会の本委員会の御要請がございまするならば、提出いたします。
  94. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げます。  ただいまお聞きのとおりですから、直ちに正午の理事会をやるときまでに至急出させるようにいたしますから、どうぞ審議を継続してください。(「それが出てこなければ審議は進まないのだよ」と呼び、その他発言する者あり)だって、岡田君が資料を持っているんでしょう。持っているんなら審議ができるじゃありませんか。岡田君は、さっきから持っている、持っていると言うのだから、わかるじゃありませんか、自信を持って言われているんだから。だから、その資料に基づいて審議をしてください。お昼までに出させます。
  95. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私が資料を持っているか持っていないかの問題は、別の問題です。私が資料を持っているか持っていないかの問題ではない。問題は、その事実があるかどうかをいま聞いているのです。どこへ配付をしたんですかと聞いている。だから、それ以外は私は進められませんよ。
  96. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そこで、先ほどの御質疑では、外務大臣に資料があるかないか、それを早く持ってこいと、こういうことですから、それは早く持ってこさせます。それからなお、大平外務大臣は、それをどこへ配ったかということを昼の理事会までに調べて報告します。こういうことです。  それから、委員会の前例は、資料の要求が前もってあれば、それを出しますから……。
  97. 岡田春夫

    岡田(春)委員 速記録を調べてごらんなさい。私は資料を出せと言っているのじゃないのですよ。その資料をどこへ配付したかと聞いているのですよ。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 いま電話で照会いたしましたところ、運輸省には非公式に渡したそうでございます。
  99. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それ以外は。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 それ以外は、私、承知いたしておりません。
  101. 岡田春夫

    岡田(春)委員 おかしいじゃありませんか、あなた。あまり関係のない運輸省に配付して、通産省にもやっていないのですか。それは一体どういうことなんですか。ね、運輸省というのはあまり関係ないじゃありませんか。運輸省だけ行って、ほかのほうに行っていないのですか。そんなばかな話ありますか。納得できませんよ、そんな答弁は。
  102. 中江要介

    ○中江説明員 この資料の内容は、いままでの経緯の概略が書かれておるものでございまして、これをアジア局でどういうふうに見たかといいますと、これは、運河の建設ということの持つ意味が、マラッカ海峡との関係で問題になっておりますので、そういう観点から、マラッカ海峡の測量に協力していただいております運輸省のほうに、非公式にお渡しした、こういうふうに私は了解いたしております。
  103. 岡田春夫

    岡田(春)委員 運輸省だけしか行っていないとは言ってない、通産省に行っているとも行っていないとも言ってない、さっきの答弁を聞いていると。その点はどうなっているのかというのを、さっきから聞いているのです。参事官は、そういう答え方はだめです。
  104. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま、運輸省に非公式に渡した経緯を御説明いたしたわけでございますけれども、その他の官庁にどうしたかという点は、電話で照会いたしました限りでは、配付をしていない、こういうことでございます。
  105. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大体、アジア局長が来てないのは、どういうわけですか。前から言ってあるじゃありませんか。参事官の答弁なんか、私は聞きたくない。大体、責任を負えるのですか。だめですよ、こういうことでは……。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 アジア局長が本委員会に出席いたしておりませんのは、私の指示によるものでございまして、本日、ほかに余儀ない公務がございまして、そちらのほうに出ていただき、参事官中江君を、私と同様に予算委員会のほうに出席させることにいたしましたわけでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  107. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの御答弁だけでは了解いたしません。やむない公務によりとは、一体どういう公務ですか。予算委員会があって、しかも私がやるということで、特に外務省は出てくれということを事前に通告して、クラ運河をやるということも言って、それなのになぜ出ないのですか。もっとはっきりしない限り了解しません。参事官の出席では、私は了解できません。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 私が外務省の責任を持っておるわけでございまして、私が出席いたしておるわけでございますので、御質疑をちょうだいいたしまして、不明な点につきましては、なお調査の上、答えるわけでございますので、その点につきましては、御了承をいただきたいと思います。
  109. 岡田春夫

    岡田(春)委員 了解しません。公務とは何だ、公務とは。
  110. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 中江参事官、その資料は運輸省に出しただけだ、こう言うのでしょう。
  111. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの点は、運輸省だけに配付している、こういう話ですが、私はそうでないと思う。この点はお調べをいただきたい。  しかし、それだけではない。いいですか。先ほどからいろいろ何とか出しているこの五分冊、六〇〇ページの報告書、これは政府が持っているはずだ。これは総理の近くにあるはずだ。総理自身は、そういうこまかいことまで知らぬだろうけれども総理のほうで——二階堂官房長官、調べてごらんなさい。総理の近くにあるはずだ。通産省もある可能性はあるけれども、しかし、総理の近くにあるはずだ。秘書官が持っているはずだ。総理秘書官が持っているはずだ。それは私は場所は言いませんけれども日本のある商社の中からそっちへ届いているはずだ。調べてください。
  112. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げます。午後の委員会再開までに……(岡田委員「それははっきりしてください」と呼ぶ)しかし、あなたの言うことは、まるで忍術使いの言うようなことで、だめじゃありませんか。総理の近くにあるのなら、どこにあるということを言いなさいよ。そんなばかな話があるか。だめですよ。そんな架空な話じゃ困りますよ。そんなばかげた話は聞きませんよ。秘書官のだれに、どこの秘書官に……。   〔「答弁のしようがない」「それが質問のポイントだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  113. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 だから、ポイントだから、どこにあるかということを午後までに調べます、こういうことだから、おわかりになるはずだ。(「休憩」と呼ぶ者あり)いや、それで休憩じゃ困りますね。  岡田君に質問いたしますが、どこにあるのですか。総理の秘書官のだれが持っているのですか。それじゃ架空な話じゃありませんか。だから、あるとすれば、後ほど調べてそれを出すことにいたそうじゃありませんか。何か架空なことでは困ります。(発言する者あり)忍術使いは取り消しましょう。  では、あらためて申し上げます。架空なことは困りますということだ。(「架空じゃないよ」と呼ぶ者あり)それじゃ証拠をあげなさい。  それでは答弁しますか。——二階堂官房長官。
  114. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 お尋ねの資料が総理側近にあるということでございますが、私は総理の秘書官にも確かめました。そういう資料はございませんと、明確に言っております。
  115. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう答弁ですが、私は了解いたしません。しかし、この問題だけにこだわってはいけないので、続いてやりましょう。  総理、さっき御答弁になりましたが、タイのサンや首相にお会いになったときに、この問題をあなたのほうでお出しになったんじゃありませんか。
  116. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 全く出ておりません。
  117. 岡田春夫

    岡田(春)委員 トーキングペーパーの中には、この問題ございますね。
  118. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それはわかりません。私は見ておりませんから、わかりません。
  119. 岡田春夫

    岡田(春)委員 出発前にトーキングペーパーをつくっている。このトーキングペーパーの中にクラ運河の問題がある。
  120. 中江要介

    ○中江説明員 外務省が準備いたしましたトーキングペーパーの中に、いろいろの項目がございますが、その中にクラ運河の問題は、当時すでに問題になっておりましたので、記載してございます。
  121. 岡田春夫

    岡田(春)委員 参事官では、私は答弁聞きたくありません。先ほどアジア局長が公務上の理由によるという、そういう理由では、私はわかりません。なぜならば、田中総理に同行したのはアジア局長だからです。直接に聞かなければわかりません。
  122. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アジア局長よりも私のほうが確かなんです、私が首脳会談の相手ですから。ですから、私はこの問題を全然タイでは話をしておりません。タイばかりでなく、五カ国で話にならなかったのです。それで、五カ国とも全然クラ地狭の問題は出ないのです。(岡田(春)委員「ラザクとやっている」と呼ぶ)ラザクさんとは、クラ地狭の問題ではなく、パイプライン計画がございますので、パイプラインに対してはということであって、ラザクさんでも、隣のタイの問題に対して、競合するような問題について、クラ地狭はやめて、こちらのほうに御協力を願いますということを、国際慣習上言うわけはないじゃないですか。あなたもよく知っておるのだ。その程度のわきまえはちゃんとしております。御自分は運河の問題には全然ノータッチで、私のほうでは、いまパイプライン計画というものを勉強しております、こういうすなおな発言があったのです。それだけの話で、クラ地狭の問題というのは全然出てないのです。(岡田(春)委員「出ておりますよ」と呼ぶ)出てません。それは、あなたはきっと外務省から出たトーキングペーパーを見たのでしょう。トーキングペーパーは、私に勉強させるために、外務省があらかじめつくるのですよ、予想質問集というものを。国会の予想答弁集というものと同じものだ。そういうものですが、しかし実際の首脳会談には全然出ておりません。本人が述べておるのですし、外務省の会談記録にもそんなことは絶対ないはずです。してないもの、あるはずがありません。
  123. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたとラザクとの話でパイプラインは出たかもしれない、それはあなたがおっしゃるのだから。クラ運河の問題は出なかったですか。(田中内閣総理大臣「出てないですよ」と呼ぶ)出ないのに、新聞記事には書いてあるのですか。新聞に書いてある。あなた、各社書いてあるのですよ。どの新聞社も書いてあるのですよ。朝日新聞も書いてあるし、共同通信も書いてあるし、ここに切り抜いてある北海道新聞にも書いてあるし、全部書いてある。  それじゃ新聞は間違いですね。
  124. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 新聞はどういう立場でお書きになったか、私はわかりません。私は新聞記者に発表もしておりませんし、新聞社との会談もしておりませんから。ただ、首脳会談をやったのは私です。首脳会談というのは、三時間やっても、ほとんど一対一でやっているのです。ですから、首脳会談というのは、これは私が言うまでもなく三時間でも五時間やっても一対一ですよ、ずっと。それを外務省が明確に記録しているはずなんです。ですから、私が確認をして、あらためて確認をせられたいと言えば、そのことばどおり両国が記録をしておるのです。  ですから、新聞にはどういう問題が出るであろうというようなことで書いたかは、それはわかりませんよ。私は、新聞社はどういう意味で書いたかわかりませんが、私の五カ国の中で、クラ地狭の問題が具体的に首脳会談で出たところは、タイでもなかったんです。それからマレーシアでもないんです。しいて言えば、先ほど言ったように、クラ地狭の問題は隣国のタイ問題ですから、だからそれに触れないで、私のほうにはパイプラインという問題がございます、こういうことなんです。それで、シンガポールでも出るかなと思ったら、全然出ないのです、向こうはさすがに。出ないけれども、シンガポールというものは、航行上非常に重要なところである、こう言いましたから、私はロッテルダムが第一、ニューヨークが第二、横浜が第三、第四だったものが横浜とシンガポールがひっくり返って第三になったから重要ですなと、こういうことですよ。  そういう三カ国で出ないものが、フィリピンやインドネシアで出るわけないでしょう。ですから新聞社に聞いてくださいよ、あんた、どこからそれを聞いたのか。
  125. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、そんなことを言うけれども、あなた出発前の新聞記者会見で言っているじゃないか。出発前に言っているじゃないの。クラの問題はある、こう言っているじゃないの。(田中内閣総理大臣「だからそれと何の関係があるのだ」と呼ぶ)関係あるじゃないか。(田中内閣総理大臣「ない」と呼ぶ)それじゃ、この新聞記者は  いいかげんだって言っているんですか。私は新聞記者に聞くわけにはいかない。しかも、あなたがこう答えたということまで書いてあるじゃないか。(「総理、発言求めて」と呼ぶ者あり)もう  一度言いましょう。こう書いてあるじゃないか、新聞記者は。いいですか。「この問題は、ラザク首相から「クラ地狭を運河にするとマレーシアにとって大変な問題になるので、ぜひパイプラインにして欲しい」と要望する形で出された。田中首相は「各国関心を持っておるので、出方を注視している。日本としていま意見は言えない」と即答を避けたが、首脳会談でこの問題が取り上げられたこと自体、クラ運河の構想がかなり具体的に進んでいることを示すものとみられる。」このように書いているじゃないか。書いているじゃないか。私が新聞記者に聞く問題じゃない。
  126. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは新聞記者の主観によって書かれたものであることは言うまでもありません。私は、その問題に対しては新聞記者会見もしておりません。現に、首脳会談をやったのは、だれでもなく私です。私が国会で、出なかったものを出たと申し上げるわけにはいきません。出ておりません。一国の総理大臣の公式の場における発言を御信用ください。ないんです。
  127. 岡田春夫

    岡田(春)委員 出てる、出てないは、私は見てないからわかりませんよ。しかし、あなたが言わなくても、ほかの日本の代表団の一行の中に出ていれば、それは事実としてあるじゃないですか。新聞記者の言っているのは、各社ともこれはうそを書いたんですか、それじゃ。うそを書いたということになるじゃないか。一社だけではないんですよ、あなた。各社書いているじゃありませんか。各社書いているのに出てないというんですか。
  128. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 どうです。はっきりもう一ぺん、総理
  129. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 岡田君、明確に申し上げます。  あなたは新聞の記事を前提として、述べられておりますが、私は首脳会談の当事者であります。(岡田(春)委員「もちろんそうです、それは認めます」と呼ぶ)それは当事者として、首脳会談に出たか出ないかという御質問でございますから、事実を述べなければなりません。私は、クラ地狭の問題が出ておれば、すなおに申し述べますよ、クラ地狭の問題が出たということを申し上げて何も悪いことないですから。そうでしょう。何もこっちは不利でもないし、事実でございまして、出ておれば、それはいろいろな、しかしまだ不勉強でございますよ、日本協力できるかどうかわかりませんよ、というような具体的な問題に入るわけですが、そうじゃないんです。何にも出さない。  私はこの問題は出ると思ったですよ、ほんとうは。私は岡田さん、私もまあこういう問題、実際は好きなほうですからね。ですから出ると思ったのですよ。出れば、その実情をひとつ聞いてこようと思ったら、マレーシアに行ったとき——まあこれは一番初めはフィリピンですから、フィリピンは全然出なかったのです。それで、マレーシアに行きましたときに、さすが出るかなと思ったら、やっぱり他人の国のことですから全然出さなかったのです。それからマレーシアからタイに行ったわけです。(岡田(春)委員タイは」と呼ぶ)いや、三回目はタイへ行ったわけです。それでタイに行きましたときにも、クラ地狭の問題は出さなかったんです、向こうのほうは全然。タイでも全然出さなかったのです。そうして、それからマレーシアの場合は、これはクラ地狭の問題には、自分のすぐ隣の国境線にすぐ近い問題ですから、私は、マレーシアではクラ地狭との比較論のようなものも出るかなと思っておったら、そうではなく、他人の国は話は全然しないで、そうして、私のほうにはパイプライン計画がございます、パイプライン計画というのは、国としても大きなプロジェクトであるし、非常に経済的にも有意義なものであるのでこの計画を進めておりますので、いずれこういうものが実現をするような状態になったら日本の御協力とまで言ったかどうかわかりませんが、いずれにしてもその程度であった。  これは事実を私はすなおに述べておるので、何も、あったものをないというふうに答えなければならないような立場は、私はないわけですから、ですから、そこはひとつすなおに考えてくださいよ。何もないのですから……。
  130. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君。——岡田(春)委員「ちょっと待ってください」と呼ぶ)どこへ質問するんです。
  131. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ進めます。  先ほどから幾つかの問題でどうもはっきりしない問題がたくさある。たとえば外務省のマル秘資料の問題にしても、配付先の点は必ずしも明確ではない。それから五分冊六〇〇ページの問題についても、私が調べた限りにおいては、やはり政府の一部にある。さっき私は、総理の近くにあると言った。これは私は間違いないと考えておる。(田中内閣総理大臣「だから指摘してくださいよ」と呼ぶ)それは名前まで言うことは、私はここで遠慮をいたします。必要があれば、また適当な機会に明らかにいたします。  それからまた、田中総理は首脳会談の代表者、責任者として、こういうことはないとおっしゃっているが、しかし、新聞記者会見総理が全部が全部発表をするわけでもない。こういう問題について、新聞社が一社だけ書いたというんなら、憶測で書いたということがあるかもしれない。しかし、各社書いている。こういう点については、あなたはないとおっしゃるけれども、私はそれでは納得ができない。  そこで、もう一歩進めて質問をいたしてまいります。いまの幾つかの問題点につきましては、もう少し私はこの点は留保をいたしまして、具体的な点を政府のほうで出していただいたあとで質問を進めます。  それから続いて……
  132. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。あとでどういう点をですか。
  133. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、だからさっきから言っているマル秘資料については、運輸省以外に出ている。それから……
  134. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 資料の要求するんですか。(「配付先はいま言います」と呼び、その他発言する者あり)資料は出すそうです。——どうぞ。
  135. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、このクラ問題については、残余ございますけれども、資料を出すそうですから、それに基づいて、またあらためて質問いたします。留保いたします。
  136. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 留保というのは……。
  137. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、理事会で御相談ください。
  138. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 理事会で御相談を申し上げます。
  139. 岡田春夫

    岡田(春)委員 次の問題に入りますが、先ほど最初に申し上げたように、政府主導経済協力ということは、一体何であるか。この問題について若干お伺いをしてまいりたいと思います。  政府は、東南アジア訪問後に反省のあるようなことを幾つか言っておられますが、ああいう技術的な反省では問題になりません。何よりの証拠、総理大臣、あなたはシンガポールに行ったときに、日本の軍隊に虐殺をされた人々の記念碑があるでしょう。その記念碑に対して訪問でもしましたか。かつての日本軍国主義が迷惑を与えた問題についてやってないじゃないですか。そういうこともやらないで、技術的に、現地のことばを覚えなきゃだめだとか、そんなことを言ったって始まらぬですよ。  政府主導経済協力というものは、へたをすると、エコノミックアニマルという考えから一歩進んで、政府自身が帝国主義的な経済侵略の片棒をかつぐ結果になる。それは具体的にいうと、現地の軍事政権に対して、これにてこ入れをする。場合によっては、軍事政権にてこ入れするために、軍事的な協力までするという危険性がある。こういう点について、まず第一点、外務大臣に伺っておきたい。カンボジアの問題です。  一九七〇年以来、無償援助で緊急援助を行なっている。毎年やっている。この無償援助は人道上の援助であるといっている。その証拠に、日赤を通して出している。これはどういうふうに使われているか。いままでに無償援助で、人道援助と称して出されたものは医薬品、食糧、繊維品、それ以外にある。トラック、救急車、難民収容所の資材、こういうものを出されている。トラックにしても、救急車にしても、難民救済用の資材、これはあなたは軍用に使われていることを知っているでしょう。特に資材の場合などは、前線のざんごうをつくるためにこの資材は使われているじゃないか。こういうことで、人道という名目のもとに軍用に使われているのを前から知っているはずだ。それなのに毎年毎年これは出しているじゃないか。これは一体どういうことなんですか。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 国際赤十字社の要請にこたえまして、日本政府といたしまして、人道援助をインドシナ地域にいたしておりますことは御指摘のとおりでございまして、これは国際赤十字社を信頼いたしまして、その持つ機能によりまして、その目的に沿った配分、充当が行なわれることを期待しながら、日本政府として実行いたしておるものでございます。
  141. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これが軍用に使われているのは知っているでしょう。現地の大使館から連絡があったでしょう。ざんごう用に資材を使っているということは、ついこの間も調べて報告があったでしょう。どうです。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 それは難民住宅に関連いたしまして、一部、その地域が緊張が高まりまして、政府軍関係者によりまして利用されたという事実は報告を受け、これに対する処置はいたした次第でございます。
  143. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いつ報告されたのですか。
  144. 大平正芳

    大平国務大臣 二月二日、難民住宅に関連いたしましての報告がございまして、わがほうから問題を提起いたしまして、厳重に申し入れたところ、二月二日、先方外務大臣名で軍当局に抗議を行なった結果、すでに軍関係者はすべて本件難民住宅から撤収いたしておる、二月五日午前に現地大使自身がその事実を確認いたしておるという報告を受けました。
  145. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の質問以外のことを答えている。私は、ざんごうに使っているでしょうと言ったら、いまあなたのほうは、難民収容所の建物を兵舎に使ったということを答弁したのでしょう。そうでしょう。
  146. 大平正芳

    大平国務大臣 軍が一部使った形跡があるということに関連して答えたわけでございます。
  147. 岡田春夫

    岡田(春)委員 トラックも兵員輸送用に使っているでしょう。救急車も兵員輸送用に使って、乗り切れなくて、屋根に兵隊がつかまって、そして乗って走っているでしょう。しかも、これはことしの二月じゃありませんよ。七一年からですよ。当時の杉浦大使が知っていますよ。本省に連絡があったはずだ。七一年にそういうことになっていて、いまだにその後も国際赤十字のあれで、人道上のことでといって、その後も送っているわけですね。一体、これはどうなんですか。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、いま現存する国際機関として、そういう任務を適確に行ない得る信用と能力を持ったものといたしまして、国際赤十字社の機能を信頼いたしまして私どもは行なっているわけでございまして、細部につきまして、どのような非違なことがあったかということにつきまして、一々私は承知いたしておりませんけれども政府の能度といたしましては、国際赤十字社を信頼してやっておる、それが一番現実的な方法であるというように考えております。
  149. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういうことを言ったって、あなた、認めたんじゃないですか。認めておって、まだ信頼しているのですか。軍用に使っているのは事実じゃありませんか。しかも、七一年のトラックは間違いない、現実にそのトラックに乗った日本人のある人までいるのだから。その人が当時の杉浦大使にこう言っているのだから。そういう点を杉浦大使は知って、本省に連絡があったはずだ。その点はどうなっているのですか。七一年といったら、三年前ですよ。三年前からこういう事実があるのに、いまだに人道上で送っているのですか。おかしいじゃありませんか。こういう点を予算に組まれたって、われわれ認めるわけにいきませんよ。
  150. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま岡田先生御指摘のような非難といいますか、コメントは随時ございましたわけでございますけれども、その一つ一つのケースについて、それが日本が提供したものであるかどうかという点については、さだかでなかったわけでございますが、最近、先ほど外務大臣が御答弁になりました難民用住宅が、これは明らかに日本が提供したものでございましたので、これについては、すみやかにカンボジア当局に対して注意を喚起して、その軍隊の撤収方を要請し、それが行なわれている、こういう次第でございます。
  151. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いかに外務省怠慢であるかというのが明らかじゃないですか。再三話があったんだけれども、わからなかった。大使にまで直接話がしてあるのに調べていないじゃないですか、三年前。一体何をしているんですか。これで国民の予算を、人道用でございますといって無償でお金を出してあげることができますか。こんなばかな話がありますか。  大体ロン・ノル政権なんというのは、もはや亡命の用意までしているんじゃありませんか。安定政権などというような要件を全然欠いておるじゃありませんか。ロン・ノル政権との関係は断絶しなさい、早く。冗談じゃありませんよ。ロン・ノル、もう逃げるかもわからないのですよ。逃げるときに、いまだに軍事用に協力しているなんということは許されますか。冗談じゃありませんよ。外務大臣もこういう点、しっかり調べてください、どうなんです。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 ロン・ノル政権云々の御意見がございましたけれども、そういう事態であればあるからこそ、私どもといたしましては、信頼すべき国際機関によって人道上の援助を行なってまいることが必要だと考えておるわけでございまして、国際機関を信用して行なうことが、一番現実的な方法であると考えておるわけでございます。  しかし、人間のやることでございますから、間々非違がないという保証はないわけでございまして、その事実が私どもに判明いたしましたときには、直ちに処置をいたしておるわけでございます。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行について発言をいたします。  先ほど来、岡田質問に対して、求めた資料が出てきていない、あるいはいま電話で照会中。これについては、委員長も言われたように、昼の時間に、あるいは一時までに資料を出す、こういうことですから、それを見た上で残余の質問は継続することにして、この際、休憩せられるよう動議を提出いたします。
  154. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの動議のとおり、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  155. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  岡田君の残余の質疑は、都合によりあとに行なうことにいたします。  荒木宏君。
  156. 荒木宏

    荒木委員 昨日、公正取引委員会から、石油連盟、日本石油をはじめとする元売り十二社に対する独占禁止法違反の勧告書が発表されました。  この内容によりますと、これから元売り十二社は、昨年度五回にわたって石油製品の価格の引き上げの談合をやった、こういうことが報告されております。石油危機と呼ばれるような事態が発生して以来、物不足の中で物価はますます急騰いたしました。詳しい数字は申し上げるまでもありませんが、昨年の十二月には卸売り物価が、前月対比で七・九%、前年同月では二九%も上昇するという非常事態に立ち至りました。  わが党は、かねてからこのような元売り十二社、これは日本石油の資本金二百二十五億円をはじめとして、太陽石油を除けば、いずれも資本金十億円以上の大企業であります。合計九百三十三億八千百万円というような資本金をもつこういった大企業にこそメスを入れるべきだ、こう主張してまいりました。そしていま、公正取引委員会の発表によりまして、そういった大企業が、この非常事態の中で法を犯してまで値上げをやっている、こういうことが明らかになりましたが、物価対策に全力投球をするとかねがね言われておる田中総理は、大企業にメスを入れるという決意がおありかどうか、総理の御意見を伺いたいと思います。
  157. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価抑制は、当面緊急最大の課題でございますので、先般も産業界、経済界の代表者に参集願って、これが物価抑制に対しての協力要請したわけでございます。また国民生活を守り物価抑制をはかっていく過程においては、いままでの政府に与えられておる法律を駆使してまいることはもちろんでございますが、必要があれば、新しい手段や立法もまた考えざるを得ないという実情を訴え、協力要請したわけでございます。  しかる中において、御指摘のような事態が報道せられておることも承知をいたしております。そういうことのないように、企業の社会性ということを十分自覚をされて協力をされるように、また、企業そのものが国民的理解と支持を受けるような状態にならなければ、その国の産業の永続性というものがはかられないものでございますので、十分な協力を求めたわけでございます。また、その過程において、必要があれば公権力による経理やその他諸般の状態に対する介入も、やむを得ざる状態になるのでという政府の決意は明らかにいたしておる次第でございます。
  158. 荒木宏

    荒木委員 私は、昨日発表されました公正取引委員会の勧告書をいただきました。この中を見てみますと、幾つかの疑念を覚えたわけであります。  そのまず第一は、こういう事態に大企業が談合して物価のつり上げをやっている。一体、この人たちは何を考えているのだろうか。財界の自粛宣言でありますとか、あるいは、企業の社会的責任でありますとか、いろいろ口にされました。それらのことを耳にはいたしましたけれども、実は、それはうわべのことであって、ほんとうの腹の中というものは、この機会にひとつもうけてやろう、これは何よりの機会だ、ここでひとつ荒かせぎをしてやろうというふうに考えているのではないかというふうに疑問を感じたのであります。いまの時期における大企業の腹の中、ほんとうの真意はどこにあるか、荒かせぎをしようとしているのじゃないかというふうに思いますが、総理はその点どういうふうにごらんになっておりますか。
  159. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公正取引委員会から指摘を受けておるということは、テレビや新聞その他で承知をいたしております。勧告書が交付をされ、これが回答待ちというのが現状でございまして、公取委員会が独占禁止法上行なった行為に対しては、公取委員会が処置するわけでございますが、あのような事態に対して行政官庁としても、そのまま放置ができないわけでございます。そういう意味で、あの問題に対しては、通産当局がその後とっておる処置その他に対しては、通産大臣からお答えをせしむるようにいたしたいと思います。  企業も、もうけるだけもうけるという考えだけを中心にしておるのではないと私は思うのです。これは善意な解釈というよりも、そういう事態が許されるような社会情勢ではないし、また、そういうことであれば、適正な手段が追い打ちに行なわれるであろうということはわかっていると思うのです。  とにかく、いずれにしても、このような社会情勢の中で、恣意によって、ほしいままに自分だけが利益を確保できるというようなことが、社会的に許されるはずがないと思うのです。しかし、石油の先高、供給の削減、また、それからくる不況感、そういういろいろなものを総合して、企業は自己防衛ということが前提になっていると思います。これはまだ、企業にそのような実態を示して調査をしてのお答えではございませんけれども、私は、とにかく日本人としまして、これだけマスコミの発達しているときに、また、これだけ社会的に物価が国民的世論になっているときに、自分だけがのがれてぬくぬくやっていけるほど、それほどの感じを持っていないと思うのです。  しかし、結果的には、公取に指摘をされるというような事態が起こっているということは、いずれにしても遺憾なことだと私は考えておりまして、行政上の措置といたしましては、かかることが行なわれるということは望ましくない、というよりも絶対に排除せられなければならないことでございます。  そういう意味で、独禁法に基づく処置は公取がやることでございまして、政府が云々はできないことでございます。できないことでございますが、これだけの事実を指摘せられておるという事態に対処しては、主務官庁を持つ行政府としましては、適切なる処置を続けていかなければならぬと痛切に感じております。
  160. 荒木宏

    荒木委員 いま総理は、このような時期に、企業がぬくぬくと一人だけ利潤を追求することは許されるべきではない、企業も自己防衛ということもあり、まさかそこまでは考えていないだろうけれども、もしそういったことがあれば、行政的にはきびしく処置をとる、こういった御意見のように伺いました。  私が、この勧告書を見まして感じます第二の疑問点は、この中にガソリンあるいはナフサという石油製品についての談合の指摘がいろいろあります。ところが、この談合の中で、一番直近の時期であります昭和四十八年の十一月中旬ごろ、この談合の中では、民生用灯油は談合の対象になっていなかった、公正取引委員会の勧告書はそう指摘をしています。しかし、勧告書の内容を見てみますと、四十七年十一月下旬、四十八年の一月の上旬、同じく同年五月並びに六月の下旬、そして九月、十月の上旬、この指摘された全部で七回の中の六回までは、民生用灯油も一緒に値上げをやろう、こういう談合をやっておるわけであります。いままでやっていたんだから、この一番最後のところも談合したんではないか。また、社会的な事態から見ますと、わが党に設けられました物不足、インフレ、物価高緊急対策本部には、この民生用灯油もたいへんに値上がりをしておる。いろいろ話しを聞けば、元売りから上がっている、だから、末端価格もなかなか下げることはできない。こういった訴えが続いたわけであります。このことは新聞の記事を見ましても、「三百八十円守らない店約半数」こういう記事がありました。  ほんとうに民生用灯油は、この談合の対象からはずされて、政府が指示をされた元売りの凍結価格、これが守られていたのか、こういう疑問があります。通産大臣にひとつこの点をお答えいただきたいと思います。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 石油業界及び企業が、公取からやみカルテルの疑いをもって調べられ、あるいは勧告を受けましたことは、はなはだ遺憾なことでございます。  われわれとしては、こういう事態がないように、いままで行政指導も指示もしてきたわけでございますが、この取り調べの結果等を待ちまして、適切な措置をしていきたいと思っております。  ただいま、去年、おととしにわたる事実の指摘がございましたが、通産省といたしましては、このようなやみカルテルについては、一切関知しておりません。  それから、いまの灯油の問題でございますが、十月、十一月にかけて灯油の値段が非常に上がる気配を示しましたので、九月の元売り仕切り値段、一キロリットル一万二千八百九十八円でございましたか、その九月末の値段で凍結いたしました。それを基準にして三百八十円というものをきめたわけでございますが、そういう厳重な行政指導をしておったという事実がありますので、あるいはそれが、何らか、もしそういう疑いの事実があるとすれば、関係しているのではないかとも想像されます。これは、しかし想像でございます。   〔委員長退席、井原委員長代理着席〕
  162. 荒木宏

    荒木委員 民生用灯油は通産省のほうで価格を凍結していた。もしそういう事実があれば適切な処置をとる、こういう話であります。  しかし、この民生用灯油、これについての世間の見方を見てみますと、こういうのがあるのです。「民生用灯油ばか高値」これはある新聞の記事でありますが、どんどん上がっている。このばか高値というのは、うんと上がっているという意味もありましょう。しかし、通産省がこれは押えているというふうにいいながらも一どんどん上がっている、こういう意味も、あるいはあるのかもしれぬと思うのですが、「標準価格どこ吹く風」こういった記事もあるわけであります。  いま大臣は、適切な処置をとる、もしほんとうに守っていなければ適切な処置をとる、こうおっしゃったのですけれども、その適切な処置とは一体どういうことを意味するのか、これを一言お伺いしたいと思います。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 灯油につきましては、指導価格をきめ、それから標準価格を決定いたしまして、この表示並びに順守をいま督励してやっておるところでございます。  最近の情勢から見ますと、三百八十円店頭裸値というのは、大体六、七〇%ぐらい守られてきておるという現状で、この守られる率は、さらに拡大しておるように考えております。
  164. 荒木宏

    荒木委員 どういう処置をとるか、処置の問題です。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 処置をとるということを申し上げましたのは、もしこのやみカルテルの事実があったとすれば、石油業界並びに個別企業に対して、今後の石油の値段その他等もいろいろ考えて適切な処置をとる、そういう意味でございます。
  166. 荒木宏

    荒木委員 いま適切な処置と、こういうお話がありました。私は、凍結ということをおっしゃっておるのでありますから、ことに標準価格ということになっておるのでありますから、もちろんそれを断固として守らせる、こういうふうな意味を含まれておるのだと思います。守らせるだけでなくて、さらに国民の要望にこたえて、下げる方向で適切な処置をとる、こういうふうに理解するのでありますが、そう伺ってよろしいですか。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 標準価格で物価下落を阻止する要因になっていてはいけません。したがって、本委員会でもお答えいたしましたように、もしそういう要因になっている場合には、標準価格は下げるか廃止するか、どちらかいたしたいと思います。
  168. 荒木宏

    荒木委員 私のこの勧告書についての第三の疑問は、この勧告書では、生産調整のやみカルテル、これはガソリンについてだけ指摘をされております。しかし、ほんとうにこれはガソリンだけのことなんだろうか、それ以外の油種について、元売りがいろいろと出荷の上で操作をしたのではないか。たとえば自分のほうの都合で、あるところには回すけれども、別のところには回さない、そしてそういった出荷制限、数量操作、こういったことを通して元売りが自分のほうの系列支配を強化する、こういうことが行なわれたのではないか、つまり支配のてこに使ったのではないか、こういう疑問を覚えるのであります。  現に、昨年の十一月二十八日でありますが、本院の物価特別委員会におきまして、わが当の野間議員が通産大臣に質問いたしました。関係部分を御紹介してみますと、大臣が三百八十円と言われたけれども、現実には末端の価格が四百五十円、五百円とどんどん上がっており、私の家庭も五百円で買わされている。いろいろ聞いてみますと、これは上から、メーカーから圧力を加えられておってこういうふうになる。その圧力を加えておるというもとの元売りのほう、それひとつ名前を言うてくれ、委員会で取り上げて追及する、こういうことを言いましたら、そんなことをされたら出荷制限されてお手上げだ、この辺のところでこらえてくれ、こういうふうな質疑応答をいたしまして問題を提起しておるわけであります。委員会でのこの質疑の経過、また、いろいろ世上取りざたをされておりますところから見て、元売りのほうで出荷をいろいろと自分の都合で操作、あんばいをする、そうして支配のてこに使ったのではないかという疑いが非常に濃いのであります。  こういうことがあるかないか、もしそういうことがあれば、通産大臣としてはどのように御処置をなさるおつもりか、このことをお伺いしたいと思います。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう疑いがありました。そこで、業界並びに企業を指導いたしまして、そういうことを行なわないように——いまやこの問題は一企業の問題ではなくて、国民全体の幸、不幸に関する問題である、こういう危機的な状態になると、ややもすれば、力のあるものは自分の系列下に入れようとしてシニアを争う、そういうようなことをやりやすい。そういうような気配が石油製品あるいはLPガスの一部等についてもあるような気配をわれわれ感じまして、その点は、いままでのルートに適正に流すように、いやしくも自分たちのシェアをふやすとか、あるいは自分たちのそういう系列化を促進するようなことを込めて配当するというようなことはやめるように、そういう点を強く当時指示したところでございます。
  170. 荒木宏

    荒木委員 そういう企業があれば、これはきびしく処置をしますね。大臣、いかがですか。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは、当時もそういうような疑いが各企業について持たれましたから、企業のものについては、呼び出しまして厳重に注意を与えて、そのような系列化を自分の利欲のために行なってはならないと強く指示した、指示済みのところであります。
  172. 荒木宏

    荒木委員 今と将来のことに対して。過去のことじゃない。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまでもあれば、もちろんいたします。
  174. 荒木宏

    荒木委員 もう一つ私の疑問を伺っておきます。  この勧告書を見まして、この談合による値上げ、これは明らかに便乗値上げじゃないか。石油危機といわれて物不足状態が起こって、どんどん物価が急騰した。そして物価が急騰したところで、物は一部出始めました。しかし高値はそのまま残った。これは明らかに便乗値上げでないか。現に一般の新聞紙でも、「石油元売り十二社やはりヤミ協定」、もう国民の思ったとおりだった。「大幅な便乗値上げ」で「原油アップ分を先取り」と、こういうような見出しで報じております。物不足に悪乗りするなというのは、いまやもう各新聞の論調にまであらわれて、世論になっているのだ。  私は、ここでこの勧告書を出した公正取引委員会に、この元売り十二社の談合による大幅値上げ、これは便乗値上げと考えるが、公正取引委員会の見解はいかがなものであるか、このことをお聞きをいたしたいと思います。
  175. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私ども公正取引委員会は、昨年の十一月以降、石油関係を中心に幾つか大きなものをねらって摘発をいたしました。その石油関係については、一応全部勧告を出しましたが、非常に短い時間、これだけ短い時間に実は結論を出すということは、この間も申しましたが、ほとんどの方が供述を拒んで、何かそんな点からは、非常に調べにくい状態にあったにかかわらず、それだけやりました。  したがいまして、私に御質問でございますが、便乗値上げであるかないかという点につきましては、確信を持ってお答えすることはできません。その点は、まあ便乗値上げが含まれているのではないかという点でございます。ですから、それ以上、原価計算その他について詳しくはしておりませんが、ただ、こういうことは言えるのじゃないか。  これは商慣習として認められているという説もありますが、たとえば七十九日分の在庫があったといわれております。しかし、実際の値上げの時期は、高い油が入ってくるときではなくて、その事前に値上げ幅も問題ですが、実施の時期が少し早過ぎるのじゃないか。値上げの通告があったら直ちに製品のほうを値を上げてしまう。原油の値上げと製品の時期とがほとんどが一致しているといいますか、同時期に行なわれているということは——少なくとも在庫が一巡して製品化するまでの間において、これは利益が出ます。相当大幅な利益が出ることになります。ただし、この価格差益といいますが、それが当然のものであるのか、商慣習に認められているものかどうか、私は知りません。これは外国でも論議のあるところだそうでございます。しかし、上げ幅が最後の段階で異常に大きかった段階においては、これはやはり、むしろ便乗のにおいが強いということがありますのと、それから実際に到着した原油の総量と業界が予想した量とが違っておる。この点は、OAPECからの通告自体が、初めかなり大幅なものでございましたから、予測としては、あるいはそれがよかったのかもしれませんが、ほんとうに船の状況などを把握し、自分の国内にある石油量を把握しておるならば、少なくとも輸送中のもの等について十分な把握が行なわれているとすれば、それはおかしな点があったのではないかという感じがいたします。  こういう点におきまして、若干便乗のきらいがあるのではないかということを係官が申したと思います。
  176. 荒木宏

    荒木委員 公取委員長の見解は、あの指摘をされた最後の値上げが大幅なのではないか、そして原材料が着く前に、その前の時期にやったんではないか、したがって、その意味では、商慣習との関連があるけれども、便乗の疑いがある、こういうふうに伺ったわけであります。  申すまでもなく、石油石油製品となり、それが石油化学製品となり、さらに関連の産業、鉄鋼、電力、基幹産業から、また洗剤をはじめとする家庭の日常生活品にまで産業連関をいたします。それの一番大もとであります。ですから、これは日本経済の一番根源のところであり、また、日本の国民生活の台所に直結をしておる非常に重要な問題です。  私は、いままで、この勧告書についての四点の疑問について政府の見解を伺ってきました。この機会にひとつ荒かせぎをしてやろうと思っているのではないか、民生用の灯油ははずしたと言っているけれども、これも一緒にやっているのではないか、出荷にあたって元売りが不公正な出荷をやって、系列支配を強化しているのではないか、そしてさらに今度の値上げは便乗じゃないか。これらの点について、総理はいまは、もうけだけを追求することを許すべきでない、こうおっしゃったのでありますが、もしいまのようなことが行なわれておるとするならば、総理は、内閣の責任者としてどういうふうな御処置をおとりになるか、このことを、私の勧告書についての疑問の最後の質問として、ひとつお伺いをしたいと思います。
  177. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 独禁法によりまして、公取が勧告をし、また勧告に従わない場合には法的措置、制裁規定があるわけでございますから、これは公正取引委員会が行なうべき問題でございます。  しかし、そのような事実を前提にして物価が押し上げられており、国民生活が圧迫を受けておるということになれば、一公正取引委員会措置だけにゆだねておって、行政の責任果たせりとはいえないわけでございます。ですから、これが原因を政府もあわせて、主管官庁を中心としてたださなければなりません。同時に、将来これが行なわれないような、格別な行政も執行していかなければならぬわけでございます。また、幾ばくかでも値上げが行なわれたというような事実があれば、しかも、それが違法な行為によって行なわれておるということであれば、それが価格の引き下げその他にどのように反映できるのかというような問題も、その後起こっている事情の変化とあわせて考究をしながら、適正なる行政権の行使を行なわなければならない、これは当然なことでございます。
  178. 荒木宏

    荒木委員 いま総理の御意見を伺いましたが、違法な値上げが是正される、これは当然であります。若干の値上げというものではなくて、大幅な値上げが行なわれておる。しかも、こういう社会情勢の中で行なわれておる不当な値上げに対して、どういうふうな処置をとるか、これを伺っておるのです。
  179. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、いまいろいろ検討いたしておるところでございます。これは価格を引き下げるということもございますが、まず大幅な値上げ、先高ということや先の不安ということもあったにしても、これが所得としてあらわれた場合には、当然改正税法によって徴収されるわけでございます。しかし、徴収されるだけではなく、それが社会的な感覚の上で、国民生活の圧迫というものを伴っての利益であるということになれば、超過利潤とか不当利得とも呼ばれておりますそういうものに対して、これを国庫の帰属にするような措置もとらなければならないということで、いま勉強も続けておるわけでございます。  それだけではなく、将来このようなことが行なわれないように、また、いままで急激に起きた社会的不安——先見通しということが立たないという前提に立って、いろいろな値上げ等が行なわれたとしても、それをもって、将来原材料が上がった場合でも、当分の間、指示価格、安定価格というようなものでもってある期間押えるということによって、国民生活を保護し、守っていくという道もあるわけでありまして、一つの問題だけではなく、広範複雑多岐な問題でもございますが、しかし、あらゆる角度から、国民生活の安定に還元できる方途というものが、どういうものが一番適当なのかというような問題で勉強しておるわけでございます。  なお、独禁法に基づく処置、これは法律的に行なわれるわけでございますから、これは政府答弁を申し上げるものではなく、また措置できるものではなく、これは公正取引委員会が行なうものでございます。
  180. 荒木宏

    荒木委員 端的に伺いたいのですが、政府がとられる処置の中で、値下げの可能なものは値下げを勧告する、値下げをさせる、こういうことも含めて、国民生活を守るために処置を進めるという決意があるかどうか、これを伺っておるのです。
  181. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは、もう当然そうなくちゃいかぬわけです。
  182. 荒木宏

    荒木委員 いままで勧告書についての見解を伺ってきましたが、私は、大企業の実態について、政府の認識が実態を正確に見ていないのではないか、いや、実態を正確に見ていないというよりも、実態からあまりにも離れ過ぎているのではないか、あえて言うならば、そらぞらしいというような、そういう感じを受けたのであります。大企業の実態というものは、決してそんな甘いものではありません。これはもう幾つか示されておる例があります。そして、それとともに、本院でも審議をされた幾つかの事例があります。本院に参考人として出頭した商社の代表の人たちのあの供述その他を見てみまして、決して政府がいま言っておるような、そんなものではないということを申し上げたのであります。  そこで、ここにわが党が入手した資料があります。これは先日、公正取引委員会によってやみカルテルの破棄勧告を受けた元売り十二社の一つであります、ゼネラル石油株式会社の最高幹部の販売方針を、あの石油危機の時期に具体化して、それを通達した文書であります。  「十二月販売方針と今後の販売に就而」「販売の考え方、当面の方針につき別紙の通り御確認労々御通知申し上げますと共に、販売管理、販売枠管理につき改めて指示いたしますので、遵守実施願い上げます」そして添付書類として、「1 今後の販売のあり方について 2 十二月販売方針について 3 販売管理」そして「4 販売枠管理」ここに公正取引委員会が表面しか触れることができなかった、表面しか発表しなかった大企業の中身の実態があります。この文書は、本社の首脳部から、北は北海道から南は九州に至るまで全国の支店にくまなく配付されました。そして末端のその大企業の販売担当者に対して、このとおりやれと指示しておるのであります。いかにして大企業がもうけるか、あの国民が苦しんだ石油危機の時期に、どんなにしてもうけをふやすか、いかにして価格をつり上げるか、そしてまた、いかにして国民をだますか、新聞をはじめとしてマスコミをだますか、あまつさえ、政府をいかにしてだますかという、そういった手口の内容を事こまかに詳しく書いてあります。  私は、これも一つの資料として、その大企業の実態について政府に質問をしたいと思います。  まず第一は、この時期における大企業のものの考え方であります。  先ほど総理は、企業の自己防衛ということもあろう、こう言われました。それでは一体、この石油大企業はその点についてどういうふうな考えを出しているか。この文書によりますと、冒頭に、「今後の販売のあり方について」 「供給不足時代のマーケッティング」こういう表題のところがあります。ここに企業としての情勢の見方、分析がずっとありまして、そしてそこの一番最後のところに「(6) 心構え」というのがありまして、こう書いてあります。「販売部門に携わるものにとって大幅なコストのアップ−値上げと財源の大幅なショートは実に辛いことで相当の苦労を強いることとなるが、」この次のところです。「逆に云えば、この様な環境の変化、時代は千載一遇のチャンスである」どうですか、総理、あなたは企業防衛とおっしゃったけれども、まさにこの石油危機の時代に、これこそ千載一遇のチャンスだ、こういうふうにものの考え方を切りかえなさい、こういっておるのであります。  この文書が出された時期は、一体どういう時期であったでしょうか。国民は物不足に苦しんで、国会にもどんどん陳情が来ました。私たちは、議員面会所の前で、物資を放出してくれ、日用品を早くほしいというたくさんの人たちの陳情を受けました。団地では家庭の主婦が、日用品を手に入れるために走り回った、個人タクシーでは、これは自殺者まで出た時期であります。この時期に企業は、これこそ千載一遇のチャンスだ、こういっておるのであります。  総理は、先ほど断固として処置をとる、あらゆる限りの手だてをとる、こういうふうに言われたのでありますが、この大企業の考え方、ここにこそメスを入れるべきだ、私はこう思いますが、総理の御意見を伺いたい。
  183. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 企業の持つ社会的な責任、企業のモラルの低下を防がなければならない、新しい視野と立場と角度から真に国民に信頼をされる企業活動でなければならない、それは国内、国外を問わずそうでなければならない、こう私が述べているわけでございます。また、企業も単独で存在をしているわけはありません。  でありますから、企業が不当な行為を行なうという場合には、必ず直接、間接にその行為に対しての制裁は受けるものであります。ですから、一つとしては公取から指摘を受けているわけです。また、いま品物が上がった場合でも、原材料が上がった場合でも、当分の間、標準価格を指定されたものに対しては、標準価格は守らせる。少しでも値下げができるような状態は、それが現出できるように政府は強力な行政指導をしております。いまあなたにもそうして指摘をされているわけです。これは企業のマイナス面でないとはいえないわけであります。こういう制裁は必ず受けるわけでございます。いま、大企業とあなたは言われますが、企業というものが全部統一して、そういうものの考え方、そういう通達を出したというなら、それはたいへんなことだと思うのです。ですから、これはまだ私はきのうの夕刊、それからけさのテレビで指摘をされたことを承知いたしましたが、まだその勧告書そのものを読む時間もありません。  私もそういう意味で、まだいまお示しになられたものそのものに対して的確に答え得る状態ではありませんが、まあいずれにしても、商人根性といってもどうも少しひど過ぎるなという感じがします、その部分だけを見ますと。これは千載一遇である。とにかく国民生活の基盤をなす石油を扱う、あずかる企業が、そういう系列や傘下に流した販売政策の方針ということでございましょうが、そういうものに対して、私自身もこの間産業界の代表者に集まっていただいたのも、企業の社会責任というものを痛感し、国民の支持と理解が得られるような社会活動、企業活動に徹していただきたい、しかも、いままでの間に、非常に幅の広い、また厚みの厚い日本の産業構造でございますから、いろいろなそごありとせば、それは直してほしい、是正をしてほしいという強い警告を発しております。それでもなお是正ができないということがあれば、当然法律及び行政権の最大の発動にもなるし、政府の強い意思は明らかにいたし、産業界もこれに同調の意を示しておるわけでございます。  国民がたいへん苦労しておる時期に、一通の通達であるとしても、これが全国傘下の系列に流されたということ、そういうものを把握することができないでおったということに対しては、これから十分な行政的な努力をしなければならない、こう考えております。
  184. 荒木宏

    荒木委員 これは、やろうと思えばすぐできるんですよ、通産省はしょっちゅう企業の代表と会っているんですから、ですから、もしほんとうにこの時期に企業の実態をぎゅうっとつかもうとすれば、すぐにでも皆さんのほうの手で、出しなさい、こうやるべきじゃないですか。ことに公正取引委員会で勧告が出された。みんな一斉にそろうて値を上げた。その中の元売り業者の一つが、いまのように千載一遇のチャンスである、こういっているのです。幾ら皆さんのほうで口でおっしゃっても、企業のほうでは、これはもう口ばかりだと、もうちゃんと見抜いているのですよ。  ここにこういうことを書いております。「政府態度と販売上の注意事項について」こういうのがあります。「政府の対策は、今のところ、原油供給削減に対して、著しくテンポがおくれており、十二月から一〇%程度の消費節約を、行政指導により実施することを、漸く閣議決定した」政府のこの行政指導、法的規制の進みぐあいによって、いよいよ混乱が出るものと予想される、企業のほうではもう初めから、これは政府は口ばかりで、大体テンポはおくれておるし、大企業のほうに本腰になって実態を調べてメスを入れることはない、こう見ているんじゃありませんか。その相手に対して、いま総理が言われたようなことでは、とても実態を把握することはできない。すぐにでもこの文書を出しなさい、そして行政指導として、元売り十二社に対して十一月、十二月、一月の販売方針を全部出せ、こういうふうにして、まず実態を正確につかむべきではないかと思いますが、それをほんとうにやるかどうか、政府の見解を伺いたいと思います。やるのか、やらないのか。
  185. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 販売方針につきましては、われわれは適切な指導をやりたいと思っております。  去年の十二月、政府の方針がおそいという御指摘がございましたけれども、私たちは法律を提出いたしまして、法律を通すのに全力をあげておったわけであります。その法律の背景がなくして行政指導をやりましても、裏をくぐられるという危険性が非常にあったからであります。しかしそのころ、たしか十二月の初中旬であったと思いますが、石油関係が値を上げ始めたという情報を聞きまして、エネルギー庁長官が業者を集めて、便乗値上げをするなと強く指導したところであります。また、事務次官であります山下君が同じく警告を発して、七油業界は諸悪の根源である、そういうことまで言って強く警告をしたのもその当時でございます。  そういう考えをもって私たちは臨んで、できるだけのことはしてきたつもりでありますけれども、しかし、いま考えれば、必ずしも十全でなかったという反省をいたしております。このような公取の調べを受けまして、公取とも打ち合わせて、いまのような営業方針等も調べまして、今後の対策を厳重にやっていきたいと思います。
  186. 荒木宏

    荒木委員 営業方針を調べて対策を十分にとる、これは通産大臣、責任をもって国会に報告しますね。この委員会に正確に報告をやりますか。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いたします。営業方針を取りまして、将来にわたる適切な方策等を考えまして、実行いたしましたら、御報告いたします。
  188. 荒木宏

    荒木委員 実行する前に、状態を正確につかんだら直ちに国会に報告すべきだと思います。いま現に問題になっているのですから、そして、ここで国民の目が、大企業にほんとうに政府がメスを入れるかどうか、これを見ているのでありますから、それはすみやかに、即時に国会に報告されるように、すみやかにするかどうか、あらためて通産大臣の見解を聞かしてください。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 わかり次第、できるだけ早期に御報告をいたします。
  190. 荒木宏

    荒木委員 私が、最初に伺った疑問点のうちの第二点です。  先ほど来の質問で、政府の対策が非常に甘かった、実態認識も正確じゃなかった、むしろ企業になめられておった、こういうことが明らかになったのですけれども、それじゃ、政府が凍結していると言い続けてきた民生用灯油、これの元売り凍結価格は一体どうであるか。  このことについて、この文書はこういっておるのであります。十二月から値上げをする、値上げの一覧表は次のとおりだ、そしてこのことについては厳守をせいということで表が出ておりますが、十二月の値上げ額、ガソリンが一万円、ナフサが五千円、工業用灯油六千円、軽油五千円、A重油が五千円、B重油が二千七百円、C重油が三千円。この中に民生用灯油千円と書いてあるのです。しかも、それはまん中に書いてあるのですよ。公正取引委員会が指摘したように、明らかに企業が、民生用灯油をはずしておるのではなくて、民生用灯油も一緒に上げていたという歴然たる証拠があるのです。  しかもそれは、先ほど大臣の答弁がありましたように、通産省が指示をしておる最中であります。当時の、十一月上旬の物価特別委員会で山形資源エネルギー庁長官はこう言っています。「各社にはそれぞれ生産段階、販売段階のいろいろな過去の商売上の秘密になっておることもございますし、一応われわれといたしまして凍結価格を上げないことが最大の眼目でございまして、」各社に対して、「それを通告し、その後においてもこの厳守につきまして厳正な約束を取りつけておる次第である」と国会で答弁しておるのです。政府委員がそういうふうな認識を持っておるときに、石油大企業のほうは、もう堂々と値上げをきめておるのであります。凍結しておるはずだという民生灯油について、全部そろってこれをやっている。もしそうだとすれば、政府がだまされておったか、あるいはだまされていたのではないとすれば、政府はそのことを知って一緒に放任しておったか。もしも政府がいうように、だまされていたのだとするならば——石油連盟の会長であります密田さんという人は、これも国会に出てまいりまして、こんなふうに言っておるのであります。「われわれ石油業界は、政府のこのような適切な指導のもとで、民間のバイタリティーだとか機動性を十分発揮いたしまして、当局に十分な協力」をしております。十二月十日商工委員会の証言です。「需給問題あるいは備蓄の量につきましては、これは連盟だけできめておるわけではございません。細部にわたりまして毎月の生産、供給、これはエネルギー庁の担当部課と詳細な詰め合わせをやってきめていっております。」こう言っておるのであります。政府はだまされていたか、あるいはそれとも、一緒になってやったのか、もしそうでないとすれば、この石連の会長は国会でうそを言ったのか、通産大臣は一体どうお考えになりますか。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 政府がぐるになったなんていうことはとんでもないことでありまして、私たちは一生懸命、民生用灯油を引き下げるために、あのころ全力を尽くしておったのは、皆さま方御存じのとおりであります。それで三百八十円というふうに一いろいろ議論があり、また石油関係方面でも、とても三百八十円ではやれないと言って拒否しておったのを、無理して押えつけるようにして実はあのころしたのであります。初めは混乱いたしまして、石商連等の全国の末端に対する通知が、了解なしに上でやったというので、若干反乱がありましたけれども、しかし、全国各府県に人を派遣したり、そのほかの努力をいたしまして徹底させて、そして三百八十円の線を守らせるように努力をしたのです。私は、その時点においては業界も協力したと思っております。それは業界の人を呼びまして協力を求めて、やりますという約束をして実は全国に手を打ってもらったからであります。  いまその文書の中に、千円上げるというような記事がありますけれども、千円上げたというようなところは、私はおそらく、特殊の、北海道とか運搬賃の高いところを除いては、そうないのではないかと思っております。  そういう面から、私たちとしては根限りの努力をしたのでありまして、ぐるなんていうことはもちろんありません。また、三百八十円を全国で守らせるために、われわれが指導したことについては協力してくれたと思っております。
  192. 荒木宏

    荒木委員 これは北海道とか、そういった遠隔の地だけ上げるというのじゃないのです。ここにちゃんと書いてあるのです。この価格できめたとおり北海道から九州まで、直売も含めて全部それでやれと、はっきり書いてあるのです。  通産大臣、事実を調べて、そしてこのことが判明すれば、必ず下げさせるように処置をしますか。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 灯油は、もう御存じのように、大体三百八十円の線が守られておるのでありまして、その線を標準価格としてきめたのでありますから、その線を守らしていくし、もしもっと下がるという可能性が出てくるならば、もちろん、これは標準価格を下げるとか廃止するとか、そういう適切な措置をとるつもりです。
  194. 荒木宏

    荒木委員 私が言っているのは、元売り価格であります。末端の価格じゃなくて、元売り価格を千円上げるといっているのです。元が上がれば、小売りの人たちがどんなに苦労したって、値を押えようはずがないのです。  だから大臣に伺っているのは、元を千円上げると言っているのですから、皆さんはそれを調べればすぐわかるのですから、それが判明すれば、政府が言っているとおり下げさせますか、こう言っているのです。
  195. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あのとき、九月の値段が一万二千八百九十何円でしたか、ともかくそれで元売り仕切り価格をきめて、そして末端価格もきめたわけであります。したがって、それ以上に上げるということは、われわれのほうは許しません。
  196. 荒木宏

    荒木委員 許さないで処置をとる、こう言われたのですが、その処置の結果も、この委員会に報告をしますね。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 確認してみます。
  198. 荒木宏

    荒木委員 確認をした結果は、もちろん報告をもらえますね。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もちろん報告いたします。
  200. 荒木宏

    荒木委員 ここでひとつ確認をしておきたいのですが、先ほど指摘をしました石連の会長の国会における供述は、十二月十日の商工委員会でありまして、この供述のときには通産政務次官も同席しておるのです。そして通産省の担当部課と詳細な詰め合わせをやって、いまのこの価格の点については間違いなしに協力をしよう、こう言っているのです。ところが、事実は明らかに違っておるのです。千円上げておるわけです。この供述が事実と相違しておるということははっきりしておりますが、この点について、本予算委員会では、近く関係業界の人たちの出頭を求めて意見を聞くという機会があると聞いています。  委員長にお願いがありますが、いま私が指摘をしております事実、つまり、政府と元売り業界と緊密な連絡をとって一緒になってやっておった、こういう証言があります。これは通産大臣も委員会でおっしゃっている。そして業界の責任者、代表は、これまた、政府と連絡をとって緊密な詰めをやって協力をしておる、こう言っています。にもかかわらず、事実は、凍結しておると言っている元売り価格が上げられている。  そこで私が言いますのは、これは知り合っておったか、それとも知らなかったのか。知らなかったならば、だまされたということであります。だとすれば、この業界の代表は事実に相違することを言った。こういうことをするような方を、国会に出頭を求めるときにどういう処置が適切であるか、これは理事会において御相談があると思いますが、委員長には、この点を特に御留意をお願いしたいと思います。  私は関連して、ここで法制長官に一言伺っておきたいと思いますが、事実に相違するようなことを言う方に、ほんとうのことを言ってもらうには、法律上どういう手だてがあるか、このことをひとつ伺いたいと思います。
  201. 吉國一郎

    吉國政府委員 これは、国会で議員提出をもって御制定になりました議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律、この法律によりまして証人として呼ぶ方法がございます。
  202. 荒木宏

    荒木委員 その方法があることは私も知っているのです。最も適切な方法は何でしょうか、このことを伺っているのですが、いま法制局長官が言われたのが、真実を供述させる一番適切な方法だ、こう伺っていいですね。
  203. 吉國一郎

    吉國政府委員 この法律をごらんいただければわかりまするように、ここでは第一条で、証人の出頭なり書類提出の義務を規定いたしております。さらに第二条で、証人は各議院の議長あるいは委員長または両議院の合同審査会の会長の前で宣誓をしなければならないことになっております。それで宣誓の方式を規定いたし、さらに宣誓、証言、書類提出の拒絶等については罰則を規定するような体制になっております。  そのような法律上の手段をとる必要があるかどうかの御認定については、これは国会の問題でございますので、私はとやかく申す限りではございませんが、そのような方法が用意されておる法律があるということを申し上げておきます。
  204. 荒木宏

    荒木委員 もう少し端的に答えていただきたいのです。  法律の規定は私も知っておりますよ。そしてまた、それを判断するのが国会の側であるということもよく知っております。いまの法律上の制度、いろいろありますが、その中で、真実を述べてもらうのに一番適切な方法はどういうことか、これを伺っているのです。いかがですか。
  205. 吉國一郎

    吉國政府委員 私の申し上げまするのは、その法律においては、先ほど申し上げましたような手段を用意してございます。そういう手段をとるかどうか、その手段をとることが、現在荒木委員がお考えになっているような目的を遂行するために適当であるかどうかということについては、国会の御判断によるべきものであると思います。
  206. 荒木宏

    荒木委員 まあ、かなり言いにくいであろうということは私もわかりますが、この点はひとつ、委員長にこの事実は御留意をいただきたい。
  207. 井原岸高

    ○井原委員長代理 承っておきます。
  208. 荒木宏

    荒木委員 なお一言つけ加えておきますが、私がいま石連の会長さんの個人の名前をあげました。これがうそを言われたかどうかは、これは個人の主観も関係しますから、調べてみなければわかりません。ただ、私が指摘したのは、客観的に事実と違うということを言っておる、これが経過の中ではっきりしておる、こういうことでありますから、その点を念のために申し上げておきまして、今度は第三の問題です。  数量カットが不公正に元売りの手によってやられたのじゃないか。これは大臣も、そういうことがあった、こう認めました。私は、そういうことがあったと、一言こう言われましたけれども、どの程度に事実を把握しておられるか、ほんとうにこれはもうほうっておけないたいへんなことだ、この大企業のやり方の中身まで全部わかっているのかどうか、この実態を明らかにしなければならぬと思うのですが、この文書によりますと、この時期に出荷をする優先順位と比率というものがあります。これは二手になっておりまして、本店からまず支店へ行く、それから支店から次に今度は取引先へ行く、この二段階にわたって、カットをどこでやるかということをきめておるわけであります。  まず、本店から支店に行きますときには、ここへたくさんあげますよという優先順位というのが三つありまして、一つは、高潤の計画達成率のよい店、高潤というのは高級潤滑油であります。これは分量は非常に少ないのですけれども、たいへんにもうかるもので、それをうんとよく売ったところには配給割り当てをふやしましょう。基準価格達成率のよい店、これは目標の値上げ額であります。つまり、これだけ上げよう、この千載一遇の時期にこれだけうんと値上げをしようという本店の指示どおりにやったところにはたくさん出しましょう。利益性の高いところ、これも出しましょう。要するに、この時期に物価をつり上げる、つり上げについて忠実にやったところにはたくさん出しましょう、こういうわけであります。  私もいろいろな訴えを受けまして、この物不足の時期にいろいろ企業に交渉に行きました。わが党議員団は全国各地でその活動に従事したのですけれども、企業の支店長さんにもいろいろありまして、なかなかがんとして話を聞かれない方もあるし、中には、住民の皆さんの御苦労もたいへんでしょう、私の権限のできる範囲で何とかやりましょうと言う方もあるのです。ところが、これによりますと、そういうところへはこれは少ないですよと。ですから、そういう地域にいる住民の人たちは物不足と物価高に苦しむような、そういった配分の制度になっておるのです。  そうして、支店から取引先という段階になりますと、これはもう一つひどいのであります。一〇〇%出資特約店、それから出資特約店、主要特約店のうちの育成先、目をかけておるところですね。それから高潤の販売、これをよくやる店、こういったのが優先順位。そうして、ここへは出しませんよというカットの対象先があります。従来うわ気をし、他社と取引をしていたところ、かけ持ちをしておる特約店、支払いのおくれたところ、高潤を他社から購入している特約店、これは一体どういうことでしょうか。うわ気といいますけれども、私はいろいろな事由があると思うのですよ。ほかに安い店があったとしたら、この時期に少しでも安いところへ取引をしたいというのは、これは業者の人たちの普通の考えであります。しかし、そういうところへ行くのはもうカットする。縁故のある人の話や口聞きがあって、やむなくもう一軒店をふやそう、これは農協なんかはたくさんあると思うのです、組合員の人たちが多いのですから。うちの知り合いとひとつ取引してくれと、あっちからもこっちからも言ってくる、それじゃ、まあひとつ二つ三つにしましょうかということもある。支払いがおくれたところ、これは商売上の理由だけじゃありません。病気のためにやむなくおくれた事例だって少なくないのです。そういったようなところへはカットする。指導して、こういうのはなくさせる、こういうふうに先ほど通産大臣はおっしゃった。しかし、現実にはこういうことがやられておるわけです。  大臣、この点について実態を調査して、そしてこういうやり方を是正させて、その調査した結果やられた処置、これをすみやかに本委員会に報告をしていただきたい。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その当時、その件はすでに処置済みであります。そういう疑いが当時ありました。そして、自分のかわいいところばかりよけいやって、一般的には公平な配給をしないという、そういううわさもあり、非難もありましたので、私たちは業界に対して強く、それはいけない、国民全般にひとしく均てんするように、この重大なときであるから配給するように、そのことを強く言ったわけです。  特に、薪炭商のような場合は、ガソリンスタンドあるいは直営の場所とは違いまして、はなはだ不利な扱いを当時受けたこともあるわけです。薪炭商なるものは、支払いが悪いとか、あるいはいろいろなところから購入しているとか、そういうことがあったわけであります。したがって、わりあいに皆さん方、国民の方々が買いに行く場合は薪炭商なんかが多かったわけです、近所でありますから。そういうところに結滞が出てきたものですから、これはいかぬ、そういうことで、当時すでに関係業者を呼びまして、強くそれを戒めまして、是正さしたところであります。
  210. 荒木宏

    荒木委員 ところが、その後もこういった訴えは、私たちのほうにもどんどん来ておるのです。新聞でもそのことは幾つも指摘されております。  いまそういったことについて、事例を若干御紹介申し上げますけれども、わが党の議員のところに参りましたのでは、「高齢者の私たちの家庭では、職を求めて、二十四時間勤務で給与がわずか四、五万円、そしてこの給与では老人福祉など絵にかいたもちであり、いま月末、わずかのプロパンガスや石油製品類も買うことができないような状態です。八十五歳の年寄りが首をつって、五千円の金を残して、埋葬依頼の遺書が残されているとテレビに出ていましたが、他人事でないような気がいたしました。」これが来たのは、あなたが指導して、すでに改善されておるというふうに言われたはるか後である十二月の下旬近くであります。  また、私たちの手元に参りました、これは京都の方からの訴えですけれども、「わが家には二歳の幼児と生後九カ月の幼児が二人ともついにかぜをひいてしまい、一日じゅう鼻水をたらし、せきをしてふるえていますが、こたつではたとえ押えつけてもじっと入ってくれませんし、せきをしながら冷え切って寒い家の中をはい回って遊んでいます。」そしてこのことは、取引先へ行って、そこの店が、先ほど言いましたような支払い遅延先であるとか、いろいろな要件でカットをされ、元から送ってこないのだというふうな話を聞かされて、こういう状態が起こっておるのです。これも同じく、大臣が言われた時期よりもはるかあとであります。こういったようなことが実際にその後も続いている。  私は今度の、政府が提案されて成立をした石油需給適正化法、あの中で、先日省令がきめられて、法の六条の規定による省令で、石油の販売計画届出書という、これの様式三号による書類を出すことになっておりますけれども、この様式を見まして、ほんとうに企業がやっておるような、値をつり上げて系列支配を強化するような不公正な数量コントロール、これがこの表を見ておってつかめるのだろうか。ここにありますのは、生産数量、それから販売数量の中で、これは欄が三つあります。最終需要家向け、それから特定石油販売業者向け、それ以外の石油販売業者向け、この三つの欄があるだけなんですよ。この中で、得意先が倒産したためにちょっと金の払いがおくれた、そのために、こいつにはもう出さないと言ってカットされる、これがこの表の中から出てくるでしょうか。  大臣は、一体、この表をごらんになって、いかにして不公正なやり方を大企業がしないように、実態をつかんで監督ができるというようにお考えなのか、その点を伺いたいと思います。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 法律に基づく石油の需給計画並びに報告というものは、やはりマクロの経済指導を行なうという基礎資料として必要なのだろうと思います。そのマクロの大きなつかみをやって、そして具体的なケース、ケースの問題については、個々の業者なり販売店を指導して、潤滑に配給が行なわれるように努力する、そういう性質のものであるだろうと思っております。
  212. 荒木宏

    荒木委員 この現実に起こっておる不公正な数量のコントロールは、この表をながめておっただけではわからない。これは認めますか。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それじゃわかりません。わかりませんけれども、その必要性というものは、マクロの経済指導の資料として必要なんであるから、ちょっと目的が違うのじゃないかと思います。
  214. 荒木宏

    荒木委員 それでは、大臣も一時期そのことがあると心配し、私が言った、いまも続いておって国民生活に非常な打撃を与えている大企業の出荷の操作、本店から支店、支店からさらにその先の取引先、ここのコントロールのからくり、これをどうしてつかむのでしょうか。大臣はどうしてこれをつかむことができるのですか。通産省の係員が行くとおっしゃる。これはいままでだってずっと話をしているわけですよ。この支店から取引先へ行くところの段階を、これ、一体どうしてつかみますか。その方法をひとつはっきり言っていただきたい。
  215. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 メーカーからの出荷は、いま、報告するように、とっております。それで、それに基づきまして、どの程度どの地方に全国的に石油の諸製品が流れているか、そういうことは大づかみにつかんであるわけです。しかし、末端で、どこでうっ血が起きてくるかということは、これは行政指導の問題でありまして、それは、その場合の陳情なりあるいは実情調査なり、モニターの報告なり、そういうものを見ましてアジャストして、すり合わせしていくべき問題である、そういうように私は思います。  しかし、かりそめにも末端で結滞が起こるということは、行政上よくないことでありますから、われわれは目を光らせて、そういうことがないように指示しておるところでございます。
  216. 荒木宏

    荒木委員 私が指摘をしましたこの事態ですね、元売りのやり方、それから末端で起こっておる国民生活への打撃と不公正、これはいま特定企業について指摘をしたのですけれども、これはすぐ調べて、ほんとうに大臣が言われるとおりやられているかどうか、この委員会に報告をされますね。
  217. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あなたは報告、報告とおっしゃいますけれども、ともかくいま一生懸命実はやっておるわけです。それで、灯油につきましては、ややだぶつきぎみの気配が出てまいりました。それで標準価格を下げるとか廃止するとかという議論が出てきておるわけであります。  現在、油の情勢全般を見ますと、一月の入荷量も予定どおりの約二千四百万キロリットル前後になりそうですし、油自体の不足という現象は、私は起きていないと思うのです。問題は、値段の問題でありまして、十二月にカルテルをやったという、そういう容疑が出ましたけれども、われわれ、一月以降はいま凍結しておるわけですから、それも実行させないで、かりにもし万一あったとしても、一月以降のものは実行させないで押えておるわけです。そういうようにいろいろ手配をいたしまして、数量並びに価格について、いま全力を傾倒しておるところであります。
  218. 荒木宏

    荒木委員 いま値段のことを言われたのですけれども、第四に指摘したいのは、この文書の中で、値段のことはこう言っておるんです。先ほど言った民生用灯油、これは九月末に家庭用灯油が凍結令が実施されておる。だから、いまその最中に値上げをするためには、次のことに特に留意しなければならない。そしてその手口としてこういうことを言っています。これは少しゆっくり読みますから聞いてください。「対外的」つまりマスコミ、官庁、消費者には「価格据置を言明し続ける事」国民も、新聞社も、政府に対してすら価格据え置きを言明し続けること。第二に、「万一、通産省、マスコミ等から調査が入り引き上げの事実が判明した時は特約店や、チェーンストア販売の中に含まれる約二割の工業用灯油を値上げしたので、平均価格が千円上ったと説明すること。」調査が入ったときの言いわけまでちゃんと指示しておるのです。  どうですか、総理、先ほど自己防衛のためとおっしゃった。なるほどこれは企業の自己防衛かもしれませんよ。しかし、政府をだましてすらこれはやりなさい、一握りの大企業が一億の国民をだまして、もうけの追求をやりなさい、こう言っておるのです。これはとても自己防衛などと言えたようなものじゃないと思うのです。通産大臣は、いろいろと実態把握のためにやっているとおっしゃるけれども、こういうふうなやり方でやっておる相手だという認識をしなければならぬのです。  そして、まだあります。「十二月価格引き上げについては文書によらず口頭で行う事」証拠を残さぬように文書じゃなくて口頭でやりなさい。「又早くから十二月価格を通知しないで、値上げの見込みであると十二月初旬迄言っておくこと。」上げますよ、上げますよということでずっと値上げのムードをあおっておく。そして、次がまたけしからぬのです。「マスコミや通産に対して値上げを通報する取引先があった場合、以後出荷停止をする旨それとなく言っておくこと。」これは手口が込んでいるのじゃありませんか。消費者から小売り価格アップの理由を聞かれたときは、それは人件費配送費のアップのためだと、こう説明をさせること。  総理、一体これはどういうことでしょうか。大企業の実態について明らかにしなきゃならぬ、ここにメスを入れることが、一番物価対策のかなめなんだ、わが党はかねてからこのことを主張し続けてきました。総理はそれに対して、正面からお答えになったことはなかった。この大企業の実態を把握して、こういったことを許さぬ、ほんとうに一握りの大企業が一億の国民をだまして、そしてもうけを続けるようなことは絶対許さぬ、ここにメスを入れるべきだ、こう思いますが、この点についての総理の、実態を把握してメスを入れるという決意があるかどうか、ここであらためて伺いたい。
  219. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 企業の社会的責任を果たさせるためにも、政府は実態究明を行なって物価抑制に全力を傾けてまいりたいと思います。  ただ、一言申し上げておきますが、あなたが指摘をされた某社は、そういうことをやった、それを立案したのはたくましいなあと、ほんとうに私、そう考えましたよ。悪徳商法の見本のような通達を出しておる。しかし、それは全部が全部そういうものを出しておったらそれはたいへんなことだと思います。私は、そういうことではなく、あなたがちょうど入手をされたものがそれを出しておるわけですな。それが石連が全国のものに対して、石油各社はみな、それは作戦要務令のようなもんですから、そういうものを出して、政府も何もみなごまかしてうまく値上げをしろと、こう言うに至っては、はっきり申し上げて、もう言語道断だと思います。しかし、そうではなく……(発言する者あり)いや、だから一社であっても、私もほんとうにびっくりしているのです。ほんとうにこれだけ政府も一生懸命になり、国民もこれだけ一生懸命になっているときに、たくましいものを書くもんだな、実際われわれ政治の面からも行政の面からも、そういう実態一部にありとすれば、メスを入れたり、実態把握に全力をあげなければならなぬという一つのいい手本であります。  そういう問題もあったので、確かに通産省は、先ほども言ったように三百八十円などでとても押えられるもんじゃないという国会においても御発言がございましたが、三百八十円の標準価格をきめたわけです。いまは、マスコミの報道するところ、一部値くずれでもって三百八十円さえも下げなければならないという議論も散見せられる実態になっております。  ですから、一社であっても、あなたが指摘されるようなことを、そういうことを聞いているだけでも、実際政府は行政上もっともっとしっかりしなければならぬということはよくわかります。わかりますが、それをもってすべてのものである、日本の企業が全部それで、日本の企業操典だ、そういうふうにきめつけられることは、これはちょっと問題があると思うんですよ。(「それが甘いんだよ」と呼ぶ者あり)それは立場も違うし、いろいろな角度があっても、私は、そういうことを一つだけでも、それはもう行政上見のがさないようにやると思いますが、これはほんとうに、高橋公取委員長も来ておりますけれども、やみカルテルをやって、そうして、そのやみカルテルをやった過程においてそういうものをきめて、そうして全部流しておる、そうなったらこれは許すことはできない、こういうことはここでも申し上げられますが、とにかくいまお示しになったのは一社の、それは全国に配られたものかどうかもわかりません。わかりませんが、これも通産省は、これだけのものをお示しになったんですから、これはもう調査をするでありましょう。そして、その実態の把握につとめる。そして、つとめるだけではない、適正な手段をとることによって国民の真の生活を守らなければならない、これは私もまじめにそう考えております。
  220. 荒木宏

    荒木委員 通産省は調査をするでありましょうと、こう言われたんですが、通産大臣、いかがですか。
  221. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もちろんいたします。
  222. 荒木宏

    荒木委員 総理の大企業の悪に対する認識が、自己防衛というふうなもので言われるようなものではない。その実例が明らかになったと思うのです。ただ先ほど、そういったことを、これはたいへんだ、許せない、しかしそれは一社だろう、こういう話がありましたが、調べてみればわかるのです。大体全部そろって値を上げたわけでしょう。そしてしかも、それは談合をやっているわけですよ。公正取引委員会の指摘があるだけで六回も七回も八回も談合をやっている。  そして問題は、ゼネラル石油だけじゃないのです。ここに共同石油の資料があります。これは、本年の一月七日に東京ヒルトンホテルで、東京共石会、これは共同石油の特約店、代理店の人たちがつくっている会合ですが、これの賀詞交歓会、これは新年の集まりでしょうね。これがありまして、そのときの会報が発行されています。ここに共同石油の森社長が出席をいたしました。どういうあいさつをしたか読みます。「こういう事態に対しまして、」これは要するに石油危機ということであります。「こういう事態に対しまして、われわれは原油価格の値上がりをどういうふうにして消化吸収すればよいのか、値上げは果たしてできるのだろうかということを夏ごろからずいぶん心配していたんでありますが、」この次です。「おかげさまでその後の需給事情の急変ということもありまして割に短期間に実現をすることができました。」値上げできるかどうか心配していたけれども、情勢が変わって案外すっと値上げができた、こういうふうに言っておるのです。そして、それを受けて、参会者は、森社長さんはじめ皆さんの御方針のおかげで、この危機の中でも業界はたいへん有利な姿になった。危機の中で石油業界は有利な姿になった。これは堂々と印刷されているのです。先ほど私が言いましたゼネラル石油の千載一遇のチャンスであるという考え方、そしていままた指摘をしました共同石油の、この時期にたいへん有利な形になった、これは同じ考え方じゃないでしょうか。  そして、この業界の動きを見てみますと、十一月になりまして値上げがきまった。ところが、その値上げがきまった中で、先ほど言いました共同石油は、これは社長さんは、たしか通産省にもとおられた方だと思いますが、政府との縁が深い。そこで、みな値上げ、値上げと元売りは言っておるけれども、まだ備蓄があるのだから年内は値上げせずにいこう、こう言った。ところが、そのほかの元売り業者から、何ということを言うか、いま値上げをせなければならぬのだ、千載一遇のチャンスじゃないか、こういうことで袋だたきにあうて、そして結局は共同石油も同調して一斉に値上げということになった。しかもその上に、そういうみな上げようと言っておる業界の空気があるこの時期に、年内は上げないでおこうというようなことを言うた共同石油はけしからぬから、値上げの口火をおまえのところからひとつ言うていけ、こういうことまできめたと新聞は報じておるのです。  ゼネラル石油の値上げは、あの十一月の元売り業界の第一弾でありました。業界が全部同じ方向に向かって足並みをそろえて、そしてこの時期にひたすらもうけをしよう、元売り業界ですが、そのことがいま指摘をしました幾つかの資料で明らかになったと思うのです。もちろん、詳しいことは調べてみなければわかりません。私たちは直接企業に行っても、なかなか事実をつかむのには苦労があります。しかし、皆さんは違います。行政権を持っておられる。内閣の責任をもって行政を行なっているのですから、こういうことをしているところは徹底的に調べる。会合であれ販売方針であれ、調べればわかるのですから、やらなければならない立場なんですから、一社だけだというふうなことでなくて、いまのようなことで、普通の人なら、ほかもやっているのではないかというふうに考えられるわけですから、先ほど総理は、一社だけだ、こう言われたけれども、それをいまのような国民の疑惑を晴らすために、この際徹底的に調べる決意をお持ちかどうか、あらためて伺いたいと思います。
  223. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまのような事態は、もしそれが真実であるならば、これはゆゆしいことでありまして、通産省の責任において徹底的に調べてみます。
  224. 荒木宏

    荒木委員 私は、業界のことを、業界といいますか、大企業の業界ですが、それを申し上げてきたのですが、この段階で、政府としていままでの処置がどうであったか、このことをひとつ質問をしたいと思います。昨年の十一月の十六日に閣議決定になりました石油に対する緊急対策本部、これが政府にできましたが、あのときの重点は消費規制でありました。物が不足するんだから消費を規制する、そしてメーカーや元売り、大企業に対しては安定供給を指導する。これはもう発表された方針の内容でも、その後いろんな機会に明らかにされた資料でも、根拠を詳しく申し上げるまでもないのですが、要するに消費面を規制する。供給のほうは安定供給、これは一体どういうことか。消費面を規制するのでありますから、需要はますますその度合いが強くなるわけです。だって押えつけるのですから。一方、供給する側は安定供給ということであって、どこへどういうふうに供給するかというようなことについてはきびしい規制はないわけです。現に実態では、通産大臣も言われたように、不公正なコントロールがやられたのですから。つまり一言でいえば、これは売り手市場になったわけです。その売り手市場をつくり出すような、あるいはそれが出たような段階で消費規制に重点を置いた。大企業がこの機会に、千載一遇だ、ひとつもうけようというふうな環境づくりに、あのときの政府の方針は一役買ったのではないか。結果から見ればそういうことが指摘できますし、まあ現にその当時、そういうふうな行政指導だというふうに国民は強い疑惑を持っておりました。  私は、ここで質問したいと思いますのは、そういった中で、通産省は原油の輸入量の見通しを発表しました。石油連盟も発表しました。しかし、通産省がその当時発表いたしました輸入量の見通し、これは途中で二度、三度変えましたけれども、どんなに改定した数字をとってみても、実績よりは全部低いのであります。四十七年度の末に四十八年度当初計画というのがありました。これが二億八千三百万キロリットル、それから九月に下期分が改定されまして、これは上期の需要が伸びたということですけれども、これは二億九千百万キロリットル、十一月にこれは減りそうだということで改定がありまして二億六千百四十万キロリットル、一月になりまして、今度は需給適正化法ができましたから、それで見直して二億七千六百万キロリットル。ところが実績のほうは、大蔵省の通関統計とそれから一月以降の実績見通しを見てみますと、二億九千二百二十八万キロリットル。物がない物がないと元売り業界、石油業界は言いました。そしてその数字を発表した。政府も、これはどうも減りそうだというので発表した。しかし実際は、入ってくる見通しはそれより多いというのです。売り手市場をつくり出すために一役買ったのではないか。なぜこのように実績見通しのほうが高くて、政府の見通しは低いのか。
  225. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、最初の点を申し上げますが、十一月の緊急対策は、消費規制が中心ではないかという点は、事実と違います。  十一月の緊急対策できめたことは、第一は総需要のカットです。それで、通産省では当時、一−三月にわたる設備投資を三千億から三千五百億程度カットする。自動車その他の産業についてもやったところです。それから第二番目は、日本石油消費量は、産業面が七割で、一般消費面が三割でありますから、産業面を切らなければ需給が合わない、消費面は国民生活にも影響するところであるから、できるだけこれはゆるやかにする、そういう基本方針をきめまして、産業面は十一月二十日から一〇%カット、電力その他について始めたのは御存じのとおりです。特に、その間にあって中小企業、農漁業、医療あるいは国民的運輸手段、そういう方向については重点的に配当する、そういうこともきめて、そのとおりやったわけであります。  したがって、そういう基本方針をもってこれを貫いてきたのでありまして、国民の一般消費生活については、できるだけ現状は維持できるような配慮のもとに実はやったというのが真相であります。この方針はいまでも貫かれておるわけであります。  それから、第二番目の問題でございますけれども石油の輸入については、十月六日に戦争が起きて、それからOAPECの削減が始まりまして、そしてOAPECは最初に、初めは五%削減ということでした。それがたしか十七日以降になりましたら二〇%削減、十二月以降さらに五%ずつ追加されていく、そういう発表がありまして、世界じゅうが騒然としたわけであります。それで、日本の油の大部分はメジャーズから供給を受けておりますから、シェルとか、カルテックスとか、エクソンとかというメジャーズからの通報を刻々われわれがとってみますと、まず二〇%削減というのがその当時の初めの情勢でありました。その後二五%から、会社によっては二八%削減するという通告が来まして、それらの通告を総計して、刻々と日本にどの程度の油が入るかということを計量しておったわけであります。そして緊急対策をやるときの時点においては、計画に対して一六%減ということが、まず妥当であろうという考えに立って始めたところです。しかし、その後石油業界は、とてもそんなことではだめだ、三〇%以上になりますというような話がございましたけれども、われわれはその一六%ということを基準にして始めました。しかし、十二月になりまして、事態はだんだんまだ悲観的になってきまして、そして、これは一月以降二〇%減にしなければならぬだろう、さもなければ産業に結滞が起きて、トイレットペーパーみたいな産業危機が国内に起きる、そういう非常な不安を持って、まずそういう考えに通産省は移行しておったところです。  しかし、その間にあって、日本の外交的努力によって友好国扱いが二十五日に決定をいたしました。それから油が足りないということで、スポット買いその他を全力をふるって業者もやり、通産省もやらしたわけであります。特にサウジアラビアからのDD原油等の入荷量が非常にふえたわけであります。これは、アメリカへ禁輸になって行けないものが日本へ回ってきたのだろうとわれわれは思います。そういうような努力をいたしまして、その間に石油需給適正化法を通過させることに努力いたしまして、十二月の下旬になりましてから集荷量をだんだん、油送船の到着及び向こうからの情報に基づいて集計してきますと、これは意外によさそうだ、そういうことがだんだん明らかになってきました。そこで、一月一日からの二〇%カットというのをやめまして、そして一月一六日から一五%カットを行なう、そういうふうに軽く変えたわけであります。これらは、もう前途の予測はなかなかむずかしいという情勢のもとに、われわれとしてはきわめて弾力的に、事態に密着して行政措置をやってきたつもりなのでありまして、ふえたということは、われわれ国民にとっては朗報でございます。しかし、じゃ数字が誤ったではないかと言われれば、確かに誤りましたから、これはわれわれとしては遺憾であると申し上げることしかございませんが、なぜふえたかということになれば、これは、われわれが業界その他を督励いたしまして、あのころスポット買いに全力を注いでやらしてプラスアルファの油をふやした、そういう努力もあったわけでございます。
  226. 荒木宏

    荒木委員 長い説明を聞きました。その経過の中で元売り業界はどんどん値を上げて、そして値が上がったところで品物が出てきて、いま高値が残っているのです。しかも、それは例として指摘をしたゼネラルだけではなくて、同じように歩調を合わしてやった疑いが非常に強い。  問題は、これは石油業界だけではなくて、石油化学業界も同じことであります。現に、三菱油化の代表取締役は、原料が五〇%上がっても売り値は二〇%ぐらいで消化できるのだ、こういうふうに新聞では伝えられておりますが、上げたのは実際は五七%です。これは皆さんも御承知のとおりです。あまり上げ方がひどいというので、上げた分の三〇%を下げなさい、こういうことになりましたけれども、まだまだこれじゃ足りはしません。アルミ業界などでも、これは少し上げ過ぎだということで、値下げの動きがありました。田中総理も前に、たしか本委員会でありましたか、便乗値上げだと思うがどうかという質問に対して、上げたな、こういう感じだということを言われたように私は記憶しておるのでありますけれども、問題は、この石油のことに関連して起こった品不足、そして物価が上がって、一部出始めたところに残った高値、これをどう解決するか。国民は、これは便乗値上げだ、そのことが石油の元売りでははっきりしました。  ですから、いまやられることは、この国民の強い要望と、そして物価を下げてほしい、この要求に対して、原価をひとつはっきりさせる。製品の原価をきちっと調べて、そして下げるところがあればどんどん下げる。原価はこれだけですよ、国民の皆さん、こういうことですからということでやればはっきりする。  現に、先ほども言いましたように、値上げということを言われて、いや、それは人件費だとか配送費がアップしたのだとかいうことでだませと言っているのです。国民をだませと指示をし、新聞もだませと言い、政府までだませと言っている。この一握りの大企業のやっている手口をはっきりさせるには原価を調べる、そして、それをはっきりしたところに従って納得のいくように処置をする、下げるものはどんどん下げる、こういうことだと思いますが、物価の解決のためには全力をあげると決意を表明された総理、はたしてこのことをおやりになるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  227. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価引き下げに対しては、あらゆる手段を講じなければならない、また講じていくつもりでございます。  二つあるわけです。一つは、これからの石油に例をとりますと、これからの石油というものをまず的確に予測をして——的確に予測をすると言っても、なかなかむずかしい問題がございます。消費国会議もありますし、それから産油国会議もございますし、なかなか的確には捕捉できがたいと思いますが、とにかくあらゆる角度から的確に把握をする。それで月別の入荷数量をまず国民の前に明らかにするということが、絶対に必要だと思います。そして、価格もいろいろな変動があるとは思いますが、私は去年の下期のような大きな変動というものをこれから予測をしておりません。少なくとも去年の下期よりも安定的な状態になると思いますので、輸入する数量及び価格というものを、まず国民の前に情報を提供しなければならない。これは私は、これから政府が行なわなければならない義務だと思います。  それからもう一つの方法は、いままで、いまあなたに指摘をされると、これは行政がすっかり手落ちをしておるような御指摘でございますし、行政が完ぺきだったとは私も強弁いたしません。いたしませんが、中東問題があのときにあのような状態で勃発をし、しかも、同時に石油が急激に、まあ石油が戦略として使われるという可能性は十分認識をしておっても、あのように倍になったり、ガスの三倍通告を受けたりというような情勢の変化は予測しがたかったわけでございます。そういうような状態で、いろいろ指摘をされるような事態も現に起こっていることも認識をいたしました。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕 政府もそれに対して法律を制定していただいたり、この法律執行に対して、必要な処置はとっておるわけでございます。ですから、物価を押し上げた品物別に対して、適正なものと認められるようなものは一体どういうものなのかということは、これから行政庁でいろいろ検討していかなければならないことは当然であります。  特に、その中で標準価格をきめているもの、特定物資と指定されているものに対しては、いまの価格というものはどの程度引き下げてしかるべきものかというようなものを、これは当然計算しなければなりません。そうでないと、いま引き上げられたものがあっても、これから今度品物が入ってきても、前にちゃんと引き上げられてやっているのだから半年間押えなさい、罰の意味でもう半年間がまんしなさいという行政の根拠はつかめないわけでありますから、そういう意味で、いろいろなものを洗っていかなければならないという二つの面がございます。その上、なおそれでも国民に迷惑を及ぼした不当超過とも思われる利得に対しては、これを吸収せよという強い世論が存在しますし、各党の間でも勉強していただいておりますし、政府も勉強しておるのでございますから、そういうことをやはりこれから効果あらしめるためには——言うなれば、十一月、十二月ごろは、どさくさでも、こざいましたし、いろいろな条件があったことは、これは理解ができると思うのです。ですから、私は、そういう意味で、さかのぼって適正な価格というものを探求していかなければいかぬという作業と、それを評価し、しかも長期的物価安定に資するには、具体的にその事実をどう駆使するかという問題に分けながら、両面にわたって努力をしていかなければならない、こう思います。  そうすると、あなたの第二に今度出てくる問題は、その洗い直した原価、洗い直した適正価格を国民の前に明らかにするかしないか、こういう問題だと思いますが、これは物価を安定させ、下げるということが目標であり、悪徳な商法によってもうけても、それは最終的には国民に帰属するのだということにならなければならぬわけでありますから、そういう意味で、すべてを公表するということが正しいことかどうか、それはなかなかむずかしいことでございます。いま私は、ここで公表いたしますなどということを申し上げられません。歯切れよく申し上げますと、それは申し上げられません。しかし、これは国会において……(発言する者あり)いや、明確です。歯切れよくじゃなく、明確に申し上げます。もたもたしておるといけませんから、明確に申し上げます。  そうすると、あなたは、国会の審議において、過去の超過利得がどのくらいあって、不当な値上げと思われるものが幾らあって、そうして、どういう状態においてそれから後の物価に寄与しているのだということの当然御質問が、これからもずっと国会があるのですから続くわけですから、そういうためにも、まず実質的な物価を安定せしめる、そういうことが実現しなければならない。そのためには、行政上どうすることが一番効率的であるかということを十分検討しつつ、実効があがるような方法をとってまいりたい、こう考えます。
  228. 荒木宏

    荒木委員 いま、製造原価について問題になっておる一つに米があります。これは国民の食糧のもとであり、一非常に重要な問題でありますけれども、米の生産費については、これは政府が米生産費調査というのをやっております。これについては、米の生産費統計というのがありまして、この中を見ますと、調査部というのがあり、農林省の関係の調査員が農家へ行って、そしてこの米をつくるためにどのぐらいの資材が要っているか、まあ事こまかに調べて、こういう表現が当たるかどうかわかりませんが、農民の人たちのさいふの底まで調べるような調査をやって、米の生産費がこれですと発表しておるのです。これは、私は農林省の担当者に聞いてみました。いつからやっているのですか、五十年前からやっています。そうしてどの程度の刻みで調べるのですか、月計簿というのをつくってやっているのです、毎日の動きですね。農民の皆さんは、御承知のように、生産者米価を上げてほしい、こういう要求を持っておりますけれども、むしろ政府のほうは、財政その他の理由ということで、なるべく上げないようにというような配慮でしょうか、もう事こまかに調べて、そうしてそれを発表しておる。  だとすれば、この大企業製品について、どうして政府が米の生産費、農民に対してやっておるようなことと同じようなことをやれないか、私はこう思うのです。もちろん、工業とそれから農業の違いはあります。また、それぞれ条件の違いはありますけれども、しかし、農民に対してやっておることを大企業に対してやれない、これはないだろう。また、そう言い切るのが、もしかりに問題があるとすれば、国民は、少なくとも農民に対しては徹底的に調べるけれども、大企業に対しては、何だかんだと言いながら、結局はやらないのじゃないか。まあ、いろいろ汚職の話があります。私は、そのことをいまここで詳しく言おうとは思いません。しかし、総理が言っておる自由主義経済、農民に対しては詳しく調べて、そうして大企業に対しては調べないというふうな、こういったやり方が自由主義ということで通るのだろうか。あるいは正直者がばかを見ないようにと言われる。便乗値上げの疑いが強いと公正取引委員会はいっている。そういうときに、消費者であり、そして勤労者であり、働いている一億国民が、はっきりしてほしい、これは下げる余地があるのじゃないか、こう思っておるときに、正直者がばかを見ないように、下げる余地があれば、どうせ先で上がるかもしれぬのだから、それまで延ばしてとか、そんなのじゃなくて、やはり押える、はっきりさせる。  私は、自由民主党の今度の大会の運動方針というのを拝見したのでありますけれども、これを拝見しますと、この中で、こういう時期に「暴利をむさぼる悪徳業者に対しては、自由社会の倫理と秩序を破壊する国民の敵として、きびしく糾弾する。」先ほど私が言いましたような、この企業の例で、一億国民をだまし、報道機関をだまし、政府までだまそうとして、そして値をつり上げているところは、これはまさに皆さん自身がおっしゃっている「国民の敵」としてこれを糾弾し、下げる余地があったら即時下げさせる、こういうふうに考えるのであります。  先ほど歯切れよくという御返事がありました。歯切れよく……(田中内閣総理大臣「歯切れよくでなく、明確にです」と呼ぶ)原価の公表をしない、こういうふうな御返事があったのであります。もし、そうでないとすれば、私は、やる道は幾らもあると思うのです。こういった石油業界に対して——時間がありませんから詳しい数字は申し上げませんけれども、開銀から融資も出ているでしょう。現に出ているのですよ。開発銀行に聞きました。そして開発銀行の標準契約書というのを見ますと、その中にはこういうのがあります。もしこの企業が——これは契約書の第五条でありますけれども、開銀が金を出して、そしてそこがもうけて、ふところが楽になったときには返してもらうことができる、こういう規定だってあるのです。だとしたら、こんなあくどい手口で、そして国民に対して弓を引いておるようなそういう企業からは、政府系金融機関は金を引き揚げるべきじゃないでしょうか、あるいはこれから貸さないというふうに態度をはっきりすべきじゃないでしょうか。やれることは、現行法の中でも幾らでもあるのです。それでなおやれなければ、これは法律を変えればいいのです。ここに対して出しておる、いろいろな引き当て金だとか、あるいは準備金だとか、そういった法律上の減免税の措置もあります。これの金額も申し上げませんけれども、ほんとうに総理が言われるように、大企業の実態を明らかにして物価を下げる、こういった方向でやるとすれば、幾らでもやる方法がある。  私が提案をしましたような、いまの融資の問題、それから税制度に対する改廃の問題それとともに、もう一度原価の調査、公表の問題をすべきであると思いますが、御意見をはっきり伺いたい。
  229. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 開銀からの融資というのは、石油の備蓄量をふやすため、それから公害防除の施設を促進するため、それからガソリンの無鉛化を促進するためというような、公益的目的のためにのみ、その限度において融資されておるわけであります。普通の営業の目的のために融資しているということはございません。もちろん、その会社の収益がよくなり、ふところがあったかくなれば、融資の額が減っていくというのは当然でございまして、そういう点は考慮いたしたいと思っております。
  230. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 企業の原価を調べて、これを公表せよというところにポイントがあるわけです。公表問題に対して、さっき歯切れよくというのは、あれは逆に使うことばでございますから、これは歯切れよくではなく、もたもたしておって、何回も何回も御質問を受けちゃ困りますので、明確に申し上げます、ということに私の表現を変えたわけでございますから、それはひとつ御理解をいただきたい。  これは、非常な一つの論点であります。論点でありますが、行政府として物価を下げる、また不当利得や何かがあったかどうか、また、いまの価格そのものが一〇%引き下げられても、それは、不当に上げたのが四〇%であって、一〇%下げてもまだ三〇%の根っこがあるじゃないか、こういうことを調べるには、経理の内容、それから原価と思われるものを調べなければならないということは事実でございます。だから、これは当然調べます。調べますが、しかし、それを公表するかしないかという問題は、これはなかなかめんどうな問題がございまして、ここで申し上げられる段階では、ございませんということを明確に申し上げます、こう申し上げたのです。  あなたは米と比較をされましたが、米は国民の税金をもってまかなわなければならない、いわゆる食管法の中にあります。食管制度の中にあります。同時に、農民の生活も守らなければならない、これは当然のことであります。そういう意味で、農民の生活を、所得補償ということをすると同時に、国民の、消費者側の利益も守るために、税金で補てんをしておるのが食管制度の妙であります。ですから、そういうものを、農民の納得を得るためには、いろいろな算定基準を正確に調査し、国民の理解も得られなければならない。農民の理解を得、税金で補てんをするという理解を得、ここまでは消費者米価はやを得ないのですという消費者の理解も得なければならぬわけでございますから、これは当然のことでございます。  あと、自由な経済体制における企業の原価計算というもののすべてを政府が調べて、これを公表できるかどうかという問題に対しては、これは究極的には、物価局をつくっていただきましたし、これから通産省は通産省所管物資、農林省は農林省所管物資というものに対しては、物価を安定せしめなければいかぬ、できるだけ引き下げたいということで調査をし、行政を進めていくわけですから、国会の審議の過程において、経済企画庁の物価局はどういう状態でもって調べておるのか、その数字を示せということになれば、これは国会でお示しをしなければならないということになるでしょう。秘密会を要求する場合もあるでしょうし、いろいろな場合がありとしても、それはちゃんと制度の上で明確になるわけでございます。これを新聞に公告するとか、テレビで公告するとか、国民の前に官報で公告するとかいうような、そういう状態ではなかなかむずかしいものでございます。議論の存在するところでございますし、また、及ぶ影響も大きいわけであります。こういう問題が、ある一時的な問題であってもそれが出るなら、そんなに利益があったのか、それなら、もう半年間石油の輸出価格を倍にしようというはね返りも直ちにあるわけですから、そう簡単に、すべての問題に対して原価計算をして、これを公にするということは、可能ではないわけです。  そういうことを、事を分けて申し上げておるわけでございますから、そこらはひとつ十分お考えいただきたいと思うのです。  同じ状態でも、中小企業と零細企業と大企業がありまして、大企業が売り値をうんと下げると、中小企業は将棋倒しになってしまうという例があるのです。これは銀行がそうなんです。都市銀行はあんなにもうけなくたっていいのです。もっと金利は下げられるはずなんです。しかし、都市銀行が金利を下げたら中小金融機関は全部まいってしまう。ですから、そういう場合には、大きな銀行に対しては、積み立てその他を制限してバランスをとるという、社会構造からくるものもありますので、ただ端的に、すべて調べたものを国民の前に明らかにするんだ、そうしてそれの最終判断は国民がするんだというような考え方で、経済の実態を全部公表するというわけにはまいらぬわけです。しかし、国政調査権に基づいて、政府に対して、調べたものを出しなさい、こう言えば、これはもう拒むことを得ず。拒むことなどではなく、調査したものは十分申し上げますから、そこらはひとつ理解していただきたい。
  231. 荒木宏

    荒木委員 いま税金の話がありましたけれども、米の問題は一般会計でまかなっておる、税金でまかなっておるという話でしたが、特別措置による実質的減免税ですね、これは。実質的な補助金だといわれているのです。だって、それだけ取り立てるのを少なくするというのですから。ですから、補助を出しているという点は、大企業も形は同じであり、むしろその額はうんと多いのですよ。これは計算するまでもありません。ですから、いま私が言っているのは、先ほど来指摘したようなああいったやり方をする企業、便乗値上げの疑いが非常に強いと公正取引委員会ですら言っているようなそれば、調べて国民の疑惑を晴らすべきだし、下げられるものはすぐ下げるべきだ、こう言ったのでありますけれど、まあ総理は、いろいろな理由をいわれて、下げるということを言わない。これは、やはり大企業に対して、原価を明らかにして、下げられるものは下げる、大企業に対して、なかなか思い切った処置はとれないのじゃないかという疑惑は依然として残ると思うのです。  私は、時間が来ましたから、最後の質問に移りますけれども、問題は、この石油の一番大もとの問題であります。先ほど通産大臣からもメジャーの話が出ました。日本石油企業が、石油を入れておる先である国際石油資本といわれるメジャーの問題について、質問をしたいと思います。  まず第一は、通産大臣が先ほど通産省の見通しというものを言われましたが、そのことが昨年の委員会で問題になりましたときに、情報はメジャーからもらっている、電報で一々情報を取り寄せて、それをもとに需給見通しを立てているんだ、こういった趣旨のことを言われました。ところが、それによる見通しは実績と明らかに違った。その結果は、もう大臣も認められたとおりであります。一体、メジャーはほんとうに正しい情報を日本に提供しているんだろうかどうか、これが第一であります。  それから第二は、いまアメリカの議会で、この石油危機はつくり出されたものではないかというふうなことが問題になりまして、議会に証人として呼び出されて、宣誓をして証言をしております。そして、その中で、エクソン会長は、宣誓証言のあとで記者会見をして、もうけは東半球でもうけたんだ、八三%増のもうけを東半球であげたんだ、こう言っているのであります。東半球で一番取引の多いのは、言うまでもなく日本であります。なぜエクソンがそれでは東半球でそんなにもうけたか、東半球は価格規制がないからだ、こう言っているのであります。このメジャーの大もうけのいわれは一体どこにあるか。日本との取引でもうけているのじゃないか。このメジャーの大もうけは一体どこから来ているのか、このことが明らかにしていただきたい第二の点であります。  そして第三に、前に石連の会長でありました出光氏は国会で公述しまして、メジャーが値上げを通告してきた、そして、その値上げは原油の値上がりを全部かぶせてきている、で、そのかぶせてきていたのをのまざるを得ないような契約になっている、少しでも何とかならぬかということで努力をしておる、こういう趣旨の公述をしております。問題は、メジャーから原油を入れておる日本の業者は一体どういう契約になっているのか、このことを明らかにしていただきたい、これが第三点であります。  そして第四点として、この一番大もとであります、国民生活のもとであり、日本経済のもとであるこの石油の問題について、政府が責任をもって量も確保し、価格も安定することができるように、メジャー抜きで、そういった疑惑に包まれたメジャーを抜いて、二国間の政府協定を結んで原油輸入を進めるべきではないか。これについて政府は一体どう考えているのか。ことに問題は、近く開かれますといわれる消費国会議に、外務大臣とそれから科学技術庁長官が参加をするということがきのう閣議できめられた、こういう報道があります。科学技術庁長官は、昨日のわが党の不破書記局長の質問によって、科学技術行政の責任者としての資格が疑われておる人であります。私は、そういった人が、いまこの時期に、問題にされておる科学技術行政の責任を十分に果たすことなく、その会議に参加されることは適当かどうか、そしてまた、きのうわが党の書記局長によって指摘をされましたような、そういった考え方のままで参加するようなことが適当なのかどうか、こういった点について明確に政府意見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  232. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、メジャーの情報の件でありますが、これは、われわれとしては、まだメジャーの経理や内部をのぞいたわけじゃございませんから、正確なことはよくわかりません。ただ、メジャーは産油国からの通報を受けて、それをわれわれに伝えてきたという当時の事情ではないかと思います。しかし、メジャーの中には——われわれのほうが、もっと日本に供給せよ、また、日本に供給するのを減らすな、たとえばインドネシアとかあるいはイランのような国はアラブ国ではございませんから、その分をアメリカのほうへ回して、そして日本の分がそれで減る、そういうことがないようにということを、メジャーの社長、支社長を集めて、強くわれわれのほうから要請いたしました。そのときのメジャーズの話等を聞きますと、大体において、産油国から通報されたものをメジャーのヘッドクォーターズでいろいろ勘案して、世界的なスケールで均衡あるように配分をしておるんだと、そういう情報を当時われわれに言ってきておりました。その程度が的確に知り得た節囲内でありまして、それ以上のことは推測になります。  第二にもうけの点でありますが、大体バーレル当たり約五十セントぐらいもうけておったのです。それがバーレル当り九十セントぐらいに昨年中に上がってきました。これは上半期からずっと上がってきておったわけです。それで、メジャーは、今度の石油危機によって手取りは減っていたい、その分がもうけになって出てきているのだろうと私は思うのです。それで、メジャーの手取りが減ってないということは、われわれは産油国にも言いまして、このアラブの諸国が手取り七ドル、で、メジャーの手取りをさらに減らせるようにという配慮をしてくれたにもかかわらず、メジャーの手取りが減ってなくて、最終消費国の石油の値段が高く入ってきているというのは遺憾であるということを、われわれは伝えたのであります。しかし、その手取りが減っているという情勢は、いまもってないと私、いまだに思います。この点は、われわれは検討すべきポイントであると思っております。  それから、メジャーとの契約の内容でございますが、これはメジャー直系の会社と、それからメジャーがわが民族系に供給しているという場合とで、契約の内容が若干違います。大体二、三年ぐらいの長期契約をやっておりまして、そうして一船ごとに向こうからテレックスが来まして、そして状況によって値が上がったり下がったり、そのときの市価あるいはアラブ産油国の情勢、向こうからの通知、そういうものによって変わっている、そういう情勢で、契約はいろいろ千差万別の内容がありますが、大体二、三年ぐらいの一応の概括的な長期契約のもとに運営されておると、こう申し上げることができます。  それから、二国間取引を盛んにせよというお考えでございますが、確かにそれも一案で、われわれは自主性のある油を手に入れるために、いままで非常に努力してきたところであります。しかし、二国間取引の場合は、大体入礼でやらされる、そうすると、各国が殺到するために、メジャーから入れているものよりも高いというのが現実なんです。たとえば、リビアの油のごときは十何ドルとか十九ドルとかいわれました。メジャーからいま入っているものは、平均的なものが八ドル五十セントとか、九ドル前後ではないかと一応推定されております。したがって、いわゆるDDオイルといわれる直接買い付け原油というものは、遺憾ながら高いのであって、そこで、この間ヤマニ大臣が来ましたときも、このDD原油の値段を、メジャーが売っている値段に下げてくれないかということを私、要請した次第なのであります。ヤマニ大臣は、石油情勢が緩和されるに従って両方の差はなくなっていくでしょうと、そういうような見通しを述べておりましたけれども、二国間取引ばかりをいまやるというと、高い油が入ってくる。メジャーの場合は、その産油国との協定に基づく公示価格を基準にする安い油と、それからバイバックといって、メジャーが買い戻した高い値段とを平均して日本に送ってきているわけです。ですから、ほかのいわゆる直接買い付け原油よりも安く入っておる。ですから、価格の問題を考えると、メジャーを無視するということは、日本に損になるということが部分的にあり得ます。相当な部分にあり得ます。だから、価格問題も考えながらこの問題は考えてやらなければならぬ。しかし、長期目標としては、二国間をふやしていくということは、私は非常に賛成であります。
  233. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 科学技術庁長官の米国出張は、原子力の問題等ございまして、どうしても参加をしなければならないということでございますが、いま問題があるという御指摘でございますが、そのとおりでございますので、政府は、科学技術庁長官臨時代理には、これは、いまの長官と同じように責任を負えるような立場で人選を進めたい、こう考えておりますし、これは率直にいいますと、まだ閣議には付議いたしておりませんが、私は、科学技術庁長官の経験者であり、内閣官房長官の職にある二階堂進君を指名する予定でございますので、国会の審議には支障を来たさないようにいたしたいと存じます。
  234. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 荒木君に申し上げますが、もうすでに時間が超過しておりますから、簡潔に……。
  235. 荒木宏

    荒木委員 わかりました。  二時間余りにわたって政府意見を伺ってきましたが、いま最も関心を寄せておる石油の問題について、私は、最後に質問いたしましたメジャーとの関係で、実態が政府としてもよくわかっていない、しかも、そのメジャーは利益をどんどん伸ばしてきており、二十五セントから九十セント、一ドル二十五セントと利益を伸ばしてきておることは、すでに明らかにされておるとおりです。しかも、量の点についても、たとえばイランのほうは供給が減っていないにかかわらず、入っておる原油の量を見ますと、イラニアンライトなどは減っておる。むしろ減っておるはずのサウジアラビアのほうは減り方が少ない、こういったようなことであり、ほんとうにいまの石油問題について政府が責任をもって解決するとするなら、このメジャーに気がねをする、アメリカに対してものが言えないというふうな状態は改めて、そうして実質的な国益に沿うような平等互恵の取引を進めるようにすべきである。そして大企業に対しても、この際徹底的にメスを入れる、そして物価を下げるという政策を、田中内閣に強く要求をいたしまして、私の質問を終わります。
  236. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて荒木君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田君の残りの質疑を許します。岡田春夫君。
  237. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほどクラ運河の問題についていろいろ質問を留保しておりますが、これについて政府のほうでお調べいただいたことがあるはずでございますので、その点からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  238. 大平正芳

    大平国務大臣 外務省の地域政策課がつくりました書類なるものは、運輸省、通産省、大蔵省、経企庁に差し上げてございまして、それ以外にはございません。
  239. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 四十八年七月十日から十二日のシンポジウム開催中、小久保事務官は七月十日及び十一日の午前中の二回出席いたしました。それは傍聴という形でありました。会談出席後担当課長に口頭で会談の模様を報告しておりますが、その内容は、壮大なプロジェクトで、夢のようなビジョンである、そういうふうに報告しております。そして、その発言中の主要な経過の概要についても報告をしております。  資料は、別に作成しておりません。
  240. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私、先ほど質問いたした中で、たとえば、外務大臣に対しては十一月二十一日のアジア局のマル秘資料、これはどの役所に出しているか、こういうことを聞きましたら、外務大臣は、運輸省だけです、このように御答弁になりました。中江参事官もそのように言いました。しかし、いまの御答弁のとおり、これは私の言っているとおり、まさに運輸省の官房、大蔵省の投資二課、経済企画庁の経済協力一課、通産省の経済協力課、それぞれ各官庁に資料を出していることは明らかになったわけであります。しかも、それだけではありません。外務省の省内だけでも約七十部がこの中に出されていることが、外務大臣のほうからお出しになった資料によって明らかになりました。こういう事実は、もうすでにあなたのほうで答弁をされたんですから、これ以上のことは証印めてまいりません。  しかし、通産省の問題については、いまの答弁では満足はいたしません。先ほどの小久保氏のこの問題については、口頭で報告をされたと言っておりますが、それだけではないはずです。文書で報告をされているはずです。  まず、それ以前に、これは外務省にしても通産省にしても、この会議に出席をした限りにおいては、この会議のテキストがあるはずです。そのテキストには、全部水爆の問題が書いてあるじゃありませんか。こういう点を私は先ほど追及しなかった。こういう点を見ても、通産省も外務省も明らかにこの水爆の実験をやっているということは明らかであります。  第二点としては、先ほどから……(「水爆計画だよ」と呼ぶ者あり)水爆ですよ。水爆の実験の計画をやっているということは明らかであります。計画ということばが落ちたのです。訂正いたします。  そこで、続いて、先ほどから外務省、通産省が言っておりますが、これは単なる民間プロジェクトである、このようにおっしゃっておられます。しかし、これはタイ国の政府がチャウというタイ石油精製会社の社長に委任をして、タイ国のナショナルプロジェクトとしてこれは委任をしている問題です。ですから、単なる民間同士のプロジェクトであるというように理解すべきではありません。こういう点ははっきりしておかなければなりません。特に、このチャウ氏の場合においてはいろいろ話がございますが、私は、きょうの質問においても、終始個人的な問題については触れません。こういう点については、チャウという人が単に個人でやっているのではなくて、これはまさに国家プロジェクトの一環として委任を受けてやっているのだということが明らかであります。  そこで、この水爆を中心にしてやっているということは、外務省のマル秘資料の中にもそれは書いてある。私は文書をそのまま読みません。これはマル秘になっているのですから、一応尊重いたしまして読みませんが、東京会議の結果、原子力の利用によるところの水爆を、結論が出されたようである云々と書いています。こういう点からいって、まさにこの問題については水爆の爆発の計画、これが主内容、中心の内容であるということは明らかであります。  そこで、総理に最後に伺っておきますが、このように水爆を爆発させる工法によって運河をつくるということは、被爆国である日本としては、このようなことを絶対に許すべきではないと思う。この点は、先ほど森山長官も、原子力基本法の立場からいっても、これについてはわれわれは認めるべきではないと思うという答弁をされた。また、部分核停条約に基づきましても、先ほど外務省の条約局長が言っているように、部分核停条約の第一条の第二項で、このようなことを許すことは認められない、こういうことをはっきり言っています。これは、もし認めるならば条約違反であります。  こういう点からいって、このクラ運河において、水爆によるところの爆発計画、開さく計画、これは日本政府としては絶対に認めるべきでないと思いますが、この点、総理大臣、率直にお伺いをいたしたいと思います。
  241. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、地峡の運河計画というものは、いま中曽根国務大臣が述べましたとおり、膨大もないものでございますし、それでまだ、つくるとすれば、在来の工法でやれば一体どうなる、また核を使えばどうなるかというような段階のようでございます。  私もさっき、昼の時間がございましたから、いろいろ聞いてみました。それで、まだ日本が参加をするとか何かという状態ではないのだ、だからタイでも全然話が出なかったのでしょう、こういうことでございます。  それで、これには複雑な問題があるようです。これはお隣の国はパイプラインのほうがいいのだということでございますし、それで、この運河がもしできるとすれば、シンガポールは上がったりになるおそれもあるというようないろいろな問題もございまして、なかなか簡単に結論の出るような問題ではないというところまでは勉強いたしました。せっかくの御質問でございましたから、そこまで勉強いたしましたが、まだほんとうにどういうようなプロジェクトとして実現性があるのかないのかさえも決定しておらぬ。ただ、あなたが御指摘になったように、タイ政府が、何という人ですかな、その方を主にして研究をしてもらっているということは、私もそのとおり報告を受けました。  結局、こういうものに対しての御質問でありますが、非常に夢のようなという表現で中曽根国務大臣は答えましたが、私もまだ、実現性があるものか、ないものかもさだかに認識をしておりません。  ただ、申し上げられるのは、原子力は平和利用の目的以外に使ってはならないという厳たる国是があるということだけは、私も承知をいたしております。だから、クラ地峡という問題がどのような状態でこれから展開をするのかという問題に対しては、全く承知をしません。しませんが、もしもという、イフがつくわけですな。もしもこれが実行され、しかも核を使うという場合にはどうするのかというお答えとすれば、これは日本で行なうならたいへんなことでございますが、外国で行なわれるものでございますし、これは実際世界的話題になると思うのです。世界的話題になり、人類的話題にもなると思います。私は、そういう意味で、  日本は非常に慎重でなければならないということだけは、これはもうすなおに申し上げられます。
  242. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ただいまの御答弁では、私は必ずしも納得いたしません。しかし、いいですか、総理、聞いてください。あなたのときも私は聞いているのだから。こういう問題について、政府が関係がないと再三先ほどからおっしゃっているけれども、私は関係ないとは思わない。それは、先ほどから私が取り上げている幾つかの問題をあげても、たとえば、全く関係のないことならば、外務省がマル秘資料で出す必要はないじゃありませんか。こういうことをやっておりますよというようなことは、何もマル秘にする必要はないじゃありませんか。こういう点については、私はきょうのこの段階においては質問はいたしません。特にこれらの問題については、もっと真相を明らかにしなければならない幾つかの問題があります。そういう意味で、私はここで、この問題は一応この発言できょうの段階においては終わりますが、あとの発言は留保いたしますけれども……。  ひとつ私は、証人喚問として、安芸皎一氏、先ほど申し上げた方です。渡辺誠氏、海部八郎氏、これは日商岩井の専務でクラ運河計画の担当の方であります。それからクラ運河の実務担当として高橋勇蔵氏、それから飯島貞一氏、これは日本工業立地センターの常務理事、それから商工組合中央金庫の理事長高城氏、それから通産省の小久保寿一氏、外務省の柳博氏、これらの方々に御出席をいただきまして、私は事実をもって明らかにしたいと思いますので、理事会においてこれはおはかりをいただいておきめをいただきたいと思います。
  243. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ただいまの岡田君の要求は、理事会で研究をいたすことにします。
  244. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、時間もあまりございませんので、続いて次の問題に入ってまいります。  先ほど休憩になりました直前は、こういう点で休憩になりました。政府主導経済協力というものは、現地の軍事政権を擁護すること、そういうことを具体的に進めるということが一つのねらいになってくる危険性がある。その証拠として、カンボジアに対して緊急無償援助という名前で、日赤を通じて、人道的なものであると称して、日本から無償で援助を行なったが、これが軍事目的に使われているではないかという質問まで入りました。そこで休憩をいたしたのですが、もう一つ、私はこれについて具体的に伺ってまいりたいと思います。  防衛庁に伺いたい。これは昭和四十七年の五月二十三日に、防衛庁が参議院の内閣委員会に正式の要求資料として、鈴木理事が要求いたしました資料として提出をされた文書のコピーであります。この中に、全部その当時の訓練資料、教範が書かれております。私、先ほど勘定いたしましたが、たしか百四十八でございました、航空自衛隊の関係に関しては。この航空自衛隊の訓練資料は、これだけですべててございますか、あるいはマル秘その他の扱いのために、この中には出されていないものもございますか、どうですか。
  245. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ちょっと突然でありますから、私もよく全部見る時間はありませんから、その当時の責任者の諸君から答弁をいたさせます。
  246. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 お答えいたします。  航空自衛隊の教範は、現在——現在と申しますのは、昭和四十九年一月一日でございますが、教範五十二点、訓練資料百二十点でございます。
  247. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは何月現在……。
  248. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 昭和四十九年一月一日現在でございます。
  249. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、あなたに伺いたいのですが、ここに出されている訓練資料は百四十八ありますよ。それから整理をして解除したという意味ですか、訓練資料は。減りているというのはちょっと考えられないね。
  250. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 当時からいままでどういうふうに個々に変遷をしてきたか、それは確認いたしておりませんが、訓練資料あるいは教範というのは、絶えず点検をし整理をいたしておりますので、変化が生じているわけでございます。
  251. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ伺いますが、これは防衛庁長官よりも——あなた、責任を負ってくれますね、向こうの政府委員答弁は。(「それはもちろんだ」と呼ぶ者あり)  それじゃ、航空自衛隊訓練資料、昭和四十一年十二月制定で、もちろんこれは訓練資料ですから航空幕僚監部の作成のものですね。それで、米空軍のベーシック・ドクトリンというのがありますね、これには書いてありませんけれど。
  252. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいま御指摘がございました航空自衛隊の訓練資料「米空軍ベーシック・ドクトリン」というのは現在ございます。ただし、これは現在ございますのは、昭和四十八年三月につくったものでございます。
  253. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あるということを確認されましたが、それはあなたのおっしゃるとおり、昭和四十一年制定版を昭和四十八年の三月の十七日に航空幕僚長石川空将の名のもとに改定をされて、同年四月二十日から使用されていることになっています。そのとおりですね。
  254. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの訓練資料「米空軍ベーシック・ドクトリン」は、昭和四十八年三月、航空幕僚監部として作成をいたしております。
  255. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これを拝見いたしますと——まずその前に伺いますが、あるというお話ですが、訓練資料の記号番号は何番でございますか。
  256. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 空自訓練資料〇〇一の一でございます。
  257. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私が調査しているのと一致いたしております。  そこで、その中に改定の主要点が書いてあります。改定の主要点はずっとうしろのほうに書いてございますが、「改訂、削除又は追加内容に関する要約」として、「この改訂版は、平戦両時において、米国の国家目的の達成に寄与する空軍ベーシック・ドクトリンの内容を再新したものである。この改訂版においては、すべての章、とくに核作戦と特殊作戦を扱う第四、第五及び第六章を改正するとともに、旧版の第六章結論を削除し、さらにAFM一一−一に基づいて、用語を改訂した。」したがって、ここでは米空軍のベーシック・ドクトリンに基づいて日本の自衛隊がこれを訓練資料として扱う。この訓練資料の中には、核作戦と特殊作戦のことが書いてある。そのとおりですね。
  258. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 自衛隊の幹部自衛官の教育にあたりましては、防衛上の専門的な知識を向上させるために、外国の資料を翻訳いたしまして、それを配付いたしたものはいろいろございます。この訓練資料もそのうちの一つでございまして、これはあくまでも参考であります。しかもこの中には、米軍のマニュアルを翻訳し、そのマニュアルの原文をそのまま添えて、そうして収録をしてあるわけでございまして、私どもは、これを教育訓練の準拠、いわゆる規範的なものといたしておりますが、そういう意味での性質のものではございません。
  259. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃあなた、参考資料とおっしゃるんなら、この資料は国会に御提出いただけますか。
  260. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは米空軍でもオープンにしておりますから、差し上げます。
  261. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、これをオープンにされるのならば、いつお出しいただけますか。
  262. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これですけれども、コピーして出してよろしゅうございますか。同じことですから、コピーすれば、いいですね。——これをそのまま出すのは貸し出し手続が要りますので、だから資料としてお出しするなら、コピーで出します。同じものですから、よろしゅうございますね。
  263. 岡田春夫

    岡田(春)委員 長官、国会に正式に出していただきたいと私は言っているんですから、私だけではなくて、正式に各委員に配付してください。これだけですかというような、そういう言い方をあなたおっしゃるなら、全部出してください。
  264. 山中貞則

    ○山中国務大臣 だから、全員に配れとかなんとか言われるわけですから、したがって、改ざんも何もいたしませんから、コピーした資料をお出しいたします。それでよろしいじゃないですか。
  265. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは、この中にこういう点も——お出しになるので、私あとで、私の調べてあるのと照合いたしますけれども、この中には、第四章として軽度の核作戦の問題、第五章として強度の核作戦の問題、これは戦略核兵器並びにその戦略の問題です。第六章は特殊作戦の問題。私が、特にここで取り上げておきたい点はこの点です。特殊作戦の問題について、このようなことを訓練して一体いいのであろうかどうかという意味で、私は伺っておきたい。  この第六章の空軍の特殊作戦の中で、「この作戦は、外国の国内治安維持、心理作戦、不正規戦及びこれに関連ある諸活動を含んでいる。」そうしてその具体的な解説の中で、「外国の国内治安維持行動」というところにおいては、「行動時において空軍特殊作戦部隊の基本的役割は、国家の建設及び治安維持に関して、現地国民を激励し、訓練し、必要な勧告を行うことである。」次は、「不正規戦」について、不正規戦については、「この作戦には、遊撃戦のほか、脱出作戦、又は転覆活動が含まれる。これらの行動は、敵国の領土、又は敵の制圧地域において、通常国外から種々の支援と指令を受ける現地国民が主体となって実施される。」と書いてある。すなわち、アメリカの空軍は、いま私が読んだように、外国における特殊作戦を行なうことになっておる。この特殊作戦は、ただいま申し上げたように——国内の治安維持活動というのは、外国の国内ですよ。外国の国内の治安維持活動を行なう。——何ですか。不規則発言があったのですが、通産大臣、何か不規則発言があったのなら、伺いましょう。
  266. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そんなことはありません。質問してください。どうぞ。
  267. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それから不正規戦。不正規戦においては、アメリカ空軍は遊撃戦、脱出作戦、転覆活動を行なう。このようなことが米空軍のドクトリンとしてはっきり取り入れられ、しかも、日本の航空自衛隊がこれを一つの訓練資料として使われる。四十一年に制定されたこれが、アメリカはこのドクトリンを改定いたしました。この改定に基づいて、日本の自衛隊もまた改定をいたしたのであります。  私は、今日の日本の自衛隊の性格からいって、外国における転覆活動などをやらせるようなことを訓練資料に使うというのは、まことに憲法違反も尤たるものだと思う。こういうことをわれわれは許すわけにはまいりません。これについては、どのようにお考えになりますか。
  268. 山中貞則

    ○山中国務大臣 考え違いをしてもらっちゃ困るのですけれども、アメリカの空軍がそういうことを構想として考えているということを、参考に資料としてみんなが読むことはおかしいことじゃないので、アメリカがそう思っていることを、日本がそのとおりに従えとか、これを基準としろとか教範としろとか、そんなことは全然言っておりません。  私も全文読みました。ずいぶん勇ましいことが書いてありますよ。かといって、アメリカの空軍がそう思っているというだけのことであります。わが自衛隊は、そういうことを考えているアメリカの空軍の意識も知っておく必要がありますから、参考資料にしておるというだけのことであります。
  269. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは参考資料として知っておく必要があると言うけれども、どうですか、石川空将の、これを採用するという決定のあとに何と書いてありますか。「幹部自衛官がこれによって資質向上のために役立てる」と書いてあるじゃないですか。これは、やらないということのためにこれを使っていると、こういうことですか、あなたのおっしゃるのは。
  270. 山中貞則

    ○山中国務大臣 自衛官といえども、また高級幹部自衛官であれば、一そう世界に視野を広げ、各種の文献その他に目を通し、教養を豊かにして、そしてわが国の憲法下の各種制約下において、任務を遂行すべき一番あり得べき姿を探求していくために、あらゆる勉強をするのはあたりまえだと思うのです。
  271. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、アメリカの空軍はこのドクトリンに基づいてやっているということは、あなたお認めになるのですね。
  272. 山中貞則

    ○山中国務大臣 アメリカがそういうドクトリンを持っていることは承知しておりますが、アメリカがそのことを、たとえば日本に強要したり、日本がこういうことを、自衛隊で練摩をしなさいというようなことを言っているわけでもないし、そういうまた強要を受ける筋合いでもありません。われわれは参考資料であるということだけであります。
  273. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは、あなたベーシック・ドクトリンです。ナンバーから言ったって〇〇一の一、アメリカのいわゆるナンバーから言ってもAFMの一一−一ですか、これは基本ドクトリンですよ。実行するのはあたりまえじゃないですか、アメリカは。日本がやれとかなんとかという問題も、この中の文章に書いてありますよ。書いてあります。日本とは書いてない。友好国と書いてある。友好国とは書いてある。こういう点についても、あなたはこれをどういうようにお考えになりますか。
  274. 山中貞則

    ○山中国務大臣 アメリカの大統領やあるいはいろいろの要路の人や、あるいはまた陸海空、それぞれがいろいろなこと言いますよ。かといって、それが私たちを拘束するわけでもありませんし、日本という名ざしでないことは、あなたも認めていらっしゃいますから。私たちは安保条約を結んでおりますから、アメリカのいろいろな考え方というものに関するオープンの資料があれば、それは参考の資料としてわれわれが勉強していく分において、別段その構想をわれわれがうのみにせよというのでもありませんし、ただの参考資料でありますから、何ら問題はないと思います。
  275. 岡田春夫

    岡田(春)委員 米空軍のベーシック・ドクトリンが、実際に行なわれている一つの例を申し上げましょう。  これは沖繩であります。外務省のアメリカ局長、来ていますね。一九七一年の四月ないし五月から沖繩において九〇SOS、グリーンベレーじゃない、レッドベレー、これがベーシック・ドクトリンの特殊作戦に基づいて参加をしている。沖繩に配置をされております。SOSというのは、スペシャル・オペレーション・スコードロンです。第九〇SOS、これはこのベーシック・ドクトリンに基づいて特殊作戦部隊として、空軍として配置をしている、この事実、御存じになっていますか。
  276. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩返還交渉当時以来、沖繩にありますアメリカのいわゆる特殊部隊というものにつきまして、国会等でいろいろ御議論ございました。当時、特殊部隊の一つとしていわれましたのがグリーンベレーというものでございますが、私、そのレッドベレーというもの承知いたしておりません。  ただ、当時いわれました特殊部隊は、いずれも陸軍管下のものでございまして、ただいまのベーシック・ドクトリンの御指摘のものは空軍であるというふうに承知しておりますので、その点がどういうふうにかみ合いますか、調べさしていただきたいと思います。
  277. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田君に申し上げますが、もうお約束の時間がはるかにはるかに超過しておりますから、どうぞ簡潔にお願いいたします。
  278. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほど、特殊作戦の部分については、私は印刷をいたしまして、その部分を配付いたしました。あと、核作戦の場合、軽度の場合、強度の場合、これについては、あなたのほうから資料を配付していただいた上で、これは質問をいたしたいと思います。それは資料を出してもらわないとわかりませんからね。いいですね。  それから、先ほどのレッドベレーの問題については、私のほうで調べてあります。これについては、いまおわかりにならないそうですから、あとでお調べをいただいて御報告を願います。  そこで、委員長に私は協力をいたしますが……。
  279. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 何を協力するのですか。
  280. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これから言うことを静かに聞いて……。私は時間にできるだけ協力をいたします。  したがって、この問題を一つ取り上げましても、防衛庁長官がいかに答えても、昨年改正をしたベーシック・ドクトリンまで使って日本の航空自衛隊が訓練をしているということは、これは、あなたがどのように言われてもゆゆしい問題です。しかも、転覆活動までやることを、アメリカの空軍のこのことを日本の航空自衛隊が訓練をしている。参考資料にする、訓練資料だから。こういうようなことを私は認めるわけにはまいりません。しかも、現地の軍事政権を強化するために、先ほど言ったように、人道的な目的でさえ軍用に使われているではないか。アメリカの空軍のこの資料を使って、航空自衛隊がこのようなことを将来やる危険性を持っていると私は思う。こういう点では、こういう訓練資料をつくられることは、私は絶対に賛成できませんが、これについてはどのようにお考えになりますか。
  281. 山中貞則

    ○山中国務大臣 あなたが承服できないとおっしゃっても、事実、アメリカの空軍がそういうものを、ドクトリンを持っておるわけでありますから、それを参考資料として配付することは一向差しつかえございませんので、私たちは、そういうことを自分たちがやろうとは言っておりません。したがって、参考資料として見る分には、何らわれわれはその訓練をやるわけでもなし、差しつかえのないものと思います。
  282. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、これらの問題、山中防衛庁長官はそう答えておられますけれども、特に核作戦の部分については、これは見なければ私は質問ができません。そういう点からいって、これらの点については留保いたします。そして、これの留保については理事会で御相談ください。  そういうことを含めまして、このような危険きわまりない特殊作戦などを航空自衛隊がやっていることについて、私は……(「やってない」と呼ぶ者あり)訓練資料としてあるじゃありませんか。訓練資料としてあることについて、強く警告をいたしておきます。  残余の問題は留保をいたします。
  283. 山中貞則

    ○山中国務大臣 警告をされましても、私どもは間違ったことをしているとは思っていませんので、私は受け取るわけにまいりません。
  284. 岡田春夫

    岡田(春)委員 山中防衛庁長官が受け取らなくても受け取っても、これは国会の問題です。あなたはそういうことを言われても、この事実についてあとで明らかにしますから、あとは留保しておきます。
  285. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 資料を出すのですね。——資料を出すことに防衛庁長官が発言をせられております。しかし、理事会で相談はいたしますが、留保の留保の留保なんということは、この委員会じゃ前例がありませんから、それだけは……。  これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十分散会