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1974-01-29 第72回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年一月二十九日(火曜日)     午前九時二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       前田 正男君    松浦周太郎君       松岡 松平君    松野 頼三君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    辻原 弘市君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       八木 一男君    湯山  勇君       青柳 盛雄君    田代 文久君       不破 哲三君    松本 善明君       有島 重武君    坂口  力君       矢野 絢也君    小平  忠君       玉置 一徳君    塚本 三郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣審議官   粟屋 敏信君         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         日本学術会議事         務局長     高富味津雄君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局経済部長 熊田淳一郎君         警察庁刑事局保         安部長     綾田 文義君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁長官官房         長       丸山  昮君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 田代 一正君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         科学技術庁原子         力局長     田宮 茂文君         沖繩開発庁総務         局長      岡田 純夫君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         国税庁長官   安川 七郎君         国税庁次長   吉田冨士雄君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省機械         情報産業局長  齋藤 太一君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         工業技術院長  松本 敬信君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁石炭部長   佐伯 博蔵君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         中小企業庁長官 外山  弘君         労働省労政局長 道正 邦彦君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省道路局長 菊池 三男君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治省行政局長 林  忠雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 一月二十九日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     田代 文久君   坂口  力君     矢野 絢也君   小平  忠君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     小平  忠君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。不破哲三君。
  3. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党革新共同を代表して、内外政策の一連の問題について、総理並びに関係閣僚に質問をしたいと思います。  まず第一に、当面の物価インフレの問題であります。  いまさら私が申し上げるまでもなく、最近の物価値上がりというものは、まさに狂乱、非常な事態であります。たとえば昨年の十二月、卸売り物価指数は前年対比二九%、小売り物価指数は同じく前年対比一七%、こういう異常な値上がりは、日本資本主義の歴史の中でも、第一次世界大戦後の米騒動前後の三年間と、それから第二次世界大戦後の四年間、この二つの時期を除いては、このような異常な事態はいまだかつてなかったことであります。これをインフレと呼ぶのを避けようとしても、非常事態であることはきわめて明瞭であると思います。まさに、政府がその手の中にあるあらゆる手段を尽くしてこの非常事態に立ち向かう、あらゆる措置をとって物価の、安定を実現する、これは国民責任を負う政府である以上当然のことであると考えます。  ところが、政府は、ことばでは、物価安定を最優先の課題と、総理もしばしば強調されましたが、その事態の中での行動を見てみますと、それからまた、本国会での総理その他の言動を見てみますと、この非常事態という認識、あらゆる手段を尽くして物価安定に全力をあげる、そういう決意がどうもうかがえません。  私は、まず初めに田中総理に、この現在の物価情勢がまさに日本経済国民生活にとって、いわば非常の事態である、政府が手に持っているあらゆる手段を尽くしてこれを押える、物価安定を実現する、これが政府のいわば最大の任務である、こういう認識をお持ちであるかどうか、あらためてこの際伺いたいと思います。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現下情勢で一番重要なものは物価の安定であるという認識においては、いま指摘したあなたと変わっておりません。特に私たちは、行政府をあずかっておる立場におりますから、この物価安定というものを、政府があらゆる努力、あらゆる施策を駆使することによって、早期に収束をせしめなければならない重大な責任を持つものであるというきびしい立場に立っておるわけであります。
  5. 不破哲三

    不破委員 行政府をあずかる政府としての行動、これについて、では具体的に伺いたいと思うのです。  たとえば、昨年の国会で、生活関連物資買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、これが成立をいたしました。そして昨年の七月六日から発効したわけであります。昨年の国会においても、田中総理は、われわれが物価を押えようと思っても権限がない、その権限がこれらの法律によって与えられるならば、これを最大限に活用して物価安定に尽くすということを何べんも約束されました。  それからまた、十二月国会においても、石油二法が通過したときに、ほかの外国にはあるが、敗戦国日本にはないような権限、これをこの二つ法律政府が手にするわけだから、この権限が与えられるならば必ず安定実現する、こういうことも約束されました。石油二法は成立してまだそう多くの日はたっていないわけでありますが、この買占め売惜しみ防止法、この緊急措置法に関しては、政府行動をとるべき期間は十分にあったはずであります。ですから、私は、ほんとう田中内閣がそういう非常事態であるという認識に立って、現実の物価問題に当面しているかどうか、この問題を検討するために、この緊急措置法がどのように活用されたかということを伺いたいと思うのです。  この緊急措置法で、政府に与えられた権限の一番中心的なものは、言うまでもなく第四条にある。実際に買い占め、または売り惜しみ現象があったときには、政府はその業者に対して、当該特定物資売り渡し指示することができる、それからそれに従わないときは、これこれの命令をすることができる。この第四条が、買い占め売り惜しみ防止、価格安定のこの法律政府に与えた最大権限だったと思うのです。  当時の情勢を考えてみますと、あるいは材木あるいは繊維、さまざまなものの売り惜しみ買い占め現象があって、それで国民が悩んでいる。それに立ち向かうために、政府にこの権限国会が与えたわけであります。ところが、この法律ができてから、ではそういう買い占め売り惜しみ現象はなくなったかというと、むしろ昨年の後半からことしにかけて、ほとんど生活物資のあらゆる分野に買い占め売り惜しみ現象が、もうだれの目にもわかる形であらわれた。  そこで私は伺いたいのですが、この法律国会から権限が与えられた政府が、一番かなめになる第四条、この法律に基づく特定物資売り渡し指示、こういう権限発動されたことがあるかどうか、このことを伺いたいと思うのです。
  6. 内田常雄

    内田国務大臣 買占め売惜しみ防止法のねらうところは、不破さんが仰せられたとおりでありますが、昨日も議論になりましたように、これは三条四条、五条といろいろ権限が並べてありまして、まず三条で、買い占め売り惜しみ事態が発生しないような管理監督をする、調査をするということを前提といたしておりまして、昨年あの法律が制定をされましたころは、私はその当時閣僚ではございませんでしたけれども、やや事態が鎮静した、おそきに失するような感がないでもなかったように思います。しかし、その後政府としては、第三条調査物資移動等管理監督をもっぱらやっていたようでございまして、四条による放出命令を出した事跡は今日に至るまではない。ただ一件、灯油についてそのような事態が生じましたけれども、これは同じようなことを目的とする消防法の規定がございまして、消防法処理をしてしまった、こういうふうに私は聞いております。
  7. 不破哲三

    不破委員 灯油の件は、四条発動ですか。
  8. 内田常雄

    内田国務大臣 消防法の件と競合をいたしまして、消防法処理済みであったので、四条発動する必要はなかった、こういうふうに聞いております。
  9. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たとえば合成洗剤につきましては、一月十七日に、三鷹の中央物産というところで、消費者からの情報提供に基づいて現地調査を行ないました。在庫は二日分であって、これは買い占め売り惜しみとは認められなかったけれども、行政指導によって、迅速な出荷を行なうように、その際現場で指示をいたしました。  一月十九日には、静岡市、日本通運の倉庫におきまして、同じように合成洗剤ライオン油脂の品物が保管されている旨の情報に基づいて、現地調査を行ないました。これは、在庫通常の三分の一以下であって、売り惜しみとは認められない。しかし需給逼迫状況にかんがみ、出荷の促進を指示いたしました。  こういうようにして、売り惜しみ買いだめという疑いが十分濃厚でない、しかし、いまこれだけ逼迫しているんだから、たとえ通常在庫あるいは通常在庫より多少多いという程度であっても出しなさい、こういう指示をしてきておるところであります。
  10. 不破哲三

    不破委員 要するに、第四条発動したことは一度もない。ただ、私、ちょっといまも気になりましたのは、この法律は売惜しみと買占め防止法なんです。ところが、中曽根通産大臣は、売り惜しみ買いだめというように、ことばが変わってきた。これはいつのころからか変わってきたわけであります。田中総理もしばしば買いだめ防止ということを言われます。つまり、この法律業者買い占めを取り締まるものであるのに、いかにも消費者買いだめすることが問題であるかのような議論が、閣内でも非常に盛んになっている。それがこういうところにもあらわれると思うのでありますが、法律は、買い占めを防止するものであって、買いだめを防止するものでない、この点は御了承願いたいと思います。  ところで、第四条の問題ですけれども、つまり一度も発動したことがない。ところが、発動しなければならない状況が生まれなかったのかというと、私は、決してそうではない、国民はそんなことは期待していなかったと思うのです。  たとえば、いまの物不足の問題にしても、一番最初に問題が起きたのはトイレットペーパー、これが去年の十月末にパニック状態が起きたといわれました。十一月には、たしかこれについて、この緊急措置法による指定が行なわれたと思うのですけれども、この事態について、政府は一体どういう措置をとられたのか。この事態について、あれだけ大規模な買い占め現象が、売り惜しみ現象が行なわれながら、なぜそういうときにこの法律発動してこれを押えなかったのか。こういう売り惜しみ買い占めによるパニック物価の狂騰に対しては、最初段階で押えることが必要だったわけであります。だからこそ、われわれはこの権限政府に与えたのに、なぜあの段階発動しなかったのか。そのことについて、総理答弁を伺いたいと思います。
  11. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 経済の安定をはかり、正常な流通を確保しなければならないということによりまして、種々の法律を与えられたわけでございますが、各省には、各省設置法をはじめ、その他の法律も存在するわけでございます。でございますので、行政の中で各法律を十分駆使しながら、実情に適合するような行政を行なってまいりたいという方針で続けてまいったわけでございます。まあ昨年の七月、この特殊な法律を与えられながら、少し発動するのに時間がかかったという御指摘でございますが、これは政府準備それから陣容、いろいろな問題もございまして、これからはこれら四つの法律を完ぺきに駆使しながら物価の安定に寄与してまいりたい、こう考えます。
  12. 不破哲三

    不破委員 この法律緊急措置法なんですよ。つまり、あの事態緊急事態だったから、緊急措置をとるために、われわれは政府権限を与えたわけです。ところが、七月にこれができ上がってから今日まで半年たって、まだ準備不足で、これからおいおい取りかかるというものであるならば、そこが私が言う政府認識の問題だと思うのです。非常事態と考え、国難ということばもありましたが、国民生活の大危難と考えるならば、この非常権限が与えられるならば、全力をあげてこれに取り組むのがあたりまえじゃありませんか。  それから、先ほど内田長官の話でも、第三条ではいろいろやったと言う。第三条は、政府がこういうことを調査しなければいかぬということが、いわばきめられているわけです。第三条調査というのは、この法律がなくたって、政府が当然いつだってできるわけなんです。  問題は、この法律が特別に与えた権限というのは、第四条の強制的な、いざというときに放出がさせられる、これが問題なのに、あれだけ日本全国を悩ました買い占め問題が起きても、それについてそういう発動もしない、これからいよいよ準備にかかる、これでは、一体政府ほんとうにこれに取り組む意思があるのかどうか、すべての国民がこういうことから判断をすると思うのです。  たとえば、中曽根通産大臣、あの当時に、去年の秋の最初物価の騰貴のはしりとしてああいう現象が起きたときに、この問題を担当される通産当局はどういうように考えられていたのか、伺いたいと思います。
  13. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大阪中心に、トイレットペーパー品不足及び消費者側からの非常な購買の勢いが起こりましたときに、これは何らかの理由によって、そういう情報が間違って伝えられて、それで団地の奥さん方が、なくなっては困るというので、半年分ぐらいみんな買い込むという、そういう一種の心理的パニック状態が起きた。そのために、どんどん在庫を出してもまだ足りないという情勢が起きたわけです。  そこで、大体トイレットペーパーというのは、静岡県あるいは四国において中小企業がつくっておるものでありますから、至急に、吉原を中心に、それら中小企業者に対して出荷を要請いたしまして、大阪方面には思い切った数量の発送をやってもらいました。それで大阪方面は一時鎮静したわけであります。次いで東京に起こりました。東京に起こりましたのも、同じように四国及び全国からのそういうトイレットペーパーの手持ちを出してもらいまして、これも鎮静に帰した。  そういう問題が起きました場合には、直ちに産地の在庫を払い出して、急送して間に合わせるようにしたのであります。
  14. 不破哲三

    不破委員 当時、これが伝えられるようなパニックであったのか、それとも値段のつり上げのための業者売り惜しみがあったのか、その点は調査されましたか。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 売り惜しみというものよりも、むしろ何らかの情報に基づいて、奥さんたちが足りなくなったという不安な気持ちにかられて買いが殺到してきた、そういう現象であったと私は思います。その点はいろいろ調査いたしました。スーパーマーケットとか、あるいは流通過程につきましても、売り惜しみがあったかどうか調査いたしましたけれども、そういう形跡は認められません。むしろ消費者のほうが、何かの情報に基づいて不安にかられた、そういう現象のように思います。
  16. 不破哲三

    不破委員 私はこの答弁を聞いて、政府調査能力というものに対してちょっと不信を強めざるを得ないのです。この事件が起きたときに、私どもの赤旗記者が、一人の記者ですよ。政府のようにたくさんの調査官を持っていない。一人の赤旗記者が、十一月二十四日に、このトイレットペーパーを生産している大手業者がつくっている衛生薄葉紙会というのがありますけれども、そこを訪問して真相を聞きました。世上、これは消費者買いだめから起きているといわれるけれども、真相はどうなんだと聞いたら、そこにいた専務理事の人が、真相は別なんだ、別に隠すことはないのだということで、その真相を率直に話してくれたわけです。  それはどういうことかというと、当時十月に、関東に比べて関西スーパーマーケットでのトイレットペーパーのほうが小売りが安かった、卸しも安かった。それで大手業者関西スーパーマーケットに対して値上げを要求したが、断わら一れた。それで大手業者関西スーパーマーケットトイレットペーパーの供給を停止した。これが原因なんだというのです。そういうことから、スーパーになくなるものですから、現象がいろいろ起きる、その結果、これが暴騰した。それで関東よりもはるかに高くなった。だから、当然関西に送るものを関東に回して値上げをはかったのだが、それで高くなったので、今度は関東に回したものが関西に流れただけだ、これが背景なんだと円いうことを、この大手業者二十四社がつくっている衛生薄葉紙会専務理事の方が堂々と述べているわけです。こういうことは、政府価格調査官ばわかるはずだと私は思うのです。  しかも、私がたいへん重大だと思いますのは、当時この値上げ現象が起こったときに、たしか夏にはあのトイレットペーパーは百円以下の値段だったはずですが、それがこのパニック状態が起きてからは、ところによっては三百円をこえるようになった。そのときにその業者団体の人が言うには、われわれは二百二十円ぐらいに上げたいと思っているのだ、そう言っていたわけです。これは当時の赤旗にはっきり書いてありますから、あとからつくった話ではないのです。ところが、この間政府が発表したトイレットペーパーの標準価格、これがまさに、そのとき業者団体がここまで上げたいのだと考えていた二百二十円そのままのものが、政府の標準価格になってあらわれている。中曽根通産大臣は、本会議での答弁で、これは値上げ前よりも二十円ぐらいしか上がっていないはずだと言われましたけれども、これはとんでもない話で、百円以下だったものが二百二十円に上がっている。しかもそれが、当時あの現象が起きたときに、業界団体が、自分たち値上げの目安だったと言ったものが、いま政府の価格として平気であらわれている。それを調べもしないで、この権限を持っていながら発動もしない、調査もしない。そして物不足値上がりにまかして、あとから政府がこの高値を追認するというためにこの法律を使われるのだとしたら、これは私は、ともかくとんでもない話だ。まさに国民の期待を裏切って、物を引き下げるための法律を、業者の言いなりに物を上げるための法律に転化したのじゃないか、こう考えますが、いかがですか。
  17. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 トイレットペーパーは、昨年の一月が底値でありまして、それから順次高くなってまいりました。これは夏の水不足その他いろんなことがあった原因もございます。そして昨年十二月におきましては、二百二十円から二百三十円、これは故紙、五十五メートルのものでございます。パルプのものになると、百七十円から二百七十円ぐらいに上がってきつつあります。一月におきましては、二百三十円から二百五十円ないし二百七十円、ちり紙は別といたしまして。  それで、このように上がりました原因を考えてみますと、昨年一月に対して、故紙が二・一倍から二・二倍、パルプが一・七倍に上がっております。そのほか、この原料の薬品代、これが、二・一倍、あるいは荷づくり材料費等も三・三倍、重油が二倍、こういうふうに上がってきておりまして、これを前の二百二十円、あるいはパルプものについて二百四十円に押えつけるということは、現在の時点におきましては、かなり業界に対してわれわれとしては協力を要請してやっておることでございます。
  18. 不破哲三

    不破委員 しかし、いま伺ったコストの中でも、おそらくこれは業界からの情報だと思うのですけれども、二倍、三倍になったというものはないわけなんですね。ところが、底値と言って、言われませんでしたが、実際には夏の値段に比べても、今度の標準価格というのは二倍以上になっているのです。しかも、中曽根通産大臣が言われた去年の十二月というのは、あのたいへんなパニック現象が起きて、それで、しかもどんどん上がると言われた結果の値段であります。  私はここで、このことだけをこまかくどこまでも言うつもりはありませんけれども、この一つの例にもあらわれているように、政府が、十月にトイレットペーパー不足が起きても、調査もしない。私の考えますのにと、考えてばかりいる。せっかく調査機構をつくりながら調査もしない。しかも、団体から聞けばどういう現象が起きたかちゃんとわかるのに、その真相も明らかにしないまま、たしか田中総理もテレビで、この現象買いだめで起こったんだ、買いだめで起こったんだと、三べんほど繰り返されました。そういう無責任なことを政府責任者が発言される。それがこの権限を持った政府のやることかと考えると、私はここに政府の姿勢がたいへんはっきりあらわれていると思うわけであります。  次に、総理は、これからはしっかりやるとさっき言われました。この法律ほんとうにしっかり使うためには、第四条をしっかり使うためには、第五条が重要であります。つまり、しっかり調査をして、そういう悪徳業者や悪徳企業、こういうものがあることを確かめてやらなければいかぬ。そこに第五条の価格調査官による立ち入り検査というものがあるわけであります。これは昨日の委員会でもいろいろ議論になりましたが、政府の皆さんがいろいろ調査を命じる。第五条でやっているんだか、第三条でやっているんだか、命じているほうがはっきりしないという状況でありますから、この立ち入り調査権限もまともに発動されていないことは明瞭であります。ですから私は、総理が、これからはこの価格騰貴防止の緊急措置法をしっかり使うというのならば、そういう現象が起きたときには、的確に売り惜しみ買い占めの所在を確かめて、はっきり調査をして、強制的な権限が与えられているわけですから、立ち入り調査権を使って、そうして機を失せずに手を打ってもらいたい、これを要望するわけでありますが、その点、いかがでしょうか。
  19. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まず第三条において調査を行なう、しかし第五条によって随時現場に立ち入り調査を行なわなければならない、これは当然のことでございます。調査官の身分を保証する証明書もきのう御提示をしたわけでございますし、それから三条と五条によって調査をしておる十二品目に対しても御説明をしたわけでございます。また、十二品目が全部五条による立ち入り調査ではなく、五条によるものが何品目、それから各省別では、通産省が何品目、農林省が何品目、それから第三条による調査は何品目、第五条によった立ち入り調査の件数、品名、それから製造業者の名前その他は、今月末までには本省に上がってくることになっておりますから、来週早々、可及的すみやかに取りまとめた上、御報告申し上げますということになっているわけです。  調査官が数が少ないじゃないかということであれば、調査官は、これを併任をして増加をすればいいことでございまして、現在では、万全の体制をとるべく調査官は任命をしてあるわけでございますし、二月一日からは地方庁の協力も得るということになっております。そういう意味で、調査に対しては遺憾なきを期してまいりたいと、こう考えます。
  20. 不破哲三

    不破委員 その価格調査官がこの点では非常に大事だと思うのですけれども、現在何人任命して、そのうち専任の調査官は何人ですか。
  21. 内田常雄

    内田国務大臣 逐次ふやしてまいりまして、現在では三百四十数名になっているはずでございます。しかし、私はこう思います。(不破委員「専任は何名ですか」と呼ぶ)みな兼任のはずでございます。(不破委員「専任は何名ですか」と呼ぶ)専任は、通産省、農林省の当該職員を価格調査官として発令するわけでありまして、価格一調査官としての専任制度というものはないわけであります。でありますから、その仕事に従事している者に価格調査官という資格を与えておる、こういうわけでございます。
  22. 不破哲三

    不破委員 昨年の物特での議論でも、価格調査官というのは、立ち入り捜査をやるわけだから、特別の訓練も要れば特別の知識も要る、そういう点がずいぶん議論されたはずだし、政府側も一答弁したはずなんです。そうすると、しかし、そのことについて専門に当たって、専門のやり方を身につけた調査官というのは一人もいないわけですか。長官、専任の調査官は一人もいないのですか。
  23. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほどお答えをいたしたとおりであります。
  24. 不破哲三

    不破委員 いま総理は万全の体制と言われましたが、一体専任の調査官が一人もいないで、三百四十名、いま日本じゅうで。――今度閣議でふえれば二十四品目になるのですか、その品目の価格を追い、それぞれの品目については、それこそ何百何千という調査対象の事業所があるはずだと思うのですけれども、それを調査をして、国民の負託にこたえるのに、一体兼任だけの三百何十人の調査官で足りるのですか。それが万全の体制ですか。
  25. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、昨日も申しましたが、こう思うのであります。それは三百何十人かの調査官がそれぞれ部下の職員を帯同して、そうして臨検調査に臨めばいいわけでありますから、一人が証票を持って示して、そして検査に入れるのではないか。それに同行するすべての職員がその証票を持たないほうがよろしいのではないか。また、専任の問題につきましては、その物資に専門的知識を持たない者を価格調査官として専任で発令するよりも、その仕事に従事している者に価格調査官としての資格を与えてやるほうが実際的ではないか。これは決して私は逃げ答弁のつもりではございませんで、そういうことをすることによって、総理の言われるような実効をこれからあげるほうがよかろうではないかと私は考えます。
  26. 不破哲三

    不破委員 お役所の仕事というのはたいへんひまで、ふだんの仕事が全くない、それで価格調査に十分当たれるというのならわかりますよ。しかし、ふだんから忙しいはずであります。その忙しい人のところへ、ほかの仕事は全部取り上げないで、ただ兼任だ、やるんなら部下がやればいい。そうすると、価格調査官というのは特別な訓練もなければ特別な知識も持たないで、ただ上で指揮をとって部下にやらせるという者を任命されたのですか。私、ちょっと調べてまいりましたが、政府のいろいろな仕事の中で、たとえば監督官とか監査官とか調査官というものは、ほとんどが専任部隊が主力でやっているわけであります。たとえば食品衛生の監視とか、労働基準監督なんかになりますと、大体全国三千名の専任の監督官がいてまだ足りないといわれている。全部専任です。植物防疫官という、そういうきわめて限定されたものに当たる者でも四百名の人が専任で監査に当たっている。一億の国民のこの生活を緊急措置法をもって守るのにわずか三百数十名、それも兼任だ。一体この価格調査官ほんとうに仕事ができるんですか。田中さんが言われるように、これからいよいよ本気にやるといって本気に調査に乗り出したときに、この部隊で一体仕事ができるんですか。その点、どうです。
  27. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、決しておことばを返す意味はございませんが、植物検査官とかいうものと違いまして、これは物資の需給とかあるいは価格行政とか、そういう行政の面において効果をあげることが大切な仕事であろうと思いますので、新しい専任の職員を何百名もここで養成をいたしますよりも、平素その仕事に当たっている者に対して、必要あらば特別の研修をするというようなことをいたしながら、平素のルーチンワークと、そしてこの法律による執行業務を両方させるほうがいいのではないかと思いますが、しかしおことばもございますので、そういうこともひとつ検討さしていただきたいと私は患います。
  28. 不破哲三

    不破委員 去年の十二月の物特では、専任の問題はすでに出て、政府は検討すると答弁しているんですよ。しかし、いまの話を聞きますと、またきょう言われたから検討する。実際に専任をするとなれば、予算措置が要るわけでしょう。今度の予算で、四十九年度の予算をきめるときにそのことを何にも考えないで提案をしておいて、それで、ここで質問をされたら検討する。私がはっきり聞いているのは、一体そういう状態でほんとにこの法律国民の役に立つように使えるんですかということを聞いているんです。  もう一ぺん聞きますが、じゃ、いまの価格調査官の状態で万全であると言われるわけですね。
  29. 内田常雄

    内田国務大臣 いま三百四十一人を価格調査官として中央官庁では資格を与えているようでありますが、私は三百四十一人をもって足れりといたしません。状況が非常に緊迫をいたしてきているようでございますので、通産省にも何千人かの職員があり、また農林省でも同様でございますので、価格調査官としての活動をなし得る者は、さらにできるだけそれらの職員にこの資格を与えて、そして必要ならば研修もし、やっていくのが一番実際的だと思いますので、私は、そういう方向で行くのがよかろう。しかし、これは私が単独できめることでもございませんので、さらに通産大臣、農林大臣、あるいは必要あらば、行政管理庁長官等とも、それらの配置については研究をさせながら、要は法律の目的をさらに一そうあげるような努力を続けさせていただきたいと思います。
  30. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください。この件について、農林大臣の発言を許します。倉石農林大臣。
  31. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省の側について申し上げます。  ただいま調査官百四十九名おりまして、現在各地で調査いたしております。二百六十五カ所ほどやっておりますが、農林省は、御存じのように地方にそれぞれ農政局を持っております。営林局を持っております。  そこで、私どものほうでは、買占め売惜しみ法に指定されてある物資が七つございまして、生糸、大豆、大豆かす、食用油、合板、製材、丸太、したがって、いま私が申し上げましたような売惜しみ法に指定してある品物の調査につきましては、調査官が参りまして、地方農政局で各何カ所を指定してやっておりますけれども、そういう場合には、地方農政局または食糧庁あるいは営林局等にそれぞれの知識のある者がたくさんおりますので、そういう者を駆使いたしまして調査をいたしておる、こういうことであります。
  32. 荒舩清十郎

  33. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通産省では、本省四十八名、通産局百三十名、計百七十八名の価格調査官をもってやっておりますが、価格調査官は一人行けば、あとはほかの事務官、技官等を連れていきまして補助として使えるわけでございます。したがって、いま洗剤やその他について倉庫の点検、立ち入り等をやっておりますが、みんなそういうふうに大ぜいの人間を連れて手分けをしてやっておる、こういう状態でございます。
  34. 不破哲三

    不破委員 つまり、価格調査官は少ないが、兼任だが、部下もいるし、出先に行けば協力者もいるから何とかなるというお話だったと思うのですけれども、私が言いたいのは、そういうことで、この法律で与えられた二十四にものぼる多数の品目に対する価格の引き下げ、それから買い占めの防止、これができる実態になっているかどうかという問題なんです。  それで、時間を急ぎますのでちょっとあれしますけれども、私ども、価格調査官の実態を非常に心配をしまして、先日価格調査官の実態調査を行ないました。三百何十名全員はやれませんでしたが、一人一人に訪問したり電話で聞いたりして、価格調査官が独自にどういう自覚を持って仕事をしているかということを伺いました。そのときの問答をちょっと紹介させていただきます。  これは一月中旬のことであります。いまお話のありました農林省ですけれども、名前は差し控えます、ここには記録してありますが。訪問しまして、ちょっと記録を読んでみますと、昨年の七月、いわゆる買占め及び売惜しみ法で価格調査官というものができました。どんな活躍をなさっているか少しお聞かせいただけますかと聞きましたら、いや、活躍などという、と言うて、下をうつ向いたという話であります。農林省は、御承知のとおり、指定されている品目がみなあまり問題のないものばかりですという回答でありました。ほんとうにそうですが、問題があるから指定品目になっているのではなかったのですかと聞きましたら、黙って暗然とした顔をした、これは主観的な評価ですが。それでずっと問答しまして、立ち入り検査がなぜないのかと言いますと、うちの取り扱い品目にはあまり問題がないからです。しかし大豆は上がっているじゃありませんかと言うと、下がっているんじゃないですかと。ほんとうですか、ちょっと資料を見せてくれと言いまして資料を求めたのですが、まわりを探したが見つからない。それでは、調査官としてどうして価格の変動をマークしておられますかと聞きましたら、各官庁から各種資料がよこされると。これは通常の仕事であります。たとえばどんなものですかと聞きましたら、いろいろ考えて、私は週に一度スーパーマーケットに行っています。これがいま報告のありました農林省の価格調査官の実際の私どもが調べてみた実態であります。  それからもう一つ紹介しますと、厚生省へ伺いました。これは伺おうとして価格調査官に電話をしまして、伺いたいと思いますと言ったら、価格調査官のことだと言いましたら、それはとんでもない、来るのだけはかんべんしてくれと言われました。これは電話の問答であります。ガーゼが指定品目となっていましたね。どんな調査活動をしておられますか。答えは、これは御承知のとおり、価格安定の方向に向かっているのでございましてと。どういうようにしてマークをしているのかと聞きましたら、マークと申しましても、日本衛生材料工業会と、各県の厚生省出先機関から来る資料を見ています。それは定期的に報告されるものですかと聞きましたら、まあそうですね。それなら、ガーゼの価格が安定する方向に向かっているなどと、そんなばかなことがなぜ言えるのか、現実にどこの病院でもガーゼが上がって困っているじゃないですかと聞きましたら、それはどうもおそれ入ります、私のところではデータが十月ごろまでのものしかありませんので、さっそく調べます。――これは一月中旬ですよ。それで、御承知のとおり、十一月ごろから石油危機の影響が出てまいりまして、それで値上がりをしたのじゃないかと思います。これが厚生省の価格調査官答弁であります。  私ども、相当数調査いたしましたが、大体どこも似たようなものでありました。これがこの法律を扱う一番中心である部隊、しかも全国価格調査官を指揮をしたり、本庁でも部下を指揮したり、全国へ出て行って協力機関に協力を求めたり、そういうことをしなければならない一番の中心の人たちがこういうふうになっている。これは私は任命された人だけの罪ではないと思うのです。毎日毎日の仕事をやっている上に名称だけ与えられた。ですから、価格調査官として独自の仕事が日常できるようにさっぱりなっていない。これはあとでちゃんと記録したことでありますが、内田さんは実態も調べられないで、いまの兼任で十分でございますと言う。田中総理はこれで万全の体制をつくりつつあると言われる。しかし、今度の予算ではとても買い占めなどは四十九年度早期におさまりそうもないのに、ほんとうに専任の調査官をつくって取り組む体制はさっぱり予算案の中に用意をされていない。この点総理、いかが思いますか。
  35. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法執行に際して、価格の安定をはかるために万全の布陣をしなければならぬことは申すまでもありません。私はきのうも答弁しましたように、こういうものは機を失せずということでありますから、これは専門の価格調査官を置くことはもちろんのこと、警察及び税務署員を当たらせることが一番効果的である、こう私は述べたことは御承知のとおりでございます。しかし、警察及び税務署員がこの仕事に当たるということになるには、よほど慎重でなければならないという有力な意見もございました。そして、まず設置法においても目的を達成しなければならない任務を持っておりますし、その他の法律政府に与えられておるものでございます。で、なおその上に特別な立法を与えられたわけでございますから、とにかく短期にこの問題を処理しなければならないという性質上から、やはり実情を知っておる専門の職をもって当たらせることが適当であろうという結論に達したわけでございます。  農林省などには定数上は相当な人がおります。いつでも問題になる米の検査官ということを考えれば、検査の時期は非常に短いわけであります。しかし、農林省職員として全国に配置をせられておるわけでございますが、そういう人たちは、ただ数だけで動員をしても混乱をするだけであって、その実をあげることはむずかしい。だから、専門の調査官中心として、これらの人々を補助的に駆使することによって実をあげることが望ましいというような討議を十分行なったわけでございます。しかも、現在の体制は、御承知のとおり自由主義経済が大前提でございますし、また国民生活を守らなければならない、物価を安定させなければならない、また私権も保護されなければならないという、その調和をはかりながら行政的な効果をあげなければならないという仕事でございますので、政府部内で、どうすれば一番効果的、効率的な結果を得ることができるかということに対しては、広範な立場で検討いたしたわけでございます。  そして、特にこれは品目を指定をして行なうわけでございますし、身分を明確にしながら立ち入り調査を行なう、売り渡し命令も出さなければならないというような、次々と今度法律改正していただきましたから、そういう意味では慎重でなければならないということはわかるが、効果をあげるということがまず第一である、幾ばくかの批判を受けても、政府はまず効果をあげるということにウエートを置いて機構等をつくっていくべきであるということで現在の状態ができておるわけであります。ある場合においては、ものには軽重がございますから、予算で専任調査官の制度を置き、予算措置をしなければできないというものではないと思うのです。これは相当部分の仕事をある意味において削減をしても、この価格調査や立ち入りを行なうというにふさわしい人たちは人員をさくべきである、それが三百人、千人、三千人、五千人必要であるならば、そういうことをなすべきであるということを強く指示しておるわけでございます。  また、中央官庁だけでできるものでもなく、これは現地では、どこの倉庫に何がある、突然車でもってどんどん運ばれたということは、市町村が一番よく知っているわけでありますし――市町村ということになると、いろいろまた政治的な問題や個人感情が入ってはまずいということで都道府県の協力を得ようということにしたわけでございまして、二月一日からは府県の協力を得ることになっております。また、今年度中の府県が行なう費用支出に対しても予備費をお願いしようということになっておりますし、来年度は五十億円の費用を計上しておるわけでございます。  そういう意味で、これから第五条というものを――一千カ所指定したのでございますが、一千カ所に対しては、まだ第五条による立ち入り調査は全部が全部行なわれておらないということは事実でございますが、これは一千カ所はさしあたりと言ったのであって、この法の目的を達成するためには二千カ所が一万カ所でもやらなければならないということでございまして、その段階を見ながら完ぺきな布陣をつくっていくということでございます。御指摘のようないろいろ――私も初めての仕事でございますから、いろいろ内閣の中にも連絡不十分なものもあるでしょうし、こういうものでよかろうというような状態もあるかもしれません。  しかし、いずれにしても、洗剤一つをとってみても、立ち入り検査というのは、あのような問題が起こったから立ち入り検査を行なわなければならないようになったわけでありまして、通常行政ベースにおいては前年度よりもこれだけずつ生産がふえておる、こういう状態から見まして、流通経路を正しながら、なぜ一体あのような問題が起こったのかというようなこともあわせ調査をしながら立ち入り調査も行なうということでございますので、そういう意味では、政府のテンポがおそいということであれば、これはもうピッチを上げてやらなければならない、こう考えております。
  36. 不破哲三

    不破委員 田中総理がいま、いままではおそい、これからは早くやると重ねて言われました。これは非常に重要なことであり、約束を守ってもらいたいと思います。  それから、それを実際やるためには価格調査官の体制強化が必要であることも認めました、専門の価格調査官が必要だ。この問題は今度の予算で一番かかわりのある、国民物価安定への希望と不可分の問題であります。ですから、ただここで抽象的に――検討するということは、去年の十二月国会でも、あるいはその前の、これが通るときの国会でも何べんも言われたのです。もう検討だけでは済まないことは明瞭でありますから、そのことがはっきりしなければ、この予算がほんとう物価安定に役立つのかどうかということも、このことだけから見ても言えないわけであります。  ですから、私が求めたいのは、この予算委員会に、現在の価格調査官の体制を改めて、専門の調査官をどれだけつくる、どういう体制で臨む、これがこの予算なんだということを明確にこの予算委員会の間じゅうに提出をしてもらいたい。その点、委員長によろしく計らい願いたいと思いますが……。
  37. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの希望を理事会にかけまして、適当なときにお答えをいたします。
  38. 不破哲三

    不破委員 ここでもう総理はそういうことを検討するということを約束をしたのですから、この予算委員会の間じゅうに提出するということを、この委員会として政府に求めていただきたいと思いますが……。この予算委員会の間じゅうにこの価格調査官についての新しい体制を提案をするということを政府に求めていただきたい。
  39. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会でよく検討いたします。
  40. 保利茂

    ○保利国務大臣 私は行政管理庁の立場からこの件について所見を申し上げます。  予算編成にあたりまして、また石油二法の成立実施にあたりまして、価格調査官の体制はこれでよろしいかどうか。総理の大体思想体系は、この問題が国民的な、何をおいても物価の安定というものは至上の命題である、行政組織をあげてこの物価の安定に対して全力を注ぎ込んでいかなければならぬ。総じて言えば、全官庁あげて価格調査官的な意識と使命感を持ってやっていただくようにしなければ、とうていお話しのような価格調査官の数をふやすとか、そういうふうなことで対応できるものではなかろうというような考えが、総理の思想の根底にある。私も全く同感であります。したがって、各省において価格調査官のあり方についても、予算編成にあたっては十分相談をいたしまして、当時三百七人でございました。しかし、さらに農林省では九人、通産省では二十五人の増員をされて、ただいま三百四十一人になっておりますが、さらに百九十四人の定員を認めまして、それぞれ各省で必要とされる人員を総定員の――行政改革のたてまえもありますから、役人の数をふやすということはいたさない。現在の役人の中において何とかこの事態に対処するようにということで、百九十四人の価格調査官をつくるということで、その予備はとってあります。それは現にまだ各省ともその任命は行なわれていないというのが、これが現状でございます。したがいまして、この総計、三百七名、三百四十一名に加うるに百九十四人の価格調査官がフルに任命されますと、行政管理庁におきましても、御承知のように全市町村にわたって四千五百七十六名の行政相談委員というものも置いてあります。これらの方々にも、どこそこに何がありそうだというようなことはできるだけひとつ早く通報をいただいて、価格調査官が積極的に動いていただくようにして、そして不当な買いだめをしておるとか、あるいは隠匿をしておるとかというようなものをできるだけ正常の流通過程に乗っけるようにして、そして価格の安定、流通の確保をはかっていくようにしようというような体制はとっておるわけでございますから、いまお話しの点は、予算のときに十分相談をいたしてそういう措置をとっておるということだけを御参考までに申し上げておきます。
  41. 不破哲三

    不破委員 いまの保利さんの話は何重にもおかしいと思うのですね。田中総理の思想を保利さんから説明をしていただかないでも、御当人がおられるのですから、別に保利さんが出てくる必要はないのです。  それからまた、価格調査官の仕事は全職員でやるべきだと言われましたが、それなら、なぜ第七条に「第五条第一項及び第二項の規定による立入検査及び質問に関する職務を行なわせるため、経済企画庁及び主務省に、価格調査官を置く。」という法律をつくるのですか。この法律をつくった以上は、価格調査官に任命された者は、一般の産業を見ている一般の行政官とは違った独自の権限と任務を持って、それだけの働きをするということが必要だからこそ第七条をきめたのじゃないですか。それをこういう仕事は全職員でやるのがあたりまえだ、それをやればもっと効果があがるだろう、そういうのはへ理屈であって、価格調査官ほんとうにそういう体制を進めるためにも――独自の価格調査官が独自の仕事をしなければいかぬ。このことをそれで逃げるわけにはいかないと思うのです。  それからまた、先ほどは内田経企庁長官は、専任の問題を考えたいと言いました。それから田中総理も、いまの状態から本気でやるために専任の問題が必要だ、その専任をやるためには税務調査官、いろいろあげられましたが、税務などを使い出すといろいろ問題がある、だから専任でやる体制も含めて強化する必要があるということを言われました。ここではっきり言われたことであります。その言われた思想は、もうこれで置かないことだ、こんな解説を保利さんがやられるというのは、これは全くおかしな、まさに閣内不統一であります。田中総理から、そういう混乱が起きないようにはっきりここで検討するということと、その検討の結果を予算委員会に報告するということを、田中総理の口から明言してもらいたいと思います。
  42. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私と行政管理庁長官との意見、何にも食い違いはございません。  これは行政管理庁長官は、私が物価問題は最大の急務である、そのためには、ものには軽重がある、だから、ある意味においては、税務署の職員が価格調査に当たるというような気がまえでなければならない、こういうことを私が一番初めに言っているわけです。また国会でも答弁しています。それで、それだけではなかなか効果があがらないとしたならば、警察やそれから国税庁、税務署の職員に、法律上明定をして兼任をせしめるということも考えなさいということで考えたのですが、先ほどから申し述べたとおり、こういうものは専門的な知識が必要である。それで無用な摩擦や混乱を避けるためにも専門的な知識を必要とすると思います。専門的な知識を必要とすれば、養成をしなければならぬ。養成をしておって間に合うものではない。そうすれば、現在おる専門家を使う以外にはないということでございます。  そういう意味で、とにかく農林省は農林省の中にいろいろな人がたくさんおります。先ほど言ったように、米の検査員は各地におるのですから。おりますが、その人に全部調査官として任命をして、ばらばらに動いて摩擦や混乱を起こすようになっては困るので、ある一定の人に調査官として任命をし、そして補助的な役割りを、いろいろな機関の職員を使うことによって実をあげることが望ましい。それで、行政管理庁との間には、まあ私は専任を幾ら置いて、それで事態の推移によって兼任をやって、ある場合において、まあ少し仕事の量を半分に削って、半分の資格者をこの調査官に臨時に任命することが望ましいような事態が来たら、それに対応できるような状態を考えなければならないということであったわけであります。だから、兼任だけでもって済むという議論もございましたが、しかし専任は置くべきであろうということで、価格調査官としての定員は、いま行政管理庁長官が述べたとおり、最終的に予算編成時に決定をします。それだけではなく、今年度地方の協力を得る場合どうするか、来年度の地方協力に対しての費用を予算にどう計上するかということをちゃんときめて、国会に予算を出しているわけですから、その間の事情をすなおに述べたのであって、何も私と行政管理庁長官との間には意見の食い違いはございません。  ただ、これ率直に申し上げますと、指定品目はなるべく少ないことが望ましい。少なくて済むような情勢が望ましいのですが、石油がいまのような状態ではなく、予測できないような状態になった場合は、その品目は相当広範に及ぶわけです。広範に及ぶというときには、あらゆるものを、専任をするものをもっと専任せしめるか、ある場合には行政の一部を縮小しても、それに総定員の中でもって振りかえて仕事に当たらしめるかということは、いまの法律制度の中で十分できるわけであります。いまの予算の中で、いまの法律の中で、いまの設置法の中でちゃんとできるわけであります。ですから、そういうような体制も十分検討いたした結果、第一次にはこのような状態で発足したわけでございます。あなたがとやかく言うように、これから何百品目になったらどうするか。何百品目になる場合は、当然それに対応するような体制をとらなければなりません。そういうことに対して遺憾なきを期してまいりたい、こう述べておるのでございます。
  43. 不破哲三

    不破委員 何百品目になる話は一度もしてないのですよ。ちゃんと聞いてほしいのです。  いまの二十四品目を全部監視するのに兼任だけの三百四十一名ですかで足りるかという問題を提起をして、それで実態がどうかということまで、政府は当然行政管理庁あたりで調べられておるのじゃないかと思うのですけれども、政府がやっていただかないから、価格調査官の実態調査までわれわれやって提出しているのです。いまの兼任の状態では、こういうことしかできないじゃないかということを言っているわけなんです。それを総理が認められて、専任が必要だということを先ほど言われました。いまは、そういう非常事態が将来起きたらというように言われたようですが、しかし、いまの事態がそれを必要としているのです。  そうならば、いまの内田長官の話ですと、専任はゼロで全部兼任だ、これはたてまえですと言われました。これでは困るというのが問題提起で、それも総理、認められたわけです。  だからこの予算委員会に、再検討されて、専任の価格調査官をどれだけつくるのか、それがこの予算で間に合うのかどうか、そういうことも判断しなければいけなくなりますから、専任の調査官をどれだけつくって、これなら万全の体制だというものを提起してもらいたい、これが私の要望であります。お答え願います。
  44. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 たいへんよくわかりました。  現在の状態では併任のままのほうがよろしい。併任のままのほうが、各自分の部下を帯同してフルに活動できまずからということで、併任を前提といたしております。おりますが、実をあげるために、やはり専任調査官というものを置いて、いままでの職の併任を解いて、そして専任にせしむるということが必要であるという御指摘であります。私もこれは前からそういう議論は述べてはおるわけですから、これはいまの御質問のように、予算委員会の間に、いままでの体制はこうでございましたが、こういうことに各省別に、こういうような人員でやれると思いますという政府の所信を述べなければならぬということは、これは当然だと思います。  ただ、それは予算と関係するものであるような前提でお考えいただかないように、これは定員の中で動かし得るものでございますから、だから、そういうことは予算とは関係なく、いわゆる陣容の問題として、どうすることによって最も実をあげるのか、これは併任で、あなたがいま、電話をかけたら、どうもあまり調査官としての実があげられないような状態のようだという御指摘もあったのですから、そういう意味では、ひとつ併任にするか直接のほうがよろしいかというような問題に対して、政府は至急検討の上、国会政府の態度を明らかにできるようにいたします。
  45. 不破哲三

    不破委員 この問題は、その政府の提案が出された時点で、また追加質問を続けたいと思います。そういう意味で保留いたします。  次に伺いたいのは、やはり物価の問題ですけれども、最近の物価高の非常な特徴というのは、大企業製品の値がどんどん上がる。いろいろ悪循環ということばがありますけれども、悪循環といえば、一つの大企業製品が上がれば、次の大企業製品が上がる。つまり大企業製品同士の値上げの悪循環という問題でありまして、ここにメスを入れなければ、ほんとう物価の値下げ、安定の実が上げられないということは明瞭であると思います。  現に、昨年の三月期決算、九月期決算、これが、われわれが物価高で苦しんでいる間に、これもまた戦後の歴史の中では、かつてないような大幅な利益の上昇が各大企業あげられております。そういう状況の中で、ほんとう物価安定を最優先でやられるならば、この大企業の、特に昨年秋から毎日のように新聞に製品の値上げということが出ますけれども、この値上げについて手を打つ、これ以上の製品の値上げは認めないとか、あるいはそれを、不当なものをもっと下げさせるとかということを政府として手を打たなければ、ほんとう物価安定はないということは自明だと思いますが、その点について、政府がどういう措置をとられるつもりなのか、総理の所見を伺いたいと思います。
  46. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現在の企業活動は、自由主義経済のもとで自由な考え方をもとにして運営をせられておるわけでございますが、しかし社会正義を守ったり、社会的混乱を起こさないように、国民生活の安定を守るという政府責任もございますので、そういう意味から物価の安定、また国民生活の正常な運営ということができるように行政権の行使をやっておるわけでございます。  ですから、あなたのいままでの御質問では、まだどういうふうに具体的にお考えになっておられるのか明らかにされておりませんから申し上げられませんが、政府の介入には限界があるわけです。それ以上やるとすれば、いまの法律による第何条の権限、第何条による行政権限の行使というふうに、政府にはおのずからの限界もございます。限界もございますし、また、態様も実態を調査しなければわからぬものもあります。十年間無配で、国際的価格から比べると、うんと低いけれども、過剰な生産でどうにもならないものが少しずつ平常に戻りつつあるものもございますし、主た、国民の需要が非常に増大をしたために、いままで売れなかったものが、国民の嗜好がそこに向いたために新しい製品がうんと売れるというものもございます。  ですから、そういう意味では、去年――四倍というものに対して私もちょっとメスを入れてみたんです。そうすると、去年は大きな資本で総計北百万円ぐらいしか利益をあげてなかったというものが、今度は一億になったからということですが、他の産業に比べると、その業種はまだ非常に低いという面もあります。問題は、この法律が企図しておりますように、買い占め売り惜しみというような不当な行為によって国民生活を圧迫する、こういう状態を避けるために政府はあらゆる努力を傾けるということは、もう大前提でございます。
  47. 不破哲三

    不破委員 大企業が製品価格を上げると、それで苦しむのは、国民はその日から苦しむわけなんです。ずうっといろいろ考えて、何年かたってから手を打たれたんでは、これはおそいわけです。この点でも、機を失せず手を打つという、スピードが問題であります。  特に私、問題にしたいのは、昨年の秋以来、石油危機が問題になった。そうすると、それによっての便乗値上げが、まず石油精製業者が便乗値上げをやった。石油会社というのは、御承知のように、田中さんがいま言われたもうけの少ない会社ではなくて、ずうっともうけをあげていた会社であります。それが去年は、石油危機の起こる前にも、前年に比べて何倍という、たいへんなもうけをあげた。それがまた石油危機が起こってから製品の便乗値上げをやって値段をつり上げる。それで今期の三月期決算の場合には、一体どうやって隠したら社会的非難を免れるかということに苦慮している。田中さんは利益の隠し方をきのういろいろここの委員会の席でもお話しされたようですけれども、いろいろな手だてがあって、それを隠すのに苦労している。それを全部使っても隠し切れないぐらいの利益が、この石油危機の間にあげられてしまった。これはもう常識であります。それにまた石油製品を使うところが便乗でどんどん上げる。この事態に対して、いますぐ手を打つことが、緊急に手を打つことが非常に必要だ。一体いまの自由経済ということで、もうどんなに上げても、それは平気なのかどうか、そこが問題なんです。  田中さんはよく、この問題を私どもが言いますと、わが国は自由社会だから、自由経済だからと言いますけれども、国と企業が全くばらばらで仕事をしているんなら、その理屈もまだ一部は成り立つんです。しかし、最近の日本経済状況では、たとえば石油会社や石油化学会社や鉄鋼会社が仕事をするときに、工場一つつくるのにも、工場用地の建設から道路の建設から、港湾の建設から、中へ引く鉄道の問題から、政府や自治体がたいへんなめんどうを見る、あるいは経理をやるのに政府機関や銀行や、たいへんな融資をやる。輸出をやるのにもめんどうを見る。つまり、その企業活動の、工場建設から製品の出荷、販売に至るまで、政府の援助や配慮が行き届いていないところはないといわれるぐらいの関係が、国の政治と企業の間にあるわけであります。だから、一方でそういうことがありながら、その不当な値上げによって国民が苦しんでおるときに手を出せないというのでは、これは筋も通らないし、困るわけなんです。  そういう点で、最近の便乗値上げについて、これは緊急に手を打たなければ、ただあれよあれよというままに物価はさらに、幾ら田中さんが何月と言われても、とまりそうもないということになるわけでありますが、この点について具体的にどういう手を考えているか。私どももいろいろ考えて提案をしておりますが、まずそれを言う前に、田中総理が考えていられる対策のほうを伺いたいと思うのです。
  48. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国の産業を振興するために、政府法律に基づいて行政権限を行使する、これはあたりまえのことなんです。そうしなかったら、国力も大きくならないし、国民生活の向上もできないし、国民に職場も与えられないし、社会福祉も向上しないし、もうあたりまえのことですから、そういうものと、何か妙な考え方を一緒にしないでくださいよ。これはちゃんと……(不破委員「妙な考え方とは何ですか」と呼ぶ)いや、何か政府がめんどうを見ている、いわゆる産軍癒着のような……(「責務があるということですか」と発言する者あり)そう、責務があるということです。責務があるということを間違えないでいただきたいということです。  また、そういう国の産業は、これは自由主義経済ではございますが、国民的なものであって、産業が反社会的な行動が許されるはずはありません。そういう意味で、みずからの利益を追求するという昔のような、全く文字どおりの過去の消費経済的なものの考え方で、自分の会社さえよければというようなことが許されるはずはありません。そういう意味で、政府は常に行政指導をやっているわけでございます。行政権の行使をやっているわけであります。国民生活を守らなければならない、それでもなお現行法では不足であるというので、このような臨時立法をお願いしたわけでありますから、この法律を駆使することによって、われわれは不当な値上げ、それから国民生活に対する困難、圧迫を排除するために、全力を傾けるということは当然であります。  もう一つの第三の問題が、あなたがいまそこまではわかったがということだと思うのです。そこまではわかっているが、しかし、対前期比何倍ももうけているようなものをどうするか、こういうことでございますから、これに対して政府も勉強しております。勉強しておりますが、これは、憲法のたてまえを言うまでもなく、国会は唯一無二の立法府である、しかも、こういうものは与野党が全員一致でもって、まあ全員一致でなくとも、少なくとも与野党が合意のもとで行なわれることが望ましいから、ほんとうなら議員立法が一番望ましいと私ははっきり申し上げておるのです。  それと、あなたさっき、利益の隠し場所を私がいかにも教えたような、そういうものの考え方はよろしくない。そんなことを言ったわけじゃありませんよ。そうじゃないんですよ。利益を押えるためには、こういうふうに使われると思いますから、これを全部目張りをしなければならないということを言っているんじゃありませんか。そういうものを政府が行なうよりも、与野党とも立場によって利害が対立する問題もありますが、一党の利害の対立よりも、国民生活を守ることがいかに重要であるかということは、政府・与党だけじゃない、野党もみんな国民の前に対して共同の責任を持っておるわけでありますから、そういう意味で私は議員立法が望ましい。そういうふうに与野党の間で話し合いが続けられておるという話も聞いておりますので、そういうことが成功することを望んでおります、政府も勉強いたしております、こう述べておるんですから。どうも、私が抜け穴を教えているような、いかに何でも――どうです。そういうことではなく、こういう目張りをしなければならないんですということを、あんまり曲げてお考えにならないようにお願いします。
  49. 不破哲三

    不破委員 抜け穴についてのうんちくを傾けられたということを言ったわけですが、それはそれとしまして、角度を変えて伺いましょう。  私は、この問題については、方法といいますか、対処策が、二つの面があると思うのです。つまり、不当な値上げで不当なもうけをあげたものをあとから吸い上げる、これはそれ自体も予防にもなりますが、いわばアフターケアであります。それと同時に、そういうことをやると同時に、現実にいまどんどん上がっている大企業の値上げを現実に押える問題、凍結問題あるいは引き下げ問題、不当だと認定したり引き下げる問題、この問題がもう一つ緊急だと思うのです。  それで角度を変えて伺いますが、総理は、たとえば昨年の秋からいままで、ほとんど製品の値上げをしなかった産業や企業はない状況でありますが、この中に、政府としてこれは認められぬと考えるような不当な便乗値上げがかなりあると考えておられるのか、そこら辺のところをまず伺いたいと思うのです。
  50. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、まあ非常にむずかしい問題でございまして、ただ単に勘だけで述べられる問題じゃございません。これは、石油が一体どのくらい上がっているのか、石油は上がったけれども、現につくられておる製品は、石油が安いときにつくられたものが幾らあるのか、高くなってつくられたものが幾らあるのかという問題もございます。それから労働賃金が、一体どのくらいのウェートを占めるようになったのかという問題もございます。それから公害投資というものが、急速にこの二年間でもって公害投資の負担が重くなっておりますから、そういう意味で、一体どうなっておるのかという問題もございます。  そういう問題から見て、しさいな検討を行なわなければならない問題でございますが、しかし私は、このような社会的な情勢の中で、とにかく少し上げても売れる。いままでは幾ら上げようと思っても売れなかったのです。砂糖なんかそうですな。何年やっても……(発言する者あり)簡単に答弁できるような質問じゃないじゃないですか。皆さん、最も重要な問題をよく聞いてくださいよ。それは少なくともいままで十年間も無配だった会社が、値上げをしてもちゃんと売れる、今度ちゃんと黒字決算になる、その黒字決算もばかに大き過ぎる。こういうものは便乗値上げといえるかどうかわかりませんよ。しかし、とにかく機を見て上げたなあという感じはします。  そういう意味で、それは商人の真髄だよと言われればあれですが、それが社会的混乱を及ぼすようなものであったり、それが社会生活に影響を及ぼすようなものであれば、これは注意をしたり協力を求めるというのは、あたりまえのことであります。政府は、行政権でそういうものを三権の中でもって要求されておるわけですから、これはあたりまえのことであるというふうに考えております。
  51. 不破哲三

    不破委員 田中さんの勘はまんざらでないと思うのですけれども、私は、田中さんが言われるように、この機会の便乗値上げというのが非常に横行しておると思う。これは末端の便乗値上げだけではなくて、一番の大もとでその便乗値上げが行なわれておる。これが問題だと思うのです。さっき私は値上げの悪循環ということを言いましたが、一番基礎になる、まず石油製品、それから基礎物資、こういうものが大幅な値上げを便乗でやられれば、それが二乗、三乗になって上がってくる。だから私は、物の値段を押えるときに、まあ需要からという考え方もありますけれども、実際にそういう状況をつくり出して上げておるところを、まずがっちり押える力がいまの政治にないのかどうか、そこを考えることが、まず重要だと思うのです。  私、石油製品の便乗値上げという問題について、なかなかこれは雲に隠れてわかりにくい問題であることは確かでありますけれども、通産省から提供していただいた資料でちょっと試算をしてみました。たとえば、原油を去年の五月から十一月末までとってみますと、五月に入った原油と十一月に入った原油の日本で受け取ったときの価格がどれくらいかというと、通産省の資料ですと、平均で、五月には一キロリットル五千四百六十八円、十一月には一キロリットル八千二百七十七円、これは通産統計であります。その信憑性は政府におまかせするしかありませんが、その値上がりは一キロリットル当たり二千八百九円なんです。じゃ、それからできる製品はどうなっているか。これは確かにガソリンもあればナフサもある、ジェット燃料もあれば灯油もある、軽油もある、重油もある。いろいろありますけれども、大体一つの原油から、平均してみますと、全体の配分でどれくらいの製品がどれくらいの割合でできるかというものは、得率という数字で出ております。これで私は計算をしてみました。五月に入った原油については、貯油期間がありますから、ほんとうはもっと先に使うのでしょうが、六月一日の元売り価格、これも通産省から提供してもらったものであります。それから十一月に入った原油については、十二月一日の元売り価格、それに得率をかけますと、プロパンガスにいくものとか潤滑油にいくものとかあるから、多少少な目に入れますけれども、計算をしてみましたら、六月一日の価格での原油一キロリットルからできる石油製品の総価格が九千三百六十六円になりました。十二月一日の価格での石油製品の総価格が一万三千五百三十八円になりました。その差は四千百七十二円であります。  つまり、原油一キロリットルが二千八百九円上がったときに、それを理由にして石油製品の価格は四千百七十二円上げた。これが通産当局からいただいた資料で、私なりに試算してみましたらはっきり出ました。つまり、原油コストの上がったのに対して千三百六十三円の上積みがあった。これは金利も変わらない、資本費用も一般的に変わらない、賃金コストもそうは変わっていない、そういう状況の中ですから、それはいろいろな状況はあるでしょうが、理由は原油の値上げを理由にして上げたわけです。原油が二千八百九円上がったときに製品価格が四千百七十二円上がった。これはたいへんな金額であります。  通産大臣、いま石油精製各社が原油を処理している量は、一日どれくらいですか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原油の量は、長官から答えさせますが、一日日本で使用している量というのは、約八十万キロリットル程度です。
  53. 山形栄治

    ○山形政府委員 ただいま大臣が答弁いたしましたとおり、一日の処理量は八十万キロリットル程度でございます。
  54. 不破哲三

    不破委員 処理量が八十万キロリットルとしましょうか。一キロリットル当たり千円上積みすると、かければすぐわかります。一日八億円の超過利潤であります。これが私の計算では千三百六十三円、これに八十万キロリットルをかけますと、一日の超過利潤が何と十億四千万円。二千八百九円に対して四千百七十二円、一キロリットル当たりわずか千円の便乗じゃないかといわれるかもしれないけれども、それが、実際にいまの石油精製各社が全国処理している量にかけると、とにかく一日千円上積みしたら、いま言いましたように八億円、千三百円上積みしたら十億円の超過利潤があがるのです。この基礎になった元売り価格や原油価格というものは、通産省当局から提供されたものですから、お調べいただければわかると思いますが、こういうような便乗値上げが平気で行なわれておる。  私は、ここにほんとうにメスを入れなければ、さっきから何べんも言いますように、幾ら口で、あると言っても、需要は何とかかんとかと言っても、この石油会社が石油不足、石油不足というのを誇大に宣伝して、そして石油製品の値上げ状況を需要面からつくり出す、しかも、一方ではこういうことをやるということになった場合には、単なる需要対策で済む問題ではないわけであります。これに対して的確に調べて、こういうものに対しては値下げの措置をとる。  その点で私は、先ほど田中さんから御質問がありましたのでお答えいたしますと、私どもは、まずこういう問題については、政府行政責任でやれることがあるはずだ。たとえば、政府責任で、これから一切の大企業製品の価格を凍結するとともに、石油危機便乗値上げが激しくなった昨年十月以降の不当値上げを撤回させる、財界が自粛宣言をやりましたし、政府がそういう態度を明らかにする、そして各大企業、産業界に協力を求める、そして、それに対して、その中でも私どもは、基礎になる石油化学や鉄鋼など、基礎物資を生産する産業がまず大事だと思いますが、ここを押えないとなかなか、ほかの産業の値上げの理由になりますから、それに対して不当な理由で協力をしない、あくまで不当値上げを固執する、そういう産業や企業に対しては、政府として打つべき手は幾らでもあるはずなんです。たとえば、私が先ほどいろんな助成措置をあげましたが、いろんな銀行の融資の問題もある、税の特別減免の措置の問題もある、あるいは輸出の際の便宜の問題もある。いろいろな手だてを政府は尽くしているわけですから、そういう社会的な悪を平気でやる企業に対しては、こういう助成措置はこれからやらないよ、日本の産業振興という立場はあるけれども、こういう大企業に対しては、これはできないという腹をきめれば、これは政府だってできるはずなんです。これが第一の提案であります。  それから第二の提案は、これも以前から言っておりますように、これはすでにアメリカその他でも前例があることでありますが、国権の最高機関といわれて国政調査権が保障されている国会に、権限を持った委員会を持って、そういう企業に対しては徹底した調査ができるようにする、国会権限として。国会は、主権在民の機関の主権者の代表でありますから、国会がそういう行動をとることに関して国民の自由が脅かされる、そういう心配は一番ないはずであります。警察を動員するよりは、国会がそういう力を持ったほうが一番いい。そういう点で、そういう調査権限を持った委員会をつくって、そこで必要な原価の公開、そういうことを徹底してやらせる。これはアメリカなどでもキーフォーバー委員会という委員会が、初めは国会で何ができるかと盛んにいわれる中でつくり上げられて、そして、なかなか行政当局ではできないような徹底した調査をやって、多くの成果をあげたという報告をされておりますけれども、そういうことも日本でやる。  この二つのことをわれわれは提案しているわけでありますが、そういう点で総理の基本的な御見解を伺いたいと思います。
  55. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど、原油価格と元売り価格との差の御指摘がございましたが、確かに差はございますが、その間において精製費――原油が到着いたしますと、それを精製したりしていろいろ諸掛かりをつけて元売り価格が出てくるわけです。その間に精製費、販売費、それから金利、事業税、それから為替の差益損というのが、この十二月には多分に出ております。それから関税、こういうようなものが入ってきまして、その間の経費が多少高くなってくるわけでございます。だから、原油価格と元売り価格との差がそのまま利潤につながるものではない。その辺のことは、輸入原油おのおのについて、いま通産省で精査しております。  しかし、いずれにせよ、私の勘では、昨年二五%カット、あるいはさらに五%カットということが来まして、そのために石油会社その他においては、操業度を維持するために自分の手持ちをできるだけ多くしておこう、そういう過剰な企業防衛の意識も働いて、それが製品のふん詰まりを来たして、価格の高騰を来たした一つの原因であるに違いない、そういうことは私らもにらんでおります。  したがって、そういうことからくる利潤については、われわれは石油の決算状況等のことも考えてみて、三月決算期において適正利潤以上に上がらないように価格の指導をしよう。実は一月から入っている原油は高くなっているわけです。十二月に比べて倍の値段になってきておるわけです。その油はこの一月二十日ごろからもう到着しているわけです。しかし、その油の値段を上げるな、こちらがいま少し精査するまで上げてはならぬ、そういうことで上げさせないために、いま石油会社は赤字状態が今度は少しずつ累積しているわけです。そういうふうにして、三月期決算においては、適正利潤になるような価格指導をしようと思って、いま鋭意調べておるところであります。
  56. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は、行政権を可能な限り行使をしておるわけです。  それから、あなたがいま述べられたようなもの、とにかくそれはケース・バイ・ケースでもって全然違うと思いますが、いずれにしましても、原油は上がったからといっても、ちょっと計算しても一日十億円になるじゃないかというような考え方、特に便乗というような非難を国民から受けるような値上げを避けるために、行政権の行使に最善を尽くしております。  ですから、普通なら重油をたいておったものが、とにかくその倍のナフサをたかなければならない電力会社など、やっていけるはずはないのです。ですから、もう全く電力会社は金繰りでもって、給与も払えないような状態もあるということで特別融資をしなければならない、こういう状態のところでも押えるものはちゃんと押えているわけですから。そうでなければ、とにかく給与がこれだけ年率上がる、重油が上がる、とにかく三分の一の敷地を拡大してそこに集じん装置をつけなければいかぬ、脱硫装置をつけなければいかぬといえば、計算上それはもう電力料金は上がるにきまっています。きまっていますが、そういうものはちゃんと押えているわけですから、行政権が適正に行使をされておる、政府全力を傾けておるということは、これは事実でございます。  しかし、そういう中でもなお御指摘をされるようなものに対して、適正利潤をこえるというような大きな利潤をあげるものに対して、何とかしなさいということについては、私たちは設置法に基づき、行政権限の行使において、理解を求めながら協力を得て押えておるわけでございます。ですから、法律ができなかったときでも、丸棒がうんと上がる、上がる場合には、平炉メーカーに、もう赤字を覚悟で丸棒はとにかく出してくれということで、通産省があっせん所をつくってさえやっているわけでございますから、とにかく相当な努力をしておるということは事実です。  ただ、あなたが言われる、これからもなお値上げが続いた場合どうするかということが一つありますが、それは総需要の抑制をやっているわけですから、総需要の抑制をやって、みんなとにかく需給のバランスが逆になれば、高くなったって売れないにきまっておりますから、総需要の抑制というまず抜本的なメスを入れているわけです。  そうすると第二は、いま上がっているものをどうするか、これからまだしばらくの間上がるかもしれぬというものをどうするかということでありますから、これに対しては、先ほどから述べているとおり、いま各党でも超過利潤と思われるがごときものを吸収するにはどうするかということでございますから、それはいま皆さんも御検討になっていただいており、政府も勉強いたしております、こういうことで申し上げているわけです。  それで、これを今度、過去にまたがって徴収したらどうかという問題でございますが、これはまあ遡及をするということに対しては、法律的になかなかむずかしいということがございます。むずかしいけれども、法律にはちゃんとワクがはまっております。過去五年以内の赤字を埋めることは法律的に許されておりますが、それ以上には積み立てできないわけでございます。ですから、きのう述べたように、過去の赤字を全部消すのは現行法で認められておりますから、これはいいにしても、これから特別償却として特別な償却をしたり、特別な積み立てを行なったり、特別な賞与を出したり、いろいろなことをすることを目張りをするというのが、過去及び現在及び近い将来においての適正な措置になるわけでございます。  それで、将来的な問題に対しては、これはとにかく総需要の抑制をする。まずそこにも問題がありますよ。あなたの言うように、あんまり法律で縛りますと、国外にみんな資本が逃げてしまうから、その場合には、国外に逃げないように法律で――法律だけではできない。ですから、あくまでも国民の支持と理解を得ながら、協力を得ながら、行政権を適正に行使するということをひとつ理解いただきたい、こう思います。
  57. 不破哲三

    不破委員 先ほどの石油の問題については、昨年十一月に公取でさえが、今度の石油危機を理由にした石油製品の値上げは、独禁法違反の疑いがあるということで臨検検査までやっているわけですね。ところが、そういう公取委員会の調査の対象というのは、話し合いでそれをやったかどうかという、つまりカルテルをやったかどうかということだけに限られますから、政府行政責任よりはきわめて狭い範囲の対象になっているのです。それでさえこういう重大な疑惑を持って検査をやっている。  ところが、政府のほうは、私が質問をすると、いわば業界の立場に立って、あの中にはこういう費用があるはずだ、こういう費用があるはずだと、まだそういう権限を持った調査を、公取のようなそういう調査をやられないうちに、いわば弁護の側に立つ、ここに、私は政府の姿勢が端的に出ているのじゃないかと思うのです。その点で、総理も総需要の抑制が第一だと言われましたが、総需要というのは出口であります。実際に値上げをして、いろいろなものが不足でもないのに不足したという状況をつくりだして、それを利用してどんどん自分の製品を値上げして、私は私の試算と言いましたが、私の試算でも、ちょっと積み上げれば一日十億円も利潤をあげる。そういうような企業がいまの値上げの原動力になっているわけですから、それについては、断固とした行政態度をとるということを求めたいと思うのです。その点、いかがですか。
  58. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう意味で、不当だと思われるものに対しては、法律をいただいたわけでございますから、この法律を適正に、迅速に、効率的に行使をすることによって国民的期待にこたえたい、こう考えます。
  59. 不破哲三

    不破委員 総理は、昨年来物価問題について何べんも発言をされました。春には、秋には下がると言い、秋には、十二月におさまると言い、総理が総裁である自民党が、去年の十二月二十七日にこういう広告を全国に示して「来年三月を最初のメドに」物価は安定するという宣伝までしたのも周知のことであります。ところが、今度の国会になったら、また三月は無理だと言い、四―六月だと言い、きのうは夏だと言われました。  こういうふうに、幾ら国民物価が下がると約束をしても、それが裏切られるというのは、私がきょう質問をした二つの点に端的に示されているように、たとえば、権限を与えられながら、半年になってもその権限ほんとう国民のために行使する姿勢を、体制をとらない。あるいはこれだけ大企業の値上げがはっきりしていて、総理といえども社会的悪だと言わざるを得ないような状況がありながら、公正取引委員会は幾つかの手を打ちましたが、内閣としては国民が期待するような手は全然打たれない。そこら辺に、私は、総理が発行する約束が結果としてはうそに終わるという一番の原因があると思うのです。  その点に関連して、この物価問題の最後に私は総理に伺いたいのですが、これだけ公害に続いて物価インフレということで国民を悩ましている大企業、財界、これと国政とのつながりというものが、実はいま国民の間にある非常に大きな疑惑の焦点になっているわけです。   〔荒舩委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 先日も、国民協会という団体が自民党への政治献金のために、二百億円近い資金を財界に割り当てたということがある新聞に発表されましたが、私は、国民が大企業、財界のやっている問題について、それと国政とのつながりについて大きな疑惑を持っている今日、これを放置することは、政治家としては許されないことだと考えております。この点を、法律で規制する政治資金立法の改正をやるということは、総理が言われるように、それはいろいろな問題があるでしょう。討論をしなければいけない問題、手数もかかるでしょう。しかし、こういう状況の中で、それぞれの政党が、その問題に対してみずからどういう態度をとるか、このことは、その党の自決権に属することであります。いまの法律のワク内でも十分できることであります。  私は、この際に、自民党総裁である田中総理に伺いたいのですけれども、政治資金の規制立法の行くえはともかく、自民党として財界、大企業からの政治献金、この間の発表によりましたら、たとえば石油業界には年間七千二百万円の割り当てがあると聞きましたが、そういうような問題についてきっぱりした態度をとり、財界からの政治献金を受け入れないという態度をとる用意があるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  60. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 個人も企業も、民主政治育成のために拠出を行なうことは、憲法に定められたものであるという判例を見るまでもなく、これはもう認められておることでございます。しかも、財界から、また産業界から拠金を受けるということに対して、自民党及び政府は何の拘束も受けておりません。しかも、精神的にもこれをもって手心を加えたり――これはありがたいと思っていますよ。しかし、ありがたいと思ってはおるが、公権力の行使においていささかのちゅうちょもいたしておりませんし、逡巡もありません。影響はありません。  それから同時に、自由民主党は、産業界から受ける個別の企業の名前というものが明らかになることは好ましくないということで、第三者機関というものが自発的につくられ、国民協会は財界との機関としてこれがつくられておるわけでございまして、ここから相当量な資金を受けていることは事実でございます。でございますが、直接どこの企業からどのような寄金が寄せられ、自民党にどれだけ入っておるのかというようなものに対しては、つまびらかにいたしておりません。だから、自民党が、法律をつくらないでも、自民党だけでということでございますが、これは政党活動をやっていくためには政治資金が必要なことは、これはもう当然でございます。これは、議員を少数しかお出しになっておらなかった共産党でも、自民党の次にちゃんとお届けになっておるわけでございますから、これはもう当然なことである。それだけじゃありません。一つの参議院の補欠選挙を行なうのに、公営費用だけでも七千万円もかかっておるじゃありませんか。国民の税金をもってちゃんとまかなわれておるわけでございまして、そういう意味で政治活動をする、政治の政策を国民に周知徹底せしめるということは、これはお互い政党人の責任でございますし、また、企業を含めた国民が、政治に対して寄金を寄せるということも、間接的な、憲法を守り、民主主義政治を育てようとする国民の権利であるということは、これは申すまでもないのです。選挙運動に携わる、政治資金を拠出する、これは当然間接的なものであり、直接的な行為としては投票権を行使するということでございますが、その問題は過去二十四年間、あと一年で二十五年間です。(不破委員「二十五年間もらい続けだ」と呼ぶ)いや、二十五年間、非常に公正な学者や大先達が集まって検討せられた中にもちゃんと書いてあるのです。だから、企業とか産業というような政治資金の規制を行なう場合には、同時に、労働組合運動の名において行なわれておると思われる政治的活動の資金も、ちゃんと規制すべきであるということが第五次答申に出ておるじゃありませんか。ですから、自民党に要求するときには、やはり労働組合も一人に幾らずつを割り当てない、こういうことをお互いがやらないで、政権をになっておる政府・与党が政治資金の拠出を拒否する、こういうことにはならぬわけでございます。そういう意味で、それは私の意見を述べているのじゃありません。ちゃんと公式な審議会の答申として政府に手交されておるものであります。国会に提案をされておるものであります。それは不成立に終わっておるというだけであります。そういうものを全部同じテーブルの上に上げて議論をしないで、政治的公正な民主政治が育つものではない、私はこう考えます。
  61. 不破哲三

    不破委員 いまの田中総理の発言の中で、労働組合の問題ですけれども、われわれは、労働組合が特定の政党を支持することをきめて、組合員から強制資金を徴収するということに反対でありますから、そういう議論をわれわれに持ってきても、これは無用であります。  ただ、いまの発言の中で、労働組合は政治的活動をしてはならぬという発言をされましたが、この部分は取り消されたらどうですか。これは、憲法にも労働基本法にも反する発言であります。
  62. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私の発言は、記録を見ていただければわかるとおり、そんな発言はしておりません。労働組合運動の名において政治的な活動をしておる団体が、巨額な資金をちゃんと集めておるということを述べておるのでございまして……。
  63. 不破哲三

    不破委員 それは速記録とあれを調べてください。その上で、労働組合は政治的活動をするなという発言があったら取り消してください。  それからいまの発言ですけれども、確かにすべての団体や個人が献金をする権利はある。しかし、国政との関係で疑惑を受けるような献金については、受け取らない権利もあるわけであります。私は、自民党がその受け取らない権利を行使しないで、財界から巨額の資金をもらっているということを問題にしているわけなんです。そして特に、たとえばさっき私が石油業界のことをあげましたが、ちょっと利潤を積み上げただけでも一日に十億円をこえるような超過利潤があげられている。そういうところから年に七千万円ぐらいの資金を自民党に提供すれば、政治に手心は加えられる、こういうような疑惑を国民が抱くようになったならば、これは政治不信の最たるものであります。その点で私はこのことを主張したわけでありますが、田中総理は、財界からもらうことに  ついて、手を加える考えはないという決意のようでありますので、この質問はこれで終わらせていただきます。
  64. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私ももう勤続二十五年、永年勤続表彰を受けた者でございますし、もう戦後二十余年のこの議院内閣制の問題、政治資金の問題、定数の不均衡の問題、それはあなた方と同じ、より以上に深刻に考えているのです。ですから、私が産業界から拠金を受けておっても、政治が曲げられたり、公権力が影響を受けるようなことはいたしません。といっても、これは産業界から巨額の資金を毎年受けるということを、間接的であっても何であっても、これが理想的な姿だとは思っておりません。  ですから、私も個人的に申したいのです。政治資金規正法というのは、一人月に二千円ですか、一年に二千円ですか、何かとにかくそういう具体的なものを何回も出しておるのですよ。出しておるけれども、いろいろなものとぶつかって、そうして成立を得ないということを心から悲しんでいるのです。それが私の真意であるのに、どうも開き直って、もらわぬということは絶対言わぬので、もらうのがあたりまえだと思っておるように、あなたはそこにアクセントをつけて言われる。最後の一言がどうも少し私は釈然としないのです。そこは違うのですから、真意はお互いに認め合おうじゃありませんか。
  65. 不破哲三

    不破委員 田中総理の話を聞いておりますと、田中総理が言う国民というのは、どうも国民協会のことではないかという疑惑を私は持ちますが、次の質問に移らしていただきます。  これは安保の問題であります。  安保の問題で具体的に伺いますが、去年の予算委員会の総括質問で、私はアメリカの空母ミッドウェーの横須賀母港化の問題について質問いたしました。そのときに政府側の答弁は、母港化というのは、これはただ家族がアメリカから横須賀へ移ってくるだけだ、それ以上のことではないということを言われました。ところが、現実には米空母ミッドウェーによる横須賀母港化を軸にして、横須賀がアメリカの極東最大の軍港として、非常に侵略的、危険な機能を強化しておるということは事実であります。  そこで、私は政府に伺いたいのですが、いまアメリカの第七艦隊の中で横須賀を母港にしているのは何なのか、米空母ミッドウェー以外に何が横須賀を母港にしているのか、このことをまず防衛庁長官に伺いたいと思います。
  66. 山中貞則

    ○山中国務大臣 横須賀は計八隻、攻撃型空母ミッドウエー、ミサイル搭載軽巡洋艦オクラホマシティー、ミサイル搭載フリゲート艦ウォーデン、ミサイル搭載駆逐艦パーソンズ、駆逐艦ローアン、ガータ、R・B・アンダーセン、バウゼル、以上であります。
  67. 不破哲三

    不破委員 いま長官が読み上げられた中で、ミサイル搭載巡洋艦オクラホマシティーと言ったのは、第七艦隊の旗艦であります。つまり、いま第七艦隊の旗艦も横須賀を母港にしている。それから六隻からなる第十五駆逐船隊、これも横須賀を母港にしている。それにミッドウェー空母が横須賀を母港にしたわけですから、母港化母港化といわれた問題が、実はアメリカの第七艦隊の旗艦をはじめ、その主要な戦力が横須賀を母港にしているという事実を示していると思います。これが非常に重要なんです。その横須賀から、インド洋からあるいは紅海まで第七艦隊が出動をしている。この点ではいまさに政府が緊張緩和の機運だといわれているさなかに、この数年の間に、日本の横須賀というものが非常に危険な基地になった。このことについて、私はまず政府の注意を喚起したいと思います。  同時に、ここで私が伺いたいのは、母港にしたこれらの軍艦以外に、原子力艦艇があります。アメリカの原子力艦艇は、この数年来横須賀入港が激増していると思いますが、最近三、四年でけっこうですから、何隻くらい各年度ごとに横須賀に入っているか、それを伺いたいと思います。――政府はわからないようですが、一応政府から言っていただかないと権威がありませんから……。  私の調査によりますと、横須賀に入港している原子力艦艇の数は、四十五年九隻、四十六年十八隻、四十七年二十一隻、四十八年十八隻なんです。ただ、この隻数と同時に、私が今度調べて非常に驚きましたのは、滞在日数が非常に延びていることであります。滞在日数を合計しますと、四十五年は横須賀に九隻九十九日、四十六年は十八隻百八十六日、四十七年は二十一隻百五十日、四十八年は十八隻百八十五日なんです。つまり、一年は三百六十五日ですから、四十六年、四十七年、四十八年という最近三年間を考えますと、原子力艦艇が何と四十六年は百八十六日、四十七年は百五十日、四十八年は百八十五日ですから、大体年の半分は横須賀に滞在をしているということになります。世界にいろいろな軍港がありますけれども、アメリカの原子力艦艇が、一つの港に年の半分以上あるいは半分近くも滞在をしている、こういう危険な港は横須賀以外には、アメリカの原子力艦艇の本国の母港を除けばないのではないかと思います。  この事態は、非常に重大だと思うのです。一番最初にわが国がアメリカの原子力潜水艦を受け入れたのは一九六四年、ことしがちょうど十周年であります。あのときは、ただ一隻の原子力潜水艦を受け入れるのにもたいへんな全国的な議論が起こりました。それから六八年、昭和四十三年には佐世保で異常放射能事件が起こって、これでまた、アメリカの原子力艦艇が日本に入ってくるときの防護体制をどうするのか、監視体制をどうするのか、まさに国をあげての議論になりました。原子力委員会が、万全の監視体制ができなければ当分入ってもらっては困るということをきめて、政府もそれに応じて一定の監視体制をつくった、これも皆さんが御記憶に新たなところだと思います。  ところが、これが問題になった当時、昭和四十三年にはどうだったかといいますと、横須賀に入ったのが三隻、二十六日なんです。それから佐世保には四隻、二十四日、合わせても七隻五十日しか入っていなかった。ところが、私、先ほど横須賀だけの数字を言いましたが、たとえば四十七年には佐世保に三隻、十七日、沖繩に七隻、八日、合わせますと三十一隻、百七十五日の滞在日数、四十八年には佐世保に一隻、三日、沖繩に三隻、三日ですから、合わせますと二十二隻、百九十一日の滞在日数、けた違いであります。  こういう事態を考えるときに、私は十年前を思い出します。また六年前を思い出します。そのことを考えると、これはよほど万全の原子力潜水艦に対する放射能汚染の監視体制がとられていかなければいけないということを痛感するわけであります。  この点で、そういう面の体制がどうなっているか。昭和四十三年、一九六八年に原子力委員会の承認のもとにきめられたそれに対しては、われわれや多くの学者が不徹底だと言って多くの批判をいたしましたが、それにしましても、当時、政府と原子力委員会の責任できめた原潜に対する監視体制、これが万全に行なわれているかどうか、このことについて防衛庁長官に伺いたいと思います。――科学技術庁長官だそうであります。
  68. 森山欽司

    ○森山国務大臣 原子力潜水艦の入港の問題は、日米安全保障条約に基づくもので、科学技術庁の所管しております原子力基本法の対象となるものではございません。しかしながら、日米安全保障条約に基づく協定によりまして、この放射能の測定について科学技術庁及び地方団体が担当をして、万全を期しておる次第であります。
  69. 不破哲三

    不破委員 つまり、万全の体制がとられているということですね。いいですね、それで。
  70. 森山欽司

    ○森山国務大臣 万全の体制をとるべく努力をいたしておる次第であります。
  71. 不破哲三

    不破委員 原潜は十年間入っているのですよ。とるべく用意をしているのですか。あのときには、万全の体制がとられたから入ってよろしいということになって、原潜を入れたんじゃないですか。正確に答えてください。
  72. 森山欽司

    ○森山国務大臣 原子力潜水艦の安全性につきましては、心配のないような監視体制をとっております。
  73. 不破哲三

    不破委員 どういう監視体制ですか。長官がわからなければ、わかる方にお答え願いたいと思います。原子力潜水艦が入ってきたときに、どういう調査をして、それで万全だということをやっているのか。これは当時からきちんとした規則がきめられているはずであります。
  74. 森山欽司

    ○森山国務大臣 重要なことでございますから、事務当局をして説明いたさせます。
  75. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 お答えいたします。  原子力潜水艦入港時におきましては、モニタリングポスト、モニタリングカー、ボート等をもちまして、科学技術庁、それから海上保安庁、それから県、市の職員が、海水中それから空間の放射能を測定しております。それから、そのときに海水それから海底上等を採取いたしまして、これを分析しております。その空間放射能と海水中の放射能の測定によりまして、異常の有無は直ちにわかるわけでございまして、それはその測定のつど発表いたしております。  それから、海底土、海水等のサンプルを分析いたしますのは、後日異常がありました場合に、それが潜水艦に基因するものであるかどうか、これを確認するためのものでございます。
  76. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、しろうとが常識的に考えますと、年のうち半分も原潜が入っているということになると、その結果の中に多少異常が出ているのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  77. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 ただいままでのところ、特に異常は出ておりません。
  78. 不破哲三

    不破委員 それで、そのデータはかなり信頼の置けるものですか。
  79. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 信頼の置けるものだと思います。
  80. 不破哲三

    不破委員 その分析はどこに依頼をされておりますか。
  81. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 ただいま申し上げましたように、海水中の放射能、空中の放射能は直ちに機器によってわかりますので、特に依頼はいたしませんが、海水及び海底土等につきましては、財団法人の日本分析化学研究所に依頼しております。
  82. 不破哲三

    不破委員 つまり、民間の会社に委託をしているわけですね。
  83. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 そのとおりでございます。
  84. 不破哲三

    不破委員 それで、そのデータというのは、その民間の会社から科学技術庁に来たら、一定のチェックをするものですか。それとも、右から左へ吟味をしないで発表するものですか。
  85. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 報告書として提出されますので、その内容は検討いたします。
  86. 不破哲三

    不破委員 その日本分析化学研究所というのは、たしか去年汚職で問題になった研究所ではありませんか。
  87. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 遺憾ながらそのとおりでございます。
  88. 不破哲三

    不破委員 この研究所が汚職で、たしか科学技術庁の収賄事件がありまして、その研究所の責任ある役員が贈賄罪で起訴された、これは確かですね。そのときに、たとえばここにいままで委託をしていた東京都などは、直ちに委託をやめているわけです。それをあえて科学技術庁が、汚職が明らかになった研究所にこの重大な仕事を続けさせたのはどういう理由ですか。
  89. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 第一点は、その不祥事件の起きます前に四十八年度の契約が行なわれていたということが一つございます。  第二点は、海底土それから海水等の分析は非常にルーチンの技術でございまして、大量のものを技術的な確信をもって委託するところが、その当時ほかに見つからなかったということでございます。ただ、四十八年度につきましては、御指摘のようなこともございますので、その一部をほかに委託するべく現在作業中でございます。
  90. 不破哲三

    不破委員 四十八年度は間に合わなかったかもしれないが、四十九年度は委託をしていませんか。
  91. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 四十九年度につきましても、その全部を委託するところが、かわるところがなかなか見つかりませんので、その一部をほかに委託をするという方針、それからもう一つ、この研究所の抜本的改善を行なって、役員の総入れかえ等をし、経営刷新の上、一部を委託するというつもりでおります。
  92. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、汚職で問題になり、当然研究内容にも疑惑が出てくるはずですけれども、それ以後頼んでいるからには、かなりきびしいチェックをしているんじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  93. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御指摘のように、この前の科学技術委員会におきまして御指摘を受けましたので、その後立ち入り検査をいたしまして、分析自体はきちんとやっておるということを確認しております。
  94. 不破哲三

    不破委員 いまお聞きのような事情でありますけれども、私どもは、この原子力潜水艦という、日本の安全に最もかかわる問題の基本的な分析が、民間の研究所に委託されているということ自体、非常に問題だと思っていたわけです。ところが、そこにあの汚職事件が起きた。大体科学研究所というのは、これは科学者の集まりのはずでありますから、一番汚職とは縁遠いはずなんですが、そこで起きた。そういうような研究所には、当然研究内容にも疑惑を感じるのが常識であります。ところが、政府は依然としてこれを使っている。しかも、そこには原潜の監視という非常な大問題がかかっているという点で、共産党の議員団としては、この問題について昨年から、科学技術庁の協力を得まして、いろいろ資料をいただきましてずっと研究をしてみました。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  いま原潜の監視の問題で、ここに技術庁からいただいた資料がありますが、一番最近発表されたのは四十七年度の――私が先ほど申し上げたのは暦年ですから、もうちょっと数が違いますけれども、これは年度ですから……。四十七年度の原子力潜水艦の寄港時の調査の一覧がこれであります。これが外に発表されたものであります。それで、これを見ますと、四十八年六月二十九日付の報告書で、分析の主任担当者が浅利民弥という名前が記載をされております。  長官に伺いますが、この浅利民弥という人物は贈賄罪で起訴された人物ではありませんか。
  95. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 まさにそのとおりでございますが、先ほど申し上げましたように、現在はすでに役員人事を一新いたしまして、その当該の人物は引退しております。
  96. 不破哲三

    不破委員 それで、この日付が四十八年六月二十九日、この翌月収賄事件が発覚したわけであります。それだけでも十分疑惑を持つに足る。しかし、この研究内容の疑惑という問題は、ただそれだけの状況、問題で提起するわけにいきませんから、私どもも徹底した研究をいたしました。そうして科学技術庁に参りまして、これは測定結果ではなくて、測定結果から分析をした分析結果であります。あまり専門的なことは言いませんが、この基礎になっている測定結果を見せてもらいたいということを申しましたら、この測定原票というものが提出されました。これは全部についての測定原票ではありません。いろいろな調査をやっておりますが、原潜寄港時の海水をとって分析をした結果であります。それも化学分析といいまして、化学的な手法で分析をする原票であります。この原票からいろいろ計算をしてこの測定結果が出る。この計算の式は、これは一定の式がきまっておりまして、多少知識があればだれでもできる計算であります。それで、この測定原票をいただきまして検討しましたところ、非常な疑惑にぶつかりました。  第一に、測定日がでたらめなんです。この測定日と政府に報告された測定日とが全く合わないのです。たとえば、四十七年に沖繩に八隻の原子力潜水艦が入港しました。政府が発表した報告によりますと、第一隻のフラッシャーというのは六月十九日に入港して、そこで採取した海水を八月二十四日から二十九日に分析をしたことになって、報告をされております。ところが、この報告書をつくった原票であるこの測定原票、これをたんねんに調べますと、このフラッシャーについての分析をやられたのは、九月二十三、二十四、二十七、二十九日ということになっているわけであります。化学の分析の場合に、測定日というものは作業記録には必ず明確につけるもので、これが間違えるということはあり得ない。ところが、それが八隻のうち八隻全部数字が違うのです。一つとして合うものがない。  それから二番目には、ここでは、化学分析の場合に、調査に研究所にも行きまして、機種もうちの議員団が見せていただきましたが、LBC1、LBC20、LBC22bという三種類の機械を使っております。この測定原票には、どの機械で分析をしたかということが全部記録をされてあります。あたりまえであります。ところが、LBC1という機械は、四十七年には、七月十八日から二十日まで、故障で日本無線医理学研究所という三鷹にある――この研究所は板橋ですけれども、三鷹にある研究所に入院をしていたわけであります。ところが、入院中にもこの機械は、ふしぎなことに、アメリカの原子力潜水艦、横須賀に入ったガーナードというものの試料の分析を刻々やって、セリウムとコバルトの分析をやっている。  それからもう一つ、LBC20という機械は、十ゴ月七日から十二日まで、同じ日本無線医理学研究所に入院をしております。ところが、その期間にバッファーという、これまた横須賀に入港した原潜のストロンチウム、セシウム、セリウム、亜鉛の分析を克明にやっている。  これだけでも、私はこの調査にはたいへんな疑惑を持ちました。私も二十数年前には物理を多少やったことがある人間でありますが、こういうことは、まじめな科学者や科学研究所では絶対にあり得ないことであります。  ところが、これだけでは私は状況判断に足りない。もう一ついただきました。この測定書からこの報告書に至る計算過程というものがあります。計算のプロセスを見せてもらいたいと、うちの議員団が要求しましたら、全部は提供してくれませんでしたが、原潜十隻分提供してくれました。これには計算に必要な全部のデータが出ております。測定値もこれから書き写されてあります。政府に提出した報告書の数字も書き写されてあります。この測定値から報告書の数字にどう至るかという過程が全部出ているわけでなんです。計算をしてみましたら、全く合わないのが大部分であります。つまり、これが全く合わないということは、政府がもらって発表した報告数字は、測定の結果とは何の関係もないということであります。  しかし私は、これを私だけの判断で断定するには問題がありますので、この計算書だけを何人かの学者に見せて、これが測定値から報告結果に至るまでの計算書として合うかどうかということを委託をして鑑定をしてもらいました。  一人は、日本学術会議の会員で原子力問題特別委員会の責任者である三宅泰雄氏であります。彼がその鑑定結果を述べてくれましたが、多少専門的なことばが入りますが、ちょっと読み上げさせていただきます。「測定値の補正を行なうには、回収率と計数効率を用いて計算するものである。ところが、日本分析化学研究所の発表している補正値なるものは、同研究所で実測されたという回収率を用いて計算されたものはわずかしかない。このことは、分析値」つまり報告値ですね。「分析値を正しく見せかけるための操作が行なわれたと見られてもしかたがないものである。」もう一人、日本原子力研究所の主任研究員で、やはり学術会議の会員で学術会議の原子力問題特別委員会の幹事である中島篤之助氏にも私は伺いました、計算票だけ見せて。その見解は、「放射能汚染を調査する場合、測定値なるものは、回収率と計数効率の両方の補正を行なって初めてきめられる。しかるに、日本分析化学研究所の公表した測定値を見ると、この関係が成り立たないものが大部分である。このことから見ると、測定もしないで測定結果、つまり測定値をでっち上げ、あたかも測定したかのようにした疑いがきわめて濃い。」これが二人の、この道では専門の、こういう種類の分析を絶えずやっている権威ある学者の、それぞれ独立した鑑定であります。  そこで、私は原子力局長に伺いますが、先ほどチェックしたと言われました。もちろん、当然汚職を起こした研究所にこれだけ重大なことを委託する以上、チェックするのはあたりまえであります。しかも、先ほど私が紹介しました原子力研究所というのは、御承知のように、東海村の、政府のきわめて関係の深い、いつでも委託すればチェックぐらいできる研究所の主任研究員でありますが、まあこの人たちの意見を聞きますと、これぐらいのことは、物理のことに、こういうことをちょっとやったことのある研究者に聞けばだれでも検算はできる、誤りぐらいすぐわかる。ところが、そういう誤り、これが先ほどチェックしたと言われながら、全く放置されていたということ、この点について原子力局長の、どういうチェックを一体やられたのか、まず伺いたいと思います。
  97. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先ほどお答えいたしましたように、前国会におきまして山原先生から御指摘を受けましたので、全数ではございませんが、立ち入り検査をしております。そしてその結果は、分析自体は行なわれております。ただ、御指摘のように、原票から報告書に記載いたしますときの事務処理に怠慢のところがございまして、相当数のものにつきまして、日付その他の手違いがございましたところは、御指摘のとおりでございます。それにつきましては、先ほど申し上げましたように、役員の一新、それから事務処理、所内体制の刷新ということを指示いたしまして、そのとおりしております。  それから、もう一つ申し上げますことは、先ほど来申し上げておりますように、原子力潜水艦の入港時の放射能異常につきましては、そのつど空間線量、海水線量で、科学技術庁、それから県、市、海上保安庁でチェックをしておりますので、その時点におきまして異常放射能がございませんので、この分析研に依頼いたしておりますのは、その後異常放射能ができた場合に、それが原潜に基因するかどうかということを確認するためのものでございます。分析研におきましていろいろ事務の怠慢がございまして、いまの御指摘のような問題ができましたことは申しわけありませんけれども、国民の安全は、その空間放射能、海水放射能の調査の時点で一応確保されているというふうに考えております。
  98. 不破哲三

    不破委員 あなたは問題の重大性を全然わかっていないと思うのです。私が提起しているのは、日本分析化学研究所が調査結果だといって政府に報告し、政府が信頼ができるといって国民に発表して、原潜入港あぶなくない、何十隻来てもだいじょうぶだと言ってきた数字が、机の上でつくり上げられた数字である重大な嫌疑があるという問題ですよ。しかも、あなたはそういう問題が出ると、いかにもほかでもやっているからだいじょうぶだということを言いますが、要りもしないものを何で頼むのですか。ここにあなたが持っていられるのと同じ「原子力軍艦放射能調査指針大綱」というものを私、持っております。これが六八年のときに原子力委員会で承認をされて、そしてこれで確実にやるということで、原潜の入港をやってよろしいということになった書類だと思います。間違いありませんね。  それで、これを見ますと、たとえば水路部が調査をやると書いてある。その中には、日本分析化学研究所の協力を含むと書いてあります。あるいは水産庁が調査をやると書いてある。そこにも日本分析化学研究所の協力を含むと書いてある。西海区水産研究所が調査をやると書いてある。そこにも日本分析化学研究所の協力を含むと書いてある。科学技術庁が引き受ける分、これは日本分析化学研究所委託と書いてある。そして、ここの定期調査、あるいは非寄港時調査、それから寄港時調査、そのすべての調査にこの日本分析化学研究所の委託部分が入っていないところはないのです。かなめをなすところであります。かなめをなすところにそういう問題があったら、事務処理で済みますか。実際に測定をしないで、分析結果を安全だといって発表しているとしたら、まさに一億国民と世界をだましたことになるんです。あれだけの大きな問題があって、それでしかも原子力委員会で決定をして、これを厳重に守ることでようやく原潜が入れるということを一九六八年にきめた。そのかなめがくずれるとしたら、これはきわめて重大な問題であります。ほかでやっているから安心だというようなことは、あなたがいま言うべきじゃないんです。どうです。
  99. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 分析研につきましては、その体制の刷新をはかりまして、きちんとやるようにさせます。そして、申し上げましたが、立ち入り検査いたした結果は、全数ではございませんが、分析自体はやっているということを確認しております。  それからもう一つ、このほかに、分析研以外にこの仕事を委託するように、目下努力中でございます。
  100. 不破哲三

    不破委員 いま原子力局長が、立ち入り検査によってやられている調査の内容は、正確だということを確認したと言われました。これはきわめて重大であります。これからの調査によって、この結果がインチキであるということがわかれば、あなたは共犯者になるんですよ。わかって答弁しているんでしょうね。
  101. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 立ち入り検査をいたしまして、全数ではございませんが、検査をいたしました結果によりますと、分析自体はちゃんとやっております。ただし、その事務処理に遺漏があったことは事実でございます。
  102. 不破哲三

    不破委員 こういう人が原子力局長をやっているならば、こういう事態が起きるのも私はあたりまえだと思うんです。事務処理じゃないのです、問題は。一定の測定結果がある。ところが、それを報告に直すときに――これが重大なんですよ。一定の測定をした、異常放射能が出ているか出ていないかを調べるのが分析の理由なんですから、それで出ていませんという報告数字が発表された。ところが、その間の計算が全部狂っていて、そして測定結果とは無関係に、政府が喜びそうな放射能が出ていませんという答えだけが机の上で作文されて皆さんのところに流されてきた。事務処理じゃないんですよ。  それから、立ち入り調査と言われますが、私たちがいただいた資料は、全部科学技術庁に提出をされている資料ばかりなんです。つまり、あなた方のところが全部持っている資料ですよ。持っている資料を、ちょっとどこかに委託をしてチェックする手間さえかければ、コンピューターでさえフィードバックといって、信頼できるコンピューターでさえ、計算が違っているかどうかちゃんと点検する装置があるんです。ところが、科学技術庁が、自分が責任を持った仕事を民間に委託をしておいて、汚職があってもそれについて何の点検もしない。これが重大なんです。  もう一つ、ここでは化学分析と同時に、機器分析というのをやっております。私ども調査してみましたら、この機械は科学技術庁で、技術庁予算で買って、この研究所に提供したという話を聞きましたが、これを四十七年と一それまでは化学分析をやっていたものが、機器分析というのを四十七年度に実験的にやった。それで、これは調子がいいというので、四十八年度からは主力を機器分析に置きかえたということを聞きました。そこで、機器分析の結果を私どもは見せてもらいましたが、百数十枚の結果がありました。これは海水ではなくて海底土であります。こういうものであります。それぞれの海底土について機器のあれをやります。ガンマ線をとってエネルギースペクトルというのをとります。この中に検出される物質がわかる。ところが、この機器分析でやるエネルギースペクトルというのは、これは非常に偶然的な要素が入りますから、この一つ一つの波のジグザグまでは、別のものをやったときは一致することが絶対にないのです。同じものを分析しても同じ結果が出ることは、時間が違えば絶対にあり得ない、そういう性質のものであります。ところが、百数十枚のこの分析書を見せてもらいますと、ふしぎなことには、同じような波のものが十枚ずつあるのです。これは常識では考えられないことであります。それで科学技術庁に行きまして、全部提出を求めたのですが、渋って、なかなかくれませんでした。ようやくそのうちの数十枚をいただいて、われわれ分析をしてまいりました。ところが、驚いたことには、その十枚の中には、こうやって照らすとよくわかりますが、細部に至るまでぴっちり一致するものがあるのです。  それから、これは全然違う原潜の海底土であります。もっと手が込んでいるのですが、たとえば、ごらんになってもちょっと遠くてあれでしょうが、一見すると、こういうものが違って見えるのです、高さが違いますから。それを私ども、同じ波形なのでおかしいと思って高さを合わせてみました。長さも合わせてみました。そういう操作をやったら、これがまた完全に一致するわけであります。これはどういうことか。これは機器分析をやりますと、一定の数字が出ます。その数字を磁気テープにとるのです。その磁気テープを機械に入れて、それでこの筋を書くわけです。一つの磁気テープができたら、同じ磁気テープで十枚コピーをつくった。同じコピーをつくったのならこれがすぐばれてしまうから、これを多少引き伸ばしたり、長さを変えたりして、それでわからないようにして十枚ずつつくって、それを組み合わせて科学技術庁に提出した、こうとしか思えないのです。  私、この点についても、私の貧弱な物理の知識では皆さん方が納得していただけないだろうと黒いまして、この点も学者に鑑定を依頼しました。立教大学の原子力研究所の所員である服部学助新授にこれを依頼しました。服部さんは、原子炉でこの分析を絶えずやっている専門家であります。彼の鑑定書は、「この種の測定には、各測定点に統計的変動が伴う。したがって、同じ資料を測定しても、統計的にばらつきが生じてカーブにギザギザが生ずる。この変動が完全に一致することけ絶対にあり得ない。しかし、この一連のカーブけこれが全く一致しており、実際には、測定をせずに同じカーブを何回も使ったことは、だれが見ても明らかである。」これは、事務処理や、頭が悪くて計算が間違ったということでは済まされない問題であります。つまり意識的に、この重大な調査を委託されながら、一枚のテープで十枚再生産する、それを適当にまぜ合わせて政府に提出をする。たとえば、ある十枚は、原子力潜水艦の名前も違えば入港時も違う、何カ月にもわたるものが、同じカーブでずっとあらわれるわけです。しかも、このカーブが科学技術庁にちゃんとしまわれていて、もう一年近く眠っている。だれか学者に見せれば一目で見抜けるものが、チェックしやと言いますが、チェックされないまま積まれている。それでこの成績が非常にいい。心配ないというので四十八年度からこれに全部切りかえた。一体これはどういう状態ですか。あなたはほんとうにチェックをしたと言いましたが、あそこから出される資料を、科学者に点検さしたことがただの一度でもありますか。それとも、そういう能力を持った職員は、科学技術庁にはただの一人もおらないのですか。
  103. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、チェックをしておりませんので、よく調査をいたしたいと思います。
  104. 不破哲三

    不破委員 田中総理に私、伺いたいのです。知が提起している問題がどれだけ重大な問題であるかということは、原子力局長にはわからなくても、田中総理にはおわかりだと思うのです。私は個々の例を言っているのじゃないのです。科学技術庁から提起された原子力潜水艦の寄港時の海水の分析、これが全部疑惑がある。それから海底土の機器分析、これが全部疑惑がある。単なる疑惑ではなしに、意識的な詐欺をやった証拠がこの中に歴然としてある。  たとえば、私どもそこで見せていただいたものは、百数十枚のカーブですけれども、それが全部で十三種類ですか、十三種類の型に分類される。つまり、十三枚のテープで科学技術庁が注文する全部の分析を間に合わしてしまった。しかも、事は原子力潜水艦の問題であります。四十七年度で言えば、いままでとは格段の違いで原子力潜水艦が横須賀に殺到する、そういう時期の調査にこのようなことが行なわれた。私ども、たまたまいただいたのは四十七年度ですが、それ以前と以後もそれが行なわれていなかったという証拠はない。なぜなら、多少の異常放射能事件が一九六八年起こったときに、日本分析化学研究所が発表した放射能の測定値については、すでに多くの学者が学問的に検討をして、きわめてふしぎなデータである、考えられないデータであると、たくさんの論文が出て批判があるのです。ところが、その批判を押し切って、これは正しいといって、最後までこの民間会社にこの重大な調査を委託してきたのが政府なんです。それだけでも政府責任はあるわけですけれども、私は責任の問題を言う前に、事の重大性をまず総理に伺いたいと思うのです。総理の御所見、いかがですか。
  105. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 科学技術庁長官森山欽司君。
  106. 不破哲三

    不破委員 総理に伺っているのです。
  107. 荒舩清十郎

  108. 森山欽司

    ○森山国務大臣 不破先生のたいへん御熱意のある御検討に対して、敬意を表します。ただ、いまお話しのございました高名な学者は、先生とごじっこんの方々ばかりでございますから、私どもといたしましても、これらの内容についてさらに調査を進めたいと思います。  ただ、ここで申し上げておきますことは、財団法人日本分析化学研究所に対しまして、原子力潜水艦入港時、海水、海底土等の分析を委託しておりますが、昭和四十八年度の分析データのうち、相当の部分について、報告書記載の日時と実際の分析の日時が食い違いのあったということは確認をいたしております。まことに遺憾しごくなことでございます。このことは、同研究所の事務の怠慢がありました点は、これを認めざるを得ないのでありまして、すでに事務処理の改善、体制の改善、責任者の退職等の措置をとっておるところでございます。しかしながら、いま先生からさらに詳細なる御指摘がございましたから、私ども、さらに先ほど申し上げましたようなやり方で検討を進めてまいりたいと思います。  ただこの際、念のために申し上げておくわけでございますが、原子力潜水艦入港時には、科学技術庁と市の職員が、空中放射能それから水中放射能等を直ちに測定し、異常のないことは確認をいたしております。ただ、この財団法人日本分析化学研究所に委託しておりますのは、放射能が異常があった際に、それが原子力潜水艦に基因するものであるかどうか、これはあとになってからは試料がとれませんから、その試料をとって確認をするために念のためやって依頼をしておる検査でございます。その検査が、ただいま申し上げましたような遺憾な点がございましたから、私どもとしては、前の国会の末期にこのことが国会で問題になり、科学技術庁としてもこれに対して処置をいたしたわけでございます。そして、いま御指摘のような点につきましては、さらにその検討を進めていくようにいたしたいと思いますし、今後につきましては、万遺憾なきを期する所存でございます。
  109. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 非常に科学的な問題でございますし、政府の中では、科学技術庁がこれを担当しておるわけでございます。いろいろな事件が起こったり、また、いまのような御指摘もあったわけでございますので、重大な問題として、遺憾なきを期し得るよう万全の体制をとってまいりたい、こう考えます。
  110. 不破哲三

    不破委員 科学技術庁長府が、そういう重大な仕事が自分の仕事の中にありながら、何がやられているかもわからないのです。  まず、この原子力委員会承認の、科学技術庁がこれを指針にしてやっている調査書によりますと、定期調査があります。定期調査は海上保安庁、水産庁及び日本分析化学研究所が共同して行なうとなって、この中には定期調査の報告もちゃんと入っておるのです。それから第二に、審港時調査というのがあります。それから軍艦が出港したあと、日本分析化学研究所の協力を得て海水及び海底土を採取する、これは毎回やっているのです。異常放射能が出てから頼むのだったら、こんなにたくさんのものを頼んだのなら、異常放射能がそれだけ出たことになるじゃありませんか。それからまた、異常放射能が出たときには特別の調査をやる、これだけのことを体系的にこの研究所に委託をしているのです。だから、いろいろな原潜問題が問題になると、政府が出してくる調査の一番がこれなんです。最も体系的にやっているのがこの日本分析化学研究所なんです。それに、いわば途中に部分的な黒があったというのじゃなくて、私が提出をしたのは、全面的に疑惑があるという問題であります。  なお伺いますが、科学技術庁ではこの研究所に、このほかどのような調査を委託しておりますか。
  111. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 ただいまの原子力軍艦関係の委託のほか、放射能測定調査、いわゆるフォールアウトでございます、それを委託しております。それから放射能調査対策研究を委託しております。
  112. 不破哲三

    不破委員 まあ、わかりやすいことばで言うと、全国の大気汚染、死の灰の調査ですね。それをやっているわけですね。もっとわかりやすく言ってください、国民が聞いているのですから。死の灰を核実験があると調査をする、その重要な部分がここに委託されているわけです。  それからまた、この研究所の事業報告を読みますと、科学技術庁からは「PCB等汚染防止に対処するための分析方法に関する特別研究」PCBの調査にも関係していますね。特に私が重大だと思いますのは、死の灰の調査の中で、死の灰が食品にどういう影響を与えるか、死の灰が食品の中に濃縮されて人体にどういう影響を与えるか、その一番重要な部分がこの研究所に委託されているのです。  次に、通産大臣にお尋ねします。  通産省及び通産省の管轄下の原子力船開発事業団並びに各電力会社は、どのような調査をこの研究所に委託していますか。
  113. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原子力船開発事業団は、たしか運輸省の管轄だったと思います。
  114. 不破哲三

    不破委員 失礼しました。では訂正します。  あらためて運輸省に聞きますが、通産省及び通産省の管轄下の各電力会社は、どのような調査を委託しておりますか。
  115. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 突然聞かれましたので、私、いま了承しておりませんから、調査の上、御報告いたします。
  116. 不破哲三

    不破委員 運輸大臣に伺います。原子力船開発事業団はどのような調査を委託していますか。
  117. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 原子力の問題につきましては、科学技術庁においてこれを取り扱っていただいております。
  118. 不破哲三

    不破委員 環境庁長官に伺いますが、環境庁はどのような調査を委託していますか。
  119. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 科学技術庁長官、ひとつお答え願います。森山欽司君。
  120. 不破哲三

    不破委員 環境庁です。
  121. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いや、森山君が先にやって、それから環境庁長官を呼びます。――環境庁長官
  122. 三木武夫

    ○三木国務大臣 環境庁に関しては、政府委員からお答えいたさせます。
  123. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先生のお尋ねの原子力船開発事業団は、運輸省と科学技術庁の共管でございまして、この原子力船開発事業団は、牛乳とか土とか海水の調査を委託しております。
  124. 森山欽司

    ○森山国務大臣 ただいま御質疑のございました問題について、ただいま資料がございませんので、調査の上、お答えいたします。
  125. 不破哲三

    不破委員 この研究所の事業報告によりますと、原子力船開発事業団は、むつについて土壌や海水や河川の土、海産生物その他の分析を依頼している。それから各電力会社は、たとえば東京電力は福島の原発、これの安全調査、あるいは日本原子力発電株式会社は敦賀の安全性の調査関西電力は美浜の安全性の調査、こういうように原子力発電所の安全性の調査をこの研究所に委託をしている。それから環境庁は、水質保全局から、「農薬残留対策調査事業、PCBの流水中における挙動と生物濃縮に関する調査研究」、つまりPCBが魚の中にどれだけ濃縮されて、それでどんな危険な魚ができるか、この研究を委託している。この調査をもとにしたのでは、食べられる魚の発表が毎週変わるのもあたりまえであります。  それから、まだたくさんありますが、特にそこを読み上げてみますと、「PCB汚染河川の拡散状況調査および魚介類への蓄積のメカニズムの研究、」重要な研究が委託されているのです。通商産業省からは「工場排水及び泥の水銀の化学分析」問題の水銀公害です。「委託調査を受け、全水銀・有機水銀の分析を行なった。」と書いてある。運輸省の港湾技術研究所からは「港湾の水質ならびに汚泥の委託調査を受け」てやっていると書いてある。農林省からも建設省からも気象庁からも調査の委託を受けていると書いてある。原潜の問題と同時に、政府の公害行政の基本になるPCB、カドミウム、水銀あるいは原子力発電の安全性、すべてがその一定の部分をこの研究所に委託をしているのです。  だから私は、この問題が、先ほどから科学技術庁の関係者が言っているように、事務処理の手違いでしたとか、そういうことで済まされる問題ではない。それ以後は間違いがないはずだと、そういうことで済まされる問題ではない。政府がいままで水銀の調査をやっていろいろ発表する、PCBの調査をやって発表する、そのデータが全部、少なくともその一定部分がここから出ているとしたら、これは公害行政全体に対する疑惑に通じる問題なのです。原子力発電所の安全性がいよいよ問題になり、ジャーナリズムでも最近取り上げられております。もともと、原子力発電所の安全性というのは、アメリカでもまだ証明されていない。それが日本に持ち込まれているわけですから、これをやるためには、よほどしっかりした調査体制がなければ進められないはずなんです。ところが、科学技術庁推薦のこの研究所にどこの省庁も安易に委託をして、これを基礎にして行政をやっている。私が提起した疑惑のとおり、大体こういう数字を出しておけば政府は喜びそうだということから、測定をしないで――私は、そこで実際に測定をしている技術者の皆さんはまじめにやっていると思うのです。科学者というのはそういうものなんです。しかし、どんな測定が出ようが、最後に報告書をつくるときにはかってに書きかえて、政府が喜びそうな数字を出しているのだとしたら、事はきわめて重大であります。これをこれからちゃんとしますとか、体制を入れかえるとか、原子力局長は贈賄罪で起訴された浅利氏がもう手を抜いているようなことを言いましたが、実態は全然違うのです。やはり贈賄罪で起訴されたこの元専務理事中心に研究所が運営されているというのが、われわれの実際の調査の結果であります。  そのことを含めて、ただ人の入れかえだけで済む問題ではない。  この点について、今後の政府としての処置のしかたについて、それからまたこの問題の重大性について、私は再度田中総理に見解を伺いたいと思うのです。
  126. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 原子力の問題その他公害の問題等、全人類的な問題でありまして、その国の専門機関だけではなく、国連を中心にした国際機関でも取り上げつつございます。同時に、先進工業国として同じような悩みを持つものは、悩みの解消というだけではなく、長い人類の歴史の中で汚点を残してはならない。科学的なこういう問題は、一代後になって現象があらわれるというものもございます。何代後ということもありますし、相当な長いデータの中で無害であったというものが、その後実用化の段階になって害があらわれるものもございます。新しい物質の研究や新しい加工というものに対しては、非常にむずかしい結果、まあいままでの歴史の中にはないような新しいものがあるわけでありますので、国際的に研究を続けましょう、現在生きる人間の能力、科学者の能力としては、これがやはり最高なんだということをやろうということで、私が訪米それから訪欧のときも、これらの問題、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ等々とお互いに努力をしながらやろう、しかも、この公害問題とか科学的な問題については、これはもうソ連訪問のときも、体制のいかんを問わず国際的協力機関をつくろう、こういうことを言っているわけでございまして、日本もこれからの問題に対しては、精力的に万全を期してまいらなければならないと思います。  ただ、いまの特定な研究機関というものの実態、私はいまの質問で初めて知ったわけでございます。相当広範にこういう問題に対しては先駆的な役割りをなしておった理化学研究所というものが戦前ございましたが、後に議員立法で科学研究所になり、それから現在また理化学研究所にかわっておるものもございます。あの当時の恩賜財団理化学研究所といえば、各大学の科学技術関係、物理関係はほとんど全部網羅しておったわけでございます。そういうようなものと、いまの研究所というものの体制がどうなっているのか、私もつまびらかにいたしませんが、これは非常に重大な問題を提案されたわけでございますから、ただその人だけがかわったからそれでいいというものじゃないことは、もう言うまでもありません。  私はそういう意味で、これを機会に、私もこういう問題には趣味もございますし、少年時代いささか研究したこともございます。そういう意味で、これはひとつ重要な問題として、科学技術庁を督励をしながら、万全の体制をつくるべく政府としても全力を傾けてまいりたい、こう考えます。
  127. 不破哲三

    不破委員 政府としてこの問題を調査をして報告をする、これは当然であります。しかし、いまの科学技術庁長官や原子力局長答弁を聞いていると、原子力局長は、調べたけれどもだいじょうぶだったと、私がそう言えば共犯者になるぞと予告をしたにもかかわらず、あえてはっきり断定をされました。しかも立ち入り調査をし、これだけの資料を持っていて、これだけのことが何にもわからないという状態では、その能力と資格についてははなはだ疑問であります。  それで、私は政府に対してその調査を求めると同時に、事は重大でありますから、しかもこれは技術的に言えば、この分析化学研究所に対する支出は、相当部分、各省庁含めて億をこえる金額がこの予算書の中にも含まれているはずであります。ですから、この予算委員会としても、この問題について、私が提起した疑惑が真実であるかどうか決着をつける必要があると思います。  それで私は、予算委員会として、この問題の現地調査あるいは証人喚問を含めて、この調査問題について予算委員会が独自の調査を行なうことを提案するものであります。
  128. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの提案に対しましてお答えいたします。  理事会でよく研究いたしまして、結論を出すことにいたします。
  129. 不破哲三

    不破委員 それで、事は詐欺でありますから、その調査というのは迅速を要するわけであります。まあ、これは賢明な皆さんにはおわかりだと思いますが、迅速が重要だ。ですから、私が要望をしたいのは、たまたまあした、あさっては予算委員会の審議が中断する事態でもありますから、その調査を緊急にやられるようにお願いをしたい。   それからまた、その際には権威ある学者の参加――先ほど長官は、私どもと親しい学者だから  というようなことで、政治的な疑惑をこのことにかけられましたが、これは実は科学技術庁の長官としてはきわめて重大な発言なんです。学術会議  の会員で、専門の責任ある人が、科学者の良心に  おいてものを言っているときに、それを、私どもと親しいから疑問だというようなことを、いやしくも科学技術庁の長官がこの席で言うということ自体、きわめて不遜で、許しがたいことであります。しかし、事は政治的な問題ではない。学問的な良心のある科学者であるならば、私はあえて政治的立場を問いません。私どもが学術会議からお願いする学者も、あるいは政府の方が、この人は学問的に信頼ができる、立ち入り調査してもわからないような人じゃなしに、そういう人がおありだったならば、その人も入れていただく、そういうことで責任ある調査を至急行ないたい。その際には、科学技術庁も全面的な協力を願いたいと思います。  それで私は、この問題に関する質問は、この調査結果が出た時点でさらに続けたいという点で留保をいたしたいと思います。  なお、最後にちょっと一言述べさせてもらいますと、もしこの結論が私が提起したように黒と出るならば、第一に、原子力委員会が六八年に決定をした前提がくずれることになります。原潜の放射能に対する監視体制がくずれることになります。当然ここからは、当時、監視体制が完備するまでアメリカの原潜を受け入れないという原子力委員会並びにそれに応じた政府の決定があらためて問題になってくる。これが第一の問題であります。  第二の問題は、科学行政全体の根本的な再検討であります。アメリカにおいてもイギリスにおいても、このような重大な原潜監視のような仕事は、政府自身が直接の研究機関でやるのが当然であります。このような公的な、国の安全にかかわる大きな研究を、民間の当てにならない怪しげな研究所に委託しているような国は、世界にどこにもない。汚職が起きてまでこれを続けるような国は、世界にどこにもない。まさにこれは国際的に見ても重大なスキャンダルであり、日本の科学技術の歴史の上でもかつてない、前代未聞の事件であります。しかも、政府のもとでそういう力を持った機関がないのかといえば、原子力研究所あるいは放射線医学総合研究所といったそういうものに専門に携わっている研究機関もある。チェックの機能なら十分できるはずであります。学術会議も、日本の科学界を代表するものとして法律によって定められている。そういうものを全部シャットアウトして、大事な仕事は全部民間に委託をする、この外郭団体主義が科学技術行政を根本からそこない、いわば政府の原潜問題や公害行政を、詐欺の上に成り立たせたといわれてもしかたのないような結果になったということになります。  これは私の提起した調査結果が明らかになった時点の問題でありますが、そういう性質の問題であるということを最後に発言をし、私がさきの質問で留保しました価格調査官政府の新しい見解が明らかになった時点の質問、それからこの問題の調査日本分析化学研究所の調査が明確になった時点での質問、この点の質問を留保して、私のきょうの質問を終わりたいと思います。(拍手)
  130. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと不破哲三君に申し上げますが、そういうことも含めて、理事会で研究して御返事を申し上げます。質問の留保とかどうとかということも、全部これを含めて理事会で研究いたします。  なお、ひとつ私から委員長として申し上げますが、いまの問題等もきわめて重要な問題でありますし、また答弁等もあいまいな点もございます。したがって、科学技術庁長官森山欽司君は、責任をもってこの問題をすみやかに研究せられんことを希望いたします。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 委員長、関連して。  まだ時間は十数分ありますが、これは再質問が留保されていますから、そのために時間をとっておるわけでございます。  私から不破委員の質問に関連して、一言委員長にも念を押しておきたいことがございますが、実は先刻の専任価格調査官の選任、選ぶ問題ですね。これは総理が見解をあらためて述べる、こう言われているので、その際はまた再質問の措置をされたい、そのために時間がとってあるわけです。
  132. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 承知いたしました。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、労働組合運動の名において行なわれておると思われる政治活動云々の問題ですね。これも速記録を調べまして、これはもし総理答弁が間違っていたらば、正式にこれは取り消されたい、このことです。  それから第二は、先ほどの財団法人の日本分析化学研究所、この問題は、原潜の放射能だとか、あるいは原子力発電の危険性の問題だとか、水銀等に関する公害の影響、これは国民の生命にかかわる非常な重大な問題でございますので、これは直ちに調査を行なわなければ、また変造される危険もある性質の問題ですので、委員長は、ひとつ理事会において、衆議院規則の五十五条によって、委員会はある案件の調査のために委員を派遣することができるとありますから、すみやかにこの措置をとられるように要求しておきます。  それから、日本共産党革新共同を代表いたしまして、当予算委員会への証人喚問をこの際しておきたいと思います。  先ほどの不破委員の質問にもありましたように、石油問題が国民の生活に重大な影響を及ぼしますので、わが党といたしましては、この問題に重点を置いて証人喚問の要求をいたしたいと思います。  まず第一は、メジャーと米系石油資本の極東または日本総支配人またはそれにかわる者。メジャーというのは、一にカルテックス、二にエクソン・三にモービル・四にシェルであります。第二のグループとして石油元売り十三社の代表取締役。この石油元売り十三社とは、一 日本石油、  二 出光興産、三 昭和石油、四 丸善石油、五 大協石油、六 ゼネラル石油、七 三菱石油、八 共同石油、九 九州石油、十 エッソ、十一 キグナス、十二モービル、十三 シェルであります。第三のグループとして石油精製会社の代表取締役。一 日本石油精製株式会社、二 東亜燃料、三 昭和石油精製株式会社であります。第四のグループは、日本船主協会の代表理事であります。第五のグループ、石油を取り扱う大手商社の社長。一 三井物産、二 三菱商事、三 丸紅商事、四 伊藤忠商事、これらの証人を当委員会に証人として喚問されることを、日本共産党革新共同を代表して要求しておきます。  以上です。
  134. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま不破君の質疑に対しまして、関連質問として林百郎君がお述べになりました前段の事項、理事会でよく研究いたしまして、結論を出すことにいたします。  なお、続いて証人喚問という要求がございましたが、証人ということになりますかあるいは参考人ということになりますか、これらも含めて、理事会で結論を出すようにしたいと思います。よろしゅうございますか。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 共産党・革新共同としては証人ということを強く要求いたしますが、念のために申し添えておきます。
  136. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 念のために、証人であるか参考人であるかということは、理事会できめることにいたしますから、どうぞ、念のため申し上げますから……。  これにて不破君の質疑は終了いたしました。  午後一時に再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ――――◇―――――    午後一時一分開議
  137. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢野絢也君
  138. 矢野絢也

    矢野委員 私は、公明党を代表いたしまして、物価問題など、国民生活にきわめて重大な関係を持つ問題を中心として質問をいたしたいと思います。  予定いたしました質問に先立ちまして、本日の新聞報道によりますと、東京都衛生局が昨日発表いたしました天然痘の発生の件につきまして、これはきわめて緊急を要する問題でありますので、先に伺いたいと思います。  十七日にインドから帰国いたしました旅行あっせん業者が、二十八日午後、真性天然痘と診断され、病院に隔離収容された。二十九日、東京都の衛生局も天然痘防疫対策本部をつくって、その対策に努力をしておられるわけでありますが、天然痘というのは、御承知のとおりきわめておそろしい病気であります。したがいまして、政府といたしましても、万全の対策が必要であろうかと思いますが、政府の防疫対策がどのようになっておるか、まず伺いたいと思います。
  139. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昨日、町田市の旅行業者本名さんという方が天然痘の疑いがあるということで、荏原病院に隔離をいたしたわけでございます。直ちに検体を厚生省の予防衛生研究所に送りまして検査をいたしましたところ、そのビールスは、間違いなく真性であるということに決定を見たわけでございます。  そこで、きのう荏原病院に隔離いたしますと同時に、直ちに東京都衛生局その他が、全国の、同行者が行っておりました県に全部連絡をとりまして、全国的な防疫体制をしくことにいたしました。同行者が大体十九人でございますが、その方方について、各府県に連絡をとり、今日まですでに全部につきまして把握をいたしたような次第でございます。  そこで、本人と家族は隔離いたしましたが、私ども、一番おそれますのは、二次感染でございます。そこで、二次感染ということになりますと、おそれのありますのは、御家族の方と、当初この方が帰ってこられまして、かぜではないのかというのでお医者さんに行っております。そこでお医者さん、そういうふうなところが二次感染のおそれのある範囲と理解をいたしておりまして、家族は隔離いたしましたが、そういうところには健康監視を厳重に行なう、こういう体制をしいて、二次感染の発生しないようにいたしたいと考えております。  なお、空気伝染等の関係もございますので、種痘の励行を行なうということにいたしてございますが、念のために申し上げておきますが、種痘分は百五十万人分用意しておりますから、必要によってそういうものを使っていくわけでございますが、そういうことがないことを期待しながら、全力を尽くして防疫に当たってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  140. 矢野絢也

    矢野委員 問題は、きわめて緊急を要する問題でございますので、万全の対策をとられることを強く要望いたします。  さて、本論に入りたいと思いますが、総理に伺いたいと思いますけれども、いまの爆発的なインフレ、便乗値上げあるいは品不足、いわば国民全般が社会的なパニック状態におちいっておる。しかし、本会議あるいは本委員会での政府答弁を聞いておりますと、いたずらに抽象的なお答え、弁解じみたお話に終始しておるわけでございまして、国民はそんなことを聞きたいのではありません。ささやかな所得の中で、物価がウナギ登りに上がる、しかもトイレットペーパー、洗剤、その他生活必需品がどんどん小売り店から姿を消していく、こういった中で奥さん方や御主人、つまり庶民は、一体、政治はどうなっておるのだという憤りの気持ちを込めてこの国会を見ておるわけであります。  総理は、たとえば春闘のストの問題につきましても、ストは困るのだ、大幅の賃金引き上げは困るのだなどと言っておられますけれども、労働者の大部分の諸君は、イデオロギーだけでストライキに同調しておるわけではないのです。このようなインフレの中で生活を守らなくちゃならない、しかし政府は、それに対して十分な手を打ってくれないという意味で、生活を守るという立場でそのようなことに同調しておるわけであります。あるいはまた、インフレの最も大きなしわ寄せを受けておるお年寄りとか、あるいは母と子供の家族、あるいは病人、身体障害者、わずかばかりの年金あるいはわずかばかりのたくわえが、インフレによってどんどん値打ちが下がっていく、こういった切実な気持ちを政府はわかっておるのだろうかしらという疑問を国民は持っております。あるいはまた、小売り店の方々もこう言っております。消費者には責められる、しかし品物はやってこない、板ばさみになって、こんな苦しい商売は初めてだと言っております。あるお店のごときは、洗剤を徹夜でビニールの袋に二つ三つに分けて、一人でもたくさんの消費者に買ってもらいたいというような努力もしておるわけであります。  いろいろと申し上げましたけれども、総理は、物価対策は、国民の協力が必要だということを二言目には大きな声でおっしゃるわけでありますけれども、国民に協力を求めるためには、まず政府自身がこのような庶民の気持ちに立って、そして断固たる決意で物価対策をやりますというものがなければ、幾らここで大きな声をお出しになっても、声のボリュームでは国民は納得しないわけであります。  まず、いろいろとお尋ねをする前に、こういった基本的な、政治に対する不信感を解消するために、総理はどんなお考えでいらっしゃるかを伺いたいと思います。
  141. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価問題が当面する最大の重要課題であり、政府の施策の中で物価安定というものが最大のものであるということは、間々申し上げておるとおりでございます。また政府は、公的な立場物価を抑制しなければならない立場にございますから、国民生活安定のために、物価抑制のために最大の努力を傾けているつもりでございます。いろいろ外から見ておられるとなまぬるい面もあると思います。しかし私は、政府の決意は断固たるものでございますし、また、その効果は漸次あらわれてまいるということを確信いたしておるわけでございます。  先ほども、またきのうから申し上げておりますように、洗剤一つとって申し上げましても、これは民間企業という自由主義経済の中で戦後の経済がつくられたものでございますし、現に自由主義体制というものが基盤になっております。ですから、情報不足の問題では政府情報を提供する、そしてなお必要なものに対しては余分に生産をしてもらって国民に迷惑をかけないように、こういう態度をとっているわけです。しかも、それでもなお値上げをして超過利得だと思われるようなものに対しては、与野党を問わず、国会の御意見もしんしゃくしながら、政府もいませっかく勉強中でございますと、こう述べているわけです。  それで、私は、きのうも夜までかかって各省にも調べさせましたが、洗剤の一カ月の使用量というのは百二十五億円であります。だから、ほんとうに洗剤は六%、七%だけよけいあればいいにもかかわらず、一六、七%もよけい増産しておるにもかかわらず、一体なぜ、いままで流通過程がうまくいったものが急にこんなになったのか。そのためには一カ月間、ほんとうに最悪の場合には予備費を支出しても、町村役場でもって一カ月分備えつけてもという決意を披瀝しているわけです。  私も、矢野さん、とにかく与党の総裁でもあるのです。それはずっと選挙でもって国民の支持を受けてきているわけです。毎日毎日、洗剤洗剤、こう言われているが、それは公の立場におる政府の代表者としたらたいへんなことなんです。いいかげんな考えは持っていないですよ。ほんとうに何とかしなければいかぬ、こう思っているのです。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  142. 矢野絢也

    矢野委員 いま、どうすれば国民が政治に対する信頼を回復してくれるか、これをやはり総理として真剣に考え通必要があると思うのです。これは、やはり社会正義が行なわれておらない、あるいは社会的な不公平が横行しておる。それを、むしろ政府は、大企業優先というような政策で追認しているんではないかという、この社会正義、社会的公平ということについて、やはり国民の政治不信の最大の原因があるのではないかと私は思うのです。ですから、いまのような抽象的なお話だけでは、ほんとうの問題解決にはなりません。すべての問題解決は、政府の今日までの失政の謙虚な反省、見直しということから始まらなくてはならぬわけでありまして、そういう意味で、今日までの事態認識についてどういう認識を持っているかということを、私は具体的に申し上げますから、御回答願いたいと思うのです。  とにかくこの物価上昇、爆発的な物価上昇は、石油危機という外的要因によって起こったんだという意味のことを、しばしば政府はいろいろな機会に説明しておられます。しかし、本質はそうではございません。昭和三十年代、池田内閣の所得倍増政策以来と言ったほうが正確かもわかりませんが、わが国の経済には長期的、持続的な物価上昇が定着しておるわけです。構造的に、いわば忍び寄るインフレというものが定着してまいりました。  第二番目に申し上げたいことは、特にここ二年来、主としてあなたが総理に就任されて以来、この忍び寄るインフレというものが、いわばかけ足のインフレに変わってきた、これはもう私が言わなくても、あなたは認めざるを得ないでしょう。なぜこうなったのか、これは外的要因よりも自民党政府経済政策の重大な失敗があったからです。  詳しく申し上げる時間がございませんが、特徴的に申し上げれば、田中内閣は円切り上げ後、その前の佐藤内閣の時代からでもあったかもわかりませんが、経団連あたり、財界あたりが、円切り上げによってえらい不景気が来る、何とかしてもらわなくちゃたいへんだと、盛んに大きな声で言っておりました。それにだまされたのか、悪乗りをしたのかわかりませんが、明らかに景気が一昨年夏、回復の傾向にある、しかも、それ以来急速に景気が回復しつつあるにもかかわらず、そのような経団連の不況説に惑わされて、大型補正予算を内閣発足直後にお組みになりました。さらに、昨年も大型のインフレ予算をお組みになったわけであります。  いま政府は、過剰流動性が物価上昇の原因だということを盛んに言われますけれども、過剰流動性、余っているお金は地からわいたんじゃないのです。自民党政府が、そのような景気回復期にあるにもかかわらず、財界の声に踊らされてこの過剰流動性をばらまいたんじゃありませんか。それをいまごろになって、これを縮めなくてはならぬと言う。まあ、縮めなくてはならぬことは、私も賛成です。総需要抑制は必要でしょう。しかし、その種は政府がまいたということ。しかも、鉄鋼などの不況カルテル、好況になっておるにもかかわらず、不況カルテルをずっと認められました。こんなばかなことはありません。  しかも、総理は「日本列島改造論」という――ずいぶん売れたそうですね、あの本は。あの本によって、一方で大型財政を組んで過剰流動性をつくり出し、一方で、余ったお金をこのようにして使えばもうかりますよということをあの本で教えられたのであります。まことに念の入ったお話です。したがって、お金を持っておる大企業やお金持ちは、あの「日本列島改造論」を読んで、あなたのお話を読んで、間違いなくこれから土地は上がるというわけで土地の買い占めに走ったわけです。したがって、土地の値段が上がり、卸売り物価が、あなたが総理になられてから上がるのは、これはもう当然のことなんです。  一口で言えば、田中内閣になってから財界人や経済人の中で、いわゆるインフレマインド、田中さんが総理をやっておる間はインフレだ、物は間違いなく上がるんだ、この気持ちが定着したんです。買い占めが起こる起こると言いますけれども、将来物が下がることがわかって買い占めするばかはおらないのです。あなたが総理をやっておられる間は間違いなく物が上がる、こう思っておるからみな買い占めをするのです。要するにインフレマインド、先高、品薄に対する一種の確信みたいなものが財界に定着したから、このようなことが起こっておるんですよ。  そして、今回の石油危機で、他国に例を見ないほどのパニック的な状況が起こった。アメリカもECも石油危機でいろいろな混乱が起こりましたけれども、このように連発花火式に石油関連製品が上がり、石油に関係のないものまでもどんどん、どんどん上がる。連発打ち上げ花火です。これは一口で言えば、もちろん石油危機が原因でしょうけれども、国内にそのような高度成長政策によるインフレのガスが充満しておったから、それに石油危機が火をつけた形になった。このインフレのガスをまき散らしたのは、間違なく田中内閣であり、歴代自民党政府です。いわば大企業やお金持ちのインフレ期待、消費者インフレ恐怖心、この両々相まって、一方では買い占めとなり、一方では品物がなくなるからといって品物買いに走らなくちゃならぬ、こういう状況をつくり出しているのです。  詳しく申し上げれば、これは切りがございませんけれども、いわば問題解決のすべての始まりは、今日までの政策の失敗を謙虚に認め、その反省の上に立った新しい政策の展開がなければ、これは幾ら洗剤できのうおそくまでおやりになった――ほんとうに御苦労さんだと言いたいわけですけれども、それだけじゃ政府不信は解消しないということを私は申し上げたいわけでございます。この点についての総理のお考えを聞きたいのです。
  143. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も政府の主管者として、われわれ政府がとっておった政策が完ぺきなものであるということは申し上げません。それはもう神ならぬ身でございますし、そんな、ほんとうに完ぺきなものであり、パーフェクトなものであるとは考えておりません。しかし、自由民主党がとってきた基本的な政策の方向というものに誤りはなかったということだけ、ここで明確に申し上げておきます。  それは、もう申すまでもなく、戦後の日本国民生活の向上やこの繁栄をだれが予想したでありましょうか。これは全国民が認めておることでございます。しかも人類、各国の歴史にないほど短期間において、就職の場を与え、ちゃんと今日になったのです。ですから、少なくとも失業率を先進工業国に比べて見ても、資源を持たない日本が今日を築き得たことは、歴史の上で高く評価される事実である。これは私が得意の数字を述べなくとも、十分おわかりのことでございます。  しかし、いろいろなこの二、三年来の経過を顧みるときに、判断をもう少し早くして、もう少し引き締むべきときに引き締めが行なわれなかったというような具体的な問題の指摘は、謙虚にこれを承ります。しかし、かつて経験をしたことのないような国際物価高、それは時を同じくしてソ連、中国、インドというような、全世界の人口半分の地帯が二年間にわたって降雪量がなくて、世界の食糧があれほど逼迫して何倍かに上がるというようなことを、だれも予測できたわけはありません。しかし、そうならそうでなぜ国内自給率を上げておかなかったか、こういう問題でありますから、そういう面に対する警告や御発言に対しては、謙虚に反省をいたしております。しかし、あの当時は、日米間に締結せられた繊維協定一つとっても、日本の繊維業界は全部将棋倒しになる、中小企業をもっていかんとなす、こういうことで、政府が当時出した税制、財政金融政策に対して、これをもって足りるかという院の内外の声もあったわけであります。しかし、そういう面にこたえてきたものが、中小企業、零細企業というものの倒産を防ぎ、国際競争力を培養することには役に立ったかもしらぬが、ちょうど時あたかも同じく行なわれたドルの切り下げという状態で国内に円貨があふれた、こういうものとちょうどダブルになって、複合して、ちょうど公害の複合公害なるものでありますが、そういうような状態で一つの問題に速度を増したというような指摘に対しては、これは私も謙虚に認めます。私自身も、あのころは、実際において国際波動に対応する対外経済調整法の必要も国会で申し上げたわけでありますし、それだけではなく、少なくとも企業が借り入れ金によってまかなっておる、戦前六一%のn己資本比率が一七%を割るような段階になると、必ず国際経済の波動に対応できない事態が来るからということで、大蔵省に証券局をつくり、ほんとうに自己資本比率を上げることによってでなければ健全な長期的な経済成長というものはできない、借り入れ金によって設備投資をなすべきでないということも述べたわけでありますが、その当時の国民の理解を得ることはできなかったということでございます。  私は、しかし、自分のやった正しさは正しいと、どこまででも主張いたしますけれども、私が機を失したり、とにかく、結果的に見て石油問題が起き、あらゆる問題が起こったことを予知できなかったのも、外交の脆弱であるとか、もっと手を広げるべきであったとか、こういう問題でいろんなことから御指摘を受けることに対しては、甘んじて私は御発言を拝承いたします。いたしますが、しかし日本の状態は、物価が抑制できない状態ではないということを考えております。物価抑制というものは、ほかの国はむずかしいと思いますよ。ほかの国は国民総生産の中に占める、どうしても縮めることのできない軍事費、国防生産というものがありますが、日本の総生産の中に占める軍事生産の面を見れば、比ぶべくもないほどでございますから、私は、いまの物価現象は、ほんとうにある短い間の現象であって、国民の支持と協力が得られるならば早期に物価を抑制できる、そのためにあえて総需要の抑制という基本的姿勢を打ち出して国民の協力を得ておるわけであります。  もう一点だけ、ちょっと申し上げますが、いつものことですから、もう言わずもがなでございますが、御質問に出るので……。何か、時あたかもというまくらでもつけばいいのですが、まくらもっかないで、「列島改造論」を出したからと、こう言いますけれども、「列島改造論」が通過をして、国土総合開発法が成立をして実行に移るほど物価は安定し、下がってくるということになると、これはもう、私はそうなると思っているのです。そういうこともございまして、いまの状況では、政府責任を果たしてまいります。ただ、国民の支持と理解が得られない限り、その効果というものはあげがたいものでございますので、あえて事実を訴えて、国民の協力を求めておるわけでございます。
  144. 矢野絢也

    矢野委員 総理、相変わらずですな。失業率が低いんだ、失業がないんだ、盛んにそういったことを言われて、今日まだ自民党の政策に誤りがなかったんだと言われますけれども……(田中内閣総理大臣「大筋において」と呼ぶ)大筋においてですか。大筋において誤っておるのです。たとえば、世界に冠たると言うと、ことばがおかしいですけれども、世界最大消費者物価値上がり率、卸売り物価値上がり率、世界に有名なGNP大国にしてお粗末な福祉、生活関連公共事業、社会福祉施設、こういった問題を、あなた方が積極的に取り上げてこなかったから政治不信があるんだ、社会的公正や社会的平等の社会正義の回復、そういった点で国民が納得することをやってこなかったから今日のパニック状態があるんです、こういったことを、私はるるこれから申し上げたいわけですけれども、抽象論はこれからはしたくない。具体論でお尋ねをしていきたいと思うのです。その上で再び、なぜインフレが起こったんだ、どうすれば解決できるんだという本論にもう一度戻りたいと思います。  まず、最初に伺いたいことは、流通部門における大資本の横暴なやり方ということを具体的に明らかにしていきたいと思います。  一昨年来から公明党が、木材、セメントその他生活必需品を盛んに買い占めて物の値段をあふった大商社の悪らつな手口については、その当時国民の痛烈な批判がありました。本院にも大商社の社長を参考人として呼んで質問をするということもございました。あなたもインドネシアやタイへ行かれてデモで歓迎をされた。あのように反日感情があるのは、日本の青少年がちょっとわかっておらぬからだということを盛んに言われますけれども、一番の原因は、日本の大企業が海外においてお金にまかせて資源を買いあさる、しかも、その利益というものを全然現地に残さないという無軌道な、乱脈きわまる日本企業の海外進出が反日感情の大きな原因になったことは、これは明らかですよ。  そこで、海外での日本の顔ともいうべきものが日本の大商社です、これははっきり言いまして。あるいはまた、資源のない日本が外国から資源を確保しなければならぬという意味においても、商社の機能というものは、日本にとっては非常に大事なものがあります。しかし、いまの商社がその役割りを正しく果たしておるか。私は、そこにおる職員、社員の諸君は、まじめな諸君だろうとは思いますが、商社のメカニズムから出てくる結果というものは、いま私が申し上げた、国民の期待する正しい方向でのやり方ではないと思います。  そこで、公取委員長にお尋ねをしたいわけでありますが、せんだって「総合商社に関する調査報告」というものを発表されたわけでありますが、その概略について簡潔に御報告を願いたいと思います。特に、六大商社の売り上げ高がどうなっておるか。卸売り業界、全法人の総売り上げ高の何%に六大商社がなっておるか。さらにしぼって、上場卸売り業八十八社に対して、この六社はどういう独占度を持っておるか。日本の輸入輸出の何%をこの六大商社が握っておるか。あるいは、垂直的系列化ということばがありましたけれども、この実態はどうなっておるのかということについて御説明願いたいと思います。
  145. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 総合商社の調査報告は、非常に詳しく述べますと時間を食いますので、いま御質問のとおり簡潔に申し上げます。  調査いたしましたのは大手六社、三菱商事、三井物産、丸紅、伊藤忠、住友商事、日商岩井でございます。これらは、次の四社のグループと比較いたしますと、平均いたしまして大体三倍の規模になります、売り上げでございますが。そういう点からいいましてちょっと格差がございますので、六社を選んで調査いたしました。目的は、あくまでこれらの六社の実態をなるべく浮き彫りにするということでございますが、非常にこまかい点につきますと、これはもう時間の制限や労力の問題がありまして、十分至らぬ点があります。その点は認めます。しかし、いまお話のありました六社の売り上げ高は、四十七年度一年間をとりますと二十一兆円でございます。これは法人企業統計によりますところの全法人十六万六千社、これは卸売り業でございますから大体法人が多いと思いますが、それの中に占めるシェアは一九・六%でございますが、四年前には二八・四%でございましたから、かなりふえております。と申しますのは、この二十一兆円は四年間に二倍にふえております。そういうのが実情でございまして、輸出に対する扱い高は約四〇%、輸入の扱い高は全体の輸入の五〇%でございますから、六社だけで五〇%ございます。取り扱い率の高いものには、重要な工業原材料等が多うございます。
  146. 矢野絢也

    矢野委員 上場卸売り業に対する……。
  147. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 上場卸売り業八十八社に対しまして、この中に六社は含まれますが、それに対しては七〇%のシェアを占めておりますから、圧倒的に大きい、こう申し上げてよろしいと思います。  そのほかに、商社の金融的な機能について着目しましたが、非常にこれは借金が多うございます。自己資金は三・四%にすぎませんで、一般の日本の企業が低いとされておりましても、大体十数%になっているのが平均でございますが、三・四というのははなはだしく低いということは、他人資本にたよっている、金融資本にたよる部分が圧倒的に多いということでございます。つまり、わかりやすく言えば、銀行の金を使って商売しておる、こう言ってもさしつかえないでしょう。  その使用総資本というものは九兆六千五百億円でございますが、資本金はわずか千四百億円で、資本金を含めた自己資本が三千三百億円でございますから、これで、いま申しました三・四%の自己資本しかならない。そして、当然でございますが、これは商社金融とか、商社というものは手形の形やそのほかの形で、売り掛けの形で与信面がございます。つまり信用を供与するわけでございますが、この信用の供与額が七兆四千億円、おおむね一年間売り上げ高の三分の一強に当たる分が与信面としてできておりまして、この関係もございまして、借り入れ金を、ストレートな借り入れ金とそれから手形割引の形を加えまして四兆六千六百億円という数字になっておりまして、このうち都市銀行からは、その五割強を借りているというのが実態でございます。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  なお、私どもの調査によりましてこれはもうすでに明らかになっておりますが、四十六年、七年の金融超緩和の時期におきまして余裕資金が発生した。この背景には、やはり金融機関が返済金を受け取らぬというふうな妙なこともございました。当時の政策でございますから、政策から発生したものと思いますが、ある程度の行き過ぎがございました。その結果、この場合に有価証券の投資額は非常に大きくふえておりまして、有価証券全投資額は八千五百億円から、一年間に約四千億円増加して一兆二千四百億円になっております。土地は、自分の所有の土地勘定と商品勘定を合わせまして、千七百億円から二千六百億円と、約九百億円増加しております。これらは、すべて余裕資金の発生におもに原因があると考えてよろしいかと思います。  なお、その六社が株式保有の点に問題があるというのが、私どもの今回調査最大の眼目でございまして、やはり他社の株式をあまりに多く保有しているじゃないか。自己資金をはるかにこえるような株式を保有しているわけでございます。その額を申しますと、株式の所有は、延べた会社の数を申しますと、国内だけで五千三百九十社の株を六社が持っておるのです。しかし、そのうちダブりを全部消したといたしまして、実際の会社数が四千百四社でございまして、上場会社が、そのうち実際数で九百二十四社に上ります。そのほかとしましては八千億円でございます。  なお、これは昨年三月末現在でございますが、その後の半年間においてさらに約一割、八百億円の増加が見られます。ですから、金融の変化にかかわらず、さらに株式保有はふえておったということがあげられますが、これらはすべて系列支配といいますか、系列を支配するものと、それからつき合い融資といいますか、つき合いの保有ですね、相互の株式持ち合い等によってそのグループ化を進めておる。この六つのものについては、特に都市銀行との関係が非常に深く認められまして、それぞれが――そのうちには三つの旧財閥系が含まれておりますが、旧財閥系でなかった三社につきましても、戦後はそういう旧財閥糸を見習って、これに追いつき、追い越せというふうな企業集団の強化をはかっている節が見られまして、その中核としては商社も相当な役割りを買っておる。また、都市銀行の主力銀行がその中核の役割りを買っているのではないか。そしておのおの、旧財閥そのものではありませんけれども、それに近い形の集団化を強化しようというふうな動きがございます。  そういうのが調査のあらましでございます。
  148. 矢野絢也

    矢野委員 いまのお話、たいへん具体的な御報告があったわけですけれども、このような圧倒的な資金力あるいは幅広い株式保有、しかも海外における原料仕入れから国内における製造販売に至るまでの垂直的な独占的系列化を推し進めておるということが、いまのお話で明らかになったかと思います。  そこで、このようなばく大な資金を背景にして、国内のそれ以下の段階における中小の卸売り業者あるいは製造業者に対して、価格のつり上げとか、あるいはまた品物の流通の操作、こういったことが行なわれておる。つまり買い占めですね。これは昨年たいへんな問題になったわけです。私たちがあらゆる角度からこの商社の実態を総点検いたしまして分析をいたしました。このような反国民的な価格のつり上げ、これでもうけ過ぎたお金を、利益を隠すのに実は困っておるわけであります。べらぼうに、そのような力を背景にしてもうける、だけもうけた。しかも、あんまりもうかったことを、公表される決算に出すのはちょっとぐあいが悪い。国民の批判もある。利益を隠すのにだいぶ苦労していらっしゃる。  そこで、この価格のつり上げのからくり、いろいろなからくりがあるようでございますけれども、私が本日ここで問題にしたいというからくりは、いま公取委員長からもお話になった、そのような商社の国内業者に対する圧倒的な発言力、影響力、独占力、これを背景にして、一つは、それでもうけたお金を海外に分散しておるということ。私は、発展途上国における日本の企業がその地域の商いでもうけたお金を現地に残す、つまりその国の経済発展に貢献するというやり方は、これはぜひやるべきだと思います。当然だと思う。ところが、アメリカとかドイツとかそのような先進国のわが国商社の海外法人、現地法人、これを隠れみのにし、安い仕入れ原価で現地で買ったものを高い仕入れ値段日本の水ぎわで仕切っておる。簡単に言えば、現地で五万円だ、日本国内へ持ってくれば十五万円で売れる。そのまま五万円で日本へ持ってくると、五万円の十五万円ですから十万円ももうかる。これはもうけ過ぎだからぐあいが悪いというわけで、五万円で仕入れたものを、日本の商社の海外法人が五万円の利益をそこで取って、そこから十万円で日本へ送るわけであります。そうして日本の商社は十万円で受けとめて、そして十五万円で売る。だからこれは、日本における商社は五万円のもうけということになるわけです。しかし、この利益は十万円なんです。海外法人というのは、いわば支店みたいなものなんです。そこに五万円の利益を保留しておるという、一口で言えば利益の分散、これを海外法人を利用して行なっておる。さらにまた、海外法人を利用して利益の隠匿を行なっておる。これはあとから具体的に申し上げたいと思います。  日本の国税当局はかなり優秀だといわれておるけれども、-海外法人まではなかなか手が届かない。海外法人が木材を仕入れた、その在庫電を適当に調整する、かかってもおらぬ経費をかかったようにする、そこまでは日本の国税当局はキャッチできないというようなことを利用し、あるいはまた、最近の経理操作がコンピューターであるというようなことを利用して、要するに海外法人を利用した利益の隠匿を行なっておる。あるいはまた、取り扱い高を操作いたしまして、利益率を実際以上に下げておるという例がたくさんあります。  これは例を申し上げますと、昨年の春でしたか、六大商社の社長が国会へ呼ばれた。そのときに、そのときの木材の利益率、マージン率は一二%でした。六大商社でたったの四カ月間で百四十九億円を木材だけでもうけた。これはべらぼう過ぎるじゃないか。扱い高に対比しますと、これは一二%の利益率になっておる。普通は二%か三%の利益率らしい。この一二%というのはむちゃくちゃやないかという野党の質問に対して、六大商社の代表は、確かに一二%、このパーセンテージがあまり続くということは不適切だと思いますというような言い方で、この一二%は暴利であることを認められました。  確かにこの一二%はむちゃくちゃです。しかし、この一二%は具体的な例で申し上げると、たとえば、アメリカから一億の木材を日本へ持ってきて東京の本社が受け入れた。これを日本でたとえば一億二千万円で売る。一億に対して二千万の利益ですから、利益率は二〇%です。しかし、そういうやり方をしていない。東京で受け入れたものをそのまま大阪本社に売る。一億の商いです。大阪から福岡へ売る、福岡でお客さんに売る。そうなりますと、実際は一億で利益は二千万でありますけれども、この本支店間の扱い高を全部取引高にしております。したがって、三億の取引に対して二千万という利益、これは七%足らずの利益率になって表面上は出てくるわけであります。何でこんな本支店間の扱いを取り扱い高にするんだ。これはまた商社の悲しい宿命みたいなのがありまして、何とかビッグスリーといわれたい、六大商社といわれたい、そのためには取り扱いがふえなくちゃならぬという要素で水増しのそういうことをやっているわけです。あほみたいな話です、これは。しかし、その結果、どういうことになるかといえば、いま私が昨年の物特委のことを申し上げた、一二%の利益はべらぼう過ぎますとお認めになったこの一二%自体が、そういうからくりによって下げられた利益率だということです。おわかりですね。一億の扱いに対して二千万もうかれば二〇%なんです、ほんとうは。しかし、この取り扱い高を本支店間を利用してふやすことによってパーセンテージが下がる。七%になります。一億対二千万が三億対二千万になるわけです。という形で下げられた一二%であるということ。しかも、さらにそれが海外法人を利用して、先ほどの例でいけば五万が十五万になっております。その五万の分は海外へ取り除いて、残りの五万で計算したのが一二%だということです。しかも利益を隠匿した上での一二%、ほんとうは二〇%、三〇%になっておる。もっとなっておる。それを、そのようなからくりを利用して一二%の利益率を持ってきた。しかも、それが不当なものでございますと、社長みずからは認めているのです。というこのからくり、こういうものに、私たちはもっと真剣な立場でメスを加えなくちゃならないと思うわけであります。  こういう大商社の圧倒的な独占的、系列的な力を利用した経理操作、価格操作、利益操作ということについて、私は具体的に御質問をしていきたいと思います。  国税庁長官にお尋ねをしたいわけでございますが、海外の現地法人を隠れみのにした、いま申し上げたとおりですが、原価に上のせをして高い商品を国内に持ち込む、そうして消費者に高く売りつけた利益を隠す、で、取り扱い高を水増しをしてパーセンテージを下げる、こういったことはいま申し上げたとおりでありますけれども、このような海外法人を利用した脱税が盛んに行なわれておる。これは一昨年の国税庁の発表によりましてもそのことが出ております。昨年も出ております。  長官に伺いますけれども、海外法人を利用した脱税、件数と金額、この三年間について御報告を願いたいと思います。
  149. 安川七郎

    ○安川政府委員 お答え申し上げます。  資本金五千万円以上のいわゆる調査課所管法人の海外取引を利用いたしました大口の脱漏所得の状況につきましては、四十五年七月から四十八年六月までの三年間に七十八件、脱漏所得の金額は百二十七億八千九百万円を把握しております。
  150. 矢野絢也

    矢野委員 私は、脱税問題をこれから具体的に取り上げて、その手口を通じて、どのように利益操作、価格操作が行なわれておるかを明らかにしていきたい、こういう意味で、つまり物価に関連があるという意味で脱税問題を伺っておるわけであります。このことをまず明らかにしておきたい。  それで長官、当方の調査によりますと、某大手商社二社の脱税事犯について、国税当局は四十八年五月ごろあるいは四十七年五月ごろ、約二十五億円及び十億円の不正所得につき更正決定、つまり脱税の追徴を課した事実があると私たちは承知をしておりますが、これはまだ公表されておらないようでありますけれども、この事実がありますか。
  151. 安川七郎

    ○安川政府委員 御指摘の点につきましては、私ども守秘義務がございまして、調査結果を個別の法人名をあげましてその内容を明らかにすることはできないのでございますが、私の記憶によりますと、おおむねその時期にそのような金額の脱漏所得につきまして更正をいたしております。
  152. 矢野絢也

    矢野委員 国税当局として、具体的な名前を言うことができないというえらい念の入ったおことばであり、私もまだ具体的に申し上げているわけじゃない。しかし、いずれにしても四十八年の夏、四十七年の夏に二十五億と十億というまことに巨額の脱税事犯を取り扱ったことがあるとお答えになったと私は理解しております。  長官にさらに伺いますけれども、この某大商社二社ですね。この脱税のテクニックでありますけれども、私が先ほどるる申し上げたとおり、海外法人を隠れみのとして、仕入れ原価のかさ上げとか架空経費の計上、こういった経理のからくりを通じて価格操作や利益操作を行なった。つまり、この脱税は、海外法人を隠れみのとした価格操作、利益操作をやったと私は承知しておりますが、この某二大商社についてお答えをいただきたい。
  153. 安川七郎

    ○安川政府委員 御指摘の脱漏につきましては、海外法人を利用したものが大きいというように聞いております。
  154. 矢野絢也

    矢野委員 このような巨大な、ばく大な脱税それ自体も、これはもう重大な社会的な犯罪です。勤労者はもうお給料をもらう前から源泉で取られているわけです。あるいはまた、中小企業の方は、このようなきびしい時代にもうからない。もうからない中でもまたきびしく取られております。これは私は日本の税制に非常に重大な問題があると思いますけれども、この税について国民が思っていることは、もちろん安くしてもらいたい、これは当然でしょうけれども、それとともに公正であってもらいたいということだと私は思います。だのに、あれほど痛烈な社会批判を受けた大商社が、二十五億とか十億の脱税をしている。とんでもないことだと私は思う。(発言するものあり)しかもそれが、いま不規則発言がありましたけれども、価格操作のからくりにつながっておる。しかも、この隠れみのに使われておる海外漢人は、総理が海外に行ったときに、エコノミックアニマルだ何だかんだと悪口を言われる大きな原因になっている海外法人、いままさにこれは、海外法人のあり方というのは重要な問題になっておる。そういうものを隠れみのにしてやっている。私は許しがたいことだと思っておる。  そこで、その某大商社二社ということでありますけれども、なかなか長官言いにくそうな顔をしておられますから、こちらから申しましょう。これは業界で第七番目といわれておるトーメン。これが、主力商品の食料や繊維、木材などを架空購入したり、原価に上のせをしたり、そういう形で、安いものをいかにも高い形で国内に持ち込んでいる。そういうことであげた利益をアメリカやドイツなどの現地法人に隠して脱税をやった。昨年の夏までに当大阪の国税局で、法人税や重加賀税など約二十数億円を追徴されておる。まあ二十五億ですね。こういう悪質な事件があります。あとで確認を長官にしたいと思いますけれども、利のほうからこの手口を申し上げたい。  国税当局は、大阪本社や東京本社の海外経理や営業、機械、こういった立ち入り検査をされましたね。そして海外経理部の幹部のまる秘事務引受継ぎ書、機密費の資金受け渡し経理を具体的に書いたメモを発見された。なかなかよくやります、国税庁は。そして、本社の裏帳簿、ドイツやパキスタン、アメリカ、豪州などの世界各地の決算表、本支店貸借勘定の明細表、資金手当て表なりを任意提出させました。そうして徴税時効三年分を除外しまして約三十億円の申告漏れ、このうちの二十六億円が課税対象となる不正所得ということにこれはもう確定をしたわけですね、昨年の百でございますか。この内訳は、決算期別に見ますと、生活関連物資が火を吹いた、暴騰したそういう時期になるほど、つまり近くなるほどこの不正所得がふえているわけです。たとえば、四十七年の九月期には約十一億円の不正所得を海外にプールしておる。これらの不正所得のほとんどは売り上げ、仕入れ利益、営業損金、一般管理費、社内支払い利息、原価諸掛かり、海外援助費というような名目で帳簿処理されておる。しかも、架空の伝票操作のために、部内の関係者がわかる暗号を伝票のすみに印刷した。これは明らかに意図的ですよ。しかも、外人サインを偽造した領収書をつくっておる。取引先の白紙タイプ用紙を持ってきて偽造契約書をつくっておる。なかなか手が込んでおるわけです。それを全部国税庁は調べられました。  この利益プールの方法というものは、国内海外経理部、国内、つまり日本の本社の海外経理部や営業部へ別口勘定、つまり日本へ残す方法、海外現地法人にそのまま残すという二つの方法がある。国内における利益金プールで最もよく使われた手口は米国トーメンとの架空取引、つまり、米国トーメンから仕入れたように装つて架空経費を支払ったり、架空の国際電報料を送金したり、いろいろのやり方で、伝票だけは両社間で取りかわして、現金は国内にストック。伝票だけは動くけれども、お金は実際行かない。国内にストックする。十三億円の裏金をつくられた。十三万円の裏金とは違うんです。つけかえ伝票、ナンバー何々のCと書いてある。不正暗号、ちゃんとついてある。また、ドイツ・トーメンからの受け入れ利益、これを帳簿に記載しない。同社の事務所経費がかかってもおらないのにかかっているように架空計上して、約三億円、ブラジル・トーメンとの関係も、援助金の名目で伝票だけを送って約三億、こういう形で、日本における本社にお金をプールしておく。  海外の法人にプールをする方法は、この場合も一番多かったのが米国のトーメン。にせの領収書や伝票をせっせとアメリカから国内本社に送って、国内の資金プールに協力するかたわら、独自に繊維製品などの売り値を低く伝票操作をしたり、食料品などの売り値を上のせする、こういうことで十数億円足らずを海外法人、アメリカ・トーメンとして隠匿した。これはBマークという伝票がついておる。ドイツも同じようなやり方で、一億円足らずを別の勘定に入れました。  申し上げるとこれは切りがありませんから、このくらいにしておきますけれども、私も一党の代表としてここで質問する以上は、事実でないことは申し上げません。自信を持って事実を申し上げておるわけでありますけれども、長官、どうですか。いま申し上げたこと、私の言ったこと、間違っておれば間違っておると、ひとつ御指摘を願いたいのです。
  155. 安川七郎

    ○安川政府委員 先ほど申し上げましたとおり、私ども法人税法で、調査の内容につきましては守秘義務がございますほか、これを結果を公開いたしますと、将来の税務調査に非常な支障がございますので、非常にこまかい具体的な内容はごかんべんをいただきたい。全体といたしまして、細部は別にいたしまして、方法その他おおむねそのような脱漏が行なわれたように記憶いたしております。
  156. 矢野絢也

    矢野委員 法律的な制約があるということで、奥歯にもののはさまった言い方でしたけれども、方法その他については、こちらの言ったとおりだという御答弁でありますから、残りの一社を先にやってしまいたいと思う。  これは、モチ米の買い占めで痛烈な世論の批判を受けました丸紅。三菱商事、三井物産とこの丸紅はスリーMと呼ばれておるわけでありまして、日本の大商社の代表的な存在です。この丸紅が約十億円を脱税しておる。丸紅米国本社など海外現地法人にプールしておる。そして大阪国税局の摘発を受けられたという事実があります。四十三年の十月から四十六年九月までの三カ年間、六期にわたる決算で約十億円余りの利益を不正手段で浮かして、海外プール、国内の機密費に使っている。この経理操作にあたりましては、国税当局に実態をつかまれなくても済むこの海外現地法人に目をつけて、丸紅米国会社との架空取引をでっち上げた。本社からアメリカへ送金するマージンの一部を水増しをして、上積み分を現地にたくわえる。これら裏利益の処理は、本社経理担当の幹部と丸紅米国の経理担当者の綿密な打ち合わせ、一般職員は知らない、秘密裏に行なわれている。裏口勘定に組み入れられたこの三カ年の現地プール資金は、計約五百万ドル、十八億円といわれております。そしてアメリカ当局の摘発、つまりアメリカだってちゃんと税金を取るわけでありますから、海外法人に税の調査をする。そういうのが近づいてまいりますと、しかも決算期が迫ると、そのお金を急遽ヨーロッパへ移すというようなことをやっているわけであります。  また、現地法人と国内の本社との立てかえ払いというシステムを利用して、丸紅米国が支払うべき金額をこの本社で立てかえ支出したように擬装する。本社の経理部門がかってに架空の支払い伝票を作成する、国内の機密費をつくる。こういうようなことをして、その結果、十八億でありましたけれども、部外借り入れ金というのがありまして、そういう金利を裏で払っておったというようなことで、この十八億円が不正所得が十億円ということになりまして、十億円近い脱税を、追徴金を払う、こういうことなんです。  私は何べんも言いますけれども、別にトーメンや丸紅にうらみがあるわけではございません。そこにいらっしゃる職員の方が、ほんとうに資源のない日本を何とかしなくちゃならぬということでがんばっていらっしゃるわけであります。しかし、その商社の持つメカニズムというものが、このような海外法人を利用した、ある面では利益の分散、ある面では利益の隠匿という形で行なわれている。その結果、かさ上げされた仕入れ値というもの、それが消費者にツケとなって回っているわけであります。国税当局に詳しくこの分散と隠匿、たとえば分散であっても、たとえばアメリカの海外法人が、最初に申し上げた五万円の原価、日本国であれば十五万円で売れるという場合、その場合、アメリカの海外法人が五万円も利益をとるのはおかしいじゃないかというようなことで、日本の本社の利益は五万円じゃない、八万円くらいあるんだというような否認というんですかね、そういうことで利益の分散も具体的に分析をしておられるわけでありまして、いずれにしても、私は、日本の税法あるいは徴収のやり方などについて、国税当局や税務署の諸君については私なりの意見はあります。しかし、これはほんとうにようやったと思いますよ。公取委のほうからも報告がありましたけれども、何だかたよりない分析しかまだ公取委ではできておらない、一生懸命やっておられるということは認めますけれども。しかし、日本の国税庁や税務署の諸君は、この企業防衛の厚い壁をぶち破って、そして海外にまで行ってこういう不正を摘発された。私は税法のあり方には意見があるけれども、この件に関してはまことにみごとなものだと思います。  さてそこで、先ほど何だかわかったようなわからぬようなことを長官言っておられましたけれども、くどいようですけれども、もう一度御確認を願いたい。トーメン、丸紅、この二社の脱税について、合うていると言えとは言いません。なかなか言いにくいでしょう。間違っているところがあったら間違っていると言ってもらいたいということを言っているのですから、さらにもう一ぺん念のために言いますけれども、商社の脱税をすべてそちらから報告せよと言っているわけではない。私のほうから具体的に申し上げて確認を求めているだけなんです。ですから法人税法第百六十三条ですか、秘密を守る義務があるとおっしゃいますけれども、何もかもべらべらしゃべれと言っているわけじゃない。こちらのことをイエスかノーか言ってくれ、これくらいのことは言えるでしょう。
  157. 安川七郎

    ○安川政府委員 先ほど再三申し上げましたとおり、私どもは法人税法等によりまして、調査の内容を公表できないことに縛られております。御質問の御趣旨が正確に合っておるかどうか、先ほど数字を伺っておりまして、こまかい数字につきましては、私どものほうの調査結果と若干入り組みがあるようでございますけれども、全体といたしまして、御指摘の事実が真実であるかどうか、あるいは間違っているかどうかということでございますけれども、先ほど某々二社の脱漏所得につきましてお答え申し上げたとおりでございますので、どうぞその間は御推案を願いたいと思います。(「はっきり言え」と呼ぶ者あり)先ほどの某某二社についての脱漏所得につきましてお答え申し上げましたとおりでございますので、その間を御了案願いたいと存じます。(「了案とはどういう意味だ」と呼ぶ者あり)
  158. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私も、いま矢野書記長と国税庁長官のやりとりを伺っておったのですが、まあ、国税庁長官としては精一ぱいのお答えをした、かように存じます。私の頭の中でも大体整理できたような気持ちがするのでございますが、もう矢野書記長におかれましても、おそらくあの応答を通じて御了解ができたんじゃないか、かように私はお察し申し上げますが、どうか御了承願います。
  159. 矢野絢也

    矢野委員 本来、これは奇妙なことでして、国税当局が大企業の企業防衛の壁をぶち破って、よくやったという性質のお話を私は申し上げているわけなんでして、ですから、国税当局を苦しめる気持ちはないのです、はっきり言いまして。問題は、これが価格操作とか利益操作に重大な関連を持っておる。いま国会に与えられた課題は、この物価をどうするかという問題でございますから、私はくどいくらいお尋ねをしておるわけでございまして、冒頭に某商社二社の四十七年、四十八年、十億、二十五億ということで御確認をいただいて、まあ御了案というのはおそらく日本語で言うと御了察せよということだろう、ちょっと言い誤りをされたのだろうと私は思いますけれども、これは委員長にお願いするとして、この資料は、法人税法の関係で簡単に公開はできない性質のものだろうと思います。ですから、本予算委員会の秘密会議にこの資料を後日提出願う。これは後日お取り扱いを願いたいと思います。
  160. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 先ほど、国税庁長官また大蔵大臣は、当局から名前は言えないが、まあ矢野君の質問はそのとおりであろうということで御了察を願いますということであろうと思いますが、それで御了承お願いいたします。
  161. 矢野絢也

    矢野委員 後ほど、まだもう一社ございますので、それが済んでからもう一ぺんお話ししたいと思います。  一昨年の木材の暴騰、一昨年来から異常な物価騰貴が始まったわけですけれども、その引き金のきっかけになったのが一昨年の木材の暴騰であったわけです。  木材市況を申し上げますと、木材市況は、一年半前まではほぼ安定しておりました。これは通産大臣にあとで御確認を願いたいわけですけれども……。四十七年夏ごろからじりじりと上がり始めまして、一昨年の十一月ごろから急騰しまして、十二月は山火事相場といわれました。一立方メートルのヒノキが六万円であったのが十六万円に上がった。米材のツガが二万四千円だったのが五万三千円。他の木材も二倍、三倍ということになった。昨年の二月、ベニヤがピークの値段になりまして、このような木材の暴騰に伴つてパルプも上がりました。紙パニックの大きな原因になっておるわけですね。こんな大暴騰は何十年も見たことがないと木材関係者は言っているわけですけれども、ようやく昨年の夏ごろから落ちついた。しかも、それは少しの間で、秋ごろから石油不足ということで外材の輸入が減ると、そういう大商社がやはり宣伝をいたしました。昨年の秋から年末にかけて木材はまた大暴騰しているわけであります。  そこで、この木材でもうけた六大商社の利益ですけれども、四十七年の十月から四十八年の一月のこの四カ月間木材で得た売却益は百四十九億、売り上げ高は千二百二十四億である。その前年の四十六年の下期、これは六カ月です、いま申し上げた百四十九億は四カ月ですけれども。その前の六カ月は四十四億です。売り上げが千二百八十二億。ですから売り上げはそう変わってないわけですね。しかし、その前はたったの――たったじゃないけれども四十四億です。これはばく大です。そのあとは百四十九億というようなことになって、べらぼうな大商社のもうけ。これは正式に表面に出ているわけですね。二カ月も期間が短い四カ月であるのに、利益は前期の六カ月に比べて三・四倍というようなむちゃくちゃなことになっております。  しかも、これがなぜむちゃくちゃであるかということを御参考に申し上げますと、この六大商社が四十七年下期に、羊毛、毛糸、綿花、綿糸、生糸、大豆、この六品目でもうけたのは、六カ月間で三十五億です。この六品目で三十五億、木材だけで百四十九億、こういうことになっておるわけです。この百四十九億のうち日商岩井が五十六億もうけている。丸紅が三十二億五千万、伊藤忠が二十二億、三井物産が十五億、三菱商事が十二億、住友商事が十一億五千万、百四十九億ということになっているわけです。  通産大臣に伺いますけれども、この木材の市況、べらぼうな暴騰であった。また六大商社がべらぼうにもうけた。その内訳はいま申し上げたとおりでありますけれども、御確認を願いたいと思います。
  162. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 数字は私まだ知悉しておりません。しかし、昨年の国会におきましてそれらの点はあからさまにされまして、矢野先生がおっしゃることでございますから、たぶん間違いないのではないかと私は思います。
  163. 矢野絢也

    矢野委員 万事そういう調子で政策のほうも転換していただけると、非常にいい政治になると思うのですけれども、ほんとうのことを言いまして。  そこで、先ほども申し上げましたけれども、この百四十九億というのは売り上げに対して一二%になっているわけですね。これがべらぼうだということは、あのときに日商岩井の辻社長が、こういう利益がいつまでも続くということは適正でないと思いますという言い方で、社会党の松浦委員でございましたかの御質問に対してお答えになっているわけです。ところが、日本の木材需要の中で、外材、外国から持ってくる材木の割合は年々増大しておりまして、四十七年には総量九千百五十八万立方メートルのうち外材が五三%というように、初めて四十七年に国産材を上回ったという事情もございます。こういうふうに外材への依存度がますます高まってきておるということ、しかも、公取委員長からも御報告がありましたとおり、圧倒的な独占的系列の力を持っておるということ、この二つ、そしてトーメンと丸紅の項で申し上げたとおり、利益の分散、利益の隠匿という操作がこの間行なわれておって、その結果一二%になっておる。しかも、これがもうけ過ぎでございましたと言っておられるというわけですね。ですから、いかに材木というものが国民生活に甚大な被害を与えたか、その元凶は商社であるということが御理解いただけると思うわけでありますけれども、この木材の輸入にからみまして、私どもが調査いたしました情報によりますと、いま国税当局は日商岩井の東京本社木材・物資総本部の木材第一部を主体にした脱税調査をやっておられると聞いておりますが、その点はどうですか。
  164. 安川七郎

    ○安川政府委員 ただいま調査中でございまして、まだ実績は正確にまとまっておりません。(矢野委員調査しておられることは事実ですね。頭下げたんじゃわからないのです」と呼ぶ)調査中でございます。
  165. 矢野絢也

    矢野委員 まあ、調査しておられるということでありますから、しかも調査中だからものを言えないということで、先手を打っていらっしゃいますから……。ただ、私たちがなぜこれに疑問を持ちましたかといいますと、通産省に提出した生活関連物資の期別売却益、六大商社が出したその中では五十九億というようなべらぼうな利益を日商があげておる。ところが、これは中間のデータでありましたけれども、この期の決算報告で一番であったはずの日商岩井が、木材部門の経常利益が二十八億、業界六位に数字の上ではとどまっているわけですね。そこで、非常にこれはふしぎじゃないかということでいろいろ聞きますと、うまく利益を隠したというのが業界のもっぱらのうわさである。当然国税当局もそういう情報に基づいていま捜査をやっていらっしゃる、こういうことだと思います。  そこで、私どもの調査によりますと、昨年十月から国税当局は調査をしておられまして、一応年末までのお調べによって、不正所得額が十億円にのぼっておる、こういう推定になっておるようでございます。これからさらにお調べになるわけですからこれはふえるでしょう。このやり方は、もうくどくなりますから言いませんけれども、トーメンとか丸紅と全く同じであります。  ただここで、私は非常に問題だと思いますことは、この海外法人がある、しかもその前に現地の、つまりアメリカならアメリカの会社が、また仲買い人といいますか、そういうものもおる。これは全部一人三役になっておるというまことに奇妙な現象が、日本の大商社の場合あちらこちらに見られるわけですよ。  一例を申し上げますと、材木を買う場合は、山林所有者、現地人のブローカー、さらに現地人の会社、まあアメリカ人の会社、そして日本の海外法人、そして本社、こういうルートになるわけですけれども、たとえばエルモア・ブーミング社という会社がポートランドにございますけれども、この経営者のエルモアさんというのは日商岩井のアメリカの現地社員です。しかも、エルモア・ブーミング社の社長であり、しかもブローカー、つまり仲買い人もやっておる。一人三役、こういうような状態において、私は、在庫の調整とか、かかっておらない経費をかかったように見せる工作というのは、きわめて容易であるということが想像できるわけでありますけれども、こういう日商岩井、しかも、先ほど申し上げた木材の大暴騰にこの問題が関連があるというわけでございまして、調査中でありますけれども、私は、任意調査などというそうやさしい、親切なやり方でおやりにならないで、ちゃんと制度の上では査察というものがあるわけでございますから、それでおやりになるべきだと思いますが、これは大蔵大臣に御意見を伺いたいと思います。
  166. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 任意調査でいたしますか、あるいは査察に移すべきかという問題は、これは脱税という犯罪的事実が証拠をもって、まあ大体心証を持ち得るというようなことであれば可能のわけでございますが、私は、ただいま問題にされておる日商岩井がどういう状態であるのかこれを承知しておりませんので、この具体的な事例についてお答えすることはできません。しかし、もしこれが犯罪的な性格のものであるということでありますれば、これは当然査察事件として扱い得る問題である、かように考えます。
  167. 矢野絢也

    矢野委員 私のほうで国税当局に資料をいただいて調べてみたんですけれども、査察の対象に付せられておる会社はほとんど中小企業なんですよ。そんな大企業で査察の対象になったというのはいまだかつて聞いたことがない、もちろんあるでしょうけれども。ところが、先ほどのトーメンも丸紅も任意調査であります。そういう制約の中でよう調べたと、むしろほめるべきかもわかりませんけれども、えらく大企業に御親切なやり方をしていらっしゃる。そして中小企業、そういったところには、かさにかかってやっておられる面も見られる。  四十七年度の査察事案の資本金の上位十社について資料をいただきましたけれども、一番大きな資本金は二億二千八百八十七万円、これが一番大きな会社です。これが一番大きな査察を受けた会社の資本金でして、これ以上の資本金の会社は査察の対象になってない、これは事実の上でそういうことになるわけですね。査察ということは、いろいろ強制的な調査権があるとか、調べの上で非常に便利な面があるのではないかと私は思っているわけでありますけれども、まさかこれは、中小企業には査察、大企業には任意調査などという方針を大蔵省はおきめになっておるとは思いませんけれども、事実はそれを示しているわけです。これはどういうふうに解釈すればよろしいか、大臣のお考えを聞きたいのです。これでは大企業優遇といわれてもしようがないですよ。
  168. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 査察事案にすべきかしないかという点につきましては、ただいま申し上げたとおりでございますが、そういう結果がただいまお話しのようなことになっているのではないか、さように思います。ただ、私は具体的なケースについて知識がありませんので、国税庁長官からひとつお答えを承ってもらいたい、かように存じます。
  169. 安川七郎

    ○安川政府委員 お答え申し上げます。  国税庁といたしましては、ただいま大臣から御答弁がございましたように、脱税として刑事責任を追及すべき対象として、大企業あるいは中小企業を問わず、真に悪質なものを査察の事案として取り上げているわけです。結果的には、ただいま資本金のお話が出ましたけれども、最近の法人につきましては、資本金の大小必ずしも刑事事犯として取り上げる脱税事犯の大きさに比例いたしませんで、同族のような会社で資本金が意外に小さいようなものが相当大きな脱漏をしている、こういう事例もあるわけでございます。それから、個人の所得税違反といたしまして、大企業にいろいろ密着いたしました不正を行なった事件、こういうのも四十八年度といたしましてはかなり処理がされておるわけでございます。  なお、全体としての傾向は、戦後の日本の会社の経理が非常に混乱いたしておりました時期とは違いまして、最近はやはり会計制度あるいは公認会計士制度が整備いたしましたので、全体としては大企業の帳簿整理はかなり整ってまいっております。ただ、一部分に、海外所得、ごく最近の国際経済の取引の旺盛に伴いまして、新たに発生しましたそのような取引分野につきましては、まだ経理制度が十分整っていないという部面につきまして、御指摘のような不正所得が発生する余地があるように見受けられるわけです。したがいまして、ただいままでのところは、大会社につきまして経理の内部牽制組織というものがございまして、その関係から、従前は刑事事犯として訴追いたすべきような事案がなかなか発生しておらなかった、こういうことでございます。  なお、最近いろいろ経済情勢がすみやかに推移してまいっております。私どものほうの査察案件につきましては、先ほども重ねて申し上げましたとおり、ほんとうの取引の実態を見まして、悪質であって刑事事犯として取り上げるべきものということにできるだけ重点を移行しております。したがいまして、いわゆる大口悪質違反というものを極力取り上げるように仕事を調整しておる最中でございます。いずれそういうような成果が出てまいる、かように考えております。
  170. 矢野絢也

    矢野委員 法務大臣と国家公安委員長に伺いたいのでありますけれども、一般論としてまず伺いますけれども、脱税などの不正の意図をもって、計画的に、しかも十億とか二十五億とかいう巨額のお金を不正所得として経理操作をしているということが一点、第二点は、数億という使途不明の隠し金をつくるということ、しかもその隠し金は、会社の管理ではなくして個人の管理になっておる場合、しかも秘密のうちに数億というようなものが隠し金になっておる、こういうことが、一般的に申し上げて刑事上その他法律上の責任を発生するのではないか、その可能性があるのではないかと私は思うわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  171. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 法務省としましては、税務当局から告発のあった事件を厳正に審査をして、裁判所に提訴するという手続をとっておりますので、こちらとして、どの事件がどういう性格があるかというところまでは、手も行き届きませんし、制度的にも、それぞれの事案が告発される、告発されたものについて厳正な審査をするというたてまえをとっておりますので、その点御了承願いたいと思います。
  172. 町村金五

    ○町村国務大臣 ただいま矢野委員が御指摘になりました、一種の隠し金を秘匿しておるというようなことについてどう考えるかということでございますが、私が申し上げるまでもなく、警察といたしましては、現在の諸法令に基づきまして違反事実があるということでなければ、発動することができないことは言うまでもございません。ただいま御指摘になりましたことが、現行法でもしそれが犯罪事実でございますれば、当然厳正な取り締まりに出るということはあたりまえだ、こう考えております。
  173. 矢野絢也

    矢野委員 大蔵大臣に伺いたいわけですけれども、一般論として私は法務大臣や国家公安委員長に伺いました。今後、このような社会的影響力の大きい大企業の脱税事犯、これはますます複雑になってきておると思います。調べにくい点もあるでしょう。しかし、少なくともいま具体的に申し七げた二件を見ましても、隠し金が数億という形であらわれているわけであります。同様の事例が他の大資本、大企業にも当然あると私は思います。  大蔵大臣の決意として、今後かかるものがあれば、任懲調査、そんななまぬるいことではなくて、一罰百戒という意味を含めて、断固としてこれは告発されるべきであると思いますが、決意を伺いたい。
  174. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 最近、物価の変動という問題があります。また為替の動きという問題がある。そういうようなことで、商社をはじめとして、企業の利益状態というものが非常に激しく動いておる。私は、国税局長会議を開くという際におきましては、先般もそうでございますが、そういう動きに着目をいたしまして、税の捕捉に万全を尽くすように要請をいたしておるわけでございますが、もし悪質のものがこういう非常の際に乗じまして出てくるというようなことであれば、これは法の定めるところによって仮借なく公正に処断をする、税法上そういうふうな処置をとるということをはっきり申し上げます。
  175. 矢野絢也

    矢野委員 ぜひそうあらなければならないと思います。でなければ、ますます政治不信が強まります。  通産大臣に伺いたいのですけれども、一部始終お聞きのとおりでございまして、話は主として脱税という問題をめぐって進んでまいりましたけれども、私が申し上げたいことは、はっきり言いまして、このような大商社のやり方あるいは海外法人のあり方、利益操作のあり方、価格のつり上げ工作のあり方というものを、ぜひあなたなり公取委員長にわかっていただきたい、総理にわかってもらわなければならぬという意味で穏やかに話を進めてきているのです。この海外法人を利用したこういうからくりは、通産省は知らぬとはいえないのです。一昨年の国税庁の白書にも、重大な問題だという意味で書いてあります。昨年もこのことについて、国税庁は白書で述べておるわけであります。しかも、一国の総理が、日本企業の海外進出のあり方について、痛烈な批判を受けられるというようなこともあったわけです。  通産大臣はこのことについてどのようにお考えになっておるか、どのような対策をとってこられたか、一般論としてまず伺う。  さらにもう一つは、私が申し上げたこの三件、おたくの出先はよく知っておられます、大阪の通産局は。商社というのはえげつないことをやりまんなと言うておられるわけであります。本省は知っているのかと言えば、本省もよく知ってますと言っております。知っておって、なぜこういうことについて行政指導をなされなかったのか。幾ら深刻そうな顔をして、物価上昇はきわめて重大な問題でございますなんておっしゃっても、このような悪らつなことをほうっておいて、何の行政指導もやらない。その結果、庶民が買うときの値段はめちゃくちゃに上がっている。こういうことを放任しておって、物価問題は重大な問題でございますなんて言っても国民は信頼しないということを、私は冒頭に総理に申し上げておるわけです。通産大臣の御意見を伺いたい。
  176. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 商社の行動につきましては、昨年いろいろ指弾を受けまして以来、通産省といたしましても、責任者を呼んでよく説示するとか、あるいは監督励行をしてきたところでございます。  いま御指摘になりました税法上の違反につきましては、私はいまここで初めてお聞きいたしましたが、われわれのほうの係の者は調べて知っておると思います。今後とも、いまのような不正事件あるいは海外にあって国民の目をごまかしてやるようなことがないように、出先をも含めて、厳重に監視して、そういうことを起こさせないようにいたしたいと思っております。
  177. 矢野絢也

    矢野委員 まあ、大臣は御存じない。出先は、あるいは局長クラスも知っているのです、これは。気楽な大臣だと私は言いたいのだけれども、いずれにしてもこの問題は、物価問題の新しい面というものを私はここで解明したのです。やみカルテルがけしからぬ、あるいはまたコストの値上がり以上に便乗の値上がりがあるのはけしからぬ、これも重大な問題です。しかし、商社がそういうような垂直的な、海外における仕入れから日本国内における製造販売までを、資金と株式の取得という形で強力に垂直的、いわば独占的な系列化をはかっている中で、価格のつり上げ、かさ上げということがこういう形で行なわれておるということを私は申し上げておるわけです。通り一ぺんの答弁では私は納得できません。どういうような対策を具体的にされるかを、ここで決意を言っていただきたい。
  178. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国税庁とよく連絡をいたしまして、そして事態を的確に把握して、そして商社の責任者を呼び出しまして事実をよく究明いたしまして、そしてその商社はもとよりのこと、ほかの商社につきましても、そういうあやまちなきように、厳重にこれを取り締まるつもりでおります。
  179. 矢野絢也

    矢野委員 大臣がそのようにおっしゃるならば、ぜひそうしていただきたい。その結果を見てまた申し上げたいと思います。ただ、一般論として、海外法人のあり方、これは非常に批判が出ておる。何らかの対策が必要であると思いますけれども、通産省には何の考えもないんですか。
  180. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 海外法人のあり方につきましては、昨年私、タイへ正月に参りまして、現地の情勢をつぶさに調べて、聞いてもまいりました。そして帰りましてから、いまのような商社のあり方ではいけない、必ず醜い日本人というふうに言われるようになる、そういうことを考えまして、省内でもいろいろ協議をし、また商社関係を集めまして、これに対する対策を商社みずからもとれということを言いまして、その結果、商社及び経済団体におきまして、海外における企業活動に関する自粛の指針というのをつくらせまして、その線に沿ってやらせるように彼らも宣言をしたわけです。それに基づきまして、在外公館及びジェトロに訓令を発しまして、こういう線でやるはずであるから、まずジェトロ及び在外公館が現地の支店長を集めて、本社からこういう指示が来ているかどうか確認せよ、そして現地の支店長の日本人会においてもその線でやるということを確認して、それを監視せよ、そういう訓令を出しまして、それぞれやっておるところでございます。その後、ときどき通産省といたしましても、出張する者に現地の情勢を聞かせまして、その情勢を聞いて報告を聴取しております。
  181. 矢野絢也

    矢野委員 最後に、総理に申し上げたいわけですけれども、海外の国際価格が上がっておることが、国内における物価上昇の一つの原因であるということを先ほども言っておられました。しかし、このように、日本に入ってくる輸入価格が、からくりによって実際以上に不当につり上げられておるということをあなたは認識すべきであります。もちろん、国際価格が上がっておるということは、私は否定しません。しかしそれ以上に、もっと安く入るものがこういう手口によってべらぼうな値段のつり上げになっておる。だから、そう簡単に、海外の値段が上がったから国内の値段も上がるんですなんて、そんな言い方じゃ済まないものだ。これは政府の怠慢ということも、日本に入ってくる価格の上昇にかかわりがあるわけなんです。  この点について、私は海外法人を規制する何らかの立法措置が必要であると思いますが、この海外法人を規制する立法、これについては通産大臣にまず伺いたいし、そのあと総理よりお考えを聞きたいと思います。
  182. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年私は現地に行って帰りまして、何らかのそういう日本人の企業の海外における行動を規制する基本法みたいなものが必要ではないか、そういうことを考えまして、省内でも検討させました。  ただ、われわれは自由主義経済を奉ずるという面からいたしまして、まず商社にやらしてみよう、その実態を見て、その上で基本法が必要ならば法律措置も検討しよう、そういうことになりまして、一年間推移を見たわけでございます。今般、田中総理が東南アジア等を回ってまいりまして、それらの結果にもかんがみ、いま矢野委員からのいろいろな御説明ございまして、大いに検討してみたいと思います。
  183. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本の商社活動、特に海外における活動等に対して、いろいろ改めなければならないことがあることは、私も承知をいたしております。また、商社の活動に対しても、商社が  コードをつくるというようなことだけではなく、まず日本の商社間の過当競争を原則的に絶対にやめること、それから商社の社員といえども、相手側から見れば、日本政府と同じようにやはり日本を代表するもの、日本人の活動として評価をしておるのでありますから、これの教育、これの現地人に対する態度、いろいろな問題に対して、いわゆる商社活動というようなことだけではなく、初めから考え直し、教育のし直しさえも行なわなければならないというようなことさえも私は要請をしておるわけでございます。  そうして、私はいままで商社がつり上げをやるような余裕ということは――きょうあなたからるる述べられたことに対して、私も新しい現実を認識したわけであります。  いままで商社活動というのは、輸出に対しても輸入に対しても、ほとんどシェア競争というので、過当競争の面だけが海外において指摘をされたわけであります。輸入に対しても、とにかく日本商社が行って倍でも三倍でも買いあさってしまうということによって、現地からの苦情が持ち込まれてきておったわけであって、安くたたいて、トンネル会社をつくって国内で高く売るというような事態はいままでは想起されなかったわけであります。ですから、あらゆる面におけるものは、いわゆる過当競争、日本人が買いあさりをやるということが問題になったわけですが、きょう、るるあなたの御指摘を聞いておって、相当変わった視点から商社活動、日本の海外活動というものを考えなければならないということもしみじみと感じたわけでございます。  商社法というようなものをつくるか、商社活動をどう規制するかという問題は、前からも問題にもなっておるわけであります。各党でも議論が出ておりますし、政府部内でも検討が行なわれたわけでありますが、これも独禁法の問題とか経済力集中排除とか、いろいろな制度がございます。銀行法のように単独立法を必要とするかどうかという問題は、これはなかなかやはり広範に考えてみないといけない問題だと思うのです。ですから、独占禁止、それから経済力集中排除、財閥解体というような方向でずっと戦後の政策が行なわれてきたわけでございますが、今日このままの状態でいいのかどうかという、商社の取り扱うものが、言うなれば寡占企業の生産品と同じようになるという面も考えられるわけです。ですから、そういう意味で、商社というようなものを一体どうするのかというような問題は、勉強課題を提供されたものだと存じておりますが、ここで商社法をすぐつくりますと言うほど簡単なものではないということは、ひとつ御承知いただきたいと思います。  物価というものが、やはり商社活動だけではなく、あらゆる面でわれわれがいままで考えられなかったような状態で、いま御指摘されたようないろいろな状態で物価が構成されておるというものに対しては、そういう実態を把握してメスを入れていかなければ物価問題にならないということは、私もよく理解をいたしました。  そういう意味で、物価抑制の現実の段階において、いま御指摘をされたような問題を十分参考にしながら、政府は遺憾なきを期してまいりたい、こう考えます。
  184. 矢野絢也

    矢野委員 私がこの問題で予定しておりました時間を越えておりますから、次の問題に移らざるを得ないわけでありますけれども、先ほどの総理をはじめ各大臣の御答弁では……。もちろんこれだけが物価問題のすべてではございません。一つの原因というものを私は解明したわけでありますけれども、そういったことについてよく検討しますとか、こういうことではやはりどうも、そうか、政府はやってくれるのかという気持ちにはなれないわけです。  いずれにしても、いま国会に課せられた任務は、物価をどう下げるか、もし悪者があれば、それを徹底的に糾明せよというのが、国会に課せられた使命であります。  そこで、委員長にお願いをしたいわけでございますが、六大商社、それにトーメンを加えました七つの商社、この社長を本委員会に証人として喚問願いたい。  第二点は、先ほどのトーメン、丸紅の件、これは物価問題とのからみにおいて重要な意味を持っておりますので、この資料をぜひ提出させるよう、本委員会としてお取り計らい願いたい。  委員長にお願いを申し上げます。
  185. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま矢野君の御要望でございますが、きのう社会党さんからも、またきょうは午前中共産党さんからも、それぞれ証人あるいは参考人として本委員会に呼び出せ、こういうような御意見もございました。先ほどの理事会で、前向きにこれをやろうじゃないかというような、まだきまったわけじゃございませんが、大体そういう結論に達しつつあります。  したがいまして、いま矢野君の御要望、これも理事会で協議をいたしますが、理事会で前向きに御要望に沿うように努力することをお約束いたします。
  186. 矢野絢也

    矢野委員 次にお尋ねいたしたいことは、石油関連製品の異常な値上がりについてであります。  わが党は、昨年来より生活防衛緊急対策本部を設置いたしまして、たとえば、洗剤の消えてしまったのはどういうわけだ、トイレットペーパーがないのはどういうわけだということで、党の組織をあげて、隠匿されておる倉庫その他を調べてまいりました。あわせまして、生産段階における原価構成、要するにべらぼうに値段が上がったけれども、妥当なものなのかどうなのかということを、業界や、あるいは業界の資料によりまして調べてまいったわけであります。いま、総理やあるいは通産大臣その他関係の閣僚の方に、公明党がまとめました資料をお渡ししてございます。この資料に基づきまして、石油関連製品が年末来どういうことになったかということを、実態を明らかにしていきたいと思うのです。そして、あわせてそれに対する対策、これを伺いたいと思っております。  まず、これから申し上げるデータは、メーカー段階出荷段階値段でございまして、それ以後の商社あるいは卸売り業の流通過程の上昇を含むデータではございません。メーカーが出荷したそのデータでございます。  調べました点は二点ございます。一つは、石油関連製品の値上げは、時期的に見て先取りであったのかどうなのか、値上げのタイミングの問題であります。第二番目は、石油関連製品の原価構成から見た値上がり要素、これは妥当な値上がりであったのか、あるいは石油危機ということに便乗した悪質な値上げであったのかを、具体的に資料としてここに記載しております。調べましたのは灯油、C重油あるいは高圧ポリエチレン、あるいは塩化ビニール、それに関連したエチレンなどについて調べております。  まず、この値上げのタイミングでありますけれども、四十七年の十月から十二月、つまり一年前と昨年末、この一年間の間隔を経て調べました。  灯油につきましては、これは工業用でございますが、四十七年の末には九千六百円、それが昨年の一月から三月は一万五百円、ずっと推移しまして、昨年の十月に一万四千円、十一月に一万八千円、十二月も一万八千円、一年前に比べますと、これは八七%アップしております。灯油の民生用につきましては、これは通産省の指導があったやに聞いておりますけれども、一万二千九百円、これは店頭小売りのことを申し上げているのではない、出荷段階ではこういう値段になっておるわけです。C重油につきましては、四十七年の末、一年前では六千五百三十円、これが昨年の十月から七千三百円、十一月に一万円、十二月一万円、五三%C重油が上がっているわけであります。ナフサにつきましては……(「容量単位を言ってください」と呼ぶ者あり)キロリットルで、一年前は六千六百円、その後七千円、七千円、七千円ということで、昨年の十月から八千円になりました。十  一月も八千円、そして十二月に一万二千円、べらぼうな値上がりで、一年前に比べますと八二%のアップになっております。  こう申し上げますと、これらの諸製品が十月以降むちゃくちゃな値上がりになっておることがわかるわけであります。しかし、輸入された原油は、バーレル・ドルという関係で申し上げますと、一年前は一・九ドル、昨年の一月から三月は二・一ドル、さらにそれが二・三ドル、二・ハドル、これは七月、八月ですね。十月になりまして三・六五ドル、十一月も十二月も三・六五ドルということになっております。これはアラビアンライト実勢数字で申し上げている。つまり、こちらに入ってきておる値段で申し上げているわけでありまして、その以後、本年になりましてからこちらに入ってくるという意味においての値上がりの影響がかなり出てくることは、十分私は承知しております。しかし、少なくとも十月十六日のペルシャ湾岸六カ国の原油の大幅引き上げ、実勢価格で申し上げて三〇%上がった。十月の十六日に値上げを発表しました分は、あくる日に日本に来ているわけではないのであります。現地においてタンカーがひしめき合っておりまして、そういった日数も加えまして、輸送期間は片道大体二十日、現地における積み込みが約十日などといわれておりますが、それ以上の手間がかかったと聞いております。いずれにしても、十月の十六日に原油が上がったとしても、この上がった分が到着するのは十一月の末になるわけであります。それまでに到着しておる原油というものは、それ以前に契約をして、海を走ってきて日本に到着しておる。つまり安い石油が十一月の末までには到着しておる。しかも、九月三十日現在のわが国のストック、これは通産省で発表された分でありますけれども、とにかく六千三百万キロリットル、七十九日分、九月末でわが国は持っておったわけであります。原油が二千二百万キロリットル、製品や半製品が二千四百万キロリットル、原油が二十八日分ですか、製品、半製品が三十一日分、タンカー輸送中の原油が千七百万キロリットルで、二十日分ということになっておりまして、こういった実態から考えますと、先ほど私が価格値上げの推移について申し上げましたけれども、それは原油の値上げに関係のない先取り値上げが、灯油の場合は十月に一万四千円、十二月に一万八千円というようにべらぼうに上がっておる。重油につきましても、九月が六千七百五十円から十月七千三百円、十二月が一万円。ナフサに至っては、九月に七千円であったのが十月に八千円、十二月に一万二千円というような調子になっております。  この七十九日分のストック、これはそのまま順繰りに使っていくわけではないでしょうけれども、少なくとも理論上は、平常の消費であれば、七十九日分でありますから、九月三十日から七十九日、つまり十二月の中旬まで理論上はまかなえるわけでありました。  しかも、この九月三十日にわが国にストックされておった石油は、九月三十日以前、一月以上前に現地で積み込んだ石油でありますから安い石油なんです。つまり十月の十六日に三〇%値段が上がった。しかし、その十六日に上がった分は、到着時間を考えれば、十一月の末に到着する。しかも七十九日のストックがあった。こういう点を考えれば、十月以降のこの石油関連製品、まあ石油の、何といいますか、関連したこの製品の値上がりは、原油の値上げを口実とした明らかな先取り値上げである、このように私は思っておりますけれども、その前に通産省に、私が申し上げた価格の推移が正しいかどうか、あわせて大臣から伺いたいと思います。
  187. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま拝見しました。ざっと見たところでございますが、大体正しいのではないかと思います。
  188. 矢野絢也

    矢野委員 その在庫分あるいは輸送中という要素を加味して考えると、あなたが正しいと言ってくださった十月以降のこの値上がりは、先取りであるという私たちの判断、これも正しいのですか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 四十八年の十月から十二月の元売り仕切り価格の値上げが、石油会社の収益状況にどういう影響をもたらしたか、現在これは精査しておりますが、四十八年十二月の元売り仕切り価格は四十八年度上期に比して四七%程度の引き上げが行なわれております。他方、原油輸入価格は、円ベースで、四十八年度上期に比して四十八年十二月には七〇%上昇しており、元売り仕切り価格に占める原油コストの比率約六割程度を勘案すると、他の条件においてひとしければ、大筋として元売り仕切り原価は、一応の推算として四割前後上昇したということになると思います。  しかしながら、輸入した原油が、いまお示しのとおり直ちに製品として市場に出回るわけではなく、従前からの在庫分があるため、即座に原油輸入価格の上昇が製品原価にはね返るわけではないということ、それから別途既契約にかかる為替差損が発生していること等、諸種の事情もあって、これら総合的に的確に精査する必要がありますが、私の大体の感触では、かなりの収益増をもたらしているのではないかと想像しております。そのことは、いまお示しのように、古い油が到着して、それに高い値段がつけ加えられたという、そういう疑いがあるからでございます。
  190. 矢野絢也

    矢野委員 まとめて私の意見は最後に申し上げることにして、次に、高圧ポリエチレンあるいは塩ビについて申し上げたいと思います。  まず、高圧ポリエチレンの価格の推移でございますが、四十七年の十月から十二月、一年前ですが、九十円から九十五円でございました。昨年の一月から三月には九十五円、四月から六月は九十六円から九十九円、七月から九月にかけて百三円から百五円、まあ上がりつつありますが、横ばいの状況で上がってきた。十月には百五円、十一月には百二十六円、そして十二月になりまして百六十五円と八三%のアップになっております。  また、塩化ビニールにつきましては、同じ順序で申し上げまして、一年前は八十円。昨年は八十、八十一、八十二から八十七という状況で九月まで推移しまして、そして十月には九十円、十一月には百十五円から百二十円、十二月には百五十円と八七%のアップです。  エチレンにつきましては、一年前は二十九円、それが昨年は三十、三十一、三十二という形で来まして、十月になりましてそれが三十五円、十一月も三十五円、十二月が一挙に五十五円、八九%のアップになっておるわけであります。  この高圧ポリエチレン、塩化ビニール、これは国民生活に非常に重大な関係のある素材でございます。これがこのような形で八三%であるとか八七%、その原料になっているエチレンは八九%というふうにべらぼうな上がり方になっておるわけでございます。この価格の推移、これは通産省のお調べでは、私が申し上げたこの値上がりは、まず正しいかどうかを御確認願いたいと思います。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 具体的なこまかい数字は政府委員から御答弁申し上げますが、高圧ポリエチレンなど石油化学の製品については、一面においては原材料や触媒等の値段の上昇もございましたが、ポリエチレンなどの値上げ幅が五十円、高圧ポリエチレンの場合の値上げ率は四三%にも達するものがあったり、あるいは国産ナフサの値上げの時期より若干早目に値上げが行なわれた製品があるなど、今回の値上げが、一部便乗値上げ的色彩を有する面もあると考えられます。したがって、政府としては、現在その妥当性について検討を進めておるところであり、問題点が明らかになれば、引き下げ指導等、適切な措置を講ずる方針であります。  具体的には、政府委員より御答弁申し上げます。
  192. 矢野絢也

    矢野委員 この高圧ポリエチレンとか塩ビ、エチレンの値上がり、八〇%をこえる値上がりは、その原料であるナフサが上がったからだということが理由になっておるわけでございますけれども、そのナフサ自体が先ほど申し上げたとおり、先取り値上げになっておるということをまず御理解願わなくてはならないのです。ほんとうはそんなに高いナフサでなかったはずだ。先ほど大臣は古い石油ということを言われましたけれども、安い石油でつくったナフサであります。しかし、そのナフサがとにかく先取りで上げてしまった。それに伴って前後して、ほとんどきびすを接してこのエチレンとか高圧ポリエチレン、塩ビが上がっているわけであります。  そこで私は、第一のポイント、つまり各製品がそれぞれの時期に値上げをしておりますけれども、少なくとも昨年に限って言えば、石油危機を口実にした先取り値上げであるということをいま申し上げたわけであります。  あわせて第二番目の、それでは、いま申し上げたエチレンあるいは高圧ポリエチレンが、ナフサが上がった、その前の石油が上がった、だからしようがなくして上がったんだという、つまり原料値上げに伴う適切な値上げであったのかという面を、原価の面から調べておく必要がある。これは通産省としても、当然この点はチェックしてもらわなければ、もうけ過ぎておるとかもうけ過ぎないなんて、こういう一般論で言われたら困るわけであります。  そこで、エチレンやプロピレンあるいはブタジエン、こういったものが、ナフサがキロリットル当たり千円上がると、エチレンは一体理論上何ぼ上がるのかということを私たちは調べたわけであります。ここで申し上げる数字は、私たちが主観的にかってにでっち上げた数字じゃございません。それぞれの石油化学メーカーあるいは業界紙その他から客観的に割り出した数字であります。  ナフサがキロリットル当たり千円上がりますと、エチレンは三円五十銭上がるわけです。ただし、これはキログラム当たりでございます。ナフサはキロリットル当たりになっております。プロピレンは二円三十銭上がる、ブタジエンが一円八十銭上がる。理論的には、原価構成からいくとこのようになります。  これは御参考までに申し上げますと、ナフサからエチレンとか、こういったプロピレン、ブタジエン、まあ得率というのがきまっておりまして、たとえばエチレンの場合はナフサから二三%とれる。こういう得率に、それぞれのそのときの価格というものを加乗いたしまして、物量面における得率を価格の面における得率に転換するという計算操作が行なわれるわけですけれども、そういう形で、ナフサが千円上がればエチレンが三円五十銭上がる、こうなるわけです。  ところが、実際はどうであったかといいますと、十月の値上げでナフサは七千円から八千円に上がった。千円上がった。これは現実に上がったわけであります。だから、理論上は三円五十銭上がるということでありますけれども、実際はエチレンは三十一円から三十五円に上がっておる。四円上がっておるわけでありますから、ほぼ理論上の値上げに匹敵するんではないか、この十月の値上げは。しかし、これが十二月になりますと、ナフサは八千円から一万二千円、つまり四千円上がりました。原料が上がったわけでありまして、先ほどキロリットル当たり千円上がれば三円五十銭エチレンが上がるということを申し上げましたが、四千円上がりますと、十四円理論上はエチレンの原価が上がることになります。しかし実際は、先ほどの価格推移で申し上げたとおり三十五円、これは十月の値段ですが、それが五十五円に上がっておるわけでございまして、十四円が原価構成上納得のできる値段であるのに二十円も上がっておる。つまり、六円の便乗値上げをエチレンの場合はこの十二月にやっているわけです。  六円だなんて言うと、えらいわずかやなあ、ちょっとやないかと思われるか知りませんけれども、とんでもないことでありまして、四十七年度のエチレンのわが国の年産量は三百八十五万トンであります。まあ大ざっぱにこれを四百万トンと計算いたしましょう。四百万トンであって、そしてこれがキログラム当たり六円上がる。千キログラム、まあ一トン、これを計算しますと、キログラム当たりエチレンが六円便乗、ちょっと上のせするというだけで幾らでございましたか、約二百四十億円の利益が出てくるわけです。二百四十億ですね。そこで、この十二月ナフサが上がりましたから、しようがありませんということで二十円上げました、六円のつまみ食い分も含めて。この二十円の値上げをしますと、業界としては、収入が八百億円ふえるという計算です。だから、エチレンがキログラム当たり六円上がる、何だ、たった六円かというようなものじゃないわけでして、業界全体でいけば、この六円の便乗値上げ、ナフサの値上げに関係のない、ついでにもうけてやろうということで上げた六円、つまり実際の値上がり二十円、理論上の値上げが十四円、この六円で二百四十億円業界は一年間でもうかるということになるわけです。たいへんな利益をこの十二月の六円の便乗値上げで業界はあげているわけですよ。  しかもこの十四円の理論価格の値上げ、これはもうやむを得ないと、私はそういう言い方をしましたけれども、この十四円の値上げはナフサが上がったということで十四円上がっておるわけです。このナフサの値上がり自体が先取り値上げになっておるわけです。安い石油でナフサがとれた。しかし、そのナフサが八千円から一万二千円しましたなんて業界は言うわけです。ほんとうは、そんなに上がっていない。あとから到着するものは上がっているかもしれませんけれども、そのときの分は、原油は上がっていない。昔の安い石油です。それがそういう形で、先取りでナフサを一万二千円まで八十数%も上げた。これは一応やむを得ないとしてエチレンの計算をすれば、十四円はしょうがない、こう申し上げておるわけでして、この十四円自体も、だからこれは便乗値上げということになるわけです。その十四円にさらに六円上のせをして、エチレンを三十五円から五十五円というようなべらぼうな値段で、つまり二十円のプラスで売っておる。その便乗分は二百四十億円であった。ナフサの分から含めると八百億円の利益を得ておる、こういうことに計算上なるわけですね。ープロピレンにつきましては、理論上ナフサがキロリットル千円上がるについてキログラム当たり二円三十銭上がる。このプロピレンが実際はどうなったかといいますと、十月のときは、一応理論上は二円三十銭上がる。ナフサが千円上がりましたから、それに対応して二円三十銭が妥当だけれども、実際は三円上がっております。これも七十銭の便乗値上げになっております。七十銭だなんて思わないで、先ほどの六円が二百四十億円になるということを前提にして聞いてください、この七十銭という金額を。さらにまた、十二月になりますと、ナフサが四千円上がった。つまり八千円から一万二千円になった。理論上は、プロピレンは分解等価比率から申しますと、二円三十銭ですから九円二十銭上がってもやむを得ない。ところが実際は十五円も上げておるのであります。倍近くも、コストのアップでやむを得ず上がる分の倍近くも、つまり九円二十銭でとどまるところを十五円の値上げにしておる、十二月に。倍近くの便乗の値上げをしておるわけであります。  ブタジェンにつきましても、ナフサ一キロリットル当たり千円上がった。そうすると、ブタジエンは、理論上は一円八十銭上がることになるのです。分解等価比率からいきまして一円八十銭上がる。十月にはナフサが千円上がった。だから理論上は一円八十銭まではブタジエンが上がることはやむを得ないとしましても、実際は二円になっておる。つまり二十銭の便乗がある。これはその他いろんな諸掛かりが上がったということで多少説明はつくでしょう。しかし十二月になりますと、ナフサが八千円から一万二千円になった。つまり四千円上がった。それに伴ってブタジエンは、理論上は七円二十銭上がるのはやむを得ない。しかし実際には十五円上げておる。これだって年産の対比で計算いたしますと、何百億という利益になってくるのです。  まあこういうようなナフサから誘導されてできてまいりますエチレン、プロピレン、ブタジエンにつきましては、明らかに石油値上がり、ナフサの値上がり以上の値上げを業界はやっておるわけであります。特に十二月はもうむちゃくちゃでございます。しかも、業界のいろんな発表によりますと、またことしもこれは上げるといっておるのであります。  通産大臣、このエチレン、プロピレン、ブタジエンについての私の意見について、明らかに悪質な便乗値上げであるという私の指摘に対しての御感想を承りたいと思います。
  193. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国産ナフサは、御指摘のように、昨年の十二月から八千円でありましたのがキロリットル一万二千円に引き上げられました。それと前後してエチレンは十一月末から十二月の初めにかけて三十五円のものが五十五円、先ほどお示しのとおりです。高圧ポリエチレンは十一月中旬以降百十五円から百六十五円、ポリプロピレンは十一月下旬以降百十五円から百七十円ないし百七十五円、塩ビ樹脂が、十一月から十二月初めにかけて九十五円ないし百十円から百四十円ないし百五十円程度に上げられております。  これらは御指摘のように先取り値上げの疑いがございます。石油の供給が締められるということから品薄になり、あるいは品薄の将来を予想して、そういう意味で上げられた面があるのではないかと強い疑いを持っておりまして、われわれはこれらをいま精査しておりまして、そして、もし便乗値上げの要素があれば、価格を妥当な線に押し下げさせるように、そしていま、午前中申し上げましたが、石油の価格につきましても、一月一日以降入った油、かなり高い油が、十二月の二倍程度の油が入っておりまして、現在石油については押えておるわけであります。したがって、この新しい油を使っている間、石油会社としては、赤字がずっと出てくるということになっておりまして、それらとも見合いまして、これらの石油製品の値段の調整もしていきたいと思います。三月決算において、過当利潤が生まれないような措置を講じたいと思っております。
  194. 矢野絢也

    矢野委員 さらに次の問題を申し上げて、総括的に御意見を聞きたいと思います。  それでは、いまこのエチレンが十二月に六円の便乗値上げ、その結果ぬれ手でアワといってよいくらいの二百四十億円というのをもうけておるということを申し上げた。そのエチレンからできてくるこの高圧ポリエチレン、これがどういうことになるか。  この高圧ポリエチレンの原価構成から申し上げますと、一応比例費と固定費ということに分けて考えましょう。単純に申し上げれば、エチレン一・〇七に対しまして高圧ポリエチレンが一できる、こういう換算率になります。これはもう業界大体平均してこういう数字になることは間違いございません。そうしますと、四十八年の十月以前は、先ほど申し上げたとおりエチレンは三十一円でございます。そうして、これに一・〇七をかけますと三十三円。その他副原料というものが要ります。それ以外の原料ですね。それから溶液、つまり水とか電気というものがかかりますから、その他の経費として比例費、つまり量に伴った比例費は、三十三円とその他十八円を足しまして五十一円。エチレン三十一円のときの高圧ポリエチレンの比例費は大体五十一円、これは十月以前の時点。固定費はその時点では二十七円ですね。これは人件費とか設備、工場の償却、修繕費、本社一般管理費、こういうものを含めまして、このときの固定費は二十七円であると業界ではいっております。そうしますと、この比例費、固定費五十一円と二十七円を足しますと、原価の計が七十八円になります。つまり、これはエチレン三十一円のときの、つまり十月以前の高圧ポリエチレンの原価、つまり七十八円である。そのときの高圧ポリエチレンは何ぼで売っておったか。この工場出荷値段、これは流通機構のことを言っているのじゃないのです。メーカーの出荷値段、これは百五円であります。したがって、百五円の売り値に対して原価七十八円ですから、二十七円大ざっぱにいって利益ということになるわけでございます。これは原価に対しまして三四・六%というべらぼうな高利益になっております。これは十月以前のことを申し上げております。つまり、大ざっぱにいえば、原料のエチレンは三十一円、そのときの高圧ポリエチレンの原価は七十八円、工場の出荷値段が百五円、利益が二十七円、利益率は三四・六%、こういう計算になるわけです。これ自体がべらぼうな、むちゃくちゃな利益率だと私は思いますけれども、これは十月以前の話。一応これを基準にして、十二月はどういうことになっているかを申し上げてみたい。  同じ論法で申し上げますと、十二月の時点の高圧ポリエチレンの原料であるエチレンは、三十一円から五十五円に暴騰しております。したがって、この五十五円のエチレンに一・〇七をかけて五十九円、その他諸掛かりが、比例費でありますが、まあ副原料、電気、水その他を入れますと、十月のときには十八円でありましたけれども、その他が二十円というふうになっております。したがって比例費は七十九円。固定費は、操業が落ちておる、その他いろいろな分、金利その他も含めまして、十月以前は二十七円でございましたが、十二月においては二十八円ということになっておるわけです。そうしますと、十二月、エチレンは三十一円が五十五円に原料が上がった。それに伴って高圧ポリエチレンの原価は、十月以前七十八円、それが十二月のときには百七円に上がってくるわけであります。これは原価であります。  私はなぜこんなめんどうくさいことを申し上げるかというと、業界の人はすぐ、石油が上がりました、石油は倍になりました、だからこれも倍になりますねん、ナフサが倍になりました、四割上がりましたからこれも四割上がるのですというような、原料の値上がりに結びつけて、関連製品もそれと同じ、それ以上の値上がりをあたりまえのように押しつけるというむちゃくちゃな商売のやり方がある。だから、たとえエチレンが三十一円から五十五円という値上がりになっても、この比例費、固定費の関係から見まして、エチレンが上がった、三十一円から五十五円になっても、現在ポリエチレンは七十八円から百七円になるにすぎないということを申し上げているわけです。  それはどういうことになるかといいますと、百七円の十二月の時点では、実際に売られている値段は百六十五円であったわけです。よろしゅうございますか、総理。十月以前は七十八円の原価に対して、売り値は百五円、利益が二十七円だったわけです。エチレンが上がったために、ポリエチレンも上がりました。そのポリエチレンの原価は百七円でして、そのときの売り値は百六十五円になっておりまして、これは利益は五十八円に上がっておるのです、引きますと。  百歩譲って、エチレンの値上げのために高圧ポリエチレンが上がりますというのであれば、先ほど申し上げた百七円の原価、これに四十八年十月以前の利潤率三四・六%、これはむちゃくちゃに高いわけですけれども、これを十二月のときの原価にかけた、言うなれば三十七円という上積みをするならまだわかります。この百七円に三十七円の上積み、つまり十二月以前の利潤率で利益を取るというなら三十七円になりますから、これは百四十四円になるわけです、十二月の高圧ポリエチレンの工場仕出しの値段は。それならまだわかるのですけれども、現実には百六十五円で売られておる。  どういうことになるかといいますと、四十七年度の高圧ポリエチレンの年産は九十九万七千トンです。約百万トンとお考えいただければよろしゅうございます。そこで、エチレンが上がりましたから、高圧ポリエチレンも上げますわということで、十二月に百六十五円にした。しかし、十月以前の利潤でいけば百四十四円である。つまり二十一円便乗上積みをしたわけであります。この二十一円を百万トンにかけますと、これは、もちろんキログラムをトンに換算しなければなりませんから、何と二百十億円の上積みになるわけでございます。この二百十億円というのは、エチレンが原料が上がったためにやむを得ず上がった値上がりを除いた、それに便乗して上乗せをした、つまり二十一円という業界の全く不当な上積み、これが二百十億円になるということを申し上げておるのです。  ですから、整理して申し上げますと、ナフサが上がった、それに悪乗りをしてエチレンを上げた、六円便乗した、それによって二百四十億円を、不当にも利益をもうけた。そのエチレンからとれる高圧ポリエチレンは、原価から申し上げて二十一円を上乗せをして、悪乗りをして積んだために、二百十億円不当にもうけているわけであります。これを合わせますと何ぼになりますか、四百五十億になるわけです、エチレンとそれから出ている高圧ポリエチレンの利益を含めますと。というようなことを業界はやっているわけです。  私は、業界の代表の方といろいろ話をしました。二言目には石油危機、石油危機と言うのであります。このように石油が上がったんじゃ、これは、もうそれから出てくる製品が上がるのはやむを得ません、電力も制限されましたから操業度も落ちます。まあ、いろいろなことを言って、自分とこの倉から出すこの出荷値段はあたりまえだということを言うわけです。幾ら便乗だ、先付けだと言っても、これはうんと言わない。私たちもこれじゃしようがないということで、徹底的に調べてやるということで、このようなデータを出したのです。ほんとうはこれは通産省でやってもらわなければいかぬ仕事です。私たちは野党です。もちろん強力な組織もあります。それだけのスタッフもおります。しかし、なぜ野党の私がこの席で一々こういうことを申し上げなくちゃならないか。ほんとうは通産省がこのくらいのことは調べて、そして、このように国民石油関連製品によって重大な生活の被害を受けておる前に、こうなっておるぞ、けしからぬ、政府としては許さないという行政指導をなさるのがあたりまえじゃないかと私は思うのです。しかも、私がこの資料を出せば、なお精査してと――何をこれから調べるのですか。調べているうちに国民が買う物はどんどんどんどん上がっているのです。二言目に、もうかった利益は不当利益だから、三月期の決算で不当利得という形で税金を取ればいいんだという話が出てきます。私は、そのインフレ利得、不当な利益によって得た分は、社会的公平という面からも、インフレ利得税を取るのはいいでしょう。しかし、ほんとうはそれじゃだめなんです。もう上がってしまって、つまり、メーカーは高い値段消費者に押しつけで、その結果、むちゃくちゃにもうけました。そのもうけた分を税金で取るんです、これじゃ国民は浮かばれないんですよ。もちろん取らないよりは取ったほうがいいです。取ったほうがいいです。こんなべらぼうなもうけをしたものを放任することは許されません。ですから、そのような超過利得を税制の上から吸収するのは悪いとは言わないですよ。しかし、そんなことを考える前に、なぜこちらの面で、国民に対する品物を安く押えることを政府はやらないかということを私は申し上げたいわけなんです。この点について、通産大臣の御意見を聞きたい。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 十二月の時点におきまして、石油が二五%削減され、さらに毎月五%削減されるという、そういう情報がございまして、みんなある意味においては非常な前途の不安にかられて、恐怖的な心情にもなったわけです。そのときに各会社等は、操業度を維持しようと、そういうような関係から、高値にまかせて買うのも出てくるし、また、それに便乗して売ろうというのも出てきたと私は思います。そういう点は、矢野委員御指摘の要素も確かにあると思っております。  それで、当時われわれのほうの事務次官は、業界に対しても警告をいたしまして、これを、そういうことをやるなと大いにやったわけです。しかし、われわれのほうといたしましては、当時はいろいろな石油の対策に忙殺され、法的根拠もなくして、まず二法をお願いしておりました。それでその後、いろいろ値上がりの状態を、全部業界ごとに調べまして、そうして、いま矢野委員が御指摘のような得率その他も考えて、適正値段は幾らであるかということを、エネルギー庁におきましても精査をしておるところでございます。  それで、もう一つ問題点に置きますのは、この一月一日から、十二月に比べて二倍の値上げの通告が来て、現にそれが実施されようとしておるところでございます。そういう意味において、この機会にもし便乗値上げがあったとすれば、それは許さぬ、過去の分は取り返させなければならぬ、そういう価格設定を指導しよう、そういうことでいま一生懸命努力しておるところで、これは確実に実行いたしたいと思っております。
  196. 矢野絢也

    矢野委員 まあ、行政指導をして価格を指導するということ、これは前向きの姿勢として評価をいたします。しかし、トンビもタカも飛んだあとの話になるのです。石油危機で、それこそ連発打ち上げ花火式に、もう各物価はぼんぼんぼんぼん上がっておる。こんな調査は、通産省の機能をもってすればすぐにできますよ。私たちは、権限がありませんから、正直なことを申し上げて、えらく手間がかかりました。きのう通産省の方にこの表をお見せしましたら、御労作でございますだなんてほめられました。その方が見えたら、そういうふうに――エネルギー庁の方が言っておられます。確かにこれは労作でしょう。エネルギー庁だってこのくらいのところはすぐできるはずですよ、これを見て正しいとおっしゃったのですから。なぜそれをもっと早く天下に公表し、そして通産省が値段行政指導をもっと早くできなかったか。これから検討しますでは、第一納得できませんよ。
  197. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまのような精査は、われわれのほうもやっております。それで、次にどういう価格設定をして、いまのような便乗値上げがあるとすれば、それを吸収するという次の価格設定の基準をいま鋭意研究させて、できるだけこれは適正にやらせなければならぬと思ってやっておるところなのでございまして、矢野委員がお示しになったようなそういう御労作は、われわれのほうでも一生懸命努力してしてやっておるところでございます。
  198. 矢野絢也

    矢野委員 やっておるのはあたりまえでして、やっておるかやっていないかよりも、そういう調べた結果に基づいて、なぜ対策がもっと早くとれないのだということを私は申し上げておるわけです。  それから、この話をさらに理論を発展させる意味において、公取委員長に伺いたいわけであります。  せんだって、公取委もいろいろな立場から、この石油誘導製品、関連製品のやみカルテル行為について勧告をなさいましたが、その実態について御報告が願いたいと思います。
  199. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 石油関係につきましては、かなり広範囲に、昨年終わりごろまで臨検検査を行ないました。  ただいま問題になっておりました石油精製品につきましては、やはりカルテルの疑いを持って立ち入り検査を行ないました。結論はまだ出ておりませんが、そう遠からずこれは結論を下せるものと思います。  なお、そのほかには、ただいま御指摘になりましたような石油化学製品のうち、ポリプロピレンと中低圧ポリエチレンにつきましては、すでに勧告を出しております。今月末までに応諾をするように、非常に短い期限で返事をするように言っておりますから近く決定すると思いますが、その内容をかいつまんで申しますと、ポリプロピレンにつきましては、三菱油化ほか、会社名を省略しますが、合計九社でございます。臨検を行ないましたのは、これは十一月の二十九日、勧告は一月二十三日に行なっておりますが、その内容は、販売価格の引き上げを協定して行なったという疑いでございまして、ポリプロピレンの販売価格を、昭和四十八年十一月十九日出荷分から一キログラム当たりホモポリマーにつきましては百十五円から百七十円に五十五円アップ、それからコーポリマーにつきましては百二十五円のものを百八十円に、これもやはりひとしくアップ額は五十五円でございます。これは当然、その破棄を勧告したわけでございますが、なお、これ以外にもう一つ並びまして、中低圧のポリエチレンにつきましては、三井石油化学ほか合計十一社であります。  中低圧のポリエチレンの販売価格の引き上げを協定したという疑いでございますが、その十一社は中低圧ポリエチレンの販売価格を、四十八年十一月二十一日出荷分から一キログラム当たり当時の価格百三十円程度に対して五十円をやはりアップする、こういうことを決定したのでございますが、なお、その新聞発表の際に、当方の係官が、おそらく質問に答えたのかわかりませんが、便乗値上げの疑いがあるのではないかということに対して、まあ、私はこれは関知しないのですけれども、その疑いがある。と申しますのは、いま矢野さんがいろいろ御指摘になりました原料のアップというものを加えた場合にどうなるかということのほかに、実は当時のこれらの業者の考え方は、さらに電気の節減によりまして、一〇%節減されると操業度は二割落ちる、こういう想定をとっております。ですから、その事実がどうであったか、これからあとから追跡調査すればわかりますが、二割稼働率が下がるという前提で価格をきめた、ところが、そのことを私どもの係官が、それを審査中において、非常に短い期間のラッシュのときでございますが、調べたところでは五十五円というのはいかにもおかしい、私があとからその係官を呼んで、大体どういうふうに見たかといいますと、幾ら見ても四十円アップというのが限度ではなかろうかと思った、稼働率が相当下がるということ、下がりますと――単位当たりの利益が同じという設定で先ほどお話ございましたが、単位当たりの利益のほかに稼働率が下がって総量が減るわけでございます。総量の掛け算から申しまして利益の総額を維持する、そういうことを考えれば、その分だけ余分に上のせになるような形になりますから、そこで四十円ぐらいまで、非常に甘く見てそうなるということでございますので――そういうことを私どもが申し上げるのは、実は公正取引委員会物価庁でありませんから、範囲を逸脱しておりますけれども、しかし感じとしてその程度まで突っ込んだ調査をしてみた、こういう趣旨でございますので、まあ、私どもは、そういう考えを公表した、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  200. 矢野絢也

    矢野委員 公取委としてはカルテル行為、独占行為についていろいろと調べていらっしゃるわけですが、とにかく独占度一〇〇%の業界ですよ。おっしゃったとおりですね。そのような一〇〇%の独占力を持っておる石油化学業界が、このような悪質な便乗値上げをやっておる。そこで通産大臣は行政指導をする、これは前向きの姿勢として評価いたしますけれども、国民生活安定法で標準価格、さらにまた特定標準価格の設定ということが議論されたわけでして、その点、私たちはこの特定標準価格というものは、原価主義でやらなくちゃいかぬということをやかましく指摘したわけですよ。政府は、そのわれわれの意見を取り入れられてこういう形にされたわけでありますけれども、これは業界ベースの価格決定になってしまうわけです。  そこで、行政指導もけっこうですけれども、特定標準価格の設定をされて、そして、もちろんその根底にはきちっとした原価計算というものがされて――法律がどうあろうと、それはできるわけです。原価計算に基づいて出てきた値段を、これが標準価格だと通産省がきめればいいわけですから、そういう形で、もっと拘束力のあるものにされる気持ちはないか、これが通産大臣に聞きたいことの一点でございます。  それから、大蔵大臣にお聞きしたいことは、最後にまとめて総理にお答えいただきたいと思いますけれども、先ほども私は触れましたけれども、インフレ利得を税で徴収する、これはいろいろと方法論的に問題があるということを、何かいろいろおっしゃっているようでありますけれども、これは原則的にはこのような不公平を是正するため、もうけた分を税で取るという考え方は、私は正しいと思います。そうしなければまじめな大衆は承知しません。とにかくもうけるだけもうけて、国民にどんな迷惑をかけようとおれはもうけるのだ、こんなものが放任されたのじゃたいへんです。まじめに働く者がばかを見ます。そして生活を守ろうと思って春闘があると、春闘はよくない、賃上げは物価に影響するというようなことをすぐ総理はおっしゃるわけですけれども、物価に影響しているのは、こういう大企業の悪徳行為なんです。ですから、不正利得を税で取ることもけっこうですけれども――悪いとは言いませんが、それじゃおそ過ぎるのです。上がった、消費者は高く買わされた、その結果、もうかり過ぎた分を税で取るというわけですから、結局、消費者から国が税金を取っているのと同じことですよ。結果として高値は消えないわけです、何ぼ税金を取っても。この点について、大蔵当局としてどういうお考えを持っていらっしゃるか。  総理にはいまの二点、この石油関連製品について行政指導されるとおっしゃっていますが、もう悪徳ぶりははっきりしています。これから検討してなんて、なまぬるいことをおっしゃらないで、断固とした措置をおとりになることが、私が冒頭申し上げた政治不信を解消する最大の近道なんです。そういうことをおやりにならないで、私は国民の協力を期待したい――国民はみな日本の国が大事だと思っていますよ。こんな世の中でいいン思っていません。納得のできる方向なら国民は全部協力します。しかし、こんな大事な問題を――先ほどの商社の問題もそうです。メーカーのこの悪徳ぶり、こういうことを何の手もお打ちにならないから、幾ら総理がそこで大きな声を出されても、国民はそうだ、われわれの総理大臣だから、総理の言うとおりやっていこうという気が起こらないのですよ。そういうことを踏まえて、この石油関連製品の価格のこのべらぼうな値上げにどういう手を打たれるか。さらにまた、いま取りざたされておる不当利得の課税、それよりもこれを下げることのほうが大事なんだ。どういう手を打たれるか。  通産大臣、大蔵大臣、総理、順番にお答えいただきたいと思います。
  201. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず、一月一日以降入ってきておる新しい油について、二倍に原価は上がっておりますけれども、これは上げさせないといういま行政指導をしております。それによって油の原価をどの程度にきめるかということを、いまわれわれは検討さしておりまして、二十日以降は新しい油が入ってきておりますから、それを上げさせないために赤字が出ておるわけです。これは赤字を当分続けさしてよろしい。そして、いつその行政的な値段をきめるかという時点を、いまいろいろ探索しておるわけです。情勢によっては、油の模様がだぶついてくれば下がるという一部のうわさもあります。そういうような情勢も踏まえまして、適切なときにその値段を、行政的に指導価格をきめて、三月決算には不当利潤を生まないような低位に値段をきめよう、その時点をいま鋭意探索しておりまして、それは実行いたします。
  202. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください。  ただいまの矢野君のお考えと中曽根通産大臣のお考えと、かなり開きがあるようです。どうぞ通産省はすみやかによく研究されたいと思います。これは委員長から御注意を申し上げておきます。
  203. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、いま矢野さんの御指摘、非常に感銘深く承っておったのです。そういう問題は、私は、これは石油製品ばかりじゃない、おそらくあらゆる物資についてあるんだろう、こういうふうに思うのです。  私は、今日の物価情勢というものを見まして、まあ、とにかく物価というものは非常に混乱しちゃった、もう物価と言うに値しない、これは相場である、投機相場であるというくらいな感じがするのです。たとえば鉄につきましては、メーカーから丸棒については四万五、六千円で出るのでしょう、それが末端では十一万円だとか、最近は下がって九万円だとか、そういうふうな値段で売られる。私は、物価というものは、これは原価に利潤が多少積み重ねられる、それが需給で幾らかのゆれがある、そんなところがほんとう物価だろう、こういうふうに思うのですが、そういう物価と言うことのできないような事態にいまはなってきておる。ですから、非常に混乱した、私は、狂乱状態にあるとも言っておるわけなんです。これを税で何とか是正せい、こういう話があるんですが、税でやりますと、いろいろ問題があるのです。しかし、これは主力的な手段じゃない、これはどこまでも補完的な手段である、そういうふうに思います。やっぱり私は、この物価問題の主力、それは矢野さんの御指摘の線で極力やってみて、しかも救い切れないという面があればこの税が発動する、こういう問題だろう、そういうふうに存じます。
  204. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いろいろ御指摘ございましたし、政府物価抑制のために具体的な対策を早急にとらなければならない責任を負っておるものだということを自覚いたしております。御指摘で、何もやってないという御議論もございますが、しかし、物価というのは需給のバランスの上につくられるものでございまして、いままで十年間卸売り物価が一・三であるというようなことは、需要に対して入札を行なう、入札は安い価格のものに落ちるというような状態でありましたから、物価は非常に安定しておったわけです。ところが、いままで安定しておったものが、急激に十年分も上がったというところに問題があります。  それは一体原因は何かといいますと、いままで全く経験したことのないものが、非常に短い間に一ぺんに起こったというところに問題があるわけです。あなたが先ほどからも述べられたとおり、石油の問題、エチレンの問題につきましても、いわゆる二カ月か三カ月のうちに二回も三回も上げなきゃいかぬというような状態が、現実的に前提であったことは事実でございます。  だから、その間に、上げ過ぎであるという御指摘はよくわかりますが、上げなければならない前提条件があったことは事実なんです。ですから、それに対して上がっているという……(発言する者あり)だから、そこは、あなたの話はよく聞いているわけですから、私の答弁も黙って聞いてくださいよ。それはそういうことですよ。ですから、それは上げるだけの――とにかく石油が上がるのですから、これは上がるのですが、それはあなたが言ったように、そこに不当な積み重ね値上げがあった、その前段に、通産省も物価局もあるのだから、なぜこういうものが総力をあげてやらないのか、しかも権限外の事項であっても、公取はすでにやっているじゃないかというところ、確かに指摘される面があります。ですから、そういう面に対しては、これから生活必需物資に対しては、これは当然、法律が定めておるのでございますから、政府責任がございますし、生活必需物資以外のものであっても、私は、物価の安定というものに対しては、政府は可能な限り最大の努力をしなければならぬ、それはもうスピーディーに行なわなければならないということでなければ――あとから税で徴収しても、結局、国民から消費税を取ったと同じかっこうになるじゃないかという気持ち、よくわかりますよ。だから、私は、あなたのことを理解しているのです。ですから、そういう意味で、物価局をつくっていただいたわけでありますし、法律も与えられておりますし、また当然、行政府が果たさなければならない責めがあるわけでございますので、もう緊急に――あなたから、そういうものを御指摘になっていただいて、御労作でございますなどと言わないように、これはひとつ大いにやってまいりたいと思います。いままででもやっていないわけはないのです。実際は業界を集め指導し、それからいろいろなことをやっておるのですが、そんなものよりも実際のほうがより上がっているじゃないかという御指摘ですから、それは私も認めます。そういうものに対しては、これから十分な努力をしてまいります。  ただ、議論をしますと、あなたの議論、私はよくわかるのですよ。わかるのですが、公取が、ちょっとここでもって高橋君述べられたとおり、それはナフサが上がったから製品がこれだけ上がるという計算のほかに、いろいろな電力の問題もあるし、操業度の問題もあるし、需給の問題もございますし、それからもう一つは、いままでの金利を引き上げられて金利が高くなった、市中のコールを入れなければならぬといういろいろな問題がありますので――そんなむずかしい原価計算じゃないと私は思うのです。これは少なくとも両三年度のものを基準数字として押えて、それから原材料の上がったものだけを足していくことは、そんなむずかしい作業ではないと思う。そういうところには、幾ばくか行政機構に対しても欠陥もあるかと思います。だから、横割りのものが、どうもほんとうに省でぴしっとまとめて、各省がその次の日には必ず結論を出すというようなことをやることに対しては、確かになれておらないという面があるかもしれません。ですから、これからはいま述べましたとおり、これは物価を抑制しなければならないということでございますし、大きくは、とにかく外務大臣がアメリカまで出張して、石油会議にも参加をしたり、いま来ておられる産油国の代表とも毎日会っておる、外交も展開し――少なくとも需給の、いわゆる供給力が需要よりも多くなれば、この問題は解決できるわけです。  ですから、そういう問題やすべてのものを考えながら、物価問題、いわゆる個別の物価問題に対しても、慎重にではなく、多少押え過ぎじゃないかと言われてもけっこうですから、これは行政は可能な限り最大の努力を行なうということです。これはやらなければ、実効があがらなければ、四月二十九日まで国会があるのですから、毎日責められるわけです。責められるだけじゃないですよ。国民に対して、ほんとう行政に対しての信頼をかちえなければならないというのですから、私はいいかげんな答弁をしていません。
  205. 矢野絢也

    矢野委員 ようやくわかった、総理をはじめ皆さん方わかったということは、こっちもわかりました。しかし、これからどうするかという話については、これからやるんだ、やるんだということなんです、はっきり言えば。毎日毎日の生活に国民は苦しんでいます。そんなゆうちょうなことでは、国民は納得できません。しかし、時間も参りました。この問題、引き続き党としても全力をあげて今後も政府の対策を見ていきたいと思います。  これは委員長にお願いを申し上げたいのでございますが、先ほど六大商社並びにトーメンの代表の方々の証人喚問をお願いいたしましたが、石油精製の関係で日本石油、東亜燃料。ナフサ分解の関係で三菱油化、住友化学。ポリプロの関係で同じく三菱油化、これは先ほど申し上げたから省きますが、三井東圧。中低圧ポリエチレンで三井石油化学、昭和油化。高圧ポリエチレンで住友化学、三菱油化、これは先ほど出てまいりましたから重複しております。塩ビの関係で日本ゼオン、鐘淵化学。ポリエチレンで旭ダウ。これは、それぞれこの製品における第一位、第二位の生産力を持っておる大メーカーであります。  これらの会社の社長に、この辺の事情をさらに衆議院としても詰めていく必要があると私たちは考えておりますので、本委員会において証人喚問をよろしくお願いいたしたいと思います。  時間が参りましたので、以上で私の質問を終わらしていただきます。
  206. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの矢野君の御要望でございますが、社会党並びに共産党からもその件について要望がございました。したがいまして・理事会を開き、証人として喚問するか、あるいは参考人として呼ぶかは別でございますが、いずれにいたしましても、これはどうしても本委員会で結論を出したい、こう考えておりますので、理事会に十分その意を含んで協議していただくことにいたします。
  207. 矢野絢也

    矢野委員 どうも委員長、ありがとうございました。(拍手)
  208. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  209. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面する内外の政治、経済情勢につきまして、総理並びに所管閣僚に御質問をいたしたいと思います。  最初、外交問題からお尋ねをいたします。  アジア諸国との友好親善の必要は、私はいささかも疑っておりません。しかるに、去る一月十五日、インドネシアのジャカルタにおいて、学生、群衆による反日デモが暴動化したことは、両国政府関係者にとって深刻な影響を与えたと思います。とりわけ、学生デモ隊の一部は日本大使館に向かい、日の丸の旗を引きずりおろし、二階建ての同大使館のガラス目がけて投石を始め、同大使館の調べによると、割られたガラスは合計二十三枚にのぼったといわれております。この事件は、単なるデモや暴動とは全く異なった印象をもって日本国民は受け取っておると思います。日本の国旗が、しかも総理大臣訪問の日に、治外法権と国際法的にも認められている大使館に押し入って引きおろされたことは、相手がいかなる者であるかは別として、事は重大であると信じます。  日本総理大臣としてこれをどう受けとめておられるか、まず所信のほどをお伺いしたいと思います。
  210. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 インドネシア、ジャカルタ大使館において国旗がおろされたということに対しては、たいへん遺憾なことだと考えておるわけでございます。これはその後の調査で、子供が雑踏の間にこれを引きおろした。破られてはたいへんだというので、その事実に気づいた警察官が包囲をしまして、これを取り上げて掲揚塔に返したということでございますが、これに対しては、須之部大使から厳重に抗議をいたしました。いたしましたと同時に、マリク外相が大使官邸を訪ねまして陳謝をいたしたわけでございます。また、公式の晩さんに先立ちまして、首脳の会談の場所で大統領から遺憾の意を表されました。本件のようなことが起こったということで日イ両国の永遠の友好が傷つけられることを真におそれておるし、このような問題に対しては深い理解を示されたいということでございまして、   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 私は、大統領からの陳謝もございましたし、マリク外相をわざわざ大使公邸まで派遣をせられて陳謝の意を表されたことは承知をいたしております、これを契機に日イ両国のこれからの友好を傷つけないように、お互いに協力をしてまいらなければならないと思いますと、私の印象を述べておるわけでございます。  このような問題を再び起こさないように努力をしなければなりませんが、ただこれは、私はすべてが日本側の原因だとは全然思っておりません。いずれ御質問があればこまかくお答えをいたしますが、しかし、日本人の経済活動や日本人の生活態度や、いろんな問題もこれあり、必然的にそうなるような社会的な背景もあったにしろ、日本大使館や日本の自動車会社がちょうど目標になり、口火をつけるようなときであったということではございますが、しかし、これらのことが起こらないように注意をしたい。また、国威の尊厳を傷つけたということに対しては、私自身も深く感じておりまして、これから海外に活動する人々、企業等に対しても自粛を求めたり、真に友好のきずなで結ばれるようにしなければならないと、しみじみたる思いでございます。
  211. 塚本三郎

    塚本委員 外務大臣やスハルト大統領が遺憾の意を表したと報道されております。それは応急の措置としては、幸い会談等が予定されておりましたので、一国の代表として、総理にその意を表されたことはけっこうなことだと思います。  しかし、私は思うのでございますが、国家対国家の問題でありますから、これらの問題は、正式に対等の立場処理することが正しい処理の方法ではないか。それには国家の機関を通じて陳謝を要求し、そして向こうからも正式に陳謝の意思表示をしてくる、こういう形でrることが、国旗の尊厳と、国家が対等な立場で将来長く長く友好を築くために必要ではなかろうか。当面、会ったから大統領が陳謝をせられた、あるいはまた、向こうの大使館に陳謝をなさったというだけではなくして、一国の独立した外交関係の立場から陳謝を要求し、遺憾の意を表してぐる、こういう形ですることは、決して相手方を傷つけたりあるいは友好を阻害するものではないと思います。したがって、きちっとそのように外交ルートを通じて処置をすることが、おとなとおとなの独立国の処置ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  212. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国旗の尊厳に関連しての御質問でございますが、塚本書記長が言われるとおりだと思います。こういう問題はけじめをつけた処置を講ずべきものと私も心得ます。したがいまして、日本政府といたしましては、須之部大使が先方に正式に抗議をいたしました。それにこたえまして、先ほど総理からお話がございましたように、マリク外相が大使館を訪れて陳謝の意を表明されたわけでございます。  私どもこの際、どういう措置を講ずべきかということをいろいろ検討いたしたのでございまするが、たまたま総理大臣が現地におられたわけでございまするし、その後最高首脳の間に、本件についての先方からの深甚な陳謝の意思の表明もありましたということでございましたので、本件につきましては、国際慣例上、一応の正式な措置がとられたものと判断いたしまして、それ以上の処置には及ばなかったわけでございます。  しかし、仰せのように、国旗問題につきましては、本件ばかりでなく、政府としてえりを正した措置が常に用意されていなければならぬと私は心得ております。
  213. 塚本三郎

    塚本委員 大使館に乱入してガラスなどを損壊したこと等は、額の大小はともかく、外交公館不可侵の条約に違反していることも当然だと思います。したがいまして、国旗の問題と、大使館に侵入して二十三枚のガラスその他を損壊したということについては、原状回復の要請、すなわちはっきりと、このことも、額の大小を問わず賠償を要求してけじめをつけることが、おとなとおとなの態度だと思います。それはいかがでしょう。
  214. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せの、当然の措置を講じてございまして、わがほうといたしましては、損害賠償の権利を留保いたして先方に申し入れてございます。
  215. 塚本三郎

    塚本委員 ガラスの二十何枚くらい、あるいは、そんなこと留保するのじゃなくして、具体的にその折衝に入って、おそらく直しておると思うんです。その点はどうでしょうか。あとからどうこうするということになっているんですか。
  216. 大平正芳

    ○大平国務大臣 須之部大使が本件について抗議いたしました段階におきまして、これに伴う損害について、わがほうとして権利を留保いたしておきますということを、前もってインドネシア政府に対しましては正式に申し入れてございまして、本件の処理は、在外公館を通じまして、仰せのようにきちんと処理いたしたいと思います。
  217. 塚本三郎

    塚本委員 一月十五日でございますから、もう一週間以上の月日がたっております。だから、処理いたしたいと思いますではなくして、きちっともうそれがなされておらなければいけないことだと思います。重ねて私は、こういうことをすることは決して非友好の態度ではない、むしろ私どもが、御無礼な表現かはしれませんけれども、あいまいにしておくことが、相手国に対して、何かしらおおようにこちらがかまえておるというその裏には、まあ後進国だからと、ぐずぐず言うよりもというふうな気持ちがあったらたいへんだと思います。  そう申し上げますることは、総理、個人的なことを申し上げてたいへん恐縮でありますが、総理がお帰りになったとき、記者会見の席上で、日本人の反古の態度の中に、日本人も現地においては、現地語をもう少し勉強すべきだという話がありました。私は、そのお話を聞いておって、はっと思ったのでございます。インドネシア語となぜおっしゃらぬのでございましょうか。現地語という表現は、やはり何かしら後進国のような表現、たとえば、アメリカのいわゆる代表者が日本に来て、そして日本のことを、現地語をもう少しアメリカ人は勉強すべきだとか、あるいはイギリス人が来て、われわれは現地語を勉強すべきだと言えば、イギリス人が、あるいは日本人でも、何かしら知らず知らず使っておるその表現の中に、相手に対する上と下の関係、おおようにかまえてやろうとする態度があったとするならば、これは邪推であればけっこうでございまするが、私は、そういうことをアジアの中における日本人の姿勢として反省をしていかなかったら、彼らはさなきだに経済協力を受けておる、援助を受けておるという相手国に対する首脳部の態度というものが、国民の目の前に映ってくる、そのことが、いわずもがなの紛争を巻き起こす種になりはしないか。したがって私は、そういう立場から、きちっと、相手もおとなの国として堂々と抗議を申し込み、いけない点は堂々と賠償を要求し、そうしてわがほうは、総理がさきにおっしゃったように、やはり経済でもって行き過ぎがあったところはこちらの間違いと反省をする、そして対等の、是は是、非は非としたそういう態度をとることが、アジア外交にとって最も大切だと思うわけでございます。  私が指摘を申し上げたから、外務大臣がそのような御答弁をなさったとは思われませんが、一刻も早くこのことの処置をおとりになっていくことが、将来の日本にとって大切だ。私は、より以上にアジアにおける日本立場は微妙でありますし、しかもまたこれから善隣友好の外交をとっていただかなければならぬ日本立場だから、あえてこの点を主張申し上げるわけでございます。総理、いかがでしょう。
  218. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほども申し述べましたように、現地大使の抗議に対して直ちに反応を示して、マリク外務大臣が大使官邸を訪れて陳謝をすると同時に、大統領が公式に陳謝をされ、しかも本件が、日イ両国の長い間の友好の傷にならないようにという懇切丁寧なる発言があったわけでございますので、こういう問題を二度と起こさないように、日本人としても正すべきところもあるようでございますし、お互い、こういうものをひとつ前提として長い友好のいしずえを固めてまいりたいと、こう述べておるのでございます。  まあ、大使館邸のガラスの問題ももちろんでございますが、あそこに進出をしておる日本人の財産も損壊をされておるわけでございます。これは、ピルが焼失をしておるとか、車が相当程度破壊をされておるというような問題もあるのでございまして、あわせて須之部大使には、十分に措置をするようにということを述べておいたわけでございます。これらの措置は、外務省に公電として報告をしてございます。同時に、私も帰国後の閣議においては、私がとった処置に対しては閣議に報告をし、閣議もこれを了としておるわけでございます。  それから、記者会見において現地語と言ったことに対する、まあ非常に配慮のある発言でございますから私もすなおにお答えをしますが、あのときはインドシナだけではなく、ASEAN五カ国という問題を対象にしての質問でございますから、現地に住む人たちは、その国の、と言ったほうがいいかもしれません。しかし、その国といってもなかなかむずかしいんです。これは英語を使っておるだけではなく、三カ国語、四カ国語を使っておりますし、まあ理屈を言うわけじゃありませんが、その国の、その土地の、と言うところであったかもしれませんが、それはそんなに、何も後進国、いわゆる開発途上国としての立場で現地語と述べておるわけでないことは、これはもう十分理解がいただけると思います。  これは、実際において私が向こうでいろいろな指摘をされたのでございますが、大都会に住んでおる人たちにだけいろいろな問題がございまして、実際山の中に入って相当困難な仕事をして、木材を伐採しておるような人たちは、ある意味では学校の先生でもあり、生活の知恵を教える兄貴でもありというようなわけで、非常に現地ととけ込んでおるわけであります。一ヘクタールで一本ないし三本しかないラワンの木を切ったら伐根をして、そのあとにまたラワンの木を植えるというのが過去の考え方でございましたが、そうではなく、ラワンの木とたくさんのまわりの木が交差になって伸びられないというものを、日本人は、ラワンを切って空間が広々とした場合、そこにある何本かの他の雑木といわれておったものを間伐をしておくと、五年間で十五年分ぐらい伸びるので、そういうことが日本人に教えられた一つの知恵であり、それが……(「答弁簡潔」と呼ぶ者あり)それが世界で一番優秀なマッチの軸材になるというようなことで、たいへん日本人との間がうまくいっているのだ。だから、そういう意味で、もっと現地にとけ込むということになれば、日本人の現地――まあ現地各国に対する協力が何十倍、何百倍にも評価されるんだということを現に指摘されておりますので、そういう感じをすなおに述べたということでございます。
  219. 塚本三郎

    塚本委員 特に国旗の問題は、かつて長崎におきます中国の問題で、大使館とは違いまして、一見本市だと思いましたけれども、それだけのことで、十年間の国交が断絶された事例は、いまさら取り上げるまでもないと存じております。したがいまして、もう少しこの点、姿勢を正して両国が尊厳を守る、この態度をきちっとしていただくことが必要だと思いましたので、冒頭にあえて申し上げたような次第でございます。  それから、年末から年始にかけまして、中東及びアジア外交では、経済援助の話があらゆる場面で新聞の記事となっております。日本経済援助がややもすると、悪い表現ですけれども、札束外交と受け取られたらたいへんでございます。総理大臣あるいは三木副総理中曽根通産大臣、小坂特使等々がたずねられた国々で、経済援助の中身をどのように約束をせられたか、この点、具体的に、どこの国にどれだけの金額を約束をせられたのか、御説明いただきたいと思います。
  220. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はブルガリアへ参りまして、ブルガリアでは民間借款二年間に一億ドル、そういう話をしてまいりました。なお、あそこヘホテルを建設するという話がありまして、約千五百万ドルのものでございますが、そのうち基金からある程度お金を出してもらう、そういうことがブルガリアでございます。  それからイラクにおきましては、前から石油のリファイナリー、あるいはペトロケミカル、あるいはセメント、あるいは鉄道、あるいは製鉄所等の建設の話がある程度詰まっておりまして、それらの工業建設に日本が協力するということと引きかえに、十年間に原油を九千万トン、それからLNG、これは千二百万トン以上、それから石油リファイナリー二十万バーレル・パーデーを建設しますが、これの製品の大部分、モースト・ポシブル・パーツという表現でやりました。これは大体一億トン以上できるのでありますから、少なくとも五千万トンは来る、これを合わせると一億六千万トン以上になります。一億六千万トン以上のものを十年間に日本に供給する、日本側はそのかわり十億ドルの政府及び民間借款を与える、利率は五・二五%である、そういう話で両方合意してまいりました。  以上でございます。
  221. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私が中東の特使として参りまして約束をした問題は、スエズ運河の改修についてであります。  日本が海洋国家であるということと、スエズ運河が国際水路であるという点から、日本が第一期工事として一億四千万ドルの借款を与えるという点を承諾いたしたわけでございます。そのエジプトとシリアが、今次の中東戦争で非常な被害を受けておる事実にかんがみて、そして経済協力の要請がありましたので、この点についてはただいま折衝中でございます。何らかの形で日本が、直接中東戦争の被害を受けたエジプトとシリアに対して経済協力をするという方針のもとに、いま具体的なことを折衝をしております。  サウジアラビアに対しては、緊急物資、これのあっせんの要請がありました。セメント五十万トン、プラスチック材料一万六千トンの要請があって、これは政府があっせんをいたしておる次第であります。
  222. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私はASEAN五カ国を回ったわけでございますが、この五カ国とも、日本との間には経済的な関係は非常に密接でございます。そして、日本経済的進出に対してだけ反撃があるような感じが日本人には多いわけでございます。そういう意味では、日本人は商社活動やいろいろなものに身を正すというメリットもあるわけでございますから、そういう意味では、私は必ずしもこれを否定しなくてもいいと思います。  しかし、現地との接触においては全く逆な立場でございます。これはなぜかといいますと、ちょうど訪問をした五カ国との間には、インドネシアと日本との間は日本のほうが払い超でございます。これは石油やガスや木材を入れているわけですから、当然そうです。日本にこれが入ってこなければたいへんなことになるわけです。それでまた、フィリピンからも木材を入れたりいろいろなことをしておりますので、これは日本もどうしても受け入れなければならないという立場でございます。  それから、先ほどから問題になっておるナフサの問題がございますが、これはシンガポールから入ってこなければ、日本の値が急激に上がるということで、バンカーオイルやナフサの供給に対しては、これはいかなる努力をしても供給は確保します、確保するかわりに、日本から受け取るところの鉄とかそれから原材料、これはどうしても責任を果たしてもらわないと、こちらからのナフサを出したくても出せなくなるのですという、非常に深刻な状態をお互いが持っておるわけであります。  それから、インドネシアの前段におけるタイなどでは、暴動が起きそうだというようなことを報道せられておりましたが、タイは御承知のとおりの状態でございまして、日本から、稼働しておる工場の九〇%まで原材料を入れておるものもございます。七五%のものもあり、五〇%のものもあり、三〇%が最低である、こういうようなことでございまして、こういうものが入らない場合非常に困る、だからタピオカとか一次産品の自由化をもっとして、割り当てワクをふやしなさい、こういうふうに学生諸君なども言っておりますし、いろいろな要求はあります。確かに年間二億ドル近い向こう側の払い超でございますから。しかし、その程度のものは、円借款その他でもお互いが協力し合っておるわけでございまして、問題は、その契約ベースのものをどうしても確保しなければならない、契約の後の追加要求というものに対してどれだけ供給できるかということが、ASEAN諸国全体の大問題なのであります。  特に、その中でもって五十万トンの要求をしておる肥料に対しまして、一――六月には三十万トンしか供給できないという現実がございます。あと二十万トン確保できなかったら、それはASEAN五カ国における食糧問題は一体どうなるのだ、日本はどんなことをしてもあとの二十万トンを確保してもらいたい、こういうことであって、これは、日本との関係というものがいかに密接なものであるかということに対しては、日本で報道されておるような状態、日本人が考えているような状態よりも非常に深刻な状態である。ちょうど中東と日本のような状態であって、石油の供給がとめられたら、稼働しておる機械は全部とまってしまう、そういう状態を考えた場合の社会不安ということを考えた場合、私は深刻に、日本とASEAN諸国その他の国々の間というものはよくしておかなければ困ると思っているのです。  そういったようなことで、今度は訪問できませんでしたが、北海道と同じ地域に七千万人の人たちを擁しておるバングラデシュ、ここで二百五十万トンの米が不足でございます。だから、それを日本が少しでも肥料を供給することによって、お互いにASEAN五カ国から幾ばくかでもバングラデシュに米が出せるとしたならば、これはお互いの協力、実りある協力になるのだから、そういうことも前提にしてお互いの交流と協力を考えましょう、こういうことでございますから、そこらはひとつお考えいただきたい。  そこで、一体幾らということでございますが、マレーシアで第三次円借款――第二次円借款が六百四十億だと思いますが、第三次円借款を交渉中でございましたので、私が参りましたときに、総額をきめたいという事務当局の意向でございましたので、これは三百六十億だと思います。これは事務当局間でも合意に達し、首脳間でも合意に達し、感謝を受けてまいりました。  それからもう一つは、インドネシアにおいて七百五十万トンの液化ガスを供給するという問題を前提とした借款がございます。大体二億ドルないし三億ドル、こういうことであって、アメリカとの持ち分をどうするかというような問題がございましたが、これは五百八十億円、円ベースで協定を行なったわけでございます。  この二件はもう事務当局で、ずっと調整中のものでございますし、最終的に首脳間で円ベースでどういうふうにきめるか、これは三百六十円できめるのか、三百円できめるのか、二百八十円できめるのか、同じような議論がございますが、そうではなく、日本円として三百六十億円、五百八十億円ということでお互いの合意ができたということでございます。
  223. 塚本三郎

    塚本委員 私が申し上げたかったことは、いま総理がお話しになりましたように、向こうで約束をせられたことが実は果たされなかったり、あるいはまた、日本経済事情によって満たされなかった場合に、また日本はうそをついたという形になったらたいへんでございます。いまお話しの中に出ておりましたセメント、プラスチック材料等におきましては、国内でもたいへんに沸騰しておる問題でございます。金額をお聞きしますると、これだけでも総計約二十億ドルをこえておるようでございます。金の問題ももちろんでありまするが、この物に対する供給と先ほどからの生産との問題、あとでこれは論じてみたいと思いまするが、はたして約束が果たせるのかどうか。万が一国会の御答弁のようにすれ違うような約束を東南アジアでなさったら、たいへんなことだと思います。したがって、きちっと約束は守らなければなりません。そういう意味で、御注意申し上げるとともにお伺いしておるのです。いかがです。
  224. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおり、先方に対して国が約束をしたことが実行できなかったというようなことでは、これはもうたいへんなことでございますので、実行はするということでございます。実行をするというよりも、いままでは交換公文を発してから後、長いこと時間がかかる。それはまあプロジェクトの選定ができなかったり、またその後値上がりをしたり、また個所が変わったり、いろいろな問題があるにしても、これらの問題に対してはピッチを上げてやらなければいかぬというふうになっておることは事実でございます。しかも、今度の借款などは、向こうからもらわなければならないというたいへんなものを控えておるわけでございまして、どんなことをしても、この程度の借款が実行できないというようなことでは、これはみずからの生活が困るということで、全く相対的なものであるとお考えいただいてけっこうだと思います。  それから、先ほどちょっと数字が間違っておりましたから申し上げますが、マレーシアとの第二次借款六百四十億というのは向こうの要求だったようでございまして、実際の決定額は、第二次は三百六十億でございますから、六百四十と言った数字は三百六十に訂正いたします。それから、インドネシアの五百八十は五百六十でございますから、そういうふうに訂正いたします。
  225. 塚本三郎

    塚本委員 ぜひそのような点、約束違反にならないように、このことだけは、やはり彼らはよけいに、そうでなくても問題を起こす心配があると心配をいたしますので、ぜひこの点、御三方おいでになりましたその約束は、誠実に果たしていただきますることを心から期待いたします。  次は、北方領土についてお尋ねをいたします。  一九七三年十月十日の日ソ共同声明で、「双方は、第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが、両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与することを認識し、」「一九七四年の適当な時期に両国間で平和条約の締結交渉を継続することに合意した。」という共同声明でございます。  ところが、このことは、委員会におきまして外務大臣あるいは総理大臣も、この未解決の問題の中に領土を含む、そしてまた、領土だけではない、経済問題等があるからこういうふうな表現をしたのだというふうに国会で御答弁をなさっておられます。ところが、外電などによりますると、領土問題は論議されなくて、この文書の中には何も書いてない、だから、日本はもはやこのことに対して発言権がないのだというような情報が伝わってきております。そんな心配ございませんか。
  226. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先般の日ソ共同声明は、いま御指摘の問題について三つのことが書かれてあるわけでございます。  第一は、いま御指摘のように、戦後未解決の問題を解決いたしまして、平和条約を締結するということが一つでございます。第二は、その平和条約の内容について交渉したということが書かれてあるわけでございまして、第三には、一九七四年中に継続して交渉するということがうたわれているわけでございます。  第二に申し上げました平和条約の内容について交渉したということ、平和条約というのは、御案内のように、領土条項というものが最大の問題でございますし、現に総理とソ連の首脳との間に、今度の日ソ交渉につきまして最も時間を多く割愛いたしましたのはその交渉であったわけでございまして、したがって、このことは、領土問題がそこからはずされておるというような情報は曲解であると私は思いまするし、ソ連当局も、未解決の問題の中に領土問題が含まれておるということは確認いたしております。したがって、そういう情報は私は曲解であると確信いたしております。
  227. 塚本三郎

    塚本委員 共同声明によりますると、本年その継続交渉を行なうとなっておりますが、いつごろ、どこで行なわれる予定ですか。
  228. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本年中に継続交渉するということだけがきまっておるわけでございまして、いつ、どこでということにつきましては、外交ルートを通じまして今後詰められるべき問題であると心得ております。
  229. 塚本三郎

    塚本委員 それは、こちらから申し出るべき、いわゆる立場だと思いますが、どうでしょう。
  230. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本年中に継続交渉するということは、合意に達しておるわけでございまして、それをどちらから申し出ますか、そしてどこでやりますか、だれが出席しますか、それは外交交渉におまかせいただきたいと思います。
  231. 塚本三郎

    塚本委員 しかし、国民待望の領土の返還を詰めなければならぬので、そのことを外務大臣が、いつごろ呼びかけたいということをはっきり言明なさるのが、あなたの立場じゃございませんか。人ごとのような御返答は国民の期待に反すると思いますが、いかがでしょう。
  232. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、したがって、日ソ共同声明には、本年中に継続交渉をするということに合意を見ておるわけでございます。私どもこのラインに沿いまして、国会が終わりまして、できるだけ早くそういう機会を持ちたいと考えております。
  233. 塚本三郎

    塚本委員 参議院選挙前には行なわれるのですか。
  234. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだそこまで先方との話し合いは詰まっていないわけでございますが、共同声明のラインに沿いまして、できるだけ早く話し合いを詰めたいと考えております。
  235. 塚本三郎

    塚本委員 すでに昨年の十月、総理及び外務大臣が訪ソなさったときに、ある程度のめどがつくものと私ども国民は期待しておったのです。  申し上げるまでもなく、北方領土の返還は、私ども民社党の立場から申し上げるならば、本来、沖繩以上に先に返るべき性質のものだ、そして返せと叫ぶべき日本立場だと信じております。なぜならば、北方領土は――日本とソビエトは戦争しておるわけじゃないのです。中立条約のある間に向こうから一方的に宣戦布告を受けて、そうして取られた島でございます。沖繩は、日本が宣戦布告をして戦って負けて、向こうを置いて逃げてきた。こういう形ですから、沖繩の場合はいわゆるアメリカの好意にお願いをすべき立場でありまするけれども、北方領土は、日本の固有の領土だけは返してくれと当然要求をすべきものだと思います。そういう意味では順序が逆になっておるのです。しかし、そのことを私は責めるつもりはありません。なればこそ、もっと大きな声で、もっと熱心に、いろいろな、客観情勢がありまするから強引なことを申し上げるわけじゃありませんけれども、もっと御熱心にこのことの折衝をなさることが必要だと思って、私はそのことを申し上げるのです。  重い腰をあげて総理及び外務大臣がおそろいでお出かけになりました。にもかかわらず、中身さえも危ぶまれるほど、外電がそうやゆをするほどの中身では困るのです。だから、そういう意味で、はっきりと、実はこういう中身になっておるのです、だからこういう立場で実は本年は交渉いたします、国会が終わったらすぐ出かけます、あるいは参議院選挙が終わったらすぐ出かけます、そういう計画で相手に当たっておるのです、しかし相手は受けるかどうか、まだ返事は参りません、しかし日本の態度はこうですということを、国民の前ではっきりと申し上げるのが、あなたの国民に対する責任じゃございませんか。いかがでしょう。
  236. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日ソ両国首脳間で、ことしじゅうに継続交渉をするということを合意いたしておるわけでございまして、これはお願いすべき性質のものではないわけでございます。両方がそのように合意いたしておるわけでございまして、それをいつ、どこでやるかということにつきましては、外交交渉を通じて詰めてまいりますと申し上げておるわけでございまして、私ども双方の政治日程を考えながら、できるだけ早くそういう運びにいたしたいと考えております。
  237. 塚本三郎

    塚本委員 国民は一刻も早くと願っておるのです。ですから、外交交渉でもって、そのことも早くおやりください、こういうことを私は実は希望しておるのです。  先ほど申し上げたように、総理も外務大臣もおそろいでおいでになって、まだめどがついていないのです。だから一刻も早く、もう正月からは七四年ですから、わがほうとしてはこういう状態ですというように、相手のあることですからいつ開かれるかわからぬけれども、こちらの希望だけでも国民に、だからしばらく待ってくださいというふうに申し上げるのが、あなたの立場じゃございませんか。外交交渉などと、わかっております。その、こちらとして積極的な態度を国民に納得さしていただきたい。どうでしょう。
  238. 大平正芳

    ○大平国務大臣 双方の政治日程を詰めまして、できるだけ早く御期待にこたえたいと思います。
  239. 塚本三郎

    塚本委員 できるだけ早くということばをいただきましたので、これ以上論じておりますと時間が過ぎていきますから、そのことを強く希望いたしておきます。  その場合に、当然日本としては無条件で返還を主張するのが日本立場だと信じます。しかしながら、相手はなかなか容易な国ではないということも想定できます。しかもまた、相手は相手の立場で、いわゆる千島列島の問題だけではなくして、一つのことが万波を呼ぶと、彼らもいろんな条件等をつけて話をそらさせるということも伺っております。その場合、何はともあれ、一刻も早く返還させるために、ある程度こちらとしても――中身を私はいま聞こうとは思いませんけれども、条件を受けてでもこちらは返還を要求すべきことになるやもしれません。そういう点について、何らかの感触等を、いままでの折衝の中で、あるいは総理の気持ちの中で、相手との中で、こういう点が問題だというような感触でもおありになったら聞かしていただきたいと思います。
  240. 大平正芳

    ○大平国務大臣 塚本さんが御主張になられるように、そして、多くの日本人がそう確信いたしておりますように、北方領土はわが国固有の領土でございます。したがってソ連側にお返しをいただくということでございまして、これは無条件でなければならぬと心得ております。  第二の問題は、それはそれとしても、何かこの問題の周辺に感触を読み取ったかという意味の御質問がございました。  先方の首脳が本件につきまして繰り返し御主張に相なりましたことは、まず、日ソの友好関係はもっともっと厚みを持つ必要がある、これをだんだんあたためてまいる必要があるということを繰り返し述べられたのであります。言いかえれば、このことは、今日の日ソ関係は、まだこの問題を解決するには十分のあたたまりを持っていないのではないかという反語ではないかというように私は感じ取ったわけでございます。したがって、総理からは逆に、真の日ソの友好関係を固めてまいる上から申しましても、まずこのことが解決さるべきであるというのが、こちらからのプレゼンテーションであったわけでございます。そういったところから、先方の考え方というものについて御想察をいただきたいと思います。
  241. 塚本三郎

    塚本委員 過日の本会議におきまして、社会党の成田委員長が発言せられている中で、日米安保条約を破棄して、四つの島だけではなく全千島を要求することが、わが党の態度だという御質問があったようでございます。ところが、総理も外務大臣も、このことにつきましては御返答がなかったようでございます。この点、私はぜひ、向こうがそんな感触でも持っておるのかどうか、こちらの態度はともかくといたしまして、どちらでもけっこうですからお聞かせいただきたいと思います。
  242. 大平正芳

    ○大平国務大臣 少なくとも日ソ首脳会談におきまして、日米安保条約につきましては言及されませんでした。
  243. 塚本三郎

    塚本委員 総理は、向こうではそういうことに対する感触は一切感じ取れないというふうに受け取ってようございますか。
  244. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたが先ほど述べられたことを申し上げますが、日ソの間には戦争状態はなかったのだということを私は明確に述べておきました。戦争があって、日本経済再建のために、戦勝国が戦敗国に大きな犠牲を払ったというようなアメリカからも沖繩の返還が行なわれたので、四つの島というものが返らないで、真の日ソの友好というものがとても築かれるものではない、だから、そこをまず理解してほしいということは、私もすなおに述べております。そしてまあ、ことしじゅうにということでございますが、外務大臣、ことしじゅうにと合意しておりますが、そのときに私たちも訪問しておるのでございますから、三首脳の来日をということを当然要請してあるわけでございます。ボドゴルヌイ国家主席は、万博のときに来日を予定しておったのが、事情があって急遽変更しなければならなかったことは残念である、いつの日にか早い機会に日本を訪れたいということでございました。そういう意味で、ソ連首脳の来日ということは一つの目標になっているわけでございますので、そういう機会が早く訪れるということになれば、当然日ソの交渉はその場で行なわれるわけでございますので、どんなにおそくともことし一ぱいには、ことしじゅうには継続交渉をやろうということになっておるわけでございます。  いろいろ外電が伝えるようなことが問題になっておりますが、いま外務大臣が述べられたとおり、ほんとうにこの問題が解決しない限り、共同声明を書く意味がないじゃないかということで、たいへんな問題を起こしたわけでございます。じゃ、墓参の問題、安全操業の問題、その他あなたがいろいろ述べていることは全部没でいいのですかと、こういうようなことでございまして、いろいろなミスがあるといわれたものもゆえなしとしないわけです。とにかく、本問題が解決しないで、まだ激論中に、その一日か二日後に共同声明を両方でもって書くような、そういう状態でない。だから、そんな状態において共同声明をつくることは無意味である、無意味とは何だという問題になったわけでございまして、最終段階において初めて共同声明を両側で急いでつくったということでございますから、しかも、あの共同声明の中にある諸案件ということではなく、単数にしよう。どうしても四島を入れるということを主張したわけですが、四島という名前が列挙できないというならば、これは単数にすべきだ。単数というならば、それは一体安全操業や墓参やその他一ぱいのものを未解決でいいのですか、こういうことですから、ではここで両国で確認をいたします、四島を含めてと、こういう確認を前提としての共同声明になったわけでございますから、そういう意味では、全く条件もついておりませんし、すなおに両国が誠意をもって交渉を続けなければならない問題だ。私は、そのときに、野党の皆さんの中には、全島を返すべきだという主張が強いのであります、にもかかわらず、政府は固有の領土として、四島にしぼって要求をしておるのであって、これをこれ以上に考える余地は全くないという日本の最終的な意思は明らかにしてございます。  日米安全保障条約その他に対しては、全然触れてもございませんし、これは中国側も、日中復交に対して何も問題としないわけでございますから、こういう問題までが条件になると考えるのは、これはどうも少し専門的過ぎて思い半ばに過ぎるものだと思います。われわれが両国首脳で話し合ったものに対しては、そういう条件とかいうものは全くなく、真に友好を築き上げるための大前提は四島の返還である、こう述べておるにすぎないのであります。
  245. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。  最後に、中国の周恩来総理及び姫鵬飛外相が、日本の北方領土返還の要求は正当なものと評価しております。これは中ソ対立の微妙な立場にありますが、そればかりではないと思います。  この中国首脳の発言を総理はどのように受けとめておられますか。
  246. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中国の見解は中国の見解として、そういう情報は聞いておりますけれども、北方領土問題はわが国の問題でございます。
  247. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、日本が固有の領土返還に対して執念を持ち続けておる、これは国民的な最大な課題であるということに対して、中国首脳が理解を示しておることは、私たちが北京訪問前にもそういう事情もございましたし、また、私たちが訪問中もございますし、その後も明らかにせられておる。  しかし、これは第三国が述べてくださることでございまして、この事実は認識をしておりますが、外務大臣が述べたとおり、四島の問題は一億一千万日本国民の課題である、悲願である、こう理解をしております。
  248. 塚本三郎

    塚本委員 その問題は強く希望いたしまして、外務大臣の最初の御答弁のような、何か他人ごとのような事務的な御発言ではなくして、できるだけ早い機会にというその御答弁を期待して、ぜひ今年のできるだけ早い機会にこれがめどをつけていただきますよう、国民の希望として強くお願い申し上げておきます。  経済の問題についてお尋ねをいたします。  すでに朝からほとんどこの問題について議論が重ねられてまいりました。私は、現在の状況を、日本資本主義の基礎矛盾のあらわれであると思っております。資本主義企業の本来の目的は、利潤の獲得にあります。投機利潤ももちろん拒むところではありません。石油の供給が削減されるという情報が入るや、需給のバランスは必ずくずれるに相違ない、もうける機会はこの際であるとばかりに、製造業においても、流通業においても、独占的大企業はもちろん、一部中小企業に至るまで買い占め売り惜しみを行ない、市場における供給不足を過重させ、石油輸入量がそれほど減少していないにもかかわらず、あたかも石油の供給が停止されたかのごとき需要状況が市場においてつくり出されております。庶民の側においてもこのような宣伝に踊らされて、なけなしの手持ち資金をはたいて、自己防衛のためとはいえ買いだめをさせられております。これでは一般大衆の所得は企業に吸い上げられ、分配所得の社会的不公平はますます拡大していきます。大手の製造業、大手商社及びそれにちょうちんをつけた中小企業の一部は、膨大な投機利潤を手に入れております。このままでは、経済の混乱と社会不安の惹起をも予測されるという状態であります。資本主義企業というものは、利潤の獲得のためには国民の生活安定という事柄は二の次、三の次のことであり、あるいはどうでもよいのかもしれません。昨秋来の社会経済現象がこのことを最も象徴的に物語っております。現に庶民の間では、諸悪の根源は企業であるということばが流行いたしております。  いまこそ国民の結集した力によって、国民生活の安定のため、現代資本主義体制の仕組みと企業のあり方にメスを入れ、改革を加えることが肝要であります。一口に言えば、国民経済の社会化がこの段階では必要だということであります。自由な市場において、自由な競争が行なわれることにより、国民経済は試行錯誤を重ねながらも予定調和を得、国民経済の発展と国民生活の安定を期待することができるというようなことは、現代ではもはや神話となってしまいました。  総理は、今日のような状況においてもなお自由競争、自由市場の神話を信じ続けられますかどうか、もはや企業と経済の社会化に踏み切るべきではないかと思いまするが、いかがでしょう。
  249. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、原則としては、自由主義経済理論のもとに立って日本経済運営を進めていくべきであるという考え方は、依然として確固たる信念のもとに申し上げます。  それは、戦後の無資本、無資源の中から今日を築き上げてきたのも、国民の英知であると同時に、自由濶達な国民の自由競争原理の中から生まれてきたものである。特に、中小企業や零細企業という面を考えてみると、これはロスも相当大きいものでございます。しかし、そのロスを乗り越えながら、ほんとうに大地を匍匐するような状態を続けつつも、強靱なこの日本経済の基礎をなしておるのでございますから、私は、日本の状態の中で自由主義経済原則というものを破るということで、より長い将来を見通しての国民生活の安定や向上というものは期しがたいということを考えております。  ただそれは、観念的な自由主義論を野方図に考えるものではないわけでございます。企業といえども、社会的な一員として社会性を帯びなければならぬし、社会的責任を負わなければならぬことは申すまでもないのであります。いま企業、企業というので調査をしておるのでございますが、俗に企業といわれるものに対して、国民が全く無関係なものというのは一体どのくらいあるのだろうということをいま調べておるわけでございますが、これは実際この調査がはっきり出れば非常におもしろいと私は思うのです。これは日本がかつて、六〇%も七〇%も個人が株を所有しており、支配権を持っておるようなときの資本主義経済ではないわけであります。これは国民総資本の状態でございます。ですから、そういう意味で、企業活動が反社会性を帯びた場合には法律によってこれを徴収することもできますし、あらゆる意味で国家社会のために、国民生活のためにこれを使い得るような状態になっておるわけでございます。特に、日本のような無資源な国で一体社会主義経済――まあ何ともあなたを前にして申しわけありませんが、どうもそういうような状態が一体できるのかということを考えますと、これはまあ、社会主義経済の国々が大体において国民総生産も国民所得も、あらゆる面で今日のような日本の濶達な自由というものがないという事実を前提にして申し上げますと、遺憾ながら、私は自由主義経済というものが悪いものだなどということをお答えするわけにはまいりません。  ただ、高度の社会性を帯びた政策を行なわなければならぬし、企業も社会的な責任を十分負わなければならないし、政府はその間の調整を十分行なっていかなければならぬということは、真にそうだと思いますが、どうも資本主義経済そのものから今日の段階が起こったものであり、これが収拾すべからざるものであって、この世の終わりであるというような考えは、ごうも持っておらぬのであります。
  250. 塚本三郎

    塚本委員 そんなことを申し上げておるわけじゃないのです。やはりこの際は社会化をぐんと進めていかなければならぬという中で、一挙に共産主義的な、あるいは国有にせよと申し上げておるんじゃないのです。私ども、また自由が基本である、しかし、政治が政治としての機能を、先ほどからるる各党代表が申し上げておりまするように、その機能を発揮しておらない。あとから論じますけれども、国民総資本だとおっしゃるけれども、何も資本なんて国民が出しておるんじゃないのです。銀行がほとんど牛耳っておるだけのことで、実は、形式的には民主主義下における資本主義体制ですけれども、いわゆる金融独占になっているのです。だから民主的じゃないのです。自己資本じゃないのです。他人資本でかってに実は自由にふるまって、そして独占的に企業を押えて利潤追求をはかっておる。政治が政治としての機能を発揮していない。ならば、もうしかたがないじゃないかという気分が、国民の中にあるということを申し上げたかったわけです。  そこで、もうけさから物資に対するいろんな問題等は論じ尽くされております。一つ一つこれ以上私が物品問題を追及することは極力避けたいと思います。しかし、その根源であった石油を例にとってみても、十一月には、十二月にもっともっと少なくなるというようなことを、政府は警告を発しました。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 だからこそ二〇%あるいは二五%も削減をさせられたわけでございます。しかし、現実にはよけいに入っておるじゃございませんか。数字はおそらく、多くの委員がここで述べられたとおりであります。ふえてきておるんです。にもかかわらず、現実には、通産省の予測を裏づけるためか、よけいに入ってきておりながら、重油のごときは、電力もセメントもあるいはまた鉄鋼等も削って出しておるのです。積み増しを、実は備蓄をしておるではございませんか。先日の本会議におきまして通産大臣は、備蓄五十九日が、十日間実は食って四十九日でございます、そして三十九日が実は限界です、しかし、それにもかかわらずもし必要ならば緊急放出をいたしますと、いかにも思わせぶりな御発言を本会議でなさいました。ところが、かえってふえておるじゃございませんか。十日間食ったんじゃないんじゃございませんか。どうしてそんな違った御発言をなさるのでございましょうか。通産大臣、いかがでしょう。
  251. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 十二月は二・八日分食いました。それから一月は一・四日分くらいやはり備蓄を食って減っておるわけでございます。しかしその後、十二月二十五日に友好国に指定されまして、その影響もありまして、一月には大体順調に入りつつある。しかし、需要が非常に昨年に比べてやはり増大しておりますものですから、当初の、年度初めの計画に比べるとやはりまだ九%以上の減という結果が出ております。  そういうようなわけで、現在一五%節減を一応やっておりますけれども、平均しますと大体一〇%くらいになっておるわけです。電力そのほか大企業につきましては、石油を多消費しておるところについてはきわめて厳格にやっておりますけれども、中小企業とかあるいは運輸業とか、そのほかについてはやっておりません。そういうようなものを全部集計しますと、電力以下一五%やってもらっておりましても、大体九%程度ということでいま進行しておるわけでございます。  そういうわけでございますから、そのほかスポット買いその他の努力もありまして多少はふえておりましたので、私がこの間申し上げましたのは、二月末に四十九日分になる見込みでありますと、こう申し上げました。二月末の話でございます。それが多少余裕が出てくるかもしれません。しかしその際も、備蓄はこれは減ってきつつあるわけでございますから、できるだけ備蓄に一応向ける。それから、もし万一余裕が出て、しかも不足物資の充当ということが必要である場合には、かりにそれがセメントであるにせよ、あるいは鉄鋼であるにせよ、生活必需物資を見るという面かからそちらのほうに増配をいたしまして、そうして緊急増産をやってもらう。現に洗剤その他についてはとってきておるところでございます。そういう措置をとりたいということであります。
  252. 塚本三郎

    塚本委員 なぜいまごろ二月末になると、というような御答弁をなさるのですか。こちらは間違えてしまうですよ。一月末にと――一月のときの本会議の各党の委員長が御質問申し上げておるときに、そのとき二月末には、なんというような話を――十月、十一月、十二月にはきちっと、しかも十二月は二十五日からふえてきておるというような詳しい御説明までなさるのにかかわらず、備蓄が減ったときだけ二月の末なんというような答弁をなさるから、混乱してしまうじゃありませんか。  何か通産大臣、けさほどからの話を聞いておりましても、意図的に石油業界に油が足りないぞということを裏づけて、そうして売り惜しみをさせて、値段をつり上げる味方をなさっておるように悪推量してしまうのです。一月の初めから、いわゆるこういうふうになったから一月の終わりにこういうふうに備蓄が減るのです、一月の終わりにはその備蓄が五日間減るのですとか、あるいは三・五日減るのです、しかし二月は、見通しを立ててみなければわかりませんけれども、このままでいくと十日分減るのです、こういう話ならわかるのです。ところが、二月の末になるとなんて――私はあのとき本会議を聞いておりまして、二月の末だと実はおっしゃったかもしれませんけれども、備蓄が十日間も減ったあと三十九日間しかないのだからというような御答弁をわれわれが聞いておりますると、これはほんとうにたいへんだなと思っていると、新聞でもって、減っていないと、こういうような数字が出てまいるじゃありませんか。だからこそきょう一日、各党の書記長さんがそんなことばかりを、数字をあげてあなた方の不信をなじっておるじゃありませんか。もっと親切に、時間を明確に区切っておやりいただきたいと思います。どうでしょう。意図的なことをまさか通産大臣はおやりになっておるとは思いませんけれども、もう少し、一月の末にはどうなるということをはっきりおっしゃっていただきたい。
  253. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あのときもたしか申し上げたと思いますが、十二月は二・八日分備蓄が減りました。それから一月分は一・四日分ということをたしか申し上げたと思います。そうして、この調子でいきますと、二月末には四十九日分くらいに備蓄がなります、五十九日分から四十九日分くらいになりますと、そういうふうに申し上げたと記憶しております。  しかし、一月におきましてスポットその他の流入がありまして、いまの調子でいきますと、二月末に四十九日分くらいになると思われたのが五十一日分くらいで済みそうです。二日分くらい余裕がさらに出てくるというのが最近の情勢であります。しかし、といって、それはいま一五%の節減をしているからこういうことができるのでありまして、それをやはり維持していく必要がある、そういう含みでいま申し上げておったわけであります。
  254. 塚本三郎

    塚本委員 ある、ないの問題を論じておると時間が過ぎてしまいますから、先に進みます。  昨晩、私が議員宿舎でいろいろと資料を調べておりますると、都内の一主婦から電話がありました。「テレビで国会の質疑を聞いておりましたが、最後まで要領を得ず、悪口と逃げの答弁で、すれ違いの議論ばかりでした。」電話の主が言うのでございます。「国民買いだめをしておると言う総理に対して、洗剤やしょうゆの二本や三本持っていなければ困るのです。一体いつになったら出回り、値上げがとまるのでございましょう。洗剤はうちに一袋あっても、すぐ手に入らないから、スーパーに売っていると聞けば、買えるときに買っておかなければならぬと思って、悪いと思いつつも余分にいま一つ買ってしまうのです。こんな苦労をしなくていいようになるのはいつの日でございましょうか。新聞で、あすは塚本さんが質問をなさると知ったので」夜です。真夜中でございましたが、電話で起こされまして、「ぜひ総理大臣にはっきり答えてもらってください、」こういうことでございます。  おそらくこのテレビを、総理のお答えを見ておってくれるに違いないと思います。この主婦に対して、総理、はっきりと答えてやっていただけませんか。
  255. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 きのう社会党の書記長が品目と数字をあげて述べられたとおり、品物はあるのです、こういうことでございました。そのとおりです。私は国会でも何回も述べておりますとおり、去年は原材料も入っておりますし、流通経路にも品物はございます。ですから、これが正常な流通経路に戻って国民生活を安定に導くように、政府責任を感じ、行政を執行してまいりたいと存じますと、こう述べておるわけであります。  いつまでにということでございますから、できるだけ早くやらなければならないということでございますし、なお、緊急四法も政府に与えられておるわけでございますから、今度は――品物がないという、いわゆる需給のバランスがくずれておるときの問題とすれば、配給をしたりいろいろなことをしなければならないわけでございますが、そうではなく、生産も確保されておるということが明らかである以上、政府はその流通経路にあるものをはき出させるように、また最終消費者に届くような行政的な努力をしなければならないことは申すまでもないわけであります。ただ届けばいいのではなく、これはやはり安定的に安く良質なものが届くようにならなければならぬわけでございます。  これは、すぐ届かぬじゃないかというのでありますが、日本も、御承知のとおり経済も厚くなっておりますし、幅も広くなっておりますから、利は、右から左にというわけにはいかぬことは御理解をいただきたいと思うのです。これは、アメリカが輸出の禁止を行ない、物価や賃金の凍結を行なっておってさえあのような状態でございますし、もっと総動員法のような強い権限政府に戦前からずっと与えられておる西ドイツにおいて、とにかくあれだけの増税を行ない、あれだけの、日本では考えられないような政策をとっておっても、ある程度の時間はかかるわけでございます。それだから日本は時間がかかっていいなどと考えておりません。政府というものの負わされておる責任は、いっときも早く国民が安心をして、あなたのところにそういう電話がかからないようにしなければならないということは、もう重々知っております。知っておりますから、これからも全力をあげて国民の期待にこたえてまいりたいということでございます。
  256. 塚本三郎

    塚本委員 総理も、先ほど御答弁の中で、四月二十九日までこんなことを言われたらかなわぬ、だから予備費を使ってでも、市町村の役場や農協にまで洗剤を配りたいとおっしゃった。その気持ち、わかるのです。ならばどうでしょう。この際、総理、あるのですと言う御自信があるなら、予備費を使ってでも物価調査官を何千人とすぐ臨時に徴集して、そして全国の倉庫を調べて、そしてこの際一挙に、一週間待ってください、一週間のうちには全部市場に並べてみせます。――そんな、予備費を使って、農協やあるいはまた市町村の役場に配るようなお気持ちがおありになるのなら、この際何千人と、臨時でけっこうじゃありませんか、雇って、法律に基づいてそれをおやりになって、そして一週間の間に全部市場に並べて見せます、予備費を使ってそういうことをおやりになったらどうでしょう。それを国民が期待しているのです。
  257. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 緊急法に基づく手配をいたしておりますし、すでに三条、五条の発動もいたしておりますということは、きのうから述べておるとおりでございますし、また、これが法律の執行に対して遺憾なきを期して、実効があがるようにしてまいりますという政府の姿勢も述べておるわけでございます。  それだけではなく、私は、ほんとうに、時間を見つけながら、関係閣僚全部出て、業界別に首脳を集めまして、あなた方はこういうような国会での御議論も知っておるでしょう、政府もこういう数字を持っておるんです、だから、このような状態で戦後二十五年も、二十八年も、足かけ三十年、困難の中でやってきたときに、どうして一体あなた方は国民が安心できるようなことに協力できないんですかということを、私自身も訴えたいのです。ですから、これから時を見ながら私、やりたいと思いますが、何しろ朝からこうしてずっとやっておりますし、じゃ十二時になって集めればいいじゃないか、こういうこともあるでしょうが、いまそういう問題を政府部内でも、私自身も検討いたしております。
  258. 塚本三郎

    塚本委員 政府権限を持っておってもなかなかこれは動き出さない。だからこそ各党が独自に、議員や政党が権限のないのにかかわらず、倉庫を一々さばいて歩かなければならないということは、政治家として恥ずかしいことではないか。そういうお気持ちがあるんだったら、いま申し上げたように何千人と、すぐ一週間ぐらいの間に予備費を使ってでも雇っておやりになったらどうでしょう。そして国民の期待にこたえるということがあってしかるべきではございませんか。総理や通産大臣がはっきりとそういう姿勢をお持ちになれば、いわゆるお役人もそのようなつもりで動くのです。たとえば、国税庁がだあっと一挙に乗り込んでいきますると、シラミつぶしにみんな調べてくるのです。通産省のお役人あるいは農林省なんというような、いままで業界中心に育ってきたお役人さんが任意で捜査しておったってなかなかできないです。上の気持ちが下に伝わってくるのです。だから、総理がそこまで、私が先ほどお聞きしておりまして、予備費を使ってでも私は洗剤を配りたい、こういうお気持ちをきちっと行政官に伝えて、何千人と動員して、そして総理も四月二十九日まで言われなくていいように、一週間で片づくようにおやりになる。それができなければ、私たちはしかたなしに、証人喚問として、あらゆるところのメーカーや流通業者の社長さんにずらっと来ていただいて、また一々口ぎたなく叫び上げなければなりません。はっきりおっしゃったらどうでしょう、これを。
  259. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私もあなたと同じような気持ちを持って、こういつでも答弁しておるわけでございます。  私、そういう意味で、きょうは定例閣議の日でございますから、閣議にはいろいろな提案をして、内閣はここで思い切ったスタートを切らなければならないと考えておったのですが、十分とか二十分というような、予算委員会前の短い時間ということではいけないので、あしたは国会のこの委員会も休みになるということで繰り下げたわけであります。閣議を繰り下げたのは、ゆえなくして繰り下げたのじゃありません。そういう意味では、あしたの閣議では、お互いにほんとう行政責任を果たさなければならない。しかも法律は、政府提案として立法をお願いしたわけでございます。そして、いろいろな御議論があったにもかかわらず、この法律をもって事態の解決をいたしますと、こう答えておるわけでございますから、まあ明日の閣議で全閣僚の意見をまとめながら相談をしてまいろう、こう考えておったわけでございます。
  260. 塚本三郎

    塚本委員 物を出すように、明日は閣議できちっときめて動いていただくということを明確にしていただきました。そのときには、あくまで高い値段で出ては何にもならぬこと、申し上げるまでもないと思いまするが、昨年の九月の時点の値段に下げていただかなければならぬと思います。その点、いかがでしょう。
  261. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは承っておきます。しかし、そんなに右から左にいくほど社会は簡単でないという事実もひとつお考えいただいて、理想に向かって最大限の努力を行なうということは、やはり理解していただかなければならぬと思うのです。
  262. 塚本三郎

    塚本委員 十分その点も承っておきます。政府がそのように決意をしていただきますれば、多少の上がったことを国民は理解してくれると思います。もともと、油が上がったことぐらいは承知いたしております。しかし、ばかげた、けさから議論されておるような形になったら国民は納得いたしませんから、その点もとくと御注意申し上げて、お願い申し上げておきます。  さて、それではもう一つ私はこういうことを総理に申し上げて、御意見を伺いたいと思います。  先日来の本会議におきまして、総理は、国民生活に重点を置いて、油や電力は生産の部面に削減をしいている、欧米では生活部門を切り詰めているが、私はそれをやらないというような御発言をいただきました。なるほど、総理国民の生活に対して優先をしようとする配慮はたいへんけっこうでございます。その気持ちは多といたしまするが、それは結局、結果として、生活のほうを切り詰めずに、需要だけそのままにしておいて、そうして国民の側に不利益をもたらさずに済むでございましょうか。自由主義経済というのは、需要と供給の関係によって値段のバランスがとれるといわれております。そのときに供給のほうだけを泣かせて切り詰めさせておいて、生活だけはそのまま、節約をしいないというような形になりますれば、勢い、需要がそのままで生産が下がれば、物価というものは上がってくる結果になるではございませんか。国民に対しては耳ざわりのいいことばでありますけれども、しかしその代償として、物価高のツケが国民のほうに回されるということになりはしませんか。総理がずいぶん御苦労なさって、声をからして叫んでおいでになりますが、このやり方の、実は生産のほうをカットして生活のほうをそのままにしておかれるという体制が続く限り、やはり九月の場合にはならぬと、顔色を変えてただいま総理おっしゃった。それは、そういうふうな、どちらを切り詰めていただくかという問題が解決されなければならぬと思いますが、いかがでしょう。
  263. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは非常に重要な御発言でございます。私自身もそう考えておるのです。ですから、アラブにわずか四%しか石油の供給を受けておらないアメリカ、しかも、アメリカのマスコミでもだいぶ問題にしておりますが、七二年対七三年の国内における石油の採油量は二〇%をこしておる、何で一体国民にこんなことをしいるのかということが、いまアメリカで問題になっておることは御承知のとおりでございます。また、石油問題はアラブにもございますけれども、日本とは違って、相当OPECの資本の中に大きなウエートを持っておるヨーロッパ先進工業国でも、アラブ問題を中心にして、国内的には日本では考えられないほどの民間の節約をやっております。ですから、理論上はあなたの言うとおりなんです。まず消費を抑制する、そして需要と供給のバランスの上に安心感も生まれ、物もできるのでございますから、だから、生産施設の稼働率を落とさないということでなければ……。石油が減れば電力が減る、需力が減れば工場の操業度が減る、操業度が減れば生産量が減る、生産量が減れば需給のバランスがくずれて物が上がる、これはもう全く初歩的な議論でございますから、それは私もそう思っております。  しかし、私が常に申し上げておりますとおり、急激に国民の消費抑制を要求するという間には、やはり実情を知ってもらわなければならない民主主義の原則があると思うのです。そうして、やはり国民が、日本というものはアメリカやその他の国々に比べても、生活必需品を供給できないような体制にはない、言うなれば生活必需品は供給できるのだという自信を持ってもらわなければ、この問題はどうしても解決はできません。いまあなたはいみじくも言われましたが、私のところに洗剤があります、ありますが、買えなくなるおそれもあるので、ほんとうにいやな思いをしながらスーパーへ行ってまた買うのですと、こういう全く赤裸々なお話で、私もそのとおりだと思うのです。それが、どうせ長いことそう先が見えないのだから、少なくとも三つ買おう、四つ買おうといったら、これはバランスがくずれて、今日の混乱はこの四法をもってしてもなかなか解決できる問題じゃありません。ですから、そういう意味で、国民がやはり日本の生産力というものを信用してもらうということが大前提でなければならないのです。こういうことも考えていただきたいのです。(塚本委員「生産力よりも政治に対する信用です」と呼ぶ)いや、しかし、それはそんなに、これだけの厚みとこれだけの幅のものが、大部隊が一挙に右旋回、左旋回できるわけはないのでして、その間の事情は私は国民は理解していただいておると思うのです。  だから、そういう意味で、私が申し上げるのは、なぜかといいますと、流通経路にも品物はあります。それから緊急に生活必需物資を輸入するに足る外貨も保有しておりますと、こう二つ述べているのです。もう一つは、これは日本の状態では先進諸外国と違うのです。それは、国民総生産の中に占める国防生産や軍需生産というものは絶対に縮められないものがあるわけでございますから、こういう状態になれば、直ちに中期的、長期的な見通しのもとに抑制ができる、こういうことでございます。また抑制ができるような法律権限政府に与えられておりますが、日本ではそうじゃないのです。  御承知のとおり、ここではいろいろな議論がございますけれども、国民総生産に占める輸出力、これは一〇%以上あるわけですし、国防生産とか防衛生産というものは、他国に比べても問題にならないほど小さいわけでございます。そういうことを理解してもらうまでは……(塚本委員総理はけさほどからすぐそういう話になるけれども」と呼ぶ)実際そうなんですよ。そうでなければ国民は理解しません。そういう意味で本質的な理解を得ることが大前提である、こう考えます。
  264. 塚本三郎

    塚本委員 総理はすぐそういう話になってきます。それは、それも一つあるということは否定いたしません。しかし、アメリカはじめ欧米等が産業を犠牲にするということをしないのは、実は彼らは失業率がこわいのです。だから、大統領に対する政治的な人気は、失業をどれだけ少なくするかということで、産業を削れば直ちに失業率が大きくなってくるのです。向こうは物価高よりも失業率がこわいのです。日本は失業のことを考えず、物価がこわいということから、実は国民におもねった形で、産業を切り捨てて、そうして国民に対する迎合主義をとっておられる。私はあえてそういう表現を使います。  といいますことは、産業を切り捨てて産業が困るかというと、困らないのです。産業は大喜びしているのですよ。独禁法をごらんください。二十四条の三――空前の好況下における不況のカルテルを政府が認めたような形じゃございませんか。そのツケが、生活は切り下げませんというおだてによって喜ばせておいて、そうして物価高のツケだけこちらに回して支払いを産業が受けるという形になっているのですよ。だからこそ、鉄鋼にいたしましても、セメントにいたしましても、石油産業にいたしましても、一割減産することによって値段が三割、四割と上がってくるじゃありませんか。生産原価を割ったときに、そうしてそれが他の産業に影響を及ぼすときだけ、公取の承認のもとに独禁法では不況カルテルが許されております。空前の好況下におきまして、こういう形で不況カルテルを――独禁法は油によってめくらにされておるじゃありませんか。こんなことだからいつまでたっても物価は下がらないのです。それは当面としては、おっしゃったとおり、倉庫の中を摘発することによって出すことができます。しかし、また足りなくなってくるではありませんか。もう少し、国民に憎まれてもいいから、一週間がまんしてください、一割だけ節約しようじゃございませんか、そうすることが、潤沢にする、自由経済を守る使命でございますと、はっきりと国民に呼びかけたらどうでございましょうか、経済のその原則を誤って、そして国民に対して恩着せがましくおっしゃること自身、その姿勢が間違っておると私は思いますが、いかがでしょう。
  265. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も幾ばくか経済の担当相もやってまいりましたから、あなたに指摘をされると、ほんとうにそう思います。指摘をされない前から考えておるのです。ですから、私は街頭でも述べておるのです。ただ、こういうときには国民の理解を得ることと、国民にまず混乱を起こさせないということが一番大事なんです。ですからそういう意味で、そういう立場で、今日、日本がとっておる政策というものは誤りではない、まず民間に節約をしいる前に、総需要の抑制の中で公共投資やその他、これはもう将来必要なものであっても、少し道がでこぼこしておってもがまんしてください、鉄道が少し雪が降ってとまってもがまんしてください、政府や地方公共団体のまず公共投資の削減というような面から国民の協力を得ていくというやはり順序があると思うのです。これは総合的にみんなやってしまえというお気持ちもわからなくはありませんよ。わからなくはございませんが、これだけの大きな経済の中で、正常な状態というものにできないような日本人ではない。私は、日本人の理解を得ながら、真実を国民に訴えて、数字を提供して――きのうのように、石橋さんが、ずっとあるんですなと、こういうことを言われたものだけでも、これは相当の国民は、とにかくあるんですな、あなたがあると言ったのは、ほんとうですなという電話もかかってくるのです。ですから、そういう国民の理解を求めるということでないと、抑制を思い切ってやっても社会的混乱が起こるおそれもございますので、ある程度の時間、それがマイナスに働いてもやむを得ない。もうとにかくそれよりももっと大きなプラスをもたらすために、一つのスタートの段階における考え方というのは、やはり私はいまの考え方は誤りではないと考えておる。  ただ、石油事情もこれよりも悪くなる、にもかかわらず、いつまでもいまのような状態が続くものだとは考えておりませんが、やはり時期を見ながら、状態を調整しながらスムーズに正常な状態を確保するために全力を傾倒すべきである、こう考えております。
  266. 塚本三郎

    塚本委員 総理のすばらしい勘や行動力は私たちも敬服しておるのです。総理のおやりになること、その誠意は疑いませんが、しかし順序が逆になっておる。いつでもそうです。列島改造でも国総法にいたしましてもいろいろ――私は昨年十二月の本会議でも、思いつきの角さんと申し上げて指摘をいたしました。一つ一つ、総理はおやりになることの順序が違っておるような気がするのです。  もうこの物価の問題でも、新聞などがまんし切れずに、社説などでは、われわれががまんして対抗しようではないか、こういうふうなキャンペーンを張るような状態に変わってまいりました。消費者のがまんと団結が必要であります。企業の横暴と消費者をなめ切った流通業者の態度に対抗するためには、いままでと同じ量を使わずに、値上げには節約による不買で対抗する運動も一つの方法である。最大の武器は節約だと力説する気はありませんか。ほんとうに高いものは意地でも買わぬ、必要品もぎりぎりまで切り詰める。こうなったら、退蔵物資をかかえる企業家などは一たまりもなく吐き出さざるを得なくなるではありませんか。物価狂走は消費者をなめ切った企業の自作自演で引き起こされたものではありませんか。総理がそのわなにひっかかっておるような形になっておると思うのでございます。そういう形で、生産産業だけ切り下げておるというような形の指導をおやりになって、消費の節約を論ずることは、私は非常に勇気の要ることだと思います。しかしながら、消費者を喜ばしておいて、あとから物価高のツケだけ回して消費者を苦しめるよりは、私は、初めから一カ月がまんしてください、油の問題だけは一〇%ずつ、こういうことだから消費を節約していこうではありませんか、こういうことを先頭になっておやりになるということが、もうこの段階では必要ではありませんか。そして逆に企業に対して、どうぞ買ってちょうだいといって再びPRしなければ売れないような状態をつくり出すことがもう必要ではございませんか。いかがでしょう。
  267. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まず総需要の抑制からということで、政府政府の姿勢を国民に訴えており、また国会で予算を審議いただいておるわけでございます。同時に、国民に節約を訴えなさいということでございますが、これは節約も訴えております。おりますから、日曜日には自家用車を使わないでください、いろいろなことも述べておるわけでございますが、洗剤を買わぬでください、砂糖はどうです、日本政府が存在する限り塩はあげます、そこまで言わなくても国民の理解は得られると私は思うのです。  それで、いまあなたが指摘をせられましたけれども、私はそれは民主主義の一つのルールだと思いますよ。それは不買でもって対抗するのは、先進工業国においては全部行なわれておることであります。しかし、それが官製であるか、いわゆる盛り上がるものであるかというところに大きな問題の違いもあるわけであります。私もその程度のことはわきまえておるつもりでございまして、政府がある意味において矢面に立つ日があっても、ほんとう国民的な盛り上がりによって、では不買運動を起こそう、こういうことと政府の考えておる政策がマッチするときには物は暴落するはずであります。だから、福田大蔵大臣が言っておりますが、それはいつの日か、さだかには申し述べかねますが、いまの政策が続いていくと物は暴落いたしますよということを、公の席上で述べておるわけです。私もそう思うんです。  ですから、そういう状態をなるべくつくらないように、国民が理解をしながらやれば一番いいことであるということを考えなければならぬわけでございますが、これはほんとうに、節約の問題は国民的盛り上がりがなければ、官製でもって節約運動を起こして、とにかく成就した例はいままでありません。政府が節約を訴えるときには、それは必ず物がなくなるのだ、物が上がるのだと反対にとられるというのが官製のマイナス面であります。  そういう意味でいまお述べになられたような、どこの新聞の社説かわかりませんが、そういう議論政府が矢面に立って一向差しつかえない、こう思う。それは一つの民主主義の中のルールであって、国民がみずから盛り上がる自覚によってこれに対抗する、それに合わせて、政府は機を失せず行政権の発動を行なうということで、国民の期待にこたえるということだと私は思います。
  268. 塚本三郎

    塚本委員 そうじゃないですよ。私は昨年の暮れ、油の問題でアメリカに参りました。そのときホテルの温度が十八度でございました。ワシントンは零下五度であります。ボイラーマンが、ニクソンが油がないから十八度以上に上げるなとテレビで言ったぞ、これだけで、とにかくあれだけごうごうの不信を買っておりますアメリカのニクソンのあのウオーターゲートホテルの中におきましても、十八度以上に上げてないのです。あるいはスピードは五十マイル、八十キロしか上げてないのです。あるいはまた、ロサンゼルスにおきましては停電まで実施しておるのです。そして私たちは、油に対する問題をニクソンがそう言うから守ろうではないか、こういうことを堂々とホテルのボイラーマンまでがわれわれに語るのです。私はそういう姿勢、もちろん政治に対する信用度が問題だと思います。だから、一面におきまして、はっきりとそういうことも述べていくということが必要であります。  むしろ、私は悪推量でありますけれども、こういう形で企業をカットして、何度も申し上げるように、企業に対して好況下における不況カルテルを許して、そして企業は悪者にさせながら、かんべんしてちょうだいと手を合わせながら、そのことばの裏から、ありがとうございますということば、実は手を合わせてあやまっておるのとありがとうと一緒に企業はやっておるのじゃありませんか。こういう形が今日の大企業の姿であります。企業はいじめられておる姿をしながら、実は感謝をして減産をして、値段だけ高騰いたしております。だからこそ空前の利潤を計上して、もはやどうして利潤を隠そうか。いままでは品物をどうして隠そうかでありましたが、これからは三月期決算を控えて、どうして利益を隠そうかということにきゅうきゅうとなっておる。これが今日の姿ではありませんか。どうでしょう、総理
  269. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほどからるるお答えをいたしておりますとおり、不正常な状態を正常化すために全力を傾けてまいりたい、全力を傾けつつございます、こういうことでございます。
  270. 塚本三郎

    塚本委員 私が質問するということで、お医者さんから、ぜひこのことだけはここで要求しておいてくれと頼まれました。ガーゼや脱脂綿、あるいは薬品等までなくなっております。生命に関することだが、一体どうしてくれるんだ、厚生大臣、いかがでしょう。
  271. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 医療用ガーゼにつきましては、昨年買占め売惜しみ防止の法律の際に品目として指定をいたしました。その指定をいたしましたのは、当時医療用ガーゼの値段が非常に上がっておったわけでございます。反当たり三百五十円、そこで何とかしなければならぬというので指定をいたし、そして生産を強化するように業界にもお願いいたしまして、その後生産も非常にふえ、在庫もふえておりまして、いま私、統計を持っておりませんが、昨年の九月ごろから三百十円、三百円、こういうふうに下がってまいってきております。三百五十円まで上がったのが下がりているのです。そういう状況でございます。  さらに医薬品の問題でございますが、実は医薬品の問題につきましては、上がっているものあり、下がっているものがあるわけであります。ブドウ糖のようなものは、いわゆるアンプルのガラスが非常に上がっておりますために、医薬品は御承知のように薬価基準できまっておるわけでございます。そこでブドウ糖のようなものは引き合わないというので、これはたしか薬価基準では非常に安かったのでございますが、二月一日から実施いたしまする薬価基準改定におきまして、実情に合うように、上げるものは上げる、ブドウ糖とかリンゲルなどは上げることにいたしました。さらにまた、そうでない局方のもので下がるものは下げようということで、薬価基準の中では御承知だと思いますが、一九%の診療報酬の改定にあたって、三・四%薬価基準の総額は下げてあるのです。ところが、そういうことが二月一日からやられるであろうといったふうなことのために、あるいは、ものによっては不足しておる、こういうものが出てきておったことは事実でございます。事実でございますが、今度の二月一日の薬価基準の改定によってこの問題が改定されますから、私は相当出回ってくるものと考えておるような次第でございます。
  272. 塚本三郎

    塚本委員 それじゃ、二月一日まで待てというのですか。
  273. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 待てというのではございません。ブドウ糖等につきましては、増産方を非常に強くお願いしております。そしていま盛んに出回っておるはずでございます。しかしそれは、二月一日からこうなりますということを申し上げながら指導をしておりますから、いまのところ、相当苦しい面はあると思いますが、私どもとしては確保できる、かように考えておる次第でございます。
  274. 塚本三郎

    塚本委員 厚生大臣がお立ちになったから、ついでにもう一つお尋ねしてみましょう。  砂糖の問題でありますが、私はこれも本会議のときにお尋ねをいたしました。あなたのほうできめられた政令によって、砂糖が暴騰したんですよ。それまでは百三十円か百四十円でした。ところが、十一月一日にサッカリンがとめられてから、一挙に二百五十円から二百七十円までいったはずです。私が本会議でお尋ねをして、そしてあわてて基準を審議会でもってつくることによって、解除されたらまた百七十円までいま下がってきております。こういうふうで、国際的な糖価は以前より暴騰しておりまするけれども、しかし国内の砂糖は下がってきております。全く厚生省の、実は早とちりによるところの失敗ではございませんか。  私は、そういうのを一つ一つこれからあげると時間がなくなりますからやめておきますけれども、これは十分国民に対して一しかも私は、きちっと十一月一日からの実施をお待ちない、日本政府が実験したところでは無害でありますということを局長答弁しておられる。しかもアメリカにおけるところの調査はあやまちでございました。わざわざ業界ではアメリカから専門の学者まで呼んで、その実証をさしたではありませんか。にもかかわらず、それをともかく実施だけさしてください、そしてあとから解除いたします。こんなばかな朝令暮改は許されないことであります。それがためにどれだけ国民と業界が傷つき、どれだけ苦しんだかわからぬと思います。こういうような、一つ一つの行政の中にもそういうことがあります。どうでしょう。
  275. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 食品添加物としてのサッカリンは、御承知のように、国際的に非常に関心の深い問題でございます。  そこで、昨年の春アメリカにおいて、いわゆる発ガン性という問題が提起されたわけでございます。そういうふうなことを考えまして、ああいうふうな措置を講じたわけでございますが、その後、アメリカにおきましても、その調査の一部に不純物質が混入されておったということも原因ではないか、こういったふうなこともございましたし、さらにイギリスのもろもろの調査も出てまいりました。それから日本においてのいろいろな試験、検討も出てまいりましたので、衛生的な面も考えながら、いわゆる使用基準ということでこれを緩和するということにいたしたわけでございます。その間の事情は、塚本委員十分御承知のとおりでございます。
  276. 塚本三郎

    塚本委員 その実験のしかた等が、聞いておってあきれるのでございます。アメリカだってイギリスだって、一度も禁止してないじゃございませんか。禁止したこともないんですよ。実験をしてやったところが、二十匹のネズミに対して五グラムのサッカリンを食べさせたら七匹ガンで死んだ、こういう発表です。五グラムもそんなものを食べさせれば死ぬにきまっておる。そこで塩を五グラム食べさせたらネズミはどうなりますかと言ったら、全部死んでしまうとおっしゃったではありませんか。それじゃ塩のほうがあぶないんですねと言ったら、そうですと局長は答えているんですよ。塩と砂糖とサッカリンと、この三者を並べて、一番危険なものから言ってくださいと言ったら、塩です、砂糖です、サッカリンですと、こういって、サッカリンの一番安全なものを禁止して、そして一番危険な塩や砂糖はそのまま許しておるじゃございませんか。私は、そのときにわざわざヨーロッパの例を出して、むしろ砂糖のとり過ぎによって栄養過多あるいは糖尿病になるから、ホテルにおいてはコーヒーのそばには、砂糖とサッカリンなりあるいは化学甘味料がつけてあるんです。それほどまでにして砂糖のとり過ぎにならないようにしているのに、厚生省はわざわざ砂糖屋さんの値上げのちょうちん持ちをしておると言われたら困りますよ。  だから、間違いだと気づいたならば、十一月一日からの実施を延期なさって、さらにその間において十分な実験をなさったらどうでしょう。業界はそれがために、わざわざアメリカから専門家まで呼んだではございませんか。私は、あなたには申し上げなかったけれども、厚生次官や局長にそのことをるる申し上げて、だから、十一月一日からは砂糖が暴騰しますからやりなさるな、私は三十日にそのことを局長にるる申し上げ、次官にも申し上げたんです。  こういうようなばかなことが行なわれれば、まさに政治不信ではございませんか。私はこういうことについて、総理、お聞きになっておわかりになると思います。大臣は、そのことは御承知のはずであります。いかがでしょう、こういうやり方。
  277. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私もサッカリンという問題では、ちょっと頭が痛かったんです。これはサッカリンを使用禁止をして、そうしてまた一日の摂取量というものを限界を置けばだいじょうぶだ、そのだいじょうぶというのは、いまあなたが例をあげて申されたが、ある一定量をこせば、塩も砂糖もみんな害であるということは申すまでもないことです。そういう問題に対して、私もきょうの質問に頭が痛いなあ、こう思ったんです、実際。ほんとうにそうなんです。私は、これはたいへんだと思った。ただ、サッカリンというものが一時、非常に害がある、特に発ガン性という問題で、ガンのもとになるということで相当その議論をされたことは事実です、マスコミでも相当取り上げて。ですから、そのときに厚生省もやっぱり世論にこたえなければいかぬ、これだけの世論があるのに何にもしないと――これは調査をして、世界じゅう調査をしてみましたが、そうではございませんでした、と言えばほめられるわけです。それをまあとにかく政治家でもない厚生省がさっととめてしまったというところに問題があるなと思って、けさからほんとうに――あなたの御質問の中で、ほんとうにこういう問題は誠意を持って早くやったつもりですが、やはりそういうものが結果論としては御指摘を受けるような状態がある。行政の運用というものに対しては、やはりそういう意味では慎重であり、的確でなければいかぬということに対しては、ほんとうにそう感じております。
  278. 塚本三郎

    塚本委員 総理が率直におっしゃったから、私は同じような問題、肉の問題を出してみようと思いましたけれど、もうすでにこういう物質の問題はけさから出ておりますから、私は省かさせていただきます。ぜひ、行政のいわゆる誤りや行き過ぎや、あるいはまた思いつきによりまして国民が被害を受けることのないように、とくとこの点は御注意申し上げておきます。  さて、日銀とドル買いについて、きのうの質問の中で七億何千万ドルというドルが一日に買われました。一月二十三日です。その中で、第一勧銀と住友銀行と東京銀行の三行が最も大きな買い手であったと報告されております。この三者がどれだけずつ買ったか、御説明いただきたいと思います。
  279. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 わかっておるのですが、担当官がいまおりませんで……。すぐ呼びましょう。
  280. 塚本三郎

    塚本委員 市中銀行は日本銀行の指導のもとにあるのです。日銀がなぜドルを売って円を買いささえたか。日本の円の信用を確保するために、実は手持ちをどんどんと売って、円を買っておるのです。そのとき、指導下にあるところの銀行が円を売るということは、円を安くし、国をはずかしめる――はずかしめるという表現は行き過ぎかもしれませんけれど、わざわざ日本経済を混乱さしてまでも自分たちの投機的な利益をもうけようとする、こういうやり方ではございませんか。なぜこんなばかなことを銀行にさせておくのでしょう。日銀はこれら三行に対して、どういう処置を講じたか、あるいはこれからどういう処置を講じさせようとするのか。日銀総裁、おいでになりますか。――おいでにならなければ、大蔵大臣でけっこうです。
  281. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 形は、三行じゃないのですが、多数の銀行でございますが、銀行が日銀に対しまして円を持ってきてドルを買っている、こういうのです。しかし、銀行はその仲介者でありまして、銀行にそういうことをお願いをいたしました商社だとかあるいは事業会社がある、そういうことなんです。銀行は頼まれたことをそれだけ取り次いだというだけの関係なんでありますが、それにしても、そういう資金的な余裕があったということについて、日銀がこれをとがめた、こういうのが実情であります。
  282. 塚本三郎

    塚本委員 銀行自身が頼まれただけの金額をそのまま商社に渡したかどうか、この点を私ははっきりしていただかなければならぬと思います。頼まれただけのものを、そのまま銀行が単なる買いに出ただけなのかどうか、問題だと思います。  それから、大企業の売り惜しみやあるいは買いだめが行なわれるということは、実は潤沢な金があるからでございます。しかし、その潤沢な金、たとえば六大商社など潤沢な金がありようはずがないというのが、私たち認識であります。資本金が少ないのです。にもかかわらず、ばく大ないわゆる商売をしておる。一体、これは借り入れによって行なっておるとしか思えませんけれど、六大商社の銀行から借りておる金額と、そして資本金との率はどんな程度になっておるか、わかりますか。
  283. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 御質問に正確なお答えになりますかどうですか。現在、日本銀行で二十の大企業に対してワクをきめて指導しております。その中で十大商社というものにワクを与えておりますが、大体三カ月間で六百億という貸し出しのワクでやっております。十二月までの実績は、大体六百七十億でございますが、そのうちの五百億台というのが実績でございます。
  284. 塚本三郎

    塚本委員 局長、累績の借り入れ金額といま運用しておる金と資本金との割合は何%になっておりますか。資本金は、全運用しておる金の中で何%ですか、それはわかりませんか。
  285. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いま少々時間を拝借いたしますと、できるだけ詳しい資料をいまさがします。
  286. 塚本三郎

    塚本委員 数字は三・四%と実は先ほど説明を受けたはずでございます。自己資本がこんな少なくて、あとはほとんど借り入れの金でございます。銀行の金であります。その銀行の金は国民大衆から集めた金であります。国民大衆から銀行が預かって、それを大商社にどさっと貸して、大商社がその金で品物を買い占めて、預けた国民に対して利をかせぎ、そうして苦しめておるという悪循環があったら、これは不道徳なことだと思います。大蔵大臣、いかがでしょう。
  287. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは金融の問題でなくて、商社の節度といいますか、マナーというか、そういうふうな問題だろうと思います。事業会社は商社を含めまして自己資本じゃ足りませんから、その事業活動のための金を借りる、これは当然のことなんです。ただ、金を借りて悪事を働くというようなことがあったらこれは相ならぬ、そういう問題だろうと思います。
  288. 塚本三郎

    塚本委員 自由経済の原則としてわかっておりますけれど、しかし、三%や四%で、あと九〇何%金を借りて、そして運用してほしいままにするというやり方は、そういうことのできるようなシステムが問題ではございませんか。だれだって金さえあれば事業活動は自由にできるのです。いまや猛威をふるっておる。中小企業は一網打尽になめ尽くされてしまうではございませんか。銀行のこういう態度が問題だと思いませんか。
  289. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 さっき公取委員長が商社のあり方についていろいろ見解を述べておりましたが、そういう問題はあると思います。そういう問題はこういう経済混乱、まあそういう問題をどういうふうにこれから正常化するかという問題の一環としてこれは検討さるべき問題だ、かように考えます。私どもも検討してみたいと、かように思います。
  290. 塚本三郎

    塚本委員 商社の問題はそういうふうに検討していただきましょう。しかし、銀行の一商社に対してどさっと貸す、こういうやり方が問題にはなりませんか。銀行は多くの人からお金を集めて多くの人に金を貸すことによって、利ざやで生きておるというのが金融機関の姿でございます。いまや日本の銀行は、三井、三菱のごときは実は銀行だとは国民は思っておりません。系列会社に対する資金調達機関としか思っていませんよ。もし三菱重工がつぶれるならば、あるいは三井の系列の大会社が一つつぶれるならば銀行はつぶれざるを得ないほど貸しておるじゃありませんか。多くの人から借りて多くの人に貸すというのが銀行の姿じゃありませんか。だからこそ、これら系列会社を持っておるところは、中小企業が借りに行ったってほとんど貸してくれません。預金で、金を集める機関になってしまっておるじゃありませんか。こんなことは何度も大蔵委員会で議論されたことだと思います。もうこのあたりで銀行法を改める必要があると思いますが、いかがでしょう。
  291. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 銀行法の問題じゃないのじゃないかと思います。これは、やはり金融行政のあり方の問題、それから金融機関のあり方の問題、また、これは商社のあり方の問題にもひっからまってくる。そういう問題、総合していろいろ検討してみる必要がある問題だ、そういうふうに考えております。
  292. 塚本三郎

    塚本委員 民主主義であり、資本主義の本山といわれておるアメリカにおきましても、たしか連邦準備法におきまして、銀行の自己資本の一〇%以上を同一企業に貸してはならないと規定してあると記憶いたしております。そういう形で、ともかく一つの自己資本と同じぐらい貸しておいたら、その企業がつぶれたら、預金者に対してどうして弁済することができるでございましょうか。だからこそ、一〇%以上は貸してはならないということで、十つぶれなければだいじょうぶだという安全圏、銀行の当然のことだと思うのです。日本じゃ一〇%どころか、五〇%以上のいわゆる貸し付けがたくさんあるはずでございます。だからこそ……(田中内閣総理大臣「いや、それはない」と呼ぶ)いや、ないことはない。私が調べただけでも、ずいぶん出てきておるはずでございます。だから、私は、一〇%といわなくても、せめて二〇%までは、こういう歯どめでもこの際かっておいたらどうでしょうか。民社党は、かつてそうい銀行法の改正を提唱したことがあります。商社などは、自己資本が三…何%で、九十六・何%が銀行の借り入れでございます。大衆から借り入れたお金でもって品物を買い占めて値をつり上げられたのでは、預金の気持ちさえもなくなってしまうのは当然ではございませんか。そしてまた、こんなことでもって野放図にやっておったら、先ほど総理のお話のように、どさっと不況がきて万が一企業がつぶれたら、銀行がつぶれるじゃありませんか。そうしたら、預金者はどうなるでございましょう。私は、この際、やはり銀行法改正に取り組む――何%かは提案いたしませんけれども、何%にいたしましても、ともかく歯どめをつけるべきだ。金によっていま国民は苦しめられておる。孟子のことばではありませんけれども、刀で人を殺すのも政治で人を殺すのも、殺人は殺人だということばがありますけれども、いまや銀行暴力の姿になっておるじゃありませんか。何らかの歯どめをする必要があると提案いたしますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  293. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは、ごもっともな話でありますので、よく検討してみます。
  294. 塚本三郎

    塚本委員 先に進みます。ぜひひとつ、銀行暴力だけは歯どめをかっていただきたい。  さて、こんなにインフレで物がどんどん高くなってまいりますと、お金を借りておられるところの人は、その借金の額が減ってくるのです。事業家は、設備をしていきますと、設備の資産がふえてくるのです。インフレをおのずから期待する形になるのが、資本主義の持つ宿命だと私は悪推理をいたしております。サラリーマンはどうするのでございましょうか。いま、ちまたにおきましては三〇%ベースアップ。穏健だといわれておる同盤におきましても、あるいは総評におきましても、当然のこととして主張いたしております。しかし私は、中小企業のおやじさんたちからこういうことを聞きます。民社党も同盟の賃上げに賛成をして、そんなことをして三〇%以上も賃上げをして、それが再び購買力に戻ってきたらイタチごっこじゃないか、こう言って責められるのでございます。単純な理論です。しかし日経連も同じようなことを、新聞で発表しておるようでございます。しかし、企業家の立場に立てば、大なり小なり金を持っておっても、借金をしたほうが経費として落ちるという仕組みになっておるから、金を持っておっても、これは預金に回しておいて借金をする、こういう経営形態になっております。だからこそ、インフレを、経営者や企業家はみんな、上がれ上がれとは言いませんけれども、期待をしておる向きがある。しかし潜在的に、勤労者あるいは給与所得者は、三〇%上がれば、田中総理の力で、金が減ったとは申し上げませんけれども、平均二百万円ずつ預金をしておりましたならば、三〇%上がったとすれば、六十万円は一年間のうちに減額させられたことは事実であります。何らかこれに対する対処のしかたを考えてやるべきではございませんか。大蔵大臣、どうでしょう。
  295. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話の問題を考え出しますと、全くこれは頭が痛いです。いろいろこう薬ばりというか、いろいろなことは考えなければならぬ。しかし根本的な問題は、やはりこの異常な物価情勢を一刻も早く克服することだ、これ以外に私はきめ手はないと思うのです。ですから、貯蓄の奨励でありますとか、そういうことはいろいろ考えます。考えますけれども、きめ手は、何といってもあらゆる困難を排しましても、この物価高をもう消しとめる、この一点にある、こういうふうに思いまして、少し窮屈な政策でばありまするけれども、総需要抑制政策、これを一路推進してまいりたい、かように考えます。
  296. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣の頭が痛いということは、同感と受け取って私は話を進めます。  その場合に、総需要抑制のために、この際、勤労者だけは特別の扱いをしてみたらいかがでございましょうか。持っておるものが減価させられてしまうから、それならば、日常生活品だけは買っておかなければ手に入らないということとともに、上がってしまう、だからこの際は、一年分ぐらいは買いたいという気持ちになるではございませんか、それはお金を預けておけば下がってくるのですから。だから、これを補償するために、この際、勤労者のお金だけは、政府が公債でも出して、たとえば五年なりあるいは三年の定期の公債を出して、その利息は一般の長期金利でよろしい、しかし万が一、物価が二〇%上がったときには、返済するときに物価の上がった分だけはプレミアムとして政府が補償をする、こういう形になれば、当面、目の前で必要なもの以外は買わずに済む。こういう形で、インフレに対して、上がることを期待する事業家に対比して、金だけを――そして将来の希望のために、あるいは子供の進学のために預金をしておる給与所得者のためにも、給与所得者に限ってはそういう形で物価にスライドする、政府からプレミアムつきの公債を出したらいかがでございましょうか。そうするならば、勤労者にとっては、無理に買わずに済んでいくでございましょう。そしてまた、そういうふうにして膨大な給与所得者が購買力、需要に走らなければ――あるいは総理がときどき言われるように、賃上げをしたなら物価が上がりますとおっしゃったが、それは二つの意味があると思います。コストが上がるということとともに、購買力に入るという二つの意味があると思います。少なくともその購買力には入らせずに済む。もしかしたら、膨大な給与所得者のこの金が、このようにして政府の手元に預金として戻ってきたならば、あるいは物価が鎮静する大きな力になるかもしれません。まさに一石二鳥ではございませんか。その方法はいろいろあると思います。しかし預金金利を上げるよりも、給与所得者だけは、あるいは一定の金額を区切ってもよろしい、こういうふうなインフレに対処するために、給与所得者に対する保護政策を考え、財産形成に役立てるという方法を考えられたらいかがでしょうか。
  297. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 財産形成制度につきましては、今回、四十九年度においても相当手厚い施策を考えておるのです。プレミアムをつけますとか、あるいはスライド制にしますとか、その財源を一体どうするか。これを金融機関が負担をするということになれば、貸し出し金利にも影響してくる。また、これを国が負担するということになれば、これは膨大な財源が要る。私は、そういうことよりは、やはり勤労者の問題というのは、一番大きな問題は住宅問題じゃないか、そういうふうに思うのです。住宅をこの財形貯蓄によって手に入れる、こういうふうにすることを考えることが最善の方策だ、こういうふうに考えるのです。  そういう意味におきまして、今度財形貯蓄をした、そういう人には、その貯蓄額の二倍に相当する額を、公庫資金を融資しましょう、こういうようなことにしたのですが、そういうふうなことを考えたほうが、むしろ勤労者のためにほんとうに役に立つんじゃないか、そういうふうに考えホす。
  298. 塚本三郎

    塚本委員 いい御発言だと思います。私は、与れならばはっきり申し上げて、そういうようなものを持った者については、プレミアムは出さないかわりに、一人に対して、たとえば五十坪なり三十坪に限っては、住宅に対して政府は保証いたします、それならお金なくて済むのです。線引きなさったところの調整区域につきましては、その当時よりもほとんど下がっておるのです。これをきちっと計画的に与えてやるならば、政府はお金たくて済むのです。勤労者はむしろそのほうが喜ぶかもしれません。だったら、きちっとそういう外債を買った者は、住宅用地のための手付にこれをいたします、けっこうじゃありませんか。具体的にそこまではっきりとなさって、勤労者に対して夢を持たしたらどうでしょう。それができないとするならば――私は、それがお金が要らなくていい方法だと思うのです。いかがでしょう。
  299. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 住宅を保証するというところ歩で私はまだふん切りはつけておりません。しかし、大体の場合におきまして、住宅を求め得るに足る資金は、財形貯蓄の期限である七年後なら七年後において手に入り得る、こういうことを申し上げておるのです。ですから、大体アイデアは塚本さんと私とそう違うことはないようでありますけれども、しかし、いま財形貯蓄を何がしかした、だから住宅を保証します、これは、なかなかいまこの段階で申し上げるわけにはいかぬ。
  300. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、発想が全然違うのです。私の申し上げておるのは、賃上げで、とにかく下がったところの、インフレによって価値がなくなった分だけは補償してちょうだいということでもって、労働組合の諸君は必死になっておるのです。政治不信にまでつながっておるのです。御承知のとおりです。そのときその金を与えれば、物価が高くなるだけじゃない、それがまた購買力にも回ってきて混乱をするということの心配があるのです。だから、彼らはがまんするから、そのかわり、下がらないように保証してやってちょうだい。そのことが、ひいては、私は財形貯蓄を申し上げたのですが、財形貯蓄というよりも、ともかく価値が下がらないようにしてやることが、いま政府にとってむしろ――その財源といいますると、初めからインフレーションを実は大蔵大臣が予定しておられるような形で、潜在的に当然だというようなことを前提にしてお話ししておられる。むしろ膨大な勤労者が、そういう持てるものを、そういうふうに実は公債を買ってくれるならば、上がらないかもしれません。それならば一銭も補償しなくていいのでございますから、まずそれが一番大切なことじゃありませんか。お金でいかなければ、万が一のことを考えて、お金がなくて済むようにするために、政府法律一本でできるところの、一番期待をいたしておりまする住宅用地を提供してください。  特に勤労者の人たちと接してみて、狭いアパートの中で生活をしておりますると、この企業は大切だ、この国は大切だという気持ちよりも、腰かけ的な気持ちになってしまうのです。自分の土地と自分の家があったら、やはり会社を愛する、あるいは国を愛するという気持ちがさらにさらに深まっていくのです。だから、一石で二鳥も三鳥にもなるのです。だから、そのことをきちっと何らかの形で、自分の持っておる財産を保証するという方法――片一方はどんどん、どんどんとインフレーションで借金の額が減っていくのです、中身が。あるいは設備投資の資産がふえていくのです。片一方だけは野放しで下がっていくのです。こんな不公平なことは憲法違反じゃありませんか。だから、それに対する道を開きなさいと私は提示しておるのです。どうでしょう。今度は総理大臣にお聞きしましょうか。
  301. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 貯蓄する国民に対しまして、物価が上がるということは、非常に私は大問題だと思うのです。(「罪悪だよ」と呼ぶ者あり)これは、いま罪悪であるというような話もありますが、ほんとうにこれはたいへんな問題だろう、こういうふうに思います。しかし、これに対しましては、いろいろ施策はある。ありまするけれども、結局、かなめは、とにかく物価高を一刻も早く打ちとめることである、こういうふうに思うのです。総理もしばしば言っているとおり、もう早期にこの物価を正常化する、こういうことでありますが、私は、その方向に全力をあげることが、勤労者を含めての全国民に対する責任であり義務である、かように考えます。
  302. 塚本三郎

    塚本委員 おっしゃるところは、それはそれなんです。しかし、発想の転換をしていただくために、総理、どうでしょう、御決意を伺ったら……。
  303. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ちょっと時間をおかりして考え方を申し上げたいのですが、ことしの財形問題のときに一番――塚本さん、重要な問題ですから……。ことしの財形問題のときに検討してあるのです。検討してあるのでして、それで、これからいよいよ、超過利得の吸収とかいろいろな面になってきますと、完ぺきなものを行なおうとすると、いまの給与の問題にどうしても触れざるを得ないのです。そうすると、その問題を考えても、これはただ抑制ということでは、とても納得を得られるものではありません。その意味で、財形貯蓄というものとあわせて理解が得られるような方法はないかということで、ずっと政府部内でも、学者の間でも検討を行なっております。  いま、先進工業国で行なっているものは一つあります。これは、あなたがいま言った、一〇%上がったら一〇%の割り増しを一般会計から負担する。一般会計からだけではいかぬので、今度の失業特別会計や何かを動かすときに、いわゆる雇用主の負担をふやして、それで政府がこれとあわせてということによって二〇%の高い金利を保証しよう、そういう考えであります。これは西ドイツ式の考え方であります。ですから、先進工業国として財形貯蓄でもって一番理論的であり、学問的であり、実行しているのは、西ドイツの、あなたがいま指摘をしたことなんです。  ただ、これにはしり抜けの部分もあるわけです。これを、受け取ったものをどう投資をするかという問題がありますし、それで、ただ本人が定期的な貯蓄をしておっても、一般との不均衡との問題もありますし、いろんな問題があるので、そこで土地と住宅というものに結びつけられないかということを考えたわけです。  それで、その大前提になるのが、一定額をこえる収入、賃上げというようなものを国債で持ってもらうような場合――国債でなくてもいいのです。これは拘束性預金でもいいのです。それは無税国債とか、無税にしなきゃならないだろうという議論を、まず提案をしているわけです。しかし、それは利息でもってまかなうというのではなく、そこで全国に三十万ヘクタールというのが出ているわけです。  そうすると、これはどういうことかというと、昭和六十年までの――そういう問題を研究しないで片づくものじゃありませんよ。それは昭和六十年までの国民の宅地の要求は二十八万ヘクタールでございます。それを政府もお互いでみなやって、三大都市の周辺にあるものが二十八万八千ヘクタールあるから、これをうまくやれば片づくと言ったのです。言ったのですが、なかなか片づかない。そういう意味で、年間六、七万ヘクタールずつばらばらに転用しているものを、土地の区画整理や産地農業の開発等、広範な立場で三十万ヘクタールを考えれば、ここに工場や宅地など全部のものの提供ができる。しかもそれは、予算で金を払うとたいへんですから、それは農協とか農民が共有をしながら交換分合の形でもってその土地を拠出する。そしてそれに対して政府は、年度末において利子補給を行なえば、それだけ少額でもって済むわけでございます。それで一千百五十万戸のうち五百万戸分は全国に土地を提供しよう、しかし土地も小さいものではだめだから百坪、百五十坪、二百坪、二百五十坪、三百坪の五段階にしようということで、計算は行なっております。ちゃんと経済企画庁で計算されてあります。それだけではなく、大都会においては、これは土地はつかないけれども、分譲住宅を提供しろ、こうおっしゃる。しかし、いま発足をしたものは、だんだん、だんだん建設費が上がっていきますと、結局頭金にはなっても、高いものになるわけですから、だから、これを財形貯蓄に結ぶときには、四十七年価格に資金運用部の利息を積み重ねたもので給付するということでなければ、これは全然メリットはないわけです。そういうことが実行に移されれば、全国的に市場で土地証券がそのまま流通するようになるので、仙台に移転すれば仙台でもって取れる、自分が今度岡山に課長で移転をするときには、二百坪に買い増しができる、その場合の価格は、全部お互いが持っている四十七年価格プラス資金運用部の資金コストであって、そこが十万円しておっても三万五千円で手に入る、こういうことをいま研究しておったわけですが、これはことしの制度新設までには間に合わなかったわけです。ですから、新しいことで、ただ金銭的に数字的にだけ計算をしていくと、それが悪循環をして、ほんとうに考えているようにはならないということで、労働者が真に飛びつくような、理解をするようなものと一緒にしての労働者財産形成ということでないと、超過利得の問題になっても、すぐこの問題にぶつかってくるということでございます。
  304. 塚本三郎

    塚本委員 総理、この土地の問題はなかなか造詣が深いようでございますから、もっと詰めたいと思いますけれども、時間がございませんので、私は、どうしてもこの際、中小企業の問題を論じ、お尋ねをしてまいらなければなりません。  金利が電話一本でもって、あすからおたくは二%金利を高くしていただきます、一方通行であります。それじゃ、預金も二%上げていただきますかというと、それは何も大蔵省から通達がありません、こういう形で実は金利が上げられてしまっております。あるいはまた、プラスチックの材料がない、どうしてくださる、鉄板がない、どうしてくださる、油がなくてどうしてくださる、選挙区をかかえているわれわれ国会議員は、仲間の中からどんどんとこんな要求が出てまいります。たいへんなことだと申し上げなければなりません。これは資金の問題等がございますけれども、どうでしょう。この際――大企業が自由自在にふるまっておっても、一々これをチェックせよということ、社会化の方向で進めよと申し上げても、すぐ話を国有化の方向に頭を回してしまって、なかなか大企業に対するチェックをなさろうとしない。自由経済というものは、あまり拘束しないほうがいいかもしれませんが、ならば、中小企業も、彼らが波をかぶらないように、特別の強化策を講ずるということぐらいならできるでしょう。この際、どうでしょうか、資本金一千万円ぐらいの限界を区切って、中小企業に対しては、基礎控除でもつくってやったらどうでしょうか。二百万円ぐらいの基礎控除を実施したら、どんなにか中小企業はその体質が強くなるかしれません。税法上におけるところの不公平は十分承知いたしております。だけれども、強い者に対してその猛威を押えることができないとするなら、弱い者に対する力をつけてやるという方向をとることは当然ではございませんか。何らかこの際、物資不足と高金利に悩まされてふるえておる中小企業者に対して、これだけは見殺しにしないぞという立場において、政府がそれぐらいの減税措置を発表すること――個人につきましては、大幅に百七十万円まで限度額を実は上げていただきました。中小企業にもそれぐらいのことをなさったらいいじゃございませんか。いかがでしょう。
  305. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 中小企業問題は、これからの経済の推移を見ますと、非常にこれは重要な問題だと思うのです。つまり、総需要抑制政策をとっていきますれば、経済界はどうしたって不況になります。そのしわ寄せは、弱い立場にある中小企業にいくことになる。しかし、そうなってはならない。そこで、昭和四十九年度予算でも、中小企業対策というのは、ほんとうに大きなアクセントをつけた対策をとっておるわけです。金融政策でもそうであります。また同時に、中小企業者の経営指導、そういうような面におきましても、いろいろきめこまかい政策をとっておる。それから税につきましても、今度は法人税の引き上げをしますというのですが、中小企業につきましては、据え置きだというのみならず、また、その適用範囲の幅も広げるというようなことをやっておりますが、基礎控除ということになりますと、これは法人税でありますから、もうすべての経費を差し引きまして、そうしてその所得というものが出てくる、それからさらに引くというのは、これは法人税として非常になじまない性格のものだろう、こういうふうに思います。ですから、そういう考えは持ちませんけれども、金融上、また他の面におきまして、中小企業に対しましては最大の配慮をする、そういう考えです。
  306. 塚本三郎

    塚本委員 上げなかったというだけで、最大な配慮ということにはならないと思うのです。大法人は上げた。上げて税収は入ってくるのだから、その分だけ中小法人に対しては特別に下げてやる。基礎控除ができなかったら、三百万円までと限界はありまするけれども、これに対して資本金を区切って、たとえば小さい一千万円以下の資本の会社に対しては二八%を二三%ぐらいにしてやって、公益法人等を二三%を一五%か二〇%に下げたらどうでしょう。基礎控除ができなかったら、大企業で取った分だけ中小企業に足してやる。そうやって、大企業をチェックすることができなければ、中小企業に力をつけてやるという意味で守ってやることはどうでしょう。
  307. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 中小企業問題を税だけで片づけようというのは、これは私は無理だろうと思うのです。やはり金融問題、これが非常に大きな問題だろうと思う。そっちのほうにはたいへんな手厚い対策をとっておるのです。  それから、御承知ではないかと思いますが、金融機関は、これからの経済の推移を見ますと、中小企業に相当のしわ寄せがいくのではないか、そうあってはならぬ、こういうので資金を三千億余り集めまして、そしてもっぱら中小企業対策としてこれを使う、こういうような自主的な対策もとっておる。そういうようなこともあわせますと、かなり完ぺきな対策がとられておる、こういうふうに思います。ここで税の体系を乱してまで、私は基礎控除制を設けるというのはいかがであろうか、かように思います。
  308. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、税の体系を乱さずにやれる方法として、先年、個人事業に対する事業主報酬制を導入いたしましたが、これを法人と同じように、所得だけではなく事業税にも適用する、これなら体系を乱さずに済むと思いますから、これ一つだけでも、ここで中小企業に対するあたたかい施策として言明なさったらいかがでしょう。
  309. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは、適用幅を拡大する、こういうことを御提案いたしたい、かように考えております。制度を廃止するというまではふん切りがつきませんです。
  310. 塚本三郎

    塚本委員 やがてはやらなければならなくなるのです。そのときまで恩恵としてとっておくなんというようなけちなことをおやりにならずに、中小企業が、不況が来るかもしれない、あるいは物資不足の波の中でもうおびえておる、こういうときに、さっとおやりになったらどうでしょう。考えてないとおっしゃったって、やがて二年か三年先には必ずおやりになるにきまっているのです。わあっと中小企業が決起したときには、きっとそうなってくるのですよ。そんなときにおやりになるよりも、こういうときに政府が積極的に、中小企業だけは政府が守ります、こういう態度をおとりになるほうが賢明だと思いますが、いかがでしょう。
  311. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その点はいろいろ考えたわけなんです。わけなんでありますが、制度的にこれをやめてしまうというところまでのふん切りができない。そこで適用幅を拡大する、大幅に拡大するということにいたしたわけです。
  312. 塚本三郎

    塚本委員 議論がかみ合いません。もう時間が間もなくでございますので、私は、最後に十分に物資の問題で論及してみたいと思いましたけれども、多くの方々から議論がなされておりますし、重複を避ける意味において議論を十分いたしませんでした。  そこで、私も各党と同じように証人の喚問を要求いたしておきます。そして、その舞台で再びお尋ねをしてみたいと思います。  読み上げてみます。三菱商事、三井物産、住友商事、日商岩井、伊藤忠、丸紅、トーメン、コクヨ、リコー、第一勧業銀行、住友銀行、東京銀行、石油連盟、鉄鋼連盟、日本自動車工業会、日本製紙連合会、以上の十六の団体及び企業の責任者の喚問を要求いたします。  最後に、もう何度も政府のほうから御答弁をいただきましたが、私は、この際総理に申し上げたいのです。  昨年一年の国会は二百八十日、超長期の国会でございました。ずいぶん混乱をいたしました。小選挙区制の問題等、ついにおやめになりました。国鉄法案はゴリ押しをなさったけれども、実施は不可能であります。あるいはまた、国総法はいまだに野党から撤回を要求されております。総理の信念は多といたしまするけれども、私どもから見ると、ゴリ押しをなさって国会が混乱になってしまって、議長さんが二回も三回もおかわりになるという事態まで引き起こしました。そしてまた、その間に国際情勢はたいへんな変化を示してまいったではございませんか。あえて徒労だとは申し上げませんけれども、この際、総理は御反省があってしかるべきだと存じます。野党についても、私たちも正すところは正して、国民の期待に沿いたいと思いまするが、総理自身のその決意のほどを伺って、私の質問を終わります。(拍手)
  313. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、常に申し上げておりますとおり、当面する事態は直視をして、これに適応する施策は効率的にとってまいりたいと存じます。  国総法は、狭い日本に生まれ、育ち、死ななければならない民族の避けることのできない宿題だと考えておるのでございまして、この国総法の成立は早期に希望いたします。しかし、私は、政府原案にこだわっておりません。これは民族の悠久の生命のためのものでございます。そういう意味で、皆さんもひとつ、メンツにとらわれないで、先ほどあなたが述べられたように――ちょうど述べたじゃございませんか。供給を拡大しないで、供給が需要を上回らないようにして、どうして物価が下がりますか。この過大な都市に集中することを、自然発生を是認しながら地価を下げることはできません。私は、そういう意味で、狭いながらも合理的な日本を築くための国総法を、そういう意味で通すという前提でひとつお知恵をかしていただきたい。私は、皆さんの建言に対して、修正案が出されるならば、謙虚に政府も検討いたします。その意味で、お互いにメンツにとらわれないで、今日のことを見ながらも、あすにも思いをはせるという政治家本来の使命を完ぺきに果たしていくために、御協力を得たいと思います。
  314. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 塚本君の御要望の件は、各党からもすでに御要望がありますので、これとあわせて理事会で協議することにいたします。  これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  午前中の不破君の質疑に対する総理答弁中、誤解を招くおそれのある発言がありますので、委員長において善処いたします。  次回は、来たる二月一日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十四分散会