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1973-12-10 第72回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十日(月曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 大野  明君    理事 櫻内 義雄君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 中島 武敏君    理事 山田 太郎君       足立 篤郎君    上村千一郎君       植木庚子郎君   小此木彦三郎君       大石 千八君    大野 市郎君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    小坂善太郎君       笹山茂太郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    前田 正男君       松浦周太郎君    松岡 松平君       松野 頼三君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       大原  亨君    北山 愛郎君       小林  進君    田中 武夫君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       細田 治嘉君    松浦 利尚君       安井 吉典君    中川利三郎君       林  百郎君    平田 藤吉君       松本 善明君    岡本 富夫君       広沢 直樹君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)         (環境庁長官事         務代理)    保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    茨木  広君         総理府統計局長 川村 皓章君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省構造改善         局長      大山 一生君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省貿易         局長      濃野  滋君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         工業技術院長  松本 敬信君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         運輸省自動車局         長       中村 大造君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 松浦  功君         消防庁長官  佐々木喜久治君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十日  辞任         補欠選任   澁谷 直藏君     前田 正男君   湊  徹郎君     大石 千八君   大原  亨君     岡田 春夫君   北山 愛郎君     赤松  勇君   小林  進君     松浦 利尚君   阪上安太郎君     八木 一男君   細谷 治嘉君     湯山  勇君   安井 吉典君     多賀谷真稔君   松本 善明君     平田 藤吉君   三谷 秀治君     林  百郎君   矢野 絢也君     広沢 直樹君 同日  辞任         補欠選任   大石 千八君    小此木彦三郎君   大野  明君     澁谷 直藏君   松浦 利尚君     小林  進君   林  百郎君     三谷 秀治君   平田 藤吉君     松本 善明君   広沢 直樹君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     湊  徹郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。山田太郎君。
  3. 山田太郎

    山田(太)委員 まず、質問を行ないます前に、きょうの総理の遅刻なさった件について、シリアの外務大臣と重要な会見であったとは存じますけれども、予定より非常におくれた件、まず御注意を申し上げておきたいと思います。一応了承申し上げたことではございますけれども、前もって注意をさしていただきます。  そこで、五日以来、補正予算に対して、関連していろんな審議が行なわれてまいりました。きょうは、いよいよ最後の日でございます、衆議院の予算委員会においては。ところが、各種報道によりましても、あるいは国民の声を聞きましても、どうもすれ違いの論議が多い。また、答弁にも誠意のない答弁が多いという声をよく聞くのでございます。どうか、政治の大転換のときに際しまして、総理並びに各大臣の誠意ある、明確な御答弁をまずお伺いしておきたいと思います。そういう国民の声にこたえるためにも、ぜひその点はまず御要望申し上げておきたいと思います。  そこで、まずお聞きしておきたいことは、昨日のOAPEC閣僚会議発表で、来年の一月以降、日本ECなど五%の石油供給削減を上のせするということを決定いたしました。わが国にとって、また全国民にとりましても、より一そうきびしい事態に直面することになったわけでございますが、このきびしい局面の中で、三木副総理が特使としてきょう出発されます。政府アラブ外交軽視の責任を背負って、経済技術援助など主として、アラブ外交アブラ外交かとの批判の中を友好を深めようということでございますが、アラブ側にはまだ相当の不満があるようでございます。この点についてどう対処なさるか、また五%削減上のせの事態は予測しておったのかどうか、またこれにいかに対処していくのか、国民はより一そう不安を高めております。どうかこの際、総理はじめ関係大臣の明確な、またそのままを国民の皆さまに表明していただきたい、そういう意味で明確な答弁を求めておきたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 中東外交は、一応石油関係とは別な問題でございまして、中近東諸国わが国との間の友好親善関係を長きにわたって築いていかなければならない悠久の課題であるわけでございます。その題意に沿いまして、いま不幸にして起こっておりまする中東紛争解決に対して、わが国としてどういう立場をとるかということにつきまして十一月二十二日に政府声明を出したわけでございまして、この題意に沿いまして、今後事態の推移に応じて、わが国としてなすべきことをなしていかなければならぬと考えております。  第二に、石油の問題、仰せのように非常に切実な問題であることは、山田さんのおっしゃるとおりでございます。石油危機の問題は、幾つかの側面があると思うのであります。  一つは、石油価格の問題でございますが、これはすでに中東紛争の前から起こっておった問題でございまするし、石油数量の問題につきましても、通貨の動揺から、すでに計画どおり増産計画について慎重な態度が資源保有国側にとられつつあったことでございまして、そういう状況中東紛争でエスカレートしたものと考えられるわけでございます。  ところが、これは価格数量だけの問題ではなくて、石油流れそのものが非常に混雑をいたしまして、あるべきものが正しいルートで円滑に最終消費地にまで届くという状況にないことも、危機一つ局面になっておると思うのでありますが、さらに考えますならば、こういう事態に処して世界各国協力をいたしまして、秩序を取り戻すための国際協力が行なわれないというところに一つ危機があるわけでございまして、こういう事態に直面いたしまして、われわれは、あらゆる外交的な努力を傾けまして、世界各国の、産油国ばかりでなく消費国協力も得ながら、こういう混乱した事態をできるだけ早く正常な状態に返すように、なすべき努力を尽くさなければならないと考えております。  第三の、ゆうべ発表されましたOAPEC石油相会議発表でございまして、一月の供給削減EC並びに日本に対して行なわれるという報道でございます。これはすでにOAPECにおいて、十二月以降行なわれるであろうと発表されておりましたところが、十二月は削減を中止したという報道に接しておったわけでございますけれども、一月は当初の声明どおりEC並びに日本に対して削減を行なうであろうという声明を聞いたわけでございまして、当初から予想されたこととは申せ、今日の緊急な事態に対して憂慮をなお濃くいたしておるのが、今日の私どもの心境でございます。  この問題に対しましては、従来以上にわが国外交姿勢というものを、信義の立場に立ちまして、いままで世界に宣明いたしましたラインに沿って、なすべきことを着実になしてまいるということが、まず根本になさなければならないことと考えております。と同時に、紛争解決にあたりまして影響力を持っておるアメリカ等の国々に対しまして、早期な解決に全幅の影響力を行使するよう執拗に求めてまいることをつとめてまいらなければならぬと思います。あわせて、資源保有国側からわが国に寄せられておるもろもろの期待がございますけれども、そういうことに対しまして、じみちにその期待にこたえてまいるということをやることによりまして、産油国側わが国に対する信頼にこたえるところを通じて事態の好転をはかってまいりたいと考えます。
  5. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 OAPEC諸国の一月以降五%削減はあり得るものと考えておりました。そういうことがないように希望しておりましたが、こういうことが出てまいりまして、事態は非常に深刻化しつつあります。  そこで、いよいよこれが現実になってまいりましたから、二法案の成立を見合いながら、一月以降の石油並びに電力に関する調整をさらに強めていかなければいけない、そう思って、目下いろいろ計画中であります。
  6. 山田太郎

    山田(太)委員 その問題は、すぐ答弁できない問題もあると思いますので、大体そのくらいにしておきまして、そこで次には大蔵大臣にお伺いいたします。  政府は、四十九年度予算年内編成をする、そういうふうに報道されております。またそういう御意向のようですが、大蔵省経企庁通産省の来年度経済見通しも大体きまった様子でございます。日程は、一応報道されたところによりますと、二十一日、政府予算編成方針をきめ、二十二日に大蔵省案閣議に出す、二十九日は政府案閣議決定運びになっておるようだ、こういうふうにありますけれども、このたびの大型補正予算に連動する四十九年度本予算であります。この意味において、まず大蔵大臣方針をお聞きしておきたい。  同時に、生活福祉関連、これをまず優先しながら、総需要抑制立場からも、引き締めを厳重に貫く方針であるかどうか、その点についても簡単にひとつ触れてもらいたいと思います。
  7. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十九年度予算につきましては、ただいま編成作業中でありまして、段取りといたしましては、年内にぜひこれを完了したい、こういうふうに考えております。そのためには、まあ二十一日ごろ政府案ができればとも思っておりますけれども、あるいは、一日ずれるというようなことにもなるかもしれません。  編成の基本的な考え方といたしましては、こういうきびしい経済見通しでございます。まだ経済見通しは正確には立っておりませんけれども、抽象的、概念的には非常にきびしい状態だろう、こういうふうに思います。  そういう情勢に対しまして、政府が積極的に対応するかまえを示さなければならぬ。非常に大ざっぱに申し上げますと、公共事業費、これはかなり抑制しなければならぬだろう、こういうふうに思っております。ただし、かような物価情勢である、そういうことを考えますと、特に弱い者、小さい者、そういう者の立場、これには特別の配慮をしたい、そういうような形で予算編成をひとつ進めてみたい、かように考えております。
  8. 山田太郎

    山田(太)委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁で、経済見通しについてはまだ煮詰まってないような、そういうお話のようでございますが、しかし、やはり経済見通しに基づいて四十九年度予算編成されるわけでございますから、例年のとおりならば、大体、通常ならばやはり十日ぐらい前にはちゃんと発表されるわけでございます。  そこで、そう詳しくはお答えできないかもしれません。しかし、現段階で答えられる範囲で、簡単に申し上げれば、物価見通しについてはどのような御判断があるか、その点についてできればお答えを願っておきたいと思います。
  9. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ、具体的な経済見通しということになりますと、政府部内では全く煮詰まっておらないのです。それは何だと、こう申し上げますと、石油供給が一体来年の見通しでどういうふうになるであろうか、これはなかなか見通しはむずかしいのですが、それにしても大胆な想定をしなければならぬ。その想定をどういうふうにするか、これがまだきまっておらぬ。したがって、経済見通し全体といたしまして、作業はしておりまするけれども、最終的なかまえをどうするかというところまで来ておらないのです。そういう際において、物価を一体どう見るかということにつきましても同断でございまして、しばらくひとつ時間をおかし願いたい、かように考えております。
  10. 山田太郎

    山田(太)委員 元来なら経企庁長官お答えになるところでございましょうが、よろしいでしょう。  そこで、また同時に、きょうの報道によりますと、公定歩合大幅引き上げが必要ではないか、こういうふうなことが報道されております。その公定歩合引き上げについてはどういうふうなお考えであるかということを簡単に、一言か二言でけっこうです。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま、政府としても日本銀行としても、さようなことは考えておりませんです。
  12. 山田太郎

    山田(太)委員 現在は、年内公定歩合引き上げ考えてない、あるいは来年初頭においても考えてない、そういうふうなことまでも含めてのお話ですか。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 来年の経済見通しが一体どうなるか、特にそれに先立ってこれから当面数カ月の経済がどうなるか、これは予断を許さないわけですから、財政金融とも機動的にこれを運用しなければならぬ、こういうふうに考えております。ただ、現在私は公定歩合引き上げるということは考えておらぬ、こういうことであります。
  14. 山田太郎

    山田(太)委員 と同時に、いま現在中小企業倒産件数がどんどんふえてきております。そこで、この中小企業対策についてどうお考えになっているか。これはひとつ総理並びに通産大臣から明瞭、簡単に御答弁を願っておきたいと思います。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中小企業の問題は、今回のいわゆるオイルショック等考えまして、特に年末金融、それから来年にかけまして資材難、そういう面から倒産件数が出ないように、十分手当てしなければならぬと思っております。  年末金融につきましては、政府系機関において三千四百億円余の特別の融資ワクをつくりまして、昨年に比べて一・八倍のワクを特につくっていただきました。このワクも、さらに情勢によっては二、三百億円は短期的にふやす話し合いをいま進めております。  それから資材難の問題につきましては、通産省あるいは運輸省、あるいは農林省関係各省庁とも連絡をとりまして、需給調整協議会あるいはあっせん所等をつくりまして、中小企業については特に優先して配当するように、いま準備中であります。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま中曽根通産大臣お答えをしたとおりでありますが、ことしに入ってからは金融引き締め傾向にずっとなっておるわけでございますが、対前年度を見ましても、中小企業関係融資は大幅にふえておるわけでございます。必要があれば数字をお示しいたしますが、非常にふえております。でございますし、特に石油問題が起こった現在、年末年始等における中小企業が、金融引き締めというようなことで黒字倒産をするというようなことはもう厳に避けなければなりません。そういう意味で、中小機関融資の拡大はいま申し上げましたが、他の民間の金融機関中小企業対象金融機関雑金融機関等も、年末金融に対しては格段の配慮をやっておるわけでございまして、都市銀行等に対して比較をすると約倍額くらいの数字になっておると思います。必要があれば申し上げますが、万全の体制をとってまいろう、このように考えております。
  17. 山田太郎

    山田(太)委員 私の調査した範囲内では、時間の関係でそう詳しく申し上げませんが、ことに都市銀行においては、昨年の比率から見ますと、中小企業に出す金融の額が、パーセントからいうと相当減っているようです。この点は大事なことでございますから、そういうことのないような指示を、これは大蔵大臣にことに強く御要望申し上げておきたいと思います。  そこでもう一点、これも大切なことですが、労働大臣にお伺いしますが、来年度の経済的デフレ傾向といいますか、そのデフレ傾向が非常に強くなると予想されております。したがって、失業者も相当数出るのではないかというおそれもある。同時に、いまアメリカ等レイオフが非常にあるようでございます。この失業者対策、またあるいはレイオフ対策、この点についてひとつ簡単に、明確に示してもらいたいと思います。
  18. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 お答えします。  ただいま、石油危機には内閣があげて善処しようとしておりますが、いま労働力需給が逼迫しているときですから、直ちに御懸念されるようなことはなかろうと期待はしておりますが、各企業のいろいろな動きなどを見ながら、言われているような問題に対しては万全の対策をとろうと思っております。
  19. 山田太郎

    山田(太)委員 万全の対策とは何ですか。
  20. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 一時帰休の問題とかレイオフの問題、そういう問題についても、いろいろと情勢を見ながら、そうした不安のないようにやろうと思っております。
  21. 山田太郎

    山田(太)委員 労働大臣、いまの、答弁じゃないじゃないですか。では、何にもないということじゃないですか。何をやっているのですか。万全のとは何ですか。では、具体的な計画はないということですか。何という労働大臣だ。
  22. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 万般について調査などをしておりますが、失業保険制度改正等考えながら、手当てをしております。
  23. 山田太郎

    山田(太)委員 まだ労働大臣になって間がないという点もあるかもしれないけれども、この点はひとつ早急に、もっと具体的な計画を煮詰めておいてもらいたい。これを強く要望申し上げておきます。  そこで、先ほどの経済見通しの問題でございますけれども、まあ大蔵大臣はことばを濁されたようですが、やはりエコノミスト等あるいは各機関等々の予測によりますと、一〇%台ということが予測されております。こういうことで、どうせお答えにならない問題をそう長くやっておっても時間の空費でありますので、そういう点、あるいはせんだっての経済見直しでもこれは一三%になっております。まあいろいろな諸般の事情があるとはいえ、経済見通しあるいは物価指数の予測というものがいまだにまだ出し切れない。現在の困難な状況を見きわめるという困難な作業があることは承知しております。また、現在の経済状態が非常に混乱しているということも承知をしておりますが、しかし、そこがやはり政府の大切な使命でございます。どうもおくれているということが心配でならぬ、あるいは変なふうなかっこうになるのじゃなかろうかということが心配でならぬ。その辺をひとつ、厳然たる大転換ということを基盤にして、福祉の優先は当然のことでございますけれども、ひとつ大転換をはかるようなことをまず念頭に置いてがんばってもらいたいと思います。  そこで、物価の問題に移らせてもらいますが、まあそのようなあいまいな態度では、どうも真剣に物価に取り組んでおるということは言えないのじゃなかろうかというふうな気がしてしようがないのです。そこで、この物価の問題の中に、ことに公共料金の問題、この公共料金の問題は、これまで当委員会においても何回か取り上げた問題でございますので、詳しくはもう申し上げませんが、しかし、消費者米価あるいは国鉄運賃の値上げ等、これは次の質問の都合上、経企庁長官どうです。この物価に与える影響。
  24. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公共料金は、申すまでもなく家計や消費者物価引き上げの要因になるわけでありますから、私どもは極力これを慎重に取り扱っておるわけであります。しかし、これを放置いたしますと、これは御承知のように、そこに資源の配分が行なわれないというようなことで、かえってサービスを低下したり、また公共性そのものの荒廃を来たす点がございますので、押え切りにするわけにいかないので私はいま非常に苦しんでおりますが、慎重に処理するつもりでおります。
  25. 山田太郎

    山田(太)委員 経企庁長官の答えは、答えのような答えでないような、公共料金は据え置けとまだ言わないうちに、御説に従うことはというふうな御答弁だったように思いますが、まあ、われわれはぜひ公共料金、これらの米価の値上げあるいは国鉄運賃の値上げ、これはぜひ三年間は据え置くべきであるという主張の根拠は、やはり政府主導型のインフレだということが、この石油問題が起こる前までいわれてきたわけです。総理大臣に答えてもらいます。ぼくの聞いたことに総理大臣、答えてもらいます。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府主導型のものとは考えておりません。
  27. 山田太郎

    山田(太)委員 どうも、ぼくの聞いたことがわからないでお答えになったようでございます。頭を振っておっても、事実そうだから。  そこでまず、決断と勇断をもって鳴る田中総理のことでございますから、この際公共料金の凍結をやるという方針を決然と打ち出されるつもりはないかどうか、もう一ぺん簡単に答えていただきたいと思います。
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公共料金を押えなければならないということは、もう原則的にそのとおりでありまして、政府も守ってきたわけです。守ってきましたから、ほかの物価昭和九年-十一年に対して六百五十倍、七百倍、八百倍といわれているのに、鉄道運賃を上げても三百倍ちょっとであるということでございまして、公共料金を押えているということはこれはもう相当なものであります。公益料金という電気料金やガス料金に対しても、年間平均一〇%以上、去年は一八%も給与が上がり、しかも石油や燃料も、重油からクリーンエネルギーへの転換によって非常に生産コストが上がったにもかかわらず、これを十数円で押えておった。これは実際によく押えたというぐらいに押えているわけでございまして、これ以上公共料金をストップするということのできるものとできないものがございます。これらの公共料金をそのままストップをしておれば、一般会計から補てんをするかということになります。地方財政の中で公共料金をストップすれば、地方財政の中で、ほんとうに地方公共団体や政府がやらなければならない社会保障とか、そういうものが、押えられぎみになることはこれは言うまでもないわけです。  ですから私は、公共料金といってもどうしても引き上げなければならぬものはやむを得ないと思っております。そして鉄道運賃でも交通運賃でも、ほんとうに社会連帯の思想において免除をしたり、特別にパスを出さなければならぬような人たちには、別途なものでなすべきである。そうでなければ、給与も上がり、高額所得者も、応益負担力は十分にあるにもかかわらず、一律に公共料金を押えるということによって、財政そのものが麻痺したり、ほんとうに国民が必要としておるところに重点的に配分できないということにもなります。また、いろいろな政策を行ないながら、そのまま公共料金をストップした分を一般会計やその他でまかなえといえば、予算は膨張的になり、それこそ、物価抑制というよりも、物価を押し上げる要因になるということでありますから、いわば個別に十分判断をして公共料金は決定をするということでなければならない、こう思います。
  29. 山田太郎

    山田(太)委員 個別に引き上げなければならぬものは引き上げなければならぬ、それは個別に検討するということでありますが、いま現在、これから一年ぐらいの間に引き上げなければならないと予想されるような公共料金は何と何と何か、ひとつ関係大臣、答えてもらいたい。
  30. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御承知のように、先般の国会の決定によりまして、国鉄料金は来年の三月三十一日に引き上げなければならない状況にございます。さらにまた、消費者米価につきましては、昨年生産者米価をかなり大幅に引き上げておることは御承知のとおりでございまして、それに対しまして財政負担はいたしますけれども、これも御承知のとおり来年の四月一日。そのほか問題になっておりますのは、私鉄の料金が昨年以来その改宗の申請を運輸省に出されておりまして、私どものほうとともにただいま検討中のものがございます。そのほか、最近、タクシー料金の値上げ申請がこの十二月一日か何かに関西方面から出され、続いてまた関東方面から出される状況にあること。それから、これは私は協議は受けておりませんが、郵便料金なと、郵政事業の内容が非常にシビアになっておりまして、料金を含む郵便事業のあり方について郵政審議会で検討中であると聞いておりますが、このほうは私は協議を受けておりませんし、これは国がやっている事業でありますから、私鉄などとはまたいろいろな取り扱いの違いがあろうかと思っております。大体そのようなことが私の胸中にございます。
  31. 山田太郎

    山田(太)委員 それ以外はありませんか。
  32. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは、物価全体が上がる中におきまして、公共料金というものはむしろコストプッシュで来ますから、何が出てくるか想定はつきませんけれども、私のほうといたしましては、出てきたものは右から左にこれを処理するということで考えておりませんので、いまおまえは何を考えておるかということでございましても、大体いま申し上げたようなことがただいま念頭にある、あとのものは、あとからできるだけ慎重にシビアに検討を進めてまいる、こういうことになろうかと思います。
  33. 山田太郎

    山田(太)委員 ぼくの質問は通告もしてありました。先ほどのOAPECはなかったですけれども、この問題は通告してありました。そこで、現段階においては、以上、長官がおっしゃった範囲内だ、そこでこれ以外はないか、そうすると、経済の動向によっては云々という御答弁ですが、現段階でと言っているわけです。現在でと言っている。ほかにありませんか。
  34. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が申し上げましたことに間違いはございませんが、しいて申すと、国内航空運賃について運輸省のほうで検討されている問題がある。その他、公共料金とは言えないような問題なきにしもあらずでございますが、それは公共料金と考えないとして、私はここでは申し上げません。
  35. 山田太郎

    山田(太)委員 このことは非常に大切なことですが、経企庁長官がまだつかんでいらっしゃらない分もあるようです。しかし、この点はまた時間を食いますから、そこで、せめて現在米価あるいは国鉄運賃等きまったものは、これはもうできないというお話でしたが、まだこれまでの御答弁にも相違がありましたが、せめてこれから上げようという、あるいは上げる意思のあるそういう公共料金についてはストップ措置を講じていく、凍結していくという決断をひとつぜひ要望しておきたいと思いますが、この点についてはどうでしょうか。
  36. 内田常雄

    ○内田国務大臣 経済企画庁は、他の役所と違いまして、物価をでき得る限り押えてまいろう、したがってまた、生計費等に関係ある公共料金につきましても、他の原局と違った立場にあるものでございますから、山田さんの申されること私にはよくわかります。しかし、これは押え切りということにいたしますと、先ほども触れましたように、それらの公共施設というものが非常に荒廃をして、国民的要望にこたえられない問題がございますので、これは需要を押えさえすればいいという問題ではございませんので、そこのところを私は非常に苦しんでおりますが、あなたのお考えはよくわかります。
  37. 山田太郎

    山田(太)委員 総理大臣、いまの経企庁長官のではさっぱり要を得ませんので、総理の決断でできるかできないか。もうきまったものはなかなかできないということだから、これからのものはせめて凍結措置、あるいはそれに近い措置というものをやろうという御決意があるかないか、これをお聞きしたいと思うのです。あるかないか。
  38. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公共料金、公益料金等については、厳にこれを抑制してまいりたいという基本的姿勢は貫いてまいりたい、こう考えます。申請をされたものに対しては、これを安易に認可するというような態度はとらないということは申し上げておきます。
  39. 山田太郎

    山田(太)委員 安易に許可するようなことはしない、安易にとらない、これはもう当然のことです。私の質問したのはちょっと趣旨が違うわけです。凍結措置もとるという意思があるかないか。
  40. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公共事業、公益事業といえども、これはその使命を果たさなければなりません。そういう意味で、凍結をいたしますということは申し上げられません。これはいままででも凍結をしてまいったことはあります。凍結のように二年間も引っぱってきたことがあるのですが、その後、交通がふくそうしてけが人が出たり脱線事故を起こしたりやったときには、しかるべき措置をしなかったために起こったのだ、事故が起こるまでは押えるのだというようなこともできません。そうすればどうするかといえば、公共負担をするか、国民の税金でまかなうか、応益負担でまかなうかということは、おのずからその事業の性質の軽重から判断をすべき問題でございます。でございますので、基本的に公共料金、公益料金というものはこれを抑制するという考えでございますが、凍結をするということをみだりに言えるものではありません。凍結をするという場合には、当然凍結による必要部分を国が一般的な財源からまかなうということでなければならないということでありますので、そこらの問題は、当然の問題として御理解をいただきたい。
  41. 山田太郎

    山田(太)委員 先進諸国においては、このたいへんな経済混乱の中でそういう措置もどんどん講じているところもあります。また同時に、公共料金は、金のない貧乏な人も、あるいは豊かな人も同じ料金になるわけです。御存じのことですけれども。したがって、これは負担の受ける度合いというものが違うのです。やはり税金で見ていかなければならない。税金は応能負担になっておるわけですから、したがって、金をたくさん持っている人はたくさん払うわけだから、ここに大きな差があるのです。弱者を守るという立場に立つならば、この点について、大悪性インフレ、あるいは悪性インフレにならんとするこのようなときに、弱者を守るという立場に立ったときには、そういう思い切った措置がなされなければならない。これは当然なことです。先進国でもやっていることなんです。この際、ひとつ総理の決断をぜひ要望しておきたいと思います。その点は重ねて答弁は求めませんが、強く要請しておきたいと思います。  そこで、物価安定の問題、本論に移らしていただきたいと思いますが、この石油適正化法案、あるいは国民生活安定法案、あるいは総じては先ほどの総需要の抑制等々がやはり必要であることは、これは論をまちません、内容はともかくとして。  そこで大切なことは、基本的にはその運用にあるということは、これはあたりまえのことでございます。この運用は政治姿勢によってきまってくることでございます。言わずもがなのことでございますけれども、いわゆる買占め防止法ができた。大事な点が骨抜きとはいいながらも、できた。しかし、これの運用というものは、全くなされてなかったにひとしい。効果ある活用はできていない。  この点については、これまで多くの方々が論議されました。そこで、その問題はもう追及なり、あるいはお答えは要りませんが、ここで一つ具体的な問題でお聞きしておきたいのですが、まずプロパンガスの問題。このプロパンガスは、家庭用では千七百万世帯、これは御存じのとおりです。六五%から七〇%の家庭は使っている。それからタクシー業者、ことに個人タクシー、非常に混乱を重ねておるタクシー業界でございます。私も、昨日の日曜日、タクシーに乗ったところが、朝の七時から待ったという。まだきのうでもそうです。きのう現在です。そうしてプロパンをもらったのが十一時半、順番の切符を受け取ったのは四十番目であった、もう何とかしてくださいよと、私の胸をにらみつけながら話がありました。一体何をやっているのでしょうか、通産省は、政府は、あるいは国会はということでございました。現在、放出したといいますけれども、タクシー業界においてもまだ行き渡ってない辺があるかもしれませんというふうな問題じゃないのです、これは。生活権の問題なんです。この点について、家庭用プロパンも同時に非常な値上がりをしてきております。私の選挙区のほうでも、八百円あるいは七百円だったのが、いま千六百円から千五百円もする。それで、あるのはいいけれども一かんの半分しかくれない。埼玉県などは、半分しかくれないのが七〇%ぐらいあるような地域さえある。こういう状態に対してどういうふうな処置をとり解決するかという点を、現実の証拠でひとつ出す方策を示してもらいたい。明確に端的にひとつ答えてもらいたい。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 タクシー関係につきましては、先週、運輸省通産省の事務次官、政務次官の間に覚書を交換し、その話し合いをきめまして、大体十二月は十一月分の九〇%を確保する、そういうことで業界とも話し合いがついて、それぞれの系統でいま補給をしておるところであります。この混乱は早晩解消するものだろうと思います。  それから、家庭用のプロパンについては最大重視しておるポイントでございまして、大体下期に五百二十万トンぐらいのLPGが入ってくる見込みでいままで計画をしておるところでございますけれども、その中でも、やはり家庭用のプロパンガスというものは、われわれとしては最優先配当をしよう、そういう考えに立っていま計画をやっております。それと同時に、この価格を暴騰させないようにわれわれとしては指導価格をきめよう、できるだけ早期に決めよう、こういうことで
  43. 山田太郎

    山田(太)委員 もう何べんも聞いてきておるのです、そういうふうな内容のことは。では、いつまでにこうやって解決できるという、そういう見通しも立たない現状なんですか、通産省は。その点を答えてください。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 タクシーの問題はもう解決すると思っております。(山田(太)委員「いつまでに」と呼ぶ)これはもう今週早々解決すると思っております。きのうまではかなり混乱があったと思うのです。また、配当について一部の系列に偏したという形もあったようであります。しかし、運輸省とよく話し合いまして、これは運輸省のほうの指導で流すルートをきめてもらっておるわけで、量は運輸省通産省の間できめたとおり通産省は配当しておるわけであります。  それから家庭用のプロパンでございまして、これはプロパン不足というような焦燥心理から、一部では、おそらくストックしているところは多少なきにしもあらずであろうと思っております。これからは厳重に監視していくつもりでございますけれども、何といっても寒さに向かって家庭の燃料を確保するということは、最大の政治の責任であると思っておりますので、これについては、いま業界ともいろいろ話し合いまして、万一にも不足する場所ができないようにいまいろいろやっております。問題は、いま値段の問題で、十キロ九百円ないし千百円くらいのものであるものが千五百円とかに上がる気配が多少あります。これを放置しておいてはよくありません。そういう意味で、先般灯油の指導価格をきめましたように、家庭用のプロパンについてもできるだけ早期にこの指導価格をきめて公表して、そしてそれを業者ぐるみ維持させるように、いま手配中であります。
  45. 山田太郎

    山田(太)委員 プロパンに対しても、灯油と同じように早急に――計画はありますか、早急にということばの中には。いつごろまでですか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体私が事務当局に命じた時限は、日を切って命じております。しかし、これは関係方面にも影響するところが多いわけですから、日を申し上げることは差し控えますが、しかし、そういう日を切って事務当局に先週命じておるところで、いまいろいろ作業しておるところであります。
  47. 山田太郎

    山田(太)委員 日を切ってという点でこだわるようで恐縮ですけれども、これはやはり家庭の生活の重大な問題ですから。半分しかくれない、中には断わられて帰っているところがあるわけですからね。だから、その日を切ってということにこだわらざるを得ないわけですよ。何日までというふうなことを言えなければ、年内にはというふうなことではいまの状況解決できないわけですから、大体どの辺で切っておりますか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今週中ぐらいにはやれるように、いま督促させております。
  49. 山田太郎

    山田(太)委員 ひとつ賢明な、より一そうの努力を重ねていただきたいことを御要望申し上げておきます。  そこで、まずここに変な紙が来ているのです。いま手に入ったわけですがね。これの真偽のほどはまだ調査してませんから、見ておりませんけれども、この標準価格については、通産省通産省独自で原価計算をして、そして独自で業者にそれを守らせるようにするのか、あるいは業界と協議して標準価格を設定しようとするのか、この辺をお聞きしておきたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国民生活の安定に関する法律ができますれば、業者に対してわれわれが強制力をもって報告を命じ、あるいは原価その他についても、われわれとしてはそれを聴取する資料を持つことができるわけであります。そういうものを基準にし、あの法律に需給関係等も勘案してと書いてありますが、そういう情勢も勘案してこれは通産省がきめる、そして業界に協力を求める、そういう形になると思います。
  51. 山田太郎

    山田(太)委員 私のお伺いしたがったのは、業者から原価計算等の資料も提出してもらって、そして通産省がきめる、いまそう御答弁になった。違いませんか、もう一ぺん念を押しておきます。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのように申し上げました。
  53. 山田太郎

    山田(太)委員 そうなりますと、業者の提出した原価計算の書類というものがやはり相当な影響力を与える。そのとおりにはしませんという御答弁は予想されますけれども、もし業者が――この法案については、どうせもうきょうで予算委員会は終わりですし、同時にそれぞれ該当委員会で深く追及なりあるいは論議なりなされることでしょうから、深くは申し上げませんが、一番心配なのは、トイレットペーパーとか砂糖とかとこのこととは多少ニュアンスが違います。しかし、この標準価格が、通産省のこれまでの態度からいうと、あるいはこれまでの行き方からいうと、どうしても業者寄りになってきておる。これはもう隠せない事実でございます。したがって、ここに業者寄りの価格、すなわち高値にきめられるような、そういう標準価格ができるおそれがある。国民の素朴な感情として、トイレットペーパーだって一応の騒動はおさまったけれども、砂糖だって騒動はおさまったけれども、依然として高値だけは残った。今度のこの標準価格も、それを通産省がちゃんと保証し、守るという形になるのではないかということを心配しておるのです。いわゆる高値安定カルテルというのを心配しておるわけです。いまの御答弁では、それを排除できるという御答弁じゃないわけです。そういうものをどうやって排除できますか。  じゃ、具体的に一つ聞きましょう。これは昨日の日経の報道でございますが、これは御承知のことと思います。通産大臣、御存じですね。LPガス業界が家庭用プロパンの単価を値上げ幅を八四%にしようと一応きめたけれども、しかし、通産省の指導で四四%にきめたということが報道されておるわけです。この事実はございますか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう事実はありません。その報道の内容は間違っております。
  55. 山田太郎

    山田(太)委員 この報道が間違っておるならば、所管庁長官ですから、この事実がどのようなことかは御存じのはずですが、どうですか。事案はどのような状況なんですか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その新聞の記事によると、何か通産省の了解を得て業界がその標準的価格をきめた、そういうことでこれはカルテルにあらずと、そういうような印象の記事であったと私は記憶しておりますが、通産省が了解したこともなければ指導したこともありません。それがかってに報道されておるので、内容は間違いであります。
  57. 山田太郎

    山田(太)委員 じゃ、先ほどの話に戻ります。  そうすると、この報道は、通産省が、介入ということばが適当かどうかわからぬが、介入して値段を下げた、したがってこれはカルテルではないというふうな――いまの御答弁からすると、そうしますと通産大臣は、業者がきめたことに対して、通産大臣とし通産省としてその単価に介入するということはカルテル行為になる、こういうことですかどうですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は公取が判断すべきことで、通産省が指導して、通産省が介入してそういうことをやった事実はありません。
  59. 山田太郎

    山田(太)委員 公取委員長にお伺いしますが、いまのような状況ですね。業者が相談して値段をきめる、それに対して通産省が介入して値段を下げる、この行為はどういうことになりますか。
  60. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この問題は、私どもが通産省、もう一方は経済企画庁と結んだ覚書のらち外の問題で、その範囲の外に入ります。私どもがあそこにおきまして標準価格等を――もちろん、これは両方通じて申しますれば、主務官庁が間にこまかく介入しまして末端価格を定める、その末端価格を業界の協力で守らせるようにしむけるということは、すぐその次に書いてありますように、守る、ただ単に順守するというのじゃなくて、違反者に対してと続いておりますが、(イ)、(ロ)、(ハ)の(ハ)と(ニ)はつなげて読むべきでございまして、そういうふうな、出荷を停止するというふうなことがありましても、そのことは再販になりません。これは契約による拘束ではありませんで、たとえば灯油ですが、その当時の状態では、灯油三百八十円という値段を末端できめた、元売りにおいては凍結ということをきめられた、そのことについて、私は独禁法上とりたてて問題にすべき問題と思いません。ただし、元売りの価格についてだけ介入しまして、元売り価格だけをきめる、そして末端価格を放置するということになりますと、その点ははなはだ微妙になってまいりまして、私どもの覚書の趣旨からいえば、新しい問題として考え直さなければならぬ。  ですから、いま直ちにここでそれが違反であるというふうには申しかねますけれども、しかし、はなはだ好ましくないことである。末端価格を定めて、そしてそれに伴いメーカー価格まである程度介入するということについては、私は、ある範囲においては容認しなければならない問題ではないかと思いますけれども、末端価格が野放しではいかぬ、こういうふうに考えます。
  61. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで本元に一応戻って、またいまの話に返ります。  そこで、公取委員長にお伺いしますが、公正取引委員会と通産あるいは経企、この間で覚書を取りかわしていらゃっしゃいます。その内容は、事業者または事業者団体が主務大臣の指示のもとに行なう協力あるいは措置などはカルテルではない、こうなっておりますね。これは独禁法で禁止されたカルテルとどう違うのですか。私はやはりカルテルだというふうに思えるのですが、これはどう違うのでしょうか。独禁法で禁止されたカルテルとどう違うのですか。
  62. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 独禁法で禁止しております違法なカルテル行為とは、価格であれ、数量であれ、設備であれ、同業者が集まって、そしてその手段、方法は問いませんが、要するに協定を結びまして、価格ならば、これを引き上げる協定をするとか、あるいは下がるべきものを下げない、数量は場合によったら制限して、制限をすることによって価格の安定をはかるとか、そういうことをかってに行なうこと、わかりやすく言えばそれが違法なカルテルでございます。  したがいまして、今度の場合に、私どもは、この緊急事態に際しまして、通産省その他各省が、それぞれの必要物資緊急な物資について、その需給の安定、需給の緩和をはかる、そういう目的のためにのみ協力措置を業界に求めるという範囲であれば、それは常に監督官庁のきめのこまかい指示監督――初めから、物の量の問題で申しますれば、量をきめるのも監督官庁である、細目の決定についても、業界にある程度の話し合いをさせなければならない情勢にあることは、これはやむを得ませんと思います。一切そういうものを禁止するとすれば、いまそれだけの組織体制が整っていない今日の状態においては無理であろうと思う。そういうことから、私どもは、それが一々主務官庁の指示監督に基づいて行なわれる限りにおいては、民間のかってに行なう違法なカルテルとは性質を異にする。あくまでそれは行為そのものを目的とするものであるし、そればかりではございません、いろいろな観点から違法なものとこれを認めることはできないので、独禁法に抵触しない。独禁法にいろいろ文言書いてございますが、その文言から見ましても、そういうものの性質とは性質を異にしますから、したがって、独禁法に抵触しない行為である。ただし、監督がきわめてルーズで、野放しで業界に一任するというふうな形になれば、これはカルテルになります。
  63. 山田太郎

    山田(太)委員 そうしますと、この覚書は要らないということになるのですか。覚書がなくても、カルテル行為じゃないということになるんだから、覚書は要らないということじゃないですか。
  64. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 お答えします。  それは、覚書というものをわざわざつくりまして公表いたしましたのは、誤解のないように、世間の業者の方が、どこから先が違反になるんだ、どういう行為を行なえば違反になるかという判定は、法律の解釈も、これは独禁法というのは非常にむずかしい面があるわけでございますから、そういうことをわかりやすくするためには、この際、関係省と覚書を結んでそれを公表しておいたほうが親切じゃないか、それが行政としてのあるべき姿ではないかと私どもも判断いたしたわけでして、確かにおっしゃるとおり、この書いてあることだけをとらえれば、当然抵触しないのですから、覚書を要しません。要しませんが、それをつくることは、私は行政上有効な措置であると考えました。
  65. 山田太郎

    山田(太)委員 なぜここまで言うかといいますと、いまこの予算委員会は、物価予算委員会とまでいわれるところでございますからね。深く論議されるところは別の委員会でやられるのは当然ですが、その点をひとつまずもう一ぺん御了解を得ておきたいと思います。  そこで、そうすると、業者に対する親切のために、なくてもええもんだけれども――なくてもええと言うたらわかりますか。これは岡山弁で恐縮ですが、なくてもよいものであるけれども親切のためにかわしたんだと、いまの御答弁はこういうふうになっているわけですね。一ぺん、そうならそう、うんと言ってください、ひとつ。
  66. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 まあ、親切にという表現が適当であるかどうかわかりませんが、私は、わかりにくいものはわかりやすくする、これがやはり行政上とるべき一つの手段ではないか、私どもの責務じゃないかと思います。つまり、民間の方が話し合いをすればすべてカルテルになるか、そこに問題がございますね。問題があるとすれば、同じ同業者が相寄って話し合いをした場合には、どんな話し合いでもいかぬのかといいますと、現在でも、実は価格に全く関係ない、カルテルに関係ない話し合いというのも、それはあるわけです。しかし、今度の場合に、それでは、うかつにそれがある範囲を越えるとカルテルに化けてしまうおそれがあります。したがって、ある意味においては、私どもは制限的な意味をも兼ねておるわけです。この範囲はよろしいが、逆にこの範囲を逸脱するものについては相変わらず違法なものとして扱いますよという警告の意味も含めておるわけでございまして、ただ単に親切にという意味ではなくて、つまり範囲を限定しているということも、当然この覚書をつくった趣旨に盛り込まれておるわけでございます。
  67. 山田太郎

    山田(太)委員 そうすると、その範囲は、当然法の中でももう限定してあるわけです。覚書なんかなくたって、範囲はもう法の中でも限定されておるわけだ。しかし、一応わかりやすくするためにかわしたにすぎないんだ、こういうふうな意味にとってよろしいですね。
  68. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そのとおりと受け取っていただいてけっこうです。
  69. 山田太郎

    山田(太)委員 そうすると、今度の二法案、これはことに大切な二法案です。しかし、内容によっては非常に国民に多大な迷惑をかける法案にもなりやすい。というのは、物価をつり上げるための働きをしかねないのは、先ほど申し上げたとおり。というのは、政府に、また当局に強大な権利を与えるという法案でございます。したがって、一たび業者との癒着があるならば、あるいは癒着ということばが過ぎますならば、やはりその辺の関連がいままでと同じように作用して、業者寄りにもしなるならば、これは当然物価引き上げの大きな元凶になるという、そういう心配のもとに国民は不安を感じておるわけです。したがって、国民の不安を除去する措置を講じなければならない、これは当然論議されていくことでしょう。しかし、いまのままでは、これは除去できないようになっている。  したがって、独禁法の運用というものが非常に大切だからこそ、独禁法の運用がいま現段階のままでは――総理か、ことしの一月の所信表明でおっしゃったように、物価安定のためには、その一つの補足として独禁法を強力に、厳格に運用してまいりますということを、たしか所信表明でおっしゃったことは、総理は覚えておいででしょう。どうでしょうか、その席のままでけっこうですか。――うんと、うなずいておられます。したがって、それを排除するよすがというのは、独禁法しかいま現段階においてはない。だから、野党の言うように大幅に修正に応じ、修正案ができるならば、その点は防げるようになっております。しかし、いまのこの政府案ではないから、この物価予算委員会といわれるここでどうしてもこの点は詰めておきたい。  そこで、ひとつ四項目ばかり公取委員長に順を追って聞きます。すみませんが、足の悪いのに恐縮でございますけれども……。  そこで、まず第一点は、通産省と業者とが談合して高く標準価格をきめる、これはどうなります。
  70. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 談合してきめるということは、私はちょっと適当ではないと思います。先ほど通産大臣から答えられましたように、あくまできめるのは政府である、そのために必要な限度において資料を要求する、こういう範囲は、これは当然許された行為でございまして、業者と話し合いをすることは、この限度においては私は当然必要なことだと思います。(山田(太)委員「話し合いはいい。価格をきめるのは」と呼ぶ)価格をきめるときには、政府がきめるものだと思います。話し合いで、いまおっしゃられたようないわゆる談合してきめるというふうなことは、私はあり得ないことだと思っております。
  71. 山田太郎

    山田(太)委員 それはあり得ないことだと思うということでは済まされぬ問題だから言うておるのです。まずそういう場合は、もちろんカルテル、独禁法違反。  二番目は……。
  72. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 独禁法違反とおっしゃる点は――私がいま申し上げたのは、標準価格一つをきめるにしろ、特定標準価格にしろ、それは政府が定めるものであって、談合してきめるということはあり得ないと申し上げたので、もしかりにそうでなかったらカルテルかと言われますと、その点、私どもはそこまでカルテルだと称するわけにいかない。たとえ、その定め方に多少の間違い、その他非難される疑点があったといたしましても、私は、それは監督官庁の責任において行なう行為でありますから、それはカルテルという問題とは違うと思います。
  73. 山田太郎

    山田(太)委員 談合ということばが適当でなかったと思います。  その次が、業者が話し合いをして一応の値段をきめる、それに対して通産省が手を入れる、あるいは介入する、この場合はどうですか。
  74. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまおっしゃっている中に、たぶん、標準価格、つまり法律が通過した後のことを主として聞いておられるのだろうと思います。であるといたしますと、そのことは、その陰にどのような定め方があるかについて、私ども公正取引委員会が、そういう行政官庁の行なうことについて、非常に目に余るような、たとえば業者間の話し合いを実はそのまま認めたというふうなことがあれば、私どもは、これは非常に好ましくないということで厳重に抗議をするというようなことはありますけれども、直ちにこれを、標準価格そのものにからんでカルテルが行なわれたというふうに判断をするのは、私どものらちを越えているのではないかと思います。
  75. 山田太郎

    山田(太)委員 私は公取委を責めている立場で言うておるわけではないのです。その点はひとつ了解しておいてくださいよ。  そこで、業者が話し合いをして値段をきめますね、これはあり得ることです、標準価格の資料を。これはいいのですか。
  76. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 それはできないはずであります。
  77. 山田太郎

    山田(太)委員 それはできないはずですね。――はい、わかりました。  次は、通産省がどのような資料にしろ、あらゆる資料はもうできているということは――この前、総理大臣でしたか、あるいは通産大臣でしたか、資料は全部できているというふうなお話までありましたけれども、通産省が独自で原価計算をして、そして業界に指示する、これはいいことですか、どんなことですか。
  78. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これはたいへんけっこうなことで、それが当然の措置であろうと思います。
  79. 山田太郎

    山田(太)委員 四番目、ここですが、通産省が業界から提出させた資料に基づいて、それを基礎にして原価計算をした、こういう場合はどうですか。
  80. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その資料については、通常申しますと、普通の例では業界からは多少値を高くきめたいという願望がありますが、これは私は、産業界としての、性悪説をとるのではなくて、そういう自然の性質だと思うのです。ですから、そういうものであるということを頭に置いて内容をよく検討していただけばいいのであって、それについては、私がここでとやかく答弁するよりも、おのおの主管大臣が、いかなる決意を持ってどうなさるかという実際上の問題でございますから、私はこれ以上の話は述べたくないと思います。
  81. 山田太郎

    山田(太)委員 非常に長時間、私も、足が悪くないのですが、一緒に立って御質問したわけでありますが、また、あとで聞くこともありますが、一応お引き取りいただきたいと思います。  そこで、いま最後の公取委員長の御答弁は、いまここでは言いたくないという、あるいは、はっきりは言えないというふうな、何かはっきりしない。その気持ちがわからぬじゃないのです。しかし、きょうこの点をまだ多くついておったのでは、次の質問ができませんから……。  予定より長く延びたのですが、この覚書の問題で一つちょっと気にかかるところが、やはり報道の中にもありましたので、通産大臣にお伺いしたいと思いますが、この覚書の中の「等」というのがここでは問題になっておりますね。「等」がここでは四カ所ばかりありますが、この前文の「実施等」これが非常に大切なようになっております、報道では。それから(ハ)の「等」、この「等」と前の「実施等」、これはどういうふうな意味にもとれるというふうなことですが、通産省としては、この「等」というものは、あってもなくてもいい字句でしょうか、どうでしょうか。
  82. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私、いま手元に覚書を持っておりませんので、覚書の正確な文章を存じておりませんから、その点お許し願いたいと思いますが、つまり、ある程度の行政裁量の余地を残した表現として、ある程度の弾力性を持たせていただいた、そういう意味であると思います。
  83. 山田太郎

    山田(太)委員 それは答弁にはなっておりませんが、もう多く言いません。  そこで、ここで先ほど申し上げたプロパンガスの「価格改訂のお願い」をひとつ読んでみましょう。「原油事情の悪化に伴いまして十二月一日より御購入頂きます石油製品は下記の通り改定させて頂き度くお願い申し上げます。」それで改定価格が八十五円から九十五円になってしまった、あるいは七十五円が八十五円になったと、それぞれ書いてあります。そして会社の名前もこれにあります。どこそこの油がと、こういうふうになっています。そうして、「情勢の変化により下記の事態が予想されて居ります。引き続き再々値上があります。御通知も差し上げないで価格を変更させて頂く場合もあります。」あるいは「さかのぼって値上をさせて頂く場合もあります。」こういうふうなものが出ておるわけですね。この点について、問題提起だけきょうはしておきますから、その結果について、また私のところに後刻ひとりお知らせ願いたいと思います。  そこで、公取委員長に……。  せんだって、塩化ビニール業界、それから石油業界、それに臨検をなさいました。これはまだ捜査中の段階でございましょうから、その内容については多くは言えないと思います。しかし、多少の、臨検をするというその目的、理由、このポイントだけをひとつ一ぺんお伺いしておきたい。  それからもう一つは、今月七日の、いま大きく問題になっております紙の問題、この紙の業界でコーテッド紙、それから上質紙、これについての勧告を、中には一社を除いて警告ということばになっておりますが、これについての処置というもの、これは非常に大切なことでございます。と申し上げますのは、この紙の業界は、もう時間がないから言いませんが、非常に悪質な独禁法違反をやっておるわけですね。昨年の九月一日に立ち入り検査を受けておる。ところが、四十八年二月八日に、五月二十一日から一〇%の値上げをしようというのを九社が寄ってきめております。そして四十八年の二月九日に、今度は日本製紙連合会に対して、コーテッド紙、このときは勧告ですね。ところが日本製紙連合会は、ただ一片の注意書を出しただけになっております。ところが、この二月九日、この前の日が談合、カルテル行為のあったとき、そのあと二月九日に勧告を受けて、今度は二月二十日にまた同じようなことを紙パルプ会社がやっておるわけです。そして五月二十一日に一〇%値上げしようときめたのを、今度はもっと繰り上げて、三月二十一日から値上げしようじゃないか、こうきめているわけです。片や、上質紙のほうもまたやっておるわけです。今度は四十八年の六月二十一日、山陽国策パルプ会社において、これは王子、十条、北越、日本パルプ、山陽国策、大昭和等々寄り合って、また一〇%の値上げをきめております。勧告を受け、立ち入り検査をやられ、勧告を受け、その前の日、あるいはそれからすぐあとにまたやっておるわけです。どちらもやっております。そして四十八年の七月九日に、今度は立ち入り検査をまた受けております。製紙各社二十一社やられておる。そして初めてこのたびの警告になってきたわけなんです。  このように、総理は、独禁法の運用は厳格にしてやりますと、こう言明もなさっておりますけれども、これは一つの例でございまして、もう独禁法をなめ切ったような、公取をなめ切ったような行為が次々になされておるわけです。セメント業界にも二度ほどあります。これも二度やっております。また同時に、酢酸エチルの業界もやっております。その他枚挙にいとまがないほど次々と――これはある意味においては犯罪です。  アメリカの国民は、カルテルは殺人よりも重い犯罪であるという認識が非常に強いようでございます。というのは、国民の大衆の生活をわずかの大会社が相つどうて、そして値段をつり上げ、利益を収奪していき、そして生活権を脅かすというんだから、アメリカの国民が、カルテルは殺人よりもひどい大犯罪であると言うのは、これは当然のことでございます。ところが、わが国においては、独禁法がまだまだ十分生かされていない。また、生かされようとしても、そこに昭和二十八年であったか改正が加えられて、またその後一回やったと思いますが、改正が加えられて、骨抜きにされてしまったという面もある。  いまのようなことを総理はお聞きになっておって、たびたび重ね、勧告の前、勧告を受けたあと、あるいはそれから後またやる、そうして警告というものを受けているけれども、まだへっちゃらでのうのうとやる、そういうふうなことは、これは簡単な御答弁でけっこうです、長くおっしゃると時間がありませんので、これについては悪質であるかどうか、どう思われますかということを簡単にひとつ……。
  84. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 独禁法は厳正に適用され、運用されなければならぬことは、申すまでもありません。新法ができましても、独禁法は厳として存在をするわけでございますし、これが物価安定、国民生活必需品の流れを正常化すためには政府も十分な配慮をしてまいりたい、こう思います。  現在、御指摘のような事情があるかもしれません。しかし、こういう問題は、新法ができれば十分明らかになることでございますし、独禁法も引き続いて厳密な運用が行なわれるわけでございますので、御指摘のような事項がないように、政府も法の運用を厳正に行なうとともに調査を進めてまいりたい、こう考えます。
  85. 山田太郎

    山田(太)委員 時間も参りましたので質問を終わりたいと思いますが、総理大臣、きょうは時間がなくてこのことを詰めなかったのですが、独禁法も活用いかんによっては、非常に物価の安定にも生きてくる法律になり得るのです、総理がおっしゃったように。現段階では、価格を押えていき、価格を引き下げさせる力もないし、また現実に証拠が、書類なりあるいは証人なり、そういう現実証拠がなければできないということも、御承知のとおりです。したがって、アメリカがやっているように、情況証拠でもこれができるという、そういう点も考えなければならぬのじゃないか。ことに、いまのような異常な物価高騰のときでございます。その点はひとつ十分お考えになるとともに、早く結論を出していただきたいことをお願いしておきます。  そこで、総理がきょう朝おおくれになったことは、これはシリアの外務大臣とお会いになっておった。非常に重要な会談であったことと思いますが、できるならば、その事柄もあわせて総理としての御見解、あるいはアラブ問題あるいは石油の問題も兼ねてその点を総理にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  86. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 独禁法が厳密な運用を行なわれなければならぬことは当然でございます。また独禁法は、国民生活を守り、物価の安定に寄与するために設けられておる法律でございますから、この法律が厳に適用されるように配慮を求めるということもまた当然でございます。新法ができますれば、いろいろ広範な調査官が出るわけでございますし、しかも、これらの調査官は、必要があれば警察にもこれを通報しなければならないようになりますし、税務署や国税庁にも通報をしなければならないようになります。同時に、独禁法の関係官庁に対しても通報しなければならないということになるわけでありますから、そういう意味では、国民生活を守るための事態は、いまよりも合理的に行なわれると考えておるわけでございます。  それから、アラブの代表との会談につきましては、アラブ側日本に対して、二四二号に対して日本が明確な判断を示されたことに対して評価をする旨述べられると同時に、石油の問題で日本に対して影響を及ぼすような処置をとらざるを得なかったような理由ということもるる述べられておるわけでございます。  私たちは、世界に類例のない平和憲法を持っておるわけでありますし、武力による占領の永続ということを認めるような国ではありません。しかも日本は、戦後日なお浅く、大体初めの十年間は全く敗戦経済であって、千百万余の同胞を海外から迎えて、今日の繁栄など考えられる状態ではなかった。まん中の十年間は、よくやく自立経済を行ない、今度の七、八年間、これからようやく開発途上国との間にも経済協力を行ない、真に世界の平和に貢献しようとしているときに、石油問題が起こってきたので、この石油問題は、あに日本経済のみならず、全世界の平和の問題にも大きな問題を及ぼすものである、そういう問題に対して、ひとつ日本が真に平和愛好国であり、また、中東問題の解決を前提として世界の恒久的平和を維持したいという信念を理解してほしいということを述べておきました。日本は、わずか四半世紀の間で、朝鮮半島事件に関して大きな影響を受け、また第二にはベトナム戦争の影響を受け、今度は中東の影響を受ける。日本は、いままで中東に対して何も悪いこともしておりません。これから大いに中東諸国との間にも友好関係を結ぼうということをいま考えておるやさきに、十八のプロジェクトに対しても真剣にお互いが検討しておるというときに、こういう事態が起こったことは遺憾でございます。これからは、商社だけのベースではなく、政府間でも直接お互いが話し合いをしながら、合理的、具体的な信頼関係をひとつ拡大していくように努力をしたい。最後に、スエズ運河が閉鎖をされておったために、どうもアラブから大きな石油を受けながらも、これを経済ベースというように考えられがちであった日本の対アラブ政策というものも、必ずしも私は積極的だったとはいえないと思います。しかし、どんな国々の人々から比べても、日本人のほうがアラブに、顔色も、また歴史も近いのでありますから、日本に対しての理解を強く求めたい。しかもアラブの恒久的平和に対して日本が貢献する立場は大きいということもひとつ評価してほしいということで、お互いに胸襟を開いての話し合いであったということを申し上げておきます。
  87. 山田太郎

    山田(太)委員 以上で質問を終わります。
  88. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて山田君の質疑は終了いたしました。  午後は零時五十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ――――◇―――――    午後零時五十四分開議
  89. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。林百郎君。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、当委員会であまり問題にされなかった、しかし事は非常に重要な地方財政の問題を中心にして、もし時間がありましたら、さらに日韓閣僚会議の問題あるいは政治資金の問題等にまで及びたいと思いますが、時間の関係でどうなりますか。  最初に、地方財政の問題を聞くにあたりまして、きょうの各新聞紙が発表しておりますところによりますと、日銀が近く発表する十一月の卸売り物価が先月比三%、これは田中さん、新聞の記事を言うのですから、暴騰ということばが使ってあります。それで悪性インフレに近づくということばを新聞は使っております、あなたがこれをお認めになるかならないかは別としても。こういう数字が出ておりますが、これは地方の基準財政需要額の算定の上にも、今年度の物価値上げの見通しというものがどういう状態にあるかということは、非常に大きな影響を及ぼすので、そこでお聞きするわけですが、これは最初に経済企画庁の長官、日銀が十四日に発表するであろうというこの数字については、政府としてはどういうお考えでしょうか。  それと同時に、続いてお聞きしておきますが、十一月三十日に閣議で了承しました「昭和四十八年度政府経済見通しの改訂試算」というのがありますが、これにどういうように響いてくるのか、その点もあわせてお聞きしたいと思います。
  91. 内田常雄

    ○内田国務大臣 卸売り物価は、日本銀行が発表することになっておりまして、私ども、いま直ちにこの際関知はいたしておりませんけれども、四、五日のうちには十一月分が発表されるだろうと思います。十月分も、御承知のように、卸売り物価の対前年上昇率というものはかなり顕著なものがございまして、私、就任のとたんでございまして、実は非常に心配をいたしておるわけでありますが、十一月分は発表されてはいませんけれども、海外要因など、また石油の値上がり、削減状況など、それが直接卸には反映をいたしますので、私は非常に心配をいたしております。しかし、それは対前月三%とかなんとかという大きいものであるかどうかは私にはわかりませんけれども、かなり憂慮すべき数字が出るのではないかと思います。  さようなことでございますが、この十一月の卸売り物価の動きが、直ちに明年の経済成長率の計算に直接影響があるとは思いません。私は、ここしばらくの間は、物価は楽観すべき状況ではありませんけれども、いまが一番物価のいろいろな材料が出尽くさない不安の時期にありまして、悪い材料もありますと思いますけれども、やはりここ数カ月の間には、落ちつくべきものは落ちつく、上がるべきものは上がる、また物資の需給なんかも同じような見通しも得られますので、そういう材料を慎重に判断しながら、来年の経済見通しあるいはまた経済運営の指導方針というようなものを慎重にかまえて、うそがないところでつくってまいりたい、かように思います。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 念のためにお聞きしますが、十一月三十日の閣議で了承された「昭和四十八年度経済見通しの改訂試算」ですね、これはもうあなたが責任を持ってここで言えると思います。当初見通しとそれとの比較ですね、それをちょっとここで最初に、私の質問へ入る前に聞かしてもらいたいと思います。
  93. 内田常雄

    ○内田国務大臣 経済成長の四十八年度の見通し試算におきましても……。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 卸売り物価と消費者物価……。
  95. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それだけでよろしゅうございますか。  卸売り物価は、当初の見通しでは二%ぐらいに低く見られておりました。低くというか、従来、ここ何年かの間の卸売り物価上昇率にさらによけいなもの、上がる要素を加えまして二%ぐらいに見ましたが、それが今度やってみますると、年間平均をいたしますると、やはり一七%くらいに改定をせざるを得ないということであります。十月の瞬間風速では、御承知のとおり前年に対しては二〇・三%ということでございますが、前年度ということにしますと、これを一七%として改定しました。  消費者物価のほうは、これは初めから五・五%ということで、卸売り物価よりもその上昇率をよけいに見込んでおりましたが、このほうも、最近の瞬間風速では、御承知のとおり一四%をこえておりますけれども、年間平均で昨年度に比べてみますると二二%ぐらいになるということで、GNPの改定試算をいたしたわけでございます。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと総理にお尋ねしたいのですが、いま経済企画庁長官が申されましたとおり、卸売り物価の当初見込み二%が一七%、消費者物価より卸売り物価の高騰率のほうが高いというのは異例でございますが、ここに悪性インフレというようなことも言い得ると思うわけです。消費者物価五・五%が一三%。  こういう政府の当初見込みのもとで組まれた地方財政の基準財政需要額等も含めて、地方財政についてはどういう手直しが必要か。これは、当初の本年度予算を組むときからするともう経済状態が異常な状態になっているわけですから、したがって、そのことは地方財政についても大きな影響を及ぼすわけですから、地方財政についてはどういう手直しを必要と考えられているか、どういう対策を講じられようとしているか。これは非常に重要な課題でありますし、民主主義の支柱である地方自治体が財政的に破壊されるということになりますと、これは非常に民主主義の根幹に響いてくることでありますから、聞いておきたいと思うのです。
  97. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 卸売り物価が急騰したという数字で御指摘がございましたが、これはまあ過去十年間、十カ国の平均よりもぐっと低い一・三%というようなものが続いてまいりまして、去年の下期から急激に上がってきておるということが数字には大きく響くわけでございます。そして、その中の要因というのは、きのうも申し上げましたが、約五〇%は海外要因ということであります。  ただ、それが直ちに地方財政にどう響くかということにはならないのです。これは、ことしは、名目ではありますが、財政収入は非常に好調なわけでありまして、今年度はこれに耐え得るような予算執行ができるという状態であることは、これは事実でございます。でございますから、今度の補正予算から見ましても、賃金アップ分に対して地方も財源を確保しなければならないというような面を除いては、特別、地方交付税の税額をすべて交付を受けなければならないというような状態でないということは事実でございますから、そういう意味では、今年度の予算に対しては十分執行できる体制にはございますが、しかし、来年度の予算を組む場合にはいまのような状態ではいかないわけでございまして、これは、政府自身がいま四十九年度の予算編成作業を行なっておりますし、またその過程において来年度の経済見通しを策定しなければならないということでありますので、地方と国とが連絡をとりながら、来年度の地方財政、また国の財政等に対しても検討を進めなければならない、こう考えております。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 自治大臣にお聞きしますが、総理は、こういう異常な経済状態のもとで、地方財政については手直しをする必要は感じない、本年度予算の執行についてはそういうことを言っておるわけなんですけれども、それならば、地方の公共事業に対する契約の進捗率は、いま一体どういう状態になっておりますか。昨年度に比較してどうなっておりますか。いまどの程度の進捗率ですか。
  99. 町村金五

    ○町村国務大臣 九月末日現在における契約率は、昨年に比べまして約八%ほど下がっておりまして、約四七%程度というふうに承知をいたしております。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 総理、そういう状態なんですよね。やはり事業の進捗率が非常に下がっているわけです。それから、自治省でも通達を出しておることは御存じでしょう。影響ないといえますか。  私のほうが念のために調べてみました地方自治体の公共事業に要する資材等の値上がり、前年九月とことしの九月とを調べてみますと、板材が五一・八%、角材が七四・八%、ベニヤが七二・七%、セメントが二一・九%、くぎが五四・六%上がりと、これは異常な上がり方なんですね。今年度の基準財政需要額の計算の際、また国の補助事業に対する補助単価を計算するときに、田中総理でさえこういうことは予想していなかったでしょう。だって、見通しが、卸売り物価二%が一七%、消費者物価五・五%が一三%だというのですから、総理が想像もしないような事態が起きているのに、地方財政だけは手直ししないでいい、そういう論理が通りますか。しかも、総理はそうおっしゃっているけれども、自治省にしても、あるいは厚生省にしても、建設省にしても、それぞれ手直ししているじゃないですか。もう少し親切な答弁をあなたできませんか。地方自治体があなたのいまの答弁を聞いたら、ちょっとあなたに対する信用はなくなりますな。あなたの支持率は一そう下がりますよ。どんなものでしょう、率直に言ってください。
  101. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 どうもあなたの発言には毒がありますな。それなら、そういう質問のしかたをしてもらえばちゃんと答えるのですよ。そうじゃないんでしょう。  ことしの地方財政だけではなく、国の財政も、異常な物価高もございますので、総需要抑制という意味から八%程度押えようということは、国会でも間々答弁をしておるとおりなんです。だから、国も地方も、同じように七、八%程度昨年に比べて発注、支払い等を押えようということになっております。これは平仄が合っておるわけです。地方も国に協力をしてもらっておるということであります。去年からことしにかけて見ますと、税収が非常に多いものですから、地方としてはいままでよりも潤沢に単独県費事業、単独市費事業、単独町村費事業というものが行なわれておる、それは事実なんです。ですから、地方における下水道などは、一〇〇%、一五〇%というところもある。そういうことがビニール管その他の不足にも直接影響したということもあるわけです。そういう意味で、国も地方も、また民間も、三千平米以上とか五千平米以上・下要不急のビルなどに対しては抑制をしてもらうということでやっておるわけですから、現時点において財政収入がないために事業が行なえない、また給与も支払いができないという状態ではないということだけは、これは私が申し上げて基本的に間違いないことなんです。  ただ、第二の問題として、単価の問題はどうですか。この単価は、異常な値上がりによって、材木とかヒューム管とか、セメントとか鉄鋼とか、そういうものが急騰したために成約ができないというものはございます。特に下水などに対して、大型下水などは五〇%も基準単価を上回っているというようなことで、まあ政府が緊急二法案を提出をしておりますから、永続的にこのようなことがあるわけはない。そういう意味で、現時点における大規模な、三年、五年という長期のものは半年繰り延べて発注しようというような動きもあります。また、そういう問題に対しては、自治省とも、厚生省とも、みな各都道府県は相談をしておるわけであります。  ですから、そういう面に対しては、一律すべてのものを、道路でも鉄道でも何でもみなやってもらうということではありません。ありませんが、地方自治体が国と平仄を合わせてなさなければならない社会保障面とか学校とか、そういう面に対しては単価補正もやりましょうということで、今度の予算に対しても補助単価の引き上げ分ということを計上し、審議を願っておるということでございます。  ですから、総体的な問題と、異常な材料値上がりというために単価がどうなっておるかという問題は、これはやはり二つに分けて質問をしていただけば一つずつ答えるのですが、そうじゃなく、あなたは腹の中には後段の問題を入れておって前段のような表現で質問されるからそんなことになるのでして、一つずつ質問願えればちゃんと答弁いたします。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 質問のしかたに毒があるのか、あるいは現実の認識に総理があやまちがあるのか、これはひとつ主権者たる国民の判断にまちましょう。  そこで、厚生大臣と文部大臣にお聞きしますが、基準財政需要額の地方交付税について、生活保護基準と文教、社会福祉施設の単価改定が今度の補正予算で二百三十二億組まれているわけなんです。そこで厚生大臣と文部大臣に聞きますが、この二百三十二億というのは、生活保護基準と文教、社会福祉施設と両方を含めて二百三十二億という数字が出ておりますので、これは当初の生活保護基準と社会福祉施設の基準財政需要額に対する何%、それから文教施設の当初基準財政需要額に対する何%アップに該当するのですか。
  103. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 基準財政需要額との関係は自治省のほうでおわかりになるかと思いますが、社会福祉の関係で申しますと、昨年度に比べまして、本年度の当初予算は、超過負担も解消しなくちゃならぬというので、一五%のアップで施設の単価を計上しました。それで当初の予算ができておるわけです。ところが、それだけではできませんというので、今回一〇・八%単価の引き上げを行ない、さらにまた、扶助基準におきましては、本年度、前年度に比べて一四%のアップでございましたが、五%上げる、すなわち扶助基準の五%アップ分と、それから社会福祉施設の一〇・八%のアップ分が今回の補正予算の中に入っておるわけでございます。
  104. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 国の予算措置に並行して基準財政需要額の改定も行なっていただいた、かように考えておるわけでございます。公立文教施設について申し上げますと、四十八年度の予算のときには、前年度に対しまして一〇%余りの引き上げが行なわれたわけでございましたけれども、八月に、実施上単価を一一・一%引き上げて運用さしていただきました。さらにまた、その後の状況にかんがみまして今回補正予算を組ましていただいたわけでございますけれども、一〇・八%引き上げさしていただいたわけでございます。その結果、四十七年度の予算単価に対しまして、鉄筋では三五・五%の引き上げということになっておるわけでございまして、これと並行して地方財政需要の措置をとっていただいたわけでございます。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 いろいろ問題があるのですが、それじゃ文部大臣にとりあえずお聞きします。  最近の改定というのは、たぶん十月の改定だと思いますが、そうすると、それは十月契約後のものなのか、あるいは十月以前のものにも、あなた、ことしと言うのだから、ことし全部に平均してその率が適用されるのか、それはどちらなんですか。
  106. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 最後の引き上げの部分、これは御指摘のように十月一日以後に契約されるものについて適用される単価でございます。それ以前のものにつきましても、残工事量を推定いたしまして、残工事量につきましては、単価の引き上がり分、いま申し上げましたような計算に基づきまして、半分は公費で負担をすべきだろうというたてまえで補助金額の増額をはかろうと、かように考えておるわけでございます。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから、十月後のものに対して十数%アップしたといっても、年平均すればそれが薄まきになるわけです。しかも、政府の当初見込みより卸売り物価、消費者物価が想像もつかないような騰率を示しておるわけですから、やはりその程度の手直しでは不十分だ。私はとうてい地方自治体の要請には応じられないと思うんですよ。  そこで厚生大臣にお尋ねします。いま、この更生施設、それから厚生関係の費用についてアップしたと言われましたけれども、それならお聞きしますが、特別養護老人ホーム、ここに収容されている老人に対しては、四十八年当初に比較して金額にして月に幾ら上がっているのか。普通の養護老人ホームについては幾ら上がっているのか。身障者更生援護施設に収容されている者は月にして幾ら上がっているのか。婦人保護施設に収容されておる者は幾ら上がっているのか。乳児院に収容されている子供の食費並びに日常諸費は月に幾ら上がっているのか。三歳以上児は幾らか、三歳未満児は幾らか、わかりますか。さらに、もしわかったなら、精薄収容施設に収容されている者は、四十八年度当初に比較して引き上げ後の金額で月幾らの金額を上げたというのですか。
  108. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 施設に入っておる方々についての生活、飲食物とか日常生活諸費こういうものは五%上げておるわけでございます。(林(百)委員「金額です」と呼ぶ)そこで、金額を一々申し述べますとたいへんでございますが、御要望に応じまして申し上げますれば、一月で申しますと、養護施設の飲食物費と日常生活諸費を含めまして、以下全部同じやり方ですが、一万二千百九十円が一万二千七百六十八円、乳児院につきましては……(林(百)委員「上がった金額を聞いているのです。幾ら上げたか」と呼ぶ)上がった金額につきましては、五百七十八円のアップになるわけでございます。乳児院については四百八十四円、保育所につきましては、三歳児以上の者は七十二円、それから三歳未満については百四十五円、精薄施設につきましては四百六十五円、これが一人の月額アップ率になるわけでございます。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 総理、いまの数字お聞きになったでしょう。具体的に、あなた、ことしは福祉元年だとおっしゃるから、福祉に重点を置かなければならない。しかし、物価はこのように異常な高騰を来たしている。一番そういうもののしわ寄せを受ける者は経済的な弱者、いま私のあげたような、たとえば施設に収容されている老人だとか乳幼児なんですよ。ところが、いまお聞きのとおり、いいところで月六百円、一日二十円ですよ。一日二十円で、あなた、とうふが幾分の幾つお買えになるか御存じですか。とうふが三分の一しか買えないですよ、一日に。その程度のものを特別養護老人ホームに入っている者あるいは養護老人ホームに入っている者、また三歳以上の児童に対しては月六十六円ですよ。一日に二円ですよ。この程度の手直し、これは地方自治体も一部負担をし、国も補助を出してくるわけですけれども、五%アップなんですよ。政府見通しですら、もう消費者物価は一〇%以上上がっているといっているときに、これがどうして一体福祉行政への転換とかあるいは福祉元年とか、そう言えるのでしょうか。そこを私は聞きたいと思うのです。そこでやむを得ず――これはもう各新聞にも出ております。いずれあとで事例は申しますけれども、たとえば、いままで肉を食べさせていたのが、この収容児童などに対して肉を食べさせるわけにいかない。で、まあフライの魚を一週間に一回にする。しかし、それも最近ではもうできなくなってきている。きょうのテレビでも言っていましたけれども、収容児童が、結局、もう食費がアップしちゃって当初の予算ではできないということで、あの発育盛りの子供がうどんを一ぱい食べている。きょうのテレビに出ましたね、総理ごらんになったかどうか知りませんが。  こういう状態を地方自治体は見ているわけなんですから、何としても地方自治体としては至急手を打たざるを得ないわけです、直接見ているわけですからね。結局これが地方自治体の負担になるわけですよ。総理、どうお考えになりますか。もっとこういう弱者に対しての国の援助の手直しを至急しなければならないんじゃないでしょうか。  総理も、今度の所信表明の中で、総需要の抑制ということを言われました。そして節約の美徳に対する価値観を定着しなければならないということを言いましたけれども、しかし、そういう節約のできる弾力のある者と、あるいは需要を抑制できる者と――もうぎりぎりでしょう。たとえば、老人ホームに収容されている老人が、一日に二十円上げられたって、これは総需要の抑制なんという範疇へ入る問題じゃないわけですよ。三歳以上の乳幼児に対しては一日二円上げる、それで総需要の抑制だと、ここまで総需要の抑制を適用する、あなたの政策をここまで入れるということは、これは正しくないことでしょう。一方では、新日本製鉄が、本年度九月決算で七百八十億円もの利益をあげている。そういう場合に、やはり総需要の抑制といっても、抑制できる部分、抑制しなければならない部分と、ここはもう抑制という範囲に入らないんだ、ここへは、こういう物価騰貴の際だから、抑制より一そう手厚い手当てをしなければならないんだという、こういう政策の転換が必要じゃないでしょうか。私はそこを総理にお聞きしたいと思うのですよ。
  110. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日の当たらない人、また社会保障対象階層に対して手厚い保護を加えていかなければならない、それはもうそのとおりでございますし、政府もそう考えておるんです。あなたはいま、何か少し意地の悪いお話でございますが、どうもおかしいじゃないですか。総需要抑制の中で、何もいま社会保障対象人口に予定しておる予算を切ったり、それから減価したり減額したりしておるならいいんですが、それはそうじゃないでしょう。ですから、予算の中で対前年度の伸びは、社会保障対象費をふやしていることは事実でしょう。しかし、そこまでいかなくとも、他の款項目に対しても確かに対前年度比ふえております。しかし、公共事業やその他が二〇%ふえたとしても、一七%ふえたとしても、そのうち年率八%は抑制しているんでしょう。そういう意味で総需要の抑制をはかっているんですよ。しかし、社会保障費の抑制などはかっていませんよ。ですから、何か総需要の抑制という中で全部削っているように、そういうニュアンスを国民に与えるような言い方というのは、あまり意地のいい言い方とは言えないですな。そうでしょう。それは少なくとも付加しているんですから、その付加のしかたが足らないということでございますから、これも精一ぱいこちらもやっているんです。ですから、来年度もまたそういうところに重点を置いてやろうというんですから、やはり、ものは正確に言っていただかなければ。それは不足だというならわかりますが、何か国民の皆さんが聞いていますと、総需要の抑制の名において社会保障費や給付費まで削っているんだということじゃないんですよ。ですから、いままで公共事業はもちろん二〇%といっても、八%繰り延べれば実際一二%、約半分になっておる。これは総需要抑制になっているわけですよ。  しかし、実際に物価は上がっているし、社会保障対象の方々に対しては、もっと何らかの処置をしなければならない。地方も国も応分の協力をしながら、これに付加して現状に対応できるように、中身がもっとよくなるようにという努力を続けることは事実なんです。ただ、その努力が少ないじゃないかということは、これはわかりますよ。だから、それは財政の規模もありますし、いろいろな事情もありますし、学校もあるし何もあるしということだから、今度はこういうふうにいたしましょう、しかし、来年度は事情によっては物価を引き下げることをやります、もっと給付内容がよくなるようにやりますということは、これはあなたと同じ考えを持っているんですよ。人後に落ちないのです。そういうことをよく前提として言ってくださいよ。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 総理もまた、私の質問することはみんな意地悪みたいにとられても、これも心外なんですよ。私の言うことをよく聞かれて、一体どこに林君の質問の真意があるかということを、もっとすなおにお聞きになったらいいじゃないですか。  政府見通しの消費者物価五・五%が、当初見込みが二二%にも上がった。さらにそれが、今月に至ればおそらく一四%になるだろう。一〇%も上がっている。そこへもってきて、社会保障費が、上がっても五%だ、生活保護がね。現実に食費やいろいろな処置費を、収容老人やあるいは乳幼児やあるいは身障者に見ると、いまも厚生大臣も言ったように、月に六百円程度。三歳以上の乳幼児に至っては六十六円。これでは国民総需要の抑制とかなんとかいっても、この部分はもっと手厚い処置をしなければいかぬじゃなかろうか、こう聞いているとき、あなたは、国民総需要の抑制のところばかり、私の質問のそこだけとらえてきて、意地が悪い意地が悪いと言うけれども、全体を聞かれたらいいじゃないですか。  それではあなたはこの矛盾をどういうふうに手直しするつもりですか。一番経済的な弱者ですよ。
  112. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど厚生大臣が述べましたとおり、本年度予算編成のときに一〇%余のアップをしたわけでございます。しかし、その後の情勢に対応して、どうにもならないということでありますから、国と地方との間で話し合いをしながらもう少し上げております。しかし、それに対しては今度の補正予算で処置をいたしております。しかし、補正予算の処置というものを個別に見れば、ほんとうに内容が豊富になり、内容がよくなるような金額にならないじゃないかというお気持ちに対しては、これは私たちも地方とも十分話し合いをしながら、一時地方から立てかえてやってもらってもけっこうだし、お互いがとにかく、いままで三度のめしだったものを二回にするわけにいきませんから、そういうものに対しては、これはもう当然現状を維持しなければいかぬし、現状維持よりももっとよくしなければならぬということが前提になっているわけですから、今度の予算にも誠意を示してこれに対応したつもりであります。  しかし、来年度というものは、いままでのようにずっと上がっていくということを前提にしておったら、これは破局的なものにならざるを得ませんから、そういう生活必需物資はちゃんと政府が確保します、こう言っているのです。ましてや、そういう要保護家庭や社会保障施設の中に入っておるものを確保できないようであったら、どうにもならぬわけです。ですから、来年度の予算を組むときには、いままで自由に買っておいてもらったものを、国や政府が確保してこれを提供するか、現物支給にするか、いろいろな方法があるわけです。ですから、来年の予算編成までの間に、そういう問題は十分考えて万遺憾なきを期してまいりたい、こういうのですから、私の言うことも聞いてくださいよ。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 私があなたにお聞きするのは、補正予算で、あなたの言うように若干手直しをいたしましたよ、たとえば生活保護で五%とか。しかし、それでは、一番経済的な弱者に対して――現在の政府の責任においてこのように物価が上がっているのですから、あなたに言わせれば、政府の責任ばかりじゃない、外因もある、需要の旺盛さもあるというようなことを言っておりますけれども、これは私とあなたの根本的な見解の違いです。しかし、そういうときに五%程度で、実際、下にいってみれば月六百円あるいは乳幼児六十六円、これでは、この現在の経済事情のもとでの弱者に対する予算の補正には当たらないではないか。ことに、あなたが福祉元年だと言った手前、これでは当たらないじゃないか、こういうことを言っているわけなんですよ。おわかりでしょうか。決して意地の悪いことじゃなくて、私はこういう人たちの声を代表してあなたに言っているわけです。  この問題ばかりやっていると限りがありませんから、それでは次の問題へ移りますが、超過負担の問題。  こういうように政府経済見通しもなかなか立たない、非常な大きな当初見込みより狂っているという状態のもとでは、地方自治体としては超過負担が発生してくるのは当然です。これはどこの自治体でもいまその声が出てきているわけなんです。  私が一例を申しますと、これは地方行政委員会が派遣して調査した埼玉県の草加市の例です。草加市の例で申しますと、栄小学校のプールが実施事業費、これは一平米当たりで言いますと数字がはっきりわかりますから、六万四千三百九十七円。ところが政府の基準事業費は一万八千円、実に二八%にすぎないわけなんですね。だから、実際このプールをつくるのに市の負担は、その総事業費の六七%でいいのに、九〇・七%も負担しているわけです。それから、同じく草加市のしんぜん保育園の新設の例を見ますと、実施単価が一平米当たり六万七千四百二十二円。ところが国の基準額は三万四千百円となりまして、市の負担が五〇%でいいのが、実際は八四・八%負担しているわけです。草加中学校の危険校舎の改築の例を調べてみましたら、これは実施単価が一平米当あり六万一千九百六十八円なのが、実際は国の基準単価は五万七百円と見られているわけです。市が負担すべきものは六七%でいいのが、七二・五%も負担を負っているということで、これは超過負担が各自治体に発生しているということは、田中総理もすなおに認めなければならないと思うのです。これに対してどういう手を打たれるか、大蔵大臣とあわせでお聞きします。  これは大蔵大臣も御承知、自治大臣も御承知だと思いますが、四十六年度決算に基づいて四十七年度に超過負担の調査をなさって、四十八年、四十九年に二分の一ずつ解消するという手を打たれました。しかし、その手を打たれても、現実はこのような超過負担が出てきているわけです。また、九大都市の指定都市のほうからも超過負担の例が出てきております。また都道府県知事会議からも出ております。これは都道府県知事会議でも全国市長会でも町村長会でも、どこからも出ているわけです。四十六年度決算に基づいて四十七年度の調査、これも六項目で、あと六項目以外のものはどうするかは出ておりませんけれども、これはどうしても超過負担の解消に至急手を打たなければならないと思うのです。私たちは、今年度直ちにこの補正予算でせめてそれを打ってくれればよかった、こういうように思いますけれども、これについてまず総理に、総理としてどういうお考えを持たれるか、また、少しきめこまかいことを大蔵大臣にお聞きしたいと思うのです。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 超過負担につきましては、林さんがよく御承知のとおり、四十七年に調査をしまして、その結果に基づいて四十八年、四十九年でこれを解消する、そういう計画を進めておったのです。ところが、そこへ今回の異常な物価高という問題が起きておるわけでありまして、その問題につきましては、すでに予算の実行上調整措置を若干やっております。それから今回の補正予算でも若干それをやっておる。そして四十九年度の予算編成のときは、超過負担問題でそうおしかりを受けるような事態がないようにという心がけを持ちまして目下予算編成に当たっているというのが現況でございます。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 もう少し具体的に説明できませんか。おしかりを受けないような手を打つということは、どういうことをなさるのですか。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 つまり、自治省と、また関係各省とよく相談をいたしまして、超過負担はこれを解消するということを基本方針として予算編成に当たる、こういうことでございます。
  117. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 超過負担の解消につきましては、大蔵大臣が述べたとおりでございまして、四十八年、四十九年でもってこれを解消するということは国会でも述べております。述べておりますが、しかし、現在の状態ですべてこれが解消できるかどうかということは、なかなか困難な状態が出てまいりました。あなたが、ことしこれだけの状態なんだから、完全消化をし、しかもそれを超過負担の解消の第一年次としてやるには、もっと大幅な補正予算を組まなければならぬ、理論的にはそのとおりです。現実問題からいいますと、必ずしもそうばかりじゃないのです。いま異常な高騰ということがあるし、しかも今度の場合必ずしも材料費が――来年石油がうんと減って、石油が減れば電力も減る、電力が減れば工場の生産力も落ちる、そうすれば材料がなくなる、そうすると需給のギャップが出て物価が上がる。これはいまの問題じゃなく、少なくとも来年以降にそういう問題が恒常的になった場合に起こり得るのであって、そういう問題に対しては、いま二法案の法成立等をお願いしているわけです。現実的には百何十億ドルもよけいに品物も入っておりますし、どこかに品物がある、しかし、先高だというような問題で売り惜しみをしている。ですから売り惜しみ買いだめ防止の法律もいまつくってもらっておる。今度二法案ができたら、政府は地方公共団体の協力を得て、総動員で、どこに品物がどうありますということをやるつもりなんです。これはほんとうに命がけでやるつもりなんです。  ですから、異常な事態における五〇%も六〇%も上がるというような状態において、これを完全に消化をしたほうがいいのか、これを繰り延べたほうがいいのかというものは、地方公共団体の自主性を基本にし、政府も十分話し合いをやっているわけです。私もそういう例を知っています。二十億でもって膨大もない上水道工事をやろうとしたら、三十億でございますと、五〇%増しの要求である。だれも受け手がない。しかし、その中になお弾力条項をつけてください。それでもなおできるかどうかわかりませんからということである。それを議会にはかるにはどうしますかというから、それは単年度の工事なのか、いや、それは五年がかりの工事ですというなら、ことしの工事の発注はとりやめなさい。なさいというんじゃなく、私はそんな権限がありませんから、相談を受けて、繰り延べるほうがより合理的であり、村民に協力するゆえんであろうと、こう示唆を与えておるわけです。そういうことを考えてやらなければだめじゃありませんか。いまセメントは三百円で見積もっておったものが六百円でございますから、これを完全に消化する、そしてその差額を全部国が出したほうがいいというわけには私はいかないと思うのです。  ですから、市町村の補助工事にも単独工事にも軽重の差があるのです。ですから、五カ年計画の庁舎などは全部ことしはやめましょう、そして庁舎でもってあてにしておったセメントや鋼材、そういうものを下水道工事にちゃんとやっていくために単価補正のワク内で完工しているものもあります。ですから、そこは知恵なんですよ。お互いに事の緩急というものをちゃんと考えながらやらなければならない。ですから、来年もいままでのような状態でこのまま上がっていくとしたら、それはもうやれるものじゃありません。それこそ悪性インフレであり、インフレーションである、こういうことなんですよ。ですから、そういう意味でそういうことをしないようにいまやっているのです。  そういう意味で多少繰り延べもありますよ。多少どころじゃない。これはやっぱり繰り延べたほうが有効であるというものに対しては、ちゃんと繰り延べています。ですから、それも政府が強制的に、これでもって全部おやりなさい、事業費の超過負担はこれで終わりですよ、こう言っているわけじゃないのですよ。ですから、国と地方公共団体が全部詰めながら、工事に優先順位をつけながら、どうしてもなさなければならないものは無理をしても完工しましょう、そういうものに対しては国も十分考えます、こういって今度の補正予算を組んでいるわけでございますので、やはり四十七年対四十八年の単価アップ、それに対する中間アップ、今度の補正予算、来年度の予算に対する単価やその処理の方法に対する国と地方との協議、こういうことを一貫して考えていただきたい。  それは超過負担などというものは、ほんとうに存在すること自身がいやなんです。こういうものは国民の支持を受けられないということですから、誠意をもってやっている。こういうことを考えてください。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 総理、繰り延べろ、繰り延べろと言ったって、地方自治体では当初に計画を立てているわけでしょう。もちろん、あなたのお考えになったような高速自動車道路網だとか列島改造に――あなた、列島改造というと、あれは私の意見だと言うかもしれませんが、いわゆる列島改造構想に基づいたああいう大きな、国内景気を刺激するようなああいう大プロジェクトに関連している地方自治体の事業、そういうものを延ばすことはいいですよ。しかし、あなたの言う繰り延べなさいという中に、どうにも繰り延ばすことのできないものまで入っているんですよ。  これは新聞に出ていたことですから一例を申しますと、たとえば入札が不調になったり、着工のおくれがざらに出ている例として、青森県が県内で七カ所につくるはずだった老人憩いの家も、三カ所で、あと来年度以降に繰り延べざるを得ないような状態になっている。福井県南条町の県立福寿園これも延ばさざるを得ない。岡山県熊山町の民間第二広虫荘、これも延ばさざるを得ない。静岡県熱海市立養護老人ホーム、それから御殿場市立特別養護老人ホーム、焼津市立の老人福祉センター、滋賀県五箇荘町の軽費老人ホーム、石川県小松市の老人福祉センター、目玉事業だといわれる山形県の心身障害者コロニー、こういうようなものはみんな延期されているわけですよ。  私は、地方自治体の事業の中にも、これは繰り延ばしてもいいというものが全然ないとは言いませんけれども、しかし、おおむね地方自治体が今年度計画の中に立てておる公共事業というものは、国の大型プロジェクトと違って、老人だとか、あるいは施設に収容される心身障害者だとか、こういうものと結びついた、あるいは下水道だとか直接日常の生活と結びついた、こういうものがあるわけなんですよ。これを一括繰り延ばせといっても、それじゃ繰り延ばせば、繰り延ばしたものは、繰り延ばしたものの単価、それから基準財政需要額は、本年はお変えになるでしょうかどうか、それでやれるようにするのか、その点が一つ。  それから、繰り延ばしたらいいだろうといったって、できない事業があるのです。これは草加市の例でありますが、たとえば舗装の新設工事ですね。これは二回入札しています。四十八年九月三日と四十八年九月十一日、二回入札に出していますが、資材がないということで応札するものがないのですよ。これは市道の八三九、八四一号線。それから同じく舗装新設工事で市道の一七七三号線、これは四十八年十月二十九日に入札に出したのですが、これも応札するものがない。それから橋梁かけかえ工事で四十八年十月十三日に入札に出したけれども、これも応札するものがない。さらに、公共下水道の第六処理分区汚水枝線工事、これは第三工区から第八工区までありますが、いずれも入札しても応札するものがない。さらに、谷塚駅西口の側溝新設工事あるいはごみ処理場の造成工事、新田駅前のバスターミナル新設工事、市立図書館新設工事、この市立図書館新設工事のごときは四回入札に出したんだけれども、応札するものがないという状態なんです。  ですから、私の言うこういう地域住民にとってどうしてもその年にやってもらわなければならない事業が延ばされているわけですね。だから、あなたの言う延ばせというものと、こういうものだけは延ばすわけにはいきません、何とか手当てをいたしますというものと、おのずから区別されなければいけないわけでしょう。そこの基準をどこへ置くのでしょうか。そして来年度繰り延ばした事業に対してはどういう手を打たれるか、これは大蔵大臣にもお聞きしたいと思います。
  119. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ものには軽重がありますから、これはどうしてもやらなければならぬものはどうしてもやるということなんです。それを政府が言うよりも、地方自治を尊重しておるわけですから、地方自治体がみずからの事業計画の中で、いずれを一番必要とするか。火事になって教室がなくなったのと、雨天体操場の計画があれば、雨天体操場は一年延ばせないことはありません。しかし、火事で燃えた教室は絶対必要なわけですから、そういうようなものは個々にみんな違うのです。その市町村市町村でみな違うわけです。ですから、大ざっぱに言えることは、社会保障とか、日の当たらない人たち、恵まれない人たちに対してお互いの協力でやってやらなければいかぬというようなものは、当然やらなければいかぬことです。ですから、そういう一般的なものと、それからその町、その市、その県によって、軽重おのずからあるわけですから、そういうものに対しては、自治省とも十分相談をしながら、大蔵省もこれにかみ、そのものを進めていくようにしますということです。  そして、ことしできなかったものは来年はあがるのかといったら、あげるつもりはないですよ、今度は。あげるようにするなら、総需要をうんと抑制していかなければだめなんです。石油を押えたのは十一月の二十日からでしょう。十一月の二十日といえばもう第三・四半期も半ばを過ぎておるわけです。ことしの経済活動は名目的にもちゃんと上がっておるわけです。ですから税収もちゃんと上がっておるわけですから、そういう意味で、鉄材は一億五百万トンちゃんとつくります、セメントは八千八十万トンで余りますということになっておるはずなんですよ。なっているはずにもかかわらず、そのセメントが倍になったり、いろいろなことをしておるわけですから、今度はここまで繰り延べを行なうというようなことになれば、これが七%、八%でなく、絶対一〇%を繰り延べなければならないということになれば、今年度の分は第四・四半期分まだ残っておりますから、三カ月分だけでなく、十二月分入れれば四カ月分残っておるわけです。ですから、こういうものの大筋を思い切って繰り延べることもできます。それはいまこまかく在庫調査や生産調査をやっておりますから、それで来年どうしてもこの分では資材というものはこういうふうに横ばいになる、ここまで下がるという見通しがつくことによって予算を組むということなんです。  では、全部のデータが出ないうちは予算は組めないのか、そんなことはない。これはある一つの目標数字でもって予算を組めると思うのです。地方財政計画もできます。しかし、どうしても下がらない実態なら、四半期、四十八年の第四・四半期分のうち大きなものを延ばすと同時に、四十九年の第一・四半期の分をそっくり延ばしてもいけるはずなんです。その中で全部が全部延ばすというわけじゃありませんよ。社会保障とか、今年から継続したものは、当然やらなければいかぬ。しかし、来年総需要を相当に抑制しながら、四十九年第一・四半期分のほとんどを繰り延べて、一としの繰り延べ分を執行するとすれば、材料は余るにきまっておるじゃありませんか。それでなければ工賃が一年間に千五百円も二千円も上がるわけはないのです。ですから、そういうことを今度は十分な配慮をしながら、予算そのものの状態に対しても抑制的なものをやります、同時に、執行過程につきましても十分やります、そういうことでこまかい配慮をしなければ、来年、結局、品物はあっても、ものが高くなるということになるわけでございますから。今度はどういうわけで入札が不調になっておるかということはよくわかるのです。ビニール管のない場合や、工場が爆発したとか、いろいろなデータを全部いま計算しておるわけですから、そんな意味で、無制限にウナギ登りにのぼっていく、そういう気持ちは全く持ってないのです。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 こういう基本的な考え方、たとえば石油が不足したって、これは地方自治体の責任じゃないわけでしょう。(田中内閣総理大臣「そんなことを言ってもしようがない」と呼ぶ)しようがないといったって、そこが大事なんですよ。あなたは、日米安保条約のもとに米軍を日本の国に駐留させて、そしてイスラエルとアラブが戦争開始したときに緊急警戒体制をとらしている。そういう、日米安保条約でアメリカ側についているということはわかっているものが、それがアラブのほうに急に親交的な態度をとろうとしたって、日米安保条約がある限り、とれないわけでしょう。アラブの諸国だってそこを見ているわけですね。だから、アメリカと同じように輸出の削減をしているわけでしょう。だから、そういうのは自治体に関係ないことなんですよ。国の責任なんですよ。だから、国の責任によって繰り延べざるを得なくなったような事業、しかも事業の内容は、子供の教育だとか福祉施設だとか、あるいは下水道事業だとか、こういう地域の住民に欠くことのできない事業なんですね。これを延ばせということ自体問題ですし、それから、延ばしたら来年は必ずそれか遂行できるような――もちろん、何でもと私は言いませんよ。私だっていろいろ事業について知っていますからね。しかし、どうしてもやらなければならないものに対しては、やるような単価や資材を保証するようにしなければいかぬと思うのですよ。こういう点をお考えになっているかどうか。  それで、あなたも投機防止法やいろいろなことをおっしゃるけれども、しかし、あの中に立ち入り検査の条項があるわけでしょう。ところが、こういう事態のもとであの買占め売惜しみ防止法に基づいて立ち入り検査をしたのが何件ありますか、あなた。中小企業か何かに一件あるだけでしょう、あれに基づいてやったのがですよ。だから、あなたの言うことを信用しろったって、なかなか軽々に信用できないわけです。しかも、あなたは、来年は物価がいまのような高騰の状態になるという見通しのもとに来年度予算のことを云々されることは正確でないというようなことをおっしゃるけれども、しかし、われわれの見通しからいったら、いまの物価騰貴の状態がそのままでいって、来年はダウンしていくという要因を見出すことはできないわけなんですよ。物価論争はここであなたと私と幾らやっても限りありません。ただ、地方自治体が直面している、そういうどうしてもなさなければならない事業に対しては資材を保証する、もし来年度に繰り延べるとすれば、来年度はちゃんとそういう事業ができるような補助あるいは基準財政需要額の計算をちゃんとする、それで政府が保証してやるということをそこで言ってくだされば、それでいいんですよ。
  121. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 保証するというけれども、それは保証するというのじゃなくて、地方自治体の自主権を尊重しながら、政府も法律で三分の二とか二分の一とか補助しなければならない、補助いたします、こういう法律になっておるわけですから、物価の値上がりということで、実際は五〇%の補助になってないじゃないかというところに政治に対する信頼感を失うわけでありますので、政府も何も五〇%のものを三〇%でもってごまかそうなんという気持ちは毛頭ないのです。私たちも自治体の中に住んでいる一員でもあるのですよ。東京都という自治体の中に住んでいる一員なんですから、国民政府も一体になって国民生活を守らなければならないという立場に立っているのですから、ですから、いずれにしても、来年度どうにもならないと考えていませんよ、どうにかするんです、必ず。しようと思うから国会に法律をお願いしているのですよ。ですから、どうにもならないで必要であれば、地方公共団体、国がどうしてもやらなければならない社会保障施設の単価に合うような品物は、今度法律を通してもらえばとにかく指示もできる、場合によれば公定価格も設定できる、配給もできるのですよ、ガソリンに対しても。ですから、そうすれば材料支給という道も開かれるわけです。私は、そんな統制的なことをしなくとも、国民がこんなときにお互いに協力をし合う、不当な利得を得ようなどというふらちな人たちがほんとうに一人でも存在しないような社会をつくらなければならないと思っていますよ。そういうふうに努力しますよ。しかし、どうにもならない人たちがおれば、やはり法律どおり政府は権限を執行せざるを得ないじゃありませんか。  私はそういう意味で、ことしというのは異常なものでありますから、来年度からの必要な公共事業の執行に対しては、方法もありますし、具体的手段も講じ得られる。国会の御意見も十分尊重いたします。これはいまは政府に総動員法のごとき権限がない。だから公表するだけである。しかし、今度の法律を通してもらえば、あらゆる人たちを調査官に指定をし、調査官は警察にこれを報告しなければならない、税務署にこれを通報しなければならないということになれば、物が出てくるにきまっているのですよ。なければ別ですが、あれば必ず出てきますよ。ですから、そういう意味で、私は来年度の執行に対して国民期待にこたえられるような情勢をつくりたいということで努力をしているのだということで、政府努力もひとつお認めをいただきたい。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 大蔵大臣、もう少しきめのこまかい説明を聞きたいのですが、要するに、今年度の地方自治体の事業を来年に繰り延べるということになりますと、その自治体の負担分は本年度の基準財政需要額で計算してあるし、単価は本年度政府がきめた単価で、そのままでできなくて延びるわけですね。そうして、来年は経済状態がどう変化するかわかりません。われわれの見通しからいえば、やはり物価が騰勢にいくのではないか、インフレ的な傾向が鎮静できるという見通しははなはだ困難ではないかというように見られるわけです。かりに物価が騰勢の状態にいって、本年度の基準財政需要額、本年度の補助単価では、自治体が来年度に繰り延べた事業が執行ができない、そういう事業に対しては、来年度の本予算編成の際に当然手直しされ、是正されるものと思いますが、その点どうですか。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 ことしの補助事業の補助費、それはいま繰り延べという措置をとっているものが相当あります。それはいま繰り延べでございますが、年度末に至りまして実際問題として繰り越し、そういう手続をするものが多かろう、こういうふうに見ておりますが、その繰り越した事業が一体どうなるか。これは、適正に繰り越しした以上、執行されなければならぬ、その執行単価は適正にしなければならぬ、これはもちろんでございます。  ただ、林さんが先ほどから前提がありまして、いろいろ事例をあげまして、ずいぶん執行が不能だ、こういうふうなお話でございますが、確かにこの夏ごろまでそういう状況があったのです。ずいぶん契約が落ちない、そういう事例があった。それは大体資材が、特に鉄、セメントです、これが不足しておる。そこで請負業者が、資材を持ってきなさい、セメントを持ってきなさい、そうすれば契約に応じますというような態度であり、それからもう一つは、それよりはウエートが少なかったと思うのですが、この単価の問題これがあったと思うのです。その後、鉄やセメントの状況も改善されております。それから、予算の実行上単価の改定をするということにいたしたわけです。それから、今度の補正でまた見直しをするということになった。九月、十月ごろから、予算の執行が非常に停滞したこういう状態が、かなり改善されてきておりますので、先ほどずいぶん事例をあげてお話がありましたが、おそらくそれは九月以前の状態の御調査じゃあるまいか、そんな感じがするのです。  いずれにいたしましても、地方団体が受け持つ事業の中にはかなり住民生活に密着したものがありますので、いやしくもきめたということになった以上、そういうものの執行には支障が起こらないように、そういう措置をしたい、かように考えております。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 大蔵大臣、私のあげた例はあなた聞いておらなかった。私のあげた、入札はしたけれども応札がなかったという例は、みんな九月後なんですよ。これは、地方行政委員会で埼玉県の人口急増地域である草加市へ調査に行ったときなんです。あなたはよく聞いておらないからそんな御答弁をなさいますが、みんな九月、十月、十一月ですよ。しかも十一月に至って、きょうの新聞にもありますように、卸売り物価は騰勢を続けていく、対前月比、異例な騰勢をしているという状態でしょう。これは何ら改善されているのではないのですよ。だから私の例は、九月、十月の例を先ほどあげて、これが応札がないんだという例でありましたので、あなたはもう少し実情を正確にお調べになってください。ことに群馬県にもありますから、あなたは自分の出身県にお聞きになればすぐわかることですから、むしろ九月、十月に至ってなかなか困難な状態が加増しているわけです。  そこで、自治大臣にちょっとお尋ねしますが、十一月二十日に出した、この補助額がかりにきまったものであっても、具体的にそれの契約がないものに対して地方債の裏づけをしないというような通達を十一月二十日に出しておりますね。この内容をちょっと御説明願いたいと思うわけなんです。  ということは、こういうものには起債の裏づけをしないというのですが、その起債の裏づけをしないというのに一体こういうものがあり得るかどうか。たとえば病院事業の中に、「診療に直接必要な施設および設備であって緊急に整備をしなければ住民生活に影響を与えると認められるもの以外のもの」、しかし、病院事業の施設で、これを緊急にやらなくても地域住民の生活に影響を与えないような病院の施設の改善なんというものが一体考えられるかどうか。さらに、下水道事業も入っていますが、下水道事業が、一体地域住民の生活に影響を与えないようなものがあり得るのかどうか。そういうものをどうして一体起債を認めないのか。しかも十一月二十日に至って、十一月二十日以後の契約分についてはもう起債を認めないということなんですね。  ところが、私が言いましたように、九月、十月、十一月なって、補助金も決定し、入札に出しているのになお応札がないというものがあるわけですね。だから、病院事業やその他で裏負担の起債を認めないというものの中で、これは福祉上どうしても認めなければならないものがあるのに、どうしてそういうものまで起債を認めないのか。たとえば、厚生福祉施設の中でスポーツ施設、休養施設、レクリエーション施設――休養施設、スポーツ施設なんて、これは勤労者のものですよ、地方自治体でつくるのは。別にゴルフ場をつくるということじゃないのですよ。それと、地域住民の生活に切実な影響を及ぼすものなんでしょう。こういうものが十一月二十日までに契約ができなければ裏負担の起債を認めないということは、一体どういうことなんでしょう。それが福祉行政を推進するという政府方針に沿ったものなんでしょうか。  しかも、この問題は(注)として、「上記の工事、事業にかかる用地の取得又は漁業補償で必要と認められるものについては例外とする。」土地だけは例外で見てやる、こういうことが書いてありますね。しかし、上のものについては延ばせ。しかし、その延ばせというものの中には、こういう社会福祉施設としてどうしても認めなければならないものがあるということですね。あなた、この通達を持っていますか。この通達の中の「記」としてある四項に、「一に伴う起債の取扱いについては別途連絡するものであること。」これは一体どういうことなのか、何を意味しているのか。とにかく、先ほど私が申しましたように、草加市だけでも、入札に出したのに応札がないというためにずうっと延びている。やむを得ず延びているものでも、十一月二十日までに契約ができないものは裏負担の起債も認めないようなことになれば、これは自治体にとっては、本年度の公共事業の計画というものはもう全く見通しが立たないということになってしまうわけですね。この通達はどういう意味で出されたのか。そしてこの中に病院施設や、厚生施設としての休養施設、こういうものまで含まれておる、あるいは下水道まで含まれておる。これはどういう意味ですか。
  125. 町村金五

    ○町村国務大臣 十一月二十日に出しました通達は、申し上げるまでもなく、地方債を財源として行なわれる事業で、住民生活の関連でその整備が緊急度が少ないと考えたものを対象としたわけでございます。  そこで、ただいま御指摘になりました病院事業等については、駐車場などはしばらく延期したらどうか、あるいは下水道等につきましても、ここに通達をいたしております内容は、庁舎というようなものはこの際としてはしばらく延期してもらったらどうか、こういうような趣旨に基づくものでございます。
  126. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 林さん、約束の時間ですから……。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃもう一問で……。
  128. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 もう一問だけ。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 これは総理大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのですが、本年度の補正予算で、御承知のとおり、交付税会計が国に一千四十五億円返済することになっていますが、これは法律で四十九、五十、五十一年に返せばいいもの、そして五十二年の一部分も入っていますけれども、こういう、法律でちゃんと先に返せばいいものを、どうしてまとめて千四十五億返済することにするのか。それからさらに、国の会計から九百五十億借りること、これも停止になりましたね。これは、地方財政が中央の政府考えておるようなそういう弾力性を持ったものでないのに、こういう法律で返済期限がきまっているのまで先に返させるということは、地方財政法からいっても正しくないのではないか。  たとえば地方交付税法には、いわゆる三二%条項があるわけですね。三税の三二%を国から地方へ出すのだ。地方へ交付税交付金として出すならば、それはもう地方財政になるわけですね。地方財政法は、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」と、こう書いてあるわけですね。それを年度間調整で、国の資金運用部資金なり一般会計なり、そして交付税交付金を吸い上げるとか、こういうようなことはやるべきじゃないじゃないでしょうか。そう言えば大蔵大臣は、いや、地方交付税交付金が足りない場合は国からも貸したこともあるじゃないですか、そうおっしゃるかと思います。そういう場合は、地方財政法の趣旨に従って三二%というものを根本的に考えればいいわけですから、地方財政に交付することが法律できまっているものは国が手をつけてはいかぬものじゃないでしょうか。しかも、法律で五十二年までに返せばいいというものまで一括してこの際返済させる、あるいは吸い上げるということは、これは地方自治体の財政の自主権というものをそこなうものではないか。それはあなた方のほうでは、国の財政と地方財政とは車の両輪だ、相輔弼し合うんだというようなことをおっしゃるかもしれませんけれども、しかし、地方自治体というものは、やはり憲法で規定されている自主的な権限を持っているわけですから、地方財政もその裏づけとしてちゃんと自主的なものを持って、国がこれを侵してはならないと書いてあるのですから、今度の補正予算のようなことをすべきでないと思いますが、これは重要な点でありますので、総理大蔵大臣にお聞きして、私の質問はこれで終わりにいたします。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 申し上げるまでもございませんけれども、国と地方とは、これは独立した、相侵すことのできない存在でございます。しかし、日本社会ということになりますと、これはもう国と地方とが車の両輪となってこれを運営する、こういう性格のものですから、国がいま、石油だ、異常な物価高だということで異常な事態に立っておる、それに対して国が総需要抑制政策というような考え方をとり、補正予算案でも、国は借金五千三百億円を、公債発行額をとりやめますという際におきまして、地方がそれにならった同じ行動をとるというのは、私は当然のことだと思うのです。これは今後といえどもそういう事態が幾らでも起きてくる、こういうふうに思います。そのかわり、地方が困ったというときには国がまあいろいろの便益を与える、これは考えなければならぬ。私は、今回とられた措置は、まあいまの時局から見まして当然のことであり、こういうことは将来といえどもあり得ることである、こういう考えでございます。
  131. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まあ総需要抑制の一環として地方に協力を求めたということであります。地方がこの協力に応じないというときに政府が強引にやるというなら、これはたいへんですが、そうじゃないんです。地方も、どうぞけっこうでございます、国から借りたこともございますし、国に貸したこともございますので、これは国民に対しても、税収がことしは非常にいい、また来年国から借りなければならぬかもしらぬということにおいて、この補正においてその処置をとられることに異議ありませんと、こういう、お互いに理解し合って国民の負託にこたえようということでありますので、そこらはひとつ理解していただけると思います。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 これで私の質問は終わります。  最後に総理に、こういう要求があるということだけ申し上げまして――私の質問ではありません。要求だけいたしまして打ち切ります。これはあなたも、私もまた地方自治体の中で生活しているのですとおっしゃっているわけなんですから、これは非常に重要なことで、これは地方自治体あげての要求ですから。簡単に申します。  まず第一に、地方公共事業の執行のために必要な資材ですね、さっき総理も言われました石油はじめセメント、鋼材、木材、塩化ビニールなど、これはやはり政府が責任をもって確保してやるという責任があると思います。  次に、地方交付税の基準財政需要額、これの算定を見直して、やはり実績に合うようにする。できるならこの補正予算でされたいし、来年度には、予算編成についてはこのことをやられるのは当然だと思います。  次に、これは四党の共同で地方財政について要求している項目で、こぐ簡単に申しますが、第一は、地方交付税のうち四十九年度以降の返済金の繰り上げ償還をやめる。これはぜひ、野党の要求でありますから。第二は、地方財政の超過負担解消をめざして、学校の建築、厚生福祉施設等の補助単価引き上げを行なうための経費を増額する。そのために、公共事業について、高速道路、鉄道、新幹線、港湾、空港などの、大企業、産業基盤整備の事業費を削減する、あるいは緊急を要しない防衛費等から兵器装備費等を中心に削減する、こういうようなことが、これは四野党として要求されておりますので、よく心していただきたいと思います。  大蔵大臣に申しますが、やはり交付税交付金というのは、自治体の自治権に基づく財政的な裏づけなんですから、国の都合でこれを手をつけるとか左右するということは厳に慎まなければならない。私はその点を大蔵大臣にくれぐれも申し上げまして、私の質問を終わります。
  133. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて林君の質疑は終了いたしました。  次に、安宅常彦君。
  134. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、まず第一番目に法務大臣にきょうは質問いたします。  法務大臣、きょうはどういう日でしょうか。法務大臣にとって非常に重要な日であります。
  135. 中村梅吉

    中村国務大臣 きょうは人権宣言の日と心得ております。
  136. 安宅常彦

    ○安宅委員 たいへんぴんとこないようでありますが、新任早々だからしかたがないということも一面あるでしょう。しかし、これは非常に重要な日だと私は思っておるんです。それで、このことに関連して、一九四八年の十二月だと思いますが、国連総会で世界人権宣言というものが宣言されて、それに付随するいろいろな条約、そういう類のものが二十近くあるはずですね。日本はどれくらい批准しておるんでしょう。――だれてもいいですよ。政府委員、いるでしょう。
  137. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 外務省条約局長――来ていますか。来ていたら返事をしてください。
  138. 安宅常彦

    ○安宅委員 わからなかったらいいです。ただし、時間をまたまけてもらいます、委員長
  139. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 そうはまけられません。
  140. 安宅常彦

    ○安宅委員 日本の人権に対する態度というものはそういうものなんですよ。そこから始めます。  六月四日、北海道大学理学部地質学教室助手の、理学博士である金喆佑という方ですが、この人が、韓国の陸軍保安部、CICに逮捕され、そして十二月三日、ソウル地裁で無期懲役の求刑を受けている。大体あしたあたり――人権の日をはずして、あしたあたりに判決が出るだろう、こういわれています。この罪名は、国家保安法、反共法、それから刑法の間諜罪です。スパイ罪ですね。  この人はどういういきさつで逮捕されたか、あなたのほうでは調べがついていると思いますが、総理が知らないと悪いですからちょっと申し上げますと、この人の兄さんに当たっている人で金喆佑という人が――これも理学博士です。これはたいへん有名な人で、あなた方が必死になっていま援助している浦項製鉄所の技術担当の理事であります。この浦項製鉄所の第一期工事の分の火入れ式、これが六月八日に行なわれていますね。その直前にやはり逮捕されて、この人は死刑を求刑されています。同じような罪名であります。弟は北海道におったのですが、何か兄貴が苫小牧の会社に、ひとつ韓国から石などを輸入したりいろいろやったほうがいいじゃないかという話を受けて、そして弟に、この人は地質学の専門家ですから、この人にいろいろあっせんなんか依頼しておったようです。ところが、その向こうの会社から、ぜひ至急来てくれ、そのことで相談をしたい、中に入っている人も連れないで、たった一人で来てくれ、こういう電話があったという話と、もう一つは、自宅に李何がしという人が来て、ぜひ来てくれと向こうで言っているから、行きましょうということで連れていったか、そのところはさだかでありません、私の調査では。しかし、だれか、これは日本におけるいま問題のKCIAか何か、そういう連中でしょう。逮捕したのが陸軍保安部ですから、あるいはCICだかもしれません。こういう人と一緒かどうかわかりませんが、急拠、四日のJALでソウルに行っています。とたんに飛行場から連行されています。  こういうのは、われわれ民主主義の国家におる人間として、いま非常に不満な状態物価も上がるし、たいへんな国柄でありますが、しかし、この韓国のやり方、これは不当逮捕だ。しかも、これは日本の北海道大学の助手でありますから、文部教官か技官だと思います。国家公務員です。それをいきなり逮捕して、直ちに起訴して無期懲役にする、こういうことはあり得べからざることだと私は思うのですけれども、どういうものでしょう。こういうことについて、総理大臣、常識で考えて、あり得べからざることではないかと私は思いますが、いかがなものですか。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 金喆佑氏は、御指摘のように、正規の出国手続を経まして韓国に帰省したところ、韓国の治安当局が同氏を逮捕したと承知しております。同氏は韓国籍でございますので、外交保護権の対象にはならないのでございますけれども、日本に学び、北海道大学の教官までつとめておりまして、わが国との関係がある方でございますので、北海道大学の関係者との面会の便宜をはかる等、側面的にわが外交出先関係におきましても便宜をはかっておるところでございます。
  142. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういうことを聞いているんじゃありません。弟さんのことをいま聞いていますが、六月四日、JALで、呼び出しを受けて、直ちに金浦飛行場で逮捕などということは、あり得べからざることではないか、こういうことを聞いているんです。誘い出しをしたとしか見られないでしょう。私はそう思うのです。これは金大中さんの問題と、やり方は違うにしても、たいへん似通っておりますから、あり得べからざることではないかと聞いているんです。常識的にそうではないかということを聞いているんです。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 その点につきまして、私はつまびらかにいたしておりません。
  144. 安宅常彦

    ○安宅委員 まあ常識的にといっても、何かその次あるだろうと思って、承知しておりませんなどということばかり言っておるから、日本の外交というのはちぐはぐになるのですよ、あなた。  それで、この問題について言うならば、弟さんの場合は、これは毎日新聞社の科学賞を受けたこともありますし、非常に有名な地質学者ですね。こういう人が、何のいわれもなしに、何か、だれかから急に来いと言われて、商売のことだと思って――どこか地質を調査してもらいたいという話だったようですね。だから、ふっ飛んで行ってみたら、ばたっと逮捕された。まるでネズミとりみたいなものですね。私どもは、こういうことをやる国家、国の権力、政権というものは、民主主義の政権だとは思わない。独裁的なファッショ政権だと思っている。どだいクーデターによってでき上がった政権であることは間違いないのでありますが……。  こういうことについて、それでは文部大臣にお伺いいたしますが、この人は休暇願を出しておるようです。ところが、どうも逮捕されたようだというんで、教室のほうでは、将来身分はどうなるだろうか、休暇が切れたときに困るだろうというので、本人の了承を得ることもできませんし、みんなで相談してやったことでしょうが、欠勤の届け出をしているようですね。そうすると、この人は身分はどうなるのでしょうか、そしていま現在どうなっているんでしょうか。
  145. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 六月四日に休暇願を出しまして、自来、休暇願の期限が切れましても欠勤のままでございますので、欠勤として扱っているわけでございます。したがいまして、身分上は助手そのまま、しかし、欠勤したということで給与上の措置をとっているということでございます。
  146. 安宅常彦

    ○安宅委員 給料はいま月幾ら支給しているんですか。
  147. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 給与の額は承知しておりませんけれども、一般職の公務員の給与に関する法律及び人事院規則に基づきまして、扶養手当でありますとか、あるいは寒冷地手当でありますとか、期末手当でありますとか、そういうものは支払っておりますけれども、本俸は支払われておりません。
  148. 安宅常彦

    ○安宅委員 たとえば、大学はあなたの直接管理じゃないんでしょうが、文部省のだれか役人が同じような目にあった、こうした場合には、国籍は違っても同じ国家公務員だ、そうした場合に、文部省は大騒ぎをするのではないでしょうか。ただ、外務大臣もそうですが、国籍が向こうだからしかたがないのだ、それだけで――しかも人事院の承認を得て正式に国家公務員として、あなたのほうは必要によって採用した人ですね。そうしたならば、あり得べからざることでいま欠勤をしている、しかも欠勤届というのは本人の意思によったものではありません。そうでしょう。休暇をとっていったら途中でそういう目にあったのですから、こういう場合には、もっと血も涙もある処遇をするのが人間として当然ではないでしょうか。私はそう思いますが、どうですか。
  149. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 外国人のことでございますし、また外国に起きている状況でございますので、私たちは、自然、ことばにつきましても慎重を期していきたい、こう考えているわけでございます。いずれにしましても、休暇願を出しまして、その後消息がわかりませんでした。したがいまして、学校当局もいろいろ心配をいたしましたし、文部省におきましてもいろいろ事情を把握したいということで、それなりに外務省当局その他を通じまして実情の把握に努力を傾けてきているところでございます。したがいまして、また給与の問題につきましても、いま申し上げましたような措置をとっているわけでございまして、日本の法令に従いまして、法令で許される限りの給与は支払うというのがいまの姿でございます。それ以上のことをするためには、法令の改正を要するということは御理解を賜わっておきたいと思います。  同時にまた、この方は休暇願を出しておられるわけでございますけれども、外国に渡りますときには、国家公務員であります以上は所属長の承認を受けなければならない。しかし、そういう承認はとられておらないわけでございます。それだけにまた、事情を正確に知りたいということで、かなりその間は苦慮を続けたことも申し添えておきたいと思います。
  150. 安宅常彦

    ○安宅委員 そこなんです、問題は。私はだから、電話によって行ったか、あるいは李何がしなる者が来たという情報もありまして、そういう手続を――大学の先生ですから、上司の許可を得なければならないぐらいは知っていると思うのですよ。それを出す間もなく、いわゆるうまく誘い出されて、悪く言えば拉致されていったのではないか、こういうこともそのときぴんとくるのが人間じゃないかという意味です、私が言うのは。ですから、そういう特別な場合に、本俸は渡しておりません。奥さんや子供はたいへんだろうというところまで気を配るそのやり方というものは、国会で問題になってからあなたのほうではいろいろなことをやりだした。それまでは黙っていた。それは、文部大臣、人の道を説く文部省の一番えらい人、大臣のことばではないと思う。日本の教育というものがそんな冷たいことで、将来日本というものはりっぱな国にならない、これだけ言っておきますよ。そんな内務官僚まる出しの答弁をしてはいけません。  それで、もう一つは、にいさんのほうですけれども、これは新日鉄――当時富士製鉄だったと思いますが、の推薦によって、韓国の要求というか要請にこたえて、そして浦項製鉄所のイロハから始めた。土地の選定から始めた。ちょうど火入れ式の直前になって、スパイだ。弟までひっさらっていく、こういうやり方です。昔、封建領主がお城をつくって、重要な部分をつくったやつはこの際消せ、こういうやり方と同じような暗示を受けるのであります。  こういうやり方について、いまいろいろ運動している人がおりますね。たとえば、あぶないというので、人権を守るいろいろな組織、アムネスティというのですか、国際委員会、これはロンドンに本部があります。ここから、死刑はひどいじゃないかという電報を打っているようです。日本の国家組織も、国家公務員の一人が高官だったら大騒ぎするだろうと私は言った。韓国人だから、朝鮮人だからしようがないじゃないかというようなことが、われわれの胸に、皆さんの胸にあったとすれば、たいへんなことです。これらの人々が、稲山さんや、あるいはまた永野さんや、こういう人に、ぜひ助けてもらえないだろうか、あなたのほうで弁明してくれないだろうか、アリバイなどについてもいろいろやってくれないだろうか、一生懸命お願いしたが、稲山社長は会ってもくれない。そして今度正式の完成式では、この人たちは無窮花勲章という大勲章をもらっていますよ。朴大統領から直接もらっていますね。会長の永野重雄、稲山嘉寛、それから日本鋼管の社長の植田という人、三菱重工業の社長の古賀という人、こういう人は、最高の勲章を向こうからもらって栄誉に輝いて、必死になって技術担当の最高の理事として奮闘した者がスパイ罪になっている。こんなことは、今日の民主社会においてあってよいことかどうかということです。私は許せないことだと思うのですね。  これは日本政府は司法権がどうの、あるいは裁判権が及ばないとか、いろいろなことがあるでしょうけれども、日本の外交の力、あるいはまた民間の大きな力、ほんとうに人権を守ろうというそういう立場で、皆さんみずから、そういう運動か何かあったときには、私が署名をいただきに上がるかもしれません。よしきたというような態度でやるのが日本政府ではないでしょうか。私はそういうことをほんとうに思うのです。逃げ回っているなどということは、ほんとうに資本の論理、この人たちの大企業というものの本質がそこにあらわれているというような気がしてなりません。自分が使って、自分が一緒に協力してやった人がそういう立場になったときには、よしきた、弁護してやろうという気になってもいいのではないでしょうか。相当の地位の人が、最後の裁判の日に、みんなに説得されて、わかった、おれもほんとうに困っておったんだということを言って、証言に立ってくださいましたが、この人なんかは非常に悩んだそうです。  こういうことは、私どもは許すことができないと思うのです。そして中国の問題などに例をとれば、いままで新日本製鉄やそういうところは全部敵対行為をとっておって、国交回復ができそうだというと、今度いきなり百八十度転換しておる。いま南北朝鮮が統一しようなんというときに、軍需産業のほんとうの基幹をなすこの製鉄所、これに多大な金もうけがあるというのでそれに力を集中し、今度は朝鮮民主主義人民共和国とも商売をやろう、これは死の商人の論理ではありませんか。こういうやり方を私どもは許すことはできない。こういうことは喜ばしいことではないと私は思いますが、総理どうですか。
  151. 大平正芳

    大平国務大臣 人権の立場から切々たる御意見を伺いまして、私も共感するところが多いのでございます。  政府といたしましては、日本国民はもとよりでございますが、わが国に在留する外国人の安全を確保することは、基本的な政府の責任であると考えております。したがって、いかなる国籍を持たれておろうと、外国人団体、組織が違法行為を行なうというようなことは許さない基本的な立場に立っておるわけでございます。韓国のCIA、KCIAと称するもの、あるいはCIC等が、韓国内において韓国人に対してどのような活動をしているかは、韓国人の国内問題でございまして、政府としてこれを云々する立場にございませんけれども、かりに日本国民に関連する場合は、外交保護権に基づきまして適切な措置を講じてまいる方針であることは言うまでもございません。  ただ、それはいわば通り一ぺんの答弁というものでございますが、安宅さんおっしゃるように、わが国の外交の責任といたしまして、そういう法的な立場でありながら、韓国との折衝におきまして、人権をどのようにして守るかということ、守ることについて韓国側の保障あるいは韓国側の実行を求めてまいるかということは、私どもがやって差しつかえないことであるし、人道上の問題につきまして、ことさらわれわれが遠慮する必要はないと思うのでございます。したがいまして、この種の事件あるいは金大中氏自身につきましても、彼の出国を含めての自由等につきましては、再三韓国側にそれを要請し続けておるわけでございまして、そういう努力は怠ってはならないものと私は考えております。
  152. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは私は、こちらから引っぱられていったということの関係で弟さんのほうのことを詳しく調べたのですが、アリバイもあるのですね。何か北朝鮮に行ってスパイの訓練を受けたというのが起訴事実の中にあるようですけれども、出勤簿もきちっとしているし、それから静岡県でそのときは地質学の何かいろいろな調査のあれがありまして、旅館に泊まったときのサイン、旅館の受け取りですね、これもあるし、それから銀行の金をおろしたサインもみなあるのですよ。合わないのです、向こうの起訴事実と。そういうことをよくお調べになってくださいよ。あなた、これはきょう初めてじゃないはずです。決算委員会やどこかでもいろいろ出ていますからね。  しかも、沢本三次ですか、中村正雄あるいは西谷進、いろいろのそういう問題について、共産党の諸君もそうですが、わが党の委員から詳しく、KCIAらしいものにうちまで来られた問題、指名手配を向こうで外務省には断わりなしに発表したりしている、こういうことについて論議がなされているわけですが、今度はこういう問題が起きたのですから、そのつどではなくて、総括的に韓国に抗議をする、こういう立場にならなければならないと思うし、KCIAなりCICというのはどこにどう活動しているか私はわかりません。みんな閣僚は言う、日本世界に冠たる警察機構のことについていろいろ言われておりますが、あれは公安調査庁だとか、いろいろな機関がありますね。そういうところで、こういうものがどういう系列で入ってきて、何人ぐらい日本でどういう活動をしているのか、こういうことについてあなたのほうでは至急調査してこの実態を明らかにしてもらいたいと思いますが、どうですか。できないはずはありません。たとえば韓国居留民団の大会なんというと、公安調査庁も来るし、外事警察も来るし、向こうのCICも来るし、よう御苦労さんなんて、ぽんと肩をたたいているというんですよ。みんな知っているのです。政府だけが、知らない、知らないと国会で言っている。これはおかしいではないかと言っているのですよ。みんながそう言っています。できるはずです。どうですか。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国の法域におきまして、外国の公権力がわが国の承諾なく行使されるということは許されてならぬことでございます。いまお申し出の、KCIAがわが国において公権力を行使した嫌疑があるかどうかという点につきまして、ただいままでのところ確たる証拠を私どもは存じていないのでございます。もしそういうことがございますならば、日本政府として許すべき性質のものではないと思います。
  154. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは決算委員会やいろいろなところでの議事録をずっとここ半年間ぐらいのものを読んでみました。みんな金大中さんのことに論点が集中しておりました。参議院では田さんであるとか共産党の渡辺武さんであるとか、私らのほうでいうならば、小林進さんが衆議院でやるとか、その他の方々が全部それをあげている。実例をあげて言っていますよ。そのとき大臣がおったかどうか知りませんよ。政府委員がみな出ています。そしてそれを一応認めているのですね。そういうことがあったらしいと聞いているのですよ。それは直ちに調査をすればできることです。きょうは時間がありませんが、聞いてない、知らない、そういうことはないということはあり得ない。これに類したことは二十人以上ぐらい、ことしに入ってからだけであるのです。この問題はあとで詳しくやりましょう。  したがって、金大中氏事件の問題に入りますが、私は先ほど、死の商人の論理だと言ったのは、感情的に興奮して言ったのじゃありません。これはほんとうに気をつけなければならないことだと思うから警告しているわけであります。  それで明らかにしたいのは、金大中氏事件のことで国家主権の問題が非常に問題になっています。しかし、ここで言っておきたいのは、国家主権というものは、朴政権を担当している政権担当者や、あるいは田中内閣の閣僚や、そういう人々がどういうふうにしたらいいかということ、あるいはそのメンツを侵されたとか、その権力を侵されたとか、これが国家主権の問題というふうに狭く考えてもらっては困ると思うのです。国民が主権を持っている今日では、国民の主権を侵されたかどうかということが主体でなければなりません。その場合に一番重大なのは何か、人権でしょう。金大中氏の人権というものをまずはっきりさせなければならない。これが国家主権を守るという、侵されてばならないという基本にならなければならない。私はそういうふうに思います。  したがって、国民に全貌を知らせず、うやむやのまま、時の政権の都合で、たとえば日韓友好上障害があるからなどといって、言うなれば手打ち式みたいな、ことに外交的にはケリをつけたなどというそういうやり方は許されるものではない。私は、はき違えないでもらいたいということをまず最初に言っておきたいと思うのです。日本の国の主権者の一人として、私はこのことを、くどいようではありますけれども、しかも国権の最高機関の一員として、はばったいようでありますが、人間一人の命というものを、そしてまた、人間の自由というものを守ることができるかどうか、いま私は皆さんに問いかけようとしているのです。それは政治の基本だからです。こういうふうに、ぜひひとつあなた方は、以下、私の質問をそういう立場で聞いていただきたいということをお願いいたします。  したがって、ここで申し上げますが、外交的にはケリをつけたという発表外務大臣はこの前累次にわたって言っています。どういうふうにやったかということについてもわれわれは明らかにこれを聞いておりません。金大中氏はすでに自由を確保してあることは欣快にたえないなどという官房長官談話も発表されました。各委員会でもそういうことが表明されました。金大中氏はいまほんとうに自由なのでしょうか。それを確保した上での、言うならば外交的にケリをつけたと、こういうことなんでしょうか、これを承ります。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 八月に起こりましたいわゆる金大中事件というのは、御案内のように、日韓の間に起こりました国際的な不幸な刑事事件であります。この事件の全貌はまだ解明し尽くされていないことは御案内のとおりでありまして、日韓両国の捜査当局はまだ捜査の過程にあるわけでございます。したがって、この事件がわが国の主権を侵したかどうかという問題について断定を下す段階でないということは、私もたびたび国会において答弁申し上げたとおりでございまして、しかし、この問題の処理が最終的につきますまで、日韓の間の外交関係がとざしたままに放置しておくことは賢明でないと判断いたしまして、この種の事件が、国際的に見まして処理がつけられてしかるべき基準に該当するところまでの措置がとられたならば、外交的には一応落着をつけるのが適当でないかと判断いたしまして、外交的処理をつけたわけでございますけれども、しかし、冒頭に申しましたように、本件の捜査は進行中でありまして、もしこの調査におきまして主権の侵害というようなことがかりに明らかになってまいりましたならば、私どもとしては、新しく韓国に対しましてそのラインに沿って問題を提起しなければならないという立場を留保いたしておるわけでございます。そういう意味で外交的落着をつけたわけでございます。  それから第二に、金大中氏、つまり被害者の人権の問題でございます。これはこの種の国際刑事事件の場合、先日も小林さんとのやりとりを通じてお聞き取りいただきましたように、多くの場合、行くえ不明になられたり、あるいは惨殺されたりした状態において、完全に回復された例がないことはたいへん残念に思っておるわけでございます。私どもとしては、日韓両国の国民あるいは世界あげて、金大中氏の生命の安全、自由ということが、本件処理の上で非常に問題になっておるということを念頭に置きまして、非常に用心深く本件の処理に当たったわけでございまして、この御当人はいま韓国の法域の中におるわけでございまして、私どもが外交折衝を通じて当たりました結果、韓国政府声明いたしておることは、一つは、出国を含めて同氏は自由であるという、自由を保障するということ、それから別件で訴追逮捕を受けるようなことはないという保障を得ておるわけでございまして、そのことがどのように今後履行されるかということにつきまして、終始重大な関心を持って注視しておるというのが私どもの立場でございます。  それから、先ほどあなたに御答弁申し上げましたように、それでもなお、私どもといたしましては、本人の意思に基づきまして出国の希望がございますならば、それをなるべく早く実現していただくようにという要請は繰り返してやっておるのが、今日の実情でございます。
  156. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、外交的に処理をするの条件に足る状態になったので外交的に処理した。たとえば、金大中氏の自由の問題についてはあとで言いますが、犯人を確定してこれを引き渡す、それから正式に謝罪をさせる、今後の保障を取りつける、これが基本だ。筋を通します、こう言っていましたね。このうち、どれが大体だいじょうぶになったと見たんですか。そしてその場合は、外交的にケリをつけたんですから、文書を取りかわしたはずですね。何かメモランダムか、あるいは協定か、あるいは口上書か、何かあったと思いますが、それはどうなんですか。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 この種の事件を国際的に処理した結果を見てみますると、まず第一に、加害者のほうから遺憾の意を表明されることが第一でございまして、それは大統領の親書を携行して国務総理みずから訪日の上、遺憾の意を表明されたことでございます。  第二は、将来に対する保障でございます。この種の事件を将来にわたって起こさない、それに最大限の努力をするという誓約でございまして、それは同様、大統領の親書並びに国務総理が口頭をもって日本政府に伝えてきたことでございます。  それから、責任者の処分でございますが、責任者はいま捜査中でございまして、嫌疑が濃厚な者、嫌疑を持っておる者もあります。まだ加害者、犯人がつかまっていない事情もあるわけでございまするが、韓国の法令によりまして捜査の上明らかになれば、これを法によって処理するということでございますと同時に、嫌疑の濃厚な者を監督いたしておりました者につきましても、相当の措置を講ずるということの口頭による申し入れが行なわれておるわけでございます。  それから、被害者の問題の原状回復論は、国際慣例上、主権侵害の場合を除きまして、権利として要求する性質のものではないわけでございます。しかしながら、事柄は人道問題であり、とりわけ日韓両国民の非常な関心を持っておる問題でございますので、いま私が御答弁申し上げましたように、非常に注意深く処理いたしまして、ただいま金大中氏は、先ほど御答弁申し上げましたような状態においてあるということでございます。
  158. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうすると、主権侵害があったかないかはわからないまま外交の処理をし、しかも文書では取りかわしていない、あるのは大統領の親書が田中総理に金首相を通じて手交された、これだけの話ですか。全然文書はないのですか。そのほかに外交文書はないのですか。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 大統領の親書のほか取りかわした文書はございませんが、外交交渉の記録は双方政府がちゃんと保存いたしております。
  160. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは先ほど、KCIAの組織、それから系列、人数、可能な限り資料として出してもらいたい、こう言ったのとあわせて、その外交のはっきりわかる経過国民は知らない、全然わからないのですから、それは国会に提出することはできませんか。できるはずですね。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 御要求、御要請にこたえましてできるだけの資料を作成してみます。
  162. 安宅常彦

    ○安宅委員 できるだけというのはどういう意味ですか。できるだけじゃなくて、その交渉、いろいろやったわけですね、そうして結論が出たはずですね、そのことについて明らかにしてもらいたいわけです。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 外交交渉の記録というのは、相手側と交渉した記録でございまして、一方の了承を得なければ外部に出すわけにはまいりませんが、そういう先方とお話をしてみまして、できるだけ御要望に沿いたいと思います。
  164. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、金大中氏の自由という問題、海外旅行を含めた自由という問題について、向こうでは保障していると言いました。ところが、デモ学生を取っつかまえて、そうして今度は無罪放免だなんといってばっとやって、それは放免したらとたんに軍隊だなんという国ですね、向こうは。そんな国の文書も残さない。あなた、いまお金借りるといったって、借用書を書きますよ、あぶなくてしょうがないもの。そういう、人の命に関する問題、しかも主権を侵されているか侵されてないかという問題、こういう外交交渉の場合に、外交文書を取りかわさないなんというそんなばかなことが、そんな外交が一体あるのですか。私は納得できないですね。総理、どうです。
  165. 大平正芳

    大平国務大臣 主権を侵されておるかどうかという問題は重大な問題であります。単なる感じで主権が侵されているとか侵されていないとかいうものを云々すべきではないと思うのでありまして、確たる証拠がなければならぬわけでございますが、日本政府は確たる証拠を持っていない。持っていないときに、日本政府が、われわれのパーソナルな感じで、これはどうもこういうことらしいなんということを私が申し上げたとすれば、逆にあなたからおしかりを受けなければいけない立場に私はおると思うのでありまして、そういうふらちなことは私はできません。
  166. 安宅常彦

    ○安宅委員 国家主権が侵されているかという問題人権の問題こういう問題は、基本の外交交渉なんですから、それが明らかにならないうちに、友好に阻害があると悪いから、はっきりしないうちにきめたなんという外交は、ほんとうはないでしょうと私は言うのです。そんなばかな、主客転倒じゃないですか。はっきりしなければ、いろいろな例があるように、あなたのところは外交はだめだ、断絶だとか最後通告するとか、いろんな方法があるでしょうね。あるいは援助をやめるとか、いろんな方法を講じて、したことをはっきりさせてもらう、これが基本だと私は思います。あなたのは、それはすりかえです。  それで、金大中氏の問題のことで言いますけれども、たとえばハーバード大学留学について、そういうことを考えて金大中さんは国に旅券の申請を出しているわけですね。ところが、ライシャワー氏が行って、そして招請状、それから入学許可証、それから財政保証書、つまり、あそこは外貨が非常に苦しいものですから、財政保証書というものをつけなければならない。もちろん身上調書は必要ですが、これは明らかになっている。これは簡単な調べがあったそうです。それから切符、こういうものも全部渡して、制度的には、書類的には完備しているそうですね。だけれども、いつまでたったって許可はしない。申請してから何日になると思いますか。こんなことで自由なのでしょうか。  自由がある、それは何かというと、韓国の国会答弁で出ています。一般人と同じ自由がある、こういうことを言っておるのです。議事録を見たら、それ以上絶対に答弁していませんね。一般人というのは何か。これはあなた方の政府部内の人から聞いた話ですけれども、この前アメリカに行くときは、野党の領袖として、そして前大統領候補、こういうような敬意を払っているのでしょうが、公用旅券で行っている。一般人と同じ手続が必要だという自由だと言っているのです、一般人としての手続の自由を確保している、格下げなんですよ安宅さん、ということをあなたの部下が私に言っていますよ。しかも、それを許可するかしないかは向こうの恣意だ、ほしいままです、こういう自由なんです。しかも、いまは軟禁を解かれたなんていっているけれども、監禁から軟禁に移っただけで、盗聴機もしかけられているし、電話も盗聴されているし、ちゃんと警備もついているし、面会に行った人は許可をもらわなければいけないし、そういうのが自由なんでしょうか。それは自由だと思いますか。海外旅行を含めてとあなたが言ったから言いますよ。
  167. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げられますことは、金大中氏は韓国内におる、韓国の法域の中におられるということが一つでございます。それで、韓国政府の法域の中におるわけでございまして、韓国政府として出国を含めて自由を保障すると言っていることを私ども信頼するよりほかに道がないわけでございまして、それが今後どのように実現してまいるか注目いたしておりますということと、日本政府といたしましては、でき得ることならば本人の意向に沿って、出国も含めての自由を希望されておる以上は、それをできるだけ早く実現さしていただくような要請を続けておるということが、いま私どもが言い得ることでありますし、なし得る最大限のことであると思います。
  168. 安宅常彦

    ○安宅委員 つまり、自由は保障します、ああそうですか、そう言っただけなんですね。自由を保障するためにこうこうこういうふうなことについて守るか守らないかという外交的なケリをつけたのではないということがわかりました。   〔委員長退席、井原委員長代理着席〕  それで、韓国の国会における金総理の報告を全文翻訳してもらったのを私、持っているのですが、こう言っていますね。金東雲の問題については韓国側が今後捜査をする、その結果を日本に報告をする、こういうことになっておって、日本における日本の警察の捜査は終結する、これで合意をいたしました、こういう報告をしていますね。知っていますか。
  169. 大平正芳

    大平国務大臣 金東雲氏の容疑につきましては、日本側捜査当局は、容疑が濃厚であるという見解を持っておりますことは、御案内のとおりであります。(安宅委員「いやいや、そういう報告をしていることを知っているかというのです」と呼ぶ)その金東雲氏は、いま韓国内におられるわけでございまして、韓国政府は引き続き捜査をして、日本に報告するということをわれわれに約束をいたしておることは、御指摘のとおりでございます。
  170. 安宅常彦

    ○安宅委員 日本の警察の捜査は、これで終結するという約束をした覚えはないのですか。
  171. 大平正芳

    大平国務大臣 金東雲氏自体についての捜査は、わが国の捜査当局の捜査は終わっておりますけれども、韓国側の政府の捜査は終わっていないわけでございまして、その捜査は韓国側で続けられて報告があるものと期待しております。
  172. 安宅常彦

    ○安宅委員 警察庁長官おられますか。――大臣でなくて実務者から聞きたいのですが、つまり、こちらの捜査は終わったという話です。これであなたのほうは外交的なケリをつけた。あなた方、いままで、この問題に関する捜査はまだ終わっていない、こういうふうに言っておりましたが、これが満足ですか。それを聞かしていただきます。
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げたことを……(安宅委員「警察庁長官に聞いている。あなたに聞いてない」と呼ぶ)ちょっと補足しておきますから。  私が言うのは、金東雲氏のことでございますが、金大中氏事件全体につきましての捜査は終わっていないわけでございまして、わが警察当局も捜査を続けておるということは、冒頭に申し上げてありますから、それはお忘れにならぬようにお願いします。
  174. 安宅常彦

    ○安宅委員 警察当局に聞いているのです。政府委員来ているはずです。
  175. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えします。  警備局長でございますが……(安宅委員「長官は来てないですか」と呼ぶ)金東雲一等書記官の容疑については、われわれとしては、捜査の体制をくずさず、これまでの基本どおり捜査を続けておる状況でございます。
  176. 安宅常彦

    ○安宅委員 公安委員長はもちろんだけれども、農林省の場合は食糧庁長官が必要、これは警察庁長官が必要だとちゃんと言っていますよ。  つまり、金東雲氏を含めてまだ捜査は続けると言っていますね、いまの答弁は。そうですね。まるきり違うじゃないですか。日本の外交措置によって捜査権というものを制限したり、なんかすることは許されていいのですか。これは公安委員長
  177. 町村金五

    ○町村国務大臣 お答え申し上げます。  いま政府委員からお答えを申し上げましたとおり、この事件につきましてはなお捜査すべきことがたくさん残っておりまして、現在それをせっかく進めておるという段階でございます。
  178. 安宅常彦

    ○安宅委員 金大中氏に関して固定して答弁してください。  いまの局長さん、金東雲という人は、もう向こうで捜査することになった、そのほかの人は私のほうでやりますという答弁外務大臣答弁。いいですね。その他の金大中氏事件一般の捜査は続けます、しかし金東雲は終わりです、さっきのはこういう答弁です。しかし、あなたのほうの局長答弁はそうではない。金東雲を含めて私どもは今後も捜査いたします、こう言っていることの食い違い。ところが、国家主権が侵されたか侵されないかという問題を明らかにしないまま外交的措置をとった、そのために、捜査権はそれによって、外交上の問題であなたのほうは捜査ができなくなった、こういう制限があっていいのかどうかということを聞いているのですよ。外交的取りきめがあっても、国家公安委員長はやる、こういうことですか。
  179. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 われわれは、捜査のほうは、先ほどお話ししましたように、これまでの方針に従って体制をくずさずやっておりまして、外交的な制約その他によって捜査が阻害されているというようなことはございません。
  180. 安宅常彦

    ○安宅委員 政府部内にこういう食い違いがあっていいのですか。総理大臣、どうです。
  181. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 金東雲氏ほかの問題に対しても、金大中事件に関して一切いま捜査中でございますというのが、韓国側の説明でもございます。この捜査の過程及び結果については、日本政府に通報し、報告をいたします、こういうことは明確に述べております。また、日本政府としても、いま警察庁が捜査の当局者でございますから、当局者は何ら制限を受けず、在来どおりの捜査を継続いたしておりますというのでありますから、事態は明白だと思います。
  182. 安宅常彦

    ○安宅委員 違います。だから私は、金東雲の捜査は日本においては終結したと向こうで報告をしているが、それを認めたのかと言ったら、認めたという意味の発言でありました。そうですね。これははっきりしてください。そういう約束をしたのか、合意に達したのか、これをはっきり答弁してください。
  183. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、外交的な都合で捜査当局にああしてくれ、こうしてくれということをお願いするつもりはないわけでございます。  ただ、私の承知しておる限りにおきましては、金東雲氏につきましては、わが国捜査当局は、捜査の結果、容疑について確信を持たれておる、金東雲氏に関する限り、捜査の結果について確信を持たれておる。韓国政府におかれては、いまからまだ捜査の要がある、その経過は報告をしていただくことになっているというふうに申し上げたのであります。
  184. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから、日本における金東雲氏に関する捜査は終結したという約束をしたのか、しないのかと言ったら、したという意味ですね、あなたのは。だから韓国でやってもらうのだということですね。そう言ったでしょう。そう言ったじゃありませんか。そこをはっきりさしてもらえばいいのですよ。よけいなことを言わぬでもいいのだ。イエスかノーか。
  185. 大平正芳

    大平国務大臣 捜査のことについては、私は責任大臣ではございません。私は、捜査が済んだとか済まないとか申し上げる立場にこざいませんで、私のことばが足らなかったところはお許しいただきたいのでございますが、金東雲氏に関する限り、私が捜査当局から伺っておるところによりますと……(安宅委員「合意したのかというのです」と呼ぶ)日本政府としては、そういう合意はいたしておりませんで、引き続き事件についての究明は両政府ともやります。金東雲氏についてのお尋ねでございましたから、このほうについては、捜査当局から伺っておるところによると、嫌疑についてきわめて確信を持たれておる、韓国政府はこれからの捜査だから、その結果は報告を受けることになっておるということを申し上げたわけでございます。
  186. 安宅常彦

    ○安宅委員 すべてあなたのはごまかし答弁だ。  じゃ、国家公安委員長、外務省から、金東雲氏の捜査は韓国でやる、したがって、日本の捜査はこれで終結したという、合意に達したという連絡を受けておりますか、どうですか。
  187. 町村金五

    ○町村国務大臣 私はまだそういう報告は受けておりません。
  188. 安宅常彦

    ○安宅委員 政府委員、長官は受けておるかどうか。
  189. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 そのようなことは、私ども聞いておりません。
  190. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから、私は、その外交の文書があるはずだと言っておるのです。こういう食い違いがあるのですよ。向こうでは、日本では終結した。あなたは、承るところによればなんてごまかしているけれども、それに類した発言だけれども、終結したということをここで答弁すれば、たいへんなことになると思って、一生懸命ことばのテクニックでごまかしているにすぎない。したがって、犯人を特定させることも――ほんとうならば引き渡しを要求して、そうしてこっちに持ってきてやらなければならないことでしょう。何ですか、それを、ばかな、向こうでやりますからなんて。それも解決してない。金大中氏の自由も解決してない。この問題も解決してない。謝罪は、なるほど、田中さんと会って、親書が来たから――謝罪の内容も問題がありますけれども、向こうは、謝罪でないと、今度は国会で報告していますよ。  ですから、そういう問題を含めて、何ら解決してないまま外交的なケリをつけた、何がケリです。あとあるのは何か。日韓閣僚会議と、あと石油の共同開発計画に関する条約案を大至急ものにしよう、これだけじゃないですか。それが日韓友好という名に隠れたあなた方の意図なんだ。金大中氏の人権も、犯人がどうなろうとも、日本国民は知らないでもいいのだ。あとは閣僚会議で、そっちの援助の問題や協力の問題を話し合おうよ、こういうケリなんです。国民が納得するわけにはまいらない。断固として承服できない、これは。こんな日韓閣僚会議というのは、中止どころか、取りやめにしてもらいたい。いま韓国の学生や、あるいは文化人や、いろんな階層の人々がデモをやったりしておりますが、あるいは宣言を出したりしておりますが、すべて日韓閣僚会議反対、われわれの経済というものを日本の支配から自主性を守れというスローガンにいま変わりつつあるのです。あなた方は、向こうの福祉の向上に貢献するために経済協力をやっているのだ、だから日韓閣僚会議は必要だ、こう言っていますけれども、向こうでは金鍾泌首相が、国会で、日本には何も協力してもらっていない、われわれの安い労働力と労働市場を提供しているではないか、たくさんもうけているではないか、日本に貢献しているのはわれわれだ、こういうことを国会で答弁していますよ。議事録を私、読みますか、それだったら。権力者自体も国会でそう言っておる。そうしてあとは、一般の民衆が、何だ、帝国主義的な侵略ではないか、こういうふうに言っているのです。  こんなに恨まれて、田中さん、それでもやらなければならないのですか。金大中氏の人権も、犯人の引き渡しも何もできないで、なぜあの国と――それに日本人まで、日本の国家公務員まで、日本人も含まっているのです。さっき言った中村正雄なんかそうです。そういう人々を含めて、日本の国内から強引に引っぱっていく、あるいは指名手配をするなどという間抜けたことをしている国と、なぜ、いま援助をしながら、向こうに頭を下げながらやらなければならないのですか。向こうからたいへん痛いしっぽでもつかまれておるのですか。どうなんですか。そんなことは必要ないと私は思う。何をしておるのですか。
  191. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、本件の処理でございますが、加害国のほうからしかるべく遺憾の意が表されるということが第一でございますし、将来にわたってこういうことが行なわれてはならない、そのために万全の措置を講ずるという保証が第二でございます。第三は、責任者について相当の処分が行なわれるということが第三でございまして、そういったことについて、この種の事件が、なお国際的な刑事事件にまつわる処理の基準といたしまして今日までとられてきた基準に照らして、今回韓国側がとられた措置は、決して甘くない措置であるとわれわれは判断いたして、外交的な処理は一応これでつけたいと考えるわけでございます。何となれば、この事件が最終的に明らかになるというのは何年か先のことでございましょう。そういうときまでこういう外交関係が停とんのままでおるということは、決して両国のためにならないことでございますので、私どもとしては、外交的落着はつけるけれども、本件自体の解明は同時に並行的に進めてまいらなければならぬと考えておるわけでございますし、その捜査の過程におきまして新しい事実が出てくれば、それはそれとしてまた新しく提起いたしまして、それにけじめをつけてまいるつもりでございます。  それから第二に、経済援助の問題と本件との関係でございますが、これは、たびたび本委員会におきましても私から釈明申し上げましたとおり、この事件と対韓政策の根幹とに関連があってはならないと私は思うのでございまして……(安宅委員「関連さしておるんじゃないか」と呼ぶ)この事件はこの事件として解明しなければならぬ。(安宅委員「あなたの答弁は要らない、時間を食うだけだ」と呼ぶ)私も答弁をさしていただきたいと思うのでございまして……(安宅委員「聞いておりませんよ」と呼ぶ)いや、お尋ねがございましたから、経済閣僚会議との関連のお尋ねがございましたから、お答え申し上げます。(安宅委員「こっちはやめろと言っておるのだ」と呼ぶ)これは取りやめるわけにはまいりません。
  192. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは、あと五人か六人ほどあわてて急遽韓国に当時帰っていった。金東雲のほかに外交官があわ食って帰っていった。それから総領事の車で運んだということもわかった。これらの人の関係というもの、そういうものを全部含めて、一人でもわれわれの機関の中でやったならば、私が責任をとるということを李厚洛という人が言った。あの人がやめたのは、あなたのほうでは発表できないのかできるのかわかりませんが、その責任をとって、李厚洛という人が中央情報部長をやめたのかどうか、どういうふうに受け取っているのですか。処分としてやられたのかどうか。
  193. 大平正芳

    大平国務大臣 外国の政権内部の改造について、どういう理由でありましたか、それはつまびらかにいたしておりません。
  194. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、あなたとは平行線ですからね。もう時間がありませんから……。つまり、外交的な措置というものは筋を通します、内外がみんな納得のできる線は何か、自分で言ったのですよ。金大中氏の自由、原状回復。原状回復してないでしょう。犯人の引き渡しも何もできていないでしょう。謝罪は一応やったかもしれない。それから、責任者を処分するということで、李厚洛はその責任者として処分されたという意味かどうかは、ほかの国のことだからわからない。何もわかってない中で外交的なケリをつけた。しかも国際的な基準だなどと、またごまかして言っているけれども、おとといですか、小林さんから言われたばかりじゃないですか。モロッコの問題、あなたとは違うということを具体的に言われておったじゃありませんか。基準とかなんとかじゃない。自分できめた基準じゃないですか。それは、国民に何も知らせないで、自分がやりたいことは、百万言を弄して自分の主張を通し、都合の悪いことは、腹で解決しようとか、すべった転んだと言って、そして隠してやることは、ファシストの論理です。ファシズムの論理だ。田中さん、気をつけてくださいよ。私もそうかしらぬけれども、主張するかもしれぬけれども、特にあなたはこのごろそうだ。これは私は、外務大臣が責任をとるというのじゃなくて、日韓閣僚会議はからませないと言いながら、それを開かないわけにはまいりません、開きます、そう言って、こういう問題を明らかにしないまま外交的にはケリをつける。捜査権は制限させる。警察は、明らかに不満だと言っているでしょう。そういうばかなやり方は――もし将来、金大中氏が外国にも出られない、あるいは日韓閣僚会議が終わって、何らかの処置がとられた。実際は反共法やいろんなもので処分しないとも限らないでしょう、文書でも確認してない限り。あのときそう言ったじゃないか、言わないと言えば、それで終わり。そのときには、金大中氏事件を含めて、この人権の日に私は言いますけれども、田中総理、あなたは責任をとってもらわなければなりません。どうですか、そういう場合には責任をとりますか。総理、責任をとりますか。
  195. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 金大中氏の自由は保障いたします、金大中氏に対しての自由は御心配ございませんと、一国の総理大臣が大統領の親書を携行して来日をし、そう述べた。そしてあの当時の報道によると、監禁状態から自由の身になった、こういうことでございますから、これはそのまま信頼するのが、国際的慣例からいっても当然なことでございます。で、これから少なくとも、世界的監視の中で金大中氏の自由が守られるということは、私自身信用しております。その後、金大中氏がどうなるかということに対してあなた責任とりますかと、こう言われても、どのように責任をとるのか……。
  196. 安宅常彦

    ○安宅委員 いや、私は、金大中氏の自由を含めて、こういうケリをつけたことで間違いがあった場合、責任をとりますかということを言っておるのです。外交措置のことを言っておるのですよ。外務大臣だけの責任ではない、あなたとして外交上の責任を……。
  197. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは、もちろんそのとおりです。そのとおりですが、外交上の問題は、国内において刑法でもって黒白をつけるような状態でもっていくものでないということば、御承知のとおりであります。ですから、沖繩返還に対してもアメリカでは大反対がありました。ありましたけれども、沖繩は返還されたじゃありませんか。日本の国内においても、ともかく四つの島が返らないうちは日ソはいかぬと言っておっても、日ソの間には正式な国交をちゃんと開かなければいかぬ、国益という大きな立場で外交というものは行なわれるのだということくらいは御理解いただきたいと思います。
  198. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから、国益の問題については、私は先ほど説明をいたしました。経済援助の問題で言うならば、先ほどちらっと私、出しましたけれども、九州沖のですね、韓国が第七鉱区だかに指定して、あわ食って、これはいかぬというので、海底油田の共同開発をやるということについて条約案がすでにでき上がっているそうですが、この問題については、私どもは非常にこれはおかしな問題だと思う。地図で見たって、九州のちょうど西ですね。それをなぜ韓国と共同開発をしなければならないのか。そのいきさつはどうなんですか。日本でなぜやれないのですか。これは外務省。
  199. 高島益郎

    ○高島政府委員 本件、大陸だなにおきます日韓両国の共同開発につきましては、過去二年来……(発言する者あり)過去二年来交渉いたしておりますけれども、もともと、大陸だなにつきまして国際法が非常に不明確な点がございまして……   〔発言する者あり〕
  200. 井原岸高

    ○井原委員長代理 静粛にしてください。
  201. 高島益郎

    ○高島政府委員 失礼しました。やり直します。  日韓の大陸だなに関します共同開発の構想につきましては、大陸だなに関しまする国際法がきわめて不明確な点がございまして、日韓両国の法的な主張をなかなか調整することは困難でございまして、過去二年来、私どもいろいろな観点から討議を十分尽くしましたけれども、合意に達しませんで、その結果、法的立場を一応たな上げしまして、実際的解決をはかるという観点から、日韓両国でこの大陸だなについての共同開発をやろうという結論に達しました。この結論に達しましたのは、昨年の第六回日韓閣僚会議においてでございます。
  202. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうでしょう。またそれも引っかかってくるのだよ。だから、金大中氏の命とそれを取っかえたみたいになるのですよ。国民はそう受け取るのです。常識論です。これは専門家は何だかんだ理屈をつけるけれども、あれが韓国の海域に近いのだったら別ですよ。大陸だな条約に両方とも入っていないのでしょう。入っていないのですから。ただ中間線ということになっているのでしょう、条約の基本は。もう九州のすぐそばじゃないですか。そこをなぜ――アメリカに海底油田の採掘権を韓国が全部売り渡している。全部、西海岸から東海岸からみなそうですね。シェルや何かにみな売っておるのですよ。許可しておるのです。それであわ食って、日本は、おれのものだと言ったのですよ。それから向こうは聞かないから共同採掘ということになったのでしょう。簡単に言えば、基本はこういうことなんです。九州のちょうど西を、大陸だな条約でどうのこうのときちっときまっておるなら別ですよ、なぜ共同開発をしなければならない弱みがあるのですか。私はそれを聞きたいのです。国民感情はそれを許さないと思うのです。  あとでこの問題は、しかも経済協力は、いろいろな意味で私は言うつもりでしたが、きょうはやめましょう、時間がありませんからね。つかみ金の援助なんてやめろ、これだけを言っておきたい。商品援助と米の援助とセマウル運動の援助と、これは完全なつかみ金だ。プロジェクトも何もない、どこに行ったかわからない、こういうものです。それが非常に大きな化けものになって、韓国ではたいへんな大騒ぎになっている。こういうものは、日韓閣僚会議はやっていけませんよ。将来いろいろなそういう交渉があった場合に、言っておきますけれども、これは許してはならない。セマウル運動なんというのは、どうなんですか。プロジェクトなんていったって、ろくなものはないでしょう。今度あなたのほうで開くそうですけれども、これはとにかくやめなさいよ。私らは、絶対に閣僚会議をやってはいかぬ。しかも閣僚会議がなくとも、向こうが別なときに要求をやっても、セマウル運動とかなんとかいうものは、出してはいかぬと私は思う。あなた、このたびどういう態度ですか。
  203. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国が一九六二年から長期計画を、二回にわたって五カ年計画を推進してまいりまして、第三次五カ年計画に入っているわけでございまして、その間生産は拡大し、GNPも伸びてまいりまして、輸出力も伸びてまいっておりますけれども、私どもの見るところ、やはり農村経済が総体的に弱いという感じをいたしておりまして、セマウル運動という問題に手を染めた韓国の気持ちはわからぬものでもございません。しかし、あなたも御承知のように、わが国経済協力計画はプロジェクトベースでやっておりますので、農村基盤整備の中でかっこうなプロジェクトを選択いたしまして、協力すべきものは協力をしたいということで、いま検討をいたしておるわけでございます。
  204. 安宅常彦

    ○安宅委員 去年も、その前のときも、六十八国会でも言ったけれども、あなたは、プロジェクトごとにやっておる。緊急商品援助なんてプロジェクトは何もないでしょう。あれはつかみ金だと私に指摘されて、弱ったじゃないですか。まだやるつもりですか。そんな、ある政権の、ぼろぼろになったものに、どろ沼に金を投げるような、そういうものをやってはいけない。これだけははっきりしております。完全なつかみ金だ。あなたもこの前の予算委員会で認めておるのです。これはあとで私どもは徹底的に、あらゆる場で追及しますよ。  ただ、今度は農林大臣、米の援助ですけれども、これは、またことしやっているようですが、去年も私、言いましたけれども、あれはトン当たり幾らでやっているのですか。そして、三十年賦ですね、何か三分の利息だかで。
  205. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米の援助のやり方は幾つかございまして、韓国では第一に貸し付け方式がございます。これは十年据え置き後、現物で二十年間に均等返還をいたします。それから延べ払いの場合も、やはり十年据え置きで、円貨でこれは二十年間均等返還、こういうやり方でございます。無償のものは、御承知のようにケネディラウンド。それから、ただいまのお話しの延べ払い輸出の価格でございますが、これは市場価格を基準といたしまして、品質差、支払い条件等を考慮しながら、そのつど政府間の交渉によって決定することとしておりますが、本年六月の韓国向けの延べ払い輸出は、過剰米でございます四十五年産米を対象としておりますので、その価格はトン当たり五万一千円でございます。よろしゅうございますか。
  206. 安宅常彦

    ○安宅委員 五万一千円で、せっかくつくった米を、しかも三十年間の延べ払いで、利子三%で、日本の農民は涙ぼろぼろだと思うのですよ。そんなことまでしてやるんだったら、そんな金があるんだったら、なぜ日本の農業にもっと投資してくれないのだろうかというのが、国民感情、農民の感情だと思うのです。痛切な叫びだと思うのですよ。どうなんですか。セマウル運動で、農村はたいへんおくれておるようだから韓国にやってあげましょうと、大きいところ見せますけれども、日本の農村はいまどうなっておるのですか。このことをよく考えてやってくださいよ。私は、こういうことはやるべきではない、こういうことだけ言っておきます。  それで、たとえば消費者米価の問題で、日本の農民は非常におこっていることがあるのです。自分たちは安く買われて、そして消費者のところにいくととんでもなく高くなる。たとえば、いま、時間がありませんから簡単に私のほうから言いますけれども、四十何%ぐらいですかな、標準米と、それから銘柄米と指定銘柄米と自主流通米との比率ですね、市場に出ているものは。このたびの場合、自主流通米が二三%の百六十万トン、それから銘柄米が二八%で二百万トン、非銘柄米と書いてありますが、標準価格米ですね、これが四二%、三百十万トン。四二%が非銘柄米ですね。これが実際に消費者に入っていくのは三五%ぐらい、つまり一〇%はどこかへ行ってしまうのですよ。ところが、大都市、東京、大阪は極端で、これは売れないものですから、二五%しか国民の手に渡っていない。あとはどうなるかというと、あなたのほうの行政指導で、これに銘柄米を少し入れて、そうして中米だとか、あなたおととい言っていましたね、ダイヤモンドだとか、水晶米だとか、何とかコシヒカリだとか、そういう名前をつけて適当に売ってもいいことになっているわけですね。だから自主流通米より高く売っているやつもおる。これは自由ですから、物価統制令なくなったので。そういうことがやられているということは、あなた知っているわけですね。そうでしょう。
  207. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話しの標準米は、必ずどこの店にも一定量置くようにという指導をいたしておりますが、それの売れ残ったものに対して違うものを加味して売却いたしておるというのは、どうもあるようであります。それはなかなかむずかしいことでありまして、御承知のように……(安宅委員「わかりました。あったらいいです」と呼ぶ)説明を聞いていただかなければ……。
  208. 安宅常彦

    ○安宅委員 いや、あるかないかと私は聞いたのです。  それで、そうしますと、安く買われたものが、銘柄米と同じような、あるいは自主流通米と同じようなもので流通過程に乗っているということは現実の問題です。  時間がないから、私は一つ提案するのですが、農林大臣、今度は聞いてくださいよ。そういうことをやられているのですから、米屋がべらぼうにもうけているのですね。米屋の立場からいえばもっと困ると言うかもしらぬけれども、そうではない。たいへんまずいといわれる。だから都会の奥さん方に、特に大都市の奥さん方に、そんなことよりも、標準米を買って――店頭米といっているのですよ、あなたのほうで。店頭に飾っておけ、ないといわれたらかっこ悪いから。だからこのごろ店頭米なんといっているのです。ただショーウインドーに並べておいて、これはありますけれども、もっとうまい米がありますと言ってこっちのほうを売るというやり方、だから店頭米というのです、あれは。店頭にあればいいんだから。そういう状態でしょう。だから、私が言うのは、奥さん方に、標準米を買いなさい。少しまぜて何とかかんとか米といって高く売っているのですから、標準米を買って、少しそっちのほうをパラパラッと入れたら、ダイヤモンド米や水晶米と同じになるのですよ。皆さん、そういう買い方をしないと、今日物価が上がっているのだからたいへんでしょうというようなPRを、農林省が逆にする気がありませんか。当然の任務だと思うのですが、どうですか、倉石農林大臣。いいアイデアじゃないですか。あなた、点数あがるよ。
  209. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この間もお話し申し上げましたように、いまのような米の状態のときには、やはりどうしても味のいいものを買いたいという希望者がたくさんございましたので、そこでああいうふうに、御存じのように銘柄米を特別に取り扱う、上、中に分けてやるようにいたしたわけでありますが、しかしながら、御指摘のような弊害も私どもも見ておりますので、この間もお答えいたしましたように、農林省といたしましては、県別に、しかも一定額を指導して、これ以上に売ってはならない、しかしながら、銘柄は銘柄として希望者があるのであるから、それはその希望に対する要求には応じてもいいが、一定の上限を置いてそれによって売っていくように指導、これは米屋さんはあまり喜んでおらぬという話でありますが、私どもとしてはそういうふうな指導をしてまいりたい、こう思っておるわけであります。
  210. 安宅常彦

    ○安宅委員 農林省はなかなかそういうことは言えないでしょうね。安い米なんだけれども少しまぜて、あなた方、味のいいお米ですよといわれて、そんな気がして、きかない薬がきくようなことを宣伝されて、そうして三千円も値段をつけて売っているのですからなんて、まさか農林省言えないと思いますから、これはわれわれ宣伝しますが、そういうやり方は間違いだ。だから、実はもううまくないのです、標準米を買ったほうがいいのだということをあなた方は宣伝しなければならないのです。それを、消費者の立場に立たないで、米屋さんの立場に立って、そうして、どだい、パーセンテージからいったって、銘柄米なんというのは何ぼもないのですから、そればかり買うのですから残りは幾ばくもないやつを、標準米にばらばらと入れたか入れないかも証拠がない、それをもって十キロ三千円で売っているなんというそういうやり方は、あなたのほうで改めてもらわなければなりません。改める方法について、あなたのほうでその手段があったならば、あとで私どもに知らせてもらう、こういうことはできませんか。そのままにしておきますか。どうです。
  211. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げましたように、私どものほうとしては、いろいろな御指摘がありますので、そういうことを参考にいたしまして、誤解のないようにやってまいりたい、こういうことのために上限価格をきめて指導していこう、こういうやり方をしているのであります。  それからまた、銘柄米につきましては、もうすでに御承知のように、何といってもやはり自主流通のほうが先に売れてまいります。それからまた、一般に千六百円のものは強制的にどこのお店にでも置かなければならないことにしておりますので、それはそれで必ずほしいという人には渡せるようになっているのでありますから、あとは、自分の御希望で選別されて、いいものを買われるというものにつきましては、それに応ずるように自主流通の制度を置く、こういうことでありますので、私は、消費者が納得のできないような販売方法というものはいましていないのじゃないか、こう思っております。
  212. 安宅常彦

    ○安宅委員 標準米に少し入れて、入れたか入れないかわからない、証拠もない。金大中みたいなものです、これは。金大中米だな。そういうことをやらせておいて、物価統制令からはずして米価を上げておいて、そして変な販売方法はいたしておりませんという感覚、これがあなた方田中内閣の感覚だ、特に倉石さんの感覚だ、こういうふうに受け取ります。これは重大なことですからね。  私はここで申し上げますが、こういう問題についてもそうですね、資本の論理ですよ。いま韓国に巨大な石油コンビナートや鉄鋼基地をつくるために申請を出したり、そして日本の今度民間の直接投資というものがどんどんふえていますね、去年から。アメリカを越しています。一年間でいままでの倍ぐらいの投資が行なわれています。そして、しかもこれは重化学産業を中心にして外資導入するようにというので外資導入法を向こうが改正したから、これから、五十年から工業権の所有協定、これは日本の資本が向こうにいったらべらぼうに有利な地位に立つ、こういう協定が生きてくる。こういうことをあてにして、いま石油危機の問題のさなかに、この間、共産党の松本さんですか、苫小牧のあれはやるのですかと聞いておりましたが、韓国にものすごい資本が集中してそういうものがつくられようとしておる。これはやはりチェックすべきじゃないかと思うのですが、大蔵大臣、どうですか。輸銀の問題も協力基金の問題もみな全部ありますから、あなたの所見を聞きたい。  ただ、もう一つ言うのは、特定の場合を除いて、一般の場合でも、節度というものがあると思うのですね。急にアメリカの倍になるようなものをぽんと、九九%ぐらいです。日本が、外資導入のうち九九%です、ことしは。しかも、外資導入法が変わったからといって、全部一〇〇%投資だな。五〇対五〇なんというんじゃない。五一対四九なんてほとんどない。あなた方の資料によっても、一〇〇%日本の会社の投資。資本率は一〇〇%のものだけがほとんどです。それががちゃがちゃとふえている。これが向こうの民族感情としては、経済協力どころが、援助どころか、怨嗟の的になるのは当然ではないでしょうか。こういうことについてあなたの所見を聞いておきたい。
  213. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はまだ対韓援助のことを、率直に言いまして、勉強しておりませんから、具体的にどうこうと言うわけにはまいりませんけれども、とにかくこの石油問題、これは非常に異常な事態をかもし出しておるわけです。そういう状態にありますわが国といたしましては、これはもう対内的な投資につきましても、対外的投資につきましても、おのずからそういう状態に対応したかまえをとらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  214. 安宅常彦

    ○安宅委員 大蔵大臣、見せておきますよ。ことしからの、ずっと一〇〇%。あなたの資料ですから、よく見てください。――そうしたら、たとえば汪政権などという、かいらい政権だといわれたものでも、四九%以上、日本の合弁会社でも資本は入れないと言っていた。あれとは違った意味で、もう屈辱的な気持ちに韓国の人々はなっているんです。だからデモが起こっているんです。  そのほかに、電話を引けば電話税、下水道税、今度、国家公務員は、給料は五〇%、ボーナスは一〇〇%、九月から通帳で渡される、こういうことになっているんです。こういう税金がぞろぞろと出てきて、韓国の経済がもう硬直状態になっているんですよね。そういう状態のときに、そういう投資のしかたというのはいいのかどうかということを考えてみてください。先ほど言った資本の論理というものはそんなにおそろしいものだということだけ言っておきます。  それで、私は日朝国交正常化の問題で聞きますが、時間がありませんから、端的に答えていただけませんか。  南北共同声明は歓迎すると政府は言いましたが、態度はいまでも変わりませんでしょうか、総理
  215. 大平正芳

    大平国務大臣 変わっておりません。
  216. 安宅常彦

    ○安宅委員 このたびの国連の韓国統一復興委員会、これが解体になる、こういうことになって、国連に入る、オブザーバーとして招聘を受ける、こういう状態になって、その解体のことそのものが韓国からの提案の中へ入っておるわけですね。そうすると、日韓条約にいう朝鮮半島における唯一合法の政権だという、そういう主張は、韓国は、条約の解釈によっては北にオーソリティーがあるということを、こっちの解釈ですが、向こうにはそうではないんだと説明していますが、ああいう主張はくずれたんだということに結果的にはなると思いますが、どうですか。このたびの国連総会の結果によってですよ。――わかりませんか、意味が。国連総会で統一復興委員会が解体になる、それは韓国がみずからそれを提案しているわけですよ。そういうことになれば、両方とも国連に入っている結果になる。それを承知の上であなた方と一緒になってやったんですから、朝鮮半島における唯一の合法政権だという基礎はくずれているはずだということを私は聞いているんですが、そのとおりでしょう。
  217. 大平正芳

    大平国務大臣 それは国連におけるUNCURKの解体問題でございまして、いまあなたの言われる問題とは私は関係ないと思います。
  218. 安宅常彦

    ○安宅委員 ああそうですか。関係あるんですけれども。なぜ関係ないのかとも言わないで――まあいいでしょう。簡単にしてくださいと私、言っているんですから、文句言いません、もう時間がないから。そういう認識です。それはわかりました。そういうものが大平外交だということばわかりました。  それで、ここで聞きたいんですけれども、あなたも国会議員、私も国会議員です。大平大臣でもいいんですが、総理もそうですが、今度IPUというのがありますね、列国議会同盟。これに圧倒的多数で朝鮮民主主義人民共和国が加盟を承認されて、会議にもすでに出ています。そうした場合に、来年日本でIPUの総会が行なわれる予定ですが、その打ち合わせで、ひとつ本国に来て打ち合わせてもらえないか、あなた方日本にいるんだからということで、在日朝鮮人の中で朝鮮総連の韓徳銖議長以下七名の方が、これは最高人民会議の代議員であります。つまり代議士です。日本でいう国会議員ですね。事前の打ち合わせだとか、あるいは向こうから来るとか、あるいはまたいろいろと国会が開かれる。お互いにみんな列国議会同盟の一員です。そうした場合には、加盟なったのですからね、加盟なっていないときと違う。そうした場合には、出国、再入国は、いままでのように制限したり、政治的だからどうのなんということにはならないと私は思いますが、どうですか。これは外務大臣、それから実際に再入国のことを扱っている法務大臣。法務大臣から先にやってください、実際の権限はあなたにあるのですから。
  219. 中村梅吉

    中村国務大臣 お説のとおり、北朝鮮が列国議会同盟に加入いたしましたことは、そのとおりでございます。したがいまして、今後の出入国につきましては、十分慎重にこれから配慮してまいりたい、かように思います。
  220. 安宅常彦

    ○安宅委員 重ねてお伺いいたしますが、来年のIPUの総会のときは入れたり出したりするけれども、その事前の打ち合わせであるとか、いろいろなことが予想されるが、それらも含めて、そういうことを想定した上でただいまの答弁だというふうに伺ってよろしゅうございますね。
  221. 中村梅吉

    中村国務大臣 これは、ただ、北朝鮮が日本とはまだ国交を開かれていない国でございますから、そういうことも考慮に入れて、しかし、一方また、列国議会同盟に加入している国でもありますから、ケース・バイ・ケースで慎重に考慮をいたしたい、かように思います。
  222. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは国交が回復されていない、いるとは関係ないのですね。IPUの一員として、これは福永さんが評議員か執行委員になっているわけですね、そういう団体なんですよね。だから、お互いに国会議員同士で行ったり来たりするということはあり得る。その場合に、国会議員団として、日本の国会議員としての集団ですね、参議院も含めて、それで招待したり招聘されたりする場合が必ずあるのですよ。そういう場合に、国交が回復していないからケース・バイ・ケースということはあり得ないと思うのです。前向きにそれを検討されるということは当然ではないかと思うのですが、どうですか。そのとおりでしょう。
  223. 中村梅吉

    中村国務大臣 お説のとおりでございます。
  224. 安宅常彦

    ○安宅委員 そうですか。わかりました。もう外務大臣、聞かない。あなたはそれより後退した答弁をするおそれがあるから。  そうしますと、ここで外務大臣に聞いておきますが、日本が国際的にまだ承認してない国というのはどこどこあるんでしょう。私は、朝鮮ぐらいしかないような気がするんですがね。この間、ベトナムの臨時革命政府の問題が出ていましたが、あとあるんですか。ちょっとわからないのですが、どうですか。
  225. 大平正芳

    大平国務大臣 特に関係の深い国といたしましては、いまあげられた北鮮でございますけれども、ほかに、あまり関係のない国は若干ございますが、一々私もいま記録を持っておりません。
  226. 安宅常彦

    ○安宅委員 一番近い国で、遠くて近い国などと言ってはいけない、だから日朝国交正常化というのは何とかしなければならない、口では言うんですけれども、一番おくれてしまったという現実、これは認めてもらいたい。これは何とかしなければならない。いま、朝鮮民主主義人民共和国を承認している国は五十六カ国です。五十七カ国あったんですが、チリが吹っ飛んでしまいましたから、これで違うのですが、こういう状態。あなたのほうでは、明確に時代の趨勢というものを、IPUが圧倒的に加盟を決定する、こういう状態になっている、こういうことを考えてもらいたいんです。  その上で私は、通産大臣、ことしの春の予算委員会でもあなたにお伺いいたしましたが、朝鮮との見本市の問題それから貿易代表部の設置の問題についてどういうふうになっているか、お伺いいたします。
  227. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのときお答えいたしましたが、南北融合の進展状況等を考えてみて、これもケース・バイ・ケースで考えます、こういうお答えを申し上げたとおりであります。
  228. 安宅常彦

    ○安宅委員 南北共同声明が出たからかえっておそくなったみたいな答弁ですが、そうなんですか。
  229. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 南北の融合関係というのは非常に微妙に動いておりまして、例の北側からの李厚洛氏に対する反発であるとか、あるいは今度は李厚洛氏がおやめになったり、いろいろ激動しておる要素もあるわけであります。でありますから、そういう事態をよく注目しながら考えているということであります。
  230. 安宅常彦

    ○安宅委員 韓国の情勢、韓国が何かやられたからということによって、あなたは、日本のそういう環境を整えるための準備を着々いまやっておりますという答弁から下がるということは、日本の自主的な外交、日本の自主的な立場というものをみずから放棄するような答弁は、非常にいただけない答弁だと思います。こういうことについてはあなたともっとやらなければならないことがたくさんあると思いますが、最後に首相に聞いておきますけれども、私どもは、これは中国の場合で非常に問題になりましたが、連邦制をつくってでも、あるいは、外部勢力の力に依存しないでそして自主的、平和的に統一しよう、こういうことで朝鮮は一つだと両方の民族がいっているわけですね。朝鮮は一つである。それから南北共同声明を歓迎するという政府立場でありますから、それを基準とした自主的な平和的な統一、これをあなたのほうでは支持する、そうして日本とは平和五原則に基づく日本と朝鮮の国交正常化のために、これを実現するために努力をする、こういうふうな三つぐらいの方針で、もう世界情勢が動いておるのですから、日朝国交正常化の方針として、私どもはそういう方法が一番いいと考えておりますが、それを支持してくださるでしょうか、総理大臣
  231. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 南北朝鮮の統一ということは、ほんとうに日本もこいねがっておるわけです。かつて同一の国家を形成しておったという歴史的な事実、非常に近い関係にある朝鮮半島でございますから、日本との友好的な韓国とそれから北鮮が一緒になること、ほんとうに私は望んでおりますし、これは日本人全体が望んでいると思うのです。しかし、遠い国ならこれは案外簡単にいくのです。これは、だから東ドイツを認めるということや、アフリカの国とかいうことは、しごく簡単にいくのですが、近くというものはこれはむずかしいことは、隣のけんかに入るなということばがありますように、これはなかなかむずかしいのですよ。  ですから、そういう意味で、いま一緒になろうという機運が起こっているのですから、やはりそれをあたたかく見守りながら統一が早くできるようにという配慮というものは、やはり私は必要だと思うのです。ですから、どっちにちょっと身を寄せたようなかっこうをしても、それが原因でできるものができなくなったというようなことが間々あるわけでございまして、日本は、ほんとうに両鮮の統一というのはこいねがっておるのです。どうぞひとつやっていただきたい、こういうことであります。
  232. 安宅常彦

    ○安宅委員 たいへん時間がなくなりましたが、最後に私は、労働問題その他治安の問題というのですか、そういうことについて――治安ということはありませんな。労働問題についてお聞きしたいと思うのですが、その前に、自治大臣、国家公安委員長、警察白書というものをあなたのほうで昭和四十八年に出した。これは発表されておるのは八月です。これはいつ印刷に回したかわかりませんが、春ごろだと思います。これによりますと、一番基本問題として非常に重要にあなたのほうで考えているのは、今日生産第一主義よりも福祉社会の実現をといった欲求が非常に強まっている、こういうところで、交通の事故や公害の激化や、あるいはまた物価や、あるいはまた老人、母子、心身障害者対策の社会保障、こういうふうないろいろな問題が重なって、そして国民の不満というものが、ちょっとしたことで大きな公安事件に発展する情勢にある、こういうふうに書いてありますね。ことしの四月か三月のころですかな、その状態で。そういうふうに書いてあることはまず一つ認めますね。  それから、現在そのほかに、あれからもう消費者物価+何%などといっておるけれども、われわれ必要なものは、もう石油でも何どもそうでしょう、三〇%だ、五〇%だ、倍にもなる、ちり紙は倍にもなる、砂糖も倍になる、こういうふうになっていて、十何%などというのはインチキ統計です、庶民にとっては、そういう状態になったことしの春あたりでさえも、不測のそういう公安事件、つまり、これは暴動です、はっきり言えば。そういうものが起こる可能性があるとあなたのほうでは国民にこれを発表している。現在はもっと容易でない段階だというふうに理解いたしておりますかどうか、国家公安委員長
  233. 町村金五

    ○町村国務大臣 警察白書を出しましたのは、たしか御指摘のとおりこの春のようでございます。当時の情勢を警察白書は書いておるわけでございますが、ただいま御指摘になりましたように、石油危機に端を発しました諸物価の高騰、物不足という事態は、なお私どもとしましては治安的には重視しなければならないときだ、かように考えております。
  234. 井原岸高

    ○井原委員長代理 時間ですから、簡単に。
  235. 安宅常彦

    ○安宅委員 はい、簡単に。よく聞いてください。  したがって、こういう危機を突破する、乗り切るというのはたいへんなことだというあなたの御苦労も私はわかりますよ。しかし、こういう場合には、日本経済の働き手である労働者階級というのでしょうか、労働者、勤労庶民大衆の支持というものが非常に必要になってくるのですよ。これはちょっとしたことで火がつく、こういう状態です。韓国の状態なんかを見るとほんとうにじくじたるものがある、私どもそう思っていますよ。したがって、いま国家公務員や公労協やあるいは民間の大産業に働いておる労働者は、インフレ手当であるとか――あなたはインフレ手当というとおこるかしらぬけれども、危機突破資金だな、それからボーナスの増加率が約五〇%近い、こういう平均値が出ている。こういうときに、つまり全日自労に所属する日雇い労働者であるとか、あるいは特に中小零細企業の労働者、たくさんおるわけです。特にまた、その上組織されていない労働者、これは非常に恨みがありあるいは怨嗟の気持ちがあり、何を言ってやがんだという気持ちがあり、そして中小企業はまた、大企業の圧力によって倒産件数はべらぼうにふえているここういう状態の中で、非常にこの場合には、特に労働大臣、公労協やあの人たちだけが手当をもらうのか、おれはもらえないのか、基本給も少ないじゃないか、何だという気持ちがある。これを政府が、たとえば、時間がないからずっと並べますけれども、全国一律の最低賃金制をしくとか、緊急な処置として業界に呼びかけるなり、あるいは政府の何らかの手段によって一時金を出す方向の施策をとるとか、こういうことをあなたが、もう発想だけではなくて、これを実行に移さなければならない、そういう状態ではないか、これが一つです。そういう意思があるかどうか。  それからもう一つは、田辺製薬の問題、新聞におとといあたり出ておるのを見たのですが、これに便乗して、実際苦しいところもあるでしょうが、必ず人員整理、合理化に名をかりた人員整理が山ほど出てくると見なければなりません。こういう問題について逆に、逆説的な言い方でありますけれども、「日本列島改造論」なんかを見ますと、週休二日制になったら、みんないなかに来て、観光農業のところに行って土いじりをするなんて田中さん書いてあるけれども、そうやれない人が大部分ですね。こういう人々のために、週休二日制、時短、こういうものを具体的に政府が率先して、こういうときに手がけるという、そういう姿勢をもはやとらなければならないのじゃないか、私はそういうふうに思いますが、労働大臣の所見を伺って、委員長に申し上げますが、最後にちょっと意見を一つだけ言って私は質問を終わりたいと思いますから、お許しを願いたいと思います。
  236. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 せんだっての公労委の調停等々によりまして、不測なストライキらしいものが無事に解決したことを喜ぶと同時に、ただいま町村公安委員長が申されたようなことなども十分勘案し、しかも、勤労者を守る側といたしますれば、いろいろな問題について具体的に研究し、内閣をあげてそういういろいろな不幸なことの起らないように、一生懸命やるつもりでございます。
  237. 安宅常彦

    ○安宅委員 田中総理、私はあなたに最後に言っておきたいことがあるのです。いま経済の大転換をやるとあなたは言っておりますね。しかし、いろいろな予算委員会の質問なり、あなた方の答弁を聞いておりますと、私つくづく感じることがあるのですよ。  それは何かといいますと、つまり、プライスメカニズムというのでしょうか、もうけなければならないという論理、それが中心になっておるうちは、幾ら総需要を押えるといっても、流通機構をぴしっとするといっても、必ずいままでの経験で、それは失敗しておるのではないでしょうか。プライスメカニズムを除外したそういう総需要の問題、流通機構の問題、こういうものを実現するというならば、いままでの官僚統制でいったら、必ず隣組や憲兵や警官やそういうもので押えるやり方で失敗しておるのですから、はっきり言うならば、これは人民がみんなで民主的に寄り集まってやれる、そういう経済の転換、総需要の抑制にしても、すべてそういうことでやる。つまりはっきり言うならば、もはや社会主義への経済体制、これをとらなければ、幾らあなたががんばったって、ある程度の調整はできるかもしれません、今日だって、ある人はそれを混合経済と言っているのですから。いま危機状態になっているでしょう。これを、来年になったら物価は下がるなんて言ったって、それはなかなか下がらない、みんな国民はそう思っています。こういう状態のときに、この論争を本気になってしなければならない時期が来ているんじゃないでしょうか。あるいは、その過程で社会主義的な政策をどの程度いま入れるかということをあなた方が考える、こういう時期でもあるような気が私はいたします。こういうことについて、皆さんは知らないかもしらぬけれども、田中総理の顔がテレビに映ると必ずヒステリーを起こす奥さんというのは、このごろうんと多いそうですよ。ああ、あいつはおもしろくないと、そういう時代なんです、いま。こういうことについて、私はいま真剣に考えているところです。諸矛盾を一つ一つ突いてみたところで、経済の大転換をするという状態のときには、この問題を考えた政策、こういうことをお互いに――われわれ社会主義経済を標榜する者とあなた方とは根本的に合わないかもしらぬけれども、しかし、そういう方向に情勢が大きく変わりつつあるんだというふうに私はそう思います。どうかひとつ経済の大転換をやろうとするならば、そういう、もうかったら何とかなるはずだ、たとえば一いま農林大臣一つ最後にちょっと聞いて、もし、あなた答弁もらえればありがたい、ぜひ答弁してもらいたい。  思い出したのですが、今度麦が十二月から上がったでしょう。今度は四月から九・八%消費者米価が上がりますよ。そうしたら、大口需要者、米飯提供業者、それから米の取り扱い業者、そういうところから順次、いまもうけたほうがいい、買い占めしておかなければたいへんだ、どうせ九%上がるんだから、その場合には、寝かせておいても、利子を計算してももうかるはずだ、いま今日の経済情勢の中で、われわれが商売人としてそういう体制をとらないでふぬけておるのは、商売人としての魂が抜けたも同じことだ、こういうことを言っている人が非常に多い。したがって、一月から二月にかけて、私は、あなたのほうはある、あると言ってもガソリンは出てこないように、主食が出てこないことが起きる。ことしの春、櫻内さんが大臣でありましたが、主食が投機の対象になっておるはずだと言ったら、モチ米は少しあるけれども、絶対ないとがんばった。がんばったとたんに、私は、責任を負うかと言ったら、負いますと言った。分科会あたりでまたつっついたら、結局、丸紅をはじめとしてずっと事前に察知したところが相当あったのですが、ばっと逮捕されたり、検挙されたり、押えられたりしましたね。ああいうことで、あのときは櫻内さんは責任をとると言ったのだけれども、それでやめてここにいるのかは別として、実際に重要な段階を先にわれわれが指摘をしたのです。予言なんというとおかしいのですが、先に指摘をしておいた。こういうことについて、経済の大転換に関する総理の見解と、あなたのこの問題について万遺憾なきを期して、絶対そういうことがないかあるか、あったときには、農林大臣は責任をとってもらうかどうか、これは非常に重要なことですから、主食がそういう状態になることをわれわれはおそれて、絶対にそういうことをさせないと言い切られるかどうか、これを二つ答弁してもらいます。  それで私は終わります。
  238. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先年の経験もありますので、万遺漏なきを期してそれぞれやっております。そういうことはないように自信を持ってやっているわけであります。
  239. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 非常に重要な段階でございますので、細心の配慮をしながら難局に対処してまいりたい、こう考えます。  しかし、こういうときに社会主義政策に転換したらどうかというせっかくの御発言で、ございますが、遺憾ながら御賛成できません。これは高度の社会性の政策を考慮しなければならぬということはわかりますが、あなたが社会主義政策と、こういうことを言われましたから、それは日本人にはやっぱり向かぬという感じなんです。そういう意味で、ちょっと遺憾ながらでございますから、御了承願います。
  240. 井原岸高

    ○井原委員長代理 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。  大原亨君。
  241. 大原亨

    大原委員 いよいよ最後でありますが、いままで本会議予算委員会の論戦を通じまして、私が限られた時間の中で指摘をいたしたい点につきまして、質問を順次いたします。  国会の論戦はそれぞれの政党の政策や立場があるわけですが、しかし、事実については論戦を通じて合意をするというところがないと、議会の政治というものは国民の信頼をつなぐことはできぬと思うわけでございます。したがって、そういう観点で私は幾つかの問題につきまして指摘をしながら質問をいたしたいと思います。  最初に、質問に入る前でございますが、いままでの論戦を通じまして、たとえば日本の消費者物価の一五%の上昇あるいは卸の二〇%の上昇、これはいずれは三、四カ月後には消費者物価に反映するわけですが、たとえばその寄与率が、外国のインフレなんだ、インフレの四割はこの寄与率なんだ、こういう議論をしばしばされるわけであります。これは、田中総理はことさらそういう点を一貫して強調されたわけです。しかし、ドルショックや石油危機を通じまして出ているこの日本の現状は、早かれおそかれいずれは来るべきものなのであります。たとえば、日本物価世界一の物価の上昇率であるということをOECDは指摘しておるわけです。それが世界のインフレにはね返って日本に入ってくるという側面が、資源の問題や貿易の問題からあるわけであります。そういう側面をほおかむりしておいて、外圧であるというようなことを言って政治責任を回避するということはできないわけであります。この問題は、私は結論的にも論議をしたいと思いますが、そこでこれに関係をいたしまして、この補正予算の中に関係いたしまして、私が国民立場に立って奇異に感じていることが一つあるわけであります。  先般田中総理が、大平外務大臣もソビエトへは同行されましたけれども、ヨーロッパに行かれたときに、イギリスやフランスやドイツに対しまして三億円のおみやげを持って行かれたのであります。私は小さいことについてとやかく言うわけではありません。それを追跡いたしておりますと、この予算の中に出てきておるわけであります。これは、当時私は、予算に計上されておる中で処理されたのかと思ったのですが、あるいは田中さん自体が自分のポケットマネーで出されたのか、こう思いました。しかし、ここに予算に計上されておるわけであります。  そこで、これは小さいことのようですが、国民の感情からいいましても非常に大切な問題です。というのは、一体こういうことは外交慣例としてあるのだろうかどうだろうか、外国から総理や大統領が来た場合にはそういう慣例があるのだろうか、あるいは、社会主義の国へは、文化の理解や交流を深める意味においてそういうことをやっておるのかどうか、あるいは、三木さんが今度中近東へ、重要な任務を帯びて、日本の開発途上国に対する外交の反省をしながら行かれるわけですが、そういうときにどういう処理をされておるのであろうか、この予算が否決になった場合には信義に反することはないのであろうか、あるいは、どこかからそういう要請があったのであろうか、単なる思いつきではないのかどうか、こういう点について、田中総理がそういうことを処理されたわけですけれども、日本の外交上の問題、予算上の問題といたしまして御答弁をいただきたい。
  242. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の仏、英、独三国に対する寄贈は、三国の大学における日本研究の促進をはかるもので、かかる日本研究の援助は、東南アジア諸国に対しては、国際協力基金が、日本語教授の派遣、資材の供与、日本語講師の招聘等を通じ促進をいたしております。この三国からは、日本研究促進のための強い要望がございまして、そういうことも勘案して決意をいたしたものでございます。  本来わが国は、欧米各国から過去百年間にわたりましていろいろな意味で文化的な寄与を受けたわけでございますけれども、経済が自立し、国力が充実してまいりましたので、わが国といたしましてもこういう種類の寄与を行なう責任を感じていたしたものでございます。  なお、これはヨーロッパばかりではございませんで、アラブその他の諸国に対しましても同様の要請があり、人選中であるものもあるわけでございます。
  243. 大原亨

    大原委員 本年度の予算編成するときも、総理大臣の外遊のスケジュールはあったわけです。から手形ということであるかないかは別にいたしまして、一国の総理でありますから。しかし、国際慣例もあるし、あるいは国際的な感情もあるわけです。たとえば、ミクロネシアの賠償問題でここで議論になったことがあります。五百万ドルの見舞い金ということで問題になったこともありますが、これはあまりにも思いつきではないか、キッシンジャー構想のセールスマンだというふうな国際的な評価がいろいろといわれたこともある。あまり場当たりではないか。大国主義外交ではないか。みつぎものを持っていったことは昔から日本にはずっとあるわけですけれども……。だから、そういう点では、予算上措置をとっておいて、議論をしておいて、きちっと方針を立てて持っていくならいいが、私が問題を指摘したから、外務大臣のああいう答弁が出てきておるわけですけれども、あまりにも場当たりではないか。そういうことが日本の内政や外交を今日大きくピンチにおとしいれているのではないか。私は、これは事実の問題として、この問題に対しては率直に反省すべき点は反省すべきであると思う。  この点について何らかの発言があるならば、だれからでもよろしいから、簡単にしてもらいたい。
  244. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは初めから外遊の予定がありますから、予算に組んでおってやるという方法もございます。そういう緊急なものならば予備費を使用してもいいじゃないかという議論もございましたが、予備費は使用できないということで、こういうものは国会の議決を経るべきであるということでございます。これはこれからでも、日本を理解しないという問題に対して、日本を理解してもらうためにあらゆる方法をとるという中で、有力な手段であるということだけは間違いありません。しかも、この行為に対しては、提供を受けた大学、文化人、国の代表からも非常に感謝を受けておる。これによって、日本がわれわれの国を理解しておるよりもわれわれの国が日本を理解することによって、お互いに相互理解が増進するであろう、こういわれておるのでありますから、これはもうこれからでも相当起こってくる問題であるということを私は考えます。  それは、あとから予算を計上して、国会で予算が通過した場合に執行する。これは外交上大体そうなっておるのです。アメリカにおいても、もうアジア開銀に対して一億五千万ドル拠出をするということを世界に宣言しておりますが、しかし、現にある予算を流用するようなことはいたしません。新しい予算を国会に提案して審議を求めておる。この国会の審議が終わらないために一億五千万ドルの支出ができないということになっておるのであって、これは国会を尊重するゆえんである、こう考えます。
  245. 大原亨

    大原委員 いままで日本総理が外遊したときに、あるいはだれかが外遊したときに、そういうことの慣例があるのか、あるいは外国から来た場合にそういう慣例があるのか。相互が理解し合うということはこういうことだけではないのですよ。基本的な外交上の問題です。ですから、私はこれに時間をかける意思はありませんけれども、非常に奇異の念を感じておる。外国から日本に対しましてそういう例がありますか。そういうことは、つまり外交上の協定を堂々と結んで、それに伴う賠償とか、そういう資金的な裏づけのある予算をあとで出すということはあるわけですが、こういう形の予算の使い方というものはいかがなものであろうか、そういう点。ですから、私はこれ以上は論議はいたしません。  それから第二の問題といたしまして、いままでの論戦を通じまして――これも私は立ち入って議論はいたしませんが、いままでの議論の中でいろいろな論評があるわけです。しかし首相は、インフレの問題につきまして、物価が真に憂慮すべき状態にあると認識をしている、物価対策は当面最重要の政策課題として対策を進めている、また恒常的物価騰貴、この憂慮すべき情勢をあなたがインフレというならば、私は異議を差しはさまないというふうに答えられたわけです。お二人ともそういうふうに答えておるわけです。これはやはり事実上、私の所見を申し述べたいのですが、別の観点から現状を政府がインフレとして認めたものである、私はこういうふうに思います。間接的な表現ですけれども、事実上私はこの事実を認識したものであるというふうに考えるのです。私は、これだけ議論したわけですから、そのくらいな合意はあってもよろしいと思うが、いかがですか。
  246. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いままで間々申し上げておるとおりであります。
  247. 大原亨

    大原委員 これも私は時間をかける意思はないのですが、いままで池田内閣以来インフレの問題はずっとあるわけです。あるわけですが、その際に論議になりましたのは、「景気が回復した後もなお八%程度も消費者物価が上昇すれば、インフレと見ていかなければならぬ。」これは藤山さんが経済企画庁長官のときに言っております。福田さんは、「卸売り物価が上がっておらないからインフレとはいいません、」こう言いましたが、卸売り物価までいきますと、これはかなり続くとインフレだという表現をいたしております。これはいままでの事実であります。それから佐藤首相は、「生産性を無視した物価の高騰が続くとなれば、これはインフレである」というふうに言っております。GNPとの関係を言っておるのであります。宮澤通産大臣は、「換物運動の起こることが一つの要件である。他方、消費者物価が定期預金の利子をこえて上がった場合にはインフレである、」こういうことを言っておるわけであります。佐藤一郎経済企画庁長官は、「下方硬直なところまで来ていない、換物心理が一般化するならばこれはまさにインフレである、」こういうふうに指摘をしてきたわけです。それを受けてずっと論争したわけですが、このどの事実も現在の事態というものはこれに適合しておることは、私が百万言を費やして指摘をすることもできるが、そういう時間は惜しいし、必要はない。まさにこの事実はインフレである。インフレであるというふうにあなたが規定をするならば、それは異議は差しはさまないということは、その事実を認めたことである。その事実に基づいて対策を立てる、こういう政府の意思を表明したものであるというふうに理解をいたしますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  248. 福田赳夫

    福田国務大臣 しばしばお答えいたしておるのですが、現在の物価情勢は非常に異常であり、憂慮すべき状態である。そういう状態をさしてあなたがインフレだ、こう言うならば、インフレといわれるその呼称に何ら異議を差しはさまない、こういうふうに申し上げておるのです。強調したいことは、物価が非常に異常で、憂慮すべき状態にある、これですべてが尽きておるのじゃありませんでしょうか。インフレということばの問題であって、これは学問的にいうと非常にむずかしいです。しかし、政治家としての認識は、非常にそれが心配だ、異常な状態だ、憂慮すべき状態だ、そういうかまえでこの問題と取り組むということで十分だ、そういうふうに心得ております。
  249. 大原亨

    大原委員 つまり、この問題は、いままで統一見解をわれわれのほうからも出しておるわけですから、ここまでにしておきたいと思います。  そこで第三の問題でありますが、先ほども申し上げましたように、日本のこのインフレは投機的なインフレ、こういうふうにいわれておるわけですが、それは過剰流動性の問題、フロートへの移行する時期の問題その他をめぐりまして中心として出てきた過剰流動性プラス銀行預金の残高にあらわれているように、三十兆円以上もふくらんだそういう信用膨張、こういうものを契機にいたしまして土地や株の買い占めがずっと始まったわけであります。それにさらに拍車をかけまして、中期的には石油が資源の問題として出ておるわけですけれども、それが短期的に中近東戦争を通じまして出てきたわけであります。  そこで、きょうも、一月以降は五%の削減OAPECはやる、こういうふうに言っておるわけですが、それを受けて、電力やあるいは石油の消費制限を一〇%から二〇%に拡大をしていかなければならぬだろう、カットしていかなければならぬだろうという、そういう意見が政府の部内にもあるそうであります。その点は、通産大臣はどういうふうな理解をしておられますか。
  250. 内田常雄

    ○内田国務大臣 石油わが国に対する供給の前途につきましては、いまの状態から、私ども承っておるところによりますと、必ずしも楽観ばかりはできない。しかし、これは国際情勢にもよることでございますし、また、国民大衆に心配ばかり与えますことも、私ども政治家としてその進むべき道ではないと考える点もございますので、この問題につきましては、ここしばらくの間状態を慎重に見きわめた上で、企画庁におきましてもいろいろな施策を立ててまいるつもりであります。でありますけれども、冒頭に申し上げましたような状態がありますために、今度の緊急二法案というものも用意をいたしまして御審議をいただいている、こういう次第でございます。
  251. 大原亨

    大原委員 石油、生活二法案、大切な問題でありますが、これについてはこれからいろいろ議論があるわけです。これだけでは問題は解決しないという議論を私どもは今日までしてきたわけであります。  そこで私は、やはりいままでの議論を通じまして、これらの問題は総需要の問題の議論にあったわけですけれども、やはり土地問題について考え方をきちんとしなければいけない。総理大臣は、土地の供給をふやしたならば地価は安定するじゃないか、土地は需給できまるのだから、供給をふやせば安定するではないか、こういう議論をされたわけですが、しかし、土地問題が投機の対象となっておるために、不公正が拡大してインフレを助長しておる、こういう事実認識をしっかりしなければ、私はこれからの予算やあるいは政策は立たない、こう思いますが、総理大臣いかがですか。
  252. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地問題が非常に重要であるということは御説のとおりでございまして、政府も、土地に対する重課その他、あらゆる法律案を御審議をいただいておるわけでございます。
  253. 大原亨

    大原委員 いままでこれは指摘をされない点ですが、いままで議論をいたしました、ずっと前から予算委員会で議論いたした中に、土地の譲渡所得の分離課税の問題が御承知のようにあるわけです。分離課税をもって供給をふやしていったならば地価は安定するのだという議論で、税制上誘導政策をとったわけです。しかしながら、結果といたしましては、昭和四十七年の資料をとってみますと、日本の高所得者からずっと順序にやりまして、十人の中で七人は土地の譲渡所得で利益を得た人であります。たとえば昭和四十七年に韓黎という方は十五億八千七百八十三万円の所得があるわけですが、そのときに勤労者の平均所得は九万八千五百二十八円で、一年間で百十七万円であります。そのベストテンの四人の方と、そうして平均所得との格差を比較いたしてみますと、千二百五十倍になるわけでございまして、この問題が始まりました当時は、十年前は、この所得の格差が五百倍ぐらいであったのが、千二百五十倍ぐらいに所得の格差が現実に開いておるわけです。ですから、この土地の投機インフレを通じまして不公正が非常に拡大をしているわけです。ですから、土地は商品にあらずということを、いまここに列席の建設大臣や前建設大臣は全部言ってきたわけです。議論いたしてきたわけです。これは資源以上に有限なものですから、金がだぶついて投機の対象になったならば、これはどんどん値段が上がっていくことは当然であって、これが全部の日本の政策の執行を妨げておるということははっきりいたしておるわけであります。  ですから、最近、農地の処理のしかたを促進せよという手続を農林省は次官通達で総理の命令で出されたというのでありますが、あるいは農地の宅地並み課税の問題でもわれわれは議論したわけですが、個人の手を離れたものが法人の所有になっておって、そうして含み資産として非常に大きな信用膨張になっておって、これが基礎で投機を助長し、インフレを助長しておるという事実は、私はこの議論の中でだれも認められると思うのであります。不公正の拡大と土地問題については、そういう事実の認識については、私はくどくど言いませんけれども、はっきりいたしておると思いますが、総理はいかがですか。
  254. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いままで反省すべき点、たくさんあるのです。土地の供給を促進するために、二年間は五%でいい、あとの二年間は一〇%でいい、あとの二年間は一五%でいい、来年一月一日から二〇%になるわけであります。まあこのときには、法人に売り渡したものというのではなく、住宅等に個人に売り渡した場合とか、それから住宅供給を業とする企業であったら、三年だったら三年以内に住宅を建てなければならないというような制限があってしかるべしだったと思うのです。思うのですが、まあこれは逆になって、個人から法人にみな移ってしまったということでございます。事実そのとおりであります。年間八百億円しかなかった取引高税式な税金が三千五百億にはね上がっておるわけでございますから、少なくとも一年間一〇%として三兆五千億の土地代金が流れた。  この背景はどうかというと、ちょうど時あたかも企業の手元流動性が潤沢なときであり、ドルの切り下げの時期でありましたので、中小企業、零細企業を守るためにはどうしても金融を緩和せざるを得なかった、輸出を内需に転換しなければならないという背景とちょうどこの税制がぶつかっておったということが相当地価を上げたということは、いなみ得ない事実でございます。またそこに時を同じくして、供給を促進すればいい、いわゆるどこでも環境を保全しながら、適切なる住宅環境を保持しながら住宅を供給するならば、それを促進するように、固定資産税をまけます、長期、低利の金を貸せますといえばよかったときに、都市計画法によって線を引いたわけであります。線の外は許可をしない、こういうのがちょうど同じ時期にぶつかりましたので、線の中の人は、線の外はできないということになればやがては上がるという、先高は当然でありますから、それに対して特別の税を賦課するという法律が通っても、なかなか売らない、その税を納めても売らないほうが得だ、こういうことになったわけでありまして、いろいろなものが複合して地価の値上がりになったわけですから、今度はその意味で、この新税、分離税を採用したその日から、法人に移った土地を今年中に売れば、十二月三十一日までに売ればいままでの税法を適用するにしても、来年の一月一日から売ったものに対しては一般の法人税プラス二〇%の重課をする。そうすると、おおよそ七〇%の税金を賦課しますということになります。そうなると、じゃ売らないということになりますから、今度固定資産税を上げ、そして特別所得税を三%課したわけでありますから、いろいろな知恵を出して、法人が持っておるものを吐き出させようとしておる。  それでもだめなので、土地を担保にしておる金は吸い上げるように、新しい金融は行なわないということで、金融でもってうんと締めておるわけでございます。ですから、昭和四十六年の一月一日には外貨四十五億ドルでございますから、ちょうどその年度が三月三十一日、四十六年四月一日の当時まで金融引き締められる。引き締まれば、当然これはもう土地は放出をせざるを得ない、持ちこたえられないということはもう事実でございます。それから、少なくとも名目でも二〇%以上国民総生産が伸びているわけですから、企業の運転資金は必要であることはもう事実であります。そこを締めれば、当然、もう会社をつぶすか、土地を放出するかという以外にはないわけでありますので、政府としてはやれるだけの土地の放出ということは、すべてのところからしぼっておるということが現状でございます。
  255. 大原亨

    大原委員 これは法制局長官、いままでしばしば指摘をされて、答弁がなかったわけですが、国総法におきまして、地価の凍結とそして利用をくっつけておかなければ憲法違反だという議論をしばしばテレビその他で総理はいたしましたし、ここでもいたしました。私はそんな根拠はどこにもないと思うのです。法制局はどういう見解を持っていますか。
  256. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの御質問で、地価の凍結と土地の規制とは分離してはならない、分離すれば憲法違反だということを、総理答弁なりテレビの会見で発言をされたというような御趣旨でございましたけれども、総理の言われたのは、総合開発部分と、それから土地の規制部分とを切り離すことは非常にむずかしいという趣旨で、違憲とまでは表現はしておられないと思います。  そういう総理答弁なりあるいはテレビの会見での発言の趣旨といたしますところは、もともと憲法二十九条の二項で、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と書いてございます。土地の所有権なりあるいは利用権も財産権の尤たるものでございます。そこで、土地の規制をいたします場合は、その前提として、土地の適正な、かつ合理的な利用の確保という目的を前提にしなければならない。そういう目的を実現するために初めて規制が公共の福祉に適合するのだというのが、憲法の第二十九条第二項の解釈として正当の、おるべき姿だろうと思います。  その意味で、今度の国土総合開発法では、土地の適正合理的な利用の確保のための方策として前段に開発の規定を詳細に設けまして、その土地の規制の方策と合わせて一本の法律とすることが、法律の全体系として整斉たるものであるという考え方に基づいているものでございまして、その考え方を総理は率直に述ベられたものだろうと思います。  第十三条で一番問題になります規制の問題これは特別規制地域の指定、このほかにも規制の問題たくさんございますが、一番大きな特別規制地域の指定の問題は十三条以下に規定してございます。この十三条の趣旨といたしますところは、この法律がいっております土地利用基本計画その他の計画を実現するために適正なものであれば、その土地の利用だとか移転だとかを容認するということを基本にして定められておりますので、そういう趣旨のことを申し上げたものでございます。
  257. 大原亨

    大原委員 それで、いまの法制局長官の答弁総理の発言は違うのです。法制局長官は、総理は憲法違反だとは言ってないということを前提にべらべらしゃべったのです。あなたは、そんなことは憲法違反ですといって、テレビでも、ここでもしばしば言ったのです。つまり、総合開発の部面と土地の規制の部面とくっつけておかないと憲法違反の疑いもあってと、議事録にちゃんと出ている。(田中内閣総理大臣「疑いがあるということだ」と呼ぶ)疑いがあるということは、憲法違反になる可能性があるということでしょう。(田中内閣総理大臣関係はあります」と呼ぶ)なぜ関係ありますか。じゃ聞きましょう、なぜ関係があるか。
  258. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地は財産である。憲法で明らかに明定をされております。この土地を公共の用に供さなければならない。公共の用というものは厳密に解釈をしなければならぬことは、これはあたりまえであります。その意味で、土地収用法を適用する場合でも、道路の幅員を公示をし明示をしなければ収用権が発動できません。それは同じことなんです。いまの新空港公団の中でも、行なう事業によって、滑走路は収用できる、引き込みの鉄道も収用できる、しかし、その他法律に明定のないものは収用ができない。そういうことでこの一坪地主というのが起こっているのじゃありませんか。それだけじゃありません。パイプラインがとにかく敷設できなければ空港は二年間も開設ができない。そのために、暫定的パイプラインをやるとしても、暫定的パイプラインのところは、法律に明定のない限りにおいて収用法の対象にならないということは事実であります。ですから、憲法二十九条で指定しておりますものは、公共の福祉というその定義の中で事業を明定しなければならぬことは、これは言うまでもないことであるのです。いままで皆さんが、私権を擁護するためにそうしなければならぬといって、二十数年間ちゃんと言ってこられたじゃありませんか。この種の法律が国会で審議されるときには、私の言っていることと同じことをあなた方は主張されてきたという事実に徴しても明らかであります。
  259. 大原亨

    大原委員 総理大臣、いままでの議論は土地の総合開発――列島改造については私はここで議論しませんよ。しかし、これがどんどん新幹線とかあるいは高速道路とかでいろんなプロジェクトを出したために、法人の買い占めがずっとあったことは事実なんですよ。(田中内閣総理大臣「観念論だ」と呼ぶ)観念論じゃないですよ。事実なんですよ。だから総合開発と土地の規制部分を分離して、土地の規制の部分、凍結の部分について、ちゃんと、何のためにそういうことを規制するのかということを法律に書くならば、これは住宅とか道路とか、いろいろなことがあるでしょう、そういう公共の目的のためにやるんだということを書くならば、土地規制法を単独でつくることはできるじゃないですか。そして国土全体をどうするかという問題は、その上に立った問題である。その順序を逆転さして、そしていままでずっと宣伝をし、買い占めをあおってきて、あとでこういうことをやる、しかも一部門だけでやる、それだったら不公平な問題が出てきてたいへんじゃないかというのが議論ではないですか。ですから、それを憲法違反とくっつけて――法制局長官の答弁だって非常にあいまいですよ、こんなことは。土地は商品にあらずということを議論してきたじゃないですか。土地問題は諸悪の根源だ、こういう問題を議論して、そういうコンセンサスの上に土地の規制をやるということが、あらゆる福祉政策とかあるいは国土利用の前提である、こういう議論をしてきたのではないですか。それを、なぜ総理大臣はその議論をすなおに事実の推移を認めてやることができないのか。なぜできないのが。
  260. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国土総合開発法を国会のテーブルに上げてからもうすでに一年の歳月を見ておるわけでございます。ですから、そういう御議論がございましたら、修正案としてお出しいただいたり、そういうことでもって議論をしていただいて、それで国民のコンセンサスを求めるということが正しいと思うのでございます。そのときには、やはり、これはいままでも申し上げましたように、法律論と事実論と、いわゆる状況論というものを全部一緒にしてやられることは望ましくないことであります。法理論は厳密に行なわなければなりませんし、しかも法律論というものは時の推移によって変化も行なわれるわけでありますから、だからそういうものをお出しになっていただいて、私も政府が出したものが、それは全知全能じゃありませんから、最高だと思っていませんよ。ですから、国会でどうぞひとつ御議論いただきたい。私が説得されれば、それはもういいアイデアがあればいつでもそれに御賛成を申し上げますから、どうぞひとつ……。
  261. 大原亨

    大原委員 ぼくはいままでの議論を通じまして、福田さんもこれは言われたのですが、総理もある一部分では言われたのですけれども――総理大臣は非常に口数が多いわけだな。それで一つの問題についてあらゆる方面から言うから、どれがほんとうかわからない。政策の基礎になるかわからないのですよ。だから私は、じっくり落ちついて総理大臣はやってもらいたい。場当たりでやってもらったんじゃ国民が困る。わかった角さんというだけに、人の言論を押えてどんどん進んできたんじゃないですか。塚本君が言ったとおりですよ、それはまさに。あなたがおこるのがおかしいですよ。  そこで、いまの福田さんの発言や総理の発言の中で、いまのままで高度成長が進むならば、物価、インフレの問題や資源の問題や、環境の問題や福祉の問題で壁に突き当たる、突き当たったのだ、そういう認識の上に発想転換しなければならぬ、政策を転換しなければならぬ、こういう議論をしてきたかと思うと、それをひっくり返すような議論があるから、これでしばしば混迷するわけです。  私は、その一つの踏み石というか、つまりそれを実証する問題として、瀬戸内海の環境保全臨時措置法という議員立法についての見解をこの際聞きたいのです。  瀬戸内海は、石油基地といたしましてもものすごい比率を占めておるわけです。六割以上占めているかもしれない。鉄だって世界一の高炉ができておるわけです。鉄やあるいはパルプや石油の基地として大きくなってきたわけだ。この調子でずっと進んでいきましたならば、瀬戸内海はヘドロの海になるわけです。運河になるわけです。水産資源や自然環境の宝庫を守ろうじゃないかという議論が出てきて、国会でしばしばあなたとも昨年以来議論をいたしまして、そうしてつくろうということになった。しかし政府が出なかった。自民党にもかなり助長行政の面から横やりが出た。そこで三木さんが、私は三木さんをかなりきびしくこの問題で批判したことはありますけれども、やはりかなり中心的な役割りを果たして、議員立法で一応できたわけです。  それは、三年間にCOD汚濁負荷量を半分にする、こういう規制を加えるというのが一つあるのですが、その前提は、臨時措置をするこの三年以内に瀬戸内海をきれいにする、環境保全をしてきれいな海にする、そういうマスタープラン、全体の計画を必ずつくりますということを法律に規定いたしまして政府を縛っておるわけです。その法律は必ず時間内につくりますね。当然ですが、つくりますね。そのきれいにする目標は、あとの七カ年計画になるかどうかわからないけれども、スピードをダウンさせると、これは結果としてはできない。田中内閣だっていつまで続くかわからぬから、そういう法律をつくってぱんと出ていく可能性は――まあそういうことは表面ては言わないが、それは別にいたしまして、そういう目標を設定すべきだ。それは私はいままでの議論、コンセンサスから言うならば、昭和三十年代の高度成長が始まる前年、三十年から三十五年、その当時の海にして、きれいな、魚も食べられるし、海水浴もできるというふうな海にすることが目標のマスタープランでなければならぬと思う。環境庁長官の三木さんは見えておりませんけれども、新しい代理の長官、この点についてまず簡単に御答弁をいただきます。
  262. 保利茂

    ○保利国務大臣 瀬戸内海の環境保全臨時措置法というのを議員各位の御熱意によって制定して、すでに十一月の二日にこの法律は実施に移しております。直ちに沿岸の知事さんあるいは学識経験者、そういう方々四十名で環境保全審議会を発足しなければならぬ。それで準備を急いでおられたようでございますが、幸いに各方面の御協力をいただいて人員もまとまったようでございますし、十二月の二十四日には第一回の総会を開きまして、ただいまお話しのようなマスタープランその他いろいろ問題があるようですが、そういうものについて御意見を十分伺って、立法の趣意に沿うて最善を尽くしていかなければならぬということで、準備を進めておるわけであります。
  263. 大原亨

    大原委員 それはいい。そのマスタープランの目標は、ヘドロの海に逐次なしくずしに進むのではなしに、きれいな自然環境ときれいな海を保全するのだ、そういう観点で、たとえば、議論されておる昭和三十年代の前半を目標にしながら、埋め立ての規制とか、あるいはヘドロのしゅんせつとか下水の施設とか、そういうものを総合的にやるのだ、こういうふうに理解をしてよろしいか。
  264. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、下水道の整備、それから埋め立ての規制等、当然やらなければなりません。しかし、昭和三十年代ということが可能なのかどうかわかりませんが、私がここに率直に申し述べられるものは、いま瀬戸内海沿岸の塩田を埋めて工場を建てるとか、それから瀬戸内海の沿岸都市に人口を集めるとかいうようなことは、これはもう原則的に禁止をしなければなりません。それだけではありません。いまどうにも化学処理のできないような工場の増設を認めない。それだけではなく、大阪湾や東京湾もそうでありますし、それからもう一つは伊勢湾もそうでありますが、あの法律の水質基準を完全に守るには、相当部分の工場を強制的に年次計画を立てて移転せざるを得ません。国総法は、その受けざらをつくっておかないで移転はできないというところを前提にして出しておるのでありまして、私がいま申し上げたような相当部分の工場を移転しないで、あの水質基準が守れるというような計算は出ません。私はそういう計算をしておるのであります。   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕
  265. 大原亨

    大原委員 国土全体をどうするかという議論は、これはまた別の議論でいたしましょう。  そこで、この瀬戸内海環境保全臨時措置法によりますと、三年以内に、汚濁負荷量千七百トン、一律に出ておるのですが、家庭排水の三百五十五トンを除きまして、三十五トンを各府県に割り当てをするわけです。そして工場にずっと割り当てていくわけです。上のせ条例でやっていくわけです。だから、これをやりますと、新全総や、あるいはあなたが列島改造論で書いておられるそういう計画というものを変えなければいけませんよ。  そこで問題は、たとえば周防灘とか佐伯湾などの大型開発とか、これは日本全体でも、資源問題総需要の問題でいえるわけですが、志布志湾とか苫小牧とか、あるいは陸奥湾とか、そういう大型の開発計画というものはぴしゃっと整理をするということでないと、石油の規制は二〇%になるか、あるいはそれに伴って操業は短縮になるし、物の生産が少なくなればずっと物価は上がっていくんですから、それに対応する総需要の抑制をするという場合には、そういう環境の問題資源の問題と一緒に総需要をぴしゃっと抑制する、そういう方針をなかなか出さないが、周防灘とかあるいは佐伯湾などというのはスローダウンをするというのではなしに、この大型プロジェクトの問題を、スローダウンをするというのでなしに、たな上げして、ストップをしておいて再検討をする、こういうようにすると、総需要の関係からいわゆる生活二法案のバックグラウンドができるということです。
  266. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そこをもう一歩進めて考えていただきたいのです。一〇%成長とか一一・一%成長はできなくても、少なくとも五%とか三%の成長というのはこれはもう必要なんです、どう考えてみても。もう日本の現状が最高だというならば別でありますが、日本人はまだこれから社会保障もやらなければいかぬし、給与も上げなければいかぬし、生活環境も整備しなければいかぬ。どんなに少なく見ても三%程度のものをやらなければ、日本がやっていけるはずはありません。しかも五%になるかもわかりません、六%になるかもわかりません。そのときに、現状においてもうすでに環境基準をこえておるのです。それはなぜかといいますと、求心力がございまして、政治の中心であるところ、東京、大阪、名古屋、福岡などというようなところに産業も文化も人もすべてが集まったところに、今日の公害問題があるわけであります。ですから、あなたが言いますように、大阪湾を含めまして瀬戸内海をあの基準までやるには、増設を認めないだけじゃないのです。いま公害を排出するところの大型の工場は移転しなければならないのです。そういう数字は必ず出てきます。その移転プラス三%ないし五%という成長というものを考える。だから私はこの間言いましたように、それが一次産業、二次産業の成長か、三次産業部門を増大する成長か、GNPの計算は別でございますが、いずれにしても、大都会においては、住居地域の中にある工場は全部排除しなければならない状態じゃありませんか。それはできますよ。それは地下水のくみ上げを禁止をし、とにかく日中の大型のダンプの通行を禁止すれば、直ちにできるのです。できるのですが、それが移転をして、そして総需要を抑制するワクの中にありながら国民生活が年率平均二%でも三%でも向上していくということになったら、水や土地や、そして住宅を提供できるように国の持つ資源の配分計画を変えていかないでどうしてできますか。そういうところに国総法がありまして、国総法は、一〇%、二〇%の成長をこの上積み重ねていこうなどということが前提にないのです。あの中に書いてあります。だから、そういうことをよく考えて国総法の……(発言する者あり)ひとつ考えてくださいよ。
  267. 大原亨

    大原委員 質疑応答は焦点をしぼってやらないと……(田中内閣総理大臣「まじめに考えて」と呼ぶ)まじめに考えてやっていると、ほかの討論をするからいかぬ。  そこでもう一つ申し上げますが、問題は、これは全部の省に関係があるのです。科学技術庁から厚生省、通産省、全部あるのですが、やはり最近石油資源の問題から石油化学の問題が議論になるのです。その中で、環境問題から議論になっておるのが洗剤の問題です。この中性洗剤の問題は、これは環境庁の専門家で答弁してもらってもいいわけでありますが、この中性洗剤は石油からですが、ABSなんですね。専門的なことは別にいたしまして、これは皮膚とかあるいは魚の味蕾を麻痺させて、重金属やその他を魚に濃縮するという作用や、PCBが沈でんしておりますと、溶解作用があるから、これを溶解しましてそれを拡散するという作用があるだけでなしに、赤潮の原因であるところの燐ですね、富栄養化の窒素と燐があるのですが、燐をどんどん琵琶湖とか瀬戸内海とか東京湾とか近辺に蓄積いたしまして、赤潮の原因になっている。瀬戸内海の赤潮は、言うなれば光化学スモッグと同じような汚染のバロメーターなんですが、そこで魚が死んでいる、汚染をされている、他の重金属がまざっている、こういうことで、この処理をしなければならぬということにぶち当たっているわけです。  そのためには、下水道の処理を、いまの処理は二〇%程度の普及率しかないが、どんどんずっと進めていって、第二次処理を第三次処理までやって、金がかかるけれども窒素と燐の処理をしなければならぬという問題が一つです。それが非常に大きな人間的な、あるいは環境破壊の役割りを果たしているということがあるわけです。ですから、瀬戸内海をきれいにしようと思うと、この赤潮の問題燐の問題を解決しなければならぬ。  そこで、中性洗剤にかわるべき石けんですね。動物や植物のたん白で苛性ソーダとやれば簡単にてきるのですから、やはりこれの生産を――厚生省はいままでいろいろなことを安全宣言なんかやったのですが、いま学者の議論がどんどん出ているわけですから、瀬戸内海をきれいにしようと思うと赤潮の問題、赤潮の問題をやろうと思うと、工場や家庭から出てきている中性洗剤の規制をしなければならない。これはむしろ社会的な評価からいうならば、洗剤で便利をするよりも中性洗剤によって被害を受けるほうが多いし、出た場合にこれを処理するのに金がたくさんかかる、何倍もかかる。こういう問題は、資源問題をしおにいたしまして発想の転換をしなければならぬ。これは一つの例です。いかがですか。
  268. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この問題、将来非常に重大な問題になると思いますので、私から一言お答えをして、あとで厚生大臣からお答えをしますが、厚生省でも東京都の衛生試験所でも、中性洗剤は人体に影響はないということでもってやっているわけでありますが、その後、学界の各方面に中性洗剤の人体に対する害ということは学説として発表されております。私自身は、これはしろうとではございますが、中性洗剤というものは人体に影響があるのではないかという感じを持っておるのでございます。それで、これが二代、三代という場合には、中性洗剤は、食物を通じてとか魚を通じてとか、いろいろな問題で必ず影響あり、こういう考えに立っております。  そういう意味で、中性洗剤が海洋に放流されるまでの間に処理をしなければならないことはもちろんでございますが、もっと学問的に掘り下げて、この問題はもう厚生省はいいのだ、こういっておるのだからということではなく、これはやはり新しい学問を国際的に集めて勉強すべきである。私は、中性洗剤に関しての有名な学者の論文を何冊も読みました。そういう意味で、厚生大臣就任と同時に、私は、齋藤厚生大臣に、いままでとは違った角度で中性洗剤に対する学問的な研究をあらためて行なうべしという、正式な指示を行なっております。
  269. 大原亨

    大原委員 そこで、これは科学技術庁が、経過からいいますと、かなり金を使ってやったわけですよ。それで、厚生省の食品衛生調査会というのがありまして、いまは少し中身を変えましたが、これはメーカーの代表が入っていたのですよ、内田さんもよく知っているけれども。そこで問題になって、科学技術庁にとってかなり予算をかけてやったのですが、一応中間では無害宣言をやったことがあるのです。しかし、皮膚の障害その他がずっと出てきて、これは非常に浸透作用がある、肝臓をおかす。ですから、国民生活センターというところでも、これは政府の外郭団体ですが、三五%は皮膚障害がある、肝臓障害があるということをいっている。それから環境庁の中でもそういうことは常識になっているわけですよ。  そこで、こういう問題は、環境破壊のおそれがあるのですから、いまやそういう問題については発想を変えて、石けんにかえていく。これは個人が便利がいいというだけじゃいけない。そういうことで発想を変えなければいかぬと思うのです。  私は、それを前向きに検討してもらいたいということに関連して、環境庁に当面の問題として指摘をしておきたいから、これは政府委員でもよろしいが、ABSの許容基準が〇・五PPMではいけないということが一般の議論になっておるが、これについてはどうか。それから工場の排出基準の中にABSを入れてないけれども、入れるべきではないか。これについては、長官はあまりにも大まかな大ものでありますから、専門家の答弁を求めます。
  270. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 私の厚生省の分についてまずお答え申し上げておきますが、中性洗剤につきましては、お述べになりましたように、科学技術庁の金をもって相当研究いたしまして、中間的に無害であるということが出たわけでございますが、いま総理がお述べになりましたように、私が厚生大臣に就任するや直ちにこの問題を科学的、本格的に研究しなければだめだ、こういう御指示をいただいたわけでございます。  そこで、科学技術庁と相談をいたしまして、いろいろな意見を述べておられる学者がたくさんおります、すなわち、催奇性の問題とか浸透性の問題とか、各方面にわたって本格的に科学的に研究しようということになりまして、この八月でございましたか、専門家の委員会をつくりまして本格的に研究をしよう、こういうことで研究を続けることにいたしたのでございます。この点だけ申し上げておきます。
  271. 森整治

    ○森(整)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のような〇・五PPMという問題は、実は厚生省のほうの水道のほうの基準としていいかどうかという御議論のようでございまして、この点は厚生大臣からお答えがございましたところでございます。  それから、その他、毒性の問題のほかに、いろいろ石けん等に転換いたしますとか、あるいは合成洗剤の中に含まれております燐の削減をいたしますとか、そういうことにつきましては、通産省とも協議いたしまして指導をしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、燐の排出につきましての全体的な総合的な調査がまだ実施中でございます。その調査の結果を見まして、排出の規制につきましても検討することといたしたいと思っております。
  272. 大原亨

    大原委員 これは具体的な問題でなければ、抽象論で水かけ論になるから申し上げるのですが、つまり結論といたしましては、総理、こういうことです。たとえば玉の浄水へ行きましても、こんなに中性洗剤のあわがある。これを界面活性剤で処理するのにたいへんな金がかかるわけだ。ですから、便利だということよりも、社会的な評価をいいますならばマイナスが多いわけですから、こういう問題では、すぐれて政治的な決断の問題ですから、大切な問題であるということが一つ。  それから、瀬戸内海の環境保全臨時措置法で出ておるように、大きなコンビナートをつくろうと思えば、港湾という公共事業に金を使うわけです。コンビナートをつくる港湾施設に使うわけです。あるいは橋もあるわけですけれども、それに伴うて民間設備投資が、あの周防灘とか佐伯湾などというのは、鉄とか石油とか、ずうっといっているわけです。それを総需要抑制の中で、財政金融の中できちっと中身をつけなければならぬ。そのときに大切なのは、福祉優先とか環境優先ということで言うならば、たとえば下水道をどうするか、あるいはヘドロのしゅんせつのためにどういうような手を打つか、あるいは下水道の三次処理のための設備や費用をどうするか、こういう問題を含めて、やはり生活問題を中心にしてそして公共事業費も中身を変えていく、金融の中身を変えていく、こういう発想がないと、ドルショックやオイルショックに対応して日本がほんとうの意味の自主外交、国益外交を展開することはできないのではないか。  そういう点について、総需要抑制の時代ではあるけれども、瀬戸内海環境保全の問題でたくさんの問題があるが、埋め立ての問題を含めて総合的に瀬戸内海の環境を守るということは、日本国民の大多数の環境を守ることになるのだから、それを優先させて、公共事業の中においてもこれが優先して通っていくような、そういう予算編成のしかたをすべきであると基本的に考えますが、大蔵大臣の御所見を聞きたいと思います。
  273. 福田赳夫

    福田国務大臣 瀬戸内海のことはまだ勉強しておりませんので、この問題についてお答えすることは私、差し控えたいと思いますが、一般論といたしまして、これから長い目の問題といたしましても、成長というか、生産ですね、そういうものを中心にする運営のしかたでなくて、やっぱり生活中心、そういう経済の運営をすべきかと、かように考えております。  それから、来年の予算のことにつきましては、物を需要する公共事業費これは厳に抑制するという方針を貫きたい、こういうふうに考えておりますが、しかし、一がいに言うわけにいかぬ。その中に、公共事業と申しましても、おのずから生活に密着するようなものもあるわけですから、そういうものに対しましては特別の配慮をしたい、こういう考えでございます。
  274. 大原亨

    大原委員 資源の配分、所得の再配分の問題ですが、四十八年の経済白書を見てみますと、「インフレなき福祉をめざして」というのですが、これは基本的にそういうことを言っているのですが、しかし、いま問題は、インフレ下の福祉をどうするかという問題が出てきておるわけです。インフレから福祉をどう防衛するかという問題があると思うのです。  私がお聞きをしたのは、経済社会基本計画の中で一応のワクをつくったわけであるけれども、社会保障長期計画を八月の末まで出すとか、あるいは年末までには少なくともつくります、こういうことを言いながら、この計画を放棄したも同然になっておるのはいかなる理由によるものであるか、簡単に御答弁いただきます。
  275. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 経済社会基本計画に基づきまして社会保障の長期計画をつくるということで、ことしの五月であったと思いますが、学識経験の方々にお集まりいただきまして今日まで検討を続けております。一応中間報告は出たわけでございますが、その後、物価の上昇、さらに今回の石油、こういったふうな問題等もございますので、経済見通しがどうなるか、それとマッチして計画をつくるということが適当ではないかということでございますので、もちろん今月中もどんどん懇談会において検討いただいておりますが、来年度の予算編成の際には来年度の経済見通し等もはっきりしてまいりますから、それとにらみ合わして正式に決定をいたしたいということで、目下作業を急いでいるような次第でございます。
  276. 大原亨

    大原委員 四十八年度から五十二年度、その経済社会基本計画の中の国民所得に対する振替所得の比率を、現在の六%を八・八%程度にレベルアップをするというその基本的な考え方は、政府全体としては変わっておるのかどうか。経済企画庁長官。
  277. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これも大原さんよく御承知のとおり、経済社会基本計画というのはことしの二月にできましたけれども、非常に進歩的な計画でございまして、産業第一主義とかあるいは輸出第一主義というものを捨てましてというか、横へ置きまして、そして福祉計画とか教育計画とかいうものを中心に組み立てたものでございますから、この計画考え方自身は、私は、いまのような石油事情が起こりましても、物価が上がりましても、変える必要がないことであります。ただし、その中に織り込まれている数字は、これは現在フォローアップをやっておりますから、若干変わるでございましょうけれども、しかし、いま直接お尋ねの国民所得の中における振替所得の割合を八・八%程度に持っていくということは、経済企画庁といたしましても、それは大蔵大臣とも厚生大臣とも協力して、私もかつては厚生省の仕事を担当いたしておりました、そういう立場からいたしましても、変える必要はない、ぜひ推進していきたい、こう思います。
  278. 大原亨

    大原委員 経済社会基本計画が、いままでの議論で、物価とかGNPとか資源の関係で事実上空中分解したような議論でありました。しかし、いままで所得倍増計画以来ずっと計画をつくっていって、社会福祉については一定のワクを設けたけれども、七%のワクを設けたけれども、実際には六%を下って、うんとこれはもう無視された形になっておったわけです。私は、経済社会基本計画というものは根本的に再検討しなければならぬ情勢にあると思いますが、しかし、その中で、福祉優先という以上は、社会保障の五カ年計画はつくる。五カ年計画というのは、言うなれば資源、予算の先取りですから、それを中心に全体を組み立てるという、そういう予算編成や資源分配の仕組みにするというのが福祉優先であり、福祉元年の延長であるというふうに考えるべきです。他のほうは総需要の抑制の観点からチェックするが、これは守っていこう。私ども社会党の主張は、国民所得に対して振替所得、社会保障の経費と大体同じですが、振替所得の比率が、これが一五%、国際並みになっている。中身は日本独特のものをやったらいいじゃないかという議論ですが、逆に言うならば、分母のほうのGNPが少なくなるのですから、社会保障の基本計画は、既定方針どおり進めていくと、八・八%をこえて九%、一〇%になるかもしれない。そうするならば、この機会に福祉優先ということが実現できるのではないかということになる。社会保障の五カ年計画は絶対に、私は、全体のワクががたがたしておるからといって、このことは国民のいまのインフレ下の最低の要求の実現としてきちっと確保すべきである、こう思います。経済企画庁長官と大蔵大臣の御所見をお聞きしておきたいと思います。
  279. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、ただいまの大原さんの御発言と同趣旨のことを申し上げたつもりでおります。
  280. 福田赳夫

    福田国務大臣 福祉諸政策は、わが国では諸外国に比べて立ちおくれておる、こういうことは事実なんで、そういう点に着目しまして、六%、これを八・八%に持っていこう、こういうような見通しになっておるわけです。ぜひなるべくすみやかにそれを実現したい、こういうふうに考えます。
  281. 大原亨

    大原委員 従来の基本計画によりますと、数字もちゃんと基本計画で出しておるわけですが、現在、国民所得に対する振替所得の比率を金額で表現いたしますと、三兆円が、大体五カ年目には、昭和五十二年には十二兆円になる、こういうことをやっておるわけであります。そうして社会保障の五カ年計画の、その中のワク組みをきめておるわけです。これはかなり基本計画では具体的にきめておるというのが特色です。  ですから、私は、社会保障の五カ年計画は早くつくって、これを基礎としながらやらなければいけない。たとえば一方では、池田さんが生きておられたならば、私はそういうことを非常にはっきり言われると思うのだが、つまり、軍事予算というのは経済的には拡大生産に乗らない浪費なんですよ。池田さんはそう言っていた、国会でも。浪費なんですよ。そのほうだけは、四回目の四次防が独走いたしまして世界第七位になる、社会保障の水準は二十何位だというふうなことでは、これは私は日本の外交、内政の一体の原則からいってもおかしいわけです。住宅とか、その他福祉生活に連なる設備投資需要がありますよ。ありますが、それと一緒に、社会保障の問題については、そういう観点で年金や医療やあるいは福祉施設の問題があるわけですが、総合的に改革する水準はまっ先につくっていって実行すべきではないか。総理大臣、いかがですか。
  282. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど大蔵大臣及び経済企画庁長官が述べましたとおり、大体あなたの考え方を、私もそう考えておるのです。ですから、経済社会基本計画が縮小されるというようなことがあっても、ここを好機として社会保障政策というものは伸ばさなければならない。  私はこの間ずっとヨーロッパを回ってまいりましたが、ヨーロッパと日本との間は全然違います。ですから、本会議でも述べましたとおり、ヨーロッパの状態まで直ちに何年間でやるということはできないにしても、社会保障政策を拡大してまいります。その原因は、端的に申し上げますと、向こうのほうでこういうことを言っていました。この社会保障政策というものは、外国にたくさんの植民地等を持っておって、長いこと投資をした投資の果実が、年々ノーマルな状態で入ってくるという状態を前提として社会保障政策をやったのだ、ところが現在そのような状態にないことは言うまでもない、そういう意味で、この社会保障政策を守っていくためにはどうするかというと、結局税と保険料を拡大していく以外にない。それが日本の二四・一%に対比し、ヨーロッパ諸国は五〇%近くなり、北欧三国は五五%になっていることは、数字上明らかでございます。  ですから、そういうような状態を前提として考えるときに、日本がよって立つ前提条件は全く違う。減税をしながら二四・一%というような、少しずつ高福祉高負担ということで負担はふえることになっておっても、五〇%にするということを前提にしておるわけじゃありません。しかし、それは何でカバーできるかというと、あなたはいま、自衛隊の費用は大きい大きいと言いましたけれども、主要工業国と比べて、軍事費との比較は、これは問題にならないほど低いわけでありますから、その部分が社会保障政策というものの拡大に必ずつながっていける、また、つながらなければならぬのだ、そういう基本的な考えを持っておるわけでありますので、これからの長期計画において、社会保障の充実は日本としては十分可能である、意思の問題である、私はそう考えておるのであります。
  283. 大原亨

    大原委員 つまり、社会保障制度審議会で、大河内さんが会長をしておられますが、これが総理府の所属で、総理大臣に提言をしておりますね。これは重要な問題があるのですが、二つの点で指摘をしておるのです。第一は、インフレというものは社会保障そのものを破壊する。それから、社会保障というものは所得の再分配の機能、これを政治を通じて行なうのである、そうして、こういうインフレの時代においては、社会保障の水準を思い切って引き上げ努力を意識的にしないと不公平が拡大をしていく、こういうことで具体的な提言をいたしておるわけです。  ですから、私はこういう観点からいいまして、たとえば、福祉年金は、ことしの春の国会におきまして、これは物価自動スライドには対象になっていないわけですが、五千円になったわけです。来年七千五百円になるというわけです。いま、ことしの十月から五千円で、来年の十月から七千五百円を予算要求しているように思われます。しかし、七千五百円といたしましても、一日に直すと二百円余りであります。三百円にはなりません。つまり、たばこ二つです。福祉年金の対象者は、老齢年金、障害年金、母子年金の福祉年金を入れまして約四百万人をこえると思いますが、そういう大多数の七十歳以上、これに百万人の谷間の老人を加えてまいりますと五百万人くらいになるかもしれません。五百万人ですね。そういたしますと、五百万人にも匹敵する人が、年金以外に何の収入もなしに生活をしているということになります。そういたしますと、一カ月七千五百円、こういう来年の程度では、このような二割近い物価の上昇期においては、私は、事実上比率をこれだけ上げましたというだけでは済まないのじゃないか。  つまり、労働者一般のなには、労働者等の給与においては一時金の問題があるわけです。五カ月以上の一時金の問題もあるわけです。ですから、生活水準の六割を保障するといいましても、やはり福祉年金については少なくとも年内に一万円、来年にかけて一万円、そのくらいはやらなければ、これが年金でございますというふうなことを言うのは、国際的に恥ずかしいのではないか。五百万人が対象になっている。補正予算を是正して、あるいは少なくとも来年にかけて、七千五百円ではなしに一万円ぐらいは出すべきであるというのが、私は国民的なコンセンサスであると思うのです。切実な、いまの物価値上がりで買いだめも何もしてないような人々からいうならば……。これはどういうふうにお考えになりますか。厚生大臣答弁になるとどういう答弁になるか、私は非常に危惧を持つわけですが、まあ厚生大臣から御答弁ください。
  284. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 私どもといたしましては、物価が上がるということを非常に憂えておるわけで、物価を押えるということが、何といってもすべての福祉政策を進める基本だと私は思うのです。  そこで、老齢福祉年金のお話でございますが、御承知のように、本年度三千三百円から五千円、ことしの十月に上げたばかりなんです。十月に上げたばかりです。来年は七千五百円、その次は一万円にいたしましょうということは、総理がすでに正式的発言として申し述べておるわけでございます。  なるほど、来年七千五百円、一万円にしろ、多ければいいということは言えるでございましょう。しかし、老齢福祉年金というものは、いわゆる拠出制の年金ではないのですね。これはもう大原委員のような専門家は十分御承知のとおりなんです。ですから、私は、多いに越したことがないという意見もあるでしょうが、ことし十月五千円になったものを、来年は七千五百円、その次は一万円、こうなっていくのが適当ではないだろうかと考えておるわけでございます。
  285. 大原亨

    大原委員 それは既定の方針であって、実際、絶対額からいいますと、七千五百円という数字は、いますぐ七千五百円になるわけではなしに、三千三百円がこの間五千円になったわけですから、そして来年の十月以降七千五百円になるという予算要求をしているにすぎないわけですから、これは、いまの情勢からいうなれば、春にかけて二割、三割と上がっていくでしょう。いかにもひどいではないか。こういう点について、福祉年金を思い切って上げるということが全体の水準を上げることになるから、福祉年金について、一体、性格を小づかい程度にするのか生活年金にするのかという分かれ道にもなるから、思い切って発想の転換をすべきではないか、こういう議論であります。総理大臣、いかがですか。
  286. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、前から申し上げておりますとおり、七千五百円、高い数字だと思いません。思いませんが、まあ五千円に対して五割上がるわけであります。もう一つは、やはり財源を必要といたします。先ほど申されたとおり、一万円に上げるということになれば、二千五、六百億から三千億という数字も出るわけでございますから、まあ七千五百円に上げるということに対しても相当抵抗があったわけでございますが、しかし、それはもう予約することであってということでありましたが、皆さんの御発言に対応して誠意を示したということでございますので、これは大蔵大臣がどの程度に最終的査定するかは私もまだ聞いておりませんが、まあ現時点において七千五百円、もう一年で一万円ということで御理解を賜わりたい。
  287. 大原亨

    大原委員 このインフレ下におきまして、もう一つは年金の構造ですが、積み立て方式をとるということはこれはひどいことなんです。というのは、昭和八十五年が老齢人口のピークなんですが、この調子では、保険料を上げて、積み立て方式でずっと積み立ててまいりますと、厚生年金だけをとってみましても四百十一兆円になるわけです。積み立て金が四百十一兆円。その積み立てた金は、いまのように一割五分から二割近い減価、貨幣価値の下落が続くならば、全くこれは収奪も収奪、搾取も搾取ということになるわけです。  これは社会党の案は、あるいは野党の案は、三年計画に縮めて、三年を基本にしてこの賦課方式に修正する、皆さんのほうは、修正方式を中心にして少しずつ修正しようというのですが、こういうことになって、昭和八十五年の長期計算を見ると四百十一兆円、その利子を六分といたしまして約二十四兆円です。この利子を給付の大きな財源にしながら、そのときの保険料で年金を給付していこうというのですから、これはいまのインフレのもとにおいては、掛け金を出すということは、ばく大な不公正を拡大することになるわけです。ですから、これは再計算の時期を早めて、当然福祉年金との関係で早めていって、五年以内というふうになっておるわけですが、私は、少なくとも来年にできなければ再来年、昭和四十九年にできなかったら五十年にはやはり改正をして、この仕組みをヨーロッパ並みに改めていくことが必要ではないか、これが一つ。  総理大臣が指摘をされました、税金と保険料を合わせて、つまり実質的な課税でありますが、その保険料の中身を、医療の問題もそうですけれども、事業主負担をふやしていく、労働災害とか交通災害とかみな関係あるわけですから、事業主負担をふやして二対一に変えていきますと、労働者や国民の負担は変わってくるわけですから、中身を変える、税金や保険料の負担を公正にするということを含めまして、やはりもう一歩、いまの保険を、ヨーロッパの実態を考えながら改善をしていくべきではないか。  この二つの点について、十分内閣において議論をして、厚生大臣一人ではできません。官僚ではできません。これは議論をして改革をしてもらいたいと思いますが、この私の意見について、総理大臣はうなずいておられるが、あなたの御所見を簡単に聞きたい。
  288. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 保険による給付内容も検討しなければなりませんし、同時に、保険料の負担の区分に対してもおのずからいろいろな問題が存在するということは、よく理解いたします。それから、それと同じような問題が労働者財産形成にもございます。いまの保険の給付の状態と、負担率をどうするかによっていろいろなものが出てくるわけです。それに財政負担をどう付加するかということによって全く変わってまいります。そういう問題は諸外国にも例がございます。西ドイツなどは明確な参考になっておるわけでございますから、西ドイツのように大きな負担、四八・五%も負担をするようなことをしないで、そうしてほんとうに合理的な給付の内容を上げていくというようなことが一体どうすればできるのかという問題は、これは当然勉強しなければならぬ問題でございまして、一厚生省の問題ではございません。これは財政当局も関係いたしますし、これを運用する資金運用部や、いろいろなものとの関係も全部あるわけであります。ですから、あわせて内閣として朝野の意見を徴しながら勉強してまいりたい、こう思います。
  289. 大原亨

    大原委員 再計算の時期……。
  290. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 再計算の時期を早めたらどうかという御意見でございますが、これは法律では、五年ごとに、こういうことになっておりますが、最近の賃金、物価の上昇、そういうふうな問題の動向を十分見定めて考えていきたいと考えております。従来の例でございますと、五年と書いてありましても、大体四年、三年目でやっておる例もありますから、そういう例もあることでございますから、今後の経済の動向を十分見定めて善処いたしてまいりたい、かように考えております。
  291. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣、このことに関係をいたしまして、財政融資なんですが、国民年金や厚生年金の積み立て金は九兆円以上になっております。そうしてそれを運用いたしますと、資金運用部や簡保の会計がございますが、三十兆円以上の財政融資を運用していると思います。そこで、年金の積み立て方式をとる以上は、たとえば私の提案ですが、一五%物価が上がるとするならば、運用利子は六分七厘五毛ですから、その差額くらいはその会計の中へ入れていきまして減価を防いでいくというふうなことをしなければ、年金というものは成立しないではないか。  もう一つは、労働者がやっている財形貯蓄の問題があるわけです。いま問題となっておりますが、プレミアムをつけるという問題があるのですが、やはりこんなに異常に物価が上昇しているときには、一定の基準を設けて、この財形貯蓄の問題でも少なくともプレミアムをつけなければ、公平の理論とかあるいは再分配の考え方からいいまして、やはり社会保障の基本がこのインフレでずたずたになっているんだ、現実に認めているようになしくずしになっているんだ、こういうことを私は認めるしかないと思います。  その二つの、プレミアムと、あるいは預金に対する利子の問題が議論されましたが、その問題は、いま一応将来の議論としておいておくといたしまして、年金の積み立ての減価分、それは運用利子を考えて、減価分ぐらいは一般財源から振りかえて所得の再配分をするようにしなければいけないのではないか、こう思います。
  292. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま、年金につきましては、かなり高度の一般財源の補給をいたしておるわけであります。いま、この異常な物価高という問題がある、これは何としても早く克服しなければならぬ、これがとにかく何よりも第一の問題だ、この問題をほうっておいてそして年金を幾ら論じてみても、解決にはならぬ、こういうふうに思うのですよ。しかも皆さんも、財政は厳正にしなければならぬ、こうおっしゃっておられる。いまずっと勉強しておりますが、来年度財政、これなんかも、当然増というのは要因が二つ大きなやつがあるのですが、一つは交付税がふえる、一つは社会保障費がふえる、こういう問題があるのです。この二三%というものにつきましては、皆さんも非常に関心を持たれ、何とか縮減せい、こう言っておられる。これを縮減することが、私は、また物価対策上たいへん重要なことだ、こういうふうに考えておる、そのときでございますので、とにかくこの異常な事態を早く乗り切らなければいかぬ、そのさなかにおいて、制度的に大きな改変をする、こういうのもいかがであろうか、こういうふうに考えているのです。しかし、それはそれといたしまして、この異常な物価高が今日現存をしておるわけですから、この被害を受ける方々に対してできるだけの処置をする、これは私はそうしなければならぬことだ、こういうふうに考えているのですが、ここで国庫補助をまたふやすというただいまの年金に対する御提案、これはどうも考えさしていただかなければならぬかな、こういうふうに考えておるのです。  それから、財形貯蓄につきましては、私は非常に関心を持っておるのです。つまり、この財形貯蓄は、勤労者のサラリー天引きで貯蓄をする、それに対する優遇措置、こういうことなんです。そういう意味において、とにかく給料が支払われる、それが一回も回転することなくその天引き額だけは貯蓄をされる、こういうことになるわけですから、これは私は、ただいまの経済情勢から見ましても、たいへんメリットのある制度じゃあるまいか、そういうふうに考えております。ただ、そのプレミアムということになりますと、これまたたいへんな財政負担を要する、こういう問題がありますので、私は、その辺もにらみながら、とつおいつしておるというのが現状でございますが、とにかく十分検討してみる、また、国家財政の中でそれがこなし切れるかどうか、当面の状態から見て妥当であるかどうか、十分検討してみるということにいたしたいと存じます。
  293. 大原亨

    大原委員 これもいままで議論になったのですが、たとえば生活保護にいたしましても、一級地で標準家族で五万円といたしますか。そういたしますと、政府計画では、当初予算では、せいぜい五・五%ぐらい物価が上がるということで、そういう見通しのもとに一四%上げたわけです。そして、異常に物価が上昇いたしましたから、五%十月からやったわけです。しかし、実際には物価は一五%をこえて上がるでしょう。そういう情勢になっているのですから、ぎりぎりのところからいいましても、なおこれは是正をすべきではないのかということが一つです。当然じゃないか。  それからもう一つ、失対の賃金ですが、これは特別公務員なんです。日々雇用なんですけれども、特別公務員なんです。〇・三の問題でそのまま私は議論するつもりはないのですが、日々雇用であっても、政府しかよりどころはないわけですから、しかも年寄りなんですから、私は、そういうぎりぎりのところに対しましては、やはり公平な配慮をするというのが政治ではないかと思うわけですよ。私は、この問題については、厚生大臣労働大臣から簡潔にひとつそれぞれ答弁願いたい。
  294. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 生活保護基準につきましては、本年度一四%、さらに十月から五%、前年度に対しまして一九%上げたわけでございます。現在の事態に対処できると思っておりますが、今後とも私は、物価の動向については慎重に見守ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  295. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 失対は、御承知のとおり特別職の地方公務員でございます。しかしながら、先日の公労委の調停の〇・三というのは、年度末にあげるものを繰り上げてあげたのです。十月に失対の賃金は御承知のとおり上がっております。これをもってしまして、年末の臨時給与というものは相当上がるんじゃなかろうかと思っておりまして、公務員のせんだってのものを適用されるわけにはなっていないことは残念でございます。
  296. 大原亨

    大原委員 もう一点。つまり、労働者には一時金の制度があるのです。しかし、ボーナスも若干実績はあるのですけれども、非常に低いわけです。ですから、ぎりぎりですから、私は十分措置をすべきであるという点を強く要求をいたしておきます。  それから、やはり低所得階層の問題で、総理大臣、あなたの発言にも関係いたしますが、原爆被爆者の援護法です。いま医療法と特別措置法ができているわけですが、しかし、これはやはりこれ以上放置すべきではないのではないか。戦闘員と非戦闘員を分けているわけですけれども、しかし、当時の閣議決定や勅令等から見るならば、それは無理だ。これは法制局も、いままでしばしば答弁いたしました。防空法関係を見たってそうだ。ましてや、戦争中に非戦闘員に対しましてやったことは、国際法上非常に大きな犯罪行為であります。ですから、そういうことで今日の段階で医療法を援護法へということは、これは政治の質の問題として、たとえば引き揚げ者の在外資産の補償をしたわけですから、そういう問題から考えてみても、私はこの問題は、いますぐとは言わないけれども、最も近い機会に政府全体としては踏み切るべきではないか。総理や官房長官や、あるいはその他厚生大臣から、しばしば今日まで発言があったわけですが、政府を代表して御答弁をいただきたいと思います。
  297. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 原爆の被爆者に対しましては、その特殊性にかんがみまして、御承知のような法律ができておりまして、年々医療援護について努力をいたしておるところでございます。  そこで、大原委員その他からお述べになりましたように、援護法、すなわち国家賠償的な考え方に立つ援護法を制定せよという強い要望のあることは、私も十分承知しております。そこで、私どもも何とかこの問題を解決する方法がないだろうかということで長いこと考え、検討を続けてまいりましたが、国家賠償という観点に立った生活援護を行なうということは適当ではない、やはり現在の社会保障の体系の中で原爆被爆者の生活をめんどうを見てあげるということが、いまの時点においては適当である、こういうふうに考えております。しかし、この問題は非常に大事な問題でございますので、私も今後とも検討を続けてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  298. 大原亨

    大原委員 前向きに検討するというふうに考えていいですか。与党の中にもそういう議論があるのです。いまやこの問題は放置できないではないか、そういうことで、私どもは、場合によったら、瀬戸内海の問題じゃないが、議員立法でここでやってもよろしい、こういう考えがあるわけです。そういう考えが与党の中にもあるわけですから、やはりその意見を反映いたしまして、前向きで処理をしてもらいたい。いかがですか。
  299. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 いま直ちに前向きにという回答はできませんが、今後とも私は善意をもって検討を続けてまいりたいと思います。
  300. 大原亨

    大原委員 時間がきましたけれども、次は、医療問題ですが、日本医師会からは四割の医療費値上げの要求があります。それから公私の病院協会からは三割の医療費値上げの要求があるわけです。それから二割という議論もございます。政府管掌健康保険でいった場合に、健康保険の改正でずっと議論いたしましたが、二割、三割、四割というふうに医療費が上がりますと、健康保険の中で保険料を上げました、あるいは弾力条項を設けました、そういうものにどのようにはね返ってくるのかということをお答えいただきたい。
  301. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 長いこと中断いたしておりました中医協も、先般、医師会長が圓城寺会長不信任ということを撤回いたしまして正常化することになったわけでございます。  そうした事態を踏まえて、一昨々日でございますか、現下の事態に対処する診療報酬の改定について厚生大臣か諮問をいたしたわけでございまして、今後、その審議を待ってその幅がきまってくるわけでございます。各方面からいろんな意見の出ておりますことは十分承知いたしておりますが、慎重な審議の上で決定すべきものでございますので、いまここで何%が適当であるかということを私は言う立場にもありませんし、その段階でもない、かように考えておりますが、いずれにいたしましても、今回の診療報酬の改定は、二年分の人事院勧告に相当するものでございますから、ある程度の適正な診療報酬に改定されると思います。その結果、私は、行政府の長として、法律で定められた例の弾力条項と申しますか、調整規定と申しますか、その弾力・調整の規定は、明年度において発動することになるのではないだろうか、かように考え、検討を続けてまいりたいと思います。しかし、どの程度上がるかということがきまりませんと、どういうことになるか、いまの段階では明確に申し上げることはできないわけでございます。
  302. 大原亨

    大原委員 この医療費の問題については、技術尊重の原則の上に立って診療報酬を改定すべきである。特に病院等は非常に困っておる。  それから、議論になりましたのは薬の問題であります。総医療費の中で四三%も薬代が占めているということは、これはお医者さんや、あるいは医薬品のメーカーの中で、悪貨が良貨を駆逐するというグレシャムの法則、薬を売れば売るほどもうかるという、そういうシステムになっておるところが問題ではないかと、しばしば議論になっておるわけであります。  したがいまして、私は、ここで厚生大臣に、あるいは総理大臣お答えをいただきたい点は、中医協の問題は、これは昭和三十六年に、医師会あるいは国会の議論を聞いて四者構成を三者構成にいたしまして、公益委員は国会承認人事にいたしたわけです。一つは、その会長をボイコットしたり、あるいは中医協を簡単に改革するというふうなことについては、一体どういうことになっておるのかということを、国会としては聞きたいわけです。  もう一つは、その際に、支払い側あるいは被保険者の意見を聞かないで――保険制度をとっておる今日においては、保険財政関係のある問題につきまして、これは一体だれが、どのようにきめるのかという問題については、国民的な立場で納得できるようにすることが、診療側を含めて全部の利益にかなっておるものであるし、私はそのことが民主主義の原則であるというふうに思うが、この点についていかにお考えになっておるか。
  303. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 中医協は、今日まで、二年に一回とか三年に一回、いろいろ混乱が起こってまいっております。支払い側、医療担当者側、それぞれ利害が対立するということもありましょうが、いろいろ感情的な対立まで出ているという面もあるわけでございまして、こうした姿において医療費をきめるということが、はたして将来の問題としていかがなものであろうか。これは、もうすべての人々が何とかならぬだろうかなという意見を持っておると思うのです。その事態を踏まえて、過去のいろいろなそういういきさつを反省して、何か新しい別な仕組みを考える必要があるのではないか、診療報酬という非常に大事な決定方式について、新たなる構想で考えるべきではないかということが打ち出されております。こうした考え方は、私は多くの方の一致した意見だと思うのです。  しかし、さればといって、それじゃどういうふうに具体的な仕組みをつくったがいいかどうかということになりますと、まだ私も十分な成案を得ておりません。しかし、国民生活に非常に密着した問題でございますから、これを決定する機構につきましては、広く関係方面の意見を聴取して具体案を練るべきだと思っております。現在のところ、具体的な構想は持っていないことを申し上げておきます。
  304. 大原亨

    大原委員 医療問題について、たとえば保険あって医療なし――総理大臣、埼玉県が全国で医者の比率が一番低いのですよ。つまり、人口急増地帯です。過疎地帯の無医地区が三千もあるけれども、人口急増地帯、過密地帯においても、お医者さんがいないというところがいっぱいあるわけです。夜間診療、救急医療に困るわけです。  保険あって医療なしという問題の一つは、教育の問題があるけれども、やはり薬の問題がある。というのは、スモン病というのは、キノホルムという整腸剤、下痢どめを連続過剰投与したときに起きるのです。薬がスモン病というふうな難病、奇病を起こしている。サリドマイドもそうです。ですから、薬の管理体制というものをきちっとするということは、当然国民の側から大切なことです。それと、技術を尊重するということです。この二つのことを改革で実現をする。改革ならば、年金や医療や施設を含めて総合的に出したらいいじゃないか、これが五カ年計画の主張なんです。  そのことと、もう一つの問題は、看護婦さんが足りない。最後に人事院総裁、たとえば教職員については、人材確保法案で一〇%をやるということは合意ができました。看護婦さんについても、そういうことを議論をしてやりますということになっているわけです。一月からやはりその程度のことは――実際に看護婦さんがいない、いるけれども顕在化しない、あらわれてこない、こういうことで議論を続けてきたわけですから、医療改革の問題の一つといたしまして、たくさん問題がありますが、具体的な問題で、最後に、二つの点について、厚生大臣と総裁の御答弁をいただきたい。
  305. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答え申し上げますが、診療報酬の改定は、現在中医協に諮問をいたしました段階でございますから、私がとやかく申し上げることは差し控えなければならぬと思いますが、私は、個人的に大臣として、いまお述べになりましたような点につきましては、まことに同感でございます。技術料は高く評価し――薬か総医療費の中の四〇%を占める、どうも私は不自然なような感じがいたすわけでございます。しかし、それを私がいまとやかく申し上げますと、中医協の審議にとやかく介入したではないかなんということを言われますと困りますので、私の個人的な見解と申して申し上げますれば、大原委員と全く同感でございます。
  306. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。  看護婦の待遇改善につきましては、ただいまのおことばにもあったと思いますが、ことしの八月の勧告の際に、私どもの報告書において指摘をしております。したがいまして、いまお話しの人材確保の法案、これが成立いたしまして、教員の方々に対する給与の改善ができますと、私どもとしては、それに引き続いて看護婦さんのほうにひとつ改善を加えていきたいということで、ただいまもすでに鋭意研究を進めております。
  307. 大原亨

    大原委員 以上で、時間が参りましたから、私の質問を一応終わりたいと思います。  いままで、総需要の抑制とか、その中で何を選択するか、あるいは福祉優先とか、大型インフレ予算とか金融とかいうすべての問題を議論いたしてまいりましたが、議論としてはかなり議論が深まってきたといいながら、それを裏づける政策は、具体的な政策がほとんどない、こう言ってもよろしいと思うのです。私は、いまの事態をほんとうに真剣に総理以下が考えておられるかどうか、まことにその点については残念に思うわけであります。いまの事態というものは、民主主義でいうならば、自由、自由だけでなしに、自由と一緒に――自由も大切、平等と正義というもの、三つがあるわけですよ。不自由であり、不平等であり、不正義である、いまの実態は。これはまさに民主主義の政治の危機である。金に対する信頼がないということは、政治に対する信頼がないということである。政治不信である。そういうことからいいまして、今日までの議論は、まことに私どもといたしましては不満足であり、残念でありますが、いままで出した問題等を中心に、これからもこの議論をさらに発展させていきながら、政治責任を明確にしていくようにわれわれとしても努力をいたしたいと思います。  以上をもちまして私の質問を終わります。
  308. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十八年度補正予算三葉に対する質疑は全部終了いたしました。     ―――――――――――――
  309. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 辻原弘市君外二十名より、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる昭和四十八年度補正予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。
  310. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、提出者の趣旨弁明を許します。松浦利尚君。
  311. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、提案者を代表して、ただいま議題とされました日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の四党共同提案にかかる昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十八年度特別会計補正予算(特第l号)及び昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につきまして、その提案の趣旨を簡潔に御説明申し上げたいと存じます。  この動議は、主文にございますとおり、昭和四十八年度補正予算(第1号)、(特第1号)及び(機第1号)については、政府はこれを撤回し、動議に明記されております諸項目に沿って、すみやかに組みかえをなし、再提出することを要求するものであります。  今回の補正予算は、申すまでもなく、政府経済政策が完全に失敗し、四十八年度予算の前提が大きくくずれ、異常な諸物価の高騰とインフレーションの進行か、いま国民生活に重大な影響を及ぼすに至っているという現実に立って編成せざるを得なくなったものであります。このような事態を招いた政府の失政の責任はきわめて重大であり、同時に、すみやかに緊急措置を講じなければならないのであります。  しかるに、今回の補正予算は、こうした政府の失政に対するきびしい反省に欠け、経済財政政策転換への姿勢が見られないばかりか、いまなおインフレではないと言い張り、かえって所得政策の導入の方向をほのめかすに至っていることは、まことに遺憾であり、国民期待を裏切るものといわなければなりません。  したがって、昭和四十八年度補正予算は、当然に激化するインフレ、物価高に対処し、国民生活を守ることを基本として編成し直すべきであり、特に、勤労諸階層及び低所得層のインフレ被害の救済及びインフレ刺激的な経費の削減を重点とした組みかえを行ない、補正予算の規模は、できるだけ圧縮すべきであります。  以上の基本姿勢に立って、最小限度、次の諸項目を組み込むことを要求するものであります。  第一は、今日の異常な物価上昇のもとで、給付の実質的な削減を強制されている低所得層のインフレ被害を緊急に救済するため、生活保護基準を二〇%引き上げ、失業対策事業費や老人、児童等保護費についても、これに準じて引き上げをはかることであります。  また、いまなお極端に低い水準のまま据え置かれている老齢福祉年金と老齢特別給付金を、十月以降月額一万円に引き上げ、障害福祉年金、母子年金等も、これに準じて引き上げる必要があります。  これらを実施するため、政府補正に上積みして九百二十一億円の追加支出を行なうことであります。  その第二は、恒常的な物価上昇のもとで、勤労所得者はいやおうなしに実質増税をしいられ、その結果、税の自然増収は巨額にのぼっております。この際、勤労者に対する税負担の調整措置を緊急に講ずる必要があり、所得税は、四人家族年収百五十万円まで無税とすることを軸として年内減税を行ない、税の取り過ぎ分を返すべきであります。そのため、簡便でかつ公平な方法として、昭和四十八年度分の所得税額から頭割り三万円、ただし所得税額が三万円未満の場合は、その全額の税額控除を行なうことであります。これに必要な減税財源は五千二百五十億円であります。  他方、好景気と物価上昇のもとで巨大な利益をあげている資本金十億円以上の大企業に対しては、臨時法人利得税を課し、増税することが緊要であります。これにより大企業の実効法人税率は、ほぼ四〇%の水準まで引き上げられ、一千八百二十四億円の増収となり、所得税減税と差し引きして三千四百二十六億円の減収となることになります。  第三に、最近になって政府は、総需要抑制を通じて景気を鎮静させ、物価安定をはかるという安易な見通しに立って、金融引き締め政策と公共事業の繰り延べを行なっているのでありますが、これでは不十分であります。  公共事業費については、高速道路、鉄道新幹線、港湾、空港などの大企業、産業基盤整備の事業費を削減するとともに、四次防計画に基づく防衛費のうち、三千六百五十八億円にのぼる兵器装備費を中心として削減する必要があります。さらに官庁営繕費やその他事項経費を圧縮、削減し、合わせて四千八百五十八億円の圧縮、削減を行なうことであります。  第四に、建築資材等の高騰や単価アップにより、地方財政の超過負担が増大し、適切な事業の進行が完全に阻害されております。  地方財政の超過負担の解消を目ざし、学校建築、厚生福祉施設、生活環境施設等の単価改定を行なうための経費を一千七十三億円増額することであります。  第五に、公務員労働者に対し、さしあたって給与の〇・三カ月分をインフレ手当として支給するため、五百三十四億円を計上することにしております。  第六に、所得税減税に伴い、その三二%に当たる一千九十六億円の地方交付税の減額となるのでありますが、これを補てんするため、地方交付税のうち、四十九年度以降に年次的に返済することとなっていた分の四十八年度における繰り上げ償還を、この際は取りやめることとし、また、たな上げ予定の土地開発基金を縮小して、事実上地方交付税の減額にならないよう措置しております。  第七に、現在行なっている金融引き締めのしわ寄せを受けている中小企業の資金対策、年末融資を強化し、政府三公庫の資金ワクの拡大等、資金対策を拡充する必要があります。  以上により、この組みかえ補正による歳出、歳入総額の増加は六千四百五十九億円であり、政府補正予算に対し三千四百二十六億円の減額となり、政府補正総額の増加九千八百八十五億円に対し、約三五%の規模減となるのであります。  以上、四党組みかえ動議の要点のみ御説明申し上げましたが、これらは、国民にとって最小限度の緊急要求であります。どうか委員各位におかれましては、国民の緊急要求の重大性を御認識賜わり、動議に満腔の御賛同あらんことをお願い申し上げまして、趣旨説明を終わります。(拍手)
  312. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて趣旨弁明は終わりました。     ―――――――――――――
  313. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより討論に入ります。  昭和四十八年度補正予算三案及び辻原弘市君外二十名提出の撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。井原岸高君。
  314. 井原岸高

    ○井原委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)外二案に対し賛成、日本社会党・日本共産党・革新共同、公明党、民社党の補正予算編成替えを求めるの動議に反対の討論を行ないます。  最近の国内経済情勢を見るに、昨年下期からの卸売り物価の高騰並びに年初来からの消費者物価の異常高騰が続いております。  この原因は、景気上昇に伴う個人消費等の需要増大、海外の農産物の不作と世界景気の拡大によるインフレの影響、国際収支の黒字基調による過剰流動性を背景とした投機が一部商品の価格を高騰させたこと、及びコストアップ分の製品への転嫁等が複合的にからみ合って作用する過程において、国民にインフレ心理をもたらした結果であるというのが大方の見解であります。  これに対し、政府は、数次にわたる公定歩合引き上げ、公共事業の繰り延べ等、総需要抑制のための財政金融政策を進めるとともに、特定品目に対する投機的取引の抑制について立法措置を講じてきたのであります。  これら諸施策の効果は次第に浸透しつつあるやさきに、中東戦争による石油危機わが国にも及んで、ために諸物価の高騰を一段と強めることとなり、ここに資源問題の重大さを認識させられたのが今日の現状であります。  したがって、政府は、国民生活の安定と石油危機に関連する規制措置を今国会に提案し、国民の負託にこたえることとしております。  かくのごとき経済情勢を踏まえ、今回の補正予算経済に与える影響を最小限にとどめ、特に緊要にしてやむを得ない事項に限って配慮しつつ編成されたことは、まことに適切なることと考えるものであります。  次に、政府原案の主要な点について簡単に私見を述べることといたします。  第一点は、国家公務員の給与改善に必要な経費についてであります。  この経費は、民間給与との格差是正を目的とするものであり、人事院の勧告による一五・三九%アップの完全実施を行なうものであります。  行政に対する国民期待は今日ほど切実なものはありません。したがって、行政の能率向上につとめ、国民の要望にこたえることが肝要であると考えます。第二点は、食糧管理特別会計への繰り入れの経費についてであります。  この経費は、本年八月の生産者米価の一六・一%引き上げと麦類の国際価格の高騰等に伴い、当初予算より大幅な赤字が生じたため、一般会計から同特別会計に繰り入れを行なう経費でありますが、特に麦類の国際価格は、小麦について見ると、予定買い入れ価格三万二千六百八十円が買い入れ実績四万五千六百三十円と約四〇%も高騰し、自給率八%という立場にあるわが国にとって、高額の支払いが生ずることもいたしかたのないことと考えるものであります。  第三点は、保護基準等の経費についてであります。  これは、最近の物価及び消費支出の動向にかんがみ、生活保護費、失業対策事業費の基準をそれぞれ五%引き上げるとともに、児童保護費などの単価を引き上げるために必要な経費であり、福祉面における配慮を行なったことは、まことに適切な措置であると考えるものであります。  第四点は、公債の減額についてであります。  今回の措置により、公債依存度は一六・四%から補正後二・九%となるのでありますが、節度ある財政運営に徹する点からも、当を得たものとして賛意を表するものであります。  第五点は、地方交付税交付金についてであります。  この経費の相当部分に当たる千九百九十六億円は、国からの借り入れ金の返還に充当することとしており、この際、国において公債金五千三百億円を減ずることとしている点からも、地方公共団体が景気に対する刺激的要因となることを極力避けるための方針協力願うことは、適切妥当なものとして賛意を表するものであります。  石油危機を含むわが国経済情勢はまことにきびしいものがあり、これは長期的に見て供給不足時代に入ったことを意味し、従来の高度成長から安定的秩序形成への政策転換を迫るものと考えられるのであります。  石油危機等に対する緊急措置は、今国会で満了することとなっておりますが、その他の諸施策は来たるべき四十九年度予算期待されるものであります。政府においては、慎重にして十分なる検討をなされ、国民生活安定のために一そう努力されることを希望いたします。  最後に、四党共同提案による補正予算の組みかえ動機についてであります。  この動議に盛られている事項、すなわち、生活保護基準及び老齢福祉年金等の引き上げ、文教、社会福祉施設等の単価改定については、すでに政府において、財政の許す範囲で措置をとっております。  また、公共事業費につきましてはすでに繰り延べを実施し、中小企業への資金対策、公務員への手当についても、政府がいずれもその措置を考慮しているところであります。  さらに、年内減税については、総需要抑制の見地から、今回は見送ることとし、四十九年度の検討課題としております。  しかして、これらの問題はあくまでも経済の推移、国庫の収支状況とにらみ合わせて決定さるべきものでありまして、唐突、性急にきめるべきものではありません。  以上をもって、私は政府原案に賛成し、四党提出の動議に反対の討論を終わります。(拍手)
  315. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 阿部昭吾君。
  316. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私は、日本社会党を代表し、昭和四十八年度補正予算政府三案に反対し、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党四党の共同提案の組みかえ動議に賛成の討論を行ないたいと思います。  まず、討論に入る前に、憲法第六十六条二項の文民に関するわが党楢崎委員の質問に対して出された政府の確定解釈について、その取り扱いに対するわが党の考え方を明らかにしておきたいと思います。  憲法第六十六条二項の文民に関して出された今回の政府統一解釈については、なおいろいろの疑義があり、今後さらに論議を深め、国会としても解釈を確定すべきである、このことを明らかにしておきたいと思います。  私は、今日のわが国経済情勢に対する政府の認識とその対策における根本的欠陥を指摘しなければなりません。わが党議員が政府のインフレ定義を求めたのに、言を弄して明快な答弁を避けたことは、まことに許しがたい、また政治責任を放棄した態度といわなければなりません。それだけでなく、わが国経済をインフレと認めるならば、所得政策の導入に踏み切らねばならない、こういった、どうかつするような態度は、もはや田中内閣が最高の行政責任者としての資格を失ったものといわなければなりません。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕  卸物価が前年比二〇%以上も上昇し、消費者物価も十数%、国民の生活実態では三〇%以上も、四〇%も上がっている、まさに典型的な悪性インフレの症状であります。今日なおインフレではないと強弁しているのは田中総理ただ一人であり、田中内閣経済運営、財政金融政策を信じている国民は刻々にその数を減じているのであります。  今日のインフレ、物価高の原因の一つは、昨年末まで政府が認めてきた十三件の不況カルテルにあることは明らかであります。政府が不況カルテルを認めた関係企業は、不況の名において価格つり上げを行ない、四十六年三月期決算は爆発的な増収、増益を記録したのみならず、不況カルテルの認可を受けた関係企業が、ばく大な政治献金を行なっているというのであります。ここに国民の政治不信の根源があります。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  次に、本補正予算に反対し、組みかえ動議賛成の理由を述べたいと思います。  第一に、今回の補正予算は二つの大きな意義を持つものでなければなりません。  一つは、激化、高進しているインフレ物価高に苦しんでいる国民各階層に対する緊急な救済対策を盛り込んだものでなければなりません。  いま一つは、四十八年度当初の大型予算編成日本列島改造路線に立つ予算編成の失敗をきびしく反省をして、インフレ促進型から国民生活優先の財政に改めることであります。  当初予算編成にあたっての三つの課題はいずれも達成できず、言うならばトリレンマ予算が全く破綻したのであります。今回の政府案は、この国民のだれしも認める事実に目をふさいだものであることを強調したいのであります。われわれが言う二つの大きな方針が欠けている、これが、基本的にわれわれが今回の補正予算政府三案に対する反対の理由であります。  したがって、第二には、インフレ救済のための施策が不十分なことであります。  生活保護者、年金生活者、また老人ホーム、養護施設等の各種社会福祉施設で生活をしている人々は、この物価高で食費を切り下げざるを得ないといった窮状におちいっているのであります。  たとえば生活扶助を見ても、当初予算一四%、補正で五%の引き上げが行なわれるというのでありますが、これらの人々の生活物資の値上がりは、数十%から二倍、三倍にも達しているのであります。たばこ年金と酷評された福祉年金も、この十月から五千円支給になっておりますが、その実質価値は昨年水準と変わらないといえるのであります。  社会福祉施設は、資材の暴騰で修理も建築も不能におちいり、いわゆる石油危機は暖房時間の短縮を余儀なくさせておるのであります。インフレの被害を集中的にこうむるこれらわが国社会保障の低水準に苦しむ人々に対する配慮が全く乏しいのであります。これが今回の政府案であります。  第三には、勤労者に対する救済策が欠けていることであります。  春闘で獲得をした賃上げも、いまや実質ゼロあるいは以下に落ち込んでおるのであります。その上、名目所得の上昇は、低所得層に重い税負担を課する現行税制によって、所得税負担は高まっているという二重の打撃を受けているのであります。だからこそ、さしあたって低額の所得税納税者を中心にした年内減税を実施すべし、これがわれわれの主張であります。年内減税回避の口実にされている二兆円減税、その内容も次第に後退をしてきている。年内減税のための財源も、所得税の自然増加分で十分まかない得るものであり、来年度に引き延ばす理由は全く存在をしないのであります。減税がおくれればおくれるほど勤労者への収奪は高まるのであり、政府の政策は容認することができません。  第四に、企業倒産の増加にあらわれてきているように、中小零細企業の経営困難への対策が全く不十分であるという点であります。高度成長過程で示されたように、好況は一番おそく、不況は一番早くといった影響を受けるのが中小零細企業であり、特にこの年末には倒産が続出する、こう見られているのであります。いわゆる二重構造の底辺部分に置かれている中小零細企業、また、いまや全く決定的な崩壊の状況に打ちのめされておる農林漁業に対する政策転換のための予算が、全く今回この補正予算原案の中に考えられておらないという点であります。  第五には、地方の超過負担解消対策がなされていない。  福祉財政と地方財政の充実とは一体をなすものであるにもかかわらず、保育所建設、学校、下水道建設等々の生活関連、環境整備関係施設に対する政府の補助事業は、地方への押しつけ、結局は国民への負担増加事業となっているのであります。保育所の超過負担訴訟は、まことに恥ずべき政府行政に対する大きな痛棒であります。金は出さないが口は出すといった現状を改めなければなりません。加えて、総需要抑制の一環として、保育所建設までも中断させるといった後退的指導は、直ちにやめるべきであります。政府には、地方財政の充実の内容も、またその考えも全く見られないのであります。  最後に、インフレ激化のおもな要因は、日本列島改造路線推進の大型公共事業の遂行であります。  物価抑制策としての公共事業の繰り延べをしておるのでありますが、削減するのが今日最も重要な政策であります。道路事業をはじめ港湾、高速鉄道、本四架橋などの大型プロジェクト計画根本的な再検討を行なうのが今日必要な政策であります。  以上、数点にわたって政府案に対する反対理由を述べたのでありますが、政府がこの補正予算を契機に本格的なインフレ対策国民生活優先の経済運営に前向きに前進する意思があるならば、四党共同の組みかえ動議に謙虚に耳をかすことが、真に国民のための予算編成経済運営になると信ずるものであります。  この点を指摘して、四党共同の組みかえ動議に対する委員各位の御賛成を強くお願いし、私の討論を終わります。(拍手)
  317. 荒舩清十郎

  318. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出補正予算三案に反対し、野党四党共同提出の政府案を撤回し編成替えを求める動議に心から賛成するものであります。  現在、石油危機を契機として、わが国経済がかつてない深刻な情勢におちいっている事態のもとで、悪性インフレの高進と大企業による生活物資の買い占め売り惜しみの横行によって、諸物価の急騰は際限もなく続き、国民は言いようのない生活不安にさいなまれております。  こうした事態が、歴代自民党政府の対米追随と大資本奉仕の経済財政政策によって引き起こされたものであることは明らかであり、政府の責任はまことに重大といわなければなりません。  いま国民が政治に最も強く望んでいることは、この異常な物価高とインフレから国民生活を防衛する緊急対策を大胆に打ち出すことにほかなりません。ところが、政府が提出した今回の補正予算を見ますと、依然として大企業、大資本の要求に重点を置き、国民の切実な要求には冷たく背を向けた、全く反国民的な内容となっていることであります。  以下、私は二、三の点について具体的にその理由を指摘したいと思います。  第一に、政府は総需要抑制ということを盛んに強調していますが、高速道路や港湾など大企業のための産業基盤整備関係公共事業費は依然として留保したままであり、赤字公債も一兆八千億円にものぼる膨大な額を残し、総額一兆円になんなんとする大型補正となっていることであります。これでは土地投機や資材不足のあらしを静めることは不可能であるばかりか、自治体の住宅や学校建設に大きな支障を来たすことは目に見えております。  第二に、異常な物価高のもとでその経営と生活が苦しくなっている社会福祉施設や生活保護家庭に対し、何ら見るべき有効な措置がとられていない点であります。  政府は、本案において生活保護費の五%引き上げなどわずかの手だてを打ってはおりますが、もともと低水準に押えられていたこととあわせまして、一四%をこえる物価の急騰が進行していることを考えるならば、むしろ水準の低下を招くものでしかありません。野党四党の動議にもあるように、いまわずか九百二十一億円をつぎ込むだけで、生活保護者、お年寄りや子供、失対労働者や身障者の方にささやかなりとも希望の光を与えることができるのであります。社会保障制度審議会の指摘をまつまでもなく、社会的に弱い立場にある人々を援助することは、現在の最重要課題であります。  また、今日の経済情勢考えるならば、中小企業対策や失業対策なども十分な配慮が必要でありますが、本補正予算では、中小企業対策として、中小企業金融公庫など政府三公庫に対して財投から若干の資金援助措置をとっているにすぎず、何ら積極的なものがありません。  第三に、本補正予算では、危機におちいった地方財政を一そう窮地に追いやるものとなっていることであります。  建設資材の高騰と不足が進んでいるもとで、国民の要望にもかかわらず、福祉施設や学校、住宅など地方の公共事業は、停止や繰り延べが続出し、きわめて深刻な事態に立ち至っております。ところが、政府は、本補正予算においても、当然地方自治体に配分されるべき地方交付税において、四十九年度以降の返済金の繰り上げ償還を強要しておりますが、これは地方財政を一そう困難におとしいれ、住民の切実な要求をますます実現不可能にするものであります。  第四番目には、大企業に対する不要不急の支出を残しておる問題であります。  国民生活の防衛に要する諸経費に関しては、以上述べたようにきわめて不十分で、無反省、無責任な態度をとりながら、大企業に対しては、ばく大な公共事業費の留保に加えて、新たに日本研究促進特別支出金や電算機産業振興対策費の追加支出を組んでいることであります。こうした経費は明らかに不必要であり、総需要の抑制というならば、まずこうした不要不急の費用こそ削除すべきものであります。  最後に、私は、勤労者に対する大幅な年内減税を行なうとともに、巨額の利潤をかかえ込んでいる資本金十億円以上の大企業に対する臨時法人利得税を新たに課することを強く主張するものであります。これは、非常事態ともいえる物価高、インフレ対策をとる上でも、手元資金をふやして投機に向かおうとする大企業の手を押える上でも、また国民生活を最優先する予算財源を確保する上でも、必要不可欠の施策であります。  以上、私は、政府案に対する反対理由を簡単に述べましたが、野党四党共同の動議は、なお不十分なところもありますが、国民生活防衛の上でさしあたって最小限必要な措置であります。  同僚諸君の全面的な御賛同を期待して、私の討論を終わります。(拍手)
  319. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 岡本富夫君。
  320. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十八年度一般会計補正予算及び昭和四十八年度政府関係機関補正予算について、政府案に反対し、野党四党で提案した政府案を撤回し、編成替えを求める動議に対し、賛成の討論を行なうものであります。  当面しているインフレ、物価高、石油危機は、政府・自民党のとり続けてきた大企業、大資本優先の高度経済成長政策と、対米追随の閉鎖的な外交によってもたらされたことは明らかであります。  しかしながら、政府はその責任をあいまいにし、外的要因のみを強調しております。今回の補正予算も、これまでの政府の失政を何ら反省することなく、いたずらにこれまでの政策を踏襲しているのであります。事態は深刻であります。  われわれは、逼迫した国民生活を救済するためには、まず政府の失政の責任を明確にすることから始めるべきだと思うのであります。  以下、政府案に反対するおもな理由を申し上げます。  第一に、このインフレ、物価高で最も被害をこうむる老人、母子家庭、生活保護世帯、福祉施設利用者及び身体障害者等に対する配慮が、何らなされていないことであります。  総理の諮問機関である社会保障制度審議会が、インフレ下の社会保障の危機回避のための建議をしておりますが、これすら、いれようとしていないのであります。  生活扶助基準を五%程度引き上げて、妥当だと強弁する田中内閣の政治感覚、国民生活の実態を無視した姿勢は、きわめて遺憾であり、許されるものではありません。  第二には、年内減税を見送ったことであります。  政府は、減税が景気を刺激するからといっておりますが、今日のインフレを招いた責任はひとえに政府にあるはずであります。  政府が、国民生活を守るというならば、せめて物価調整のための減税は実現すべきであったはずであります。  第三には、国民生活に密着した地方自治体の財政の窮状に対し、きわめて冷淡であるということであります。  現在、地方自治体は、インフレの高進による資材の値上がりで、超過負担をさらに重くしいられ、病院、学校、保育所等、住民生活に必要不可欠の施設までも、工事の延期を余儀なくされているのが実情であります。政府は何らこの超過負担の解消をはかろうとしていないのであります。さらに、本補正予算案におきまして、地方自治体の交付税特別会計から借り入れ分を繰り上げ償還する措置をとったことは、納得できないのであります。  第四には、景気の引き締めやインフレ、物不足によって経営を圧迫され続けている中小企業に対し、何らの補正措置もとっていないことであります。  政府のように、単に財政融資を拡大すればよいというものではありません。財政融資の拡大は当然のこととし、これに加えて、一般会計からの利子補給による金利の引き下げ、信用補完制度の充実によって、民間金融機関からの融資を円滑化するほか、中小企業減税、中小企業の指導育成の充実をしなければならないのであります。  第五には、政府はインフレ、高物価を押えるためには総需要抑制が必要だとしながらも政府みずからの行なう高速道路、鉄道新幹線、空港などの大企業、産業基盤整備事業費あるいは防衛費を十分に削減していないことであります。  当面する事態が、民間の設備投資、それに政府の資本支出の急激な膨張によってもたらされている事実から見ても、最優先してこれらの事業の削減が取り上げられてしかるべきなのであります。  以上、反対する各点を述べてまいりましたが、私たちは、この政府補正予算案に対し、四野党で共同して組みかえ動議を提出いたしました。政府が真に国民生活を守るための熱意があるならば、当然これに応ずるべきだと思うのであります。  以上で、政府案に反対し、四野党共同の組みかえ動議に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  321. 荒舩清十郎

  322. 安里積千代

    ○安里委員 私は、民社党を代表いたしまして、政府提案の昭和四十八年度三補正予算案に一括して反対し、野党四党の共同提案にかかりまする同三補正案の組みかえを求める動議に賛成の討論を行ないます。  今日、わが国経済最大のエネルギー源でありまする石油供給が、アラブ諸国によって削減されるという、かつて経験したことのない異常事態を迎えております。石油削減に伴う物不足経済到来の懸念や、このような困難時を利用し、買い占め売り惜しみ、系列化を促進して利益を追求する悪徳業者の横行などから、国民の生活は根本から脅かされ、国民は極度の精神的不安の状況のもとに置かれております。  また、心身障害者、老人、生活保護世帯、勤勉な勤労者及び中小企業者など、このような異常事態に対処する力を持たない人々は、救済のないままに犠牲をしいられている現状であります。したがいまして、事態をこのまま放置しますれば、国民はますます不安におののき、社会暴動さえ起きかねないでありましょう。  このような状況の中で、政治が対処すべき最も重要なことは、石油ショックに伴う社会的混乱を収拾し、異常な物価高を押えるための確固たる方針国民に明示して、国民生活の安定を保障し、その不安を除去することであります。したがって、今回の補正予算案は、激化するインフレ、物価高に対処し、国民生活を守ることを基本として編成することが絶対的な要請であります。  しかるに、政府補正予算案は、以下に述べまする理由から、この認識に欠け、従来の高度経済成長政策に根本的なメスを加えることを忘れているといっても過言ではありません。  その第一の理由は、当初予算編成方針に沿うものであり、特に、公共事業費の大幅な削減を中心として、政府みずからが総需要の抑制に対する明確な姿勢を欠いていることであります。  少なくともこの際は、四野党組みかえの動議のように、補正予算の規模は三五%削減し、内容において福祉対策費の大幅増加、地方公共団体の超過負担の解消、年内所得減税を断行し、歳入においては、かつて見ない利益を計上している資本金十億円以上の大企業に対しては、臨時法人利得税を課するなど、国民生活、国民経済の現状に照らして補正予算案を編成すべきであります。  第二の反対理由は、異常な物価高、悪性インフレの中で一方的に犠牲をしいられている生活保護世帯、老人、心身障害者、中小企業者等に対する救済対策がきわめて貧弱であるということであります。  社会的に弱い立場に立たされているこれらの人々をインフレから救済することこそ、政府が果たすべき重大使命であることにかんがみ、生活保護基準の二〇%引き上げ、これに準じた失対事業、老人、児童等保護費の充実、また老齢福祉年金と老齢特別給付金を月額一万円に引き上げ、障害年金、母子年金等もこれに準じて引き上げるよう本補正予算案を組みかえるべきであります。  第三の反対理由は、公共事業費の中で、高速道路、鉄道新幹線、港湾、空港整備費など、大型な財政支出を削減すべきであるにもかかわらず、政府案ではそれをわずか八百七十一億円にとどめていることであります。この政府案の背景にあるものは、破綻した高度成長政策を財政主導に切りかえ、その継続を主眼としているといわなければなりません。  言うまでもなく、資源を持たないわが国が、狭い国土で多量の資源を消費し、高度成長を続けることはもともと無理な問題であり、すでに公害、自然環境の破壊など、国民の生活と生命を脅かすことが事実として展開されておるのみならず、今回の石油供給削減措置は、世界的にも重要な基礎資源の不均衡配分の是正を求めていると受けとめるべきであります。  このことからいたしましても、わが国経済構造を、高度成長から福祉向上型に転換せしめることこそ急務といわなければなりません。  この際、私は政府に猛省を促しつつ、政府は本補正予算案を撤回し、四野党共同提案になる予算組みかえ動議に基づき再提出されることを強く要求いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  323. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、辻原弘市君外二十名提出の昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  324. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、辻原弘市君外二十名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十八年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十八年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和四十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  325. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立多数。よって、昭和四十八年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  326. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  327. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、一言ごあいさつ申し上げます。  補正予算三案の審査をここに終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力によるものでありまして、心から感謝を申し上げ、連日審査に御精励されました各位の御労苦に対し深く敬意を表しまして、ごあいさつといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十分散会