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1974-01-24 第72回国会 衆議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年一月二十四日(木曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第九号   昭和四十九年一月二十四日    午後二時開議   一 国務大臣演説に対する質疑                 (前会の続)     …………………………………  第一 学校教育水準維持向上のための義務     教育学校教育職員人材確保に関す     る特別措置法案(第七十一回国会内閣     提出)     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)  細谷治嘉君の故議員楢橋渡君に対する追悼演説     午後二時四分開議
  2. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  国務大臣演説に対する質疑   (前会の続)
  3. 秋田大助

    ○副議長秋田大助君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。金子溝広君。   〔金子満広君登壇〕
  4. 金子満広

    金子満広君 私は、日本共産党革新共同を代表して、田中内閣内外政策に対し、総理並びに関係閣僚質問いたします。  今日、内には異常な物価高国民生活の困難、外にはインドネシアをはじめ東南アジア諸国反日抗議行動に見られるように、田中内閣政治はいまや内外ともに重大な破局に直面し、国民の不安と怒りは全国に広がっております。  こうした重大なとき、いま政府国民の前に明らかにすべきことは、国民生活防衛のための具体的緊急政策であり、また同時に、従来の政治経済基本路線そのものに対する根本的な検討とその転換であります。  しかるに田中首相は、施政方針演説で、総需要抑制策国民総がまんを説き、日米安保条約路線堅持と対米従属、大企業との癒着のワク組みの中で、従来の基本的政治路線を引き続き遂行する姿勢を明らかにいたしました。そして、いま国民が緊急にその解決を求めているインフレ物価対策については、その具体的、根本的な解決策は何一つ示さず、今日の異常事態をつくり出したみずからの政治責任については、全くそれを回避しているのであります。  総理は、過去の行きがかりにこだわることなく、反省すべきは率直に反省し、改めるべきはいさぎよく改めると言いましたが、では、一体歴代自民党政府内外政策のどういう点を反省されているのか、また、何を改めようとしているのか、この点を国民の前に明白に示す責任があります。(拍手)まず、この点について、総理の率直な答弁を求めるものであります。  具体的な問題に入りますが、私は、まず第一に、当面の国民的緊急課題である物価インフレ物不足問題について質問をいたします。  政府は、物価問題の解決にあたっては、短期決戦でこれを鎮静すると強調していますが、しかし、政府が示した物価問題の見通しは、来年度卸売り物価が年に一四・六%上昇消費者物価が九・六%という驚くべき数字であります。一体、年に一〇%も消費者物価が上がる状態を、物価安定などとどうしていえますか。(拍手)この無神経さはまさに前代未聞であります。昨年七月、総理は、秋には物価が安定すると言い、秋になると今度は、四十九年三月には安定すると言いました。そうして、総理総裁をしている自民党は、昨年十二月二十七日にも一部新聞に、物価安定の種をまいたから来春三月が物価安定のめどだとの大きな広告を出しました。ところが、それからまだ一カ月もたっていないというのに、総理は、昨年の本会議答弁で、三月は困難だ、四月-六月がめどだろうなどと、またまた目標をずらすありさまであります。広告に偽りありとは、まさにこのことをいうのであります。(拍手総理は繰り返し、結果については責任をとると言明してきましたが、一体あなたは、何回国民をだませば責任をとるというのですか。物価安定の目標について、これができなかったら責任をとるという明確な目標をこの席で国民の前に明らかにすべきであります。(拍手)  言うまでもなく、物価上昇インフレは、自然の災害ではありません。物価上昇を食いとめるためには、その原因に正しくメスを入れ、それに対する断固たる対策を実行すること以外にないのであります。  今日、物価上昇の最大の原因一つは、石油危機につけ込んだ大企業売り惜しみ価格つり上げであります。  このことは、昨年来、大商社の買い占め売り惜しみで、木材、大豆繊維製品など一斉に物価つり上げられた事実、そして石油危機が激化した昨年秋以来、鉄、セメント、石油化学製品から灯油LPガス、トイレットペーパー、洗剤など、生産資材から日常生活品まで、ありとあらゆる製品物不足物価つり上げが行なわれた事実によっても明らかではありませんか。(拍手)それだけではありません。昨年十二月以来、通産省、石油業界原油輸入大幅削減の大宣伝をしている中で、石油業界が、石油危機をいいことにして、不当な売り惜しみと、許すことのできない価格つり上げを行ない、大量に原油備蓄をふやしていたことは、今月二十一日、大蔵省が発表した貿易統計によっても明らかにされているのであります。  しかも見過ごすことのできない問題は、こうしたやり方で国民に窮乏を押しつけながら、大企業が不当きわまる利益をあげていることであります。しかも、これらの産業は、社会的批判を避けるため、その利益をいかにして隠すかに苦慮していることさえ報道されているのであります。このことを見ても、今日の物価高物不足が大企業によって計画的につくり出されたものであることは明白であります。  このような大企業価格つり上げメスを入れることは物価対策の第一の試金石でありますが、総理はこれに取り組む意思があるかどうか、明確な答弁要求いたします。  物価つり上げを押えるためにいま緊急に必要な対策の第一は、大企業製品生産原価、在庫、価格操作利潤隠蔽の仕組みを国民の前に明らかにすることであります。そのために、わが党は、すでに六年前、一九六八年から、国会調査権を発動し、国会にこれらを調査するための権限を持った特別の委員会設置することを提唱してきました。今日、これは国民の声になっているのであります。アメリカの議会でさえ、大石油会社メジャー売り惜しみ価格つり上げを調査する委員会が開かれていることは、周知の事実であります。わが国でも、戦後、隠退蔵物資等に関する特別委員会証人喚問を行なうなど、活発に活動していた経験があるのであります。  日本共産党革新共同は、インフレ物不足石油危機緊急対策委員会をつくり、地域住民と共同して、これまでに灯油洗剤、砂糖その他の物資について売り惜しみや隠匿の事実を突きとめ、全国的に多量の放出を行なわせてまいりました。国会にこのような調査機関ができるならば、より大きな効果をあげることは明らかであります。  政府はこれまでかたくなにこの委員会設置を拒否してきましたが、私は、あらためてここに再度その設置を強く要求するものであります。(拍手)  次に、これまで大企業によって行なわれた売り惜しみ価格つり上げによる不当な超過利潤を吸い上げることであります。そのためには、値上げによって不当な利益をあげてきた大企業に対しては、当然累進制臨時超過利潤税を課すべきであります。また、国民中小企業の苦しみをよそに、この数年来土地買い占めや株式の売買で不当な資産をふやしてきた大企業に対しても、臨時資産課税を徴収し、過剰流動性を吸収すべきであります。総理が社会的公正の確保を強調するならば、これらの措置をとるのは当然と考えますが、総理の所見を伺いたいと思います。(拍手)  次に、物価上昇のもう一つ原因である公共料金の問題について質問します。  政府は、国鉄運賃消費者米価の半年間値上げ延期をきめましたが、これは参議院選挙が終わればつり上げるということであります。総理は、公共料金などについては極力抑制すると述べていますが、これまでも同じことを言いながら次々に公共料金値上げを行なってきたのであります。政府が真剣に公共料金を抑制するというなら、国鉄運賃消費者米価については、単なる一時的な延期ではなく、その値上げ撤回することはもちろん、電力、私鉄運賃タクシー料金など、政府認可権を持っている一切の公共料金凍結をこの席で明言すべきであります。(拍手)あいまいな答弁ではなく、国民に対して明確に答えていただきたいと思います。  この凍結期間中に、大企業に安く国民に高い料金体系の改定や費用負担原則についても民主的な検討を行なうなど、公共料金長期的安定策を講ずべきだと考えます。この点もあわせて答弁をいただきたい。  さらに、もう一つ物価上昇原因である財政金融面でのインフレ政策について質問をいたします。  まず、この際、総理並びに大蔵大臣にお聞きしたいことは、今日の異常な物価上昇を目の前にしても、まだインフレと見ることに反対なのかという問題であります。福田大蔵大臣は、狂乱の物価上昇と言いましたが、物価狂乱状態こそ、まさに悪性インフレそのものではありませんか。今日の時点での両大臣の明確な答弁を求めるものであります。  さて、総理は総需要抑制などと宣伝していますが、通貨増発の元凶である赤字公債を二兆円も組み、高速道路新幹線計画にも前年と同規模を計上し、さらに、不要不急の最たるもの、四次防予算は、史上初めて一兆円をこえているのであります。  政府は、これまで自衛隊予算が批判されるたびに、国民の安全を守るためということで合理化してきたのであります。しかし、国民の安全を言うなら、政府災害公害対策の不備のために多数の国民の生命、財産が失われている現実こそ重大であります。  たとえば、先般熊本のデパートで火災が起こりました。百名をこえる人命が失われましたが、熊本市には、はしご車がわずかに一台というありさまでありました。これは熊本だけの問題ではなく、多かれ少なかれ全国共通の状況であります。  四次防による来年度戦車の発注は四十台でありますが、これを一台やめるだけで、近代的なはしご車十台が購入できるのであります。(拍手)このようにすることが、真に国民の安全を守る政治のあり方ではありませんか。(拍手)  総理はまた、外国では民需を抑制しているが、日本産業需要を抑制しているなどと、国民生活重視姿勢をとっているかのように言いました。しかし、石油消費の内訳を見ても、日本では、高度成長政策に圧迫されて、個人消費需要の比率が外国と比べてきわめて低いことは周知のことであり、このことをもって、政府一連不要不急部門を温存している事実をおおい隠すことはできないのであります。(拍手)  わが党は、列島改造関連事業への投資の凍結軍事費大幅削減など、これによって財政規模を圧縮し、赤字公債も大幅に縮小して、真にインフレ防止予算を組むことを要求するものであります。(拍手)  また、経済の実質的な成長を大幅に上回る日銀券増発こそ、通貨価値を低下させ、インフレを招く重要な原因一つであります。昨年末の日銀券発行残高は前年を二一・五%も上回っております。今日のような非常事態には、このような通貨増発をきびしく押えることが絶対に必要であることは常識であります。(拍手)  以上の諸点について、総理並びに関係大臣答弁を求めます。  第二は、今日の経済危機から国民生活をどのように防衛するかという問題であります。  今日最も重要なことは、インフレの根を断つ抜本的な政策を断行するとともに、国民生活物価高による被害から守ることであります。一部の大企業家や大地主はいざ知らず、圧倒的多数の国民は、異常な物価高のために生活水準の急速な低下を余儀なくされています。これを以前の状態に戻し、さらに向上させることこそ、政府責任でなければなりません。特に、総理労働者賃金引き上げ要求の自粛を要求し、また、総理総裁となっている自民党運動方針が、労働者のぎりぎりの賃上げ要求を、事もあろうに売り惜しみ価格つり上げ悪徳業者と同列に置き、反社会的行為などと見なしていることは、断じて許すことはできません。(拍手インフレ国民生活を破壊しながら労働者賃上げ要求を攻撃することは、国民生活防衛権利正当性を否定することにほかなりません。私は、国民生活防衛権利を否定するこのような言動を、総理としても、自民党総裁としても、すみやかに撤回するよう要求し、答弁を求めます。(拍手)  さらに、国民生活防衛のためには、最小限、次の緊急施策が必要であります。  まず、年金、生活保護費をはじめとする社会保障各種給付に対し、一年ごとのスライド制ではなく、短期のスライド制を導入して、インフレの荒波から国民生活を守るべきであります。  また、住民生活と密着した地方自治体の財政危機に対して、政府がこれを援助するのではなく、逆に、来年度地方交付税を千六百億円も実質的に削減する措置をとったことは、全くの暴挙と言うほかありません。政府はむしろ積極的に地方交付税率を現行の三二%から四〇%に拡大し、さらに、保育所学校など生活関連事業超過負担を解消するなど、抜本的対策をいまこそ講ずべきであります。(拍手)  さらに、週四十時間労働制など、時間短縮を実現するとともに、深刻化が予想される失業に対しては、その防止対策を強化すること、失業保険制度を改正して給付額を八〇%にまで引き上げ、給付期間を延長することなどを実行すべきであります。  また、物不足倒産インフレ金融引き締めにあえぐ中小零細業者に対して、物資あっせん所改善充実、無利子金融の新設、関連倒産防止制度の改善、中小零細業者法人税率の五%引き下げなど、経営を守る対策を飛躍的に強化すべきであります。高額所得者優遇重役減税ではなく、四人家族の課税最低限人的控除で二百万円に引き上げるなどの減税措置を講ずべきであります。  以上の諸点について答弁を求めるものであります。(拍手)  第三は、高度成長政策日本列島改造、国総法に関連する問題であります。  田中総理は、佐藤内閣高度成長政策に輪をかけた超高度成長政策日本列島改造計画を提唱し、今日の危機をつくり出してきたのであります。総理は、昨年末の国会で、列島改造私的見解であると言いました。しかし、総理自身が一昨年十一月、七十国会答弁で言明しているように、田中内閣成立直後の閣議で、日本列島改造論を方向として承認し、その具体化をはかってきたではありませんか。現に政府は、道路計画についても、列島改造論の一〇%成長に合わせて、従来の七千キロ目標を一万キロに改定したではありませんか。いまさら私論などと言って責任をのがれるわけにはまいりません。この際、いさぎよくその非を認めて、悪名高い列島改造論撤回を公然と表明すべきであります。(拍手)もちろん、日本列島改造計画を実行するためのステップである国総法は、当然撤回すべきであります。(拍手)  また、歴代自民党政府高度成長政策は、インフレ物価高公害を生み出してきただけではありません。それは、今日の食糧問題やエネルギー問題を深刻なものにし、日本経済の根底をゆるがすという重大な事態をつくり出してきたのであります。  食糧問題についていえば、政府は、いまになって自給率維持向上などと言い出しています。しかし、一九六〇年安保改定以来、自民党政府高度成長政策をとり、農産物輸入自由化を促進し、米作の減反を押しつけ、公害乱開発農地をつぶすなど、日本農業を系統的に破壊する政策をとり続けてきたではありませんか。その結果、今日、農業人口は激減し、農林省の統計によっても、この十年間で三十万ヘクタール以上の耕地がつぶされたのであります。食糧自給率は、ついに五〇%を割るに至りました。小麦、大豆、飼料などの圧倒的部分アメリカ中心とする外国に依存するという異常な事態を迎えているのであります。世界的な食糧危機が叫ばれている中で、石油危機以上の重大な事態が発生しないと、だれが保証できますか。  それにもかかわらず、田中内閣は、新たに農地三十万ヘクタールをつぶすという無謀な計画を実行しようとしています。これこそ、まさに国民の命のかてを断つ亡国農業論というべきであります。(拍手)  土地問題の解決については、わが党は、農業犠牲にするのではなく、大企業が投機を目的に買い占めた用地の適正な価格での収用と民主的な再配分、山林原野農用適地開発などによって、都市、農村の土地問題を根本的に解決する第二次土地改革内外に公表しています。  私は、農業日本基幹産業として位置づけ、おもな食糧自給を目ざしてその多面的な発展をはかる立場から、田中内閣の三十万ヘクタールの農地転用撤回要求し、農地の大規模な拡大を方針とすること、おもな農産物価格保障制度の確立をはじめ、民主的総合農政を実現することを要求するものであります。この点について政府見解を求めます。(拍手)  高度成長政策はまた、日本エネルギーを安易にアメリカ系石油大資本に依存した石油輸入に切りかえ、埋蔵量二百億トンといわれるわが国の貴重なエネルギー資源である石炭産業を荒廃させてきたのであります。政府は、いまこそここに根本的な反省を加え、アメリカ従属エネルギー政策を改め、石炭産業復興基本政策長期計画国会に提出すべきであります。  政府は、いま、石炭事業開発を口にし始めていますが、来年度の予算案の中には、百五十万トンの閉山を進めるための炭鉱整理促進費などを依然として計上しているのであります。このような計画は、当然、直ちに撤回すべきであります。(拍手)  また、わが国原油輸入の八〇%がアメリカ中心とするメジャーに握られ、価格輸入分量メジャーの意のままにされるという現状にメスを入れることは、目下の急務であります。さらに、メジャー石油支配に追随せず、資源産出国主権を尊重する立場を確立するととは、自主的エネルギー資源政策のかなめをなすものであります。  政府は、これらの問題に対してどのような見解を持ち、どのような対策を講じようと考えているのか。  また、中東政策についても、日本政府の自主的な立場を明確にして臨むべきであります。石油ほしさアラブ寄り政策といわれるものではなく、アラブ人民正義立場を認めるなら、当然イスラエルの行為が不正義のものであり、侵略であることを総理は認めることができるかどうか、この国会を通じて内外に明確にすべきであります。(拍手)  以上の点について、総理答弁を求めます。  第四に、一連の外交問題について質問をいたします。  総理は、施政方針演説一連の外遊について触れましたが、まず伺いたいのは、首相の訪問を機会に巻き起こったインドネシアなど諸国民日本政府に対する爆発的な抗議に対し、総理はこの事態一体どう見ているのか、こういう問題であります。  まず、非難の的となっているのは、日本の大企業が、インドネシアにある合弁企業の工場に減価償却の終わった中古機械を送り、値段だけは新品同様の額にしているとか、現地雇用労働者に差別的低賃金を押しつけているとかいう問題であります。これこそ、高度成長の名のもとに、日本独占資本国民に耐えがたい犠牲を押しつけていることとまさに軌を一にするものといわなければなりません。(拍手)  また、重視すべきことは、今度総理が歴訪した東南アジア五カ国のほとんどは、アメリカ帝国主義軍事拠点であるか、あるいはアメリカの膨大な援助の受け入れ国であることを見ても、日本経済進出なるものが、アメリカアジア支配計画の一翼をになって進められてきたことは明白ではありませんか。(拍手)ここに問題の根本があります。  ところが、総理は、若い世代日本人の心の問題などと言って問題をすりかえ、財界、大企業の横暴や、これを支援してきた日本政府責任アメリカ一体となった新植民地主義的経済進出に対し、何らの反省をもしようとしていません。その点についてどう考えているか、あらためて明確に答弁をいただきたいと思います。(拍手)  さらに、総理は、帰国後の記者会見で、日本軍隊がかつて現地で橋を直した話を得々と持ち出して、今日と対比して、大戦当時の日本軍行動を肯定するような発言を行ないました。しかし、日本総理がこの大戦について語るとき、日本がこれらの地域侵略をほしいままにして、住民を殺害し、資源を略奪してきたことについて一片の反省をも表明することをしないのは、まことに驚くべきことであります。(拍手)  総理は、大東亜共栄圏の名のもとに強行された当時の侵略戦争について、いまどう考えているのか。これは国際的にもきわめて重大な問題でありますから、明確に答えていただきたいと思います。(拍手)  次に、金大中事件についてであります。  本事件の当初、政府は、この問題はあいまいにすることなく、その実態を国民の前に明らかにすることを公言してまいりました。しかし、政府は、本件がわが国主権に対する明白な侵害であるにもかかわらず、金大中氏の自由が拘束され、再来日の見通しもないまま外交的決着なるものをつけ、日韓閣僚会議を開催して、朴政権に対するてこ入れの経済援助まできめているのであります。  政府は、一体、この事件について、韓国の公権力による主権侵害の事実がなかったと言い切るのか、それとも、主権侵害に目をふさいで日韓関係正常化に踏み切ったのか、あらためて政府の結論的な見解を求めるものであります。(拍手)  次に、総理は、施政方針安保条約堅持をうたい、米国とのゆるぎない相互信頼関係わが国多角的外交関係の基盤とすることを強調しましたが、国民にとって重要なことは、こうした田中内閣のもとで、日米安全保障条約在日米軍基地アジアにおける侵略的機能を再編、強化しつつあることであります。横須賀は、昨年アメリカ第七艦隊空母ミッドウエーの母港となり、いよいよ第七艦隊の重要な根拠地にされています。そしてベトナム協定後の今日なお、横須賀からトンキン湾に出動したミッドウエーは、ベトナム人民に対して挑発行動を行ない、十二月七日、ベトナム民主共和国外務省のきびしい抗議を受けているのであります。  大平外務大臣は、外交演説の中で、インドシナ地域の真の平和と安定に貢献したいと言っていますが、米第七艦隊のこの挑発行動日本基地が使われていることについて、どのように考えていますか。当然、基地の使用を拒否すべきであると思うが、明確な答弁を求めるわけであります。(拍手)  また、中東戦争にあたっても、在日米軍基地を使用した米第七艦隊は、アラブ諸国に対する露骨な軍事脅迫のために紅海にまで出動しております。  いまや、日米安全保障条約は、アメリカの全世界における侵略軍事挑発日本を直結させる足かせとなっておるのであります。日米安全保障条約経済発展のささえだという、いわゆる安保繁栄論の誤りも、ドル危機石油危機を通じて日本国民がすでにみずから体験しているところであります。  総理は、この事態になってもなお、日本主権と安全をそこなう安保条約を将来とも堅持する考えなのかどうか、あらためてお聞きしたいと思います。  日米安保条約廃棄こそ、今日、日本が直面している危機を打開するかぎであります。わが党は、安保条約廃棄を断固として要求するものであります。(拍手)  最後に、教育政治姿勢の問題について伺います。  総理は、昨日の答弁でも、インドネシア問題に関連し、戦後世代に対する修身教育を云々しましたが、物価問題でも平気でうそをついてきたあなた方には、修身や道徳について語る資格はないと思いますが、どうですか。(拍手)  総理教育についてあれこれ述べていますが、政府が何よりも責任を負わなければならない教育条件の整備については、わずか教員給与に触れているのみであります。公立高校をふやしてほしい、私学助成をふやしてほしいとの切実な要求には何らこたえず、たった三十億円の高校新増設の国庫補助さえ削っているのであります。これでは、受験地獄を一そう苛烈なものにし、多くの子供たちに希望を失わせるのみで、総理の言うような人間形成などはとうてい期待できないではありませんか。  同じようなことは、中小学校の教室不足や、現在の経済情勢から引き起こされている教材教具などの不足、高騰に対する対策についてもいえることであります。  もし総理教育の重要性を真に考えるなら、用地取得を含む高校新増設に国庫補助を行なうなど、教育条件の整備に具体的措置を講ずべきではないか。この点についても答弁を求めます。(拍手)  次に、政治資金の問題について触れたいと思います。  昨年十二月、自治省は政治資金の内容を発表いたしましたが、重大なことは、この中で、売り惜しみ物価つり上げ公害などの元凶である石油、電力、鉄鋼、不動産、銀行などの大企業から、ばく大な政治献金が政府与党である自由民主党に渡されているという事実が明らかになったことであります。(拍手)これらの資金を含め、自民党への政治献金の総額は五十六億円をこえております。ここに大企業政府自民党の癒着が端的に示されているのであります。  国政の刷新、民主政治の真の確立のためには、政治資金に対する厳正な規正が必要であることは、いまや国民の常識であります。総理は、昨日も、政治資金規正を引き延ばす口実として、選挙制度との関連などを持ち出しましたが、選挙制度を変更しなければ政治資金の規正ができないというのは、大企業からの政治献金をいつまでもいつまでも続けようとする自民党の党略的な議論であって、国民の間では絶対に通用しないものであります。(拍手)わが党は、国政を大企業と癒着させるような、このような不当な政治資金制度はやめるべきであると考えるが、総理の所見を伺いたいと思います。  さて、田中内閣が成立してから一年半、田中内閣に対する国民の鋭い批判と退陣要求の声は強まるばかりであります。いまや、世論調査の結果を見るまでもなく、田中内閣の支持率は急速に低下し、歴代自民党内閣の中でも最低を記録するに至っております。こうした中で、政治の革新を求める声は日ごとに高まり、もはや時の流れになっているのであります。(拍手国民生活を防衛し、日本の現在と未来を平和と安全の方向に導く唯一の道が、安保条約廃棄し、大企業本位の政治をやめ、軍国主義復活強化に終止符を打ち、平和中立の日本の実現、国民生活安定と民主主義の確立にあることは、いまや国民共通の自覚になりつつあるのであります。(拍手)  日本共産党革新共同は、今日この重大な情勢のもとにあって、田中内閣にすみやかな退陣を要求するとともに、民主連合政府の樹立に向かって、広範な国民とともに全力を尽くして奮闘する決意をここに表明して、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
  5. 田中角榮

    内閣総理大臣(田中角榮君) 金子満広君にお答えいたします。  第一は、政治責任についてでございますが、わが国は、国民のたゆみない努力と勤勉によりまして驚異的な経済発展をなし遂げ、いまや、主要工業国の一員として国際的にも確固たる地位を占めるに至ったわけでございます。しかし、狭い日本の国土に短期間のうちに高度工業社会を築き上げましたわが国には、先進工業国が直面をいたしておりますと同じように、物価公害エネルギー、過密過疎などの問題が先鋭的にあらわれておることは事実でございます。また、国際経済秩序は、物価、通貨、資源エネルギー食糧、南北問題などに見られますように、いま苦痛に満ちた再編成の途上にあります。  このような複雑かつきびしい情勢に対処するためには、過去の行きがかりにこだわることなく、経済運営、産業構造、制度、慣習、生活意識などに思い切った発想の転換をはかっていかなければならないということもまた事実だと思います。同時に、これまでたどってきた道を冷静かつ謙虚に振り返り、私たちが選んできた政策について率直な反省を加えて、将来に対して誤りのない施策を推進していくためのかてにしていきたいと思うのでございます。これが政局担当者として政治責任を果たすゆえんだと考えておるのでございます。  物価物不足等について申し上げます。  政府は、あらゆる政策手段を活用しまして、異常な物価高を本年上期中に鎮静させるべく懸命な努力を重ねておるわけでございます。  企業が便乗値上げや投機的行為に出ないよう強く自制を要請いたしますとともに、かりにこれらの不当な行為等によって過大な利益を得た者に対しては、国民生活安定法などの厳正な運用をもって対処してまいります。  臨時利得税につきましては、いろいろ問題がございまして、各界の意見も広く聞いておるわけでございますが、いずれ結論が出されるものと考えております。  過剰流動性吸収のための資産課税は、適当でないと考えております。  公共料金につきましては極力抑制する方針でございまして、総需要抑制政策ではこれを堅持してまいります。  四十九年度の防衛費につきましては、当面する内外の情勢を十分勘案いたしまして、総需要抑制の見地からも、必要最小限の経費計上にとどめておるわけでございます。  国民生活の安定等についてでございますが、労働賃金については、わが国賃金が近年とみに上昇をしてまいりましたことは、まことに喜ばしいことでございます。具体的に賃金交渉は、基本的には、労使が労使自治の原則に従いまして平和裏に、自主的に話し合いを進め、合理的な解決をはかっていくべきものであると考えておるのでございます。ただ、本年のわが国経済の前途はまことに多難でございまして、私としては、労使双方が、その影響の重大さを自覚し、国民経済的視野に立ってこの問題に対処されることを切望してやまないのでございます。  中小企業に対しましては、小口需要者向けの原燃料等の確保のため、あっせん相談所を開設しております。また、無担保、無保証の中小企業経営改善資金貸し付けの資金量の増加、貸し付け限度額の二倍引き上げ、税負担の軽減などの施策を画期的に拡充いたしたわけでございます。  国総法、農業政策、石炭政策等に御言及がございましたから申し上げますが、狭い国土に住む一億一千万人の国民に、自然と文化と産業が融和した住みよい生活環境、空間を提供するためには、国土の総合開発が絶対に必要でございます。また、地価凍結を含む土地の基本的役割りをになう国総法案については、そのすみやかな成立を期待いたしておるのでございます。  国民の主要食糧のうち、国内生産が適当なものは極力国内でまかない、自給度の維持向上をはかってまいります。また、農産物、水産物を通じまして、流通諸施策を充実強化し、価格の安定をはかってまいりたいと考えております。  他方、公共用地、住宅用地などの円滑な供給と地価抑制の観点から、三十万ヘクタールを一応の目標として、一定の期間をかけて農地の転用をはかってまいりたいと考えておるのでございます。  政府としては、四十八年度からいわゆる第五次石炭対策を進めておるのでございますが、このようなエネルギー危機という状態に対処し、国内炭の最大限の活用をはかりますとともに、輸入炭を含めまして、石炭のより積極的活用をはかることを前提として、今後の石炭政策を進めてまいる所存でございます。  なお、これまでの閉山につきましては、自然条件の悪化、可採炭量の枯渇等によるものが多かったと考えておるのでございますが、かりに相当の可採炭量を残して閉山をするような事例があれば、できるだけ閉山をしないような方向で指導をしてまいりたいと考えます。  石油メジャーとの関係、中東政策等に対しての言及がございましたが、わが国といたしましては、石油輸入における自主性の拡大に努力する一方、メジャーの国際石油供給に占める機能の正当な評価を行ないつつ、それとの協力関係を維持してまいりたいと考えるのでございます。  中東紛争についてのわが国立場は、十一月二十二日の官房長官談話のとおり、明確でございます。  東南アジア諸国との関係でございますが、このたび東南アジア諸国を歴訪いたしまして、お互いに必要とし合っている強い相互補完の関係で結ばれていることを痛感いたしたのでございます。東南アジア諸国の置かれた困難な事情に深い理解を持って、平和と繁栄につながる協力関係を一そう増進してまいらねばならないと考えておるのでございます。  インドネシアにおける問題につきましては、昨日申し上げたとおり、インドネシアが困難な問題に当面をいたしておりまして、あのような事件は、日本企業活動によって起こったものではないと私は考えております。それは国民の不満の一つの方向が日本人に向けられておるということを、すなおに認むべきでございます。いささかでも日本企業の活動が原因であるとしたならば、正すべきは正さなければなりません。そうすることによって両国の末長き協調を継続していかねばならぬと考えておるのでございます。何でもかんでも日本人がみんな悪いという前提に立った考えは誤りであることを、この際申し上げておきます。(拍手)  また、第二次大戦中における日本立場等に対して言及がございましたが、当時の問題は歴史のかなたの問題でございまして、現在の日本は、新しい平和主義のもとに立って、国際協調の理念に従って行動しておることは、全世界の認むるところでございます。  また、道徳教育の必要性についての御言及がございましたが、国の将来の発展のために、国家社会の一員として心身ともに健全な国民の育成を期することは、国政の基本でございます。道徳教育につきましては、すでに昭和三十三年以来、小学校及び中学校において道徳の時間を特に設け、道徳教育の推進をはかるとともに、単にその時間のみならず、学校教育活動の全体を通じて行なうことといたしておるところであり、今後ともその一そうの充実に努力をいたしたいと考えておるのでございます。  なお、青少年の徳性の涵養につきましては、学校教育のほか、社会教育、家庭教育のあり方などとも関連をいたしまして総合的に推進する必要があり、今後ともこのような見地から十分配慮してまいりたいと考えます。  なお、この際一言いたしますが、私の発言をお聞き違えのようでございますので申し上げますが、私が修身教育などをと言ったのではなく、五カ国を訪問したときに、かつての日本人は修身教育などをやっておったからりっぱでございます、その後の日本人は、自由ということはよく知っておられますが、自分の生活だけの自由であり、まことに閉鎖的であり、現地との交流が全くない、自分さえよければというような――自由のものの考え方が起こるとはどうしても思わない、なぜこんな人間ができたかというと、修身教育日本がやめたからではないですかというのは、先方の国々の人が言っておるのでございますから、(拍手)そこらはひとつ間違えないでよく聞いていただきたい。  それから政治資金規正法の問題につきましては、政治資金規正法改正の問題は、申すまでもなくきわめて重要な問題でございますが、過去において幾度か改正法案が国会に提案され、廃案になった経緯があることは、御承知のとおりでございます。これを今日の時点に立ってみると、金のかかる選挙制度をそのままにしてこれを具体化することにはいろいろと無理があることを示しておるように思われます。今後、政党本位の、金のかからない選挙制度の実現への動向も踏まえつつ、さらに検討と論議を積み重ねてまいりたいと考えておるのでございます。  最後に、日米安全保障条約廃棄するか堅持するか。もちろん堅持をするのでございます。(拍手日米安全保障条約廃棄するような状態の中で真の民主的な日本成長するとは思っておりません。日米安全保障条約堅持することによって、国民の負担を最小限にとどめながら、独立と平和を守り、真の日本の民主政治を確立してまいりたい、これが政府の基本であります。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕
  6. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私に対する第一の御質問は、中東政策について、イスラエルの行為をどう評価するかという問題であったと思います。  わが国中東政策は、いま総理からも言及がありましたとおり、昨年十一月二十二日の官房長官談話で明らかにしたとおりであります。その中で、政府は、イスラエルによるアラブ領土の占領継続を遺憾とし、一九六七年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退を呼びかけておりますことで日本立場を御理解願いたいと思います。  それから第二の御質問は、金大中事件主権侵害との関連であったと思います。  この問題につきまして、金子さんは、この事件は明白にわが国主権侵害であるという立場に立たれておるようでございますが、政府は、金大中事件に韓国の公権力が介入していたという客観的証拠はまだつかんでおりません。また、韓国側もこれを否定しておるわけでございます。したがって、政府立場は、本件によって主権侵害があったとは断定していないのでありますが、同時に、主権侵害がなかったとも言っていないことを御理解いただきたいと思います。  それから第三点、ミッドウエー等第七艦隊の艦船は、わが国を含む極東の平和と安全の維持という目的のため、わが国の施設、区域を使用いたしておるものであります。政府としては、したがいまして、第七艦隊の艦船の在日施設、区域を使用することを拒否するつもりはありません。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
  7. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず第一に、現下の経済情勢をインフレと言うのか言わないのか、こういうお話でございますが、私は、現在の物価情勢については深くこれを心配いたしております。異常であり、まことに憂慮すべき状態である。さような状態をさしてインフレと言われる、私は何の抵抗も感じません、また、異議も申し立てませんから、さよう御了承を願います。  臨時超過利得税を徴収すべしというお話でございます。これは、ただいま申し上げましたように非常にむずかしい物価情勢である、そういう際に、売り惜しみだ、買いだめだ、あるいは便乗値上げだ、さようなもののあることは、これはもうもってのほかである、不届き千万である、私はさようなものに対しましては深い憤りを感ずるのであります。私は、そういうものに対しましては何らかの制裁があってしかるべきである、さように考えます。  税の上から見ましてそういう制裁を考えてみる、私もいろいろ考えてみましたけれども、しかし、この制裁方法によりましては、その反面におきましていろいろなデメリットがあるのです。たとえば、過当の利益を全部徴収いたしますとする。そうすると、企業は、どうせ政府に取られちゃうんだから使っちゃえ、こういうことになってしまう。このきびしい物価情勢の中で、そういうことになったら一体どうなるんだというような問題もあるのです。しかし、気持ちは私は前向きであります。皆さまにおかれましても、知恵がありましたら、どうかひとつおかし願いたい、かようにお願いを申し上げます。  なお、臨時資産課税につきましては、これは税の問題じゃないんです。金融の問題なんです。いま、過剰流動性につきましては、金融引き締めによりましてこれが回収方をやっておるところでございます。  日本銀行券の増発を抑制すべしと、こういう御提言でございますが、日本銀行券はしりのほうから引き締めることはできないんです。これは経済情勢が鎮静いたしますれば、自然に日本銀行券はこれは収縮してきます。現に、昨年、前年度比二七%もこえるというような日本銀行券の激しい増勢は、これは少し鎮静してまいりまして、一月になってからの平均残高といいますか、この銀行券の発行増加率は二三・二%というふうに下がってきておるのであります。  地方交付税率を三二%から四〇%に引き上げろと、こういう御議論でありますが、これは反対であります。いま中央も地方も相携えて総需要を抑制しなければならぬ、これが最大の国家的な命題である。そういう際には、逆に地方交付税の交付額を引き下げるということによって、地方にもその政策に御協力を願うということがしかるべきである、かように考えます。  また、中小零細法人の法人税率を引き下げよと、こういうお話でございますが、まあ引き下げまではできませんけれども、御承知のように、政府におきましては法人税の税率引き上げをいたします。しかしながら、中小企業につきましてはこれを据え置くなどの、きめこまかい配慮を加えておるのであります。  また、標準家族の課税最低限を二百万円に引き上げよという御議論でございますが、私は、今回の史上最大の所得税減税、これにつきましては、ずいぶんまあ苦慮したわけなんです。それは、そういうことをしてこの物価上昇の大勢の中でいいかどうかということも考えてみたのです。しかし、国民全体があの大きな所得税減税に期待を持っておる、また、物価上昇しておる、そういう際に、給与所得者等の立場をどう考えるかという問題もある。そういうことで、まあとにかく思い切ったつもりなんです。その限度がとにかく百七十万円、これは高く評価していただきたい、こういうふうに思いますので、これをさらに二百万円まで引き上げよというのは、いささか難題に属するのではあるまいか、かように考えます。(拍手)   〔国務大臣奥野誠亮君登壇〕
  8. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 公立文教施設整備につきましては、千五百十億円を計上いたしておりまして、事業費につきましては、対前年度四〇%増、事業分量につきましては、対前年度一〇%増でございます。御指摘のとおり、高校新増設に対しまする国庫補助金は計上いたしておりません。従来から地方財政責任のもとに置かれておるわけでございまして、そういう関係の仕事に対しまして中央政府が補助金を交付する、その対象を広げる、そうすることによって中央政府の関与の範囲を広げ、支配力を深めていくということにつきましては、行政責任の所在を不明確にするということで批判もあるわけでございます。   〔副議長退席、議長着席〕  そういうことでもございますので、従来の仕組みを踏襲しながらその運営を円滑にいたしますために、地方債計画の中で、高校新増設に向けられるという対象を明確にして、六十億円を計上さしていただいたわけでございます。この元利償還に要する経費は、減価償却費の形で地方交付税法上の基準財政需要額に算入され、そして各地方団体に所要の財源は保障されるということになるわけでございまして、補助金が交付されます場合には、この保障額がそれだけ減額されるということになってまいります。  問題は、国と地方との間の税源配分を適正にしていくということであろうと考えますし、今後もこういう問題につきましては深く関心を寄せていきたい、かように考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  9. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) 竹入義勝君。   〔竹入義勝君登壇〕
  10. 竹入義勝

    ○竹入義勝君 私は、公明党を代表し、現下のきわめて悪化した国民生活の打開と、行き詰まった日本外交の転換について、田中総理並びに関係閣僚質問をいたします。  現在、国民の中に充満する自民党政府に対するふき上がる憤りと不信感、さらに日常生活の先行きの大きな不安の状態に謙虚に心をいたし、責任ある率直な答弁を求めるものであります。(拍手)  昨年の石油ショック以来の悪性インフレの激化、物価の狂騰について、政府は、いたずらに周章ろうばいするのみで、十分国民が納得する対策も示さず、危機と節約を訴え、国民の消費態度に責任を押しつけようといたしてまいりました。  経済界は、口に企業の社会的責任をもっともらしく唱えながら、生産段階では誇大な減産宣伝を行ない、流通段階においては、買い占め売り惜しみを行なって、生活必需物資の不足と先高機運を盛り上げ、消費者の心理的パニックにつけ込み、続々と便乗先取り値上げに狂奔をいたしたのであります。  それに対し政府は、口先の精神的訓辞を述べるだけで、実効ある規制を加えようとしない。国民政府に対し、大企業と癒着しているとの疑惑を強く持っており、そのような政府のお説教など信じられないで、物不足物価先高の声に脅かされて、重大な不安におののく毎日の生活を送っているのであります。  総理、あなたは、日本経済は、物価騰貴であって、インフレではないと、繰り返し強弁してこられましたが、事態は悪性インフレであり、しかも深刻かつ重大な状態になってきているのであります。  わが国インフレ物価高は、昭和三十六年以来、消費者物価は、年平均約六%近い、先進国の中で最高の上昇を続けてきたのでありますが、政府は、卸売り物価が諸外国に比較して安定しているというだけの理由で、われわれの物価対策要求を退け、恒常化したこのインフレ物価高を放任し、国民生活、社会資本の投資をおくらせ、高度経済成長を至上の政策目標として経済運営を続けてきたのであります。  私は、この間に、わが国経済の中に基調としてのインフレが根深く定着し、それに海外要因、過剰流動性、石油問題が複合され、そしていま消費者物価の暴騰を上回る卸売り物価の狂騰という、わが国経済がかつてない異常事態をもたらしたと指摘をするものであります。  高度経済成長政策の本質は、総需要の強引な拡大政策であります。政府は、もっぱら産業基盤整備の公共事業を毎年飛躍的に増大させる一方、民間設備投資あるいは大企業の輸出に対する過度な優遇策をとり、石油資源をあらゆる部門に組み込ませながら、総需要拡大政策をとってきたのであります。  政府産業基盤整備に偏重した公共事業政策は、おのずと社会施設、公共サービス部門のおくれを来たし、当然ながら国鉄運賃、医療、教育にかかわる料金などの上昇を招いたのであります。それに大企業が生産の拡大の中でつくり上げた市場支配力によって価格操作され、管理価格、鉄鋼の不況カルテルをはじめカルテルの横行となり、加速度的にインフレ深刻化していったのであります。  このような状態を決定的にしたのは、昭和四十六年ニクソン・ショックのとき、政府は、重大な為替政策の失敗により、六兆円といわれる過剰流動性を国内にはんらんさせ、さらに、田中総理日本列島改造論で拍車をかけ、さらにまた、事実上の調整インフレ政策をとり、景気過熱現象が明らかになりながらも、四十八年度予算において、景気刺激超インフレ大型予算を編成し、しかも金融緩和を放置し、国内景気拡大政策に狂奔したのであります。このことが、過剰流動性の野放しとなり、大企業、商社を中心に、土地生活関連物資買い占め投機が横行したことは、いまさら説明する必要がないところであります。  しかも、石油不足が誇大な宣伝であったことは、去る二十一日、大蔵省が、通関実績に基づく貿易統計昭和四十八年一年間で二億八千九百六十一万キロリットルに達し、四十七年度に比べて一六・二%も増加していると発表していることからも明らかであります。  したがって、OAPEC石油供給削減宣言に便乗した狂乱といわれる物価暴騰は、田中内閣インフレ政策と、石油産業の誇大宣伝に対する対応策の無策にその原因があると言っても、決して言い過ぎではないのであります。(拍手)  もちろん、政府はそれなりに、総需要の抑制など、しかるべき対策に努力しているのでありましょう。しかし、この石油ショックに始まる日本経済危機を、不測の事態と、あたかも天災のごとくとらえようとする今日の自民党政府の基本姿勢では、問題は解決し得ないのであります。政府が、今回の事態を突発的な石油供給の削減によってはからずもやってきたとする無反省姿勢に終始し、台風が通過すればまた再び従来の生産第一、成長第一の経済姿勢に戻りたい、戻れるような準備だけは残しておこうとして、従来の誤った政策の根本的な転換をなし得ないことこそ、危機を生み出す最大のものではないかと私は言いたいのであります。(拍手)  この緊急事態を収拾するのは、あくまでも政府に課せられた重大な責任であります。私は、ここに総理の真意を確認する意味において、次のことをただしたいのであります。  われわれは、物価と物の流れについて、買占め売惜しみ防止法、石油需給適正化法、国民生活安定緊急措置法により、国民生活を安定させるための強力な行政権限を政府に与えました。総理は、これら諸法律を機動的に運用することを言明いたしましたが、その具体的な今後の方策について、確たる総理見解を伺いたい。それによって必ず物価を下げることを確約すべきであり、もしそれが実現しないときは政治責任を当然とるべきでありますが、この点はいかがでありましょう。(拍手)  これには、物価は必ず下がると言っておられる福田大蔵大臣もあわせて御答弁を願いたい。  第二点は、わが党は、最近、極端に品不足の洗剤について、東京都内の実態を調査いたしました。その結果は、流通段階における買い占め貯蔵が行なわれていることが明らかとなり、そのことが摘発されました。自民党大会における総理の決意からいうならば、立ち入り調査権限を持つ政府は、当然、国民の強い要望にこたえ、このような調査をすべきであり、また、その実態を国民の前に公表すべきであると思いますが、その意思がおありかどうか、お答えをいただきたいと思います。(拍手)  第三点は、かねてからわが党が主張し要求している国会物価対策についての調査機能を強化するため、物価特別委員会並びに関係調査室を大幅に拡充することが緊急に必要でありますが、総理自民党総裁としてどのように考えておられるか、御答弁を願いたい。  第四点として、独禁法の強化のための改正、公正取引委員会の拡充強化について、総理はどのような見解と決意をお持ちか、伺いたいのであります。  第五点として、国民生活の窮迫の中にあって、利益を不当に拡大した企業に対し、不当な利益を臨時利得税で吸収すべきであると思いますが、この際、重ねて質問をいたしたいと思うわけでございます。  第六点、昭和四十九年度予算案が、総需要抑制型であり、短期決戦型であるというからには、列島改造計画のたな上げを国民の前に宣言し、さらに、昭和四十八年度予算中繰り延べた公共事業費の再繰り延べあるいはたな上げを決意しておられるかどうか、明確に御答弁を願いたいと思います。  第七点、公定歩合の引き上げ、預金準備率の引き上げなど金融引き締めは、このインフレが終息するまで続行すべきであると思いますが、この点のお答えをいただきたいと思います。この場合、中小零細業者に対しては、別途の金融措置を講ずべきであると思いますが、この点もあわせてお答えをいただきたいと思うわけでございます。  第八点として、政府は総需要抑制の施策として、国民の貯蓄誘導策を積極的に推進しておられますが、その結果集められた預貯金をどのように運用しようとされておられるのか。また、すでに過去十年間において半減した預貯金の価値を見るとき、預貯金利率を大幅に引き上げるべきであります。また、勤労者の財形貯蓄に対しては、物価上昇分を含めた割り増し金制度を導入し、貯金減価の補償をなすべきであると主張するものでありますが、これは総理並びに大蔵大臣もあわせて所見を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  以上八点、明確な答弁を求めたいと思います。  国民福祉優先の経済運営への転換は、すでに国民的合意として要求されております。  四十九年度予算政府案で見る社会保障関係費は、対前年度三六・七%の伸び率であります。もともと低い前年度予算額に対する伸び率でありますから、一般会計に占める割合を見なければなりませんが、昨年の一四・七%に対し一六・九%で、わずか二・二%の伸びにすぎません。その割合は、日銀の国際比較統計等から見ましても、欧米先進国の二分の一以下にすぎないのであります。しかも、その三六・七%の伸び率のうち一九%は医療費で占められており、また、当然増経費を取り除けば、とうてい福祉優先とは認められないのであります。(拍手)もし政府が真剣に福祉に対処しているというならば、四十八年度中の消費者物価上昇による目減り分や、四十九年度、政府自身が見込んでいる九・六%の物価上昇、一七・五%の医療費上昇分をあらかじめ予算化する配慮があってしかるべきであります。  現在のインフレの中で最も深刻な生活をしいられているのは、福祉施設にいる人たち、年金生活者、生活保護世帯の人たちであります。四十九年度予算案の福祉施設入所者に対する生活諸費は、現状より二〇%増額はしたものの、一人一日当たりの食費は、児童は約六十円の増額で三百五十六円、寝たきり老人の場合、約六十円増額して三百五十八円、養護老人の場合は、約四十七円増額して二百八十四円程度でありますが、これで育ち盛りの子供や弱りきった老人に必要な食生活を維持できるとお考えになっているのかどうか。  また、その生活保護世帯の扶助基準が、四人世帯で最高六万円になっておりますが、これで最低生活を維持することができるとお考えでありますか。  老齢福祉年金五千円を七千五百円に引き上げたことは、昨年からきまっていたことであり、新しく福祉を充実したものではありません。(拍手)この金額が、老人生活にどれほど足しになるとお考えになっておられるか、総理の率直な見解を伺うとともに、いままでの、もともと救貧的な低い基準からの積み上げ計算を抜本的に改め、あらためて憲法に示す国民の健康的、文化的な最低生活を保障し得る生活基準を算定して、大幅の増額をし、施設入居者の生活費とともに物価にスライドすべきでありますが、この点もあわせてお伺いをいたしたいのでございます。(拍手)  政府が福祉元年の看板とした五万円年金が、その受給対象者があまりにも少数であるのと、長年の勤労にたえて老後の安息を期待した人々の生活を保障するに足りるものでないことは、きわめて明らかであります。拠出年金である厚生年金などは、昨年四野党が共同提案した年金改正法に基づき、直ちに修正賦課方式に改め、国の支出を増額して、少なくとも六万円年金を実施し、物価のみならず賃金水準にスライドするなど、その充実を要求するものでありますが、総理見解を承りたいのであります。(拍手)  さらに、児童手当は当然第一子から対象とすべきであり、手当額も五千円に引き上げるよう、制度の改正を要求するものでありますが、どのように考えておられるか、総理の御所見を伺いたいのであります。(拍手)  次に、政府の二兆円減税は、課税最低限を標準四人世帯で初年度百五十万円にいたしました。しかしながら、今回の減税は、三千万円前後の高額所得者まで累進課税率を緩和し、給与所得控除の上限をなくすなど、いわゆる金持ち減税となっております。  これを標準四人世帯の収入別課税軽減額で見ますと、収入百五十万円で二万九千四百七十八円、二百万円で四万五千二百九十六円、これが五百万円になると二十四万二千をこえ、一千万円になると九十一万一千円をこえるというように、高額所得者ほど大幅に減税されるということがきわめて明らかであります。給与所得者の実質所得の格差をますます拡大させることになっているのであります。これでは、全く高額所得者のためのものであり、インフレの被害をきびしく受けている者を無視した減税であるといわざるを得ないのであります。物価の異常な上昇を加味して生計費に課税しないという原則によれば、当然二百二十万円まで課税最低限を引き上げ、高額所得者の税負担は従前どおりとするべきであると考えますが、これに対する総理並びに大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。(拍手)  また、法人税の大企業に対する税率の引き上げは、配当軽課税率の後退、大企業優先、資産所得者優遇の租税特別措置の温存とあわせ、大企業産業優先の現行税制の本質を変えていないのであります。欧米水準から比較しても、大企業の税率は最低四二%に引き上げ、規模に応じて実効率を累進的に上げるべきであり、租税特別措置はこの際全面改廃をすること、交際費課税の強化、広告税の新設など決断すべきときであります。  ますます窮状にある中小企業に対しては、税率を大幅に引き下げると同時に、税の申告方法を簡素化することを要求するものでありますが、総理並びに大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。(拍手)  地価の高騰は、国税庁が発表した、最高路線価格に見られるように、依然として年一六%も高騰いたしております。東京新宿区では、三・三平方メートル当たり八百四十四万円という極限状態に達しております。また、日本不動産研究所の調査によると、昨年九月末現在、全国市街地平均価格は、半年で一五%も高騰いたしており、特に六大都市の住宅地は、昭和三十年三月末以来で実に四十倍にも達し、国民から完全にマイホームの夢を奪い去っております。物価問題の元凶といわれ、諸悪の根源といわれ続けた土地問題について、いまこそ、政府は、土地対策に手をゆるめることなく、積極的に取り組まねばなりません。特に住宅用地の地価安定と確保に総力をあげるべきであります。  ある住宅企業の調査によると、三大都市圏で、大手民間デベロッパーがかかえ込んでいる住宅用地は、二万五千ヘクタールに達するといわれていますが、いま、かりに、この買い占められている住宅用地に建設省の長期構想による理想的な低中高層組み合わせ住宅を建てるとすれば、総理の専門でありますが、百二十五万戸の建設が可能であります。  そこで、まず総理にお伺いしますが、このような土地買い占めと地価の高騰に伴う不公正を是正するため、緊急地価安定特別措置法を制定し、地価の凍結、空閑地税の創設、あるいは大企業の保有する土地の再評価と課税措置、大企業土地譲渡所得に対する分離課税の強化など、総合的な措置を講じ、断固として土地問題の解決をはかるべきであると思いますが、総理にその決意がおありかどうか、お伺いをいたしたいのであります。(拍手)  次に、公害、環境問題について、私は、このときこそ、大企業資源大量消費と大量廃棄によって公害列島と化したわが国土を、公害のない美しい日本列島に転換する唯一絶好の機会であると確信をいたしております。  石油危機に便乗した環境規制緩和への圧力が各方面に出ていることは、まことに遺憾であります。その中で、政府が、二十日、日本版マスキー法の五十年規制の実施を決定したことは、評価するにやぶさかではありません。窒素酸化物にかかわる五十一年規制についても、予定どおり実施すべきことを強く主張するものでありますが、総理の決意を伺いたいのであります。(拍手)  さらに、大気、水質等の環境基準は、強化しても緩和することなく、また、総量規制の早期実施等、公害対策に万全を期すべきであると考えますが、総理の所信を承りたいのであります。  地方財政を圧迫している超過負担は、同時に、国民生活の福祉向上を大きく阻害いたしております。ところが、公営住宅、文教施設等の建設単価の引き上げは四十八年度の補正分を織り込んだものであり、諸資材費の暴騰とあわせ、とうていこの問題を解消するに足りるものではありません。実態に即して超過負担解決要求するものでありますが、大蔵大臣の所見を承りたいのであります。  総理演説教育施策の重要性もこれと関連しており、教育施策の根本問題として、小中学校教育施設の慢性化した不足と不備を解決するためにいかなる決断をお持ちか、総理にお答えを願いたいのであります。(拍手)  昨年十二月の企業倒産件数は、総理もすでに御存じのとおり、負債一千万円以上で見る場合、九百三十一件を数え、今後さらに増加することは明らかであります。それ以外の小、零細企業の倒産を加えれば、膨大な件数になることが推測され、まことに憂慮するものがあります。  いまや、失業問題が社会の前面に登場することが懸念されます。当然、失業者を出さないことにまず重点的施策がなされなければなりませんが、政府は、失業問題についてどのような措置をとろうとしておられるか、また、いかなる見通しのもとに対策を講じようとなされるのか、総理の所見を伺いたいのであります。  と同時に、中小企業対策はきわめて緊要であり、積極的な施策を機動的に運用する必要がありますが、その対策方針について、あわせて総理の所見を伺いたいのであります。  さらに、賃金問題に関し、総理は労組に対する節度ある行動を要望いたしておりますが、すでに昨年度の物価上昇は、総理統計等をもってしても、賃金上昇分は完全に相殺され、物価の狂騰、インフレの高進の中で、賃上げを要求することは当然であります。これに対し、物価対策に名をかり、不当に労働者犠牲をしいるべきではなく、賃上げはあくまでも労使間の民主的な交渉にゆだねるべきであります。この点、総理見解を承りたいのであります。(拍手)  ここで、わが国食糧問題の今後について、総理見解をただしたいのであります。  わが国の、米を除く主要食糧、飼料は、そのほとんどを輸入に依存していることは、すでに御承知のとおりであります。小麦九五%、大豆九六%、濃厚飼料七二%が輸入されていることが報告されております。世界最大の農産物輸入国であるわが国が、世界最大の農産物輸出国のアメリカにたよっているこの関係は、アメリカ政府政策によってつくり出され、また、わが国政府によって、日本の工業化のために、農業切り捨て政策が推進されてきたことも明らかであります。アラブ諸国の石油の生産、供給削減によって、わが国経済は大ショックを受けたのでありますが、もしこれが輸入食糧において起こされ得ないとは、だれ人も断言できないのであります。  昨年春、国際商品たる小麦、大豆、飼料などの国際価格の高騰によってゆさぶりをかけられた体験は、まだまだ記憶に新しいものがあります。これが、世界の食糧危機ないしは国際政治のかけ引きに利用されて、供給削減に発展したときのわが国の混乱を考えるとき、まさにりつ然たるものがあります。ここにおいて、政府日本農業の再建について、真剣な方策が講じられなければならないと思うのであります。  そこで、総理に、主要農産物自給率高度化のための農業政策の再検討を行なう用意があるかどうか、それはどのような具体的構想か、また、三十万ヘクタールの農地の宅地転用をこの際撤回するかどうか、お答えを願いたいのであります。(拍手)  昨年の第四次中東戦争後のアラブ諸国による石油戦略は、世界各国、なかんずく先進工業諸国に大きな衝撃を与え、従来、ともすれば政治、軍事面においておもに論じられてまいりました国際政治は、さらに、石油など資源をはじめ、食糧、通貨等々新たな要因が加わり、中小国の資源ナショナリズムの台頭と相まって、一段と複雑なものとなっております。  こうした国際情勢の中で、わが国の外交も、これに対応した適切な再検討が必要であることは当然であります。しかし、政府のとってきた外交政策は、国際情勢の動向に対し、的確な認識も、また長期的展望も持たずに、依然として日米安保体制での惰性的な対米追随外交を続け、その結果は、相次ぐ矛盾に対して、後手後手と、そのほころびを補修することに奔命してきたのであります。昨年の第四次中東戦争とその後の石油危機しかり、また、東南アジア諸国の対日不信、反日感情の高まり、またしかりであります。  すでに、わが国の存立がわが国の平和のみで達成されるものではなく、世界の平和とともにあることは自明の理であり、資源食糧を世界じゅうに追い求め、利己的な生産拡大と利潤を追求しようとするわが国内外政にわたる体質が、すでに国際的に適用しないことを知るべきであります。(拍手)  したがって、あらゆる国との友好関係を深めていくためには、いずれかの軍事ブロックに属することではなく、等距離完全中立政策に基づく自主、平和、中立外交によらなければならないと確信をいたします。  わが党のいう等距離完全中立政策は、あくまでも、孤立化政策ではなく、世界のすべての国と友好関係を深め、平和の維持に積極的役割りを果たそうとするものであり、いわば全方向修好のための政策であり、わが国の最善の選択であると思うのであります。  もとより、この中立政策が、いかなる国際紛争に対しても中立という名で無関心を装い、自国のみの安泰をはかろうとするものではありません。民族自決と平和共存五原則に基づく立場堅持することは当然であり、その原則に照らしてわが国の態度を明確にすることはもちろんであります。政府が中東問題でとった中立という名の無策外交と根本的に異なるものであることは、言うまでもありません。(拍手)  私は、総理に対し、わが国が等距離完全中立政策をとるべきことを提案するものでありますが、総理の所信を承りたいのであります。(拍手)  田中総理は、東南アジア諸国歴訪で、タイ、インドネシアなど諸国民の非難と抗議を受けましたが、これら諸国の対日不信、反日感情の高まりの原因はどこにあったのか、その背景にある問題をどう認識しておられるのか、いままでお答えがありましたが、重ねて承りたいのであります。  日本の長年にわたる経済協力が、その本来の目的である相手国並びに相手国民の期待する経済的自立、民生安定にはたして役立っていたのかどうかを田中首相は知ったはずであります。さらに、日本の海外進出企業が、ただ商品を売りまくり、資源確保をどうするか、いかに安い労働力を得るかということのみを考え、相手国民を無視した、思い上がった利益追求主義や、多くの公害、被害を現地に与えたことが、どれほど現地国民に耐えがたいものであったかを理解したはずであると思うのであります。総理の率直な所見を求めるものであります。(拍手)  アジア諸国その他アフリカ、中東、中南米との関係において、日本企業の海外進出に関して、この際、総理は、根本的に、従来の経済協力のあり方、企業の海外における活動等について、厳格な基準を作成するなど、多くの考え直すべき点があると思うのでありますが、その所信を承りたいのであります。  次に、きわめて当面する外交課題について、若干の質問をいたします。  第一は、日中問題についてであります。  日中復交後、第一の実務協定と目されてきた日中航空協定がいまだ締結されていないことは、日中共同声明の精神に反することであります。政府は、今国会に航空協定の批准を求めることができる見通しなのかどうか、その他の実務協定並びに平和友好条約の締結の見通しを明らかにしていただきたいのであります。  第二に、すでにわれわれの指摘のとおり、石油ショックが示すように、日本外交は、日米安保体制によって、アメリカワク組みの中という国際的な評価が明らかになりました。日米関係が重要であることは、私も決して否定するものではありません。しかし、真のパートナーとしての関係を確立するため、総理は、日米安保条約を解消し、それにかわるべき日米友好不可侵条約締結を真剣に検討すべきであると思いますが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)  第三に、朝鮮問題についてであります。  日韓関係における日本経済協力並びに企業進出は、東南アジアのそれよりも以上に問題があるといわれております。その実態を調査し、再検討すべきであります。また、金大中事件の公正な解決をどうするのか、日本の報道機関に対する抑圧などに対しどのように対処されるのか、それぞれ承りたいと思うのであります。(拍手)  さらに、日朝関係国交正常化について、政府の考えを明らかにしていただきたいのであります。  次に、防衛予算はついに一兆円の大台を突破いたしました。昭和三十六年以来のわが国防衛予算の伸び率は一〇%以上、特に昭和四十四年以降の平均伸び率は一七・二%という驚異的なもので、世界各国を見ても異常な伸び率となっております。東南アジア諸国から経済侵略の非難を受け、また、軍国主義復活の警戒の目を向けられているわが国が、ますます不信を増大させることは必然であり、アジアの緊張緩和に逆行するものであります。  今日、国民が強く求めていることは生活の安定であり、国民生活防衛こそ最優先されるべきことは当然であります。(拍手)特に平和憲法との関係、国民的合意もなく、いたずらに軍事力増強をはかる政府姿勢は、きわめて危険なものといわねばなりません。さらに、総需要抑制を実効あらしめるならば、少なくとも第四次防計画の中止あるいは凍結を直ちに行なうべきであると思うが、総理見解を示していただきたいのであります。  総理、いまほど社会的不公正をなくし、社会正義の確立が求められているときはありません。「乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂う」とは、国民の切実な願望でありますが、むしろこれは、政府が衷心これに徹し、率先実行することが何より肝要であります。もしその自信がないなら、あるいはその実効があがらないときは、敢然、内閣総辞職をもってその責任を天下に明らかにするべきこと、また、その覚悟で今日の事態収拾に当たるべきであることを強く申し上げて、質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
  11. 田中角榮

    内閣総理大臣(田中角榮君) 竹入義勝君にお答えをいたします。  まず第一は、物価対策でございますが、政府は、石油関係二法等あらゆる政策手段を活用いたしまして、異常な物価の騰勢を本年上期中に鎮静をさせるべく、全力を傾注しておる次第でございます。  なお、生活必需品が大量に退蔵されておるというような事実の指摘がございましたが、そのような場合は直ちに調査を開始し、国民の期待にこたえたいと考えておるのでございます。  次は、独禁法の強化、改正についてのお話がございましたが、管理価格などの寡占対策、カルテルの排除措置の強化等につきまして、現在公取内部において検討中であり、政府といたしましては、その結果を見ながら対処をしてまいりたいと考えるのでございます。  それから、繰り延べ等に対しての問題、国土総合開発等の問題に対しての長期的展望について御指摘がございましたが、政府といたしましては、きびしい経済社会の現状に緊急に対処するための諸施策を強力に講ずる一方、国土の総合開発につきましては、長期的展望に立ちまして、着実に取り組んでいかなければならないと考えておるのでございます。また、現段階におきましては、昭和四十八年度公共事業費の繰り延べに相当する額について、四十九年度において執行のたな上げまたは再繰り延べを行なう必要はないものと、現時点では考えておるわけでございます。  また、総需要抑制策の一環といたしまして、現在の金融引き締めの体制を堅持してまいる方針でございます。  なお、中小企業金融につきましては、金融引き締めの影響が本格的に浸透する段階を迎えているので、これから一そう弾力的な対応策が必要であると考えておるわけでございます。  なお、勤労者財産形成制度につきましては、利子の非課税限度額の拡大、積み立て期間七年以上の財形住宅貯蓄につきまして税額控除の拡大等の措置を講じまして、その拡充をはかっておる次第でございます。  ただ、御提案の割り増し金の導入につきましては、何ぶんにもわが国では類例のない全く新しい制度でありまして、これが他の施策に及ぼす影響、将来の財政負担の増加の程度など、さらに検討すべき問題が多いのでございます。  社会保障につきましては、社会福祉施設入所者の処遇につきまして、毎年改善をはかってきておるところでございますが、昭和四十九年度におきましても、物価の動向、消費支出等を総合勘案しまして、その処遇費につきまして二〇%の大幅引き上げを行ない、あわせて、その他の経費につきましても、きめこまかな改善をはかっておることは、御承知のとおりでございます。  生活保護基準につきましては、従来より、国民生活の動向に対応し、実情に応じた改善をはかっており、明年度におきましても、二〇%の引き上げを行なうこととしておるわけでございます。  福祉年金につきましては、昭和四十九年度において、老齢福祉年金を現在の五千円から七千五百円に五〇%引き上げるなど、大幅な年金額の引き上げを行なうことにいたしております。これは、かつて国会で申し述べましたとおり、四十八年度には五千円、四十九年度には七千五百円、五十年度には一万円という公約を実行しておるのであります。  年金の財政方式につきましては、今後、年金受給者の急激な増加に対応して、将来にわたり、五万円年金の実質価値を維持しつつ、その給付の確保をはかっていくためには、現行の方式を維持していくことが適当であると考えておるのでございます。  なお、野党四党案の年金額は、退職者の年金額としては著しく高い額となり、勤労者の収入との均衡上、とり得ないと考えておるのでございます。  また、年金額のスライド制につきましては、年金額の実質価値を維持するために、昨年の改正で自動的な物価スライド制の導入をはかったところでございますが、財政再計算の際には、従来どおり、賃金生活水準の向上を勘案して改善をはかることとなしておるのでございます。  児童手当制度につきましては、四十九年度において段階的実施の最終年度に入ることになっておるのでございます。最近の国民生活水準及び消費者物価上昇にかんがみ、とりあえず現在の月額三千円から四千円に引き上げることにいたした次第でございます。  政府は、土地取得に関する融資の抑制、法人の土地譲渡益に対する課税の強化、特別土地保有税の新設等、各般にわたる施策の展開をはかってきたところでございます。さらに、地価凍結を含む土地対策のいわば基本法として、国土総合開発法案を御審議いただいておるところでございます。また、宅地の大量供給促進のための制度の整備、宅地開発公団の創設などを推進してまいりたいと考えております。  御提案にかかわる空閑地税につきましては、空閑地の認定をめぐるむずかしい問題があり、また、土地の再評価益に対する課税につきましても、投機のため最近取得した土地の税負担は軽く、昔から保有している土地の税負担は重いという問題があり、土地対策としては必ずしも有効ではないと考えておるのでございます。  公害対策について御答弁を申し上げます。  窒素酸化物の低減を目的とするいわゆる五十一年度の自動車排出ガス規制につきましては、すでにその方針を示してございます。この目的を達成するためには、排出ガス防止技術の開発が必要であり、今後さらに自動車メーカーの防止技術開発を促進させる所存でございます。  なお、硫黄酸化物による大気汚染につきましては、いわゆる総量規制を導入するため、大気汚染防止法の一部改正を今国会に提案、御審議をいただきたいと考えております。  次に、中小企業対策についての御発言に答えます。  政府としては、これまでも、物不足に対しては、あっせん相談所を開設し、小口需要者向けの原燃料等の確保につとめておることは、御承知のとおりでございます。  また、金融逼迫に対しましては、昨年来、政府関係中小企業金融三機関等に対して大幅な財投の追加を行なったことも事実でございます。今後とも、中小企業の事業活動に支障を生じないよう、事態の推移を注意深く見守りつつ、金融その他所要の処置をタイムリーにとってまいりたいと考えておるのでございます。  賃金問題について申し上げます。  間々申し上げておりますとおり、わが国の労働賃金は近年とみに増加しておることは、はなはだ喜ばしいことでございます。賃金交渉は労使の自主的な話し合いによって決定さるべきものでございますが、労使双方は、その影響の重大さを十分自覚し、国民経済的視野に立って、節度ある態度をとられるよう強く望んでおるのでございます。  春闘に対しましては、私がいずれ機会を見まして労使の代表とよく懇談をして、労働賃金が急激に引き上げられるというようなことや、もしも伝えられておるようなゼネストのような事態が起こって、さなきだに苦しい国民生活が一そう混乱するようなことのないように、格段の配慮を懇請する予定でございます。  農業問題についての御発言がございましたから申し上げます。  国民の主要食糧のうち、国内生産が適当なものは自給度の維持向上をはかることが重要であり、生産の停滞している麦、大豆等につきまして生産奨励措置を講じますとともに、未利用地域における農用地の開発、畜産等の大規模生産基地の建設を進めてまいりたいと考えております。  農地の転用につきましては、公共用地、住宅用地等の需要に応じ、必要な用地を円滑に供給し、地価の上昇を抑制するという観点から、一応三十万ヘクタールの目標を立てて、計画的に農地の転用をはかるべく考えておるのでございます。  なお、外国との問題でございますが、今度のASEAN諸国訪問のおりもそうでございました、またその他の国々との接触においてもそうでございますが、なるべく、外地においても、食糧基地としての機能が発揮できるところについては、日本現地との協力によって食糧基地とし、その国の食糧をまかない、また、場合によっては日本の備蓄にも充て、また、日本米を緊急援助に回しておるようなところに対する援助米の基地ともしたいというようなことで、各国との間にいろいろな相談をいたしておるわけでございます。しかし、あくまでも、日本食糧につきましては、国内で自給できるものは自給度を引き上げるべく最善の努力をすることは申すまでもありません。そしてわが国の安全と確保をはかるとともに、友邦諸国との間に合理的な協力を進めてまいりたいというのが考え方でございます。  それから、外交方針等についての御発言がございましたが、世界が直面いたしておりますエネルギー危機、通貨不安等の諸問題が、一国で解決のつく問題でないことは申すまでもないのでございます。これは各国の理解と国際協力によって初めて克服できる問題でございます。さればこそ、私は、一昨年来の首脳外交において、世界的視野に立つわが国外交を強力に推進をしてまいったのでございまして、対米追随などの指摘は当たらないわけでございます。  しかしながら、米国との緊密な関係の維持はわが国外交の重要な柱であり、かかる認識のもとに、等距離中立外交などではなく、自主積極の外交を展開してまいりたいと考えておるのでございます。  東南アジア諸国の多くは、いまだ独立後日なお浅く、国づくりの過程にあって、多くの困難に直面をしておることは、私が間々申し上げておるとおりでございます。わが国は、東南アジア諸国のかかる立場に深い同情と十分な理解を持ち、相互補完の強いきずなで結ばれているこれらの国々とのよき隣人関係の樹立につとめなければならないと思っておるのでございます。  わが国経済協力、企業活動のあり方についても御発言がございましたが、これはいつも申し上げておりますように、量的に拡大をし、活発の度合いが深まっているだけに、相手国の負担を軽減するための条件の緩和、相手国の民生に役立つものの選定、現地との協調、融和の確保等について、絶えずきめのこまかい見直しをしていくことが不可欠でございます。  私は、かつて日本と朝鮮半島が合邦時代が長くございましたが、その後韓国その他の人々の意見を伺うときに、長い合邦の歴史の中で、いまでも民族の心の中に植えつけられておるものは、日本からノリの栽培を持ってきてわれわれに教えた、それから日本教育制度、特に義務教育制度は今日でも守っていけるすばらしいものであるというように、やはり経済的なものよりも精神的なもの、ほんとの生活の中に根をおろすものということが非常に大切だということで、今度のASEAN五が国訪問で、しみじみたる思いでございました。これはかっての台湾統治の中でも、そのようなほんとうに民族的に相結ばれる心の触れ合いというものが、いまでも高く評価をされておるという一事をもってしても言えるものでございます。だから、大都市における企業活動というものよりも、山の中に入って、一日一本、二本というラワンの木を切っておるような人たちと住民との間には、非常に、兄弟以上の、さすがに日本人なりという高い評価があることを忘れてはなりません。われわれはそういうこまかい配慮をもって、真に信頼をし、真に理解を得られるような協力の実をあげなければならない、こう考えておるのでございます。(拍手)  当面する外交課題のうち、日中航空協定に関しての御発言がございましたが、日中航空協定に関連する問題につきましては、先般大平外務大臣が訪中をして、基本的理解が得られたと考えられますので、早急に国内の結論を出すよう努力しておる次第でございます。できるだけすみやかに、中国側と協定交渉を行ない、今国会にも提出したいと考えておるのでございます。  また、日米安全保障条約にかわって、日米友好不可侵条約をもってしてはどうかとの御指摘がございましたが、これは日米安全保障条約堅持すると申し上げておるのでございまして、御理解をいただきたいと思います。  また、対韓経済協力の適正なあり方につきましては、これまでも十分留意してまいりましたが、一そう遺漏なきを期するため、対韓経済協力の実態について近く調査団を韓国に派遣したいと考えておるのでございます。間々申し上げておりますが、日韓というものは歴史的にも長い友好関係がございますし、かつて一つの国をつくっておったお互いでございますし、隣国である韓国の民生の安定、経済の向上ということに対しては深い関心を持ち、協力をするのが日本立場でもあると考えておるわけでございます。  北朝鮮との関係につきましては、漸進的に積み上げていく所存でございますことは、たびたび申し上げておるとおりでございます。  最後に、防衛関係費等について申し上げますが、わが国防衛費の一般会計歳出予算に占める割合は、ここ二十年間ほぼ一貫して低下しており、国民総生産に占める比率も諸外国に比してはるかに低位に置かれているのが実態でございます。総需要抑制の見地から、四次防の主要項目にかかる装備品の一部について調達を繰り延べることにいたしましたが、四次防を中止をすることは考えておらないのでございます。  なお、平和愛好国としてわが国のイメージは定着をしており、私が歴訪したいずれの国におきましても、日本が軍国主義復活のごときことは一切聞かれませんでした。だから、やはり日本人も自信を持って、私は、日本は真の平和愛好国家として世界の平和に寄与したい、こう言ったら、皆拍手しておるわけでございますから、平和に対してはみずからが自信を持つことであります。(拍手)そして、この大目的達成のために邁進をすること以外にないということを申し上げて、答弁を終わります。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
  12. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず、物価安定の手段、施策ということでございますが、これは総理からお答えがありましたので、格別私から申し上げないことにいたします。要は、総需要抑制である、財政金融抑制方針をとり、かつ、国民生活安定緊急措置法の適用、運用よろしきを得れば、私は、これはかなり早い機会に物価の安定を実現し得る、かように考えます。  それから、預金金利の大幅引き上げを実行せよ、こういうお話でございます。それはそうしております。しかし、今日、現時点以上にすると、これは貸し出しのほうにも影響する、さようなことで、慎重に考えたい、かように考えます。  それから、集まった預金をどこへ運用するのだ、それは総需要抑制政策の見地に従って運用する、こういうふうに申し上げます。  それから、給与所得控除を二百二十万円に引き上げよというお話でございます。これは先ほどもお答えしたのですが、百七十万円というところで精一ぱいです。私は、これは御評価いただいていいのではないか、こういうふうに思います。二百二十万円は、少しこれは無理な御注文だ、かように考えます。  また、中堅以上の人の減税はやめたらどうか、こういうお話でございますが、全体の事業所得者等とのバランスから見まして、ある程度の税率調整、そういうようなものが必要じゃないか、さように考えております。  それから、財形貯蓄につきましては、これは総理からいま詳しく申し上げましたので、これは省略いたします。  それから、法人税につきまして各種の御提案があったわけであります。法人税率を、政府案では四〇%になっておるが、四二%にせい、こういうお話でございます。これはいま四〇%でも、実効税率にいたしますと四九・五%になるのです。そういう状態でありますので、まず四〇%ぐらいのところが妥当ではあるまいか、さように考えます。  また、累進税率を法人税に導入せよ、こういうお話でございますが、法人は自然人と異なっております。規模におきましても、組織におきましても、株主構成でも、千差万別である。これに段階制の累進税率を導入するということは、これは不可能である、さように考えます。  また、租税特別措置につきまして、これを全廃せよというお話でございますが、この特別措置は、皆さまの御主張になられる中小企業対策でありますとか、あるいは公害対策でありますとか、そういう特殊な目的を持っておるものが大部分でありますので、これを撤廃するということはかなりむずかしい問題であろう、かように考えておるのであります。しかし、これらの特別措置の中には、既得権視されるようなものがある傾向があります。したがいまして、これは毎年毎年見直しをいたしまして、与えられた任務を終えたものにつきましてはこれを廃止していくという方針で臨みたい。現に、四十九年度におきましても、そういう措置をとります。  交際費課税につきまして、これは若干の課税強化を考えております。  それから、広告課税をすべしというようなお話でございますが、これは広告というものが一体どういうものであるかということを確定することは非常に困難でございます。そういうような問題がありまして、一応頭にはある問題ではございまするけれども、まだ結論を得るに至らず、なかなか困難な問題である、かように考えております。  また、中小企業の税率引き下げを断行せよというお話でございますが、引き下げはなかなかむずかしい。むずかしゅうございますが、今回、法人税全体の税率の引き上げをいたしますが、中小企業につきましては、従来の軽減税率を据え置くなどの配慮を行なうことにいたしております。  次に、超過負担の整理の問題、地方財政関係でございます。  この問題につきましては、四十七年度に調査を行ないまして、四十八年度、四十九年度にこれが整理を行なうという計画を進めておるのでございます。このプログラムに従いまして、四十九年度予算におきましては、この問題の解消ということを実現するということで鋭意努力をいたしまして、そのような予算を編成いたしております。  ただ、この問題は、物価がいま非常に動いておる、そういう状態でありますので、なかなか完全な、きれいな整理というのは、ある特定の時点に立って見まするとあるいは問題が起こるようなことがあるかもしれません。そういう際には、そういう実態に応じまして適正に善処する考えでございます。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕
  13. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 外交問題につきましては、おおむね総理から御答弁がありました。しいて申せば、二つ私から補足させていただきたいと思います。  一つは、航空協定以外の実務協定と平和友好条約の締結の段取りでございます。  これにつきましては、海運、漁業等があるわけでございますが、先般訪中の際、中国側首脳と意見を交換いたしまして、できるだけ早期に締結しようじゃないかということで意見の一致を見まして、今後の段取りについて相談をいたしました。  それから、日中平和友好条約の問題でございますが、これは今後の日中間を律する長期的展望に立ちました大事な基本的な条約でございます。われわれといたしましては、りっぱな内容のものにいたしたいと考えております。かかる観点に立ちまして、条約の内容、締結の段取り等につきまして、中国側の考えもあらましまず承知しなければならぬと考えておりまして、寄り寄り接触を始めておるわけでございまして、各種実務協定の進め方も踏まえながら、今後中国側と打ち合わせを行なっていきたいと考えております。  それから第二の問題は、韓国におきまして、先般大統領の緊急措置というのがとられて、報道規制が行なわれた。わが国の記者諸君に対しましてもこの規制が及ぶということになると、ゆゆしい問題でないかという意味の御指摘でございましたが、この緊急措置は韓国の国内措置でございますので、私どもはとやかくコメントする立場にありません。しかしながら、表現と報道の自由というのは民主主義の基本的な原則でございまして、わが国の報道機関にかような規制が加えられるということは非常に残念なことでございますので、早くこの撤廃をわれわれは希望し、この旨は韓国政府にも当方から伝えてございます。     ―――――――――――――
  14. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) 春日一幸君。   〔春日一幸君登壇〕
  15. 春日一幸

    ○春日一幸君 私は、民社党を代表し、わが国政が当面する重要課題について、政府方針をただしたいと存じます。(拍手)  まず、冒頭に、田中内閣物価高インフレに対する政治責任と今後の政策路線について質問いたします。  田中内閣は、一昨年七月に発足してここに一年六カ月、この間、田中首相物価公害、住宅など、わが国政が直面する重要課題に対して、日本列島改造構想を高らかにかざして、その高度成長政策を推進してこられました。しかしながら、その政策はことごとく逆の結果をあらわし、現に物価は日々に劇的な上昇を続け、日本列島はいまやインフレの黒煙におおわれました。  ここに、田中内閣の四十八年度の経済見通しによれば、消費者物価上昇は五・五%、卸売り物価上昇は二%という想定でありましたが、これに対し、去る十二月における日銀集計による実勢は、消費者物価の前年度比上昇率一七%、卸売り物価は同じく二九%上昇という、これはまさに敗戦直後の悪性インフレさながらの状態であります。(拍手)これが田中内閣政治の集大成であることを、われわれはここにあらためて直視するものであります。もとより、ここに燃え盛っているインフレの炎は、それが石油外圧によってさらに激しく熱気を加えたものとはいえ、だからといって、長年にわたる成長一本やりの自民党政治、それをあおり立て、また、事ごとに対策を誤った田中内閣政治責任は、いささかも免れるところはありません。  総理は、しばしば物価の安定を最優先にすると公言してこられましたが、今日このように国民生活を極度に圧迫しているインフレの現実を直視されて、その御心境はいかがでありますか。  また、インフレを押えることができなければ政治責任をとるとも述べてまいられましたが、このような事態に対し、いかなる政治責任をおとりになる御所存か。  総理は、その施政方針演説で、改めるべきは謙虚に改めると申されましたが、ここに総理が特に改めねばならぬと反省されているその政策の問題点は何々か、この際、総理よりその御反省とともに、インフレ克服のための今後の具体策をお示し願いたい。(拍手)  次は、田中総理日本列島改造構想についてお伺いいたします。  田中首相は、その「日本列島改造論」の中で、日本経済の未来像として、昭和六十年には三百兆円経済も可能というバラ色の夢を掲げ、それに基づけば、十年後には世界の資源エネルギー源の三〇%以上を輸入しなければならなくなるとして、そのための日本列島改造の青写真を描いて、国の内外に示されました。  当時、私どもは、その構想に対し、それはブルドーザーの響きと、ハンマーのうなりの幻覚だけでも地価を暴騰させ、インフレを激化させる過激思想のたぐいと指摘して、その後も引き続き田中首相の猛省を求めてまいりました。(拍手)かりに、高度成長政策論の上では、理論上そのような数値を数えることができるとしても、現実の問題として、日本だけが世界の資源エネルギー源の三〇%以上をひとり占めにすることが許されるわけがありません。  インドの詩人、思想家、タゴール翁が、一九一六年訪日のおり、慶応義塾で行なった講演で、いま日本が掲げている「適者生存」という標語の意味は、それはさっさと自分の好きなことをやれ、そしてそれが他人にどんな損失をもたらそうと気にとめるなということである、しかし、それはあきめくらのモットーであると述べております。まことに、田中首相の思想とその政治姿勢は、それはタゴール翁がいみじくも喝破された、あの戦前の日本帝国主義の思想と一脈相通ずるもののあることを痛感せずにはおられません。  今回の石油ショックも、東南アジア諸国における学生集団の首相に対する抗議デモも、まさにそれは頂門の一針であります。  高度成長政策の行き着く先は、あたかも帝国主義の終着駅があのようなむざんな敗北であったように、それはまさしく日本経済の破局にほかならないことを、田中首相はいまこそ心底に銘記せらるべきであります。  すなわち、あの「日本列島改造論」は、わが国政の進路を誤たしめるおそれあるものとの反省に立たれ、総理は、この構想を全的に撤回して、その書籍の頒布は直ちにこれを停止するとともに、この際、この構想に基づく、かの新国総法案は、いさぎよく取り下げるべきであると思うが、ここにあらためて総理の御見解を承りたい。(拍手)  次は、わが国経済見通しと、それに対する政府の対応策について質問いたします。  いま日本経済は、インフレの炎の中に、すでに焼けただれたデフレの骸骨が折れ重なっているといった、それは不気味な様相を呈しております。現に福田蔵相は、その景気抑制型予算金融引き締めを武器として、短期決戦によってインフレ鎮静の成果を確保しようとしておられます。  かくて、インフレの熱風の吹きつのる中で、一方においては不況の寒波がりんりんとにじり寄っております。したがって、政府は、ここにインフレとデフレの二正面作戦を念頭に置いて、ともに万全を期さなければならぬが、政府対策はおよそどのようなものか。  この際、私が特に政府に善処を求めたいことのその一つは、大企業や重要物資関連企業がこの混乱に悪乗りしてむさぼる暴利に対する追及であり、他の一つは、この動転の中であえいでいる弱小企業に対する手厚い救済策についてであります。ここにインフレの高進の中で、中小企業国民の困窮とは全く対蹠的に、ひとり特定の大企業がわが世の春を謳歌している、このような秩序の乱脈を政府一体何と見るか。  伝えられるところによれば、これら超過利潤追及の措置については、政府はこれを議員立法にゆだねる方針とのことであるが、かかる社会正義の本質に触れる重要案件は、当然、政府責任において立法措置をとるべきではありませんか。ことさらにそれを避ける理由は何か、国民の納得できるように御説明を願いたい。(拍手)  なお、政府は、引き締め政策による金融逼迫に備えて、今後は財政金融の重点を特に中小企業や農漁民、勤労大衆に置いて、経済的弱者の救済に特段の施策を講ずる必要があると考えるが、これに対する政府対策方針はいかがでありますか。  いまや日本経済の危局に立つわれわれは、いまこそ、従来の行きがかりを一てきし、社会正義国民連帯の原理に徹して、ここに新しい政治路線を切り開かねばなりません。それは発想の転換であり、政策の転換であり、究極には政治そのものを転換することであります。すなわち、生産第一の高度成長政策と完全に訣別して、何はともあれ、国民生活の安定に向かって百八十度の政策転換を断行することであります。  この際、田中総理、福田蔵相より、これらの諸点に対する政府の態度、方針をお示しを願いたい。(拍手)  次は、国民生活安定のための政府の行政措置について質問いたします。  ここに想起すべきことは、欧米石油消費政府が今回の石油ショックに対応したその機敏な行政措置についてであります。すなわち、米政府は、十月六日の紛争発生三日後の九日には、石油の消費節減の大方針を全国民に向かって呼びかけ、また、英国、フランス、イタリア等では、七日後の十三日に、西独の場合は十月十七日に、そしてオランダなどその他ヨーロッパ数カ国は十月中に、いずれも必要な措置を講じ、この緊急事態に対応する体制を整えました。これに比べ、わが国政府対策ははなはだしくおくれをとり、石油消費規制の法律が成立したのは、実に紛争発生後二カ月半以上を経過した十二月下旬でありました。  かくて、その施策は後手に回って効力をそぎ、業者は先高を見越して売り惜しみ、消費者は政治不信にかられて買いだめに狂奔し、この動きはたちまち広範な日常物資に波及して、ついに国民経済はこのような混乱状態におちいりました。  ここに納得できないことは、少なくともあの石油関係二法の制定以後における政府のその行政執行のはなはだしき停滞についてであります。(拍手)この法律は、国民生活安定のために、政府に対し特に緊急な措置を講ぜしめる必要ありとして、国会は実に昼夜を分かたずして審議を急いだものでありました。しかるに、この法律執行に必要な政令が公布されたのは、法制定後実に三週間を経た一月十一日のことであり、また、肝心の生活関連物資の指定は、本日までに灯油とプロパンの二品目にとどまり、その他、生活に関連度の高い他の重要物資については、いまだほとんど法上の措置はとられておりません。(拍手)  かくて、生活物資価格政府をしり目に日々に値上がりを続けております。これは一体どうしたことか。これでは、国会が深夜審議まで強行してこの法律の成立を急いだかいがないではありませんか。  いまや諸物価はまさに狂乱状態にあります。内田経企庁長官らは、その原因を消費者の買いだめにあると言って、ひとり消費者をきめつけておりますが、ここに生活維持のため、やむにやまれず買いさがしに身をもむ主婦たちの苦労が政府には理解できませんか。さらには、買いだめをしないで、いまやとほうにくれておる大多数の消費者は、この先一体どうしたら生活物資確保できるのでありますか。日々に高まる政治不信とモラルの退廃、まこと政府の行政責任は重大であります。(拍手)  そこでお尋ねしたいことの第一は、このように行政措置がはなはだしく手間どっておる理由は何か。  第二は、国民生活物資を正常に入手できるようになるには、この先どれほどの日数を要するか。  第三は、物価を安定させるめど政府は本年の何月ごろに置いておるか。総理は、昨日の本会議で、それは早いほどよいとか、また一-三、四-六などと無責任答弁を行なっておりますが、国民の関心は深刻であります。  以上三点に対して、総理、通産相より御答弁を願いたい。(拍手)  次は、外交問題について質問いたします。  わが国外交は、対ソ、対中平和条約、それに日韓問題をはじめ、幾多の重要課題を山積しておりますが、本日は、中東問題とともに、今後の外交のあり方について、政府方針をただしたいと存じます。  まず最初に、今回の中東問題を教訓として、今後のわが国外交の基本姿勢について質問いたします。  わが国の外交は、従来、ことごとに米国の肩に寄りかかり、本日までもっぱら対米依存政策のぬるま湯につかってまいりました。今回ここに、石油ショックの一撃によってたちまちわが国経済が粗漏状態におちいったことによって、国民はいまさらながら他国依存のむなしさを身をもって痛感しているところであります。  政府わが国外交の基軸を日米友好関係の維持に置くことは理解できるといたしましても、だからといって、それはわが国の主体性を滅却したものであってはなりません。現に、昨年六月の、アメリカによる一方的な大豆輸出規制措置や、今回の石油危機におけるアメリカのきわめて冷厳な態度等を思い合わせて、わが国は日米友好関係におけるアメリカ側の限界をここにしかと見定めなければなりません。資源が豊富で、広大な領土を持つ大国アメリカと、これに対して、資源が乏しく、したがって工業立国以外に立ち行く道のないわが国とでは、国際社会における日米間の共同歩調については、そこにおのずから限界がありましょう  いまこそ、わが国は、従来の惰性から脱却し、  一大決意をもって、アジア外交はもとより、中東外交、西欧外交、その他すべての国々との外交関係について、自主外交の基本姿勢に立って、これを正しく立て直すべきときであると思うが、政府見解はいかがでありますか、総理、外相の御見解を承りたい。(拍手)  次は、中東紛争に対する政府の態度、方針について質問いたします。  ここに中東紛争の解決は、世界のエネルギーである石油問題の解決に不可欠な要件であるばかりでなく、もしもこの紛争が今後さらに悪化するならば、それはさらに大いなる世界的紛争への太い導火線となるおそれのあるものとして、全世界は恐怖のまなこでその推移を見詰めております。したがって、この中東紛争に対しては、すべての国々がその平和的処理に向かって誠意を尽くして協力しなければなりません。  このほど、三木副総理、中曽根通産大臣らがアラブ諸国を訪問され、さまざま努力を尽くされたことに対し、私は深く敬意を表します。しかしながら、あれは客観的には石油確保のための応急の手段と見られ、あれでわが国中東政策の基本が打ち出されたものとは理解できません。よって、わが国は、ここにあらためて本来あるべき対中東政策の基本を早急に確立すべきであると思うが、政府方針はいかがでありますか。  なお、この際、それに関連して、当面する次の諸点について政府の態度、方針をお示し願いたい。  その第一は、中東紛争の根底にあるパレスチナ人の主権的独立の願望を政府はどのように受けとめておるか。政府はそれに協力する意思はあるかどうか。その意思があらば、それに対してどのような協力を行なう方針か。  第二は、十一月の官房長官談話に示された、あの、イスラエルに対するわが国の関係を再検討するということは、具体的にはいかなる意図を持つものか。なお、その意図に基づく再検討はその後どのように行なわれたか。  第三は、イスラエル、エジプト両軍の兵力引き離し協定の成立に基づいて、中東紛争は、シリアの動向をも含め、これが完全なる和平に到達するには今後どれほどの日数を要するものであろうか。  第四は、この和平に向かっての軍事協定成立の各段階において、アラブ諸国の石油供給制限はどのように緩和されることになるものであろうか。  以上の諸点について、総理、外相より、政府方針並びにその見通しを承りたい。(拍手)  次は、わが国経済外交のあり方について質問いたします。  戦後における日本経済外交の実態は、それは日本企業利益を至上目的とした商売本位の、言うならば、それは単なる商業活動のごときものでありました。すなわち、相手国をただ商品と資本を売り込むマーケットとしてしか考えず、ひたすら企業利益中心として、国内における高度成長と同様に、しゃにむにそれを推進してきたのが、これまでの日本経済外交であります。  東南アジアに対する賠償と経済協力も、それは結果として日本企業の進出に大きな役割りを果たしたものであって、その真の受益者はだれであったか、この際、わが国はこのことを真摯に反省しなければなりません。  ここに、東南アジアにおける日貨排斥や田中首相の訪問に対する学生の抗議デモのごときは、戦後日本経済外交に対する東南アジア民衆の不信のあらわれであります。  わが国は、ここに過去を反省して今後を戒め、いやしくもエコノミックアニマルなどのののしりを受けないよう、わけても経済協力にあっては、相手国の要望を第一義として、そのあり方にあやまちなきを期さなければなりません。特に資源国に対しては、その資源に対する当該国の主権権利を尊重するとともに、その国民が真に求めておるものに対する誠実な対応を怠ってはなりません。(拍手)  政府は、今回の石油ショック、東南アジアの学生デモの教訓に立って、ここに担当国務大臣の新設を契機に、この際、海外経済協力憲章のごときものを国の基本方針として厳粛に明定し、あわせて一方、在外公館に対し、経済協力に関する正しき認識の徹底とその人材の拡充をはかるなど、もって今後の経済外交に万全を期すべきであると思うが、総理、外相よりその方針をお述べいただきたい。(拍手)  次は、資源産出国が強行するカルテル的共同行為に対するわが国の対応策について質問いたします。  アラブ産油国は、連合して石油供給の制限並びに価格の協定を行なっております。このため、先進工業国ばかりでなく、石油消費国は一大恐慌に見舞われております。産油国の立場に立てば、これは自国防衛の手段としての論拠を持ち、また、それは国益確保資源温存の措置としてその正当性を主張することはできましょう。しかしながら、この反面、われわれがまこと深刻なおそれを抱くことは、もしもこれらの措置が一方的に拡大されていくときは、これが新たな、そして大規模な国際紛争に余儀なくエスカレートしていく危険性のあることについてであります。(拍手)  すでに、米国防長官シュレジンジャーが、このほど、テレビ演説で、アラブ諸国が石油禁輸をあまり極端に推し進めた場合、米政府としては、世論に押されて武力を行使することもあり得ると言明したことは、われわれにとってまさに重大な衝撃でありました。すでにこのように新たな国際紛争の萌芽が現実に芽ばえつつあります。われわれは、世界の良識が、第二次世界大戦の教訓に立って、戦後三十年営々として築いてきた自由と平和、共存共栄の理想をここで消滅させてはなりません。  私は、この意味で、わが国政府は、今後あらゆる国際会議の機会をとらえ、アラブ諸国立場を理解しつつも、アラブ諸国、イスラエルをはじめ全世界の国々に対し、この際、国際連帯の良識に基づいて、おのおのがそれぞれに節度を守るべきであることを積極的に呼びかけるべきであると思うが、政府見解はいかがでありますか。総理、外相より、政府対策方針を承りたい。(拍手)  次は、当面する内政上の重要問題について質問いたします。  まず最初に、土地改革の断行について伺います。  土地は人間の生活基盤であり、いわば国民が利用するためのものであって、それは個人が財産として所有するためのものではありません。土地政策は、この土地利用の公理に立って確立されなければなりません。明治維新の版籍奉還、第二次大戦後の農地改革、いずれもこの基本理念に基づいて行なわれてまいりました。もはや第三次土地改革を断行すべきときであります。(拍手)  土地政策上最も緊急を要することは、地価の凍結であります。地価の凍結土地改革のかなめをなすものであり、これを欠いた土地政策は一片の作文にしかすぎないことは、ここ十年来の数々の土地政策が何らその政策効果をあらわさなかったことによって明白であります。(拍手)  次は、都道府県ごとに土地利用公社を設置し、この土地利用公社が公定価格土地の一手売買を行ない、もって土地国民の福祉のために活用することであります。要するに、土地は国家の国土であって、それは個人の金もうけや投機の対象にすべきものではありません。(拍手)  政府は、これらの内容を織り込み、すみやかに土地利用基本法を制定して、現に物価高インフレの先導的暴力をほしいままにしている土地問題、この際、これを根本的に解決すべきであると思うが、政府見解はいかがでありますか。総理、蔵相よりの御答弁を求めます。(拍手)  次は、政府農地大幅転用方針について重ねて質問いたします。  政府は、昨年十一月、田中首相の指示に基づき、農地三十万ヘクタールを一挙に宅地に転用する方針を決定されました。まことに、かかる決定は、土地政策の上からも、農業政策の上からも、二重、三重のあやまちをおかすものであり、これは土地政策の断片を逆コースに向かって暴走させたものと断ぜざるを得ません。(拍手)  総理の地価対策は、従来ともに、地価を下げるには大量の用地を供給すればよいという、それは単純な需要と供給の均衡論によるものでありました。しかしながら、従来のその実績はいかがでありましたか。現に、転用を認められた農地の大半は次々に不動産業者に買い占められ、たちまちそれは投機商品に変貌し、それら転用農地は、現に、地価抑制どころか、逆に地価のつり上げの役割りを果たしております。  すなわち、政府は、このような農地の宅地転用の推進が、まこと宅地造成のためならば、それは都市計画法による市街化区域、調整区域などの線引きの改定を先行させるべきものであり、また、地価抑制のためならば、それはもはや実効をあらわし得ないものであることを知るべきであります。政府の御所見はいかがでありますか。  なおまた、総理は、国民経済における農業の役割りをどのように位置づけておるのであるか。ここに、わが国食糧自給率は、三十六年度に八六%であったものが、四十六年度には七二%に低下しております。また、学者の試算によれば、オリジナルカロリーで見て、それはわずかに四〇%そこそこのものとされております。ここに、世界の食糧事情は、農業生産が天候に左右される不安定なものであるばかりか、一方、世界全体の需要の増大に伴い、その需給の均衡はかなり窮屈な状態に傾いております。ここに石油資源の不足がわが国経済をこのように惑乱させておることにかんがみ、もしも食糧がそのような不足を来たすことになるならば、それによる社会不安は、想像するだにそらおそろしきものとなりましょう。(拍手)  政府は、まずもって食糧自給率の向上に最大限の努力を傾けるべきであります。それは、農地を減らすことではなく、農地をふやすことであります。  政府は、国際経済の長期的展望に立ち、かつは食糧政策が広義の安全保障政策の中において中枢的地位を占めるものであることを念頭に置かれて、あの農地大幅転用措置は、この際これを取りやめるとともに、あわせて農家が安んじて主要食糧の増産に従事することができますよう、農政を総合的に充実すべきであると考えるが、以上の諸点に対して総理の御見解を承りたい。(拍手)  次は、減税政策と、あわせて福祉予算について質問いたします。  いまや、インフレの高潮は、国民生活を日増しに生活苦の中に押し沈めつつあります。そして一方では、インフレ対策としての金融引き締めによって弱小企業は倒産に追いやられ、その国民的被害はまさに激甚であります。  そこで、本年度の減税は、この認識に立って、第一には、低所得者を物価高から防衛するために、第二には、富の不平等を是正するために、第三には、零細企業を保護するために、以上の三つを目標の主柱として最大限に断行せらるべきであります。  その第一については、標準世帯の所得税課税最低限を年収二百万円以上に引き上げることであり、その第二については、法人税は、中小企業は除き、一般税率を四二%に引き上げるとともに、かつてシャウプ勧告にも示された富裕税を、この際、高額の資産所有者を対象に創設することであり、第三については、弱小企業に対し税負担の思い切った軽減をはかるため、まず事業税における事業主報酬部分は、これを国税同様に課税対象外に置くこととし、また、同族会社の留保所得課税を廃止することなどであります。  政府の本年度減税計画は、従来のそれに比べ評価できる部分もありますけれども、その中身は依然として幾多の問題を未解決のままに内蔵しております。以上三件の減税案は、インフレにあえぐ国民生活防衛のために、租税政策上必要最小限度の措置と考えますが、政府方針はいかがでありますか。(拍手)  なお、あわせて福祉予算について伺います。  物価高インフレの最大の被害者は、恩給、年金生活者、老人、身障者、生活保護世帯など、それは生活力の弱い社会保障の対象者たちであります。政府は、本年度予算において、物価にスライドする方向で給付の改定を行なっているとはいえ、その基準の低さから計算して、この程度の上積みではとうてい効果を期待することはできません。よって、この際、これら給付生活者等の深刻な困窮をささえるため、各種福祉予算は特に大幅に増額すべきであると思うが、政府方針はいかがでありますか。  次は、重要産業に対する基本政策の確立と、物価安定国民会議設置について、いささか所見を添えて政府見解をただしたいと存じます。  わが党は、資本主義を改革する第一歩として、今般、重要産業に対する基本政策の確立と物価安定国民会議設置を提唱しております。  およそ国民生活に大きな影響を及ぼす経済力を持つ企業は、ただその企業の自己資本だけによって成り立っておるものではなく、それは労働者、下請業者、消費者、それに国、公共団体など、幾多の企業外の総合的な協力の上に成り立っておるものであって、それは社会的な存在と見るべきものであります。したがって、そのような社会的存在たる企業は、その企業活動とともに、あわせて社会的責任を果たさなければなりません。そのためには、その企業活動の基本に関する事項の意思決定にあたって、今後はそれを企業の取締役会だけの専断にゆだねることなく、企業外部からも社会的代表者をそれに参加せしめることとし、ここに新しく企業ごとに経営委員会のごときものを設けさせる必要があると考えます。  このようにして、企業が常に社会的効果を念頭に据えて運営されまするならば、これによって、公害の防除、公正な価格の形成、投機やインフレ利潤の抑制、あわせて、売り惜しみ買い占めの自己規制など、弱肉強食的資本主義の弊害を大幅に緩和することができましょう。(拍手)  次は、物価安定国民会議設置の必要性についてその骨子を述べますが、ここに戦後二十数年間、物価は恒常的に上昇し続けてきたし、わが国経済は今後もこの傾向を持続するものと見られます。このゆえに、物価安定対策は長期的な政治問題であり、また、これは全国民的な生活課題であります。したがって、物価問題は、単に行政府の一部の所管に一任しておくべきものではなく、これは国民規模によって総合的に解決に取り組むべき問題であると考えます。  すなわち、この物価安定のための国民組織は、各地域ごとにその生活現場で物資の生産と流通について社会的監視を行ない、不公正な経済活動を摘発し、また、政策のひずみについて政府に献策を行なうなど、国の施策の効果を総合的に確保せんとするものであります。  以上二つのわが民社党の提案に対し、政府見解はいかがでありますか、総理、通産大臣より御所見をお伺いをいたしたい。(拍手)  以上、私は、わが国政が当面する重要課題について質問いたしましたが、最後に、今後の政局の動向について、総理の御所見をただしたいと存じます。  このほど、さる大新聞の世論調査は、政府支持率が二二%に低下し、すなわち、国民の七八%が田中内閣に背を向けておることを明らかにいたしました。  この際、特にお考え願いたいことは、時の政府が無為無策におちいって国民の信頼を失ったとき、力強き者が横暴にふるまうようになったとき、加えて悪徳業者売り惜しみ、買いだめを行なって暴利をむさぼるようになったとき、このような状況がからまり合って国民大衆の生活が困窮にさらされるようになったとき、国民のふんまんはやがてどのような形で激発するかという、このことについてであります。  ここにおそるべきは人心の荒廃であり、警戒すべきは左右全体主義勢力の膨張であります。(拍手)すでにその傾向が日々に高まっております。  このようにして、わが国議会制民主政治はまさに歴史的な危機に立っております。いまこそ、わが国政は根本的に総合的に刷新されなければなりません。  すなわち、長年にわたる保守政治のこの暗たんたる行き詰まりを打開して、ここに明るいあすへの進路を切り開くためには、それは国民に信頼される革新政権を樹立して、その政権が健全なる革新政策を断行する以外に道はないと思うが、総理は、この際、勝海舟の烱眼に学び、一日先見の明あってそのように断念される考えはないか、あわせて、この際、総理の抱かれる今後の政局の展望について御所信のほどをお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
  16. 田中角榮

    内閣総理大臣(田中角榮君) 春日一幸君にお答えをいたします。  第一に、政治責任と今後の政策路線についての御発言について答えます。  物価情勢はきわめて憂慮すべき事態を迎えていることは、間々申し上げておるとおりでございます。政府は、あらゆる政策手段を活用しまして、本年上期中に鎮静化さすべく全力を傾注しておるのでございます。この難局を切り抜けまして国民生活を安定に導くことが、政治責任を果たすゆえんであると考えておるのでございます。  この難局に対処する努力を通じて、これまでの資源多消費型の技術、産業構造、生活様式などを省資源型なものに一大転換するという、社会体質改善の長期的課題とも取り組んでまいりたいと考えます。  そして、使い捨ての生活様式から訣別し、よいものを大切に、心を込めて使うという伝統を見つけつつ、量の豊かさから質の豊かさへ、物質的豊かさから心の豊かさへと、軌道修正を行なってまいりたいと考えておるのでございます。これは単なる耐乏生活への復帰ではなく、新しい安定と繁栄の設計であり、真に豊かな福祉社会を創造する努力にもつながるものと確信をしておるのであります。  列島改造論撤回ということについての御発言でございますが、列島改造論に私はこだわって御答弁を申し上げるつもりはございません。ございませんが、狭隘な国土と乏しい資源という制約条件の中で、一億をこえる国民が長い将来にわたって豊かな生活を享受するためには、長期的展望に立って国土利用の再編成をはかり、過密過疎を解消して国土の均衡ある発展をはかることが必要であることは、言うまでもないのでございます。当面、総需要抑制という現実がございますが、しかし、そうかといって、当面に目を奪われて、あすのこと、十年後のこと、わが子の時代のことを考えないわけにはまいらないわけでございます。  あとから御質問がございました土地の利用計画と一緒に申し上げますと、政府が二、三日前に経済見通しで発表した人口の総数は、一億一千万人でございます。しかし、東京を中心とする関東だけにも、国民の約三分の一、三千五百万人近い人が住んでおるのでございます。しかも、東京、大阪、名古屋という五十キロ圏という小さなところに総人口の三分の一以上が集中しておって、きれいな水、きれいな緑、それから地価を下げる、交通の混乱を排除していくということが、一体可能であるかどうかということをよくお考えになっていただきたい。それでは高層をやろうといえば、日照権の問題があって、高層は反対、大規模な改造にも反対と言われておったのでは、どうして一体理想の生活を築くのか。第一、このような過密の中では、人心は荒廃して、心の豊かさを養うことはできません。そういう意味で、狭いながらも、十年後、二十年後を考えながら、日本全国土を改造しでいかなければならぬ、総合的利用をしていかなければならぬ。これはもう算術問題であって、私はそんなむずかしい問題だと思っていないのです。絶対に必要なんです。(拍手)これはそういう意味で、春日さん、よく知っているはずです。どうぞひとつそこは十分お考えになっていただいて、列島改造などという論文だけにとらわれないで、あの中には、一〇%、八・五%、七%、五%のときのことまでちゃんと書いてあるのですから、どうも攻撃するための数字だけを読んで――そうじゃないでしょう、みんな読んでいるんだが、そこだけ取り上げて演説をするということでは、国民のための政治にはならないのであります。(拍手)  それから、今次の石油問題を契機にして、いままでの考えを変えてはどうだということでございますが、それはそのとおりでございまして、反省すべきは反省しておる、転換すべきは転換すると言っておるのです。春日さんも時を同じくして議席を持ったわけですし、同じようにしていろいろな問題を検討し、討議をしてきたからおわかりでありますが、敗戦後のあの状態はどうだったでしょう。無資力、無資源、まず職場を得ることが国会の最大の議題であったじゃありませんか。まずわれわれが職を得なければならない、国際競争力をつちかわなければならない、そうすることによってわれわれの生活基盤を確立する以外にないと言ったじゃありませんか。そのためにお互いは与野党で毎日毎日全精力をあげて議論をしてきたじゃありませんか。日本人の勤勉さは、あの困難を乗り越えて今日をちゃんとつくり上げてきたのです。(拍手)だから、この政策は間違いはないのです。  ただ、第一の敗戦経済から第二の自立経済を越して、今度は国際経済であって、自分だけが太るようなことが許されないときになったのと、東南アジアの友邦諸国に対しても、日本の肥料を削っても東南アジアに対して肥料を輸出しなければ、東南アジアの友邦の食糧事情は日本以上に困難なんですと、こういう状態日本が置かれておるのでありますから、だから日本は、そういう国際的な現実を踏まえて、日本産業構造も徐々に変えてまいらなければなりません。しかも、資源多消費型の産業から知識集約的な産業公害を出さないようなきれいな産業に変えていかなければなりませんと、こう訴えておるじゃありませんか。しかし、いかに知識集約産業に転換しようといっても、われわれのまわりにある友邦が、鉄鋼をどうしても必要とするんだ、肥料を必要とするんだ、塩ビの原料を必要とするんだという事実がある限り、それを供給するだけの工業生産はやはりどうしても維持しなければならぬのが、国際協力の上から日本に課せられた使命でもあります。われわれが果たさなければならない責務でもあるということを十分考えながら、ただ机の上の議論で、構造改善をいますぐできるんだということではないのでございます。ですから、長期的な展望と、現在置かれておる国際的な中における日本の地位と、国内的にどうしなければならないかということを区別しながら判断をし、そうしてその調和をとることによって新しき道を求めていくべきでございます。  物価はいつごろかといいますから、物価は今年上期中には鎮静をさせるべく最大の努力をいたしておりますと、こう述べておるのでございますが、国民生活必需物資はいつごろになったら安心して供給できるのか、これは政府責任でもございますし、そのためにこそ三法を成立さしていただいたわけでございますから、これらの法律運用をきびしく的確に行なうことによって、国民生活に不安をなからしめるように全精力を傾けてまいりたいと思います。これは一カ月とか二カ月じゃありません、いっときも早くそういう事態をつくらなければならぬ。これはもう何カ月なんという問題じゃありません、これは一日も早く、いっときも早く正常な状態をつくり上げるために全力を傾注してまいります。それは自民党政府だけよりも、野党の皆さんからも御声援と御協力を得ることによってなおうまくいくのでございますから、そこらはひとつ十分お考えをいただきたい。  自主外交の推進問題、経済協力の問題、国際連帯の問題等に対して春日さん御言及がございましたが、今日の世界が直面しております諸困難は、一国のみで解決できるものではなく、国際協調によらなければ克服できないものばかりでございます。このような観点から、私は、各国首脳との会談を重ね、幅広い自主外交を推進してまいりました。今後とも多方面との協力関係を築き上げ、錯綜した国際情勢に対し十分対応できるようにしていきたいと思っておるのでございます。  お説の海外経済協力憲章等については、十分勉強さしていただきたいと思うわけでございます。経済協力体制に万全を期さなければならないことは当然でございます。相手国の立場に立つ心の通った国際協力は、単に物の移動によって期し得るものではなく、そのにない手である人にかかっており、かかる人材の養成、確保を真剣に考えてまいりたいと思っておるのでございます。  国際連帯の良識を呼びかけるとの趣旨は、理解いたすところであり、わが国外交は長期的視野に立つ健全な良識によって推進されなければならないと考えておるのでございます。  中東紛争につきましては、関係国の話し合いによって、兵力引き離し等、部分的曙光が見られつつあることは、歓迎すべきことでございます。わが国といたしましても、公正かつ永続的な解決がもたらされるよう、三木特使を派遣しましたが、引き続きできるだけの寄与を行なってまいりたいと思っております。  なお、本件に関して数点の御質問がございましたが、具体的、詳細については、外務大臣より答弁をいたします。  国際経済協力につきましての御指摘がいろいろございましたが、端的に申し上げますと、いままでは民間企業中心にして日本は行なってまいったわけでございます。その意味で、数字の上から見ますと、技術や経済の協力の金額は、GNPに対する一%をこえておるのでございまして、先進工業国に何ら遜色のないところでございますが、御承知のとおり、民間企業優先というところに幾らかの問題が存在するわけでございます。その意味で、日本利益を得、しかも相手国も大きな利益を得ており、相互補完の関係にありながら、経済的な専門分野だけでお互いが交流を始めたという結果についていささか摩擦も生じておることは、確かにございます。  そういう意味で、政府が、このたびの国会に、国際経済協力担当大臣、また、農業とか文化とか教育とか、いろいろな面から広範にわたって、長きにわたる両国の友好親善ということをはかり得るようにするために、国際協力公団の設立をお願いしているのは、この意味でございます。そうすれば、政府がやるものは――政府のやるものと別々でやっちゃだめなんです。政府、海外経済協力基金、輸銀、それから各民間の銀行や商社が行なうシンジケート等が、総合的にお互いに政府間で理解をされ、計画が立てられ、青写真がかかれ、工程表がかかれるということによって、お互いがいままでのような紛争がなくなる、こう考えておるのでございまして、それはUNCTADの会議において、GNPの〇・七%まで政府間ベースの援助を拡大し、アンタイイングを進めますと、全世界に先がけて宣言をしたのは、このような理由によるものであることを理解をしていただきたいと思うわけでございます。  土地問題に対しましては、さっき言ったとおり、これはどう考えても――私はこだわるわけじゃございませんが、狭い日本なんですから、地下にもぐるわけにはいきません、空まで行くわけにはいきません、海を埋めるわけにいかないのです。日本人に与えられた、カリフォルニア州一州よりも小さいけれども、まだまだ利用価値は十分ある、水もある、緑もある、豊かな生活の基盤もできる日本全土をやはり視野にして、俯瞰的、鳥瞰的な立場から日本を見ていただかなければ、土地問題の真の解決はないのだ。国総法は早く通してください、だからもう、与野党でもって十分話し合いをして、これを通していただければ、土地問題の基本的な解決にはなるのです。こう申し上げておるわけです。――どうもおかしいんですな。(拍手、笑声)  食糧政策に対して申し上げます。  今後の世界の食糧の需給動向は、人口の増加等の諸事情から見て、きびしいものになることが予想せられることは当然でございます。そのため、国民の主要食糧のうち、国内生産が適当なものは自給度の維持向上をはかることが重要であり、生産の停滞しておる麦、大豆等につきましては、生産奨励措置を講じますとともに、畜産等の大規模な生産基地の建設を進めてまいりたいと思うわけでございます。  海外に依存せざるを得ない農産物につきましては、備蓄政策、国際協力の一環として開発輸入政策等、長期輸入取りきめなどを進めて、その安定的な供給を確保してまいりたいと思うのでございます。  三十万ヘクタールの農地の転換に対しては、御指摘もございましたが、いまでも一年間に七、八万ヘクタールずつの転換があるわけでございますが、これは必要なところ、必要であるという理由によって転換をしておりますから、一貫性も計画性もないわけでございます。そうすれば、その三年分、四年分、五年分を計画的に青写真をつくって、それをどのようにして市街地に、どのようにして住宅地に、どのようにして緑地に、どのように公用地として考えて転換をはかるということは、けだしこれはあたりまえのことだと思っておるのです。そういうことで、もう少し角度を変えて考えていただきたい、こう思うのでございます。  しかも、この必要な食糧につきましては、大豆とか、それから飼料とか、そういうものに対しては、もうこの間参りましても、フィリピン、インドネシア等でもって、これを基地にして日本の備蓄にもなるように、自分たちの食糧供給基地にもなるように、そうして隣の友邦で米を必要としておるところに、日本の高い米を、国際価格で倍もする米を半値で渡すよりも、ここでもってバングラデシュなど二百五十万トンも不足なところへ幾ばくかでも供給できるような基地としたいという提案もありました。しかも、これは豪州からもあります。ニュージーランドからもあります。ブラジルからも、アルゼンチンからも、カナダからもあるのでございます。そういうような国際的な意味で、これは南北問題の主目的である国際分業というまでにいかない、その手前の段階において、日本が国内でできるものは国内でやる、しかし、お互いが協力をしてジョイントベンチャー形式をとることによって国際的な義務も果たし、日本の備蓄にもなる、そうして日本の農村にも影響がないとしたならば、やはりその道も選ぶべきだと考えておるのでございます。  それから物価安定国民会議の問題についてでございますが、物価問題の解決には、政府の努力に加えて、国民各層の理解と協力を得ることが不可欠であります。このような観点から、広く国民各層の意見を聞くことを目的として、すでに物価安定政策会議設置してございます。また、全国物価モニターを配置して、地域的な物価事情等についての民間による監視体制の整備にもつとめておるわけでございます。また、こうして国会で御審議を賜わっておること自体が、国民の声がすなわち一堂に集約されるというために国会は存在するわけでございます。そういう意味で、当面、御指摘のような会議を設けるという考えはないわけでございます。  最後に、今後の政局の展望その他、野党に政権を譲ってはどうかという――そこまで言われなかったかもしれませんが、そのような御発言でございます。明確にお答えをいたします。  われわれは、戦後四半世紀にわたり政権を担当し、国民とともに、大地を匍匐前進するような苦労をしながら困難を乗り切り、今日の繁栄を築き上げるため、微力をいたしてまいったつもりでございます。この困難を乗り切ってきた責任政党としての自信と伝統は、新しい難局に直面をしている現在にあっても、必ずや国民の負託にこたえ、国民とともに考え、ともにこの試練を乗り切り得るものと確信をいたしておるのでございます。そして議会制民主主義の確固たる基盤に立った協調と連帯の新時代を切り開いていくことができるものと確信をいたしておるのでございます。(拍手)  民主政治の前進には健全なる野党が必要であることは、また当然でございます。野党が健全に政策に対してきびしい批判をするとともに、是々非々の立場に立って、国民のために是なりと思ったら勇敢にこれを支援せられることを切に願いたいのでございます。(拍手)  現在、私たちは、これは社会主義政党に日本の政権がいますぐ移動するとは考えておりません。自由民主党が当分の間国民の負託にこたえていかなければならない、全力を傾けなければならない、こういう考えでございます。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕
  17. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 中東政策に関連して若干の御質疑がありました。  第一は、パレスチナ人の権利の問題でございます。  政府といたしましては、すべての国が国連憲章のワク内でパレスチナ人の正当な権利を認めるべきであると考えております。このことは、累次の国連総会においてそういう立場をとってまいりましたし、去る十一月二十二日の官房長官談話でも明らかにしたところでございます。すべての関係国がパレスチナ人の政治的、経済的、社会的条件の改善のため誠実な努力をしてまいることが必要であると考えまするし、わが国といたしましても建設的な寄与を行なってまいるつもりであります。  第二点は、官房長官談話にありました、わが国のイスラエル政策の再検討ということについての御質疑でございました。  あの中東政策は、中東和平の早期実現を希求する立場からものされたものでございまして、今後の事態の推移を見ながら、日本政府といたしましては、最も適当な時期に、最も適当な手を打っていかなければならぬと考えております。イスラエルに対するわが国政策につきましてもそうでございまして、その再検討の内容について、いまの時点で予諾をしたり、予告を申し上げたりすることは適切でないと考えております。  それから第三点は、軍事協定の成立と石油供給制限の緩和についての御質問でございました。  これは春日さん御指摘のように、すでにジュネーブ会議が成功し、その後兵力の引き離し交渉が成功してまいりまして、十二月、一月の石油供給制限が緩和の方向をたどっていることは御案内のとおりでございまして、私どもといたしましては、この緊張緩和が今後続いてまいりますことを期待をいたしておる次第でございます。  第四の問題といたしまして、和平協定はどのぐらいかかるかということでございますが、シナイ半島における兵力引き離し協定は成立したようでございます。シリア戦線における話し合いにも期待を持たれているようでございまして、話し合いは、ただいままでのところ順調にいっているようでございますが、いつごろそれが結実するであろうかというような展望につきましては、自信を持って申し上げられません。   〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
  18. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  春日委員長お見通しのように、総需要抑制政策をとっておりますので、景気は下降方向に向かう、かように考えます。その際に気をつけなければならぬことは、弱い者、小さい者、そういうものがこの経済変動の犠牲者にならぬ、こういうことであります。その犠牲というか、そのしわ寄せがそういう方向に片寄らぬ、こういうことだと思います。そういうことを考えながら、予算におきましても、中小企業対策、また、社会保障対策、これに特に重点を置いておる。なおこの上とも気をつけます。  第二の問題は、超過利潤税とも申すべきものをなぜ政府は立案せぬか、提案せぬか、政党まかせにするのか、こういうお話でありますが、政府検討をあきらめておるわけじゃございません。しかし、これは非常にむずかしい問題でありますので、各方面の意見を聞きたい、かように考えておりますので、どうかこの上ともひとつ御教示願いたい、かように存じます。  それから、課税最低限を二百万円に引き上ぐべし、こういうお話でございますが、これは先ほども申し上げたのです。もう精一ぱいの努力をいたしまして百七十万円だ、将来また、そういう二百万円とか、それ以上のことは考えてみたい、かように考えます。  それから、法人税率を四二%に引き上げよ、こういう御意見でございますが、政府の考えでは四〇%にするのです。その実効税率を見ますと、四九・五%になる。これはちょうど国際水準というふうに考えられますので、四〇%引き上げで妥当なところではあるまいか、さように考えます。  それから、富裕税を創設せよと、こういう御意見でありますが、この問題は、相続税や所得税や、あらゆる所得、資産関係の税の基本にかかわる問題でございます。これは、富裕税という一つの構想もございましょう。私は、今後の問題といたしましてひとつよく検討してみたい、かように考えます。  次に、中小企業対策の見地から、事業税中の事業主報酬部分を、国税同様に課税の対象からはずせ、また、同族会社の留保課税を廃止せよ、こういうお話でございます。これは、そこまではいかないのでございまするけれども、四十九年度税制改正におきましては、事業主控除の額を八十万円から百五十万円に引き上げる。また、留保金課税につきましては、法人企業と個人企業との税負担バランス問題があるのです。そういうことで、全廃することはできませんけれども、定額控除の額を倍にふやしまして一千万円とするという措置を講じておる次第でございます。  それから最後に、もう土地問題につきましては総理からお話がありましたが、私は、土地問題に関する基本的な思想におきましては、春日委員長に非常に共鳴をいたします。私も、春日委員長同様に、土地は他の一般の財産と違う、これは完全な私有を認めらるべきものじゃない。さればといって、これを国有、公有とすべてをすべきものであるとも考えませんが、いわば国民財産というような考え方をとるべきじゃないかと思うのです。そういう考え方に立ちまして、この土地問題をいかに処理すべきかということにつきまして、これを一般的、全国的に一つの基準に従いまして、その使用等を制限する、そういう考え方をとりますと、なぜそれはアルプスの山の上までも使用の制限が必要であるかというような、憲法上の財産権、自由の問題との対立もあるのです。私は、この問題は、いま日本社会が当面しておる非常に大きな問題、つまり、サラリーマンの住宅問題、その住宅問題という角度から取り上げたらいいじゃないかというふうな考え方をもちまして、住宅対策のための土地行政はいかにあるべきかというテーマにつきまして、私が行政管理庁長官をいたしておりまするとき、行政監理委員会に諮問をいたしたわけであります。その諮問に対する答申が行なわれたわけでありまするけれども、私はその答申案をよく見まして、大体この線でいくと土地問題というものがきれいに解決されるんじゃないかという気がいたしまして、そして田中首相にもお願いをし、田中首相から建設大臣に対しまして、これらの実施方を検討せい、こういうことにいまなっておるんです。その手始めといたしまして、宅地開発公団が新設されることに動いておるわけでございまするけれども、地価抑制の問題をどうするかという問題は、目下建設省において鋭意検討を進めておる、かように御理解をお願い申し上げます。(拍手)   〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
  19. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 石油の対策がおくれたではないか、こういう第一の御質問でございますが、私はおくれたと思っておりません。日本の国情に合うように、弾力的に処置してきたと思っております。と申しますのは、十月に中東戦争が起こりまして、各国はいろいろ措置をやりましたけれども、日本政府の場合は、日本国民の社会的心理を考えまして、政府があんまり早目にあわててやると、心理的パニックを起こすという情勢でもありました。したがって、あの場合には、政府はむしろゆったりとして、自信を持っているというほうがよかったと私は思うのであります。  もう一つは、物価が鎮静に帰する方向にありまして、八月三十一日の公定歩合の引き上げ以来、夏にはいろいろ化学工場の爆発とか何かで物価が上がりましたけれども、九月から卸売り物価はずっと下がる方向に来ておったわけです。したがって、できるだけこれを長引かして卸売り物価を定着させる方向に持っていきたい、これを一五%とか二〇%の規制を正式に出しますと、物価がはね上がるという、そういう情勢でもございました。  もう一つは、国会がいつ開かれるかということがありまして、新しい法律をつくって授権さしていただかなければなりません。そういう法の裏づけがなくて行政指導でやった場合で、せいぜい二十日か十日しかこれはもたぬ。国会がいつ開かれるかということを観測しておりましたら、十二月一日から開かれる。そこで、十一月の十日ごろから諸般の対策をやって、そして二十日からいわゆる行政指導による規制に入ったわけであります。そして十六日に緊急対策本部をつくり、その日から官庁の自粛運動を始め、十九日から民間の自粛運動を始め、また、一〇%の削減をそれから始めて、そして国会に二法を提案いたしまして、御審議願って法律をつくっていただきました。この伝家の宝刀をいただくということが、行政措置の背景にとって非常に力強いものになってきているわけであります。今日においても同様でございます。  それで、法律をつくっていただきまして、それから直ちに内閣でこれを告示し、一月の半ばごろまでは、大体、供給者側の規制の政令、省令その他をつくり、それから審議会の構成等をやってきたわけです。それから一月の中旬以降は、消費者側の節減、規制の方向の法体系をつくりまして、そしてその間に知事会議等を開いて、知事さんの御協力もお願いをしてきたわけで、その間に審議会を開きまして、その間の処置の御了承もいただいてきたというのがいままでの状況でございます。  そこで、いま、なぜ標準価格を早くつくらないか、こういう御質問がございました。きょうの事務次官会議で、たしかトイレットペーパーとちり紙はやるはずであります。その以外の問題につきましても、実は非常に急いで検討しております。しかし、たとえばいま幸いに十二月の措置によりまして友好国になって、油が思う以上に入ってまいりました。十二月はわれわれが期待している以上に入り、一月も計画以上に入ってまいりまして、この調子でいくと、物によっては卸売り物価が下がる前兆が出てきておるものがあります。丸棒あるいは繊維等は、卸売り物価が下がる前兆が出てきておる。うっかりきめるというと高値安定という危険性がございます。  もう一つ、また逆の面で、この一月一日から入ってくる油、出港した油は、去年の三月に比べて約四倍の高値に今度はなっているわけです。それが一月二十日ごろから入荷してまいります。この原料でできた品物はやはり高くなってくるという危険性がございます。そうすると、昔の安い油で入ったものと高い油で入ったものとの、この暖流と寒流の交錯のぐあいをいかに価格的に見きわめるかという、非常にいまむずかしい状態でございます。しかし、LPGやあるいは灯油でやりましたように、これは上がるという情勢の場合には、事前にがちっと、なたでぶった切るようにともかく押えて、そうしてその経過を見るという行政指導をやったわけです。いま、そういう意味におきまして、数品目につきましては行政指導価格でとりあえず押えよう、そういうことでいま各省間で検討させておるわけでございます。  そうして今後の見通しはどうであるかといいますと、大体二月の情勢まで見ますと、必ずしもまだ情勢、予断を許しません。中東和平は、兵力の引き離しができましたけれども、和平会議が始まってから、たとえばベトナム戦争のような場合には、アメリカが大北爆をやったり、あるいはトンキン湾の機雷敷設というような、ああいう事件がパリの和平会議以降起こっておるというのが現実です。したがって、兵力引き離しがあるからといって必ずしも楽観は許さぬ。やはり最もぎりぎりの現実を基準にして政策は進めていかなければならぬという考えに立って、二月もそういう意味で一五%の節減という線でこれを貫いていくつもりであります。しかし、将来もし確実に長期にわたって石油の供給が増大し得るという確信を持つ段階になれば、情勢によってはいまのストックを放出して、そして物価引き下げを思い切ってやれるように弾力的にやることも辞すべきでないと実は考えて、国際政局等も見守っておるというのが現状でございます。現在の状態では、二月末になりますと、ストックが、かつて五十九日分ありましたのが、四十九日に減ります。いままでそのストックを食ってこれできておるわけであります。日本経済を運営していくために必要な最低量は三十九日であります。そのストックだけは持たなければならぬ。そういう意味で、いま需給調節を見ながら、物価問題も考えて、情勢を見きわめておる。よけい入ってくる分がもし将来あるとすれば、これはストックをふやして備蓄に回していくということもまた将来考えておかなければならぬ、そういう情勢であるわけであります。  その次に、生活物資の入手がいつごろできるかということでありますが、重要物資については、増産及び出荷の指示をやり、在庫の調査をいま懸命にやっておるところでございます。洗剤、トイレットペーパー、あるいはタクシーのLPG等の問題で御迷惑をおかけいたしましたが、これらは順次鎮静に帰しつつあります。大体、物はある程度あると思っております。いかにこれを吐き出させるかということに、いま行政の最も重大な関心を持って力を入れてやっておるところでございます。  最後に、春日先生から、公共的企業に関する規制のお話がございました。この点は総理から御答弁がございませんでしたので、お答え申し上げますが、やはりいまのわれわれの自由主義経済の観念からいたしますと、たとえば電力にしても、あるいは銀行にしても、あるいは交通機関等にいたしましても、そういう必要なものは、それぞれの法規によって監督の措置を講じておるわけであります。ある場合には銀行監査もするし、ある場合には公益的事業として政府価格を承認する、許可する、そういう形でできておるわけであります。これがやはり企業の創意を生かしながら、いまの国民経済発展させ、また、国民の皆さんの生活にも貢献するという仕組みであるとわれわれは思っておりまして、それ以上の規制を加えるという考えは、私は持っておりません。(拍手
  20. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  21. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) 御報告いたすことがあります。議員楢橋渡君は、昨年十一月十七日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、去る十一月二十九日贈呈いたしました。これを朗読いたします。   〔総員起立〕  衆議院は多年憲政のために尽力しさきに予算委員長の要職につきまた再度国務大臣の重任にあたられた議員従三位勲二等楢橋渡君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます     ―――――――――――――  故議員楢橋渡君に対する追悼演説
  22. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) この際、弔意を表するため、細谷治嘉君から発言を求められております。これを許します。細谷治嘉君。   〔細谷治嘉君登壇〕
  23. 細谷治嘉

    細谷治嘉君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員楢橋渡先生は、昨年十一月十七日脳溢血のため急逝されました。まことに哀悼痛惜の念にたえないところであります。  私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで弔意を表したいと存じます。(拍手)  先生は、明治三十五年三月、久留米市の農家にお生まれになりましたが、経済的にも恵まれなかった境遇のもとで、多くの弟妹のめんどうをよく見られ、少年時代からすでに一家の働き手として生計を助けてこられました。  高等小学校卒業後、十四歳にして筑豊の炭鉱に身を投じ、過酷な労働条件のもとであらゆる辛酸をなめられましたが、多感で克己心の強かった先生は、夜は炭鉱の納屋で綿のように疲れた肉体にむち打ち、禅の書をひもといて人間性の本質を追求し、また早稲田の中学講義録を取り寄せては熟読し、独学で基礎的な学習を積まれたのであります。  十八歳になったある朝、青雲の志を胸に秘め、炭鉱を去ることを決意し、北九州の中央にそびえる六ケ嶽の山頂に登り、「なつかしき筑豊炭田よ、なんじはわれに生きる力を与えたり、いまわれ志を立てて都にのぼらんとす」と、腹の底から叫んで上京されました。  上京後は、生活の苦難と戦いつつ、弁護士試験を目ざし中央大学に入学したのでありますが、ほとんど独学で勉強し、二十歳にして全国最年少で弁護士試験にみごと合格されました。(拍手)  弁護士時代は、しばしば無料で弁護や法律相談を引き受けるなど、強者に抗して弱者を助け、気骨ある若き法曹として頭角をあらわすに至ったのであります。  弁護士会からその力量を高く評価された先生は、大正十四年、陪審法調査のためフランス留学が認められ、リオン大学、ソルボンヌ大学において労働法を専攻するかたわら、国際間の債権債務の法理論の研究に没頭されました。  先生のこの専門的分野における研究の成果は、ほどなく起こりましたいわゆる東京市の仏貨公債事件の処理に大いに生かされることになりました。  この事件で東京市は完全に行き詰まり、その処理を楢橋弁護士に依頼いたしましたが、先生は、昭和七年から十四年に至るまで、フランスにおいてこの困難かつ長期にわたる国際訴訟事件の処理に奔走し、東京市に大きな利益をもたらして落着せしめたのであります。  東京市は、先生の多大の功績に報いるため、ばく大な報酬を支払おうとしたのでありますが、先生は、東京市のため、日本のためにやったことであるからと言われて、これを固辞し、時の市長大久保留次郎氏をいたく感激させたとのことであります。(拍手)  昭和十六年十二月、開戦とともに、わが国は、急速に戦争拡大の方向へと発展し、昭和十七年四月には、いわゆる翼賛選挙が行なわれたのであります。  この衆議院議員総選挙において、楢橋先生は、軍備反対、反東条の立場で政界入りを決意し、非推薦で立候補されましたが、先生は、激しい圧迫と妨害の中で、わが国の行きべき道を堂々と主張し、いまこそ安全じょうぶな楢の橋を渡る私を支持してくださいと訴えました。当時、私も共感を覚え、一票を投じたのでありますが、先生は、みごと最高点で初当選されました。(拍手)  自来、先生は、政治の道を一筋に歩まれて、その間、本院議員に当選すること前後七回、在職十五年に及び、戦後の政治史の上に大きな足跡を残されたのであります。  すなわち、終戦直後の昭和二十年十月、楢橋先生は、内閣総理大臣幣原喜重郎氏の懇請を受けて法制局長官に就任し、行政改革と取り組み、また婦人参政権法案、労働組合法案、農地調整法改正案など、もろもろの基本法の立案に当たられました。そして、引き続き幣原内閣国務大臣内閣書記官長の要職につかれて、混乱をきわめた戦後の事態に対処されるとともに、新憲法の政府草案起草に夜を日に継いで尽瘁されました。  また、昭和二十一年四月の総選挙に当選された先生は、新日本建設の中心勢力を結集せんとして、新党樹立のために中核となって奔走し、昭和二十二年三月、民主党が結成されましたが、その直後、先生にとってまさに青天のへきれきともいうべき公職追放を受けて、雌伏の生活を余儀なくされるに至りました。  先生は沈思黙考、ひたすらわが国の将来を見詰め、議会政治のあり方について思いをめぐらせてこられましたが、やがて本院に復帰された先生は、これを国政の場に具現すべく、諸議案の審議に、あるいは政策の立案に、豊富な経験とすぐれた手腕を駆使して、縦横の活躍をされました。  昭和三十三年六月、先生は、予算委員長の重職にあげられて、昭和三十四年度総予算の審議に当たり、与野党委員の意見の調整をはかりつつ、委員長としての職責を十分に果たされました。そして引き続き翌年六月には、第二次岸内閣の運輸大臣の要職につかれたのであります。  当時、国鉄が経営する志免炭鉱処理問題をめぐり、労使が大きく対立し、紛争を続けておりましたが、楢橋運輸大臣は、労使双方の意見を十分に徴して円満な解決に導き、また、タクシー業界に新風を吹き込むため、強い反対の声を押え、個人タクシーの採用を断行して、国民の間に大いに好評を博されたことは、いまだわれわれの記憶に新たなところであります。(拍手)  先生は、所管大臣として、ひまさえあればみずから地方の末端まで出かけて実情に触れ、これを直ちに行政の上に反映されました。北海道のさいはての地の小さな灯台を訪れて激励し、あるいは海上保安庁の巡視船に乗って玄界灘におもむき、漁民と第一線に働く職員に明るい希望と光を与えられました。  先生は、その後行なわれた前後三回にわたる衆議院議員総選挙に苦杯を喫し、野にあって雌伏すること九年、苦汁をなめ尽くされたのでありますが、一昨年十二月に行なわれた第三十三回衆議院議員総選挙においては、烈々たる信念を吐露し、「われに翼を」と、政治生命をかけて選挙戦を戦った結果、みごと念願を果たされました。そして、わが国の進路をはばむ幾多の困難を克服し、国民生活の安定を確保するために再び挺身することを、かたく誓われました。ことに、農林漁業、中小企業の育成振興対策や各種の福祉政策には、血の通った、きめのこまかい配慮が必要であると力説されて、その実現に尽瘁してこられたのであります。  しかるに昨年十一月、よわい七十一歳、政治家として幾多の変遷を経て、いよいよ円熟の境地に達せられた先生は、雄図むなしく、ついにその生涯を閉じてゆかれました。惜しみても余りある急逝と申さなければなりません。(拍手)  いま、楢橋先生の歩んでこられた道を静かに顧みるとき、先生の生涯は、まさに波乱をきわめたものであり、苦難苦闘と栄光の織りなす人生であったと申せましょう。(拍手) 私は、そこに人生における険しさとともに、政治家に課せられたきびしさをしみじみと感ずるものであります。  しかし、先生は、常に人を愛し、人を恨まず、おのれを信じて人生を歩み、その信念で政治とも取り組んでこられました。苦境にあっても、「待てば海路のひよりかな」と、あたたかいまなざしで人に接しました先生の内面には、青年時代に洗礼を受けた近代思想に根ざす先生固有の哲学があり、思想がありました。キリスト、ルソー、ルーテル、日蓮は、先生に生きる喜びととうとさを教え、愛を教えたのであります。先生は、「政治は本来愛情の表現である。その意味において、政治の衝に当たる者は、国民より先んじて憂いをなし、国民よりおくれて楽しみをなす、すなわち、先憂後楽の心がまえがなければならない。そこに、初めて政治が生き生きとして人々の心のよりどころとなる」と常に語り、みずからもこれを実践してこられました。  そして、最近は、健康にも恵まれ、「来年は自分のえとのとら年だから、力の限りがんばる」と、心を新たにして政治に取り組む意気を示しておられました。(拍手) しかるに、この新たな年を迎えずして先生はこつ然として去っていかれたのでありまして、天命とは申せ、痛恨やる方ないものを覚えるのでございます。(拍手)  わが国は戦中から戦後にかけて有史以来の一大転換を遂げ、楢橋先生もこの時期に、本院議員として、また国務大臣として枢機に参画されました。そしていままた、わが国はかつて経験したことのない試練に立たされております。このときにあたり、楢橋先生のごときすぐれた政治家を失いましたことは、まことに大きな国家的損失であり、まことに残念なことでございます。  このたび、御令息楢橋進君が本院に議席を占められ、政治家として意義ある第一歩を踏み出されました。(拍手)われわれは進君が御父君の御遺志をりっぱに受け継がれ、議政壇上において大いに御活躍くださることを期待いたすものであります。(拍手)  ここに、ありし日の楢橋渡先生の面影をしのび、その業績をたたえ、もって追悼のことばといたします。(拍手)      ――――◇―――――
  24. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) 御報告いたすことがあります。  元本院副議長高津正道君は、去る一月九日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、先例により、議長において去る一月十二日贈呈いたしました。これを朗読いたします。   〔総員起立〕  衆議院は多年憲政のために尽力しさきに本院副議長の重職にあたられた高津正道君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます      ――――◇―――――
  25. 森喜朗

    ○森喜朗君 議事日程第一は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  26. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) 森喜朗君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 前尾繁三郎

    議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十九分散会      ――――◇―――――  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣 町村 金五君         国 務 大 臣 内田 常雄君         国 務 大 臣 小坂徳三郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 三木 武夫君         国 務 大 臣 森山 欽司君         国 務 大 臣 山中 貞則君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君      ――――◇―――――