○春日一幸君 私は、民社党を代表し、
わが国政が当面する重要課題について、
政府の
方針をただしたいと存じます。(
拍手)
まず、冒頭に、
田中内閣の
物価高、
インフレに対する
政治責任と今後の
政策路線について
質問いたします。
田中内閣は、一昨年七月に発足してここに一年六カ月、この間、
田中首相は
物価、
公害、住宅など、
わが国政が直面する重要課題に対して、
日本列島改造構想を高らかにかざして、その
高度成長政策を推進してこられました。しかしながら、その
政策はことごとく逆の結果をあらわし、現に
物価は日々に劇的な
上昇を続け、
日本列島はいまや
インフレの黒煙におおわれました。
ここに、
田中内閣の四十八年度の
経済見通しによれば、
消費者物価上昇は五・五%、
卸売り物価上昇は二%という想定でありましたが、これに対し、去る十二月における日銀集計による実勢は、
消費者物価の前年度比
上昇率一七%、
卸売り物価は同じく二九%
上昇という、これはまさに敗戦直後の悪性
インフレさながらの
状態であります。(
拍手)これが
田中内閣の
政治の集大成であることを、われわれはここにあらためて直視するものであります。もとより、ここに燃え盛っている
インフレの炎は、それが石油外圧によってさらに激しく熱気を加えたものとはいえ、だからといって、長年にわたる
成長一本やりの
自民党政治、それをあおり立て、また、事ごとに
対策を誤った
田中内閣の
政治責任は、いささかも免れるところはありません。
総理は、しばしば
物価の安定を最優先にすると公言してこられましたが、今日このように
国民生活を極度に圧迫している
インフレの現実を直視されて、その御心境はいかがでありますか。
また、
インフレを押えることができなければ
政治責任をとるとも述べてまいられましたが、このような
事態に対し、いかなる
政治責任をおとりになる御所存か。
総理は、その
施政方針演説で、改めるべきは謙虚に改めると申されましたが、ここに
総理が特に改めねばならぬと
反省されているその
政策の問題点は何々か、この際、
総理よりその御
反省とともに、
インフレ克服のための今後の具体策をお示し願いたい。(
拍手)
次は、
田中総理の
日本列島改造構想についてお伺いいたします。
田中首相は、その「
日本列島改造論」の中で、
日本経済の未来像として、
昭和六十年には三百兆円
経済も可能というバラ色の夢を掲げ、それに基づけば、十年後には世界の
資源、
エネルギー源の三〇%以上を輸入しなければならなくなるとして、そのための
日本列島改造の青写真を描いて、国の
内外に示されました。
当時、私どもは、その構想に対し、それはブルドーザーの響きと、ハンマーのうなりの幻覚だけでも地価を暴騰させ、
インフレを激化させる過激思想のたぐいと指摘して、その後も引き続き
田中首相の猛省を求めてまいりました。(
拍手)かりに、
高度成長政策論の上では、理論上そのような数値を数えることができるとしても、現実の問題として、
日本だけが世界の
資源、
エネルギー源の三〇%以上をひとり占めにすることが許されるわけがありません。
インドの詩人、思想家、タゴール翁が、一九一六年訪日のおり、慶応義塾で行なった講演で、いま
日本が掲げている「適者生存」という標語の意味は、それはさっさと自分の好きなことをやれ、そしてそれが他人にどんな損失をもたらそうと気にとめるなということである、しかし、それはあきめくらのモットーであると述べております。まことに、
田中首相の思想とその
政治姿勢は、それはタゴール翁がいみじくも喝破された、あの戦前の
日本帝国主義の思想と一脈相通ずるもののあることを痛感せずにはおられません。
今回の石油ショックも、
東南アジア諸国における学生集団の
首相に対する
抗議デモも、まさにそれは頂門の一針であります。
高度成長政策の行き着く先は、あたかも帝国主義の終着駅があのようなむざんな敗北であったように、それはまさしく
日本経済の破局にほかならないことを、
田中首相はいまこそ心底に銘記せらるべきであります。
すなわち、あの「
日本列島改造論」は、
わが国政の進路を誤たしめるおそれあるものとの
反省に立たれ、
総理は、この構想を全的に
撤回して、その書籍の頒布は直ちにこれを停止するとともに、この際、この構想に基づく、かの新国総法案は、いさぎよく取り下げるべきであると思うが、ここにあらためて
総理の御
見解を承りたい。(
拍手)
次は、
わが国経済の
見通しと、それに対する
政府の対応策について
質問いたします。
いま
日本経済は、
インフレの炎の中に、すでに焼けただれたデフレの骸骨が折れ重なっているといった、それは不気味な様相を呈しております。現に福田蔵相は、その景気抑制型
予算と
金融引き締めを武器として、
短期決戦によって
インフレ鎮静の成果を
確保しようとしておられます。
かくて、
インフレの熱風の吹きつのる中で、一方においては不況の寒波がりんりんとにじり寄っております。したがって、
政府は、ここに
インフレとデフレの二正面作戦を念頭に置いて、ともに万全を期さなければならぬが、
政府の
対策はおよそどのようなものか。
この際、私が特に
政府に善処を求めたいことのその
一つは、大
企業や重要
物資関連
企業がこの混乱に悪乗りしてむさぼる暴利に対する追及であり、他の
一つは、この動転の中であえいでいる弱小
企業に対する手厚い救済策についてであります。ここに
インフレの高進の中で、
中小企業や
国民の困窮とは全く対蹠的に、ひとり特定の大
企業がわが世の春を謳歌している、このような秩序の乱脈を
政府は
一体何と見るか。
伝えられるところによれば、これら
超過利潤追及の
措置については、
政府はこれを議員立法にゆだねる
方針とのことであるが、かかる社会
正義の本質に触れる重要案件は、当然、
政府の
責任において立法
措置をとるべきではありませんか。ことさらにそれを避ける理由は何か、
国民の納得できるように御説明を願いたい。(
拍手)
なお、
政府は、引き締め
政策による金融逼迫に備えて、今後は
財政金融の重点を特に
中小企業や農漁民、勤労大衆に置いて、
経済的弱者の救済に特段の施策を講ずる必要があると考えるが、これに対する
政府の
対策、
方針はいかがでありますか。
いまや
日本経済の危局に立つわれわれは、いまこそ、従来の行きがかりを一てきし、社会
正義と
国民連帯の原理に徹して、ここに新しい
政治路線を切り開かねばなりません。それは発想の転換であり、
政策の転換であり、究極には
政治そのものを転換することであります。すなわち、生産第一の
高度成長政策と完全に訣別して、何はともあれ、
国民生活の安定に向かって百八十度の
政策転換を断行することであります。
この際、
田中総理、福田蔵相より、これらの
諸点に対する
政府の態度、
方針をお示しを願いたい。(
拍手)
次は、
国民生活安定のための
政府の行政
措置について
質問いたします。
ここに想起すべきことは、欧米
石油消費国
政府が今回の石油ショックに対応したその機敏な行政
措置についてであります。すなわち、米
政府は、十月六日の紛争発生三日後の九日には、石油の消費節減の大
方針を全
国民に向かって呼びかけ、また、英国、フランス、イタリア等では、七日後の十三日に、西独の場合は十月十七日に、そしてオランダなどその他ヨーロッパ数カ国は十月中に、いずれも必要な
措置を講じ、この緊急
事態に対応する体制を整えました。これに比べ、
わが国政府の
対策ははなはだしくおくれをとり、
石油消費規制の法律が成立したのは、実に紛争発生後二カ月半以上を経過した十二月下旬でありました。
かくて、その施策は後手に回って効力をそぎ、業者は先高を見越して
売り惜しみ、消費者は
政治不信にかられて買いだめに狂奔し、この動きはたちまち広範な日常
物資に波及して、ついに
国民経済はこのような混乱
状態におちいりました。
ここに納得できないことは、少なくともあの石油関係二法の制定以後における
政府のその行政執行のはなはだしき停滞についてであります。(
拍手)この法律は、
国民生活安定のために、
政府に対し特に緊急な
措置を講ぜしめる必要ありとして、
国会は実に昼夜を分かたずして審議を急いだものでありました。しかるに、この法律執行に必要な政令が公布されたのは、法制定後実に三週間を経た一月十一日のことであり、また、肝心の
生活関連
物資の指定は、本日までに
灯油とプロパンの二品目にとどまり、その他、
生活に関連度の高い他の重要
物資については、いまだほとんど法上の
措置はとられておりません。(
拍手)
かくて、
生活物資の
価格は
政府をしり目に日々に値上がりを続けております。これは
一体どうしたことか。これでは、
国会が深夜審議まで強行してこの法律の成立を急いだかいがないではありませんか。
いまや諸
物価はまさに
狂乱状態にあります。内田経企庁長官らは、その
原因を消費者の買いだめにあると言って、ひとり消費者をきめつけておりますが、ここに
生活維持のため、やむにやまれず買いさがしに身をもむ主婦たちの苦労が
政府には理解できませんか。さらには、買いだめをしないで、いまやとほうにくれておる大多数の消費者は、この先
一体どうしたら
生活物資を
確保できるのでありますか。日々に高まる
政治不信とモラルの退廃、まこと
政府の行政
責任は重大であります。(
拍手)
そこでお尋ねしたいことの第一は、このように行政
措置がはなはだしく手間どっておる理由は何か。
第二は、
国民が
生活物資を正常に入手できるようになるには、この先どれほどの日数を要するか。
第三は、
物価を安定させる
めどを
政府は本年の何月ごろに置いておるか。
総理は、昨日の本
会議で、それは早いほどよいとか、また一-三、四-六などと無
責任な
答弁を行なっておりますが、
国民の関心は深刻であります。
以上三点に対して、
総理、通産相より御
答弁を願いたい。(
拍手)
次は、外交問題について
質問いたします。
わが国外交は、対ソ、対中平和条約、それに日韓問題をはじめ、幾多の重要課題を山積しておりますが、本日は、中東問題とともに、今後の外交のあり方について、
政府の
方針をただしたいと存じます。
まず最初に、今回の中東問題を教訓として、今後の
わが国外交の基本
姿勢について
質問いたします。
わが国の外交は、従来、ことごとに米国の肩に寄りかかり、本日までもっぱら対米依存
政策のぬるま湯につかってまいりました。今回ここに、石油ショックの一撃によってたちまち
わが国経済が粗漏
状態におちいったことによって、
国民はいまさらながら他国依存のむなしさを身をもって痛感しているところであります。
政府が
わが国外交の基軸を日米友好関係の維持に置くことは理解できるといたしましても、だからといって、それは
わが国の主体性を滅却したものであってはなりません。現に、昨年六月の、
アメリカによる一方的な
大豆輸出規制
措置や、今回の
石油危機における
アメリカのきわめて冷厳な態度等を思い合わせて、
わが国は日米友好関係における
アメリカ側の限界をここにしかと見定めなければなりません。
資源が豊富で、広大な領土を持つ大国
アメリカと、これに対して、
資源が乏しく、したがって工業立国以外に立ち行く道のない
わが国とでは、国際社会における日米間の共同歩調については、そこにおのずから限界がありましょう
いまこそ、
わが国は、従来の惰性から脱却し、
一大決意をもって、
アジア外交はもとより、中東外交、西欧外交、その他すべての国々との外交関係について、自主外交の基本
姿勢に立って、これを正しく立て直すべきときであると思うが、
政府の
見解はいかがでありますか、
総理、外相の御
見解を承りたい。(
拍手)
次は、中東紛争に対する
政府の態度、
方針について
質問いたします。
ここに中東紛争の
解決は、世界の
エネルギーである石油問題の
解決に不可欠な要件であるばかりでなく、もしもこの紛争が今後さらに悪化するならば、それはさらに大いなる世界的紛争への太い導火線となるおそれのあるものとして、全世界は恐怖のまなこでその推移を見詰めております。したがって、この中東紛争に対しては、すべての国々がその平和的処理に向かって誠意を尽くして協力しなければなりません。
このほど、三木副
総理、中曽根通産
大臣らが
アラブ諸国を訪問され、さまざま努力を尽くされたことに対し、私は深く敬意を表します。しかしながら、あれは客観的には石油
確保のための応急の手段と見られ、あれで
わが国の
中東政策の基本が打ち出されたものとは理解できません。よって、
わが国は、ここにあらためて本来あるべき対
中東政策の基本を早急に確立すべきであると思うが、
政府の
方針はいかがでありますか。
なお、この際、それに関連して、当面する次の
諸点について
政府の態度、
方針をお示し願いたい。
その第一は、中東紛争の根底にあるパレスチナ人の
主権的独立の願望を
政府はどのように受けとめておるか。
政府はそれに協力する意思はあるかどうか。その意思があらば、それに対してどのような協力を行なう
方針か。
第二は、十一月の官房長官談話に示された、あの、イスラエルに対する
わが国の関係を再
検討するということは、具体的にはいかなる意図を持つものか。なお、その意図に基づく再
検討はその後どのように行なわれたか。
第三は、イスラエル、エジプト両軍の兵力引き離し協定の成立に基づいて、中東紛争は、シリアの動向をも含め、これが完全なる和平に到達するには今後どれほどの日数を要するものであろうか。
第四は、この和平に向かっての軍事協定成立の各段階において、
アラブ諸国の石油供給制限はどのように緩和されることになるものであろうか。
以上の
諸点について、
総理、外相より、
政府の
方針並びにその
見通しを承りたい。(
拍手)
次は、
わが国経済外交のあり方について
質問いたします。
戦後における
日本の
経済外交の実態は、それは
日本側
企業の
利益を至上目的とした商売本位の、言うならば、それは単なる商業活動のごときものでありました。すなわち、相手国をただ商品と
資本を売り込むマーケットとしてしか考えず、ひたすら
企業の
利益を
中心として、国内における
高度成長と同様に、しゃにむにそれを推進してきたのが、これまでの
日本の
経済外交であります。
東南アジアに対する賠償と
経済協力も、それは結果として
日本企業の進出に大きな役割りを果たしたものであって、その真の受益者はだれであったか、この際、
わが国はこのことを真摯に
反省しなければなりません。
ここに、
東南アジアにおける日貨排斥や
田中首相の訪問に対する学生の
抗議デモのごときは、戦後
日本の
経済外交に対する
東南アジア民衆の不信のあらわれであります。
わが国は、ここに過去を
反省して今後を戒め、いやしくもエコノミックアニマルなどのののしりを受けないよう、わけても
経済協力にあっては、相手国の要望を第一義として、そのあり方にあやまちなきを期さなければなりません。特に
資源国に対しては、その
資源に対する当該国の
主権的
権利を尊重するとともに、その
国民が真に求めておるものに対する誠実な対応を怠ってはなりません。(
拍手)
政府は、今回の石油ショック、
東南アジアの学生デモの教訓に立って、ここに担当
国務大臣の新設を契機に、この際、海外
経済協力憲章のごときものを国の基本
方針として厳粛に明定し、あわせて一方、在外公館に対し、
経済協力に関する正しき認識の徹底とその人材の拡充をはかるなど、もって今後の
経済外交に万全を期すべきであると思うが、
総理、外相よりその
方針をお述べいただきたい。(
拍手)
次は、
資源産出国が強行するカルテル的共同
行為に対する
わが国の対応策について
質問いたします。
アラブ産油国は、連合して石油供給の制限並びに
価格の協定を行なっております。このため、先進工業国ばかりでなく、
石油消費国は一大恐慌に見舞われております。産油国の
立場に立てば、これは自国防衛の手段としての論拠を持ち、また、それは国益
確保、
資源温存の
措置としてその
正当性を主張することはできましょう。しかしながら、この反面、われわれがまこと深刻なおそれを抱くことは、もしもこれらの
措置が一方的に拡大されていくときは、これが新たな、そして大
規模な国際紛争に余儀なくエスカレートしていく危険性のあることについてであります。(
拍手)
すでに、米国防長官シュレジンジャーが、このほど、テレビ
演説で、
アラブ諸国が石油禁輸をあまり極端に推し進めた場合、米
政府としては、世論に押されて武力を行使することもあり得ると言明したことは、われわれにとってまさに重大な衝撃でありました。すでにこのように新たな国際紛争の萌芽が現実に芽ばえつつあります。われわれは、世界の良識が、第二次世界
大戦の教訓に立って、戦後三十年営々として築いてきた自由と平和、共存共栄の理想をここで消滅させてはなりません。
私は、この意味で、
わが国政府は、今後あらゆる国際
会議の機会をとらえ、
アラブ諸国の
立場を理解しつつも、
アラブ諸国、イスラエルをはじめ全世界の国々に対し、この際、国際連帯の良識に基づいて、おのおのがそれぞれに節度を守るべきであることを積極的に呼びかけるべきであると思うが、
政府の
見解はいかがでありますか。
総理、外相より、
政府の
対策、
方針を承りたい。(
拍手)
次は、当面する内政上の重要問題について
質問いたします。
まず最初に、
土地改革の断行について伺います。
土地は人間の
生活基盤であり、いわば
国民が利用するためのものであって、それは個人が財産として所有するためのものではありません。
土地政策は、この
土地利用の公理に立って確立されなければなりません。明治維新の版籍奉還、第二次
大戦後の
農地改革、いずれもこの基本理念に基づいて行なわれてまいりました。もはや第三次
土地改革を断行すべきときであります。(
拍手)
土地政策上最も緊急を要することは、地価の
凍結であります。地価の
凍結は
土地改革のかなめをなすものであり、これを欠いた
土地政策は一片の作文にしかすぎないことは、ここ十年来の数々の
土地政策が何らその
政策効果をあらわさなかったことによって明白であります。(
拍手)
次は、都道府県ごとに
土地利用公社を
設置し、この
土地利用公社が公定
価格で
土地の一手売買を行ない、もって
土地を
国民の福祉のために活用することであります。要するに、
土地は国家の国土であって、それは個人の金もうけや投機の対象にすべきものではありません。(
拍手)
政府は、これらの内容を織り込み、すみやかに
土地利用基本法を制定して、現に
物価高と
インフレの先導的暴力をほしいままにしている
土地問題、この際、これを根本的に
解決すべきであると思うが、
政府の
見解はいかがでありますか。
総理、蔵相よりの御
答弁を求めます。(
拍手)
次は、
政府の
農地大幅転用
方針について重ねて
質問いたします。
政府は、昨年十一月、
田中首相の指示に基づき、
農地三十万ヘクタールを一挙に宅地に転用する
方針を決定されました。まことに、かかる決定は、
土地政策の上からも、
農業政策の上からも、二重、三重のあやまちをおかすものであり、これは
土地政策の断片を逆コースに向かって暴走させたものと断ぜざるを得ません。(
拍手)
総理の地価
対策は、従来ともに、地価を下げるには大量の用地を供給すればよいという、それは単純な需要と供給の均衡論によるものでありました。しかしながら、従来のその実績はいかがでありましたか。現に、転用を認められた
農地の大半は次々に不動
産業者に
買い占められ、たちまちそれは投機商品に変貌し、それら転用
農地は、現に、地価抑制どころか、逆に地価の
つり上げの役割りを果たしております。
すなわち、
政府は、このような
農地の宅地転用の推進が、まこと宅地造成のためならば、それは都市
計画法による市街化区域、調整区域などの線引きの
改定を先行させるべきものであり、また、地価抑制のためならば、それはもはや実効をあらわし得ないものであることを知るべきであります。
政府の御所見はいかがでありますか。
なおまた、
総理は、
国民経済における
農業の役割りをどのように位置づけておるのであるか。ここに、
わが国の
食糧自給率は、三十六年度に八六%であったものが、四十六年度には七二%に低下しております。また、学者の試算によれば、オリジナルカロリーで見て、それはわずかに四〇%そこそこのものとされております。ここに、世界の
食糧事情は、
農業生産が天候に左右される不安定なものであるばかりか、一方、世界全体の需要の増大に伴い、その需給の均衡はかなり窮屈な
状態に傾いております。ここに石油
資源の不足が
わが国経済をこのように惑乱させておることにかんがみ、もしも
食糧がそのような不足を来たすことになるならば、それによる社会不安は、想像するだにそらおそろしきものとなりましょう。(
拍手)
政府は、まずもって
食糧自給率の向上に最大限の努力を傾けるべきであります。それは、
農地を減らすことではなく、
農地をふやすことであります。
政府は、国際
経済の長期的展望に立ち、かつは
食糧政策が広義の安全保障
政策の中において中枢的地位を占めるものであることを念頭に置かれて、あの
農地大幅転用
措置は、この際これを取りやめるとともに、あわせて農家が安んじて主要
食糧の増産に従事することができますよう、農政を総合的に充実すべきであると考えるが、以上の
諸点に対して
総理の御
見解を承りたい。(
拍手)
次は、減税
政策と、あわせて福祉
予算について
質問いたします。
いまや、
インフレの高潮は、
国民生活を日増しに
生活苦の中に押し沈めつつあります。そして一方では、
インフレ対策としての
金融引き締めによって弱小
企業は倒産に追いやられ、その
国民的被害はまさに激甚であります。
そこで、本年度の減税は、この認識に立って、第一には、低所得者を
物価高から防衛するために、第二には、富の不平等を是正するために、第三には、零細
企業を保護するために、以上の三つを
目標の主柱として最大限に断行せらるべきであります。
その第一については、標準世帯の所得税
課税最低限を年収二百万円以上に引き上げることであり、その第二については、法人税は、
中小企業は除き、一般税率を四二%に引き上げるとともに、かつてシャウプ勧告にも示された富裕税を、この際、高額の
資産所有者を対象に創設することであり、第三については、弱小
企業に対し税負担の思い切った軽減をはかるため、まず事業税における事業主報酬部分は、これを国税同様に課税対象外に置くこととし、また、同族会社の留保所得課税を廃止することなどであります。
政府の本年度減税
計画は、従来のそれに比べ評価できる部分もありますけれども、その中身は依然として幾多の問題を未
解決のままに内蔵しております。以上三件の減税案は、
インフレにあえぐ
国民生活防衛のために、租税
政策上必要最小限度の
措置と考えますが、
政府の
方針はいかがでありますか。(
拍手)
なお、あわせて福祉
予算について伺います。
物価高、
インフレの最大の被害者は、恩給、年金
生活者、老人、身障者、
生活保護世帯など、それは
生活力の弱い
社会保障の対象者たちであります。
政府は、本年度
予算において、
物価にスライドする方向で給付の
改定を行なっているとはいえ、その基準の低さから計算して、この程度の上積みではとうてい効果を期待することはできません。よって、この際、これら給付
生活者等の深刻な困窮をささえるため、各種福祉
予算は特に大幅に増額すべきであると思うが、
政府の
方針はいかがでありますか。
次は、重要
産業に対する
基本政策の確立と、
物価安定
国民会議の
設置について、いささか所見を添えて
政府の
見解をただしたいと存じます。
わが党は、
資本主義を改革する第一歩として、今般、重要
産業に対する
基本政策の確立と
物価安定
国民会議の
設置を提唱しております。
およそ
国民生活に大きな影響を及ぼす
経済力を持つ
企業は、ただその
企業の自己
資本だけによって成り立っておるものではなく、それは
労働者、下請業者、消費者、それに国、公共団体など、幾多の
企業外の総合的な協力の上に成り立っておるものであって、それは社会的な存在と見るべきものであります。したがって、そのような社会的存在たる
企業は、その
企業活動とともに、あわせて社会的
責任を果たさなければなりません。そのためには、その
企業活動の基本に関する事項の意思決定にあたって、今後はそれを
企業の取締役会だけの専断にゆだねることなく、
企業外部からも社会的代表者をそれに参加せしめることとし、ここに新しく
企業ごとに経営
委員会のごときものを設けさせる必要があると考えます。
このようにして、
企業が常に社会的効果を念頭に据えて運営されまするならば、これによって、
公害の防除、公正な
価格の形成、投機や
インフレ利潤の抑制、あわせて、
売り惜しみ、
買い占めの自己規制など、弱肉強食的
資本主義の弊害を大幅に緩和することができましょう。(
拍手)
次は、
物価安定
国民会議の
設置の必要性についてその骨子を述べますが、ここに戦後二十数年間、
物価は恒常的に
上昇し続けてきたし、
わが国経済は今後もこの傾向を持続するものと見られます。このゆえに、
物価安定
対策は長期的な
政治問題であり、また、これは全
国民的な
生活課題であります。したがって、
物価問題は、単に行
政府の一部の所管に一任しておくべきものではなく、これは
国民的
規模によって総合的に
解決に取り組むべき問題であると考えます。
すなわち、この
物価安定のための
国民組織は、各
地域ごとにその
生活現場で
物資の生産と流通について社会的監視を行ない、不公正な
経済活動を摘発し、また、
政策のひずみについて
政府に献策を行なうなど、国の施策の効果を総合的に
確保せんとするものであります。
以上二つのわが民社党の提案に対し、
政府の
見解はいかがでありますか、
総理、通産
大臣より御所見をお伺いをいたしたい。(
拍手)
以上、私は、
わが国政が当面する重要課題について
質問いたしましたが、最後に、今後の政局の動向について、
総理の御所見をただしたいと存じます。
このほど、さる大新聞の世論調査は、
政府支持率が二二%に低下し、すなわち、
国民の七八%が
田中内閣に背を向けておることを明らかにいたしました。
この際、特にお考え願いたいことは、時の
政府が無為無策におちいって
国民の信頼を失ったとき、力強き者が横暴にふるまうようになったとき、加えて
悪徳業者が
売り惜しみ、買いだめを行なって暴利をむさぼるようになったとき、このような状況がからまり合って
国民大衆の
生活が困窮にさらされるようになったとき、
国民のふんまんはやがてどのような形で激発するかという、このことについてであります。
ここにおそるべきは人心の荒廃であり、警戒すべきは左右全体主義勢力の膨張であります。(
拍手)すでにその傾向が日々に高まっております。
このようにして、
わが国議会制民主
政治はまさに歴史的な
危機に立っております。いまこそ、
わが国政は根本的に総合的に刷新されなければなりません。
すなわち、長年にわたる保守
政治のこの暗たんたる行き詰まりを打開して、ここに明るいあすへの進路を切り開くためには、それは
国民に信頼される革新政権を樹立して、その政権が健全なる革新
政策を断行する以外に道はないと思うが、
総理は、この際、勝海舟の烱眼に学び、一日先見の明あってそのように断念される考えはないか、あわせて、この際、
総理の抱かれる今後の政局の展望について御所信のほどをお尋ねいたしまして、私の
質問を終わります。(
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〔
内閣総理大臣田中角榮君登壇〕