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1974-05-22 第72回国会 衆議院 法務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十二日(水曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 稲葉 誠一君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    小沢 一郎君       河野 洋平君    塩川正十郎君       塩谷 一夫君    中村 弘海君       保岡 興治君    日野 吉夫君       正森 成二君    沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  千葉 和郎君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     中村 弘海君   河本 敏夫君     塩川正十郎君   中垣 國男君     河野 洋平君   野呂 恭一君     小沢 一郎君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     野呂 恭一君   河野 洋平君     中垣 國男君   塩川正十郎君     河本 敏夫君   中村 弘海君     江崎 真澄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び裁判所司法行政に関  する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件、裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。本日、最高裁判所矢口人事局長及び千葉刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  4. 小平久雄

    小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣が一時間ほどおくれますし、それから警察のほうがほかの委員会に行かれるということもありまして、最初警察関係とそれから法務省刑時局関係をお聞きをしたいと思います。  質問を別にこう楽しんでしておるわけじゃないのですけれども、ひとつゆっくり楽な気持ちで答えていただきたいのですが、新聞なんかを見ますと、日教組委員長だとか書記長ですか、そういうようなものが逮捕されたとかなんとかよく出ているのですが、よく知りませんけれども、日教組で何かあったのですか。
  6. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 日教組は四月十一日にストライキをやったということで、警察といたしましては、地方公務員法違反に該当するということで四月十一日に十一の都道県警察において日教組事務所等について地公法六十一条四号違反の容疑で捜索を実施いたしました。その後引き続いて参考人等から事情を聴取するなどして現在捜査中でございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは条文はどこに該当して、法定刑としてはどの程度のものと見ているわけですか。
  8. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 法律地方公務員法第三十七条第一項の違反でございまして、その罰則は六十一条にございます。「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金」ということでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その捜索、差し押えの令状の場合の被疑者はどういうふうになっておりますか。
  10. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 中央については日教組槙枝委員長、それから県ではその県の日教組委員長被疑者になっているところもございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 従来そのことに関連して、最高裁判決が出ましたから、私はそれが違法であるとか違法でないとかいうことをいまここで論議しても、それは時間ばかりかかるわけですから、それは別として、従来は最高裁判決の出てきた事案などでは、一審、二審どの程度の刑であったわけですか。これは法務省のほうでもどちらでもいいですけれども、刑はどの程度であったわけですか
  12. 安原美穂

    安原政府委員 従来四・二五の判決が出ますまでは、有罪になったものがほとんどなくて、無罪になったものが多うございますし、遺憾ながら有罪になったものの刑につきましても、ただいま承知いたしておりませんので、何でございましたら直ちに調べまして御連絡いたします。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ぼくのほうの通告のしかたが悪かったかもわかりません。警察のほうでは大体わかっているわけでしょう、有罪の人がどの程度の刑だったのか。
  14. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私のほうでわかっておる状況では、一般公務員関係有罪の確定しておりますものが二件、高裁に係属中のものが一件、不起訴処分二件ということでございまして、刑の内容その他について——ちょっと前に戻しますけれども、これまでに無罪の確定したものが八件、最高裁係属中のもの一件、不起訴処分三件、公訴取り消し三件というのが教職員組合関係の件数になっております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の聞きたいのは、前もって言ってしまいますけれども、こういうことです。最高裁有罪判決確定したのがある、その刑が一体どのくらいかということですよ。いいですか。それに比例して、今度の事件でたくさんのいろいろな捜査をやっておられるというと、いずれにしてもかりに有罪になったところで結論は見え透いているんではないか。見え透いているというとことばは悪いけれども、あれではないかというのでしょう、そんなことをいうとおこられちゃうけれども。それから見ると、これだけ大がかりなものをやる必要が一体どこにあるのかということを聞きたいわけですね。警察比例原則からいってもいろいろな点からいっても、当然そこへ来るので一体どの程度、いままで有罪になったとしても刑を受けていたのであろうかということを聞きたいわけですよ。これは、この前の最高裁判決引っぱってくればわかるのですが、どうなっていましたか。
  16. 安原美穂

    安原政府委員 いま、本省刑事局に即刻連絡いたしまして、調査中でございますので、しばらく御猶予願いたいと思います。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、問題はそうすると全国的に大がかりな捜査をしき、押収捜索をやっておるということのそれだけの必要性があるかないかということになってくる、そういうふうに私思うわけですが、何か、参考人として任意出頭を求めた者が一万四千人ぐらいあったとかなかったとか出ていましたね。こまかい数字は別として、それはどういう事件参考人になってくるわけですか。それが一つ。それから、出頭しなかりたときどうなるんですか。
  18. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 参考人から聴取する内容というのは、この公務員法違反でありますあおり罪内容を立証するためのいろいろな状況を聞き取るということでございまして、また参考人の方が出頭をお願いしても出てこないということになれば、別にそれ以上の処置はとっておりません。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのあれお聞きしますと、あくまで参考人ですわね。参考人に対して出てきてほしいというのに、何かよくわかりませんが、授業中に出てきてくれとか、それから非常にやかましく何回となく出てきてくれといっているのですか。何か、死んだ人にも出てきてくれといったというふうに書いてあるけれども、ほんとうなんですか。死んだ人がどうやって出てくるのかしらぬけれども、そんなことがあったんですか。
  20. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 われわれはこの捜査については、教育的な配慮は十分するようにいろいろと指導しておりまして、授業中に参考人として呼び出すというようなことのないようにという指導をいたしております。これまでそういうような話がありましたので調べましたけれども、そういう事実は確認されておりませんし、そういうことはないということでございます。また、死んだ人を呼び出したということですが、これは何か一件だけある県でこれまでの先生方の名簿から、それが一番新しいものであったのでそれに従ってお願いしたところ、すでになくなっておったということでこの点は非常に申しわけないということでそこの方によく趣旨を話しまして、おわびをいたして御了解いただいたというふうに聞いております。その他、教育上の問題的な形で参考人を呼び出しているというふうなことはないというふうに私どもは考えております。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、いま押収捜索令状被疑者槙枝委員長ですかになっているという話があったわけですが、そこまで話がはっきりわかっているならば、常識的に見て当然それに基づく証拠ももう収集されているわけですね。だから裁判所押収捜索令状を出したのだと思いますが、何か新聞なんかによると盛んに何日に逮捕するなんて出ていますね。それはどこから出てくるのですか。
  22. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 それは全く新聞観測記事でありまして、私のほうはどこの県からも、具体的にいつ、だれを逮捕するというようなことは一切聞いておりません。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は事件そのものというよりも法律的に問題をいろいろお尋ねしたいと思うのですが、証拠隠滅のおそれがあるあるいは逃亡のおそれ、この逃亡というのは勾留の場合ですか、いずれにいたしましてもそういうようなことがある場合に逮捕するわけでしょう。そうすると、そこまでわかっていて押収捜索令状被疑者として特定されているなら、別に証拠を隠滅するとかというおそれはないのじゃないですか。だから逮捕というものの法律的な要件というものは欠けてきておるのじゃないですか。
  24. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 まだ物証として十分完全にそういうものを押収しておるわけではございませんし、また参考人の方からの事情の聴取というものも、その内容からしてまだ完全に立証するに足りるものを聴取していないという状況であるわけでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのことと証拠隠滅のおそれとどう結びつくのですか。
  26. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 最初にお話し申し上げましたようにまだ捜査中でありまして、具体的に逮捕するかどうかという判断は、われわれとしてはまだいたしておらない状況でございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、捜査中の事件だからあまり聞くなというあれもありますけれども、一万何千人だかの人を参考人として呼び、各県で大々的な捜査をするだけの、そしてよくわかりませんけれども逮捕するとかなんとか言われておるだけの、本件はそこまでやらなければならない重要性というものがどこに一体あるのでしょう。どれだけの法益侵害をされたというふうに考えられるのでしょう。  法務省あとから質問出ますから、前もってあなたに準備するように言っておきますけれども、石油やみカルテルの問題との対比において問題が出てきますから考えておいてください。  どういうふうにお考えでしょうか。
  28. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 今回、日教組が実施しました争議行為というものはこれまでにない規模のものであって、このために全国各地公立学校授業が著しく阻害された。特に義務教育である公立の小中学校の授業が多大の影響を受けた。結局数で約三十万人の組合員争議行為に参加したということになっております。  御承知のとおり、公務員法律によって争議行為をすることを禁止されておるわけでございますので、かかる大規模な違法な争議行為が実施されるということに至ったことについて、日教組がその組合組織を利用して違法な争議行為をあおるという地方公務員法違反の犯罪が濃厚になったわけであって、われわれ法律の厳正、適正を確保する立場にある者として、こういう違法行為を見のがすわけにはいかない、こういうたてまえで捜査を実施したわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 問題は、違法行為がかりにあったとして、それだけの大がかりなものをやるだけの必要性というものがどこにあるかということにかかってくる、こう思うのです。かりに一時間、二時間あるいは一日授業がやめになったところでそのことによって国内治安がそう乱れたということもないし、あるいは子供は喜んでいるかもわからない。そんなこと言っちゃいけないけれどもね。いずれにいたしましても、それほどのものでもない。いわんや公務員争議権の問題がいま国際的に大きな問題になっており、これが認められる方向にあるというふうに考えられるその段階でこういうふうなことをやるというか、やりつつあるというか、これからやろうというか、よくわかりませんけれども、それだけのことをやれば逆に国内治安、それに対する抵抗あるいは反対、それが逆に広まってきて、かえって混乱が大きくなるということも当然考えられるのではないかというふうに思うわけですが、これは警察としてはそういうふうなことをやるについて国家公安委員長の十分な了解を得てもちろんやられたことだろうと、こう思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  30. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 もちろんこういう大規模捜査でございますので、当然国家公安委員長にも御報告申し上げて、その承認を得て実施したわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、国家公安委員長が政党の人であるということの行き方に私は問題があると思うのですが、現実には自由民主党から出た人であり、その人が国家公安委員長をやっておられる。国家公安委員長というものがどういう職責であるかはなかなかむずかしい議論があるかと思うのですけれども、そういう人に報告をし、承認を得てやっておられるということになってまいりますと、当然そこに政治的な色彩があるというふうに、あなた方は考えないにしても、一般国民考えてくるのは私は当然だというふうに思うのですが、これについてあなた方はどこからかの示唆なり何なりを受けて、そして今度の捜査をやらざるを得ないということになったのでしょうか。そこら辺はどういうふうですか。
  32. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 われわれとしてはこの捜査をするにあたって外部のあるいは政治的な特別な示唆なり圧力なり、そういうものは一切受けておりません。国家公安委員会には報告いたしましてそれの御了解を得ておりますけれども、特別の具体的な指示等は、政治的な方面からは絶対にわれわれとしては受けておりません。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この前何のことでしたっけ、警察庁長官警備局長が朝四時か五時ごろに田中総理のところに行きましたね。これは金大中事件か何かのことで行きましたね。今度のことについてはそこまではやっておられないようなんですが、そこで今後の捜査進展というか、そういうふうなものの見通し、それはどういうふうなことになってくるでしょうか。
  34. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 現在それぞれ、さっきお話し申し上げました十二の府県でいろいろと捜査をやっており、その上でそれぞれの本部長が最終的な判断を下すことになるわけでございますが、現在の捜査方針といたしましては、これまでの捜査の結果証拠がかたまり次第関係被疑者検挙するということになろうかと考えております。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務省のほうにお聞きをするのですが、公取から石油告発がありましたね。あれの進展状況について一応お尋ねをしておきますが、ここで問題は、あの事件一体法務省国民の生活なり何なりにどういうような影響影響というのは経済的な影響という意味ではなくて、法益侵害という形でどういうふうな影響があったというふうに考えておられるのか、その重要性についてどういうふうにお考えになるかということが一つですね。  それと、あの場合はあくまで任意捜査でしたね押収捜索は別として、身柄については全くの任意捜査でいったわけですね。これは任意捜査原則なんだからといわれればそれまでなんですけれども、じゃ、ああいう場合は任意捜査でいって、教員組合の場合は強制捜査身柄強制捜査にするということの違いは一体どこから出てくるのでしょうか。これは法務省はどういうふうにお考えですか。
  36. 安原美穂

    安原政府委員 石油カルテル事件国民に与えた影響その他あの事件の評価というものは、いずれ起訴、不起訴がきまる段階におきまして検察の意見として天下に公にされるわけでございまして、いまからあの事件をどう評価するということを私の口から申し述べるのは適当ではないと思います。  あと石油カルテル事件では任意捜査であり、まだ警察は逮捕されるとは言っておられませんが、そのほかの事件については強制捜査でやるという違いは、かりにそうだとすれば、なぜ出るのかというお尋ねでございますが、全く仮定の御質問でございまするけれども、要するに稲葉先生御案内のとおり、強制捜査は、いま申されましたとおりに、例外でございまして、強制捜査をするということは、正しい刑罰権の実現のために必要最小限度においては強制捜査もやむを得ないということで、あくまでも任意捜査原則であるという一般論を申し上げるほかはないと思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、警察お尋ねするのですが、日教組の場合はどうして任意捜査ではだめなんですか。
  38. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 捜索のほうの強制捜索ということについてはもうすでに済んでしまったことでございますが、その後また、それ以前からいわば日教組という組織をあげて弾圧対策という形でいろいろと運動しております。また証拠隠滅的な行為組織的に行なっている、こういう実態をわれわれは把握して、その前提に立って捜査を進めているわけでございます。また、先ほどお話ししましたように、これは検挙方針ということではなくて、これは必ずしも絶対的に逮捕するという意味ではないわけでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 前の日教組なりあるいは都教組ですか、その他で、地公法事件有罪になった場合の量刑はどの程度だったか。
  40. 安原美穂

    安原政府委員 いわゆる争議行為のそそのかしあおりということで、地公法あるいは国公法違反起訴されたもので、日教組関係スト関係は十二件中有罪一つもございません。それから同種のもので四・二五判決によりまして、全農林事件につきましては、被告人五人とも罰金五千円でございます。それから全司法事件につきましては四十四年四月二日の判決でございますが、二人有罪がございまして、罰金二千円ということで、すべて罰金刑であるというのが実情でございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、いま法務省で言われたように無罪が多いし、有罪になっても罰金刑ですわね。ということは、あれですか。裁判所に聞くのはちょっとぐわいが悪いから聞きません。最高裁の刑事局長来ておるけれども、聞くわけにいきませんから聞きませんが、そのような事件にこれだけの大がかりな捜査をしがなければならないという必要性というものは、一体どこにあるのかということをだれだって疑いますわね。結局やってみたところで結論無罪が多いし、また罰金程度。それなのにどれだけの捜査人数を使いどれだけの費用を使っておるのか、わかっている範囲でお答え願いたいと思うのですが、それだけのことをやって、警察が総力をあげる必要性というか相当性というか、そういうものは一体どこにあるのかということですよね。いまの日本の少なくとも裁判所なり何なりの、あるいは検察庁の求刑などもこの程度かどうか、ちょっとあれしませんが、いずれにいたしましても、その程度にしか見ておらない事件じゃないのですか。それをそれだけの大きな人数を使って逮捕し、あるいは勾留し、あるいは押収捜索し、あるいは人を調べるそのことによって出てくることは、別の目的が副次的に達成できるということ、あなた方は意図してないにしても、結果的にはそこにいく。そういう副次的な目的が結局達せられる。それで警察のほうとしては終わったということに、これはだれが見てもならざるを得ないのじゃないですか。これが死刑だ、無期だ、懲役だといくならば、あるいは世の中の治安をうんと乱したということでいたし方ないかもわかりませんが、たかだか無罪あるいは罰金刑程度のものに、どうしてそれほど大がかりでやらなければならないのか。これはだれが見てもおかしい。だからほかの目的があってやっているとしか考えられないと、一般国民は受け取るのではないでしょうか。
  42. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 軽い刑なのにというお話ではございますけれども、地方公務員法、先ほど申し上げましたように、法体系としては三年以下の懲役ということがあるわけでございますし、昨年の四・二五判決によってこれの合憲性は立証されておるわけでございますし、またこれまで無罪といいますけれども、公訴棄却なり、そういう形で公訴をやめたのも四・二判決の結果であるというふうに承知しておりますので、四・二五判決があったということによってそういう制限がなくなったという現実をとらえて、われわれとしてはやはりこういうような法律違反というものを看過することはできないという立場でおりまして、これによる政治的な影響なりその他の影響というものを、われわれの捜査の際に材料として組み込んでおるということは全くございません。純粋に法律違反を問擬するというだけの立場でございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 警察関係文教委員会へ行くのを五十分ごろという約束をしておりますから、私のほうもこれで質問を終わるわけですが、私はいま言ったように、結論的にはもうわかり切っておるということになれは、これは捜査をし、検挙をし、そして参考人としてどんどん呼び出しをかける、そのことによって警察としては目的を達するということを考えているのではないか。現実にはそこに問題がいく。だからあなた方は政治的な意図はないとか、何だかいろいろなことを言われるけれども、警察として考えているのは、なるほどかりに法律違反があったとしても、それにはその違反というか、その結果として出てくるものとの比較考量において捜査全体が考えられなければならないのに、もう比較考量範囲をものすごく逸脱しておることが行なわれるから、これはだれが見たっておかしいというふうに考えられざるを得なくなってくるわけです。私はどうもその点については理解をいたしません。しかしこれは警察とここで問答しても始まらないことですから、私としてはこの質問はこれで終わりますが、どうも了解ができません。そういうことで、一応警察に関するこの点の質問は終わりにしておきます。  それから、法務省のほうでは、この日教組事件に関連して、警察当局なり国家公安委員会から何らかの連絡なり何なりというものは受けておるわけですか。
  44. 安原美穂

    安原政府委員 その点につきましては、今回のストをめぐる地公法違反事件捜査の開始にあたりまして、事前に警察当局から御連絡を受けまして、特に地公法の解釈あるいは判例というようないわば法律技術的な面につきまして協議をいたしたことはあるという報告を聞いております。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、ちょっと前に出た公取からの告発があった石油カルテル事件、これは差しつかえない範囲でいいですから、いまどういうふうに進んでおって、そうしていつごろどういう結論、どういうといっても、その中身は言えませんでしょうが、いつごろ結論が出るという予定なのでしょうか。
  46. 安原美穂

    安原政府委員 お尋ね事件につきましては、二月十九日に公取から告発を受けまして、御承知のとおり直ちに東京高検検事長東京地検、特に特捜部検事を指揮いたしまして、鋭意告発事実の有無につきまして捜査をいたしました。最近に至りまして特捜部において一応の捜査を終わりまして、東京高検にそのまとめた結果を報告いたしておりまして、ただいま管轄庁であります東京高検におきまして、その報告を受けて、補充捜査の必要があるかどうかという点から検討いたしておりますが、近いうちに起訴、不起訴の決定に至る段階に達しております。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 前にちょっと言ったのですけれども、日教組事件などと比べると、やみカルテル以来、公取告発事件に対する検察庁側のやり方が、一生懸命やったのは一生懸命やったのでしょうけれども、どうもなまぬるいというか、そういうふうな印象を国民は持つ、こう私は思うのです。しかし何が何でも逮捕しろということを言うわけではないのです。ただ訴訟法のたてまえは在宅でやるのがあたりまえですから、それならば在宅でやるということが全体として一般的になっていればいいわけです。ところがそうでないところに問題があると私は思うのです。  そこで、ひとつこれに関連してお聞きしたいのは、法務省の民事局長ですが、カルテルが行なわれた場合に値段がきまってまいりますね。その場合それが民事的にどういう効力があるのかということと、そのカルテルが行なわれたことによってできた価格と、それが行なわれなかった場合の価格との差、こういうふうな問題に対して、一般の消費者にはどういうふうな救済の方法というのが考えられるのでしょうか。
  48. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 その点につきましては、私的独占禁止法の二十五条に「私的独占若しくは不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を用いた事業者は、被害者に対し、損害賠償の責に任ずる。」という規定がありまして、これは無過失責任ということになっております。この規定によって損害賠償を請求することができる、こういうことになろうと思います。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、だれが一体だれを相手としてどういう価格、このどういう価格というのは理論上のどういう価格ですが、理論上どういう価格に対して請求ができるわけですか。  それから、クラスアクションとの関係で、クラスアクションの制度というのは日本で立法化されてはいませんけれども、現行法の中で消費者保護のためにやり得る制度というのはどういうふうなものがあるわけですか。
  50. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 請求をする者は被害者でございまして、やみカルテルの場合でございますとやみカルテルが行なわれた結果不当に高く物を買わされた、その買わされたことによる、やみカルテルなかりせばもっと安く買えたであろうというその差額が損害ということになろうかと思いますこれを請求する方法といたしましては、お説のように日本にはクラスアクションという制度がございませんので、一般の手続によってやるわけでありまして、裁判上の請求といたしましては、民事訴訟法の規定に従って請求するということになるわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはどうやって主張をし、主張をしというか、立証をするということになるんですか。とてもなかなか立証できないんじゃないですか。できないわけないでしょうが、考えられるのはどういうふうにやったらいいかです。何かそこに便法がなければ、こういう規定があったって実際生きてこないんじゃないんでしょうか。消費者保護のための規定というのは、日本では非常に不備なんじゃないんですか。そういうことはいままで考えられていなかったからでしょうけれども、そういう点法務省としてもこれは将来いろいろ考えていく必要があるんじゃないかと思うのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。ちょっと質問があまり正確じゃない質問なんですけれども、これは私も知っていて言っているのですが、お答え願いたいと思います
  52. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 被害者としては、この法律の要件を立証する必要があるわけでありまして、無過失責任でございますから、故意過失という点については証明の必要がないわけで、この訴訟は二十六条の審決を前提といたしますので、この審決というのが一つの資料になるわけです。  それから、損害をこうむったということの証明は、そのやみカルテルの行なわれた以後における取引によってこれだけの価額で物を購入したというような事実が証明されなければならないことになると思います。これは一般の不法行為損害賠償の請求の場合と同様であるので、格別変わったところはないように思います。  それから、クラスアクションの制度でありますが、これはまさに消費者保護のための特別な訴訟手続といわれております。アメリカで非常に使われておるということも聞いておりますが、この制度は委任を受けない者のためにも訴訟を行なうことができるという点に非常に特色があるわけでありまして、そのような形での訴訟提起を認めるということは、非常に便利な点もございますけれども、反面、委任をしないでしかも自分の権利について他人が訴訟を起こすという点において本人の立場を十分に考える必要がある。したがって、その条件をどのようにきめたらいいかといったような問題、それからその訴訟の効果をどのように考えたらいいかという問題、さらにはその乱訴などの弊害をどのように防止したらいいかといったようないろいろの問題を考慮する必要がありますので、これは前の委員会お尋ねがございましたように、将来の研究課題というふうに考えております。  消費者保護のための特別の制度というものはございませんけれども、現在のわが国の制度のもとにおきましては、一般の民事訴訟法によりましてたとえば選定当事者の制度を利用するとか、あるいは代理人に一括委任をするというような形で、多数の者が集まって訴訟を同時に提起するという方法が考えられると思います。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまたとえば無罪を訴えて再審を請求しているとか、あるいはそうでなくても無罪であるというような主張をする人が裁判の中でいろいろあるわけです。そういうときに問題となってくるのは、いろいろあるのですけれども、一つは代用監獄の制度の点がきわめてルーズに運用されているという点、それからもう一つは、警察なり検察官のところの供述調書の取り方の問題これが私はあると思うのです。これは刑事訴訟法の問題。それから特に証拠法の問題などに関連してくるものですからそう簡単には言えないものだと思うのですが、まず裁判所に、前の代用監獄の問題でお尋ねをします。  勾留のときに代用監獄の指定を求めて検事が来ますね。そうすると、若い裁判官などでは代用監獄に指定をしないで拘置所に指定してしまう、あるいは代用監獄に指定したのに対して取り消しの準抗告が出てくる。そうすると取り消して、代用監獄に身柄を入れることをやめさせて拘置所に移転させる、こういうふうなことがあると思うのです。現状はどういうふうになっているかということですが、検察官が代用監獄に身柄の留置を求めてくると、ほとんどそのままの状態で代用監獄というものに身柄を入れることを裁判所自身も認めておるのではないんですか。
  54. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 勾留場所の指定ということになりますが、現実にその点の統計というのはとっておりませんです。しかし会同なんかで伺いますと、半分近く代用監獄になっているというふうなことを聞きます。もっともこれも地域差がありまして、結局は勾留場所の指定の場合に裁判官の裁量になるわけですが、拘置所の施設の状況、それから拘置所のある場所の関係、それから拘置所の職員の問題、それから拘置所のたとえば面通しの施設がないというような意味での施設の問題、それから事件によっていろいろな証拠物が非常にたくさんあって拘置所のほうにそれを持ち運びするのが不便であるというような問題、あるいは参考人が非常に多くてそれと対質するために拘置所ではいろいろまずいというようなこと、その辺をすべて勘案してやっているようでございまして、全部が全部請求のとおりなっているとも思えませんが、大多数はその辺を考えて、検察庁からの請求とほぼ同じ数くらいが代用監獄になるこういうふうなことだろうと思います。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑事訴訟法のたてまえは、逮捕の場合は別として、勾留になったら拘置所に勾留するというのがたてまえになっているのではないんですか。そこはどういうふうに受け取ってよろしいんでしょうか。
  56. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 拘置所を勾留の場所と指定すべきと考えるのが原則ではないかという議論については、若干議論が対立しているようであります。確かに被疑者の勾留場所として、原則として捜査機関の影響から遮断したほうがいいそういう施設を持った拘置所であるのが本筋であろうということは、そういう面があることは否定できないと思いますが、ただ現実の問題として先ほど言ったような状況がありますので、それらのことを勘案して具体的なケースできめていくというほかはないのではないかと考えております。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 本来なら勾留場所の指定のときに、代用監獄に指定するときにはそれなりの疎明が必要じゃないか、こう思うのですが、いまの場合は疎明は全くないでしょう。
  58. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 犯罪の性質で大体わかる場合にはむしろ疎明をつけてないと思います。ただ、どうしてこの程度のものを代用監獄にしなければいけないかということについては、疎明を要求してつけてもらうこともございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、法務省矯正局ですか、この代用監獄というのは元来監獄法の一条三項ですかにあることはありますけれども、最初のできたときから将来用いない方針であるということは明記されておったのではないでしょうか。それから戦後も代用監獄廃止というのはいろいろな形でのテーマになっているはずだし、その弊害が非常に指摘をされておりながら、なおかつそれが利用されておるということでしょう。代用監獄ということについての問題点がどこにあるかというふうに法務省矯正局ではとっておられるのですか。これは古いのですけれども、倉見という人の書いた論文などもありますし、それからあなたのほうの専門家の朝倉さんも来ておられるのですが、矯正局としてはどういうふうにとっているのですか。代用監獄というものは望ましくないということにはとっているのですか。
  60. 長島敦

    ○長島政府委員 先生に御指摘いただきましたように、監獄法の第一条第三項には、「警察官署二附属スル留置場ハ之ヲ監獄二代用スルコトヲ得」という規定になっておりまして、代用するということば自体から、本来は監獄として勾留場所を設けるべきものというのが原則で、それの足らないところといいますか、実際上拘置所を十分に要望に応ずるだけつくれないという現実を踏まえまして警察官署を代用する制度ができたものというふうに理解しております。したがいまして、監獄法の考え方からいたしますと、できるだけ固有の監獄の中に拘置場所というものを充実していくというのが好ましい方向だというふうに考えられておるものと思います。  御指摘のように戦後幾たびもございましたいろいろな改正の委員会その他におきます意見の中にも、できるだけ代用監獄を廃止するという方向で意見が出ておりますが、ただその意見の中におきましても、当面早急に監獄を整備いたしましてすべての留置をまかなうということは困難であるということで、その点早急に、一気にそういうことは困難だろうという前提のもとに、現在の代用監獄の運用と申しますか、そういったような点について当面考慮を加えるというようなことも付記されておる答申があるわけでございます。実はこの問題は現実の問題がからんでおりまして、理念は理念といたしまして、現実問題として代用監獄を早急に廃止するということには非常な困難が伴うのが現状でございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 拘置所はいまがらがらじゃないですか。定員の三分の一ぐらいしか入ってないでしょう。半分も入っていませんよ。統計とってごらんなさい。私がいつか拘置所の定員と実際入っている人の統計をとってくれと言ったら、出してきたら非常に少ない統計が出てきたんです。いつの統計かといったら、十二月二十八日だかの統計をとってきた。十二月二十八日といったら、みんな二十五、六日に出してしまうんだから、そのころなんか入っていっこないんですよ。そういう統計をとって出してきたのがありますけれども、そうじゃないですけれども、いまでも、半分も入っていませんよ。それなのにこの代用監獄のほうに入れていくんでしょう。そうすると、こういうことはどうなんですか。これは刑事局のほうかな、捜査の便宜のために代用監獄というものを実際に指定を求めてきておるんじゃないですか。いま千葉刑事局長が言ったように、捜査の便宜というのはいろいろ中身があります。参考人が近くに一ぱいいるとか証拠物を運ぶのがたいへんだとか、いろいろなことがあるかもわからぬけれども、まず一番大きな原因というのは、四十八時間内では自白をしない。自白しないから勾留された。代用監獄に入れてそこでたたく、たたくという意味はちょっと悪いですけれども、自白させる。このことのために現実には代用監獄が使われているんじゃないですか。そういう役割りを果たしているんでしょう、代用監獄は。  千葉刑事局長は御案内かと思うが、横浜の裁判官で、代用監獄の問題でいろいろありましたね。あれはどういうふうになったんでしょう。代用監獄廃止の意見を横浜の裁判官が出したんでしたっけね。あとで説明願いたいと思いますが、いずれにいたしましても、実際は自白を求めるために代用監獄が使われ、なお余罪捜査という形で代用監獄が使われておるんじゃないですか。余罪捜査ということで代用監獄を使うということは、法律の本来の目的に合致しているというふうに考えていいんでしょうか。そこはどういうんでしょうか。
  62. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおり、否認事件なんかにつきましてもしそういう運用があるとしますと、ほんとうはそれは本筋ではないと思うのです。むしろ否認事件のようなものは拘置所に置くべきで、代用監獄に置くということは逆であろうと私も考えます。これまでも運用の問題で会同なんかで議論しますときには、そういうふうな趣旨の発言が多く出ております。  ただ、あとのほうの余罪捜査のような場合は、たとえば窃盗が非常に多いというような場合は引き当たり捜査というのを御承知のようにやりますが、その場合の便宜といいますか、捜査上の都合などを考えますと、そういうのはむしろ自白事件でありまして、必ずしも最初の例のような弊害はないかもしれないと思います。したがいまして、その辺は裁量の問題としてあるいは代用監獄でもいいということが出てくるのではないか、そういうふうに思います。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務省からも意見を聞きたかったんですが、それではこういうことですね。監獄法施行規則というのがあるでしょう。これが代用監獄の場合には守られておるんですか、どうなんですか。そこら辺のところ、これはまず一つの問題でしょうね。一番大きな違いは何かといいますと、これはきわめて卑俗的なことで恐縮なんですけれども、現実問題としてはたばこを吸わせるか吸わせないかということでしょう。監獄法施行規則ではたばこを吸わしてはいけないというふうになっているんですか。ぼくは未決の場合にはたばこを吸わしたっていいんだろうと思うのですけれども、火事になったり何かすることもあるから、いろいろあるでしょうけれども、ところが代用監獄だとたばこを吸わせるわけでしょう。調べているときに、調べられているほうがたばこが好きだと、何かもうのみたくてしょうがないらしいですね。そうすると、調べ官がわざとたばこを吸ってぷうっと煙を吹っかけるわけだ。そうするとたまらなくなって自白してしまうというのが多いんですよ。そういうふうに使うわけだ。酒とたばこで、酒のほうはがまんできるけれどもたばこのほうはがまんできないというのは、もう実証的なあれらしいですね。ぼくは両方のまないからよくわからないのですけれども、そういうことらしいですよ。たばこをのむ人は、入ってから三日も四日もとってもがまんできないそうですね。それで警察はたばこを吸わしてやるんでしょう。そこで自白させるんでしょう。代用監獄はほんとうにこれに使われているんですよ。そうすると、全く捜査の便宜ですよ。拘置所に入ったんじゃ一々調べに行くのがたいへんだ。そこなら年がら年じゅう上へ上げて調べられる。しかも夜おそくまで調べられるというので使われているんじゃないですか。そこで自白の強制が行なわれると思うのですが、監獄法施行規則が代用監獄にどういうふうに適用になっているのか。あるいは準用なのかもしれませんが、それが一つ。それと、よくわかりませんが、この施行規則というのは法務大臣の行政委任立法であって、当然には警察官署には適用がないんだ、だから結局国家公安委員会規則というものできめる必要があるんじゃないかという議論がありますね。法務省の矯正局はそういう意見のようなんだけれども、この点についてはどういうふうに考えるわけですか。それから代用監獄にいる人が請願権を行使するというか、そのときは法務大臣にやるのかあるいは国家公安委員長にやるのか、どこにやるのですか。そこら辺どういうふうになっておるのですか。私もよくわからないんだけれどもね。
  64. 長島敦

    ○長島政府委員 監獄法施行規則は御指摘のように法務大臣が定めておるわけでございます。司法省令として出ておるわけであります。この監獄法施行規則の中に二色の性格のものが含まれておるものと理解しております。一つは、監獄法の中に主務大臣といいますか法務大臣「えヲ定ム」というふうに法律自体に書いております場合に、それを受けまして書かれております施行規則は、いわば法律に基づいて出ております委任命令ということで法律と同じ効果を持っておるということで、代用監獄も監獄という意味で、そういう意味の施行規則は代用監獄にも適用があるというふうに考えられます。一方そういう法律の根拠を離れまして一般的に監獄行政の上で必要なこととして規定されましたいろいろな処遇に関します事項につきましては、これは法務大臣の管轄します監獄についてのみ適用があるというふうに解釈されておるのでございます。したがいまして、この中に二色のものが含まれておりまして、たとえて申しますと信書の検閲とか文書、図画の閲読に関する規定でありますとか、そういうものは監獄法に根拠を持ちましたものでございますからそのまま代用監獄にも適用があると考えておりますが、たばこを吸わせるかどうかというような問題は、直接には法律に根拠がございませんで、監獄行政上法務大臣がきめたことでございまして、警察のほうの代用監獄にはそのまま適用はないというふうに考えております。したがいまして代用監獄につきましては、警察で定めました留置場の規則というものの中でそこは定め得るものというふうに考えております。  で、情願の問題でございますが、これは代用監獄からの情願の例を聞いておりませんので過去の実例がないと承知しておりますが、理論的には二色の考え方が立とうかとも思いますけれども、現在の解釈としては情願先はやはり代用監獄における処遇に関する不服の場合におきましては、警察固有のそこの運営に関する問題でございますから警察関係のほうへ情願が出ていくものというふうに理解しております。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 代用監獄でいろいろな事故なんかあったときにはだれが責任を負うのですか。法務大臣が責任を負うのですか、あるいは警察のほうが責任を負うのですか。
  66. 長島敦

    ○長島政府委員 これは直接その運営を管理しております警察のほうが責任を負うものと理解しております。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もう大臣が来るころなので時間を延ばしているわけなんですけれども、じゃもう一つ聞きます。  別のことですけれども、やはり無罪を訴えるあるいは再審を訴えるという中で出てくるのは自白の強制が一番多いでしょう。現実に裁判なんかでも一番問題になってくるのは警察なり検事の調書が一体任意制があるのか、ほんとうに調べられた被疑者なり被告人がこういうことを言ったのかどうか、これは非常に大きな問題ですよね。ところが現在のいわゆる供述調書というのは被告人なり何なりが自分のほうから進んでしゃべったようにずっと書いてあるわけですよ。これは取り調べ官の腕にもよるわけなんだ。だからたとえば未必の故意なんかのとり方でも、これはあなた、たとえば石をぶつけて死んじゃったようなときでも、当たりどころが悪ければ死ぬのではなかろうかと思いましたなんて書いてあるでしょう。そんなことを本人が言っているわけじゃないんですよね。当たりどころが悪かったら死ぬのはあたりまえだろうと言うと、はいそうですと言う。当たりどころが悪ければ死ぬのはあたりまえなんだから、そういう質問が出ればはいそうですという答えが出るのはあたりまえなんだ。そうすると調書の中では、私は石を投げたのは、これは当たりどころが悪ければ相手が死ぬのではなかろうかと思いました。そこで未必の故意が出てくるわけだ。あるいは何かで刺したときに、刺しどころが悪ければ相手が死ぬのではなかろうかなんて出てくるわけでしょう。臓物故買の知情だってみんなそうですよ。なかろうかと思いましたなんて、そんなこと本人が答えるわけがないのだけれども、調書はみんなそうですよ。そこでいつでも任意性の争いが出てくる。取り調べ官を呼ぶ。呼んだところで本人は任意に答えたと言うに違いない。二人しかいないところなんだからわけがわからない。任意性が排斥されるのもありますけれども、やはり眼光紙背に徹すればできるけれども、普通の場合にはそこはできない。じゃ名前を書いて判こを押したろう、名前を書いて判こを押したに違いない、じゃ事実を認めたんだろう、このとおりしゃべったのだろうという形になってくるわけですよ。だからいまのような供述調書のとり方、そこに私はほんとうに問題があると思うのですね。この問題については常々疑問に思っていたところなんですが、一時「生きている刑事訴訟法」という中で佐伯千仞さんの流れの中で井戸田という人だったか立命館の人がそのことに触れていました。私も疑問に思っていたものですから、いつか最高裁の何かのときに裁判官の人とお話をしたのですが、そうしたらやはりその点は非常に疑問に思っておられる。そこでこの前の「判例タイムズ」を見たら小野慶二判事がやはりこの点書いていますね。いまのような供述調書ではいかぬ。それを速記にするとかあるいは問答式にするとかあるいは録音をとるとかいろいろあると思うのですけれども、この点についての、これは有罪無罪を争うとき、一番この争いが出てくるのですよ。これについて刑事訴訟法の運用は別として、まず最高裁としてはこの点に関連して何らか刑事訴訟法の中で、法律を改正するかしないかは別として、いま言ったような供述調書のとり方、このことについてどうもどこかに問題があるんだというふうにはお考えにはならないでしょうか。最高裁にそこまで通告しなかったかもわかりませんがそういう点をまず最高裁側にお伺いをしておきたいと思います。
  68. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 訴訟の現実の問題として任意性の問題がまさに争点になる事件が非常に多うございまして、それにつきましては調書の作成の方法ということについて確かに稲葉委員御指摘のような問題があると私は思います。実際の問題としては捜査官によりましてはどういう状況で調書をつくられたかという、自分自身のメモのようなものでその任意性を担保する用意をしている場合もあります。それから実際に録音をつけて供述調書をつくっている場合もございます。私ども、もしそういう配慮をしていただけるならば、その争点が少なくなっていくだろうということはいえますが、しかしただこれを一律に義務づけていいものかどうか、またそこまでの必要があるのかどうかというのはやはりいろいろなケースによって違うんじゃないかというふうに思いますので、運用の問題としてそういう争いが起こりそうなものについて捜査官のほうでそれを担保する、任意性を担保するような資料を何かつくってもらえないかというふうにいまの段階では考えております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのメモとか録音とかというのを捜査官がするというのは、実際の例はこれはいままでたとえばずっと否認してきた、それを最終的に自白した、その自白があとまたひっくり返るかもわからない、そのときにその部分だけ録音をとったりメモをとったりしているのじゃないですか。放火事件なんかに多いですね、その他の事件にもありますけれども。  そうじゃなくて、これは法務省刑事局長にお聞きしますが、あの供述調書は本人がまるでしゃべったようになっているわけですね、初めから終わりまで、一からずっと。それではどういう問いが出てどういう答えがあったかということが全然わからないじゃないですか。それが一番大事なんじゃないですか、問いがあって初めて答えがあるんだから。だから、そのためにはどういう問いが出たかということが調書の中に出てこなければ、あとで争いがあったってわからないですよ。そこら辺のところが日本の刑事訴訟法の非常に大きな欠陥だ、こう思うのです。なるほど英米などでは自分が署名するときには納得しなければ署名しませんから、そんないろんな争いがないかもわからぬけれども、日本の場合には、名前を書いて判こを押せというと、はあと言って名前を書いて判こを押してしまうわけですよ。読んではくれるけれども、あそこで読んでくれるのにそれは違いますとなかなか言えないものですから、そこで問題が出てくるので、ああいう供述調書のとり方については非常に疑問があるのです。ああいう調書を認められておるという段階においては真実はなかなか発見できないし、人権の保障というものもほんとうにむずかしい問題になってくるというふうに私は思っているのですよね。その点について法務省の刑事局のほうからどういうふうに考えておるのかお答えを願っておきたいと思います。
  70. 安原美穂

    安原政府委員 稲葉委員のお考えと事柄の評価について意見を異にするわけでありますが、調書は問答式でなければならぬということでなくて、要するに調書で避けなければならぬことは、供述者の真意に反することが書かれてはならないといいうことであろうと思います。その点につきましては訴訟法は、調書をあとで読み聞かせて間違いがないかどうかを聞くということによって保証をしておるわけでありますし、任意性の問題につきましては、伝聞証拠の制限法則ということによって公判廷においてその点がレビューされるわけでございまして、その点の保証につきましては訴訟法上欠けるところがないといたしますならば、できるだけ簡潔に供述者の要旨が述べられるという調書の様式であって何ら差しつかえがないわけでその点におきまして、検察官が犯罪の構成要件あるいは犯罪を犯すに至った動機、情状等につきまして簡潔に供述者の述べたところを記載するということで何ら差しつかえないものと考えておりますし、外国におきます調書におきましても問答式というようなことでなくて、いまの日本と同じような調書の形式になっておると聞いておりますし、それから先ほど千葉局長の申されましたように、特に任意性の争いになりそうなものにつきましては録音をとるというようなことで、信用性の保証に対する配慮も欠けておらないわけでございまして、検察官が拷問をするという傾向があるというならともかくといたしまして、任意の供述をとることに専念しております検察官の調書といたしましては現在の様式で十分であるというように考えております。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは議論があるところですが大臣が来られたのでこれでやめますけれども、現在の検察官の調書といったって、それは現実にはほとんど警察の調書の上塗りみたいのが多いのですよ。そこできわめて不自然な供述が調書の中で出てきているし、それから録音をとるとかなんとかいったって、要するにそれはいま言ったような事件の場合で、あらゆる事件にそんなことをやれというのはあれかもわからぬけれども、私の聞いた範囲では、被疑者なり被告人が希望をした場合には問答式にするとかあるいはソノシートでやるとか、あるいは最終的な調書の場合には弁護人を立ち会わせる、こういうようなことを考えたらどうかということを、これはぼくはだれから聞いたということは言いませんよ。だれかの意見だと言うとちょっとぐあいが悪いから言いませんけれども、そういう意見を私もお聞きしたことがあるのです。それから今度の「判例タイムズ」なんかでもそういうようなことが出ておりますから、そういうことがあるのでお話ししたわけなんですが、これはまたあとの研究課題とさしていただきたい、こう思います。  大臣がおいでになりましたので、大臣にちょっとお尋ねをしたいと思うわけなんですが、まず、たとえば国家機密の問題でこの前毎日新聞の西山記者の問題がありましたね。それから今度日中航空協定で何か問題があった、こう言われているわけでしょう。私の考え方は、こういうようなことで両方を問題にするのはおかしいと思うのですよ。いいですか、おかしいと思うのだけれども、片方だけがああいうふうになって、片方だけが何だかわけがわからぬというのはおかしいという立場です。それは外交なり防衛なりに最小限のぎりぎりのところの何か秘密というものはどこの国でもあるでしょうから、それまで全部さらけ出せということを言うつもりはありませんけれども、それは民主国家においてはきわめて限定中の限定されたものに限るわけなんでございます。だから、こういうことを問題にすること自身がおかしいと私は思うのですが、対比してみるとどうもおかしいように思うものですからお聞きするわけなんです。日中航空協定に伴って何か機密がどうとかかんとかしたということで法務大臣と外務大臣と運輸大臣か、三者が集まって、そして何かきめるのだとかきめたとかいうことが伝えられているわけです。それに関して、いままでの経過、あなたが関与されての範囲の経過と、それはどういう点に問題点があるか。問題点があるかということは、法律的な問題点ですからこれは刑事局長のほうでいいと思うのですが、大ざっぱな点のあなたの考え方、いままでの経過ということについてお話をお願いをいたしたい、こう思うわけです。それは刑法の改正にも関連してくるものですからお聞きするわけです。
  72. 中村梅吉

    中村国務大臣 大平外務大臣が出そうとしていた談話の要旨がどうも抜かれたということで、外務省は一時どこかで漏れたに違いないというのでだいぶ力んでおったようですが、どうも私どもにも実態がよくわからないわけです。私は私なりにその後関係のところに当たってみましたが、どうも漏れたのか漏れないのか、コピーを出したわけでないものだからわからないわけで、どうも事実がわからない。判明していない以上は、われわれとしても何ともお答えのしようがない。何かこうこうこういう経過でこうなっておるという事実がはっきりしておれば、それに対する法務省としての見解も述べられますけれども、事実がまだ何もはっきりしておりませんのでお答えのしようがないというのが現状でございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 事実がはっきりしてないというのですけれども、はっきりさせることは必要だとは法務大臣としてもお考えなんでしょうか。
  74. 中村梅吉

    中村国務大臣 私としてもああいったようなことで外務省が迷惑したとすれば、できるだけ事実ははっきりできるものはさしたいという個人的な気持ちはございます。したがって関係者にも個人的にも会ってみましたが、たとえば党の佐藤運輸部会長にも私は会いました。そうしたら、総務会のあった当日の朝ですか、藤尾君が便せんに大体要旨を書いてきて、こういうことで総務会で発言したいと思うのだがこれで大体間違いないだろうかということであったそうです。ですから、佐藤君の見解からいうと、藤尾君は藤尾君なりに各種の情報を取り集めてきて、どうも外務大臣の談話というものはこういうものらしいという見当をつけて便せんに書いてきて佐藤君に見せたらしい。佐藤君は読んでみて、大体こんなところだろうなという話をしてきたんだそうで、だからそういうようないきさつをいろいろ見ますと、コピーか何か持ってきてこれでというなら別ですけれども、そうじゃない。便せんに自分で集めた情報で書きおろしてきたものと佐藤君は思うと言うのです。そうだとすると、情報でも集めようによっては実態と同じものが集まるわけでありますから、どうもそれが漏れたのか漏れてないのか、私どもも実は半信半疑でわからないわけです。外務省は一生懸命その後もどこからそういう要旨が漏れたか検討しておるようですが、外務省もまだ的確なつかみどころがないように聞いておりますから、これ以上私どもとしては現段階でかれこれ申し上げることは、仮定の事実の上に立ってなら別ですけれども、それは非常にぶっそうなことでございますのでちょっと申し上げられないというような状態でございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの問題に関連して、どういう点が法律的な問題点があるかということを刑事局長からひとつお答え願いたいと思います。法律的な問題でこういう問題があるのだ、これはこうだということは言えるわけじゃありませんけれども、問題点は問題点としてこういうことがあるのだということだけで私はいいと思うのです。
  76. 安原美穂

    安原政府委員 全く想定の上での問題点でございますけれども、外交上の秘密にわたってまだ公然化されていないものがかりに与党議員に示された。それは秘密が示されたということを前提としましての法律上の問題点といたしましては、御案内のとおり秘密が上司の許可もなしに出されたといたしますならば、上司の許可なしというよりも秘密が外部に漏らされたということであれば、公務員法にいう秘密漏示の構成要件には当たるということはいえると思います。ただ問題は、あらゆる犯罪について同様でございますが、正当の事由があったかどうか、違法性があるかどうかということにつきましては、そういう秘密を外に出す、開示する行為についての正当の事由の有無、違法性の有無ということが問題になるのはいずれの犯罪についても常に同様でありますが、本件の場合につきまして一般的に考えます場合に、かりにいわゆる一般職の国家公務員が与党議員にそういうものを漏らしたといたしました場合におきましてその一般職の公務員にそういうものを漏らす正当の事由があったかどうかということが問題になるわけでありまして、一般論といたしまして政府が行政施策を推進し、あるいは立法作業の円滑な促進ということをはかるためにある程度の秘密を与党議員に漏らすということは、それがいまの行政施策の推進のためということであれば正当な事由に当たる場合があるのではないか。問題は、だれがどの程度に漏らしたかという具体的な事情がわからないとそれが行き過ぎであるかどうかがわからないので、それが行き過ぎであるかどうかというところに問題があるわけでございまして、それが行き過ぎであるかどうかはかかって具体的な事案にかかるものでございますので、一がいに違法だとか正当の事由があるということはいえないけれども、どの程度に行き過ぎがあったかどうかということに問題がしぼられてくるのではなかろうかというふうに考えております。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのお答えについていろいろ質問もあるのです。たとえば与党議員だというから、それじゃ野党の議員にあれした場合はどうなるのかという議論も出てくると思うのですけれども、そんなこと聞くのはやめましょう。  そこで問題になってくるのは、たとえば西山記者の問題がありました。あれとの対比で考えてくるわけですが、そうすると、世間一般国民はそこまでいろいろな内容のことはよくわからぬものですから、報道機関が漏らしたというか何というか、いろいろ方法はあったのでしょうけれども、その場合には起訴されて、そうでない場合には全くわけがわからぬということはどうもおかしいじゃないかというふうに一般国民には考えられます。それが一つの問題。  それと、西山記者の場合には一審で無罪だった。どうして検事控訴までして争わなければならないのか。それだけのものがこの場合にあったのでしょうか。その点が二点目の問題です。この二つだけ先に聞きましょう。
  78. 安原美穂

    安原政府委員 西山事件につきましては、要するに検事控訴いたしましたのは、西山記者についてそれはそそのかし罪に当たらないという判決の理由につきまして検察の主張と違うということから検事控訴がなされたものでございまして、それ以外の何ものでもないというふうに考えております。  なおついででございますが、行政施策の推進ということの必要上、俗にいえば根回しというような観点から、所管の事項につきまして所管の公務員が野党議員にある程度の秘密を申し上げるということも場合によって正当性のある場合もあるというふうに考えておりまして、別に与党と野党と区別して申し上げているわけではございませんが、与党の場合により議院内閣制においては、その必要性があるいは正当性が認められる場合が多いということのために、例を与党にとっただけでございまして他意はございませんので、誤解のないようにお願いしたいと思います。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで今度の刑法の改正案というかその中で、企業の秘密漏示罪、これが非常に重くなっているわけですね。これは一体どういうところに根拠があるのか。これは企業内告発の口封じだとか企業の保護だとかいろいろ議論が出ていますね。その点についてのこまかい点は抜きにして、そういう企業の中での秘密の漏洩、これは今度非常に重くしようとしている。ちょっとこれでは内部で公害の告発すらできなくなってくるということになる。この点について大臣としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  80. 中村梅吉

    中村国務大臣 まだ法制審議会で検討しておる最中でございまして、われわれの手元にいただいておるわけではありませんが、ただ法制審議会の様子をわれわれ聞いてみますと、問題は、企業にもいろいろな新しい発見をしたりいろいろな秘密があるわけですが、従来だとその秘密の書類を持ち出しても書類を持ち出したという窃盗にはなるけれども、何にもほかに該当する問題点がない。しかし企業それ自体としては非常に大事なことであるというようなことから、今度企業秘密の漏洩について罰則を設けることになったようです。私どもまだこれから答申を受けてから最終的な検討をするわけでございまして、目下法制審議会のメンバーが検討し結論を出しておるわけでございますから、いかんとも申し上げかねるところでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣としても、たとえば企業内の秘密のあれとしても、企業内の秘密というのを非常に厳格に解釈をしていかないと、たとえばいろいろな企業の中の公害問題についての告発をすること自身も、企業の内部の秘密を漏らしたということで処罰をされてしまうということで何もできなくなってしまう。これではほとんど意味がなくなってしまうわけですから、正当な市民運動ということも全然できなくなってしまうということも考えられるわけですから、そういう点との関連で正当な公害の告発というふうなことも企業の秘密ということでおっかぶせてできないようにしてしまうということのないように、当然、刑法の改正がかりにできるとしても、ぼくはこんなものはできない方向に進みたいと思うのですけれども、そういう点について大臣としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  82. 中村梅吉

    中村国務大臣 もちろん法制審議会で立案しておるものも、おそらく正当の理由がなくしてやった場合だけを処罰しておる。正当の理由があれば免責されるもの、かように思っております。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると刑事局長にお聞きするのですが、企業の中のいろいろの秘密というふうなものも、たとえばそれが告発をするということ、それを明らかにすることによって、たとえば公害の事実を明らかにして一般国民がその被害から、影響からのがれられるという場合、そして同時に企業の内部のいろいろな悪、そういうふうなものを明らかにすること。そのことが国家、社会あるいは市民の利益に合致するという一つの意図そういう正当な意図で行なわれた場合には、それは違法性を阻却をすると考えていいのか。あるいは全部が違法性を阻却をすると考えるのは、理論的にはあれかもわかりませんけれども、そういうふうに考えていいのか。条文では正当な理由があるとかないとか書いてあるのですか。その辺はどういうふうに理解したらいいですか。
  84. 安原美穂

    安原政府委員 政府案でございませんが、法制審議会でお考えになっているお気持ちをそんたくして御説明申し上げることになるわけでございますが、大臣が申されましたように、正当の理由がないのにということが特に明記してございますことは、こういう罰則の構成要件としては正当の理由のある場合が相当多いということの意図がそこにもあるというようになると思います。  それから、秘密を漏らすといたしましても、それは企業の生産方法その他の技術に関する秘密ということでございまして、単なる経営上のぼろもうけをしていることとか、あるいは生産設備に欠陥があるということよりも、技術に関する秘密ということ、いわばここで守ろうとするのは、ノーハウといいますか、国際的なレベルにある技術の秘密ということでございまして、単なる経営上の秘密ということではないということにしぼりがかかっておることにも御留意を願いたいのでございますが、それでして、なお公害防止のために漏らしたという場合に、正当の理由があるということで違法性を阻却される場合があるかということでございますが、一般論といたしましてはそういうこともあり得ると私は思います。ただ、企業の中の者がノーハウに属する高度の秘密を外に漏らすというものにつきましては、その人が、漏らす前に、まず企業の中でその改善の措置をとる手段をとったかどうか。あるいはそれをとったが、聞き入れなかったということかどうか。あるいは避けんとする公害の害が、企業秘密が漏れることによる企業の受ける害と同等ないしはそれを上回るものであったかどうかということとか、いろいろケース、ケースにおきまして、具体的事情に応じて社会的通念に照らして相当である場合に、正当の理由に当たることもあり得る。きわめて抽象的で申しわけございませんが、正当の理由に当たる場合もあるが、厳格な社会的相当性という解釈のもとに違法性が阻却される場合もあるであろうと考えております。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 かりに正当な理由が必要だということになると、いま言ったしぼりは二つかかっているわけですね。企業の生産方法、それから正当な理由と二つかかっているわけです。そういう場合であると免責をされるというのは、具体的にどういう場合が考えられますか。いまあなたいろいろ言われたがよくわからないのですが、免責というか、世間的に一般考えられているけれどもこれはこの条文に当たらないのだという。いまのあなたのお話でいうと、内部でなおかつ手段を講じなければならない。手段を講じて聞き入れられないということがあたかも前提であるかのように、そういう有権的な解釈であるようにとれるわけですが、必ずしもそんなことはないわけでしょう。必ず内部でいろいろなことをやって、会社側に話したが聞き入れられなかった。そういうことをやったから初めて正当な理由になるというわけでもないでしょう。そうでなくたっていいこともあるわけでしょう。
  86. 安原美穂

    安原政府委員 法文にそう書いてあるわけではございませんので、そうでなくてもということにもなるかと思いますが、先ほど申し上げましたように、正当の理由はないのにということをことばを置きかえれば、社会通念上漏らすことが相当であると認められる場合ということにも相なるわけで、その場合に私といたしましては、企業の中における不法、不当なことについては、企業の中におる者はまず企業にその是正を求めるのが社会通念上相当な行為ではないかと思いますので、そういう処置がとられたかどうかということも相当性判断一つの資料になるのではないかという一例として申し上げた、あくまでも私の一つの解釈でございます。  それから技術上の方法と申しますのは、生産方法その他技術に関する秘密でございますので、何か非常に高い、もっと安く上がるのに高い、ぼろもうけしておるというようなことは、生産方法その他技術に関する秘密にはならないだろうと私は思うということを申し上げたのであります。
  87. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ぼくは、企業あるいは国家、そういうもので秘密がないとはいいませんけれども、きわめて厳格に解して、それのいろんな漏示とかなんとかいうことはほとんど問題にしないので、刑法上は、別のことをやるなら別として、そういうふうに考えるのが正しいのではないか、こう思っているわけですが、どうもいま言ったように、日中の場合と外務省の沖繩の場合、片一方はやけに厳格で、片一方はおっかなくて手が出ない、何かそういう印象を与えるものですからお聞きしたわけですけれども、私としては、秘密なんというものはほとんどあり得ないという立場で、そういうことをかれこれ刑法上問題にすること自身がおかしいんだという立場ですから、それは誤解を招くと困ると思うのです。  そこで、刑法の改正にいま進んでいるわけですが、大臣、その中で大臣が考えて問題だと思うようなところ、これもちょっといやな質問なんだけれども、大臣が考えて問題だと思うようなところは各個にどういう点があるんでしょうか。
  88. 中村梅吉

    中村国務大臣 まだ具体的にはよくわかりませんが、日弁連あたりがいろいろ批評していることをわれわれ耳にいれまして、そういう点は、今後答申があってから特に慎重に検討すべきではないだろうか、こういうように考えております。どの点がといいましても、いままで日弁連の反対や何かで大体浮き出ているところは幾つかあるわけでございますが、まだこれも、私ども法制審議会に毎回出ておるわけでありませんので、委員の人たちの意見も、外部の批評だけでなしに、なぜそういう盛り込みをせざるを得なかったのか、したのか、そういうような真意がわかりませんと、ちょっと判断いたしかねるわけでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 一つ中で大きな問題は、私はまだ質問していなかったのですが、たとえば騒乱罪が騒動罪になるということ、これは簡単にいうと対象の範囲が広がるというふうに見てよろしいでしょうか。そして罪も大体重くなるというふうに見てよろしいでしょうか。騒乱罪がなぜ騒動罪になる必然性があるのかということがよくわからない。対象が広がるのか、刑が重くなるのかということです。
  90. 安原美穂

    安原政府委員 私の法制審議会における審議の経過から聞いているところによりますと、騒乱ということばは何か内乱ということばに通ずる意味で、語感として大げさだという感じのために、騒動という、やさしいことばではございませんが、ややトーンダウンしたことばにしたんだと聞いております。  それから騒動の罪につきましては、広がる部分ということになりますと、結局最近におきます騒乱、現行法の騒乱の罪に関する判例の動向が地方の静ひつを害するという、メーデー事件あるいは新宿のあの学生のデモのときの騒動のような相当大規模なものでないと適用にならない傾向にあるので、そういう大規模なものがこの騒動の既遂の形態であるとすれば、その段階に至らない準備の段階でこれを制圧する罰則を設けることが治安維持上相当であるという御判断で騒動予備罪というものができた、かように聞いております。
  91. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは予備罪だけですか、広がってきたというのは。刑が重くなったというのは、ほかにもあるんじゃないですか。付和随行の場合なんかも重くなったんじゃないですか。
  92. 安原美穂

    安原政府委員 現行法は百六条で——先ほど騒乱と言いましたが、騒擾です。「附和随行シタル者ハ五十円以下の罰金二処ス」というのでございますが、今回は単なる付和随行、いわゆるやじ馬的なものについての罰則を落としまして、「その他騒動に参加し、又はこれに関与した者は、」という意味におきまして、付和随行よりもその参加の形態を、騒動に参加する意思を持って参加し、またこれに何らかの形で関与したというような者はということで、構成要件といいますか、犯罪の成立要件を厳格に、騒動に対する参加のしかたを強くいたしたということの関係から、刑が重くなったというふうに理解いたしております。
  93. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはあとで認定するんで、最終的にそうであるかないかということの認定は裁判所できまるんですが、その前には、付和随行のやじ馬的な者でも、いま言ったような認定をして実際問題としては幾らでも検挙できるということになってくるんじゃないですか。だからこういう事件はうんと無罪が出るわけでしょう。だから検挙にポイントがあるんで、というふうに実際の運営はされてきているわけじゃないのですか。それから、いまの騒動予備罪というのはどういう場合に適用されるんですか、実際の例をあげてみるというと。
  94. 安原美穂

    安原政府委員 例と申しますか、構成要件は、騒動の罪を犯す目的で二人以上が通謀して多数の人間を集合させたり、あるいは通謀して凶器を準備したというのを予備というふうにいっているので、単なる予備ではなくて、二人以上の通謀で多衆を集めあるいは凶器を準備したということをもって予備というので、予備の中でもさらに構成要件をしぼっておるわけでございますし、それから前段の検挙のために結局付和随行が検挙されるのではないかというお尋ねでございますが、今日の時代におきまして、警察は裁判判決でどうなるかということを無視して都合よく拡張解釈するというようなことの警察ではないというふうに確信しておりますので、そういう御心配はないというふうにお願いしたいと思います。
  95. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現行法と、騒動罪というこれができた場合と具体的にはどういう——現行法ではできないのだけれども、この改正がかりに通ったらこういうことはできるんだという違い、それはどういうふうなところにあるわけですか。例をあげてひとつ説明をしていただきたいと思います。
  96. 安原美穂

    安原政府委員 例と申しましても、先ほど申し上げました百七十二条の予備というものは、現在では処罰できないわけでございますから、その点が処罰できる。したがって先ほど申しましたように、騒動の罪を犯す、騒動の罪とは、「多衆が集合して、暴行又は脅迫」をするということが騒動の罪でございますから、多衆が集まって暴行または脅迫をしようという目的で二人以上の者が——一人ではだめなんで、二人以上の者が通謀いたしまして多数の人間を集めさせた、あるいは凶器を準備したということで処罰される点が、現行よりに認定されれば、違うと言ったって、、違うというのは一番最後の段階で争うのであって、それまでの段階では幾らでも騒動予備ということで逮捕し、勾留はされないとしてもできるということになってくるのじゃないですか。実際問題としては非常な広がりで、いわば治安のための便宜というか、そういうことのために人権が侵されるという危険性がこの中に非常に大きく入ってきておるのじゃないですか。そういうふうに考えていいのじゃないかというふうに思うわけですが、大臣はそういう点についてどういうふうにお考えでしょうか。騒動罪というのは予備を設けて、そしていままでは検挙もできなかったものも、事前にそういうようなものをなくすという意味か何か知りませんけれども、きわめて予防検束的な形のもので、それはちょっとことばは違うかもわからぬですが、やっていこう。治安主義的なにおいが非常に強いと考えられておる騒動罪、特に予備を罰するというのは例外中の例外ですよね。いま予備というのは、殺人とか強盗とかという程度でしょう。ほかにもあるかもしれませんが、あまりないですよね。例外中の例外ですからね。そこまで広げていくという行き方については、治安の優先のために国民の正当な表現の自由とか人権とかが侵害される危険性が非常に強いということが考えられるわけですから、こういう点について大臣としては、将来どういうふうに考えて進んでいきたいということでございましょうか。
  97. 中村梅吉

    中村国務大臣 私は直接審議に参画していないものですからよくわかりませんが、大体想像すると、予備を加えざるを得ないというのは、最近学生の内ゲバなどが非常に盛んで、鉄棒をたくさん用意したり、それから人を傷つけるような石だとかセメントだとかというようなものを大量に用意したりするような者がしばしばあるけれども、これは広がるといえば広がるということでございます。はいまの段階では予備の罰則がありませんから検
  98. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その目的というのは、だれがどういうふうにして認定するのですか。第一次は警察でしょう。だから、警察のほうでそういうよう挙もできませんので、おそらくそういう必要性を審議会の委員の諸君としては考えて、こういうことを盛り込んできたんではないかというように想像いたしております。いずれにいたしましても、これは構成要件及びしぼり方その他、答申の出た暁において、法務省として十分に検討をしてまいるべき事項の一つである、かように思っております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これで終わりますけれども、刑法の改正は非常に大きな問題だと私は思うわけです。各方面からも反対が起き、いろんな声がありますから、これはいままでも大臣、答弁しておりますけれども、日弁連の意見もありますが、日弁連だけではなくて各方面の意向、声、あるいは声なき声もあるでしょう。いろんなものを十分に聞いて、そして慎重に対処をするというお考えであるかどうかを最後にまとめて御答弁を願って、私の質問は終わります。
  100. 中村梅吉

    中村国務大臣 十分に慎重に検討してまいりたい。相当日数がかかっても、十分に検討して成案を得るようにつとめたい、かように思っております。
  101. 小平久雄

    小平委員長 次に、正森成二君。
  102. 正森成二

    ○正森委員 私は二月に、千里ニュータウンの裏口分譲について、三名の検事の名前と事実をあげて、そういうことがあってはならないではないか、検察の綱紀の点から見ても姿勢を正すべきであるという意味のことを言いましたが、その後新聞紙上で大臣から厳重注意になったということを拝見いたしましたし、私の部屋にもそういう御連絡がございました。あの事実内容から見まして、厳重注意というのは、たとえばここに三月五日付の新聞がございますが、大阪府を見ましても、五人が懲戒解職になっております。これは贈収賄事件にからんだということはもちろん大きな理由でございますが、そのほかに知事みずからが減給になるというようなことで、府の幹部全部についても公務員法上の措置をとっておられるわけですね。それに比べまして、いかに土地をお返しになったとはいえ、軽きに失するのではないかというようにも思われるわけですが、それについて、厳重注意にとどめられた理由等について伺いたいと思います。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  103. 安原美穂

    安原政府委員 この処分を出すに至りました理由につきましては、これを読み上げますと相当時間がかかりますので、これの要旨を申し上げますと、要するにこれら三検事がこれらの土地の分譲を受けたことについては、客観的には法律による優先分譲を受ける資格がなかったのに受けたという意味において違法なことであったということは認めて、しかしながらその違法なことをこれらの三検事がすべて知悉してさようなことをしたものではないというようなことでございますので、国家公務員法上の懲戒処分の事由には当たらない。しかしながら検察官というものが世間から深く信頼を受けて、いささかたりとも違法、不当なことのないようにという、身を持するに厳でなければならないという、検察官に求められるモラルの高さにかんがみまして、結果的には違法であったがそういうことに注意が足らなかったということも認められるので、その不注意について、今後かようなことのないように厳重に注意するというのが要旨でございまして、その判断をいたす過程といたしまして、違法な結果は原状に回復せよということで土地を買い戻してもらい、あるいは土地の上に家を建てておった検事につきましては家もろともに買い戻しをしていただいて、原状を正当なものに戻したということも加味いたしまして、厳重注意ということにしたというのが事情でございます。
  104. 正森成二

    ○正森委員 原状回復されたということも厳重注意にとどめられた大きな理由になっている。これはお返しになりましたから姿勢を正されたという意味では評価いたしたいと思います。しかしいま安原刑事局長の答弁の中に、私事に関することであるということが出ましたが、もちろん大阪府の職員のように、職務に関して収賄をするというようなことではございませんが、かりに私事であったとしましても、たとえば検察官、警察官等が勤務時間外に、非常に申し上げにくいことですが、窃盗を働いたとかいうようなことになれば、これは私事とは言い切れない面があるということはお認めになると思うのですね。本件では、そういうようなものではございませんが、私がこの前指摘しただけでも、純粋に私事にわたることといってそれで済まされるものであるかどうかという点については非常に疑問があります。  たとえば、もうこの前名前を出しましたから遠藤検事のことを申しますと、遠藤検事というのは最初土地を優先分譲を受けておったが、これは新住法で権利移転が認められるには十年かかるということで、もう一度新しい土地を入手したというわけですが、その入手するのについて関係しましたのが信貴平一という、贈賄で起訴され、贈賄以外にもいろいろ問題を起こしている人物であり、このときに、今度は法律上問題がないような書類手続にしたいということで、遠藤検事を、土地を提供した地主でないにもかかわらず地主に仕立て上げるという分譲手続をとった府の企業局の管理二課長代理の林利武というのは、これまた新住法違反について収賄容疑で起訴されている人物であるということになりますと、これは決して私事にわたることではなしに、本件の新住法違反事件捜索するについてきわめて中心的な人物からいずれもこのような裏口分譲を受けておるということになるわけで、これは見方によっては、その間の事情について何かそれ以上のものがあったのではないかというように一般的にいえば疑われてもしかたがない事案であります。  そのことはお認めになったと思うのですが、そういう事案であるといたしますと、私は一そう遠藤検事等につきましては姿勢を正した対処のしかたが必要であろう。三人の検事のうち、金沢の検事正をしておられた方は、これは定年間近であったということもありましょうが、三月末日をもって退職されて、表向きの発表はどうであるにせよ姿勢を正されております。その点特に、こういうように自分が分譲を受けるにつき世話をした人が二人までこの千里ニュータウン事件についての中心人物であるという方と接触しておられ、その方たちのいろいろのあっせんまた不正によって自分自身も分譲を受けたということになりますと、それは私事と言い切れるかどうかという点は問題だと思いますが、いかがですか。
  105. 安原美穂

    安原政府委員 正森先生におことばを返すようですが、私、私事であるからということは少なくともいまのお答えについては申し上げたことはございませんので、これは私はうそは申しません。  ただ、いずれにいたしましても、検察官の身辺というものは公私にわたって清潔であって、世の疑惑を受けるということがあってはならないという一般論はおっしゃるとおりでございます。そのゆえにこそ今度のような処分をいたしたのでございまして、その点はひとつ御理解を願いたいと思います。  なお、遠藤検事につきましては、御指摘のように信貴平一あるいは大阪府の林利武が贈収賄で起訴されておることも事実でございますので、結果的にそういう人間とかかわり合いがあったということは、まさに遠藤検事の不徳のいたすところであったと思いますけれども、その信貴平一というのは遠藤検事の小学校以来の友達の知人であり、その知人が不幸にして林利武であったという関係でございまして、さような不法行為に出るおそれのある人間ということを知って交際をしておったわけでもなかったという点もひとつ御理解いただけたら幸いであると思います。
  106. 正森成二

    ○正森委員 自分の小学校時代の友だち、そのまた知人であったというようなことはあるようですし、私が調べたところでは、新聞ではAさんとかBさんとかいうように、名前が出ておりませんがそれは鳳中学時代の同級生の山本という人物であるというようなことも私のほうで調べてわかっております。かりにそうだとしましても、そもそものいきさつは、知人であり、そのまた知人である知人であるということで何でも許されるというわけにはまいらないのではないか。特に今回の場合にはあまりにも偶然の符合というのが多過ぎるのではないかというように私どもは思うわけですね。林というのが少し知っていた人物である、そのまた知人が信貴平一であるということのようですが、しかしそれだけではありません。広く府庁その他でもいわれておりますことは、この遠藤なる検事は、林、それから信貴平一だけでなしに、ついこの間まで企業局の局長をしていた五百蔵芳明というような人々と和歌山のほうに釣りに行って、そして大いに清遊を楽しんでおるのかどうか知りませんが、そういうことをやっておるということも広くうわさされているのですね。ですから、そういうようなことがあるといたしますと、本件について、ただ分譲を受けるのに世話になったというだけでなしに、ふだんからそういう人と非常に親しい関係であるということになりますと、今度のような千里ニュータウン事件を摘発するのについて、現在は福岡高検の検事ですけれども、それ以前には大阪地検検事をしておったわけですから、非常に不都合なことが起こるし、一般紙などでも、こういう検事ではこの事件の追及はとてもできなかっただろうと公然と書いておるわけです。  だから、どういうわけで釣りにまで一緒に行くというような親しさになったのか、お調べになっておりますか。和歌山の由良に行っておったという話ですね。
  107. 安原美穂

    安原政府委員 この点につきましては、正森先生の御指摘があったところでございまして、いわゆる法務大臣の監督権の発動に基づく調査ということで調査をいたしましたわれわれの結果によりますと、遠藤君は、先ほど申し上げました知人の信貴平一と和歌山県の由良町付近に釣りに行っ先先の旅館で、たまたま五百蔵企業局長と出会ったということでございまして、最初から一緒にいやというほどの深い仲ではなかったようでございます。
  108. 正森成二

    ○正森委員 私そういうような説明を伺いましたけれども、これが検察庁の近くの喫茶店に行ったらたまたま会ったというような説明なら私も納得するんですけれども、大阪の人間がわざわざ和歌山の由良というようなところへ、タイ釣りかタコ釣りか知りませんが行きまして、しかも、日も同じ、釣り場所も同じで、偶然会って、そして意気投合するというようなことは、通常は信じられないんですね。  しかも、私がいろいろ聞いたところでは、この四名は釣り仲間であるということになっているんですね。向こうで偶然会ったんじゃなしに、大いに釣りをして楽しもうではないかということで大阪から出かけたというように見るほうが自然であるし、そういうようにその関係者は言っておりますが、いかがですか。
  109. 安原美穂

    安原政府委員 たまたま五百蔵局長だけがおったのではなくて、そこに林利武という企業局の職員、これが、遠藤君の一緒に行った知人の信貴平一と知人でございますので、そういうことで、林五百蔵局長のおられるところの旅館でたまたま会ったということでございまして、林氏を通じて旅館で落ち合ったということになっておるようでございます。  なお、念のためにでございますが、問題の土地の分譲を受けましたのは、遠藤君の場合は四十六年五月でございますが、この五百蔵局長が企業局長であったのは四十六年八月二十日以降でございますので、この土地の分譲を受けた当時の企業局長ではなかったということもひとつ御理解いただきたい、かように思います。
  110. 正森成二

    ○正森委員 私もその点は存じております。もしそれが同じ時期だったら、私の質問もこの程度ではとても済まないわけで、まさにどんぴしゃり贈収賄であります。——になる可能性が少なくとも大きいわけですけれども……。  しかし、そう伺いましても、先ほど、おやめになった五百蔵企業局長と林氏がたまたま組んで釣りに行かれた、それで信貴平一と遠藤検事がまた組んで行かれた、それで釣り場でばったり会われて、それで林氏と信貴とが友人であるから、結局四人一緒にグループになった、こういう御説明でありますけれども、しかしこれは、私も釣りに、あまり好きではありませんけれども、何回か行ったことがありますが、釣り場なんというのは、そこでよほど好き者同士でないと、またその釣り場がいいというようなことでよく行く人でないと、めったに会わないものですよ。私がかりに釣りに行って大竹委員長代理にぱっと会うようなことはめったにない。それでまた、行った人がよく知っている人であるようなことはまずないわけで、そういうように御説明されましても、これはなかなか人を納得させられない。  しかも、起訴状の要旨を見ますと、この信貴平一というのは、林氏に対してルームクーラーや電気冷蔵庫や電気洗たく機各一台及び現金七十万円を贈賄しておる、こういう関係の人物ですね。一方は収賄側であり一方は贈賄側である、そのそれぞれのほうに、片や検察官、片や、とにもかくにも、一カ月ほどおくれたけれども、企業局長で千里ニュータウンについてほぼ全権を持っておる人物がやはり一緒に釣りをし旅館に泊るということになりますと、これはだれが考えてももやもやと煙が立つということになると思うのですね。  私が調べておるのではそれだけではないのです。信貴平一には弟があり、その弟は巷間、暴力団もしくはそれに準ずる組織に入っておるということは御存じですか。
  111. 安原美穂

    安原政府委員 私どもの調査したところによると、その弟さんが暴力団関係者であるということは聞いておりません。
  112. 正森成二

    ○正森委員 それでは私から申しましょうか。  信貴平一の弟は信貴久政といいます。これが堺方面では、準暴力団ということで名前の知られておる人物であります。遠藤検事は、その堺支部の検事をしておられたときに、私の伺っておるところでは、暴力団関係検事であります。そうじゃございませんか。
  113. 安原美穂

    安原政府委員 堺支部在勤当時の遠藤検事は、暴力団係というよりも、あらゆる事件の担当であったというふうに聞いております。
  114. 正森成二

    ○正森委員 堺支部というのは、検事はいろいろなことをやりますけれども、少なくとも暴力団関係も所管に置いていたということは事実であります。  そしてその信貴平一というにいさんのほうが、贈収賄事件で千里ニュータウン事件にいろいろ関係をせられ、自分自身も起訴されたということのほかに、その弟さんの信貴久政というのが、巷間いわれるところでは、そういう団体に関係のある人物であって、堺においては「銀の星」というキャバレー、それから「堺トルコ」というトルコぷろでありますが、それを経営しておられます。ところが、私の知っておるところでは、遠藤検事は、この信貴久政の経営する「銀の星」と「堺トルコ」に何回か出入りをなさっておる、そこで飲食をされておる、からだも洗っておられるということのようでありますが、そういうことをされており、しかもそのおにいさんの贈賄者側がいろいろと裏口分譲について便宜をはからわれ、そして贈賄されて収賄した林さん、その人に、地主でもないのに地主だといううその書類をつくってもらって、自分が分譲を受けたということになりますと、どう考えてもこういう検事はよくないですね。  あなた方は「銀の星」や「堺トルコ」があるというようなことは知っていますか。私があらかじめ参事官に言っておいたでしょう。
  115. 安原美穂

    安原政府委員 これまた正森先生の御指摘がありましたので、そういうトルコぶろあるいはアルバイトサロンというものがあることは事実でございますが、調査の結果によりますと、そういうところに遠藤検事が出入りしたという事実はないということでございます。
  116. 正森成二

    ○正森委員 いまの安原刑事局長の答弁は、これは、事実を御存じないか、あるいは部下をかばわれるのか知りませんが、私はここではっきりニュースソースを申し上げてもよろしいけれども、それを申し上げますと現職の方にいろいろ御迷惑がかかりますから名前は申しませんが、私は二度、三度繰り返して間違いがないかというように聞いておりますけれども、こういうところを飲み歩いておったというのはもう公然の秘密であります。そういうようなことをされておって、そしてその関係者からいろいろ不正のことまでされて分譲を受けておられるということになりますと、これは検事として非常によくない。私は、いま聞き違いで安原さんが私事とおっしゃったように聞いて少し違った質問をいたしましたが、私は以上のような調査に基づいているわけですけれども、安原刑事局長は否定をなさっておられますけれども、しかし少なくとも信貴平一や林と関係して本件分譲を受けられたということは事実で、それは認められるでしょう。どうですか。
  117. 安原美穂

    安原政府委員 それは事実でございますが、書類の作成の細部にわたっては万事遠藤君が知ってそれをそういうふうに了承したとかいうことではないのでございますが、いずれにいたしましても信貴平一と林利武の世話になって土地の分譲が受けられるに至ったということは事実でございます、
  118. 正森成二

    ○正森委員 私は決して安原刑事局長を苦しめるつもりではありませんけれども、遠藤検事というのは、最初に四十四年三月に一たん泉北ニュータウンの用地を自分のものにするつもりで代金も納めているのですね。ところが、新住法の規定を調べてみたら、自分は地主ではないからそれはだめなんだ、権利移転を受けるには十年たたなければ知事の許可がないということを知って、これでは困るからというので土地をかえてもらいたいということを言っているんですね。そうだから、その時点で新住法の規定はよく知っているわけですよ。ところがその後四十六年ですか、そのことを話をして、十二月ごろですか、自分の名義で同じニュータウン関係の土地が手に入ったということですから、自分は地主でもないのになぜそういうように今度はさっさと自分の名義になったんだろうなということは、一回目だけならともかく、二回目に突き返した上で結局そういうぐあいになったんですから、どういうわけでなったかわからないなんていうようなことはないはずですね。自分の判こがなければそういうようにもならないわけですし……。ですから、そういう不正が行なわれたということは知らなかった、こうおっしゃいますけれども、普通の事件でそういうように言って安原刑事局長が担当検察官としてお許し願えるだろうか。かりに正森成二がそういうふうなことをやってお調べいただいて、知らなかった、ああそうでしょう、先生なら御存じないでしょう、法律も何しろ御存じないからということでお許し願えるだろうかと思うと、なかなかそうはまいらぬと思うのですね。だから、そうなるとやはり同じ検察官同士ではどうも甘いんじゃないか。一般の庶民は何百倍というので公募を受けておるのに、検察官はこういうことをやって、俗な言い方をすれば非常に確実を期して二へんまでやり方を変えて分譲を受けておられるということになりますと、これは部下をかばわれる気持ちもわかりますけれどもしかし相当よくないという感じはしませんか。
  119. 安原美穂

    安原政府委員 その点は正森先生の御指摘を待つまでもなく、私どももそういう点について一種の疑いを持ちまして、どうして知らなかったかということを調べましたところが、調査の結果によりますと、遠藤君は法律を詳しくは見ていなかったが、優先分譲を受けた者からさらに分譲を受ける、最初のケースでございますが、そういう場合におきましては十年間は転売が許されないものだということは耳学問で知ったということは事実のようでございますが、直接に自分が分譲を受けるという余地がないということまでは法律をよく知らなかったようでございまして、当時何か巷間あちこちで、結果的でございますが、だいぶいわゆる資格のない人が譲り受けている事実もございますので、そういうものをちらほら耳にいたしまして、ほかにまた便法があるものだと思ったようでございまして、その後たまたま大阪府から——先ほど申しましたように手続につきましては全部まかせきりでございますので、よく知らなかったものですから、たまたま大阪府から分譲の通知を受けたので、これはいいぐあいにいった、こう簡単に軽信したというところに不注意があった、かように調査の結果ではなっております。
  120. 正森成二

    ○正森委員 人から転売を受けるのはいかぬけれども直接受けるのはいいと軽信した、法律をよく知らなかったということですけれども、私どもから考えますとそのほうがむしろ理解しがたい、こう思うのですけれども、しかし安原刑事局長のお話を伺っておりますと、遠藤さんがそう思うのも無理はないなと思われる点があるのですね。それは、数年前にやはり検察官で直接入手しておられる方がおられるから、そういうのを小耳にはさんでおられて、あの人でも直接譲り受けたんだからおれもよかろうと思われたのかもしらぬというように思うのですね。  そこでお聞きいたしますが、昭和四十三年ごろつまり本件の遠藤検事関係が起こるよりも三、四年前に、大阪府の企業局や日本住宅公団大阪支所をめぐって造園汚職という事件がございましたか。
  121. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘の、大阪府企業局並びに日本住宅公団大阪支所の造園工事をめぐる汚職事件というものの検挙、摘発、処罰がなされまして昭和四十三年十月二十一日に警察から送致を受けて大阪地検が捜査をし、四十四年二月十三日、約三カ月後に最終処分をしたという事実がございます。
  122. 正森成二

    ○正森委員 その被告人の中に大阪府企業局の役人も含まれておりますか。
  123. 安原美穂

    安原政府委員 収賄者が四名おりまして、いわゆる企業局関係職員二名、住宅公団職員二名ということになっております。
  124. 正森成二

    ○正森委員 企業局関係の職員の一人に坂上利男という大阪府企業局宅地開発部建設第二課の主査がおり、この方はほぼ十回にわたって収賄を受けすでに裁判結果が出て、懲役一年六月に処せられて、最高裁ですでに刑が確定していると思いますが、それは事実ですか。あるいは、事実であるとして、もう一人の方はどなたですか。
  125. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘の坂上利男被告人判決状況につきましては、御指摘のとおりでございまして、懲役一年六月ということで、最高裁まで上告がなされましたが、確定をいたしております。  それから、もう一人の被告人の氏名は神田曠という方でございます。
  126. 正森成二

    ○正森委員 したがって、その時期には大阪府の企業局の役人が二名ほど関係者として収賄等で裁判になっているわけですから、検察官たる者は大阪府と何らかの特別の便宜を受けるということは慎まなければならなかったと思うのですね。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕  当時、やはり同じ千里で企業局が宅地造成をしておりまして、それは通称千里一団地というように呼ばれておったわけであります。このときにはこの団地は新住法の規定は適用ではなしに、私の承知しておりますところでは旧都市計画法に基づいて分譲が行なわれた。それについて、大阪府知事は分譲の基本方針や譲渡の方針を昭和三十七年十月十一日に議会において決定して、それに基づいて譲渡したというように聞いているのですが、安原さんはそういうことを御存じですか。
  127. 安原美穂

    安原政府委員 御指摘のとおりの事実があったと聞いております。
  128. 正森成二

    ○正森委員 そのときに、大阪府知事は昭和三十七年十月十一日に「千里丘陵住宅地区開発事業に基づき建設した分譲住宅等の譲渡および貸付けの基本方針」というのを議会において可決しております。それの「譲渡の方法」というところを見ますと、「譲渡は、一般公募により選定した者または国、地方公共団体その他知事が適当と認めた者と随意契約により行なうものとする。ただし、知事が必要と認めた場合は、この限りでない。」こういう規定になっております。ですから、一般公募が原則でありますが、そのほかに知事が国や地方公共団体その他で適当と認めた者と随意契約を行なう。これはどういうことであるか私大阪府で調べてまいりましたら、それは団地に必要な保育所であるとかガソリンスタンドであるとか、そういうものを随意契約によって行なうということだそうであります。最後の、「ただし、知事が必要と認めた場合は、この限りでない。」というのは、そういうような公共性がなくても知事が認めればそれによって分譲、譲渡するということになっておりまして、これは新住法の規定よりは非常にゆるやかになっておりまして、知事が政治的判断でいろいろ分譲できるということになっておるそうであります。  そこで、こういうような、知事が必要と認めれば特段の理由がなくても譲渡できるという規定に基づいて、当時このまさに造園汚職が行なわれていたときに、大阪の高検の最高責任者と目される方が二人まで裏口分譲を受けておられるという事実があったのではありませんか。
  129. 安原美穂

    安原政府委員 先ほど御指摘の、大阪府の土地分譲の基準ということは、どうも私どもこれは別に違反事件がこの宅地の分譲についてあって捜査の対象にしたわけでもございませんので、そういうものがあったかどうかは存じません。  それから、大阪高等検察庁の最高責任者の二人がそのころ譲渡を受けたかということにつきましても、詳しい、いつどうなったかということは調べる権限もなければ、いまのところ理由もないので存じないのが正直なところでございます。
  130. 正森成二

    ○正森委員 安原刑事局長からそういう答弁がありましたが、私は質問をする場合に、不意に聞いたら気の毒だと思って、一日、二日前に法務省の方に大阪府知事、当時左藤義詮氏でありますが、昭和三十七年十月十一日に可決、確定した基本方針というのをお見せしてありますが、いかがですか。それでも局長は御存じなかったのですか。
  131. 安原美穂

    安原政府委員 担当の参事官の話によりますとそういうものを正森先生から見せてもらったことは事実でございまして、かつまた土地を取得したことはあるように思われるが、それがいつであるかはわからぬという報告でございます。
  132. 正森成二

    ○正森委員 それでは、最小限そういうことを知っておられるということでお聞きいたします。  お断わりしておきますが、この二人の高検の最高首脳の方は、別に遠藤検事等のように新住法違反法律違反を犯されたわけではない、旧都市計画法にはさような規定はなかったわけでありますから。またそれが妥当であるかどうかは別として知事が議会にかけて作成した「ただし、知事が必要と認めた場合は、この限りでない。」という規定に基づいておそらく分譲されているというように思われますので、それもまた法律違反というような問題あるいは規則違反というような問題は起こらないと思います。ただ私は、ともかく検察官というものは、知事の特別の政治規定に基づいて、一般庶民が公募でなければ譲り受けられないような場合に、軽々しく譲り受けるべきではない。特にそういうものと関係があったというようなことは一切ないと私は思いますが、当時大阪においては、非常に新聞紙上をにぎわしておりました造園汚職等があり、大阪府企業局がそれに関係しており起訴されるというような時期に、こういう「ただし、知事が必要と認めた場合は、この限りでない。」という著しく政治的な規定に基づいて分譲を受けるというようなことがもしありとすれば、これは決して妥当ではないというように思うのですけれども、いかがでしょう。
  133. 安原美穂

    安原政府委員 先ほど来たびたび申し上げておりますように、どういう事情で最高責任者に当たる方が土地を入手されたのかがよくわかりませんので、私といたしましては何とも意見を申し上げるわけにはいかないわけでございますし、またいつ入手したかもよくわからないという状況でございますから、ますますもって、時期それから事情というのがわからぬ以上は、ちょっと私この際意見を申し上げることができないというのが実際でございます。
  134. 正森成二

    ○正森委員 私はこれらの方が現職ではなしに、すでに退官をして弁護士をされておりますので、名前を申し上げることは差し控えたいと思いますしかし、私はここに登記簿謄本を持ってきております。それを拝見いたしますと、Aさんと申しておきましょう。高検の最高首脳といいますと、普通は高検の検事長になると思いますが、検事長であるとは私は申しません。その高検の最高首脳であった方は、吹田市古江台、町名番地もわかっておりますが、町名番地は略します。そこで二百八十三・四五平方メートル、こういうものを大阪府から直接入手されております。ここにその年月日も書いてあります。  もう一人は、やはり大阪府の高検の最高首脳でAさんより一代前に同じ役職についておられた方でありますが、その方は吹田市津雲台、町名番地はあえて申しませんが、宅地三百七十一・五〇平方メートルというものをやはり大阪府から直接譲り受けておられます。それは登記簿上明白であります。念のためにその上に家が乗っておるかどうかというのを調べましたが、なかなかしょうしゃな家が乗っておりまして、ここに写真がございますが、これはなかなか庶民では買えないような家しかもきわめて閑静な住宅地帯であります。  こういうようなことがあるとすれば、これは新住法の時代とは違いますけれども、遠藤検事が、人から転売を受けた場合には問題だけれども、直接譲り受けるというのはかまわないではないか、何となれば、自分の最高上司がそういうことをやっていたのだからというように思われるのもこれは無理はないな、こういうように思うわけです。私はこれが法律違反であるというように申し上げるわけではありませんけれども、今度の三検事の処理のしかたを考えてみますと、決して法律違反ではないにしても、庶民からすれば、千里ニュータウンの宅地は五百倍から最高二千倍にわたるような激しい公募の上でやっと手に入れるというような時代に、一つの政治的な規定によって知事から直接入手される、あるいは最近の新住法の場合にはあえて法の不正を犯し、場合によっては文書偽造というようなものを関係者に事実上させて入手されるというようなことは、これは決して法の厳正な適用者である検察陣営がそういうことをすべきではないという印象は繰り返し持つわけであります。  したがって、私は法務大臣に伺いたいと思いますが、法務大臣はゆうゆうたる態度でこのいきさつを聞いておられたと思うのですが、そこで私は、こういうような事実が確実に法律違反になるかどうかとか、あるいは処分をさらにやり直せというようなかっこうでは聞きませんが、しかし私のあげたようなことが巷間いわれているとすれば、私は相当なところからきちんと調べておりますからだからそうだとすると、庶民感情から見て決してほめた話ではないというように思うのですね。私がきょうあえて聞きますのも、今後そういうようなことのないようにしていただきたい。いやしくも李下に冠を正さず、こう申しますから、そういうような姿勢で貫いていただきたい。検事も人間でございますから、私は関係のないところに自分の金で酒を飲みに行く、疲れたときにトルコぶろに行くのを決してするなとは言いませんけれどもこういうようなかっこうでなさるということは慎まれたほうがいいということで申し上げるわけです。大臣の御所信を伺いたいと思います。
  135. 中村梅吉

    中村国務大臣 お説のとおり、検事というのはみずから正しいと思うだけではなくて、第三者からも常に厳粛な正しい人と見られるようにつとめるべきであろうと思います。したがって御注意のような点につきましては、今後、遺憾の点のないように十分に努力をしてまいりたいと思います。
  136. 正森成二

    ○正森委員 たとえば五月二日の週刊新潮を見ますと、千里ニュータウンについての記事が出ておりまして、その中で府企業局のある幹部がこういっているというのです。「私は今、『大阪無情、千里泉北ニュータウン悲話』という題で三百枚ほどの原稿を書いています。事件のいきさつ、裏話のすべてですよ。とにかく事件関係者のすべてに罪の意識がない。役人、検事、府議、新聞記者、みな同じです。おれだけじゃない、おれの場合はこうだから仕方がないとか……、全く大阪無情ですよ」といっているのですね。だから、こういうことで罪の意識がなくてやっておられるということが一番こわいので、罪の意識を持ってやっておられるという場合は、これは正されるわけですけれども、そういうものが一角として本件において浮かび上がったということだろうと思います。  なお、私が問題提起した現職の検事については、お聞きになる点はお聞きになり、いやしくも該当するような事実があれば、なお厳重な検察行政上の注意といいますか検察行政のあり方を改善されることが望ましいと思います。そういう点を指摘して次に移らしていただきたいと思います。よろしゅうございますね、大臣。  法務大臣にも最高裁にも伺いたいと思うのですが、各省で人事の採用をなさる場合に、これは三菱樹脂事件等でもいろいろ問題になったわけですが、各出身校に学歴調査票というようなものをお送りになって、そこで思想調査にあたるようなことをされているということは、法務省の場合はあるのですか。それはないのですか。わかりませんか、大臣、あまりえらいから。
  137. 中村梅吉

    中村国務大臣 承知しておりませんが……。
  138. 正森成二

    ○正森委員 そうですか。それは大臣はそういう下々のことまで御存じないと思いますが、そういうことはしておらないであろう、しているということは知らない、こういう意味ですか。
  139. 中村梅吉

    中村国務大臣 そういうことです。
  140. 正森成二

    ○正森委員 それでは最高裁判所はいかがでしょうか。
  141. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 学歴調査というのはいたしております。もっとも思想調査云々というようなことはいたしておりません。
  142. 正森成二

    ○正森委員 ここに私の手元に資料があります。この資料には「大阪地裁人秘第〇〇〇号、昭和四十九年〇月〇日」ということで、何々殿というところに学校の名前が書いてあります。それからお出しになった大阪地方裁判所の方の名前もわかっております。しかしこれをそのまま申し上げますと、この資料はどなたから私が入手したかということが出てまいりますので、その名前は伏せさせていただきたいと思います。しかしこれを見ますと、見出しが「裁判所学歴調査票」こうなっておりまして、マル秘ということで四角がついております。いろいろ成績だとかいうようなのをお聞きになっているようで、それはよろしいのですが、その中ほどのところにこういうことが書いてある。本人の学内外団体における地位及び活動状況、団体名、団体の目的及び性質、団体内の地位、役名、活動状況ということになっております。こうなりますと、本人の学内外団体における地位及び活動状況でありますから、自治会の役員をしておったとかしなかったというようなことだけでなしに、すべての学内学外の団体に加盟しておるかどうか、加盟しておるとすればその地位及び活動状況ということになりますと、たとえば民主青年同盟に加入しておるかどうか、日本共産党に加入しておるかどうか、その他位及び活動状況、正森と接触しておるかどうかというようなこともこの記載内容になってくる。こういうことになりますと、事実上思想調査にあたることを最高裁判所は職員採用にあたって要求しておられるということになるわけです。それはやはり裁判所の、憲法の番人たるべき者として、私はよく存じませんが、日本国憲法を守るというようなことは当然誓約させられると思いますが、それ以上にわたって、一般的に学内学外における団体に加入しておるかどうか、その地位及び活動状況、すべて学校に答えさせるということはあまり感心しないのではないかというような気もするのです。これは大阪でのことですが、そういう事実があったかどうか、あるいは今後も続けられるかどうか、御答弁願いたいと思います。
  143. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 お手元の調査票の原本を拝見いたしておりませんので、完全にこれと同じであるかどうかということについては一応の留保をつけさせていただきたいと思いますが、おそらく、私どものほうで職員を採用いたします際に学歴調査票というのを統一用紙で使っておりますので、同じものについて御指摘になっておるのではなかろうかというふうに考えます。それでございますと、十という欄がございまして、十という欄は正確には「本人の学内外団体自治会、部、クラブ等加入の有無および同団体における地位、活動状況」という名前でございます。以上でおわかりいただけますように、共産党に入っておるとか民主青年同盟に入っておるかどうかというようなことを聞く趣旨ではなくて、わかりやすいことばで申しますと生徒会とかクラブ活動等における本人の地位、活動状況ということがわかるなら書いてほしい。それによりまして本人の指導力あるいは特技等を承知して人事上の処遇の一資料にしたいという趣旨のものでございます。  これは何も昨今に始まって使用している様式ではございませんで、最高裁判所が採用試験を独自にやるようになりました昭和二十七年以来、この様式を使って学校照会をいたしておるものでございます。近時、このような書き方についてそれはそれなりに御指摘のような、そのとおりの疑義ということになるかどうかはわかりませんが、学校側からこのとおりに書かなくてもいいんじゃないかというような照会がございます場合にはそれでけっこうなので、そちらの学校の御自由なやり方で御回答いただきたいということを申してきておるわけでございます。  実は、この様式も裁判所独自で考えついた様式ではございませんで、人事院が学歴照会等に使っております様式を私どもも一応検討した上で、ほぼ同一の様式を使用させていただいてきて今日に至ったわけでございます。ところが人事院のほうは昨年からでございますか、新しい様式に改められまして、先ほど私が申しました十という欄がなくなっております。私どももそれを承知いたしましたので、昨年来同様の様式に改めたいということを考えたわけでございますが、昨年は印刷が間に合いませんで引き続きただいま御指摘のような様式を使ったわけでございます。しかし本年からは人事院と同一様式に改めまして、現にそれを使用して職員の採用をいたしておるという状況でございます。その新しい様式にはいま言ったような欄はもうやめてしまっておりますので、今後そういう問題は起こらないと存じますし、またこれまでも決して正森委員御指摘のような観点からの調査ではなくて、私がいま申し上げましたような学校の中における指導力といいますか、本人の特技と申しますか、そういったものをわかれば知りたいという趣旨に出たものであるというふうに御了承いただきたいと思います。
  144. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう御説明がありましたし、もう改められたそうですからこれ以上は申し上げませんが、しかし私の手元へ入っておりますものはやはり昭和四十九年四月マル日ということでございますから、少なくとも四月時点では大阪地裁では行なわれていたというように思われますし、また矢口人事局長は、学校内においてどれだけ指導力があったということを知りたいというように言われますが、また私はそうであろうと善意に解釈したいと思いますが、少なくとも文面では本人の学内外団体における云々と、こう書いてあって、たとえば民主青年同盟、あるいは日本共産党、日本社会党あるいは自由民主党というようなところでどんな活動をしておるかということも受け取るほうの学校としては知っておれば書かなければいけないだろう、知らなければ調べなければいけないかという気を起こさせないとも限らないということでございますので、それはないほうがいいのではないかと思って質問したわけです。すでに本年から是正される措置がとられたということでありますからこれ以上申しませんが、できましたら本年から変わった様式ですね、白地の何にも記入されていないものを委員会もしくは私にお見せいただければより一そうしあわせかというように思いますが、そういう措置をとっていただくということを委員長に了承していただいて、私は質問をこの程度でやめさせていただきたいと思います。
  145. 小平久雄

    小平委員長 出していいんでしょう。
  146. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 はい、けっこうでございます。
  147. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる二十九日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。午後零時五十二分散会