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1974-04-10 第72回国会 衆議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月十日(水曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 谷川 和穗君 理事 羽田野忠文君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    塩谷 一夫君       野呂 恭一君    保岡 興治君       山崎  拓君    山下 徳夫君     早稻田柳右エ門君    日野 吉夫君       正森 成二君    沖本 泰幸君  出席政府委員         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ――――――――――――― 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   正森 成二君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     正森 成二君 同月十日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     山崎  拓君   河本 敏夫君     山下 徳夫君 同日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     江崎 真澄君   山下 徳夫君     河本 敏夫君 四月五日  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願(小濱新次紹介)(第三五四〇  号)  同(広沢直樹紹介)(第三五四一号)  松山地方法務局岩城出張所存置に関する請願外  二件(越智伊平紹介)(第三六四四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月三日  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案に関する陳情書  (第三六八  号)  白鳥事件の再審に関する陳情書  (第三六九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件及び法務行政に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。本日、最高裁判所矢口人事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  4. 小平久雄

    小平委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。青柳盛雄君。
  5. 青柳盛雄

    青柳委員 最高裁判所お尋ねをいたしたいと思います。  ことしも司法修習生裁判官採用されるように希望される方がたくさんありまして、昨日の新聞の報ずるところによりますと、その採否決定した、正式には十二日ころの閣議できまるということだそうでございますが、裁判官希望の方は何名で、最高裁判所選考され、内定された方は何名か、その詳細を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 今週の月曜日、八日でございますが裁判官会議をお開きいただきまして、その時点におきます裁判官採用希望者八十七名の方につきまして、判事補として任命すべきものの名簿に登載することの可否ということで御審議をいただいたわけでございます。慎重にあらゆる観点から御審議をいただきまして、結局二名を除きます八十五名の方につきまして、名簿に登載すべきものとの裁判官会議の御決定をいただきました。したがいまして、残ります二名につきましては、いわゆる不採用ということになったわけでございます。
  7. 青柳盛雄

    青柳委員 この前の法務委員会で私がお尋ねしたときには、八十九名ぐらいの希望者があったと言われておりましたが、それがさらに八十七名に減った上、さらにまた二名は不採用ということになったようであります。新聞報道によりますと、その二人の人はいずれも男性であったということでありますが、不採用になった理由について公表することは、いままで慣例としてやっておられないようでありますけれども、ある新聞記事によりますと、それは成績がよくなかったからだという、どうもそれは観測記事でありますから、そうはっきり説明をされたわけではないと思いますけれども、例年問題になっております青年法律家協会あるいはその他の団体の加盟の有無について、取材をした記者などが、団体加入は問題にならなかったというような説明があり、そしてそれでは成績がよくなかったのかというようなことに対して黙っておられたというような、そういう関係があるのではなかろうかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  8. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官採用の場合におきまして、特定の思想でありますとか、特定団体加入というようなことについて一切調査もしていないということは、これまでも申し上げておるところでありまして、今回も同様でございます。採否理由、これは採用理由も同様でございますが、採用されなかったことの理由について、これは申し上げられないということで一切公表をいたしていないということは今回も同様でございます。そのことだけでございまして、特段にそれ以上の成績とかなんとかいうようなことで申し上げては一切いないわけでございます。
  9. 青柳盛雄

    青柳委員 青法協会員であったかなかったかというようなことは、かりに公表されても、それ自体本人人格を傷つけることには結びつかないと思いますけれども成績が芳しくなかったというような話が不採用理由になってまいりますと、これは一生その方の不名誉になる可能性はあるわけで、かりそめにも成績がよくなかったんだということが推察されるような措置があってはなるまいと思うのです。昨年の二名の不採用の人については、前の法務委員会で正森委員からも指摘されましたように、裁判所部内でほとんど公然といわれたというようなことがある。今度の場合も青法協会員ではないというように記事にはなっておりますが、私どもの調べたところによると、青法協会員ということがやはりあって、ただ任官を希望した際に、だれからか、おそらく教官などではなかろうかと思うのですが、そういう人から、青法協会員というままであるならばなかなかむずかしいだろうという示唆を受けたか勧告を受けて、退会をされた。しかるにもかかわらずどうも効果を発揮しなかったらしいのであります。非常に温厚な青年だそうでございまして、もと、ある職場労働組合青年部長どもやったことのある人だそうでございますけれども、温厚だからというので青年部長をやめたわけじゃありませんでしょうが、裁判官希望されたようであります。こういう方がせっかく示唆勧告かによって青法協を脱会してもなおかつ採用されないというのは、つけ焼き刃か欺瞞とでもとられたのかどうか、はたから見ると非常に気の毒な感じがしないわけでもない。何らかの配慮がそこにあったのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  10. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青柳委員からただいまも御指摘がございましたように、不採用理由ということを公表いたしますと、御本人にも非常に御迷惑なことにもなるわけでございます。そういったようなこともございまして、人事のそういった点につきましては一切理由を申し上げないという原則をかたく貫いてまいっておるわけでございます。したがいまして、成績とかなんとかというようなことにつきましても、私どもからは個別の問題として申し上げることは一切避けておるわけでございます。  昨年の問題につきまして裁判所の中でいろいろいわれておるというような御指摘がございましたが、これは当委員会におきまして正森委員の御質問がございましたときにも、私は、昨年の問題ということではない、その趣旨のお答えをした記憶がございます。  今回不採用になりました方につきまして、団体加入等についてお尋ねでございますが、私ども、二人の方が団体に加入しておられるのかどうかというようなことも一切存じておりませんので、どういうことからお尋ねであろうか、趣旨が必ずしもはっきりいたさないわけでございますが、いずれにいたしましても、いま申し上げましたように、そういったこととは一切関係のないことであるというふうには申し上げられるかと思います。
  11. 青柳盛雄

    青柳委員 例年のごとくに不採用者が出る、それが最初からのことであればもう恒例のような形になってしまうわけでありますが、四十五年から始まって現在に至っている。したがって五年連続ということになるわけでありますが、いずれも青法協会員である人が含まれておったということが一つ理由になって、いっときは非常に激しい反対運動までも巻き起こるようになったわけでありますが、いずれにしても毎年毎年不採用者が出るということはたいへん残念なことでございます。ことしは希望者も多かったし、また採用者も多いという点では特色があるようでありますが、それでもなおかつ裁判官の定員は十分に充足されないという状況のもとで、せっかく希望をするにもかかわらず排除されてしまう、拒否されてしまうというようなことがあるのは非常に残念でございます。もちろん裁判所としては、数ある司法修習卒業生の中からすぐれた裁判官になる人を望まれるのはわからないわけではないんだけれども、少なくとも卒業ができた人、つまり法曹資格は完全に取得した人でありますから、これは人によっては、裁判官向きとか、検事向きとか、弁護士向きとか、中には学者向きというように、それぞれの傾向の差はあるでしょうが、客観的にそれが評価されて、はたしてそのとおりのものであるか、また主観的に、本人希望するから、それがいいというものでもないでしょうけれども、少なくとも裁判官になりたいという希望を持っておられる方が、わずかとはいえ——場合によっては非常に多かったときもあるわけで、七人も不採用になったこともございますから、排除されるということは非常に遺憾である。また最後までその希望を撤回しない人が結局は排除になるわけで、それ以前にいろいろの事情希望を撤回する人も相当数あるようであります。その不採用原因は、本人人格というものがおもな理由になりますけれども、それ以外、やはり人事の機密という理由もあって明快にはされない。したがって同じことが毎年繰り返されていくということは制度的に何か欠陥があるのではなかろうか。一つの関門は、法曹資格を獲得するという点でもう突破しているわけですね、ところが採用の点ではそうはいかぬ。これは大学を出たから必ず就職できるというものでないというものとはまた質が違ってくるのではなかろうかというふうに思うわけです。したがって、希望者は一人も不採用にならぬというようなことを期待することは現実問題として不可能かもしれませんけれども、何とかできるだけ大ぜいの人が希望をかなえられるようにする、また例外的にそれがかなわないのは決して採用者側の恣意的なやり方ではなくて公正なやり方でそうなったんだということが保障されるようなそういう措置というものはとれないものか。たとえば非常にむずかしいことではあろうかもしれませんが、ある種の選考委員会のようなものができておって、単に最高裁裁判官あるいはその準備をする総務局ですかの段階人事局などの段階だけでなしに、他の者も加わるような形の委員会があって、そこで選考を行ない、最終的には最高裁判所会議でリストをつくるというようなことはできないものだろうか。そうすれば一般の信頼をも保障することができるし、また本人十分納得をされるであろうというふうに思うわけです。こういう点は、もうすでに五年もこういう問題が起こり続けておるわけでありますから、ことしこの人たちが何か公然と訴えを発表するか運動するかどうかそれは知りません、知りませんけれども、少なくともいままではそういう状況があったわけでありますから、最高裁判所として前向きに検討されたことがあるかどうか、この点をお尋ねをしたいと思います。
  12. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 修習を終了いたしまして裁判官希望する方、できるだけ多くのいい方々に御希望をいただき、御希望をいただく方はできるだけ多数、できれば全員裁判官になっていただくように取り計らいたいというのは私ども人事を担当する者としても念願とするところでございます。ただ、以前におきましては、修習生のほうから教官方にかなり御相談等がありまして、まあ進路指導と申しますか、一つ指導ということでいろいろ御相談に応じたということもあったようでございます。近時、いろいろな事情からそういうことがなくなってまいったということも、あるいは不採用者が出る一つ原因であろうかというふうに考えております。こういった点におきましても、今後もっときめのこまかい修習中における指導というものが行なわれてしかるべきではなかろうかという考えも持っております。  ただ、しばしば申し上げておるところでございますが、やはり裁判官になっていただくということでございますから国家意思としての判断をそこで下していくという重い職責でございますので、御希望の方である限りは全員の方に常に来ていただくということまでは申し上げかねるわけでございます。  そこで、裁判官職責という観点から、どういう方が裁判官たるにふさわしい方であるかということにつきまして種々の見地から十分慎重に御検討いただきまして現在裁判官会議で御決定をいただいておるというものでございます。裁判官会議は御承知のように、裁判官出身の方、検察官出身の方、弁護士出身の方、それから学識経験としての学者出身方等、いろいろの方で構成されておりまして、そこで慎重に御決定をいただくということでございますので、まあ青柳委員指摘委員会というようなお話がございましたが、私は現在の裁判官会議の御決定ということが十分にそういった意味を果たしておるものと考えております。そういうことでございますので、その前段階といたしまして原案提出に当たる委員会といったようなものはこれは司法の独立ということもございますし、そういったものを設けるかどうかということは検討をする余地はないというふうに現在のところ考えております。
  13. 青柳盛雄

    青柳委員 確かに最高裁判所裁判官の構成が非常に多方面から選ばれた人々であり知識、経験も豊富で、人事の問題についても誤りなきを期するに足る人材がそろっているような面はないわけではないと思います。しかしながらやはり常勤の公務員でございますから一般民間人というものとは同じではないわけです。で、役人採用するのは役人がやるんだというのが過去の考え方で、民主主義のもとでは公務員国民全体の奉仕者であるということばもあるように、国民が主人公としてその任を与えるわけでございますから、正確には選挙その他の方法が一番民主主義に沿ったゆえんではないかという感じもしないわけではありません。しかし職業的な裁判官をすべて選挙で選ぶなどということは非現実的な面もありますし、陪審員と違いますから、その点は必ずしも選挙でなければならないということはありませんけれども民間人のフリーな立場での意見が人事にも一定の影響力を持って、介入するなどというと、いかにも片方が専権事項であってそして横からじゃまをするとか干渉するというふうにとられますけれども、介入するのじゃなくて参与する、人事国民が参与する、そういう面でものごとを考えれば、前向きに幾らでも考える余地はあると思う。いま全然考えることはしていないというお話でありますが、これは今後の大きな課題として私どもは追及していく必要がある。  その問題はこれで打ち切りまして、これも昨日の朝日新聞報道によりますと、札幌で起こった事柄でありますが、その記事を読んでみますと、「全司法札幌支部ゼネストの十一日、勤務時間にくいこむ職場集会を開く予定だったが、札幌高裁と地・家裁がこのほど、長官所長名で全組合員家庭に「違法な行動に参加すれば、将来の処遇にも影響する」などと述べた警告文書を郵送したため、組合側は八日午後、長官室に押しかけて抗議、全司法本部を通じ国会でも追及する、という。」こういう記事であります。別にその記事のとおりに私が全司法本部を通じて国会でいま追及しようとしているわけではありませんが、その全司法の十一日のゼネストというのは、「早朝、勤務時間に十五分くいこむ職場集会を開く予定だった。五日の本部決定で時間外集会に切りかえられたが、問題の警告文書方針変更前の三日付で組合員の各家庭に配られた。」この問題について、札幌高裁地家裁がどういう文書家庭に送りつけたのか。それからそれが五日に本部決定方針変更される前の三日付で各家庭に配った。こういうことはいままでにもあったものなのか。そういう文書を送りつけるなどということは、今度が初めてなのか。そういう点いかがですか。
  14. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私どもも、昨日の朝刊各紙を見まして、初めてそういう事実を知ったわけでございまして、そういう文書等があるならば、こちらにすぐ送付するようにと連絡をいたしまして、まだ参っておりませんが、大体新聞に出ておりますような内容文書を各職員自宅あてに発送したということのようでございます。詳細は詳細の報告を待ちませんとはっきりは申し上げかねますが、そういう事実があったようでございます。職員自宅にそういった文書を送ったということは、今回の札幌のケース以外私どもは承知いたしておりません。
  15. 青柳盛雄

    青柳委員 国家公務員であるところの裁判所職員に、いわゆるストライキ権なるものが保障されているわけではありませんけれども、それが憲法違反であって無効であるかどうかということも当然論争のあるところでありますが、少なくとも春闘の中で待遇の改善その他いろいろの要求の実現のために、労働者としての権利を行使するわけでありますから、こういう団体行動に対して、時間内に十五分食い込むから反則だということで、早目警告すればいいということで出したのかどうか知りませんけれども、どうも政府ども一般行政庁公務員に対していろいろの警告を発するようでありますが、最高裁指示もなしに高裁地家裁が先ばしったことをするということになると、これは裁判所の性格からいっても少しく戦闘的であって、司法行政ですからかまわないわけでありますけれども、それにしても落ちつきのない態度ではないかという感じがしないわけでもありません。もう少し真相を確かめて、時間外集会に切りかえるという本部指示も出たわけでありますから、そういう状況も判断せずに先ばしった行為に出るということは、いたずらに挑戦的であって、組合員の正当な権利行動に対する不当な干渉を思わせるものがあると思います。もちろん、行なわれてしまってから処分をするというよりは、事前に警告して反省を求めるということが常に悪いというわけではありませんけれども組合の幹部に対する警告とか勧告とかいうのならば、まだ幾らかいままでもあったかもしれませんけれども、こういう、各組合員家庭分裂策動のように、違法な行動に参加をすれば将来の処遇にも影響するなどといって、家族までおどかすような形でやるというのは、いかにも切りくずし作戦といいますか分裂作戦といいますか、労働者にとっては一番不愉快なやり方ではないかと思うのです。これは至急真相をよく調査して、責任者に対して適当な措置をとられるように私は強く求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
  16. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私ども最高裁を含めまして、裁判所の側といたしまして、組合員の正当な組合活動について介入するというような気持ちは毛頭持っておりませんし、そういうことはこれまでもいたしたことはないわけでございます。  ただ組合が、ストライキというように公務員に禁止されておりますことをやろうということになりますと問題は別でございまして、組合員に対しましても、そのような違法な行動に出ることのないよう強く警告する必要が出てまいるわけでございます。また、組合員と申しましても一般裁判所職員でございますので、その職員に対しまして、いやしくも違法な行動に出ることのないよう強く呼びかけて、その協力を求めるということも必要な場合が出てまいるわけでございます。  先ほども申し上げましたように、札幌でのできごとはまだ詳細の報告を得ておりませんので何とも申し上げかねますが、そういった観点からいたしたのではなかろうかと私どものほうで想像いたしております。しかし、いずれにいたしましても、その報告を待ちまして、もし問題とすべき点があるならば、今後そういう点には十分留意いたしていきたいと考えております。
  17. 青柳盛雄

    青柳委員 私のほうもまだ全司法本部のほうから詳細な資料をもらっているわけでありませんので、この問題はさらに事実の調査を経た上で御質問申し上げることもあろうかと思いますので、それは留保いたします。  それにも関連があるわけでありますが、裁判所管理職という制度があります。これは国家公務員法の百八条の二の規定が裁判所職員にも適用されるという関係から、管理職というものが設けられるわけでありますが、この管理職の数が他の行政庁と比べてあまりにも多い、つまり比率が高いということが問題になっております。  そこで裁判所では、一般職員管理職との比率などを調査し、それが他の省庁と比べてどういう差があるのか調べたことがございますか。
  18. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判所管理職一般職員に対する割合というのは一五%でございます。各省庁の平均的なもの、これは正確には承知いたしておりませんが、大体一一、二%というふうに承知いたしております。そういうことでございますので、各省庁に比しますとやや高いのではなかろうかというふうには考えております。この点は、当委員会でこれまでの機会にも申し上げたことがあろうかと思いますが、裁判所仕事特殊性というものがどうしてもそこに反映してこざるを得ないのではないかということで、私ども、この一五%という数字、必ずしもそう無理な数字ではないのではなかろうかというふうに考えております。
  19. 青柳盛雄

    青柳委員 私が全司法のほうから聞いたところによりますと、裁判官を含めると全職員に対するパーセンテージは二六、裁判官を抜けば一六%というので、非常に管理職という、裁判官まで管理職といえるのかどうかそれはわかりませんが、決して低いものではない。一般行政省庁パーセンテージは八、九%、まあ一〇%内外だという点から比べれば、確かにいま矢口人事局長もお認めのように高いわけです。裁判所というところの仕事性質上高くなるのはやむを得ないと言いますが、それは私どもにはとうていうなずけないのであります。この管理職仕事というのは、主として監督のような仕事でありますから、労務対策というようなことに通ずるわけでございます。したがって、裁判所職員が非常に労働組合運動が盛んで、そして、他の省庁と比べれば非常に戦闘的であって、管理職の数を高くしておかなければおさまりがつかないといったような性質のものではないと思います。また、労働内容につきましても、いわゆる管理指導する人が非常に多くないとできにくいんだという、十分その目的を達しにくいんだという性質のものでもなかろうと思うわけです。なぜこのように高くなったのか、非常に私どもは疑問に思っているわけでございます。一つ一つの役所について一応の分析はされているわけでありますが、時間的にそれをすべて摘出してお尋ねをするということはできませんので、一応また時間のゆっくりあるときに、ここはどうしてこう多いんだということの原因と思わしきものをこちらで調査した上で、お尋ねをする機会もあろうかと思いますが、一般的にお尋ねをいたしますのは、昭和四十一年の最高裁規則第六号、裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員管理職員等の範囲に関する規則、これは別表にあるものは管理職になるのだという、そういう規則でありますが、それを見ますと、首席書記官というものが含まれております。この首席書記官のほかに主任書記官というのがあります。ところが最近次席の書記官という職種と申しましょうか、そういうものがあらわれているそうでありまして、これが事実上管理職のような仕事を行なっているようでありますが、この点はいかがでしょうか。
  20. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 次席書記官という職種ができておりますことは御指摘のとおりでございます。
  21. 青柳盛雄

    青柳委員 その次席書記官が、いま申しました規則の別表にはないにもかかわらず、あたかも管理職というものと同じような仕事といいますか、管理職そのものの仕事をやっておるというところに問題があるわけですが、やっておらないと言われるのでしょうか。
  22. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 次席書記官は、裁判所書記官の一般執務についての指導監督及び調停事務に関し当該裁判所の首席書記官を助けるということで、いわゆる管理職的な仕事をいたしておるわけでございます。
  23. 青柳盛雄

    青柳委員 そうすると、規則にないにもかかわらず管理職仕事をやっておる、法規というものを非常に厳格に守ることをもってその本質のようなものとされている裁判所司法行政において、規則にもないものを設けてしかも管理職としての仕事を行なわせるということは、これはどういう解釈に基づくわけですか。
  24. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほどの御指摘規則は、国家公務員法の百八条の二の三項の規定を受けてできておるものでございまして、いわゆる職員組合に含まれない職員の範囲をきめるという趣旨のものでございます。したがいまして、次席書記官の職責等から申しまして、まあ当然御指摘のルールを改正いたしまして、次席書記官をそこに加えるということをいたすべきものでございます。なぜそのルールの改正をいたしていないかということでございますが、これは青柳委員も十分御承知のところかと思いますが、このルールの改正をいたすにつきましては、全司法職員組合と十分話し合いをいたしまして、その話し合いの上で改正を行なうという方針でおるわけでございまして、その点私ども機会あるごとに職員組合と話し合いをしょう、あるいは話し合いをしておるわけでございますが、主任書記官の範囲というようなこととの関連がございまして、なかなか話し合いがつかない。したがってそのルールの改正はできないという状況であるわけでございます。そういう状況でございますので、次席書記官は管理職員等の指定には入っていないわけでございます。ただ管理職というものとこの管理職員等の指定というものは、これは別個の概念でございますので、管理職にすることは別途、首席書記官等に関する規則の改正を行なえばそれはそれでできるわけでございます。私ども、そういう状態が決していいとは思っていないわけでございますが、まあ組合の側といたしましても重要な問題でございますので、その点もう少し話し合いをすべきではないかというような主張のようでございますし、また私ども組合の了解をとらないでしゃにむにルールの改正をする、御指摘のルールの改正をするということもすべきではないというふうに考え、今日に至っているわけでございます。
  25. 青柳盛雄

    青柳委員 どうも先ほどから組合の問題が起こってきたわけでありますが、この前、調停委員を非常勤の裁判所職員に最初からしてしまう、そういう問題が起こったときに、やはり全司法労働組合のほうでは、そうだとすればこういう人たち労働組合に参加する可能性があるのかないのかというような点、研究をしたようであります。まあ調停委員の方が全司法労働組合の常勤の職員と同じように組合員になるかならないかということは将来研究課題でございましょうし、法的にあるいは規制されている結果になるのかどうか、それもわかりませんけれども、それはそれとして、同じ常勤の裁判所職員でありながら労働組合員になれない、職員団体に加入できない、いわゆる管理職指定というものが広がっていくということに対しては非常に問題があると思うわけであります。本来、次席書記官などというものを管理職として設けて、これは首席と主任との間にもう一段階設けて、そして首席書記官に準ずる形でいろいろ労務対策どもやっていこうということでありましょうが、労務対策をやらせる人が組合へ入ってはまずいということであれば、当然規則を改正すべきである。しかし、実際上の運営で次席書記官というような人はおそらく主任書記官、つまりもう非組合員から出世をした方でありましょうから、規則にないからといって組合に入るというようなことは実際問題として起こりそうもない。だからこのままでいいんだというようなことなのかもしれませんが、むしろ主任書記官を職制にするというような制度を改めて、そしてまあ次席書記官ぐらいまでは管理職として非組合員でもやむを得ないというのはまあ組合側のほうからの考え方。また管理側のほう、当局側のほうでは、その程度でいいという、そういうような改良ができれば今後の職場を非常に明るいものにしていくことができるんじゃないか。どうも私ども聞いておりますと、主任書記官が非組合員であるということのために非常に職場の民主化が妨げられているというようであります。こういう点は、もっともっと権力的な行政といいますか、何か組合と対抗するというような形で自分の陣営のほうを強化するというようなそういう考え方、あるいはまあ組合というものを形骸化させるための手段としてなるべく組合員でない人をたくさん職場に置くというようなやり方、これは改めるべきではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  26. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私ども組合の力を弱めるために管理職員等をふやすとか管理職をふやすとかいうような、そういうような意図は全然持っていないわけでございまして、組合に対しましては、その職員組合の果たす役割りというものも十分認識して、できるだけいろいろなことで話し合ってやっていきたいということを常々考えておるわけでございます。  ただ、裁判所の構造は、御承知のように裁判体に非常にこまかに分かれておりまして、その裁判体自体がそれぞれかなり高い地位の職員構成でもって占めておるという実情でございます。各省庁で申しますと、各裁判体が一つの課、場合によっては一つの部にも相当するというようなものでございますので、給与上の処遇とかいろいろな点を考えてまいりますと、その一つ一つを、人数はごく少数でございますが、そこにいわゆる管理職員を置くという形になっていかざるを得ない。これが主任書記官等の数が非常に多くなってきており、御指摘管理職員の割合が他省庁に比して比較的高くなってきておる原因ではなかろうかというふうに考えております。事務局部門だけで申しますと、他省庁の平均程度にしか管理職員は置いてないわけでございまして、それ以外に全く他意はないものであることを申し上げておきたいと思います。
  27. 青柳盛雄

    青柳委員 私も、この管理職といいますか、仕事の能率を上げ、効果的な司法行政が行なわれることに反対しているわけでは絶対ありませんので、そのための職階級ですか、この職制というようなものがあってふしぎではないと思うのですが、主任書記官であるからすぐ、そしてそれは管理職であるからすぐこの管理職等のこの指定の中で、つまり非組合員にならなければならぬのだというところに少しく論理の飛躍があるんじゃないかと思うのです。労働組合員を結局は減らすことになるわけでありますから、そしてまた非組合員であるがゆえに組合員に対して違和感を持つとかあるいは対立意識を持つというような結果にもなる。これはおかしなことなんです。たしか私が弁護士になったころ、大学を出たころのことでありましたけれども裁判官や検察官が非常に待遇が悪いということで、ストライキではなかったのですが、待遇改善の要求をしたことがあります。裁判官であれ、検察官であれ、俗にいう給料取り、労働者でありますから、給料が悪ければこれに対して増額を要求するというのは当然なことでありまして、そういうための団体はなるべく多くの人がつくるのが民主的なものだと私どもは考える。したがって、裁判所であるからなるべくこの待遇改善を要求するための労働組合員などは少なくてもよろしいんだというような結果にならないように配慮をするということが大事だという、そういう観点で私は質問をしてきたわけであります。確かに機構的には、管理職になればそれが非組合員にされてしまうという、どうも国家公務員法百八条の二の三項のただし書きですか、そういうものがこのまま最高裁判所規則のほうにつくられてまいりますので、別表の中から主任書記官などというものは除いてしまえばよろしいわけですから、その運用の面で減らすことはできるわけですね。そして次席書記官を新しく加えるというようなことをすればそれで済むことだと思います。こういう点、ひとつ大きく目を開いて、そして労働組合とも意見の交換を十分に遂げて、革新的な形にやっていってもらいたい、かように思うわけであります。その希望を述べて、私の質問を終わります。
  28. 小平久雄

    小平委員長 次に正森成二君。
  29. 正森成二

    ○正森委員 本日は、私は少年院の問題について伺いたいと思います。  まず最初に、少年院には幾つの種類がありますか。そして、現在おおむね何人ぐらい収容されておりますか。
  30. 長島敦

    ○長島政府委員 少年院の種類でございますけれども、初等少年院、中等少年院、特別少年院、医療少年院の四種類ございます。  昭和四十七年にこれらの施設に入りました少年の総数が三千五百八十名でございまして、そのうち最も多いのが中等少年院で、約二千三百名、その次が特別少年院で約五百名、それから初等、医療が約三百五十名前後でございます。
  31. 正森成二

    ○正森委員 私が承知しておるところでは、初等少年院というのはおおむね十四歳以上十六歳未満の者を収容し、中等少年院というのは十六歳以上二十歳未満の者を収容する、医療少年院というのは心身の障害のある非行少年、それから特別少年院というのはおおむね十六歳以上二十三歳未満で犯罪傾向の比較的進んだ者というように聞いておりますが、それでよろしいか。
  32. 長島敦

    ○長島政府委員 仰せのとおりでございます。
  33. 正森成二

    ○正森委員 少年鑑別所にはどのぐらい収容されておりますか。
  34. 長島敦

    ○長島政府委員 昭和四十七年に少年鑑別所に入りました総数が一万三千九百三十名でございます。
  35. 正森成二

    ○正森委員 少年院を出ました者の中で、再び罪を犯した者あるいは非行を重ねた者の割合、ことばをかえていえば、新しく少年院あるいは刑務所へ入ってきた者の中で、従来少年院に収容されていた経歴のある者の比率はどのくらいですか。十年ぐらい前と比較して述べてください。
  36. 長島敦

    ○長島政府委員 手元に十年前のものを持っておりませんので、昭和四十一年と四十七年を比較して申し上げたいと存じますが……(正森委員「いいです」と呼ぶ)昭和四十一年に刑務所に入りました者のうち、少年院の経験を持っておる者は一五・九%でございました。昭和四十七年の同じ数字で申しますと一一・九%で、多少減少を示しております。  次に、少年院へ入りました者のうち、前に少年院の経験を持っておる者について申しますと、昭和四十一年は二〇・六%でございましたが、昭和四十七年には一七・五%ということで多少減少しておる状況にございます。
  37. 正森成二

    ○正森委員 いま御説明がありましたが、再犯率という面から見ますと、昭和四十七年度は一一・九と一七・五を足しますとほぼ三〇%ということになるわけですね。ですから、減少傾向にあるとはいえ、少年院に入りました者のうち、やはり三割ぐらいは再び非行を重ねているというように大ざっぱに見ていいんじゃないかと思うのですが、そういうことのないように、もちろん少年院で幾ら教育に苦心をいたしましても、再び罪を犯す者がある程度出るのはやむを得ないわけですけれども、しかしそれには少年院で最善を尽くさなければならないわけです。少年院における教育ないしは処遇のあり方は法律なり規則で定めていると思うのですが、それはどういうたてまえになっておりますか。
  38. 長島敦

    ○長島政府委員 先ほど御質問がございましたように、少年院の種類が初等、中等、特別、医療というふうに分かれております。したがいまして、入ってくる少年の年齢とか持っております特性とか、いろいろ異なっておりますので、当然のことでございますが、それぞれの少年院において教育内容に特色がございます。  たとえば初等少年院で申しますと、まだ義務教育を終わっておらない者が多うございますから、どうしても学科教育中心と申しますか、卒業資格をつけるということで、教育に重点を置きまして、現に卒業いたしますと、前におりました学校あるいは少年院の近くの学校の校長先生から卒業証書をいただくということで、少年院にいたことがわからないようなかっこうで資格をつけておるわけでございます。中等少年院等になりますと、これはまだ進学希望を持っておるような者がございますが、そういう者については教科教育というのを非常に重視いたしますし、進学希望を持たない、職業につきたいという者については、職業訓練とか職業補導とか申しておりますが、そちらを重点に置いておるわけでございます。医療は、もちろん申し上げるまでもなく治療が主たるあれになるわけでございますが、これらの少年院全体を通じまして一番大切なことと申しますのは、生活指導と申しますか、人間の生き方について教えていくことだというふうに考えております。  この生活指導につきましては、私どもいま一生懸命指導しておるところでございますけれども、ちょうど親が子供を見ておりますような目で一日じゅうその施設内における子供の生活を見なければいけない。教育の先生も、単に学科ということだけで見るのじゃなくて、その子供が教育課程にどういうふうに適応してきているか、その人間を見ると申しますか、そういう見方で朝から晩までその少年をみんなが見て欠陥を直していくというような生活指導の面が、今日一番重視してきておる面でございます。
  39. 正森成二

    ○正森委員 いま相当詳しくお話がありましたが、それらを一言で言いますと、私の手元にある少年院処遇規則というものを見ますと、第一条「少年院における処遇は、在院者の心身の発達程度を考慮して、明るい環境のもとに、紀律ある生活に親しませ、勤勉の精神を養わせるなど、正常な経験を豊富に体得させ、その社会不適応の原因を除去するとともに長所を助成し、心身ともに健全な少年の育成を期して行われなければならない。」第二条「在院者の処遇にあたっては、慈愛を旨とし、併せて医学、心理学、教育学等に基く知識の活用につとめなければならない。」こう書いてありますが、これらの条項というのは少年を処遇するにあたっての指針になるべきものであるというように思いますが、いかがですか。
  40. 長島敦

    ○長島政府委員 仰せのとおりでございまして、これは最も大事な指針と存じております。
  41. 正森成二

    ○正森委員 ところが、私のところへ来ておる訴えによりますと、少年院で、慈愛を旨とするどころか、暴力を旨とし、気合いを入れることを旨としてやっておるという事例が無数に報告されております。それは法務省にも文書が提出されておりますから、法務省もつとに御存じのはずであります。そこで私は、あげれば枚挙にいとまはありませんが、そのうちの幾つかをあげて、どういうように措置されたのか、今後そういうことをなくすためにはどうしたらいいかということを順次伺ってまいりたいと思います。非常に数が多いわけでありますが、時間があれば触れるとして、典型的なものを三つ、四つ述べたいと思います。  最近まで暴行が続いておるわけですが、昭和三十九年七月十二日の午後二時半ごろに、奈良の少年院、これは中等少年院でありますが、そこで、椎名薫という少年に対して、これが院内で若干非行を犯したようでありますが、そこの教務課の野村正和教官が、その寮の第三室の前の廊下に呼び出して暴行を加えた。急降下の姿勢というのは、私はどういうことか関係者から聞きましたら、床に手をついて、そして足をあげて、足を窓かけの上に乗せる。こういう逆のかっこうをする。そうするとおしりがぽこっと上へ上がるわけですが、そのしりだとか腰を棒でなぐる。バットだといわれております。それから、なぐる、ける、頭部をコンクリートの壁に突き当てるなどの激しい暴行を加えて、人事不省におちいらせた。そこで急遽医務課に運び込んで、ビタカンフル、カルチアゾール等の強心剤の注射を行ない、職員や他の少年たちが交互に人工呼吸を実施したが、二時間十五分意識を回復しなかった。こういう事件があったそうでありますが、それはいかがですか。
  42. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘の事件は、三十九年の七月十二日に奈良少年院で起こった事件と存じますが、これにつきましては当時事実を調査いたしまして、御指摘の事実が判明いたしましたので、その職員を四十年の八月一日に減給一月、百分の一という懲戒処分に付しましたほか、院長につきましては懲戒処分として戒告処分を加え、次長につきましては訓告処分がなされております。
  43. 正森成二

    ○正森委員 いま聞きますと、減給一カ月、百分の一ですか。実に軽い処分ですね。しかもこれについてあなた方のところに報告書が出ていると思います。菊地三郎という院長だったと思いますが、大阪の矯正管区長に報告書を提出したのは一体何年何月ですか。
  44. 長島敦

    ○長島政府委員 報告が出ておりますのは、翌年の四十年四月二十一日付で管区長に報告が出ております。
  45. 正森成二

    ○正森委員 これほどの暴行が三十九年の七月に行なわれているのに、翌年の四十年の四月二十一日まで文書報告されておらない。なぜ四月に報告したかといえば、少年が退院してから京都に就職したわけですが、人権擁護局に訴えて出て、それが地元の京都新聞に四十年の四月十五日に報道された。そこでやむを得ず文書報告する、こういうことをやっておるのですね。これほどのことをやりながら、文書で何ら報告せず、社会の木鐸である新聞報道されて初めて正式文書報告するとは一体何ごとです。このことだけでも少年院長をはじめとして責任をとらなければならない。しかも私が調べたところでは、その報告書をあなた方見てもらったらわかりますが、人事不省二時間十五分というのを、医務課にて強心剤を注射約十五分で意識を回復したと、うその報告をしておるのじゃありませんか。どうなっておりますか。
  46. 長島敦

    ○長島政府委員 この点につきましては、大阪の矯正管区で、その後本件の問題の告発書でございますかと称する書面が参りまして、その調査の過程で少年院を調べておるわけでございますが、その少年院の病床日記というものの記載によりますと、午後二時十五分から四時三十分まで失心していた旨が記録されております。
  47. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、十五分でなしに二時間十五分失心していたということはそのまま報告されているわけですか。二時十五分から四時三十分ということになると二時間十五分ということになりますね。そういう事実は報告されておるのですか。
  48. 長島敦

    ○長島政府委員 本件の調査を始めまして後にわかった事実でございます。
  49. 正森成二

    ○正森委員 ある時点では約十五分の失心でありたというような報告が出されておる事実はありませんか。
  50. 長島敦

    ○長島政府委員 それは、当初管区に対する報告は十五分というふうに記載になっておるわけでございます。
  51. 正森成二

    ○正森委員 いま認められましたように、菊地三郎という奈良の少年院長は、これほど重大なことがあったにもかかわらず、二時間十五分も失心するというたいへんなことが起こっておるのに、十五分だといううその報告をしておる。その後大阪の矯正管区が調べて、カルテという動かすことのできないものを見ると、二時間十五分だということがわかった、こういうことでしょう。そういう公文書内容を事実上偽造するようなことをしたことに対してどんな責任をとらしたのですか。
  52. 長島敦

    ○長島政府委員 この菊地院長はすでに昭和四十六年でございますか退職になっておりまして、本人についてまだ事実は調査いたしておりません。
  53. 正森成二

    ○正森委員 私の手元に入っている資料では、この椎名少年は、七月十二日にそういう暴行を受けたわけですが、七月二十三日に奈良県立医大付属病院でレントゲン診察、翌二十四日脳波検査を受け、毎月二回来院する竹林という精神医の治療を続け、十二月五日信貴山病院で脳波の検査を受け、治癒したということで四十年三月十日仮退院しましたが、やはり頭のぐあいがおかしいということで四月十一日に院長の菊地三郎教官に面会をしております。そしてもう一度岡山医大で診断を受けたいから診察に要する費用を出してほしい、出してもらえなければ告訴するつもりである、こう言うたために菊地院長は、もうなおっておるんだと言うて一たんは帰らしたようですが、翌十二日に京都の地方法務局人権擁護課へ行って少年が直接暴行事件を説明して人権擁護局に助けを求めた。そのためにこの事情を知った菊地院長が、四月十三日同院の吉田正晴、川端城太郎という両教官を椎名少年の家に派遣して少年と母を説得させて、診察費用として二万円、手みやげ二千円の菓子折りを渡してもみ消そうとはかった、こういうことが報道されているのですね。  一体、少年が直接に治療費を出してくれと言ってお願いしたときは何もしないで、人権擁護局へ訴えたら初めてそういう治療費やみなを出す。そしてさらに新聞社に報道されて初めて大阪矯正管区に報告をする。最初の報告では十五分の人事不省だ、それが調べてみたら二時間十五分だ、もってのほかじゃないですか。一体これが処遇規則にいう慈愛を旨とするというのに該当するのですか。慈愛を旨としないどころか、暴行を旨として、それがばれると一生懸命ごまかそうとする、こういうことをあなた方は知って、その程度の処分で済ましてそれでいいと思っているのですか。
  54. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘のとおりの事実といたしますれば、はなはだ遺憾なことであると存じます。
  55. 正森成二

    ○正森委員 あなたは、御指摘のとおりの事実であるとすればはなはだ遺憾であると思いますなどと、人ごとのように言っておられますが、この事実を告発しているのはこれらの少年院にずっと在職し、もちろん転勤はありますが、十数年にわたって少年院に勤務した岡一雄という人が告発していることであります。岡一雄氏は四十七年に本院に対して請願書を出しましたが、請願が具体的過ぎるというので受け付けられなかったために、さらに法務省にこの請願書を送るということをやり、私の手元に文書がありますが、昭和四十八年三月八日付で当時の法務大臣田中伊三次殿に対して行政上の改善ということについて書類を二冊送っております。これが私の手元にあるこの文書であります。ですからそれは法務大臣のところにいっているはずであります。しかも、四十八年の十月二十六日付で大阪矯正管区長の川嶋真一氏から当人に対して親書を送りまして、大阪矯正管区に来ていただけば矯正局付の山川一安検事が親しくお会いして対処する、こういうように言っております。だからすでにそれが行なわれているはずであります。それに対してあなた方はどういう取り調べを行ないどういう措置をとったか御説明願いたいと思います。
  56. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘の岡一雄さんからの書面は、御指摘のように昭和四十八年の三月に法務大臣あてに提出されました。それでこの内容を見ましたところが非常に重大な内容でございますので、すぐ大阪の矯正管区長に調査を命じますとともに、矯正局の局付検事であります山川検事に特命をいたしましてこの事実の調査に当たらせたわけでございます。調査を進めていったわけでございますけれども、問題はかなり古いケースでございまして、ことに暴行の関係につきましては、少年がすべてもう退院しておりますので、退院した後の少年について調べることもいろいろと問題がございますので、調査の方法といたしまして、まずこの関係の少年院に残っておりますいろいろな少年簿でございますとか職員人事記録でございますとか、そういうものを精査をしたわけでございます。一方山川検事は二回にわたって関西方面へ出張しておりまして、一回は大津の少年鑑別所及び大阪矯正管区に出張して関係を調べておりますが、二度目はいまおっしゃいました岡さんに大阪の矯正管区へ来ていただきまして、そこで岡さんに面接をするということをやっておるわけでございます。それらの調査の結果を踏まえまして、今後なおこの問題については鋭意調査を続行するというつもりでおるわけでございます。
  57. 正森成二

    ○正森委員 当時の大阪矯正管区長の名前は何とおっしゃいますか。
  58. 長島敦

    ○長島政府委員 川嶋さんであります。
  59. 正森成二

    ○正森委員 私どもが調べたところでは、この事件がありましてから菊地三郎という院長はこれらの職員の暴行事件に対して、少年院の職員の少年に対する暴行は宿命だ、こういうように言うておる。あるいは川嶋矯正局長は報告を受けて、職員の暴行はやむを得ないときがある、職員の暴行事件が起きたら早く報告せよ、そうすれば何とか善処してやる、つまりもみ消してやるということを親分気どりで言ったということを内部から告発されております。大体、上の者がこういうような気持ちで、暴行がなくなるわけがない。こういう点をあなた方は知っておりますか。
  60. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいまお話しの中で川嶋矯正局長というお話がございましたけれども、川嶋さんはこれを調査いたしました当時の大阪の管区長でございまして、その矯正局長の点につきましてはこの調査の過程でその菊地院長にも確かめておりますが、矯正局長が当時言われましたのは、先ほど御指摘のありました少年の暴行事件でございますけれども、それがもう一年ぐらいたってからそういう報告が来るというようなことがございましたので、局長室でその院長に対して、こういうことをそういう報告がおくれるということではいけないということ、そういう事案が起こった場合には、起こったについていろいろな具体的な事情があるので、そういうことをすべて早く自分のほうへ言ってこい、こういうふうにおくれると院長が糊塗しているということになるので、そういう処置のしかたは非常にまずいということで叱責を受けたのだというふうに申しておるようでございます。
  61. 正森成二

    ○正森委員 あなたのほうではそういうことになっているかもしれないけれども、私どもにきているところでは、少年院における暴行は宿命だとかある程度はやむを得ないとかいうことを上のほうの人が言っているという報告になっているのですね。それだけでなしに、この事件については椎名少年が前に審判をした神戸家裁姫路支部の裁判官状況を知らせる手紙を出そうとした。ところが奈良少年院教務課長の坂根国雄、次長の豊蔵豊良、院長の菊地三郎の三人で、発信せずにそのまま握りつぶしてしまったということが報じられております。大体、自分で暴行を加えておいて、それを自分を審判した裁判官に知らせて助けてもらおうという少年に対して、その発信を差し押えるとは一体何ごとです。
  62. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいま御指摘の事実につきましては、ただいままでの調査段階では、少年院には少年が外部と通信をいたします場合に通信票というのがございまして、それに許さなかったもの、あるいは許したもの全部出るわけでございますけれども、当時の通信票が、もう時期が古くなっておりまして、調査段階では見当たらないという状況で、客観的な裏づけがまだとれておらないわけでございます。
  63. 正森成二

    ○正森委員 客観的な裏づけがとられていないようですが、それについては、少年も言っておりますし、そのほか医務課の川端城太郎教官もその旨を言っているそうであります。したがって間違いのないことであると思います。こういうような少年院のあり方というのはまさに文字どおり教育、矯正の場ではなしに、一番最悪の意味での牢獄あるいはリンチ部屋だというようにいわなければならぬと思うのですね。  ここには無数の事実があげてありますが、時間の関係で次の点を申しますと、同じく奈良少年院で昭和四十年五月六日、山口光一という少年が教務課の係長中川友義教官、田中蒸治教官、中森恒夫教官からなぐる、ける、ひっくり返されるという暴行を受けて、その直後から両足では歩けなくなった。医務課の休養室に入室治療したが回復せず、七月三十日に奈良国立病院にて受診の結果、肢骨神経不全麻痺、二、三カ月低周波電気療養を要するという重症だと診断されたということをいっておるのですね。そして、京都の医療少年院に移送するように意見具申したら、前にも出てきた豊蔵次長というのから、移送すればその原因事情が明るみに出るので困るではないか、もう少し様子を見てはどうかという発言があって、それはうやむやになったということがいわれておるのですね。  しかも、九月二日に教務課長の坂根国雄教官というのが奈良国立病院に行きまして、その前に小倉という医務課長がもらってきた国立病院の宮丸医師の診断書を当初診察した緒方医師の診断書と取りかえてもらってきて、そして、診断書を取りかえてきたということで意識統一をしておきたいということを菊地院長から言うておる、こういう事実が摘発されておる。暴行しただけでもとんでもないことだのに、何カ月にわたるような重傷を負わしておいて、医療少年院に送れば事が明らかになるからと言って別の病院に連れていって、その別の病院の診断書を取りかえるというのは一体何事ですか。
  64. 長島敦

    ○長島政府委員 そのケースにつきまして、ただいままで書類によって調査いたしましたところによりますと、原因は書類からは不明でございますけれども昭和四十年の六月十二日の病床日誌を見ますと、この少年が入室いたしております。その後、六月の二十五日、七月十六日、七月三十日、この三回にわたりまして奈良の国立病院の整形外科で治療を受けておりました。七月三十日にはギプスがとれたということでございます。その後、四十年の九月六日に京都医療少年院へ移送になりまして、四十一年の十月二十八日に少年が仮退院になっております。  なお、医師の診断書関係につきましては、書類上は残っておりませんで、四十年の九月六日付のこの病院の医師の診断書が残っておるようでござ  います。
  65. 正森成二

    ○正森委員 いまそういうようなお話ですけれども、大体こういうことをしょっちゅう起こした菊地という少年院長や豊蔵という次長はいま何をやっておりますか。
  66. 長島敦

    ○長島政府委員 菊地院長は四十八年の三月に退職されまして、現在奈良市に住んでおられると聞いております。豊蔵次長は四十三年の三月に退職されておりますが、現在どこにおられるか私にはわかっておりません。
  67. 正森成二

    ○正森委員 あなた方のところに資料がございますように、暴行というのはそれこそ日常茶飯事で行なわれているということは、それをお読みになればおわかりのとおりです。  これを一つ一つあげますと、おそらく質問を三時間ないし四時間しなければならないと思いますから、委員長に御迷惑もかけますし、二、三の点だけを申し上げるわけですが、この中に出ているところで、昭和四十年の八月十八日に、院長、次長、課長、係長などが出席して処遇審査会が行なわれたときに、職員の圧力が強過ぎるのではないかということをこの岡一雄氏が指摘したところ、教務課係長の新美章教官というのが、職員が厳重訓戒するのになぐるのはいけないといってそれをとめられたら、われわれは保安の責任が持てない、こういうことを言ったというのですね。  大体、職員の士気が鈍るとかあるいは保安の責任が持てないとかいうようなことを教官が広言をしておる。バットでなぐってみたり、あるいはてんびん棒でなぐってみたりというようなのが多いようでありますが、手でたたくのはもったいない、棒でけっこうだ。昔、海軍に海軍精神注入棒という棒がありまして、それで一斉にぶんなぐったというのをわれわれは先輩や同期生から聞いておりますが、げんこつでなぐると自分の手が痛いから、海軍精神注入棒ではないけれども、てんびん棒だとかバットだとか、そういうものを持ってきてそれでぶんなぐる。しかもそのぶんなぐるのが、立たせておいてぶんなぐるならいいけれども、急降下というような、人間では恥辱で耐えられないようなかっこうをさせてぶんなぐる。一体、滋愛を旨とするというような、そういう処遇規定というのはどこへ行っておるのですか。あなた方はそういうことをやっておるということを少なくもつかんでおりますか。まず事実をつかまなければ、直そうにも直しょうがない。その事実すらあるかないかわからぬというようなことでは、直りょうがない。  しかも、いまたまたま奈良少年院のことだけをあげましたが、宇治の初等少年院、河内の特別少年院、浪速少年院あるいは播磨少年院、昔、鈴蘭台学園といわれていたところですが、全部行なわれておる。関東では赤城少年院でも行なわれておる。転勤してきた教官が、赤城でもおれはやったんだというようなことを言うておる。刑務所でもこういうことは行なわれませんよ。少年を刑務所に入れないのは、成人の犯罪を犯した者と一緒にしたのでは矯正上おもしろくないというから少年院をつくっているのでしょう。その少年院で刑務所でも行なわれないことをやる。なぐるのをとめられたら保安の責任が持てない。何事ですか、一体。
  68. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘のとおり、まことに不都合なことだと思いますが、先ほどからも申し上げておりますように、少年院処遇規則の一条、二条というのは少年処遇のほんとうの基本でございますし、ことに少年に暴力をふるうというようなことがあるとしますれば、少年教育というのは全く成り立たない。これは実は処遇以前の問題でございます。そういう意味で、先生のお手元にも資料を差し上げたわけでございますけれども、代々、局長あるいは大臣から通達を出し、訓示を出し、事あるごとに注意を喚起してきておるわけでございます。  これはたいへん弁解がましく聞こえて申しわけないと思うのでございますけれども、少年院の収容状況をごらんいただきますとおわかりいただけると思うのでございますが、こういった事件が発生いたしました当時、わが国の少年院は最悪の状態にございまして、いわば一〇〇%をこえる収容状態にございました。そういうことから、つい職員のほうが気持ちのゆとりを失うと申しますか、そういう面もあったと思います。また、誤った愛のむちと申しますか、誤った練成精神と申しますか、そういったような点等も残ってきておったというふうに思います。ことに特別少年院等におきましては、そういうふうな過剰収容の状況になりますと、違反が続出いたしまして、謹慎のための単独室というのがございますけれども、そこへ入り切らないというような状態になったということもございました。決してこれは弁解で申し上げておるわけではございませんので、そういう状態にあっても絶対にこういうことはあってはならないということでございますが、ただそのことを申し上げましたのは、実は数で御承知のように最近少年院の収容状況が非常に好転してまいりまして、そのことによって職員の意識も非常に変わってきたというふうに私はかたく信じておるわけでございます。
  69. 正森成二

    ○正森委員 ところがあまり楽観を許さない状況ではないですか。あなたはこういう事件が起こったのは一〇〇%以上収容していた時期だというように言われますけれども、最近は少年院の人員が減ってきているということはこの統計を見ればわかります。ところが減ってきてからでも依然として暴行は行なわれている。たとえば鈴蘭台学園ですか、播磨少年院というのがありますが、この幡麿少年院で昭和四十六年十二月に院長の田村重臣教官というのが同院の教務課職員の少年に対する暴行が激しいので、これを是正すべく調査して懲戒処分をきめるにあたって、前もって大阪矯正管区長に報告相談をしたところ、暴行に関係ある教官が私信で大阪矯正管区長に状況報告したことから、広範囲にわたる内情が表面化して、大阪矯正管区長は矯正管区の第一、第三部長を同院に派遣して、四十七年二月特別監査を行なった。その結果、暴行を行なった教官が処分されるのではなしに、それは不問に付して、逆に院長の田村重臣教官が大阪少年監別所次長に配置がえされたという事件があったのではありませんか。その事件について調査していますか。
  70. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘のとおり四十六年の十二月ごろに播磨少年院の一教官が暴行事故を起こしております。この件につきましては、その本人につきまして四十七年の三月減給一月百分の五という処罰をいたしました。なお監督者の責任は、いまちょっと手元にございませんが、当然に戒告等の処分を受けておるものと考えておるわけでございます。
  71. 正森成二

    ○正森委員 いま長島矯正局長が私の指摘した事実の一部を認められましたが、四十六年というのはあなたからいただいた表でも少年院の収容者数が三千二百九十名で史上最低になったときであります。そういうふうになっておるときでも依然として暴行が行なわれている。これは人数が多いからついやったというようなものじゃなしに、少年院関係者の体質になっておるといってもいいものではないか、こう思うのですね。で、調べたというようにおっしゃいますけれども、わずか減給百分の五の一カ月だけだ。私は安原刑事局長に伺いたいのですけれども、こういう法令によって国民を拘束するという立場の者が、法の定める手続によらないで、バットでぶんなぐったり、てんびん棒でぶんなぐったり、急降下させてぶんなぐったりというようなことをやるのは刑法上どういう犯罪に該当しますか。
  72. 安原美穂

    ○安原政府委員 刑法第百九十五条だったと記憶いたしますが、それの特別公務員の暴行罪ないしは陵虐罪というものに該当すると思います。
  73. 正森成二

    ○正森委員 刑事訴訟法によれば、公務員というのは犯罪があると思量したときには告発しなければならないことになっておりますが、これらの院の院長はただの一度でも検察庁ないし警察に告発をいたしましたか。
  74. 長島敦

    ○長島政府委員 過去のことはよくわかりませんが、最近はこういう事故がありました場合に、院長が知れば必ず検察庁に報告をするようにという指導をいたしております。
  75. 正森成二

    ○正森委員 それでは四十六年の播磨少年院の事件はまだ時効になっておりませんが、告発され現在捜査中ですか。
  76. 安原美穂

    ○安原政府委員 検察庁にはいまだ告発はございません。
  77. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ長島矯正局長の言っていることは違うじゃないですか。椎名少年のはだいぶ前だというように申し開きができるとしても、四十六年十二月、特別監査が四十七年二月だとすればまだ二年ぐらいしかたっていない。その件について、時効も完成していないのに何ら告発していないじゃないですか。それで最近の事件は全部告発するようにしている、あなた、国会でそんなうそをついたらいかぬです。告発をやりますか。
  78. 長島敦

    ○長島政府委員 告発と申しますか、検察庁へ報告するように指導を私はしておるのでございますが、本件につきましては、なおどういう事実関係になっておりますか、検察庁へ連絡したことがあるのかないのか、そういう点を調べてみたいと存じます。
  79. 正森成二

    ○正森委員 少なくとも行政上の処分をしている以上はこれは暴行があったということは間違いない。そこまで調べておってどういうように対検察庁関係をしておるのかということがわからないというのはこれは非常に問題だ。しかもこの件では、これは非常に遠慮して書いてあるけれども、中の職員がいろいろなことをばらしておれだけが暴行しているんじゃないんだ、ほかにいろいろなことがあるんだということで開き直ったために懲戒処分は非常に軽くなって、むしろそれをただそうとした田村という院長がその少年院におられなくなるということが現実に起こっておるのです。そういうようなことでどうして暴行をなくすことができますか。大体教官がそういうことをやっているから、中に入っている少年というのも非常にすさんでまいりまして、中で、昔江戸の牢獄では牢名主というのがおって、ふとんを何枚も積んで、映画でも出てくるけれども、その上ででんとすわっておる、新入りが来ておじぎをするということですが、それと大体同じことが行なわれておりますね。読んでみましょうか。大体少年院では最初に入るのを新入りという。その次が中堅見習い、次いで出世をいたしまして中堅になる。それから中堅筆頭になって、その次が準幹部、それから幹部になりまして、そのもう一つ上がボス、ボスの上が陰ボス、政党の実力者のようなものでありますが、そういうような順番がついておる。これが少年院です。暴力団と全く同じような、それよりもどうも階級制度がきびしい。こういうことをやっておって、焼きを入れる、つまり職員からぼんぼんぶんなぐられるものだから腹も立つということで、内部で気に入らぬやつはぶんなぐるということをやっておるそうです。その種類がいろいろ書いてありますが、セミ、自転車、セミというのは昔軍隊でやった柱にこうとまってみいみいと鳴かせるのでしょう、自転車というのは足を動かすことをやらすのでしょうが、それからげそばんというのがあるらしい。げそばんというのは地下たびをはいてけるのをげそばんというのだそうです。かりんとというのがある。これは指の間に鋭筆を入れて締めつけるという。なにわのせんべというのがある。なにわのせんべで何を食わしてくれるのかと思ったら、ガラスの破片をかじらせる。それから夜の明星というのがある。これは手足を縛ってほうり上げてどすんと下へ落とす。デッキブラシ、床を何回もぞうきんがけする。肉弾特攻隊というのがある。これは壁に添って立たせておいて他の少年が長いすを押して突進をしてどすんと当てるというのが肉弾特攻隊であります。そのほか特別なのではアブラムシやガを食わせるという罰があるらしい。こういうことが内部で行なわれ、職員はぶんなぐらなければ秩序を保たれないというようなことをやっておって、どうしてあなた方の規則の慈愛を旨として、医学、心理学、教育学等に基づく知識の活用につとめなければならない。アブラムシを食べるのが知識の活用ですか。そういうようなことが行なわれるとなったら、家庭裁判所裁判官はおちおち少年院になんか送られないです。現に私らが非公式で聞いているところでは、家庭裁判所裁判官が自分が審判した少年がどういう状況になっているかというので少年院に行く。そうするとぶんなぐられて包帯なんかしている子供が出てくる。なぜそんなにけがをしたのかと聞いても絶対に言わないそうですね。作業をしておってころびましたとか、あるいはどこそこへぶち当てましたとか言うて、言わない。言えばあとで仕返しをされるから。そこで家庭裁判所裁判官は、少年院なんかに送るよりは保護観察にしておいたほうがかえって少年を悪くしないんじゃないかということで少年院に送るのを非常にちゅうちょする傾向があるということまで私は弁護士時代に聞いております。私はほんとうかなど思ったけれども国会に出てきてからこういうものを見て、なるほどそうだ、私が裁判官だったとしてもこういうような状況があるのであれば少年院などには物騒で送ることはできない、こう思うのです。いいですか、私はあなたのところにこれがいっているから一々聞かないのですよ。この中にはもうほんとうに一ぱい事実があげてあるでしょう。一つや二つじゃないです。しかも一つの少年院ではないです。全部です。なぜそういうことが日常茶飯事行なわれていると思いますか。直すにはどうしたらいいと思いますか。
  80. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいま御指摘がございましたように、一部の少年院で過去にこういった暴行事件が非常に多くあったのは事実でございまして、はなはだ遺憾なことと思います。これをなくしてまいります方法は結局二つ、大きくあげれば三つあると私はかたく信じております。  一つは、やや消極的なことかもしれませんが、こういうことはもう絶対にあってはならない、人間が人間を教化していこうという立場にある人が暴力をふるうというようなことでは全く教育する資格はないわけでございますから、そういうことは絶対にあってはならないということをあくまで徹底させる。また、そういうことが起こりました場合には、これは厳重に責任を問うという態度をしっかり立てることが一つだと思います。  もう一つ、積極的な面から申しますと、従来とかくこういう問題が起こってまいりました基盤には、教育の貧弱と申しますか少年院の処遇のマンネリ化と申しますか、そういうものがあったと思います。先ほど申し上げましたように、最近、私はかたく信じておるのでありますけれども、少年院人口が減ってまいりました。この機会に少年院の職員が非常に熱を入れてもう一度少年の教育を見直そうという気風が出てきております。私はこれを極力奨励をしております。そのためにたとえばヨーロッパとかアメリカ等で行なわれております最も新しい処遇方法というものの研究を始めておりまして、先ほど御指摘のありました播磨少年院では、その院長が中心になりましていま最も新しい実験処遇を始めております。そのために士気は非常に上がってきております。ですから問題は、各少年院がもう一度新しい教育の理念、それは慈愛ということもありますが、同時に科学的に対象者の少年の特性にぴたっと合った処遇というものを開発していかなければならぬ。これがもし開発できますれば暴力などの入る余地は全くなくなってくると私は信じております。  第三の対策は、少年院をもっと社会に開くことだと私は存じております。このことも私が着任以来強調してまいっておるところでありますけれども、少年院が社会の目からおおわれるといいますか孤立してしまうということになると、そこにへいができまして、そこの中でいろんなことが行なわれる。もっとあけっぱなしにみんなに見てもらいなさい。しかもやっていることがいいことであれば——いままで少年院から受けている暗い印象と申しますかいま先生御指摘になりましたような印象がもしあって、そのために家庭裁判所から少年が送られてこないということがあれば将来の少年院というものはもうだめになっていくわけでございますけれども、ほんとうにこれから新しい少年院の処遇というものをやる、それをまた世間にわかってもらうように差しつかえのない限りこれを社会に開いていくということが大事なことだ、こう思っております。  以上三点が、この問題についての私の基本的な考え方でございます。
  81. 正森成二

    ○正森委員 私の手元に「非行少年の心理と教育」という本がありますが、それを見ますと、一般保護事件というのは全事件から道路交通違反事件を除いたものをいいますが、一般保護事件は少年に関係しては年約二十万だそうであります。それは現在でもそんなに変わっておりません。そのうち四千名あるいはこのごろでは三千五百名前後が送られてくるわけですが、統計を見ますと、四十年には一般保護事件の人員のうち少年院に送られる比率は三・九%、それが四十四年には二・二%というように減少をしております。これは少年院に送らなければならない程度の事案が少ないというようにも理解されますけれども、同時に、少年院に送ってももう一つ更生率がよくない、逆に中でのいろいろ悪いうわさを聞くことも原因であるということも考えられるわけですね。ですから、もしそうだとすれば、逆に人員が減って収容者に余裕ができたときこそ中の処遇をよくし、科学的な教育を行ない、更生率をどんどん高めることをしなければならぬわけですね。私は何も保護観察をやめて少年院にたくさん送れと言っているわけではありませんけれども、そういうように少年院を活用し得る余地があるわけです。そこでよく考えていただきたい、こう思います。  同じ本の一九〇ページ以下を見ますと、少年院に送致される人というのは精神的資質で劣る方が多いのですね。統計を見ますと、全く正常だとされている人は四十四年で〇・二%だ。準正常の人が八一・六%、精神薄弱が一〇・一%、精神病質が六・〇%、その他の精神障害が一・五%、不詳が〇・六%、計一〇〇%、こうなっておるのですね。そうしますと、非常に問題があると思われる人が約二〇%、それから準正常と見られる人が八〇%、正常と見られる者はわずか〇・二%、こういうことなんです。  また知能指数から見ますと、知能指数が六九以下、これはわりと問題があるわけですが、そういう人が四十四年で男子一二・三%、女子二二・四%、知能指数が一〇〇以上ある者は両方を通じて二〇%に満たない。女子の場合は特に低い。ですから、少年院に送られてくる人は知能指数が必ずしも高くなく、むしろ六九以下というのが非常に問題があるわけです。そして精神的資質においても非常に問題がある。  こういう人を扱う場合に、昔の軍隊のように精神注入棒みたいな気持ちで、言うことを聞かなければぶんなぐるということをやったのではこれは教育にならないのは明らかであります。したがって中におる心ある人にもいわれているように、職員を昇進させる場合に法規の試験だけやって、法規をよく知っておって管理がうまくいくようなら係長、課長、それから上へ上げていくというようなことだけやっておったのではだめで、やはり児童心理学あるいは少年心理学等々の科学的な教育をやり、そして特にカウンセリングですね、個人的な経歴を見て個人に合うような、そういう指導をしていく。子供たちは、この本なんかを見ましても、非常に受動的、無気力なところがあって、教官からわっと言われると聞く、中のボス的な者にわっと言われると聞く。そして少々不満があっても早く院から出たいためにじっとしんぼうする。出ていくものが後輩に残すことばは、しんぼうせえよ、こういうことばらしいですね。そういうようなのにつけ込んで科学的な処遇あるいは指導ということには手を抜いて集団的な指導、それは結局とどのつまりは暴力だということになれば、少年院というのは少年にとって決して更生の庭にはならないと思うのですね。だからカウンセリングあるいは心理学的な指導というものをもっともっと強化され、職員の研修についてもそういう点を重視される意向はございますか。
  82. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいまたいへんありがたい御指摘がございまして、私もまさしくそういうふうに実は考えておるわけでございます。現に最近の少年院の教化活動の中心が先ほど申し上げましたように非常に生活指導ということに向けられてきておりますが、生活指導の中で非常に重視しておりますのは、御指摘のカウンセリングでございますとか、あるいは少年同士の集会活動ということをいたしておりまして、ホームルームのようなものでございましょうか、こういう機会に少年たちがお互いに意見を発表し、お互いに理解し合うということで、自由にここで発言ができるという場をつくっておりますし、それから役割り活動と申しまして、少年にそれぞれ役割りを与えまして一週間とか、二週間交代で週番になるわけでございますけれども、たとえばその間に美化の役割りを負いますと、清掃について責任を持って協力してやっていくということで、そういう責任ある地位に一度は少年がみんなついていく、そのことによって責任を自覚すると申しますか、そういう体制をつくるということも進めております。  あらゆる面でいま少年院は変わろうとしておりまして、ぜひこれは先生の御指摘のような線で変えていきたいということで全力をあげたいと思います。  なお、研修の面でございますけれども、たとえは最近矯正研修所——中央の研修所でございますが、このカリキュラム等をごらんになればわかりますように、従来の法律中心から行動科学というものを重視いたしまして、相当多くの時間をそれ  にさくようになってきておるわけでございまして、地方の研修所につきましてもこういう点は今後なお一そう充実をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  83. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう答弁がありましたが、暴行をしてはいけないということで、教官に厳重に禁止すると同時に、正しい指導を行なっている教官は思い切って抜てきする。試験でも法規の試験だけをやって——私も法学部出身ですからあまり法律の悪口を言うのはどうかと思いますけれども、六法全書が背広を着ているような男を、どんどん課長だとかあるいは院長に抜てきするというのではなしに、ほんとうに少年の心理を研究し、そしてカウンセリングなんかにも一生懸命やって、そしてほんとうに少年をよくしていこうという実践において顕著な成績をあげている者は少々法規を知らなくても、そんなものは次長かだれかおればいいわけですから、次長が悪いというわけじゃないのですけれども、どんどん抜てきをするというような累進方法もとらないと、私が聞いているところでは、えてして法律何条というようなことを覚えて実行しもしない、処遇規則を宙で覚えておるというような男は立身出世する、しかし実際にそれをじみちにやっておる人はなかなか認められない。そして法規を少しばかり覚えて、ボス的な傾向があって、ぶんなぐったり威圧をして少年を威服をさせるという者はどんどん上がっていくというようなことでは、幾ら一片の通達で——私のいただいた資料では三回ほど暴行をしたらいかぬという通達を出しておられるようですけれども、そういうのを出しただけでは決してよくならないと思うのです。ですからその点について格段の御配慮を願いたいと思います。  それから、ついでに聞いておきますが、食べ盛り育ち盛りの少年ですが、一体一日の食費は主食と副食費でどれくらい予算をとっておりますか。
  84. 長島敦

    ○長島政府委員 新年度の予算案でございますけれども、それにおきましては、副食が一日九十八円九十五銭でございまして、主食分を加えますと四月から九月までは一日百七十七円七十五銭でございます。十月以降主食が値上がりいたしますので、百八十三円九十一銭というのが平均の一人一日当たりの少年の食費でございます。
  85. 正森成二

    ○正森委員 カロリーは。
  86. 長島敦

    ○長島政府委員 カロリーは三千カロリーでございまして、副食でとりますカロリーが六百カロリーでございます。
  87. 正森成二

    ○正森委員 このお金でよくこれだけカロリーが出るなあというように感心しているわけですけれども、ちょっとひどいことないですか。いまどきの世の中に、一日が百七十七円七十五銭で食べ盛りの十八や十九の子をまかなう副食はたった九十八円九十五銭だ、このごろは町で買えば大根にしたって、白菜にしたって、とんでもない値段ですからね。これでたまには肉やら卵が食べられるようになっているんですか。副食の比率が六百カロリーで、主食の比率が二千四百だというのはいまどきの世の中では副食から得るカロリーというのが非常に少ない。おそらく副食で足りない分を麦めしをたくさん食べさせてそれでカロリーを補っておるのだろうというように思いますけれども、私はまだ刑務所へは入ったことはありませんけれども、結核で長い間療養所に入っておりましたけれども、外へ出られなくなると人間の楽しみは食べることですからね。だから、それについてこういう予算では、特にこの人たちは確かに悪いことはしたでしょうけれども、矯正教育ということでこれからよくしていこうという人ですから、それに対してこういう予算案では、特に食べ盛りであるということを考えると非常に不十分だと思うのです。これはわれわれもこれから考えなければなりませんけれども、法務省としても予算請求をなさる場合にこういう少年については、やはり少年の食べ盛りであるということを考慮した、しかも刑務所という一応犯罪を処罰するというのと違って、たてまえは教育なんですから、そこら辺を十分に配慮した扱いをしていただくことを特に望んでおきます。  また、前に引用した本に返りますが、子供たちの心情を見ていると非常に胸を打たれる点があります。中で情操教育のために俳句や短歌をやっておるようですが、そのうちの幾つかを読んでみますと「鉄格子われにやさしく初日の出」「秋めいて窓の向こうに未来あり」「先生と楽しく病者菊咲かす」こういうような俳句をつくっているのです。非常に前向きの俳句をつくっております。あるいはおとうさんやおかあさんに対する思慕の情が非常に深くて、「田植する父六十の胸見せて」「細き手を焚火にかざす老いし父」というように、中へ入っておとうさん悪かったとこう思ってうたっているのです。おかあさんについては「朝霜を踏みつけ母は野良仕事」「お母さんお休みなさい天の川」「木枯の中にも母の声がする」というような俳句をつくっておる。和歌についてみれば「無軌道なわれのみを知る面会の父は変わりしわれに涙す」「面会の母いうおまえは変わったと部屋に帰りて鏡のぞけり」というようなのをつくっているのです。こういう気持ちを持っておる少年を急降下させて、バットでぶんなぐるというようなことでは、一体収容所に入れなければいかぬのは少年なのか職員なのかということを疑わぬわけにはいかない。こういう俳句や歌をつくる少年のつめのあかでもせんじて飲んだほうがいいんじゃないかというように思うんですね。そういう点で、あなた方は職員指導される上で十分に自戒をしていただきたい、こう思います。  次に移らせていただきます。奈良の少年鑑別所で起こった事件でありますが、ここの杉山佳行という所長がおります。この人は昭和四十二年三月二日に着任をして四十四年の三月に大阪拘置所に転勤をされたそうでありますが、所長在任中に毎週火曜日と金曜日の二日間はサボらせてもらうと庶務課長に告げて、自分の印鑑を庶務課長に預けて出勤簿は押す、出勤簿は押すけれども、その二日間は、週に二回は確実に鑑別所に出てこないで、他の病院の精神科の医者としてつとめるということをずっと続けておったようであります。あなた方はこういう国家公務員法に違反するようなそういう勤務状態というのを知っておりましたか。
  88. 長島敦

    ○長島政府委員 承知しておりませんでした。
  89. 正森成二

    ○正森委員 いまは調べて承知しておりますか。
  90. 長島敦

    ○長島政府委員 この点につきましては、先ほど申し上げました山川検事が奈良少年鑑別所におもむきまして、この当時の所長はもちろん退職しておりますし、庶務課長も退職しておりまして、当時の職員で残っておる者が一名おりましたので、その者から関係書類の提出を求めて、事情をいろいろ聴取しております。ただ、事情を聴取いたしましたが、その関係書類上は出勤になっておりますし、それから関係職員も、そういった長期間にわたってさようなことがあったのではなくて、ときどきそういうことがあったというようなことで、それがいつであるのかということが確証がとれません。この所長さんは精神医学のお医者さんでございますので、精神病院へ医学研修と申しますか、ときどき出かけるということも、当然職務上あり得るわけでございますので、これが現在まで調べたところでは、どういう事実であるか、まだ確定ができない状況でございます。
  91. 正森成二

    ○正森委員 そういういいかげんな答弁では絶対に私は了承できませんよ。私は、こういうことがほんとうかどうかと思って、岡さんに直接私の法律事務所に来ていただいて、詳細に伺っております。岡さんはよく知っておりますが、絶対に間違いはない。それは出勤しているはずですよ、自分の判こを庶務課長に渡して押さしているわけだから。それでこの人は、アルバイトに非常に熱心な人で、火曜日や金曜日が別の用事で行けない場合には、別の日を休んで、週に二日間は、必ずよその病院の精神科医として勤務した。だいぶかせいだと見えて、アルバイトでかせいだ金で自分の家をだいぶ大きく増改築した。そういうことが地元でもう公知の事実だ、こういわれている。だから、幾ら退職をしていても、一体、この人にどこへ行っていたのだということを聞けば、そんなものは、研修で行っていたのか、アルバイトで行っていたのか必ずわかるし、庶務課長にでも聞いて、調べようと思えば調べられるし、岡さんにでも聞こうと思えば聞ける。いいですか、あんまりなめたことをしたらいかぬですね。自分は、ただの医師じゃなしに鑑所所長でしょう。その所長が、国家公務員法上の兼職の届けもせずに、よそへ医者のアルバイトとして行って、週に二日間は、絶対に出てこない。そうして出勤簿だけは押しておる。こんなことを上のほうがやっておって、少年に恥ずかしくないですか。少年に、どうやって正しい人、まじめな人になれと言えるのですか。そんなのだったら、どろぼうを呼んで、警察官を教育させるほうがまだましですよ。それなら、こういうぐあいに入って、どろぼうするのだということを言えば、おまわりさんはなるほどなと思って勉強になる。自分がこういうことをやっておいて、まじめに働けとか、更生しろとかなんて、そんなこと言えるわけがないでしょう。それをあなた方は、告発されておって、法務大臣に請願書まで出ておって、一年もたって私がこうやって聞いても、まだその程度しか調べていない。それでは国民も納得しませんね。第一、そういう事実があったら、退職金をもらってやめたのなら、退職金なんか取り返してもいいぐらいだ。厳重に調べて、そしてしかるべき措置をとりますか。
  92. 長島敦

    ○長島政府委員 冒頭に申し上げましたように、まだこれは全般について調査の途中でございますので、結論を申し上げたわけではございません。  なお、調査をしたいと思っております。
  93. 正森成二

    ○正森委員 こういうように、少年鑑別所の所長がいろんなことをやっておるということがあらわれておりますが、今度は、和歌山少年鑑別所の所長の森実という人がおります。この森実という人もいろいろなことをやっております。  昭和四十四年の十一月の十二日に有本文雄という少年を河内少年院に護送中に、この少年が逃走した。それを追跡した三谷教官などは少年を取り押えたが、少年の抵抗にあって、加療十日間の負傷をしたという事実があるそうであります。ところが和歌山西警察署員が同少年を取り調べ中に、和歌山少年鑑別所の観護課長の竹田峻教官が警察署におもむいて、身柄の返還を受け、河内少年院に護送した。そしてこの点について公務災害の報告も行なわず、また矯正管区長への逃走事故報告もしなかった、そして無事故であるという扱いをした、こういうことになっておりますが、少年が逃走するだけでなしに、反抗をして、取り押えようとした教官が負傷するというようなことは、相当な事故であります。それに対して報告が行なわれていない、こういう事実があります。そういう事実を知ったとして、あなた方はどうされますか。
  94. 長島敦

    ○長島政府委員 この点につきましても、山川検事が和歌山少年鑑別所の関係者について事情を聴取しておりますが、当時、そういう逃走事故がございまして、その三谷教官が負傷をしたということは事実のようでございます。また、これについて報告がなかったのも事実のようでございます。  ただ、関係者の話によりますと、逃走といいましても、逃げようとしたのをすぐつかまえたということで、当時の考え方としては、未遂と申しますか、逃走が、報告すべき程度に達した逃走とも考えなかったということのようでございます。  負傷の点につきましても、たいした負傷でなかったように思うということを当時の関係者が申し述べておりまして、なお、この点も事情をもう少し調べなければならぬと思っておりますが、現在の調べでは、そういう状況でございます。
  95. 正森成二

    ○正森委員 負傷をしたというのは、事実なんでしょう。
  96. 長島敦

    ○長島政府委員 事実であります。
  97. 正森成二

    ○正森委員 それなら未遂だとかなんとか言っても、安原さん、専門家がおられるから、そんなものをどういうように評価をするのか聞いてもいいけれども、逃げかけた者をちょいとつかまえて、いかぬよと言うたぐらいじゃなしに、どどっと逃げて、取り押えようとした者とチャンバラの武勇伝をやっているのでしょう。そういうようなことは、報告しない。中で二時間十五分人事不省になっても、新聞報道されるまでは報告しない、何でもくさいものにはふたで、そのかわりけしからぬというて、暴行でぶんなぐることだけはやる。報告すべきことはきちんと報告し、そのかわり私的なリンチは加えないということでないと、一方で報告しないということは、一方でリンチを加えるということと表裏の関係にあるのですね。それはもうこの告発状を見ると、非常にその点はよくわかる。ですから、あなた方は、こういうのが出て、私が聞くまでに一年からたっている。ところが山川という検事は、どれぐらい有能な検事か知らないけれども、まあ私に調べさしてくれれば、二、三週間もあれば、ぴしっと調べるけれども、一向調べが進まないで、一年たってもまだ取り調べ中、その検事の勤務評定にもかかわると思うのですね。それともよほどほかに忙しい仕事があるのか、よほど無能な検事なのか。その点を私たちはきちんとなさる必要があると思う。刑事局だとか何局だとかというのは、わりと日が当たるけれども、矯正局というのは、あまり国会でも追及はないし、まあゆっくりやろうかというようなことを思っておられたのでは、これはとんでもないことですよ。しかも自分の自己主張がわりとできにくい少年に対して、いろんなことをやっているということは、決してよくないと思いますね。  それからもう一点聞きますが、収容所と言うといけませんが、少年鑑別所やあるいは少年院では、少年に対して、お菓子だとか、あるいは飲みものだとか、一般に官費で支給されている以外のものを販売するということは、一応許されておるのですか。そしてそれはどういう機関が販売をしているのですか。
  98. 長島敦

    ○長島政府委員 少年本人が甘味品を買うということは原則としてございませんで、これは特別の誕生日とか何かにはそのために予算が特別についておりまして、その誕生日に甘味品を官側で給与するということでございます。ですから、そういうことがあるといたしますれば、面会に来た父兄の方がそこの売店で買われて子供に食べさせる、そういうことは許しておりますので、そういうような売店としてところによりましては矯正協会の支部というようなところが経営をしておりましたり、あるいは職員会というようなものが経営しているように聞いております。
  99. 正森成二

    ○正森委員 父兄が買うというように言われましたが、あなた方は実情をお調べになったらわかりますが、そうではなしに、前の日に各部屋、各少年から希望を出さして、そしてそれを集計して買ってさておいて、それを分けてやるというような甘味品の与え方もしているのですね。それが実情であります。そしてそれだけでなしにそういう甘味品を販売しますと、当然利益金が出てまいりますね。その利益金をどういうぐあいにしているか御存じですか。
  100. 長島敦

    ○長島政府委員 私の承知しておりますところでは、そういう利益金は職員のレクリエーションと申しますか、武道大会の費用、武道の練習の費用でありますとか、そういった関係におもに使っておりますが、少年院等ではたとえば少年の運動のためのボールを買うとか、そういうような方面にも使っておるというふうに承知しております。
  101. 正森成二

    ○正森委員 これはこまかいことのようですけれども、子供たちに甘味品を売って利益を得るというようなことは、従前国会でも、これは収容者のピンはねや脱税につながる行為ではないかというように指摘されたことがたしかあったと思うのですね。そういうように子供たちにパンやキャラメルやサイダーやようかんというようなものを売りまして、一個について三円から二十円ぐらいの利益を得て特別会計に入れるというようなことをやっておるのですね。そういう事実は知っていますか。
  102. 長島敦

    ○長島政府委員 さような事実は存じませんが……。
  103. 正森成二

    ○正森委員 そういうことはあまねく行なわれているということですね。国会でも前に指摘されたことがあるようであります。たとえば和歌山の少年鑑別所では、その収支を見ますと、昭和四十四年度はこの関係の収入が約六万一千円、支出が約六万円。四十五年度は収入が約四万六千円、支出が約四万九千円ということになっているのですね。そしてこういう子供たちに売った利益の中から、中央から来られた役人に対する接待費おみやげ、こういうものが払われておる。たとえば昭和四十四年十一月に法務省のある役人が和歌山市に来られたときにはみやげものを含む接待費として一施設当たり——というのは少年鑑別所や少年院やいろいろあるわけですが、八千三十三円の割り当て額が負担させられて、職員の数がわずか十五名であるために和歌山の少年鑑別所は非常に苦労して、結局子供たちに売った利益の中からそういうものをまかなうということをやっておるのですね。そういう事実は知っておりますか。
  104. 長島敦

    ○長島政府委員 存じません。
  105. 正森成二

    ○正森委員 安原刑事局長はかつて会計課長もしておられたようですが、こういう事実は知っていますか。
  106. 安原美穂

    ○安原政府委員 そういう矯正協会というか、そういう売店のようなものがあって、それが職員の厚生費捻出の財源になっているということは承知しておりますが、そういう金の使途の詳細は存じませんので、接待費に使われているかどうかは遺憾ながら存じません。
  107. 正森成二

    ○正森委員 財団法人矯正協会ということでやっているところはまだしも、それもつくらないで小さな鑑別所ではやっておる。そして利益を得ておる。それを中央役人の接待費などに使う。中央役人の接待というものも会議費とかいうことでそれは要る場合がある。そういう場合はやはり予算に計上すべきであって、こういうやり方でまかなうということはいろいろな誤解を招くもとになるというように思うのです。その点はよくあなた方のほうでお調べになる必要があると思います。  さらに杉山さんのところに戻りますが、この杉山という所長はいろいろな費用を生み出すために課長以下の職員に超過勤務を命じて、やってもおらない超過勤務をやったということでいろいろ勤務がえなどをして、そしてその金をいろいろな方面に使っておるということが報道されておりますし、告発されておりますが、そういう点は知っていますか。
  108. 長島敦

    ○長島政府委員 この点につきましてはやはり調査をいたしておりますけれども、宿直日誌、勤務割り当て表につきまして全部調べておりますが、帳簿上は問題がある点がないようでございます。この点もなお調べが不十分のようでございまして、もう少し関係者について調査の必要があるという状況でございます。
  109. 正森成二

    ○正森委員 いま調査が不十分だということはお認めになりましたが、帳簿上は合っている可能性も強いわけですね。帳簿上は合っておるけれども、実際には超過勤務もしないということで、超過勤務料をかせいでそれを別のほうに使うということを、この所長というのは相当広範囲にやっておった。非常に評判の悪い所長だったそうであります。そういうようなことが正されるように、私は厳重に希望しておきたいと思います。  それから中央からといいますか、矯正管区からいろいろ調査に行かれる人の中にも、ずいぶん気のゆるみがあるようですね。昭和四十六年一月十二日から三日間和歌山地区の少年鑑別所や拘置所、刑務所の三施設を監察に行った大阪矯正管区第一部長本橋達という人がおるようですが、その人は二日目に監察に来ておったけれども、監察の途中で午後から近くにある娘道成寺で有名な道成寺を見に行きたいというようなことで、監察を途中でやめて車を連ねて見に行くということをやったようですね。私はこういうこまかいことを一々言いたくありませんけれども、大体下が下なら上も上、上が上なら下も下というような感じですね、どうも少年刑務所だとか少年鑑別所、少年院というところはそういう感じがする。下の教官も暴行する、上の人もそういうようなことをやる。国会の質問が比較的少なく、また矯正局というのはそれほど表立ったところでなく、内部告発も少ないというところで、非常に気がゆるんでおるのじゃないかというように、この告発書を読んで思わざるを得ないわけです。これは比較的こまかいことでありますけれども、監察に行った場合には、終わって四時、五時から市内の見物をなさるのはいいとして、監察の途中でそのような物見遊山に役所の車を使うというようなことは、絶対にすべきでないと思いますが、この点の調査は行なわれておりますか。
  110. 長島敦

    ○長島政府委員 この点につきましては、当時の関係者、運転手等について調べておりますが、道成寺に着いたのがもう夕方で暗くなっておったということは確実な事実のようでございます。関係者の話によると、大体巡閲が終わったので四時ごろから出かけたというのと符合するようでございまして、何かこれは終わってから出かけたのが真相ではないかという気がするのでございます。
  111. 正森成二

    ○正森委員 あなた方のほうの調べではそういうようになっているようですが、私が調べたところではそういうようになっておりません。そして、そのことについて所内で非常に悪いうわさがたっているということがいわれているんですね。いろいろ陰口をきいて、上がああいうことであったら下は何やつてもいいんだな、その職員のことばを言いましょうか。えらいさんだったら何をしてもかまわぬのだな。監察のため残業までして書類整理をしたのに、あれじゃ監察官を監察する必要があるね。下っぱばかり苦労させておいて、ふまじめにもほどがあるな。各施設が自動車事故を起こすんできびしい取り締まり通知を管区から出しているのに、もし交通事故があったら一体どうする気なんやろ、つまり、道成寺へ行ってね。こういうことを下では言っているんですね。そんな監察に行った人が監察されるほうから、あれじゃ監察官を監察する必要があるねというようなことを言われておって綱紀が保てるわけがない。あなたは監察が終わってから行ったんだと言われるけれども、監察が終わってから行ったんなら職員がこんなことを言うわけない。何ごともきれいごとで済まさないで、内部からこんな告発が出ているという場合にはよくよくなんだ、こういうことで姿勢を正すようにしなければ、逆に局長を矯正しなければならないというようなことになりますから、だからそういうことのないようにしていただきたい、こう思うのです。  私は要望をいたしますが、こういういろいろなことがたくさん報告されると、私としても、各施設の所員が、職員が行政処分を受けた人数と内容、最近十年間にさかのぼってそれの一覧表を私に出していただきたい。これだけのことが行なわれておってどれぐらい処分をされておるのかということを知りたいと思いますし、あなた方の姿を見る上でも非常に大事なことだと思いますから、それを要請したいと思います。それは出していただけますか。
  112. 長島敦

    ○長島政府委員 過去十年間にわたって全部それが保管されているかどうか、私、現在所管でございませんのでわかりませんが、調べまして、できるだけ御希望に応じたいと思います。
  113. 正森成二

    ○正森委員 最後に一つ。少年院の中で置き便器が使用されている施設はまだどのぐらい残っておりますか。置き便器というのは、自分の居室や寝室に同時に便器が置いてあって、それで昔の刑務所と同じやり方をしておるのですが……。
  114. 長島敦

    ○長島政府委員 現在少年院が六十二カ庁ございますが、そこのうちで全庁を水洗化されておりますのが二十二カ庁でございます。残り四十庁ございますけれども、これらの中の多くは、開放施設の場合は個室には便所がございませんで、集団で便所を、そこはまあ水洗便所になっておるというのが多いわけでございますから、純然たる置き便器というのは、現在ではきわめて少数だというふうに考えております。
  115. 正森成二

    ○正森委員 きわめて少数でも残っておるのでしょう。それで少年院という矯正施設の場合に、もしその置き便器というのが残っておるということになれば、これは処遇の上で非常に考えなければならぬ問題があると思うのですね。もし残っているとすれば、そういうのがなくなるように切に希望したい、こういうように思いますが、いかがですか。
  116. 長島敦

    ○長島政府委員 確かめてみますと、残っておるといいますのは単独室の一部に残っておるようでございます。この場合も従来の置き便器というのでなくて、それを改造いたしまして、水洗ではございませんが、落ちてたまりへ入るようになって外からくみ取るという、何と申しますか簡易の、何と表現するのかわかりませんですが、従来のただ便器を置いてそこでやるというようなものではございません。が、しかし、これも一刻もすみやかに改善するように努力をいたします。
  117. 正森成二

    ○正森委員 これで質問を終わりたいと思いますが、申すまでもなく、憲法三十六条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」こういうぐあいになっているのですね。これは成人の凶悪犯に対しても、法による正当な処罰以外には公務員が暴行陵虐を加えてはならないと、こういうことであります。それがまだ将来の可塑性のある少年、しかも統計によれば、心身に必ずしも正常でないものがあるために社会に十分適応ができなくて少年院に行くようになった少年に対して、個別的に、科学的な指導をするというんじゃなしに、暴力でこれを行なう。私が調べたところでは、てんびん棒が折れるか、おまえの腰骨が折れるか、どっちかまでやってやるというようなことを言うて気違いみたいにぶんなぐった職員もおる。時間がないから一々言いませんけれども、そういうようなことが日常いつでも行なわれているということがこういうぐあいに告発され、請願されているときに、あなた方は、矯正の責任を負う局長以下の方々は、こういうことが絶対にないように、そしてそれを直すためにはどういうぐあいにしたらいいかということを真剣に考えるように、少年から逆におまえたちこそ犯罪者ではないかというようなことが言われることのないように、私は切に希望したい。そして、あの俳句や和歌で父母を慕い、更生の日を願っているような少年に恥じないような、そういう近代的な教育的な少年院、少年鑑別所というものをつくるようにあなた方が努力されることを切に希望したいと思います。そして、そのためには綱紀を粛正する、罰すべきは罰し、そしてほめて昇進さすべきは昇進させるということで、長島矯正局長が法務大臣にも報告をされて、十分にその実をあげられることを希望をして、質問を終わりたいと思います。
  118. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる十九日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十七分散会