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1974-03-22 第72回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十二日(金曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 稲葉 誠一君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    片岡 清一君       塩谷 一夫君    田中  覚君       竹中 修一君    野呂 恭一君       保岡 興治君    山崎  拓君       正森 成二君    沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         法務大臣官房長 香川 保一君         法務大臣官房司         法法制調査部長 勝見 嘉美君         法務省民事局長 川島 一郎君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     田中  覚君   河本 敏夫君     竹中 修一君   千葉 三郎君     山崎  拓君   中垣 國男君     片岡 清一君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     中垣 國男君   田中  覚君     江崎 真澄君   竹中 修一君     河本 敏夫君   山崎  拓君     千葉 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出第一八号)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この法案内容に入る前に、この法案がどういう経過立案せられるに至ったかというところをお聞きをしていきたいと思うのですが、法案提出権法務省にあるわけですから、これは法務省法制審議会の議を経て、そして法案作成するのが筋だというふうに思うのですが、この法案は、そういう経路を一体たどったのかどうか。それからたどらなかったとすればその理由はどこにあるのかということを最初にお聞かせ願いたいと思います。
  4. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいま御指摘のこのたびの改正法案は、法制審議会意見はお聞きしておりません。御承知のことと存じますけれども法制審議会は、法務省設置法の規定によりまして「民事法刑事法その他法務に関する基本的な事項について調査審議する」ということになっております。すでにこの委員会でもお話が出ておりますように、この法案につきましては最高裁判所臨時調停制度審議会が設けられまして、十分検討されたものと私ども考えておりまして、その審議会答申に基づきまして立法依頼がございまして、その中の緊急に立法を必要とするものにつきまして、私ども法案作成して御提案を申し上げた次第でございます。すでに御承知のとおり、その中身におきまして予算関係法案となっております。予算折衝は、本年度は年末に最高裁判所におきまして大蔵省との間に折衝が行なわれて、その妥結の結果、正月早々から正式の立案作業に入ったわけでございます。  そのようなことがございまして、法制審議会意見をお聞きしないまま御提案申し上げた次第でございますが、自主的に法曹が入っております臨調審におきまして十分御審議いただいている点、ただいま申し上げました予算関係法案でございまして、時間的にさほど余裕がなかった点、それから中身におきまして私ども考えておりますのは、先ほど申し述べましたように、法制審議会には「基本的な事項」ということでございます。私ども考えといたしましては、このたびの改正調停制度の本質につきまして基本的な改変を加える趣旨法案ではないという考えのもとに、以上のような経過で御提案を申し上げた次第でございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ちょっとわからないのですが、これは基本的な改革じゃないというんですか。おかしいな。最高裁基本的な改革だって考えているんじゃないですか。どうなんですか。ちょっと待ってください。そうすると基本的な改革じゃない、たいしたことはない。たいしたことはないということとは別かもわからぬけれども、おかしいな。だって、その調停制度全体を通じて、ことに調停委員の身分の関係なんかも変えようとするし、それからいろいろな、十六条の二ばかりじゃなくて、その他のあれもあるし、これは基本的な改革じゃないんですか、そこはどう考えているんですか。最高裁、どう考えているのか。
  6. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 最高裁判所といたしましては、調停制度基本として考えておりますのは、民間人良識経験主体とした活動によりまして、条理にかなった、また当事者の互譲を求めての迅速、経済的かつ平和的な民事紛争の解決、これを基本というふうに考えております。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その基本はもちろん変わってないわけですね。まあ変わってないという考え方でしょうね。そうすると、調停制度基本を変えるとなると具体的にどういうことですか、いま言った調停制度のものが基本ならば、その基本を変えるということは調停制度を廃止するということになってくるのじゃないのかな。そこはどういうふうに理解されるわけですか。
  8. 勝見嘉美

    勝見政府委員 第一点は、ただいま最高裁のほうから申し上げたとおりでございます。  それからただいま御指摘の第二点につきまして、具体的に例示を申し上げますと、たとえば調停審議会審議されました調停委員による期日の実施というようなことは、やはり基本的な構想にかかわる問題だと思います。と申しますのは、あくまでも民間人を入れた調停委員会という機関ではございますけれども、やはりそこに調停主任あるいは家事審判官構成員として入っておりますことが現行調停法基本であると考えます。したがいまして、調停委員調停委員会を構成して現在のように調停を実施するという限りにおいては、基本的な改変ではないというふうに考えております。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはざっくばらんな話、この法案をつくる過程最高裁法務省との間で話し合いが行なわれて、そうしてこれは最高裁のほうでやろうというふうなことになったんですか。それはどうなんですか。これはちょっと私、よくわ  からないのですよね。
  10. 勝見嘉美

    勝見政府委員 たびたび申し上げますように、法案提案は私ども責任を持って行なわなければならないわけでございます。しかし、内容はあくまでも運用責任に当たっておられる最高裁判所でございますので、十分最高裁判所と御連絡申し上げ、調整の上、立案作業をいたした次第でございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、たとえば訴訟法改変の問題、刑訴の場合は検事が関与するからこれはちょっと違うかもわかりませんけれども民事訴訟法の場合は手続法だし、ほとんどこれは裁判所関係法律ですわね。そうすると民事訴訟法の場合でも根本的な変革を別とする場合は、今後は最高裁規則をもって何とか審議会かなにか設置をして実際の立案というか立法過程を全部やるということになるのですか。そういうことなら、ぼくはまたそれで話はいいと思うんですよ。実体法法務省関係がやる、手続法最高裁関係がやる、最高裁がそういうことをやるのがいいのかどうか、ルールの関係ならば問題ないと思いますが、法案作成のことまでタッチするのはぼくはいかがかと思います。手続法の場合、特に民訴改変なんかの場合、今度は最高裁主体となってやるということになるのですが、そこまで法務省としては理解しているのですか。
  12. 勝見嘉美

    勝見政府委員 民事訴訟法改正が行なわれますような場合には、もちろん法務省作成いたしまして御提案申し上げる次第でございます。  それから、ただいまの臨調審審議過程におきまして、立法事項云々という御指摘がございましたけれども、あとでおそらく最高裁判所のほうから詳細御説明があろうかと思いますが、臨調審発足自体は、調停制度発足以来五十年をけみしまして、その間におけるいろいろな問題点を拾い上げて、これを具体的に討議しようというところと、その上にどういう施策を講じたらいいかというところが目的であったろうと思います。結果的には、もちろん立法を要する事項もあり得るわけでございまして、現にこのたびの臨調審答申の中から立法事項を拾いまして私ども立案した次第でございますが、発足当初はもともと臨調審立法そのものをねらいとした審議会ではなかったわけでございます。その点の詳細はまた最高裁判所のほうから御説明いただきたいと思います。
  13. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたような調停制度基本というものを前提とした上での緊急な改善策ということの検討を始めたわけでございまして、審議内容いかんによりましては、もちろん法律改正に及ぶような問題にも入り得るということは予測をいたしておりましたけれども、重要なテーマはやはり調停制度運用という問題も含めた全般的な調停制度改善施策検討するということでございましたので、最高裁判所諮問機関としての審議会設置したわけでございます。審議内容としては当然法律改正を必要とするような事項にも及ぶということを予測いたしましたので、審議会委員、幹事には法務省法制局等担当官方々にも御参加いただきまして、審議のいわば大ワクというようなものについては十分御配慮を願ってまいったわけでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると今後、いま言ったように、たとえば民事訴訟法の根本的な改変というかそういうようなものは法制審議会の議を経て法務省中心になってやるけれども、そうでないところの、技術的というとことばが悪いかもわかりませんが、そういうふうなものの改正などの実際は最高裁審議会みたいなものをつくってそこでやっていくという形になるのですか。そういうふうならそれでまた話はわかるのですよね。実体法のほうは法務省でやる、手続法最高裁が、研究というか、諮問というか、立案というかそういうふうなものを、法案提出権はもちろんないから、コンクリートなもの、全部確実なものをつくっていくというのじゃないとしても、大かたのものはつくっていくという行き方を今後とるのかどうかということなんですよね。そこら辺がはっきりしないような気がするのですがね。どうするのですか、今度の民訴改変なんかについて。
  15. 勝見嘉美

    勝見政府委員 民事訴訟法改正につきましては、あくまでも法務省責任者として法案作成に当たることになることは従前のとおりでございます。ただ、たとえば現行民事訴訟法運用の問題につきまして問題があるのではないかというようなことで、最高裁判所に何がしかのその種の委員会ないし審議会が設けられることはあり得るかと思いますが、その意を受けて、立法事項につきましては当然法務省のほうで責任をもって立案することになるわけでございます。
  16. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 将来どういう点が改善の対象として検討されるかによっておのずから違ってまいると思います。したがいまして、予測として私ども申し上げることはできないわけでございますけれども、従来から、手続のごく運用に関して法律改正を必要とするというような問題が起こってまいりました場合、事務段階で私ども検討いたしまして、適宜法務省に相談を持ちかけまして、法務省の判断のもとに法制審議会を開くあるいは開かないということで進めてこられた例もあったように記憶いたしております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、強制執行、いまどこまで進んでいるのか別だけれども、浦野さんを中心研究をやっておられるようです。あれは民事訴訟法でしょう。民事訴訟法の第何編だったか、五編だか六編だか忘れましたが、最後のほうですね。あれば法務省でやっておるわけでしょう。実際は、執行官だっていま裁判所に付属しているんだし、執行手続は全部裁判所がやるんですし、それならある段階までの研究というものは裁判所でやるのが筋じゃないですか。これは現実にもう初めから法務省でやっているんじゃないですか。そこらのところどうもよくわからないんですよね。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 強制執行のお尋ねでございますが、強制執行につきましては、もうかなり以前に法務大臣から法制審議会に対する諮問がなされておりまして、この諮問に基づいて検討を行なっておるわけでございます。  それに関連して調停の問題ですが、本来、法務省法案を準備いたします場合にこれを法制審議会にかけるというのが慣例でございます。ただそれは、事柄の軽重によるわけでございまして、法務大臣が必要と認めた場合には法制審議会諮問をする、しかし諸般の事情から諮問するまでの必要がなかろうと考えた場合には諮問しないということになるわけでございます。今回の調停の問題につきましては、法務省法案立案いたします前に、すでに最高裁判所において調停制度全般に関する——これは立法だけを目的とした審議会ではございませんで、運用の面も含めまして調停制度全般についての緊急な改善対策というものを研究する審議会が行なわれましたので、法務省といたしましては、今回法案を提出いたしますについてこれを重ねて、と申してはなんですが、法制審議会諮問するかどうかということを一応考えてみたわけでございますが、しかしながら、問題がすでに最高裁判所において検討されておるというような経緯考えまして、今回は法制審議会諮問しなくてもよかろうということで、法制審議会に対する諮問は行なわなかった、こういう経緯になっていると理解いたしております。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 質問は二つですが、いまの法制審議会諮問しなかったというのは、重要じゃないからということもあったらしいですが、同時に、臨時調停制度審議会で、運用等について諮問されていろいろ研究されておる。これはいま聞くと運用の問題が中心だというのでしょう。法制審議会のほうは立法中心でしょう。そうなれば立法段階で、重要な法案だということを考えれば、当然法制審議会諮問しなければならないわけだ、こう思うのですよ。ところが、これを諮問していないということは、ダブっているからという意味かもわかりませんけれども法制審議会臨時調停制度審議会というのは性質が違うんだし、ダブっていないわけなんだから、当然諮問しなければいけないんじゃないかということが一つですね。それほど重要性がないというふうに考えたのか。いまの話は、もうすでに十分だというふうに考えたようにとれるようですね。けれども内容が違うんじゃないですかね。  強制執行の問題は、強制執行の問題として出しておるわけじゃなくて、手続法の問題じゃないか、実際に手続をやっているのは裁判所ではないかというわけですね。そうなってくれば、それはいま言ったように、強制執行の場合は直接法務大臣諮問したというのでしょう。じゃ、諮問するのと同時かどうか知らないけれども最高裁のほうで結局審議会等をつくってその運用についての研究というものを当然行なわれているはずなんでしょう。それは行なわれているわけですか。どうなっているんでしょうかね。それでないと何か話が合わないように思うのですよ。ちょっとくどくて恐縮なんですけれどもね。
  20. 川島一郎

    川島(一)政府委員 先ほど申し上げましたように、諮問をするかどうかということは、これは法務大臣がその必要があるかどうかを判定した上で決定される事柄でございます。今回の調停の問題につきましては、すでに最高裁判所審議がなされておる。それに法務省も関与しておりますし、弁護士会も関与しておる。ある程度学者の方も関与しておられるということでございましたので、その結論というものは法制審議会でやっても大体同じようなことになるのではなかろうか、そういうようなことから、法制審議会に対する諮問は行なわなかった、こういうことです。  それから強制執行につきましては、もちろん最高裁判所は実務の運用に当たっておられるのですから、そちらで研究がなされることはあってもおかしくはないと思います。しかしながら、法律改正立案を行なうという作業は、これはあくまで法務省責任で行なわなければなりませんので、法務省としてはその立場から、最高裁判所の個々の御方針というものとは一応別に、法務省独自の立場から検討をすることにしておるわけでございまして、強制執行といいましても、裁判所の内部の手続だけではございません。一般の第三者に対する関係でいろいろ問題があるわけでございますので、広い立場から検討してみる必要がある。もちろん運用の衝に当たります裁判所のほうにも積極的に御参加をいただきまして、打ち合わせをしながら法制審議会審議を進めている、こういう状況でございます。
  21. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 強制執行審議に関しましては、最高裁判所側といたしましても裁判所側意見、希望なりを十分に表明する必要があるというふうに考えておりますので、事務当局における検討はもちろんのことでございますけれども強制執行を担当する裁判官、書記官、あるいは執行官等も集めまして、協議会、会同その他を開きまして、意見を集約し、それを法務省のほうにも伝えておるというのが現在行なっておるところでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私のほうもそう深くこだわるつもりじゃありませんけれども、何か一貫しないような印象を受けるのです。問題は、私が疑問に思いますのは、最高裁判所司法権機関でしょう。それで法案提案権はないわけです。内閣と、もちろん議院があるというわけですね。そこから考えると、立法に関連するようなことを最高裁判所審議会をつくってやるということ自身が一体いいのだろうか、悪いのだろうかという疑問を持つのですが、それをもしやるならば、手続法全体を通じてもすべてやるという形にしないと、何か一貫しないように私は思うのです。これはまた別なことだと思いますが……。  そこで、昭和四十六年の六月一日に、最高裁判所規則三号というので臨時調停制度審議会というのを設置することにしたわけですね。一体、具体的に何をこの審議会の中でやろうとしたのですか。どういうふうな諮問がなされたのでしょうか。第一部会と第二部会とがありますね。これはどういうふうに内容的に違うわけですか。
  23. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 臨時調停制度審議会が設けられました理由につきましては、すでに申し上げてまいったわけでございますので、簡単に申し上げます。  前回申し上げましたような調停事件の統計的な減少の傾向の背後にある問題といたしまして、ここ数年来調停に対する批判というものが、調停を担当する裁判官なり調停委員なり、あるいは当事者の代理人である弁護士なりから寄せられてきた。いわゆるまあまあ調停といわれる批判とか、あるいは相互の主張を足して二で割るような案を押しつけてくるといったような批判とか、あるいは調停というものが単に引き延ばしの方法として利用されているのじゃないか、こういう批判が出てまいったわけで、そういう批判にこたえるために設けられたものでございます。  そのきっかけとなりましたのは、先ほど法務省からも御説明もございましたように、調停制度が五十周年を迎えるという機会に、そういう強い声を受けまして、最高裁判所で慎重な検討を始めたほうがよいのではないかということがあったわけでございますし、また加えて、これは国会の方々から、たとえば当時参議院の法務委員会亀田議員から当時の民事局長に対して、調停制度改善検討しろというようなサゼスチョンもございました。  そういったようなことを契機といたしまして、四十六年六月一日に規則三号で審議会が設けられたわけでございます。この審議会に対する最高裁判所諮問事項は「調停委員制度調停手続その他調停制度に関する事項に関し緊急に必要な施策について」こういう諮問がなされたわけでございます。そしてこの審議会は四十六年の七月に第一回の総会を開いたわけでございますが、その結果、調停委員及び調停制度に関する問題点を調査研究する機関として第一部会と、それから調停手続改善に関する問題を検討する機関として第二部会というものを設けて、それぞれ審議を開始したというのがその経過でございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、この審議会委員というのが二十七名ですか、これを拝見いたしますともちろん学界の方も入っておられ、それから裁判所法務省も入っておられ、新聞社の方も入っておられ、いろいろおられます。決してかれこれ言うわけではありませんけれども三井不動産株式会社の社長が入っておるわけですね。これはどういうわけで入っているのですか。これは不動産会社代表として入ったのかな。
  25. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 結局、委員の中には学界それから財界言論界等方々はいわば高度の社会常識あるいは良識経験を持たれた方として、そういう立場から大所高所からの御見解を承る機会を得たい、そういう趣旨で参加していただいたものと承知いたしております。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから安田生命保険相互会社の相談役の人も入っておられますね。それから経団連の副会長の人も、名前を省略しますが入っておられるわけでしょう。そうすると、財界の人が調停制度審議会になぜ入らなければならないのですか。財界の人でないと大所高所からものを見られないのかな。そんなことがどこに書いてあるのですか。日本の憲法にはそんなことは書いてないと思うのですけれども、それは冗談ですが、どうして財界の人が入ってくるの。これはおかしいな。しかもこの審議会会長さんというのは、こんなことは言いたくないけれども名前をあげませんが、古河合名か何かの顧問弁護士をやっておられた方ですね。これは財界代表かどうかは別として、そういう方ばかりではないけれども最高裁のこういうところに出てくるのはどういわうけなんですかね。最高裁はなぜこういう選び方をするのか、ちょっとぼくにはわからないな。どうしてこういう人が出てくるんですかね。三井不動産安田生命保険経団連会長、これは調停制度審議会に一体どういう関係があるのですか。
  27. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、学界の方その他と同じく学識経験者ということでお願いしたという以外にちょっとお答え申し上げようがございません。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、学識経験者というのは財界しかいないのですかと聞いておるんですよ。そのほかにもいますけれども、おられることはおられるんだけれども、こういう選び方はおかしいですね。ぼくは最高裁の体質をあらわしているとは言いませんけれども、これはおかしいよ。これではほんとうの調停運用などについての考え方というか、正確な意見なんて出てこないんじゃないですか。どうもぼくはわからないですね。不動産会社がどうして大所高所からものを見れるのかな。それは大きなビルを建てているから、大所高所から上のほうから見れば大所か高所かもわからぬけれどもね。経団連もそうかもわからぬけれども、こういう選び方はおかしいね。全然疑問を持たないで選んでくるということがおかしいですね。ここにどうも審議会の性格があらわれているように思うのですが、あまり個人攻撃みたいなことになっても悪いですからあれします。  そこで、この前、日弁連の方が参考人のときに言っておられたんですが、日弁連のほうの選び方はどういうんですか。弁護士加藤晃さん、それから溝口喜方さんと横地秋二さんが入っておられる。横地さんは調停協会関係理事長小林俊三さんがやっておられたんですかな、どういう関係でこういう選び方をしたのか。日弁連との関係はどうなっているんですか。
  29. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 委員には弁護士さんから三名、幹事として二名が入っておられますが、いずれも日弁連に推薦を依頼いたしまして、推薦によって御参加いただいたわけでございまして、溝口さんは東京弁護士会横地さんが第一東京弁護士会、加藤さんが第二東京弁護士会をそれぞれ代表して来られたということでございます。それから調停委員の方は、日調連のほうに推薦を依頼いたしまして、委員三名、幹事同じく二名入っていただいたわけでございますが、この調停委員の三名の中の二名、小林さんと金末さん、それから幹事のうちの一名、海谷さんは、いずれも弁護士であられます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうして、この前、日弁連の方も言っておられたように、これは法務省のほうかな、この法案ができる、何か閣議決定より一日か二日前ですか、日弁連に、こういうふうにでき上がりましたといって持っていったと言っていましたね。一日か二日かは、ちょっと日にちは別として、その間の経過はどうなんですか。それと法務委員会で何か決議がされておるようですね。法曹三者が十分な緊密な連絡をとってやれというような決議が両院であるようですが、それで十分な連絡をとったということになるんでしょうか。連絡のしかたはどういうやり方をしたわけですか。
  31. 勝見嘉美

    勝見政府委員 事務的な接触の大要を申し上げますと、先ほど申し上げましたように本法案予算関係法案でございまして、年が明けまして正式な作業を開始したわけでございますが、一月の十九日に法律案の要綱案ということで、日弁連との間に事務的な説明会を持ったわけでございます。続きまして、一月の二十八日に法律案を内部的に、私どもの事務的に確定した案をお渡ししてございます。この間日弁連の方からお話がございましたように、閣議決定は一月三十日でございました。  以上が一応暦日の経過でございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その法務委員会での決議ですね、これは附帯決議か何かだと思うのですが、どういう決議になっているのですか。その決議と日弁連とのこの法案についての連絡というようなものとの関係ですね、それはどういうふうになるか、ちょっとお聞きしたいわけです。
  33. 勝見嘉美

    勝見政府委員 この法律案は、先ほどから申し上げておりますように、臨調審答申に基づきまして、最高裁からの立法依頼によって最小限度のものの改正内容とするものでございます。これもまた重ねて申し上げることになりますけれども調停委員の待遇改善に関しましては、予算折衝をまちませんと立法化に着手できませんので、そういう事情にございました。また、御承知のとおり、予算関係法案といたしましては国会に提出する時期の制限もございます。そういう客観的な制約もございまして、きわめて倉卒の間にこの草案をまとめなければならない状況にあったわけでございます。他方、いわゆる三者協議会につきましては、これも御承知かと存じますが、現在開催いたしますことは事実上困難であるという事情にございます。やむを得ず、先ほど申し上げましたように、一月の十九日に日弁連の担当者に私どもの係官が法案要綱案を持参いたしまして御説明申し上げまして、その御意見も承る機会を持った次第であります。これも先ほどからお話がございましたように、臨調審におきまして日弁連の推薦をいただいております弁護士の方も参加していただいておりますし、それから臨調審答申ができ上がった後も、日弁連意見書も公表されております。その公表されました日弁連意見書も十分頭に入れまして、このたびの法案作成したわけでございます。  以上のようないきさつでございまして、日弁連との間にあるいは十分な協議を遂げたとはいいがたいのではないかという御批判はあろうかと存じますが、ただいま述べましたようないろいろな関係で、やむを得ないことじゃなかったかと考えております。もちろん、ただいま御指摘のとおり、本院におきましても、また参議院におきましても、附帯決議がございますことは重々存じております。この両院の附帯決議の趣旨は十分に尊重するつもりでおりますが、このたびの法案につきましてもできる限りのことをやったつもりでおります。今後とも可能な限りその趣旨に沿った措置をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その附帯決議というのは、衆議院でもあるわけでしょう。六十五国会、昭和四十六年三月二十六日にありますね。民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議、この第二項ですね。「政府及び裁判所は、司法制度改正にあたり、在野法曹と密接な連絡をとり、意見の調整を図るように努めるべきである。」これは衆議院のやつですね。どうしてこういう附帯決議が出てきたのですか。それで、在野法曹と密接な連絡をとらなかったけれどもやむを得ないのだというふうなことにいま聞こえるわけですが、どうもよくわからないのです。三者協議会を持てない状況にあるということは、どういう意味なんですか。これは事務当局から答えていただいて、終局的なまとめですね、今後在野法曹との連絡なり意見の調整その他については大臣のほうから——大臣も日弁連の会員の一人、ぼくもそうですけれども、ひとつまとめた御意見をお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  35. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 この三者問題につきましては、法制審議会も今度のこの臨時調停制度審議会も、それぞれ日弁連委員の選出方をお願いして、日弁連代表といいますか、日弁連から出していただいた方々委員になっていただいておる。これが一つの非常に緊密な連絡の機関ではございますが、おそらく附帯決議の御趣旨は、もっと根本的に三者が平素から協議会か何かのような機関を持って、一体になってやるべきである、こういう御趣旨だろうと私どもも思います。さて、その問題、連絡しておるわけでございますが、なかなか機が熟さないといいますか、まだ三者協議会というものをつくるまでには至っておりませんが、できるだけ緊密な連絡をとりまして、私どももこの法案提案して御審議を願うにあたりましては、日弁連会長や副会長とも会いまして、御意見等を承っておるわけでございまして、連絡は十分つけておるつもりでございますが、まだ協議会というような形はとれていないようでございます。ですから、私どもといたしましては、何か適当なきっかけがありましたら、そういうようなものをつくって、年に何回か集まって三者で懇談をするような機会を得たいものだ、かように思っておりますが、まだそこまで達していないというのが現状でございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはおそらく最高裁にしても法務省にしても、日弁連に対して言いたいこともあるのだろう、こう思うのですよ。これはあたりまえの話だ。三者だから、お互いに言いたいことがあるわけですから、遠慮することはないんで、十分言い合ったらいいんじゃないか。日弁連にももちろん改革すべき点がたくさんあるんじゃないかと私は思いますけれども、それはそれとして、いま大臣が話したような方向で今後進んでもらいたいと思うのです。  そうすると、今度の改正案には臨調審答申に含まれていない改正事項がある、こういうことですね。臨調審答申に含まれていない改正事項があって悪いと言っているのじゃないのです。答申なんですから、一〇〇%それだけにこだわるというか拘束されるわけでもありませんから、それはかまいませんけれども臨調審答申に含まれていない重要な改正事項というのは、一体何なのかということが一つと、それから、なぜそれが臨調審答申に含まれなかったのか、この二つですね。これは事務当局からでけっこうです。
  37. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいま御指摘臨調審答申にないもので法律案に入っている事項は何かというお尋ねでございますが、この事項は、先日の江尻参考人の御意見書の要旨にもございますように、調停委員の職務内容最高裁判所がきめるというふうにしている点と、それから、調停委員がその職務を行なうのにあたって裁判所の命を受ける点、この二点だと思います。  まず第一点でございますが、これは最高裁のほうからもうすでに申し上げておるとおりでございますが、この最高裁の定める事務につきましては、具体的には最高裁判所規則において嘱託にかかる事実の調査が定められるというふうに聞いたわけでございますが、実はこの職務の内容は、「調停委員の身分」というところの項と「隔地者間の調停の円滑化」のところで、すでに答申意見の中に述べられておるところであります。法案調停委員の事務として規定しておりますことは、すでに御承知のとおり、第一点は専門的意見の陳述、それから嘱託にかかる関係人の意見の聴取、第三点がその他最高裁判所の定める事務ということでございます。私ども法案作成する段階にあたりまして、いわゆる調停委員だけで行なえる事務につきましては主としてこの三点が問題になりまして、これをどういうふうに法律に盛るかということをいろいろ検討したわけでございます。  この間も申し上げましたように、本来公務員の職務の内容が法令によって定められるべきであることは、これまた当然でございますが、これは法律で直接規定しなければならないものでもないというふうに考えます。主要な職務内容法律できまっております場合には付随的なものは下位法令に委任しても差しつかえないというふうに考えております。本来、調停委員は、これは申し上げるまでもございませんが、調停委員会を構成して調停を行なうことが主たる職務でございます。そのほかに、このたび、調停委員の、いわゆる単独として行なえる事務につきましては、いわば調停を行なうための補助的な事務というふうに考えているわけでございます。  それでは、先ほど申し上げました嘱託にかかる事実の調査をなぜ法律で直接規定しなかったかということになろうかと思いますが、この事実の調査自体、それから嘱託ということはすでに現行の最高裁規則に定められております。その意味におきまして今回の法改正に必ずしもこれを法律事項としてあげるまでもないのではないかということで、現行法案のような形になったわけでございます。  次に、「裁判所の命を受けて、」という点でございますが、これも前々回私から申し上げたと思いますが、調停委員調停委員限りでやる仕事が認められるといたしますと、どの調停委員にだれが命ずるかということが当然に問題になるわけでございますので、これをきめざるを得ない。この際、その指定権者といいますかきめる主体はあくまでも手続法上の裁判所が適当である、そのほかにはないのではないかということで、「裁判所の命を受けて、」という表現になった次第でございます。  以上のような意味でございまして、実質的に答申にないものをここに掲げたということではないというふうに私ども考えておる次第でございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その点は最高裁でも全く同じように考えているのですか。多少答申に含まれていないものが改正条項として出てきているということについて、いまの話だと別に問題はないように言っておられるようですけれども、そこはどういうふうに理解をされておるわけですか。
  39. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 実は私、答申に盛られていない事項が今度の法案の中に入っているという趣旨が十分に理解できなかったわけでございますが、私どものほうで想像いたしましたところは、法案の八条一項にあります専門的な調停委員意見の陳述ということが答申趣旨の中に書いてないという点がまず第一点であろうかと推察いたしたわけでございます。これは答申事項の主文には確かに直接には出ておらないわけでございますが、理由をごらんいただますと、「調停委員の身分」のところで、調停委員としての新なた職務を加えるべきであるということで、検討されたことが記載されておるわけでございます。この点は臨調審におきましても十分協議されたところでございまして、ただ、独立の項目とする必要はなかろうということで、答申項目からは落ちていたということにすぎないわけでございます。  次に、同条一項の中にあります「裁判所の命」によりという語句が答申書の中に見当たらないではないかという点ではなかろうかと思われるわけでございますけれども裁判所の命により調停委員がなすべき職務内容につきましては、ただいま調査部長から御説明申し上げましたように、「隔地者間の調停の円滑化」の中で嘱託事項に関し、また調停委員会のメンバーである調停委員の事実の調査に関しましては、それぞれ答申に記載されておるところでありまして、ただ裁判所の命によりということばはございませんけれども、ただいまの嘱託に関する事項におきまして、「嘱託を受けた裁判所は、その指名する調停委員に当該措置を行なわせることができるものとする」ということで、「その指名する調停委員」ということばで表現されておるわけでございます。この「裁判所の命」によりという今度の法案の表現は、結局裁判所調停委員の職務として定め得る事項を限定する趣旨と、それから調停委員を指名するということによりまして、その調停委員に当該職務に関する職務権限の根拠を与える、そういうことを示すための法文技術上の要請から入ってきたものであるというふうに理解いたしておるわけでございまして、実質的にはすべて審議会の中で十分議論されたところであるというふうに理解いたしております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこでお聞きをしたいのは、現在の調停にいろいろな問題がまだあって、それが十分に解決されていないのではないか。いろいろな例をあげてお聞きしたいと思うのですが、そういうふうなこと、それは法律的な問題点もあるし運用上の問題点もあるのですけれども、そういうふうなものがまだまだたくさん問題があるではないか、こういうふうに私は思うのでこれからお聞きするわけなんです。  その前にこの法案についてそのものずばりでお聞きしていきたいのは、よく世間一般では今度の法案調停委員の日当というのですか何というのですか、これの性質が変わって六千五百円になるということをいわれますね。それと調停委員の身分がいままでと変わってくる。いままで任命されている間だけだったのですけれども、今度はそうではない、非常勤の国家公務員になる、こういうようなことの二つがポイントだというように常識的に受け取っている向きがあるわけです。もちろん調停委員の権限の拡大もあるでしょうけれども。そうすると、それらの関係の中でこの法案について法務省なり最高裁は一体どこが一番のポイントだというふうに考えるわけですか。調停委員のあれを六千五百円にするのがポイントなんですか、いやそれよりもむしろ身分を国家公務員にして非常勤化するというところにポイントがあるというふうに考えるのですか。これは問題としては率直に言ってちょっと愚問だと思うのです。愚問だと思うのですけれども、意識的に聞いているわけですからお答え願いたい、こう思うのです。
  41. 勝見嘉美

    勝見政府委員 このたびの改正法案制度面に関する限りは、ただいま御指摘のとおりの三つあると思います。第一点は当初からの非常勤公務員にすること、第二点は調停委員の職務の内容の拡充、第三点は待遇の改善、以上だろうと思います。その点はまさに御指摘のとおりだろうと思います。  現在の制度にそういう不合理な点がどこにあるのかというお問いかと思います。そういう点でございますが、現に私どもその点を考えましたのは、先ほど最高裁のほうから申し上げましたように、統計的に見ますと新受件数もそうふえてないという点はさておきまして、成立率の低下、それから審理期間の伸長等に端的に現在の調停制度の不十分さというところがあらわれているのではないかと思います。この現行の調停制度の理念といいますか、それを維持する限り、第一点はいかにしてすぐれた人を多数調停委員にお迎えするかという問題と、第二点といたしまして、その調停委員にいかに充実した調停活動を行なっていただくかということに尽きるかと思います。  第一点につきましては、現行の候補者制度は御承知のとおり無償奉仕ということが前提になっていると思いますが、この複雑困難化した事件の処理につきましてはそれに対応する体制ではないのではないかということで、当初から高度の資質、能力のある方に来ていただくということをいたすために適任者をいわば厳選いたしまして人材を確保する、そして当初から任命を申し上げるという制度考えたわけでございます。それから第二点とも関連いたしますけれども、せっかく資質、能力の高い調停委員が来ていただきますので、それを効率的にまた調停活動にあるいは補助活動に従事していただくという意味で調停委員の職務内容を拡充いたします。  それから第二点といたしましては積極的に活動を求めること、これには先ほど申し上げました資質の高い調停委員の効率的な活用ということで積極的な活動に従事していただく、それぞれのところを総合いたしましてさらに待遇を改善いたすというのが今度の改正法案のねらいであります。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まだそこまで聞いていないのですけれども、私の聞きたいのは、ポイントは三つあるというのでしょう。ところが三つあるうちの最後の六千五百円とか云々という話は法律案そのものとは関係がないでしょう。まずそれをお聞きしたいわけです。
  43. 勝見嘉美

    勝見政府委員 現行法におきましては、日当、宿泊料、旅費を支給するということだけでございまして、現行調停委員に対しましては報酬としての待遇を与えてないというところでございます。したがいましてこのたび改正いたしまして、別に法律の定めるところにより手当を支給するという点が今度の改正法にあらわれている点でございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、私が聞くのは、もちろん日当を手当に改めるというのですけれども、日当は日当であっても六千五百円は払えるのでしょうということを聞いているのです。払おうと思えば法律的に払えるでしょうということを聞いているのです。
  45. 勝見嘉美

    勝見政府委員 現在の制度のままで手当が支給できるかというお尋ねでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 違う、違う。日当で六千五百円は払えるじゃないかということです。
  47. 勝見嘉美

    勝見政府委員 現在の日当は、私どもは実質弁償であるというふうに考えております。したがいまして実費弁償と観念する限りは、やはりそこにリミットがございまして、現行法のもとでは千三百円ということになっておるわけでございますが、日当と解する限りにおいては私どもといたしましてはリミットがあるというふうに考えておる次第でございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまは日当でしょう。それでは日当というのは何なのですかということを聞くのと、日当でいま千三百円出しているのでしょう。その法律的な根拠は一体どこにあるのですか、それを説明していただきたいと思うのです。実費弁償、実費弁償というけれども、具体的にはどういうことに対する実費弁償なんですか。何の実費弁償ですかということを伺いたい。ぼくらが考えておる疑問は、あなた方はおわかりだと思いますけれども、日当をなぜ手当にしなければならないのか。六千五百円を支給するためになぜそういうふうにしなければならないのか。現在の日当のままでも当然出せるのではないか。六千五百円出せるかどうかは別として、それに近い金額は出せるのではないかと思うのです。そこら辺の法律的な根拠を説明してもらいたいのです。
  49. 勝見嘉美

    勝見政府委員 日当ということばで法文上出てまいりますのはたくさんございます。(稲葉(誠)委員調停委員の日当のことを聞いているのだ。」と呼ぶ)でございますから、調停委員の日当の場合は公務員として働いた場合の日当の範疇に属すると思います。公務員の日当につきましては、先ほどから申し上げましたように、その公務に従事した場合の実費弁償というふうに観念いたしております。たとえば旅費法の日当を取り上げてみますと、旅費法の日当は公務員が出張した場合における実費弁償というふうに観念されておると思います。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そんなこと聞いてないですよ。現在調停委員に日当を出しているというのでしょう。日当を出している法律上の根拠があるでしょう。非常勤国家公務員の給与の規定かなにかあるんじゃないですか、一般職の。条文があるでしょう。その条文を説明してくださいと言っているのです。そんなことを説明したらあなたに不利になるから説明しないのでしょう。
  51. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 現在民事調停法の第九条において「調停委員及び前条の規定により調停の補助をした者には、最高裁判所の定める旅費、日当及び宿泊料を支給する。」、こういう規定になっておるわけでございます。ここでいう旅費、日当、宿泊料の日当というのはいわゆる旅行に伴う雑費という観念でいままで理解をされておるところでございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もう一つ法律があるのじゃないですか、それじゃなくて、よく説明してくださいよ。
  53. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいま御指摘の一般の公務員について、一般に日当を支給する根拠の一般法はございません。いわゆる給与法の中に日当という条文はないというふうに考えております。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現在、調停委員の身分をきめるでしょう、調停委員候補者から調停委員になるわけでしょう、なったときに、いま言ったように日当を払うわけでしょう。それは法律上の根拠があるのじゃないですか、最高裁規則ですか、ちょっとよくわからなかったのだけれども。それは金額の上限があるのじゃないの。一万二千円なら一万二千円の上限があるのじゃないの。そうじゃないですか。
  55. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 金額についての規定はございません。実際上は、裁判所のほうにおいて、予算の額においてきめて、通達でもって払っているというところでございます。(稲葉(誠)委員「そんなことはないよ、よく調べてくれよ、ちゃんと書いてあるぞ」と呼ぶ)たいへん失礼いたしました。調停委員規則におきまして、第十条で「調停委員等の日当は、執務及びそのための旅行に必要な日数に応じて支給する。日当の額は、一日当たり千三百円以内において、裁判所が定める。」、こうなっております。どうも失礼いたしました。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうじゃなくて、一般の——現在でも調停委員になった段階においては、非常勤の国家公務員なんでしょう。非常勤の国家公務員に対する給与の支払いの規定があるのじゃないですかと聞いているのですよ。それはあるんでしょう。
  57. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいまの御指摘は、日当という御質問でございましたので、日当につきましては、一般法はないというふうに申し上げた次第でございますが、いまお伺いをいたしますと、日当は給与ではないという前提でお答え申し上げましたので、先ほどのような答弁に相なったわけでございますが、給与として支払える根拠は、御指摘の給与法の二十二条一項でございます。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、給与法の二十二条一項というのは、どういう条文ですか。ちょっと見ていただけませんか。
  59. 勝見嘉美

    勝見政府委員 一般職の職員の給与に関する法律第二十二条の一項は、「委員、顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で、常勤を要しない職員については、勤務一日につき、一万二千円をこえない範囲内において、各庁の長が人事院の承認を得て手当を支給することができる。こういうことになっております。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、日当と手当というのはどういうふうに違うのですか、それと、日当は実費弁償だ、こういうのでしょう。そうすると、手当は実費弁償に何が加わるというのですか。そこら辺はどういうふうに理解したらいいのですか。現在の法律の体系のもとでも一万二千円というものは、当然出せるのではないですか。あるいは手当としなければそれは出せないのですか。いままで千三百円になるまでに経過があって、何回も上がってきているわけでしょう。それをあとで説明してもらいますが、この前千百円だったのでしょう。それが千三百円になってきたのでしょう。だったら、その金額を上げればいいんじゃないですか。幾らまで上げられるのですか。上げようと思えば上げられるのですか。これは最高裁のほうかな。きょう、そこまでぼくは質問するつもりじゃなかったのだけれども……。
  61. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 ただいまの民事調停法の規定によりまして、調停委員に対しては、旅費、日当、宿泊料を支給するということになっており、法律の根拠はそこにあるわけでございますので、手当は支給できないということになるわけでございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから旅費、日当、宿泊料でしょう。それをいま千三百円としておるというのでしょう。それは規則でしょう。だから規則を改めれば、一体幾らまで上げることができるのかと聞いているわけです。これは物価が上がったり、いろいろ賃金が上がってくるのだから、上げようと思えば上げられるのじゃないですか。どこまで上げられるの、現在の段階で。
  63. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 正確な日時は記憶いたしておりませんけれども、現在、いま申し上げましたように、旅費、日当、宿泊料という観念で日当がきめられておりますので、その限度でしか上げられないということになるわけでございますが、一般の公務員の旅費に関する法律によりますと、その千三百円というのは、当時、内閣総理大臣の旅行日当と同額でございます。現在、それがたしか千七百円になっておるというふうに聞いておりますので、千七百円が限度であるというふうに考えられるのではないかと思います。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうもここら辺のところは、ぼくは理解が十分できないのですが、問題になってくると日当を手当にする、かりに手当にしたときに、それを恒常的な非常勤の国家公務員にしなければ手当は支給できないのですか。手当となれば、一万二千円の範囲内で払えるわけでしょう。そこら辺との結びつきはどうなっておるのですか。
  65. 勝見嘉美

    勝見政府委員 たいへん答弁がまずくて、誤解を招いて、はなはだ申しわけございませんが、私どものほうでは、ちょっと弁解をさせていただきますと、日当と手当というものは、全然性質が違うというふうな前提で申し上げておりますので、どうも御質問にお答えが合わなかったようでございます。日当はあくまでも実費弁償、それから手当はあくまでも給与の一種である。したがって、公務の労務に対する反対給付であるというふうに御観念いただきたいと思います。  そこで、それでは現在の調停委員に手当が支給できるかという問題でございます。現在の調停委員が、現在のように候補者制度をとっているということ自体で、調停委員に手当を支給することができないというふうには言い切れないものがあろうかと思います。ただ、現在の給与法の二十二条一項の委員には、顧問、参与というふうに並んでおりますので、いわば高い学識経験を有する民間人の国民に対する参与であるということが予定されていると思われますので、現在の調停委員の要件のままで、二十二条一項の委員手当を支給するというのは問題ではなかろうかと思います。現在の候補者は、御承知のように、調停主任あるいは家事審判官から指定を受けて調停委員、すなわち公務員の——その事件限りで公務員の身分を取得するわけでございますが、いわばこの指定をいたしますのは、調停主任または家事審判官でございまして、これらの裁判官は、本来身分の得喪という人事関係を扱う司法行政機関ではないわけでございまして、このように、本来、いわば給与支給権者でない司法上の手続機関である調停主任ないし家事審判官の指定によって、公務員性を取得するという形態でございます。こういう形態は、非常に変則的なものでございまして、ほかにあまり例がないように思われます。他の法制で、いわゆる候補者制度を採用しながら手当を支給している例は、もちろんないわけではございませんが、いずれもその任命につきましては、行政機関自体が任命を行なっておりまして、現行調停委員の場合と比べまして、いわば任命形態がはっきりした形になっておるというのが現在のいろいろな例を見た上での私どもの見解でございまして、現行調停委員に現行のままで手当を支給するのは、非常にむずかしいというふうに考えている次第でございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはむずかしく考えるためにむずかしい理屈を考えてきているというぐるぐる回りの議論で、そういうようになっておるのですよ。これはやろうと思えば幾らでもできるわけですよ。ぼくは、いまの話はどうも納得できないのですよ。わからないのだな。わからないという意味は、勘ぐりかもわからないけれども、六千五百円払うというところにポイントがあるんじゃなくて、むしろ身分を非常勤の国家公務員にするというところにポイントを先に置いて、そこから待遇というか何かを持ってきたのじゃないかというふうにどうも考えられるんです。ですから、どうもそこら辺のところがよくわからないのですが、この点が一つの非常にこまかいむずかしい点かもわかりませんけれども、これはいずれまた問題としてあとでやりたい、こう思うのです。これはあとでいまのことに関してあなたのほうでお答え願えればお答え願ってもいいんです。  ぼくは、もう一つ別のことで、現在の調停法にもいろいろな問題があるんじゃないかと思う。その一つは、ことに家事調停の場合にもあるし、それから民事調停の場合にもあるのですが、たとえば調停が効力を生ずるというのはどういうときに調停としての効力を生ずるのかということですね。これは条文にはありますけれども、この条文の法律的な意味がよくわからないのですね。そこら辺のところ、どういうふうになっているのか説明を願いたいと思います。
  67. 川島一郎

    川島(一)政府委員 調停が効力を生ずるのは、当事者間に合意が成立して、これを裁判所が相当と認めて調停調書に記載がされたときでございまして、また結局当事者間の合意、それから裁判所がこれを相当だと認定して調書に記載させるということによって調停が成立するわけでございます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それで成立した調停は確定判決と同一の効力を持つわけですね。これはあたりまえですけれども。そとで、家事調停で実際にやってみて問題になるのは、たとえば離婚の調停の場合に申し立て人と相手方とを判決では離婚するという判決でしょうけれども調停の場合には申し立て人と相手方とは協議離婚をするというか、協議離婚の届け出をするとかというふうにいま書くんですか。この書き方は非常に変わってきていますね。それは人によって非常に違いますね。ここら辺の実際の扱いはどういうふうになっているんですか。  あとの質問も一緒にしちゃいますが、ということは、法務省民事局長通達で通達を出しているでしょう。調停が成立して調停によって離婚の届け出を出しても、戸籍の届け出前に不受理届けを出せばそれは調停としての効力を生じなくなっちゃうのでしょう。そこら辺のことがどうもよくわからないというか、ちょっと混迷しているのじゃないかと思うのですよ。申し立て人と相手方を協議離婚するとか協議離婚の届け出をするとかいろいろな書き方があって、それによって違ってきているのじゃないかと思うのです。だからこれはいま言った調停の効力の問題とも関連してくるわけですよ。どういうふうになっているのですか。最初に家庭局長、あとから民事局長法務省のほうでは通達を出しているでしょう。
  69. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 ただいま稲葉先生からの御質問の点ですが、実務の上でいろいろ問題があるということでございまして、普通夫婦間に紛争が起きまして、離婚をするかしないかということが民事紛争としてあらわれてきました場合に、訴訟でやる場合と調停でやる場合とそれから調停が途中で合意の関係が非常にむずかしくなりまして、家事審判法二十四条の審判でする場合とこの三つございますが、調停でする場合の離婚は当事者間に合意がなされたということになりますと、それは民法上でいうその夫婦間の離婚の合意ができたというふうな性質を持つものだということといたしますと、それは届け出によって効力が生ずるのであって、調停そのもので、届け出を要せずに離婚ができてしまうというふうには考えられないというふうな考え方もございまして、そこにいろいろ法律上の問題がある、こういうことになろうかと思います。それでその点につきまして戸籍のほうはどういうふうな態度をとるかということは法務省民事局長のほうからお答えがあると思いますが、私どものほうは調停について存在する問題点はそのように考えております。
  70. 川島一郎

    川島(一)政府委員 法務省で出している通達というのが実はどういう関係か、戸籍の関係でございますか。(稲葉(誠)委員「そうだよ、あなたのほうの通達です」と呼ぶ)離婚の場合ですと、ただいま家庭局長がお答えされましたように、調停によって当事者間の離婚の合意が成立するということになるわけでございますが、離婚が成立するのはその届け出が受理されることによるわけでございますので、その調停に基づきまして届け出がされますと、その届け出の日をもって離婚が行なわれたということが戸籍に記載される、そういう関係になろうかと思います。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 こういうことですよ。いま家庭局長お答えになったように、調停による離婚の場合、一体いままではどういうふうにやっていたのですか、まずそれ。いままでの例はどういうふうにやっていたか。そうすると、調停の離婚が成立すると調停調書を職権で本人の本籍地へ家裁のほうで送るのでしょう。そういう形をとっていたのじゃないですか。それはそれでいいですか。じゃその次には、ところが送る前に当事者から調停調書に記載したら判決と同じ効力を持つと言っているのでしょう。離婚の場合はちょっと違いますよ。違うんだけれども、一応そういうふうになっているわけだけれども、本人のほうからああいう離婚が成立した、調停離婚が成立したけれども、その調停についてはあれはあれだから不受理してくれという届けを出すと、そうすると戸籍吏はそれを受け取らないのじゃないですか。そこら辺のところを聞いているわけですよ。だから現実にはどういう形の調停が離婚の場合に一番正しいのか、それを聞いているわけですよね。
  72. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  ただいま稲葉先生からの御質問につきましては、調停の条項に当事者が離婚するという合意を記載した場合、その調書の記載だけで離婚が成立するということにはならないという考え方で取り扱っている庁が多いかと思います。と申しますのは、普通、合意による離婚はやはり届け出をしないと効力は発生をしない。そうしますと、その調停の席上で合意ができましても、それは離婚の届けをしましょうという合意ではなかろうかというふうに考えられる。けれども、その当事者のそういうふうな離婚の届け出をしましょうという気持ちはその調停後に変わる場合もございまして、そうしますと、ああいうふうな届け出をするという合意をしたけれども、しかし、いざ届け出をする場合に自分はいやだということになれば届け出をしない。そうすると、調停がありましても、届け出をしないという意思を表明すれば届け出ができないわけですから、離婚は成立しない、こういうことになるというふうに私ども考えております。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ところが、それは理論的にそうだと思うのですが、各家裁の場合にはその調停条項をつくるときにどういうふうな、いま言ったように申し立て人と相手方を離婚するというふうな調停条項をつくっているのですか。どういう調停条項をつくっているのですか。それがよくわからないのですよ。それから民事局長の通達か何か出して、不受理届けが出れば——調停調書を職権で送るわけでしょう。どうやっているんですか、現実には。職権で送る場合は、申し立て人と相手方とを離婚するというなら職権で送るのですか。あるいは当事者間は協議離婚をする、届け出なければならないという形だったら職権で送らないのですか。そこのところは具体的にどういうふうになっているんですか。その辺のところと、それから法務省民事局長通達でいま言った不受理届けの場合のこと。あなたのほうで人訴における裁判上の和解の問題と調停の問題とごたごたにしているんだな。ぼくがごたごたにしていたのかもわからぬけれども。意識的にごたごたにした点もちょっとあるのだけれどもね、人訴における裁判上の和解について、これは法務省としては認めないというのでしょう。認めないということに関連してあなたのほうで通達を出しているのでしょう。そこのところはどうなんですか。最高裁から先に伺いたい。
  74. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 家庭裁判所の取り扱いといたしましては、先ほど申しましたような趣旨に基づきまして、調停調書には離婚するというふうな条項はつくらない取り扱いが通常かと存じます。この調停調書は戸籍事務管掌者のほうにお送りしましても当事者が届け出たということの効力は持たないわけでございます。したがいまして、それだけでは(稲葉(誠)委員「それなら送らなければいいじゃないか。」と呼ぶ)送らなければいいとおっしゃればまあそういうことになりましょうが、離婚の効力はそれでは発生しない、当事者がやはり戸籍事務管掌者に届け出をすることによって離婚が成立する、こういうことになろうかと思います。
  75. 川島一郎

    川島(一)政府委員 先ほどの不受理届けとの関係についてまず申し上げたいと思いますが、離婚の調停が成立いたしました場合には、これは審判と違うわけでございますので届け出が必要になってまいります。なるほど規則には調停が成立した場合にはこれを戸籍の管掌者に送るという規定がございますけれども、しかし、これはそれだけではまだ戸籍法上それによって戸籍の記載をするという端緒とはならないわけでございまして、やはり当事者から離婚の届け出がなければ戸籍の記載はされない、こういう関係になるわけです。  そこで、離婚の調停が成立しまして離婚の届け出がされるまでの間に、当事者の一方から市町村長に対して不受理の申し出がある、こういう場合におきましては、はたしてその合意が真実であるかどうかという点につきまして問題がありますので、現在の取り扱いでは不受理の申し出が出ておる場合にはこれは受理しないということになるわけでございますが、これは、調停で一たん合意した、それが後に当事者の気持ちが変わるといいますか、そういう場合と、それからそもそも合意が真意に反しておったという場合とあるわけでございまして、きわめて異例な場合であろうかと思いますけれども、やはり一般的に調停だけでなく当事者間で話し合いがついた、そして離婚届けをつくったという場合におきましても同様な取り扱いをしておりますので、それとのバランスにおいて戸籍の取り扱いとしてはやむを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  76. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何か親族法のゼミナールみたいで、あまり関係ないといえば関係ないからこの辺でやめますけれども、ぼくが問題にしているのはいま言ったことと同じで、たとえば調停調書ができるでしょう。調停調書はいつできるかということですよ。たとえばあそこで現実に行なわれている調停というのは、書記官が大体原稿を先に書いちゃうのですよ。大ざっぱな原稿を書いちゃって、裁判官を呼びに行って、裁判官が来て、そして法律的に直すわけだ。直して読み上げますわね。読み上げない人もありますけれども、前に書記官の書いてあるとおりだなどと言う人もあるけれども、大体読み上げますね。そこで同意する。いいということになるでしょう。そこで一体成立するのかどうかということですよ。調停調書に記載して成立するなら、あとからタイプを打つのでしょう。タイプを打つといったってだいぶ日にちがかかる。一週間くらいかかるときもある。そのときに成立するのですか。いつ成立するのですか。よくわからない。調停調書は、ぼくはよく調停調書をもらったのだけれども調停委員が署名するのでしたっけ。どうなっているんでしたっけ。署名しないのかな。よくわかりませんが、どうでしたかな。それが一つ。つまりいつ成立するかということが一つ。  それから当事者はこう考えるわけですよ。当事者は成立するためには名前を書いて本人たちが判こを押さなければ成立しないと考えているわけだ。そういう人が日本人に多いわけですよ。名前を書いて当事者は判こを押さないわけだ。それはなぜ名前を書いて判こを押さないかということですよ。それを法律的に説明をするとどういうふうなことになるのかということをこれは聞くわけですよ。これもゼミナールとしてはいい問題だと思うのですけれども
  77. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 調停がいつ成立するかという問題でございますが、少なくとも法律的には当事者の合意が成立し、裁判官も含めた調停委員会がその調停案の内容で相当であると認めて当事者に読み聞かせ、当事者がよろしいというて裁判官が書記官に調書に記載を命じた、その瞬間に成立したものと考えてよいので、ただ、現実に使います調書はその後に確かに書記官が清書するなりあるいはタイプに打つなりいたしておりますので、若干時間的なズレはあるかと思いますけれども、そこは一つのフィクションとしてそのときに成立したというふうに考えておるわけでございます。  それから調停委員の署名は必要としないわけでございまして、これは調停調書の中に関与した調停委員の氏名が記載されることになっておりますので、それで証明されるということでございます。  また、当事者の署名捺印を求めない理由というのは、ちょっと私にもいま正確なお答えをする知識を持ち合わせておりませんけれども、これも当事者が関与したということが調書上明確にされますので必要がないものと考えられたのではないかというふうに考えております。
  78. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのフィクションは非常に危険性があるんじゃないですか。実際には原稿をあとで直す場合がありますよ。直すというのは、重要な点は直さないかもわかりませんけれども、字句を直しますね。字句を直すのか、てにをはを直すのか、いろいろな点を直すのがありますし、そして、原稿に書いてあったって、いわゆる原稿の書き方で、メモ程度の書き方でしょう、非常に乱暴に書いてあるのが多いですよ。ですから、そこで成立したというふうに擬制するといったところで、条文とは違ってくるんじゃないですか。条文はそういう書き方してないでしょう。だから、やはりそこで、当事者のいる前で、ちゃんとタイプならタイプに打つなり、打たなくても何なりして、すぐ渡せるような方法をとっていかないと、あとで非常に議論が出てくるんじゃないですかね。これは非常に問題になってくるところだ、こう思うのですね。  それから、当事者が署名捺印しないというのは、ちょっとわかりませんけれども当事者が関与したからいいということだというふうに言われるのですけれども、そこで問題になってくるのは、だから調停というのは、当事者の合意に重点を置くか、あるいは裁判所の公権的な機能というか、そういうものに重点を置くかということによって、その考え方が変わってくるのじゃないですか。当事者の合意に重点を置くということならば、やはりそこで当事者に署名捺印させるとか、まあ和解の場合なんかもしていないからいいかもわかりませんけれどもね、そういうふうな方法をとっていかないと、非常に弊害が出てくるのじゃないかというふうに思うのですがね。ということは、よく調停が終わって帰りに寄る人があるんですよ。そうすると本人たちは、自分は名前を書いてこなかった、判こを押してこなかった、こう言うのです。だから成立したとは思っていないわけです。それで、すぐ裁判所に聞くと、いや成立しましたという。それで非常に困るのですよ。ことに、家の明け渡し、土地の明け渡しなんかで非常にそれが多いんですね。そういう点で実際に困っているわけですね。だから私は念を押して聞いているわけなんです。  そこで、もうさっきの問題で、一つは、裁判所の和解の問題で、人訴の場合は請求の認諾ができないことになっているでしょう、その裏返し、反面解釈として、裁判所の和解はできるんだという説もありますね。それに対して法務省は、裁判所の和解は効力がないんだ、人事訴訟手続法における離婚などの裁判所の和解は効力がないんだというふうな形、だから、そういう和解調書は受けつけちゃいけないという通達を出しているんでしょう。そこを、出しているかどうかよく確かめてください。  だから、人訴における離婚などにおける和解というものは、法務省は認めない見解に立っているのかどうかということですよね。それはもちろん、人訴において、和解だって、そこで調停にまかせるといって回して調停調書をつくればいいんだという理屈もつくわけですし、そういう説もありますね、裁判官でそういう考え方をとっている人もいますけれども、それを法務省はどう考えているのかということと、その点については実際は裁判所関係ではどう考えているかということですね。裁判所は実務はどうなっていますか。離婚等における裁判所の和解は認めていないんですか。そういう行き方をとっていますか。
  79. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 ただいまの稲葉先生の御質問につきましては、私どもも、裁判所の和解は離婚についてあり得ないという考えに一応立っております。学説としては、離婚については裁判所の和解を認めていいのではないかという説があることも先生の御指摘のとおりでございまして、その理由は、形式的な理由と実質的な理由があろうかと思いますが、形式的な理由といたしましては、人訴法の十条で和解を排除していないということは先ほど御指摘のとおりであります。それからもう一つ、実質上の理由は、裁判外で離婚というものは、西欧の諸国とは違いまして合意でもって離婚できるということになっておる。その点を取り上げますと、当事者にその処分権があるんではないか。そういうものについて和解を認めないというのはおかしいではなかろうかという、この二つの理由が大体あろうかと思いますが、私ども考えておりますのは、いまの人訴法の条文が、離婚の訴訟の取り扱いとして、婚姻の維持ということに非常に力を入れておりまして、職権探知主義が働くのも、そういう見地から婚姻を維持する方向の場合に職権探知が働くというふうな条文の規定がある。また他方、家事審判法を見ますと、第一条に「家庭の平和と健全な親族共同生活の維持」というふうな規定がありまして、家事調停ではやはり夫婦間の円満な婚姻の維持ということをその理念として掲げておるというふうに考えられますし、そういうところからいろいろ条文ができておる。たとえば調停前置主義をとっておるとか、あるいは受訴裁判所がいつでも相当だと思えば職権で家裁の調停に付するというふうな判断もできるといったような事柄からいたしまして、紛争の内容裁判所の公権的な機能というものを期待しておる。それで家庭裁判所の夫婦間の調整に関するいろいろ科学的な調査をして、婚姻関係の問題について事件を取り扱っているというふうな、全体の法のたてまえからいたしまして、調停でやるべきもので、裁判所の和解は許されないのじゃなかろうかというふうな考え方であろうかと思います。
  80. 川島一郎

    川島(一)政府委員 通達の点は、よく調べて、後ほど御回答いたしたいと思います。  それから、和解ができるかどうかという点につきましては、私考えますのに、処分権のないものがそもそも人訴の訴訟物になっておりますので、和解はできないのではなかろうか、結論的には、裁判所の言われたことと同じように考えております。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこでぼくはわからないのは、和解と調停との関係の問題だと思うのです。和解が——和解といったっていろいろ内容が、まあ離婚とか養子離縁とかあるけれども、そういうことではなくてですよ、裁判所の和解ができなくて、それが調停でできるという理屈、その理屈を理論的に説明すると一体どこに求められるのだろうか。問題わかりますか、そこにやはり調停の本質というものが出てき、和解の本質というものが出てこなければならないわけですよね。そこがわからないからお聞きをするわけなのですがね。だから、調停と和解とは一体どう違うのかということに一般論としてなってくるかなってこないかは、この問題の例が特殊ですから、ちょっと疑問があるところだと思いますけれども、これはどうなんでしょうかね。
  82. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 裁判所における手続過程で、当事者が合意をすることによって、その合意に何らかの法的効果を与えるという立場から見れば、和解と調停とは似たようなものであろうか、こういうふうに思うわけでありますが、調停の場合、ことに家事調停の場合には、先ほど申し上げましたような裁判所が公権的な機能を果たすというふうな意味で特殊の配慮をしておる。ですから、和解という双方の合意を求めるにしても、調停手続で先ほど申しましたようないろいろな理念、公権的な機能が円満に発揮されるその手続で取り扱うべきだ、こういうことになっているのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 裁判所の和解であっても、それは公権的な機能というかどうかは別として、裁判官はこの和解が公序良俗に反するとか反しないとか、妥当であるとか妥当でないとか内容考えて、そして和解を進めて、和解が成立をするわけですから、それなら公権的な機能と名前はいうかいわないかは別として、同じことじゃないですか。だから和解でできなくて調停でできるところの理由づけ、理論づけというのがどこかになければならないわけですよ。どこにあるのですか。根本問題じゃないですか。ぼくはどうもわからぬ。おかしいと思うんだな。ぼくのあげた例はちょっとおかしいのですよ、いいですか、きわめて例外的なことをあげているのですから、そのことで言っちゃおかしい。一般的なこととして言わなくちゃいかぬと思うのですけれども、ちょっとわかりませんね。それはあとで若い方に研究してもらいましょう、最高裁にも法務省にも一ぱいおられるのだから、研究してください。これは案外答えは簡単なんですよね。ただ、答弁のしかたがあれですからね。  もう一つたとえば平賀健太さんね、前の法務省民事局長をやって、いまは高裁の裁判長をやっている人です。民事部何部だか忘れましたが、裁判長をやってますね。あの人の書いたものを見ると、古いあれですけれども、人事訴訟法という手続、やめちゃえと言っていますね。やめちゃって家事審判、家事調停手続で全部やったらいいじゃないか。大ざっぱに言いますとこういう意見ですね。たくさん書いてありますけれども、何だか一ぱい書いてあってよくわからないのですが、結論はそういう結論のようですね。人訴というものがはたして現在の段階で、それじゃ和解もできない、当事者に処分権がないから和解もできないのだというのでしょう。密行性もないわけだ。公開しなくちゃいかぬ、こういうならば人事訴訟法というのはやめちゃって、家事審判、家事調停法に全部回したらいいのじゃないかという考え方が出てくると思うのですが、これについては最高裁としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  84. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 御指摘の平賀判事の論文は二十年近く前に出されたものでありまして、当時私も拝読したのでありますが、いろいろ申されておる中に、同じ人事訴訟事件と申しましても、たとえば婚姻の無効であるとかあるいは離婚の無効、縁組の無効あるいは離縁の無効といったものと、それから離婚と離縁とは多少ニュアンスが違ったような受け取り方を私しておりましたが、離婚、離縁について非訟的な手続でやったほうがいいじゃないかという御趣旨は、十分尊重に値するものだとは思いますが、なかなかむずかしい問題が理論の上でもなおあろうかと思いますし、十分検討してみなければ、いまの段階で人訴を廃止したほうがいいというような、きわめて大胆な意見に、にわかに賛成していいというふうには言えないのではなかろうかという気がしております。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私もそう思うのですけれども、ただ人訴の場合はほとんど、離婚の事件とそれから婚姻の無効の取り消しが多少ある程度ですか、その程度ですね。それはそれとして、そこで法案の問題に移らないと悪いから移ります。  調停が、現実に委員会というものが組織される。そうすると、各裁判所で非常にやり方が違いますね。ということは、まじめなというとおかしいけれども、非常にきちんとした裁判官の方は第一回の会合に出てこられますね、調停委員会に。出てきて調停委員と相談をして、そしてどういうような問題点がある、ということは調停申し立て書というのは率直にいって、非常に荒っぽいというか、たくさんいろいろなことが書いてある場合もあるのと、それから意識的に簡単にしているのとありますから、わかりにくいところが確かにあると思うのですが、問題点がどこにあるかということをやって、それから代理人がいる場合には代理人に出てもらって、それで進め方を相談をしてやる人もありますね。それからそのほかはもちろん出てこない。もちろんといってはおかしいけれども、出てこない。だけどその結果については一々調停委員裁判官の部屋に来てもらって、どういうふうに調停が進んでいるかということを説明してもらって、そして今後どういうふうに進めるかということを相談を受けている裁判官もおられますね。それは一番いい裁判官——いい裁判官といっては悪いけれども、一生懸命やっておられる方、そうでない方は全く出てこないですね。全く出てこないで、最後のときにちょっと出てくる。しかもそれも書記官の書いた調書を見て、ああこのとおりですか、よかったですね、けっこうでしたねなんという程度で終わっちゃう人もいるわけですよ、極端から極端で。そこで問題となってくるのは、裁判官調停に初めから終わりまで全部出ていなくてもいいと思いますけれどもね、かえって出ていくことによって緊張してしゃべれない場合もあるし、と思うのですが、一番当事者が不満に思うのは、家庭裁判所に呼ばれた、あるいは簡易裁判所調停で呼ばれた。行ってみた。裁判官ちっとも出てこないんですね。裁判官出てこないで、あれでいいのですかということをよく言うのですが、裁判官が忙しければ、それにかわるべき調停をやる人、裁判官に準ずるような人を養成するという行き方をとられないものだろうかどうか。だから家庭裁判所では調査官がおられる。これは法律よりむしろ心理学や社会学をやった人が多いんですけれども、調査官にその調停の主任官みたいなものというか、何というか、それを代行してやってもらうなりあるいは資格を与えて、これは何というのですか、レフェリーシステムというのですか何か前ちょっとあったようですが、そういう形をとれないものかどうか。この辺は当然、ことに家事審判の場合には考えられているのじゃないか。  それから民事の場合には、調停の場合に調停専門の裁判官を、これは簡易裁判所裁判官であっていいと思うのですけれども調停専門の裁判官を一つの裁判所に置くというような形を通じて、とにかく裁判官が出てきてほしいというのが国民の要望なわけですから、そこら辺についての考え方が当然あってしかるべきだ、こう思うのですが、そこら辺はどうでしょうかね、家裁とそれから民事のほうと。
  86. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 ただいまの稲葉委員のお話、まことにもっともでございまして、調停に対する先ほど申し上げました批判の中にも、裁判官が全く出てこないではないか、最終段階で初めて顔を出す、これでは困る。やはり少なくとも第一回の期日には出てきて、当事者双方の言い分を聞いた上で、争点及び解決の方向について調停委員とも十分協議をした上で、その後の進行をはかるべきではないか。また一回ごとに期日が終わった段階で、少なくとも調停委員からその日の状況等を伺った上で、今後の方針等を相談すべきではないか。こういう批判が強く出てまいったわけでございまして、今度の臨調審におきましても、その点が大きな問題点として指摘されまして、今後私どもとしては運用の方向としてはそういう方向にできるだけ持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  あとの問題でございますが、レフェリーの制度もしくは調停専門裁判官の問題、これに関連しまして、やはり臨調審においても若干議論されたわけでございますけれども、こういう制度を設けるということになりますと、やはり調停制度の根幹にかかわってくる問題であり、現在の段階では民間人である調停委員主体とした調停活動という点を重視をしていきたいということで、少なくともそれが基本ではないかということで、結局検討事項の程度にとどまったわけでございます。
  87. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 稲葉先生の御指摘では、家庭裁判所の審判官が調停を十分把握できないような状況のもとでは、たとえていえば家庭裁判所調査官にこれをかわらしめるような方策を講じてはいかがかというふうなことでございましたが、私どもとしましては、家庭裁判所における家事調停では家事審判官が十分その調停の実情を把握するように配慮するのがまず第一義であろうかと思っております。そして調査官は、先生御承知のように社会学とか心理学とかいったような専門的な知識、素養を持っておりまして、当事者の間の心理的な葛藤などを把握するような調査をしておりますので、その活用によって調停委員会における調停がスムーズに運ぶような方向に持っていくような補助的な仕事をする、それが調査官の本来の職務だと思っておりますので、今後その方向を一そう進めましてそういうふうに持っていきたい、こういうふうに考えております。
  88. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま西村さんが言われた、できるだけそういう方向にしたいと言ったところで、では具体的にどういうふうにしたらできるだけ裁判官調停に出てこられるようにするかということになってくると、それが問題でしょう。ただできるだけすると言ったって、なかなか無理ですよね。それは、そんなことを言っては悪いけれども、特例というか、十年たった裁判官といってもなかなか数も無理でしょうしするから、それ専門の裁判官とかいうようなものを養成するというような形のことを考えなければ、いまのままでは裁判官不在の調停がずっと続くわけですよね。これは問題じゃないか、だからやはり新しい開拓ということが必要ではないかというふうに考えるわけですが、これはまたあとであれします。  そこで資料として、これはこの中に出ているのかどうかわかりませんが、ちょっと出てないようにも思うのですが、この日当と手当の関係で、ほかのいろんな官公庁あるいは国会とかその他で日当を払っておる例があるわけでしょう。その日当は一体幾らぐらい払っているのか、そこら辺の資料は——この法務省からもらった資料の中には調停委員のあれはありますけれども、ほかのいろんなものの日当のは何かないように思うのです。これは率直に言うと、日当として六千五百円以上払っているところもあるのじゃないですか。それはあるかもわかりませんけれども、日当として各官公庁だとかその他の何かで幾らぐらいのものを払っているのかという一つの表があるのですか。あれば出してもらいたい。それからそれの法律的な根拠を明らかにしてもらいたいし、それから手当として出しておるのにはどういうふうなものが、幾らぐらいのものがあって、どういう法律的な根拠があって手当として出しておるのかということの何か資料があれば、きょうあればいいんですけれども、きょうなければ、この次私が質問するまでに出していただいて質問の資料にしていきたいというふうに考えるのですね。  それから調停の中でやはり問題になってくるのは、たとえば民事調停の中では境界確定の調停の問題がありますね。境界確定は非常に多いわけですけれども、これだって調停やったって、調停の効力は一体どこまであるのですか。当事者間で合意したって境界がきまるわけじゃないでしょう。それなら調停やったって意味ないのじゃないかという議論も出てきますね。どれだけ一体効力があるのですか。境界確定なんということが。いや、あれは境界確定という名前を使っているけれども所有権確認だというのなら、これはまた話は別かもわかりません。境界確定と所有権確認はごちゃごちゃになっておりますから、あるかもわかりません。  それから地代、家賃の増額問題、借地法十二条の問題でしょう。これなどは裁判所の扱いはほんとうに区々ですね。区々というか、ほとんど理論的なあれもなしに、ただ足して割ったような関係でやっている。鑑定人に命じて、鑑定の結果で一割引きか二割引きでやったりなんかしているんでしょう、調停なんかでも。それで適当にやっちゃっているわけだ。案分しているんでしょう。では今後新しい調停制度ができたら、具体的に地代や家賃の増額の問題あるいは境界の問題、どうやってやるのか。地代の場合なんか三つの鑑定方法がありますね。それを一つの方法ばかりとってやっているわけですけれども、これなんかに対する理解のしかただって全く違うわけですから、これはあとで建設省と自治省を呼んでやらないといけないと思うのですが、借地法十二条の調停のやり方の問題。  それから交通事故の調停の問題、これはいま非常に混乱しているわけでしょう。たとえばホフマンをとるのかライプニッツをとるのかということでほんとうに混乱しているわけでしょう。いままでホフマンでやってきたものが、東京地裁がライプニッツに変えてきたから今度ライプニッツになっちゃった。そうすると逸失利益が非常に少なく出てくるわけですよ。前のほう、古いほうの人はうんともらっていて、今度ライプニッツになると逸失利益が減っちゃうわけだ。そういうことで、一体どっちをとるのかということは、みんなばらばら、ばらばらやっているわけでしょう。そういう点なんか、調停なんかどうしたらいいのかということについて、それはもちろん一種の裁判だからこういうふうにやれということのあれはできないにしても、ここら辺を現実はどうなっているのか、それを一体どうやったらいいのか、こういうことをもっと関心を持ってやっていかなければいけないのじゃないかというふうに思いますし、それから調停委員を、いままでの任命についてもう各裁判所調停委員の候補者を去年ごろから三分の一減らしているでしょう。通達を出しているでしょう。——通達は出さないかもわからないけれども、通達を出すと資料になってまたあぶないから電話でやったのかもしれませんが、このごろ電話がはやるから電話でやったのかもしれませんけれども、三分の一どんどん削っていますね。削って何か金杯——金杯は金がかかるからだめか。木杯か何か知らないけれども、たいしたものでないものを、長年お世話になりましたなんといって何かみんなに配っているのじゃないですか。各裁判所でもすでに整理しているでしょう。各裁判所でどの程度やっているのですか。どういう根拠でそれをやっているのか、それはわかっていますか。わかっていればいま言ってもいいし、いまでなくてもこの次でもいいのですけれども、大体三分の一削っているでしょう。どういうふうにやったのですか。
  89. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 いろいろな問題が提出されたのですけれども、最後の調停委員の数の問題でございますけれども、これは調停制度改善というのは審議会でもちろん議論も一方で続けておったわけでございますけれども裁判所としてできる範囲で調停運用改善措置をとっていきたいということで進めてまいった方策の一環でございますが、たとえば交通事故調停についての事件の受理の手続を簡易化して当事者の便宜をはかるというのも一つの方法でございますが、また調停委員について適宜新陳代謝をはかっていただくというのも一つの運用改善の問題でございます。それで、各庁ともそれぞれの実情に応じまして従前から新陳代謝のための努力をしてまいったわけでございまして、昨年特に人員整理をするという趣旨でやったわけではございません。いままでの方針をそのまま受け継いだものでございますが、ただ各地でそれぞれが一つの基準を立てましてその方向での改善策をとってまいったわけでございますが、そのために各地地家裁でそれぞれの運用の基準がまちまちである、そういうことから調停委員の側からもまた裁判所の側からも不満なりあるいは運用のむずかしさというようなことの訴えがございまして、昨年何とか最高裁のほうである程度の統一基準をきめてもらえないだろうか、そうすれば運用がしやすいのではないかという希望が強く出てまいりましたものでございますので、私どもとしては行政指導としての一つの指針といたしまして、数年間全く調停事件を担当されない全く肩書きだけの調停委員候補者の方々あるいは非常に年齢が高くなっておって御無理をお願いするのが非常にお気の毒であるような方々にはこの際御勇退願ったらどうだろうかということで一つの基準を示したわけでございます。それに従ってある程度御勇退を願ったという、その結果、人員数としては多小減ってまいりましたけれども、その後各庁ともまたそれぞれ新人を発掘いたしまして調停委員の仕事をお願いするようにいたしておるというのが現在の状況でございます。
  90. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは時間の関係もあって質問はこれで終わりますけれども、いま言ったのは、大体三分の一程度現実にはやめてもらっているのじゃないですか。それをあとで調べてごらんなさい。全国のやつ、わかればいいけれども、全国のあれを調べるというのも何だということになれば、東京高裁管内だけでも調べてごらんなさい。たしか三分の一はやめているはずじゃないですか。それと、そうすると残った人に今度も調停委員を頼むということになるのですか。残っている人の中からも今度調停委員をやめてもらう人が出てくるのですか。そこはどういうふうになるのですか。それを答えていただいて、それから資料の点、あと何か根拠を出していただくものがあれば出していただくようにして、あるのかないのか、どうするのか。それできょうは質問を終わりまして、この次にまたいたします。
  91. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 調停委員候補者の数は、昨年度は約二万九千名でございましたが、本年二月一日現在の段階におきまして約二万五千名ですから、約四千名減ったことになります。その後多少新しく候補者になられた方もありますので、正確な数字は別として、二万五千名が現在のおおむねの数字でございます。残られた方は、大部分の方は新しい任用資格のもとにおきましても適任者であられると思いますので、大部分の方はお残りになるのではないかというふうに考えております。
  92. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいま御要求の資料につきましては、ただいま手元にございませんので、早急に作成して御提出申し上げます。ただ、日当の額で非常に多額のものというお話でございましたけれども、先ほどから申し上げておりますように、公務員として受ける日当につきましては多額のものはございません。先日参考人のお話のときに、国会における参考人の日当の問題が出されましたけれども、確かに御指摘のとおり相当多額の日当が出ておりますが、証人、参考人の場合はいわゆる公務員の日当というふうに私ども考えておりませんので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
  93. 小平久雄

    小平委員長 稲葉委員要求の資料はできるだけ詳細に出してください。  次回は、来たる二十六日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時十二分散会