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1974-03-20 第72回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十日(水曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 谷川 和穗君    理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    塩谷 一夫君       野呂 恭一君  早稻田柳右エ門君       日野 吉夫君    山本 幸一君       正森 成二君    沖本 泰幸君       安里積千代君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君  委員外出席者         法務省入国管理         局次長     竹村 照雄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   安里積千代君     佐々木良作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件並びに法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。本日、最高裁判所矢口人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決定いたしました。      ————◇—————
  4. 小平久雄

    小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間の関係もあるものですから、最初アメリカで一九六六年に改正されて行なわれておるいわゆるクラスアクションの問題です。これは、実は日本でも非常に新しい問題ですし、主としてこれは京都大学の谷口さんあるいは東京大学の竹内さん、新堂さんたちなど商法学者民法学者訴訟法学者もちょっと入っておられるようですが、いろいろ研究をされておられるようですが、私もよくわからない点がたくさんあるものですから、ひとつこのクラスアクションというものがどういうふうなものなのかということを最初お話を願って、それからそれに関連しての質問で、大体順序としては現在の訴訟法との関係でどういう点が問題になるかという点、これが第二です。第三は、日本への導入考えられるかどうかということ、考えられるとすればどういうふうな現在の法体系との関連考えられるかというような点、こういう点、第一、第二、第三になると思うのですけれども、一応第一の点からお話を願いたいというふうに考えるわけです。
  6. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まず、クラスアクションとはどういうものかということでございますが、これは先生御承知のように、日本では団体訴訟とかあるいは集団訴訟などと訳されておりまして、たとえばある会社のある種類欠陥商品を買わされた消費者の全体というような多数の人々、こういう消費者団体というのは団体とは言えないわけでございますが、そういう団体性のない多数の人々のためにそのうちの一部の者、一人とか数人とかいうような者が訴訟を起こしてその全員損害の賠償を求める、そういう形式の訴訟クラスアクションというふうに言っているわけでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉委員 欠陥商品の場合などもちろんありますけれども、いま問題となっておりまする、たとえばカルテルの場合に不当に価格を共同行為でつり上げた、それによって一般消費者損害をこうむった、しかし一般消費者損害は各人に考えてみるというと非常に少額だ、しかしその多数の人が集団的にやれば非常に効果がある。一人一人の権利は眠っているけれども、それを起こせば権利として非常に有効だし、同時にそれは、企業の悪と言っては語弊があるかもわかりませんが、そういうものに対する制裁的な意味も持つ、こういうふうなことになるかと思うのですが、よくわかりませんのは、たとえばアメリカでこれが実際にどの程度——六六年に訴訟法規則改正になった。それはいろいろ要件がたくさんあるわけで、四つと言う人もあるし六つと言う人もありますけれども現実アメリカにおいてはどういうふうに行なわれておるのでしょうか。そこら辺はどういうふうに把握をされておるわけですか。
  8. 川島一郎

    川島(一)政府委員 実情につきましては私も詳しくは承知しておらないわけでございますが、先ほどお話にございました一九六六年改正連邦民事訴訟規則というのは、これは連邦裁判所規則でございまして、つまりフェデラルの連邦裁判所に訴え出る場合の規制でございます。したがいまして金額とか訴訟種類によって制限というものがあるわけです。そのほかに、州の裁判所に訴える場合のやはりクラスアクションに関する規則というもの、これは州によって設けているところもあるということでございまして、私実情は承知しておらないわけでございますが、話に聞くところによりますと、たとえばカリフォルニアあたりではかなり活発に行なわれておるというような話も聞いております。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務省としては、こういうふうなことについてはあまり興味はないわけですか。興味がないというと語弊があるけれども経済界の要請で商法改正するのはたいへん熱心なんだけれども、通ったんだから楽な気持ちで答えてくださいよ。しかしこういうような消費者保護のための法律、これを開拓していくということについては、率直に言ってあまり興味を持たないわけですか。これは企画庁でも何かいろいろ計画を立てているというようなことも、新聞紙上などで聞くわけですね。こういうことについては、いままで全然といっていいくらいあまり関心を持たないのですか。これはもうすでに去年からもう少し前あたりから、学界などでは相当問題になっているのじゃないですか。もう少し関心を持っていいのじゃないかと思うわけですけれども、いまのはアメリカカリフォルニアですか、いずれにしても具体的にどういうふうに行なわれているかということをもう少し研究する必要があるのじゃないかと思うのです。日本選定当事者制度がありますけれども、あれはほとんどといっていいくらい利用されていないのじゃないですか。これは、多数の当事者の場合でも代理人がつけば特に選定当事者制度は必要ないということも考えられるでしょうが、あまり利用されてないようにも思うのですけれども日本選定当事者制度とはどういうふうに違うのかというところを、あるいはその他の日本訴訟制度共同訴訟なんかありますわね、そういうのとどういうふうに違うのか、御説明を願いたいと思います。
  10. 川島一郎

    川島(一)政府委員 いまの点お答えする前に、法務省として関心は持たないのかという点について一言お答えしておきたいと思いますが、私どもといたしましても、これは非常に注目される制度であるし関心を持たざるを得ないわけでございます。ただ大陸では全く行なわれていないし、イギリスでも行なわれていない、アメリカで最近非常に盛んになってきた制度でございますので、まだこれについて資料を集めるといたしましても必ずしも十分そろっておるわけではございません。しかし、いろいろやらなければならない問題もございますけれども、これも非常に今後検討しなければならない重要な問題であるということは考えております。  それから共同訴訟なり集団訴訟、このクラスアクション、どういう点が違うかというお尋ねでございますが、一番違いますのは、代表者が出るという点では選定当事者制度と似ておるわけですけれども、その代表者によって代表される人々クラスアクションの場合はクラスに属する人々ということになりますが、その人たちからの訴訟をすることについての委任を受けているかどうかという点が大きな違いでございまして、選定当事者の場合はすべての者が当事者となることを自分から欲してそして当事者となって、しかも代表者を選定するというのに対しまして、クラスアクションの場合には代表するという者が名のり出ましてそうして訴訟を行なうわけでございまして、代表されるその多数の人々から訴訟をすることについての直接の委任を受けていない、その点が違うわけでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで委任を受けてない人に対してどうやって通知するかとか、新聞なんかで通知する場合もアメリカなんかであるようですね。それから判決効力が、勝った場合はいいけれども負けた場合、一体訴訟に参加しない人に対しても効力が及ぶのかとか、途中で和解してしまったときにほかの者に効力が及ぶのかとか、いろいろなむずかしい議論があるわけでしょう。あるけれども考え方によってはこれが一種の企業に対する制裁を加えるために利用されるというようなこともあるかもしれないというようなことを企業側では何か考えているようにもとれるのですね。ですからこういうふうな制度については全く導入は反対だという意見などがあるようにも聞いておるわけですね。そこで、こういう制度日本導入するとすれば一体どういう方面に影響があって、それから訴訟法の技術というかあるいは法律的な効力関係といいますか、そういうふうな関係でどういうふうに影響があるのか、これについてはどういうふうにお考えになるわけでしょうか。
  12. 川島一郎

    川島(一)政府委員 クラスアクション制度日本導入した場合に、日本訴訟法にかなり大きな異質のものを持ち込むということになることは間違いございません。御指摘のとおりであります。その場合に問題となりますのは、やはりいままで先生の御指摘のございましたような点でありまして、まとめて申し上げますと、第一には、訴訟委任を受けていない人々のために訴訟を起こすということが妥当であるかどうかという、まあ妥当でないということになればこれはクラスアクションの否定ということになりますけれども、しかしそれをどういう形で認めるかといったような点が問題になろうと思います。それにつきましては、たとえばそのクラスアクションというものを一体どういう場合に認めるか、その認める範囲の問題、あるいはその代表者を選定するについてどういう手続を考えたらいいかといったような問題がございます。  それからそれに関連いたしまして、これも先生指摘判決効力、これがクラスに属する人々全員に及んでくるということを認めざるを得ないと思いますが、それはちょうどその人たち当事者となったと同じような形で効力を認めていいのかどうかというような問題がございます。和解につきましても問題があることは御指摘のとおりで、アメリカでは裁判所の許可が必要だというようなことになっておるようでございます。それからそれに関連いたしまして、アメリカではクラスアクションを起こす代表者の資格の審査裁判所が行なうということになっておりますが、こういった点につきましても日本裁判所がこれを行なうととした場合に、いままでの裁判所としてはあまりそういった問題を扱っていないので、そこにどういった点にくふうをしなければならないかといったような問題があろうと思います。そういった技術的な問題がいろいろあるわけでございますけれども、そういった点につきましてはわれわれとしてもアメリカ実情というようなものをよく調べて、採用するとすれば日本に適した方向というものを考えていかざるを得ない、このように思うわけでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 確かにいままでの日本法律体系というか、ことに民事訴訟法との関係で非常に異質のものでありまするし、それから革命的というか何というか、ちょっと違ったものですからね、確かに問題はたくさんあると思いますが、ただ普通ならばみんながあきらめてしまうような少額権利に眠っておるのを起こしてやっていくためにはこういう方法が一番いいというか、考えられるわけですし、また企業のいろいろな違法行為とかなんとか、そういうようなものに対する一つの制裁的な意味も持つわけですからね。これは法務省においてもどこで研究するのかよくわかりませんけれども、そこまで私どもは介入しませんが、よく勉強し研究していただきたいと、こういうふうに思うわけですね。幸いといっては失礼ですけれども法務省にはよく勉強されて非常によく本を書く人がたくさんいらっしゃるわけですから、ひとつ、笑っているんじゃなくて、よく勉強していただいてまた本書いていただきたいと、こう思うのですが、そういう点でもっと今後、この問題は私の見ておる感じでは、率直に言ってなかなか困難だと思います。あまりに何か違い過ぎるもんですから困難だと思うし、特に日本の場合は大陸系法律のあれが多いですからね、それとの関係で非常にむずかしいと思いますが、よく研究をしていただきたい、こういうふうに考えます。この点について結びのお答えを願って、これはきょうはその程度にして別の問題に移りたい、こういうふうに思います。
  14. 川島一郎

    川島(一)政府委員 確かにクラスアクション制度日本訴訟法体系から見て非常に異質なものである。しかしながら反面において、現在の訴訟体系ではなかなかまかなえないような機能を果たしてくれる面がある。そういう長所も認めざるを得ないわけでございますので、ことに最近のような社会、経済情勢のもとにおいてこれが問題となってくることは当然であろうと思います。そういう意味におきまして、私どもクラスアクションにつきまして十分研究をいたしまして、今後はたして日本訴訟制度の中がどういう形で採用する余地があるかどうかといったような点につきまして検討させていただきたい、このように考えております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今度は刑事局長なり公取関係に移るわけですが、公取告発をした例の石油関係事件ですが、俗称やみカルテル事件といっておきましょうか。この事件の、告発された以後における検察庁の取り組みというか、新聞紙上などではいろいろ出ておるわけですが、実態というか、真実の関係、これは国民が大きな関心を持っておりますし、同時に捜査の問題ですから、私どもの聞くのもセーブするし、お答えもある程度セーブされるのはいたしかたない、こう思うのでありますが、ある程度公知の事実もあるようですし、その後の経過でひとつ差しつかえない範囲のことをお話をお願いしたい、かように思います。
  16. 安原美穂

    安原政府委員 御案内のとおり、二月十九日に公取から検事総長告発がありました事件は、その後直ちに検事総長から東京高検検察官に移送がなされまして、これは御案内のとおり東京高裁専属管轄に属する事件でございますので、その対応する東京高検が責任を持って処理する事件ということで東京高検に移送されたのでございますが、検察官捜査につきましては、いわゆる事物管轄土地管轄がございませんので、東京地検東京高検検事長から指揮がなされまして、現在は東京地検特別捜査部が中心となって捜査を行なっているのが現状でございます。  当初三十五人ぐらいの検事事務官陣容で、公取から告発を受け、引き継ぎを受け、差し押えをいたしました証拠物点検をいたしておりましたが、新聞に報道しておりますように、三月十二日に石連の本部その他全国六十五カ所の押収捜索を実施いたしました。押収いたしました証拠物件検討を進めるかたわら、検事の数を現在十九人にふやしまして、副検事三人、事務官四十四人、総勢大体七十人の陣容をもって証拠物点検を行ないながら、連日関係人被疑者を呼びまして取り調べを進めておりまして、その総数は延べ百三十人に及んで、鋭意捜査を続行しておるという現状でございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 押収捜索が十二日に行なわれたわけですね。これは率直にいって一般しろうと考えでは時期的におそ過ぎるのではないか、もっと早く押収捜索が行なわれてしかるべきであったのではないか、こういうのは国民の感情としてはあるというふうに私は思うわけですが、これは捜査のことですから証拠検討だし、それから令状裁判官が出さなければできないわけですから、それはそれですけれども、疑問に思いますのは、公取告発をしたわけでしょう。告発したならば、これは税法の違反の告発とは内容が違って、直ちに事件に結びつかない告発であるかもわかりませんけれども税法の場合は、告発があればほとんどその段階で大体起訴できるような段階になって告発するのが普通のように私どもは聞いたりなんかしておるわけですが、本件の場合には告発のときに相当な証拠が来ているはずですよ。証拠が来ないで告発するということはないと私は思うのです。その証拠でなおかつ足りないで、そしてずいぶん日にちがたってから押収捜索をするというのはどういうふうなわけなんだろうかということを考えるのです。告発のときの証拠はどの程度あったのかしれませんが、差しつかえなければ、どの程度証拠があったのか。それではなおかつ非常に不十分だったということになるわけですか。そこらはどういうのでしょうか。
  18. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  公取告発をなさるにつきましてはそれ相当の資料といいますか、証拠をおつかみになって認定の上で告発をなさったのでありますが、先般来申し上げておりますように、国税犯則取締法に基づく収税官吏告発の場合におきましては、その事柄が調査そのものが訴追を目的とする、犯則事件調査目的とするという意味犯罪捜査に準ずるような捜査でもございますし、その結果の告発でもございますので、十分に事前に連絡があるということから、国税庁の判断資料はまた検察官告発を相当とする資料としても判断の材料になっておるわけでありますが、公取告発の場合にはあくまでも独自に調査をなさった後の告発でもございますので、事前証拠検討をしておらないということもございますので、そういう意味で直ちに検察官として十分であったかどうかということはわからない。告発を受けてから証拠書類を見るというのが通常のプロセスであったと思うのであります。したがいまして、間延びがしておるという御批判もございましょうけれども検察庁といたしましては、告発を受けてそれこそ全身全霊を傾けて証拠品検討をやった結果、なお証拠物を差し押えする必要があるという判断で、先般の押収捜索をやったものと考えております。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはどちらに聞いたらいいのか、あれですが、公取審査部に属する人たち司法警察職務を行なうというか、その権限は与えられていないわけですね。それはどういうわけなんですか。公取というものの使命が、これはいろいろここで議論しても始まらないことですけれども、いろいろあるかと思いますが、どうして司法警察官職務を行なうということの指定や何か行なわれていないわけですか。
  20. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  公取審査官は、独禁法四十六条で、立件をいたしますと、審査官指定というのがございまして、これは各事件について指定をするわけでございます。それを審査官指定がありますと、独禁法四十六条のいわゆる立ち入り検査とかそれから証拠書類——会社に行って書類を調べる、それは立ち入り検査でございますが、あるいは報告書を出せとかいわゆる間接強制と申しますか、つまり、正当な理由なくして出さなければ罰則がかかるというようなことで、これは実質は任意捜査だと思いますが、いわゆる捜査令状をもらって立ち入るというようなことは法律上そういう権限がないわけでございます。どういうわけでそうなっているかということは、私立法当初のあれはよく存じませんけれども、おそらくそこまでのことをやらなくても、大体独禁法目的というのは、違法な行為を排除するというところにあるので、決して犯罪を摘発してこれを処罰するというところに第一義的な目的がないんじゃないか。違法な行為をやめさせるということであるから、そこまでは必要なかったんではないかというふうに、一応考えられるわけでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 公取の性格というものは、いまおっしゃったようなところにあるし、あるいは経済検察的なところにあるのか、どっちにウエートがあるのかというふうなことについては、これは本質的な議論があるし、なかなか問題があると思うのです。  そこで、いま公取審査部の人が調書をおそらくとっているんだと思うのです。どういう形の調書だか、ぼくもよくわかりませんが、これは刑事訴訟法上はどういうふうな証拠価値があるわけですか。どういうふうになっているの、これ。
  22. 安原美穂

    安原政府委員 検察官警察官以外の、一般の人のいわゆる供述調書あるいは供述録取書面という取り扱いを受けるべきものと思います。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると現実には、審査部の人がとった供述調書は、検事のところに起訴した場合の証拠として出すとき、全部とり直さなければならない、こういうことになるわけですか。
  24. 安原美穂

    安原政府委員 これは釈迦に説法のようでございますが、いわゆる伝聞証拠の法則の制限をできる限り排除する必要のある部面については、とり直さなければならぬわけでございますが、これは実際の法廷活動では、できればそういうことはしたくはない場合が多いのでございますけれども、やむを得ずそうしなければならぬ部面もあるかと思います、一般論でございますけれども
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、それじゃ率直な話、これからの捜査の中で、いまの陣容でやっていくのはなかなかたいへんだとぼくは思うし、しかも早急にやらなければならないということになってくると、これは捜査のことにわれわれが介入すべきことではありません。ですけれども、この事件については、非常に国民関心を持っておる。ぼくは、一つのポイントは、これはなかなかむずかしいことだと思うのですけれども、現在の段階で進んでいって、いわゆる被疑者とみなされる人に対しての身柄の問題がありますね。それからかりに、勾留の場合の勾留令状裁判官が出すか出さないかとか、いろいろな問題が出てくるし、それからあとかりに身柄拘束した場合、一体起訴するかどうかということなんか、なかなかむずかしいあれがあるかと思いますけれども、これはぼくは介入すべきことではありません。これは全力をあげてやっているというならば、それを信頼して、事実をしっかり明らかにして、ぴしっとした態度をとってもらいたい、こう思うわけです。  そこでこの前、二月二十七日にこれに関連をして私が聞いた中で、これは中村大臣も答えておるのは、「もし通産省行政指導というものがたとえば関係があるとすれば、それはもちろんその実態についても明確にしなければならない時期が来るだろうと思います。」具体的に大臣はこう言っているわけですが、どういうことをさして言っておるのか、あるいはどういうことについて問題というか内容になってくるのか。ここら辺のところを、これは大臣が言っていることで、局長が言っていることはあとでありますが、これはまたあとで聞きますが、大臣が言っているこの意味は、一体どういう意味なんでしょうか。ちょっと説明していただきたい、こう思います。
  26. 安原美穂

    安原政府委員 大臣が言われたことをそんたくいたしますと、「もし通産省行政指導というものがたとえば関係があるとすれば、」という関係とは何に関係があるかとすれば、それはいわゆるやみカルテルの結成について、通産省行政指導というものが関係があるとすれば、もちろんその実態を明らかにしなければならないという趣旨を申されたものと思います。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうするとあなたのその後の答えは、ぼくが聞いたんですが、それに対して「せっかくのお尋ねでございますが、なかなかデリケートな問題でございまして、」——確かにデリケートなんだけれども、「一般論から申しますれば行政指導の根拠、内容にもよることでもございますし、」云々ということを答えていますね。「捜査に直接、間接に影響することもあり得るとも考えますので、一般論としては、行政指導の根拠、内容にもよるということでひとつごかんべんを願いたいと思います。」と、こう言っているわけです。だからぼくも、もちろん事件について聞くわけじゃございません。一般論として、あるいは法律論としてというか何といいますか、きわめて国民が素朴に疑問に思って考えておるのは、一体その行政指導やみカルテルなり独禁法の三条と八条の関係等で、この行政指導なるものは——行政指導とは一体何かということがわからないのですが、あとで聞きますが、どういう影響があるかということですね。  その前に、それじゃ通産省から来ておられますから、一体その行政指導というのは何なのかということ、それから具体的にどういうことが行政指導としてこの石油関係で行なわれておるのか、このことをひとつ御説明を願いたいと思います。
  28. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えします。石油業界に対しましては石油業法がございまして、毎年度石油供給計画というのを政府はつくることになっておりますが、これは石油の需給が過不足ないように、石油業法によります石油の安定供給という観点からの計画作成でございますが、これに沿いまして、精製会社のほうから毎年度生産計画が提出をせられるわけでございます。全体の需給の適正化をはかる、こういう観点から私どもは各社の計画が、非常に過大な計画が出てくる、あるいは非常に過小な計画が出てくる。その結果集計してみますと、全体の計画がいろいろな意味で支障が生ずるというような場合には、各社に対して必要な計画の変更を勧告することができるという規定がございますが、実際問題としましては、具体的な文書によります勧告というのは従来例はございませんが、事前段階で、当該者に対しましての指導を行なうということが従来の通例でございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは生産計画についてだと思うんですが、価格の点について行政指導というのか、あるいは業界なら業界にアドバイスか指導か何か知りませんけれども、そういうようなことをするのは、現実にはどういうふうに行なわれているわけですか。いまのあなたのお話は、生産計画の点でしょう。価格の点は、どういうふうに行なわれていますか。
  30. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 従来、価格につきましては、石油業法の上では標準価格というものを決定することがございますが、これは石油業法のできました当時と現在ではかなり実情が違ってまいっておりますので、この条項を活用するというよりは、むしろ一般的な通産省設置法に基づきます指導といたしまして、最近まで行ないました事例は、御承知の灯油につきまして、昨年の十月の初めに需要期に向かって騰勢に向かっておりました灯油を押えるという意味で、業界に対しまして灯油の価格の今需要期を通じました凍結を要請をいたしました。また十二月におきましては、家庭用のLPGにつきましての末端価格を決定する。こういった等の措置を今日まで行なってまいっておりまして、その他の油種につきましては、私どもは石油価格は市場におきまして自由に形成されるべきものと考えまして、何ら行政指導を行なっていないというのが今日の状況でございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは公式的な答えとしてはそれ以外にないわけですからそういうふうに答えざるを得ないので、それ以外に答えるとたいへんなことになるからと思うのですが、それは一応おいておきましょう。  そこで、刑事局長が答えたこの行政指導の根拠、内容にもよるんだ、行政指導の根拠それから内容によって、そして何がどうなるというふうに考えたらいいですか。聞いていることは、たとえば生産制限、八条あるいはは三条との関連で、行政指導の根拠、内容によって犯罪が成立しないこともあるし成立することもある、そして成立した場合に、問題は、一般的にいえばその指導をした人たちなり何なりがどういうようなその犯罪との関係に立つかということですね。それが根拠、内容によってどういうふうに影響をしてくるわけですか。これはぼくは、一番右側のほうにいくと、それによってカルテルやっても全く違法性もなくなっちゃった、あるいは可罰性なくなっちゃったという場合も、これはなきにしもあらずかもわかりませんよ。一番左側にいくと、それによって、そのやった人たちが共犯になる場合もあるだろうし、そこら辺のところが一体どうなるんですかね。この根拠と内容によってどういうふうに違ってくるのですか。いろいろなジャンルがあるでしょう。ジャンルによって分けてひとつ説明を願いたい、こう思うわけです。
  32. 安原美穂

    安原政府委員 ごかんべん願いたい気持ちはいまも変わりはないわけでございますが、稲葉先生の御質問がその次にございまして、「行政指導の根拠、内容によって違法性を阻却する場合もあるだろうし、それから逆に、通産省当局が刑法の共犯的な立場に立つということもあり得る、ないというわけにはいかない、」と聞いておいてよいかというのに対して、「お察しのとおりでございます。」と申し上げておるわけでございまして、いまここで、まあ理屈としては考えていることはございますけれども、どういう根拠と内容のときにはどういう犯罪になり、共犯にもいろいろございます、共同正犯とか幇助とか教唆とかございますが、どういうときはどうなってということを申し上げることだけはごかんべんを願いたい。と申しますのは、もう御案内のとおり、法務省が検察運営につきまして一般的な指揮監督権を持っておりますし、したがいまして、法務省の法令解釈は検察庁に対しても一種のそれを指示するという立場にもございますので、こういう場合にはこうなるということをここで申し上げることは、おそらくは捜査に対して直接、間接の影響があるんじゃないかということをおそれるからでございます。  そこで、一般的に申しまして、さらに一歩進めて申しますならば、行政指導というものが、客観的なやみカルテル結成という行為があった場合に、そこに行政指導というのが関係して、それが誘因となりあるいは縁由となり動機となっておるといたしましても、やみカルテル行為の違法性を阻却するものではないということが一般にはいえるということを申し上げたいと思いますし、その関与のしかたによっては、共犯ということも指導担当官においてはあり得るということだけは申し上げさせていただきたいと思います。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま、ごかんべんを願いたいというか、推察を願いたいということで、よくわかるのですが、わかるということは、結局いま私が質問しあなたが答えるということが、今後の捜査に大きな影響があるというふうに私どもはとるわけですね。大きな影響というのは、その答えによって、現在被疑者なり何なり目されておる人たちが、あまり言っちゃ悪いかもわからぬけれども、防御——防御なら自由だからいいけれども、防御をこえて証拠隠滅というか、そういうふうなことをする危険性、あるとはいわないけれども、なきにしもあらずということも一般的に考えられる、回りくどいのですけれども、ということもあるからそれについてはこの程度にしてほしい、こういうふうなことでしょうか。
  34. 安原美穂

    安原政府委員 一般的にはそういう危惧があるということでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはある新聞などでこの関係の記事を見てみますと、こういう記事があるわけですよね。国家は悪をなさず、これはだれのことばですかちょっと忘れましたが、だれが言ったのか知りませんけれども、そういうふうなことばがどこかにある。そこで、一方において国家が行政指導をしておいて、国家がというか政府がというのかな、そして一方においてそれが犯罪の主体というか、あるいは何でもいいのですが、幇助でもいいけれども一応犯罪の主体になる。一方において行政指導をし、一方において犯罪の主体になるということは、国家は悪をなさずという考え方からいうとおかしいのだ、こういうふうなことがどこか一部に出ていたのですね。ありますけれども、これはぼくはとてもわからないのですけれども、こんなことはない。行政指導ということによっても、それによってもいま言ったように違法性は阻却しないから、だから国家がというか、政府がというか、あるいは担当官というか、それが法律上、ことに刑事責任を負わなければならない場合も一般論としてはあり得る、こういうことでしょう。しつこいですけれども念を押しますが……。
  36. 安原美穂

    安原政府委員 このカルテル事件につきまして、いわゆる政府見解でも行政指導によってやみカルテル結成を助長するようなことをしてはならぬということは言っておられるわけでございまして、そういう意味におきまして、この関係につきましても国家が悪をなすこと、そのカルテル、いわゆる独禁法の違反のような行為をすることを国家の名のゆえに許されるということではないはずでございます。したがいましてあくまでも、特に独禁法におきましては法律による除外ということが原則になっておる状態でございますから、法律によらざる行政指導によってカルテル結成行為がなされたときに、違法性を阻却するということはないということがいえると思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、アメリカやみカルテルの判例などを見てみますると、一番むずかしいのは、やはり共同行為現実にあったということだけではいけないわけですか。共同行為をする範囲というものが構成要件としては必要なんですか。結果としては大体共同行為がありますね。それだけでは立証としては足りないわけかな。そこをどういうふうに見ているのでしょうか。結局こういう事件についての、ことに三条の問題等についての範囲の問題ですね。法律的にどこまで範囲として必要になるかということですね。それはまた、証拠の上でどういうふうにその範囲を認めるかということは、これはぼくはまた逆に別の問題だ、こう思うのですが、二つに分けますけれども、どこまで範囲としては必要なんでしょうか。
  38. 安原美穂

    安原政府委員 やはり主観的な要件として、いわゆるアメリカ法でいうコンスピラシーといいますか、共同の認識というものは必要だと思います。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのいわゆる共同の意思というか共謀といいますか、その認定は率直な話、こういう事件では本人たちの自白を得るということがなかなかむずかしいですね。ですから、状況証拠だけで足りる。これはアメリカはほとんど状況証拠で、具体的に共同行為があった、いまの共謀意思というかコンスピラシーというものがあるかないかわからぬという場合立証できないけれども、そういう行為があったということから、逆に状況証拠というかそれで意思を認定するというのをアメリカではほとんどやっているようにぼくらは聞いてはいるし、それから日本の場合でも、これは審決の場合に、合板入札の価格協定事件ですか、ちょっと古いのですが、二十四年の八月三十日の公取の審決もありますね。これでもたしかそういうふうにいっているというふうに思うのですが、その点について法務省としてはどう考えるか。あるいはそれから公取としては従来、この点は状況証拠をもって足りるというような審決の内容、それについてはどういうふうになっておるでしょうか。両方からちょっとお答え願います。
  40. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 確かに共同行為があったかないか、これは明白な、いわゆる協定行為があれば、それはそれで立証できるわけでございますが、ただ契約書とかなんとか明白な協定行為がない場合、いわゆる暗黙の意思の合致という場合、先生おっしゃいましたように、昭和二十四年の合板入札価格協定事件の審決で、「共同行為の成立には、単に行為の結果が外形上一致した事実があるだけでは未だ十分」ではない。結果だけが、たとえば同じ価格で全部上がっているということだけでは十分ではないので、「行為者間に何等かの意思の連絡が存する」ことが必要である。「意思の連絡が存する」というのを、何で立証するかという問題はございますけれども、とにかく自分がこういう価格をつければほかの人も同じ価格をつけるであろう、あるいはほかの人がこういう価格をつけるであろうから、自分もこういう価格にしようということで、価格が一致して値上げが成立するという場合には、そういう共同認識というのを立証すれば、あえて協定行為、つまり契約書というようなものがなくても、これは公取としては独禁法違反としては成立する。つまり暗黙の意思の合致もそれが何らかの形で立証できれば、独禁法違反としては成立するというふうに考えておるわけでございます。
  41. 安原美穂

    安原政府委員 立証すべき対象といたしましては、いま公取吉田局長が言われたようなことでございますし、何も自白がなければ立証はできないということではないと思います。検察の方向といたしましても、自白を中心にしないで間接証拠によって事実認定を勇敢にやっていくという方向に向かうべきことも、検察一般の方針でもございますので、そういうことでございますから、供述がなければあるいは協定書がなければ立証ができないというふうに、窮屈には考えておりません。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ちょっと早いですけれどもこれで終わりますが、いまの公取吉田さんの二十四年八月三十日の審決についての理解のしかたと私の理解のしかた、それから書物などで出ておる理解のしかたとちょっと違うように思うのですが、それはそれとしてあとのことに、別の機会にいたしますけれども、いずれにいたしましても、公取に課された使命も大きいですし、私はいろいろなあれがくると思うのです。この前も、何かいつか申し上げたのですけれども独禁法改正で価格引き下げ権の問題とか企業の分割ですか、いろいろな問題がありますね。ぼくは率直に言って、これはとても財界の抵抗がものすごいし、第一自民党の中でとても抵抗が強くて、なかなかたいへんなことだと思うのですね。思いますけれども、それはしっかりやってもらいたいと思いますし、それから法務省というか検察庁にこの事件告発されて、国民が注視しているわけですから、これは厳正にしかもなかなかむずかしいですけれども、早急にある程度のぴしっとした結論を出すように心がけてほしいということを私は申し上げて、その点については前からお答えがありましたからお答えはけっこうでありますが、法務省からだけでもまとめの答えをしてもらって私の質問を終わります。
  43. 安原美穂

    安原政府委員 たびたび申し上げておりますように、告発を受けた以上、検察庁といたしましては全力をあげて糾明に努力いたしておるのでございまして、われわれはそれに全幅の期待を持っておるものでございます。
  44. 小平久雄

    小平委員長 青柳盛雄君。
  45. 青柳盛雄

    ○青柳委員 きょうは最高裁判所法務省とに、それぞれ一つの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、最高裁判所のほうにお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、本国会で裁判所職員の定員を増加する問題について審議が行なわれました際に、ことしの司法修習生卒業者の中から、裁判官希望の者を採用することについてどのような状況であるかということをお聞きいたしましたけれども、その後の状況の変化もありましょうから重ねてお尋ねをするわけでありますが、現在に最も接着した時期において、二十六期修習生の中から判事補に任官してもらいたいという希望を持ち続けている者の数はどのくらいでしょうか。
  46. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 今日現在におきまして九十一名でございます。
  47. 青柳盛雄

    ○青柳委員 前回お聞きいたしましたときとあまり違いはないようですが、数名の減があるようです。それはどういう理由に基づくかおわかりになりますか。
  48. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御本人から採用願いの取り下げが出てまいっておるわけでございまして、どういう理由によるものかは問いただしておりません。
  49. 青柳盛雄

    ○青柳委員 これは私のほうで調べればすぐわかることなんですけれども、その人たちに事情を聞きに行くわけにもちょっと簡単にいきませんので、推察にすぎないかもしれませんが、成績その他の関係で採用を拒否されるのではなかろうか、それよりは希望を取り下げたほうがいいという、そういう考えの方もあろうかと思います。そこで第二次試験と申しますか、もう及落をきめるための試験というのは終了したのでしょうか。
  50. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 いわゆる二回試験というものでございますが、先週の土曜日をもって終了いたしました。
  51. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこで判定が下るわけでございましょうから、いずれ九十一名の中に、俗っぽいことばで言えば落第した者がない限りは、九十一名全員について採否の審査を続けられるであろうと思いますが、それは書面による審査のほかに、口頭による考査といいますか、そういうものも行なわれるわけでしょうか。
  52. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 例年の例によりまして、今月末三日間ほどを予定いたしまして面接を行なう予定でございます。
  53. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その面接を担当される方々は、いま御答弁に立っておられる矢口人事局長をはじめ事務総局に属しておられる方々ではなかろうかと思うのですが、私もそういう内部の取りきめがどうなっているか、実際にどう行なわれているかということについて前にお聞きしたことがあったかもしれませんけれども、あまりづまびらかにいたしておりませんので、重ねてお尋ねいたしますが、複数の方々で三日間にわたって分担をしておやりになるのじゃなかろうかと思いますが、それはそのとおりかどうかということと、それから面接ということはただ顔つきを見るとか外観をながめるということではなくて、本人と何か会話をされる、対話をされるということを含むと思いますけれども、その場合どのような質問を発せられるのか、具体的に例示をしていただきたいと思います。
  54. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 最初の、どういうメンバーで面接をするのかという点でございます。以前にも当委員会で申し上げたことがあろうかと思いますが、現在、事務総局次長がおりますので、次長が主査になりまして、いわゆる局課長が加わりまして、数々で面接をいたすわけでございます。分担して、分けて面接するということはいたしておりません。  質問の内容でございますが、面接するのにどういう質問をするのかとおっしゃられてもちょっと困るわけでございますが、そうむずかしいことを聞くということは考えておりません。
  55. 青柳盛雄

    ○青柳委員 例示をしていただきたいと言ったわけでございまして、いままでにもおやりになっておるわけで、経験者から聞けば、いまの矢口さんからお聞きしなくても、そんなことかということも推察はつくわけでありますけれども、民間の会社の入社のための試験というか、面接というのもありますし、また他の行政官庁の場合もありましょうけれども、何か俗にいう入社試験などというふうなことばもありますように、口頭による試験のようなものが行なわれるのかどうか。つまり、具体的な質問に正確に答えられるかどうか。質問が単に家族はどうだとか健康状態はどうかというような質問ではなくて、解決を求められる、その判断力、理解力、そういうようなものをテストするような意味での問題提起ですね。だから、広い意味では試験だろうと思うのです。口述試験みたいなもの、そういうものはあるのでしょうか。
  56. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これはどういうものをしなければいけないというふうにも、そう厳格には考えておりませんが、場合によりましては法律問題を聞くこともございますし——もっとも、法律問題を聞きましても、とっさのことでございますから、正確な答え、いわゆる正しい答えといいますか、そういったものを要求するというわけでもございませんし、これは千差万別というふうにお考えいただきたいと思います。法律問題を聞きましても、即座にその場で正しい答えが出るということだけがいいということでもないようにも思えますので、そういったむずかしゅうお考えいただかないで、まあ一般的な採用面接をする、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  57. 青柳盛雄

    ○青柳委員 前に経験者から訴えられたことがあるのですけれども、非常に立て続けにむずかしい法律問題のようなものを質問されて、そして明快な答えができない、非常に自信を喪失するといいますか、まさか質問者のほうで、そんなことに答えられないようじゃ君はもう裁判官として希望したこと自体がおかしいのだというようなことを露骨に言って、もうだめなんだぞ、落第するんだというか、採用されないのだということを予測させるような態度はおとりにならなかったと思いますけれども、これでもかこれでもかというようにやられて、もうこれはみずから採用願いを撤回するか、結論は採用されないということを観念させられたというような、これはオーバーであるかどうか知りませんけれども、そんな話もありましたので、そのようなことはおそらく最近はおやりにならないと思いますけれども、いずれにしても面接によって採用されないという結果になる人も出てくるだろうと思いますし、もちろん採用される人が出るわけですが、採用される方に内示というのでしょうか、私はその正確な法的な行為意味をよくわかりませんけれども、単なる事実行為かもしれませんが、要するに内閣に提出するリストに載っけられた、したがって内閣はそれを拒否権を発動して特定の人を排除するということはまずないという、長い憲法上の慣例もありまして、最高裁として採用リストに載っけたからさよう理解せよというような告知行為事前に、つまり採用の辞令が出てから知らせるのではなくて、その以前に知らせるということが行なわれているようでありますが、これは事実かどうかということと、それからその方法はどういうふうにやっているかということと、それからなぜそういうことをやるのかということについてお尋ねをいたしたいと思います。
  58. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これまでの慣例といたしまして、採用者は、最高裁の裁判官会議でおきめいただきますと、これがいわゆる新任さるべきものとして最高裁が提出いたします名簿の登載の可否の御決定に当たるわけでございまして、そういうものがございますとそれを内閣に送付し、閣議を経て内閣において任命の発令をしていただく、こういうことになるわけでございますが、いまも申し上げたところでおわかりいただけますように、事前に名簿登載についての裁判官会議があるわけでございまして、その段階を経ますと、正確な意味ではどういうことになるかは別といたしまして、俗に申し上げればいわゆる採用内定ということになるわけでございます。したがいましてその段階で御本人に、採用が内定したということ、任地をどこにきめられた、そういうことをお知らせすることにいたしておるわけでございます。
  59. 青柳盛雄

    ○青柳委員 大体私の質問にお答えになっているように思いますけれども、ついでにお尋ねいたしますが、任地がどこになるかということは、もちろん本人の希望が前提にあろうかと思います。希望をかなえてやれない場合もあるということをも含めて、採用になった場合には希望地あるいはそれ以外のところになるかもしれないというようなことで、あらかじめ予断を抱かせる、採用になった場合には、東京であるとか大阪であるとかいうふうにまではなかなか言いにくいのじゃないかと思いますけれども、面接あるいはそれ以前の段階で、任地の希望は当然申し込み書からわかっていると思いますけれども、それに対する答えは内定を知らせるときに正確になるわけでしょうが、その点は事前に知らして——事前に知らせるといっても、理論的にもそのときでなければ内定しないわけですから事前に知らせようがないけれども、採用されるとするならばここであろうというようなことは条件つきに本人に了解させておくというようなことはないのでしょうか。
  60. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 面接は、先ほど申し上げましたように面接を担当いたします者が全員順次やるわけでございますので、その途中の段階あるいは全員の面接が終わりまして裁判官会議で御決定をいただく前の段階というところで任地がどこだとかここだとかいうようなことは、これは事柄の性質上ちょっと申し上げにくいわけでございます。したがいまして、勢い御本人の希望は承りますけれども、何しろ多数のことであり、また人員配置の関係もございますので、なかなか希望どおりにもいきかねるという点がございます。したがいまして、結局裁判官会議で御決定をいただきました後の段階においてできるだけ早くお知らせするということをこれまでいたしてきておりますし、どうもそれ以外に方法がないのではなかろうかというふうに考えております。
  61. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこで、事前に内定を知らせるということの意味も、赴任の関係もあろうから辞令が出たときには直ちに任地におもむけるような準備をさせる、そういう含みもあるかと私は思うのです。したがって辞令の出る直前、つまり内閣の閣議で採用がきめられる直前になって知らせるということは、私の言ったような意味での準備を十分にさせるという点からいって当を得ていないのではないかと考えますが、その点はいかがでしょうか。
  62. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 確かに御指摘のとおりの面がございます。できるだけ早く——東京を希望しておる方がありましても、希望どおりいくならばいいかもしれませんが、希望どおりいかないような場合には、先にお知らせできればいいわけでございますが、御承知のように裁判官は最高裁で任命するということではございません。閣議の任命でございます。内閣の任命でございますので、その辺のかね合い等を考えますと、やはり名簿確定の段階において事実上お知らせするということ以外にちょっとやりようがないのではなかろうかというふうに考えております。
  63. 青柳盛雄

    ○青柳委員 理屈はそのとおりだと思います。それで、大体裁判官を新しく修習生から採用する場合に行なわれる閣議、これは大体四月の十日を過ぎて最も近い時期の閣議に上程されるような習慣のようであります。そして最高裁判所裁判官会議で名簿に登載することを決定することがきめられるのは、大体三月の下旬の水曜日の定例の裁判官会議、ことしでいうならば、三月二十七日の会議あたりがそういうことになるのですけれども、私の得た情報では、二十七、八日ごろは先ほど言われた面接をおやりになる。ですから、まだちょっと裁判官会議にかけることは困難で、結局は四月三日の水曜日の裁判官会議ということになろうかと思うのですが、その点の見通しはいかがでしょうか。
  64. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御指摘のように三月の二十七日から二十九日までに採用の面接をすることを予定いたしております。したがいまして、そのあとにならざるを得ないわけでございますが、二回試験と申しますか修習終了の認定のための合否判定委員会を開催していただかなければなりませんし、そういうことを考えますと、ちょっと四月の上旬、ただいま青柳委員指摘の上旬のどの辺で裁判官会議をお願いするか、その点につきましては現在のところまだ最終的な確定をいたしておりません。
  65. 青柳盛雄

    ○青柳委員 将来のことですから予定が立たないといわれればそれまでですけれども、いわゆるその筋から得た感触というのでしょうか、当局の方からのお話では、三月の水曜日の定例のほかに五日も最高裁の裁判官会議がある。そうすると三日だろうか五日だろうかというようなことが大体関心の的になっているようです。そこで十日過ぎの閣議ということになれば、十一日か十二日か、ちょっと閣議の定例はよく知りませんけれども、その辺のところへいく。そこで四月の第一週ですね、三月三十一日から始まる週のうちに希望者に返事というか先ほどから問題になっている通知をする可能性はいまのところ何とも言えないでしょうか。
  66. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 どうも裁判官会議をお願いする日が確定しておりませんのでちょっと正確には申し上げかねますが、裁判官会議でおきめいただきますれば、その日のうちに電報等でできるだけ早くお知らせするということをいたしたいと考えております。
  67. 青柳盛雄

    ○青柳委員 従来の慣例からくれば当然そういうことだろうと思います。したがって裁判官会議がいつ開かれたというようなことは公表はしないでしょうけれども新聞等でわかりますので、ことしの希望者は全部採用されたとか、あるいはされない人間が出たとかいうようなことはその時期になっていち早くわかると思いますが、前回お尋ねしたときに採用の定員は百人くらいまでは余裕があるというお話がありましたので、九十一人ならばその範囲内ですから、全員適任者であれば採用されることになるのではないかということを私どもは期待しているのですが、ここ数年来新任希望者で採用をされなかったという方が十四、五名あるようでございます。もっとも、その後、翌年になって採用されたという例もあるようでありますが、いずれにしてもたまたまその採用されなかった人の中に青法協の会員が多数を占めておったというようなことから、やはり思想、信条あるいは特定団体に加入しているという事実が採用拒否の主たる理由になっているのではなかろうかという疑問を持たれて、最高裁は正しいことをやっておらぬというようなこと、そして採用すべきであるという要求を貫徹しようというような運動も続けられてきた例もありますが、ことしもそういう点を懸念している人たちはないわけではないのです。そういうことはしないということを修習生の代表が言質をとるというか、そういうことにこたえてもらいたいというようなことを言っても、書面を出しても受け付けられないとか、それに回答する限りではないというようなことで、ちょっと取りつく島がなくなっているようであります。そのことはもう国会でも私どもが繰り返しお尋ねをして一定の回答をいただいているわけですが、あくまでもそういう理由で採用が拒否されるということのないように、これはそういうことで採用を拒否するということはありませんとおっしゃられたこともあるし、またそういうことは人事の問題だから答えるべき事柄ではないというようなお話も聞いたこともあるのですが、少なくとも国家行為が憲法違反であってはならないという一般論はだれでも言明できるわけですし、しなければならないし、またそれを聞いても私どもはそれだけではそれほど安心ができないという不信感もあるわけです。私どもは、いずれにしても過去の苦い経験からしてそういうことがかりそめにもないことを強く要望したいと思います。そのことだけ申し上げまして、最高裁の方々にはお帰りをいただいてもけっこうでございます。  次に、法務省にお尋ねをいたしたいと思います。  実は、三月十八日の各紙の報道によりますと、札幌の地方裁判所で在日朝鮮人の柳さんという方が国を相手に裁判を起こしておったのですが、それに勝訴されたということが載っております。時間の関係がありますし、法務省当局ではその経過はつぶさに知っておられると思いますから概略だけを申し上げますけれども、この柳さんという方は昭和八年に、現在五十四歳の方でありますからまだ青年の時代に日本にやってこられた。郷里は朝鮮の慶尚南道、南朝鮮に属しておりますが、つまり韓国というところに属している地域でございますが、そこで生まれて、日本にやってきた。そしていろいろと苦労された結果、三十四年に函館でパチンコ店を開業し、その事業にも成功され、また在日朝鮮人総連合の函館の支部の委員長という社会的地位にもついておられたそうでありますが、この方の弟さんがやはり郷里の慶尚南道のほうから昭和三十九年に日本で勉学しようとしてやってこられた。この方は高麗大学を卒業した後日本にやってこられて北海道大学教養学部研究生となり、大学院にも合格をしたのでありますが、日本に来たときの入国手続が違法であって、いわゆる密入国ということで逮捕されて、結局退去を強制されてしまった。現在は朝鮮民主主義人民共和国に行かれているようでありますが、この密入国なるものに先ほど申しました柳さんが協力をした。いわゆる幇助をしたというようなことで、略式ではありますけれども罰金五万円を受けたというのであります。これは出入国管理令の二十四条の一項四号ルという条項、それと罰則に当たるわけですね。そこでルによって法務当局は国外退去処分に付した。つまり退去強制をきめられたわけでありますが、これははなはだしく不当であるということで行政訴訟を起こして、その裁判に勝った。裁判が始まったのは昭和四十二年ごろでございますから、だいぶ長い口頭弁論を経てこういう結論になったわけであります。この判決の理由はいろいろ詳しくあるようでございまして、私どもその謄本を取り寄せることができればもっと正確なことがわかると思うのですが、要するにこの出入国管理令二十四条一項四号ルに該当することは事実だけれども、したがって退去強制事由にも当たるんだけれども、しかし長年日本に居住し、日本人妻と一緒になり、そして在日朝鮮人としての生活が安定をしているのに、その生活を奪って強制退去を命ずるということはあまりにも残酷な措置であり、正義の観念にももとり、人道にも反する、そういうことでこの退去強制処分というものは認められないということのようであります。  これは結論的には正しい判決だというふうに私個人としては考えておりますが、法務当局とすればこれに対してどういう見解を持っておられるか、お尋ねいたしたいと思います。
  68. 貞家克己

    貞家政府委員 訴訟を担当いたします訴訟部長としての態度と申しますか、考え方だけにとどめたいと思いますが、実は一昨日、御指摘のとおり札幌地裁で判決の言い渡しがございました。  そこで判決書の写しを昨日に至りまして入手することができるようになりましたので、さっそく検討を開始したところでございまして、これに対する訴訟上の態度というものはまだ決定いたしておりません。敗訴の理由につきましては、ただいま先生から仰せのありましたように法律問題も若干ございますけれども、二、三の論点については当方の主張を認められまして、ただ法務大臣の特別在留許可を与えるかいなかについての裁量権の行使について、裁量権の逸脱ないしは乱用があるというような理由で原告勝訴の判決となったわけでございます。したがいまして、法律問題とともに本件の事案の経過あるいは原告側の経歴その他の事情というような事実関係が基礎になっておりますので、ひとつ詳細にまた慎重に検討をいたしたいと考えております。ただいまそういう段階でございます。
  69. 青柳盛雄

    ○青柳委員 裁判の内容についてあまりここで論争する必要もないと思いますが、一般論がこれにからんでくるわけでありまして、在日朝鮮人六十万といわれておりますが、その約半数がいわゆる韓国籍を取得して、そして日韓協定に基づく、正確に名前を言うとなかなか長いのですが、在日韓国人の法的地位に関する協定みたいなものがあり、それを実施するにあたって出入国管理特別法、昭和四十年法律第百四十六号というのがございますが、これで韓国籍を持っている在日朝鮮人は、出入国管理令二十四条の規定にかかわりなく、退去強制をされる事由というものは四つに限られている。一つは、内乱、外患罪で禁錮以上の刑に処せられた場合。二は、国交に関する犯罪で同じく禁錮以上の刑に処せられた場合。三番目は、営利目的で麻薬類取り締まり犯罪で無期または三年以上の懲役または禁錮に処せられた場合。そして第四番目に、それ以外の一般的な犯罪である場合には無期懲役または七年以上の懲役または禁錮に処せられた場合。これだけであって、それ以外のどのような法律違反によっても退去強制はされないということになっております。したがって、いま問題となっております柳さんの場合のような二十四条一項四号ル号などというようなものはもちろん問題にならない。問題にならないという意味は、処罰されないという意味ではありません。退去強制事由にはならない。退去を求められる事由というものはきわめて厳格なものであるということがこの出入国管理特別法でわかるわけです。もちろん在日朝鮮人の方々は、一般的にいってこの程度のことであっても許せない、これはやはり在日朝鮮人に対する地位保障としては十分なものではないという考え方が強いようであります。つまり、一般外国人と違う特殊性を持っている在日朝鮮人の場合は、一般的にはほとんど本人の意思を無視して法的に日本からの追放を強制すべきでない、そういう考え方が強い。要求も強い。それは私どもよく知っておりますが、少なくとも現在の出入国管理令の規定とこの管理特別法とを比較してみれば、たいへんな違いがあるわけですね。こういう違いがあるにもかかわらず、憲法のもとでは人は法的に平等に扱われなければならぬということで、これは外国人の場合であろうと日本人であろうと全く違いはないと思うのでありますが、同じ在日朝鮮人でありながら一方は韓国籍を持っているという理由によって出入国管理令二十四条のどのような条項にもほとんど該当しない。その中で、チ、リの中のほんとうにわずかな先ほど申し上げた四つの場合だけに退去を強制される、こういうふうになっている。  法務当局では、このような不公平がそのまま通っていいのかどうか、つまり韓国籍を持っていない在日朝鮮人の方に対しては遠慮会釈なく、いま言ったような弟さんの入国を援助した、ただそれだけの事情で罰せられ、それだけの事情で四十年も日本に定着しておった生活を奪うというようなことがまかり通っていいかどうかという問題。  だからこの具体的な案件では、裁判所は非常に具体的妥当性のある判断を下したと私は先ほども申しましたけれども、それはそれとして、こういうことが今後も行政行為として行なわれていいのかどうか、これは一般論としてお尋ねをしたいと思うのです。憲法十四条の規定がある以上、最恵国待遇じゃありませんけれども、少なくとも差別待遇はしない。何か韓国籍を持っている者だけは特権として与えてやるのだ、韓国籍を持たない在日朝鮮人はもう普通の一般外国人と同じ並みに扱うのだ、そういう差別が行なわれていいのかどうなのか、この点いかがでしょう。
  70. 竹村照雄

    ○竹村説明員 一般論としてのお尋ねでございますけれども、少しく本件に即してお答えし、一般論に及びたいと思います。  本件のような事案につきまして私どもは在日朝鮮人、その中でも生活の本拠が深くわが国に根ざされている者の生活の擁護という観点で行政を行なうべきであるということは十分心得ており、念頭に置いております。しかしながら本件では、まあ兄が弟の密入国を幇助した事案とはいえ、内容的に見ますと密入国の手引きをずっと兄がやった事案でございまして、密入国ということになりますと、それはわが国の入管行政の基本に対する言うならば挑戦というような内容のものでございます。そういった観点で退去強制手続がとられた。  本件訴訟の中で非常に特徴的なことは、本件の訴訟の基本的な主張の中に、そもそも法一二六該当者については入管令の適用が全面的にないのだという基本的な主張がございまして、この点については一歩も譲らないということでございましたので、われわれもじゃ裁判によって決着をつけようということで今日に至ったわけでございます。そういった意味では、一方では在日朝鮮人の処遇の安定という要請と、入管体制の基本にかかわるような犯罪を犯した者に対する処遇をどうするかという接点で、本件は訴訟になってきたわけでございます。はたしてこれを控訴すべきかどうかという点につきましては、訟務部と十分協議いたしまして、先ほど申し上げましたような事情、さらに最近に至りましても、密入国は依然としてあとを断たない、むしろ昨年来ふえておる、そしてこれらの事実関係を調べていきますと、内外においてその手引きを行なっておるという事情もございますので、軽々に結論は下せないと存ずるのでございます。ただ、そういうことはございますけれども先生一般論として御指摘になりました在日朝鮮人というものの処遇をどうするか、韓国籍を持っておる人で永住権を持っておる、すなわち協定永住といっておりますけれども、そういった人たちの安定した地位に比べて、いまだ法一二六のままで在留しておる在日朝鮮人の地位というものは、はなはだしく違うのではないかという御指摘の点でございます。この点につきましては、法律上そういうふうな差のあることを私どもは自覚しておりますけれども実態的に見まして、その歴史的な経過や、日本に生活の本拠を置いておるというような事実関係等につきましては、基本的に同一でございますので、そういったことを十分念頭に置いて、現在行政運営を進めておる。率直に申して、私ども、現在の入管行政の基本の柱の一つに、こういった在日朝鮮人の処遇の安定ということがあり、そういった処遇をきめる場合に、やはり協定永住においてきめられておる一つの線というものは、絶えず念頭にあるということは申し上げることができると思います。
  71. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この柳さんが、密入国を何か営業的に手伝っておったというふうに聞こえるようなところがありますので、私は、事実関係を調べておりませんから、わかりませんが、少なくとも柳さんのほうからは、不法入国幇助を業とする者ならば格別、親子、夫婦、兄弟など肉親関係の場合などは除外すべきだというような主張をしておるところを見れば、パチンコ屋をやって、成功した方でありますから、まさか密入国者の手助けをして、何かそれを収入のもとにするとか、あるいはそれによってボスになるとかというような人ではなかろうと思うので、これは名誉のためにもこのことは言っておかなければなるまいと思いますが、それはそれといたしまして、いま御回答がありましたように、同じ歴史的な経過で、日本に定住しておられる朝鮮人の人々が、一方は韓国籍を取得した、他方の人は、韓国というのは、自分たちの祖国とは思えないという理由によって、あえて韓国籍をとろうとしない。これは全くその人の自由でありますから、私は、強制すべきではないと思う。ところが差別的に扱うことによって、間接的に国籍の取得の自由を奪う、あるいは制限するというようなことがかりそめにもあってはならない。どうも。韓国籍がとれる期間というものは、数年前に切れましたけれども、その切れる前後などには。相当いろいろの面で。日本の内政の面で、在日朝鮮人で韓国籍をとらなければ損だ、差別的な扱いを受けるのだからというようなことで、正しくないようなことが行なわれたように思います。また反対運動も盛んでございました。したがって、かりそめにもそういう差別待遇が行なわれないように、そして法的にもそれが保障されるようになることが一番いいわけなんで、それは一番いいのは、私個人として考えるのは、朝鮮民主主義人民共和国とわが国との国交が樹立するということであろうと思うのでありますが、それがまだ達成されない以前におきましても、在日朝鮮人の処遇というものは、合理的な理由がなしに差別されない。差別されるというのは、大体不法という意味が含まれておりますけれども、差別しないということを大前提に置いていただきたい。いまの御回答でもそういうふうに理解できたわけでありますが、本日は、法務大臣も参議院のほうに行っていまして、ちょっと大臣のお考えを聞くわけにはいきませんでしたけれども、行政当局としても、ぜひこの私がいままで申し上げたことを前向きに理解してやっていただきたいと思います。  それだけを申し上げまして、質問を終わります。
  72. 小平久雄

    小平委員長 正森成二君。
  73. 正森成二

    ○正森委員 まず、最初法務省に伺います。  検察官というのは、起訴するかどうかについての権限を独占しているわけですが、それが不十分である場合に、それを是正するために検察審査会が設けられていることは、御存じのとおりであります。この管轄は最高裁だそうでありますが、法務省の刑事局で、二十七条で起訴を相当とする議決、こういうものがどのくらいあったか。つまり検察審査会に申し立てられた件数は幾らで、それから不起訴不当ないしは起訴相当とされたものがどのぐらいで、そのうち実際に起訴されたものがどのくらいであるか。できれば、過去三年分ぐらいにさかのぼって、御回答を願いたいと思います。
  74. 安原美穂

    安原政府委員 手元に検察審査会のほうからいただいておる資料がございますが、それによりますと、昭和四十四年から四十八年までの過去五年間の数字をいただいておりますが、五年間をトータルいたしますと、いわゆる議決のあったもの、あるいは議決に至らずに審査打ち切りということで、事件が処理された既済事件の合計が一万一千二百三十八件ございまして、そのうち九百二十七件が起訴が相当である、あるいは不起訴が不当であるという件数でございまして、全体の八・二%、それから不起訴が相当である、検察官の処分どおりでよろしいというのが七千九百十二件、全体の七〇・四%、それから「その他」としまして、審査の打ち切りとか、申し立ての却下、移送というのが二千三百九十九件で、全体の二一・三%。したがいまして、重ねて申しますと、不起訴不当あるいは起訴相当の事件は全体の八・二%の九百二十七件であるということでございます。
  75. 正森成二

    ○正森委員 私の問いのうちの一つお答えになっておりませんが、その起訴相当とされたうち、実際に検察官が起訴された者はどのくらいですか。
  76. 安原美穂

    安原政府委員 いま申し上げた統計とリンクして統計報告がなされておらぬようでございまして、「起訴相当・不起訴不当事件の事後措置」の統計ということでいただいておるものがございます。これが四十四年から四十八年までの過去五年間で全部で八百四十七件ございまして、そのうちの百六十七件、いわゆる一九・七%につきましては、議決のとおり起訴をいたしました。残りの八〇・三%につきましては議決はあったがなお検察官判断のとおり起訴はしなかったということになっております。それが八〇・三%でございます。
  77. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう数字を伺ったわけですが、検察審査会で不起訴が相当でないあるいは起訴が相当であるというのが八・二%、しかもそれにそのままリンクしたものではありませんが、そのうちのわずか一九・七%、二〇%足らずしか検察官は公訴を提起していない。これはよほど自分の判断に自信を持っておるのかもしれませんけれども、そもそも起訴をされなければ裁判所はみずからの判断を下すことができない。そこで私は検察審査制度というのは検察官が公訴を独占し、起訴便宜主義を持っておるというのに対する重大な監視機関であると考えておりますが、実際にはその役を果たしているのかどうかという点について、このパーセントを見ると非常に疑わしいといわなければならない、こう思うのです。  そこで具体的なこともこれから伺っていきますが、その前に検察庁法の四条によりますと、「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、」また公益の代表者として行動するということになっておりますが、そういう心がまえに間違いがないか。いやしくも同じ検察官同士もしくは法務省内のできごとについては手心を加える、そでの下をもらうかもらわないかは別として、手心を加えるというようなことは断じてあってはならないし、また行なってはいないと思いますが、それについての御所見を承りたい。
  78. 安原美穂

    安原政府委員 おっしゃるとおりでございまして、むしろ身内のものについてはより厳正な態度でもって臨むという伝統になっております。
  79. 正森成二

    ○正森委員 その伝統はわが国の検察に対して非常にけっこうなことだと思いますが、しかし実際にはなかなかそうもいっていないのではないかというように思われるケースがあります。  そこで一つ例をあげますと、これは昭和四十七年の四月十九日の午前十時半ごろでありますが、富山県の砺波というところに法務局の支局があるようでありますが、その建物の隣、地番は砺波市広上町九の四十一で火災が起こりました。これはトナミ孵化場という当時有限会社であったとされておりますが、現在は株式会社ですが、その事務所、雑倉庫及びふ化場が全焼するということが起こりました。ところがこの原因というのは、すぐ隣に法務局の砺波支局というのがあるそうでありますが、そこでまっ昼間に木造の建物からわずか二・八メートルといわれておりますが、そういう近くで法務局の砺波の支局長の橋本慶三と総務課長の林巌というのが、事もあろうにたき火をしておって、そしてその日はフェーン現象で南の風が非常に強く吹いておって、当時消防署が火災に気をつけるようにということを街頭で警告しておるときであった。ところがそういうたき火をしたためにその火が燃え移ったというようにいわれております。ここに私は当事者から写真をいただいてまいりましたが、この写真を見ましてもこういうように——あとで見ていただいたらわかりますが、柳の木の根っこがある。その柳の木の根っこを掘りまして、そこへ法務局の古いいすだとかあるいは書だなだとか、そういうものをこわしてたき火をしておったということだそうであります。きわめて近接した場所でそういうことをやっておる。ところがこれについての処理がはなはだおもしろくなく不徹底でありまして、いまだに処理がされておらない。そして検察審査会では本年の二月一日に不起訴は不相当であるという決定をしております。ところがこれに対して言を左右にして起訴もしなければ、そのあと損害賠償についても何ら誠意ある態度を示さない。これは加害者と思われる者が法務局の役人、しかも重要な責任者であり、処分をするほうは同じ法務省内部の検察官であるということで、きわめて不明朗な印象を地元に与えております。これについてまず概略的にどういう措置がとられておるのか、どう思っておるのかについて伺いたいと思います。
  80. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、いわゆる失火事件につきましては、出火が四十七年四月十九日でございますが、その約一カ月後の五月十六日に地元の所轄警察の司法警察員から事件の送致が検察庁にございまして、一年余りかかりまして捜査の結果、嫌疑不十分ということで不起訴にいたしました。それに対しまして、本年の一月三十日に検察審査会で不起訴不相当という議決がなされましたので、検察庁ではこの議決を受けまして、四十九年二月七日に事件を再起いたしまして、現在あらためて捜査中であるというのが概況でございます。
  81. 正森成二

    ○正森委員 概略について伺いましたが、なぜこういう事件を嫌疑が不十分であるというようにしたのか。ここに写真がありますけれども、南風の非常にフェーン現象で、しかもものがかわき切っておるというときに、木造の建物の二メートルや三メートルの近くで大きなたき火をしておる。しかも、ここに写真がありますが、このたき火をしたすぐ近くから火が燃えて屋根へ吹き抜けておるという関係になっておるのです。だれが見てもこれが原因であるということはきわめてはっきりしておるのに、なぜ通常の失火事件と異なって一年もの長きにわたって不起訴というような決定になったのか。これは非常に理解に苦しむところであって、現地ではやはり法務省の中であるからこれはうやむやにされるのだろうということになっておるわけですね。あなた方はその点についてもう少しいまの概略的なお返事だけでなしに、問題点をどうつかんでいるのか、嫌疑が不十分であるとすれば、このような近くでたき火をしておったという事実があるのになぜそれが火事の原因でないと思うに至ったのか、それについてお答え願いたい。
  82. 安原美穂

    安原政府委員 現地に問いただしましたところによりますと、不起訴の理由、いわゆる嫌疑が不十分であるという理由の要旨はこういうことになっております。いろいろそのときの気象状況その他を調査いたしました結果、本件の火災の原因が飛び火であるという推定は立った。そこで飛び火として考えられるものが、当時捜査の結果二つあった。その一つは御指摘の、そしてまた警察の送致事実にあります法務局の前庭におきますたき火であり、もう一つは、現場から約七十メートル離れておりますところの深谷という人のふろ場の煙突から出た火の飛び火ではないかという二つが推定されたということになっておりまして、不起訴の理由の中にも申しておりますが、いわゆる法務局の前庭におけるたき火から飛び火したという蓋然性のほうが高いけれども、当時の測候所の技官からの供述、あるいは富山大学の深井教授からの鑑定の結果によって、後者の、深谷さんのふろ場の火の飛び火という可能性もないではないということであった。そしてそのことについて、消防署の署員が本件の火災の現場にかけつけるときに、深谷さんの家のふろ場の煙突から煙が出ており、そのそばの松の枯れ木が燃えていたという消防団員の供述もあったということも含めまして、蓋然性は法務局の前庭のたき火が高いけれども、深谷さん方からの飛び火という可能性も否定しきれないということで、いわゆる疑わしきは罰せずということで、嫌疑不十分となったという報告でございます。
  83. 正森成二

    ○正森委員 いま富山大学の深井三郎教授の鑑定的意見のこともお触れになりましたが、その教授は、蓋然性についてどういうパーセントを示しておられますか。
  84. 安原美穂

    安原政府委員 蓋然性のパーセンテージは、少なくとも報告では明らかになっておりませんが、可能性がなくはないという報告になっております。
  85. 正森成二

    ○正森委員 可能性がなくはないというのは——「ふかや」とおっしゃいましたが、実際には「ふかたに」と読むんだそうですが、深谷さんのところのふろ場の火というように思われますが、ここに四十八年七月十七日付の北日本新聞がありますが、それによると、深井三郎教授は、法務局の失火によるという可能性が九五%であるというように言うておられます。これは新聞に発表されておりますから御承知だろうと思うのです。この九五%というのも、私は必ずしも納得できませんが、かりに五%という可能性があったとしても、それは深谷家で当時ふろをわかしており、そこから火が出ているという事実があって、なおかつ五%前後の可能性があるということであります。  ところが、深谷家を調べてみますと、深谷家ではその日に不幸がありまして、翌日がお葬式だったので、当日はふろを全然たいていなかったということを主張しております。おかあさんがなくなったそうであります。そうだとすれば、その消防署員が見つけた火というものは、これは火事の現場へかけつけるのに、七十メートル以上離れたところでそういう火を見つけるということも普通はないことでありますが、かりにそれを見つけたとしても、それは深谷家のふろをたいた火ではなしに、火事がぼうぼう燃えているわけですから、しかも当時深谷家の近くまで煙がきていたという証言がありますから、逆にこのトナミ孵化場での火災現場から飛んだ火がその深谷家の木にかかっておったという可能性すら非常に蓋然性が高い。そういうことをよく調べたのかどうかということを私は伺いたいと思うのです。  当時風向きが深谷家のほうから火災現場のほうへ吹いていたのではなしに、逆に火災現場から深谷家のほうに吹いていたということは、深谷家の道を隔てた前に中学校がありますが、その中学校が、煙がくるというので避難準備をしたということが当時の新聞にも報道され、また現地で確認されていることによっても明らかであります。そうすると、一方では二メートルや三メートルの近くでぼうぼうたき火をしておった。しかも風は火災現場のほうに向いておったという事実があり、他方は七十メートルから百メートルほど離れておって、しかも風は全く逆の方向に吹いておったというときに、そんな、火事の原因であることがなくはないというようなことをいわれれば、だれか知らぬが、道でたばこを吸っておったからその人が火災を起こしたのかもしらぬ可能性はなくはないというのと全く同じなんですね。疑わしきは罰せずというけれども、それは、疑わしいものは何も罰しないということじゃなしに、ビヨンド・リーズナブル・ダウト、合理的な疑いが残る程度に証明されなければいけない、こういうことなんであって、そういう観点からいえば、本件のような事件で、一年もかかって起訴もせず、うやむやにしておるということは、その当事者が法務局の役人であり、支局長というのか支部長というのか知らないけれども、そういう立場の者であったから手心を加えておるというように考えざるを得ない。現に、その支局長というのですか、橋本慶三という人は自分の非をはっきりと認めておるのですね。それが証拠に、火事が起こってから数日たって、火事で焼けた人のところへあいさつに来まして、そして、このたびは火災について私としても十分責任を感じ、本日口頭にて富山法務局長へ辞職願いを出した、そのほかについては富山法務局に一任してあるから、今後のことについてはよく相談してくれ、こういうことを火で焼かれてしまった人のところへ言うてきておるのですね。当事者が、責任があって、十分責任を感じて口頭で辞表を出しておる。そういうことがあるのに、なぜかばいだてするのか。あなた方は、この橋本慶三という人が口頭で富山法務局長へ辞職願いを出したということを知っておりますか。口頭でですよ。
  86. 川島一郎

    川島(一)政府委員 書面は、とにかく出ておりません。それから、口頭で申し述べたかどうかは承知しておりません。
  87. 正森成二

    ○正森委員 私は当事者から聞いておりますけれども、富山法務局長へ辞職願いを出したということが確認されております。  そこで安原刑事局長に伺いたいのですが、この程度の失火事件損害額は約一千万円だそうでありますが、これは高岡の検察庁の担当だと思うのですね。検察官の名前もわかっておりますが……。これを高岡の検察庁、支部というのですか、そこだけで処理せずに、富山地方検察庁検事正が決裁をする。あるいは決裁をするにあたって、名古屋高検まで伺いを立てるなんということは、普通の失火事件では考えられないことだと思うのですけれども、普通の失火事件で、こういう事件について高検まで伺いを立てるのですか。
  88. 安原美穂

    安原政府委員 一般には、失火事件につきましてはせいぜい検事正どまりで、高検にまで相談するということは一般論でございますが、例外的なことだろうと思います。
  89. 正森成二

    ○正森委員 ところが本件については、被害者が何回もどうなったか、また民事上の損害賠償についても、刑事のほうがはっきりしないからといって、一向誠意がないということで、何回も何回も聞きに行ったら、富山の検察庁に相談せねばならぬとか名古屋の高等検察庁に相談に行かなければならないのだ、それでおくれておるのだということをいって、少しも事がはかどらないということを言うております。そうなりますと、これは明らかに普通の失火事件として扱ったのではなしに、法務局の役人が、十時や十一時というようなまっ昼間にたき火をしておって火事を起こしたということ、そのことが非常に不面目であるために、何とかこれをもみ消そうということで上のほうまでいったというように、合理的に考えれば、疑いを残さずそういう判断が出てくる。あなた方は、私は二月にも千里ニュータウンの問題について伺いましたけれども、自分たち内部のことについては非常に寛大であり、人民に対しては非常にきびしいという態度をとっておるのではありませんか。あなたは最初身内の場合には一そう厳格にやりますということがもしほんとうであるとすれば、こういう事実関係について法務局の砺波支部の支部長やあるいは総務部長、課長の責任を否定するためにはもっともっと何か責任がないという資料が出てこないといけないのじゃないか。しかも、唯一の他の原因であると考えられる深谷さんやそれを見つけたという消防署の署員に対しても、私が承知している限りでは十分な捜査が行なわれていない。そんなものを見たというのは消防署の署員だけなんですから。しかも、消防署の署員が見ていたとして、それがはたしてその日たいていだふろ場の火によるものなのか、ふろはたいていなかったのか、そんなことは翌日がお葬式だったということで通常の目じゃないから調べればすぐわかる。客がたくさん来るわけですから。それを一体捜査したのかどうか。そんなものは捜査すればわかることです。また、消防署員が火を見つけたとしても、それははたしてその家の火であったのか、火事がもうぼうぼう燃えていたからそこから飛んできた火だったのか、そんなことも調べればすぐわかるはずです。それを放置しているというのはやはり身内をかばおうという気があるからに違いない、こういうように現場では言うているのですね。それについて厳正な態度をおとりになるというお気持ちがございますか。
  90. 安原美穂

    安原政府委員 当時の主任は検事であったと思いますが、検事といたしましてはふろをわかしておったかどうかも調べて消防団員からの供述を信用したということでございましょうが、いずれにいたしましても、いま御指摘のふろ場で火をたいていだかどうかということについての捜査が検察審査会として検討するに不十分である、それから先ほど御指摘の七十メートルも離れたところから、かりにふろ場の煙突から煙が出ておったとしても、飛び火をするという可能性についての捜査も不十分であるという点から不起訴不相当という御意見、議決がなされましたので、現在検察庁では検事正以下あらためて記録を検討するとともに、主任検事を富山本庁の検事に切りかえましてあらためて再捜査をしておる段階でございまして、一般にこういう不起訴不相当の議決がありた事件は必ず再起いたしまして調べる、そして主任検事をかえる、そして検事正、次席検事が再度その記録を精査するということが一般になされておりますほかに、本件につきましてはさらに慎重を期するために名古屋高検にも報告をしておるということでもございますので、本件に関しましても厳正な態度で再捜査に臨んでおるということは御理解を願いたい、かように思います。  それから先ほども身内に甘いという御指摘でございましたが、身内にはきびしいはずでございますが、ただ、本件は嫌疑なし、嫌疑不十分ということでございますので、法律の適用自体を身内にはきびしくということにはならないので、われわれきびしいというのはむしろモラルの点において高い水準を求めるということであるということも御理解願いたいと思います。
  91. 正森成二

    ○正森委員 失火事件というのは安原刑事局長よく御承知のように時効がきわめて短い。三年しかありません。そうすると、残るところは一年であります。そこで、いま厳正な捜査をするというように言われましたから、法律に基づいて厳正な捜査をしていただきたい、こう思います。  それから念のために御指摘しておきますが、刑法の百十六条を見ますと、「火ヲ失シテ第百八条ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物ヲ焼燬シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス」こうなっているだけでなしに、第二項には「火ヲ失シテ自己ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物又ハ第百十条ニ記載シタル物ヲ焼燬シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者亦同シ」こうなっております。具体的危険説をとりましても、具体的に火事が起こったわけですね。そして焼毀しましたものは、柳の木の根っ株に自分のところにある古いいすだとかあるいは書だなだとかを持っていって穴を堀って燃やしたわけですから、これは自分の木、自分のいすやあるいは古い書だなを燃やしておるのですね。こうなりますと、これは百十六条の一項はもちろんですが、二項の点から見ても、非常ににまっ昼間からけしからぬことをしておったというように言えるのじゃないかというように思うのですね。  川島局長がおられますのでお伺いしたいのですけれども、現地では、刑事の問題が片づかないからだから損害賠償にも応じられないのだ、こう言っているようですけれども、このような場合に損害賠償をすべき法律的根拠条文としては何と何とが考えられるかをお答え願いたい。
  92. 川島一郎

    川島(一)政府委員 考えられますのは、本人の使用者である国の責任というのが考えられます。これは民法七百十五条の使用者責任ということになろうと思います。御承知のように失火ノ責任ニ関スル法律というのがございまして、重大なる過失があった場合に限って損害賠償の責任を負うということになっておりますので、その関係はございますが、先ほど申し上げましたような七百十五条というのが一つの根拠条文であります。
  93. 正森成二

    ○正森委員 いまおっしゃったように失火ノ責任ニ関スル法律と民法七百十五条ですが、そのほかに、私が調べたところでは、柳の木自体も国の所有物である、そこでたいておりましたものも自分の庁舎のいすやらあるいは古い書だなであるということになりますと、これはただにそれだけにとどまらずに、国家賠償法二条の公の営造物の設置や管理に瑕疵があった、あるいは民法の七百十七条もこれは十分参考にされなければならない、こういうように思うのですけれども、いかがですか。
  94. 川島一郎

    川島(一)政府委員 国家賠償法二条、それから民法の七百十七条の適用があるかどうかという点につきましては私まだ確信をもってお答えするわけにまいりませんが、なお検討いたしたいと思います。
  95. 正森成二

    ○正森委員 私はこの間の沖繩の爆発物事故の場合に多少調べましたけれども、国家賠償法の公の営造物というのは民法七百十七条よりも広く通説では解釈されておりまして、不動産だけでなしに動産も含むというのが判例で、判例の中には、自動車等の管理が悪かった場合にこれは公の営造物の設置、管理に瑕疵があるということで損害賠償を認めた例があります。また、法務局の訟務検事をしておられました方の著書を見ますと、ピストルだとか警察犬というようなそういうものの管理が悪い場合にも国賠法二条は適用されるべきである、こうなっております。そういたしますと、自分のところの柳の木の根っこを自分が燃やす、自分のところのいすやら書だなを持ち出してきてそれを燃やす、しかもフェーン現象で非常に危険なときにすぐ二メートル先に木造の建物がある場合に燃やすというような場合には、十分に適用の余地があると思うのですね。その場合に、私は安原刑事局長にも伺いたいのですけれども、一応鑑定で深谷家から火が出ていたとしてもなおかつ九五%は国に責任があるということになっておるときに、ともかく一〇〇%とはいかないけれどもそうなれば損害賠償をいたしましょう、損害賠償をしているというようなことも考慮してこれは起訴は不相当であるというようなのならまだ話がわかりますけれども、一方では自分に一番有利に解釈しても九五%責任があるのに起訴されていないからといって国が平然として損害賠償も何もしないというようなことになりますと、自分と同じ権力機関である検察庁に起訴がされなければ結局民事の損害賠償もしないのだというようなことになってくるわけですね。そこで、私がこういうことを聞きますのは、一つのこのことだけの問題として聞いているのではありません。いやしくも権力を持っておるものは、しかも同じ法務省の役人がそういうことをやった場合に、同じ法務省の職員である検察官が、いやしくも国民から手心を加えておるんではなかろうかと疑われるようなことは、決して法の厳正な適用のためにもなすべきでなく、姿勢をたださなければならない。特別に法律をきつく適用するということはしないでいいにしても、道義的に公平な態度で捜査をし、公平な態度で法を適用し、公平な態度で損害賠償すべきものはするということがぜひとも大切だと思うのですね。それは先ほど検察審査会での起訴相当とされるもののパーセンテージ、その中で実際に起訴されたもののパーセンテージを伺ったのは、一般的に国民の意思が起訴便宜主義においてどれだけ反映しているかということを知りたかったから聞いたわけであります。そしてその一つの典型的な、お互いの間同士でかばい合いをしているのではないかと疑われる事案について伺ったわけです。  そこで両局長に再度伺いたいと思いますが、厳正な捜査をされて、起訴すべきものであれば起訴をする。あるいは起訴、不起訴、そのことともちろん関係はしますが、場合によってはそれと必ずしもイコールに直結せずに、損害賠償すべきものは損害賠償をするという態度をとるのが至当であると思いますが、それについて両局長の答弁を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  96. 安原美穂

    安原政府委員 正森先生の御指摘のとおり、厳正な態度でもって起訴すべきものは起訴するという態度で処理されることを期待いたしております。  なお、損害賠償につきましては、直接は管理の民事局長からお答えいたします。
  97. 川島一郎

    川島(一)政府委員 事実関係が明確になり、責任の所在が明らかにされた場合にはこれは損害賠償をなすべきことは当然でございます。必ずしも起訴、不起訴の有無によるわけではございません。ただ、本件の場合におきましては事実関係がまだ必ずしも確定されていないという事情にございますので、その再捜査の結果待ちということになっておるわけでございますが、事実がはっきりいたしますれば、直ちにその責任問題についても検討を行なう、このように考えております。
  98. 正森成二

    ○正森委員 最後に両局長に確かめておきたいと思います。  刑事局長には、そういうように厳正に捜査をされて、時効ということもございますから、できるだけ早くどういう措置をとられたかについて御報告をいただきたいと思います。  それから民事局長に対しては、これは橋本慶三氏が、口頭であるにせよ辞職願いを出しておる、こういう事実が現場で確認されておるわけですね。そこで、そういう事実を確認されて、そういうように普通なら本人はなかなか責任を認めたがらないのに、本人が責任を認めておるものをなぜ慰留したのか、その点についてなお詳しく調べていただきたいと思います。それはしていただけますか。
  99. 安原美穂

    安原政府委員 御報告申し上げます。
  100. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私のほうへまいっております現地からの報告によりますと、必ずしも本人は責任を認めてはいないようでございまして、むしろ隣に家があるので注意しておった、たき火についても、あれが火災の原因として飛び火をするというようなことは自分としては納得がいかないということを言っておるように報告の上ではなっておるわけでございますが、なおそういった御指摘がありましたので、そういった事実の有無につきましてはさらに私どもとしても調査していきたい、このように考えております。
  101. 正森成二

    ○正森委員 そういうことをおっしゃるなら、私から一つ指摘しておきたいと思いますが、午前十時半といえば勤務時間であります。その勤務時間になぜたき火をしておったのか。たき火をするのは法務局の仕事なのか。明らかにサボってしておったか、法務局の仕事としてしておったか、どちらかじゃありませんか。しかも当日はフェーン現象で南風が吹いておって、万人が火事が起こったほうに風が向いておったということを認めておる。消防署が火に気をつけてくださいということを町じゅうふれ歩いておるそのときに、法務省の役人が勤務時間中に木造の建物からわずか二メートルかそこら離れたところでたき火をしておったということ、そういうことについて責任を少しも感じないのか。もってのほかじゃないか。責任は感じていつでも責任はとるけれども、まだ検察庁の措置がわかっていないから暫時保留するというのならわかるけれども、逆に居直るとは何ごとですか。  それじゃ、こう聞きましょう。それは職務としてやっておったのか、それとも職務外としてやっておったのか、どちらです。夜じゃないですよ。まっ昼間の十時半ですよ。
  102. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私どもが報告により承知しておるところによりますと、富山地方法務局の砺波支局の庭には柳の根っこが二つあったそうでございます。これが車が入ってきたような場合に非常にじゃまになるというので取り除きたいということで、職員が一つは掘り起こしましてそして根元から切ったそうでございますが、これをやるのに非常に手間がかかったということで、さらにもう一本の残っておるほうの根っこをやろうとしたところが、ちょうどその支局に来ておった人が、それはその根っこを焼いたほうが簡単にできるのだ、根っこを焼いてしまえば自然に腐れてしまうというようなことを言ったもので、それじゃやってみようということでやったということで、いわばその庁舎の敷地の管理というような意味でたき火をしたというふうに聞いておるわけでございます。そういった点から必ずしもそれが職務外の行為というのは少し酷ではないかという感じを持っておるわけでございますが、なお事情につきましては先ほどの点を含めてさらに再確認をいたしたい、このように考えております。
  103. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁を聞くと、ますます国に責任があるじゃないですか。職務として管理のために自分の木を自分のところの古いいすなんかを持ち出してきて焼いておったということになれば、職務として自分の設備の管理をしておったということになる。しかもその管理のときに、フェーン現象で南風が吹いて、町じゅう火に気をつけよと言っているときに、そんなことをおかまいなしに燃やしておったということになれば、ますます国の責任は大きいじゃないですか。しかもその場合には、そういうことになればもろに国賠法の二条が適用になって、それはある意味では因果関係さえ立証されれば、あれは無過失責任ですね、結果責任ということになるでしょう。しかも深谷というところのふろ場から火が出ておったとしても、なおかつ九五%可能性があるということになれば、これは官庁じゃなしに、まともの民間の人なら何らかの形で損害賠償をするとかいうようなことをしなければ良心の苛責に耐えかねるというような事案ですね。それを法務省の役人だったら、いや、不服であるというようなことを言う。これでは国民は納得しないですね。これは一つの例ですけれども法務省の職員というものはもっと自分自身に対して厳正でなければならぬし、同じ法務省の職員にそういう疑いがかかっている場合には、やはり科学的にできる限りの捜査をして結論を出すのが至当であるというように、ますますそういう感を深くする次第でございます。  安原局長が厳正な捜査をして報告をされるということでございますので、検察の公正な適用ということをまず期待して、質問を終わりたいと思います。
  104. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる二十二日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十分散会