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1974-03-19 第72回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十九日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 谷川 和穗君 理事 羽田野忠文君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    塩谷 一夫君     早稻田柳右エ門君    日野 吉夫君       山本 幸一君    正森 成二君       沖本 泰幸君    安里積千代君  出席政府委員         法務政務次官  高橋文五郎君         法務大臣官房司         法法制調査部長 勝見 嘉美君         法務省民事局長 川島 一郎君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君         参  考  人         (日本調停協会         連合会理事長) 横地 秋二君         参  考  人         (日本弁護士連         合会司法制度調         査会委員長)  江尻平八郎君         参  考  人         (北海道大学教         授)      小山  昇君         参  考  人         (東京家庭裁判         所調停委員)         (慶応義塾大学         教授)     人見 康子君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君 委員の異動 三月十九日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   安里積千代君     佐々木良作君     ――――――――――――― 三月十八日  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願(新井彬之君紹介)(第二八八三  号)  同(松本忠助紹介)(第二八八四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  岡山法務局中央出張所存続及び増員に関する  陳情書  (第二三九号)  地方法務局出張所存続に関する陳情書  (第二四〇  号)  金大中事件早期解決に関する陳情書外二件  (第二四一  号)  白鳥事件の再審に関する陳情書外一件  (第二四二号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出第一八号)      ――――◇―――――
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として日本調停協会連合会理事長横地秋二君、日本弁護士連合会司法制度調査会委員長江尻平八郎君、北海道大学教授小山昇君、東京家庭裁判所調停委員慶応義塾大学教授人見康子君、以上四名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の皆さまには、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。本委員会におきましては、本案について慎重な審査を行なっているのでありますが、本日参考人各位の御意見を承りますことは、本委員会審査に多大の参考になることと存じております。参考人におかれては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  それでは、まず参考人からお一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後に委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、質疑応答のときにはそのつど委員長の許可を得て御発言をお願いいたします。  それではまず横地秋二参考人からお願いいたします。
  3. 横地秋二

    横地参考人 ただいま御紹介にあずかりました財団法人日本調停協会連合会理事長をいたしております横地秋二でございます。  ただいまから、今回の民事調停法並びに家事審判法の一部改正法案につきまして、いささか申し上げたいと存じます。  今回、政府提案民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案の大綱につきましては、賛意を表するものでございます。  そもそも、わが国調停法は、御承知のとおり大正十一年に借地借家調停法が実施されましたのが始まりでございまして、自来五十余年を経過いたしました現在では、あらゆる民事紛争解決をいたし、国民生活に不可欠な制度となっております。  昭和四十七年度における最高裁判所の統計によりますと、第一審の訴訟受け付け件数十六万五千三百七十七件に対しまして、調停の新受け付け件数は十一万九千八百六件という数字になっておりまして、第一審訴訟受け付け件数の約七二・四%を処理いたしているわけでございまして、わが国司法の一翼をになう重要な役割りを果たしておる次第でございます。  これは訴訟と違いまして、調停裁判官国民各層から選ばれた良識者調停委員として関与いたしまして、法律的見地ばかりではなく、条理や健全な常識に基づきまして、当事者の互譲により実情に即した解決をはかり、手続が簡易で早く解決し、費用も低廉なことのほかに、非公開、非対審でいわゆる本人主義をとっておりますことから、わが国民性にも合致いたし、親しまれているものと存ぜられます。  ただいま申し上げましたように、国民各層から選ばれた調停委員が関与することは、いわゆる国民司法参加でございまして、また国民のためにある制度とも申されるものと考えられます。  しかしながら、戦後のわが国社会情勢の著しい変転に伴いまして、現行調停制度が必ずしも現代にそぐわないものとなりまして、再検討すべきであるとの見地から、昭和四十六年六月一日、最高裁判所臨時調停制度審議会が設置され、慎重に審議の結果、昨昭和四十八年三月二十六日最高裁判所改善施策を申されました。  日本調停協会連合会は、臨時調停制度審議会が設置されますにあたり、傘下五十五調停協会代表者をもって調停制度改善協議会を設け、この協議会全国五十五調停協会がそれぞれ会員から寄せられました改善策を取りまとめた意見について研究討議を重ね、その結論を十項目にまとめ、理事会評議員会決議を経まして、昭和四十七年九月五日付で臨時調停制度審議会建議書を提出して適切な改善方答申されますよう要請いたした次第であります。  そして、この建議事項項目のうち八項目答申に取り入れられまして、今回の民事調停法家事審判法の一部改正法案は、この臨時調停制度審議会答申に基づいて立案されたと伺っておりますが、私ども調停委員に直接重大なる関係がありますことは、調停委員に関する制度改正であります。すなわち、第一に、調停委員身分非常勤公務員とすることについてでございます。  現在は、民事調停法並びに家事審判法及び調停委員規則によりまして、地方裁判所及び家庭裁判所が毎年調停委員となるべき者を前もって選任いたし、原則として、その中から事件ごと裁判官調停委員を指定するたてまえをとっておりまして、調停委員としての身分は、取り扱い事件の指定を受けたときから終了するまでの間、非常勤国家公務員となるものと解されております。  しかし、現実には毎年選任された候補者の大多数は、少なくとも年間を通じて数件以上の調停事件を担当いたしておりまして、各事件処理期間も数カ月を要する実情でありますので、現在の調停委員も事実上年間を通じて非常勤国家公務員身分を持っておる次第でございます。  そして、裁判所選任書には昭和何年度調停委員選任するとございますし、また藍綬褒章受章あるいは最高裁判所長官高等裁判所長官等の表彰のときでも何々裁判所調停委員と呼ばれておりますこと等からも、現在の調停委員候補者制度選任と同時に調停委員とすることは実情に沿ったものと考えられます。  もっとも、調停委員職務内容を無制限に拡充いたしまして裁判所職員化した取り扱いをなすことは、国民参与調停制度本質からいたしましても避けられるべきことではないかと存ぜられます。  次に、調停委員選任についてでございますが、現在、調停委員候補者選任は各地方裁判所家庭裁判所でありますが、民事調停法第二十条によれば、当事者合意により最高裁判所あるいは高等裁判所に係属する事件調停に付することができまして、現に全国高等裁判所において調停が行なわれております実情と、人権擁護委員民生委員保護司等選任に見られるように、全国的総合施策のもとで調停委員選考や任命を行ない、常にその素質の向上をはかることから、最高裁判所が任命する今回の改正案は、適切であり合理的であると考えるものであります。  なお、調停委員選任にあたって、各種調停事件に対する適任者を得るかどうかは、調停制度発達を左右する重要問題であることは申し上げるまでもありません。  したがいまして、裁判所調停委員選任にあたって、その職務にふさわしい人材選任する選考基準を定め、それに従い広く社会各層からすぐれた人材を積極的に求めるとともに、かりにも司法の威信をそこなうことなどのないよう期すべきでありましょう。次に調停委員待遇についてでございますが、現在の調停委員は、司法に直接参与するという重大な職責を果たしているにもかかわらず、その待遇は、調停委員規則第九条、十条、十一条に定めてある旅費、日当宿泊料が支給されるだけで、まことに実費弁償制度で、その地位一般行政職の四等級相当扱いで、行政庁における困難でない職務を行なう課長補佐というきわめて低い地位にございます。  しかしながら、調停制度実施以来五十余年を経過し、社会情勢の変化とともに調停委員弁護士、医師、学者をはじめ各界の有識者で、社会的に重要な地位にある者が選任され、その素質が向上いたしました今日、調停委員日当千三百円の実費弁償制はあまりにも不合理であり、今回の改正は、当局調停委員待遇改善一端として、その身分非常勤公務員とし、一般職職員給与に関する法律第二十二条非常勤公務員に対する手当を支給する規定を準用することは、けだし当然と考えられる次第でございます。  かような制度をとられることによりまして、今後人事院の勧告により公務員給与が改定されるにしたがい、自動的に改定されるものと推定いたしておりますが、われわれ調停委員の恵まれなかった待遇改善が一歩実現したものと存じているものでございます。  ただいま申し上げました事項は、さきに申し述べましたわが日本調停協会連合会から臨時調停制度審議会に提出した建議書にも述べております事項でもあり、また、毎年十月に開催されます全国調停委員大会、あるいは各地支部大会において決議されておりますことを申し添えさしていただきます。  次には調停手続についてでございますが、今回の改正事項は、調停制度本質にかんがみまして、その諸機能の発揮に重点を置き、手続遅延化を防ぐことを考慮して立案されたものでありまして、われわれ調停実務担当者の協力と相まちまして、必ずや国民福祉増進に寄与するものと考えられます。  今回の調停法規改正法案は、調停実務に関与する私ども調停委員が、多年要望してまいりましたことにこたえる施策一端にほかならぬものでございまして、この法案が成立し、調停制度がさらに国民福祉増進に寄与し、長く発達いしずえとなるよう各位の深甚なる御配慮を切望いたしてやまない次第でございます。  一言申し上げました。失礼いたしました。
  4. 小平久雄

    小平委員長 次に江尻平八郎参考人にお願いをいたします。江尻平八郎君。
  5. 江尻平八郎

    江尻参考人 私は、日本弁護士連合会司法制度調査会委員長江尻平八郎でございます。  当法務委員会が現在審議を重ねております民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案の御審議にあたり、特に日本弁護士連合会代表して意見を申し述べる機会を与えられましたことにつき、深く感謝する次第でございます。  日弁連は、いわゆる法曹三者の中にあって、一般国民立場から発言せねばならない責任を負わされた唯一のものでございますので、司法制度改革につきましても、その責任の重くかつ大なるを自覚し、従来から積極的な努力を続けてまいりました。  司法制度改革は、日弁連を含む法曹三者の十分な協議意見の一致を見た上で着手せよという趣旨の御決議昭和四十五年の五月十三日参議院法務委員会においていただき、また衆議院法務委員会の同年四月十七日の決議も同趣旨の要望を前提といたしたものでございましたが、これらの決議は、日弁連のこうした役割りを十分に御理解いただけた結果であると考えておる次第でございます。  しかるに、この法案は、まこに遺憾なことでございまするが、これら衆議院参議院法務委員会決議趣旨が全く無視され、事前に日弁連との協議機会を持つこともなく、直ちに国会に上程されております。これは権利の救済を求めて調停手続を利用する国民立場から見ますと、調停制度がいかにあるべきかをただすことなく、官側が一方的に国会に上程したものであることを意味いたします。まずこの点を御認識いただきたいと存じます。  この点につきましては、あるいは臨時調停制度審議会において審議を行なったことを、協議と称する向きもあるかもしれませんけれども、この臨調審は、御承知のように、最高裁判所諮問機関でございまして、事の性質上そこへ参加する弁護士は、個人として参加したものでございまして、会の代表ではなく、そこでの審議日弁連との協議と同視してよいものではございません。しかも、この改正案には臨調審答申に含まれていないところの重要な改正事項、すなわち調停委員職務拡張に関する重要な部分が含まれておりますので、その点でも臨調審審議日弁連との協議と称することは許されないのでございます。このようにこの法案は、日弁連との協議を尽くさなかったばかりでなく、諮問機関答申をも一方的に踏みはずした提案がされておるのでございます。  そこで、日弁連は、この法案の中で次の三つの点につきまして強く反対いたします。  その第一点は、調停委員会の定める調停条項による調停強制一般化でございますし、第二点は、調停委員職務担当事件以外への拡張でございます。第三点は、調停委員身分の、事件を離れての非常勤公務員化でございます。  以上、三点につきまして、簡単にその理由を申し上げます。  まず、反対の第一は、調停委員会の定める調停条項一般化でございます。もともと調停制度は、御存じのように、当事者がいやだと言えば絶対に成り立たないことを前提にして、実情に即しかつ筋通を通した説得を行なうことによって、当事者納得のいく適切な解決をはかる制度でございます。  ところが改正案を見ますと、解決をあらかじめ白紙調停委員会に一任するものでございまして、しかも、出された結論がいかに不満なものであっても、これに従わなければならないのでございまして、さらに不服の申し立ても許さないというものであります。納得のいかない解決が押しつけられることは、不服のある者にとっては不公正な解決が無理やりに押しつけられるということになります。法案では「当時者間に合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合」にこの方法をとるというのでございますから、おそらくそのほとんどの場合当事者不満を残すことは見やすい道理であろうかと存じます。  国民にとって調停制度が安心し信頼して利用できるということは、調停委員会説得が十分に行なわれ、しかも、いやならば、その説得に応じなくてもよいからでございます。この法案が実現することになりますと、調停委員会は、めんどうな説得を尽くさないで強制調停でまとめてしまおうとする方向に走りがちとなります。また、いざといえば強制調停の手段があるからということで、調停委員会説得の態度が独善的になり押しつけ的になることが憂慮されるのでございます。現在でも、委員が自分だけの特殊な考えを押しつけたり、あるいは機械的に足して二で割る式の調停をなすことが多過ぎるという不満があげられています。このような不満は一そう多くなることと思われます。この方法が、同時に提案されております身分公務員化あるいは職務範囲の拡大というものに結びつけられては、その弊害はますます助長されることになると思います。その結果調停制度への信頼感がますますそこなわれるということになると考えるものでございます。  現在この制度を採用しております商事調停、それから鉱害調停では、この制度はほとんど活用されていないといわれております。このことはいかにこの制度調停になじまないものであるかを証明しているのでございまして、あえてこの制度を活用するとするならば、前のように調停制度本質をそこなう結果になるわけでございまして、この提案は、いずれを指向するとしても実現されてはならないものだと確信しております。  なお、提案者は、この制度書面による合意前提としておるものであることを強調しております。しかし、合意そのものが強制されない、あるいは常に適正に行なわれるという保障は全くありません。しかも、一度合意書面ができてしまえば、その結果に不満が残っても訂正の機会が全くないのでございますから、合意に有効なチェックを期待することは不可能でございます。これは調停ではなく仲裁であり、運用によっては公開の裁判所における裁判を受ける憲法上の権利を侵す重大な問題を含んでおるものでございます。  次に、反対する第二は、調停委員職務拡張でございます。これまた、現在の指定された事件についてしか職務を行なわないとされております調停委員担当事件以外の職務を行なわせるというものでございますから、職務そのものを根本から変えてしまうものでございます。  事件と離れての職務は、身分非常勤公務員化とともに、調停委員を常時裁判所に拘束する可能性を伴うものでございまして裁判所の説明とは逆に、そのような余裕のない者はたとえ適任者であっても調停委員となることができなくなり、調停委員の給源はますます狭まっていくことが心配されるのでございます。その結果、調停委員が特殊な身分となり、国民から次第にかけ離れた専門家あるいは官僚的存在となりましょう。また、調停制度のすぐれた特長は、国民の中から調停委員が選ばれ、委員は担当する事件を離れた時にはすなわちすぐ一国民立場にかえることにあるとされていますが、この点が実質的に失われていくことをおそれるものであります。  今回拡張される職務の第一は、「専門的な知識経験に基づく意見を述べ」るということでございます。この提案は、当事者意向にかかわりなく、裁判所もしくは調停委員会が一方的にどんどん調停委員鑑定要員として活用するということでございます。しかし、調停事件について、具体的実情を踏まえない意見専門家意見であるということで重要視され、当事者意向を押える運用がされることになりますると、それは調停のあり方を説得から強要へと変化させ、不公正な解決をもたらす一つの要因となるものでございます。  拡張される職務の第二は、「嘱託に係る紛争解決に関する事件関係人意見聴取」でございます。隔地者間の調停について、負担軽減とかあるいは手続の進行の円滑化をはかるための聴取嘱託を行なうことについては賛成でございますが、嘱託を受けた裁判所事情聴取は当然調停委員会が行なうべきであり、調停委員にまかせることは許されないものと考えます。調停委員事情聴取を行なわせた場合、聴取に際しての手続的な保障もなく、また事後的にも不正確な結果を排除する方法も全くないのでありますから、それを基礎として行なわれる調停が適当でない結論を出すことが憂慮されるのでございます。なお、調停委員は、一般国民から選ばれるものであり、事実調査専門家ではないことからしても、調停委員会を離れて調停委員に単独で行なわせるこのような提案は、実現されてはならないと信じます。  拡張される職務の第三は、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う」でございます。御提案は、調停委員職務内容の確定を一切最高裁の規則白紙で一任してしまおうとしています。すなわちこの提案では、調停委員が何をせねばならぬかは明瞭でないのであります。これでは、裁判所調停に関するいろいろの事務調停委員に処理させ、職員のように使用したとしても、そのことを防止することができません。また裁判官不足が深刻化している今日、それをカバーし、下請をさせる運用がなされたとしても、これを防ぐことができません。このことは国会審議が実質的になされないまま、どんどん調停委員職務拡張していく危険があることを意味するものであります。およそ調停委員に限らず、公務に当たる者の職務内容は、それぞれの制度において最も本質的な部分をなすものでありますので、制度を定める場合には、必ず明確に法律でその範囲を確定しておく必要のあるものであります。本法案提案は、かかる基本的な職務白紙で他へ委任しようとするものでありまして、その観点からも許されないものであると信じているものでございます。  反対する第三は、調停委員身分非常勤公務員化でございます。この公務員化につきましては、何ら積極的合理的な理由はないのでございまして、なぜにそのようなことをされねばならぬのか、理解に苦しむところでございます。この点につき待遇改善の必要がもっぱら強調されておりますが、待遇改善自体につきましては日弁連も大賛成でございます。しかし、そのためになぜ非常勤国家公務員としなければならないのかの合理的な理由は全くございません。当局は、一日六千五百円を支給するためには「日当」を「手当」に改めねばならず、そのために公務員化が必要だと説明されております。しかし、御存じのとおりこの法務委員会参考人は四時間未満の場合には六千二百円、四時間以上になると七千四百円の日当が支給されることになっております。その他財団法人日弁連交通事故相談センターでは、国家補助金日当として五千円支給することが認められております。したがいまして、現行日当制度においても調停委員待遇提案の金額に改めることは可能なので、そのような方向待遇を改善すべきだと考えておるのでございます。  なお、職務のために身分を改めるということではなく、今回のように待遇をよくするために身分を改めるという発想は、事の本末を転倒するものでございまして、とうてい納得できないことを付言したいと思います。  調停委員身分公務員化は、積極的な理由がないばかりではなく、逆に多くの弊害を伴うことが予想されます。もともと調停委員は、国民の中から選任され、利用者と同じレベルの者が職務に当たることが予定されているわけで、そのことが筋道を通した説得を十分に行ない得ることの一つ保障とされているのであります。かりに調停委員公務員となれば、利用者より優越した立場にある意識を知らず知らずのうちに身につけることは避けられません。特に、事件から離れた職務を与えられ、強制調停の力を背景にして調停に臨むとすれば、このような意識がさらに輪をかけられることは当然でございます。このような事態になりますと、現在でもいわれている押しつけ調停弊害はさらにひどくなり、調停制度本質を見失わせ、調停制度そのもの信頼をも失わせるに至るものでございます。  また現在単なる調停委員候補者にすぎない者であっても、調停委員の肩書を振り回し利用する場合があると指摘されておりますが、その弊害はさらに強くなると思われます。また委員身分公務員化されると、当然その職務事件を離れて一般化し職業化すると思われますし、その負担にたえ得る者はおのずから限定されざるを得ませんので、調停委員の給源はかえって狭められ、広く国民から調停委員適任者を求めるという態勢そのものが失われる結果となり、国民国民として裁判所の仕事に参加するという民主的な側面が失われることになります。これは調停制度の有する長所を基本的に失わせるものにほかなりません。  このような日弁連意見は、日弁連を構成する全国の各単位会の民主的な討議と意見を集約した、文字どおり、全国の在野法曹の一致した意見でございます。これに対しまして、日本調停協会連合会からも御意見がございまして、日弁連とは反対に改正案賛成されておると伺っております。しかし、日本調停協会連合会の有力な傘下組織でございます東京調停協会臨調審答申対策委員会は、慎重な検討を重ねられた結果、昨年の八月二十七日付の同協会長あてに提出された答申書に「調停委員を以て裁判所職員とし、裁判機構の一部となすが如きものであってはならぬ」ということで、この公務員化に反対されておるのでございます。そしてそれは日弁連意見と同意見でございまして、日調連の意見とは見解を異にされておるのでございます。日調連の意見が、全国調停委員意見を民主的に集約された結果であるかどうかにつきましては、深い疑問を持っておるものでございます。  最後に、日弁連調停制度が、そのすぐれた特色を発揮して充実、強化されることを心から願うものでございます。  このような観点から、この法案の中でも交通調停及び公害等調停の土地管轄の拡張につきましては、積極的に賛成でございます。また日弁連は、現在の調停制度運用にあらわれておりますもろもろの欠陥の排除、改善のためには、次の三つのことを考えております。  その第一は、調停主任裁判官不在の調停の現状を改めるため、全体としての裁判官の充員、増員をはかることでございます。  第二は、調停委員候補者選任をするには、公募された候補希望者をも対象として、国民の各界、各層からなる選考委員会をつくり、その議を経るべきものとするよう手続を改めること。  第三は、調停委員に対する旅費、日当宿泊料等の支給額を大幅に増額するよう、関係法規を整備することを強く要望するものでございます。  前に申し上げました日弁連の反対する三点は、調停制度を充実、強化するものではなく、かえってその本質を変質させ、あるいは弱体化するものでありますので、日弁連は反対せざるを得ないのでございます。どうぞ、この点を御理解いただき、調停制度を真に充実、強化する方向で、十分に御検討くださいますよう希望する次第でございます。  たいへんありがとうございました。
  6. 小平久雄

    小平委員長 次に、小山参考人にお願いをいたします。
  7. 小山昇

    小山参考人 小山でございます。  日ごろ調停法を研究し、かつ、みずからも家事調停委員としての経験を十年以上持っておる者といたしまして、このたびの改正法律案につきまして、一法律学者としての意見を申し上げさせていただきたいと存じます。  このたびの改正の目的は、調停制度を人の面と手続の面で充実することにあるというふうに伺っております。したがいまして、私は、人の面と手続の面におきまして、民事調停制度が、現行法に比べて改正法律案のほうがどの程度充実に資するであろうかという観点から、主として法律的に検討いたしました、その結果を御報告申し上げたいと存じます。  今日、財産上の民事の紛争につきましては、訴訟という制度がございますが、この訴訟という制度は、現在わが国におきまして、必ずしも国民の十分な満足を買うに至っておりません。他方、そういうこともからめまして、国民のかなり多くが現在の調停制度を利用することを希望しております。したがいまして、調停制度存続する必要があるというふうに考えます。  家庭事件紛争ということになりますと、通常の民事の紛争に比べまして、その紛争が家庭内の紛争であるという事柄の性質上、特に調停が単に望ましいだけでなく、必要でさえあります。したがいまして、そういう意味におきまして、家庭事件についての調停制度存続の必要が当然あると考えられます。  ところが、民事調停事件につきましては、統計によりますと、新しく受ける事件数が減少ないし横ばいであるといわれております。家庭事件におきましては、新受の事件数が増大の傾向にあるにもかかわらず、成立率は減少の傾向を見せているといっております。すなわち、この統計上の数字は何を意味するかと申しますと、国民調停制度を利用することを欲していながら、なお満足をしておらないということを意味すると考えられます。この観点から、調停制度というものは、民事調停、家事調停を問わず、早急になお充実する必要があるという結論が出てまいります。したがいまして、その早急に充実する必要があるということに基づいて法律案が提出されたということは、しごく当然のことと考えられるのでございます。  ところで、調停を充実するというのはどういうことかということを考えてみました。まず、手続面についてでございますが、調停と申しますのは、調停制度を利用しようと欲する国民が申し立てをいたしまして、この申し立てに基づいて原則として調停委員会が活動し、そして最後に適切な内容合意に到達する、これが調停手続でございます。したがいまして、この調停手続を充実するということは、第一に、申し立てをしやすくするということであります。第二に、調停委員会の活動が充実するということでございます。第三に、合意の成立をしやすくするということでございます。  そこで、申し立てをしやすくする、調停委員会の活動が充実される、合意をしやすくする、この三つのそれぞれについて、現在提出されております法律案が、その目的に沿った改正であるかということを検討してみたいと存じます。  まず、申し立てをしやくするという点でございますが、御案内のとおり、改正法律案におきましては、交通調停事件及び公害等紛争調停事件につきましては、実質的に被害者の住所地におきまして調停の申し立てをすることを可能ならしめております。これは明らかに申し立てをしやすくするという方向への一歩前進であります。しかも交通調停あるいは公害等調停は、現在また将来にわたってますます事件がふえるものでございますから、この申し立てをしやすくするという方向への一歩前進というものは、まさに緊急の必要に応ずるものというふうに考えることができます。  次に、調停委員会の活動を充実させるということについて申し上げます。  調停委員会の活動というのはどういうものかと申しますと、現行法ではまず裁判所という場所で活動いたします。裁判所で開かれて、その期日において調停委員会が活動いたします。  それから第二に、その裁判所という場所で期日において当事者の陳述を調停委員会聴取いたします。この期日には両当事者が出頭してくるというのがたてまえでございます。  第三に、調停委員会の最も重要な活動はこの両当事者の間に入ってあっせんをすることでございます。ところで、このあっせんでございますけれども、調停委員会が相対立する両当事者の間に入って適切なあっせんをすることができるためには、まず両当事者の陳述を十分に聴取することが必要でございます。のみならず、両当事者の陳述を聴取しただけでは実は足りないのでございます。両当事者の陳述にはあらわれない事実というものが、適切なあっせんと適切な内容合意へ導くために絶対に必要なことでございます。  それから次に、両当事者の陳述を十分にかつ正確に理解することが必要でございます。  そこで事実を十分に知るということと、それから事実を正確に理解するということを分けまして、まず事実を十分に知るということについて、改正案現行法に比べてどれだけ前進しているかということを見てみたいと思います。  先ほど申しましたように、調停委員会の活動というのは、現行法では裁判所という場所で期日においてなされるのがたてまえでございます。しかし調停委員会があっせんのために必要な事実を知るには、裁判所の外で事実を知るということがどうしても必要になってまいります。訴訟におきましては、御承知のとおり口頭弁論主義というたてまえがありまして、当事者裁判所で期日において陳述したことのみが判断の資料になりますけれども、実情に即した解決をするためにはそれだけでは立りないわけでございます。したがいまして、裁判所の外で期日以外で事実を知るということが必要になってまいります。そのためには、なるほど現行法ではその方法がないわけではございません。すなわち調停委員会が、または調停委員会決議に基づいて調停主任あるいは家事審判官という裁判官が事実の調査をするという制度はございます。しかし調停委員会は通常三人でございますが、三人の人が行動をともにして裁判所の外で事実を調査するということは実情に合わないし、また非常に困難でございます。したがいまして、必然的に調停委員が単独ででも事実を調査することができるようになれば、調停委員会としての活動はきわめて充実したものになってまいります。  それから調停委員会当事者の陳述を正確に理解する必要がございます。しかし当事者の陳述の中には、専門的な知識、たとえば医学上の知識とかあるいは心理学上の知識とか、そういうものを持っていないと、当事者の言うことを正確に理解することができない場合が非常に多くございます。その場合には専門家意見を当然に聞かなければなりません。  ところで、専門家意見を聞く方法といたしましては鑑定という方法がございます。しかしそれは判断をするときにその判断者の参考に供するものでありまして、陳述を理解するために専門家意見を聞くのとは違うわけでありまして、したがって陳述を理解するために専門家意見を聞くということがどうしても必要になってまいります。このような必要性というものは、現在のように事件がきわめて複雑になり、個人の考え方、個人の持っている価値観等々が複雑になっておる今日におきましては、緊急に必要な事柄と考えられるわけでございます。  そういう事柄につきまして現在の法律案がどのような対応のしかたをしておるかということを見ますと、まず裁判所の外で調停委員が単独で、もちろん命を受けてでありますけれども、事実の調査をする道を開いております。したがいまして、先ほど申しましたことから考えますと、これはまさに調停委員会の活動の充実のための緊急に必要な一歩前進ということができると思います。  それからこのたび提出された法律案を見ますと、遠隔地にある者が事件関係人であって、そしてそこへ調停委員会が出向いて意見を聞くということが実際上きわめて困難であるということを配慮いたしまして、遠隔地の裁判所事件関係人の意見聴取嘱託いたしまして、嘱託を受けた裁判所がその裁判所調停委員に命じて、事件関係人の意見聴取するという道を開いております。これもまた調停委員会の活動を現行法よりも一歩必要に応じて前進させたというふうに見ることができます。  なお、このたび提出されました法律案におきましては、専門家意見調停委員会が聞く道を開いております。そしてその専門家というものも、調停委員という身分を持った専門家意見調停委員会が聞くという道を開いておりまして、これもまた先ほど申したところによりますと、緊急に必要なことに応ずる一歩前進の改正案だと考えることができるのでございます。  次に、第三番目の合意を成立しやすくすることが調停の充実になる。しかし現在の提出されました法律案におきまして、どの程度そのことが企てられているかと申しますと、そのためには、まず合意の成立を妨げている事情を除去するということが合意の成立を促進することに相成ります。合意の成立を妨げている事情といいますのは、一つ調停委員の側にございますし、一つ当事者の側にございます。調停委員の側に存する事情と申しますのは、それは結局調停委員の能力の向上にまつよりほかはございませんので、この点は深く立ち入らないことにいたしまして、当事者の側に存する合意の成立を妨げる事情について簡単に申し上げます。  当事者の側に存する合意を妨げる事情というものは、実にさまざまでございまして、きわめてがんこであるとかあるいは感情的対立とか、実にさまざまなものがございます。その中の一つに、遠距離にいるために申し立て人あるいは相手方と面談した上合意に達することができないという事情がございます。この事情に対しまして法律案は、家事調停事件でしかも遺産分割事件に限って、出頭しないままに合意が成立することができる道を開いたのでございます。これは緊急必要な一歩前進であります。しかも実に控え目な前進でございまして、まだまだこの点をもっと拡張すべきではなかろうかと考えられますけれども、少なくともこの法律案に盛られていることは、緊急に必要な措置であると考えられます。  それから最後に、合意の成立をしやすくするために、あらかじめ調停条項が示されればこれに合意するという書面が提出されておれば、調停委員会調停条項を定める、こういう便法を設けております。これは、理論的に申しますといささか問題がございます。といいますのは、調停といいますのは、両当事者が自分で内容をきめてそれに合意するというのが本来の姿でございます。ところが、改正案の十六条の二によりますと、内容をきめることを調停委員会にまかせてしまうわけでありまして、したがって内容を自分が考えない、そこに一つの問題がございます。しかしこの点につきましては、私が聞くところによりますと、実務家の経験では、商事調停鉱害調停では利用されなかったけれども、一般化すれば必ず利用されるであろうし、それから両当事者の間ではまとめたいけれどもまとまらない、しかし委員会が入ればまとまる、そういうことを経験したことはしばしばあるとのことでございますので、こういう道を開くということは、試みることに異議を申し立てる理由はないのではないかというふうに考えております。どの程度の成果があるかは、私予測はつきません。しかし実務家の感覚でそういう状況があって、そしてそういう状況でそういうことをすればうまくいくであろうというふうに考えられている以上、その道を一応開いてみるということは必要なことではなかろうかと考えております。  さて人の問題でございますが、人の問題は申すまでもなく調停委員の質の向上でございます。そのためには、まず第一に、すぐれた人を発掘して調停委員になっていただくことでございます。第二に、なっていただいた調停委員の能力をさらに研修等によって向上させることでございます。それから第三に、調停委員に任命はしてみたけれども、どうも適当でないという人を勇断をもって淘汰することでございます。この三点がきわめて重要だと考えられます。  さて、この三点から考えまして、調停委員身分調停委員となるべき者から当初からの調停委員に変更すること、あるいは調停委員手当を出すこと等々がどれほど役に立つかということにつきましては、私は決定的な資料は持っておりません。むしろこれからの問題であり、その問題は当然法律改正を待たずしてもなお考えなければならなかった問題ではなかろうかと思います。ただ、だからといって私は、当初から調停委員に任命するということ、それを最高裁判所が任命するということあるいはその手当を出すということについて反対しているわけではございません。そしてまたそれはそれなりに理由があるとも考えております。しかしそれらのこまかい点あるいは手続問題についてのこまかい点につきましては、後にもし御質問がございましたら忌憚なく意見を申し述べる用意がございます。  もはや持ち時間が切れましたので、一般論といたしましてはこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  8. 小平久雄

    小平委員長 ありがとうございました。  次に、人見康子参考人にお願いをいたします。人見康子君。
  9. 人見康子

    人見参考人 ただいま御紹介にあずかりました東京家庭裁判所調停委員、正確には候補者と申し上げるのだと思いますが、候補者人見康子でございます。  先ほど来、日本調停協会連合会理事長横地参考人あるいは日本弁護士連合会司法制度調査会委員長江尻参考人あるいは北海道大学小山教授から、たいへんに深い御学殖とそれから豊富な御経験に基づきました御意見が出されておりまして、その上にまた私のようにまだ家庭裁判所調停委員といたしましては末席に連なっているにすぎない者の意見を加えさせる機会をお与えくださいましたことは、たいへん光栄に存じている次第でございます。  現在民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におきましてもたいへん慎重な御審議を賜わっておりますことは、私らの厚く感謝するところでございます。私がきょう出てまいりましたのは、東京家庭裁判所の調停委員ということでございまして、大体調停委員の実務から出てまいりましたところのことにつきましての御意見を申し上げますので、どうぞその意のありますところをおくみ取りいただきまして、法案の御審議に御参酌いただければというふうに考えております。  すでにお聞き及びのとおりでございまして、最近の家事紛争というのはたいへんに複雑かつ多様というふうなことになっておりまして、そのために事件解決というふうなものが前に比べますと長引き、また困難になってきております。私どもは紛争の公正かつ迅速な解決というふうな調停の本来持つべきはずの利点を実現いたしますために日夜努力をいたし、そのための自己修養というふうなことにもつとめているところでございます。  ところが、家事調停事件の処理は現在種々な困難に直面しているのでございますが、なお家事事件というものの本質は、先ほどの小山参考人の御意見にも出てまいりましたように、その本来的な解決というふうなものは調停によるということが最も望ましい、あるいは好ましいというふうなことが国民大かたの要望するところでもあると考えられるわけでございます。したがいまして、調停制度の充実、発展ということは、調停の仕事に携わります私どもはもちろんのこと、同時に広く国民全体が期待しているところではないかというふうに考えております。そこで、今回の民事調停法及び家事審判法の一部改正のうち、特に家事審判法の一部改正案につきまして、私ども家庭裁判所調停委員のかねてからの要望が今回実現され、さらに一般人の調停に対する期待にもほぼこたえられているのではないかというふうなことで賛意を表する次第でございます。  そこで、まず調停委員制度改正につきましてでございますが、私どもは従来からも時間の許す限り調停の仕事に携わる、そうしまして、できるだけ数多くの事件を担当いたしたいというふうにつとめてまいりまして、これは同時に大部分調停委員の方々の実際の御活動でもございますが、今回の調停委員制度改正というのは、その調停委員の実際の活動にふさわしいお取り扱いであるというふうに私どもは受けとめております。現在におきましても、事件調停を受けますと、これは公務員身分になるわけでございますが、その職務を行なっておりますときには、心がまえといたしましては、常日ごろの民間人としての良識というのが必要不可欠でございます。  そうしますのはなぜかと申しますと、常に当事者納得のいく合意による紛争解決というふうなことが調停の根本理念でございますけれども、当事者合意に達しますまでのプロセスにおきましては、調停委員説得というものは、調停委員の常日ごろの民間人としての活躍の場で得ました専門的知識あるいは積み重ねた経験あるいは良識の裏づけ、こういうふうなものがありまして初めて当事者を十分納得させられる説得力があるのだというふうに考えておるのであります。したがいまして、調停委員がそういうふうな民間の活躍の場において得ました判断に基づいて調停の場におきましての説得を行なっていくというこの心がまえは、現在のみならず、同時に調停委員制度改正されましても変わることはないと存じますし、また変わることがないようにみずからもつとめたいと存じている次第でございます。  また、特に家庭裁判所におきましては、実際に扱います事件を通じまして、私どもは社会のいろいろな分野の方々に直接接触するというわけでございまして、それら当事者のかかえております悩みと申しますかあるいは問題と申しますか、これらは私らがはだ身をもって感じておるところでございます。そうしまして、常に当事者にとって親身の事件解決ということが、事件の公正な解決と同時に必要であるということを痛感している次第でございます。したがいまして、その公正な職務遂行ということの中にも、常に民間人としての健全な良識を忘れない態度というものが、情と理を兼ね備えました調停の成立へと導くものではないかと存じ、私らは日常心がけてそのようにつとめておる次第でございます。  また、待遇の改善につきましては、今回改正案におきましてたいへんな御配慮をいただいておりますが、これは調停委員に一そう広い人材を求めることによりまして調停制度の一そうの充実をはかるということの一助にもなりますし、また、私ども従来調停活動に従っておりました者も、調停制度充実のために要望しておりましたところで、たいへんにありがたい改正の傾向であるというふうに考えております。  次に、調停委員職務に関する——これは家事審判法の第二十二条の二でございますが、この改正についてでございます。近年、家事紛争がたいへん複雑であるということは、先ほど来小山先生からも御指摘がございましたところでございますが、これはすでに皆さま方においてもお聞き及びのところでございますが、特に家事事件につきましては事件数が多く、また解決も長引く傾向を示しておりますのは、遺産分割の事件においてその傾向が著しいわけでごごいます。  その遺産分割事件におきましては、特に遺産の評価ということをめぐりましてなかなか複雑な専門的な知識を必要といたしますことがしばしばございます。そこで、むずかしい理屈のほうは先ほど小山先生のほうからもいろいろお述べいただきましたところでございますが、私らが実務の上で考えておりますところでは、たとえば不動産鑑定士の資格を持っておりますような調停委員は、調停委員の全期日の関与というふうなことは時間の都合上できませんでも、その専門的な知識に基づく意見が述べられる、そういうことが認められますような改正が行なわれますと、これは高い費用負担にたえられない当事者にとりましても非常な便宜でありますし、また同時に、調停の成立を円滑にし、したがいまして調停制度は一そう充実し、あるいは調停の機能が拡張されるというふうに考え、望ましいところであるというふうに考えております。  それからもう一つ、これもやはり私ら調停委員の実務上の実感ということで、たいへんに俗な表現をお許しいただきたいと思いますが、最近私たちが接触いたします当事者というものはサラリーマンで、かなり転勤が多いという状況でございます。本人出頭を原則といたします家事事件におきましては、関係人が調停意見を述べていただきたい、あるいは関係人が調停意見を述べたいという場合もありますが、これらの関係人が住居の関係でどうしても遠隔地から調停期日に出頭しなければならないということになりますと、これはサラリーマンの方たちにとりましては時間的にも経済的にもかなり負担になる場合がございます。しかし、当事者関係人の意向を十分くんだ調停の成立ということをはからなければ、これは調停として本来あるべき姿ではないわけでございますので、私らといたしましては十分意向をくんだ調停の成立ということを心がけておりますが、そのような場合に、関係人方のお呼び出しということにつきましてかなり困難を生じます場合が少なくはございません。したがいまして、嘱託にかかわる事件について関係人の意見聴取が行なえるということは当事者及び関係人にとりましても非常に有益でありまして、私どもといたしても従来からそのような便宜ということの必要性を感じていたところでございます。  それからさらに問題は、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務」というふうな問題がございますが、この点は私らも従来から、横地参考人の御意見にもありましたように、調停委員としてあるべき限界というふうなことをわきまえた運用ということをお願い申し上げたいというふうに考えておるところでございます。  次に、家事審判法の第二十一条の二に関する改正でございますが、遺産分割の調停は、これは先ほども申し上げましたように、非常に複雑な事実関係事件が多うございまして、その複雑な事実関係の正確な把握はなかなか困難でございます。しかもそのような複雑な事実関係を正確に把握した上でできるだけ早く公正な解決をと努力いたしておるのでございますが、これはなかなか思うにまかせない次第でございます。現在の遺産分割事件と申しますのは非常に当事者の数が多く、しかもそれらの当時者というのはかなりばらばらの地方に住んでいるというふうな事情がしばしばございます。しかも遺産分割調停というのは、相続人全員がそろいましての合意がなければ調停は成立いたし得ないわけでございます。そこで、私どもといたしましては、日常遺産分割事件におきましてしばしば遭遇いたしますのにこのような事例がございます。それは調停成立の合意をほぼ得ておりながらも、先ほども申しましたように当事者の一人が急に転勤になるというふうな事情が生じまして、調停成立を目前に控えまして、なおかつ数回の期日を重ねなければ全員の合意が得られないというふうな事情が出てまいります。また相続人が非常に遠くにおりますために、御本人はできるだけ調停期日に参加したい、こう思いましても、経済的に制約されましてなかなか思うにまかせないというふうな事情もございます。したがいまして、私たちは従来それらの事件解決につきましては、できるだけ全員の御意向を個別的に聞きまして調停説得に当たるわけでございますが、そのときに個別に御意向を伺いまして、調停は成立し得ると判断いたしましても、調停期日に出頭しにくい当時者がおりますために解決を引き延ばさざるを得ないというふうな状況に出会うわけでございます。そうしまして時に、よりましては、また当時者のほうから、期日には出頭できないが、自分の申し立てたこの線に沿ってあとはおまかせしたい、こういうふうな意向を示される場合もございます。そこで、これらの点につきまして何らかの解決がはかられれば、遺産分割調停の円滑な成立が見られ、そうしまして調停の機能発揮の一助にもなると考えておりましたところでございます。そこで、調停当事者の真意に沿って運用いたしますならば、今回の御改正というのはたいへんに適切な改正であるというふうに私らは考えておる次第でございます。  それからさらにもう一点ございまして、調停制度につきましてはこれはもう先ほど来三御参考人の方々からたいへん御丁寧に御意見を披瀝されましたので、私としましては屋上屋を重ねるようなことになりますのでつけ加えるべき意見はございませんが、これはおそらく本日私が婦人調停委員というふうな含みもあってのことと思いますので、若干自画自賛みたいなことになってお聞き苦しい点があると思いますが、婦人調停委員の活動について、これは調停制度を御論議になりますときにぜひ御理解をいただきたいというふうに存じておりますので、その点についても触れさせていただきたいと思います。  現在家庭裁判所におきましては、調停委員のうち一人は婦人調停委員を加えて調停を行なうという庁が大体でございます。そうしまして、家庭裁判所が創立されまして以来、家庭裁判所が親しみやすい裁判所というふうなことで、少なくとも国民の方々が裁判所の門をくぐりますのに抵抗を感じなくなりました。そのイメージをつくり上げます中におきまして、婦人調停委員の存在というのはこれは欠くことができない存在であったのではないかと思います。また事件の過程におきまして、当事者が、裁判所というところはなかなか近づきがたいところである、思いどおりに心やすく事件実情を述べられないというふうなことがなくなりまして、婦人調停委員のソフトな事情聴取によりまして、当事者はかなり自分の思うところを忌憚なく申し上げられるというふうな気持ちをお持ちになられておりますのも、婦人調停委員の功績の一端ではないかというふうに考えております。そうしまして、このように当事者が事実関係を心やすく明らかにしていただくということで、先ほど小山参考人も仰せられましたように、事実というのは、なかなか陳述にあらわれない事実の中に重要な事実があるというふうなことをお示しいただきましたが、御婦人の調停委員事情聴取というふうなことの中に、かなりそういうふうな、本来ならばなかなか当事者が胸を打ち明けて語れないような事実が家庭裁判所におきましては打ち明けられるということになるわけでございます。そうしまして、そのような事実関係が非常に心やすく明らかにされるというふうなことで調停では紛争の実態に即した妥当な解決が可能になったわけでございます。  それから同時に、家庭裁判所におきましては、事件当事者の中には御婦人の当事者も非常に多いわけでございますが、特に御婦人の当事者というのは裁判所に出てまいりまして胸を開いて御自分の事情を打ち明けるというふうなことがなかなかむずかしかったわけでございますが、その主張をよく理解してくれる相手として婦人調停委員には心よく事実を打ち明けられるというふうなことがございます。そうしまして、これらの事柄を通しまして、裁判所に対しまして従来長い間国民が持っておりました一種のおそれと申しますか、それよりは、自分の心から胸を打ち割って解決を求められる裁判所であるというふうな信頼を増す存在にもなってきていると存じております。そうしまして、特に家庭裁判所調停に携わっております婦人調停委員の方は非常に年代層も広く、また同時に調停職務遂行のためには自己修養というふうなことにも非常につとめております。またさらに、最近では高い識見を備えました御婦人調停委員も少なくなく、同時にその活動というものも非常に活発かつ積極的で意欲に富んだものでございます。したがいまして、事件解決にあたりまして、かなりきめこまかい配慮といいますか、そういうふうなものも婦人調停委員ならではのものであるというふうに考えております。したがいまして、家事調停におきましての婦人調停委員の重要性というものは、従来も占めておりましたが、同時に今後もまた家族間の紛争というふうなものは、親子の問題にいたしましてもあるいは夫婦間の紛争にいたしましてもますます多様性を加えますおりから、一そうの重要性を増しこそすれ減少するものではないという点につきましても御理解をいただきまして、私たちがよりよい家事調停の充実へと改善の努力を怠っていませんことを、あるいは今後も怠らないようにつとめたいということにつきまして御理解をいただきたいと存じております。  たいへん簡単でございますが……。
  10. 小平久雄

    小平委員長 ありがとうございました。  これにて参考人意見の開陳は終わりました。      ————◇—————
  11. 小平久雄

    小平委員長 引き続き質疑に入ります。  申し出がありますので順次これを許します。羽田野忠文君。
  12. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 まず人見参考人にお伺いをいたします。  いま非常に貴重な御意見を承ったのでありますが、先ほど小山参考人が述べられた三点のうち、合意の成立がしやすいようにすることが必要だという点につきまして、家事審判法の二十一条の二の改正が非常に適切であるという御意見をいただきましたし、それからもう一つは、調停委員会の活動を充実するようにすることが必要だということで、同じく二十二条の二の改正の非常に適切なことを御指摘をいただきました。  そこで二十二条の二のことについてちょっとお伺いをいたしたいのでありますが、この改正では、調停委員は、調停関与のほかに、専門的な知識経験に基づく意見の陳述、嘱託にかかわる事件についての関係人の意見聴取、その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行なう、こういうことがきめられておりますが、この最高裁判所が定める事務を行なうという概念がきわめてはっきりせないのであります。この点についていま参考人は、これは調停委員としてあり得べき限界の仕事だというまた非常にむずかしいことをおっしゃられましたが、私どももこの条項につきましては、こういうばく然とした、先ほど江尻参考人が指摘されましたように、最高裁判所規則白紙委任をするような立法というものは必ずしも感心できないというふうに考えております。そこでこの前、最高裁判所にこのことはただして、当委員会の議事録にはっきり出ておるのでありますが、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務」というものは具体的に何であるか、特定できて、それに限るということがいえるかという質問をいたしたわけでございますが、これに対して最高裁判所はこういうお答えをいたしております。これはやはり嘱託にかかわる紛争解決に関する事件についての事実の調査、これを行なうということなんだ、そうしてそれ以外には考えていない、こういうふうに特定をいたしてあります。これは議事録でそういう歯どめがきちっとできております。  そういうことを前提にしてお伺いいたしたいのは、この調停委員調停関与のほかに仕事をしていただくということ、その仕事の内容関係人の意見聴取、事実の調査、そういうような場合に、江尻参考人が指摘しておられますのは、そういうことは嘱託で行なうということは賛成なのだけれども、その事情聴取調査調停委員会が行なうべきであって、調停委員にまかせることは許されないという御指摘がありました。その理由といたしまして、この事情聴取、事実の調査、まあ特定しておりませんから、そこまで触れておられませんが、これもおそらく含まれるようになるのじゃないかと思いますが、そういう場合に手続的な保証がない、それから正確性の保証がない、これはむしろ逆に事後的にも不正確な結果を排除する方法がない、そういうようなことから調停委員にやらせることは反対だ、委員会でやれ、こういうふうな御指摘をなさっておられます。先生は、この改正案のように、それは調停委員にやらせてもその点はだいじょうぶであるというふうにお考えになっておられるか、あるいはそれは委員会でやるべきだというふうにお考えになっておられるか、その点をちょっとお伺いいたします。
  13. 人見康子

    人見参考人 どうもお尋ねにあたりまして正確なお答えになりますかどうかわかりませんが、私の考えといたしましては、調停委員会でございませんで、調停委員が専門的な知識経験に基づく意見を述べましても、従来の調停委員の良識からいたしましても、また今後の調停委員がなお資質の向上というふうなことがはかられるといたしましたならば、なおのこと、そのような点についての御心配はないというふうに考えております。
  14. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 あとの意見聴取並びに調査はいかがでございましょうか。
  15. 人見康子

    人見参考人 その点も、意見聴取につきましてもそういうふうなわけでございまして、調停委員意見聴取ということでも御心配になられることはないのではないかと思います。  それから、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」という点につきましては、先ほど議事録で歯どめがついておりますというふうなお話を伺いしまして、私どもとしてはたいへん安、心をいたしているところでございます。
  16. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 小山参考人にお伺いをいたしとうございます。  民事調停法のことについてお伺いいたしたいのでありますが、わが国訴訟手続がキャリア裁判官にこれをまかされておりまして、非常に手続もむずかしいし、いわゆる法による裁判という原則を非常にきびしく守っております。そういうことで、何か外国の小額裁判所やなんかがやっているような公平に基づく裁判と申しますか、条理等を基本とした解決というようなものが要請される。そういう面から調停制度というものがわが国では非常に重要視をされておりまして、訴訟事件十六万五千件に比べて調停事件十一万九千件というような相当な数もあるようでございます。私もそういう意味でこの制度は非常に重要だと思っておりますが、今回民事調停法の中に入ってまいりました十六条の二でございます。いままで鉱害事件、商事調停事件に行なっておったものを新たに民事調停全部について、調停委員会の定める調停条項という制度を入れてきた。これは非常に画期的なことであるし、やり方によっては非常に効果を上げるいい制度である。しかし、運用を誤ると、江尻参考人が御指摘をなさいましたように押しつけ調停になって、当事者合意という大事な要素というものが侵されるという面も非常にございます。先ほど先生が、この点についてちょっと触れられましたが、この十六条の二について、こういうことをすべきだというような運用についての何か御意見等ございますれば、ぜひ承りたいと思います。
  17. 小山昇

    小山参考人 民事調停改正法律案十六条の二につきましては、先ほど申し上げましたように、調停条項を定めることをあらかじめ内容を知らないままに調停委員会にまかせてしまうということにつきましては、理論上調停は本人が合意内容を定めるということと矛盾いたすという点はございます。しかし、先ほども申し上げましたように、実務の経験上なるほど商事調停鉱害調停については例は少なかったけれども、その他の調停につきましては例が多くなるであろうし、また日本人の性格からいって、もう一歩のところでまとまるというところに至った場合には、それが効果を上げるであろうということも実務家の経験を拝聴いたしますと推測できるところでございます。  そこで、運用上という御質問でございます。私が考えておりますのは、おそらくまず調停条項に服する合意がございます。そうしますと、その次に調停委員会が評議をいたしまして、どのような調停条項案が両当事者に受け入れられるであろうかということを考えるであろうと思います。調停委員会調停条項案がきまりますと、そこで起こります問題は、あらかじめ合意があるから直ちに調書に記載してしまうのか、それとも調書に記載する前に両当者を審尋すべきなのかというと、現行法でも当事者を審尋するという制度はございますから、おそらくそういう運用になるかと思います。当事者を審尋した段階で、当事者がそういうことになるとは夢にも思わなかったというようなことがもしあれば、その段階でチェックできるのではないか。しかし、実際問題として、私よくわかりませんけれども、もう一息でまとまるというところまで行って、この十六条の二が使えることになれば、おそらく調停条項案はその程度ならばのみましょうということになる、のではないか。しかし、その機会はおそらく当事者を審尋するという段階であろうと考えておりまして、当事者の審尋という段階がある以上、乱用のおそれというものははたで考えるほどはないのではないかと推察しておる次第でございます。したがいまして私は、こういう制度を設けることが緊急に必要であるかどうかと言われると、にわかにはお答えできませんけれども、先ほど申しましたように、その道を開いておくということは非常に有効ではなかろうかと考えております。
  18. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 いま先生の非常に貴重な御意見を伺いました。実は私も、その当事者の意思を最後に確認するかどうかという点が非常に大事だと思いまして、ただしたのでございますが、最高裁判所では、もしこの改正案が成立をいたしました場合においては、当事者の全く知らない調停条項が記載されて、これが裁判上の和解と同一の効力を生ずるというようなことがあってはいかないということで、最高裁判所規則で、この十六条の二の調停条項を定めようとするときには当事者意見聴取しなければならないということをはっきり明定するようなお考えのようでございます。こういうのが出てきますと、先ほど江尻参考人が述べられました押しつけ調停というような危険性はだいぶなくなるのではないかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  19. 小山昇

    小山参考人 私もそのとおりだろうと思います。つまり、最高裁判所規則でそのような歯どめがあれば、乱用のおそれはまずないと考えてもいいのではないかと考えております。
  20. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 江尻参考人、いまお聞きの点でございますが、先生の御懸念、私も同じようなあれでございますが、いまのような歯どめをして当事者が予期せざる調停結果に泣くようなことのないように、最高裁規則による十分な配慮、また調停委員に対するそういう指導を行ないますならば、先生の御杞憂もある程度なくなるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  21. 江尻平八郎

    江尻参考人 お答えいたします。  日弁連といたしましては、この十六条の二という条項でございますが、制度そのものとしてこういうものは反対でございまして、運用によってその意思が確認されるとおっしゃっても、特に規則によってそれは確認されるということをお考えになっていらっしゃったとしても、この制度そのものに反対している、こういうことでございます。
  22. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 本会議の時間が迫りましたので、もう一、二問ございますが、あとに続けさせていただきます。
  23. 小平久雄

    小平委員長 午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ————◇—————    午後一時開議
  24. 小平久雄

    小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人に対する質疑を続行いたします。羽田野忠文君。
  25. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 横地参考人に一点お伺いいたしまして、終わりにしたいと思います。  いまの調停委員身分制度でございますが、調停委員候補者になっておりまして、事件が起こったら事件ごとに指定を受ける。指定を受けると非常勤公務員になって、その事件が終わるとまたその身分はなくなる。次にまた指定を受けると非常勤公務員になる。こういう身分制度というものそれ自体は非常に変則的なものだと思います。調停委員さん御自身の認識それからまた調停当事者や一般の国民の認識は、むしろ調停委員というのは任命されると一年間非常勤公務員であるというふうにお考えになっておる。調停委員自身もそれから調停をやられる当事者や一般の国民の認識も、むしろそう考えている人のほうが多いのじゃないかと思いますが、参考人が実際に調停委員をしておられてのその実感と、それからそういうことになると、今度の改正によって調停委員の任命を受けると二年間非常勤公務員ということのほうが、あなたが先ほどおっしゃった実情にマッチする、だからいまの制度のほうがむしろ擬制的な立場で、今度の改正のほうが実情にマッチした改正だというふうにも考えられるのですが、あなたの御経験をお聞きいたしたいと思います。
  26. 横地秋二

    横地参考人 お答え申し上げます。  最初に、私自身の経験、感じからかってながら申し上げさせていただきますが、私自身はなるほど理屈の上では現在では調停委員候補者ということでございますが、気持ちの上では、もう毎年選任を受けましたとき以来、その一年間調停委員であるという気持ちであり、またそれだけの自覚と、少し言い過ぎかもしれませんが、自尊心を持っておる次第でございます。また当事者の方々の様子、お話などを伺いましても、それが候補者であるということはむろんおっしゃいませんし、調停委員だから自分たちの言うこともよく聞いてもらって、できるだけお互いの希望を、むろん互譲を伴うことでございますけれども、実現したい。調停委員だと、信じ切っておられる次第でございます。したがいまして、ただいまのおことばにもありましたように、そういう実態から申し上げますと、現在の候補者制度のほうがむしろ変則と申しますか、実情に沿わないので、今度の改正法によりまして、任命と同時に名実ともの調停委員になるということのほうが実情にも沿いますし、また調停委員の心がまえ、調停に対する自覚というものにつきましても大いに資するものがあると存じております。
  27. 羽田野忠文

    ○羽田野委員 終わります。
  28. 小平久雄

    小平委員長 青柳盛雄君。
  29. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は日本共産党・革新共同に所属している青柳でございます。本日は、先生方におかれましてはたいへんお忙しいところ貴重なお時間をとっていただきまして、私からも敬意を表する次第でございます。  まず最初に横地先生にお尋ねいたしたいと思いますけれども、先ほどお話もありましたし、また先ほどいただきました「調停時報」六十七号「調停法規改正法案をみて」と題する理事長横地先生の文章がございますが、その中に「調停委員身分非常勤公務員とすることについて」という欄がございまして、現在も「事実上年間を通じ調停委員身分を持ち非常勤公務員となっております。」というふうにあり、そして今回の改正は従来の不明確な身分を確立するんだ、こういうふうにおっしゃっておられます。事実上の非常勤公務員であって、何か非常勤公務員ではないかのごとくあるかのごとく不明確な身分だといわれるようでありますけれども、この点は、調停法非常勤公務員であるというふうな明文がないので、単なる事実上の非常勤公務員で不明確なんだというお考えが前提におありになるような感じがするのでございます。この点はいかがでございましょうか。
  30. 横地秋二

    横地参考人 お答え申し上げます。  「事実上」ということは、ことばは必ずしも正確でないかも存じませんが、いまお尋ねの中にもございましたように、明文としては非常勤公務員という文字が使ってございません。しかしお話にもございましたように、具体的事件の指定を受けまして、それが終了するまでの間は非常勤公務員と解されております。そこが不明確と申しますか、はっきりしないというほどの意味で「事実上」という文字を便宜使用した次第でございます。
  31. 青柳盛雄

    ○青柳委員 ありがとうございました。実は昭和二十七年最高裁判所規則第二十五号というのがございまして、ごらんになっていただいておられると思いますけれども、裁判所非常勤職員の政治的行為制限の特例に関する規則という題名がついておりますが、「裁判所非常勤職員のうち次の各号に掲げるものについては、裁判所職員臨時措置法において準用する国家公務員法第百二条の規定は、適用しない」。一は司法委員、二は参与員、三が調停委員、四、五と、こういうふうにありますが、調停委員はまさに昭和二十七年の最高裁判所規則制定にあたって非常勤職員である。しかし国家公務員法の百二条、つまり政治的行為制限の特則というものは、政治的活動を禁止する制限というものは適用しないのだ、こういうふうにありますので、この点は疑義のないところではないかと思うのです。それを今度わざわざ明文に入れなければならないということについて、非常な疑問を感ずるわけでございますが、先ほど読みました先生のお名前の文章の中には「もっとも調停委員職務内容を無制限に拡充し、裁判所職員化することは、調停制度本質からして避けられるべきことと思われます。」こういうふうにございまして、裁判所職員化ということをたいへんおそれていらっしゃるようでございます。また江尻先生もお述べになりましたが、日調協の傘下組織である東京調停協会臨調審答申対策委員会は慎重な検討を重ねられた結果、同協会長あてに行なわれた答申書に「調停委員を以て裁判所職員とし、裁判機構の一部となすが如きものであってはならぬ」という趣旨のものがございます。こうしますと、裁判所職員になってはいけないのだ、あるいは職員化するということがおそれられるということが、調停協会に参加していらっしゃる先生方全体のやはり御意向のように承るわけですね。したがって、何か今度の改正職員化を導入してくる、つまり二年間という任期の間は、明けても暮れても裁判所職員なんだ、従来とは何か違ったものなんだという、そういうおそれを感ずるのではないかと思うのですが、この点はどういうふうに理解したらよろしいのでございましょうか。
  32. 横地秋二

    横地参考人 お答え申し上げます。  私が「裁判所職員化」云々ということばを使いました意味は、ことばの使い方が不正確かも存じませんが、一般の裁判所職員のように出勤日を定められたり、月給としてきまった給与を受けたりすること、特に出勤日を定められてその日には必ず定期的に出なくてはいけないということは避けられるべきことである、こう存じ、申し上げた次第でございます。
  33. 青柳盛雄

    ○青柳委員 ありがとうございました。  次に、江尻先生にお尋ねいたしたいのでございますけれども、今度の改正法の中で、八条の規定はたいへんに重要な内容を含んでおるようでございます。これは家事審判法の二十二条の二も同趣旨でございますけれども、調停委員の先生方が個人として、調停委員会のメンバーとしてではなくて「他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見」を述べるという仕事、それから「嘱託に係る紛争解決に関する事件関係人の意見聴取」をするという仕事、「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務」、この前からお話のありました要するに事実の調査でございますか、特定な具体的なものを担当して調停をする調停委員会のメンバーとしてではなくて、調停委員という非常勤公務員としての資格においてこういう仕事をするのは、調停制度本来の趣旨からそむくものではないかというようなお話があったと思いますが、その点私の理解が間違っておりますでしょうか。それとも正しいとすれば、その点をもう少しよくお教えいただきたいと思います。
  34. 江尻平八郎

    江尻参考人 お答え申し上げます。  今回のこの改正案によって調停委員非常勤国家公務員、特に裁判所職員のワクに入るということでございます。そうしてその担当する職務も、普通の特定の調停事件のほかに、今回の提案によりますと三つほど職務拡張されると思うのでございますが、こうしますと、本来調停制度国民司法に参加する、そしてその特定の事件を受け持ったために、その事件によって身分公務員性を帯びるのでございます。事件がなくなればただ普通の国民に帰る。そして司法調停に参与するというのが調停制度の一番よいところでございます。これが裁判所職員のワクに入ってしまいまして、そうして特定の調停事件のほかに、あるいは鑑定要員として自分の担当している事件以外の事件の仕事をなす、あるいはまた嘱託にかかる事件についての関係人の意見を単独で聞くとかあるいはまたその他最高裁制所が規則で定めたところの事務を行なうということになりますと、これは全く裁制所の職員になって、その仕事が専門化し、一般化するということでございまして、考え方によりますと、国民事件を通じて国家事務である調停に参与するという特色がまるっきり失われてしまいます。その結果私どもが一番おそれるのは、そういう特定の事件以外の仕事を持ち、しかもまた裁制所職員というワクに任期中は入ってしまうということでございますと、多忙な方とか、あるいは適任者であっても裁判所の要請にはこたえられないという人がたくさんあると思いますが、そういう人は、そういう身分があってはいやだ、あるいはそういう仕事を担任してはいやだということになって、適任者を得られないという結果に相なることをおそれるわけでございます。  そのように考えます。
  35. 青柳盛雄

    ○青柳委員 ありがとうございました。  次は、関連をいたすわけでございますが、小山先生にお尋ねをいたしたいと思います。との調停をやるためにいろいろの専門家意見を聞くということが必要である。裁判のためには鑑定という制度があって、判決をする、判断をする上でその鑑定が使われるけれども、調停の場合には、私、聞き違いかもしれませんが、事実を知るために専門家意見を聞くというようなことが必要なのじゃないか、そこで鑑定でなしに調停委員の専門的な知識、経験というものを活用する、その人の意見参考にするということが調停をよくやるために必要ではないか、そういうふうに御説明をいただいたような気がするのでございますけれども、本来調停委員というものが専門的な知識、経験を有するということが基礎に一体あるのかないのか。なるほど法律家もおられますし、医者とか科学者とか学者とか、そういう専門的な知識、経験をお持ちの方も調停委員の中にはおられるわけであります。それは調停委員というものはバラエティーに富んだものであることが望ましいわけでありますから、出身階層や経験の相違というものは、おのずからあっておかしくはないと思いますけれども、何かそういう人がたまたま調停委員の中におられるからひとつその人に聞いてみよう、具体的な案件にタッチする調停委員ではなくて、ほかのほうにいるというとおかしいのですけれども、その事件調停委員ではないけれども、調停委員という資格を持っているから聞いてみよう、これは少し調停委員というものの任務を乱用しているというか、あまりにも便宜的に使い過ぎるのじゃないか。やっぱり専門的な意見を聞くという場合には、金はかかってもこれは国のほうで負担をして、そして専門家意見を聞く、ことに公害なんかの場合でいいますと、たまたま調停委員さんの中にお医者さんがいた、そこでその方に聞いたらば、それはたいしたことじゃないというような御意見だったというようなことになってしまったのでは、これは被害者にとってみると非常にたいへんなことなのでございまして、調停であっても専門的な知識というものはやはり科学的でなければならないし、もちろん調停委員さんが非科学的なことをおっしゃるとは思いませんけれども、しかし、やはりそれは鑑定に類するものであっていいのではないか。調停もやはり裁判と同じように客観的な事実を基礎に調停が進むべきものではないかというふうに思うのでございますが、この点は、何か判断のための専門家意見と事実を知るための専門家意見というのを区別する必要性というようなものは、ちょっと私には理解できませんので、お教えをいただきたいと思います。
  36. 小山昇

    小山参考人 お答え申し上げます。  まず第一に、おっしゃるとおり調停委員は、一般的には専門家である必要はございません。むしろ一般の国民として、あるいは最近になりますと、ただ普通の国民というよりは、両当事者の対立する問題を処理できる能力のある人が期待されておりますけれども、そういたしましても、やはり一般の人であって、特に心理学とか医学とか、あるいは物の価格の鑑定とか、そういうことの専門家である必要はございません。一般論としてはそのとおりでございまして、通常、調停委員会は民事でありますと調停主任、家事では家事審判官のほか、一般の方が二名調停委員として、その三名でもって調停委員会が構成されます。その調停委員会で両当事者の陳述を拝聴いたします。その際に、私が申し上げましたのは、当事者の陳述を聞いた上で、専門的な知識を持っていなければ理解しがたいことが出てくるであろう、その場合にどうするかという問題がございます。それを理解しないままにあっせんすることは必ず当事者不満を引き起こします。したがいましてどうすればそれを理解できるか、もちろん御自分で勉強することも必要かと存じます。しかし、専門的なことになりますと、にわか勉強ではなかなか理解をすることはできません。そこで調停委員の中に専門家がおりました場合には、その専門家に、こういうことを聞いたけれどもそれは一体どういうふうに理解するのが両当事者の陳述を正確に理解することになるかということ、そのために私の理解では、専門的な知識、経験を持った調停委員意見聴取することが、担当した調停事件のより適切なあっせんのために必要欠くべからざることではないかと考えた次第でございます。もちろんその事実の認定のために、ある専門的な鑑定が必要な場合が起こりましたら、その場合には、調停といたしましても事実の調査及び証拠調べをすることはできますので、その証拠調べの一環として鑑定人の鑑定を仰ぐこともあろうかと存じます。そうするとその場合には、国費でやればいいというお話でございますけれども、それを国費でやるかどうかにつきましては、私現在のところどうすべきかという意見は持ち合わせておりません。したがいまして、事実認定あるいは証拠調べとしての鑑定ということを私は申し上げたのではなくて、事件を担当する調停委員が一般の調停委員であるために、あっせんのために必要な専門的な知識が欠けていれば十分なあっせんができないというときに、専門家調停委員意見を聞くことが必要であろうか、そう考えた次第でございます。  それでは、なぜ調停委員でない専門家でなくて、調停委員たる専門家が望ましいかといいますと、調停委員でない専門家ということになりますと、鑑定という手続をとらない限り、私的な意見聴取ということになりまして、そうなりますと調停委員としての、一例をあげますと、職務上知り得た秘密を他人に漏らして、その他人の意見を聞くというおそれも出てまいりますから、したがいまして調停委員たる専門家意見聴取するということが非常に有効ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  37. 青柳盛雄

    ○青柳委員 先生と私は論争するつもりはありませんので、一応承っておきますけれども、先ほどの江尻先生のお話の中にもありましたように、自分が担当してない事件について、たまたま専門的な知識を持っているがゆえに、命ぜられて意見を述べるというようなことが問題ではないかという、その点に今度の改正の疑点というようなものが出てくると思うのでありますが、もう一ぺん別なことを小山先生にお尋ねいたしたいと思います。  それは今度の調停法の十六条の二という規定でございます。これが何か積極的な意味を持っていはしないだろうかという先生の御意見、やってみなければわからぬことだけれども、どうも弊害よりはいい面があるのではなかろうか、実務家はそういうふうに言っているようだというお話でございましたが、これは私どもから見ると非常に危険な内容を持っておるものでございまして、ためしてみたらよかったというようなものではなくて、むしろこういうものがあると調停制度そのものを根本から破壊するような結果になるおそれはないか、書面による合意をとってあるのだからいいのだというしかけになりますと、これが凶器に転化するわけですね。要するに書面があるのだからもう文句は言わせない、事実調停の過程で調停委員にまかせないか、案を出してみるけど、というときには口頭でございますから、よろしゅうございますと言ったけれども、これは書面じゃございませんから、あとになって、あれはやめたと言ったところで、それはおまえ、一ぺん書面にはよらないけれども賛成したじゃないか、だから苦労して出したのにもうだめだぞというようなことは、徳義の上からは言えても、書面がなければ、それはなかったものとあきらめて、そしてその案というようなものは、双方が承知できないときは引っ込めてしまう。しかし、紙があるとそれができるんだということになりますと、これは非常に凶器に転化すると思うのです。だから、実務家の経験からいうならば、むしろこれはないほうが非常にいい。こんなものがあると、運用する人によってはこれを悪用するといいますか、主観的には善意でございましょうけれども、とにかく合意書面がある、だから承知しなさいといって押しつけるような結果になりかねないと思うのですが、この点、先生、実務家が聞いたら案外いいようだというお話でございますので、どういう点がそんなにいいのか、ちょっと私は教えていただきませんとわからないのですが……。
  38. 小山昇

    小山参考人 おっしゃるとおり、実務家すなわち現に調停に携わった裁判官なり調停委員の方がそうおっしゃっておるわけでございまして、私は調停委員を十年以上やっておりますけれども、私個人といたしましてはその経験はございません。したがいまして、どういう経験から、こういう十六条の二のような規定があったほうがいいかということは、むしろ実際に御経験なすった方から聞いていただきたいと存じますが、私は十六条の二の条文を読みまして、実際の手続の過程を一応頭の中で考えてみたのでございます。  まず、この十六条の二の規定からは、調停委員会の中で裁判官あるいは調停委員のほうからまかせろというようなことばはまず出てこないのではないか、また出てきてはならないと思います。あくまでも当事者のほうから、十六条の二に、いわゆる申し立てが出てくると考えます。その申し立てといいますのは、事件解決のために適当な調停条項を定めることの申し立てが出てまいるはずでございます。その申し立てが出てまいりますと、調停委員会では十六条の二の定めるところの、調停条項に服する旨の書面合意があるかどうかということを当事者に問いただすであろうと思います。そこで書面による合意が出てまいるだろうと思います。書面による合意が出てまりました場合には、おそらく調停委員会ではその書面による合意が真意であるかどうかを確かめるだろうと思います。それから、書面による合意が出るまでに至る過程というものは、おそらく調停委員会では把握しておるだろうと思います。それはどういう状態で出てくるかと申しますと、実質的には両当事者の間に調停を成立させようという意思がある。そしてある程度合意内容も煮詰められておる。ごく狭い範囲で、その合意内容についてまだきまらない、たとえきまっておったとしてもそれを当事者の口からは言い出せない。これが私、実は個人的にはどうもよくわからないところなんですけれども、日本人の性格としては非常によく見られる現象であります。自分の口からは言えないけれども、しかしこうあってほしい、第三者が一言口を聞いてくれればそのとおりするというところまで煮詰まっておる場合に、この十六条の二が働くのではないかと思っております。したがって、そういう状況で書面による合意があり、そうしてそれに基づいて申し立てが出てきた場合に、調停委員会といたしましてはその合意の真意を問い、それから合意内容としてどこまで煮詰まったかを確かめ、しかる後に調停条項案を作成し、そうしてその作成するにあたって、あるいはその作成の後にでも当事者を審尋する、あるいは当事者からの意見を聞いて、そうして両当事者に異論がないという見きわめがついたところで調書に記載する、そういう段取りになるかと存じております。  したがいまして、そういう段取りになるかならないかということについて、質問された青柳先生は非常に疑問を感じておられるわけで、私は、どういう疑問を感ずるか、あるいはこれでだいじょうぶなのだ、あるいはこれではあぶないのだということを判断する材料を実は持っておりません。かりに、疑問をもし感ずるとすれば、おそらく押しつけだろうと思います。その押しつけのおそれというのは、結局は裁判官ないしは調停委員に対する不信感のあらわれだろうと思います。  そうすると、その不信感がどこから出てくるのかということに相なります。そうしますと、それは調停委員の質の問題に還元されまして、調停委員をどのような質に持っていけばいいのかということになりまして、調停制度一般を否定するのでない限り、それからその質の問題にかかわりをもって十六条の二を批判するとすれば、現在の調停委員の大半は質が悪いから十六条の二はだめだというのか、それとも、中には質の悪いのもいるけれども大半はそうでないからこれでやってみようというのか、どちらかの選択になるのではないかと思います。その点についての材料を私、持ち合わせておりませんので、非常に大ざっぱなことしか考えておらないわけでありますけれども、伺うところによりますと、弁護士の総数の三〇%が調停委員になっておると聞いております。調停委員全体の中での割合は一〇%ないしはそれをこえると聞いております。その弁護士たる調停委員の方が、青柳先生のおっしゃるような心配の方とはとうてい思われません。そうしますと、あと残りは九〇%足らずでございます。その九〇%のすべてが心配な調停委員とも思われません。かりに半分といたしますと四五%でございます。そうしますと、その四五%足らずが心配だとしましても、その残りの四五%はそう心配する必要はない。それに弁護士たる調停委員の一〇%余りを加えますと、五五%をこえるのではないか。そうしますと、大体において心配しなくてもいい。しかし心配する要素はなお残っている。そういうことではなかろうかと大ざっぱに考えておりまして、それから先のことは、私は材料を持っておりませんので、何ともお答えすることはできない次第でございます。
  39. 青柳盛雄

    ○青柳委員 たいへんに論理的な御説明をいただいたわけですが、私はまだ、こういう制度を設けなければならないその積極的な理由を理解できないばかりでなく、マイナスをおそれるのでありますが、たまたま先生もおっしゃいましたし、また、法務省でしたか、最高裁判所の説明をされる方のお話も聞いたのですが、当事者が言いそびれているというか、自分の口からはそれでいいとは何か言えない、しかし内心では、だれかが言ってくれれば、それでしぶしぶでもないけれども顔を立てるような意味でそれをのむ、内心はそれで満足しているんだ、そういうきっかけを与えてやるのにいいんじゃないかというようなお話、これが案外と無責任なものを助長することになると思うのです。自分が納得はいかなかったのだけれども、何か合意書があった、そして調停委員さんがこれでいいと言った、だからしかたなしにのんじゃったのだ、あとになって考えてみるとくやしくてしょうがない、とてもそんな調停に応ずる気にはなれない。これは調停委員が悪いという意味で言うのではなくて、そういう思想状態に置かせておいた制度が悪い。つまり、自分が納得の上で妥協に応じたというのならば最後まで文句をどこへも持っていきようがないわけだ。ところがあとになって考えてみたらどうもばかばかしい話だった、そのときには自分も内心はしようがないかなと思っていたところへ、調停委員さんのほうでそういう案を出してくれたものだからのんだというようなことは、内心ではそう思っておってもはたの者に対してはあれは押しつけられたのだというようなことを言い、またみずからをも欺くというようなことになって、こういう制度はたまたま調停委員にいい人があるからとかないとかいうより以前の問題として調停制度の本旨に反するんじゃないか、仲裁と同じような形になってしまってまずいんじゃないかというふうに思うのでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  40. 小山昇

    小山参考人 仲裁制度と同じになってまずいということは、仲裁制度を否定することになりますが、仲裁制度は現在法律上の制度として存在しかつ機能しておりますので、仲裁制度に似るようになるからまずいということは少なくとも現行法上は言えないのではないかと思います。  それから第一点の、書面による合意をしてしまったからもうしかたな、調停条項に服しよう、そしてあとでぶつぶつ言うということは、おっしゃるとおり確かにまずいと思います。私の個人的な趣味と申しますか人間としてのあり方から申しましてもまずいと思います。しかしながら、ひるがえって考えてみますと、まだまだ日本人の大半はそういうものではなかろうか、つまり面と向かって合意内容を討論し、そして自分の力で合意にまで持っていくということは、まだまだ日本人の社会ではなかなかできないことではないか、これはあらゆるところでそういう現象が見られます。私は札幌に住んでおりますけれども、たとえば札幌の市会議員の方あるいは道会議員の方の中にもだれか間に入ってくれるのを待って争いを解決しようという身がまえの人がたくさんございます。したがいまして、青柳先生のおっしゃることがまずいということになれば、日本人の大半が現在まだ持っている体質がそもそも悪いということになるのでありまして、もし日本人のこの社会である法律をつくろうとするならば、日本人の体質からどこまで離れた法律をつくらなければならないかということになりまして、その点になりますと、もはや単なる法律論ではございませんので、これ以上私お答えできない次第でございます。
  41. 青柳盛雄

    ○青柳委員 参考人の先生方のお話を聞いて私のほうが一つ意見を述べないというような形でおしまいにするのは、何か非常に責任のない態度だと思いますので、私の考えは決して調停制度を無視するとか、仲裁制度そのものを否認するということではないので、調停制度を生かすのにこのような条文を新しく入れておくこと、これは事実商事調停鉱害調停ですかにあってほとんど活用されていなかったものを今度民事調停に入れたら役に立つだろうという全く空想的な話かあるいは場合によったら官僚的な思想かどちらかがあってほとんど死文化したというか実際に使われないものを何か今度生かしてくるというような感じがするために、第三者的な立場の学者でおられる方ならばもうちょっと中立公正といいますか、もっと第三者的な御意見も承われるかと思って実はお尋ねしたわけなんですが、これ以上小山先生のお話をお聞きするのもいかがと思いますので、私はこれで質問を終わりにいたします。
  42. 小平久雄

    小平委員長 正森成二君。
  43. 正森成二

    ○正森委員 最初に横地さんに伺いたいと思いますが、先ほど江尻参考人の御意見の中で東京調停協会臨調審答申対策委員会では協会長あてに、調停委員をもって裁判所職員とし、裁判機構の一部となすがごときものであってはならぬというような意見が出ているんじゃないか、だから調停協会の全体の御意見とおっしゃっても、どれだけ有力な傘下の組織の御意見をくみ上げておられるか疑問であるという意味のことがことばでも言われましたし、この文書に載っておりますが、あなたのほうでは、意見をまとめられるのについてどういうような手続あるいは論議が行なわれたのか、それを伺いたいと思います。
  44. 横地秋二

    横地参考人 お答え申し上げます。  私どもが今回のいろいろな要望書等をつくりますにつきましてはまず臨調審答申対策委員会というものをつくりまして、その委員会の構成でございますが、これは当初全国から委員を八十八名選びまして、そのうち十六名が小委員になりまして協議、検討を続けた次第でございます。その委員会の全体会は二回設けました。それから小委員会は四回持ちました。小委員会におきましてある程度協議、検討をいたしました後に、今後は一々地方から出てくるのも事実上困る場合があるから委員長に一任するというお話をいただきました。そういうお話はいただきましたけれども、委員長といたしましても。一人でもって進め決定すべき事柄でございませんので、在京の日調連の理事、それから副理事長、その他便宜東京に出てこられた機会にその委員会がありますときにはその方々にも参加願いまして、協議、検討して意思をきめた次第でございます。そういう次第で今日に至っております。
  45. 正森成二

    ○正森委員 私の質問の東京調停協会から私が申し上げましたような裁判所職員にするようなことについては慎重であるべきだというような、そういう意見があなたのほうに出てきているということは事実ですか。
  46. 横地秋二

    横地参考人 それは東京調停協会から正式にそういうものが提出されたことはございません。ただ、そういうことが行なわれたということは東京調停協会の機関誌で拝見いたした次第でございます。
  47. 正森成二

    ○正森委員 今度の改正では日当手当になって六千五百円ということですが、私どもが最高裁判所から事前に伺っているところでは、実際には調停事件というのは午前と午後に分かれるわけですが、午前だけ出た場合、午後だけ出た場合には半額の三千二百五十円支給することになるであろうというように説明を受けております。  ところで、現在は日当が千三百円ですが、事件ごと調停委員は指定されますから、私どもは同僚に調停委員がたくさんおりますので知っておりますが、たとえば午前に二件をやった人は二千六百円受け取るというのが通例であると聞いております。そうしますと今回の改正は実は羊頭を掲げて狗肉を売るというと非常に気の毒ですけれども、千三百円が六千五百円になると実に四倍ないし五倍で、たいへんな改善だといわれますけれども、実際は実情としては二千六百円が三千二百五十円になるという場合が非常に多いのではないか。そのために公務員化されるというようなことになるのではないかという意見がありますが、実際の実情として、事件ごと日当が支払われて、千三百円掛ける二、千三百円掛ける三の場合は少なかったと思いますが、そういうことが実情として行なわれていたのかどうか。また今回半日の場合には六千五百円じゃなしに三千二百五十円支給される予定であるということを御存じなのかどうか、それを承りたい。
  48. 横地秋二

    横地参考人 お答え申し上げます。  最初に、一日当たり六千五百円だから半日なら半分であろうというお説、これはそうであるという決定的な意見を聞いてはおりませんが、おそらく扱いはそうなるだろうとは存じております。  それから、現在は日当として一件千三百円だ、だから一日に二件やれば二千六百円ではないか、極端なことを言えば一日に四件やれば五千幾らになるんじゃないかという趣旨のお尋ねだったといま伺っておりましたが、ところが現在におきましても、日当は一件千三百円ですが、二件以上扱った場合には千円をプラスした二千三百円を限度とするということに定められておりますので、いまお話の二件やって二千六百円というお話は何かお聞き違いか、あるいは離れた土地からいらっしゃるための旅費などが加算されての数字かと存じます。定めは二件以上やってもすべて二千三百円でございます。
  49. 正森成二

    ○正森委員 私どもは現在の調停委員待遇が非常に不十分である、かりに半日出てきても六千五百円支給すべき場合が非常に多いんじゃないかというように思いますので、そのこと自体には反対ではございませんが、最高裁の答弁では、三千二百五十円、午前ないし午後の場合には支給するというようになっておりますので、その程度の物質的改善のためにいままでの日本の調停制度の根本的なものまで変えてしまうというようなことについて、はたしてそれがいいかどうかということは検討しなければならない問題であるというように考える次第でございます。  そこで人見参考人に若干伺いたいと思いますが、たしか羽田野委員の質問に対しまして、今度の民事調停法に「調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行なう。」というようになっているが、調停委員としての限界の中でやりたいというようなことをいわれたのに対して、最高裁当局が、嘱託にかかる紛争解決に関する事件関係人の意見聴取を行なう、それ以外にはないというようにいっておるがという羽田野さんの御意見に対して、そういうような歯どめがあれば……。(羽田野委員「そういう意味ではない、事実の調査です」と呼ぶ)事実の調査を行なうということであれば、これは歯どめで安心だというようにいわれたと思うのですね。しかし、そのこと自体もいろいろ意見がありますが、かりにそうだとしましても、この第八条ないし家事の場合には別の条文ですが、「最高裁判所の定める事務を行なう。」というようになっておりまして、これは最高裁判所規則できめるわけですから、今回の国会でどのような答弁をしましてもそれに法的に拘束されることはないわけですね。最高裁判所規則で半年先、一年先、二年先、三年先にはいろいろとおきめになるわけで、そういうような余地を残しておるという点ではやはり調停委員に対してどのようなことを言いつけてくるかという点では必ずしも歯どめにならないのではないですか。
  50. 人見康子

    人見参考人 お答え申し上げます。  先ほどの速記録からの御調査で私も初めて伺いましたが、その他の事務というふうなことにつきましては事実の調査ということに限定されるというふうな歯どめはついているというお話を伺ったわけでございます。そうしますと、これは法律につきましてそういうふうな歯どめがつくといたしますと、通常法律規則関係から申しまして、規則のほうで法律できめましたワクをこえるような内容のことが定められることはまずあり得ないのではないかというふうに考えております。
  51. 正森成二

    ○正森委員 それがちょっと誤解があるわけで、法律には何もないわけです。法律には「必要な最高裁判所の定める事務を行なう。」ということで、限定がないわけです。下のほうの規則で一応今回だけはそういう歯どめをしておるけれども、もとになる法律に歯どめがないわけですから、その規則は幾らでも変えることができる。法律のほうが上ですから。その上のほうの法律に「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行なう。」、何でも入ってくるようになっておる。それなら、結局あなたの御理解に反してやはり歯どめがないことになるのではないかという心配が弁護士会その他から出てくるのはまことに無理からぬことだというように思われるのですね。あなたの場合は法律にそういう歯どめがあるなら、こう御理解なさったわけでしょう。それが事実は、この条文を見ると、違うようになっているというように思われるのですね。  次に、小山先生に伺いたいのですが、十六条の二で、結局日本人の性質としてもう少しのところまでいっているけれども、自分たちだけではなかなかできない、調停委員が入ってくださればできるというような意味をおっしゃいました。私の理解が間違っているかもしれませんけれども。これは私も弁護士をしておりまして調停事件はたくさんやっておりますので知っておりますが、それはある程度事実なんですね。ある程度歩み寄っているけれども、おれのほうでここまで歩み寄ったということは、どういったらいいか、けったくそが悪いといいますか、言えない、しかし調停委員がこう言ってくれれば、これは第三者が言ったことだからおれもそれでのもうというような気持ちを依頼者が、あるいは申し立て人、相手方が持つということは、これはあり得ることなんです。しかし、そのことと、そういったから調停委員会がいったことに何でも従うというのは、これは性質の違う問題でありまして、ここまで歩み寄ったけれども、もう一声、調停委員会が何か案を出してくればというのは、あくまで、その案を聞いてそれで調停委員の案だから自分はこれに同意しよう、こういうワンクッションが入るわけなんですね。私たちはそういう意味での調停委員役割りはまさに期待いたしますし、われわれは代理人として、実はしばしば調停委員にそういうプッシュをしてもらうようにということはいっているわけなんですね。それはある意味では日本人の性質でもありますし、これは日本人に限らず万国共通の性質ではないかというように私は思うのですね。しかし、その前に、そうだからといって調停委員会が条項をつくってしまう、しかもその条項を事前に見せないでそして書面があるからそれで合意するということになりますと、そこには一応飛躍があるのではないか、こう思うのですね。  それで、非常に俗なことですけれども、私はしばしばやっておりますと、弁護士が非常にるる説明しまして本人が非常に納得してお帰りになった場合でも、うちへお帰りになると、このごろは女性の力が強くて女房におこられたとみえまして、次には帰ってまいりまして、それでいよいよおっしゃることが、自分が同意されたのに、実は弁護士さんが押しつけたからおれは同意したんだというようなことで、女房の顔をお立てになるという方もあるんで、これは弁護士をしておりますと経験することなんですね。現在でもそういうことだのに、ましてこういう制度ができますと、その人たちにとっては非常に困る場合があり得る。いま羽田野先生の御質問に、やはり最高裁の規則で事前に当事者意見聴取しなければならないということがありますけれども、その聴取というのは、あなた百万円払いますかあるいはどのくらい払いますかということでもいいわけで、その場合に百万円をどのくらいの月賦でどう払えということまで示して、それでやることまで義務づけてないんじゃないか。そうしますと、やはり本来自発的意思で決定さるべき調停については、少し変革ではなかろうかという気がするんですが、いかがでしょう。
  52. 小山昇

    小山参考人 ただいま正森先生ですかおっしゃいましたこと、そのとおりだと思います。すなわち私が午前の一般論で申し上げましたように、理論的には、合意で成立すべき調停における合意は、当事者自身がその内容をみずから考えた上での合意でなければならない。しかるに十六条の二は、合意内容部分的にであれあと回しにして合意だけを先取りしておる。この点は、理論的にはまさに問題だということは先ほど申し上げたとおりでございます。しかしこれにつきましては、これも先ほど申し上げましたように、それがいいことかいけないことか、弊害が多いのか弊害が少ないのかということになりますと、私は実際にそういう必要性、合意があらかじめあったら成立するであろうということを感じたことがございませんので、経験がありませんのでその点は何とも申し上げられないということでございます。  それから歯どめの点でございますが、合意があって調停条項案がつくられて、そしてそれを示さないままに調書に記載されるであろうという点でございますけれども、その点はまさに運用の問題でありまして、この運用の問題をもしこの国会におきまして非常に心配される向きがございましたならば、その点は法律で明文化する必要があるかと存じますけれども、さて運用の問題をどのような条文でもって明文化するかということになりますと、まさに運用の問題というのは千差万様でございますから条文化できない性質のものではないか。したがいまして、残るのは抽象的な条文、この十六条の二この合意についての真意及びその調停条項案について納得いった形で同意するだろうかどうかということをくみとる機会というものが必要である。それもまた、その機会をどのように利用するかというのは運用の問題でございますから、運用よろしきをもし得なければおそらく利用率がゼロあるいはそれに近くなりましょうし、運用よろしきを得れば利用率が高まってくるであろう。そこで利用率が高まるか、それともそうでないかという見通しは私は持っておりません。そこで、それじゃあそういう規定を置かないのか置くのかということになりますと、私は一般論で申しましたように、実際に経験した人がそういう機会があってそれを利用すればうまくいくといっている以上は、道だけは開いておいてもいいだろうということを先ほど申したわけです。しかしそれにしても、これも一般論で申しましたように、いま緊急にこれが必要かというと、私、最終的な結論は持たないという、これも先ほど申したとおりでございます。
  53. 正森成二

    ○正森委員 いま小山先生の御意見を承ったわけですが、まさに条文の中に歯どめがないということは、法律として不十分ではなかろうか。この十六条の二を見ますと、「申立てにより、事件解決のために適当な調停条項を定めることができる。」「前項の調停条項を調書に記載したときは、調停が成立したものとみなし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。」こう記載してあるのです。調停条項を事前に示せとも何とも書いてない。しかもまさにこういうことが必要なのは、調停条項を事前に示して同意が得られるなら、十六条の二は要らぬわけです、普通の調停のときもそうやっているわけですから。だから十六条の二が働くのは、まさに調停条項を見せたんじゃ調停がまとまらない場合か、調停条項を見せて同意が得られないにもかかわらず、なおかつ調停をさせようという著しく職権的なことが、事前に書面合意があるという一事をもって要請される場合に初めて十六条の二が働く。そうでなくて、調停条項を定めて、こういうぐあいに考えましたけれどもいかがですかということで、そこでさらに当事者の自発的な合意が求められるような努力がなされ、かつその合意が得られるなら、これこそまさに普通の調停なんで、十六条の二は要らないわけですね。ですから、小山先生の御意見を承っておりますと、まさに小山先生の理想的な調停が行なわれる場合は十六条の二が要らない場合なんじゃないか、そういうように考えますと、この条文自体に歯どめがない場合には、やはり十六条の二というのは慎重でなければならないのじゃないか。これは小山先生のお立場を尊重しても、そういうことがいえるのじゃないかというように私は理解したわけですけれども、そういうように歯どめがない場合に道だけこしらえておくということは、法律のたてまえとしては、その道がどういうぐあいに踏まれるかわからない場合には、やはり危険なものを残しておる、いいように使われる場合があるかもしれない、三〇%、五〇%は。しかし残りはいいように使われない場合があるかもしれない。一たん合意しましても、こんなのだったらとんでもない、合意するのじゃなかったという場合がしばしばあり得るわけです。しかも不服申し立ての方法がない、和解調書と一緒なんですから。こういうことになるのじゃないかという気がします。これは私の感想です。  さらに小山先生にもう一点伺いますが、たしか先生は「自由と正義」という日本弁護士連合会の小冊子の一九七三年三月号に「調停・和解・訴訟——調停の問題点について——」という論文を書いておられますね。それを拝見いたしますと「期待される調停委員像」ということでいろいろあげておられます。全部は長いから申し上げませんが、まず第一に聞き上手であること、第二番目に問題点を的確にとらえる能力があること、三番目に当事者の人柄、性格などを正確に理解できること、四番目にものごとについて重要か軽微か、筋が通っているかいないか、正当か不当か、適正か過度かなどについての感覚が鋭いこと、最後に調停委員は自分の意見を押しつけてはならないというような——ほかにございましょうが、そういうようなことをあげておられるわけですね。そしてその節の一番最後で「裁判官でもこのような能力を具えることは容易ではない。」しかしこれは調停委員に期待される能力で、「ごくおおざっぱにいうと、行政職公務員の役職コースにあるものはかかる能力を養成するのに適した環境に置かれていない。意識の構造が支配型指導型になるような職場にあるからである。」こう御説明になっておるわけですね。そこで私は、こういうお立場がかりに正しいとすれば、やはり調停委員というのは当事者の自発的な合意によってできるところに訴訟と違う妙味がある、もし理屈で割り切るなら訴訟をすればいいわけですから。そういうことを考えますと調停委員というのは、少なくとも調停主任の裁判官以外は、国民の中にあり、中から出、そして終われば国民の中に帰るというのが望ましいのじゃないか。そうしますと今回の、六千五百円にするためか何か知りませんが、調停のときだけでなしにそれ以外でも公務員であるというようなかっこうは、先生も言っておられる指導型といいますか、あるいは上から的といいますか、そういうことに傾斜するおそれをやはり含んでいるのじゃなかろうかというように思いますが、いかがですか。
  54. 小山昇

    小山参考人 いまの御質問の前のことでちょっと補足して説明いたしますが、十六条の二につきまして、合意が成立しそうならば十六条の二は要らないじゃないかというお話がございましたが、先ほどの御指摘の分析の中で、なお残された状況があると思います。それはどういう状況かと申しますと、書面による合意があるというのはどういう状況かということでございます。当事者の間の意見がまだあまりにも離れている場合には、書面による合意はないだろうと思います。したがって、書面による合意がある場合には、当事者の間でかなり接近している、そういう状況で調停条項案がつくられるという場合には、調停条項案がかりに当事者に示されないままに調書に記載されたとしても、当事者の主観的な予想を裏切る程度というのは非常に少ないのではないか。もしそれが多ければ、書面による合意というものはおそらくあり得ないだろう。したがいまして、そういうことから考えますと、おっしゃるような弊害は、私としてはそれほど感じられないのでございます。  それから、十六条の二の条文にもありますように、「調停条項を定めることができる。」とあるわけでして、そしてまた、調停委員会調停条項を定めた場合に、当事者に示して意見を聞くか、示さないまま調書に記載するかというのは、全く運用の問題でございます。それで、示して合意が得られる場合には、それだったらおそらく十六条の二は要らないだろう。むしろ示さないでそのまま調書に記載するということで初めて十六条の二が生きるであろうと考えましても、その場合には、当事者がなおふっ切れなかった非常に狭い範囲の譲歩を、あっ、こういうふうにきまったのか、それじゃそれでもうぶっ切ろうという一つのきっかけになるという点もあり得るんじゃないか、これを補足として申し上げたいと存じます。  それから、先ほどの御質問でございますが、調停をやっている間は職員になり、やめたらまたすぐもとへ戻るということでございます。私、調停委員となるべき者を当初からの調停委員にするということの相違をいろいろと考えてみたわけでございますが、一つは、参与員は依然として参与員となるべき者として残されております。調停委員が今度は調停委員となるべき者から当初からの調停委員に任命される、そういう違いが出てきております。その違いがどこにあるかということを考えてみたわけでございますが、参与員と違いますところは、調停委員は、単にその人の知識、経験、能力を裁判官の判断の参考のために供するだけではなくて、みずからある一定の労務を——労務ということばはどうも適当じゃございませんけれども、労務を提供するわけでございます。したがいまして、一定の労務を、たとえ短い任期の間であり、かつ指定を受けたときにのみ提供するものであれ、提供する者に対しましては、それ相当の反対給付を、調停委員としては無償の奉仕だと考えておりましても、国の側としては提供すべきではなかろうかと考えておるわけでございます。  ところが、先ほど江尻参考人から指摘されましたように、労務に対する反対給付というのは手当ということに概念上なりますけれども、手当ということになりますと、一般職給与に関する法律の第何条かに該当しなければ出せないのではないか。もし出せるなら、また話は別でございます。もし、一般職給与に関する法律に該当するとしなければ出せないとなると、一般職給与に関する法律の第何条かに該当するかどうかを考えなければならない。ところが、その法律の条文を私読みますと、法律の条文では、一定の身分を保有した者がその身分を保有する期間一定の労務を提供した場合に、手当を与えるというわけでありまして、調停委員となるべき者は、その法律の規定の前提する条件に入っておらないのではないか。そこでおそらく、これは私の想像でございますけれども、その法律を適用するほかに手当の出しようがない、手当を出ずには身分をそういう者にしなければならないというふうに考えられたのではないかと推察しております。  それから、これは御質問にあったかどうかちょっとあれですけれども、国民調停に参加するというのが司法参加というふうにいわれておりますが、理論的に考えますと、国民国民のままで司法参加することはできないわけでございます。司法参加をするためには司法参加をすることのできる根拠を与えられなければならない。それが現行法では、調停委員となるべき者に対して事件の指定をすることがその根拠になる。改正案では、調停委員に任命することがその根拠になる。現行法では、指定によって指定された限りで非常勤職員たる身分を持ち、それから改正案では、任命によって職員たる身分を持つ。いずれも非常勤であるという点では同じであります。ただ違いますのは、任命によって一定期間職員たる身分を指定の有無にかかわらず持つというところが違ってまいります。そのことがいわゆる官僚化につながるであろうかということの御質問があったかとこちらでかってに受け取っておるわけでございますけれども、確かに一般に国民が、司法参加にせよ、あるいは政治参加にせよ、行政参加にせよ、参加する場合には、その根拠となるべき一定の身分というものを臨時的にであれ与えられます。ところが、与えられた瞬間に、あるいはその与えられたことによって、自分は司法に参加しているんだという意識を持ちまして、その意識がいい意味に働く場合と、悪い、マイナスのほうに働く場合とございまして、マイナスのほうに働くのはいわゆる官僚化ということだろうと思います。そのマイナスのほうに働く要因としては、政府あるいは裁判所のほうからの働きかけといいますか、事実上の運用と、調停委員自身の意識の面と両方ございまして、その調停委員意識の面という点だけをつかまえますと、調停委員となるべき者から当初からの調停委員になったからといって、そう急激に官僚化への傾向が起こるとは思われないのでございます。官僚化の傾向を持つような素質のある人は調停委員となるべきものという現行法のもとでも、すでにかなり官僚化した調停委員が正直のところございます。したがいまして、官僚化傾向というのは制度を変えたからといってそうなるのではなくて、むしろその調停委員の質の問題ではなかろうかと私は考えておるのでございますけれども……。
  55. 正森成二

    ○正森委員 時間でございますので終わらせていただきますが、私はいまの小山さんの陳述を聞いておりましても、質の問題だけには帰せられないのじゃないか。質はございましょうが、制度というものがやはり質のほうに逆作用する、世の中は弁証法でございますから、そういうように私としては思うのですね。  私の意見をちょっと申し上げておきますと、手当にしなくても、日当でいまの現行法で相当額を支給することができる。また先生方にしましても、先生方はきょうは別でございますが、四時間をこえますと七千円台に上がるということで、二時まで以上質問しろというような陰の声もあるような次第でございまして、努力をしておるわけです。私たちはそういうことで、先生方が日当でおいでいただいても、いや手当じゃないから、きょうの意見が非常にまずかったとは思わないわけで、十分に拝聴しておるわけですから、調停委員の諸先生方にとっても、これは額が支給される根拠があるわけですから、日当でも待遇改善につながるというように私は思うのですね。そして事前に書面の同意があるから、十六条の二の場合ですが、私ら調停委員会に何べんも行きまして、まさに合意がある契約書で、しかも二カ月、三カ月前の両方の判が押してあり、成立に疑いのない契約書があっても、なおかつもめるのが紛争なんです。ですから私たちは書面合意があるという一事で何事もまかせられるとは思わないし、それに交通裁判その他いろいろございますが、略式裁判というのがあります。検察官のところへ行って正式裁判でなくてもいいと言うて判こまで押してくるのですけれども、外してきてから、いやえらいことしたということで正式裁判を申し立てる、あるいは命令が出てから不服をいうという場合が幾らでもあるわけですね。これは不服をいえる制度があるから助かるのです。ところが今度の場合はないわけですから、私は書面だけで合意があるからいいというようには一がいにいえないと思いますが、なお先生の貴重な御意見参考にして、審議を進めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  56. 小平久雄

    小平委員長 稲葉誠一君。
  57. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私、午前中ちょっとおくれたものですから、あるいはお話が出ておったのかと思って、その点について、もしダブりましたならば失礼をお許し願いたいと思います。  日本社会党の稲葉誠一でございますが、人見先生はお時間があれだということでございますので、私は実は最初に、日弁連の方にこういう法案が出てきたのを——私も弁護士をやり、調停委員などやっておりまして、いま調停委員やっていませんで、調停代理人のほうでありますが、いろいろ話をしてみますと、どうしてこういう法案が出てきたのだろう、最高裁なり法務省の真意がどこにあるのだろうということをみんなからいわれるわけですね。これは日弁連の方にあとからお聞きすることにいたしまして、最初に人見先生と小山先生にお尋ねいたしたいのは、実はこの調停制度というものの存在理由、これは訴訟の場合と対比してどういうふうに考えたらいいだろうか。たとえば岩波講座の現代法の五に金沢大学の佐々木吉男助教授——これはおもに民事調停のことだと思うのですが、私は民事調停と家事調停とはちょっと性質が、訴訟調停との関係でだいぶ違うとは思います。そこで主として民事調停については小山先生、それから家事調停については主として人見先生にお伺いをし、時間の関係で先に人見先生にお答え願いたい、こう思うのですが、この佐々木さんのものを見ますと、調停制度の存在理由として簡易、迅速、低廉性が一つ、それから円満性が二つ目、三番目が妥当性、こういうふうに見て、小山先生の著書も引用されていて解決の妥当性に求めておられる。これを最も詳細に分析しておられるのが小山教授だということでいろいろ言っておられるわけです。これはまたあとから出てくると思いますが、日本の場合はヨーロッパなどと比べまして非常に権利意識が薄い。そういうようなことできわめて日本的というか東洋的といいますか、そういう形で調停というふうなものが出てくるのじゃないか。だから調停制度の存在理由というのは、訴訟と比べてみて一体どこにあるのだろうか。むしろ訴訟による救済を求めないで調停による救済を求めるという行き方が、はたして新しい憲法の考え方からいって正しいものなんだろうかどうだろうか、これを私ども疑問を持つものですから、これを最初に人見先生、あとから小山先生にお聞かせを願いたい、こういうふうに思うわけです。
  58. 人見康子

    人見参考人 お答え申し上げます。  家事調停の場合は民事調停と違いますという点は御指摘のとおりでございまして、家事事件の場合の一つは、事件の性質そのものから家事調停というものがたいへんによろしいのではないかというふうに考えております。これは先ほど御指摘もございましたように、確かに簡易、迅速、低廉ということは民事調停及び家事調停、両方を通じましての事件でございますが、同時に家事調停の場合には非公開の場所でできるという点で、家庭内の事件紛争に合致する手続がとれるということ、及び単なる合理性だけの判断ではまいりません面がございますので、その点につきましても調停委員というふうな方たちの参与ということで、純法律的だけではいかない点に調停の一種の妙味があり得たのではないかというふうに考えるわけでございます。その点で現在の家事審判法では、訴訟事件でありましても、家庭内の紛争に関する事件については一応調停前置主義というふうな形をとりまして、訴訟の前に必ず調停を経るというふうな構造をとっております。しかしなおかつ訴訟性のあります事件につきましては、これは訴権を奪われておるわけではございませんで、必ず訴訟というふうな最終的な手段は保障されているわけであります。しかし事件の実際の解決を見ますと、これは訴訟事件よりは調停解決されることが非常に多いわけでございまして、これは日本の家事調停が、また日本のみならず、家庭内の事件解決としてはかなり適切な運用が行なわれ、同時にまた当事者にとりましても、ある程度満足を与えるような結果から出てまいりました筋ではないかというふうに理解しております。その程度のお答えでよろしゅうございましょうか。
  59. 小山昇

    小山参考人 たいへん基本的な問題を質問されまして、うまくお答えできるかどうか存じませんけれども、まず第一段の私の考えといたしまして、訴訟における裁判官の判断基準と調停における調停委員会の判断基準の違いがあるということを申し上げておきたいと思います。訴訟における裁判官の判断基準と申しますのは、あらかじめ法律によって与えられております。民法、商法等の法律によりまして、こうこうこういう場合にはこうこうこうであるということがきめられておりましてそれはなぜそういうふうに明文の規定でもってきめられておるかと申しますと、強制的に解決する以上、国としては同じ型の事件は同じように処理しなければならない、そういう考えからきておると考えております。したがいまして、それはむしろ裁判官に対するコントロールでございます。それに対しまして調停におきましては、むしろ直接に一般的な正義に基づいて事件解決する。もちろん法律に定めてあることも、それが正義であるからそういうふうに法律で定めてありますけれども、法律で一々こまかく規定しておりますのは裁判官に対するコントロールであります。調停におきましてはそういうコントロールを必ずしも置かないで、むしろ直接に実情に即しつつ、正義に反しないような実際的な紛争解決をはかろうというのが調停の本旨と考えます。  そうなりますと、すぐこういう疑問が起こります。民法、商法の条文の中にもいわゆる一般条項と呼ばれているものがあるじゃないか。たとえば借地法、借家法に正当の事由がございまして、正当の事由がある場合でなければ明け渡しを要求することはできない。しかし、正当な事由というのは非常に抽象的でございまして、これをわれわれ一般学者は一般条項と呼んでおりますが、一般条項で裁判官裁判するんではないか、それでは調停とどこが違うかということに相なります。  そこで、第二段として手続法上の制約というのがございます。すなわち、訴訟におきましては、当事者が主張した事実、当事者が証明した事実のみを資料として事件解決いたします。したがいまして、弁論主義とかあるいは挙証責任の分配というようなことで事件解決され、しかも強制的に解決されてしまいますから、当事者としてはあれは実情に合わないという不服が残ります。これが調停になりますと、そういう手続法上の制約がございませんので、調停委員会はフルに活動して実情を探り、そして実情に見合った解決をはかることができる、これが調停の特質でございます。したがいまして、現在のように権利意識がかりに高揚したといたしましても、権利意識が高揚した現在におきましても、なおかつ調停の存在理由はあります。一説によりますと、私もかつてはその方向で考えたこともございますけれども、調停というものは訴訟の欠点を補うものだという面がございましたが、他方におきましては、調停そのものが一つの独自の紛争解決の手段として、正義にかなった紛争解決をもたらすことができるものだというふうに考えております。したがいまして、そういう意味におきまして、現在権利意識が向上した日本の社会におきましても、なお調停というものは必要でございます。  その傍証でございますが、現に権利意識が日本人よりははるかに高いといわれているヨーロッパ、中でも北ヨーロッパにおきましては、調停という制度はやはりございます。それはなぜかというと、やはり手続的に簡単に、そして簡易、迅速にものごとを処理することができかつ簡易、迅速であるために手続法上の制約に縛られない。したがって、実情に即した解決を迅速にはかることができるという効用がヨーロッパの社会でも一定の国では認められて、そして調停という制度が今日なお存在するのであると考えられるのでございます。  それでよろしゅうございましょうか。
  60. 小平久雄

    小平委員長 質疑の途中でありますが、人見参考人のお約束の時間が参りました。  人見参考人には、御多用中、本委員会のために貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとう存じました。どうぞ御退席を願います。他の参考人の方々には、いましばらくお願いを申し上げます。  稲葉誠一君。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 第一問として予定しておったのですが、こういう法案が出てきた真意が一体どこにあるのだろうかということです。これは私は、日弁連司法制度調査会の委員長である江尻さんに、日弁連意見になるのか個人の意見になるのかは別として、フランクに遠慮しないで言っていただきたいと思うのです。最高裁の人や法務省の人はいますけれども、そういう方々には御遠慮する必要はないんだろうと思うのです。そうでなければ日弁連の存在意義はないのですからね、あおるわけじゃないけれども。遠慮なくひとつお聞かせ願いたいと思うのです。  私どもも、みんなよくわからないと言っている。どうしてこういうふうになるんだろうか、特に自分の関係、それから最高裁が任命する、どうしてこういうふうにしなければならないんだろうか、どこかほかに意図があるんじゃないかとか、みんな疑問に思っているものですからお聞かせ願いたい、こう思うわけです。
  62. 江尻平八郎

    江尻参考人 お答え申し上げます。多少、私の私見がもし入りましたならばお許し願いたいと思います。  この法案日弁連に正式に持ち込まれたのは一月二十八日、法務省の参事官から持ち込まれて、こういう法律案を出したいということでございました。二日先の一月三十日には、もう閣議決定しましてすぐ国会に上程された、こういういきさつをとっておるのでございます。その少し前の一月十九日に、法務省関係の方から調停法改正案について、こういう要綱案でこのような改正をしたいという、ただ要綱案を書いたものを持ってこられまして、そして約二時間くらいの説明並びにそれに対する質疑をしたのでございます。しかし、そのときにはまだ法案はできてないという話でございまして、実際に正式に受け取ったのは、それから九日先の一月二十八日でございました。そして一月三十日に閣議決定、すぐ国会上程、こういうことで非常に急がれてやりまして、日弁連とも何ら十分な協議とか打ち合わせもなく、この法案提案されたわけでございます。  そこで、われわれこれをよく検討いたしますと、調停制度の根本に関するような非常に重大事項を含んでおりまして、特に事件を離れて調停委員非常勤公務員化する。さらにまた、特定事件の指定のほかに職務範囲を拡大しまして、相当広範囲職務拡張をはかる。さらにまた、調停委員会だけの調停条項による調停強制制度一般化する。商事調停鉱害調停においては活用された事例がほとんどない。ないものならば廃止すればよろしいものを、今度はまた一般の調停に持ち込んでこれを活用したいんだというような、いわば立案者側としては、国民の便利とかあるいは国民権利保障というようなものを犠牲にしてまでもこの法案を出したいという腹案でなかったかと考えるわけでございます。  われわれが想像いたしますところは、現在裁判官不足というものが相当強く叫ばれておりまして、実際の実数は私ども正確にはつかんでおりませんけれども、昨年の十一月、十二月ごろの欠員は、裁判官で二百七、八十名あった。それからまた、裁判官を配置しないところの裁判所、これは地方裁判所の支部、家裁の支部とかあるいは簡易裁判所を含んで二百四十庁の多きに及んでおる、こういうことでございまして、今回の立案者の意図するところは、要するに調停制度事務調停委員に転嫁して、そして大量の事件処理を調停制度を通じて行なわんとする、こういう考えではないかと推察されるわけでございまして、人権擁護の立場をとっております日弁連といたしましては、この法案は非常に遺憾な点がたくさんある、こう考えている次第でございます。
  63. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いま前段は、プロセスの問題ですね。お聞きしますと、おそらく法務省なり最高裁側から反論が出てくると私は思うのです。臨時調停制度審議会ですか、あれは弁護士代表で出ているじゃないか、あれは日弁連代表じゃないのか、出ていて、いま言うのは話がどうも筋違いじゃないかという反論がおそらく出てくるだろうと思うのですよ。きょうは政府委員に質問するあれではないから別ですけれども、出てくると思うのです。それから要綱になかったものが入ってくるというところもありますけれども、その点はどうなんでしょうかね。
  64. 江尻平八郎

    江尻参考人 これは本日、意見の冒頭で申し上げたところでございますが、司法制度改革は、日弁連を含む法曹三者の十分な協議意見の一致を見た上で着手しろ、こういうことを参議院法務委員会、あるいはまた昭和四十五年の四月十七日のこの衆議院法務委員会における決議も同じ趣旨の要望を前提とした御決議でございました。われわれといたしましてはこの決議を御尊重していただくというつもりでおりましたが、しかるに、この法案臨調審答申とも関係がございまして、あるいは臨調審答申事項の中にあるのであるから、提案者弁護士会に協議したということを言われるかもしれませんけれども、御承知のように、臨調審最高裁判所諮問機関でございまして、事の性質上、そこへ参加する弁護士というものは個人として参加したものでございまして、会を代表したものではございません。そのほかに、この提案の中には調停委員職務拡張に関する重要な部分が含まれておりますが、この事項につきましては、臨調審答申の中にもございませんし、十分な協議が遂げられていないわけでございます。そういう点をわれわれは重要視するわけでございます。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私どもが調停の代理人などをやっておりまして、これは小山先生が特にいいと思うのですが、いま日本の一般の人の場合は、かりに調停の場合に合意が成立したとしますね。ですが、調停調書に記載して初めて効力を持ちますね、あの法律では。ところが、そこですぐ調停調書ができるわけじゃございませんね。何か書記官が持っているメモか何か借りて、裁判官が読むだけですね。そうすると、当事者としては、名前を書いて、判こを押さない、判こは押さないから、いいか悪いかは別なんですが、日本の慣行として、判こを押さないから成立したと思っていない。帰りがけに弁護士のところに寄りまして、いま何か裁判所で成立したように言われたけれども、私は不本意だ、あるいは成立したかどうかのことも十分認識していないという場合が相当あるわけなんです。そこで、これは調停本質をどう見るかということで、当事者合意本質と見て、調停というのは当事者間の合意の成立をあっせんするものだというふうに見るのが、従来の学説における支配的な考え方だ。それは佐々木さんの書いたものの中に、先生の「民事調停法概説」ですか、これも引用され、それから宮崎教授のやつも引用されておるわけです。ところが実務家の中では、調停機関の判断性に本質を求める者が実務家に多いということで、これは裁判官司法研究の報告書や何かをおもに援用されておるわけですが、私は当事者間の合意本質と見るという見方と、調停機関の判断性に本質を求めるというのと、具体的にどこがどういうふうに違うのか、ちょっとよくわからないのですけれども、ニュアンスは確かに違うように思います。どこがどう違うのかわかりませんけれども、どちらのほうにより本質を置いて調停というものを考えるべきかということですね。そこら辺はどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。
  66. 小山昇

    小山参考人 調停手続の段階を簡単に振り返ってみますと、まず、調停を欲する人が申し立てをいたします。調停委員会があっせんをいたします。あっせんを重ねていくうちに、両当事者間に合意が成立いたします。成立した合意を調書に記載する。こういう段階になります。そこで、その幾つかの段階のうち、何が調停本質かということになりますと、調停制度一つの大きなねらいは、民事の紛争を国の裁判所によって強制的に解決するのも一つ方法であるけれども、しかしそれは当事者間で自分の力で解決できなかった場合にそういうふうな強制的な解決をすることであって、当事者間で自分の力で合意に到達して、自主的な解決ができれば、それにこしたことはないということから考えますと、調停本質は両当事者間の合意にあるといっていいと思います。  しかし、今度はその合意に対して法律上の効力を与えております。民事調停におきましては、調書に記載されますと裁判所の和解と同一の効力を持つ。裁判所の和解は確定判決と同一の効力を持つ。そういう法律上の効力を合意に持たせるということは、当事者が自主的な意思に基づいてなした合意を強制的に守らせるということでございます。  そこで、当事者合意をした、それを国の力で強制するということになりますと、国がその合意法律的な観点から見直す必要がございます。そこで、成立した合意が相当であるかどうか、成立した合意法律に反しないかどうかということをチェックする必要がございます。それが裁判官の本来の仕事であろうと思います。したがって、合意内容が妥当であるということをいわば保証するのは、調停委員会の良識とあっせんであろうかと思います。合意内容及び合意に至るプロセスが適法であるということを保証するものが法律専門家である裁判官の非常に重要な役割りであろうかと思います。したがって、そういう意味から、調停委員会には必ず裁判官が入っていなければならないということも出てくるかと思います。  したがいまして、合意制度上の本質であるけれども、それに法律上の効力を与えなければ法律上の効力のある調停にはなりませんので、法律上の効力のある調停本質とは何かというと、調書の記載ではなかろうか。理論上はそういうふうになるわけでございます。すなわち、調書に記載されない限り、調停というのは、成立はしても効力は持たないという意味で、調書の記載をまって初めて調停が完全な形になるという意味で、調書の記載ということもまた調停本質から除くわけにはいかないだろう。すなわち、実質的には合意法律的な観点から調書の記載、この二つが相まって調停本質を成り立たせている、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いまの調停委員会について、先生も調停委員をやっていらっしゃったわけですね。そうすると、実際には裁判官は出てこないですね。最後にまとまったときに書記官が呼びにいって、出てくるわけですね。ああまとまりましたか、ああこのとおりですかなんて、書記官が原稿を書いているのもありますし、あるいは裁判官がその原稿を見て直して、これじゃ執行できないとか、これじゃ登記ができないなんといって、法務局に電話をかけて調停条項を直したり何かしてやっているのがありますけれども、まあいろいろなのがありますが、ほとんど出てきませんね。それで、調停委員にまかせっぱなしということになるわけですが、そういうようなことについて、実際には裁判官はさっぱり出てこない。形の上では調停委員会を構成している。もちろん最後の記載するときには出てきますけれども、こういう調停制度のあり方というものが、本来法の目的としたあり方なのかどうかという点ですね。これはそんなことを聞くのはおかしいんで、わかっているといえばわかっているかもわかりませんが、どうもちょっとおかしいのじゃないかというふうに私は考えるのですが……。  それからもう一つは、これは江尻さんにお伺いをしたいのですが、この調停委員の選び方は、いままでは地裁の所長なり家裁の所長がいろいろな推薦なんか受けて選んでいたわけですけれども、いままで町村でやったり区なんかでやったのは、今度やめたかもわかりませんが、いずれにしても、その調停委員というのが、ことに一番弊害があらわれるのは、借地借家の場合の調停委員に、東京なんか別かもわかりませんが、地方の場合あらわれるわけですね。いわゆる徳望家というのは大体地主階級というか、いわゆる保守党というとおかしいけれども、保守的な色彩を持った人が非常に多いですね。ですから、私どもが調停に出てまいりますと、借地権なんというものは全く無視してしまうのですね。借家権なんというのは全く——全くといってはいけないけれども、だいぶ無視する。借りたものは返すのがあたりまえなんだと盛んに責めるわけですね。これでは借地権なんかあったってだめなんですね。借家権なんかあったって、借りたものは返すのがあたりまえじゃないか、そういう考え方の人が実際には調停委員に非常に多いですね。それで困っているわけなんですが、そういうふうな調停委員の選び方をこの法律でどうやって改正するのか知りませんが、そういう調停委員の選び方、弊害がこれによってなくなるものでしょうか。臨調の審議会のメンバーを見ますと、いろいろなメンバーが出ていますが、相も変わらず財界のメンバーが入っていますね。財界のメンバーは入っているのだけれども、これはそうでない階層の人は入っていないというような形でしょう。どうもそこいら辺のところはいまのままでいいのか。改正するといったって、そんなところどうやって改正しなければならないのか。こういう点については江尻先生にひとつお伺いしたいと思います。
  68. 江尻平八郎

    江尻参考人 お答え申し上げます。  調停制度運用する上において最も重要なのは、委員の人そのものでございまして、委員適任者を得るということが一番重要なことだと思います。今日のこの調停委員会を充実強化するということで、緊急にして最も必要なことは、この調停委員選考方法を具体的に、適任者をどうしたら得られるかというふうに持っていくことが一番重要な課題であると考えております。今回の改正によりますと、先ほどしばしば申し上げたのでございますが、非常勤公務員化することによって、あるいは調停委員職務拡張することによって、まず時間の余裕のない人とかあるいは多忙な人等の適任者裁判所職員としてのワクに入るのを快しとしない、あるいは調停の特定事件以外に仕事を持つということは自分はいやだというようなことで、適任者をむしろ選ばれなくなる。調停委員の給源というものが狭められているのじゃないかということを憂えているわけでございまして、臨調審委員をされておりました東大の川島教授もむしろ適任者裁判所職員のワクに入ることは回避するではないかというようなことも、審議の議事録によりますと申されておるようなわけでございまして、われわれ日弁連といたしましても、これでは適任者はむしろ狭まるのではないか、こう考えておるわけでございます。そこで、日弁連としてはこういう考えを持っておるわけでございます。各地方裁判所あるいは家裁に調停委員選考委員会というものを設けて、調停委員となるべき者を選任するには、この選考委員会の議を経なければならぬ、こういう構想を持っておるわけでございます。それで、この選考委員会は、この調停委員の推薦母体の代表者その他相当と認める部外者をもって構成する、そうして各地裁、家裁はその規則によって調停委員となるべき者の選考基準あるいは選考方法につき具体的な準則を定める、そうして特に調停委員となるべき者の一定の割合については公募の方法によって選考方法を考えてはどうかということを提案しているわけでございます。そうして従来の候補者の推薦母体というものには拘泥しないで、広い視野に立って各界各層から適任者を求めるということを考えておるわけでございまして、特に団体あるいは推薦母体に属しないところの者が、相当多数の国民がおるわけでございまして、その国民の中からあるいは勤労者の代表者とかあるいは消費者の代表者とかそういう者に選考委員会委員になっていただいて、そういう方面からもひとつ調停委員選任できるようにしたい、こう考えておるわけでございます。  なお、公募するということにつきましては、いろいろな議論がございまして、調停委員を公募というものにすることはなじまないではないかあるいはまた公募の方法が非常に困難ではないかというような御意見もございますが、それらの点についてはさらに検討して、とにかく公募によって国民の各界各階層あるいは推薦母体を持たない国民の中からも適任者を得る、こういう方針でいくことが妥当である、こう考えておる次第でございます。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 小山先生に最後に二つですが、さっきの、裁判官が出ない調停委員会といいますか、これは一体どういうふうに理解したらいいのだろうか、本筋からはずれているものだというように思うのですけれども、これをどういうふうにやって正当なものに、正当なものといいますか、するかどうかという点ですね、それが一つ。  それから「自由と正義」にあります先生の文の中で、職業的調停委員として調停官というものを本格的に養成するほかはないだろう一四年制大学卒業程度の学力ある者に試験をして合格者を一定期間研修させてそれを調停官補にしそれからまたあれして調停官とするというような御意見がございますが、こういうふうな御意見についても自由にお話しをお願いをいたしたい、こういうふうに考えるわけです。
  70. 小山昇

    小山参考人 まずいわゆる裁判官不在の調停といわれていることについて私の考えを申し上げますと、私は十年以上家事の調停委員をやっておりますが、その経験から申し上げます。  当初はおっしゃるとおり、裁判官がほとんど出ておいでになりませんで、いよいよ合意が成立したというときに、私どもが合意が成立しましたということを申し上げますと、裁判官が書記官を従えてまいりまして、そこで裁判官当事者の言うことを聞いて、口述して、それを書記官がメモに書き取るというようなことをやっておりましたけれども、裁判官不在の調停ということの批判が高まるにつれまして、裁判官調停にみずから関与することになりました。裁判所によって違うようでございますけれども、私は釧路に調査に参りましたときに、ある裁判所裁判官が言っておったごとでございますけれども、まず最初は、自分が記録を見て、そうして問題点を整理する、それからそのことを両調停委員に話して、法律上の問題点はこうだ、事実上の問題点はたぶんこういうことだろうということを調停委員に指示する、そこで調停委員が今度はあっせんを始める、あっせんで法律上の問題が出てきて、調停委員でわからないところがありますと、すぐまた裁判官に聞きに行くというようなことがだんだんと行なわれるようになっているのが事実でございます。  そこで、理論的に調停委員会においての期日において裁判官は常に終始、最初から最後まで立ち会わなければならないかという問題につきましては、私は、調停委員会の中における裁判官の機能の最も重要なところは、法律に照らしてみて、そこからはずれないように注意をするということであろうかと思います。裁判官みずから当事者をあっせんするというのも、これも裁判官の重要な働きでございますけれども、先ほど引用されました私の書いたものの中に、裁判官の中にも、ことに若い裁判官になりますと、その当事者説得するあるいはあっせんするということについて必ずしも十分でない方がいないとも限らないということで、また当事者の側からも、裁判官が出てくると非常に緊張してしまいまして言いたいことも言えないという状況もございまして、ときには調停委員だけであっせんすることが非常に効果があがるという事実がございます。こういう事実をもとにいたしますと、裁判官が最初から最後までべったりと当事者と面接するということは、合意の成立にまで持っていくのに必ずしも適当でない事件が間々ございます。そういう意味におきまして、裁判官の機能というものを調停手続及び合意内容の適法性のコントロールというところに重点を置きますと、裁判官は、重要なときに立ち会いかつ常に調停委員からの連絡、報告を受け、指示をしているということがあれば充実した調停はできるのではないかと考えておる次第でございます。  それから調停官のことでございますけれども、私が考えておりますのは、午前中にも申し上げましたように、調停制度の面、手続の面のほかに人の面が非常に重要である。人としては適格な人を発掘して採用すること、それから調停委員の研修によって能力を高めること、それから三番目に、英断をもって不適当な人を淘汰すること。その淘汰するということにつきまして実は私はこういうことを考えていたのでございます。真にその調停委員の質をよくするためには、英断をもって淘汰しなければならない。ところが、いままでの伝統的な各裁判所のやり方は、よほどのことがない限り、また本人が申し出ない限りは再任、再任、再任ということで、十数年に及んで調停委員をやっておられる方が出てきておる次第でございます。それはなぜかと申しますと、ある人を再任しある人を再任しないということは非常にやりにくい実情が、ことに地方ではあるようでございます。そこに私は着目いたしまして、一斉に再任しないという期間を一年ないし二年置いて、そして新しい人をどんどんと入れていく、そういう方法をとりますと、一年たちますと一年後に再任された、一年後にあの人は再任されなかったというようなことは目立たなくなりますし、調停委員の感情としてもそれほど刺激的ではないのかと思いまして、引き続き再任ということはしないで、一定期間、間を置くことを考えた次第でございます。そうしますと、現状といたしまして調停委員の不足というのが立ちどころに出てまいります。それを補う方法は何かということで、調停専門の人を養成するという方法を考えたらどうかというふうに思ったのが調停官の発想でございまして、調停主任官の発想とは全く別のものでございますので、あらかじめお断わり申し上げておきたいと思います。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これで参考人の先生方への私の質問は終わらせていただきます。いろいろ貴重な御意見をお聞かせいただきましたので、それを十分しんしゃくしてといいますか、と言っては悪いですけれども、今後の審議に当たらせていただきたい、こういうふうに考える次第でございまして、質問を終わらせていただきます。
  72. 小平久雄

    小平委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位にはたいへん長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明二十日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時六分散会