運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-15 第72回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十五日(金曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 谷川 和穗君    理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    塩谷 一夫君     早稻田柳右エ門君    日野 吉夫君       正森 成二君    沖本 泰幸君  出席政府委員         法務政務次官  高橋文五郎君         法務大臣官房司         法法制調査部長 勝見 嘉美君         法務省民事局長 川島 一郎君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      安村 和雄君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月十四日  辞任         補欠選任   福永 健司君     塩谷 一夫君     ————————————— 三月十四日  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願伏木和雄紹介)(第二五二七  号)  同(伏木和雄紹介)(第二五九〇号)  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願外  一件(瀬野栄次郎紹介)(第二五八九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出第一八号)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 それでは民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案について質疑をいたしたいと思いますが、提出者法務省ということでございますけれども、内容はこれはむしろ裁判所の問題でございますので、御答弁いただくのは、こちらからどちらというふうには御指定いたしませんが、ひとつ適宜裁判所あるいは法務省のほうでお答えをいただきたいということを最初にお願いを申し上げて質問に入りたいと思います。  初めに、最近における調停事件概況、これは資料もいただいておりますけれども、まず簡単に最近の概況についてお答えをいただいてから逐次質問に入りたいと思います。
  4. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 調停事件概況につきまして便宜上民事調停事件家事調停事件分けて簡単に御説明申し上げます。  まず民事調停事件事件数は四十七年度におきましては約五万件でございますが、これはこの十数年間漸次減少傾向を示しております。たとえば昭和三十年度で見ますと八万件ございましたのが、その後減少傾向を続けながら現在五万件になったということでございますが、この件数自体が減っているだけでなしに、これを第一審の民事訴訟事件の新受件数と対比してみますと、昭和三十年当時におきましては、訴訟事件一〇に対して調停事件は六の割合でございました。四十七年度におきましては訴訟事件一〇に対して調停事件は三の割合に減ってきているということが言えるかと存じます。なお、調停が成立した事件の新受件数に対する割合から見ますと、民事調停事件につきましてはおおむね六〇%台で、これはほとんど変わっておりません。審理期間は多少延びてきているという数字が出ております。  家事調停事件について見ますと、昭和四十七年度におきましては約七万件でございますが、これを三十年度に比べますと、三十年におきましては四万件でございました。その後漸次増加してまいっておるわけでございます。家事調停事件につきましては、家庭関係紛争につきましては調停前置主義をとっておるということがあるかと存じますので、事件数増加自体は必ずしも喜ぶべき傾向とは言いがたいわけでございます。なお、家事調停事件における成立率につきますと、昭和三十年当時は四八%の成立率でございましたが、四十七年度にはそれが四一・三%に下がってきているということでございます。調停に要する期間も漸次長引いてきているという結果が出ております。  このような数字に示されました現象の背後にあるものは何かという点でございますが、この点は臨時調停制度審議会審議におきましても指摘されておりますように、社会経済生活複雑化とかあるいは価値観の対立、法意識の高揚といったような一般的な現象前提といたしまして、新しい形の紛争関係調停にも持ち込まれてきておるということと同時に、調停事件の処理が非常に困難になってきている。そういう関係調停に対する国民期待に即応しかねる問題が出てきているのではないかというふうに考えられるわけでございます。  このような現象が一方にございますけれども、他面調停制度はなお国民の要望する制度であるという点につきましては、一つの例として御参考までに申し上げますと、これは全体の事件ではございませんけれども、交通事故に基づく損害賠償事件について、昭和四十六年に名古屋の地方裁判所調停委員をしておられます石井さんという方が中心になって調査された結果がございます。これによりますと、判決があった事件については全額支払いを受けた割合が三四%である、全くの支払いがないというのが二八・五%あるということでございますが、これに対しまして、調停によって成立した事件につきましては、全額支払いを受けた事件が七〇・一%、現在一部支払い中であるというのが一二・四%、合わせますと八二・五%が支払いを受けている。全く支払いなしという事件は三・二%にすぎないという結果が出ております。  こういった点から見ますと、調停制度はなお今後とも発展させ維持さしていく必要があるものではないかというふうに考えるわけでございます。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、最高裁から安村事務総長が御出席でございますので、お聞きしておきたいと思いますが、いまほど最近における調停事件概況について御説明をいただいたわけでありますが、この実情を踏まえて、最高裁では調停制度というものをどういう評価をしていらっしゃるか、これをまずお聞きいたしたいと思います。
  6. 安村和雄

    安村最高裁判所長官代理者 民事及び家事事件については私的自治原則というものが行なわれております。でありますから、紛争がどうしても片づかなくて訴訟になる事件のほかに、当事者の合意が成立しますならば円満に解決することが望ましい、特に民間調停委員の方が参加されて、常識のある、そしてまた条理に基づいた調停のうちに当事者の互譲が行なわれて円満な解決を見るということがあることはこれは最も望ましいことであろうかと思います。ただいまも民事局長が申しましたように、大正十一年以来五十年間にわたっております調停制度の成績というものは十分評価に値するものがあると思います。調停事件ですべての紛争解決するというのではありませんけれども、調停事件当事者紛争が円満に解決する道が開かれているということに裁判所は十分の評価をしているわけでございます。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 次にお聞きしたいのでありますが、今度の改正は、御承知のように臨時調停制度審議会答申に基づいて改正をされるということになったわけでございますが、この答申書はいただいて拝見はしておるわけでございますけれども、この審議会構成の問題、それから審議経過について簡単に御説明をいただきたいと思います。と申しますことは、御承知のように昭和四十六年の三月二十六日ですか、民事訴訟法等の一部改正が当委員会を通りますときに「政府及び裁判所は、司法制度改正にあたり、在野法曹と密接な連絡をとり、意見調整を図るように努めるべきである」。という決議がございます。この審議会構成審議経過において当然この決議も十分考慮されたことだと思うのでありますが、御承知のように、日本弁護士連合会から相当基本的な問題について強い反対の意見も出ていることを承知しているわけでございまして、そういう点からこの審議会構成あるいはその審議経過というようなものをまず承っておきたいと思います。
  8. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 先ほど調停事件概況で申し上げましたように、現在調停制度については必ずしも国民期待に完全にこたえていないのではないか、そういう面も出てきているのではないかという点を踏まえまして、調停制度に対する批判もいろいろ聞くようになってまいったわけでございます。そこで調停委員方々あるいは調停を担当しておる裁判官方々、あるいは当事者の代理人として調停に関与される弁護士方々からも調停制度について改善をすべきではないかという声が強く起こってまいりました。これを受けまして最高裁判所といたしましては、現行調停制度基本前提といたしました上で緊急に改善する措置検討をするという目的のもとに最高裁判所の中に臨時調停制度審議会を設けたわけでございます。審議会委員構成でございますが、審議会委員長のほかに学界から五名、弁護士代表の方が三名、調停委員代表の方が三名、経済界から三名、言論界から四名、裁判所から五名、行政官庁——法務省法制局等童名という構成になっております。なお幹事として別に学界から四名、弁護士から二名、調停委員から二名、調停担当裁判官から三名、書記官が二名、家裁の調査官が一名、そのほか事務総局法務省法制局等担当官幹事として入っております。  以上のような構成調停運用改善に関する審議を行なったわけでございまして、審議会といたしましては総会、部会等分けて合計十九回の審議を行なっております。その結果まとめましたのが臨時調停制度審議会答申ということになるわけでございます。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 次に、この審議会について、いま一つだけお聞きしておきたいのでありますが、この答申の中で大事な主たる事項は大体取り上げて今度の改正に盛られているようでありますけれども、中には本法案に盛られていない面もあるように拝見するわけでありますが、この盛られていない部分については妥当でないとお考えになって採用されなかったものかあるいはそれほど重要でないという趣旨で逐次採用するというようなお考えであるのか、その点いま一つだけお聞きいたしておきたいと思います。
  10. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいまの点は御指摘のとおりでございます。今回の改正は緊急に必要と考えられる最小限度立法措置を講じようとしたものでございますが、答申に盛られておりますいろいろな諸施策の中には、これは実施するにはなお検討を要する点が多々ございました。要約して申し上げますと、先ほど最高裁民事局長からも申し上げましたように、調停本質は任意的な紛争解決制度であるということでございますが、この本質との関連で問題のある点、それから裁判官調停手続主宰者とする調停委員会構成基本的な構造にかかわる問題それから他の法制、特に訴訟との関連において調停をどういうふうに位置づけるかというような観点から答申案に盛られている施策の中で、これらに関する事項がございましたので、この点はなお検討を要するということで、今回立法化を見送ったわけでございます。これらの事項につきましては、最高裁判所とも十分協議いたしまして、今後とも十分検討していくつもりでございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 それではこの法案に入って逐次質問を申し上げたいと思いますが、第一に調停委員身分について、そしてまた、それに関連して選任について改正されているようでありますが、その改正されている点とその必要性、なぜこういうように改正をしたのか、この点をまず御質問いたしたいと思います。
  12. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいまお尋ねの点は、調停委員身分改正ということでございます。御承知のとおり現行制度はいわゆる調停委員候補者制度をとっております。指定された事件限りで非常勤裁判所職員ということでございますが、今回これを改めまして、当初から非常勤裁判所職員としての身分を有することというふうにいたしております。先ほどからお話が出ておりますように、最近の調停事件の中身を見ますと複雑化しており多様化しております。この種の事件につきましては従来どおり一部の篤志家の善意の奉仕に期待するということでは不十分ではないかということでございまして、資質のすぐれた民間有識者調停委員に迎えまして、その知識経験を有効に活用するようにすべきではないかという考えからここで新しい職務内容を定めまして、複雑な事案を十分に把握していただきまして、積極的に調停を行なっていただく、そして充実した職務活動を行なう体制を整える必要があろうというふうに考えたわけでございます。そのためには待遇を改善する一方、当初から非常勤裁判所職員として任命することが必要であると考えたわけでございます。その利点といたしましては、資質、能力の高い方をお迎えすることによりまして、従来の候補者制度弊害でございますところの老齢化固定化あるいは肩書きの乱用といいますか、そういうことも防げるということ、それから第二番目には、どうしても事件限りの調停委員ということでございますと片手間意識が出てくるという点がやはり否定できないかと思いますが、その点を払拭する点がございます。あと研修の充実というようなことなども利点にあげられるかと存じます。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 それで逐次お聞きしたいと思うのですが、いままでは御承知のように調停委員一本であったわけでありますが、これを民事調停委員家事調停委員に今度はお分けになっているわけでありますが、これはどういうことからお分けになったのですか。
  14. 勝見嘉美

    勝見政府委員 ただいま申し上げましたように、当初から非常勤公務員として任命いたすことになりますと、そして事件の指定を受けて調停声やっていただくわけでございますが、身分としての調停委員と、それから職務活動を行なう機関としての調停委員ということで、その間の区別ができなくなりますので、名称としまして民事調停委員家事調停委員という地位最初からはっきりさせたほうが立法技術上もよろしかろうということで、このようにした次第でございます。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 次に御質問を申し上げたいのでありますが、民事調停法改正八条二項及び家事審判法改正の二十二条の二の二項、民事調停委員及び家事調停委員について、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定めることになっておりますが、身分に関する大事な点でありますので、この点は任免に関する事項をなぜ法律規定しないのかということが非常に問題になっておるわけでございますが、その点について御説明をいただきたいと思います。
  16. 勝見嘉美

    勝見政府委員 御承知のとおり、裁判所関係基本法であります裁判所法の六十四条には、「裁判官以外の裁判所職員任免は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所、各地方裁判所又は各家庭裁判所がこれを行う。」というふうに規定されております。このように裁判官以外の裁判所職員任免につきましては、いわば最高裁に一任されているのでございます。これは、申し上げるまでもございませんけれども、このような司法行政事務につきましては裁判所に責任を持っていただくことが司法の独立を確保するゆえんであるという趣旨規定であろうかと思います。今回の御指摘の条文もこの規定趣旨に従ったものでございます。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 それでは最高裁判所が定めるということになっておるのでお聞きしたいのでありますが、それなら最高裁判所は、民事調停委員及び家事調停委員任免について、その資格あるいは選考方法任期などについてどのように定めようとしているのか。その内容についてお答えをいただきたいと思います。
  18. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 まず任命資格の点でございますけれども、任命資格につきましては、現行調停委員規則によりますと、一般的には徳望良識のある方から選任する。そのほか宅地建物調停あるいは農事調停商事調停公害調停等につきましては、それぞれの分野について専門知識のある方から任命する、こういう規則になっておるわけでございますが、この点を改めまして、任命資格といたしまして、弁護士その他法曹の有資格者民事家事紛争に関する専門的な知識経験を有する者もしくは社会生活の上で豊富な知識経験を有する識見の高い者であって、原則として年齢四十年以上七十年以下の者とする。ただし年齢の点につきましては、特に必要があるときには四十年以上あるいは七十年以下であることを要しないものとする、こういう内容規則を定めたいと考えております。  この中で申します民事家事紛争に関する専門的な知識経験を有する者と申しますのは、調停事件内容に応じまして必要とされるような法律以外の分野での専門知識のある方ということでございまして、たとえば医師であるとか不動産鑑定士であるとか、あるいは公認会計士であるとか、あるいは建築士であるとか、そういった方々考えておるわけでございます。それから社会生活の上で豊富な知識経験を有する識見の高い者というのは、広く人生経験社会生活経験の豊かな方で良識があり、柔軟な判断力説得力を持った方という意味でございます。これらそれぞれの資格はもちろん兼ね備えておられる方もおられるわけであるとは存じますけれども、事件に応じまして適当な組み合わせをして事件を担当していただきたい、そういうふうに考えているわけでございます。  次に、任期については二年といたしたい。これは臨時調停制度審議会答申にも二年が相当であるというふうにいっておるわけでございますが、その理由として、きわめて多忙な方にも調停委員をお願いしなければならないといたしますと、あまり長い任期では適当でないのではないかという点と、それからある程度は調停事務に習熟していただく必要がある。そのためにあまり短い期間であっても適当ではなかろうということと、さらに適当な新陳代謝を可能にするためには二年程度が相当ではないか、こういう配慮から任期を二年といたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。  次に任命権者の点でございますけれども、任命権者については最高裁判所任命するということに定めたいと考えております。その理由は、裁判所における裁判官以外の職員任命につきましては、裁判所職員の中の事務局長、次長、首席書記官等の高い職務にある方の任命権最高裁判所にございますので、それとのバランスの上から見ましても、調停委員の方の任命権はやはり最高裁判所に置くことが望ましいのではないかと考えているわけでございます。もとより、任命権最高裁判所に置きましても、最高裁判所では多数の調停委員方々がはたして適格かどうかについての判断は不可能でございますので、実質的な選考地方裁判所及び家庭裁判所にお願いしなければならないわけでございます。  そこで、地方裁判所家庭裁判所が実際の選考を行なうにあたりましての選考手続運用基準を別に定める必要があろう。これは形式としては総長通達という形式で定めたいと現在考えております。そこで定めるべき事項でございますが、臨時調停制度審議会におきましても、調停委員選考につきましては、広く各界から適当な人の推薦を求め、各界意見を十分に聴取した上で選考基準を整備し、公正、公平な人選を行なうべきである、こういう趣旨答申をされておるわけでございます。  この答申趣旨を十分尊重いたしまして、たとえば地方公共団体弁護士会、大学、医師会あるいは全国農業協同組合あるいは都道府県に置かれている中小企業団体中央会あるいは日本技術士会日本建築士連合会その他各地の実情に応じまして、それぞれの公的な団体機関等に広く推薦を求めまして、各団体機関の御意見を十分伺いながら人選を進めていく。そしてさらに必要がありますれば、裁判所におきまして所長なり調停担当裁判官なりが面接を行なう。そういったようなことも手続の中に考えておかなければならないであろう。  さらに選考基準と申しますか、あるいは調停委員としての人柄理想像といったようなことも一応考えてみる必要があろうというふうに考えまして、そういった人柄としての理想像として私ども考えますのは、人間尊重精神持ち主である。人間関係に深い理解と関心を持っている方であること。あるいは奉仕的な精神の豊かであること。人間関係調整をはかるという点で素養を持っておられる方。あるいは庶民的で協調性がある。誠実で人間性が豊かである。的確なあるいは柔軟な判断力思考力を持っておられる方である。また実際に調停事件を担当される熱意があるということ。また健康状態が良好であること。家庭生活が円満である。そういったような一つ理想像考えております。これはあくまでも理想像でございます。  以上のような内容を含みました運用指針というものを定めたい、そのように考えております。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 そこでお聞きしたいのでありますが、調停委員身分非常勤公務員という、いままでと違った身分ということになりますし、いままでは地裁が任命しておったのを最高裁任命をするという形になるわけでありまして、その点若干の心配がないでもないというわけでございます。  三つ、四つあげてみますと、調停の特色である国民司法参与原則後退するのではないかというような心配もありますし、またこの調停委員が非常に官僚化するという心配がないか。またいままででもそういう傾向がなきにしもあらずでありました調停委員肩書きを利用するとでもいいますか、そういう弊害が一そう助長されるのではないか。また先ほどもちょっとお話がありましたが、相当な知識持ち主であるということになりますと、当然これは相当多忙な民間方々であるというような面からいたしまして、適任者を得るのに相当困難になるのではないか等々、四つばかりあげましたが、こういう点について相当心配している向きがあるわけでありますが、これについてのお答えをいただきたいと思います。
  20. 勝見嘉美

    勝見政府委員 まず第一点の、国民司法参加後退ではないかという御批判でございますが、今回の改正におきましても民間有識者司法参与という制度の特質には何ら変更を加えるものではないというふうに考えております。当初からの非常勤公務員と申しましても、現在各行政庁につくられておりますところの各種審議会各種委員会委員方々も、地位といたしましては当初からの非常勤公務員として任命されているものでございます。これらの委員会審議会は、いわば国民の意思を行政に反映させるという趣旨のものであろうかと思いますけれども、その身分をとらえまして、国民のいわば国政参与にはならない、マイナスであるというようなことの批判はないと思います。例としてはあまり適切でないかもしれませんが、地位から申しまして、身分から申しまして、民間有識者司法参与という線の後退ということはないというふうに考えております。  それから官僚化あるいは官僚統制化という問題でございますが、官僚化の点につきましては、先ほど申し上げました各種委員会ないし各種審議会委員方々自身自分官僚であるというふうに思っていらっしゃる方はおられないというふうに思いますが、ただ調停委員の中には、あるいは自分調停を非常にたくさんやって何か裁判官になったような気になりまして、そのような意識で日常行動されるという点はあるいはあるかもしれませんが、これはむしろ制度の問題というよりは、調停委員自身の身の持し方の問題ではなかろうかと思います。  それから官僚統制の問題でございますが、最初から非常勤公務員という身分を取得いたしましても、調停委員の活動が任命権者によって制肘されることはないわけでございますので、そこに、たとえていえば最高裁判所が統制をはかるというふうなことはあり得ないというふうに考えております。  それから第三点の肩書き利用の弊でございますが、制度論として申し上げれば肩書き利用の弊はむしろなくなるというふうに考えております。現在の候補者制度のもとにおきまして、調停委員という名刺を刷っておられる調停委員がおられるとすれば、それは現在の制度下においてもすでに肩書きを乱用されているということになるわけでございますが、ただ、先ほど申し上げましたように、いわばその名刺を振りかざして日常行動されるということにつきましては、制度の問題ではなくて、やはり先ほど申し上げました調停委員自身の身の持し方の問題で、むしろ運用といいますか、そのほうの問題になろうかと思います。  それから第四点の、資質を高め、専門的な知識のある方を採用するということになりますれば、そんないい人はたくさんいないのではないか、むしろ多忙でいい人がいない、とりにくいのではないかという点があろうかと思いますが、この点はむしろ任用の実際に当たられる裁判所のほうからお答え申し上げるほうが適当かもしれませんが、制度的に申し上げますと、調停事件の処理につきましては、現在もそうでございますけれども、必要な限度で担当していただくということでございますので、その方が非常に多忙であるという場合には、それなりの事件の割り当てを行なっていると思います。また現実の多くの調停委員の平均負担件数も、従来の標準的な調停委員の負担件数とほぼ同じになるのではないかというふうに考えております。  なお、先ほど申し上げましたように、第四点につきましては裁判所のほうからもお聞きいただきたいと存じます。
  21. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 ただいまの調査部長の御説明に若干付加して申し上げたいと存じます。  非常勤公務員ということで任命されると、時間的にも拘束を受けることになるのではないかというおそれがあるというような御疑問もあるやに伺っておるわけでございますけれども、そういう点は全くないということを申し上げられるかと存じます。現在でも調停委員候補者の方に調停事件をお願いいたします場合には、候補者の方のお時間の都合を伺った上でお願いしておるという運用をいたしておるわけでございますが、これが非常勤公務員ということで調停委員任命されることになりましても、そういう運用に変更があるということは私ども考えておらないわけでございまして、御無理をお願いすることによって、調停委員方々がおいでいただいたといたしましても、決して望ましい調停ができるわけではございませんので、やはり調停委員方々のお時間その他御都合を伺った上で調停をお願いする、そういう運用が今後とも行なわれるものと確信いたしております。  それから肩書きの点でございますが、これは厳密に申しますと肩書きの冒用の問題と悪用の問題とがあるのではないかと考えられるわけでございます。冒用の問題というのは、候補者制度がなくなりますれば必然的になくなるわけでございます。肩書きを悪用するというのは、肩書きを不当、違法な目的で利用するということであろうと思いますが、これは調停委員の方の人格の問題でございまして、制度の問題ではなかろうと考えます。悪用はどういう身分になりましてもやはりいけないことでございまして、そのようなことは調停委員方々も十分自制されることと存じますし、またそういうことが起こらないよう私どもとしてもできるだけの配慮をしてまいりたいと思います。  それから、いろいろ各界の多忙な方々にも調停委員をぜひお願いいたしたいと存じておるわけでございまして、その点では御無理をお願いすることになるかもしれませんが、たとえばこの点につきましては、高松の調停関連をいたしまして報告が出ておるわけでございます。高松ではかなりお忙しい方に御無理に調停委員をお願いした。ところが、その調停委員方々調停を担当してみまして、調停の仕事に非常に意義を感じられまして、むしろ積極的に調停に御協力をいただけるようになった、そういうような実例の報告もございました。今後私どもといたしましてもできる限り広報活動を活発にいたしまして、多くの方々各界方々に御協力を賜わるようにお願いしてまいりたいと存じております。
  22. 大竹太郎

    大竹委員 次に、この問題についていま一点お聞きしておきたいと思うのであります。先ほど各界に対して意見を聞いて選ぶというお話でございましたが、こういうような点からするなら、むしろ各界代表というものでこの調停委員選考委員会というようなものをつくって、これにまかせたほうがより効果的でないかという意見が相当あるようでありますが、これについての御所見を承っておきたいと思います。
  23. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 選考委員会なりあるいは諮問委員会なり、そういった委員会制度的に設けるということになりますと、裁判所といたしましては委員会の御意見を尊重する、それが制度のたてまえになろうかと存じます。そこで、調停事件運用につきまして全責任を負っておるのは裁判所でございます。したがいまして、その調停事務を担当される方の人選につきましても、やはり裁判所が全責任を負うべきではないかというふうに考えております。そういう意味で、委員会的なものを設けますことは、かえって責任の所在を不明確とする心配があるということでございます。  もう一つは、特に点数制をとっておる試験制度のようなものでありますれば、画一的な選考なり推薦なりができるわけでございますが、具体的な人事の問題について、点数制をとらない、いわば人間的な評価の問題に関しまして選考委員会というようなもので審理をすることは現実の問題としては不可能ではなかろうか。ことに多数の調停委員方々の問題でございますので、結局は書面審理による形式的な審査に流れる。かえって自主的な公正公平な審査が不可能になるのでないかということが第二点でございます。  第三点といたしましては、今度の調停委員につきましては、一般職の職員の給与に関する法律の二十二条一項の「委員」ということになるわけでありますが、二十二条の一項の「委員」の人選につきましてこの種の委員会を設けておるという例を私ども知らないわけでございます。  以上のような理由で、制度としての委員会を設けるというようなことは考えておらないわけでございます。できる限り自主的に御意見を伺い、公正公平な人選をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  24. 大竹太郎

    大竹委員 いま一つ、これは選考にあたってむしろこちらの要望事項というようなことになるかもしれませんが、お考えを承っておきたいと思うのであります。  いままでもそうでありましたし、今度の改正によってもそういう傾向があると思うのでありますが、とかく指導者層あるいは知識人、そういうようなものに偏しまして、この調停制度の本来の目的である庶民感情といいますか市民感情と申しますか、こういうものをほんとうに理解している、よくわかっておる人が調停委員の中には少ないのではないかという批判というかそういう心配もないわけではないのであります。もちろん、これから新たな法律によって御出発になるわけでありますので、その辺についてのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  25. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 ただいまの御意見全く同感でございまして、今後とも広く各界各層、またそういう団体等に属していない層からもしかるべき推薦を受けて、適当な方を調停委員にお願いしていくという努力を続けてまいりたいと思います。
  26. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、この選任について最後にいま一つだけお聞きしておきたいのでありますが、そういたしますと、いままでの調停委員の方、これは候補者であるわけでありますが、たしか二万何千人ですか現在おられるのが、今度の選任方法によりますと私どもの考えでは相当減るのではないかと思いますけれども、その点はどうか。また、ある程度減らないにしても、現在の調停委員資格に欠けるというようなことで、相当新旧交代という状況になるのでありますか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  27. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 新法が施行されることになりますと、一応現在の調停委員候補者は全部候補者としての身分を失うことになりますので、新法に基づきまして調停委員としてあらためて選任されるということになろうかと存じますが、現在の候補者の大多数の方々は、新たな制度のもとにおきましても任用資格のある方であるというふうに私どもは考えております。しかしなお一面、新しく各界から推薦を求めまして新たに調停委員になっていただく方々も相当多数あるのではないかというふうに考えております。ただ、新しく調停委員になっていただく方々には、どれだけ調停に時間をさいていだだけるか、その予測もつきかねるわけでございますので、現在のところ人数がどのくらいになるというようなことを申し上げることはいたしかねるわけでございますが、何よりも現在進行いたしております調停事件の運営を阻害することがあってはならない、これがやはり根本的には私どもの運用にあたっての心がまえではないかというふうに考えておりますので、それほど大きな差異は出てこないのではないか、そういうふうに考えております。
  28. 大竹太郎

    大竹委員 次に、先へ進みたいと思いますが、この待遇の問題で相当改正されているようでありますが、新旧の待遇について、比較をして御説明をいただきたいと思います。
  29. 勝見嘉美

    勝見政府委員 御指摘の待遇改善でございますが、現在の調停委員には、御承知のとおり、最高裁判所の定める旅費、日当、宿泊料が支給されることになっております。これは先ほどお話し申し上げましたように、現在の調停委員は奉仕者というふうに観念されておりまして、そのいわば実質的な内容は、実費弁償という域を出ていないものでございます。したがいまして、調停委員に対して支給しております日当は、主としていわゆる出頭雑費だというふうに考えられておるわけでございます。現在の金額は、千三百円以内というふうに最高裁判所規則で定められております。なお、宿泊料につきましては、一般公務員の六等級以下にランクづけされております。  これに対しまして、改正法案における調停委員には、従来の奉仕者として職務を行なっていただくということでなくて、公務員としての職務の遂行として行なわれるということでございますので、裁判所職員臨時措置法で準用しております一般職の職員の給与に関する法律という法律がございますが、この二十二条一項の「委員」に当たるということで、委員手当を支給するというふうにしたものでございます。なお、予算関係につきましては、私どものほうから申し上げる筋合いでないかもしれませんが、六千五百円ということで妥結しているとのことでございます。  なお、申し落としましたけれども、そのほかに、一定の要件のもとに旅費、日当、宿泊料が支給されることは現在と変わらないというふうに御理解いただきたいと存じます。
  30. 大竹太郎

    大竹委員 たしかこれはこの十月から、国会を通れば施行するということになっておるわけでありまして、予算もそういうように盛ってあるように思うのでありますが、ただ、ここでお聞きしておきたいことは、調停委員の待遇を改善することについては異論のない人でも、この身分の問題、あるいは、あとから御質問を申し上げますが、職務内容の問題等々に反対意見を持っている人等の中で、非常勤公務員とする身分改正をしなくとも、調停委員の給与という面については今度のような改正ができるのではないかという意見もあるわけでありますが、その点はどうなんですか。
  31. 勝見嘉美

    勝見政府委員 今回の身分改正につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。それとともに、調停委員にその職務内容地位にふさわしい待遇を保障すべきであるという考え方も当然であります。今回調停委員資格要件の高い職員とされることになりましたことから、その結果といたしまして、委員手当の支給という形で待遇改善が実現されることとなったわけでございます。  ただいまお尋ねの、現在の調停委員のままで手当を支給できるのではないかという点でございますが、現行給与法に照らしますと、現行法下における調停委員では、委員資格の点で問題があるのではないかというふうに考えます。先ほど別な例で引きました給与法二十二条に規定されております「委員」は、顧問あるいは参与という名称のものと並んで規定されておりますが、これはやはり相当高度の学識経験を持つ職員を予定しているものと考えられます。そこで、現在の調停委員資格要件、それからまた、制度として認められております合意調停委員あるいはいわゆる臨時調停委員等を考えてみますと、現在の制度下において、調停委員に給与法の二十二条一項の手当を支給することは、きわめて困難であるというふうに考えている次第でございます。今回の改正資格要件が高められることになりまして、このことから、委員手当の支給が実現されるということになるというふうに考えておる次第でございます。
  32. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、もうあまり時間がございませんから、先へ進みたいと思いますが、一番問題になるのは、この職務内容の問題ではないかと思いますが、まず、いままでの法律と今度の改正によって職務内容はどういう点で改正されたか、そしてその理由を簡単に説明していただきたいと思います。
  33. 勝見嘉美

    勝見政府委員 今回の改正によりまして、職務内容がふえたことは御指摘のとおりでございます。当然のことでございますが、従来どおり、調停委員会を組織して調停事件を処理するということについては、もちろん変わりはございませんが、今度の改正法によりますと、まず、第一種の仕事といたしまして、受調停裁判所の命を受けて、自分が担当していない他の事件について専門的な知識経験に基づく意見を述べることでございます。それから、第二種の職務といたしまして、いわゆる隔地者間の調停において、調停が行なわれております裁判所あるいは調停委員会から、事件関係人の意見の聴取を嘱託してきた場合におきまして、受託裁判所の命を受けて、その関係人から意見の聴取を行なうことでございます。第三種といたしまして、以上のほか、「調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」これが一応第三種の事項というふうに分かれると思います。  この理由でございますけれども、今回の改正によりまして、先ほどからお話が出ておりますように、その資格要件というものを非常に高めたというところから、その調停委員知識経験及び能力を有効適切に活用させていただきまして、複雑困難化している調停事件を適正に処理しようという趣旨改正でございます。  なお、第三種の職務と申し上げました「調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務」につきましては、裁判所のほうからお答え申し上げたいと思います。
  34. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 法律案の八条で新しく定められました調停委員職務内容は、いずれも調停委員調停委員会構成員としてでなしに、他の調停委員会で行なっている調停事件に関しての職務でございます。この関係最高裁判所が定める事務として考えておりますのは、現在嘱託にかかる事実の調査という点だけでございます。  これはたとえて申しますと、東京の調停委員会調停をいたしておりまして、当事者が大阪に住んでいる、一方が大阪に住んでいるというような場合に、大阪の関係について事実の調査を必要とする場合に、大阪の調停委員の方に事実の調査を嘱託することを認めようということでございます。いずれもこの八条の関係事務は、ただいま調査部長からも御説明ございましたように、調停委員方々の豊富な知識経験、特に専門的な知識経験調停事件の処理の上に活用することによって、複雑、困難化した事件を適正、円滑に処理するということを目的とするとともに、あわせて当事者の経済的な負担の軽減を目的といたしておるわけでございます。専門的な意見の陳述につきましても、ただいまの規則で定めようといたしております嘱託にかかる事実の調査にいたしましても、特に利用されるのは専門的な知識経験を生かすということであり、こういう調停委員の専門的な知識経験を生かす方法がなければ、結局鑑定という方法によらざるを得ない。鑑定によりますと、鑑定費用は当事者負担ということになるわけでございます。そういう意味での費用の負担の節減をはかり得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。  さらに、これに関連して一言、規則考えております内容について御説明申し上げますと、八条はただいま申しましたように、調停委員会構成しない調停委員職務でございますが、調停委員会構成する調停委員にいわば受命調停委員としての事実の調査をお願いできるようにしたいということでございます。これは現行民事調停規則十二条におきまして、調停委員会は職権で事実の調査ができる。また調停主任裁判官に事実の調査をさせることができるという規定がございます。したがいまして、現行規定によりますと、調停委員会すなわち裁判官を含め三人の方々で事実の調査をするか、あるいは調停主任である裁判官にさせるかのいずれかしか方法がないわけでございますが、事実の調査を三人の方がそろってされれば一番望ましいわけでございますけれども、三人全員がそろうというためには、期日を入れるのに非常に困る場合が多いわけでございます。そういった場合に裁判官に事実の調査をさせるということになるわけでございますが、事実の調査対象が専門的知識経験を有するという場合におきましては、裁判官では役に立たないわけでございます。したがいまして、調停委員会のメンバーの中に専門家であられる調停委員が入っておられる場合には、そういう調停委員の方に事実の調査をお願いするようにしたい。これもまた八条の趣旨と同様に、当事者の経済的負担の軽減にも役立ち得るし、あるいは迅速な処理という点においても役立つのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  35. 大竹太郎

    大竹委員 いまの御説明をお聞きしておりますと、第八条の一番最後の「その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。」というこの項が、ほとんど必要ないように思うのでありますが、どうですか。
  36. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 調停委員会における事実の調査に関する規定は、従前は法律の中にはなくて、規則で初めて認められておる事務でございます。したがいまして、それとのバランスから申しましても、嘱託にかかる事実の調査の関係は、やはり規則のほうで定めさせていただきたいというのが私どもの希望でございます。
  37. 大竹太郎

    大竹委員 そこで、この第八条について、いろいろな反対理由その他あるのでありますが、まずお聞きしておきたいのは、御承知のように、旧法の七条によりますと、七条の三項「調停主任は、事件を処理するために必要があると認めるときは、前項に掲げる者以外の者を調停委員に指定することができる。」ということになっておりますが、これを利用すれば、隔地間のものは別といたしまして、少なくとも他の調停事件について専門的な知識経験に基づく意見を述べるというようなことは必要ないのじゃないかと思うのですが、その関係はどうですか。
  38. 勝見嘉美

    勝見政府委員 先ほどちょっと触れましたけれども、今回の改正は、資質の高い調停委員をお迎えするということでございまして、現行法下における臨時調停委員ないしいわゆる合意調停委員制度はこれを廃止したわけでございます。したがいまして、ただいま先生の御指摘の形で活用するという方式はできないということになろうかと思います。ただ、おそらく御指摘の点を理解いたしますと、その意見を述べさせるような方を、自分のところの裁判所でやっている場合に意見を述べてもらいたいような方を、その調停委員会構成員として入ってもらって、そこで意見を述べさせたらどうか、こういう御趣旨かと存じますが、そういたしますと、そういう方法ももちろんあり得るかと思いますが、かりに第一種の事務と申し上げました専門的意見の陳述ということに限って申し上げますと、その種の方はいろいろお忙しいでございましょうし、すべての事件にそういうふうな調停委員構成員となるということは、あるいは事実上非常に困難であるというような実際上の問題もあろうかと思います。  なお、運用につきましては、また、裁判所のほうからお答えいただきたいと思います。
  39. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 ただいま調査部長から御説明ございましたように、非常に御多忙な専門分野で活躍しておられる方々調停委員をお願いいたしました場合に、その調停委員に終始事件に立ち合っていただくということが困難な場合があり得るのではないか。そういう場合であっても、やはりその専門的な知識をその事件運用の上においては生かす必要があるという場合に、一回だけ来ていただいて御意見を伺う、それを参考にしていわばしろうとの調停委員方々調停をあとまた進めていく、こういう運用が一番望ましいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  40. 大竹太郎

    大竹委員 次にお伺いしたいのですが、現法の第八条でございますが「調定委員会は、当事者意見を聞き、適当であると認める者に調停の補助をさせることができる。」という条文がございます。今度はもちろんこれは除かれるわけでありますけれども、私はやはりこういうことは必要じゃないかというふうに一いままでこの条文はどういうように実際に運用されておったかよくわからぬのでありますけれども、これは私やはり必要な条文じゃないかと思うのですが、これはもちろん現状を私よくわかりませんので、お聞きしておきたいと思います。
  41. 勝見嘉美

    勝見政府委員 御指摘のいわゆる調停補助者の制度は、今度の改正法では廃止いたしました。この趣旨は、ただいま実際の運用につきましては裁判所のほうからお答えいただきたいと思いますが、私どもの聞いておりますところでは、実際上利用されることがきわめてまれであるということと、利用される場合には、利用されている実際の調停補助者を見ますと、必ずしも現行法が考えているような方に、調停の補助をしてもらっていないというような実情にございますので、この際廃止をしたわけでございます。
  42. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 この補助者が設けられました趣旨は、当事者双方に対して説得しやすい立場にある方に補助者として立ち会っていただいて説得をしていただく、こういうことにあるようでございまして、利用のされ方は——ほとんど現在利用されておらないわけでございますけれども、利用のされ方につきましては、ただいま調査部長言われましたように、いわば地方的な有力者というような形で利用されるということで、これは必ずしも調停制度本来のあり方として望ましくないのではないかというようなことも考慮されまして、削除されることになったものと承知いたしております。
  43. 大竹太郎

    大竹委員 それで、この新しい第八条でありますが、これについていろいろな批判がございます。たとえば調停委員が単独でいわゆる職務を行なうということで、裁判官不在の調停になるのではないかというような心配もあります。また、「裁判所の命を受けて、」というようなことからいたしまして、一面単独でやるというような心配があると同時に、調停委員に対する裁判所の指揮監督を強化し、無定量の職務を行なわせることにならないかというような心配もないわけではありません。ことに私が指摘しました最後の「最高裁判所の定める事務を行う。」というようなことからいたしまして、公務員職務内容というものは法律に直接規定するのが妥当ではないか。それにもかかわらず、こういうきめ方をするのは先ほど申し上げましたような無定量の職務を行なわせるということで、そういう面で将来の歯どめがないのではないかというような心配あるいは批判、それに基づく反対というものがあるわけでありますが、これについて御説明をいただきたいと思います。
  44. 勝見嘉美

    勝見政府委員 第一点の裁判官不在の調停を助長するのではないかという御批判でございますが、この点につきましては先ほど申し上げました、今度いわば加えられた職務内容は、いずれも補助的、手段的なものにすぎません。もちろん調停行為自体を調停委員単独でやっていただくという趣旨ではございませんので、ことばどおりにお答えいたしますと、裁判官不在の調停を助長するということはないというふうに考えております。  それから第二点の裁判所の命によりという点でございますが、この「裁判所」と書いてございますのは、手続法上の裁判所考えておるわけでございます。この「裁判所が」ということが出てきた理由を申し上げますと、このたびの改正法によって新しい職務調停委員ができるということにお認めいただきますと、その職務につきまして、どの職務をどの調停委員にやっていただくかということについては、だれかがこれをきめなければならないわけでございます。いろいろ考えられるわけでございますけれども、だれかにやってもらうという指定そのものは、いわば事務分配的な職務命令の性質を持つものだと思います。したがいまして、この事務分配をやる主体はどれが一番適当であるかということを考えました場合に、やはり調停委員の執務状況等につきまして十分把握しているはずの裁判所が最も適切であるというふうに考えて、裁判所の命によりということにしたわけでございます。  その裁判所の命によりということで、指揮、監督の強化になるのではないかという御批判でございますけれども、その点につきましては先ほど申し上げましたように、その命令自体は事務分配でございますので、その指定自体で指揮、監督を強化するということにはならないというふうに考えております。また実際上の問題といたしまして、当然、当該調停委員の御都合をお伺いした上で行なわれるということになろうかと思いますので、実際上のいわば職務の強化ということにもならないものと考えておる次第でございます。  それから最後の無定量云々の点でございますが、現在でもそうでございますが、調停事件を受理いたしますと、その受理をいたしました裁判所は、これを裁判官単独のいわゆる調停をやるか、あるいは調停委員会を組織して調停をやるかというふうな選択をいたします、いわば調停機関の決定をいたします。それ以降のその事件の処理につきましては、調停委員会で行なう場合には当然調停委員会によって行なわれるわけでございます。したがいまして、事件調停委員会でやるということにきまったあとの事件処理につきましては、いわゆる受調停裁判所の命じ得る事項は理論的にはきわめて限定されたものとなるわけでございます。したがいまして、裁判所の命ずるという文言から、いわば無定量の義務が発生するということには相ならないというふうに考えておるわけでございます。  それから最後の公務員職務内容については、法律によって定めるべきではないかという御批判の点でございますが、もちろん公務員職務内容は法令によって定められるべきものでありますけれども、また一方、できるだけ法律で直接規定するということは望ましいことであると考えられますけれども、必ずしもすべてが法律によって規定すべきであるというふうには考えていないわけでございます。現にほかの立法令もございますけれども、いわば重要な職務内容法律規定されておりますれば、付随的なものは下位法令に委任するということも許されるものというふうに考えております。そのようなことでございまして、歯どめの問題、無定量の問題等につきましては、そういう御心配は私どもは制度論としては要らないというふうに考えております。
  45. 大竹太郎

    大竹委員 時間がございませんから先を急ぎますが、現法律の三十一条でございますが、これによりますと、商事調停事件については調停委員会が最終的な紛争解決内容を定めることができる、こうされておるのでありますが、新しい十六条の二によりますと、これを今度は民事調停一般に認めるということにしておるのであります。したがいまして、この商事調停のこの条文が相当利用されるといいますか、非常に効果的だということで、民事調停一般についてもこの十六条の二で今度はおきめになったのだと思うわけでありますが、この商事調停のいままでの活用状況というもの、そしてこれを一般に認めた理由とでも申しますか、これを簡単に説明していただきたいと思います。
  46. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 この項に基づく調停条項を定める規定の利用状況につきましては、昭和二十七年から四十六年までの二十年間を見ますと、報告されておる事例としては合計三十四件にすぎないということになります。年平均一件ないし二件という程度でございます。  その少ない理由でございますけれども、鉱害調停事件そのものが非常に少ないということと、もう一つは商事調停事件につきましても、最近では商事調停事件民事調停事件の区別が必ずしもはっきりしない関係で、ほとんど民事調停事件として取り扱われているという例が多いということ、その二つが理由ではないかというふうに考えております。
  47. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 改正理由につきまして、手続の問題でございますので私からお答えを申し上げたいと思います。  この現行法三十一条の規定、御指摘のように当事者が合意したことに基づきまして、調停委員会調停条項を定めるという制度でございます。この制度は、現行法におきましては、商事調停及び鉱害調停のみに認められておるわけでございますが、その理由は、商事調停事件あるいは鉱害調停事件というのは、普通の調停事件の中でもやや特殊な性格を持っておりまして、その解決には特殊専門的と申しますか、専門的ないし技術的な知識によって、専門的ないし技術的な要素を含んでいる問題が多いということがいえようかと思います。  そこでこういう事件におきましては、そういう事件解決するに適当な知識を持った者が公正かつ合理的な判断をすることによって、適正妥当な解決が得られるという場合が考えられますので、商事調停及び鉱害調停についてだけこの制度が認められておるわけでございますが、最近御承知のように、交通事故に基づく調停事件でありますとかあるいは建築関係調停事件、こういったものがかなり出てきておるわけでございますが、この種の事件におきましても、やはり専門的ないし技術的な判断によって解決をはかるということが考えられますし、事件解決につきましても、画一的な基準というものが考えられる場合もあるわけでございます。したがいまして、ただいまの制度商事調停と鉱害調停だけに限定しておくということは必ずしも妥当ではない、これを全般的に広げてもいいのではないか、こういうふうに考えられたわけでございます。  ただいま最高裁民事局長お話にございましたように、あまり利用されている数は多くございません。しかしその理由一つとして、民事調停商事調停の区別がはっきりしないというようなこともございます。したがいまして、これを調停制度一般について適用できる制度といたしました場合には、さらに活用の余地も広がってくるのではないか、こういうことも考えられるわけでございまして、以上のような理由によって今回の改正考えたわけでございます。
  48. 大竹太郎

    大竹委員 家事審判法のほうでいままで質問をしませんでしたので、一つだけ御質問しておきたいのでありますが、家事審判法改正の第二十一条の二、遺産分割調停事件について特則を設けておりますが、この理由を、時間がありませんから簡単に説明していただきたいと思います。
  49. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 遺産分割事件の特則の規定でございますが、家事審判法の二十一条の二の規定を新設するという関係でございますが、遺産分割の調停事件というのは、家事調停事件の中で大体六%ぐらいを占めておりまして、昭和四十七年度の統計によりましても、四千件ちょっとあったと思います。  この事件の特色と申しますのは、当事者の数が非常に多いということでございまして、大体一件平均当事者の数が六名ということになっております。場合によりましては、さらに五十名以上というようなものまで出てきております。その結果、調停をいたします場合に、この多数の当事者のうちに、遠隔の地に住んでおるとかあるいは病気であるとか、そういう理由によりまして出てこられない方がおられるわけであります。ところがこの遺産分割事件というのは、全員がそろわないと調停ができませんので、そういうことのために調停が長引くとか成立しないという場合が出てまいります。しかし、遺産分割というのはなるべく調停で行なうほうが望ましいわけでありまして、そういうことのために調停の不成立に終わるということは、はなはだ当事者の意思にも沿わないものがございますので、特にそういう者が書面によって承諾するということを表示いたしました場合には、その承諾された調停条項によって調停を成立させる、こういう制度を認めようとするものでございます。
  50. 大竹太郎

    大竹委員 最後に、この調停委員選考その他で相当慎重におやりになるということで、それはそれとしてけっこうなんでありますが、これはやはり同時に調停委員の研修というものが私は並行して行なわれなければ、この制度そのものもほんとうに生きてこないと思うわけであります。予算なんかちょっと見ますと、相当この研修費その他増額になっていてけっこうだと思うのでありますが、今後の研修についての御計画その他を承っておきたいと思います。
  51. 西村宏一

    西村最高裁判所長官代理者 現在、調停委員候補者につきましては、裁判所が予算を持って行なっております研修のほかに、日調連主催もしくは日調連の後援に基づく各市の調停協会が自主的に行なっておられる研修会、研究会等がたくさんあるわけでございます。そういったものについては裁判所もできる限りの御協力を申し上げているわけでございますが、今後多少調停委員の研修の予算のほうも増額になりましたので、これから具体的な研修計画等を考えてまいりたいと思っているわけでございますけれども、調停委員の研修はあくまでも民間有識者を対象とするものでございますので、一般の公務員に対する研修とはおのずから性質を異にするわけでございます。したがいまして、その方法につきましてもまた形式につきましても独自のくふうが要るのではないかと考えております。たとえば講習会形式にするかあるいは自主的な研究会なり協議会の形式をとるか、内容につきましても、法律家である調停委員の方には法律関係は要らないわけでございますし、また専門的な自然科学上の知識を持っておられる方には自然科学についての研修ということは要らないわけでございますし、調停委員方々のそれぞれに応じて適切な内容を選ばなければならないというふうに考えるわけでございます。そういった内容なり方法なりにつきましては、今後日本調停協会連合会あるいは各市の調停協会等の方々とも、密接に連絡をとりながら御意見なり御希望なりを吸い上げて具体的な計画を立ててまいりたい、そう考えております。
  52. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、時間も来ましたのでこれで質問を終わらせていただきますが、最初はもう二、三十分もやるつもりでおりましたので若干飛び飛びになった点もございますので、あとでまた質問させていただくようにお願いするかもしれませんが、きょうは、この程度で終わりたいと思います。
  53. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時四十三分散会