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1974-03-12 第72回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十二日(火曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 谷川 和穗君 理事 羽田野忠文君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    河本 敏夫君       塩谷 一夫君    中垣 國男君       中村 弘海君    中山 正暉君       野呂 恭一君    羽田  孜君       保岡 興治君  早稻田柳右エ門君       日野 吉夫君    安井 吉典君       山本 幸一君    正森 成二君       沖本 泰幸君    玉置 一徳君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         法務政務次官  高橋文五郎君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      田中啓二郎君         大蔵省証券局企         業財務課長   小幡 俊介君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   松野 頼三君     保岡 興治君 同月十二日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     羽田  孜君   早川  崇君     中村 弘海君   福永 健司君     中山 正暉君   松澤 雄藏君     塩谷 一夫君   佐々木良作君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     松澤 雄藏君   中村 弘海君     早川  崇君   中山 正暉君     福永 健司君   羽田  孜君     江崎 真澄君   玉置 一徳君     佐々木良作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇二号)(参議院送付)  株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会閣法第一〇三号)(参  議院送付)  商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇四号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の三案を一括議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは質問順序を、この前参議院で修正になったところの三点のうち残っておるのがありますので、それをやって、それから例の公正なる慣行ですか、しんしゃく規定といいますか、それと企業会計原則との関係の問題、そして第二には例の引き当て金会計原則との関係、そして累積投票の排除の問題、こういう順序でやって、最後には附帯決議について、今後どういうふうにするか、こういうふうな形で順序を追って質問したい、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、この前の仮処分の問題で残っておりますが、具体的にどういうような事案に対して監査役から取締役について差しとめの仮処分が出るのかどうか、具体的な事案を設定して御説明を願いたいわけです。そこで、特にその中で仮処分主文がどういうふうになるのかというふうなことも含めて御説明を願いたい、こういうふうに思います。
  4. 川島一郎

    川島(一)政府委員 違法行為差しとめの仮処分につきまして、まずどういう行為差しとめの対象になるかというお尋ねでございますが、この点につきましては相当いろいろな場合が考えられるわけでございまして、すべての場合を網羅するわけにまいらないと思いますけれども、私いままで幾つかお答えいたしました事例から申し上げますと、たとえば会社公害を起こすような事業を行なっている。その場合に、その公害差しとめができるかという問題がございます。これにつきましては、取締役に対して、公害を出すような事業差しとめよ、こういう請求をするわけでありまして、仮処分でとめることも可能であろう、こういうふうにいわれております。それから会社側が放漫な経営をいたしまして、たとえば不渡り手形を乱発するというような場合に、その手形発行差しとめる、こういうことも考えられるであろう。それから違法な相場操縦を行なう、こういう場合におきましても差しとめが可能である、このようにいわれております。それから買い占めとか売り惜しみとか、そういった会社としての信用を傷つけるような行為をいたしました場合、この場合にはその認定がなかなかむずかしいわけでございまして、実際にどのような場合にできるかという具体的な判定につきましてはかなり問題がある場合が多いと思われますが、理論的には可能である、このように考えられます。一応思いつきましたのはその程度でございまして、なお御参考までに申し上げますと、現在株主差しとめ請求権という規定がございます。この規定によって差しとめが行なわれた例を見ますと、違法な新株発行差しとめるという場合がほとんどでございます。  次に、その仮処分の命令の主文でございますが、これこれの行為をしてはならない、こういう形になるわけでございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、いま言った仮処分の場合の被保全権利といいますか、そういうふうなものは何になるわけですか。
  6. 川島一郎

    川島(一)政府委員 これは結局会社利益のために行なうものでございますから、会社利益が侵害されないための仮処分でございまして、結局その行為によって損害を受けるべき会社利益というものが被保全利益になる、このように考えます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 会社利益で、それが損害されないというか、あるいはその利益を守るための権利というけれども、法律的にいうとどういう権利なんでしょうか。ちょっとわかりにくいですね。通俗的にはそれでいいかと思いますが、法律的にはどういう権利になるわけですか。
  8. 川島一郎

    川島(一)政府委員 種類によっていろいろ変わってくるわけでございまして、たとえば会社財産が違法に処分されるという場合にはその財産ということになりましょうし、また取締役の不作為義務というものが被保全権利というふうに見られる場合もあろうと思います。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、してはならないということで任意履行を期待するというだけになるわけですか。してはならないというのだけれども、してしまったらどうなるのか。これは仮処分効力の問題になりますけれども、してはならないというだけですか。任意履行を期待するだけですか。それ以外に考えられないのかな。
  10. 川島一郎

    川島(一)政府委員 差しとめられた限度において取締役がその権限を制限ないし剥奪される、こういう関係になりますので、取締役行為としてはその効力を持たないということになるわけでございます。ただ、問題となるその行為の態様によりましては、第三者保護のためにその行為効力が認められるという場合も出てまいりますので、一がいには申せませんけれども、しかし仮処分効力自体といたしましては、取締役のそういう行為を行なう権限が制限され、剥奪される、こういう関係になるわけでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その取締役というのは、代表取締役ということになるんですか。共同代表の場合もありますね。それから代表の取りきめのない場合もあるわけでしょう。そういう場合はどうなるんですか。
  12. 川島一郎

    川島(一)政府委員 数人が代表権を持っているという場合には、その代表権を持っている取締役全員を相手にして差しとめを行なう、こういうことになろうと思います。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、それはそれとして、今度は親会社子会社関係立ち入り調査の問題ですか、これがあるわけですが、立ち入り調査権限を認めたということなんですが、立ち入り調査権というのは具体的にはどういうふうなものであるわけですか。いわゆる公務員が立ち入り調査権限を持っている場合は、税務署とかいろいろあるでしょうが、私人というか、こういうふうなものが立ち入り調査権を持つというふうなことはほかにはあるんですか。
  14. 川島一郎

    川島(一)政府委員 子会社調査権規定は、商法の今度の案の二百七十四条ノ三でございまして、ここに書いてございますように、最初はまず報告を求めるわけでございます。報告を求めたにかかわらず報告をしてこないとか、あるいはその報告の真否を確かめるために必要があるという場合に、今度はみずから調査を行なうというわけでございまして、これはその現場におもむいてみずから必要なものを実地に当たって調査するということになるわけであります。この調査を拒んだ場合には、商法規定によりまして過料が課せられることになっておるわけでございます。  それから、このような調査権私人に認められている例があるかという点でございますが、たとえば管財人でありますとか、そういったものにつきましては例があるわけでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 管財人私人といったって半ば公な性格を持つものだと思うのですが、それはそれとして、そうすると、正当な理由があれば拒むことができるという意味ですね。あなたのほうとしては、自分のほうでそういう条文をつくったわけじゃないからと言われるかもわからぬですが、これはどういう意味を持っているわけですか。ただ立証責任が転換されるということだけですか。あるいは立証責任とは関係ないんですか。どういう意味を持っているんですか。
  16. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私が理解しておるところによりますと、これは立証責任とは関係がない。そして、どういう場合かと申しますと、子会社の営業上の秘密といったようなもの、これを守る必要がある場合に拒むことができる、こういうことであろうと解釈いたしておる次第でございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは正当な理由だとかなんとかいうことがあってもなくても同じじゃないの。違うんですか。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 かりにないといたしました場合にも、拒むことが正当と認められるような場合にはそういう解釈の出てくる余地はあろうと思います。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはあなたのほうが立法したんじゃないから、それ以上聞いてもちょっとあれですが……。  そこで本論に入るわけですが、この三十二条に「商業帳簿作成ニ関スル規定解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行斟酌スベシ」こういう規定が設けられているわけですね。これについてはいろいろな方から質問があって、同じことをお聞きをしたのでは私はこれは恐縮だと思いますものですから、できるだけ違う面というか、そういうことをお聞きをするわけなんですが、この「斟酌スベシ」というのをしんしゃく規定だというふうにどなたか答弁されておったわけですが、このしんしゃく規定というのは一体何なのか。何なのかという意味は、「斟酌スベシ」ということなんでしょうけれども、それの法律的な効力の問題ですよ。効力というか、分類というか、たとえば強行規定任意規定というような分け方がありますよね。それからまた、別な角度から取り締まり規定とか効力規定とかいう分け方ももちろんあるわけですね。そうすると、このしんしゃく規定というのは一体どういうような法律的な効力を持っているものなのか、ここをちょっとお尋ねしたいわけですね。これだけじゃわからないのですよ。しんしゃく規定しんしゃく規定と言ったって何だかわからないですね。具体的な法律的な内容効力というか、そういうようなものをお聞きしたいわけです。
  20. 川島一郎

    川島(一)政府委員 このしんしゃくということば自体意味は、ある事柄を組み入れて考えるということでございます。そこで、法律的な効果はどうかというお尋ねでございますので、具体的にお答えさせていただきたいと思います。  この「斟酌スベシ」というのは、たとえば従うべしというのとは意味が違うわけでございまして、従うべしと書きました場合には、公正なる会計慣行に常に従った解釈を行なわなければならない、こういうことになるわけであります。ところが「斟酌スベシ」という場合には、その規定解釈にあたってそれを組み入れて考慮に入れろということで、結論までは言っていないわけでございます。そこで、これは説明の便宜上でございますが、かりに公正なる会計慣行以外に会計処理方法として考えられる幾つかのものがあるといたします。その場合に、公正なる会計慣行に従うべしという場合にはほかの考えられる方法をとることはできないということになりますが、この「斟酌スベシ」という場合には、ほかの方法をとることもできる、ただ慣行というものを無視してはいけないので、選択するにあたってはどういう理由でこっちを選んだかというようなことも一応判断した上で、どの方法によって会計処理を行なうかをきめなければならない、こういうことになろうかと思うわけでございます。その点が違うというふうに考えております。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、聞くのは、ではしんしゃくしなかったらどうなのかと聞いているんですよ。そこのところ、いやなことを聞くけれども、しんしゃくしなかったら一体その効力はどうなのかということですね。いや、しんしゃくしたかしないかということは事実問題なんだ、そんなことはどうということないのだということなんですかな。効力には関係ないということかな。しんしゃくする、しないは、そうすると自由なんですか。そこどうなんですか。「斟酌スベシ」とあるんだから自由ではない、一種の法規的な裁量みたいなものなんだけれども、だから別にそれに違反したところでどうということはないということなんでしょうか。そこら辺、よくわからないのですよね。ぼくはどうもそれに違反したときどうなるか、どうなるかということばかり頭に入れて質問するのですが、どうなのでしょうか。
  22. 川島一郎

    川島(一)政府委員 結果的には、公正なる会計慣行に従った場合、従わなかった場合、いずれも商法に違反しない場合がございます。しかしながらこの規定自体としては、その商業帳簿作成に関する規定解釈についてはこれをしんしゃくせよといっておりますので、選択にあたってはそれをしんしゃくに入れなければならない、こういうことになるわけでございまして、それが結果的にはしんしゃくしたかどうかということがはっきりしない場合もあろうかと思いますけれども、規定趣旨としては、その結論を出す過程においてこの公正な会計慣行というものを考慮に入れろ、こういう趣旨でございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 趣旨は前からわかっているんですが、しんしゃくしなかったらどうなのかと聞いているんですよ。それはしようがないでしょう、ぼくはそういうふうに聞いているんだから。あなたの答えは大体わかります。そうすると、しんしゃくしなかったとしてもしようがない、ざっくばらんにそういうことですか。それをかれこれ問題にするわけにはいかぬということですか。ちょっとぼくの言い方は荒っぽいですがね。そこのところはっきり出てこないのだよ。ぴしっとした答えが出てこないものだから。これは非常に大事なんですよ、あとでどんどん出てきますけれども。
  24. 川島一郎

    川島(一)政府委員 要するに、最終的な結論が公正なる会計慣行しんしゃくしてもなおかつこのような会計処理が妥当であろうというふうに認められる場合には、この規定に違反したことにはならないと思います。しかしながら、公正なる会計慣行しんしゃくすればそういう処理はとれなかったであろう、こういう場合にはこの規定に反するということになろうかと思います。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 規定に反するのはわかったのだよ。規定に反したときに効力はどうなるのかということ、それを聞いているんですよ、しつこいけれども。
  26. 川島一郎

    川島(一)政府委員 いま申し上げたことと同じでございますが、その解釈結論を出す過程においてはしんしゃくしなければならない、これに違反することはできないということになるわけです。ただ、そのしんしゃくをして、そして出された結果が公正なる会計慣行と違うものである、こういう場合におきましてはこの規定に違反したことにならない場合がある。要するに公正なる会計慣行によるか、あるいは別な合理的な会計処理方法によるかという二つの道があります場合に、そのいずれを選択するかについては、公正なる会計慣行しんしゃくした上できめなければならない、こういうことです。それをしんしゃくしないできめるということはこの規定に違反することになる、こういうことです。  それで、その結果その処理が違法であったかどうかということになりますが、これは出てきた結果からさかのぼって考えざるを得ないんだろうと思います。公正なる会計慣行以外の合理的な方法によったという場合には、はたしてそのような結果を導き出すにあたって、公正な会計慣行考慮してもなおかつそれ以外の方法が認められるというような場合であればこの規定に違反したことにはならない。しかしながら公正なる会計慣行考慮すればそういう別の方法をとるべきではなかった、こういう場合にはこの規定に違反したことになる、こういう結論になろうと思います。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはわかりまして、だから違反したときに会計上の処理というものが一体どういうふうな効力を持つのかということなんです。わかりませんか、言っていることが。それを盛んに聞いているわけです。ということは、これはしんしゃくしなければならないという、「スベシ」という規定が、ちょっとぼくの頭が混雑しているかもわかりませんけれども、いわゆる効力規定的なものかどうかということですよ。結局訓示規定じゃないかということを聞いているわけですよ。そういう意味での聞き方です。
  28. 川島一郎

    川島(一)政府委員 お尋ねの御趣旨はわかりました。決算の結果が最終的に違法と認定されるかどうかという点でございますが、それはあり得るわけでございます。たとえばこの規定に先ほど申し上げたような意味での違反が行なわれて決算が行なわれる、そうしてそれが株主総会で承認されたという場合に、株主などの一部がその決議は違法であるということで決議無効の訴えを起こしたという場合に、裁判所でそれが違法かどうかの対象として審理される、このようなことは十分考えられると思います。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは去年の六月十二日に衆議院の法務委員会会議録第三十一号、私どもの阿部助哉さんが質問をしているのですが、そのときに田邊さんが、当時の参事官ですか、田邊さんがこの法案を審議している最中に、転勤じゃないけれども、民事局の参事官でなくなっちゃったというのは、どうもこれは、あなた方の自由かもわからぬけれども、ぼくもちょっとおかしいと思うのですけれどもね。法案が通ると思ってかえたのかもわからぬけれども、どうも何かあれだと思いますが、田邊さんはこういうふうに答えていますね。斟酌規定ですけれども、法制審議会審議過程では、「依拠すべし、準拠すべしという案が出されました。」こういうふうに言っておるんですが、これは、依拠すべし、準拠すべしという案が出されたのだ、それは間違いないのですか。それが一つ。それと「斟酌スベシ」ということとは、もうさっきの説明を聞きますと、緩和されているというかな、「公正ナル会計慣行」との関連において緩和をされておるというふうにどうも理解できるわけですがね。この点はそういう理解でよろしいのでしょうか。
  30. 川島一郎

    川島(一)政府委員 そのとおりでございます。先ほど私が従うべしという例を引いて申し上げましたが、その場合には依拠すべしというのと結果的に同じような意味になろうかと思います。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで問題は、それではなぜこの条文、三十二条がそういうように緩和をされた形になってきたかということですね。ここに一つの問題のポイントがあるというふうに理解するんですがね。いいですか、田邊氏が同じ日にこういうふうに答えているのですよ。「しかしこの案に」この案というのは斟酌規定ですね。「この案に決定いたしました経緯は、商法が一応の計算規定を用意いたしております、特に商業帳簿作成するに関しての規定を持っておるわけでございますが、局長が申しましたようにこれに漏れるものについて商法は実際の企業会計実務、登記の実務、こういうものを予想してこれを補足するといっておるわけであります。その場合にそれらのならわしに当然依拠せよ、あるいは準拠せよということになりますと、法律的な性格を持たないならわし、慣行あるいは後に議論に出てまいります企業会計原則というものもございます、これらのものが法律化されないで商法準拠規定としてあらわれることを阻止しよう、そういう考え方に基づくものでございます。」こういっておるのですよね。ただあとのほうはよくわからないのですよ。企業会計原則というものが法律化されないで商法準拠規定としてあらわれることを阻止しよう。法律化されないでというのがどこへかかるのか、ちょっと文章がはっきりしませんが、とにかく商法準拠規定としてあらわれることを阻止しよう、こういう考えに基づくのだといっておりますね。これは具体的にどういうことなんですか。もう少し詳しくわかりやすく説明してもらいたいと思うのです。これは非常に考え方によっては誤解を招くし、それから考え方によっては本質をあらわにしておるとも考えられるし、どうもよくわからないわけですね。具体的にこまかくかみ砕いてこの点説明してください。ことに阻止ということば、なぜ阻止ということばが出てきたのか。
  32. 川島一郎

    川島(一)政府委員 いまお読み上げになりました個所でございますが、私はこのように理解するわけでございます。  すなわちこの改正案の三十二条の二項「公正ナル会計慣行斟酌スベシ」という規定を、かりに準拠すべし、あるいは依拠すべしというふうにいたしました場合には、会計慣行というものが、つまり法律でもって強制されたものになるということは会計慣行法律と同じ効力を持つことになる、こういう意味でございます。  そこで企業会計原則というものが、これは公正な会計慣行を具体化したものだというふうにいわれておりますが、そうだといたしますと、企業合計原則というものが、つまり商法の準拠すべしという、その準拠すべき内容として出てくることになります。そうしますと、企業会計原則というのは法律でございません。ございませんけれども、この商法が依拠すべし、準拠すべしという形に直りました場合には、それがすなわち法律内容であるというふうな意味を持ってくるのではないか。そのことをさしてその法律化ですか、(稲葉(誠)委員法律化されない」と呼ぶ)法律化される、そういうことになったのではぐあいが悪いので、そこで依拠すべしとか準拠すべしということばを避けて、そうして商法としては「斟酌スベシ」という緩和された形に改めた、という趣旨であろうと思います。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だからこの条文ができた経過というものを法務省としてはいろいろ——言いたくないというとことばが悪いかもわからぬけれども、ざっくばらんな話、大蔵省との折衝の結果でしょう。だからどうしてこういう条文ができたかということをもう少しはっきりフランクに説明をされたほうがいいのじゃないかと思うのですが、田邊氏の言っていることは、商法準拠規定としてあらわれることを阻止しよう、こういう考え方に基づくのだと言っているのですね。阻止しようというのは相当強い表現ですね。ことばじりをとらえるわけではありませんけれども、企業会計原則法律準拠規定というか商法準拠規定となることを食いとめようということでしょう。ということは、具体的にはどういうことを意味しているのですか。私の質問意味はわかりますか。ということは、企業会計原則を修正する、あるいはこの商法が通ったら、また見合ったように直すというのでしょう。それは立法事項としてではなくて行政のジャンルでやっていきたい、これはこういうことの大蔵省側の要望があってこういうふうな形になり、そして法律化されないで、商法準拠規定としてあらわれることを食いとめよう、こういうような法務省の立案者の答弁になってあらわれてきたのじゃないのですか。ぼくは阻止ということばがひっかかるのですよ。これは非常に強いことばですよ。ここのところがどうもはっきりしないな。なぜ阻止ということばを使ったのか、これは田邊氏を呼んでこなければわからぬかもしれないけれども、どうもここら辺のところがぴんとこないですね。
  34. 川島一郎

    川島(一)政府委員 仰せのとおり、阻止ということばは非常に強くて、あるいは誤解を招く点があろうかと思います。ただ趣旨はこういうことであろうかと思います。企業会計原則というのは、仰せのとおり法令ではございません。法律でないばかりでなく、政令でも命令でもございません。したがって法律的な意味におきましては強制力というものがないわけです。これに従ってやれというそういう強制的な力というものがないわけであります。そこでそれに強制力を持たせるような形を与えることは問題であるというのがこの商法の立場であったと思うわけであります。ここに三十二条の二項の規定は、会計処理にあたっては慣行を何らかの形で尊重しながらやることが必要であるということまでは異論がなかったわけでございますが、さらに進んで会計慣行というものに一つの強制力を与えるというところまで進めという意見が一部にあって、それが最初に御指摘になりましたように依拠すべし、準拠すべしという意見となってあらわれてきたわけであります。それに対しまして、そういう会計慣行なり企業会計原則というものを法律内容として強制する、それに強制力を与えるというところまでいくのは行き過ぎであろうというのが、この「斟酌スベシ」という考え方であったわけでございまして、そういう意味阻止するということばが出てきたというふうに思うわけでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、依拠すべし、準拠すべしというような考え方を持っておられた方というのは、個人という意味じゃなくて、どういう団体というか階層の方がそういうふうな立場に立たれたのか、それを法律化しないというか食いとめようというか、そういう考え方に立った団体というか何とかというものはどういうふうなもの、ものと言っては悪いけれども、まあ方々というか、であったわけでしょうか。そこはどうなんですか。
  36. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私、その審議の過程、詳しく存じておりませんので、どういう方の御意見であったかということまではお答えする用意がございません。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どういう方というのは、ぼくの言ったのは個人名をあげろというのじゃないのですけれども、それはあなた方内部の問題だとすれば、それはそれでいいと思いますが、この「公正ナル会計慣行」ですね、「慣行」ということば、これは法律用語ではあまりないように思うわけですがね。慣習ということば法律用語としてあると思いますがね。ほかの法令にもある。そうだと思うのですが、「慣行」ということばはあるのかな。どうして「慣行」ということばを使ったわけですか。慣習というのは一つの法源になりますね。慣習ということばを使うと、法源になるからという意味ですか。それで「慣行」ということばを使ったのですか。どこから出て来たのですか、このことばは。
  38. 川島一郎

    川島(一)政府委員 なぜ使ったかということまでは存じませんが、「慣行」ということばは、慣習と同じような意味でございまして、慣習として行なわれている事柄、その行なわれているというものを主としてさすために「慣行」——慣習の中には、そういった行為的なものとそうでないもの、いろいろなものがあるように思いますが、「慣行」というのは、慣習の中で行なわれているというものをさした、そういう感じでございまして、なぜ慣習といわずに「慣行」といったかということは、ちょっと私も……(「よう勘考せい」と呼ぶ者あり)その経過は存じません。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それでは、大蔵省にお伺いしますけれども、いまのこの三十二条ができてきた経過ですね。あなた方のほうで法務省にいろいろ交渉したとか、何かがあったと思うわけですね、商法は、当然法務省所管だから。その間の経過は、どういうふうなものでしょうか。そこら辺のところをお聞かせを願いたい、こういうふうに思います。
  40. 田中啓二郎

    ○田中説明員 そのころの事情は、私もそのころおりませんでしたので、その当時参画した者の話によりますと、会計学者の中には、従来一つ会計の体系というものもありましたし、それをまじめに順守して、さらにいいものにしようという考えがございました。そこで、できれば、こういった会計原則というものを高めて、商法においてもこれに依拠するとか、準拠してもらいたいという高い望みはあったようでございます。しかしながら、先ほど民事局長からのお話もありましたように、やはりこれは行政機関の策定するものでありまして、商法というジャンルから見ますと、そういった最終的には裁判所の判断すべきものが、行政機関の決定に依拠なり準拠するということは、やはり越権といいますか、好ましくないのではないかというような経緯によって、準拠論は立ち消えとなって、やはり商法を頂点とする一つの体系として三十二条の二項で「斟酌スベシ」ということになったように聞いております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 昭和四十四年の十二月十六日に、大蔵省企業会計審議会報告で、「商法企業会計原則との調整について」、こういうのがありますね。これは大蔵省法務省も持っておられると思うのです。この三ですね、「企業会計原則は、本来、関係法令の将来の改廃に際して提言するための根拠となるべきものであるが、今回の調整に当っては、商法が強行法規たることにかんがみ、企業会計原則の指導原理としての性格を維持しながら、注解等において商法に歩みよることとした。これにより両者の間に残されている相違点は一掃されることとなったが、下記の諸点については、商法において所要の措置がとられることを考慮して企業会計原則修正案をとりまとめた。今後、関係方面においてこの修正案の趣旨を尊重し、格別の配慮がなされることを期待したい。」、こういうふうなことをいっておるわけですね。おそらくこれを受けて、田中審議官は、ことしの二月十四日の参議院法務委員会で、これは会議録四号ですが、佐々木静子さんの質問に対して、お答えになっているのじゃないかとぼくは思うわけですね。あなたのこれによりますと、「私どもといたしましては、継続性の原則に対する態度は変わっておりません。ここで、従来の企業会計原則におきましても「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」ということが書いてございまして、修正案においても同じことが書いてございます。ただ、従来「正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」という字句がございますのが、今度はそれがないことに伴って種々の御疑問を抱かれている向きが多いようでございますが、これは、商法は強行法規でございまして、しかも、今回商法三十二条二項でしんしゃく規定が入りまして、したがって、この企業会計原則しんしゃく規定の具体的な内容となるわけでございます。そういたしますと、場合によっては企業会計原則違反について違法性の問題が生じてくるわけでございます。その場合に、企業会計で正当であるとか正当でないとかいうことは、いたずらに論争を招くおそれがございますので、そのような商法が強行法規であるという面からこの字句を削ったのでありまして、私どもといたしましては、継続性の原則は依然、当然のことながら堅持すると、みだりにこれを変更してはならないというたてまえは続けていく所存でございます。」、こういうふうに答弁をしておられるわけですね。これはちょっと何か舌足らずなような感じを受けて、わかりにくいところがあるわけですね。たとえば「商法は強行法規でございまして、」というのはちょっと意味がよくわかりません。これはいま企業会計原則についての審議会報告の中にそういうことばがあると思うのですが、どうも「商法は強行法規でございまして、」という意味がよくわかりませんが、そうすると、結局あれですか、この「正当な理由によって、」云々というものを削って、注記に加えたわけですね。そのことを現行の企業会計原則では「第一一般原則」の五ですね、五のほうの「正当な理由によって、」以下を削っているわけですね。注3で、そのことが文章を変えて出ているわけですね。現実にこの「正当な理由」云々というようなことが本文から削除されたことによって、具体的にどこがどういうふうに違ってきたのか、あるいは全く違わないのか、違うとすればどういう点が実際に違うということなのか、そこら辺を説明をしていただきたいというふうに思います。それといま私が読んだあなたの答弁ですね。どうもこれはちょっと舌が足らないように思うので、もう少し詳しく理解できるように説明を願いたいというふうに思います。
  42. 田中啓二郎

    ○田中説明員 先生に十分御理解いただけるように説明できますかどうか、最善を尽くしてみたいと思いますが、先ほどからお話がありますように、企業会計原則というものは、やはり法律ではございませんし、強制力もない。「正当な理由」ということばは、やはり法律上の用語だと思います。そこで、法律的に突き詰められますと、会計の側から何が正当で何が正当でないということはなかなか明瞭に答えにくい。この点については、田邊参事官国会におきましても、監査をする側からそれは正当とは思えないぞと言われた場合に、それに立ち向かって、それは正当な理由だという論理を提出することはなかなかむずかしいということを言われておりますが、そこでやはり法律的な用語である、そうして私どもはしんしゃくすべしということを非常にまじめにとりまして、正当でない場合には、これは要するに内容が直ちに違法なりあるいは決算そのものが無効になるというような場合もあるのではないか。そういう意味では、むしろ混乱を避けるために、「正当な理由」というのを除いて、みだりに変更してはならないという一本にしぼっていった。従来は、みだりに変更すればこれはいけない、それでそうでないものはまあ大体正当な理由というふうに厳格に考えてきておりました。そしてみだりでない場合に正当な理由とそれ以外のものがあるかのような誤解を与えてもいけませんので、今回は、したがって、みだりにはやっちゃいけない。そして何がみだりであるかということは、これは会計的にも協会等を通じてある程度の指導原理を立てていくことができるのではないかというような気持ちを持っているわけでございます。  十分御納得いただけましたかどうか、なんでございますが、要するに商法という一つの法体系、そこに行政的な会計なり会計原則というものが沿っていくわけでございますから、あまりにこちらが法律の分野で使うようなことばを使って混乱を起こすのもいかがかということで、最終的にこのことばは削られたというのが、私が従来聞いているところでございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この会計原則の注3の「継続性の原則について」というのがありますね。この中では、「いったん採用した会計処理の原則又は手続について重要な変更が行なわれた場合には、変更が行なわれた旨及びその変更が財務諸表に与えている影響額を当該財務諸表に注記しなければならない。」こういうふうになっておるわけですが、これが注のほうに入って、本文からはずれたわけですね。ちょっと正当な理由によって云々がなくなった。そうすると、正当な理由がなければ重要な変更をしてはいけないということなんですか。どうもそこら辺がよくわかりませんがね。これはむしろ、法律解釈なら法務省のほうがいいかもわからぬな。これはどうなんですか。いままでの場合公認会計士が監査する場合に、現行法では正当な理由によって云々ということがありますからね。正当な理由があるかないかということを一応判断の材料にしなければいけないわけですか、正当な理由によって変えたかどうかということを。どっちでもいいです、大蔵省でもいいですが、今度の場合は正当な理由によって変えたかどうかということについては判断しなくていいということになるわけですか。
  44. 田中啓二郎

    ○田中説明員 従来私どものほうに財務諸表の監査証明に関する省令というのがありまして、その中の第四条第三項で、「次に掲げる事項を示して表明するものとする。」というのがありまして、その二号に、財務諸表の項目が要するに同一の基準によって処理されているかどうか、これは継続性の原則に関係する点でございます。「財務諸表の重要な項目が同一の基準により処理されていないと認められる場合において、その基準の変更が正当な理由に基づいていると認められるときは、当該変更があった旨、その基準の変更が正当な理由に基づいていないと認められるときは、その旨、当該変更が正当な理由に基づいていないと認められる理由及び当該変更が当該財務諸表に与えている影響」こういうものを意見表明しろ。この意見表明というのが一般的には限定意見というふうにいわれておりますが、こういうようなことで、従来も要するに継続性の原則が変更のありました場合は、あらゆる場合にその旨をきちんと明らかにするということになっております。今回も変更があれば、注におきましてやはりすべて明らかに注記しろということに、いま先生がお読みになりました注のほうにございますから、その点では「正当な理由」があった場合とそれを削った場合と変化はないというふうに考えます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの資料「商法企業会計原則との調整について」というものの三に——三というのは本文の三ですが、「商法が強行法規たることにかんがみ、企業会計原則の指導原理としての性格を維持しながら、注解等において商法に歩みよることとした。」こう書いてありますね。この「商法に歩みよることとした。」というのは、これはわかっているようでもあるけれども、ぴしっと言うとどういうことなんですか。
  46. 田中啓二郎

    ○田中説明員 従来、証取法に基づく監査は事後監査でございました。それが今回、商法監査も行なうので事前監査にもなる。そして同一の公認会計士なり監査法人が両方の監査を取りしきる。そこで商法の基準はこっちだ、証取法監査の基準はあちらだというふうに分裂するのはよろしくございませんし、そこでドッキングが行なわれたわけでございます。そしてその場合にやはり商法という法律体系の中にこちらも入っていくわけでありますから、その法律的な限界ないし解釈というものに歩み寄らざるを得ないというような意味で歩み寄りということばが使われているのじゃないかと思います。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは法務省大蔵省と両方に聞くのですが、同じ資料の中に「記」と書いた中での三ですね、「企業会計原則修正案の趣旨にそい、法務省令「株式会社の貸借対照表及び損益計算書に関する規則」及び大蔵省令「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」を修正し、両者の一致を図ること。」というふうにありますね。この点については法務省なり大蔵省両方にお尋ねするのですが、「両者の一致を図る」ということは、これは具体的にどういうことであって、もうすでに済んでいるのですか。これからやろうということなのですか、どういう点ですか。
  48. 川島一郎

    川島(一)政府委員 これからやろうとするわけでございます。この法務省令、株式会社の貸借対照表及び損益計算書に関する規則と申しますのは、商法中改正法律施行法の四十九条に基づきまして、株式会社の貸借対照表とか損益計算書の記載方法その他の様式を定めるものでございます。それと大蔵省令のいわゆる財務諸表に関する規則等用語その他いろいろまちまちな点がございますので、これを統一しようというものでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大蔵省も同じですか。
  50. 田中啓二郎

    ○田中説明員 同じでございます。要するに証取法の監査というものも依然あるわけでございますから、それによって出される内容商法監査によって株主総会に提出される内容とがそごを来たさないように両者の統一をはかりたい、それを商法国会を通りましてそして企業会計原則等が確定いたしましたら作業に取りかかるというふうに考えております。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、二つの監査を事実上一ぺんだけで済ませたいということなんですか、ざっくばらんに言うとどうなの。
  52. 田中啓二郎

    ○田中説明員 結局同じ人がやるわけでございまして、商法監査のほうは事前監査でございますから、相当前広に企業の財務内容にタッチしていける、そして一回でやると申しましてもおそらく当該営業年度全部を通じて非常に綿密に注意を払いながらやるということだと思いますが、いずれにしましても監査証明として提出する内容はそごを来たさないようにしませんと、非常にぎくしゃくすると思います。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそのとおりなんですけれども、私の聞くのは商法による監査と証取法による監査と実際は性質が違うわけでしょう。違うのだけれども、実際は両方を一緒にやっちゃうということなのですかと聞いているのですよ。全然別にやるのですか、それはどうなんですか。
  54. 田中啓二郎

    ○田中説明員 事実上一緒にやりまして、それで私どものほうには営業年度が終わって三カ月たったら、やはり証取法の監査証明をつけて出してくる、そして商法株主総会のほうにも今度の特例法によって監査対象とされているものに対して証明をつけて出すという、先生の仰せのとおりでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこでやはりことしの二月十四日に田中さんが「商法が成立しました暁には、現在企業会計原則修正案として企業会計審議会の四十四年の十二月報告のあるものについて所要の見直しをした上に修正案として確定してまいるということになります。」こういうふうに答えておるわけですね。  そこで、これは立法府の関与すべきことでないという議論もあるかもしれませんし、これは行政の問題だということであるかもしれませんが、商法との関連で問題になってくることですから、これはお尋ねをするわけなんですが、私はだからこの修正案というものについてこまかくどこどこをどうするかということを、これはここでは聞くつもりはないわけです。これはいいか悪いかは別として、行政のジャンルの問題だと思いますけれども、そこで十二月報告のあるものについて所要の見直しをするということですね、あなたの答弁は。そうすると、具体的にというか、こまかい内容は別として、企業会計原則の修正案というもののどこをどういうふうに直すかというのはぼくは聞かないけれども、どこを直さなければならないというふうに考えられるのかということは、これは当然聞いてもいいことだと私は思うのですよね。こまかい内容は別として、どこを直さなければならないかということになってくるのかということですね。
  56. 田中啓二郎

    ○田中説明員 その見直しをしていただく場合に、こちらがこう修正してほしいという原案のようなのを出すということではございませんで、やはり衆参両院の審議を通じていろいろ貴重な御意見が示されまして、かつ附帯決議におきましても、前回衆議院におきましては企業会計「原則の修正に当っては、より真実の財務内容の公開という目的に合致するよう留意すること。」参議院附帯決議におきましては、「企業会計原則は、企業の財政状態及び経営成績について真実公正な財務諸表を作成公示するための基準であるから、修正については、その目的に反することのないよう配慮すること。」というのが決議されまして、私どもその御趣旨を尊重しなければならないわけでございます。  かつ、社会経済情勢も企業会計原則修正案が公表された昭和四十四年当時とは異なってきておりますし、また修正案の内容について誤解を与えるような意見が公表されていたり、了解のないことをあたかも了解があったというような書きものなどもございました。そういう点をあわせ現時点において考えてみますと、修正案については謙虚に見直しを行なう、そうして十分審議会でも見直すべきものは見直していただいて、その上で最終的に確定する必要があると考えております。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは抽象的な御意見としてはそのとおりなんですが、だから、私は具体的な内容についてかれこれ聞くという意味ではなくて、いいですか、いまあなたがいろいろ言われましたよね、そのことについて一々こまかく聞いていけば、これはなかなか、これで二、三時間たちますよ。それはぼくはきょうの法務委員会でやるのは適当かどうかというと、ちょっとあれですから、むしろ大蔵委員会でやるのが筋じゃないかというふうに思うのですがね。私の聞きたいのは、たとえば附帯決議がある。それはこんなことを言っては悪いかもしれませんが、抽象的というか、その他のいろいろなものを生かすといったって、この修正案の中のどこをどう変えるかということを聞くのじゃなくて、どこが問題なのかということを聞くわけですね。だから、見直しをするとすれば、修正案の中のたとえば一般原則の中のこういう点だとか、あるいは第二の損益計算書の原則だとかいろいろありますね。この中のどこら辺が問題となってくるのだろうか。私はこのこまかい内容までいまこの段階で聞こうというわけじゃないのですが、そういう点は当然答えられるのではないかというふうに思って聞いておるわけです。
  58. 田中啓二郎

    ○田中説明員 御審議において、特に三十二条の二との関係、継続性の原則、特定引当金、やはりこれが中心になったと思いますので、どういう御審議があったかというようなことを審議会の議題にのせまして十分審議し、見直すべきものは見直していただくということでございます。したがいまして、具体的には最も意見の多かったただいまの三点については十分議を尽くしていただこうと思います。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 三点について議を尽くすのはいいのですよ。そのとおりだと思うのですが、その三点について議を尽くすのに基本的なプリンシプルがなければいけないわけですね。その基本的なプリンシプルというものをどこに置いて議を尽くしてもらいたいのか。たとえば継続性の原則というものはどんなことがあっても確保するとか、いろいろあります。それから引き当て金の問題はあとで出てきますが、これについてはあまり乱用しないようにするとか、いろいろあると思うのですが、こういう点でそのプリンシプルがどこにあるのかということ、これをひとつ説明してもらって、これだけのものはしっかり守っていくのだ、そしてその上で三点について見直しというものを考えられるのだということでしょう。そこら辺のところが出てこないとどうもよく理解しにくい、こういうふうに思うわけです。
  60. 田中啓二郎

    ○田中説明員 三十二条の点は商法解釈の問題でございますので、私どものほうとしてやれますれば継続性の原則、それから特定引当金はこれまた二百八十七条ノ二で商法の問題でございます。そして特定引当金に関しましては、公認会計士として、どういうものが商法上認められているのかどうかということについて、やはり関心といいますか、重要なことでございますから、これから法務省に御相談申し上げて、指導原理というものを通達なり何らかの形で出していただいたほうがいいのではないかということを申し上げました。その点は法務省のほうでどういう御措置になりますか、法務省の問題でもございます。  継続性に関しまして私どもがやれますことは、みだりに変更してはならない、そうすると、みだりに変更するというのは大体どういう指導原理になるべきか、さらに、一つ一つについてはみだりではないけれども、全体として見た場合には利益の平準化というようなもののみを目的としておる、こういうものもやはりみだりな変更になると思います。そこで、そういうようなものを含めて、公認会計士協会としましても傘下の公認会計士に通達のような形で指導原理を示さなければならないということは、現下の時代の要請にもなっていると思います。そういった動きに対しましては、私どもも相談にあずかりながら善処していきたい、かように考えております。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうの審議官の答弁は非常にわかりいいですね。いままでのやつは速記録を読んでみてもわからないのです。何か答弁を非常に詰めちゃっているのかな、時間が十分でなかったかもわかりませんが。きょうのはよくわかった。いまの問題は、またあとで大臣が来てからもう一ぺん聞くかもわかりません。通達の問題、引き当て金の問題が中心になるかな、ポイントだけ……。  そこで、二百八十七条ノ二の「引当金」これはよくお聞き願いたいのですが、三十七年の初めのころ、三十六年から出たのかもわかりませんが、三十七年に出た法案であるわけですね。私が参議院に出たのは三十七年七月ですから、私が出る前なんですが、だから質問が簡単だった、不十分だったというわけではありませんけれども、これを見てみたら全くといっていいくらい質問がないのですね。衆議院で一回ちょこっとやって、何だかよくわかりませんが、それから参議院で一回ちょっとやって、それでこの関係は全部通ってしまったのです。これは考えてみると、やはり法案が出たときにはいろいろな角度から慎重に審議をしてやっていかないと、あとでわからなくなっちゃうと思うのです。  そこで、「引当金」二百八十七条ノ二の新設について、三十七年の三月六日に当時の民事局長平賀健太さんが提案説明しているのです。それを読んでみますとこういうことを言っておるのです。「次は、引当金に関する第二百八十七条ノ二の新設であります。現行法では、いわゆる負債性引当金について規定を設けておりません。負債性引当金というのは、将来における特定の支出に対する準備額であって、その負担が当該事業年度に属し、その金額を見積もることができるものというように説明されておりますが、その内容は必ずしも明確ではありません。また、法律上債務でない見越費用を負債とすることにつきましては、理論上疑義がないわけではありません。しかし、会計の理論及び実際の面から負債性引当金を認めるべきであるという要望が強いのであります。そこで、この法律案におきましては、この要望をいれ、特定の支出または損失に備えて引当金を貸借対照表上の負債として計上することができる道を開いたのであります。しかし、この引当金は、その範囲が広く、また、経理操作に利用されやすい項目でもありますので、株主総会で計算書類の承認をする際に、引当金の目的を明らかにしておく必要上、その目的を貸借対照表において明らかにしなければならないこととし、また、この引当金を目的外に使用するときは、損益計算書においてその理由を明らかにしなければならないことにいたしました。この引当金の項目は、株主利益に関することでありますから、この項目の内容株主に知らせることによって株主の保護をはかるという趣旨であります。」これが提案理由であるように思うんですね。おそらく法務省が出して、大臣が説明し、大臣の説明は非常に簡単なものでしたが、その後に局長が補足説明したのかなんかわかりませんが、こういう説明だと思うのです。ここでいろいろな問題があるのですが、一応十二時で終わって、あと午後にまたゆっくりやりますが、ここで民事局長が問題にしているのは、負債性引当金のことですね。二百八十七条ノ二は、負債性引当金のことについて民事局長が盛んに言っているわけでしょう。ちょっと中はあいまいなところがありますが、どうもそう言っている。ところが企業会計原則では、その点は違ってくるのじゃないですか。企業会計原則の現行は注の16ですか、それから修正案は注の18ですね。そうすると現行を見ますと、「引当金には評価勘定に属するものと負債的性質をもつものとの区別があるが、後者については、流動負債に属するものと固定負債に属するものとを区別する必要がある。」(1)は「納税引当金、修繕引当金のように将来における特定の支出に対する引当額が比較的短期間に使用される見込のものは、流動負債に属するものとする。」(2)は「退職給与引当金、船舶等の特別修繕引当金のように相当の長期間を経て実際に支出が行なわれることが予定されているものは、固定負債に属するものとする。」こういうふうに書いてあります。修正案を見ますと、「将来において特定の費用(又は収益の控除)たる支出が確実に起ると予想され、当該支出の原因となる事実が当期においてすでに存在しており、当該支出の金額を合理的に見積もることができる場合には、その年度の収益の負担に属する金額を負債性引当金として計上し、特定引当金と区別しなければならない。」こういうふうに書いてあります。「製品保証引当金、売上割戻引当金、景品費引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金等がこれに該当する。負債性引当金は、金額は未確定であるが、その支出は確実に起ると予想されるものであるから、偶発損失についてこれを計上することはできない。」こういうふうに書いてありまして、負債性引当金というものと特定引当金というものを区別しているのじゃないですか、企業会計原則では。どうも私は会計学専門じゃありませんからよくわからないのですが、この提案説明では、負債性引当金についての規定がないからそれを設けるのだというように、どうもこの二百八十七条ノ二のときの提案説明になっているように思うのです。あるいはその説明の中に、いわゆる特定引当金らしいものがちょっと入っているようにもとれるのですが、表書きは負債性引当金のことについて説明しているようにとれるのです、ぼくらが見ると。法務省会計学のことはよくわからない——よくわからないと言っては悪いけれども、よくわかるけれども必ずしも十分でないというか、大蔵省会計学のほうは専門だけれども、法律のほうになってくるとちょっと弱い。商法は強行法規だというのも何か私はよくわからないのです、さっきあまりよく聞かなかったのですけれども。これは食い違いがあるのですか、ないのですか。これが私はよくわからないのですよ。どうなんですか、これは。
  62. 川島一郎

    川島(一)政府委員 表面的には確かに食い違いがあるように思います。その食い違いの原因は何かと申しますと、一つは負債性引当金ということば意味が違って解釈されているのではないかと思います。企業会計原則のほうで申します負債性引当金というのは、やはり債務たる性質を持っているものでありまして、それに対して提案理由で平賀局長が述べておられます負債性引当金というのは、債務ではないけれどもこれに準ずるような性格を持ったものそういう意味であろうと思います。企業会計原則ができました当時には、まだこの商法の三十七年の改正が行なわれておりませんでしたので、企業会計原則には特定引当金に関する規定がなかったわけであります。その後、商法が改正になりまして、負債でない負債性引当金、つまり特定引当金でございますが、これが法律上認められることになったわけでありますので、それに伴って企業会計原則を修正しておけばその間の不一致というものは生じなかったわけでございますが、その手当てがなされないまま今日に至っているというところに両者の不一致の原因があるんではなかろうか、このように考えております。
  63. 田中啓二郎

    ○田中説明員 従来の経緯はともかくといたしまして、現在におきましては、特定引当金は評価性引当金並びに負債性引当金以外のものではないか、修正案もそのような分け方になっていると思います。そうして、従来負債たる性質を持っているものと負債ではないが負債性である、何かちょっとはっきりしない面もありましたのを、今回は負債性引当金とは何だということを定義ではっきりしまして、例示をさっき先生お読みになったように並べているわけでございます。これはいわば条件つき負債そのものでございますから、二百八十七条ノ二に依拠しなくても、商法の他の負債は全部貸借対照表に出せという観点からいたしますと、負債性引当金は二百八十七条ノ二によるものではない。そうすると、二百八十七条ノ二によるものは何かといいますと、評価性でも負債性でもない引き当て金ということではないか。現在の会計的な面ではそのように了解ができております。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは商法条文を見ると、特定引当金のようにとれるのですね。そうでしょう。ところが説明を見ると、どうも説明が何か違っているというか、これは解釈というか、内容の広い狭いによって違うのかもわかりませんけれども、違ってきているわけですよ。そこで平賀さんの言っておる中で、いわゆるいまの準則でいう特定引当金、これは平賀さんが提案というよりも法務省が提案説明しているわけですが、この法務省が提案説明した「引当金」に関する二百八十七条ノ二の中で、いわゆる企業会計原則でいう特定引当金はどれなんですか。この提案説明の中にありますか。
  65. 川島一郎

    川島(一)政府委員 当時の法務省説明で負債性引当金といっておりますのが、すなわち現在の特定引当金といわれているものと一致することになるのではなかろうかと思います。と申しますのは、現在の引き当て金は負債の部に計上いたします。その実質は債務ではございません。利益留保性のものでございます。そういうものを「引当金」として二百八十七条ノ二で認めたわけでございまして、そういうものを認めてほしいという要望があってつくったんだということを平賀局長説明の中で言っておるわけでございまして、それがすなわち特定引当金の説明であったということになろうと思うのです。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 なぜ、どこからそういう要望が出たか、これはあと質問しますよ。答えはわりあい簡単だと思うのですよ。そうすると、法務省が言っておる「将来における特定の支出に対する準備額であって、その負担が当該事業年度に属し、その金額を見積もることができるもの」、こう最初に言っているでしょう。これは大蔵省、何ですか。これは大蔵省に聞こうか。これは特定引当金ですか。
  67. 田中啓二郎

    ○田中説明員 法務省政府委員の御答弁でございますから、私は差し控えさしていただきます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたが専門家じゃないか。
  69. 川島一郎

    川島(一)政府委員 この少し前、先ほど先生お読み上げになりましたところですが、「現行法では、いわゆる負債性引当金について規定を設けておりません。」と言っておりまして、そうして「負債性引当金というのは、将来における特定の支出に対する準備額であって」云々というふうに説明しておるわけでございます。そうしますと、この負債性引当金というのは、現行法では規定を設けていないところのものであるということになるわけでありまして、それについて今度二百八十七条ノ二を新設するというわけでございますので、ここで申しておりますいわゆる負債性引当金というものは特定引当金をさすというふうに、この文脈の上からも考えられるわけでございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 文脈の上からはそういう見方ができるかもわかりませんが、私の言うのは、いま私が読んだところ、「将来における特定の支出に対する準備額であって、その負担が当該事業年度に属し、その金額を見積もることができるもの」、これはいまの企業会計原則でいうと一体どれになるのですか。ぼくは会計学はわからないから聞くわけですが。
  71. 田中啓二郎

    ○田中説明員 現在の負債性引当金は、「将来において特定の費用たる支出が確実に起ると予想され、当該支出の原因となる事実が当期においてすでに存在しており、当該支出の金額を合理的に見積もることができる」ものということでございます。この法務省政府委員がお答え申し上げた……(稲葉(誠)委員「お答えじゃない、提案説明なんですよ」と呼ぶ)「将来における特定の支出に対する準備額であって、その負担が当該事業年度に属し、その金額を見積もることができるもの」というと、現在私どもが定義した負債性引当金ではないかと思います。
  72. 川島一郎

    川島(一)政府委員 その辺は私勉強してまいりませんでしたが、ちょっといまいろいろ検討してみましたが、どうも違うのではないかと思います。と申しますのは、この企業会計原則修正案の注18でいっております負債性引当金の定義と、それから先ほどの政府委員説明とは、内容はほとんど同じことをいっておりますけれども、修正案のほうはむしろ条件つき債務のようなものを考えており、政府委員説明のほうは、そういう条件つき債務とはいえないようなものをいっておるということではないかと思うわけでございます。そうしませんと、どうも意味がつながりませんので……(稲葉(誠)委員「無理につなげているんじゃないか」と呼ぶ)おそらくこの表現が、いずれを見ましても必ずしもはっきりしないわけでございますが、条件つき債務である場合とそうでない場合と、一方は条件つき債務である場合をいい、それから政府委員の提案説明のほうは条件つき債務でない場合をいっている、こういうことに解釈されるわけでございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 政府の答弁なら、ことばが足りなかったり、そのときのぐあいでいろいろ出てくるから、そのことは私はかれこれ言わないのですよ。これは提案説明なんだ。提案説明がきわめてわからないのですよ。今度じゃないですよ、この前ですよ、十年前の話。ぼくが出ていないときですよ、念を押すけれども。それで、この提案説明について、さっぱり何の質問もない。疑義を全然ただしていない。まあそんなこと言っても始まらぬけれども。それで、法務省が提案説明していることについてあとから聞いて、それでこの二百八十七条ノ二の新設がどういう目的でどこからの要請で行なわれたのか、そしてそれがどういうような現実の作用をしているのか、それが株主利益なり何なりにどういうふうな影響を与えているのか、こういうようなことを午後に聞きたいと思うのです。この提案説明はよくわからないのですがね。疑義があるとかなんとかいう提案説明までしているというのは、ぼくは変な提案説明だと思います。提案説明ならもう少しぴしっとすればいいので、何だかわかったようなわからないようなことをいって、何かどこかの圧力でいやいや提案しているような印象を与えるような提案説明なわけでしょう。こういうのはちょっとまずいと思うけれども、これはあなたの責任じゃないから別として、これについて午後また聞きますからね。  それから、累積投票の場合。累積投票の場合は、いろいろ組み合わせがありますから、いろいろ具体的な例をあげて説明を願いたい、こう思うのです。  それから、あとまだありますが、きょうは時間がたっぷりありますからゆっくりやりますが、昼で一応休憩ということですから、午前中の質問はこれで一応終わりにいたします。
  74. 小平久雄

    小平委員長 午後一時に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  75. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉置一徳君。
  76. 玉置一徳

    玉置委員 今次商法改正が参議院で若干の修正並びに附帯決議を付されまして送付されてきたのでありますが、御案内のとおり、株式会社の運営の適正と安定をはかり、資金の調達を容易にするとともに株主利益擁護のため監査役の制度等の強化その他もろもろの事項を盛った今度の商法の一部改正でございます。  そこで、まず参議院から送付されました附帯決議でございますが、大蔵省に先に尋ねまして、御退席いただきたい、こう思うのです。  参議院附帯決議の二番でございますが、「監査法人は、その社員が税務代理、税務書類の作成及び税務相談を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制すること。」こういうようになっております。一部、監査法人の従業員がそれに従事するような場合のことを危惧する向きもありますが、どのようにこれを阻止されようと思われるか、御質問申し上げておきたいと思います。
  77. 田中啓二郎

    ○田中説明員 監査に補助者として従事する者が被監査会社の税理士業務を行なっている場合には、当該監査法人は当該会社の監査を行なうことができません。これを監査に従事しない従業員にまで広げることは、利害関係の範囲の広げ過ぎといいますか、適当でないというふうに考えられます。現実にもそのような御懸念はないのではないかと思います。
  78. 玉置一徳

    玉置委員 その三に、「企業会計原則は、企業の財政状態及び経営成績について真実公正な財務諸表を作成公示するための基準であるから、修正については、その目的に反することのないよう配慮すること。」こうなっておりますが、この附帯決議の三番目は、どのような趣旨でこういう附帯決議がつき、それを当局はどのように措置されようとしておるか、お答えをいただきたいと思います。
  79. 田中啓二郎

    ○田中説明員 その附帯決議はおそらく今度の商法の三十二条の二項の斟酌規定とか、あるいは継続性の原則とか、特定引当金ということをめぐっての御審議の結果出た附帯決議ではないかと思いますので、私どもその御趣旨を尊重いたしまして、先ほども申し上げたのでございますが、ここでどういう審議があったか、そして、修正案は一応四年前のことでございますし、その間社会経済情勢の変化もある。そしてその間いろいろな誤解を招くような発言その他が雑誌等に報じられておりましたから、そういうことを企業会計審議会に報告しまして、その審議会において、そういったすべてを踏まえて見直すべきことは見直すということをやっていただいた上、これを確定したいということでございます。
  80. 玉置一徳

    玉置委員 それでは、附帯決議の一番に戻ります。  現在の会社は、御案内のとおり、一つ株式会社で非常に数多くの株主を擁しておるわけであります。たとえば新日鉄で申しますと四十九万四千五百六十九名、それから丸紅でも一万二千百二十九名、三菱商事で三万一千百五十名ですか、三井物産で五万六千七百八十名、東京電力で三十万、東レで十五万、こういうふうに株主が非常にばく大な数字にのぼっております。こういうことになりますと、株主利益擁護というよりは、株主はただ投資の対象としておる部面が非常に多くなるのではないか。御案内のとおり大口の株主にいたしますれば、企業の行動に非常に大きな関心を持っておりますけれども、若干、そこまでの関心を持たない数多くの層が存在すると見なければいかない、こう思うのです。そこで、今度の商法の改正にあたりましても、そういう意味監査役が、会計だけでなしに業務一般についても監査をし得るような改正になっておりますけれども、実際問題として、この数の多い株主株主総会で一堂に集めることも、物理的にほんとうは無理じゃないだろうか。と同時に、お集まりになっておる、ほんの四百名、五百名ぐらいの御人数であると見ましても、五十万人に四百名というような数でございますので、株主総会の運営を今後とも気をつけろというようなことになっておりますけれども、こういった改正がどんなに考えてみても、的確に株主に短時間の間にその会社の業務形態の実態を把握していただいたりすることは非常に困難じゃないだろうか、こういう感じがいたします。したがって、今後株主総会並びに会社の業務監査等についてのやり方につきまして、すみやかに商法を改正してもらいたいという附帯決議がついておるわけですが、この実態にかんがみて、一体どのような方向でこれを持っていこうかというようにお考えになっておるか、大臣並びに当局の御答弁をいただきたい、こう思います。
  81. 中村梅吉

    中村国務大臣 私どもも考えまして、附帯決議第一項というのは、まことにごもっともに思います。非常に大規模な企業、小規模のもの、これは一本の商法で運営しようということ自体に無理がありますので、おのずから企業の社会的責任もありますし、そういうすべてを入れて再検討をする必要があろうかと思っております。したがいまして、この附帯決議趣旨に沿いまして、法務省としましてもさらに検討を続けていく考えでおりますので、さようにおくみ取りいただきたいと思います。
  82. 玉置一徳

    玉置委員 局長から御答弁をいただきたいのですが、そこで、この大きなばく大な数にのぼる株主、この方々が一堂に会することは物理的にできない。一時間もしくはそれよりももっと時間の少ないところでほとんど終わっておる実態にかんがみまして、株主総会というのは一体どのように運営さすようにするか、あるいは会社というものなんかは、実態的にはどんな位置づけがほんとうなんでしょうかね。
  83. 川島一郎

    川島(一)政府委員 たいへんむずかしい問題でございます。会社は企業でございまして、株主はその出資者の立場に立つわけでございますので、その会社の基本方針というものはやはり株主がきめるという形をとらざるを得ない、そういう組織であると思います。したがいまして、株主総会に最も重要な権限、たとえば定款を改正するとか取締役を選任するとか、そういった権限株主総会以外に持つものがないわけでございますので、その限りにおきましては、やはり最も重要な機関としてこれをなるべく合理的に運用ができるような形に考えていかなければならないというふうに思います。先生御指摘のように、大きな会社になりますと株主が非常にたくさんおります。これを一堂に会することは確かに不可能でございます。実際の運用におきましても、委任状をとるというような形でかなり総会が運営されておるわけでございますが、この委任状をとる方式にいたしましても、現在のように白紙委任を求めるというような形でなしに、何かの限定を付した株主の意見を反映させるような形で委任状をとるというようなことも考えられますし、いろいろ技術的な問題が考えられると思いますので、そういった点も含めまして、株主総会の機能がどうしたら十全に発揮できるかということをさらに検討していきたい、附帯決議の御趣旨をそういう方面においても生かすように努力していきたい、このように考えておる次第でございます。
  84. 玉置一徳

    玉置委員 労働組合その他で行なわれております、一般に行なわれておるような代議員制度というものにするのも、これまたむずかしい問題もあると思います。しかしながらいま局長のお話しのような、これが一番重要なことを規定するものであることだけは事実でありますけれども、そういう意思表示をどう持っていくかということはほんとうに至難中の至難じゃないか、こう思います。だからこれについては学識経験者及び実務者等々の意見を、審議会を設けるかもしくは大臣諮問の懇談会にされるか、直ちに発足をし出さないと、お互いに衆知を集めないとなかなかむずかしい問題じゃないかと思いますが、どのようにお考えになりますか。
  85. 川島一郎

    川島(一)政府委員 商法の改正につきましては、従来から法務大臣の諮問機関として設けられております法制審議会において御審議をいただいているわけでございまして、学者それから学識経験者のほかに、実際の実業界に携わる方などもおられますしあるいは官庁の関係の方もおられますが、そういう審議会におきましてこれまでも審議を続けてきたわけでございます。今回商法改正案国会に提出いたしまして、いろいろな貴重な御意見をいただきましたので、そういう点につきましても審議会に報告をいたしましてさらに審議を続けてまいりたい、このように考えております。
  86. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、先ほども申しましたように、いまの株主の大多数の方々、非常に大きな株を持っておいでになります方々、大株主を除きましては、一般庶民の多くは投資の対象にしておいでになるという感じが実態じゃないだろうか、こう思わざるを得ないと思うのです。そういう意味ではある一定の株主総会のときだけに財務諸表を見せまして意見を徴するというようなことは実際はなかなか困難ではないだろうか、そういう方々のために常時監査をするような機関を設けざるを得ないのじゃないだろうか、こう思いますが、常時監査をしておいでになる方々、たとえば公認会計士なら公認会計士、監査法人なら監査法人で常時株主のかわりにそういうことを行なっておいでになる方、そういうものをつくることによって、その制度をつくることによって株主で意見があるものはいうでも聞きに行けることにしなければいかぬのじゃないだろうかと思いますが、どういうようにお思いになりますか。
  87. 川島一郎

    川島(一)政府委員 常時監査をするようにしたらどうかという御提案でございますが、私も全くその御趣旨に賛成でございます。  今回の改正案におきましては、大きな、資本金五億円以上でありますか、そういう株式会社につきましては、決算の際に会計の専門家である公認会計士あるいは監査法人を会計監査人として決算の検査に当たらせるということにいたしております。これは決算期がきてから監査を行なうということが法律上の要件になっておりますが、しかしながら大きな会社になりますと、決算期がきたときに何週間か監査をするというだけでは十分ではございません。それで見切れるものではございません。それからまた仰せのように、平素からいろいろ問題が起こったというような場合に、どうしたらこれが正しく処理されたことになるのかというような点につきまして専門の方の御意見を伺うという必要も少なくないと思います。そういう意味におきまして、この会計監査人にいたしましても、決算期がきてからあわてて選任するというのではなくして、もっと前から選任しておいて、そして平素から会計上の疑義を見ていただくというようなことをいたしまして、仰せのような常時監査の実質というものを備えた形で運営していくということが望ましいと思います。
  88. 玉置一徳

    玉置委員 先ほど申しましたように、実態は投資的対象になっておる株主が非常に多くなっておる。そういう意味からは、どうしても平素から株主の意見なりいろいろなことが表現できるような、あるいは聞きに行けるような制度、したがってそれは株主総会の場で選任された会計監査人もしくは監査法人というようなものを事実上運営できるような機構が私はどうしても必要じゃないだろうかと思う。その意味ではなるべく近い将来の商法の改正にそういうこともひとつうたっていただきたいし、原理的にそういう運営を行なうように慫慂していただくことが望ましいのじゃないか。と申しますのは、株主だけの問題じゃなしに、現在の大きな会社はこれはもう国民的な視野から、また国民に対して責任を負うておるような形になっておるのじゃないだろうか。たとえばいま国会で問題になっております予算委員会の総合商社は、六社でもって輸入の五割、輸出の四割をとり行なっておるというぐらいに国民経済に非常に密接な関係を持っておるわけです。したがって、会社の中の監査役会計だけじゃなしに業務上のことまで監査できるということになっておりますけれども、どうしてもいままでの伝統から申しまして会社取締役会から任命された形のものが、形といい実態といいそうなっておるような感じがいたします。したがって一つには株主の立場からと、もう一つは国家、国民的な視野からそういう監査が常時でき得ることが望ましいのじゃないだろうか。むしろいまではそのことが絶対必要だという要件にまでなりつつあるような感じがするのですが、どうでございますか。  それから、いま申しましたように将来の商法の改正に、あるいはまた商法の改正以外でも、行政指導としてそういう運営が望ましい。でないといまのようないろいろな問題が起こってきて国民のひんしゅくを買うようなことも行ない得るわけであります。そういう意味のチェックも、株主にかわりあるいは国民にかわって意見を申し述べられるような制度というものをわれわれは醸成していかなければならないのじゃないだろうか、このように思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  89. 川島一郎

    川島(一)政府委員 仰せになりましたことは全くそのとおりであろうと思います。株主の立場、それからさらにはもっと大きな国民的立場から会社の運営が適正になされるように、そういった仕組みとかいうものも考えていかなければならないし、実際の運用面においてもそういう点を配慮する必要がある、仰せのとおりだろうと思います。行政指導と申しますといろいろなニュアンスがございまして、場合によってはあまり適当でないこともあろうかと思いますけれども、しかしながら会社の運営としてこういうことが望ましいということは、われわれとしてもできるだけあらゆる機会を通じてその趣旨を徹底するようにさせてまいりたいと思います。国民的な立場と、それから株主の立場というものが必ずしも一致するものではないと思います。したがって今後商法改正をする場合におきましても、そういった問題を考えるにつきましてはいろいろ複雑な問題が出てこようかと思いますが、しかし仰せのように現在の社会情勢というようなものを考えますとき、特に大きな株式会社が社会的にりっぱな存在として成長するように考えていくことはわれわれのつとめでもあると思います。
  90. 玉置一徳

    玉置委員 そういう観点からすれば、私が先ほど申しましたような会計監査人というものは取締役会で選任されるよりも、むしろ株主総会で選任することが望ましいんじゃないだろうか、同時にその費用も株主総会で決定された費用、われわれが、国会が立法府で行政府をチェックしあれする機関でありながら、大蔵省からもちろん金は来ておりますけれども、その予算措置はすべて一応国会にまいるわけでありますが、そのような形をとることが望ましい、こう思いますが、どうでありますか。
  91. 中村梅吉

    中村国務大臣 この点はごもっともな向きもありますが、ただ今回の改正にあたりましては、法制審議会会計鑑査人は取締役会で選任するようにという答申でございましたのでそういう案になっておりますが、なおお説の点につきましては将来とも最も重要な検討題目として検討を続けていかなければならない、かように思っております。
  92. 玉置一徳

    玉置委員 ですから答申のあったときとこのごろのあれでずいぶんそういう様相も変わりつつあると思いますので、そのことをひとつお考えいただきまして、全般として次の商法改正には臨んでいただきたい、こう思います。  そこでこういった制度でございますが、つまりいま商法改正は監督は法務省でおやりいただいております。こういう会計監査人あるいは監査役等々、株式の利益保護並びに国家国民の利益の擁護のために、一つの監視役と申しますかあるいは指標を与えていくようなサゼスチョンをするというような方々のために独立機関の、たとえばいま公取委員会がございますが、あれは御案内のとおりカルテル行為そのものを監視する機関でございますが、それよりもむしろもっと大きく会社の運営そのものが適正に行なわれていくような角度から総合的に見て、いま大蔵省に証券局がございますが、ああいうものを独任機関にすることによって、こういった諸制度全般をバックアップすることまで包括するということも私は一つ考え方じゃないだろうかという感じがするわけです。日本の商行為そのものが、ほとんど株式会社の制度で行なわれることが大多数でございます。しかも、それが個々に、ただいま申しましたように大きなやつはほとんど投資的対象であって、その中のところまで関心のない株主が非常にふえつつあるという現状にかんがみまして、その行為そのものを全般としてバックアップし、指導というとおかしいのですが、バックボーンになるような行政機関をつくっていくということも、将来ぼつぼつ検討すべき時期じゃないだろうかという感じがするわけであります。にわかにこういうことを申しまして、大蔵省からの答弁はしにくいかと思いますけれども、監査人制度の運営を適切に管理するような何らかの独任機関をつくるべき段階に来つつあるのではないか。こういうことについて法務当局並びに大蔵当局の御見解を聞き、大蔵省のほうはお帰りいただきましてけっこうだと思います。
  93. 中村梅吉

    中村国務大臣 御説の点はまことにごもっともな感じもいたしますが、すべての会社についてということは非常な困難であろうと思います。ただ、社会性の大きな会社については、お考えとしては一つの考えだと私は思いますが、ただ行政がそこまでタッチすることがいいのか悪いのか。この点は非常に問題だと思います。  そこで、今回の改正としましては会計監査人という制度を設けまして、第三者の独立した会計監査人の適正な監査によって粉飾決算や逆粉飾決算のないように、会社経理というものが適切に行なわれるようにということを考えておるわけでございますが、これは今後の運営いかんを見まして、御指摘のような点は考慮せらるべきである、かように考えております。
  94. 田中啓二郎

    ○田中説明員 非常に高い見地からの御意見で、私ども、ただいま法務大臣のおっしゃいましたこと以上申し上げることは何もございません。大蔵省設置法の問題でもあり、また行政委員会となりますれば行政組織法の問題であり、行政管理庁の問題でもございますことで、事務の私として特に意見がましいことを毛頭申し上げることはできないことをお含みいただきたいと思います。
  95. 玉置一徳

    玉置委員 この件につきましては、にわかに御答弁をいただくことは無理だと思います。しかしながら、昨今の情勢を見ましても、企業そのものに制肘を加えることはあまり好ましくないと思いますけれども、国家、国民的視野に基づきまして、その方向が国民経済の健全な発展という方向からはみ出るようなものだけは、好ましくないものだけはなるべくそういうものがないような、大きな視野のあれだけは要るのじゃないか。それを自主監査させるという形、会社で自主監査ではだめだから、株主から選任された監査法人、会計監査人等がこれをやる。しかも、その方々の適切な選任ができ得るようなということだけは、ひとつそういうものが見ていくというようにすればどうだろう。法務省のほうでは法務省のほうの権限に基づきまして、その責任を負ってやっていただいておるわけですが、そのものをやっておる通産省等々は、またそれの企業活動を誘導する方向に行っておる。いろいろ役所の関係があるわけでありますけれども、そのものずばりの観点からのあれがないから、こう申し上げておるのですが、この問題につきましては、将来とも、私も具体的な勉強をしていきたいと思いますので、当局の御研究もお願い申し上げたい。  そこで、いま申しましたような関係から申しますと、公認会計士あるいは監査法人等々が、今後、国民の要請と申しますか多くの不特定多数の株主の要請に基づいて、いわば国家的な立場からの監査もやっていかなければいかない時期に来ておるし、商法の改正もそのことを意図されたんだ、こう思います。それならば、公認会計士が税理士の税理業務と交錯するところがいま一番問題になっております。ところが、三分の二の公認会計士の方々が税理業務を現におやりになっておるということも現実であります。  したがって、そういう関係から申しますと、いつかはこれがある程度確実に分離された時代が来なければならないのではないだろうか。それまでの経過措置、過渡的な措置というものは幾多手を打たなければいかぬ問題がございますが、現に弁護士が税理業務をやれるようになっておるわけでありますが、事実上なさっておいでにならないということは、やらなくても弁護士のほうで十分な報酬があり得るからだと思います。また仕事もそれで手一ぱいだと思うのですが、そういうような関係で、将来これの常時監査等々の制度が慫慂されてまいりますと、勢い報酬そのものもそれに見合うべき報酬というものに高まっていくと思います。そういう意味で、初めのここ十年ぐらいの間の、そういった形に隔絶するまでの間の問題点が非常に多いと思いますけれども、そこに附帯決議がついたりいろんなことをしまして問題になっておるわけでありますが、これをどのように経過期間を措置していくことが好ましいと思われるかどうか。  これとともに、またそれにふさわしい資質の向上が要ると思います。衆議院の最後の段階で御質問申し上げましたとおり、二十四、五で公認会計士なら公認会計士の資格を取得される。それから三年間の、したがって二十七、八ぐらいで公認会計士の実務につき得るわけでありますが、はたしてそれだけでいいのかどうかという問題が一点ございます。したがってあのときには、監査法人というような組織、運営を十分に御指導いただくほうが好ましいのではないかということにも議論が多かったと思います。そしていよいよある程度の年配とある程度の社会に対する一つの教養を高められて、独任的におやりになることのほうが好ましい、こういうふうな議論が多かったと思うのですが、それをどのように扱っておいきになるつもりでございますか。
  96. 川島一郎

    川島(一)政府委員 実は公認会計士の関係につきましては大蔵省のほうで所管されておられますので、私直接の所管でございませんのでお答えいたしにくい点があるわけでございますが、私なりに理解しております限りで申し上げますと、日本の公認会計士制度は戦後できたわけでありますが、今日まで相当の期間を経過しております。しかしながら、外国の制度に比べますとまだ歴史が浅いというような事情もあるようでございまして、御指摘のような問題がないとはいえないと思います。大蔵省のほうでは以前から上場会社に対する監査というもの、これは証券取引法に基づいてやっているわけでございますが、この証券取引法の監査に当たられる公認会計士なり監査法人の御経験というものもある程度積まれてきております段階でございますので、今回の商法監査の実施にあたりましても、ある程度その御経験というものが利用されるのではないかと思います。しかしながら、まだまだ仰せのように現在の公認会計士は必ずしも会計検査の仕事のみに十分完熟しているともいえない面もあるように伺っておりまして、大蔵省でも監査法人の育成というものをかなり熱心にやっておられるように伺っておりますので、われわれも側面からこれに御協力を申し上げまして、援助いたしまして、将来商法監査がますます充実したものとなりますように努力していきたい、このように考えております。
  97. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、附帯決議の一に戻りまして、「現下の株式会社の実態にかんがみ、小規模の株式会社については、別個の制度を新設してその業務運営の簡素合理化を図り、大規模の株式会社については、その業務運営を厳正公正なら」め、株主、従業員及び債権者の一層の保護を回り、併せて企業の社会的責任を全うすることが下きるよう、株主総会及び取締役会制度等の改革を行なうため、政府は、すみやかに所要の法律案を準備して国会に提出すること。」、ここで、先ほど株主総会につきまして御質問を申し上げたわけでありますが、取締役会制度の改革という点につきまして、附帯決議趣旨はどのような趣旨だとお考えになるか、どのように措置しようとお考えになっておるか、御答弁をいただきたいと思います。
  98. 川島一郎

    川島(一)政府委員 これは大規模の株式会社についての問題でございますが、御審議の過程で私なりに理解いたしましたところでは、現在の株式会社の運営というのは、社長が中心となって、場合によりましてはその社長の一存でなされておる、あるいは中心となる二、三の取締役の一存でなされておるという運営が多いように聞いております。そこで、やはり商法上の制度といたしましては、取締役会というものが中心の機関になるべきでありますし、実際の運営がそのようになされていない面があるとすれば、それは制度的にも何らかの手当てをする必要があるであろう。そうして、衆知を集めて、ここに書いてありますように会社の企業としての社会的責任を全うすることができるような、そういう分野をはかる仕組みをつくっていく、そういう方向で制度の改革を検討せよ、こういう御趣旨であろうと理解いたしております。
  99. 玉置一徳

    玉置委員 ついででございますが、この間衆議院の予算委員会で大会社、ことに商社、銀行等の代表者を参考人として来ていただきまして、いろいろな質疑を繰り返したわけであります。あるいは意図的かもわかりませんけれども、私はそういうことを内容を熟知しておりませんというのが非常に多うございました。なるほどあれだけでっかくなってしまいますと、ちょっと内容のわからないこともあり得るのもむしろ当然じゃないだろうかと思われる節もございます。そういうような形で取締役会というものが運営されておる。だから、株主利益擁護だけではなくして、そんなことは言うべくして行なわれ得ないような大きな機構になり過ぎておる総合商社等に、商法改正というものを考えましてどういうことをお考えになるか、この際ひとつ御意見を承っておきたいと思います。
  100. 川島一郎

    川島(一)政府委員 たいへんむずかしい問題でございまして、実は先ほど申し上げました法制審議会にはかりまして、委員の方々の御意見を十分に承り、委員会において十分の御審議をいただきたいというふうに思っておるわけでございまして、私一個の考えというものを申し上げるにははなはだまだ未熟なように思いますので、できますればその点は今後の検討課題とさせていただきたい、このように存じます。
  101. 玉置一徳

    玉置委員 では答えのできやすいほうに戻りまして、先ほど附帯決議の中で、衆議院のときだったと思いますが、御案内のとおり、被監査会社の税務業務につきまして、監査法人の会員が一人でも従事しておる場合はいかんと、こういうようになっておりますが、このことはこのようにやっていただかなければならないわけでありますけれども、これで従来の、たとえば監査法人というものは実態としてはお互いにある交友関係のある者がお集まりになっているのじゃないか、そうしてお互いにもちろん知友であると同時に、ある程度のことを何を話してもいいというようなお仲間が集まっておいでになるのじゃないだろうか。そのうち、いままで法律的にそういうものがなかった場合に、その中には多数の税務上の仕事に従事しておいでになった方々もあるのじゃないか。それを二、三年前のそういう仕事に従事しておいでになった方々の作成されたものが、これから一切法律的にだめだということになると、実態として非常に不ぐあいな問題が生じるのじゃないだろうかという感じがいたします。これが一点。  それから、先ほど申しましたように、会計監査人、公認会計士、それから監査法人、それから税理士の方々、この職域を若干の日数をたちながらうまくそれが相互に侵犯しないように、共存できるような、共存共栄と申しますか、お互いの分野においてりっぱにそれぞれの分野の責任を果たしていただくようになるように持っていかなければならないわけでありますが、そのほんの経過的な期間というものは、公認会計士のうちで三分の二が現に税理業務を行なっておいでになるというような実態から考えまして、法律並びに附帯決議等はあるべき姿というものを想定してものを言うておる節もあります。こういうような意味では、これを措置していくときの経過的なあんばいと申しますか配合と申しますか、というようなことに十分な配慮を願いまして、双方が御満足のいけるような形で、そしてあるべき姿に早く持っていくということがこれから法務省の非常にむずかしいところだと思います。これにつきましてどのようにこの附帯決議を措置していこうとお思いになるかお答えをいただいておきたいと思います。
  102. 川島一郎

    川島(一)政府委員 主として公認会計士の関係の問題になるわけでございまして、先ほど申し上げましたように大蔵省で所管しておられる問題で、附帯決議関係も公認会計関係の法令で措置されることに相なっております。そういう関係で私直接にお答えを申し上げにくいわけでございますが、商法自体といたしましては、この法律施行されましてからこの会計監査に移行するまでに若干期間を置いております。具体的には、この法律施行になりましてから最初の決算期は従前どおり、その次の決算期から始まるということにしておりまして、しかもその実施は段階的に幾つかに分けてございまして、最初は現在商取法の適用を受けている、つまり商取法の監査を行なっている会社について商法の監査も行なう、その次の年度に入りまして特に大きな会社について行なうといったような三段階、四段階に分けておりまして配慮もいたしておりますので、その間に数年かかって完全実施ということになるわけでございますので、その間混乱のないように大蔵省にもよく御相談申し上げて考えてまいりたい、このように思っております。
  103. 玉置一徳

    玉置委員 約束は大体一時間とこう申し上げておりましたので、大臣がおいでになりましたら将来の問題につきましてこまかく質問したいと思っておったのでありますが、時間的にも無理でございます。われわれが商法の改正をやっておりますこういう期間にも、世の中のあり方が国民の規範意識というものまで変わってまいります。株式会社の実態も非常に膨大なものができまして、われわれが昔商法という形でもって頭に描いたような実態じゃなくなってすらきつつあるのじゃないだろうか。したがって、株主の保護ということもさることながら、投資的な対象というような観念がおもであるとすれば、それは国民経済的な観点からすべてのことを律していかなければならないのじゃないだろうか。したがって、今度は監査役の業務にまで手を伸ばしてよろしいということになっておりますけれども、事実上会社取締役会から選任されるような形にいままでなっております監査役というようなものが、取締役会あるいはその代表取締役にたてついて、総合商社のこれはよくないですよ、あれはよくないですと、国会議員みたいに言いたいことを言えるような仕組みにはまいらぬ、これも実態だと思うのです。そういう意味では、できるだけ株主からそういう方々を選任できるような、あるいは株主の側からあるいは一般国民の側からは、監査役じゃなしの、広い視野からもってそういうことが代弁できるようなものを将来とも育てていかなければならないし、それには、いまの法務省並びに大蔵の証券局だけでという形よりは、むしろ私は独立の行政機関のほうがそれにマッチしやすいのじゃないだろうかということも御提議申し上げたわけでありますが、今後とも法務省はもちろんのこと、国会もこういう問題について真剣に取り組んでいかなければならないのじゃないだろうかということを今次の石油危機の問題並びに予算委員会の審議等を通じまして痛切に感じてくるわけであります。こういうことにつきましてひとつせっかくの御検討を審議会等に御諮問されると同時に、審議会だけのあれじゃなしに、あらゆる質疑等々も参考にされまして十分な対応策を講じておおきになるようにお願いを申し上げたいし、それぞれ分業の世の中でありますので、取締役会は取締役会の国民経済に負託された責任というものを痛感してやっていただくと同様に、やはりチェックする機関というものがどんな場合でも要るわけでありますので、それはそれで育てていく、その過程において税理士並びに公認会計士がともにお互いに協力し合ってその国民の負託にこたえていただくような形に機構並びに仕組みを持っていかなければならないのではないだろうか、こういうように思います。それについて所見を当局から申し述べていただきまして、私の時間が参りましたので質問を終わっておきたい、こう思います。
  104. 川島一郎

    川島(一)政府委員 いろいろ有益な御意見をいただきまして、私ども今後の改正におきまして十分参考とさせていただきたいというふうに思います。  仰せのように今回の改正におきましては、監査役に業務監査までさせるということにいたしておるわけでございますが、その趣旨は、取締役監査役を対立させてそうしてコントロールをしていこうということよりも、むしろ監査役が常時取締役の業務執行の中に入っていって、そしてその業務執行が円滑にしかも違法でなく適正に行なわれるように、そういうような形に業務執行そのものを変えていきたい、それが最終的な一番ねらいとするところでございまして、それがうまくいかない場合には、それは監査役がその職権を発動して違法行為差しとめ等の問題を生ずるわけでありますが、そういう二段がまえでやっていこうということを考えておるわけであります。最近のいろいろな問題を見ておりますとはたしてこれだけで十分かという御懸念は確かにあろうと思います。そういった点につきましても今後十分商法部会でも検討していただきたいと思っておりますので、御了承を賜わりたい、このように思っております。
  105. 玉置一徳

    玉置委員 いまの問題につきまして意見だけ申し上げておきます。監査役がなるほど常時取締役会の業務運営にまで一緒に入っていく、これは望ましいのですけれども、従来の会社の中から順番に持ってまいりますと、監査役というものがえてして常務取締役よりも一枚下の方が順番におなりになっているような形態になっております。私は昔農協の役員をさせられておりましたときもよく思いましたのですが、おまえのほうは小さいから業務分量が少ない分はひとつ監査役になりなさい、順番に同じようなところだけが理事になるのと監査になるのと交代をしておるというようなのが多うございます。当時でも思いましたのは、各市町村の農協の監査から府県の連合会の監査へ、それから国の連合会の監査には優秀な者を選ぶようにする。そこへいったら、業務の多少によりまして、監査は少ないほう、多いほうは理事だなんというような形で行なわれておる。一般の農協その他の団体あるいは会社におきましても、監査というものが一枚下のような位に位置づけられておるのがいま世の中の普通じゃないだろうか。その意味では、無任所の非常勤の社外重役の取締役なんか重きをなすのじゃないかと思いますが、あれも金が借りやすいように、信用力がつくように、私のほうの会社も参加しておるのですというような意味の度合がいま多いのじゃないだろうか。だからおっしゃったことは、非常にいいことをおっしゃっていただいておりますけれども、それは株主総会から選択するというような形にでもならぬ限り、一部にはそういうことがあり得ますけれども、全般としてはいまの仕組みではそのことがなりにくいような実態になっておるように思います。そういう意味で、そういうことやこういうことも考えまして、やはり大きな組織には一つや二つのチェックの機関というものが要るのじゃないだろうか、こういう感じもします。常任監査役はそういうところまでお行きになることは非常にいいことでありますけれども、なかなか実態としてやりにくいということを考えれば、さらにチェックする機関が、株主の擁護のためにも国民経済的な視野からもあっていいんじゃないだろうか、こういうことを思いますから、ぜひともそのこともあわせて考えなければいかないような感じがします。念のため申し添えまして、質問を終わります。
  106. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後二時二十二分休憩      ————◇—————    午後四時十四分開議
  107. 小平久雄

    小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  108. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 午前中の続きで、三十七年のときに、これはさっきは私は提案説明と言ったようですが、民事局長の補足説明のようですね、聞きますと。そういうふうに訂正をさせていただきますが、この中で「また、法律上債務でない見越費用を負債とすることにつきましては、理論上疑義がないわけではありません。しかし、会計の理論及び実際の面から負債性引当金を認めるべきであるという要望が強いのであります。」こういうふうにいっておるわけなんですが、法律上債務でない見越し費用を負債とすることについては理論上疑義がないわけじゃないけれども何とか、こういっていますね。これはどういうことですか。これは負債性引当金とは違うのじゃないんですか。これは何をいっているのですか。これが問題のやつでしょう。
  109. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私もこの文章そのものがどういう趣旨かということは理解しておりませんが、ただこの当時においては、負債性引当金ということばをかなり広い範囲で認めておった。現在では負債であるものを負債性引当金と呼んでおりますが、負債に準ずるものということで、この当時はそういうものも含めて負債性引当金と呼んでいたのではないかと思います。
  110. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だってこれはあなたのところで——あなたはおられたかどうかは別として、あなたのところで補足説明しているのでしょう。補足説明だから、質問に対して答えたんじゃなくて、ちゃんと省議か何かやって、そうしてこのあれをまとめて、そして書面で国会に出したのでしょう。常識的に見てそうでしょうね。それがよくわからないというのは、どうも何というか困るような感じがするのですがね。困るとは申し上げませんが、困るような感じがすると言っておきますけれども。これは大蔵省は何をいっているわけですか。「法律上債務でない見越費用を負債とすること」というのは何をいっているわけですか。会計原則では何に当たるわけですか。
  111. 田中啓二郎

    ○田中説明員 これはおそらく修繕引当金ではないかと思うのでございますが……。
  112. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは修繕引当金だけですか。「法律上債務でない見越費用」というのはそのことだけですか。ほかのものをいろいろなものを含んでいるのじゃないの。この法案を出すときに、あなたがおられたかどうかは別として、大蔵省にもいろいろ相談があって、むしろ大蔵省側のほうでアクティブにやってできたのじゃないですか。昔のことだからわからなくなってしまったのかもわかりませんけれども。それはそれで、じゃいいとしましよう。  会計の理論及び実際の面から負債性引当金を、この負債性引当金というものの意味は別として、認めるべきであるという要望が強いのだ、こういつていますね。それでこの法律案においては要望をいれたのだ、こういっているのでしょう。しかも、この引き当て金はその範囲が広くて、また経理操作に利用されやすい項目である、こういっていますね。どこからどういうような要望があってこの法案、十年前のことを言って申しわけないのですけれども、これはできたのですかね。その当時議論しておくのがほんとうだったのでしょうけれども、してないから。これが粉飾に関係してくるわけでしょうね。これが逆粉飾の一番ポイントでしょう。あとで出てきますけれども。これはどこからどういう要望があったのですか。
  113. 川島一郎

    川島(一)政府委員 実はその当時のことを若干調べてもらったのですが、どこからの要望かという具体的な点ははっきりいたしません。ただ、私が聞きましたところでは、当時すでに実際界におきましては引き当て金を若干広い範囲で認めておったという事実があったようでございまして、その事実に基づいてこういう必要があるのだからこういうものを認めてほしい、商法の上にも規定してほしい、こういう要望があったと聞いております。  たとえばでございますが、先ほどの負債性引当金の意味にも関係いたしますが、退職給与引当金というのがございます。これは商法上は、やはり負債と考えておるわけでございます。将来退職が生じた場合に、退職の給与を払わなければならない。これが雇用契約なり、あるいは労働協約できまっております場合には、法律上の債務ということになるわけです。したがって、これは負債である。ところがそういう雇用契約あるいは労働協約に規定がない、つまり会社が退職金を払わなければならないという義務のない場合がございます。そういう場合におきましても、退職給与の引き当て金として計上することがあるのだそうでございます。その場合には、それは負債でございませんから、商法的には、負債でない引き当て金ということになるわけです。そこで、そういう債務か債務でないかということをはっきりさせずに、いずれも引き当て金というような形で運用しておる。そのほかにも、先ほど例に出ました修繕引当金とか、いろいろなものが考えられるわけでございますが、その内容を、法律的にはっきりこれは債務であるとか、あるいはこれは債務でないというようなことを区別しないで、引き当て金という形で運用しておった。そういう事実がありまして、それをこまかく見ますと、それは債務でないから、負債の部に入れることはできないのではないかといったことがございまして、それでは実際に必要があって計上しているのだから、こういうものも負債の部に計上することを認めてもらいたいということが出てきた。その結果、ここに書いてございますように、要望があって、引き当て金の制度が商法にも規定された、こういう経過になっておるようでございます。
  114. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、会計原則の修正案の注の14ですか、これは「負債性引当金以外の引当金について」という中に「負債性引当金以外の引当金を計上することが法令によって認められているときは、当該引当金の繰入額又は取崩額は未処分損益計算の区分に記載する。」と書いてあります。この特に「法令によって認められているとき」というのは、どういうときを言っているのですか。
  115. 田中啓二郎

    ○田中説明員 これは商法二百八十七条ノ二によるものと考えております。
  116. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの条文は、ただ条文が書いてあるだけの話であって、具体的なものは何も書いていないわけでしょう。そうでしょう。だから「特定ノ支出又ハ損失」という場合の「特定」ということについて、広く解釈する場合と狭く解釈する場合とがあるわけでしょう。広く解釈すれば、いろいろなものが、将来のものもどんどん入ってくる、見越しの計上というようなことも入ってきますね。たとえば創立何十周年記念をいつやるのかという将来のことまでみんな入ってくる。そこで費用が計上できるということになれば、利益が減ってくるという形になる、配当が減るということになるわけでしょう。  そこで、一体この「特定ノ支出又ハ損失」というこの「特定」という意味法務省としては、どういうふうに解釈をするのかということですね、現在の段階において、立案としては。これはその当時の座談会のあれなんか見てみますと、味村氏ですね、味村氏が制限的に列挙しようと思ったのだけれども、何かそれがなかなかむずかしくて、いろいろなことでできなかったという意味のことを言ってはおるのですが、現在の時点で、この「特定」というのをどういうふうに解釈するか、こういうことですね。広く解釈するのか、狭く、厳格に解釈するのか、こういうことですね。二つの解釈のしかたがあるでしょう。解釈のしかたによってどういうふうに違うのかということと、法務省としてはどういう立場をとっておるのかということをお聞きしたいわけです。
  117. 川島一郎

    川島(一)政府委員 「特定」の意味でございますけれども、これはその支出または損失の生ずる原因ですね、この原因と、それから損失をこうむる対象物が特定しているということが必要であろうというふうに考えております。
  118. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは相当広い解釈でしょう。それよりもっと狭く解釈すると、「特定」というのは、支出または損失の発生が確実である、それから支出または損失発生の確率や確実性が大であって、その発生を確実に予測し得るものにのみ引き当て金の設定が限定されるというふうに解釈すると、いまあなたの言われた範囲のものであっても、非常に広くて、その中で厳格に解釈すると入らないものができてくる、こういうふうなことになるんではないでしょうか。それではこれは大蔵省としては、どういうふうに解釈しておるのですか。広く解釈するのか、狭く解釈するのか、そこら辺のところをどう理解しておるのですか。
  119. 田中啓二郎

    ○田中説明員 従来は、引き当て金は、評価性と負債性、特に条件づきの負債は、これは負債性引当金としてむしろ記載しなければならないというような感じで、それ以外のものにつきましては、会計的には、従来は、これは利益、剰余の処分のものがかなりあるのではないかというような感じで、その点については、場合によっては意見表明ということが行なわれてきたわけでありまして、しかし今回、商法と証取監査が、要するにドッキングしますことに伴いまして、私どものほうとしましては、とにかく修正案では、評価性引当金と負債性引当金というのは、概念的にもはっきりさせた。あと残るのは、特定引当金をどういうふうに解釈するか。これは商法の問題でございますから、やはりこの解釈は、法務省の御指導を得なければならない。そうすると、公認会計士としましても、法令に認められているということは、商法でいいか悪いかということですから、やはりある程度の指導原理を示していただきたいと思うのではないかということを、ここでも何回か申し上げたわけでございまして、現在としましては、そういうようなことで、できれば、法務省のほうから御協議いただきまして、その辺はっきりさせたほうがいいのではないかという気持ちは持っておりますが、とにかく商法規定でございますから、私どもがその解釈を自分でどうこうと言うことはできないということは、御了承いただきたいと存じます。
  120. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、いまの解釈、これは法務省としては、広く解釈する立場と狭く解釈する立場がある。広く解釈した場合には、どういうようなプラスあるいは弊害、これがあるのか。その点については、どういうふうにお考えになるのでしょうか。それで広く解釈するという場合の例をあげて、広く解釈すれば、こういうものはこれに当たるけれども、厳格に解釈すれば、これには当たらない、こういうものがあるわけでしょう。そこら辺のところははっきりさせていただいて、広く解釈した場合どういう利害得失があるのかということ。たとえば株主にとってあるいは債務者にとって、会社自身にとって、いろいろあると思いますが、これをひとつ明らかにしていただきたいというふうに思うわけであります。
  121. 川島一郎

    川島(一)政府委員 お答えする前に、先ほどの「特定ノ」の意味でございますが、私は「特定ノ」ということばをどういうふうに理解するかということでお答えしたわけでございまして、特定引当金というものをどういう場合に認められるかという点につきまして、これは必ずしも「特定ノ」ということばだけにこだわらなくてもいいんじゃないか、規定全体の趣旨から考えるべきであるというふうに思っておるわけで、必ずしも広く解釈せよという趣旨ではございません。  それから、どういう意味があるかという点についてのお尋ねでございますが、特定引当金は、商法上は負債でないものを負債の部に記載するということになりますので、利益をそこに留保するという形になります。したがって、たとえば株主に配当すべき利益のほうへは回ってこないわけでございますから、その分だけ配当が減るということになりますから、少なくとも配当し得る配当可能利益が減ってくるということになります。したがって、株主としては一体どこに利益がどれだけ留保してあるのか、こういう留保があるならばそれは配当のほうへ回したらどうかというようなことも言えなければならない。そういう意味で、あまり多く引き当て金のほうへ回しますとこれは株主の不利益になるし、株主総会で問題にする余地が出てくるであろう、こういうふうに考えるわけです。債権者のほうにいたしますと、これはそれだけ会社の内部留保がふえるわけですから、会社の担保財産と申しますか一般担保財産というものはふえてくるんで、別に債権者のほうから文句が出るということはないんではないかというふうに思うわけであります。それから具体的な例でどうかという点でございますが、先ほど先生がお触れになりました創立何周年記念事業引き当て金というようなものがございます。これを何年前から引き当てるかという問題がございまして、たとえば五年も十年も前から引き当てるということは、これは目的は特定しておりますけれども、しかし引き当て金趣旨からいって許されないんではないか。実際に二、三年前になりまして計画が立つわけです。そしてその計画をいまから準備していこうというような場合があったといたしますと、たとえば三年前から引き当て金を積んでおく、こういうようなことは許されるであろうというふうに思うわけです。
  122. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま言われましたように、これは範囲を広く解釈すればそういうふうな弊害が非常にあるわけですね。現実にいろいろな引き当て金という名称をやって損金経理をしているけれども、厳格にいえばこれに該当しないものが相当あるんではないか、こういうふうに考えられるわけですね。たとえばよくある、前にもあったらしいんですが、営業外費用ということで自由化対策費というのを設けておる。それから自由化引当金といった形で負債の部に載っけてある。製品改善引当金だとか、設備改善引当金——設備改善の場合は、ものによっては一つ考えられるのがあるかもわかりませんが、これはみんな利益留保ですね。だからこの引き当て金というものを大きく認めてしまえば、そこで逆粉飾というか、これが非常に大きく行なわれやすい。そのことは、この条文自身がきわめて簡単であるんだけれども、補足説明自身を見てもどうもはっきりしない、混乱しているということから出てくるんじゃないんですか。いわゆる利益留保性引当金というのか、そういう形で設定しているのやいろいろな形であるんですね。販売促進引当金だとか、みんなそこへ持っていってしまうのですね。そうすると、みんな利益が減ってしまうというわけだな。そうでしょう。大蔵省のほうとしては、それはどういう程度のどういう引き当て金ならば、この条文にいうところの法令によるに入るか入らないか。それは法務省のほうにみんなまかせてあるのですか。そんなことないでしょう。これは実際はあなたのほうの責任でやっているわけでしょう。ですからあなたのほうとしては、ぼくがいま言ったような自由化対策引当金、製品改善引当金、設備改善引当金あるいは特別開発準備金とか販売促進引当金とか、いろんなものがありますね。こういうのははたして、利益留保というのはあるとして認められるべきものなんですか。こういうものは実際は非常に多いのでしょう。ここで粉飾が行なわれているのじゃないのですか、どうなんですか。
  123. 田中啓二郎

    ○田中説明員 現在の商法の営業報告書で、特定引当金の部に計上されているもので税法上損金算入を認められないものがかなりあることは、おっしゃるとおりでございます。そこで私どもは、現在におきましてはそういうものは、税法上認められているものは特に限定意見と申しますか特別の意見を付することを必要とさせませんが、それ以外のものは必ず意見表明として限定的にこういうものはこうだということを表示してもらっております。そうして、もしそれが利益処分としてやるべきものであれば、そのような処理を公認会計士のほうでもしているというのが実情でございます。ただそこで、今回は商法監査と証取監査と一緒にいたしますので、そういたしますと商法で認められている特定引当金でございますればそれは負債の部に計上できますので、会計の側からそれは利益処分でなければいかぬぞということは言えませんので、そういう意味で何が法令で認められるかはやはりはっきりする必要があるのではないかという考えを先ほど申し上げたわけでございます。
  124. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの大蔵省の答弁を聞いておられて、法務省としてはどういうふうに理解をされるのでしょうか。ただ聞いていて、ああそうかということだけですか。それでは済まないと思うのですが、どうするのですか。やはり限定してある程度はっきりしていかなければいけないのじゃないのですか。これが逆粉飾の根本じゃないの。何でこの条文をつくったのですかね。しかも実に簡単に通ってしまっているのですよね。私はどうもふしぎでしょうがないのです。何か法務省として通達を出すとか出さないとか言っていましたね。どの程度のことをいま考えておられるのか、そこはどうなんですか。
  125. 川島一郎

    川島(一)政府委員 引き当て金がどういう場合に認められるかという点につきましては、確かに現在の規定がやや大まかでございまして、そのためにいろいろな解釈、あるいは自分に都合のいい解釈というようなものまで出てきておるという状況であろうと思います。したがいまして、これは解釈上かなり厳格にはっきりしたものを一応基準としてきめるということは必要なことだろうと思います。その点につきましては、十分御専門の方や何かの御意見を伺わないと私は自信のあるお答えはできませんけれども、しかし少なくとも商法がああいう引き当て金を認めております趣旨は、合理的な経営者であるならば、この会社の営業についてはこの程度の損失なり支出というものの準備をしておくことが必要であると認められる範囲で引き当て金を設けるべきだ、こういうことになろうと思うわけです。ただ、その基準でしからば具体的にどうなるのかということになりますと非常にむずかしいわけでございます。たとえば貸し倒れ準備金にいたしましても、貸し付け額の何%までが合理的で、それをこえるとどうかというふうに一がいにはいいにくいわけでございまして、そのときの経済情勢にもよります。それから会社の貸し出している貸し金の担保がついているかいないかとか、そういったいろいろな条件にもよるわけでございまして、一がいにはきめにくいわけでございます。それだけに、形式的にきめるということは非常にむずかしいと思いますが、抽象的な、具体的に適用し得るようなある程度の基準というものは、これは大蔵省とも御相談してみたいというふうに思っておるわけでございます。その程度でよろしゅうございますか。
  126. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 やけに自信がないな……。  実は河井信太郎氏の「会計上の粉飾と法律上の責任」という本があるわけですよ。これはずっと前に河井氏のところへ遊びに行ったら、彼がロッカーから出してくれて、二冊くれたような気がぼくはするのですが、これは図書館から借りてきたのですけれども、これを見てみますと、この引き当て金の問題で、三十七年にこれを改正したでしょう。したものですから、第二章の「粉飾の態様とその責任」というところの「三 引当金の計上と損益操作による粉飾」というところで、「現行商法解釈上引当金の計上を会社の自由とする以上、この勘定を利用した損益操作による粉飾が自由活発に行なわれることは必然である。」と、こういっているわけです。そして会社の計算書類を検討して、株主やそれから債権者がいろいろ株中総会で発言できたりするのだからいいだろうというのは、これは本末転倒だと、こういうふうなことをいって、「引当金の本質が当期の費用として収益から控除されなくてはならないものであるならば、取締役は右の任務遂行はこれを控除した計算書を作成する義務を負担すると解すべきではなかろうか。そして昭和三七年の改正法は、明文をもってその義務づけを解除したものであるといわざるを得ないであろう。」と、こういっている。ちょっとぼくもわかりにくいところがあります。それからもう一つは、「二 引当金の本質」、これは六八ページ、前のところが七〇ページ。「会計学上は、かなり明確な概念のように理解されて来た引当金の本質が、昭和三七年の改正によって不明確になったと思われる。」と、こういっているのですね。だから、昭和三十七年の改正というものがきわめて不明確になり、しかも会社の自由に粉飾できるような余地を残したのだということを河井氏の著書で盛んにいっているわけですね。これはもちろん全部を言いあらわしているのじゃないかもわかりませんけれども、少なくともこの関係の本質的なものをぼくは追求していると思うので、これはやはり二百八十七条ノ二が税金対策あるいはいろいろな労務対策などに悪用されないような形に法務省としては当然留意する必要があると思うのですね。これは法務省の中で、もちろん刑事局にもそういう義務があると思うのですけれども、民事局も大蔵省とよく相談をして、しっかりする必要があるというふうに思うのですが、あとで大臣が来たときに、大臣がこの点についてまとめて答弁するようなことをいっておられたので、あとで大臣に質問しますけれども、大臣もよくわからないで変な答弁をされると困るから、よく教えておいてくださいね。  そこでぼくは考えるのに、これは端的に言うと、引き当て金利益からそこへ回しておいて操作をする。その操作というのは、株主に対してある時期において配当がうんと出た。その次のときにもある程度の配当が出ないと株主としては困る。でないと、この前はうんと配当があってよかったけれども、今度は配当が少ないというので、取締役としては腕がないというか、会社経営の責任を追及されるということのために、この引き当て金というものを法定外にか何かつくっておいて、そしてそれを取りくずして配当の平均化をはかる。それによって会社の運営という上からいって、取締役の責任を免れようということばは悪いかもわからぬけれども、いずれにしても株主や何かに対する取締役の責任というものをよくいえば全うしようというところにこの問題のポイントがあるのじゃないですか。そこはどういうふうに大蔵省でも法務省でも考えられますか。どうもぼくはいろいろ聞いてみますと、配当の平均化にこれが役立っているんだ、こういうふうに聞くのですが、ここはどうでしょうか。これは大蔵省のほうがよく知っているかな。どっちでもいいです。
  127. 田中啓二郎

    ○田中説明員 特に役立っていると申し上げるわけにはまいりませんで、要するに、特定引当金として繰り入れられますればそれは損金になりますし、それを事後に取りくずせば益金になるということで、繰り入れる場合には当期の未処分利益がそれだけ小さくなることは確かでございます。そこで今回の修正案においては、そうではあるけれども、特定引当金というのは商法に厳然とある。したがって、それは貸借対照表上負債の部に設けざるを得ない。しかし、損益計算書においては営業利益なり経常利益なりを出しまして、そして純利益を出して、それを当期の純利益として、そこに関係せしめないで、その下に、要するに未処分利益計算というので、繰り入れたものは三角を立てるし、取りくずしたやつはプラスにするということをしまして、それで最後に当期未処分利益剰余金というのを出す。したがって、特定引当金は繰り入れても、当期の純損益にはかかわらしめない。見ればはっきりするではないかという、要するにデバイスというか、やり方でそこのところはきめたわけでございます。そうしますと、残るのは結局どこまで二百八十七条ノ二が認められるかということであると思います。
  128. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの中で二つ問題があるのじゃないですか。見ればはっきりするというけれども、これは経団連でも言っているように、しろうとの人は当期の損益ですか、そこら辺のところばかり見ていて、いまあなたの言われるようなところはよく見ないから、だからどうとかなんとか言っていますね。これはぼくもよくわからないところですが……。  もう一つ商法は厳然としてあるというけれども、それは厳然としてあることはあるでしょう、六法全書にあるのだから。六法全書にあることは間違いないのだけれども、いま言ったように、河井氏の言っているように、「引当金の計上を会社の自由とする以上、この勘定を利用した損益操作による粉飾が自由活発に行なわれることは必然である。」。だから問題は、この引き当て金の計上を会社の自由としないようなそういう立法あるいは何らかの行政措置というかそういうふうなものがなければ、粉飾は自由自在に行なわれるという形に実際はなってくるのじゃないですか。これは民事局の関係じゃないというかもわからぬけれども、そうじゃないですか。それとも何かの立法上の措置、引き当て金の計上を会社の自由としないような方法というのは何かないのですか。これは自由主義経済だからそんなことはできないのか。商法が厳然としてあるといったって、抽象的な条文がただあるだけの話だ。そうじゃないですか。何か方法はないの。立法なりあるいは行政措置なり何なりによって、引き当て金の計上が会社の自由にならないような形にできないの。これは会計原則というものを厳格に適用するとかなんとかということでしょうが、これは審査はみんな事後のものでしょう。どうなんでしょうかね。どっちでもけっこうです。
  129. 田中啓二郎

    ○田中説明員 その点、特定引当金の引き当ては任意でございます。したがいまして、合理的な範囲内で特定引当金として引き当てさすべきでないと考えられるようなものは、できれば、利益処分のほうで処理するということも企業は任意にやれるわけでございますから、指導によってはそっちのほうに持っていけることもできるわけでございます。そこで、その特定引当金の合理的な範囲ということが問題になりまして、それを越えるものは、たとえ任意であっても、先生おっしゃるように自由にはやれない。越えないものは、任意ですからそっちにやってもいいし、場合によっては利益処分として処理するということをやってもいいという二つになるのではないかと思います。
  130. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそのとおりだと思うのですがね。いま言った特定引当金の合理的な範囲ということが一体どうやって——それはなるほど業界の慣行だとか会計学の原則とかいろいろあると思うのですけれども、やはりそれをある程度法的な形でぴしっとしていかないと、そこから拡大が行なわれ、逆粉飾が行なわれるのじゃないか。だから、その合理的な範囲というものを法務省なら法務省は一体どうやって確定するのか。もちろん経済は流動的だし、発展するものだから、ただここからここまでだというふうにぴしっとするわけにはいかないかもわかりませんけれども、おおよそのある程度のものはぴしっとしたものをつくって、大蔵省とも相談をして、業界なり何なりを指導するとかなんとかしなければ、これはもう収拾つかなくなって、粉飾というものは自由に行なわれる。それを結局黙認せざるを得ないような状況に追い込まれるのではないか、こういうふうに私は言っておるわけなんですが、最終的にまとめてお答えを願いたいと思います。
  131. 田中啓二郎

    ○田中説明員 これは、私のほうからは、法務省にお願いして何らか協議をさせていただけないものかということで、何回も申し上げておるわけでございます。
  132. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、お願いされた法務省は今後具体的にどうするのですか。問題はそこですよ。これは商法の今度の改正の中に入っていないものだけれども、監査役の監査の対象としても非常に重要な問題になってきますしね。逆粉飾というか、あるいは粉飾というものをなくすのが今度の商法改正の主眼だ、こういうのでしょう。そうならば、この点が非常に大きな問題になってくるので、大蔵省法務省にお願いをする、法務省はお願いを受けた、さあどうするんだということをもっとある程度明確にできないかということを私は聞いているわけなんですよね。あまり同じ質問をしていてもしようがありませんから、ここら辺で一応あなたのほうでまとめた答えを聞いて、別の質問に移ります。
  133. 川島一郎

    川島(一)政府委員 事は商法解釈の問題でございます。法律解釈は最終的には裁判所がするものでございますけれども、しかし、その前に運用というものがあるわけでございますので、その運用の際に基準となる解釈というものをきめておくということは必要なことであろうと思います。これまでも大蔵省のほうでは証取監査というのがございまして、会社の計算書類を公認会計士の方々が監査されて、それをチェックしておられたというような関係もあるわけでございますが、今度商法監査というものが商法改正によって入ってくるということになりますと、勢い私のほうもそれに無関心でいるわけにはいかない。そういう意味で、実際公認会計士なり監査法人の方々が監査されるにあたって、その基準となるようなものを、大蔵省とも御相談して何らかの形で示すことができるようにしたい、こういうふうに考えております。
  134. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まあ同じ質問をしていても始まりませんから、一応これでこの点は終わりにして、大臣が来たときにまた聞くかもわかりませんが、もう一つわからない点は、二百五十六条ノ三と四、累積投票制度の排除の問題がありますね。これは、あなた方の段階では、全体が資本の自由化ということが一つの至上命令——至上命令かどうかは別として、あれならば、それを防ぐためにこれをやるんだとはなかなか言いづらいかもわからないけれども、一体何のためにこういう制度が行なわれるようになったんですかね。ということは、一つは、なるほど外資のためのいろいろなあれがあるでしょう。同時に、これはやり方によっては、いわゆる少数株主というかそういう人たちが取締役か何かを選任する権限が非常に奪われていく結果が現実として出てくるのじゃないか。こういうことがあるからお聞きをするわけなんです。  そこで、抽象的な話を聞いてもこれは同じことですから、具体的に、たとえば取締役が何人いる、それで株主が何人いる、そういう場合にどういう投票をしたときにどうなんだ、だから、たとえば五一%持っていれば全部が当選しちゃう場合もあるし、四九%ならば全部が落っこっちゃう場合もあるし、これはこの法案の改正の前の段階ですよ。改正ができたならばそれが今度どうなるのかとか、違いがあるのかという点を、いろいろな数字の例をあげて説明願わないと、抽象論ばかりやっていても始まりませんから、具体的な例をあげて説明をしていただきたいと思うわけです。
  135. 川島一郎

    川島(一)政府委員 累積投票請求をした場合にどうなるかということにつきまして、この資料でお答えしたいと思います。  これは「商事法務研究」という雑誌に載ったわけですが、「累積投票のメカニック」という論文がございます。これによりますと、いろいろこまかい分析がございますが、結論を申し上げますと、たとえば選任すべき取締役の数が二人の場合に、その半数を選任するに必要な持ち株比率というのは三三%である。三三%持っておれば、二人のうち一人は選任できる。それから四人の場合には四〇%が必要である。六人の場合には四一%が必要である。つまり六人選任する場合には、四一%株を持っておれば三人までは選任できる。そういったことをいろいろ分析してございますが、結論的にそういうふうにやや少数株主に有利な結果が期待できるということになるわけです。
  136. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはいまのはその結論に至る経過がどういう計算経過かによって非常に違うわけでしょう。たとえばかりに五人の取締役を選任するとする場合に、五一%を持っておる株主たちのグループがある、それから四九%の株主のグループがある、こういうふうな形でいくと、たとえば五一%の株主のグループというのは五票かける五十一だから二百五十五票、四九のほうは五票かける四十九だから二百四十五票、こういうふうな形に常識的になってきますね。そうすると、その二つのグループが最も合理的な形で投票したということになると、Aのほうが二百五十五ですからこれを三で割ると八十五票ですね。二百四十五のほうのBが三で割ると八十一と、二余るわけですけれども、それを計算していくと、いままでの段階ならばAグループが三人、Bグループは二人という取締役が出せる。これは一つの数字ですよ。ところが、今度この累積投票制度を排除してしまいますると、やり方によるかもわかりませんけれども、今度は五一%持っている人が全部当選しちゃう、四九の人は全部落っこっちゃうということも理論上は考えられるのじゃないか、結論としては、これは極端な例かもわかりませんよ。これは設問のための設問かもわからないけれども。そういうことも考えられるということになってくると、累積投票制度の排除ということは、結局は大株主というか何といいますか、たくさん持っている人に非常に有利になってくるのではないか。そういうことがいわれるのではないか。結局そういうところから来て、少ない株主は不利ではないか。少ない株主は不利というのはあたりまえといえばあたりまえかもわからないけれども、こういうところで取締役の選任ということについて非常に大きなギャップが生まれてくるのじゃないかというふうに考えられるのではないか。いまあなたの言われたのはぼくは見ていませんけれども、それは途中の計算が抜いてありますから、どういう形かよくわかりませんけれども、出てくると、そういうことになる場合もあるだろうし、ならない場合もある。だから、あなたのほうの言う場合では、少数株主にいまよりも有利だということも考えられるかもわからないし、やり方によっては少数株主がいまより不利になることもある。こういうふうに二つの問題が考えられるのではないでしょうか。だから、そこで一がいにただ少数株主のほうに有利だというのはおかしくなってくるのではないですか。少数株主に不利な場合もある、これは事実でしょう。それが一つ。  それから外資との関係でどうなんですか。ちょっとわからないのですが、この制度は外資の乗っ取り防止ということで、乗っ取り防止ということばは悪いけれども、役に立つとか役に立たないとか言っているのですけれども、その点をもう少し具体的に説明をしていただきたい、こういうふうに思います。
  137. 川島一郎

    川島(一)政府委員 お答えする前に、先ほど私が少数株主に有利な結果になるということを申し上げたわけでございますが、これは現在の累積投票制度が必ず実施された場合という前提で申し上げておったわけでございます。ですから、累積投票制度が排除されるとこれは明らかに不利になってくるという結果になるわけです。  それから外資との関係ですが、資本の自由化によって外資が入ってきます。そうしますと、外国の株式というのは、外国で公募される、外国で取引されるということになりますが、形式的には株式の保管会社というものができましてそれが一括して株式を保管しておる、そして現実に株を買った人には預かり証を出すという形式がとられる例が多いわけでございます。そういう場合に議決権の行使はその保管会社に一括して委任されるということになりまして、その結果保管会社累積投票権を行使するという場合が出てくるのではないか、それを懸念しておる会社があるということを聞いております。そういうことから資本の自由化をちゅうちょする会社が出てくるという点で、そういった心配を除く意味で、今回のような改正によって、定款で累積投票を排除できる、こういうことを考えたらどうかというのが一つの改正理由になっております。
  138. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は累積投票制度が排除された場合にどうなるかということを聞いたつもりだったのですけれども、いまの「商事法務」のやつはどうも変だと思ったのですが、それは現在の累積投票制度がある場合のことでしょう。そうでしょう。
  139. 川島一郎

    川島(一)政府委員 そうです。
  140. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから排除された場合は、逆とはいわないかもわからないけれども、いわゆる少数株主というかそういう人たちには非常に不利になってくることは事実なんでしょう。その点どうなんですか。そういうような少数株主に不利になるようなことをなぜ認めたのか。前に言った「商事法務」のやつは逆でしょう。
  141. 川島一郎

    川島(一)政府委員 そうです。あれは累積投票が行なわれた場合のことを言ったわけです。ですから私が勘違いして逆の場合についてお答えしたのだと思います。  それから累積投票制度の排除を認めた理由でございますが、これは、累積投票の制度がそもそも認められたのが昭和二十五年で、当時アメリカの例にならったわけでございますが、アメリカでもこの制度は一部の州にしか行なわれていなかった、それで日本に持ってくるについても多少異論があったけれども、当時は司令部がございましてその結果ああいう改正が行なわれたという経緯であったように聞いております。その後の実績を見ましても、あまり累積投票請求が行なわれたという例はございませんで、ごくまれにしか行なわれていないというのが今日までの実情になってきております。そして、先ほどお話に出ました資本の自由化との関係、こういった問題もございまして、実際界ではこういった累積投票の制度はやめにしてくれというような要求もかなりあったわけでございます。しかしながら、完全にその制度をやめてしまうのはどうであろうかということで、会社の定款によって排除をした場合には完全排除を認めるといういわば中間的な形で改正を行なうということにしたわけでございます。
  142. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 一応非常に不十分だと思うし、それからいまの累積投票制度を排除した趣旨が、私はどうも少数株主というか、むしろ一株一株の運動がこのごろありますが、それが株主総会ですぐ取締役を選任するまでの株を持ち得るかどうかこれは問題だと思いますけれども、それらをやはり企業側としては避けたい、あるいは防止したい、こういうふうな考え方からこういう制度をとってきたのではないか、こういうふうに思うわけですね。企業側の要請というのは、株主総会権限というものをできるだけ弱めていきたい、そして監査役権限も、今度の商法では一応強めるようなかっこうになっておるけれども、要綱にあるものの中で二つ、三つですか、排除されているというか法案に出ていないものもある。取締役会というようなものも権限を強めていきたい、これが企業側のねらいであるということを考えますと、どうも一株運動というものは、これはある意味においては政治的な主張かもわかりませんけれども、それらが非常に企業側から見れば困ったというか何というか、そういうようなことがあって、それを排除をしたいということがこの法案の中、いまの点などあるいはその他の点にもあらわれているのではないか、こういうふうに思うのですが、この点はあなた方のほうでは、どういうふうに考えておられるわけですか。
  143. 川島一郎

    川島(一)政府委員 一株運動の対策ということは、実は全然考えていないわけでございまして、この案が審議されましたのは、昭和四十一、二年のころから——失礼しました。もう少しあとでございますが、四十六年でございますか、最終的にでき上がりましたのが。でございますが、現行の制度によりましても、累積投票請求をできるものは、二五%以上の株主。これはその定款に禁止があっても、累積投票請求ができるということになっておりますが、二五%の株ということになりますと、これは相当大きな資本参加という形になりますので、現在いわれております一株運動というようなことは、今回の改正を行なうについては全然念頭に置いてなかったわけでございます。
  144. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、だんだん終わりになるのですが、この前に衆議院で附帯決議がされ、参議院附帯決議がされたわけですね。もちろんそれについていままで質問も出たものもあって、回答があって、大体済んだものもありますね。それから、済んだような済まないようなところもあって、なかなかまだ、この附帯決議について、ほんとうは大臣が来れば、大臣から総括的に答えてもらうのが筋だと思うのですが、この衆参両院の委員会の附帯決議というものを、あなた方のほうでは、法務省あるいは大蔵省はその関係部分をどう受け取って、そしてそれを今後どのようなスケジュールで実現の方向に進もうとされておるのかということを、概括的な点をまず伺って、それから個々の問題について二、三お尋ねをしたい、こういうふうに考えます。法務省のほうから、あるいは大蔵省のほうからお答えを願いたいと思います。
  145. 川島一郎

    川島(一)政府委員 それでは私から先にお答えを申し上げます。  衆議院の法務委員会における附帯決議の第一項と参議院法務委員会における附帯決議の第一項は、いずれも株式会社法の改正に関する問題でございます。この点につきましては、法制審議会商法部会を開きまして、さっそく検討に取りかかりたい、このように考えております。  それから衆議院における附帯決議の第三項「商法の運用については、政府各行政機関において連絡を密にしその適正を期すること。」これは先ほども引き当て金についてお話がございましたが、そのほかの面につきましても、十分努力をいたしたいと考えております。  あと、衆議院の附帯決議第六項それから第八項がございますが、この六項はPRを十分行ないたいと思っておりますし、八項につきましては、これも早急に検討いたしたいというふうに考えております。  それから十項は、参議院の修正で問題は一応解決したように考えております。
  146. 田中啓二郎

    ○田中説明員 衆議院の附帯決議大蔵省関係いたすものは第四号でございますが、これは横山先生の御意見などもございまして、十分検討していきたいと思います。  五号は参議院でさらに追加されましたが、この点につきましては政令に盛り込みます。  それから七につきましては、企業会計原則の確定に先立って見直しを行ないます。  九につきましては、学校法人で国または地方公共団体の補助金になるようなものは、現在においても公認会計士の監査対象となっておりますが、それ以外のもので公益的な性格の法人についてどうするかという点につきましては、関係方面とも十分相談してまいりたいと存じます。  次に、参議院附帯決議のうち、大蔵省関係いたしますものは二号と三号でございますが、二号は政令に盛り込みます。三号は見直しをいたします。かようなことでございます。
  147. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この衆議院の附帯決議の二の、「会計監査人の独立性を確保するため、その選任方法等について適切な方途を講ずること。」これはどっちですか、どうするの。
  148. 川島一郎

    川島(一)政府委員 これは、制度の問題としてさらに検討するという点につきましては、会社法の改正の審議に合わせてもう一度御意見を伺ってみたい、このように考えております。  運用の問題につきましては、法務省は行政指導というわけにまいりませんので、なるべく改正法の趣旨を周知徹底させるようにいたしたいと考えております。
  149. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは大蔵省お尋ねをするのですが、衆議院の附帯決議では五ですね、「監査法人は、その社員が税務書類の作成などの税務業務を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制すること。」これが参議院のほうではちょっと詳しくなったんですか。「監査法人は、その社員が税務代理、税務書類の作成及び税務相談を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制すること。」監査法人と被監査会社との特別利害関係については公認会計士法に基づく政令で定めることが予定されておりますが、衆議院における附帯決議第五号と同趣旨決議をしようとするものであります。こういうふうになっておりますね。この衆議院の附帯決議参議院附帯決議ですね、これはあなたのほうとしては受け取り方が違うんですか。ことにその両方にありまする文章の「監査法人は、その社員が」とありますね、その社員というのはどういうふうな意味に理解をしておるわけですか。
  150. 田中啓二郎

    ○田中説明員 社員は、監査法人は多く合名会社でございまして、その社員が無限責任を負っております。そういった社員のことでございます。  それから先生の前段の御質問の衆議院の五号は、「税務書類の作成などの税務業務」とございますのに対し、参議院附帯決議では、「税務代理、税務書類の作成及び税務相談」というふうに、いわゆる税務業務の三つを全部並べてございますので、拡大された参議院附帯決議をそのまま政令に盛り込むということでございます。
  151. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、政令は二本あるのですか、一本になるのですか。参議院決議の第二のほうで——公認会計士法に基づく政令できめることが予定されているということが書いてありますね。それで「本法の監査業務を行なわないよう規制する」というのでしょう。その政令は二つ出るのですか、一本になって出てくるのですか、そこら辺はどうでしょうか。
  152. 田中啓二郎

    ○田中説明員 私どもは、今回の整理法におきまして、公認会計士法の二十四条なり三十四条の十一というものの改正をいたしまして、そこで政令に委任しておりますので、ただいまおっしゃった附帯決議は、公認会計士法の政令、そちらのほうに手当てをしていきたいというふうに考えております。
  153. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、監査法人は合名会社だ、これは合名会社だから無限責任だ、それはそのとおりですが、その社員というのは、きわめて人数は少ないわけですね。何人から合名会社ができるのかちょっと忘れましたけれども、そう多くないですね。五名か七名かな。  そこで、この社員というのを、監査法人の中での公認会計士、あるいは公認会計士補というのですか、あるいは税理士がやっているという意味ですね。拡大ではないと思うのですが、そこら辺のところを——その合名会社の社員というのはきわめて数が少ないし、それは全部公認会計士とは限らないんだ、こう思うのですが、その社員というものの、それを拡大というか、拡大でもないかもわかりませんけれども、そうでないというと、公認会計士と税理士との権限の問題がまた出てくる可能性があるわけですから、そこら辺のところはどう理解していらっしゃるのか。これはいろいろな形で税理士か何かが心配して要望してきているところだと思うのですが、そこはどうでしょうか。
  154. 田中啓二郎

    ○田中説明員 監査法人に関する今回の整理法の三十四条の十一では「監査法人又はその社員が会社その他の者との間にその者の営業、経理その他に関して有する関係で、」云々「業務の制限をすることが必要かつ適当であるとして政令で定める」ものをいう。というふうにございますので、政令におきましては、社員、これは監査法人では五名以上、それで、大きな監査法人では五十名の公認会計士を持っているのがございますが、この社員はすべて公認会計士でございます。そういう社員のうち、一人でも被監査会社の税理士業務を行なっていたならば、その監査法人は、当該被監査会社の監査はできないよということが附帯決議で入れられたわけでございます。かつ、実際にその監査に従事する補助者がやはり税理士業務に従事していれば、その監査法人は当該会社の監査ができないよということにもなっております。したがいまして、先生のおっしゃいますように、使用人なり補助者でじっとその監査法人の事務所にいる者が一人でもあったら、監査法人が監査できないというのは、利害関係の範囲をあまりに広げるもので適当ではございませんし、先ほど読みました三十四条の十一では、社員の関係法律で書いてございますので、それはできないことではないか、かように思います。
  155. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この商法の一部改正については、いろいろまだお尋ねしたい点もあるし、どうもよくわからない点があるのですね。わからないというのは、私が会計学がわからないからわからない点もあるので、お答えになっているほうの人はわかっているのですけれども、聞いているほうがよくわからないというところもあって、どうもこれはよくわからない点がありますね。ただ一つわかるのは、あとで討論の中でも出てくると思うのですが、これはやはり経済界の要請、いわゆる経済界というものは何だかよくわかりませんけれども、そういうところの要請をどうもストレートに受け過ぎているのではないか。そのことがそのままこの商法の改正の中に反映してきている。ことに、この前の三十七年の改正もそのとおりだったし、今度の改正もどうもそうだというふうに考えられるので、私はその点だけを受けて、商社なら商社というものの規制というものが、これは商法の中に挿入しにくいものであるということは私もよくわかるのですけれども、挿入しにくいというだけではなくて、何らかの形で当然挿入しなければ、これはまたいまの時勢とマッチしないのではないかというようなことも考えるわけなんですが、これはあとで討論の中で申し上げることにして、大臣が来るのでしょうけれども、来たらちょっと短い間、もうさっきの点について質問をして、そうして私の質問を終わりたいというふうに思います。  まあ時間もありますけれども、ちょっとあれします。
  156. 小平久雄

    小平委員長 この際、暫時休憩をいたします。大臣が予算委員会を終わって出席できるようになりましたら、再開いたします。    午後五時二十八分休憩      ————◇—————    午後五時四十九分開議
  157. 小平久雄

    小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  158. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いよいよ長い間かかった商法の一部改正等の質疑も終わりになりますので、大臣に二つの点だけお聞きをして、お答えを願いたいというふうに思います。  一つ引き当て金に関する第二百八十七条ノ二の関係で、これは範囲を広く解釈しますと、粉飾の可能性というものが非常に出てまいりまするし、これが問題になる可能性非常に強いものですから、この範囲をできるだけ特定し、限定をして、そして通達等でこういうふうな粉飾が行なわれないようにしなければならないと、こう思うのですが、大臣としては大蔵省その他と協議の上通達等によって万遺憾なきを期するという覚悟かどうかということをお尋ねをいたしたい、これが一つ。  もう一つは、衆議院、参議院において附帯決議が行なわれましたね。これはいろいろございまして、いま説明は民事局長なり、大蔵省からもいただいたのですが、これは全体を通じて今後どういうふうにこれを処理し、実現をしていくのかということに関しての大臣のお気持ちというか決意といいますか、それをお聞かせを願って、私の質問を終わりにしたい、こういうふうに考えるわけです。
  159. 中村梅吉

    中村国務大臣 第一点の特定引当金の問題につきましては、御審議の過程におきましていろいろ問題が指摘されておりますので、よく大蔵省とも協議をいたしまして、その解釈を明らかにし、遺憾のないように十分努力をしてまいりたいと思います。  第二点の附帯決議の点につきましては、私ども附帯決議の御趣意はまことにごもっともな点で、われわれのほうで気のつかなかった点も御指摘をいただきまして、十分に附帯決議趣旨に沿うて運用いたしたい、かように存じております。
  160. 小平久雄

    小平委員長 次に、関連をいたしまして正森成二君。
  161. 正森成二

    ○正森委員 三月八日に私が質問いたしまして、大臣が中座されましたので、ここで簡単に申し上げておきたいのですが、その質疑の中で、たとえば企業会計審議会の委員でもあり、経団連の関係者である居林次雄氏あるいは番場嘉一郎氏が企業会計原則その他について論文、著書等で意見を発表しておられる。その解釈というものは、それがもし公権的解釈の中に入りますと非常にゆゆしい問題であるということを私は指摘いたしました。その中で、特定引当金の問題につきましてもまだ私は継続性の原則についてもそう考えるわけですが、今度の商法解釈について通達を出されるということを伺いましたので、重ねてその御意思があるかどうか、あるいは出されるとすれば、できるだけ早く出されるのかということをお伺いしたいと思います。
  162. 中村梅吉

    中村国務大臣 私もいろいろと御議論を承っておりまして、いわゆる企業会計原則というものについては今後適正な改善を要するのではないか、かように感じております。したがいまして、近いうちに企業会計審議会というものによって、あるいはその人選等もありましょうけれども、十分にこの企業会計原則については御期待に沿うような再検討が必要である、かように思っております。  なお、この法律が成立いたしました暁においては、この御審議を通しまして法律の精神がよく徹底するように十分努力をしてまいりたい、かように思っております。
  163. 正森成二

    ○正森委員 それではこれで質疑を私は終わらしていただきたいと思いますが、たてまえとしては、そういうように企業会計原則をもう一度見直すといいますか改めるべき点があるというようなことが質疑の中で明らかになれば、本来そのほうを先にやって、そしてそれを国会の場で審議してから商法を通すのが筋であるというように私は現在でも思っております。そのことを大臣に特に申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。
  164. 小平久雄

    小平委員長 これにて三法案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  165. 小平久雄

    小平委員長 これより三法案について討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  166. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 商法の一部を改正する法律案等三法案に対しまして、日本社会党を代表して反対の意思を表明し、反対の討論を簡潔に行ないたいと思います。  この法案を全体を通じて審議をしてまいりまして、いまになって考えますと、率直に言ってどうもまだ私どもの審議も不十分であり、解明できなかった点も多々あるのではないかということを考えるのでございます。いずれにいたしましてもきょう終結でございますので、反対の意見を以下簡単に述べたいと思います。  一つは、いま一番大きな問題は商社のいわゆる規制というふうなものが叫ばれておるわけでございますが、そのことが商法の中に欠如しておる。なるほど技術的な商法でありますから、そのことを条文という形で書きにくいかもわかりませんけれども、少なくとも商社を規制するということの何らかの形というか、精神というか、そういうものがあらわれていなければいけないと思うのでごいますが、それが欠如しておるということは基本的な一つの欠陥だというふうに思います。  第二には、今回の改正というのがきわめて部分的な一部の改正にすぎないのでありまして、重要な点の改正というものが見送られておる。言うまでもなく株主総会取締役会、監査役、この三つが会社における機関でございますが、その中で監査役の問題だけが取り上げられ、しかも山陽特殊鋼事件というのはずいぶん前の事件でございますが、いまごろになって商法の改正が日の目を見るようになるというようなことは非常に残念です。しかもそれがきわめて部分的だ。監査役権限だけを強化をすれば問題が解決するというものでは決してないと私は思う。むしろ取締役会の権限を規制をする、それで株主総会権限を拡大をするということが必要であろうと思うのに対して、そういうことは抜きにされて監査役の業務を拡大いたしましたけれども、取締役との関連においては要綱の中にあったものが削除をされている面もある。このことを考えますと、改正がきわめて部分的であって、びほう的である。このことが反対の第二の理由となるわけでございます。  第三は、これは将来の問題になると思うのでございまするが、どうも株主総会なり取締役会の今後の商法の改正の中で底流として流れておりますることが、株主総会権限を弱める、これは会社としては株主総会なんというのは簡単に済んでやかましくないほうがいいのでございましょうが、株主総会権限を弱め、少数株主権限を低くしていく、逆に取締役権限を強めていこう、こういうふうなことが、答弁の中で今後の改正の底流になっておるのではないか。このことを考えますと、なおさら本法案との関連において不十分であり、反対をしなければならないというようにも考えるのでございます。  その次は、質問の中で明らかになってまいりましたように、商法企業会計原則というものとの関係がきわめて不明確であり、同時に企業会計原則の適用をゆるめるような方向に進んでおるのではないか。このことを考えてみますと、どうもこういう点について十分ではないし、また問題となりました特定引当金の問題は、十年前の商法の改正をいまさらここで持ち出すというのは、何と言いまするか、私どももいろいろ考えるのでございまするが、この特定引当金の問題一つ取り上げましても粉飾の拡大に役立つ。しかし、粉飾の拡大に役立つのに現実に利用されておるのに、それに対して何ら手を打たないでおる。このことはきわめて遺憾であります。今後のこの点についての改善があるとは思いますが、そういうようなことがこの中に十分含まれておらない。十分じゃない、全然といっていいくらい含まれておらないということを私はどうも遺憾に思い、反対をする一つ理由にしたいと思います。  また、いま問題となりました累積投票の問題等につきましてもいろいろな理屈はあるかもしれませんが、現実には少数の株主権利を奪うことになる。このことを考えてみますと、私は、やはり株式会社なりその他の会社が少数の株主というものを保護しなければならないということをたてまえとしておる、このことから考えて、この問題はどうも問題としておかしいというふうに考えざるを得ないのであります。  以上が、ちょっとラフではございますが、大要の反対とするところでございます。  最後に、いま大臣も言われましたように、この附帯決議の問題については、これは衆参両院の附帯決議、ダブるところもございますが、これらについては早急に誠意をもって履行するというか、そういう方向で善処をしていただきたいということを希望として申し上げまして、本法案に反対をする要点だけを簡略に申し上げまして、日本社会党を代表しての私の討論を終わらせていただきたい、かように存じます。
  167. 小平久雄

    小平委員長 正森成二君。
  168. 正森成二

    ○正森委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、商法の一部を改正する法律案等三法律案に反対する立場から討論を行ないます。  第一に、この改正案商法三十二条二項に「商業帳簿作成ニ関スル規定解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行斟酌スベシ」との規定を新設することによって企業会計原則の修正案を導入するものであることは明らかであります。従来、商法企業会計原則との差異の中心は、商法には継続性の原則はないが、企業会計原則にはある、特定引当金制度が商法二百八十七条ノ二にはあるが、企業会計原則にはないという点でございました。ところが質疑の中で、この二つはいずれも企業会計原則商法に近づける方向で修正していることが明らかになりました。これは現在石油危機、便乗値上げによって大企業がぼろもうけし、この利益隠しに狂奔しているときに、大企業に自由に償却制度を変え、引き当て金を増大して利潤隠蔽をはかる絶好の口実を与えることになります。だからこそ大蔵省も三月二日、減価償却方法やたなおろし資産の再評価の変更は原則として認めないという行政指導を行なうことを明らかにしたのであります。今回の改正は、このような政府の行政方向にすらまっこうから反するものではありませんか。  第二に、さきに法人税法二十二条四項が改正され、商法三十二条二項とほぼ同じ規定がすでにできていますが、この規定は経団連によって税法と商法企業会計原則との間で板ばさみになっている企業の苦脳を解決、調整するものと評価され、税法は自主的な企業会計の上にそのまま乗っかって課税すべきであるとさえいわしめているものであります。今回行なわれる商法等、企業会計原則の改正と修正は、この経団連の要望に沿い、公認会計士が決算前に監査することによって税務監査を省略し、企業の経理を税法でもそのまま認めることを容易にするに違いありません。現に経団連は、公認会計士の監査結果を税務上尊重することを税法整備に関する意見で打ち出し、公認会計士の監査証明のある場合には、税法上これを是認することとして、税務取り扱い上の簡素合理化をはかる必要を公然と主張しております。  このように今回の商法改正は、税法と商法企業会計原則を事実上一体化することによって、監査の強化を表向きの理由にかえて、企業の利益隠し、税金のがれを合理化する方向に大きく踏み出すことは疑いありません。  右のほか、商法改正による親会社子会社の概念の導入も、経団連は連結財務諸表からさらに連結納税申告制度の採用、これによる親会社利益隠しと税の軽減の一手段と見ていることも質疑の中で明らかになりました。事実、結果的にはそうなるでありましょう。  したがって、以上いずれの観点からも今回の商法改正は現在の社会情勢にも庶民の要求にも合致せず、ただ大企業を喜ばせる役割りしか果たさないことは明らかであります。修正もこの根本問題を解決しておりません。  以上の理由から、日本共産党・革新共同は今回の商法等の改正に対し断固として反対することを表明して、私の討論を終わります。
  169. 小平久雄

    小平委員長 沖本泰幸君。
  170. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は、公明党を代表して、商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案及び修正に対して、一括して反対の討論をいたします。  この法律案に関しては、昨年わが法務委員会で長時間にわたって審議されたにもかかわらず、多くの問題点を解決しないままに、同年の七月に衆議院を通過し、そして参議院で継続審議されておりましたが、今国会に修正されて再び衆議院に送付されてきたのであります。  本法案は、昭和四十年三月の山陽特殊鋼の粉飾決算に端を発したものであるが、現在においてはすでに社会的、経済的に諸条件が異なってきております。最近、特に問題になっている大資本、大手商社のエゴによる買い占め、売り惜しみ、さらにやみカルテルや便乗値上げ等による不当利益や隠蔽は、法律のワクを越え、刑事犯罪ともとれる反社会的行為は、国民を愚弄するものであります。  このような社会状況下において、本法案の重要性を考えるならば、この法律の目的をより強化に達成するための責任を感じるのであります。しかし、法案の本質に光を当ててみると、すでに法制審議会過程において腐食していたともいえる疑いが非常に強いのであります。  たとえばこの審議過程において経団連意見が非常に強く、いろいろの点について注文がありました。ここはこうせよ、あそこはああせよというふうに経団連の要望が非常に多かったわけで、ほとんど経団連意見を取り入れて、途中において修正し、再修正をするということもあり、経団連意見はほとんど九〇%まで通っていると思いますと経団連パンフレットの中に明記されております。これでは粉飾決算等の防止どころではなく、逆粉飾の隠れみのにもなりかねないのであります。  私は、反対理由として次の諸点についても指摘したいと思います。  まず第一に、本法案の第一の目的である監査制度の強化についてであります。  この本法案が審議される過程において何回も指摘されたのでありますが、株主総会招集請求権取締役会招集権、取締役の定期報告義務等の削除であります。これらの削除によって、粉飾決算や逆粉飾決算の違法行為に対して差しとめ請求権という法的効力が後退したことは、本法案の目的を骨抜きにしたものであります。  第二に、第三十二条二項の「商業帳簿作成ニ関スル規定解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行斟酌スベシ」と定められている条項であります。この意味するところは、商法規定するところではなく、財界主導のもとにでき上がった企業会計原則修正案が原則として大企業の都合のよい「斟酌」として解釈される可能性が強いため、継続性の原則を並行して引き当て金制度を乱用し、逆粉飾の危険性も十分に考えられます。また、利益の過小表示を広範に認めることによって利益配当請求権を不当に阻害するおそれがあります。  第三に中間配当であります。  本法案の中間配当は、営業年度中に利益を得たものを、株主総会を通さずに直接取締役会の決議だけで、中間においてその利益を分配することができるということです。いわゆる年に二回の分割配当になります。  ここで心配することは、人為操作による見込み配当の失敗によって、赤字配当、すなわちタコ配の危険性が十分考えられるからであります。またその結果、粉飾決算をせざるを得なくなり、利益者に迷惑をかけることになります。  以上が反対理由でありますが、しょせん企業がみずからの姿勢を根本的に変革しない限り、どんなにりっぱな法律をつくったとしても、本法案の目的である粉飾決算や逆粉飾の防止は期待できないと思います。  さらに三月三日の新聞発表によりますと、今国会終了後法制審議会商法部会で株式会社制度の大幅な抜本改正に取り組み、その内容はすでに当委員会で問題点として指摘されたところであります。この時点から考えると、本法案は廃案とし、早急にきめのこまかい具体的な改正をはかって次期国会にかけるべきであると考えるわけであります。  以上、簡単に意見を述べて反対討論といたします。
  171. 小平久雄

    小平委員長 これにて討論は終了いたしました。  これより採決いたします。  まず、商法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  172. 小平久雄

    小平委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  173. 小平久雄

    小平委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  174. 小平久雄

    小平委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  175. 小平久雄

    小平委員長 ただいま議決いたしました三法律案に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  177. 小平久雄

    小平委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  先ほどの理事の協議に基づき、内閣提出、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案について、来たる十九日火曜日午前十時から参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来たる十五日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十三分散会