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1974-03-08 第72回国会 衆議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月八日(金曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 谷川 和穗君    理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    登坂重次郎君       野呂 恭一君  早稻田柳右エ門君       日野 吉夫君    正森 成二君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         警察庁刑事局長 田村 宣明君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      田中啓二郎君         大蔵省主税局総         務課長     渡辺 喜一君         大蔵省主税局税         制第一課長   伊豫田敏雄君         大蔵省証券局企         業財務課長   小幡 俊介君         国税庁調査査察         部調査課長   甲斐 秀雄君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月八日  辞任         補欠選任   中垣 國男君     登坂重次郎君 同日  辞任         補欠選任   登坂重次郎君     中垣 國男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇二号)(参議院送付)  株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会閣法第一〇三号)(参  議院送付)  商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇四号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の三案を一括議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この商法の一部改正関連して、関連してというのは非常に広いのですけれども、いろいろお聞きするわけですが、大臣としては、元来商法目的はどういうものであるというように理解をされていらっしゃるのでしょうか。
  4. 中村梅吉

    中村国務大臣 これは一般商人及び商行為についての規律を定めたものと思います。あまり問題が大き過ぎてどうお答えしていいかわかりませんが、まあそんなように考えております。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのことで、たとえば戦後できた法律でも、民法には第一条に目的があるでしょう。それから刑事訴訟法にもありますね。そうすると、商法目的というのは特に……(中村国務大臣条文目的があるでしょう」と呼ぶ)いや、ないんですよ。ないから聞いているんです。目的がないから聞いているので、目的を書くとすれば、どこへどういうように書いたらいいのか。いま大臣が言われたでしょう。たとえば規律をどうこうするというようなこと、それを一体どこへどういうように書いたらいいのでしょうかね。
  6. 川島一郎

    川島(一)政府委員 たいへんお答えしにくい問題でございますが、要するに商法商事に関する特別法といいますか、民法国民生活一般規律する私法であるのに対しまして、商事に関する特例と申しますか、商事に関する特別な事柄を取り上げて規定したというのが商法であろうと思います。大臣が仰せになりましたように、会社組織でありますとか商人でありますとかあるいは商行為に関するもろもろの規定を集めたものでありまして、目的は何かということになりますと非常に範囲が広いわけでございまして、ちょっと一言に言いにくい面があろうかと思います。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ぼくの聞いているのは、たとえばいま言った規律というか商社規制というか、近ごろやかましくいわれておるそういうふうなものをかりに商法の中に入れるとすれば、どこへどういうような文言で入れるのが妥当なんだろうか、こういうことを聞いておるわけですよ。最初からそういうふうに言ってしまうと答えがあれだから聞いていたわけなんです。それはいまの商法の中へはちょっとなじみにくいんですか。ということは、商法自身が形式的ということばは別としてきわめて技術的な法律です。ですから、そういうような商社規制だとかそれに対する目的だとかいうようなものを商法としては入れにくい法典としての性質を持っておる、こういうふうに理解をしていいんでしょうか。
  8. 川島一郎

    川島(一)政府委員 一般の私生活を規律するという意味におきまして、商法には政策的意味規定がほとんど入ってきていないということが言えると思います。そういう意味で、事柄にもよりますけれども、特殊な政策目的というものを掲げた規定というものは商法の中には入れにくいだろう、このように考えます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 たとえばいま問題になっておる商社あり方規制とかなんとかいうことは商法の中には入れにくい、こういうふうになってくると、だけれども、株式会社法の中なんかには入ってもいいのじゃないか、こう思うのですが、法的に何らか別個の規制をすることが考えられるのか、いやそれは法律的には無理だ、それはきわめて倫理的な問題であって、法典としてはなじまないし、かりにそういうふうに書いたところでたいして意味がないのだ、こういうふうに理解をせざるを得ないのでしょうかね。
  10. 川島一郎

    川島(一)政府委員 なかなかむずかしい問題でございます。株式会社について申しますと、非常に大きな企業から小さな企業までたくさんの株式会社があるわけでございまして、これに共通した規定商法は設けておるわけでございまして、現在問題になっておりますのは大企業に関する部分であろうと思います。そうした大企業に特有な問題を商法に掲げるということは、現在の実情から考えますとなかなかむずかしいのではないかという感じがいたします。ただ、株式会社というものを資本金額とか何かの制限を置きまして相当大規模なものに限定するというふうにいたしました場合に、その大規模株式会社という法人組織が逸脱しやすいような問題をとらえまして、それに対する規制を加えるということは考えられないことではないだろうと思います。しかしながら、先ほど申し上げましたように、それも別の見地からの政策的な問題ということになりますと、これは別の法律でやるのが適当であろう、こういうばく然としたお答えでございますが、そういうことになろうかと思います。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこでちょっとお伺いしたいのは、あるいは前の質問に出たのかもわからないと思うのです。それで、参議院へ行って、形の上では会期不継続で参議院先議みたいになっておりますけれども、実質的にはあれですから、修正された点が大きく分けて三つありまして、その点と、それから従来の附帯決議中心にしてお聞きするのが筋だとは思うのです。そういうふうにしたいと思うのです。そしてまた十二日に大蔵省関係の問題を中心として質問を残しておりますので、きょうはどこまでいきますか、質問したい、こう思うのです。  一つは、今度の商法改正で、普通の場合は法制審議会にかかるのでしょう。法制審議会に正式にかかっていないものが二つ三つあるわけですか。緊急提案というような形で出ているのですか。それはどうなんですか。あるいはかかったとしてもきわめて簡略な形で、たとえば転換社債の問題だとかなんとか、そういうような点二つ三つ、これはどういうふうになっていますか。
  12. 川島一郎

    川島(一)政府委員 今回政府で提出いたしました法案に盛られております事項は、すべて法制審議会審議が行なわれた事項でございます。法制審議会に対する法務大臣諮問商法全般に関するものでございまして、特に株式会社監査制度というように限定したものではございません。したがいまして、商法部会商法全般をながめまして、必要と認める問題を随時検討しておるわけでございまして、転換社債などの問題につきましては、監査制度関係とは別に昭和四十六年に答申がなされております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それでは、株主総会取締役会監査役、この三つのものが株式会社その他における大きな機関だと思うわけですが、今度の場合は監査役の問題を中心としての改正になってくるわけですね。とはいいながら、今度の場合にたとえば取締役会権限を従来の法律よりも強化をしておる、こういうふうな点が現実にはあるわけでしょう。そこら辺はどういうわけで取締役会権限を強化したということになるわけですか。
  14. 川島一郎

    川島(一)政府委員 今回の法律取締役会権限を強化したというのは、たとえば従来転換社債株主総会決議を要した。しかし今度の案では、定款に一定の定めがある場合には取締役会だけで発行できるということにする、こういった点であろうかと思いますが、これはむしろ取締役会制度権限を強化するということよりも、転換社債の発行を合理化するという見地から検討されたものでございまして、取締役会自体権限をどうするというような問題につきましては、直接それを意図しての検討というのはなされていないわけでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、今度の場合は監査役だけの権限を拡大するというか、強化するという形が中心ですね。将来の問題として取締役会あるいは株主総会、これらは今後の商法改正に待つんだ、こういうふうにいままでお聞きしていたわけですが、それは間違いないでしょう。そうすると、それでは現実取締役会あるいは株主総会というものについてどういうふうに改正をしようとするのか、こう聞くと、いやそれは法制審議会諮問をしてその結論を待たないとわかりませんと、こういう答えでしょう。ところがそうじゃなくて、それは一つ答えではありますけれども、それではどういう点を改正するという意味ではなくて、どういう点が問題になっているのかということは、これは当然その前提として考えられるわけですね。どういう点を改正するかというんじゃないですよ。どういうふうに改正するかということを聞けば、それは法制審議会にかからなければだめだと言うから、そうじゃなくて、改正するんではなくて、どういう点がいま問題になっているのか。たとえば取締役会株主総会ですね。この点についてはどういうふうに考えられるわけですか。これは答えられるんではないですか。
  16. 川島一郎

    川島(一)政府委員 お尋ねの問題につきましてはまだわれわれも十分検討したわけでございませんので、あまり的確なお答えがいたしかねるわけでございますが、たとえば株主総会につきましては、最近アメリカの州の中では株主総会を省略することができるような規定をつくっているのが幾つかございます。これは中小株式会社あるいは閉鎖的な株式会社、非公開の株式会社、こういったものを対象とした改正であろうと思いますけれども、そういった考え方もあり得るわけです。それから公開会社株主総会につきましては、日本株式会社規定外国のを比べてみますと、株主総会における株主提案権とかあるいは動議権、そういったことについての規定日本商法にはないわけですけれども、そういったような点をもう少し明確にする必要があるのではないか、こういったことも考えられるわけです。さらに実際界の要望といたしましては、単位株制度というものを採用してほしいという要望がございます。これは現在の株主総会に出席する者を制限しようという一つ考え方に立っておるわけでございますが、そういった問題でありますとか、それから株主総会権限はいまのままでいいのかどうか、もう少し限定するとかあるいは広げるとか、そういった点を検討する必要があるのじゃないかというようなこともいわれておるわけでございます。取締役会につきましても、外国制度と比べまして、ことに監査役との関係などで、その権限の調整をどういうふうに考えていったらいいかといったような問題はまだ残っておるように思います。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのお話を聞いていまして、これは正確な私の判断ではないということ、いまお話を聞いていたことから受ける感触としてお聞き取り願いたいのは、株主総会権限を何かだんだん縮小していって、そして経済界の実体としては、やりいいようにするためには取締役会権限をふやしていこう、こういうような行き方をあたかも——まあ是認するとは言いませんけれども、そういう方向に進んでいきたい、これは経済界要望であるかもしれないですね。株主総会なんてやかましくてしようがない、うるさくてしようがないから、そんなものは権限をうんと縮小していく、取締役会でどんどんやれるようにしたい、これは要望かもわかりませんけれども、どうもそういう線に沿って考えておるのではないか、こういうような私なりの印象を持つんですがね。最初アメリカではまるで株主総会をなくすところもあるとかなんとかいう話が始まってきて、順序はどうでもいいですけれども、どうもそういうふうな印象を持つんですがね。逆ではないんでしょうか。やはり株主総会というものは、国民主権ということから見れば一種の議会みたいなものだし、現実にどれだけの効果を発揮しているかは別として、取締役会執行部株主総会というものの権限が、それは確かに一部に悪用されている点があるかもわかりませんけれども、十分にその役割りを果たしていない。こういうふうなことを考えると、株主総会権限をむしろ場合によっては広げていく、それが正常な形で株主総会十分議を尽くして行なわれるようにしていくのが筋であって、取締役会権限というものを株主総会によって規制する、こういうふうな形が当然考えられていいのではないかと思うのですが、いまの話を聞いていると逆な方向を、経済界の要請に従ってとろうとしているのではないか、こういうふうに考えられるのですが、そこはどうなんでしょうか。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 確かにむずかしい問題であろうと思います。従来いわれておりますのは、所有と経営の分離ということで、株主は主としてオーナーである。それから取締役経営者である。経営専門家である取締役にまかせる。株主はその最終の利益の配当にあずかる、こういう形で進んできたと思います。昭和二十五年の商法改正によって株主総会権限がかなり制限されたという経過をたどっておりますし、外国法制を見ましてもそういう傾向にあるわけです。しかしながら株主総会株式会社における最高機関であるということは、これは株式会社の構成からいって否定できない問題でありまして、少なくとも役員選任解任権利、これは株主総会が持たなければならない。それから定款変更とかあるいは決算承認、こういった問題につきましては株主総会権限を持つべきであるし、また持つ以上は、それを適正に十分に行使できるような形で運営されるということが望ましいわけでありまして、私いろいろ先ほど申し上げましたが、少なくともこれは株主総会が、そういう本質的な権利というものはあくまで持っておって、それを適正に行使する。それ以上あまりこまかい問題を、これも株主総会だ、あれも株主総会だというふうに集めますと、かえって会社運営がしにくくなる面もあろう。  したがいまして、一番大事なのは役員選任解任と、それから定款変更、それから決算承認、この三つ権限を完全に行使するという形に持っていくのが望ましいのであって、それ以外の点につきましては、実情をある程度考慮しながらきめていっていいのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  しかし、これは私もただ現在感じておりますことを申し上げただけでございまして、商法部会における御審議においては、さらにいろいろな御意見があろうと思います。したがってその程度のものとしてお聞き取りいただければ幸いでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、株主総会あり方というものをめぐっていろいろ考えられるわけですが、それは率直に言って功罪いろいろあると思うのですよ。ことばがちょっと悪いので、誤解を招くことがあってはいけないと思うのですが、国会で三日間予算委員会商社代表なんか呼んでいろいろ追及しましたね。大臣、それに対してあなたの御感想を伺うわけじゃございませんが、本来それは、あれに出てきたことは、普通の状態なら、株主総会なりあるいは監査役なりが当然わかっていなければならないことなんじゃないでしょうか。株主総会でいろいろな問題の追及をしようとしても、現実にはその追及がすべてはばまれてしまっておる。いろいろな形で、たとえば総会屋その他による議事進行等ではばまれている。だから、株主総会が健全な状態運営をされておれば、ああいうような不正というか、不正とまでいかないとしても、妥当でないというようなもの、これは当然その株主総会で発見をされて追及され、監査役によって是正をされていくという方向をたどっていくべき筋合いのものではなかったのでしょうか。現在の株主総会なり監査役あり方というものに対して、非常に反省すべき点が多いのじゃないでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか。
  20. 中村梅吉

    中村国務大臣 この間うちの事態を見ますと、どちらかというとカルテルを結んだり便乗値上げをしたり、主として会社利益をよけいにあげようという方向に動いておるように思います。したがって、株主の立場からいえば、会社利益がよけいあがることが望ましいので、モラルということよりはそのほうが優先するような気がいたします。ですから、株主総会がああいう問題を取り上げるより、やはり国会がああして集中審議をやられたことは非常によかったのだ、私はそういうように考えます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは国会がやったことはよかったのでね、悪かったと決して言っているわけではありませんけれども、本来なら、株主総会がちゃんとして運営されて、株主意見というものがきちんと出、妨害されないで出てくるようになっておるあるいは監査役がしっかりしておれば、その中の多くの問題というものは会社内部で是正されておったものが相当あるのではないかというふうに考えられるのです。  そこで、株主総会あり方関連をして出てまいりまするのは、いわゆる総会屋と称せられるものの問題があるわけですね。この前、法務省刑事局長は、総会屋攻撃型総会屋協力型総会屋があるということを言われたのですけれど——これは私の去年の六月二十二日の質問会議録があります。  そこで、問題になりますることの一つは、たとえば株主がいろいろ会社のことについて、業務執行について質問するわけですね。質問をすると、いわゆる総会屋議事進行動議かなにかどんどん出して、そして何分で終わるのか、五分で終わるのか十分で終わるのか知りませんが、簡単に終わってしまうという形になっておるわけでしょう。そういう場合に、株主株主総会質問するというようなことは、一つ株主権利だし、それはいわば業務だというふうにも考えられる。こうなってくると、商法の四百九十四条の問題は別として、そこまでいかない問題を聞いているわけですが、そこまでいかない段階においても、意図的に株主のそうした発言を、威力をもってというか、そういうような形で封ずるということになってきた場合には、どうなんでしょうか、いわゆる協力型の総会屋だとしても、刑法でいう威力業務妨害が成立するということも考えられる場合もあるのでしょうか。そこはどうでしょうか。
  22. 安原美穂

    安原政府委員 総会屋株主発言を抑制するために威力といいますか、あるいは脅迫手段を用いるというようなことで発言をできないようにするということは強要罪というような問題になると思います。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そういうのは現実には多いんじゃないですか。発言しようと思うと、そこへ行ってにらみつけたり、おどかしたり、押えつけたりして発言をさせないという形が実際には多いようですね。  そこでもう一つ、さらに一段進んでまいりますと、いま問題となっておる、たとえば津上製作所の問題ですか、この場合の正式な名前は、商法上の贈収賄罪というのですか何というのですか、商法四百九十四条の場合ですね。この問題が出てくると思うのですが、これは警察のほうにお尋ねいたしますが、いま問題となっておる津上の問題あるいは安宅産業ですか、この問題の株主総会における贈収賄ですね。これはいまわかっている範囲では具体的にどういうものであって、条文との関係ではどういうふうになるんでしょうか。まず事件の概略と条文との関係はどうですか。
  24. 田村宣明

    田村政府委員 最初事件の概要でございますが、これは、株式会社津上の常務取締役畑佐邦雄と申す者がおるわけでございますが、これがエターナル・プロダクツ株式会社社長小野伸恭、それから安宅産業の機械第一本部の副本部長百木正孝という者と共謀いたしまして、昨年五月に株式会社津上におきまして総会が行なわれることになっておったわけでございますが、当時津上におきましては会社経営が必ずしもうまくいっていないというようなことから相当多額の売り掛け金滞納等がございまして、これについて当時、いわゆる総会屋嶋崎経済研究所社長嶋崎栄治がこの点をとらえまして、会社に対して公開質問状を発するなどをして、定期株主総会においては経営失策等追及するというので総会の成立が危ぶまれておったというような状況があったようでございます。それで、この機会に畑佐らは総会屋嶋崎などを動かしまして、当時の社長を退陣させて自分が代表取締役に就任するということを工作し、さらにこの株主総会審議される予定の報告事項等につきまして、それが無事に承認をされますように、嶋崎らの働きによってその報告事項等について異議が出ないように、また異議が出た場合にはこれを封じてほしいというような依頼をいたしまして、四十八年の五月中旬に百万円、下旬は二百万円を畑佐小野を通じて嶋崎に渡したという事件でございまして、兵庫県警において現在懸命に捜査をいたしておる、こういう状況でございます。  そういうような事実は、商法の四百九十四条との関連でどのように考えるべきかという点でございますが、現在兵庫県警考え方といたしましては、四百九十四条の一項一号でございますが、株主総会における発言に関しまして不正の請託を受けて財産上の利益の収受があったという疑いで捜査をいたしておるという状況でございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この問題について考えますと、まだ捜査中の事件ですから、いろいろあとに差しつかえがあるかとは思いますが、この事件の今後の一つの発展といいますかな、見通しというかな、それはどういう方向のところにポイントが置かれるというふうに見たらよろしいのでしょうか。差しつかえない範囲お話を願いたい、こういうふうに思うわけです。  質問で聞きたいところは、結局こういうことですよ。たとえば安宅のほうから一千万円金が出ている。もっとも一千万円以上だというふうにいわれているのですけれども、その金がどう結びつくのか。条文との関係でいろいろあると思いますが、率直にいって、副本部長とかいう人があれされている程度ですが、その人が責任をもってそういうことをやるということは考えられないわけですね。となれば、当然、会社の上部の了解なりあるいは決裁なりというか、そういうもののもとにこの金が動いておる。安宅から幾ら出たんでしたっけね。あとでお聞きしますが、百万円、二百万円というのはその一部分のようですね。となると当然考られてくる。この人だけに責任を負わせて、それで終わりだという形になってしまうのはどうも少しく常識に反するのではないか、こういうふうに思うものですからお聞きをするわけです。
  26. 田村宣明

    田村政府委員 これから捜査がどういうふうに伸びていくかということに関連してのお尋ねでございますが、先ほど申し上げました犯罪の疑いの範囲内で端的に申し上げれば、これから、どれだけの被疑者がどれだけの行為を行なったかということの解明になるわけでございます。その場合に、この種犯罪でございますから、御承知のように知情の点その他いろいろ立証上問題があるわけでございますが、ただいまお尋ねがございましたように、現在兵庫県警が一応承知をいたしておりますところでは、畑佐安宅産業の百木に金策を依頼して、百木が取引先の某社から一千万円を調達して貸したということはわかっておりますが、いまお尋ねのように、どういうふうな関係者の判断で、またどの程度の情を知ってそういうふうな金銭が動いておったかということ、これは今後の事件の発展と申せば発展でございましょうけれども、一体どこまでが被疑者になるかということにつきましては、警察といたしましてもできるだけこれを解明しなければならないということは当然でございますが、ただいま御承知のように一応捜査でございますので、いままでの状況から推測をして、その範囲内で一体どの程度の立証ができるかということでございます。その範囲は、現在のところ兵庫県警として考えておりますことは、私がただいま申し上げましたような筋で動いておる金につきまして、どこまで関係者の知情その他がありまして被疑者になるのか、どの程度範囲が犯罪行為になるのかというような、そこらが今後の捜査の目標と申しますか範囲と申しますか、そういうようなことになろうかと存じます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 こういう事件になりますと、大きな会社はえてして、身がわりだとはいいませんけれども、それに類する人を立ててきて、因果を含めるというか、そこを防波堤にして、それで何とか食いとめよう、終わらせようというのがおそらくいままでの例ですが、いやこれは私の一存でやったのだ、こう言うに違いないと思うのですが、それはだれが考えても不自然なので、そういう点には警察当局としてはこだわらないでというか遠慮をしないで、かりに上層部であっても何でも事件については徹底的に解明をする、こういうふうな決意でございますかどうか。その点だけを端的にお伺いをしておきたい、こういうふうに思います。
  28. 田村宣明

    田村政府委員 申し上げるまでもないことでございますが、今後の捜査といたしましては、客観的な証拠資料があればきわめてけっこうでありますので、その点の捜査に十分力をいたすと同時に、犯罪の構成要件から見ましても、主観的要素の立証に力を注ぐということは当然でございます。  今後の決意はどうかということでございますが、兵庫県警として、現在までそれぞれの会社の首脳部を逮捕あるいは検挙して捜査を進めてきておるということが、兵庫県警一つの姿勢であるというふうに考えてよかろうかと思いますので、今後とも厳正な捜査を続けていく、捜査の方針としてはそういうことが申し上げられようというふうに考えます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 捜査中の事件ですから、聞くのはこの程度にいたします。  そこで、これは法務省刑事局長にお尋ねをしたいのですが、いま言った四百九十四条のことに関連をして、最高裁で四十四年の十月十六日第一小法廷の判決があるわけですね。これは例の東洋電機の事件だったように思うのですが、それを見ますと、「会社役員等が経営上の不正や失策の追及を免れるため、株主総会における公正な発言または公正な議決権の行使を妨げることを株主に依頼することは、商法四百九十四条にいう「不正の請託」に該当する。」それから「株式会社役員会社経営上の失策があり、来るべき株主総会において株主からその責任追及が行なわれることが予想されているときに、右会社役員が、いわゆる総会屋たる株主またはその代理人に報酬を与え、総会の席上他の一般株主発言を押えて、議案を会社原案のとおり成立させるよう議事進行をはかることを依頼することは、商法四百九十四条の「不正の請託」に当たる。」こういうのが最高裁で出ているわけですね。  私は、この当時チッソの問題を取り上げて聞いたのですが、この当時はそこまでいってなかったのですが、チッソばかりでなくて、きょう問題になっている東邦亜鉛の問題にしても、あるいはこの間国会で問題になったトーメンにしろ、あるいは伊藤忠だとかいろいろほかにたくさんありましたね。そういうような会社株主総会において、普通の場合はおそらく経営上の不正や失策の追及ということに該当する、こう私は思われるのです。その責任追及が行なわれると思うのです。それを封じるために総会屋に金を渡して株主発言を押えたりなんかする、こういうことがおそらく私は現実にはあるんだと思うのですが、そういう場合には一体この犯罪になるのですか、ならないのですか、お尋ねをしたい、こういうふうに思います。
  30. 安原美穂

    安原政府委員 稲葉先生御指摘の「会社役員等が経営上の不正や失策の追及を免れるため、株主総会における公正な発言または公正な議決権の行使を妨げることを株主に依頼することは、商法四百九十四条にいう「不正の請託」に該当する。」という判例に徴しましても、いま御指摘の案件は、要するに会社経営上の失敗の追及を免れるために、株主発言を押えてもらうように総会屋に頼むという意味で金品を渡すわけでございますから、まさに不正の請託に当たるというべきであると思います。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、公害を出しておるたくさんの会社、いま私はチッソとか今度問題になっている東邦亜鉛とかをあげたのですが、そのほかたくさんの会社があります。それから国会でこの前問題になった脱税だか脱漏だか知りませんが、あるいはその他のいろんな不正の手段によって、ばく大な利益を上げている会社がたくさんあるわけですが、そういうふうな会社総会において現実に行なわれるということは考えられると思うのです。そのときにはこの犯罪に当たるとすれば、それに対する捜査をどうするのか。これは警察、検察の両方にお尋ねしたいと思うのですが、特にチッソの場合は、あの場合に総会屋が来て発言を封じてやったことは明らかですね。そのことから考えても、当然この場合には捜査の対象として考えていいんだと思うわけですが、第一次的には警察の問題だと思いますので、まず警察のほうからお答え願って、それから法務省のほうにその点お答えを願います。
  32. 田村宣明

    田村政府委員 チッソの事件は、警察におきましては刑事局関係で処理をいたしておりませんので、私ちょっと詳細存じておりませんので、御了承願いたいと思います。
  33. 安原美穂

    安原政府委員 前回も申しましたように、チッソのことと言われますと、はなはだお答えしにくいのでございますが、一般論といたしまして、検察当局といたしましては、かような事件につきまして決して消極的な態度ではなくて、先般図書印刷につきましても同種事件を起訴したということもございまして、積極的な態度で臨む姿勢は変えておらないのでございますが、先ほど私は一般論と申しまして、会社経営上の責任追及する、それを免れるために正当な株主権の行使としての発言権を抑制するというようなことを依頼することは、不正の請託に当たると申し上げたのでございますが、一般論といたしまして、それが正当な会社所有者としての株主権の行使であるということを妨げるということであれば犯罪に該当するわけでありまするが、それがたとえば株主権の行使ではなくて株主権の行使に籍口して、たとえば自己の損害賠償を有利に導くために株主権の行使に籍口して発言するというようなことは正当な株主権の行使ではないという場合もありますし、あるいはそういう会社所有者としての株主の立場に籍口して別個の立場、たとえば政治的意図から会社経営者追及するというようなことであるとすれば、これまた公正な株主権の行使ではないということもございますので、問題は、お尋ねのような場合は、公正な株主権の行使であるかどうかということの判断ということが一つのポイントになろうかと思いますが、一般論としては、そういう場合は希有でございましょうから不正の請託ということにもなる場合が多かろうとは思いますけれども、そこは区分けをして考えなければならない問題があるということを申し上げたいと思います。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそのとおりですね。会社側のほうでも、いま言ったように経営上の不正や失策の追及を免れるためということがありますから、ただ経営上の責任、いまあなたは責任と言われたけれども、その責任ということばではちょっと不正確ですね。同時に、株主のほうでも、公正な発言だとか公正な議決権の行使ということは入っておるわけですから両方で制限されるわけです。一般的な場合には、これに該当する場合が公害の場合だとかいろいろな脱税その他の問題のときに多いわけですから、それを検察庁としては、何だかどうも聞いているとやるつもりがあるようなないような話なんですけれども、これはむずかしいといえば何だってみんなむずかしいんですよ。むずかしい、むずかしいでいったんじゃ何にもできないわけなんですが、やろうと思えばこれは幾らでもできるんじゃないですか。だから、こうした問題がたくさんあるんですよ、あなた当然考えられますよ。だからそうした問題については積極的にやるということを、これは大臣、どうでしょうか。そういうふうな発言大臣としてはできにくいんですか。企業に遠慮してとてもできない、そんなことはないよね、どうなんですか。しっかりした決意が出てこないと、どうも何だかよくわからないのですね。どうも経済界その他については甘いというふうな印象を与えてはいけませんからね。やろうと思えば現実にこれに該当するのは一ぱいあると私は思いますよ。大臣、それはどういうふうな考え方なのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  35. 中村梅吉

    中村国務大臣 不正があればどしどしやるべきだと私は思います。ただ問題は、検察庁としては、大体が警察から上がってくる事案を法律的に判断をしてあやまちのないように検討をして処理するのが主たる業務でございますので、世間には不正があっても見つからない場合もあると思うのですね、見つかったものに対しては厳重に処置するということが当然だと思います。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣、いま言われたように、それは刑事訴訟法——あなたも弁護士というか、やっておられるんでしょうから、それは刑事訴訟法変わりましたから直接の指揮権はないにしても、警察から上がってきたものを検察庁がやるというの、そういうのを壁塗りというんですよ。知っているでしょう。警察から上がってきたやつをまた壁塗っているだけなのね、そういうのを壁塗り検事というんですよ。どろ検と壁塗り検事といいましてね、どろぼうばかり調べているのとそれから壁塗りというのをやるんですが、これはだめなんですね。これは検察庁のやることじゃないですよ。検察庁はもっとしっかりとした角度からやらなければだめなんですね。そのために特捜部というものがあるのだから、これはしっかりやらなければいけないのですけれども、それはどうも返事がはっきりしないから……。いずれにしてもこうした問題はうんと出てきますから、これはしっかりやってほしいと、こういうふうに思います。  そこでこの法案に戻ると言ってはあれですけれども、参議院で修正をされましたね。きょうは私は時間の関係もあるから参議院における修正点などを中心に聞いて、そうしてあとは十二日に企業会計原則を中心とする大蔵省関係ですね、これはきょう私は大蔵省呼んでいませんから、十二日に時間をゆっくりいただいてやりたい、こう思うのです。  参議院三つの点が修正されましたね。これはどういうポイントからこういう修正が出たんでしょうか。これは民事局長でいいですよ。簡単に御説明を願いたいと思います。
  37. 川島一郎

    川島(一)政府委員 修正の三点のうちの第一は、商人が損益計算書を作成するという改正案の部分を削るということでございます。これは、一般商人に損益計算書の作成義務を課するということは、いままでつくらなくてよかったものを今度はつくらなければならないようにするという意味においてそれだけ負担を与えることになるのではないかという点が、この法案審議の上で再三問題にされたわけでございまして、その結果、一般商人についてはあまり困難をしいるようなことは避けよう、こういう趣旨でこのような修正が加えられたというふうに承知しております。  それから修正の第二点は、子会社調査権の行使にあたって、子会社のほうで正当な理由があるときは親会社監査役あるいは会計監査人の調査を拒むことができる、こういう規定を入れるということにした点であります。これは、子会社も独立の人格を持った会社でありますから、子会社調査権によって、子会社として正当に守らなければならない営業上の秘密などがあります場合に、これをその調査権によって親会社のほうに知られたくないし、まあ知らせることは子会社に酷であるというような場合もあろうということでこういう修正が加えられたということであります。  それから三番目は、取締役の違法行為の差しとめの仮処分に保証を立てさせることを要しないということにした点であります。これは、この違法行為の差しとめの仮処分に保証を立てさせることにいたしますと、監査役業務執行が阻害される場合がある、そういう心配をなくそうということでこういう修正が加えられたわけでございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それじゃ、いま言った三点の修正、どうして初めからあれしなかったのですか。初めからあなたのほうで原案をそういうふうにして出せばよかったのじゃないですか。どうして出さないの。  じゃもう一つの聞き方は、参議院のこういう修正というのは、あなたのほうにとっては不本意なの。そういう聞き方もおかしいけれども、これはどうなんですか。
  39. 川島一郎

    川島(一)政府委員 順々に申し上げます。  損益計算書の関係につきましては、政府側といたしましては、一般商人の作成する損益計算書というものは簡単なものであってよろしいし、また営業の規模が比較的小さい場合には簡単な損益計算書で済むはずである、こういう考えであったわけでございますが、現在損益計算書は比較的大規模会社などでつくっておりまして、相当詳細なものがつくられております。それと同じようなものをつくらなければならないことになっては困るということでこういう修正が加えられたわけでありまして、この点につきましてはそういう御意見もあり得るであろうし、まあそういう見地から修正が行なわれたとすればこれはやむを得ないことであろうというふうに考えております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはやむを得ないという程度のことなんですかな。それなら、初めからそういうふうにやればいいんじゃないですか。それは修正するのは議院の権限だからあたりまえですけれども、どうも何か煮え切らないところがありますね。  そこでお聞きしたいのは、そうすると、この帳簿の問題で、商法の二百八十何条でしたか、貸借対照表の公開規定があるでしょう。これは何か守らなくてもいいんだという、まあ、あやまち論の制裁がありますが、たとえば、IBMなんかは、こんなのは守らなくてもいいんだというようなことを言っているとか言っていないとかという話がありますね。この場合は貸借対照表だけでしょう。まず、IBMなんかが言っているように、この規定日本IBMその他に適用になるかならないかということが一つ。  それから、ここでは貸借対照表だけですね。損益計算書は入ってなかったのじゃないですか。どうでしたか。
  41. 川島一郎

    川島(一)政府委員 貸借対照表の問題ですが、商法の二百八十三条で公開、公告をすることになっております。これは守らなくてはならない規定でございまして、IBMがやっていなかったとすれば、それは商法規定に反しておったということが言えると思います。いま問題の修正の規定は、これは損益計算書に関するものでございますので、ちょっと御質問関連がわかりかねます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その公開というのは貸借対照表だけで、損益計算書は公開に入ってないわけでしょう。そうなんですか。とすれば、その理由はどうなんでしょうかと聞いているわけですよ。
  43. 川島一郎

    川島(一)政府委員 お説のように、現在公告を義務づけられておりますのは、財産目録と貸借対照表でございます。これによって、会社の財産状況というものが少なくともわかるわけでありますから、その程度で足りるということにしたのではないかと思います。損益計算書まで公告するということにいたしますと、これはかなり膨大なものになる場合がございますので、損益計算書については公告の義務を課さなかったということであろうかと考えております。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その公告の義務と帳簿の必要ということとは必ずしも一致しないとは思うのですが、結局損益計算書を作成することを必要としないということになってくると、現在の商法と同じになるのですか、この修正案が可決された結果は。帳簿の関係で同じですか、違うのですか。
  45. 川島一郎

    川島(一)政府委員 その前に、私さっき財産目録も公告するように申し上げましたが、これは間違いでございまして、貸借対照表だけでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 二項でしょう。二百八十三条の二項で貸借対照表だけでしょう。
  47. 川島一郎

    川島(一)政府委員 そうでございます。  それで、一般商人につきましては、財産目録を削りましたので、今後は会計帳簿のほかは貸借対照表だけをつくればいいということになります。会社につきましては、これは損益計算書は別の規定によって作成を義務づけられておりますので、変わりがないわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまあなたは、何か一般商人の場合は財産目録のあれをしなくていいというふうに言われたのだけれども、損益計算書をしなくていいということになったという意味じゃないのですか。ちょっと私の聞き違いかな。
  49. 川島一郎

    川島(一)政府委員 現行の商法規定によりますと、一般商人は、商法の三十二条及び三十三条によりまして、会計帳簿と財産目録と貸借対照表をつくらなければならない、こういうことになっております。今回の改正案の原案は、会計帳簿と貸借対照表と損益計算書の作成を義務づけて、財産目録ははずしたわけでございます。今回の修正によりまして、さらに損益計算書が削られましたので、結局残りましたのは、会計帳簿と貸借対照表、この二つになるわけでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、その保存期間が条文にありますね、三十六条でしたっけ。これは十年間でしょう。十年間というのは、どこから来たのかよくわからないんですが、一般債権の時効でいっているんですか、よくわかりませんがね。商事債権だから時効は五年でしょう、手形は三年としても。だから、どうして十年間もそんなものを保存しておかなければいけないのですか。とにかく、倉庫は山のようになっちゃうんじゃないの、これ、場所によっては。そこのところは議論にならないのですか、保存期間。十年というのは、どこから出てくるのですか。
  51. 川島一郎

    川島(一)政府委員 法制審議会では、特に議論が出なかったようでございます。どうして十年かという点は、私も推測いたしますのに、先生がおっしゃったような時効との関係ではないかと思います。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時効なら、商事債権だから五年でしょう。一般債権は十年だって、商事債権は五年じゃないですか。商人規定なんだから、五年でいいんじゃないの。法制審議会で議論あったんじゃないですか、正式な議論かどうかは別として。まあ、どうでもいいようなものですけれどもね、どうなんですか。あとでからんでくるのは、ぼくはマイクロフィルムとの関係で、これ、からんでくると思うんですよ。それで、この修正点の第一点について聞いているわけなんですけれども、時効なら五年でいいんじゃないの。
  53. 川島一郎

    川島(一)政府委員 商事債権は確かに五年でございますが、会社が行なう場合であってもすべて商行為とは限っていないわけでありますから、まあ十年の場合もあり得るだろうと思います。しかし、この十年というのは長過ぎるのではないかという点につきましては、確かにそういう問題もあろうと思います。そういった点につきまして、今後商法部会の開かれます際に、また意見を伺ってみてはどうか、このように考えております。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まあ、どうでもいいんですけれどもね。だって、絶対的商行為じゃないんですか、会社が行なうのは。だから全部五年になるんじゃないの。会社が行なうので十年の時効になるというのは、何かありますか。それは個人としてやったんなら別として、そんなことはおかしいよ。それはあとでいいですよ、きょうでなくていいですよ、たいしたことはない問題なんだから。わかりますか。
  55. 川島一郎

    川島(一)政府委員 一般個人のほうが会社に対して債権を持つという場合に、それが必ずしも商事債権でない場合があり得るわけでございます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうですね、そういう場合もないわけではありませんね。ないわけではないけれども、普通の場合はちょっとないんじゃないかな。まあ、いずれにしても、そうすると十年間でしょう、保存しなければならないということになりますね。そうすると、書類が山のようになっちゃうわけですよね。そういうようないろいろな関係も含めて、たとえばマイクロフィルムその他の問題でこれを商業帳簿とするということ、これは現在の時点ではどうなんでしょうか、また将来はどういうふうになるんでしょうか。
  57. 川島一郎

    川島(一)政府委員 商業帳簿をコンピューターあるいはマイクロフィルムを利用してつくることはどうか、こういう問題につきましては、法務省といたしましても前に検討したことがございますし、これからも検討を続けていく必要があるように考えております。  どういう問題があるかということでございますが、たとえばコンピューターの場合を考えますと、商業帳簿は、一体何が商業帳簿になるのかというような問題が一つあるわけでございまして、商業帳簿をコンピューターに入れました場合には、私機械のこと詳しくございませんけれども、たとえば磁気テープとか磁気ディスクというのですか、そういったような記憶装置だけをいうのか、あるいはそれを含めた機械全体をいうのか、いろいろそういった問題が出てくるわけです。それについて保存期間とかあるいはこれを損壊した場合の刑法上の責任というものが違ってくるわけです。たとえば文書ですと文書毀棄罪になりますが、器物ということになりますと器物損壊罪ということで、適用条文や罰則も変わってまいります。そういった問題が一つであります。  それから裁判所が商業帳簿の提出命令を出す場合がございまが、その場合に商業帳簿そのものを出すことはできないのではないか、それについては何らか特別な規定を置くべきではないか、こういった問題がございます。それから、たとえば商業帳簿の閲覧の場合にどういう形で閲覧の効果をあげるのか、こういった問題がございます。コンピューターの場合とマイクロフィルムの場合で若干問題は違うと思いますけれども、そういうような問題が幾つか提起されておる実情でございます。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはまたあとで、証拠能力の問題その他について別の機会にゆっくりお伺いしたい、こう思うのです。  そこで修正の二番はまたこの次にいたしまして、三番の仮処分の問題ですね。取締役の違法行為差しとめでしょう。仮処分に保証を立てるかどうかということは、原案では裁判所の裁量でしょう。ところが修正されてきた結果は立てないことになったのでしょう。これは司法権に対する介入ではないのですか。そこまで一体法律で、立法できめていいのですか。どうなんですか、何かよくわからないのだけれどもね。
  59. 川島一郎

    川島(一)政府委員 たとえば現在の商法の二百四十九条という規定がございます。これは決議取り消しの訴えを提起した場合の担保提供の規定でありますが、株主が訴えを提起した場合には会社の請求によって担保を供すべきことを裁判所が命ずる。しかしながら、取締役が同時に株主である場合もあり得るわけですが、取締役がこの訴えを提起した場合には担保を供すべきことは命ずることができない、こういうことになっておるわけでありまして、これと同じように、違法行為差しとめの仮処分を監査役が起こすという場合には、監査役会社機関として、その職務として行なっておるのでありますから、制度的に担保は必要がないということを規定いたしましても、それは必ずしもおかしなことではない、むしろ一種の機関機関関係の問題でありますから、こういう事柄、こういう問題については、担保を条件とするということにしないほうが適当であるというふうに考えます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまあなたの言われるようならば、それなら初めからそういうふうに条文をつくって出せばよかったのではないですか。  それはそれでいいとして、この仮処分はどういうふうにやるの。相手方はだれになるのですか。それが一つ。  それから、これに違反をした場合の効力はどうなんですか。取締役が違法に取引してしまったときに、どうなんですか、その効力は。第三者との間の取引でしょう。第三者に対してどういう影響があるのですか。第三者の利益を守らなければならないでしょう。この仮処分をやったって、具体的に第三者が当事者になっているわけじゃないでしょう。これはどういうふうになるのですか。具体的には第三者も入れて仮処分をするのですか。それと、その効力……。
  61. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まず相手方でありますが、これは違法な行為を行なおうとしている取締役が相手方になるわけであります。  それから、その効力でありますが、この仮処分によってその取締役は当該行為をする権限を失う、制限されるということになるわけでありまして、これに違反した場合には、ちょうど権限のない者が行なったのと同じような形になるわけであります。しかしながら、その仮処分に違反した行為の効力につきましては、一般的にいろいろな問題があるわけでございまして、法的などういう行為の差しとめが行なわれたかということによって結果が違う場合がございますし、また学説上も問題が出てくる場合がございます。一がいに言えないと思いますが、しかし、たとえば取締役が違法に新株を発行しようとしている場合、これを差しとめるという場合に、少なくとも取締役としては有効な株券が発行できなくなる、こういうことになろうかと思います。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 質問は十二日にまたあと延ばして終わりますけれども、そうすると、相手方は会社も入るのですか。会社取締役になるの。第三者は入らないのですか。それが一つと、では別の取締役がやったらどうなんですか。Aという取締役がだめだったら、今度はBという取締役が取引したら、これはどうなんですか。そこら辺のところはどうなの。善意の第三者をどうやって保護されるのですか。だから、これは、実際にはあんまり効力ないのじゃないですか、現実問題としては。どうなんでしょうかね。もちろん内容によりますけれどもね。
  63. 川島一郎

    川島(一)政府委員 相手方は取締役だけでございます。会社とか第三者が入ることはありません。(稲葉(誠)委員取締役がかわってしまったらどうするの。別の人が……」と呼ぶ)  取締役が何人かおるという場合に、まあ事柄にもよりますが、必要があれは代表権を持つ取締役全員を相手方とした仮処分が必要になる、このように考えております。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま言ったことで、第三者はどうやって保護されるの。第三者がそういうふうな仮処分があるかないかわかるのですか。わからないの。まあ内容によりますけれどもね。その点については考えられないのですか。きょうでなくてもいいですけれども、よくあれしてください。いろいろな場合があるのじゃないですか。
  65. 川島一郎

    川島(一)政府委員 第三者には通知もいたしませんので、わからない場合があり得るわけです。したがいまして、その仮処分に違反した行為の効力につきまして、学説上問題の出てくる場合があるというふうに申し上げたわけでございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの問題は、これは簡単に言われるけれども、なかなかむずかしいですよね。むずかしいし、それから内容によってもいろいろ違ってくるので、これは商法改正に直接関係はないかもわかりませんけれども、非常に大きな問題が、混乱が将来起きるいろいろなことができてくると思います。  これは別として、きょうは私は終わりまして、十二日に残ったところを中心に少し時間をいただいて質問したい、こういうふうに思います。
  67. 小平久雄

    小平委員長 次に、青柳盛雄君。
  68. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この商法の一部改正は数年前から問題になってまいったわけでありますが、いよいよどうも大詰めに近づいたらしい。政府のほうでは何とか三月中に制定を終わりたいというような御希望で、当法務委員会でも先に付議されました調停法の一部改正あと回しにして、あとからきたこれを先に審議することになったわけでありますが、三月中に制定されなければならないという何かタイムリミットみたいなものがあるのでしょうか、それをお尋ねしたいと思います。
  69. 川島一郎

    川島(一)政府委員 政府は提案者でございますのでなるべく早く御審議をしていただきたいというふうに考えておるわけでございまして、厳格な意味のタイムリミットというようなものはございませんけれども、この内容がいろいろ経済界の実務に影響を及ぼす点がございますので、三月の末に決算を迎える会社も多いことでもございますし、なるべくならば早く審議をしていただきたい、このように希望をいたしておる次第でございます。
  70. 青柳盛雄

    ○青柳委員 はしなくも三月中に決算を終わる会社があって、実務上それに便宜を与えてやる必要があるというふうにとれるわけですが、いままでの商法決算をやったのでは三月中にうまくない、だから改正ができれば三月期の決算がわりにうまくいくということにとれるのですけれども、巷間伝えるところによりますと、石油危機でたいへんな超過利得を得た会社などが今度の決算でそれを全部あからさまにするということ、あるいはそれを全部超過利得として計上することがいろいろと世間の批判の的になるというようなことで、今度の決算にあたっては公認会計士さんの監査も得て、別に変なところはないということで世間をごまかすというか、非難を免れる、そういう必要がある、だから商法改正を急いでいるんだというふうに伝えられているのですが、この点はどうでしょうか。
  71. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私そういうことは全然承知しておりません。なお、この商法施行されましても、会計監査人による監査の規定は若干期間を置いてから施行されるようになっております。具体的に申しますと、法律施行されました後最初に迎える決算期の決算につきましては従前どおりとするということになっております。先生仰せのような事情は私全然承知しておりません。
  72. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その点、いま御説明のとおりであれば、それはそれなりに評価されていいことだと思いますけれども、それに関連いたしまして、実は商法の二百八十七条の二という規定がございます。これは商法の一部改正としてごく最近に制定された規定のようでありますが、昭和三十七年法律八十二号で追加されたものですが、この「特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為ニ引当金ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルトキハ其ノ目的ヲ貸借対照表ニ於テ明カニスルコトヲ要ス」という第一項の規定、「特定ノ支出」ということが法文上あるものですから、これを一般に特定引当金などということばを使っているようであります。これと企業会計原則との関連をお尋ねしたいと思うのですが、もっぱらこれは商法規定のほうにだけあって、その他証取法あるいは法人税法などにはないような感じがするのですが、特定引当金というのは企業会計上どういう性格のものであるのか、これを法務省あるいは大蔵省のほうで御説明をしていただきたいと思います。
  73. 小幡俊介

    ○小幡説明員 特定引当金についてのお尋ねでございますが、ただいま先生お話ございましたように、特定引当金は商法二百八十七条の二に根拠をもちまして法令上引き当て金として経理することが認められている、こういう性格のものでございます。  企業会計の立場から申しますと、当期の費用としてそれが企業会計上当然に処理されなければいけないもの、これは負債性引当金というふうなものとして掲げられておるわけでございまして、これにつきましては修正案の注解の18というところで、その負債性引当金につきましてその概念並びに例示をいたしております。特定引当金の説明をするためには負債性引当金の話をちょっといたしませんとつながりがいきませんので、ちょっと負債性引当金のことを申し上げさせていただきますが、負債性引当金は将来において特定の費用たる支出が確実に起こると予想され、当該支出の原因となる事実が当期においてすでに存在しており、それから当該支出の金額を合理的に見積もることができる、こういう三つの要件を満たすような場合には、その年度の収益の負担に属する金額を負債性引当金として計上する、つまりこういうものは当期の費用、収益を計算する場合に、当然に費用として考えられるべきものである、これは引き当て金として計上しなければいけない、こうなっておるわけでございます。会計上はこういう負債性以外の引き当て金で、しかも法令で認められているもの、これを注解修正案では注解14というところに書いてございますが、そういうふうなものにつきましては、会計上は当期の費用として認めることにつきましていろいろ問題があるということで従来会計学者からいろいろ議論がなされておるわけでございますが、いずれにいたしましても、法令によりましてその引き当てとすることが認められておる、こういう現実があるわけでございますので、その会計上の表示の方法につきましては一定の方式に従いまして表示をする、こういうふうなこととして処理をすべきものと修正案でなっている、こういう性格のものでございます。
  74. 青柳盛雄

    ○青柳委員 なかなか詳しい、しろうとにわかりやすい説明をしていただきまして、私も理解できました。法令によって引き当て金というものがあるんだから、これは会計上計上しなければならぬのだ、しかしその中身は当期の損益と直接的な関連がない。ですから企業会計からいうと、当期の損益を明確にすることによってその企業の成績というものが明確になるわけでございますが、同時にまた税制上もそれが好ましいことだと思うのです。ところが特定引当金というのは法令にあるから別な記載で出すのだ、公認会計士さんなどから見ると、これを貸借対照表の上で表示するということが正しいかどうかということでやはり議論があるようで、限定意見が出されるという話を聞いております。  そこで法務省にお尋ねしたいのですけれども、昭和三十七年にわざわざ法律で二百八十七条ノ二というものを制定したのは一体どういう目的があってなされたのか。これは私その時分は衆議院におりませんでしたから、その論議の模様がよくわかっておりません。ちょっと説明していただきたいと思います。
  75. 川島一郎

    川島(一)政府委員 仰せのようにこの二百八十七条ノ二という規定は三十七年の改正の際に加わった規定でございますが、その当時の審議議事録を見ますと、この点に関する質疑はほとんどないようでございます。
  76. 青柳盛雄

    ○青柳委員 どうもふかしぎな話だと思うのですが、その当時の議員諸兄が全く怠慢であったのか、それともほとんど問題にならない、もう審議するまでもなく異議なしで全会一致で通るようなものであったのか、ちょっと私理解しにくいのですが、まさか怠慢をしておられたとは思いませんし、それからほんとうに論議がないものかどうかということになりますと、先ほど大蔵省の人が説明されましたように、学者の間などでは、そんな引き当て金というのはおかしいという議論がなされているというふうに理解できるのです。たとえばある会社が何十周年記念をやる。そのときに、いろいろ関係方面に招待をしたりお礼をしたり、にぎにぎしく会社が隆盛をきわめているということを誇示するようなことをやらなければならない。そのときに用意するために利益をどんどん特定引当金という形で蓄積しておく。こういうようなものがこの規定で認められているらしいのですね。公認会計士さんたちはそんなものは認められないと言うのだけれども、とにかく法令にあるからどこかに表示しなければならぬというので、企業会計原則でもたいへん苦労して、今度も修正などで貸借対照表の上で未処分利益というような形でしっぽのほうへくっつけておくというようなことがあるらしいのですが、私は、これは企業が利潤を蓄積する一つの手段ではないかというふうに理解するのですよ。つまり当期に相当利益をあげた、だから当然これは配当もしなければならぬし、また税金も納めなければならぬ、しかしそればもったいないから、配当もなるべく留保をする、それから税金も免れるというような形で特定引当金をつくっておく。そしてそれを、第二項によりますと、目的外に使用するときはその理由を損益計算書に記載することを要するというふうに——だから目的以外に利用しよう、何十周年記念に使うということで何億円の引き当て金を蓄積しておいたのを、たとえば増資に使うというような、そういうようなことにして肥え太っていくというための規定ではなかろうかという感じがするのですが、これは法務省のほうでおわかりにならなければ大蔵省のほうで御説明をしていただきたいと思う。私の言っていることが全く的はずれのことであるのかどうかですね。
  77. 川島一郎

    川島(一)政府委員 この商法の引き当て金でございますが、これは先ほど先生申されましたように、特定の支出または損失に備えるために見越しの費用または損失として貸借対照表の負債の部に計上することができるものであります。したがって先ほど大蔵省のほうからも御説明がありましたように、負債である引き当て金とは別個のものでございます。その意味におきましては利益留保性のものであるということもいえようかと思います。しかしながらこういう利益が出たのだ、それを引き当て金に充てるのだということが特定引当金というところで明示されることになるわけでありまして、この引き当て金というものがそういう性格のものであるということを知った上で貸借対照表を見ますと、その辺の関係が間違いなく看取できるようになっておるわけでございます。それから貸借対照表あるいは損益計算書というものは取締役会が一応つくりますけれども、決算株主総会に提出するわけでございまして、株主総会で引き当て金に計上することが適当でない、あるいはこれを利益配当のほうへ回せというようなことでありますれば、そちらへ回すこともできるわけでありまして、そもそも引き当て金を計上するかどうかというのが任意になっておるわけでございまして、引き当て金を計上しなければならないという性質のものではないわけであります。  それから先ほど、創立何周年記念事業というような例を出されたわけでございますが、われわれが考えておりますのは、この「特定ノ支出又ハ損失」というのは、近い将来においてそういう支出または損失が生ずることが相当の確実性を持っておるということが必要になるわけでございまして、たとえば十年ぐらい先の記念式典の費用をいまから計上しておくというようなことは適当でない。しかしながら、もうあと二、三年に迫っておるという場合にそれに相当な費用として毎年幾らかずつ計上しておくということは、この引き当て金として運用ができるというふうに考えておるわけでございます。その辺に多少はっきりしない部分があるんではないかと仰せられればそのとおりでございますけれども、商法の立場といたしましては、その辺は規定の趣旨から考えて合理的な限度でこの引き当て金の計上を認めていこう、こういう立場をとっておるわけでございます。
  78. 青柳盛雄

    ○青柳委員 なかなかこまかな説明をしていただいたわけでありますが、これがいわゆる今度改正されようとしている商法三十二条の「公正ナル会計慣行」というものになっていくかどうかということが問題だと思うのですね。もう相当の長い間、企業会計原則というものが続いてきたわけでありまして、それが今度修正されるということでだいぶ論議をかもしているわけでありますが、修正されたものがまた長く続いていけばそれが公正なものだということになるわけでしょうけれども、私は、企業会計原則ではいままでなかったものが、つまり負債性引当金というのは当然のこととして、合理的なものとして企業会計原則の中に定着をしてきたわけでありますけれども、三十七年になって商法改正のほうを先にやって、そしてこれを企業会計原則のほうへ押しつけていく、それでこれも公正なものだということにしようという計画ではなかったかと思うのですが、最近石油危機などが叫ばれてきておりまして、これも予見できるものであるということであれば、まあ石油危機引当金というようなものを設けても不合理ではないという気もいたしますけれども、何か企業の利潤を確保するためにやる、しかもそれがはたしてどの程度の確率性を持った事柄についてそれを予見して用意しておくといえるのかどうか、ちょっと疑問な場合だってあるんじゃないか。だから特定引当金の中でも、公正な会計慣行の中に入れてもいいようなものとそうでないようなものとがあり得るんじゃないかと思うのですが、そのけじめというようなものがあるかどうか。たとえば共産党の言っているような民主連合政府ができて、そして安保条約が廃棄されるというようなことになって、アメリカのほうでそれに対して報復措置をとる、日本の経済に対して大きな影響力を及ぼすようなことがあるかもしれない。それを予見して、それに備えるための民主連合政府特定引当金というふうなものをつくったら、それは一体いいだろうかどうだろうかという、そういう問題もあろうかと思うのですよ。これは少し脱線ぎみな発言だと思いますけれども、ひとつ大蔵省のほうで、その特定引当金でも公平な会計慣行になるかどうか、標準的なものが何かないでしょうか。
  79. 小幡俊介

    ○小幡説明員 お答え申し上げます。  ただいま特定引当金の問題でございますが、特定引当金は二百八十七条ノ二の文言にございますように「特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為」ということが書いてあるわけでございます。したがいまして、特定引当金という商法規定があるからといって、どのような利益留保的なものであれ、それが商法二百八十七条ノ二によって合法的に認められるというふうなものではないのではないかというふうに私どもは考えるわけでございます。で、この点につきましては商法の解釈の問題でございますので、法務省御当局のほうの所管の問題であろうかと思いますが、ただいま民事局長からもお答えがございましたように、特定引当金というものについての何でもいいということではないんだというふうな趣旨のお話もちょっとあったように私、伺ったわけでございますが、私どもの立場といたしましても、公認会計士が実際に商法の監査をしていく、同時にまた証取法の監査をしていくという場合に、どういうものが商法二百八十七条ノ二にいう特定引当金であるのか、どういうものは商法二百八十七条ノ二にいう引当金には当たらないのかというふうなことにつきまして、所管の当局のほうから何らかの指針のようなものが示されますると、公認会計士の監査をする立場におきましても非常にそれが役に立つということになろうかと思いますし、また私どもといたしましても、特定引当金は一定の表示、先ほど先生おっしゃいましたように、未処分損益というところで計算をするんだ、それから貸借対照表では特定引当金という部を設けてそこにはっきりと書かせるんだということで、明確に区分をさせるというふうにいたしてはおるわけでございますが、それにいたしましても、どんなものでもそこに入ってきていいというふうなものであってはやはり問題があるんではないかということを考えますので、先ほど民事局長のお話にもありましたし、また先生のお話しの点でございますが、その一つの合理的な範囲と申しますか、そういうふうなことにつきまして所管の当局のほうで何らかの指針が示されれば非常に有益な指針ということで公認会計士の監査も進んでいくのではないか、かように思うわけでございます。
  80. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いま、所管の官庁のほうで指針をというお話がありましたが、それはたとえば法務省のほうでそういうことについて指針を出して、で、公認会計士さんが監査をする場合の参考というか基準になるということのように聞こえたのですがね。はたしてどこで適当な指針を、どのような形で出すことになるのか。これがないと公認会計士さんがもうさっそくその監査をする場合に、これはいかぬ、これはいいというようなことがきめられなくて困るのじゃないかと思うのです。これを大蔵省のほうで出すのか、法務省で出すのか、それは私はわかりませんけれども、とにかくそれは商法改正とともに出される可能性があるのかないのか、それを詰めておきたいと思います。
  81. 川島一郎

    川島(一)政府委員 ただいま大蔵省からも御説明がありましたように、合理的な経営者であればこの程度のリザーブというものをしておくだろうということを予想しての引き当て金の規定でございます。したがいまして、企業により、そのときの社会情勢により、合理的な範囲というものは必ずしも画一的なものではないという面がございますので、これを一般的な基準で示すということになりますと、なかなかむずかしいわけでございます。ただ、抽象的にもう少し内容を詰めるというようなことは考えられるかと思いますけれども、これは法律の解釈の問題でありますから、終局的には裁判所が判断される問題でもありますし、かといって実際の会社の監査の場合に、どういう基準に従ったらいいかというような点で問題が出てくる場合がないとも限りません。そういう意味で、そういう合理的な範囲というものにつきましては、私どもといたしましても大蔵省などともよく御相談をいたしまして、なるべく明確にするような努力をいたしていきたいとは思いますけれども、商法改正と同時に一定の基準をつくってどうこうするというようなことはなかなかむずかしいのではないか。いろいろ考えてみたいとは思いますけれども、そういうむずかしい問題があるということを御理解いただきたいと存じます。
  82. 青柳盛雄

    ○青柳委員 たいへん苦心した御答弁ですが、とにかく特定ということばは、やはり特定なんですから、特定の支出、特定の損失、これは特定をしなければいけないわけですね。だから、損失として見越されるということが相当程度合理性のあるものでなければ、企業ですから、もうかるときもあるし、損するときもあるのはあたりまえの話なんですけれども、それは特定じゃなくて一般的な損失ということになりますから、やはりよほど厳格に、予想される特定の損失——特定の支出などというのは、先ほど私が例に出した何十周年記念が来るというのはもうあと三年とか二年とかということではっきりいたしておりますけれども、損失などというものは、きょうもうかってもあしたは損するということがある。だからもう一般的なものなんですよ。その中に特定されるような損失というものがあるのかないのか。天災地変みたいなものでたいへんな損をするというようなものなどはとても特定なんかできるものじゃありません。三十年後にそういう災害が来るのか、一世紀後に来るのかもわからないような損害なんか、特定とはとてもいえません。ですから、これはよほど研究して明確な基準を与えていただきたいと思います。  時間の関係もありますから次の質問に移りますが、企業会計原則の修正は今度の商法改正にあたってたいへん論議をされ続けてまいりました。そのために今度参議院附帯決議までつけられたようでございます。参議院附帯決議の第三項を見ますと、「企業会計原則は、企業の財政状態及び経営成績について真実公正な財務諸表を作成公示するための基準であるから、修正については、その目的に反することのないよう配慮すること。」こういう附帯決議がなされたようであります。これは先ほども申しましたように、七十一国会の衆議院の審議の中でも相当追及された問題でございまして、このすでになされた修正案は、商法改正され、実施される段階で案というものがなくなって、そのものずばりになるのだというお話でございました。それでは問題があるのじゃないか。たとえば継続性の原則について正当な理由というものをなくして、ただみだりにだけで間に合わせようとするのはおかしいのじゃないかという議論もありましたし、そのほかいろいろあったと思います。そこで、参議院でもそれからまた今度の衆議院での審議の中で、政府ではいよいよ商法改正されて実施される段階には再検討される、そしていまある案は変更されるのではないかという見通しをわれわれは持ったわけなんですが、ただ見直しをいたします、再検討をいたしますという抽象的なお話だけで終わってしまっているので、はたしてどういうところをどういうふうに直すのか、またその手続はどうかということについてはまだ詰まっておりません。何か白紙委任をしたままでその言明を受け取って商法改正してしまうということはわれわれとしてはちょっと無責任じゃないかという気がいたしますので、いま再修正する部分というようなものがどんなものであるか、明確にしていただきたいと思います。
  83. 小幡俊介

    ○小幡説明員 お答え申し上げます。  企業会計原則の修正案につきましては、本委員会にかかりまして以来、衆議院並びに参議院、また衆議院におきましていろいろ御審議をいただいておるわけでございます。先生から先ほど御指摘をいただきましたように、衆議院におきましても修正案につきましての附帯決議をいただいておりますし、また参議院におきましても修正案につきましての附帯決議をいただいておるわけでございます。私どもといたしましては、この企業会計原則は企業会計審議会におきまして慎重審議の上に決定されるというものでございますので、商法改正法案が成立いたしました暁におきましては企業会計審議会を開きして、いままでいろいろ御議論をいただきました点も審議会の各委員に披露いたしまして、見直しをいたした上で決定をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  84. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この企業会計原則の修正については、財界からのいろいろな要求があって、そして大部分はそれが取り入れられてあるというようなことがいわれております。ずいぶんあけすけなことも言われたというような文献もありますけれども、そういうことは十分世間の批判にたえるように再検討されなければならないと思います。どの部分がどうということはいま言えないというようなお話で、結局はいままでの論議を参考にして、そして正すべきは正すというようなお話でございますので、それ以上押し問答をしても具体的なものは出てこないと思います。  そこで、私は次の点についてお尋ねをするのでありますが、七十一国会の衆議院の附帯決議の五項には「監査法人は、その社員が税務書類の作成などの税務業務を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制すること。」それから参議院附帯決議の第二項にも「監査法人は、その社員」及び使用人が「税務代理、税務書類の作成及び税務相談を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制すること。」大体同趣旨でございます。ただ、文章上違う点は、衆議院のほうは「その社員」とあるのに対して参議院のほうは「その社員」及び使用人という文字が入っているようであります。確かに監査法人でその使用人というのは、単に事務をやる人の意味ではなくて、使用人たる公認会計士さん、つまり公認会計士として独自に会計の監査をする資格を持っておられる方が、監査法人の社員ではなくて従業員という形になって活動しておられる面があるようです。だからこの社員及び公認会計士たる使用人が税務に関して関与している会社は、もう本法の監査業務は行なわない、行なうことができないというように明確にすることが求められているんだと思います、この決議は。  そこで、私は、これはどういう形で法令上明確化されるのか、また公認会計士協会のほうでは、アメリカやその他ではもう税務と監査とは何ら矛盾をしないという形で、そういう制限なんかないんだ、日本ではそれを配慮してか何か知らないけれども、社員の半数以上が税務相談にタッチしているときはいかぬということなんで、その程度にしておいてくれ、こういう希望があるようでありますが、この衆参両院の附帯決議の趣旨は、半分以上はおろか一人も関与してはいけないんだという厳格なもののように私は理解するのですが、その点明確にすることができますか、どうですか。しかも、その法令上のやり方についても、ぜひこの場で明らかにしていただきたいと思います。
  85. 小幡俊介

    ○小幡説明員 お答え申し上げます。  衆議院並びに参議院におきまして示されました附帯決議に書かれている内容につきましては、私どもはそのとおりに実行してまいるというふうに考えております。  なお、先生のいま御指摘になりました参議院附帯決議の内容でございますが、参議院におきます附帯決議の内容といたしましては、「監査法人は、その社員が」云々云々ということになっておりまして、その社員及び使用人ということにはなっておりません。いずれにいたしましても、この衆参両院で示されました附帯決議の内容につきましては、私どもは改正されます今度の公認会計士法に基づきます政令の中にその内容を織り込むというふうに考えております。
  86. 青柳盛雄

    ○青柳委員 社員だけで従業員たる公認会計士さんは除かれているようでありますが、これはどうも決議が私不徹底ではなかったかと思うのです。私がたまたま見たのは附帯決議案で、その案の中に書き込みで及び使用人という字があったもんですから、これは通ったのじゃないかと思っておりましたが、やはりその点では衆参両院とも共通しているわけで、念には念を入れということだけになってしまいましたけれども、それにしても、監査法人というものがたいへんに大蔵省からは奨励されてたくさんでき上がっているようでありますけれども、その中に社員と社員でない人がいるということは、どうも私どもから見ると全く驚きなんですね。堂々と対等の資格を持っておられる方々が一方は社員で、そして一方は単なる使用人だというような関係になるということは、私弁護士ですけれども、弁護士事務所にも相当の数の人はおりますが、使用人たる弁護士なんというものは一人もおりません。もちろん、いそ弁などということばがありまして、いそうろう弁護士なんていいますが、これは給料はもらってはおりますけれども、これはそうだからといって使用人というような形ではない。  そこで、もう一ぺん念を押しますけれども、証取のほうの関係で半分以上というのもありますが、それは改正されるわけですか。
  87. 小幡俊介

    ○小幡説明員 お答え申し上げます。  従来は証券取引法に基づきます監査証明省令というのがございまして、その監査証明省令の二条に詳しく利害関係のことが書いてございました。今後は証取法監査と商法監査というものが同時に行なわれる。通常の場合には、おそらく同一の公認会計士または同一の監査法人の方が同じ会社につきまして監査をされるということになろうかと思います。  ところで、商法監査の特例法におきましては、特に利害関係に関する規定というものはないわけでございまして、これは商法監査と証取監査を通じましてどこに利害関係規定したらいいかということになりますと、公認会計士法でそれを規制をしたらいいではないかというふうなことから、今回関連法案の中に公認会計士法の改正法案が織り込まれておりまして、公認会計士法改正法案の中に、利害関係につきましてはその公認会計士法の政令に織り込むというふうな規定になっておるわけでございます。従来、証取法の監査につきましてただいま御指摘になりました点につきましては、監査法人の中に税理士業務を行ないまして継続的に報酬を受けているような人が二分の一以上あるような監査法人につきましては、これは利害関係があるということでその会社の監査をできないということになっておったわけでございます。この点につきましては、先生お話ございましたように、諸外国実情等から見ますると、われわれとしてはその程度でいいのではないかというふうに当初考えておったわけでございますが、衆議院並びに参議院におきまするいろいろの御審議及びその附帯決議におきまして示されました御意見がございますので、私たちといたしましては、監査法人につきましてはその社員のうち一人でも税理士業務によりまして継続的報酬を受けているという人がいますれば、その監査法人につきましてはその当該会社についての監査はできない、こういうふうに政令に盛り込みたいというふうに思っているわけでございます。
  88. 青柳盛雄

    ○青柳委員 もうだいぶ時間が迫りましたから、最後に税理士さんのことについてお尋ねをいたしたいと思います。  商法の一部改正、この問題が起こりましてから非常な関心を持たれたのは、何と申しましても公認会計士さんと税理士さんであったということは事実でございます。税理士会ではしばしば会合を持ちまして、これに対して全面的に反対の意思表示をされました。私も途中からそういう集会には招待されて参りごあいさつもしたわけでありますけれども、これは単に野党の私どもだけが招待されたのではなくて、非常に多くの与党の衆参両院の議員さんが出席をされ激励をされているわけですね。御本人が出ないで秘書の方が代理でお出になっておられた方もたくさんおります。また、法務委員長をやっていらっしゃる方も参加しておる、法務大臣をやったことのある方も参加しておる。そういうふうに非常に広範な議員がこの税理士さんの大会に臨んで激励をしておられたわけですね。だから税理士さんのほうにしてみれば、こんな法律がよもや上程され通過するというようなことはなかろうと当初は思っておられたのじゃないかと思うのです。また私も昨年突如としてこれが閣議決定になって上程されたということでちょっと意外な感じを持った面もないわけではない。そして、あれよあれよといううちに修正されて衆議院は通過し、参議院へ行って、参議院では継続になった。そしてまた再びこちらに戻ってきているわけですが、いずれにしても、与野党通じて非常な論議の対象になった。そしてむしろ反対が野党によって行なわれて、結局は自民党の多数で通過されるというような法案になってしまったわけですね。なってしまったというよりは、そういう性格のものではないかという気がするのです。ですから私は、これは単に税理士さんだけの問題ではなくて、税理士さんたちがいろいろと相談の相手になっている中小企業の方々の問題であろうかと思うのです。ですから、日本の経済が少数の大企業企業活動によって発展をしているという中に、むしろ隠れた形でその下働きをさせられているような中小企業というものが非常な広範なものとして存在している、それで生計を営んでいる業者及び労働者というものが非常に縁の下の力持ちのような形で日本の経済をささえていると思うのですが、そういう人たちがこういう商法改正に反対の意を示している。もちろん非常に技術的な法律なものですから、説明を聞かないと自分たちの生活にどんなかかわり合いを持つものかということはよくわかっていない面はいまだにあると思います。しかし、そういう人たちの相談相手になっておられる税理士さんたちがこぞって反対をする。もっとも、途中から妥協的な人たちも出てきたし、また、あくまでも反対をしなければいかぬのだという初志を貫いておられる人もあって、必ずしも一様ではございませんけれども、かりに妥協した方々であっても、本来からいうならば、こんなものはつくってもらいたくない、しかしどうしても通るんなら少しでもましなほうがいいということであって、本心は反対をしておられるだろうと私は思います。これは非常に大事なことだと思うのですね。私は、税理士さんが反対している面の一つとして、職域を締め出されるのじゃないかという点は、先ほどの附帯決議を完全に実行してもらう点である程度変わるとは思いますけれども、しかし、税理士制度というものとそれから公認会計士制度というものとの間の矛盾といいますか、公認会計士さんが税理士として登録する資格を持っておられ、しかも現実は税理士業務を行なうことによってその活動の大部分を占めておられる、公認会計士としての監査業務というようなものについてはごくわずかしかやっておられないというのが実情のようであります。したがって、税理士としての資格をお持ちになっている公認会計士さんの活動というものが、税理士会の中で何か特権的な位置を占める。弁護士も通知して税務ができるという制度がありますので、別に税理士会に登録するという人はそんなにたくさんはないと思いますけれども、公認会計士さんは二重な加入をやって、そして税理士業務がおもであるという実情でございますから、私は、この商法改正が通ったことによって、公認会計士さんのほうが何か普通の税理士さんよりも上位のものであるというようなことに誤解されないようにする必要があると思うわけです。  それに関連いたしまして私が質疑をしたいのは、税理士さんの社会的地位が非常に重要であるにもかかわらず、何か大蔵省の従属物のような、下働きをさせられるというようなものに理解されるような法制になっている。だから、むしろ税理士さんたちは、長い間税理士制度改正とその自主性、独立性を要求して運動しておられるようであります。こういうことについて議員立法でもいいから出してくれという強い要望もありますが、簡単に議員立法ということにならない面は、与野党がなかなか複雑でございますからあり得ると思いますけれども、大蔵省として税理士さんを中正な立場でやる、それは当然だと思います。依頼者であるから何でも納税者の利益を一方的に不当に守るというようなものではなくて、もちろん中正、公正に法律を正しく守るということは当然でありますけれども、そうだから大蔵省の監督のもとにあっていいんだということにはならないと思うのですね。弁護士だって中正、公正に法律を厳格に守る立場で依頼者のために活動するわけでありますけれども、決して戦前のように裁判所あるいは司法省の監督のもとにあるわけではなくて、その業務についてあやまちがある場合には、当然のことながら弁護士会のほうでこれを処理するということになっているわけなんですね。そういうふうな形に改正していく気持ちがあるかどうかですね。その一点だけお尋ねいたしまして、私の質問は終わりたいと思います。
  89. 渡辺喜一

    ○渡辺説明員 税理士なり税理士会が大蔵省の従属機関であるというふうには私ども全く考えておりませんし、また現実の事実を見ましても、決してそういうふうなことにはなっていないわけでございます。これはまさに先生がおっしゃったように、法律でも明らかに「中正な立場」ということになっておるわけでありまして、もちろん徴税官庁の立場に立つものではないし、かといって委嘱者である納税者と全く同一人であるというふうな行動をとるものでもない。まさに特定の税務業務につきまして独占的な権利を与えられる反面、公共性に見合う義務を負っておる非常に崇高な職務であるということになっておるわけでございます。形式的に税理士法の所管官庁たる大蔵省の監督を受けるということは、法制上これまた当然のことでございまして、同様な職業専門家すべてについてそういうふうなたてまえになっておるわけでございます。  先生がおっしゃったように、弁護士だけは行政官庁の監督を受けないシステムになっておりますが、これは弁護士職務の特殊性からくる非常に例外的なケースであるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。弁護士の場合は裁判手続にまで、司法手続にまで関与するということでございますから、行政権の監督下にあっては、その職務が十全に執行できないということではなかろうかと思うわけでございます。  税理士法の改正につきましては、これまた非常に長い間の懸案でございます。いろいろな問題が存在することも事実でございますし、私どもの立場としても積極的に直したいというふうな面も多々あるわけでございます。すべての制度というのは、社会経済の情勢の推移に即応していかなければならないということはまことに当然のことでございまして、私どもの所管する諸法律の見直しの一環といたしまして、税理士法改正も私どもにとっては重要な課題の一つであるわけでございます。  ただ、税理士法というのは職業法でございまして、これ自体だけの立場から改正するということはなかなか困難な面が多い。ただいま先生からの御発言にもうかがわれますように、公認会計士であるとか、あるいは弁護士であるとか、その他もろもろの職域との関係というものが微妙にからまっておるわけでございまして、私どもとしては、税理士法改正を具体的に取り上げる大前提として、そういうふうなもろもろの利害関係の調整ということについてある程度の目鼻がつくということがどうしても必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。したがって、まずそういう面から議論を詰めていく必要がある。これがこれからなすべき第一の仕事ではないかというふうに考える次第でございます。
  90. 青柳盛雄

    ○青柳委員 もう一言だけ。そういう改正にあたって、税理士法も公認会計士法も大蔵省の所管のような法律でありますが、その両方を見合いながら改正していくとすれば、会計士と税理士とは似たような仕事だと思うのですね。だから、これを一つにまとめることができるのか、それとも、似てはいるけれども違った面があるから、公認会計士は税理士の資格は与えないというようにしてしまうか、また税理士が公認会計士になってしまえばもう税務はできないというようにするか、その辺のところをひとつ総合的に考え、また格差みたいなものが社会的にないように配慮するということを私は希望いたしまして、終わりにいたします。
  91. 小平久雄

    小平委員長 午後一時十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時十九分開議
  92. 小平久雄

    小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  93. 正森成二

    ○正森委員 大臣にまず最初に伺いたいと思いますが、商法改正という問題が出ましたのは、山陽特殊鋼などの逆粉飾に関連して、監査を厳重にすればそういうことがなくなるし、企業の社会的責任をただすことができるというような意図が非常に大きかったと思います。しかし私は、昨年来の審議を見ておりまして、はたして商法改正されることによって、その目的を達成するのであろうか、逆に利益隠しだとかあるいは租税回避行為を増大させることになるのではないかという危倶を禁じ得ないわけでございます。以下その問題について、きょうは委員長のお許しを得て質問させていただくわけですが、大臣が他の委員会に行かれるそうでございますので、その点についての所信を承ると同時に、今後の質疑の中で、その危惧が払拭されないという点が出てまいりました場合には、もう一度見直すとかあるいはそれに対する歯どめを何らかの形で行なうとかいうようなお考えがあるかどうか、最初に伺っておきたいと思います。
  94. 中村梅吉

    中村国務大臣 従来のように、会社内部だけの監査ということだけでなく、完全に独立した、権威ある会計監査人の会計監査を得ることによりまして、粉飾決算はもちろん、いま仰せのような逆粉飾というようなものについても、相当制約ができるのではないか、かように思います。会計監査人はとにかく独立した立場で監査をいたしますから、あまりにも不当なものがあれば、もちろんこれは許さないことになると思いますし、施行をして実績を見た上でなければならない点も確かにありますが、とにかく予想としましては粉飾や逆粉飾というものをなくしていく上において、相当の効果があるものと、かように期待をいたしております。
  95. 正森成二

    ○正森委員 私の質問の、後段の利益隠しということはないと思うが、そういうことがある場合には、質疑の過程で見直すというか歯どめをするというそういうお心がまえはございますか。
  96. 中村梅吉

    中村国務大臣 そういう点については大いに期待いたしておりますが、もしそれでも十全でなければ見直すことは当然考えなければならない、かように思います。
  97. 正森成二

    ○正森委員 私は昨年の六月の質問の場合にも、商法三十二条と企業会計原則との関係について伺ったわけでございますが、商法三十二条の改正案では、「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」こういうようになっております。そして公正なる会計慣行といいますものは、企業会計原則を含むものである。そして商法が変われば企業会計審議会の審議を経た上で、現在われわれが入手しております修正企業会計原則案というものが案でなくなって、実際に施行されるようになるんだという趣旨の答弁があったと思います。そういうお考えには間違いございませんか。
  98. 田中啓二郎

    ○田中説明員 そのとおりでございます。  衆参両院において、いろいろ御審議もありまして、両院において附帯決議において、企業会計原則修正案のことにも触れておられますので、必要な見直しを経た上で確定したい、かように考えております。
  99. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、現在ある企業会計原則の修正案というものがございますね、現に。それをさらに見直すという趣旨ですか。
  100. 田中啓二郎

    ○田中説明員 大体従来、継続性の原則とか特定引当金を中心に議論があったわけでございます。しかし、そのほかの点についても、これだけいろいろ審議がございましたので、一わたり見渡すということはやはりしなければならないと考えております。
  101. 正森成二

    ○正森委員 そうするといまのお答えを聞いておりますと、継続性の原則と特定引当金の問題はいろいろ議論もあったけれども、そのほかの点についても見直す必要があるという御答弁であると、反対解釈として、継続性の原則と特定引当金に関することは、もうこれだけ議論があったのだから見直す必要はないというように理解できるわけですが、そう解釈してよろしいか。
  102. 田中啓二郎

    ○田中説明員 そういう意味ではございませんで、はたして継続性の原則、特定引当金の部分が書き直されるかどうかは再び審議会の議を経なければわかりませんが、少なくともただいままでの審議において、いろいろな経団連のパンフレットとかその他誤解を招くようなこともございましたので、そのような了解は特にないということを確認するとか、その他とにもかくにも確定に至るまで再び審議をお願いするという意味でございまして、必ずしもおっしゃるような反対解釈を申したつもりではございません。
  103. 小平久雄

    小平委員長 ちょっと、大臣はいいですか。
  104. 正森成二

    ○正森委員 いいことはございませんけれども、それはもちろん当然法務委員会の審議としては、私の質問中全部大臣は出席すべきであります。しかし他の委員会に行かれるということでやんごとない事情でありますから行かれる場合はやむを得ませんと言っているだけでございます。  そこでいまの御答弁を伺っておりますと、継続性の原則や特定引当金について経団連などでいろいろ言われている。かの有名な番場さんやら居林さんのことをおっしゃっているんだろうと思うのですけれども、だからそういう了解がないということについて、企業会計審議会で論議するというふうに受け取れるのですね。意地が悪い、こうお思いにならないでほしいと思うのですが、そうすると現在出ている企業会計原則の修正案には手をつけないが、それの解釈などをめぐって経団連がいろいろ言うておるが、それはかってな解釈であるということだけを明らかにする、企業会計原則の修正案については、これは継続性の原則や特定引当金については、注を含めてそのままである、どうもこう聞こえるわけですね、私がすなおに聞くと。そういうことですか。
  105. 田中啓二郎

    ○田中説明員 審議におきまして、特に継続性の原則ないし特定引当金に関しまして、公認会計士の側からもやはり一つの指針のようなものがほしいという気持ちもあると思いますし、特定引当金につきましても、これは商法の問題そのものでございますから、その点についても何が合理的な特定引当金であるかということを法務省におかれましても一つの指針を与えていただきたいというような面の議論も出るかと思います。そして最終的に字句が変わるかどうかはわかりませんが、その字句で十分明僚でないところを固めるというようなことも含めての一応の見直しという意味も考えている次第でございます。
  106. 正森成二

    ○正森委員 私はこれからの質問の中でいろいろ明らかにしたいと思いますが、いまの答弁だと、字句が変わり得ることもあり得る。字句が変わらない場合でも、それについていろいろ解釈のある場合に、それをもう少し固めるという作業をしたいというようにいわれます。しかし、商法三十二条の「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という文言は、企業会計原則がどう変わるかに大きくかかっております。つまり、それが中身であります。その中身が字句が変わるかもしれない、解釈が固まっていないからそれを企業会計審議会でいろいろ論議をするということになれば、本国会に中身の固まらないものを法案として提出しておる。結局白地立法を強要するのと同じであるというようにいわなければなりません。ですから、そういうものであるならば、企業会計審議会でもっと固めてから国会に提出するのが当然ではありませんか。そうでなければ、われわれは何を対象として審議を進めたらいいかわからない、こうなります。したがって、もう一度企業会計審議会を開いて、問題のある人物がおるならば、その人物に明らかにさせ、字句を直す点があれば直して、そして、こういうものでありますということで、商法三十二条との関係で出すのが当然じゃないですか。そうでなければ審議できないでしょう。一生懸命修正案で審議したら、これは変わったものが公正な会計慣行だといって入ってくるわけでしょう。それでは、事実上国会審議権を無視するものじゃありませんか。
  107. 田中啓二郎

    ○田中説明員 私の答弁に足らない点があったと存じますが、やはり私は字句について変わる可能性があるかどうかという点は、非常に詰めたものでございますし、さだかにどうと申し上げられませんが、要するにそれだけでは十分と思われないものは、行政的に補足して万全を期したいという意味でございます。
  108. 正森成二

    ○正森委員 行政的に補足というようなことを言われましたが、それでは行政的な補足とは何ぞやということになってくるわけですが、それはもう少しほかの議論を煮詰めてから、あらためて最後に問題にしたいと思います。  そこで私は、大蔵省の所管になると思いますが、お聞きしたいのですが、法人税法の二十二条の四項というのがあります。ここには「第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」、こういうように定めてあります。これは私が承知しておるところでは、昭和四十二年ですか、四十年に法人税法の全般的な見直しがありまして、その後四十二年に改正されたと思いますが、この改正された経緯及び企業会計原則との関係商法の今度の条文とほとんど同じ文言の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」ということがありますから、その二点について伺いたいと思います。
  109. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 第一点でございますけれども、改正は、私の記憶でもたしか昭和四十二年と記憶しております。そのときには、この制度と申しますか、この二十二条四項を新たに加えました趣旨と申しますのは、一つの法人税法解釈上の基準というふうな基本的な考え方と申しますか、方向を示したものと考えております。ただ、法人税法上は「別段の定めがあるものを除き」ということでございまして、事実上は課税所得の計算は相当こまかいところまで法律、政令、省令をもって定められております。したがいまして、特に「別段の定め」のない点につきましては、こういうふうな基本的な考え方をもって解釈を行なっていくという趣旨で、その方向をあらわした改正と考えております。  それから第二点で、企業会計原則との関係はどうだという御質問につきましては、この法人税法第二十二条四項にいっております「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」と申しますのは、いわば客観的に公正妥当なものとして一般に認められあるいは法的機関にまで高められたような会計処理の基準、こういうものを頭に置いております。したがいましてこれが直ちに企業会計原則をさすものではないというふうに考えておりますが、実際問題といたしましては、別段の定めのあるところを除きまして、企業会計原則の解釈にゆだねる部分は比較的少ないものと申しますか、企業会計の一般に公正妥当な基準と申しますか、そういう抽象的なものでございますが、もちろん具体性は持っておりますが、そういうものにゆだねる部分は少なく、実際上の問題としては企業会計原則に一致する部分がきわめて多い、このように考えております。
  110. 正森成二

    ○正森委員 さっきの、ちょっと言い間違えたような感じがあったところは、いまのあとのほうの説明が正しいのですね。
  111. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 そうです。先ほど企業会計原則にゆだねると申しましたのは間違いでございます。
  112. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、結局のところは法人税法二十二条にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」というのも、そして商法三十二条で申しております「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」というのも、これはほぼ同意義である、それは企業会計原則だけではないけれども、企業会計原則及びそれにない部分について一般的に客観的に公正妥当と認められるような会計基準ありとせばそれに従うという、同様の解釈にならざるを得ない、こう思いますが、それでよろしいか。
  113. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 商法のほうの解釈の件につきましては、私のほうはきわめて同じようなものではないかと考えておりますが、これは担当でございませんのでよろしくお願いいたします。
  114. 川島一郎

    川島(一)政府委員 結果的には大体仰せのようなことになろうかと思います。商法商法の立場で公正かどうかということを判断することになるわけでございまして、商法の立場というのは、つまり商法が、商業帳簿を作成させる目的、これは主として会社の場合でありますと株主とか債権者とか、そういうものが会社実情を十分に知ることができるようにという配慮があるわけでございまして、そういう点から見て公正だと認められるという意味でございます。税法と目的が若干違う点はあろうかと思いますが、内容的にはほぼ一致する点が多い、このように考えます。
  115. 正森成二

    ○正森委員 内容的にはほぼ一致するあるいは一致するという御見解がありました。そこで私は、なぜ法人税法の二十二条四項というものができたかという経緯を少し伺いたいと思うのですが、これは商法の解釈と非常に関係がある。私の承知しておりますところでは、たしか昭和四十一年の十二月に、「税制簡素化についての第一次答申」というのが税制調査会から出ております。さらにそれを受けまして昭和四十二年の二月に、「税制簡素化の具体的措置について」というのが税簡七の一で出ておりますが、これらを受けて法人税法二十二条四項が挿入されたということではありませんか。
  116. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答えいたします。  簡素化に関する審議会をたしか二度やりまして、その後にもう一ぺんやっておるかちょっと記憶にございませんけれども、その二度目の答申に基づいて改正が行なわれたものと記憶しております。
  117. 正森成二

    ○正森委員 直接のお答えではありませんが、そうすると「税制簡素化の具体的措置について」というのを受けて法人税法二十二条四項が挿入されたというように伺ってもいいわけですね。
  118. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 ただいまその二度目の答申が手元にございませんものですから、確認いたして正確なお答えを申し上げたいと考えております。
  119. 正森成二

    ○正森委員 だけれども、いまの答弁はたぶんそうだろうということでしょう。
  120. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 たぶんそうだろうということでございます。
  121. 正森成二

    ○正森委員 質問する方向でもそのくらいのことは調べておるんですから、だから大蔵省の担当役人として、しかも大蔵省にきのう私は法人税法の二十二条四項について聞くということを言ってあるのですから、そのくらいのことは調べておかないといかんですよ。そうでなければ私の言うておることが正しいかどうかわからぬわけでしょう。それじゃ次の議論になかなか発展しないじゃないですか。  それじゃ、おそらくそうであろうというお墨つきをいただいて、次に進みますけれども、これを見ますと、つまり法人税法二十二条四項というのは税制簡素化の一環としてなされたということは明らかですね。「税制簡素化の具体的措置について」という、そういうものに基づいてつくられておるわけですから。そこで、税簡七−一というのの(2)のところを見ますと、こう書いてある。「課税所得の計算の弾力化——商法企業の会計慣行等の開差の縮小」それが大きなねらいである、こういうようにいうておるわけですね。そして前の昭和四十一年十二月の第一次答申を見ますと「課税所得は、納税者たる企業が継続して適用する健全な会計慣行によって計算する旨の基本規定を設けるとともに、」云々と、こうあります。ですからまさにそういう趣旨で法人税法の二十二条四項が設けられた、こういうぐあいに解釈せざるを得ないと思うのですね。つまりこの規定商法企業の会計慣行、つまり企業会計原則というようなものの差を縮めていく、そして企業は継続して適用する健全な会計慣行をなるべく尊重するという趣旨だと思うのですね。そういうぐあいに解釈してよろしいか。
  122. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 簡素化の問題につきましては税制の問題はもちろんのこととして、実際の執行の問題も含めまして税務全体としての簡素化というものを念頭に置いて当然のことながら議論が行なわれているものと考えます。したがいまして、その趣旨を含めて考えますと、企業会計との開差を縮める——必ずしも企業会計に右へならえをするということではございません。別段の定めを必要なところにおきましては租税政策上必要な規定を設けておりますが、その他の点につきまして一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って措置することが税務の執行上も、また税制の考え方としてもそこに簡素化の意味があり、あるいは省力化の意味があり、あるいはさらに税務の執行というものを正しくやる上に一番必要だという意味から、そういうところにつきましては弾力化ということばがそこに使ってあるものと、必要な限り弾力化を考えるということが考えられているものと、このように考えております。
  123. 正森成二

    ○正森委員 いま社会では、大企業便乗値上げによって利益をどういうぐあいに隠すか、もうけはあがっているのに実際上の公表される利益は少ない、税務署に対する税金もなるべくかからないようにするのじゃないかということの世論が非常にわき起こっているわけですね。したがって、私たちはこれらの点を考えざるを得ないわけですけれども、いま大蔵省からそういうような答弁がありましたが、私はそれをそのままうのみにするわけにはいかないと思うのですね。たとえば税経通信の四十二年の七月の臨時増刊号、「改正税法を企業はどう見るか」という中で、大蔵省税制一課の課長補佐久保田一信氏という人がおりますね。この人がその税経通信四十二年七月の臨時増刊号で言っておるのを読みますと、法人税法の二十二条四項についてこう言っておる。「一般に公正妥当と認めるというのは、一体だれが認めるのかという点でございますけれども……これは第一次的には会社の経理担当の方方、あるいはその背後にございます会社の経理規程といったようなものになると思います。その次に……税務の側ではないだろうかと思います。」こう言っておる。そうすると、あなた方は法人税法の二十二条四項をつくり、そしてそれは商法三十二条とほぼ同一内容だと言うが、それをだれが一般に公正妥当と認めるかといえば、第一次的には会社の経理担当の方、あるいはその背後にございます会社の経理規程、ことばをかえていえば会社重役、それでございます、こう言っておる。そうすればこれは結局企業に公正な会計慣行とか公正妥当ということで、事実上企業の自主的経理の尊重という名前のもとにそれを法によって認めるということにほかならないことになるのではありませんか。
  124. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 先にちょっと申し上げておきますが、久保田一信と申します者はおりましたけれども、ただいまはすでに退職しております。  それから、ただいまの税経通信の記事というものを読み上げられまして、それにつきましての考え方でございますが、非常に正直な話を申し上げておるのですが、こういうふうな抽象的な書き方を二十二条四項にされて会社の経理担当者は一体何にのっていいのか困るというふうな、おそらく座談会でございますからお話があったんではないかと考えます。その場合に実際上別段の定めが相当ございまして、通達にゆだねる部分は現在でも非常に少ないのでございますけれども、その場合におそらく久保田君は、それにつきまして第一次的にはまず皆さんが判断をして一番正しい申告だと思うやり方で税務の申告についてはやってください、そういうことを申した趣旨だと考えておりまして、決して第一次的なものが最終的なものでもないし、そういう判断でやってほしいという趣旨のことを申したものと考えております。
  125. 正森成二

    ○正森委員 どうもそういう答弁のようですが、しかしその他の資料をいろいろ考えてみますと、どうもあなたのおっしゃる答弁は楽観的に過ぎるんじゃないかというように思わざるを得ない点があります。  そこで伺いますが、この法人税法二十二条四項を変える前に、たしか「税法と企業会計との調整意見」というものが出たと思いますが、それを御存じですか。
  126. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 出たことは存じております。読んだこともございますが、ただいま完全に覚えているとは申し上げかねます。
  127. 正森成二

    ○正森委員 それでは他の係官もおられるようですから横で調べていただくとして、そのほかに、昭和四十年一月二十一日に経団連経理懇談会から「税法整備に関する意見」というのが出ましたし、それに前後してやはり「税務改善に関する意見について」というのが出ておりますが、それは御存じですか。
  128. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 記憶しておりませんが、たぶんあるんではないかと思っております。
  129. 正森成二

    ○正森委員 専門の方が記憶しておりませんと言われますから、しかたがないから資料を示してこちらのほうから申しますが、「税法と企業会計との調整意見」というのはお読みになった、こう言われました。また文献を読んでみると、これが法人税法の二十二条四項を変える上でやはり一定の影響があったということも事実であろうと思います。そこで、これについて有名な居林次雄氏、企業会計審議会の幹事で、経団連の理財部におられる方ですが、その人がどういうようにいうているかということは、法人税法の二十二条の四項をどう解釈するか、少なくとも経団連はどう見ておったかということを知る上で非常に重要であり、そしてその解釈が昭和四十二年以来、現在着々と進行しておるということを一方の面から論証づけることになる、こう思うのです。あなた方が、読んだことはあるけれども、詳しくは知らないとか、あるいは存在は知っておるが記憶がないとか言われますから、非常に失礼ですけれども、出典をあげて私がこれから申し上げたいと思います。  まず第一に、「企業会計」という雑誌がありますが、それの一九六六年の十一月号に「税法と企業会計との調整意見に寄せて」というのを居林氏が書いております。それを見ると、こういうことをいうておるんですね。「企業会計審議会が税法と商法企業会計原則との調整について、意見を取り纏めるべく検討を開始して以来、短期日のうちに成案を得たことは喜ばしいことである。かねてよりわれわれは、税法が企業会計に口ばしを入れすぎるために企業の経理が複雑化し、適正な処理を妨げていること等の種々の障害のある点を指摘して、早急に税法の改正を行なうように要望していた。先に経団連より、「税法整備に関する意見」、「税務改善に関する意見」を政府に提出して、税法が企業会計を乱すことのないように要望していたが、これがかなり取り入れられていることを、極めて嬉しく思っている。」これが全般的な評価であります。つまり経団連の意見が「かなり取り入れられていることを、極めて嬉しく思っている。」こういう評価をしておる。そしてさらに進んでこういっている。「本意見書は極めて高く評価されてしかるべきであると思う。その理由の第一は、税法と商法企業会計原則との間で板ばさみになっている企業の苦悩をよく捉えて、その調整に腐心していることである。」「今回の意見書では税法の改むべき点と、「企業会計原則」の方で改むべき点とを並列して両者の調整を可能な方法で行なおうとしている」中略「意見書がタイムリーに出された」、「税制調査会が九月中旬に税制の簡素化の中間答申を行ない、それにより現在、簡素化の立法作業が進められている折でもあり、簡素化の具体案につき、理論的裏づけをするために何らかの拠り処を必要としているのであるが、企業会計審議会の調整意見がまさにこの役割を果たす面が多い。理論のみを追求して議論していると数年間の月日が経過してしまい、やっと結論が出たころにはどこからも顧りみられない状態になることも多いのであるが、簡素化の税制調査会の答申を横目でにらみながらほど良くタイムリーに纏め上げたのは、番場委員長の人柄に負うところが大きい。」と、かの有名な番場委員長さんを、人柄がはなはだいいということで、居林氏と番場さんがお互いにほめ合っておる、こういう内容になっております。  こういうものを読みますと——ほかにまだ読んでいきたいと思いますが、結局経団連は「税法整備に関する意見」や「税務改善に関する意見」でいろいろ要望した、それが税法と企業会計との調整意見に非常に取り入れられてうれしいということになっており、そしてそれらを参考にして法人税法の二十二条四項にああいう一般規定が入れられておる、こういうことになるんですね。そしてそれは結局税法と商法企業会計原則の調整を行なったものである、つまり一体化を行なおうとしておるものである、こういう評価なんですね。あなた方は、こういうように評価されたということについて、結局そういうことでいいのかどうか。具体的には内容は同じであるということを言われたけれども、そうすると経団連が言っているようなことになりますけれども、そこからはいろいろな問題点が起こってまいります。商法の今度の改正はそういう方向に一歩大きく歩み寄るものであります、商法がおくれておったわけだから。それが商法の三十二条で、今度は、先ほどから再々読みましたように、「規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」ということで入ってくるわけですから、結局、税法と企業会計原則と商法の一体化がこれで行なわれるということになります。そう解釈してよろしいわけですね。
  130. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私、税法のことは知りませんが、商法の立場は先ほど申し上げたとおりでございます。要するに、「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スべシ」ということでございまして、商法的な公正の立場というものは、これは本来、規定がない場合においてもそうであったと思いますけれども、今回の改正は、ただそのことを一そう明確にしたというふうに御理解いただきたいと思います。  それから商法三十二条の二項の規定は「斟酌スべシ」となっております。これは公正な会計慣行をその法律の中身として取り入れるということではなくして、それを実際の運用にあたってしんしゃくせよということでございまして、法律の中身として取り入れるという意味ではないわけでございます。
  131. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答えいたします。  居林さんがその際、いろいろの本の上でいっていらっしゃる件につきましては、一部については私どもも同意する点もございますし、一部については同意いたしかねる点もございますようでございますが、われわれといたしましては、二十二条四項を入れたこと自体につきましては、これは経団連がそれをいいと言っているとか悪いと言っているとかそういう問題でなく、企業会計審議会の税法と企業会計との調整に関する意見書ももちろん参考にさしていただき、あるいは税制調査会における審議等も十分参考にさしていただき、またわれわれも勉強をし、一番いいと思う道を選んだものと考えております。
  132. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず川島局長が、「斟酌スベシ」ということであるから内容としたものではないというように言われましたが、それはそうではないと思うんですね。法律のようにそのまま、この条文はこの条文と同じであるというようにはしておりませんけれども、私が昨年六月五日に川島局長及び田邊参事官に伺ったところでも、「斟酌スベシ」というのは一般に公正妥当な会計慣行というものは企業会計原則で尽きるわけではない、会計学というものは日進月歩するのだから、企業会計原則にあることも新しい会計原理によって進歩していく、そうすればその進歩した、一般的に公正妥当と認められるものは入ってくるという意味で「斟酌スベシ」とこういうているんだ、こういう見解ですね。ですから企業会計原則、今度変わりますけれども、それを全く別に横に置いておくんだというような解釈ではないのです。企業会計原則を含み、しかも日進月歩する公正妥当と思われる会計慣行をどんどんしんしゃくしていく、こういう意味なんですから、やはり内容なんです、企業会計原則は。内容であって、しかもそれは流動的な、前進か後退か知らないけれども、企業によってつくられていくものである、こういうことでしょうが。そうすると、内容では全くありませんというような答弁は、これは正確ではない。内容でないなら、一体公正妥当な会計慣行というのは何なんだ、何にもないのか、こういうことにならざるを得ません。そうではなしに、固定的ではないが一定の内容のものがある、その大きな部分は企業会計原則であるということは当然じゃありませんか。また大蔵省はいま答弁の中で、税法と企業会計との調整意見についても参考にするし、あるいは経団連の意見も参考にするし、正しいと思うのもあるけれども、それが全部ではないという意味のことを言われました。しかし、いみじくも言われましたように、税法と企業会計との調整意見というのは大蔵省所管の企業会計審議会が出したものです。そしてそれを大いに参考にしてつくったものが、その審議会の幹事や経団連の人々から、調整意見というのはけっこうなものだ、これはわれわれの意見をいれておるんだという評価があるとすれば、だれが何と言おうと、客観的に経団連はそういうように評価しておるということにほかならないじゃないですか。私はそう思うのですね。  そこで次に進みますと、さらに居林氏がどういうことをいうておるか。先ほど引用しました「企業会計」の一九六六年十一月号に、「今回の税法と企業会計との調整意見の内容に立ち入ってみると、根本は企業経理の自主性を尊重することとし、税法はこの自主的な企業会計の上に、そのまま乗っかって課税することとすべきであるといい切っている点に注目しなければならない。」こういい切っているのですね。これが居林氏の見解であります。そして「今回の意見書において、このような税法の干渉を退けて、」「このような」というのは、その前に「俗にいわれる如く税法は商法の死神的存在となっている。」ということばを受けるわけです。いいですか、税法は死神的存在といわれておるのです。「今回の意見書において、このような税法の干渉を退けて、」つまり死神的存在とならぬようにして、「企業の自主的経理を基本として税法がこれを原則的に鵜呑みにするという根本理念を打ち出したことは画期的なことで誠に喜ばしい。企業の自主的経理を認めるというからには、税法として余計な規定や取扱通達を定めている点につき早急に改めることとし、企業会計慣行に委ねて貰わねばならない。」これはどうです。実にずうずうしい。こういうことを堂々というております。  そしてそのほかにいろいろなことをいうておるけれども、こういう背景があって法人税法の二十二条四項ができており、それと実質上内容が同じものとして商法三十二条がいま改正されようとしておる。ここに大きな問題点がある。それは現在の企業利益隠し、こういう会計操作が行なわれようとしておるときに、国民の租税回避行為を許さないという見地から見ても断じて黙過することのできない論点だと私は思う。大蔵省はどう思いますか。いいですか、「税法はこの自主的な企業会計の上に、そのまま乗っかって課税することとすべきであるといい切っている点に注目しなければならない。」この意見書が大幅に採用されたといっているのですよ。
  133. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 そのまま乗って課税すると言い切っているところに注目しなければならないと居林さんはいっておられるようですが、その点につきましては、先ほど私がこの席で答弁さしていただきましたように、別段の定めのある場合を除きということになっておりますので、事実が違っているのではないかと考えております。
  134. 正森成二

    ○正森委員 あなたは別段の定めがあるときというようなことをおっしゃいましたが、その別段の定めなんというものはどんどんやめろと、こういつているんじゃないですか。そうして……。ああ、お答えになるなら答えてください。
  135. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 どうも中断して申しわけございませんでした。  それは居林さんがいっておられるので、私としては個人の意見に対してこの段階でこれ以上のあれを申し上げたくないと考えておりますが、私としては全面的に賛成ということではございません。
  136. 正森成二

    ○正森委員 それでは居林さんが少し出過ぎましたから、今度は大蔵省の役人がどういうことをいうておられるかということを聞いていきたいと思います。  あなた方のところに元主税局長をしておられた塩崎潤という方はおられますか。それからまた国税庁の審理課の課長であった大塚俊二という人はおられますか。
  137. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 かつておられました。
  138. 正森成二

    ○正森委員 現在の役職は……。
  139. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 塩崎潤先生は現在、衆議院議員をなさっておられます。それからもう一人の大塚俊二さんにつきましては、正確なところを確かめまして御返答申し上げたいと考えております。
  140. 正森成二

    ○正森委員 その塩崎潤、現在衆議院議員、何党であるか私はあえて聞きませんが、元主税局長が「企業会計」の一九六七年の十一月号、「税制簡素化の意味」という論文を書いておられます。これを見ると、当時の大蔵省、特に主税局という税金を集める立場の人の一番の責任者の考え方が非常によくわかる。「税制簡素化の意味と狙い」という項でこういうことをいうておる。  「第一の背景と原因は、」つまり、税制調査会の簡素化の第一次答申ですね。それが出た背景についていうておられるわけです。「第一の背景と原因は、わが国税制ないし税務行政に特徴的な強い画一主義の傾向である。」こういうことをいいまして「進歩的な近代税制は、経済社会の発展に応じて、個々の納税者が自分に適合する合理的な会計処理の方法を選択した時にこれを幅広く認容するのがその特徴である。」中略しております。「第二の背景と原因は、租税法律主義の過剰な適用である。」中略「この租税法律主義の意味するところは、税法以前の社会的事実である所得や企業利益、あるいは財産の定義や計算原理をこまかく規定するところにあるのではなく、課税標準が何か、税率はどの程度かという租税プロパーのことを法律規定することにある。」こういうことをいいまして、結局、よその国ではそれほどしゃくし定木のことはいうておらないのだということで、企業の自主的経理をもう少し認めなきゃならないという意味のことをずっというておられるわけです。長くなるから省略いたしますが、そして「税制簡素化の一つの基本的方向」という部分で「この画一主義のできる限りの排除と相まって租税法律主義の過剰な適用をやめると、法令に拘束されないで実情に即した会計処理の下で自主的に申告ができて、法文にとらわれた調査範囲も縮小して否認は少なくなる。むずかしい法文の字句せんさく的研究に費す時間は減少して、納税者も税務官吏も税理士も会計検査官吏ももう少し生産性の高い部面や健全なレクリェイションに時間を回すことができる。」こういつております。  つまり、あなた方の一番の責任者であった塩崎主税局長は、まず第一に画一化をやめろ、租税法律主義という憲法のいうておる最も根本原則の過剰な適用をやめろ、そして「法令に拘束されないで実情に即した会計処理の下で自主的に申告ができて、法文にとらわれた調査範囲も縮小して否認は少なくなる。」こういうようにやるべきである、これが基本方向であると、こういっているんです。居林さんのいうこととよく似ているじゃないですか。そっくりじゃないですか。失礼ながら答弁なさった方は課長らしいが、おそらく大蔵省の職制では局長のほうがえらいんだと思うのですね。そうするとその局長がこういうようにいうておる。私個人は意見が違いますと言うが、それじゃ局長の意見はどうなんです。当時の局長だ。
  141. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 当時の塩崎局長が書かれましたものの中にそのような、一つには画一的という取り扱いに問題がある、それから二番目は、そのすべてを法律で最後まで書いていってしまおうという、租税法律主義を非常に強く解するところにまた問題があると言っておられるのは、考え方としては確かにそのとおりだと考えておりますが、ただすベてはバランスの問題でございまして、税につきましては、執行の限界というものもございますし、適正な税務の運営と申しますのは、税制のあり方と同時に、それにバランスのとれた税の執行の力を伴わなければならない、このように考えておりますので、いかにしたらば正しく税務が運営できるか、そういう意味から、全く画一的なしゃくし定木と申しますか、すべてはこれ一つでなければいけないというふうな考え方ですべてを律してまいりますと、たとえば収益をどういうふうに計上するか、収益計上の時期の問題というのは会計学上も、また税務上もなかなか問題の多いところでございますが、これにつきましても、いわゆる到着主義、あるいは発送したときに計算する、あるいは検収ベースで事を考えていくというふうな、いろいろの方法がございます。確かに、厳密に申しますれば、それは何日かずれる場合がございます、そのいずれの日をとるかによって。しかしそれが継続性を前提とする限り、そこに課税上の弊害なし、そこまで税法で詳しく書いていく必要はないのじゃないかということは、われわれとしてもそのとおりだと考えておりまして、たとえば、そのような点につきましては、画一的な問題にも問題があると言われる点につきましても、あるいは租税法律主義を非常に厳密に最後まで書いていくというところにも問題がある。社会的事実としてそれをとらえなければいけないというふうな御所論についても、もちろん全体の税務の運営に弊害があってはなりませんが、弊害のない限り、一つの所論かと考えております。
  142. 正森成二

    ○正森委員 さすが大蔵省一体の原則か何か知りませんが局長を非常に弁護をされましたが、しかしそれは局長のある部分の弁護であって、局長の論文自体の「法令に拘束されないで実情に即した会計処理の下で自主的に申告ができて、法文にとらわれた調査範囲も縮少して否認は少なくなる。」そういうことを言われたほんとうの趣旨、つまり、居林さんがいみじくも喝破されているような、企業の会計原則の上に税法がそのまま乗っていけばいいという方向、そういうような方向というのは、これは両者の間におそろしいほどの符合一致があるというようにいわなければならないし、あなたの局長をかばう実に忠義な答弁を聞いても、私はその疑念を払拭することができない。しかもこれは大蔵省の一局長の考えだけではない、勇将のもとに弱卒なしというわけで、ここに大塚俊二という国税庁審理課の課長がいる。これはもちろん外局でありますから、直接主税局長の部下ではありませんけれども、この人が一九六七年八月号、税務弘報というのがある。ここで簡素化通達の動向という座談会に出ておられるが、ここに出ておられる方が、やはり番揚嘉一郎とか、居林次雄というおなじみの方々。このおなじみの方々と、内輪同士の気楽さか何か知らないけれども、談論風発しておられるのを読んでみると、やはり同じようなことを言っておられる。たとえば番場さんが、「法人税法第二十二条に加えた「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算……」という条文を受けての通達は別につくらないということですか。」こういう質問をしたのに対して、大塚国税庁審理課長は、「第二十二条第四項に規定する「公正妥当な会計処理の基準」とは何であるかということを、これはどうも私どもの能力ではきめられそうもありません。ただ、そういった通達はしないにしても、さきほど申し上げましたように、会計方法を一つに限るというようなことではなしに、妥当なものであれば広く認めていくという方法、それぞれ個別の取扱事項をきめるところでそういった趣旨の表現にしていくということになりましょうし、」云々。そして、「もう一つは事前確認制度といいますか、納税者と税務当局の間で、経理方法を確認しあって、それを継続していく限りは税務署の所得計算もそれによっていくという事前確認制度というものを大いに今後活用していくという方向は考えられていいと思うのです。」こう言って、やはり妥当なものであれば広く認めていく、そして具体的には企業と相談をして事前確認制度でできるだけそういうものを認めていくということを言っておるのですね。この事前確認制度というのは、本法案の改正で行なわれる公認会計士の事前監査の問題とからんで、税務処理上も重要な問題になると思うのですが、それはあとで言います。  座談会をもう少し読んでいきますと、こう言っておるのですね。大塚「資本的支出か、修繕費かの区分の問題も、むしろ先ほど触れました事前確認制にのせて、会社のほうが一定の判断基準を設けて、それを税務当局と会社の間で、確認をしてやっていくというような方法がだんだんできてくれば、そういう面の否認のケースは少なくなっていくのではないかと思いますね。」居林「その事前確認制度というのは今度の通達にお触れになりますか。」大塚「具体的にどこでそういうものを入れるかどうかはまだ検討していませんが、私自身国税局におりました当時、一応そういうことで、会社側がある基準をつくって、それで修繕費と資本的支出を区分するという申出があり、原則としてけっこうですと言った事例はございます。」居林「そうしますと、」ここが大事ですよ。「今度第二十二条なんかが入ったから、公正妥当な会計慣行だということで、そういうことを、通達があろうとなかろうと実際にやってもかまわんわけですね。」大塚「問題は会社の基準が妥当かどうかということでしょうね。実際執行の面でも、大きい会社になりますと一々修繕費の中味を洗って、これは資本的支出か、どうかを判断していくのはとてもたいへんですね。ですから、会社のほうで公正妥当な基準をつくっていただいて、それを事前に了解しあって処理していくということになれば、非常に進歩だと思うのです、税務行政としても。」こう言っておる。どうです、居林さんは「第二十二条なんかが入ったから、公正妥当な会計慣行だということで、そういうことを、通達があろうとなかろうと実際にやってもかまわんわけですね。」こういうことをぬけぬけと言って、そして勇将のもとに弱卒なしで、審理課の課長ともあろうものが、とんでもない、おれのところの通達を尊重してもらわねばいかぬというようなことは一言も言わないで、事前に相談し合って、了解し合ってやっていくことになるでしょうねということで、居林さんのこのことばを事実上肯定しているじゃありませんか。つまり下は課長から、上は局長まで、全部経団連の私が読み上げた一連の要望あるいは意見書というものにそっくり沿った発言をし、行政をしているのではありませんか。そしてそれが今度税法と商法企業会計原則ということで一体になる、これが商法三十二条の一番問題点ではないかと思いますが、あなたの役所の方のこの発言について、いやいやそうではないという弁護がありましたら、委員長のお許しを得て答弁してください。
  143. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 税法の問題についてお答え申し上げます。  ただいま読まれましたものを伺っておりますと、居林さんの所見に対して答えられている大塚さんのお答えとしては、公正妥当な会計慣行であればということを言っておられまして、何が何でも企業の判断でやったものをそのまま認めるという趣旨では全くなく、かりに通達に書いてなくとも、それが公正妥当な会計慣行と申しますか、会計基準と申しますか、会計処理基準と申しますか、そういうものであればという趣旨でお話になっているものと考えております。
  144. 正森成二

    ○正森委員 そういうように弁護なさいますが、私が読み上げたところでも、「会社のほうで公正妥当な基準をつくっていただいて、それを事前に了解しあって処理していくということになれば、非常に進歩だと思うのです、」こう言っているのです。だから、公正妥当なものは会社がつくってください、ただ、それは事前にちょっとお見せいただけば事前確認ということで私どもも都合がよろしゅうございます、こういっておるにすぎないのでしょう。経団連はよけいな干渉をするな、よけいな通達で企業の自主的経理を乱すな、こういうことをいっているんです。だからこういうような一連の流れを見ると、法人税法の二十二条四項というのは、そういう意図のもとに改正され、それと事実上、いみじくも川島さんが言われたように、内容的にはほぼ変わらないというものが商法三十二条の中に入ってくる、こういうことになっていくと私は思うのですね。  そこで、そういうようになるといたしますと、現在の社会情勢のもとでどこに問題が起こるのだろうかということを私は少し申し上げたいと思うのです。いままでもあなた方の答弁のことばの中にも出ておりましたし、また私が手元に持っております「税制簡素化についての第一次答申」でも必ず留保がついているのですね、「課税所得は、納税者たる企業が継続して適用する健全な会計慣行によって計算する旨の基本規定を設けるとともに、」こういうことで、それならば尊重するというようになっているんですね。あなたの答弁でも継続してというようなことばがどこかの段階で、田中さんだったかもしれませんが、入っていると思うのですね。ところが今度の商法改正ではどうなります。商法にはもともと厳密な意味での継続性の原則はございませんでしたけれども、企業会計原則では継続性の原則があった。ところが他の同僚議員がたびたび質問いたしましたように、今度の改正の中では継続性の原則が非常にゆるめられて、「正当な理由」がなくても「みだりに」でなければいい、こういうことになったのは周知のとおりであります。そうすると、継続して適用されるということを条件として、まあまあ企業がきめたことはこうして通すというようになっていたのが、継続して適用されるということについて大きく歯どめをとめてしまうということになれば、これは非常な問題であり、いろいろ減価償却の方法にしろ何にしろ変えていって、ある場合には利益を出し、出さないということが行なわれることになると思うのです。これは私が昨年の六月五日にも簡単に指摘しましたし、他の議員も言われたと思うのですが、それについて現下の情勢から見て、こういう企業会計原則の修正というものがプラスになるのかならないのかということを御答弁願いたいと思います。
  145. 田中啓二郎

    ○田中説明員 その点は、商法との関係で「正当な理由」というものが適法か違法かの問題に発展する、そういう関係もあってそのことばは落ちた。しかし、私どもの従来から考えている継続性の原則の適用に関する態度はいささかも後退しないつもりだという点は何度も申し上げているところでございますが、この点につきまして、たとえば従来の評価によっていては適正な評価ができない場合とか、あるいはかなり相当期間ある方針を継続してやっていたとか、あるいはこれからも新しい基準によって相当期間継続するとか、あるいは一つ一つについては理由、理屈はあるけれども、全体として見るときには、利益の平準化等、財務諸表に著しい影響を与えることを目的とすることが明らかであるというような場合は、やはり好ましくないというようなことをいっておられる会計学者もおりまして、そういう意見も傾聴に値しますので、これからそういう点を踏まえまして、現実に公認会計士協会等において公認会計士に対してそういった指導基準を出すかどうかということが検討されていくのではないかというようなことが期待されると考えます。
  146. 正森成二

    ○正森委員 いま現在法案を審議しているのに、期待されるというようなことでは困るんですね。期待されるなら期待されて、できたものをこの法務委員会に出していただいて、そして私たちがこれならけっこうだと思われるかどうかというようにしていただかなければ、期待だけはされておっても、現在はないわけですから。  「正当な理由」というのが省略されましたが、それならば、原則としてこれを変更してはならないというような文言でも入れられなかったのですか。
  147. 田中啓二郎

    ○田中説明員 この点に関しましては、当時私おりませんで、その辺の経緯がどうであったかさだかでございませんが、私が聞きました限りでは、やはり三十二条の「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」の内容にこれはなっていくという意味で、「正当な理由」ということは誤解を防ぐために取られたということを承知しております。したがいまして、原則として云々で切ったかどうかということは、ちょっと私その間の事情をつまびらかにいたしません。
  148. 正森成二

    ○正森委員 それではその間の事情を番場嘉一郎氏に語ってもらいたいと思います。これはたびたび出てきた「企業会計原則修正案の解説」という経団連パンフレット、ナンバー一〇五の中の記事で、なぜこういうことになったかということを番場嘉一郎氏がいうておる。どういうようにいうておるかというと、こう書いてあります。継続性の原則を「変更をしても、どういうわけで変更したかということを調べるようなことを、商法としてはするわけではない。変更があれば、これをいちいち当局が、この変更は困る、だから取り消せ、というようなことを商法としてはいうわけではないのであります。会計原則および注解では、こういう線を出したつもりであります。」こういいまして、「みだりに」という文字が残っておるがこれはなぜかということに少しお触れになって「「みだりに」ということばのかわりにほかのことばを当てはめましても、どうもうまくない。この点はどうもうまく直せないから、このまま置こうということになりました。また「みだりに変更するなといえば、何となくわかるではないか。やたらに毎期毎期継続性の変更をすることは、商法としても許せない。だから、みだりにというぐらいのことはあっても差しつかえない」というような商法学者の発言があったりして、この点が残ったわけです。「みだりに」のかわりに「原則としてこれを変更してはならない」とする案もありましたが、これはかえって厳しくなるという心配もありまして、結局、「みだりに変更しない」というように記述することになりました。」番場嘉一郎氏はこういっている。これは企業会計審議会の一員でもありますし、有力者なんですから、この言うていることが正しいと思うんです。つまり、「正当な理由」というのを削ったということは、変更してもどういうわけで変更したんだ、企業はこれがぐあいが悪いから、当局が取り消せというようなことをいえないようにしたんだ、「原則としてこれを変更してはならない」とするとかえってきびしくなっちゃう、だからわけのわからない「みだりに」ということばで、ことし変え、来年変え、去年もまた変えたというようなことでなければよろしいんだということにしたんだ、こういっているのでしょう。  これは現下の情勢から見て非常に問題があるということを、あなた方はお認めになっているでしょう。どうですか。
  149. 田中啓二郎

    ○田中説明員 もし番場委員のそこでいっておられるようなことが、個人の意見にとどまらず、ほかの委員も何となくそういう雰囲気であったということであれば、先ほども申し上げましたように、次に招集いたしますときにはその点も十分注意を申し上げたいと思います。そして継続性の原則に関しましては、やはり先ほどの会計学者の意見なども踏まえまして、私ども期待されると先ほど申しましたが、ある程度指導もしていきたい。ただ、現在は非常に、たとえば大企業利益隠しとかあるいは隠れみのとかいうような観点からいわれておりますが、経済には好景気のときも不況のときもございますし、不況の際に株式会社は大中小を問わずやはり商法に従うし、今度の企業会計原則というものを十分しんしゃくされるわけでございますから、その点に関する配慮もございますので、さっき申し上げました会計学者の意見なども踏まえ、かつ、ただいま申し上げたような点も踏まえまして、十分な指導をやはりやつていきたいと率直に考えている次第でございます。
  150. 正森成二

    ○正森委員 田中さんは非常に率直に、企業会計審議会をまた開いてそういうような点も注意していきたいというように言われております。この委員会でそういうようにおっしゃる誠意は私は認めますけれども、しかし国会議員の立場とすれば、そういうのを法案が通ってしまってからまた企業会計審議会を開いていろいろ御注意申し上げたりして、場合によっては字句を直したり、あるいは了解事項は、そんなものはないんだということを言われても、これは現在はわからないのですから、どういうぐあいになるかということは。だからわれわれとしては、よろしくおはからいくださいということで、三十二条の中身がよくわからないまま法案を通過させるということに結局はならざるを得ない。それも、自信満々で、正森議員が何とおっしゃろうと、企業会計原則の修正案というのはりっぱなものでございますといわれるなら格別だけれども、あなたの答弁を聞いていると、まず第一に居林さんや番場さんのそういう解釈というものがまかり通るとなれば問題だと、そしてまた、その解釈を許すような文言自体にも場合によったら問題があるというように受け取れるような、これは私の主観ですよ、そういう答弁だということになれば、われわれとしては、そんあやふやなものを国会で通すわけにはいかないということになるのですね。これはあなたが非常に率直にお答えいただいたことを逆に使うようでいけませんけれども、しかし理屈としてはそうならざるを得ない。しかもそれは、田中さんの審議官としての御意見だけでなしに、大蔵省全体の御意見だと思うのですね。それは他の議員も引用になった三月三日の各紙に載っているのですね。私はたまたま読売新聞を持ってきましたけれども、「大蔵省、税制・証券行政面から 減価償却変更認めない たな卸し評価替えも」こういう大きな見出しですね。これは他の議員が引用になったということを、私は欠席しておりましたが、伺いましたけれども、それを読んでみますとこういうぐあいに書いてあるのですね。「石油危機に便乗した値上げで超過利得を得た数多くの大企業はいま合法的な、“利益隠し”に躍起となっているが、大蔵省は二日、税制と証券行政の両面からこうした利益操作を厳しく監視し、封じ込める方針を決めた。具体的には(1)税制面では国税庁が今週早々、全国の税務署長あて「上申制度の強化」について通達、これまで税務署長の権限で審査、承認してきた減価償却方法と、たな卸し資産の再評価の変更は原則として認めない(2)証券行政面では、公認会計士協会や証券会社を通じて企業会計原則に合っていても社会常識を逸脱した決算をしないよう指導し、黒字を少なく見せる。“逆粉飾”が明らかになれば上場停止という強い措置もとる、というもの」こういうように書いているんですね。まず第一に伺いましょう。こういうような大蔵省の措置をとったのかどうか、まずそれから伺いましょう。
  151. 田中啓二郎

    ○田中説明員 私どもの証券局に関する限りは、そこにあるような措置はまだとっておりません。
  152. 甲斐秀雄

    ○甲斐説明員 たなおろし資産の評価方法や有価証券の評価方法及び減価償却資産の償却方法の変更承認というような件につきましては、法令の定めるところに従いまして厳正に処理してまいってきておりますが、現下の情勢では好ましくない経理操作が行なわれるおそれもありまして、より一そうその取り扱いを厳格かつ慎重にする必要があると考えますので、現在、これに関する通達を近々発遣する見込みでございます。
  153. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、国税庁のほうはこの新聞の記事を、時間の前後はあるにしろほぼ認められたと解釈していいと思うのです。そうすると、私は委員長にもお聞き願いたいんですが、もともと現在の企業会計原則では「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。」こうなっておって、ものごとの当然からいって、正当な理由がなきゃ変えたらいかぬ、変えたときでもこういう措置をとれと、こうなっておるんですね。そういう現行の企業会計原則のもとでもなおかつ利益隠しが行なわれたらいかないから今期は変えちゃいかないと、評価方法とか減価償却ですね、そういうやり方を、こうなっておるのに、いま一生懸命商法審議を急いでいるんですが、もしこの商法が通り、企業会計審議会で修正企業会計原則というものがいま出ているような案のままで制定されるとすれば、そうすれば今度は「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」とこうなって、正当な理由がなくても変えてよいことになり、そして番場さんの経団連でのパンフレットによれば、変えたからといって、それはなぜ変えたんだ、取り消せ、というようなことはいえなくなるんだと、こういうことになる。そうすれば、まさに現在商法が変えようとしている方向は、大蔵省、国税庁がとろうとしている、現下の物価高、企業のぼろもうけという中で大蔵省が庶民を納得させるためにとろうとしている方向と、まっこうから反することをいまこの国会で通過させようとしているということになるじゃありませんか。それなら、こんな商法改正はおくれればおくれるほどよろしい。やらないほうがよろしい。やるなら、大蔵省のこういう行政措置をとらなくても、法自体の中にそれの歯どめがあるというような状況にこそ変えるべきであるということが理の当然ではありませんか。いまからでもおそくない、孔子さまも、あやまちて改めざる、これをあやまちという、というているから、早いことあやまちを改めて、こんな商法審議をやめるようにあなた方、行政当局はしたらどうですか。
  154. 田中啓二郎

    ○田中説明員 先ほどの三月三日の新聞に先立ちまして、実は二月十八日に公認会計士協会の会長から「現状下における監査に対する要望」というものを会員各位に送りまして、その中で「各企業が近く到来する決算期において、利益を過大もしくは過小に表示するため、みだりに引当金を操作し、または減価償却費の計算方法ないしはたな卸資産の評価方法をみだりに変更し、あるいは関係会社取引を通じての利益調節を行なうことはないと信じるが、万一そのようなことがあったとしたならば、企業に対する国民の信頼感が失なわれるところ顕著なるものがあると考える。会員各位におかれては、これらのことに留意し、財務諸表の粉飾については利益を過大に表示すると過小に表示するとを問わず、厳正なる監査の姿勢をもつて臨むと同時に、単にそれにとどまることなく、これらを未然に防止するため、企業に対してあらかじめ指導的役割を十分に果たすことをここに要望する。」というのが出されております。
  155. 正森成二

    ○正森委員 私はいまの答弁は、審議官としてはやむを得ないのかもしれませんけれども、私の質問に対して何ら正面からお答えになっていない。つまり現在の厳格な継続性の原則でも、なおかつこういうことをやるから、減価償却の変更は認めないようにしようというのが国税庁の考えです。ところが、そういうことを言うておるまさにそのときに、継続性の原則をゆるめるような、変更をなぜしたかというようなことは問題にしないでよろしい、それを行政官庁が取り消せのどうのこうのということを言われないでよろしいという方向に変えよう、その審議をいま一生懸命しておる、こうなんだから、これは大きな矛盾ではないか。もしこの商法改正がほんとうにいいものなら、こんな大蔵省の通達というか、行政指導はやらないで、商法改正はけっこうなんだから、これが通ればもっともっとよくなるのだというようなPRをしてもよさそうなものだ。全く逆なことをやっているじゃないですか。全く逆なことをやっているということは、現在の商法改正が庶民の感情から見ても、経済情勢からいっても全く時宜に合わないものであり、言えば大企業利益隠しを保進する役割りしか果たさないということを明らかに示しており、それを大蔵省も認めているということ市はありませんか。私はそう思わざるを得ない。あなたの意見をもう一度率直に伺いたい。
  156. 田中啓二郎

    ○田中説明員 「正当な理由」云々が削られましたのは、商法との関連においての法律論によるものと聞いております。私どもといたしましては、公認会計士の判断として、従来、妥当ないし適切と判断していたものはそのとおりで、その判断の方法が後退するというようなことは絶対にあってはならないので、正当な理由の有無にかかわらず、従来同様ないしそれ以上に厳格な一つの指導原理というものを出したいという希望を持っておりまして、第一次的には、先ほど読みました公認会計士協会長からの通達というものが出ております。そしてやがて国税庁から通達が出されますれば、私どもとしても公認会計士協会長を通じて、どのような通達を出すか、その点十分相談にあずかりつつ善処していきたいと考えております。
  157. 正森成二

    ○正森委員 正面からのお答えがない。で、そういう行政指導をお取り消しになる御意思もなく、逆に強化されるような御意向と承りましたが、そのことは間接的に現在の商法改正というものがいかに社会情勢に合致しないかということを裏から認められたものであり、審議官としてはこれが精一ぱいの答弁で、それ以上の答弁をやれば大蔵省におれなくなるかもしれないということになるのだろうと思いますから、政治家としてはこれ以上追及することはしませんが、しかし二度までお答え願ったけれども、あなたの答弁を聞いておりますと、今度の商法改正というものは、大蔵省のこういう行政指導から見ても明らかに反するし、時代に逆行するものである、そういうように私は思わざるを得ないんです。  そこで、時間の関係で次の論点に移らしていただきますが、民事局長に伺いたいと思うのですが、商法の二百八十七条ノ二には特定引当金がありますが、元来、特定引当金というようなものは商法にあるものであって、本来企業会計原則にはないものではなかったのですか。
  158. 川島一郎

    川島(一)政府委員 商法には三十七年の改正で加えられたという経過になっておりますが、企業会計原則がどうなっておりましたか、私、承知しておりませんのでお答えいたしかねます。
  159. 正森成二

    ○正森委員 それは負債性引当金というのはございますよ。しかし、今度の商法改正は、学者やら公認会計士さんがしばしば言うておるように、一番の問題点というのは、商法には継続性の原則というものはかちっとしたものはない、企業会計原則にはちゃんとある、これをどう調整するか。商法二百八十七条ノ二には、特定引当金というような、株主総会が認めればどうでもなるようなものがある。ところが企業会計原則の立場からいえば、負債性引当金、それは限度がありますが、それは別として、商法のいうような——これは学説で狭義の解釈と広義の解釈があるようですが、広義の解釈というのが通っておりますから、広義の解釈における商法の特定引当金というようなものは企業会計原則から認められない、その矛盾をどういうぐあいに調整するかということで非常にもめたんでしょうが。だからそんなことを民事局長ともあろう方が御存じないはずはないですよ。
  160. 川島一郎

    川島(一)政府委員 現行の企業原則で参りますと、ただ引き当て金というものがあるわけでございますが、特定引当金というような区別は特にないわけでございます。
  161. 正森成二

    ○正森委員 ないのでしょう、企業会計原則には。
  162. 川島一郎

    川島(一)政府委員 ですから現在の企業会計原則で参りますと、この引き当て金の中に、特定引当金とおそらくそれ以外の負債性引当金というようなものもあわせて規定されておったということになるのではないかと思います。
  163. 正森成二

    ○正森委員 そんな解釈でいいんですか、大蔵省。これは珍説じゃないですか。
  164. 田中啓二郎

    ○田中説明員 従来の原則におきましては、「引当金について」というところに、「引当金には評価勘定に属するものと負債的性質をもつものとの区別があるが、後者については、流動負債に属するものと固定負債に属するものとを区別する必要がある。」ということが書いてございまして、特定引当金をそのまま直接引用した文言はございません。
  165. 正森成二

    ○正森委員 そうですね。そこで今度の修正企業会計原則では、「注14」と「注18」というところではっきりと「負債性引当金以外の引当金について」というのと「負債性引当金について」というように区別して記載されて、そして負債性引当金以外の引き当て金については、別のところに「未処分損益計算の区分に記載する。」というようになったと思うのですね。そこで川島局長、どうもそういうことのようですから、あなたの答弁と合うてたのか違ってたのか知りませんけれども、しかしあなたの答弁では少なくとも不正確だったと思うのです。ですから、そういうことで次に進みます。  そこで、他の議員も質問しましたし、私は六月にやりましたので、もう一々この条文は読み上げませんけれども、今度の修正企業会計原則によると、負債性引当金もいろいろ例示されまして、言うたら非常に幅広く認められるということになったのではないでしょうか。
  166. 田中啓二郎

    ○田中説明員 負債性引当金につきましては、今回は従来よりも定義をはっきりいたしまして、「将来において特定の費用たる支出が確実に起ると予想され、当該支出の原因となる事実が当期においてすでに存在しており、当該支出の金額を合理的に見積もることができる場合には、その年度の収益の負担に属する金額を負債性引当金として計上し、特定の引当金と区別しなければならない。」というふうに限定いたしまして例証をここに掲げているわけでございます。したがいまして、これはほぼ、と申しますか、負債そのものであるというものがほとんどこれに該当しているわけでございます。
  167. 正森成二

    ○正森委員 あなたはそういうようにおっしゃいますけれども、ここでもまた番場さんや居林さんの御所見を承りますと、あなたのそういう御所見のようには、少なくとも経団連は理解していませんね。そして特に「負債性引当金以外の引当金について」というところなどでは非常に広く解釈しようとしておるということが言えると思うのです。  そこで川島局長に伺いたいと思うのですが、「負債性引当金以外の引当金を計上することが法令によって認められているときは、」という法令というのはどういうものを言うのですか。
  168. 川島一郎

    川島(一)政府委員 先ほど仰せになりました商法二百八十七条の二、この規定による「引当金」というのはまさにここに言う法令によって認められているものだと言えると思います。
  169. 正森成二

    ○正森委員 そうだとすると、今度の注14によって商法の二百八十七条の二がそのままもろに入ってくるということになると思います。そうだとすると、こういう「負債性引当金以外の引当金」というのは、いままではそれを引き当て金というところで負債の部だとかあるいは第四区分か何か知りませんけれども、そういうところへ入れておけば公認会計士が当然とこれに対して限定意見を書くというようになっていたと思うのですが、今度のように企業会計原則が修正されるとすれば、当然公認会計士は限定意見を付さないということになると思いますが、そうですか。
  170. 田中啓二郎

    ○田中説明員 法令の認める特定引当金であれば、いまのような特掲をすれば限定意見は付さないということになっております。
  171. 正森成二

    ○正森委員 その中には現在の企業会計原則なら限定意見を付されるものも当然あるわけですね。
  172. 田中啓二郎

    ○田中説明員 おっしゃいますとおり現在は会計の観点から利益剰余金と考えるべきものがあるということで、そういうものにつきましては限定意見を付しておりましたので、その意味においてはいま先生のおっしゃるとおりでございます。
  173. 正森成二

    ○正森委員 そこでこれは私も引用しましたし、他の議員も引用されたことだと思いますが、私は非常に大事な点だと思いますので、番場氏の御所見をもう一度引用したいと思いますが、こう言っているのですね。同じ経団連パンフレットの一〇五で、三五ページの部分と三九ページを若干引用しますが、「バランスシートの貸方を、負債の部と引当金の部と資本の部の三つに分けて、特定引当金は引当金の部に書くことも考えました。特定引当金は負債にもあらず、資本にもあらず、まあ第三国的な存在であるというふうな案を練っていたのですが、負債でもない、資本でもないという性質のものがあるということは困る、という商法筋のご意見がありまして、最後に引当金の部を負債の部の中に属させることになりました。」云々というように書いてありまして、長いですから途中から読みますが、「監査という点からいいますと、本来のまともな意味の引当金、いま決算整理のときに費用をたてなくては過大な利益の計上になるので、費用をたてなければいけないのだというときに引当てて、この貸方は〇〇引当金とします。こういう引当金と価格変動準備金や海外市場開拓準備金のごときものの繰入額というものとは、はっきり区別してもらうということでないと監査がやりにくくてしようがないわけです。これが監査意見で、常に限定がつくということを避けるためには、損益計算書においても区分を異にする第四区分に特定引当金を書くことにし、またバランスシートにおいても、本来の引当金の残高と特定引当金の残高とは区別してはっきり書く、こういうことでなくては監査上とても困る。それがもしも実現できないとしたら、今度の修正案には全面的に反対するということで、今度は公認会計士の方からはっぱがかけられたわけです。もう右すれば何とか、左すれば何とかということで進退ここにきわまるというような場面もありまして、この点だけは何とか渋谷さん、」渋谷さんというのは御承知の方も多いと思いますが、経団連の経理懇談会の委員長であります。「渋谷さん、居林さんにお願いし、がまんしてくださいといった結果がこんなふうになってきたわけです。そのかわり、まともな引当金というその引当金の解釈を」というのは負債性引当金のことだと思いますが、「少し拡大解釈をしましょうという、そういう話をとりつけました。負債性引当金というものを厳密に解釈すると、これもだめ、あれもだめということになるが、修正案では、これもいい、あれもいいというふうに、まともな引当金の概念というものを拡大することによって、そこのところを吸収しましょうということで目をつぶっていただいたのです。そこで、まともな費用というよりも、損失的なものの引当金計上ということもなるべく認めるようにしようという了解があったわけです。具体的にどんなものをすくいあげるか、この点は各会社に公認会計士がタッチするわけです。公認会計士の方で具体的な問題をとり上げまして、公認会計士協会において会社の方にご都合のよいような線で結論が出るように検討をしてもらう。だから、具体的な引当金について、これはまともな引当金に入るかあるいは負債性以外の引当金か、この点の具体的な決定というものは、今後に残されているというふうに御了解いただいて結構です。」こういうように言っております。  で、つづめて言いますと、まともな引き当て金についてこれを拡大解釈する。それ以外の引き当て金というものも今度は入れたということで、公認会計士が会社のほうに御都合のいいような線で結論が出るように検討してもらうということになった、こう言っているのですね。これは非常にゆゆしい問題ではないかというように思うのです。それでなくてさえ、巷間いわれているところでは、負債性引当金のほかに特定引当金という項目を設けて、しかもそれを負債の部に入れるということになれば、利益が多ければ多いほど負債のほうも多い、そういう現象もこれは商業帳簿上出てくるということになるんだといわれておるときに、こういうようなことをおっしゃるということになりますと、これは世間の誤解を招くだけでなしに、商法改正というものが現実にはどういう作用を果たすであろうかということについて、重大な疑いを持たざるを得ないと思うのです。それについてどういうように思われますか。これを、企業会計審議会を開いてただすべきはただすというふうに思われますか、その点を伺いたいと思います。
  174. 田中啓二郎

    ○田中説明員 おっしゃいますように、商法に二百八十七条の二の特定引当金というものが厳然としてございます。そこで、従来に比しまして、評価性引当金あるいは負債性引当金というものは非常にきちりとしばりまして、負債性がきわめて強いものだけを負債性引当金とする。特定引当金は、あの条文におきましても、特定の支出、または損失に備うるためとありますので、どうしても広い概念だと思います。したがいまして、これは評価性引当金ないし負債性引当金以外のものというふうに考えられるわけでございます。ただ、今回商法企業会計原則がいわばドッキングする過程におきまして、法令で認められているものはこれは適法なのであるから、認めざるを得ない。ただ、その場合に、当期損益勘定にかかわらしめないで、純損益を出したあとに、先ほど先生がおっしゃいましたように、第四区分として未処分損益計算というところにはっきり明示するというやり方をしたわけでございます。そうして、バランスシートのほうには、負債の部に特定引当金というのを設けるということになりました。さてそこで、公認会計士等は、今回この特定引当金を認めるかどうかということが、すぐに違法、適法の問題にかかわりますので、私も参議院並びにこちらの委員会におきまして、おそらく公認会計士は商法二百八十七条の二の解釈といいますか、指導原理について法務省の御指示を仰ぎたいと思うのではないかということを申し上げたのでございますが、特定引当金も、何でもかんでもいいというものではなくて、おのずから合理的な範囲にとどめられるべきは当然でございます。そこで、もし法務省におかれまして、そのようなことをしていただきますれば、その範囲のものは適法であると同時に、会計処理上も何ら限定意見を付する必要がない。それはだめだよというものであれば、商法では違法になりますし、会計処理の面ではこれは不適正ということになりまして、きわめてすっきりするわけでございますが、その点に関しましては、私ども公認会計士がどのような希望を持って、どう対処するか、文書照会などで法務省にお伺いを出すのかどうか、はっきりいたしませんが、あるいはまた法務省におかれても、どのような御態度をお持ちかという点は、今後よく御相談したいと実は思っております。
  175. 正森成二

    ○正森委員 私は田中さんが御危惧なされるのは当然だし、そして法務省は厳然とした態度をとりませんと、税法上も非常な問題になる、こう思うのですね。たとえば、たびたび出てきて申しわけありませんが、経団連パンフレットナンバー一〇五で、居林氏が一問一答を行なっております、疑問に答えるという形で。その中でどういうことを言っているか。「〔問〕商法二百八十七条の二の引当金を広義に解して、引当金を手厚く計上しても新しい制度の下では公認会計士が限定意見を付することはないか。」こういう問いに対して、「〔答〕修正案では、商法二百八十七条の二の引当金を広義に解しても差支えないという立場を取っており、このために、注解14で「負債性引当金以外の引当金」という表現をした。会社が負債性引当金以外の引当金よりも広い引当金を計上するときは、損益計算書では「未処分損益の部」に、貸借対照表では「引当金の部」に記載してあれば、公認会計士はこれにつき「負債性引当金に該当しないので利益が過少に表示されている」というような限定意見ないし不適正意見を付する必要がない。これが今回の修正案の現実版と言われるゆえんである。ただし、広義に解するからと言っても、商法二百八十七の二に該当しないような違法なものを計上することは許されない。」これはあたりまえの話です。前段の部分を読んでごらんなさい、こういうことを言っているのですね。だから、これを見ると、特定引当金という意図が経団連ではどういうものであったかということはきわめて明らかですね。これに対して何らの歯どめがないということになれば、商法改正というものは現下の経済情勢から見るととんでもないことになると思います。  そこで私は川島さんに伺いたいと思うのです。もともと商法企業会計原則を、田中さんの表現によれば、ドッキングさせる場合に、継続性の原則が違う、どうするか、特定引当金が一方ではあり、一方ではない。それをどうするかというのが大きな問題だったのです。そのいずれも企業会計原則が商法のほうに譲って、まあ、いわば非常にゆるやかにしてしまった。それに経団連がつけ込んでいるわけですね。そこで、そういうことを許さないために、法務省としては厳然たる態度をとる必要があるのではないか、現下の情勢から見て商法二百八十七条の二というようなものをあのまま置いておくということが問題だ、これは何らかの意味で削除するか、あるいは限定的に修正するか、そういうことによって、むしろ商法企業会計原則なり庶民感情に合うように近寄る必要がある、こういう情勢だと私は思うのです。そういう点についてどうお考えになりますか。
  176. 川島一郎

    川島(一)政府委員 先ほどからいろいろ御指摘があったわけでございますが、商法企業会計原則をドッキングさせる、それについて、企業会計原則の修正案が従来の監査基準をゆるめることになるのではないか、こういう御疑問が中心になるわけでございますが、私の理解しておりますところを申し上げますと、私は実はそのようには考えておらないわけでございます。先ほどの継続性の原則にいたしましても、なるほど「正当な理由」ということばがなくなっております。しかしながら、みだりに変更してはならないということは、これは依然として継続性の原則は認めておる。そして従来よりもそれをゆるめるという意図はないというふうに伺っておりますし、私もゆるめるようなことがあってはならないというふうに思っております。  また、特定引当金の問題でございますが、これも従来の会計慣行で引き当て金ということばをいろいろ広く使っておりまして、その辺に非常に複雑した問題が出てきておるわけでありますが、本来商法が認めておりますのは、これは負債ではない引き当て金、しかも特定の支出または損失に備えるということでございまして、そこには合理的な範囲というものがあるわけでございます。したがって、その範囲というものは、今回商法改正でその規定をいじっておりませんし、今回商法改正されましてもその範囲が広がるというようなことはあり得ないことでありますし、またあってはならないことであるというふうに考えております。その点につきまして、法務省といたしましては、こういう点についても指導をするというのは方法その他の関係でむずかしい面がございますけれども、法改正の趣旨というものは十分徹底さしたいと思いますし、また大蔵省ともよく御相談申し上げまして遺憾のないように厳正な運営をはかっていきたい、このように考えております。
  177. 正森成二

    ○正森委員 最後のことばだけ厳正ということを強く言われましたが、前段伺っておると、ちっとも厳正じゃない。私は法務委員ですが、法務省と大蔵省の答弁を聞いておって、大蔵省のほうがまだよっぽどましだ。まだ問題がわかっておる。ところが法務省の民事局長のいまの答弁を聞いておると、一時間半余り費やして一生懸命やったことが、一体何を聞いておられたのか、全然反省がないというか、こんなことで商法改正されたのじゃ国民はたまらぬ、企業は大喜びだというように思わざるを得ない。大蔵省は役所の立場からずいぶん遠慮はしておるけれども、問題はあるんだ、企業会計原則はずいぶんゆるやかになったのだ、これでいいかなと思っているんだというのが、明示されたことばにあらわれるかどうかは別として、ひしひしとこちらに響いてくるものがある。ところが川島さんの場合には全然それがない。あなた、そのいまの答弁は法案を通すために一生懸命そういうことを言うておられるのか、腹の底からそんなことを思っておられるのか、そこのところを知りたい。そう思わざるを得ない。いいですか。「みだりに」が入っているから継続性の原則はゆるめられたようなことはないといったって、大蔵省が言外に認めておるように「正当な理由」というのは消えちゃって、番場さんや居林さんがこういうことをぬけぬけと言っておって、新しく大蔵省が三月三日にこういうような行政指導をしなければならないというような状況において、みな心配しておるのですよ。それを「みだりに」があるからそんなものはちっとも変わらないと、あなた去年の六月五日からちっとも進歩していないじゃないですか。このきびしい経済情勢の中で、いや企業会計審議会でもう少しそこが何とかならないかとか、そういうようなことばでもあればともかく、そういうことをしゃあしゃあとおっしゃるようでは、私は、民事局長はわれわれが心配しているこの問題をほんとうに理解しておられるのかどうかを疑いたいと思う。  また、私は、今回の改正によって特定引当金のところがゆるめられるようなことがないというようなことを言っておるのじゃなしに、もともと企業会計原則には商法的な意味での特定引当金はなかったのです。ところが、商法の特定引当金を改正しないで企業会計原則とドッキングさせようとするから、特定引当金という項目を企業会計原則の中に何とか入れなければならない。だから「負債性引当金以外の引当金」というようなことで注解14で無理をしておるということを言うておるのであって、それほど商法二百八十七条ノ二が企業会計原則に御迷惑をかけているのに、あなたはしゃあしゃあと商法二百八十七条ノ二がこれによって悪く変えられることはないなんてもってのほかですよ。たとえは悪いけれども、まあ言えば、商法二百八十七条ノ二というのは劣等生なんです。企業会計原則はもうちょっと質がよかった。それを一緒にしなければいかぬからどこで手を打つかということを心配しているのに、あなたは、劣等生がこれ以上悪くなるというようなことはないというようなへたな答弁をしておられる。むしろ私は現在の二百八十七条ノ二にもっと厳格な歯どめをかけるようなものを考えられるのが現在の社会情勢からいって至当ではないか、こう聞いているのです。私はあとでこういう資料も出しますけれども、それは当然のことだと思うのです。その点について、川島民事局長、はなはだ専門家に失礼ですけれども、現在の予算委員会の総括、一般などで聞かれた論議をほんとうに御承知の上でなおかつそういう御答弁をしておられるのかどうか、それを伺いたい。
  178. 川島一郎

    川島(一)政府委員 現行法の引き当て金の規定がしばしば乱用されておる、そういうことは問題になっておるようではございます。それというのも、商法規定が不備ではないかという御指摘でございますが、そもそもこの引き当て金というものが非常に不明確なものであるということは私も認めます。しかしながらこれは実際に合理的な経営を考えました場合に、何らか特定の支出とか費用として利益を留保せざるを得ない、こういう場合が出てくるわけでございまして、そのために引き当て金というのを認めなければならないという実際的必要のあることも事実であろうと思います。したがって問題は、いかなる要件のもとにこれを認めるかということでございまして、もっと歯どめが必要であろうという御意見は、十分私も傾聴に値するものと思いますが、少なくともそれが改正されない現段階におきましては、十分その解釈の面において、こういうものを負債の部に計上することを認めるというその法律規定の趣旨からいたしまして、厳密な制限のもとにこれを認めるような運用をしていく、そうい多解釈をしていくということが必要であろうと思うわけであります。まあ私は、そういう厳重な解釈、運用のもとにおいてこの商法運営されていくように十分な留意をいたしたい、こういうことを申し上げたわけであります。
  179. 正森成二

    ○正森委員 私はその答弁に満足しませんけれども、さらに理論的な問題を相当無理して言うておりますので、少し実際のことを申し上げたいと思うのです。  今度の石油危機の中で便乗値上げをやりました企業が、どれくらい利益を出して、それを隠すのにどんなに苦労をしているのかというのについては各議員が言われたと思うのです。私は最近の新聞等から申し上げたいと思うのですが、たとえば石油化学業界のトップメーカーである三菱油化というのがあります。これが決算をいたしましたが、それを見ますと売り上げあるいは収益が非常な伸びを示しまして、経常利益は二・一倍、また実際上は償却しないでもいいものを継続性の原則を変更してみたり、あるいはいろいろなことをやって変えておるので、実際の利益は前期の三倍だということがいわれておるのです。新聞のその部分を読みますと、こう書いてあります。「決算案によると、同社の十二月期の売り上げは八百四十二億五千八百万で、前期に比べて三〇・三%増、経常利益は六十二億八千四百万円で同二・一倍、税引き利益は三十四億二千四百万円、同五三・二%増と大幅な増収増益となった。企業の本来の活動で生まれる営業収益は、前期より百九十五億八千万円ふえたが、このうち約九十九億円は販売数量の増加、約九十七億円は価格の引き上げによるものという。また、」ここからですが、「営業外の費用として前期より減価償却費を九億二千九百万円、退職給与引当金を六億六千万円、試験研究費を六億五千七百万円それぞれふやした。このうち減価償却費は、この六月にスクラップにする工場設備のもので、本来なら今年六月期に計上するのを繰り上げた。このほか、投資有価証券が前期より二十三億二千二百万円ふえている。このように、決算案の経常利益の数字に入ってはいないが実質利益とみなされるものが約三十億円にのぼることは会社側も認めており、これを含めれば、実質上の利益が前期比三倍という好業績をあげたわけである。」こういうようにいうているのですね。  ですから、企業は一生懸命こういうようにやってものすごくもうけているのにまだスクラップにもなっていない工場を全部償却してしまうとかいうようなことで、いろいろな形で利益を小さくするということをやっております。これはもうみんなが知っていることです。  あるいは住友化学につきましても、売り上げ高は千七百九十四億円で一四・五%増収ということでいろいろ伸びておりますが、利益は前期に比べて少し伸びたという程度に終わったようですが、それがなぜかといえば、これは昨年の八月十二日に大分製造所で火災事故を起こして、倉庫や貯蔵製品が焼失し、三カ月の操業停止を行なったので九億九千万円の損失を計上した。だから少なくなっているのだ。「このほか、法定外の賞与引当金、販売リベートなどを有税で確保したため、法人税引当額が前期の百五十億円から二百八十億円へと大幅増、増収率の割には増益率が低く抑えられる結果になった。」こういうように書いてあるわけですね。つまり、操作によってどうでもできるということをこれらの新聞の記事は示していると思うのですね。  そこで問題は、今回の商法改正というものが、こういうことをやりよくするようなものであるのか、あるいはやりにくくするようなものであるのか、そしてそういうことをやった場合に、いままで限定意見がついていたものは今回も限定意見がつくのか、もっとつくのか、それとも、従前なら限定意見がついていたものがつかないように、つまり適正であるというようなことでまかり通るようになっていくのかということが問題なんですね。ところが、私がいままで明らかにしてきたところによれば、今回の商法改正というものは、公認会計士の監査を受けるということで、しかもその会計監査の基準というものは修正企業会計原則で変えられるわけでありますから、限定意見もつかないし、いろいろな利益隠しといいますか操作がやりやすくなるというように変えられるということは、これは議論の余地がないと思うのですね。これは現在の情勢から見て非常に重大なことであると思うのですけれども、それはどう思いますか。
  180. 川島一郎

    川島(一)政府委員 商法が、決算をする規定をいろいろ設けておりますが、その目的は何かと申しますと、会社の財産状態を明らかにして、一つはどれだけ利益があがったか、それによって利益を投資者であるところの株主に配当するわけでありますが、その配当すべき金がどれくらいあるかということを示す、これが一つの大きな目的であります。それからもう一つは、会社の財産状況というものを公開いたしまして、広く債権者その他の者に知らしめるという取引上の関係があろうと思います。そういった意味におきまして会社の経理を明らかにするわけでありますので、この引き当て金でございますが、これについて申し上げますと、引き当て金が、本来負債であるものを含んだようないわゆる負債性引当金、こういうものも引き当て金としてごっちゃになっておりますと、会社の経理がはっきり正確に示されないということになります。そこで、商法のいわゆる特定引当金、これは負債ではございませんので、むしろ利益の留保であるということをはっきり明示しておるわけでございますから、その意味では、利益隠しということには厳密な意味では当たらないと思います。ただ、それならば引き当て金を幾ら計上してもいいのかと申しますと、これは商法にありますように、合理的な限度でもって計上しなければならないということになりますので、そのルールに従う限りにおいては、会社の経理というものは一応正しく、商法の意図しております目的どおりに示されることになると思うわけであります。  それから、償却の問題にいたしましても、商法は「相当ノ償却」といっております。この相当なということの意味も問題になるわけでありますけれども、会計の公正な慣行に従ってやるという限度におきまして、これが会社の経理内容を正しく示すということになろうと思うわけであります。ただ、いろいろいまお示しになりましたその会社の例でございますが、私その会社実情というものを詳しく具体的には存じませんので、それが直ちに不当であるといっていいのかどうかわかりませんけれども、そこは専門である監査役とか、今度商法改正できますれば会計監査人が、それぞれの立場から公正な判断をしていただくということによって正しく経理が行なわれることになるんではなかろうか、こういうふうに期待をいたしておる次第でございます。今度の商法改正によって悪くなるのではないかという御懸念でございますけれども、もっぱら問題になっております企業会計原則の修正というものが、これが正しい形で行なわれるということになりますれば、先ほど申し上げましたように、これによって会社の経理が正されることになるのであって、御心配のような経理が、かえっていろいろ不正な操作が行なわれることはないというふうに信じておるし、またそれを希望しておる次第でございます。
  181. 正森成二

    ○正森委員 信じ、希望しておるということは非常にけっこうなことですが、旧日本軍も必勝を信じ、勝つことを期待しておりましたが、しかし結果はごらんのとおりですね。ですから私も、川島民事局長が信じ、期待しておることはけっこうですけれども、しかし現実にこの商法改正はそうならないんじゃないか。たとえば、私は大蔵省に伺いたいと思うのですが、ここに、かの有名な松下電器産業株式会社の有価証券報告書があります。その一五ページを見ますと、柳田栄次さんという方の監査報告書が載っておりますが、「監査の意見」のところを見ますとこう書いてあるんですね。「監査の結果、会社の採用する会計処理の原則及び手続は、価格変動準備金が税法の限度を超えているので、その全額六十六億九千七百万円は利益剰余金とみ、それだけ当期未処分利益剰余金が少なく表示されていることになることを除き、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し、かつ、前事業年度と同一の基準に従って継続して適用されており、また財務諸表の表示方法は、法令の定めるところに準拠しているものと認めた。」云々と、こう書いてあるんですね。そこで、こういう場合の、この「表示されていることになることを除き」というのは、これは限定意見だと思うのですが、今度商法が変わり、企業会計原則が変わりますと、こういう点はどうなりますか。
  182. 田中啓二郎

    ○田中説明員 その点が継続性の原則にかかわるものでございますれば、それは、みだりにであれば当然意見がつきますし、みだりでない場合でも、その理由なり影響額というものは一々書くということになっております。それがたとえば特定引当金に関するものでありますれば、法令すなわち商法によって認められたものであれば、これは意見表明というか、限定意見はつかない。認められないものであればはっきり限定意見がつくということになると思います。
  183. 正森成二

    ○正森委員 認められるものであれば限定意見はつかずなんというのはあたりまえの話じゃないですか。だけれども、私はその前に大蔵省の方にもこれを実際に見せて伺いましたけれども、これを読んで、そういう場合には今度の商法改正になれば、限定意見はつかないことになるという趣旨のことをおっしゃいました。おそらくそうなるのでしょう。結局こういうように経済情勢が非常に庶民の憤激を買っておるときに、実際上は限定意見を公認会計士がつけなくてもいいようにいいようにというように今度の商法改正ではなるわけですね。そしてそれが税法の上でも必ずや反映するに違いないということをやはり経団連は言っているんですね。  そこで、その問題に入る前に一つだけ伺っておきますが、あなた方はこの商法改正案を提出をされる前に商法についての「民事局参事官室試案」というのを昭和四十三年九月三日につくられました。それは御記憶であろうと思いますが、その中で、第八の「監査役の報告書の記載事項」というのがあります。それを見ますと、(5)のところに「商法第二百八十七条ノ二の引当金が設定されているときは、その設定が必要か否か。」という項目が監査役の監査しなければならない項目の中に入っておりました。ところが、このたびの改正案を見ますと、こういうような明確な文言では入っていないようであります。そこで、それが除外された理由は一体何なのか、除外されたとしたらこういう問題については一体どうなるのか、その二つについて伺いたい。
  184. 川島一郎

    川島(一)政府委員 お示しの点でございますが、参事局室の試案の第八の(5)の引当金の設定が必要かいなか、これを報告書に記載するということが削除されておりますが、これは改正案におきましては、二百八十一条ノ三の二項に監査報告書の記載事項がございます。このうちの第三号「貸借対照表及損益計算書が法令及定款ニ従ヒ会社ノ財産及損益ノ状況ヲ正シク示シタルモノナルトキハ其ノ旨」、この中に含まれるということで特に独立した項目を設けなかったわけでございます。
  185. 正森成二

    ○正森委員 委員長、すみませんが、いまちょっと羽田野議員と話をしているときに、耳にちょっと聞き残しまして、えらい申しわけありませんけれども、後半をもう一ぺんちょっと言っていただけませんか。まことに失礼します。
  186. 小平久雄

    小平委員長 かいつまんでどうぞ。
  187. 川島一郎

    川島(一)政府委員 改正案、商法第二百八十一条ノ三、二項の第三号でございます。この中に含まれるということで、特に引き当て金という名前は用いておりませんが、内容的にはこの中に含まれるということでございます。
  188. 正森成二

    ○正森委員 商法二百八十一条ノ三の第二項の三号だ、こういうことのようですが、しかし、こういうように「商法二百八十七条ノ二の引当金が設定されているときは、その設定が必要か否か。」というように書いてありますと、その必要性についても判断できるということが非常にはっきりするんですね、民事局参事官の案では。ところが、今度提案されたものによりますと、これは三号では、「貸借対照表及損益計算書が法令及定款ニ従ヒ会社ノ財産及損益ノ状況ヲ正シク示シタルモノナルトキハ其ノ旨」と、たしかこうですね。それだと、前の参事官試案の五号というのがなかなか必要性についてははっきりあらわれていないように思うんですね。それは、わざわざ必要性まで判断さしたのではぐあいが悪いというので削ったのじゃないですか。
  189. 川島一郎

    川島(一)政府委員 これは、最終的にはその後、商法部会で要綱を作成したときに、その要綱が現行法のような形に改められたわけでございまして、おっしゃるような必要かいなかということが実質的な判断を含むので、現在よりも少し判断の余地が広いのではないか、そういう感じはしないことはございませんが、その法制審議会審議の結果、そこにひとつまとめておけばいいのではないかということになった経過につきましては、私、ちょっとまだ詳しく調べておりませんのでよくわかりませんが、大体それで足りるという考えで落としたのではなかろうかと推測する次第でございます。
  190. 正森成二

    ○正森委員 私がなぜそういう点を伺うかといいますと、この民事局参事官の、この必要性の有無についても判断するというのは非常に重要な点でありまして、それがわざわざ削られておるというのは、これは経団連なんかも言っていることでありますが、せっかく特定引当金ということでフリーパスになっておるのに、その必要性の有無についてまで意見を書かれたらかなわないということで、それはあまり露骨に出さないほうがよろしいということでわざわざ削除されたということがいわれておるんですね。しかも前の民事局参事官の試案では、監査役は必要性の有無について監査できるけれども、公認会計士は、この五号というのはわざわざ除かれておるんですね。だから諸論文では、公認会計士というのは特定引当金の必要性の有無については解釈できないんだ、そこから除外しておるんだということがいわれておるんですね。そうだとしますと、そういう議論があったにもかかわらず、わざわざこういうのを落とされたというのはあいまいもことして、公認会計士の権限を狭める。しかし狭めたとははっきり表現しないほうがいいというかね合いがあってそういう条文になったのではないか。それなら公認会計士の実際上の権限というものはきわめて技術的なものに限定されざるを得ないというように思うのですが、そういうのは単なる危惧でございますか。
  191. 川島一郎

    川島(一)政府委員 なるほど仰せのような経過をたどっておるようでございますが、しかし、どういう理由でもってそういうふうな変更が行なわれたかということは、これは先ほど申し上げましたように、私、承知しておりません。ただ、現在の改正案の法令に適合しているかどうかというような形での審査を行なう場合に、引き当て金の必要性というものは含めてもいいといいますか、むしろ含めて考えるべき問題ではなかろうかというふうに思うわけです。商法が、特定の支出または損失に備えるといっております、これはきわめて合理的なものでなければならないという見地から考えますと、その合理性を越える場合には法令に適合しないものである、法令に反するということがいえるのであろうというふうに思うわけでございまして、その辺は別に書いてあったほうが一そうはっきりするということはあろうかと思いますけれども、改正案でも同じような運用が可能であろうというふうに思います。
  192. 正森成二

    ○正森委員 時間がある程度経過しましたので、私は、あと二、三点こまかい点を聞いて、最後に総括的なことを伺って質問を終わるようにさしていただきたい、こう思いますが、今度の商法を見ますと、一年決算で中間的に金銭配分をしてもいいということになっておりますね。この金銭配分の性格ですが、これは配当ですか。
  193. 川島一郎

    川島(一)政府委員 配当ということばを用いておりませんが、配当的なものでございます。株主総会の議によって配るということでございませんので、配当ということばを使っていない。しかし実質は配当と同じ性格のものである、このように考えております。
  194. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、この金銭配分についても、たとえば税法上の配当軽課というのは適用になるのですか。
  195. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答えいたします。  中間配当につきましては、現在普通の配当につきまして認められております配当軽課措置あるいは個人が配当を受け取る段階において認められております配当控除制度、このようなものにつきまして中間配当をどのように取り扱うかにつきましては、中間配当の性格というものをさらに税務の面から十分検討いたしましてしかるべく措置したいと考えております。
  196. 正森成二

    ○正森委員 いまいみじくも中間配当ということばを使われましたが、商法では配当ということばは使っていないので、中間における金銭の配分、こういう意味ですね。そうしますと、私たちは税法上も非常に問題になると思うのですね。これをはたして配当と見て軽課措置その他をとるかとらないかによって税収の面もずいぶん違います。しかも株主総会の議決を経ていない、明白に配当でないもの、しかもそれが払うべきでなかったということになれば、正常な決算において措置されなければならないもの、それがもう事前に配当と同じものとして扱われてしまうというように扱うかどうかというのは、これまた税法上の一つの問題点だと思うのです。ところがその問題点がまだ解決されていないのに、とにもかくにも法案だけは先に上げてしまうということは、私は前のほかの問題点でも申し上げましたけれども、非常に問題じゃないかということで、法務省並びに大蔵省に問題点を提示しておきたいと思うのです。  それから金銭配分をやる場合には、これはあるいは中間的な配当ということばを使いますけれども、おそらく一年決算の場合は仮決算をやると思うのです。新聞の報道によりますと、新商法で一年決算に移る会社がおそらく続々とふえるであろう。「経団連が昨年秋に調べたところでは、調査した五百三十社のうち、二百九十九社は一年決算への移行を明らかにしており、現在一年決算である百三十二社を加えて、約八〇%が一年決算になるわけである。」こう書いてあるのです。  そこで大蔵省に伺いたいのですが、いままでは、半期決算の場合は、これは税金を取るのも都合がよかったけれども、一年決算の場合はやはり中間に取らなければならない。それを取る場合には、前期の二分の一ということで取るかあるいは仮決算をしてもらって取るかという二つの方法以外にはないと思うのですが、それは現在でも行なわれてきたし、今後も行なわれるであろう、こういうことですか。
  197. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 一年決算法人の中間における納税の問題につきましては、現在の状況はそのとおりになっておりまして、なお十分検討はさしていただきますが、おそらくそのような方向で課税上の弊害がない限り進んでいくことと考えております。
  198. 正森成二

    ○正森委員 そこでこれは非常にげすの勘ぐりかもしれないのですけれども、私がもし経団連の幹部なら——私は経団連ではなくて、残念なことに、日本共産党の議員でありますけれども、経団連の幹部ならこう考えると思うのです。今度中間的な金銭処分というものも認められる、商法がそういうぐあいに変わるということになりますと、税金を納める場合に、今期が非常によくもうかっている場合には、前期の二分の一で税金を納めておく、今期が非常に悪い場合には仮決算をやって少ないほうの税額でいく、こういうことになって、実際上企業としてはちょうど中間に税金を納めなければならないその額を、恣意的な操作によって納めないで留保しておく。留保しておくといっても、われわれの収入のように何十万円、何百万円ぐらいならいいですけれども、松下さんなんかだったら半期が何百億円ということになるのですから、その金利だけでもばかにならない。そのばかにならない金利を操作する余地を残すものではないかというように思いますが、それに対する歯どめがありますか。
  199. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 一年決算法人につきましては、実は現在でもおっしゃるとおりすでに認められております制度で、その点ならばすでに内在している問題でございます。しかしながら仮決算を強要いたしまして、すべての場合に仮決算ということにいたしまして、すべての会社にそれを要求することの国民経済的な問題、ロスの問題というふうなものも考えなくてはなりませんし、また税務の執行あるいは調査件数の増大その他の点も考えなくてはなりませんので、そこら辺の全部のバランスを見て考えるべき問題であると考えております。
  200. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう答弁がありましたが、現在すでに内在していることが、この経団連の一年決算への移行のパーセンテージを考えましても、さらに拡大する可能性がある。そういう場合にこれはやはり金利相当分の留保というような点を考えてみましても、それだけはもうまるまる利益になるわけですし、納めるべき税金が残っておりますと、それは内部でいろいろ使えるわけですからね。そういう点について大企業が不当にもうけにならないように税務署としては留意して対策を考える必要があるというように思うのです。特に今度商法が大幅に中間の金銭配分というものを認めるわけですから。  そこで時間の関係で次に進みますが、今度商法は親会社、子会社という概念を認めております。修正で子会社が親会社の会計監査人の監査といいますか、調査がありました場合に、正当な理由がある場合にはこれを拒否できるというようになっておりますが、私はこの点について非常に親会社の子会社に対する支配というものが行なわれて、いろいろ心配すべき点があるのではないかと思いますが、この点は他の議員も質問されましたので、私はこの親会社、子会社という概念あるいは支配会社、従属会社と初めは言っておられたのですが、そういうものをわざわざ商法に導入されたという考え方の根本に、もっと監査の充実というような以外の問題があるんじゃないか。たとえば連結財務諸表を将来においてとるのではないか、あるいは連結納税申告制度を行く行くはとるのではないかということが、学者の中でも言われておりますし、私も日本商法にこういう概念を引き入れたということは、そういう方向に進む傾向があるというように思うのですが、その点はいかがでしょう。
  201. 川島一郎

    川島(一)政府委員 法務省といたしましては、そこまで考えてはおりません。実際に連結財務諸表といったようなものを作成するのがいいのか悪いのか、そういった点につきましてはむしろ御専門は大蔵省のほうでございますので、われわれといたしましてはそこまで考えて子会社調査権という規定を設けたわけではございません。
  202. 田中啓二郎

    ○田中説明員 連結財務諸表制度につきましては、四十年三月に大蔵大臣から企業会計審議会に対し諮問が行なわれ、四十二年五月に答申がなされました。ただこれは連結財務諸表についての啓蒙的性格を有するものでありました。その後昭和四十五年の証券取引審議会の答申及び四十六年の証券取引法改正の際の附帯決議におきまして、連結財務諸表を早急に制度化すべきであるという意見が示されたこともありまして、四十六年六月大蔵大臣から企業会計審議会に対しその制度化について諮問が行なわれ、現在企業会計審議会において鋭意検討中でございます。したがいまして、私どもは企業会計の面でこの検討を進めまして、できるだけ早く実施に移したい、かように考えております。
  203. 正森成二

    ○正森委員 大蔵省ではそういう意見であります。そこで、またまた居林氏が出てくるわけですが、居林氏はいろんなところで言っておるのですね。大蔵省に言っておきますが、あまりあっちこっちで放言をすると、非常に法案審議で大蔵省が迷惑するということは言っておきたいと思うのですね。居林さんのものを読みますと、質問の種が何ぼでも出てくるということになるので、勢い、他の同僚議員にも、眠いのにしんぼうしていただくというようなことになりますので。実際この人は、ほんとうに言いたいほうだい言っておるのですね。だから、こういうことを言って物議をかもすようなことになると、われわれは経団連の代表的論客がこういうことを言っておる。それでは、大蔵省はこういうことを意図しているのではないか、少なくとも客観的にそうではないか。こう、痛くもない腹を探らざるを得ないのです、実際は痛いものを持っておるのかもしれないけれども。そこで、申し上げておきたいのですけれども、この点について、これは連結財務諸表意見書というのがあるのですが、それへの経団連意見の反映ということで、実務会計の六七年六月号に居林さんが意見を書いておるのですね。それからさらに、財経詳報の五月二十二日号に、「連結財務諸表に関する意見書について」というのを、これを居林さんが書いておる。こういうものを読んでみますと、実は大蔵省には非常に申しわけないのですが、連結納税申告制度の導入をめぐる諸問題の検討というのを、あなたのところの国税庁直税部審理課総務係長井上久彌とい人が、企業会計の六七年六月号に書いておる。これも大体、大なり小なり、確か居林さんとは表現が違いますけれども、大体の方向というのを書いておられるのですね。委員長にお約束しました時間がございますので、井上さんの点は読むのを省略いたしますが、居林さんはどういうことを言うているかといいますと、こう言っておるのですね。「連結財務諸表に関する意見書が企業会計審議会で取り纏められ答申されるに至った。企業側では連結財務諸表作成について冷淡な態度をとっているものが多く、今回の答申を歓迎する向きは余り多くない。それというのも連結財務諸表作成のための手間と費用を要する割合に比べ、企業自体にとって大してメリットがない上に、日本社会一般の空気としてそれほどに連結財務諸表を切望している状態ではないと企業が判断しているためである。」こうおっしゃっている。それではやらなくてもいいのかというと、そうではないのですね。そうではなくて、それはやってもいいのだということを言いまして、「日本として国際的に恥かしくない連結の会計慣行ができ上がっていくかどうかは、企業の大規模化、集中化が米国の如く今後推進されるかどうかにかかっているというのが、企業側の見解である。現時点で親子会社の財務諸表を連結しなければ、企業集団の財務的情報の信頼性と価値が失なわれるほどに集中化が行なわれていると考えられるケースは余りないという意識が財界筋には濃厚である。連結によって親子会社間の相互取引が、本支店間取引と類似のものであると目され、その間の未実現損益が連結財務計算上で消去されると、一般的には連結利益はかなり減少する。そこで連結利益に法人税を課することになれば、相当な減税になる例も多いと思われる。仮に連結の意識が企業サイドに低いとしても、年間数千万円なり数億円なりの減税になるという状況になった場合、経営者としては多少の面倒はあっても、連結財務諸表を作成してみようという意識を持つようになると思われる。かように税法の面からでも連結財務諸表作成の動機が生ずることも予想し、審議会の答申においては「連結納税申告制度を採用する方向において」制度の具体的内容を検討するよう前文の終りに注文が置かれたのである。」こう言っているのですね。つまり、連結財務諸表が企業状態を正確に反映するかどうかというような回りくどいことではなしに、連結すれば未実現利益というものは、これは利益にあげないでいいのだ、そうすれば年間何億円かもうかるだろう、そういうメリットがあればやってもいいのだという意見ですね。つまり連結財務諸表というのは、連結納税申告制度があって、しかもそれによって税金をあまり納めないでいいということがあって、初めて企業にとって意味があるのだという考え方をとっておられるわけです。そういたしますと、井上さんの御議論は時間の関係で省略いたしますが、親会社、子会社というものを導入された。法務省はわりとのんきにしておられますが、大蔵省はさすがこういう連結財務諸表意見書というようなものも御存じでございますから、将来の方向についても一定の見通しを持っておられます。そういたしますと、住友化学の長谷川社長をこの間の物価問題の集中審議のときにお呼びいたしまして、私が直接質問をいたしました。そのときに、資料として持っておりましたが、時間の関係で言えませんでしたが、たとえば住友千葉化学というのがあります。これはエチレン等だけをつくっておるところでありまして、ここでは非常にもうけておる。操業上のいろいろな負担というものをやっと償却して、この一年間にものすごくもうけて、いままでの赤字を全部なくして、そしてやっともうかるような状況になったから、近く企業に合併するというようなことを談話でも言っておられますね。こういうような、企業がぼろもうけをしたというような段階では、むしろいままで赤字だった住友千葉化学を一緒にして連結財務諸表にすれば、未実現利益のことは除外して、一方の住友化学はもうかっておる、一〇〇%子会社の住友千葉化学はもうかっておらない、そうすればもうけが隠せるということになるのです。これがいま大企業が連結財務諸表及び連結納税申告制度によって一番ねらっておることだ。その導入部門になる親会社、子会社という概念が、今度公認会計士の子会社に対する監査という名前で導入されておる。これが今度の商法で非常に大事だと思うのです。居林さんは、そのための環境整備が必要だ、こう言われておるのですけれども、まさに居林さんの言う環境整備の一つが今度の商法改正であるというように言わなければならないんじゃないかと思います。そうしますと、大蔵省、アメリカだって連結財務諸表をとり過ぎたために、利益が非常に分散されて、付加価値税ですか、何か二%ほど設けて、それでなければ税金が取れないという事態が起こったことは、あなた方専門家だから御存じでしょう。日本ではたださえ法人税が特別の措置を入れても三六・七五で、今度の国会で四〇%にするとかいうことが行なわれているときに、企業が、できの悪い子会社をどんどんかかえ込んで、収益を減らして、そして本体たる会社はぼろもうけしておっても税金を納めないようにするということを行く行くは合理化する重大なワンステップに、今度の商法はなるんじゃないかという危惧を禁じ得ないのです。法務省民事局長はとんと高潔な人格で、お金のほうにはうといかもしれませんけれども、そういう心配があるのですね。大蔵省はお金の問題を扱っておられますから、先ほどうんうんと、ほんとうにわかっていたのかどうかわかりませんが、うなずいておられる方もおられましたけれども、ほんとうにこういう問題を庶民は心配しているのです。法務省や大蔵省はどう考えられますか。何か歯どめがありますか。断わっておきますが、私は連結財務諸表が全部悪いと言っているのではないのですよ。
  204. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 連結財務諸表の制度の問題と、それから税の面に連結納税申告制度を導入するという問題とは、私のほうでは一応別にして考えております。税の制度というのも一応の社会的実態の上に乗りませんとなかなかできないものでございますので、少なくとも連結財務諸表の制度化ということが第一前提とは考えますが、その時点において、あるいはこれから連結財務諸表制度がいろいろ検討される段階において、われわれのほうといたしましてもただいま御指摘のような問題もあわせまして、十分検討させていただきたいと考えております。  なお、営利会社を会員とする団体の立場から、居林さんがそのような考え方を述べられているのは、それは別の問題といたしまして、われわれといたしましてはその会社の税金が少なくなるとか、そういうことでなく、要するに企業の法人所得として把握すべきものの実態が連結財務諸表制度によったほうがいいか、あるいは悪いか、こういう観点から十分検討さしていただきたいと考えております。
  205. 小平久雄

    小平委員長 正森君、お約束の時間もだいぶ経過しておりますから、簡単に願います。
  206. 正森成二

    ○正森委員 名古屋の国税局管内では税理士会と国税局とでチェックリストというものをつくって、税理士会が雑収入の計上漏れがないかとかいうようなことを調べて、税法上の適法性を税理士がチェックしてサインして出せば、これは監査を省略するということが、実際上中小法人、零細企業については行なわれておるのですか。
  207. 甲斐秀雄

    ○甲斐説明員 私のほうの所掌するところではございませんけれども、名古屋の国税局でそういうことをやっているということは知っております。ただし、それをそのまま認めるというようなことではありませんで、必要があれば調査をやることは当然でございます。
  208. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私は、委員長の御注意もございましたので、これで質問を終わりたいと思うのですが、私が先ほど引用いたしました「税法整備に関する意見」という昭和四十年一月二十一日の経団連経理懇談会のものがございます。これは経団連月報の一九六五年の二月号に載っておるものですが、それについて同じく居林さんが経団連月報の一九六六年四月号に解説のようなものを書いておられます。ここでどういうことをいっておられるかといいますと、それの第五で「公認会計士の監査結果を税務上尊重すること。近年税務の取扱いが複雑になり、大規模企業においては、税務経理のために莫大な人員・施設・費用および時間を費やしている。一方、一定企業に対しては、証券取引法にもとづき、公認会計士による権威ある監査が行なわれているので公認会計士の監査証明のある場合には、税務上これを是認することとして、税務取扱上の簡素合理化をはかる必要がある。」こういっているんですね。そして居林さんはこの解説の中で「公認会計士の監査結果の尊重については、国税庁としても前向きの姿勢でのぞみ、まずテスト・ケースとして適正な税務申告をしている会社を選び、国税庁の望む監査手続を済ましている限り公認会計士にすべて委ねることとし、国税庁当局は、三年ないし五年間その会社について税務調査を一切省略する方法を考えているようである。税務上要求する監査手続の細部については、今後、国税庁・公認会計士協会と当会」——経団連ですね。「当会の三者で話し合いを進める予定である。」こういうぐあいになっております。こういうことであるとすると、いよいよ結論に入りたいと思いますけれども、商法改正して三十二条で企業会計原則を持ってくるが、その企業会計原則は従来のものではなしに、修正されたきわめてゆるやかな企業会計原則である。そしてこれは法人税法二十二条四項で二つのものが内容的にほぼ一体のものとしてドッキングされる。そして公認会計士は証取のように事後監査ではなしに、今度は事前に、決算の前に監査をして、それを株主総会が決定する。そうすれば、このようにして行なわれた公認会計士の監査を受けた大企業にあっては、今度の商法改正では十億円以上ですけれども、経団連の意向ではそれは税務上尊重することということになって、結局のところ大企業が行なうところの自主的な経理の尊重あるいは別のところで重要性の原則を持ち出して、中小企業では百万円は重要かもしらぬけれども、大企業では百万円が右向こうが左向こうが、そんなことはたいしたことはないんだということを、やはり居林さんはいっております。時間の関係でその原文は引用しませんが、そういうことになると重要性の原則を持ち出し、自主的経理の尊重の考えを持ち出して、法人税法の二十二条四項と商法三十二条と修正された企業会計原則で、企業は結局公認会計士が決算前に監査をすれば、その証明で適法だということになれば、これは税務署を素通りするんだ、そういうようにしろということが経団連の要求ではないか。今度の商法改正というものは結局その方向にきわめて沿うものではないか、こういう疑いを払拭しようと幾ら努力しても払拭することができない、こう私は思います。それについてあなた方の見解を承りたい。
  209. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答え申し上げます。  ただいまの法人税法の二十二条と商法の同様の規定と、ゆるめられた企業会計原則、こういうお話でございますが、税の立場といたしましては先ほど来申し上げておりますように、別段の定めが相当してございまして、今度の企業会計原則あるいは商法改正によって従来の扱いが変わるところはないと考えております。
  210. 甲斐秀雄

    ○甲斐説明員 執行のほうからお答え申し上げます。  法人税の調査は、法人税法に基づきまして適正な課税標準を把握するために行なうものでございまして、公認会計士の監査とはその目的を異にしております。従来の監査対象となりました法人についての調査事績等にもかんがみまして、監査対象となった法人について税務調査を省略するというようなことはとうてい困難であると考えております。
  211. 正森成二

    ○正森委員 最後に申し上げますが、いま大蔵省からそういう答弁がありましたけれども、私が時間を費やして経団連の考え方、居林氏の意見というようなものを順次総合いたしますと、今度の商法改正といいますのは、経団連の意図としてはそういうものに沿うものであるというように考えていると考えざるを得ない。しかもあなた方の塩崎主税局長とか、あるいは若干の係官の言明も、それを全く否定しているとは考えられないということを考えますと、今度の商法で、大企業にとっては公認会計士の監査を受けることによって税務調査を簡略化する、一方中小企業については税理士にチェックをさせるというようなことで、二つに分けて、一方はできるだけゆるやかに、そして庶民のほうには経済的、効率的に、五万人しか定員がない税務署員をフルに動員するということをほんとうはねらっておるし、実際上はそういうぐあいになるのではないかというのが、庶民の抱いている大きな疑問点であります。私は全審議の過程でそれが払拭されたとはとうてい考えることができません。  そこで、委員長に私は質問を終わるにあたってお願い申し上げたいと思います。  その第一は、大蔵省当局からも失笑が出ましたけれども、居林次雄なる人物、また教授だそうでございますが、番場嘉一郎氏というのは、企業会計原則について至るところで重要な談話を発表し、放言をしております。しかもこれは商法三十二条との関係で重要な意味を持つものであります。したがって、商法が通ってしまってから企業会計審議会でその点を詰めるといいましても、これは国会審議権を事実上低めるものにほかならないと思いますし、企業会計原則についてただすべきものがあり、そんな了解事項はないというものがあるというなら、それをこの審議が終わる前にまず明らかにすべきであるというのがまず第一点であります。  第二に、少なくとも番場嘉一郎氏と居林次雄氏を当法務委員会に証人として、それができなければせめて参考人として喚問をして、一体どういう趣旨でこういうことを言ったのか、こういうことを明らかにして、そして商法審議を充実させるべきである、それが現下の経済情勢のもとで国民に対して当然当委員会が負うべき任務であると考えます。  以上の二点について法務委員長に要請をして、私の質問を終わります。
  212. 小平久雄

    小平委員長 正森君の申し出につきましては、後刻理事会で協議いたすことにいたします。  次回は、来たる十二日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時十分散会