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1974-03-06 第72回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月六日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 谷川 和穗君    理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    江崎 真澄君       住  栄作君    保岡 興治君     早稻田柳右エ門君    日野 吉夫君       正森 成二君    沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         内閣法制次長  真田 秀夫君         警察庁刑事局長 田村 宣明君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 住田 正二君  委員外出席者         環境庁大気保全         局特殊公害課長 鈴木 善晴君         外務省国際連合         局専門機関課長 市岡 克博君         運輸省航空局飛         行場部長    隅  健三君         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     住  栄作君   中垣 國男君     保岡 興治君   野呂 恭一君     田中 正巳君 同日  辞任         補欠選任   住  栄作君     河本 敏夫君   田中 正巳君     野呂 恭一君   保岡 興治君     中垣 國男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青柳盛雄君。
  3. 青柳盛雄

    青柳委員 一、二年前までは公害が社会問題、政治問題として非常に大きく論議され、世人の関心を引いておったのでありますが、昨年後半期以後は石油危機の問題などもあり、悪性インフレ、高物価、物不足便乗値上げ、いろいろ経済方面のことが社会問題にもなり、政治問題にもなり、七十二国会の花形のような形で予算委員会をはじめ各委員会で論議されているわけでありますが、だからといって公害の問題がもう後景に退いて、大体下火になって、われわれは安心して暮らせる、われわれの命が保障されているというほど好転しているわけではないのであって、そのことは昭和四十四年ごろかち始められた大阪国際空港における公害訴訟が去る二月の二十七日かに判決をされるということになりまして、が然公害問題が大きく社会の耳目を引くようになったわけでございます。したがって、これは国会の各委員会でも論及され、マスコミもいろいろと報道しているところでありますが、当委員会におきましても公害問題は人権にかかわる問題でもございますので、当然のことながらそういう観点からもいろいろと審議を進めるべきではないかというふうに考え、私は取り上げてみたわけであります。  最初環境庁お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この大阪空港公害につきまして何か環境基準というようなものがいままでに出されたことがあるようでありますので、判決に引用されておりますのは四十六年の十二月ごろの基準のようでありますが、その後四十八年の十二月に基準が出されたようでありますので、その間の経緯を御説明いただきたいと思います。
  4. 鈴木善晴

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  先生お話のありました四十六年十二月に出ましたものは普通緊急対策といわれているものでございまして、大阪空港及び東京空港周辺地域において騒音による住民被害がたいへん深刻であるということで、環境庁長官が緊急にこういう対策をとるべきであるということで運輸大臣に対して勧告したものでございます。  その勧告内容は、ごく簡単に申しますと、大きく分けて二つありまして、一つは深夜便の規制、もう一つWECPNLという単位を使いまして八十五以上の地域については防音工事とか移転補償とかそういう対策をとりなさいという勧告であります。これは通称緊急対策といわれておりますようにその被害がたいへん深刻であるのでとりあえずこういうことをおやりなさいということで勧告したものでございます。  それから二番目に先生がおっしゃいました、四十八年の十二月につくられましたものは「航空機騒音に係る環境基準」というものでございまして、これは公害対策基本法に基づいて生活環境として望ましいものはどういうものであるということをきめて、それを政府なり地方公共団体行政目標としてその達成、維持に努力していくという種類のものでございます。これは、東京大阪空港だけでなくて、日本じゅう空港適用になるというものでありますし、同時にこの基準受忍限度とかそういった我慢すべき限度とは違いまして、行政目標として望ましい生活環境、それを実現するための目標ということでつくられております。  この環境基準につきましては、一言で申しますと、やはりWECPNLという単位を使いまして、住居専用地域では七十以下にする、その他商工業等に供される地域については七十五以下にするということで、まず目標基準値をきめまして、その達成期間として空港の種別によって、直ちに達成するべきもの、五年以内に達成すべきもの、十年以内に達成すべきもの、十年をこえてできるだけ早く達成すべきものというようなことできめているものでございます。
  5. 青柳盛雄

    青柳委員 昭和四十六年十二月二十八日の緊急対策で示された大阪空港についての時間制限ですか、それは午前六時三十分から午後十時までの間ならば飛行してもよろしいというようにもとれるわけで、要するに今度の訴訟で問題になっております午後の九時から翌朝まで飛行をさしとめてくれという原告側の請求は採用されなかったわけでありますので、これがまたたいへん物議をかもしているわけでありますが、環境庁とすれば九時から十時の間はがまんしてもらわなければしようがないというふうに理解をしてそういうふうな方針でこの対策を出したのだろうと思いますけれども、それががまんできないというのであれは裁判ざたになった。そこで、これは理想案だといわれるような話でありますが、あとから、判決よりは前ですけれども、昨年の十二月二十七日に告示をされた環境基準によれば、当然、九時はおろか、一日じゅうでも大阪空港などは存在し得ないような環境の中にあるのじゃなかろうかと思うのですが、この点はいかがですか。
  6. 鈴木善晴

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  四十八年十二月に作定いたしました環境基準に照らし合わせますと、現在の大阪空港はもちろんその基準達成維持しておりません。そういう意味では環境基準に反した空港でございますけれども先ほども申し上げましたように、環境基準につきましては達成期間というものを同時に定めておりまして、大阪空港のような空港につきましてはその周辺にたいへんに人家が密集しているというようなこともありまして、達成がたいへんむずかしいということで達成期間を「十年を越える期間で可及的速やかに」というふうに定めております。そういうことで、現在直ちにということでございませんので、定められた達成期間内にこれを達成するということで国及び地方公共団体が今後努力していくべきものということになっております。なお達成期間がたいへん長いものですから、中間に五年目標値、十年目標値というものを定めまして、それぞれ五年目標値の場合には屋外で八十五以下、十年目標値の場合には屋外で七十五以下——この七十五以下というのは商工業等地域適用になる基準でございますが、そういう基準達成すべく今後努力していくということでやっております。
  7. 青柳盛雄

    青柳委員 せっかく四十八年十二月六日に中公審答申を出されて、それを環境庁告示で出されたわけでありますので、私どもはこれが非常に実際に役に立つものになってくれることを期待するわけでありますが、私ども公害等調整委員会から得た情報によりますと、大阪空港周辺の、特に伊丹市などに居住している人たち、それに宝塚も今度加わったようでありますけれども、そういう方々大阪空港騒音調停申請というものを出されて、慰謝料とそれから受診料などを請求された方が四十九年二月二十二日現在で一万三千二百二十九名に達しているそうであります。こういう人たち調停申請の対象になるのはもっぱら金銭のようでありますけれども、しかし金銭でがまんはできるといったところで、それは一ぺんだけ補償してもらえばそれで済むというものじゃなくて、結局は継続的なものであるから、ほんとうの要望はこの大阪空港を廃止してもらいたい、どこかほかに移ってもらいたいというごとだそうでございます。先ほどから指摘されております訴訟のほうは伊丹市ではない地域方々から出されたもののようでありまして、これは廃止してくれということを裁判所に求めるのではなくてもっぱら時間制限、それから過去に起こった損害の賠償あるいは今後起こるであろうところの将来の賠償というもののようでありますが、いずれにいたしましてもこの四十八年十二月二十七日の、中公審答申の線、告示の線を実施するとなれば、結局はこの五年目標、十年目標でこの大阪空港が所定の基準値、つまりWECPNLで七十以下に下がるという可能性があるのかないのか。現在でもそれは展望できることではないかと思うのですが、環境庁はどうお考えですか。
  8. 鈴木善晴

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  WECPNL七十とか七十五という数字は基準値としては生活環境として望ましい基準という意味では一応合格する基準だと思いますけれども、それを達成するということになりますと、特定の空港についてはたいへん困難であるということは御指摘のとおりでございまして、特に大阪空港につきましては現在周辺にたいへん人家が密集しておりまして、WECPNL七十以上の地域に百数十万人の人が住んでおるという現況でございますので、この基準値達成するというのは先生指摘のようにたいへん困難なことでございます。しかしながら、今後と申しますか、現在すでに開発されておりますエンジンの改修による音源の減少あるいはすでに開発されております低騒音機を現在使われているジェット機と入れかえる、そういった方法相当程度一機ごとの飛行機の音を減らすことができますし、さらに今後十年という長い年月の間にはいろいろな技術開発が行なわれて、さらに低騒音飛行機が導入されるという可能性も十分ありますし、片や周辺土地利用対策と私ども呼んでおりますけれども飛行場周辺の一定の音がうるさい地域につきましては、移転補償費を支払って住民の方に移転していただくとか、あるいはその外側にある相当うるさい地域につきましては防音工事をさせていただくとか、そういったいろいろな方法をとりまして今後達成期間内には必ず達成するように関係機関とも十分協力しながらやっていきたいと考えております。
  9. 青柳盛雄

    青柳委員 努力目標のようなことのお話でございますけれども、どうも新聞報道などにあらわれている政府側関係者の話などを総合してみますと、大阪空港周辺をどうこうするというよりもむしろ新しい空港を適当な場所に設ける、このほうは廃止するかあるいはもっと現在とは違った形で使用するようなことのほうが手っとり早いというか現実性があるような言動も見えるわけであります。そういう将来のことはいますぐの問題になりませんが、当面この訴訟を出した人々にとってみるといろいろの面で不満がある。金銭賠償のほうのこともさることながら、何よりも一番眼目にしておった午後九時以後の飛行を中止するような命令が出なかったということ、これに非常な憤りを持っているようでございます。現実にはもうすでに九時以後の飛行をやめているものが出ているのではないか。それから郵便飛行機について見れば、もう事実判決どおりに十時以後は飛ばないようにしているというのでありますが、運輸省といたしまして、この判決は満足すべきものというふうに、少なくとも運輸省実施している程度のことは——その程度のことしか命じていないわけでありますから、これ以上のことを命ぜられたんならたいへんだと思うのですが、実情に合うようにするためにはやはり九時以後を何とか規制できないものか、この点行政の立場からどういう方針をとっておられるかお尋ねをしたいと思います。
  10. 隅健三

    隅説明員 お答えをいたします。  今度の判決におきまして差しとめ命令はいままでのとおり十時から翌朝の七時まででございます。それで九時以降の発着便数について運輸省として何とかできないかという御質問のようでございます。最初に申し上げたように大体九時以降大阪に到着あるいは大阪を出発いたします便が現在のダイヤでありますと日本航空が五離発着、全日空が六発着、それから東亜国内航空が一発着で国内線が十二発着ございます。また国際線は、これは日によって違いますけれども、大体平均して一日に二発着がございます。それでこの時間帯の便数削減につきましては、運輸省といたしまして、まず第一に大阪空港の一日を通しての離発着削減ということを考えまして、その中で九時、十時のできるだけの離発着についての削減ができるかどうかを検討しておる次第でございます。たとえばいろいろ御批判はございますけれども、低騒音大型機大阪に乗り入れて東京大阪間の便数につきましては代替輸送といたしましての新幹線もございますし、この便数大幅削減あるいはその他についても便数削減というものをいろいろ検討し、これをぜひ実行に移し、付近の地元の皆さま方の御迷惑を少しでも軽減しようと考えております。九時、十時だけを取り上げましてこれだけ減らすというのではなく、一日の便数をにらみ合わしての削減ということをただいま行なっておる、検討をしておるところでございます。
  11. 青柳盛雄

    青柳委員 もちろん一日を通じて便数を減らすという考え方、これも非常に前向きだと思いますし、それから低騒音飛行機に切りかえという、エアバスがいいというような話がありますが、この間の事故もありますので、DC1〇みたいなことになったんでは、これはまたたいへんなことになりますが、いずれにしてもいま具体的に相当数の人が裁判所にまで提訴して長い問にわたって争っておられる夜の九時からというその問題をまず片づける、そしてもちろん昼間の便も減らす。私どもはそうすることによって少なくとも差しとめ問題についての係争はもう控訴して云々する必要はない、賠償金のことだけならばともかくといたしまして。これはいずれ法務大臣が来てから訴訟をこれからどう考えるかということについてはお尋ねしたいと思うのですが、いずれにしても運輸省とすれば権限のあることでありますから、こういう従来の公害民間事業、イタイイタイ病にしたところで、水俣病にしたところで、あるいは四日市公害などにいたしましても、いずれも民間事業で生産に従事することであり、そういう中から出てくる有害物質でありますけれども、今度は国が関係をする公共性のあるという、それが一つ公害をがまんしてくれという口実といいますか根拠になって、それがまた社会問題になるわけでありますけれども、そういう国の規制が十分にみずから行なわれなければならぬ。もちろん私企業に対しても国の規制があってしかるべきものだと私ども思いますけれども、まずみずから改めるというか、航空機公害などというものはそれを発しているのは民間かもしれませんけれども空港というものは国の管理のもとにある以上、あくまでも公共性ということを犠牲にばかりするわけにいかないにしても、今後運輸省としては十分な措置をするということが大事じゃないかと思うのです。  ついでにお尋ねしておきますが、新しい東京国際空港、いわゆる成田のほうにできましたあれはまだ開業しておりませんけれども、あそこが使われるようになって、そしてまたジェット機がひんぱんに離着陸するということになりますと、また新しい意味で紛争が起こってくるのではないかという懸念がするわけでありますが、この点についての見通しはどうなんでしょうか。やはり環境庁にもお尋ねしたいし、それから運輸省お尋ねしたい。
  12. 隅健三

    隅説明員 成田の新東京国際空港につきましては、ただいま場内の施設というものが完全にでき上がりまして、問題は航空燃料輸送につきましてパイプラインが一応工事がいろいろの問題で中止になっておりまして、この問題が片づけば開港が見込まれるわけでございます。やはり成田空港と申しますと内陸の空港でございますので騒音につきましては一段の留意が必要だというふうに、われわれ運輸省または新東京国際空港公団も非常にその責任を痛感いたしております。  それで、まず騒音対策といたしまして、航空機騒音防止法に基づきまして新東京国際空港公団空港周辺学校等防音工事を全部完了いたしました。これに対する助成でございます。それから共同利用施設の設置の助成という問題も一応終わっております。それから新東京国際空港につきましては、現在の騒音防止法適用についてはその買い上げの補償移転補償の範囲をいままでの空港よりも非常に大きくいたしております。その区域の移転補償実施いたしました。また、民家防音工事につきましては、ただいま本国会に提出をいたしております航空機騒音防止法の一部改正の成立を待って他の空港ではいたす予定でございます。成田地区におきましては、千葉県の非常に大きい御協力によりまして民家防音工事助成がどんどんできておりますし、また騒音の最も著しい地区にございます部落は、これは代替地を求めまして集団移転をするというようなことで、その代替地造成その他について千葉県において一段努力をしていただいております。こういうことで、われわれといたしまして開港に備えて騒音対策実施いたしております。開港時には、先ほど先生お話のございました、告示された航空機騒音にかかわる環境基準の五年以内の改善目標である八十五WECPNL以上の地域については、開港時に環境整備達成するように努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。たとえば第三種と申しまして九十五WECPNLという最も騒音のひどいところでも総戸数が二百三十八戸ございまして、すでに百七十九戸の移転を終わりました。あと五十九戸を、現在千葉県の御協力を得てこの移転実施にかかっております。このようにいたしまして、千葉県には非常に多大の御協力をいただきましたけれども公団あるいは運輸省といたしましても、新東京国際空港騒音対策については万全を期して開港に備えたいというふうに考えております。
  13. 鈴木善晴

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  ただいま運輸省からお答え申し上げましたように、成田空港につきましては千葉県がたいへん熱心に取り組んでおられまして、千葉県を中心としまして空港公団運輸省関係機関が一生懸命になっておやりになっておられますので、成田空港達成期間のうちの中間目標値、五年目標値というものは開港の時点でほぼ達成できるというふうに環境庁といたしましても考えております。今後とも成田空港周辺住民方々には航空機騒音で御迷惑のかからないように、私どもといたしましても、運輸省その他関係機関協力しまして努力していきたいと考えております。
  14. 青柳盛雄

    青柳委員 先ほど申しましたように、マスコミ相当この問題については関心を高めておられ、某新聞のごときは空港革命を急げというような主張まで出されておるわけでありまして、今後ますます盛んになるであろうところの航空機利用というような問題から、空港騒音の問題が相当各所で起こってくることが予想されます。いまから訴訟などを起こさなければ解決がつかないなどという、そういう後手におちいらないように、やはり先手をとっていくということばがありますけれども、便利なものを使う場合にはその反面でマイナスが生ずる、それをなるべく除去するということを考えて進めていただきたいと思います。  そこで、私は、続いて同じような騒音振動公害を起こしております国鉄新幹線公害の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、これもまた、まだ訴訟にはなっておりませんが、新聞などの報道によりますと、今月中に裁判が提起されるかもしれないという、そういう問題が起こっているようでございます。それは名古屋市における新幹線公害の問題でございます。   〔委員長退席羽田野委員長代理着席新幹線騒音とか振動とかいう問題はただ名古屋に限ったわけではありませんので、東海道新幹線からさらに山陽新幹線、そしてまた九州にまで及ぶ新幹線の中でも起こっているでしょうし、また起こる可能性がある。その他、予定されている上越新幹線東北新幹線北陸新幹線とか成田新幹線などといういろいろな新幹線構想があるようでありますが、そういうものの中でも同種の問題が将来起こってくるんではなかろうかという懸念を持つわけで、現にまだつくられつつある東北新幹線上越新幹線などについて、大宮、上尾地域あたりでは強硬な反対もすでに出されているということを聞いておりますが、いずれにしても具体的なケースとすれば名古屋新幹線公害であります。これについて最初運輸省の取り組みの状況の概略をお答え願いたいと思うのです。
  15. 住田正二

    住田(正)政府委員 名古屋におきます新幹線公害について近く訴訟が行なわれるということは、新聞によりまして私どもも承知いたしております。  運輸省といたしましては、一昨年十二月に環境庁から新幹線公害についての勧告をいただいております。勧告内容は二つに分かれておりまして、一つは、国鉄音源対策をやれというのが一つのあれでございます。それからもう一つは、周辺公害を受ける方々に対して障害防止対策を講じろという内容でございます。  音源対策につきましては、一応八十ホンまで下げろということでございますが、これは現在国鉄におきまして、防音壁を設けるとかあるいは吸音材をつけるとかあるいは防音マットを敷くとかいうようなことで、大体八十ホンまで下げ得るのではないかという見通しでございます。  それから障害防止対策のほうは、いま申し上げました音源対策を講じても八十五ホン以下に下がらないところについては障害防止対策をやれということでございますが、音源対策をしても八十五ホン以下に下がらないという地域は無道床鉄げたを持った橋梁周辺で起こるわけでございます。これは東海道新幹線で大体四十五カ所ぐらいあろうかと思いますけれども、その周辺につきましては障害防止対策、まあ民家防音工事であるとかあるいは住民方々の御希望によりまして移転補償をするということを考えておりまして、近くその実施要領を発表いたしたいと思っております。  以上申し上げましたように、環境庁から出されております勧告基準は大体以上の措置によって解決できるのではないかというふうに考えております。  しかし、名古屋周辺地区の問題は、騒音の問題ではなくてむしろ振動の問題ではないかというふうに考えております。これまで振動につきましてはまだ環境庁のほうから基準を示されていないわけでございますが、どういう基準が出るかは別といたしまして、名古屋地区は非常に地盤が軟弱であって振動による被害が大きいのでございますので、近くこの点につきましても、新幹線の通っております周囲の土地を買い上げる、まあ住民の希望によりまして移転をしたいという場合にはその土地を買い上げる対策を講じたいということで、現在その実施要領を検討中でございます。これも近く、おそくても今月末あるいは来月早々までに具体的な対策を示したいと考えております。
  16. 青柳盛雄

    青柳委員 名古屋のことについて言うならば、音源対策として八十ホンというのは指示されている、それを実施するためにいろいろの措置をとっているということだけでなしに、地盤が軟弱であるために振動が問題になるんではないか。それが付近の住民の生活に害を及ぼしているんじゃなかろうかというお話のようでありましたが、訴訟を起こすということは新聞などで知ったと言いますが、その関係住民の間から運輸省に対してあるいは国有鉄道に対してすでに何か具体的な要求が出ているのではないか。それが解決しそうもないんでそれでもう訴訟に踏み切るということになっているんではなかろうかと想像するのですが、この点は何にも聞いてはおらないわけですか。
  17. 住田正二

    住田(正)政府委員 名古屋地区騒音につきましては、これまで運輸省に対しましてもあるいは国鉄に対しましても地元からいろいろ話が出ております。ただ、具体的に何ホンにしてほしいとかあるいは振動をどの程度まで下げてもらいたいという具体的な基準についてのお話はなくて、先ほど申し上げましたように、地元が訴訟を準備しておられる、その訴訟内容で、昼間六十五ホンであるとか夜間五十五ホンであるとか、あるいは昼間の振動は〇・五ミリ、夜間は〇・三ミリという具体的な基準を今回初めて新聞で知ったわけでございまして、いままで具体的にどうしてほしいという御要求は私どものほうには承っていないわけでございます。
  18. 青柳盛雄

    青柳委員 その程度関心でおられるんじゃ裁判ざたになってもやむを得ないという感じもするのでありますが、新聞報道などによりましても、参議院議員の須原昭二氏が政府に対して質問書を出して、それに対する答弁書が決定されたということが報道されております。そういう質問書の中でも引用されているようないろいろの問題があるようであります。ですから、運輸省としても国鉄としても政府としても、そういう具体的な問題について真剣に取り組むということが当然のことだと思うのでありますが、これは病人に対して医療委員会というようなものを設けて、そして具体的な措置をとる、因果関係などについて明確にするとか、どの程度の救済をするかというようなことをきめる、そういうことのようでありますが、これは当面緊急を要する問題として当然そういうことが行なわれなければならぬと思いますけれども、たとえば動力車労働組合などが、側面から応援する意味も含めてスピードダウンをその地域でやっている。そしてその地域被害者の人たちはスピードダウンによって非常に感激しているといいますか、こういうふうにしてもらえば助かるのだという意思表示をしておるようであります。テレビなどでも放映されておりました。こういうような措置というものは名古屋の場合とり得ないのかどうか。この点はいかがですか。
  19. 住田正二

    住田(正)政府委員 東海道新幹線全体を見た場合に、騒音の大きなところは、先ほど申し上げましたように無道床鉄げたの四十五カ所あるいは名古屋その他の軟弱地盤のところ、その他かなりあるわけでございます。したがって名古屋だけスピードダウンするということであれば、そう大きな問題はないわけでございますが、東海道新幹線全体について問題のあるところでスピードダウンするということになりますと、現在三時間十分で走っておりますのが五時間ぐらいかかってしまうことになるわけであります。五時間ぐらいかかることになりますと、輸送力がおそらく四割あるいは五割近く減るという結果になるわけでございまして、したがって東海道新幹線全体についてスピードダウンするということは不可能ではないかと考えております。
  20. 青柳盛雄

    青柳委員 これが前例になって四十五カ所全部スピードダウンすると一時間よけいにかかるというような、たいへんに飛躍した議論になってしまうのでありますが、少なくとも訴訟にまで踏み切ろうかというのには、それだけの根拠があってほかと違った特色があるのじゃなかろうかと思うのです。先ほどお話がありましたように、単に無道床鉄げたということによる騒音だけでなしに、地盤が軟弱であるというようなことによる振動も合わさっている。四十五カ所というのはおそらく名古屋の場合と全く同じだとは考えられないので、もちろん騒音で悩まされている地域東海道新幹線の各所にあるだろうと思いますけれども名古屋の場合は特別に病人まで出てきているというような状況でありまして、とりあえずその地域だけのスピードを落としてみる。それは単に労働組合が当局の指示に反してというか、何か新聞によりますとそれは違反であるというようなことが報道されております。なるほど一定のダイヤが組まれているわけでありますから、それに意識的におくれるというようなことは業務命令違反とか反則とかいうことになるのかもしれませんけれども、そういうトラブルの起こらないようにダイヤそのものを変更する、そしてそれこそ、そこは順法でいくとするならばこれこれというふうになれば合法性も出てくるわけであります。それが一つの前例になってあちらもこちもということになるかならないかは、それは状況を見ればできることでありますので、損害の補償の点はともかくといたしまして、おそらく裁判ざたになれば、またスピードを落とすことというようなことが当面の差しとめ命令みたいな形で出てくるんじゃなかろうか。ところがそれは裁判所がなかなか簡単にやれない。損害のほうならともかくということになって、そして疎開をするとかというような問題に解決を譲るというようなことはあまり現実性がないのではなかろうかと思うのですが、この点運輸省として検討してみる価値はないのでしょうか。
  21. 住田正二

    住田(正)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、名古屋地区だけであれば新幹線全体の運行についてそれほど大きな影響が出ないのではないかと思いますけれども、現在名古屋地区で動労がスピードダウンをしているということに関連いたしまして、ほかの地区からもスピードダウンしてもらいたいという話も出ております。したがいまして、騒音問題からスピードダウンするということになりますと、東海道新幹線全体について検討せざるを得ないわけでございまして、したがって全体についてスピードダウンいたしますと、先ほど申し上げましたような大きな影響が起きるということで、現在の段階では踏み切ることが非常にむずかしいというように考えております。
  22. 青柳盛雄

    青柳委員 これ以上同じ問答はいたしませんが、大体公害問題について裁判所協力しなければならないというような事案にならないことを私どもは期待するわけでありますけれども、どうも行政が十分なことをやらないために国が訴えられるというようなことになってくる。これからはおそらく航空機公害でもあるいは新幹線公害でも常に国が当事者として訴訟の場に引き出されるというような、そういうことになりかねないと思うのですね。だから私はそういうことを防止する意味においても、法務省の中に人権擁護局というのがありまして人権擁護の任に当たっているわけです。いろいろの措置を講ずるように任務づけられているのですが、これは大臣が来てからまた詳しくお尋ねしたいとも思いますけれども、事務的な点で法務省の係の方にお尋ねしますが、こういう公害問題について何らかの措置をいままでにとられたことがありますか、どうですか。
  23. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答えいたします。  御承知のように人権擁護機関といたしましては法務局の人権擁護部、地方法務局の人権擁護課並びに人権擁護委員がございまして、それらの者が中心になりまして、公害問題についても大体二つの面から努力しております。一つは、一般的な啓発活動でございます。もう一つは、具体的なケースで公害問題が人権侵犯の疑いがありというふうな事案になりました場合には、関係人を取り調べるなり現場を実際に見るなりいたしまして、もしそのような侵犯の事実がありという一応の認定ができました場合には地方公共団体にその旨を通報して、それとともにできるだけその公害による侵犯が少なくなるよう、できれば解消できるようにつとめておりまして、われわれとしてはいままでわれわれなりに相当の実績をあげてきておると存じております。
  24. 青柳盛雄

    青柳委員 きわめて抽象的な話で、私が約小一時間にわたって環境庁やあるいは運輸省に対して騒音公害の問題を尋ねて、それが人権侵害にもなっているのじゃなかろうか、これに対する対策はどうかということをお聞きになっているはずなんですがね。そういうことについては一体法務省は全然無関心でいたのか、それとも関心を持っていたんだけれども何もやらなかったのか、それを実は聞きたかったのです。一言答えてください。
  25. 萩原直三

    ○萩原政府委員 それは非常な関心を持って事態の成り行きを注視しております。  いままでの具体例を申し上げますと、昭和四十三年ごろに隅田川の汚染がひどくなりましたときに、関東ブロックの人権擁護委員連合会が、なるベく早くその汚染を軽減するようにという要望を出しておりまするし、また水俣病の場合は、熊本県の人権擁護委員連合会及び全国人権擁護委員連合会がいずれも決議をして、その軽減を要望いたしております。  それから、ただいまお話のございました騒音関係につきまして申し上げますと、昭和四十六年に横田基地のジェット機騒音が問題になりましたときに、その地元住民の申告がございまして、それに対しまして、地元の三多摩地区人権擁護委員協議会がそれに対する専門の小委員会をつくりまして調査を始めまして、東京都の公害研究所その他地元の研究団体と協力いたしまして調査を続けたのでございます。そのようなことが一因となりましたとも考えられますが、防衛施設庁に対する関係で処置猶予という結論を出しておるのもございます。  それから鉄道関係でございますが、ただいま御質問の場合と違いますけれども、いわゆる乗客の排せつ物が保線工夫に非常な影響を与えているという申告がございまして、浦和地方法務局及び東京法務局がこの点についての調査を続けてございます。  以上のように、具体的な例と申しましては、ただいまあげたようなものがございます。
  26. 青柳盛雄

    青柳委員 裏から理解すると、大阪空港の問題も名古屋新幹線の問題も全然、関心を持っていたのか持っていないのか、いずれにしても何にもやっていない。これは関係者からの申し立てがなければやらないというたてまえのものではなくて、ちゃんと人権侵犯事件処理規程というものまでつくって、第二条には、新聞とか出版物の記事もしくは放送その他の情報によって自発的に調査の開始もできる、できるのじゃない、するということになっているにもかかわらず、これは新聞どころか非常に大きな社会問題として関心を呼んでいたわけでありますから、またそれでいるわけでもありますから、何らかの人権侵犯のおそれはないかということで調査を始めなかったとするならば、一体人権擁護局というのは何かそういうことにはかかわりはない、裁判でやっているなら裁判のほうでやってくれ、高みの見物というわけでもありませんけれども、なるべくさわらないといったような消極性がそこに見られると思うのですけれども、その点はいかがですか。
  27. 萩原直三

    ○萩原政府委員 ただいま先生指摘のように、われわれは申告を非常に重要視しておりますけれども、申告がなくても調査の目的に照らして調査すべきであるというふうに考える場合は、職権を発動して調査活動をいたしております。  ただいま問題になっております大阪空港の問題及び名古屋新幹線騒音及び振動につきましては、おっしゃるようにわれわれは調査をいたしておりません。ただ新聞報道等により情報を収集している程度にとどめております。それは、まず大阪空港につきましては、すでに先生お話しございましたように、訴訟が提起されて第一審判決までおりているのでございまして、そのような場合にはわれわれ人権擁護機関としては司法権を尊重しまして、またわれわれの目的が人権思想の啓発にあるという点からいたしまして、調査活動をいたしていないのでございます。名古屋新幹線の問題につきましてはまだ情報を集めている段階で、今後どのようにするか、もちろん態度をきめているわけではございません。  なお、このような問題について一般的にどのような気持ちでおるかという御質問の御趣旨でございますけれども行政機関の内部に専掌機関があるという場合には、われわれはその専掌機関の努力を期待しておるのでございまして、ただ何らかの理由でその権限を全く行使しない、万一著しい怠慢がある、それがきわめて人権思想の啓発上不適当であるという場合には、その補完的な意味でその問題について人権問題として取り上げるという気持ちは持っている次第でございます。
  28. 青柳盛雄

    青柳委員 大臣が来てからまたこの話は少し質問を追加させていただきたいと思いますので、ここで稲葉委員と交代をいたします。     —————————————
  29. 小平久雄

    小平委員長 この際、おはかりいたします。  本日、最高裁判所西村民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  31. 小平久雄

    小平委員長 稲葉誠一君。
  32. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 きょうは、主としていろいろ問題になっております議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律を中心にいろいろ聞きたいのですが、いま大臣と法制局長官が宮中へ行っておられるというようなことでございますので、帰ってきてからゆっくりお聞きをしたいと思います。  そこで、その前にちょっと航空機の事故等による損害賠償の問題、一つは自衛隊機と全日空機の衝突ですか、あの事故に基づく遺族の賠償の問題と、それから今度の飛行機のあれに関連いたしまして各条約との関係等についてお尋ねをしていきたいというふうに思います。  そこで、最初にお聞きをしてまいりたいのは、これは防衛庁の経理局長になるのですね、岩手県で起きた全日空との衝突事故、これに対して遺族の方々に、防衛庁側というか国側が、百五十五人の方ですが、いろいろ金額を示されて、妥結をされておるのとされないのとあるわけですが、その具体的な数字なりあるいは根拠、あまり詳しくは要りませんが、大要について御説明をいただきたいと思います。   〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 お答え申し上げます。  四十六年の七月に起こりました全日空機と自衛隊機の接触事故に関します損害賠償につきましては、まずどちらに責任があるかという問題がございましたけれども、これは乗客の方々に過失がないことは明らかでございますので、国側と全日空会社との話し合いの上で、とりあえず防衛庁が窓口になろうということにきまりまして、防衛庁におきましてその後検討を進めておったわけでございますが、四十六年の十一月に賠償方針を大体固めたわけでございます。  その考え方といたしましては、不法行為に基づく損害賠償でございますので、まず所得補償方式をとる。つまり、今後の生存しておられました場合の逸失利益を中心として考えるということで御遺族の方々から資料をちょうだいいたしまして、その積算をいたしました。原則はそういうことで逸失利益をホフマン方式によって計算するということにいたしたわけでございますが、そのときに考えました一つの問題は、その雫石事故の直前に東亜国内航空の「ばんだい号」事件がございまして、この補償が行なわれておったわけでございます。今回の事故につきましても、少なくとも「ばんだい号」の補償額を下回ることは適当ではないという判断を政府でいたしました。「ばんだい号」の場合には各御遺族に一律の補償をいたしたわけでございますが、その一律の補償額に達しない、つまりホフマン方式によります逸失利益の計算が「ばんだい号」の補償額に達しない方々に対しましては、その差額を特別見舞金ということで差し上げる。つまり最低基準を「ばんだい号」基準に置いたわけでございます。それで逸失利益がそれをこえる方々につきましてはその積算方式によってお支払いをするということで御遺族の方々と交渉を進めてまいりまして、百五十五名のうち百五十二名の方々につきましては四十七年の初めまでに和解が成立いたしました。残りの三名の方、これは二世帯でございますが、今回判決がございました大田さんは、ややおくれまして四十七年の七月に一応私どもの考え方で賠償額を提示したわけでございますけれども、御納得がいただけないで訴訟に至った、こういう経緯になっております。  それから、残る二名の方、これは一世帯の方でございますが、この方はいまだに御了解をいただけずに、できるだけ早く和解していただくようにお願いをしておる、こういう状況でございます。
  34. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いまの件に関して、国が提示した金額と東京地裁の民事三十二部で三月一日にあった判決との間に非常に開きがあるわけです。どういうふうな理由によってこの開きが出てきているわけですか。
  35. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 具体的に申し上げますと、国側が提示いたしました金額は三千三百四十八万八千円でございます。この内訳といたしまして、逸失利益が三千百三十三万八千円、それから慰謝料が二百五十万円、それから御携帯になりました物的損害、これが十五万円、葬祭料が五十万円、以上合計で三千四百四十八万八千円になるわけでございますが、すでに全日空会社のほうから百万円のお見舞金を差し上げてございますので、損害額としては、それを差し引きまして三千三百四十八万八千円、こういう提示をいたしました。これに対しまして、訴額は八千四百五十万円でございますが、判決として今回御提示をいただきました金額は、合計で四千八百二十三万六千円、その内訳といたしまして、逸失利益が四千百七十三万二千円、それから慰謝料が六百十万円、物損が三十万円、葬祭料が百八万二千円、弁護士費用が三百万円でございますが、損益相殺といたしまして、先ほど申し上げました全日空からの見舞金百万円のほかに、実は逸失利益の中に将来の退職金を加算なさいましたので、現実に支給を受けられました退職金二百九十七万八千円を控除して、差し引きして四千八百二十三万六千円、こういう判決が下ったわけでございます。
  36. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 きょうはその判決内容のことについてかれこれやっているのが目的じゃないのですが、これは常識的に考えて、一家の支柱を失った場合の慰謝料が二百五十万円というのはどこから出てきたの。だれに相談してこういう金額をきめたのですか。裁判所だって、こういう金額をいままでの例として出していない。一家の支柱を失った場合に五百万円は普通じゃないですか。これは法務省と相談したのですか。こんな金額出したのではだめですよ。こんなものは通りっこないのにきまっているじゃないか。最高裁に聞くのは悪いから聞きませんけれども、こんな金額の出し方ではだめですね。あとのこまかいことは裁判所じゃないからやめますけれども、それはそれとして、それから過失について全日空なり保険会社から国に対して訴えが起きているわけでしょう。国側でも、片方に過失があるから額は減殺さるべきだというような意味の主張をしているのですか。訟務部長でいいです。
  37. 貞家克己

    貞家政府委員 ただいまの共同不法行為の主張でございますが、御指摘のとおり、大田静枝その他を原告といたします本件におきまして、国側は第三回の口頭弁論陳述におきまして、本件事故は自衛隊機及び全日空機双方の過失によるものであるというような主張をいたしております。しかしながら、これは、種々の資料に基づきましてそう判断した結果、共同不法行為になるものと考えたわけでございまして、そのために本件におきまして損害賠償額が減殺さるべきであるというような主張はいたしておりません。
  38. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 共同不法行為であるという主張をして一体何の意味があるのですか。おかしいんじゃないか。そんな主張をしても法律的にはしようがないんじゃないの。
  39. 貞家克己

    貞家政府委員 確かに御指摘のとおり、本件の原告に対する関係におきましては、共同不法行為であろうと単独の不法行為であろうと、これは影響がないわけでございます。  ただ、御承知のとおり、別件において全日空あるいは保険会社との間の訴訟事件も継続しておりますし、資料に基づきましてその段階における国側の客観的な認識を裁判所に申し上げ、それによって事態の御判断を正確にいただくという趣旨でございまして、本件の原告との関係において賠償責任を減殺してもらうとか、そういう考えは全くございません。
  40. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 事情として主張したという程度のことのようですが、それは確かにこの訴訟自体としてはおかしいですね。  そこで問題になってくるのは、国が提示した金額と裁判所判決との間にこんなに開きがあるということを見ると、世間一般の人はちょっとふしぎに思いますよ。どうも国がそういう点で十分な慰謝料を講じていないのではないかと思うわけです。特にいま言った一家の支柱を失ったときの慰謝料として二百五十万円というのはどこから出てきたのですか。これは、あまり詳しく聞きませんけれども、おかしくないか。
  41. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 ただいま申し上げましたのは国が提示いたしましたものの内訳でございまして、そういう積算をしたということでございます。したがいまして、判決額と提示額との間にはそれぞれ出入りがございますので、総体としてごらんいただきたいと思いますが、慰謝料の算定につきましては、当時の自賠責の算定基準を参考にいたしております。自賠責におきましては、本人分が五十万円、それから遺族が最低百万円で、遺族の数に応じて最高二百万円までということでございますので、その最高額をとった、こういうことで一応算定したわけでございます。
  42. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ここでそんな議論していても始まらないのですけれども、裁判例は、四十六年のことにしても、このころでも大体最低四百万円、それから五百万円の判決はどんどん出ていたんだと思いますが、ことにこの方の場合は一家の働き手だし、大学の助教授ですか、それはそれとして、この判決について国側は控訴したの、するの。あるいはこれで確定をするんですか。これは国会で聞くべき筋合じゃないかもしれないけれども、せっかくのあれだし、早く確定さしてあれしなければ悪いんじゃないですか。仮執行ついているんでしょう。
  43. 貞家克己

    貞家政府委員 実はこの判決は、一昨日裁判所から送達を受けまして、目下それに対しまして控訴するかあるいはこれを確定させるべきかという点につきまして、現在判決内容を鋭意検討中の段階でございます。確かに御指摘のとおり、問題点非常に限られておりますので、鋭意検討いたしましてできる限りすみやかに結論を出したいというふうに考えております。なお、御指摘のとおり、仮執行の宣言が付されておりますが、国側といたしましては、現在この執行停止の申し立てをする考えはございません。
  44. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この飛行機の場合、いまのは自衛隊の関係ですが、そういう場合に自衛隊で事故が起きて、これを払うわけでしょう。国民の税金を払うわけだね。そういう場合の求償はどうやっているんですか。本件のような場合、求償どうするの。
  45. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 国の一方的過失でございますればもちろん求償関係はないわけでございますが、先ほど務部長から御答弁申し上げましたように、国といたしましては、本件につきましては全日空機、自衛隊機双方の過失が競合して起こりました共同不法行為であるというふうに解釈いたしております。したがいまして、その全日空会社との話し合いにおきましても、とりあえず国が窓口になるという話し合いになっておりますので、他の方々賠償額も含めまして今後全日空会社と本件につきまして、現在裁判係属中でございますが、求償をしなければならない、かように考えております。
  46. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 国としてはいろいろ立場があるでしょうけれども、全日空や何かから国を相手に損害賠償の訴えが起きているわけでしょう。そうすると、共同不法行為だということなら、過失の割り合いはどうするかということも国側から積極的に確認の訴えを起こすとかなんとかしていかなければ、向こうの言いなりになっちゃうんじゃないですか。  この議論はやめますが、そこでもう一つの問題は、飛行機で事故にあった場合、これは外務省の関係になりますね。あった方々についての補償というんですか、それが条約によって非常に違うわけですね。いま大きく分けて三つありますけれども、そこで、日本の場合は、一番金額が出るのはモントリオールですが、これにはいままでどうして入らなかったのですか。何かきょうの新聞を見ると、今度はこれに加入するようなこともちょっと出ているのですがね。そこら辺の経過はどうなんですか。
  47. 市岡克博

    ○市岡説明員 御説明申し上げます。  御指摘ございましたように、民間航空におきまして事故が起こりましたときの旅客等に対する補償につきましては、三つの条約がございます。一つはワルソー条約、それを改正いたしましたへーグ議定書、それからグアテマラ議定書、この三つでございます。わが国はワルソー条約及びヘーグ議定書に参加いたしておりますが、グアテマラ議定書にはまだ参加いたしておりません。この条約は一九七一年採択されたわけでございますが、その批准につきましては、批准のための国内法の整備の必要性も含め、関係省庁におきまして学識経験者等の意見も徴しつつ、目下検討を行なっているのが実情でございます。まだ結論を得るに至っていないということでございまして、いまだ検討を急いでいる段階にあるということで批准をするに至っていないわけでございます。なお、この議定書の発効には三十カ国の批准を要するという条件が満たされることが必要になっておるのですが、ただいまのところその条件は満たされていないのが実情でございます。
  48. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いま言われた中で、よくいうモントリオールの条約というのはどんなものですか。それといま言ったこととの関連はどうなんですか。
  49. 市岡克博

    ○市岡説明員 御説明申し上げます。  モントリオール協定と通常いわれておるものがあるわけでございますが、これは政府間の協定ではなく、航空運送会社間の協定というように承知いたしております。この内容は、米国を出発地、目的地または寄航地とする国際運送については、運送人の旅客に対する損害賠償限度先ほど申しました政府間の条約とは別に定めたものでございまして、具体的には訴訟費用を含む場合には七万五千ドルというようにきめたものでございます。
  50. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あと法務大臣や法制局長官が来ますから、またあらためて聞くことになると思うのですけれども、これは法務省の刑事局長や法制局の真田次長も来ておられますので、お尋ねをしていきたいというように思います。  ちょっとさっき申し上げました議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律というのが昭和二十二年の十二月二十三日に法律二百二十五号でできておりまして、その日から施行されておるわけです。この法律について、いま商社の招致に関連をして——この前三日間やりましたが、いろいろ問題があるわけです。三月四日ですか、予算委員会が再開されたときに、総理大臣がこの法律に関連して述べておるわけです。これは正式な速記がまだできませんので、翻訳をとってもらったので、これを一応ゆっくり読んでみてそれから徐々に質問に入りたい、こういうふうに考えます。  田中さんが言ったことですが「この法律の成立の経緯というものがございます。」この法律というのはいま言った法律です。「これはいろいろこの法律は、証人と証言等に関する法律というのは、過去に使われたことがございます。隠退蔵物資処理委員会、その隠退蔵物資処理委員会から不当財産取引調査特別委員会に移ったときに、メモランダムケースの有力なる法律としてこの問題ができたわけでございまして、当時は、国会でもあまり賛成がなかったわけです。これは四権思想に基づくものであるというようなことでいろいろな問題があり、新憲法との条章で競合しないか、国政調査権の限界というものと、まあ御承知のように、新刑事訴訟法がその後二十三年に出たわけでありますが、それよりもちょっと前にこの法律が出たわけです。新刑事訴訟法は、御承知のとおり、犯罪でもって訴追を受ける前にある人でも、黙秘権それから不利な証言をしないでいい、また弁護士は、当然官選弁護人をつけなければならない。そういうものに対して、この法律がどうもきびし過ぎるというような意見があったことは、」云々ということです。これだけしか翻訳がとれてないものですから、あるいはあともっと政府側には資料があるのかもわかりませんが、あればそれに基づいてお答え願ってけっこうなんです。  実は、私もこの法律の制定についていろいろ調べてみましたら、これは議員立法ですね。議員立法で、淺沼さんが提案理由の説明を二十二年の十二月七日にしておられます。ちょっと最初のところだけ読んでみます。  ○淺沼稻次郎君 ただいま議題となりました、  議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律案について、提案の理由を御説明いたします。   日本国憲法第六十二条によりまして、各議院は証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができることになっておりまするが、これに関する国会法の規定には足りない点がありまして、今会期中における各委員会での証人の証言と実情を見ておりますと、憲法及び国会法が予期した効果をあげることができず、証拠力において欠けるところがあると思われまして、まことに遺憾に存じます。このことは、先ほど隠退蔵物資等に関する特別委員会委員長加藤君から中間報告の際述べられた点でも明らかであります。この観点から、証人がその義務に反した場合には、何らか制裁を加えることが必要となってきましたので、ここに本案を提出いたしまして、諸君の御賛成を得たいと考えたのであります。  これが淺沼さんの提案理由になっておるわけです。あとは省略いたしますが……。  実は、この四日ですか、晩のテレビを私見ておったときに、総理大臣の答弁としてこういうふうに出たわけですね。この法律は、占領軍からどうこうされたとかいうふうなことが一つあったのと、それから憲法違反の疑いが濃いというように流れたわけです。私は、それだけで質問をするのは、率直に言って間違いのもとになってはいけませんから翻訳をとったのですが、私がいま読んだのが翻訳、速記録ですが、いま言ったものとは多少ニュアンスは違うともとれるし、あるいはまた近いともとれるというふうになるわけです。私はこの法律についての意見なり何なりということはきょう申し上げるつもりはないわけでして、ただいろいろ法律的に問題があると考えられる点について、内閣法制局なりあるいは法務省なりにいろいろ意見をお聞きしていきたい、こういうふうに思うわけです。なぜ内閣法制局かといいますと、これは総理大臣が発言をしたのは、おそらく内閣法制局と連絡というか何というか、レクチュアを受けたのか相談したのか、そういう結果で発言をしたものというふうに思いますので、私は法制局にもお尋ねをするわけです。  最初に、いま私が読んだ中で、この法律の制定の経緯について、「当時は、国会でもあまり賛成がなかったわけです。」、こう言っていますね。これはどういうふうな経過でしょうか。議員立法の法律なんだから政府に何か聞くのはおかしいというかもわからぬけれども、でき上がった法律は、議員立法であろうと内閣提出であろうと、法律として一本立ちするわけですから、どっちに聞いたらいいのかわかりませんが、どちらでもお答え願いたいと思います。
  51. 真田秀夫

    ○真田(秀)政府委員 ただいまお話しのいわゆる議院証言法のことでございますが、まさしくいま稲葉委員がおっしゃいましたように議員立法でございまして、その成立するに至るまでの経過、過程でどういうお話し合いがあったとか、御賛成の向きがあったとかなかったとかいうようなことは、一切、私どものほうでは資料もございませんし、わからないわけでございます。むしろ衆議院の法制局のほうにあるいはそういう資料が残っているかもしれないというふうに感ずるわけでございます。
  52. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 法務省、どうですか。
  53. 安原美穂

    ○安原政府委員 真田次長の申されたとおりでございまして、私何もその資料はございません。
  54. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だって、総理大臣が「国会でもあまり賛成がなかった」、こう言っておるんですよ。言っておるのだから、どこかから聞いてきたのじゃないですか。あの人よく思いつきで言うけれども、それは思いつきを言ったわけでもないでしょう。それはあなたのほうでレクチュアしたのじゃないですか。それはそれでいいわ、成立過程だから。  その次に、「四権思想に基づくものであるというようなことで」、何ですか、四権思想というのはぼくはわからないのだけれども、三権思想というのはわかるけれども、四権思想というのは何だろう。「四権思想に基づくものであるというようなことでいろいろな問題があり、」これはどういうことでしょうか。議員立法だって、法律的なことになってでき上がってしまった後の法律のことですから、この点は内閣法制局でわかるのじゃないですか。
  55. 真田秀夫

    ○真田(秀)政府委員 私も実は当日予算委員会に出ておったわけじゃございませんので、どういう言い回し方でどういうニュアンスでお話しになったのか、直接聞いておりません。ただ、いまの四権云々という点は、あるいはこういうことじゃなかろうかというふうに私が思うことを申し上げてみたいと思いますが、憲法の国政調査権は、一体、国会が本来持っていらしゃる立法だとか、予算の審議とか、内閣に対する、行政に対するコントロールとかというような、本来的な権能をお使いになる手段として補完的に認められたものであるのか、あるいは独立の権能であるものかというような、国政調査権の性格についての意見があるわけなんです。その前者だとすれば、三権分立、三権そのものの一つでございますけれども、後者だとすると、いわゆる立法、司法、行政とはまた別の独立した権能じゃないかというような意見に従いますと、そういう点をとらえて四権だというようなお考えがあるいは立つのかもしれないというふうに感ずるわけでございます。政府がその四権の説をとっているとかなんとかいうことじゃなくて、そういう考え方もあるということを御紹介になったのじゃなかろうかというふうに推測するわけでございます。
  56. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、その四権思想というのはわかったようなわからないようなものなんだけれども、それに基づいての内閣法制局としての統一的な見解はないのですか。これは長官が来てからでもいいんだけれども、統一的な見解はないのですか。
  57. 真田秀夫

    ○真田(秀)政府委員 大筋から申しますと、議院証言法は議員立法としてでき上がったものであり、かつ、議院、ハウスの内部の運営の問題でございますので、まず国会が解釈し運用されるべきであって、政府のほうで、おまえのほうの——おまえと言っては失礼ですが、国会の持っている権能はこういうものだよというようなことを公式に述べる立場じゃございませんので、そういう統一見解のようなものをつくったということはございません。
  58. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 じゃ、その次に、「新憲法との条章で競合しないか、」これは国政調査権の問題と関係しないんだけれども、「新憲法との条章で競合しないか、」というのは、これはぼくも意味がよくわからないのですよ。具体的にはどういうことを言っているのか。これは法務大臣どうなんですか。——まあ法務大臣あとでいいです。法制局はどういうふうに考えているのですか。
  59. 真田秀夫

    ○真田(秀)政府委員 おそらくは三十八条一項あたりのことを念頭に置いておっしゃったんじゃなかろうかと思います。
  60. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、三十八条の一項とこの議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律とはどういう関係になるわけですか。競合という意味がよくわからないんだけれども、どういうふうになるというふうに法制局としては理解しているのですか。これは法務省でもいいけれども、どういうふうに理解しているのか。これがはっきりしてないと問題がこんがらがっちゃいますよ。
  61. 真田秀夫

    ○真田(秀)政府委員 これもまた私限りの推測になって申しわけないのですが、三十八条一項を非常に広く読む見方もあるわけなんです。あるいは狭く、刑事訴追を受けるおそれのある不利益な供述を強要されないんだというふうに、これは最高裁判所の判例も御承知のとおり狭く見ているわけですが、広い考え方もあるわけなんです。広い考え方に立つと、いまの議院証言法の被喚問者が何でもかんでも強制されるということにかりになった場合には、やや問題が起きるのじゃないかというようなことを念頭に置いておっしゃったのではなかろうかと思います。
  62. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これはぼくがやるのじゃなくて、予算の総括かなんかでだれか別の人が田中総理に直接聞かなければならぬことだ、こう思うのです。  それじゃ問題を切りかえてというか、そのものずばりでぴしっと聞いたほうがかえっていいと思うのですが、そうすると、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律で国会に呼ばれた人に対して、憲法第三十八条第一項「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」これとの関連で、こういう証言拒絶ができますよということを告知する義務は、院にあるのですか、ないのですか。そこのところは法制局としてはどう理解しているのですか。
  63. 真田秀夫

    ○真田(秀)政府委員 いまのは、不利益供述は拒否できるんだということを事前に知らせる義務があるかということでございますか。その点につきましては、これまた三十八条の解釈になるわけなんですが、最高裁判所の判例がございます。憲法は事前告知の義務までは課しているものではないというふうに、たしか大法廷の判決だったと思いますが、ございますので、必ずしも憲法上、宣誓させる前に、あるいは証言を求める前にそういう拒絶権を告知しなければならないということにはならないと思います。ただ、罰則をもって強制するわけですから、それは刑事訴訟法なり民事訴訟法にはすべて規定がございますので、国会証言法の運用上も、これは口幅ったい言い方でございますけれども国会で運用されるにあたりましては事前告知をされてしかるべきものだろうと思います。
  64. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 学者の論文、いろいろな人のがあります。たとえば東北大学の齋藤秀夫さんのものを読みますと、「議院の証人については、刑事裁判の場合と異なり、実定法上は証言拒絶権の事前の告知に関する規定が存在しないことは、立法の不備であり、憲法第三八条の趣旨を貫徹するためには、供述拒絶権があることを発問者たる委員長から事前に証人に告知することを要する旨の規定を設けるのが妥当である。」こういうふうに齋藤さんは言っておるわけですよ。だから議員立法に対して、議員が法制局や法務大臣にこのことを聞くのはちょっとおかしい、筋はおかしいのだけれども、ほんの参考だね。ほんのと言っては悪いけれども、参考としてお聞きするというと、結局、いま言われた点については、立法の不備である、こういうふうに理解をしてよろしいのでしょうか。そこはどうでしょうか。
  65. 真田秀夫

    ○真田(秀)政府委員 どうも議員立法を私のほうから批判するような立場に追い込まれまして、はなはだ心苦しいのですが、刑事訴訟法、民事訴訟法等の法律と横並びでながめますと、やはり告知義務の規定があったほうがいいというふうに考えます。
  66. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで今度は法務省になるわけですが、刑事訴訟法との関連ですが、田中さんは「新刑事訴訟法がその後二十三年に出たわけでありますが、それよりもちょっと前にこの法律が出たわけです。」これはそのとおりですけれども、このときは応急措置法が出ておったのじゃないかと思いますが。「新刑事訴訟法は、御承知のとおり、犯罪でもって訴追を受ける前にある人でも、黙秘権それから不利な証言をしないでいい、」証言というのは供述の間違いじゃないかと思いますが。「また弁護士は、当然官選弁護人」これは国選弁護人の間違いじゃないかと思うけれども、「つけなければならない。そういうものに対して、この法律がどうもきびし過ぎるというような意見があった」こういうことをいっておるのを見ると、田中総理の答弁は、このところから裏返しに見ると、この議院のこの法律で出てきて宣誓した証人というのは黙秘権もない、それから不利な供述をしないでいいというようなことのそれもないのだというふうにもとれるのですがね、ちょっとこれはわかりにくい予算委員会の答弁なんですけれども。そこで法務省としては、この法律によって——これは罰則があるわけですね。第六条で、三月以上十年以下ですか、ずいぶん重いですがね。その出てきた人はどうなんですか、黙秘権があるというふうに考えているのですか、ないのですか。これはもうぴしっとした答えでいいと思うのです。
  67. 安原美穂

    ○安原政府委員 議院の証言法の解釈でございまして、私が答えるべきかどうか、ちょっとちゅうちょいたしますが、議院における証人法におきましても、第四条に、宣誓、証言の拒絶できる場合が規定してございまして、民事訴訟法の規定の準用がございまして、憲法三十八条一項の精神をくんだ規定でもあるいわゆる自己負罪のおそれのある場合における証言の拒絶ということができるわけでございまして、全然証言が拒絶できないということではないわけでございます。まずそういうことであります。
  68. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは条文に書いてあるのだからわかっていますけれども、そうじゃなくて、第四条に当たらない程度の場合のことを言っているわけですよ。そこが問題なので、第四条は、ここに書いてあるんだからわかる。そうじゃない場合、これに当たらない場合でなおかつどうなのかということですよ。
  69. 安原美穂

    ○安原政府委員 御案内のとおり、刑事訴訟法におきましては、いわゆる被告人、被疑者には黙秘権がございます。そういう意味におきまして、議院の証人になった場合におきましては、証人法の四条に規定する以外の理由につきましては原則として証言の拒絶ができないということでございますが、正当の理由がなくて拒絶した場合に処罰するという規定が罰則にございますところを見ますと、正当の理由のある場合は証言の拒絶ができるというふうにも理解できるわけでございまして、極端な例といたしましては、国政調査権の目的以外の目的の、国政調査権の目的を離脱するような、範囲外のような証言の要求に対しては、拒絶することは正当な事由があるという場合もあろうかと思います。
  70. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この第七条に出てくる「正当の理由がなくて」というのは、これはたとえば憲法の十九条との関連でいっている場合が多いのではないですか。これは当然ですね。思想信条の自由との関連で聞かれた場合は拒否できますよ。これは、アメリカなんかはこの点では非常に拡大した行き方をとっているのだと思うのですよ。アメリカの行き方、非米活動委員会なんかの行き方、そういうものがいいといっているのじゃないのですよ。誤解を招くといけませんが、それはそれとして、憲法十九条との関連での問題が一つありますよね。  もう一つの問題として、国政調査権の範囲外だということ。範囲外だとか範囲内であるということを一体だれが認めて拒否するのですか、そこのところですよ。
  71. 安原美穂

    ○安原政府委員 第一次的にはもちろん証言を拒絶する者の判断でございますが、有権的な最終的な解釈は裁判所ということになると思います。
  72. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、結局いまの刑事訴訟法との関連などから見ると、この法律は、田中さんも言っているのですけれども、きびし過ぎるというふうな意見があったということを盛んに言っていますね。そうすると、この法律は刑事訴訟法の規定などから考えてみるときびし過ぎる、こういうふうに法務省としては考えるのですか。
  73. 安原美穂

    ○安原政府委員 国会のおつくりになりました法律が過ぎるとか過ぎないとかということは控えるべきだと思いますが、客観的にながめまして、先ほどお尋ねのとおり、刑事訴訟法におきましては、被告人、被疑者にはいかなることについても黙秘権がある、あるいは弁護人の選任権があるというようなことと、総理御指摘のとおり、議院の証人におきましては黙秘権という一般的なものはないというようなこと、あるいは弁護人が選任できないというようなところを比べますと、証人のほうが権利の保護に薄いということは一応いえるわけだと思いますが、それはそれなりに私ども理解いたしますに、刑事訴訟法というのは刑事責任を追及する手続法であり、一方は国政調査のための証人法でありますから、目的が違いますから、刑事訴訟法ほどに権利の保護が厚くないというのにも一理があるというふうに思います。
  74. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、刑事訴訟法とこの法律とを直ちに平面的に比べて、それで権利があるとかないとかいうような行き方は、ぼくはおかしいと思うのですよ。国会の院に、ハウスに与えられた国政調査権というものを全く無視した考え方になってくる、こう思うのです。どうもしかし田中さんのこれを読んでみると、いかにも刑事裁判の場合のあれと比較して、だからこの法律は酷だ、酷だから証人として呼ぶことは拒否するんだ、こういうような——はっきり言っていませんよ。言っていませんけれども、そこへ引っかけてきて拒否の理由にしているようにこの言い方はとれるのですね。これはどうもぼくはよく理解できないわけです。  国会が、国政調査権に基づいて、より高度のというか、より公共的な、全体的な一つの立場から事実を追求していく。それは歴史的に見ても、国家あるいは国民全体の利益になるのだ、こういう形のためにこの法律ができ、そして権限が与えられておる以上は、単に刑事訴訟法と並べて判断をして、そしてプラスだマイナスだという行き方は、私はちょっと違うのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。もちろん、そこに行き過ぎがあっていいということを言っているわけじゃありませんけれども、この法律の目的から見て、ある証人なら証人の人が多少の不利益というものがあったとしても、それはより大きな目的のためには受忍しなければならないんじゃないか。受忍義務というか、忍容しなければならないんじゃないか、こういうふうに私は考えるわけなんです。  そこで法務大臣、大体の経過をお聞きになったかと思うのですが、あなた自身の、いま言ったような問題についての考え方をひとつわかりやすく、あまりむずかしく言わないでくださいね。わかりやすく、ぼくらみたいな頭の悪い者にもわかるようにひとつ説明をしていただきたいと思うのです。いいですか。刑事訴訟法との関連でどうなんだろうか、国政調査権のあり方から見て、より大きな目的のためにはある程度のことはあれしなければいけないんじゃないかとか、そういうふうな点全体を通じてあなたのお考え方をお聞きをしたい、こういうふうに思います。
  75. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 この国政調査権の問題は、立法の精神がどういうふうであるか、条文だけでは明確な判断もいたしかねる点もあろうと思います。したがって、立法府である衆議院の法制局長に解釈論を聞いていただけば一番これは間違いないと思うのです。われわれは推測だけでございますが、なるほど、よく読んでみますと、いま刑事局長がお答え申し上げましたように、国政調査権のほうと一般民事あるいは刑事の訴訟法の規定とは若干の差があるように思いますが、総理がどういう場面でどういう動機でそう答えたのか、なかなか総理は記憶力のいい人ですから、立法当時のことでも覚えていて答えたのかわかりませんが、私どもとしてはどうも刑事局長や法制局からも来ておりますが、専門家の御判断にまつ以外にはない、こう思っております。
  76. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 また変なふうになってしまいましたけれども、一応私は交代します。
  77. 小平久雄

  78. 青柳盛雄

    青柳委員 法務大臣がお見えにならないときに、私は大阪空港公害の問題それから新幹線で特に名古屋公害の問題について、環境庁及び運輸省関係者の説明を聞き、それから最後に、これは明らかに公害であり人権侵犯に該当すると思うので、法務省とすれば人権擁護の立場から何か調査をしたことがあるのか、あるいはどういう措置をとったことがあるのかという質問をいたしました。そうしますと、先ほど萩原人権擁護局長さんからいろいろとお答えがありましたが、結局いま申しました大阪空港公害の問題については、訴訟があったので訴訟の係属中は裁判所におまかせするという観点から調査はしなかった。それから名古屋新幹線の問題はまだ訴訟になっておらぬけれども、他の行政庁などのやることについてよほどのことでもない限りはおまかせするというような趣旨の答弁がございました。つまり大阪についてはたまたま訴訟が起こったということがあって、訴訟中は法務省がその案件について調査するのは裁判の独立を侵すことになりはせぬかという配慮のように聞こえますが、名古屋のものと関連して考えますと、運輸省などのやっていることについてはよくよくでないと手をつけないという趣旨に聞こえたわけです。これは何かお互いの行政庁同士の仁義と申しましょうか、なわ張りというのもちょっとことばが悪いと思いますが、よそのやっていることにあまり法務省として口出しはしない、よくよく目に余った場合は、ということはほとんど何もしてない。これはどうも明らかに人権じゅうりんがあると思うのに、その省が何ら措置をとっていない場合にはやらざるを得ないかもしれぬというふうに聞こえるのですけれども、事は人権問題でございますので、民間人が人権侵害をやっている場合は重視するけれども、他の省庁がやっているような場合には様子を見るのだというような消極的な態度でいいのかどうか。なるほど人権擁護の仕事というものにはそれほど強制力みたいなものはないわけで、結局は人権侵犯事件処理規程第九条で、「調査の結果により、人権侵犯の事実があると認めるときは、次に掲げる処置をとるものとする。」というのが一号から六号まであります。したがってその程度のことはできるわけで、これはそれなりの効果を発揮するという実績もあるわけです。しかもその中には第五号で「人権を侵犯されたと認められる者に対し、官公署その他の機関への連絡、法律扶助機関へのあっせん、法律上の助言その他相当と認める援助を行なうこと。」などというふうにありまして、他の官公署その他の機関への連絡もできるわけですから、当然運輸省なりあるいは国鉄なりに対し、あるいは場合によったら航空会社などに対しても連絡をしたりするというようなことも考えられるわけであります。そういうふうにして、大阪空港公害問題あるいは国鉄新幹線名古屋問題などが裁判ざたになって、そして当事者は非常に苦労を続けなければならぬというようなことのないように、やはり人権擁護の立場で積極的にやったらどうか、こういうふうに私は考えるわけなんですが、法務大臣はどうお考えになりますか。
  79. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 広い意味人権擁護局は人権すべてについて努力するのが当然だと思いますが、役所の機構としましては本省に人権擁護局があり、各ブロックの法務局に人権擁護部があり、各地区の法務局に擁護課がありますが、問題は御指摘のとおり航空機だとかあるいは国鉄だとか道路だとかいろいろ人権侵害の範囲があるわけでありますが、そういうようにきまった所管省がありまして、苦情の持ち込むべき場所がはっきりしているような場合にはそれもやればけっこうでございますが、むしろ法務局といたしましては、一般町に発生する人権侵害に対して投書があったり訴えがあったりした場合に、あっせんをしたり助言をしたり勧告をしたり努力して、できるだけ人権侵害を除去していくのがまず第一義でございまして、直接苦情を持ち込める場所のあるものはどうしてもあと回しになるというのはいたし方ない現状だと思うのです。御指摘のとおりあらゆる人権侵害について法務省の人権擁護局が発動すればよろしいかと思いますが、なかなか手の回りかねる困難な面もありますので、そういうような実情になっておるということが考えられるわけでございます。
  80. 青柳盛雄

    青柳委員 私の手元にPR文書、一九七二年法務省人権擁護局の名前で「人権の擁護」という一六ページのパンフレットがございます。それの一一ページを見ますと、公害問題について人権擁護の立場からいろいろと活動することが大事だということがるる書いてあります。これは「環境庁が設置され、また公害対策基本法公害紛争処理法などの公害関係立法や地方公共団体公害防止条例もしだいに整備されてきていますが、」それからが大事なところです。「人権擁護機関としても、他の諸機関と十分連絡を図り、公害問題解決のために、たえず新しい関心と不断の努力を続けていくことが必要であると考えています。」、これはりっぱなお話だと思うのですよ。だから先ほどお話のように他の機関にまかせておく、よくよくの場合に口出しをするというような消極的なことではなしに、やはり他のやっていることに干渉するとかいうような考え方はお持ちにならないでやっていただくわけにはいかぬか、せっかく人権擁護局というりっぱな役所が法務省の中に設置されておって、そしていろいろ人権擁護のために活動しておられるわけですから、そして下部の組織もあるわけですから、そういうものに公害の問題などにつきましてもぜひひとつ今後ともやってもらえないかということが私の質問の眼目なんです。ですから実際問題としてできないというんだったらそのネックはどこにあるのか。たとえば予算が足りないとかあるいは人員が足りないとかいうのであれば、それはやはり人権問題でございますから、優先的に予算や人員を配置するということがあっていいんじゃないか。そうでないと、人権擁護局などというのは単なる飾りもののようた形になって、せっかく民主国家として人権を尊重するんだという憲法の立場からいっても、どうも空虚なものにならざるを得ないと考えるわけです。いかがでしょうか。
  81. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 確かに、近代国家になりましてから、いろんな公害が起こってまいりますので、この公害の処理ということについては、人権擁護局としては極力、そのパンフレットにもございますように努力をしておる次第でございますが、御指摘のような点については、今後もひとつ十分に配慮をしてまいりたいと思います。
  82. 青柳盛雄

    青柳委員 終わります。
  83. 小平久雄

    小平委員長 次回は来たる八日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十一分散会