運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-05 第72回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月五日(火曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 谷川 和穗君    理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    野呂 恭一君     早稻田柳右エ門君    日野 吉夫君       八百板 正君    正森 成二君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局経済部長 熊田淳一郎君         法務省民事局長 川島 一郎君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    妹尾  明君         大蔵大臣官房審         議官      田中啓二郎君         大蔵省主税局総         務課長     渡辺 喜一君         大蔵省主税局税         制第一課長   伊豫田敏雄君         農林省畜産局牛         乳乳製品課長  佐野 宏哉君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   山田 太郎君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     山田 太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇二号)(参議院送付)  株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会閣法第一〇三号)(参  議院送付)  商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇四号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の三案を一括議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 大臣がおくれるそうでありますから、少し、本質的に関係がございますが、一応それまで農林省公取行政指導カルテル関係について伺いたいと思います。  事は全国牛乳屋さんであります。まず、事実関係に相違がないかどうか確かめたいと思います。  全国乳業メーカー牛乳屋さんが、一月二十九日、大都市の各所において公取の一斉調査を受けました。約百人ぐらいの公正取引委員会の職員が一月二十九日朝一斉に調査をいたしました問題は、牛乳小売り価格についてやみカルテルのおそれがあったということに基づくものだと考えられます。昨年生産者団体値上げ要求があり、メーカーがこれをのみ、そしてメーカーは卸、小売り価格の改定を要求し、十一月ごろ、農林省畜産局牛乳乳製品課全国牛乳商業組合に対して行政指導を行ない、牛乳屋が十円の値上げをしたいというのに対して、少なくとも並み牛乳は八円以下、加工牛乳は七円以下に押えよと行政指導をいたしました。十二月十一日、十二日、大阪乳業センターにおきましてこの小売りメーカー会合が行なわれた。そしてその翌日の新聞に、この会合牛乳小売り値段値上げが決定したと報じられた。これがやみカルテルを行なったのではないかという疑いを持たれたと思われるのであります。  以上の事実について、公正取引委員会及び農林省畜産局として事実関係について間違いがないかどうか、両所の御意見を伺います。
  4. 妹尾明

    妹尾説明員 お答えいたします。  公正取引委員会は、お話しのとおり、本年一月二十九日、牛乳値上げに関しまして牛乳メーカーそれから牛乳小売り店関係団体等十八カ所に対しまして立ち入り検査を行ないました。立ち入り検査を行ないました被疑事実の概要は、これは先生御案内のとおり、昨年の十二月十二日に牛乳メーカー販売店団体団体交渉を行ないまして牛乳販売価格協定した、これが一点でございます。もう一点は、牛乳メーカースーパーに対する販売価格一般小売り店に対するよりも高い値段に引き上げる、こういう協定をした。こういう二点につきまして立ち入り検査を行ないました。  以上でございます。
  5. 佐野宏哉

    佐野説明員 お答えいたします。  先生お話しのとおり、昨年の値上げに際しまして、値上げ幅を圧縮するように行政指導を行なったことは事実でございます。行政指導を行ないました対象の中には、先生お話し全国牛乳商業組合連合会も含まれております。それから先生お話のございました八円とか七円とかという数字は、そういう行政指導の結果生まれてきた価格水準であるということも先生指摘のとおりでございます。
  6. 横山利秋

    横山委員 そこで、事の判断をもう一ぺん御両所にたださなければなりませんが、高橋委員長は先般本院におきまして、行政指導といえども法的根拠のない場合はやみカルテル考える、こういう発言をされた模様であります。申すまでもなく、農林省が行なわれた八円以下ないしは加工品ならば七円以下ということは法律根拠を置かざる行政指導であったと思われるがどうか。また私の承知いたしておりますところは、総理諮問機関であります物価安定政策会議において、牛乳を安く、そしてなるべく値上げをしない、しなくてはならないにしても延ばす、それから大型をひとつなるべく採用しろ等意見が表示をされて、そして農林省がこれをもとにしてまた行政指導を行なった。すべてこれ法的根拠を持たざる行政指導だと考えられる。この点について間違いはないか。そうだとするならば、法的根拠のない場合はやみカルテルになるということについて、農林省もまたこれを承知をしておるかどうか、その点について伺います。
  7. 佐野宏哉

    佐野説明員 お答えいたします。  農林省が行ないました行政指導は、法律上の権限なしに行なわれたものであるというのは、先生御説のとおりでございます。  それから物価安定政策会議から値上げ幅を圧縮するように行政指導を行なうようにという御意見が私どものほうに伝達されておりました。  それから行政指導を行なえば当然にやみカルテルになるかどうかということにつきましては、農林省としてはそういうことではないはずだというふうに考えておりますが、有権的な解釈を述べる立場にはございませんので、御了承ください。
  8. 横山利秋

    横山委員 それでは公取に伺います。  公正取引委員会としては、約百人、十数カ所に立ち入り調査をしたのでありますが、その立ち入り調査にあたって、農林省がそういう行政指導をしておるという事実を把握をしておったのかどうか、伺います。
  9. 妹尾明

    妹尾説明員 お答えします。  牛乳につきましては、加工用原料乳につきましては法律に基づきまして農林省はいろいろ指導できるようになっておるようでございますが、飲用牛乳についてはそういった特別の法律上の規定はないように承知いたしております。  それから立ち入り検査にあたりましては、新聞等でそういうふうな記事が出ておったことは承知いたしておりましたが、農林省から特にそういう事実があったということについて聞いてはおりません。
  10. 横山利秋

    横山委員 委員長はじめ同僚委員にひとつお考えを願いたいと思うのであります。いまの二人の説明の中で事態は明白になりました。独禁法やあるいは不公正取引承知しております私どもにとりまして、大企業やみカルテルならいざ知らず、町の牛乳屋さんが農林省に日参をして値上げをしてもらいたいという、農林省は、それは高過ぎる、物価安定の政策会議意見もあることであるから、八円以下にしろ、加工牛乳は七円以下にしろ、しかもそれは統一的にでなくて、それを最高標準価格にしろ、こういうふうに説得をした。それに対して牛乳屋さんの言い分によれば、確かに大阪で十二日に会議はした。会議はしたけれども、こういう農林省指導があるということを連絡をして、情報を提供してそれで解散をしたはずだと主張をしておる。もし、独禁法やいろいろなことを知っておる私どもにしてみれば、そういうふうに農林省からこういう話がありましたよ、はいさようならといって散会しておれば、独禁法の問題は起こらない。これはよくわかる。よくわかるけれども、そういう法律解釈というものがはたして中小企業団体の中にそうまで浸透しておるかどうか、お役所言い分というものを聞いて、そこまで、八円以下なら、七円以下ならよろしいと言われたことについて、ああそうですかというてそれを腹におさめてそれが実行された。しかも実際執行価格を調べてみますと、八円以下ではない、さらに一円安、二円安、三円安というふうに全国ばらばらになっておる。これは牛乳ばかりではありません。いまの値上げムードの中で、各省行政指導をもって、しかも法律的根拠によらざる行政指導をもって業界中小企業界行政指導しておるということは、牛乳のみならずあらゆる問題がそうではないか。それを、公正取引委員会存在は知らないとはいわないけれども、そういう人も、役所行政指導についてまあ服従をし、それを実行したものに対して、百人、十数カ所にわたる全国一斉の立ち入り調査が行なわれた。これはどういうふうに理解すればいいのかということなのであります。  私が指摘したい第一は、一体畜産局としてそういう指導をするときに独禁法との関係というものを承知をしておるならば、独禁法との関係上この扱いについてはこうしなければならないよということについて十分に組合の諸君あるいは関係者に対して事実を知らせなければならないのではないか。それが行なわれておったならばかかることはあるまいにということが考えられる。それが第一点。  第二番目に、公正取引委員会役所関係であります。公正取引委員会がいま非常に世間の期待を集めており、公正取引委員会活動が断固として行なわれることが期待されておる。私ども公取の今後の活動を大いに期待したいところであります。期待したいところではあるけれども、今日の役所がほとんどといっていいほど行政指導をしておるという事実について、おれの知らぬことだとはたして言い切れるかどうか。こういうことについて公正取引委員会として、大企業だとかそういう寡占企業はいざ知らず、中小企業の問題についてはいささかの考慮もなしで一体それでいいものかどうかという点について、それぞれの御意見を伺いたい。
  11. 佐野宏哉

    佐野説明員 お答えいたします。  私どもといたしましては、値上げの話が起こりまして以来、一般論としては独禁法に抵触するような行為のないようにということは業界にも申しておりましたが、先生の御指摘を拝聴いたしまして、なお十分な努力が足りなかったのではないかという反省をいたしております。
  12. 妹尾明

    妹尾説明員 お答えします。  これは一般論でございますが、業界協定等を行ないます場合に、法律上の根拠に基づいて行なわない限りこれは独禁法関係で違法なカルテルとなる疑いがあるわけでございます。  それから行政指導につきましても、法律根拠に基づかない限りはそういう問題があるわけでございまして、この問題についてこれは違法なカルテルではないか、こういうことが正式に問題になれば、私どもとしては調査をせざるを得ない立場にあるわけでございます。調査をするにあたりましては、これは事前に外部に調査をするということを明らかにいたしますと、調査をいたしましても、特にカルテルにつきましては証拠の収集が困難である、こういう事情がございます。  それから牛乳の問題につきましては、これは牛乳メーカー小売り商組合との間の牛乳販売価格についての団体交渉のほかにもう一点、先ほど申し上げましたが、スーパー向けに特に割り高価格で出す価格協定をやっておる、こういう問題もあった、こういう事情がありまして、ああいう形で立ち入り調査を行なった、こういうことでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 もう一回公取に伺います。  農林省のみならず各省すべてでありますが、いまこの物価値上げの状況であるから各省行政指導をしておる。その行政指導が八円以下が適当であるか七円以下が適当であるかについては私どもも大いに議論があるところではある。しかし一斉に各省があらゆる品目について行政指導をしておるのが今日の実態であることは、公正取引委員会としても事情は十分おわかりだと思うのであります。問題は、いまの独禁法のたてまえからいって、行政指導法律的な根拠によらざる場合においてそれを金科玉条にして申し合わせをすればやみカルテルになるということは、これは法律解釈として動かしがたいところではあろうと思う。したがって行政指導があった、八円以下、七円以下であった、はいさようならということになればそれはいいということだと私は思うのであります。そこで公正取引委員会として役所がそういう全般的に行政指導をしておるという現実を認識をする場合に、公正取引委員会として全く役所関係なく、まことに自分の思うままに連絡もなく行なって差しつかえない、こういうふうにお考えなんでありましょうか。たいへんこれはむずかしいところだと思う。公取役所とが癒着をしてもらっては困る。困るけれども、あらゆる業界において行政指導が行なわれておるという今日、あらゆる業界において行政指導やみカルテルの問題が普遍的に存在をしておるということもまた私は事実であろうと思う。その点は単に公取を責めるばかりではなくて役所側にもいま言ったように反省を求めたわけでありますが、事中小企業の問題についてはもう少し各省側公取との間に統一見解のごときものがあってしかるべきではないか、こういうことを考えるのでありますが、公取側どうお考えでありますか。
  14. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 ただいま妹尾第一審査長のほうから申し上げましたが、一般論といたしまして行政庁指導によります価格の設定といいますか誘導といいますか、こういうものはどうしてもその間にカルテル行為が介在しやすいわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、行政庁法律的な権限なしに指導によって価格を設定したり誘導したりするということは原則的には適当でないというふうに考えております。  ただ、先生おっしゃいますように、確かに現在いろいろな物資につきまして指導が行なわれております。この点は、公正取引委員会と各官庁との間の指導カルテルとの関係についての考え方といいますか解釈といいますか、こういうものがまだはっきりとされておらないという面がある点も一つ原因だろうと思います。したがいまして、私どもはこの際、この指導カルテルとの関係というものについて関係庁との間にはっきりした解釈というものを確立をいたしまして、そしてこの点につきまして民間の方々にも役所はこういう考え方であるということを十分に御理解をいただくような方策を講じたいというふうに考えております。
  15. 横山利秋

    横山委員 私の言いたかったのもそれなんであります。高橋委員長中曽根通産大臣がそれぞれ自分立場で明白な言い方をしておる。明白な言い方ではとてもじゃないけれども中小企業関係においてはいま指摘をいたしましたような問題が随所に発生するおそれが顕著であると思う。そこでお答えのように、癒着をしてもらっては困るけれども、しかし何らかの行政指導カルテルとの関係について統一見解というものをぜひ示してもらいたい。  そこで最後にこの問題について伺いたいのですが、行政指導に従った結果相手方が損害をこうむることがある。たとえば牛乳の問題でいまスーパーの問題があるというお話がございましたけれども、そういう問題がかりになくて行政指導に従った結果だけである。それは法律的な根拠によらざる行政指導ではあるけれども、今日の事態として行政指導存在をするということは国民が首肯しておる、ある程度納得をしておることなんでありますから、公正取引委員会がそんなことはいかんといったってこれはいささかしかたがないことではないかと私は思うのであります。そういたしますと、行政指導に従った結果、そしてまたその会合やみカルテルを結んだものではないということが明白になった結果、これによって損害を受けた問題について国家賠償法の一条による損害請求権というものが一体存在するかいなかという点を考えなければなりません。事は牛乳屋さんの問題ではありますけれども、非常にむずかしい今日の政治経済情勢の中で、野党の私が言うということはいささか問題があるとは思いますけれども、理論的に詰めをしていった場合においては、行政指導に従った結果国民がそれによって損害を受けた場合には、それによって損害請求権が成立するかどうかという点については、私は成立するという判断を持つわけでありますが、どなたかお答えになる方がございますか。
  16. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私、そういう問題について考えたことございませんけれども、公権力の行使に当たる公務員という点に該当するかどうか、まずその点でちょっと疑問を感ずるわけでございます。
  17. 横山利秋

    横山委員 だから、行政指導というものが法律的根拠によらざるというところに問題が生ずる。そうすれば、この行政指導をした責任者というものは、一体国家と見なされるかどうかということだろうと思うのですね。そうすると、行政指導した個人責任は一体どうなるのか、国家でなければ個人なのかということになるわけであります。ですから、行政指導のあり方についてはよほど注意をしてもらわなければならない。法律的根拠によらざる役人行政指導をするということは、本来許されるべきではないという理論的な説に私は同意をいたしますけれども、今日的状況においては、それは政治的にやむを得ないと思われる。そうなりますと、論理的に一体どういうふうに考えたらいいのか。行政指導が徹底すればするほど、法律的効果をもたらさらざる行政指導が徹底すればするほど、お役人がいばる結果になる、お役人の権力が集中する結果になる。集中しておいてそれが間違った場合、それによって国民損害を与えた場合に、だれが一体責任をとるのか、だれも責任がとりがたいと民事局長はおっしゃるようです。どうなっているのか、どうしたらいいのか。だれが一体その責任をとるのか。お答ができませんか。お答えをされる適当な人がないのも原因でありますが、しかしこの場合には、農林省公正取引委員会、特に農林省牛乳乳製品課長行政指導をしたことは間違いありませんね。あなたがした。あなたがしたことによって国民損害を与えたという場合に、あなたは一体どうお考えになるのですか。
  18. 佐野宏哉

    佐野説明員 お答えいたします。  私どもが行ないました行政指導に従うためには、価格協定を行なうことなしには行政指導に従えないという性質の行政指導を行なったおぼえは、私どもとしてはございません。ただ、先生の御指摘がございましたように、行政指導に服する過程独禁法に抵触するようなことにならないためにはどうすればいいかということについて、もう少し親切に助言をすべきであったのではないかという反省はいたしておりますが、八円以下、七円以下にするために横断的な価格協定がなければ行政指導に従うことが不可能であったというふうには考えておりません。
  19. 横山利秋

    横山委員 これは一ぺん適当な機会に法制局なり何なり来ていただきまして、質問詰めをいたしたいと思いますが、ただ、この問題について私がくれぐれも申し上げたいのは、行政指導カルテルの問題について混迷が起こっておる。しかもそれは中小企業業界に対して、法律解釈はこうだから行政指導行政指導、あなた方は行政指導を各人に連絡して、はいさようならをしろということでやらなければならぬということが、国民の中にはそうわかるものではないということなのであります。ですから、熊田経済部長お答えになったように、今日行政政府として必要なことは、公正取引委員会政府の間に、この行政指導カルテルの問題について少なくとも統一的見解というものがどうしても必要であるという点を強く指摘をしておきたいと思います。  大臣がまだお見えになりませんから、次に主税局に伺います。  商法審査をしております過程で、弁護士公認会計士とそれから税理士、その職務の分野につきまして、先般も一応触れたわけでありますが、端的にいえば、税理士弁護士は、それぞれ法律ワク内において、依頼者権利依頼者利益を擁護し、それによって報酬をもらう、そうだと思います。公認会計士のほうは必ずしもそうではない。公認会計士は、財務諸表の公正な作成を会社をしてなさしめる。極端にいうならば、会社に対して一つの検事の役割りをする。そればかりじゃありませんが、その度合いが非常に強い。弁護士税理士は、会社に対して、依頼者に対して、文字どおり弁護士的な役割りをする、こういうふうに考えるのが私は一応常識的だろうと思うのであります。  ただ、そこの職域の目的からいって矛盾が生じますのは、一つには、公認会計士会社に対して検事的な役割りをするというのであるが、それにもかかわらず、その会社から金をもらってその役割りをするというところに矛盾があります。税理士のほうは、会社から報酬をもらって法律ワク内において、その会社なり個人納税者権利を擁護する、なるべく税金を安くするように法律ワク内で努力をするということなのであります。  この解釈がおおむね国民的に納得のできることだと思うのでありますが、それにもかかわらず、税理士の場合においては法律において中正立場ということが税理士法に強調されています。中正とは一体何であるか、私はかつて内閣総理大臣質問主意書を出しました。国民的に納税者として納得のできることは、税法というワク内においてその納税者権利なり利益なりを守るということであろうと思う。この点について税理士法が現状に即し得るようにこの中正立場を削除して、私がいま言ったような趣旨に基づいて、あるべき姿に税理士法を改正すべきではないか、こう考えているわけでありますが、主税局としてはどうでありましょうか。
  20. 渡辺喜一

    渡辺説明員 一定の業務範囲を限定いたしまして、ある特定の資格を持った方々に独占的にその業務を遂行させる、そういう権利を与えると同時に、反面またそういう公共性に応ずる義務を付与しておるという点におきましては、税理士弁護士公認会計士も共通していると思います。ただ、税理士の場合は、他の弁護士とか公認会計士とやや違ったニュアンスを持っておる。それが端的にあらわれておりますのは、税理士の場合は報酬をもらわなくとも、無報酬でその仕事をやるということについてもやはり排他的な法律構成をとっておるわけでございます。他の業種は無報酬の場合までも排除していない。これはやはり、税理士業務にはそれなりの他と違った公共性ということがあるからではないかというふうに考えるわけでございます。結局、税金というのはある特定納税者だけの問題に尽きない。特定納税者納税が適正に実現されないということは、結局他の納税者の犠牲においてそういうふうなことになるという関係もございます。また、国家財政というものに対する影響ということも当然考慮に入れなければならない問題でございます。そういうふうな関係で、税理士につきましては、たとえ無報酬であっても、それは税理士以外の者がやってはいかぬのだ、それだけ税理士仕事には公共性ということが強く要請されておるというふうに感ずるわけでございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 ちっとも私の質問に対する答えになっておらぬ。税理士がただでやってもいいからほかの人にやらしてはならぬ、そんなことは弁護士だって一緒、公認会計士だって一緒なのであります。私が言っているのは、今日税理士というものを国民がどう理解しているか、自分の税務代理行為をしてもらう、そして、そのお礼を報酬として出す、そして、まあ脱税の教唆をしてはいかぬけれども、節税のために努力をしてもらいたい、そういうことが税理士に対する国民的認識であることは間違いない。なぜ中正立場というのか、中正とは何か。一つの土俵場、つまり、税法という土俵場において常識的に納得できるのは、国を代表する税務署は一番高く取りたい、税理士は一番安く税金を納めさせたい、これは常識的に考えることなのです。それを話し合って、税法のワク内でここが妥当であろうということで、土俵のまん中でそれじゃ話がついたというのが、私はこれまた常識的なことだと思う。そのまん中がいわゆる中正立場かもしれぬけれども、一番出発点は、土俵の端と端とで、納税者の問題について税務署と税理士とが話し合うということが必要ではないか。したがって、中正立場でなくして、文字どおり国民的理解を得るように、税法のワク内において納税者権利を代表し、納税者利益を守りながら、社会の発展に寄与する、こういうような理解がまことに私は妥当な理解ではないかと思う。あなた方は税理士というものを何か国税庁なり政府の出先機関、外郭団体、そういうふうに思いがちではないか。その気持ちが法律の中に中正立場としてにじみ出ているのではないか、そういう感覚がもう間違っておると私は指摘しているのであります。重ねて答弁をいただきたい。
  22. 渡辺喜一

    渡辺説明員 税理士の職務というのは、究極すれば税法にきめられた納税義務を適正に実現するということに尽きると思うのでございます。  納税義務というのは税法できめられておりますが、これはきわめて抽象的なものでございます。しかし理論的には客観的な事実というものが存在すべきはずでございますが、それを税、会計の専門家たる税理士が、そういう知識のない納税者を手助けして、適正に実現するというのが本来の税理士職務であるというふうに考えるわけでございます。  で、その実現というのは、百であるべき税金が百十になるということはもちろんこれはいけないことでありまして、そういうことにならないよう納税者を擁護するということは、当然税理士の最も重要な職務でございます。しかしまた逆に、百であるべきものが八十になるということもいけないのでございまして、そういうものは税理士が一段高い立場から納税者指導いたしまして、百を適正に実現するということが税理士の職務であろうかと思うわけでございます。  したがいまして、税理士の職務というのは、納税者の委嘱を受けて仕事を行なうわけではございますが、完全に納税者立場そのものではございませんで、一段高い専門知識を持った立場から納税者指導し、税法に定められた納税義務を適正に実現していくというところにあるわけでございまして、そういうことを表現するために法律中正立場ということばを使っておるというふうに考えております。
  23. 横山利秋

    横山委員 あなたのたとえはたいへん悪いのであります。百と初めからきまっておるという論理、前提に立っておる。そうではないのです。一つ個人あるいは会社がその税について税法上五十から百までの中で争う。法律上、税法上五十の解釈もあり得る、百の解釈もあり得る、国は百の立場に立ち税理士は五十の立場に立つ、そこから出発するのが普通なのであります。納税者が三十と言っておったら、それはいかぬ、それは五十だというのが税理士としては当然であろう、その点は認める。けれども、出発点はあなたのたとえのように初めから百にきまっているのではない。五十から百までが税法で許される。その五十から百までの間に対してどういう話し合いが行なわれるか。税理士は五十だと言う、税務署は百だと言う。そして話が始まるのがきわめて普遍的な条理なのであります。その五十の立場に一生懸命立って、そうして百の立場の税務署と話をするという意味において、納税者権利を代表し、納税者から報酬をもらって、税法上のワク内においてその努力をするというのがあたりまえの解釈なのであります。あなたの言うのは初めから百があるような顔をしておる。神様でもあるまいし、だれが一番最初に百だと言いますか。あり得ない論理を持っては困る。  もう一つ、同じく税法上の税理士法の改正についての質問をするのですが、今度商法が改正になる。そして監査法人は監査と税務が両立しないということになる。そうすると、新日鉄とか三菱というような大きな会社を担当をする公認会計士は、おそらく監査法人だと思う。監査法人が数人あるいは場合によって数十人の補助者も使って、その新日鉄の監査をします。一方税務と監査と両立しないから、税理士はその新日鉄なりあるいは三菱の税務を一人でやる、いまのたてまえはそうなっていますね、一人でやる。きわめてこれも論理的に矛盾があるではありませんか。八幡の監査は数十人でやる、八幡の税務は一人の税理士がやるということについては私は非常に矛盾を感ずるわけであります。もしも監査というものが、と同様に税務というものも国家的な大きな問題であるならば、マンモス会社の税務が一人の税理士が一体できるだろうか。税理士は脱税を調査するわけにはいかぬ。しかし脱税があるとしたならば、それを適当に、適切に税法上の軌道に乗せるようにしなければいかぬ。一人の税理士が一体そんなことができるだろうか。そうなりますと、監査法人が必要であるならば税務法人もまた必要になってきたのではないか、そういうことを考えるのでありますが、どうです。
  24. 渡辺喜一

    渡辺説明員 現在、公認会計士についてだけ監査法人という制度があるわけでございますが、弁護士とか税理士にはそういう法人制度というものがまだ導入されておりません。しかしまあ経済の規模というものがだんだん大きくなりますし、複雑化してまいりますので、おっしゃるようなそういう方向での検討というのは私どもも必要かと考えております。
  25. 横山利秋

    横山委員 大臣がお見えになりましたので、問題の本論に戻らなければなりませんが、私があなたに言いたいことは、まだ税理士法改正の必要性という点について数点ございます。数点ございますが、少なくとも今日の税理士法が競争試験でなくして税務署から天下りで来た税理士と、それから一般、狭い門をくぐり抜けていった税理士とその業務的な運営の違い、やり方、そして憲法に基づく不平等、そういうことを考えますと、この際税理士法を改正すべきである。政府税理士法の改正の検討に着手すべきである。いろいろな過去のいきさつはあろうけれども、今日の経済情勢の大きな変化と、零細企業に対するいまの税務署のあり方と、大企業に対する税務署のあり方等々を考えてみて重点の指向について、税務の重点の指向のあり方についても考えられるべきであり、その点について税理士のあり方も考えられるべきであるという点から言うて税理士法の改正を検討に着手すべきである、私は痛切に主張しておるわけでありますが、いかがでございますか。
  26. 渡辺喜一

    渡辺説明員 先生のおっしゃるとおり、現行の税理士法が万全のものであるとは私ども考えていないわけでございまして、いろいろな問題がございます。  いまおっしゃった試験制度というふうな問題ももうすでに十年前に税制調査会からも必ずしも適切なものではないという答申もいただいておるわけでございます。また、世の中の経済というものも絶えず変動、流動しておるものでございますから、そういう意味からも法律というものは常に新しい目で見直していかなければならないということは当然かと考えておるわけでございます。  ただ、税理士法の改正というものは税理士のあり方についての基本的な検討が必要であることは言うまでもございませんし、さらに税務執行の面につきましても相当大きな影響を持っておる重大な課題でございます。税理士法のような職域法といいますか、職場法というものは、単に税理士の職場に限りませんで、他のもろもろの各方面に非常に微妙な影響を持つ問題でもございます。したがいまして、私どもとしてはまずそういうもろもろの利害関係をどういうふうに調整していくかということから着手しなければならない、非常に根の深い問題であろうかと思います。決してサボっておるわけではございませんで、そういう意味での着手は、商法もかりに無事通りますれば早急に開始したいと考えておりますが、税制調査会に具体的な案をはかるというふうな段階にはまだなかなか到達しないということではないかと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 回りくどいことをおっしゃっておるのですが、私どもとしては税理士法の改正を始めよと言っているのです。始めるのですか、始めないのですか。サボるのですか、やるのですか、どっちかはっきりしてください。
  28. 渡辺喜一

    渡辺説明員 私が先ほど申し上げましたような意味でのもろもろの関係の調整、全体がそういう雰囲気が醸成されてきませんと、なかなかやってみても成果があがらないということもございますので、まずそういうもろもろの雰囲気を醸成していくということから始めたいと考えておるわけでございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 そのもろもろというのは何だか私にはよくわかりません。  要するに、あなたの言いたいことはこういうことですか。法律改正になるような機運、その機運を醸成したい、こういうわけですか。
  30. 渡辺喜一

    渡辺説明員 そのとおりでございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  もう少し時間がほしいところでありますが、大臣がおいでになりましたから……。  大臣は、この間同僚議員の商法に関する質問の最後に、商法について、法務省として商法の改正をされる、商法についてさらに具体的に十分法務省としてその法律の目的が達成するように努力をしたい、表現がちょっと違っているかもしれませんが、そういう決意を述べられましたが、一体その決意というのはどういう事実、どういう方式、どういうやり方という裏づけを持ってのお話でございましょうか。それとも抽象的に何となくおっしゃったのでありましょうか、たいへん失礼でありますがへそのあなたのものの考え方を伺いたい。
  32. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 御承知のとおり世の中は非常な速度で進歩したり、変化をいたしております。したがいまして、今回このような商法改正を提案いたしまして御審議をいただいておりますが、さらにわれわれといたしましては全般について検討を続けたい、かような意味で申し上げたのでございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 私のお伺いしたこと及び同僚委員が伺ったことはそういうことではなかったようなんでありますが、つまり私は今後の商法改正の問題でなくて、通過する商法についてその運用を十分法務大臣として強化をしたい、そういうふうに伺ったと記憶しておるのですが、そうでないのですか。これからの商法改正をさらに継続するという意味において熱意をお話しになったのですか、どちらですか。
  34. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 今回の改正は主として経理及び監査の面で改正をいたしておりますので、まだほかにも問題点は確かにございます。  たとえば五十八条のように非常に厳重な規定があるにかかわらず運用されていないものもございます。これらの点につきましては今後とも引き続いて検討を続けたい、かような意味でございます。
  35. 横山利秋

    横山委員 大臣は五十八条を例におとりになりました。私の質問の焦点もそこにあるのでありますが、五十八条というのは「裁判所ハ左ノ場合ニ於テ公益ヲ維持スル為会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノト認ムルトキハ法務大臣又ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ会社ノ解散ヲ命ズルコトヲ得」という規定なんであります。商法は五十二条において「会社トハ商行為ヲ為スヲ業トスル目的ヲ以テ設立シタル社団ヲ謂フ」とあります。衆参両院を通じて会社の社会的責任というものが強く指摘をされています。その意味において五十二条について改正をすべきではないか。単に商売をする、もうけるための社団であるというふうに規定するには今日の経済状況からいって適当ではないということがしばしば議論がされたわけであります。  念のために大臣に想起をしてもらいたいのでありますが、今度の予算委員会で大企業がどんなことがあったのか、新聞やテレビでお互い承知しているところでありますが、念のために商法審査のために列挙をいたしますと、石油連盟がカルテル行為をした。共同石油は減産指導をして私文書を偽造した。花王石鹸は花王レポートなるものをもって虚偽の広告をした。アルミはやみカルテルをして独禁法違反の疑いを受けた。洗剤はシールを張りかえて独禁法や薬事法違反の疑いを受けた。そして出光は、集中排除法によって持ち株制限をしたのだけれども、脱法行為をもってまた株を集中して独禁法違反の疑いを受けておる。三菱商事は灯油の凍結価格に違反をする疑いを受けた。三井物産、三菱商事、住友商事は脱税の事実があった。それから丸紅は農地法違反の疑いを受けた。ライオン油脂や花王石鹸は買い占め売り惜しみを規制する投機防止法に違反をする疑いを受けた。松下は引き当て金で税法に対して脱税行為をした疑いを受けた。大昭和製紙は五回にわたるカルテル違反をやった。住友化学や三井化学は、カルテル違反として独禁法違反五件の勧告を受けた。住友化学に至っては、今後は絶対にいたしませんという念書を入れているにもかかわらず、またやった。昭石は自分のところでつくった文書を裁断機にかけて、これを隠滅した疑いを受けた等々、枚挙にいとまがないこのような状況というものをどう考えるか。これははたして今日の大会社、独占資本がやっている希有な例であるのか。本質、体質によるものではないか。本質や体質によるものであるとするならば、商法五十二条はそのままで一体いいのか、そういうことがしばしばわれわれが去年指摘したところなんでありますけれども、今日においてますますその五十二条改正の必要が痛感される。その点を法務大臣はどうお考えになるかということが第一であります。第二番目に、そういう五十二条でありながら、商法は社会的責任ということをほとんどいっていない法律ではあるけれども、ただ一つ五十八条というものは、会社の解散命令というものをうたっている。この五十八条について歴代の法務大臣は一回もこれを利用したことはない。法務大臣が裁判所に対して請求をした事実というものは一回もない。一体法務省は五十八条を運用し得る体制にあるのかどうか。だれが一体五十八条を自分仕事だと思っておるか。どのセクションが五十八条をおれのところの課の仕事だ、局の仕事だと考えているのか。だれもないではないか。五十八条は空文ではないか、そう考えるのでありますが、この二点について大臣の御意見を伺いたい。
  36. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 第一点について申し上げますと、こういうような世の中の変動期に、いろいろと欠陥が暴露されたというように一口に言うこともできると思うのです。したがいまして、商法のこれからの運用につきましては、今回の改正はもとよりでございますが、将来に向かいましても、商法上の商人あるいは商業を営む法人というものについて、いろいろな角度から検討を非常に迫られておるような気がいたします。したがいまして、そういう方向に向かって今後も検討を続けたい、かように思います。  第二点でございますが、これは確かにりっぱな条文でありますけれども、その条文が活用された例がないというまことに遺憾なことでございます。ただ法務省として、法務大臣が解散命令を裁判所に要求するというようなことは、何か事件がありまして、その事件の捜査を通してその法人が非常に違法な法人である、あるいはこの五十八条に規定したような不都合な法人であるということが的確につかめない限りは、法務大臣として解散命令を要求するというようなことはできませんが、問題は、債権者とか利害関係者とかいう人たちが、最近ではいろいろ土地の問題なんかについては初めから違法覚悟のような法人も、新聞紙上を見ておりますとあるようでございます。したがいまして、これからの時代におきましては、この五十八条を社会的にももっと債権者や利害関係人が活用するようになることを期待するといいますか、希望するわれわれの立場でございます。しかしそういう五十八条のようなりっぱな条文があまり社会的に知られてはいなかったということは、われわれ自身法律を勉強した者でもあまり関心を持たなかった条文でございますが、これからは社会的に大いにこういう条文について、法律の制度がある以上は、いかにしてこれを活用するかということについて関心を高めていく必要がある、かように思っております。
  37. 横山利秋

    横山委員 それでは五十八条の解釈について、ほんとうにあなた方が五十八条を今後重視をして発動する気持ちがあるとしたならば、五十八条の解釈について伺います。  まず「公益ヲ維持スル為」という内容があります。ここでいう「公益」というものは何でありましょうか。公益といえばきわめて広い意味に使われる。狭義の意味もまたあるであろう。必ずしも国家社会全般の利益の意味に限らず、広く会社をめぐる利害関係一般利益を含むと解釈さるべきである、こう私は思います。そういう解釈でよろしいかどうかというのが一つ。  それから「会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノ」という厳密な規定がありますが、「会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノ」という判断、そういう条件というのは一体どういうものであるか。また許すべからざるときというのはいかなる条件であるかというのが一つであります。五十八条の一号から三号まではきわめて普遍的な条件であるが、この一号から三号までに該当すればいいのか、該当する上に許すべからざる条件というものがつくのであるかどうか、その点を伺います。
  38. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 非常に専門的な問題でございますから、民事局長からお答えさせます。
  39. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まず「公益ヲ維持スル為」の「公益」の意味でございますが、先生おっしゃったとおりの意味に考えてよろしいと思います。  それから「公益ヲ維持スル為会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノト認ムルトキ」、この「会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノ」というのはいかなる場合かと申しますと、他の手段をもってしては会社の反社会性を除去することができないとき、こういう意味でございまして、たとえば取締役を解任するとかあるいは損害賠償、刑罰、営業停止といったような措置によってもなおかつ会社の反社会性を除去することができない、こういう場合の最後の手段として解散命令が認められておるわけでありますので、そういう場合に初めて「会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノ」と認められる、こういうふうに考えるわけでございます。  それからこの五十八条の一号、二号、三号の各号に該当する場合のほかに、さらに「公益ヲ維持スル為会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノト認ムルトキ」という要件が加わって必要であるかどうかという点につきましては、そのとおりでございまして、一号、二号、三号の要件に形式的に該当する場合でありましても、そのほかさらに最初に申し上げましたような「公益ヲ維持スル為会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノト認ムル」、こういう要件が必要になってくるわけでございます。
  40. 横山利秋

    横山委員 五十八条は、法務大臣が裁判所に請求をするという法務大臣権限義務が一つ、それから「法務大臣ヨリ書面ニ依ル警告ヲ受ケタルニ拘ラズ法令若ハ定款ニ定ムル会社権限ヲ」という法務大臣の警告義務、警告権といいますか、その二つがあるわけであります。私がいま五十八条を真に運用するとしたならば、いま質疑応答いたしましたような五十八条運用体制というものが、いま法務省にないではないか。一体、いまお答えになったように、「公益」とは何だ、「会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノ」とは何だ、法務大臣が請求する場合とは何だ、法務大臣が警告を発する場合、条件というのは何だということについて、何らの公的な省令なりあるいは政令なりそういうものがないで、五十八条を運用するといったところで、これは絵にかいたぼたもちである。この際、五十八条運用体制について、法務省はしっかりした基盤、体制をつくっておくべき必要がある、そう思うが、大臣はいかがですか。
  41. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 大体この条文をよく読みますと、各関係官庁がそういうような事実を知ったら法務大臣に通知をして、それから法務大臣はそれを受けて処置をする、警告をしたり解散の請求をしたりという手続になっておるように思うのでありますが、お説のとおり、これだけの条文がありながらその体制がないということは、まことに遺憾なことでございまして、各省及び法務省として、そういう体制を今後は時代の進展に伴って整えていく必要があるというように感じております。
  42. 横山利秋

    横山委員 公取に伺います。  非訟事件手続法第十六条、検察官への通知義務、「裁判所基他ノ官庁、検察官及ヒ公吏ハ其職務上検察官ノ請求ニ因リテ裁判ヲ為スヘキ場合カ生シタルコトヲ知リタルトキハ之ヲ管轄裁判所ニ対応スル検察庁ノ検察官ニ通知スヘシ」、それから百三十四ノ四、法務大臣への通知義務、「第十六条ニ規定スル者ハ其職務上商法第五十八条第一項ノ請求又ハ警告ヲ為スベキ事由アルコトヲ知リタルトキハ之ヲ法務大臣ニ通知スベシ」、この非訟事件手続法をなぜ公取委員会は実行しないのですか。
  43. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 私、担当でございませんので、ちょっとお答えしかねます。
  44. 横山利秋

    横山委員 担当でないからといったところで、この非訟事件手続法というのは厳然たるもう疑いをいれない文章であって、法務大臣の通知義務、「第五十八条第一項ノ請求又ハ警告ヲ為スベキ事由アル」とき、これは請求というのは解散命令である、警告というのは法令違反の場合の警告である。明らかに、先ほど申し上げたようなカルテルの違反行為だとかあるいは公取が今日までさまざまな立ち入り調査なりあるいは処分をしたものは、すべて非訟事件手続法百三十四条ノ四に該当するものだ。あなたは手元に非訟事件手続法ありますか。ありますね。それを読んで、どうお考えになる。  また、法務省としても、この非訟事件手続法というものが、あなたのほうの管轄になるとするならば、どうして一体この両条の運用を法務省として、もし公取なりあるいは関係官庁が何も言ってこなかったならば、なぜ言ってこないとなぜ注意をなさらぬのですか。そういう気持ちが両省とも全然ないのですか。これは空文ですか。やろうと思えば、幾らでもやれる方法があるじゃありませんか。なぜやらないのですか。
  45. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まず警告の要件でございますが、これは五十八条の三号にございますように「会社業務ヲ執行スル社員又ハ取締役ガ」「法令若ハ定款ニ定ムル会社権限ヲ踰越シ若ハ濫用スル行為」をしたとか「刑罰法命ニ違反スル行為」をしたということが、一つの要件になるわけでございますが、それとともに、警告をしてもなおその行為を継続する場合には、先ほど申し上げましたような公益を維持するために会社の存立を許すべからざるものと認められる、こういう状況にあることが必要であろうと思います。  ところで、先生指摘になりましたのはやみカルテルの問題であろうと思いますが、この事件につきましては現在検察庁において捜査中でございますし、この業務を執行する取締役がどの程度関与しておるか、はたして刑罰法令に違反する行為と認められるかどうかという点が、まだ最終的に決着がついておりません。さらに、先ほどの公益上の要件といった点につきましても、これは相当むずかしい判断が必要になると思われます。そういう現在のいろいろな状況から見まして、この段階においてそういった措置をとるというのは、少なくとも新聞記事によって私ども承知しておるわけでございますが、その程度で警告を発するということはまだ適当でない、このように判断いたしたわけでございます。
  46. 横山利秋

    横山委員 民事局長、十六条をもう一ぺんお互いに読みましょう。「裁判所其他ノ官庁、検察官及ヒ公吏ハ其職務上検察官ノ請求ニ因リテ裁判ヲ為スヘキ場合カ生シタルコトヲ知リタルトキハ」とある。「公吏」が入っているのですよ。別に裁判所の判決がなくてもいいのですよ。検察官が裁断をしたあとでなくてもいいのですよ。その前に、十六条によって通知の義務が発生する。そうして、百三十四条は「第十六条ニ規定スル者ハ其職務上商法第五十八条第一項ノ請求又ハ警告ヲ為ス」警告というのはカルテル違反を五回も受けているのですよ、その会社は。そうだとすれば最終的処分を、警告をするかいなとにかかわらず、少なくともそういうようなことについては百三十四条ノ四、十六条の発動は当然あってしかるべきではないか。なぜ通知をしてこないのか。なぜ通知をしない。そういう問題が非訟事件手続法によってなさるべきではないか。それをあなたは何とかして十六条や百三十四条の発動をしたくない、むしろしたくないという気持ちが動いている。今日の事情から言うならば何とかしてしたい、させなければならぬ、なぜそういう気持ちにならないのですか。解釈に幅があるとしたならば、今日の事態商法の運用なりあるいは大会社に対するそういう違法行為、違反行為については、法律に現にあるのだから、あるものを活用して違法ではないのだから、適当なんだから、やる気にならなければだめですよ。あなた方自身が勉強不足でサボっておって、国会指摘をされたら、いや、それはやらなくてもいいのです。やってもいいのでしょう。やってどうして違法なんですか。お互いに公取にしたってあるいは法務省にしたって、関係各省にしたって、今日の事態について、商法の運用についてまじめじゃないですよ。だから、どんな法律ができましょうとも、そこに魂を入れなければだめだ。この間、法務大臣は最後に同僚委員質問答えて言われたことは、商法運用に魂を入れると私は理解した。どうも間違っておったらしい。こんなことではだめじゃありませんか。
  47. 川島一郎

    川島(一)政府委員 決して商法の運用をサボっているというわけではございません。要件に該当する場合には断固としていたします。ただ、先ほどから御説明を申し上げておりますように、法律の要件というものはやはり無視するわけにはまいりません。この解散命令という手続は、会社の消滅を来たすという……(横山委員「解散命令の前に警告があります」と呼ぶ)重要な問題であります。そうして、その警告は解散命令の前提要件としてなされるものでありますから……   〔横山委員「そうばかりもいえぬ、そういう解釈をして逃げようとしているのだ、それが逃げている手段だ、方法だ」と呼ぶ〕
  48. 小平久雄

    小平委員長 ちょっと聞いてください。
  49. 川島一郎

    川島(一)政府委員 解散命令の前提手段であるというふうに考えられますので、現在事態が必ずしも明白ではございません。私ども立場におきましては。事態は必ずしも明白ではございません。また、直接この事件に関与しておられる公取あるいは検察庁からの通知もございません。そういう段階におきまして、新聞記事のみによって法務省が動き出すというわけにはまいりません。そういうことでございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 新聞記事によって動くわけにはいかぬとおっしゃる。しかし、牛乳屋さんの話は、十二月十三日新聞記事でそこで決定したと報道されたのが、公取が動き出す一つの要因であったと私は見ているわけです。新聞というものをどういうふうに判断するかは別だ。しかし、現に事実が報道されたときに、役所から言ってこぬから新聞だけでは動かぬ。非訟事件手続法があっても、なおかつこれは何の通知もしてこぬ。通知してこぬのは、通知するつもりであるけれども、通知せぬのではない。知らないから通知してこない。そうだと思いませんか。どうも公取のいまの話では、そういう手続があったということは知らなかったんだという顔をしてみえる。知らせるのはあなた方の責任じゃありませんか。こういう場合には知らせるべきですよ。非訟事件手続法があるのですよということがちっとも管下、各官庁に伝わっていない。そういうことを私は指摘している。通知文があるということを、存在を、そして通知しなければならない義務の事実を励行せしめるように商法の運用をしろ、こう言っているのです。どうも川島さん逃げてばかりおるのですが、法務大臣、私の言うことおわかりでしょうね。では、あなたの政治的判断のある御答弁をお願いします。
  51. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 いまの横山委員の御指摘の非訟事件手続法の規定は、法律体系からいえば一種の訓示規定だと思いますが、(横山委員「違うですよ」と呼ぶ)訓示規定であっても、規定がある以上はできるだけ各官庁及び官公吏はそれを守るべきであると私は思います。従来社会情勢がそういうことになっていなかったのでみなうかつにきたのが現実ではないかと思うのです。ですから、最近の社会情勢、ことに石油危機以来の社会情勢というものから見ますというと、これらの訓示規定を最高度に活用して、効果あらしめるようにするのが本来ではないか、かように思っております。
  52. 横山利秋

    横山委員 局長、大臣に手続規定を見せてあげなさい。それが訓示規定だといったら取り消しをせんならぬ。ちょっと見せてあげてください。何が訓示規定だ。それは取り消しだ。そんなことは子供でもわかる。訓示規定だなんてばかなことを言われてもだめだ。
  53. 川島一郎

    川島(一)政府委員 非訟事件手続法第百三十四条の四の規定、これは大臣が訓示規定というふうに申し上げたわけでございますが、大臣の申し上げた御趣旨は、この規定に違反した場合の罰則がないということを言っておられるのであろうと思います。(横山委員「そんな助け舟はだめだ、訓示規定ではないということだけはっきり言いなさい」と呼ぶ)訓示規定というのはことばが適当でないという御意見もごもっともであろうと思います。
  54. 横山利秋

    横山委員 御意見もじゃない。あたりまえのことじゃないか。だめだ、大臣、取り消しなさい。これは率直に取り消したほうがよろしい。
  55. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 私ども実は法律を勉強する段階で、罰則とか締めくくりのある法律はこれは強行規定であり、それから、そういう罰則等の伴わないものは、法律にいろいろ書いてありますが、それらは訓示規定であるというような解釈できたものですから、私はたぶん訓示規定であろう、こう申し上げたのですが、あるいは解釈上どういうことになりますか、その点もし取り消したほうがよろしければ取り消しますが、どうもこの規定には罰則がないようでございますから、さような感じを申し上げたわけでございます。横山委員がそれは訓示規定じゃないのだ、強行規定だ、こうおっしゃれば、私のほうは勉強も足りませんから取り消しも苦にはいたしませんが、さような解釈から起こったものであるということを御了解いただきたいと思います。
  56. 横山利秋

    横山委員 何だか歯切れが悪いな。どこの法律にお役人に対して「すべし」といっておいてお役人に対する罰則規定のある法律がありますか。ほとんどないですよ。民間に対しては、「すべし」といったら罰則規定がある。お役人に対して「すべし」といっておいて罰則規定のあるのは少ないのです。これが日本の法律の悪いところなんですけれども……。だけれども、少なくともこの十六条と百三十四条というのは、「通知スベシ」となっておる。「検察官二通知スベシ」となっている。ですから、罰則がないからこれは訓示規定なんてばかなことを、法務大臣ともあろう方がおっしゃるものではありません。  日本アイ・ビー・エムは先般財務内容を公開をいたしました。この日本アイ・ビー・エムが商法の規定に反する——商法二百八十三条で計算書類の公告を義務づけ、違反した場合には最高三十万円の過料を支払うことになっておるのにかかわらず今日まで日本アイ・ビー・エムは財務内容を公開しませんでした。この点について、今度公開に踏み切ったことはいいでしょう。けれども、こういうことは、商法二百八十三条におまえのところは違反しておる、罰金をとるという責任のあるところはどこですか。
  57. 川島一郎

    川島(一)政府委員 御指摘のとおり、過料に該当する行為であります。これは利害関係人が裁判所に申し出るのが通常の手続でございます。
  58. 横山利秋

    横山委員 そうすると、商法二百八十三条に該当をしておっても法務省は申告がなければ知らぬ顔である、こういうことをおっしゃりたいのですか。
  59. 川島一郎

    川島(一)政府委員 貸借対照表をどの会社がサボっておるか、貸借対照表の公告をどの会社がやらずにおるかということは、一々調べておりません。また、調べ切れるものではございません。これは何のためにするかと申しますと、株主とか債権者とか、そういった利害関係人に知らせるためであります。したがいまして、その公告がなされなかったことによる不利益をこうむった利害関係人が裁判所に対して申し出るというのが商法の期待している手続であります。
  60. 横山利秋

    横山委員 もう一ぺん聞きますが、二百八十三条違反の罰金を取るお役所はどこですか。
  61. 川島一郎

    川島(一)政府委員 罰金ではございませんで、過料でございます。これは裁判所が徴収いたします。
  62. 横山利秋

    横山委員 そういう行政事務をつかさどっているところはどこですか。つまり、私の聞いているのは、民事局なり法務省は、この運用について、私の所管じゃありません、そういう法律が実行されておらなくても私の知ったことじゃありません、こういうつもりか、それとも私の所管でございますというのですか、どちらですか。
  63. 川島一郎

    川島(一)政府委員 一般の私人間の関係でございますから、直接これに関与する役所というものはないように承知しております。
  64. 横山利秋

    横山委員 私が先ほど大臣質問をいたしまして、商法というもの、そしてまたその中で先ほどくどく言った公益というもの、そういうものについて解釈を確かめたのは、そういうところに基盤があるわけであります。公益というものを今日の株式会社の利害関係者は狭義に考えられるべきではない。国家、社会に対する責任も持っている。それから消費者に対する責任も持っている。狭義の意味の株主だとか、狭義の意味の会社役員だとか、そういうものに限定さるべきではないという点について、先ほど民事局長も同意をせられたと思うのであります。今日、財務内容の公開をするということが、広くたくさんの利害関係者、広範な社会的責任、そういう意味において感じられなければならないことであろうと私は思う。民事局長お話によれば、商法二百八十三条の運用は私の所管ではない、法務省は関係ない、狭義の意味の利害関係者がおそれながらと裁判所に訴え出るだけの話だ。そういう解釈が今日時点の経済、今日の状況からいって適当だと思われますか。私はいろいろと例証をあげてきょう言っておりますが、商法というものの改正は法務省担当である、しかし商法を運用するには、おれのところは全然関係な、どうもこういうことが言いたいらしいのであります。現にそういうような運用をする体制もセクションもありゃせぬ、どうもそういうことが言いたいらしいのであります。それでは、一体われわれがこの基本法である商法を議論しておっても、うどん屋さんやあるいは八百屋さんに何も株主総会をやらなければ罰則を科するという意味で言っているのじゃありませんよ。しかし大企業のあり方、二百八十三条に違反してもちっとも知らぬ、こういうようなところが方々にあるということは調べればすぐわかる。わかっておるのにかかわらずおれの知らぬこっちゃというような体質、体制、そういうシステムというものが私にはがまんがならぬ。何のために一年も二年も三年もわれわれは商法を議論しておるのかということなんであります。どうですか、私の言うことが間違っていますか、大臣
  65. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 確かに、公益ということは利害関係者のみではないということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、民事訴訟法といいますか、あるいは裁判のたてまえからいいますと、利益なければ訴権なしという原則がありますように、やはり何らかの利害関係のある人がその主張をしてくれませんと、一般的にはなかなか事態を把握しにくい状況にあると思います。  ただ、お話しのように、商法の運用全体からいいますと、われわれいままで世の中が安泰過ぎて不勉強な点なりあるいは怠慢な点が多々あったと思うのです。しかし世の中が最近のような激動期に入ってまいりますと、さらにその法律の運用についてもっともっと勉強し、あるいは足らざる点を補って万全を期する努力をする必要がある、かように私は痛切に感じております。
  66. 横山利秋

    横山委員 どうぞひとつ、痛切に感じておるだけじゃなくて、法務大臣として、商法運用について法務省が責任を持つように、責任を持つということは執行体制ができるように、そして法解釈川島さんの言うような狭義じゃなくて広義に解釈して、商法を運用することによって大企業の独善や——予算委員会でもろもろの問題があるときに、法務省は関係ないというような顔をなさらぬようにしてもらいたい。本来ああいうことの発生する根本原因というものは商法である。商法の基礎が感じられなければならぬ。  次に、企業会計原則について伺います。  衆参両院を通じて、商法それ自身ではないけれども企業会計原則が密接不可分な問題としてずいぶん議論されました。この議論というものは両院の附帯決議にもあらわれておる。いまその内容については私は再度いろいろ言うつもりはありません。しかしながら、衆参両院の附帯決議及び膨大な質疑を率直に考えて、この際、企業会計原則修正案については企業会計審議会であらためて再検討すべきではないかと、私は痛切に思うのであります。  衆参両院の審議の模様を端的にいいますれば、継続性の原則、それから引き当て金の問題、いろいろあるけれども、私はその二つに尽きると思います。正当な理由なくしてということばを削除した。議論としては、正当な理由ということは、神さまでもあるまいし、何が正当かわからぬから、書いておいても書いておかなくても同じこっちゃ、変更したときには理由を付記すればそれでよろしい、こういう論理であります。予算委員会のいろいろな議論を皆さんもつぶさに御存じだと思うのでありますけれども、ああいう議論を通じてみて先ほどあげたような各社の状況を考えてみますと、株主は一体どちらが財務内容の公正な状況を知悉できるかという点についてやはり重大な疑問が残ると思うのであります。真実を把握するのに、粉飾決算を防止するのに、配当金の操作を見破るのに何が一番適当であるかという点については、継続性の原則と引き当て金の問題についてずいぶん私は議論が残るけれども、いまここでその二つについてもう一ぺん議論を再開するつもりはありません。時間がございません。しかし、衆参両院を通じての質疑と附帯決議の精神を踏まえてみますと、この国会の附帯決議の院議となった状況と今日の大企業の状況をもう一度照らし合わせてみまして、企業会計審議会はあらためてこの審議内容も十分審査をして、そして修正案について再検討をすべきである、こう考えますが、政府考えを伺いたい。
  67. 田中啓二郎

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  ただいまおっしゃいましたとおり、企業会計原則修正案に関しましては、確定前にいま一度見直しをしようと考えております。
  68. 横山利秋

    横山委員 率直にお考えを披露していただいてけっこうであります。くどくは申しませんけれども企業会計原則につきましては、今日の情勢下において私どもずいぶん、右から左からいろいろな意味で議論をいたしました。この企業会計原則というものは、将来を考えてみますと、いま日本だけできめるのか、国際的な共通点を見出していく必要性も将来は起こると思うのであります。ですから、長年の努力ではあろうけれども、衆参両院の審議を踏まえて、主として継続性の原則と引き当て金を中心にして、いまお話しになりましたように再検討をされるということでございますから、それを了承して次の質問に移りたいと思います。  外国の公認会計士と日本の公認会計士との関係であります。いま日本に五十人ばかり外国の公認会計士が、日本の公認会計士試験に受かって存在をしておるという話であります。昔、いまのように公認会計士制度が日本において発展をしていないときならいざ知らず、今日、日本の公認会計士の諸君がいろいろと努力をされておる状況から考えますと、いまごろ外国人が日本の公認会計士試験の受験ができるという必要性はないのではないか。現に各国は公認会計士試験に外国人をどのくらい受験資格として認めておるか。私が調べたところによりますと、米国では二、三州しか受験資格がない。あと各国を調べてみますと、日本のようにやれるところはほとんどないという話であります。最近そういう世論がありまして外国人の試験をやっていないようでありますが、私が常識的に考えましても、外国でりっぱな公認会計士といえども、日本語ができるわけではなし、日本において日本の法律に通暁しているわけではなし、そう考えますと、この際外国人の日本公認会計士受験資格というものをもう削除してもいい時期ではないか、そう考えますが、いかがです。
  69. 田中啓二郎

    ○田中説明員 この制度は、公認会計士制度ができました際、その十六条の二として設けられたものでございますが、おっしゃいますとおり、四十六年四月以降一回もこの資格試験というのは行なわれておりません。当初はそういう外国公認会計士によって国内に刺激を与え、適正な監査に役立たせるという趣旨もございました。また、三十七年には公認会計士審査会というところの論議で、やはりまだこれはあってもいいじゃないかという結論だったのでございますが、そのときから十年以上経過しておりますし、最近四年一つも行なっていないということにかんがみまして、われわれのほうといたしましては、公認会計士審査会にどうしたものかという付議をしてみてもいいのではないかと考えております。
  70. 横山利秋

    横山委員 ぜひひとつその線で検討願いたい。  それから二つ目は、ADR監査なんでありますが、外国に本社を持つ会社が日本において上場する、このときに外国に本社を持つ外国企業はその国の外人の公認会計士が、その本国の公認会計士が監査をする。しかし、日本の商法監査なり証取法監査からいうならば、日本の公認会計士、日本で資格をとった公認会計士でなければそれは受け付けられない。そのためにどういうことが起こっておるかといいますと、外国の公認会計士のパートナーとして日本の公認会計士が名義だけ実際やっている、実際問題として。本国で外国人がやった監査結果を、まあそういうことを言うとたいへん失礼ではありますが、調べに行くわけにもいかぬ、だから英語を日本語に翻訳をして、多少の念査をして、そうしてそれを届け出る。つまりある意味で、極端にいえば名義貸しが行なわれておる。私はそれが適当でないと思う。適当でないが、それじゃ逆の場合はどうであろうか。たとえばソニーのような会社が外国で上場をする、その場合に日本の公認会計士がソニーを行なった監査結果というものが逆に外国でそのまま尊重されておるかというと、あらためて全部外国の公認会計士が外国からやってきて、その外国の法律に基づいてソニーを監査する。日本の場合、日本に本社があるものは二重監査をされる、外国に本社があるものは形式的、名義的な監査を行なう、私はそれが実態ではないかと思う。そういうことは、まあ極端なことをいいますと国辱である。この状況を先進国諸国で是正をする必要がある。その是正の理想的形態としては、租税条約のような国際会計監査条約のようなものを締結をする。私はかつて日米安保条約のときに審議をした記憶があるわけですが、自由人の職業について相互主義、そういう条項があったと私は覚え書きか何かで理解をしておる。まさに公認会計士の職務の外国と日本との関係について相互主義をひとつとったらどうか。そのためには国際会計監査条約のようなものをひとつ提起してみる、結んでみる必要がありはしないか、こう思いますが、いかがですか。
  71. 田中啓二郎

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  外国の企業が東京の証券取引所に上場するような場合どのような基準によるか、これにつきましては、外国の法令、慣行等、外国の基準によることが日本の投資家保護上適当であると認められるときはそれによってもいいということになっております。ただし監査に関しましては、法律のたてまえがありますので、あくまで日本の公認会計士が最終責任を負わなければならない。ただし、外国に行って監査証明資料に目を通す場合には、外国の信頼があり、経験もあり、かつ当該会社と利害関係のない外国の会計監査人から資料を出してもらって、その日本の公認会計士の心証形成に役立たせる。しかし最終的な責任、特に虚偽記載云々に関しましては、御高承のとおり民事責任がかぶせられておりますので、それは日本の公認会計士が負わなければならないよということになっております。ただ、まだ経験も浅うございますから、あるいは形式的だとか名義貸しだとかいうそしりを免れない点ももしあるとすれば、この点は質的に充実して、そのようなそしりを受けないようにしていきたいと考えます。  第二点の、条約によってこれを徹底させたらどうかという点でございますが、御承知のとおり日本の開示制度ないし監査証明制度は、世界の中でアメリカと並んできびしいものでございます。ヨーロッパ等はこれが非常に基準が低いもので、その面ではいささかちんばになるおそれがございます。そういうことからいたしましても、むしろ日本の監査能力を高めて、先ほどの形式的名義貸しに堕さないというようになって、そうしてそれぞれの国の公認会計士責任を持ってやるというほうが、全体から見て公正妥当を期し得られるのではないか、かように考えております。
  72. 横山利秋

    横山委員 この問題についてはもう少し詰めたいのでありますが、時間がございませんから……。私の提起した問題が理想形態としては私は望ましいことだと思っています。しかも、先ほどちょっと触れましたように、監査というものが、多国籍企業が非常に多くなっておる今日、それから将来また企業会計原則にしても、国際的にやはり共通点を見出さなければならないという問題が生じてくると思われる今日、いまいろいろな問題がありましょうとも、当面いたします第一点としてはい名義貸しの問題がある。私は日本の公認会計士が外国へ行って本社の監査をするということがどの程度できるかということについてはやはり疑問なしとしないけれども、同時に外国人が、日本の公認会計士のやったことについてこれを信用しないで、日本へわざわざやってきて二重監査をするということの問題、それからもう一つは、外国人がやったものを日本の公認会計士がやる場合に、法的にはその人の個人責任になる。監査法人でやっても個人でやっても個人責任になる。その責任というものはどういうふうにきちんとしておるのか。パートナーである公認会計士と外国の公認会計士との実質的雇用契約なのか、本社である企業との雇用契約なのか、一体正当な報酬を受けておるのか。あなた、これちょっと写してまいれ、あなた念査してまいればいいのだから安くやってくれということに実際はなっているのではないか。法律的にそれは疑義はないのかという点が、第一の問題としてはかなりある。将来の問題として私が示唆した問題について御検討を願いたいと思います。  それから、次に商法監査におけるディスクロージャー制度なんであります。これは証取法については貸借対照表、損益計算書、利益処分の方法、営業報告書等の公表制度がある、そしてまた、縦覧制度がある、開示方法がある。商法監査においては、これは一体どういうことになるのかということを法務省に伺います。証取法においては、財務局へ行けばどなたも見せてくれる。しかし、商法監査をやって、それを利害関係者なり国民が、証取法監査と同じように一体どこで見れるのか。だれがその世話をしてくれるのか。その点はどうなんですか。
  73. 川島一郎

    川島(一)政府委員 株式会社の場合、取締役会が作成いたしました計算書類、それから会計監査人が作成いたしました監査報告書、こういったものは株主には事前に送ったりするわけでございますが、会社に備えつけておきまして株主、債権者がこれを閲覧できるようにいたしております。これは商法に規定がございます。
  74. 横山利秋

    横山委員 会社に行かなくても、財務局へ行けば証取法の監査は自由に見られる。またあなたは逃げようとしておるのです。が、大蔵省で財務局へ行けばだれでも見れるようになっていることについて、法務省はそのほうはやりませんというつもりですかということを聞いているのです。またしてもあなたは、狭義の意味の利害関係人に仕事を限定しようとしておるけれども、広義の意味の会社の社会的責任商法の改正というのはそういう意味で行なわれておると思うのですよ。財務局で縦覧ができるなら、登記所で縦覧ができるようにしたらどうです。あなたのほうが、おれのほうではちょっと手狭だというなら、財務局へ頼んで一緒に商法監査の結果も縦覧できるようにさしてくれと言ったらどうですか。商法監査の公示制度というものがより広く国民の中で徹底するような措置をなぜ講じないのですか。私は、ここにも商法の運用について、法律さえ改正すればその所管じゃないという気持ちがたいへんにじみ出ていると思う。財務内容の公開をしろ、そして社会に対して責任を負え、その会社の財務内容が、証取法なり商法の監査が行なわれたならば、少なくともだれでも見れるようにする、そういうことが大事じゃありませんか。証取法だけ縦覧制度があるけれども商法監査では縦覧制度はありません。見たければ会社に行ってちょうだい。そういうことについていかがなものでしょうかね。
  75. 川島一郎

    川島(一)政府委員 御承知のように、会社株式会社だけでも百万からの多数が存在しておるわけでございまして、一々書類を登記所に出させて、これを閲覧するということにすることは非常に事務の複雑化を来たしますし、またそれだけの実益があるかどうかという問題もあります。おそらく御趣旨は大きな会社についてだけということではないかと思いますが、そういう点につきましては今後の問題として検討する余地はあろうかと思いますけれども、私が先ほど申し上げましたのは、現在の制度がこうなっておるということを申し上げたわけでございます。
  76. 横山利秋

    横山委員 うどん屋さんやげた屋さんじゃあるまいし、商法監査がうどん屋さんやげた屋さんに行なわれるはずはない。少なくともこれだけはどうしても商法監査をする必要があるというふうにきめたその趣旨、今日の経済情勢からいうて、証取法だけはきちんと大蔵省がやっておるのに、商法監査だけはとても事務が複雑だということでは済まされぬ。少なくともこれくらい以上の会社については監査目的というものが十分徹底するように措置をなさったらどうですか。だから特に私は教えている。えらいすみませんが、私のほうは手狭だから財務局で一緒にやってもらえぬだろうか、助太刀まで私は意見として表明しているのですから、これもまた十分御検討願わなければなりません。  参議院で修正されました子会社に対する拒否権の問題について伺います。  正当な理由があれば子会社は拒否できる、これはこの間同僚委員がその問題について注目すべき質問をされました。私もその質問の趣旨がよくわかるわけであります。予算委員会において議論されました点を考えますと、親会社利益調節機能に子会社がなっている。それから拒否権がどういう場合に発動されるか。親会社の社長や取締役が子会社に電話をして、拒否権を発動しろ、おれの命令だ、こういう場合も考えられる。子会社とは必ずしも中小企業ばかりではないことが考えられる。多国籍企業の場合もあり得る。そうなりますと、参議院で修正されました正当な理由とは一体どういう場合であろうかという点について、やはり一つの問題をこの間は提起されたと私も思います。参議院が正当な理由ということは、要するに子会社の独自性、自主性を尊重しろ、こういうことだと私は善意に理解しておるわけでありますが、この点について、参議院の修正されました正当な理由というものの解釈を、今後どういうふうに政府としては運用なさいますか。
  77. 川島一郎

    川島(一)政府委員 正当な理由の中身でございますが、これは判定の非常にむずかしいところがあろうかと思います。要するに、子会社の独立の会社としての立場から見まして、このような事実を他のものに知られることは今後の経営に差しつかえる。一つの例といたしましては、営業上の秘密、ノーハウといったものについてその内容を調査されるような場合におきましては、親会社といえども会社であるから知られては困る、こういう場合があるわけでございまして、子会社の営業を行なっていく上において、どうしても部外に出しては差しつかえがある、そういう事項について調査を拒絶する、こういう場合が正当な理由があるというふうに考えておるわけでございまして、あまりこれを広く解釈することはできない、このように思います。
  78. 横山利秋

    横山委員 私は狭く解釈してくれと言っているのでは必ずしもありません。私が例示いたしましたこの四つですね。この弊害だけはひとつ注意をしてもらいたい。参議院で修正した趣旨というものは、子会社の独自性、独立性、それが完全な独自性、独立性でないにしても親会社の支配がますますそれによって強まることのないように、こういう意味においてひとつ配慮してもらいたいということが参議院の修正だと私は思います。その点について、これがいま言いましたような悪用をされて、親会社の社長や取締役が、おれのところの公認会計士が、監査役が子会社調査に行くそうだ、あんなものを拒否してしまえという命令を出す可能性がある。それだけの支配能力を持っておる状況下にあると考えますと、正当な理由を申し立てた場合に、私が心配したことのないような念査というものをひとつしていただかなければならない、こう考えますから、運用についてはひとつ善処をお願いをいたしたいと思います。  次に、公認会計士協会及び公認会計士のあるべき姿について若干の質問をいたします。  この間公認会計士協会宮坂会長が「現状下における監査に対する要望」として、会員各位に書面を出されたようであります。前文は省略しますが、要点だけ申しますと、「各企業が近く到来する決算期において、利益を過大もしくは過小に表示するため、みだりに引当金を操作し、または減価償却費の計算方法ないしはたな卸資産の評価方法をみだりに変更し、あるいは関係会社取引を通じての利益調節を行なうことはないと信じるが、万一そのようなことがあったとしたならば、企業に対する国民の信頼感が失なわれるところ顕著なるものがあると考える。会員各位におかれては、これらのことに留意し、財務諸表の粉飾については利益を過大に表示すると過小に表示するとを問わず、厳正なる監査の姿勢をもって臨むと同時に、単にそれにとどまることなく、これらを未然に防止するため、企業に対してあらかじめ指導的役割を十分に果たすことをここに要望する。」、私はしごくもっともな要望だと思う。今日の大企業の独善、横暴、法律違反ということについてだれが一番念査機能を持っておるか、それは、株主よりも監査役よりもあるいは公取よりも、むしろ公認会計士の諸君が一番はだに接して密接な関係を持っておる。しかし、公認会計士のこの権限に限界があることは言うまでもない。限界があることは言うまでもないけれども、一番今日のあのような実態を知悉していけなればならないのは実は公認会計士ではないか、私はそう思うのであります。そういう意味合いにおいて「これらを未然に防止するため、企業に対してあらかじめ指導的役割を十分に果たすことをここに要望する。」ということは適切なことであり、こういうことが単に会員各位ばかりでなくて、社会的に、公認会計士協会なり公認会計士の皆さんがこの役割りを積極的に果たすことを私は要望をいたしたいと思うのでありますが、さて、その要望に一体今日こたえ切っているかどうかという点を少しただしたいと思うのです。  まず第一にただしたいのは、今回商法改正によって、監査対象会社が大体五百社ふえますね。で、公認会計士はいま三十幾つの監査法人がある。そしてまた個人公認会計士がある。私どもは、先般本委員会において商法が通過するにあたって附帯決議を付しました。その附帯決議は、公認会計士の諸君が、この商法改正の運用にあたってそれぞれの能力を十分発揮し得るようにということを要望したにほかならないのであります。  その附帯決議の四項「監査法人の育成・強化を図る反面、個人たる公認会計士業務分野についても行政上適正な措置をすることとし、もって活動分野の調整をはかるものとすること。」、非常に抽象的ではありますが、今日公認会計士の皆さんの中で本来の公認会計士仕事を全然しない、ほとんど税務をやっていらっしゃる人がある。それからまた、狭い門をくぐって公認会計士になったけれども公認会計士協会で社員にあらざる従業員としてつとめておられる若い公認会計士の諸君がある。で、私がこの附帯決議を同僚諸君とともに付するにあたって考えましたことは、これからの公認会計士の監査の状況を展望いたしますと、どんどん巨大な監査法人ができている、仕事はそこへ集中される。なるほど一人の公認会計士が巨大資本に対して監査は不適当であるということはよくわかるが、これだけたくさんの公認会計士がおって、そして実際の実務をやっておる人がきわめて少ないという点について、いろいろな面から適正な措置が必要ではなかろうか。また、若い公認会計士諸君の将来に対する希望、そして将来に対する意欲、そういうものが発揮できるようにしなければならぬのではないか。公認会計士協会につとめておる新進気鋭の公認会計士と、それからその人が監査をやらずに税務専門にやっている場合とでは、おそらく税務専門にやっている公認会計士のほうが比較論としては所得が多いのではないか、こう私は思うわけであります。そういうことを考えてみますと、この五百社増加をする事態について、公認会計士協会に対する今後のあり方、この活動分野についての調整はどうあるべきかという点について、これは公認会計士協会独自の問題ではありますけれども、大蔵省の行政指導としてはどうあるべきかという点について伺いたいと思う。
  79. 田中啓二郎

    ○田中説明員 大規模法人の監査につきましては組織的な監査ということが必要でございますので、監査法人が多くの公認会計士をもってこれに当たるのが適当ではないか、そして一人の手で負えるようなところには個人公認会計士でいいのではないかというような大体の感じがございます。  ただ、監査法人を設立するにあたりましては、その要件が法律にもございますし、かつ通達でもそれをふえんしておりますので、それは順守していかなければならない。また調整の問題のほかに、公認会計士、それが個人であろうと監査法人であろうと、私どもとしましては社会的な信頼を彼らが得ることができるように、証取法あるいは公認会計士法あるいは今回の商法によって種々の、彼らの公正な業務を担保する手段ないし戒告の規定その他がございますので、よってもって、公認会計士が信頼をより多く得られるよう今後も指導してまいりたい、かように考えております。
  80. 横山利秋

    横山委員 答えがむずかしいと見えて、何をおっしゃっておられるのかさっぱりわからないのでございますが、要するにこの附帯決議の趣旨というものを十分くみ上げて考えてもらいたい。  それについてもう一つ、二つ関連して伺いたいと思うのでありますが、この監査法人が三十幾つあるわけですが、監査法人の認可基準というものが大蔵省にあるようであります。その認可基準は私が承知をするところによれば、現在公認会計士として監査をしておるものを持って集まって、それが一定数に達しなければ監査法人としての認可をしないということでありますね。そういたしますと、ネギとカモを持ってこい、鉄砲はおまえ持っておってもそれはだめだ、鉄砲持っておるだけではだめだ、簡単に言えばそういうことであります。能力があっても、自分が前からネギとカモを持っていなければ監査法人は認めないよということなのであります。そういたしますと、一つの被監査会社を獲得をするのはどんなにむずかしいことかということは私は容易に想像できるわけでありますが、これから新しく出ていく公認会計士なりいままでなかった者は、未来永劫監査法人を自分たちで組織することができない。どんなに優秀な鉄砲を持っておっても、いまネギとカモ、被監査会社をお互いに持って集まらなければ認可はできないという点について、私は疑問を持っておるわけですが、この点について監査法人の設置基準を少しゆるめる必要があるのではないかということが一つ。  それからもう一つは、今回の衆議院の附帯決議をもって「監査法人は、その社員が税務書類の作成などの税務業務を行なっている会社について、本法の監査業務を行なわないよう規制すること。」といたしました。これは、当時政府が十分これを尊重するというてお話承りましたから、そのとおりになると思うのでありますが、さてもう一歩突っ込んでお伺いいたしますると、「その社員が」ということに附帯決議はなっておるわけであります。しかしその精神というものは、税務と監査は両立しませんよ、検事と弁護士と両方やるわけにはいきませんよ、簡単に言えばそういうことであります。その意味から演繹してお伺いしますと、社員でない公認会計士が被監査会社を監査するときに、社員の補助者として監査を行なうときに、その補助者である公認会計士が監査会社の税務をやってよろしいかどうかという問題なのであります。私は検事と弁護士と両立できないという精神は、当然補助者であってもその会社についてのみは税務と監査は両立できない、こう解釈いたすのでありますが、いかがでございましょうか。
  81. 田中啓二郎

    ○田中説明員 御質問の補助者でございますが、実際の監査に従事する補助者につきましては、御指摘のように税理業務に従事しておればその者は監査に従事できないということは、おっしゃるとおりでございます。
  82. 横山利秋

    横山委員 監査法人の認可基準の緩和の問題はどうですか。
  83. 田中啓二郎

    ○田中説明員 その点につきましては、現実に被監査法人を持っていなければ監査法人を結成できないという点でございますが、法文を読んだ限りではそのような条件はないように考えられるのでございますが……。
  84. 横山利秋

    横山委員 私の承知いたしておりますところは、大蔵省の認可基準の指導方針として、カモとネギを持っていなければ鉄砲だけ持っておったってだめだ、実績を持ってこい、そういうふうに私は理解しておるわけです。もしそうでなければ、一回ひとつあとで調べて御報告を願いたいと思います。  それから、大臣の所見を最後に、二、三伺いたいんでありますが、この商法で今度監査役に内部告発の権限を与えた、こういうことが言えると思う。取締役の違反行為、忠実義務違反、会社の信用を傷つけるという場合においては、株主もまた内部告発の機能を持っておるということが言えると思うのであります。それならば一体、従業員は内部告発をしてどうなんだろうということであります。私はこの間、大阪の鐘紡でありましたかの社長が従業員全員千二百人を集めまして、会社の従業員が秘密に内部告発をした、書類が漏れたということについて、そういうことはこれからやめてくれ、上役に言ってくれ、労働組合に言ってもらってもよろしい、けれどもひとつのりを越えずにしてもらいたいという訓示をしたということを聞きました。今日、企業が社会的責任を持ちながら不法な行為をしておるときに、一番それをよく知っておる従業員が内部告発をしたからといって、その従業員に対して不当な扱いをしてよろしいのであろうかということなんであります。どうお考えになりますか。
  85. 川島一郎

    川島(一)政府委員 なかなかむずかしい問題でございますが、かつてこういう問題がございました。ある企業が公害を出しておる、それを会社としては秘匿したいけれども内部に従事している従業員がそれを告発する、その場合に会社としてはその社員に対して何らかの措置をとり得るか、こういう形の問題があったわけでございます。私どもは、公害という反社会的な行為が行なわれておる、これを警察なりしかるべきところに告発をするということは、これは社員であろうとなかろうと正しい行為であるので、その行為について会社責任をとらせるようなことをすることはできない問題である、このように考えたわけでございます。御指摘の告発の問題、いろいろな事例があろうかと思いますが、根本の精神といたしましては、ただいま公害について申し上げたのと同じことが言えると思います。
  86. 横山利秋

    横山委員 ちょっといま書類をさがしておって大事なところを聞き漏らしたのですが、つまり内部告発はやむを得ない、そういうことに対して会社が首を切ったり何かするのは穏当でない、こういう意味ですか。
  87. 川島一郎

    川島(一)政府委員 そういう趣旨でございます。
  88. 横山利秋

    横山委員 先般来、予算委員会において秘密文書なり、あるいは秘密文書ではないけれども会社内部の通達というものが表に出た。いま国民はこの狂乱物価なり非常なインフレに対して、おこるよりも恐怖心を持っておる。そういう国民的な状況の中で、会社の中におきます従業員が会社の雰囲気の中から、それを上司に言っても、あるいはかりに労働組合に言っても十分ではないから、会社の反社会的行為に対して内部告発をする。それは事案にもよりけりでございますが、一般的に社会正義に燃えて行ないました内部告発について、会社が就業規則違反だとか忠誠義務違反だとか、そういうことをいたしかねないという点については、これはいま別に法律があるわけではありませんで、会社の就業規則の問題になると思うのですが、民法も商法もこういう点について何らの規定はない。ただ、いまお話しのように、公害の問題については労働委員会の救済命令を出したようですね。この労働委員会の命令というものが、法的な規範に将来なり得るかどうかについては議論があります。そういう点で法務大臣の常識豊かな御答弁を伺いたい。
  89. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 法律の制度としては、監査役とかあるいは株主に内部告発の権能を制度的に与えておけばよろしいので、一般社員としては、問題は、私は道義上の問題だと思います。道義に反しないことをやるなら、それはやったって、そのために首を切るとか処罰をするとかいうことはできないはずでございまして、問題は道義の問題に帰着するのではないかというように考えております。
  90. 横山利秋

    横山委員 その道義ということが実は問題なんですね、大臣。あなたの言う道義というのはたぶん社員としての会社及び会社の上役に対する道義のことでしょう。そういうことを考えて内部告発はいかぬということをあなたはおっしゃりたいのですか。あなたの言う道義というものは社会に対する道義なのか、会社に対する道義なのか、どちらでございますか。
  91. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 もちろん社会的責任でございます。
  92. 横山利秋

    横山委員 わかりました。社会的に、会社が反社会的な行為をしておる、それに対してやむにやまれぬ正義心で、これはいかぬ、買いだめ売り惜しみを当社はしておる、あるいは脱税をしておるということを内部告発をしたことによって、その社員が就業規則違反、忠誠義務違反として処分をされた場合の問題が、これからも、おそらくいまただいまでも各所で問題になっておると思うのであります。この点について、また具体的な事例が起こりましたときにいまの法務大臣の御返事をたてにしてひとつお伺いをいたしたい。  時間がなくなってまいりましたが、今後の商法改正の問題についてだめ押しをいたします。附帯決議で今後の商法改正の方向として「会社の社会的責任、大小会社の区別、株主総会のあり方」、これは総会屋も含んでいますが、次に「取締役会の構成及び一株の額面金額等について所要の改正を行なうこと。」ということに院議はきまっております。それに一つ、二つ追加をしたいと思うのでありますが、監査役をずいぶん両院で議論をいたしました。監査役は今日職務執行上、個別にみずからの意思、みずからの方法ということになっておると思うのであります。監査役の個別監査、個別性というものをそのままで一体いいのであろうかどうか。少なくともこの監査役というものが切りくずしにあわないためにも、監査役会というものがひとつ今後の改正方向として考えられるべきではないか。もちろん私は監査役会が新設をされたところで、その監査役会が、採決によって、多数によってすべてが律せられるということを希望しているわけではありません。この監査役会を設置することによって、統一性と個別性といいますか、最高裁判所の判決のようなああいうような運営というものがあって、監査役が効果をもたらしめるようなやり方を考える、あるいは監査役の選任方法、公認会計士の選任方法ということについてもう一歩考える。私はくどくいままで言ってきたのでありますが、検事たる役割り——検事ということばは適当でないかもしれませんが、一応お許し願って検事という名前を使うのですが、検事としての公認会計士が被監査会社から直接報酬をもらうということにどうしても割り切れない問題を残している。これは根本問題でありまして、銭をもらってその会社の恥部を探すということが本質的にあり得るか。少なくともこれはまん中へ第三者機関が一つ置かれて、公認会計士の指名あるいは報酬の収受というものが別の角度で行なわるべきだと考えておるわけでありますが、そういうものを含めて、監査役会の新設やあるいは監査役、会計士の選任方法についてもう一度考える必要が今後の商法改正の中にあるのではないか、こう思いますが、いかがでありますか。
  93. 川島一郎

    川島(一)政府委員 いろいろ問題の御指摘があったわけでございまして、今後の商法改正の作業におきましても、いろいろ御指摘のあった問題を含めまして検討を続けていきたい、このように考えております。  最後に御指摘のありました会計監査人の選任方法、御疑問はごもっともな面もあるわけでございまして、私どももいろいろ考えたわけでございますが、現在の外国の制度などを見ましてもやはり同じような形になっておりまして、それにかわるべき制度というものがなかなかむずかしいというところに大きな原因があるように思われます。  それから監査役会の問題、これも将来検討すべき一つの課題であろうと思うわけでございますので、附帯決議に盛られておりますいろいろな問題に加えまして、そういった問題につきましても十分考慮をしてみたい、このように考えております。
  94. 横山利秋

    横山委員 大臣に政治的な御質問を二、三行ないます。  それは一つは、いま監査と税務と両立せずといいまして、法務大臣はそういう意味合いでは、閣僚の中でも法の執行、きわめて矛盾のない政治姿勢というものがたいへん要望されておるわけでありますが、大臣、ひとつこういう点についてはどうお考えでありますか。自民党の国民協会の問題がずいぶん議論になりました。予算委員会で議論になりましたあの各社の中には、国民協会に対する政治献金がずいぶんあるところがあるのであります。いまそれを具体的にとやこう言うつもりはありませんが、少なくとも補助金を受けているもの、それから租税特別措置法の恩典を受けているもの、政府資金の導入を受けているもの、政府から援助を受けているもの、そういう会社は少なくとも政治献金はやめたらどうだ。ぼくらは根本的には、法人というものは自分の銭じゃないものだから自由になりやすい、だから法人はすべて政治献金は中止をしたらどうか、あくまで国民の個々人のさいふの中から政治献金が出るようにしたらどうだ、こういう考えを持っておるわけでありますが、予算委員会や各委員会におきます状況を考えますと、おこっておる人が実は銭をもらっている。ちょうどいま私が例示をいたしました監査と税務というような問題に関連をいたしまして、おこっておる人が実は銭をもらっておるということは、国民がどうしても釈然としない。この際政治献金を株式会社についてやめさせる、それが非常に政界を明るくするゆえんである。どうしてもできないならば、せめて政府の補助金、政府税金政府の資金、それらを受けておるところは政治献金をやめさせるという点について、閣僚の一人としてどうお考えでございますか。
  95. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 なかなかむずかしい問題でございまして、基本的にいえば政治献金などというものは全部ないほうがよろしいと思うのでありますが、実際の政治問題としてはそうもまいりませんので、お尋ねの点につきましてはわれわれといたしましてもこれからとくと検討してまいりたいと思います。
  96. 横山利秋

    横山委員 政党も金は要るのです。私も社会党の選挙対策委員長として、金のない選挙はできないと思っています。だから、国民が自発的意思をもって政治献金をすることについて、いかぬことではないと思っています。問題は株式会社というものが、株式会社という非人間的なものでありますから、どうしてもおれの銭じゃないから、会社の銭だからといって使う。銭を出したら、自分が銭を出したものでもないにもかかわらず、それをてこにして政治を動かそうとしておる。したがって、株式会社、特にいま列挙したような状況下にある株式会社からは政治献金を禁止すべきである、私の理論はそういうことなんです。あなたは、原則的にこの意見に賛成でありますか、反対なんですか、どっちだか態度を明らかにしてください。
  97. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 どうも私の立場では明らかにはいたしかねますが、問題は、法人だからいかぬというのは少し幅が広過ぎると思うのです。ただ、国庫の補助を受けているとか、特殊の会社については考慮する余地があるのではないかというように考えております。
  98. 横山利秋

    横山委員 もう一つ伺いますが、税務と監査と両立せず、これはずいぶん各方面で反響を呼び起こしました。失礼ですが、たとえばあなたが法務大臣として監督をし、あるいは自分の、大臣としていろいろやっていらっしゃる、指導下にある団体だとか、あるいは会社とか、こういうものの役員や顧問をなさっていらっしゃる場合がありますか、いま。
  99. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 現在ございません。
  100. 横山利秋

    横山委員 それと同じように、あなたが自分が出処進退をそういうように明らかにするように、あなたも自民党の領袖なんでございますから、自分が政治信念、純粋信念としてそういうことが正しいのだとしておられるならば、政治献金の問題もおのずから答えが出てくると思いませんか。私はこれは何も与党としての自民党にだけ迫っているつもりは必ずしもないのでありますけれども一般に政党というもの、政治献金というもの、株式会社というもの、そういうものをこの際明らかに矛盾のないように——この法務委員会が税務と監査と両立せずというたことは、単に公認会計士税理士の問題ではない。およそ社会一般において検事と弁護士とは両立せずということを貫き通すべきであって、ひとり一つ団体に対してその理論を強要するばかりが能ではあるまい、こういうふうに私は言っておるわけであります。  それから、今日のような世相、今日のような大会社に対して、商法だけでこれが解決ができると私は思っておらないのであります。商法はどうしても限界を一歩伸ばすためには、商法の五十二条を改正すべきだと言っておるのでありますが、今日的には間に合わない。われわれが与野党を通じてやろうとしておるのが超過利得の問題である。私どもが言っておる総合商社規制法の問題がある。あるいはまた、先般国会で成立した生活安定法の問題がある。そういう多角的な立場において、今日の大企業の横暴というものは確かめなければならぬと思うのでありますが、商法を改正する責任省として、責任者としての法務大臣が、この商法が通過をする段階において、一体今日的なこの大企業の状況、予算委員会の状況をどうお考えになっておられるか。閣僚としてどうお考えになっておるか。どうしたらいいと思われるか。非常に抽象的な質問ではありますが、田中内閣の領袖としてあなたに——いま商法が通過しようとしておる、通過して公布をしただけで、今日の情勢は直りはせぬ。直りはせぬとするならば、この経済情勢、この大会社の横暴に対して、基礎法である商法の改正責任者として、閣僚として、どういうことを一体お考えなんでありますか。あなたの感懐をひとつこの際十分伺いたいと思います。
  101. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 御指摘の点は、政治全体の問題としてお互いに検討をしていかなければならない問題だと思っております。ただ問題は、最近の企業の問題でございますが、これら与野党を通じて予算委員会でも集中審議をなさいましたように、問題は企業モラルの問題でございまして、この企業のモラルというものをどういう方法かで社会的に徹底をさして、いやしくも企業というものは自分たちのためだけではない、国民のために存在するんだという角度に立ってモラルが確立されるように、何らかの方法でこれは考えなければならないというように思っておりますが、目下のところ、どうもこれで名案であるという名案がありませんので、遺憾ながらお答えいたしかねます。
  102. 横山利秋

    横山委員 たいへん残念な答弁でありますが、時間が来ましたので、これで終わります。
  103. 小平久雄

    小平委員長 午後は一時十五分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  104. 小平久雄

    小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沖本泰幸君。
  105. 沖本泰幸

    ○沖本委員 質問が前後するかもわかりませんし、横山先生の御質問と重複するかもわかりませんが、商法改正案について御質問したいと思います。  今回の商法改正は、いわゆる株式会社の粉飾決算事件に端を発して、株式会社業務及び経理の健全な運営を確保しなければならない政治的、社会的要請に基づくものであるという趣旨になっており、当委員会におきましても、前国会で相当長時間にわたって商法改正については質疑が行なわれたわけであります。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 しかし、商法改正案のでき上がった由来なり趣旨なりその時期なりというものと、現在、当国会で問題にされておるところのいろんな大企業の便乗値上げ、あるいはもうけを隠したとか脱税とか、こういう内容が予算委員会でいろいろな角度から明らかにされていっているわけです。そういう角度から考えていきまた見ていきますと、本来の法律の内容よりもっと違った時点といいますか、もっと真剣な角度からこれをもう一度見直さなければならないという観点に立って御質問したいと思うわけであります。  法務省のほうとしてもこの点については、三日の新聞の発表によりますと、「株式会社制度改正も 大、小企業で別個に 取締役会の行き過ぎチェック」こういうふうな内容で新たな問題——これはあとでこまかく御質問するつもりでおりますけれども、こういう観点から新聞にも御発表になっているという点、こういう内容を見ますと、以前の御答弁のときの問題点とお考えになっている点に大きな、いわゆるもっときびしい引き締まった内容のものが検討されていっている、こう考えられるわけでありますけれども、そういう点から見ますと、この法律が、現状のままではたしてその法律の目的とする役割りを果たすか果たさないかという点に非常な疑問が出てくるわけです。そういう観点からいろいろ御質問を進めていきたいと思います。  そこでまず三十二条の二項の規定になるわけですけれども、商業帳簿の作成について公正なる会計慣行のしんしゃくを規定しておる。ところが、その中身は商法に規定するところではなくて、財界主導のもとにでき上がったと言って過言でない。企業会計原則修正が原則としてしんしゃくの前面に出てくることになる。ところが、この企業会計原則修正案自体が実は逆粉飾決算の可能性の素地をはらんでいる。一般原則の六の規定そして注釈の4における「過度に保守的な会計処理を行なうことにより、企業の財政状態及び経営成績の真実な報告をゆがめてはならない。」という文言があるわけです。一般原則の六ですと「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理を」しろというが、これはちょっとまずいのじゃないか。注釈の4では、あまり目立つような保守主義はとらないでほどほどにしたらいいのじゃないか、うるさいから、こういうふうに言っている。はたして今回のこの改正の根本目的、健全な株式会社業務、会計運営が確保されるか疑問があるわけです。そこで法務大臣にお伺いしたいわけですが、会社経営の実態を如実に示す商業帳簿の作成に関する基本基準は、少なくとも株式会社については財界サイド、大蔵省サイドに実質的にゆだね切り、まかせ切りにせず、むしろ商法の土台、縁の下のささえをするものとして、この商法自身の中に将来規定を設けるようにすべきではないか。この方向で商法改正をさらに検討したほうがいいんじゃないか。これは新聞発表の中を見てみても同じことがうかがえるわけですけれども、その点についてはいかがですか。
  106. 川島一郎

    川島(一)政府委員 商法改正の基盤となる社会情勢が、最近いろいろ指摘されておりますような問題を起こしてきておるという点にかんがみまして、十分に今後とも商法の改正については検討を続けていかなければならないという点は仰せのとおりであろうと思います。  いま御指摘になりました商業帳簿作成の基準となる会計のやり方の問題でございますが、商法は御承知のように法律でございまして、あまり会計的、専門的な事柄については規定しないというのが従来の態度であったわけであります。ただ基本的な事項につきましては商法の中にも若干規定を置いておりまして、これらの規定が現状ではたして十分であるかどうかという点につきましては、私ども今後におきましてもさらに検討を続けてまいりたい、このように思っております。会計の重要な原則につきましては、現在規定がございませんけれども、これにのっとって商業帳簿を作成するということが必要であることは、現在の商法のもとにおきましても変わりはないわけでございますが、この点をさらに一そう明確にする必要があるとすれば、その点につきましても十分考えていきたい、このように考えておる次第でございます。
  107. 沖本泰幸

    ○沖本委員 会社の健全な会計方向、いまおっしゃっている規定を設け、基準を設けていくというもの、今度この国会でも一番問題になり、マスコミのほうも非常に注目をしており、国民もやはり企業の内容的なもので注目しておるのはこの引き当て金ということになってくるわけです。こういうふうな内容が結局は悪循環をして、売り惜しみ、買いだめ、便乗値上げ、こういうふうな形で国民の生活を苦しめている。そしてその企業だけが過大の利益や隠匿のために、引き当て金とか準備金とか減価償却等が利用されることはいままで幾つも例が出されてき、明るみにも出されてき、またこれからも十分想像もされる、こういうことになっていくわけです。これは今度の予算委員会でも十分明らかになってきているところなんですけれども、その保守主義の入り込むところである、会社側のですね、そういうふうに考えられるわけです。この引き当て金については、従来会計学上の通説としては、債務性引当金のみが引き当て金としての性格と考えられておった。ところが企業会計原則修正案では、ここへ利益性引当金が強引に割り込んできて、商法の二百八十七条ノ二の規定の本来の立法趣旨に疑問すら感じるものを生ぜしめておるということはいえるわけです。そのために強引な逆粉飾、正確でない、真実でないその財政状態及び経営成績が報告されることを防止するためにも、将来はこの商法を改正して、財界サイドでなく、法務省サイドの株式会社健全経営のための詳細な会計規定を設ける必要があるとそれは考えるわけですけれども、先ほどの民事局長お答えですと、検討しなければならない、こういう御答弁ですけれども、検討をして法律をつくらなければならない。改正のもう急務に迫られておる。この商法、いまのこの法律自体が役に立たないんじゃないかというふうに考えられるわけですけれども、その点はいかがなんですか。
  108. 川島一郎

    川島(一)政府委員 引き当て金の問題でございますが、御承知のように商法は二百八十七条ノ二に「引当金」の規定を置いております。この規定は、今回は特に改正を加える予定にはなっておりません。  いま、負債性引当金というようなことが御質問にあったわけでございますが、負債性引当金ということばの意味がいろいろに使われておって、そこで一つ混同を来たしておるという面があろうかと思います。と申しますのは、商法が規定しております引き当て金は、負債でないものを特に負債の部に計上することができる、そういう意味におきましてあの規定ができておるわけでございまして、商法が以前から規定をしておりました引き当て金というのは、債務ではないのですね。債務ではないけれども債務と同じように負債の部に載せることができる、そういう意味で、もともと商法は債務でない引き当て金というものを認めておるわけでございます。  最近使われております負債性引当金というのは、負債であるものを引き当て金の名前で載せる、これを負債性引当金と言っておる場合がございます。  それから、負債ではないけれども負債に準ずるものとしてこれを引き当て金としてあげる、こういうものもございます。この後の場合が商法のいわゆる引き当て金というものに該当するのではないかと思います。ただ商法は、特定の支出または損失に備えるという表現でございまして、特に負債性という意味をあらわしておりません。したがいまして、その解釈が問題になるわけでございますが、その点につきましては商法の改正は今回はいたしておりませんので、従来の解釈がそのまま引き続き使われるわけでありまして、今回の商法の改正によって引き当て金の範囲が増大するとか縮まるとか、そういう問題は本来は出てこないわけでございます。  それはそれといたしまして、いまの引き当て金の商法の規定が十分にわかりやすいかどうかという点につきましては、問題が必ずしもないとは申せませんので、最初に先生指摘のように、いろいろ商法の計算関係の規定について検討を加える必要があるんではないかという点は、十分われわれといたしましても考えなければならない問題である、このように思っておるわけでございます。
  109. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これはただ、その引き当て金という法務省側だけの問題に終わらないわけなんですね。これは大蔵省のほうの関係も出てくると思います。税法なり会計の問題なり商法の問題なり、こういうものが一つになって初めて有機的な機能を発揮していくということになるわけです。たとえて言いますと、租税特別措置法では、海外市場開拓準備金だとかあるいは価格変動準備金だとか、まだほかにも例があるわけですけれども、こういうようなものを大蔵省ではきめている。こういうものに振り当てていって、同じ内容のものがいろいろ名目が変わってくずれ去っていってしまう、変わっていってしまうということになるわけですね。ですから、たとえば法務省だけが一つの歯どめをつくってみても大蔵省のほうで歯どめが抜けている、また、大蔵省のほうで何かのことを考えていってもこっちの法制は整っていないというような関係性が十分出てくるわけです。現在の時点からいろいろ考えていきますと、こういうものが、いわゆる大蔵省でいえば主税局なりあるいは証券局、それと法務省とが完全に一つになって機能を発揮するような内容の検討が行なわれて一つのものをつくり上げていかなければ、十分な歯どめはできてこないということに現実にはなっているわけです。そういう点について、そういうものはないんだ、十分検討はできているんだとか、そういう点にはずいぶん食い違いがあるんだとかいうことになると思いますけれども、大蔵省のほうはどういうふうにお考えですか。
  110. 田中啓二郎

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  商法二百八十七条ノ二という規定が前からございまして、今回もそれは何ら修正されていない。その前提に立ちますときに、特定の支出または損失に備えるためにそういう引き当て金を設けたときは負債の部に計上すると商法にございます。私どものほうは、会計の立場から、そういった特定引当金はあまりみだりになすべきものではないし、おのずから合理的な範囲内にとどめるべきだというように考えておりましたし、従来も指導をしてきたわけであります。ただし、今回商法監査と証取法監査がいわばドッキングをいたすのに伴いまして、企業会計原則修正案というものをつくりまして、そのときに、やはり商法において認められている。そうであるならば、私どもとしては、引き当て金というものは、任意に引き当てられれば違法ではない。そうであるならば、従来、方々に散らかって特定引当金的なものが計上されていたのを一カ所にまとめて、特定引当金として貸借対照表の負債の部に計上させる。しかし、損益計算の部では、純益、純損益に関係せしめないで一たんそこで切りまして、その下に未処分利益計算というところで処理すると、非常に明瞭化を行なったわけであります。  ただ問題は、やはり特定引当金というものは、評価性引当金でもなければ負債性引当金でもないわけであります。そこで、厳然としてある商法がどういうものを任意に引き当てていいかという点に関しましては、おそらく今後、公認会計士がその業務を行なうにあたりまして、これはい、いんだろうか、悪いんだろうか、合理的範囲にとどまるんだろうかどうかというようなことを、場合によっては法務省のほうに照会するというようなことも起こるかもしれない、かように考えております。したがいまして、私どものほうは、商法という厳然たる規定がある。それと平仄を合わせながら証取監査のほうもドッキングを行なった。そこにおのずからなる限定があったというふうに考えております。  なお、税の関係は、私、証券局でございますのでなんでございますが、税は税独自の税理論なり租税政策というものがございますので、また別の観点からの問題かと考えております。
  111. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま公認会計士が引き当て金についての振り分けなり何なりというのはいろいろ任意的に考えてやっていくという問題が出てきたんですが、これはあとでお伺いいたしますけれども、その辺がやはり公認会計士が、一番どろをかぶるんじゃないか、一番責任を負わされるんじゃないかと心配しているようなところではないかと想像するわけなんですけれども、まだ引き当て金についての問題がありますし、減価償却なり準備金なりいろいろな名目でもうけが隠されているということに問題があるわけなんですね。それがこの国会でやかましく言われているということになるわけです。  これはこの三日に、「つくられた石油危機に便乗、巨額の利益をあげた大手企業に対し、国税庁は二日、三月期決算の申告前調査税金のがれの、もうけ隠しにメスを入れるという異例の方針を打ち出した。先の国会の集中審議で悪徳商法の実態が明るみに出たためだが、同時に十二月期決算の大法人についても厳しいチェックを急いでいる。そこで、読売新聞社の「生活一一〇番取材班」は、主要二十四社の同期決算報告の内容を日大経済学部の名東孝二教授に分析してもらった。各社の報告書によると、利益を前期の二、三倍にふくらませたところはザラで、ミヨシ油脂のように約二十倍というケースもある。反面、純粋のもうけとなると、各社とも低めに抑えており、同教授は「株券や公債類をたっぷり買い込んだり、子会社の製品を言い値で仕入れたりの操作で、黒字を隠すのに腐心した疑いが濃い」と指摘している。いずれも“合法のころも”に包まれているため、実態は国税庁の今後の調査結果を待たなければならないが、各企業に共通しているのは、経常利益の大きさに比較して、当期純利益が少な過ぎることだ。さまざまな手段で経常利益を取り崩す一方で、モノを買い、資産を増やしているのだから「利益は紙幣から現物に姿を変えたにすぎない」という、カラ出張や水増し伝票の操作による会計上の粉飾はカゲをひそめ、代わりにこうした企業資産の“肥大”が目立っているが、値段のつり上げ、収益増大のツケは、結局消費者に回る。名東教授は「政府が強く各企業に製造、流通原価の明細を公開させるべきだと思う。そうでなければ、一般消費者は商品値上げの当否を判断しようがない。ごまかしが野放しで、原価は秘密にしてよい——という現在の会計制度が続く限り、愛される企業社会が実現するはずもなかろう」と厳しい。こういうふうに言っているわけなんです。  時間の点であとは省略いたしますけれども、一覧表をごらんになったと思いますが、すごい数字が出ているわけですね。たとえば東亜燃料は有価証券で六十六億三千五百万円、建設仮勘定で二十七億一千四百万円、こういうふうな内容があり、これはそこに赤線を引いて申し上げているわけで、同じ東亜燃料の十二月期決算報告にあらわれた利益というのも出ておりますけれども、これは新聞に出ておるわけですからごらんになったと思います。こういうふうなものに対して、実際に十分に国税庁のほうでいろいろ検討するということになると思うのですけれども、この法律がどのような役割りを果たすことになるのでしょうか、これは法務省なり大蔵省なりのお立場お答え願いたいと思うのです。
  112. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のございました、いろいろなものを買い込んで、あるいはいろいろな準備金あるいは特別償却ということによって利益を隠す、こういう問題でございますが、これは、課税所得の面とそれから公表利益の面とやはりわれわれといたしましては、特に税の立場といたしましては二つに考えておりまして、有税で引き当てを行なう等の場合もあるし、有税で特別償却を行なう等の場合もございますが、その点は一応分けて考えさしていただいております。と申しますのは、税の立場から申しますと、課税所得の計算というのは、租税目的のため一つの別の観点から所得の把握をいたします。したがいまして、そのために租税特別措置法等で規定しております、ただいまお話しのございました価格変動準備金とかあるいは海外投資損失準備金とか海外市場開拓準備金とか、こういうふうないわゆる課税所得の計算上損金に計上できるもの、こういうものを規定することによって商法あるいは企業会計のほうに御迷惑をかけるようなことがあってはいけないというたてまえから、現在では租税特別措置法の各準備金、特別償却につきましてはそれぞれ損金として経理する、費用として経理するあるいは剰余金として経理する、いずれの場合であっても税法上これを認めることにしておりますので、したがいまして、商法あるいは企業会計との調整という意味では従来から努力しておりましたし、その観点から現在の規定ができているわけでございますので、一応税の立場から申しますと、税といたしましては、そのような観点から商法あるいは企業会計との調整というものはできていると考えております。
  113. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それは調整はできているかわからないけれども、調整ができただけでは困るんですね。企業が喜ぶような調整ができたんでは、国民のほうはいま困っているわけです。ですから、そういう国民の側に立っていま御質問しているわけなんですからね。  この前も当法務委員会で脱税についていろいろ御質問したときに、大きい企業ではその権限がいろいろ分かれておるから、刑事責任は追及できない、むずかしいんだ、ところが小さい企業においては権限を持っている代表者がずっと下にまでその権限が及んでいくから、脱税の刑事責任というものは追及する点が非常にあるんだ、そのために小さいほうの企業が刑事責任を問われているというような内容が答えられたわけです。それじゃ税の公平の原則に反していくわけですね。たとえば勤労所得者は源泉徴収でがっぽりいかれるわけですよ。素朴な質問になりますけれどもね。それじゃ、いろいろな名目を十分話し合いができて認めることにしておるということになると、その勤労所得者のいろいろな名目ももっと認めてくださいということになるんじゃありませんか。そういう観点から、いまのお答えについてもう一度お答えください。
  114. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答え申し上げます。  ただいまの私がお答えいたしました点につきましては、決して野方図に租税特別措置を認めている、こういう処置ではございません。現在、ただいまお話しのございました価格変動準備金あるいは公害防止準備金等につきましても、こういう種類の準備金は、一たび定めますとなかなかそれを縮減することがむずかしい、既得権化するというふうな租税特別措置法の本来持っている性格を持っておりますものですから、われわれといたしましては常時、毎年の改正においてその見直しをはかり、同時に必要な整理、合理化をはかっているところでございますので、そういう意味で、もちろん限られた範囲内で、最小限の範囲内でこれを認めているということにつきまして、これを御了解願いたいと考えております。
  115. 沖本泰幸

    ○沖本委員 限られた範囲内ということをおっしゃいますけれども、私が言っているのは、公平の原則に立ってどうかということを申し上げているのですよ。片一方のほうはあまり見過ぎているんじゃありませんかということになるんですよ。だんだん認めていって慣行化されていき、実際に運営されていったらなかなか変えられないんだということをおっしゃいますけれども、それじゃ、場違いな質問かもわかりませんけれども、勤労者の所得税の中にもっとほかの名目を入れていただいて慣例にしていただいたらいいということになるんじゃありませんですか。そういうことになるわけです。それで、そういうふうなものがありますから、あなた方のおっしゃっている租税特別措置法上の問題なり準備金なりあるいは損金なりの問題をいろいろおっしゃったわけですけれども、引き当て金等に関する内容のもので、四十五年三月の三十日に「企業会計原則修正案の解説」こういうことで経団連のパンフレットのナンバー一〇五というのが出ているのです。これは図書館から借りてきたのですけれども。この中では、ことばの扱い方として企業側と商法側、こういうことばで扱っていますけれども、このいわゆる経団連側の解説者の話として出ておるのは、これは会計原則という立場で申し上げるわけですけれども、「一般原則にございます真実性の原則、明瞭性の原則、継続性の原則など七つの原則のうち、とくに継続性の原則については、従来、公認会計士監査におきまして数多くの限定意見を付せられている問題でございますので、新しい会計原則においては、これを無闇に強制しないようにということを極力主張いたしました。」こういうことが書いてあるのですよ。これはこの中にあるのです。この企業会計原則修正についてむやみに強制しないようにという話し合いが行なわれたということは問題ですよ、こういうことは。引き当て金についても弾力的に処理ができるように望んだ。また、臨時巨額の損失の繰り延べについては、従来の会計原則ではこれは認められておりますけれども商法側の強い意見があって、これを削除するという機運が非常に強かったが、これも従来どおり認められるように極力主張した。その結果存続されるようになったと話している。この商法の一部改正の問題が練られてくる段階でちゃんとこういうことが中に入ってきているのですよ。企業側のほうの要求が全部この中に入ってきているのです。あとで言いますけれども、九〇%主張が認められた。それじゃ何のためにいろいろな制度を設けて商法の改正をやっているか、わけがわからなくなってくるのです。これは経団連の経理懇談会委員長、十条製紙株式会社社長、企業会計審議会委員の渋谷さんのお話なんです。ここに載っているのです。この点についてどうなんですか。こういうことがすでに話し合われたというのです。そして十分そのことがしんしゃくされて商法の中に組み込まれた、こういうことになっているのですよ。
  116. 田中啓二郎

    ○田中説明員 ただいま御指摘の、たとえば継続性の原則についてはむやみに強制しないようにとか、引き当て金はうんと弾力的に、こういう主張をしたということでございますが、いろいろな方がいろいろな主張をした結果できたものは現在ある修正案というもの以外にございませんで、その主張がみんなの了解事項であったというようなことはないのでございます。その点、重ね重ねあのパンフレットについては御質問をいただいているわけでございますけれども、私どもそのつど申し上げておりますように、継続性の原則なり何なりにつきましては従来と同様ないし従来以上に厳正にこれを行ない、いやしくもみだりに継続性の原則がひん曲がるというようなことがないようにということははっきり申し上げることができます。
  117. 沖本泰幸

    ○沖本委員 従来より厳重にとか、そういうことないんだといろいろこの問題について言及されるけれども、さっき言ったとおり九〇%も認められたと、こう述べていらっしゃるのですよ。そういうことがなおざりになっているのなら、なぜこういうことは事実とは違うということを何かの形で向こう側に訂正させないのですか。そんなになおざりになっているのです、これ。それで現在は企業のもうけ隠しとか脱税とか、それからこの引き当て金についてはいろいろなごまかしができるということを企業側も言っているし、現実にやっているし、そういうことがあるかもわからないということなんで、今度は、十二月期についてもだけれども、三月期については厳重にやるとこう大蔵省のほうではおっしゃっているわけでしょう。それなら、何もないのならこういうことわれわれが心配して御質問する必要はないということになるわけです。ところが現実に予算委員会でいろいろなことが明るみに出されて、マスコミのほうもいろいろな調査をやって出てくる問題は、これはやはり企業のモラルであり、そのモラルが根本になって出てきている社会性をなくした企業のあり方ということで、現実に問題が出てきているわけです。そういうことになるわけです。引き当て金の問題についてもお読みになったと思うのですけれども、負債性引当金の考え方については、将来の費用となる支出についてのみ負債性引当金として計上するということだった、しかもこれを計上しないで配当すれば違法配当になるという強い考え方が大蔵省の主税局にはなかったのか、こういうことになるのですね。企業側の考え方は、「われわれ企業の側からすれば、会計原則でそういう規定を置かれて、これを強制されるならば、税法がまずそれを認めるべきであって、税金を払ってまで引当てをするというのも実情として納得できない」こういうふうな言い方をしておるわけです。だから会計原則の上では強制しないといった趣旨で解釈して差しつかえない、しかし負債性引当金と特定引当金は明確に区別しなければならないが、将来の費用のほかに、損失を含めて引き当ててよろしい、こういう新しい解釈が決定した、これは先ほどお答えになったのとやや似ているわけです。これは書いている内容と全く一緒ですよ。どこかで違う答弁をしてくださいよ、それは違いますという。また余裕のある企業においては、ぜひひとつ率先して有税でもって引き当て金をおとりになって、「そしてこれが経済界における会計慣行であるということで、大蔵省主税局のほうでもこれらの引当金を税法上、損金に算入せざるを得ないという状態になることが妥当のように考えられます。」こういうことなんですがね。だから経団連のほうにおいてほとんど九〇%通っていると思いますとおっしゃっているのですよ。あまり経団連の言うことを聞いてしまうと理論がつぶれる面がある、しかし経団連の意見をいれないと実務上で不便になるから、こういうふうな話し合いができたんだ、こういうこともこの中に書いてあるのですよ。そうすると、おっしゃっていることと全然逆じゃありませんか。すでにいろいろな配慮の話し合いがいろいろ間にあって、そういう経緯を経てここまできたということになるのですよ。こういうことは民事局長のほうは全然御存じないことだと思うのですがね。それじゃ、さっきから心配して申し上げているとおり、ばらばらになるんじゃないですか。法律はつくるんだけれども、実際のところでは法務省のほうは具体的なことについては関係ないんだというふうなお答えも先ほどあったわけです。具体的なことについての話し合いというのは前もってこういうふうなことが四十五年にいろいろやられてきているという指摘があるわけなんです。
  118. 田中啓二郎

    ○田中説明員 ただいまの点はそれぞれの主観的な判断をものに書いたりスピーチしたりしたということだと思いますが、私どもとしましては、決して経団連がどうだとか、九〇%主張が通ったとか、あるいは何でも引き当てれば次第に慣行化していずれは税も認めざるを得ないだろうというようなことは、発言としては私はとんでもない発言だと考えておるわけでございまして、最近の激動する経済情勢下にありまして、四十五年の環境とただいまとはかなり違ったところもございます。そして衆参両院でこの点についてはいろいろ御議論もございまして、私どもはこの企業会計原則の修正案が確定するに先立って、商法が通過した暁に見直しをしてみようということを答弁申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、商法という強行法規、ここでやはり「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」という三十二条がございますので、企業会計原則もそのしんしゃくする内容、対象となるわけであります。したがいましてたとえば継続性の原則において正当な理由というのを置きますと、何が正当で何が正当でないか、違法か適法かという無用な混乱を呼び起こすという形式的な理由によりましてそれを落としたわけでございまして、みだりにこれを変えてはならないということ及び重要な事項について変更があったならばきちっとその旨を理由を示して書くし、影響額も明示しろということはそこにきちんと書いてございます。さらに保守主義の原則につきましても従来は注解的なものがなかったのを保守主義の原則のみを掲げて振り回すというようなことはいかぬぞというようなことも入っております。そういうようなことで、私どもとしましてはそもそもの目的が商法改正によって監査制度を強化するということでございますから、その目的にいささかなりとも違背することがないように今後とも十分注意して、先生の御指摘等も踏まえながら対処したい、かように考えております。
  119. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ただ私は御質問していますけれども、専門家じゃありませんので、私なりに一生懸命あれこれあっちへ当たりこっちへ当たりして調べたことで御質問しているわけですから、とんちんかんを言う場合があるかもわかりません。しかしそのためにやはり素朴な考えからいろいろお聞きしているという点に立って答えてもいただきたい、専門的に聞いているんじゃないのだということでお伺いしたいわけですけれども、予算委員会では結局通産省が企業側にいろいろ指導したんじゃないか、そしてそのカルテルがあったんじゃないか、違反のことが、ほぼ近いところまで問題点が押し込まれていったわけです。そうすると、いま私が心配して申し上げているのは、大蔵省のほうが企業側のほうのいろいろ立場考えてあげて、そういう立場から先ほど言ったとおり保守主義をとってはいかぬとかいろいろなことを言ったと書いてあるというけれども、大体ほどほどにしてやっておけよというような内容の法律じゃないか。これはあとにいろいろな結果があるわけですから、そういう観点から見ていくと、この法律にあまり食い違ったような結果が出るような形にならないように、じょうずにやっていきなさいよというふうにだいぶたががゆるめられてきた内容でこの法律ができているのじゃないか。私が一番最初に御質問の趣旨を申し上げたのは、現在の膨大になった日本経済の中で、そしてこういうふうに明らかにされた企業の内容を国民の目からいろいろ見ていくと、ほんとうの会社法人というもののあり方というものがいろいろな角度から考え直されていって、隠されている部分が非常に多くて、そして反国民的な内容のものになっているんじゃないか。そういう中にあってこの法律がどういうふうな役割りをほんとうに果たしてくれるのだろうかということが一番心配点なんですよ。そうでなかったら法律つくる必要はないじゃないですか。ですから、現時点に合わせてみてこの法律の果たす役割りというものはどの辺まで歯どめがきくんだとか、効果があるんだとかいうことにあるわけなんです。そういう中から一番心配になるところを御質問しているわけなんです。  それで先ほど会計士の問題に触れられましたけれども、証券取引法上における公認会計士の鑑査報告についてですけれども、もしそれが間違った報告であった場合に、この虚偽の証明はどういうふうな交通整理が行なわれるのですか。
  120. 田中啓二郎

    ○田中説明員 鑑査報告の内容の重要な事項について虚偽記載があったというような場合には、ただいま証取法の話でございますが、証取法におきまして損害を与えた関係者に賠償責任を負うというきびしい規定もございますし、そこに至らない場合、公認会計士に対して大蔵大臣による種々の懲戒処分というものがございます。
  121. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この商法改正によって刑事責任を問われるということになります面もあるし、その会計鑑査人の責任はどの範囲内というふうなことになるのでしょうか。
  122. 川島一郎

    川島(一)政府委員 会計鑑査人の責任につきましては今回の特例法に規定しておりまして、第九条でございますが、「任務を怠ったことにより会社損害を生じさせたときは、その会計監査人は、会社に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。」、それから「監査報告書に虚偽の記載をしたことにより第三者に損害を生じさせたときは、その会計監査人は、その第三者に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。」、こういうことになっております。
  123. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、個人公認会計士と、それからいわゆる連帯責任を持った監査法人という場合の責任はどういう形に変わっていくわけですか。
  124. 川島一郎

    川島(一)政府委員 監査法人の場合には、その監査法人がその責任を負うわけでございます。
  125. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その連帯責任ということになりますと、監査法人というのは第一義責任者が全部責任を負うということになるわけですね、何人かおるわけですから。仕事をやって、そこで責任を生じた場合、責任の分担というものは主たる監査法人の分にかかってくるということになるんじゃありませんですか。特定の人だけに限られるわけですか。
  126. 川島一郎

    川島(一)政府委員 監査法人が責任を負います場合には、その法人として責任を負うわけでございます。そのほかに、個人が故意または過失によって、その結果に因果関係のあるような行為を行なっているということがありますれば、その個人も同時に責任を負うということになろうと思います。
  127. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いわゆる間違った監査報告をして賠償責任というものが生じた場合、アメリカでは日本円にして十億円以上の損害賠償責任が課せられたものもあるわけです。たとえて言えば、日本テレビの粉飾決算があったわけですけれども、そういうふうなことになってきて、この監査法人が責任をとっていって賠償責任を負わなければならないということになると、はたして個人なりその監査法人が、実際にそれを果たせるだけの担保なり何なりというものがあるのかどうかということです。一応現在の保険制度からいろいろなことを考えると、限度一億円までということになっているわけですけれども、こんなにだんだん膨大になっていきますと、一億や二億やそこらで済まない問題が出てくるということになってきます。これは当然考えられるわけです。そうなった場合、結局被害者に対して、いわゆる交通事故があった場合に、加害者のほうは強制賠償保険に入っておって、少なくともある程度の賠償責任を果たすために、保険制度の中に入ってその責任を果たしていっているというようなことがありますけれども、こういう制度でもっと額の大きいものにもっていかないとむずかしくなるんじゃありませんですか。
  128. 田中啓二郎

    ○田中説明員 確かに現在公認会計士職業賠償責任保険という制度がございます。付保の限度もおおむね先生のおっしゃったところでございまして、かなりの者が付保している状況でございます。ただ、これの限度をふやすべきかどうかという点は、これは付保する側とそれから保険をやっております銀行局の双方の話かと思いますので、私所管が違いますので、ちょっとお答えしかねます。
  129. 沖本泰幸

    ○沖本委員 どっちの所管になるわけですか。
  130. 田中啓二郎

    ○田中説明員 銀行局保険部だと思います。
  131. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ではこの点については、どうせ政府側としてお越しになっているわけですから、答えられなくても、問題点は聞いて、その点についての検討は加えていただかなければならぬと思います。すでにこういう点について御質問が以前にあったと思いますけれども。  それで、結局刑事、民事の契約不履行という場合には、故意だとか過失だとかいう立場から責任を問われるということになってくるわけですけれども行政上の責任について問題が起きた場合の罰則というのはどういうことになりますか。
  132. 田中啓二郎

    ○田中説明員 先ほど申し上げました懲戒処分の種類は大体三つに分けることができます。一つが戒告、一つが一年以内の業務の停止、もう一つが登録の抹消、以上でございます。
  133. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまの罰則というのは、これは監査法人なり公認会計士なりに対する罰則ですね。そうすると、会社側の役員に対する責任は生じてこないわけですか。こういう人たちに対する罰則なり、同じ責任が課せられなければならないと思うのですけれどもね、そういうものの規定はないわけですか。そうすると、それがなかったら、会社側のほうは何をやってもいいということになるわけです。
  134. 川島一郎

    川島(一)政府委員 会社側のほうに責めるべき点があって第三者に損害をかけたという場合には、会社損害を賠償する責任を負う場合もございますし、また、その行為を行ないました取締役なりあるいは監査役が責任を負う、こういう場合も出てくるわけでございます。
  135. 田中啓二郎

    ○田中説明員 証取法におきましても百九十七条におきまして、重要な事項について虚偽の記載を提出した者については三年以下の懲役並びに罰金という規定がございまして、その法人に対しても両罰規定がございます。
  136. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その法人の両罰規定というのは、いわゆる監査役なり会計監査人が間違った場合、それが会社側のいろいろな内容によるものによった場合は同じような責任を問われるわけですか。それとも、会社側の両罰規定というのは全然関係なしに両罰規定があるということになるわけですか。
  137. 田中啓二郎

    ○田中説明員 それぞれ別の罰則体系によりまして、ただいまの会社の場合には、提出した者及び法人そのものについても罰則規定の適用がございます。
  138. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その辺にまだ問題点が残っているのじゃないかと思うのですけれどもね。いわゆる逆粉飾なり何なり、もうけ隠しなり、いろいろなことを会社が意図してやっていく、それを監査してみる、それでその監査報告が間違っておるなり、監査法人がいろいろ会社側のやったことに基因してそして間違いを犯した、それに対して両罰規定があるのに、今度は会社側のほうは別の両罰規定で規定されておる。同じ内容のものに対して同じ責任をとらされるということになればうなずけますけれども、そうでない場合はこれはうなずけないと思うのですがね。その辺いかがですか。
  139. 田中啓二郎

    ○田中説明員 両罰規定は各本条の罰金刑を科するということになっておりますから、罰金に関する限り各本条の罰金と同様な罰金が科せられるということでございます。
  140. 沖本泰幸

    ○沖本委員 罰金の問題なり監査役なり公認会計士会社側との関係というものはあとでもう少し御質問したいと思いますけれども。  そこで、きのう、おとといの新聞で金属加工機械メーカー津上、これが総会屋に乗っ取られた、これで商法四百九十四条でいろいろ、嶋崎というのと会社側の常務というのがいま贈収賄で書類送検というかっこうになってきているわけですけれども、こういうふうな内容から、この問題はこの問題として、法務省としてはこういう内容についてどういう御方針でいらっしゃるのか。今後類似したものがいろいろあると思うのです。それと同時に、結局株主総会における総会屋は、新聞の社説にもいろいろ出ておりますけれども、このまま野放しにしておったらいかぬということがいわれております。そこで、損害賠償についても、いろいろなことのでっち上げで、公認会計士がいろいろな形で総会屋に振り回されて、そして、それに対する挙証責任公認会計士が持たなければならないというような立場に追い込まれて、振り回されるということは考えられるわけです。そういう点についてはどうなんですか。
  141. 田中啓二郎

    ○田中説明員 現行法下における証取法の公認会計士による監査は事後監査でございますので、株主総会によって確定した決算を事後に監査するということでございますから、総会で確定したものを自由な立場で、公正な監査意見を付するということがたてまえになっております。
  142. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この辺はもう少し検討していただいて、今後問題が起きないように十分考えていただかなければ、先ほど言ったとおり何もかも全部、この法律ができてということで、公認会計士がどろをかぶってしまうということに具体的になりかねないということがあり得るわけですから、その点はもっと研究していただきたいと思うのですね。  それで、先ほどの引き当て金的なものになりますけれども利益封じという点で読売の中に「大蔵省、税制・証券行政面から 減価償却変更認めない、たな卸し評価替えも」、こういうことで「国税庁は審査の基準づくりを急いでいるが、今のところ、三月期決算会社の減価償却などの変更は原則として認めない方針である。先に国会で問題になった新日鉄・君津製鉄所など鉄鋼会社の償却変更は承認されないことになった。  証券行政の面では、最近、企業の決算が“悪徳企業”のレッテルを張られるのを恐れるあまり、減価償却のほか、各種引当金、準備金を必要以上に積み増し、利益を過小に公表している傾向があるためである。」、「大蔵省は、企業会計原則に合っていても社会常識を逸脱するような決算は、つつしむよう公認会計士協会や証券会社を通じ、通達などによって指導する一方、黒字を少なく見せる“逆粉飾”が明らかとなれば、上場停止など強い態度で臨む。」「全国の租税Gメンを総動員して利益操作を防止するための“事前調査”を指示しており、」とこういう記事があるわけですけれども、そうすると先ほどの点については一応でき上がったもの、きめられたものについてはというお答えがあったわけです。それとだいぶ趣の違う新聞記事の内容が示されておるわけですね、大蔵省側としては。いわゆるこの商法の中に盛られている中心になっているところの企業会計原則についての先ほどのお答えだったのか、あるいはこの新聞発表になっておるものも含めたお答えなのか、新聞発表はさらにそれを突っ込んでこういう形で発表があったのか、その辺私もうひとつのみ込めないわけなんです。先ほど伊豫田課長さんですかのお答えの部分について、何かいままででき上がったものについてはそれ以上のことはやらさないけれども、大体合っておれば認めないわけにはいかないのだという点のお答えがあったわけです。それといま新聞でお読みした点とだいぶ内容が違うわけですね。これはあなたの知らない内容なのか、あるいは記者会見に対してこういう強いものをあらためて出しておるのか。それからこの中で「国税庁は審査の基準づくりを急いでおる」、この基準づくりとはどういうふうな基準づくりかという点と、それからさきのこの委員会で稲葉先生からの質問にもありましたけれども、そのときの答えの中に、あまりに膨大過ぎるということで現在の国税庁の人員なり機能なりを使ってみてもなかなか見つけられないのだ、膨大な人員が要るのだということをおっしゃっておられましたけれども、そうすると、三月の青色申告について各税務署はいまてんてこ舞いを始めているわけですね。そういう中にあってこういうふうないわゆるGメンを総動員してやるという内容とのつながりですね、ぼくらの考えじゃちょっとうなずけないのですけれども、ただ新聞発表だけでこういう強がりをおっしゃっておるのか、具体的に現在の国税庁のこういう機能でいまの企業全体の内容をさらに徹底して調べるだけの能力があるのかないのか、そういう点についてお答え願いたいと思います。
  143. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答えいたします。  御質問の前半の部分につきましては、実は先ほど申し上げましたのは、主として準備金あるいは特別償却というふうな、特定の政策目的を持っているがために租税特別措置法上特に損金に算入することを認めております各種準備金、特別償却について御説明申し上げたわけでございますが、ただいま先生がおっしゃいました新聞記事あるいは新聞発表とおっしゃいました件の内容につきましては、これはたなおろし資産の評価方法あるいは減価償却資産の減価償却の方法、これらをどのように選択するかということについての問題かと考えております。それで先日予算委員会でそれに関する御質問がございまして、大蔵大臣はその点につきまして、現在たなおろし資産の評価方法の変更あるいは減価償却の方法の変更についてはきわめて厳正に執行しております、現在法人税法施行令の五十二条にどういう場合にそれを認めあるいはどういう場合にその変更を却下するかという規定がございますが、その執行については十分きびしく現在まで執行しております、なお足りないと言われるのであれば、国税庁をして、それをさらに厳正に執行し問題がある場合には庁に上申するように、そういうふうな方向での通達を出させましょう、こういう御答弁を申し上げております。ただいま先生のおっしゃいました件はそのときの新聞に書かれておりましたことかと考えております。なお、基準づくりと申しますのはそういう意味ではむしろございませんで、そのときの答弁は、ただいま私が申し上げましたように、問題があれば上申してくるように、稟議してきて国税庁でそれを判断いたしましょう、こういうことでお答えしていると私は記憶しております。  それから後段の現在の国税庁の人員、規模をもってしては云々という点につきましては、私どのような内容の新聞発表があったかそこら辺承知しておらないのでございますが、現在国税庁は限られた人員、規模をもって適正な税務の執行に毎日努力しております。  以上でございます。
  144. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ことばが足りなかったかもわかりません。たなおろし評価がえ等についてはいまおっしゃったとおりなんですけれども、「証券行政面では、公認会計士協会や証券会社を通じて企業会計原則に合っていても社会常識を逸脱した決算をしないよう指導し、黒字を少なく見せる“逆粉飾”が明らかになれば上場停止という強い措置もとる、」こういうものだ。三月期決算会社から適用することにしている。「既に全国の租税Gメンを総動員して利益操作を防止するための“事前調査”を指示しており、これに今回の措置を加えることで企業利益操作はほぼ封じ込めることができるとみている。」こういう内容なんです。「減価償却のほか、各種引当金、準備金を必要以上に積み増し、利益を過小に公表している傾向があるためである。」こういう内容が書かれているわけです。「大蔵省は、企業会計原則に合っていても社会常識を逸脱するような決算は、」これは先ほど言ったとおりということです。「“逆粉飾”が明らかとなれば、上場停止など強い態度で臨む。」こういうことなんです。逆粉飾があると見ているわけです。「明らかとなれば」ですから、「ない」じゃないです。「ある」なんです。あると見ているからです。それはいままでのこういう経過をたどってきて出ていることなんです。つたない御質問で意味が御理解しにくかった点はあるかもわかりませんけれども、私の意図しているところもそのことを申し上げているわけです。そしてこれを申し上げたのも、すでにそういうことの内容をはらんだものが話し合われておったということを申し上げているわけです。そういうことはないということをおっしゃっているのですけれども、そうであればこういう結果を見るというようなことはおそらくないということが言えるのじゃないか、こう考えられるわけです。結論的なことはもう少しあとで申し上げたいと思います。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、先ほど総会屋にちょっと触れました。結局これはこの前の国会でもいろいろ問題になりましたけれども、前国会での質疑は総会屋の云々についてのことが多く時間をとったような面もないことはないわけです。しかし、心配されたものがだんだんと出てきているということであり、あるいはその逆に総会屋を利用してみたり、あるいは総会屋から恐喝されていろいろな内容になっていったりということですね。利益を隠すために総会屋を入れて形式的な総会に終わっているという質問はたくさんな方からあったんです。これは前田中大臣がおすわりでございますから、よく御存じでございます。そういう点があるわけで、そういうことになっていくと、結局国会で本会議のもとに委員会があるように、株主総会という本会議のもとに委員会を設けて、それでその株式会社の運営の健全性確保のために健全な議論なり質疑をさせるべきである、そういう規模に持っていくべきである、これはほかの学者の方もそういう議論をおっしゃっておられます。ですから、簡単な形式的な株主総会制度というものを廃して、本会議とか委員会とか、こういうふうな形で、国会が死んでしまえば、本会議が死んだり委員会が死んでしまえば国も死んでしまうということになっていくわけです。ですから、株主総会が死んでしまえば会社自体も死んでしまう、健全な株式会社経営ということはいえない、こういう観点からこういうふうなきちっとした総会運営形式に持っていくべきと私、考えるわけですけれども、その点についていかがですか。
  145. 川島一郎

    川島(一)政府委員 株式会社の株主総会の運営についていろいろ問題があることは御指摘のとおりでありまして、われわれも今後十分検討してまいりたい、かように考えております。どういうふうに運営したらいいかというような点、もう少し実情もよく研究いたしまして、その結果を見ながら考えさしていただきたい、このように思います。
  146. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そこで、こういうふうな総会屋の弊害が社会に及ぼしている影響というのは重大であるということは新聞の社説でも取り上げられております。一取締役の背任行為が、商法では四百八十六条で「七年以下ノ懲役又ハ五十万円以下ノ罰金」ということになっておるのに、総会屋に関する処罰は、金を出す会社側も含めて四百九十四条で「一年以下の懲役又ハ五万円以下ノ罰金」、こういうことしかないわけです。これでは防げるわけはないと思うのですね。ですから、これはやはり取締役の背任行為を取り締まるように、七年以下の懲役または五十万円以下の罰金にこの法律を改正すべきである、こういうふうに考えるわけです。それで、だんだん会社の規模が大きくなっているわけですから、社会的な影響もまた大きいということが言えるわけですから、この四百九十四条の法定刑を少なくとも取締役の背任罪を規定する四百八十六条の法定刑と同じものにしていただいたほうが妥当ではないか。すでに前にもこの点については審議会でいろいろ同じような、四年という内容のものも出ておったということを聞いておるわけですけれども、やはりこういうふうに一つ一つ改めていただかなければならない、こう考えるわけですけれども大臣、いかがですか。
  147. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 時勢の変化に伴いまして、御説の点は全くごもっともだと考えております。
  148. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣に伺ってもその程度しか伺えないとは承知しているんですけれども……。それから、監査役が重任していこう、こう考えてもいまの任期では——これは前にもいろいろ議論があったと思います。あったけれども、あえて申し上げるのは、こういうふうな形で置いているから監査役なり何なりが会社と迎合してしまわざるを得なくなってくる、こういうことになるわけですから、監査役を少なくとも五年間は監査役としておれるようにやるべきだ。いわゆる法制審議会では四年、こういうことが出ておったわけですね。三年ですか。少なくとも五年ぐらいにしていただいて地位が安定してくれば、当然しっかりした監査ができていくということになるわけです。そういう点をあやふやにしておくと、どんなものを上へ乗せてみたところでできない。ですからいろいろな議論が出てくるということになってくるわけです。  同じように、いわゆる公認会計士につきましても五億円以上の会社からすべて報酬相当額を国庫へ納めていただいて、プール制にしていただいて、会計監査人は国のほうから報酬を受けてやっていく、これも前に出た意見だと思います。そうしなければ公正は期せられないというふうになってくる、これはもう間違いないと思うのです。こういうところをはずしておいてこの法律の目的を達成しようと思っても、そこはその辺から抜けてしまっているということになるわけですから、そこのところをお考えになっていただきたいのですけれども、これはいろいろな点でこの前すでに議論されたところを蒸し返して申し上げているわけですけれども、蒸し返しているというところは、それだけに内容はあるわけです。というのは、初めから申し上げたとおり、この法律が目的としたところと現在いろいろ国会で明らかになったところとは全然趣を異にしているわけですね。そういうふうな内容を考えて、この法律が社会的な責任を果たすという観点から考えていくと、当然このことはやってもらわなければならないというふうに考えるわけですけれども、この点いかがですか。
  149. 川島一郎

    川島(一)政府委員 御指摘の点、われわれも十分考えさせていただきたいと思います。また、この国会でいろいろ御指摘いただきました点は、今後法制審議会の商法部会で審議される場合にもその点を御報告して参考にしていただくようにいたしたい、このように考えております。
  150. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ここに「経理情報」ナンバー七という中の抜粋なんですけれども、「会計原則の国際的統一には前向きに」ということで国際基督教大学教授の中島省吾さんの書いた論文の中にも、日本の公認会計士が世界であまり知られていない、日本の高度な経済成長なり何なり、総生産力なり何なりというのは世界でいろいろな形で出てきて、いま世界経済の中で日本経済が云々されておるときに、日本経済の公認会計士なり何なりというものは世界であまり知られていないということが書かれているわけです。アメリカの公認会計士は日本の会社に対してちゃんと資格をとっておやりになっているのに、日本人の場合は、日本の公認会計士がアメリカで公認会計士の資格をとろうとすれば州で三つぐらいしか認めているところはないし、それもちゃんと向こうに従ったことでやっていかなければならないというものがあるわけです。ところが、日本でアメリカ人がとっている公認会計士というのは通訳つきで試験を受けて、やさしい試験で資格をとっておる。こんなアンバランスなことはないと思うのです。  これも前に話があっと思うのですけれども、なぜこんなことを申し上げているかというと、今度の国会でも日本の企業が海外進出している、それで向こうの現地企業なり何なりを使った利益の脱税なり何なりというものが非常に大きく問題にされてきたわけです。そういう点をチェックしなければならないのが大きな問題なんですけれども、この辺について何ら歯どめ的なものが全然日本としてはできない、現地法人まかせ、そういうところにこれは抜け穴があるんじゃないですか。日本の企業が現地企業とタイアップしていろいろなことをやっていく、あるいは海外に出ている日本の企業が現地の商社とのいろいろな仕事をやっていく、そういうところで、具体的に各党から海外での企業の——東南アジアでは田中総理が総スカンを食うほどの大きな悩みまで持たれていっているというところは、これはやはり海外に出ている企業のこういう内容についてチェックできないというところに問題があると思うのです。この点いかがです。
  151. 田中啓二郎

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  日本の現地の子会社に対する監査はどうなっておるか、外国では容易に公認会計士の資格を得させないから、それが障害になっているではないかというお話でございますが、ただいまの資格は、たとえば外国で、アメリカで申しますればSECに届け出をする場合、その監査証明という法律行為はアメリカの資格のある公認会計士でなければならないという意味の資格でございますので、こちらの会計士が行きましても、そういう意味ではなくて、事実行為としてそこに行きまして帳簿も見る、しかしそれは日本の証取法の効力発生にかかわらせるという意味においては、法律問題は日本で発生いたしますので、そのような事実行為が完全に排除されているわけではないと考えます。  ちなみに、現在の証取法におきまして商社等の海外子会社、これはどうなっているかと申しますと、重要な関連会社につきましては添付書類を付するということになっておりまして、どのような添付書類を付するかは省令できめております。したがいまして、本社と子会社との関係は、本社の帳簿を見てそこでわかりますが、子会社が外国において非居住者といろいろな取引をしているという関係はその添付書類によって大体の状況を把握する、投資家の判断資料に供するというようなたてまえになっております。
  152. 沖本泰幸

    ○沖本委員 日本公認会計士協会というものが、これへの参加によって、海外八カ国の会計団体に直接に責任を負うことになっておるけれども、同協会だけの問題ではないんだ、日本の学界も、関係官庁もそして産業界もこの問題については、少なくとも道義的には、対外的に連帯的な責任を負うことになる、こういうふうにいっているわけです。ですから、いや、それは問題点はないんだ、ちゃんとチェックできるようになっています、ということになりますけれども、先ほどは一例で言うただけなんです。アメリカの会計士は日本の会計士の資格をとっているのです。では、なぜ日本の会計士がアメリカの資格はとれないのですか。
  153. 田中啓二郎

    ○田中説明員 ただいまの点は、昭和二十四年に公認会計士制度ができましたときには、まだできたてのこともあり、従来そういった業務に習熟した外国人を日本で公認会計士業務をやらせるほうが日本の公認会計士制度の円滑な発展上けっこうではないかということでこれができたわけでございますが、最近では、四十六年以降このような特別な試験とかいうものは行なっておりません。そして現在登録されている外国人公認会計士の数は三十一でございます。  なお、公認会計士審査会というのがございまして、三十七年にこの外国人公認会計士のことを議題に供しましたときには、まだこの制度はあってもいいのではないか、日本は国際化もまだ進んでいないし、そういうことも考えると、まだこの制度もあっていいのではないかという意見だったわけでありますが、それ以後すでに十年以上経過しておりますし、最近はずっと新しい外国人公認会計士の登録もございませんので、新たに公認会計士審査会にこのような問題を呈示して審議をお願いしてもけっこうではないか、かように考えております。
  154. 沖本泰幸

    ○沖本委員 最後のお答え納得できないこともないのですけれども、私が申し上げているのは、前の国会公認会計士会から来られた方が参考人として御意見を述べていることなんですよ。それを私がもう一ぺん申し上げているだけなんです。ただ、私は上つらだけかすって調べたのですから詳しいことは申し上げられませんけれども、いまの時点で言えることは、そのときすでに問題点を指摘されているわけです。それがいま事新しくお答えが得られるというようなところに問題点があるのではないか、私はこういうふうに考えられます。  すでに日本の企業はアメリカの土地の中に入って、大きい名前でいえば、キッコーマンなり何なりというところがすでにそれなりの企業で向こうに大きな地盤を築いていっておる。海外の大きな企業が日本の中に地盤を築くと同じようなものがすでに海外のいろいろなところで、ただに発展途上国に限らず先進国の中にも入り込んでいっている。そういうふうな事態の中にあってそういう問題がなおざりにされておるということ自体がやはり問題だということになるわけです。  それで、いろいろな点で子会社についても親会社のほうから添付書類としてつけられるからという御答弁がありますけれども、そういうふうな大蔵省のほうの側がおっしゃるようなきちっとした面があるのなら、予算委員会で海外の企業のいろいろな隠し方を暴露するはずはないですよ。そういうことになると思うのです。そこにいろいろな抜け穴があるから、その抜け穴をつかんで暴露しているんじゃないか。それで、これが問題ですよということを各党が言っているわけですよ。それで、いままでのお答えを一貫して伺っていると、いやあ、心配ないんだ、これで十分だという言い方、何も問題点はありません、十分検討もしておりますし、問題点については歯どめがほとんど行き届いておりますというようなお答えがどんどん返ってくるわけですけれども。  では、われわれが心配するところはないのかといったら、あるから、こういうふうに厳重にやるとか、法務省のほうもいろいろ談話を発表して、今後はこの商法をさらに検討するということをおっしゃっているわけです。そのさらに検討するというのは、この商法が通ってからまだ検討するということになるわけです。この段階だけではわかりませんということをおっしゃっているわけです、総括して言いますと。  それで、先ほど大蔵省からの御答弁でも、商法が通過したあとでさらにまた検討しますという御答弁もあったわけです。ということは、この法律は完全なものじゃないということなのです。初め評価されたほどの内容ではない、あるいは初め目的とした商法の目的とは反するような大きな問題があとから一ぱい出てきて、そして、この商法の現在の一部改正ではどうしても目的を達成するような内容ではないということになるのじゃないか、こう思います。すでに先ほどちらっと申し上げましたとおり、法務省自体もおとといの新聞で、「これはひとつには現在の商法の「株式会社制度」にも問題があるとみて、今国会終了後、同制度の抜本改正に取り組むことになった。具体的には法制審議会(法相の諮問機関)の商法部会を中心に検討されるが、改正の方向としては1大会社、小規模会社が別個の制度を適用する2大会社に関しては、株主総会、取締役会、監査役の権限の配分と構成を再検討し、取締役会の行き過ぎをチェックする機能を強める3小規模企業業務運営の簡素合理化を図る——などが検討されるものとみられる。現在の株式会社制度は株主総会、取締役会、監査役の三本柱から成り立っている。これは、国の「三権分立」に相当し、株主総会が国会、取締役会が内閣、監査役が裁判所の機能を果たす。ところが実際には取締役会が金と人事権をにぎり、強大な力を行使している。株主にとっては企業の社会的責任より、利益をあげる方が当面の関心事であることが多く、どうしても取締役会に対するチェック機能が弱くなる。」、こうずっと述べていらっしゃるわけです。「悪徳商法に走るようになり、しかも企業の力は強大だから、一般庶民が大きな迷惑をこうむることになる。法務省は、問題企業の生まれる背景を、このように分析している。」、私たちが申し上げたとおりのことをおっしゃっているわけです。これは大臣がおっしゃったのかどなたがおっしゃったかわかりません、けれども、いままでいろいろ問題にして、いろいろ申し上げた中のことが、かいつままれてざっとこう出ているわけです。これはここでお読みしましたように、現在の商法、同制度の抜本改正は今国会終了後ということになります。今国会終了後というのは、いずれにいたしましても、現在の現に持たれておる法律が、どっちになるかわかりませんけれども、一応通過したということの後においてということがいえているわけです。ここでおっしゃっていることは不備だとおっしゃっているわけです。問題だとおっしゃっているのです、この現在の商法一部改正は。大臣、そうなりませんですか。新聞でなっているのですから、問題点を法務省みずからおあげになっているわけです。まあ、大蔵省のほうは、ずっとお聞きしていると、心配ないんだ、心配ないんだ、問題ないんだ、こう言っているけれども、中ではもうちょいちょい問題になるところをおっしゃっているわけです。こういうことになるわけです。で、問題ないならこれは必要ないじゃないかということもいえるわけです。ですから、こういう点——もう時間が来ましたから、限度がありませんし、まだ勉強が足りませんので、皆さんに筋の通った御質問ができなかったかもしれませんけれども、意図しているのは何度も申し上げているとおりなのです。そういう角度から、これはほんとうにこういうことを端緒にして、商法の一部改正というのは法務省から出た法律だからわれわれは付属的なものだ、こういうふうにお考えにならないで、真剣にお考えになってやっていただかないと、これは国家に対する大きな不信になっていま返ってきつつあるわけですから、こういうことを契機にして、ほんとうに内容的なものはやっていただかなければならないと思います。今後の分科会なり何なりで、これからの委員会を通じて、現在の物価高なり企業のあり方というものがいろいろ追及されていくけれども、こういう機会に、ほんとうに現在の企業のあり方というものに対して、角度を変え、ほんとうに真剣に真正面から取っ組んで、国民のための法律にしていただきたい、こういうふうに考えるわけですけれども新聞の御発表ともあわせて、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  155. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 今回の改正は、御承知のとおり赤字の粉飾決算だの、黒字の粉飾決算だの、そういうようなことのないように企業の健全化をはかることが目的の改正でございますが、なお大きく考えますと、最近の社会情勢などから見て、これはどうしてもいろいろ検討すべき点があるように思われます。ただ、これはやはり、法務省として商法のあらゆる点を検討してまいりますのには、法制審議会という、学識経験者の専門家の人たちに十分議を練っていただく必要があります。私ども個人の感触からいいますと、どうしても現在のような社会情勢からいえば、大会社、中会社、小会社ぐらいにやはり組織を分けていかないと、大会社も小会社もみんな一緒の法律でやっていこうというのですから、そこに若干の無理があると思うのです。それともう一つは、先ほど来いろいろ御議論がありました点、私もまことにごもっともだなと思って聞いておりましたが。監査役や監査のやり方、そういうようなものを、会社から俸給をもらってはほんとうの監査はできないじゃないか、こういうお説がありましたが、さりとて、企業でありますから、企業の監査について国やほかからその経費を出す方法もございません。ですから、できればやはり、大会社のような会社については監査役の報酬は年額幾ら、あるいは監査費用は幾らというようなことを、要するに株式会社における国会に該当するような株主総会で、いまの重役報酬年額幾らというのと同じように、監査役の報酬は幾ら、監査費用として該当する金額は大体これ以内とかいうような制度ができてやっていけば、やや独立した監査なり監査役の職務遂行なりができていくのではないかというような感じがいたしますが、これらのことはすべて、これは私ども個人的の感触でございまして、これをほんとうに立法化して制度化していこうとするのには、やはり専門家の集まりである法制審議会の商法部会で十分に検討してもらって、その上でない  となかなか右とも左とも結論が出にくいもののように思いますが、ただ、いずれにいたしましても、世の中の変化が旧来の社会情勢とは非常なテンポで変わってきておりますから、これをいかにさばいていくかということは、これはやはり国民全体が、皆さんお互いにあらゆる角度から検討していく必要があろうかと、かように考えております。
  156. 沖本泰幸

    ○沖本委員 まあ、その点につきましては早急に検討を加えていただきたいと思います。  それから大蔵省のほうは、課長さんや審議官の皆さんに責任あるお答えをしてくれと望むほうが無理だと思いますけれども、具体的なこまかいことは皆さんのほうがよく御存じのはずなんです。そういうことですから、ただ違った常任委員会のほうに出ていって答弁したということにしないでいただいて、ここで飛び出してきたのも租税特別措置法という内容がいろいろからんできているということも事実なんです。野党が一番問題にしているのもそこら辺にあるわけですね。それをもっと明朗にしていただいてやっていかなければならないということになるわけですけれども、実務に当たられる皆さん方が真剣にお考えになっていただいて、この法の運用なり何なりを効果あるようにもしていただかなければなりませんし、あるいは局長なり大臣がいろいろお考えになる土台も皆さんがおつくりになるわけですから、皆さん方のほうで根っこはきまるわけです。ですからその点は十分お考えになっていただいて、現在の社会情勢なり何なりに合ったように、国民が心配している心配を除くような方向に向かって今後やっていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  157. 小平久雄

    小平委員長 次回は、明六日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時十一分散会