運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-01 第72回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月一日(金曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 羽田野忠文君    理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君       愛野興一郎君    井出一太郎君       塩川正十郎君    竹中 修一君       萩原 幸雄君  早稻田柳右エ門君       日野 吉夫君    正森 成二君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         法務省民事局長 川島 一郎君  委員外出席者         参議院議員   後藤 義隆君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     正森 成二君 同月二十八日  辞任         補欠選任   保岡 興治君     松野 頼三君 三月一日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     塩川正十郎君   千葉 三郎君     愛野興一郎君   中垣 國男君     竹中 修一君   野呂 恭一君     萩原 幸雄君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     千葉 三郎君   塩川正十郎君     河本 敏夫君   竹中 修一君     中垣 國男君   萩原 幸雄君     野呂 恭一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法の一部を改正する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇二号)(参議院送付)  株式会社監査等に関する商法特例に関する  法律案(第七十一回国会閣法第一〇三号)(参  議院送付)  商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案(第七十一回国会  閣法第一〇四号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付商法の一部を改正する法律案株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の三法律案一括議題といたします。
  3. 小平久雄

    小平委員長 三法案は、いずれも前国会に提出され、本院において、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案修正、他の二法案原案のとおり議決の上参議院に送付いたしましたものを、参議院におきまして継続審査に付し、今国会、三法案とも修正議決の上、去る二月二十二日本院に送付してまいったものであります。  したがいまして、これら三法案趣旨につきましては、すでに十分御承知のことと存じますので、先般来の理事の協議に基づき、趣旨説明を省略することとし、参議院における修正部分につきまして、参議院法務委員会における修正案提出者参議院法務委員会理事後藤義隆君から、三法案修正趣旨について説明を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  参議院法務委員会理事後藤義隆君。
  5. 後藤義隆

    後藤参議院議員 商法の一部を改正する法律案外二法案参議院修正にかかる部分について、御説明申し上げます。  第一に、商法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一点は、商人は、損益計算書作成することを要しないものとする修正であります。  原案は、第三十二条、第三十三条及び第百五十三条において、商人は、損益計算書作成しなければならないものとされていますが、これを義務づけることは、小規模商人にとって負担となるなどの問題があるため、損益計算書作成することを要しないものとするものであります。  第二点は、子会社は、正当な理由があるときは、親会社監査役調査等を拒むことができるものとする修正であります。  原案は、第二百七十四条ノ三において、親会社監査役子会社に対する調査権が与えられておりますが、子会社に対する調査乱用されないよう、子会社は、正当な理由があるときは、親会社監査役調査等を拒むことができることを明らかにするものであります。  第三点は、取締役違法行為差しとめの仮処分には、保証を立てることを要しないものとする修正であります。  原案は、第二百七十五条ノ二において、監査役取締役違法行為差止請求権が与えられておりますが、取締役違法行為差しとめの仮処分につき保証を立てることを要するものとすると、差止請求権を与えた実効性が失われるおそれがありますので、保証を立てることを要しないものとするものであります。  第四点は、施行期日等に関する修正であります。  原案附則第一条において、法律施行期日昭和四十九年一月一日とされているのを公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日に改めるものであります。  次に、原案附則第十三条において、休眠会社に関する特例規定を設けていますが、その規定昭和四十八年十一月一日とあるのを昭和四十九年十月一日に改めるものであります。  第二に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律案について申し上げます。  第一点は、子会社は、正当な理由があるときは、親会社会計監査人調査等を拒むことができるものとする修正であります。  原案は、第七条において、親会社会計監査人子会社に対する調査権を与えておりますが、監査役子会社調査権に関する修正と同様の理由により、子会社は、正当な理由があるときは、親会社会計監査人調査等を拒むことができることを明らかにするものであります。  第二点は、第二十五条の規定表現を改めるという修正であります。  原案第二十五条の規定は、資本金一億円以下の株式会社について商法適用除外規定を定めたものでありますが、表現をわかりやすくするための修正であります。  第三点は、施行期日等に関する修正であります。  原案附則第一項は、施行期日昭和四十九年一月一日としているのでありますが、これを公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日に改めるものであります。  また、附則第四項の修正は、法律昭和四十八年中に成立しなかったことによる整理であります。  第三に、商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法律整理等に関する法律案について申し上げます。  原案附則において、施行期日昭和四十九年一月一日とされているのを公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日に改めるものであります。  また、原案第八条外十一カ条の修正は、法律昭和四十八年中に成立しなかったことによる整理であります。  以上が参議院における修正趣旨及びその内容であります。     —————————————
  6. 小平久雄

    小平委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。羽田野忠文君。
  7. 羽田野忠文

    羽田野委員 この商法の一部改正につきましては、前の国会で当委員会で非常に慎重な審議が行なわれておりますので、私は、今回参議院のほうで修正されました点にしぼりまして御質問申し上げたいと思います。そういう関係からすれば、むしろ参議院提案者にお聞きするのが適当かと思いますが、お差しつかえのようでありますので、法務省のほうでお答えをいただきたいと思います。  まず第一の、商人損益計算書作成することを要しないというふうに修正した点でございますが、常識的に考えますと、やはり商人修正前の三十二条のように、会計帳簿だとか貸借対照表損益計算書をつくることのほうが適当であり、望ましいと思われるわけでございますが、このうち損益計算書作成することを要しないというふうに修正されたのはどういうふうないきさつなのか、ちょっと簡単に御説明願いたいと思います。
  8. 川島一郎

    川島(一)政府委員 お尋ねの点につきましてお答え申し上げます。  今回の政府提案いたしました改正案におきましては、商人損益計算書作成義務を課することにいたしておりました。これに対して参議院の御審議におきまして、その作成を義務づける点を削除するという修正がなされたわけでございます。この問題につきましては、昨年当衆議院法務委員会においてもいろいろ御指摘があったわけでございますが、損益計算書というのは従来株式会社などがつくっておったものであって、これを一般商人にまで義務づけるということは、やや技術的に困難をしいることになるのではないか。ことに一般商人の中には個人商人が含まれておりますし、個人商人の中には相当規模の小さなものも入ってくるわけでございまして、そういう商人一般に対しまして損益計算書作成せよという規定を設けることは、現在の商人営業のやり方、実情などから見てやや困難をしいるのではないか、そういう御指摘があったわけでございます。私どもといたしましては、一般商人作成する損益計算書というものは必ずしもそういうややこしいものでなくてもよろしい、きわめて簡単なものでもいいのだということで、商法改正が通りました暁にはその点をよくPRするつもりでおったわけでございますが、この点につきましては一部になお疑念を抱かれる向きがございまして、参議院の御審議におきましても同様の懸念が表明されました。その結果、御指摘のような修正が行なわれた、こういうことになると思います。
  9. 羽田野忠文

    羽田野委員 そういう理由であるならば、これは商法で完全に解決されておる。いわゆる商法第八条に、「本法中商業登記商号及商業帳簿ニ関スル規定ハ小商人ニハヲ適用セズ」小規模商人には適用しないという商法の明文があるのです。これで完全に解決されておると思うのですが、なおかつ修正のような必要はどこにあるのですか。
  10. 川島一郎

    川島(一)政府委員 仰せのとおり、商法の八条には商業帳簿に関する規定は小商人適用しないという規定がございます。そこで小商人範囲が問題になるわけでございますが、現行法によりますと、商法改正法律施行法の第三条におきまして、資本金二千円未満商人会社でない者が小商人である、このように規定されております。この規定は現在の実情にはなはだしく合わないわけでございますが、こういう規定の形になっておりますので、これに該当する者が実際にはほとんどいない、こういう実情でございます。そういう点もございまして、先ほどの商業帳簿規定がほとんど全部の小商人適用になる、こういう関係があるわけでございます。
  11. 羽田野忠文

    羽田野委員 理由はよくわかりましたが、私はたいへんな間違いをおかしておるのじゃないかと思います。というのは、商法改正法律施行法というのは昭和十三年に公布された法律ですが、十三年に資本金額二千円というのは相当規模のものであります。現在でいいますと、二千円未満の者が小商人ということになると、それに該当する者はほとんどない。したがって、商法八条の除外適用を受ける者はない。だから今回の修正で、そういう者を救済するために損益計算書をつくらないでいいように修正をしたということですが、これはどちらがもとでどちらが枝かということをよく考えなければいけない。商法の八条のほうは商法本文の中にある。それからその適用除外をしておる小商人の定義を施行法で定めておる。これにむしろ枝です。いま御説明のようなことであるならば、前の国会でもこれは論議されておりますが、この小商人範囲資本金二千円未満というような、いまの社会情勢に適合しないままにしておくことがむしろ矛盾をしておる。これを現在の貨幣単位あるいは社会情勢に適合するように改正することのほうがほんとうである。枝を改正するべきものを枝を改正しないで、もとのほうを改正するということは、私はたいへんな誤謬をおかしておると思います。しかしこの施行法改正されてない現在では、今回参議院修正のようなことをなさらないと、実際に小商人負担の軽減ができないからやむを得なかったことであると思いますけれども、将来の方向としては、枝を改正しないでもと改正するということをしないように、この施行法のほうを改正して、本来商人がつくるべきものはきちっとつくるということにすることのほうが望ましいと思います。それについて御見解を承りたいと思います。
  12. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まことにごもっともな御指摘でございまして、私、先生の御意見に全く同感でございます。本来商業帳簿規定改正する提案をいたします際に、同時に小商人範囲に関する配慮を加えて、先ほど申し上げました、商法改正法律施行法の三条を改めることが正しい順序であった、このように思うわけでございます。そういった意味におきましてこの小商人範囲を早急に検討する必要がある、このように考えております。  なお御参考までに申し上げますと、この小商人範囲が現在資本金二千円未満個人商人ということになっておりますが、その以前におきまして資本金五百円未満となっておったわけでございます。資本金五百円未満商人に加えまして、さらに資本金の額にかかわらず、行商人であるとかあるいは露店商人であるとか、そういうものについてはやはり小商人としての範囲に含ましめておったということでございまして、この小商人範囲のきめ方につきましては学者の間にもいろいろ議論があるようでございます。そういった点も含めまして今後早急に検討するようにいたしたい、このように考えております。
  13. 羽田野忠文

    羽田野委員 第一点はよくわかりました。  次に、修正された第二点の問題でございますが、今回親会社監査役子会社についていろんな報告を求めたり、あるいはそれに基づいて調査をしたりするようなことができるように定められた。これは親会社子会社を利用して粉飾決算をするような事例があったので、こういうものを防止するために子会社についても報告を求める権利あるいは調査権というようなものを今回認めたというふうに承知をいたしておりますが、今回の修正では、子会社は正当な理由があるときには親会社監査役調査等を拒むことができる、こういうふうに修正をされておりますが、これはどういうふうな理由からこういう修正をなされたのか、その点をちょっとお聞きしたいと思います。
  14. 川島一郎

    川島(一)政府委員 子会社調査権規定は、先生仰せのような趣旨修正案に盛り込まれたわけでございますが、この規定につきましては一部の御批判がございました。それはどういうことかと申し上げますと、子会社親会社とは独立の人格を有する会社である。したがって、親会社監査役子会社に対して調査をすることができるということになりますと、子会社秘密にしておきたい事項、特に営業上の機密といったようなものが会社にはあるわけでございますが、そういったものをこの子会社調査権によって報告を求められる、あるいは調査をされるというようなことによって子会社が困る場合が出てくるのではないか。そういう点の配慮が十分になされておるかという御批判があったわけでございます。  そこで私どもは、この子会社調査権というのは、先ほど先生指摘のように、親会社の横暴を防ぐ趣旨のものでございます。子会社にとってはむしろ利益になるものであって、不利益に働くものであってはならないと考えておったわけでございまして、それが逆にその子会社不利益にこの調査権が用いられるというような懸念があるといたしますならば、その点を明確にしておくということもむだではあるまい、このように考えたわけでございますが、衆議院それから参議院の御審議を通じましてその点の御疑問が一部にあってなかなか解けませんでしたので、その結果このような修正案となってあらわれたのではないかと考えております。
  15. 羽田野忠文

    羽田野委員 この正当な理由というものの範囲が非常にあいまいなんですがね、いま参議院提案者の御説明によると、調査乱用されないようにこういう規定を設けるのだというのですが、親会社監査役調査権があったとしても、それが権利乱用して、いわゆる調査する必要のないものまで調査をするというようなものを拒み得るということは、これは明らかなんです。違法または不当な調査というものはこの規定がなくても私は拒み得ると思うのです。  そこでこの正当な理由というものは、その当然拒み得るものを文章ではっきりさせるというためにこういうものを置いたのか。それとも、その当然拒み得るものよりももっと外の、ほんとう親会社監査役報告を求めたり調査をすることができる正当な権限範囲内のものであるけれども、いま御説明があったように、このものは子会社企業秘密に属する、そういう特別な理由があるからその理由を言って拒んでもよろしいという、権限乱用じゃなくして、正当なものだから特別な理由がある、その場合は拒んでもよろしいのだという範囲を広げたのか、ここのところはどういうふうに御解釈になっておりますか。
  16. 川島一郎

    川島(一)政府委員 子会社調査権乱用の場合には、これは子会社調査権の正当な行使とはいえないわけでございますから、規定の有無にかかわらず拒み得るということになろうと思います。こういう規定が設けられました趣旨は、そういう乱用の場合以外に、一応調査権は行使し得る場合である、しかしながら子会社としてはその調査に応じがたいという客観的に正当な理由がある、先ほど申し上げました子会社営業上の秘密であるとかそういうものを調査するにつき、親会社監査役のほうは調査の必要がある、しかしながら子会社としてはこれは調査に応ずることは困る、こういう場合にこの規定適用になる、そういう解釈になろうかと考えております。
  17. 羽田野忠文

    羽田野委員 そういう意味ではこれは私は非常にいい規定だと思いますが、ただこの運用はよほど注意をしませんと、せっかく親会社子会社調査権を認めても、これは調査されるとぐあいが悪いというような場合には、子会社のほうがむしろつうつうで、当然調査すべきことも、これは企業秘密だから申し上げることはできません、調査に応ずることはできませんということによって、せっかくのこの改正趣旨実効をあげないことになるという非常なマイナスの面も加味したこの修正だと思います。そういうことのないように、粉飾決算子会社が利用されて盲点をつくらないように指導していただくことが必要だと思います。これは御答弁は要りません。  次に、第三点「取締役違法行為差しとめの仮処分には、保証を立てることを要しないものとする」という修正がなされておりますが、本来、裁判所仮処分命令を出す場合には、その必要性の疎明があった場合でも保証を立てさせてもよろしいし立てさせなくてもよろしい、疎明がない場合には必ず保証を立てさせなければならない、大体こういうたてまえになっていると私は承知しているのです。だから、保証を立てさせなくてもいいという道が開かれておるのに、なおかっこの修正保証を立てることを要しないというふうに断定して規定をする必要性はどこにあったか。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 裁判所仮処分を命じます場合には、仰せのように保証を立てさせてもよい、市てさせなくてもよいということになっておりまして、立てさせるかどうかは裁判所裁量によるわけでございます。その点は民事訴訟法の七百五十六条が準用しております七百四十一条の規定によって明らかでございます。そこで、今回の修正にかかわる監査役違法行為差しとめの仮処分でございますが、これにつきましても同じような考えのもと裁判所運用がなされるといたしますと、違法行為差しとめの仮処分監査役が申請いたしました場合にも、裁判所保証を立てることを条件にこれを認めるという場合が考えられるわけでございます。その場合に、これは監査役会社職務執行として行なうわけでございますから、裁判所に納付すべき保証金というものは会社の金で払うということになるわけでありますが、その会社の金を握っておりますのは取締役でございまして、取締役に、保証金を立てるからその費用を出してくださいと請求いたしましても、取締役違法行為差しとめられる側でありますので、簡単に応じてくれるかどうかわからない、こういう懸念があるわけでございます。他方、このように会社機関機関の問題でございますし、監査役個人利益のためにやるのではなくして、会社のために職務執行として、その地位に基づいて違法行為差しとめの仮処分を申請するわけでございますので、こういう場合には保証を立てさせることは本来必要がないのではなかろうか、こういう考え方が出てくるわけでございます。そういった運用上の問題制度上の問題、両面から考察いたしまして、この監査役請求による仮処分につきましては保証を立てさせないほうがよかろう、こういうことに相なったわけでございます。
  19. 羽田野忠文

    羽田野委員 これは私はむしろもう少し裁判所を信頼すべきであったのではないかという気がいたします。というのは、いま御説明のように、監査役取締役違法行為差しとめ請求をするというような場合は、これは機関機関の問題であって、監査役機関としてこれを行なうわけですから、会社そのもの自体から見れば、損害賠償の担保というような問題がほとんどない事案です。そういうふうな事案の場合に、裁判所仮処分命令を出す場合に、保証を立てさせることのほうがむしろ異例に属する、立てさせないのがほんとうだと思う。だから、裁判所がそういう妥当な判断をすることが保証できないから法律で断定したというようなことば、はなはだ望ましくない。私はよくないことだと思います。  それと同時に、もう一つは、この規定ができたことによって仮処分がむずかしくなった面があるというふうに私は思うのです。というのは、仮処分の場合には、疎明をしなかった場合でも、保証金を立てさせて仮処分命令を出すことができるという民訴の七百四十一条二項の規定がございますね。ところが、今度は保証を立てさせないのですから、疎明がない場合には仮処分命令は出せないということに逆になってくる、この法解釈からすれば。そうしますと、違法行為差しとめの仮処分などというものは相当急速を要するものが多い。それに、その理由を疎明しなければ仮処分命令が出せないということになると、その命令をとることが非常にむずかしくなってくる。時期を失して実効性をあげ得ないという問題が起こってくるということは、せっかくのこの改正の効果を半減させたんじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  20. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まず第一に、裁判所運用にまかしておけば適当な結果が得られるのではないかという点でございますが、私も先生の御意見に同感するわけでございますが、ただ法律規定が、保証を立てさせてもよい、立てさせなくてもよい、裁判所裁量にまかせるというたてまえになっておりますと、これは裁判所独立の立場で御決意をなさるものでございますから、制度的な保障がないといえばやはりないことになるのではなかろうか。ことに保証を立てしめるべきものでないといたしますならば、そのことをはっきり宣言する意味規定を設けるということも、これまた一つ考え方ではなかろうかというふうに思うわけでございます。そういう趣旨でこういう規定修正が加えられたのではないかと考えております。  それからこういう規定を設けることによってかえって疎明が必要になって、やりにくくなりはしないかという問題でございますが、そもそもこの違法行為による差しとめの仮処分というものは、全然疎明なしに仮処分を許すべきものではない、事柄の性質上そういうふうに考えられるわけでございまして、やはり何らかの形の疎明、疎明というのは比較的簡単なものでよろしいわけでございますし、書面がありません場合にも当事者のいろいろな申述書みたいなものを使うこともできるわけでございまして、そういった形の何らかの疎明を必要とする、そういう運用がなされるべきであるというふうに考えますので、先生指摘のような御懸念全くないとはいえないかもしれませんが、実際上はそれほど制約されることにはならない、このように考えております。
  21. 羽田野忠文

    羽田野委員 よくわかりました。この監査役権限強化によりまして、会社の活動というものが行き過ぎない、目的の範囲を越えたりあるいは法令、定款に反するような行為がないようにという方策を講ぜられたことは、私はきわめて適切なことだと思います。ただ、残っている問題は、この監査役がその選任あるいは二年の任期を終えたときに再任をされるかどうかという問題、途中の解任、こういうものを含めてその身分が取締役会に握られておるということ、それから報酬の決定、こういうようなものがやはり取締役会に把握されておるという点で、職務上の独立性を持ってない監査役というものは十分その効果を発揮し得ない面が実際問題としては出てくると思うわけです。そういう場合に、最近のように営利会社がその範囲を逸脱したような営業行為をやっている場合に、これを阻止する方法というものが非常に要求されております。数日前からありましたあの予算委員会の参考人の聴取でも、そういうような事案がたくさん出てきております。  そういう問題で、商法はそれ自体にそういうものを規制する五十八条という規定を持っておりまして、その第一項によると、会社の業務を執行する社員または取締役が法務大臣より書面による警告を受けたるにかかわらず法令もしくは定款に定むる会社権限を踰越し、もしくは乱用する行為または刑罰法令に違反する行為を継続または反復したときは裁判所に申し立ててこの会社の解散を命ずることができる、というような規定がございます。これなどは会社の業務執行の公正さを担保する一番適切な、しかも商法が深く考えた規定だと私は思うのですが、いままでに法務大臣が書面による警告をした例あるいはその後継続または反復することによって解散命令を申請したような例があるかどうか。
  22. 川島一郎

    川島(一)政府委員 商法五十八条の規定に基づきまして法務大臣が会社に対して警告を発したあるいは解散命令の申請をしたという事件は現在までにその例がございません。これは、この五十八条の規定にもございますように、会社取締役などが会社権限を踰越したり乱用する行為あるいは刑罰法令に違反する行為を行なうということが一つの要件になっておるわけでございますが、それと同時に、公益を維持するために会社の存立を許すべからざるものと認むるという要件がもう一つ加わるわけでございまして、かなり特殊な場合に限られるということになるわけでありますし、会社の側にいたしますと、解散といういわば法人格を否定されるような重大な結果を招くことになりますので、そういう意味において、これに該当するような例というのは実際問題としてもあまり多くないと思うわけであります。  それからもう一つ、手続的には法務大臣がその権限を行使することになるわけでございますが、法務大臣といたしましては直接会社の行動を監視するという体制を持っていないわけでございますし、御承知のとおりこの手続につきましては非訟事件手続法に規定がございまして、非訟事件手続法の百三十四条ノ四の規定でございますが、官庁とかあるいは公務員が職務上この商法五十八条の請求または警告をなすべき事由というものを知った場合にはこれを法務大臣に通知すべしということになっております。そうしてこの通知がございますと、法務大臣としてはそれを調査、検討いたしまして、必要があればその手続をとれ、こういう形になっておるわけであります。ところが、現在までにこの通知もなされた例がございません。そういう次第で、現在までお尋ねのような事例が一件もないわけでございます。
  23. 羽田野忠文

    羽田野委員 最後に、法務大臣にいまの問題についてちょっとお伺いいたします。  最近の営利会社営業姿勢というものは、営業倫理を逸脱しているものがある程度出てまいっております。これは、営利会社といえども何でもかんでもその会社利益をあげればいいということではなくして、やはり大きくは営業倫理を守る。その具体的なものとしては、法令あるいは定款その他のいろいろな取り締まり規定とか、こういうものをよく守って社会通念上妥当な営業をして、その上で利益をあげていくという努力をすることが望ましい。ところが最近の実情を見ますと、ややもするとこの倫理を逸脱して利益をあげるということのみにきゅうきゅうとしておるのではないかというような現象が出てまいっております。最近問題になりましたものでも、独占禁止法に違反をするやみカルテル行為で何回も勧告を受けたというような会社も出てきております。あるいは税法違反で、脱税で重加算税をとられたというような会社も出てきておる。こういうふうなことはいまの国民感情としては許されない。国内問題だけでなくして、国外まで行って安くたたいて買いまくるとか、あるいは相手方の立場を無視して売り込むというようなことでいろいろな批判を受けている。やはり私は営利会社といえども会社営業倫理というものが特に重要視される時期だと思います。  そこで、いまお聞きしました五十八条一項三号の適用でございますが、これは非訟事件手続法によりまして、関係官庁がそういう警告をすべきあるいは解散請求をすべき事由を知ったときには法務大臣に通知するということになっておるけれども、その通知がなされていない。したがって、法務大臣としてはそういう請求をいまだしたことがないというように承りましたが、私は、通知すべき事前の段階でこの法の適正な運用というものがなされていないのではないかということをまず痛感をいたします。  そこで、連帯責任を負っておられる国務大臣として法務大臣、この関係官庁に、やはり会社に対して警告をしあるいは解散請求をするような行為を知った場合には、この法律のとおりにきちっと通知をしろということを徹底していただく必要があるのではないか、それと同時に、法務大臣も、これは会社の解散ということは非常に重大なことだと思います。自然人ならば死刑にして命を断つと同じことでございます。これを行なうかどうかということについてはよほど慎重な配慮を払ってやらなければなりませんが、その前手続であるところの書面による警告、あまりにも反社会的行為を行なう者に対しては、今後これを継続しまたは反復した場合には解散命令の申請をするぞという書面による警告ということは、私は非常に効果のあることであるし、いまの情勢下においてはある程度やらなければならない、商法自体がきめておるところの会社の倫理を守るための方法として行なうべきではないかというふうに思っております。そしてなおかつやめない者については、解散請求というようなことも法務大臣はお考えになるべきではないかと思います。この点についての大臣の御見解をお聞きして、最後にしたいと思います。
  24. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 お話の点は私も全く同感のような気がいたします。いままで五十八条というのは、せっかくありましてもあまり運用されたことがないようでございます。しかし企業の倫理性ということは最も大事なことでございまして、最近どうもそういう倫理性というものが乱れておるように私も感じます。しだがいまして、乱用することはもちろん慎むべきでございますが、慎重にこれは考慮をして、お話しのような線に今後努力すべきではないか、私もさように考えます。
  25. 羽田野忠文

    羽田野委員 終わります。
  26. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる五日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時四分散会