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1974-02-27 第72回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十七日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 羽田野忠文君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    江崎 真澄君       中垣 國男君    松澤 雄藏君       保岡 興治君  早稻田柳右エ門君       山本 幸一君    沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         国税庁調査査察         部長      井辻 憲一君         農林省農蚕園芸         局植物防疫課長 福田 秀夫君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   正森 成二君     不破 哲三君     ————————————— 二月二十六日  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願鬼木勝利紹介)(第二三二六  号)  同外一件(山田太郎紹介)(第二三二七号)  同(坂口力紹介)(第二三五三号)  同(鈴切康雄紹介)(第二四〇五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二四〇六号)  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願外  一件(坂本恭一紹介)(第二三二八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二四〇四号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二四五八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。沖本泰幸君。
  3. 沖本泰幸

    沖本委員 私の質問は、主として農薬について御質問をしていきたいと思います。これは二十二日の予算委員会でわが党の坂口議員が、農薬輸出について予算委員会で御質問した内容をさらに詰めてみたいと考えて御質問したいわけです。  まず公害罪についてでありますが、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律公害罪が施行されたのは昭和四十六年七月になるわけです。そこでこの公害罪防止にこの法律がどれだけ目的を達成しているか、具体的な御説明をいただきたいと思います。
  4. 根岸重治

    根岸説明員 お尋ねのいわゆる公害罪につきましては、現在までに検察庁では総計五件の事件受理しております。そのうち二件につきましてはすでに不起訴処分にしておりまして、三件はなお捜査中でございます。  なお、どれだけ公害防止に寄与しているかというお尋ねでございますけれども、実は公害罪法はいわば自然犯的なものを特にとらえようとしてつくられた法律でございますので、それに当てはまるような事案が、そう多数生起するということはむしろ想定しておらなかったわけでございますので、私どもとしましては、この法律があることによってそういうような行為が行なわれることの予防的効果は十分に果たしておるのではないかというふうに考えておるのでございますが、何ぶんそういう予防的効果の面につきましては、数字的データをもって御説明するようなわけにはまいらないのでございます。現在までは以上のような受理処理状況になってございます。
  5. 沖本泰幸

    沖本委員 裁判所における民事訴訟受理件数を見ますと、非常にその件数が少ないわけです。伺ってみますと、大気汚染については四十六年に一件、四十七年に三件、計四件で、水質汚濁については四十六年に二件、四十八年に二件、合計四件、全部で八件ということになっておるわけであります。公害罪の裁判の受理数が少ないからそれは悪いんだ、こういうふうなつもりで申し上げておるわけではないのですけれども、心配されるのは、この法律が、先ほど御説明ありましたけれども公害防止に十分活用されている、目的を果たしている、こういう御答弁でありますけれども、私たちとしてはそうじゃないのではないだろうか、こういう考えが非常に強いのですね。  たとえば、この間も報道されましたけれども関東地方相当濃度のびっくりするようなシアンが現実に流されておったことを摘発されている。相当以前からやっておった。こういうふうなのは、もう完全に法律なんか何もかも無視してやっているということになるわけですね。ただ企業利益だけを考えて行なわれているという事実が多いわけです。そうなってきますと、水質汚濁とかいろいろなところでもう自然の環境が破壊され、公害たれ流しというのは外国にまで響いておるということになるわけですから、それを環境を取り戻して快適な国民生活を確保していくという上について、はたしてどれだけのこれが役割りを果たすかという点については、この法律制定にあたって、「おそれ」という字句を入れるか入れないかで大論争をやったという事実もあるわけです。そういう点もありますし、また、すでに刑法全面改正の中でも、この問題が非常に論議されてきているということになるわけですから、この両面あわせて考えたときに、はたしてこの法律そのものが生きておるのか生きていないのかという点については、先ほどの御答弁に対して私たち、まだはなはだ疑問を持っておるというふうになるわけです。  それで、具体的な問題といたしまして、検察庁自体に、実際にそれに対応する陣容をお整えになっていらっしゃるということは伺っておるわけですけれども、その陣容と、その働きなりなんなりが、現在の社会的な環境に即応したものであるか、ないだろうか。ただ先ほどの御説明だと防止役割りをさえ果たせばいいのだということになるわけですけれども犯罪防止する役割りの果たす基準なりそのめどというものをどの辺に置いておやりになっていらっしゃるか。ではどういう形で十分めどが果たされておる、目的が達しておるのだということが言えるのか、その点についてお答え願いたいと思います。
  6. 根岸重治

    根岸説明員 まず検察庁陣容からお話しいたしますと、現在各検察庁公害係検事を設けまして、さらに各地実情におきましてその下に係の事務官等を置いておるわけでございます。  この公害係検事は、ただ単に公害事件処理するばかりではございませんで、各地にできております関係機関公害防止のための各種会議のメンバーになったり、あるいは各機関との連絡等にも当たっておるわけでございます。私どもといたしましても、年に一度中央に集めあるいは地方ごと公害係検事会同を催しまして、いろいろなことについて協議をしておるという現状でございます。  次に、果たしておる効果と申しますか、公害罪法を含めましてそれの効果ということについてお話しでございますが、実は昨年だけを例にとりましても七千五百六十一件の公害関係事犯受理しておりまして、そのうち二千七百八十七件を起訴しております。不起訴にいたしましたのは千百三十五件でございまして、起訴のほうが倍以上も多いという実情でございます。したがいまして、検察庁といたしましては、受理いたしました事件につきましては、非常に厳正な措置をとっておるということがいえるのだろうと思うわけでございます。  なお、公害罪のことにつきまして先ほど私が申し上げましたのは、なぜ公害罪受理が少ないのだろうかということをいわば推測して申し上げたわけでございまして、先生御案内のとおり、予防的効果というものを数的に量定するということは非常に困難でございます。ただ、私が申し上げましたことは、他の公害関係事犯処理につきましても非常に厳正になっておる、公害罪につきましても、それに相当する事案があったといたしますれば、やはり厳正な立場で処理するという方針にしておるということでございます。
  7. 沖本泰幸

    沖本委員 今国会予算委員会でも、企業モラルなり何なりということが非常に問われておるわけですね。そういう観点から見ていきますと、おそらく考え得るということになりますし、あるいは公取でもいままでがまんしてきたけれども、この際だから一罰百戒でやるということで告発しているというふうな非常に流動的な内容があるわけですね。ですから、そういう点をにらみ合わせていきますと、おっしゃるとおり、ただ数字だけ見たんでは答えは得られないというお答えなんですけれども、その辺にやはり科学的なデータなり何なり、数字から、よってくるところの効果とかいろんなものの中から、十分この公害罪役割りを果たしておるというふうなものが出てこなければならないんじゃないだろうか。胸を張って、この法律十分効果が出ておる、こういうふうなことでなければならないと思うわけです。この法律をつくるときに、私たちはそういう効果を十分考えながら、「おそれ」の字を入れてもらわなければ困るということを申し上げたわけなんですね。そういうものがないから、われわれはこういう結果に終わるんではないだろうかというふうに考えられるわけです。したがって、現実にある問題は、決して自然的な環境がよくなっているということは考えられないということにあるわけですから、モラルの低下しているときですから、やはり、そういうふうな内容のものも厳密に考えてやっていただく必要があるんじゃないか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。  さらに、この公害罪法律をつくる段階において、薬品とか食品とか農薬あるいは騒音とか複合公害防止についても入れるべきであるということで、入れないでいいとか入れるほうがいいとかという議論が盛んに行なわれたわけです。そして、結果的には公害罪適用から除外されたというのが事実なんです。現在は、国会においても、社会においても、先ほど申し上げたとおり、企業モラルというものが、いま予算委員会でも問題をどんどん追及していっているというふうになっておりますし、大きな問題になり、国民が一番関心を寄せておるということになるわけです。ですから、片一方では、物不足とかあるいは物価が狂いまくっておるという裏には、いろいろな企業働きがあって、そういうつくられた物価とか、何かこれは関係ないような話をしておりますけれども、同じようなことがやはり、製品をつくる段階においては、モラルの低下というものは結果的には水質をよごしていったり大気を汚染したりする内容のものが出てくる。極端な例をいいますと、セメント製造業者は、昼間は目で見えますから、あまり作業をしないけれども、夜になると猛然と作業を開始していくということは、セメントを積んでいる運転手が言っているわけです。車で入ってヘッドライトが全然届かなくてクレーンの柱にぶつけそうになることは幾らでもある。こんなものは、完全にこういう問題を除外している一つの例でもあるわけなんですね。そういうふうに、実際にモラルというものが落ちておるということは事実なんです。  これは先ほどの話に戻りますけれども日本で禁止された農薬DDTあるいはBHCが海外、特に東南アジア輸出されておるという点につきまして、三木環境庁長官は、害になるものは輸出すべきでない、こういう答えをしておりますし、田中総理も、東南アジアを訪問したときに、タイ学生との間のやりとりで、公害は絶対輸出しない、こういうふうな言明もしてきておるわけです。日本で禁止された農薬残留性が非常に強くて人畜に毒性が非常にある。また生態系の破壊とか環境汚染慢性中毒発ガン性の疑いがあるからというような理由から、これは禁止されておるわけです。公衆の生命または身体に危険を生ぜしめるような農薬に対しては、結局法務省としては、あるいはこの法律を担当しているところの刑事局としては、どういうふうなお考えを持っておられるか。この農薬輸出してもいいかどうかという点について、これは人道的な問題にもなってくるわけで、そのために人権擁護局長をお呼びしているわけですけれども、まず大臣にこの問題についてお伺いしたいと思うのです。
  8. 中村梅吉

    中村国務大臣 沖本委員が非常に公害問題に御熱心なことは、心から敬意を表します。何といいましても日本の国は国土が非常に狭い状況にありますから、公害についてはよその国よりもっと敏感であり、熱心に対策を進めるべきである、かように基本的には考えております。  そこで問題は農薬の問題でございますが、これは一体輸入しておる国が何の必要があってDDTBHCを輸入しておられるのか、輸出するほうもするほうですが、買うほうも買うほうだという気が私どもはいたしますが、これらの点につきましては、使用の用途その他よくわかりませんので、こういう点につきまして今後農薬等を担当しております農林省とも十分協議いたしまして最善を尽くすようにいたしたい、かように思っております。
  9. 沖本泰幸

    沖本委員 農林省では有機塩素殺虫剤、いわゆるBHCDDT等使用禁止になったものの処分について、通達を出していらっしゃるわけです。ですから、使用禁止になったものを輸出することは許されるべきものではないということになって、大臣も、そういうふうな方向で、輸出するものもするものだけれども買うものも買うものだ、こういう率直な御意見をおっしゃっていただいたわけでございますが、そこで、この取り扱いにつきまして、農林省は、四十六年の四月十七日に、農林省農政局長名で、      有機塩素系殺虫剤等処分について   有機塩素系殺虫剤BHCDDT、アルドリン、ディルドリンおよびエンドリン)で使用規制の強化により使用できなくなったものの処分については、昭和四十六年二月二十七日付け四六農政第九三四号農政局長畜産局長蚕糸園芸局長および林野庁長官連名通達をもって適正な処分指導についてお願いしてきたところであるが、使用不可能な農薬を大量に集積する処と適正な分が困難になるので、できるだき小規模な単位で適正な処分が行なえるよう、都府県が下記の点に留意のうえ病害虫防除所等関係機関を通じて処分の円滑な実施指導するよう管下都府県に対し、指導の一層の徹底を図られたい。   また、パラチオン剤メチルパラチオン剤TEPP剤については、すでに昭和四十二年六月二十八日付け四二農政B第一四六八号農政目長通達をもって低毒性農薬への切り替えを指導し、昭和四十四年末をもって登録をまっ消したが、さる三月二十三日公布された毒物及び劇物取締法施行令の一部を改正する政令昭和四十六年政令第三十号)によってその使用基準が削除され同令が施行される六月一日からは使用が禁止されることとなった。これに伴い、その残余農薬処分について厚生省薬務局薬事課長より都道府県衛生主管部(局)長に別添のように通知された。ついては、これら農薬処分についても衛生部局と協力し、その円滑な実施について指導されるよう管下都府県指導されたい。 こういうふうにして埋めてしまえということなんです。     記  一 埋没場所の選定について   ア 埋没に要する土量を掘り上げた場合に地下水が湧出する場所はさけること。   イ なるべく粘土質場所を選ぶこと。   ウ 附近に飲料水の水源または掘抜井戸がある場所はさけること。   エ 風水害による崩壊または発掘のおそれがある場所はさけること。  二 処分方法   ア 一か所に埋没する量は原則として三〇〇キログラム以内とすること。   イ 乳剤はその一〇〇倍量程度の粉剤、粘土粉または消石灰に吸収させて埋没すること。   ウ 有機りん剤との混合剤埋没するときは、農薬の上下および周囲を厚さ数センチメートルになるよう消石灰でつつむこと。 こういうふうな方法がちゃんと出されておるわけです。  三 処分実施について   ア 処分実施にあたっては病害虫防除員毒物または劇物に該当する農薬処分については毒物劇物取扱責任者)の指導をうけるとともに、必要に応じ農業改良普及所または保健所に連絡しその指導をうけること。   イ とくに多量の農薬処分する場合には、処分実施方法内容について、あらかじめ市町村防除協議会連絡のうえ実施すること。 こういうふうな通達が出ているわけです。  そこで農林省にお伺いしたいのですが、まず初めに、農薬取締法ができた目的及び趣旨について御説明していただきたいのです。
  10. 福田秀夫

    福田説明員 農薬取締法は、昭和二十三年にできましたが、その後何回か改正がございまして、去る四十五年末のいわゆる公害国会におきまして大改正が行なわれ、四十六年の一月から、一部、五月からその残りが適用になったというような法律でございます。その目的のところに書いてありますとおりに、「この法律は、農薬について登録の制度を設け、販売及び使用規制等を行なうことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、もって農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民生活環境保全に寄与することを目的」といたしております。これはこの間の公害国会改正まで目的条項のない法律でございましたのを改めて、そういった目的条項を加えたわけでございます。
  11. 沖本泰幸

    沖本委員 これは農薬農業生産の安定をはかるとともに、人間の健康の保護が守られなければならない。そして農薬それ自体による作用、働きによって国民生活環境保全に寄与することが目的でなければならない、こういうふうに考えられるわけです。それに関連して聞きたいわけですけれども、第十六条の「適用の除外」に「農薬輸出するために製造し、加工し、又は販売する場合には、この法律は、適用しない。」こういうふうに規定されているわけです。この法律がつくられた趣旨はどういうふうな点にあるのか御説明していただきたいのです。
  12. 福田秀夫

    福田説明員 農薬使用に伴います影響というものは、それぞれの対象とする農作物あるいは使用方法環境条件によってたいへん異なってくるものと思われます。したがいまして、各国の農薬規制状況を見ますと非常にばらばらでございまして、たとえばBHCDDTにいたしましても一部使用規制している国あるいは全然使用規制していない国等々、それぞれの事情によりまして規制が行なわれているようでございます。あるいはまた極端なことを申しますと、日本では全然使う当てがないようなもの、作物とか害虫とかで日本にいないようなものもあると思いますが、そういったものに使われる農薬というのは日本では全くその影響がわからないわけでございますけれども、そういったことで農薬使用に伴う影響というものはそれぞれの国の事情によって異なりますので、輸出のことに関しましてまでこの法律適用するわけにはまいらないだろうということと、この法律目的が「国民生活環境の」と申しますので、事輸出に関しましてはこの法律だけでどうこうできるかどうかというような問題もございますので、この条項を設けて輸出のことについては別であるということにしたわけでございます。
  13. 沖本泰幸

    沖本委員 タイ学生田中総理大臣に、公害輸出してもらいたくない、それはやらないというやりとりがあったわけです。大平外務大臣説明は少し違ってはおりますけれども東南アジアはほとんど米作地帯なんですね。ということは、日本が一番問題にして農薬を中止したものを東南アジア発展途上国なりあるいは戦火で痛められたところが増産をはかろうとすれば当然使うことが考えられるということになるわけです。それはいわゆるつくった稲のわらを牛に食べさして牛のからだが汚染され、牛乳が汚染されて、そして母乳にまで影響し、おかあさんからいろいろな反応が出てきたということで、だんだんだんだん大問題になっていって、これがこういうふうに禁止条項ができてきた、これが経緯なんです。ですから日本でとめたものを輸出のことには適用しないというふうにいっても、同じような食生活をしておるようなアジアの人々のところへ輸出していいかどうかということになるわけです。日本がいまはいろいろ米についての減反をやり、さらにまた増産をやるという形をとって、日本自体自給体制をいろいろやっておりますけれども、これが何かの形で米が足りなくなってくると、外国から米を輸入しなければならない。当然それを輸入するのはアジアの国々からであり、ベトナムにしましても、あるいはラオスやカンボジアにしても、戦火がおさまれば、当然どんどん米作をしていくということは間違いないわけです。そういうことになっていくと、輸出した農薬で汚染された米が、また日本へ入ってくるということも言えるわけです。これはもう当然考えられることなんですね。そういうことをなぜあえてやらなければならないのかということになるわけです。外国は、その農薬について、あるいはこういうふうなDDTとか、あるいはBHCのことについての法律なり何なり、条項がないからといって輸出していいものであるということは、私は言えないと思うのですね。日本では、人体に影響があり、生命に危険を生じるからとめたものを、そのまま外国に出していいということは絶対にないと思うのです。この点、どうなんですか。
  14. 福田秀夫

    福田説明員 わが国BHCDDTを禁止しました経緯等につきましては、諸外国に報告しておるところでございますが、先生御指摘のように、私ども進んでこういうものを輸出するというような気は毛頭ございませんし、あるいはできれば輸出したくないと思っておりますが、わが国が禁止している内容等を承知の上で、なおかつ輸出していただきたい、使いたいという国が東南アジアに限らず、幾つかあったわけでございます。この国は、日本だけではなくて、現在BHCをつくっている国、これは先進国だけでもございませんで、いろいろな、たとえばインドだとか——そう言っては、少し語弊がございますけれども、欧米の国だけではございませんで、インドあるいは中華人民共和国等がございますけれども、そういうところも含めまして、国際的にBHCDDTの需給といいますか、流通がはかられているわけでございます。その中におきまして、日本に対しまして引き合いもございますが、日本はなるべく断わってきたわけでございますけれども、どうしてもというところに対しまして、一部輸出しているという実情があるわけでございまして、向こうの国の自主的な判断というものも尊重していかなければならない面もあるのではないかとも考えているわけでございます。
  15. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、この取締法の第一条に述べられている目的と、そしてただいまの十六条の三は全然相反する意味合いを持っているものになるのじゃないですか。片方で禁止したのですよ。だけれども輸出に関してはこの限りでないということでしょう。そうすると、全然相反する内容を持った法律になるのじゃないですか。
  16. 福田秀夫

    福田説明員 目的は、わが国農業生産の安定と、それから国民の健康の保護あるいは国民生活環境保全ということ、わが国農業事情なりあるいは食糧事情その他からこれらのことを守っていきたいというような目的で、この法律がございまして、諸外国事情は、先ほど申しましたように、農薬影響等もすべて非常に異なっておりますので、そこの辺になりますと、農薬取締法の範囲の外ではないかと考えております。
  17. 沖本泰幸

    沖本委員 いま、たとえば日本と同じように、終戦直後、私たちはペニシリンとかDDTというものは非常な効果をあげて、まるで神様の薬みたいな感じで、こういうふうな薬品を受け取っていたわけですね。それがだんだん満たされてくると、今度は逆に、その毒性というものが大きな問題になって、現在に至っているわけです。そうしますと、こういうふうな輸出先の国々でも同じようなことで、将来になってどんどん害が出てきたときに、どこからこういうふうな薬品を入れていたのだということで、日本から入れておったのだということになると、やはり日本はもうけ第一主義じゃないか、アジアの人間はどうなってもいいのだ、日本企業は、毒性があろうと何であろうと、売りさえすればいいのだということで売ったのじゃないか。だけれども、政府の法律の中にこういうふうなのがあるから、企業はこういうことをやるのだというふうになってきて、それでいろいろな、結果的には悪い条件が出てきたときに日本が責められた場合は、一体だれが責任を持つのですか。いや、私のほうは国内では禁止しておりますけれどもと言ったって通らないことになるのじゃないですか、現実問題として。だから、私はこういうふうな法律を置いておくことは、これは全くけしからぬことだ、こう考えるわけです。まだもっとけしからぬことだと考えておるのは、これの使用が禁止になったのは四十六年の十二月三十日だったわけですけれども、この禁止になったはずの農薬が、国内でまだ製造されているじゃないですか。農林省のほうは、この農薬を製造している企業は、どれどれの企業農薬をつくっており、それはどれだけの量を製造しており、一切、量の処分なり扱い量について厳密にチェックができておるのかどうかということになるわけです。先ほどこまかくいろいろと読んだのは、これは補助金を取って埋めてしまいなさいということで、補助金を取って埋めたのでしょう。埋めて、一切そういうことはもうまかりなりませんということになっているわけですから、たとえ輸出はしてもいいということであって、製造しておったとすれば、輸出分だけの製造ということになるわけです。それが国内で漏れないようにちゃんとした監視なり何なり数量のチェックがなければならぬはずなんです。その点どうなんですか。
  18. 福田秀夫

    福田説明員 禁止は、販売の禁止をいたしておりまして、同時に登録を抹消いたしました。製造禁止ということばは使っておりませんけれども登録が抹消されておりますので、これを国内で売りますと、農薬取締法違反で処罰することになっております。したがいまして、国内向けには販売ができない。売りますと、罰せられるということになりまして、厳重な監視をしておるわけでございますが、輸出のことにつきましては、相手国の注文ということがございまして、通商政策あるいは国際問題ということがございますので、輸出規制ということに関しましては、農林省だけでどうこうするわけにはまいらないということもございますし、この取締法の外のことであろうと思いまして、輸出用にその注文に応じてつくるということについては、農薬取締法で取り締まるわけにはまいらない、このように考えております。
  19. 沖本泰幸

    沖本委員 じゃ、その取締法登録をもう全部抹消してしまったので、農林省関係ないということになるわけですか。
  20. 福田秀夫

    福田説明員 そうじゃございませんで、法に違反すれば、すなわち登録のないものを国内で売れば、農薬取締法違反になりますので、国内で売るわけにはまいらない、そういった監視はしているわけでございます。
  21. 沖本泰幸

    沖本委員 監視しておると言うけれども現実に製造会社は三井東圧、三菱化成工業、日本曹達、呉羽、こういうようなのが——これはあなたのほうで輸出しているためにつくっているのだということを言われるかわかりませんけれども、それじゃ全然輸出の問題に関して私のほうは関係がないわけだからというと、輸出のためにつくっておるところは、農林省のほうは全然関係なしだ、その間のつながりなり何なり、幾らつくって、それでまるまるそれを出しておるのか、どこへ出しておるのか。法律をとめたのはおたくなんですよ。そういうことになって、ここのところだけ輸出をしてもよろしいという条項をつくって、そうして輸出のために相手方の注文によってつくっているところは、それは私のほうはまかり知りません、あなたのほうは通産省の関係だと、こうおっしゃるのだろうと思うのですが、それじゃまるっきりノーチェックじゃありませんか。
  22. 福田秀夫

    福田説明員 製造に関する指導監督は農林省でやっておりますけれども、製造したものが国内に出回るかどうかということにつきましては、農薬の流通あるいは使用指導というものは、都道府県とともどもに、防除所その他でもって厳重に監視されておりますので、国内では全く使われていないということは間違いございません。
  23. 沖本泰幸

    沖本委員 間違いないとおっしゃる、はっきりしたチェックですね。どうやってチェックをやっていらっしゃるのですか。
  24. 福田秀夫

    福田説明員 製造会社あるいは流通業者等から報告を求めておりまして、都道府県別にどのような農薬がどれだけ売られたかという統計を全部つかんでおります。
  25. 沖本泰幸

    沖本委員 この農薬をつくっている会社の報告だけということで、それはその会社が仕入れた原料とか、それから出てくる製品というものはわかるはずなんですから、何々の品目の製品がその原料によってどれだけできたということから、出していった先がどこであるということが完全にチェックされていなければこれは何にもならないということになるのですが、それについてはこの間の予算委員会では全然わからぬということだったのです。
  26. 福田秀夫

    福田説明員 農薬となります場合には、登録番号あるいはその他表示事項等を定められた形を整えて、大体BHCですと大部分が全農系統で流れておりましたけれども、現在は流れていないわけでございます。そういうことと、防除のほうは防除体制というものをつくりまして、共同防除といいますか、管理防除というようなことを進めておりますので、都道府県、市町村等が取り上げる農薬、これをきめてやっておりますが、そういうところに入ってきておりませんし、また農林省といたしましては、安全使用基準の中で、DDTBHCは一切のものに使用しないというような指導をいたしておりますので、国内に流れてくることはないと思います。ただ、先生御指摘のとおり、このバランスシートが完全につかめるかどうかと申しますと、実はDDTBHCにつきましては、衛生害虫防除用にも使われるわけでございます。蚊とかハエとかノミとか。国際的にも衛生害虫防除用が多いようでございますけれども、このほうは農薬ということになっておりませんものですから、その方面にDDTBHCがいった分は農林省で掌握できない面がございます。
  27. 沖本泰幸

    沖本委員 いまお答えになった面と、先ほど読んだ通達、補助金を取ってこまかく土地の中に埋めなさいというきびしい指導、聞いていると何かしり抜けみたいな感じがするのですが、こっちではこれだけきびしいものをやっておいて、片一方では防虫のためなり、害虫防除のためには、これは全然場所が違い目的が違うので、おれのところは調べようがないのだ、そういうことではこういう処置をとったことが何の役にも立ってないということになるじゃありませんか。
  28. 福田秀夫

    福田説明員 農林省といたしましては、農薬取締法の範囲内におけると申しますか、わが国では農薬としてはこれは使うのはやめよう、そしてその農薬はこのように安全に処理しようということがその任務でございますから、当然のこととしてやりましたけれども農薬以外、他で所管がされているものについては所管が違っているので、農林省では何ともなりませんということです。  それから諸外国の問題につきましても、それぞれの国の自主的判断と申しますか、内政のことでございますので、農林省としては限界があるということでございます。
  29. 沖本泰幸

    沖本委員 それじゃいわゆる十六条のこういうものは残しておく必要はないんじゃないですか。農薬に関しては関係ないというのですもの。それじゃ、それに関連のあるようなものは全然なくして、はずしてしまっておけば問題がなくなるわけでしょう。この条文からいきますとそういうことになるのじゃないですか。そうじゃなくて、これを残すのなら何らかの形でしぼるなり歯どめをかけるなり、何かのチェックできるような内容のものを置いておかなければ、初めに申し上げたとおり、何か初めはぴしゃっとやかましくいわれたのでやってみたけれども、その後のことは何か開いてしまって、ざるみたいになっているということになってくるわけです。そういうことですからね。それが外国へ行ってどうなろうとこうなろうとそれは私のほうは関係ないのだ、よそがくれといえば、たとえ毒性があっても何であっても、それは向こうがほしいというのだから分けてあげますということにはならないと思うんですね。そういう姿勢自体をいまいろんな立場から問われているのじゃありませんですか。そういうことであれば、こういうふうな法律は完全にしぼって、はずしてしまうなりしぼるなり何かのほかの歯どめをかけていく、チェックをつくっていくべきだ、こういうように考えるのですが、その点どうなんですか。
  30. 福田秀夫

    福田説明員 御指摘のとおり公害輸出ということになってはならないと思いますので、すでにわが国規制を行なった経過等々は諸外国に通知してございますが、あらためてもう一度諸外国わが国規制の理由とかあるいは規制内容についての理解を深めていただくために、在外公館等を通じてこの徹底をはかりたいということをいま考えております。  それからまた諸外国から注文がありました場合でも、相手の国で何に使うかという目的等をチェックし、かつまた通産省のほうでお考えになっているようでございますけれども、相手国の要請ということを条件にするなど事前に審査いたしたいということで関係各省庁の間で目下話し合いが進められているところでございます。
  31. 沖本泰幸

    沖本委員 世界人権宣言には「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と、平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので、人権の無視と軽侮とは、人類の良心をふみにじった野蛮行為を生ぜしめ、」こういうふうになっているわけです。さらに「国際連合の諸国民は、基本的人権、人身の尊厳及び価値並びに男女の同権に関するその信念を憲章において再び確認し、且つ、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進することを決意した」こういうふうにあるわけです。第一条には「すべて人間は、生れながら自由で、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、同胞の精神をもって互に行動しなければならない。」こういうふうに載っているわけです。第三条には「何人も、生存、自由及び身体の安全を享有する権利を有する。」こういうふうに崇高な人間尊厳の精神がうたわれているわけですけれども、これはあなたのほう、これと反するんですよ。これ、お読みになったことありますか。十六条、これはみなひっかかるわけです。こういうところから突かれたらぐうとも言えなくなってくるわけです。  人権局長にお伺いしたいのですが、この世界人権宣言をもとにしていまのことをお聞きになって、この農薬事件はどういうふうにお考えになりますか。日本が禁止をした農薬を、害になると知りながら輸出をしておる、こういうことになるわけですけれども
  32. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、世界人権宣言の前文、第一条、第三条を見ましても、人間の生命、自由等、十分その安全をはからなければならないということは明らかでありまするし、平和条約に基づいて、その前文にもございますように、わが国も世界人権宣言の目的を実現することに努力するという約束をしておりまするし、さらにさかのぼりまして、わが国の憲法の精神からいいましても、外国人についてもその人権を尊重しなければならないということは明らかだと存じます。ただ問題は、先ほど来農林省の方からの御説明を伺っておりますると、外国においてこの農薬がどのように使用されているのか、たとえば対象農作物はどんなものであるのか、その使用方法はどういうものであろうかというふうな使用状況、その事実を明らかにする必要があろうかと思います。そしてその外国においての農薬の危険性がどの程度のものであろうかということも明らかにする必要があろうかと思います。そのような実情を明らかにした上で、初めて先生御指摘のようなこの条文の精神に背反するかどうかということを検討しなければならないと思っております。先ほど大臣から御答弁ございましたように、実情をわれわれとしてもできるだけ明らかにして、人権擁護の立場からわれわれの態度をできるだけ早く明らかにしたい、こう思っております。
  33. 沖本泰幸

    沖本委員 局長さんとこの前人権問題でやりとりしましたけれども、人権擁護局としては、各局が受け付け事案についてはそれぞれの取り扱いがある。しかし各省間の中において起こる人権侵害問題については勧告していくというような御答弁があったと思うのです。ですからまずおそれなきにしもあらずという点については、これは人権にかかわるような大きな問題になってきますよということは、いろいろと勧告されるだけのものがあるんじゃないか、こういうふうに考えます。ただ、内容をとくと調べた上でということで、もうすでに人権を侵してしまっているということになれば、人権擁護の立場からはおそきに失すると私は考えるわけですけれども、その点についてはいかがなんですか。
  34. 萩原直三

    ○萩原政府委員 人権侵犯ありとして勧告するためには、それ相当の侵犯の事実あるいはその危険性がきわめて濃厚であるという事実が前提とならなければならないと思います。ただいまの段階では、そのような判断をするだけの事実が手元にございませんので、先ほど申し上げましたように、実情を明らかにするように努力したいと存じております。
  35. 沖本泰幸

    沖本委員 それはちょっとおかしいと思うのですがね。先ほどそのために御説明したわけですよ。法律で、害があるので日本の国内では農業に関しては農薬使用を禁止しているわけですね。その禁止された農薬は、人間の生命にかかわるから禁止したわけです。その禁止した農薬が、今度は別の法律の中で輸出が許されておるということは、やはりひっかかってくるんじゃないですか。そういうところを法律的に読んでいただいて、それでこれは人権にかかってくる問題が生じるという判断なり何なりをお下しになるのが当然じゃないかと私は考えるわけなんです。
  36. 萩原直三

    ○萩原政府委員 やはり問題は危険性の程度によるのではなかろうかと考えます。わが国においてはそれが危険であるということで禁止されたのでざいますけれども外国においては、ただいま農林省のお話を伺っておりますと一部制限している国もあるし、全く制限していない国もあるというふうなこともございまして、外国においての危険度がわが国における危険度と同様であるかどうかということは、まだ明らかにされていないのではないか、こう考えております。
  37. 沖本泰幸

    沖本委員 それはちょっと私はおかしいと思いますよ。外国では、いわゆる医薬品の中でも、これは間違いだということになれば製造禁止して、輸出も何もとめているものは一ぱいあります。外国でとめているのに日本でつくっているというものはあるわけです。なぜつくっているかというと、日本禁止条項がないからなんです。そういうものは山ほどあるのです。ですからそういうものに対して、危険を生じるいろんな内容のものがいまはっきりしてないからということをおっしゃいますけれども法律の上ではっきりしているわけです。公害のたれ流しだとか環境が破壊されるとか、あるいは水質が汚染されるとか大気が汚染されるとかいうことでいろんな法律ができていき、公害罪もいろいろできてきているわけです。そういう中にあるわけなんです。同じように米作地帯をかかえておるアジアの国々に、法律で許されたから輸出しているわけなんです。だけれども、これは同じような条件が生じるということは考えられるわけです。タイ学生田中総理大臣に、公害は持ってくるなということを言っているわけです。田中総理公害は持ち出さないということをはっきり言っているわけです。そういうふうな内容は、そういう状況証拠だけで十分出てくるはずなんですね。議論のやりとりに終わるわけですけれども、そういう点については人権擁護局のお考え方というものは私はどうしても納得できません。まあ私の気に入るような答えをしてください、こういうことを求めているわけではないですけれども、こういうところでやはり日本政府の姿勢というものが問われるのではないか、こういうふうに考えられます。この農薬は国外では、日本の会社が合弁会社をつくって、現実にこういう薬品をつくっているわけです。販売しておるわけです。このために何らかの結果が出てきた場合、生命、財産に害を及ぼすような内容が出てきた場合、これは刑事事件が発生しませんでしょうか。刑事事件になり得る可能性は出てこないでしょうか。
  38. 根岸重治

    根岸説明員 お尋ねの点は非常に法律上むずかしい点があるかと思うのでございます。いわゆる日本農薬取締法等で処罰できないことは明らかでございますが、一体これがどの程度の危険性があって、予見できたかという問題、さらには輸出を受けた国がどういう形でそれを販売しておるか、それが禁止されていないものかどうかというような問題、さらには日本の伝統的解釈で申しますと、これはむしろ向こうの売りさばきの従犯のような形になるかと思いますが、従来、従犯が成立するには正犯が実行行為に出たばかりでなく、正犯が処罰されるものであることを要するというような伝統的な刑事法上の解釈等々を考えますと、非常に法律上むずかしい問題がある。いろいろな事情を十分勘案して明らかにならない限り、にわかに成立するというふうにはお答えいたしかねる事情があるかと思います。
  39. 沖本泰幸

    沖本委員 日本においては、はっきり結果が出たために法律でとめたわけです。とめたものを、外国で合弁会社をつくって、それで製造販売しているということは、当然そこからくるところの結果が生まれてくるということは考えられるわけですね。そうしていきますと、知りながらやっておるということは未必の故意になるのじゃないでしょうか。
  40. 根岸重治

    根岸説明員 私が申し上げますのは、未必の故意の問題も一つでございますけれども、いわゆる従犯、従属性という理論の問題もありますし、国外犯の処罰の問題もある、しかも外国自身でかりに輸入した会社が売りさばいておるといたしますと、その会社は当該外国においては何ら制裁を受けないというようなことになりますと、またそれを幇助した者の責任だけを、しかも外国での結果発生について問うということについては、いろいろ刑法上の問題がございます、こういうことを申し上げているわけでございます。未必の故意も一つの問題ではございます。
  41. 沖本泰幸

    沖本委員 ですから、できるだけかかわり合いのないように考えていけばいろいろ答えも出てくると思いますし、かかわり合いを考えていこう、こういうふうになれば、それに従った関係法律なり何なりということが考えられてくると思うのです。それで、とにかく国の中だけが安全であればいいということには、現代の日本という国の状態というものはなってきていない。いろいろな関係性を生じ、それでいろいろな国との経済なり外交なりいろいろな形で接触が多くなっていっていることは、これはもうだれも認めるところであるわけです。そういたしますと、いわゆるいまのような内容で、予算委員会でもいろいろ問題が出てきましたけれども企業の海外における進出というものが非常に向こうの国からも問題にされてきておるという時点にあるわけです。そういう政治的な配慮を、決してそちらのほうで考えてくれということではないわけですけれども、広い意味で、日本国民なり日本企業が犯すところの犯罪の成立あるいは発生というものを、やはり広い意味から考えていただくだけの内容を、現在もこれからもいわゆる刑事局のほうでは考えていただいて法律条項考えてもらわなければならない。私は、そういうときにきているんだ、こういうふうに考えるわけです。ですから、そういう点から考えていきますと、まずその元を締めていくためにはどうしても国内法も変えていかなければならぬということになりますから、いわゆる公害罪の中からは食品なり薬品なりの問題が削られてしまったわけです、そういうところに、こういう問題発生の一つの端緒にもなってくるということになりますし、先ほどから御説明がありましたとおりに、いわゆる未然に防止するため、その役割りを果たすために公害罪というものの力が大きく働いているんだ、こういうふうにお答えがあったわけですから、そういうお答えの中から考えていきましても、公害罪の中に薬品に対する取り締まり条項というものが当然入ってこなければならない、こう私は考えるわけなんですけれども、その点について、課長なり大臣のほうでもお答えになっていただきたいと思うのです。
  42. 根岸重治

    根岸説明員 先ほど来お答え申し上げておりますことは、私は決してこの問題にかかわりたくないのでそういう解釈をとっておるということではございませんで、純刑法理論として申し上げたものでございますので、それは御了承いただきたいと思うのでございますが、先ほど大臣も申されましたように、一体こういうような輸出を許しておいていいのかどうかという問題につきましては、農林省その他の関係当局とも相談の上検討すべき問題があるやに考えられるのでございます。
  43. 中村梅吉

    中村国務大臣 全くわれわれは、相当世論もやかましくなってきておりますが、まだ考えてみますとルーズの点があるように思います。したがいまして、公害防止につきましては、みんな国民が関心を深く持って今後とも熱意を込めてやっていくべきものである、われわれもその考えでやってまいりたいと思います。
  44. 沖本泰幸

    沖本委員 この点についての議論は大体終わるわけなんですけれども農林省のほうでお考えになっていないようなところに、ちゃんとしたものがあるのですよ、精神的なものなり何なり。世界的な内容をはらんだものがあるわけですから、国内だけはやったのだからよその国にはいろいろ条件が違うので、それについてはどうこう自分のほうでは言い分はないのだ、こういうふうなことは私はよくない、こう考えるわけです。当然そういう広い範囲内から考えていくと、諸外国でもよく示してますとおりに、自分の国の中で悪いものは絶対よそへも売らないというのが、これが一つのきちっとした正しい考え方ではないか、こう考えられるわけです。むしろそういうふうなものを残すということになれば、政府自体企業の側に立って企業を弁護し、企業をかばっている、こう考えてもやむを得ない、国民からそうとられてもしかたがない、こういうことになるわけですから、この問題はそう軽々しくお考えにならないで、関係省庁と十分協議をしていただいた上、いま言ったようなところでまだまだDDTとかBHCというのは日本の国だけで完全であるというものではないわけです。日本がきびし過ぎるというものがあるかもわかりません。ソ連にしてもアメリカにしてもイタリアにしてもフランスにしても、どんどんどんどんアジアの国々に日本を通じたりあるいは経由したりしながら、あるいは日本の会社がむしろ一たん輸入してまたそれを輸出している、そういう形をとっておるものも多くあるわけです。そういうふうになっていきますと、それはもう全然こっちはどうすることもできないという立場になるかもわかりませんですけれども、そういうこと自体日本がやったのだ、日本によってもたらされたのだということは十分あり得るわけです。そういうことになるわけですからね。通産大臣も、この点については日本はもうとめておりますということをよく説明して、その上なおかつほしいというところにはやむを得ないだろうということをお答えになっておったようですけれども、そうではなくて、日本日本人に害があるものは外国のすべての人にも害があるので、害を及ぼすものは絶対売りません、出しません、これが正しい姿勢ではないか、こういうふうに考えるわけです。ですから、いわゆる刑法上のいろいろ問題もあると思いますけれども、そういう立場から考えて、今後もますます環境を整えていくためには大事な問題だと思いますので、ただ委員会答弁ということに終わらないで、これは大臣、前向きに真剣にお考えになっていただいて、公害罪の中で取り組んでいただきたい、こういうふうに考えます。  以上で質問を終わります。
  45. 小平久雄

    小平委員長 次に、稲葉誠一君。
  46. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 きょうは、いま問題になっておる告発の問題、そういうふうな問題を中心に聞くつもりだったのですが、きょう大阪空港の騒音問題についての判決がありました。これはもちろん裁判のことですから、その内容とかなんとかいう意味ではなくて、一方において国が当事者であり、法務省はその代理をしておるわけですから、そういう観点から聞くわけですが、最初訟務部長に、どういう点が問題であって、結論的にはどういうふうになったのかということを要点だけを簡潔に説明を願いたいと思います。
  47. 貞家克己

    貞家政府委員 この事件の原告の請求原因でございますが、御承知のとおり、この訴訟は、川西市及び豊中市に居住する二百数十名の住民の方から、国を相手として、損害賠償と航空機発着の差しとめを求めるという訴訟でございます。  その原因をきわめて大まかに申しますと、ジェット機の大阪空港発着に伴いまして非常な騒音がある。それが受忍の限度を越えておりまして、原告らの心身、日常生活、教育等の面におきまして被害をもたらしているということを原因といたしまして、空港の設置、管理をいたしております国に、不法行為に基づく損害賠償責任がある、こういう主張でございます。  これに対しまして国側といたしましては、国が大阪空港を設置いたしておりますことは、これは事実でございますけれども、空港に別に瑕疵があるわけではない。また、一定の供用条件を定めまして、それを空港会社に利用さしているわけでございますから、それから国の不法行為が成立するといういわれはないであろう。また、その被害の面におきましても、確かにテレビの受信その他につきまして被害があることは事実でございますけれども、大部分の被害があるといって原告らが主張しておりますものにつきましては、騒音によってどういう具体的な被害が生じているかということは必ずしも明確でないのではないか。また、若干の被害があるといたしましても、航空というものの重要性、公共性、ことに大阪国際空港の持っております機能の重要性あるいは郵便機というようなものの持ちます公共的必要性ということを考えますと、受忍の限度を越えているとは言いがたいのではないかというような主張をいたしておったわけでございます。  大まかに申しますと、争点は以上のとおりでございます。
  48. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、いま訟務部長からもう少し聞きましてから、説明しますから、それが終わってから大臣の意見を聞きますから、よく聞いておいてください。  そこで、これについての判決がきょう出たわけでしょう。その判決の内容と、これによっていわゆる住民の新しい権利といいますか、いままで法的にはしっかりとした体系がなかったといわれている環境権というか、あるいは何といったらいいでしょうか、生活権といったらいいか、そういうふうなものの権利がはっきり認められたかどうかは別として、ぼくもまだ内容を見ているわけじゃありませんから大まかかもわからぬけれども、そういうような一つの既存の法体系にない新しい権利が認められたというふうに見ていいんでしょうかね。その点はどうでしょうか。
  49. 貞家克己

    貞家政府委員 実は判決の内容をまだ承知いたしておりませんので、主文を電話で聞いたという程度でございますので、的確な御回答をいたしかねるのでございますが、連絡によりますと、航空機発着の一部の差しとめが認められた、それから過去に生じた損害についての賠償責任が認められた、将来の不法行為に基づく賠償責任は認められなかった、こういうふうに聞いておるわけでありまして、これは全くテレビの情報でございますので御了解願いたいと思うのでございますが、裁判所がこの不法行為の成立を認め、また、損害賠償の請求を認めた根拠というものは必ずしも明確ではございませんが、一応国の不法行為というものを認めた。しかしながら、その理由づけといたしましては、もちろんこの騒音による被害については、運航者、つまり航空会社に責任があることは言うまでもないけれども、そういったジェット機等の利用を前提といたしまして空港を設置、管理したということも被害の原因になっている、だから下大阪空港を設置いたしました国といたしましては、空港の利用に関しまして第三者に被害を及ぼさないように管理、運用する義務があるところ、いままでとってきた防音対策は一般的にいってまだ十分でない点がある、したがって国に不法行為責任があるというような理由づけであるかに聞いているわけでございます。  しかしながら、一方におきまして、原告側が強く主張いたしました環境権でございます。環境権に基づいて請求をいたしておりましたが、環境権というものにつきましては、これは具体的請求権としては認められないのであって、環境自体を原因として救済を求めるというのは私法的救済の域を出るものだというふうにいっているわけでございます。したがいまして、不法行為の成立自体、これはいろいろ国側の考え方と違うわけでございますけれども、その差しとめの根拠というものにつきましては、従来の通説と申しますか、考え方とそれほど違っているのではないのではないかというふうに私は想像しているわけでありまして、特に新しい権利を裁判所が認められたというふうには理解できないのではないかというふうに、実はテレビその他の情報で私が一応の判断をいたしているわけでございます。
  50. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、いまの場合に、新しい環境権とかあるいは生活権とか日照権とか、いろいろありますね、本件は日照権に関係ないとしても。いずれにいたしましても、そういうふうな権利関係がどうであれ、今後こうした騒音の問題、あるいは新幹線の騒音によって住民の人たちが非常に生命だとか身体だとかいろいろな面に影響がある。各方面にこういうふうな問題が国の施策によって起きてきますね。これに対して、この判決を含めてというと、あるいは判決については云々言えないと言われるかもしれませんけれども、一方の当事者ですからね、国は。そういうふうな観点を含めて、こうやって起きてくる住民の身体、生命、いろいろなものを侵害をする国の行き方、これに対して大臣としてはどうやって抵抗していくかというふうなことを——ということは、ぼくは、訴訟になれば法務大臣が国の代理人になるわけですから、そういう限度で聞くわけですが、どういうふうにお考えなんでしょうか。フランクにお話し願いたい、こういうふうに思います。
  51. 中村梅吉

    中村国務大臣 航空機にいたしましても新幹線にいたしましても、一つの文明公害でございまして、これにこれからどういうふうに対処していくかということは、非常にむずかしい問題だと思います。しかし、何としても、個人がそのために健康を害するとかというようなことになればこれは重大でございますから、そういうことのないようにつとめることと、環境の整備をしてすべての国民が健康の保持ができるようにこれはどうしても考えなければならない。そういう意味において、これから幾ら文明が進歩するにしてもその角度だけは基本をしっかり置いて遺憾のないようにやっていかなければならぬ、こういうように考えております。今回の訴訟自体につきましては、出歩いておりましたので、私どももまだよく承知いたしておりませんので申し上げることができませんが、基本としてはそういうように考えております。
  52. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その問題はまた別の機会に譲ることといたしまして、きょうは刑事局長も来られたので、この前の石油関係の公取の告発の問題に関連していろいろお尋ねをしていきたいというふうに思うわけです。  そこで第一の問題は、この告発がいわゆる独禁法の三条と八条によって行なわれた、こう思うのですが、三条は前段、後段あるわけですが、この三条、八条の法律的にいういわゆる構成要件が一体何なのかということをまず御説明を願いたい、こういうふうに思います。
  53. 安原美穂

    ○安原政府委員 先般の予算委員会でも大臣からも申し上げましたように、本来告発があったということは当然には公にすべきことではないわけでございますが、すでに告発があったということは公知の事実でもございますので、せっかくのお尋ねでございますので、いわゆるどういう構成要件の判断で告発があったかということを申し上げますと、まず石油関係商社十二社につきましては私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、略して独禁法の第三条の「不当な取引制限をしてはならない。」という規定の違反、それから事業者団体、つまり石油連盟に関しましては第八条の第一項第一号の一定の取引分野における競争を実質的に制限してはならないという義務規定の違反の犯罪という二点でございます。
  54. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはわかっているので、そんなことは新聞に出ているのです。そうではなくて、問題になってくるのは三条のいまの「不当な取引制限をしてはならない。」とこうあるでしょう。「不当な取引制限をしてはならない。」ということの構成要件ですね。これを聞いているわけですよ。これはむずかしいでしょう。なかなか。
  55. 安原美穂

    ○安原政府委員 不当な取引制限につきましては、もう少し具体的に申しますといわゆる価格の協定をしたということと、もう一つは販売の数量の制限をしたということの二点がひっかかっておりまして、それはさらにこの不当な取引制限の内容をなす規定といたしまして独禁法の第二条の第六項に「不当な取引制限とは、」という規定がございますが、これの具体的な関係といたしましては、事業者が契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、事業活動を相互に拘束することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野、石油の関係の取引分野における競争を実質的に制限したという構成要件でありますし、販売数量につきましては、いま申し上げました対価を決定し、数量等について相互にその事業活動を拘束して、先ほど申し上げましたように公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限した、そういう内容の不当な取引制限の禁止に違反したということでございますし、第八条の関係におきましては石油連盟という事業者団体がいわゆる生産制限をした、そして一定の取引分野における競争を実質的に制限したということの違反であるということでございます。
  56. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、告発に至るまでの経過をお聞きするわけですが、これは新聞などにも出ているし、これもおそらく公知の事実だと思うのです。公知の事実ということは、それは公取と検察庁とが、これは一審が東京高裁ですから東京高検とやったと思うのですが、普通の場合は、告発に至るまでには十分な協議を遂げてそして起訴できるという見通しがあって告発するのですね、これは税法なんか全部そうですが、この前ぼくが聞いたときもそれにちゃんと答えているんだ。そうすると公取と検察庁との間のどういうような、何というのかな、協議というのかな、それがあったかということですね。告発に至るまでに検察庁がどの程度関与したかということですよ。
  57. 安原美穂

    ○安原政府委員 先般国税犯則取締法の違反事件についての告発前における検察庁と国税当局との協議については、これは国税犯則取締法調査というものがまさに犯罪の訴追処罰を目的とする、告発を目的とするいわば実質的な犯罪であるということのゆえに、検察庁と国税当局の間におきましては緊密な協議がなされておるというのが実態でございまして、今回のような独占禁止法の違反の告発の場合におきましては、本来公取当局のお調べが告発を目的とした調査ではないはずでございますので、そういう意味におきまして、常に告発をする場合において検察庁と意見の一致を見る、あるいは起訴が可能であるというお互いの意思の合致を見なければ告発をしてはならないということはないわけでございますので、そういう意味におきましてその国税当局との間における国犯法の告発事件のような協議というものはなされておりませんし、またなされる必要もないということでございます。そこで事実上、告発にあたりましては法律上は黙って告発をなされてもかまわぬわけでございますけれども、実際問題としては、告発をするにあたりましてこういう事実について告発をするということの御連絡はあったのでございますが、それ以上どういう点について協議をし、どういう点について意見の交換をしたかということはこれはまさにお察しいただけると思いますが、これからの捜査上の秘密でございますので、申し上げるわけにはまいりません。
  58. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 捜査上の秘密といったって、常識的に考えて、本件についてどういう点が問題だということはだれでもわかっているわけですよね。いわんや会社側は一流の弁護士がついてやっているのでしょうからね。ポイントはだれが見たってわかりますよ。  そこで私の聞きたいのは、公取側と検察庁側とでこの法律の解釈について、いま言った構成要件の解釈について意見が一致しているのかしてないのかということですよ。これは一つのポイントですよね。それを聞いているわけだ。
  59. 安原美穂

    ○安原政府委員 まず稲葉先生お尋ねの、法律的な見解が相違しておったので協議をしたかどうかということ自体私承知しておりません。また逆に、意見が相違しておるということも聞いておりません。
  60. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 何だかよくわからないな。それはあれですか。はっきりしないんだけれども、端的に聞きますと、公取のほうで聞きましょうか。公取のほうは検察庁とどういう協議をしたのですか。
  61. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 公取のほうも事前にこれはある程度の話し合いはしておりますけれども、その内容についてはさっき刑事局長申されたように、捜査に支障がございますので、申し上げるのはお許しいただきたいと思います。
  62. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 捜査に支障があることまでぼくは聞こうと思っているわけじゃないのですけれどもね、当然のことながら、ことに問題は三条ですよね。三条の「不当な取引制限」の解釈、構成要件の内容の問題、これについて意見が一致しないで告発するということことは考えられないわけですよ。意見が一致しないで告発したら、あとで収拾がつかなくなりますよ。八条のほうは、これはおそらく通産省の行政指導がどういう法律的な効果を持つかということ、これはあとで出てくると思うのですが、ぼくの聞くのは、三条に拘束力という問題があるでしょう。三条から二条にいって拘束力、これは一体何かということですよ。ペナルティーを科さなければ拘束力がないというふうに見ているのですか。そこはどうなんですか。それから同時に拘束力の内容を……。
  63. 安原美穂

    ○安原政府委員 これは本来公取法の実体規定の解釈でございますから、最初に公取当局からお聞きを願うのが筋かと思いますが、せっかくのお尋ねでございますので、私どもの一般的な解釈論として申し上げますならば、この拘束というのは自由な競争の制限をするというだけのことであって、その制限の違反に対して罰則を科する等の強制力を伴う拘束力を伴わなければ拘束にはならないとは考えておりません。
  64. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ところが、きょうの毎日新聞を見ると、東京高検と地検が、やみの価格協定を結んだ場合、それだけで独禁法違反として刑事責任を追及できるかどうかということで、解釈をめぐって意見調整ができないために二十六日までに法務省に対して見解を求めた、こういう記事が出ているのですよ。そうすると、検察庁内部としては、法律の解釈ということについては意見は一致しているのですか。だから何も法務省に見解を求める必要はないんだ、現にそういうふうな意見を求めてきたこともない。こういうことですか。一〇安原政府委員 最後に申されましたように、意見を求められたことは承知しておりません。したがって、新聞に書いてあることはおそらく何らかの誤報じゃないかと思います。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、検察庁当局としては、いま三条の解釈については意見が一致して、しかもそれについては公取とも意見が一致しておる、こうお聞きしてよろしいですか。
  66. 安原美穂

    ○安原政府委員 聞いてきておりませんからわかりませんけれども、本省の解釈と同じ解釈を持っておるものと確信しております。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そういうお答えならば大体わかりましたから、それ以上いまの点については私はお聞きをいたしません。  もう一つの問題は、これはどうも経過がはっきりしないのですが、告発があった直後の新聞などを見ますと、いかにも検察庁が弱気のような、事件はむずかしいと、何かとても、なかなかむずかしいというか、そういうようなことが盛んに出てきますね。証拠が違うのだとか、証拠の判断が違うのだとかなんとか、こう出ているわけですね。そこら辺のことは、そういう話をしたことがあるのか、あるいはそういうニュアンスのことを検察庁当局としては一体考えているのかどうか。ここら辺はどうなんですか。
  68. 安原美穂

    ○安原政府委員 この点は予算委員会でもお尋ねがございましたので、その後問題の次長検事談話につきまして、当該次長検事からもお聞きをし、それから報道している新聞等を総合して、いまのお尋ね答えるといたしますと、報告によりますと、次長検事は公取の調査と刑事事件の捜査では証拠判断が違うという当然のことを一般論として述べた。御案内のとおり公取の認定については、伝聞証拠法則の制限とかそういうものはございませんが、刑事事件についてはある。したがって、公取の証拠だけで直ちに刑事事件の証拠になるということはいえないという意味での一般論を述べただけでございまして、次長検事の談話にもございますように、告発を受けた以上は全力をあげて真相の究明に当たるということを申し上げておるのでございまして、それ以外に、弱気であるとかなんとかそういうことはなくて、現に体制を整えまして、まさに前向きの姿勢で取り組んでおる事実からも御判断をいただきたいと思います。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、いま話が出たように、体制を整えて前向きの姿勢で取っ組んでいるというんでしょう。こまかいことはいいのですよ。あとで聞きますけれどもね。そうすると、大臣としては、体制を整えて前向きの姿勢で本件を処理したい、これは検事総長に対するあなたの指揮しかないとしても、そういうふうにお考えなんでしょうか、あるいはこれはむずかしくてとてもだめだ、こういうふうに考えているのですか。
  70. 中村梅吉

    中村国務大臣 さようなことは絶対にありません。問題は、告発がありましたので、目下検察当局は鋭意その告発の事実について努力をしておるというのが段階であろうと思います。私どもといたしましては、あくまでこれは厳正な態度で、そしてできるだけりっぱな結論が出るようにということを期待いたしております。われわれ自身がやるわけではございませんのでよくわかりませんが、気持ちといたしましては、あくまで検察当局はいかなるものにも動かされないで厳正な態度でやるべきである、かように思っております。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 厳正ということを特に強調されましたが、私そのとおりだと思うのですが、八条の問題になってくると、この点については通産省の行政指導があったんだということで、どういう行政指導があったかは別として、その行政指導に基づいて石油連盟なりが数量の調整ですか制限をやった、こういうことは当然出てきますね。これたあたりまえな話です。そうすると、厳正にやるためには、通産省の関係者も当然呼んで——どういう形で呼ぶかは別ですよ。呼んで事情を聞かなければならないわけですね。そういう点について大臣としては、これは遠慮をしないで厳正にやるんだから、当然それはもう事案の性質上やらざるを得ない、こういうふうにお考えなんでしょうかね。
  72. 中村梅吉

    中村国務大臣 具体的な事件でございますから、私どもは申し上げかねるわけでございますが、もし通産省の行政指導というものがたとえば関係があるとすれば、それはもちろんその実態についても明確にしなければならない時期が来るだろうと思います。とにかく具体的な事件であり、まだ始まったばかりでございますので、とやかく申し上げることはできないと思います。
  73. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、こういう事件ですから、直接の証拠というものを補強するために、あるいは結果として価格の協定が各社一斉にできておるということから逆に推定して、不当な取引制限があったということを認定することもできないわけじゃないわけでしょう。一般論としてね。どうでしょうか、刑事局長。
  74. 安原美穂

    ○安原政府委員 まさに一般論としてはあり得ることだと思います。
  75. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 もう一つ問題になってくるのは、行政指導行政指導というんだけれども、その行政指導にはいろいろ内容があるとしても、そのことによって——法務省に聞きます。ぼくは、通産大臣に十分でもいいから来てくれ、あるいは資源エネルギー庁長官に十分でも十五分でもいいから来てくれと言ったのですが、来られないと言うからしょうがない、法務省に聞きましょう。そうすると、いわゆる行政指導によって、特に八条の問題、三条は別だから、通産省の設置法にもないことですし、八条の問題で違法性が阻却されるという場合もあり得るわけですか。これが一つ。  それから逆に、八条違反について、どういう形かは別として、法律上いって通産省がたとえば刑法の六十条以下の関係に立つということも考えられるわけですか。
  76. 安原美穂

    ○安原政府委員 せっかくのお尋ねでございますが、なかなかデリケートな問題でございまして、一般論から申しますれば行政指導の根拠、内容にもよることでもございますし、私の答えますことがこれからの捜査に直接、間接に影響することもあり得るとも考えますので、一般論としては、行政指導の根拠、内容にもよるということでひとつ御かんべんを願いたいと思います。
  77. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、行政指導の根拠、内容によって違反性を阻却する場合もあるだろうし、それから逆に、通産省当局が刑法の共犯的な立場に立つということもあり得る、ないというわけにはいかない、ちょっと意地の悪い質問だけれども、そういうふうに聞いておいていいでしょうか、
  78. 安原美穂

    ○安原政府委員 まさにお察しのとおりでございます。
  79. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで問題になってくるのは、高橋公取委員長が記者会見か何かで一罰百戒ということを盛んに言っておりました。一罰百戒というのは一体なのだ。これはまず公取に聞いて、あとから大臣に聞きましょう。一罰百戒というのは何なのだろう、具体的にどういう意味を持っているのですか。
  80. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 私ども委員長が言われたことですから、委員長がどういう真意で言われたか、私はっきりわかりませんけれども、一罰百戒と言われた意味は、過去において二回、三回と勧告を受け、審決を受けたという例は、そうたくさんではございませんが、あるわけです。そういうものを全部告発するかどうかという問題もございますけれども、それともう一つバランス論もございまして、やはり世間的に影響の多い、最も悪質と見られるものを一つ取り上げて告発をするということによって、業界全体の姿勢が正されるのではないか。だから、どういうものを悪質と認めるかどうかという認定の問題はございますけれども、そういう意味で一罰百戒ということを申し上げたのだろうと思います。しかし、一罰百戒と申しましても、一ぺんやったからあとはやらないということではなくて、やはり今後もあり得るという意味で申されたのだろうと思います。
  81. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ことばの解釈を議論しても始まりませんけれども、公取としては、検事が起訴して有罪の判決を受けるということが目的じゃなくて、それは目的かもわからぬけれども、そこまでは公取としては関与しない。とにかく告発したことに意義があるのだ、こういう理解のしかたですか。
  82. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 必ずしもそういうことだけではございません。それはそういう意味もございますけれども、やはり独禁法違反というものが、単なる形式犯ではなくて、非常に道徳的にも悪い、間違った行為であるということから、そういう違法なカルテル等をやった個人の責任を追及するという意味もあるというふうに思います。
  83. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これぐらいにしておきましょう。  そこで問題になってくるのは、七十四条ありますね。検事総長が、公正取引委員会に対して調査及びその結果の報告を求めることができるというのがありますね。これはどういう規定ですか。いままで使わないのですか、今後も使うつもりはないのですか。
  84. 安原美穂

    ○安原政府委員 七十四条の運用の問題でございますがいままで、これによって公取に通知をして、調査及びその結果の報告を求めたことの事例があるとは聞いておりませんが、解釈といたしましては、これは、検事総長すなわち検察庁のほうにおきまして、公取法違反の端緒を得たというような場合に、公取に連絡をするということであろうと思います。
  85. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だけれども、これは石油だけでなくて、いまいろんなものが新聞に出ていますね。アルミあるいは鉄鋼もあるでしょうけれども、こういうふうな問題があっても、七十四条の検事総長の通知による調査報告というのは今後もあまり使わないわけですか。そこまで考えたことないということですか。
  86. 安原美穂

    ○安原政府委員 今後の方針ということになりますれば、現実の問題といたしましては、現在公取がまさに主管の当局とされまして、真剣にこの禁止法違反の調査に取り組んでおられるところでございますので、そうたびたび検察庁側から犯罪があるぞということを通知するというようなことにはならぬと思います。  と同時に、この規定があることは、稲葉先生御案内の、重要な犯罪違反につきましては親告罪であるということから、端緒を得た場合には告発されるかどうかということを通知するというようなことがこの法律の裏にあるのではないかと思います。ただ運用の問題としましては、現実におきまして公取が真剣に取り組んでおられる現状においては、そうたびたびこちらから申し上げるということを待つまでもなく、適正な告発権の運用がなされるものと信頼しております。
  87. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣も何か御用があるそうですから、国税庁にひとつお聞きしますが、例のこの前から問題になっているトーメンと丸紅ですか、日商岩井もあるでしょうけれども、あの脱税問題について、脱税かという質問が出てくると、議事録を見たら、国税庁の長官は脱漏だと言っていますね。今度参考人を呼んでみたら脱税ということを認めておる、こういうことでしょう。それに対して国税庁としては現在どういう方針なのか、今後どうするのか、ここをお聞きしたい、こういうふうに思います。
  88. 井辻憲一

    井辻説明員 脱税というのは、この前も申し上げましたように、一般俗にいわれておることばでございまして、法令上そのような字句があるわけではございません。したがいまして、私どもの所掌でございます査察を中心にしました、刑事訴追を目的とした犯罪を構成するもの、これを厳密に私のほうでは脱税という言い方を部内ではしております。刑事局も同様であることは、この前お答えになりましたとおりでございます。それから脱漏と申しますのはもう少し広い意味で、これも法律上の定義ではございませんが、単純なるミスによるもの、あるいは隠蔽仮装によるもの、あるいは厳密な意味での脱税というものも含めて脱漏ということが多うございます。  いずれにいたしましても、商社の代表が予算委員会等でその脱税を認めたというふうにいわれておりますのは、私も聞いておりましたが、重加算税の追徴を受けた。その重加算税というのは隠蔽仮装によるものでございますから、これは一般的に俗にいわゆる脱税といわれておる慣用的な使い方がございますので、そういう意味で脱税と認めたというふうに私は社長の発言を受け取っております。
  89. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、今後どうするのかということを聞いているのだよ。
  90. 井辻憲一

    井辻説明員 端的に申し上げまして、告発をするあるいはしないというふうなことにつきましては、事柄の性質上、個々の問題につきまして申し上げるわけにはいかないということを御了承願いたいと存じますが、この前申し上げましたとおり告発の前提となりまする国犯法の調査に着手し得るかどうかということにつきましては検討中でございます。なお今後とも検討をいたします、こういうことでございます。
  91. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 まだいろいろこういう経緯に関して聞きたいこともあるのですが、大臣、御用があるということですから、きょうは一応の目的を達したというか、と思いますから、まあ十分達していませんけれども、私の質問はこれで終わります。
  92. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる三月一日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時二分散会