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1974-02-19 第72回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十九日(火曜日)     午後二時三十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 谷川 和穗君    理事 羽田野忠文君 理事 稲葉 誠一君    理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    江崎 真澄君       河本 敏夫君    千葉 三郎君       早川  崇君  早稻田柳右エ門君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         法務大臣官房長 香川 保一君         法務大臣官房司         法法制調査部長 勝見 嘉美君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  千葉 和郎君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 二月十八日  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願青柳盛雄君外一名紹介)(第二一  六六号)  同(稲葉誠一紹介)(第二一六七号)  同(上原康助紹介)(第二一六八号)  同(大出俊紹介)(第二一六九号)  同(川崎寛治紹介)(第二一七〇号)  同(木原実紹介)(第二一七一号)  同(楯兼次郎君紹介)(第二一七二号)  同(中路雅弘君外二名紹介)(第二一七三号)  同(日野吉夫紹介)(第二一七四号)  同(八百板正紹介)(第二一七五号)  同(安井吉典紹介)(第二一七六号)  同(山本幸一紹介)(第二一七七号)  同(横路孝弘紹介)(第二一七八号)  同(横山利秋紹介)(第二一七九号)  同(吉田法晴紹介)(第二一八〇号)  同(和田貞夫紹介)(第二一八一号)  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第二二三五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九号)      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 定員法に関連しての質問ですからできるだけ法案から離れないようにはいたしますけれども、多少のことはお許し願いたい、こう思います。  この前最高裁で三菱樹脂の判決があったわけですが、あれは確定しているわけではありませんし、審理不尽ということで高裁差し戻しになっておるわけです。高裁判決があればまた上告になるかもわかりませんから、結論が確定しておるわけではありませんので、そのこと自身についてここで質問するというわけには私もいかないと思いますので、それは質問するわけではございません。あの判決については私自身いろいろ考え方があるわけですけれども、そこでお聞きをいたしたいことは、たとえば司法修習生採用する場合に、憲法思想信条の自由というか、それとは一体どういうふうな関係になっているのかということですね。修習生採用でそういうふうな点について全く意に介しないというのか、あるいは意に介するけれどもある程度のことは常識的に許容の範囲なんだ、こういうふうなことなんでしょうか。そこら辺のことをお聞かせ願って、それから次の質問に入りたい、こう思います。
  4. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御指摘最高裁判決、これは憲法十九条、十四条の規定の解釈をいたしておるわけでございますが、憲法十九条、十四条の規定は、国または公共団体統治行動に対して個人の基本的人権の自由を保障する目的に出たもので、私人相互間の関係を直接規律することを予定するものではないという趣旨の判決であったというふうに記憶をいたしております。  修習生採用でございますが、修習生は御承知のように最高裁判所が所管をいたしておる研修所修習をいたし、法曹になるための卵として入所するものでございまして、思想信条ということについてどうであるかということは、以上の点からもおわかりいただきますように特に意に介していない、こういうふうにお答えできるのじゃないかと思います。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 司法試験に受かってそして修習生——まあ司法試験資格試験ですし、その中で修習生を希望しないという人は、毎年、きわめてわずかだと思うのですけれども、たとえば大学助手か何かで残るとかなんとかそういう人とか、いろいろあると思うのですが、どの程度ですか。大多数、九割九分は修習生を希望するんだ、こういうふうに思うのですが、そこら辺はどういうふうになっておられますか。
  6. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 正確に何%かというのはちょっと記憶いたしておりませんが、二、三十名を除きますと大体みな希望してまいるということでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その二、三十名というのはほとんど大学に残る人ですか。必ずしもそうでもないわけですか。
  8. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これは、大体その年に合格いたしました者の中からは二、三十名はいないわけでございます。ところが、前年以前に合格した方がずっとこうございますので、結局合格者と同じくらいの数が毎年入るということになります。しかしこまかに見てまいりますと、当該年度に合格した人は大体合格者の中の二、三十人が当該年度には希望しないということでございます。そのおもな理由は、健康上の理由によるものと、それからいま御指摘大学助手として行くとか大学院に残るとかそういうような方、それからごく少数はどうも理由がよくわかりませんけれども、結局希望されないというような方ではなかろうかというふうに思います。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 修習生を希望してそして採用にならないという人、これは毎年どのくらいいるわけですか。
  10. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 昨年四十八年度の例で申し上げますと、結局数名の取り下げがございました。したがいましてこれは終局的には希望しておられないという方になるわけでございますので、そういった方を除きますと、二年間の修習にたえないと思われるような病気の方と、それ以外にいわゆる当該年度採用を留保した方でございますが、当該年度採用を留保した方は、昨年の例で申しますと四名でございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ですから、思想信条理由として修習生の場合は問題を云々するということはないわけですね、公務員でないという関係もあるかもわかりませんが。そこで採用を留保する人がいるわけですね。私どもの聞く範囲内では、それがどういう人かというと、大体はいままでの例では、たとえば学生運動をやった人、こういう人が採用を留保される。いまの学生運動をやった人というのは、またあとからいろいろな内容的なものが出てくるのだと思いますが、そういうふうに実際にはなっているのじゃないですか。
  12. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 昨年度の例で申し上げますと、率直に申し上げましてその四名と申し上げましたが、その四名の方はいずれも東大事件をはじめとする学生事件に何らかの形で加わった人でありまして、有罪判決、これは執行猶予つき懲役判決でございますが、を受けて、執行猶予期間満了はしておりますが、満了後まだ相当期間を経過してないといったような方ばかりでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから修習生採用するのに、公務員でもないし、そういうふうな事件で処罰を受けた、しかも執行猶予期間満了しているわけでしょう。それを、なぜ表向き理由にするのかそれはちょっとわかりませんが、理由にするというのはどうもちょっとね、結局その人の思想なり信条なりというようなことを理由にして差別というか、そういうふうなものが行なわれておる、こういうふうにちょっととられがちなんじゃないですか。それが一つと、よく言われるのは、これは刑事局長のほうの管轄かもわかりませんが、執行猶予判決を言い渡すとき、裁判官が言うでしょう。言い渡し期間が過ぎたら刑の言い渡しはなかったものとなるというようなことを言いますね。ちょっとこれは正確かどうかわからぬが、そういう意味のことを言いますね。この意味がちょっとはっきりしないのですけれども言い渡しがなかったものになって消えてしまっているものならこれは採用してもいいのだと思うのだけれども、なぜ執行猶予期間が過ぎたのに採用しないのか、これは毎年ずっと積み重なっていますね。これはどういうのですかな。
  14. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 確かに執行猶予期間が他の犯罪を犯すことなく経過いたしますと、そういった意味有罪効果というものはなくなるわけでございますので、いわゆる欠格事由というものに該当しないということはもう御指摘のとおりだろうと思います。ただ、私どもはやはり法曹として法と秩序を守る、そういう職責をになうべく修習をいたすものでございますので、もし修習生が法を守り、秩序を守るという考えが完全にないならば、これはそういった方を修習生として採用すべきであるかどうかということについて疑問を持つわけでございます。しかし、これはその方の将来とか、どういうふうな考えがあっておられるかということから判断すべきものでないことは当然のことでございますので、猶予期間を経過され、なお経過後相当期間一般の市民として、正しい生活をしておられるということの実証のある方につきましては、これをその時点において修習生として来ていただく、そういう扱いをしておるわけでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、執行猶予、これは東大事件かどうかは別として、いままでのあったのは安保闘争のが多いですね。それで執行猶予になった、言い渡し期間を過ぎたというのでしょう。それで採用願いを出すというと採用しない。大体一年間たってから採用するのがほとんどらしいですね。この前は私の聞いた範囲では、たとえば団藤先生などが責任を持つ、保証人になるということで、兼子一先生もそうだったかな、責任を持つということでやったけれども——運動したのかどうか知りませんけれども採用にならなかったですね。そうすると、執行猶予言い渡しがあって、刑の言い渡しがなかったものとなるとして、大体一年間模様を見るのですか。何だかこれは保護観察みたいなものだな。一年間模様を見て、それから採用をするのですか。実際の運営はそこまでやる必要ないのじゃないですかね。執行猶予が切れれば、これはたいてい普通は三年間でしょうね。三年間がまんして何にもなくて済んでいれば、それは改悛の状顕著だし、改過遷善の効果があがったと見ていいんで、執行猶予が切れたとたんに採用するというのはどうかと思うかもしれませんが、それはなにも一年間待たなくて、次に送らなくても採用していいんじゃないか。特に大学先生方責任を持つと言ったって最高裁はなかなかきかないそうですね。そういうところで最高裁の権威を発揮しているのかもわからないと思うのですけれども、それはどういうのですかね。いまでもそういう取りきめですか。
  16. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 取りきめというようなことを考えておるわけではございませんが、私どものこれまでの扱いといたしまして、執行猶予期間を経過されて後、願書をお出しになる方は執行猶予期間中にお出しになるような方も間々ございますけれども取り扱いといたしましては、経過されて後一年はいろいろな意味で様子を見させていただくということで扱っておるわけでございます。あらゆるケースが例外なくそういうふうにしておるかどうかというと、それほどの厳格な扱いとも考えておりませんけれども、原則としましてそのような取り扱いをさしていただいておる。その結果大体当該年度採用されなかった方が数名ございましても、翌年に採用の希望をなされば、これまでの例としましては全員漏れなく採用をいたしておる、こういう状況でございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 たとえば修習生から判事補になる場合には具体的に——修習生になる場合には思想信条全く関係ない。そうすると、判事補になる場合は思想信条関係ないというのか。あるという答えもできないかもしれないけれども、そこら辺のところはどうなんですかね。実際にはどういうふうに判断をしてやっていくわけですか。
  18. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 たびたび申し上げておることでございますが、裁判官判事補としてふさわしいと認められる方に来ていただくということでございまして、その方がどういう思想信条を持っておられるかとか、どういう団体に加入しておられるかというようなことは一切調べてもおりませんし、またそういうものが基準になるということもない、そういう状況でございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはまあ公式な答えはそれだと思うのですけれども、そこでもう一つほんとうならば突っ込んで質問してもいいわけですが、いろいろな影響があるからあれしますけれども、いずれ機会を見て、もう一つそこのところでぼくはワンポイントあると思うのですけれども、まあ別のときにいたしますけれども……。  そこで、修習生から判事補になる場合に、試験に受からない人がいますね。毎年二人ぐらいいるかな、そのときによるけれども。それは問題になってくるのは、修習生研修というか、いろいろな形で行なわれるそれを、どこに重点を置いて採点するわけですか。たとえば判事補を希望したけれども受からない人というものについては、受からない人なり何なりのほうは、たとえばそれは青年法律家協会に入っているとか入っていないとかということを理由にあげる、最高裁側では全く関係ない、知らなかった、成績が悪かった、こういうわけでしょう。修習生成績がいいとか悪いとかいうことをどうやって、どこにウェートを置いてやるのかということです。いろいろな研修があるわけですが、どうやっていいとか悪いとかいうことを最終的にきめるのか。そこら辺をどういうふうにやっていらっしゃるのですか。
  20. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 研修所のどういう修習を行なわせるかということに関します——むずかしいことを申し上げますれば、司法修習生に関する規則の第四条に「高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努め」させるということを研修目的といたしておるわけでございます。しかし、こういうふうにむずかしく申し上げるまでもなく、二年間研修所で前期、後期と集めて合同の研修をいたします。その間の期間というものは現地に参りまして裁判所検察庁弁護士会、いずれも実務を身につけるわけでございます。で、そういうふうに二年間の修習というものを、しかもいま申し上げましたような目的のもとに職業教育というものをいたしますれば、そこにはおのずとできる方もできない方もできてくるというものではなかろうかと思います。もっとも修習を終了するということは法曹となるための最低限資格要件でございますので、最低限資格要件は、修習を終わった方であるならば皆さんお持ちでございますが、その間に、これは人間でございます以上は、やはりある程度の上下というものができてまいるのが当然ではなかろうかというふうに考えます。じゃ、それはどういう点で見きわめるのかということでございますが、別の機会にも申し上げたことがあろうかと思いますけれども、全期間を通じまして統轄いたしております研修所長は全期間修習成績というものを、いわば平常点と申しますか、そういったものを考試委員会報告をいたしてまいるわけでございますし、さらにこまかく申しますと、実務修習の庁におきまして、裁判所検察庁弁護士会、それぞれの修習をした期間成績というものを研修所のほうに送付してまいり、それが研修所長平常点報告ということの中に十分にしんしゃくされ、なお参考としてそのままの現地報告が私どもの手元に参るわけでございます。そういった二年間の全く実施における職業教育というものの成果と、それから御承知のように二年間の終わりにいたしますいわゆる二回試験と申します筆記試験口述試験、そういったものが主流をなして、修習生評価というものが形成されるわけでございます。しかし修習生評価と申しましても、現実裁判官採用いたします場合は、全人格的な評価でございますので、採用面接をいたします者たちが感じ取りますところ、あるいは身上報告書あるいは学業報告書、いろいろなものあらゆるものがやはり資料となりまして、これらをすべて総合いたしまして最終的な採否の判断が下される、こういうことになるわけでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私なども修習生を預かってそしてやったことあるんですが、最終的な一つ評価をしてくれと来ますね。それは非常に大ざっぱなものです。特にいいとか、いいとか、普通だとか、五段階ぐらいに分かれておったかちょっと忘れましたが、その程度ですね。特にいいというのをあまりつけないでくれとかなんとか言われたのを覚えているけれども、あまりそればかりでもおかしいし、どの程度の評定をつけていいかわからないので、普通、いいぐらいのことをつけておいたようですけれども、それはそれとして、しかし修習生全部こまかく点数が最終的に出ますね。何点、何点と出るでしょう。そして順番が全部つきますね。どこでそういう点数がつき順番がつくんですか。それは最終的な二回試験というか、研修所を卒業するときの起案というか、そういうふうなものの試験をやって、それを中心点数つけているんじゃないですか。こまかい点数ついているでしょう。順番までついているんじゃないですか。
  22. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 試験の中身についてはあまり申し上げるのもどうかという感じがいたしますが、実際問題といたしましては、現在何十何点とかいう点数はつけておりません。五段階天段階ぐらいの評価をいたしておるというのが実情でございます。したがいまして、現地からいただきます報告も、ある意味では少し大ざっぱ過ぎるかと思われるような大ざっぱな区分けでございまして、ただその大ざっぱな区分けであってもそこにはおのずと、ずらずらと上のほうのランクの並ぶ方もありますでしょうし、下のほうに並ぶ方もございますから、おのずと色分けはできると思いますが、何番、何番、何十何点、そういったものではございません。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現地から来るのは——現地ということばもおかしいけれども、各地の地裁や何かから来るのは大ざっぱなものですよ。ランク五つぐらいに分けてやるだけですよ。ところが、研修所で最終的にきまるのは順番ついていますよ。五百何人いるでしょう。そのうちの四百何番だとか何とか全部ついていますよ。あなた、それは言いづらいかどうかは別として、それはついているのをぼくは見ていますよ。そんなこと言ったって、それはだめですよ。点数は別です。点数までついているかどうかわからないけれども順番がついているということは間違いないですよ。順番がついているということは、結局、目に見える試験で最終的にやるということでしょう。目に見える試験というのは何かというと、最終的には起案でしょう。そこに起案中心主義弊害が出てくる、こう言われるんですが、それは起案じゃないですか。起案重点を置いて、その起案点数をつけて、あと口述か何かあるかもしれませんけれども、そこでこまかい五百何人のうちの各人の点数まで出るかどうかは別として、順番はついていますよ。ぼくは見ていますよ。
  24. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 まずいわゆる二回試験だけで評価をするというものではなくて、平常二年間の研修所報告していただく平常点というものが、二回試験民事裁判刑事裁判、検察、民事弁護刑事弁護、こういうふうに専門科目がございますが、それと同じウェートをもって検察庁報告弁護士会報告裁判所報告というものが出てまいるわけでございまして、決して二回試験のいわゆる筆記あるいは口述の答案それだけで評価しておるものではないということをまず第一に申し上げたいと思います。それだけでございますが、先ほども申し上げましたように、率直に申し上げますと、全部優をとっておられる方、これはまあ一番いいということになるわけでございます。そういう意味で、およそどれぐらいということは出てまいりますが、これもいわゆる司法試験で行なわれておりますような何十何点何分、平均何十何点何分何厘というような、そういったようなものではございません。司法試験では何か順位を具体的に本人に言っておられるようでございますが、私どものほうではそういう公式的な順位と申しますか、そういうものはないわけでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 公式的な順位はないかもわかりませんが、たとえば修習生から判事補を希望して受からない人が毎年二人くらいいるでしょう。そうすると、その人の成績は何番だ。たとえば例は悪いかもわからぬけれども、大体五百人のうち四百番台が多いね。四百番台だからこれはとても判事補になれないといって、本人にはそこまで説明しないにしても、こまかい順番が出ているのじゃないですか、一番から五百何番まで。ぼくはそういうように聞いているのです。そればそれでいいとして、順位のきめ方が、各地裁なら地裁に配属されているときにはいろいろ講評のつけ方によって違いがありますから、結局は目に見えるものとしては最後の二回試験できまる。そうするとそれは起案だ。そうすると起案中心主義におちいって、研修所に入れば起案ばかりやっている。起案で人生をすりつぶすかどうかは別として、それで終わってしまうという形になってきて起案主義というものが非常に弊害が出ている、こういうふうになってくるのじゃないですか。ぼくはそういうように聞いているのです。  そこで、まだいろいろ問題があるわけですけれども判事補になった場合に、いまは十年間判事補をやるわけでしょう。しかし実際には、五年たつと判事補仕事からは離れて判事と同じような仕事をやっているのではないですか。だから判事補を十年間やるということは、どうもそこまでの必要があるかどうかというように思うわけですが、これはどういうところから出てきたのか。それから、ある年限にもっと縮減することは実際問題としてできないのだろうか、こういうことをお聞きするわけです。
  26. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 最初に、起案起案起案ばかりではないかという御指摘でございますが、もう申し上げることもないのかと思いますが、昔は二回試験というようなものだけで、いわゆるペーパーテストだけで厳格な順位をきめたという時代があったように聞いておりますが、現在は、ペーパーテストも相当なウエートを占めますけれども、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、研修所が二年間見てつけられる平常点といったものがそれと同様の大きなウエートを占めて、そういうものの総合によって合否の判定がなされる、これだけは申し上げておきたいと思います。  次の、判事補になって十年間もやる必要がないのじゃないかというお尋ねは、確かに現在の状態というものをごらんいただきますとそういう御疑念が起こるのもごもっともだと思います。ただ、稲葉委員も御承知のように、新しい裁判所法理想といたしましたのはやはり法曹一元といった考え方裁判官でございまして、これは検事、弁護士を何年かやった者から裁判官をとっていく、これは理想と言うには少し近過ぎますが、それを理念としたものでございます。そういうところから、修習を終わって十年間というものは判事にしない、そういう判事でなければいけないのだということから出発いたしました。しかし現実の姿は、それじゃすぐ弁護士検察官から必要な裁判官の方が来ていただけるかということになりますと、日本の現状はそれにほど遠いわけでございます。そこで、同じ判事の供給源として判事補という一つの制度をつくらざるを得なかった。そして現実の運用は、あたかもキャリアシステムであるかのように判事の大部分、九九%までは判事補判事になるという現実の運用をせざるを得なくなってきたというのが今日の姿でございます。そのようにして、なお裁判官の数の問題とかいろいろの点を考えてまいりますと、十年間一人前の裁判ができない判事補のままということは人的なロスでもございますし、また全国の津々浦々に裁判官を配置するという関係から申しましても、もう少し一人前に裁判のできる方々の幅を広げたいという実務上の念願もございまして、法曹一元の理念には必ずしも合わないものではございますけれども、特例というような意味で五年間で特例をつけて、そして五年を過ぎますと、一応一人前の裁判はできるというような扱いをいたしておるのが現状でございます。この特例の制度というものは、これだけ定着いたしますと、もう一思いに五年に下げたらいいじゃないかというようなお考えも出てまいろうかと思いますが、しかし最初に申し上げましたように、新しい裁判官理想法曹一元、裁判官検察官弁護士というようなところで仕事をなさった方から裁判官をとり、その裁判官によって裁判をしていただくという、せっかく掲げましたこの理念というものはおろしたくないものでございます。そういう観点上、現実の姿がなかなかそれに追っつかないということは一方で重々承知いたしながらも、いまの制度を続けておるというのが偽らざるところでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 十年間というのは、ことにアメリカなどでは、法曹一元で弁護士から裁判官になる。そうすると裁判官をやめさせてくれなくちゃかなわない。十年たったらやめて弁護士にまた返れるということのために、むしろ弁護士側からの要請というか、法曹一元の要請といいますか、そういうことで十年という任期がきまったんじゃないですか。そういうふうにむしろ聞いているのですがね。十年たってまた再任されるのじゃなくて、むしろ裁判官としては十年たったならば弁護士に返りたい、元来が弁護士なんだから弁護士に返りたいというために、十年たったらそこでフリーになれるということででき上がったというふうに聞くわけですけれども、日本の場合は全くそうじゃなくて、ずっと裁判官裁判官でいくわけで、法曹一元というか、そういうものが多少ありますけれども、全くといっていいくらい行なわれないわけでしょう。それはどこに原因があるというふうに考えられるのですかね。そこら辺はどういうふうに判断というか把握というか、されるのでしょうか。
  28. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判の理想といたしましては、やはり法曹としてあらゆる分野で活躍し、法曹としての活躍を行なうことによって人格識見をみがいた人たちが多数おられて、その多数の人の中からさらにえりすぐったごく少数の方に裁判官としての仕事をおまかせするというようなシステム、そういったものがないと、やはりこの法曹一元というものの制度はなかなか現実には運用ができないようでございます。日本は、理想としまして、戦後そういった理想を掲げましたし、またその理想とするところは私、今日においても決して間違っていない。裁判というものはそういうものだというふうに考えていくべきものではなかろうかという感じがいたしますが、しかし実際の問題といたしましては、ある他国の制度を受け継ぐといたしましても、そう簡単に形だけ受け継いでも実質が受け継げるものではないわけでございまして、これはもう稲葉委員承知のように、日本の法曹における明治以来の法曹の歴史というもの、その中からだけでは、一足飛びにアメリカで行なわれておりますようなそういう理念形態に近づくということが非常にむずかしかった。そのむずかしかったことの中身は、個々にとらえてみますといろいろあろうかと思います。弁護士さんの数も非常に少なかったということもございますでしょうし、いろんなことがあろうかと思いますけれども、私どもは今日においても、理念といたしますそういった法曹一元の姿、そういうものに一歩でも近づくものであれば、これは取り入れていかなければいけないと心がけておりますけれども、現在のところそう簡単にそういった理念に近づき得るかどうかということになると、むしろ障害のほうがいろいろ多いというのが現状でございます。  十年間のこの任期と申しますのは、やはりそういったことも勘案いたしまして、法曹一元の姿勢がとり得るときに適宜弁護士活動あるいは検察官活動をやっておられた方で、いい方に入っていただくという余地を残していかなければいけないということも一つ考えの中にあったと思います。しかしそれと同時に、同じくらいのウエートをもちまして、やはり裁判官の身分保障、それとこれをあまり強大にすることによってバランスの失われること、そういったことをおそれたということ、そういったものも全部ひっくるめまして現在の十年ごとの任期という制度ができた、こういうふうに思っておるわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今度の法案でもその判事補を二名ですか三名ですかふやして、高等裁判所の裁判にあれするというのですか、なっておるようですけれども、最初五年間の判事補は具体的には各地裁などではどういう仕事をやっておるのですか。そこら辺のところがどうもはっきりしないというか、まあ陪席はやっていますわね。陪席以外に何をやるのですか。
  30. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 裁判所法によりまして、未特例の判事補は合議体に加わるということでございますので、原則としては合議体の左陪席として仕事をしておるわけですけれども、実際問題といたしまして、戦前に比べまして合議事件というものが非常に少のうございますので、それで訴訟法によって単独でできる裁判、民事で申しますと仮処分それから競売といったようなことをやっております。刑事では勾留、それから令状関係、そういうふうな仕事をやっておるわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その仮処分、仮差し押え、それから競売、これは率直にいって一番むずかしいんじゃないですか。これはきわめて敏速な判断も要るし、同時にまた決断も要るし、それから非常に法律的にむずかしいのが仮処分で出てきますね。変な言い方をするけれども、仮処分というのは、何というか、弁護士の腕というとことばが悪いけれども、いろんな内容のものがありますわね。内容のものがあるというのは、商法の上ではっきりしておるものもあるし、ある程度のものもあるし、いろいろなものがあるでしょう。そういう非常にむずかしい仮処分をいまの未特例の判事補にやってもらっているわけでしょう。だから一面において非常に仮処分がおくれるのじゃないですか。さあ仮処分をもらったはいいけれども、それはやさしいものはわかりますよ。普通の仮差し押えとかなんとかならいいけれども、複雑な仮処分なんかなかなかわからなくて、もたもたしていて日にちがうんとたって、一週間くらいたっているんじゃないですか。それは疎明が整わないということもあるしいろいろありますけれども判事補にやってもらっているために、現実問題としては非常に仮処分がおくれるんじゃないですか。ちょっとこれは無理なんじゃないですかね。
  32. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたのは、東京あたりですと仮処分部というふうな特別な部を設けておりますので、そこでは相当ベテランの裁判官がやっておるのですけれども、地方の裁判所ですと特に仮処分部ということで専任で当たるような体制になっておりませんので、一応事務分配としてはそうした未特例の判事補、単にいつも未特例とは限りませんが、判事補の方に担当してもらっているのが多いと思いますが、実際の事件処理といたしましては、やはりむずかしいような事件につきましては、ベテランの判事クラスの人が実際には担当するということも現状としてはやっておるようでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ことにむずかしい仮処分もありますね。断行の場合もあるし、いろいろ内容の複雑なものもあるのですけれども、おくれますね。非常におくれる場合が多いし、なりたての判事補の方は、理論的にはすぐれておったとしても経験がないし、はたしてこういう仮処分を下してその結果がどうなるんだろうかということなどで非常に迷われる。そのために、非常にこまかくいろいろ親戚なんかに聞くわけです。そのことのために非常におくれるということがあるんじゃないですか。これはなかなかむずかしい問題だと思いますよ。東京や大阪などでは保全部が、非常に練達な人が行っておるのだと思うのですが、そういう点などもいろいろ考えなければならないことじゃないか、こう思うのです。  そこで、判事補の人は、何だか制度が変わったのか運用が変わったのかよくわかりませんが、なりたての人はどこか研修で東京に集めているのですが、そこがよくわからないのですが、どういう制度になっているのか。それから、東京へ集めてどういうふうにしているのか、そこら辺のところはどういうことなんでしょうか。
  34. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 御指摘の点は、現在東京で行なっておりますところの判事補研さんというものであろうと思うわけでございます。実は判事補に任官したばかりのいわゆる初任判事補につきましては、従来から研修所におきまして任官いたしました最初の年に研修をやっておったのでございます。この研修は二週間ないし二十日程度研修をやって、これは司法研修所に全国から集めまして、そこで研修を行なっておったのでございます。しかしながら、考えてみますと、判事補研修といったものも単にそうした法技術的な問題といったようなことでは足りない面があるのではないか。と申しますのは、研修所で二年間修習したからといって直ちに事件処理が十分できるわけのものではございませんし、また任官早々でございますと、先ほど来のお話のとおり、未特例判事補でございますので、おのずからやる仕事も限られるということで、未特例の判事補、任官したての判事補研修として単に研修所修習生のころと同じような講義等だけでは十分ではないのではないかというふうに考えまして、昭和四十七年の四月から、その年に任官いたしました判事補を三回に分けまして東京に集めまして、東京で民事、刑事の部に配属いたしまして、これは配属するといっても身分がほかの裁判所にありますので、東京地方裁判所判事補というわけにまいりませんので、職務代行ということで東京に来まして、各部に所属をさせて、そこで実務をやらせる。そのかたわら、定期に研修所のほうに集めて一般教養的な講演を聞くとか、そこで研究会のようなことをやるとか、または見学をやるといったようなことをやっておるわけでございます。これはそれぞれの裁判部に所属しまして、正規の部の構成員としてそこで仕事をして、仕事を通じてみずから研さんをしていただく。これも単に技術的な面だけではございませんで、その部に所属する裁判長、それから右陪席等の方と接触することによって裁判官としての心がけその他もあわせて会得していただくという面があるわけでございます。  なぜ東京に集めるかという点についても、いろいろ論議のあるところでございますけれども、先ほども申しましたように、この研さんと申しますのは、従来研修所で行なっておりましたところの研修の拡張というふうに考えておりまして、どうしても研修所におけるところの研修部門というものははずすわけにまいりませんので、東京に集めるということになるわけです。  それから反面、また未特例の判事補ですと、先ほどもお話がありましたように、合議体の左陪席として訴訟事件に関与するということになりますが、地方の裁判所では合議事件というのが非常に少のうございますので、たとえば一週間おきに合議に加わるといったようなこと、または判決を書く場合でも、二カ月に一件くらいしか合議の判決起案をしないといったような面もございますので、その点東京地裁でございますと刑事、民事ともかなりの合議事件がございますので、そうした合議事件の左陪席として立ち会う機会が地方におる場合よりも多いという面がございますので、合議事件の左陪席になる機会をできるだけ多くして、それによって研さんしていただく、そういったような目的から四十七年四月から始めておるものでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 地方のほうでは、一人の判事補が刑事の陪席に出て、そしてまた今度は、民事の陪席に出ているわけでしょう、一人いなくなってしまっているから。そういうふうな形で、実際問題としては、刑事の場合はむずかしい事件もありますけれども、その判決を書くのに、そんなことを言っちゃ悪いけれども、そう骨折れるというのは、事案によりますけれども少ないわけですね。民事の場合にはなかなかそうはいかない。ことに簡裁の場合が、率直にいって、控訴されるとひっくり返るものも相当あるというようなこともあって、民事の合議の場合に判決を書くというのはかなりたいへんだ、こういうふうに思うのです。そうすると、東京にみんな集まってしまうものだから、一人の人が民事に行ったり刑事に行ったりしてやっているわけです。だから、そのために今度は日が入らなくなっちゃうんじゃないですか。地方のほうの裁判が延びてしまうんじゃないですか。こういう点があるんじゃないですか。そういうようなことがあって、どうもなかなか合議が、ことに地裁の控訴が延びてしまうという欠点が現実には起きてきているんじゃないか、こう思うのですが、そこはどういうふうに把握しているんでしょうか。簡裁によっては、民事の場合、裁判所によってちょっと違うかもわかりませんけれども、控訴がわりあいに多いんじゃないですか。ことに境界確定の問題というのは、和解がついた場合は別として、そうでない場合は境界確定か所有権確認か、これもまたごたごたしていて、入りまじっていて収拾つかないのですけれども、一番多いんじゃないですか。だから、地裁に対する控訴は減ってはいないんじゃないですか。
  36. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 御指摘のように、簡裁の事件のうち特に土地関係確定、土地の境界確定訴訟は、上訴率がかなり高くて、従来と変わらないと思います。そんなような関係で、簡裁の事件に対する控訴事件が、現在従前よりも減っているという現象はないわけでございますので、ただいま先生指摘のように、東京に四カ月研さんで左陪席の人が行くということは、それぞれの裁判所にいろいろな面で御迷惑をかけておるのでございますが、その点はできるだけ当事者には迷惑をかけないように中でやりくりしていただくということをかねがね申しておるわけでございます。  そうしますと、結局ただいま申し上げましたように、刑事の左陪席が刑事と民事をかけ持ちをするということで、各地の左陪席クラスの人が非常な忙しい思いをするというようなこともあるようでございますが、この点も判事補クラスの人並びに特に裁判長クラスの人にも、この研さん制度というものに十分御理解いただきまして、四カ月東京で勉強していただくことによって、帰ってくればそのお礼と申しては行き過ぎですが、いままでの分を取り返すほど働いていただく、それからまた長い目で見た場合には、そういう形でりっぱな裁判官を育てていくということは、将来の裁判所をしっかりしたものにしていくためのものだというふうな見方もできるのではないかということで、各地の所長それから裁判長クラスに対しましては、そうした制度の趣旨をかねがねお話しいたしまして、その点の御協力をお願いしている次第でございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 わかりますけれども、たとえば甲号支部の場合は、刑事の合議があるでしょう。甲号支部は裁判官が三人そろっているところがあるのですか、どうなんですか。全国ないんじゃないですか。ないことはないな、浜松だとかなんとかああいう大きなところはあるから、それはあるでしょうけれども、どうなんですか。
  38. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 あるいは私の出る幕ではないのかもしれませんが、手元に数字がございますので申し上げますと、甲号支部八十五ございます。三人以上裁判官がおりますのは五十一でございます。ですから相当数は裁判官がそろっておるということでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 甲号支部に三人以上そろっているのが八十幾つのうち五十幾つあるとしても、それは民刑両方やるのでしょう。民刑両方やるのだから、あれはどういうふうに分けるのですかね、よくわかりませんけれども。あまり内部のことに立ち入ってはあれですけれども、たとえば小さな甲号支部、小さな甲号支部というのも変だけれども、甲号支部、ここでは裁判官三人いないところがあるでしょう。そこで、たとえば殺人だ、放火だ、合議になりますね。強姦致傷の場合もそうですね。強盗は単独ですか、それはどうでもいいですけれども、そういうふうなときに、三人そろってないから填補が一人行くわけでしょう。填補は普通本庁から行きますね。填補の日程がなかなかつかないわけです。だから填補の人が行く日程に合わせて日がさまるわけですからね。だから刑事の合議がどうしてもおくれるということになると、大きな事件ですから身柄が勾留されっぱなしだ、ということになってくるんじゃないか、こう思うんで、ぼくは研修が反対だとは言いませんけれども研修をやるのなら夏休みやったらいいじゃないですかね。そんなこと言っては悪いけれども、七、八月はほとんど裁判官休んでいるんですもの。ほとんど二十日ずつ休むでしょう。どこから出てくるのか知らぬけれども、二十日ずつ休む慣例があるんだから、そこでやるとかなんとかして、各地にそう迷惑をかけないようにしたらいいんじゃないか、こう思いますがね。ぼくらやっていても、延びたほうがいい事件があるからあまり文句も言えないけれども。だから一人の人が民刑両方の陪席をやる、それから仮処分もやる、とても無理ですよね、実際、地方では。いろいろなことがあるでしょうけれども、それは意見としてあれするとして、そうすると、それは東京へ来て、いわゆる参与判事というものと別なんですか。どうもそこら辺がごたごたになってしまっていてわからないのですが、参与判事というのは一体どういうものなのかということが一つですね。
  40. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 その前に、これは配置の問題でございますので、ちょっとお答えを申し上げておきたいと思いますが、いま申しましたように、甲号支部は三人ぎりぎりのところも相当数逆にあるということになるわけでございますが、そういう少ないところには新任の判事補は原則として配置しないという方針をとっております。したがいまして、長期研さんで出てまいりますような判事補は、小さい三人しかいないような甲号支部にはいないということになるわけでございます。その点はひとつ御了承をいただきたいと思います。
  41. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 参与制度のお話になりましたが、参与制度と現在行なっております長期研さんとは全然違うものでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま言ったのは、三人ぐらいしかいない甲号支部から一人の新任したばかりの判事補をいわゆる研修にとるというようなことは、これは私はないと思うのですよ。それはそうじゃなくて、本庁にいるそういう人がとられちゃうものですから、甲号支部で三人いないところがある、そうすると、いつも填補で一人行くということになっているわけでしょう。その填補がなかなか行けないわけですよ。本庁から一人とられちゃうとなると、残っているところの未特例の判事補が民事やったり刑事やったりしているものですから、なかなか日が入らないということになってきて、そして甲号支部のそういうものもおくれる結果になってくるんじゃないか、こういうことを言っているわけなんです。  もう一つは、判事補が東京へ行きますね。それにからんできて——それにからんでというばかりでもないのでしょうけれども、いままでの事件を配点がえする場合があるのですね。判事補が東京へ来たからということじゃないかもしれませんけれども、いろいろな都合で配点がえがあるでしょう。配点がえがあるというとみんな職権の変更ですよね。民事の場合当事者主義ですから、普通は当事者のあれでしょうけれども、職権でどんどん変更になるということになりますね。そのためにいままたおくれるということになってくるので、これはそういうことで研修が必要なら必要でいいけれども、ぼくはできるだけ夏休みにやるようにしたほうがいいのじゃないかと思いますね。同時に、それに伴って事件の配点がえなんかが行なわれて、職権で変更なんかになっておくれることがないようにしておく必要があるのじゃないかと思うわけなんです。  そこでいまの判事補仕事研修と参与判事関係ないわけですけれども、参与判事というのは具体的にどういうふうなことから出てきたのですか。これに対して憲法上かあるいは裁判所法か何かの疑義があるということをよくいわれますが、最高裁側としてはそういう疑義は当たってないと考えられるのでしょうが、どういうところから出てきたのか、どういうふうな疑義があると主張されているのかということですね。
  43. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 この判事補の参与の制度は、四十七年の十一月二十日から施行になって、もうすでに一年以上経過しておるものでございますが、これの目的につきましては、第一次的には先ほど来お話ありましたように未特例の判事補事件を通じてそれぞれ研さんをしていく機会が非常に少ないので、したがって事件を通じて研さんをし、自己の事件処理能力の向上その他に役立てようということ、それとあわせまして、そうしますと今度参与されたほうの単独裁判官の審理の充実にも役立つ。これを具体的に申しますと、単独裁判官が一人で考えているよりもどなたかに意見を聞いたほうが正確な判断ができるとか、たとえばケアレスミスというものもそういう点ではなくなるといったような面の利点もございまして、単独裁判官の充実にも役立つ。そうした二つの目的からスタートしたものでございます。  これに対してその当時いろいろ論議がございまして、現在でも弁護士会によってはその点をいろいろ言っておるわけでございますが、そのうちの第一点といたしましては、これはやはり裁判所の構成に関するものだから、規則でこれをきめるのはおかしいので、むしろ法律事項ではないかという点が主として主張されているのでございます。この点は、参与する判事補は裁判体を構成する一員ではございませんので、意見を——法廷に立ち会ってもみずから証人等を尋問するわけではございませんし、また当該単独裁判官のために学説、判例等を調査する、また意見を求められれば意見を述べるということで、裁判体の構成員として直接外部と申しますか、当事者、関係人に対して何らかの権利を行使するという形にございませんので、このことは法律事項ではなくてむしろ判事補の職務内容をここで明らかにしたものである。もともと判事補というものは補助的な裁判官で、一人で裁判はできないわけでございます。特に法律に定められた場合のみ一人で裁判ができる、そうした性質の判事補でございますので、もともと判事補はそういった補助的なものというふうに裁判所法上なっております。したがいまして、規則によってその職務内容を明らかにしたにすぎないから、したがって法律事項ではなくて規則でやり得る、そういうふうな説明をしてまいってきておるのでございます。  もう一つ弁護士会等の御批判は、これによってその未特例の判事補、参与する判事補の独立を害するのではないかということが言われるわけでございますが、憲法規定されておりますところの裁判の独立というのはあくまでも裁判権の行使をする場合の独立でございますので、参与判事補の場合にはこれは裁判体の構成員として裁判権を行使するという立場にございませんので、裁判の独立とは関係のないことだというふうに説明しております。  それからまた、そうした参与判事補の意見を聞いて単独裁判官が裁判をするということは、単独裁判官の裁判の独立を侵すのではないかという、こうした御批判もあるわけでございますが、しかしながら単独裁判官が最終的には自己の責任において判断を下すわけでございますから、その過程においてそうした参与判事補の意見を聞いたからといって、それによって単独裁判官の独立が侵されるということは決してないというふうに説明してまいってきておるのでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの説明を聞くと、率直に言うとたいへんいいことのように考えられるのですがね。俗なことばでいえば、ひまだから利用するのだといっても、ことばは悪いけれども、いずれにしても、そんないいことならどうしてもっと早くやらなかったのですか。どうなんですか、それは。
  45. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 その点もやや時宜を失したというきらいはなきにしもあらずでございますが、これは先ほど来お話がありました判事補制度というものをどういうふうにとらえるかという問題ともからむわけでございます。法曹一元というたてまえで憲法裁判所ができているということで、これも立法経過的に見ますと、判事補という制度は、当初は予備判事というような構想があったようでございまして、予備判事で十年間は何もしないのだ、させないのだというふうな構想でありまして、それが判事補という制度に変わってきたようでございます。いずれにいたしましても、十年間は仕事をしない、単に判事の給源であるというふうな位置づけをしてまいったものでありますので、そうした考えから、従来ともすれば判事補に対する教育という面についていささか十分でなかった面があるのではないかという反省でございます。  それで、この教育の点につきましても、従来研修所におきまして、初任の場合、それから三年たって簡易裁判所判事の資格を取得する直前と、それから特例がつきます五年目と、それから一人前の判事になります直前十年のとき、それぞれ研修所研修を行なって、判事補研修につきましては従前から十分努力してまいったのでございますが、しかし、何と申しましても判事補が育っていくということは事件を通じて育っていくのではないか。このことは戦前地方裁判所で申しますと全部合議事件でございましたので、戦前でございますと、判事に任官すれば直ちに、左陪席としてそこで勉強する機会に恵まれる。しばらくたつと高裁の陪席となり、その次には地裁の右陪席になる、こういうことで常に合議体を通じて勉強する機会があったのでございますが、未特例の間は職務権限も制約されておりまして、そういった面の研さんが足りないということでございますので、そうした事件を通じて研さんの機会を与えるということに思い立ったといっては語弊がございますが、そういう必要を感じましてこういうふうな規則をつくった次第でございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現実にはどういうことをやっているのですか。場所なんかどこへすわるのですか。ぼくはまだ一ぺんも見たことないのです。これはやってないところもあるのですか。東京、大阪、名古屋、どこでやっているのですか、それは。
  47. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 最初この規則ができましたときに、何ぶんにも新しいやり方だということで、当分の間高裁所在地の八地方裁判所で行なうということにしておりまして、一年二カ月経過いたしましたので、本年の二月一日からは全国実施ということにいたしておりますが、従来の八地裁状況を見ますと、実際にやっているやり方といたしましては、法廷に立ち会い、または判例、学説を調査し、それから釈明事項を検討するとか、事件の進行順序等について意見を述べるといったようなこと、または法律上、事実上の問題点について、判事から質問があればそれに答える。それから、意見を述べる形式として判決書を書くといったようなこともやっているようでございます。これも判決書を書くということにつきましても、これは判決書きの下請ではないかという御批判もありますけれども判決書の下書きをするということは下請ではございませんで、これは意見を発表する一つの手段ということでして、一般的に行なわれているものでは決してございません。主としてやっておりますのは、そうした裁判官の求めに応じて釈明事項とか法律上の問題点、事実認定の問題点等について意見を述べる、そういう点が主でございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると参与判事補というのは全部判事補で未特例の人が当たっているわけですか。これが一つと、従来は、よくわかりませんが、任地を判事補段階で三回ぐらい変えるんですか、何かそういう行き方をとっておったようですね。分けて本庁地区、東京地区とか、あるいは甲地区とか乙地区とかいうふうに分けて、そうして全体に一応行き渡るように何かやっていたんじゃないですか、いぼまで。それを変えたわけですか。それともまた別なのかな。参与判事補になる人というのはどういう人、全部の人がなるわけですか。
  49. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 一応参与させるかどうかというのは当該単独裁判官がきめることでございますので、当該裁判官がその参与決定をすれば当該裁判官に参与するということでございますので、必ず全部の未特例判事補が参与するということには規則上なっておりません。そういうふうな次第でございますので、いま御指摘のように、従来三年ごとぐらいに判事補の方が転任するということとこの参与の規則とは全然関係のないことでございます。参与する判事補は未特例の判事補でございますので、五年末満の判事補がこれの対象になっている、こういうことでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 修習生になる前提は司法試験ですね。これは司法試験はいま大臣、法務省の一応管轄ということになっているわけでしょう。それから修習生のほうは最高裁の管轄ということに分かれていますね。そこでよく司法試験の希望者などから話がありますことは、司法試験合格者、まあ試験をいまマル・バツやって、それから論文やって、あと面接ですか、三回やるんですかね。大体五百何人でしょう。そうなっていますね。これはどういうふうに人数が、大体毎年同じようなんだけれども、きまっているんですか。ちょっと一点の点数を変えればもっと多く合格者が出てくるということが考えられると思うのですが、そこら辺はどういうことなんですかね。もう少し合格者をふやすとか。一点違うとずいぶん人数がふえるそうですね、というような話を聞くんですけれども、そこはどういうふうになっているんでしょうか。
  51. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 司法試験管理委員会ができておりまして、そこで試験の方針をきめて試験をなさるわけで、たぶん、何点までを合格にしようということをきめてかかるわけだと思うのですが、確かにきっと一点違ったらたいへんな人数が違うだろうと私どもも思います。しかし、司法官、弁護士というのは昔から厳格な試験制度できておるものですから、試験委員の方々や管理委員会の人たちもその点はきっと厳正にやっておることと思います。なかなか点数を下げるということは、そう人間の素養に差しつかえないように思いますけれども、また専門的に考えれば相当に開きが出てくるので、厳格な制度でやっておるんだ、かように思っております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もちろん厳格な制度でやっているんで、これは日本で一番厳格な試験だと思うのですね。これは変な者が入っちゃたいへんな騒ぎなんで、そんなことはありませんけれども、ぼくの言うのは、人数が大体いつも同じでしょう。これは具体的にいえば大体五百人前後ですか、前よりはふえてきましたけれども。大蔵省との折衝で一体何人ぐらいを大きな幅でとるということがきまって、そこから出てくるのですか。あるいはそれとは全く関係なしに何人ぐらいというのがきまるのですか、そこはどういうふうになっているのですか。大蔵省はあまり喜ばないわけです。それだけ出てきたって、ほとんど六割ぐらいが弁護士になっちゃうわけでしょう。だから大蔵省としては、せっかく国で予算かけてやってもみんな弁護士になってしまってはということで、あまり合格者の人数をふやすということを喜ばないわけですね。人数のきまり方は大蔵省との折衝の関係でどういうふうになっているでしょうか。
  53. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、司法試験の合格が大体きまりますのが毎年十月でございます。そのときで人数がわかるわけでございますので、予算の復活折衝は御承知のように十二月末あるいは一月でございますが、私どものほうとしては、その人数を見合って、合格者は希望してきても全部とれるようにということで予算折衝をいたしております。要は、やはり司法試験委員会のほうでどの程度のレベルでもっておとりになっておるかということによってのみきまるものでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 世間的にいえば、それは大体六十点取れば合格だとかなんとかよくいわれておったわけですね。その内容のことまで聞くわけにいかないわけですけれども、何か毎年同じような人数です。毎年同じような人数というところは、人数を先に考えて、そこへあとから当てはめるのじゃないかというような印象を与えちゃっておるわけですけれども試験のやり方なんかでもぼくは問題があると思うのです。あんなマル・バツで、ぼくはあの問題を見たけれどもとてもわからない。どれが正解なのかというのは、考え方によってはかえってわからない場合もあるし、案外頭のいい人が落っこちちゃって、あまり頭のよくないのが受かるというのがマル・バツではある、統計とったかどうかわかりませんけれども、そういう説もあるのですよ。昔はああいうのはなかったのでしょうけれども、いまは人数が多くなったからしようがないのかもわかりませんけれども、それはそれとして、外国人の場合は司法試験は受けられるのですか。そこはどういうふうになっているのですか。
  55. 勝見嘉美

    ○勝見政府委員 司法試験資格試験でございますので、外国人でも受験可能というふうに考えます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると資格試験だ、なるほどそうだ。外国人でも受けられる。受けられるけれども、合格して修習生になるときには、外国人というのはとらないということになるのですか。
  57. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 修習生採用の要件として、日本国籍を有しない者は欠格事由に該当するという扱いにいたしております。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 判事補検察官ならば日本国籍を有しないのはまずいと思いますけれども公務員でない修習生ならば、なかなかむずかしいところかもわかりませんけれども、必ずしも日本国籍を有しなくてもいいのではないでしょうか。司法試験を受けてもいい。理屈は資格試験だ、それはそのとおり。司法修習生になると採用試験だ。だから、これは日本国籍がなくちゃいけないということになるのは、理屈としてはあるいはあるかもわかりませんけれども司法試験に受かった外国人というのはどうなんですか。ただ受かったというだけのことしかないということですか。外国の弁護士というのはどういうふうなきめ方で、日本で弁護士活動ができるわけですか。何かいまは準会員という制度になっているのですか。これはどういうふうになっていましたか。それなら初めから修習生採用したらいいじゃないですか。そこはどういうふうになっていますか。
  59. 勝見嘉美

    ○勝見政府委員 現在の弁護士法におきましては、外国人が日本国の弁護士になる規定はございません。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはわかっているのですけれども、外国人の弁護士は日本で弁護士活動ができるのでしょう。弁護士の場合は世界どこでもできるのかな。よくわからないんだけれども、日本の場合は準会員になっているんですよね。いまは正式会員になっているのですか。前はたしか日本弁護士連合会の準会員という制度だったと思いますが、いまは正会員ということになっているのですか。どういうふうになっているのですか。
  61. 勝見嘉美

    ○勝見政府委員 現在削除されております弁護士法七条の関係最高裁判所の許可を得ておりました外国人の弁護士の方は、現在経過規定で準会員とされております。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、司法修習生公務員ではないわけですから、公務員でない司法修習生、そして将来弁護士になりたい、日本で弁護士活動をやりたい、そういう人に対して試験だけは受けさせる。受かる。受かったはいいけれども修習生には採用されない。そうすると弁護士の資格はとれないということですか。自分の国で弁護士の資格をとってきてやれば、日本で弁護士活動ができるということだから、そこで満足している、こういう行き方になっているのですか。これはぼくはよくわかりませんけれども、判検事やなんかならちょっとおかしいと思うのですけれども修習生は日本人じゃなくたっていいんじゃないかと思うのですが、その理由はどうなんですか。
  63. 勝見嘉美

    ○勝見政府委員 ただいまお尋ねの前段の点についてお答えいたしますと、外国の弁護士の資格のある方が現在日本で弁護士活動を行なうことはできないことになっております。
  64. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 修習生採用にあたって外国人でもいいではないかというお尋ねでございますが、確かに日本人でなければいけないという趣旨の明文の規定がございませんので、現行法の解釈として積極、消極の両説が考えられるところでございます。最高裁判所ではこの点慎重に検討いたしまして、昭和三十二年の採用時以降、国籍のないことが欠格条件であるという募集要項による明文の要件を設けたわけでございまして、自来そのような扱いをいたしておるわけでございますが、その理由として申し上げ得ることは、修習制度が将来のわが国の法曹を国家の費用によって養成する制度であるということ、また修習生は、法律上は国家公務員ではございませんけれども最高裁判所が任免権を持っておりまして、兼職を禁止されております。修習によって知り得た秘密を守る義務が課せられております。また御承知のように公務員に準じた給与を受けるということで、実質的には公務員とかわらない面を非常に多く持っておるわけでございます。  そういうことから考えますと、明文の規定は欠いておりますけれども、現在の修習制度というものを考えます以上は、やはり日本国民を対象として設けられたものであるといわざるを得ないということでございまして、それが今日日本国籍を欠くということを欠格条項としておる理由でございます。もちろん、こういった考え方につきましては、長い時間がたっておりますので、国籍ということを問題にするとしても、もっと広い視野からの相互主義というものを考えるべきではないかといったような考えもあり得るわけでございますが、当時これをきめますにあたりましては、日本弁護士連合会の御意見等も十分に伺いまして、このような扱いをきめたということでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは外国人という意味の中に、戦争前には日本人であった者、それでその後に自分の意思によらないで日本国籍を離れた者、そして日本に生まれ、日本に育って永住権を持っておる、こういうような人たちの問題、そういう人たちに対して、司法試験を受ける、そして受かれば修習生になる、一応判検事になるということは別として、その程度のことは当然認められてもいいのではないかと考えるわけですが、これはいまここの問題というよりも将来の研究の一つの課題としてとっておきたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、時間も少しですからお聞きするのは、裁判所へ行ってみると、いま言った、たとえば東京へみんな集めて研修する。まあ研修は別として、参与判事でもほとんど東京でおもに行なわれておるということだと思うのですが、事件が東京よりもむしろ浦和だとか千葉だとか横浜だとか、そういうところに非常にふえておるわけですね。そういうところの裁判官の手持ちというものが非常に多いわけだと思うのですよ。  たとえば、いま浦和で、私、ある在宅の刑事事件で依頼を受けて、そうしたら——これはいろいろな関係で十一月の末ごろ起訴された事件ですね。そうすると、一カ月以内に公判期日を指定しなければならないと普通いっているわけでしょう。わあわあやかましく言いますよ、普通のところは。それは国選弁護がつくか、つかないかということで本人との連絡がとれなかったためにおくれた事件ですから、これは別として、一月の末ごろに話をしたら、期日は——在宅ですけれども、刑事事件ですよ。いつ入るか、ぼくはこ月か三月に入るかと思っていたわけですが、そうしたら入らないですね。早くて四月だというのですよ、浦和は。第一回の指定までにずいぶん日にちがあるのですねと言ったら、とても忙しくてだめだ、入らないというわけですね。横浜もそうだそうですね。それから千葉もそうでしょう。  それから見ると、東京は非常に事件、ことに刑事事件が減っておって、そして東京地裁の刑事部というのはわりあいに事件が少ないのじゃないですか。ひまだといっては悪いけれども事件が少ない。民事はある程度あるかもわかりませんけれども。これは一時的な現象なのか。それは、学生事件が一応終わって、高裁のほうへいっているから、高裁が忙しくなった。地裁が、ことに刑事がいまのところはわりあいにひまだ、事件数が少ないという一時的な現象だ、こういうふうに言われるかもわかりませんけれども、いずれにしても、裁判官なりの集まり方が東京を中心に集まり過ぎていて、ほんとうに事件の多い、一人の裁判官が何件もかかえておるようなところの裁判所に十分に配置をされないというふうなきらいがあるのじゃないですか。だから、東京地裁の民刑の裁判官の現在持っておる件数、手持ちと、横浜だとか千葉だとか浦和とか、こういうところを比べて見てもらいたい、こう思うのですね。ただ、民事の場合は、一割か二割ぐらいいわゆる寝ている事件がありますから、その件数だけではなかなかいかないかもわかりませんけれども、東京のほうがむしろいまでは閑散で、周辺のところが非常にふえている。これに対してみんな東京へ集まりたがるというようなことで、事件の配点、同時にそれに伴う、閑散に伴うというか、裁判官の配置といいますか、そういうふうなものがどうも十分な配慮がされていないのではないか、こういうふうに考えるわけなんです。だから、横浜、浦和、千葉の一人当たり件数と、東京の地裁の件数とを比べてみて一応説明していただきたい、こう思うのですが、きょうそれがなければ、きょうでなくてもいいですけれども
  66. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 ただいま詳しい数字はございませんが、大ざっぱに申し上げまして、先生指摘のとおり、横浜、浦和、千葉といったところが最近急激に事件が増加しております。まあ新受事件のほうはそう目立った増加はございませんが、やはり千葉等で、御承知のように成田事件等複雑な事件がございますので、自然そのために未済事件が多くなるといったようなぐあいで、結局手持ち事件が多くなるといったような現象が生じております。こうした現象が、特に千葉は、成田のころそうした状況があったのでございますが、横浜等は、昨年四十八年に入りまして、そうしたような状況が生じておりますので、千葉につきましては、一昨年ですか、特別に裁判官を東京から向こうのほうに回したというようなこともございますので、浦和、横浜等につきましても、その点裁判官の負担量等十分検討した上で、何らかの措置をしなければいけない、こういうふうには考えておる次第でございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは資料だけ一応要求しておいて、この次に、それに関連し、それからあとは書記官の問題、今度は定員のふやし方の問題にからんで、書記官だとか事務官だとか速記官だとかいろいろありますね。廷吏の人の問題、いろいろな問題がありますから質問したいと思うのですが、その資料としてお願いをしたいのは、裁判所の場合、最高裁から各地裁なり何なりにいろいろな報告を求めていますね。いやたくさん報告を求めているようですね。報告を書くために人がいるのかと思うくらい報告を求めているのだな。これは国会で質問されたときの資料に必要なのかもわかりませんけれども、とにかく報告が多いですね。一体どういう報告を求めているのか、そんなに報告が必要なんですかね、ということが一つですね。それは率直に言うと、事件を受けてから何カ月以内に裁判が済んだか、何カ月未済かという報告を要求しているわけでしょう。そればかりじゃありませんけれども、どういうふうな報告を要求しているのかということですね。これをひとつ明らかにしていただきたい。  それから法務大臣に——法務省もそうなんですが、法務省も多いですよ。これは実に多いですね。法務省も、検察庁だけでなくて、法務局だとか、刑務所、拘置所、鑑別所とか観察所とか全部のあれ、どういう報告をとっているのか、ちょっと一覧表をつくってほしいのですよ。そんなのはほとんど要らないものがずいぶんあるのじゃないですか。要らないものがずいぶんあるし、それから、管区などに矯正関係では報告を出すものもあるわけでしょう。そんなのは要らないのが一ぱいあるわけですよ。いまになって管区というものが必要かどうか問題ですけれども、人間のために管区というものはできたような感じもするくらいなんで、問題があるのですが、いずれにしてもそういう報告がべらぼうに多いですわ。どういう報告をとっているのか、それでほんとうにはたしてこれだけの報告が必要なのか、よく検討していただきたい、こう思うのです。  きょうはこれで終わります。
  68. 小平久雄

    小平委員長 次回は、明二十日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    牛後三時五十八分散会