○田宮
最高裁判所長官代理者 この
判事補の参与の制度は、四十七年の十一月二十日から施行になって、もうすでに一年以上経過しておるものでございますが、これの
目的につきましては、第一次的には先ほど来お話ありましたように未特例の
判事補が
事件を通じてそれぞれ研さんをしていく
機会が非常に少ないので、したがって
事件を通じて研さんをし、自己の
事件処理能力の向上その他に役立てようということ、それとあわせまして、そうしますと今度参与されたほうの単独
裁判官の審理の充実にも役立つ。これを具体的に申しますと、単独
裁判官が一人で
考えているよりもどなたかに意見を聞いたほうが正確な
判断ができるとか、たとえばケアレスミスというものもそういう点ではなくなるといったような面の利点もございまして、単独
裁判官の充実にも役立つ。そうした二つの
目的からスタートしたものでございます。
これに対してその当時いろいろ論議がございまして、現在でも
弁護士会によってはその点をいろいろ言っておるわけでございますが、そのうちの第一点といたしましては、これはやはり
裁判所の構成に関するものだから、規則でこれをきめるのはおかしいので、むしろ
法律事項ではないかという点が主として主張されているのでございます。この点は、参与する
判事補は裁判体を構成する一員ではございませんので、意見を
——法廷に立ち会ってもみずから証人等を尋問するわけではございませんし、また当該単独
裁判官のために学説、判例等を調査する、また意見を求められれば意見を述べるということで、裁判体の構成員として直接外部と申しますか、当事者、
関係人に対して何らかの権利を行使するという形にございませんので、このことは
法律事項ではなくてむしろ
判事補の職務内容をここで明らかにしたものである。もともと
判事補というものは補助的な
裁判官で、一人で裁判はできないわけでございます。特に
法律に定められた場合のみ一人で裁判ができる、そうした性質の
判事補でございますので、もともと
判事補はそういった補助的なものというふうに
裁判所法上なっております。したがいまして、規則によってその職務内容を明らかにしたにすぎないから、したがって
法律事項ではなくて規則でやり得る、そういうふうな説明をしてまいってきておるのでございます。
もう
一つの
弁護士会等の御批判は、これによってその未特例の
判事補、参与する
判事補の独立を害するのではないかということが言われるわけでございますが、
憲法で
規定されておりますところの裁判の独立というのはあくまでも裁判権の行使をする場合の独立でございますので、参与
判事補の場合にはこれは裁判体の構成員として裁判権を行使するという立場にございませんので、裁判の独立とは
関係のないことだというふうに説明しております。
それからまた、そうした参与
判事補の意見を聞いて単独
裁判官が裁判をするということは、単独
裁判官の裁判の独立を侵すのではないかという、こうした御批判もあるわけでございますが、しかしながら単独
裁判官が最終的には自己の
責任において
判断を下すわけでございますから、その過程においてそうした参与
判事補の意見を聞いたからといって、それによって単独
裁判官の独立が侵されるということは決してないというふうに説明してまいってきておるのでございます。