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1974-02-12 第72回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十二日(火曜日)     午前十一時三十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 谷川 和穗君    理事 羽田野忠文君 理事 青柳 盛雄君       江崎 真澄君    千葉 三郎君       早川  崇君    保岡 興治君     早稻田柳右エ門君    日野 吉夫君       正森 成二君    沖本 泰幸君       高橋  繁君    山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         法務政務次官  高橋文五郎君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部長 勝見 嘉美君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局経理局長  大内 恒夫君         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十二日  辞任         補欠選任   山田 太郎君     高橋  繁君 同日  辞任         補欠選任   高橋  繁君     山田 太郎君     ――――――――――――― 昭和四十九年一月三十一日  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出第一八号)  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九号) 昭和四十八年十二月二十日  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願赤松勇紹介)(第二一〇号)  同(八百板正紹介)(第二一一号)  同(稲葉誠一紹介)(第二八二号)  同(佐野憲治紹介)(第二八三号)  同(楯兼次郎君紹介)(第二八四号)  同(東中光雄紹介)(第二八五号)  同(日野吉夫紹介)(第二八六号)  同(八百板正紹介)(第二八七号)  同外一件(横山利秋紹介)(第二八八号)  金大中事件早期解決に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第二一二号)  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (沖本泰幸紹介)(第二八〇号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二八一号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第三三八号)  保護司活動強化に関する請願(船田中君紹  介)(第三三九号) 昭和四十九年一月九日  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第五一二号) 同月十七日  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第六三九号)  同(林孝矩紹介)(第六八五号)  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願沖本泰幸紹介)(第六八六号)  国立瀬戸少年院移転促進に関する請願早稻  田柳右エ門紹介)(第八二六号) 同月二十三日  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第九〇六号)  同(山田太郎紹介)(第一〇四四号)  法務局保護局及び入国管理局職員増員等に  関する請願外一件(山田太郎紹介)(第一〇  四九号) 同月三十日  身体障害者人権を侵害する用語等使用中止  に関する請願辻原弘市君紹介)(第一二一一  号) 二月二日  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第一四〇〇号)  同(野田毅紹介)(第一五五三号)  出入国法制定反対に関する請願(小濱新次君  紹介)(第一五五四号) 同月四日  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第一六五〇号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一八一三号)  保護司活動強化に関する請願登坂重次郎君  紹介)(第一六五一号)  身体障害者人権を侵害する用語等使用中止  に関する請願早川崇紹介)(第一七三三  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 昭和四十八年十二月十九日  人格なき社団等財産管理に関する陳情書  (第二四号)  金大中事件早期解決に関する陳情書外四件  (第六四  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法  律案内閣提出第一八号)  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九号)  法務行政に関する件  検察行政に関する件  国内治安に関する件  人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、法務行政等の当面する諸問題について、中村法務大臣から説明聴取いたします。中村法務大臣
  3. 中村梅吉

    中村国務大臣 委員各位におかれましては、平素から法務行政について格別の御理解と御尽力をくだされ、厚く御礼を申し上げます。  それでは、第七十二回国会における当委員会の御審議に先立ちまして、法務行政に関する所信一端を申し述べたいと存じます。  現下わが国社会情勢は、いわゆる石油危機をはじめ、諸物価の高騰、公害その他種々の深刻かつ重要な問題をかかえ、きわめてきびしい情勢下にあります。  このような情勢もとにおいて、法秩序維持国民権利保全という法務行政に課せられた使命は、まことに重大というべく、私は、昨年十一月法務大臣に就任以来、常にこのことを念頭におき、所管する行政の各般にわたり、その適正な運用をはかってまいりましたが、今後とも、国民期待に沿うよう法務行政の適正、迅速な処理に一そうの努力を傾注したいと存じております。  以下、私の考えております重点施策につき申し上げます。  まず第一は、治安維持についてであります。  申すまでもなく、民主主義維持し、平穏な国民生活を確保するためには、その根底をなす法秩序がゆるぎなく確立維持されていることが、何よりも肝要であります。  ところで、当面の治安情勢を見ますに、わが国における刑法犯発生状況、ことに大都市における犯罪情勢は、諸外国に比して、すぐれて安定しているといわれているのでありますが、社会情勢の急激な進展等に伴い、各種経済関係事犯企業活動に伴う公害事犯等、新たな形態の事犯発生を見ておりますし、一般犯罪につきましても、犯罪内容が従来よりも一段と複雑多様化の様相を呈しており、今後の犯罪情勢は、必ずしも楽観を許さないものがあると考えられるのであります。また、いわゆる過激派集団は、派閥間で殺伐な抗争を繰り返し、勢力の伸長を競っており、機を見てはハイジャックやテロ行為、さらには集団的暴力行動に出るおそれも少なくなく、その動向には、引き続き警戒を要するものがあると考えられるのであります。  私は、このような諸情勢に対処するため、検察その他関係機関整備充実をはかる等して、執務の効率的な運営につとめてまいる所存であります。また、不法事犯に対しましては、厳正な態度のもと、適正、迅速に刑罰法令を適用することにつとめ、これら犯罪の根絶をはかり、もって、治安維持、確保に遺憾なきを期する所存であります。  第二は、民事行政事務充実強化についてであります。  登記その他の民事行政事務は、最近における社会経済の著しい進展に伴い、その事務量は年々増加一途をたどり、また、その内容複雑多様化しているのが実情でありますが、これら民事行政事務は、国民生活に直接関係を持ち、その事務処理のあり方は、国民権利利益保全等に影響するところがはなはだ大でありますので、今後とも引き続き、職員増員をはじめとして、関係法規整備組織、機構の合理化事務機械化等をはかり、その需要に即応した事務処理体制充実につとめたいと考えております。  特に、登記所適正配置につきましては、一昨年の民事行政審議会の答申の趣旨を踏まえ、目下、小規模庁を中心とした整理統合実施中でありますが、今後とも整理統合対象庁につきましては、地元住民理解協力を求めながら、円滑な実施を進め、登記行政の一そうのサービス向上につとめる所存であります。  さらに、人権擁護につきましては、昨年十の地方法務局を選び、それぞれの管内に、町程度生活圏を単位とする人権モデル地区を設定し、特に力を注いで人権思想啓発活動を展開してきたのでありますが、さらに、今後おおよそ四年間に、すべての法務局地方法務局管内に、この人権モデル地区を設け、人権思想の一そうの啓発活動を行なう所存であります。  第三は、少年非行者及び犯罪者に対する矯正及び更生保護充実についてであります。  少年非行者犯罪者改善更生につきましては、少年院刑務所等矯正施設における施設内処遇と、保護観察等実社会における社会内処遇充実強化するとともに、これら相互間の連携を密にすることが肝要であると考えます。  そのためには、個々の犯罪者等の特性に最も適合した処遇方法を講ずるための分類処遇及び矯正医療充実と、社会復帰に役立つ職業訓練刑務作業の再開発、教科教育拡充等をはかる必要があり、また、保護司など民間篤志家による更生保護活動充実を促進し、これら民間協力者保護観察官連携を一そう密にして、犯罪者等社会復帰を容易ならしめることが必要であると考えております。  第四は、出入国管理行政充実についてであります。  近時、わが国出入国状況につきましては、国際交流活発化輸送手段大量化に伴い、出入国者はますます増加一途をたどり、その結果、出入国及び在留管理に関する事務は、いよいよ複雑、困難の度を加えてきております。そこで、このような情勢に対応した出入国管理制度確立するため、過去数回にわたり、出入国法案を提出したのでありますが、遺憾ながら御賛同を得られず、いずれも未成立に終わった次第であります。  かかる事情を踏まえて、出入国法案内容につきまして、各方面の意見を承り、御賛同を得て、すみやかに成立を見るよう法案の検討を重ねるとともに、現行制度もとで、できる限り業務合理化をはかり、機動力充実させるなどして、出入国手続の適正、迅速な処理につとめ、出入国管理行政に遺憾なきを期してまいりたいと存じます。  また、いわゆる未承認国との人の交流につきましては、国際情勢の推移を踏まえ、国益を十分考慮しながら、適切、妥当な措置を講じてまいる考えであります。  最後に法務省施設整備改善についてであります。  法務省施設につきましては、その組織複雑性及び機能の特殊性から、他省庁に比してその庁数はきわめて多く、現在、二千九百余を数える実情にあります。しかも、このうちの約五〇%は、依然として未整備庁であります。このような実情から、法務省といたしましては、毎年度施設整備予算を計上して、その整備改善をはかっておるところでありますが、昭和四十九年度におきましても老朽、狭隘度が特にはなはだしい施設や、民間地方公共団体等から返還あるいは移転要請を受けている施設重点的に取り上げ、その整備改善実施してまいる所存であります。  なお、私は、現下社会情勢にかんがみ、経済秩序を乱す企業の悪質な違法行為に対しましては、現行各種法規を活用して、その効果的な取り締まりをはかり、秩序確立を期したいと考えているのでありますが、これに関連いたしまして、さき国会において継続審査に付され、本国会において引き続き御審議を願うことに相なっております商法の一部を改正する法律案外二法案審議につきまして、格別の御理解をいただきたいと存じます。同法案では、監査制度を改善し、会社の不正な経理、違法な業務行為に対する監視を強化し、株式会社の運営適正化をはかることを重点の一つといたしており、現下社会経済情勢にかんがみますとき、この改正法案は時宜を得たものであると考えております。何とぞ、立法の趣旨について十分な御理解を賜わり、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上、法務行政の当面の諸施策について所信一端を申し述べましたが、委員各位格別の御協力により、その実をあげることができますよう、一そうの御支援、御鞭撻を切にお願い申し上げる次第であります。     —————————————
  4. 小平久雄

    小平委員長 この際、高橋法務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。高橋法務政務次官
  5. 高橋文五郎

    高橋(文)政府委員 一言ごあいさつを申し上げます。  先般法務政務次官を拝命いたしました高橋文五郎でございます。一身上の都合でごあいさつがおくれ、恐縮に存じております。  私は法務行政につきましては全く未経験でございますが、中村法務大臣もと、全力を尽くして国民期待する法務行政の推進に努力してまいりたいと存じます。どうかよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。
  6. 小平久雄

    小平委員長 なお、昭和四十九年度法務省関係予算及び昭和四十九年度裁判所関係予算説明聴取につきましては、関係資料をお手元に配付してありますので、これをもって御了承を願います。      ————◇—————
  7. 小平久雄

    小平委員長 次に、内閣提出民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案並びに裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、趣旨説明聴取いたします。中村法務大臣
  8. 中村梅吉

    中村国務大臣 民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、最近において民事及び家事調停事件複雑多様化している実情にかんがみ、調停制度充実強化をはかるため、調停委員制度及び調停手続について緊急に必要とする改正を行なおうとするものであり、その内容は、次のとおりであります。  第一は、民事調停委員及び家事調停委員制度を新設することであります。  従来、調停委員は、地方裁判所または家庭裁判所が毎年あらかじめ選任する調停委員となるべき者、すなわちいわゆる調停委員候補者等の中から各事件ごとに指定されたものであり、この場合、その事件処理する限りで非常勤裁判所職員となると解されておりましたが、手当の支給は受けておりませんでした。今回、このいわゆる調停委員候補者等制度を改め、新たに、当初から非常勤裁判所職員である民事調停委員及び家事調停委員制度を設け、その職務内容を定めるとともに、その地位及び職務内容にふさわしい手当を支給することができることとしております。  第二は、民事調停手続について、その規定整備することであります。  まず、当事者間の合意を前堤とする紛争解決手続整備するため、従来、商事調停事件及び鉱害調停事件についての特則であった当事者間の合意により調停委員会の定める調停条項をもって調停成立したものとみなす制度に関する規定民事調停事件全般にも適用される通則規定に改めることとしております。  さらに、被害者救済等をはかるため、交通調停事件及び公害等調停事件管轄特則を設け、従来の管轄裁判所のほか、交通調停事件については損害賠償を請求する者の住所または居所所在地管轄する簡易裁判所に、また、公害等調停事件については損害発生地または損害発生するおそれのある地を管轄する簡易裁判所に、それぞれ土地管轄を認めることとしております。  第三は、家事調停手続について、その規定整備することであります。  当事者が各地に散在することが通常予想される遺産分割調停事件について、調停成立を容易にするため、遠隔地に居住する等の理由により出頭することが困難であると認められる当事者が、あらかじめ調停委員会または家庭裁判所から堤示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が期日に出頭して当該調停条項案を受諾したときは、当事者間に合意成立したものとみなすこととしております。  以上が民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願いいたします。  次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、高等裁判所における刑事長期未済事件の適正迅速な処理をはかるため、判事補員数を二人増加し、また、簡易裁判所における道路交通法違反事件の適正迅速な処理をはかるため、簡易裁判所判事員数を三人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、下級裁判所における事件の適正迅速な処理をはかる等のため、裁判所書記官について六人、家庭裁判所調査官について五人を増員するほか、裁判所事務官については、事務簡素化能率化に伴う六十八人の減員を差し引いてなお十四人を増員し、以上これらの職員を通じてその員数を合計二十五人増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  9. 小平久雄

    小平委員長 引き続き、民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案について、補足説明聴取いたします。勝見司法法制調査部長
  10. 勝見嘉美

    勝見説明員 民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案について、補足して御説明いたします。  わが国調停制度は、大正十一年の借地借家調停法制定以来、逐次整備され、今日まで五十年余の間広く国民に利用されてきたところでありますが、最近における社会情勢の著しい変動、ことに、科学技術の進歩、経済規模の拡大、社会生活の変化、国民権利意識向上等に伴い、調停の場にあらわれる民事及び家事紛争は、ますます複雑化するとともに、交通事故公害等にかかる新しい類型紛争が加わって一そう多様化しており、その処理はいよいよ困難なものとなっております。そこで、このような実情にかんがみ、民事及び家事調停制度国民期待に沿い得るよう充実強化しようとするのが、今回の法改正の目的であります。  ところで、この法律案の本則は、二カ条からなっておりまして、第一条は民事調停法の一部改正、第二条は家事審判法の一部改正であり、いずれも調停委員制度及び調停手続についての改正内容とするものであります。  第一条の民事調停法の一部改正から御説明いたします。  まず、調停委員制度に関する改正であります。  第一点は、現行法第六条についてでありまして、同条では、調停委員会は、調停主任一人及び調停委員二人以上で組織することとされておりますが、今回、新たに民事調停委員制度を設けるのに伴い、調停委員会は、調停主任一人及び民事調停委員二人以上で組織することとしております。  第二点は、現行法の第七条第二項及び第三項についてでありまして、同条第二項に規定されているいわゆる調停委員候補者及び当事者合意に基づく調停委員並びに同条第三項に規定されているいわゆる臨時調停委員の各制度を廃止するとともに、調停委員会組織する民事調停委員は、裁判所すなわち受調停裁判所が各事件について指定することとしております。  第三点は、現行法第八条に規定されているいわゆる調停補助者制度を廃止して、新たに同条として民事調停委員職務内容及び身分に関する規定を設けることであります。すなわち、同条第一項において、民事調停委員は、調停委員会組織して調停に関与するほか、裁判所すなわち受調停裁判所の命を受けて、調停委員会構成員として関与する以外の調停事件について専門的な知識経験に基づく意見を述べ、また、裁判所すなわち受託裁判所の命を受けて、嘱託にかかる紛争解決に関する事件関係人意見聴取を行ない、その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行なうものと規定し、同条第二項において、民事調停委員非常勤裁判所職員として身分を明確にするとともに、裁判所法第六十四条が裁判官以外の裁判所職員任免は、最高裁判所の定めるところによりこれを行なう旨定めている規定趣旨等にかんがみ、民事調停委員任命資格任免権者など任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定めることとしております。  第四点は、現行法第九条を改め、民事調停委員には、別に法律で定めるところにより、すなわち、裁判所職員臨時措置法によって準用される非常勤職員給与に関する規定である一般職職員給与に関する法律第二十二条第一項の規定により手当を支給することとし、あわせて最高裁判所の定めるところにより旅費、日当及び宿泊料を支給することとしております。  次に、民事調停手続に関する改正であります。  第一点は、現行法の第二章特則第三節の商事調停において規定され、回章第四節の鉱害調停において準用されている調停委員会の定める調停条項に関する第三十一条の規定民事調停事件全般についての通則規定に改めることであります。これは、さきに御説明しましたとおり、交通事故公害等にかかる新しい類型調停事件増加していること等にかんがみ、当事者間の合意を前提とする紛争解決手続整備する必要があるからであります。すなわち、すべての民事調停において、当事者間に合意成立する見込みがない場合または成立した合意が相当でないと認められる場合で、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意があるときは、調停委員会は、申し立てにより、事件解決のために適当な調停条項を定めることができるものとし、これを調書に記載したときは、調停成立したものとみなすこととしております。その要件及び効果は、いずれも現行法第三十一条に規定されているものと全く同一であります。  第二点は、最近激増している交通調停について、新たに第二章第三節として交通調停の節を設け、第三十一条として交通調停事件土地管轄特則を設けることであります。すなわち、自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償紛争に関する調停事件は、被害者の簡便な救済をはかるため、現行法第三条に規定する相手方の住所等所在地管轄する簡易裁判所または当事者合意で定める地方裁判所もしくは簡易裁判所管轄のほか、損害賠償を請求する者すなわち被害者住所または居所所在地管轄する簡易裁判所管轄とすることとしております。  第三点は、新たに第二章第五節として公害等調停の節を設け、第三十三条の二として公害等調停事件土地管轄特則を設けることであります。すなわち、最近、問題となっている公害または日照、通風等生活上の利益の侵害により生ずる被害にかかる紛争に関する調停事件は、紛争の適切な処理及び被害者の簡便な救済をはかるため、さきに御説明しました現行法第三条に規定する裁判所管轄のほか、損害発生地または損害発生するおそれのある地を管轄する簡易裁判所管轄とすることとしております。  以上のほか、現行法中、調停にかわる決定に関する第十七条、第三章罰則中の第三十七条及び第三十八条その他について所要の整理をしております。  次に、第二条の家事審判法の一部改正について御説明いたします。  まず、調停委員制度に関する改正でありますが、この点については、民事調停法の一部改正について御説明しましたところと全く趣旨を同じくしております。  すなわち、第一点は、現行法の第三条第二項及び第二十二条第一項についてでありまして、今回、新たに家事調停委員制度を設けるのに件い、調停委員会は、家事審判官一人及び家事調停委員二人以上で組織することとしております。  第二点は、現行法の第二十二条第二項及び第三項についてでありまして、同条第二項に規定されているいわゆる調停委員候補者及び当事者合意に基づく調停委員並びに同条第三項に規定されているいわゆる臨時調停委員の各制度を廃止するとともに、調停委員会組織する家事調停委員は、家庭裁判所すなわち受調停裁判所が各事件について指定することとしております。  第三点は、新たに第二十二条の二として家事調停委員職務内容及び身分に関する規定を設けることでありまして、同条第一項において、家事調停委員は、調停委員会組織して調停に関与するほか、家庭裁判所すなわち受調停裁判所の命を受けて、調停委員会構成員として関与する以外の調停事件について専門的な知識経験に基づく意見を述べ、また、家庭裁判所すなわち受託裁判所の命を受けて、嘱託にかかる紛争解決に関する事件関係人意見聴取を行ない、その他調停事件処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行なうものと規定し、同条第二項において、家事調停委員非常勤裁判所職員として身分を明確にするとともに、その任命資格任免権者など任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定めることとしております。  第四点は、新たに第二十二条の三の規定を設け、家事調停委員には、別に法律で定めるところにより手当を支給することとし、あわせて最高裁判所の定めるところにより旅費、日当及び宿泊料を支給することとしております。なお、この関係で、参与員及び調停委員の旅費、日当及び止宿料に関する現行法第五条の規定を削除し、参与員については、止宿料を宿泊料と改めた上、別に第十条の二として独立の条文を設けております。  次に、家事調停手続に関する改正であります。  これは、遺産分割調停事件当事者が通常各地に散在しており、調停成立が困難な実情にあるのにかんがみ、その成立を容易にするため、新たに第二十一条の二として同事件についての特則を設けることであります。すなわち、遺産の分割に関する調停事件において、遠隔の地に居住する等の理由により出頭することが困難であると認められる当事者が、あらかじめ調停委員会等から提示されに調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が期日に出頭して当該調停条項案を受諾したときは、当事者間に合意成立したものとみなし、遺産分割調停事件に限り、いわゆる当事者出頭主義の例外を認めることとしております。  このほか、現行法中、合意に相当する審判に関する第二十三条第一項、調停にかわる審判に関する第二十四条第一項、第四章罰則中の第三十条第一項及び第三十一条その他について所要の整理をしております。  以上が、この法律案の本則についてでありますが、以下附則について簡単に御説明いたします。  第一項は、との法律の施行期日に関する規定であります。  第二項は、今回の改正により調停委員制度が改められ、調停委員会組織が変わりますので、従前の調停委員会においてした手続及び裁判所がした調停委員意見聴取について、その効力を引き継ぐこととする規定であります。  第三項は、この法律の施行前に調停委員、いわゆる調停補助者または参与員がした執務にかかる旅費、日当及び宿泊料または止宿料の支給について、所要の経過措置を定めた規定であります。  第四項及び第五項は、民事調停法第三十七条及び第三十八条並びに家事審判法第三十条第一項及び第三十一条に規定する罰則の適用について、所要の経過措置を定めた規定であります。  民事調停法及び家事審判法の一部を改正する法律案についての補足説明は、以上のとおりであります。
  11. 小平久雄

    小平委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  12. 小平久雄

    小平委員長 この際、最高裁判所長官指定代理者の出席説明の承認に関する件についておはかりいたします。  本会期中、ただいま趣旨説明聴取いたしました両案の審査にあたり、最高裁判所長官指定代理者から出席説明の要求がありました場合には、その承認につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明十三日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時九分散会