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1973-12-18 第72回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十八日(火曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 羽田野忠文君    理事 稲葉 誠一君 理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    松澤 雄藏君       保岡 興治君  早稻田柳右エ門君       日野 吉夫君    山本 幸一君       正森 成二君    沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省保護局長 古川健次郎君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    小林 功典君         警察庁警備局参         事官      星田  守君         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         建設省住宅局住         宅総務課長   重元 良夫君         自治省行政局振         興課長     田中 和夫君         最高裁判所事務         総長      安村 和雄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 十二月六日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     北山 愛郎君 同日  辞任         補欠選任   北山 愛郎君     赤松  勇君 同月十日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     安井 吉典君   佐野 憲治君     山本 幸一君 同月十四日  辞任         補欠選任   山田 太郎君     坂口  力君 同日  辞任         補欠選任   坂口  力君     山田 太郎君 同月十八日  辞任         補欠選任   山田 太郎君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     山田 太郎君     ————————————— 十二月十四日  熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願  (瀬野栄次郎紹介)(第一号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第七二号)  同外一件(馬場昇紹介)(第一四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  裁判所司法行政に関する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  おはかりいたします。  本日、最高裁判所安村事務総長及び矢口人事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 小平久雄

    小平委員長 裁判所司法行政に関する件並びに法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣が来てから、また質問をダブるような形になるかわかりませんが、まず、私が考えていた質問の順序を変えまして、来年度法務省関係予算要求の問題が中心ですが、特にその中で法務局登記関係職員増員問題等についてお尋ねをしていきたい、こういうふうに思います。  四十八年度は何名の要求をして、そして何名が認められたわけですか。それはどういうふうに配置したわけですか。登記関係職員の問題です。
  6. 川島一郎

    川島(一)政府委員 本年度すなわち四十八年度増員要求でございますが、法務局関係におきましては約千七百名の要求をいたしまして、実際に増員が認められましたのは二百五十三人、そのうち計画削減の分を差し引きますと、法務局関係では百三十三名純増ということになっております。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その千七百名を必要とした根拠はどこにあるわけですか。これは絶対必要と考えたから要求したわけですか。
  8. 川島一郎

    川島(一)政府委員 そのとおりでございます。登記事件は御承知のように毎年急激に増加をいたしておりまして、たとえば昭和三十八年から四十七年までの十年間をとってみますと、甲号事件におきまして約一・九倍、乙号事件におきまして三・四倍というふえ方でございます。これに対しまして登記従事職員だけを取り出してみますと、職員は一七%の増加ということになっておりまして、その間、事務合理化機械化等能率を上げてはおりますけれども人手の足りないという事実は争うことができませんので、その増加した事件処理するための一人当たり処理能力というようなものを計算いたしまして、三千名以上の職員不足しているというふうに考えられましたので、その半数に当たる千七百名をとりあえず要求したという形になっております。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 絶対必要だと思った千七百名を要求した。それが純増で百三十三名しか認められなかったとなれば、約千五百何人というものが必要だったのが満たされないわけですから、その分の仕事を一般の現在の職員がかぶるというと語弊がありますが、理屈の上ではそういう形になるわけです。そうなってくると、職員仕事の量というのは、いろいろな合理化はあったかもしれませんけれども、実際には百三十三名の純増が認められたことで、何とか仕事の量は同じような状態でいったのですか、あるいはふえたのですか、そこら辺のところはどういうふうに理解をするわけですか。
  10. 川島一郎

    川島(一)政府委員 結局要求しただけの人員が認められませんので、職員負担量が非常にふえているという結果になっております。たとえばごく大ざっぱに申し上げますと、三十八年ころは職員の一人当たり平均負担件数というのが年間で千六百件程度ではなかったかと思います。それに対しまして最近ではもう三千件に近い負担量になっているということがいえるわけでございます。したがいまして、登記所現場におきましては非常に忙しい、これを処理するのにたいへん苦労をしている、こういう実情でございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこでことしは何名ぐらいの増員要求をすでにしておるわけですか。それと、それの根拠ですね、こまかい資料等あとで出していただいてもけっこうだと思いますが、概略だけ説明を願いたい、こう思います。
  12. 川島一郎

    川島(一)政府委員 概略申し上げますと、昭和四十九年度予算要求におきましては千七百十一名の要求をいたしております。その計算のしかたでございますが、二万件以上の登記所と二万件未満登記所に分けまして、それぞれ必要な人員を計算いたしまして、そのほか機械化等による能率化の方策も要求いたしておりまして、そういった能率化により節減できる人員というものを差し引きました結果、二万件以上の登記所におきましては二千三百九十八名が不足している、それから二万件未満登記所におきましては合計千五百三十六名が不足している、こういう結果になります。その両方合わせました三千九百三十四名という不足があるわけでありますが、このうち二万件以上の登記所不足人員につきましては、二年計画でその二分の一を要求する、それから二万件未満登記所不足人員につきましては、三年計画でその三分の一を要求する、こういう形にいたしまして、最初に申し上げましたような千七百十一名を今回は要求している、こういうことになっております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 登記の場合のたてまえは、商業登記不動産登記とありますけれども、その日のうちに申請をすればその日のうちに謄本がもらえる、これがたてまえになっているわけですか。現実には、それが場所によって非常におくれる。私ども聞く範囲では、申請してから一週間くらいおくれるところもある。これはちょっとあるいはとも思いますが、いわれているわけですが、そこら辺の実態はどうなっていますか。
  14. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まず登記申請がありました場合に、それを即日に処理するというのは、原則としてそうあるべきだろうと思います。ただ、御承知のように、不動産登記の中には表示に関する登記というのがございまして、これは登記申請がありましてから実地調査等を要する関係上、若干日がおくれるということはやむを得ないと思います。しかしながら、所有権移転とか抵当権設定といったような権利に関する登記、これは即日処理がたてまえというふうに考えております。  実際の処理状況はどうかという点でございますが、最近集中的に非常にたくさんの事件が一時に  一つ登記所申請されるというようなこともございます。それから慢性的に事件がふえてきている登記所もございます。そういった事情のために即日処理ができない。登記申請がありましてから一週間かかる、あるいは二週間近くかかるというような登記所もたまには出てきております。ことしの九月に実際の処理状況を調べましたところ、十日以上をこえるという登記所が一庁ございました。それから、五日をこえて十日までの間に処理がなされているという登記所が九庁ございました。そのほか、五日までの、あるいは四日とか五日とか処理にかかるという登記所はかなり見受けられたわけでございます。こういった点につきましてはそれぞれ特殊な措置を講じまして、なるべく登記の遅延をなくすようにつとめておる次第でございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 五日もおくれる、十日もおくれる、そういうことによって国民がどういうふうな不便をこうむっているわけですか。実際問題として、例をあげてひとつわかりやすい説明をしてくれませんか。登記所謄本をもらいにいって、それを担保にして抵当権設定して金を借りるとか、いろいろ例がありますね。そういうように、おくれたことによって国民はどういうふうな不便をこうむるのでしょうか。
  16. 川島一郎

    川島(一)政府委員 やはり、仰せになりましたように、金を借りる場合に、登記ができませんと金を貸してくれないということで、非常に緊急に金策を得たいという場合に不便をこうむるという例が、一番顕著なものであろうと思うのです。それから売買にいたしましても、もちろん売買代金というものが手に入らない、そういうようなこともあろうかと思います。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そういうことがあろうと思いますと、人ごとのように言っておられるような——人ごとでないかもわからぬけれども、きわめて冷静に言っておられるようだけれども国民の方はそれによってずいぶん困っているわけですね。その原因は、大臣来られたけれども法務局人員が非常に少ないということがおもな原因であることは間違いありませんか。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 それはそのとおりでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそのとおりで、だから具体的にどうするのかですよ。  大臣、だんだん質問していきますけれども、いま法務局職員の数が非常に少ない、事件が倍するに比較して非常に少ない。そのことのために、登記簿謄本をとるのが、はなはだしいところでは申請して十日間もおくれる。ほんとうは即日もらえるのがたてまえなわけですね。そのために国民の方は非常に迷惑をこうむっているということの質問をしてきたわけです。これは大臣、おわかりのことだと思うのです。  そこでひとつ、いまはまだ事務当局でいいですがお聞きしてまいりたいのは、登記の間違いがこのごろ非常にふえてきて、そして局長認可による職権更正登記が非常にふえているわけですね。これは年間一万二千件をこえているということですが、その実態のあらましと、なぜそういうような職権更正登記が行なわれているのか、その原因はどこにあるのか、このことの御説明を願いたい、こう思うのです。
  20. 川島一郎

    川島(一)政府委員 仰せのように職権更正登記というのが最近非常にふえてきております。  まず実態を申し上げますと、昭和四十七年度におきましては、全国で一年間職権更正登記の行なわれた件数が一万三千二百七十九という数字になっております。これを過去に比べてみますと、昭和四十三年、四十四年、四十五年、四十六年、四十七年と、大体年間に一千件程度割合ずつふえてきておるようでございます。  これが、どうしてこういうことが起こるのかと申しますと、これはもちろん、職員登記記入の際の不注意による誤りであろうと思います。その実態調査いたしてみますと、一番誤りの多いのが、登記原因とその日付を登記簿に記載する、これについての誤りが四八%を占めております。それから所有者の住所とか氏名あるいは会社の名前、こういった所有名義人表示に関する誤りというのが同じく相当数を占めております。この両者が九十数%を占めておりまして、一番多いわけでございます。こういった点から見ますと、登記簿に記入する際に不注意で書き違えたとかいうことが概して言えようかと思います。もちろん記入係登記簿に記入いたしましたあとで、最後に登記官が校合をいたします。検査でありますが、その際に発見して版すということもあり得るわけでございますが、全体的に見ますと、先ほど申し上げましたように、登記件数が非常にふえておる。そしてその職権更正登記との割合を見ますと、二千件に一件ないし二件程度誤りが生じておるということになろうかと思います。こういう誤りが生じますと、当事者の方にはたいへん迷惑をかけるわけでございますので、事件が忙しいからといって間違いを起こさないように十分注意せよということは言っておるのでございますけれども、何ぶんにも非常に事務が錯綜してまいりますとこういうような誤りが起こりやすいのではないか、このように考えて、今後とも十分注意いたしたいと思っております。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今後とも十分注意するといったって、具体的にどうやって注意するのか一つ問題ですよね。もう人間の力の限界を越えていれば、とてもくたびれてしまって起きるでしょう。しかも局長認可というものが非常に時間がかかるんじゃないですか。私がやったんでも、一週間以上かかりましたよ。文書でこれ一々やるんですか、局長認可というものを。局長というのは地方法務局長でしょう。これ非常におくれるんですね。もっと早く、それは文書でやってそして更正するんだから慎重にやらなければならないのですね。また間違ってしまってはたいへんだから、それはわかりますけれども、非常に時間がかかりますね。もっと便利にやる方法はないんですか。というのは、本庁ならわりに早いのですね。支局とかなんとか、出張所の場合は一々文書本庁へ行くんでしょう。それがまた返ってくるわけでしょう。これにとても日にちがかかるわけですね。その間に不動産業者とかいろいろな人が入ってきて、いろいろな不正や何か行なわれたりする可能性があるし、そこらのところをもっと早くやる方法を考えられないのかということが一つです。どうしてあんなにおくれるんですか。
  22. 川島一郎

    川島(一)政府委員 仰せになりますように、本庁の場合と出張所の場合とで文書関係もありまして時間が違うわけでございますが、職権更正登記というのはやはり登記の一種でございますので、不動産登記法にその手続が記載してございまして、法務局長または地方法務局長許可を得なければならないということになっております関係上、その許可を得るについては関係の書類の写しも必要であり、それから許可を得たということをはっきり文書に残しておくことも必要である。そういった関係でどうしても若干の日数がかかるわけでございますが、こういった点、さらによく実態調査いたしまして、もっと早くできる方法があるかどうか、十分検討してみたいと思います。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それからこれに関連するのですが、職員登記ミス、これは職員の過失という意味だけで言っておるわけじゃないのですが、それに伴って訴訟が起きて国が損害賠償を払っているのが相当ありますね。この法務省で調べたのは確定したものだけを調べているように思うのですが、私どもの知っている範囲では、現在浦和だけでも七件くらい係属しているのじゃないですか。それもいろんなのがありますよね。たとえば、共同担保申請していたのが一つが落っこっちゃっていた、それがほかに売買されちゃった、担保に載っていないというようなことでえらい損害をこうむっているとか、ほかの例もありますが、これが非常にふえておるわけですよね。こういうようなことを考えるとそれはたいへんなことなんで、何とか職員増員の問題を解決するように、これは大臣のあれですけれども骨を折ってもらいたいというように思うのですが、いまの訴訟関係は現に係属のものを含めてどうなっていますか。
  24. 川島一郎

    川島(一)政府委員 実はその点ちょっと手元に資料を持ってまいりませんでしたけれども相当数件数訴訟となっておることは事実でございます。浦和関係をちょっと伺いましたので、その関係だけ法務局のほうに問い合わせてみたわけでございますが、現在係属しておる事件は三件ございます。そのうち一件は、これはちょっと国のミスとは言えないような事件でございまして、登記所の明らかなミスと思われるのは二件でございます。ただ、この損害賠償請求訴訟は現在係属中でございますので、はたして結果がどうなるかということはいまさだかでないわけでございますが、こういう訴訟がいろいろ起こって問題を生じておりますことはまことに申しわけないことと存じております。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、職員病気になって休むというのが非常に多い。ことに東京法務局に非常に多いというのですね。東京法務局では、去年からことしにかけて過労のために病気になった者が三百七十五名もいる。うち一名が死亡された。その死亡されたのは直接この過労によるのかどうか、それも間接的に関係があったかと思うのですが、こういうような状態職場の中で労働強化が非常に強い。そういったことで、年次休暇はほとんどとっていないのじゃないですか。そこら辺の実態調査したことがありますか。
  26. 川島一郎

    川島(一)政府委員 非常に仕事が忙しいために、過労におちいっている方々も職員の中におられるということは私も聞いております。そういう意味からも、現在の人手不足を何とかして解消していきたいというふうに思っておるわけであります。  第二点の、年次休暇をとる率が少ないのではないかという点でございますが、その全体的な数字というのは必ずしも正確に承知しておりませんが、私が現場管理者から聞くところによりますと、比較的係長以上の責任感を持っている方が休暇をとる率が少ないということを聞いております。これはやはり職場が非常に忙しい、そのために責任を感じてとりにくいというような事情もあるのではないか、そういうような話を聞いております。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あまりことばじりをとらえるようで悪いから言いませんけれども責任感のある者は休まなくて責任感のない者が休んでいるように聞えるのですが、いまの話はそれはちょっとまずいのじゃないですか。あとであれしてください。  それから、これは大臣にお尋ねするのですけれども大臣もいろんなことは御存じだと思うのですが、いま言ったように法務局、ことに登記関係事件が十年間で約二倍になっておる。それに対して人員増が一七%、この一七%というのも数字がちょっと違うように思うのです。こちらのあれではそんなになっていないように思いますが、いずれにいたしましても非常に増加が少ないわけですよね。それで事務はふくそうして、本来その日に謄本が交付されなければならないものが、はなはだしいところは一週間あるいは十日おくれる。それから職員過労病気になってしまう、休暇もいろいろとれない。こういうような状態の中で、国民は、特に金融関係の便からいっても謄本をとらなければ困りますよね。それから商業登記簿謄本もありますけれども、そういうことのためにそれがおくれるために、非常に迷惑しているわけですよ。そしてしかも過労からくる、ミスが相当出てきておる。更正登記が年に一万三千件もあるでしょう。こんなことを考えますと、どうしても人員増の問題について、これはもう大臣としても当然最大限の骨折りをしていただかなくちゃならない。これは野党とか、与党とか、そういうことを抜きにして、私どもどうしてもこれはやっていただかないと困る、こう思うのですが、そういう点についての、大臣の本年度のこれからの登記関係人員増についての考え方、それらをひとつお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  28. 中村梅吉

    中村国務大臣 確かに登記事務が非常にふえておることと、人員増が、例年若干ずつやっておりますが、なかなか思うように進展をしないというようなことで、お説のような事態が起こり、間違いが起こり、いろいろしておると思います。そこで私どもとしましては、来年度予算編成を通しまして人員増については最大限努力をいたしたい、目下こう考えておるわけでございます。ただ総定員との関係がありますので、なかなか行管のほうが渋くて、毎年これは苦しんでおるところでございますが、本年はひとつ行管の長官はじめ関係者にも陳情いたしまして、できるだけ増員が達成できるように最大の努力を払いたい、かように思っております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、いまの職場実態がなかなか上のほうの人にはわからないのですよ。たとえば人事院がいろいろな状況の視察なんかに行くのです。そうすると人事院が来たときにはこういうふうに答弁をしろということをやっているのですよ。ぼくはもう知っていますよ、実態は。だけれども、ここで言いませんけれども人事院が来たときにはこういうふうに答弁しろ、それ以上のことは絶対に言っちゃいけないぞといって教えるのですよ。これはやっている、ぼくはもう知っているけれども。そういうようなことをやったり何かしていて、実態が上へ伝わってないですよ、これは。  それからいま言った年次有給休暇でも、法務局だけでなくて、たとえば刑務所関係なんかほとんどとってないですね、実態は。今度調べてごらんなさい。ほとんどとってない。拘置所なんかもほとんどとってない。そういう関係の中でやってきている。それから検察事務官法務省関係事務官、これは公安職になっておるのが多いですけれども、それと裁判所の場合には調整がつきますね。最初のころは同じような出発だったのでしょうけれども、いまではだんだん離れてきまして、法務省関係職員待遇が非常に悪くなっているのですよ、比べると。その実態調査というものは最高裁は絶対出さないのですよ。出すといろいろなあれがあって、人事院のほうからいろいろ出てくるから出さないのですけれども、これはぼくは裁判所関係法務省関係職員の同一に出発した人の給与関係はどうなっているかということについての資料を、ここで出せとは言いません、いろいろな差しさわりがあるから言いませんけれども実態は非常に離れているのですよ。これはよく考えて実態調査して、そしてそういう面での給与改善のためにもぜひ骨を折っていただきたい、こういうふうに思います。  それからもう一つお答え願いたいのは、法務省関係でいろいろな職員がありますね。職員組合がある。全法務というのがありますね。そういうところと大臣との話などを、短い時間じゃなくて、時間をとってよく話をして、実態というものをよく認識されて、その上から増員の問題とか待遇改善とか、いろいろな問題にお骨折りを願いたい、こういうふうに思うわけです。この点についての大臣の見解をお聞きして、そうして別の質問に移りたいと思います。
  30. 中村梅吉

    中村国務大臣 全法務の人たちとも、われわれ、いまお話しのとおり十分にひざを突き合わせて話し合いをしたい気持ちでおりますが、先般来国会のほうの予算審議でわれわれもくぎづけになっていたものですから、その間を縫いまして短時間お目にかかっておるわけですが、いずれ機会を見て十分にそういう現場職員の意見も徴しまして、できるだけ期待に沿うようにいたしたいと思います。確かに登記職員だけでなく、刑務所関係とかあるいは保護司、保護観察官の関係とか、法務省は大体じみな役所だものですから、どうもいままで思うように進展してない向きが多々あるようでありますが、これらについて最善を尽くしたい、かように思っております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それではその問題については一応終わりまして、別の問題に入りたい、こう思うのです。  金大中氏の事件について、これは前々からいろいろこの委員会でも論議があったのですが、大臣もかわられたものですからあらためてお尋ねをしたいわけですが、この金大中氏の事件について、あなた自身がどういうふうにお考えになったかということが一つと、それに関連して、国民はどういうふうに解決したらこの事件を満足するのだろうか、あるいは満足したと思うのであろうか、こういう点について二つお尋ねしたいと思います。
  32. 中村梅吉

    中村国務大臣 金大中氏の事件というのは全く遺憾な事件でございまして、日本側の捜査によりますと、指紋等から見て韓国の外交官であった人間が関係しておるという推測も出ております。しかし事柄が外国人の、日本人でない人間のやった犯行であり、被害者が日本人でない、外国人であるしする関係で、捜査は難航しておることは御承知のとおりでございます。ですから、この捜査を円滑に進めるためには、どうしても関係の韓国側が日本の捜査に協力してくれないことには、日本の捜査というものは行き詰まりを生ずるわけで、問題は韓国側の協力ということが中心ではないかと思うのです。韓国は韓国側としてまた別途の捜査をしておるようでございますが、それについて、できるだけ日本の側から見た、日本人の納得のいくような最終結論が出ることをわれわれ期待しておるわけです。韓国の捜査が終了しましたら、その捜査経過なり捜査の資料なり、日本側に説明してもらうように外交ルートを通して交渉しておるわけでございますが、まだそれが的確な結論が出ていないというのが現状のようでございます。したがってわれわれは、これから先の韓国側の動きというものを注視していく以外には方法がない、かように思っておるようなわけでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると韓国側の協力というのは、大臣の考える範囲では十分に協力しているというふうにお考えなんでしょうか。
  34. 中村梅吉

    中村国務大臣 十分に協力しているとも考えられませんし、また向こうは向こうでやっておるようでございますから、結論が出るのがおそいのはやむを得ない事情があるのかもしれませんが、まだ韓国側から最終的な報告は受けていないというのが現状でございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、結局は韓国待ちということですか。
  36. 中村梅吉

    中村国務大臣 日本側の捜査としては、それより目下のところいたし方ない、こういう現状だと思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それで日本の国民としては満足ということばは悪いかもわかりませんけれども、しょうがないというふうに思っているというふうに判断されるわけでしょうか。
  38. 中村梅吉

    中村国務大臣 日本の国及び国民としては、とにかく事件の経過並びに結論というものが、できるだけ納得のいくような成果のあがることを期待しておるわけですが、これはかりに犯行を行なった者がいたにしても、おそらくその大部分がもう韓国へ帰ってしまっておる、被害者も帰ってしまっておる。これらを呼び出して捜査をする機会もありませんし、ですから韓国側の結論が出るのを待つ以外に、目下のところはどうも日本でこれ以上捜査をする方法がないのではないかというように思っています。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 日本の国内で起きた日本の主権を侵害したと考えられる事件、しかも重要な人物の人権が侵害されたと考えられる事件、それについて当の韓国側は日本の捜査なり何なりに対して協力をする義務があるというふうにお考えなんでしょうか。いやそれは向こうは向こうでやればいいんだ、別に日本の捜査その他に協力する義務はないんだ、こういうふうにお考えなんでしょうか。
  40. 中村梅吉

    中村国務大臣 これは道義上、韓国側は日本の捜査に協力するのは当然だと私は思うのです。ただ、しかし理論的にいいますと、国際間では、自分の国の国民が他国で犯罪を犯した場合に、犯人を引き渡せという交渉があっても引き渡さないのが慣例のようでございますし、ことに外交官の場合には、外交特権というものを振り回すのか振り回さないのかはいまのところわかりませんけれども、あるいは外交官という立場においてやったのか、全く個人としての立場でやったのか、それらもこちらだけでは判定が目下のところつきませんし、なかなか理論的にはむずかしい。道義的には当然協力すべきものだと私ども思いますが、法理的にはむずかしい点に逢着するような気がいたします。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 前に法務大臣をやっていられた方、何という方かちょっと名前は忘れましたが、いまいらっしゃらないのですが、だいぶトーンが違うような気がするのです。そうすると、いまあまりしつこいことを聞いてもあれですが、道義的に韓国は協力している、十分に協力しているというふうにお考えなんでしょうか。あるいは事件全体を、いろいろな韓国の内情があるかもわかりませんが、まあ適当なところで終結しようとしておるというふうにお考えなんでしょうか。
  42. 中村梅吉

    中村国務大臣 目下のところでは何とも言えないというのが現状だと思います。道義的に日本の捜査に協力してるともいえませんし、また全然非協力であると断言するわけにもいきませんし、いまのところではまだその結論は申しかねる現状ではないか、かように思っております。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうもはっきりしないですね。またあとの方も聞かれるでしょうし、いずれにいたしましても、何か全体に最初のころと空気が変わってきたような感じがしますね。まあ適当に政治的解決をして終わらしてしまいたいというふうなことになっているんではないかというふうに考えられるわけですが、別の問題に移りましょう。  そこで、もう一つ問題は、今度の国民生活安定緊急措置法というものの附則で、物統令を改正するようになっていますね。物価統制令というものをなぜいままで廃止しなかったのでしょうか。
  44. 安原美穂

    ○安原政府委員 物価統制令を存続させる必要性の有無ということは、少なくとも法務省の主管の法律でもございませんので、私どもから申し上げることはいかがかとは思いまするけれども、ポツダム勅令でできました物価統制令の目的は、御案内のとおり第一条に「終戦後ノ事態二対処シ物価ノ安定ヲ確保シ以テ社会経済秩序ヲ維持シ国民生活ノ安定ヲ図ルヲ目的」とした勅令でございまして、それがその後法律としての効果を有して今日に至っておるわけでありまするが、これを存続せしめた事情というならば、やはりこの第一条に規定しておるような物価の安定を確保するあるいは社会経済的な秩序を維持するという必要性のある部分がある、あるいはそういう事態に対処する必要がある事態が出てくるであろうという必要性を感じて、今日まで存続せしめたものであろうというふうに考えております。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 終戦後の混乱といったって、もう終戦から二十八年たっている。あなた、まだ終戦後の混乱が続いているのですか。
  46. 安原美穂

    ○安原政府委員 終戦後の混乱が続いておるというふうに一がいには言えないのでございますが、この第一条は、いわば立法の動機でございまして、終戦後の経済状態のような事態が生起するならば、それに対応して適用する法律というふうに理解しております。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いままでは具体的にこの物統令というものが適用になったのはどういう場合があるわけですか。私どもの聞いている範囲では、たとえば、いわゆるダフヤだとかそれからふろ屋とか、きわめて小範囲のもののように聞いているわけですね。伊勢湾台風のときのトタンか何かあったということをちょっと聞いているのですが、どういうふうに適用されておったわけですか。
  48. 安原美穂

    ○安原政府委員 いままでといいますと、最近のというふうに理解をして申し上げますと、いま御指摘のように、伊勢湾台風のときにトタン屋根ですか、亜鉛板の暴利行為を処罰した事例がただ一件ございまするけれども、おおむねいま稲葉先生御指摘のとおりダフヤの事件、つまり不当高価に入場券等を売る目的で所持しておったという、物価統制令の十三条ノ二の違反という事例が全部でございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、今後物統令というものはどういうふうに適用をされていくのでしょうか。たしか前の田中さんは、いかにも物統令をびしびし適用していくように答弁したと思うのです。非常に勇ましい答弁をされたわけですけれども法務大臣はその点はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  50. 中村梅吉

    中村国務大臣 今回改正をされていく将来でございますが、国民生活安定法はまだ審議中でございますけれども、おそらくあの中身は、大体標準価格をきめてこれを守らせるということ、それから次には特定標準価格をきめて、暴利をむさぼった者からは課徴金を取るというような処置を講じまして、それでも目に余るような、物統令の精神に違反するような者があったら、物統令を適用して処罰をするというような何段階かに考えておるように思うのです。ですからかりに物統令を改正してこれからの物価変動等に対処していくについても、処罰ということは最終の伝家の宝刀であって、むやみに振り回すべきものじゃないだろうと、私ども実はそう考えておるわけですが、これからの国会審議でどうなりますか、法律ができました暁でわれわれも十分に検討してまいりたい、かように思っております。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ただ、物統令が適用になる条件ですね。たとえば物価が著しく高騰しているとか、または高騰するおそれがある場合とかという一つの条件になっておるわけでしょう。そうすると現在のこの状態というのは、この条文の「物価が著シク昂騰シ」というようなところに入るのでしょうか。そこら辺のところの認識はどうなんでしょうか。これは企画庁というよりもむしろ、実際には罰条中心ですから、罰条を適用するのはやはり法務省関係になってくるわけでしょう。だから、そこら辺のところはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  52. 安原美穂

    ○安原政府委員 この物価統制令も、先走っては何でございますが、いま稲葉先生御指摘の文章、おことば聞いておりますと、おそらくはこの国民生活安定緊急措置法の附則第二条で物価統制令を改正する、いわゆる統制額を指定する場合の条件を御指摘のように思いますが、そうであるとすれば、いまの状態をどう認識するかということにつきましては、実は私どもここで権威をもってこの状態であるかどうかということを申し上げることは私はできないのでございますが、いま大臣も御指摘のとおり、国民生活安定緊急措置法によりまして、標準価格制度あるいは特定標準価格制度というような制度ができておりますことと物価統制令とあわせ考えますならば、まず通常の事態におきましては、国民生活安定緊急措置法案にいう事態というものの宣言、あるいは特定標準価格の指定というようなことがまず先行するのがこの法律のたてまえであろうと思いますので、そういう意味におきまして、物価統制令の第四条の統制額を指定する条件というものは、少なくとも私ども承知しておる限りは、いまだそこまでには至っておらないということに理解すべきであろうというふうに思います。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、具体的にはもう少し例をあげると、どういう場合にこの物統令というものが今後適用になるのですか。三条、四条だけの問題ではないわけでしょう。ほかの条文なんかもあるわけでしょう。九条の問題もあり、十条の問題もあります。それから十四条もあるでしょう。こういうのは具体的にどういう場合に適用になるのですか。ひとつ例をあげて説明をお願いしたい、こう思うのです。全く伝家の宝刀、伝家の宝刀ということで、そして、ただあるだけだというわけでしょう。デモなんかやってちょっとした何かやってもすぐとっつかまえて逮捕して勾留するのに、こういうときになるとさっぱりやらないのですね。これはどういうわけでしょうか。
  54. 安原美穂

    ○安原政府委員 私ども、企画庁とこの法案の審議の際に、企画庁、いわゆる主管当局からの説明によりますと、この物価統制令の第四条の発動の条件をもう少し——ここは抽象的てございます。やや具体的に申し上げると、終戦後の事態と実質的には変わらない程度のきびしい物価の高騰が生じているというようなことを企画庁当局が言っておられたのでございますが、さらに具体的に、たとえば物価統制令の第九条ノ二の不当高価契約、あるいは第十条の暴利の契約というようなものを発動の場合を考えますと、この国民生活安定緊急措置法との関係で申し上げますならば、私どもの考えでは、特定標準価格制度というものがしかれる。そういたしますと、一応統制額ではございませんが、一種の適正な価格の一つのめどができるであろうというふうに考えられます。そういたしますと、特定標準価格をこえて契約をしたという場合には、金額につきましてその差額部分につきまして不当利益の剥奪という、いわば一種の広い意味での制裁としての課徴金という制度がとられるわけでありますので、物価統制令の九条ノ二とか十条との関係におきましては、この課徴金が取られる段階、すなわち特定標準価格をこえたという段階では直ちには物価統制令の第九条ノ二の不当高価でもなく、第十条の暴利ということにもならないであろうけれども、特定標準価格をきめるにあたりましては、仕入れ原価とかあるいは諸掛かり、あるいは適正利潤というものを考えてこの特定標準価格がきめられますので、その特定標準価格を社会通念上著しく上回る、その適正利潤を著しく上回るというような場合におきましては、この物価統制令第九条ノニあるいは第十条の違反ということで物価統制令の適用すべき事態が生ずるというふうに理解しております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、特定標準価格ができるまでは物統令というものは第九条ノニにしろ第十条にしろ、これは死文になってしまうわけですか。
  56. 安原美穂

    ○安原政府委員 いまどういう場合に適用になるかという一つの例といたしまして、特定標準価格という制度というものがとられるとするならば、第九条ノニとか第十条の解釈、運用するのに一つの非常に有力なものさしになるという意味で、適用がしやすくなるということを申し上げたのでございまして、現状におきまして第九条ノニ、第十条は死文にはなっておらないわけですが、実際の問題といたしまして、そういうメルクマールと申しますかものさしが、適正な価格の基準とか利潤というものが、捜査当局ではなかなか判断しにくいという意味におきまして、実際問題として何が不当の高価であるか、何が暴利であるかということの判断が非常にむずかしかった。死文ではございませんが、適用の非常に因難な条文であったということは事実でございますので、国民生活安定緊急措置法に基づく特定標準価格というような制度がとられるならば、その点の解釈がしやすくなるであろうというふうに思っております。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、特定の標準価格というものができたときに、不当というのはそれを著しくこえなくちゃだめなんですか。それでは何で特定標準価格というものはできるのですか。それは相当高い価格が出てくるのじゃないですか。著しくなおかつこえなくちゃいけないの。それをある程度こえたならば、これにひっかかるという意味ですか。著しくというのは、社会通念だろうけれども、どの程度のことを目していうわけですか。これは法務省が取り締まりだから、主管としてはそこら辺のととろがある程度はっきりしてないと、法律そのものは乱用される危険性もあるし、また逆に全然適用されないということも出てくる。手をこまねいて見ているだけということにもなってくる。そこら辺のところ、どうなんでしょうかね。
  58. 安原美穂

    ○安原政府委員 国の法律というものは、ある法律ができたとすれば、それと既存の法律との関係を整序してというか、体系的に理解するべきであって、そこを矛盾してはいけないように理解すべきであろうということになりますと、国民生活安定緊急措置法の特定標準価格制度が導入されました場合には、特定標準価格をこえた場合におきましては、こえた額を課徴金という一種の広い意味での利益剥奪ということで取るということで、国民生活安定緊急措置法自体が、それを直ちに刑事制裁を課すべき反社会的行為とはまだ理解しておらないという法案でございますから、法案の考え方からいいますと、これが法律になったとすれば、それはそういうことで、課徴金を取られる対象となるような特定標準価格の違反ということイコール不当高価とは考えない。不当高価というのは刑罰、刑事制裁を課する行為でございますから、そういう意味において、この法律の関係からいいますと、こえたということで直ちに不当高価あるいは暴利ということにはならないであろうというふうに理解するのが、関係法律を合理的に解釈するゆえんであろうと思うのでございます。  そこで、こんなことは稲葉先生おわかりいただいておるのですが、問題は、しからば著しくこえるというのはどの程度かという御指摘でございますが、これは非常にむずかしいことでございまして、取引当時における社会通念上著しく不当であり、暴利であるということというのが判例でもございますので、これは何ぼこえたら幾らということはやはりケースバイ・ケース、あるいはそのときにおける取引の事情というようなもの、あるいは物資の需給状況というものを考えて、不当に高価であるか暴利であるかということで考えるべきであろうと思いますので、具体的に数字で示せと言われましてもちょっと申し上げかねるというのが真情でございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何も無理にこういう法律があるからこれを適用しろということを言っているわけではないのですけれども、どうも聞いていると、何だかこういうふうな問題については経済行為なんだ、だからそれは刑罰になじまないというか、刑罰をもってやるという形になってくるとそれは、あなた言わなかったけれども、資本主義経済というか自由主義経済といいますか、そういうふうなものに背反をしていくという形になってくるという考え方が強いのかどうかわかりませんけれども、どうもそうした問題についてきわめて消極的な印象を与えるわけですね。それで公安事件だとかデモだとか、そういうようなことになると一生懸命つかまえて逮捕するとか、これは死にもの狂いでやっているけれども、こういう問題になってくると全く手をこまねいているという考え方にとれるのですが、どうも積極性がないというふうにぼくは考えざるを得ないわけです。そうすると、結局物価統制令の九条なり十条なりあるいは四条といいますか、そうしたものの適用ということについては、何というか、できるだけやりたくないということか、あるいは慎重に対処するという言い方か、どっちですか。そういうふうな意味に受け取ってよろしいのでしょうか。
  60. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま御指摘のやりたくないということは絶対にございません。この事態でこれに違反するものであれば、びしびしと適正に検察権を行使するということでございますが、事柄が経済行為を対象とすることでもございますし、何と申しましても、経済統制ということにことばを限定いたしますならば、やはり行政施策がベストを尽くしていただくということが先行すべきであろうというふうに検察当局では考えておりますので、そういう意味におきましては、こういう事態が発生すれば検挙、処罰もやむを得ないが、決してそれが万能であるという考えでやるという考え方ではございません。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間が来たというか、別のこともいろいろ聞きたかったし、防衛庁関係のことも聞きたかったのですが、これはいずれまたあとでゆっくりお聞きするようにしたい、こういうふうに思います。  何だか大臣がかわって、聞いていますと、前の大臣はやけに勇ましかったわけだ。勇ましいのはいいか悪いか別ですよ。これは人によって個性があるのだから何とも言えませんけれども中村さんになってくると、何だかやけに慎重というか、非常に消極的なようにとれるわけです。これは勇ましいのばかりがいいわけじゃありませんからね。それは慎重でも実際にやればいい、実行すればいいということになるのでしょうから。  だから大臣にまとめて要望したいのは、前にお話しした来年度予算についての、ことに法務局関係職員の増の問題なり、あるいはその職場実態調査なり——それは刑務所関係もあるし、拘置所関係もあるし、それから法務省のほかの事務官関係もありますが、そういうふうな面で、ことに法務省関係というのは声があまり出ない役所ですからね。声なき声というか、そういうようなものを十分に聞いていただいて積極的な形で善処をしていただきたい。これはこういう時期ですから、今度の予算の中でいろいろ困難があるかと思いますよ。だけれども、これは千七百名だか、要求していること自身はそれだけの根拠があって、どうしても必要だからというので要求しているのだと思いますよ。山をかけているわけじゃないでしょう。だからどうしてもそれに——全部というわけにはいきませんから、とにかくことしよりはもっと多いものを増員してもらうように、これは大臣としても積極的に骨を折っていただきたい。こういうようなことを再度要望いたしましてなお全法務の人たちとも時間をかけてお話をしていただきたいし、それから法務局なんかの実態もよく見ていただきたいと思うのです。  たとえばこんなこと言っちゃあれだけれども中村さんの選挙区の話をしちゃ悪いけれども、板橋の法務局があるでしょう。これは豊島を管轄しているのかな。それは選挙区は関係ありませんけれども、非常に古い建物ですしね。それから職員も非常に事件がふえて困っているところがありますから、そういう点なんかもよく見ていただいて——ただあなたが見ると、おそらく法務省局長か、課長か何か知らぬけれども、そういう人たちは下のほんとうの声を遮断しちゃいますからね。そんなことないかとも思いますけれども、そういうようなことでなかなか伝わりませんから、そういう点は十分考慮しながらよく見ていただいて、そして予算の場合の職員の増なり何なりということで十分お骨折りを願いたい。このことを最後に要請をして、ちょうど時間になりましたものですから、まだきょう残ったものがありますが、これはまた別の機会にいたします。そういうことできようの質問を終わりたいと思います。
  62. 小平久雄

    小平委員長 青柳盛雄君。
  63. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は最高裁判所に対して、例によって裁判官の新任あるいは再任の時期が迫ってきておりますので、ことしの場合どんな状況になっているか、お尋ねをいたしたいと存じます。  まず最初に、俗に十六期という修習生の方々で、判事補に任官されて十年の任期の切れる方の数と、その中から判事に任命されることを希望している方の数をお尋ねいたしたいと思います。
  64. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 十六期という判事補の方はわりに数が少のうございまして、総員で五十四名でございます。原則として全員の方が、資格が得られれば判事に任官したいという希望を持っておられるというふうに承知いたしておりますが、正確には今後一定の時期までに判事の任官願いというのが出てまいりますので、それが締め切りになりませんと、正確な数字としては申し上げかねるわけでございます。
  65. 青柳盛雄

    ○青柳委員 次に、すでに判事に任官されて十年の任期が満了される人の数と、これもまたその時期にならないとわからないかもしれませんが、再任を申し込んでおられる方の数は何名でしょうか。
  66. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 お尋ねの趣旨は、いわゆる六期の裁判官についてのお尋ねであろうかと思いますが、六期の裁判官も比較的数が少のうございまして、現在三十六名が在任中でございます。もっともこれらの方の中には、一、二再任を希望されないで弁護士等を希望される方があるやに承知いたしておりますが、現在のところやはり三十六名全員の方が、引き続き判事としてとどまることを希望しておられるものというふうに私ども承知いたしております。
  67. 青柳盛雄

    ○青柳委員 次に、今度修習を終わるいわゆる二十六期の方々で、判事補あるいは特別には簡易裁判所の判事を希望しておられる者の数は、現在のところどのくらいおありになるか。それから当初修習生として採用される際に、将来の希望として裁判官を選んだ者の数はどのくらいであったか、これをお尋ねします。
  68. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 二十六期の修習生についてのお尋ねであろうかと思いますが、二十六期の修習生でいわゆる来年の三月に二回試験を受ける方の数は、現在のところ五百七名というふうに承知いたしております。これらの方が採用当初に一応の志望をチェックしておられるわけですが、その中で裁判官というふうにお書きになった方は百三、四十名であったかというふうに記憶いたしております。その後最近の調査では、予備的に研修所で調査をされるのが例でございますが、この調査によりますと六、七十名の方が裁判官を希望されるやに承知いたしておりますが、これは私どもとしては正確な数字ではございません。
  69. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私どもちょっと漏れ聞くと、研修所のほうでは後期の始まりがもう来ておりますので、十二月の二十五日前後に締め切りで一応最近の希望者を調べるというような話を聞いたことがあるのですが、その状況で六、七十名ということでございましょうが、そこで、先ほどからお尋ねしました人々が大体全部再任あるいは新規採用を希望するといたしまして、定員との関係でこれらの希望者数はそれを超過しているかどうか、あるいは不足かどうか、この点は大体の見当としていかがですか。
  70. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいまも申し上げましたように裁判官を希望される方の数字が確定的ではございませんので、この段階では概算としてしか申し上げかねるわけでございますが、現在の状況でございますれば定員上困るという事態は発生しないというふうに考えております。
  71. 青柳盛雄

    ○青柳委員 定員上超過してお断わりしなければならないというようなことはまずなかろうというお話でございますが、従来定員の面では別に問題はなかったのだけれども、つまり定員からいえばもっと希望者があっても採用してよろしいというような状況であるにもかかわらず新任、再任希望者中に新任または再任されなかった者がございました。これは客観的な事実です。その理由をお尋ねいたしたいのでございますが、何か採用するかしないかについて最高裁判所のほうでは採否基準というようなものを設けておられるのかどうか、その点いかがですか。
  72. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 当委員会でも何度かの機会に申し上げたところであろうかと思いますが、裁判官を希望されて裁判官になっていただくということのためにはやはりそれにふさわしい方でなければいけないわけでございます。そのふさわしいということの内容でございますけれども、これはやはりいろいろの角度から申し上げ得るかと思いますが、同期の方がごらんになっても、あれに裁判されるならばこれはしようがないというふうに皆さんが思われるような方、そういう方がやはり裁判官になっていただかなければ困るというわけのものでございます。単なる主張をするということではございませんで、やはり双方の主張の対立する中でそれを一定の決断を下す。しかもそれは国民の権利義務に重要な影響を持つものであるという裁判官の職責を考えてみますと、やはり同時に法曹資格を取得された多くの方々の中でも仲間のうちの方々からそれにふさわしいと思われる方でなければいけない、これがしいて申し上げますれば裁判官の採用の基準でございまして、私どもはいろいろの言い方をいたしておりますけれども、詰めてまいりましたところいま申し上げたようなものが採否の基準ということに相なるのではなかろうかという考えでございます。
  73. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私どもも抽象的にお話を聞いておりますと、裁判官にふさわしい方を選ぶ、それが基準だとおっしゃる、確かにだれが見てもふさわしくないとか、希望することはできないというような者を排除するということだと思うのですが、もう少し具体的なものが何か示されないと、その採否が適法であったのか、また公正であったのかということが外部にはわからないわけでございます。したがって基準は、まあこまかな項目的にはないといたしましても、本来この採用するかいなかを決定する最高裁判所の内部的な準則のようなもの、まあ基準であって、採否が客観的に公正妥当であるためにそういうものがあるのだ、しかし採否の対象となっている者の何らかの権利を保障するためにあるものではないというような見解に立っておられるかどうか、この点をお尋ねしたい。
  74. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 いわゆる修習生の課程を無事修了された方は法曹としての資格をすべてお持ちになっておる方でございます。しかし具体的にその中から裁判官になっていただく方ということになりますと、これはやはりいろいろの問題をあらためて考えなければいけないわけでございまして、裁判官である限りは、異なる双方の主張をそれぞれの立場に立って十分によりよく理解し、各主張の長所をとる、そしてしかも対立点というものを的確に把握し、それの対立点について的確な判断を下していくということが特に要求されるわけでございます。しかもその判断はあくまでどちらに寄るということではなくて不偏不党、公正な判断がなければならない。しかも身を持することは、そういった判断をなすという立場上、当然いやが上にも厳でなくてはいけないということがあるわけでございます。そういったようなことは、これは長年の裁判官像というものからして自然にでき上がっておるものでございまして、ことばで申し上げることになりますと、結局は抽象的に裁判官たるに全人格的にふさわしい方とでも表現するよりほかないわけでございますが、しかし法曹を志す者のおのおのの中で当然万人が見てふさわしいと思われるような方、そういう方にこれまでまあ来ていただいたつもりでございますし、今後もそういう方に来ていただくように努力をいたしたい、これがしいて申し上げれば、内部的な基準と申しますか、法曹全体に当然のこととして理解された基準ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  75. 青柳盛雄

    ○青柳委員 まさに内部的な基準であって、その反映として採否の対象者になった人たちの権利といいますか利益は害されるおそれはないというような議論であろうと思うのです。しかし最高裁判所が合議体として裁判をすると同時に裁判官会議においても合議をしてきめるものでありながらなおかつそれが社会的な批判にさらされるわけでございまして、その最も典型的なのは最近の三菱樹脂の高野判決の大法廷判例、これは十五名の裁判官全部意見が一致した。珍しいことだと思うのですが、にもかかわらず、世間ではこれに対して大きな批判があるわけでございますので、ある裁判官希望者が資格があるにもかかわらず拒否された、これは絶対に間違いないのだというふうなことを主張し得ないことはわれわれの常識だと思うのです。だから、もしいままでどおりの最高裁の採否についての態度を貫くとするならば、それを理論づけるものは、任官希望者には何らの権利もなく、最高裁判所の全くの自由裁量であるということであって、自由裁量である限り、法的には何らの制約を受けないというような議論になってくるんではなかろうか。そうなると、憲法十四条も十九条も二十二条も二十八条も基本的人権を保障しているわけでありますけれども、これは国民が就職の権利を平等に保障されるということの規定だと思いますけれども、これとは全く無関係、つまり憲法とはかかわり合いのない行為であるというようなことに理論的にはなっていくんではなかろうか。やはり私は、その自由裁量であっても何らか希望者の権利というものは保障されるということがなければならないのじゃないかと思うのですが、その点をどうお考えになりますか。
  76. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 憲法十四条、十九条がそれぞれの基本的人権に関する規定を置いておるということは私どもも十分承知いたしております。それからまた裁判官になるためには一定の資格要件が必要であるということも一方にあるごとは当然のことでございます。しかし、この資格要件のある者の中からどういう方に裁判官になっていただくかということに関します、いわゆる裁判官に任用するための名簿に登載するにあたりましての行為というものが自由に裁量される行為であるということもまた法律的には明確なことであろうかと思います。そういったことが、この憲法の十四条あるいは十九条等の規定と自由に裁量される行為であるということが抵触するというようなことは決してないというふうに考えております。
  77. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そうだとすると、この間の三菱樹脂の裁判を見ますと、思想、信条を理由に採用を拒否しても一向にかまわないのだ、社会的に特別に許容度を越えたようなときにはまた考えられるかもしれないけれども、原則としては思想、信条を理由に採用を拒否しても、それは一向法律的には違法性を持たないのだという考え方があります。これは民間会社の人事問題に限るというように論ぜられているわけでありますけれども、どうも最高裁判所が裁判官の人事をやる場合にも事実上そういう考え方がまかり通っているのではないか。たとえば石田裁判官の憲法記念日における談話、無政府主義者とかはっきりした共産主義者は裁判官として思想がよくないというようなことを言ってみたり、岸事務総長も、特定の政治的団体に加入している裁判官は裁判官としてふさわしくないというような談話を発表してみたり、具体的には熊本の官本裁判官が再任を拒否された。また毎年のように修習生から判事補への希望が何名か拒否されているというような事実を見ますと、どうも公正妥当に人事が行なわれているという主張は必ずしも事実として裏づけられていないという気がするのです。だからこれを最も客観的に公正妥当、しかも違法性を持たないというような人事ということについて世間から何らの批判も受けないようなやり方、つまり基準を一般に公開をするとか、また具体的な場合にそのどれに該当するかということを、拒否された者に、希望があれば知らせるとかいうようなやり方で、疑義の余地のないような方法を講ずる気持ちはないかどうか、その点をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  78. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これも当委員会等でしばしば申し上げておるところでございますが、裁判官になっていただくかどうかということをおきめいただくにあたりまして、思想、信条あるいは特定団体加入というようなことを、いわゆる拒否の一つの理由にすることはしないということはしばしば申し上げておるところでございます。ただ、そのことと、いまも御指摘がございましたが、裁判官になっておられる方々が、やはり裁判の公正らしさを担保するためにできるだけ特定の団体等に加入しないほうがいいという裁判官のモラルを説いたこととは、これはあくまで別個のものであるということはしばしば申し上げておるところであるわけでございまして、私どもはその間の事情につきましては、国民各位も十分に御了解をしていただいておるのではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  また、今後の裁判官の採否をおきめいただくにあたりまして、不幸にして採用されなかったような方が出ました場合に、御希望である場合にはその採用しない事由を告げろというお話でございますが、やはりこのこともしばしば申し上げておりますように、人事のそういった問題につきまして、たとえ御本人が御希望であろうともその事由を申し上げるということは、これはやはりいたすべきことではないというふうに考えております。このこともまた、およそ人事というものをお扱いいただいておる方でございますれば十分御賢察いただけるところではなかろうかというふうに考えております。いずれにいたしましても、決して御懸念のような事態はないというふうに申し上げられるかと考えております。
  79. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いまの答弁には私は承服できませんけれども、時間の関係がありますので、また次の機会に譲って、終わります。
  80. 小平久雄

    小平委員長 沖本泰幸君。
  81. 沖本泰幸

    ○沖本委員 最高裁ちょっとおっていただきたい、先にやりますから……。  時間を三十分しかいただいておりませんので、やりとりが十分できませんが、最高裁の職員の問題と、それから法務省のほうの職員の問題と両方合わせてお伺いしていきます。  裁判所のほう、お立ちになりかけておりましたので、先に裁判所のほうをお伺いしたいと思いますが、きょうも全司法労働組合のほうで会合をお持ちになっておられまして、そこからも資料をいただいてき、いろいろお話も伺ってきたのですが、まず大きな面から申し上げますと、裁判官が非常に不足していらっしゃるということのために、事務が非常な繁雑を加えてきておる。これは裁判所側でも、しばしば最高裁のほうでもお答えになりましたけれども、大型訴訟が非常にふえてきて、それで複雑困難な事件増加して、仕事の量だけでなく質も多様化してきておる。民事の特殊損害賠償、まあ医療関係、公害関係は東京地裁だけで約四百件係属中であり、また学生事件は全国で約三千件ある。それから、いわゆる事件処理のために裁判官、職員関係がうまくいってなくて、人員の裏づけのない部の増設がある。東京地裁あるいは神奈川、京都、福岡、各地でそういうことが起きておる。それから臨時に開廷し、長時間の立ち合いがあり、昼休みが少なかったりなかったり、あるいは五時以降の和解の問題に関係が出てきている。それから訴訟指揮の職権主義化、省力化、書記官の持ち帰り、居残り仕事、これが慢性的な労働強化になってきておって、そこから健康を非常に害してきておる。こういうために非常に書記官にしわ寄せがたくさん起こってきておるということを具体的な事実をあげて御説明になっていらっしゃり、また昇給に伴って転配属が起こっておって、ひどいのになると、家族が三つになって住まなければならない。御主人のほうは転勤地へ行く、奥さんのほうはもとのところにいらっしゃる、子供さんは学校へ行っているために別のところにいる。そういうことがいろいろ具体的に起こってきておる。それから宿日直という点についても、これは昨年の問題の中にもあったわけですけれども、できるだけなくしようとこうはかっているけれども、耐火構造とかいろいろな点でまだ十分でないという最高裁のほうのお答えもあったわけですけれども、言ってみますと、健康管理問題について、いわゆる十分な規定をつくって、組合との協議をはかってもらっていないという点について、最高裁のほうは、規定はともかくも、できるだけ要求に応じる方向に行こうというお答えはあるのですけれども、年に三回ぐらい検査をして、減員をやっていきたいというようなお答えも出ているわけですね。そういう点が、働く人たちの立場に立っていくと、非常にその仕事に対する意欲をそいでいくし、将来に対する不安もたくさん出てきておる。こういうことにもなっておるわけです。そういう点、宿日直の廃止もふやしてほしいという要求もありますし、一番問題になっているのは、いわゆる五等級を四等級にしてほしいという御要求なんです。これはもう数の点で非常なギャップが起きておる。こういう点もやはり俸給生活者ですから、また現在のこういう複雑な物価とか物不足ということになってくると、むしろ最高裁のほうで精神面ばっかりの訓練をなさるとそこで行き詰まってしまうのじゃないか。  これは法務省にも通じる問題なんですけれども、はたでは新聞を読むと、トイレットペーパーの買いだめだとか、砂糖はもうデパートから消えてしまったとか、きょうの朝のニュースで新巻サケが幾らになるとか、そういうもの全体について一つ一つを見ていると、もうとても手の届かない問題で、お正月なんか思いもよらないようなことが起きると、人間の常として、もう労働に対する意欲なんか全然なくなる、こういう事態が起きてくるわけですね。そういうところは、やはりお考えになっていただいて、前にもお願いはしましたけれども、やはり精神的なものを裏づけをして、十分な仕事をさしていき、完全な仕事を全うさすためにはやはりある程度の物の裏づけがあってこそこれは全うされるわけでございますから、そういう点、いま時間がないために、急いでまとめてお伺いしたわけなんですが、それについてお答えをいただきたいと思います。
  82. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 問題が非常に多くあったようでございますが、これを要するに、沖本委員のお尋ねは、裁判所職員、ことに裁判所固有の官職でございます裁判所書記官とか裁判所速記官の仕事というものは適正に行なわれておるかどうか。裁判所書記官、裁判所速記官になっておられる方々の労働意欲というものが十分発揮できるような、そういうような管理体制をとっておるかどうかということについての非常に御理解あるお尋ねではなかろうかというふうに思うわけでございますが、個々の問題これは時間の関係もございますので、また個別にお尋ねがあれば申し上げることといたしまして、私ども、部を増設いたします場合につきましても、やはり裁判官だけの手当てで、書記官は手当てをしないでおくというようなことはいたしていないつもりでございます。御指摘の数カ所がございましたけれども、それらの個所の部を増設いたします場合には、非常に困難はございますが、やはり書記官の手当てをいたしまして、増部ということを行なっておるというのが現状でございますし、また、臨時開廷の問題等にいたしましても、時には必要やむを得ず、臨時に予定日以外に開延するということもございますけれども、これは、ある場合には、事件の迅速適正な解決ということのためにはやむを得ない措置ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  書記官等が適正な配置であらねばならないということは、これは書記官の昇進の問題昇格の問題等とも関連いたしまして、なかなかむずかしい問題でございますが、一カ所にずっととどまっておりますと、どうしても上位の官職、等級のあきができました場合に、すぐその人をつけるということができないという事態が起こってまいります。隣の裁判所に上位の官職のあきができたというときには、やはりその時点におきまして最もふさわしい方をそこへ持っていきたい。としますと、まあ異動、移転の問題が出てくるわけでございまして、この問題は、当委員会でもかつて御指摘がございましたけれども、いろんな、子供の教育の問題とか、あるいはこういう時節になってまいりますと、ますます新しい移転先でいろいろと生活必需品の購入にも不便をするといったような問題も起こってまいります。私ども、書記官の適正な配置ということは、その待遇の上においてある程度必要なことではございますが、できるだけ適正な配置も得られるように、しかも移転の頻度数と申しますか、そういうものを少なくしていくように、そういった配慮はいたしたいというふうに考えておるわけでございます。宿日直等の問題にいたしましても、大いに努力をいたしまして、人数の少ない庁等から逐次これをやめていくというような方向を強力に推し進めておりますので、この問題は、いましばらく御猶予をいただきたいというふうに考えております。職員の健康、安全管理というようなことについても十分意を尽くしておるわけでございまして、そういったことについては事務総長名の通達をもちまして遺漏のないようにはいたしておりますが、なお当委員会でもお約束を申し上げたかと思いますが、これを規則化するというような点については鋭意作業を急いでおるという段階にあるわけでございます。まあいずれの問題にいたしましても、結局は私どももまた裁判所書記官あるいは裁判所速記官が安んじて全能力を発揮して仕事ができるようにいたしていくということでなければいけないと存じておりますし、御質問の御趣旨と全く同様の意見を持って、それに向かって努力をいたしておる段階でございます。
  83. 沖本泰幸

    ○沖本委員 お答えの趣旨はわかるのですが、具体的にいいますと、一、二の例ですけれども、東京地裁の書記官の方で、中には家族と満足にお正月ができないのがここ数年続いておるというところがたくさん出ておるという問題とか、あるいは僻地のほうへ転勤させられて、一人でおって本人がおかしくなっておったのがあくる日行くまでわからなかったという事態が起きてなくなった方もいるという実例もきょうおっしゃっておりました。そういうふうなことがないように、これはきょうテレビで言っていましたけれども、三木さんが、アラビアのほうで雲だけで雨が云々という話があって、雨を降らすことが肝心なことであってということですから、いわゆるお話よりも具体的な実行ある問題をやっていっていただきたい、こういうことになるわけです。ですから、お答えよりもむしろ満足するような内容が整うことが大事なことであり、それによって意欲が出てくるということにもなり、それから職員の方の家族も、これは法務省も同じだと思いますけれども、たとえば灯油が配給みたいになってきて、それで心やすいと幾らかもらえるけれども、全然顔なじみでなかったらもらえないのが現実なんですね。そうすると転勤なんかさせられたらたいへんだという問題が生活の上から起きてくるわけで、そうすると、もう転勤命令なんか出るとショックを受けてくる、こういうことになるんじゃないかという問題もありますし、具体的な、生活の内容に食い込んだものをとらえていただいて改善をはかっていただかないと、やはりこういう時に応じた対策を立てていただかなければならないと考えます。  砕いてやればたくさんあるのですが、時間がないのであらためてやりたいと思いますけれども、要は予算の時期だから特にお願いするわけなんです。  それでは最高裁のほうはその程度で、あとまたあらためてお願いいたします。  それから法務省のほうなんですけれども、これも先ほど稲葉先生も触れていらっしゃったわけですけれども、具体的にいいますと登記事務についてのことにかかってまいります。列島改造論が出てから急激にこういう事件がふえてきたということを数字をあげておっしゃっているわけなんです。それで登記甲号事件として昭和三十八年に約千百十九万件あったのが、昭和四十二年には約二千百四万件になり、四十八年には約二千二百五十三万件と推定されて、約二倍以上になる。乙号事件は、昭和三十八年が約六千五百三十万件、四十七年には二億二千百万件、四十八年には二億三千七百万件が見込まれて、約四倍に達しようとしている。これに対して職員は、昭和三十八年には法務局九千七百九十四名、うち登記従事職員が七千五百三十八名。四十八年には一万一千百五十名、うち登記従事職員が八千六百四十三名、これは一四%にしかすぎないということであり、こういうことのために下請の人なんかが入って非常に混雑をきわめてきておる。それで中堅層の人に病人とか在職中の死亡者が出てきておる。東京法務局では昨年からことしにかけて病気になった人が三百七十五名、約半数病気だ。うち一人の人がなくなっておる。そのため調査の手抜きが起きたり、地方自治体や司法書士など、部外者の応援でやってようやく処理をしておるけれども、限界をこえた事務量のため、仕事のおくれやミス増加しており、法務局ミスにより誤った登記を行ない、それを更正する登記が四十七年度年間で一万二千件をこえている。部外者応援の数は数年前の調査でも年間で五十万人をこしておる。だから都市部で三日から一週間、地方でも三日程度はおくれてきておる。そういうことで、水戸のように一週間から十日もおくれているところもある。これは地域の人たちにたいへんな迷惑をかけており、さらに乙号事務の下請を導入しておったりするために職場では混乱が生じており、そういうことで非常な問題点をはらんできておる。だから総定員法なんかにかかわらないで早急な定員の充足をしていただき、いろいろな点で改善をしていただかないと、これはうちらも外も大きな問題になってくる。こういう点も指摘されておるわけです。  その点もありますし、それからもう一つは、これも時間がないので固めてお伺いいたします。これも先ほどの最高裁のほうの五等級を四等級にしてほしいというような内容と同じなんですけれども、複雑な業務、特殊なものに従事する者の一六%上げていただくという点についてですけれども、保護観察官はいま八%になっておる、家庭裁判所調査官は一六%だ、仕事の内容は同じなんだ、なのにどうしてこういうふうに違うのかという点が指摘されておるわけです。書記官についても、裁判所の書記官については一六%がついている、ところが法務省のほうには全然ついていない。もうこれは公平の原則からいっても全然間違いであるということになりますし、私たちが聞いても、なるほどとうなずけるわけですね。同じ仕事をやっておるのに、出発点は同じようなところから出ておるのに、枝葉に分かれたときにどうしてこういうふうなギャップが起きるのかということになると、これは先ほどからも申し上げたとおり、働く人の意欲が全然欠けてしまうということになり、そういう不満がやはり仕事の上にも出てくる、こういうことになってくるわけです。そういう点についていろいろな要求が出ているわけですけれども、まずいま申し上げたような点について、これから予算の時期に入るわけですけれども法務省としては、これらのいろいろな要求が出ていることに、さらに職業病の問題もいろいろありますけれども、どういうお考えでいらっしゃるか、また来年度予算にはどういう点を盛り込まれるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  84. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私からまず法務局登記事務関係についてお答えを申し上げます。  先ほど先生が数字をいろいろおあげになりました。その数字につきましては私どものとっております数字と若干違う点がございますが、大体におきまして登記事務が異常な激増ぶりを示しておる。それに対する人員の手当てがまだ十分でないということは御指摘のとおりでございます。そこで、何と申しましても登記所の繁忙対策というのが今回の予算要求の最も大きな部分を占めるわけでございまして、それにつきましては相当多数の増員要求をいたしております。これは先ほど稲葉先生からも御質問がございまして、私どもといたしましては来年度予算に千七百名程度増員をお願いしたいということで努力をいたしておる次第でございます。  そのほかどういう手当てをしているかということを簡単に申し上げますと、超過勤務手当の増額でございます。これは仕事が忙しいために超過勤務をしているが、その手当が十分に支給されないということでは困りますので、現在九億余りの予算が計上されておりますが、これを十五億程度に増額をしてほしい、こういう要求をしております。それから職員待遇の面におきまして、四等級、五等級の定数が不足しております。四等級、五等級に昇格させたいにもかかわらず、等級の定数がないために昇格できないという者がございますので、その相当上位等級への切り上げを要求いたしておりまして、これもある程度は認めていただけるのではないか、このように考えております。  そのほか小規模登記所職員待遇改善といたしまして、渡し切り費の増額、現在二万六千六百円程度でございますが、これを三万六千円程度の額に引き上げてもらいたい、こういう要求、あるいは一人庁の事務補助費、これは一人庁の所長の奥さんなどがその手伝いをする、それに対する事務補助の経費を増額してほしい、こういうような要求もしておるわけであります。  それから、先ほど裁判所関係で問題になりました宿日直の問題、これにつきましても、宿日直をなるべく機械警備に切りかえていきたい、それによって職員の負担を軽減したいということで、この点につきましてもかなりの要求をいたしておるわけでございます。  そのほか老朽な庁舎の新営、改築でありますとか、あるいは事務室の整備、そういった点につきましてもできるだけの努力をしたいということでそれぞれ要求をいたしておるわけでございます。
  85. 沖本泰幸

    ○沖本委員 こまかいやりとりができないのが残念なんですけれども、全司法の皆さん方は、この登記所増員につきましては六千四百名ほど必要だ、こういうふうにおっしゃっておるわけなんですね。いま民事局長がお答えになったのは千七百名ぐらいを要求しておるということなんで、その間あまりに開きが大き過ぎるのじゃないだろうか。それはやはり全体のワク組みの中からいろいろなことをお考えになりますから、それでそうなってくるので、緊急必要だという内容のものと総ぐるみでお考えにならないで、分離さして、これはどうしても必要だという点を考えてもらわないと、こういう面はいつまでたっても解決できない。それから私たちがいろいろ委員会の間にお伺いしてみる分についても、新しい庁舎には冷暖房ができておって機械化されていって、非常に場所もとれて、前のところから見ればある程度仕事が楽だ。ところがそうでないところはもう夏などはむんむんするところで汗だくでやっている。これはもう銭金にかかわらないような労働条件が起きておるわけですね。これはやはり公平ではないということになるし、それは民間でいけば、そういうギャップが起きた場合には何らかの形で埋め合わせがあるわけなんです。その分だけはお金になって返ってくるとか、その分だけは時間が短縮されているとか、そういうところは人がふえて交代制でやっているとか、そうでなかったら人は得られないわけですね。そういう点もよくお考えになっていただきませんと、先ほどから申し上げておるとおり、重大なときを迎えているわけですから、たいへんな問題がいろいろなところで噴火口みたいに起きてくるのじゃないかというおそれもあるわけですから、これはもう一度御再考いただきまして、練り直していただいてお考えになっていただかなければならない。  総需要を押えるということを大蔵大臣おっしゃっておられて、法務省の需要まで具体的なものを押えられたら困る。それから列島改造論は政府でなく田中私案だといっているけれども、それによって迷惑をこうむっているわけですから、やはり大臣もその辺お考えになっていただいて、責任を感じて、その分だけはいろいろカバーできていくとか、それに対応したところの内容のものがやはりできていくというふうにしていただきたいことをきょうはとりあえずお願いしておきたいわけです。  あと何分ぐらいですか。
  86. 小平久雄

    小平委員長 十分までに大体……。
  87. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうするとあと五分ぐらいですから、それだけ御要求して、あとは次でやりますから。  あと金大中問題で、稲葉先生とダブるかもわかりませんが、何となく片づいていないのですね。政治的な解決を見たといいますけれども、金大中事件そのものは全然片づいていない、こういうことになるわけですけれども、そういうことに関しまして、いままでの田中大臣と比較しては非常に失礼にもなりますし、ということを考えるのですけれども大臣がおかわりになって、今度は全然逆の方向のお答えばかり出てきたということになれば、国民もよけい非常な疑心暗鬼を起こしてくると思うわけです。そういう面も考えながら、どうしてもこの問題は解明しなければならない、そうして国民の前に明らかにしなければならない政府としての責任があるわけです。  そういう観点に立ちまして、大臣はこの事件をどうおとらえになって、そしてどう解決しようとしていらっしゃるか。ただ外務省のレベルからいきますと、これは全然向こうを向いて進まないような状態で、事件と日韓閣僚会議とは別だ、こういう発言がたくさんあるわけです。そういうふうになって、なしくずしでこれがうやむやに消えてしまったのではどうにもならない。金東雲一等書記官をこちらに送ってくれるのも向こう側のあり方だ、あるいはそのほかの問題について、金大中氏が日本に寄れるようにはからってもらえるのも韓国側の出方一つなんだ、出方待ちであると、よほどの事態の変化が起きない限りはこちらが期待していることには合っていかない、こういうことになるわけですけれども、これを解決の方向へ進めていくために省当局としてはどういう措置を現在おとりになっていらっしゃるのか、その点を具体的にお答えいただきたいと思います。
  88. 中村梅吉

    中村国務大臣 警察が目下第一線で事件の捜査をやっているようですから、警察のほうから一応答えさせます。
  89. 星田守

    ○星田説明員 ただいま御指摘がございました金大中事件につきましては、現在までの捜査の結果、金東雲一等書記官の容疑というものは確定いたしておるわけでありますが、劉永福元副領事の車両が金大中氏の連行に使用された疑いというのはきわめて濃厚でございますが、当時の使用状況等がまだ未調査でございますので、これを断定することはまだできていない状況でございます。目下この車両の使用状況と韓国におきますところの金東雲書記官の取り調べの結果についての回答を待ちながら、私どもといたしましては従来の体制のまま捜査を継続いたしておるわけでございます。  今後の捜査方針につきましては、共犯者、連行経路、出国地点、使用船舶の割り出し、これを重点に進めていく所存でございます。なお、金大中氏ら三氏の来日を外交ルートを通じまして要請いたしておりますが、金大中氏の来日につきましてはまだ渡航申請したというふうな正式の話は伺っておりません。いずれにいたしましても、金大中氏の来日があれば当然捜査協力をお願いいたして事件をまとめてまいりたい、このように考えておる所存でございます。
  90. 沖本泰幸

    ○沖本委員 金東雲一等書記官の捜査報告が得られればということなんですが、得られるようなめどなりあるいは何らかの韓国の捜査当局との話し合いがあって近々にその報告が得られるとか、具体的な捜査の方向に向かっておってある程度の内容をつかんでからというのか、いままでどおりのちんぷんかんぷんでわからない、表面的なことしか聞けないのか、その辺捜査当局のほうの実感はどうなんでしょうか。
  91. 星田守

    ○星田説明員 御指摘の点につきましては、私どもといたしましても外務省を通じましてしばしば金東雲一等書記官の任意出頭の要求をいたしておりますし、その後十一月二日に金国務総理が来日されまして金書記官の容疑を認められたというようなことを伺っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、日韓の捜査権が競合いたしておるわけでございまして、本人の身柄を持っておりますところの韓国側に第一次的な裁判権があると思われますので、私どもといたしましては従来どおりの方向で外務省を通じまして事件究明についての協力をお願いをいたすということでございます。先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、国内におけるところのあらゆる状況を捜査いたしまして、従来の基本方針のままこれを継続してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  92. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間も越したのですが、それでもう一問だけして、あと大臣の所信を伺っておいて終わりたいと思いますけれども、いわゆる政府が一件落着、こういつているわけですね、政治的解決を見たと。で、何を政治的解決を見たのかわからないわけです。ですから捜査当局としては解決してないわけなんですよ。ただ解決したといわれるのでお茶濁しでじりじり引っぱっているのか、あるいはあくまで黒と見て確証を握っていらっしゃるわけですから、割り出しをやり、どんどん進めていこうという、ただそこに二国間の問題があるから壁があるということだけにとどまっておるのかどうかということなんですけれども、捜査当局としてはその辺はどうなんですか。
  93. 星田守

    ○星田説明員 私どもといたしましては従来どおりの基本方針のまま捜査を継続いたしておるということでございます。
  94. 沖本泰幸

    ○沖本委員 またあらためてこの問題は掘り下げていきたいと思いますが、大臣としてどういうふうなお考えでこの事件と取り組んでいらっしゃるのか、その辺のお考えを明らかにしておいていただきたいと思うのです、当委員会では初めてお答えになるわけですから。私たちは何もやゆしたりひやかし気分で申し上げているわけではないのです。前大臣はいろんな方向から問題になるような御発言もいろいろあったわけです。それとどうしても比較されるということにもなりますし、比較されるからどうこうというお答えでなくて、大臣御就任になりましてまだこの問題は片づいていない。そういう立場から、いろんな事件内容はもうお耳に入っていらっしゃると思うわけでございますが、そういう観点について大臣としてどういうお考えでこの事件とお取り組みになっていらっしゃるか。その辺だけ、お聞かせいただきたいと思います。
  95. 中村梅吉

    中村国務大臣 外務省としては、韓国の金総理が日本を訪問して陳謝の意を表し、あわせて今後かような事件は絶対に起こさないようにするというような誓約をしたとか、あるいはまた金東雲一等書記官を罷免したり、あるいは情報局長を罷免したりしておるような事柄から、一応政治的解決はこれでついたのだといっておるようでございますが、法務省及び警察関係の捜査の手法的なことは全然別問題でございまして、そのほうがかりにどうなろうとも、警察や法務省としてはいままで捜査を続けてきた捜査方針をそのまま継続をして、今後もできるだけこちらで容疑のある人たちの任意出頭を求めるというような態度は続けていく。それが最終的に一体どこへこぎつくのか、いまのところどうもはっきりしためどがありませんけれども、しかしわがほうとしてはあくまでその方針を続けていこうというのが私どもの現在の考え方でございます。
  96. 沖本泰幸

    ○沖本委員 次回に譲ります。ありがとうございました。
  97. 小平久雄

    小平委員長 正森成二君。
  98. 正森成二

    ○正森委員 最初法務大臣に伺いたいと思いますが、治安担当大臣として、たとえば警察法の二条でも、不偏不党、公平中正な立場で事を行なわなければならないという意味が定めてありますが、法務大臣としてももちろん同趣旨で法の厳正な適用をはかられる、こういうお考えでございましょうか。
  99. 中村梅吉

    中村国務大臣 お説のとおりでございます。
  100. 正森成二

    ○正森委員 そこで、昭和四十八年の十二月三日を中心にして羽曳野市で起こりましたことについて伺いたいと思いますが、まず最初に建設省に伺いたいと思います。  建設省では、昭和四十五年十一月十八日付で建設省住総発第二百二十三号で「特定目的公営住宅等の入居事務について」、こういう通達をお出しになったことがあると思います。その中では「特定目的公営住宅及び改良住宅の入居については、公営住宅法及び住宅地区改良法の規定に従い、合法かつ、厳正に、その事務を執行されたく、法に定める入居者の公募を行なわず、又は入居者を一部特定の団体に加入している者に限る等の違法な取扱いは絶対に行なうことのないよう厳に注意されたい。」こういう文言がありますが、こういう通達をお出しになったことは間違いありませんか。またその趣旨について簡単に説明してください。
  101. 重元良夫

    ○重元説明員 昭和四十五年十一月十八日に住宅局長仰せのような通達を出したのはそのとおりでございます。公営住宅の入居につきましては、公営住宅法の第十六条から十八条までの三条において入居者の募集方法あるいは入居資格、入居者の選考等について規定しておりますが、これは趣旨はあくまでも住宅困窮者に対して住宅を供給するという制度からして、適確に住宅の困窮者に公営住宅が割り当てられるようにということを趣旨として規定したとこでございます。これを受けまして政令でまた選考基準等は定めておりますが、この運用にあたりまして、法令規定に従って実際の運用も合法かつ厳正に執行されることを担保するといいますか、事業主体にお願いするという趣旨で通達を出したものであります。
  102. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、入居者を一部特定の団体に加入している者に限るとか、そこを通さなければ入れられないというようなことはこの通達の趣旨に反するわけですか。
  103. 重元良夫

    ○重元説明員 「入居者を一部特定の団体に加入している者に限る」ということは通達にはっきりうたっておることでございますが、入居者の決定はあくまでも事業主体の権限でございます。しかしながらその決定の前段階、過程におきましていろいろと民間機関の協力を求めることはあろうと思いますが、限るというふうなことは通達にもとることであると思います。
  104. 正森成二

    ○正森委員 あなた非常に歯切れが悪くて日本語らしくなかったけれども、前段は間違えたんじゃないですか。入居者を一部特定の団体に加入している者に限るということでございますがという意味のことを言いましたが、限るということをしたらいけない、こう書いてあるのでしょう。あなた初めの答えでは逆に聞き取れるようなことを言ったけれども、それは間違いであって、一部特定の団体に加入している者に限るなどの違法な取り扱いは絶対に行なうことのないようにというのがこの規定の趣旨でしょう。初めのほうの答弁、速記録を見てもらったらわかるけれども、あなた逆のことを言いましたよ。そうでしょう委員長。——大体なってないじゃないか。言い直せ。
  105. 重元良夫

    ○重元説明員 入居者を一部特定の団体に加入している者に限るというのは違法な取り扱いであるから絶対に行なわないようにという趣旨でございます。
  106. 正森成二

    ○正森委員 そこで、昭和四十八年五月十七日に総審第九十五号で各省次官通達が出されております。それを見ますと、「同和対策事業の執行に当たつては、同和対策行政のめざす受益が対象地区住民に均しく及ぶことが必要であるので、行政の公平性と対象地区住民の信頼の確保についても、今後とも充分留意されるようお願いする。」こうなっております。こういう通達が出されたことは間違いありませんか。総理府、自治省、関係省に出された趣旨をお聞きします。
  107. 小林功典

    ○小林説明員 ただいま先生から御指摘ありました五月十七日付の通達は間違いなく出ております。
  108. 田中和夫

    田中説明員 各省連名通知で出ております。
  109. 正森成二

    ○正森委員 こういうたてまえが守られなければならないということは、いま出席しておられる役人の方も認められました。  また、最初に建設省の方が言われましたが、関係の条文からいいますと、公営住宅法の十六条ないし十八条ですが、十八条に入居者の選考という規定がありますね。そしてその中で「政令で定める選考基準に従い、」と、こうなっておりますが、その「政令で定める選考基準」というのは、私がいろいろお聞きしたところでは政令第六条ですか、入居者の選考基準ということで六号まで定められておりますね。それをさすものだ、こういうように承ってよろしいか。
  110. 重元良夫

    ○重元説明員 そのとおりでございます。
  111. 正森成二

    ○正森委員 ところが羽曳野では昭和四十八年の十一月二十二日に津田市長が、いま建設省が言ったとおりの入居選考基準、これは政令六条と全くといっていいほど同じでございますが、それに基づいて入居者をきめるというように申しましたところが、部落解放同盟の一部の人々がそれでは承知できないということで、いろいろ紛争が起こったという事案であります。  私は現地へ行って調べてまいりましたが、羽曳野市向野というところであります。そこでは四十六年に七十二戸、四十七年に二十四戸建ったわけでありますが、実情を調べてみますと、四十六年の七十二戸のうちでその土地の人、関係者以外の人が相当数入居をしておる。しかも土地の関係者五十数名が申請をしたら、そこの部落解放同盟の向野支部の半田支部長を通じていないからといって当時受け付けてももらえなかったという事態が起こっております。  また、その実情を見てみますと、最も住宅に困窮している人が優先されなければならないのに、たとえばトタン屋根で六畳と四畳半しかない、土間と床とがほんとうにひっついておって、つゆの時分はしつけるし、冬は寒いし、トタンなどは夏は焼けて水をかけるとじゅっと音がする、そういうところに家族五人も住んでおるというような人が入れない。逆に二階建て八部屋ある人が入って、しかも自分は入らないで表札だけかけておるとか、子供が将来結婚するときのためにから家賃をかけて維持するんだというようなことが現実の問題として行なわれておるということが私ども調査で明らかになっております。これは従来昭和四十八年四月に羽曳野市の市長が選挙でかわるまではいわゆる窓口一本化ということで、その土地の部落解放同盟の支部の手を通さなければ入居者をきめないということになっておりましたためにこういう手落ちが起こったということがもっぱらのうわさあるいは実情であります。こういうことが事実であるとすれば、あなた方の繰り返し出された通達に反するものであるというように私どもは思いますが、そうではありませんか。
  112. 重元良夫

    ○重元説明員 入居者の決定権は事業主体の長にあるわけでございますが、いま御指摘のような事実がございますれば、法令あるいは通達等の趣旨に反することになろうかとは思います。
  113. 正森成二

    ○正森委員 そこで今度警察のほうに伺いたいわけですが、そういうことで十一月の二十二日に市長が建設省の通達あるいは公営住宅法に基づく政令、そういうのに合致した入居基準を出したことからそれを変えろということで部落解放同盟の一部の方たちが動員をなさるということが起こりました。  そこで私は時間がございませんので二日間の事実について聞きたいと思いますが、たとえば十一月二十八日には一時半から三時まで、その土地には部落解放同盟正常化連絡会議羽曳野支部というのがありますが、その方たちと交渉を市長がすることになっておりましたら、百数十名の部落解放同盟関係の方々が市長室や助役室を占拠されて、これから正常化の方と会わなければならないのだから出ていってほしいということを言いましても出ていってくれなくて、結果的に正常化の人との会談の約束が実行できなかったという事態があります。警察はこのことについて、杉山弁護士等を通じてこういう事態をなくしてほしいという要請を受けたはずでありますが、それに対してなぜ適正な措置をとられなかったのか、お聞きしたいと思います。
  114. 星田守

    ○星田説明員 ただいまの十一月の二十八日の件でございますが、この問題につきましては確かに杉山弁護士のほうから市長室でもめておるから来てほしいというお話がありましたが、当時現場に警察官が警備係長外四名が出ておりまして警戒いたしておりましたし、それから職員の人からも状況を聞きましたところ、問題になりましたのは、第三者の人に出てほしいということで、これが中心になって押し問答が続いただけで、そのほかは平穏に交渉が行なわれた、こういうふうな報告でございましたので、私どもといたしましては事態の推移を見守ったということであります。
  115. 正森成二

    ○正森委員 平穏に交渉が行なわれたという話ですが、私は現地へ行って市長から聞いてまいりましたが、とてもそういう状況ではない。特に市長たる者が一時半から三時まで別の人にその同じ場所で交渉することになっているのに、突如としてそれ以外の人が百数十名押しかけた場合に、そういう人と平穏に会うなんということがあろうはずがない。どうしても会えるような状況にしてほしいということを繰り返し要請したにもかかわらず、それが実行できなかったから、結果的にその場にとどまるということになったわけであります。あなた方のそういう判断及び情報については、私どもは非常に誤ったものであるというように思っております。  時間があれば伺いますが、十二月三日の件をきょうは中心に聞きたいと思いますので、十二月三日のことに移りますが、十二月三日に一時半から三時までという約束で六人の部落解放同盟関係の人に会うことになっておったのは御承知のとおりだと思います。ところが、三時がやや過ぎまして三時十分前後になりましたので、一応きょうはこれで終わりだということになりますと、助役室等に待機しておりました三、四十名の方が、市長の了承なしに部屋の中へ入ってこられまして、そして市長のまわりの土間にすわり込まれるという状況が起こり、市長が繰り返し退去を要請しあるいは自分が出るというように言ったけれどもそれが実行されなかった、こういうことになっております。またあなた方のところにも、そのことについて市長が出られるようにしてほしいという要請が何度か事前にもありましたし事態が起こってからもあったと思いますが、それに対してあなた方はどういう措置をとられましたか。
  116. 星田守

    ○星田説明員 この問題につきましては、二日の日に要請がございまして、私どもといたしましては午前八時から部隊を用意いたしまして、当日は二十名の私服警察官を市役所内外に配置をいたしておりますし、さらに百二十九名の制服の部隊を前進待機させておるわけでございます。  先ほどお話がございました三時十分ころの問題につきましては、私どものところの向井警部が直接中へ入りまして、市長に対して市長の意向を確かめております。同時に、交渉を打ち切りされるのであればその旨を明確な措置をとられるように、助役や各部長もおられますから、そこで一体としてその措置をおとりいただきたいということを申し上げておりますし、同時にあわせて部落解放同盟の方々のほうに対しても、多数で大声を出したり暴力行為あるいは実力で市長が出るのを阻止をするようなことをやれば、警察としては放置しない、大声をあげるだけでも犯罪になる場合があるということで警告を行なっておるわけでございます。ただ、その後も市側のほうから何らの行動がとられなかった、こういう状況でございます。
  117. 正森成二

    ○正森委員 あなたはどこの報告か知らないけれどもそういうことをおっしゃるが、私は現地で市長からもまた部長クラス七、八名からも事情を聴取してまいりましたし、また羽曳野警察署、大阪府警本部へも行って片岡本部長からも聞いてまいりました。あなたはそういうようにおっしゃっておりますけれども、当日時間は若干当事者によって違いますが、四時前あるいは五時ごろということで主治医が二度にわたって診察をし、ふだんは血圧が非常に低い人が百八十にもなる、ドクターストップがかかるという事態が起こり、そして繰り返し外へ出してほしいということがあなた方に伝わっておる。庁舎内に私服警官が二十名もおるというにもかかわらず、何らの措置をとられなかったということを言っております。これは公人である市長がそういう状況におとしいれられているのに、警察が百二十九名も制服部隊を用意したのはいいけれども、それはやはり宝の持ちぐされということになるのじゃないか、こう思いますがいかがですか。
  118. 星田守

    ○星田説明員 全体的な経緯につきましては、実は私も大阪へ行きまして直接この向井警部なりあるいは三浦警視、それから西村警視から事情を聞いております。(正森委員「いつ行きましたか」と呼ぶ)十日の日でございます。それで、私どもの立場から公正に把握しておるつもりでございます。ドクターストップの問題等はございますが、繰り返しこういう点につきましては、私どもといたしましても市長側の意向の確認ということを行なっておるわけでございます。  ちなみに、五時四十五分から樋口という警備係長が現場の警戒に当たっておったわけでございますが、民生部長室で会議を終わられまして、そして市長が出てこられたわけです。そのときに市長が、もう出るから出してくれ、こう言われたというふうな報告がありましたので、念のため、いよいよこれでは打ち切りでお帰りになるのですねということを確かめましたところ、このときに同行しておられました助役のほうから、市長さん、いま部落解放の人ともう一度話し合ってからにするといったのがこの会議の内容ではないのですか、こういう話が出されまして、それで市長はまた、そうやな、もう一回会ってからにしようか、こういうことで、自分から自発的に市長室に行かれた。そのときに、警備係長に対して、ついてきてくれ、こういう話がありましたので、樋口警備係長が一緒に市長に随行いたしまして市長室まで行っておるわけでございます。そして、交渉の中に警察官が入るというのは穏当ではございませんし好ましくありませんので、室外に出て警戒に当たった、こういう状況でございます。
  119. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ言っておられますが、それでは私から聞きますが、警察関係者が市長室に入ったのは二回のようです。第一回目の三時五十分ごろに、向井警部やあるいは脇村という羽曳野の警備課長ですか、これが入ったときに、平穏に行なわれるなら交渉を続けてくださいというようなことを、市長が早く出たいというのに、しかも市長の許可なしに三十数名が入ってきて、部屋の中へすわり込む、踏まなければ外へ出られないという状況が起こっているのに、なおかつ平穏に行なわれるなら続けてください、そして出られるなら管理措置をとってくださいということを言うだけで帰っておる。管理措置というのは一体何なんだ。市長が自分で出たいと言っているのに、なおかつ管理措置がなければ措置がとれないというのは、はなはだおかしいことではないか。これはだれが常識的に考えてもそう思うのですね、市長は管理責任者なんですから。しかるに管理措置をとってくれということだけを言い、市長が出たいと言っているのに、そしてまた数名が穏やかに話しておるならともかく、まわりを全部、床にまですわり込んで出られないようにしているのに、平穏に行なわれるなら交渉を続けてください、いやしくもそういうことを中に入っておる警察官が断じて言うべきではない、こう思いますがいかがですか。
  120. 星田守

    ○星田説明員 三時四十分ごろに市長室に入りまして、市長に対しまして、現場を見てくれというふうな電話があったので来たがどうですかということを聞きますと、市長は外に出ようと思っておる、こういう話をされまして立ち上がりかけましたところ、市長さんもう少し話し合ってくれ、こういう話があって、そこで市長が再びいすにおすわりになった、こういうことがあったようでございます。
  121. 正森成二

    ○正森委員 私は片岡警察本部長にも聞いたのですけれども、片岡さんと話をするときにも、片岡さんはわれわれ国会議員の人数を制限されました。それぐらいのものですね。私は片岡さんに、かりにあなたに用事があってこれで打ち切りたいと言われたときに、私たちが済んでいないからもう三十分話をしてくれと言ったら、それはあなたは聞かれるかもしらぬ。しかしそのときに、私ども調査に行きましたときも、党の関係者がやっぱり数十名おりました。それが無断で本部長の部屋へなだれ込んできて、あなたが出られないようにまわりに全部すわり込んで、そうしてもう一時間やれ、二時間やれと言ったら、あなたは言うことを聞きますかと言ったら、片岡本部長は答えられなかった。本件の場合はそういう事態が起こっているのです。あらかじめ約束の六名、六名で話がつかないからもうちょっとやってくれと言っているのではないのです。突如として許可もないのに狭い二十平方メートルぐらいのところに三十数名来て、通るなら踏んで行けというようなことを言うて、そういう状況の中で市長が出たいと言っているのに市長が立とうと思ったが話したいというのでまた坐ったから話をするつもりだった。それはそうですよ。出られないからです。私は部長に聞いたけれども、出ようと思っても出られない、踏んで行けと言う、踏んだらまた踏んだのは差別だと言われる、だから出られなかったのだと言っているのです。そういうことをたなに上げて、出ようと思って腰を浮かしたがまたすわったから、だから平穏に話し合いを続けた。もってのほかじゃないですか。しかも五時前後のときに市長が警察にお願いしたときにはこう言っているのですね。救出方法をとってくれと言ったら、警察は、部長みんなで相談してこれが体力の限度だということをはっきりしてくれ、それでないとできないというようなことを言っておる。一体、市長が出たいと言うのにあらためて部長会議を開いて、部長が市長の体力はこれでは限度だということを言わなければ警察は出動しない。そのドクターが信頼できるかどうかは別として、いやしくも主治医であるドクターが血圧が百八十でストップだと言っておるのに、あらためて部長が相談をして、体力が限度だと言わなければ百二十九名の制服は出ていかないのか。もってのほかだと思いますけれども、いかがですか。
  122. 星田守

    ○星田説明員 ただいまの話につきましては、私のほうでは聞いておりません。ただ、この部長会議をおやりになったときに診断されたという状況は聞いておりますが、そのあと状況につきましては、先ほど御答弁さしていただいたとおりでございます。
  123. 正森成二

    ○正森委員 そういう一番自分の痛いことについては知らぬ存ぜぬと非常に都合のいいことを言われる。しかし、私は他の国会議員とともに部長が一名を除いて全部そろっておる席で聞いたのです。そこで部長がそう言って、それを否定した人はだれもおりませんでした。私は安原刑事局長に伺いたいのですが、刑法で二百二十条に逮捕監禁罪があります。また百三十条には住居侵入、不退去罪が規定されております。この構成要件について聞きたいのですが、百三十条の場合には「又ハ要求ヲ受ケテ其場所ヨリ退去セサル者ハ」というのが構成要件になっております。また二百二十条では「不法二人ヲ逮捕又ハ監禁シタル者ハ」と、こういう構成要件になっております。この構成要件の中に、自分の意に反して出られない場合に、体力がある程度消耗しなければこれらの犯罪は成立しないというような判例があり、それに基づいて検察庁はいろいろの公判維持を行なっておられますか。
  124. 安原美穂

    ○安原政府委員 いまおっしゃった体力が消耗するまでは不退法罪にならないというような判例は不幸にして存じませんし、検察庁の捜査としてもそういうことはやっていないと思います。
  125. 正森成二

    ○正森委員 私は法律家としてそれは当然のことであると思います。ところが、私が羽曳野警察署また片岡本部長に会いましたときにも、一体どういう状況になったら出動するのだ、こういうことを言いましたら、まず監禁の状況とそれから市長の体力、健康状態、その限界がどうであるかということで警察が独自にきめます。幾ら要請がありましてもそれは警察が独自に判断します、こう言っております。私はそういうことでいいのか、いつから日本の刑法がそういうようになったのですかという意味のことをもう少しえんきょくに申しましたけれども、相手が本部長ですから、またこの間まで交通局長をしておられた方ですから言いましたけれども、もってのほかじゃないですか。かってに警察が日本の刑法の解釈を変えてしまって、市長が外へ出たい、救出しろということを繰り返し言っても、部長会議を開いて体力の限界であるかどうかということで要請しなければできない。警察本部長まで健康状態というものを考えて警察が独自できめると言う。いつから、要求を受けて退去せざるも要求する者の体力がある限りは住居侵入や不退去罪は成立しない、監禁罪は成立しない、こんな法律に日本はなったのですか。そういうものをもし法のもとに平等にやるなら、あなた方をだれかが監禁をして、要求しても、それでもあなた方が少々ぴんぴんしておれば、何ぼあなた方が出ると言っても犯罪は成立しない、したがって機動隊は要請できないという解釈になり、全国の労働組合などはそういうことであなた方に対してもいいのか。そんなことはいけないでしょう。それだったらあなた方も同じような態度をとらなければいけないじゃないですか。どう思いますか、法務大臣。いま刑事局長がお答えになりましたけれども、それが法律の解釈だと思うのですね。ところがそれに反することが行なわれる。もし反することが行なわれるなら行なわれるでもよろしい、同じようなことが官庁に対しても警察に対しても行なわれなければならない。もし中村法務大臣をどなたかが監禁して、あなたが出たいと言われる。しかし健康状態をお見受けしたところよろしい、顔色もよろしい、こうなればまだもう三時間ぐらいもつだろう、中村さんだったら一日ぐらいもつかもしれぬ、警察は出てこない、これでいいのですか。私はそれじゃいかぬと思いますね。どうですか大臣
  126. 中村梅吉

    中村国務大臣 抽象的には刑事局長がお答えしたとおりだと思います。ただ、この問題は具体的な問題でどうも事実関係がよくわかりませんものですから、私ども判断できませんが、とにかく法律解釈としては刑事局長がお答えしたとおりでよろしいし、またわれわれもそういうように考えなければならぬ、かように思っております。
  127. 正森成二

    ○正森委員 星田さんどうですか。そんな解釈になったら困るでしょう。あなただって被害者になる場合があるのですよ。
  128. 星田守

    ○星田説明員 私どももそういう解釈はとっておりません。問題は市長さんがやはりみずからの意思で交渉を継続されたというところにある、こういうぐあいに私どもは受け取っております。
  129. 正森成二

    ○正森委員 市長さんがみずからの意思で交渉を継続されたと認定されておるようですけれども、それが大きな誤りであって、市長は繰り返し要請もしておるし、また秘書係長なとを通じて——秘書係長は名刺まで渡してお願いしておるということを言っておるのに、それが実現されないということは、これはよろしくないと思うのですね。  そうしますと、市長さんが交渉を継続されたというようにあなた方は認めておられるようですけれども、あるいは管理措置をとってくれということを言われた方もおられるようですけれども、私今後のために聞いておきたいのですが、どういう状況なら、市長さんがどういう態度をとられれば、あるいはどういう管理措置をとれば必ず救出する、こう言われるのですか。誤解のないように言うておきますが、私はその場合にそのいわゆる取り囲んだ人を全員逮捕しろとかあるいはそれを必ず起訴しろとか、そんなことは言ってないのですよ。全員逮捕しなければならないかどうか、起訴するかどうかは、それは警察と検察庁が考えることだ。しかし要請がある場合に救出するということまではやらなければいけない。それをその後どういう具合に法的措置をするかはまた別問題で、そういう事案があったから必ず逮捕しなければならないとか必ず起訴しなければならないということはないわけですからね。そこで、どういう状況ならあなた方は実力を行使して救出するというようにされるのか、それをぴしっと答えてください。
  130. 星田守

    ○星田説明員 先ほどから繰り返し申し上げておりますように、明確な意思を表示していただきたいということでございます。
  131. 正森成二

    ○正森委員 その明確な意思を表示していただきたいというのはどういうことなのか、それを聞かしていただきたい。
  132. 星田守

    ○星田説明員 この交渉を実際に継続されるのか、あるいは席を立って帰られるのか、そういうのをやはり示していただきたい、こういうことでございます。
  133. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、自分のまわりにびっしりすわり込んでいるときに、そしておれの要求をのまなきゃ帰さぬぞ、場合によったら、命があると思うているのかというようなことを言うている場合に、自分の意思を明瞭に示すという場合には、おれはもうやめなんだ、出たいんだというだけではだめで、あとどういうことをやらなければいけないのですか。私が言いましょうか。立ち上がってそして戸口へ歩いていくということをやれ、こういうことですか。
  134. 星田守

    ○星田説明員 それも一つの態様だと思いますが、そのほかにもいろいろな方法があると思います。
  135. 正森成二

    ○正森委員 だからそれを遠慮せずに言いなさい。
  136. 星田守

    ○星田説明員 結局要約いたしますと、自分はこの話し合いを打ち切るなら打ち切る、そういうことをはっきり意思表示をお願いいたしたい、こういうことでございます。
  137. 正森成二

    ○正森委員 だからそれは意思表示しているから、そのほかにどういうことが要るのか。
  138. 星田守

    ○星田説明員 それはもうございません。
  139. 正森成二

    ○正森委員 坂本九ちゃんじゃないけど態度で示そうよ、こうなって、どういう態度を示せばいいのですか。
  140. 星田守

    ○星田説明員 いま申し上げたようなことでございます。
  141. 正森成二

    ○正森委員 わからぬ。市長が繰り返し言うているし、弁護士を通じて言わしているし、秘書室長を通じても言わしているのだから、だからそれでもだめだとなれば、まわりを取り囲まれておっても戸口まで歩いていくということ以外にはないじゃないですか。それ以外にはどんなことがあるのだということを言っているのです。それをあなた方が具体的におっしゃれば、星田さんともあろう方がそう言ったのだから今度それをしても救出してくれなければ星田さんの責任だということになるから、はっきり答えてください。
  142. 星田守

    ○星田説明員 今度の事件、前の吹田の事件もそうでありますけれども、打ち切るような打ち切らないような、態度が非常にはっきりしないということでございました。そういうことからたびたび私どもも市長の意思を確認したということでございます。それで七時十分ごろでございますか、市役所の秘書課員の杉本さんという方、この人から大西公室長を通して正式に救出の要請が出たということがございましたので、私どものほうの警備課長が市長室に参りまして直接市長から今度はもうはっきり出ますからということを言われたので、一方直ちに部落解放同盟の責任者の方に対して市長の退去を妨害してはならない、妨害した場合には部隊を出して措置する、こういう警告を行ないました。そういう状況でございました。
  143. 正森成二

    ○正森委員 あなたはそう言われますが、私どもが調べたところでは杉本さんを含めて関係者から聞いたのですけれども、いわゆる七時十分ごろに要請をしたら、その後あなた方の警察のほうから連絡があって要請があったけれども、いま解同を呼んで要求をスローダウンして機動隊を出さずに済むようにしておるからもう少し待て、こういう連絡がありました。何ですか、あなた方は。要求をしたときには、要求がない要求がないと言い、やっと確認しなきゃならないようになれば救出をせずに逆に解放同盟を呼んで要求をスローダウンして、おれたちが出動しなくてもいいようにしろ、こういうことを言うておる。示談に入っておる。それが一体警察の態度ですか。こういうことをやっているのですよ。私はこのことも全部現地へ行って秘書関係の人や部長から聞いてきておる。あなた方はえらいきれいなことをおっしゃるけれども、実情はこういうことじゃないですか。また私があえて言えば態度で示そうよということで幾ら口で言ってもだめだ。あなた方は態度で断固と示せというけれども態度で断固と示すといえば、立ち上がって歩き始めるよりしかたがない。回りぎっしりと取り囲んでいる、みな踏んでいけと言うておる。そうすると市長たるものがどいてください、どいてくださいと言ってもどかないとこうなれば、態度で示そうと思ったら手なり足なり踏むよりしようがない。そうすれば踏んだなということで身体に危害が加えられるような、そういう紛争が起こるかもしれない。それをやらなければ明確な意思がないから救出しない、そういう解釈がまかり通るのであれば、これは中村法務大臣にとっても、田中総理大臣にとってもゆゆしいことだと私は思いますよ。そんな解釈はとるべきじゃないんじゃないですか。なおかつあなた方は、そうしなければ救出のために実力は行使しないと言われるのですか、そこを聞きたい。
  144. 星田守

    ○星田説明員 繰り返し御答弁いたしておりますように、交渉を打ち切るのか、それとも事実的に続けられるのかということがはっきりいたさなかった、こういう状況でございますので、当方としては意思の確認ができなかった、そういうことでございます。
  145. 正森成二

    ○正森委員 私の直接の質問に答えておりませんが、交渉を継続しないという意思の確認ということを言われますが、向こうがいろいろ言ってくる、ものを言わなければわっとどなるというようなことがある場合に、交渉を継続しないということの意思の確認というのは結局どういうことになるのですか。全然ものを言わないで交渉はやめだというようなゼッケンでもここへつけろということですか。それとも一歩踏み出して紛争が起こるような事態にまでなる、このどちらかしかないということですか。それともそこまで至らないで交渉を継続しないという意思が確認できる方法があるというならそれを言うてください、今度そういう紛争が起こらぬように。
  146. 星田守

    ○星田説明員 ただいまのことにつきましては、繰り返し申し上げておりますが、交渉の意思があったかどうかということにつきましては、先ほど御答弁いたしましたように、五時四十五分までの——四時四十五分トイレに行かれたときですが、それ以降一時間にわたって市長を中心にして部長会議を開かれているわけでございます。その中でもう一度話し合ってするという結論を市長を含めた部長会議で御決定になっているということがございますので、その点について私どものほうからもう一度確認いたしましたところ、もう一度会ってからにしよう、こういう市長の話があったということは一つの事実としてございます。
  147. 正森成二

    ○正森委員 私の言ったことにちっとも答えないで、要らぬことばかり言っておるということでは、星田参事官の答弁能力を疑うということにならざるを得なくなる可能性がありますよ。だから、そういう横道のことを言わずに、やはり今後紛争が起こらないように、どうすれば警察は出やすいのか。何も出やすいといって私は無理やり出てほしいというのではありませんよ。しかし、実際上救出しなければならないときには、警察に御迷惑をかけぬようにするにはどういうようにするのが一番いいのか、こう言って聞いているんですから、それを横のことばかり答えるというのはあなたよくないと思うな。だから、もう一度答弁に立ってもらうから、どうすればあなた方として確認しやすいのかということを一言、二言で答えなさい。
  148. 星田守

    ○星田説明員 繰り返し申しておりますが、明確な意思の表示をお願いいたしたい、こういうことでございます。
  149. 正森成二

    ○正森委員 明確な意思の表示をお願いしたいというような、何とかの一つ覚えみたいなことだけを言われるけれども、そのことをそれではきょうは時間がありませんからまたあとであなたと詰めるようにしましょう、日本語としてどういうように理解したらいいのか。  そこで、最後に外務省に一つだけ聞きますが、きょうの朝刊に、金大中氏の出国要望ということで、外務大臣が離任の李大使に「一日も早く金大中氏を出国させることが望ましい」こう韓国政府首脳に伝えるよう要請した。そうして、ここからあとは朝日の記事でございますが、「閣僚会議を早ければ二十四日にも開催する意向を固め、それに間に合うよう金大中氏の処遇について決断することを求めたものとみられる。」こうなっております。これはそういうことでございますか。もし二十四日までに出られないというようなことがあれば、閣僚会議はどうなさるおつもりか。一言だけ、もう時間がありませんから……。
  150. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま御質問の前段はそのとおりでございますけれども、後段は推測記事でございまして、私どもはまだ何日に開くということはきめておりません。
  151. 正森成二

    ○正森委員 それでは、そういう要請をされて、それを極力実現するように外務省としても外交折衝をするということは事実ですか。ただ大平さんが言うただけでなしに、現地の駐韓日本大使を通じても韓国の外務省にそういう措置をされる、あるいはしている、こう承ってよろしいか。
  152. 中江要介

    ○中江説明員 従来ともハイレベルでこの折衝はしております。今後も続ける所存でございます。
  153. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  154. 小平久雄

    小平委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十八分散会