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1973-12-17 第72回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十七日(月曜日)     午後三時五分開議  出席委員    委員長  平林  剛君    理事 稲村 利幸君 理事 木部 佳昭君    理事 倉成  正君 理事 橋口  隆君    理事 井岡 大治君 理事 松浦 利尚君    理事 野間 友一君       上田 茂行君    加藤 紘一君       片岡 清一君    羽生田 進君       三塚  博君    粟山 ひで君       山崎  拓君    山本 幸雄君       金子 みつ君    中村  茂君       増本 一彦君    有島 重武君       石田幸四郎君    和田 耕作君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君     ————————————— 十二月十四日  物価値上げ反対に関する請願(神崎敏雄君紹  介)(第四九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民生活安定緊急措置法案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 平林剛

    平林委員長 これより会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村茂君。
  3. 中村茂

    中村(茂)委員 私は前回、俗にいう一億円事件内容についていろいろお聞きしたわけでありますが、その後通産省調査に基づく報告を若干受けました。それから新聞等に出ておりました通産省村岡課長談話等新聞で一応目を通しました。そういう中で痛切に感じましたことは、この事件がただ単に表面に出てきている問題ではなしに、いわゆるトイレットペーパーパニック事件に発展した私は好むと好まざるとにかかわらず、原因になっている、そういう角度からこの問題を十分調査し、検討してみなければならない問題だ、こういうふうに思うわけであります。まだ報告にははっきりしておりませんけれども前回私が申し上げましたように、この談合が成立するときに、業者自身操短を十日間行なうということ、それは公取でまた調べるというふうに言っておりましたけれども、まだその結果どうなったか私は知りませんけれども、いずれにしてもこういう在庫融資を行なう際に、業者操短を行なうということを前提にして、またそういうことをきめてこういう問題に取りかかっているということは、私はその前提として非常に重要な問題だというふうに思うわけであります。そして、いままではこういう在庫融資については銀行等から借りていたけれども、ことしは三井物産から融資を受けた、そこに誤解があるだろうというような発表をしておりますけれども、ただ単に私は、そのこと自身は、銀行から金を融資されようが、三井物産から融資されようが、そういう商売上のことでありますから問題にしませんけれども、しかし総合商社である三井在庫融資をするということは、その在庫担保にして融資をし、この事件は途中で放出命令が出たわけでありますから、メーカーの手に物はあったというふうにいいますけれども、何で三井物産在庫融資するかといえば、それが完全に行なわれた場合には、その製品三井物産の手を通して流通機構に乗り、販売になっていく、そういうことをやはり考えてみなければならないと思うわけであります。一口に言えば、こういう現象を見る目というものがどうしても業者寄りの目、こういうもので見、分析しているというところに姿勢上非常に問題があるというふうに私は思うわけであります。特に前回も申し上げましたけれども、いまここで討議されております生活安定緊急措置法案標準価格というものをきめる際ほとんどの品物通産省の手によってきめられる内容になっております。大臣がきめるわけではありません。そこの皆さんが、特にこの新聞で発表しておりますような課長クラスのところで検討され、おそらくきまるでしょう。そういう人たちが、業者のこういうものを見る目というものが全く業者寄りの目で見るというその態度に対して私はどうしても納得できないわけであります。この法案が通って、いま申し上げましたように、価格がきまってくるという場合に、その姿勢標準価格がきめられたらたいへんであります。そこに私どもが言っておりますように、どうしても高い基準できめられる、こういう内容が、または懸念がそういう中から生じてくるわけであります。ですから、この問題を通じて私は痛切に感じましたのは、いま申し上げました一点。  それから二点目には、これはなお調査して報告を受けたいと思いますけれども、こういう中身で、何月何日にどのくらい放出したという表が出ておりますけれども、では放出したときにはどのくらいの価格で、どういう流通機構を通って、どこへ行ったときはどういう価格で、そして消費者に渡ったときはそれは幾らになったのだ、それを追跡して、その中身を明らかにしてもらわなければどうにもなりません。ちょうどこの放出した時期は非常に問題が起きていまして、実際に消費者の手に渡るには、普通この大束が二百二十円くらいだったものが四百円、五百円、八百円というふうに値が上がってきていた時期であります。はたしてこの放出したものがどういう流通経路で、消費者に渡ったときは幾らになった、これをはっきりしていただかなければ、この事件内容の本質をつかむことはできません。したがって二点目には、その流通経路、どういうふうに消費者の手に渡って、消費者には幾らで渡ったのだ、こういう点をひとつ明らかにしていただきたいというふうに思うわけであります。
  4. 内田常雄

    内田国務大臣 これは通産省のほうの担当局長もお見えでございますから、中村さんがあげられたこの調査の、その後のまた通産省側調査についても報告があると思いますが、この法律の仕組みを、全体を通しまして総括的運営立場にある私といたしましては、これは次のことをぜひ申し上げておきたいと思います。  たとえば標準価格などのきめ方につきましても、業者カルテル的な話し合いの結果がそのまま標準価格の中に織り込まれるようなことはあってはならない。また同時に先取り的な価格業者が今日の事態においてきめましても、それは標準価格をきめるその際におきまして、私どもが合理的なものだと認めない限り、先取り価格をそのまま標準価格として吸収するような考え方は、大臣の私としては全くない。したがってそれは各省にも私の考え方を、今度できますところの国民生活安定緊急対策本部というような、そういう内閣的な各省の会合におきましても、私は私の立場から徹底的に関係各省に要望をいたすということが一つでございます。  もう一つは、いまのちり紙事件のことはこの夏のことのようでございますし、そのころ紙が買占め防止法指定品目になっておったかどうか、あるいはそのときはまだ買占め防止法指定品目にはなっていなかったと思いますが、今日ではなっておるわけでありますから、いやしくも何か担保金融というようなことに、そういう形をとることによって変形をされた買占め行為のようなことが、これは今後において、紙にかかわらず行なわれるようなことがあってはならないと思います。ことに今度の国民生活安定緊急措置法におきましては、買占め防止法の条項も一そう厳重に改正をはかっておるわけでありますから、買占め防止法の精神というものは従来よりもその運営が一そうきびしくあるべきだということを考えますときに、私はいま述べましたような擬装されたる買占めというようなものについても十分それは注意を払っていかなければならない、かまうなことを私の考え方として、良心としてまず申し上げておきます。
  5. 橋本利一

    橋本政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたように、いささかなりとも疑惑を招くようなことにならないように自重自戒いたしたいと思います。今後の行政姿勢にも生かしてまいりたいと思います。特に標準価格決定にあたりましては、厳正に実施することといたしまして、平常時における販売価格等とも対比しながら、便乗値上げ的なものは徹底的に排除いたしたい、かように考えております。  それから、調査につきましての価格流通経路あるいは消費者に対する販売価格等につきましては、さらに追跡して調査してまいりたいと考えております。
  6. 中村茂

    中村(茂)委員 この操短については公正取引委員会調査しているのですか。
  7. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 少し古い話になりますが、ある程度調査をした実績がございます。しかしその結果については、はっきりとした独禁法違反の事実がその段階では確認できなかったということでそのままになっておるわけであります。
  8. 中村茂

    中村(茂)委員 特に操短の問題ですけれども、これははっきりと三井在庫金融を行なうこととあわせて操短の問題が話し合われている問題ですから、もう少しこまかく調べて内容を明らかにして、次でいいですけれども、見解もあわせてお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。  それから、いま局長から、疑惑を持たれないように自戒してやっていきたい、こういう御答弁があったわけであります。また長官からも態度表明があったわけですけれども、私は特にこの問題をめぐっては、通産省態度、それから今後の価格決定等に伴う態度をどうしても大臣から実は聞きたいというふうに思っていたわけですけれども、お見えになりませんから、その点をひとつ保留しておきたい、こういうふうに思います。  そこで次に入らしていただきますが、標準価格決定について、そういういま申されたようなきびしい態度で臨んでいく、こういうお話ですが、どうもそういう態度表明だけではなかなか理解できませんので、いま問題でずっと取り上げてまいりましたちり紙またはトイレットペーパー基準を合わせて、この法案が通って、トイレットペーパー等標準価格をきめるとすれば、具体的に幾ら標準価格がそこへでき上がるのですか、明らかにしていただきたいというように思います。
  9. 橋本利一

    橋本政府委員 まずトイレットペーパーにつきましては、御承知のとおり原料にパルプを使うかあるいは古紙を使うかのほかに、長さだとか幅だとか色だとか、いろんな組み合わせがございまして、種類が百程度あるというふうに承知いたしておりますが、ただ生産静岡で半分ということになっておりますので、まず標準品目としては静岡産のもので古紙原料として使うもの、五十五メートルのもの一ロールにつき幾ら、かような形で標準品目について標準価格決定いたしたいということで作業いたしておるわけでございます。いまの段階ではまだ幾らになるかということを申し上げるまでには作業が進捗いたしておりませんが、先ほども申し上げましたように、当方でいろいろ検討いたしました結果、その中でも特に過去の平常時、通常時における価格等とも対比いたしまして、少なくとも便乗値上げ分といったものは排除いたしたい。ただその間、原料故紙中心といたしましての値上がりが、ものによっては二倍から四倍にもなっております。そういった事情も勘案する必要もあるかと思いますが、少なくとも便乗値上的な標準価格は設定しないということを申し上げたいと思います。
  10. 中村茂

    中村(茂)委員 ここに十一月三日分新聞があるわけですけれども、そこでちょっと読み上げてみますと、「同省では」というのは通産省のことですけれども、「同省では静岡産の標準もの卸売価格は一パック百四十円。小売価格はスーパーで二百円程度一般小売店では二百二十円から二百三十円が標準価格であり、」まだこの法案は通っていないけれども標準価格という言い方で新聞に出ているわけです。これはやはり静岡産のもので、トイレットペーパー、これは大束ちり紙と若干値段は違いますけれども、いずれにしても一般小売りでは二百二十円から二百三十円が標準価格である、こういうふうに言っているわけです。しかしこれは便乗値上げになるのかどうかわかりませんけれども、いま町でどのくらいで売られているかといえば、三百円以上、場所によっては四百円、この程度で売られていますよね。そこで私は、この便乗値上げというような問題や、特に問題を起こしたものについて、標準価格というもみについて新聞にこの程度標準価格だろうというふうにはっきり言っているんだから、もう少し態度を明らかにしていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  11. 橋本利一

    橋本政府委員 新聞記事について私のほう、まだ十分読んでおりませんが、現在のトイレットペーパー販売価格小売り価格は地域によって、あるいはものによって違いますが、大体二百三十円から先生も御指摘のように三百円程度のものまであるかと思います。当方といたしましては、これをできるだけ値段を下げさせようという方向で、たとえば先ほど申されました百四十円というような、かつて十月の終わり、十一月の初めころに現地におけるメーカー出し値として指導したいということで言っておった数字に大体合致しております。百四十円ないし百六十円くらいになるかと当時言っておったわけでございますが、その他の数字につきましては、私のほうといたしましては、新聞記事のいかんにかかわらず極力引き下げる方向で努力したい。ただその場合に、故紙価格をどこまで引き下げられるかということがきめ手になると思いますが、いまの段階でいかほどにするかということはまだ申し上げかねる段階でございます。
  12. 中村茂

    中村(茂)委員 そこで、私が先ほど問題にしましたこの静岡産のちり紙大束でいままではずっと百五十円だった。そして大体消費者に入るのは、やはり二百円から二百二十円程度。それがいま四百円から五百円で消費者の手に渡っているわけでありますけれども、これは標準価格をつくる場合に、いまのトイレットペーパーのこの静岡産の例でいいのか、どの程度になっていくのか、ひとつ明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。
  13. 橋本利一

    橋本政府委員 トイレットペーパーにつきましては、ただいまも申し上げましたように種類は多うございますが、大体標準品目というものは比較的把握しやすいという状況にございます。ちり紙のほうもやはりトイレットペーパーと同じく種類も多いわけでございます。その反面、中心品目的なものがなかなかつかまえられないという点が若干トイレットペーパーと違うようでございますが、ちり紙についても標準価格を設定するような場合には、必ずしもトイレットペーパーとのバランスの問題でございませんで、ちり紙自体の実態をよく把握いたしまして、適正と思われる点に標準価格を設定すべきだと考えます。
  14. 中村茂

    中村(茂)委員 だから私の言っているのは、もう少し具体的に、適正というような表現ではなしに、いずれにしても百五十円のものが、いままで二百円ないしは二百二十円程度のものが、トイレットペーパーパニック事件を通じて大束八百円までいって、いまでも四百円している値段ですよね。それじゃ便乗値上げなりそういうものを押えるとすれば、先ほどき然たる態度で臨むというのだから、これはどの程度になるのかという不安は、私ばかりではなしに、こういう問題についてはどの程度にきまるということは国民の非常に関心のあるところだというふうに私は思うのです。白紙委任を私どもはするつもりはありませんから、適正なんという表現ではなしに、もう少し具体的に明らかにしておいていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  15. 橋本利一

    橋本政府委員 先生指摘の現在四百円ないし八百円になっているという品目につきまして、過去の平常時、正常な時点における販売価格幾らであったか。先ほど申し上げましたように、ちり紙等につきましても種類が非常に多うございますので、先生の御指摘の四百円ないし八百円の価格になっておるちり紙とそれの平常時における価格と比較いたしまして、極力低い線に落ちつけるようにいたしたい。四百円ないし八百円といったようなアブノーマルな価格をそのまま取り入れるという気持ちはございません。
  16. 中村茂

    中村(茂)委員 これ以上申し上げませんけれども、いずれにしてもここ三カ月の間に二倍、三倍、そうして最近あらゆるものがそういう便乗値上げというか、いろいろな形で上がってきているわけですよね。だからそれを標準価格にするのはどういうところにするだろうということは非常に関心の深い問題でありますから、いまいろいろお答えありましたように、疑念の持たれないき然たる態度国民の納得のいく標準価格をきめる、こういう姿勢で臨んでいただきたいというふうに思います。  そこで、標準価格について基本的な考え方をひとつ明らかにしていただきたいというふうに思うわけですが、標準価格は上限、下限の幅をどのくらいに見るのですか、その点をひとつ明らかにしていただきます。
  17. 小島英敏

    小島政府委員 標準品目につきましては一本の数字を出すつもりでございまして、幅を持たす考えはないわけでございます。ただ品質その他あるいは地域的な事情等で、標準品目中心に、ほかのものについては当然上下にある程度のばらつきを示すということになるかと思います。
  18. 中村茂

    中村(茂)委員 標準品目について一応価格をきめて、それが標準になって、これはもう種類は種々雑多だと思いますけれども、そういうものはこの標準というか基準というか、こういうものなしに、一応標準品目できまったら、これは標準だからあとは業者の自由かって、こういうことですか。
  19. 小島英敏

    小島政府委員 これはやはり監督官庁で監視をいたしまして、役所では標準品目、これも一つとは限らないわけでございます、幾つか標準品目を出すことがあるわけでございますけれども標準品目以上のものについて役所のほうから数字を出すことはいたしませんけれども、実際の動きが品質その他から見て合理的な範囲よりも越えているような場合には、これはやはり標準品目以外のものにつきましても引き下げの指示をし得るということでございます。
  20. 中村茂

    中村(茂)委員 そこで、やはりこれは公正取引委員会のほうに聞いておいたほうがいいと思うのですけれども、この前も少しお聞きしたわけですけれども公取委員長考え方とすれば、この覚え書きの(ハ)の項目は、小売り標準価格をきめる、こういう考え方、それでいいのですか、それをひとつ確認しておきたいと思うのです。
  21. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この「標準価格等」とありますのは、経企庁との覚え書きについて申しますれば、小売り標準価格及び特定標準価格、これをさすものと解釈しております。この点については企画庁とも十分了解を得ております。
  22. 中村茂

    中村(茂)委員 そうすると、この標準価格のきめ方は生産段階できめることもできる法律内容になっているわけですが、覚え書きでは特別標準価格小売り決定については独禁法違反にならないという覚え書きを結んで、法律のほうでは生産段階値段もきめることができるというふうになっている。まあきめ方だと思いますけれども、そのことは、やはり生産段階価格をきめていくということはどうしてもカルテルにつながる内容が出てくるので十分警戒しなければならないし、その値段をきめるにもカルテルに発展するような内容にならないよう、ならないというか、そういうところにしないようなきめ方をしていかなければならないという意味が含まれているというふうに私は思うのです。特に鉄鋼とかセメント業界とかこういうところで業界が整理されていて、一つ値段をきめることによってすぐカルテルに発展する要素が十分ある業界のそういう品物を、やはり卸売り段階というか生産段階できめたという場合には、イコール政府がきめてくれた安定カルテルになる要素というものが私は十分出てくるんではないか、こういうふうに懸念してたまりません。したがって、そこら辺のところをどういうふうに生産段階価格決定というものを考えているのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  23. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 当然経企庁長官からお答えすべき部分が多いんでございますが、私のほうの覚え書きに関する点について申しますると、この覚え書きには生産者段階における標準価格等については何にもうたっていないということであります。それははっきりさしておきます。なぜかと申しますと、そういう面でこの覚え書きは、そうやって政府が主導して政府がきめた価格標準価格ならば、当然これは政府がきめるわけでありますから、それを守るための協力措置というものはメーカー段階では必要ないのです。そういうことを特にここに述べる必要は全くない。標準価格がきまったら、生産者段階であれば、これは数の多いのもあるでしょうけれども、いま御指摘になったような鉄鋼業界高炉メーカーの場合だったら十社にはならない。八社でありますから、それらが守るということはもうあたりまえのことでございまして、標準価格でなくて特定標準価格までメーカー価格をもっていけば、そのことは法律上十分可能なわけだし、またそれをやらなければ末端価格を押え切れない場合がございます。私は当然出てくると思います。プロパンバスの例をとりましても、これは末端価格をきめただけでは、メーカー段階元売り段階を押えないと、それを野放しにしておいたのでは、とうてい末端価格が守られないことになりますから、そこは必要に応じてメーカー価格もきめることができるように法律はできておるわけです。そのことについて私ども覚え書きを要しないと申しましたのは、それはメーカーがきめられたものを守るのに何ら特別協力措置だとかいうことをうたう必要はないので、法律を守ればいいのだ。末端価格の場合になりますと、これは業者の数が、石油製品関係で見ますと十数万ある。末端価格取り扱い業者というのは非常に多いから、そこで個々別政府が全力を傾けてもなかなか規制し得ない面もあるだろう。そこで元売り等にこれは協力してもらうというふうな意味をうたっただけでございまして、もしそれがかなりきつい制裁措置がとられる段階になりますれば協力も何もないわけで、末端業者といえとも課徴金をかけられるなり、あるいはさらに進んで物統令にいけば、物統令による刑事制裁が待ちかまえておるわけでございます。でありますから、協力措置も必要ないと思いますけれども、ちょうどいま中間の段階で規制が行なわれようとしている段階においては、メーカー等協力も必要ではないかというだけなんです。メーカーが、価格をきめられたら当然それは守っていいので、へたをすれば、いま御指摘のように、なぜ守るのだということを相談するということは、ちょうど価格問題について協議をしなさいといわんばかりの形になりますから、私はそういうことをするのはむしろ有害じゃないか。この標準価格等をきめる場合も厳正にやっていただくという点からいえば、メーカー段階にそれぞれが相談して持っていらっしゃい、こうなりますと、どうも実質的にはカルテル行為が反映してくる。カルテル的行為といいまして、私は絶対に独禁法違反事件だときつく申し上げるわけにいきませんけれども、そういう業界の変な協力関係、これはわざわざ共同行為的な関係をつくらせるようなことになるから、これはごめんであるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  24. 内田常雄

    内田国務大臣 公取委員長が申されたとおりでございまして、中村さん御承知のとおり、標準価格そのものは上のメーカーからの出荷価格といいますか蔵出し価格といいますか、そういうものと、それから何万人あるか知りませんが、小売り屋さんが直接消費者に売る小売り価格と両方について標準価格をつくることができるわけでありますが、私ども公取との間で覚え書きをいたしておりますのは、その何万かある小売り商の小売り価格政府がきめたことが守られるように、守ることのために業者同士が行動をする場合には、これは独占禁止法のもともと禁止しているカルテルではない場合がある、こういうことを述べておるだけでございまして、上のほうのたとえばメーカーが数軒しかない、私どもがそれに対して標準価格をつくりましても、その標準価格をつくる前後においてメーカー同士がいろいろな話し合い、カルテル類似行為をした場合にもそれは差しつかえはありませんというところまでは、公取はそんな約束はしないよ、こういうことを公取は言っているようでありまして、上の数人の大メーカー蔵出し価格等の順守の件については、政府と個々のメーカーとの間で十分話ができるはずではないか、だからそんな上のほうの段階について独禁法の関するところではないというような覚え書きをつくっておく必要はないではないか、こういう趣旨を公取委員長は申されているのだろうと私は思いますが、私もそれでいいのではないかと思います。
  25. 中村茂

    中村(茂)委員 覚え書きの趣旨はわかりました。そこで、いまの中から出てきた生産段階価格、特に鉄鋼とかセメントなんというところは寡占化が進んできて数社ですね。生産段階のところの価格、数社と話して談合できめるわけじゃないけれども、いずれにしても資料をとって、政府というか主管のところで標準価格というものがきめられていく。特にその生産段階のところでそれがきめられていくという場合に、私はどう考えてみても、数社でしょう。鉄鋼なんか値段一つはっきりさせればそれがカルテル的な行為に発展する、統一していくということははっきりしているんだから、結果的にそういうふうに、気をつける、気をつけると言っていますけれども、非常に危険な要素一つ含まれている。これは私の意見として申し上げておきます。  それで、もう一つ確認しておきたいというふうに思いますのは、生産段階価格というのはメーカーから出る蔵出し価格だ。それから販売価格というものが小売り価格として標準価格を設定することができる。中間段階価格というのはきめることができないと思うのですけれども、先ほど公取委員長が中間段階価格というふうに言われましたが、中間段階価格というのは、具体的に言えばどこら辺の価格ですか。
  26. 内田常雄

    内田国務大臣 なぜ中間段階価格標準価格としてきめるたてまえをとらなかったかといいますと、これはメーカーはわかっている。また直接消費者に接する小売り段階もわかっていますが、中間の価格というものはものによっていろんな段階が幾つもある。元卸とか二次卸とか三次卸とかいうようなものも幾つもあって、ものによって非常に複雑であって、それを一々きめることが標準価格として意味があるかどうか。一番大切なことは、生活関連物資でも何でも最後は消費者の手にわたるわけでありますから、消費者のところで標準価格をきめておくことは何といっても手を抜けません。その場合に、必要なものについては生産者蔵出し価格をきめておけば、その間の中卸だか三次卸とかいうものの値段は、両方から詰めていけば幾らであるべきかというものがおのずからわかるではないか。これはもう御承知のように、全部の指定物資について標準価格をきめるわけではございませんで、その中の代表的な銘柄、品目標準品目としてきめるわけでありますから、まん中辺の卸の値段はおのずからわかるではないかということで、この法律案三条の標準価格のきめ方のところにはない。しかし、それはどこかの標準価格に類する価格標準価格に準ずべき価格と考えられるものよりもたいへん高い値段で中卸だか卸が売っているではないかということが見られた場合には、標準価格ではないけれども標準価格に準ずる価格のような考え方のもとに、その当該官憲あるいは地方公共団体の職員は、その卸屋さんに、そんな値段メーカー蔵出し価格からいってもまた最終的な小売り価格からいってもあり得ない価格だから引き下げろ、こういう指示ができるという、その指示のところだけは卸についてもさわっておるわけであります。しかし、これは中村さんに申し上げますと、私は国会修正案には関知しません。これはいつも私が申しましたように、政府としては最善のものだとして出したわけなんです、こう申しておるわけでありますから、あとの修正につきましては、それは与野党の国会議員の皆さま方がいろいろお打ち合せになってきめられる分については、これは私はあんまり口出ししないほうが当然じゃないか、こう言っているからそのことは触れませんけれども、いまの卸なんかの問題については、各党の間で御論議があるやにも聞いておりますので、そこら辺は皆さんの御決定がそうなれば、それは政府がめんどうだからとかいって拒絶すべき限りではないようなものかもしれない。これは少し言い過ぎたかもしれません。
  27. 中村茂

    中村(茂)委員 生産段階蔵出し価格を、いまの段階でこれが施行になった場合に、どうしてもこの段階できめておかなければならないという品目はありますか。
  28. 小島英敏

    小島政府委員 いまの段階でこれとこれはどうしてもということを申し上げる段階でないわけでございますけれども政府といたしましては、法律が施行されましたならばなるべく早い段階で、やはりまあ第一段階は、石油製品あたりが第一バッターになるんではないかという気がいたしますけれども、そのほか生活必需物資を中心に設定いたしたいと考えております。
  29. 中村茂

    中村(茂)委員 これは中身も非常に問題ありますが、それと同時に、この法案全体が、末端の小売り商が非常に苦しくなるというか、きつい法案になっているというふうに私は思うのです。そういうことと関連し、品物に関連して、末端価格だけきめた場合、それから生産段階のものをきめた場合、これはいろいろ品物によって違ってまいりますけれども、いずれにしても標準価格をきめて、流通機構品物を乗せて小売り店にずっといった場合に、いろいろなしわ寄せがこの小売り店にいく要素というものが非常に出てくるんじゃないか、こういう感じが実はするわけであります。そういう意味からすれば、卸段階のやつをきめて小売りまできめれば一番はっきりしてくるわけですけれども、そうなっていくと、統制がますます強化されて再販価格——きめる人は違いますけれども、制度としては再販制度と同じようなかっこうが出てくる。メーカー値段がきまって、この末端の販売がきまる。ですから、この取り扱いというものが今後流通機構末端の小売り標準価格をきめ、流通機構に乗せていくという段階の中で非常に大きなポイントになってくると思うのです。ですから、それともう一つは、どうしても上のほうのそういう場合には、カルテル行為というような関係も出てきたりして、この問題をどういうふうに取り扱ったらいいかということは今後非常に重要な問題になってくる。私はこの点だけ意見として申し上げておきたいというふうに思います。  そこで次に、いまちょっと触れました、この法案全体が小売り段階に非常にしわ寄せになるということは、いまの標準価格のきめ方によってやはり小売りのところへ一番そういうものが集中してくるんじゃないか。いまの物価の値上げの問題についても、お客さんが行って一番問題になるのは、生産しているところや流通機構のところではなくて、ものを買う小売りのところで、販売業者のところでものが上がってしまった、どうなるんだ、一番苦情を受けるわけであります。ところが今度は、こういう値段がきまって上のほうから流れてきても、マージンを少なくして流通機構に乗ってきた場合でも、一応きまっている販売価格標準価格でこれは売らなければならぬということになれば、追い詰められるのは何といったって一番弱い小売り商のところへ追い詰められる制度になっている。しかも、きのうの連合審査の中でも、土十五条の割り当て、配給、これについても問題になりましたが、このところまですぐ持っていかないという答弁もありましたが、それはそれにして、慎重に扱え、こういう大きい問題をやっていくにはやはり国会の意見を聞くというような、まあ私どもの意見を盛っておりますけれども、それはまたその論議のほうに私は譲りたいと思いますが、これが実施になった場合に、やはり苦しめられるのは小売りであります。小売りのところがいろいろ割り当たってきて、お客さんがそこに来て、いや、こんな割り当てじゃとてもじゃないけれどもどうにもならぬ。しかし、お客さんはそう言ってくるけれども、これだけの配給では売ることができない。やはり小売りの、この末端のところが一番苦しめられてくる。  それから課徴金等についても、これは販売のところが標準価格がきまるわけでありますから、課徴金がかかるかからないかというとごろは、販売段階のところにこれはかかってくる。それから、いままで全然やっていなかった帳簿の記載等についても二十六条で行なっていくということになれば、これもまた販売段階小売りのところでたいへん負担になってくる。しかも、立ち入り検査等についでは、これはやはりその段階というものが、標準価格とあわせて一番きびしくなっていく。そして罰則を見ますと、今度はその小売りのところに該当してくる課徴金のところについても、帳簿の記載のところについても、立ち入り検査のところについても、上の段階生産段階、流通段階の罰則よりも重くなっているわけであります。これは懲罰刑までついている。しかし、販売段階の上のほうの罰則については、これは罰金だけだ。内容がきつくなり、追い詰められて、しかも罰則についてはそこのところが一番重い、こういう小売り段階をいじめるような——だからこれは、法というものは運用次第というふうにいいますけれども、この運用というものは、やはりこの小売り段階を守るような運用をしなければならないし、これにあわせて小売り段階を保護するような政策が金融等を含めて出てこなければ、との法案を直ちに実施していくということは、非常に小売り業、販売業者を苦しめる結果になってしまう、私はそういうふうに思うわけであります。その見解について、考え方をひとつ明らかにしていただきたい。
  30. 小島英敏

    小島政府委員 標準価格制度につきましては、御案内のように、小売り商だけではなく卸売り業者生産者に対しましても、その指定物資が標準価格から合理的に推定される価格をこえて販売していると認められますときには、価格引き下げのし指示を行なうということでございまして、当然、これは小売り業者だけでなく上のほうまで一般的な対象にいたしたわけでございます。  それから課徴金制度におきましても、必要に応じてこれは各段階ごとに、第一段階標準価格のほうは、先ほど申しましたように上と下とたてまえとして二段階でございますけれども課徴金の対象になります特定標準価格の場合には、各段階すべて定めるということになっております。したがいまして、これも特に小売り商にきつく当たるということはないわけでございます。  いずれも適正利潤というものを織り込んで計算いたしますので、特に小売り業者を不当に圧迫することはない。いずれにしても、おっしゃるように、この小売り商というのも非常にまあ過大な利潤を織り込んだ値をつけるようなところもございますけれども、非常に良心的な業者も多いわけでございますから、その辺、中小企業、零細企業を不当に圧迫することがございませんように、十分やはり運用には気をつけなければいけないと思っております。  それから、帳簿整備義務等につきましては、いま検討しておりますが、主務省令であまり零細なものについては過大な義務づけにならないように考えるべきではないかという線で検討いたしております。
  31. 中村茂

    中村(茂)委員 私の言わんとするところは標準価格、これは販売価格としてきまる例が多いわけでありますから、したがって、一番はっきりするわけですよ、それが守られているか守られていないかということは。しかし、流通段階とか生産段階標準価格がきまっていない品物については、これはどういう値段が過重であるかどうかということについて標準がないわけですよね。末端へいけば、標準価格がきまっているからはっきりする。流通段階はどのくらいが標準で、生産のところはどのくらいで、それで末端へいけばどうだということなら、どのところにもみんな価格をつけなければはっきりしてこないわけですよ。だから私の言うのは、何だかんだ言ってもこれは良心的にいろいろ運用され、流通機構はできていくようになっていればいいけれども、こういう制度というものは一番の弱い末端へいくほどしわ寄せがされていく。そうして、いろいろそれが不当かどうかということを見るにも、実際に末端できまっている販売価格を検討する以外には、流通段階なり上のほうできまっていない場合には、これは何と言ったって調べようがない、はっきり言えば。そうでしょう。生産するにはこれだけが必要なんだ、流通機構でこれだけ輸送費がかかって、これだけでこうなってきてそして末端へいってこれだけの標準価格で売れというふうになったって、そこのところへ順に金が重なっていって、ほんとうに手数料というか、販売の利潤というものを得るのは追い詰められていってしまう。こういうのが落ちですよ。だから、そこら辺のところはきちっとやってもらわなければ困りますよ。いいですか。
  32. 小島英敏

    小島政府委員 おっしゃることはよくわかりますが、小売り末端価格が野放しになっておりますと、やはり小売り商が品物を仕入れる場合に、卸商から高くふっかけられた場合に、これは消費者価格に転嫁できると思えばどうしても高く買ってしまうということがあるわけでございますけれども、今度は、上と下とのところで標準価格できめられておりますと、やはり小売り商はその商品を仕入れる場合に、われわれはこの値段で売らなければいけないのですからと言って、あまり高い卸売り商のさし値に対して当然抵抗できるわけでございますので、下のほうから押し上げられて、結局その中間段階も合理的な水準に落ちつくべきものであるというふうに考えております。
  33. 中村茂

    中村(茂)委員 それだから甘いのですよ。私は冒頭申し上げましたちり紙の問題にしても、それから洗剤、砂糖、これはどんどん上がってきましたけれども、いまどこが一番そういう上がったところにおいてもうけているかということなんです。小売りなんかこれだけ上がってきても、やはりお客さんからは苦情が出る。苦情受付所で、苦情を受けただけうまいしるなんて言えば語弊に当たるかもしらぬけれども、これだけ上がった中で一番せしめているのはどこかということなんですよ。しかも、今度末端の価格がきまるわけでしょう。それだからこれは普通に考えれば、下から突き上げるということもできるでしょう、品物等が豊かになっていけば。しかし、標準価格をきめるという品物はどうしたって品不足、それから非常に流通機構上問題があって、いま世間でもいろいろ問題になっている品物を一番先にきめていくわけでしょう。安定しているものについては別にきめる必要はないんだから。そういうものがきめられていけば必然的にそのしわ寄せは小売り、末端のほうへいく。それだから、下のほうから突き上げていって正常な流通に発展していくなんというような考え方でこれに取り組んだら、たいへんなことになってしまう。だからもっともっと小売り段階販売段階、特に大スーパーとか——同じ販売といっても大きい資本を持ってやっているところはいいですよ。小売りの零細でやっているところについて、こういう制度になってきた場合には、もっともっとあたたかい保護を与えるような制度をあわせ考えていかなければたいへんなことになる。こういうことを私は強く要求しておきます。  以上、終わります。
  34. 平林剛

    平林委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  35. 平林剛

    平林委員長 速記をつけて。  この際、暫時休憩いたします。    午後四時一分休憩      ————◇—————    午後七時二十五分開議
  36. 平林剛

    平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案について質疑を続けます。和田耕作君。
  37. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 企画庁長官に最初に御質問申し上げます。  この第七条に特定標準価格決定についての条文がありますけれども、これは私最初にお尋ねした件で、そのときは、もし緊急の事態が起これば標準価格の第一段階を経なくてもこれを実施できるという政府委員並びに長官の御返事をいただいた。昨日も、民社党の河村委員からも同様の質問をしたのに対して長官からも同じような御答弁があったわけですけれども、これは法律の専門家等に聞きましても、少しこの意味がまぎらわしい面があるという意見が非常に多いようですけれども、この点をまぎらわしくないように、緊急の事態が起こった場合は第一段階を飛び越して特定の標準価格を直接に実施するというようなことが直截にわかるようにお直しになったらいかがかと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。そうしなくともだいじょうぶであればそういうお答えをいただきたい。
  38. 小島英敏

    小島政府委員 これは法制局とも相談いたしましてはっきりいたしておりますのですけれども、この法文にございますように、「第三条から前条までに規定する措置を講じてもなお指定物資の価格の安定を図ることが困難であると認められる場合において、」こう書いてあります場合には飛び越してもだいじょうぶだということでございまして、もし第一段階を経なければいけないという場合でしたら、第三条から前条までに規定する措置を講じた後においてもなおこれが困難である場合においてというふうに書きますと、これは第一段階を必ず経なければいけないことになりますけれども、この原案のように書いてございますと当然飛び越し得るということでございます。
  39. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 まあそれで何回か念を押した点で、実はこれは私どもとしてはこの一つの指定価格という形に一括するという考え方を持っておるわけですけれども、それがどうしても聞かれぬ場合は、この点だけははっきりさせてもらっておかないといけないという意味で、一つ重要な項目として考えておるわけで念を押したわけです。それはまあ、そういう必要な事態ができれば第一段階を飛び越えてこれが実施できるということと思っていいわけですね。——お答え要りません。  中曽根通産大臣がお見えになりましたので、通産大臣のほうに先に御質問申し上げたいと思うのですけれども大臣、このごろのペルシャ、イランのあの石油が、外国の競争的な買い付けによって非常に値上がりをしている。これがOPECあるいはOAPECのほうにも今後大きな影響を及ぼしていくだろうというような予想があるわけですけれども、国内でいろいろ標準的な価格をきめましても、外国から来る値段が、しかも非常に著しく上がるという場合も今後考えられると思うのですね。そういう場合の対策というのか、大臣どのようにお考えになっておられるか、お伺いしたい。
  40. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 最近イランの入札を見ますと十七ドル三十セントというような高値がつけられております。そこで問題は、不当な暴利あるいは便乗値上げということを許さないということだろうと思うのです。しかしイランの場合は、あれが相場としてあそこで値付けされるかどうかは私は疑問だと思います。非常に少ないときのマージナルなラインでスポット買いが行なわれてああいう値段が出たんではないかと思われる節もあります。しかし、いままで原油価格が二ドル八十セントであったのが近ごろは大体平均四ドルないし五ドルぐらいになってきて、それが七、八ドルに上がるという情勢でもあります。ですから、いままでわれわれが考えていたよりもべらぼうに高い原油が入ってくるということは否定できません。したがいまして、われわれが価格政策を行なう場合に、それらの動向をよく見ながら、できるだけ業者生産者の方面で仕事をしていく場合に、従来自分がストックで持っておったものを完全に消化するまでは旧来の価格を守らせる。そして新しい高い原油が入ってきてそれを使ってきたという場合に、適当なときに価格の上昇を認めて採算も考えなければならぬ。そういうことであって、その辺の分界点をどういうふうに見きわめるかということは非常にむずかしい仕事でありますけれども、やらなければならぬ仕事である。そういう国民にわかるような合理的な態度をとる必要があるだろう、そういうように思います。
  41. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いろいろなケースが考えられる。特にこの三カ月あるいは半年は、なかなか常識的な経済活動というようなものは、たとえばOAPECにしましてもOPEC諸国にしましても、できるだけ少ないものを売って従来あるいはそれ以上の利潤を得たいという考え方はもうすでに一般的になっているようですから、われわれが想像する以上に外国の値段が高くなってくるということは今後とも考えられると思うのですね。単にイランだけじゃないと私は思うのです。そういうふうな場合に、しかしそれに応じて国内の標準価格を上げたり、下げることはないのですが、たとえば半月前に上げたやつをまた半月あとに上げるというふうなことがあっては、日本の国民生活あるいは経済的な行動に非常に支障を来たすという問題もあるわけですね。したがって少なくとも半年あるいは一年の間は、そういうふうな予想しない価格の暴騰なんということが起こったときには、国の一つの資金を出していいかどうかは別ですけれども、何かプール資金のようなものを、価格調整の資金のようなものを考える必要が私は少なくとも過渡期にはありはしないかという感じがするのですけれども、そういう点を御検討なさっておられるかどうか、お伺いしたい。
  42. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これはむしろ内田さんがお答えする分野であると思いますが、事態によってはそういう必要性が起こるかもしれないと思います。
  43. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 企画庁長官、ひとつ中曽根大臣からのあれもありましたので、そういう場合は私は今後ほんとうに考えられると思うのです。特に標準価格政府もかなり強権を働かしても維持しようとする標準価格ですから、これが目の色が変わるように変わったのではその標準価格制度そのものもおかしくなってくるということがありますので、異常な国際価格の値上がりに対して、これは単に石油だけの問題じゃない。いま予想されるのは石油ですけれども、食糧でも飼料でもそういうことが考えられるわけで、つまり国際的な価格一変動というものを今後日本の国内の標準価格制というものとどのようにマッチさせていくのか、こういうふうに広げて考えてもいいと思うのですが、企画庁長官の御見解をお伺いしたい。
  44. 内田常雄

    内田国務大臣 これは昔でございましたら、私の答えもそういう仮定の状態にはお答えできませんといえば済むところでございましょうが、私はいまそんなことは言っておられないときで、どういう事態が起こるか、こういう法律まで出します以上は、それはそういういろいろな場合を想定して制度をつくらなければならぬ場合も出てこようと思います。しかし私はその際、いまここに一つのプールの公団のようなものをつくるとか、あるいはまたそれをささえるための特別会計をつくるとかいう具体的のお話をいまこの際いたすことは正直のところできませんけれども、和田さんが御心配になるような事態が万一にありますことも、仮定ではなしに想定しながら、私はいまここでお答え申しませんけれども、いろいろな検討を進めてまいりたいと考えております。
  45. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それから昨日出された標準価格を策定するいろいろ具体的な根拠、基礎のようなものを統一見解として発表されたのですけれども、その中に、いままで政府の中にはなかった過去の一定時期というのがありましたね。過去の一定時期の価格を参考にするというのがありましたね。これは最初に私内田長官に御質問した。田中角榮総理大臣がNHKのテレビでそういう種類の発言をしたのですよ。つまり四十八年の一月から十月までということですから、十月といったらまだ石油問題が起こっていないときです。正常だとはいわれませんけれども、石油問題の起こっていないこの十カ月の平均をとりたいという意味の発言をなさっておったのですけれども、私はこれは目安として非常に大事な発想だと思う。しかしその後総理大臣内田長官にもその話をしていないようですから、何か思いつきで話したかなと思ったのですけれども、しかしきのうの統一見解では、過去のある一定の時期の価格というものがかなり重要な要素に取り上げられてきているわけですが、これはあの統一見解を出すのは大体どれくらいの前の期間のことを考えておられるのかどうか、もし案があればお示しいただきたい。
  46. 内田常雄

    内田国務大臣 この前和田委員から、田中総理大臣の記者会見における御発言を引用されてただいまおっしゃられましたようなお尋ねがございました力その際、一月から十月までの期間の平均価格標準価格の目安にするというような話を総理がしたかということでございましたから、私は少しこれはことばがよろしくございませんでしたけれども、そういう乱暴なこともいたしかねるというようなことを実は申して、ことばが乱暴過ぎたかと思って反省したことがございました。それはいま考えましても、田中総裁はやはり一つの比喩的な考え方として述べられたものでありまして、通常一月から十月までの間の平均価格をとることを原則とするという意味ではないと私は思いますし、またそういうこともできないと思います。というのは、その間生産費の構成要素、ことに春闘等の時期もはさみますので、賃金などにかなりの開きがありまして、平均をとります場合には非常に安い時期の——春闘ということばがいいかどうかわかりませんけれども、それより前の安い時期の賃金、あるいはまた国際価格等を織り込みました価格になりますから、実際にそういうものだけで、そういう考え方だけで標準価格をつくったときに実施不能だというようなことになることを実は心配をいたす点がございます。そこで、昨日でございましたか、この統一・見解で申しました妥当と考えられる時期の販売価格というのは、これは別に何月から何月までということではございませんけれども標準価格をつくる前のしかるべき期間といいますか、しかるべき時期において比較的安定しておった価格、その時期の価格などをベースにして、それ以後労銀なりあるいはまた国際価格なりが上がったような正当のファクターは取り入れるけれども、しかし、単なる見越しの要素のようなものは取り入れないということでいきたい、こういう考え方でおるわけでございます。したがって、このある一定の時期の妥当と考えられる時期というものは物によって、その物が安定しておった時期をとればいいわけでありまして、一つ一つによって違う場合もあるとお答えするほかないと思います。
  47. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この前にこの委員会で参考人を十数人の人をお呼びしたことがございました。その参考人の共通の意見が幾つかあったのですけれども、最も共通している点は、標準価格をきめるにあたって、官僚のひとりぎめ、あるいは業界との話し合いによってきめるということだけは絶対に避けてもらいたい。何としても消費者の意見を聞くようなシステムを制度化するように考えてもらいたい。これは与野党のどの参考人も共通に出ておった御意見だと思うのです。確かに価格構成の場合に、緊急な値上がりに対処するために標準価格をつくろうとする場合に、ああでもないこうでもないという、たぶんしろうとも交えての協議という場は好ましくない、つまり価格をかえってつり上げるような状況を引き出してくるということは理解されることだと私は思います。あのときに中林参考人が出した意見も、日本生活協同組合の会長ですけれども、そのような前提に立って、きめることは時期を失せないで主務官庁が責任をもってきめてよろしい、主務官庁が責任をもってきめてよろしいけれども、きめたあとでその価格がそのままで永続するわけじゃない、改正するときもあるし、きめたあとでいいから消費者の意向を十分くみ入れてその後の価格構成に影響が与えられるようなシステムを考えてもらいたいという主張を中林参考人は話しておりました。そのとき私、経団連の堀越参考人も来ておりましたので、堀越さん、いまの意見をどう思われるかと聞くと、あまり反対もなさそうでした。今度の国民生活安定審議会という案を政府のほうもお認めになるようですけれども、この案はそのような国民の持っている要望におこたえできるような形で運用しようとお考えになっているのか、あるいはそうすれば構成メンバーをどのように考えておられるのか。もしお考えがあればここでお示しをいただきたい。
  48. 内田常雄

    内田国務大臣 実は各党の間で、私どもが提案をいたしました法律案についての修正のお話し合いが進んでおることを聞いております。聞いておりますが、私なりまたここに出ておりますような政府委員は、いま出しました案が、たいへん恐縮でございますけれども、最良の案だという考え方で出してございますので、その話し合いの場へ出ましていろいろ意見を申し上げるよとも適当ではないと思いますので、それを差し控えておるわけでございます。しかしお話のような審議会を設ける話し合いが、これはどうなりますか、私はいまのように関与いたしませんけれども、進んでおることも傍受いたしておりますので、そういう審議会ができました際には、全く意味のない審議会でありますよりも、和田さんがおっしゃられるようなことについていい動きをしていただくことが大いに意味があると考えられますような仕組みになれば、私どもは、行政の立場にあるものといたしまして、御意見のようなことも何らかの形において審議会の皆さま方のお知恵をかりるような場合が十分あるのではないか、またそうするほうがよろしいのではないかと、抽象的のことばで恐縮でございますけれども、まだその修正案の構成なども見ておりませんですから——しかし、それにもかかわらず私はいまのように考えることを申し上げておきます。
  49. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 質問が出たり入ったりであと先になりますけれども、中曽根大臣、灯油の三百八十円、LPGの千三百円、この価格は、その後の状況から見て、政府が強力に行政指導していけば標準価格としての役割りを果たすことができるという確信がおありになるか、あるいはこれは何とか考えなければいかぬなという感じであるのか、ひとつ大臣の御決意をお伺いしたい。
  50. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あれでやっていくつもりであります。またやっていけるだろうと考えております。灯油の場合は、石油関係ではね上がる前の九月のメーカーの卸売り価格、つまり一キロリットル一万二千八百何円というものを大体基礎にしまして、そしてその後の情勢も勘案して三百八十円というものをきめたわけです。ですから、この指導価格は、ある意味においてはこの法案に規定する考え方の前駆をなすものである、そういうふうに思います。それからプロパンの場合も大体九百円から千三百円くらいが十一月くらいの相場でありましたが、それについても千三百円を最高価格として——まあ北海道は千五百円でありますけれども、九百円のところは三割上がってもよろしい、しかしそれも千三百円どまりである、そういう体系をきめましたのも、これはやはり当時の大体妥当と思われる価格を基礎にして、そしてそれ以降の価格について諸般の情勢を考えて最高をきめた、そういう価格体系でありまして、これまた同じ意味において前駆をなすものではないかと思います。しかしそれらの価格をきめるについては、関係業者は非常にいやがりました。とてもこれではやれないと言って非常に強く反対もしたのでありますけれども、相当日数をかけて説得をして、そして了承してもらったもので、時期も来年三月までがんばれ——ちょっと考えようによってはむちゃですけれども、しかし来年三月までがんばれ、そういうことで了承してもらってあるわけですから、これで大いにがんばっていくつもりです。
  51. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ちょっと大臣のお耳に入れておきたいと思いますのは、私、土曜日の日に杉並の灯油を販売している人たち、よく知っている五人くらいの人がお目にかかりたいということでお目にかかった。そのときに、こういう話をしている。つまり、三百八十円でやっていきます、私のところも十分やっております、やっておりますけれども、やってない業者もたくさんおります、そこで、これはどうせ守られないという感じがしてならないけれども、今後政府が三百八十円を維持するためには、ちゃんとその標準価格を守っておる人に対しては報償を出してくれる制度を考えてもらいたい、このことを機会があったら通産大臣にぜひとも話してもらいたいということで——いや、これは報償でなくとも、そういうちゃんと規則を守っている人にはよけい配給するようにすればいいんだというような御意見もありました。いずれにしてもこの問題は大臣が非常に御努力なさると思うのですけれども、これをやりなさいということだけではなかなか守られない制度の一つだと思います。したがって、それをちゃんと守って正しく営業している人には何らかの報償を、あるいは割り当てを多くするということもあるでしょうし、お金をたくさん出すというようなことはちょっとあれでしょうが、何らかのそういう報償制度を考えないと、これは大臣、なかなかむずかしいことになると私は思うのです。特に来年の三月までこの価格で守る、この御決意はごりっぱだと思うのですけれども、何かそういうものを考えなければならぬと思うのですが、いかがでしょう、大臣、そういうものを御検討になることはございませんか。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 考えようによってはあたりまえのことをやっているのでありますから、ほめるとか報償するということが筋が違うようにも思えますけれども、こういう世の中にあって約束したことを誠実に守っていくということはまた奇特な行為でもあります。そういう意味で私も先般来、よくマル優制度というのがありますが、タクシーの運転手でも優良な者はマル優というのが書いてあって、そういうようなわけでまじめによくやる人には何か考えてあげる必要があろう、そういうことでいま通産局にいろいろ検討を命じてあります。たとえば、これはまだきまったわけじゃありませんが、思いつき程度で頭の中にあるようなことは、経営改善資金について優先的に考えるとか、そういうようないろいろな面について検討するように命じてあります。
  53. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは普通の学者が考えたあるいは役人が考えた対策というよりも、そのような正当な利益、代償を与えるという考えもこの標準価格を維持するためにはぜひとも考えてみる必要がありはしないか。一般の人はこんなむずかしいことをやっても、これはざるだ、なかなか実行できない。ところが良心的にやろうとすればひんぱんに標準価格自体を変えていかなければならないというようなあれが非常に多いときですから、ぜひともそういうふうな問題点をひとつ真剣に考えていただきたい。つまりそういうことが官僚的な統制ではないという一つの雰囲気を持たすわけですね。あんまり射幸的なことはむろんいけません。大臣もおっしゃるように、あたりまえのことをやっているわけですから、それに対する報償というような、そういうお考えをなさらないで、このむずかしい、守れないものを守っていかすためにはこういう措置が必要だというような立場で考えてみないと、この制度はなかなか維持できない、こういうように思いますので、ぜひともひとつそういうふうな点についてお考えをいただきたいと思います。  それから最後になりますけれども一つの参考人の重要な心配として、カルテルが復活しやしないかという心配、これもなかなか根強い心配なんです。役所できめるといっても役所には資料がない。どうせ業界は商売ですから、それにかけている人ですから、一番よく知っている。また運用のために、業界を守らすためにも業界の意見を聞かなければならないという一つの正しい理由もある。いろいろなことで業界寄りの価格になるんじゃないかという心配をほとんど全部の参考人は述べておりました。そういうことですから、この問題については、いまの標準価格を守らせる方法と同じように、特別の一つ考え方が必要ではないかと思いますけれども公取委員長、その一つの例として通産省との覚え書きとか企画庁との覚え書きとかいうことが目下大衆的な話題になっているのですけれども公取委員長としてこういう問題についての対処する決意なり具体策なりというものがあったら、ひとつお聞かせをいただきたい。
  54. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 具体的なケースを考えてみますといろいろございますが、ここであまり長々とおしゃべりするのもどうかと思います。とにかく協力を求める。この法律は緊急なものだと思います。しかし緊急だからカルテルがいいとは私は決して思いません。思いませんが、完全に一方的に官僚統制でいくのならば、それはもう業界が何を言おうがかまわないわけでございますけれども、いまおっしゃいましたようにある程度民間の協力を求めながらいく。善意の協力を求めるという点からいえば、資料だって官庁に全部あるわけじゃありませんから、それは取り方によりますが、取り方を注意していただけば、当然それは必要な行為であるし、それからとにかく有効にこの法律の効果というものを確保するためには、一切協力的な行為を認めないというのは、私のほうとしてはとるべき態度じゃないと思うのです。いかに独禁法——それは私は独禁法をはずしてはいけないと思いますよ。その点は同じでございますけれども協力的な、前向きのほんとうの善意ある協力であるならば、それはやはりその範囲において求めていかなければ実際実行できない場合が非常に多いと思うのです。そういう意味におきまして覚え書きをかわして、この範囲までならばいいんですよということを、これは一般的比喩でございますから、具体的に一つ一つは書くことはできません。とにかくこの範囲で前向きに政府に向かって協力する、自分たちのエゴを通すためでないのだということが明らかな行為については、私どもは違法性がないと思います。これはカルテル自体につきまして「不当な取引制限」とは何かという定義がいろいろございます。その中に解釈上も公共の利益に反して競争制限をするという行為はいかぬ、「公共の利益」とは何ぞやということについて実はいろいろ学説がありますが、ごくすなおに読みましても、公共の利益に沿った行為であって、しかも共同行為ではない、共同行為でわざとあとでカルテルを堂々とやれるような体制に持っていくことでなければいいんだ、こういう解釈を下したわけでございますから、私は、主管官庁がたくさん出てまいりますから、各省がその気持ちで業界に対して業界のエゴを認めるんじゃないんだ、一方に消費者の問題もありますから、消費者の利益というものを考えなければならぬ。しかし消費者のエゴだけを貫くということはおそらく不可能でございましょう。こういうふうに品不足の時代でございますから、みんながやはりある程度犠牲を払わなければ経済のバランスは保てないわけであります。そういう中にありまして私ども考え方としては、いやしくもこの機会を悪用してカルテル的な行為をするとか、また一つのそういうやり方で標準価格を何とかごまかしてつくり上げていこうかという行為、これは私は最も好ましくない行為であり、場合によっては独禁法違反そのものに該当するおそれもあるだろうという意味におきまして、それに対しては厳重な態度でもって監視を続けていきたい、必要とあらば、それだけの相応の措置をとるつもりでございます。
  55. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いずれにしても私どもこういう法律が施行される場合には、特に中心になる標準価格というものが国民が納得されるような方法で設定をされて、設定された場合はこれをみんなが理解をして協力をする、実行するということに最大の焦点を置いていかなければならないわけですけれども、中曽根大臣、かりに業界カルテル行為というものが、これは根拠はつかめなくても大体よそから見ればわかるわけですね。そういう場合に何かの効果のある罰則のようなあるいはこらしめのようなそういうことも考えておかなければいかぬと私は思うのです。先ほどの、ちゃんと守った人には何らかの報償をすると同時に、おかしなことをやった者に対しては、しかもこの法文で処罰できないような者に対して何らかのこらしめのようなことを考えていく必要が私はあると思うのですが、いまのカルテル類似行為があると思われる場合にどういうふうなことをおやりになったらいいとお考えになっておられますか。
  56. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 われわれがやっておる指導行政措置とカルテル行為というものが混同されないように、まずわれわれが注意する必要があります。われわれがやろうとしておることは、政府の国家権力による介入であり、それに対して業界協力するという形であって、業界同士の共同行為を認めているわけではありません。その点はまずはっきりさせる必要がありまして、それに便乗することがないように、われわれはその間をやはりびしっと切断しておかなければならぬと思います。  それから第二に、そのカルテル行為が行なわれるかもしれぬというようなことについてはわれわれ自体も監視いたしますが、公取が本来の使命に立って厳重に監視すると同時に、必要に応じて法を発動して措置をしていただく、こういうこと以外にちょっとないと思います。
  57. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。
  58. 平林剛

    平林委員長 増本一彦君。
  59. 増本一彦

    ○増本委員 この安定法は、私はこの法案作成の過程からも、それからまたこれから運用されるであろう面からも、どうも民主主義というものが尊重されていない、このことが一番これからの将来の問題としてもたいへん重大な問題になるというように考えるわけです。きょうはそういう立場からひとつ政府の所見を伺いたいと思うのです。  法案作成の経過を見てみますと、石油二法といわれて、この石油関係の需給調整法と、それからこの安定法とがいわば一つの相関連する法案として出されているわけですけれども、これが法案作成の経過の上でも、財界とだけ相談をしたり意見を聞いたりしている。まず一体、中小企業や消費者国民の、今日のこの重大な事態に対処するためにどうしたらいいのかという点での意見を聞いたのかどうか。この委員会見えた参考人の人たちは、どれもこれもほとんどの人がこの法案に対して危惧を持ち、そして反対の意思を表明する人がたくさんいた。このことが、こういう一般消費者小売り業者業界関係者はもちろん、財界の中にも統制経済へ移っていく歯どめがない、ここに危険性があるというような指摘までして、危惧を持っているというところに端的にあらわれている。ましてや国民や労働者、農民、中小企業というような人たちの意見を聞いていないということも歴然としているというように思うわけですが、法案作成の過程でどうだったのかということをまずはっきりさせていただきたい。
  60. 内田常雄

    内田国務大臣 この法律案は題名にもまた各条にもございますように、国民の中でも消費者大衆のための物価の安定、生活の安定ということをねらいとして制定しようとするものでございまして、一部の物資をつくる企業の、なかんずく大企業のカルテル行為等を追認するような意図から出ているものでは全くないことをあらためて申し上げるものでございます。
  61. 増本一彦

    ○増本委員 私が聞いていますのは、中小企業、消費者、特に労働者とか農民とか、そういう人たちの意見をこの法案作成の段階で聞いて、そういう人たちの知恵も集めてつくったものかどうかと、ここなんですよ。いかがですか。
  62. 内田常雄

    内田国務大臣 もう御承知のように私とも自民党は国民政党でございまして、国民大衆、中小企業者等の考え方、利益を代表する立場に立つものでございますので、そういう立場においてこの法律案の原案をつくり、国会に提出、御審議をいただいているものでございます。
  63. 増本一彦

    ○増本委員 私の質問に答えて、いただきたい。長官そんなこと言ったって、自由民主党は大金持ちや財界の利益を擁護する政党だ、これが国民の意見ですよ。(「そうじゃないよ、つまらぬこと言うな」「何を言っているか」と呼ぶ者あり)私が聞いているのは、一般消費者国民の意見を聞いているかどうか。   〔発言する者あり〕
  64. 平林剛

    平林委員長 御静粛にお願いします。
  65. 増本一彦

    ○増本委員 一体意見を聞いたのかどうか、このことを聞いているのですよ。  中曽根通産大臣は去る十一月の十九日に経団連や日本商工会議所、東京商工会議所、日経連、経済同友会共催の会合に出席をされた、そしてあいさつをされたということが経団連週報に載っているんですが、その中で、統制は極力避け業界の自主的調整によってこの危機を打開するよう産業界協力をお願いしたい。もう一つは、石油の供給削減に伴う物価暴騰を防ぐためには価格安定カルテルを結べるよう独禁法の運用を再検討したい、こういう趣旨のあいさつをしたというように、この経団連週報に載っているんですが、このような趣旨のあいさつをなすったでしょうか。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はその会に出たかどうか、いま記憶にないのですが、あるいは出たかもしれません。しかし価格安定カルテルを結べるよう指導したいということばは言わなかったつもりです。おそらくその原稿を書いた人が要旨をまとめてサマリーとして出すという意味で簡単にそういうふうに書いたんでしょう。業界協力を求めて、そして通産省と一緒になって、通産省あるいは業界消費者、まあ総ぐるみで、この物価問題、現下の石油危機の問題を突破したいという趣旨のことをどこでも言ってきておるのであります。
  67. 増本一彦

    ○増本委員 せんだってこの委員会に参考人として経団連の堀越副会長が参られまして、そのときそういう趣旨のあいさつをしたかどうかということを確認しましたところ、このような趣旨のあいさつをしたことは間違いないということを言われている。  問題なのは、一つ業界の自主的な調整によってこの危機を打開する、これを産業界に求めているということになりますと、これは共同行為を業界相互でやって、そしてそれに基づいて価格の安定をはかっていくという、こういう方向大臣みずから率先して言っているということになって、いま問題になっている覚え書きをはじめ、カルテル、これを通産省そのものが促進していく立場に立っているというようにとれるわけですね。いま大臣の答弁の中にも、業界も含めて総ぐるみでこの危機を突破していこう、こういうことを大臣は強調しているというようにお話しになりましたけれども、まさにそのことが、財界も望んでいる、業界ぐるみで業界の自主的な調整で進めていこうという、このやり方と符合して、これは文字どおりカルテルを促進していくという立場に立っているんだというように見ざるを得ないと思うのですが、その点はいかがですか。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 政府主導のもとにというのが、それは抜けておりますですね。そういう意味においてその記述は誤りであります。それで、業界の自主的調整というようなところを、あるいは言ったかもしれません。しかし、それは、たとえば三百八十円以上で売った、そういうものについては、そのものにもはや製品を供給しない、そういう意味業界内部における自主的な調整作用を考えておったわけであります。そういう意味で言っておるのであって、業界がかってに共同行為をして、自分たちだけで政府国民と離れてやっていい、そういうことを言ったのでは毛頭ございません。
  69. 増本一彦

    ○増本委員 同じ経団連が、この十一月の二十九日に石油危機対策についての緊急総合対策委員会というのを開きまして、意見をまとめたのが載っていますけれども、ここの中でも、物価安定策として、この業界の自主調整によって価格の安定をはかることが望ましい、こういう趣旨を言っている。このことは大臣は御承知でしょうか。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 経団連がどういうことをきめたか、私はそのことを知りません。しかし、政府が考えていることは、政府主導のもとにということがいつも頭にあるわけであります。それは、われわれはやはり独禁法というものを知っておりますから、業界だけでやるということは、必ずこれは独禁法にひっかかる、そういうことをよく熟知しておったからであります。
  71. 増本一彦

    ○増本委員 大臣は、この公正取引委員会覚え書き通産省が結びましたね、こういう時点のもとで、あくまでもこの共同行為あるいはカルテル、こういうものに対しては、き然とそれを取り締まり、規制していくという、これは本来公取立場だけれども、しかし、一方では業界を行政指導したり、その衝に最も直接、広範に当たるところですから、それをどうしてもこの独占禁止法に基づいて、そのようなことをさせない、そういう規制をきちっとしていくという立場にお立ちになれるのでしょうか。その点はどうですか。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 政府は一体でありまして、私たちが公正取引委員会の活動に協力するということは、また当然のことであります。先ほど和田委員の御質問にお答えいたしましたように、このカルテル的な共同行為と、今回法律によって行なおうとしている指導行為ないしは政府介入のもとに政府が主導して業界協力を求める行為というものは、これはりん然と分けておかなければならぬ、それを切断しなければならぬと、さっき和田委員にお答えいたしました。そういう点は明確にやるべきであり、やるつもりであります。
  73. 増本一彦

    ○増本委員 大臣は、本会議での今度の総理に対する代表質問での答弁でも、そしてまたそのほかの機会にも、この異常事態を乗り切っていくために民主的な調整ということをやるのだ、こう言っていますね。この大臣の言われる民主的な調整ということと、いま私があげたこの経団連などで言っている業界の自主的な調整というのは、まことにことば、表現としてもウリ二つの表現です。だから、大臣がいま独禁法の適用を再検討するというようなことを言ったことがないとか、独禁法の適用については政府一体として臨んでいくのだというように言われても、やはり政府があるかないか、ここのところが違うだけで、結局業界が望んでいるようなこの自主調整によるカルテルを進めていこう、価格安定カルテルを望んでいこうという方向にならざるを得ないのではないかというように思うのですが、この点はいかがですか。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私が使った民主的調整ということばは、官僚統制ということばに対抗する象徴的な表現であります。
  75. 増本一彦

    ○増本委員 財界も物価統制令による直接統制には限界があり、種々の弊害のおそれもあるので、業界の自主調整によって価格安定をはかることが望ましい。同じように、官僚統制はいやだからこの業界の自主調整で価格安定カルテルまで望んでいる。いま大臣が官僚統制に対置して民主的な調整というようなことを言われたが、中身は同じじゃないですか。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ですから何回も申し上げるように、政府主導のもとに、そういうことを言っておるのであります。
  77. 増本一彦

    ○増本委員 それでは具体的にお聞きします。  この通産省公正取引委員会覚え書きの中で、(イ)として「石油製品の増産、出荷の円滑化、相互融通等、石油の需給緩和のための協力措置」というのがございます。これは具体的にこういうことを業界にさせようとするものなのでしょうか。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これはたとえばLPG、個人タクシーがプロパンガスがない、そういうような場合に、業者間相互で融通させて、Aというメーカーあるいは卸でないという場合には、Bという業者がそのかわり持っていってやんなさいとか、そういう意味の需給緩和のための協力措置意味します。
  79. 増本一彦

    ○増本委員 そうしますと、当然業界のほうでも納得できるマージンとか価格というものがきちんとしていなければ、この協力というものは円滑にいきませんですね。で、それは一軒の業者に対してそういうようなことをするというよりも、業界でそういうことができるような受け入れ体制というものをつくらせるということも前提になるだろうと思うのです。だからそういうことになると、通産省のほうで業界の体制を固めて、そして実質的に共同行為やカルテルの体制を、そういう土台をつくっていく、こういう結果にならざるを得ないというように思うのですが、いかがですか。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは業界がお互いに連携して、みずから自分たちだけで通謀してやったことではなくして、政府が指示して、それに基づいてやる融通行為でありますから、性格がまるきり違います。
  81. 増本一彦

    ○増本委員 高橋委員長にお伺いします。   〔委員長退席、井岡委員長代理着席〕  これまでの当委員会の審議の中で、委員長が、この覚え書きカルテルでないのは、業者の横の連絡ではなくて、政府と個々の業者との縦の関係だ。そしてこの覚え書きやその他のこういう事態が取り除かれたあと、このカルテルのような、そういう体制ができるようなそういう仕組みになることはこれはいかぬ、こういうような答弁をされてきましたね。その見解はいま今日この時点でも変わっていないと思いますけれども、いかがですか。
  82. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 その見解は変わっておりません。ただし、私が申しましたのは具体的なケースに当てはめた場合に絶対に同業の業者が話し合いの場を持ってはならぬということになりましたならば、これはもう動きません。ですから、私は政府が公権力をもって介入して具体的に指示しながら、ここにない、こっちにある、そういう問題についてどこが増産に応じ得るか、増産といいましても、石油製品でも減っていくばかりですから、非常にむずかしいことだけれども、少なくともカルテルというのは通常私どもは増産のためのカルテルというのは聞いたことないですね。そういうふうな話し合いをするものではない。しかしながら、私どもがおそれるのは、たとえこの場合政府協力でありましても、業者団体に、業界に半分手放しでまかしてしまう、こういうふうなことは困る。ですから、そのつど(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の条項をお読みになるとき、この場合でいいますと、通産省の指示監督に基づいてというのはいずれの条項にも全部実は入っていなければいかぬのです。一括してそこにあげましたけれども業界だけで話をするというふうなことではなくて、それぞれの業者に対してこれはどうか、これはどうか、たとえば需給両方の意思の疎通というような点もございますね。これは確かに供給するほうがもう絶対に不足しておりまして、需要するほうがそれをオーバーしている。現在でもそうでございますが、今後もさらにそうなるでしょう。その場合に需要供給を突き合わせるというのは、私ども非常にこまかいことは詳しく知りませんが、会社と購入する側の従来の取引関係というのは実に複雑なんでございます。そういうことについて官庁が全部切符制に直してしまえば別ですよ。あるいは完全な割り当て制にいってしまった場合には、どこへ行っても一定の量しか買えないのですから、それはよろしいのですが、そうでない前段階におきましては、そういう入り組んだ関係についてある程度の話し合いをしなければ問題は全然解決しないだろうと思うのです。しかし、その話し合いというものはかってにやらしたのではいけないのだ、それは官庁が常にそこへ介入して、具体的な指示をしていかなければならぬ。包括的なおまかせというふうなことは絶対避けてください、こういう趣旨でございます。そうでないと、この標準価格段階といいますか、第一段階——最終段階に至る前の段階のいろいろなこういう需給調整、つまり圧倒的に需要が超過しているというふうな状態に対処できないじゃないかと思います。ですから、その範囲でどういうふうにすればうまくいくのかということを前向きに検討するという行為については、私は具体的な指示監督が厳格に行なわれておれば違法性がないと認めざるを得ない、こういう趣旨でございますから、原則は縦の関係です。これは確かに横の連絡をとってはいかぬのです。その場合においても強力な指示監督が行なわれておれば、目的がそういう目的であって公共の利益に反しないということが明確であれば独禁法違反というふうに解釈すべきではない、こういうふうに私は考えておるわけです。
  83. 増本一彦

    ○増本委員 そうしますと、いままで委員長はA、B、C、D、こういう業者がいた。役所のほうでAという業者、Bという業者、C、Dと、ここに直接いく行政指導だから、だからこのA、B、C、Dが横につながるものではないから共同行為ではないのだという、こういう解釈でいたわけです。そのことを今日までこの委員会でも答弁をしてこられたわけです。今度は役所が目を光らしていれば、A、B、C、Dがつながってもいいという、こういうところにまで後退をしていると思うのですが、前段でその考えは変わってないと言いましたけれども、もう後退しているんじゃないですか、いかがですか。
  84. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 同業者の横の話し合いをそのまま認めることは絶対ないのです。しかし、話し合いはある程度しなければ、おそらくいま一人も増員なしに、それは人のやりくりはするでしょうけれども、この緊急事態に対処して、需要と供給の非常なかけ違いをうまく調整するのには役人が仲へ入りまして、わかりやすく言えば役人が仲に入って、そしてそちらからは出ないのか、こちらからはこうなのか、そういう話を具体的に進めること、これはある程度はやむを得ないのではないか。そうしなければ動かない。値段の問題でしたら、これはもう同業者値段を話し合うなんということは絶対禁止です。しかし、数量の突き合わせの場合に役人が実は全部の需要や何かを具体的にみな把握しているわけじゃない。把握し切れないわけですね。総量についてはできると思うのです。だから総量ははっきりときめていただきたい。それを中でどのように分かち合うのかあるいはだれとだれとが取引をするのかという複雑な問題があるように私は聞いております。ですから、そういう意味において横のものをそのまま認めるというように態度を変えたわけではないのです。そういうような業者間の話し合いだけは、これはカルテルの温床になりますから好ましくありません。場合によったら違反にもなります。しかし、具体的に入り込んで調整をはかること——だから政府主導型で調整をはかるのだとしたら、同じ供給者側でどうなっているんだということを役人が入りながら話し合いをするというか、話し合いといいますか、緊急の場合にはそうしなければ間に合わないのではないかと私は思うのです。つまり、そこに私のほうの独禁法には何を違法と見るかという、これは私どもの解釈でございます。これは、解釈は学説その他ではなくて、あくまで公正取引委員会がその解釈の権限を持っておる。それに違反であるとして認定されたものが不満であれば、東京高裁に持っていけばいいんです。三回訴訟する権利がありますから、それはよろしいんですけれども、そういう公権的な解釈については、私どもはこの点までだったら違法性はない。しかし、これはそうではなくて、たとえば業者間の話し合いをまとめて持っていらっしゃいというふうな、そういうことをされるのは全く迷惑であり、独禁法違反になりますよ、こう言っておるわけですから、役人が具体的に仲に介入してやっておる行為については、その際違法性を問われないのがあたりまえではないかというふうに思っているわけです。
  85. 増本一彦

    ○増本委員 そうしますと、このような、御承知だと思うのですが、たとえば(イ)のような協力措置をとる場合に、ここには「出荷の円滑化、相互融通等、石油の需給緩和のための協力措置」ということで、品物を、たとえば灯油やプロパンを動かすわけですね。あるところから足りないところへ動かす、その動かすための流通の上でのマージンとか価格という、こういうものはやはり業者の納得のいく価格で、きちんとその同業組合なり何なりでそこまで詰めた約束や体制というものをとっていなければ、これは実際には円滑に動かぬ。そのこと自身が、いま政府協力措置で入っていく場合にやられるだけでなくて、これまでも委員長が言ってきたように、そのあとにも一そう共同行為や相談をする土壌や体制をつくるという、こういう副産物を残すことにもなるのですよ。そういうところまで見通しを含めて、この覚え書きについての検討というものをされているのかどうか。ここは、私は一番大きな問題だと思うのです。その点について委員長はどういうように考えているのか、もう一度見解を聞かせてください。
  86. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私は、いずれにいたしましても今回の石油の不足、ことに二割削減というふうな段階になりました場合に、その及ぼす影響はかなり深刻なものであろうと受け取っております。それがために、この危機をいかに乗り越えるかということは、あらゆる人がそれぞれの立場に対して、自分の立場のみにとらわれないでやることが望ましいと思っております。だから、そういう事態であるからというだけで、私は独禁法の解釈を非常にゆるめるつもりはありません。というのは、むしろカルテルやいろいろなやみ再販とかいう行為がふえる傾向にありますから、その点においては一貫して変わらないのですが、先ほどからくどくど申しておりますように、政府主導型で行なう。そしてその場合に、いまおっしゃった、こまかい話になりますが、一体マージンはどうするのだ、融通する場合にどういう価格ならばいいのかというのは、これは政府が当然介入せざるを得ないでしょうけれども、しかし、それが一つ標準価格になるわけじゃないのです。相互融通する場合に、そのときの相場というものは、その業者がお互いにまあまあと思う値段でやるんであって、幾らでなければならぬというふうなことをきめないし、卸の段階であったら、なおそうでございます。卸の段階に一応標準価格は設けられませんから、したがって卸の段階に設けられるものも、いろいろ品物の回転率によってマージンが違うし、取り扱いの業態によって、単にただ中間でもって受け渡しするだけできまる場合もある。そういう場合にメーカーあるいは卸の段階で、それについて品物の相互融通ということは起こり得ることである。しかし、その中身について一々公定価格的な、あるいは業界協定みたいな価格体系が必要だとはとても考えないのです。ですから、そういうことをやれば、へたをすれば独禁法違反になります。お互いに価格をきめてしまった、これではちょっと私は合点がいかないと思いますから、そういう行為は、私は違反行為とみなしますから、かなり厳格に解釈してこれを運用するつもりである。覚え書きはなるほどつくりましたけれども、いろいろ一般に誤解されておるようなカルテル的行為やなんかを是認する気持ちは全くありませんので、厳格に解して、具体的な介入も相当厳格に解する、こういうふうに考えております。
  87. 増本一彦

    ○増本委員 流通マージンや流通価格がどういうようなきめ方をされるのかということがわからないのじゃなくて、このことに十分な監視をしていくかどうかという、このところが一番決定的な問題だと思うのですね。  もう一つ(ニ)の問題をとりますと、「違反者に対する出荷停止等、需給・価格の混乱防止のための制裁措置」というようになっているわけですね。そうしますと、この点では、制裁措置政府がきめるのか、あるいは業界としてきめるのか、ここのところであとの不公正な取引に導いていくような、ここで取りきめたものの保証を担保していく役割りを、この制裁措置は果たすわけですから、これも共同行為をつくっていくようになる土壌を生み出しやすい最も危険な問題だというように思うのですよ。  ちょっと先に通産省にお伺いしますけれども、この混乱防止のための制裁措置と、いうのは、役所がきめて役所がやるものなのですか。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 政府指示のもとに行なうことです。
  89. 増本一彦

    ○増本委員 出荷の停止をしろとか、あるいはそれに組合からの除名が入るかどうかわからぬけれども、そういうことを政府の指示のもとでやるというのは、政府がこういう制裁措置をとれということを具体的に指示をする、ふういうことになるのですか。
  90. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ここであらためてまた私申し上げなければならぬのは、6の条項ですね、ただいま御質問になりました条項は独立しては意味をなさないわけです。「違反者に対する出荷停止等、」という書き出しになっておりまして、かねがね私申し上げているのですが、6の措置と(ニ)の措置、(ニ)の条項は一体として読まなければ意味をなさない。6に「標準価格等」とあるのは、生活安定でいいますと、これは小売り段階標準価格であります。メーカー段階を含みません。小売り段階でもってやっている、いまのたとえば三百八十円という灯油の価格とか千三百円というプロパンの価格というものは、これは末端段階価格でございますから、それに対して通産省との覚え書きにおいては、一番最初に法律の実施等とありまして、これは法律が効果を発するまでのつなぎとしてもやれるという、私どもで、これはいわば法律に基づく行為ではないけれども、しかし、いま緊急の場合において国民がそれを必要とするという措置であるならば、それは認めていいじゃないかという考え方でございまして、したがって、そういう末端の段階における業者がたくさんございます。非常に多くの業者がございますが、それらの方々が違反をした、高い値でもって売ってやまない。そういうものに対しては、通常ならば許されない出荷停止という行為が元売り段階で行なわれても、それは独禁法違反に問いません、こういう趣旨でございます。ですから本来ならば、出荷停止をかってにやれば、これは不公正な取引方法に該当します。しかしながら、末端価格政府が指示してきめた。この法律が通れば、これは当然標準価格あるいは特定標準価格になるでしょう。そういう法律に基づく価格、それは再販のときの契約による末端価格ではございません。全く違うものでございますから、それを守らないというのは、守らないほうがいけない。ですから、それに対して出荷停止という措置を一々あれしなくても、こういう覚え書きによって明らかにしたわけです。そこまでは、そういう行為は反則になりませんよ、違法性を問われません、こういうふうに言ったわけでございますから、確かに書き方がまずいために、(ハ)と(ニ)を別々に読むと、6はまるでメーカー段階におけることをもうたっているように、これだけ見るとそうとれるのです。これはまことに遺憾でございます。  その点は、はっきり申し上げまして、メーカー段階価格をきめて、それを順守するための協力措置なんということをあらためて覚え書きでうたう必要は全くありません。それは守ればいいのです。守ればいいのであって、かえってその中に制裁措置だ何だなんということをやれば、これは制裁金になるでしょうけれども、それは実行上守ることも期待できませんし、それらのメーカーについては、主要なメーカーであれば政府の監督の目が行き届くはずです。ですから、そういうメーカー段階については、このような覚え書きにあらためて書く必要もない。しかし三百八十円とか千三百円という価格になりますと、これを守るべき業者の数はめちゃくちゃに多いわけでございますから、それらについて政府が一々これから監視してまいりますが、しかし手の及ばぬところは業界に——上の業界ですね、これに品物を売っている業界協力を求めてもいいのではないか、こういう趣旨でございますので、書き方が悪いという点はひとつごかんべん願いまして、そういう意味だけは御了解願いたいと思います。
  91. 増本一彦

    ○増本委員 時間がありませんので、先に進みますけれども、しかしこういう協力措置があとにカルテルを生み出すような、そういう土壌づくりになる。また監視をきびしくするといっても、これまでのやはり行政指導やその他の実態から見て、これは国民としても危惧を持つのも当然だし、私はこういう誤解を生み、また結局独禁法を骨抜きにしていくような、言ってみれば独禁法の自殺行為になるようなこの覚書は絶対にやはり破棄をしなければならぬ。問題は、もともと独禁法の適用のないことだったら、あえてこういうようなことをするまでもないことだ。疑念があり、それとすれすれのこと、あるいは独禁法にいわば脱法行為にひとしいようなことをやるからこういう覚書が必要になってきたんだというように見ざるを得ないので、ぜひとも破棄は強力に主張したいと思うのです。  次の問題に移ります。  企画庁長官にお伺いいたしますけれども長官は十二月十五日に談話を出されましたね。その中で、大企業製品価格の上昇が著しいことは遺憾であり、値上げの自粛を強く要望したい。このような事態に対処して、国民生活安定緊急措置法案の早期成立をはかるほか、同法に基づく標準価格などの決定にあたって、法律成立前の先取り的な値上げを利することのないよう適正な措置をとることにしたいという趣旨のことを言われています。  そこでまず最初にお伺いしたいのは、この法案成立後直ちに指定する物資をこの場で明らかにしていただきたい。
  92. 内田常雄

    内田国務大臣 それは主務大臣がそれぞれ選びまして、それを協議の上決定をいたすわけでございますので、いまこの場で私がどれとどれということは申し上げられませんけれども、要するに二つの範疇の物資、すなわち国民生活に最も関連の高い物資、もう一つ国民経済の基礎となる物資のうちから値上がりが激しいものまたは激しくなるおそれのあるものを、私どもが今度つくりますところの国民生活安定緊急対策本部というようなところで相談をして選んでまいるつもりでございます。
  93. 増本一彦

    ○増本委員 きょうお見えなのは通産省ですからお伺いしますけれども、じゃ、この法案成立後直ちに指定する物資は通産省所管として何か、すでに御用意のあるものを明らかにしてほしいと思います。
  94. 内田常雄

    内田国務大臣 これもたびたび申し上げていることでございますが、物資の種類はたとえば生活関連物資で申しますと、今日の消費者物価をつくります中身の、これは家計支出の項目になるわけでございますけれども、それが五百近くあるはずでございます。その中から選ぶ。また国民経済に重要な関係のある物資は、これを卸売り物価を構成する品目の中から選ぶのが私は現実的だろうと思いますので、そういう選び方のもとに、先ほど来申しておりますような選定をいたしますので、いまここで何と何ということを申し上げる段取りに至っておりません。   〔井岡委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 増本一彦

    ○増本委員 長官はこのような事態に対処して、国民生活安定緊急措置法案の早期成立をはかると言っているわけですね。こういう談話を発表されたということはお認めになるでしょう。法案の早期成立ということだけを言っておって、すぐ移る準備ができてないというのはどういうことなんですか。指定物資が、この五百からの中から生活関連物資の中でそれを選ぶために、これは各所管庁でやるんだというような、もう審議が始まったときから同じ答弁をされているわけですね。この法案で物価の安定をはかるなどという、このこと自身が私はたいへん疑いを持つようになります。長官として釈明なり弁明がありましたらおっしゃってください。
  96. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、この法律をつくっていただきますことによって、それが物価の安定にならないとは全く思っておりませんので、この法律をつくることによりまして個別物資対策としての物価対策を遂行できるものと信じております。  なお、法律のつくり方といたしましては、たとえばどういう物資を指定するかというようなこと、つくり方によりましては、別表第一号に定める物資とか、あるいは別表第二号に定める物資とかいうつくり方も形式としてはございましょうけれども、しかしこれは何が物価の値上がりが激しくなるおそれがあるか、また激しいかというようなことが常に動いておりますので、増本さんの御主張なさるように、初めから別表第一に掲げる物資、そういうような形をとらないほうが機動的でいいだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  97. 増本一彦

    ○増本委員 私は別表一とか別表二でやれと言っているのじゃないのですよ。いまもうこの法案の審議もそろそろ最終段階に入ってきている。この時点で、長官の談話は異例の談話だというようなことまでいわれている。この時点で早期成立ということを長官みずから談話の中で言っているのに、いまだに指定しようとする物資そのものの用意がない。私はこの政治姿勢そのものを問題にしているのです。  では、仮定の問題になりますけれども、たとえば灯油とかプロパンガス、これらの物資が指定物資になった場合には、具体的にひとつどのようにして標準価格をきめるのか御説明をいただきたいと思います。
  98. 内田常雄

    内田国務大臣 物資を指定しますのは、これは主務大臣がかってに指定するわけではございませんで、政令で定める。つまり各省相談の上で、仕組みとしては、おそらく国民生活安定緊急対策本一部のようなところへ届け出をしましてきめますが、その価格をきめますのは主務大臣がきめるわけでございます。いまおっしゃったような物資につきましては中曽根通産大臣がきめて、おそらくはこういうきめ方をするからこれで了承してもらえるかと言って私どものほうに御協議があると思うわけでありますから、中曽根さんのほうが主で、私のほうがそれでいいか悪いかを判断するのでありますが、まず灯油で申せば、これは標準品目標準価格をきめるわけでありますから、その標準品目というものはどこでどういう形で売っているか、何が代表的な品目になるか。つまり炭屋やまき屋で売っている灯油になるのか、あるいはまたガソリンスタンドで売っている灯油になるのかというようなことによりまして、販売の態様、取引の状態等が違うわけでありましょうけれども、そういう販売の態様や取引の状態、需給の状況等も頭に置きまして、標準になるものを標準価格としてきめますけれども、いまの三百八十円という値段は私は標準価格をきめる際の有力な手がかり、資料となるだろうと考えております。またそれがよろしかろうと私は思います。
  99. 増本一彦

    ○増本委員 いま長官が言われた中で、燃料屋で売っている灯油になるか、ガソリンスタンドで売っている灯油になるか、こういうお話がありましたけれども、三条から見ると、そういう売っている場所によって標準品目がきまるということじゃないんじゃないですか。標準的な品目というのは、そういう意味じゃないでしょう。
  100. 内田常雄

    内田国務大臣 私も、どうもあまり法律の読み方はじょうずなほうではございませんけれども、この第三条の第三項でございます。「標準価格は、」ずっと見てまいりまして、「取引の態様及び地域的事情、当該標準品目に係る指定物資の需給の見通し」云々、こういうことを総合的に勘案してきめるということは、取引の態様でございますから、たとえば容器に入れた値段とするか、あるいはいまの三百八十円のように、容器もはずした裸にするか、あるいはまた地域的事情で、いまは一本の三百八十円ということのようでございますが、これは法律に基づかない中曽根指導価格のような形でございますが、この次は中曽根・内田指導価格というようなものになります場合には、その三百八十円という中曽根価格を有力な手がかりにしながら、取引の態様、地域的事情等々を総合的に勘案してきめてまいる、こういう趣旨で申し上げました。
  101. 増本一彦

    ○増本委員 私が言っているのは標準価格じゃなくて、あなたが間違えたのは、標準品目で間違えたんで、三条の一項のことを言ったのです。まあいいです。  結局、この問題でも、どうもここで私たちに十分納得できるだけの説明や資料というものを御用意されていない。これでは、こういう政府案の標準価格あるいは特定標準価格という二段がまえのやり方がよいのか、この点妥当性や有効性についての具体的な審議ができないのですね。時間がありませんから、次の問題に移ります。  長官は、十二月十五日の談話の中で、「特に最近、大企業製品価格値上げが著しいことは遺憾であり、値上げの自粛を強く要望したい。」こういうように述べていますけれども、問題は口で言うだけでなくて、具体的な手だてをもって実行することだと思うのです。この大企業製品価格値上げについて、これを押えていく具体的な手だてをお伺いしたいと思います。
  102. 内田常雄

    内田国務大臣 この法律を一日も早く制定をさしていただきたい。制定されました後には、物資の指定、標準価格決定というものをいたすわけでありますが、それまでの間に現実の価格というものをどんどん先取り的に上げられてしまったのでは、またそういうものに標準価格が、この法律が通った際に牽制されることは、私はこの法律をつくります者としても非常に遺憾でございますので、この法律が皆さま方の御理解によりましてつくられます場合には、先取り的な値上げを民間の企業家がやっておいても、そんなものはそのまま受け入れるものではない、むだになるのだ、こういうことを牽制していくことが、行政を担当する私どもとしては、またいまの場合としては、きわめて大切だと考えまして、いまお述べになりましたような意向を表明いたしておるわけでございます。
  103. 増本一彦

    ○増本委員 これは、自粛を要望したり期待するだけでおさまる性質のものではないし、実際に、軒並み大企業はこの九月決算でも大きな利益をあげて、そして大企業製品というのは国民生活の必需品である場合もあるし、電気製品なんか文字どおりそのとおりですし、それから生産財としても経済の重要な部分をしょっている。いま長官指摘するような大企業製品価格の上昇の一番大きな要因は、原資材ですね、原料、材料の上で、大企業を中心にして値上げを競っているというところに問題があると思うのです。これをどうやって押えるかという、単に製品蔵出し価格元売り価格をきめるということだけで押えられる性質のものじゃないと思うのです。むしろそれは、末端の小売り人まで来る生活関連物資等についての蔵出し価格元売り価格を押えるだけの話でして、それが製品としてできる前の段階での、たとえば鉄材とか、アルミとか、こういうものに不当な利益として転嫁されて値上げになっているという、しかも石油危機を背景にして、先行き需給が一そうタイトするという、こういうことからいま一そう値上げ競争が行なわれているわけですね。こういうところにメスを入れて、原価を明らかにさしたり、不当なもうけを削らせるような、そういう強力な行政指導というものが、いまもし長官がほんとうにこの談話で言っているようなことを、大企業製品価格の値上げを押えるということをやるんだったら、それを行政指導としてもやるということが必要なんであって、国民生活安定法でこれはできるという性質のものじゃないと思うのです。だから、そういう点で、いまの現実のこの実体経済を、長官の認識というのは非常に甘いし、むしろ正確に認識されておらないという気もいたします。そういう、私がいま申し上げたような手だてをおとりになるようなかまえがあるかどうか、そのことをお伺いしたい。
  104. 内田常雄

    内田国務大臣 そういうかまえで私も談話を出しているわけでございまして、法律が施行され、標準価格をつくる際に、その先取り的な現実の価格が世の中にどんどん行なわれているような事態にならないように、私はそれだけの事前の準備をもって臨んでおる、こういうわけでございます。
  105. 増本一彦

    ○増本委員 それではその関係を具体的に少しお伺いします。  経済企画庁が「標準価格決定方法について」という資料を私たちにも配付されました。これを拝見しますと、重要なのは、一枚目の下から五行目からの部分であると思うのです。ここで、「過去の妥当と考えられる時期の販売価格と比べ、標準価格設定時の価格のうち海外原材料の価格の大幅な変動等必然的に生ずる部分以外の便乗値上げ等による過当な利得部分をチェックして、公正な価格を決める考えである。」、こういうようにいっておる。そこで一体「過去の妥当と考えられる時期」の価格というのは、たとえばいま非常に需給関係がタイトになっている灯油とかプロパン、セメント、木材、こういうものではおのおのいつの時点の価格を妥当であると考えているのか。その点はいかがですか。
  106. 内田常雄

    内田国務大臣 そのことにつきましては、先ほど和田さんからもお尋ねがございまして、お答えを申し上げたどおりでございまして、これはたとえば一月から十一月までの平均価格というような一律単純な考え方ではなしに、私は、その物その物によりまして、いろいろな価格の動きも今日に至るまで違っておると思いますが、まず一番安定——その物につきまして一番安定しておったその時代の価格というものが中心にならざるを得ないと思います。それ以後において賃金の値上がりでありますとか、あるいは輸入原材料の値上がりでありますとか、私どもが正当に評価しなければならない要素は、それは正当に標準価格の作成の際に取り入れるのはよいと思いますけれども、ここでも申しておりますような先取り的な便乗値上げによる過当な利得部分というものはチェックするということはチェックアウトする。もう単にチェックするだけではつまらないから、そいつはチェックしてその部分は削ってしまう、こういう趣旨でございます。
  107. 増本一彦

    ○増本委員 いま申し上げた品目について、小島局長、具体的に、「過去の妥当と考えられる時期の価格」というのはいつの時点のいつの価格かということは、お答えになれませんか。
  108. 内田常雄

    内田国務大臣 いまお答え申し上げましたように、ものによってこれはたいへん違うと思いますので、平均的なことを、何か総理大臣が記者会見などで、一月から十一月までの平均価格、こういうようなたとえ話をなさったこともあるそうでございますが、それはまあ一つ考え方でもあろうと思いますけれども、私どもの現実の作業の場合には、単純に、そういう計算だけではなしに、先ほど述べましたようなやり方できめてまいりたいと思います。
  109. 増本一彦

    ○増本委員 委員長長官に御注意をお願いしたいと思うのです。私の尋ねていることをよく聞いて、そのつぼだけをひとつ答えてください。  私が申し上げたのは、灯油、プロパン、セメント、木材などではおのおのいつの時点の価格が妥当なのか、こういうように聞いているので、だから一律平均の価格をきめろというようなことを私は質問としても申し上げているわけじゃないのです。そういうことじゃないということは、これはもうそのとおりなんですよ。そういう、一律にやったら実態に合わないし、妥当な価格がはじけないというのは当然なことです。だから、それぞれいつの時点のことを考えているのか、それが標準価格を形成していく上できわめて重要な判断の材料になると思うから、あえて伺っているのです。ひとつお答え願いたいと思うのです。
  110. 小島英敏

    小島政府委員 個々の物資につきまして原案をつくりますのは物資所管省庁でございますので、きょう、そういう御用意があるかないかは存じませんけれども通産省のほうからお答えいただきます。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 標準品目とか標準価格というものをきめるときには各省斉一でなければいけません。一つの省だけが先へ行き過ぎたりするということは、全体の均衡を破ります。そういう意味において、まだそういう相談を各省ごとにもしておりませんし、そういうような準備もまだしておりません。この法案が通りましたら、そういうような検討に入るだろうとは思いますけれども、そういう状態でありますから、通産省だけが先行するというようなことはしておりません。
  112. 増本一彦

    ○増本委員 これは私が先ほど運用上の問題で指定物資についてお尋ねしたときの批判がそのまま当てはまると思います。もう一つ便乗値上げなどは排除するということは、これはもう当然だと思うのです。  ここで私は、大企業などがよく、今日の価格の上昇は企業努力ではもう吸収できないというような意見を言う。新日本製鐵の稲山社長などはそういうことを、新聞で見る限りはよく発言をしていられるようです。しかし先ほどお話ししたように、これまで見ても大企業が軒並み好況になっているし、特にいまこういう緊急事態のもとで一定の利潤を適正な利潤として価格にのせて、それがまた価格上昇に影響をしていく。ところが、それが適正な利潤かどうかということは、これは解明するすべもないわけですね。原価の公表もしない。それから通産省といえども、いままでの時点では、そういう生産費についてこの原価に対してまで十分な解析や解明をしていない。この際、いまのこのような大企業を中心にしたこの価格の上昇に対して、やはり大企業が節度を持った価格形成をするように強力な行政的な介入を含めた指導が私は必要であると思うし、必要な場合には大企業製品価格を規制するような法律までも、この緊急事態を乗り切っていく上では必要になってきているというように考えますけれども、その点、所管の通産大臣からひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま御審議願っておりまする二法で当面この危機を乗り切っていこうと思うので、その必要はいまのところは感じておりません。
  114. 増本一彦

    ○増本委員 私は、これは大臣としてももっと実体経済を十分に解明し、御認識される必要があるというように思うのです。私はぜひ、こうした大企業の原価を解明し、そして適切な節度のある価格形成をしていくように十分な行政指導をするよう要求したいと思います。  次の質問に移ります。今度の標準価格は、再三ほかの人からも指摘されましたように、卸売り価格についての取りきめがない。このことが、これも再三指摘されてきましたように、零細小売り商を圧迫するという状況になる。皆さんは第六条で標準価格をこえて販売をする場合には引き下げの指示ができるし、それで卸売り業者についての規制も可能なんだという見解を発表されていますけれども、いまの物価調査官の三百六十人足らずで兼任ばかりだという状態を見れば、これがすべてに行き届くという保証もありません。ですから、やはりこの卸売り価格についても、主要なものについてはそれを定めるということを考える必要があるのではないか。いろいろ流通機構というのは複雑だ、これはそのとおりだと思います。しかし、少なくとも主要な取引の態様に応じて卸売り価格をも定めるものとするということをやはり検討してみる必要があるのじゃないか。これは指示価格の問題とともに——私たちは指示価格といっています。野党修正案の一つの骨子にもなっているのですが、この点についてのわれわれの意見も十分に検討をされるべきだと思いますけれども、いかがですか。
  115. 内田常雄

    内田国務大臣 政府側の考え方は、たびたび申し述べておりますように、生産者あるいは輸入者の蔵出し価格というものとそれから販売業者小売り価格というものをきめていけば、中間の卸売り段階における複雑な取引機構に一々応じたような価格をきめないでも、標準価格としての作用をなす、こう考えてこの法律案がつくってございますが、いま増本さんの御指摘の点は、皆さま方の各党の間で御論議になっておられるように承っておるところでございます。
  116. 増本一彦

    ○増本委員 長官、たとえば大手のスーパーですと、生産者から直接仕入れてそして大量に売る。だから流通経費が節減されて、これがいままでの状態でも、その周辺の小規模な小売り商や、ある場合には中小の問屋も泣かせてきた実態だと思うのですね。だから、消費者には安い物を、そして小規模零細業者の経営も守るという、この両面の成り立つ、こういう政策の要請がいままさに問われているのだというように私は思うのですよ。だから、この点での価格形成についても十分な配慮や指示、介入ということを流通段階ではかっていくということが必要だというように思うのですが、いま小売り商百五十万のうち零細企業というのが百三十万でしょう。そうすれば、この零細業だけでなくて中小の問屋もやはり、主要な流通過程での卸売り価格についての規制や介入ということをきちんとやれば、営業も窮屈な中でも保証されていく道が開ける。これをとるかとらないかというここが、私は、中小企業政策とか小規模零細業者の営業を守る政策の上できわめて重要だと思うのですが、そこいらまで十分配慮される必要があると私は思いますが、これはひとつ長官と通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  117. 内田常雄

    内田国務大臣 増本委員がおっしゃるとおりでございます。その辺に標準価格のつくり方のむずかしさがございまして、単純につくれるものではございません。ことに、私どもは、中小零細企業者立場というものも十分考えてまいらなければならないと思いますので、たとえばスーパーが産地直送を受ける場合のことだけを想定して、消費者だけの立場から、安くきめればきめるだけいいと、こういうふうにも、いまおっしゃるとおり考えられない面がありますので、いろいろ苦労をいたしておるところでございます。
  118. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 内田長官と同じであります。
  119. 増本一彦

    ○増本委員 この面でも具体的な政策が提示できないというのは、私はたいへん遺憾に思います。まさに、これが小売り商いじめになるという危惧を雄弁に物語っているのだと思うのです。いまこういう時期ですから、いままでのようなやり方は検討していただくとして、少なくとも中小企業者の共同化、自主的な共同仕入れとか共同購入というものを政府が積極的に促進をするというようなことで、流通機構、流通の問題についても中小の小売り業者を守っていくというような手だてをとるべきだし、そういう面で、特に地域と密着している地方自治体も積極的にこの地元の中小業者の共同仕入れとかあっせんができるように、国と自治体とが一体になってやはりそういう面でもくふうをしていく、こういう政策が、いまこれからのこの安定法を施行し、小売り価格を規制していくという上ではきわめて重要になるのだろうと思うのですね。その点についてひとつ最後に、大臣食事まだだそうですから、これだけ答えていただいて、で、あとゆっくりお食事していただいてけっこうですから、ひとつその問題だけ答えてください。
  120. 内田常雄

    内田国務大臣 これは通産大臣所管の物資ばかりではなしに、農林大臣所管の物資などにも多く見るものでございますので、増本委員の御心配になられるとおりのことを私どもも心配いたしております。これはまあ、物資の販売の面では、流通機構の整備合理化というものが、価格の面でもあるいは需給の調整の面でも非常に大きなファクターでありますことを私は常に考慮をいたしておるものでございますので、それらの点につきましても十分配慮してまいるように、通産省のみならず、関係の物資担当官庁に私どものほうからもいろいろ協力をしてまいりたいと思っております。
  121. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、あと二つだけ聞いて、私の質問を終わりたいと思います。  一つは、昼間の質疑の中で、二十六条の記帳義務ですね。これについては中小零細業者には緩和をするというような答弁がありました。しかし、現実に記帳能力や記帳の体制、実態を見れば、これは記帳義務そのものを負わせることが酷だというように思うのですよ。だから、これはぜひ適用除外すべきだというように考えますが、その点いかがですか。
  122. 小島英敏

    小島政府委員 内部にも適用除外すべきだという考え方もございますけれども、やはり標準価格、さらに一段進んだ特定標準価格というようなことになりますと課徴金の対象にもなるわけでございますので、全然記帳をしないでよろしいというところまでいくのは行き過ぎではないかという考えもございまして、どの程度簡略化した帳簿にすべきじゃないかというような考え方が多数説でございますので、なお検討さしていただきたいと思います。
  123. 増本一彦

    ○増本委員 これはどういう簡易帳簿をつくっても、複式またはそういうものに類似したようなやり方とかいうことになったら、これはもう全然実効性が保てなくなりますよ。だから、私は、この問題はぜひとも適用除外ということを積極的に検討していただきたいと思うのです。  もう一つは、これまでも、私たちは、この法案国民生活全体に重大な影響を与える、国民経済にも大きな影響を与える、だから、こういう問題こそ民主的な運営を確保する必要があるというところで、審議会をつくって、そのもとでこの法の運用を常に検討していくということを提案してきました。  そこで、この審議会方式については、長官は、緊急性という点から見てこれはまずいという、こういう意見を述べておりましたね。しかし、これは運用のしかただと思うのです。総理のもとにある物価対策の審議会のように、二年間も眠らされておって、そうして総理が中山伊知郎会長からおこられたというような、こういう運営のしかたをやっていればだめにきまっているのです。いまのこの緊迫した事態のもとで、常にやはり消費者や学識経験者の意見も聞き、それで一体になって運営していくというところに、適正な価格の形成ができるし、運営も十分に、大多数の国民の納得が得られるような運営も保証されていく道が開けるのだというように考えるのですが、この点で、いま一度政府自身として、この審議会方式を採用していくという、前向きに検討をすべきだと思いますが、いかがでしょう。
  124. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点につきましてはわれわれ両名、両名ながら異見がございますが、各党折衝の結果を尊重いたしたいと思います。
  125. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、私は、このいままでの質疑を通じましても、まだまだほんとうに国民の生活を守っていくという上で対処していくという、そういう面での政治姿勢に大きな疑念を持たざるを得ません。そういう面も含めて、積極的な物価対策の展開がいま必要になっているということを申し上げて、質疑を終わりたいと思います。(拍手)
  126. 平林剛

    平林委員長 有島重武君。
  127. 有島重武

    ○有島委員 本法案の第一条にはこの法律の目的がうたってあるわけでございますが、その中で「物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、」そのように書いてあるわけでございます。この点についてこの前経済企画庁長官にはこれを問い尋ね、いまその時期にあるのだということを承りましたけれども、きょうは通産大臣が来ていらっしゃいますから、このことについてちょっと突っ込んで伺ってみたいわけであります。  「我が国経済の異常な事態」ということについて、これはどのくらいの大きいレンジで考えるかということによってこの法の運用というものがずいぶん違ってくるのではないかと私は思います。「我が国経済の異常な事態」というのはきのうやおとといに起こった問題ではなくてかなり長い間多少変則といいますか、異常な事態を続けてきたんだというような見方を私はするわけなんです。それですからここでもって緊急措置をとられた。それでその緊急な事態——確かにいま石油危機になっておりますけれども、そういった問題がある程度解決されるとそのままいままでの事態が続くとすれば、これは私どもの考えていることとは少し違うのではないか。たとえば日本は資源にしてもエネルギーにしろ、原料特に食糧なんかの大きな部分を外国に依存している。それから各企業の自己資金の率が非常に低くて借り入れにまって自転車操業をしている面が非常に多い。それから狭い国内において消費者をあおって物資を消費していくことが文化の水準であるというような一つの宣伝ということがよく行き届いておる。先日はモデルチェンジの問題が出て、不必要なモデルチェンジはもうしないことに業者も申し合わせたということがございましたけれども、それからこうした消費、消費でもってごみの山ができている。それから産業公害につきましても厳格な措置が一向にとられていかない、こういったこと自体が相当な異常な事態ではないかというふうに私は思うのですけれども、通産大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  128. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 現在の事態のように、たとえば外的要因または内的原因等によりまして経済の正常な運行がむずかしくなって、物価の騰貴とか暴騰、憂うべき事態、そういうような現象が起きて、しかもある一定の限度続くという見通しがある、そういう場合を私はさすものであると思いまして、現在の事態はまさにそれに該当すると思っております。
  129. 有島重武

    ○有島委員 いまおっしゃったようなお話ですと、いつごろから異常であるとお思いになりますか。
  130. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これはOAPECで石油の生産制限をきめまして、その結果が出てこようとする、そのために思惑その他で物価上昇が始まりかける、そういう前後からそのときの政府が認定することになるだろうと思います。
  131. 有島重武

    ○有島委員 具体的に今年の大体何月ごろをもって異常とお思いになるわけですか。
  132. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 OAPECが削減を決議した。そしてそれによって日本がその対象になった。また世界的にもその大きな影響が出てきた。まあ出てくるであろうというところから出てきつつある、その辺にかけてもはやそういう事態に入ると私らは考えます。
  133. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、経済企画庁長官はもうすでに異常な事態である、そのようにこの間判断なされているわけであります、いまもうすでに。(中曽根国務大臣「私もそうだと申し上げました」と呼ぶ)それで、この石油の輸入について異常な経済の流れの中でのまた異常な事態ではないかと私は思うわけでございますけれども、もっと長期にさかのぼってもやはり異常な事態であって、これをいまおっしゃるように短期的に見ますと、これをおさめてやはりもとの先ほど申しましたような、いわゆる自転車操業の成長経済というものが推し進められていっていいのか、あるいはこれを転機としてやはり日本経済そのものがいままで異常であった、これを是正していかなければならない、そういうような運用のしかたをなさるのか、その辺のことを伺いたいわけです。
  134. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この法案国民の権利義務を拘束するという重大な内容を持っておりまして、これを施行する、またこれを適用するという場合はなるたけ限定的に考える必要があると思うのです。ですから内閣が告示をする、そういう要件を持っておるわけであります。内閣が告示をしてこの法律を適用するという段階は、やはりかなり異常性を持っていないとそういうものには該当しない。景気の波動によって高下が起こり得るということは当然あり得ることでございますけれども、今度の場合のように、石油の二五%削減ということが出てまいりまして、明らかに物価が暴騰する危険性が出る、そういう事態はまさにこの法案に該当するときであるだろうと思います。とにかくこの法案は告示という大きな要件を必要とするのでありまして、なるたけ限定的に、適用は慎重に行なう必要があると思います。
  135. 有島重武

    ○有島委員 まさにその辺のところに——これは確かに緊急措置法でありますけれども、この緊急措置法をまたてこにして、経済の方向そのものについては考慮を加えないで、それで単なる緊急措置としてだけ扱うというか、運用していくというか、そのことについて私どもは非常に心配を持っているわけなんです。それでこういったことを一つのチャンスとして、日本の経済のいままでの異常なあり方をひとつ転換していこうという、そういう姿勢がなければならないのじゃないかという声が起こっておるようでございますけれども、そういった点については通産大臣としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  136. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 景気の波動によって物価は高下いたしますが、それが景気の波動によるものであるという程度の場合にはそう著しく暴騰するとかなんとかということでもございませんから、私は適用すべきときではないと思うのです。今回の場合でも、八月三十一日の公定歩合の引き上げ以来、わりあいに卸売り物価の騰勢は弱ってまいりまして、九月、十月はそれがかなり鎮静化してきたのです。でありますから、あの勢いで続けていけば、もし石油の削減というようなことがなければ、私は次第に鎮静化していっただろうと思います。しかし、OAPECのこういう問題が起きたために著しく乱れて、また憂うべき事態に転化してきた、私、そう判定しておりまして、この春以来の過剰流動性等々に基づく物価騰貴というような事態がこの法案に指定するような時期であるとは私は考えたくありません。ともかくこういうような権利義務を拘束するというようなものについては、非常に限定的に慎重に扱うということが必要であると思っております。
  137. 有島重武

    ○有島委員 石油に限って申しますと、石油の輸入について本年上半期の輸入量、それから下半期の見通しということは数字が出ているわけでありますけれども、本年度の石油の輸入の見通しは大体どのくらいになるのか。それからさらに五十年度、五十一年度ということはどのようにする気なのか。ということは、わが国の石油消費が長期的に見てどのくらいが適量なのかということを検討する必要はないでしょうか。
  138. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 来年度の石油の輸入の見通しは、いま予算策定の基礎としていろいろ協議しているところでありますが、大体二億六千五百万トンから二億七千万トンぐらいの間であろう、これを一応の基礎にしております。再来年以降はどうであるかといいますと、これはOAPECの中東戦争に対する態度がどう変化するかということに非常にかかっておりまして、いま予測することは困難であります。しかし、いずれにせよ、石油の数量というものによって産業構造というものが著しく変化するということを今回われわれは経験したわけでございまして、来年度から初めて石油の輸入数量というものを基礎にして予算編成を考えたわけで、この石油の輸入数量をチェックすることによって産業構造の転換、省資源型への転換というようなことを行なういい勉強もさせられたわけであります。したがって、経済社会発展計画に見合う五十年、五十一年、五十二年の経済の構想に沿うように石油の輸入数量というものを考え、そして適正成長をもたらすような石油の輸入数量を考えて、そして予算その他の規模も考えていくのが適当ではないか、そういうふうに考えております。
  139. 有島重武

    ○有島委員 来年度二億七千万トンというのは、ことしとほぼ変わりないわけでありますね。そして五十年、五十一年、五十二年の見通しをもう一ぺん考え直す、検討し直すという必要はないのでしょうかということを伺いたいのですよ。それでOPECだとかあるいはアラブであるとか、そういう対外事情によって、年々ときどきにこちらのわが国の経済状況をある程度制限されたりきめられてしまうということをいつまでも続けておってはならないと思うわけでありまして、あるいは国民がそれぞれにやはり経済成長の意欲を持っておるわけでありまして、これは入ってくるならたくさんとってもらいたいということは言うにきまっておる。けれども、そのときどきの制限あるいはそのときどきの値段関係とかそういうことにかかわらず、いま言われましたけれども、省力、省資源の経済の目標というものはいまやはり設定しなければならない、設定し直さなければならないという時期にいまあるのではないかと私は考えますけれども、そういった点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  140. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は私も同感でございますが、経済社会発展五カ年計画がございますから、その線に沿って進むということになりましょう。その計画が変更されれば、また変更されたところに従って進むということになると思います。しかし、通産省の政策といたしましても、産業構造審議会の答申がございまして、省資源あるいは知識集約型への転換を強く指摘されておりまして、そういう意味におきましては、適正成長を維持しながら構造変換を実行していく一つのいい機会でもある、そのようにわれわれは受け取っております。
  141. 有島重武

    ○有島委員 いま言われました経済社会発展計画そのものの変更といいますか、修正といいますか、そういうことをいま考えなければならない時期ではないかということを言っているわけです。いま大臣のおっしゃったのは、変更されたら私たちも考えますよ、そういうことでございますね。私たちはもうそれは変更すべきじゃないかと思っておるわけです。
  142. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 企画庁の所管なんです。どうぞ内田長官にお聞きください。
  143. 有島重武

    ○有島委員 私はあえて通産大臣に、そういった御判断をどのように考えていらっしゃるか、これは虚心たんかいに御意見を承りたい。めったにこうやって物価の委員会に出てきてくださることはないじゃありませんか。
  144. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は有島さんの思想に共鳴しておるのであります。それで通産省もそういう考えを持っておるわけであります。そこで、経済社会発展基本計画もたしか成長率というものは八%から一〇%ぐらいの間だったろうと思います。それが日本はめたらやたらな成長をいたしまして、伸び過ぎの傾向がございました。だから、おそらくいまある経済社会発展基本計画に従っていってもちょうどおっしゃるようなところへいけるのではないかと思っておるのです。たしか七%から一〇%の間の適正成長を考えておったように思いますし、日本の経済を考えてみても、今後の推移を見ていろいろな諸元を考えると、その程度がいいし、またその程度にいかざるを得ないという形になりはしないかと思っております。
  145. 有島重武

    ○有島委員 毎年政府が物価の見通しもなさいます、あるいは成長の見通しもなさいます。それがたいがい予想を上回っていくわけですね。それで、どうして予想を上回ってしまうのか、そういった原因の追及ということなしに、数字の上ではそうだからちょうどその辺にいくだろうというわけにはいかないと思うのですね。
  146. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そこは先ほど来申し上げているように、われわれも大きな反省と教訓を得た、つまり石油が無限大に入るということから、何ぼでも石油を入れて、そうして企業が成長しようとずる力にこたえようとした結果が、石油に偏食した肥満児の日本経済ができたわけで、いまそれが罰を受けておるわけであります。そういう意味で、石油の輸入量というものによってチェックしていく、それを今回われわれは実物教育を受けておるわけです。ですから、来年度初めて一億六千五百万トンから二億七千万トンの間という石油の輸入数量を基礎にして予算編成を考え出した、今度の予算編成の一番基本的なところで閣僚が何回も会いましたのは、石油の輸入数量何ぼということをきめるためであったのです。それで通産省がいろいろ数字をはじきまして、二億六千五百万トンから七千万トンの間という数量をきめて、それで、じゃ経済成長はどの程度になるか、予算の規模はどの程度にするか、それから、では社会保障と公共事業の割り振りはどうするか、そういうことを大蔵省は作業に入っておるわけであります。そこで、これからの毎年の日本の経済の運営については、石油の輸入数量というものをまず計算して、それによって経済成長の数量をきめる。そうすると、石油の輸入数量をそれ以上に伸ばさなければ経済成長は大体計画的にいくだろうと思うのです。それを無限大に石油を入れてきたために、それが二%でなくてくずれたわけです。ですから、そのときの毎年の情勢を見つつ適正成長率を考えて、それに見合う石油の数量というものをきめれば、一一%とか一三%という大きな数字になることはない。そういう考えに変わってますということを申し上げているわけであります。
  147. 有島重武

    ○有島委員 いまのをもう少し詰めたいのですけれども、そのわが国が使う石油の来年度の適量二億七千万トンというものは、これはこちらが自主的にきめたというよりも、非常に外部的な事情によっていたし方なくそうなったということでもって、それを基準として一つの新しい予算の考え方、国の経済の規模、あり方ということを考えるということを勉強しているといまおっしゃいましたけれども、そういったことを踏まえて、将来にわたって今度は外部の事情がどうであろうとも、わが国の経済の行き方としては、五十年、五十一年、五十二年とそういう先にわたってどのくらいの石油使用量に制限していこうではないか。石油はわが国みずからが一つのきめ方をして、それをすることによって他のまたエネルギー開発を促進するという決意をしていかなければならない。それを多少きつめにとっておけば、他のエネルギーの開発がおくれた場合にはまだこちらのゆとりがあるというような、そういうようないわば国全体としての大ワクの計画経済というようなこども、それをいま検討すべき時期に入っているのじゃないだろうか、そう申し上げたいわけなんですが、いかがですか。
  148. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 全く同感であります。
  149. 有島重武

    ○有島委員 第三条の問題に移ります。  標準価格のことにつきまして、いままで灯油十八リットル三百八十円、それからプロパンガスが十キロでもって千三百円という二つの経験を持っているのでございますけれども、このプロパンガスの場合と灯油の値段のつけ方とは、性質が違うのか、大体同じような考えでやられたのか。
  150. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  今回行なわれましたプロパンガスの指導価格、上限価格の設定でございますが、それから灯油に  つきましてさきに凍結価格元売り凍結と小売り段階での三百八十円をきめたわけでございますが、これはいずれもいわゆる指導価格でございまして、ここにいわゆる標準価格、この法律にいう標準価格そのものではございませんが、従来の経緯をお尋ねと思いますのでお答えを申し上げます。  灯油につきましてもプロパンガスにつきましても、いずれも先行きの不安あるいは需給状況の逼迫というようなことに対する不安から、ほっておけば値段がかなり上昇する気配が濃厚である、これをストップさせようというのがこの指導価格設定のねらいでございまして、この点におきましては二つは同等でございます。
  151. 有島重武

    ○有島委員 灯油の場合もプロパンガスも指導価格といえるようなものである、同じ性格のものであると考えてよろしいということでございますが、それでこの第三条以下に標準価格のことが出てくるわけですよ。この指導価格は一種の標準価格とみなしてもよろしいのか、あるいはいま言われた指導価格というものと標準価格とは全く異なるものであるのか、もし異なるとすればその画然たる違いは一体どこにあるのか。これは値段のつけ方に限って言うのですよ。どういう手続を経てやりますというようなことはいまけっこうです。それは法律に書いてあるから要りませんけれども値段の算出法についてどういうことになりますか。
  152. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 私どものプロパンと灯油につきまして行ないました指導価格は、先ほど申しましたように上昇過程にあるものをとめようということで、たとえば原価の計算であるとか等々というしさいな検討は行なわれておりませんで、政策的な判断のもとに行なったものでございます。今回この法律によります標準価格につきましては、あるいは過去の販売価格なりあるいはコストの事情その他諸要素を判断して決定されるものと存じます。趣旨においてはかなり似通ったものがあると存じますが、この性格上は、指導価格とそれからいわゆる標準価格と、法律に基づくものと基づかないものと、その違いは基本的にはあると存じます。
  153. 有島重武

    ○有島委員 法律に基づく、基づかないということは別にして大体同じようなものである、そのように考えてよろしいのですか。
  154. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 趣旨におきましてはかなり似たものであろうと存じます。ただ、私どもの今回行ないましたプロパンと灯油につきましては、上限価格ということで指導いたしております。この標準価格はそういった上限価格としての意味を持ちますかどうか、若干のゆとりがあるかもしれないと思いますが、その点の違いはあろうかと思います。
  155. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますとこの指導価格のほうが、上限価格を凍結したわけでありますから、この法にいわれる標準価格よりも一そうきびしいものである——きびしいといいますか、それを越えてはならないはずのものである、そのように考えていらっしゃったわけですね。
  156. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 あくまでもプロパンと灯油につきましては、これは指導でございますので、法律によります標準価格は、さらに事態の進展をまちまして、あるいは指定価格といったような形でのよりきつい規制ということもあり得るかと思いますが一そういう意味では、指導価格でございます現在やっております措置とこの標準価格というのがより単純に比較はできないもんだろうというふうに思います。
  157. 有島重武

    ○有島委員 単純に比較はできないとおっしゃるけれども、どの点は似たようなもんで、との点が違うのかということを、いろいろなことが、これはもう国民生活と非常に密着した話になりますので、一般消費者も納得できるようにしてむらいたいわけです。さっき、上限であるからその運用は一そうきびしいはずですねと言いましたけれども、今度は計算からいえば甘いということにもなろうかと思いますね、上限ということになりますとね。少し上のほうに定めるわけですからね。  それで、経済企画庁長官が昨日連合審査でもって、標準価格決定方法について発表なさいました。で、これによりますと、標準価格決定の根拠になるものは、一つには過去の販売価格である、それから二番目が原材料の価格である、それからその他のコスト事情、それから生産量、それから将来の見通し、六番目に消費者物価指数におけるレート、それから他の物資の価格に与える影響、こういった七つの点があげられていたと思うのです。それで、この灯油、プロパンガスの価格を算定なさったときも大体こうした諸要素を勘案なさったと思いますけれども、その点はどうですか。
  158. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答え申し上げます。  灯油とプロパンにつきまして、これらの諸要素を、いま先生がおっしゃいました諸要素につきまして一応の検討はもとよりいたしておりますが、先ほど申しましたように、ほっとけば相当な上昇が見込まれるという事態でございますので、まずそれをストップするということが主眼で行なったものでございますので、いまおっしゃいましたいろいろな問題点につきまして、具体的な検証といったことにつきましては、特にまあコストの事情につきましてしさいな価格分析を行なう余裕は必ずしもなかった、むしろ政策的な判断のほうが主眼であったというふうに考えております。
  159. 有島重武

    ○有島委員 九月末の灯油のこの指導価格を定められたときの原材料の価格というのは幾らになりますか。
  160. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 九月のときは、いわゆる元売りの仕切り価格を凍結したわけでございます。で、この際の原材料、と申しますよりは原油の価格がどうかということになるわけでございますが、当時、原油価格は九月の時点におきましては、トン当たりでCIF約一万円という状態だったと思います。
  161. 有島重武

    ○有島委員 かりに九月末でもって灯油を、この法律に従った標準価格をつけるとすれば一体幾らになったであろうということは算出できますね。
  162. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 いろいろ前提を置きましての計算にならざるを得ないかと思いますが、九月末の時点で、それをベースにいたしまして灯油の小売り価格を計算をするということを標準価格として作業はできないことはございません。しかし、その価格につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、これをもし標準価格とするという問題につきましては、各省全体のやはり打ち合わせ等もございますので、その段階できめるということにならざるを得ないと思いますが、私どもとしましては、過去の、現在の三百八十円をきめました、あるいは九月の元売り仕切り価格を凍結いたしましたこの経緯につきましては、先ほど来からも申し上げているとおりでございますが、これを標準価格として扱うかという問題につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、経済企画庁とも打ち合わせをいたしまして、所要の計算をその段階でするということになろうと存じます。
  163. 有島重武

    ○有島委員 この前の委員会でもって私が伺ったのは、もしこの法律が施行されれば即時にこれが適用されるようになるであろうということを想定して経済企画庁も関係各省も作業をいま進めていらっしゃるはずである。ということになれば、さしずめ、いまの灯油、プロパンというようなものは、これはもう当然その試算がいろいろに行なわれているのではないかということを申し上げたわけです。それでいまの時点で、法がまだ通っていないのにそのことを現在で計算すれば幾らになりますということは言えないかもしれないけれども、九月末でもって、これをその時点で算定したらば、一体どういう基礎数によってどのような価格が計算されるのか、そのことを明らかにしてもらいたい、そう申し上げたわけなんです。いま申し上げたこと、実は明らかにすることができますか。
  164. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  いま先生がおっしゃいましたのは、いわゆる、先ほど来議論が出ておりますように、過去の妥当の時期と考えられる販売価格をベースとしていろいろ計算をしたらどうかと、こういう計算ができるかと、こういうお話でございましょうか。(有島委員「可能かどうか」と呼ぶ)計算自体はいろいろな試算があり得ると思いますが、たとえばプロパンでも、小売り店になりますと四万四千軒ございますし、それからまた灯油になりますと十三万軒の小売りがございます。どれをベースにして標準価格とするかということにつきましては、私どもは、この標準価格設定というような段階が将来参りました際に備えまして、いろいろ勉強はいたしておるわけではございますけれども、いま直ちにその価格が三百八十円以外はあり得ない、あるいは上下幾らというようなことについて、結論らしいことを申し上げるのは控えさしてもらいたいというように存じます。
  165. 有島重武

    ○有島委員 いまの問題はもう少しあと回しにします。もう一ぺんいまのはやるつもりですけれども。  プロパンの千三百円、これが凍結値といいますか、その指導価格というものが出た。これは守られておりますか。
  166. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  この十キログラム当たり千三百円という今回の指導価格でございますが、私どもとしましては、関係の団体を通じまして十分周知の努力の約束も得ておりますし、今日ただいま末端におきましてなお若干の困難は見られるとは存じますが、早急のうちに周知徹底がはかられ、履行されるものと信じておるわけでございます。
  167. 有島重武

    ○有島委員 御承知と思うけれども、東京の通産局に苦情が相次いでおる。東村山市の婦人団体から、十キロ一二千円で売られておると、そういう訴えがあったのをはじめ、十キロ三千円だと、そういうのもあった。それから足立の消費者からは十キロ千五百円取られたと。神奈川県の海老名市役所からは、消費者販売店に助成金一万円を出せと請求されておると、それから埼玉県の地域婦人会連合会にも、二十キロで二千七百円取られたと、こういうことについての苦情が通産省にはすでに届いておりますか。
  168. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 連絡は十分参っております。
  169. 有島重武

    ○有島委員 どのように指導なさいましたか。
  170. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 私どもは、今回の家庭用プロパンの上限指導価格設定にあたりまして、その実行を確実ならしむるために、各通算局を通じまして、末端段階におきます履行状況を十分監視するようにということで連絡をすでにとっております。通産局がこれらの問題につきまして、灯油同様でございますが、苦情の処理ということで、そういった苦情につきましてはこれらの販売店につきまして厳重に注意をするということで今後の履行を確実なものにしてまいりたいと存じております。
  171. 有島重武

    ○有島委員 この点について通産大臣に承っておきたいのですけれども、これは守られるはずであるという根拠はおありになったと思うのですね。現実にはもう初日から守られないという現実があるわけであります。守られない理由は一体どの辺にあるとお考えになりますか。
  172. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 おそらく業者の不誠実ということがあるのではないかと思います。プロパンの場合は、灯油の場合よりも時間をかけて、中央団体並びに地方のほうにも周知徹底するようにやって、そして千三百円というふうに踏み切ったので、時間的には灯油のほうがなかったのであります。それから、灯油の場合には約十三万軒というものがありまして、なかなか周知の時間がかかると思いますけれども、プロパンの場合は四万軒ですから、数も少ない。それからプロパンのほうはわりあいに業態としてはしっかりしておって、あれはみな持っていってやるのですから、自動車を持っておりますね。炭屋さんやお米屋さんが副業で灯油を売っているのと違う性格でありますから、だから業態としてはしっかりしているのでありますから、灯油よりも徹底していいはずだと私ら思っております。ですから、そういうものを守っていないというものがあれば、これは誠実でないのではないか、そういうように思います。
  173. 有島重武

    ○有島委員 この法律が施行されれば、やはり同じ千三百円の値段でこれが徹底できる、そういうふうにお考えになりますか。
  174. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまきめました指導価格を来年三月まで続けさせよう、そういうことで行政指導を徹底してやっておるところでありまして、すぐ標準価格に移るということを必ずしも約束しているのではありません。できるだけ、法律ができたことによって、それを背景にしていまきめている行政指導による価格を順守させよう、そういう意味で伝家の宝刀を握ったという点で強みがあると思うのです。今度はいろいろ調査や何かの権能もございますし、そういう点で力を持って行政指導をさらに有効たらしめようという考えでやっておるのでありまして、私は法律ができればなおそういう意味では威力を持ってくるだろう、行政指導に力が出てくる、そういうように思います。
  175. 有島重武

    ○有島委員 守られないのは不誠実だということでございまして、それから、今度この法律が通れば、たとえ指定品目にしなくても、一つの力の背景を持って、これを徹底させることができるはすだ、そういうふうにおっしゃったわけですね。もしこの法律が通ったにもかかわらず、あるいは指定されたにもかかわらず、これがなおかつ守られないということが起こったときは一体これはだれの責任になるのですか。やはり国民の不誠実だということでおしまいですか。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは監督官庁たる通産大臣と、それから業者団体並びに業者でありましょう。
  177. 有島重武

    ○有島委員 その責任は大臣以下業者にあるといまいさぎよくおっしゃったわけでありますけれども、被害を受けるのは、だれが責任をとってくれようとも消費者のほうでありまして、消費者のほうはその責任を追及してそれじゃ大臣が払ってくださるかといえば、そういうことはないわけでありますね。これは規定はされていないし、とられたほうはとられっぱなしという状況が起こってくる。これはやはり責任はあるというけれども、その責任をどのようにとってくださるのかということがはっきりしなければ、業者なんかに対する罰則はあっても責任をどうとってくださるのか、これが国民、一般消費者にとってはみんな口をきけたらばそう言いたいという偽らざる声であろうと思うのです。いまの課徴金を取るというようなことがありますけれども、その課徴金はやはり国庫に入ってしまうのであって、それで、高く買わされた者がそれはあとから安くしてもらうというわけにはいかないということが起こってきますね。責任の所在は大臣以下業者にあるといま仰せられましたけれども、じゃその責任をどのような形でとってくださるのですか。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう不誠実な業者を一人もなくすという努力を一生懸命やるということでございます。
  179. 有島重武

    ○有島委員 じゃ、通産大臣は商工委員会のほうに行かれるというので、一番最初の話にまた最後に戻っていこうと思っていたのですけれども、それは省略いたしまして、先ほど、一番冒頭のときに通産大臣の御意見をいろいろ承りました。  経済企画庁長官、今後の日本経済の行き方全般に関して経済社会基本計画をこの際もう一ぺん考え直してみる、練り直してみる、そういうお考えをお持ちでしょうか、経済企画庁長官。
  180. 内田常雄

    内田国務大臣 これは有島さんよく御存じだと思うわけでありますが、ことしの二月つくりました経済社会基本計画というのと、それから昭和四十四年につくりました新全総というのがしばしば混同をされております。新全総というのは、何しろ昭和四十四年につくりましたから、ものの考え方も経済成長主導型の時代の考えが多く取り入れられておるものもあるようでございますけれども、経済社会基本計画のほうはことしの二月つくられたものでございまして、私も経済企画庁長官に就任をいたしましてからその認識を実は新たにしたようなことでございましたけれども、この経済社会基本計画のほうは、これからの経済指導の原理原則というものにつきまして、これまでの経済成長重点主義あるいは輸出重点主義というものをすっかり改めて、社会福祉の充実とかあるいは国際協調の推進とかいうものを目標にいたしながら、経済の進め方につきましても、教育とか社会福祉とかそういうような点を多く取り入れ、またエネルギーや資源につきましてもいままでのエネルギー資源の無限にあるというような立場に必ずしも立ちませんで、省エネルギー、省資源経済構造というものを推進すべきであることと、また石油経済ばかりじゃなしに、原子力とかあるいは水素エネルギーとか、さらに将来は核融合のような新しいエネルギーも考えていくべきだというようなことまで実は示唆しておる計画でございまして、経済指導の方式としてはたいへん新しい、このごろ私どももまた多くの人々も言っておられるような考え方に立った計画でございます。したがって、経済成長の目標などもいわゆる安定成長といわれる範囲、九%ぐらいに押えております。日本のこれまでの経済成長の実質成長の平均も、過去十年間で一〇・六ないし統計のとり方によりましては一一・一%くらいになっておるのでございますけれども、この経済社会基本計画のほうは、昭和五十二年までの平均の成長目標を九・四%ぐらいのかなりモダレートな安定成長のところに置いてあるわけでございます。ただし、そういう新しい考え方を推進していきますにつきましての量的ないろいろな推算につきましては、最近におけるエネルギーの著しい不足でありますとか、あるいは物価の非常な高騰でありますとか、あるいは国際収支のここ両三年と違った状況等がございますので、そういう面を考慮して、経済社会基本計画における量的の推算については、この事態に沿うようにフォローアップということばを使っております。一方のほうの新全総のほうは総点検ということばを使っておりますが、これは総点検のほうではない、基本計画のほうではフォローアップでそのときそのときの事態の推移に応じて量的の積み上げというようなものを考え直していく、こういうことをやっております。したがって、たいへん長くなりまして恐縮でございましたが、経済社会基本計画そのものの指導原理というものは、これは当分——当分といいますか、現状におきましては変える必要がない、こういう性質のものでありますことをあらためて私も認識しましたが、申し上げさせていただく次第でございます。
  181. 有島重武

    ○有島委員 先ほどの問答の中で言っておりましたのは、石油の総量、日本が一年間に使う石油の総量というものをむしろ自主的に考えてきめる、そういったところから次の経済計画を考えていかなければならないのではないかということを言ったのですけれども、いまここでもってそれでは経済社会基本計画が大体年間どのくらいの石油を想定しておるのか。
  182. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほど来申しますように、経済社会基本計画というものは数量的な目標を述べた計画ではございません。たとえばよくいわれますように、いろいろな日本の各地のコンビナートのようなものを一つずつあげてそれをどうするとかというようなこと、あるいは交通とか通信とかいうようなものの大きさについて計量的に表示をしているものではありませんから、石油につきましても何億キロリットル使うというようなことは、必ずしもこれを目標にいたしておりません。しかし文章の中でいろいろなところを探ってみますと、経済社会基本計画というものも昭和五十二年ぐらいにはいまよりかなり大きい石油エネルギーというものを使うような想定があるようでございます。しかし、今日に至ってみると、私は、そういう点につきましては、有島さんがおっしゃるように、フォローアップの過程におきましてさらに考え直すべきではないかと思う点が各所にあることを申し上げざるを得ないと思います。石油エネルギーばかりにたよらず、水力とかあるいは石炭とか、あるいは先ほど申しました新しい無公害エネルギーというようなものへのアプローチをより積極的にやるというようなことをさらに強調をすべきであるということだけを申し上げさせていただきます。
  183. 有島重武

    ○有島委員 それでは時間があまりありませんので、先ほどの標準価格の問題でもって、ひとつ通産省のほうには宿題を出しておきます。  それで、いずれは先ほどの灯油、プロパンについても計算をなさるべきだと思うのですね。なさるときが来ると思うのですね。その際に、同じ計算方式でもって、九月末現在の灯油、それから十  一月末現在のプロパン、家庭用の灯油でいいですから、そういった数字ですね、その算定根拠、それを発表していただきたい。それはできますね。そういうことが国民に対して——こういうことなんだ、いままで、三百八十円でこれが出されたけれども、全然守られなかった、四百五十円程度になった、こういった経験をわれわれは持っているわけなんです。プロパンについても一つの経験を持っているわけなんです。それで、それは大臣のほうからいえば不誠実といわれたかもしれない、あるいは逆な立場からいえば不信感というようなものが流れていると思うのです、国民側からすれば、消費者側からすれば。きょうの新聞報道によっても、ここにはある婦人団体の方が予想したとおり政府の約束は守られていない、予想したとおりと、こういっているわけです。そういうことから考えて、やはりいままでの経験もしっかり分析できるように、それからこれからの標準価格も算定基礎がはっきり比較して明示できるように、そうしてもらいたい。そのほかいまの九月末の灯油の今度なさる標準価格の算定のしかたそのままでもって当てはめたらば、九月末で灯油は幾らになるか、それを発表していただきたい。それはできますね。いま約束しておいてもらえばいいのです。
  184. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 九月末というのは、灯油につきましての元売り価格の凍結は九月末でいたしているわけでございますが、いわゆる小売り価格につきましては十一月の下旬にきめたものでございます。したがいまして、先生のおっしゃる趣旨につきましてはよく理解できますので検討をいたしたいと思いますが、時点の点につきましてはまた御相談さしていただきたいと思います。  それからプロパンにつきましては、今回の指導価格は十一月一日を一応ベースといたしておりまして、それより三〇%以上上がらないようにという指導をやっておるわけでございます。と申しますのは、十一月一日におきますところの家庭用のプロパンの価格というのはかなり幅があるわけでございますが、八百円から千二、三百円という幅がございますし、また十二月に入りましての通告状況というのが千二百円から千五、六百円、千八百円というまちまちではございますが、かなり幅のあるものであったわけでございまして、こういった価格の趨勢を踏まえて今回の上限価格を設定したという意味でございます。  今回もしこれをプロパン、灯油につきまして標準価格決定するというような事態になった場合におきましては、同様の材料で同様の計算をというのは、私ども勉強はいたしてみたいとは思いますが、その凍結いたしました時点での政策判断がございますので、直ちに全く同じものになりますかどうか、ちょっとお約束できかねる点がございます。
  185. 有島重武

    ○有島委員 いま同じ数字をうまくつじつまを合わせて言っているのじゃないのです。そういった算定でもって、同じ算定法でやればどのようになるのか、そのことは計算して示すことができるでしょう、可能でしょう、それを発表してもらいたい、そう言っているわけです。約束だけしておいてもらいたい。
  186. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 つまり同じ方法でということでございますが、先ほど申し上げましたように、今後の需給の状況その他いろいろ時点が違った場合の判断もございますので、同様の方法というのははたしてできますかどうか、私は若干疑問に存しますけれども先生の御趣旨ございますので、私どもとしましては検討をいたしたいと存じます。
  187. 有島重武

    ○有島委員 それでは企画庁長官、いま通産省のほうでは技術的にはほぼ私どもの要求に近いことが可能であるということでございますから、これはぜひともやっていただきたい。お願いしておきます。  じゃあ終わります。
  188. 平林剛

    平林委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  189. 平林剛

    平林委員長 速記をつけて。  次回は、明十八日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後十時四十六分散会