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大木参考人 私は、今日の状態が
日本列島的な
インフレーション病とでもいえば、医者が患者を診断する際には、なぜその病気にかかったかということを調べ、カルテに記入しなければ、なおらぬと思うのです。ですから、この
法案に関しまする
意見を後ほど二つほど述べますが、前提としてぜひ与野党を越えた立場から、今日の
国民の
心配、あるいは荒廃した
生活、また破壊されんとする
生活、なぜこれが起きてきたか、これについてまず私の見解を述べてみたいと思うのです。
端的に申し上げますと、
インフレーションそのものについては国会でもたいへんきびしい
議論がなされておりましたが、十二月三日の日の田中総理の国会冒頭の見解なり、これに対する野党の代表質問などを伺いまして、双方に——私は立場が総評
事務局長ですから野党に味方することはあたりまえだと言うかもしれませんが、双方に対して私は非常に失望を感じました。端的に申し上げて、しからば今日の
インフレーションは何で起きたか。トリレンマということばがございますが、
インフレと福祉と国際的なドルの黒字の増高という問題が二年前にありました。しかし、いま
国民が受けておりますトリレンマということは、この二年前のドルショック当時の、これを乗り切るためのときにとられた
調整インフレ政策、カルテルの長期認容問題とか、四分に引き下げました
日銀の
公定歩合の引き下げ問題とか、あるいは二八%に及ぶ
日銀券の膨張問題とか、これがまず
一つの大きな問題だったと思います。
同時に二つ目の問題は、何といいましても、田中さんが自分の私的見解とおっしゃられたのですけれ
ども、列島改造という問題が一体どういう
心理状態を、
経済活動というものを国全体に巻き起こしたか、これについて考えてみてもらいたいと思うのです。最近の
所得番付の上位はいずれも土地持ちであります。しかも低
金利を媒介にしまして、
金融界はまさしく土地を担保にして膨大な金を貸し付けました。これは二つ目のダブルパンチの
段階でした。
そして三つ目のパンチが、いま問題の
石油エネルギー危機問題なんであります。
ですから、この三つの
インフレーションの病因というものを解剖せずしてどのような立法
措置を講じようとも、どのような行政
措置を講じようとも、私はそのことの正確な
認識なくしては対策は立たないと思います。ですから、そのことをまず考えていきますと、
一つは、先ほど
長洲先生その他おっしゃられた総
需要抑制問題に確かにぶち当たる、こういうふうにも感じます。ただ、私が国会の与野党の質問の中でもって失望を感じましたと申し上げたところはここにあります。たとえば四十八年度の
国民の総生産、GNP、これは百十五兆といわれております。その五一%から五二%が
国民の
個人消費ということばが田中さんの御発言の中にありました。私はこの数字は間違ってないと思います。しかし、
インフレの
原因というものを海外に押しつけ、同時にもしこの
国民の
個人消費を中心とするGNP構成比の問題で出すならば、なぜ欧米諸国における
個人消費が六〇%前後を常に推移してきた戦後の
状況についてお考えを示されないのか。また野党諸君の質問についても、なぜそのことをつかれないのか。私は総
需要の抑制、賛成なんです。オーバーキルも、賛成という気持ちが
部分的にはございます。しかし問題は、百十五兆のGNPのうちでだれがよけいに金を使ったのかについて明確にしなければ、これはでき得ない相談でしょう。三本の橋はもちろん要りませんし、十二本の新幹線はもっと先に延べてもいいでしょう。
ですから、その種の問題で、十二月の一日に発表された、皆さん方も
新聞で
ごらんになったと思いますけれ
ども、
経済企画庁が出したいまの
経済社会基本計画の乖離問題を見てもらいたいと思うのです。これには何と書いてあるか。この中身は明確に申し上げれば、今日の
経済計画を狂わした犯人というものは、民間の土建業者のマンション建設問題と、ドルショック以来の低
金利で助けられた民間の工場拡張こそが乖離の最大の問題という指摘があるではありませんか。そして労働者
所得というものについて、わずかに計画六%しか埋まってはいない、こう書いています。賃金は今日の
インフレの
原因でないということを大来
委員会は明確に指摘をしている。しかもこの
委員会は
政府の一機関で、
経済企画庁の
審議会が公表したものなんです。これについてなぜ野党の諸君も追及しないのか。私は疑問でならないのですよ。ですから、そのことを明確にした上で私たちは総
需要抑制問題についても論を進めていかなければいけない、
インフレーションの退治はできない、こういうふうに感じているわけなんです。
そこで問題は、今度の出されました新しい
生活安定
緊急措置法案の内容とも若干
関連して申し上げてみたい。私は若く見られるけれ
ども、年は五十一歳半です。戦争中三年間の
経験がある。戦後の
インフレーションの
経験をなまでくぐってきたのです。まさしく
統制経済が新しい
統制を呼び、そしてその当時の苦しいやみ行為ということについて苦々しい
経験を知っています。サラリーマンとしていなかからイモを買い込んできて
生活した
経験があるわけなんです。ですから、そういう感じからしますれば、
統制経済というものはこれはもうとてもじゃありませんが、私たちに受け入れる土壌はないことは明確に知っていただきたいのです。と同時に、今度出されました
法案の中でもって私たち最大に注目をしている
部分は何であるかといいますと、先ほど先生方御指摘もありましたとおり、まさしく
標準価格の設定、いわゆるカルテル行為というものを含むところの業者の相談による相場決定が高値でもって硬直安定してしまうということはたいへんな問題だと思います。ですから、今日の一きのうもタクシー業者のデモがありましたけれ
ども、あの場合でも、ガソリンあるいはLPガス等については、元売りのところには相当に物がある。問屋から小売り業者には物がない、こういう
状況が明確にけさの
新聞にも出てきているわけです。同時に、灯油問題等につきましても三百八十円ということを
通産省はおっしゃったけれ
ども、最近東北、北海道を旅行して驚きましたけれ
ども、いずれもこれは四百五十円、運搬
価格という名目でもって四百五十円から五百円が相場になってしまっているわけです。
そういったことを考えていきますと、私たちは、
標準価格の決定を皆さん方立法府におられる
方々がむしろ行
政府にまかせる、主務大臣にまかせる、こういう
関係でよいのかどうなのか。私はここに、私的な見解は別に持ちますけれ
ども、
一つの疑問がどうしても抜け切ることができない問題と思っているわけです。同時に、一体、これからこの法律というものをつくった場合、先ほど
長洲先生は、また
鈴木さんもおっしゃったのですが、なるべく品目を整理して少ないものにしてくれという話がございました。私は、少ないものという、いえば抽象的な表現についても非常に危機を感じます。
一つのものにもしこの法律が発動されれば、まさしく万波を呼ぶでしょう。そしてその万波はまたカルテル行為に基づくところの高位の
価格を硬直させていくでしょう。そういったことが結果的に私たちは
国民生活に対する脅威としてどうしてもその不安の中から抜け出ることができないのであります。一体フランスやイタリア、スイス等で行なわれているいまの
石油の配給問題について、皆さん方はヨーロッパをたくさん回った方が国会休会中あったと思うのですけれ
ども、私もスイスに行きました。ジュネーブでもってILO問題をやりました。あのときにもすでに
石油、ガソリンの
統制等の問題があったのです。しかしヨーロッパの土壌には、いえば市民の参加による社会的なミニマムといいましょうか、要するに
一つの社会性、政治への信頼と社会相互間の信頼感があります。そこにおいてこそまさしくガソリンなり灯油なりあるいは砂糖なり
洗剤なり
トイレットペーパー、そういったものが、テレビや
新聞等でこの
程度あるから
心配するなという話が出てくれば、私はまさしく最近の
トイレットペーパーや
洗剤問題等に
関連して起きましたパニック的なものは起きないと考えます。
そこで問題は、その種のことを形成するにどうすればよいのか。私は労働団体を信頼してもらいたいのですが、の
どもとまできているのは実はマイカー規制はマイカー規制はもうすでに始まっていますけれ
ども、声を大にしてマイカー規制を呼びかけたいのですよ。呼びかけたいのですけれ
ども、その前提となるものについて実は整理がされていませんから言えない立場にあるのです。それはさっき申し上げた、要するに
インフレという病人のいわゆる治療のしかたが間違っているという問題があり、列島改造というものが依然として消えない。新全総法というものが、国総法が依然として消えてない。あるいは法人税の引き上げをやったけれ
ども、要するに法人の軽課
措置というところの株式七割持ち合いの株のあの税金問題、全然大法人の方が負担しようとしない。こういった中でもって総
需要の抑制等をやるからには、これは
国民生活全体を二年間よりを戻すしかないわけです。ですから、そこで大事なことは、何といっても市民が参加をするという立場における、
一つの新しい第三者機関的な
意味合いにおける
物価監視機関といいましょうか、あるいは公取委を強化をしながら、その公取委の外ワクにさらに新しい
物価をお互いに話し合うという機関をつくるかどうか。これは労働省、厚生省、企画庁、大蔵省、全部やっていることなんですよ。ですから、いずれもこの種の
法案ができるときには、そういったことの周辺を埋めていった中でどういう法律をつくるかということが従来の大体ここ十数年来の国政のあり方だと私は推察をいたします。ですから、まず第一は、市民が参加をし、労働組合等が参加のできる、いわゆる
消費者の参加のできる第三者機関というのをつくってもらいたいと思います。
同時に私は
石油問題に一言触れておきたいのですけれ
ども、これはむしろ
石油問題等に関するエネルギー
関係のことについては、最近炭労が大会をやりまして、そして石炭を五千万トン掘ったらどうかという話もあるけれ
ども、いやだとごねていますわね。自分たちの都合のいいときは掘らしておいて、そして
石油が幾らでも安く入ってくるときになったら、とたんに今度は切り捨てる。山を埋めていく。
合理化でもって苦しんだ。これはもうごねることがあたまりまえだと私は思いますね。ですから、エネルギー問題は、もしも新しく新エネルギーの開発が進むまでの間一定の限界量しか使えないとすれば、私は
石油と電力と石炭という三つを総合したエネルギーに関する公社をつくる。電話についてもそうです。国鉄は赤字ですけれ
ども。そういった
意味合いでもって私たちはこの公社を中心にしながら、産業の米ともいわれるエネルギーがその公社から平等に、
国民生活分野と産業分野と外国みたいに五〇対五〇の分野でもって
石油が産業と
生活に使われていくという状態ができていかなければ、中間マージンを盛んに取り上げるところのいわゆる元売り業者とか問屋
関係の問題とか、これは私はまさしく今度は、投機問題が本年の三月にありましたけれ
ども、それが
石油を中心とし全産業にびまんしてしまうと思いますね。ですから、このことはぜひ一考してもらいたい問題だと思います。
いずれにいたしましても、こういったことを一々具体的なことを提言いたしますけれ
ども、この
法案については、私たちが
関係団体として一番関心を持っている問題は、最後に一言申し上げますと、いわゆる
標準価格、その中の適正な利潤、適正利潤の中における人件費の
コスト、すなわちこれが結果的には
所得政策に対する入口といいましょうか門戸の開放というか、そういったものについて考えている方もおそらくあると思いますけれ
ども、もしもそういうことになれば、まさしく総
需要の中において、本年の春闘でわずかに
分配率は下がっているわけですから、
国民の
個人の
消費は五一、二%なんですから、一〇%外国に比べて低いのですから、そういったことを固定さして
国民生活を破壊に追い込んでいくということについて許せませんので、この問題について
標準価格なりその中における適正利潤の問題とからめて
所得政策の導入ということは、私たちはこれに対して絶対に受け入れることはできない、こういう立場でございますから、この問題を最後につけ加えまして、持ち時間が参りましたから見解の表明を終わらしていただきます。(拍手)