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1973-12-12 第72回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十二日(水曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 平林  剛君    理事 稲村 利幸君 理事 木部 佳昭君    理事 倉成  正君 理事 坂村 吉正君    理事 橋口  隆君 理事 井岡 大治君    理事 松浦 利尚君 理事 野間 友一君       上田 茂行君    加藤 紘一君       片岡 清一君    羽生田 進君       三塚  博君    粟山 ひで君       山崎  拓君    山本 幸雄君       吉永 治市君    金子 みつ君       中村  茂君    山中 吾郎君       増本 一彦君    有島 重武君       石田幸四郎君    和田 耕作君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君        公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         通商産業政務次         官       森下 元晴君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君  委員外出席者         参  考  人         (日本経済新聞         社論説委員)  鈴木 幸夫君         参  考  人         (横浜国立大学         教授)     長洲 一二君         参  考  人         (中央大学教         授)      岩尾 裕純君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会事務局         長)      大木 正吾君         参  考  人         (全日本労働総         同盟会長)   天池 清次君     ————————————— 委員の異動 十二月十二日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     片岡 清一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民生活安定緊急措置法案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 平林剛

    平林委員長 これより会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として、日本経済新聞社論説委員鈴木幸夫君、横浜国立大学教授長洲一二君、中央大学教授岩尾裕純君、日本労働組合評議会事務局長大木正吾君及び全日本労働同盟会長天池清次君に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。すでに御承知のごとく、本委員会において審査中の国民生活安定緊急措置法案は、国民的関心の深い、しかも緊急を要する重要な内容を持つ法案でございます。  本委員会におきましては、連日にわたり鋭意審査を進めておりますが、本日は特に学識経験豊かな各位に、それぞれの立場から忌憚のない御意見を承り、本案審査参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  なお、議事の進め方といたしましては、最初鈴木参考人長洲参考人岩尾参考人大木参考人天池参考人の順序でおのおの一人十五分程度、要約して御意見を賜わり、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは鈴木参考人
  3. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 日本経済新聞論説委員をやっております鈴木でございます。  最近の物価の問題と、それから本日ここで御審議されております国民生活緊急措置法との関連で、どういうふうに考えるかという御諮問がございましたので、私の意見をかいつまんで申し上げてみたいと思います。最初結論を幾つか申し上げて、あとでそれを補足的に御説明申し上げたいと思います。  第一に、いまの物価問題についてどう考えるかということになりますと、今日の物価上昇性格というものが、もう明らかに需要超過原因としておるということでございまして、それ以外の要因もたくさんございますけれども、いま緊急になさなければならないのは、何をおいても総需要調整であるということにおいては、これはもう方人が認めるところであろうかと思いますが、私自身も、緊急にこの総需要政策について、効果を発祥するような強力な手をもう一段打つべきではないであろうかと考えておるわけでございます。  特に最近、政府日銀がおやりになっておる財政金融引き締め措置については、まだまだ不十分である。特に預金吸収とか個人購買力吸収のためには、もっと思い切った預金吸収のための金利政策あるいは国債政策の活用といったようなことが必要ではなかろうかというふうに考えております。  さらに、財政面でも、現在の繰り延べ措置をもっと徹底するほかに、来年度予算の編成についても相当きびしい措置が必要であろう。これが、現在の物価問題について当面何が必要であるかと言われれば、その点にポイントを置きたいというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、こういった財政金融措置で総需要調整をやるということで、これは基本的な原則として正しいのですが、それだけでこの緊急事態で、物価の問題について国民生活との関連ではたして十分かどうかという議論になりますと、私自身もまだ十分に煮詰めているわけではありませんけれども、少なくとも最近のトイレットペーパーだとか洗剤だとか、そういった生活物質に対する非常な混乱というのがございまして、その混乱経験からいたしましても、この際、国民生活に非常に必要な物資に限定した形で、緊急措置としての何らかの政府介入の強化ということが必要であろう。そのためには、この国民生活安定緊急措置法というものが、あくまで緊急手段をやりやすくするという意味においては、できるだけ早く法案を御審議を願って、成立さしていただくほうが望ましいのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただ、あとでも申し上げますように、国民生活緊急措置法というのは、たいへん実施面からも、それから法案自体性格から言っても、たくさんの問題をかかえているわけでございまして、この問題については、必ずしも今日まで、国会審議のみならず、一般学者その他の専門家方々の間でも、十分に議論が煮詰められているとは思いませんし、役所自体がまだまだこの法案自体の運営について、よほど詰めた調整をやっていただかなければならないというふうに考えておりますので、これは今後の議論としてもっと詰めていただくということで、とりあえず、この法案自体については、そういうものが必要であろうというふうに考えているわけでございます。  統制全般の問題につきましては、この法案自体運用とかかわるわけでございますけれども、同じことを繰り返すようでございますけれども統制というものは、一ぺん始めますと、ミーゼスという経済学者が言っておりますけれども、一波は万波を呼ぶというふうな非常に大きな危険性を持っている。自民党の中にも植木ばちまで統制しなければならぬというふうな御議論があるかに聞いておりますが、まさにそのとおりでございまして、したがいまして、かりにこの緊急措置として発動する場合におきましても、できるだけそれは限定していただきたいし、できるだけミニマムな、特に最小限のものに限る。そうしてその限定された最小限のもの以外のものは、できるだけやはり競争原理なり市場原理なりというものを生かしていけるような、あるいは将来そういうものが必要以上にゆがめられないような形で運用されていくことが望ましいというふうに考えるわけであります。  一般論になるかもしれませんけれども石油の問題にしても、この生活緊急措置法の問題にしても、たとえば標準価格の設定とかあるいは価格安定のための共同行為の問題だとかというふうなことでいろいろ議論があるわけでございますけれども、共通して言えることは、政府が実際に直接統制をやろうとしても、なかなか政府自身能力がない。したがって、何らかのかっこう業界組織に依存せざるを得ない。業界組織に依存するとなると、そこに業界に都合のいいということになりますか、たいへん危険な要素を持って統制というものが生まれやすいということでございまして、そういうものについて、公正取引委員会あたりから相当強く反論も出て、法案上は一応そういうものを調整しているような形にはなっておりますけれども、しかし、その疑念というものは依然として残っているということは、これは否定できないわけでございます。  特に私が強調したいのは、統制というものは、従来の実績とか、国が判断をする優先度ということももちろん加わってくるわけでございますけれども、しかし、優先度の判定におきましても、国がどの程度まで客観的にやり得るかという問題もございますので、そこできめられた優先度あるいはその実績を中心とした一つ割り当ての方式というふうなものが、かりに統制として定着してしまいますと、それはむしろ産業構造の改革なりあるいは望ましい生活消費構造を変えていくというふうな方向にかえって逆行するのではないか。つまり、石油なんかの場合でも、これはきょうの法案とは関係がございませんけれども石油の場合でも、あまり統制的に押えてしまえば、結局、むしろその市場原理を無視することによって、産業構造というものがかえって、こういう石油危機を機会に、本来ならばもっと促進されるべき望ましい構造転換というものがおくらされてしまうのではないか。これは抽象的な言い方になるかもしれませんが、あとでまた御質問があればお答えしたいと思いますけれども、私はそういうふうな懸念を感じているわけでございます。  先ほどの話にまた戻りますけれども、今日われわれが考えなければならない総需要調整ということにつきましては、何回も繰り返しておりますけれども財政金融全般を通じて大いにやっていかなければならないということでございますが、特に財政政策の面ではこれは予算、それから金融の面では金利政策と量的な引き締めと両面からやらなければなりませんけれども、意外に一般に見忘れられている問題というのは、今日、六兆円ないし七兆円と言われるボーナスが大量に個人消費へ回ろうとしている、現に回りつつある。もちろん消費者の中にも、最近の物価上昇に対応して、たとえ金利は安くても、ここで使ってしまったらあと生活に差しさわるであろうというようなことから、比較的思ったほど購買力が急激に消費活動に回っていないということは言えるわけでございますけれども、しかし、それは消費者が消極的な意味で防衛しているわけでございまして、むしろ政策的に積極的に購買力吸収して、しかもそれを消費者にとって不利にならないような形で吸収していくということを考えるためには、やはり預金金利というものを相当大幅に上げなければいけないというふうに私どもは考えているわけでございます。市中の預金金利を大幅に引き上げる。どのくらい上げたらいいか、これは各国の先進国の例をごらんになってもおわかりのように、でき得べくんば二けたの、一〇%以上のやはり預金金利を実現してもらいたいというふうに私どもは考えているわけでございます。これは、短期、長期いろいろございますけれども、少なくとも一年ものぐらいの定期でございましたら、一二、三%ぐらいにしてもらうぐらいの配慮は必要ではないか。そのことは、当然金融機関の経理上非常に大きな影響を与えるわけでございまして、金融機関としてはやはり貸し付け金利も上げざるを得ないという問題が出てまいります。私は、ある程度上げざるを得ないというふうに考えております。その場合には、金融機関も単に貸し付け金利に転嫁するだけではなしに、自分自身のいままでの利益というものを吐き出すぐらいの誠意を見せてもらわなければいけない。そういう意味においては、日銀なり大蔵省なりの行政指導によって、金融機関行政というものをもっと徹底してもらいたいというふうに思っているわけでございます。  同時に、そういうことをやるということと並行いたしまして、当然公定歩合の引き上げ問題が出てくる。公定歩合は、それは何%がいいということは私はここでは断定はできないわけでございますけれども、少なくとも現在の七%に対して二%や三%ぐらい思い切って緊急手段で上げるぐらいのことがなぜできないのであろうかと私どもは考えているわけでございます。そういうことをやりまして、総需要政策にもう一段だめ押しをすると同時に、さらに預金者に対して、大衆の零細預金というものを吸収する。それをできるだけ購買力に回さないということが必要である。  と同時にもう一つは、単に銀行に資金を回すだけではいけないのであって、国がここで思い切って特別の国債を発行いたしまして、でき得べくんばこれも半年ぐらいの、あるいは一年ぐらいのものでもいいのですが、ともかく暫定的な緊急の特別国債というかっこうで、金利は一割以上、もちろん一割五分ぐらいにしていただければ一番いいのですけれども、それは不可能といたしましても、それに近い水準のものをやはり考えて、ともかく使ってくれるなということで吸収する。吸収したものは、国がそれをプールするなり、あるいはある部分については、社会保障その他の分配面に必要な部分に投入する。公共投資に投入しては、これは困りますから、その点は大いに考えていただく、このくらいのことをやっていただければ、むしろ御心配のような需要超過による個人消費の増大によって物価が高騰するということは、ある程度は避けられるわけでございます。  したがいまして、総需要政策というものを十分やった上で、そして足りない部分統制で補うというのはいいのですけれども、アメリカでも所得政策の第一段階、第二段階の例をごらんになってもおわかりのように、少なくとも初期の段階、第一段階、第二段階では供給力が非常に余っておりまして、そこで一方において賃金のコストアップということで、それが物価にもいろいろ影響しておったわけですが、ああいう段階では、価格統制なり所得政策なりというものが、一応効果を奏するわけです。ところが、いまの日本現状におきましては、これだけ需要超過があり、その需要超過原因というものが、まさに政府なりあるいは企業なりそれぞれの政策の失敗というふうなことも関連があるわけでございまして、それを十分に調整しないでいきなり統制でやるとなると、よほど強権的な統制、力による統制をやらなければできない。しかも、そういうことをやれば、非常に混乱が起こるし、あとあと非常に大きな問題が起こるということでございまして、私の考え方としては、まず総需要調整をやっていただく。同時に、しかし他方において、現にいまでもそうなんですけれども、低所得者あるいは非常にまじめに勤勉にやっているけれどもふところに余裕がないという方々は、トイレットペーパーだって、それはろくに買い占めもできません。一般のサラリーマンの下位の、下のほうの方々状況をごらになればおわかりでしょうけれども、こういう方々洗剤を買うにしたって、少し所得の高い人が一年分も二年分も買えるという力があったとしても、そういう人たちは前もって買う余裕がない。したがって、まわりがみんななくなってからあわてだす。そのときにみんな行列をつくって買う。だから、行列をつくって買う人たちのことを、いろいろひやかしたり、ばかだのなんだのと言っている向きもございますけれども、しかし、そういう人たちほど、むしろやはり生活余裕がない方々であって、そういうことが起こらないように、政府としても何らかの強権的な介入が必要であろう。だから、いまの投機防止法ももちろん活用していただくと同時に一応国民生活緊急措置法という形で、国がこういう一応の介入をやり得る手段というものはやはり必要であろう。くどいようですが、それは緊急措置法として、しかも、あくまでほんとうに限定された生活必需物資に限っていくということでひとつやっていただきたいというふうに考えるわけでございます。  最後に、これは私見でございますけれども経済というものは市場原理を一ぺん殺してしまうと、さっきも申し上げたように非常にいろいろ問題があるわけですけれども、たとえばガソリンなんかの場合ですと、ある一定の必要量は、これは切符制なり割り当て制でもって供給を安定してしまう、確保するということは必要でございましょうけれども、それ以外のものは、むしろ値段をどんどんどんどん需給関係に見合わせて上げることによって、市場原理を生かすことによって消費をむしろ押えていく。そして石油を使わないような産業構造に転換していくというふうな考え方を導入すべきであろうと私は思っております。したがいまして、そういう観点からすれば、国民生活緊急措置法運用にあたっても、生活必需物資のいろいろな選択・それによってどの程度統制をやるかという問題が出てまいりますが、その場合にもこういった考え方を根っこに持っていたほうが、ある意味消費生活そのもの合理化あるいは産業構造そのもの合理化にもつながっていくというふうに考えるわけでございます。  非常に抽象的でございますし、まことに常識的な結論になりましたけれども、一応時間が参りましたので、私の発言を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 平林剛

  5. 長洲一二

    長洲参考人 長洲でございます。  初めに、総括的に現状についてでございますけれども、私は最悪の事態に日々刻々と近づいていると思います。おそらく来春、破局的な状態を迎えかねない。すでに無気味な予兆が感じられます。そういう点で、情勢は極度に深刻かつ重大だと思います。私は、戦後最大の緊張事態だというふうに考えております。  石油そのものも重大でございますけれども石油の絶対量は少なくも昨年並みといわれております。昨年、国民は寒さにふるえ、炊事に困ったわけではございません。国民も昨年以上の暖房やドライブを求めてはいません。分配の公正さえ保障されますならば、国民生活への影響は少ないはずだと私は思います。問題は、石油がすでにインフレのガスが充満しているところに点火した。石油をきっかけにしまして一切の物価が奔騰を開始した。物不足と先高の確信というインフレ心理が根をおろしたことにあると思うのです。  すでに御承知のように十月、御売り物価は対前年比二〇%上昇、そして十一月以降続々と大幅な値上げが名乗りをあげております。これがわずかのタイムラグで消費者物価にはね返ることは必至であります。したがって、来春以降、爆発的な悪性インフレーションの到来する危険は非常に大きいと思います。インフレーションというのは、御承知のように論理かける心理であります。こうなれば、問題は経済の問題を離れて、社会的、心理的な問題になります。私はパニックの可能性はあると思います。  そこで、それに対していま政府から出ております対策は御承知のように二つ、総需要抑制統制でございます。しかし、私見を申し上げることをお許し願うならば、端的に言って私は総需要抑制については不徹底、統制については不用意だと思います。総需要抑制については、まだ何か腰が定まらず、すぐにも打つべき具体的な手が打たれていない。統制については、何か状況に流されて、それがもたらす危険への備えが十分でないと思います。鈴木さんのお話に基本線で私は賛成でございます。総需要抑制こそいま全力をあげるべきポイントだと考えます。そして、統制については、基本的な認識を、学者抽象論と思われるかもしれませんが、まず確定していただきたい。統制は中途はんぱなら効果はありません。効果を出そうとするならば無限に拡大します。しかも、拡大すれぱするほど非効率と腐敗が生まれます。今回の法律案も、新聞の伝えるところでは、抜かない伝家の宝刀といわれておりますが、抜かない宝刀は切れません。切れ味を見せようとすれば抜かなければならない。一たび抜けば万物なで切りにしなければなりません。歴史上統制インフレを押えることのできた経験は一度もないのです。どこの国にも一度もありません。わが国でも、戦後のインフレーションも、統制によってではなくて、ドッジラインによっておさまったのです。この点ぜひ国会議員の皆さんが冷静な理性を現在発揮していただきたいと思います。統制への誘惑に耐えて、統制あとに何を残すかをぜひ洞察していただきたいと存じます。  同時に、この席をかりて、失礼ですけれども国民方々にも、学者として警告させていただきたい。今日、善良な国民は、万物連日の値上がりで、何とか取り締まってくれということを切実に願っている。しかし私は、それは根拠ある錯覚だと思います。根拠はあります。当然の願いです。しかし、それができると思うのは、錯覚だと考えます。  あとで申し上げますように、私は、野方図でいいと言うのではございません。ほかに緊急にやるべきことはあります。しかし、とにかく安易な統制へののめり込み、それへの誘惑は、これは絶対に効果がなく、むしろ将来取り返しのつかない禍根を残すと思います。  こうした基本認識抽象論でございますけれども、まず申し上げておきたいと思います。  二番目に、今回の法案についてでございますけれども、率直に言わしていただいて、この法案を拝見した限りでは、以上申し上げました心配は消えません。  まず第一に、これでは有効でないと思います。もしこれがありましても、物価は上がると思います。  第二に、あまりに行政府、特に通産省のみにあらゆる権限が集中し過ぎて、それゆえに、有効にしようとすれば、権力的統制への悪循環におちいる可能性があると思います。  第三に、実際上は、通産省がすべてを実施することは、鈴木さんの御意見のように、不可能であります。そうである以上、実際には必ず業界主導型、産官一体の硬直したカルテル体制ができることは確実だと思います。  以上、総括的な感想でございますが、二、三、例を申し上げます。  たとえば標準価格。だれが何を基準にしてきめるのか。通産省は資料を持っておりません。それは業界にしかございません。情報も業界のほうがはるかに豊かです。鉄鋼業代表者がある新聞で語っておりますように、業界が案をつくり、政府が命令する、こういうことになるほかはないと思います。標準価格は当然限界企業原価プラス適正利潤できまるでありましょう。言いかえれば高位安定価格になると思います。課徴金にいたしましても九・九九%アップまでは取れないわけです。とすれば実際には標準価格プラス九・九九%が実際の価格になる。また一部の不心得者課徴金でおどすことはできますけれども業界全体に課徴金をかけることはできません。したがってそうなれば当然標準価格改定、引き上げということになることは必至でございます。さらにコストプラス適正利潤の、そのコストが御承知のように毎日上がっているわけです。とすれば毎日標準価格改定が必要になります。それをこなせるだけの能力、人手は役所にはございません。したがって実際上でき上がりますのは私は全面的なカルテル体制だと思います。  この法案を読みますと、多少の言い過ぎをお許し願いたいと思いますが、私は、独禁法の弔鐘を聞きます。協調的寡占体制への出発進行のベルだと思います。政府が指示しましても実体はカルテルです。カルテルでないという覚え書きが新聞で伝えられておりますけれども、しかしそれは不謹慎な比喩かもしれませんが、ガダルカナル撤退を転進と言い、敗戦を終戦と言ったのと同じだと思います。戦力なき軍隊とか、物価騰貴はインフレでないと言うのと同じだと思います。そして統制統制を呼ぶように、カルテルはカルテルを呼びます。ある品物にカルテルができれば関連部門に次々にカルテルができます。すでに私の感じでは、久日あらゆる品物について事実上やみカルテルが成立していると感じます。証明はできませんが感じます。現にこの法案成立を予期して、一斉にかけ込み値上げが開始しております。そして公取は、けさの新聞でも七件摘発しておる。すでに本年やみカルテルの告発は五十六件に達していると聞いております。このやみカルテルが公然、公式に承認されることになるのではないか、こうなればカルテルマインドは完全に定着いたします。こうして事実上でき上がるのは新しい産官コンプレックスであるに相違ないと思うのです。  さらにこの法案は、私誤解でなければ、恒久立法であって時限立法ではない、統制とカルテルは次々に波及し、ちょっとゆるめると価格は奔騰します。したがってまた長期化せざるを得ない、延長せざるを得ない。こうして日本経済社会の構造を極度に硬直化することは間違いないと思います。そしてこれを遂行すれば当然所得政策まで進まなければなりません。標準価格は当然標準コストを前提し、標準コストは当然標準賃上げ率を決定してまいります。標準価格企業を締めつければ、当然企業内組合は標準賃金をのむほかありません。したがってこの法案を承認するものは所得政策への一歩を踏み出したことを自覚しなければならないと私は思います。  こういう点で、この法案は以上の点への歯どめをきちんと盛り込まない限り、私は一人の学者として賛成しがたいと思います。このままではインフレ抑制に得るところは少なく、失うものがきわめて大きいのではないか。  以上が総括的な感想でございますが、しかし、私は何もやるなと言うのではございません。ここではこまかい点は省略いたしますが、少なくも新しいルールと制度とそしてミニマムな保障、この三点を申し上げたい。  第一のルールでございますが、私は、企業活動は当然利潤を求めて競争するのが主眼でございまして、その競争のルールをきびしくする、今日の事態に合わせてきびしくする、それがポイントだと思います。その意味で、いま必要なことはカルテルや新しい産官複合体をつくることではなくて、むしろ公取を強化拡充することが必要だと思います。公取に人員と金をもっと与えて、カルテル調査、摘発の権限を与え、罰則を強める、そういうことが肝心だと思います。また競争を強める、そのためには情報の公開、ガラス張りをできる限りやることが必要だと思います。業界内部だけの談合、業界役所だけの談合、私は、ことばは悪いのですが、いずれも密室内のことだと思います。そういう情報の公開がなければ、今日いかに善意でありましても、現に存在する広範な国民の対企業不信、行政不信、これをぬぐうことは困難であります。そしてそうした不信がぬぐわれない限り統制は必ず失敗すると思います。  第二に、機構としては私は業界プラス通産という形は適当でないと思います。私は業界の知識、通産の善意やら能力を否定しているのではございません。しかし形が適当でない。むしろ第三者構成の機関にしたほうがよろしいと思います。いろいろ問題はありましても、たとえば米価審議会、労働委員会のように第三者、メーカー、ユーザー、公益といったような対抗力を組み合わせた機構にゆだねたほうがいいと思うのです。またあるいは国会の中に、アメリカに見られますようなキーホーバー委員会のようなものをぜひつくっていただきたいと私は思います。この法律をつくっただけで、もし議員の先生方があと業界と行政にまかせきりというのはおかしいし、無責任だと私は思います。  三つ目にミニマムということでございますが、しかし、以上のことを無制限に品目を広げてやることは不可能だし、不必要だし、不適切だと思います。むしろ統制の及ぶ品目はできる限りぎりぎりの生活必需品のミニマム、最小限の品目にしぼるべきである。ほかは欲ばらずあきらめたほうが現実的だし、有効だと思います。石油関連で言えば、LPGと灯油あるいは電力ということにしぼり、それも大網にきめてしぼって、その関連品を無限に広げるということはやるべきではないというふうに考えます。  時間がそろそろ参りましたので、この程度にいたしますが、私は冒頭に申しましたように、当面が緊急だと思います。この年末からの物価の——ふだんでも上昇する、これが来春引き継がれ、そして爆発する、そういう意味では、私はまず一−三月が正念場だと考えております。そしてその次の四−六月、この第二段階、これで次の新しい手をどう打てるか、この二段階を踏まえました当面半年、これに全力をかけるということが必要だと思います。そういう点で、私は、国民生活安定の基本は、ある意味では非常に機動的な総需要抑制策のほうが根本だと考えております。これにつきましては、もし後ほど時間をいただけるならば、別途申し上げたいと思います。  私は、端的に申しまして、今日の事態は一口に言って、根本は当面やるべきことは、デマンドプルインフレーションの悪性化を防止することにあると思うのです。この点で私は、むしろ総需要抑制統制と二つ考えますならば、安易な統制へののめり込みをこそおそれるべきである、そしてあえてこの際は短期の緊急のオーバーキルをおそれるべきでない、こういうふうに私は基本的に考えております。詳細は後ほどもしお時間をいただければ申し上げます。(拍手)
  6. 平林剛

  7. 岩尾裕純

    岩尾参考人 岩尾でございます。非常に重大な時期に発言をさしていただくわけでございますので、率直に意見を申し上げます。  この法案につきまして、これと関連するいろいろな問題がございますが、問題点を法案自体にしぼっていきまして、私の取り上げたいポイントを大きく二つに分けさしていただきます。  一つは基本的な、あるいはもう何人かの方も方々でおっしゃっているような基礎的な条件の問題でございます。もう一つは、多少専門とも関係いたしますので、いわばこの法案を実施するにあたってどのような取り組み方が必要であるか、いわば技術的なと申しますか、そういう点について申し上げてみたいと思うのです。  まず第一に基本的な点から申し上げてみたいと思うのでございますが、何とか現在の異常な情勢に対して物価をおさめていきたい、そういう趣旨が法案に基本的には盛り込まれておるものという了解のもとに、その趣旨につきましては同感でございます。これはやむを得ないと思います。しかし、これは表題にありますように、国民生活安定緊急措置法ということになっておるのでありますから、たとえば法案の目的にいたしましても、国民生活が中心であるということをもう少し具体的に方向を明示していただきたい。そういたしませんと、一体これは経済安定という一般的なことになるのかどうなのかという点が姿勢として不明瞭になるというふうに心配するわけでございます。  それから次に基本問題でございますが、このような法案が実施される状況、それはすでに他の参考人もおっしゃいましたけれども、これはどういう条件のもとでこれが行なわれるのであるかということを検討しなければならないと思うのでございます。そこからこの法案につきましての、あるいはそれと関連する問題も出てこようと思うのでございます。  これはどなたも御存じのように、現在のインフレーション的な価格上昇がもう決定的な段階までこようとしている、そういう状況、特に長洲参考人が言われましたような非常に不穏な状況になっている、こういうところの問題だ、こういう条件のもとで行なわれているということでございます。  具体的に申し上げれば、これは申すまでもございませんけれども日本列島改造問題以来の価格上昇でございますし、それからドルの買いささえ、それに基づく過剰流動性、それを基盤としました価格上昇でございます。そこにもつてきまして、これはその後の処置でございますけれども、公共料金あるいは米、具体的には電気、ガス、鉄道、石油等々の上昇がこれに火をつけるということになってきておるわけでございます。  さらにもう一つの条件といたしましては、これは冷静に事実を見ていただければよろしいわけでございますけれども、産業特に国民生活に基本的に重要な産業の分野で、いわゆる大企業の支配力が決定的な状況になっておる。そうして先ほど長洲参考人も言われたように、事実上のカルテルやらあるいは大企業間の暗黙の協調によりまする管理価格、これがすでに事実上一般化しておる、こういう条件のもとで行なわれるということでございます。その条件がどういうことになるかということになりますとこれは非常に重要でございます。そのような社会の重要な物資の生産の非常に重要部分を大企業がになっておる、こういう状況のもとで、このようなインフレーションが展開し、そしてまた統制が行なわれるということになりますと、それをどのように処理するのかがこの問題のキーポイントになってくるということになるわけでございます。インフレーションそのものにつきましての財政金融措置、これは当然これと並行して行なわれるわけでございましょうけれども、現実に一般的なインフレーションの問題ではなくて、大企業の資金の構成、資本の構成、これはもう御存じのように国際的にも日本が——日本の大企業の場合には大きく借り入れ金に依存しております。いわば銀行借り入れに依存しておるわけでございます。そういう形での資金動員が可能であるし、そういう形で企業成長が急速度に行なわれておるわけであります。こういう条件のもとで行なわれる。そうすると、そういう大企業の重要な部分の生産のにない方を、いかにインフレ的な要因を除いていくかという点で、この財政金融政策あるいは総需要抑制政策の場合でも、その点に触れずに一般的に総需要抑制ということになりますと、これは国民のなけなしの金をコントロールするということになりかねないおそれがある。その点では慎重な配慮が必要であろうというふうに思っております。  そこで、こういういまのような条件でインフレーション的な物価上昇はとめどなく続く。財政金融の面におきましても、巨大企業の資金は銀行借り入れ、さらに日銀依存という形で展開し得る。生産の大部分は大企業がコントロールし得る。こういう条件のもとで低位の価格安定を望むということになっておるわけでございます。  そうしますと、焦点として取り上げなければなりませんのは、標準価格と、それから生産、流通につきましての政府の指示、監督ということでございますけれども、これはいろいろの問題を含んでまいります。いまのような条件のもとで標準価格を設定する。第一、標準価格自身が非常に幅がある問題でございまして、はたしてこれが実効性を持つかどうかということが疑問でございます。また、先ほど長洲参考人がおっしゃいましたけれども、実際に標準価格をつくろうとするならば、これは事実上カルテル価格あるいは大企業の暗黙の協調のもとで行なわれる管理価格を基礎とせざるを得ないだろう。その可能性が非常に強い。それを政府が公認する。業界が案をつくり、政府がそれを命令するということになりがちである。さもなければ、しょっちゅう標準価格を、あるいは特定標準価格をも更新していかなければならないということになってくるんじゃないかと思うわけです。そうですから、これは一般的な意見で、どなたも当然のこととして御了解いただけると思うのですが、いわば列島改造的な雰囲気は、ぜひ政治的に姿勢として一掃していただかなければならぬ。  それから同時に、カルテルやら管理価格をこの際きびしく押えるような体制が必要でございますし、いろんないきさつできまっておるかもしれませんけれども、この公共料金につきましては、値上げを一時ストップするというようなことは一般的に出てきますれば、それだけでどれだけ国民の気持ちが安定するかというのは、これは思い半ばに過ぐるものがあろうかと思うのでございます。  それからまた、借り入れ金依存による高度の企業成長というやり方、これは財政金融の総需要抑制とも関連いたしますが、民生を押えるのではなくて、そういう基本的な成長のしかたをコントロールしていくということが、この際、これは基本的な問題でございますけれども、打ち出されてきますと、ずいぶんこのような統制のしかたにしましても、いわば安定的な形がとり得る基盤ができるんではないかと思うのでございます。  次には、時間も少しなくなりましたけれども、実施にあたって考慮すべき問題点があるわけでございます。むしろこの点に私はかなり重要性があるというふうに思っております。これは標準価格あるいは特定標準価格の場合もそうでございますけれども、標準的な生産費、標準的な販売費用、利潤、そうしてまた政府の指示、監督に正当な理由なく従わなかった場合には処罰するというようなことになっておるわけでございますけれども、標準的な生産費ということになりますと、これはたいへんいろんな問題をいっぱい含んでおります。  第一原価をどういうふうに考えるのか。原価というのはたくさんございます。それをどういう観点で判定して認めるのかということ、標準的な生産費といい、販売費用、利潤ということになりますと、現実の問題としましては、標準的な大企業の行動そのものを全面的に認めるということにならざるを得ない。これは、すなおにそれを認めないとすれば、もう当然のこととしまして、そういうさまざまな、先ほども言われたようなやみあるいは関連物資への生産の動きも出てまいりましょうし、これはたいへんむずかしい問題でございます。戦時中の統制経済になれた方々がいろいろこれを立案されるにあたってもずいぶん悩まれた点であろうと思っております。  具体的に言いましたならば、あと御質問があれば申し上げますけれども、原材料の仕入れ価格にしましても減価償却にいたしましてもあるいは広告費にいたしましても交際費にいたしましてもさまざまな形での献金にいたしましても、これらをどういうふうに評価するんだということになりますと、現在の標準というなら、現在すべての大企業の標準行動を認めざるを得ないということになるわけでございます。そういう点からいたしますと、これはもう、いわば原価がどのようなデータのもとでつくられていくのか、その資料を提出していただく、それをつくるということ、作成方法を厳密に科学的にするということ、これをどうしても何らかの形でオープンにしていきませんと、そしてそれを公正な観点で検討するということでありませんと、これは誤解の上にさらに誤解を生んでしまって、単にインフレに対する不安、動揺ばかりではなくて、今度は行政府がこれに専心するということになれば、これは政府全体あるいは政治全体に対する不信にも導きかねない。それを、私、いま個人の不安感を表明して恐縮ですけれども、これは非常におそれておるわけであります。  原価につきましての種類について言いましたならば、単純に現実の現在の原価がどうかという問題ばかりではございません。将来の経営戦略と関係した原価もあるわけなので、それは一言申し上げておきたいと思う。これはどうしてもオープンにしていただかなければならない。  それから、先ほども長洲参考人が申されましたが、すべてが行政権限にゆだねられておる。そういうことになりますと、これはますます私ら不安感を感じざるを得ない。国会でこういう問題が十分に討議されなくなるのじゃないのか、国民生活の非常に重要な問題であるにかかわらず、国民参加の理念というものが一つも取り上げられてない。原価の問題にいたしましても、需給の問題にいたしましても、全体としての国民あるいは主権者としての国民ということを意識するわけでございますが、それぞれの、また地域での具体的な住民参加を保障していって、そしてこの審議会が成立していきませんと、これはとても国民全体の不信感を一掃するわけにいかないというふうに考えるわけでございます。いろんな重要問題にしましても米にしましても何にしましても審議会があるわけでございますが、国民生活の、いわば国民全体の主権者の危難が振りかかっている状態のこの重要問題について、そのような審議会がないのはどういうわけなんだろうか、私は、これは最高の疑問を持っておるわけでございます。  要するに、こういうふうな非常事態で、当面、混乱なり不安なり国民生活の動揺あるいは危難をできるだけ最小限度に押えていくためにはどうすればいいか、それは国民の納得を得られるような方式で進むほか道がないわけでございます。そのためには、その基本的な施策についても私は申し上げたわけでございますが、やり方につきましての、いわば民主、公開といいますか、できる限り民主的な基盤で、しかも審議のやり方、検討のしかたをできる限り公開してやっていく、そして合理的な運営をしていくということ以外には、最小限度に混乱を食いとめる道はないと思うのであります。そういう点で、基本姿勢と同時に、実行のやり方についての民主、公開、これを私、強くお願いしておきたいと思うのです。  以上であります。(拍手)
  8. 平林剛

  9. 大木正吾

    大木参考人 私は、今日の状態が日本列島的なインフレーション病とでもいえば、医者が患者を診断する際には、なぜその病気にかかったかということを調べ、カルテに記入しなければ、なおらぬと思うのです。ですから、この法案に関しまする意見を後ほど二つほど述べますが、前提としてぜひ与野党を越えた立場から、今日の国民心配、あるいは荒廃した生活、また破壊されんとする生活、なぜこれが起きてきたか、これについてまず私の見解を述べてみたいと思うのです。  端的に申し上げますと、インフレーションそのものについては国会でもたいへんきびしい議論がなされておりましたが、十二月三日の日の田中総理の国会冒頭の見解なり、これに対する野党の代表質問などを伺いまして、双方に——私は立場が総評事務局長ですから野党に味方することはあたりまえだと言うかもしれませんが、双方に対して私は非常に失望を感じました。端的に申し上げて、しからば今日のインフレーションは何で起きたか。トリレンマということばがございますが、インフレと福祉と国際的なドルの黒字の増高という問題が二年前にありました。しかし、いま国民が受けておりますトリレンマということは、この二年前のドルショック当時の、これを乗り切るためのときにとられた調整インフレ政策、カルテルの長期認容問題とか、四分に引き下げました日銀公定歩合の引き下げ問題とか、あるいは二八%に及ぶ日銀券の膨張問題とか、これがまず一つの大きな問題だったと思います。  同時に二つ目の問題は、何といいましても、田中さんが自分の私的見解とおっしゃられたのですけれども、列島改造という問題が一体どういう心理状態を、経済活動というものを国全体に巻き起こしたか、これについて考えてみてもらいたいと思うのです。最近の所得番付の上位はいずれも土地持ちであります。しかも低金利を媒介にしまして、金融界はまさしく土地を担保にして膨大な金を貸し付けました。これは二つ目のダブルパンチの段階でした。  そして三つ目のパンチが、いま問題の石油エネルギー危機問題なんであります。  ですから、この三つのインフレーションの病因というものを解剖せずしてどのような立法措置を講じようとも、どのような行政措置を講じようとも、私はそのことの正確な認識なくしては対策は立たないと思います。ですから、そのことをまず考えていきますと、一つは、先ほど長洲先生その他おっしゃられた総需要抑制問題に確かにぶち当たる、こういうふうにも感じます。ただ、私が国会の与野党の質問の中でもって失望を感じましたと申し上げたところはここにあります。たとえば四十八年度の国民の総生産、GNP、これは百十五兆といわれております。その五一%から五二%が国民個人消費ということばが田中さんの御発言の中にありました。私はこの数字は間違ってないと思います。しかし、インフレ原因というものを海外に押しつけ、同時にもしこの国民個人消費を中心とするGNP構成比の問題で出すならば、なぜ欧米諸国における個人消費が六〇%前後を常に推移してきた戦後の状況についてお考えを示されないのか。また野党諸君の質問についても、なぜそのことをつかれないのか。私は総需要の抑制、賛成なんです。オーバーキルも、賛成という気持ちが部分的にはございます。しかし問題は、百十五兆のGNPのうちでだれがよけいに金を使ったのかについて明確にしなければ、これはでき得ない相談でしょう。三本の橋はもちろん要りませんし、十二本の新幹線はもっと先に延べてもいいでしょう。  ですから、その種の問題で、十二月の一日に発表された、皆さん方も新聞ごらんになったと思いますけれども経済企画庁が出したいまの経済社会基本計画の乖離問題を見てもらいたいと思うのです。これには何と書いてあるか。この中身は明確に申し上げれば、今日の経済計画を狂わした犯人というものは、民間の土建業者のマンション建設問題と、ドルショック以来の低金利で助けられた民間の工場拡張こそが乖離の最大の問題という指摘があるではありませんか。そして労働者所得というものについて、わずかに計画六%しか埋まってはいない、こう書いています。賃金は今日のインフレ原因でないということを大来委員会は明確に指摘をしている。しかもこの委員会政府の一機関で、経済企画庁の審議会が公表したものなんです。これについてなぜ野党の諸君も追及しないのか。私は疑問でならないのですよ。ですから、そのことを明確にした上で私たちは総需要抑制問題についても論を進めていかなければいけない、インフレーションの退治はできない、こういうふうに感じているわけなんです。  そこで問題は、今度の出されました新しい生活安定緊急措置法案の内容とも若干関連して申し上げてみたい。私は若く見られるけれども、年は五十一歳半です。戦争中三年間の経験がある。戦後のインフレーション経験をなまでくぐってきたのです。まさしく統制経済が新しい統制を呼び、そしてその当時の苦しいやみ行為ということについて苦々しい経験を知っています。サラリーマンとしていなかからイモを買い込んできて生活した経験があるわけなんです。ですから、そういう感じからしますれば、統制経済というものはこれはもうとてもじゃありませんが、私たちに受け入れる土壌はないことは明確に知っていただきたいのです。と同時に、今度出されました法案の中でもって私たち最大に注目をしている部分は何であるかといいますと、先ほど先生方御指摘もありましたとおり、まさしく標準価格の設定、いわゆるカルテル行為というものを含むところの業者の相談による相場決定が高値でもって硬直安定してしまうということはたいへんな問題だと思います。ですから、今日の一きのうもタクシー業者のデモがありましたけれども、あの場合でも、ガソリンあるいはLPガス等については、元売りのところには相当に物がある。問屋から小売り業者には物がない、こういう状況が明確にけさの新聞にも出てきているわけです。同時に、灯油問題等につきましても三百八十円ということを通産省はおっしゃったけれども、最近東北、北海道を旅行して驚きましたけれども、いずれもこれは四百五十円、運搬価格という名目でもって四百五十円から五百円が相場になってしまっているわけです。  そういったことを考えていきますと、私たちは、標準価格の決定を皆さん方立法府におられる方々がむしろ行政府にまかせる、主務大臣にまかせる、こういう関係でよいのかどうなのか。私はここに、私的な見解は別に持ちますけれども一つの疑問がどうしても抜け切ることができない問題と思っているわけです。同時に、一体、これからこの法律というものをつくった場合、先ほど長洲先生は、また鈴木さんもおっしゃったのですが、なるべく品目を整理して少ないものにしてくれという話がございました。私は、少ないものという、いえば抽象的な表現についても非常に危機を感じます。一つのものにもしこの法律が発動されれば、まさしく万波を呼ぶでしょう。そしてその万波はまたカルテル行為に基づくところの高位の価格を硬直させていくでしょう。そういったことが結果的に私たちは国民生活に対する脅威としてどうしてもその不安の中から抜け出ることができないのであります。一体フランスやイタリア、スイス等で行なわれているいまの石油の配給問題について、皆さん方はヨーロッパをたくさん回った方が国会休会中あったと思うのですけれども、私もスイスに行きました。ジュネーブでもってILO問題をやりました。あのときにもすでに石油、ガソリンの統制等の問題があったのです。しかしヨーロッパの土壌には、いえば市民の参加による社会的なミニマムといいましょうか、要するに一つの社会性、政治への信頼と社会相互間の信頼感があります。そこにおいてこそまさしくガソリンなり灯油なりあるいは砂糖なり洗剤なりトイレットペーパー、そういったものが、テレビや新聞等でこの程度あるから心配するなという話が出てくれば、私はまさしく最近のトイレットペーパー洗剤問題等に関連して起きましたパニック的なものは起きないと考えます。  そこで問題は、その種のことを形成するにどうすればよいのか。私は労働団体を信頼してもらいたいのですが、のどもとまできているのは実はマイカー規制はマイカー規制はもうすでに始まっていますけれども、声を大にしてマイカー規制を呼びかけたいのですよ。呼びかけたいのですけれども、その前提となるものについて実は整理がされていませんから言えない立場にあるのです。それはさっき申し上げた、要するにインフレという病人のいわゆる治療のしかたが間違っているという問題があり、列島改造というものが依然として消えない。新全総法というものが、国総法が依然として消えてない。あるいは法人税の引き上げをやったけれども、要するに法人の軽課措置というところの株式七割持ち合いの株のあの税金問題、全然大法人の方が負担しようとしない。こういった中でもって総需要の抑制等をやるからには、これは国民生活全体を二年間よりを戻すしかないわけです。ですから、そこで大事なことは、何といっても市民が参加をするという立場における、一つの新しい第三者機関的な意味合いにおける物価監視機関といいましょうか、あるいは公取委を強化をしながら、その公取委の外ワクにさらに新しい物価をお互いに話し合うという機関をつくるかどうか。これは労働省、厚生省、企画庁、大蔵省、全部やっていることなんですよ。ですから、いずれもこの種の法案ができるときには、そういったことの周辺を埋めていった中でどういう法律をつくるかということが従来の大体ここ十数年来の国政のあり方だと私は推察をいたします。ですから、まず第一は、市民が参加をし、労働組合等が参加のできる、いわゆる消費者の参加のできる第三者機関というのをつくってもらいたいと思います。  同時に私は石油問題に一言触れておきたいのですけれども、これはむしろ石油問題等に関するエネルギー関係のことについては、最近炭労が大会をやりまして、そして石炭を五千万トン掘ったらどうかという話もあるけれども、いやだとごねていますわね。自分たちの都合のいいときは掘らしておいて、そして石油が幾らでも安く入ってくるときになったら、とたんに今度は切り捨てる。山を埋めていく。合理化でもって苦しんだ。これはもうごねることがあたまりまえだと私は思いますね。ですから、エネルギー問題は、もしも新しく新エネルギーの開発が進むまでの間一定の限界量しか使えないとすれば、私は石油と電力と石炭という三つを総合したエネルギーに関する公社をつくる。電話についてもそうです。国鉄は赤字ですけれども。そういった意味合いでもって私たちはこの公社を中心にしながら、産業の米ともいわれるエネルギーがその公社から平等に、国民生活分野と産業分野と外国みたいに五〇対五〇の分野でもって石油が産業と生活に使われていくという状態ができていかなければ、中間マージンを盛んに取り上げるところのいわゆる元売り業者とか問屋関係の問題とか、これは私はまさしく今度は、投機問題が本年の三月にありましたけれども、それが石油を中心とし全産業にびまんしてしまうと思いますね。ですから、このことはぜひ一考してもらいたい問題だと思います。  いずれにいたしましても、こういったことを一々具体的なことを提言いたしますけれども、この法案については、私たちが関係団体として一番関心を持っている問題は、最後に一言申し上げますと、いわゆる標準価格、その中の適正な利潤、適正利潤の中における人件費のコスト、すなわちこれが結果的には所得政策に対する入口といいましょうか門戸の開放というか、そういったものについて考えている方もおそらくあると思いますけれども、もしもそういうことになれば、まさしく総需要の中において、本年の春闘でわずかに分配率は下がっているわけですから、国民個人消費は五一、二%なんですから、一〇%外国に比べて低いのですから、そういったことを固定さして国民生活を破壊に追い込んでいくということについて許せませんので、この問題について標準価格なりその中における適正利潤の問題とからめて所得政策の導入ということは、私たちはこれに対して絶対に受け入れることはできない、こういう立場でございますから、この問題を最後につけ加えまして、持ち時間が参りましたから見解の表明を終わらしていただきます。(拍手)
  10. 平林剛

  11. 天池清次

    天池参考人 同盟の天池です。  私は本法案に対しまして、一つは基本的な見解、二つは法案の内容にわたりまして具体的な見解、二つに分けて申し上げたいと思います。御承知のように最近資源の制約というものが予想以上早く表面化しつつある現状のもとにおきましては、これに伴って摩擦が発生をいたしております。どのような摩擦が発生をしているのか。一つは市場機能を通じる需給調整混乱が生じており、二つ目は消費者の買い急ぎ行動による品不足の激化と価格の過度の上昇という状態であります。三つ目が企業の過当利益の発生であり、四番目が社会的不公正という状態であります。これらをできるだけ回避するためにはいわゆる経済路線の修正を急ぐべきでありますし、このために行政のある程度介入による直接統制はやむを得ないものでありますし、また現状では必要であると思うのであります。  しかしながらこのような統制手段は緊急やむを得ない場合の一時的手段でありまして、国民生活安定緊急措置法案は恒久立法であるといたしましても、直接統制の適用範囲は緊急度に応じて極力限定をする、また一時的な措置とすべきであると思います。  この法案は、緊急措置としての統制権限をかなり広範囲に行政に与えるものでありますけれども、これをいわゆる官僚統制の弊害におちいらせないためには、法の運用について国民の代表の参加など適切な歯どめ措置が必要であると思います。  また、本法案は、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営の確保を目的とするものでありますけれども、とりわけ国民生活の安定と社会的公正こそ最優先にさせるべきであると思います。  本法案の目的にもいう国民生活の安定の確保のためには、わが国の当面する異常な物価の高進、インフレに対して、政府は責任のある抑制策を講ずべきであると思います。特に加速的インフレに対する緊急な対策は言うまでもございませんが、持続的インフレ、基調としてのインフレに対する対策に全力を傾注すべきであります。この姿勢がなくてはこの法案の目的は達せられないと思うのであります。私はさらに、政府生活関連物資供給の政治責任を持っていることを明らかにすべきではないかと思います。  第二に、具体的な項目についての所見でございますが、第一に、第一条の「目的」、緊急措置は、国民生活を優先する緊急措置であるということを明確にすべきであると思います。そして国民生活との関連性が高い物資の安定的供給価格の安定は政府の責任であることを明示いたしまして、万難を排してこれを実行する必要があると思います。  第二番目に、第二条以下の標準価格についてでありますが、法案は、標準価格と、これが有効に機能しない場合の特定標準価格の二本立てになっているわけでありますが、第二条にいう緊急事態に際しては、遅滞なく強力な統制手段を講じるようにすべきであります。この前の段階にいわゆる標準価格の決定、表示、指示等の手ぬるい処置を講ずるのはかえって次の統制手段の裏をくぐる用意を促す結果ともなりかねないのでありまして、したがって政府介入する第一の段階は、第七条以下の特定標準価格制度でなければなりませんし、いわゆる初動段階を強力にすべきであると思うのであります。  第三に、第八条の特定標準価格の決定方法についてでありますが、この点はきわめてあいまいで、非常に詰めが足りないと思うのであります。特に適正利潤をどのように判定するのか非常に問題があると思います。この特定標準価格を決定するときは、もうすでにきわめて緊急事態なのでありますから、また、この処置が一時的処置であることを考慮いたしますときに、本法案の目的が国民生活の安定、価格の安定にあるということからすれば、適正な利潤確保は私は重要な要素ではないはずであると思うのであります。また、このような事態では操業率が異常に低下をしていると思うのであります。標準的な生産費は、低操業率のもとにおけるそういう状態ではあまりに高い水準になるのではないかと懸念をするのであります。この標準価格の決定が低生産性企業を温存するといたしますならば、相対的に生産費の安い大企業、寡占企業の過当な利潤を生じるのではないかと思います。  次に第十条の課徴金の問題でありますが、原案では非常に手ぬるい。これでは課徴金意味をなさないのではないかと思うのでありまして、これを強化すべきであると思います。また課徴金は、標準価格をこえて販売した理由が供給者側にある場合には、その部分については供給者に課すべきであると思うのであります。  第五に、第十三条の生産に関する指示、十五条輸入、十九条保管、第二十一条の売渡し、輸送または保管、第二十二条による設備投資に関する、それぞれ政府が指示できることになっているのでありますが、従来の実例を見てもわかりますように、これは政府の指示ではきき目がありませんから、この必要があれば政府が命令をするようにすべきであると思います。  次に法の運用に関する国民参加の必要性でございますが、本法案運用に関しまして国民意見を反映するということは非常に重要なことでありますので、国民の各層の代表を含む生活安定審議会などを設置することを私はすべきではないかと思うのであります。そして、この審議会には必要な調査権、建議権を与えるべきであると思います。また、諸外国の例でもありますように、公的機関の任命による民間モニターの制度を設置する必要があるのではないか、そして、このモニターには販売業者に対する改善勧告権、あるいは行政機関と緊密な連携をとりましてその効果を発揮するようにすべきであると思います。また政府は、生活関連物資についてその生産、在庫、流通の状況について正確な情報を国民に提示する必要があります。またこのために関係事業者の協力というものを義務化する必要があるのではないかと思います。  さらに、消費者の苦情処理機構を整備する必要があると思います。各地方自治体にはかなり消費生活センターなどの設立を見ているところがあるわけでありますが、たとえば特定標準価格物資などを展示するなどの便宜をはかりますならば、それを中心にして消費者の苦情処理というものをさばくことができるのではないか、このように考えます。  最後に、独禁政策についての所見を申し上げたいと思いますが、業界価格安定カルテルや再販価格維持行為は、価格の高位安定や企業政府のなれ合い、その乱用の危険を招くことになりやすいのであります。この問題について公取委は、通産省、経企庁との覚え書きを結んでおります。これは独禁法適用を除外したということについて独禁法違反でないという覚え書きをしているのでありますが、そのように信ずるなら——私はその危険が大いにあると思うものでありますが、もし公取委がそのように信ずるなら、その覚え書きの趣旨というものが確実に実施できるように監視をする必要がある、その責任があると思うのであります。そして右に述べたような共同行為の発生を防止するように万全の努力を払うべきである、このように考える次第であります。  以上申し上げまして、私の所見といたします。(拍手)
  12. 平林剛

    平林委員長 これにて参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 平林剛

    平林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三塚博君。
  14. 三塚博

    ○三塚委員 長洲先生にちょっとお伺いを申し上げますが、生活安定法には基本的に反対である、以下三点、オーバーキルの問題、公取を強化するとかいう案でいくべきである、こういうことでありますが、昨今のトイレットペーパー騒動あるいは灯油の騒動、そういう問題、具体的な問題があがっておるわけでございますけれども、こういう問題は、先生はどのように対処すべきである、解決すべきであると考えておるか、その点をちょっとお聞きさせていただきます。
  15. 長洲一二

    長洲参考人 これはたいへんむずかしい問題でございまして、私に特に名案があるわけではございません。しかし、この法案をやってもああいう騒ぎは起こるだろうという心配があるわけでございます。やはり根本は、多少時間がもうすでに時間切れの感じがございますけれども、根本は、物は不足と申しましても、よくいわれますように来年はへたをすれば成長率実質ゼロ、名目三〇%ということが可能だというこの状況でございます。昨年並みのものはあるわけでございます。したがいまして、今日いわれておりますような物不足というのは、私は、かなり操作されたものかあるいは錯覚によるものかはわかりませんけれども国民は昨年並みの生活はできるという安心感があれば、ああした騒ぎは起きない。にもかかわらずなぜああいう騒ぎが起こるかと申しますならば、やはり今日かなりの程度の備蓄、在庫がありながら、しかし物不足という信念、したがって先高確実という信念、これをぬぐい去りませんと、どうにもああいう騒ぎがいろいろな形で起こり得ることは私は防ぐことがむずかしいのではないかと思います。そういう点で根本的な道は、先ほど鈴木参考人もおっしゃいましたけれども、私はここで大幅に金利を上げること、これは貸し出し並びに預金者両方でございますが、こうして金が締まってまいりますならば、在庫はいやおうなしに出てくると思います。統制で吐き出させるよりも、私は当面のところはむしろ金を締めて吐き出させるというほうが効果が大きいし、オーソドックスな道ではないかというふうに思うのです。この物不足の問題を解決いたしますのは、要するにいま心配なことは、いままでのように供給過剰で需要が足りないから不況になるのではなくて、供給は横ばいなのに需要アップしている、超過需要がある、そういう状態を信じているから、さらに仮需要が上積みされる、こういうことでございます。したがってよく言われますように、今日の根本は債務者利得をなくすこと、投機のコストを高くして持ち切れない形にすること、これがやはり正道だろうというふうに私は考えます。現に、最近少しずつ金詰まりで、御承知のように土地も木材も羊毛も少し下がりかけておったわけです。そこへこのオイルショックでたちまちそれがまた上がるという信念を国民に与えて、したがって在庫投資をふやす、そして在庫投資を一〇%の金利を払っても二〇%上がれば一〇%得、こういう形で債務者利潤の発生を人々に確信させている。こういうところに一番根本の問題があるんだろうというふうに私は思います。
  16. 平林剛

    平林委員長 山崎拓君。
  17. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 ただいまの質問に関連してさらにお伺いをいたしますが、長洲参考人消費者心理が今日の物価の高騰を生んでおる一つ原因であるという御指摘でございますが、確かにその面もあると思います。しかし十月、十一月ごろの物価騰貴の現象を見ておりますと、主として小売り物資の買い占め、売り惜しみが原因になっておるというふうに考えられるわけです。したがって、流通段階におけるこういった不当な行為、やはりそれを規制していくということがどうしても必要なのではないかと思われるわけでございまして、そういった観点から本法案はやはり緊急事態には適切に作用するのではないか、このように私は考えるわけですが、御意見いかがなものでしょうか。簡単にひとつお答えいただきます。
  18. 長洲一二

    長洲参考人 私が申し上げたことは少し舌足らずだったかもしれませんが、私は消費者心理がいまの問題だというつもりではございませんでした。むしろ問題は先高期待、そして債務者利潤が必ず発生するという信念は流通段階に強いのだと思います。そこをなくすことのほうが大事だというふうに私も思います。そのやはり正道は投機コストを高くすること、持ち切れなくすること、こういうことにある、それが大筋だろうということを私申し上げたわけでございます。
  19. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員 これに関連をいたしまして鈴木参考人にお伺いいたしますが、鈴木参考人は、とりあえず当面とにかく総需要の抑制が最も緊急の対策であるということを御指摘なさったわけでありますが、その点私も同感でありますが、ただ当面非常に需給のバランスがくずれておって、供給不足の状態において鈴木参考人が御指摘なさったような市場原理をできるだけ生かしていくということがはたして適切であるかどうかについて私は疑問を感ずるわけです。  それから第二点は、自由競争の原理をできるだけ生かしていきたいということでございますが、たとえば企業の宣伝広告活動、こういったものも需要をつくり出す作用を持っておるわけでございますが、こういうものを規制する必要はないのか、あるいは企業の交際費等に、こういう時期でございますから、思い切った課税をする、そういう対策が必要であるとお考えにならないか、そういう点について御意見をお伺いしたいと思います。  それから第三点は金利政策の問題でございますが、ただいま長洲参考人からも同趣旨のお話がございました。思い切った高金利政策をとるべきであるという点、私も賛成でございます。この金利政策をやる上において標準金利である公定歩合をどの辺に定めたらいいかという点が肝要でありますが、日本は七%、イギリスは二二%、こういうふうになっておるわけでありますが、公定歩合についてどの程度まで引き上げたらいいとお考えなのか、この三点についてお伺いしたいと思います。
  20. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 それではいまの三つの御質問に対しまして、最後のほうからお答えしたいと思います。  金利政策の問題につきましては、これはあくまで私個人の見解として聞いていただきたいのですけれども、やはり少なくとも日銀公定歩合は、いまの七%に対してまあ九%以上、でき得べくんば一〇%程度というくらいの引き上げが必要ではなかろうか。これは全般の貸し付け金利その他との関連もございますので、その議論は非常に複雑になってまいりますけれども緊急事態としてやはり二けたの公定歩合にしておかなければ、預金金利なり貸し付け金利全体に政策的な機動性を持たせることはできないのじゃないかというふうに考えているわけでございます。  それから貸し付け金利が上がった場合にそれが価格に転嫁されるのではないかというふうな議論がいろいろあるわけでございますが、これは実は非常におかしな議論でございまして、長期的に見ますと、貸し付け金利が上がることによって確かに企業コストは上がってくるわけで、それが価格に転嫁されるという傾向は出てまいります。しかしいま起こりつつある現象というのは、もう明らかに企業が今日のこの環境の中で、価格を上げることによって企業利益を拡大していくという、価格上昇に期待利益を拡大する傾向が出てきている、そのように企業の収益構造がもうでき上がってしまっている。こういう事態に至るまで放置しておいたというのは、これはやはり政策当局にもいろいろ反省していただかなければならないと思いますが、したがいまして、いまここで貸し出し金利を上げることは、むしろそういったような企業の経営の甘さをチェックする、押えていくという一つの面からいっても必要だと思いますし、同時に先ほどから繰り返し、私のみならず長洲先生からも御指摘がございますが、預金金利を大幅に上げるということとも関連ございますので、ぜひそういう点は因果関係を間違えないように議論していただきたい。先生方は間違えていらっしゃらないでしょうけれども企業の中にはそういうことを主張する向きが多いので、これは現在の時点においてはそうではない、逆であるというふうに御理解願いたいと思います。  それからいまの貸し出しの問題について、じゃ、大企業、中小企業全般に一律にやっていいかどうかという議論につきましては、これはまだ私も十分に頭が整理されておりませんけれども、中小企業関連、あるいは国民経済的に見て必要だと思われる業種に対してはある程度金融上の配慮は必要である、これはもう当然なことではないかというふうに考えております。  それから最初のほうの御質問でございますが、いまのような状態の中では引き締め政策だけではだめではないか、やはり相当介入が必要ではないだろうかという御指摘でございますが、私は、最初の話にも申し上げましたように、緊急事態としてはやはり必要である、だから私は政府介入を否定しているわけではございません。ただその介入する場合にも、先ほどからいろいろ御指摘がございまして、標準価格その他いろいろな方法論上の問題がございますが、いまこれをやるとしても、はたして、機動的にやると申しましても、いまの生活安定緊急措置法で、たとえば標準価格を公示するというふうなことになる場合でも、標準価格の策定自体がいろいろおくれてしまうというふうなことでは、やはり緊急事態に間に合わない。しかもいろいろ運営上問題もあることでございますので、でき得べくんばいまは投機防止法というものがあるわけでございますから、それを大いに活用していただくということが必要であろうと思います。  それから標準価格の策定等の今後の問題ともからみますけれども、まずたとえば石油なんかの場合でも灯油の政府の指示している三百八十円という値段自体についてもそれが適切であるのかないのかということは、もう少しやはり詰めてみる必要もあるのではないかというふうな感じもいたします。  それから、二番目に御指摘になりました競争原理との関連でございますが、実はこれは基本的なものの考え方にかかわる問題でございまして、緊急措置あるいは暫定措置として統制というものを認める以上は、しかもやる以上はやはり徹底的にやらざるを得ないという、これはほかの参考人方々の御意見にもありますように、相当これは深入りせざるを得ないということになるわけでございます。しかし、深入りしたからといって、その効果があがるかというと、これもまた先ほどからいろいろ御指摘のあるように、なかなかそれはうまくいかない、むしろ弊害が多いということになるわけです。ですから、でき得べくんば統制をなるべくやらないで、法律は法律としてあくまで伝家の宝刀であってほしい、市場原理をできるだけ生かしていきたい。その生かすという意味は、これは国民生活——ほんとうにわれわれが生活する上において必要不可欠の食糧だとか日用品なんかについて極端な市場原理を導入しろということを言っているわけではございません。それはもうまさしくこの国民生活安定緊急措置法によってそれをカバーすべきであると思いますけれども一つをやればどうしてもほかに広がっていく、その広がっていく場合になるべくそれを広げないようにするということと、それからもう一つは、一般的に見てやはり市場原理を生かすということによって高いものはなるべく買わないようにする。つまりそういうことによって、たとえば現在の緊急事態というのは石油から起こっているわけで、石油が足らなくなった、あるいは入らない。そのことによって生産を押えなければならない。生産を押えるにあたっては需要のほうが大きい。需要を生産に合わしていかなければならない。昔の軍隊のように、与えられた軍服にからだを合わしていけというふうな無理な注文かもしれませんけれども、そういうふうな観点からいたしますと、やはり需要を押えるためには価格原理というものはある程度有効であろうと、私はまだそういう考え方を信じておりますので、これは具体的な品目について、もう少し議論を詰めてみる必要があるのではないかというふうに感じております。
  21. 三塚博

    ○三塚委員 持ち時間もだいぶなくなりますから、簡明にひとつお答えをいただきたいと思います。  そこで、長洲先生は第三者会議で問題をしぼれと、こういうことですが、国会は国民の代表です。そういう意味で国会に置かれるべきことが至当であると私は考える。同時に、長洲先生の言われる第三者会議、またほかの委員からも言われましたが、各種団体からたくさん代表が出ますと、こういう緊急事態の場合は論議が沸騰いたしまして、なかなか結論が出てまいりません。こういうことから考えますと、その辺の御見解はいかがですか。
  22. 長洲一二

    長洲参考人 その第三者機関というのは、私も構成をどうすべきかということを詰めているわけではございません。しかし、やはり機動的に動けるということが大事でございますから、あまり欲ばって大ぜいの委員会にする必要はないと思います。それでなかなかきまりかねるということもございましょうけれども、しかし米価審議会がたいへん問題があることは私もよく存じておりますが、しかし少なくもあそこでいろいろな情報がすべて公開されて、そして国民もああそうかと納得する、こういうことが必要ではないかというふうに考えております。
  23. 三塚博

    ○三塚委員 大木参考人にお伺いをいたします。  先ほど来、今日の事態はまさに戦後の未曽有の状態であり、この処置を誤るならばたいへんな状態になるということは各参考人からの供述で、私どもも同感であります。そこで、これは国民的な視野の中で問題解決をしなければなりません。もちろん総需要の抑制、これは企業者にも、政府、地方自治体もみずからのえりを正してこれに進むことは当然であります。そういう意味で、今日の物価高の大きな要素を占めるといわれますのが交通体系、流通体系の混乱であります。特にストライキによる交通網のストップが滞貨を生むという今日の現況でありますことも事実であります。  一つ具体的な例を申し上げますと、新潟や、私は宮城県でありますけれども、米の出荷がそういう形の中で非常におくれております。また青森のリンゴあるいは北海道の生産物、そういう問題等が深刻にそれに競合しておりますことも事実であろうと考えます。そういう意味で、今日の事態に立ってこの問題解決に進まれるということでありますと、あなたが非常に枢要な立場にあられますものですから、春闘、相当な大規模でやられるということも聞いております。そうしますと、総需要抑制をやる、国民がそれに耐え忍ぶ。しかし、それにまた大きなパンチがそこに加わるということになりますと、日本経済はこれでパンクをするのではないかという、これは大方の国民の非常な危惧があるものでありますから、素朴な意見として局長にお伺いをさせていただきます。
  24. 大木正吾

    大木参考人 雪がことしは多いですから、雪でもって汽車がとまるほうがはるかにストライキより大きいという感じがいたしますが、私はストライキをやることが目的じゃないのであって、やはり田中さんが列島改造計画をやめるということを早く国民の声を受けていただいてこたえていただければ、ストライキは非常に短くなる、こういうふうにお答えいたしたいと思います。
  25. 三塚博

    ○三塚委員 じゃ時間がないですから、これで終わります。(拍手)
  26. 平林剛

    平林委員長 松浦利尚君。
  27. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 きょうおいでいただきました参考人の皆さん方には、たいへんお忙しい中をありがとうございました。また、貴重な御意見をいただきましたことを心から感謝いたしたいと存じます。  ただ、一つ二つ簡潔に質問して、また簡潔に御答弁いただきたいと思うのですが、先ほど長洲先生も御指摘いただきましたように、この法案の中で実は標準価格等をきめる場合に、産官一体の、要するにカルテル野放しの状態になるのではないかという御意見があったわけですが、鈴木参考人にまずお尋ねをしておきますが、公取と通産あるいは経企の覚え書きの中で、政府が主導して価格をきめていくのだ、こういうことの覚え書きが結ばれておるわけでありますが、そういうことは参考人新聞論説委員として現在の通産行政の中ではたしてやれるかどうか、そのことはあわせて長洲参考人にもお尋ねをしておきたいと思います。
  28. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 簡単にお答えいたします。  政府をわれわれはできるだけ信頼したいと思っております。そこで、政府がはたしてやれるかどうかということについては、過去の実績においては私はあまり信用しておりません。しかし、これからはひとつやってもらうよりしようがない。先ほど諸先生方からも御指摘がございましたけれども国民参加、市民参加の何らかのそういう機関をつくれというお話、私もこれはたてまえ論としては非常に賛成でございます。しかし、緊急事態において、はたしていままでの米価審議会のようなものが機能し得るかどうかということになると、若干疑問を持っております。そういうことはございますので、長期的な問題あるいは今後の予見的な問題を含めたものあるいは事後的な問題をフォローする、そういうふうな形では審議会機能というものは役に立つとは思いますけれども緊急事態については、やはり役所の官僚の緊急的な判断にある程度は依存せざるを得ない、これはあとでチェックし、かつ試行錯誤で調整していくよりしようがないのではないかというふうに考えます。
  29. 長洲一二

    長洲参考人 私は端的に申しまして、これは業界が案をつくって政府がそれを命令する、こういう形になるほかはないだろうと思います。善意やなんかの問題ではございませんで、実際の仕事、能力、情報のあり場所の問題でございます。
  30. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ありがとうございました。  それからもう一つ鈴木論説委員を含めましてあと二人の学者先生に御答弁いただきたいのですが、公共料金の問題につきまして、御承知のように来年三月三十一日から国鉄の運賃、四月一日から消費者米価の値上げがすでに既定事実としてきめられておるわけであります。こういった緊急法を上程する段階の中で、政府のこうした公共料金の引き上げすでに決定ということについてのあり方、あるいは皆さん方のお考えをひとつ簡潔に、御三人の方からお答えいただきたいと思います。
  31. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 公共料金につきましては、私は政府答弁みたいになりますけれども、問題によりけりだということでございます。いま御指摘になりました国鉄並びに消費者米価の問題につきましては、私は両方ともやはり上げることはやむを得ない。特に国鉄につきましてはやむを得ない。消費者米価の問題につきましては、いままでのいきさつその他を考えて、なお若干問題は、私としてふっ切れない面がございます。それは事実だと思います。公共料金政策全体として考えなければならない問題は、つまり何でも押えればいいという問題ではない。それからもう一つは、だからといって所かまわず上げればいいという問題でもない。全体の物価上昇の流れ、その中においてタイミングをどういうふうにはかっていくかという問題が一つと、それからもう一つは、公共事業体の性格によりますけれども、たとえば電気料金などにつきましては、料金のあり方の問題と関連していかなければいけない。つまり、現在までのいわゆる原価算定方式そのものがいいのか悪いのか、あるいは産業別、民生用のそれぞれの配分をどういうふうにしていくのかといったような問題を詰めて議論していく必要がある。その点がどうも十分に行なわれていないということにおいては、私は大きな不満を持っているということでございます。
  32. 長洲一二

    長洲参考人 私、先ほどのお話の中で強調したいと思いましたことは、当面半年が正念場だということです。したがいまして、総需要抑制というようなことを強調いたしましたが、これがマイナスであり、万能だとは思っておりません。しかし、当面この半年の悪性インフレヘの転化を食いとめるということに全力を上げるべきだというのが私の意見でございます。そういう点では、やはり先高信仰をなくすこと、このためには半年少し出血する覚悟でやるべきだというふうに考えております。緊急だから統制するといっても、緊急だから統制してもできない、統制だけではできないというのが私の趣旨でございます。  そういう点から申しますと、簡単に申しまして、公共料金でございますけれども、私は、長期の問題は別にして、この半年はとにかく凍結してみる、こういうことは国民心理効果としては非常に大きいと思います。政府のそういう姿勢、この半年はつらいけれどもがまんする、こういう政府の苦悩する姿が見えれば、私は、国民はうんそうかという感じを持つのじゃないかと思います。そして、半年と申しますのは、この半年の間に石油の見通しについても客観的にある冷静な判断ができるだろう、そう考えますし、またこの半年の間に公共料金をどうするか。いま鈴木さんの御指摘のような電力料金体制をどうするか、こういう問題についても徹底的に詰めて、冷静に議論することができる。  私は、そういう意味で、この半年、特に一−三月のために今月何やるか、四−六月のために一−三月に入ったら何をやるか、こういうぐらいのつもりでやるべきではないか。そして、この長期のコスト・クリーピング・インフレーションの問題と、最近の爆発的なギャロッピングないしハイパーインフレーションの問題を一応区別して、当面これを押える。そして、その半年の余裕の間に、クリーピングインフレーションについては、かなり抜本的なことを先生方にもぜひ研究していただきたい、こんなことが私の学者としての、ある意味で非常に緊張感に満ちた現状認識でございます。
  33. 岩尾裕純

    岩尾参考人 簡単に申し上げます。  私、先ほど申し上げましたけれども、現在の状況をどれほど深刻に考えるかということと関連してきますので、その点では長洲参考人と同意見でございますけれども、いままでの物価上昇の先がけをなしておりますのは、何という判断をくだされようとも、事実関係としましては公共料金の引き上げが大きな条件になっております。そういう点で、国民がこれを基盤にしましてさまざまな不安感にかられるのは当然でございますし、特に今度は大企業企業全体の指導、指示までやるというふうな状況になっておるわけでありますから、そこにもつてきまして公共料金を引き上げて、いままでいろんないきさつがあったでしょうけれども、今日のような緊急した事態があるいは予測されなかったのかもしれませんけれども、この情勢に即して、これを原則として取りやめる、あるいは若干騒動がおさまるまでこれを延ばすということはせめて必要であろうかと思います。  しかし、公共料金を引き上げておいて、標準価格をこういう形で、しかもさまざまな審議会なしにきめていくということになりますと、これは理解のしようによっては非常に重要な問題になるわけです。といいますのは、公共料金は上げておく、つまり物価上昇のテンポは認めていく。他方では、標準的な原価、標準的な販売費、それから適正利潤という形でそれを認めていくということになりますと、物価を依然として上げておいて、大企業の行動そのものは認めるということになってくるわけでありますから、この場合は、この法案を出すならば、これはこの際重要問題としまして思い切って政治姿勢を改めることとも関連しまして、これをストップする、あるいは一年間なり、あるいはおさまるまでこれを延期するということは、ぜひ必要であろうかというのが私の意見でございます。
  34. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それから長洲先生にお尋ねしたいのですが、実はいま緊急に必要なのはやはり石油だと思うのです。ですから、石油をまず当面緊急的に措置する。他のものは、第七十一特別国会で通りました投機防止法、これを強化することによってやれるのではないかという意見もあるわけです。こうした意見に対する先生のお考え方をひとつお願いしたいと思います。
  35. 長洲一二

    長洲参考人 私もある意味でそう思います。  先ほど申しましたように、何か新しい機構をつくって、そこでやるならやるべきだと申しましたが、同時につけ加えまして、品目を欲ばらないことが大事だと思います。そういう点では、国民生活ということに関しますならば、これは私の考えが正しいかどうかわかりませんが、たとえばプロパンガスと灯油、あとは電力だと思いますが、このくらいにしぼって量だけは絶対確保します、そういう数量の大綱を審議会のようなもので決定して、それだけは厳密に守る。しかし、あと石油化学がどうだ、したがって塩ビがどうだ、ずっとやっていけば一切の物資に広がりますから、そこのところは目をつぶる。むしろそちらのほうは需要抑制でもって押えていく。こういう筋道がよろしいのではないかと思います。何品目にしぼるべきかはわかりませんが、ぎりぎりミニマムな必要なものだけはきちっと確保されていて、国民は寒さにふるえなくてもいい、炊事ができなくなることはない、こういう安心感がまずずばりあることが一番根本だと思います。そういう点で、品目を最小限にしぼる、こういうお考えに賛成でございます。
  36. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大木さんと天池さんにお尋ねいたしますが、実は先ほど鈴木参考人から、個人消費吸収する、購買力吸収する意味で、預金金利をぐっと引き上げたらどうだろうかという御提起がありました。この内容は物価にスライドして預金金利を上げるということを言っておられるのか、その点はまだわかりませんけれども、いずれにしても現在の預金金利を引き上げることによって、労働者の個人消費というものを吸収できるとお考えになりますかどうか。そのことをひとつ両参考人からお聞かせいただきたいと思います。
  37. 大木正吾

    大木参考人 どうも新聞などを拝見いたしますと、二けたの公定歩合の引き上げ問題、それから半年定期の一分の金利引き上げ問題、預金のほうですけれども、そういう話が出ていまして、福田さんは盛んに吸収策として考えているのですが、私は金融問題詳しくありませんから、一つは、もし借金の金利を上げるならば、これは大中小という、まあ資本の高によるかあるいは純益の高によるか見方はありましょうけれども、二けたにした場合に中小企業の倒産がメジロ押しになるということは、これははっきり考えた上、借金のほうの公定歩合引き上げはやってもらいたいことが一つですね。  もう一つは、非常に具体的に労働省の財産形成法というものがありまして、ドイツなどでは現に二割から三割プレミアムをつけて預金の奨励をやっているわけですね。もちろんドイツの場合には住宅が完備していますから、労働者の百万か二百万の貯金が確実に金利以上に増加する、こういう傾向なんですね。しかしいまの日本の場合に、これを私はもし福祉問題ととらえるならば、目の前にあります要するに財形問題のプレミアムをまず一つは実行してみなさい。それがやはり預金者金利を上げる福祉政策じゃないかと思うので、これは根性の問題なんですよ。要するに零細、この場合には労働省の答申ですと、預金のできない、非常に三十五、六で子供さんを持って五人家族で苦しい貯金のできない層にも会社が貯金をしてあげる、国が貯金をしてあげる、こういう制度ですからね。そこは福祉問題だから、あまり何か大蔵省ができそうもないことをいうよりは、そういった現実目の先のことをやって、さっき長洲さんもおっしゃったのですが、心理問題として一つの、私は消費抑制問題ということはあってもいいと思うのです。ただ、あくまでも前提条件がこれは大事ですから、要するに総需要という百十五兆の中におけるだれが銭をたくさん使っているのだということを抜きにして、あまりそれを通り越して、全部をべたで四十六年に逆行するなんということをやりましたのでは、これは全部の所得がいまのままで不平等でもって減るわけですから、そういったことを総合面で考えてもらいたいということが私の意見です。
  38. 天池清次

    天池参考人 預金金利の引き上げが個人消費抑制の手段になるかということでありますが、基本的にはならないと思います。確かに一時的には、たとえば物価スライドで預金金利を上げるということになれば、一時的な効果はあるでありましょうけれども、しかしいまのような物価上昇にスライドして預金金利だけがどんどん上がっていくという状態で、それに伴う他のバランスがとれるかどうかという一つの問題があります。  それからもう一つは、個人消費抑制という中でやはり物不足に対する脅威というものがあるわけですから、それは預金金利を上げたからそういう問題が解消するということにはなかなかならないだろうと思います。したがって、やはりインフレ抑制をどうするかという問題がきわめて基本的な問題であろう、このように考えます。
  39. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それから鈴木さんそれから長洲さん、岩尾さんの三人にお尋ねしますが、この標準価格の決定等の第二条に、ごらんいただくとわかるのですが、「国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資価格が著しく」云々、こういう表現があるのですが、この「国民経済上重要な物資」というのは、極端にいうと鉄とかそういったものも当然入ってくると理解をするのが常識だと思うのでありますが、お三方参考人の御意見をひとつ述べていただきたいと思うのです。
  40. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 それじゃ簡単に申し上げます。  「国民経済上重要な物資」というこの条文をおつくりになった当局の頭の中には、おそらくそういったような感触もあったかと思いますが、私は先ほどから申し上げているように、できるだけ統制の幅を広げないという観点におきましては、私は当面これは石油だけに限定すればいいというふうに考えております。  それからちょっと先ほどの金利問題で一言だけ、私の弁明というわけではございませんが、私はあくまで預金金利は緊急一時的なものとしてやるべきだということであって、長期的の問題として言っているわけではございません。
  41. 長洲一二

    長洲参考人 時間の節約のため、私も鈴木さんと同意見でございます。
  42. 岩尾裕純

    岩尾参考人 私は、このお二人の方と違いまして、当然含まれるべきだと思います。鉄がなくて何の生産ができますか。これは根本であると思います。
  43. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ありがとうございました。
  44. 平林剛

    平林委員長 野間友一君。
  45. 野間友一

    ○野間委員 きょうは参考人方々、たいへん御苦労さまでございます。非常に貴重な御意見をお聞かせ願ったわけですけれども、二、三点にわたりましてさらにお教え願いたい、このように考えるわけです。  最初にお伺いしたいのは、独占物価の形成の特徴について、これは六九年か七〇年だったと思うのですけれども、大阪商工会議所の調べによりますと、たとえば電気冷蔵庫、これは原価が一万七千円前後、これが市販では六万から七万で売られているという事実、あるいは自動車につきましては、小型の乗用車が原価が二十四万、これが六十万以上で売られている、このような発表があったわけでありますけれども、こういうことを聞きますと、いかにその独占が暴利をむさぼっておるか。これは国民としてだれでも怒りをもってこの事実に接したわけでありますけれども、こういう点を踏まえまして独占価格の形成についての特徴と申しますか、このあたりにつきましてまず最初鈴木参考人それから岩尾参考人、ひとつぜひお伺いしたいと思います。
  46. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 では簡単にお答えします。  一つはいまの独占ないしは寡占の問題でございますが、これは現状はどうなっているかということは、私はいろいろ資料を最近ずっと洗っておりますけれども、最近特に寡占的な業種がふえてきているということは事実だと思います。これは従来、いまから数年前までは、寡占寡占といわれましても、それが価格面でどの程度の弊害を与えているかということについてなかなか立証が困難であった。最近はやはり全面的な意味で寡占業種のそういう価格支配力というものは強まってきているということは事実だと思います。それからもう一つは、いまのような経済環境、特に金融環境あるいは過剰流動性を背景にしたこの環境の中では、こういうふうに需要が大きいと、結局寡占業種であろうとなかろうとすべて売り手市場でございます。したがって、売り手である企業は中小企業を含めまして、市場に対して相当価格面で操作力を持つということになりますので、企業の数が多いとか少ないとかに関係なしに、いまや完全に企業の売り手市場中心型の市場支配というのが起こっているというふうに考えます。
  47. 岩尾裕純

    岩尾参考人 簡単に申し上げます。  現在、私が先ほど申し上げました事実上の寡占価格が形成されるような状況といいますのは、産業にしてみましたならば電力、石油それから化学、合繊、紙パその他等々、これは鉄はもちろんでございますが、約十一業種があるわけでございます。これは、最も国民生活あるいは国民経済の根幹に位している分野でございます。そこで寡占価格が形成されておる。特に高度成長の過程で一九六〇年代にこれが非常に強まり、あるいはトラスト、あるいは事実上の協調体制であります管理価格の形成が見られておるわけであります。したがって、現在までやってきたプロセスがそういうものを非常に強めているわけでありますので、この際こういうふうな姿勢を改めるとなりますと、本格的にそういう体制を少しでも国民のために是正するということなくしてはとてもおさまるものではなかろうというふうに考えております。
  48. 野間友一

    ○野間委員 もう一つお伺いしたがったのは、これが事実であるとすれば、いわゆる価格形成については原価プラス適正な利潤とかいろいろございますけれども、こういうのを前提とすれば、これが適正な価格であるといえるのかどうかということについて一言お触れいただきたかったわけですけれども、できましたらどうぞ。
  49. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 いまの独禁法の運用にあたりましても、実際に企業のディスクロージャーというものは非常にやりにくい。なかなかやり得ない。しかも、カルテルなどの実証行為というのは、実際には寡占的な価格支配というものはなかなか立証因難であるということから、一方においては旧法八条の復活問題というようなことも議論されたり、いろいろあるわけでございます。現実にいま標準価格の算定においても、まさにその点が問題になるわけでございまして、先ほどからも御議論があるように適正利潤、適正コスト、一体何が適正なのか、これは私どもも、実はどういう形でおやりになるのか、事務当局からもまだいろいろ聞いてもおりませんが、これは非常に問題が多い。いま言ったような背景の中で、そういう問題はやはり相当慎重に進めていかなければいけない。この程度にしか申し上げられないのです。
  50. 岩尾裕純

    岩尾参考人 多少技術的にわたりますが、所見を申し上げます。  これが正しい原価と言えるかどうかというお尋ねでございますが、これは一般的に申し上げれば、あるいは自由経済を基盤とした観点から申し上げれば、これはもう当然、不当な原価、不当な価格あるいは不当な利潤ということになるわけでございます。  ところが、これは先ほどもちょっと私申し上げたかったのですが、時間の余裕がなくて言えなかったのですが、原価を基礎にするといった場合に、実際の原価もございますし、それから将来期待される、あるいはされねばならない原価もあるわけでございます。その場合の原価は、いわば期待される原価ということになりますと、経営戦略の観点から、どのような企業との競争にあっても負けないように利潤をあげなきゃならない。そのための設定さるべき、そのための売り値を決定するような原価ということがやっぱり理論的には言えておるわけなんです。ですから、正常な理由とか、あるいは何とかということになりますと、立場を変えましたならば、つまり大企業の立場から見れば、これはきわめて正常な利潤であり、適正な利潤だということになるわけです。これがなかったならば、世界的な国際競争には負ける、いかなる国際競争にも勝てるような利潤をということになって、それを可能にするような販売価格ということになれば、きわめて適正ということになるわけであります。その点を明確にされずに、原価を基礎にすると文章化されておりますので、私、非常な不安感を持ったわけでございます。
  51. 野間友一

    ○野間委員 ありがとうございました。  それじゃ、次に原価とか在庫のオープンの問題について長洲先生、それから組合の大木さん、天池さんにお伺いしたいわけですけれども、いわゆるノーハウとかあるいは原価について、これは財界のいろんな方々が、座談会とか新聞等でいろいる意見を述べておりますけれども、これはオープンにすることはできない、こういうことを一貫して申されておると思うのです。その点について、外国ではこれをオープンにしておる例も——これはいろいろ限度もございますけれども、こういう外国の例も踏まえながら、原価あるいは在庫の公開制というものについてどうお考えになるのか、少し具体的にお話をお伺いしたいと思います。
  52. 長洲一二

    長洲参考人 これは、ただいまお米の場合にはある程度わかるわけです。したがって、農民がオープンにできて、企業がオープンにできないというのはおかしいと思います。ですから、原価、在庫、なかなかこれはわれわれにわかりにくいものが出てくるという、そういう懸念はございますけれども、にもかかわらず、原則的には、いまこそそういうものをオープンにして、そして国民にとにかく信頼感を与えるということが、私は、企業としても大事ではないかと思います。御承知のように、企業は、公害、この前の投機と非常な不信感を国民の中に植えつけておりますから、ましてこれが密室でやられるということになれば、国民は当然怪しいと思うわけでして、私は、企業方々にも、この際は進んで情報を提供する、そのことによって国民の産業と企業に対する信頼感を回復する、こういうことをぜひすすめたいというふうに考えております。
  53. 大木正吾

    大木参考人 私は、この法案には原則的に反対なんですが、むしろさっきも一般論で申し上げたのですが、市民社会の形成ということが非常に大事な前提でありまして、私たち自身がいま考えていますものは、政府統計なりILO統計、国際統計等では、日本の鉄鋼とかあるいは自動車などをつくる際のコスト構成の比較は一般的に出てくるわけであります。ただ、物によりまして、たとえば減価償却費がアメリカとかドイツの自動車に比べて日本の自動車が非常に高過ぎるとか、そういうところはわかるわけですが、さてそれからさらに入りまして、原価のほんとうの人件費なりあるいは原材料費などについて、ほんとうに原価計算してどういうふうにしていくかというところまでは入り切れないわけですね。そこで、さっき申し上げた一つの方法としまして、審議会というものをつくり、市民社会を形成し、そういった市民の声の中で結果的にはコストの公開というものを次第にはかっていかなければいけない。法律でもってやって、また一方ではもうあぐらをかいて、原価を公開するなんて、世界の資本家なり経営者がどう言うかということを言わして、黙っている日本の社会に、私は非常に残念な気持ちですね。ですから私は、もう法律じゃなしに、自分たち自身組織ですね、市民団体、そういったものを加えた中で、必ずこのことは、それこそ一−三月か四−六月かわかりませんけれども、やっていかなければいけないし、大企業なり大商社に交渉を持ち込んで、そのことを迫ってみたい、こういう気持ちでおりますので、今後の努力について考えていただきたいと思います。
  54. 天池清次

    天池参考人 在庫の公開は、現在の状況でいいますと、政府はたくさんあるとこう言っておりますが、事実は売り惜しみなどの事実があるわけですから、ぜひこれは公開をしなければいけないと思いますし、やりようによって大いに可能である。その内容は、私が先ほど申し上げたとおりであります。  それから、原価のオープンの問題については、労働組合でも賃金が支払えるかどうかという場合に、経理をガラス張りにしろという要求をいたしますし、また、そういうことをした結果、非常にうまくいっているところもあります。また、特に対米関係の輸出で、ダンピング問題などに関連して、原価の公表という問題が社会的に、あるいは国際的に要求される事実もあるわけでありますから、これも、そういうような事実の上に立って考えると、いまのような情勢で原価がオープンできないということはないと思いますし、その必要はあると思います。  ただ私は、この緊急事態では、適正利潤というようなものを見なくていいのではないかと主張をしておるわけでありまして、商売でもうけるときと損をするときもあるわけですから、この点を標準価格などをきめる場合にあまり考慮する必要がないと主張をいたしておきます。
  55. 野間友一

    ○野間委員 時間がございませんので、あと一点だけお伺いしたいと思うのですが、いまのオープンに関連して、先ほども少しお話が出たわけですけれども、第三者機関により、価格なりあるいは物の流れ、これを規制するということについてでございますけれども、私たち四党は、一応審議会形式というものを考えておるわけです。とれには、たとえば先ほど話が出ておりました労働委員会ですね、そういう性格、つまり行政委員会的な性格のものというような御意見もたしかいま出たというように思いますけれども、いずれにしても、こういう第三者機関を持って、ここでやっていくということが、これが公開制とマッチしてうまくいくのじゃないかというふうに考えるわけであります。  そこで、審議会の構成について長洲先生は、構成については具体的にはまだお考えは固まっていないというお話がございましたけれども岩尾先生あたりどのようにお考えになるのか、あるいは組合としてどのような構成にすればいいのか。これは第三者形式の話も出ておりましたので、関連してお聞きして、私の質問を終わりたいというふうに考えております。
  56. 岩尾裕純

    岩尾参考人 簡単にお答えいたします。  私は、審議会形式が行政委員会であるのか、その他どういう形になるのかという点については、さらに詰める必要があると思いますけれども、国会でのこの調査権というものはぜひ確保しておいていただかないと、やはり不安だと思います。それに加えてやはり審議会も必要であると思いますが、審議会の構成につきましては、数は多くということよりも、むしろ選出の条件、選出の方法が必要であろうかと思います。  それから、特に学識経験者ということも当然入ると思いますけれども、学識経験者の選出も、これは非常に慎重にしていただかなければならない。きわめて民主的な運営をされておる、この基盤でやっていただきませんと、たとえば学術会議のようなところからの推薦をお考えになるとか等々でありませんと、これは非常に不安を持ちます。  特に先ほど来申し上げているわけですけれども、原価計算の問題になりますと、非常にいろいろな原価計算がございます。極端にいうならば、学者意見を一人ずつ生かしたら、百以上原価計算の方法がございます。そういう点を無視して大まかにやられたんじゃ、これはどうにもなりませんので、ぜひその点は慎重な配慮をお願いしたいと思います。
  57. 大木正吾

    大木参考人 私は、第三者的な機関を非常に重視をする立場なんですが、これは衆議院の議席によるか参議院をプラスして議席を考えるか、とにかくやはり何らかの一定の標準といいますか、ものさしをつくりまして——私は総評ですから、総評イコール社会党とやじられますけれども、総評だからといったって、別に社会党の御託宣で動くわけではないのですから。きょうの学者方々の御意見でも、自民党推薦の方でも皆さま方には耳の痛いことも相当しゃべっておるわけですからね。だからそう意味合いで、私はぜひ、数はせいぜい二十人くらいということで、政府の諮問機関であり、同時にその諮問機関が実質的な行政上の影響を与える、あるいは都道府県なり自治体に対しても同種のものを置く、このことを考えてもらいたいのですよ。  ヨーロッパ社会等では、なぜあれほど石油がきびしくてもパニックが起きないかという問題なんですね。要するに、上からずばっと締めていくのではなく、おれたちの代表が行って相談して、たとえばマイカーでもってドライブをするについても、石油の切符でもって一月のうち二回しか行かれないことをしんぼうしているわけですからね。それは市民社会ができているからでしょう。同時に、その市民社会をつくるには、おれたちの代表が行ってやはりきめてきたんだからこれはしようがない、こうなっておるわけです。  ほんとうは、これは先生方には失礼に当たりますけれども、国会というものを選んでいるわけですから、そこでもいいじゃないか、こういうふうにおっしゃるかもしれませんが、残念ながら現状では、もう少しおれたちに日常的にものを言わせろ、こういう意見がありますから、そこのところをひとつ信用していただいて、私は第三者機関の構成については、統制ということをどうしてもゆるやかにするということでやるとするならば、品目をうんと限定する問題と同時に、この種の審議会というものをどうしてもつくる問題、こういったことは考えていただきたいということを申し上げます。
  58. 天池清次

    天池参考人 第三者機関につきましての必要性は、一つは本法案の施行にあたりまして国民的な協力を得るという必要があるということ、特にその中でも消費者の苦情処理というものをどうしていくかということと、それから国民的な立場で監視的な機関をどう発揮するかということ、こういう点を重視いたしまして第三者機関というものを考えるべきではないか。私の先ほどの供述の中には若干具体的な例を申し上げましたが、特に技術的な意味でそれらに固執するものではありませんが、いま申し上げました趣旨をひとつ大いに尊重すべきである、このように考えております。
  59. 野間友一

    ○野間委員 どうもありがとうございました。
  60. 平林剛

  61. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 公明党の石田でございます。本日はたいへんにありがとうございました。  補足して、幾つかお伺いをしたいと思うのでございますけれども、この国民生活安定法はいわゆる恒久立法というような形で行なわれておるわけでございます。性格はそういうふうになっております。これについて長洲先生にお伺いをしたいのでございますけれども、この恒久立法的な性格というものは経済を硬直さしていくというような御心配を非常にしていらっしゃるわけでございますが、そういった意味におきまして、この法案性格をやはり時限立法に限定をする必要があるのではないかというふうに思いますが、この点いかがでございましょう。
  62. 長洲一二

    長洲参考人 先ほどの陳述のときにも申し上げましたように、私は時限立法のほうがいいと思います。これは恒久立法で動き出しますと、いやおうなしに硬直した市場構造が確立する。そうなりますと、当面、私それほど効果があるとはどうも思えないのですし、当面得るところ少なく、そうしてあとになって、しまったという、失うところのほうが多いんではないか、そういう点で、先生の御意見に私は賛成でございます。
  63. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さらに標準価格、特定標準価格の決定についての問題についてお伺いをするわけでございますけれども、現在、この法案によりますれば、元売り段階あるいは小売り段階でこの標準価格もしくは特定標準価格をきめる、こういうふうになっておるのでございますけれども、今日のこの物資不足によりますところの物価上昇というのは、多分に流通段階におきますところの問題点が大きいわけでございます。先ほど長洲先生は債務利潤の発生を非常に心配していらっしゃいましたけれども、これはやはり生産段階においても当然ございましょうけれども、むしろ、現段階状況を見ますと、流通段階の問題として非常に大きくクローズアップされてくるのじゃないかと思うのでございます。そういった意味におきまして、流通段階の徹底的な洗い直しをする必要があると思うのでございますけれども、われわれ野党としましては、したがってこの標準価格もしくは特定標準価格について、卸売り段階においても、もしやるとすればそういう必要があるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。また、地方自治体等の意見も聞いてみますと、この卸売り段階での標準価格をきめるということになれば、ぜひともひとつ地方自治体にもその権限を与えてもらいたい、こういうような意見があるのでございますけれども、この点について、いかがお考えでございましょうか。
  64. 長洲一二

    長洲参考人 流通段階の問題でございますが、私は、いまの物不足というのは、自分で調査能力がございませんからわかりませんけれども、GNPがことしは実質ゼロになったわけではないのです。ですから、物は去年並みにはあるにもかかわらず物不足といわれるのは、要するに先高がかたく信じられているからだと思います。非難の意味ではなくて、先高が信じられていれば、いやおうなしに在庫手当てをしてストックしておくというのは、ビジネスの当然の論理でございます。それが相乗効果を起こしているわけでございますから、そういう点で、先ほどもちょっと申しましたように、やはりそうした投機といいますか、売り惜しみ買いだめのコストがうんと高くなるということをやるのが、当面の緊急措置としては流通段階にたまっている滞貨を吐き出させる基本の道だというふうにまず考えているわけです。  そして同時に、いま御質問の流通問題というのは、おそらく、さまざまな構造的な問題でございますね、これは私はあると思います。先ほど申しました、昭和三十年代から続いておりますクリーピングインフレーションと最近の爆発的なこれと、この二つを分けて考えてみまして、当面は、爆発的なギャロップになっている部分に緊急の対策をやって、そしてこの半年の間に流通機構なり何なりというものを洗っていく。しかし私は、これはなかなか簡単には直らないと思います。それはしかし、いま当面のインフレマインドを鎮静化させるならば、あとの作業として本腰を入れて取り組める、こんなふうに私は考えているわけでございます。  お答え、まだあれだったでございましょうか。もう一問あったでしょうか、ちょっと忘れまして−…。
  65. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 卸売り段階におきます標準価格の設定の必要はないかということです。
  66. 長洲一二

    長洲参考人 これはこの法案では、どこで標準価格でございましたか。
  67. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この法律の中では、元売り段階とそれから小売り段階のみの標準価格設定ということになっているわけでございます。そういった意味で、中間の卸売り段階においても、もし実施をするとすれば、やはり標準価格設定が必要になってくるのじゃないだろうかという考えを持っているわけです。
  68. 長洲一二

    長洲参考人 そうですね。私もそう思います。ただ、そうなりますと問題はますますむずかしくなりまして、したがいまして、いろいろなものを欲ばってやればやるほど事実上バンザイということになって、卸売り段階標準価格は問屋さんがきめる、それを政府が指示する形になる、大体そういう悪循環の中に入り込むと思います。したがいまして、もしやるならば、先ほどからあまりくどくなりますけれども、私は最小限に品目をしぼってやるということが大事なのではないかと思います。
  69. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 岩尾先生にお伺いをいたしますが、先ほど期待される原価、いわゆる長期にわたる経営というものを考えました場合には、期待される原価というのが出てくると思うのでございますが、現に私も、実態を聞いておりますと、いま木材等におきましては、いわゆる外材を輸入する場合の油の都合がつかないために、在庫を二カ月程度第一次問屋で持っているそうでございます。しかし、先行き全く不安になっておりますので、現在持っている在庫を幾らで売れば適正なのかというのが大問題で、売っておりませんと、こういうようなことは明らかに、先ほど先生がおっしゃっておられる期待される原価という中に含まれてくると思うのでございますけれども、この標準価格を決定する場合に、先生の御意見は、標準価格からこの期待される原価というものは取り除くべきだというお考えでございましょうか。
  70. 岩尾裕純

    岩尾参考人 結論から申し上げますと、この期待される原価はたいへん困ります。これはもう、期待される原価をもって基盤にして販売できるような業者といいますのは、いわゆる巨大企業以外にはございませんで、中小企業が期待原価をもって販売ができるというのはなかなか珍しいというふうに考えざるを得ませんし、これはむしろ将来の利潤をあらかじめ先取りするということになるわけでございます。これは不当利潤というふうに自由経済からいえば考えざるを得ないわけでございます。  しかし、そればかりではございませんで、実際の原価といった場合でも、これは当然物価上昇の過程では、たとえば安いときに仕入れたもの、それから高いときに仕入れたもの、どれで原価を計算するんだ、いま売るのでしたら、現在高い値段で仕入れた原価で計算して売れば、安いときに仕入れた原価との差はもうかるわけでございます。これは明らかにインフレ利潤なわけです。こういう問題もあるわけでございます。  そういう問題もございますので、先ほども申し上げましたが、どうしてもやはり在庫と原価の公開が必要なんだ、作成方法の公開が必要なんだ。もちろん国民一般に何々会社はこうだと言う必要があるかどうか、これは疑問でございます。しかし、いずれにいたしましても、それを審議会なり何なりに出しておきませんと、これは正当ないわゆる期待原価であり、独占利潤であるかどうかの判定もつきません。  また、労働者は生活費の調査もやらせますし、先ほど長洲さんもおっしゃいましたが、農民も米の生産費をちゃんと調査しておるわけでございますが、なぜ企業で行なわれないのか。これは、アメリカの、日本で勲章をいただきましたピーター・F・ドラッカーが言っておるわけでございますが、特に大企業というのは社会の鏡なんだ、シェードなんだ、こう言っておるわけでございます。だとしましたら、社会の鏡である、シェードであるものは堂々と行動をオープンにしなければいけません。堂々とオープンにして、この原価を隠すというのは競争上の問題なんですから、その点はお互いが、実はお互い同士は基本的には事実上わかっております。でなかったら暗黙の価格協定はできませんので、それはもう国民が知らないだけでございますから、少なくも国民の代表の前にはそれはオープンにして、そして極端に、むしろ理念的に申し上げましたならば、原価とか在庫の公開というのは、人間の上に企業というものを置いてはいけない、社会の上に置いてはいけない。あくまで大企業といいますのは、この社会が存続なり、あるいは人間が、あるいは主権者である国民生活していくための道具であり、シェードだという観点で貫いていただきますなら、このような緊急な状態のときには、期待利潤にしろ期待原価にしましても、これは当然堂々と議論ができるのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  71. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 天池参考人にお伺いをいたしますが、先ほど標準価格の問題に触れられまして、原価あるいは適正利潤のお話が出ておるのでございますけれども、先ほど適正利潤の問題に触れられまして、緊急立法であるからその必要はないじゃないか、こういうお話でございます。ただ、先ほど申し述べられた中に、いわゆる低生産性の部門の適正利潤ということを考えますれば、逆にいわゆる高生産性の大企業の利潤というものがばく大になってくる、あまりにも過大になってくる。したがってこれを押えなければならぬというような御意見でございましたけれども、そのような御意見でございますれば、いわゆるこれは利潤まで抑制していくわけでございますから、所得政策にめり込んでいく心配があるとわれわれは考えておるわけでございます。したがって、この国民生活安定法案というものは必然的に所得政策の方向へめり込んでいくのじゃないか、こういうような心配をいたしておるのでございますけれども天池参考人はどのような御意見をお持ちでしょうか。
  72. 天池清次

    天池参考人 この立法の必要性はいまの緊急事態でやむを得ない、いわゆる必要悪だという意味で私は認めるものでございますから、これは恒久的な意味でこの法案というものを考えているわけではございません。これがまず前提であります。そして、この標準価格あるいは特定標準価格を決定するこの法案の内容は、非常に複雑であります。あらゆる要素を持ってきて特定標準価格をきめるとこういっているのであります。それに適正利潤を加えてきめるとこういっているのであります。そういうような多くの要素を加えて、はたしてどういう価格がきまるのであろうかという疑問が生じます。この疑問に突き当たるところは、適正利潤の内容などは一体どういうものになるのか。これはおそらく通産省の判断ではできない問題なのではないか。結局業界の意向を伺う。政府は特定標準価格をきめる場合に業界介入してと法文にありますけれども、実際はお願いをしてきめることになるのではないか。お願いをするということになれば、それは明らかにカルテル行為を容認するという結果になるのではないか。そういう危険性を非常に多く含んでいるという、そういう事実にかんがみまして、私は緊急であるという前提で、いわゆる適正利潤というような観念は、この特定標準価格をきめる場合に一時的に放棄してもいいのではないか、こういうような考え方を持っているわけでありまして、これが恒久的な問題になりますと、いま言われるようないろいろ関連する事項も生じてまいります。一時的、緊急的なものとして考えておるわけでありまして、これが所得政策につながるというような面はむしろ排除をしていかなければいけないだろう、このように考えております。
  73. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 なお、の議論ももう少しお伺いをしたいところでございますが、時間がありませんから、最後に長洲先生にひとつお伺いいたしますが、石油問題あるいはその他の資源の問題におきまして、まあ石油は当然品不足ということが予測をされておりますが、鉄の問題にいたしましてもその他の問題にいたしましても、いわゆる資源は有限であるというようなことが最近特にやかましく言われておるわけでございますが、そういった資源の面から見たいわゆる日本経済の転換というものが必要なのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。ごく卑近な例をあげますれば、資源の消費規制法とかあるいは省資源の促進をする法律であるとか、そういうようなものもあわせてこの法律とともにやっていかないと、本格的な日本経済の転換にはならないのではないかというふうに考えているのでございますけれども、先生はいかがお考えでございましょうか。
  74. 長洲一二

    長洲参考人 私もおっしゃるとおりだと思います。  御承知のように、大体一九六〇年代をとってみますと、資源そのものの世界の生産と輸出の伸び率はほぼ平均して大体六%です。日本の輸入と消費の伸び率は年率二〇%です。こうして、世界資源貿易の中で占める日本のシェアは年とともに高まりつつあって、最近では、ある説によると、世界資源貿易の四分の一を日本がすでに占めている、このままでいけばやがて一〇〇%日本が占めなければ計算が合わない、こういうことになっているそうでございます。そういうことはあり得るはずがないことは、大体七〇年代に入る直前あたりからいろいろな専門家たちが指摘しておったことでございまして、そういう点では、ことばは悪いかもしれませんが、今回のオイルショックというようなものも、こういう形でドラマチックに来るという予測はしないにしましても、来てみれば当然来るべきものが来たにすぎないと思います。当然私どもが進めておるべきでありました省資源、無公害、公害と資源の問題は七〇年代日本経済の根本問題でございますが、これは根っこでつながっている問題でございます。そういう意味でこの省資源、したがって無公害というような方向に産業構造を転換し、われわれのライフスタイルを転換していくというのが七〇年代の日本経済の基本的な課題だと私は思います。それなしに、やたらにGNPをふやし重化学工業を伸ばしてまいりますならば、これは文字どおり惨たんたる結末になるであろうというのが長期の七〇年代の問題だと思います。そうした課題に取り組むために、まずこの半年間の緊急事態を乗り切るべきだというのが私の基本的な見解でございます。そしてそういうふうに考えますと、この法案で先ほどから私が心配を申し上げておりますのは、非常に硬直化した市場構造ができ上がる、市場構造が硬直化すれば、これは産業構造は転換できないということなんです。そういう長期の課題に対して、文字どおり逆行するような結果を後々生み落とすその第一歩になるのではないかという点が私の最も心配な点でございます。そういう点からも、先ほどから申しましたように恒久的な、そして全部に広げていく、カルテルができれば現状維持になるのはもうわかりきっていることなんですから、そういう体制をいまつくることはこの根本課題に逆行するというのが私の懸念でございます。
  75. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 終わります。
  76. 平林剛

    平林委員長 和田耕作君。
  77. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、民社党の和田耕作でございます。  ゆうべの委員会でも申し上げたのですけれども、田中総理の事態現状認識はきわめて楽観的だ、驚くべき楽観的だという感じを私は持って、現状認識について政府はどう考えておるかということをまっ先に御質問申し上げたのですが、きょう長洲先生からその問題について、きびしい深刻な事態、ここの三月、半年が勝負だという御意見を承ったのですけれども、私も同じような感じを持つわけですけれども参考人の先生方で、いやそれはちょっとひど過ぎる、もうちょっと余裕を見たほうがいいじゃないかというふうにお考えになる先生おられるでしょうか。おられたら、ちょっと御意見言ってください。——おられないようでございますから、やはり事態は非常に深刻だというふうに考えておられると思います。その上、私、長洲先生とはちょっと感じが違う点があるのですけれども、深刻であればある段階で、やはり最小限度のこの二つの法案に盛られておるような措置というものは、ある程度必要だという感じを私は持っておるのです。しかし、まあ標準価格の問題にしたっていろいろな問題にしたって、行き過ぎ、つまり悪い、マイナス面が出る面が非常に多いのですから、これはもう厳重にチェックしていくというような心がまえでこの法案に対処したほうがいいのじゃないか、先ほど天池さんはそういうような形の御意見だったと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。そういう態度は間違いでしょうか。ひとつ特に三人の学者の先生方からお伺いしたいと思います。
  78. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 和田先生の御意見には全く私は賛成でございまして、最初に申し上げたときも、緊急事態としてある程度やむを得ぬということをはっきり申し上げております。ただ、これは長期化しては困るということで、できるだけ短期に片づけるためには総需要政策の面でもきついことをやらなければいかぬ、こういうことでございます。
  79. 長洲一二

    長洲参考人 私も、先ほどから申しておりますように、できるだけしぼった少数品目についてやるということは当面やむを得ないかと思います。ただ、この法案のようなやり方でないいろいろなやり方がある、そのほうが禍根を残さないだろうということを強調したいと思います。  そして、なおあわせて先ほどから強調していることでございますけれども、この委員会はこの法案審議しているわけですから、この法案が中心になるのは当然かと思いますが、しかし当面、もしやるとしたらもっとほかにやることはたくさんあるのじゃないか、そちらのほうが主力じゃないかという感じがいたします。たとえば私は、年内に今年度の予算について公共事業費は再繰り延べするあるいはたな上げする、そういう方針とかあるいは金利を大幅に引き上げる、私はできれば二けた台ということを考えてもいいのじゃないかと思いますが、そういう姿勢がばっと出ることが、こういう法案が悪循環におちいらないで済む基礎前提を、空気をつくり上げる、そちらのほうに主力を置いて考えたほうが、かえって国民生活は安定するのではないかというのが私の感じでございます。そういう意味で、この法案に多少ネガティブな印象を皆さんにお与えしているのかもしれないと思っております。
  80. 岩尾裕純

    岩尾参考人 私も二点だけお答えいたします。  一点は、この法案だけではこれはとてもだめなんで、たとえば先ほど申し上げましたように、独禁法を強化しましてカルテルや寡占価格を取り締まるというようなことを一そう強めていただきたいし、それからとにかく物価上昇を、この非常事態をストップするために、一たんおきめになったことでありますけれども、国会の権限でも一度公共料金を当分の間たな上げするという姿勢があることが一番私は必要だと思っておりますし、また投機資金になるような性質の金融政策をとるべきじゃない、改めていかなければならぬといろことについては強く主張しております。  しかし、この法案自体についていいますと、これは和田代議士がおっしゃっているように、私も非常に不安感を持っております。これはいわば一歩誤ればたいへんないわゆる統制経済になる可能性がございます。それでやりよういかんによっては、ほんとうに国民が安心して納得できて政府に協力する態勢にもなります。そのかぎをどうすればいいのかというのを、私は民主、公開の原則をどうかひとつお考えになっていただきたいということをお願いしたわけでございます。それがなかった場合には、御心配のように、たとえ時限立法にいたしましても、結果が積み上げられていきましたら、たいへんないわば戦時統制経済みたいになったらどうなるかということを心配しているわけです。その点では繰り返し私の意見を申し上げておきます。  以上でございます。
  81. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 よくわかりました。  いまの標準価格の問題について私きのうもこういう意見を申し上げたのですけれども、十一月二十九日にNHKで田中総理がこの法案に触れまして、標準価格について、たとえばこういうことをやればいいじゃないかという例として、四十八年の一月から十月までの価格の平均を基準にして標準価格を設定すればいいじゃないか、これを役所に指示しておるのだというようなあれがありました。その後、ゆうべ経済企画庁長官にそれをただしますと、一向そのことを御承知ない。つまり田中総理はあれは思いつきであの場で言ったのじゃないかと私は思うのです。つまり標準価格の決定というのは原価あるいは適正利潤その他等々なかなかめんどうなものが、要素が入っているのですけれども、これを一々やったらなかなかまともにできるものじゃない。また事実できるものじゃない。やはり客観的な一つのいままであった事実を、こういう法律ができるからといってかけ込みでもって値上げしたなどということが入らない過去のある一定期間をとって、それだけじゃいかぬでしょう、いろいろなことがあるでしょうから考えるとして、それを基準にして標準価格をきめるというような考え方、これは私は一理があると思うのだけれども、いかがでしょう。参考人方々一言ずつ御意見があればお伺いしたい。
  82. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 実際に標準価格をきめる場合に、やはりそういうふうに過去の実績をもとにしていくということにならざるを得ないのじゃないかと私は思っております。ただそれが、過去の一−十月の金額がはたして妥当であったかどうか、やはり洗い直す必要があると思います。これは非常にたてまえ論になりますけれども、やはり一方では厳密な原価計算というものをできるだけやるようにしながら、他方においては実績というものを尊重して、その上でかね合いをはかっていく。したがって、理論的にいえばいろいろ問題が出てくるかもしれませんけれども、やはりそこは常識というものはおのずから出てくるのじゃないか。その意味において常識をあまり逸脱しないようなものになれば国民的コンセンサスも得られるだろうというふうに考えております。
  83. 長洲一二

    長洲参考人 私は、現に上がっておりますから、何年と田中さんはおっしゃったのか……。(和田(耕)委員「四十八年一月から十月」と呼ぶ)ことしの一月から十月ですか、その辺は目安になると思いますが、しかしそれで押し切ろうったってどうにもならないと思います。結局、事実上は現在アップした時点できめる以外には、結果的にはないと思うのです。  それから、その場合にどういう品目をお考えになっていらっしゃるのかわかりませんが、よく言われますように、たとえばトイレットペーパーだけで二百種類あるそうですから、そしてトイレットペーパーというのは紙の生産の二%だそうでございますから、それを人為的に低く押えれば、トイレットペーパー供給が減るだけでございます。業者はほかの紙をつくります。したがって、トイレットペーパーをやろうと思ったら、必ずほかの紙も全部やらなければ価格は守られない。事実上、物が出てこないだけということになるだろうと思うのです。先ほどから私、強調しておりますのは、トイレットペーパーをやったら紙の全部をやるということになるということです。そういうことがはたして先生方もできるとお考えになっていらっしゃるのかどうか、その点を非常に私は懸念しているわけでございます。
  84. 岩尾裕純

    岩尾参考人 たいへん実はむずかしい問題を出されまして困っておるわけでございます。和田代議士の御意見、良識的な一つ意見でございますし、実務的には確かに一つの目安になるわけでございます。そしてまた実際に動けるのか、やれるのかやれないのかということになりますと、現在の価格を基準にするということもまた当然考えられるわけでございます。しかし他方では、これは新聞にたくさん出ておりますように、今期なり前期の大会社の決算表を、公表された利益をごらんになってもわかりますように、非常にインフレーションの過程で巨大な利益があがっておるわけでございます。これはまたある意味ではこれを認めるのかということになりますので、これは一つ参考になることはもちろんでございます、しかし慎重な上にも慎重に検討していただきませんと、かえって納得できない、反論も出てくるかと思いますので、あえて一言申し上げます。
  85. 大木正吾

    大木参考人 私は、これはもう通産官僚の勘でやるしかないだろうということだと思うのです。ですから、もしほんとうに一〇〇%パーフェクトな価格の決定ができないとすれば、先ほど何人かの方の御意見もあるのですが、結果的には原価の公開とか、あるいは元売り、卸売りあるいは小売りですね、そういった面の各層の商行為に及ぶ。生産工場でつくる場合には原材料、人件費、金利、減価償却、ずっと見たり、さらには卸売りに行く場合に、元売りの場合に一体どの程度のマージンを取るのが妥当かどうかとか、流通過程における輸送経費がどうなるかとか、そういったことが国民全体に公開されていくというシステムこそが大事であって、神さまでなければ私はこのことはできないと思いますから、大体標準価格ということ自身が、主管大臣、あるいは実際には業者がバックにおってつくっていく、こういう形はとにかくやめてもらいたい、こういうことなんですね。そういうふうにお願いしたいのです。
  86. 天池清次

    天池参考人 価格決定の現在の機能というのが全く果たされていないというのが現状だろうと思うのです。その原因というのは、現在の自由主義経済というものがまさに行き詰まっているということであろうと思うわけです。ですから、これをほうっておけばうまくいくかということになると、行き詰まっている自由主義経済ですから、このままではうまくいかない。それを公益的な立場からどう介入をしていくのかという精神が、一つはこの法の中で非常に重要なことであろう。ですから、標準価格の決定にあたっても、その自由主義経済の悪いところが非常に多くあらわれてくる。たとえばかけ込み値上げをする。そういうことをしない者は損をして、かけ込み値上げをした者が得をするというような標準価格の決定は、やはりこの法の運用というものを非常に誤ったものにするのではないか。やはりもっと社会主義の上に立ってこの標準価格を決定するということが、私は非常に大事な問題であろうと思っておりますので、あまりそういう弊害にとらわれないきめ方を強く希望いたします。
  87. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私も、そういうふうな一つのものをきめた上でも、その価格の中にコストが何ぼ、適正利潤が何ぼ、その他が何ぼということは公表すべきである。何となれば、国民をそれによって強制的に縛る価格ですからということをゆうべも強調しておきましたが、こういう問題はひとつできるだけ国民が納得のいくような形できめていかなければならないと考えております。  そこでひとつ、私ほんとうにわからない問題でございましてお尋ねしたいのですけれども、総需要の抑制ということは何よりも先に徹底してやる必要があるということは、これは各党とも一致した見解、そうしてまたいろんな世論からいっても一致した見解だと思います。これをやれればいいのですけれども、なかなかやれない、効果のあるような形に進んでいかないというのが先進諸国の共通の一つの実情じゃないかと思います。  そこで、これがやれない、あるいは非常に中途はんぱな場合に起こってくるのが所得政策ということになるのが通例のように思うのですけれども、この問題は、日本だけが実質的な所得政策への発展を押えることができるかどうか。現在ドイツはまだやってないようですけれども、そのほかの国は多かれ少なかれそういう道を歩んでいる。フランス、イタリアでは労働賃金に直接手をかけるということはずっと押えておるようですけれども、アメリカ、イギリスはそれをやっている。労働賃金の問題について手をつけることをおくらしていくということは、日本でも非常に必要だと思うのですけれども、そういうことを考慮した上で、つまりこの事態を総需要の抑制ということだけで押え込むことができるかどうかという問題ですね。総需要の抑制といいましても、総需要の内容を見れば、五二、三%は国民の個々の需要だ、あと政府需要が二〇とか、産業の需要が二〇とか輸出が一〇というような内訳になっておる。先ほど大木さんは、外国では国民が六〇%以上になっているというお話もあったのですけれども、そういう構成ですから、事態がいよいよ窮迫してくれば、五〇%以上に及ぶ国民需要に入っていかざるを得ない要素を持っておるのじゃないか。そうなれば、つまりいまの所得政策的なものが登場してくる余地も出てくるのじゃないか。そういうことになった場合に、できるだけ国民生活に負担、しわ寄せがいかないような形を考慮するということが、これは国によって違うと思いますけれども、そういう考慮がはたして絶対にいけないものかどうか。このことについて、労働界の巨頭のお二人の御意見は大体わかっておりますけれども学者方々の御意見をひとつお伺いしたいと思います。
  88. 鈴木幸夫

    鈴木参考人 学者じゃございませんけれども、それに準じた者ということで最初にお答えさしていただきます。  いまのインフレ性格というものは、はっきり申し上げて非常に需要超過部分が大きいわけで、コストプッシュ部分というのはきわめて微々たるものである。同時に、労働の企業内における分配率というものは相対的に低いということは事実でございます。したがって現在の時点においては所得政策議論するということは非常に早計であり、危険であるということははっきりしているわけでございます。しかしながら、来年以降の問題ということになると、私はここで非常に微妙な発言をせざるを得ないのでございますけれども、現在の需要超過部分というのは、今日進められている財政なり金融なり、あるいはその他の引き締め措置、総需要調整によってかなり押えることはできるであろう。来年の二、三月ごろになればおそらく中間財についてはかなり在庫のはき出しも行なわれるだろう、しかし最終需要あるいは原材料、これは、原材料のほうは海外価格との関連がございます。最終需要のほうは、これは個人消費との関連も非常に大きいということで、価格の面で、全体として中間財とか、そういったようなものについては若干鈍化する可能性はありますけれども、しかし問題は、来年後半の問題でございまして、来年の賃金が大体どのくらいなら適正かどうかという議論をここですることは非常に危険だとは思いますけれども、かりに三割をこすような賃上げがあり、あるいはそれをさらに上回るというふうに賃上げがもしあったといたしますと、それは当然コストプッシュの要因としてかなり警戒すべき事態にはなるであろう。もちろん、そこで所得政策論議を展開するのがいいかどうかということは別な問題でございまして、その場合、他の所得とのバランス、金利その他を含めまして、全体の所得なり、インカムズとのバランスにおいて賃金をどう考えるかという議論が当然出てこざるを得ない。それはおそらく来年というよりも、再来年の春闘あたりにかなり詰めなければならない問題として出てくるのではないか。  私はここで、所得政策がいいとか悪いとかという問題ではなくて、賃金問題というものを無視して将来の物価は語れないであろう。これは先進諸国におきましても、物価問題というのはコストプッシュの要因というのが非常に大きい。それは先進国一つの体質でもあるわけでございます。したがって、そういう面からの発想としてはやはり賃金を考えなければならないのだが、それを考える場合に、まず日本的条件というものを考えなければならない。その日本的条件というのは何かというと、現在この時点においてもすでに問題になっているように、インフレの中で非常に大きな所得格差が起こっている。キャピタルゲインの問題だとか、あるいは税制上のトーゴーサンとかクロヨンの問題だとか、あるいは社会保障が非常におくれている問題だとかいう問題がございます。したがって、労働者だけにしわを寄せるという考え方はおかしいのであって、全体として労働者とそれから農民所得なりあるいは地主の所得なり、あるいは法人所得個人所得の配分なりというふうなことを考えながら議論しなければならないということになりますと、まずそういった面での分配の是正策を先行させながら、引き締めから将来いろいろな、来年の春以降の景気政策の動かし方の中において、やはり分配政策という観点を失わないようにしていって、下にそういう土台をつくっていくことによって、賃金というものをどう考えたらいいかという議論に入っていくべきじゃないか。最初に賃金という議論に来年春あたりから入るということは、やはり危険であろうと私は考えております。
  89. 長洲一二

    長洲参考人 私は、所得政策というのはみんながその気にならなければまず効果がない、ただ混乱が起きるだけだと思います。だからそういう点で、いい、悪いより何より、いまやったってだれも納得しないのじゃないでしょうか。だから、まずこのインフレムードを冷却させること。そういうことを十分やらずに、すぐ所得政策議論へいく、何でも押えよう、統制しよう、こういう発想に流れるのがいま一番危険なんだ、安易だというふうに私は思います。  それから、長期的に考えましても、日本個人消費は欧米に比べればまだ約二、三割低いわけです、レーショは。それから労働分配率も御承知のように低いわけですから、何か賃金政策というような意味での所得政策というのは、これは有効でないだけではなくて、妥当でもないと私は思います。ただ心配は、来年三〇%賃金が上がる、しかし半年でけし飛ぶ、もう一ぺん三〇%の臨時の賃上げを組合がやらざるを得ない、間違えばこういう悪循環にはまり込んでいくと思います。そうなると、あれよあれよという間に所得政策の問題が正面にクローズアップされてくる、そういうことがむしろ危険だというふうに思います。  それから、総需要抑制については先生方も大体意見は一致しておる、わかったというふうにおっしゃいましたけれども、しかし私から言わせますと、さしあたりはコストプッシュよりデマンドプルのこの部分が中心なんだから、これを除きなさい、そういうことがもし意見一致したならばやることはたくさんあるのじゃないか。  先ほど申しましたように、来年一−三月が山場だとすれば、十二月に先ほど申しましたような公共事業の再繰り延べとか、あるいは金利アップとか預金者金利アップとか、こういうようなことをまずすぱっとやって、断固としてインフレは食いとめるという姿勢がまず打ち出される、このことがやはり基本ではないか。そして一−三月の間に、来年の予算の問題につきまして四−六月向けの準備、第二段のことをやっていただく。来年はかなり機動的にやりませんと、相当締めなければだめですし、締め過ぎれば、物価暴騰のあとに来るのは崩落なだれですから、財政でも金融でも非常に機動的な運営をしなければならないと思いますので、予算の組み方なんかも、もういままでとは発想を変えた組み方が絶対必要ではないか。  こういう点で、私に言わせていただきますと、意見の御一致がございましたらば具体的にやることがまだ幾つもある。それが十分行なわれていない点がいまむしろ一番問題ではないかというふうに感じておるわけでございます。
  90. 岩尾裕純

    岩尾参考人 簡単に申し上げます。  現在所得政策の問題を検討すべき時期でもないと思いますし、実質的に所得政策を検討しますれば、これは賃金統制ということに落ちつかざるを得ないわけでございますので、これは私としては反対でございます。所得政策ではなくて、いま必要なのは、先ほど申し上げましたような、国民のほんとうの意味の参加を一そう促進させていく、そして納得のいく政治経済政策の実施ということが必要であろうかと思いますので、そういう意味で、私は現在所得政策の問題についてははっきり反対でございます。
  91. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 どうもありがとうございました。貴重な御教示を賜わりまして、心から感謝したいと思います。  最後に一言。私、市場原理、自由競争というものへの期待を持っておられる方がまだ多いような感じがするのですけれども、これにあまり期待をかけると、打つ手打つ手が何か損をするような感じがございますので、そういう点もひとつ今後ともお教えを賜わりたいと思います。ありがとうございました。
  92. 平林剛

    平林委員長 これにて本日の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、お忙しいところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。ここに委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)  午後五時三十分に再開することとし、この際、休憩をいたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後七時三十六分開議
  93. 平林剛

    平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民生活安定緊急措置法案について質疑を行ないます。井岡大治君。
  94. 井岡大治

    ○井岡委員 午前中、この法案審議のために参考人方々に来ていただいて、いろいろ御意見を伺ったわけですが、一口で申しますと、今日の状態はたいへんな状態だ。総理はいろいろインフレでない、こういうように申されておりましたけれども参考人方々の御意見を伺ってみますと、インフレというよりは、むしろ悪性インフレへの一歩手前だ、こういうことまで申されておったわけでございます。  したがって、何らかの緊急の措置を講じなければならぬ、こういうことも言われておりますが、しかし、この法案全体をながめてみますと、最初は私はいわゆる生活必需品、こういうように考えておったわけでございますけれども、よく読んでみますと、そうでなくて、ここに書いてありますように、「国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資」こうなってまいりますと、これはたいへんな法律だということがわかってまいったわけでございます。したがって、これはある種の統制をかけるわけですから、もし誤りますと一波は万波を呼ぶ、こういう結果になることは、われわれ戦時中あるいは戦後のあの混乱の状態等を経験をいたしました者としては心配せざるを得ないわけなんです。したがって、この法案を施行するにあたっては、国民のコンセンサスを得なければいけないのじゃないか、こういうように考えます。  そこで、私はまずこの法案について、簡単なことではございますけれども、恒久法なのか、あるいは時限立法の臨時措置なのか、この点をお伺いいたしたいと思います。そうして、なぜこれが緊急という名前をつけられたのか、私はここのところが非常にあやふやで、そうして法案それ自体を何かつくったらいいのだ、こういうような感がして、しかたがないのです。ですから、この点について、まずお伺いをいたしたいと思います。
  95. 内田常雄

    ○内田国務大臣 井岡さんの考えられますこと、私にもよくわかるものでございます。それで私がこういう御答弁を申し上げるわけでございますが、この法律の第一条には、インフレというようなことば、けさの参考人のいろいろな方から、お述べになりましたような中にございましたそのことばは入っていないわけでございますが、しかしもう第一条の第一行から、「物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、」この法律をつくるのだ、こう書いてありますし、しかもこの法律が国会で御決定をいただくと、その公布をしないでしばらくしまっておいて、公布の時期は別に政令で定めるとかいうものではございませんで、附則の一番初めにございますように、公布と同時に施行する、こういうたてまえであり、そういう考えでありますから、したがって私は、いまの事態は、インフレということばは使いませんけれども物価の高騰その他わが国経済の異常な事態にある、こういうことをみずから判断して対処をいたすということを、まず申し上げます。  それから、この法律は、いわゆる限時法の形にはなっておりません。法律全体としましては、いわゆる限時法ではございませんが、これはお読みくださいますと、あちこちに出てまいりますが、ある事態が発生したときに、たとえば、具体的には、物価全体が高騰しているような今日の異常な事態の中で、ある特定物品の価格が、個別の価格が著しく上昇をしたり、上昇をするおそれがあるときに、その物品を指定物品として指定したり、それについて遅滞なく標準価格をつくりますが、しかし、その著しい上昇というような事態がなくなって安定をした場合には、直ちにこれは指定物資からはずす、こういうような仕組みになっておりまするし、また、それぞれの段階がございまして、それぞれの段階手段はそういう事態に応じて発動し、またその事態の解消とともにそれを引っ込める、こういうことになっておりますから、総論といいますか、全体は恒久立法でありながら、各論はおっしゃるような時限措置を組み入れておる、こういうような形をとっておるわけでございます。  それから、三番目のお説の、この法律をほんとうに動かすためには国民の支持と理解と協力、他のことばで言いますと、国民的コンセンサスがなければ、幾らりっぱな法律だと私どもが申して御賛成をいただいても、動かす段になりますと、なかなかこれは国民とともに動かないということはおっしゃるとおりでございますから、その辺のことにつきましては、特別の審議会をつくるかつくらぬかという問題もございましょうけれども、私は、右申しましたような心がまえをもってこの法律の執行に私自身も当たり、また各主務大臣にも当たっていただけますように努力をいたす所存でございます。
  96. 井岡大治

    ○井岡委員 いまの御説明だと、私は非常にまやかしいものが出てくるのじゃないか、こう思うのです。ということは、これは法律自体としては恒久的なものであるけれども、しかしものによっては臨時的なものだ、こういうお説ですが、それだったら私は、これは臨時措置法にしておいたほうがより明確だと思うのです。そうでないと、これは大臣がおやりになるということではありません。あるいはまた、いまの内閣がおやりになるというのではありません。しかし、恒久立法ですから、これをこのまま置いておく、こういうことになって、もし違った人が出てきて、これを活用しようと思えば、先ほども申し上げましたように、国民生活関連がある——あとで聞きますが、国民生活関連があるといったら、すべてのものが全部関連があるわけです。あるいは国民経済に重要な関係がある、こういうことになりますと、これまた全体に及ぶわけですから、私は、臨時措置法にしておいたほうがいい、こういうように考えるのですが、この点もう一度お伺いいたします。
  97. 内田常雄

    ○内田国務大臣 法律のたてまえにつきましては、私が先ほど申し述べたとおりでございまして、絶対的恒久法ではない、まあそういうことばがありますかどうか、相対的限時法、こういうようなたてまえでございます。これについては私どもが立案する過程において検討はいたしましたが、そのほうがいいと思うことも、これは政府側の私どものほうの考えだけでございまして、決して井岡さんのお考えを私が干渉するつもりはございませんけれども、いろいろな措置をきめましても、この法律が限時法ですと、その措置が有効な結果を生じない際に、その法律の満期が来てしまったり、また悪い場合には、この法律によるいろいろな手段が講ぜられる間は、これはそれらの品物が姿を消してしまったりして、法律がなくなったときに、のこのこ出てくるというような、そんな妙なことはございません。  私どもそれは限時法であろうと何であろうと、大いに管理監督をするわけでありますが、仕組みとしてはそんなようなことも考えられますので、いま申しますような相対的限時法、レラティブな限時法、こういう考えをとったわけでございまして、これらの点につきましては、いま申しますように、私がそのほうがいいと思いましたけれども、井岡さんのお考えは、私はそれなりに尊重をいたすものでございます。
  98. 井岡大治

    ○井岡委員 私は、大臣少しはき違えておいでになるのじゃないか、こう思うのです。それだったら租税特別措置法、あの法律は時限立法だったはずです。最初は五年だったはずです。それがいまもって延々として続いているわけなんです。そういう点を考えると、これがなくなったときに、のこのことタケノコみたいに芽を吹いてきたら困るのだというお考えというのは、私は、少しものをせっかちに考えておいでになるのじゃないのか、こう思うのです。  ですから、私なら私の意見に対して尊重しますということであれば、やはりこれは臨時措置法にしておいたほうがより的確に国民の前に、私たちは長いこと統制をやらないのですよ、長いことやる意思はないのですよ、ですから臨時にしておるのですよ、こう言ったほうが、よりコンセンサスを得る私は手段になるのではないのか、こういうように思うのですが、この点いかがです。
  99. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これどうも私がことばがへたでして、おまえの言うことはさっぱりわからぬと、しばしばおしかりを受けるゆえんでございましょうが、井岡さんのそういうお考えはよくわかりますと、こういう私のことばで、いま私が、それならもう一ぺん、引っ込めて、そのように直して出し直しますと、こういうことを申し上げるわけにはまいらぬわけでございます。  それから、これは私の誤解でなければ、租税特別措置法というのは、その法律自身は時限法ではなしに、その中に時限的な事項のいろいろな特別措置を種々入れたり、またその必要がなければ消したり、こういう仕組みになっておったと思いますので、もし租税特別措置法の体系についての、私のいま申したことに間違いがなければ、やや似たようなところがある。その恒久法の形はとりながら、中身の事項については、必要に応じて時限的に引っ込める、こういうところが似ているようにも思いますが、これはまあ私は決して自説をあなたに押しつけて、これ以上申し上げませんので、御了承いただきたいと思います。
  100. 井岡大治

    ○井岡委員 まあ提案者ですから、かりに私の意見に賛成されたとしても、これをこう変えますといえば、これはそれならもう一ぺん洗い直せ、こういうことになったらたいへんだ、こういう用心からおっしゃっておいでになるのだと思いますから、私は、それはそれなりに私のほうも理解します。しかし、私たちはそのように考えておりますので、これは審議の過程で十分織り込んだ処置をとりたい、こう考えます。そのときに、政府のほうからそれじゃ困るんだ、こうやられたんでは、私の意見に理解をしていると言いながら、理解をしていないことになりますから、その点だめを押しておきます。
  101. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それはまあ私からお答え申し上げないほうがいいので、これは法律を国会に出しました以上は、もう国会でいろいろな御論議、御検討によって処理をされる性質のものであると思います。しかし、政府には政府考え方があって出したものでございますから、おまえの考えへぼだ、こうおっしゃられるわけでございますけれども、まあ政府政府なりの考え方を持って出したということも、ひとつお含みおきいただきたいと思います。
  102. 井岡大治

    ○井岡委員 私がいま申し上げておるのは、国会で政府が出した法案というものは一言一句変えちゃいかないのだという思想、これが従来あったわけなんです。ですから、いわゆる緊急動議を出して、質疑を打ち切りにして、ぽんと通してしまう、こういうなにがあったわけです。私は、大臣が自民党の諸君にそのような指示をなさるとは思っておりませんよ、思ってはおりませんけれども、そういう例を私はしばしばなにしてきたわけです。国会は国民の最高機関であり、コンセンサスを得る場なんです。ですから、私は政府は固執をなさらないように、こういうことだけをはっきり申し上げておかないと、私たちここで幾ら審議をしても、最後は時間がきたら、これでしまい、こういうことになるわけです。  私たちは、この法律について多くの意見を持っているわけです。したがって、まずもってこの法律それ自体について緊急にしたほうがいいんじゃないか。ここから明らかにしておかないと、あなたのほうでそれはいかぬのだ、こうやられると幾らここで審議をしたってだめなんです。このことを明らかに申し上げておきたい、こういうことですから、御答弁は要りません。  そこで、私は先ほどから申しておりますように、「国民生活」とそれから「国民経済上」ということが使ってある限り——意地の悪い質問しますよ。意地の悪い質問しますが、じゃ、国民生活関係のない、それから国民経済に重要な関係がない、こういうものはどれですか。
  103. 小島英敏

    ○小島政府委員 第一条にございます「国民生活との関連性が高い物資」というのが、この法律における生活関連物資でございます。生活関連物資といいますと、おっしゃるように何でもかんでも生活関連するということになりますけれども、この法律に「生活関連物資」といいますのは、国民生活との関連性が高い物資ということになりますので、やはり必需品を中心にいたしまして、直接消費財だけでなくて、そういう必需品だけでなくて、必需品の原料になるような生産財等も含めているわけでございまして、これは現在の買占め防止法の概念と同じでございます。いま先生の御質問の、抜けるものはどんなものかという御質問でございますが、たとえばゴルフ用具などというのは、この法律にいう関連性の高い物資とはいえないのではないかというふうに思います。
  104. 井岡大治

    ○井岡委員 いまの局長のお話ですが、抜けるのはごくわずかですよ。例にとられたゴルフあるいは宝石、こういうことぐらい、私は一生懸命考えてみたんですが、あまりないわけなんです。「高い」と書いてあるから生活必需品だ、こういうような規定にはならぬと私は思うのです。ということは、たとえばきのう同僚の松浦君が、経団連の植村会長が、このようになっておるので、これで業界と話をするから、何だカルテルは十分にやれるじゃないか、いわゆるわれわれが協議をして値段をきめることはできるじゃないか、こういった意味のことを質問をしたわけですが、そのときに大臣は、経団連がどうお考えになろうとも、私たちはそんなことは知ったことじゃないのだ、こういう御答弁がございました。けれども、やはり産業に、経済に重要な物資、こういうことになりますと、そのにおいがしてならないわけです。したがって、ここにカルテル行為が行なわれる、私はこういうように理解をせざるを得ないのです。この点いかがです。
  105. 小島英敏

    ○小島政府委員 新聞等によりますと、確かに初めの段階でそういうような考え方業界その他にあったように聞いておりますけれども、この法律をごらんいただきますと明らかなように、覚え書きというものも公取との間に取りかわされまして、標準価格というようなものを実質的に業界の間できめてしまうというようなことは、これは絶対この法律では認めないということでございます。したがいまして、大臣も言われましたように、財界の方がどういうことを言われましょうとも、私どもは一切そういうことは考えていないということは、はっきり申し上げられると思います。
  106. 井岡大治

    ○井岡委員 私たち物資の問題を長い間扱ってきました。管理価格の問題、寡占価格の問題、その際にも常に政府は、いま小島局長が申されたようなことを言って、決してわれわれは財界なりあるいは業者の束縛を受けるもんじゃない、そういうことはやらさない、こういうように言われてきたわけですが、しかし二十何年間の歴史を振り返ってみますと、そういう例がたくさんあるわけですね。したがって、この法案を、私は先ほども申し上げましたように、単に緊急ということになりますと、鉄鋼が足らなくなった、いま鉄鋼が足らないといっている。これは一昨年の暮れから減産政策をとらしたために鉄鋼が足らなくなってきた。こういうことで国民経済に重大な影響があるということで、鉄鋼が生活必需物資だといわれるけれども、わが国の経済に重大な影響ということになると、鉄鋼もこの中に入っている、こういうように見ても私は見過ぎでない、こう思うのです。この点いかがです。
  107. 小島英敏

    ○小島政府委員 「国民生活との関連性が高い物資」という概念の中には鉄鋼は入りませんけれども、「及び国民経済上重要な物資」という概念の中には鉄鋼等は当然含めて考えております。
  108. 井岡大治

    ○井岡委員 だから私は言っているわけです。そこで問題は、通産の森下次官お見えになっていますから、きのうの御答弁の中でちょっと気にかかることがあるわけです。それは値段をきめるのにあたって、業界意見を聞きますと、こういうように言っておいでになったわけです。少なくとも国民経済に重要な影響を持ったり、あるいは国民生活に重大な関連を持つようなものを業界に聞く、こういうようなことになりますと、だれだって自分で損をして物を出そうという気にはならないわけですから、適当な方法でものを言うだろうと思います。特に原価計算なんてものは——これはきょうの先生の話じゃありませんけれども、原価計算のやり方はいろいろあって、諸説いろいろある。わしの知っているだけでも百ぐらいのやり方があるのだという先生もおいででございました。こうなると私はたいへんだ、こう思うのです。この点について、もう一度次官のお考えと申しますか、通産省の姿勢と申しますか、お聞かせをいただきたい、こう思うのです。
  109. 森下元晴

    ○森下政府委員 業界との癒着の問題並びにいわゆるミイラ取りがミイラになるのじゃなかろうか、業界主導型の価格決定とか、また意思決定になるのじゃなかろうかと、非常にありがたいおことばをいただいたわけでございますけれども、きのうの私の答弁も少し寸足らずがございました。業界意見を聞くというと、これは非常に語弊でございまして、何か業界の意思によって、すべてきめてしまうというような誤解を招くおそれがあると思います。そうじゃなしに、いわゆるミイラ取りがミイラにならないように、業界主導型のきめ方じゃなしに、自主的にこれをきめる、これが本心でございまして、誤解があった点は、ひとつここで釈明いたしまして、答弁とさせていただきたいと思うわけでございます。
  110. 井岡大治

    ○井岡委員 私は別に業界主導型、そういう政府ではないだろうと思うのです。ただ私たちが一番心配せざるを得ないのは、たとえば輸入業者、いわゆる輸入商品などは、現に肉の問題にいたしましても、これは農林省が悪いのでしょうけれども、豚肉を輸入した、損をしたのだ。実はそうじゃなくて安く買ってきているのだ。こういうことがずっとあらわれてくるわけですね。そういたしますと、業界意見を聞くというよりは、むしろ業界を指導するのだ、指導型にやるのだ、こういうことであれば、われわれとしてはこういう方針でいく。こういうようにしていかないと、向こうさん、なかなか海千山千ですから、私たちが法案の字句をいじくっている以上に、あの人たちはお金をもうけることについては、われわれより上なんですから、そこらの問題を考えていくべきではないのか、こういうように思うのですが、いかがです。
  111. 森下元晴

    ○森下政府委員 まことにおっしゃるとおりでございまして、業界に巻き込まれないように心して、自主的に決定をしていくようにしたいと思っております。
  112. 井岡大治

    ○井岡委員 そこで、私は先ほどから申し上げますように、この際ですから、きょう大臣、申し上げないけれども、私たちきょうは非常にいい参考人意見を聞いたわけです。この際政治に国民の信頼を取り戻さないとたいへんなことになる、こういうお話でした。一人のある参考人は、一月から三月までだ、あるいは四月から六月までだ、ここで勝負をしない限り、これはもう悪性インフレというよりはむちゃくちゃになってしまう、こういう御意見すらあったわけです。  したがって私は、このいまの問題、今後の、この法律を制定された後政府がとるべき処置というものは、重大な決意でもってやらないといかないのじゃないか、こう思うのです。この前投機防止法をつくったけれども、あれは発動しましたか。これは局長に聞きますけれども、ほとんど発動しなかった、こういうように考えていいんじゃないですか。この点いかがです。
  113. 小島英敏

    ○小島政府委員 立ち入り検査に関してだけ申しますと、確かに一件しか発動していないわけでございますけれども、あの法律は、当時もお話し申し上げましたように、行政指導を補完すべき法律でございまして、立ち入り検査前に任意調査というものをみっちりやるというところに非常に大きな意味があったわけでございます。  それから、たとえば大豆などが法律施行前においては、実態はそう悪くないのに、ああいうふうに非常に暴騰したわけでございますけれども、アメリカの輸出禁止というような、実体的には実はことしの初めよりむしろ深刻な事態がありましたにもかかわらず、やはりああいう経験がものをいって、法律ももちろん間接的に効果があったと思いますが、今度の夏場の場合はあまり暴騰しないで済んだということが言えるわけでございまして、立ち入り検査をするばかりが法律の効果というふうには私どもは考えていないわけでございます。  ただ何といいましても価格調査官が兼務で、ふだんの仕事のほかに二枚看板であるために、やはり立ち入り検査をする場合に非常にウイークであるということは、これは私ども反省しなければいけない点であるというふうに思っております。
  114. 井岡大治

    ○井岡委員 私は済んだことを繰り返してそれを追及しようとは思いませんよ、局長。しかしあの審議をした際に、立ち入り検査と公表がある、これで十分やれるのだ、こういうことであったはずです。最後の日に懲罰問題が起こりました。総理も同じことを言われたのです。そうだとすると、人が兼務であったから立ち入り検査ができなかったのだ、これでは私は済ませられないと思うのです。ここらの問題が、法律を審議するときには、いわゆるこういうように質問をしてくるんではないのか、こういう想定のもとにちゃんと頭で組んでおって、そうして答弁をされるものですから、ついわれわれはごまかされて通していく、そこに問題があるわけなんです。ですから、私はいまの問題について、立ち入り検査は一件だけだったとこう申しますけれども、またいろいろなことをやり百件やったと言われるのですが、主務官庁で、どれとどれとどれをおやりになったか、これを総括して知っておいでになりますか。
  115. 小島英敏

    ○小島政府委員 立ち入り検査以外にやはり三条調査といたしまして、トイレットペーパーにしろ、灯油その他の石油製品にしろ、あるいは合成洗剤にしろ、各担当官が相当綿密な調査をやっていることは言うまでもないわけでございまして、そのほかに実は私どものほうにもちょいちょい電話などかかってまいりまして、あるところが非常に売り惜しみをしているというような情報を受けて、その店に対して事情を聞く場合がございます。そういたしますと、どうして企画庁がそういうことを聞くのですかということを言うそうですけれども、これは買占め法の権限に基づいてやっているんだということを言いますと、やはり何もない場合に比べて相手の態度が非常に変わってくるそうでございまして、調査をした結果非常に大きなものを買い占めていたというような事例は遺憾ながら見つかっておりませんけれども、そういう個々のケースで十分やはり法律をバックにした事情聴取というものが、ものをいっているということは無視できないわけでございます。
  116. 井岡大治

    ○井岡委員 調査をされた、あるいは呼びつけて話をされた、しかし残念なことにそうおやりになっても、もとの値段にならないのですね。もとの値段になった、こういう例がありますか、お伺いいたします。
  117. 小島英敏

    ○小島政府委員 やはり非常に買い急ぎその他で暴騰いたしまして、一番高いときの値段に比べますと、その後政府が緊急出荷なんかやったり、あっせんしたりいたしました場合の値段というのは、一番高いときに比べると、確かにそれよりは低い水準にいっております。ただし、現在の騒動が始まる前の水準に比べると、遺憾ながらかなり高いというのが一般的だというふうに思っております。
  118. 井岡大治

    ○井岡委員 したがって、この法律をつくりましても、いろいろ標準価格とか指示価格といっておいでになりますけれども、私は高値価格になる、こういうように思われてしかたがないのです。この点はいかがです。
  119. 小島英敏

    ○小島政府委員 やはりこれは価格のきめ方が非常に重要であると思います。業界からデータをとって作業することは当然でございますけれども、主務官庁が責任と良心にかけて適正な水準をきめていくということがやはり根本であると思います。  灯油の件が新聞で非常に騒がれておりますけれども、もしほんとうに、あれが業界がみんな納得してけっこうでありますというような水準であるならば、設定されたあと、みんな守られているはずなんですね。ところが、新聞紙上に伝えられておりますように、なかなか末端において守られていないケースが多いということは、やはり通産省が、業界がみな納得した上でああいう数字を出したのではないということの一つの証拠ではないかと思います。しかも守らないままで済んでしまっては、これはたいへん困るわけでございまして、いま通産省も末端について強力な指導を続けておりますので、しばらく時間をかしてくれというお話でございますから、その効果を見定めたいと思いますけれども……。
  120. 井岡大治

    ○井岡委員 そうすると私はまたもとへ戻るのですよ。それだと、業界が聞かないんだということになると、逆に業界の聞く値段ということになりはしませんか。そうだとすると、国民生活の安定だといっても、これは価格の安定であって、私は決して生活の安定じゃない、こういわざるを得ないのです。この点いかがです。
  121. 小島英敏

    ○小島政府委員 やたらに低い水準にきめて、業界コスト的にも成り立たないようなものであれば、これはもうそういうものは基本的に守られない水準であると思いますけれども、少なくとも平均的な生産費というようなものをもとにして、いろいろな要素をかみ合わせて、総合判断して標準価格をきめた以上、業界が聞かない部分が一部にありましても、これを行政指導を強力にやり、しかも業界の内部の順守、協力をやらせるということによって守っていこうというのが、この標準価格の趣旨でございますから、御心配のような点は極力ないようにいたしたいというように思っております。
  122. 井岡大治

    ○井岡委員 私は、次に質問しようと思っていたら、もう局長が言いましたから、ついでに言いますが、標準価格を決定する際にその地方の価格を聞く、あるいは通常売られておるような価格参考にする、いろいろあるわけですね。そんなことだったら、私はこれはたいへんだと思うのです。たとえば灯油の問題、三百八十円にいたします、こういうことでございましたけれども、いわゆる配達料と称して公然と四百五十円あるいは五百円とっているじゃないですか。ここに問題があるのです。ですから私は、この法律をなおさらもっと強力なものにするために考えなければいかないと思うのです。  それで私は、もう時間が来ましたから、あまり長いことやれませんので残しますけれども、次に需給の調整等がある、こう書いてあるのですね。「価格及び需給の調整等」これは何をさしているのですか。一条のところです。
  123. 青木慎三

    ○青木政府委員 この法律の「目的」で「需給の調整等」と申しておりますのは、条文で申しますと、十三条の「生産に関する指示等」、十四条も同じことでございますが、十五条以下にございます「輸入に関する指示等」、それから十九条以下にございます「保管に関する指示等」、それから二十一条以下にございます「売渡し、輸送又は保管に関する指示等」、物資の需給に対する措置をきめておることをさしておるわけでございます。
  124. 井岡大治

    ○井岡委員 そういたしますと、この法律の中でいろいろ書いてありますが、需給の問題と関連をして考えて指示価格というのがあるのでしょう。そうと違いますか。
  125. 小島英敏

    ○小島政府委員 指示価格とは直接関係ございません。
  126. 井岡大治

    ○井岡委員 直接関係がないことないじゃないですか。「国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資価格及び需給の調整」これはみなずっと続いているのじゃないですか。一つ一つ分かれているのですか。
  127. 小島英敏

    ○小島政府委員 国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資価格調整及び需給の調整という意味でございます。これに関する緊急措置を定める。したがいまして、価格調整部分と需給調整部分と両方あって、いずれも国民生活との関連性の高い物資及び国民経済上重要な物資というものについて価格調整または需給調整をいたします、そういうことでございます。
  128. 井岡大治

    ○井岡委員 そうすると、やっぱり指示価格関連があるじゃないですか。そうでなければ、ここに書く必要はないと思うのです。  なお、この問題については、委員長、松浦君が関連質問したいと言っていますから……。
  129. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 森下政務次官にちょっと質問したいのです。  政務次官にお尋ねをしますが、いまの井岡委員との発言の中で三百八十円の灯油の問題が出たんです。それが守られないということの議論がいまあったんですが、われわれが知っておる範囲内では、御承知のように三百八十円というのは、九月三十日現在の元売り価格を一万二千八百円で凍結をした、その段階における平均価格というものを出して三百八十円という小売り価格が出ておるわけなんです。あの三百八十円というものを指導価格としてきめた場合に、全体的な価格の構成というものを検討した上で、全体の業界も小売り店もこれで了解してくれておるという前提に立って通産省が指導したわけでしょう。そういう事実はないんですか。ただ勘で、ヤマカンで三百八十円とやったんですか。具体的な根拠をもって三百八十円と指導したわけでしょう。その点についてどうですか。——政務次官に聞いておるんです。
  130. 森下元晴

    ○森下政府委員 いまおっしゃったように九月末現在の取引価格、その価格参考にしておりますけれども、全国に消費モニター制度がございます。この資料もとりまして、データに基づいてきめたわけでございます。ただ問題は、九月末でございますから、あまり家庭用の灯油は使っておらないのです。だから、その価格には、大体九月末の価格プラス将来灯油を使う時期になった場合のその価格も見込みまして三百八十円と、こういうように決定したように私承知しております。  灯油の価格が昭和四十五年を一〇〇にして大体一一三くらいの割りで八月、九月まで来ておったように存じております。だから、まあ四十五年からして極端に上がっていなかったわけでございます。そういう観点から三百八十円であれば、需要期を迎えても大きな値上がりはないであろうということで三百八十円を決定さしていただきたいと、こういうことでございます。
  131. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 物価局長、いま言ったように、通産はあらゆるデータを見た上で需要期に向かっても三百八十円でだいじょうぶだという自信をもって指導したわけでしょう。いいですか。ところが、そのことを業界が言うことを聞かなかった、ずばり言うとですね。それじゃ、今度の標準価格をきめる場合に、この三百八十円という灯油の例をとって、それじゃ一方的に通産がいま言ったような計算をして三百八十円だということで、この法律を通すことによって、業界意見を聞かずにきめ切れますか。その点をひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  132. 小島英敏

    ○小島政府委員 個々の、灯油の場合にどうなるかということは、どうもやはり私のほうからいまの段階ではお答えいたしかねるわけでございまして、通産省で原案をつくって、私どものほうへ協議を受けて、そこで決定するということでございます。
  133. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、そんなことを言っておるんじゃないんです。私がいま言っておるのは、一つの例なんです。かりにあの三百八十円という末端小売り価格を決定するときに、この法案が通っておったと仮定した場合、この三百八十円というものは、通産省が自信をもって業界を指導するつもりでやったんだ、結果的に従わなかったという例が出るでしょう。業界意見を結果的には聞かざるを得ないんじゃないですか。指導する標準価格をこうして設定するが、これでどうだろうか、業界の諸君、だいじょうぶかということを最終的に聞かざるを得ないじゃないですか。そういうことになるんじゃないですか。
  134. 小島英敏

    ○小島政府委員 通産省が、いまの段階で高く売られておりますのを、そのまま容認しておるというふうには聞いておりませんで、しばらく時間をかしていただけば三百八十円を守らせますと言っておるわけでございます。したがいまして、一般論といたしましては、通産省が自信をもって数字をはじいたものであれば、業界の末端まで一々了解を得なければいけないという性格のものではなくて、その自信のある数字を強力に守らせるように行政を行なうべきであるというふうに思っております。
  135. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 理論的に、ことばではそうなんですよ、ことばでは。ところが三百八十円の根拠というのは、九月十五日現在でモニターの報告を受け、そして九月三十日現在の元売り価格を凍結をする。十三社の平均価格が一万二千八百円。それで小売り末端の配達料その他を計算して三百八十円と出したのです。ところが、その根拠が小売り店の皆さんやら、そういう人たちに受け入れられなかったのです。だから業界のほうで、いやそれは困る、受け入れられないということになれば、また改定しなければいかぬでしょう。一方的に押しつけることができますか。この法案が通れば、それを一方的に守らせるという自信がありますか。これは明らかに、通産省の資料と業者の資料との間に不符合が出たために、こういう混乱が起こっておるんですよ。そのいずれが正しいかという判定が基準にならなければならぬでしょう。そのときに通産がそのことで押し切れないでしょう、現実に。  ですから、そういった行政指導をするときには、やはり通産で資料をつくるけれども、同時に、最終的にはこれでどうだろうかという意見を業者に聞かざるを得ないじゃないですか。そういうことになるのじゃないですか。非常に心配だから、そのことを関連質問としてあなたに聞いておるのです。
  136. 小島英敏

    ○小島政府委員 三百八十円を業界が初めの段階で聞かなかったことは事実でございますけれども、今後とも聞かないかどうかということは通産省のほうにお聞きいただきたいと思いますけれども通産省は守らせると言っておるわけでございますから、やはりしばらく事態の推移を見るべきじゃないかと思います。
  137. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、法案の主管が経済企画庁だから、あなたに質問をしておるので、この法案関連として質問をしておるから、あなたに質問をしておるのです。  この法律全体に流れておる精神というのは、経済企画庁というのは調整するだけであって、全部主務官庁でしょう。これは通産だ、これは農林省だ、これは何だ、こういうふうに、極端に言うと、何の権限も経済企画庁にないんですよ。みんな主務大臣がやるのです。だから、最終的には経済企画庁は開き直る以外にないのですよ。おい通産省、どうか。あなたのほうは、それ以外に方法がない。いまあなたがいみじくも、それは通産省に聞いてくれと言ったでしょう。これはそういう法案なんです。まとめて、きちっとやれるところがないのですよ。だから標準価格をきめても、各省でばらばらだね。自分の主管するところの、たとえば利潤とかそういったものは、その利潤率を幾らにするとかなんとかいうことは計算をするけれども、各官庁でばらばらなんだ、これは。そういう各省間においても非常にあいまいな標準価格というものをつくろうとしておる。そのことを、私は関連質問だから、あまりここでは言いませんが、それじゃ、せっかくですから、物価局長が政務次官に聞いてくれというのだから、通産省の政務次官は、いまの物価局長の質問にも明確に答えていただきたいと思うのですよ。
  138. 森下元晴

    ○森下政府委員 灯油の価格の問題で業者に聞いたかどうか。これは、ちょっと日にちは忘れましたけれども通産省で三百八十円の線でいこうということになって、石油連盟からの流通機構の中にいわゆる全石商、全国石油商業連合、それと、もう一つは全国燃料団体協会ですか、この二つの流れがございますが、その全石商のほうに三百八十円でやってくれということは言っております。全石商の会の中ではございませんけれども、灯油の対策審議会という会がございまして、燃料関係の一部の方もその中に入っているようでございます。そこで、その三百八十円は徹底したものだという認識に立って、十一月二十八日からはぴしりいくという認識でおったわけなんです。  全石商のほうは扱いの三割で、十四万軒のうちの四万軒、これは扱い量は少ないです。軒数も少のうございます。これは一応スタンドを通じて販売しておりますけれども、三百八十円でやりますということは、たびたび声明しております。しかし、燃料組合のほうは流通機構が非常に複雑になっておりまして、ドラムかんで取りまして、いわゆる小分けにしてやっておる関係で利潤が少ない。しかも将来はかなり削減されるであろうという、いわゆる薄利多売から薄利少売という方向にいくという予想のもとに、生活もなかなか立っていかない。三百八十円は非常にむずかしいというような意見もございますし、現に配達料五十円ではなかなかできませんし、これも団地とか、人家の密集していない地域で多少違うようでございます。通産省の調べたデータでも、先生おっしゃるように、かっちり守られておるとは言い切れません。かなり高い例もございます。  以上でございます。
  139. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私、関連質問ですから、これで終わりますけれども、いま物価局長が言っておられたのですが、あなたのほうは守らせる、こう言っておられるのですから、いま末端消費者は実際に三百八十円以上の高い価格で買わされておるわけですから、早急に守らせてください。そのことを申し上げて、関連質問を終わります。
  140. 平林剛

    平林委員長 内田大臣にちょっと聞きますが、結局政務次官が言っているように、九月末現在の取引価格参考にして、全国モニターの資料もそろえて、しかも需要の多くなるときの価格を考慮して三百八十円ときめた、こう答えられておるわけですね。この法律が成立すると、こうしたものは三百八十円なら三百八十円で守らせることができるのかどうか。これはやはり法案全般の効果というものを確かめる上で重要な一つの焦点になるのでありますから、大臣からひとつお答えをいただきたい。
  141. 内田常雄

    ○内田国務大臣 灯油の問題がいまいろいろ出ておりますが、私が理解をいたしておりますところによりますと、いま森下政務次官から話されたように、メーカーの蔵出し価格というものを九月末で押えて、それが通常の取引ルートによる石油の小売り商、多くはガソリンスタンド等でございましょうが、それらの小売り商が組織しておりますところの、いわゆる全石商連との打ち合わせでは三百八十円でいける、またぜひそれでやりなさいということで話を進めてきた。ところがどっこい、灯油の販売網というものは、そんな簡単なものではなしに、それはまき屋が売っている灯油もあれば、たどん屋が売っている灯油もある、あるいは米屋が売っている灯油もあるというようなことで、全石商連のような、すうっと一本できたルートだけではない、もう一つの昔からの小売りの販売の大きな仕組みがあるようでございまして、それは必ずしもメーカーの一連のルートに乗っておりませんために、三百八十円ときめられても、自分のほうでは——これは相談がなかったということばを使うと、また業者に引っぱられているじゃないかというおしかりを受けるかもしれませんが、何らの通告も、自分らの商売についての調査もしないままに、一つの全石商連のルートだけできめたというところに今日の複雑な問題のかなりの部分があるようでございます。  したがって、この法律が通りまして灯油の標準価格をきめますときには、私が第一回の委員会の際に与党質問にもお答えをいたしましたように、いろいろな品物の種類や販売の態様等もありますから、その全部についてきめるわけにはいかないだろうと思う。大体通常の取引のルートといいますか、販売の形のものを選んで、そういう販売の形のものについて標準価格幾らときめて、それに準ずる価格というものは、標準価格を通じて、おのずから標準価格に近く引っぱられて形成をされる。したがって、標準価格はきめなくとも、標準価格の前後左右にある、標準価格に準ずる同じ品目の価格については、それが高いと思う場合においては、この法律の条文がございまして、そういうものについては、標準価格に準ずる以上の価格で売ったと思われるものについては引き下げの指示もできるし、それからまた公表もできる、こういう仕組みになっておりますので、この法律におけるその仕組みを使うのはいい、私はそのように理解をいたしております。
  142. 井岡大治

    ○井岡委員 いろいろ聞いておりますと、ますます高値安定と申しますか、そういうかっこうになるような気がしてなりません。  そこで、私は、時間がもう来ましたから、これから二条以下の問題についてお伺いしたいと思うのですが、主として通産の関係になりますから通産の御意見を伺いたい、こう思いますので保留いたしますが、ただ長官に一つだけ聞いておきます。  一条の問題で、「もって国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする。」私は、先ほどから申し上げますように、この法律によって国民生活を安定さすんだ、あるいは国民経済を円滑にやるんだ、こういうことであれば、確保だけでなくて、国民の福祉に貢献をするというものでなければならぬと思うのです。そうしないと、やはり高値安定ということになってしまうわけです。だから、標準価格というようなものをこしらえて、まあ、ちょっと一ぺん、お手並み拝見、こういうかっこうなんです。初めから指示価格なら指示価格と、こうおやりになったらいいのです。こういう点で、なぜ国民の福祉に貢献をするということをお入れにならなかったのか、この点についてお伺いいたします。
  143. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは、実は経緯を簡単に申しますと、この法律については、初めの発想は、国民経済の確保、それと並んで国民生活の安定というふうに考えられておったころもございましたが、私どもは、政府として考えますと、国民経済の運行も大切だけれども、それよりも今日の国民の一番の関心事は、お互いの生活を守っていくところにあるんだということで、法律の題名も国民生活安定緊急措置法ということにいたして、国民生活安定及び国民経済確保緊急措置法とかいうような部分は、それはこの法律のタイトルからも取ってしまいますと同時に、一条の書き方も、それは国民生活の安定を確保するということをまつ先に先のほうにうたって、しかし、国民生活に必要な生活関連物資というものも、これはやはりさっきお話が出ました、鉄も必要でございましょうし、いろいろな基礎資材も必要でございますから、国民生活を、つまり生活関連物資を確保するに必要な、最も密接な関係のあるそういうような基礎資材をもここに一緒に並べた、こういう形になっております。したがって、心は「国民生活の安定」という中に井岡先生のおっしゃる国民の福祉を守るということも入っておるつもりではおるものでございます。
  144. 井岡大治

    ○井岡委員 これは、いまお話がございましたけれども、もしそれが主たる目的だというのであれば、やはり私は、国民の福祉に貢献をする、この項をここに挿入すべきだ、そうしないと、先ほどからのやりとりでおわかりのように、非常にやはり疑問の出る個所が多い、こういう点から、この点を強く私は要求をいたしたいと思います。  同時に、先ほど申し上げましたように、二条以下は、通産なり農林なり、関係大臣に関係がありますので、時間も来ましたから、私はこれで本日のところは終わります。
  145. 平林剛

    平林委員長 野間友一君。
  146. 野間友一

    ○野間委員 きょう私は時間が一時間というふうに制約されておるのと、通産大臣、公取委員長が見えていない、それから政令の要綱はつい最近いただいたわけで、逐条にわたってきょうは質問することができません。そこで一、二点論点をしぼりまして、関係者にお伺いをしたいと思います。  まず最初に、物不足の問題についてでありますけれども、総理あるいは大蔵大臣は、いずれも今日の物不足の主たる原因石油危機にある、こういう発想で貫かれておると思うのです。ところが、物不足というのは、単に石油危機を契機にして起こったものではない。そのことは、昨年末の木材とかあるいは大豆、それから鉄鋼、セメント、最近に至りますと、トイレットペーパーとかあるいは洗剤、砂糖、こういうものが問題になっておりますけれども、このトイレットペーパーとかあるいは砂糖、これらを除きますと、この物不足のほとんどが石油危機以前にすでに起こっているわけですね。  そういう点で、私はここで、いまの物不足、このことはそのすべてが石油危機に起因するのではない、その以前から不足は起こっておったという事実をまずひとつ長官に確認をしておきたいと思います。
  147. 内田常雄

    ○内田国務大臣 物が足りるかあるいは不足であるかということにつきましては、絶対的な不足というものももちろんございますけれども、しかし、それはまたその物を買う力、総需要と申しますか購買力と申しますか、そういうものと供給数量との相関関係から、お金は何ぼでも持っているというようなことから、非常に物に対する需要が集まるというような場合がございますことは、これは今日の自由主義経済のもとにおきましてはさような場合をお認めいただけると思います。  もちろん、今度の石油危機が起こりましたのは十一月ごろからでございまして、石油が足りなければエネルギーが足りない、エネルギーが足りなければその設備をフルに動かせない、そうすると製品が十分できない、そうすると物が足りなくなるだろう、こういうことにはなりますが、しかし、石油以前の場合においては、物そのものが、絶対不足というよりも、国民購買力——あるいはそれは一部の当時問題のありました商社等の企業をも含めて購買力、買い占め余力というようなものがあったがために、物が絶対的には足りなくないのだけれども、それに買いつく力のほうが大き過ぎた、こういうふうな状況もあの七月の買占め法をつくりました当時の状況であったように私は思うものでございます。
  148. 野間友一

    ○野間委員 時間が限られていますので、質問に対してだけ要領よくひとつお答えください。  私がお聞きしたのは、いま申し上げたように、石油危機、これが物不足のすべての原因ではない。その以前、つまり昨年の秋ごろからすでにこういう状態がずっと続いておる、こういうことについて、それぞれの品目をあげていま確認を求めたわけなんです。これが石油危機を契機にして、さらにいろいろな要因が加わって深刻化したという事実は、私も否定するものではありませんけれども、こういうことをまず長官に確認を求めたいということで最初に申し上げたわけです。  そこで、その点に関しましては、田中総理も今国会の冒頭に、生活必需品については、生活段階にも流通経路にも相当量の在庫が存在しておる、こういうことも言っておるわけですね。したがって、物不足というふうに一言で言いますけれども、これはやはり石油危機とかあるいはその他要因はあったとしても、そのほかの要因が大きく作用していると同時に、外的な要因よりもむしろ内的な要因、こういうものが大きく左右しているというふうに思うわけです。その点は異存がなかろうと思うのですね。  そこでお聞きするわけですけれども、たとえばトイレットペーパーとかあるいは砂糖、木材あるいは電線とか水道管、これらの原料になりますところのエチレン、これらについて、それぞれパニックにひとしいような現象が起こったわけですけれども、このころに物が不足しておったのかどうか、具体的にこの品目について関係者にお答え願いたいと思うのです。
  149. 内田常雄

    ○内田国務大臣 全般的に申しますると、先ほど述べましたように、物は必ずしも不足していないけれども、それに対する購買力のほうが過剰のものがあったというのが大部分のその状況でございますが、しかし、いまお述べになりましたような一部の石油化学製品などにおきましては、あの当時その工場の爆発等が起こりまして、それによる物そのものの供給不足が憂えられておったというものもなかったわけではないと思います。
  150. 池田正範

    ○池田政府委員 御指摘の砂糖について申し上げますと、この時期におきまして、実は御案内の国際砂糖協定が価格の面で折り合いが売り手国との間につきませんで、ちょうど九月の半ばごろに中身のない事務局の構成をするというだけの協定になってしまった。そのことから、国際的な糖商筋を通じて、今後これはかなり売り手国が強腰になって下がらなくなるのではないかという形のために、仮需がかなり需要筋から起きた。(野間委員「簡単に答えてください」と呼ぶ)そのために、一般的な物不足ムードというものが便乗しまして、当時、現在も含めてでございますが、砂糖があのような価格に上がるような需給状態でないのに価格が上がったという実情であるというふうに認識いたしております。
  151. 橋本利一

    ○橋本政府委員 トイレットペーパーについてお答え申し上げます。  トイレットペーパーにつきましては、この六、七月ごろまで大体月間ベースで一万五千トンないし一万六千トンで需給が均衡しておったわけでございますが、八月ごろから需要が増加してまいりまして、十月の終わりから十一月の初めにかけまして、一部の地域におきまして買い付け騒ぎが発生いたしたわけでございます。それまでは需給は非常に均衡いたしておったわけでございます。
  152. 野間友一

    ○野間委員 一通り聞きます。エチレン。
  153. 森口八郎

    ○森口政府委員 エチレンにつきましては、石油危機以前には生産設備あるいは原料等についての問題はなかったわけではございますが、御存じのとおり、出光石油化学等の相次ぐ事故によって若干需給が窮迫しておったということは事実でございます。
  154. 野間友一

    ○野間委員 これはそれぞれに一言ずつ申し上げねばいかぬと思うのですけれども、たとえばエチレン、いま森口さん言ったけれども、これは通産省でもらった資料、これによりますと、出光の事故で七月は若干ダウンしておりますけれども、八、九、これはすでに正常に戻っております。それはあなた誤りなんです。  それから砂糖ですね。これはいまいろいろ仮需要の問題等々、これはトイレットペーパーについても話がありましたけれども、たとえばトイレットペーパーについていいますと、八月から消費が伸びた、こういう話がありました。これは私、実はもっと前の物特の中でもこの点について統計をあげまして政府にただしたわけですけれども、八月ごろ生産も出荷もこれは一定しているわけですね。大体それ以前から平均しているわけです。ところが、消費が絶対的に伸びたということは、これは証拠はないわけです。絶対ないわけです。しかも出荷がふえているわけですね。出荷がふえているけれども消費が伸びておるわけじゃない。このパニックが起こったのは十月の末から十一月の初めにかけてなんです。ですから、このころずっと落ちついておった。  これは、たとえばペーパーについていいますと、私、これはいろいろ小売り屋さんへ行って調べてみたわけです。ところが、大体九月ごろまではずっと安定しておるわけです。たとえば、ある小売り屋で聞きますと、小売り商の仕入れ価格が九月現在でまだ九十円なんです。これは四ロールですね。それから十月になりますと百五十五円、十一月になりますと二百二十五円、このように推移しておるわけです。それから砂糖につきましても、大体ことしの十一月二十日ごろまで落ちついておる。これは私もかなりあちこち小売り商を回って調べたわけでありますけれども、落ちついておるわけです。  つまり、物不足は、先ほど長官があれこれ、需要が伸びたとか云々と言われますけれども、実際いま指摘したこの品物については大体需給のバランスがとれておったわけです。ところが、この十月末からこれらの商品についていろいろ問題が起こったわけです。  そこで、私はこの価格の問題についてお伺いしたいわけですけれども、たとえば砂糖のごときは、これは毎日毎日仕入れ価格が上がっておるわけです。ことしの十一月の十日ごろには、仕入れ価格、これは小売りですけれども百三十五円、ところが、これが二十日ごろになりますと百九十円、それから二十三日には二百十五円、二十四日には二百三十円、ここまでのぼり詰めておるわけです。ほとんど毎日毎日仕入れ価格が変わっておるわけです。仕入れへ行って聞きますと、これは仕入れが買ってくる、卸が買ってくるその価格が上がっておるというのです。つまり、メーカーの価格が上がっておるわけですね。このことは、ペーパーについても同じことが言えると思うのです。先ほども申し上げたように、四十八年の九月で九十円、それが十月には百五十五円、それから十一月には二百二十五円、こういうふうにわずかの期間に急ピッチで上がっておるわけですね。いろいろな統計によりますと、生産も出荷も価格も、もとのところでは——製造原価ですね、もとのところではそう大きな変化はない。ところが、蔵出しから始まって、この流通経路の中でこれだけ上がっておるわけです。  そこで私は問題にしたいのは、例の緊急出荷の問題です。これは砂糖とペーパーとやりました。パニック状態が起こったときに、大阪とか東京その他でやったわけです。この価格を私はひとつ問題にしたいと思うのです。といいますのは、たとえばペーパーの放出、これは御承知のとおりワンパック百九十五円あるいは百八十五円、これは長さによって違うわけですけれども、これは私から言わなくてもおわかりのとおりなんですね。この価格は、四十八年九月ごろの小売り価格よりもはるかに高いわけです。しかもこれはメーカー直送でやったわけですね。メーカー直送でこれを放出した。わずかの期間、この間にすでにもう小売り商の仕入れ価格よりも、あるいは場合によれば小売り商の小売り価格よりも放出したときの価格のほうが急騰しておるわけです。わずかの二週間あるいは三週間、この間にこんなにメーカーの蔵出し価格が急騰する原因、これは全くないと思うのです。  このことは砂糖についても同じなんです。この放出したメーカーの出し値、これは百六十三円、これで直送しております。小売り価格は百八十五円から百九十円、こういうふうに統一をしております。この価格一つ例にとりましても、先ほどあげましたように、四十八年の十一月の十日、といいますと、いまからわずか一カ月前なんです。そのころの小売り価格は百五十円なんです。小売り価格、末端価格は百五十円であったものが、そこからわずか数週間を経て、政府が指導してこれを放出させた、そのときの価格がはるかに上回っておる、こういう現象が生じておるわけです。これは一体どういう理由に基づくものなのか、納得のいく説明をひとつしていただきたいと思うのです。  家庭の奥さん方やすべての国民が、これこそ政府が主導して、そしてこの物価の高騰安定をはかったものである、けしからぬということをみな言っておるわけですね。これは当然だと思うのです。これについて、国民に納得のいくような説明をひとつしていただきたい。
  155. 橋本利一

    ○橋本政府委員 首都圏に対して放出しました価格は、ただいま先生の御指摘になりましたように、百九十五円と百八十五円の二種類でございます。この価格を決定するにあにりましては、一応現地におけるメーカー出し値を百四十円、消費地で百六十円という凍結価格を前提としてかように指導したわけでございます。この間、特に原料になる故紙の値上がりが非常に高うございまして、ものによっては二、三倍あるいは四倍まで故紙の値上がりがあったわけでございますが、そういった要素も勘案しながら、いわゆるパニック前の価格百四十円と百六十円をベースとして、御指摘のような価格で首都圏地域に緊急出荷いたしたわけでございます。
  156. 池田正範

    ○池田政府委員 砂糖について申し上げますと、ちょうどこの緊急放出をいたしました時期では、先ほど申し上げましたような一種のパニック現象というのがありましたもので、とりあえずメーカーが末端にまで物を流して、とにかく物があるということを、まず最末端のスーパーなりあるいは生協なりで確保することが前提でございました。したがって、一刻を争うということでございましたので、とりあえずとにかく流すということに全力をあげました。  それからもう一つ、そうは申しましても、当時すでに三百円とか三百五十円とか、一部にいう法外もない値段でものを出すという小売り店もございました。したがって、これは少なくとも当面、いかに卸売り業者と小売り業者との間が相対であるとしても、あまり高いのは困るので、とりあえずはまあ二百円以下というふうなところを水準に置いて、とにかく暴利を取り締まるという形で行政指導をしたわけでございます。むろんいまの百八十五円前後というのは、そういう行政指導のもとで、上下は多少あったけれども、大体その辺がまあ水準になっていたということでございまして、私どもとしましては、これがだんだんおさまってまいりましたので、今度は本格的にやはり価格水準を引き下げるということで、第二段といたしまして、現在適正な価格水準まで引き下げるべく——これはメーカーが下げましても途中でもうけて最後が高くなってしまっては何にもなりませんので、メーカーから最末端までの間を順次押していくという、多少しんぼうが要りますけれども、そういう方法で現在引き下げをする方向での行政指導に努力中でございます。
  157. 野間友一

    ○野間委員 いまいみじくも私が申し上げたように、パニックの状態が続き、そして品物が店頭からなくなった。ところが緊急放出をされた。そのときには、パニックより前の小売り価格よりもさらに高い価格でこれが放出をされておる。これは砂糖にしてもペーパーにしても、その価格についてはいま是認されたと私は思うのです。しかも、その価格もわずか二日か三日なんです。それからさらに急騰を続けておる。いまは一応落ちついておりますけれども、結局残ったのは高値安定だけなんです。こういう現象が生じておる。この一連の現象から考えてみますと、物は不足してない。物はあるわけです。生産も在庫もあるわけなんです。ところが末端にはない。政府が主導して価格をつり上げた。そのあとはその価格が安定して、あとそれ以下には下がらない。残ったのは高値である。こういう現象が実際に生じておる。私はこの行政庁の、政府の姿勢、これを今度の標準価格あるいは特定標準価格、これとの関連でとらえていきたいというように思うのです。  そこで私はお伺いするわけですけれども、先ほど砂糖の関係でも若干申されましたけれども、メーカーの出し値——いま申し上げたように、十一月十日ごろで小売り価格が百五十円、一カ月前ですね。ところが放出したメーカーの価格は百六十三円ペーパーについては、四十八年九月で小売り価格は百三十円、放出価格は百四十円。高値なんですね。これらの価格を一体どのような根拠に基づいて算定したのか、その積算の基礎、根拠、これをここでひとつ具体的に明らかにしていただきたい。
  158. 池田正範

    ○池田政府委員 砂糖会社というのは、御承知のように、たくさん、大きい会社もございますし小さい会社もございまして、それぞれのコストの水準もみな違うわけでございます。したがいまして、どのコストの水準が最も正しいかというマル公価格のごときものは別にあるわけではございません。ただ一つありますのは、政府が、この価格が非常に高くなりましたときに、砂糖事業団を通じまして、高くなりましたものを上限価格で原糖だけは売り戻しておるわけでございます。  したがって、そういう形から考えますと、中間のコストというものが、私どもの計算からいたしましても、大きいところと小さいところでは大体十三円前後の開きがあるということから考えますと、上下で考えて、かりに百五十円の卸売り価格ということになれば、それは百八十円前後が小売り価格として正しいという問題になろうかと思いますが、その根っこの百五十円というのは、いまの原糖価格が五十四円という上限の売り戻しで売られた場合に、それに中間経費と関税と消費税と、それに歩どまりというふうなものの総合いたしましたものをかけ合わせますと、大体いまおっしゃいました百五十円前後、それに大体上下で十三円ぐらいの幅で、いい会社と悪い会社との差が出てくる、そういうふうなことになろうかと考えております。
  159. 橋本利一

    ○橋本政府委員 先ほども申し上げましたように、百四十円ないし百六十円のメーカー出し値は、パニック前のメーカー出し値で凍結しておるわけでございます。その意味では、厳密なコスト計算の結果ではございません。また反面、小売り価格が十月には二百二、三十円、あるいは十一月には二百二十円から、ところによっては三百五十円といったような非常に割り高の価格が出ておりましたので、これを鎮静するために、二百円以下で小売り価格を規制したいということで、凍結価格をもって価格指導いたしておるわけでございます。
  160. 野間友一

    ○野間委員 私がお聞きしたいのは、このメーカーの出し値ですね。この価格を形成された、つまり行政庁、政府がこの価格をきめた根拠、積算の基礎をひとつ明らかにしてほしい、こういうことを申し上げておるのです。
  161. 池田正範

    ○池田政府委員 砂糖につきましては、ただいま申し上げましたように、別に政府が指定をして価格をきめた経緯ではございません。ただ、あの時期において法外な価格で砂糖が売られるという形は、少なくとも防がなければならない、片一方で物がなくならないようにしなければならないという範囲で、大体とりあえずのところでめどをその辺につけて行政指導をしたわけでございまして、別に卸売り価格の基準をきめたわけではございません。
  162. 橋本利一

    ○橋本政府委員 特に精細なコスト計算をいたしておりませんが、故紙の値上がりについて例示して申し上げますと、たとえば色上という原料につきましては、九月時点でキロ当たり二十一円であったものが五十円まで上がっておる、その他古雑誌、古新聞等の故紙原料も倍ないしは三倍近い値上がりを示しておる。さような原料故紙の値上がり等も勘案いたしまして、百四十円ないし百六十円のメーカー出し値を凍結したわけでございます。
  163. 野間友一

    ○野間委員 私がふしぎに思いますのは、これは重複になりますけれども、少し前の小売り価格よりも高い価格でこれを放出した、この事実なんです。いいですか。要するに、生産費そのものがそう急激に変動するとは思われない。わずか二週間や三週間の間にこんなに、いま申し上げたような急騰、こういうものを裏づける根拠はないわけです。物はある、在庫はあるわけです。そしてコストも、このわずか短期間の間にこんなに急激に上がるはずがない、にもかかわらず、小売り価格よりも、末端価格よりもさらに高い値段でなぜ放出しなければならないのか、それがいま高値安定として残っておるじゃないか、こういうことなんです。これをひとつ国民に納得のいくように説明をしていただきたいということを申し上げているのです。
  164. 橋本利一

    ○橋本政府委員 当時十月の小売り価格が二百二十円ないし二百三十円、十一月におきましては二百二十円から三百五十円と、非常に高騰いたしております。そういった価格を鎮静化するために、先ほど申し上げたような価格で指導しておるわけでございますが、その結果、もう昨今では、地域あるいは場所によりまして異なりますが、大体二百二十円から三百円という数字になっております。当時よりは下がってはおりますが、三百円という価格は、われわれといたしましてもかなり高い水準である、したがってこの価格をさらに引き下げるよう指導してまいりたい、特に、先ほども例示いたしました故紙価格の安定化を進めたい。また、毎月二千トンずつ緊急増産をさしておりますので、こういった製品が市場に出回ることによって、価格をさらに低いレベルに安定させるよう行政指導してまいりたいと考えております。
  165. 池田正範

    ○池田政府委員 おことばを返す気持ちは全然ないのでございますけれども、とにかくあの非常な事態のもとで、物がなくなるかもしれないというもとで、物を確保し、しかもそれが幾らででも売れるという異常心理のもとで、特定の店舗にその物を流して、末端である程度の物を売らせる場合に、御指摘のような、問題が起こる前の価格に直ちに戻すという形をとって、かりに物が流れないで物がないという形と、多少の高値ではあっても、現実に、より高い現状というものを打ち破って、そしてとにかく物のない不安というものを解消させるというふうなことと、いずれが喫緊の場合大事だろうかという感じを持ちまして、おしかりをいただくようなことはむろんあったと思いますけれども、私どもとしては後者をとって、とにかくやる。あの当時二百五十円から三百円というような小売り価格が横行した時代でございますので、それを、前が百五十円でございましたので、幾分高目ではございましたけれども、とにかく二百円以下にとりあえず下げる、しかも、物は末端にいけばある、そういう形をつくり出すことに全力をあげたわけでございます。  したがって、先生がおっしゃるような、そこで公定価格をきめるように、コスト概算をやって、それぞれが自由に販売をしており、仕入れたものをそれで売れという形での行政介入まではでき得なかった、そういうふうに申し上げておるわけでございます。
  166. 野間友一

    ○野間委員 いまのお話を聞いておりますと、いま緊急事態に対処して、とにかく鎮静化しなければならない、そこで、高いけれども、何とかこの程度でというふうにしか、私はいまの答弁から受け取ることができなかったと思うのです。このペーパーにしても砂糖にしても、これは局地的なものなんですね、福岡とか東京とか大阪。在庫はあるのですね。物はある。しかも、コストがそんなに変わっていないとすれば、いち早くなくなったところにその現物をどんどん出していく、これは可能なんですね。と同時に、価格の点についても、パニック前の価格でこれを販売する、買わせる。そうしなければ、とにかく緊急の事態にある程度鎮静化さす、落ちつかせるということで、この過熱しておる局地的なところでこれだけ高値で安定しますと、これが全国に波及するわけです。  このことは、私が言わなくても、皆さんよくおわかりだと思うのです。現にこうなっておるじゃありませんか。この皆さんがきめた、放出した価格——いま砂糖のほうでは、農林省としては価格はきめてないと言われましたけれども、実際に放出した価格、これが全国の価格一つの下敷きになっておるわけですよ。つまり、この過熱した前の状態に一たん上がった価格は戻らないわけですよ。そういうことは、とった行政措置としては誤りである、私はこう言わざるを得ないと思うのです。  そこでお聞きするわけですけれども、この行政上の措置、これは灯油とも関連するわけですけれども、このことと、この価格の点について今度の標準価格、これとの関係でどう考えておるのか。つまりこのような形で標準価格をきめようとしておるのかどうか。これはお二人に一々聞きますと時間がありませんので、橋本さん、ひとつお答え願いたいと思います。
  167. 橋本利一

    ○橋本政府委員 標準価格の決定にあたりましては、われわれとして独自の立場で判断することにいたしたいと思います。ただ、資料といたしまして、生産費あるいは流通経費等の調査ないしは資料の提出を要求することになると考えております。
  168. 野間友一

    ○野間委員 具体的に若干お伺いするわけですけれども、この三条の標準価格、このきめ方についてはいろいろございます。これと、いまペーパーの点についてお聞きするわけですけれども、ペーパーについてのきめられた価格、この価格形成について、具体的にどこでどう違うのか、それをひとつお示し願いたいと思います。
  169. 橋本利一

    ○橋本政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、百四十円ないし百六十円なる価格につきましては、精細なコスト計算の結果としてではなくて、パニック以前の凍結価格というたてまえで採用しておるということでございますが、そういった関連から、この第三条三項との関連で申し上げますと、標準的な生産費に近い感触と、それから国民生活または国民経済に及ぼす影響を勘案してそういう指導をしておるということになるかと思います。
  170. 野間友一

    ○野間委員 私は禅問答しておるわけではありませんので、具体的に聞きたいわけです。どこがどう違うのか。あなたのほうでは、一応ある時点においては相当と考えてこういう価格をつけられたと思うのですね。今度またこの標準価格としてきめなければならぬ。具体的にこの価格をきめるに至った基礎——この三条の三項ですが、いろいろな要素がありますけれども、どういうふうに違うのか。このペーパーの放出した価格、こういうものは三条の三項とは全く関係ない、こういうことをおっしゃるわけですか、どうですか。
  171. 橋本利一

    ○橋本政府委員 全く関係がないというわけでございませんでして、この第三条第三項の標準的な生産費というものがむしろ基準になっておる。ただ、メーカー出し値できめておりますから、輸入価格または仕入れ価格というところまでは読み込んでおらない。ただ、首都圏に放出した場合には、その間の販売費用あるいは利潤を加えた額というものを勘案はいたしております。
  172. 野間友一

    ○野間委員 この標準価格の形成の問題については、カルテルとの関係は、きょうは委員長おりませんので留保したいと思いますけれども、ただ、一つ関連して申し上げたいのは、この標準価格と、それから特定標準価格、この関係についてひとつお伺いしたいと思うのですけれども、私たち野党は、この指示価格ということで、要するに原価計算ですね、コスト・プラス利潤、こういう算定、しかもこれを公開していく、このような修正案をいま立てつつあるわけですけれども、ところが、この政府案の標準価格、これはあいまいもことしてとらえようがないわけです。いろいろなものを総合勘案してきめる、こういうことになっておるわけですね。しかも、メーカーの出し値をきめる場合に、これはいろいろな品目においてもたくさんのメーカーがあるわけですね。これらを一体どのようにして価格を形成するために作業を進められるのか。  きょうは時間の関係で省きますけれども、いずれにしても、これは実際業者からいろいろな資料、いろいろな言い分を聞いて、その上でこれを政府が追認する、こういうことにしかならないと思うのです。先ほどペーパーあるいは砂糖の問題を例に出しましたけれども、あの放出価格が、いまや全国で最低の価格になっておるわけですよ。こういう価格ではもうありませんけれどもね。つまり政府のお墨つきという形になっておるわけです。そうだとすると、標準価格をきめる際に、私たちが言っておるような考え方をとらずに、このようなあいまいもこな形で価格をきめるということになりますと、これは業者の言い分をそのまま聞いて追認するということ以外には価格のきめようがないと思うのです。これはまた後日に譲りますけれども、と同時に、私は特定標準価格、これとの関連についてひとつお尋ねを申し上げたいと思うのです。  これは原則として二段がまえになっております。私が思うのには、最初に業者の出した価格標準価格を追認していく、ところがそれでもなおかつ物価が安定しない、物価が安定しないということは、これは標準価格をかりにきめても、それで物価が鎮静しないということを意味するわけですね。つまりことばを変えますと、標準価格をきめてもなお高値がずうっと継続していく、こういうことにしかならないと思うのです。そこで、さらに標準価格を上回って、あるいは最低の場合でも標準価格が特定標準価格にそのまま横に流れていく、こういうこと以外にはないと思うのです。つまり、業者の言い分を聞いて標準価格を高くきめる、ところが、そのきめた価格物価が安定しない、鎮静しない。ですから、それよりさらに上げた価格でメーカーやあるいは小売り価格をきめていく。私は、これが標準価格と特定標準価格の特徴だと思うのです。  一体、標準価格から今度は特定標準価格をきめた場合には、標準価格より下がるということは可能であるかどうか、そういうことは考えられるかどうか、これは長官、ひとつ答えてください。
  173. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いろいろの場合があろうと思いますが、御承知のように、この法律案におきまして標準価格と特定標準価格の二つをきめましたのは、とにかく、いま緊急の事態において、国民生活安定のための物資を遅滞なく指定して、指定されたら遅滞なくそのうちの標準品目について、一つの指導的な価格というか、標準的な価格をつけて、そしてそれに類するものの価格を引っぱっていこうということで、第一段の措置として標準価格をきめるのが実際的であろうということで、まず標準価格の制度をとっております。しかし、その標準価格の制度というものは、それ以上で高く売った場合には、あるいはまたそれに準ずる品目について、それに準ずる価格以上の高い値段で売った場合には、引き下げの指示をする、引き下げない場合には、天下にこれを公表して指弾をする、こういうことになるわけでありますが、しかし、それはそういうことできき目はございましょうけれども課徴金を徴収するというものではありません。課徴金を徴収するということになりますと、その標準品目について標準価格をきめたもの、そのものがいい場合もございましょうし、それよりもより中心的な品目を特定品目として選んで、それについては、より正確な緻密な価格形成をして、そしてこれを特定標準価格としますから、これはもうあくまでも、課徴金を取る場合に、それより高く売った場合には、その差額の全部を課徴金として取る、こういうことのために設けておるわけでありまして、あなたは手を振られますけれども、私のほうでは、そういう二段がまえでやることが現実的な行政であろう、こういう考えから出発をいたしております。
  174. 野間友一

    ○野間委員 質問にお答え願いたいと思うのです、質問に。(内田国務大臣「答えているのです」と呼ぶ)いや、それは私の質問に答えてないわけです。  私の聞いておるのは、二段がまえの価格をきめたのは、標準価格はきめたけれども物価は安定しない、こういう場合を想定して、特定標準価格という二段がまえをつくっておるわけです。これは直接に最初から特定標準価格といく場合があるということは、きのう局長答えましたけれども、それはそれとして、そういう二段がまえになっておるのです。  私が言いたいのは、標準価格をきめて物価が安定しないから特定標準価格をきめる、こういう二段がまえになっておる場合に、最初きめた標準価格よりも、特定標準価格になった場合に、これが下がるということが考えられるかどうかということです。私は、それを越えて売った場合にどうのこうのということは聞いてないわけです。質問の意味わかりますか。
  175. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私のお答えをいたしていることもぜひ御理解をいただきたいのですが、行政の実際としまして、課徴金を取るための特定標準価格というものをいきなりつくりますよりも、これは時間もかかりましょうし、とにかく標準品目を選んで標準価格をつくることが、指導価格をつくる実際的の行政の行き方ではないかと思うこと、それでこの法律の冒頭のほうに標準価格をつくっております。しかし、それをもって十分の効果をあげ得ない場合も私どもは想定しますから、課徴金を取ったり、さらに、その課徴金を納めたものを税金上の経費に見ないというようなことをやりますためには、より緻密なものをつくるという意味で、特定標準価格というものを置いている、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  176. 野間友一

    ○野間委員 ちょっと局長、答えてください。
  177. 小島英敏

    ○小島政府委員 標準価格の場合は、各種の標準的な生産費というのは、一つの総合判断の材料にすぎないわけでございますけれども、特定標準価格の場合にはそれが基準になるわけでございます。そういう意味から申しますと、初めの段階のものに比べまして、ある意味では一そうシビアな形になっておりますから、理論的には特定標準価格のほうが低くなるということは、十分あり得ると思います。  ただ、現実問題として、一般的な物価上昇傾向にある場合には、時間的に特定標準価格をきめる時期のほうがおそくなりますから、その間に生産費が上がっているということがございますから、いつの場合でも特定標準価格のほうが低いということはいえないと思いまして、やはりそれはケース・バイ・ケースで、上がる場合もあり下がる場合もあるということだと思います。
  178. 野間友一

    ○野間委員 私はへ理屈を聞いておるのではないのです。形式論理をここでやっておるのではないのです。実際にどういう機能を持つかということを私は聞きたいわけです。物価が急騰する場合に初めてこの法律を発動する、こういうことになるわけでしょう。標準価格をきめた、それでもなおかつ物価が安定しないということは、それが守れないということでしょう。守れないということは、それよりさらに高い価格で取引されるということでしょう。いまの三百八十円の灯油でもそうでしょう。きめたけれども、全然守られていないじゃありませんか。四百四十円、四百五十円、五百円、こういうことで現実には取引されておる。これが背景なんでしょう。ですから、標準価格をきめても安定しないということは、きめた価格で取引ができない、さらにそれよりも上回る、これが前提なんです。だから、その場合には特定標準価格をきめるということなんです。そうでしょう。そうだとすれば、確かに理論的には下がる場合がありますよ。コストが安くなれば、それは下がりますよ。しかし、いまの情勢、しかもこの法律の背景から考えて、そういうことは理論的に可能であっても、現実に可能ですか。そんなこと、あなた本気になって考えていますか。いないでしょう。
  179. 小島英敏

    ○小島政府委員 灯油の場合を一つのモデルということで皆さん考えますから、あれなんですけれども、灯油の場合、まさに政策効果がこれから及ぼうとしているということを通産省も言っているわけでございますから、灯油の場合が、いままでの段階であまりうまくいっていないからといって、こういう制度がすべてだめであるというふうには言えないと思います。しばらくはその効果を見定めていただきたいということが一つと、それから、それは必ずあとの場合のほうが値が上がるということは、一般的に物価水準の上昇率が相当きつい場合にはあり得ることではございますけれども、そのものについて、原価的な動きがあまり上がり方がひどくないということだって十分あり得るわけでございますから、いつでもあとからきめたほうが高くなるということでは必ずしもないというふうに思います。
  180. 野間友一

    ○野間委員 それもおかしいですよ。それなら、標準価格物価が安定していますから、ことさら特定標準価格まで進む必要はないわけですよ。そうじゃないのですか。安定しないからまたきめなければならぬ、こういうことになるわけでしょう。そして、そのきめた価格を守るために課徴金まで課す、こういうことになるのではないですか。  そういう点から考えますと、上がりこそすれ下がることはない、横ばいか、あるいは上がる以外に考えられないのではないですか。違いますか。
  181. 小島英敏

    ○小島政府委員 コスト的には十分標準価格でペイするはずなのに、そのときの需給、思惑その他が加わって非常に暴騰するというケースがあり得るわけでございまして、そういう際には、しっかりした原価計算に基づいて、低い水準のマル特といいますか、特定標準価格をきめて、どうも指示や公表では担保として弱い、しかしながら課徴金という強い措置をとることによって守らせ得るという場合も十分あり得るというふうに思います。
  182. 野間友一

    ○野間委員 いま原価計算の話が出ましたので、一言お尋ねしたいと思うのですけれども、この原価計算をされる場合に、どのような方法で原価計算をされるのか、一言お答え願いたいと思います。
  183. 小島英敏

    ○小島政府委員 一般的に平均的な生産費をとることもございましょうし、指定された場合には、その企業に対して原価その他経理の状況を常備させることができるわけでございますから、そういうものについて報告徴収を求めることによって生産費を知るということになるわけでございます。
  184. 野間友一

    ○野間委員 確かにいまの帳簿の記帳義務ですか、それはあると思いますけれども、メーカーのコスト価格、原価ですね、そろいうものについて特にお尋ねするわけですけれども、たしか二十六条では帳簿の記載義務がこの中にあります。これは私は、中小零細企業泣かせの、いじめのものであり、非常にこれは問題が多いと思うのですけれども、それは後日に譲りまして、ところがこの法案で、局長、各メーカーに対して帳簿閲覧やあるいは立ち入り検査、そういうことが、標準価格を形成する段階で法的な根拠、裏づけがあるのかないのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  185. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それは私からお答えをしたほうがいいと思いますが、指定物資は、これはこの条文に書いてございますように、そのものを指定物資とすることによって、その価格の安定や需給の調整をはかるわけでありますから、指定物資を指定しますと、直ちにその標準価格をつくらなければならないことに法律上なっております。その段階においては、この法律のあとのほうの条文は二条、三条等に関連する立ち入り検査や調査権を規定をいたしておりませんが、その標準価格をつくるんだよ、だからおまえさんはその必要な資料を出しなさい、こういうことが当然言える。ただ、これは国民の権利も尊重しなければなりませんものですから、指定価格をきめて、標準価格をきめてしまって、告示をさせたり何かをして、いろいろの義務をかけたものについて立ち入り検査をするような場合はともかく、これは大切な物資だということを政府のほうから考えたとたんに、もうそこへ立ち入りをするというようなことは、これはこの法律全体の構成におきましても、あまりにも初めから強権的過ぎるのではないかということで、私はそのことを気がついておったわけでありますが、法制局ともいろいろな論議をしました結果、これで実効があげられるということで、ことさらに五条以下のところにのみ立ち入り検査を認めよう、こういうことでございます。
  186. 野間友一

    ○野間委員 私が聞いておるのはそんなことじゃありません。いま申し上げたのは、原価計算をするとおっしゃるから、原価計算をするなら原資がなかったらいかぬ、こういうことです。帳簿なり伝票ですよ。そうでしょう。ところが、そういうものをかりに備えつける義務、これはいろいろ帳簿の範囲については政令で定める、これはあとで聞きますけれども、備えつけるにしても、原価計算をする場合に、この法律では帳簿を見せろということもできない、あるいは立ち入り検査もできない。価格をきめる場合ですよ。法律上のそういう権限はどこにありますか。ありますか。
  187. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そのことをお答え申し上げたわけであります。いきなり政府がこれを指定物資としてきめたからといって、そこに立ち入り検査をするというような強権を初めから置かないほうがよろしい。しかし物資を指定しますと、それは標準価格をきめるものでありますから、当然法律の強権を用いずして資料の提出を求めることができる、そのほうがこの法律の民主的運営のためにもいいだろうという、私どもは私どもの判断をもちましてやったわけでございます。
  188. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、法律的には、この法律では調査権もあるいは立ち入り検査権もないわけですよね、価格をきめる場合に。そうでしょう。任意に行政指導で出すとか出さないとか、それはともかく、その場合にしても、見せろといっても見せる義務はないわけです、その場合。見せさす権利がないわけでしょう。だから、その行政上の指導としては、いろいろそのメーカーに対してあれこれされることはあるかもわからない。しかし、それを裏づける法律上の根拠が全くないじゃありませんか。
  189. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それは、野間さんは直ちに大企業を想定されるからメーカーと言われますが、その標準価格というものは、メーカーの蔵出し価格についてきめることもございましょうけれども、零細な小売り人の小売り価格をきめる場合もあるわけであります。両面できめるわけでありますから、これはメーカーではございません。しかし、これは主義、政策の問題でございまして、そういう零細の小売り人の扱う物資を指定物資としてきめたからといって、いきなりこの法律で強権規定を置いて、そこに立ち入りして、そうしてその原価やら帳簿、書類をひっくり返してみるのがいいかどうかというのは政策の問題でありますけれども、私どもは二十六条で指定物資の販売する者については、帳簿を備えたり、あるいは必要事項を記載するだけの義務は命じましたけれども、いきなり官憲がこれに踏み込んで立ち入り調査をするということはしないほうがよかろうという政策判断をもってやりましたが、これについては、いろいろ御批判やら、それぞれのまたお立場のお考えはあろうかと存じます。
  190. 野間友一

    ○野間委員 ですから、この記帳義務、これは罰則の裏づけがあります。ところが、調査とか立ち入り検査はない、価格をきめる場合。しかも、罰則の規定がないわけですよ。そうだとしますと、報告書を出さない、調査に応じない、これも自由なんです。立ち入り検査、これもありませんから、応じないことは、これは自由なんですね。出す報告書、虚偽のものでもこれは制裁がないわけでしょう。そうしますと、一体原価計算はどうやってされるのか。この点、法律上の根拠なしに、行政指導だけでやられる。裸でいくのと同じじゃありませんか。何の裏づけもないわけでしょう。それで、はたして原価の計算ができますかどうかということを私は聞いているわけです。
  191. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それを私はお答え申し上げたわけでありまして、法律上の強権がなくても、おまえさんが扱っている物資は、それは今度指定物資になって標準価格をきめるものだよ、だから法律上の強権で立ち入り検査はしないけれどもというたてまえのもとに、小売り人についていえば、いろいろな正常な販売経費の調査ができます。さらにまた、これは全部の物資についてとは私は言いませんけれども、例の七月つくりました売惜しみ緊急措置法におきましては、これはその物資を指定しますと、いま二十一品目が指定されておるわけでありますが、三条によりまして、強権的に帳簿の提出を命じたり、いろいろな資料の提出が命ぜられる。でありますから、あの買占め防止法のほうは、主として商社その他の大企業を想定したものでありますから、少なくともあそこに関する限りは、いまの強権的な資料の提出を命ぜられる、こういうことにはなっております。
  192. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、これは果てしなく続くと思いますから、途中でまた後日に譲りますけれども、せめて調査に応じなければならない、こういう規定すらなぜ設けなかったのかということ、しかも一方、小売りには、標準価格をきめられた場合には店頭でこれを掲示しなければならぬ、掲示しない場合には公表する、あるいは記帳義務、これはメーカーあるいは大会社の場合、法人ですから記帳義務は当然に義務づけられておる。これは通常なんです。ところが記帳義務は、実際に当たってくるのは、これは小売り商、中小零細企業じゃありませんか。八百屋のおやじさんやら魚屋のおやじさんに帳簿をつけろということは言えても、この記帳義務を認めなくても、大企業にはちゃんと記帳する義務はあるわけですよ。これは小売り商泣かせですね。一方では店頭に標準価格を掲示しろ、掲示しない場合には公表するぞ、あるいは立ち入り検査もあります。しかも、一方では記帳しろ、これはまさに末端の小売り価格に対しての規定でしかないわけです。ところが、私が問題にしている大きなメーカーですね、ここについては、立ち入り調査も、あるいは立ち入り検査の調査権、これも法律上、全くそれの担保がない。ですから、調査を拒否してもいい。虚偽のものを出してもいい。こういうものを信じて、はたして原価計算ができるかどうかということです。これは決してできるものではありません。  時間が来ましたので、この程度で留保して、次回にやりたいと思います。
  193. 平林剛

    平林委員長 山中吾郎君。
  194. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は、この法案については、有効に物価抑制政策として機能を果たすかどうか、その点を視点に置いて検討してみましたが、次の三点について疑問がありますので、各委員の質疑と重複しないように簡潔に御質問して、お答え願いたいと思うのであります。  一つは、この法案の構成そのものについて、第二には、この法律を執行する行政能力その他の外部の条件について、第三には、来年度の経済見通しとこの法案の役割りはどうなるか、この三点についてお聞きいたしたいと思います。  まず、法構成の点についてでありますが、これは各委員もあるいは参考人も、新聞その他の評価等の中にも共通をしておるのでありますが、二点共通の疑問があると思うのであります。その一つは、第二条の、いわゆるこの法案を発動する時期について、それから第二は、各委員が重ねて論議をいたしております標準価格の設定のしかた、この二点にしぼってお聞きいたしたいと思うのでありますが、この第二条には、「物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合」、これを外堀にして、内堀に個々の「価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがある」場合、「おそれがある」場合が二つあります。「おそれがある」ということは、価格が暴騰しない前の時期だから「おそれがある」と言っておると思うのでありますけれども、現実には、この種の法案は、価格が暴騰したあとに発動する歴史的事実がある。そういうことから、この法案に対する疑点が深いのであると思うのであります。  そこで、まず、第一の外堀のおそれ、「物価が高騰し又は高騰するおそれがある」、これを物価が高騰しない時期であるということをこの法文の解釈として一体言えるのか言えないのか、具体的にどういう時期に発動できるのかを長官からお聞きしておきたい。
  195. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ごもっとものお尋ねであると存じます。率直に申しますと、私は、いま山中さんの言われる外堀の状態はすでに来ておる。ということは、しまいのほうにございますが、「この法律は、公布の日から施行する。」ことになっておりまして、政府は、国会の皆さま方に一日も早くこれの可決をお願いをいたしておるわけでございますが、御可決をいただきましたならば、直ちに公布をする意思でございます。ということは、すでにもうあなたのおっしゃる、外堀の「物価が高騰し又は高騰するおそれがある」状態になっているんだ、こういうことを私は率直に認めざるを得ないと思っております、それはインフレと言うか言わないかは別といたしまして。一応それだけにいたします。
  196. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 「物価が高騰し又は高騰するおそれ」ということは、大体われわれの常識はインフレである。よく予算委員会インフレインフレのおそれがあるかということで、田中首相その他も論議をしておるのですが、インフレのおそれがある場合、こういう意味ですか。別のことばでインフレのおそれのある場合……。
  197. 内田常雄

    ○内田国務大臣 インフレということばは使わないことに、これは当方の都合でいたしておるわけでございますが、物価の高騰その他の事情で異常な経済事態が来ておる、こういう表現で御理解をいただければ幸いだと存じます。
  198. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 まずその辺で、これは一応お聞きしておきますが、その次、内堀のおそれ。個々の「価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがある」場合、これについては、たとえば灯油問題を例に持ってきますと、かりにこの法律が本年の四、五月ごろに成立しておった場合を仮定いたしまして、灯油が四百円、四百五十円、五百円となる前に、灯油の価格上昇するおそれがある場合として、七月、八月ごろに四百五十円にならない前に、三百八十円というふうな価格が上がったあとに中曽根通産大臣が宣言をして、それが事実何の効果もなくて国民から信用をなくするようなことにはならないで、この法律がかりに成立しておったとすれば、三百八十円で政府がその価格を維持しようとしたときに発動できるようにこの文章はなっておるのですか、どうですか。
  199. 小島英敏

    ○小島政府委員 なかなかやはり物の価格というものが先行きどういう動きを示すであろうかということはむずかしい問題でございます。したがいまして、一番わかりやすい例といたしましては、たとえば同種のものの海外価格が非常に暴騰しているというような場合、あるいはその消費財の原料であるものの卸売り価格が非常に急騰しているというような場合には、その当該物資消費者価格が現実にまだ上がっておりませんでも、まさにおそれがあるということで適用できるのではないかというふうに思います。
  200. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 この場合、投機規制法の場合と比較をしてお聞きしたいと思うのでありますが、投機規制法を発動する条件は、これは私、委員長のときにできた法律でありますから、責任があるわけでありますが、これによると、第二条に、「生活関連物資価格が異常に上昇し又は上昇するおそれ」、この法案は「著しく上昇」と書いてある。投機規制法は「異常」と書いてある。どっちのほうがひどいのか。それもお答えください。そして投機規制法のほうについては、異常に上昇した場合の中で正当に上昇した場合は除外をして、買い占め、売り惜しみが行なわれた場合なんですね。まずそれの場合、こっちの法律の場合は著しく上昇した場合であるから、売り惜しみ、買い占めというものはなくても、いわゆる不正、社会正義に反することがなくても、物価上昇したときにはこの法律は発動する。売惜しみ買占め投機規制法については、そうでなくて、不正なる行為があった場合だけが発動するというふうに一べつして私は解釈するのですが、そこで、この法律と投機規制法との関係はどういう関係になり、発動のしかたはどうなるのか、お聞きしたいと思います。
  201. 小島英敏

    ○小島政府委員 本法のほうは「著しく」という表現で、買占め防止法のほうは「異常に」というように使い分けしてございますのは、まさに先生のおっしゃいますような意味でございます。  それから、重要な点といたしましては、本法のほうは、先ほど来先生おっしゃいます外堀の条件というものがまずあって、それから内堀の条件を満たすときということでございますが、買占め防止法のほうは、外堀条件がございませんで、そのもの自体に着目して、まさに買い占めその他の反社会的な行為によって「異常に上昇し又は上昇するおそれがある場合」には買占め法のほうが発動される、そういうことでございます。
  202. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 十分理解できないのだが、著しいというものと異常という場合、異常のほうがひどい、そういう意味ですか。著しいだけでは異常ではない……。
  203. 小島英敏

    ○小島政府委員 「著しく」と「異常」が、パーセントでどっちが大きいかということはなかなかお答えしにくいと思いますけれども原因に着目して、やはり買い占め、売り惜しみというような仮需要、しかも普通の仮需要以上に反社会的な仮需要に基づくものである場合には「異常」という表現を使っている、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  204. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 こういう論議はまた別のときにしてもいいので、ここで時間をあまり使わないようにしたいと思いますが、常識的に日本の用語としては、異常の場合は著しいものよりもっと程度の高いものをさしていると私は解釈するのであって、その辺は解釈の統一をしてもらいたい。  そこで二条、この法律の場合については、買い占め、売り惜しみがなくても、その企業にとってはいわゆる生産コスト・プラス正当利潤の場合でも、著しく上昇したとき、おそれがあるときには発動するという意味ですか。
  205. 小島英敏

    ○小島政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  206. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そうすると、個々の企業にとって正当なる——売り惜しみ、買い占めしないけれどもコストが高くなり、正当利潤であっても、その企業を犠牲にする内容を持っているのですね。あと標準価格について、その矛盾をぜひ聞かなければならぬと思うのです。  それから、本法の関係と物統令の関係、附則で物統令自身が改正されておりますが、物統令についてはこの附則において改正をして同じ文章にしておりますね。第四条「主務大臣」の下に「物価が著シク昂騰シ又ハ昂騰スル虞アル場合」ということばを入れておるから、第二条の外堀と同じですね。こういう場合には物統令は価格を凍結する、ばさりと凍結価格を出すことができる。国民生活安定緊急措置法でも、個々の価格が著しく上昇したときは標準価格をきめることができる。これは競合してくるわけでありますが、ばさりとこの物統令を発動することもできるわけですか。その辺は両者の関係はどうしますか。
  207. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私からお答えをしたほうがよろしいかと思います。  この附則の第二条で物統令の第四条の改正をいたしておりますことはごらんくださるとおりでありますが、山中さんがお読みくださらなかったの一ですが、「物価が著シク昂騰シ又ハ昂騰スル虞アル場合二於テ」というところまではこの国民生活安定緊急措置法の二条と同じですが、物統令のほうの四条にもう一つ下に、おもしといいますか制約をかけまして、「他ノ措置二依リテハ価格等ノ安定ヲ確保スルコト困難ト認ムルトキ」で、ということは、国民生活安定緊急措置法でありますとか、あるいは買占め売惜しみ規制法でありますとか、そういうような措置によっても何ともし得ない場合には、初めて物統令への橋を渡るのだということで、その橋を渡るのには、他の措置ではどうしてもやれないというときに、非常におもしのある法律の適用をやむを得ないものとする、こういう考え方に立っております。
  208. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そうしますと、この法案を一応適用して指定標準価格をやってなお効果がないときだけ物統令が発動する、そういう第四条の読み方をされておるわけですか。
  209. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大体そうお考えいただいてけっこうであります。もっとも何かの非常な大混乱が——これ全く仮想な話でございますが、経済的な大混乱でも起きて、そうしてあたかも終戦後の事態と同じような状態、ということはこの物統令の第一条は終戦後の事態のことをそのまま残してあるのでありますが、そういうような同じような事態になって、国民生活安定緊急措置法の、やれ標準価格とかあるいは特定標準価格とかいうようなことをやってみたところで、とてもそのものでいろいろなことをやっているよりもという事態がかりにきた場合には、それは緊急措置法のほうの各条の手段を通さないということも理論的にはあり得るわけでありますけれども、通常はまず緊急措置法であらゆる防ぎをいたしてと、こういう意味でございます。
  210. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 いろいろのインフレ状況が出ると思うので、物統令を発動するかこの法案によるかということは、まずこの法案が先で次に物統令でなくて、そのときの判断でいずれかを選択することができるのだ、私はそう解釈をしたのですが、そうじゃないですか。あとで重要な適用の問題が出るので、これははっきりと言っておいてもらいたい。
  211. 内田常雄

    ○内田国務大臣 最初にお答え申し上げましたように、四条の改正が「他ノ措置ニ依リテハ価格等ノ安定ヲ確保スルコト困難ト認ムルトキ」という前提は、これはどうしてもこの重い橋といいますか、この橋だけはばずさない。緊急措置法でいくかあるいは物統令の四条の公定価格でいくかということを選択的にやる、こういう意味ではございません。
  212. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 業種の関係、品種目が千差万別であり、標準価格効果がないというふうな認定が先できる場合があると私は思うのです、こういう法案は適用しない前に。そのときに物統令が適用できるようにしておかなければ、これは役に立たぬのじゃないか。長官の解釈から言えば、この法案を適用しなければ物統令が発動できないという解釈ですね。私は間違いじゃないかと思うのですがね。もう少し考えておいてください、あとしばらく答弁の時間の余裕を残しますから。  その次に、この法案構成について一番世論で問題になっておるのはやはり標準価格である。標準価格について各層の国民が非常な疑問を持っております。私の意見を述べるよりは、各階層の評価をそのまま読んだほうが印象が深いから読んでみますが、十二月七日の毎日新聞のこの法案に対する「各界の声」という欄に、生活経済研究所長青木茂さんはこう言っておられる。「法案をざっとみるかぎり、業界がリーダーシップをとっての価格安定カルテルに思える。業界のリードで生活安定ができるぐらいなら、現在の経済混乱なんかおさなかったはずだ。標準価格などが決まっても、業界のいいなりの値上げムードに落ち着くとすれば国民にとってはマイナス要素の多い法律となる。」これが一つの評価。次にたいまつ新聞主幹のむのたけじさん。「国民生活が現実に苦しくなり、見通しを失ってしまっているときに、官僚が机の上で法規を考え、それでコントロールできるものだろうか。政府の発想は後追い心中型である。法の効果はほとんど期待できないだろう。」次に主婦連副会長の春野鶴子さん。「一番恐れるのは業界中心で価格が決められ、高値安定になることだ。監視の目を十分光らせるためには、いまいる役人がすべて企業に入り込んでも足りないでしょう。」次に全国消費者団体連絡会事務局長の大野省治さん。「物価対策は、すでにある独禁法や買占め・売り惜しみ防止法、物統令の強化、改正でも十分にやれるはず。新しい法律は運用の仕方によっては業界主導型の価格決定がなされる恐れが強い。」こうしますと、私の意見を述べる前に、各階層はこの標準価格について一番疑問を持っておるようだ。国会の中の審議を通じて、そういう心配がないということが明確にならないと、この法案においそれとわれわれは賛成はできない。大体、こればかりでなくて、一般の世論を聞きますと、標準価格についてそういう疑問が深いのでありますから、この点を長官は、そういう心配は絶対ないんだ、こういうわけで心配はないんだということをこの法案審議の過程の中で何回でもあなたは言わなければならぬ責任があるようです。  私はなぜそういうことを申し上げるかといいますと、いま発動する時期の外堀、内堀のおそれあるときにという文章の中で、投機規制法の場合には価格が上がるということと、その原因は買い占め、売り惜しみという社会正義に反する不正行為がある、それに対する一つの法の取り締まりでありますが、標準価格の場合については不正行為がなくても物価インフレ抑制その他の立場、国民生活を守る立場から標準価格をきめて押えていくというのですから、この点についてはおいそれと一方的に強権発動もできない事情もあるでしょう。そうして各企業ごとに原価計算が違うでしょう。百の企業があれば百の標準価格をつくってやらないと、ほんとうは額に汗をして正直に働いて、仕入れ価格が高くなったから正当価格をつけて売るという中小企業者に対しては、正当に働いている者に対して標準価格で罰を加えるということにもなる。そういう困難な性格を持った標準価格なのであるから、業界意見を聞くということも、これはやはり出てこざるを得ないだろう。売り惜しみ、買い占めに対する制裁ではないのである。正当に働いている業界に対する標準価格ですから。そこで論理的にも実際的にも標準価格をきめるということは物価抑制政策にはなりそうにないと私は思う。そういうことも含んでおるものでありますから、ひとつ私の疑問を解明してください。
  213. 内田常雄

    ○内田国務大臣 山中さんがお読みになりましたように、毎日新聞に載せられた各方面と申しますか、特定の方面の方々がお述べになったような心配がないように、また山中さんをはじめすでに今日までこの法律案審議の際に各委員から述べられましたように、標準価格というものが業界主導型で、ことに最悪の場合には業界自身がカルテルできめたようなものを政府が追認するというようなことがあっては全くならないと私は考えるものでございまして、御心配のようなことがないように納得のいく標準価格として価格の安定ができますように、長いことは申し述べませんけれども、そういう決意のもとに私は各省を督励し、あるいは監督権、総理大臣を通じて監督をいたしてまいる決意でおるものでございます。
  214. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 標準価格の客観的性格から私はむずかしいと申し上げているのです。  第三条の三項の標準価格の決定のしかたに生産費、輸入価格、仕入れ価格、こういう価格に利潤を加えて得た額、これは正当な額ですからね、企業ごとに考えてやらなければならぬものである。私は、だから売り惜しみとか、買い占めとかいう不正行為をやっておる企業に対する場合の制裁としてのいわゆる価格ではなくて、国民生活を守るという立場から企業を犠牲にするという標準価格という性格を持っている。したがって、それを企業ごとに価格をきめてやらなければ、中小企業については赤字価格になり、これは倒産も出る。もうつぶしてしまおうということになる価格だと思うのですね。したがって具体的に強権を発動して、そして一番安い価格できめることはできないですよ、標準価格の客観的性格からいって。できないでしょう。米価の場合については、農業というものは一般工業生産から不利なのであるから、そして国民の必需品というかっこうからバルクラインをして、そして生産費の高い農民を守る立場で最初から二重価格でやっている。だから、この思想も二重価格ならわかる。中小企業、零細企業を守る、その赤字分を補てんをする、そして国民生活関連物資も安くするという構想なら私はわかる。そうでなくて、何かこの法案の構成の中に、売り惜しみ、買い占めの不正行為を前提とした業者を観念的に想定をしてこれをつくったような錯覚があるんじゃないか。投機規制法と混乱をして、そうして投機規制法のように不正行為を前提として押えていく、それを価格面で押えるのがこの法案だという錯覚がどこかあって、標準価格を堂々と政府の権力でやっていくというふうな思想が当然のようになってしまっている。性格が違うでしょう。だから一方に国民生活を守る立場で安い価格をきめるならば補償を考えてやらなければならないだろう。高いもの、不正な超過金を取れば、これは不正だからいいでしょう。下のほうはそうでない。そこに法構成に間違いがあるのではないかと私は言うのです。そこに標準価格というものが技術的に困難だというばかりでなくて、との発想の中にどこか誤りがあり、正直に働く者を犠牲にするという要素があるから、これはこの審議の中で野党の意見も聞いて、一たん出したから突き通すという考えはお持ちにならないほうがいい、必ずこれは失敗するだろう、私はこの法案を読んでそう感じておるのです。したがって、問題だけ提起をして、まだ大ぜいの委員方々が論議をあらゆる角度からされるでしょうから、問題提起をしておきますので、長官のこういう問題についての審議に対する態度、過程についていろいろな問題を発見した場合には、それに真摯に即応してお考えになるという気持ちをお持ちかどうかを、この問題を提起してお聞きしておきたい。
  215. 内田常雄

    ○内田国務大臣 山中先生は当委員会委員長をなされて、前回の買い占め緊急措置法の制定にあたりましても、非常に直撃な御努力をいただいておりましたことに、私は非常に敬意を表するものでございまして、いまお述べになりましたことに一々私が反駁を申し上げたり、また意見を申し述べません。が、非常にいろいろの点を御心配いただいて、督励的な御忠告をも含めた御意見を私は十分心に銘じてまいりたいと思います。  ただ、先ほどお読みになった毎日新聞の四氏の御意見の中に、こんな法律をつくるよりも現在の物統令を強化して、そして統制価格でいけばいいじゃないかという御意見もあったようでありますが、それは私はさようなものではないように思いますので、その点だけは——これは山中さんの御意見ではございません、そこに述べられた方の御意見でありますが、最初に山中さんからも御意見がありましたように、物統令との関連を、物統令を修正しながらきめてありますが、その際にも、簡単に物統令を選択するというたてまえをとっておらないことからいたしましても、物統令適用についての私どもの慎重な態度をお読み取りいただけると思います。しかし、その新聞の御意見は、物統令というものは、もういきなり公定価格をつくりまして、それに違反した者は三倍以内の罰金を取るとか、あるいは何月何日の価格統制額を凍結してしまうというようなものでございまして、それを直ちにやったほうがましだと、こういう御意見にはにわかには私は賛成ができないことをちょっと申し添えさせていただきます。
  216. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 この問題はまた審議の過程の中で煮詰めていただきたいと思うのです。  ただ、あとのほう、統制令の、その他の措置によっては価格等の安定を確保するのは困難と認むるときですから、この二段、三段、四段階の三重構造の発動のしかたを法構成に持っておる生活安定措置法をやっておることは、もうその適用する前に物価の高騰はどうにもならないという状況を一判定したときに、物統令はこの法案を越えて発動する可能性があると解釈しておかなければまたたいへんだと私は思って、これは法解釈の問題ですから、法自身についての批判じゃなくて、この物統令の四条の解釈とこの法律の適用の解釈を、これをやらなければこっちがだめだという解釈をされておられては、あとで困るのじゃないですか。例外的にも可能性があることを言っておかなければたいへんじゃないですか。
  217. 小島英敏

    ○小島政府委員 私もいま気がつきましたので、たいへん恐縮でございますが、ミスプリントがございまして、新旧対照表の部分が、物価統制令の第四条でございますけれども「主務大臣 物価が昂騰シ」と書いてございますが、これは物価が「著シク」というのが抜けております。こちらの本文のほうはそういうミスはございませんが、この新旧対照表のほうがちょっと誤っておりますので、訂正いたします。  それから先生おっしゃいますように、普通の場合は先ほど大臣も申されましたように、第一段階、第二段階を通って最後の段階にいくわけでございますけれども、物統令の「第四条中「主務大臣」の下に「物価が著シク昂騰シ又ハ昂騰スル虞アル場合ニ於テ他ノ措置ニ依リテハ価格等ノ安定ヲ確保スルコト困難ト認ムルトキ」」ということでございますので、これはそういうふうに判断すればよろしいということでございます。ですから、あらゆる場合にこの第一段階、第二段階を経由しなければ第三段階がとれないということではございません。第一段階、第二段階ではすでに事態が急迫していて間に合わないと認めた場合には、物統令を直に適用できるということでございます。
  218. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 長官、もう一度言い直さなければいかぬのじゃないですか。
  219. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は言い直す必要はないと思うわけでありまして、物統令をいきなり適用して、状況判断によって、選択的に物統令の統制額をいきなりきめるということは、これはほんとうに統制に入りますから、たいへんなことでありまして、他のいろいろの手段を尽くしてもこれによらざるを得ないときにはと書いてある、やはりそこに大きな意味がある、こう私は思って進みたいと思います。しかし、これはいずれにいたしましても法律の読み方でございますので、一緒にこれをつくりました内閣法制局長官にも来ていただきましてお確かめをいただいたほうが、これは私だけが意地を張る問題では決してない、かように思いますので、その辺どうか委員長よろしく御配慮をお願いいたします。
  220. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私の聞くところによれば、長官と局長の解釈が違っている。そこで局長と長官が何か言うのはどうもぐあいが悪いだろうから、あとで正確に統一解釈をしてください、それまで保留します。  そこで長官、物統令の文章の中に、これを見ると、この第二条と物統令の四条は同じ文章に書いているが、いまわざわざ局長が、この法案の第二条の「物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合に」というのを、物統令では、物価が「著シク」ということばが抜けておると訂正している。著しいということばが抜けていると訂正しておる思想からいえば、これは第二条よりも、著しいということばを入れてあるという趣旨は、直ちに物統令を適用しなければならぬという場合を想定しておるから入ったと私はいま聞いておって解釈したのですが、おそらくそういう点において長官の解釈は、あとで法制局長官に聞いてもらってけっこうですが、直さなければならぬのじゃないかと思いますよ。それで私は次に答弁をされるまで保留しておきます。
  221. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が長官であり、物価局長役所の仕組みに従うと私の部下であるからということで、私が小島君を押えつけるつもりは毛頭ないのです。ただ、私は政策を担当する責任者として、ある事態が生じたときにいきなり今度の緊急措置法の諸手段をそのまま乗り越えて、閑却して物統令に走るということは、これは戦時あるいは戦後の統制状況を考えましても適当でない。ことにこの他の手段という中には、物価ばかりでなしに、物が上がりますときには物が足りない場合がございます。そこで緊急輸入の措置とかあるいは出荷の措置とか、あるいは余っているところから足りないほうへ物を持っていく措置とかいうこともやりまして、そうして物価の安定をはかろうというような手段が、うしろのほうに、ごらんのようにたくさんございますから、そういうことをやったりまた考えたりしてもどうにもならないというような場合に物統令に乗り移る、こういうふうに読むばかりでなしに、やることが、私は政策担当者としてはいいだろうと腹の中で思っておるわけでございます。しかし、私が幾ら思っても、この法律の書き方が、もうそれはおまえがそんなことを思っても、状況によってはどっちでも選択できるのだ、政府はそういう統一解釈だということになりますれば、これは私は責任者ではありますけれども、まあ皆さま方の仲間の一人として、きょうの私の発言はお許しをいただいて、それは政府の法制局長官を中心とする統一解釈に従うようにいたしたいと思いますので、その点ひとつ御了解をいただきたいと思います。
  222. 平林剛

    平林委員長 長官、ただいまの件は、政策上やりたくないとかやるべきでないという見解とは別に、法律上の解釈としては、それは小島局長の言われたように食い違っておりますから、後日法制局長官ともよく相談をなさって、あらためて御答弁をしていただきます。
  223. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 あまり長官くどくどしゃべっておると、あとでまた始末が悪くなると思うので、そのくらいにしておいて、あと研究してもう一度お答えしてください、あしたでも一あさってでも。私は、この法律がいつでも発動が手おくれになるということが国民から一番信用をなくするので、だから「おそれがある」「おそれがある」「おそれがある」ということばで事前に処理できるように、法案の文章がみなあるわけです。したがって、そういう立法の精神からいって、物統令発動の場合とこの法案の発動の場合について選択の対象になっているので、これをやらなければこれだというふうなことの解釈は、この法の「おそれがある」という文章の立法精神からいっても、やはり間違いではないかと思うので、それは次にお答え願うことにして、これは保留しておきましょう。  そこで、次に、時間がないので要点だけを申し上げます。この二つの法構成の中の疑問を提起して、提案者も、政府も各野党も、審議の中でもっと綿密に吟味をして、国民に笑われない法律になるように切望しておきます。  第二点のこの法案が成立したあと、執行するについて、執行が有効に行なわれる条件が備わらないと、この法律がまただめになるだろう。  その第一は、行政能力である。経済企画庁がこの法律の執行責任者でありますが、物価局ができても職員が非常に少なくて、調査能力あるいは情報の収集能力などはほとんどない。そういう意味において、この法律を執行するに必要な行政能力の強化というものは、これは法律全体がなければ、この法律ができてもだめである。標準価格の問題についても、各階層から業界のペースに乗ってしまうであろうといわれているのも、行政能力に対する不信である。だからこの法律と同時に、行政能力の強化について長官の決意をお聞きしておきたい。
  224. 内田常雄

    ○内田国務大臣 おっしゃるとおりであると思いますので、行政部内を強化するばかりでなしに、今回のこの法律の中には、地方公共団体の長にまで諸般の権限を委任をすることによりまして、この法律の執行に遺憾のないようにしたい、こういうことでそのような条文も入れてございます。
  225. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 一年間私は委員長をしておって、一回決議をいたしておりますが、決議が文章で終わるのでは国会の権威にかかわるので、その決議の内容をここでもう一度読んで、長官の善処を要望しておきたいと思うのです。  この行政能力の強化について、決議の第九項に「関係各省庁の物価行政を整備、拡充するとともにその責任体制を確立すること。特に新設された経済企画庁物価局を強化拡充し総合調査機能の強化を図ること。」各党全会一致をして決議をしてあります。私みずから二階堂官房長官にこれを直接渡して、作文に終わらないように善処方を要望した事項でありますから、覚えておいてください。申し送りはこれはしてないでしょうから、ここで明確に読んでおきます。それがこの法律を執行する行政能力の問題として非常に深い問題があるから申し上げているわけであります。  それから、私の持論でありますけれども、こういう法案ができて統制経済になることを心配をしておる。これは歴史から来た教訓なのでありますが、末端において、小売り業者というものはどこへ行っても商業組合、いろいろの組合の関係組織化されておる。しかし一方の消費者のほうは個々別々にばらばらなので、消費者組織化ということ、消費者行政を拡充をして、こういう機会に正当な価格を選択できる消費者の選択能力を付与するという消費者行政が強化されないと、この法案が施行された場合についても、最後までいわゆる戦時中の統制に入らなければ効果が出ないということになるのではないか。こういう法案ができる、また物資欠乏その他で政府が干渉しなければならぬようになるに従って、消費者行政をもっと強化すべきである。これも決議の八項目に「消費者運動を育成し、健全な消費生活協同組合への助成を進めるとともに、国、地方自治体の消費者行政を充実すること。」ということの決議もいたしてあります。この辺も忘れないように、長官の決意をお聞きしておきたいと思います。
  226. 内田常雄

    ○内田国務大臣 まことにごもっともの事柄であるとともに、私は当然のことであると考えますので、前回御決議の趣旨を、私が長官に就任いたしました後におきましても、その方向で進めてまいりたいと存じます。
  227. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は、農林省にしても通産省にしても全部企業保護省でありますから、企業省の立場であるから、閣議において対等に責任のある意見を述べる消費者省があって、消費者大臣と企業保護大臣が対等で論議ができるような国家機構がなければ、統制経済に移るしかないと実は考えておる、個人意見ですが。そういうことも考えておるものですから、消費者行政というものはこの機会にうんと進める、そしてできる限り自由競争の中で正当なる価格が安定するような方向に最大の努力を払われることを要望いたしておきます。そして、具体的プログラムその他については、今後また推進的な協力を申し上げたいと思うのであります。  最後に、もう時間でありますから、来年の経済の見通しとこの法案の機能はどう関連するかということをお聞きしたいのでありますが、この間、橋口委員の御質問に対して、経済成長率は四十九年度はどうか、六%なかなかむずかしいという御答弁があった。私は輸入石油がもとに復さない限りについては、日本経済石油の輸入量によって決定されると思いますので、もし通産省が考えておるいわゆる一六%減少のまま四十九年の経済に入っていけば、四十七年度の経済規模にならざるを得ない。したがって、経済成長ゼロというのがむしろ正しいと思うのでありますが、長官はその辺は経済成長率をどういう根拠でお考えになっておるか、お聞きしておきたいと思うのです。
  228. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先般橋口さんの御質問にお答えしたとおりでございまして、私ども四十八年度の経済成長率を最近改定試算をいたしました結果が、いまお述べになりましたような六・四%でございますから、それより引き上げるということは非常にむずかしいだろう。しからばそれよりどのくらい以下になるのか、ゼロになるのか、マイナスになるのかということにつきましては、私は必ずしもそのようにも見ておりませんが、いずれにしても、これは来年度予算編成などとも関連をいたしまして、私どもの仕事として、明年度の経済の見通し及び運営の基本方針というものを例年のとおりつくることになろうと思いますので、その間さらに検討を続けさしていただきたいと思います。ことに、石油の事情も流動的でございますので、それまでしばらくひとつ勉強さしていただきたいと存じます。
  229. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 石油の輸入量が本年度よりはふえないということが前提ならば、来年度の日本経済の規模は本年度と同じ、しからば経済成長率はゼロ。最も単純に私は算術計算をしているんですが、本年度より輸入量がふえるならば、経済は何%か成長するでしょうが、成長しないということ。いま輸入が減少したまま、三月までは、これはふえても、絶対もとに戻らないでしょう。三月にアラビア諸国と何らかの外交的な成功があって若干多くするとしても、復活するには三月、四月かかるでしょう。船だけでも四十日、一カ月以上かかる。したがって、来年度下半期までは石油は本年度並みになるはずはない。そうすると、経済成長率はゼロになる。ゼロにならざるを得ないのではないか、下がるんではないか。私は最も単純に考えるのですが、そう思いませんか。
  230. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いま申しましたとおり、せっかく検討をして、いろいろな諸条件を詰めております。山中さんのお考えとして承っておきます。
  231. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そういうことも考えられるので、そこで日本の生産についても拡大することはできない。減少することはもう当然だ。しかし賃金は上がらざるを得ない。来年の春闘も、労働者の側からいえば、物価の上がった分だけは当然賃金の要求をされるでしょう。それを、予算のほうは、ことしの規模にストップになるなら、ことしの規模どおり予算を編成すべきであるが、二三%をようやく二〇%にするという予算編成がすでに予想される。刺激予算にならざるを得ないと私は思うのです。経済の規模からいって、石油現状を前提とすれば、いわゆる本年度の予算規模そのまま据え置きするのでなければ合理的でないという感じがするわけでありますが、そういうことを考えて、来年度において、石油関係で生産規模は拡大しない、むしろ減少する。しからば、あらゆる物資について供給は増加するはずはない。品不足である。しかし購買力だけは上がる。品不足で高物価ということが必ず出てくるのではないか。そのときに、この法案はどういう発動をする余地があるんだろうか。ことしは物がたくさんあって、売り惜しみ、買い占めでいま問題になっている。来年になったときは、物がなくて、そうして仕入れ価格が上がり、正当の利潤を得るために小売り価格その他が上がらざるを得ない。それを標準価格で、おまえは悪いことをしておると言って押えるわけにはいかなくなってくるのじゃないか。もしそうならば、全部の物価凍結というならこれは恨みっこなしでまた別の問題であるが、こういう法案を発動する余地が来年度の経済の見通しの中から出てくるのかどうか。そういうことを私は考えるので、むしろ経済の私のような見通しをすれば、物統令、そうして投機規制法、この法案を強化をしてやる以外に道はなくなってくるのではないか。この法案の発動の余地はなくなるのではないかということさえ思うのであります。そういうことを考えて、この法律の全体の評価については、いま申し上げた法構成、内容についての評価と、この法律を執行する外部の条件である行政能力の増強いかんという問題と、来年度の経済の見通しとこの法律の発動の余地はどこに出てくるんだということを吟味して慎重に結論を出してもらわなければ困る。したがいまして、結論を申し上げます。  もの笑いにならない法律をつくってもらいたい。この物価特別委員会の中からもの笑いになるような法律をつくってもらいたくない。できた法律が、価格を引き上げる機能だけを発揮して、低い価格で押えることができないような、マイナスの効果だけ出るようなことになってもらいたくない。また、カルテルを増長する機能だけ発揮して、物価を押えられないということのないように慎重にしていただいて、野党の意見も真摯にお聞き願って結論を出していただきたい。  以上申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
  232. 平林剛

    平林委員長 次回は、明十三日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後十時三十七分散会