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1974-05-09 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長代理理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    小沢 一郎君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       近藤 鉄雄君    佐々木義武君       島田 安夫君    染谷  誠君       丹羽 兵助君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    美濃 政市君       諫山  博君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君       小宮 武喜君  出席政府委員         農林政務次官  山本茂一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君         農林省畜産局長 澤邊  守君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         環境庁企画調整         局公害保健課長 竹中 浩治君         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 遠藤  茂君         大蔵省主計局主         計官      宮下 創平君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         農林大臣官房審         議官      二瓶  博君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     近藤 鉄雄君   神田 大作君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     金子 岩三君   小宮 武喜君     神田 大作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 坂村吉正

    坂村委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が本日所用のため出席されませんので、委員長の指定により私が委員長の職務を行ないますので御了承願います。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤鉄雄君。
  3. 近藤鉄雄

    近藤委員 私は、本日この委員会の席をおかりいたしまして、いわゆるカドミウム問題、とりわけカドミウム米問題についていろいろ政府の御意見を承ってまいりたい、かように考えております。  このカドミウム問題が世上非常にクローズアップされましたのは、いわゆる神通川流域イタイイタイ病、世界にまれな奇病でありますこのイタイイタイ病というものの原因が何であるかということについていろいろ調べたところが、どうもカドミウムがその原因じゃないか、こういったような考え方からこの問題が一躍マスコミその他においても大きく取り上げられたわけでございますが、私その後いろいろ調べてまいりますと、当時はカドミウムイタイイタイ病というものが、たいへん密接な関連があるようなことで医者や学者方々も考えておられたようでありますけれども、どうもそういうことじゃないんじゃないか、むしろ直接関係づけることが間違いじゃないかというような御意見の方のほうが多くなっているような現状でもあるようでございます。しかし、そういうことでたいへんカドミウムに対する考え方が深まりましたので、いわゆる食料の中におけるカドミウム経口摂取量の規制をしなければならないというようなことだと思いますが、一PPM以上の米は食品衛生法からもこれは食料じゃない、こういうような形で規定をされているようであります。  そこで私は、まず最初にこの問題について関係当局に御意見を承っておきたいと思うわけでありますが、神通川流域以外の地域においてこれまでもカドミウム汚染地域があるわけでございますけれども、相当量実地調査をされたんだが、あまりイタイイタイ病と判定されるような患者は出なかった、こういうことを伝え聞いておりますが、このことについて事実をお知らせいただきたいと思います。
  4. 遠藤茂

    遠藤説明員 たいへん申しわけございませんが、担当の課長がまだ参っておりませんので、さっそくいま連絡いたしまして……。
  5. 近藤鉄雄

    近藤委員 それでは、環境庁課長が参る前に厚生省のほうに承ってまいりたいわけでありますけれども、一PPM以上のカドミウムを含む米は食品衛生法上はこれは食品ではない、こういうようにおきめになっているようでございますけれども、一PPM以上がなぜいけないか、この根拠についてひとつ簡単明快に承っておきたいと思います。
  6. 三浦大助

    三浦説明員 食品衛生法に基づきまして米のカドミウム含有量基準を一PPMと定めた根拠ということでございますが、米のカドミウム基準を決定する際に根拠といたしました資料は、アメリカアンワーが犬に行なった実験がございまして、それぞれ一日当たり〇・五PPM、それから二・五PPM、五PPM、一〇PPMカドミウムを四年間にわたって連日投与いたしまして、すべてのグループにおいて異常を認めなかったいうのが根拠になっておるわけでございまして、この実験におきましてカドミウム濃度が最も高かった一〇PPMの分が体重一キログラム当たり千マイクログラムカドミウムを摂取したということになるわけでございます。このことは、毎日体重一キログラム当たり千マイクログラムの投与で四年間に特に異常が認められなかったというのが根拠になっておりまして、動物実験の結果を人に適用する際は、これも国際的に通常齧歯類などの小動物の場合は百倍の安全率、それからサルなどの中動物の場合は五十倍の安全率をとるということが常識になっておりまして、この犬の実験の場合はほぼ齧歯類サルの仲間を考慮いたしまして約七十五倍というふうに考えまして、体重一キログラム当たり十三・三マイクログラムとしたものでございます。これは成人一人当たり六百六十五マイクログラムということに相なるわけでございますが、米以外の食品に由来するカドミウムの最高値が百五十マイクログラム、それから水からも入ってまいりまして、水に由来するカドミウムの量が十五マイクログラムを差し引きますと五百マイクログラムということになるわけでございますが、国民栄養調査、当時の昭和四十一年の実態調査を使っておりますが、これによりますと、米の一日平均摂取量が三百三十四グラムでございますから、これを大き目に見て五百グラムといたしまして、これから五百マイクログラムカドミウムが入るものといたしまして米のカドミウム濃度を一PPMというふうに定めてございます。
  7. 近藤鉄雄

    近藤委員 いまの食品衛生課長の御説明でも私なかなか納得できないのでありますけれども、まず二、三点非常に単純な御質問でありますが、お聞きしたいのでありますけれども、問題は日本カドミウムの問題であります。なぜ日本学者実験結果を使わないんですか。アメリカアンワーとかなんとかいう学者が犬の実験をしてこういう結果が出たということでありますけれども、私はたいへん厚生省不勉強だと思うのです。アメリカ学者実験を聞くのはいいのでありますけれども、これはたいへん大きな社会的な問題を起こしていることに対してただ一つ実験例だけで基準をきめるということに対しては、私は納得できないのでありますが、御答弁をいただきたいと思います。
  8. 三浦大助

    三浦説明員 この基準値は四十五年に設けられた基準でございますが、当時緊急事態としてああいう問題が出てまいりました。緊急にこれを定める必要があった。その当時毒性試験というものは国内にあまりございませんで、日本専門家を集めてその当時得られた内外の資料の中で、やはりアンワー実験根拠を置いてきめるのが一番いいのじゃないか、こういう先生方の御意見がございましたので、先ほど申し上げましたような理由できめたわけでございますが、なおその後毒性実験は現在でもまだ続いてやっておるわけでございます。
  9. 近藤鉄雄

    近藤委員 四十五年から現在まで相当年限がたっておるわけでありますけれども、繰り返し申し上げますが、そのときは緊急事態としてきめなければならない、これはわかります。すでにやった実験に基づいて数値をきめたということはわかりますけれども、しからば具体的にお伺いいたしますが、四年の間にどういう動物を使ってどういう実験厚生省でこの問題でおやりになったか、具体的にお聞きしたいと思います。
  10. 三浦大助

    三浦説明員 現在続けられております実験は、主としてマウスを使っての毒性試験——普通、毒性試験と申しますと、大体二年間の結果を用いて基準値がきまるわけでございますけれども、なお、長期慢性毒性という点も考慮いたしまして、現在マウスを使って毒性実験が続けられておるわけでございます。
  11. 近藤鉄雄

    近藤委員 それはもうちょっと具体的に承りたい。どういうふうに実験しているのですか。たとえばマウスを使って、毎日どれぐらいのものを投入して実験しておるのですか。たとえば、私はある人に聞いたんですけれども、マウスを使っての実験は、大体三〇〇PPMとか五〇〇PPMというめちゃくちゃな量のカドミウム毎日毎日マウスに飲ませたり食わせたりしまして、これでもか、これでもかといって調べているという話を実は聞いたことがあるわけでありますが、私は全くしろうとでありますが、しろうととして考えても、一PPMとか二PPMがどうだこうだという実験をするときに、三〇〇、四〇〇、五〇〇とは、およそ筋違いだと思うのであります。それは、何でも適量の問題がありますから、酒でもたばこでも砂糖でもこしょうでも、これは何でもそうだと思うのですが、めちゃくちゃ飲んだら、何を飲んだって、何を食べたっておかしくなるわけでありますが、そういう非常に人為的な無理な実験をしているという話を聞いたことがありますが、具体的に事実をお話ししていただきたいと思います。
  12. 三浦大助

    三浦説明員 カドミウム人体影響というものを研究する上での研究方法目的といたしまして、二つのことがあるわけでございますが、一つは、大量のカドミウム動物に与えまして、病気の発生機序を究明する、これはかなり大量を与えますことによってはっきり出てまいりますが、もう一つは、食品衛生の立場から、食品を介して取り込まれますカドミウム安全量を確認する、こういう二つ目的があるわけでございます。それぞれ実験は、大量に与えた場合の実験と小量に与えた場合の実験があるわけでございますが、ただ、四十五年にアンワー研究結果をもとにしてきめました場合、百マイクログラム以上までさらにどうか、こういう追及がまだその当時なかったわけでございまして、この点も含めまして、いま研究をやっているわけでございます。
  13. 近藤鉄雄

    近藤委員 まさにそうだと思うのであります。このアンワー実験等、いま課長の話をお聞きしてもすぐ感じるわけでありますけれども、ともかく一PPMまで、すなわち人間一人当たり一日六百六十五マイクログラム摂取していい、そこまでは何かだいじょうぶだということなんでありますけれども、しかし、それよりもよけいの場合はしからばどうだという実験も、具体的に、もう四年間たったのでありますからなされてしかるべきだと思うわけでありますが、そういう方向で実験がなされているかどうかについて承りたいと思います。現実に行なわれているかどうか。そして、何らかの中間報告がいま出ているかどうか。
  14. 三浦大助

    三浦説明員 かなり実験は進んでおるわけでございますが、まだ最終結果が出ておりませんので、いまの段階でまだ評価がむずかしいということでございます。
  15. 近藤鉄雄

    近藤委員 私は率直に言って、厚生省きわめて怠慢だと思うのです。これはあとでお伺いしますが、この基準が一PPMなのか一・五PPMなのか二PPMなのかということによって、非常な影響を受けるわけであります。これは財政負担を考えても、また地域住民農民負担を考えても、これはべらぼうなことなのでありますけれども、こういうことを、ただ四年前にアメリカ学者がちょっと一つ実験をしたということだけできめて、その後全く具体的な研究成果をいまだにあげていないということは、私は、これは厚生省としても重大な責任だと思わざるを得ないのであります。ですから私は、あえてこの場を介して委員長を通じて資料を要求したいと思うのでありますけれども、四年間に日本においてこの問題で行なわれた実験、まだ成果が出てないとおっしゃいましたけれども、一応中間報告でもけっこうでございますから、この犬だけではなしに、マウスでもいいですし、ラビットでも何でもいいです。ともかくもいろいろの実験を、これだけ大きな影響を与える数字をきめるわけでございますから、四年間に何をしたか、その結果について、厚生省のほうから資料を要求したいと思いますが、お願いいたします。
  16. 三浦大助

    三浦説明員 毒性試験というのは非常にむずかしゅうございまして、かなり長期慢性毒性ということになりますと、非常に慎重にやらなければならぬ場合もございますが、先ほども申し上げましたように、いま研究はかなり進んでおりますので、現在得られたデータで手元にあるものは先生のほうにお届けしたいと思います。
  17. 近藤鉄雄

    近藤委員 くどいようですけれども、四十五年から四十九年まで、四年間たっているわけでございます。アンワー実験が、四年間の結果で出しているわけでありますから、できないはずがないのです。ですから、この点については資料を要求すると同時に、もうちょっと具体的な実験をして結果を出していただきたいと思います。  そこで、議を進めますが、かりにこのアンワー実験が正しいとして考えても、先ほど課長の話でも、一日の成人摂取量が六百六十五マイクログラムまでいい。そこで、水から入るのが十五マイクログラムで、水以外の副食から百五十マイクログラム入ります。そうすると、五百マイクログラムはいいということで、それを、四十一年の統計によると、日本人一日平均三百三十四グラムの米を食べるから、これを大きく見て五百グラムということで割れば一PPMという数字が出るのだ、こういう話でありますけれども、これは食糧庁長官に伺いたいのでありますが、四十一年から現在まで、おそらく私は日本人の食べる米の量は減っているのではないか、今後もさらに減るのではないか、かように考えますと、その三百三十を五百と考えて割るということがいいのかどうか。具体的に申しますと、五百マイクログラムを五百で割るから一PPMという数字が出てくるわけでありますけれども、もしもこれを三百三十で割れば一・五PPMという数字が出てくるわけであります。ですから、これはまるめて五百でやるか、三百三十でやるかによって、一になるか一・五になるかということが違ってくるわけであります。  そこで、食糧庁長官に承りたいわけでありますけれども、かりに一・五PPMまで食糧として考えていいのだ、こうなりますと、現在いろいろ問題になっておりますカドミウム米がどれぐらい減るものかについて、数字を示していただきたいと思います。
  18. 三善信二

    三善政府委員 いま先生お尋ねの、一・五PPMまでいいとしたらどのぐらい減るだろうか。一・五PPMまでというそういう推計はちょっとできませんし、それは数字的にはなかなか答えられないのではないか。私もその辺少し研究しないといますぐお答えできません。
  19. 近藤鉄雄

    近藤委員 しからば承りますけれども、いわゆる四十八年度産米でもけっこうでございます、また四十八年度の数字が出ていなければ四十七年度でもけっこうでございますけれども、一体日本全国でどれぐらいの米ができてきているのか。そのうち一PPM以上の米が幾らあるのか。また、これもあとで御質問いたしますけれども、食糧庁は一PPMだけでは心配になってきて、最近はまたちょっと変わったかどうか知りませんが、ちょっと前までは〇・四から一PPMまでも、これは要注意だ、こういうことで、一応買っていらっしゃるようでありますが配給はしない、またそのような米を自主流通米として流通することをある程度抑制をしていらっしゃるようでありますけれども、たとえば〇・四から一PPMまでの米は一体幾らあるのか、一PPM以上の米は幾らあるのか、具体的に数字を示していただきたい。
  20. 三善信二

    三善政府委員 全体的な数字最初に申し上げますと、四十四年以前の産米から四十七年産米までで、一PPM以上のこれは食糧庁が現在保管している米でございますが、大体千八百トン、それから〇・四から一PPM未満が二万七千二百トン、計で〇・四PPM以上の米を現在政府で在庫しています量が二万九千トン、このほかに実は県の要請によりまして、ひとつ安全度を見て売却を保留してもらいたいということで売却保留をしているものが一万四千四百トン、それを全部入れますと四万三千四百トンになります。  これは四十七年までの話でございますが、四十八年はそれじゃ一体どのくらいあるかというお尋ねでございますが、四十八年の数字につきましては、まあこれは〇・四PPM以上のカドミウム含有米政府買い入れの一応の推計でございますけれども、大体一万二千トンと推定されます。うちこれも推計ほんとうに恐縮でございますけれども、一PPM以上の含有の米、これは全国の全体の発生量ですね、それを非常に大まかな推計をしてみますと大体二千トンぐらいになるのじゃないか、大まかな推計をしてみましたら大体そういうふうな数字になります。それから御承知のように先ほど先生言われましたように、一PPM以上の米についてはこれは食糧庁買い入れをいたしておりません。それから〇・四から一PPM未満、これは買い入れておりますけれども、消費者感情を考慮いたしまして配給のほうには現在回していないという状況でございます。
  21. 近藤鉄雄

    近藤委員 ついでに承っておきますが、この四十七年、四十八年、〇・四PPM以上の米というものは食糧として配給しない、食管で買っても、食糧庁が買っても配給しない、また一PPM以上は買わない、こういうことだとすると、それだけの米がいわば少なくとも商品としての価値を失っているわけでありますけれども、これは一万円米価をかければ数字が出るわけでありますけれども、一体こういうカドミウム関係で、本来ならちゃんと商品価値があるものが価値がなくなっているわけでありますけれども、そういうように一PPMときめた、また〇・四ときめたからなくなった価値の総量は、これは概算でけっこうですが、一体幾らであると計算をされていらっしゃいますか承りたいと思います。
  22. 三善信二

    三善政府委員 先ほども四十七年までの数字で、トータルで四万三千四百トンと申し上げました。これに買い入れ金額といいますか、政府買い入れておりますから、その年々の政府買い入れ価格で試算をしてみますと約六十億円ということになります。
  23. 近藤鉄雄

    近藤委員 四十八年は。
  24. 三善信二

    三善政府委員 四十八年は、先ほど一万二千トンと申しましたから、現在の買い入れ価格トン当たり約十七万一千円でございます。それをかければ出てくるわけでございます。
  25. 近藤鉄雄

    近藤委員 そうすると幾らなりますか。計算してください。
  26. 三善信二

    三善政府委員 いまの計算でいきますと大体約三億四千万円でございます。
  27. 近藤鉄雄

    近藤委員 私は食糧庁長官にもちょっと言いにくいのですが申し上げたいと思うのでありますが、私はこの問題のしろうとであります。しろうとの私が、いま厚生省食品衛生課長の話をお聞きしてちょっと考えただけで、すなわち一日当たり摂取量が五百グラムなら一になるけれども三百三十で計算すれば一・五PPMになりますよ、こういうことであります。これは全く勘で言っておりますけれども、かりに一・五まではあってだいじょうぶなんだということに数字がなったとすれば、私は四十七年までの四万三千トンなり、また四十八年産米の一万二千トンなり、そういうむだな米は発生しなくてよかったと思うのであります。そうしてあえて私はお金の値打ちをお聞きしたわけでありますが、これまで六十億、これは大ざっぱにいえば六、七十億の価値が、これは県が払うとか農家の人が泣き寝入りをしたとか、食管で買って配給をしないとか、いろんなそういう負担をだれがするということはありますけれども、問題は国民経済全体の中でだれかが六十数億という金を負担してきたわけであります。それがいわば、ただ一PPMにしたというだけで起こったとすれば、私はこの食糧庁、まさに米の行政の最高の責任者であるところの食糧庁方々が、安易に厚生省が一PPMときめたから、したがってそのとおりいたしましたということを言えるのかどうか、私はたいへんに疑問に思うわけでありますが、長官どうですか。
  28. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 お答えをいたします。  このカドミウム濃度が〇・四から一PPMまでの間は、食品衛生法によってこれは食べても害がないということになっておると承知をしておるわけでございます。したがって、農林省としてはこれを配給することは可能であると考えるわけでございます。ただ、消費者感情というものを考えなければならないということでございまして、これをただいま御質問のような趣旨によりましてどう処置するかということは、消費者感情というものをわれわれは計算をしていきたい、頭に入れていまやっておるわけでございますが、しかし、この問題は御意見のとおりでございますので、今後慎重にこれを検討いたしまして、そうしてしかるべき処置をとりたい、こう考えておるわけであります。
  29. 近藤鉄雄

    近藤委員 政務次官から消費者感情を考慮しなければならぬというお答えでございますが、消費者感情というものはまさにつくられているものなのであります。何も大ぜいの日本消費者が、全部カドミウムの問題について十分研究してこうだというのでなしに、先ほど最初に申し上げましたように、イタイタイ病カドミウム関係というものがマスコミその他の非常な話題を呼んで、それに追い打ちをかけて一PPM以上は米じゃない、食糧じゃないと厚生省がいう。これも私は先ほど来問題にしておりますけれども、非常に安易な外国のただ一つ実験例をもってきめた数字なんですよ。これに基づいて一PPM以上ではいけない、それからさらに下がっていって、どうも一PPM以上もいけないけれども、これは下げるほどいいんじゃないかということで、〇・四PPM以上もどうもあぶないような形にしてしまったわけでありますが、消費者感情感情政務次官おっしゃいますけれども、消費者感情なんというのは、私を含めて、ないのですよ、それは。それは政府の皆さんがそういうものはいけないとおっしゃるから、それを新聞が書き立てるから全くおかしく思うのであって、私は繰り返し申しますが、厚生省もけしからぬと私は思うのです。非常に安易な実験もとにしてこういう重大な基準をきめて、けしからぬと思いますよ。それから同時に直接米というものを取り扱っている——すでに私もこっちへ来る前に米価の要求の大会に行ってまいったわけですけれども、それだけほんとう日本農民が必死になって考えているこの米の問題について、一体農民はだれをたよっているのですか。それは農林大臣農林省であり、食糧庁なんですよ。その農民ほんとうにたよっている食糧庁農林省が、いま私がお聞きしても、一PPM以上の数字は出ておりません。私はおかしいと思うのです。大体そうでしょう。調べるときに全部ちゃんと抜いてきめるのですから、だから一PPM以上は、基礎的な資料があるはずですね。整理をすれば一PPMから一・五まで幾らだとか、一・五から二まで幾ら、二から二・五まで幾ら、二・五から三PPMまで幾らという米が日本全国地域的にどこにどう散らばっているかということがわからないはずがないですよ。それもしないで、一PPM以上全部いけないといってしまっていることに対しては、私は食糧庁は怠慢だと思うのです。考えていただかなければならない重大なことだと思うのであります。しかも、私は繰り返し申しますが、ここで食品衛生課長から一言聞いただけでちょっとひねれば五百でなしに三百三十でいい。おそらくこれから日本ではもっと米を食べぬようになってまいりますから、三百でもいいかもしれない。二百五十でいいかもしれないですよ。それを割ればすぐに一・五の数字が出てくる。それからいまの話を聞いたって、これまではいいんだ、犬に実験してみたらこれまではいいんだと言っているんですよ。しかし、もっと先いいか悪いか、なぜ実験しないのですか。怠慢だと思いますが、政務次官どうですか。
  30. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 御意見の点は、理論的にまさにそのとおりだと思います。先ほど申しましたように、一般においての空気を考慮いたしました関係上、現在のような処置にいたしました。それでこの問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたようによく検討をいたしまして処置をしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  31. 近藤鉄雄

    近藤委員 長官どうですか。
  32. 三善信二

    三善政府委員 先生がおっしゃいました一つは、農林省でもっと積極的に調査研究を独自でやったらどうか、厚生省にまかしておくのはおかしいじゃないか、こういう御意見だったと思いますが、このカドミウムの許容基準、これにつきましては、先生も御承知のように、安全基準は人の健康に関する重大な問題でございますし、それは役所でも、もち屋はもち屋ということで、厚生省がそういう問題は主管的にやっているわけでございますから、厚生省でそういう問題はやはり研究をし、学者その他の意見もいれて十分研究されておられるということで、農林省食糧庁でそこの分野まで入って研究せいとかいうようなことはちょっと行き過ぎではなかろうかという感じを私は持っております。
  33. 近藤鉄雄

    近藤委員 もち屋はもち屋といいますが、もち屋がはっきり言って信用できないのですよ。繰り返し申しますが、もち屋のやった実験がこういうことなんですよ。なぜ五百で割らぬのですか。   〔坂村委員長代理退席、山崎(平)委員長代理着席〕 ほんとうに皆さんが真剣にこういうものを考え、ほんとう農民のことを考えているなら、繰り返して申しますが、ちょっと考えればこんなことはわかることです。それはもち屋がきめたんだ。もち屋かきめたって——たとえばあなた方が、運転手がおって運転しておる。運転して走っておる。前から車がくれば必ずぶつかりますよ。これは運転手は専門家だから、運転手にまかせて走ってぶつかってもいいんだと言いますか。言わないでしょう。皆さんの生命がかかっていれば、財産がかかっていれば、もち屋はもち屋、そんな安穏なことは言っていられないですよ。ほんとう農民にとっては生命、財産がこの数字にかかっているんですから。それをもち屋はもち屋でけっこうでございます。——私は繰り返し申しますが、政務次官食糧庁長官怠慢ですよ。もう一回御答弁をいただきたい。
  34. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 ただいま御意見をいただきまして、農林省としての怠慢といわれる点については、そういうように御観察をされる一つの要素はあることと私は思います。したがって、先ほど申し上げましたように、この問題はさらに関係の方面にも意見を徴しまして、国民の感情も入れながら御説の方向に向かって努力をいたしたい、それだけを申し上げます。
  35. 近藤鉄雄

    近藤委員 私はこの場をおかりして、政府農林省、そして食糧庁、そして厚生省関係各省に強く要望しておきたいことがありますけれども、こういう単純な間違いをしている。私は間違いだと思うのです。こういうことで世間に対して大きな騒がせをしているわけでありますから、早急に、しかも時間を限って、一PPM以上は米なり食料にあってはならないとかなんとかいうこの一PPMという数字について新たに検討していただきたい。早急に検討していただきたい。していただけますか、政務次官
  36. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 ただいまの御意見のとおりに私も感じて先ほどの御答弁を申し上げたわけでございまして、今後なるべくすみやかに結論の出るように検討していきたい、こう考えております。
  37. 近藤鉄雄

    近藤委員 すみやかにというのはいつですか。
  38. 三善信二

    三善政府委員 近藤先生のおことばを返すようで非常に恐縮でございますけれども、やはり、この安全基準の問題というのは、それは普通の場合と違いますし、専門的にほんとう学者先生方、そういう方々の衆知をしぼってやるべきものだと私は思っています。それで、そういう再検討をする必要があれば、厚生省のほうでひとつ真剣に取っ組んでいただいたほうがむしろベターだと思います。
  39. 近藤鉄雄

    近藤委員 繰り返し申しますが、あなた方が農民の立場を考えておるのでありますから、あなた方が米のことを考えているんですから、ですから、逃げないで、さっそくきょう午後でも厚生省に話をしてください。私は厚生大臣に申し上げたい、環境庁長官に申し上げたい、農林大臣にも御出席賜わって御要望申し上げたいわけでありますが、できるだけ早く、このぐらいの数字の検討はすでにあるデータを調べたら——だから、私は資料の要求をしているんですが、調べれば、一カ月あれば、一カ月以内に、一PPMという数字がいかにいいかげんなものだとわかるのですよ。厚生省が専門なら厚生省が中心になって、厚生大臣が中心になって、農林省食糧庁長官環境庁長官関係各省の局長が集まられて、再検討を一カ月以内にしていただきたいが、どうですか。
  40. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 ただいまの御意見のとおりに実行できるように、関係の、たとえば厚生省そのほかとよく早急にいろいろと御協議を申し上げて処置をいたしたいと考えております。
  41. 近藤鉄雄

    近藤委員 厚生省、どうですか。
  42. 三浦大助

    三浦説明員 私どもの考えといたしましては、大体食品に有害物というものがあってはならぬわけでございますが、それがどこまであったらいいかということの研究というのは非常にむずかしいということでございまして、特にやむを得ず食品中に含まれてくるという場合は、慢性毒性の試験の結果得られた最高値をとって安全率をかけてきめるというのが国際的な常識になっておるわけでございます。先ほど先生の御指摘の御意見もありますので、いま慢性毒性実験もやっておるわけでございます。必要があれば、もちろん私ども検討するにやぶさかでございません。
  43. 近藤鉄雄

    近藤委員 食品に毒性があっちゃいけないなんということを言っちゃいけないのです。繰り返し申しますが、これは量の問題です。砂糖だって、アルコールだって、たばこだって、程度が過ぎればそれは全部毒なんですよ。水銀だって、だれかが言っていましたよ、ごく少量飲めば薬になることだってあるんですからね。われわれは蒸留水を飲んで生活しているんじゃないのです。蒸留水で米をつくって食っているんじゃないのです。いろいろなものを含んだものを食べ、飲みしているわけです。だから安全は安全に越したことはないですよ。ないですが、しかし、だからといって何でもかんでもこれはいけないということで、不必要に国民の食生活に不安感を与えることが正しい政治だと私は絶対に思わないのです。ほんとうにあぶないならあぶないんだ。しかし、あぶなくないものはここまであぶなくないんだから御安心くださいということを言うのが、私は国民のほんとうの安定を願う政治のあり方ではないかと思うのであります。そういう観点から言って、厚生省はけしからぬ。この間一騒ぎした魚の問題もそうです。チクロの問題もそうだ。安易にそういう数字を発表して、国民に非常な不安感を与えていることに対して、私は厚生省として責任をとっていただく必要があると思うわけであります。繰り返し申しますが、ともかく新たに実験をする、これは時間がかかるかもしれない。しかし、すでにある実験を整理して——私は繰り返し申しません。整理するだけで一PPMがいかにいいかげんな数字かわかるのですから、そのくらいの決論は、幸い国会が延長になりましたので、今国会中に出していただきたい。私は国会末にもう一回この問題についてしかるべき委員会で御質問申し上げますので、その段階で、暫定でけっこうでありますから一つの結論を出していただきたいと思います。環境庁どうですか。
  44. 三浦大助

    三浦説明員 このカドミウム問題はいまかなり国際的にも議論になっておりまして、WHO等でもいろいろ基準の検討をやっておるわけでございまして、それと並行して私どもこれを再検討しなければならぬという時期には来ておるわけでございまして、先生の御趣旨も体しまして検討はしてみたいと思います。
  45. 竹中浩治

    ○竹中説明員 カドミウムの中毒の問題につきましては、私どもも非常な関心を寄せておりまして、御承知のようにイタイイタイ病中心に非常に研究をやっておるわけでございます。ただいま先生お話しの一・〇PPMの問題につきましては厚生省と十分協議をいたしまして、できるだけ早く結論を見出すようにいたしたいと思っております。
  46. 近藤鉄雄

    近藤委員 私は、直接環境庁長官、厚生大臣、農林大臣にお話をいたしますが、ひとつどうか、きょう御出席の政府委員方々も、帰られたら大臣、長官によろしくその点をお伝えいただきたいと思うのであります。いかにこの基準が相当ないわば害毒を流しているかということについて、もう一つ突っ込んで承りますが、これに基づいて土地改良したり土壌の改良をしなければならない——農林省に承っておきたいわけでありますけれども、このカドミウム関係の土壌改良の費用というものは一体どれくらいのものか、数字がおわかりでしたらお知らせいただきたいと思います。
  47. 二瓶博

    ○二瓶説明員 お答え申し上げます。  農用地土壌汚染対策関係の四十九年度の農林省関係の予算額でございますが、一つは概況調査関係の経費がございます。これが二千四百二十一万七千円でございます。それから現地改善対策試験というのをやっております。これに要する予算額が千百十八万一千円でございます。それから対策計画の作成費でございますが、これの関係が二百七十五万三千円。それから公害防除特別土地改良事業、これは公共事業になりますが、この関係が二億九千七百万円。それから非公共のほうでございますが、小規模公害防除対策事業、これが三千三百九十万円ということに相なっております。
  48. 近藤鉄雄

    近藤委員 私はそういうことをお聞きしているのじゃないのです。いわば土地改良、その土壌汚染防止に基づいて全国カドミウム対策としてやらなければならない費用ですね。その総事業量というものは、たとえば私が直接関係しております山形県の南陽市におきましても、これはどんなに見たって二、三十億ぐらいの金がかかると思うのですよ。一PPM以上だけじゃなしに、〇・四から一PPMまでの米も農民の目の前で一応食糧庁は買ってくれますけれども、しかし、それは配給しないということになっておれば、みんな米は気持ちよくつくりませんよ。だから当然農民としては〇・四から一PPMまでの汚染地域についても土壌改良を要求するのはあたりまえだ。いわゆる汚染者負担原則、PPP原則に基づいて会社にツケを回す、何をする、それはいいと私は思うのですよ。いいのですが、問題は、国がやろうが会社がやろうが、国全体のお金から考えれば同じことなのです。私は、全国でこれを取り上げて土壌改良をするとすれば、おそらく何十億じゃない、何百億の金が、要らなくてもいい金がかかると思うのですよ。繰り返し申しますが、一から一・五に変えただけで何百億の金を使わないで済むようになる。私は、きょうは農林当局にも言いにくいことを申し上げて恐縮でありますけれども、このことに基づいてどれだけの国家財政、国家資金もしくは会社資金が必要になるかということに対する何らの計算もしていらっしゃらないとすれば、私は、これも農林省は怠慢だと思うのです。もしもいま数字がおわかりでなければけっこうですよ。非常にラフな数字でもけっこうでありますからはじいてみていただきたい。
  49. 二瓶博

    ○二瓶説明員 先生御存じのとおり、農用地土壌汚染対策を進めます際に細密調査等を環境庁中心でやりまして、その後地域指定をやります。それから対策計画を立て、さらに事業を固めていく、こういう姿でいまやっておるわけでございますが、一つは現在対策をやっておりますところ、これは五地域ございまして、この五地域につきましてはそれぞれ総事業費というのはわかっております。この五地域を総計しました事業費の総額は大体二十億七千三百万円程度になっております。それから、その他の現在計画を立てているところとか、あるいは地域指定をやっておるところ、こういう面につきましては、さらにどういう事業をやるかということにつきまして、県のほうが中心になって、地元の意向等も聞きながら検討をしておる段階でございますので、具体的に事業費が幾らというものは確定をいたしておりません。したがいまして、その辺は数字的にどのぐらいの事業費になるかというのは一応申し上げるほど固まってはおらないわけでございます。そういうものも一応のおよその推定でもやっておらぬのは怠慢ではないかというような御指摘かと思いますけれども、一応まだ固まっておりませんので、そういう面ではちょっと差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  50. 近藤鉄雄

    近藤委員 先ほど説明にあったのですが、米だけでも六十数億の金が消えちゃっているわけであります。そして不必要な土壌改良をするために、これに数十億、場合によっては数百億の追加負担がかかるとすれば、私は繰り返し申しますが、政府として全体を考えて——ばかな話なのですね。一体厚生省はこのカドミウムの一PPMをきめるために幾らの金を使ったのですか。
  51. 三浦大助

    三浦説明員 四十五年当時、急いで基準をきめるということで専門家を集めて微量重金属研究会を開いてきめたということを私ども伺っておりますけれども、金額が幾らかかったかということは私、ちょっとわかりませんので、申しわけありませんが……。
  52. 近藤鉄雄

    近藤委員 おそらく数百万もかけていないと思うのですね。そこが問題なんですよ。片っ方で簡単にきめておいて、片っ方で何十億、何百億と金を使っているのですから、私は、これは正しい政府のあり方とは思わない。だれの責任とかなんとかじゃないのです。それはいけないことなんですよ。今年度だけで三億の金がかかるとおっしゃっているのだから、それを回したっていいわけですよ。国全体で資金の効率をもっと考えていただきたいのですが、長官、さしあたってお聞きしたいのですけれども、私はなぜ一カ月と申しますかというと、少なくとも一というのはたいへんあいまいな数字だ。むしろ一・五だってだいじょうぶなんだという結論が出るから私は申し上げているのでありますから、そういう観点から考えますと、〇・四から一の米は一応買いますけれどもこれは配給しないというようなことを即刻やめていただきたいのでありますが、どうですか。
  53. 三善信二

    三善政府委員 この問題につきましては、先ほど政務次官からお答えしていただきましたように、なるほど先生のおっしゃるように、理論的に言えばそれは有害でないということは言えると思いますけれども、当時カドミウムの一番問題であった時期でもありましたし、国民の、消費者感情ということも、これまた、単に新聞でつくられるとかなんとかいうようなことだけではなくて、それも非常に重視しなければならない点もございました。現在それは配給していないというのが実情でございます。この問題についても、先ほど来の先生の御趣旨は何とかもっと前向きで積極的にやれという御趣旨だろうと思いますが、厚生省ともまたいろいろ御協議、御相談も申し上げていきたいと思っております。ただ、そう単純にいかないような点もあろうかと思いますので、その点は慎重に検討していきたいと思っております。
  54. 近藤鉄雄

    近藤委員 どうもきょうは繰り返しばかり申し上げて恐縮なんですが、これは繰り返し申さないとほんとうにわかっていただけないから繰り返し申すのでありますけれども、国民感情というものはつくられたものなのであります。そんなものはあるのじゃないのですよ。厚生省農林省が不用意にいろいろな数字を発表するから、それをマスコミに載っけるからそういう国民感情ができてしまうのだから、間違ってきたのだから、それを改めるために、やはりマスコミを使ってじゃんじゃんPRする必要があると私は思いますので、ぜひひとつ早急に——だから繰り返し申し上げるが、今国会中に一応の結論を出してもらいたい。少なくとも一PPMという数字は非常な安全な数字なんです。少なくとも一・五PPMまではだいじょうぶなんだという結論は、いまのデータによってもできるわけであります。私は、それに基づいて政策を考えていただきたいということを、重ねて強く要望しておきます。  そこで、もう時間がありませんから、私は、この際お願いしておきたいわけでありますが、そういうことで、非常に思いつきと言ったらオーバーですが、ぱっときめたのですよ。あわててきめたのです。それで農民負担し、苦しみ、それを受けて、たぶん山形県なんかの場合だって、国が冷たいから、全部県がちゃんと農民を補償している。市がめんどうを見ている。また、場合によっては、一でも一・五でもいいものを、これを汚染米と称して全部会社の負担につけている。会社が負担したからいいものでもなければ、県が負担すればいいものじゃないのです。一・五にすればそんな必要はなかったのでありますから。山形県の南陽市の問題を含めて、従来すでに四十七年産米についても県が全部払って補償しております。買い上げている。食糧庁が買ってくれないですからね。その分については、あくまで国の責任において、県がたてかえ払いをしたものに対しては国が全部払っていただきたいと思うのであります。方法は問いません。方法はいろいろなものがあってもいいと思いますけれども、少なくとも農民や地元の県などの負担にならないように、国が自分の責任できめたことなんでありますから、国の責任でやっていただくことを強く要望したいと思うのですが、政務次官、どうでしょうか。
  55. 三善信二

    三善政府委員 一PPM、これは現在の安全基準でございますから、一PPM以上の米は有害であるし、食糧庁としてもそれは変えないということは現在の段階では非常にはっきりしているわけでございます。したがいまして、それではどういう処理の方法があるかということも、私ども、日ごろ学識経験者の方々に集まっていただいて、いろいろ苦労して研究しているわけでございます。したがいまして、最近までの私どもの研究しました結果によりますと、これはやはり、たとえばアルコール原料に使ったらいいじゃないかという問題が一つある。アルコール原料に使うとやはり残滓が残る。そういうことで、その残滓の処理をどうするかという一つの大きな問題もございますし、合板の接着剤ですね、それに使えばこれは全然安全も差しつかえないということで、そういう方面の用途に向けるように私どもも努力しておりますし、現にそういうことで、一生懸命農家が保有しているもの等について、あるいは……。
  56. 近藤鉄雄

    近藤委員 それは〇・四から一PPMまでの米なんですか。それとも一PPM以上の米についてお話をしているのですか。どっちなんですか。
  57. 三善信二

    三善政府委員 〇・四PPM以上の米、一PPM以上も含めて、そういうことで現在用途の拡大をはかっていきたいということに考えております。
  58. 近藤鉄雄

    近藤委員 ですから、そこがおかしいんですよ。だから繰り返し何回もぼくは言うんだ。一PPMは、あれは絶対安全なんですから、それを〇・四からなんて始まるから、何度も聞かなければならぬ。少なくとも〇・四から一は、胸を張って売っていただきたいんですよ。そして一PPM以上だって、一PPM以上は、第一、原則として食糧庁は買っていないんでしょう。買っていないんだから、いまのお話しののりにするとかなんとかというのは、大体において〇・四から一の話だと思うのです。だから、うしろ向きなんです。それで、一PPM以上の米は買いません、かってにしゃがれだから、しかたないから県が身銭切って払っているんですから、この分については、食管で払うか別の農林予算で組むか、地方財政の別ワクで出すか、交付金で出すか、方法は問いませんが、環境庁がこの問題の責任者、まとめ役なんだから、環境庁は中心になって考えていただきたいんですよ。私は、政府が一PPMという基準をそう簡単に変えられないという、これもわかりますよ。わかるんだが、だからといって、根拠がないこの基準のために相当県が迷惑を受ける、また、おまえが原因者だといって企業が迷惑を受けている、県が払う、企業が払う、かってにしゃがれで済むものですか。国の不勉強で安易に一PPMという基準をつくったがための地元農民負担であり、地元市町村、県の負担であり、そして地元のいわゆる原因者と言われている会社負担なんですからね。私は決して重金属公害がないとは言っていないんですよ。ある。それがはっきりしたときは、もちろん会社に負担させることはあたりまえなんですよ。徹底的にやらなければならぬ。しかし、私が申し上げたいのは、根拠がないことで、恣意的に国がきめたことでなぜ地元住民が、県が、市町村が、会社が払わなければならないんですか。それがわからぬのですよ。だから、変えることはすぐできませんなら、検討いたしますということでいいですよ。しかし、検討しなくたって、結論が出るまでの間は国の責任で全部見るべきだと私は思うのであります。買い上げの補償金の問題もそうだし、どうしてもそういうことで土地改良をしなければならなかったら、国がかってにきめたことなんだから、国の責任で土地改良は全部やっていただきたい。やりたかったら、〇・四から一だっていいですよ。国の責任で全部やってください。そしてあとで十分に根拠が出て、やっぱりこれはいけなかったということなら、おまえの会社の責任だから会社が払えと、県が何か悪いことをやったら、県の責任で払え、ツケを回せばいいじゃないですか。政務次官、どうでしょう。
  59. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 ただいまお聞きいただきましたように、私どもの考え方は、いわゆる科学に少し弱かったんじゃないかというような考えも持ちます。ただ、私どもの農林省といたしましては、この点について安全にも安全を考えますとともに、生産者はもちろん、また、これを食べる方々関係も考えて、安全の上にも安全を期したという一つの傾向があったんでなかろうかと考えます。これは、いまのお話しを承りますというと、現状をそのまま、このスピードをそのままでいったんではいけないんじゃないかという感じを非常にいたします。ただ、基礎になりますことは、利どもの仕事の範囲外の、他の省に関係をしておる科学的な問題もありますし、環境保全というような問題もございますから、御注意もございましたように、私どもはこの問題をできるだけ早く解決するために、スピードをあげて結論を出していきたい、こういうように考えておるわけであります。
  60. 近藤鉄雄

    近藤委員 いま政務次官から御答弁がありましたように、これはぜひひとつ政府責任でやっていただきたいし、繰り返して申しますが、国がきめたことで、それを変えるのには時間がかかるのはわかります。それは認めましょう。だったら、その間、一PPMという基準が一・五になり、二になることこそあれ、それが下がることは何もないんですよ。だから、もう時間がありませんからあれですが、〇・四から一の米は早急に流通する、そしてそれを国民が食べなかったら、食糧庁、PRしなさい。だいじょうぶなんです、間違っていました、だいじょうぶなんですとPRしなさい。厚生省を使い、環境庁にもお願いしてPRして売る。いいですか。それから今度は、一から、いまかりに一・五とします。私のラフなあれでもできるのだから、一・五までの間については変えるべきだと思います。変えたくなかったら、少なくとも一から一・五までの米についての補助金、これは国の責任できめたことは国の責任でやる。予算が農林省につくか、厚生省につくか、環境庁につくか、どこにつくか、それはいいですよ。しかし、国の責任で全部払うこと、それから土地改良についても、これはやはり国の責任で全部すること、これを私はぜひひとつ要望をしておきたいわけであります。もう一回ひとつ政務次官、くどいようですが、御決意のほどを承りたいと思うのです。
  61. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 御趣旨のところは、重ねて申しますが、よくわかりました。ただ、この問題は、逃げ口上ではございませんが、関係の方面もいろいろとございますので、この方々と十分協議をいたしまして、質問の御趣旨を尊重をして、なるべくすみやかにこれを解決するごとく努力をいたしたい、これだけを御返事いたします。
  62. 近藤鉄雄

    近藤委員 時間がきましたのでこれでやめますが、最後に重ねて私は強く要望しておきますけれども、従来のデータでいいです、アンワーとかなんかというアメリカ人のデータだけをいじったって、一・五まではいいということが出ているわけでありますから、そういうようないろいろな実験を、食品衛生課長が、やっている、厚生省が、やっているとおっしゃるのだったら、これまでのデータでけっこうですから、これを早急に関係各省が集まって検討されて、少なくともぎりぎり一ぱい、一まではだいじょうぶだという結論を今国会中に出して、そしてそれを大いにPRして——いまあっちこっちの農村に眠っていますよ、米が。あっちこっちに眠っている、倉庫の中で眠っているのです。この〇・四から一の米を早急に売り出す、そして農家の方々に安心を与えていただきたい。そしてこの基準を変えることがすぐできなければ、国が国の責任で土壌改良をするために、いいですか、五十年度予算に、農林省カドミウム問題の全額国庫負担によるところの土壌改良事業費として、全国地域について大蔵省に要求をしていただきたい。これは逃げていただきたくないわけであります。繰り返し申しますが、国がかってにきめたことですから、これを農民や市町村や県や会社の負担にすべきじゃないと私は思います。
  63. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 御要望の点につきましては、よく了解をいたしました。先ほど申しましたように、関係のところも、また学問的な問題も含みますので、これらとすみやかにいろいろと御相談を申し上げまして、そしてできる処置を考えていきたいということで御了承いただきたいと思います。
  64. 近藤鉄雄

    近藤委員 ひとつさっそく検討していただきたいし、環境庁もぜひ検討していただきたい。それで、実は最初に要求したのですが、環境庁課長がいらっしゃらなかったのでしなかったのでありますけれども、いわゆるイタイイタイ病で神通川以外の地域で相当検討ざれた。先日も環境公害特別委員会で橋本審議官の御答弁では、二百八十人を調査したけれども、八名イタイイタイ病と考えられるような患者が出たというお話でありますけれども、どうも私がその後調べてみますと、あまりイタイイタイ病じゃないんじゃないかというようなうわさも聞きますので、その八名はどういう症状でイタイイタイ病と判定されるのか、その点についての具体的な診察書というのですか診断書を、委員長を通じて私は要求したいと思いますので、その点、よろしくお願いいたします。これについて課長から……。
  65. 竹中浩治

    ○竹中説明員 ただいま先生のお話の問題は、国で置いておりますイタイイタイ病の鑑別診断班にあがってまいりまして、そこで経過を追跡するということになっておる方々の問題だと思います。御質問のとおり、その点につきまして資料をできるだけ早くお出しいたしたいと思っております。
  66. 近藤鉄雄

    近藤委員 どうもありがとうございました。
  67. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、美濃政市君。
  68. 美濃政市

    ○美濃委員 最近、飲用乳の生産者価格引き上げの要請が強く起きて、聞くところによると、昨日あたりから交渉に入って、生産地域ではその交渉がまとまるまで出荷停止等の運動が全国あちこちで起きておるようでありますが、農林省としては、これは保証価格の決定とは違いますけれども、この問題に対してどういう見解を持って指導をしようとしておるか、まずこれをお伺いいたしたいと思います。
  69. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 飲用乳価の値上げ問題につきましては、三月半ばに生産者側が値上げの要求額を決定をいたしまして、四月に入りましてから具体的なメーカー側との交渉に入っておるわけでございます。キロ当たり四十円の引き上げの要求をいたしまして、メーカーと現在交渉に入ったところでございまして、まだ本格的な話し合いにまでは至っておらない段階で、まあいわば始まったところでございます。しかし、生産者側は、六月一日までにきめたいというようなことで、昨日の各メーカーとの交渉に臨んだように聞いておりますが、飲用乳価格の決定につきましては、これは従来から農林省といたしましては、生産者側あるいはメーカーあるいは小売りという、それぞれ当事者間で自主的に決定すべきものであるというふうに考えております。昭和四十二年の二月に国民生活審議会の消費者保護部会でも、それ以前、行政指導で乳価をきめておったことにつきまして、自由な競争を促進して価格の安易な引き上げを行なわれるおそれがあるので、再検討すべきだというような要望も出されておる点も考えまして、ただいま申し上げたような考えで臨んでおるわけでございます。ただ、従来からも必要に応じまして、値上げの幅なり、あるいは値上げの時期等につきましては指導を行なってまいっておりますが、先ほど申しましたように、現在まだ交渉が始まった段階でございますので、当面両当事者間の自主的な話し合いの推移を慎重に見守っていきたいというように考えております。
  70. 美濃政市

    ○美濃委員 現在のところ、農林省としてどうですか。農林省が指導上、さきにきまった加工原料乳の保証乳価等から見て、値上げ幅についてどのぐらいが適当であるという検討をしておりますか。
  71. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほど申しましたように、当事者間の自主的な交渉によって今後決定すべきものと考えておりますので、現段階において、われわれ行政当局といたしまして、どの程度が適当であるかというような考え方を述べるのは差し控えたいというように考えております。
  72. 美濃政市

    ○美濃委員 飲用乳価の問題は、やはり当事者間の自主的な交渉できまるべきものであることにはもちろん間違いないが、しかし生産者価格については、これは毎度繰り返しておるように、えさの値上がりその他が加わって、非常に、生産経費が上がっておりますから、当然かなり大幅な引き上げが必要だと私は思います。それに比べて、いわゆるメーカーの経費は、飲用乳はかなり利潤も伴っておるわけでありますから、やはりこういう物価対策上から、メーカーの経費は据え置いてよろしいのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  73. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま申し上げましたように、現段階で具体的にお答えしにくい段階にあるわけでございますが、ただいま御指摘ございましたように、生産者価格につきましては、昨年の十二月にキログラム当たり十五円の引き上げが行なわれたわけでございます。それまでの飼料価格の値上がり、その他のコストアップ等も織り込んできめたものでございます。その後御承知のように飼料価格はじめ諸物価がかなり値上げしておりますので、生乳の生産費に当然それが反映をされておるというように思いますので、十二月、あの段階できめた価格そのままでずっといいんだということはなかなか言いにくいと思いますけれども、その幅なりあるいは時期等につきましては、生産費から見た計算だけではなくして、やはり消費がどの程度ついてくるか。御承知のように、最近畜産物全体がそうでございますけれども、消費の停滞、伸び悩みということがございます。飲用乳につきましては十二月の値上げということもございまして、その他の要因ももちろんございますけれども、消費がやはり伸び悩んでおるという状態が依然として続いておりまして、まだ十二月の値上げ以前まで回復するところまでいっておりません。そういうようなことも当然考慮に入れながら時期なり幅なりをきめていくべきものではないかというように思います。  お尋ねがございましたところの、相当もうけているではないか、したがって、メーカーの取り分については今回は考えなくていいのではないかという御趣旨の御意見でございますけれども、この点につきましてわれわれとして、いまこの際それがいいとか悪いとかいうようなことは申し上げるのは差し控えたいというように思います。
  74. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは、この問題についてはもうノータッチということですか。物価対策上、そういうメーカーの手取りについては据え置いていいのではないか。十二月のときもかなりメーカーの取り分を引き上げておるわけです。今回は据え置きでメーカーはやれるのではないかと思うのです。そういう問題についても農林省は何も検討してない、全く自主取引だから、メーカーの取り分が何ぼ上がろうとわれ関せずということですか。
  75. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほどお答えしましたように、上げ幅なり上げる時期等につきましては、必要に応じて交渉の推移も見ながら、必要な場合はもちろん物価対策的な面も考えながら、あるいは生産者対策ということも両面考えながら必要な指導をすべき時期があるいは来ようかと思いますけれども、現段階といたしましてはただいま始まったばかりの段階で、自主的に当事者が交渉によってきめるという原則にのっとって行なわれておる段階でございますし、さらに両当事者からも特に農林省当局に対しまして特別な要請、要望という形では現在出てきておりません、そういう段階でございますので、現段階としては差し控えたい、こういう趣旨でございます。
  76. 美濃政市

    ○美濃委員 いずれかの時期で介入する意思があるんですか、これは介入するんですか。それとも、話がスムーズにきまれば——いつもきまっている、生産者乳価の倍ぐらい上がっていくわけです。今回はその必要はないと私は思うのですが、そういう問題に対して、やはり決定前に介入する意思があるのか。それともスムーズにあすきまるかもしらぬ、きょうきまるかもしらぬ。妥結したら、それできまったんだからそれでいいと、こういう態度をとるということですか。それとも妥結前にやはりそういう最終小売り価格について、メーカーの取り分やその他について、物価対策上の問題もありますから、行政指導、介入をするという意思なんですか。いま始まったばかりだから、いまそれをすぐ畜産局長として表現できないということもわかります。わかるのだが、そうすると、早急にきょうでも妥結すれば、これはもうきまったとおりでいいんだ、そういうお考えですか。
  77. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 私のほうの基本的な態度といたしましては、物価対策とかあるいは生産者対策という面から見まして、必要がある場合には介入といいますか、指導というものはやらなければならないと思っておりますが、これはそういう必要がない場合もあると思いますので、現段階において必ず指導するとかあるいはしないとかということではなくして、慎重に交渉の推移を見守っていきながら、必要がある場合には指導をするということはやりたいと思っております。
  78. 美濃政市

    ○美濃委員 少し姿勢が弱いんではないかと思います、どうですかな。やはりこれだけこの国会は物価対策でやかましいわけです。私は、繰り返しますが、生産者乳価は、まあ局長の答弁もそうなっておりますが、再生産が維持できるように相当引き上げるべきである。しかし、それに便乗してメーカーの取り分は十二月もかなりメーカーの経費部分として上げておるわけだから、この際はメーカーの取り分は、十二月値上げで大体牛乳処理の経費その他から見てもそう上げる必要はないのではないか、据え置きでいいんではないか、こう言っておるわけです。そういうことに対してまだ何も言えない。いろいろ決定前にそういう問題に介入する意思があるのかどうかということを聞いている。いまのところ介入するかせぬか、わからないということですね、自主的にきまるものであるから。しかし私は指導、介入をすべきであろう、助言をすべきであろう、こう思うのですね、どうですか。
  79. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 繰り返しての御質問でございますけれども、ただいま交渉が実質的に開始の緒についた段階でございますので、現段階につきまして、この際積極的に介入するとしかないとかいうことを、あらかじめ交渉が煮詰まる前に申し上げるのは時期尚早であるというような判断に基づいてお答えをしておるわけでございますが、もちろん交渉の経過を見ながら、必要な場合には指導を行なうということは当然だというふうに考えております。
  80. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは以上で、指導介入に出る時期等もあろうと思いますけれども、ただきまったからいいんだというのではなくて、やはり適当な時期に生産者乳価の引き上げ、それから、いわゆるメーカーの取り分は据え置くという大体の考えで、いまここでそれを決定せいというのではございませんけれども、そういう考え方で適切に指導介入をして、そして生産者は苦しいわけでありますから、飲用乳の生産が後退しないように、適切な指導を強く要請して、この問題は一応終わります。  次に、牛肉の価格についてお尋ねいたしますが、これは昨年、非常に過剰輸入をして、いま国内生産が破壊される状況に牛肉価格が暴落したという推移をたどっておりますが、いま畜産局として牛肉対策に対してどういう考えでやっておるか、どういうところまで進んでおるか。それから、国内生産の需給の展望についても、どこまで基本的な対策を進めておるか、この状況をまず先にお聞かせ願いたいと思います。
  81. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 牛肉の価格対策あるいは生産対策等についての現在の農林省の対策の考え方いかん、こういう御趣旨でございますが、御承知のように、昨年の秋、牛肉価格あるいはそれに伴いまして成牛の価格あるいは子牛価格も非常に高値であったわけでございますが、その後諸物価高騰によります消費の減退、さらにそれ以前にきめました輸入肉が、その後契約したものが入ってきておるということによる影響もございまして、年末からかなり下がってきておるわけでございます。  それと同時に、また御承知のように、えさ価格の高騰が肉牛経営に対して相当な圧迫要因になっているということも事実でございますので、これに対しまして、一般的な畜産対策の一環といたしまして、えさに対します低利融資の制度、第三次の低利資金の融資を実施することにきめて、現在、通達等も流しておるところでございますけれども、この問題につきましては、われわれといたしましては、当面の緊急の対策と、それからやや長期の対策と二つに分けて検討しておるところでございます。  緊急対策といたしましては、いま言いました当面のえさの値上がりに伴う対策といたしまして、えさに対します配合飼料の購入費に対します二月から七月までの値上がり相当分についての融資を行なうことにいたしておりますほかに、当面、価格が最も値下がりしておりまして経営上困っておるのは、肥育経営の中でも、輸入肉と直接品質的に競合いたします乳雄の牛肉でございますので、あるいはそれを肥育しております経営でございますので、これに対する対策といたしまして、四月から生産者団体によります——これは全農その他全開連とか、あるいは全畜連等も含めまして、主体は全農を中心にいたしました生産者団体が国内産の乳雄牛肉の調整保管を行なうことにいたしまして、現在開始をしております。やや予定よりおくれておりますけれども、加工メーカー等が自主的に調整保管をやることにつきましても、融資等のあっせんも加えてやっておりますので、それとあわせまして、四月中に約一千トンぐらいの調整保管をやって価格の回復をはかるように現在努力をしておるところでございます。引き続きこれを実施する予定にしておりますが、さらにこの調整保管数量を拡充するのにどのような方法があるかということにつきましても、現在検討をいたしておるところでございます。  したがいまして、短期的な対策といたしましては、二月の初めに実施いたしました例の輸入肉の輸入の停止措置のほかに、その後やっておりますのはいまの二点でございます。  それから、さらに長期的な問題といたしましては、牛肉の消費は現在一時的に停滞あるいは減少いたしておりますけれども、長期的には、やはり所得の伸びとともに、従来ほどではないにしろ、需要は相当強い、世界的にもそういうふうな見方がされておりまして、国際的に見て牛肉の世界需給は逼迫の度を加えるのではないかというようにも見られておりますので、われわれといたしましては、いろいろ困難な問題がございますけれども、国内生産をできるだけふやしていくということ、そうはいいましても、全部が全部需要量をまかなうだけの国内供給を確保するというのはなかなか容易でないと思いますので、輸入につきましても安定的に輸入できるような、あるいは計画的に輸入できるようなことを考えていく必要があろう。そういうことの一環といたしまして、現在御審議をいただいております海外協力事業団の中の事業といたしましても、牛肉を含めた開発輸入ということも長期的な問題として検討していく必要があろうというように考えておるわけでございます。  しかし、輸入肉が、経済情勢の変動等によりまして、昨年の後半からことしにかけてのように、計画いたしました輸入肉がそのまま入ってくる場合には、国内の価格、生産を予想外に圧迫をするというような事態が今後も考えられないわけではないので、現在の輸入方式について、基本的には、特に現在の輸入方式は九割は事業団によって輸入をし、一割は民貿方式ということでやっておりますけれども、その方式自体をいま直ちに変える必要はないというふうには考えておりますけれども、九割のシェアを占めます畜産振興事業団の輸入のやり方につきましては、もう少しルール化をすると同時に、弾力的に小回りのきく輸入措置ができるような仕組みを考えていく必要があるのではないか、そういうことによりまして、輸入肉の量、時期の調整によりまして国内の牛肉価格の安定に資していくというようなことをまず考えていったらいいのではないか。しかし、そういうことをやりましても、なお、どうしても間接的になりますので、国内の牛肉価格の安定が期せられないということでありますれば、やはり豚肉その他の食肉等の例も参考にしながら、別途の直接的な価格安定対策というものも検討しなければいけないこともあり得るというふうに思いますけれども、さしあたりは、牛肉輸入のやり方につきまして改善を加えることによりまして、国内牛肉の価格の安定に資していくというような方向で検討を開始しておるところでございます。
  82. 美濃政市

    ○美濃委員 前に、これは委員会ではないですが、局長にお願いしておいたわけですが、すき焼き肉とそれからステーキ肉と分けて、需要は何ぼあるというふうに把握されましたか。現在把握されたと思うのです。日本の国内における牛肉の需要、これは両面に分かれますから、すき焼き肉とステーキ肉と二つの需要があるわけですから、この需要の量をどういうふうに把握されたか。
  83. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 お尋ねの件は数量的に把握が非常にむずかしいので、お尋ねの点的確にお答えするだけの資料を持ち合わせておりませんが、昨年の例でいいますと、国内の消費、輸入及び国内供給を含めまして三十五万トンでございます。ラウンドでいいまして、暦年で申しまして、四十八年度は三十五万四千トンという数字を把握しております。そのうち二十二万七千トンが国内生産による供給であり、輸入量は十二万七千トンということでございます。この国内生産二十二万七千トンのうち、乳牛の肉が乳雄、それから廃牛を含めまして、約六〇%近くになっておると思います。いま的確な資料をここに持ち合わせておりませんけれども、五〇%をこえておる、五五%あるいは六〇%近いところまでいっておるかと思います。そうしますと十万トン前後がいわゆる肉用牛である、専用種であるということになりますが、それが主として高級肉といいますか中級以上の高級肉という部類に属するので、それ以外の乳用牛、廃牛並びに乳雄の肥育牛肉、さらに輸入肉が、中クラス以下の、中には例外はございますけれども、いわゆる大衆肉といいますかそういうものではないかと思います。その十万トン前後の肉専用種の去勢牛その他のうち、どの程度がいわゆるほんとうの高級肉であるのかという点は、いまここに材料を持ち合わせておりませんけれども、品質別に見た全体の消費量の中での内訳はいまのような状態になっております。
  84. 美濃政市

    ○美濃委員 国内の自給量は、私はかなり高まっておると思うのです。前年度、たとえば北海道のような大酪農地帯がいわゆる牡犢の肉用育成をほとんど全道やっているわけです。いままでは、生まれると何かかん詰め工場かどこかへ、千五百円か二千円で生まれ落ちてすぐ出しておったものを、全部育成するようになっております。これらの関係が全部調査されておりますか。どういうふうに国内自給量の体制が——まあ肉用牛については、肉用牛の性格から見てそう大きく伸びておりませんけれども、乳用牛から派生する雄子牛の育成というものはものすごくふえておると思うのです。それらの動向は大体把握できましたか。
  85. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いま手元に詳細な資料は持っておりませんが、ございますので後ほど提出をしたいと思いますけれども、おおよそのところを申し上げますと、確かに先生おっしゃいましたように乳雄の肥育というものはここ数年来非常に伸びております。最近の推定では、その利用率は九〇%をこえてもう一〇〇%近くなっているのではないかというように急激に伸びております。これが国内供給量をこれまでふやしてきた一番の大きな要因になっていると思います。したがって、逆にいいますと、肉専用種はやはりふえていない、減っておる。それをカバーしておったのが乳雄の肥育であった。それが利用率が年々急激に上がっておりましたので、それが全体としての国内供給量をふやすのに役立ったということでございます。これはまだことしの見通しでございますけれども、これもなかなか価格その他の動きによりまして、需要も生産も的確には見通しにくい点がありますけれども、和牛とか乳廃牛あたりはことしは前年より減るだろう、一〇%前後減るのではないかというような予想をいたしております。それとは違いまして乳用肥育雄牛につきましては、約二〇%ぐらいふえるのではないか。といいますのは、利用率が限界に来たといいますけれども、九〇%以上までの利用率にきたものをまだ現在肥育をやっておりますので、これが出てくるということになりますと、前年よりふえるという関係になりまして、二〇%ぐらいふえるのではないかというように考えております。  それからちょっと失礼しましたが、若干肉用種につきましては、雌和牛と乳廃牛が一〇%減るのではないか。それから去勢の和牛につきましては、これはもう今年度は一〇%ぐらいふえるのではないか。かなり価格もよかったので肥育に回っておるものがございます。肥育経営が確かにえさの値上がり等諸資材の値上がりで困っている面ももちろんございますけれども、乳雄ほどの打撃は受けておりませんし、価格のよかったときに肥育に回したものが今後出てくるということでございますので、一〇%ぐらいふえる。そういたしますと、国内生産量としては今年度に関する限り全体として、正確にはわかりませんが六、七%まではいけるのではないかというように考えております。しかし、これは来年になったらどうなるかということになりますと、乳雄の利用率が一〇〇%になったということだと、これはもうそれ以上はふえないということになりますと、それがこれまで国内供給をふやしてきたという要因として評価できなくなるという点がマイナスになって働きますので、今後は肉の専用種をふやしていくということ、いろいろ問題がございますけれども、これにやはり重点を置いていかなければいけないというように考えております。
  86. 美濃政市

    ○美濃委員 私はこの際やはり畜産局に指導のあり方について要請をしたいと思いますが一それはいま局長も言われたように、乳用牛から派生する牡犢の育成というものがとにかく軌道に乗ったわけですから、その中で大切なことは、用途が牛乳であれば加工原料乳と飲用乳と二つに分かれるように、先ほど申し上げたようにやはり牛肉の日本の用途はすき焼き肉とステーキ肉と用途が二つに分かれますね。ステーキ肉についてはやはり用途も違うし肉質も違います。ですから、その用途に向かって、たとえば北海道で肥育する状態を見ますと、二百五十キロで素牛として内地へ送って、あぶらをかけてすき焼き用の肉に仕上げていくという育成のしかたと、それからもう一つはステーキ用の肉として生体量が大体満度になるように肥育するというのと二つあるわけです。この二つの需要に向かった指導をきちっとしてもらいたい。私はステーキ用の肉としてやはり消費者がある程度価格についても安い価格を要求する肉については——すき焼き用はこれは世界で需要のないあぶら肉をつくるわけですから、これは高くなるのはあたりまえだと私は思うのです。ああいう飼育をすれば、いわゆる白人種の国ではああいうあぶら肉は食べないわけですから、いずれも牧草だけでつくったほんとうのあぶらのない肉を常食として食べておるわけです。北海道は幸い大規模草地とか草地条件もいいわけですから、北海道で完全に肥育していけば、コストはすき焼き肉をつくるようなコストでなくてもできるわけですね。同じ用途ですから、やはりステーキ肉になればあぶらは要らぬわけですから、そういう点をくふうして、北海道では御存じのような頭数ですから、あの乳牛から派生する牡犢を全部すき焼き肉にすると、すき焼き肉の需要を上回ると私は思うのです。ですから用途別に一定量は、二百五十キロですき焼き肉のあぶら肉を生産する内地へ素牛として売ることもいいわけですね。需要があるわけです。しかし、一定の頭数は、やはり飼育条件の安いコストの北海道でステーキ用の肉として仕上げていく、こういう指導体制をひとつ確立してもらいたいと思うわけです。  それからもう一つは、いま調整保管をしておるというが、大体指導価格の目標はどのくらいに置いておるわけですか。農林省として、牛肉のいわゆるそういう調整保管をしたり安定価格ですね、国内生産の安定価格の目標をとこへ置いて——輸入をするにしても、価格上の問題とあわせて輸入が行なわれるわけですから、安定価格目標をどこに置いて政策指導をしていくのか。その安定価格の目標をお聞きしたいのです。
  87. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 二点のお尋ねでございますが、第一点は御指摘のとおりだと思います。すき焼き用といいますのは、特に業務用等を中心にいたしまして、非常に高級肉でございますので、これは乳用牛というよりはむしろ専用種の中の一部が高級肉に回わる、こういう事情はあると思いますし、そういうのを目ざした肥育経営をやるのもあっていいと思いますけれども、やはり一般的な大衆肉といいますか、ステーキ用あるいはすき焼き用でも一般並みのものということになりますと、やはり乳用牛あたりが今後主体になって、供給源として育っていく必要があろうと思います。その場合、現在北海道の場合、肥育を全部終わりまでやらずに、内地に販売をしておるというような点が見られますけれども、確かに乳用雄だけではございませんけれども、肥育についてだんだん規模も大きくなりまして、購入飼料に全面的に依存するような肥育経営が行なわれております。これは規模が大きくなりますと、どうしてもそういうような傾向に走りがちであることはわからぬではないんですが、そういうことになりますと、経営的に非常に不安定であるし、肥育効率からいってもよくない。それから今回のようにえさ価格が暴騰するというようなときには、もろにその影響を受けるということでございますので、肥育効率あるいは経営の安定というような点からいたしますと、やはり育成段階はもちろんのこと、肥育の前期におきましてもなるべく草を食わせて育てていく。仕上げの段階に至って濃厚飼料を集中的にやるということによって、購入飼料に対する依存度を低めながら経営をやっていくのが一番健全なやり方だというように思いますので、そういうことは肉質の面では先ほど先生のおっしゃったようなことにもつながるわけでございますので、そういう方向でわれわれも指導していきたいというように考えております。  それから、牛肉価格の安定の目標をどの辺に置いておるかという点の御質問でございますけれども、実はいま一番安定を迫られておる牛肉は、先ほど来申し上げておりますように乳雄の牛肉でございます。これは実は農林省も生産費調査が行なわれておらない、試験的に一、二やってはおりますけれども、全国的な生産費調査で生産費を把握するということが現在困難な段階でございます。ごく最近急激に伸びたために、それまでそれに備えた統計調査が進んでおらないという点で、われわれ現業をやっている立場からすると非常にやりにくい面があるわけでございます。したがって、全国的な平均的な生産費調査がどの程度かといわれますと実は非常に困るわけでございます。これは肥育の経営の形態自体も千差万別でございますし、統計的に継続してかなりのサンプルについてやったという例がこれまでございませんので、非常に申し上げにくいわけでございますけれども、きわめて大胆に生産者の方の御要望なりあるいは専門の方のお話等も伺うと、乳雄の牛肉につきましてはやはり九百円から千円——きのうも実は生産者の方が来られて、これは代表されておるかどうかわかりませんけれども、ぎりぎりキログラム当たり九百円だ。これは卸売し価格での話でございます。(「枝肉ですか」と呼ぶ者あり)ええ、枝肉の市場における価格です。そうしましたら、それはちょっと安過ぎる、もうちょっと上だ、こういう反論といいますか、陳情の中の方からそういう声もありましたけれども、われわれもやはりその辺から千円の間というところが現段階においての目標ではないかというように、大ざっぱで恐縮ですが考えておるわけでございます。  御参考に申し上げますと、昨日、東京の芝浦の市場では八百九十円ぐらいのところまでやや回復してきましたけれども、これまでの例だと、これは回復しますとすぐ出荷がふえましてまた下がるということを何回も繰り返しておりますので、きのうは八百九十円でやや上向いたといって安心できないというふうにわれわれは考えております。
  88. 美濃政市

    ○美濃委員 生産費の資料がないというお話しだが、そうだと思うのです。これは統計の調査対象にもなっていないわけですけれども、しかしこれは統計と打ち合わせして、やはり生産費の把握にもひとつ努力をしていただいて、あれだけ産まれるあの頭数を全部肉として肥育するということになれば、経済単位としてもかなり大きい経済単位になるわけですから、そういう点の準備が、いま局長のお話を聞いてもまだかなり不十分でありますから、準備体制あるいは指導体制を十分整えて、そしてせっかく軌道に乗ってきた乳用牛雄子牛の肥育という体系をやはり食料需給体制にきちっと結びつける。そしてその中にあまり極端な、もう生産が破壊されるような現象、これは私は輸入調整でいけると思うのです。局長のお考えどうですか。たとえば豚とか鶏卵のようなものは、生産が多少減産して高くなると、ああいう性格のものは、短い期間でぐっと生産が伸びて、国内生産が過剰で市場を圧迫するという問題が出ますけれども、牛肉についてはそういう現象は、急激な生産といっても乳用雄子牛にしても産まれる限度があるわけです。ですから、大体平年において三十五万四千トンぐらいの需要があるということになれば、牛肉については、和牛の生産が落ちてくればそれだけ自給度が低下するということで、おそらく当面輸入との需給量の調整一本で政策指導価格の目標は維持できると私は思うのですが、どうですか。
  89. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 確かにおっしゃるように、牛肉の場合は、豚肉なり鶏肉の場合と違いまして、急激にふえたり減ったりということはないという意味では安定しておりますので、やはりいい面もあると思います。  それからさらに先ほど数字で御説明しましたように、現在輸入肉が四割近くまでいっているわけでございますから、これは今後そう減ることはないと思いますので、それの量の調整が的確に機動的に行なえれば、それを通じて国内価格の安定がはかられるということは言えると思います。さらにその輸入の調整が割り当て制度でなっておりますし、さらにその中でも事業団の輸入が九割を占めるということでございますので、行政的に操作しやすいという面が確かにありますので、先ほど申しましたように、当面輸入を通ずる国内価格の安定のやり方について研究をして改善をしていきたいというように考えております。
  90. 美濃政市

    ○美濃委員 この牛肉につきましては、いまいろいろ局長のお話を伺いましたが、私が要請した問題も局長は同感だというふうに受けとめられておるわけでありますから、どうかひとつ指導体制と、きょう申し上げたことのいろいろな問題を——急に始まったことですから、いま資料なりそういう体制の不十分さについても怠慢だというふうには私も考えておりませんから、どうかひとつこの牛肉価格が安定するように、そしてそれがいまいわれております国内のたん白食料の自給源に確実に結びつくように、今後やはり生産費なりそういう資料や指導性の不十分は十分これから検討して、完全な対策を確立していただきたい、このように重ねて要請を申し上げましてこの項を終わります。  次に、アズキ問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。  アズキの需給量はどういうふうにお考えになっておりますか。昨年は北海道が豊作でかなり需要に対して生産量が上回ったわけです。九月末見通しについてお尋ねをいたしたい。
  91. 二瓶博

    ○二瓶説明員 四十九豆年度の需給見通しを申し上げます。  まず、期首在庫でございます。これは四十八年の十月一日のものでございますが、四万三千百トンという期首在庫に相なります。それから国産出回り、輸入等ございまして、供給のほうが十六万六百トン。それから消費、輸出がございまして、需要といたしましては十三万二千九百トン。したがいまして、期末在庫が二万七千七百トンというふうに見ておりますが、輸入の面で若干、従来発券したものがズレ込みがあろうかと思います。五千トン程度あるのではないかということで、いま現在の時点では、ことしの九月末にこれが三万二千七百トン、俵数に直しますと五十三万五千俵、大体三カ月分ぐらいの持ち越し在庫ということになるのではないか、かように考えております。
  92. 美濃政市

    ○美濃委員 輸入のズレ込みというのはどういう条件で起きてきますか。
  93. 二瓶博

    ○二瓶説明員 輸入の割り当ての関係につきましては、会計年度で申しまして四十八年度の上期、月で申しますと四十八年の四月から九月までの分でございますが、これにつきましては二百万ドル、五千トンの輸入割り当てをいたしました。四十八年度の下期、四十八年の十月から四十九年の三月までの分でございますが、四十八年度下期につきましては国産小豆の二年続きの豊作という関係もございまして、下期は割り当てをいたしておりません。それで、ただいま申し上げました四十八会計年度の上期の分が多少ズレ込んで輸入されてくるということがあるだろうということで、それを見込んで先ほどの、ことしの九月末の期末在庫の推定数字を申し上げた次第でございます。
  94. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの需給量からいくと約三カ月分あれは——正常在庫か期末二カ月分程度が私は正常在庫だと思う。そうすると、やはり去年の北海道の豊作等の関係があって、在庫三カ月分あれば、これはやはりアズキという緩急食糧であっても発券すべきでないと私は思うのですが、今後の発券についてどうお考えになっておるのか。
  95. 二瓶博

    ○二瓶説明員 適正在庫の面につきましては、先生おっしゃいましたように二カ月といいますか、あるいは二カ月半程度ぐらいがせいぜいかと思います。したがいまして、三カ月という見通しであれば適正在庫を上回った期末在庫になるだろう、こういうことでございます。したがいまして、四十八年度の下期の分につきましては、現在も発券をいたしておりませんし、今後も追加発券する気はございません。ただ問題は、この輸入割当についての考え方は、あくまでも国内産で不足する数量についてということでございますから、そういう意味で現段階においては発券するというような考えはございません。ただ、ことしのこの五月中に播種します小豆がどういうあと作になるか、その辺を見定めて今後の、四十九年度下期といいますか、そちらの面についてはまた検討することになろうかと思いますが、少なくとも上期の問題については、ただいま申し上げたような需給の情勢でございますので、追加発券等は考えておりません。
  96. 美濃政市

    ○美濃委員 新聞でちょっと見たのですが、これは誤報かもしれませんが、四月だったと思うのですね、何か広州の見本市等で、日本の商社が割り当てを見越して買い付け契約をしたようなニュアンスの記事を見たのですが、この関係はどうなっておりますか。事実無根なのか、それとも商社はもうけ本位て——もうけになるのかならぬのか、これはわからぬけれども、何か発券がないのに見本市で小豆の買い付け契約が行なわれたような新聞記事を見たのですが、これはどうですか。
  97. 二瓶博

    ○二瓶説明員 新聞情報でございますけれども、それによりますと、昨年の秋に広州交易会があったわけでございますが、その際に三千トン程度の仮契約が行なわれたというようなことを一応新聞が報道いたしております。ただその際も、通産省のほうにおきましては、成約実績は輸入ワク、発券の要素にはならないということをあらかじめ業界に対して、商社に対してくぎをさしてございます。その辺をあるいは承知の上で、いずれ発券になるのだろうということを当て込んで企業サイドのリスクでやられたのかもしれません。そういうことで、通産省を含めまして、役所の姿勢としてはそういうことにつきましては一応くぎをさしておる、こういうことでございます。
  98. 美濃政市

    ○美濃委員 それは去年の秋ですか。四月にはないですか。去年の秋と四月と、二つに区分して、把握しておる状況についてお伺いしたい。
  99. 二瓶博

    ○二瓶説明員 ただいま申し上げましたのは昨年の秋の広州交易会のときのことを新聞がそういうことで報道いたしておるわけでございます。  この春の広州交易会は、たしか、四月十五日から今月の十五日までだと思いますが、開かれております。これにつきましてはまだ情報は何らつかまえておりませんけれども、ただ、先ほど申し上げましたように、四十八年度の下期の発券はいたしておりません。いたしておりませんので、商社としては新規に買いつけをやるということはないのではないか、かように思っております。
  100. 美濃政市

    ○美濃委員 そうしますと、もしそういういわゆる発券を見越した契約があったとしても、それは農林省としては、この需給量から見て、その発券はしないと考えてよろしゅうございますか。それとも、業界からの圧力で発券する場合があるということが起こるのですか。どうですか。絶対そういうことはない、もし商社がそういう割り当て外貨を無視した買いつけ契約があったとしても、それはあくまで商社がかってにやったことだから、いかなる損失をこうむろうと、やはり非自由化という原則に従って、発券するなどということはあり得ない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  101. 二瓶博

    ○二瓶説明員 輸入割り当ての際の基本的な考え方につきましては、先ほども申し上げましたように、国内産で不足をするというようなものについて輸入をしようというのが基本でございます。ただ物価対策のような関係で、相当現物相場等が上がるというようなことがあれば、たとえば、これは取引所に上場されている商品でもございますので、そういう場合もレアケースとして出ないという保証はございませんけれども、何かそういうことでもあれば、物価対策上という関係のことはあろうかとは思いますけれども、一般的には、基本的には需給上の不足する分だけを入れよう、こういう考え方でございます。したがいまして、ただいま先生お尋ねの、商社が企業サイドのリスクで成約をしたというような事実があるから、その辺を商社等の要請等を受けて発券をするというようなことは、これは役所としては全然そういう要素は考慮には入れないという考え方でおります。
  102. 美濃政市

    ○美濃委員 終わります。
  103. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、野坂浩賢君。
  104. 野坂浩賢

    ○野坂委員 最初に林野の関係をやりまして、それから構造改善をやって、構造改善局長にお願いして、最後に食糧庁にお願いしたい、こういうふうな順番でやりたいと思います。  林野庁の長官お尋ねをいたしますが、ことしは、不順な年でもございまして、東京でも三月の下旬に大雪が降るというような状況にございました。しかも、局地的な豪雪もございまして、私どものほうでは山林地帯に豪雪が、特に春ございました。全国的にも、東北、北陸地方でもあったようでありますが、その辺の集約は今日どの程度まで進んでおりますか。
  105. 福田省一

    ○福田政府委員 お答えいたしますが、いま御指摘ございましたように、四十九年一月から二月にかけまして豪雪の災害がございます。主として東北、それから北陸地方が中心でございます。なお、北近畿、それから山陰地方などに広く発生いたしております。山間部ではまだ融雪を見てない地域もございます。詳細な被害調査をまだ完全に終わっておりませんが、民有林におきます林業関係の被害の状況は、造林地、それから林産物の被害を主体としまして、およそ百億円以上に達するものというふうに推定されております。  被害を受けました農林漁業者及びその組織します団体に対しまして、経営等に必要な資金を融通してその安定化に資するために、四月三十日付で、四十九年の一月−二月の降雪を天災融資法の適用対象の天災として指定しますとともに、特に被害のひどかった青森県、秋田県、それから山形県につきましては、激甚災害法を適用しまして、資金融通に関する特例県としたところでございます。  被害あと地の復旧造林につきましては、一つは、国有林におきましては、被害の程度に応じまして倒木起こし、それから改植などの措置をとることといたしております。それから民有林におきましては、造林の助成制度を活用いたしまして、これは融資あるいは補助でございますが、復旧するように指導してまいりたいと考えております。  概況は以上のとおりでございます。
  106. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大体全国的な情勢はわかりましたが、特に私の地元の鳥取県のことを詳しくお話しをして、御意見を聞かせていただきたいと思います。  私どものところでは、去年でありましたか、農林水産委員方々にもおいでをいただいて、智頭というところ、あなたの前々任者ですか、石谷さんという方が出られたところでありますが、そこでも山をながめていただきましたし、具体的にいろいろなお話を聞きました。前には、私たちは一坪で一本というようなかっこうで木を植えておりましたが、林野庁の指導もありまして、肥料をやりますし、密植にいたしました。したがって、五十年で伐採をするものを四十年程度で切る、こういう指導方法に基づいて作業をしてまいりましたので、今度の春の雪を見ますと、ここにおいでになっておりますが、北海道のほうのように粉雪ではなくて、通称私たちはぼたん雪といっておりますが、非常に水分を含んだ雪がぼってりと針葉樹の上にかかりますために、非常に重さが加わって、折損なり倒木、そしてこういうふうに木が傾いてまいります。そういう状況が、今度は谷、一つの県、町村でも谷違いがございまして、智頭谷という谷は非常な大雪が降りまして、最近まで雪がありました。  ここの面積を言いますと、町の面積が二万二千四百八十五ヘクタールですが、林野面積が二万五百四十七なんです。森林面積が一万九千九十なんですね。民有林は一万二千三百五十三ヘクタール、町有林が五百十四ヘクタール、国有林が三千五百十七ヘクタール、県有林が五百六ヘクタール、こういうことになっております。ほとんど山で生活をしておると、こういっても決していい過ぎではありません。  その中で、民有林のうち二千二百三十二ヘクタールが雲で非常に、ひっくり返ったといいますか、木がだわあっとしてしまった。それから八百五ヘクタールというものがだめになった。これは智頭町だけなんです。町有林はそういう雪起こしで復旧ができるであろうと推定をされるものが二百三十ヘクタールで、もうだめなのが三十・八ヘクタールあります。これをずっと私も二日がかりで歩いてみました。歩いてみて民有林の方々、私有地の皆さんは異常なほど神経質になっておられますし、数まで数えておられます。一般民有林の本数は、雪起こしで復旧可能であるというのが七百六十七万六千五百本、雪起こししても復旧できない、だめなのが二百十一万一千五百本、金額は合計をして十六億七千七百五十四万二千円だ、こういうふうに統計といいますか、とりあえず集計をしておられます。町有林は、両方合わせますと九十三万四千四百本で九千二百十二万五千円、町有林と合わせて十七億六千九百万ございますが、そのほかに、私たちのほうには町村合併いたしましたときに、財産区ということで残しているのです。それも二千二百ヘクタールございます。これはいま調査中でありますが、私たちはどう見ましても激甚地と言わざるを得ません。そう見ております。あなたに、私がうそをついておると思われては困ると思いまして写真を写してきましたから、ちょっとこれを林野庁長官に渡してくださいませんか。うしろのほうの方にも見てもらうように……。はい、これも。——ほとんどの山がそういうふうになっております。したがいまして、いまお話がありました青森、山形一秋田、こういう天災融資法をとりあえず受けられるところもありますが、わが県でも、いま県から報告をしておりますのは八千百ヘクタールで八億か十億かと言っておるようでありますが、それはずいぶん前でありますから、われわれが三日、憲法発布の日と四日と歩きましたときに、そういうことが強く発表され、しさいに集計をしてまいったところなんです。  こういう状況でありますから、たくさん陳情書がきておるのです。きょうは電報もいただいておりまして、激甚地の指定をしてもらわなければとても助からぬ、これから生活もできないという状況でありますし、もう一つは、倒木をしておりますから、雪起こしをして針金とかあるいは縄をかけて引っぱって起こさなければ——こんなふうに私たちは残っておってもまっすぐになって起きてきますけれども、あなた方は、こういうふうに斜め方に生長してきますと、将来困るわけです。金にならない、こういうことになりますから、早急に手をかけなければならぬ。  で、この激甚地の指定を受けられると、私たちはそういう実態から判断をしておりますが、天災融資法による激甚地指定、それからもう一つは造林補助制度による激甚地指定、こういうふうに二通りあると思いますが、それぞれ受けられるというふうに考えておりますが、調査の段階で、また見ていただいたり——私は一町村だけをあけてこのとおり申し上げておるわけですから、まずそのような激甚地指定になる、こういうふうに考えておりますが、林野庁長官はどのようにお考えでしょうか。
  107. 福田省一

    ○福田政府委員 ただいま鳥取県のほうで調査中でございますので、調査の結果によりましては、先生ただいま御質問ございましたような結果になるかと思います。はっきりしましたのは青森等、先ほど申し上げました東北の三県でございます。天災融資法は当然適用になります。その中での、いわゆる激甚災害地として指定するかどうかは、県の調査の結果によりたいと思っております。これは先生承知のように一応の基準がございますので、それに達しますればそういうことは可能でございます。  ただもう一つは、造林の復旧事業の際に、この天災融資法によるいわゆる激甚災の指定ではなくて、造林事業の助成制度の中に激甚災害復旧造林というのがございます。これはやはりいろいろと助成の措置を手厚くしてあるわけでございますが、これには大体指定できる見込みでございます。
  108. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、造林の助成制度というのは、補助金を従来に三〇%上乗せをしてもらう、それから造林の場合は国が十分の三、それから県が十分の一、十分の六のうちの八〇%は農林漁業金融公庫で二十年間の据え置きで十年間で払う、三十年償還だ、こういうふうに私は理解をしておりますが、そのとおりでございますか。
  109. 福田省一

    ○福田政府委員 激甚災害復旧造林の指定要件は、一つは災害が数県にまたがって、被害額の合計が三十億円以上の場合の当該県内、または被害額が十五億円以上の県内で被害額五百万円以上で、被害復旧面積三十ヘクタール以上である市町村、もう一つは、被害額が三千万円以上、被害復旧面積が百五十ヘクタール以上である市町村、こういう基準でございまして、これには入ってくる見込みでございます。そういうふうになりますと、復旧造林におきますヘクタール当たりの標準単価等につきましては、先生ただいま御指摘ございましたように、査定係数は再造林の場合、倒木起こしの場合、あるいは作業路をつける場合、それぞれ査定係数で三割ぐらいよけい見られるようになっております。  それから融資のほうは、先生御指摘のとおりでございます。
  110. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまお話しがありましたように、十五億円以上ですし、三十ヘクタール以上は一町村でもはっきりしているわけですから、これには間違いない、これが一つ。それから天災融資法の適用も受ける、天災融資法における激甚地はこれから調査の段階だ、こういうことですか。調査をしなくても、私が申し上げることが是とすれば、当然、天災融資法における激甚地指定ということにしてもらわなければ助からぬということになろうと私は思います。これが一つ。  それから、倒木をして雪起こしをしなければならないわけですが、見てもらわなければかかられないのか、かかってしまわなければそのままだめになっていくということがございまして、折損をしたものはそのまま投げておきますけれども、すぐかかっていかなければ、人もなかなか集まりませんので、それを処置したい、こういうふうに言っておりますが、それはどうですか。
  111. 福田省一

    ○福田政府委員 県の調査がはっきりしました段階で、御質問の前段はきまります。  それから、すでに折れたり、あるいは倒れたり、これを処理することはさっそくやらなければならぬことでございますので、県と連絡いたしまして、そのようにさっそくかかるように指導したいと思っております。
  112. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまお話しがありましたように、天災融資法なり、あるいは造林助成制度による激甚地の指定を受けるということに決定をしていただくようでありますから、至急にそういう作業ができるような体制を指導をしていただきますように要望しておきます。  それでは、林野関係はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。  次に、構造改善局長、最近の物価高で構造改善事業等も非常にやりにくくなってきた。物が上がって、当初計画をして、あなた方の承認を受けてから実施をするということになりますが、第二次構造改善事業等も二億七千万円というかっこうで押えられておる、こういうふうな町村もあるというわけですがこれはどうですか。
  113. 大山一生

    ○大山政府委員 現在の予算におきましては、地区によりましてその事業費総額は異なっておりますけれども、第二次構造改善事業でございますと三億というのを基準にして、それぞれの内容を審査の上、こういう事業が適当であろうということで査定して金額をきめていく、こういうかっこうになっておるわけでございます。  そこで、先生御指摘のように資材費が上がる、それから労賃が上がる、こういうふうな情勢の中でどう対処していくか、こういうことになるわけでございますけれども、構造改善事業の中で基盤整備的なものにつきましては、極力公共事業のほうに回す、そしてそうでない一般会計的なものを中心として構造改善事業をやってまいる、こういうふうなかっこうでとりあえずの措置を講じておるわけでございます。公共事業のほうになりますと、これは計画変更というようなことが可能になってまいりますので、その限りにおいては、当然に事業費が総額においてふえるということはやむを得ないというふうになるわけでございますが、構造改善事業のワクの中でやる部分につきましては、現在のところ、その三億のワクということの中で処理せざるを得ませんので、より効果のあがるものを重点的に事業をやってもらう、こういうふうなかっこう、そして構造改善事業で行なわれます事業の中身が、国の補助において行なう分に、いわば県なり単独で行なう部分というのをあわせ行なう場合が非常に多いわけでございますので、それらの分については、県なり、市町村なり、あるいはその単独部分についてはそれぞれの費用負担をしていただいて、そして所期の目的を極力達成するような方向で進めているというのが現状でございます。
  114. 野坂浩賢

    ○野坂委員 お話がありましたように、昔は構造改善事業の中で基盤整備事業も上ものもやってきた。しかし、いまおっしゃるように、物価高騰の今日、上ものだけでも三億以内ではなかなかできない。だから圃場整備、基盤整備は他の公共事業にゆだねて、上ものだけにするというのはお説のとおりだと思うのですよ。そうしなければやっていけないと思うのです。それで、この構造改善事業は事業別の年次別計画を立てますね。あれは三、三、二、二の方式でやるのですか、四年間で。
  115. 大山一生

    ○大山政府委員 先生御指摘のように三、三、二、二のスピードといいますか、進度率でやることになっております。
  116. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、私は、名前をあげると、その町村があなた方からにらまれたら困ると思いますから言いませんが、たとえば一次に水田作の協業をやる、トラクターを買う、農機具の格納庫をつくる、園芸の共用施設をやってスピードスプレーヤーを八台買う、定置の配管も実施する、園芸地域の施設もやる——野菜の集荷所ですね。それから、畜産の協業施設をやってトラクターを買い入れる、畜産団地、いわゆる養豚団地も十二棟建てる。そして、第二次はいまのように水田の作業の協業化をやる、それから園芸の共用施設もやっていく、ハウス団地をやる。こういう計画を村の者と集まって、町村、県、普及員というかっこうで協議をして出しますね。承認をしてもらいますね。そうして去年の十月ごろたとえばやって、ことしからいよいよかかる、一年ぐらい待って。やるというと、いま水田作の地域施設としてライスセンターをやるということをきめますね。できるだけ広域ということですから、合併をしておりますから。そうすると、ライスセンター一つ建てるのに当時は、去年の十月は、ざっと一億六千万程度かかる。いよいよかかろうかという段階になりますと、いまは上がって二億三千万ですね。それでもまだなかなか落ちない。二億七千万というのが限度になりますと、三、三、二、二でやってもらって、ことしは天井だけ、来年床張り、再来年度は機械といって、その間にどんどんどんどん物が上がりますから、これは何らの施策がない。構造改善の意味をなさぬじゃないか。つくったものは投げておくというかっこうで、ほかの事務的ないろいろな作業の計画はつくるけれども、全部ぱあにしてこれ一つで終わるのじゃないかというかっこうになって、三、三、二、二方式というのは非常に非能率になってくるというのを、現実に私は歩いてみてぶち当たって、これは直してもらわなければならない、明晰な頭脳の持ち主と農民の愛情にこたえておる構造改善局長、そのぐらいのことはこたえるだろうと、こう私は約束をしてきたんですが、どうですか。
  117. 大山一生

    ○大山政府委員 一般会計のワクというものが一つの問題でございます。ただ現実の問題といたしまして三、三、二、二というスピードの進め方、その進め方の中におきまして、各地区単位に三、三、二、二でいくのか、あるいは全体のワクとして三、三、二、二でいくのか、その辺の問題は、これは問題を重点的に施行させるという意味におきまして、現段階においても融通性を持ち得る範囲であろう、こういうふうに考えております。ただ、根本的な問題といたしまして、この一年間で資材その他が三割ないし四割上がっているというような事実の中で、そして設計がおくれたためにいわば入札するときになったら事業費が上がっていた、入札価格が上がってしまった、こういうふうな事態が各地で出ているわけでございますので、これらの問題につきましては、根本的に検討をしなければならない時期が来ているのではないだろうかと思っております。ただこの問題は、単に構造改善事業だけではございませんで、農林省の一般会計の補助金全体に共通の問題だろうというふうにも考えておりますので、五十年度予算の際には、ひとつその問題を検討してみたいというふうに考えるわけでございます。現段階におきましてはそれぞれの事業の中において、いま申し上げましたような三、三、二、二というものの操作のしかた等によって措置してまいる、こういうふうなことをやっているわけでございます。先生先ほど具体的なところは言われませんでしたけれども、あそこもそういう操作をしたはずであるというふうに私理解しておるわけでございます。
  118. 野坂浩賢

    ○野坂委員 違うんですよ。私は言ってないですよ。前にあなたのところに話し合いに来たときのところとはこれは違うんですよ。これは私の近いところなんです、地元。いま設計がおくれたという理由じゃないんです。計画をつくって出さなければ承認をされない。承認をされてからかかるということですから、設計はずっと早くできておっても、あなた方の許可が出ないために、承認が出ないために進めない。各地区ごとといいましても、三町村が合併をしてライスセンターをつくるということになりますと、これは五年前では五千五百万でできたんです。しかし、いまは二億三千万なんですから、それを三、三、二、二に割ったら一体どうなるか。固めてやっても一年でやらなければ、頭が二億七千万ないし三億ですから、ことし三年分一ぺんにもらわなければ建たぬのですよ。それは一ぺんに出してもらえますか。
  119. 大山一生

    ○大山政府委員 先ほど申し上げましたように、地区単位に三、三、二、二という一つの原則がある中で、全体のワクとしての三、三、二、二というワクの操作で可能な範囲においては、極力、そのものにもよりますけれども、操作できる範囲のことはしてみたいということでございます。
  120. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わからぬことはないですが、地区単位といったって、たった一つしかできぬのですから、構造改善事業、二億九千万で頭を押えられておって、それが二億三千万で四千万残るといいますけれども、この二億七千万なら二億七千万の三、三といっても、たとえば三、三、二で八割もらっても足らぬのですからね。地区ごとじゃない、たった一つの事業で、ほかのものは全部投げなければならぬわけですからね。金額が頭打ちに押えられておるために。そうすれば、まず三年半分のところまでもらわなければ手出ししていかなければならないし、家だけを建てて、その次は機械を入れて、その次にまた壁を塗ってというようなかっこうになれば、一体いつその構造改善の意味があるかということになるわけですから、意義あらしめるために、四年分一ぺんに出さざるを得ないじゃないか。三、三、二、二というようなことにこだわっておっても困るじゃないか。一地区ごとにということじゃなしに、各地区回した総体的なものが、一挙に、たった一つの事業にしか使えないというこの現状をどう見るかということなんです。それだから、出すか出さぬのかと言っているのです。
  121. 大山一生

    ○大山政府委員 現在の予算、特にこれから四十九年度予算の事業費の問題になってまいるわけでございますけれども、いま言われましたように、三、三、二、二ということ、したがって、全事業地区が、一斉に同時に発生しているとするならば、それの三割分しか予算がないわけでございます。したがって、それを八割分出すということになりますと、逆にいいますと、地区数を大幅に減らさねばならぬ、こういうことにも相なるわけでございまして、それはなかなか困難であろうというふうに考えるわけでございます。ただ、それぞれの地区でやろうとしておられる事業の中身というものについて、いろいろの事業というものを並行的にやるか、ある事業を単年度でやるような方向でいくか、その問題を、全国的な規模の中で操作できる範囲のことは希望してもいいのではないだろうか、そういうふうなくふうをしてみてはどうであろうか、こういうことが現在の予算執行の上において可能な範囲ではないだろうかというふうに実は考えるわけでございまして、いま先生の言われましたように、全体の事業費の三割分しかないやつを八割分出すということは、これは事実上不可能である。したがいまして、いま申し上げましたように、予算ワクの中で可能な限り重点的に使うかっこうをとり、したがって、その三、三、二、二が、全国的には三、三、二、二であっても、地区単位でいえば三、三、二、二でなくなる、ところによっては一、〇、五、四というところがあるようなことになってもやむを得ないのじゃないかというふうには思いますけれども、ただし、そういう方法も一つ考えられはせぬかということでくふうしてみたいということでございます。ただ、隣が六いってその隣は一しかいかぬということになりますと、また県間なり、あるいは町村間の問題も出てまいりますので、その辺はなかなかむずかしい問題を含んでおりますけれども、くふうしてみるとすればそういうことではないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  122. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは私が歩いてみた鳥取県の中山町というところの例なんです。だから、あなたのところにお話し合いに行ったのとは違うのですよ。  私は、町村間でいろいろなトラブルが起きるのではないかという懸念はあると思うのですよ。この三、三、二、二方式というのは全く効果はないですね。今日のような政府主導型の物価騰貴によって、こういうインフレの中ではとてもやっていけない。だから、新しい提案としてあなた方は考えるとおっしゃっておりますが、これはやはり縮めていかなければならぬ。だから、中を高くして、最悪の場合といえども三、五、二程度にしなければ、構造改善は全く意味がない。私は、構造改善をやるのではなしに、この段階だったらもう単独振興というような事業に変えていくべきがというふうにさえ思うのです。単独振興事業に切りかえていかなければ、むしろ異常なほど金をつぎ込んで遊ばしておくという施設がたくさんできてくる、こういうふうに上ものをやる場合に考えざるを得ない、こう思うのですがどうでしょう。五十年度は何を考えますか、それもあわせて言ってください。
  123. 大山一生

    ○大山政府委員 構造改善事業は、御存じのように地方の住民の総意を結集されたものについて、いわばメニュー方式でやりたいものを、それは額においては一定の制限がございますけれどもやってまいる、こういうことでございます。それと別に、単独の補助金というものにつきましては、それぞれの目的別につくってまいる、こういうことでございますので、私はやはり単独補助金は単独補助金として、それからまたメニュー方式で自発的な総意が結集されるかっこうの構造改善事業は構造改善事業として進めてまいるという二本立てがいいのではないだろうかと思っております。  ただいまの問題は、構造改善事業であれ、あるいは単独の事業であれ、いずれにしても共通して起こっている問題だろうというふうにいまの問題としてはあるわけでございます。そこで、五十年度予算もそろそろわれわれといたしましては検討に入っているわけでございまして、その中におきまして、構造改善事業なり、あるいは公共事業一般なり、すべての問題に、この物価といいますか、あるいは人夫賃も含めてでございますけれども、労務費も含めてでございますけれども、上昇しているという事態をどうにらみ、そしてそれにどう対応していくか、この問題をこれから真剣に検討してみたいというふうに思うわけでございます。ただ、事業費のワクというものが、農林省が出す予算におきましても一定のワクがあるという中において、ただ自動的に金額をふやして、三億をたとえば六億にするというようなことで解決する問題でもまたないような気がいたしております。そこで、事もなかなか困難であろうと思いますので、それやこれやを勘案しながら、来年度予算についてどうすべきかということを慎重にそして真剣に検討してみたいというふうに考えるわけでございます。
  124. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう時間がなくてあまり追及はできませんけれども、一つだけ申し上げましょう。  たとえば、いま私が例をあげた豚の団地だとか、あるいは水田の共同作業によるトラクターとか、スピードスプレーヤーとか、上ものがたくさんありますね、あるいはビニール栽培によるハウスの問題団地とか、そうものはもうだめなんだ、一つしかできぬのだ、できない場合はもうかかる。たとえば二億五千万なら二億五千万かかる、それについては、でき得るだけあなた方は二年分でも出していく、残されたものはしかたがないですから、とりあえず農協が融資をする、その融資も農協がそれ自体かぶってしまうというわけにいきませんから、あとから農民にまたかぶらせるというかっこうになりますね。いままでずっとそういうことなんですよ。あなた方も御存じだと思いますが、知って、知らない顔をしておるだけであって、知っておると思うんですよ。困ったなと言って頭をかいておるだけで、ほんとうは知っておるけれども、黙認をしておる。だから、そういうことがあれば、利子補給というようなことをもうこの辺では考えていかなければ農業効果は出ない。むしろ、効果あらしめるためにはそのようなことの政策を農林省としては思い切ってやるべきだ、こういうふうに思うのです。  構造改善局長は事務官僚の最高のところなんでして、これが政治的な課題であるとすれば、やはり政務次官からお答えをいただかなければならぬだろう、こういうふうに思いますけれどもどうでしょう。
  125. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 この問題は、現在の日本の特異な状況もございまして、いままでの行き方だけではたしてこれがいいのかということについては、ただいまの先生の御意見によりましても、私はなるほどそうだろう、こういうように深く感ずるところでございます。ただ、問題がいろいろと関連するところもありますので、しばらく時間をいただきまして、そうして御趣旨に沿うごとくいろいろ努力をいたしたい、こう考えております。
  126. 野坂浩賢

    ○野坂委員 たいへん明快な御答弁をいただきまして、けっこうでした。  それでは構造改善局長、この基盤整備事業をやらなければならぬ、——この間農業者年金の問題がございましたときにも、五百万の農家のうち、加入しておるのは百五万ですか、目標は二百万でしたか、二百六十万か——二百二十万でしたね。二百二十万というかっこうで進める。しかし、残されたものがたくさんある。これは農業者年金のほうに入らないということをあなたと議論をしました。ずうっといなかのほうを歩きますと、どの県でも平地のほうは大体基盤整備できつつあるわけですよ。ところが山間地に参りますと大体三反一窪、三十アールを一区画というふうなかっこうになってきますために現実にできない。単県で、県単独事業として小さいのはやっておりますけれども、これはもう非常にわずかなもので、こういうふうに総需要抑制で逼迫すると、これも投げなければならぬ、こういうところがたくさんあるのです、山間地は。だから、山村には過疎地というかっこうになって出ていかなければならぬ、出かせぎで行かなければならぬ、出かせぎに行って帰ってくると、失業保険を解約をして九十日分をまた三十日分にする、こういってだんだん過疎地を促進をしておるというような姿が出てくるわけですが、この山間地の基盤整備事業なり構造改善事業というものを一体どうすべきか、どうやってこの農地なり耕地というものをもっと近代化をするか、近代化することはできぬじゃないかということになりますが、どのようにされますか。
  127. 大山一生

    ○大山政府委員 山村地帯あるいは過疎地帯、これは離島でもそうでございますけれども、そういうところに対しましては、一般的にも採択基準を下げるとか、それから、ものによっては補助率を変えるといったような措置を講じているわけでございます。  そこで、圃場整備の問題を先生例に出されましたけれども、三反区画というものが立地条件からいって非常にむずかしい、御指摘のとおりだと思います。そこで現在われわれ計画部が中心になりまして検討しておりますのは、平たん地における三反という問題が、山間地においても当然三反であるというかっこうでいいのかどうかというような問題につきまして、現在いろいろと検討しております。したがって、その検討の結果を待ちまして、画一的な三反というかっこうでない、しかしながら、やはり機械化が可能であり、そしてそれによってコストが低下するというような角度において必要な限度における広がりということは必要になりますので、あまり零細な圃場ということは考えておりませんけれども、ただ三反というような区画でいいのかどうかという問題につきましては、現在真剣に検討しているわけでございまして、しばらくお時間をいただきたいというふうに思うわけでございます。
  128. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この目的が近代化をしていくということで、そのために設備、用水路、そういうものを考えていかなければ近代化できないわけですから、そういう点についてはぜひ五十年度の予算前までに検討して明らかにしてもらうように要望しておきます。いいですね。——それと関連をしますが、食料の自給率というのはだんだん低下しておりますね、昭和三十五年から比べて。耕土面積というものも減っておると私は思うのです。将来農林省としては、どの程度昭和六十年度には考えていらっしゃいますか。耕地面積、それから耕地利用率というのは、どういう傾向をいまたどっておるでしょう。
  129. 大山一生

    ○大山政府委員 土地改良長期計画におきまして、つまり四十八年から五十七年、したがいまして五十七年時点におきます要土地改良面積というようなことの前提といたしまして長期見通しを立てているわけでございますが、五十七年ベースにおきまして農地は現在の五百八十万ヘクタールが五百二十万ヘクタールになるであろう、五百二十万ヘクタールになるために必要な農用地の開発を行なってまいるということを前提といたしまして、五百二十万ヘクタールの農地というものを前提としているわけでございます。  なお、その際におきまして、その前提になりました農産物需給長期見通しとの関連におきます耕地利用率は、約一一五%程度であったというふうに考えております。現在の耕地利用率はたしか一〇三か四ぐらいに落ちているというのが統計上出ております。
  130. 野坂浩賢

    ○野坂委員 食料の自給率は高める、耕地面積は減る、耕地の利用率も減る、こういうことになってくれば、非常に農業者はもうからないからやめていくし、耕地の利用率も減ってくるし、さらに面積も減る、こういうことになっておるわけですね。これではやはり自給率を高めるということにならぬじゃないですか。むしろなすがままにまかせる、しかも農地の転用の実態は、非農林業用のものが約八〇%もありますからね、これではやはり自給率を高めるというかっこうになってこない、こういうふうに耕土面積の利用率からいって推移をするのではないかということを心配をするわけですが、どうですか。
  131. 大山一生

    ○大山政府委員 先ほど申し上げましたように、土地改良の長期計画の前提となります農産物の需給の展望と長期見通し、これにおきまして、五十七年におきまして田が約三百万、畑が二百三十万、合わせまして五百三十万ヘクタールの農用地をもちまして、そして農産物の需給見通しをしているわけでございます。したがいまして、その中におきまして四十六年から見ますと、耕地が壊廃される面積を八十六万ヘクタールというふうに見ているわけでございます。現在の農地の壊廃という問題につきましては、大体四十七年で六万三千七百ヘクタールでございますが、約六万四千ヘクタールというような壊廃がなされているわけでございますが、その中で大きなウエートを占めておりますのは、植林でございます。その植林という問題が一つの生産調整とのからみにおいてあったということもまた一つ事実であると思いますし、現在の壊廃ということをもってするならば、この長期見通しで考えました壊廃面積を上回るというようなことはないのであろう、こういうふうに実は考えているような次第でございます。
  132. 野坂浩賢

    ○野坂委員 確かに北海道、芳賀先生なり島田先生もおいでですが、この三十五年から四十八年までの間に九・六%はふえておりますが、全体的には七・二%減っておる。利用率も昭和三十五年を一二四として、今日四十七年度は一〇二%になって、四十八年度はもっと減るのじゃないか、こういう矛盾があるわけですね。ところが、おもしろいことには、経済企画庁が出しております資料の中では、大体六十年には七百万ヘクタールをやる、こういうふうにあなた方はもっと耕土面積をふやすというのが当然だろうと思うのですが、逆に経済企画庁のほうがそういうことを発表しております。これに対してはどのようにお考えになっておるのですか。
  133. 大山一生

    ○大山政府委員 先生御指摘のは、あの四十年につくりました新全総の数字を言っておられると思います。新全総の場合におきましては、非常に長期のマクロ的な試算でございます。その中におきまして、畜産をたしか相当、一千万頭ですかにふやすということを前提としているわけでございますが、われわれの土地改良長期計画のベースになりました農産物の需給の見通しにおきましては、むしろ現実にある家畜というようなことを意識しながら、より実効性のあるものというかっこうで現在の計画をつくっているわけでございます。したがいまして、新全総と、それから土地改良長期計画で見ております農地の造成面積等においては、相当の差のあることは事実でございます。ただわれわれといたしましては、むしろ土地改良長期計画に基づきます実効をあげるということをまず前提として考えているわけでございます。  それから先生の言われました裏作等を入れたいわば耕地の利用率の問題につきましては、たとえば飼料作物でありますとか、大豆でありますとか、麦でありますとか、ああいった今度のいわば生産奨励措置をもっていたしまして、そうして利用率の向上はもちろんはかっていかなければなりませんし、またそういう方向に向かって現在各種の施策を進めているわけでございます。
  134. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いろいろ言えば言えますけれども、具体的に申し上げまして、利用率も裏作をやったり、農業白書にもありますように、穀物の自給率というのはわずかに四三%ですから。しかし、いま人手がありません。人手がありませんから、ドラクターを入れたり、耕うん機を入れたりして田植えをやり、稲刈りも稲刈り機を入れたり、コンバインを入れたりしてやっていく。そのためにには早くからやらなければ、植えつけもなかなか全部機械力でできないでしょう。麦を植えておりますと、水があたってくるわけですよ。早く刈っちゃわけなければびたびたになるわけです。畜産をやるから裏作でたとえばイタリアンをつくれ——この程度にまでなれば、植えつけのために水が入ってきますから、これも刈らなければならぬ。そういうことも十分考えておってもらわなければ、裏作をただ単にやる、団地形成をやるといっても、全体的に今日の近代化と、あるいは麦作なり飼料作物というふうなものとかみ合わないところが全国的に非常に多いということを十分認識をしてもらって対処をしてもらわなければならぬということをあなたに強く訴えておきます。  次に、あと五分程度しかありませんから食糧庁長官、今度はあなたです。  前に三善長官は官房長でほとんどここにいらっしゃったのですからよく御存じだと思うのですが、いま一番大きな問題になっております。米の問題ですね。米価審議をいつやるかという問題なんです。去年七月十一日にここに田中総理がおいでになりました。十九日宮脇中央会会長がおいでになりまして、米をつくるかつくらないかはその価格によってきめたい、宮脇発言ですね。引き合わなければやめるのだ、そのために米価審議会は植えつけまでに開くべきだという強い発言がありました。御存じですか。——御存じですね。十一日に田中総理がおいでになりまして何と言われたかというと、できるだけ予算のときにきめていきたい、しかし、春闘その他があっても、考えておるけれども、本来的にはそうだ、こうおっしゃったのです。それを受けて櫻内農林大臣は七月の十九日、忘れもいたしません、私が質問をして何とお答えになったかというと、どっちもそう言っていらっしゃるし、最高の総理大臣も言っていらっしゃるのだから、そうしたい、しかし、農民の盛り上がりもひとつ見てみなければならぬ、こう言われたことは御存じのとおりです。それについてあなたは食糧庁長官としては、急いで作業をされておると思いますが、大体作業がいつごろ終わって、いっこういうことを受けて米価審議会は開くべきだとお考えですか。それにしては発言がなかなかできにくいと思います、これは大臣でありませんから。どの程度お考えですか。
  135. 三善信二

    三善政府委員 いま先生の言われましたことは、私、ちょうど官房長でおそらくこの席にいましたので、私もおぼろげながらそれは聞いておりました。それで櫻内前大臣が言われましたあと、事務当局にもっと早くできるかどうかという検討をしてみたらどうかというお話も実はありました。いろいろ検討してみましたところ、やはり御承知のように生産者米価というものは、それをきめるために必要な所要のデータというものがそろわないと何とも算定のしようがないということは、これはもう御承知のとおりでございます。たとえば生産費調査のデータがございますし、労働省の毎勤統計、毎月の勤労統計がございますし、それから農業パリティ指数もございます。そういったデータが整わないとこれは算定のしようもないわけでございます。しかも、七月ごろ米審を開いてきめているというのが大体例年の実情でございますし、そういうことを考慮いたしますと、田植え前にきめるということは非常にむずかしいし、現実問題としてデータもそろいませんし、これは非常に困難なことであろうというふうに考えております。そういうことでございます。
  136. 野坂浩賢

    ○野坂委員 データがそろえばできるというわけですか。
  137. 三善信二

    三善政府委員 まずもって、所要のデータが出ないことには何ともやりようがないということが大前提でございます。
  138. 野坂浩賢

    ○野坂委員 去年私は、数字的にはっきりいたしませんが、大蔵省が所管をしております専売公社の葉たばこ価格というのを出しますね。あのときには、葉たばこの価格の審議会で答申があって、当初、二月に六・九%か七・二%上がったんですよ。それからまた途中で、それでは低かったということでまた九・二%程度上げて、たしか一六・二か三にしたことがあるわけです。二回上がっておるわけですよ。だから、そういう措置だって私はとれるんじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、農家の期待にこたえるために、そういう措置でもして米価審議会を当面開くべきじゃないか、こういうふうに思いますが、どうでしょうね。
  139. 三善信二

    三善政府委員 専売公社の葉たばこの価格は、たしか生産費及び所得補償方式ではなかったんじゃないかと思います。米価の場合には、御承知のように生産費及び所得補償方式で、生産費についていろいろ評価がえをしているわけでございます。その点方式が違うという点もございます。いずれにしましても、直近時のデータを使いまして評価がえをしてやるというわけでございますから、そういう意味で先ほど私が申し上げましたようないろいろな所要のデータが出そろわないと、やはりこの算定のやりようもないということを申し上げているわけでございます。
  140. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは観点を変えまして、いろいろデータがそろわなければできぬ。ことしは異常なインフレでした。インフレのために、たとえば年金の関係でも、弱者救済という意味で繰り上げをやる。それからインフレ手当というものも、いろいろ政府には批判がありますが出した。米は去年はたしか自主流通米といいますか、銘柄米を含めて一六・一%、北海道のようなところは銘柄米がありませんから一五・一だ。消費者物価は二五%も上がった。こういう状況で農家の生活というのは、肥料が五〇%も上がれば、農機具もそうだ。飼料に至っては一〇〇%も上がっておる。こういう実態の中で生活は困窮その度が極度に達しておる、こういうふうに思うのです。そういうことになれば、たばこでさえそういうかっこうであとから追い打ちをかけて追加払いをしたというかっこうなんですから、生産費及び所得補償方式から考えてみて、またこういう経済事情から考えてみて、幾らになるか知りませんが、常識的に言って四十八年度の分は追加払いをしなければならない。一万三百一円なら、一五%上がったとして、二五%が一〇%の差となれば、単純計算をすれば千三十円ですか、もっと低めの要求をされるようでありますけれども、そういうことは当然考えていかなければならぬ、こういうふうに思いますが、その点は食糧庁長官はどのようにお考えになっておりますか。
  141. 三善信二

    三善政府委員 追加払いにつきまして、これは御承知のように、先ほど来申し上げておりますように、米価の場合は生産費及び所得補償方式で直近時のデータで労賃の評価がえとか、あるいは物財費の評価がえをやってきめているわけでございます。昨年の場合、いま先生おっしゃいましたように、一五%と申しますか、一六・一%と申しますか、相当大幅な引き上げをしているわけでございます。(野坂委員「小幅、小幅」と呼ぶ)大幅な引き上げをしているわけでございまして、現在、私どもはその追加払いをしなければならないというふうには考えておりません。と申しますのは、そういう米価というものが、単に物価の動向とか、あるいは労賃の動向とか、そういう一義的なしゃくし定木なことではじかれるというようなことではないわけでございまして、そういう意味もございますし、また、もし追加払いというようなことをやるということになれば、いままでの算定方式自体を基本的に変えていくというようなことにもならざるを得ない。もちろんその稲作に要した労働時間の問題とか、あるいは反収の問題とか、そういうのも全部織り込んで、その他の経済事情あるいは生産事情等も織り込んでやっているわけでございますが、そういう算定方式の問題にも非常に影響してくるという基本にも触れますので、私どもは昨年の米価の決定を見まして、相当大幅に、先生は小幅と申されますけれども、相当大幅に引き上げたつもりでございますし、現段階でその追加払いをするという気持ちは持っておりません。
  142. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう時間が来てやかましく言われておりますので……。米につきましても算定方式がいろいろ変わる、こういうお話ですけれども、生産費及び所得補償方式の原則は動かない。しかし、算定方式の中で変えてきて、一貫的にやってこなかったのはあなたのほうなんです。たとえばメリットを農民に還元したものを引き上げたり、あるいは平均というものよりももっと七割も六割も助けておったものを平均にしたり、あるいは直接労働費なり間接労働費の中、特に付帯労働時間というようなものを取り上げたり、そういう一貫をしない、米価を逆計算をして出した、式を立てたという経過があることは、去年、いまの中野農林次官は認めていらっしゃるのです。それは大臣もお認めなんですよ。いわゆるごまかしておったということを認めたのです。だから私たちが言うのは、当時はそうであったけれども、生活実態からしてやらなければならぬ。だから、よそは手当てもできた、農家には、米は手当ては出さぬぞ、こういうことで、弱者救済でそういうことも引き上げたということを言いながら、四十九年産米を六月から適用というようなことはできないのですから、そういう周囲の情勢から見て——農家の方たけですよ、何もしないというのは。きまったのだからしようがあるまいという姿は、食料の自給率が低下をし、耕地の利用率というものが異常な低下をし、耕地面積も減少しておるという今日からして、為政者としてとるべき態度じゃないと私は思うのです。  そこで、農林政務次官、あなたに政治家としてお尋ねをしたいのだが、私はそう思いますよ。それから、農家の皆さんが、つくったほうがいいか、つくらないほうがいいかという判断をするなら、植えつけ前でなければ、植えつけをしてしまって肥料をやってから抜けというわけにはいかぬわけですから、本来ならばそうすべきだ。田中総理もおっしゃった。櫻内農林大臣もお話しになった。食糧庁長官は皆さん方の命令に従ってやるだけですからね。だから、その方向をたどるべきが順当ではないかというふうに私は思うわけでありますが、副大臣である次官はどのようにお考えですか。
  143. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 ただいまの御意見先ほど来の御意見をつつしんで拝聴いたしました。これは一つの有力な考え方であると思いますが、ただ、あらかじめ早い時期に決定したほうがいいかどうかという問題につきましては、先ほど食糧庁長官が述べましたように、決定そのものに対するデータの正確性というものも考えなければ——正確性といいますか、データを整備するということも考えなければならぬと思います。こういう点につきましても全然無視をすることはできない問題でございますので、それらを考慮いたしまして慎重にこれを決定していかざるを得ない、これがただいまの考えでございます。
  144. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで質問を終わりたいと思いますが、いま農家の農業所得の中心を占めます米価の問題は、農業者の皆さんにとっては非常に重大な関心になっております。しかも、諸物価高騰のおりから、異常なほど米の値段については関心をお持ちになっておる。生きていけないというのが現状でありまして、各県ではすでに大会を開いて、十五日には東京に集結をして農家の皆さん方が大会決定をされるというような状況にあります。したがって、昨年櫻内農林大臣が当時お話しになりましたように、農家の皆さんの盛り上がり、動き、そういうものを見て対処をしたいとお話しになっておったわけでありますから、いまの政務次官のお話からして、農家の皆さんの期待にこたえるように、価格も、時期も、そういう点についてはできるだけその期待に沿うように善処をされることを要望して、私の質問を一応終わります。
  145. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後二時二十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十八分休憩      ————◇—————    午後二時三十二分開議
  146. 坂村吉正

    坂村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  147. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 飲用向け乳価問題並びに昭和四十九年産米政府買い入れ価格等に関して、農林省当局に質問いたします。  まず最初に、飲用向け乳価問題に関して質問いたしますが、各指定団体は飲用向け乳価の大幅引き上げ要求を現在いたしているところであります。すでに全乳対指令によりまして実力行使の計画がなされまして、第一段階では時差出荷及び出荷一時停止、第二段階では出荷先変更及び乳量カット、第三段階では全面的出荷停止、こういうような三段階に分けた実力行使の計画がなされました。実施時期も交渉の進展状況に応じ戦術を詰めていくということで、現在交渉団体である酪政連においては、乳業メーカーに対して昨八日と本日九日には、第一波として要求すわり込みをいたしておりますし、さらに第二波として十四、十五日には強化していくという計画がなされております。たいへん憂慮されておるところでありますが、特に九州地方においてはこの飲用向け乳価の問題が深刻な問題になっております。こういったことに対して畜産当局は御承知であるか、その点、まずお伺いしたいと思います。
  148. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 飲用乳価格の引き上げ問題につきましては、去る三月半ばに生産者側が要求乳価キログラム当たり四十円の値上げをきめまして、その後四月に入ってから具体的な折衝に入り、ただいま先生が御指摘ございましたような最近の経過をたどっておることは、十分承知をいたしております。
  149. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 当局も十分承知をしておるということでございますが、局長答弁のように、四月十日から交渉段階に入っておりまして、いよいよ今月末を目途に、生産者も重大な注目をしておるところであります。そこで、乳業メーカーが早期引き上げに応じる姿勢がなかなか見られないということで、事実上要求を拒否しておるわけです。このために生産者団体では、もはやがまんができない、非協力メーカーとは訣別せよ、こういったことなどの声が各地であがっておりまして、九州でも大分県の酪連傘下では、農家がすでに牛乳を投げ捨てるというような状態まで起きてきております。まさに火の手が上がってきたわけでありますが、この状態は日にちがたつにつれてますます熾烈化してくる、こういうふうに思っております。消費者の立場、また生産者の立場、いろいろあるわけですけれども、以下、順次いろいろ質問してまいりますけれども、こういった動きに対して政府は積極的な行政介入をして今後やっていかなければならぬと思うのですけれども、先ほどの答弁によると、現段階では介入の姿勢が見られないような状況でありますが、いつごろからこういったことに対する行政的な指導介入をしていく姿勢であるか、その点、さらにお伺いをいたしたいのであります。
  150. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 生産者側は、早期に引き上げ決定ということを目標にして、種々交渉のスケジュール等も考えておることは承知しておりますが、従来の例から見ましても、本格的に交渉といいますか話し合いに入りましたのがごく最近でございますので、従来の例から見まして、まだ交渉の緒に入ったという段階でございますので、農林省としてどのような時期にどのような方法で指導をするかということについては、現段階では特に考えをきめておるわけではございませんが、慎重に交渉の推移、経過を見ながら、必要がございますれば物価対策の面あるいは生産者対策の面という両面から指導を加えてまいりたいというふうに考えております。
  151. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 生産者の立場に立って考えまするに、現在、私がいろいろ調査をしている試算によりますと、諸資材が相当上昇を続けておる現状でございます。四十八年十二月、これはいずれも前年同月対比でございますけれども、四十八年十二月には配合飼料が一四五・二%、四十九年一月には一四〇・四%、四十九年二月には一六一・五%、四十九年三月には一五〇・七%、こういうふうに生産資材が上がっておりまして、こういったことについては、政府はこの資材の値上がりが、私が申し上げたような試算、これに間違いないか、どういうふうにとらえておられるか、その点明らかにしていただきたいと思います。
  152. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 牛乳生産に必要な生産資材の価格の動向を見てみますと、たとえばセメント等畜舎建設資材や、トラクターとか、ミルカーとか、機械器具等はなお騰勢を示しておりますものの、他方では昨年異常な高騰を示しました乳牛の価格、これは漸次鎮静化の動きを示しております。また、御承知のように、本年二月に値上がりをいたしました配合飼料の価格につきましても、全農その他のメーカーがそれぞれ建て値を四月−六月期につきましては八百円以上引き下げる、さらに二−三月分についても一部還元をするというようなことをやっておりますように、若干値下げの傾向を示しているのが見られるわけであります。したがいまして、すべての資材が一様に騰勢を示しておるということではございませんが、昨年の十二月に御承知のようにキログラム当たり十五円、飲用乳向け生乳価格の引き上げを行なったわけでございますが、その後資材価格の高騰等がございますので、当時よりは確かに生産資材の価格が上がっておるということは、当然言えるかと思います。
  153. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 生産資材の中で、いま申しましたように配合飼料の例を一例とりましたが、対前年同月比で配合飼料の場合は一五〇・七%、また乳牛購入費なんかも二九・八%、諸材料なんかを見ましても一七〇・〇%、農機具にしても一二七・〇%、また農業労賃にしても一二〇・二%と、こういうふうにかなりの上昇をしております。いま一、二の例をあげたわけですけれども、当局は、この値上がりの数字は大体間違いないか、そういうふうに掌握しておられるか、その点お答えいただきたいと思います。
  154. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまお示しになりました数字そのものについては、あとで拝見させていただいて検討をさしていただきたいと思いますけれども、おおよその数字といたしまして私どもが把握しているのも、大体そのような前年対比の引き上げ率になっておると思います。
  155. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 おおよそ私が試算しておる数字に間違いないだろうということでございますが、以上申し上げたような数字になっておるわけです。  そこで、次にお尋ねしたいことは、乳製品輸入がだんだんに増加しまして、自給率が低下しているという問題でありますけれども、乳製品の輸入量を見ますと、四十八年現在で生乳換算をいたしましても百四十二万トンに達している。国内生産の三割弱を占めておるわけでございます。特に乳糖、ホエイパウダー、ココア調整品、これらの輸入増が激しくございまして、国内酪農を圧迫していることも事実であります。こういったことを踏まえて、乳製品の輸入量がどれくらいで、しかも国内生産量の何割を占めているというふうに当局は見ておられるか、その点お答えをいただきたい。
  156. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 乳製品の輸入量あるいは自給率、国内生産等についてのお尋ねでございますが、ただいま例示をされました乳糖、ホエイパウダー、ココア調整品の輸入量についてまずお答えいたしますと、四十八年暦年におきましてはホエイパウダーが、ラウンドでございますが一万二千五百トン、乳糖が五万四百トン、ココア調整品が二万一千二百トンという数字になっております。それぞれ前年の輸入額との比で見ますと、ホエイパウダーは二一二%、乳糖は一〇八・六%、ココア調整品は一二一%、二一%増という意味でございますが、そういうような数字になっておりまして、年々輸入量がふえているところでございますが、御承知のように乳糖、ココア調整品は国内生産がございません。またホエイパウダーは、中間製品として自社でつくってすぐ使うということで、自社使用分として消費されまして一般には流通をしておりません。そういうようなことから、ほとんど輸入に依存をしておるということのために、輸入量がふえてまいっておるわけでございます。  なお、その他の乳製品の需給状況、輸入状況等について申し上げてみますと、最近におきます生乳生産の傍滞、それから反面、飲用乳需要が非常に旺盛であるということのために、乳製品に回る重乳が逼迫ぎみに推移をいたしております。このため、畜産振興事業団は四十八年度に約二万四千トンのバターと約九千トンの脱脂粉乳を輸入して放出をしたわけであります。またAA品目になっておりますナチュラルチーズにつきましても、輸入量は四十八年、年間で約三万八千トンに達しておりまして、今後とも乳製品需給は逼迫が続くものというように見ております。したがって、国内需給の安定をはかるために、国内の需給事情、市況を勘案しながら適切に輸入を実施いたしまして国内に放出をしてまいるというようにいたしたいと考えております。  なお、自給率を見ますと、四十八年度は数字がまだ締め切って出ておりませんので四十七年度について申し上げますと、バターは八〇%、脱脂粉乳は七八%、チーズは二一・四%、牛乳乳製品全体で八七・一%というような数字になっております。
  157. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長が答弁されておるように、かなりの輸入量になっておるわけです。乳糖、ココア製品は輸入にたよらなければならない。ホエイパウダーは中間製品であると、こうおっしゃるけれども、こういった輸入にたよる関係もあって、現在世界的に生乳の乳製品の需給逼迫が起こっております。そこでわが国においても、量の確保のためにも自給度を向上させる必要が当然考えられるわけで、これに対して畜産当局も真剣に取り組んでおられると思いますけれども、こういった乳製品の輸入量が例年ふえておる現状を踏まえて、国内の生産がだんだん減退してくる姿を見たときに、先々寒々しい気持ちが起きるわけです。そういったことに対する見解は、見通し等を踏まえてどういうふうに考えておられるか、お答えをいただきたい。
  158. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 酪農は、日本の農業の振興という上におきましても、また、牛乳とか乳製品の安定供給の観点からしましても、ともに重要な項目であると考えております。それで、今後におきましてはその振興をはかって、国際需要の動向のいかんに関係なく、日本の国内における自給率の向上を推進していくことが肝心だと、こう考えておるわけであります。五十七年を目標とした計画の一つの試案でございますが、これにおいても牛乳乳製品については九二%程度の自給をやりたいと考えておるわけであります。また、国内における生産振興をはかるために、去る三月には配合飼料価格の値上がりやいろいろな資材等の値上がり、コストの上昇を適正価格の形において吸収をして、再生産を確保する方針のもとに加工原料乳の保証価格の大幅な値上げを実施したところであります。  一方、生産面におきましても、草地開発等による飼料生産基盤の整備、既耕地における飼料作の推進をはかるとともに、酪農団地の育成、乳用牛、資源確保対策の推進等の諸施策の拡充強化によりまして、酪農の振興をはかってまいりたいと考えておる次第であります。
  159. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官は、農林省試算によれば、五十七年度には九二%に自給率を上げていきたい、かようにおっしゃる、また酪農振興をはかる。これはたびたび農林省が言われることでありますが、そう言いながら、現実はまさにそれとは逆な方向に進んでおります。ちなみに申し上げますと、農林省は四月三十日、牛乳乳製品統計を発表しておりますけれども、わが国の生乳生産は三月も前年同月を下回り、昨年八月以来、八カ月間連続して前年を下回る異常事態が続いております。生乳生産量が昨年三ないし五月に前年同月を〇・五ないし〇・一%割り、六、七月に何とか前年同月を上回ったのでありますけれども、それも一時的なものであったわけです。八月以降は三月までに連続して前年を割り続けておりまして、一向に回復ができないのであります。四十八年度の場合は、年間で前年対比九九・五%というかってない落ち込みとなっている。いわば史上初めての落ち込みであります。この原因はどういうように考えておられますか。
  160. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま御指摘のように、四十八年度年間を通じまして〇・五%生乳生産が前年より下回りまして、四十九年に入りましても、一月は前年に比べて九八・八、二月は九八・二、三月も九八・八ということでずっと前年を下回ってきておるわけであります。  これの原因はいろいろ考えられるわけでございますけれども、一つは価格等との関連もあります収益性の問題がございます。そういう点も考えまして、先ほど政務次官からお答えいただきましたように、四十九年度の保証価格のかなり大幅な引き上げを実施をしたわけでございます。  そのほかの要因といたしまして、兼業化が進展いたしますことに伴いまして、零細規模の飼養農家がどんどんやめていく、これを大規模な飼養農家がカバーするだけ規模拡大をし、飼養頭数がふえていくということでございますれば、全体の生産性向上という点から見ましても望ましい方向と思うのでございますが、兼業化の進展で零細農家が脱落するテンポが非常に早く、それにかわるべき大規模層の発展というのが十分進まない、かなり進んではおりますけれども、カバーするだけには至っておらないというような点が見られること、それらのさらに要因ということになるかもしれませんが、飼料生産基盤の拡大が用地の取得難等のために思うにまかせない。特に北海道とか九州とかいう遠隔地に比べまして、都市近郊、中間地帯等につきまして御承知のような事情で用地が確保できないというような点、あるいは酪農労働が年間非常に拘束的である。俗にいわれますように週休二日制の世の中で休みがとれない、こういうような労働の特殊性等の要因もあろうかと思います。  現段階におきましてわれわれが生産の停滞あるいは減少というものの要因として考えておりますのは、大体以上のようなところでございます。
  161. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長からただいま答弁がございましたように、幾つかの例をあげられましたが、用地の確保がなかなかできないとか、零細農家がやめていく、または兼業農家が脱落して大規模経営がなかなか進まない、いろいろあげられましたが、こんなことは毎回指摘しているとことでありまして、十分承知のところであると思うのです。事実そういったことがますます深刻化しておる現状です。  そこで、最後にいろいろとまとめてまた乳価問題をやるわけですが、農林省に深刻に理解をしてもらうためにもあえて指摘いたしておきたいわけですけれども、三月の生乳生産量を地域別に見ましても、近幾地方が九二・二%、四国が九六・二%、東山が九七%、関東で九七・二%と市乳地帯の減産が著しくて、北海道一〇三・九%と北陸一〇〇・四%だけが前年をやや上回っているわけでございます。市乳地帯については毎年落ち込みが激しいということは、現状価格では採算割れでどうしても生産ができないということが主要な原因である、かように思うわけです。昨年の十二月に大幅値上げと、こうおっしゃいますけれども、われわれはまあまあ一応の評価はしたものの、実際問題、こういった落ち込みの原因は価格の問題にある、かように思うのです。こういった市乳地帯の落ち込み、これらの原因はどういうふうに考えておられますか。
  162. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまごく最近の地域別の生産の落ち込みについての数字について御指摘がございました。そのとおりでございまして、四十八年の暦年を通して見ましても、一番落ち込みの大きいのは近畿の七・一%の減、それからそれに次ぐのは東山の三・六%の減、それから中国、四国が一・五%、それぞれ減ということで、ふえておりますのが北海道の一・六%と東海の一・五%、北陸は横ばい、こういうのが四十八年暦年を通じての数字になっておるところでございます。  これらからうかがえますことは、先ほども、最近全国的な停滞ないし減少の要因としてお答えいたしましたように、都市近郊あるいは中間地帯を含めまして兼業化が非常に進んでおる、他産業の雇用機会が非常に多いということ、さらに土地価格が非常に高くて用地の取得が全国的に見ましても都市近郊あるいは中間地帯という順序で非常にむずかしいというようなことのために、都市近郊地帯、中間地帯、遠隔地帯というように、前年に比べての落ち込みが大きくなっておるというのが、例外はございますけれども、あるようにうかがえます。  そこで先ほどちょっと申し上げました東海は、ある意味では都市近郊に近いところが多いと思いますけれども、一・五ということでこれはふえておるということでございますが、これは愛知を中心にいたしまして畑作地帯が比較的多いということもございまして、ただし先ほど申し上げました要因のほかに、どうしても水田地帯よりは畑作地帯のほうが落ち込みが少ないとか、あるいは増加の傾向が見られるというようなことも全国的に見られるわけでございます。   〔坂村委員長代理退席、山崎(平)委員長代理着席〕 いま申しましたような数字から見ますと、単に価格だけの問題ではないようにうかがえるわけであります。御承知のように北海道は加工原料乳の比率が非常に高くて、加工原料乳と飲用乳に向ける生乳価格が四十八年は非常に格差が大きかったわけであります。関東地域で三十三円という大幅な開差があるということで、それを縮小するためにも加工原料乳の保証価格を上げるべきだという御意見が非常に強かったことからもうかがえますように、その間の開きが年ごとに非常に大きくなっておった。今度これを回復したわけでございますけれども、そういう点からすれば、単なる価格関係だけならば、北海道あたりはそんなに——むしろ減るはずであるというふうにも見られなくもないわけでございますので、相対的には比較的優位であった市乳地帯がむしろ減り方が大きいという点は、価格の問題はもちろんございますけれども、価格だけではなくして、先ほど申し上げましたような用地取得の問題なり、あるいは他産業への雇用機会の問題、兼業所得の問題、そういうような問題が複雑にからみ合ってきておるというように見ておるわけであります。
  163. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官お尋ねしますが、ただいま畜産局長からいろいろと答弁がありました内容はお聞きのとおりでありまして、市乳地帯の落ち込み等も私の指摘したとおり認めておられるわけですが、先ほど五十七年度を目標にした農林省試算によると、九二%に自給率を上げていくという御答弁でございましたが、四十八年度の生乳生産が前年を〇・五%割ったということは、戦後の一時期を除きかってないことであります。政府の酪農政策の貧困をきびしく問う数字であると私は指摘しているのです。こういったことではとても五十七年度目標の試算には及びもつかないことである、かように私は申し上げたい。畜産局長が単に価格のみではないということをいま申されましたけれども、今後飲用乳価を早急に引き上げる以外には実際にこれらの問題を解決することはできないと私は端的に指摘したいわけです。もちろん雇用の問題とか、資材の問題とか、あるいは兼業化の問題とか、いろいろおっしゃっておられますけれども、端的に言えば飲用乳価の早急な引き上げ、これ以外にない、かように思っておるわけですが、これらの事態を踏まえて政務次官はどういうふうにお考えであるか、お答えをいただきたい。
  164. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今回の市乳の引き上げについてどのように考えるか、こういう御趣旨に承ったわけでありますが、先ほどお答えいたしましたように、現段階としては、農林省が直接指導するとかあるいは介入するということを差し控えております。と申しますのは、飲用乳価格は、政策価格あるいは行政価格としてきまるものではございませんで、当事者間で自主的な話し合いと申しますか、交渉によってきめるということでこれまでもきておりまして、双方最終的にはおおむね納得のいく線できまってきておるわけでございます。今回もそのような考え方で、両当事者が交渉の席についていよいよこれから本格的に始まるところでございますので、現段階として特に行政が積極的に乗り出す時期ではないというふうに考えております。  ただ、昨年末、キログラム十五円引き上げましてから、その後のえさその他諸資材の価格のアップという問題がございますので、その点では、生産費はまだ的確には把握できませんけれども、上がっておるはずであるということはもちろん当然のことであると思います。しかしながら、両当事者間で自主的に話し合いできめるということになりますと、生産費が上がっておるということも一つの考慮事項、要素にはなることは当然でございますけれども、やはり消費がどうであるかという点も、価格をきめる場合には、需要あっての生産でありますから、当然念頭に置いてきめなければいけないという点もございます。そういう点では昨年の十二月飲用乳の小売り価格が八円引き上げられまして、二百ccで大体四十円になっておるわけでございますが、そういう引き上げに伴いまして、従来と同じように、あるいはそれ以上に消費のダウンというのは免れなかったわけでございまして、現在もなお引き上げ以前まで回復するというところまでは至っておりません。これは諸物価高騰というような一般的な情勢のもとにおいて起こっておるわけでございます。今後の消費の回復の見通しあるいは上昇の見通しといいますか、そういう点も見きわめながら、両当事者間で適正な価格を決定してもらいたいということを期待をいたしまして、現段階では慎重に推移を見守っておる、こういうことでございます。
  165. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官お尋ねしたのを局長がぺらぺらしゃべりましたけれども、政務次官、あなたは先ほど私が質問しました——畜産局長は単に価格のみでない、こういうように言うわけです。われわれは価格の問題が大きな要因である、かように言うわけです。そこで四十八年の生乳生産が前年を〇・五割っておる。これはかってない状態で、史上初めてである、こういうふうに私たちは指摘しておるわけです。  そこで政府の酪農政策の貧困をきびしく問う数字である、こういうふうに指摘しておるわけですが、政務次官としては、先ほどからの局長の答弁を聞かれて、どういうふうにお考えであるか。こんなことでいいのか。先ほどから自給率を上げる、五十七年度試算では九二%にする、こうおっしゃっておるけれども、逆な方向に進んでおるわけです。私はそういったことをうんと論議して、最後にどうしても上げなければならないということを言わしめたいために質問しておるわけですからね。とにかく政務次官はどういうふうにこの点踏まえておられますか、お答えをいただきたい。
  166. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 ただいまの御質問でございますが、私の申しましたのは、日本の現在の酪農状況というものが、大観的に見ましていろいろと欠陥もあるものと思います。そういう意味におきまして日本の酪農を伸展せしめなければならぬということは、一つの大きな方針になるべき問題である。そのほかの問題は、それに同級の、同じ高さのものではない。こういうものの考え方において酪農を伸展させたい、こういうことでございます。そういう意味において、ただいまの御意見のように、われわれは酪農政策をそういう方向において持っていきたいと考えておるわけであります。
  167. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長、そこで乳牛頭数の減少もまた問題でございます。農林省はどういうような把握をしておられるかお尋ねするわけですけれども、酪農家の戸数も三十七年をピークに減少を続けてきております。これは先ほど兼業農家の脱落とかいろいろ申されておりましたが、相当数が減少を続けております。さらに乳牛頭数も、四十六年度をピークにしまして減少に転じております。このまま推移すれば今後の生乳生産に重大な支障を及ぼすことはもう火を見るよりも明らかです。こういった点は、農林省はどういうふうに踏まえておりますか。数字を踏まえてひとつ明らかにお答えいただきたい。
  168. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 生産量の減少の背景として、乳牛頭数の減少が先行してすでにあらわれてきたわけでございまして、毎年二月をとっておるわけでございますが、四十七年二月には、前年に比べまして約二%の減、四十八年二月には二・三%の減、四十九年の二月はまだ出てきておりませんけれども、四十八年まで見まして二%ないしそれを若干上回る減少を来たしておるわけでございます。  これの理由、要因につきましては、先ほど申し上げた生乳生産量の停滞ともちろん同じことでございますが、これはたいへんなことだとわれわれも思っております。したがいまして、乳牛の個体の性能を向上させる、端的に申し上げれば泌乳量をふやしていくというようなことももちろん必要でございますけれども、何としても飼養頭数、搾乳頭数自体をふやしていくということが先決になるわけでございます。生産の長期見通しの試案におきましては、乳牛につきましては三百八万頭の目標を置いておりますが、最近の停滞現象を見ますと、容易なことでそのような目標が達成せられるとは考えられないわけであります。そういう点で乳牛、酪農経営の収益性を上げるというために、種々の生産対策、流通対策、価格対策を総合的に実施してまいる必要があるというふうに考えるわけでございます。  先ほども申し上げましたような飼料基盤の拡大、既耕地におきます飼料作物の生産とともに、草地の造成によって、思い切って飼料基盤、飼料の自給率を拡充していくということが必要になるわけでございますが、それが一つのネックになっておったわけでございますので、この点につきましては、先般成立をしていただきました農用地開発公団等の機構も十分活用いたしまして、それのみではなく、一般の草地造成、飼料作物の作付の増進ということに重点を置いて、自給飼料の基盤を拡大をしていくというようなこと、さらに肉用牛の資源を確保する、あるいは増殖をするというようなことも基本になりますので、それらの施策、あるいは家畜導入事業につきましても、水田飼料作の推進に伴う家畜導入あるいは飼料作物作付推進に家畜導入事業といったようなものも新たに設けたり、あるいは拡充をしたりして、四十九年度から実施をいたしております。それらの対策を総合的に実施をいたしまして、もちろん先ほど来申し上げておりますような価格対策の重要なことも申すまでもないことでございます。そういう価格対策、生産対策、流通対策、基盤対策等を総合的に拡充実施することによりまして、先ほど申し上げました試案の目標にできるだけ到達するように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  169. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長から、いまいろいろと答弁がございましたが、政務次官にまたお尋ねしますから、よく質問の内容を聞いておいていただきたいと思うのですが、いまの答弁をお聞きになると、私が先ほどからいろいろ指摘をしてきましたことが明らかになってまいりまして、だんだんにさびしくなってきたと思われるであろうと思います。畜産局長が、現状はたいへんなことである、個体の生体を向上さして乳牛をふやすということも考えなければならぬ。搾乳頭数をふやすことも考えなければいかぬ、これが先決だ。しかし、これもなかなか困難です。いまだんだん減っております。芝浦の屠殺場へ行っても、乳牛がどんどん屠殺されている状況を見ても明らかです。また、生産、流通、基盤、価格対策等を含めた総合的な施策を実施して、拡充強化をしていかねばならぬということをはっきりと申された。容易なことではない。さらには農用地開発公団等を活用するなり草地改良をやるなり、拡大をはかるとおっしゃる、当然なことです。農地開発公団も、トンカチ公団から性格が変わって、農用地開発公団に変わったわけですから、なかなか一挙にはまいりません。これにもいろいろと問題があります。これが一、二年ですぐ間に合うとも考えられません。徐々に開発が行なわれる、これもわれわれも期待しておりますから、ぜひ進めていかねばなりませんけれども、これにはまだまだ時間がかかるわけです。こういったことを見ましたときに、乳牛頭数もどんどん減っていく、また生乳の生産もどんどん、史上最大といわれるように落ち込んできている、こういったことを考えますと、まさにこれはたいへんなピンチに来ております。なるほど、昨年の十二月乳価を上げたとはいいながらも、その後の生産資材は、一応は鎮静といわれるけれども、事実上はまだまだ上がっている状況にあります。先ほどから指摘したとおりであります。  こういった状況を踏まえたときに、農業のいわゆる三本の柱である米、畜産、果樹、この三つの中の二番目の、第二食管といわれるこの畜産が、重大な転機、重大なピンチに来ているということは言うまでもありません。昨年来畜産地大会がしばしば開かれ、また酪連の大会等も開かれて深刻な訴えがなされておりますけれども、一息ついたかのような現在の状況を見ましたときに、まことにざんきにたえない気持ちで私は一ぱいです。こういったことはもうすでに言わなくてもわかっていることでありますけれども、あえて公開の席でこれを申し上げ、反省を求め、早急な対策、そして当面の問題と取り組むという姿勢でなければならぬ、かように思う。そのためには、諸条件はあるかもしれませんが、私は何としても乳価の引き上げをしなければならぬ、そのために政府の強力な行政介入を早急にやらなければならない。すでに実力行使にも移っている、今後ますます激化するということを踏まえて考えましたときに、何らかの手を打って乳業メーカーとのいろいろな話し合いをつけさせなければたいへんな問題になるのではないか、かように思って指摘をいたしておるわけです。  いままで申し上げたことについて、政務次官、あなたは、現状を踏まえ、将来のことを思い、そうして生産者が要求している乳価問題等を踏まえて、どういうふうにすべきだ、このまま放置していいのか。もちろんこれは乳業メーカーといわゆる生産者との自主交渉にまつということにはなっておりますけれども、これがますます実力行使が激しくなり、そうして諸問題が起きてくるということになりますと、これは社会的な問題になる、ほっておけない問題だと思う。その生産者の言う今度の価格引き上げ、すなわちキロ当たり四十円、二百cc当たり八円の値上げということを言っておられますが、これらを踏まえて、どういうふうに政務次官は現状を分析し考えておられるか、いままでの畜産局長の答弁をお聞きになって、あなたの政務次官としての考え方をひとつここらで明らかにしていただきたいと思う。
  170. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 この酪農なり畜産の問題そのものは、申すまでもなく、日本としては歴史的には相当あるのでありましょうが、近代的な面においてはきわめておくれた分野だと思うわけであります。そういう意味におきまして、いろいろ現在まで実行いたしました政策そのほかにおいて、必ずしも万全の策を実施し得なかったであろうと私は考えるわけでございます。われわれは、これらの結果と外国における状況そのほかをいろいろと参考といたしまして、日本がこの方面において一つの進歩した酪農政策をとるように努力をいかしたい、こういう意味で先ほどお答えを申し上げた次第でございます。  なお、最後のところに牛乳の四十円値上げの問題にお触れになられたわけでございますが、この問題につきましては、生産者がその乳業メーカーに対して要求しておるものでございまして、これらの問題は、飲料の原料になる乳の価格というものは当事者間においてお話をせられるのが本筋だと考えます。それで農林省としては、いまこの業者間においてお話をされておる現段階におきましては、これがいいとか悪いとかということを意思表示することは私は差し控えたいと考えるのであります。
  171. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 飲用乳価の大幅引き上げの要求が中央酪農会議を中心として行なわれておりますけれども、御承知のように、最近の酪農をめぐる情勢というものが、配合飼料価格の二月からの大幅引き上げ、さらにはその後の情勢不安も解消されていないということが一つあげられると思うのです。二つには、その他の生産資材、一般消費者物価の続騰、労賃の大幅上昇等が急速に進行しておることも言うまでもありません。三つには、前回の四十八年十二月値上げも水泡に帰して、再び赤字経営に転落しているというのが実情であります。四つには、さらに引き続く生産の減退が需給の逼迫を招き、乳製品の輸入が激増し、わが国酪農の衰退に拍車がかかっておる。こういった四つにまとめられると思いますけれども、いままでいろいろ論議してきましたことをかいつまんでまとめたわけでありますが、こういったことを見ましたときに、酪農崩壊を食いとめて生産の維持をはかる、また酪農振興をしていくためには、即時飲用向け生産者乳価をどうしても上げなければならぬ、かように思うわけです。ところが、御存じのように、一方消費者側の立場もあるわけです。これも十分われわれもわかっております。今回中央酪農会議においては、生産費・所得補償方式によって計算されて、百二十一円六十九銭という試算を出しておられる。現在の価格八十二円を引きますと、約四十円ということで、今回四十円の値上げを要求しておられますが、私はこの四十円がかりにできないにしても、少なくとも百円台くらいには乗せなければこれは成り立たない、かように思うわけです。そこで、かりに四十円が実現すると、一本の牛乳が二百ccで二十円上がる。こうなれば一本六十円、こうなりますと、なかなか消費者もこれを飲用しない、他の飲用物にかわるということにもなろうかと思う。そういったことで、消費者の飲用が減退してくるということも十分踏まえていかなければならぬということを考えましたときに、どうしてもこの乳価決定にあたっては、生産者を崩壊から防ぐためには、生産者の価格を引き上げてやると同時に、この乳価についてのいわゆる二重価格制、すなわち不足払い制度を今後考える必要がある。これはもう毎回申し上げているわけですが、いよいよこれを考えねばならぬ。そうして消費者も保護し、生産者も生産が成り立つように考える、こういったことを重大決意を持って考えねばならぬという気がしてならぬのですが、その点当局は、いままでいろいろ論議したこういった酪農の将来の問題等を踏まえて、どういうふうに対策を考え、どういうふうに検討しておられるか、この不足払い制度について今後考える意思があるか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  172. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 飲用乳価格につきまして、不足払い制度を検討すべき時期に来たではないか、こういう御趣旨の御意見、御質問であったと思いますが、現行制度におきましては、加工原料乳につきましては、取引条件が非常に不利でございますので、保証価格を定めまして不足払いを実施することによりまして、酪農農家の所得を維持するというようなことをやっておるわけでございますが、飲用乳価格につきましては、自由な取引によりまして、当事者間の自主交渉によりまして決定をすることによって、おおむね両当事者が納得する価格がこれまでも形成をされてきたというふうに思うわけであります。しかもそれによりまして、消費が、そのときどきの需給状況あるいは景気の動き等によりまして変動がございましたものの、傾向といたしましては年々消費がふえるということで来たわけでございます。先ほど来お答しておりますように、昨年十二月に値上げをいたしましたころから消費が前年を下回っておるという現象があらわれておりますけれども、これは価格が上がったということももちろん要因の一つでございますが、それだけではなくして、昨年の暮れ以降御承知の石油危機に伴い、日本の経済全体が大きな変動に見舞われまして、消費者の消費支出自体が実質的にかなり減ってきておるということに伴いまして、牛乳についても消費が停滞をし、減少しておるという傾向が見られるというふうに考えております。したがいまして、このような傾向が、今後とも恒久的に続くというふうにわれわれは考えておるわけではないわけであります。将来のことはなかなか的確に判断いたしかねますけれども、そういうことはないだろう、やはり経済が落ちつき、家計も従来ほどではないにしろ、着実に年々上昇するということがございますれば、牛乳につきましてもある程度の適正な幅の値上げがございましても、消費はそれについてくるし、さらに増加をするということも期待できるわけでございます。したがいまして、現段階において、直ちに消費者が消費を伸ばしながら消費をしていくに必要な適正価格と、それから生産者が供給を確保するために必要な生産者価格というものがギャップを生じて、その間加工原料乳の場合と同じような意味での不足払いをしなければいけない段階になるかどうかということは、現段階ではまだそういう判断をいたす段階には至っておらない。今年度の価格の決定の推移等も見ながら、将来の問題としてはあるいはそういうことを検討する必要があろうかとも考えますけれども、現段階においてそのような事態にすでに至っておるというふうには考えておりません。
  173. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、三月でしたか、日本農業新聞が報道しました乳業メーカーの超過利得の問題、私も当委員会でこれは二回にわたっていろいろ当局の見解をただしたわけですが、年間約六十億円にのぼる超過利得の実態が明らかにされたわけです。当時渡辺政務次官も、予想以上の利益については農民に還元するということを約束した。また、倉石農林大臣は、乳業メーカーの不当利得問題にからめ、雪印など、大手乳業メーカーと指定生乳生産者団体に対して通達を出し、受託販売にかかる生乳の数量、販売価格、メーカーの購入数量と価格、取引条件などを報告することを求めております。すなわち不足払い法第二十三条の報告聴取規定により、メーカー等に乳価奨励金などの報告を求めたのは実際には異例のことである、これはわれわれもそう思っているわけですが、これについてはたしか三月二十三日までに報告をせよということになっておりますけれども、報告書は入手しておりますか。
  174. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 三月末までということで、大手のメーカーと、それから生産者団体、出しておるほうと受け取っておるほう、両者から報告を求めまして、全部集まっております。
  175. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その報告された実態はどうだったのですか。
  176. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 これは初めての調査でございまして、まあ奨励金その他の奨励措置というのを、どういうふうな概念規定のもとに報告をするかという点、若干判断に迷うようなところもあったようでございます。それで、報告を聴取いたしまして、現在整理をいたしておりますが、率直に申し上げまして、生産者側から出てきておる面と、それからメーカー側から出てきておる面の突き合わせが十分整合しないという点がございまして、その点を現在洗い直しておるところでございます。
  177. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省はいま整理をしている、若干判断に迷う、こういうことをおっしゃるけれども、こういう大事な乳価問題で騒いでいるときに、実際怠慢だと思うのです。どういうふうにこれを判断していますか。いわゆる不当利得、こういうふうに見ておられますか。
  178. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いわゆる六十億の問題でございますが、これは当時もお答えをしたわけでございますけれども、安定指標価格と実勢価格が華離することによりまして生ずるその間の差額をどのように見るべきかということにつきましては、メーカーの原料乳取引の実態、先ほど来お話しが出ております奨励金を上乗せしてどの程度出しておるかということ、あるいは奨励金という形ではなくして、いろいろな援助、技術面その他の援助をどの程度しておるかというような実態、あるいは製造、販売経費が、安定指標価格をきめた当時と当然差異が生じておるわけでございますので、その辺を、実態をどう判断するかという必要があるわけでございますが、そういう意味で奨励金の調査も判断の材料にもちろんなるわけでございますから、先ほど申し上げましたように、現在なお提出されました資料について、再調査あるいは再整理をいたしておるところでございます。  そのような現段階でございますが、一般的に申し上げまして、実勢価格と安定指標価格との差額が直ちに乳業メーカーの利益になっておるということではないと思います。四十七年度について特に乖離が著しかったから、それが予定外の利益になっているという面も含まれておるとは思いますけれども、それが幾らかという点は的確に判断をし、把握するのは非常に困難だと思います。  昨年の秋、生産者に対しまして、乳牛確保のための奨励金として、九月、十月、キログラム当たり三円づつメーカー側が生産者に対して交付いたしております。これも、通常のものではございませんけれども、一種の奨励金でございまして、特別な奨励金を出しておるわけでございまして、それが約六億円に至っておる。あるいは本年の二、三月になりまして、配合飼料価格が引き上げられたのに対しまして、酪農家に対しまして北海道の場合、キログラム当たり三円の奨励金を支払っております。それらのものも含めまして奨励金がどの程度払われておるかというようなこと、あるいは先ほども申し上げましたような製造、販売経費が実態がどうなっておるかということを的確に把握するのは非常に困難でございます。したがいまして、現在六十億のうちのどの部分、どの程度が利益になっておるかということを申し上げるまでに至っておりません。ただ、そのように安定指標価格と実勢価格が乖離したことによりまして、予定したよりも販売金額全体としてはふえたことは間違いないわけでございます。全部が全部農家に還元されたわけでもないだろうと思いますが、そういうような実態も考えまして、四十九年度の基準取引価格、安定指標価格の決定にあたりましては、実勢価格と安定指標価格の乖離を今後生じないように、一月の実勢価格の水準で安定指標価格をきめたということ、それからさかのぼって、基準取引価格、メーカーが生産者から加工原料乳を買い入れます価格であります基準取引価格を算定します際に、製造販売経費を差し引くわけでございますが、これにつきましては、従来以上にきびしく圧縮査定をいたしまして基準取引価格を決定をいたしたわけでございます。六十億問題についてはそのような経過並びにそれと関連いたします価格決定の算定をいたしたわけでございます。
  179. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間もないのではしょってやりますが、いま畜産局長からいろいろ報告がありましたけれども、現在整理中であり、いろいろ検討されているようですが、この乳業メーカーの報告書並びに当局の調査検討された内容等について、早急に私は資料として出していただきたいと思うのです。委員長にぜひお願いしたいのです。
  180. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 承知しました。
  181. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 委員長から指示をしていただくということでございますので、ぜひ提出をお願いしたい。と同時に、またその機会にいろいろと質問いたすことにしますが、その検討の結果、渡辺政務次官が言いましたように、予想以上の利益については農民に還元すると約束しておるわけですけれども、今回の生産者が乳価問題について大幅の値上げを要求しており、これがまた消費者にも影響するということを考えましたときに、不足払いの制度のことも考えなければならぬが、生産者の立場で資材のことを考え、あるいは先ほどから指摘しましたように、労賃その他が値上がりしておるということを踏まえた場合、乳業メーカーがこういった不当な利得を得ておる。おそらくこれ以外にも相当あるということが指摘をされておるわけです。私たちもいま調査しておりますけれども、かなりの不当利得があると思うのです。  そして一方考えてみますと、生産者の取り分というものはまことに減少しておりまして、生産者、乳業メーカー、販売者、この三者の取り分の推移を見ますと、一本二百cc四十円の場合に、生産者は十七円十銭、メーカーは八円十三銭、小売りが十四円七十七銭、このように現在の配分がなっております。そして四十二年の生産者の取り分が四七・三%、四十八年十二月が四二・八%と大きく減少しておる。四十二年から四十八年十二月までの額の上昇率についても、末端価格が二倍になっているのに、生産者の取り分は一・八倍にしか過ぎず、メーカーと小売り店が二・三倍、二・一倍と大きく増加しておる。いろいろ論議したいことはありますけれども、こういったものを踏まえて生産者の乳価を上げる、乳業メーカーの価格は据え置く、そして将来こういった畜産の危機、または乳牛頭数の減少、あるいは農家の脱落等考えましたときに、どうしても二重価格制、不足払い制度も考えなければならぬ、私はかように思う。こういった意味からも私は——いまいわゆる実力行使が行なわれ、各地でいろいろな問題が起きていま深刻なときになってきておる、政府は当事者間で自主的にきめてもらう、また値上がりの幅なり時期については指導は行なう、当面推移を見守っていきたい、こういったことをおっしゃっております。いま決定的に介入する意思はないとおっしゃる。必要があれば介入する、現段階では指導する段階ではないというようなこともしばしばおっしゃっておりますけれども、こんな姿勢であってはならぬと思う。国民、消費者の立場、また生産者の立場、社会問題を考えたときに、早急に介入してやるべきである。そして、いまの乳業メーカーの不当利得を生産者に還元すべきであると大臣も政務次官も答えておる。こういった意味からも、この乳業メーカーの報告書を早急に検討し——そんな手ぬるいことてあってはならぬ。怠慢である。そして還元すべきものは還元し、少しでも負担を軽くして、消費者にも、また生産者にも喜んでもらえるような対策がなされなければはらない。そういった意味では、政府は当事者間の話し合いにゆだねて傍観しておるわけではないかもしれぬが、われわれに言わせれば傍観していると言わざるを得ない。そういったことを思ったときに、早急に介入してこれらの問題を解決するという決意がなければいかぬと思う。それを踏まえて、畜産局長、どうですか。
  182. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほどお答えしたことと同じようなことになりますけれども、現在の生産者とメーカー側との間に行なわれております乳価交渉は、ようやく緒についたばかりでございまして、まだ本格的に進展を見るところまでに至っておりません。当事者間で自主的にきめるという原則からいたしますと、現段階において行政当局がどの程度の幅がいいとか、あるいはいつがいいというようなことを軽々に申すべきものではないというふうに考えております。もちろん政府といたしましては、物価政策とか、あるいは生産者対策という面から責任も持っておりますので、必要がある場合、それらの観点から指導を加えることは当然だというふうに思っておりますが、現在まだ開始されたばかりでございますし、さらに生産者側からもあるいはメーカー側からも、直接的に、農林省に対しまして価格のあっせんとか指導とかいうことをやってほしいというような声も、現在のところ全く出ておりません。自主的な交渉によって価格をきめるというこれまでのルールに従って、両当事者がこれから本格的に交渉を詰めていく段階に入ろうとしておるわけでございますので、現段階といたしましては、慎重に情勢の推移を見守って、必要な場合には必要な措置を講ずるということでいきたいと考えます。
  183. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 飲用向け乳価の問題については以上で終わりますが、いろいろ答弁ありましたけれども、特に西日本地区では、この価格大幅値上げの問題が重大な問題になっております。政府はしばしば、当事者間の問題である、当分推移を見守っていくということで、いま直ちに介入する意思はないとおっしゃるけれども、これは重大な問題でありますので、今後農林大臣ともよく協議されて、生産者の価格を何としても五月末にはきめたいという方向でいま進めておりますので、政府は、重大なるこの事態に対処して今後さらに検討し、早急なる介入によって円満な解決ができるように、そして、生産者が再生産に見合う畜産振興ができるように対策を講じていただきたいということを強くお願いします。  最後に、米価問題について一、二簡単にお聞きして質問を終わります。  食糧庁長官お尋ねしますけれども、去る四月二十五日にも私はこの米価問題要求については質問をしたところでありますが、先ほどからいろいろ論議をした中で、食糧庁長官もいろいろ申されておりますけれども、いよいよ明十日には全国農業会議所主催によって十一時から千代田公会堂で昭和四十九年度産米価格決定要求並びに中核農業者擁護等全国農業委員代表者大会を開催し、さらに五月十五日には、全中農協米穀対策中央本部主催によって都道府県農協代表者一万一千人を集めて、十時三十分から日本武道館で要求米価実現全国農協代表者大会が開かれるということは御承知のとおりであると思うのです。  そこで、昨年七月十一日、当委員会で総理の出席を求めて私も質問をいたしましたし、七月十九日には宮脇全中会長ほか参考人を呼んで質問をし、引き続き委員会でいろいろと検討しました。その後、前後六回にわたって私はこの問題を取り上げ、もう現在の米審は形骸化すべきであるというような意見まで出るくらいきびしい批判があったわけですが、この米価要求に対して米審のあり方、この批判はさることながら、いずれにしても早急に米審を開いて米価決定をすべきである。  ところが、先ほど食糧庁長官の答弁を聞いておりますと、七月以降、諸条件のデータをそろえてからという答弁があって、私も昨年ここで論議した問題から見ましたときに、残念に思えてしようがありません。  まず第一番目に、食糧庁長官として、あなたも熊本の出身で、農家の生まれであることをよくぼくは知っておるが、かねがねあなたにもいろいろと警告を発しておるけれども、農家の立場に立って考えた場合に、米審というのは七月、八月にやるのがあたりまえだと思っておられるのか。先ほどの答弁を聞くと、いつも七月ごろ例年行なっているから、田植え前にきめることは困難だ、七月ごろが一番いい時期だというように言っておられるけれども、そうじゃない。これは労働賃金なんですから、田植え前にきめるということが当然のことです。それが作付時期を大幅に経過したところの七、八月に、政府のいわゆる政局によって動いてきておる。それがいかにも当然視されたような形になって今日来ている。そういったことを私は強く指摘するのですが、食糧庁長官がそういった認識であったならばたいへん困った問題である。そういった意味で、米審のあり方というものは七月、八月が一番いいのかどうなのか、その基本的な考え方をまずお聞きしたい。
  184. 三善信二

    三善政府委員 昨年、先生がおっしゃいましたように、ここの委員会で、櫻内前大臣も、先生方の田植え前に米価をきめたらどうかという御質問に対して、ひとつ検討してみたいという御返事をされていることは、私もちょうど当時官房長でここにいましたし、存じ上げております。  米価の決定時期につきましては、御承知のようにこれは単に推定で算定をするというわけにはまいらないわけでございます。生産費・所得補償方式で、その生産費の中でもやはり家族労賃は評価がえをし、あるいは物財費は直近時のデータで修正をする、そういったことをやっているわけでございまして、何を申しましても、大前提としてそういったデータがそろわないことには、これは算定はできないということは先生も十分御承知のとおりだと思います。抽象的にはいろいろ先生のおっしゃるようなこともわからぬでもございませんけれども、そういう具体的な問題では、やはり生産費の調査のデータがまず出てこなければ何ともならない。あるいは労働省の毎勤の統計が出てこないと家族労賃の評価がえもできない。あるいは物価、農業パリティ指数が出てこないことには、それは物財費の修正等もできないということは先生十分御承知のとおりでございます。そういったデータを毎年そろえながら米審を開いて生産者米価の決定をしているというのが、これも通例でございます。ただ、申し上げておりますのは、従来そういったデータが整い、そして米審を開いているのは大体七月ごろが通例であるということを申し上げているわけでございまして、そういう意味におきまして田植え前に米審を開いて米価を決定するというようなことは、これはなかなか困難なことであるし、現実的には非常にむずかしい問題ではなかろうかということを申し上げているわけでございます。
  185. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 食糧庁長官、それはわかったが、七月が適当ということではないと私は思うが、本来ならば田植え前に米審を開いてきめるということは、あなたも十分それはわかっておられますか。
  186. 三善信二

    三善政府委員 田植え前に米価を決定しなければならないという基本的な、理論的な問題については、私は必ずしもそうではないんじゃないかと思います。と申しますのは、ほかの農産物価格の決定につきましても、大部分はやはり収穫期に決定しているのが非常に多うございまして、そういう意味で田植え前にどうしてもきめなければ基本的にはおかしいじゃないかというような、そういうようなことにはならないだろうと思います。
  187. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、最後に伺いますが、先ほど申しましたように、明日は全国の農業会議所の米価大会が開かれ、また、十五日には全国農協代表者大会が開かれますが、一万一千人を集めての日本武道館での大会です。これは各党も出てあいさつもするし、また、いろいろと要求や決意の発表等があることになっておりますが、私は、先ほどからの答弁その他を聞いておりまして、ことしもまた昨年と同じように、八月の暑いころに米価を決定し、国会の休会中に三番町にすわり込んでやらなければならぬかと思って、実は嘆いております。おそらく参議院選挙後にやるというような考えがもう根底にあるんじゃないか。そうすれば、あしたの大会と、十五日の大会と全国から集まる一万一千人という、しかも相当な経費を使って大会を開く農民を、いわゆる全国の代表者を裏切るということにもなりかねない。私は残念に思う。そういったことを思ったときに、参議院選後に開くということは、すなわち、七月に参議院選があるわけですから、それ以降にしかこれは開かれないと思うが、その点はどうなんですか食糧庁長官は、もう七月か八月でないとどうしても開けないというふうに考えておられるのですか。どうなんですか。
  188. 三善信二

    三善政府委員 私が申し上げておりますのは、政治的情勢とか、そういうようなことではございませんで、やはり、事務当局としてデータがそろわないことには米価の決定に必要な算定もできないし、米審も開けないというようなことを申し上げているわけでございます。
  189. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これは論議する時間がございませんが、いずれにしても十五日には一万一千人が集まって米審を早く開けということで、米価を要求する全国の農業者代表大会を開きます。政府も十分これを踏まえて一いろいろ答弁を聞いておりますと、かなりデータがそろわないとできないということでありますが、こういった全国の農業者の要望をになって、早急に検討されて、データを寄せて、早急に米審が開けるようにぜひお願いしたい、このことを強くお願いして私の質問を終わります。御協力ありがとうございました。
  190. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、諫山博君。
  191. 諫山博

    ○諫山委員 私は、最近九州で行なわれている三つの大規模農地開発の実情を見てまいりました。私たちは、もともと農地の大規模開発に反対するものではありません。ほうとうに農民の利益を守り、民主的にこれが進められるということであれば、私たちは大賛成です。ところが、私が見てきた熊本県の羊角湾、福岡県の耳納山麓宮崎県の一ツ瀬川では、それぞれ共通した幾つかの問題点に気づきました。私はそのおのおのについて簡単に質問します。  まず、熊本県天草の羊角湾ですが、ここでは昭和四十三年から五十一年度までの計画で、総合農地開発干拓が行なわれています。ところが、事業が非常におくれている。いつ完成するかわからないということが地元でいわれています。現在農林省としては、いつごろ完成する予定を立てているのか、お聞きします。
  192. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 羊角湾のパイロット事業につきましては、当初計画では五十一年度完了を目途にして現在進めておるわけでございますが、ミカンの暴落というような事態がここ一、二年ございましたりいたしまして、地元で多少意欲を失った農家も出てまいっております。そういうような事情等もありまして、作目の一部変更等も含めて計画変更を要する事態に立ち至っております。そういう計画変更並びにまた本年度の総需要抑制というような観点がございまして、多少事業がおくれております。現在の見通しといたしましては、完成までに二年程度はおくれるのではなかろうか、そういう予定でございます。
  193. 諫山博

    ○諫山委員 工事のおくれとも関連しまして、総事業費がどんどんかさんでくるということがいま避けられない状態だと思います。これが結果的には農民負担を大きくするということになってきます。最初の計画では総事業費は七十億五千六百万円といわれていますが、現在どのくらいででき上がる見通しですか。
  194. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 当初計画におきましては、これは昭和四十三年でございますが、四十四億七千万という予定でございました。それが四十八年度予算要求時点では実は七十億五千六百万、いま先生おっしゃいましたようになっております。その後の物価上昇もございまして、現時点ではさらに一割程度の上昇が生ずるというふうに見込んでおります。
  195. 諫山博

    ○諫山委員 それは事業の完成が二年くらいおくれても、七十億の一割増し程度で済むという意味ですか。
  196. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 完了の最終的な事業費につきましては、実はまだ試算をいたしておりません。予算要求時点で、さらにそのときの物価、労賃等を加えて算出するということになっております。
  197. 諫山博

    ○諫山委員 現地で説明を受けますと、工事計画を全面的に変更する、その場合に、農家の負担もどのくらいになるかということをきめるというふうに言われていますが、そのとおりですか。
  198. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 農家の負担につきましては、これは全員同意という事業でございますので、当初もちろん計画時点の負担の見込みを示しまして同意をとるわけでございますが、その後の物価上昇等がございます、あるいはまた大幅な工事計画の変更があるというときには、さらに新しく算定をいたしまして、それに基づきまして農家負担額をはじいて、大幅な計画変更に基づく工事費について同意をあらためて求めるということになります。
  199. 諫山博

    ○諫山委員 私が現地で聞いたのでは、ことしの十一月ころまでに計画変更の骨子をつくり上げる、そして総事業費は百四億円程度にするつもりだ、こういう前提で作業が進められているということですが、違いますか。
  200. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 現在計画変更の作業をやっておることは事実でございます。干拓を含めまして、いま先生がおっしゃいましたような一つの試算が出ているというのも事実でございます。
  201. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、この計画というのは、工事が二年ほどおくれたとしても、完成まで変更しないつもりですか。さらにまた、経済事情の変動によって二度目の計画変更というような事態が出てきますか。
  202. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 計画変更はなるべくしないほうがよろしいわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたような次第で今回計画変更の作業を進めておるわけでございますが、最終的にさらに大きな工事計画の変更がなければ、そのままで完了したいというふうに考えます。
  203. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、いま予定されている計画変更で計算をするとすれば、農家の負担というのは、最初の計画はどのくらいで、計画変更後の負担はどのくらいになるということがわかりましょうか。
  204. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 十アール当たりで申し上げますと、当初の計画が四万一千円であったわけでございます。先ほど申し上げました四十八年要求時点で六万五千円に——七十億五千六百万円に相当するものでございますが、六万五千円になっております。さらにその後の物価変動が加わって、やはり一割くらいこれがふえておるというのが現状だと思います。今回行ないます計画変更は、そういうことも含めまして、再度計算をし直したいというふうに思っております。
  205. 諫山博

    ○諫山委員 総事業費が百四億というふうにめどがつくと、農家の負担も計画変更後幾らくらいになるということは推定できませんか。
  206. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 これは総事業費に対しまして国庫が八〇%持ちまして、地元の県が一二・五%さらに持ちます。したがって、地元負担が七・五%くらいになると思います。したがいまして、総事業費が上がればすぐ計算できるわけでございます。もしかりに百四億というふうに総事業費が確定いたしますと、当初事業費の倍をちょっとこすわけでございますから、約十万円近間あるいは九万何千円かというようなことになるのではなかろうかと思います。
  207. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、ごく大ざっぱに言うと、羊角湾の事業に参加している人は、昭和五十三年ごろに一切の事業が完了して、その場合の農民負担は十アール当たり十万円程度だというふうに聞いていいですか。
  208. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 いま申し上げましたのは、かりに百四億というふうなことであるとすればというふうな前提で申し上げたわけでございますが、実は総事業費につきましては、先ほど申し上げましたように現在作業中でございます。その総事業費につきまして、私どもこれから内容を検討いたしまして決定したいと思います。それに基づいて計画変更する際に農民負担のおよその推定額は出てくる。したがって、正確な数字はそのときでなければわからないわけでございますけれども、現在の賃金、物価の上昇からいきますと、八万円なり九万円なり、九万円前後というふうなかっこうになるのではなかろうかというふうに想像いたします。
  209. 諫山博

    ○諫山委員 私、きょうの質問をするに際しまして、昭和四十六年二月十九日の参議院決算委員会におけるこの問題の論議を議事録で読んできました。そうしたら、農林省農地局建設部長という人が、羊角湾の開発について、ミカンを中心にやりたい、そしてミカンというのはまだまだ成長する部門だ、だから安心してくださいという答弁をしております。もうこのことばは通用しないでしょう。いかがですか。
  210. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 確かにミカンの情勢は非常にきびしくなってきておることは事実でございますが、収益力等からいきまして、これはまだこの事業にたえ得る、あるいは年償還額に対応した増加所得が得られるというような見通しを持っておるわけでございます。
  211. 諫山博

    ○諫山委員 この前ミカン農民全国大会があって、その一部の人たちが私のところにも来たのですが、ことしはミカンの生産調整を具体的な課題にした、もうあまり効率の上がらないようなミカン畑というのはつぶすということが言われています。また、昨年からの農林水産委員会の論議を聞いておりましても、農家がミカンをつくり過ぎた、これがミカンの値くずれの最大の原因だというらうに言われております。そうすると、一方では、ミカンをつくり過ぎたと農林省自身も言うし、ミカンをつくっている農民の人たちは、これではまらないから生産調整をやりたいと言い出す。ところが、他方では膨大な金を使ってミカン畑を浩成する。どうもここが私に理解できないのですがあくまでもこれはミカンで押し通すつもりですか。それともミカンはもうだめだからほかの方向に転換するのですか。
  212. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 ミカンの見通しにつきましては、果樹課長がおいでになっておりますので、後ほどまた答えていただきますけれども、本パイロット事業のいわゆる作目につきましては、現在のところ対象作目がミカンということでやっております。しかし、これはどこの地帯においてもいわゆる農産物の需給の関係とか、あるいはその他の社会情勢の関係で、工事期間中に内容が変わるという事例は確かにあります。この地域につきましてもすでにミカン以外の作目が導入されている事例もございまして、その辺も考えて、今回の計画変更では十分地元の意向をも反映する形で内容をきめていきたいというふうに思っております。
  213. 諫山博

    ○諫山委員 私、現地で話を聞きましたら、昨年の十月ごろ、この開拓事業に参加する希望を表明した人たちについてアンケートの調査をした、ところが半分ぐらいの人がもう自分は手を引きたい、やめたいという意向を表明したというふうに言われております。事実、農家の人たちに話を聞きますと、やはり不安もあるし、不満も一ぱいです。こんなに金がかかるつもりではなかったというような声も聞きます。その後農林省にいろいろ聞いてみると、あのアンケートの調査というのは非常に不完全で当てにならないのだ、今度調査するときにはもっと比率を高めますというようなことを盛んに言われまして、そのときのアンケートの結果を私に知らせることを渋っているようです。実際は、アンケートのやり方がどうかこうかは別として、回答はどういうふうになったのですか。
  214. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 結果だけ申し上げますと、当初計画受益戸数 七百七十九戸であったわけでございますが、そのうち六百八十五戸を対象に調査を行ないました。調査の内容は、いま先生おっしゃいましたように不備な点も多々あるわけでございますけれども、結果的には、造成地で一次利用指定済み、あるいはまた準備中というものが百八十二戸、それから四十九年一月下旬から三月末の現地調査で確認しておるものが八十一戸、それから新規参加の希望者が三十五戸、二百九十八戸については今後とも進めたいというような確認を得ております。しかし、先ほど申し上げましたように、今後の作目も含めて計画変更を準備中でございますので、そういう新しい計画に基づきまして、あらためて法手続としまして地元の意向も確認してまいりたい、それで事業を進めていきたいというふうに思っております。
  215. 諫山博

    ○諫山委員 結局、そのときの調査では、もうやめたいとか、あるいは他人に譲りたいという人が何名いましたか。
  216. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 その点につきましては詳細わかりません。
  217. 諫山博

    ○諫山委員 あなたはわからないと言うが、現地の工事事務所の所長さんは、半分ぐらいの人がやめたいと言ってきましたから困ってますと言ってますよ。それはあなたのほうに伝わってませんか。ちょっとぐあいが悪いからそれは内緒にしているのじゃないですか。
  218. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 報告書をもらっておるわけでございますけれども、その点については記入がございませんで、わからないわけでございます。ただ、これまでの事例等で見ますと、やはり中には相当熱心にやる人もございますし、新たに参加したいという方もございまして、たとえばあの近辺の多良岳のパイロット等につきましては、十分にりっぱなミカン農家が育っておるという実情もございます。したがいまして、今後の営農指導等を含めまして、さらに地元に本事業参加の意義も徹底しまして指導してまいりたいというふうに思っております。
  219. 諫山博

    ○諫山委員 私は、おそらく現地の人たちの深刻な悩みというのが、本省まで伝わってないのじゃないかと思いますね。私は、現地の所長さんと話し合ったのです。ほかの何人もの人も来て説明してくれました。しかし、半分ぐらいの人がやめたいと言っているから困っている、こんなにやめてもらったのじゃ事業が成り立ちませんと言っているのですよ。そういう状況は本省には全く反映されてないのですか。
  220. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 そういう事態にあるという情勢は承知しておるわけでございます。そこで今後どうするかということも含めまして、いま申し上げましたような地元とも一緒になって計画変更等についての協議を進めておる、また具体的な内容もつくり上げつつ準備しておるという段階でございます。
  221. 諫山博

    ○諫山委員 こういう問題は、冷厳なる事実を把握して、その上で対策を立てるということでないと成功しないと思います。あなたたちはなるべく希望的に観察したいでしょうが、希望的な観察に基づいて政策を立てたのじゃ間違いますから、だから現在は、半分ぐらいの人がやめたいと言っているという、その事実に基づいてどう方針を改めていくかというやり方をしないとだめだと思います。  たとえばアンケートの調査では、半分ぐらいがやめたいと言った。そこで昨年の十一月ごろから、今度は農林省側で個別に当たった。百二十戸について調査したところが、約四十戸は続けたいと言っている、約四十戸はやめたいと言っている、約四十戸は他人に譲りたいと言っている、こういうふうに言われていますが、この数字は聞いていますか。
  222. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 私は、ちょっと承知しておりません。おりませんが、そういうミカンの現在の状況から、やめたいという希望が相当あるということは承知しております。そこで、先ほどから申し上げておりますような計画変更を進めたいということで、これは作目の内容も含めまして、さらに地元の意向を確かめて計画変更をいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
  223. 諫山博

    ○諫山委員 この計画変更の場合には、農民の人に、あなたはこういう計画でも事業に参加しますかという意向調査はしますか。あるいは希望の取り直しのようなことはしますか。
  224. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 希望の取り直しというようなことではなくて、申請されてきました現在生きておる計画を変更するわけでございますから、かりに何かの事情でその土地から除斥されるような、そういう方も含めまして、あるいはまた今後続けて現在の計画をそのまましたいというような人もおられますから、そういう意見も含めまして、あらためて地元の意向も聞き、計画をつくりまして、その計画に基づきましてそれぞれの承認を、各人の意見を求めるような手続をとりたいというふうに思っております。
  225. 諫山博

    ○諫山委員 たとえばいまあなたたちが掌握している人たちの二割なり三割なりが、この事業から手を引く、やめさしてくれということになると、あくまで事業に参加したいという農家の経済的な負担というのは、大きくなってくるのじゃないかと私は思いますが、そこはどうなりますか。
  226. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 確かに、先生のおっしゃいますような事態になるわけでございます。そういう事態を避けると申しますか、そういう点からも、個人の希望どおりに、やめたい人はいつでもやめるというような、そういう仕事の仕組みにはなっていないわけでございまして、これはやはり条件の変化によって、農家が事業から抜けたいという場合には、この事業が関係農家が連帯して行なっておるという意味から、皆さんの意見を聞くと同時に、全体としての意見はどこにあるかというような観点でこの事業の計画変更を行なっていく。したがって、たとえば十戸ある中の一戸だけが抜けたいと言われても、それがたとえば団地のまん中にある場合には、その人にはぜひ参加してくれというようなことになると思います。
  227. 諫山博

    ○諫山委員 それは法律的に強制するという意味ですか。それとも、法律的な強制はしないけれども、ぜひ参加してもらうように努力するという意味ですか。
  228. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 これは、特に法律的にきびしい話になりますと、必ずしも実態に合わない面もあるいはあるかと思うのですが、最初に始めるときが全員同意で始めておる事業でございますから、それは皆さんがそういう同じ意見で同意をされまして、連帯して行なわれておるということですから、かってに抜けるということは好ましくないということになります。したがって、法律的にはぜひ引き続き参加しろというようなかっこうになりますけれども、実際にはやはり十分な話し合いを行なって、そしてまた事業計画を変更するわけでございますから、変更し得る範囲内においては、これはできるだけそういう残った人の負担が過重にならないような、そういう観点で内容を定めて、除斥される人は除斥するし、そのかわりに新たに参加したいという方があれば、そういう人も含めて事業を仕組んでいく、計画変更の内容をつくっていくというようなことになると思います。
  229. 諫山博

    ○諫山委員 いまの答弁を現地の人に伝えると、おそらく大騒動になるのだと思いますがね。現地の事業所では、強制はできない、やめたいというならそれを無理に押しとどめることはできませんと言っているし、農民もそう信じているのですが、たとえばそこの農家のだれかが、もう絶対にいやだ、一緒にやりたくないということを言う場合には、抜けられないのですか、抜けられるのですか。もちろんあなたたちは抜けないように説得するでしょうが、しかし、抜けることはできるのか、できないのか、どっちですか。
  230. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 それは抜けることが非常に全体に影響を及ぼす場合について申し上げますと、どうしてもやめたいというようなことであれば、あるいは隣の方に土地を譲るなり、あるいは生産法人等をつくって新たな経営形態を考えるなり、いろいろ手はあると思います。しかし、一部離れたところで、全体の工事計画等にそう大きな支障がないというところであれば、これは工事上あまり影響がないということで、そのところが除斥されても、これはまあやむを得ないケースだというふうに思っておるわけでございます。いずれにしましても、全員同意で事業内容をよく熟知した上で参加されておるわけでございますから、自由かってたるべしというような、そういう性質のものではないということでございます。
  231. 諫山博

    ○諫山委員 私は、これは厳格にお答え願いたいのですが、そうすると、結局、自分だけはこの事業から離れたいと思っても、飛び地とか何とかで他に影響のないところは別として、そうでない限り抜けるわけにはいかぬ、抜けることはできない、こういうことになりますか。
  232. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 法律的にはそういうかっこうになります。しかし、そこで救いの方法は、その隣接の人にその土地を譲ってあわせて経営をしていただくなり、いろいろな手はあるというふうに考えておるわけでございます。
  233. 諫山博

    ○諫山委員 これは現地の農民の理解のしかたと全く違うから、農林省がこういうふうに答弁されたと言ったら現地で大騒ぎになると思う。  そこで、計画変更の場合に、現地の事務所では、あなたはこの新しい計画でも事業に継続して参加しますかということも聞きますと言っているのですが、そうするのですか、しないのですか。
  234. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 それは当然意見を聞くわけでございます。
  235. 諫山博

    ○諫山委員 その場合に、私はこの計画にはもう反対です、初めのころはミカンがいい、いいとすすめられるから参加しましたが、ミカンがこういう状態になった以上、もう手を引かせていただきますという意思を表明したら、それはさっきの話の続きですが、抜けられるのですか。
  236. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 これはたとえ話になって恐縮でございますけれども、そういう方がぼろぼろ出てまいりますと、参加する人としない人の土地がしま模様みたいなことになるわけでございまして、工事自体としては非常に効率の悪い、非効率なものになります。その辺はやはり十分考えて工事の変更計画をつくらなきゃならぬというふうに思っております。ただ、いわゆる計画変更をいたす際に、当然同意を求めるわけでございますから、同意をしないというような意思表示は、これは自由なわけでございます。そこで、そういう意思表示があった場合に、それでは工事自体が非効率になりますので、それをより効率化させるためには、その土地をやりたいという人に譲っていただくとか、あるいはまた生産法人等をつくって経営形態を新しく考えていくというようなことで、残る人にも過重な負担にならないような措置をすべきであるというふうに、またそういう指導をしなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  237. 諫山博

    ○諫山委員 私、非常にくどくこれを聞きますが、そうすると、全く手を引いてしまうことはできない、やめたい人はその土地をほかの人に譲り渡すほかはない、こういうふうに聞こえるのですが、計画変更には同意しないという人もやはりそういうことになるのですか。
  238. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 これはいわゆる計画変更する際の指導でございまして、どうしても一切の土地の使用も含めましてやめたいということになれば、これはそこだけぽつっと抜けた、そういうことになり得るわけでございます。
  239. 諫山博

    ○諫山委員 私は、一部の人が抜ければたいへんなことになるということはよく知っているのです。抜けないことが望ましいことも知っているのです。しかし、現に半分ぐらいの人がやめたいといっているのも事実です。その場合に、どうも指導方針とか、どれが望ましいとかいうことばが多いのですが、計画変更のときにやめようと思えばほかの人に迷惑が及ぶかもしれませんが、やめられるのですか、それとも譲るほかないのですか。
  240. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 それはもちろん好ましいことではありませんけれども、計画変更のときにやめることはできるわけでございます。
  241. 諫山博

    ○諫山委員 私は、その点をまずはっきりした上で、なるべくやめてもらわないように努力するということにしないと誤ると思いますよ。あなたのさっきの話をずっと聞いておりますと、やめられないのだ、やめたい人は譲るほかはないんだというふうに聞こえます。私に対してさえそう言うのですから、現地ではもっと違った、それこそわけのわからない説明がされると思うのです。だから、やはり、ほんとうに強制されるものかどうかという点をきちんとした上でなるべく参加してもらうということをしないと農民をだますことになりかねないのじゃないかと私は思います。  そこで、同じ問題が福岡県の耳納山麓でも出てくるわけですが、耳納山麓の当初の計画はいつ終わる予定で、現在はその竣工予定はどうなっているのか、お聞かせください。
  242. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 工事の着手は四十七年度でございまして、完了の予定時期は五十三年度ということになっております。
  243. 諫山博

    ○諫山委員 これは、現在のところ五十三年度に終わる見通しですか。
  244. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 その予定でおります。
  245. 諫山博

    ○諫山委員 総事業費は、最初の計画は幾らだったのか、そして完成時点では変更になる見通しなのかどうか。お聞かせください。
  246. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 当初計画は百十億でございまして、現在の時点では百四十五億ということになっております。
  247. 諫山博

    ○諫山委員 事業費全体、国とか県とか団体の負担すべて含めると幾らになりますか。
  248. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 この地域全体の、いわゆる圃場整備事業等も含めまして百九十四億ということになります。
  249. 諫山博

    ○諫山委員 個人の負担は、十アール当たり当初の予定が幾らで、現在どうなっておるのか、竣工時にはどのくらいの見通しになるのか、わかりますか。
  250. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 反当農家負担額は、四十八年三月、いわゆる計画時点で約九万四千円、それか久現在時点では十五万円でございます。
  251. 諫山博

    ○諫山委員 その十五万円というのは、現在予守している工費で事業が終われば、ということになりますか。
  252. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 現時点で工事が終われば、ということでございます。
  253. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、こんなにたいへんな報いで物価が上がっておるわけですから、ごく常軌的に考えると、最終的にはもっと高くなっていくんじゃないでしょうか。
  254. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 さらに物価、労賃等が上昇を続けますならば、最終的にはさらに上がるというふうに思います。
  255. 諫山博

    ○諫山委員 この事業から脱退できるかどうかという問題は、羊角湾の議論と同じですか。
  256. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 現在の時点では、いわゆる同意されて始まっておるわけでございますから、脱退できないわけでございます。しかし、計画変更等でさらに同意をとり直す時期がございますから、そういう時期に、その時点での判断でどうしてもやめるという方が出てきますと可能になるわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、連帯していわゆる農業水利なりあるいは開拓なりが合わさった総合的な事業として進められておる関係もございますし、地域全体の問題でございますから、ぽつぽつ抜けていくということは非常に好ましくないことであるというふうに思います。
  257. 諫山博

    ○諫山委員 羊角湾のばあいには、ことしじゅうに計画変更の手続が済む。耳納山麓の場合にはそれがまだ具体化していないようですが、どこに違いがあるんでしょうか。
  258. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 羊角湾につきましては、相当時間もたっておりますし、耳納山麓につきましては一昨年から始まったばかりでございまして、そうは行なわれていないわけでございます。こういう時点で計画変更をするのは適当かどうかというような問題になります。そこで、特に事業費が物価増等によりまして上がった場合には、いわゆる大きな工事の変更ではございませんので、相当これは問題になる時期が当然来るわけでございますけれども、この時点で計画変更をすべきではないというふうに考えております。  それから羊角湾のほうは、やはり、この際、先ほど先生がおっしゃいましたような点もございまして、工事的にも内容が変わってまいりますし、計画変更の手続を進めまして、内容についてやはりさらに同意を取り直すということが必要だというふうに判断いたしておるわけでございます。
  259. 諫山博

    ○諫山委員 耳納山麓の場合には、ミカンを中心とした羊角湾と事情はだいぶ違うと思います。しかし、羊角湾の人たちに聞くと、耳納山麓もいずれ工事の計画変更があるはずですがねと言っているんですが、こういう場合、普通一般的にはこんな事業費が高くなるというような場合には、計画変更をするものですか。
  260. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 一般的に申し上げますと、いわゆる主要工事の工事計画の変更、あるいはまた、でき上がりました施設の管理、予定管理保護と申しておりますが、そういう非常にかかわり合いの大きい点が生じた場合に計画変更をするということでございまして、物価スライド等による当然増と申しますか、そういうやむを得ない事情につきましては、必ずしも計画変更を要しないわけでございます。ただ、それでも非常に急激なインフレということで地元負担が急激に変わる場合は、やはり、もちろんその間に若干の工事計画の変更もございます、ものも含めまして、適当な時期に計画変更をして、同意をさらに求めるというのが適当じゃなかろうかと思っております。
  261. 諫山博

    ○諫山委員 農民にしてみると、十アール当たり四万とか五万ぐらいでできるというので参加した。ところが、どんどんこれがふくれ上がって、十五万も出さないと十アール完成しないということになると、いろいろ新しい考慮が出てくるのは当然だと思うのです。ですから、計画変更というものは、機会を見て、やれるものはやったほうがいいんじゃないか、そのほうが民主的だと私は思うのです。一たん賛成したんだから幾ら分担金が高くなろうとついてこいというのはあまり民主的ではありませんから、私が初めにも申し上げましたように、こういう事業にもともと反対というわけではないのですが、それでも、事業遂行の上における民主主義という点を確立することが非常に大切だということを感ずるのです。  それから、耳納山の場合には、何しろ高い山の斜面をいろいろ造成したりするわけで、災害が問題になっています。そして、この災害について、たとえば市町村の代表とか、県の代表が集まって会議を開くというようなこともされたようです。その場合、関係自治体の話を聞くと、耳納山麓のパイロット事業の地域に何十という小さな河川があるわけですが、これに水害の危険が出てくるんじゃないかということが心配されているんですね。この点は配慮してありますか。
  262. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 いま先生がおっしゃいましたように、関係市町村あるいは地元県を含みまして、防災的な観点から、この造成工事に伴います防災対策の検討会というものをやっております。その中で支派川が五十幾つかございます。その流域の現状なりあるいは開発されたあとの状態なりを想定いたしまして、そこに設けるべき防災施設等について一本ずつ検討を加えております。内容は、非常にこまかくなりますので省きますが、それがいわゆる農用地造成に伴うものであれば、当然原因負担と申しますか、事業主体がそれらの施設をやるということにしておる次第でございます。
  263. 諫山博

    ○諫山委員 昭和四十八年十月十九日、浮羽郡自治会館で防災対策検討会というものが開かれて、福岡県の砂防課長が次のように言っています。裸地状態となった部分から土砂流亡が発生するので、これに対する防護措置が必要だ、そして造成団地に関係する流域は大小五十七流域ある、そこで、このままであれば当然水害の危険性というのが出てくる、そこであらかじめ、たとえば護岸工事をするとか、いろいろ手を加えたいという話が出ています。ただ、その場合に、関係自治体にその経費の一部を負担させるというようなことが問題になっているのですが、そういう経費は自治体に負担させるのですか。
  264. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 関係自治体にいわゆる農用地造成で裸地をつくることによりまして、土砂が流失するとか、あるいは流失量がふえるというようなことで、そのための防災措置を講ぜなければならぬという場合は、当然原因負担でございますし、なお、その際に、当然それに必要な措置をとるわけでございますが、この措置をとる際は当然国の負担でやりますが、さらに、その流域に不測の事態と申しますか、最初から考えられないような異常な事態が生じまして災害等が生じた場合には、これはいわゆる災害復旧の国庫負担法によってやるということになると思います。そういう際には、これは非常に判定がむずかしい問題もあるとは思いますけれども、そういう意味も含めまして、地元県、市町村を含めまして、事業主体が当然とるべき防災の処置を検討いたしまして、その内容に基づいて事業を進めていくということにしておる次第でございます。
  265. 諫山博

    ○諫山委員 災害が起こった場合の事後措置についてではなくて、当然災害が予想されるから事前に河川をがっちりしたいというような場合には、自治体には負担させますか。それとも、工事費としてやりますか。
  266. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 災害に対応する必要な措置、たとえば水蝕防止とか、あるいは斜面の保護とか、そういう土砂の打止林の配置とかいうようなことを計画的にやるわけでございます。その際に、河川に現況よりもさらに異常な洪水が当然に生ずるというふうに考えられる場合には、その河川の改修をも事業主体でやらざるを得ないというふうに考えております。  しかし一般的に、この五十七の支派川はきわめて小さな流域でございますし、その流域の中でいわゆる農用地造成で林野その他を裸地にする部分の比率というものも、必ずしも多いわけではございませんので、その辺はやはり技術的に、どのような現況断面のままでは被害が生ずるかという判断に基づいてやることになると思います。その判断に基づいて、いま先生がおっしゃいましたように、相当な断面拡幅等を行なわなければ被害が牛ずるであろうというふうに考えられる場合には、断面拡幅並びにその護岸が当然つくわけでございますが、そういうものは事業主体でやるということになると思います。
  267. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、一般的な議論じゃなくて、本件開発について聞きますが、五十七河川のうち、たとえばそれの強化とか改修というような工事で、関係自治体に負担してもらうという計画なり予定があるのですか。
  268. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 関係自治体に、本事業によって生ずるような防災的な見地からの工事について、負担を求める考えはございません。
  269. 諫山博

    ○諫山委員 この開発事業は、合所ダムというダムの建設が一体となって進められていますね。ダムの上流、下流の住民が対策協議会をつくって、いろいろ現地の事務所に要望書を出したり陳情を出したりしているはずですが、それは農林省にも伝わっていますか。
  270. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 承知しております。
  271. 諫山博

    ○諫山委員 この中で、やはり防災が問題になっています。私は、ダム建設によっていかなる被害も現地の住民に与えてはならない、ましてそのために災害がおそれられるような事態に絶対にしてはならないと思うわけですが、たとえばダムの下流の改修だとか、あるいは護岸工事をもっとやってもらいたいとか、そういう要望については検討してありましょうか。
  272. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 こまかい内容につきましては、現在、現地の事業所並びに農政局で検討中でございます。しかし、ダム築造に伴って災害が発生するというような事態は絶対に防がなければならないということは、もちろんそのように考えておる次第でございます。
  273. 諫山博

    ○諫山委員 私、熊本の羊角湾の人たちと話したときに、九州で一番うまくいかなかったのは羊角湾ですと言っています。確かに現地で聞いてみましても、耳納山麓の場合に、羊角湾のように半分もやめたいというような話は聞きません。ただ、何しろ膨大な農民負担になるわけだし、さらにダム建設という羊角湾とは違った新しい問題もありますから、民主的に進めてもらいたい、そして農民とか近隣の住民がいやしくも犠牲にされるようなことがあってはいかぬ、あるいは意に反して強制されるようなことがあってはいかぬということを私は要望しておきたいと思います。  それからもう一つ、宮崎県の一ツ瀬川の開発というのがありますね。これがたいへん問題になっていることは、異議申し立てなんかも出ていますから御承知だと思います。あの事業は、いつごろまでに完成させるという目標があるのですか。
  274. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 四十七年度に着工いたしまして、目下のところ、やはり五十三年度に完了する予定でございます。
  275. 諫山博

    ○諫山委員 その場合に、農民負担幾らになるのかというのが非常に深刻な問題になって、宮崎県に農民の人たちが何回となく聞きに行くそうです。しかし、わからぬ、見当がつかぬ、こういう回答が返ってくるということです。当初の計画では十アール当たりどのくらいの負担になるつもりだったのか、現在はどういう見通しを立てているのかお聞きしたいと思います。
  276. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 国営事業費が五十七億円、関連事業費を含めた総事業費は百二十五億円ということになっておりまして、そのうち地元負担に対しましては、これは国なり県なりの負担割合が多少違うわけでございますけれども、そういうものを含めまして十アール当たり、これは年償還額でちょっと申しわけないのですが、年償還額が八千五百三十五円ということになっております。
  277. 諫山博

    ○諫山委員 総額はわかりませんか。
  278. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 失礼しました。平均六万五千八百十六円ということになっております。
  279. 諫山博

    ○諫山委員 最後までこれで済むかと県庁の人に聞くと、とてもこれでは済まないでしょうということになり、じゃ幾らぐらいになるのかと言うと、見当がつきませんという答えになるそうですが、見当はつかないのですか。
  280. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 特に物価の問題が響くわけでございまして、いわゆる現在までの傾向値というようなものもございますけれども、それが推定にして、必ずしも正確を期するということになりませんので、正確な数字は見当がつかないということは事実だというふうに思います。
  281. 諫山博

    ○諫山委員 ここでは相当たくさんの人が、いやだいやだと反対し抜いている。いまなおその反対は続いている。そして、行政訴訟まで提起しようかという話まで持ち上がっている。そういう事情になっているわけです。こういう事業の場合に、たとえばある特定の部落だけは非常に反対が多いから、この部落だけ事業からはずそうというような取り扱いをした例はないのですか。
  282. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 これは、いわゆる異議の申し立てがございましたので、その辺も相当に検討したわけでございますけれども、やはりその異議の申し立て内容によりまして……
  283. 諫山博

    ○諫山委員 本件じゃなくて、よそで、ある部落だけ計画からはずしたという例はなかろうかということだけでいいです。本件についてはわかっていますから。
  284. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 計画変更等をやりまして、そういう除外をした例はございます。
  285. 諫山博

    ○諫山委員 その場合は、事業計画の変更という処理をするわけですか。
  286. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 そのとおりでございます。
  287. 諫山博

    ○諫山委員 いつごろ、どういうところに前例があったか、聞かしてくれませんか。(「至るところにある」と呼ぶ者あり)
  288. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 手元に資料がございませんので、具体的に申し上げることはできませんが、幾つかございます。
  289. 諫山博

    ○諫山委員 いま、至るところにあるというお話しがありましたが、そういう状態ですか。
  290. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 至るところにある例ではございません。
  291. 諫山博

    ○諫山委員 わかりました。  この問題は、何しろ行政訴訟までして反対しようという強固な人たちがいるわけですよね。至るところにあるのかどうか、私は知らないですが、しかし、そういうことができるんだったら、もっと民主的に処理していくということが必要ではなかろうかと思います。私、この間、演説会で宮崎に行きましたら、宮崎で取っつかまりまして、ぜひこの問題を解決してくれというような強い要望なのです。話を聞いてみるとまことにもっともで、いま至るところにあるのかないのかよくわかりませんが、やろうと思えばできることだそうですから、ほうとうにこれを民主的に進めるということを私は最後に要望したいと思いますが、次官、いかがでしょうか。
  292. 山本茂一郎

    山本(茂)政府委員 お答えをいたします。  原則的なことを言ってはなはだ失礼でございますし、また、いままでの御質問の中において、詳細に具体的にいろいろと先生の御意見も承り、また当局からの説明もいたしたような形でございます。したがって、総括的というような私の御返事にはなりにくいかと思いますが、原則的に考えますと、こういう計画、いわゆる土地改良事業の事業費に関しましては、これはその地域の特性とか事業の計画の内容というものを十分に慎重に定める必要があるということを私は感じたわけであります。  しかしながら、現状では、一方において賃金そのほかの経費は増してまいります。また、物価も上がってまいります。それに従って計画をしました事業費も、計画当時と変わりまして、いろいろと上昇する状況が、ただいま御議論になったものが起こってくると思います。はなはだ失礼なことでございますが、一般農家とかそのほかの状態を考えますと、同時にそういうところの収入もまた増しつつあるという現実の問題も頭に入れなければならぬと考えるわけであります。これは小理屈でございますが……。  また、脱退そのほかの御議論は、事務当局から御返事申し上げたわけでございますが、計画の重要な部分が変更を生じて事業費が高まるという場合には、いわゆる土地改良法の定めるところに上りまして計画変更の手続をとるという形が残された問題じゃないかと考えます。  以上のことを重ねてまとめたという意味ではございませんが、いままでのお話しの重点と思うところを回答申し上げる次第であります。
  293. 諫山博

    ○諫山委員 最後に一言だけ……。  私は、何もどんどんみんなが脱退することをすすめているのではないのです。また、計画がくずれることを希望しているのじゃないのです。やはり農民の利益を守る立場から、こういう事業が民主的に、さらに農民の利益をほんとうに守れるように進めてもらいたい。  そこで、次長さんに最後に……。  宮崎県では、とにかくこれはたいへんな問題になっているのです。ですから、いま言われたような計画変更というようなことが、宮崎県の場合に適当かどうかということは、本気で考えてもらいたいと思います。本気で考えることはいいでしょう。どうですか。
  294. 杉田栄司

    ○杉田政府委員 相当広範囲の大きい地域でございますから、地元の事情をよく聞きまして内容を十分検討いたしたいというふうに思っております。
  295. 諫山博

    ○諫山委員 終わります。
  296. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に小宮武喜君。
  297. 小宮武喜

    小宮委員 農林省は昨年の八月二十五日、告示千六百七十四号をもって、「まき網漁業に係る中小漁業振興計画」を告示しております。その振興計画によりますと、「昭和五十二年度末までにおける経営近代化の目標」の一つとして、「操業形態の合理化及び資本装備の高度化」をあげておられますが、これの具体的な内容についてひとつ説明を願いたい。
  298. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 振興計画の基本的な考え方といたしましては、まき網漁業の体質改善を積極的に推進することといたしまして、そのため、経営規模の拡大、二そうまき漁法から一そうまき漁法への転換等の操業形態の合理化、漁場の拡大、装備の近代化などの推進をはかることを主要な対策として掲げてあるわけでございます。
  299. 小宮武喜

    小宮委員 操業形態の合理化及び資本装備の高度化の問題ですね。これを具体的に説明してくれませんか。特にこの問題については、その目標を推進する立場からまき網漁業操業形態合理化研究会が設けられておりますが、この研究会の検討内容と経過について説明を願いたい。
  300. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたまき網漁業の操業形態合理化研究会は、まき網漁業の経営の安定及び生産の維持発展をはかることを目的に、操業形態の合理化を推進するために昨年の十月に設置したものでございまして、以後六回にわたって検討を行なっております。  この研究会の検討事項といたしましては、当面の問題と将来の問題がございまして、当面の問題といたしましては、サイドスラスター等の装備に伴う網船の合理的設計、装備及び船団の編成、また将来の問題といたしましては、付属船機能を網船に集約する方向での網船の合理的設計、装備及び船団編成が取り上げられております。当面の問題でございますサイドスラスターの装備等に関しましては、東海黄海漁場における操業形態の合理化に資するためのサイドスラスターの検討、またそれを装備する船の船型といたしまして、百十六トンで十分であるか等が問題となっておるわけでございます。  まず、これらの装備を登載いたします船型といたしましては、現在の漁労性能を維持することを前提として装備全般を洗い直し、できる限り装備の軽量化をはかることといたしまして、現在水産庁の漁船研究室を中心に最後の作業を行なっておりまして、五月三十一日に最終報告書の検討が行なわれる予定になっております。それからさらに将来の問題につきましては、本年度から三カ年計画で研究を進めていくという考え方をしております。
  301. 小宮武喜

    小宮委員 それではこの研究会で当面の問題として検討されておるのは、網船にサイドスラスターの装備をするということだけですか。それで将来の問題として、その付属船の集約の問題は三年以内に結論を出すということですか。ちょっと違うようですけれども……。
  302. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 今後のまき網の操業の合理化を考えます場合に、サイドスラスターの役割りというのは非常に大きいわけでございます。ところが、現在の百十トンないし百十六トンの船でサイドスラスターの装備が十分にできるかどうかという問題がございます。そこでサイドスラスター等の装備に伴う網船の合理的な設計、装備及び船団編成ということを当面の課題としておりまして、付属船機能を網船に集約する方向での網船の合理的な設計というものは、将来の問題として取り上げているわけでございます。したがいまして、当面の問題といたしましては、サイドスラスター等を装備した場合の船型がどういうのがいいかということに問題をしぼって検討しているわけでございます。
  303. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、五月三十一日までに研究会の結論が出るというのは、サイドスラスターを装備する問題について結論を出そうということで、灯船とか運搬船の合理化の問題については、五月三十一日までに結論を出すということではないということですか。
  304. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  305. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、この農林省の告示の中に四つの目標が掲げられているわけですが、一番目が「経営規模の拡大」、それから二番目が「生産行程の協業化」、三つ目が「操業形態の合理化及び資本装備の高度化」、四つ目が「大型漁船による単船操業」で、まだほかにも沿岸漁業の問題もいろいろありますけれども、いまのサイドスラスターは現在の百十一トンの網船に装備できると思いますか。
  306. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 その点を研究しているわけでございまして、その研究の結果によりましては、船をさらに大型化しなければサイドスラスターを使えないということも起こってくるわけでございますが、現在その検討会で研究しているわけでございます。
  307. 小宮武喜

    小宮委員 サイドスラスターを設備するということは、現在の網船にたいてい作業船がついておりますね。これを廃止するかどうかの大きなポイントになるわけです。したがって、現在でも網船は御承知のように乾舷マークから——すでに乾舷マークは水中に没して、乾舷マークから二十センチぐらい上にいっておるわけです。したがって、その上にいまのサイドスラスターを装置するとすれば、それだけまた船は沈むわけです。だからサイドスラスターを装置することについても、この研究会の内部においてすら問題が起きているわけです。現在まで五回、六回やられておりますが、それが三十一日までに出るという根拠についてもいろいろお聞きしたいのですけれども、この中で、合理化研究会における水産庁漁船研究室所属の技官ですらこういう意見を述べておるのですよ。  昨年の十一月九日の第二回の委員会で「港の中で、片舷に乗っても傾かぬという安定性の問題も犬事な要素であるが、沖ではさらに乾舷が大きな要素になる。乾舷が少いと波が打込まれ、甲板の端が水に入ると、ころりと転覆するおそれがある。感覚的には安全に思われるが、このような船は非常に危険である。」これは土屋さんという人です。御存じでしょう。それからまた、次を述べますと、第三回の十二月十一日の委員会でも、「船の復原性を船首体でカバーするのは大変なのでハイドロスラスターをつけてカバーするということだが、現在は、曳船によってこの弱点をカバーしている。」それからさらには第四回でも出ておりますが、「船底の水を減らして造水機を上へ積むと、乾舷の問題は良くなるだろうが、復原性はむしろ劣化するのではないか。」これは長官も御存じでしょうが、私もこの何回かの結論をみんなここに持ってそろえているわけです。  これから見ていまのハイドロスラスター、いわゆるサイドスラスターの問題にしても、どういうような結論を出すか知りませんが、いままでの研究会の研究過程でも、サイドスラスターを現在の船につけて絶対復原性がだいじょうぶだというような結論は何ら出ていないのです。そういうような中で、どういうような結論を出すのか知りませんが、少なくとも現在の百十一トンの網船に、ましてや乾舷も沈んでおる。そういうような中でこのサイドスラスターをつけるということになると、また船は沈む。そうなった場合に、船の転覆の危険があるということを私は非常におそれるのです。  それでは、あのサイドスラスターは何トンありますか。装置したら何トンになりますか。
  308. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 サイドスラスターをつけますと、約十二トンさらにウエートがふえるわけでございます。したがいまして、現在の百十一トンにサイドスラスターをそのままつけるということは、あるいは無理があるのかもしれません。その場合におきましては船型の大型化ということが当然必要になってくるわけでございます。その辺の問題について現在検討しているわけでございます。
  309. 小宮武喜

    小宮委員 それは当然いま言われるように、いまの百十一トンの網船にサイドスラスターを装備することになると、やはりまた乾舷が下がってくる。そうしますと、船は転覆の危険があります。だから、この問題について、私はその結論をどういうふうな形で出すのか知りませんが、非常にその点は十二分に慎重に配慮していただかぬと、この結論の中でもそういった安全性というものは立証されていない。それを水産庁としては、むしろ強行しようとする意図すらあるのではないかという感触を私は持っているわけです。だからこの問題については、少なくともこの告示の四つの目標にしても、これがやはり並行して行なわれなければ、ただ合理化の問題だけを先行していった場合、これは漁業経営の安全どころか、経営の悪化ということにつながってまいりますし、私はこれを四つ同時にやはり検討すべきだというような考えを持っておりますけれども、それはそれとして、ただ「操業形態」の問題だけがいま研究会で中心になっておりますが、ほかの三つの、「経営規模の拡大」の問題、それから「生産工程の協業化」の問題、「大型漁船による単船操業」の問題等については、現在何も検討をされていないということですか。
  310. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 それらの問題につきましては、先ほど申しました長期の問題の一環として検討しているわけでございます。
  311. 小宮武喜

    小宮委員 そうしたら、当面する問題で、そのサイドスラスターを装置するということになると、作業船の削減の問題は当面として考えられますね。それから灯船の問題は、将来の問題として三年以内に結論を出すということですか。この点ははっきりしてください。灯船の問題は将来の問題として考えるということで、当面の問題はサイドスラスターを装置することによって作業船の廃止という問題は表裏一体となって出てくるわけですが、作業船の廃止についてはそれではどう考えますか。
  312. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 将来の問題として取り上げておりますのは、先ほども申し上げましたように、付属船機能を網船に集約する方向での網船の合理的な設計、装置及び船団の編成ということで将来の問題を考えておるわけでございます。したがいまして、灯船の問題直の問題ではございません。それから作業艇の話等はこの長期の問題とは必ずしも関係のある話ではございません。
  313. 小宮武喜

    小宮委員 いや、関係がないから、そのサイドスラスターを装置するということは、網船に装置することによって作業艇をなくするということが前提でしょう。問題はそれでしょう。だから、サイドスラスターを取りつけることによって船体の安全上の問題を保障されたならば、いまの現在ある作業艇を廃止するということなんでしょう。だから、将来の問題については作業艇は関係ないとしても、当面の問題としてこれが一番関係があるわけです。いかがですか。
  314. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 サイドスラスターを装備して網船の合理化をはかるという話と、付属作業艇の話とは直接な関係はございません。いまの網船にサイドスラスターというあの機械をつけまして、非常に旋回度をよくするという話と、現在確かにその作業に作業艇を使っておりますけれども、現在の網船でそれではサイドスラスターを使わなければ必ず作業艇を使わなければならないという問題とは考えていないのでございます。
  315. 小宮武喜

    小宮委員 ぼくもこのハイドロスラスターの本も持っておるんですよ。これはなぜハイドロスラスターをつけるように考え出したかというのは、作業艇を廃止するために考え出したことなんですよ。結局ハイドロスラスターをつけることによって船の復原力を増すとか、こちらから海水を注入してこちらに出すということで、船体のローリングの問題安定性の問題からこのハイドロスライスターはできておるわけですよ。それを取りつけようというわけです。しかも水産庁が言っておることは、三陸沖で、海岸からわずか三時間か四時間走ったところでこのハイドロスラスターをつけた船が二隻おるだけなんです。しかも、どちらかといえば、三陸沖は東シナ海、黄海に比べればそう波は荒くないんです。そういうようなところでこれをただ二隻実験しているだけです。これの問題は研究会でまだ結論は出ておりませんけれども、それはいいけれども、ただ船の大きさをどうするかという問題と、それから、ただ穏やかな波の場合と、しけで風速七メートルも八メートルもあるところでこれをつけた場合と、効力はそのまま発動するかどうかという問題もあるのです。このハイドロスラスターをつけてみても、東シナ海、黄海においては、海流から、風波から、全然違うわけです。しかも、たった二はいについて実験されておるわけです。それを東シナ海から、まき網漁全部にこれを使用するということについても、船の安全に一番責任を持っておる漁労長会議で、これはまだ危険だ、まだ未知な部分が多い、もう少し十二分に検討して、それからつけるというならつけるようにしてもらいたいということで、漁労長あたりは長官のところにも陳情に来ておるでしょう。私が感じたところでは、水産庁としてはそれをどうも強行しようとしておるらしいところに問題がある。そして、しかも、これもまたこれの議事録もありますけれども、乾舷マークの問題はなるほど五島の奈良尾で出航する船を見ております。これは出航する場合の乾舷マークの状態じゃないですか。沖に行ったらどうなりますか。(「長官を一ぺん乗せてやれ」と呼ぶ者あり)そのことはあとで言うつもりですがね。だから、この問題を水産庁が強行するようなことは絶対やめてもらいたい。水産庁はすぐそれは逃げると思うのですよ。この問題については、今月の十四日に生産調整組合でもうすでに決定をされようとしておる。もし決定をされたら、これは水産庁に認可申請が出るわけです。そうしたら、水産庁は、それをいいことにしてすぐこれに認可を与えようというような動きが、空気が、長官自身の口からも非常に顕著に出ておる。こういったまだ未知の部分で、しかも、実際効用的にも、試験をたった二回、二隻の船で試験しただけで、こういうようなハイドロスラスターを全船に取りつけて、そうして直ちに網船を、作業船を廃止しようという無謀な水産庁の考え方、これは断じてやめてもらいたい。皆さん、もしこの船が転覆したら、漁船員三十人が死ぬのですよ。皆さん、ハイドロスラスヌーをつけぬで、そして、この作業艇で網船が作業しておりながらも、転覆して死亡した事件がもうすでに何件も起きておるじゃないですか。  そうすると、長官、いままでまき網漁業で何件ぐらい船が転覆して、何人ぐらい死んでいますか。
  316. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 まずこの際はっきり申し上げておかなければならないと思いますのは、水産庁といたしましては、網船にハイドロスラスターをつけることを義務づけることは全く考えておりません。ただ、ハイドロスラスターをつけたほうが網船の操業が非常にやりやすくなる、安定度がふえるということでございまして、私どもといかしましては、現在、研究会でハイドロスラスターをつけたいという船主の希望が出てきた場合に、どういう船型のものが一番安全度が高いかということについて、船の専門家がその設計についていろいろ検討しているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、ハイドロスラスターをつけなければいかぬということをまき畑の漁業者に強制するようなことは全然考えておりません。  それから、海難事故がどれくらいあるかということでございますが、過去二十年間のまき網漁業の沈没事故は、網船五隻、魚探船三隻、運搬船八焦、計十六焦でございます。このうち網船五隻はすべて北部大西洋の海上における事故でございまして、原因は衝突、網を揚げているときの横波による沈没、台風による沈没、避難航行中の横波による沈没ということでございます。  それから、サイドスラスターの安全性の問題でございますが、確かに、先生から御指摘がございましたように、東海黄海のような海区でどうかということは問題がございます。したがいまして、現在専門家が一生懸命検討しているという段階でございます。
  317. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、水産庁としては、サイドスラスターをつけることは義務づけはしない、それから、たとえば総会できまったとしても、組合が自主的にきめたということを決定しても、水産庁としては強制をしないということですね。首をひねりおるが、たとえば、もし総会で猛烈な少数意見の反対があったとしても、多数意見として、定款によってサイドスラスターをつけようじゃないかということをきめても——その場合、当然この漁業生産調整組合の事業の問題にもかかわるわけですから、関係が出てくるわけですから、そのような場合でも、総合できめても、水産庁としてはサイドスラスターを義務づけはしないというふうに理解していいですね。自主的にやろうじゃないかということで、たとえば、半数以上が出席して、三分の二できまれば、結果としては、組合の総意としてきまることになりますね。そういう場合に、サイドスラスターをつけようということがもしきまったとしても、それを水産庁としては強制はしないということですか。その点をはっきりしてください。
  318. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいまの先生の御指摘の点は、生産調整組合が、組合員の自主的な意思として、一部の人の反対があっても、三分の二以上なら三分の二以上でサイドスラスターをみんなつけようじゃないかということを決議した場合に水産庁はどうするかというお話しかと思いますけれども、組合員の意思として、サイドスラスターをつけなければならぬということを合法的にみんなで決議してきた場合に、安定性の問題について検討会等で一応技術的な解決がなされている場合におきましては、水産庁としては、その自主的な意思というものはやはり尊重しなければならないのじゃないかと思います。その場合、サイドスラスターをつけてもなお安全性に疑問があるということを水産庁の研究者等が言っておりまして、水産庁としてそういう意見を結論として得た場合には別でございますけれども、研究会の結果、たとえば船をある程度大きくして、それにサイドスラスターをつける場合においては安全性はもう絶対だいじょうぶだというような場合には、組合の自主的な決議というものは水産庁としては尊重すべきではないかと思います。したがいまして、安全性の問題だと思います。
  319. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、いまの合理化研究会で結論が大体今月一ぱいぐらいに出るという話なんですね。そうしますと、現行の百十一トンの網船にサイドスラスターをつけるかどうかという問題について、船の安全上から言って、船を大型にするかとか、いろいろなことがまたここの研究会で検討されて、結論が出されると思うが、その検討結果が出る前に、たとえば総会でかりに強引にきめられだとすると、そういう場合は農林大臣にも関係があるのだけれども、農林大臣はこの次やりますから、まず、長官は、やはり、結論が出るまでは、この認可の問題については、認可するということはしないというふうに理解していいですね。
  320. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 組合の総会におきまして、研究会の結論が出る前にサイドスラスターをつけなければならないという決議がかりになされたといたします。それで、定款が変更になりまして認可が出てきました場合には、私どもといたしましては、サイドスラスターをつけた場合の網船の安全性について完全なる確信を得るまではそういうものは認可いたしません。
  321. 小宮武喜

    小宮委員 長官、そこで、そういった一番大事な問題をいままだ研究会で検討しておる過程の中で、組合の総意であろうと、そういうような総会で一応議題として検討することについては、これはやはり適当ではないというふうにぼくは考えますけれども、長官も、その問題については、今月一ぱいぐらいしたならばその問題についての研究会の結論が出るんだから、それまでは何も早々にそんな決定をする必要はないぞ、また、することはまずいんではないかというような行政指導はするつもりはないですか。また、その点はどうなんですか。
  322. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私どもが承知しておるところでは、作業艇をやめようという話はございますけれども、サイドスラスターをつけなければならぬという決議をするというような動きは全くないように聞いております。  そこで、サイドスラスターをどうしてもつけなければならないということを組合の決議として合法的に決議された場合の認可申請の扱いにつきましては、先ほども申しましたけれども、安全性の確認があるまでは、私どもといたしましては認可いたしません。
  323. 小宮武喜

    小宮委員 その安全性を確認するために、この問題については、どれぐらいの船につけるか、また、現行の百十一トンの船にスラスターをつけるようになるのか、そういったことはちょっとわかりませんけれども、いずれにしても、たとえばサイドスラスターをつけた場合に、船の安全操業はだいじょうぶなのかということについて、ひとつ試験的に東シナ海までモデル船をやってみて、水産庁でも課長ぐらいが乗っていって実験操業ぐらいしたらどうですか。その意思はないですか。
  324. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 試験操業という形態がどうかという問題がございますけれども、私どもといたしましては、私どものほうの漁船の研究者が、サイドスラスターをつけた網船について、この船型のものが東海黄海では安全であるという結論が出れば、その船が就航する前に、作業に従事する前に、関係者としては安全の確認のテスト等は当然するというふうに思っております。
  325. 小宮武喜

    小宮委員 いま、話の焦点はサイドスラスターをつけるかどうかということにあるわけですが、先ほどからの長官の答弁では、サイドスラスターをつけた場合は作業船を廃止するという前提ではないということを言われたのですが、そういうふうに理解していいですか。そのように確認をしていいですか。
  326. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私どもは、別問題と考えております。
  327. 小宮武喜

    小宮委員 別問題として考えた場合に、たとえば組合のほうでそういうような決定をした場合は、それを尊重するわけですか。
  328. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいまの御質問の、そのような決定ということの意味が必ずしも明らかではございませんけれども、サイドスラスターをつけなければならないというような決定をした場合には、先ほども申しましたように、サイドスラスターをつけた網船の安全性の確認ということは、当然認可の前提になってくるわけでございます。
  329. 小宮武喜

    小宮委員 サイドスラスターの問題は大体それでわかりました。しかし、そのうらはらにある問題が作業艇の廃止につながってもいるのです。別問題ということを言われたのですが、私は、これはうらはらの問題で、一体の問題と思っておった。しかし、水産庁の説明で、いやそれは別だ、作業艇は作業艇、サイドスラスターをつけても作業艇はつけておってもいいのだ——別だということは、そういうふうにも理解できるわけですよ。だから、別という問題であれば、たとえば生産調整組合で、サイドスラスターをつけるかどうかは別問題として、それでは作業艇を廃止しようではないかという決議をした場合に、水産庁としてはそれを認可するのかどうかということなんです。
  330. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 関係のまき網業者の方々は、長い間十分な経験を持っておられるわけでございまして、操業形態につきましては、安全性とさらに経営の問題等も考えて、一つの操業形態の提案が生産調整組合の決議として出てくるわけでございます。したがいまして、その決議が合法的になされておると申しますか、生産調整組合法の定める規定に従って決議がなされている場合には、瑕疵がない限り、私どもとしてはやはり認可しなければならないというふうに思っております。
  331. 小宮武喜

    小宮委員 そこで、私も、サイドスラスターをつけることによって船をある程度大型化した場合は、またこれは考えてもいいと思うのですよ。しかしながら、現在の百十一トンの網船にサイドスラスターをつけてみたって、ますますこれは船の転覆の可能性がある。そのためには、実際問題として作業船が要るわけです。そうすると、長官、実際にどうですか。それは百十一トンの現在の船ではまずい、サイドスラスターをつけるにしては船が小さ過ぎる、大きくしなければいかぬという結論がもし研究会で出た場合に、組合の決議で、たとえ合理的な方法で作業船を廃止するという決議をされたとしても、それは当然そのためには船を大型化して、建造期間もかかるわけですから、その間は結局決議が認可されず、そのまま保留という形になるのかどうかということです。船を大型化するということになると、船を建造し直さなければならぬわけでしょう。その間、半年なり一年かかるわけだから、かりに組合で決議をしたとしても、前の、現行のままで、その間操業を休むわけにはまいりませんので操業するわけです。その間は当然いまの作業艇というものは必要であるという前提に立って、そういう場合にかりに廃止をするときめても、やはり、大型の船をつくってから初めて廃止をするとか、あるいは大型船を建造する間は現行の百十一トンの網船で操業をするということになれば、いまの作業艇はそのまま必要ということになるが、私の言いたいのは、そういうような決議があった場合に、その関連はどうするのかということです。組合の決議があるから尊重するということを言われてみたって、実際は結論がどうなるかわかりませんでしょう。たとえば百十トンを百五十トンにするとか、百三十五トンにするとか、いろいろ意見もあるようですけれども、そういうふうに船をつくらなければいかぬわけですね。その間、時間がかかるわけでしょう。そうして、そこで初めてサイドスラスターを取りつけるということになるわけでしょう。その暁は、たとえば作業艇はなくするならなくするという形になるわけでしょうけれども、その間、半年なり一年間、新しい船ができ上がるまでは、これもまき網漁業の方々も休業するわけにはいかぬですから、やはり操業する、操業する場合は現行どおりに作業船はつける、必要だということを理解しますかということですよ。それでいいでしょう、どうですかということです。どうですか。
  332. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 確かに、ただいま先生から御指摘がございましたように、サイドスラスターを装備した場合の船型についての結論が出てから、その船ができるまでには相当の時間が必要でございます。その間、関係のまき網の業者の方々が操業しなければならぬということも事実でございます。ただ、まき網の業者の方々も長い間の経験を持っておられますし、それから、自分の経営の問題も考えておられるわけでございます。そこで、サイドスラスターを装備した船ができるまでの間、総意として、現在の作業船を廃止しても安全に操業はできるんだ、非常に無理な操業をしなければ、安全性については問題ないということを皆さまが総会の決議として出されてきた場合には、私どもとしてはそれを尊重しなければならぬということを申し上げているわけでございます。
  333. 小宮武喜

    小宮委員 私が聞きたいのは、尊重するというのが、この調整組合法の十一条の「調整規程の認可」の問題に関係あるわけですよ。だから、尊重するということは、それは決議をしたから水産庁に認可申請をした。だが、いま私が申し上げたような、実態が伴わない間にそんな認可をするのかということなんです。尊重する、尊重すると言っても、何を尊重するかはっきりしてもらわぬと、ごまかしては困りますよ。
  334. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 繰り返して申し上げますけれども、その作業艇がなければ、いまのまき網の操業ができるかできないかという問題とも関係があるかと思うのでございます。  そこで、先ほどから申し上げておりますように、関係の業者の方々も、東海黄海での操業の経験をみんな持っておられるわけでございまして、いまの経営の問題その他から作業艇を廃止してもまき網漁業の操業はできるんだ、しかも、サイドスラスターをつけないで、現在の百十一トンの網船でもできるんだということで、総会で合法的に決議されてきた場合には、私どもは、その決議はやはり尊重せざるを得ないということになるわけでございます。  そこで、問題は、その作業艇がなければ非常にあぶないかどうかという問題でございまして、そこは、やはり、業者の方々の経験というものを尊重しなければならないんじゃないかということを私は申し上げているわけでございます。
  335. 小宮武喜

    小宮委員 どうも話が少しかみ合わぬけれども、それでは、三陸沖に出漁しておるまき網漁船と、東シナ海に出漁しているまき網漁船はどういうふうな比率になっていますか。何倍になっていますか。いま言われるようなことは、長官、三陸沖で操業をすれば、昼間やるのです。しかも、たとえばしけが来た、風が吹いたといっても、三時間、四時間でぱっと港まで避難できるのですよ。東シナ海へ行った場合は、長崎、唐津まで帰ってくるのに二昼夜かかるのですよ。  この問題についてはぼくはもう一点聞きたいのだけれども、これは大臣に聞いたほうがいいんだけれども、こういうような状態になったときにこの人たちは、従来は台湾に緊急避難しておったのですが、いまの日中航空協定の締結によって、日台航空路線も廃止されたというような状態になって、緊急避難ができるかどうかという問題も、東シナ海で操業する場合に起きておるのですよ。だから、安全だということは、三陸のほうはわりあいにそういうことは言えるかもしれません。わりあい波が穏やかだし、すぐ避難もできる。水揚げ港に戻るのには三時間か四時間でよろしい。しかし、東シナ海、黄海に行くほうは二昼夜かかって来るのですよ。緊急避難をどこでするのか。そんなことを、実態をよく知っておりますか。実態を知っておればそういうことは言えないのじゃないか。いまの水産庁の考え方というのは、おそらく三陸沖で操業する人たちのことを大体中心に考えてものを言っておるのじゃないかという気さえするのですよ。資料はここにありますよ。三陸沖とか、どこへ行く船とか、みんな……。  しかも、いまぼくが水産庁に言いたかったのは、合理化とか経営の改善というのは、水産庁がこういうような指導の中でやらぬでも、経営者自身は合理化をやりたいのです。だれがむだな油を使って、むだな金を使ってやりますか。むしろやり過ぎるぐらいにやるのが、水産業界だけでなくて、地上のあらゆる産業での合理化の実態じゃないですか。そういうような中で、なおかつ経営者としてこれではあぶないということを訴えておるわけだから、その場合には尊重すると言われるけれども、それでは、たとえばかりに三陸沖とか、対馬の沖とか、五島の沖とか、こういうような近いところで操業している人は、それは尊重してやってもよろしい、そして、東シナ海で操業して、二昼夜もかかって帰ってこなければならぬようなところでは、それなら作業艇はつけてもよろしいというふうに理解していいですか。尊重するということばはそう理解していいですか。
  336. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 三陸沖で操業のできるまき網船は、六十三隻の中の三十隻でございます。そこで、生産調整組合の総会になりますと、三陸油で操業のできない東海黄海で操業している三十三隻の人たちの声ももちろん出てくるわけでございます。そこで、その人たちが作業艇を廃止してもだいじょうぶだという結論を出された場合には——たとえば潮流の状況、海峡の状況等、いろいろな観点からいろいろと状況によって違うと思うわけでございますが、長い間の経験を持っている業者の方々がだいじょうぶなんだという合法的な決議をそこでなされてきた場合には、水産庁としてはその決議を尊重せざるを得ないということを先ほどから申し上げておるわけであります。
  337. 小宮武喜

    小宮委員 どうもそこが長官と私はちょっと意見が食い違うんですよ。それは尊重することはいいですよ。しかし、現実に——また話を戻さぬと話がわからぬですが、いま言われるように、研究会の結論が、たとえば今月末までには何かの結論が出るであろうという場合に、いまの百十一トンの船を百五十トンにつくりかえる、百五十トンの船でなければサイドスラスターをつけることは非常に危険だという結論がかりに出たとすると、いま百十一トンの船というのは、これは全部百十一トンになっておるわけだから、全部つくりかえなければいかぬわけですよ。そうすると、その間期間がかかる。たとえば三陸沖で操業する網船にしても、百十一トンでサイドスラスターをつけてだいじょうぶかどうかという問題もあるわけです。それは、いままでの実験で、二隻がつけて大体結論が出ておるようですけれども、しかし、それでは東シナ海に出漁する船はあぶない、三陸沖と一様にはいかないということを言っておるわけです。だから、かりに百三十五トンの船につくりかえなければいかぬわけです。つくりかえるのに半年かかるか、一年かかるかしれません。おそらく半年や一年くらいではできないでしょう。そうすると、その経過措置というか、臨時措置というか、その間は向こうに出漁する船については作業艇をつけるというような配慮もあってしかるべきですよ。たとえば百十一トンでだいじょうぶだという研究会の結論が出た場合にはなおさらのこと、現在でも、合理化研究会の議事録を見ても、あぶないということを水産庁の技官そのものが言っておるじゃないですか。そういうような中であえてそういうような結論が出たとした場合、その作業艇を廃止することは、水産庁としては、少なくとも事人命に関する問題なんだからもつど慎重に考えてほしいと私は思うのですよ。十人のうちにまあ六人か七人か八人かがだいじょうぶと言ったとしても、あと一人でも二人でもこれは生命上あぶないという声があったら、多数決の原理でその二人の考えは切って捨てろ、十人のうち六人賛成すればいいのだとか、七名賛成すればいいのだとか、その結論は尊重するのだというような考え方は——これは陸上の仕事じゃないんですよ。東シナ海の荒波の中で作業するわけですから、そういうように一人でも二人でも反対の声があったら、それも考慮すべきです。それでは漁船員の生命の安全は保ち切らぬからということを漁労長あたりはみんな言っているわけでしょう。そういう船主もいるわけだから、その場合にあえて多数決の原理を尊重して、その決定は尊重しますということについては、水産庁長官としては——漁業の経営もあります。しかし、漁業の経営よりも何にも増して人命の尊重が優先されなければいかぬわけです。その問題を、水産庁はどうも合理化問題だけを先行しておるような感じがしてならないのです。だから、私がいま言いましたように、尊重するにしても、三陸沖と東シナ海とは操業の実態が違いますよ。したがって、その場合は現行の作業船を廃止するにしても——尊重するということは、この認可規程でそれを認めるということになれば、それは作業艇を廃止することなんですよ。いまの場合、将来の問題ということを言われましたね。三年以内ということを言われました。作業艇の問題についても、この問題を将来の検討事項として検討するなら、何も尊重して出てきたやつを、申請されたやつを直ちにOKだと言う必要もないじゃないですか。将来の問題と言うのですからね。いまのサイドスラスターを取りつけることだけが当面の問題である、そして、作業艇の問題を将来の問題として、三年以内でやろうとしておると言っておるわけだから、尊重するにしても、そういった方針と計画のもとにおいて慎重を期してやるべきだと思うのですよ。どうですか。
  338. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 現在のまき網漁業が置かれているいろいろな客観情勢から、生産調整組合として、経営の合理化、生産調整を進める、それについて作業艇を廃止する、それによって作業上は全く困らない、安全性もだいじょうぶだということを、かりに十人のうち八人、場合によっては九人が……(小宮委員「六人」と呼ぶ)出席者の三分の二以上の議決でございますので……。そういうような場合に、そういった生産調整組合の方々はやはり長い操業の経験を東海黄海で持っておられるわけでありますから、それについては逆に今度は絶対にあぶないと言わなければ、なぜ認可しないのかと言われたときに、水産庁としては立場に窮するわけでございます。したがって、そういう長い経験を持っておられる方が合法的な議決をしてきめてこられたことについては、現在のまき網漁業が置かれている現状からして、それを尊重しなければならないのじゃないか。そうすると、そういうことを前提にして皆さん安全操業をおやりになるわけでございますから、私どもといたしましては、そういった決議というものはやはり尊重せざるを得ないというふうに思うわけでございます。
  339. 小宮武喜

    小宮委員 これはまた平行線だけれども、尊重、尊重と言っているけれども、私が先ほどから述べたような現状があるわけでしょう。だから、それをあえて無視して尊重するというふうに言われるのか。もう一ぺんやりますけれども、ただ確認をしておきたいのは、今度の合理化研究会等の検討内容というのは、あくまでもサイドスラスターを百十トンの船に装置できるかどうかということだけが主題だ、それで、あくまで作業艇の問題は別問題だということですね。  灯船の問題はどうですか。灯船は減船する考えかどうか。
  340. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先ほど申しましたように、研究会の当面の課題といたしましては、先生の御指摘のあったとおりでございます。  それから灯船の問題につきましても、組合の議決を十分尊重してやるということはもう当然でございます。
  341. 小宮武喜

    小宮委員 どうもあなたは、組合が今月の十四日に議決されようとすることと口うらを合わせたようなかっこうだが、少なくとも今度のものは経営の近代化が目的でしょう。生産調整事業の目的を読んでみてもいいですよ。灯船を減らすということも、調整組合のほうできめたら、それを尊重するということですか。そうした場合に、漁獲はどれだけ減少しますか。
  342. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 灯船は、先生御案内のように、資源上の問題もあって、現在二隻になっているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、灯船を二隻からさらに減らすというような議決をするとは思いませんけれども、組合の決議というものはやはり尊重しなければならない。しかし、その場合において、組合が経営合理化だけの観点からすべてをきめて、安全性ということは全く考えていないというふうには私どもは考えておりません。やはり、先ほどから繰り返して申しておりますけれども、東海黄海について長い操業の経験を持っている人たちがこういう操業形態でもだいじょうぶだということの場合には、経営の合理化と同時に、安全性についても十分考慮されているというふうに考えるのが普通ではないかと思います。したがいまして、組合の決議を尊重するということは行政庁としてあたりまえの態度ではないかと私は思っておるわけでございます。
  343. 小宮武喜

    小宮委員 水産庁としては、灯船の二隻は減船する意向はない、しかし、組合のほうで減船を決定したらそれを尊重するということですか。しかし、そんなことになると、水産庁の行政指導はどうなりますか。長官、灯船を一ぱい減らすとどれだけ水揚げが減るかわかっておりますか。今度の総会の議題の中では灯船の減船も出ておりますよ。魚は灯船に寄ってくるわけですよ。もし灯船を減らしたら魚の水揚げが減ることははっきりしているわけだ。灯船を減らした場合それが経営の拡大あるいは経営の安定に役立つことになるわけですか。長官は、組合のほうできめたらそれを尊重しなければいかぬとか、すぐにそんなことを言っているけれども、そういう水産庁の方針と逆行するような決議がなされようとする場合は、行政指導として待ったをかけるぐらいなことは当然じゃないですか。灯船を減船したら水揚げは減ると思うのです。まさか、ふえるとは言わぬでしょうね。減るとすれば、どのくらい減りますか。長官は減らす方針じゃないけれども、組合が減らしたらそれを尊重すると言うから聞くのです。
  344. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 灯船を減らすということを組合が考えているという話は全く聞いておりません。  それから、生産調整の目的は、ある程度水揚げが減って、要するに豊漁貧乏を避けようという気もございますので、同時に、漁業の継続のためには資源を持続的に維持しなければならぬという面もあるわけでございます。そういったことを考えて、ある程度水揚げを減らそうという面もあるわけでございまして、水揚げが減ること自体が悪いんだということにはならないのではないか。生産調整組合の目的ということは、そういったことを通じて経営の合理化をはかり、所得の維持をはかっていこうという考え方があるわけでございますから、灯船の一隻を減らして幾ら減るかということにつきましては、これはケース・バイ・ケースで、漁場によっても違うと思いますけれども、生産調整組合のねらいというものはやはりそういうところにあるのでございまして、それを当該漁業の現実に照らして、関係方々が十分議論してきめてきたということについては、私ども行政庁としてもこれは尊重しなければならないのではないかということを繰り返し繰り返し申し上げておりますけれども、私は、行政官としてそのように考えておるわけでございます。
  345. 小宮武喜

    小宮委員 それは水揚げの問題にしても、たとえば三陸沖と、対馬沖と、五島沖と、東シナ海ではそれぞれ違います。だからケース・バイ・ケースごとに違うと言っておりますけれども、多いところはもし灯船を減船されたならば四〇%も四五%も水揚げが減るというデータが出ておるのです。三陸沖だったら一〇%くらいでしょう。ただ、問題は、長官、それだけではないのですよ。運輸省をきょう呼ぶつもりでおったけれども、水産庁のほうが一番詳しいからと思って呼ばなかったですが、いま、漁船員の賃金というのはオール歩合制ですよ。そのために水揚げが減れば収入が大幅に減るわけです。その場合の生活保障の問題も出てまいります。だから、ほんとうの近代化というのは、もちろん省力化とか設備の近代化とかいろいろありますけれども、それによって漁船員の生活も労働条件も向上していき、経営も悪化するということじゃなくて、経営も改善してよくなっていくというところに近代化のねらいがあるんじゃないですか。漁船員の収入が減少してもよろしい、経営者の採算悪化で倒産する事業所が出てもよろしい、これが水産庁の振興計画ですか。これは大きな問題があるのですよ。漁船員問題もあります。灯船を廃止したとした場合に、乗っている漁船員は首なんです。失業するわけです。たとえば灯船は別としても、運搬船の問題があります。運搬船の問題もどうするのか、ちょっと長官から聞いておきましょう。運搬船は削減でしょう。
  346. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 生産調整の問題でございますけれども、水揚げが減った場合におきましても、一方魚価という問題があるわけでございます。したがいまして、水揚げが減ったから必ず所得が減ってしまうというかっこうにはならないわけでございます。  さらに、漁船につきまして、依然として歩合い制度が遺憾ながら多いということも私どもはよく承知しております。しかし、その場合におきましても、これは水揚げ量だけできまってくるわけではなしに、水揚げ高できまってくる面がございます。  それから、先生御案内のように、今日、以西のまき網ドロール漁業は、船員の不足で非常に困っております。したがいまして、合理化の結果一つの船が削減されまして、余ってくる船員の方々も就業の機会に困るというようなことはまずないのではないか、むしろ、以西のトロールのごときは労務者不足で出漁できないというような問題も現在すでに起こっておるように聞いております。  それから運搬船につきましても、削減の方向で、あるいはトン数制限等をとるということで組合のほうでは考えているというふうに聞いております。
  347. 小宮武喜

    小宮委員 長官、なるほど長官が言われるように、水揚げが減れば魚の値段が上がるから、水揚げ高としては変わるかもわからぬですよ。それはいまのような物価の問題のときに、魚の値段が上がるということは、そんなことを認めるわけにはまいりませんね。  特に、船員の不足の問題ですが、なるほど若年船員は問題が一部にあるようです。しかし、一番大きな問題は、長官、たとえば日ソ漁業によって減船を余儀なくされた。漁船員を含めて、船員というものは、いままで二五%予備船員、いま四五%になっているのですよ。いま漁船員の対策というものが、雇用対策というものが一番大きな問題になっているのですよ。だから、いま長官が言われるような、合理化をやって減らしたら、むしろその人間が行くところが一ぱいあるのだ、まだ不足しておるからいいんだ、そのために合理化をやったほうがいいのではないかとも受け取られるような発言はちょっと解せかねます。しかし、それはいいです。  運搬船の問題にしても、いま言われるように、三隻七百五十トン以内ということになっておりますね。そうしますと、いま言われる三陸沖で四時間か五時間走って行かれるところで操業してとれた魚をこっちへ持ってきて揚げるのと、二昼夜もかかって東シナ海から来る場合と同列にして、三隻で七百五十トンという基準そのものがおかしいと思うのですよ。かりに七百五十トンとしますね。そうすると、いま現在の船がたとえば三百トン、四百トン、百五十トンとしますよ。そうしますと、百五十トンの船を一ぱい減船すれば七百トンなんですね。そうすれば、やはり経営者としては七百五十トンぎりぎりまで運搬能力を持ちたいのは当然でしょう。そうすると、またもう一ぱい廃船をして三百トン、四百五十トンというようにつくりかえるということになりますよ。その場合資金の問題がありますこういうような、現実に即しないような、現実を無視したような乱暴な今回の振興計画の操業形態の合理化の中では、いろいろな問題を含んでおります。  したがって、もう時間も来ましたので、私はきょうはこれくらいにしますけれども、今度は大臣もおるところで、長官も二人とも出てもらって、この問題ではもっととことんまでやりますから、来週の木曜日にまたお目にかかりましょう。  きょうはこれで質問を終わります。
  348. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十七分散会