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1974-04-09 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月九日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    上田 茂行君       小沢 一郎君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       島田 安夫君    染谷  誠君       丹羽 兵助君    井上  泉君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    馬場  昇君      米内山義一郎君    諫山  博君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         農林政務次官  渡辺美智雄君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         林野庁長官   福田 省一君         林野庁林政部長 平松甲子雄君  委員外出席者         環境庁自然保護         局企画調整課長 新谷 鐵郎君         農林省農林経済         局統計情報部長 吉岡  裕君         林野庁指導部長 松形 祐堯君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      柴田 益男君         自治省財政局交         付税課長    森  審一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     越智 通雄君   島田 琢郎君     大柴 滋夫君 同日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     上田 茂行君   大柴 滋夫君     島田 琢郎君 同月八日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     山本 政弘君   神田 大作君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     野坂 浩賢君   小沢 貞孝君     神田 大作君     ————————————— 四月五日  畜産業経営安定等に関する請願安里積千代  君紹介)(第三五〇三号)  同(池田禎治紹介)(第三五〇四号)  同外二十七件(伊藤宗一郎紹介)(第三五〇  五号)  同(諫山博紹介)(第三五〇六号)  同外八件(植木庚子郎君紹介)(第三五〇七  号)  同(内海清紹介)(第三五〇八号)  同(小沢貞孝紹介)(第三五〇九号)  同外三件(加藤常太郎紹介)(第三五一〇  号)  同外一件(笠岡喬紹介)(第三五一一号)  同(神田大作紹介)(第三五一二号)  同外四件(久野忠治紹介)(第三五一三号)  同(栗田翠紹介)(第三五一四号)  同(小泉純一郎紹介)(第三五一五号)  同外二十件(小島徹三紹介)(第三五一六  号)  同(小宮武喜紹介)(第三五一七号)  同(佐藤孝行紹介)(第三五一八号)  同(瀬崎博義紹介)(第三五一九号)  同(田代文久紹介)(第三五二〇号)  同(多田光雄紹介)(第三五二一号)  同外十七件(竹中修一紹介)(第三五二二  号)  同(竹本孫一紹介)(第三五二三号)  同(塚本三郎紹介)(第三五二四号)  同外一件(中澤茂一紹介)(第三五二五号)  同(中川一郎紹介)(第三五二六号)  同(西銘順治紹介)(第三五二七号)  同(野原正勝紹介)(第三五二八号)  同(原茂紹介)(第三五二九号)  同(平田藤吉紹介)(第三五三〇号)  同外一件(藤井勝志紹介)(第三五三一号)  同(本名武紹介)(第三五三二号)  同(三池信紹介)(第三五三三号)  同外八件(水野清紹介)(第三五三四号)  同(宮田早苗紹介)(第三五三五号)  同(山崎平八郎紹介)(第三五三六号)  同(井岡大治紹介)(第三六一二号)  同外二件(板川正吾紹介)(第三六一三号)  同(太田一夫紹介)(第三六一四号)  同(木野晴夫紹介)(第三六一五号)  同外二件(小坂善太郎紹介)(第三六一六  号)  同外八件(塩崎潤紹介)(第三六一七号)  同外十六件(關谷勝利紹介)(第三六一八  号)  同外十九件(田澤吉郎紹介)(第三六一九  号)  同(中路雅弘紹介)(第三六二〇号)  同外六件(中澤茂一紹介)(第三六二一号)  同外二件(芳賀貢紹介)(第三六二二号)  同外十一件(毛利松平紹介)(第三六二三  号)  同(松浦周太郎紹介)(第三六二四号)  同(吉田法晴紹介)(第三六二五号)  同(宇野宗佑紹介)(第三七二一号)  同外四件(大野市郎紹介)(第三七二二号)  同(河村勝紹介)(第三七二三号)  同(北澤直吉紹介)(第三七二四号)  同外三十件(栗原祐幸紹介)(第三七二五  号)  同(小林正巳紹介)(第三七二六号)  同(佐藤孝行紹介)(第三七二七号)  同(島田安夫紹介)(第三七二八号)  同(塚原俊郎紹介)(第三七二九号)  同(中山利生紹介)(第三七三〇号)  同(旗野進一紹介)(第三七三一号)  同外十件(藤本孝雄紹介)(第三七三二号)  同外一件(森下元晴君紹介)(第三七三三号)  同(安田貴六君紹介)(第三七三四号)  同(坊秀男紹介)(第三七三五号)  昭和四十九年度加工原料乳保証価格等引上げ  に関する請願外二十六件(野原正勝紹介)(  第三六〇八号)  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願外五件(木野晴夫紹介)(第三六〇  九号)  同外五件(塩崎潤紹介)(第三六一〇号)  同外七件(關谷勝利紹介)(第三六一一号)  同外十五件(足立篤郎紹介)(第三七三六  号)  同外三件(阿部喜元紹介)(第三七三七号)  同外一件(天野光晴紹介)(第三七三八号)  同外七件(荒舩清十郎紹介)(第三七三九  号)  同(有田喜一紹介)(第三七四〇号)  同外十一件(井出一太郎紹介)(第三七四一  号)  同外七件(井原岸高紹介)(第三七四二号)  同外一件(伊東正義紹介)(第三七四三号)  同外十三件(伊能繁次郎紹介)(第三七四四  号)  同外五件(稻葉修君紹介)(第三七四五号)  同外十五件(稻村佐近四郎紹介)(第三七四  六号)  同外三件(今井勇紹介)(第三七四七号)  同外二十三件(宇野宗佑紹介)(第三七四八  号)  同外十三件(上田茂行紹介)(第三七四九  号)  同外十八件(上村千一郎紹介)(第三七五〇  号)  同外四件(植木庚子郎君紹介)(第三七五一  号)  同(臼井莊一君紹介)(第三七五二号)  同外十一件(浦野幸男紹介)(第三七五三  号)  同外八件(江崎真澄紹介)(第三七五四号)  同(江藤隆美紹介)(第三七五五号)  同外十五件(小川平二紹介)(第三七五六  号)  同外二件(小此木彦三郎紹介)(第三七五七  号)  同外二十二件(小澤太郎紹介)(第三七五八  号)  同外二件(小沢辰男紹介)(第三七五九号)  同外十三件(小渕恵三紹介)(第三七六〇  号)  同外十六件(越智伊平紹介)(第三七六一  号)  同外九件(大石千八紹介)(第三七六二号)  同外三十三件(大久保武雄紹介)(第三七六  三号)  同外四件(大竹太郎紹介)(第三七六四号)  同外二件(大野明紹介)(第三七六五号)  同外五件(大野市郎紹介)(第三七六六号)  同外八件(小沢貞孝紹介)(第三七六七号)  同外三十四件(加藤六月紹介)(第三七六八  号)  同外七件(海部俊樹紹介)(第三七六九号)  同外七件(梶山静六紹介)(第三七七〇号)  同外三件(亀岡高夫君紹介)(第三七七一号)  同外三件(鴨田宗一紹介)(第三七七二号)  同外十二件(唐沢俊二郎紹介)(第三七七三  号)  同外三件(金子一平紹介)(第三七七四号)  同(仮谷忠男紹介)(第三七七五号)  同外七件(木村俊夫紹介)(第三七七六号)  同外十五件(吉川久衛紹介)(第三七七七  号)  同外十三件(久野忠治紹介)(第三七七八  号)  同外九件(久保田円次紹介)(第三七七九  号)  同(熊谷義雄紹介)(第三七八〇号)  同外六件(栗原祐幸紹介)(第三七八一号)  同外十三件(小坂善太郎紹介)(第三七八二  号)  同外十件(小島徹三紹介)(第三七八三号)  同(小平久雄紹介)(第三七八四号)  同外十八件(河野洋平紹介)(第三七八五  号)  同外三件(河本敏夫紹介)(第三七八六号)  同(近藤鉄雄紹介)(第三七八七号)  同外二件(小平忠紹介)(第三七八八号)  同外一件(佐々木秀世紹介)(第三七八九  号)  同外十件(櫻内義雄紹介)(第三七九〇号)  同外二件(佐々木良作紹介)(第三七九一  号)  同外五件(篠田弘作紹介)(第三七九二号)  同外一件(菅波茂紹介)(第三七九三号)  同(瀬戸山三男紹介)(第三七九四号)  同(染谷誠紹介)(第三七九五号)  同外十二件(田川誠一紹介)(第三七九六  号)  同(田澤吉郎紹介)(第三七九七号)  同外一件(田中覚紹介)(第三七九八号)  同外六十八件(田中六助紹介)(第三七九九  号)  同外六件(田村元紹介)(第三八〇〇号)  同外十一件(高鳥修紹介)(第三八〇一号)  同外一件(高橋千寿紹介)(第三八〇二号)  同(竹内黎一君紹介)(第三八〇三号)  同外十五件(竹下登紹介)(第三八〇四号)  同外五件(地崎宇三郎紹介)(第三八〇五  号)  同外五件(坪川信三紹介)(第三八〇六号)  同外三件(戸井田三郎紹介)(第三八〇七  号)  同外四件(渡海元三郎紹介)(第三八〇八  号)  同外七件(徳安實藏紹介)(第三八〇九号)  同外九件(中尾栄一紹介)(第三八一〇号)  同外九件(中尾宏紹介)(第三八一一号)  同外十二件(中垣國男紹介)(第三八一二  号)  同外一件(中川一郎紹介)(第三八一三号)  同外一件(中村拓道紹介)(第三八一四号)  同外十件(丹羽喬四郎紹介)(第三八一五  号)  同外三件(野田卯一紹介)(第三八一六号)  同外十八件(野原正勝紹介)(第三八一七  号)  同(野呂恭一紹介)(第三八一八号)  同外十三件(羽田孜紹介)(第三八一九号)  同外八件(橋口隆紹介)(第三八二〇号)  同外七件(橋本登美三郎紹介)(第三八二一  号)  同外六件(長谷川四郎紹介)(第三八二二  号)  同(服部安司紹介)(第三八二三号)  同外八件(浜田幸一紹介)(第三八二四号)  同外九件(原健三郎紹介)(第三八二五号)  同外七件(廣瀬正雄紹介)(第三八二六号)  同外四件(福田一紹介)(第三八二七号)  同外十八件(藤本孝雄紹介)(第三八二八  号)  同外一件(福永健司紹介)(第三八二九号)  同外十一件(藤尾正行紹介)(第三八三〇  号)  同外六件(高見三郎紹介)(第三八三一号)  同(坊秀男紹介)(第三八三二号)  同外九件(細田吉藏紹介)(第三八三三号)  同外三件(本名武紹介)(第三八三四号)  同外六件(松浦周太郎紹介)(第三八三五  号)  同外一件(松野幸泰紹介)(第三八三六号)  同(三池信紹介)(第三八三七号)  同外十三件(安倍晋太郎紹介)(第三八三八  号)  同外二件(水野清紹介)(第三八三九号)  同外三件(武藤嘉文紹介)(第三八四〇号)  同(村山達雄紹介)(第三八四一号)  同外七件(毛利松平紹介)(第三八四二号)  同外三件(粟山ひで紹介)(第三八四三号)  同(森美秀紹介)(第三八四四号)  同外二十三件(森下元晴君紹介)(第三八四五  号)  同外一件(安田貴六君紹介)(第三八四六号)  同外八件(山口敏夫紹介)(第三八四七号)  同外二十三件(山下元利紹介)(第三八四八  号)  同外十二件(山下徳夫紹介)(第三八四九  号)  同外十一件(山本幸雄紹介)(第三八五〇  号)  同外十二件(早稻田柳右エ門紹介)(第三八  五一号)  同外四件(渡辺栄一紹介)(第三八五二号)  同外八件(渡辺紘三君紹介)(第三八五三号)  昭和四十九年度加工原料乳保証価格引上げに  関する請願安田貴六君紹介)(第三七一九  号)  昭和四十九年産てん菜最低生産者価格引上げ  に関する請願安田貴六君紹介)(第三七二〇  号) 同月八日  農山漁村における有線放送電話育成強化に関  する請願外六件(福田篤泰紹介)(第三九四  九号)  畜産業経営安定等に関する請願外三件(安倍  晋太郎紹介)(第三九五〇号)  同外一件(足立篤郎紹介)(第三九五一号)  同(新井彬之君紹介)(第三九五二号)  同外五件(井原岸高紹介)(第三九五三号)  同(石野久男紹介)(第三九五四号)  同(大平正芳紹介)(第三九五五号)  同外四件(小林正巳紹介)(第三九五六号)  同(三枝三郎紹介)(第三九五七号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第三九五八号)  同(津川武一紹介)(第三九五九号)  同(中山利生紹介)(第三九六〇号)  同(中村茂紹介)(第三九六一号)  同外一件(西村直己紹介)(第三九六二号)  同外七十六件(浜田幸一紹介)(第三九六三  号)  同(葉梨信行紹介)(第三九六四号)  同(福田篤泰紹介)(第三九六五号)  同外十四件(安田貴六君紹介)(第三九六六  号)  同(渡部一郎紹介)(第三九六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五一号)  農林水産業の振興に関する件(てん菜問題)      ————◇—————
  2. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、委員長の指名により、暫時私が委員長の職務を行ないますので、よろしくお願いいたします。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  すなわち、外務委員会においてただいま審査中の国際協力事業団法案について連合審査会開会申し入れを行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時等は、外務委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。      ————◇—————
  4. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。愛野興一郎君。
  5. 愛野興一郎

    愛野委員 保安林整備臨時措置法の一部改正案について若干の質問をさせていただきます。  本法は期間の十年延長ということでありますから、法案自体については大賛成であるわけでありますが、その内容につきまして若干お伺いをいたしておきたいと思うわけであります。  本法は、提案理由の説明にもございますように、戦中戦後の森林の乱伐による荒廃から起こるところの大災害未然に防止するために森林の維持、造成をはからなければならぬという根本的な見地から昭和二十九年に制定をされたわけであります。その後、また、日本経済高度成長によっての過密の急速化あるいはまた人口集中、あるいはまた過疎地帯においての第一次産業における水資源確保のための水源涵養、あるいはまた環境保全のための保安林確保、こういうことをするためにさらに三十九年度から延長をされたというわけでありますから、日本のように森林面積国土一の約三分の二近くあり、あるいはまた丘陵山岳地一帯国土の約七〇%近くあるという場合におきましては、これはもともと積極的な保安林充実整備をはかっていただかなければならぬわけでありますから、私どもはこの法案について非常な期待を寄せておるわけであります。  第一次、第二次によって森林面積の約三割に当たる七百万ヘクタールを保安林にしていただいたというわけでありますが、今回またさらに延長をいたしまして、さらに各種の保安林充実していくためにどのような整備をはかっていかれるおつもりであるのか、この点について政務次官にお伺いをいたしたいと思います。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 御指摘のように、保安林整備臨時措置法が初めて二十八年のときにできたわけでありますが、そのときの保安林面積はおおよそ二百五十一万ヘクタール、それが第一期、第二期というように、約二十年にわたるところの整備を着実にやってまいりまして、ただいま御指摘のように、現在は六百九十四万ヘクタールというような面積になったわけでございます。さらにこれをあと十年程度は少なくとも延長しなければならぬ。十年程度延長して、九十二万ヘクタールぐらいをさらに保安林整備計画の中に新しく取り入れていこう、それによって十年後には七百八十万ヘクタール程度保安林確保したい、こういうような考えであります。  そこで、保安林整備計画においてどういうようなものを考えておるのかということでございますが、大きく分けますと三つぐらいに分類できると思います。  その第一は、何と申しましても、最近におけるところの森林環境保全に対する機能ということが国民の間で非常に強く要求をされてきておることにかんがみまして、いままでややもすればなおざりになっておったところの、都市周辺部を中心としたところの保健保安林というものを特に積極的に取り入れてまいりたいということが一つ考え方でありまして、もう一つは、従前と同じでございますが、特に、最近、地域的な水需要の逼迫というものが非常に強く出てきておるわけであります。したがって、この水不足が見込まれる流域を重点的に水源涵養保安林というように指定をして、その充実をはかり、水というものを、ダムだけではなくて、自然の面でたくさん確保する、こういうような機能を持たしてまいりたいと考えておるのであります。そして、三番目には、集中豪雨なとか最近各地に起きておるわけでありますが、このような最近の災害傾向に対処いたしまして、災害防止のための保安林というものをそれぞれの地域の実情に応じて指定をしてまいる。こういうような基本的な考え方を持っておるわけであります。
  7. 愛野興一郎

    愛野委員 いまの御答弁で、今後の配備方法あるいは配備に対する基本的な考え方等はよくわかったわけであります。  そこで、若干念のためにお伺いをいたしておきたいと思うわけでありますが、たとえば佐賀県の場合におきましては、台風の災害昭和二十年以来六回、また、集中豪雨等豪雨災害が十回ばかりあったわけであります。そのたびごと山地崩壊とか地すべり等々によって住民は非常に悩まされておるわけでありますが、農林御当局におかれては、治山治水の面あるいはあらゆるものを行使していろいろと万全の措置をとっていただいておるわけであります。そこで、そういった意味での保安林指定の分野において、そういう災害未然に防止するための保安林指定達成率と申しますか、申請件数に対して指定されたものがどのくらいであるのか。これは具体的な数字じゃなくて、大体の目の子でお知らせいただければありがたいと思うわけです。たとえば土砂流出防備あるいは土砂崩壊防備ですが、こういういわゆる大臣権限保安林指定、これが大体目的達成率にいっておるのかどうか、伺いたいと思います。
  8. 福田省一

    福田(省)政府委員 お答えいたします。  保安林種類から申しますと、目的別に十一ございます。そのうち大臣が認可を直接しなければならぬといいますのは、一つは第一号と申します水源涵養保安林でございます。それから、二号というのが土砂流出防備する保安林で、第三号が土砂崩壊防備する保安林で、この三種類でございます。  第一号の水源涵養林が全体のうちの七五%を占めておりますし、それから二種と三種を入れますと、全体のうちで九七%を占めます。したがいまして、四号以下たくさんございますけれども、これは全体の中では、面積から見ますと三%程度になっておるということでございます。
  9. 愛野興一郎

    愛野委員 いまお伺いいたしましたのは、国なり都道府県なりで、大臣権限水源涵養土砂流出防備あるいは土砂崩壊防備というものの予防措置としての保安林指定は大体目標どおりに達成しておるかどうかということですが、目標どうりに達成しているのですね。
  10. 福田省一

    福田(省)政府委員 大体目標どおりでございますが、達成率は若干それを上回っておるぐらいでございます。
  11. 愛野興一郎

    愛野委員 それからもう一つ伺いをいたしておきたいわけでありますが、三十九年に指定された事例に見られますように、たとえば日本高度成長によって、どうしても環境保安林が必要になってきたというような変化等々もございますし、これは今後ともいろいろな種類保安林というものを確保していく必要があろうかと思うわけでありますが、そこで、本法を十年に区切って今回改正を提案されたことは何か理由があるのか、もしくは永久の法律というものはお考えになっておらないのか、念のためにお伺いをいたしておきたいと思います。
  12. 福田省一

    福田(省)政府委員 今後重点的に整備をいたしていきたいと思っておりますのは、ただいま政務次官からお答え申し上げましたように、水源涵養のための保安林、特に最近保健休養の場としての森林期待が大きいわけでございまして、そういう意味保健保安林整備を特に拡充してまいりたいと思っております。  当初第一回目の保安林整備臨時措置法昭和二十九年から三十八年まででございましたが、その後三十九年から四十八年まで延長しましたおもな理由は、やはり、水の確保ということにございました。今回はそういう面の水の確保ということもございますけれども、もう一つ集中豪雨による土砂流出崩壊を防ぐための二号、三号の保安林もございます。特に、保健保安林は、ただいまのところ、その指定あるいは解除は都道府県知事に委任されておるのでございますけれども、全般的な要請にこたえまして特にこの保健保安林を拡充してまいりたいと考えておるところでございます。  これも十年という計画ではございますが、もうすでに二度延長して二十年もたったんだから恒久法にしてはどうかという御意見かと思いますが、しかし、それも、現在の段階では、保安林制度全般につきましてはさらに検討を進めてまいりたいと思っております。この経過の中で、御指摘の点も含めまして今後検討してまいりたいと思ってはおりますが、ただいまのところでは一応十年の延長というように考えておるところでございます。
  13. 愛野興一郎

    愛野委員 そこで、ただいまお話しがございました保健保安林についてでありますが、保健保安林必要性については、今日の国内の状況を見ますと、都市部においては非常な公害問題大気汚染の問題等々で、とにかく緑を国民が渇望しておるというような時代でありますから、その方向を強化していただくということは非常にありがたいわけでありますが、ただ、保健保安林というのは奥地の森林と違うわけでありますから、そこにいろいろと問題が出てくる。言うなれば、土地価格の価値というものが根本的に違うわけでありますし、あるいはまた森林所有者自体が非常に企業的な考え方で見詰めるとか、あるいは不動産の価値として見詰めるとか、あるいはまた森林の所有者自体でいろいろな保安林整備していく場合の費用負担等々が非常にかかるというようなことが問題であると思うわけであります。  そこで、五十万ヘクタールに及ぶ保健保安林配備を進めるということでありますけれども、これを進めるにあたって、現実の問題としてそのようないろいろの困難な問題が起きてくるというように思うわけでありますけれども、そういった点についての方策と申しますか、対策をどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。
  14. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘がございましたように、保健保安林は大都市、中小都市の周辺にこれを指定していく必要があるわけでございます。したがいまして、ほかの土地利用との競合が著しい場所になってくるということが十分考えられるわけでございます。また、これは保健休養の場でございますので、入山者が非常に多い。したがいまして、いろいろな火災とかその他の被害をこうむるおそれがあるというふうなこともございまして、通常の林業経営と両立しにくいような面もあるわけでございます。私有林として指定できるものもあるのでございますが、公的所有によらなければ保健保安林としての機能確保がむずかしいという場合も相当出てくるだろうと思うわけでございます。このような性格を持っています保健保安林指定を円滑にいたしますために、昭和四十九年度からは、国土保全機能と保健機能とをあわせ持っておりますところの民有林を都道府県知事が買い入れる場合、これは都道府県におきまして相当そういった買い入れをして保全していきたいという要望が強かったのでございますが、四十九年度からは、それに対しまして都道府県知事が買い入れた場合に、その買い入れ費の三分の一を補助するという予算案を今回御審議願っているところでございます。  それから、従来保全林整備事業ということをやっておりまして、これは、都市近郊の森林都道府県あるいは市町村が造成していきます場合に、それに対する造林費であるとか、その他の森林の改良に要する費用補助をいたします制度があったのでございますけれども、これは治山事業と並行してやっておったわけでございます。これも、これらの事業をあわせまして、生活環境保全林の整備事業といたしまして、これに対しましても、その事業費の二分の一を補助するということを四十九年度予算案の中で盛りまして御審議を願っているところでございます。  このほか、保安林と同様に立木の伐採制限に対する補償、あるいは税制上の優遇措置各般にわたりまして施策を行ないますとともに、特に保健保安林におきます山火事の防止のための保護あるいは巡視と申しますか、そういった制度の充実をしてまいりたいということで、国有林、民有林ともにこういった制度に必要な予算の計上もいたしておるところでございます。
  15. 愛野興一郎

    愛野委員 各種保安林の持つ機能の高度発揮というものがはかられなければ保安林意味はないわけでありますから、そこでもちろん保安林指定し、また、計画を作成をしていただくと同時に、森林の、いわゆる保安林目的確保されるような内容の充実と申しますか、それを絶えずはかっていただかなければならぬわけであります。  そこで、実際には、先ほどもお話しがございましたように、たとえば手入れが不十分であったり、また、保安林においても相当程度の皆伐が行なわれたりしたというようなことで、それが災害の原因になっておるところもなきにしもあらずであるわけでありますけれども、そういった皆伐施業に対する規制を強化して、保安林の持つ機能を十二分に発揮していくように、そういった面についての監督、規制というものを常にはかっていただかなければならぬと思うわけでありますけれども、そういう保安林の質的観点についての強化策と申しますか、あるいは方策についてお伺いをいたしたいと思います。
  16. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林機能は、指定目的あるいは地況、林況等に応じまして適切な施業を行なうことによりまして、その結果その機能を発揮されるわけでございますが、保安林指定施業要件は、このような観点から、その機能の高度な発揮を目ざしますとともに、森林所有者の権利を不当に侵害することがないように、必要最小限度の制限として、政令で定める基準に準拠しまして行なっているところでございます。  この指定施業要件のうち、伐採規制の現状を昭和四十七年度末で見ますと、一応七六%は伐区の制限等はあるにいたしましても、何らかの形で皆伐することが認められておるのでございます。しかしながら、最近におきます国土開発の進展等に伴いまして、森林の持っております環境保全機能に対する国民一般の方々からの要請が非常に強まっておることにかんがみまして、昭和四十五年度以来、指定施業要件整備基本調査を実施いたしております。これによりまして指定施業要件の適正化を進めてきたところでございますけれども、今後におきましてもその改善につとめていくことといたしております。  この調査の中間報告の結果を見ますと、やはり、半分ぐらいはこの指定施業要件を強めなければならぬという実態になっておるのでございます。次には、具体的には、大面積に伐採することによって崩壊の危険が生ずるおそれがあります個所等につきましては、一カ所当たりの皆伐面積を縮小すること、それから、皆伐から択伐への代採方法を変更する、あるいはまた択伐を禁伐にするといったような施業要件の変更が行なわれているのでございます。  また、保安林の保安機能の積極的な確保をはかりますためには、保安林の内容の向上が必要なことは御指摘のとおりでございますが、一つには、森林所有者によります適切な林業活動がはかられるということが必要でございますので、特に造林事業に対する助成の強化をいたしております。具体的には、ほかの造林地にはございませんけれども、この場合には造林地のあと地の保育に対する助成を行なっているのでございます。  それから、水源涵養のための森林開発公団による水源林造成の積極的な推進あるいは治山事業による保安林の保育事業、あるいは地味劣悪な保安林及び被災保安林に対する改良事業、それから崩壊地、崩壊危険地に対する復旧予防治山の実施、こういったことによりまして保安林機能の強化につとめてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  17. 愛野興一郎

    愛野委員 いまのお話しは、保安林指定施業要件を各般の保安林目的達成のためにさらにきめこまかく規定をしていくという御趣旨であろうと思います。私は、今日まで五段階ぐらいの指定施業要件があると聞いておりますが、これをそれぞれの保安林目的に合わせて、きめのこまかい指定施業要件を規定していただきたいと思うわけであります。ただ、そこで、そういった充実をはかっていただきます場合に、森林所有者にとっては、林業経営という目的から負担がさらに加わらないようにしていただかなければならぬ。先ほどいろいろと配慮をしていただくような御答弁をいただいたわけでありますが、これは造林保育等についての助成の拡充あるいは税制、金融を含めた総合的な対策をさらに講じていただきたい。そして、この森林所有者も目的に合致した活動ができるようにしていただきたいと思うわけでありますが、この点の御了解を求めます。
  18. 福田省一

    福田(省)政府委員 今後の保安林整備につきましては、その量的な配備と、それから、ただいま御指摘がありましたように質的充実をはかることにしておるのでございますが、保安林指定によって林業経営に制限が課せられる場合、あるいはまた、指定施業要件の変更によって規制が強化される場合には、森林所有者に対する助成の拡充によりましてその負担を軽減する必要があるものと考えております。このことはまた、保安林機能を高める意味でも重要であると思うわけでございます。したがいまして、今後保安林整備を進めるにあたりましては、立木の伐採制限に対する補償の一そうの充実をはかるほかに、農林漁業金融公庫による伐採調整資金の拡充、それから税制上の減免措置、それから造林補助制度、こういった各般にわたる施策の強化をはかるようつとめてまいる考えでございます。  具体的措置としましては、従来のもろもろの措置に加えまして、四十八年度からは、造林補助として、五年生以下の下刈り、それから六年生から十年生への間のこういった若い木の雪起こしなどを補助対象としております。さらに四十九年度からは、造林事業補助におきましては、十一年生から二十年生林分に対する除伐、それから保育間伐、それから、これに必要な作業路の開設等に要する経費を補助対象とすることを予定いたしております。これは補助率は四〇%でございます。それから、伐採調整資金の貸し付け限度額は、年間一人当たり三十万円から六十万円に引き上げるということを予定しておるものでございます。  以上が、大体具体的な措置、また措置をお願いしておる内容でございます。
  19. 愛野興一郎

    愛野委員 現在の保安林についての補償措置は、いわゆる用地補償措置についても、土地利用面の規制をはかる以上は、現実にあった用地補償措置というものをはかっていくべきであるというふうに思うわけであります。この面についても十分な配慮が行なわれておると思うわけでありますが、お伺いをいたします。
  20. 福田省一

    福田(省)政府委員 補償の問題の御質問でございますが、御承知のとおり、憲法第二十九条第三項には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定してございます。これを受けまして、森林法第三十五条では、「保安林指定によりその者が通常受けるべき損失を補償しなければならない。」という規定があるわけでございます。保安林につきましては、通常の林業的利用が期待できなくなるために生じます損失を補償の対象とすべきであるという観点から、規制に伴いまして、一つには現に発生しました損失、及びその次には期待利益のうち確実に発生する損失を対象とする立木補償、こういったものを行なっておるわけでございます。これはいま、先生御指摘のとおりでございます。  土地の利用制限により損失を補償することにつきましては、保安林指定されたことによりまして、一つは林業経営に制約が加わるために森林の経済価値が低下することによる損失、それからもう一つは、林業経営外の土地利用に対して制約が加わるため、より経済的に価値の高い土地利用が困難になるために生ずる損失、こういう二つに分けられると思うのでございます。前者の場合につきましては、当該土地に林業的利用を行なう場合の損失補償でありますので、立木補償による補償を行なうことが相当と考えられます。後者の場合につきましては、私的な所有権の本質であります土地利用を規制することに伴う補償をすべきであるとの意見もあるのでございますが、このような補償は、主観的損失に対する補償あるいは不確実な期待利益に対する補償として論議のあるところでございます。また、類似の法的な規制、たとえて申し上げますと自然公園法、こういったものにおきましても、一定方式をもって継続的に実施する補償は現在行なわれていないというふうに承知いたしております。今後この点につきましてはさらに検討を深める必要のある問題であるというふうに考えておるところでございます。
  21. 愛野興一郎

    愛野委員 費用負担の問題についてお伺いしたいと思いますが、第一期、第二期の負担におきましては、水源涵養林あるいはまた土砂流出防止のための保安林が大部分であったわけであります。そこで、たとえば東京都等の場合を考えますと、日常大量の水を使用いたしておるわけでありますけれども、その保安林は奥利根その他の水源地帯の機能に負うところが大である。こういうことは、保安林関係ばかりではありませんけれども、いわゆる実際の受益者が負担をしないでいいものかどうか。これは保安林の問題のみならず、特に東京都の場合なんかはいろいろな面でそういうことを痛感させられる事例が多いわけでありますけれども、こういう保安林そのものに指定された地域は非常な負担をしておるのに、受益者は負担がないというようなことがはたしていいものかどうかということは考えさせられる問題であると思うわけであります。そうして、こういう事例は日本全国にあるわけでありますが、受益地域が負担をしておるという地域は、ただわずかに木曽、三川、琵琶湖等の流域において流域の協力が行なわれておるというだけにすぎないということを聞いておるわけでありますが、こういうことについての費用分担のあり方についてはどのように考えておられるか、また、こういう問題についての地方自治体の指導助言というか、そういう問題についてはどう考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  22. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま先生からお話しがございましたように、具体的には木曽三川の水源造成公社とか、滋賀県の造林公社というふうに、すでにそういったことに実施しているところもございますが、保安林については、伐採の規制に対応しまして、通常生ずべき損失について所有者に対しまして補償しますほかに、税制面での優遇措置がなされているのでございますが、その積極的な維持改良に要する経費につきましては、必要に応じまして補助、金融上の措置を講じていますものの、一部は所有者が自主的に負担しているということが実情でございます。しかしながら、最近におきます経済的あるいは社会的な諸情勢の変わっていきます中で、国土保全と、それから水源涵養あるいは環境保全等の保安林の有する公益的機能に対する社会的要請が急速に増大してきております。一そう高度にこれらの機能を発揮するような森林の維持造成が必要となっているのでありますが、このような森林の維持造成に要します費用については、社会全体で負担するほか、特定の受益者においても何らかの形で応分の負担をすることが妥当だと考えているところでございます。このためのものとしまして、一般的には地方公共団体が費用の一部を援助するほか、特に水源涵養機能については受益関係が比較的明確なこともございますので、現在でも、水源地帯の造林について、下流の地方自治体、電力会社物が費用の負担を行なっている例は先生がお話しになったとおりでございます。しかしながら、現在のところ、受益の程度の量的の把握ということは法制化し得るほどには的確になっていませんので、これらの点を明らかにする試みとしまして、現在、林野庁におきまして森林の公益的機能計量化調査を実施しておるところでございます。さらに、四十九年度におきましては、森林の造成維持費用分担関係設定調査ということを実施することにしておりまして、これは、実は、利根川の流域等におきまして予算を計上して実施する予定でございますが、これらの調査成果を踏まえまして、適正な費用分担のあり方についてできるだけ早期に検討を進めて実施してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  23. 愛野興一郎

    愛野委員 次に、保安林の買い入れについてお伺いをいたしたいと思うわけでありますが、昭和二十九年に本法が制定されて以来二十年間、国による民有保安林の買い入れが実施されてきたのであります。しかし、その実績は当初の目標を大幅に下回っておるわけでありまして、特に、昭和三十九年の延長後は、その目標に対して買い入れ面積が逐年減っておる。約二五%ぐらいの実績だそうでありますが、そこで、逐年買い入れがやりにくくなった理由と申しますか、買い入れ面積が低くなった理由と、その理由を踏まえて、今後どのように買い入れ目標を設定していくかということと、そして、どのような買い入れ方針を現在持っておられるのかということ、この点をお伺いいたしたいと思います。
  24. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林の買い入れは、第一期が、目標五十万ヘクタールに対しまして実績は約二十万ヘクタール、第二期が、目標二十五万ヘクタールに対しまして約六万ヘクタールと、減少傾向にあるのは御指摘のとおりでございます。  この原因としましては、一つには、権利調整未済あるいは境界不分明あるいは登記未整備等の事情によりまして、買い入れの事務が不調に終わることが多かったことが一つでございます。それから第二点としまして、効率的な管理を確保する観点から、買い入れの基準を大団地としまして、三百ヘクタールまたは国有林の隣接地というふうにしておったがために、買い入れ対象が限られたという点も一つの原因であろうというふうに思います。第三点は、土地、立木について、従来からの値上がり傾向に加えまして、最近特に開発の伸展等によりまして値上がりが加速化されたこと、それから所有者の値上がり期待による売り控えが増加したこと、それから売買の希望単価が折り合わないために売買契約が締結できないこと、こういうケースが増加したことでございます。次に、当初交換による取得を八万ヘクタール予定しておったのでございますが、四十二年度以降、交換渡し財産の用途及び交換の相手方をきびしく制限したいきさつがございます。それで計画を大幅に下回ったということなどがおもなる理由なのでございます。  今後におきますところの民有保安林の買い入れは、民有保安林行政の強化の方向も考慮しまして、国有にするメリットのある地域にしぼって重点的に行ないたいというふうに思っております。このような見地から、水源涵養国土保全、特に重要な流域の保安林であって、たとえば過疎の進行等を考慮し、経済的、社会的、技術的見地から見て、その機能を高めていくために国で所有する必要のあるものを対象としたいと考えております。特に、国有林野の分布の少ない地域というものを重点的に推進していく必要があろうというふうに考えております。  買い入れ財源につきましては、国有林野事業特別会計の収支状況をも考慮しながら、必要に応じましては一般会計からの繰り入れについても検討するなど、必要な金額の確保をはかってまいりたいということも考えております。  買い入れ業務の実行につきましても、従来以上に保安林買い入れに関して積極的に啓蒙宣伝を行ないますとともに、買い入れ計画区内の森林所有者との接触を密にしまして情報収集の強化をはかるなど、買い入れの促進につとめるほか、買い入れの基準につきましても、現在の三百ヘクタール以上の団地または国有林隣接地という原則を、買  い入れ後の管理の効率を考慮しつつ対象範囲を広げるといったような改正を検討することも必要でございますし、買い入れの促進を円滑化するように、以上申し上げた点を十分検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  25. 愛野興一郎

    愛野委員 森林に対しての土地の投機的取引、あるいはゴルフ場またはレジャー的投資といったような乱開発を防ぐために、今国会において森林法の一部改正が可決成立をして、普通林における開発行為の許可制が創設されたわけであります。しかしながら、この一番重要な保安林の問題につ  いては、普通林のこのような行為規制と申しますか、こういう許可制というものが厳正でない。したがって、むしろ保安林こそ厳正にこういう開発規制をやらなければならぬと思うわけであります。保安林は売買もある程度自由であるし、また、すぐ登記もできるというようなことではいけないと思うわけでありますけれども、こういう保安林制度の運用をいかに考えておられるのかということと、また、解除の要件について、さらに一つの歯どめというか、規制をするというふうなことを考えていく方針をお持ちであるのかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  26. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林以外の普通林につきましては、先般森林法の改正を御採決になったわけでございます。その中におきまして、一町歩以上の森林の開発については都道府県知事の許可を要するというふうにいたしたわけでございます。  保安林の問題につきましては、さらに、先ほど来申し上げましたように、水の問題あるいは国土保全の問題あるいは環境保全の問題等、いよいよその要求の度合いが強まってまいっておりますので、さらにその内容を充実することは、量的にこれをふやすことと同時に必要なわけでございます。そこで、特に保安林の解除につきましては、これまでは重要性の特に高い保安林は原則として解除しないという方針でございます。  重要性の高い保安林というのは一体どういうものかと申しますと、治山事業が施行された保安林、または現在施行されつつある保安林などでございます。つまり、まだ安定していない森林ということでございます。次には、河川とか渓流に面しますところの二十五度以上の急斜面の保安林、その他の保安林でも三十度以上のそういった急斜面のもの、それから地質その他の理由によって崩壊しやすい保安林、そういったようなところが重要度の高い保安林というふうに考えております。こういったものは原則として解除しない。  それから、これ以外の保安林につきましても、ほかに適地を求めがたいものにつきましては、必要最小限度の面積に限る。防災施設を確実に設置させるなど、転用の結果保安効果の低下を来たさせないような措置を講ずる、そういう条件を付しまして厳正な運用をはかってきたところでございます。  なお、保安林以外の民有林につきましては、ただいま申し上げましたように、許可制の導入によって一そうこの点をきびしく取り締まってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  27. 愛野興一郎

    愛野委員 わが国の保安林配備は、すでに面積的には国土の約二〇%に達しておるわけであります。そこで、ゴルフ場、別荘、宅地の開発あるいは無許可開発等々、保安林がいろいろと荒らされると申しますか、侵される、あるいはまた山火事等々の危険性が年々増加をしていくというようなことで、保安林を適正に維持管理して、その機能を十分に発揮するためには強力な管理体制が必要であるわけであります。そこでこういった強力な管理体制に対する具体的な対策をお伺いをいたしたいと思うわけであります。それから、また、こういう管理体制を十分充実していくための組織なり予算なりあるいは要員等々についても、どのように考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  28. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林内におきます立竹、立木の伐採、損傷とか、土石もしくは樹根の採掘というような、いわゆる土地の形質を変更する行為等は知事の許可制といたしております。これは諸外国にもこういう例は多いわけでございます。  それから、無許可もしくは許可条件に違反して伐採なり形質の変更行為などを行なった者、または保安林における植栽の義務に違反した者に対しましては必要な監督処分命令が発動されるようになっております。たとえば造林の行為の命令とか、そういったようなものでございます。  次に、保安林の区域内には標識が設置されますほか、知事によって保安林台帳が調製、保管される。事務的なことでございますが、こういうことでございます。  それから、次に、民有保安林の保護巡視を強化するため、これまで一市町村当たり百ヘクタール以上の保安林が所在する場合に限り保護巡視の対象としておったのでございますが、これを全保安林に拡大することとしまして、現地における管理徹底を期することといたしておるのでございます。なお、国有林におきましては、営林局・署において保安林の管理の徹底を期しているところでございます。  予算の面について若干申し上げますが、昭和四十九年度の予算要求の案でございますけれども、保安林の標識設置等経費が二千七百七十七万円ほどでございます。それから、森林の保全管理事業でございますが、四十九年度は一億四百七十六万円の要求をいたしております。森林保全巡視費がそのうち九千五百四十六万円、山火事予防施設等の配備費が九百三十万円というふうな内訳でございます。
  29. 愛野興一郎

    愛野委員 最後に、ローカル的なことで申しわけありませんけれども、たとえば佐賀県のような場合におきましては、国営多良岳パイロット事業というような、ミカンの大樹園地造成が、また県営でも行なわれておるわけであります。そのほか県営のかんきつのパイロット事業はたくさん行なわれておる。しかしながら、原野並びに山林を取っ払って樹園地にするわけでありますから、それが完成したあと、今度はむしろ集中豪雨による洪水のおそれがあるということで、地域住民に非常に危惧の感を与えておる。  そこで、国営パイロット事業あるいは県営パイロット事業を造成計画される場合において、この造成主管部局と林野庁当局と、土砂流出予防等々の保安林配備については十分打ち合わせがなされて計画がされておるのかどうかということですね。それと、もう一つは唐津に虹の松原というところがあるわけでありますが、これはもちろん林野庁の所管でもありますし、また、防潮林でもあるわけでありますが同時に、また、国定公園というわけで、厚生省の所管でもある、あるいはまた環境庁の所管でもある、あるいはまた——とにかく四つぐらいの管轄がある。こういうふうな場合の保安林としての調整等は十分に行なわれておるのか。あるいは、たとえば玄海の原子力発電所ができます場合において防風保安林をつくる場合、地域の住民の方はなかなか売らない。そういたしますと、こういった用地補償等についても若干の考えをしなければ防風林ができないわけでありますが、そういう場合の林野庁とほかの省との機能調整と申しますか、連絡調整と申しますか、そういう点はどういうふうになされておるのか。以上をお伺いをいたしまして質問を終わりたいと思います。
  30. 福田省一

    福田(省)政府委員 農業との関連等、これは農林省内の問題でございますので、この点については私たちも十分関係局とも連絡をとってまいってきておるところでございますが、御指摘のございましたような点については、なお今後ともつとめてまいりたいと思っております。  なお、環境庁との関連等、これはたとえば原生保全地域の問題であるとか、それと保安林の調整の問題もございますし、その点につきましても、その考え方等については、環境保全法の中でも、また、今度の森林法の改正の中でもそういった考え方は入っておりますけれども、十分連絡をとってまいるつもりでございますし、今後つとめてまいりたいと思っております。  なお、治山事業等につきましては、建設省とも非常に関連するところがございます。これも定期的な会合等によってその具体的な調整をはかってまいっておりますが、そういったようなことで、それぞれの関係省庁との連絡は今後ともできるだけ十分とるようにつとめてまいりたいというふうに考えております。
  31. 愛野興一郎

    愛野委員 終わります。
  32. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 次に、野坂浩賢君。
  33. 野坂浩賢

    野坂委員 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由の説明を伺いましたが、「昭和二十八年の大災害を契機として山地災害の防止を主目的に、昭和二十九年に制定されたものであります」ということであります。そして、今日の「国民経済の発展に伴う水需要の増大に対処して、水源涵養保安林配備の促進を主たる目的として」と言われて、以下いろいろと言われておりまして、「当初の目標を達成する等相当の成果をおさめた」と、自画自賛をしております。しかし、今日、「保安林をめぐる情勢はかなり変化しており、」ということも指摘をされておりますし、長官が補足説明をされましたものによっても、「第一期、第二期ともに目標を上回った実績をあげている」というふうに評価をしておりますが、今度の延長をされるおもな理由を三つあなたはあげており、その最終的な段階で、「緊急に保安林の内容を向上させる必要がある」と結んでおるのでありますが、この「内容を向上させる」という具体的な中身についてもっと御説明をいただきたいと思います。  時間がありませんからさらに申し上げておきますが、保安林としての保安の機能を、保安林そのものがいまほんとうに持っておるだろうかどうかという点については、大きな疑問を私は持っております。それは、今日の高度経済成長に伴う山村の過疎化の現状、あるいは当時と現今とを比べての労働者の減少、こういう点についてはどのように現状の認識をしておられ、かつ、責任をお感じになっておるか、その点をまず一番初めに御説明をいただいてから質問に入りたいと思っております。
  34. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 保安林機能を十分に果たせるためには具体的にどういうふうなことをやるのだということがお尋ねの一点だと思いますが、私どもの考えておりますのは、まず、保安林整備計画というものをきちんとつくる必要があるということで、その整備計画の内容は、ただいまあなたが御指摘なさったような、その三つの目的が十分に達せられるような形でつくるということであります。  それから、保安林の質的な向上をはかるためには詳細な調査をしなければなりません。調査をいたしまして、保安林機能が高度に発揮できるような指定施業の要件というものをきめなければなりませんが、この指定施業の要件につきましても、いままで多少ゆるいなと思われるようなところも中にはあるかもしれませんので、その指定施業要件をもう一ぺん見直す必要があるんじゃないかと思っておりまして、これは禁伐にしなければならぬとか、これは択伐にしなければならぬというようなことなど、一つ一つの案件について見直しを行なっていくということが大切であると思います。  その次には、保安機能を積極的に確保するためには、治山治水事業というものとこれは結びついておるのであって、木だけ守っていけばいいというのではなくて、土砂の自然的な崩壊というものも当然ありますから、崩壊したようなものに対しては積極的に対処するし、崩壊をする危険性のあるようなものについては、治山治水五カ年計画に基でいて定められたところの治山事業というものを積極的にやっていく必要がどうしてもある、そういうように考えておるわけであります。  また、重要な流域の上部にあります国土保全上必要な保安林につきましては、国がそれを積極的に所有をして維持管理をする、そのための保安林の買い入れ計画というものをさらに推し進めていく必要がある、こういうことなどを計画の骨子にしていくべきではないかと思います。  その次に、その指定施業の要件の問題でございますが、これは保安林指定目的が十分に達成できるように個々の保安林について現地調査をいたしまして、個々の要件を適正にもう一ぺん見直していくということで、保安林整備計画の実質的な充実というものをはかってまいりたいと考えております。
  35. 福田省一

    福田(省)政府委員 御質問の中で、そういう地域の森林造成に必要な労働力についてはどう考えておるかということでございましたが、この点につきましては、最近、林業労働力の減少傾向がずっと続いておりましたことは先生御承知のとおりでございます。四十七年度の統計、四十八年度の見込みでは、若干そのカーブはゆるやかになってきたというよりは、専業化あるいはその数が、Uターン現象というような原因もございましょうが、少しふえたような現象もございますけれども、決して楽観を許さないと思っておるところでございますので、この確保につきましては、国有林、民有林を通じまして非常に重要な問題でございますので、労働の条件あるいはその他の労働環境の改善という面につきましては、国有林、民有林とも、それぞれなお一そうの努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  36. 野坂浩賢

    野坂委員 いろいろ御説明をいただきました。施業要件の内容あるいは調査をして、それを活用するということを次官からもお話しをいただきましたが、最初に私が申し上げましたように、この措置法というものは、災害を契機として、それを防止するための目的でできたものでありまして、ほぼ当初の目的を達成をするという評価がされておりますが、この法律ができましてから二十年間、災害が減少するよりもむしろ増大しているのではないか、それは天候その他の関係ももちろんありますが、一面から見ますと、災害は増大をしておるではないかというふうにさえ思われます。きょうテレビでも言っておりましたが、けさ、地盤がゆるんだ東名高速の静岡県の蒲原市内では人家がつぶされ、登校中の子供たちが三名も三週間程度のけがをしておる。こういう事実がしかも都市周辺に最近ひんぴんと起こっておる。こういうことを見ると、相当の成果があったというふうには言い得ないではないか、特に、開発という美名に隠れての自然破壊が行なわれておるという現状から見て、この法律目的目標からして、一定の大きな成果があがったという評価をすることは早計ではないか、こういうふうに私は責任者である長官に言うわけでありますが、これについてはどのようにお考えになりますか、伺いたい。また、災害の状況についても詳しくお話しをいただきたいと思います。
  37. 福田省一

    福田(省)政府委員 昭和二十九年に保安林整備臨時措置法ができまして、保安林整備計画に着手し、また、あわせて国有林への買い上げということもいたしてまいったわけでございますが、計画に対しましては、量的には計画量を上回る達成率でございました。しかし、それでもなお不十分だと思いますので、今後十年延長しましてさらに配置計画をふやすということを考えておりますし、同時に、また、内容の充実考えてまいりたいということはただいまも申し上げたとおりでございます。  このように保安林の量的な配置計画が達成したのでございますけれども、では、それに比例して災害が減少したかどうか——比例じゃなく反比例ということになりましょうか、ともかく災害が減少したかどうかという御指摘でございますが、確かに、保安林整備はだいぶ計画以上に達成したのでございますけれども、最近の五、六年間におきますところの主要な災害としましては、具体的に言ってみろというお話しでございますので若干申し上げてみますと、昭和四十二年の七月に西日本一帯を襲った梅雨前線の豪雨災、それから、翌昭和四十三年八月に岐阜県及び長崎地方を襲った飛騨川災害昭和四十七年七月に西日本、東海、東北地方を襲った梅雨前線の豪雨災、こういうふうな大きなものがあげられるのでございます。これらの近年におきます実態を見ますと、昭和二十九年の本法の成立以来、流域保全のための保安林整備をはかってきたこともありまして、大河川を中心とした洪水等の流域全体を襲う災害はむしろ減少する傾向にあることは事実でございます。ところが、最近、いま先生から御指摘がございましたように、山地開発の進展と局地的な豪雨の発生によりまして、局所的な山腹の崩壊などの災害が非常に増加する傾向になってきているのでございます。このような事態に対処するために本法をさらに延長し、これらの山腹崩壊等の災害未然に防止するということも特に必要というふうに考えまして、いわゆる大流域地帯のそういったものではなしに、局所豪雨によって被害を受ける、最近できたそういう部落とか住宅地とかいうものも重点的に考えていかなければならぬということが、一つの対象とした大きな原因なのでございます。
  38. 野坂浩賢

    野坂委員 説明のしようによっては見解の違いもいろいろあろうと思いますので、この二十年間における災害の状況を正式に資料として提出方をお願いしたいと思います。それに基づいてさらに議論を深めてまいりたいと思います。  この保安林法律の中で、保安林につきましては一号から十一号までありまして、一号から三号までについては農林大臣がきめるわけでありますが、保安林の国による買い入れというのは、第一期二十九年から三十八年、第二期は三十九年から四十八年で、第一期の場合には、一号−三号の場合は、達成率は約四〇%と低い、第二期は四十七年度末で二三%、これが実態であります。非常に伸びたと言いますけれども、そういう災害防止目的から見て、目標達成が非常に低いと断ぜざるを得ませんが、それについてどのような見解をお持ちか。保安林配備の実績は上回ったということは認めますけれども、いま申し上げたように、目標より下回っておるということであります。  また、第二番目にお尋ねをしておきたいのは、本案によります整備計画目標百万ヘクタールのうち、保健保安林は五十万ヘクタールをお考えになっておると拝察をしておりますが、今後の配備の主体は、地価の高い都市近郊の保健保安林ということになろうと思うわけでありますが、今日、われわれの周囲を見ておりますと、都市周辺の保安林は、指定をした場合、あるいは改良する場合に非常に高い。いままでは奥地のほうにそれを求めたわけでありますが、最近は都市近郊で求めるということになりますと、買い入れについては異常なほど高い。したがって、この目標が達成できるかどうかということは非常に疑問が出てくると思います。一定の特別会計等ではでき得ないのじゃないか、一般会計の中で考えていかなければならぬのじゃないかと思っております。先ほども質問がございましたように、最近では、レジャーなどの普及等によりまして異常なほど買い占められておるということは本委員会でしばしば議論をされたところでありますから、そういう中にあって、この百万ヘクタールのうちの五十万ヘクタールの都市近郊における保健保安林整備と買い入れは、過去の過程から見て、目標を達成する確信がおありかどうか。そして、特別会計でそのことが実現できるのか。できないとすれば、一般会計にはどのような配慮が必要なのか。また、どのようにお考えになっておるのか。この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  39. 福田省一

    福田(省)政府委員 まず、最初の御質問でございますが、保安林の買い入れは、第一期が、目標五十万ヘクタールに対しまして実績が約二十万ヘクタール、第二期が、目標二十五万ヘクタールに対しまして実績が約六万ヘクタールと、これは交換を含んでいるのでございますけれども、減少傾向があるのでございます。  これは、一つには、権利の調整が済まないとか、境界がはっきりしないとか、登記が未整備であるとか、こういった事情により買い入れが不調に終わったことが多かったということでございます。  第二は、効率的な管理を確保しようという観点から、買い入れ基準を三百ヘクタールという大団地としまして、なお国有林の隣接地であるというところを買い入れ対象にした、こういう限定があったということも次の原因と考えられるのでございます。  それから、第三に、土地、立木について、従来からの値上がり傾向に加えまして、最近特に開発の進展などによりまして値上がりが加速化された、所有者の値上がりの期待によって売り控えが増加して、売買の希望単価が折り合わなかったために、売買契約が締結できない。  こういうケースが増加したということは、いま先生も御指摘になったとおりでございます。当初、交換による取得ということを考えておったのでありますが、四十二年度以降に交換の渡し財源の財産の用途及び交換の相手方をきびしく制限したといういきさつがございまして、計画を大幅に八万ヘクタールから五千ヘクタールに縮小したことなどがおもなる原因なのでございます。  次に、この保健保安林というのは、全体の今後の保安林指定の約半ばを占めており、しかも、これは都市近郊にあるんだから計画どおりにできないのではなかろうかという御質問でございますが、保安林指定は、申し上げるまでもなく、公益上の理由によりまして特定の森林に制限を課すものでございまして、これによって普通にはない特別な制約が生ずるわけでございますが、特に、保健保安林につきましては、都市近郊などほかの土地利用との競合が著しい場所に指定するものが多いのは当然でございます。保健休養の場として入山者が増加してくることによって各種の被害も発生することが予想されますし、通常の林業経営になじまないものがあると考えられますから、このような性格を持っています保健保安林指定を円滑に推進するためには、国土保全機能と保健機能をあわせ持っております私有林を都道府県が買い入れる場合に助成するということも、昭和四十九年度から予算要求いたしております。こういうものに、従来から行なってきました保全林整備事業、これは都道府県がそういった保健保安林のようなものを整備しようとする事業をやるときの補助でございますけれども、それを今度はその土地を買おうとするときに、それに対する助成も含めまして、治山事業と一緒にしまして、生活環境保全整備事業——ちょっと長い名前でございますが、そういうことにして四十九年度から発足することにしたわけでございます。  さて、最後の御質問でございますが、国有林としてこれを買おうとするような場合、いま都道府県が買う場合の補助のことを申し上げておりますが、一−三号につきましては国が買う。これに対しては、従来特別会計でこれを支弁しておるわけでございますが、これはいろいろな特別会計の状態によって、収入、支出の関係で非常に苦しいときはどうしても制約が加わります。その点も考えまして、こういう公益的な保安林を購入する場合においては一般会計からの財源を導入するという措置考えていかなければならぬというふうに私は思うわけでございまして、実は、予算要求もいたしております。四十九年度は成立しなかったのでありますけれども、国有林の経営改善の中におきまして、こういったものにつきましては、勘定区分をはっきりして、一般会計からいただきたいということを、今後とも強く要求してまいりたいと考えております。
  40. 野坂浩賢

    野坂委員 県の買い入れの場合、いわゆる保全事業についての補助というものは全部要望どおり出すことができるかどうか。これから始まってくるわけですが、各県から要望があれば、それには対応できるのかどうか。これが一つ。  それから、政務次官、あなたは非常に力量があるわけですが、いまお話しがあったように、国有林で買い上げをするということは、ことしの予算では、一般会計では要求されてもばっさり切られております。これから私が指摘するように、地価は高くなって、山は高くなってくる。保安林の買い上げが予定どおりできない。長官は得々として、一九五三年の二百五十一万町歩から今日では六百九十四万町歩に二・八倍もふえたと言っておりますけれども、これは木のはえていない保安林もあるわけです。そういう実情ですから、そういう点も含めて一般会計等から繰り出していかなければ、ほんとうに国民期待、要望にこたえることはできないし、ただ単に法律を十年間延長するといっても、それだけでは意味がない。中身がなければならぬというのはそういう意味でございますが、それらについては、政府あるいは農林省全体として、どのようにこれから取り組んでいくお考えか、聞いておきたい。
  41. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 保安林をふやしていくというためには、まず指定をしていけばいいのであって、国が買わなくとも保安林指定をすればいい。同じことですからね。いままでは、財産権を尊重して、どうしても指定に応じないというようなものを買っていくとか、そういう傾向が強かったわけであります。しかし、法律は一方的に大臣指定できるということになっておるんだから、そこらのところは憲法解釈の問題ともからんでおりますが、私は、やはり、必要な保安林については指定をしていくことが先ではないかと思うのです。それで、保安林として強制的に指定することが憲法上どうしてもぐあいが悪い、それぞれの保安林の緊急的必要性、公共的な必要性というものはなかなか立証できない、できないけれども、保安林にしたほうがより望ましい、と、こういうようなものもあるわけだと思います。そういうようなものは特別会計の中でいままで買ってきたわけでございますが、今後とも、必要に応じて一般会計からでも金を出して買っていくということはけっこうなことなので、われわれとしては大蔵当局に交渉をしてまいりたいと思います。しかし、先ほども言ったように、基本的には指定をすればいいんだから、金は要らないんだから、だから、そういうところをもう一ぺん新しい憲法解釈でやってみたらどうか、と、私はそのように思っております。
  42. 福田省一

    福田(省)政府委員 前段の御質問でございますが、各都道府県から非常に強い要望が出てまいっております。しかし、四十九年度は発足当初でもございまして、事業費約四億でございますが、認められたところでございます。この点につきましては予算上の問題でございますので、今後努力してまいりたいと思います。
  43. 野坂浩賢

    野坂委員 保安林整備をする、指定をする、これが何よりもまず先だということは、そのとおりですが、いまごろは、高度経済成長で土地を上げたものですから、売り急ぐというようなこともあるし、なかなか簡単に保安林指定になりたがらないという状況もあるわけですから、それらの点についても配慮をいただいて——税対策なり、あるいは造林事業の補助という特典もありますけれども、それよりも、ならぬもうがいい、なったらなかなかできぬじゃないかということも一あるわけでありますから、それらの目的達成のために十分配慮をしてやっていかなければなりませんが、まず、災害防除のために、森林の保安の機能充実していかなければならぬ。ところが、いまの生長の段階では、木材の化産を第一にして、そういう保安機能というものはかすんできておるというような感触がしてなりません。それは最近はなかなか切らないといって、伐採量も減ってきましたが、山村の荒廃ということが災害の発生の多発ということにつながってくるというふうに私は思うわけであります。  時間がありませんから、特に視点を変えて申し上げますが、最近、四十六年度から三カ年で、森林の公益的機能計量化調査、いわゆる緑の効用調査というものを御調査になっておりますが、金は約三千万円お使いになっておるわけであります。この機能の調査をされた結果、水源涵養土砂崩壊保健休養、大気浄化、騒音防止というような意味森林機能は、年間締めて十二兆八千二百億円になるんだというふうな国民に対するPRの資料のようなものがつくられて、また新たな認識をした。政務次官に言わせると、見直すことが大切だということの話とこれと同じじゃないかというふうに思うわけであります。この「緑の効用」というのは、具体的にいろいろなことが書かれてありますが、森林機能、望ましい林型、望ましい樹種というふうに書いてありますが、今日、この調査結果をどういうふうに活用されておるか、そして、これが一番望ましい樹種なり望ましい林型であるということであれば、日本の国の林野というものはこれに合わせてどのような姿になっておるのか、こういう点についてお伺いをしたいと思います。
  44. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま御質問のございました公益的機能の計量化調査は、四十六年から四十八年まで三カ年にわたって調査いたしまして、その結果を公表いたしたのが十二兆八千億、これは数字にいたしますと、そういうことでございます。これは年間の森林の各種の効用をお金であらわしたものでございます。  これは何に使うのかという御質問でございますが、今後の森林施業のあり方、これがまずこれを使います一つ目標でございます。具体的に申し上げますと、日本の現在の森林の量的、質的内容を今後五十年にわたってどういうふうに持っていくかということは、昨年の二月に閣議決定していただきました「森林資源の基本計画」、これは林業基本法に基づくものでございますけれども、それに大まかに述べておりまして、具体的には、その内容を現在の二十億立方から三十六億立方に持っていくこと、量的な面ではそういうことでございます。それと同時に、質的な面においても、やや抽象的ではございますけれどもこれをうたっておるわけでございまして、十年ごとにこういう状態に持っていくということの基本計画でございます。  それを受けまして、農林大臣がつくります「全国森林計画」というものがございますが、それは国有林と民有林を合わせまして、流域別に大ざっぱに申し上げますと約七十ないし八十になりますけれども、その流域別に国有林と民有林を一緒にして、将来こういう森林をつくるということで、どういう樹種にするかということと、それの伐採方法、造林方法といったものを具体的に規定するものでございます。これは今度の森林法の改正の中でそういうふうに改正したものでございます。そういうものを「全国森林計画」の中できめまして、それを受けまして、今度は、都道府県知事が地域森林計画を——各人が今度は森林施業計画というふうなものを具体的につくっていくものでございます。そういうものをつくる際の一つ考え方を、この結果をもとにしてきめるわけでございます。  もう一つ目的でございますが、それは、費用の負担の適正化ということでございまして、これは、すべて現在国が補助いたしましたり、あるいは県が補助いたしましたり、各人の山を持っている人たちに対して、税制なり、あるいは金融なり補助なりのいろいろな制度でこれを援助しているわけでございます。しかし、この受益者というものが、その利益を森林にある程度還元したらいいんじゃないかという考え方があるわけでございます。それが、たとえば水について申し上げますならば、利根川の流域をとると、これは源流が群馬県でございますから、これを使っておる東京都なりあるいは千葉県なりの人たちがその利益を山へ持っていって造林費あるいは治山費を出したらどうかということでございます。そういうことをきめますためにこれを使うのでございまして、これは四十九年度の予算要求の中で利根川の例を引きまして、いまその手法を検討中でございます。
  45. 野坂浩賢

    野坂委員 これから検討されるわけですが、そうすると、保安林が果たすべき保安機能を最高度に発揮するような森林というと、中身は、具体的にどういうふうな内容ですか。
  46. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林機能を最高度に発揮する森林というのは、一言にして言えば、活力のある安定した森林ということに、ちょっと抽象的ではございますが、なると思います。もう少し具体的に申し上げますと、生長力の旺盛な壮齢林が望ましいのでございますけれども、最高の機能を持続させますためには、逐次後継樹が生長してくることが必要なわけでございまして、幼齢から壮齢に至るまでの各樹齢階に属する木が、単木的にせよ、あるいはまた集団的にせよ、その山にまんベんなく生育しているということが必要なわけでございまして、そういう配置が必要だということでございます。  それから、もう一つは、安定したという意味でございますが、これは気象災害とか、あるいは病虫害等に耐性を持っていることが望まれるわけでございます。その地域の特性の樹種、それを郷土樹種と申しておりますが、この郷土樹種を中心に針葉樹と広葉樹がまざっておりまして、各樹種がいろいろ豊富であることが望ましいということでございます。  さらに、その保安林目的別に見ますと、たとえて申しますならば、水源涵養保安林でございますならば、根系、つまり、根がよく発達して、根の量が多く、根の広がっている区域が広いということで、なお、木の上のほうの樹冠のうっ閉度が高くて、落葉とか落枝というような有機物の供給量が豊富であるという森林、つまり、深根性で材積成長も旺盛である壮齢林で、単層林よりは複層林のほうがいい。そうしますと、降った水がそういうところの木に伝わって、そういうスポンジみたいな状態になっているところを通して、今度は土の中へ入っていく。根が多い、そして広がっている、そこで水が十分に涵養される、これが水源涵養保安林の理想とする一つの林型でございます。  その他、保健保安林とか、あるいは土砂崩壊防止とかいろいろございますけれども、水源涵養の例を引いて申し上げたわけでございます。
  47. 野坂浩賢

    野坂委員 たいへん長い説明ですが、もう時間が来ておるわけですから、簡単に説明をしてください。  要するに、水資源涵養保安林でも、根が発達をして、非常に強くなった、活力のある森林にしなければならぬということで、そのためには林道や集材機についても十分配慮していかなければなりませんが、たとえば林道も、安上がり林道というようなかっこうのものが最近非常にできておりまして、四十二年度の維持修繕等でも平米当たり百二十円が、四十七年度は七十円というふうにダウンしたということである。札幌の営林局のほうではそういうふうになっておりますし、この林道の規格の導入前と今日では、非常に安上がりにできておるというのが実態であります。だから、側溝その他についても、非常にりっぱな側溝ではなしに、すぐ流れるような姿になっておるということはあなたも歩いてみられてよく御存じだと思いますが、私どものところの林道もみんなそういう姿になっておって、山を切るところでも非常にいいかげんなことになっておるということが最近の林道には特に目立ちます。そういう点も山荒らしになっておる一つの姿ではなかろうかと思います。  それから、集材機にいたしましても、前は架線でずっと引っぱってやっておったのですが、このごろは高密路網といいますか、一ぱいつくって——林道をつくるには、それぞれ知事の許可なりが必要なんですが、作業道路だということでやって、ブルドーザーみたいな、自走集材機とでもいいますか、そんなもので各所に集めておる。だから、あなたがおっしゃったような、根を張ってずっといくというようなかっこうにはならないで、そういうところも切ってしまう。それもあとはほうり投げで、樹木を育成するというような姿になってこない。そのまま、道路でもないし、道路でもあるようだし、雑木が雑然としておるというような変な山になりつつある。そういうふうなわけで、あなたのおっしゃるような、保安機能を十分充実させるという意味のものとは逆の方向をたどっておるのではなかろうかというふうに私は思うわけでありますが、それらの点についてはどのようにお考えですか。
  48. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘がございましたように、林道は、普通の平地の農道とか国道等に比べますと、ほとんど山に入ってつくられます。ですから、のり面とか盛り土という場面がどうしても出てくるわけでございまして、それの保全工作を完全にいたしませんと、いま先生から御指摘がございましたような問題がどうしても出るわけでございます。ですから、林道につきましても、幹線的な林道については、国有林の場合におきましては、広域的な面については一般会計の負担をお願いするということに今後持っていきたいと思います。民有林につきましてはさらに助成を強化していくということも考えたいと思っております。  集材機につきまして、トラクターに最近変わってきたという問題でございますが、確かに集材機は非常に事故率が高かったのでございまして、たとえば一万立方メートル当たり一・一六件の事故があった。それがトラクターにかわってから〇・四二件と事故率は減っておりますけれども、いま先生から御指摘がございましたように、路面を非常に荒らすという問題もございます。でございますので、あと地の更新あるいは土壌条件等というようなものも考えまして、集材機にするか、あるいはトラクターにするかということは、現地の実態によって判断してまいりたいと思っています。ですから、もし完全に林地をいじらないという伐採方法を考えれば、これはちょっと極端な例でございますけれども、木材価格というものが非常に高騰してまいればできるかもしれません。ノルウエーなんかにおきましては、 ヘリコプターでこれを切り出すという方式もございます。しかし、これは日本の現状においては夢みたいな話でございますので、そこまでは考えられませんけれども、林地を荒さぬようにする、あと地の更新に影響しないようにするということは、その作業方法についてのコストの問題にも関連するわけでございまして、この点につきましてはなお検討してまいりたいと思います。
  49. 野坂浩賢

    野坂委員 それから、たとえば災害復旧をやるのに、設計をして作業に入るわけですが、災害額と復旧額というものは、平均して、復旧額は災害額の大体三分の一だ。これでいいのだろうかということをわれわれはしろうと目にも思うわけです。たとえば四十七年は、国有林だけですが、百七十八億あるが、これの復旧額は四十一億だ。それから、百十七億に対して二十一億だ。ずっとこういうことなんですが、そういうものだろうか。それは直営でやられるのか、あるいは設計その他もほかのところに出すのか、その率は一体どうなのか、そういうことも聞いておきたい。
  50. 福田省一

    福田(省)政府委員 災害が起きましたあとの復旧、つまり、治山事業についての御質問と思いますが、治山事業につきましては、災害が出ました場合には、当年度復旧工事をする場合、あるいは翌年度から復旧工事をする場合、緊急なものについては当年度災害として直ちに復旧いたしますけれども、少なくとも大体三年ぐらいのうちに復旧を完了するようにつとめておるところでございます。その際に、事業はすべて現在のところ、一部の縁化事業を除いて、それぞれの専門家にこれを請負事業として実施してもらっておるところでございます。なお、設計についても内部で——内部と申しますのは、営林局ないしは営林署でいたします場合もございますけれども、外部に設計を委託している場合もあるわけでございますが、林道事業であるとか、治山事業であるとか、そういったようなすでに専門化された組織のあるところにつきましては、いま申し上げたように、大体請負事業を主体としてやっております。補完的に内部でできますものにつきましては、緑化工事等につきましては、直営で実施しておるというのが現状でございます。
  51. 野坂浩賢

    野坂委員 林業土木コンサルタンツというのがありますね。それにほとんどいっておりますね。林野庁からもたくさん入社していらっしゃいますね。だから、もっと直営という姿を打ち出されて、足らざるところは、という方向のほうが望ましいのですが、いまの状況というのは端的に言ってそれが中心で、余りものを直営でというふうな姿にさえ見られます。その点については十分留意をしてほしいと思います。  次に、保安林指定解除と林業構造改善事業に関連をしてお尋ねをしたいと思いますが、林業構造改芽事業というのは、ここにも書いてありますように五千町歩あって、民有林がその中に千町歩あって、市町村単位の林野率が七〇%、これが大体中心で第一項にあがっておりまして、それがそれぞれ六項までいろいろありますが、林業構造改善事業をやるというような場合は十分それを考えてやらなければならぬと思うのですね。それがゴルフ場になったり、あるいはあとからその金を返してもらったりという、そういうぶざまなこともありますね。あるいは山形県の米沢営林局のところでは、ジークライト鉱業ですか、あそこの姿にいたしましても、最初は坑内掘りだったのが、いま露天掘りで、公益上の理由ということでこれが解除になっております。そういう点については、もう条件も無視をされておる。しかし、それも解かれたままである。天気がよくても、長ぐつはいて歩かなければできない。それの横のほうには六千四百万円も投資をして堰堤をつくったけれども、それも埋まっておる。それも今日唯々諾々としてやっておる。こういうことが実情なんですね。そういう点について、構造改善の基本的な考え方なり、あるいは将来の見通しなり——あなたは慎重に検討というようなことばをよくすぐに使われるのですが、あなただけではなしに、政府そのものが非常に慎重に検討をしておるという様相は全然見えませんね。たとえばそういう具体例をあげてあとから返すというような事態、それが造林をして、林業改善をして、六千四百万も二百十町歩の山に投ずる。それが五千町歩はもちろんない。こういう規模で、それがまたゴルフ場に使うなんというような姿であわてて金を返してもらう。こういうこと一つをあげても、こういうようなことでは林業行政全くなれりというような姿はみじんも感じられませんね。そういう点については十分配慮をされなければならぬと思うわけですが、それらの点についてはどのようにお考えか。ほんとうにこの法律を十分考えて、解除のことも考えて、あるいは林政、林業構造改善というもの全体を考えてやっていただかなければ、これらのことはたいへん問題だと思う。だから、山形県の米沢営林局におけるこのジークライト鉱業というものは一ぺん再検討して、解除をやめるかどうかという点についても検討してもらわなければならぬと思っておりますが、どうお考えですか。
  52. 福田省一

    福田(省)政府委員 林業構造改善事業は、ここで私からくどくどその目的を申し上げることはいたしませんですけれども、これが目的を達成できずに、途中でこれを返還さしたという事例につきましては、私もこれは一言もございません。この後の措置につきましては、県当局なり市当局と十分調査の上、打ち合わせて対処いたしたいと思います。  米沢の問題につきましても、御指摘のとおり、十分調査の上対処してまいりたいと思いますが、この点については私もまことに遺憾なことであると思いますので、十分気をつけてまいりたいと思っております。
  53. 野坂浩賢

    野坂委員 これは十分対処してもらいたい。これからの林政についてさらに姿勢を正し、保安林機能充実していくという意味のこれは法的措置でありますから、十分善処されるよう要望して、時間が参りましたので、質問を終わります。
  54. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後一時三十七分開議
  55. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上泉君。
  56. 井上泉

    ○井上(泉)委員 保安林整備臨時措置法は、臨時の名がついておるとおり、これからまた十年間の時限立法ですが、十年が終わったら、保安林整備に関するいろいろな法律はもう必要ないという見通しのもとにこのたびもまた臨時立法ということにしたんですか。それとも、恒久的な法律にするには値しないということで、やはり臨時として区切ったんですか。どっちですか。
  57. 福田省一

    福田(省)政府委員 二回目の十年延長でございますが、その理由は、最近の水の問題あるいは環境保全の問題等があり、それから災害等が発生していますので、国土保全の問題ということでさらに十年間延長ということにいたしたわけでございますが、十年でもう十分だというふうには考えておりません。その経過を見まして、場合によっては先生の御指摘のような恒久法の場合もございましょうし、今後の経過を見ながらその点はさらに検討してまいりたいと思っておりますが、とりあえず十年の延長ということでお願いしたわけでございます。
  58. 井上泉

    ○井上(泉)委員 とりあえず十年の延長ということではありますけれども、保安林の持つ役割りというものは、この法律の中にも、あるいはまたこのたびの提案理由の中にも示されておるとおり、重要なものを持っておるわけですから、保安林に関する時限立法的な法律ではなしに、日本国が厳存する限りにおいては、日本国のきちんとした法律として、臨時措置法でなしに、保安林整備措置法というような形での恒久的な立法というものを考えるべき段階ではないかと思うわけですが、政務次官の御見解を承っておきたいと思います。
  59. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 それは望ましいことで、率直に言って、あなたのおっしゃることのほうが望ましいと私は思います。しかし、今回は、御承知のとおり森林法の改正案等もありまして、農林省はたくさん法律を持っておる。そこで、結局、現在の整備法というものをかりに恒久法に直すということになれば、中身等についても多少検討をしなければならない問題もあろうかと私は思います。しかし、現在のままで何ら特別に支障はないのでありますから、これが消えてしまうということのほうが支障が大きい、したがって、とりあえず十年間の延長をする、こういうふうなことにしたわけであります。しかし、これは後日になってさらに皆さんからいろいろ御指摘をいただいて、こういうことなども入れてもっと内容も改めたほうがいいじゃないかという時期が来れば、これは内容を改めるにやぶさかではありません。でありますから、そういうような諸種の事情から、ともかく今回はこれは年限継続をするということで提案をしたものであるというように御了解をいただきたいと存じます。
  60. 井上泉

    ○井上(泉)委員 現在のところではそういうように理解をするわけですけれども、十年後にまた臨時措置法という形で出てくるということではなしに、この経過の過程の中において、保安林が法的にどういうふうにして——臨時措置法に基づいてやっておるけれども、臨時措置法ということじゃなしに、木というものは、二十年、三十年、四十年、五十年のものもあり、保安林とかいうものになると、これはまた百年生も出てくるものだから、やはり樹木の性質に合った恒久的な法というものを考えるべきである。  これは一つの課題でありますけれども、いま政務次官の言われたように、次には時限立法ではなしに、必要な場合には恒久的な立法体系をつくるということにおいて善処してもらいたいと思うわけですが、もう一度政務次官の見解を承っておきたいと思います。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 一応十年ということになっておりますが、私は、何も十年待たなくてもいいじゃないか、十年過ぎてからということでなく、もう少し早い時期においても皆さんからいろいろ英知を集めて検討して、改正すべきものがあれば時代に合ったように改正をして恒久立法化したってよろしいというくらいの気持ちを持っております。
  62. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのことで了解をして、この法案のことについての関連をした質疑を行ないたいと思うわけです。  昭和四十五年、六年、七年ごろと、今日の段階においては、山に対する考え方というものがかなり変化せざるを得ないと思うわけです。特に、資源問題が日本の国政の重要課題となってきた場合に、山の問題というものは新しく考え直さなければならぬ時期だと思うのですが、林野庁としては、昭和四十五、六年ごろの林業行政と今日の林業行政と同じような考え方の上に立って進めておるのか、あるいは今日の資源問題を背景として、山というものを見直した形において取り組んでおるのか、その点について林野庁の御見解を承りたい。
  63. 福田省一

    福田(省)政府委員 先生から御指摘がございました四十五年、四十六年のころと最近の情勢と非常に変わりました点は、何と申しましても、四十五年あるいはそれ以前におきましては、森林に対する見方は、木材を生産する場所であるという認識が強かったと思うわけでございます。その後、森林の公益的な機能に対する要請というものが非常に強くなってまいりました。そういう点から、森林の経営につきましての取り扱い方について、森林には公益的な機能というものは本来あるわけではございますけれども、そういう要請の強まりに対応しまして、いま、保安林の制度であるとか、あるいは普通林におきましても、その規制であるとか、そういうふうな施策を講ずる必要が出てまいったということが非常に大きく変わった点でございます。
  64. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、林野庁長官にお尋ねをしたいわけですけれども、林政審議会の答申がなされておる。そして、その前に当委員会では満場一致で林興決議がなされておる。この林興決議と林政審議会の答申とを対比して、それを行政の面で具体的に反映をさしていく中で、いま長官の言われたところの、その時分とまた変わった新しい行き方における林野行政を進める中で——答申かなされたときには、合理化ということが非常に前面に出された。それが答申の中心ではなかったかというふうに、中身を見ると思われるわけですけれども、合理化ということは、今日では、逆に言えば人減らしということに通ずるのが普通の合理化としての常識ですけれども、今日では、そうではなしに、逆に山へ労働力を復元をさしていかなければいかぬ。そして、山というものをもっと見直して、水資源の問題とか、あるいはその他の山の持っておる資源というものを国民生活に役立たせなければいかぬ。そういうことから考えてみますと、この審議会の答申の中に出ておる合理化の問題は、これは具体的に事例をあげて言わないとそれに対する答えもはっきりしないと思うし、また抽象的なことでやられると困るわけですから申し上げるわけですけれども、たとえが四国の高知の営林局管内に馬路営林署と魚梁瀬の営林署がある。長官も御承知のように、魚梁瀬の営林署のところには早明浦ダムが築かれて、そのダムを築くことによって、そこの部落の再編成が行なわれる。そして、魚梁瀬には、丸山団地という、山のああいう山の奥深いところでは珍しい団地が形成をされて、そこであの付近の住民の生活の環境というものがやられておるわけであります。そこに営林署が存在している。うしろには魚梁瀬の千本杉があり、そしてまた広大な国有林の面積を持っておる。片方ではダムがつくられておる。そしてまた、馬路は馬路としての管轄の山というものもあり、これも広大な面積を持っておるわけで、水資源涵養の面から言っても、魚梁瀬、馬路のいわゆる奈半利川水系というものの山の管理の重要さというものはまさに一段と加わってきておると思う。それを、この審議会の答申の中で営林署は統合されるというようなことが出ておる。そして、さらに、それを受けた林野庁の基本的な考え方の中にも、依然としてこの統合ということが文字として出ておるわけです。これは何も魚梁瀬、馬路を差し示したわけではないけれども、文字として出ておることに対して、その馬路の村当局というものが非常に不安な状態の中に置かれておって、先般もたくさんの方が陳情に来られ、私にも、そしてまた仮谷委員長にも陳情をなされた。あなたにも陳情をなされたと思うわけですが、そういうふうな不安感を与えておるという事実の上に立って、長官としても、これからの林野行政を進める中で、そういう不安、動揺を与えないようにしてもらいたい。そこで、ああいう魚梁瀬の地区から営林署がなくなったらどうなるか。それはよけいに過疎になる。仕事には迷惑をかけないといっても、現実的には位事の面でもどうしても立ちおくれてくるわけですから、その辺についての見解を承っておきたいと思います。
  65. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま先生から御指摘がございましたように、林政審議会の答申の中身を見ますと、御承知のように、ものの考え方としましては、従来の木材の生産に重点を置いた考え方だけでなくて、公益性を重視した経営を確立すべきであるということが考え方の基礎にはあるわけでございます。そういう内容から出てまいりまして、仕事のやり方、特に伐採のしかた、あるいは伐採の結果の量と、それに伴う造林量等いろいろ変わってくるわけでございまして、それに伴っていろいろと仕事の計画が変わった点に対応した、そこの中で働く人たちの配置等についても、また検討が必要だということも言われております。なお、それに伴いまして、組織の問題についても統廃合等を検討すベきであるということが出てまいっております。でございますが、先生からいま御指摘がありましたように、営林署の統廃合だけやれば、それで経営の合理化ができるというふうには私は決して考えていないのでございまして、組織につきましても、大正年間にできた組織でございますし、その後におきましても、いろいろと交通事情の変わった面もございますので、その点につきましてただいま検討しているところでございます。  いま具体的な事例として先生があげられましたように、馬路村の中にありますところの馬路営林署と、魚梁瀬営林署と二つあるわけでございますが、四国の中の高知県の、その高知県の中でも、特にこの地帯は、いわば林業経営を主体としておる過疎地帯であろうかと思います。そういう意味におきまして、ここの仕事の内容の変化に伴って、どういうふうな組織のあり方にしたらいいかということは、これは十分検討していかなければなりませんし、また、その場合におきましても、地元の町村あるいは県当局等の御意見もいろいろ十分尊重しながら、具体的に立案してまいりたいと思っておるわけでございまして、ただいまその点について具体的な案をここに持っておるわけではございません。非常に重要な問題でございますので、先生の御趣旨を十分尊重して、地元との話し合いの上でこの問題を具体的に解決してまいりたいと考えているところでございます。
  66. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それで、これは具体的にローカルの地点を示して恐縮ですけれども、馬路、魚梁瀬というところの地域は、同じ馬路村という一つの行政区画の中にあるけれども、他の営林署の所轄と、二つが持っておるそれぞれのものを比較しても、非常に広大な面積を持っておるし、その過疎地域の対策としても——また、魚梁瀬のダムを中心にして丸山団地というものを構成した中で、またその中心として魚梁瀬の営林署が存在しておる。そういう中で馬路、魚梁瀬という営林署が統合あるいは廃止とかいうことになれば、いわゆる馬路村自体の存立の危機にも関係するし、山に労務者を復元させてくることに対する期待というものも裏切られてしまうようなわけでありますので、いま長官が言われたおことばの、非常に重要な面であるから慎重に対応せなければいかぬという御意見と、さらには、その御意見の中で述べられたところの、長い歴史を持ったところであるから、その地元の町村の意向を十分尊重して、その上においてこの方向をきめるのであって、林野庁あるいは局が独走的に統合とか廃止とかいうようなことはやらないということについては、そう理解しておって間違いないのかどうか、念のために確認をしておきたいと思います。
  67. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたとおりでございまして、特に、あの魚梁瀬の営林署は、私が高知におりましたときにも、むしろこれは便利な奈半利に置いたらどうかというような意見があったり、いろいろと問題のあったことも記憶いたしておるのでございます。しかし、あそこは特に国有林の多い地帯でもありますし、林業を主とする地帯でもございますので、地元市町村の意見を無視してこれを行なうということは、国有林経営に地元の人たちの協力を必要とするという趣旨からいくならば、決してとるべき方法ではないと考えております。地元の意見も十分尊重してこの計画を具体的に進めていかなければならぬというふうにただいま考えておるところでございます。
  68. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういうふうにぜひ地元の意見を尊重して行動していただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、法律のおもなる目的一つ水資源の問題ですが、これは通産省に伺いますが、いまの通産省の関係では工業用水が主体だと思うわけですが、現在の日本の総需要抑制の中で、そして、これからの経済の成長のテンポから考えて、工業用水は十分足り得ておるのか、あるいは工業用水を確保せねばならない地域というものがまだまだ多数存在しておるのか、工業用水の需給関係についての説明を承りたいと思います。
  69. 柴田益男

    柴田説明員 工業統計表によりますと、昭和四十六年の工業用水の使用量は、一日当たり八千五百万トンでございます。このうち、回収して循環使用している分を除きまして、外から補給している量は四千百万トンで、約半分でございます。  将来の見通しにつきましては、こういう石油危機以前の、昨年の初めごろ立てた一つの試算が通産省としてございますが、それに基づきますと、昭和六十年では工業用水全体の使用量が約三倍になるわけでございますけれども、回収して使用する部分の比率を高めまして、外から補給する量につきましては約倍、八千五百トン程度を見込んでおる実情にございます。
  70. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それで現在の水の需給関係については足りるか足らないかということですね。足らない場合にはどういうふうな措置考えておるのか。これはただ数字的に出しただけではお答えにならぬわけなんですから、その辺のことのお答えをしてもらいたい。
  71. 柴田益男

    柴田説明員 工業用水につきましては、現状でも、地域によりましては不足しているところがございます。たとえば南関東、京阪神地域あるいけ北九州地域でございますが、こういうような水が現在でも不足しているところにつきましては、われわれがとっております対策といたしましては、一つは都市下水の再生利用でございまして、現に東京あるいは大阪ではそういう工業用水道ができております。従来やっておりましたところのダムの建設促進も今後とも進めていく必要があるというふうに考えておりますし、より長期的には、海水の淡水化を進める必要があると考えております。  先ほど申しました六十年の工業用水の需要見込みに対して、建設省さんのほうで、広域利水調査ということで一つの需給見通しを出されておりますけれども、それによりましても、南関東、京阪神あるいは瀬戸内、四国の場合ですと高松、松山、東予というようなところが若干不足するという見通しになっておりまして、先ほど申しましたように、ダムの建設あるいは下水の再生利用、海水の淡水化というような方策を今後ともこういう地域には特に進めていく必要があるというふうに考えております。
  72. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、この法律目的である水資源涵養ということについては、これは農林省がやっておることであるからということで、通産省のほうはこの法律そのものについては別段関心も寄せておるというわけではないわけですか。期待をしておるというわけではないのですか。
  73. 柴田益男

    柴田説明員 工業用水につきましては、今後ともダムあるいは河川の水に依存するところが非常に多いわけでございますので、そういう意味では、水資源涵養する保安林の問題につきましては、われわれも十分関心を持っておる次第でございます。
  74. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その関心というのは精神的なものなのですか。保安林水資源涵養することについては、通産省のほうも積極的に具体的に協力をするとか、あるいは財政的に——財政的と言っても、国の金ですからなにだが、精神的に関心を寄せて期待をしておるというのが現在の段階ですか。
  75. 柴田益男

    柴田説明員 この水資源地域に関連いたしましては、先生御承知のように、昨年の秋に水源地域対策特別措置法が成立いたしまして、ダム所在地にかかわる市町村の造林事業につきましては、工業用水を含めて利水者がある程度負担をするということになったわけでございまして、そういう水源地域対策特別措置法のような措置がとれてまいりますれば、われわれとしても協力していくという姿勢でございます。
  76. 井上泉

    ○井上(泉)委員 たとえば高知県から仁淀川の分水が、これはもう十年ぐらい前だと思うわけですけれども、道前、道後の平野の農業用水ということで配分をされた。ところが、そのことによって面河の水系というものが水が非常に枯渇をしてきたわけです。これは林野庁のほうも面河の関係については御承知だと思うわけですけれども、面河の林道をつくったことによって、あの地域全体が非常に破壊をされて、水資源涵養をするはずのものが、逆に水資源が非常にできなくなった。つまり、水資源涵養とは逆な結果が面河の水系では生まれておるわけです。このことについてはまた別に質問をして見解を承りたいと思うわけですけれども、さしあたって通産省にお尋ねするわけですけれども、工業用水なんだからといって、関係のお百姓さんが困るのなら、お互いに少々のことなら水を分けるようなことをしようじゃないかという気持ちになるのは普通人情ですが、大企業のためにこの水が使われるということになると、心情的に、これはもう通産省にやられたという感じが非常に深くするわけです。特に、仁淀川の分水によって、高知県の下流の土佐市のほうの農業用の水あるいは伊野町の工業用の水が非常に不足をしてきておるわけです。これは道前、道後のほうに農業用水として持っていたものをあの地方の工業用水に持っていったというように言われておるわけですけれども、これの配分というか、つまり、仁淀川から分水をした水が農業用と工業用とにどういうふうに配分をされ、そして、工業用の負担というものがどれだけの負担をしておるのか、その辺がわかっておれば説明をしていただきたいと思います。
  77. 柴田益男

    柴田説明員 先生の御指摘の仁淀川の水系の面河ダムにつきましては、三十四年から三十九年度までの工期で、農林省の道前、道後平野農業水利事業ということで行なわれたわけでございまして、かんがいはもちろんのことでございますが、発電と工業用水と共同の事業になっておるわけでございます。その配分でございますが、毎秒当たりの取水量で申し上げますと、農業用水が最大の場合が五・五九トンでございます。それに対しまして工業用水は毎秒一・二九トンで、毎秒当たりで申しますと、工業用水が農業用水の約五分の一でございます。しかしながら、農業用水はかんがい期だけ使用する。この水利事業では計算されておりますが、年間のうちで百二十二日だけ使用する。工業用水は年じゅう使用するわけでございまして、年間使用数量でまいりますと、工業用水が約五五%、農業用水が四五%という比率に相なるわけでございます。
  78. 井上泉

    ○井上(泉)委員 農業用水は季節的なものということは当然わかるわけです。季節的なものであっても、工業用水は年がら年じゅう使っておるわけだから、季節的な農業用水が工業用水のほうによけいとられていくことによって、季節的な農業用水に支障を来たすというような例が往々にして出てきておるわけです。全体にして五五%も工業用水に使っておるということは、そういう水を分水するときの大義名分と実際に配分しておるものとではこんなに違うわけですが、これは最初から、分水をする場合にはこの水はこうこうでこうなるんだというようなことをなぜ明らかにできなかったのだろうか。工業用水のために仁淀川の水を分水するんだというようなことが話として出されておったならば、下流の高知県が地元の水の不自由を忍んでまで分けるというような話にはおそらくならなかったであろうと思うわけです。これは工業用水に使うとかいうようなことをどうして当初には言わなかったのですか。
  79. 柴田益男

    柴田説明員 御指摘の事実でございますが、何ぶんにも昭和三十四年当時のことでございまして、私ども資料でしか当時の事情が推察できないわけでございますが、当時の経緯をちょっと報告さしていただきますと、三十四年二月九日に、工業用水道事業者としての愛媛県知事から河川管理者としての愛媛県知事に対して水利使用許可申請が……
  80. 井上泉

    ○井上(泉)委員 高知県知事じゃないのですか。
  81. 柴田益男

    柴田説明員 愛媛県知事でございます。工業用水道事業者としての愛媛県知事から河川管理者としての愛媛県知事にということで、まず、使用許可が三十四年二月九日に出ております。このときにはっきりと工水一・二九トン毎秒ということで出ておりまして、このあと、先生がいまおっしゃいましたように、下流県知事に協議することになっておりますので、三十四年二月十一日、二日あとでございますが、水利使用許可のための協議が愛媛県知事から高知県知事に対して行なわれております。それで、三十五年十月七日に高知県知事から同意の回答が来ておるということでございまして、こういう事実からいたしますと、愛媛県知事から高知県に協議した際には、はっきりと工業用水何トンということで協議したのではないかというふうに推察されるわけでございます。
  82. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは別にあなたの責任でもないわけですが、その当時私ども県会に、委員長仮谷先生も一緒におったわけですけれども、こんな工業用水への配分だとかいうような話は全然聞いていないわけです。農業用の用水だとか飲用の水だとかいうことでたまたまやっておって、いざ水を引き取ると、その水がとんでもない方向に使われておった。こういう結果というものは、この仁淀川の河川だけでなしに方々にあると私は思うわけですが、そういうふうなことに対してはどこが責任を持ってやるのか。これは当委員会の論議の問題ではないと思うわけですけれども、政務次官、これは当初から分水をする場合における目的をはっきりしてやるべきことじゃないかと思うのですが、いま私が仁淀川の分水のことで工業用水課長に質問したことで、あなたは、そういうふうなこともあるかな、農業用水でやっておいても、あと工業用水に使うこともあるのだろう、地元を納得させるためには農業用水でやって、工業用水のことはほおかぶりしておったらよかろうと、こういうふうにお考えになるのですか。あるいは、水の配分というものについては慎重な配慮が欠けておったということに受け取られるのか、政務次官の見解を承っておきたいと思う。
  83. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 その具体的な案件について私は実情をよく把握しておりませんから、適切なお答えができるかどうかわかりませんが、やはり水は貴重な国民の財産でありますから、農業用水用につくられたダムであっても、農業用水として必要にして十分なものが確保され、非かんがい期においてそれが余っておるというようなときには、利害関係者がよく話し合いをして有効な利用の方法を考えることも必要ではないかと私は思っております。そういうような例は全国にたくさんあります。
  84. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは愛媛の今井先生もおいでですが、高知県の水と愛媛の水とはこれからもかなり問題が起こると思うわけですが、この水資源の問題の中で、こういうふうな仁淀川の分水等に見られるようなやり方でやられるというと、これからの高知県と愛媛県の分水問題というものは、おそらくなかなかうまくはいかぬだろうと私は思うわけです。私どもも非常にうかつ千万でしたが、仁淀川の水を分水したことが、農業者でなしに工業者のために、しかも、公害をまき散らす大企業のために分水したことになり、そのために高知県の下流民が水不足で苦しむという苦杯をなめさせられるという結果になったことについて反省をして、これから水資源の問題は考えなければならぬという気持ちを新たにするわけです。  そこで、この面河の水系でも、あそこはずいぶん伐採をして、面河の付近というものはほんとうに荒れ果てた山の姿を示しておるわけですが、ことに、面河の林道をつくったことによって、あれからずっと四国の屋根という峰を伝って、面河林道から瓶ケ森林道とかいうようなことで、大事な山の峰というものを荒らしまくっておるわけです。これに対して林野庁は、そういう荒らされた地点を水の資源の涵養地域としての山の価値を発揮するようにどういうふうにして復元をするつもりなのか、その点を承っておきたいと思います。
  85. 福田省一

    福田(省)政府委員 面河の渓流から林道を通しまして、あそこの石鎚山の下の土小屋から瓶ケ森に道路の計画があり、それが実施されましたことは私も承知いたしております。あの面河が、林道をつくりましたために石や土が落ちてその渓谷を埋めたということで非常に問題になったことも承知いたしております。これにつきましては、林道の工法について問題があったというふうに私も考えております。この措置につきましては、復旧費等について万全を期してまいりたいと思っておりますけれども、いずれにしましても、面河のような例が今後再び出ないように工法を完全にしていく。具体的に申し上げますと、のり切りしたあとの緑化であるとか、あるいは盛り土したところに対するいろいろな構作物の設置をすること、あるいは排水溝等を設けまして、経費はかかるわけでございますけれども、そういう工法をしっかりとすること、また、その以前には路線の選定の問題もありますけれども、そういう点に重点を置いて対策を講じてまいりたいと思っております。  土小屋から瓶ケ森に至る区間につきましては、地元の自然保護団体の人たちからもいろいろと意見もありまして、その工法についてはいろいろとこまかな配慮をしていることも聞いております。たとえば土砂崩壊を防止する工法をちゃんとやって、編柵をやりまして、それで防ぐとか、あるいは土や石が落ちて立木を傷つけないようにあてがっておくとかというふうなこまかい配慮もいたしておりまして、ある程度経費はかかりますけれども、そういう問題が起きないような配慮をいたしておるのでございますが、今後ともそういった点については指導をこまかにいたしまして、予算措置等につきましても十分の措置をとるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  86. 井上泉

    ○井上(泉)委員 こういうふうな法律を定めて水資源をつくり出すという、こういう大義名分のはっきりしたりっぱな法律を示しておる一方において、せっかくの水資源涵養地域を破壊してしまうというようなことは許さるべきことではないと私は思うし、いま長官の言われたように、そういう荒らされたところは、復元をするための思い切った投資をなさねばならないと私は思います。  そこで、金の問題になるわけですけれども、林野庁はことしは非常に黒字になった。いままで赤字、赤字というようなことで宣伝をしておったのが非常に黒字になっておるということであるわけですが、およその黒字の見通しと、その黒字になった金額はそのまま一般会計へ持っていくつもりなのか、どうするつもりなのかということについて、長官の御見解を承りたいと思います。
  87. 福田省一

    福田(省)政府委員 これは国有林の四十八年度の決算の見込みでございますけれども、先般発表いたしまして、損益計算上は六百億、収支計算では約五百億の黒字となるのでございますが、過去三カ年くらいの実績を見ますと、赤字の累積が五百億くらいございましたので、そういうことで、四十八年度の決算分を見ますと非常に黒字が出たように見えますけれども、大体四年ないし五年くらいそういったようなことを繰り返しております。つまり、赤字期間が三、四年ありますと黒字のときが一年あるというふうなことを従来繰り返しておるわけであります。  これはいろいろと原因がございますけれども、木材の需要と供給とのアンバランスから来るのでございますが、四十八年度の決算において非常に大きな黒字が出ました原因は、一つには、いま申し上げたように三、四年非常に不況でございまして、赤字の期間が長かったということから、支出面で相当切り詰めた計画をしておったということでございます。そこへ持ってきて、四十七年の暮れから木材価格が急に上がりまして——国有林は御承知のように公売を原則といたしております。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そして、また、販売をするときの価格は、そのときどきの市況に応じて決定するというルールになっておりますので、四十七年の暮れから四十八年にかけての木材価格の高騰ということが次に大きな黒字を生んだ原因なのでございます。  この会計の原則としまして、黒字が出ました場合においては、その半分を利益積み立て金として積みまして、大きな損失があった場合にこれを補てんする。それから残りの半分は、特別積み立て金としましてこれを積み立てて、それと同じ現金を引き当て金として持っております。そうして、予算の定めるところによりましてこれを一般会計に繰り入れて、これを使用するということになっておるのでございます。  いま申し上げた黒字もそういうルールに従って経理されるわけでございますけれども、四十九年の最近の状況から見まして、国有林の人件費が、直接雇用するものにつきましても約六割以上になっておりますが、間接的な賃金を入れますと七割になんなんとしているのでございまして、前年度並みのべースアップをいたしましても約三百億必要でございます。今回のベースアップはどの程度におさまりますか、それらを考えますと、ちょっとした黒字が出たからということで、これは特別会計にそう大きな影響を及ぼすものではございませんで、基本的には、公益的な面の経理と企業的な面の経理というものをはっきり区分して、公益的な使命を果たすためには、それに必要な財源措置については、一般会計から大きく導入していただくという考え方を貫いていかなければならぬと思うわけでございます。でございますので、四十八年度の決算が少し黒字になったからといって、今後のことを考えますと決して安心できない状態が依然としてあるというふうに私は考えているところでございます。
  88. 井上泉

    ○井上(泉)委員 国有林の会計が四十八年度黒字であるからといって格別楽観をする数字でもないと、いろいろな経費の支出等を考えて言われたわけですが、ことし森林法の改正法がきまったわけです。そして、保安林の臨時措置法も早晩通ることは間違いないわけですが、そうなると、たとえば森林法の一部改正に伴う新しい体制というか、事業体制、あるいは保安林整備臨時措置法による新しい事業量というふうなものにこたえるだけの林野庁としての体制があるのか。これは森林法のときにもずいぶん論議をされたわけですが、そういう体制をつくっておるという段階にあるのかどうか。まだ国会審議もやっておる中だから、国会が終わったあとでそういう体制については考えようという段階にあるのか。その辺のいままでの経過というか、そういうものを承りたいと思います。
  89. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、森林改正に伴いまして、乱開発規制あるいは計画制度の強化、あるいは森林組合の指導の強化という面で、御指摘のような事務が相当多量に出てくるというふうに考えられるのでございます。それで、森林法の改正に伴いまして、組織関係につきましては、同時に四十九年度におきまして特に指導部の治山課に企画班というものを設けまして、その中で開発規制の係を設置いたしております。また、現在ありますところの係の関係を一部整理いたしまして、特に、森林組合の指導であるとか計画制度の指導が適正にいかれるように一部の執行体制の強化をはかったところでございます。  それから、林野庁におきます林業行政の企画立案や民有林の指導監督等の一般林業行政は林政部と指導部の二部になっておりまして、これらの部に所属します十課があるわけでございます。これによりまして民有林行政を指導してまいっておりますが、これに従事します職員数は、四十八年度は八十九名、四十九年度には七十四名の増と、逐次増大してきております。四十九年度におきます定員は、林野庁におきましては三百五十二名で、実は、農林省の他局並みの定員数となっておるのでございます。ちなみに、林野庁本庁の国有林関係の職員数は四百十七名というぐあいに、およそバランスがとれたというふうに考えられます。  しかしながら、林野庁の行政組織につきましては、最近におきます森林、林業とを取り巻く情勢が急激に変動する中で、外材の輸入とか、木材流通の需給対策あるいは森林の保全管理等の一般林政部門の政策を一そう充実さしていかなければならぬということを考えておりまして、この点につきましては、林政審議会の答申の中でも、林野庁の組織について、一般林政部門と国有林野事業経営部門とを明確に区分し、一般林政部門の拡充強化と国有林野事業の経営責任体制の確立をはかる必要があるというふうに指摘されているところでございます。このために、林野庁としましても、森林林業をめぐる諸情勢の変化に対応しまして、諸施策を機動的かつ効率的に展開しようとする組織のあり方について、現在もなお慎重に検討しているところでございます。  国有林の事業に従事しています職員は、定員内職員でも約三万八千名ございますけれども、いま申し上げましたように、民有林にはわずか三百五十人ほどしかいないじゃないかという御指摘もあろうかと思いますけれども、都道府県におきます職員が約一万五千人おりまして、その業務を補佐しておるわけでございます。  しかしながら、今回の森林法の改正あるいは保安林整備臨時措置法延長等によりまして、いろいろとこういった業務も煩瑣になってくると思われるのでございまして、指導行政の強化につきましては、なお、人員の増を含めて慎重に検討してまいりたいと考えております。
  90. 井上泉

    ○井上(泉)委員 林野庁という機関が、単に国有林だけではなしに、民有林を含めた日本の山林行政の所轄の機関であるということから考えると、県の関係に林業関係の職員もずいぶんおるわけで、これはほとんど民間のいわゆる民有林関係の仕事に従事をしておる職員だと思うわけですけれども、体制としては、いま長官みずからも言われておるように、国の林野庁の中の民有林に対する指導行政というものがもっと充実するような機構の立て方でなければならないじゃないか。いままで保安林整備臨時措置法を出したときには、当時の立案者あるいはその当時の大臣は、十年後にはまた法律延長しますよというつもりでやったものじゃないと思うのです。ところが、山というものの状態から考えて、十年ではいかぬからまた十年ということになってきたわけである。また十年の間にやろうとするならば、それなら、保安林整備計画というものもきちんとしたものをつくって、この保安林整備計画に基づいた人員の配置というものも、印刷で計画はできるわけではなしに、印刷で計画をされたものは実行せねばいかぬわけですし、実行するためには人が要る、体制が要るということになるわけなんで、そういう点についても、この林野庁の体制というものについて、他の農林省の局と同じような考え方で林野庁というものを見てはならぬと私は思うわけです。少なくとも国土の七割の山を管理する庁であるわけですから、その山の持っておるいろいろな使命を遂行さす上においても、林野庁の体制というものをもっと充実させねばいかぬ。そして、それは林野庁だけではなしに、山で働いている労働者を含めて、山の関係者というものの機構は充実せねばいかぬ。歴代の林野庁の長官はじきに参議院選に出ていろいろやるわけですけれども、たまたまいまの長官はそういうことも考えずに、非常に山一筋に愛してやっておられるわけだから、その熱意の中で、林野行政というものをここで大躍進を遂げるように構想を打ち立ててやっていただきたいと私は思うわけですが、そういうことに対して政治がこれにかきをつくったらいかぬわけなので、政治がそれを援護していかなければいかぬ。  そこで、政務次官の決意が必要だと私は思うわけですが、政務次官も、将来の日本の山林行政、いわゆる農林政策を背負って立つ人になろうと意識しておると思うわけですが、そういうところから考えましても、私どもが十年先に渡辺農林大臣から臨時措置法でまた提案を受けるようなことのないようにしてもらいたいし、また、山の管理体制というものがもっと充実した仕組みになるように、せめて五十年度の予算の編成の時期あたりには林野庁というものをもっと充実するような機構に持っていくだけのお考えがあるのかないのか、そのことを承って私の質問を終わりたいと思います。
  91. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 山に対するあたたかい深い御理解を賜わりまして、たいへんありがとうございます。そのような趣旨に沿って山を守っていくということはいろいろな面で重要でありますから、われわれも極力努力をしてまいりたいと考えております。
  92. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、終わります。      ————◇—————
  93. 仮谷忠男

    仮谷委員長 農林水産業の振興に関する件について、調査を進めます。  この際、てん菜問題についての質疑の申し出がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 砂糖価格安定法によりますと、国産糖の原料であるてん菜の価格につきましては、明日の四月十日までに農林大臣が決定して告示をすることになっておりますので、その前日でありますから、この際農林省の事務当局でけっこうでありますが、四十九年度産のてん菜の最低生産者価格の決定作業についてはどの段階まで具体的になったかということを、この際池田食品流通局長から具体的な説明を願います。
  95. 池田正範

    池田政府委員 お尋ねのとおり、今年産のてん菜の最低生産者価格につきましては、目下政府部内で最終的な作業中でございまして、まだ結論は出ておらないわけでございますが、規定の四月十日には告示できるという見通しのもとで現在作業中でございます。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 先週の四月四日の当委員会において、同僚各委員からてん菜の最低生産者価格の問題あるいは国内の甘味資源問題について質疑を行なったわけでありますが、当日は肝心の四十八年度のてん菜の生産費の政府の公表がまだ行なわれておらなかった関係、あるいはまた担当の池田局長が参議院の予算委員会の関係で出席ができなかった等の事情もあって、例年に対しましてきわめて具体性を欠いた審議に終わっておるわけです。いずれにしても、今晩のうちに政府としては価格を決定して、明日告示するのが通例になっておるわけであります。毎年のことでありますが、この際、農林当局として、すでに試算された幾つかの計算例の内容について、あるいはまた、大蔵当局との間においてどの程度まで問題を煮詰めておるかという点について、それから、与党自民党とも事前に打ち合わせ等をやられておるわけでありますからして、その間の折衝等についても、これがどうなっておるかということについて、きょうは時間があらかじめ限定されておるので、できるだけ効果的な説明をしてもらいたいと思います。
  97. 池田正範

    池田政府委員 せっかくのお尋ねでございますのでなるべく詳しく申し上げたいのでございますが、何ぶんにもまだ政府の中で話し合いが持たれておる最中でございまして、一つの方式といいますか、政府として大体こういう形でいきそうだというところまで実ばまいっておらないのが現状でございます。したがいまして、具体的なお話しを先生に申し上げられないのは非常に残念だと思いますが、現状はそのようなところでございます。  ただ、問題は、今年のパリティ指数はすでに出ておりますし、生産費もすでに公表になっておりますので、私どもといたしましては、昨年来のサトウキビの最低生産者価格をきめました点以来のいきさつ等も含めまして、少なくともかなり——最近聞くところによりますと、昨付意向が低下しておるというふうな情報もございます。したがって、私どもといたしましては、今回の最低生産者価格がそのような形に、少なくとも全体の作付意向を低下させるような方向に働かないようにその水準をきめていきたいというふうに考えているわけでございます。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 てん菜の最低生産者価格については、根拠なしに政治的な判断できめるというわけではないんですね。たとえば糖安法の第二十一条には、最低生産者価格の告示の期日が明らかにされておる。あるいはまた、糖安法の規定に基づいて最低生産者価格をきめる場合においては、まず、農業パリティ指数を基礎にして、それに経済事情、物価、賃金等の事情を勘案して再生産が確保されるようにきめなければならぬということになっておるわけですから、これを踏みはずした計算というものはできないわけであります。そこで、こちらからは法律に基づいた幾つかの計算の根拠を示して農林当局の方針をただしたいと思います。  まず、パリティの指数によりますと、毎年最低生産者価格をきめる場合の決定年の決定の月のパリティ指数は当該年の二月パリティということになっておるわけですからして、毎年毎年てん菜の作付が一年一作であるという点から見ても、前年と当年の一年間のパリティ指数というものはどういう変化を示したかということになりますと、政府が発表した四十九年二月の総合パリティ指数は三一二・一七であります。ちょうど一年前の四十八年二月のパリティ指数は二四一・一七ということになっておるので、前年同月のパリティと当年二月パリティの上昇率をとりますと一二九・四四ということになるので、ちょうどこの一年間に二九・四四%、おおよそ三〇%パリティ指数は上昇しておる。この上昇率というものを昨年の最低生産者価格である八千五百六十円に乗じますと、その答えは一万一千八十円ということになるわけであります。年間のパリティの変化率を乗じた場合には一万一千八十円ということになる。ここで、問題は、従来は、政府のパリティによる計算方式というものは正常なパリティ計算ではなくて、変則なパリティ計算をここ数年とっておるわけです。それは計算の分母となる前年度のパリティ指数については、現時点から言いますと、昨年の四十八年の四月−十月の平均パリティを分母にして、四十九年二月のパリティを分子にするわけでありますから、それは二六一・〇六を分母にして、三一二・一七を分子にして計算いたしますと、この場合の変化率は一一九・五八ということになりますので、これでいけば一九・五八%の上昇係数ということになって、およそこれは二〇%の上昇ということになるわけです。だから、この変則パリティを農林省がことしも使うということになれば、昨年の二〇%の上昇率、正常なパリティ計算でいけば三〇%の上昇ということになるので、その場合は一万一千八十円、だから、同じパリティと言っても、本もののパリティ計算と変則なパリティ計算をやる場合においては、指数においておおよそ一〇%の差がある。金額においてはトン当たり八百四十円の差額が生ずるということになるわけでありますから、今年のように政府自身が狂乱物価時代ということを告白しておるときでありますから、ことしの計算につきましては、法律の示した正常な一年間のパリティの変化率というものを求めて、それに基づいた価格の計算というものを基礎にして、四十九年度の拡大再生産を確保するため、あるいはまた生産農家の所得の向上をはかるということを勘案して、適正な価格をきめるということが妥当であるというふうに考えるわけであります。  この際もう一つ申しておきますが、昨年の決定の事情であります。昨年は糖安法に基づいた合理化五カ年計画の最終年であった関係もありますが、局長も御存じのとおり、五カ年ごとの合理化目標計画を立てる場合における、その基礎になるのは目標生産費ということになるわけであります。結局、目標生産費というものは、自由主義経済のもとにおいて五年を目途にして立てられるわけでありますから、昨今のように経済の変動が激しい場合においては、五年前に立てた合理化目標計画の中における中心の目標生産費というものは実現不可能な架空なものであるということは言うまでもないわけであります。ところが、毎年毎年の最低生産者価格をきめる場合においては、この合理化目標計画の中における最低目標生産費というものがわざわいをしているわけです。ですから、政府の変則パリティによってさえもその実現ができないというのが実態であります。  昨年の場合においては、正常なパリティの計算をいたしますと、四十七年二月を分母にした場合は二一七・一六、四十八年二月の分子になるパリティが二四一・一七でありますから、この一年間のパリティの変化率はちょうど一一%ということになるわけです。一一%ということになれば、四十七年の最低生産者価格がトン当たり八千二百五十円でありますから、このパリティ指数を乗じますと、トン当たり九千百六十円ということになるべきであるにもかかわらず、政府が決定いたしました価格は昨年度八千五百六十円ということになると、これは前年の八千二百五十円に対しましてはわずかに三・八%の値上がりということにしかならぬわけであります。こういうことで、毎年毎年パリティの上昇率あるいは法律の精神というものが生かされておらないというのが今日の実情でありますから、今年度の価格決定にあたっては、まず、計算の基礎になるパリティの計算については、一年間の正しい変化率を求めた、つまり、三〇%の上昇係数を使って価格を計算するということと、もう一つは、昨年の合理化計画目標に基づいた目標生産費によって抑圧された、つまり保留分というものがあるわけです。九千百六十円にすべきものが八千五百六十円にきめられたわけでありますから、その差額がおおよそトン当たり六百円、九千百六十円ということできまれば、この六百円分というものについても、当然一年間のパリティ上昇の百八十円というものが上積みになるわけでありますから、これらを計算いたしますと、昨年の政府の価格抑制分というものが八百円程度保留されておるわけでありますから、これもこの際同時に清算をするほうが妥当ではないかというふうに考えるわけであります。そういたしますと、われわれの政策を加味しない計算によりましても、トン当たりおおよそ一万二千円という最低生産者価格というものが出てくるわけでありますから、それに対して政府としてどれほど再生産確保を——この経済激変の中で、農民の生活と生産活動が圧迫されておるわけでありますから、その回復分というものは、トン当たり千円とか二千円という価格で当然この上に上積みをさるべきである。そうなれば、生産者の要求は、局長も御存じのとおり、ことしはぜひトン当たり一万五千円にしてもらいたいという切実な要求もあるわけでありますが、われわれが判断いたしましても、ことしは少なくとも政府の責任においてトン当たりの最低生産者価格を一万三千円を下回るものにしてはならないというふうに判断しておるわけであります。  これは局長から具体的な説明を受けるために、あるいは農林省の方針を明確にさせるために、私から逆に計算事例について指摘したわけでありますが、これに対する率直な答弁をしてもらいたいと思います。
  99. 池田正範

    池田政府委員 内容をよく御承知の先生がおっしゃることでありますから、重複は避けさせていただきたいと存じますが、パリティのやり方について、御指摘のような単年度のパリティ、前年の二月に対してのことしの二月というような形のとり方、これは一つあると思います。あると思いますが、現在のてん菜の最低生産者価格の基準となっておりますパリティのやり方については、ただいま御指摘のとおりの方式でございまして、前年の四−十月分の当年度の二月ということになるわけであります。これにつきましては、てん菜が新しく北海道の基幹作物といたしまして輪作体系の中心として入ってまいります。その促進ということも含めましてなるべく早くきめるということで、本来でございますと前の年の四月から十月分の、その翌年の四月から十月という、生育期間分の生育期間という形でまる一年とることが理想であろうと思うのでございますが、それがとれないということで、現在直近二月ということをとっているわけでございまして、そのやり方につきましてはいろいろ御批判もあろうかと思いますけれども、政府が現在作業いたしております本年度の試算におきましても、この基準のとり方については変更いたしていないわけでございます。  しかしながら、これもまた御指摘いただきましたように、基準価格というものは、本来ただいまのような非常に物価が騰貴するおそれのある時期を想定したものでもございませんで、通常の物価水準ということを頭に描きますと、必ずしもこのやり方が常に不合理である、あるいは農家側にとって不利であるというふうになるばかりでもないわけでございまして、法律はそれを救うために生産費を確保せよということをあらためて参酌要件としてうたっておりますので、私どもといたしましては、十分再生産が確保できる価格と基準価格をにらみながら、両者相まって適当な価格にきめていくというやり方をとれば、先生いま御指摘のような形にもなり得るものであると考えておるわけでございます。  したがいまして、そういう形で出してまいりますことが生産者価格をきめます場合の一つの算定の約束方式でございますので、問題は、むしろそうやってでき上がった結果が、はたして農家の再生産を割るような低い価格できめられるかどうか、かつてそれがきめられたかどうかというところに問題点があるので、ある特定の月数のパリティによって積み残しがあって、その積み残し分を上に足せばそれで済むというふうに必ずしもいかないのではないか、むしろ、これからきめようとする価格、あるいは御指摘の昨年きめた価格がはたして再生産を割るものであったかどうか、あるいは今度きめようとするものがまたその生産費を割るものであるかどうか、そういうところにわれわれとしては政策的に十分配慮していかなければならないのではなかろうかと考えておりますが、私どもといたしましては、毎年そのときに実際に最低生産者価格を決定するために使いますところの生産費というのは、前年度の生産費によらざるを得ない。そこで、どうしてもこれをパリティアップして、当年度のものに直して、推定生産費として使うという形をとっておるわけでございます。むろんその生産費だけで決定するわけではございませんけれども、そういうことで決定をする。そうしますと、それを要素としてきめました価格が、振り返りまして、あとで実生産費が翌年出てまいりました際に検証いたしまして、はたしてその実生産費を割るかどうかということに非常に大きな問題点が一つはあるわけでございます。一応私どもといたしましても検証いたしておりますけれども、残念ながら推定生産費を実生産費が上回った時期も現実にございます。大きな額ではございませんが、確かにございますが、しかし、四十年以降ずっと長年にわたって見てみますと、非常に合理化のメリット等もございまして、比較的生産費を下回って行政価格がきめられたのは少ないように考えておりますので、不十分ではありますけれども、私どもといたしましては、今後ともいままでの方程式を守って、懸命に前向きにがんばることによって、再生産が不可能になるような価格をきめるおそれはまずないというふうに考えておる次第でございます。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 私の先ほど示した計算並びに数字は、砂糖価格安定法に根拠を置いて示したわけでありますから、そのよりどころとしては、糖安法の政令並びに省令で具体的に計算する方法を定めてあるわけですから、どのような手法で計算しようとしても、パリティ指数に基づく計算を無視してやることはできないわけです。その場合、てん菜の場合には、前年度政府がきめたてん菜の最低生産者価格を基準価格にして、前年度を基準年ということにするわけでありますから、当然それは決定年よりも一年前に最低生産者価格が決定されて告示されておるわけでありますから、この一年間における農業の総合パリティ指数がどのような変化の方向を示しておるかということは忠実に反映させる必要があると思うわけです。去年の値段に対して、ことしきめる一年間のパリティの変化がどうなっておるか。  なお、いま局長の言われた四月から十月までというのは、てん菜の場合耕作前に価格をきめるわけですから、四月に播種あるいは移植をすると、収穫の時期が十月になるわけですから、昨今のように経済変動が非常に激しいという場合には、この四月十日にきめた生産者価格というものと、十月の収穫時期において経済事情がどうなるかということはなかなか予測できないわけです。こういうときになれば、年度内において経済事情が変動する場合においては再計算をして価格の改定ができる。これは糖安法にも加工原料乳の補給金法にも明らかになっておるわけですが、これを用いたことは自民党政府として一度もないわけです。だから、ことしのような場合は二段がまえにして、去年きめた時期と今年きめる時期のパリティの変化率というものを正しく反映させて、それを基礎にした価格の決定を行なう。四月から十月の収穫時までにどういう経済事情の変化が起きるかということは、その測定の方法としては、あるいは四月から十月までのパリティの変化がどうなっておるかということは、毎月毎月農林省が公表するわけですから、これはわかるわけです。局長の答弁をそのように善意に誘導して、まず、先に、一年間のパリティの変化に基づいて、これを基礎にした適正価格をここで四月十日にきめると、収穫までの半年間の変化については、法律の精神にのっとって半年間のパリティの変化がどうなっておるかということをまた中心にして、そのときの物価事情あるいは賃金事情を正しく反映させるということになれば、これはたいへん手厚い具体的な原料価格の決定方式ということになると思うのです。  もうすでに加工原料乳については四月一日から実施に入りましたが、毎日毎日生産して出荷されるわけでありますから、一年前の四月一日と一年後の翌年三月三十一日では相当の経済事情の変化があるわけですから、これに対しても、年途中において、たとえば四半期ごととか、上期、下期というふうに分けて、その時点で再計算をして、そして適正な価格改定をやるべきである。これは政府もやるということをすでに言ってあるわけですから、そういう具体的な配慮をやるという決意の上に農林省が立たなければだめなんです。  この前も当委員会指摘したとおり、加工原料乳とか、あるいは豚肉の価格決定の場合においても、せっかく決定前に当委員会において同僚の各委員の皆さんが具体的な質問をしても、加工原料乳の計算の各費目についても、担当畜産局長は、これは大蔵省と事前に話し合いをしなければ、この委員会で説明することはできないと、まことに消極的というか、へっぴり腰というか、農林大臣がきめる価格について担当の局長が明確な方針とか内容を説明できないまま、ついに加工原料乳あるいは豚肉の安定価格というものはきまったという、まことに大醜態を演じておるわけです。畜産局長から見れば、池田局長のほうが局長就任の年も占いし、部内でも先輩でしょう。まさか先輩が後輩のそういう醜態の轍を踏むとは考えていないわけだが、きょうの説明は、全くもう何を言っているかわからぬような、早く三時十五分になればいいというようなものだが、この大事なときにそういうことではだめじゃないですか。いまでも、前年度のてん菜の作付六万ヘクタールが大体二〇%ないし三〇%減少してはたいへんだというふうにわれわれ苦慮しておるときに、これに追い打ちをかけるような農林省の原局としての試算というものがまずつくられて、それを基礎にして大蔵当局と話し合いをしているということでは、もう結果はおのずからわかるわけなんですよ。いいですか、この変則なパリティ指数で計算した数字は、おそらくこれはトン当たり一万二百円でしょう。こんなものを基礎にして、あとは統計情報部の日雇い労賃を基礎にしたような四十八年の生産費を踏まえ、若干の物価修正等を試みてみても、これも上積みになるような要素はあるいはないかもしらぬ。あるいはまた、ことしは競合作物の労働費というものを比較にするような新しい手法が講ぜられておるが、これも変則パリティの一万二百円をこえるような要素はないというようなことになれば、結局、たとえば先ほど私が、少なくとも最低価格としてトン一万三千円ぐらいの実現は当然ではないか、それは法律あるいは政省令の根拠によっても可能であるということを言ったわけですが、相当これは開きがあるわけでしょう。いかに馬力のある渡辺政務次官がそばに控えておるとしても、確信のない数字を持って大蔵省へ行って大きな声を出してみたり、自民党の内部でこれは安過ぎると言ってみても、自分の農林省の中で局長が中心になって安い値段をきめて持ち出したのでは、これはどうしようもないと思うのですよ。もう少し張りのある答弁をするならするとか、きょうは残念ながら何も言えませんと言うとか、そういう答弁をするならともかく、どっちを向いているんだか、何を考えているんだかわからぬような答弁、説明だけは絶対にしないようにしてもらいたいと思うのですよ。  それから、もう一つ参考までに言っておきますが、農林省の毎年毎年の、四月−六月の変則パリティでは、長期にわたるパリティの変化がどうなったということは全然わからぬわけですね。そこで、この糖安法ができた昭和四十年の二月パリティは一五五・三一、四十九年二月は三一二・一七でありますからして、四十年二月を分母にしてパリティの変化を求めるとちょうど二一〇ということになる。四十年の最低生産者価格は六千五百五十円でありますからして、このパリティを乗じますと一万三千八百円という価格になるわけですね。これは大体食管の麦方式にも準じたようなことになるわけでありますが、この四十年から四十九年までのパリティの指数というものを用いた場合においては、ことしの最低生産者価格は一万三千八百円ということになるわけです。だから、こういう有力な根拠というものはあるわけですね。これを使っても糖安法の違反ということにはならぬわけですね。これならこれ一本で堂々と、ことしは一万三千八百円、いいですかということで、大蔵大臣でも、自民党の総裁でも、あるいは総務会長でも、政調会長でも、そういう諸君に説明してもこれは通るんじゃないですか。狂乱時代にこれは高過ぎるなんということを言うのは、政府の中にも、自民党の中にも、一人もいないと思うのですよ。正しい自信のある数字をつくらないで、ただ低い数字を使って何とかしなければならぬといって頭をひねっても、これはなかなか前向きにいかぬと思うのですよ。これはむしろわれわれが指導するようなことになってしまったけれども、どうですか、局長。確信をもって、ことしは場合によってはひとつあばれるぐらいの調子でやったらどうですか。まだきまっちゃったわけじゃないわけだし、ちょうど政務次官もそばに並んでおるんだから、この際二人でよく相談してやってみたらどうかと思うが、いかがですか。
  101. 池田正範

    池田政府委員 非常に強いおしかりと御指導をいただきまして、一生懸命がんばりたいと思いますが、特に、麦方式の問題につきましては、これはいわば固定年に対するパリティの方式でございまして、麦につきましては確かにその方式については一つ理由があると思うのでございますけれども、かりに、前の年の生産関係を移しながら翌年にパリティアップしていくといういままでのようなやり方をやめて、特定の時期における固定年の方式をとるということになりますと、非常に浮動要件の大きい、ある意味で生産関係を発展させてきたいまのビートというものを考えますと、はたしてその方式が適当であるかどうかは、やはり、実務的にもかなり詰めてみなければならない問題が出てくるように思います。特に、基準年方式がいいのかどうか、あるいは、かりに固定方式がいいという結論が出ましても、一体どの基準年をとるべきかといったような非常にむずかしい問題も出てくるわけでございます。したがって、この方式をとるとこの方式よりも値段が高く出る、こっちのほうが有利に出るというふうな、値段を出してみて高く出るものを使うというふうになかなかいきにくい面も実務的にはあるわけでございます。私どもといたしましては、従前からの方程式の中にも十分参酌条項はございますので、したがって、それらの参酌条項というものを十分含めば、ただいま先生から、生産費はあまり高くないじゃないか、パリティも四−十分の二月ではあまりたいした期待はできないじゃないかという一つの御指摘でございましたけれども、それも一つの現実の数字でございます。しかし、それがあるからといって、それでもしきめた場合に、そのものずばりで再生産がまかなえないということになってはたいへんなことでございますので、それがあるからということではなくて、それらの実態というものを踏まえながら生産費というものを十分カバーできるような水準に参酌した価格をきめていくということでございますので、いろいろ方式はあると思いますけれども、いまの政府のやっております基準パリティ方式に参酌する方式のやり方でも、私どもとしては、十分御期待に沿える、つまり、再生産可能な数字に持っていく努力はする道があるんだという確信のもとに努力いたしたいと考えております。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 道があればいいですよ。しかし、なくて困っておると思うから、こういう方法もあるぞということをこっちが言ったわけです。  もう一つ、三月九日の予算委員会第四分科会で、私が農林大臣に質問した際に、農林省が国内糖の小売り価格について、上白一キログラム百八十六円という指導価格を設定されたが、これがいつまで続くかということはわかりませんが、そこで百八十六円の上白一キログラムの小売り価格から逆算した場合に、原料であるてん菜の生産者価格というものはおおよそどのくらいの水準になるかということを聞いたわけでありますが、その際、これは参考の説明ということでありましょうが、池田局長の答弁としては、正確にこういう数字になるということは会社の決算等の結果を見なければわからぬが、しかし、推定としてはトン当たり原料価格一万二千円程度というものは考えられるというような意味の説明をされたわけです。私も根拠を求めていろいろ逆算して計算したわけですが、たとえば精糖一トンを製造するに要する原料としててん菜七トンが必要になるわけです。だから、原料価格に対して所要の七トンをかけると精糖一トン当たりの原料代というものが出ることになるので、これによると八千五百六十円の七トンは六万円、それから一万三千円ということにするとすれば四千四百四十円原料価格を上げることになるので、この分の七トン分が三万円ということになるわけですね。そうすると、一万三千円の原料価格ということになれば、精糖一トン当たりの所要原料七トンで計算すると九万一千円というもの、これが精糖価格の中における原料代ということになるわけですから、これを基礎にして糖安法による政府の買い入れ価格あるいはまた卸価格、小売り価格等の計算がなされるわけでありますが、これから見ても、先般の分科会における池田局長の答弁の一万二千円というものは決して場当たり主義なものではない、ごくかたく考えて発言した数字であるというふうに私は考えておるわけです。ただ、こういう点もことしの価格決定の場合においては有力な材料として使う必要があると思うわけです。  もう一つ最後に尋ねておきますが、昨年初めて、国産糖の事業団売り渡し、買い戻しの行為の中で、事業団に対して納付金を納付したという事態が生じたわけですが、これは現在の糖安法によりましても、国産糖の製造事業者は製造した砂糖を必ず事業団に売り渡さなければならぬということにはなっていないのですね。売り渡しの申し込みをすることができる。事業団は売り渡しの申し込みが行なわれた場合においては買い入れをしなければならぬ。その場合には売り戻しを条件にするということを相手方に明らかにしろということになっておるので、一昨年までは、結局は、国産糖擁護の上に立って事業団から幾ばくかの財政的な補給をしておったわけですね。そのためにはどうしても糖業者は売り渡しの申し込みをしなければならぬわけですが、昨年のような場合は、納付金を納付しなければならぬというような事態であれば、むしろこれは売り渡しの申し込みをする必要はないではないか。そうなれば、別に差益金と称して一定金額を事業団に吸い上げされるということでなくて、その分は当然最低生産者価格の再検討を行なって、必要があれば、法律の根拠に照らして、農林大臣が、最低生産者価格の告示ということでなくて、大臣勧告という形で取引価格に対する指示もできるわけでありますから、これは今後の運営の問題ですが、高値安定のように国産糖が市場で流通されておるというような場合においては、無理に形式的に売り渡し、買い戻しの手続をさせるということでなくて、それらは弾力的な運営の中で、生産者の努力分に対して十分配慮するというような運営が当然必要ではないかというふうに考えるわけです。時間が参りましたので、これらについても率直な答弁を聞かしてもらって、これで質問を終わることにしたいと思います。
  103. 池田正範

    池田政府委員 先般芳賀先生からの御質問にお答え申し上げましたときに、かりに一万二千円と計算すればと申し上げましたのは、実は、あれは、ロンドンの市価が二百ポンドという水準にあると仮定いたしまして引き直した場合に、てん菜糖で引き合える限度は幾らかということに引き直して実はお答えを申し上げたわけでございまして、もし、ただいま先生がおっしゃったようなことをそのままお答え申し上げますと、百八十六円、上白一袋一キロということを最終のベースにして一応計算をいたしてみますと、これは実はこの間も申し上げましたけれども、中間の流通マージンがいろいろ差がございますので、その流通マージンのとり方によって幅が出てまいりますけれども、私どもの試算によりますと、大体九千八百円から九千百四十円程度の幅の中に入ってまいります。したがって、現在の百八十六円というものは、それによって支払い得るビートの価格はそう高いものではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。  それから、もし値段が高くなったときには事業団には売らなくてもいいのではないかということ、これはおっしゃるとおりでございまして、仕組みの上では売る必要がないわけでございますけれども、これも御質問の中にございましたように、すでに国産ビートにつきましては市価が非常に安くて、いわゆる形成価格で売れないということから、長い間市価参酌という制度を活用いたしまして、事業団から補給金を流してきたわけでございますが、その総額が前々年度末におきまして総計で約四十億円見当になったわけでございます。そこで、その後非常に市価が上がってまいりましたので、実は、事業団といたしましても、この事業会計の穴を埋めなければならないという問題が当然出てまいりますので、したがって、これは一般会計から埋めてしまえばいいという御議論もあるいはあろうかと思いますけれども、現段階では、非常に市価がたれ込んで安かった時期の四十億円の穴埋めという意味で、逆市価参酌というちょうど反対のやり方で、全体の需給の中で国産糖の需給の占めるシェアの割合だけを価格が上がっても下がっても責任を持ってもらうという、そういう考え方で実は逆市価参酌を実施しておるわけでございます。そういう意味で、実は価格はまだかなり上がっておりますものの、従来の四十億を埋めるにはとうてい至っておりませんけれども、私どもといたしましては、今後もう少し糖価の様子等も考えながら、全体としての糖価水準を——あるいはこれは糖価を上げない方向に使えという話もあるでしょうし、生産者に返せという先生の御指摘のような考え方もあるわけでございますけれども、同時に、事業団としても、出したものをある程度バランスさせて収入支出を合わせていかなければならぬという面もございますので、そこいらを含めて、長期にわたっての収支問題としても十分検討していきたいと考えておるわけでございます。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、いまの池田局長の答弁に関して、私が三月九日の予算委員会の第四分科会で質問した事項というものは会議録にも明らかになっておるわけです。国内の上白糖一キログラム百八十六円というものを政府、農林省の指導価格と設定したわけだが、これから逆算した場合に、原料であるてん菜の生産者価格というものはおおよそどうなるかということを尋ねたのであって、それに対して、まだぼける年でもないのに、全く事を曲げるような答弁をするというのは、神聖な国会の中における発言を自分から冒涜するようなものですよ。これは食言ですよ。これはここで議論する余地はないわけだが、国会の中における政府委員としての正式発言を、御都合主義であとで歪曲するようなことは絶対に許すことができないです。いいですか。  それから、もう一つは、どうして逆算方式を当時取り上げたかというと、過去五年間におけるわが国の上白糖の小売り価格というものは、キロ当たり百四十五円ないし一番高いところで百五十円という線なわけですよ。百四十五円というのは過去五年間の平約価格ですから、それから見た場合に、現在においてもおおよそ二百円の小売り価格というのが現実ですから、その中で百八十六円の指導価格というものを全国四千店の店舗ではやっておるということはわかっておる。そうすると、キロ当たりにして、政府の指導価格によっても大体キロ四十円というものは去年の暮れから今日に急騰しておるわけだ。二百円ということになれば、五十円ないし五十五円キロ当たり小売り価格が上昇しておる。これには製造経費も、砂糖消費税も、マージンも、何も要らぬわけでしょう。安い原料価格で製造した砂糖が急激に上がったというものを、これを原料に換算すると、五十円あるいは四十七円というのは、今度は七で割れば、たとえば原料トン当たり五千円とか六千円あるいは七千円価格を上昇させることもできるとか、あるいはさかのぼって、これが国営等でやっている場合には配分もできるということの一つの事例として当時私が指摘したわけなんですよ。そういう根拠のある確実な見通しと判断の上にわれわれは立って国政に臨んでおるわけだからして、その点は月給取りのあなた方とは立場がいささか違うと思うのですよ。だから、言った以上は、間違っておれば間違いであるということを率直に是正することは許されるが、事を曲げるということは、今後といえども絶対これを許すわけにはいきませんよ。長官とか、政府委員もおられるけれども、これは厳重に私からこの際注意をして、きょうの質問はこれでとどめておきます。      ————◇—————
  105. 仮谷忠男

    仮谷委員長 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案について、質疑を続けます。諫山博君。
  106. 諫山博

    諫山委員 保安林の制度が災害防止と不可分の関係にあることは言うまでもないと思います。昭和二十八年に全国的に発生した大水害が保安林制度の契機になったことは明らかなところです。ところが、現在でも依然として山林の乱伐が水害上か土砂くずれの大きな原因になっているということに非常な問題を私は感じています。昨年の七月三十一日に福岡市周辺で集中豪雨が起こって、数十名が死亡するという大きな水害がありました。私は、この水害の翌日に撮影した二枚の写真を用意してきたのですが、これを見ると、山林の伐採が土砂くずれの原因になっている。そして、これが集中豪雨による水害の被害を増加したということが非常に明らかに読みとれます。写真は福岡県粕屋郡宇美町の山を写したものですが、林野庁としては、伐採が水害を激化させる原因になったということを認めておられるのかどうか、まず、この点をお聞きします。
  107. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま御質問がございましたように、昨年の七月三十一日に福岡市の周辺で水害があったのでございますが、福岡県からの報告によりますと、被害の実態は大体三点に要約されておりまして、一つは、福岡市周辺におきます集中豪雨は、寒冷前線の通過によりまして、春日市においては、三十日から三十一日にかけて二百三十ミリの豪雨があり、そのうち一時間雨量の最大は百十五ミリという強い雨を記録しているということでございます。この豪雨によりまして、三郡・若杉山系及び四王寺・大城山系の山地を中心として山くずれが多発し、荒廃地の発生面積は八百十一カ所で、約四百五十ヘクタールでございます。被害額が約四十三億円、人的被害は、死者、行くえ不明二十八名、住家全半壊二百八十戸、こういう報告でございます。  この三十日から三十一日にかけて二百三十ミリ、一時間雨量の最大百十五ミリというのは非常に強い集中豪雨でございまして、上佐山田の集中豪雨あるいはえびのの集中豪雨の事例もございますが、その際にもいろいろ御説明したところでございますけれども、大体連続雨量が二百ないし三百ミリ、それから、時雨量にしまして五十ないし百ミリというところは森林機能の限界を越えた線であるというようにお答えをしておったところでございます。この場合におきましても、この集中豪雨というのは相当まとまった集中豪雨でございまして、上佐山田あるいはえびのの事例等から見ましても、森林の存在による機能の限度を越えた点もあるというふうに観測されるところでございます。
  108. 諫山博

    諫山委員 私が知りたかったのは、山林の伐採が土砂くずれなり被害を激化する原因と関係があったのではなかったかということです。あの集中豪雨がかつてなかったような大規模なものであったということは私も知っております。私はそれを否定しているのではなくて、それにしても、乱伐が被害の増加に関係がなかったかと聞いているのです。
  109. 福田省一

    福田(省)政府委員 福岡営林署管内の宇美国有林六百九十四ヘクタールは、昭和四十二年全域水源涵養保安林というふうに指定されてございます。従来から、その指定施業要件は、主伐にかかる伐採種は定めない、年度ごとの皆伐限度面積は約二十八ヘクタールという範囲内で伐採を行なってきたところでございますが、しかしながら、四十八年七月、この地を襲った異常集中豪雨によりまして、この国有林の地質が深履風化の進んだ花こう岩であることもありまして、約二ヘクタールの山腹崩壊地が発生し、その土砂の大部分は「流の砂防ダムに滞留したものの、その一部が下流に流出して、民有林からの流出」砂と相まって下流の住宅、田畑等に被害を及ぼしたものでございます。  今回の災害の主たる原因は、いま申し上げましたように、異常集中豪雨によるものとは言いますけれども、この伐採の影響というものが全然なかったというわけにはまいらぬということは反省しなければならぬと思っております。今後の施業にあたりましては、一年間の伐採面積は五ヘクタール以内としまして、特に、水源地のし上流部に位置します十一林班、十二林班につきましては常に一定の森林が存在するように配慮しまして、また、保護樹帯の完備等、防災施業に万全を期したいと考えておるのでございます。  また、山地災害の危険側所の点検と、これに基づく危険個所に対する治山工肺の優先的実施、さらには災害になるおそれのあります末木枝条の処理など、防災に対する処置についても万全を期したいと考えておるところでございます。ですから、伐採については全然その影響はなかったということではございませんが、今後の対策につきましてもあわせてお答え申し上げておきます。
  110. 諫山博

    諫山委員 委員会の質問というのは、質問されたことにずばり答えていただきたいと思います。どこかで弄いたことを長官が読み上げる、これで答弁にかえるというのであれば、政策の前進はありません。率直に長官が自分の立場を説明するというやり方でないと一つも前進がないと思います。  長官としては、伐採が水害の激化と関係がないとは言えないというふうに言われておりますが、その点はもっと具体的に説明できませんか。その問題に限って伺いたい。
  111. 福田省一

    福田(省)政府委員 昭和四十四年度におきましては、伐採面積が、宇美国有林におきまして、十一林班から十四林班、二十三ヘクタール伐採しております。四十五年度には十二ヘクタール、四十六年度には十二ヘクタール、四十七年度に入りましてから八ヘクタール、四十八年度五ヘクタールというふうに減少いたしております。具体的にこの二十三ヘクタールあるいは十三ヘクタールの間でございますから、十ないし二十ヘクタールの伐採面積というものは、そういう集中した伐採があったのではなかろうかというふうに判断されるものでございます。
  112. 諫山博

    諫山委員 その中には保安林がありますか。
  113. 福田省一

    福田(省)政府委員 この地域は全域水源涵養保安林でございます。
  114. 諫山博

    諫山委員 そうすると、水源涵養目的保安林を切り過ぎたために水害による被害が増加したという結論に達しているのですか。私は、これだけが被害の原因だとは言っておりません。被害を激化させる一つの原因として切り過ぎがあったのだということを認めているかということです。
  115. 福田省一

    福田(省)政府委員 水源涵養保安林ではございますけれども、伐採種の指定はいたしておりません。
  116. 諫山博

    諫山委員 そうすると、現在の認識では、切り過ぎがあったと思っているのですか、なかったと思っているのですか。
  117. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま申し上げましたように、十ないし二十ヘクタールの伐採ということは、結果から見ますと、伐採種をもっと限定すべきではなかったかというふうに判断されます。
  118. 諫山博

    諫山委員 私の質問に即して言えば、切り過ぎがありましたという結論ですか。
  119. 福田省一

    福田(省)政府委員 どの程度切り過ぎたかという数字的な判断はむずかしいのでございますけれども、確かに、この災害の起きた原因としては、十町歩ないし二十町歩という伐採、皆伐面積は少し大き過ぎたのではなかろうかというふうに考えられます。
  120. 諫山博

    諫山委員 初めからそう答えていただけば、議論はすぐに進展するわけです。このわかり切った結論に到達するまでに、あれやこれや説明されるから、いたずらに時間が過ぎるし、問題の焦点がぽけてくるわけです。  そこで、この伐採というのは、私が福岡県の治山課長に聞いたところでは、指定施業要件に従って切っているのだ、だから、問題は伐採の要件そのものに問題があったのではないかというふうに述べているようですが、この点はいかがでしょうか。
  121. 福田省一

    福田(省)政府委員 指定施業要件に従って伐採いたしております。
  122. 諫山博

    諫山委員 指定された要件に従って伐採した、しかし、結果的には切り過ぎて被害が激化した、こういうことになりますと、きめられた要件自体に問題があったと言わざるを得ないわけですが、この点はいかがでしょうか。
  123. 福田省一

    福田(省)政府委員 そういう点がございますので、指定施業要件の見止しをいたしているところでございます。
  124. 諫山博

    諫山委員 私は、たまたま昨年七月に起こった福岡市周辺の集中豪雨についてのみ質問しましたが、指定施業要件の見直しをいま考えているということのようですけれども、これは、この地域についてのみ考えているのか、全国的に再検討しているのか、いかがでしょうか。
  125. 福田省一

    福田(省)政府委員 全国的に再検討いたしております。
  126. 諫山博

    諫山委員 保安林の制度が発足して二十年、いまなおこういう問題が発生しているということを私は遺憾に思います。しかし、いまの答弁では、切り過ぎを認めて、そういうことが起こらないように全国的に再検討に入ったということでありますから、再びこういうことが起こらないような措置をすみやかに講じていただくということをまず要求しておきます。  次に、保安林指定の問題でありますが、保安林指定を受けると、自治体としても、個人としても、保安林の所有者がいろいろな影響を受けてきます。たとえば私有林の保安林について言いますと、固定資産税の収入がなくなるということが非常に深刻な問題だと聞いておりますが、これはやはりそういう結果になっているんでしょうか。
  127. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 先生の御指摘のとおり、保安林指定されますと固定資産税が免除されるということになりますので、当該市町村にとっては、当該税収の減少ということの結果になります。
  128. 諫山博

    諫山委員 この市町村の減収に対しては、国として何らか補てんの措置を講じていましょうか。
  129. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 固定資産税の減免をいたします結果、当該市町村について収入に不足が生ずるということがございますので、地方交付税法の第三条の規定によりまして、基準財政需要額の算定の際に、当該団体に対して、保安林の地積にかかわる部分については地方交付税によって補てんするというふうなことが措置として講ぜられておるわけでございますけれども、必ずしも全収入減分をこれで補てんするという結果にはなっていないというふうに承知しております。
  130. 諫山博

    諫山委員 自治省の方に質問します。  いまお聞きのとおり、私有林が保安林指定されると、固定資産税の収入がなくなる。そして、地方交付税の適用の問題はあるようだけれども、結果的には自治体の収入が減少することに変わりはない、こういう農林省の説明ですが、自治省としてはこの点何らかの措置を講じているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  131. 森審一

    ○森説明員 お答えいたします。  一般的に税の問題につきまして減収補てんが問題になりますのは、一、二の例を申し上げますと、たとえば過疎地域対策緊急措置法でありますとか、あるいは農村地域工業導入促進法でありますとか、こういうふうな一つの政策目的に従いまして、たとえば企業の地方分散という措置をとります場合に税の減免を行なうことができることになっておりますけれども、その際、ただ税の減免だけを行ないますと、当然その地方団体に対して入る税収入がその分だけ少なくなりまして、財源的に苦しくなる。こういうことになりますので、その際に、地方交付税のほうの収入の算定におきましてその税を除外するということになっております。  先ほど御質問のありました保安林の問題につきましては、これらとは異なりまして非課税ということになりますので、交付税計算の中で初めから収入がなかったものというふうにして計算いたしますから、減収と言いますか、財源補てんとかいうふうな問題の余地はないと思います。現にそういうふうな要望を地方団体から聞いたことはございません。
  132. 諫山博

    諫山委員 そうすると、地方自治体の税収入は減少するけれども、それに対する補てんの措置は自治省としては何もしていないということになりますか。
  133. 森審一

    ○森説明員 御説明が不十分だったかもしれませんが、税の非課税あるいは税の減免を地方自治体が自分の自由意思でやりました場合には、これは全くの任意でございますから、交付税計算上は収入がなかったものとして計算をいたします。したがって、その分は当然地方団体の収入としては減ってくるわけでございます。そこで、財源補てんの問題がものによっては出てくるわけでございますけれども、この場合には制度的に非課税になりますので、初めからその地方団体にはこの税収入は入らなかったものとして地方交付税の計算をいたします。したがって、交付税がその分減らされて損をするといいますか、マイナスになるというふうなことはございません。
  134. 諫山博

    諫山委員 長官にお聞きいたしますが、たとえば地方自治体を例にとりますと、山林が保安林指定される、いろいろ迷惑をこうむるという結果が生じているのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  135. 福田省一

    福田(省)政府委員 確かに、保安林指定しますといろいろと制限されますので、迷惑の出てくる点もあろうと思います。
  136. 諫山博

    諫山委員 私は、保安林指定することは非常に必要だと思います。しかし、指定された相手が迷惑を受けるようなことではいけないと思います。たとえば個人所有の山林が保安体に指定される、これにはいろいろな優遇措置が講ぜられてはおるようですが、それにしても、個人所有の山林が保安林指定されることは、一般的には個人にとって非常に迷惑だと理解されていると思うのですが、いかがでしょうか。
  137. 福田省一

    福田(省)政府委員 確かに、おっしゃいますように制限がつきますので自分かってに森林の経営ができないわけでございますから、おそらく、迷惑を感じていることは事実だと思います。
  138. 諫山博

    諫山委員 あなたは平気で迷惑を感じているのは事実だろうと言われますが、これは大きく言ったら憲法第二十九条の問題だと思います。私は二十九条を抜き書きしてきたのですが、第三項に、「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と書いてありまして、「正當な補償の下に」ということが前提条件になっております。ですから、公共の目的で私有財産に制限を加える場合には、いかなる経済的な損失も個人に与えてはならないというのが憲法第二十九条の精神です。だとすれば、保安林指定されることによって、指定された山林の所有者が被害を受ける、迷惑をこうむるというようなことは本来あってはならないはずなんです。ところが、あなたは、迷惑を受けるだろうと平然と言われるのですが、これは問題じゃないでしょうか。迷惑が及ばないような何らかの措置を講じた上で保安林指定をすべきではないかということを言っているのです。
  139. 福田省一

    福田(省)政府委員 それにつきましては、法律の定めるところによっていろいろと補償制度を考えることになっておりまして、森林法の三十五条でも、立木ないしは土地に対して補償しなければならぬという定めもあるわけでございます。
  140. 諫山博

    諫山委員 ほんとうに完ぺきな補償がされておれば、指定されることによって迷惑を受けるでしょうという結果は生じてはこないはずなんです。それにもかかわらず、迷惑を感じるのが一般的だとすれば、その補償が十分でないからだというふうにしか考えられません。この点で、保安林指定に伴ういろいろな迷惑、損害をなくするような措置をもっと講ずることは検討しておられないのでしょうか。
  141. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいまの先生の御指摘のように、憲法二十九条に「正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という規定がございまして、これを受けまして、森林法の三十五条に、「保安林指定によりその者が通常受けるべき損失を補償しなければならない。」という規定があるわけでございます。  長官が先ほど申し上げました何らかの迷惑をこうむっておるであろうということでございますが、森林の施業というものについての制限がある、あるいは土地の土石の採取その他について制限があるというようなことでございまして、そのために通常受けるべき損失を金銭で補償するということがございましても、そういう森林施業についての制限を受けるとか、あるいは土石の採取について制限を受けるとかということについての満足は得られないわけでございますから、そういう意味において何らかの迷惑が残るということを長官が申し上げたわけでございます。  その補償の態様につきまして、現在先生が問題にされました満足すべき補償が一体行なわれておるのかどうかという問題でございますが、その点につきましては森林法の規定で、「通常受けるべき損失を補償しなければならない。」という規定になっておるわけでございますが、また、損失補償の態様といたしましては、一つは、保安林について申し上げますと、林業経営に制約が加わったために森林の経済価値が低下することによる損失についての補償という考え方があろうと思います。それから、森林経営以外の土地利用というものについての制約が加わる、その点についても補償をしろというふうな、補償要求というものは大きく分けまして大体その二つになろうかと思いますが、現在、森林法に基づく損失補償というのは、最初に申し上げました林業経営に制約が加わるために森林の経済価値が低下することによる損失ということにつきまして、立木補償を行なっておるということでございます。後者のケースにつきましては、私的所有権の本質である土地利用を規制するということに伴う損失補償ということでございますけれども、これは期待される利益に対する補償ということになるわけでございますから、損失額の算定その他についても非常に主観的なものになるということでございますし、際限がないということにもなりますので、通常こういうふうな土地利用について制限をしております場合には、そういうものに対する損失補償は行なわれていないというのが実態でございまして、森林法もその例にならいまして、森林としての利用について制約を加えた分についての損失を補償するというたてまえをとっておるわけでございます。
  142. 諫山博

    諫山委員 長官に質問しますが、いま二つの種類の迷惑について説明されて、第二番目の迷惑、つまり土地利用の規制については何もされていないようなお話でした。しかし、非常に問題になっているのはこちらのほうではないかと私は思います。たとえば他人に土地を売ろうとしていても、保安林指定されているために十分これを活用することができないということになりますと、経済的には大きな損失になるわけです。これに対して何らかの補償措置が講ぜられておるのかどうかということが一番問題だと思うのです。この点を解決しない限り、保安林指定されればされるだけ所有者が迷惑をこうむるという結果は避けられないのです。ですから、土地利用の規制に伴ういろいろな経済的損失に対しては、政府としてもっと補償の方法を考えるべきではないかという提案ですが、いかがでしょうか。
  143. 福田省一

    福田(省)政府委員 この補償の問題につきまして、現在具体的に実施しておりますことは、国でもって買い上げます場合、一号から三号までの重要なる保安林、つまり水源涵養保安林土砂崩壊土砂流出保安林、この制度がございます。それから四十九年度から実施する予定でございますけれども、保健保安林等につきましても非常に問題がございますので、都道府県が購入します場合に、これに対して補助をするという制度も四十九年度から予定いたしておるところでございます。
  144. 諫山博

    諫山委員 私の質問の趣旨が正しく理解されなかったかもしれませんが、私は、保安林制度というのはもっと積極的に活用したほうがいいと思います。しかし、そのためには、保安林指定を受けてだれか迷惑するような人がおってはいけない、そういうことがないようにもっと補償の方法を検討してもらいたいということを言ったわけですが、政務次官、いかがでしょうか。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 土地の規制の問題とか、それから保安林指定の問題というようなことはきわめて公共的な目的のためにやられるわけでありますから、憲法上財産権はこれを侵してはならないといっても、別に私有権、所有権を否定するわけじゃない。特に、いま、都市周辺に商社等が山林を買い占めたとか、そういうふうなこともあるのであって、そういうようなものを保健目的を達するような保安林指定をするというようなときに、いたずらに全部買わなければならないのかどうか。私は、やはり、指定をするという姿勢を強く出したほうがいいのじゃないかと思う。そして、伐期に達した木があれば、その木を切らないための損害はこれを補償するわけですから、面積にもよるし、持っている人にもよりましょうが、迷惑をこうむるのは気の毒だと言えば、そういうこともあるけれども、人によっては必ずしも気の毒でもない場合もあるし、一がいには言えないのではなかろうかと私は思います。
  146. 諫山博

    諫山委員 私は三名の人に答弁を求めましたが、いずれも私の期待する答弁にはなっておりません。事は憲法二十九条と関係する問題です。公共の福祉と個人の権利をどのように調和させるかという問題でもあります。私は、この機会に農林省なり林野庁がもっとこの問題を検討していただくことを要望します。  次に、一つの実例に基づいて質問します。  大分県の山香町というところで島崎観光がゴルフ場を建設したいという申請をしております。総面積が五十ヘクタール、そのうちに保安林が十二ヘクタール含まっている。これは水源涵養保安林のようです。大分県に問い合わせますと、保安林指定が解除されるならゴルフ場の建設を承認したいということのようですが、すでに林野庁に保安林指定解除の申請が届いていると思いますが、林野庁としてはどういう処理をされるつもりでしょうか。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  147. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  ゴルフ場の造成にかかります保安林解除につきましては、たいへん近ごろ増加いたしております。したがいまして、昨年でございますが、昨年の三月末をもちまして、「ゴルフ場造成に係る保安林解除の当面の取り扱いについて」というような通達を一応私どもは出しまして、その中できわめて厳正な処理をしたいというようなことで、今年度に入りました後は一応審査を中止いたしまして、四十七年度中に指導中であったものについての処理をいま急いでいる段階でございます。  ただいま御指摘がございました大分県の山香町の島崎観光ゴルフ場だと思いますが、これは四十八年度中に申請が県を通じまして出されたものでございまして、この通達に従いまして現在審査を中止いたしておる分野でございます。しかし、今後の新しい森林の取り扱いとか、森林法の通りました現段階におきましては、普通林の取り扱いと保安林の規制とのからみもございまして、新しい考え方のもとでこの事案を処理してまいりたい、このように現在思っておるところでございます。
  148. 諫山博

    諫山委員 大分県の山香町のケースのように、ゴルフ場の建設の目的保安林解除申請が出ているのが現在何件くらいあるのか、面積にしてどのくらいなのか、御説明願いたいと思います。
  149. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  ただいまお答え申し上げましたように、昨年の三月三十一日現在におきまして、林野庁なりあるいは県におきまして受け付けておったものが約百二十件ございます。そして、その後通達に基づきまして検討いたし、ほとんど審査等を終わりまして、告示あるいは告示済みのもの等を含めますと三十一件ございます。なお、通達に基づきまして、きびしい基準に基づきまして指導をいたしました結果、大体百二十件のうち四十件が保安林を除外いたしてまいりまして、現在私どもの手元にございますのが約八十件、そのうち三十一件が告示あるいは告示の準備が完了いたしておる、こういうことになっておるわけでございます。
  150. 諫山博

    諫山委員 告示というのは、保安林でなくするということですか。
  151. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  解除の告示でございます。
  152. 諫山博

    諫山委員 そうすると、まだ結論を出していない分についても、いずれは同じような方法で解除していくつもりでしょうか。
  153. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げましたように、森林法の普通林に対する規制と保安林の取り扱い等の調整をとりまして、なるべく早く新しい処理方針を出しましてこれを処理してまいりたい、このように考えております。
  154. 諫山博

    諫山委員 それはわかりやすく言うと、なるべく早く解除の手続をとりたいという意味ですか。ちょっとわかりにくいのですが……。
  155. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  まず、保安林を解除いたします場合に、それぞれ処理方針に基づきました書類等が完備しているかどうか、それぞれ現地等につきましても十分審査するということでございまして、ただいま私どものほうに届いておりますものにつきましては、十分審査をいたしましてこれを処理したい、こういう意味でございます。
  156. 諫山博

    諫山委員 いまの御説明では、自発的に申請区域から保安林を除いたところもあったようですが、ゴルフ場にすることはまかりならぬといってけった例がありますか。
  157. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  先ほど約四十件ございますと申しましたが、その中で、地形等の関係から保安林を除きまして、レイアウト等を変更してもらったというのが大部分でございまして、これでだめだということを申し上げたのは、ただいまのところないと思っております。
  158. 諫山博

    諫山委員 ゴルフ場建設の目的保安林解除の申し立てをする。これに対して、いろいろ話し合いで行政指導をした例はあるけれども、ゴルフ場建設で保安林を解除するわけにはいかぬと言ってはねつけた例は、いまだかつて一件もないという意味になりますか。
  159. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、ゴルフ場を建設いたします場合に、基準といたしまして、傾斜度が二十五度以上とか、あるいは地質上崩壊しやすいとか、あるいは保護対象がすぐそばにございまして直接重大な影響を与えるとかも過去におきましてその周辺で治山事業を行なったとか、そういう場所はなるべくこのゴルフ場の中で解除しない。また、ゴルフ場を認めたといたしましても、周囲に四〇%程度森林を持たすとか、あるいはコースの間は二十メートル以上の森林を残すとか、こういう指導をいたしておるわけでございまして、現在審査いたしておる中で、これを全部だめであると言ったところはいまのところないというふうに申し上げたわけでございます。
  160. 諫山博

    諫山委員 長官に質問しますが、ゴルフ場のための開発がいろいろな点から問題になっておることは御承知のとおりです。特に、災害との関係でいろいろ論議されております。ところが、ゴルフ場の中に保安林が含まれている、この保安林の解除を求めてゴルフ場をつくろうとしている、こういう例が非常にたくさんあるようですが、結局、保安林の解除をしないという例はなかったようなんですが、これで保安林制度の目的が十分達せられるだろうかどうだろうかということに疑問を持ちます。ゴルフ場建設の一つ一つについて検討するといろいろな微妙な問題か生じてくると私は思うのですが、それにしても、保安林というのが、実際的にはゴルフ場の場合にあまり機能していないんじゃないのかという気がするのですが、いかがでしょうか。
  161. 福田省一

    福田(省)政府委員 先ほどの、はねつけた事例はあるかという御質問でございますけれども、保安林の解除は許可しなかった、そのほかのほうでつくったということは、結局ははねつけたことになるんじゃなかろうかということで、これは詭弁のように聞こえますけれども、私はそう思います。  保安林ばかりでなくて、一般の普通林におきましても、行き過ぎたゴルフ場の建設ということは反省しなければならぬと私は思いますけれども、森林法が幸い今度通りまして、一町歩以上の開発については、水の問題、保全の問題、環境の問題に影響がある場合にはこれを許可しないということになっておりますので、今度そういった意味でのこまかい通達を出す考えでございますけれども、いま申し上げました保安林におけるゴルフ場の規制は、非常にきびしくいたしております。これで相当ふるいにかかるわけでございますけれども、一般林の場合におきましても同じように規制してまいりたいと考えております。
  162. 諫山博

    諫山委員 次に、民有保安林の買い入れの問題について質問します。  いままで、林野庁は、昭和二十九年から昭和三十八年にかけて、さらに三十九年から四十八年にかけて、二回にわたる民有保安林買い入れ目標を定めて、この達成に努力したようです。ところが、調べてみると、その達成卒が非常に低い。第一期の場合には四〇%しか達成されていない、第二期の場合には二三%しか達成されていない。こういう実情のようです。林野庁のほうに聞きますと、この目標をきめるには、直接林野庁のほうで調査して、この保安林についてはぜひ国が賢い入れたいということを調べ、目標を設定したそうですが、なぜ買い入れ目標かこれほど達成されていないのか、林野庁はどう考えていますか。
  163. 福田省一

    福田(省)政府委員 一つは、金利調整がうまくいかなかったということと、それから、境界がはっきりしない問題かあったということ、それから、登記の未整備なところがあったということ、そういう事務的な事情から計画どおりいかなかったということがございます。  次は、買い入れ基準を、実は三百ヘクタールというような大団地にしておりまして、また、国有林と隣接しておるということを条件としたのでございますが、これは相当きびしい条件でございまして、それに該当するものはなかなかなかったということでございます。  第三点は、土地とか立木について、従来から値上がり傾向がございましたのに加えまして、最近、特に開発の進展等により、値上がり非常に加速化してきた。それで、所有者のいわゆる値上がり期待による光り控えということがだんだんふえてきており、光環希望単価が折り合わないために契約ができなかったというケースが相当あったということでございます。  それから、次に、交換による取得が計画されておったのでございますが、これは四十二年度以降、交換の渡し財産の用途と、それから交換の相手方を非常にきびしく制限したいきさつがございます。そのために八万ヘクタールの予定が五千ヘクタールになったなどの理由によって、当初の計画が非常に減少したというふうなことがおもなる原因でございます。
  164. 諫山博

    諫山委員 いろいろ解決すべき問題を指摘されましたが、私は、それはそれぞれ重要だと思います。ただ一つ心配になるのは、値段が安過ぎるという点はないのですか。価額のきめ方が施行令の中に規定されております。しかし、ほんとうに納得して光るだけの価額が提示されているのかどうかということに疑問を持ったのですが、そういう問題はありませんか。つまり、置いたたこうとしてうまく買えないという問題はなかったのかということです。
  165. 福田省一

    福田(省)政府委員 確かに、そういう点は懸念されるわけでございます。先生御承知と思いますけれども、この場合、土地の価額をきめます場合に、近傍類似の取引事例を基準として、精通者の評価額をしんしゃくした上できめるということになっておるわけでございます。将来どれぐらいしがっていくか、あるいは下がるか、なかなか予測がむずかしいわけではございますけれども、大体、四十九年度予算等におきましても、従来の取引価格を基準にして一応見込みを立てておるところでございます。
  166. 諫山博

    諫山委員 いま、民有保安林買い入れ目標計画どおり達成されない原因について、幾つか指摘されましたが、この点は改善の方向が出ているんでしょうか。
  167. 福田省一

    福田(省)政府委員 過去におきましてはそういり不例がございましたので、よくその点を考慮いたしまして、今後の買い入れの目標を達成するように対処してまいりたいということで、ただいま検討しているところでございます。
  168. 諫山博

    諫山委員 聞くところによりますと、買い入れ予算が使い切れずに余っているそうですが、そういう状態ですか。
  169. 福田省一

    福田(省)政府委員 買い入れ計画は、一応年度初めに予算をつくるわけでございます。従来、その予算が執行できなかったことも事実でございます。その理由も、いま幾つかあげてお話ししたことにも一つ原因があるわけでございます。
  170. 諫山博

    諫山委員 私は、保安林指定あるいは民有保安林の買い入れなどの問題について幾つか質問しました。私は、何回も繰り返しますように、保安林制度というのはもっと活用したほうがいいと思います。しかし、そのためには、たとえば指定に伴う補償だとか、買い入れの場合の価格の決定だとか、そういう点であまりけちけちせずに、買い入れされる側、あるいは指定を受ける側が公共のために喜んで自分の土地を提供すると言うと語弊がありますが、保安林に売り渡したり指定されたりすることに迷惑を感じないというような状態をつくり上げなければ、保安林に伴ういろいろな計画というものはうまく成功しないだろうと思います。ことばをかえますと、保安林という制度が非常に大事であるなら、もっと金を使っていいんじゃないかということですが、いかがですか。
  171. 福田省一

    福田(省)政府委員 第二回目の延長で十年ということで、臨時になっておりますけれども、これは恒久立法にする必要はないのかという御指摘も先ほどの御質問の中にございました。でございますが、一応先生のおっしゃいましたことにつきまして私ども同感でございまして、買い入れの制度というものにつきましては、やはり、予算措置が絶対必要でございます。それで、特別会計に財源に不足するときには一般会計からこれを繰り入れるという制度も実はあるのでございますけれども、まだそれは適用したことはございません。それらの問題も含めまして、この買い入れの場合の、先ほどいろいろの原因は申し上げたわけでございますけれども、基準の問題あるいはそういった予算措置の問題等、恒久的なものでございますし、保安林種類整備等ともかねまして、とにかく森林を持っている方々が進んで協力してくださるような恒久措置というものをつくらなければならぬというふうに考えておることでございます。そういう御趣旨をくみまして、今後真剣に検討してまいりたいと思っております。
  172. 諫山博

    諫山委員 民有保安林の買い入れ計画というものは一応昭和四十八年度まで組まれているわけですが、いま審議されている法案法律として制定されるとすれば新しい買い入れ計画がつくられるんじゃないかと思いますが、この点については、すでに作業は進んでいますか。
  173. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のように、この整備計画というものはつくらなければならぬということになっておりますので、その準備を進めておるところでございます。
  174. 諫山博

    諫山委員 その整備計画をつくるについては、いま指摘されたような弱点、不十分さというものは克服する方向が見出されていますか。
  175. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘の点を踏まえまして、ただいま慎重に検討しているところでございます。
  176. 諫山博

    諫山委員 政務次官に質問します。  とかく政府は、保安林というものは公共のためのものだから、国民もこれに犠牲をいとわず協力してくれるべきだというような姿勢が出がちだと思います。しかし、いまの憲法のたてまえから言ったら、そういう考え方は正しくないわけです。公共の目的に協力してもらうことは必要でしょうが、そのためには、協力する側に十分な補償をするということ、憲法二十九条のことばを借りれば「正當な補償」が伴うということがどうしても必要なわけです。私は、今度の法案が審議される機会に、いろいろ森林法について調べてみたり、専門家の意見を聞いたりしてみましたけれども、帰着するところ、保安林というものは非常に公共性の高い大事なものだから、国民がもっと協力すべきだというような立場だけではなくて、国民がほんとうに安心して協力できるような財政的な裏づけを進めていくことが非常に大切だということに気づいたわけですが、この点、次官の見解をお聞きしたいと思います。
  177. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 先ほどもちょっとお話しをいたしましたが、保安林として指定をするという場所は、当然これは必要だから指定をするということなんですが、その土地を持っておる人が、何のためにその山を持っておるのか、転売しようとして持っておるのか、あるいは森林に木を植えようとして持っておるのか、何か別なレジャーセンターでもつくろうとして持っておるのか、いろいろ持っておる理由があると思いますが、山を持っておるという場合は、やはり、木をはやすつもりで持っているのだろうと私は思います。保安林の現在の法律からいたしましても、農林大臣は必要があれば指定をすることができるわけです。買わなくても指定はできるわけです。ですから、いたずらに単価を引き上げて、高くして、それを何が何でも全部買わなければならぬということではないのではないかと思うわけで、いまの法律でも指定ができる。指定ができれば、保安林目的はそれで達せられるわけです。したがって、まず第一義的には指定をするという姿勢が必要ではないかと思いますが、指定をすれば、いままで自由に木が切れたものが木が切れない、伐採できないということに当然なりますから、適齢期に達した伐採できない木については補償する。これはいまの法律でもそうなっておるわけであります。しかし、ともかく民主主義の世の中で財産権をうんと守るというようなところから、木の補償だけではわずかな金にしかならぬ。したがって、どうせ自由に使えないならば土地ごと売ってもいいという人もあるわけでありまして、それについては、森林としての適正な価格で政府が買い入れる。政府が買い入れるからには、ゴルフ場にするために売る価格とか、レジャーセンターや別荘地に売る価格で買うことはできない。光るほうはうんと高い値段で売りたいというのは人情の常であります。ですから、そこのところの調和が非常にむずかしいのでございますが、話し合いでなかなか指定に応じないからといって、いたずらに地価の値上げをするということを政府がやることにはむしろ私は批判的であります。ですから、森林としての適正な値段で買うが、どうしても売らないというような場合で、しかもそこを指定せざるを得ないような状況にあるときには、法律の定めどおり指定をする。こういう姿勢があれば、便乗値上げ等で政府が売りつけられることはあまりないのではないかと私は思っております。
  178. 諫山博

    諫山委員 私は、質問を打ち切るつもりでしたが、いまのような答弁が出てくると質問を続行せざるを得ません。  長官にお聞きしますが、保安林指定をすればいいのだ、売りたくないものまで無理に買わなくてもいいのだという趣旨の答弁だったと思いますが、民有保安林を買い入れようとする場合には、どういう民有保安林を買い入れることにしているのですか。
  179. 福田省一

    福田(省)政府委員 国が買います場合には、重要な保安林、つまり水源涵養保安林、それから土砂流出防備保安林土砂崩壊防備保安林でございますが、今後重要であろうと考えられますものは保健保安林でございまして、これは都道府県が購入する、その場合に国がこれに対して助成するということを四十九年度から実施いたしております。
  180. 諫山博

    諫山委員 それは保安林として指定するだけでは足りないのですか。やはり、国が買い入れなければならないのですか。
  181. 福田省一

    福田(省)政府委員 一応、現在のところでは、治山事業あるいは保安林指定した場合に、保安林を持っておる土地所有者の方々に対する助成措置等もいろいろ均てんしてきてまいっておるわけでございます。でございますから、保安林指定がなされた場合においても、以前に比べるといろいろと助成措置もございますけれども、それじゃ困るからこれはどうしても買い上げてもらいたいということがございますれば、国で買い上げるとか、あるいは都道府県が買い上げるというふうな制度にいたしておるわけでございます。御承知でございましょうけれども、そういうことで、話し合いの上で現在進めてまいっております。  ただ、保安林整備臨時措置法には強制買い上げの制度もございますけれども、いままでそれは適用した事実はございません。
  182. 諫山博

    諫山委員 政務次官の説明と長官の答弁は微妙な点で食い違いがあると思います。保安林指定さえすればそれで足りるんだということでは、問題は解決しないと思います。だからこそ、林野庁は二回にわたって民有保安林買い入れ目標をきめて、その達成のために努力してきたわけです。ところが、達成率が第二期の場合にはわずかに二三%にとまったということは、ここには何らかの問題があったからだと思うわけですが、この点は政務次官と林野庁のほうで意見をよく調整していただくことを希望して、質問を終わります。
  183. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 次に、瀬野栄次郎君。
  184. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案について、農林省並びに環境庁に質問をいたします。  本案は、保安林整備計画の実施状況及び最近における保安林にかかる諸情勢の変化にかんがみ、保安林整備臨時措置法の有効期間を十年延長しようというものでございますが、農林省は、最近における保安林にかかる諸情勢の変化についてどのように考えておられるか、冒頭伺いたいのであります。
  185. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 最近における保安林をめぐる諸情勢の変化につきましては、次に申し上げるような点において著しい変化があるというふうに考えております。  その一つは、近年の都市化の進展の中で、緑の確保ということが非常に強く叫ばれております。森林の有する生活環境の保全あるいはレクリエーションの場の提供の機能など、森林環境保全機能に対する国民的要請が非常に強まっておる。これが非常に変わっておる。これに対応して、都市周辺部を中心として保健保安林等を積極的に配置をしなければならぬという情勢であります。  第二の情勢の変化は、過去二十年にわたって、水源涵養保安林等の配備は、全体としての水需要の緩和に大きな寄与をしてまいりました。今後、水需要の動向を見るに、人口、産業の集中化等に伴いまして、地域によってはなお水不足というものを来たすおそれがあるということが指摘をされております。ですから、そういうような指摘をされた地域が著しく変わってきておる。だから、それに対応しなければならぬ。  第三番目は、最近の災害の傾向として、集中豪雨による被害が非常に多く見られておるのであります。国土の開発の発展に伴って、今後この種の災害は一そう広がるのではないかというおそれもありますし、また、深刻化するというような懸念もございます。したがって、災害の防止というような観点からも一そう保安林配備というものが必要だという点がいままでよりも著しく変わってきておるし、それらに相応していかなければならぬと考えるものでございます。
  186. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 保安林の諸情勢の変化についての農林省の認識をお聞きしたわけですが、あとこれと関連しての質問をいたしてまいりますので一応お聞きをいたしまして、さて、保安林の質的充実の問題を次にお尋ねをしておきたいのであります。  保安林制度は、御承知のように、公共の福祉を増進することと、さらには、いまも説明がありましたように、被害の防止等をはかるために森林所有者に課すべき最低限の義務を定めたものであるというふうに言えるわけでございますが、その具体的内容というものは、指定制を要件に定められておるわけでございまして、保安林の保安機能を最高度に発揮させるためには、それに適合した質的充実をはかるところの森林を誘導する施策が当然考えられなければなりません。そういったことで、保安林が果たすべき保安機能を最高度に発揮するような森林というものは、当局はどういう森林内容をさしておっしゃっておるか、これも次にお伺いしておきたいことでございます。御答弁いただきます。
  187. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林機能は、指定目的あるいは地況、林況等に応じまして適切な施業を行なうことにより発揮されるものでございます。このことは保安林の適正な指定施業要件によって確保されるものであるというふうに考えております。しかしながら、最近におきます国土開発の進展等に伴いまして保安林の保全対象が大きく変化していること、また、森林の有する環境保全機能に対する要請が高まっておること等から、昭和四十五年以来指定施業要件整備基本調査というものを行ないまして、これによって指定施業要件の適正化を進めてきたところでございます。今後においてもその改善をはかっていく考えでございます。  また、保安機能の積極的な確保をはかるためには、保安林森林内容の向上が必要であることは御指摘のとおりでございます。これは森林所有者による適切な林業活動によって実現されるものでございますので、造林事業に対する助成の強化等の措置を進めることといたしております。  以上の施業によって、目ざす保安林の内容は、一般的に言えば活力のある安定した森林ということでございます。たとえば水源涵養保安林であれば、根系の発達が良好で、樹冠のうっ閉度が高くて、落葉、落枝等の有機物の供給が豊富な森林、つまり、深根性で材積成長も旺盛な壮齢林分で、単層林よりも複層林が望ましく、樹種としては杉などが代表的なものとしてあげられるわけでございます。  造林事業の補助制度の具体策といたしましては、造林事業補助制度において従来の諸措置を行なっておるところでございますけれども、四十八年度からは新しく五年生以下の下刈り及び六年から十年生の雪起こしを補助対象としまして、さらに、四十九年度からは十一年生、二十年生林分に対する除伐、保育間伐及びこれに必要な作業路の開設を補助対象とすることを予定しております。  このほか、水源涵養のための森林開発公団による水源林造成の積極的な推進、治山事業による保安林の保育事業、保安林改良事業の実施など、保安林機能強化につとめる所存でございます。
  188. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 端的に言って、御承知のように、この保安林の大半を占めるものは水源涵養保安林、それから、今回から特に強力に取り上げられておりますところの、配備の重点にしてありますところの保健保安林で、こういったものが重点的なものであるというように理解できるわけですが、普通林の場合と比較して、森林内容とか森林の施業の相違というものはどういうふうに区別しておられるか、端的にお答えをいただいておきたい。
  189. 福田省一

    福田(省)政府委員 保健保安林の改備は、全国森林計画において、保健、風致の保存等のための保安林として全国でおおむね四十七万三千ヘクタールの森林計画的に指定することといたしております。  保健保安林として指定すべき森林は、主として市街地もしくは集落地の周辺にあって、一つは大気の浄化、気象の緩和などの生活環境の保全及び形成に資する森林、二点としまして、その林相が郷土樹種を中心として安定し、針葉樹、広葉樹混淆の複層林相をなすなど、レクリエーションなどの公衆の保健休養に資する森林指定することといたしております。  したがいまして、森林の内容及びその施業方法等は、第一は、主として大気浄化等の生活環境の保全、形成に重点を置く場合であれば、光合成能力の大きい林分、すなわち成長量の高い樹種、たとえば杉などでございますが、そういう樹種で構成される壮齢林や、大気汚染物質の吸着機能が高く、かつまた病虫害に対しても抵抗性があり、それから葉の量も多いイチョウ、プラタナス、二七アカシアなどで構成されている森林が望ましいと考えております。第二点としては、主として保健休養に資する場合は、優美な景観、それから良好な林内環境を維持する観点から、多様性のある森林で、地域の特色を生かした個性のある森林がよろしいわけであります。天然林と人工林、それから幼齢林から高齢林までを適正に配置しまして、樹種としては郷土樹種が主体となるのでございますが、たとえて申し上げると、関東地方ならばアカマツ、ケヤキなどにクスノキとか桜、ツツジなどを配するのがいいのではないかというふうに考えております。  したがいまして、普通林とは目標樹種が異なる場合がありますほか、適正な混肴林、複層林に誘導することが望まれるなど、施業方法においても普通の森林とは異なる点があるわけでございます。
  190. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 林野庁長官にここで一つ、次の問題に入る前にお聞きしておきたいのですが、これは林野庁長官の私的研究機関であろうと思うが、保安林制度問題検討会というものがあって、座長に奥原日出男氏がついておりますが、これを林野庁はかなりウエート高くいろいろと取り入れておられるのじゃないかと思いますけれども、この保安林制度問題検討会について、林野庁はこれをどういうふうに評価しておられるのか、その点お答えをいただきたい。
  191. 福田省一

    福田(省)政府委員 この検討会は、保安林制度につきまして緊急に措置すべき事項について、現地検討会を含めまして、前後五回にわたって、各層にわたる学識経験者によって広く検討をお願いしたところでございます。  そのメンバーは十三名からなっておりまして、専門分野も、林業をはじめとしまして、自然保護、造園、交通工学、補償制度、森林利水など広範にわたっておるわけでございます。したがいまして、検討の内容につきましても水源涵養災害防備保安林配備、それから指定施業要件の整備、それから生活環境保全のための保健保安林の拡充強化、それから保安林の解除手続の適正化、保安林整備臨時措置法の取り扱い、そのほか補償措置、助成措置等費用の公的負担に関する問題、それから保護監督体制など、ほぼ保安林全般にわたって検討が行なわれたのでございます。  この専門の委員さん方のお名前を申し上げましょうか。(瀬野委員「いいです」と呼ぶ)  以上でございます。
  192. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 せっかくこういう委員を設けられておりますが、私も名簿を持っておるわけですけれども、学識経験者、各界、各階層の人がかなりおりますけれども、われわれの立場から言えば、もう少しこういったことに熱心な大学の教授だとか、篤林家とか、あるいは地元の山林所有者の代表とか、あるいは全森連なんかのメンバーとか、あるいはかつて外地で活躍した外林会の松川恭佐君とか、もう少し内容を検討して、構成メンバー等を考えていただきたいというような気持ちも実はしておるわけです。いよいよ保安林は多様化してまいるし、冒頭に政務次官から答弁がありましたように、今後保安林の問題はかなり重要視されてくる。水資源の関係からも日本にはたいへんなウエートを占めておる関係がございますし、そういったことから、いろいろそういった希望もあるわけですけれども、これは長官のほうでこういった人を指名してお願いしておられるのか。構成メンバーについてもぜひ——一、二、例を私は言ったけれども、これは決して私が押しつけるわけではなくて、広範にもっと考えてもらいたいという希望を持っておるわけですが、その辺のことはどういうふうに考えておられるか。  それから、先ほども質問しましたように、この保安林制度問題検討会は、いわば林野庁長官の諮問機関みたいなものになっていると思いますし、この意見をかなり尊重しておられるように思うが、十分尊重して検討を進めておられるというように理解していいのか。  その二点について、簡潔でけっこうですからお答えをいただきたい。
  193. 福田省一

    福田(省)政府委員 今後の問題もございますので、御指摘の点は十分頭に入れまして対処してまいりたいと考えております。
  194. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、指定施業要件の見直しの問題について質問をいたします。  指定施業要件の見直しが本法一つの柱になっております。今後ますます規制がきびしくなることも当然でございますが、その基本的方向はどういうように考えておるかということをお尋ねするわけです。  いま申しました保安林制度問題検討会等の報告書等をずっと見ましても、水源涵養保安林については、一カ所当たり伐採面積の縮小等を内容とする指定施業要件の変更を進めることが必要であるというように言っておりまして、伐採方法をきめこまかく指定することを考えているというふうになっております。いままでの五段階を今回は十三段階に分けるやに聞いておりますが、その点、御答弁をいただきたい。
  195. 福田省一

    福田(省)政府委員 地域開発の進展に伴いまして、保安林の保全対象が大きく変化していますこと、あるいは、集中豪雨の発生によりまして保安林自体の現況が変動していますこと、森林の持っておる環境保全機能に対する要請が非常に強まっておること、こういうことから、昭和四十五年以来指定施業要件の基本調査を行なったところでございます。今後におきましてもその改善をはかっていくように考えておりますが、いままでの取りまとめ結果によりますと、大面積に伐採することによって崩壊の危険を生ずるおそれのある個所等につきましては、一カ所あたりの皆伐面積の縮小、あるいは皆伐から択伐への伐採方法の変更といったようなことが主になっておりまして、その見直しの中間報告によりますと、約九割近くがこういったような縮小の方向になっております。逆に、ある程度緩和してもいいのではないかという場所もございますが、これはほとんど例外的なものでございます。
  196. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、施業要件の変更が規制の強化につながる場合には、保安林の新規指定と同様に相当の困難が今後起きてくるということは当然のことだと思うのです。指定施業要件の見直しということば、既設の保安林のすべてが対象となってくるというように当然理解されるわけでございますから、必ずしもすべてが変更されるとは限らないと言っても、相当の件数とか面積が変更になるということは、これまた当然のことでございます。そこで、これらを円滑に進めていくということになりますと、その具体策はどうか、さらには、国はこれらの実現にいかなる努力を払うように考えておられるか、この点についてお答えをいただきたい。
  197. 福田省一

    福田(省)政府委員 今後の保安林整備につきましては、水源涵養保安林保健保安林を主体に指定を進めることを方針といたしております。保安林指定は、通常の林業経営活動に相当の制限を課することになりますので、森林所有者に対する助成の拡充などによりまして、その負担を極力軽減する必要があるものと考えております。このことはまた保安林機能を高める意味でも重要であると考えております。したがいまして、今後保安林指定の促進を進めるにあたりましては、立木の伐採制限に対する補償の一そうの充実をはかりますほか、農林漁業金融公庫による伐採調整資金の貸し付け、それから税制上の減免措置、造林補助制度などの各般にわたる施策の拡充をはかるようにつとめてまいる所存でございます。
  198. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上、いろいろお尋ねをしてまいりましたが、次に、流域保全保安林の費用負担問題、いわゆる受益者負担問題について、昨年の森林法の一部改正のおりにも、三時間、四時間にわたって質問した際にこれを指摘したところでありますし、ことしも数回にわたって当局にいろいろその考えをただしてきたところでございますが、法案の審議にあたって、再び具体例をもって、これら法制化について、長官をはじめ当局に今後ぜひ積極的な検討をしていただきたいということで、提案かたがたいろいろとさらに私は要求するものであります。  それは岐阜県、愛知県、三重県のいわゆる木曽三川水源造成公社の問題を例にとって、年間七千五百万円が山林所有者に還元されておるという例を指摘したところでございますが、さらには、大阪府、兵庫県あるいは大阪市等から出資と融資を受けておるところの滋賀県の造林公社の例があります。また、昨年の九月、群馬県議会で、利根川下流六都府県は群馬県の造林治山ダム建設などにおいて受益者としての責任を果たせといった趣旨の議決を行なっておりまして、水源地帯である山村地域の負担のみによって水の安定的供給を確保するのではなく、たとえば長期にわたる適切な林業活動を通じて得られる水源涵養保安林機能発揮のために要する経費については、水需要地帯でもこれを負担することを今後検討する必要があるということも、いわゆる先ほど申しました検討会の意見の中にも、報告書となって出ております。群馬県の例ですと、森林面積約四十万ヘクタールのうち約半分の二十万ヘクタールが保安林指定され、造林治山ダム建設等にからんだ国の助成に対する地元負担も相当の額に及んでいると言われまして、たとえば造林に対する県負担は、造林公社への融資を含めて約七千五百万円、治山事業では約六億九千万円が計上されている。こういうような現状に対して、政府はこういった問題をぜひ十分に検討してもらいたい。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  御承知のように、昨日来から雨が降りまして、少し水かさが増したのじゃないかと思いますけれども、東京都の水も、いわゆる東京の水がめが底をついて、貯水量はあと二週間ということで、二、三日前にはたいへんな問題になりまして、対策はお手上げだ、史上初の春の給水制限も必至だというようなことが言われたりしまして、利根川水系をはじめ、東京の水資源等もたいへん苦況に立たされております。これはいまだかつてないことでありますけれども、今後ますますこういったことは深刻になってまいりますし、先ほどから政務次官もこの水需要の問題に対しては深刻な答弁をなさっておられましたが、こういったことを考えましたときに、こういった制度を法制化していくということをこういう機会に強力に御検討いただきたいと思うのですが、その点について当局の御見解を承りたい。
  199. 福田省一

    福田(省)政府委員 最近の経済的、社会的諸情勢の変化の中で、国土の保全、それから水資源涵養環境保全など、保安林の持っています公益的機能に対する要請が急速に高まってきておりますことはたびたび申し上げておるとおりでございます。これらの機能を発揮するような森林の維持造成が必要でございまするので、このような森林の造成に必要とする費用につきましては、社会全体で負担するほか、特定の受益者がある場合には、これらの者に応分の負担をさせることが十分に成り立ち得ると考えておるのでございます。  そこで、特に、水源涵養機能につきましては受益関係が比較的明確でございますので、現在でも、水源地帯の造林について、下流の地方自治体あるいは電力公社等が費用の負担を行なっている例は先生御指摘のとおりにございます。しかしながら、現在のところ、受益の程度の量的な把握につきましては、法制化し得るほどにまだ明確にされておりませんので、これらの点を明らかにする試みとしまして、現在、林野庁におきまして、「森林の公益的機能計量化調査」を実施しておりますが、さらに四十九年度におきましては、「森林の造成・維持費用分担関係設定調査」という、ちょっと長い名前でございますけれども、利根川の流域におきましての調査を実施することにいたしております。これらの調査成果を踏まえまして、適正な費用負担のあり方について検討を進めてまいりたいと思っております。  なお、この検討と相まちまして、事実上費用の負担、森林施業などについて、上流部及び下流部による協議を行なう協議会の設置についても検討してまいりたいと考えております。  御指摘の点につきましては、できるだけ早期に確立したいというふうに考えて、われわれも真剣に取り組んでおるところでございます。
  200. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 現在設定のための調査を実施しつつあるということについては、協議会等を開いたりして地元といろいろ協議をするということでしょうが、早期に確立すべく努力をするというようなことでけっこうだと思います。今後の農村の過疎対策のためにも、また森林所有者が意欲的に森林造成に励むためにも、いずれこれはぜひ法制化をして、こういったことをまとめてまいりたいと私は思うわけです。  それで、その際、この受益者負担制度をつくる場合に、現在も御存じのようにデモクラシーの時代でございますので、単に受益者が負担するだけでなく、いわゆる山林所有者に対しても、受益者のほうから山林の森林施業に対して発言の機会を与えられるようなシステムを当然考えるというふうにすべきであると思うわけです。そして初めて受益者も負担の意義があるし、山林所有者等も意欲的にまた森林施業を行なっていくということにもなろうかと思います。今後検討する問題でありますが、そういったことについての協議会等も考えるべきだという意味だろうと思いますけれども、そういったこともあわせ十分検討していただきたいと思うのですが、長官、その辺をおくみいただきたいと思うのですが、どうですか。
  201. 福田省一

    福田(省)政府委員 御意見のとおりでございまして、先ほど協議会設置と申し上げましたのは、まさにそのものでございます。
  202. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、本案に関連する問題で、本論の中で若干指摘している問題をこの席で私はお伺いしたいのであります。  去る三月二十九日の予算委員会の総括質疑で、田中総理をはじめ農林大臣、環境庁長官、防衛庁長官等関係閣僚に対し、日光国立公園内の国有保安林自然保護の見地から、栃木県の塩那道路五十・四キロメートルの乱開発について指摘したところでございますが、この問題についてその後若干の調査をしておられると思いますけれども、雪なんかもあった関係で、どの程度できておるか疑問でありますけれども、総理も総点検をして結果を報告するということになっておりますが、大体いつごろに報告できるか、その中間報告をお願いしたいのであります。
  203. 福田省一

    福田(省)政府委員 塩那道路につきましては、先般予算委員会で御質問があったのでございますが、林野庁におきましても調査を進めているところでございます。先般来営林局あるいは県当局を呼びましていろいろと事情を調べております。この道路は標高千七百メートル以上の個所を通過する部分もございまして、高標高地帯と申しますか、六月上旬まで積雪のため現地調査は不能の状態でございますので、融雪を待ちまして直ちに調査にかかり、その結果を御報告する予定といたしております。  なお、現時点で栃木県に照会した結果、この道路は当初パイロット道路として開さくしたために、その道の構造物等が十分に設置されていないために、昭和四十九年度から五十八年度の間に、改良保全工事、保全代替工事、崩壊地復旧舗装工事などの実施を計画しているというふうに聞いております。
  204. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 細部については、先般総括質疑で指摘したところでありますので省略しますけれども、六月の融雪時期を待っていろいろと調査をし、報告するということでございますので、ぜひ徹底した調査をしていただいて、早急に対策を講じなければ、栃木県側も財政がかなり急迫しておるし、また、総延長が五〇・四キロという膨大な延長でございますから、沢に落ちた土砂、岩石等が累積しておりまして、自然も相当荒らされております。一たび災害があると下流でたいへんな大災害が起きるという可能性がありますから、十分対策を講じていただくようにお願いしておきます。  環境庁にお尋ねしますが、先般の総括質疑のときに、時間の関係で環境庁にさらに質問ができなかったのですけれども、この機会にお聞きすることは、環境庁はその後できたわけで、当時は厚生省が所管していたわけですが、いかなる理由でこのパイロット道路を当時許可されたのか、その辺のことはどういうふうに認識しておられるか、お答えをいただきたい。
  205. 江間時彦

    ○江間政府委員 塩那道路に関しましては、先生が先日予算委員会で御指摘になったような事情があるということはわれわれも承知しておるところでございます。その当時どういう経緯で許可がなされたかということにつきましては、われわれが調べましたところでは、通常の国立公園内における道路としての一般的ないろいろな条件は守ってもらうということで許可が下されたということ以外には状況が不明でございます。
  206. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ところが、いま現在見てみると、条件は守られておったですか。その辺はどうですか。
  207. 江間時彦

    ○江間政府委員 ただいま林野庁長官がお答えいたしましたとおり、われわれも現地の調査をしたかったのでございますが、まだ雪が積もっておるということで実情調査をできないような状態でございます。
  208. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 雪があってやむを得ないと言えばそれまでですけれども、いずれ融雪したときにおいては調査していただくことにして、現在、雪はあっても、両サイドからかなりのところまで行けるわけです。しかし、これは林野庁とともに調査をしていただくということになっておりますので、それにまつこととして、環境庁にさらにお尋ねしますけれども、この塩那道路に限らず、全体的な問題として、従来と現在では経済的機能から公益的機能にずっと変わっていくことは十分百も承知のことでございますから、公益と保安とはどちらが優先するかという点については、環境庁は率直にどういうふうにお考えですか。
  209. 江間時彦

    ○江間政府委員 いろいろな考え方があろうかと存じます。一般的にわれわれの生活水準を上昇させるためには開発も必要でございますが、片一方で自然を保護しなければならないという要請もあるわけでございまして、そこら辺の調整は社会通念に従って考えなければならないと思います。一般論といたしましては、最近は自然保護についての要請が非常に高まっておりまして、われわれもその方針に従って対処しておるつもりでございます。
  210. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 自然公園法の規定ではもちろんいろいろ規定されておりますけれども、いままで需要に見合った道路がだんだんふえてきたというふうにわれわれは認識しておるわけですが、御承知のように、東欧、アメリカ等においてはこういった保護が徹底しております。日本よりはずいぶん進んでおるわけです。御存じのように、自動車がどんどん山林に入りますと、排気ガスで相当森林が痛むし、また、道路を開設しますと、道路の両サイドは、いままでうっ閉していたクローネという森林のうっ閉度が破れて中が乾燥する、あるいはまた通風が激しくなるということで、道路側からだんだんに樹木が枯れていくということが至るところに見られるわけです。それで、道路の両サイドには、これらをカバーする林縁に適当な樹木を植えるというようなことで保護しなければならないというようなことを四、五年前から私はずいぶん指摘しておるところでありますが、これがなかなか徹底されないということで、天然下種を待って自然に林縁ができるような状態に放置されているのが現状でございます。そういったことをいろいろ思いますときに、自然と開発の調和ということはもちろん十分承知しておりますけれども、いたずらにこういったところの開発を進めますとあとで取り返しがつかない、植生が変わる、どんどん車が来ますと、ビンは投げる、動物は追い出される、あるいは高山植物が盗掘される、また樹木が枯損する、と、こういうようにいろいろなことがあります。そういったこともありますので、場所によってはどうしても開発せざるを得ない場所ももちろんあるとしても、こういったことを十分配慮した上で、自然を保護する意味で十分な配慮をして、自動車道を避けて歩道にするというようなことも十分取り入れていくというようなことが今後必要である。こういったアプローチを十分環境庁は検討して、林野庁ともよく協議しながらやってもらいたいというふうに私は考えておるのですけれども、その点の御見解についてお答えをいただきたい。
  211. 江間時彦

    ○江間政府委員 先生が御指摘のように、最近は車による道路の需要が非常にふえておりまして、つい数年前までは確かにその需要に追いつくということに非常に大きな力点が置かれたということも事実でございます。しかしながら、最近、われわれの考えといたしましては、需要に追いつくということに追われておりましたならば自然の破壊がきわめて大きくなるということも十分認識をいたしておりまして、最近における国立公園内を通ります道路の認可につきましては、極力慎重な態度で臨むという方針を貫いておりまして、この一、二年間における態度の変化というものは、いろいろな道路の認可についての状態をごらんいただけばおわかりになると思うわけでございます。
  212. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁の最近の姿勢については、いまおっしゃることは私も十分認識しております。そういった意味で、十分強力にそういったことを推進していただくようにお願いするわけです。  そこで、これまたさらに環境庁にお尋ねするわけですが、先般の予算委員会の総括質問でお尋ねする予定でしたが、時間の関係で割愛したのですけれども、裏男体の有料観光道路の問題です。裏男体スカイラインと言っておりますが、昨年十一月に業者が建設申請書を正式に提出しまして、現在県段階でとまっております。手続の順序から言えば、いずれ栃木県から環境庁に申請書が送られることになってくるわけでございまして、その時点で環境庁でこの道路建設は十分検討し、慎重に現地を調査し、中止をされるよう私は強く望むものでございます。地元の自然を守る会あるいは自然保護協会等、これらの問題については、住民あげて真剣な反対のための要請活動も行なわれております。先般も、三月二十八日ですか、栃木県と地元側の交渉が持たれて、宇都宮大学教授をはじめあらゆる各階層の人たちが要請をしておりますが、ちなみに申しますと、この道路は国際的観光地として知られる日光に隣接しながら、表日光地区には約二百頭のニホンシカ、二百ないし二百五十頭といわれるニホンザル、カモシカ、ツキノワグマなどがおりまして、こういった大型補乳類をはじめ、キツネ、テン、イタチ、リス、オオルリ、サンコウチョウ、ワシ、タカ類などの豊富な鳥獣が生息いたしております。首都圏からわずか百キロの地域にこれほど鳥獣の種類と数が豊富であることは動物学上非常に貴重であります。それというのも、この地域一帯は、一八八二年に宮内省日光御猟場として設定されたのを振り出しに、その後一九二六年に農林省の管理による国営猟区となり、野生鳥獣の個体数管理がなされていたから今日こういうふうに残っておると言われております。  また、植生面では、シロヤシオの群落をはじめ、最近では珍しくなった直径八十センチメートル以上のミズナラ、ブナの落葉広葉樹林が点在しておりまして、特異な景観を呈しております。もちろん、高地には、亜高山帯の針葉樹林であるオオシラビソ、コメツガの林があります。  こういったことは、私も、昭和四十五年、四十六年と、日光ないし奥秩父の自然保護の問題で国会で数回にわたって指摘をして、一時とまっておったのですけれども、さらに今回またこういった道路の建設が台頭しております。もちろん、この道路は、御承知のように、現在日光から光徳牧場に通ずるところのいろは坂を通っていく道路のいわゆるバイパスとも言われておりまして、その必要性は私もわからぬではありませんけれども、いま申し上げたように、あらゆる動物または植生面からもあまりにも重要な地点で、これらの道路が通ることになりますとたいへんな乱開発になってくるということで憂慮されております。すなわち、今回の道路は、男体、大真名子、小真名子、女峰、赤薙の山々に囲まれたこの地域を縫うようにして建設される予定でありまして、いわゆる裏男体有料観光道路の計画ということでございます。この有料道路の予定地域は、しばしば指摘しておりますごとく、亜高山帯のきびしい気候を持っておるわけでございまして、このきびしい気候帯を通過するということで、いままで草木はこのきびしい岩にしがみついて育ってきたということで、これを開発するということになれば、一挙にはなかなか育たない。五百年、千年しないとなかなか復元しないという地帯が数多くあるわけでございます。また、全般的には、男体溶岩とか火山砕屑物等が互いに層をなしておりまして、きわめて脆弱な地域であり、治山事業特別地域に指定をされておるところであり、この地域に幅広い道路を建設するということは、これに起因する土砂崩壊、水害等の災害を誘発することは明白であり、無謀と言わなければならないと私は思うわけです。そういったことで、いずれ環境庁にこの書類が栃木県からあがってくるかと思いますけれども、私は、わけのわからぬ反対をするという立場でなくて、専門的立場から十分現地を見、また意見を聞き、日光の状態も、十数回現場をいろいろと調査をした経過からこういったことをしみじみ思うわけですけれども、先ほどから、環境庁からは、極力慎重な態度で臨んで、認可にあたってはきびしく臨むという答弁もありましたけれども、それは当然である。三木環境庁長官としても、こういった姿勢は従来からますます強くはなれ、弱くはなっておりません。そういったことを考えましたときに、きょうは長官はおいでではありませんけれども、この裏男体スカイラインの建設については十分な態度をもって臨み、中止をされるなり、また、これらの審査にあたってはよく現状を調査されて検討されますように強く要求するわけですが、長官にかわって環境庁から、これに対する御見解を承りたい。
  213. 江間時彦

    ○江間政府委員 先生が詳しく申されましたように、裏男体道路の予定地域におきましては、きわめて貴重な野生動物であるとか植生のあるところでございまして、われわれといたしましても、この自然は守っていかなければならないというふうに考えております。  現在、この道路の建設につきましては、栃木県に申請がとまっておるようでございまして、われわれのところにはまだ進達がなされておりません。進達が行なわれました段階で、先ほど来申し上げましたようなきわめて慎重な態度で本件を検討させていただきたいと思っているわけであります。
  214. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 現在、この裏男体有料観光道路については栃木県で書類がとまっているということは、そのとおりであります。これらの道路についてはぜひ調査をされて、中止をするということで御検討いただきたいということを重ねてお願いしておきます。  そこで、次は林野庁にお伺いしますけれども、村上営林署管内の新潟県と山形県の県境のわらび峠一円も国有保安林になっておりますが、村上営林署が昭和四十七年十月に掲示板を立てて、水源涵養土砂流出防備保安林として、ここは国有保安林です、木を切ったり草や土石などをとることはできません、と、仰々しく掲げております。私は現地を見まして、写真をとってきましたので、長官並びに政務次官、ひとつこれをよく見てください。——この林道もまさに無謀な開さくであると私は思うわけです。私の調査の数字から見てもきびしい結果になっておりますが、この実態を林野庁は、先日私は指摘をしておきましたので、いろいろ調査しておられると思うが、概要の御報告をいただきたい。
  215. 福田省一

    福田(省)政府委員 この道路は山形県小国町の町道樋沢付近から分岐しまして、山形、新潟県境を越えて、前橋営林局村上営林署内の三面国有林、三面川末沢支流に沿って計画されている国有林林道でございます。現在延長が一万三千三百三十五メートル、今後の計画延長ば四千九百二十メートル、幅員三・六メートルの林道でございます。この林道の利用対象地域は磐梯国立公園地域でもございますし、林道の開設にあたっては、自然環境の保全には十分留意して実施しているところでございます。なお、今後は一そう環境の保全、災害の防止に配慮して実施してまいりたいと考えております。また、既設区間において保全工、それから路面の補修を必要とする個所につきましては早急に調査の上、補修工事を実施しまして、環境の保全、路面の維持管理につとめてまいりたいと考えております。  従来は、保安林指定施業要件の範囲内で一伐区十ヘクタール前後の皆伐を行なっていたのでございますけれども、昭和四十八年度以降は保安林指定施業要件の範囲内で伐採を行なうことはもちろんのこと、国有林野における新たな森林施業のこういった方針に基づきまして、一伐区の大きさをおよそ五ヘクタール以下にしますとともに、保護樹帯を設置するなど、国土保全等には十分配慮した施業を行なうようにしてまいりたいというふうに考えております。
  216. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま概要報告がございましたが、お手元の写真を見られればわかるように、肉眼で見ても相当の崩土があり、それから沢に土砂が落とされております。いわゆる土どめ工事をきちっとやってやればこういった乱開発にならぬのじゃないかと思うのですけれども、模範を示すべき林野庁の国有保安林の中の林道であるにかかわらずこういったことをしますと、民間に示しがつかないというようなことで、私は、これは問題であると思うのです。こういったことは全国にあちこちにあるわけですけれども、一例を申し上げたわけですが、これについては本日の本題ではありませんので、きょうはこういったことを指摘しておきまして、この分についてはいずれまたあらためて一般質問等で取り上げることにいたしますから、十分な対策、検討をなされてもらいたい。そして、今後四千九百二十メートルをさらに再延長するということでございますし、保安林の中のことでありますので、環境庁も十分な検討を進められて、慎重に臨んでもらいたい、こういうことを指摘しておくわけでございます。  次に、環境庁にさらにお尋ねいたしますが、保安林は、国民は言うまでもなく、人類の生命を守るものであるという観点から、災害森林火災など特別の場合における措置は別としても、一つには高山地帯、二つには亜高山地帯——これらは気候が悪くて気流が激しい、また、寒い、雪も多いといったことから、なかなか木が育たないところであります。三つには岩石地帯、四つ目には急傾斜地帯、五つ目には表土の薄い地帯——これらは、切ったあとでもなかなか植栽がむずかしい、雨が降れば、場合によっては土砂流出するというところであります。六つ目には地盤の不安定な地帯、これは地すべりの原因となる。七つには景観がすぐれている地帯、これは原則として伐採を禁ずべきものである。かように思うわけです。もちろん、保安林の維持、培養上からは手を加えることはあっても、さきに述べた理由によって、森林を伐採したがゆえに、大雨が降り洪水になったときとか、または暴風雨があった場合等を考えますと、災害の元凶になるということは当然のことであります。  そこで、さきに指摘しました七つの地帯に対する問題について、環境庁の基本的な見解をまずお述べいただきたいと思うのであります。
  217. 江間時彦

    ○江間政府委員 保安林にはそれぞれ保安林指定目的がありまして、その目的に支障を与えない範囲で慎重な施業が行なわれるということをわれわれは希望しておるわけでございまして、その線に沿って林野庁は対処しておられると思うわけであります。われわれのほうといたしましては、自然を守る上で必要な限度におきまして、自然公園というような制度のもとで、国立公園、国定公園、その他の公園という形で必要な地域の指定を行ないまして、それぞれの地域に自然の重要度に応じた規制を行ないまして、それが保安林である場合には、森林施業につきまして極力慎重に行なわれるように林野庁当局にも希望し、また、そのとおり行なっていただいておるわけであります。
  218. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官がビート価格の問題でいろいろ検討したいということであるので、政務次官並びに大臣にお尋ねしたい問題は後ほどに保留することにしますが、ビート価格も明日いよいよ決定するということで、たいへん重要なときでありますので、ぜひひとつ北海道のビート作農家のために——ことしはかなりきびしい値段のようで、われわれが期待している額よりもかなり下回った数字をいろいろ仄聞しておりますから、ビート価格の決定にあたっては十分慎重に臨まれ、再生産に見合う決定をされるように心から期待しておきます。審議が始まるということでありますから、保留しまして、退座されてけっこうでございます。  林野庁長官伺いますが、いまの問題について、林野庁長官の立場としてはどう考えるか、同じ問題に対する見解を承りたい。
  219. 福田省一

    福田(省)政府委員 日本の山岳地帯は、御指摘のように、気候の点あるいは地形の点から非常に問題の多い地帯でございます。そういうような地帯におきましては、自然公園としての環境庁の指定された場所もございますし、また、保安林として特に規制をして、ここで適正な施業を行なうという地帯もあるわけでございます。なお、また、治山事業等も積極的に推進しまして、そういった地帯の保全を十分に行なってまいりたいというふうに考えております。
  220. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それだけ伺っておきまして、きょうは時間の関係もあるので、問題を指摘して、その見解を承る程度にしておきますが、このほか全国的に私がいろいろ調査している中でも、数多くある国有保安林の中で、特に次の個所について私は指摘をしておきたいのであります。  一つは、北海道の大雪山国立公園、阿寒国立公園においても、トドマツ、エゾマツ等の原生保安林がどんどん切られているわけですね。もちろんこれは施業要件に基づいて、と、こうおっしゃるかと思いますけれども、それにしてもかなり大面積の皆伐がなされつあつるということを指摘せざるを得ません。  二つには、青森県下北国定公園の恐山と津軽半島の国有保安林でヒバの原生保安林が切られております。  三つには、東北地方、秋田、山形、福島県、磐梯朝日国立公園、新潟、茨城県等の中で、ブナの原生保安林が、これまたかなり切られております。  四つには、栃木県日光国立公園、いま指摘しました裏男体は亜高山地帯の国有保安林でありますにもかかわらず、道路に関係ないところがさらに伐採が進んでおります。  五つには、埼玉、長野、山梨県、東京都に連なる秩父多摩国立公園の中の亜高山地帯の国有保安林が、これまたかなり伐採が進んでおるわけであります。  六つには、奈良、和歌山県境、紀伊半島の高野竜神国定公園、ここにおいても、ブナ、カシの原生保安林が三千ヘクタールと言われるほど切られております。  七つには、同じく奈良、和歌山の吉野熊野国立公園で、これまた民有林を含めて七割が伐採が進められております。  八つには、和歌山県の大塔山、ここは山が深く、なかなか森林も深いために植生が多いところでありますが、大阪営林署で七百ヘクタールを伐採しておりますし、現在、民有林千ヘクタール、国有林千ヘクタールが残っておるのみになっております。  いろいろありますが、特にこれらのところは得がたい国有保安林でありまして、この指摘しました八つの個所については、環境庁では原生特別保全地域に指定して残したいという意向を述べられておるが、林野庁がなかなか承知しないということで、これらがうまく調整がついていないまま今日いろいろと伐採が進んでいるというふうに私は理解をしているのですけれども、環境庁も一つ一つについての説明はたいへんだと思いますので、これは後日また機会を得て、一つ一つについていろいろと内容を質問して検討することにいたしますが、総まとめとして、こういった問題について  いかなる見解をお持ちであるか、環境庁からお答えいただきたい。
  221. 江間時彦

    ○江間政府委員 お答えいたします。  自然環境保全地域等の指定につきましては、保安林の調整などの取り扱いの問題を含めまして林野庁と調整を進めておりますが、まず、第一次分として、先日五地域の候補地について合意に達したわけでございまして、自然環境保全審議会にはかって了承を得ております。近日中に五地域を正式に指定する運びになっております。  なお、環境庁としましては、今後、第二次以降の指定予定地につきましても逐次その指定順を進めてまいりたいと思っておるわけでございまして、先生のおっしゃるようなトラブルはなく、きわめて円滑に協議が進んでおるわけでございます。
  222. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上の問題について林野庁の見解を承るわけですが、世上の話をいろいろわれわれがキャッチしておるところによると、林野庁は環境庁との調整がなかなかうまくいかない、林野庁はなかなかうんと言わないので問題が解決に至っていないということを言うわけですが、これらに対しての林野庁の見解を長官から承っておきたい。
  223. 福田省一

    福田(省)政府委員 昨年出しました新しい施業方針に基づきまして、保安林につきましては、より一そう指定施業要件の見直しをいたしながら厳正な保護を加えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。基本的には、活力のある森林を造成するというための伐採でございますので、ただいま先生から御指摘のございましたような乱伐というふうな形のものが過去においてあったとすれば、すみやかにこれを是正してまいる考えでございます。  なお、環境庁との調整の問題につきましては、具体的には、たとえば原生自然環境保全地域の問題につきましては、屋久島、南硫黄島あるいは大井川源流部とかいうふうなところにつきまして検討したいという申し入れもございまして、林野庁としては、これを受けまして具体的な検討に入っているところでございます。そういうふうにいたしまして、環境庁と林野庁とは、具体的な面におきましてよく検討し、協議してまいりたいというふうに考えております。
  224. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁とは具体的に協議をしてまいりたいということでありますが、時間の制約もあることですから、きょうはこういったことの問題を指摘をしておきますので、いずれ機会を得て、一つ一つについて林野庁並びに環境庁の御見解を承っていくということにいたしたいと思います。  次に、保安林の解除手続の問題についてお尋ねしますけれども、保安林の解除は、森林法第二十七条によりまして、地方公共団体の長または直接利害関係者が申請できることとなっておりますが、直接利害関係者が保安林の解除を申請する場合、解除の結果が地域住民の利益をそこなわないようにするために、林野庁は通達をもって、市町村の同意書を添付して都道府県知事に申請するよう措置しておるようでありますが、この通達というのが、昭和四十五年六月二日付、四五林野治第九百二十一号、四十五年八月八日付、四五林野治第千五百五十二号でありますけれども、このとおりでございますか。
  225. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  226. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、この保安林解除手続という問題については、今回の保安林整備臨時措置法の一部改正に重大な関係があるわけですが、従来から全国各地でたいへん問題が起きているわけです。従来、保安林を解除する場合は、地域住民がお願いをする関係で、同意書をとる。そして、お願いをする。われわれはこれは常識のように思っておったけれども、実際は法的には何ら規制がない。先ほど申しました林野庁の二つの通達によって行なわれているということで、そこらをめぐっていろいろな問題が起きておるわけです。保安林が二カ町村、三カ町村にまたがる場合に、一町村ならば一町村でまたいろいろまとめようもあるけれども、二、三カ町村にまたがる場合なんかもいろいろと他の町村との関係があるということで、問題も起きてくるし、現に一町村の場合でありましても、先般私が指摘をして調査を依頼しておきましたが、群馬県利根郡川場村のゴルフ場開発をめぐる贈賄事件が起こったわけであります。これはゴルフ場建設予定地の保安林解除申請をめぐり、議長と村長がかってに村議会でゴルフ場誘致を議決したという架空の決議書を添付していたもので、すなわち解除申請を有利にしたものであります。  もう一つは、同じく群馬県吾妻郡高山村でも、ゴルフ場建設に伴う保安林解除汚職問題が起こりまして、県議会でも大問題となり、これに県議会議員が関与しているとかしていないとかいうことでいまだに問題がこじれておりますが、当の高山村の村長さんは、一月十七日、現職の村長でありながら逮捕されているという事件が起きている。また、群馬県では、県内に、大規模土地開発規制にかかる事業が、ゴルフ場だけでなく、事前協議中のものだけでも二十三件、事前協議終了のものが二十件、公式にあがっているものだけでも四十三件ある。そのうち、高山村を含めて、ゴルフ場建設にかかわるもので、市町村に保安林を有するもの九カ所くらいがあるということで、これを言えば切りがありませんけれども、従来からしばしばこの委員会でも問題になりましたように、特に群馬県はゴルフ場が多いということで、特にこの問題に焦点をしぼって私は指摘したわけでありますが、次々にいろいろな事件が起きてきているが、全国的にこういった問題があるわけです。これは林野庁のいわゆる通達によってやっている、法的規制がないということで、あいまいもことされているためにこういったことになっていると私は思うが、都道府県知事や直接申請にかかる件について、当該市町村長の解除の可否に関する意見を聴取することとすれば、かような事態は防止できるのじゃないかと私は思うわけであります。この解除について、現在、二つの、一片の通達でやっておられますけれども、今後保安林の解除申請等が多くなってくると、保安林の重要性にかんがみ、こういったことに慎重に臨むと環境庁も林野庁も言っておられるわけですが、これらの問題を踏まえて、これに対して十分検討し直さなければならぬと思うのですが、林野庁長官の御見解を承りたい。
  227. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林の解除につきましては、都道府県知事以外のものの申請によるものである場合には、森林法上都道府県知事は意見書を付して農林大臣に進達することとされておるわけでございます。その意見書の作成にあたっては、知事みずから所管市町村長及び直接影響を受ける土地等の権利者の意向を調査するように指導しておるのが四十五年六月の通達なのでございます。本件のような、御指摘のありました問題は、この運用にあたりまして、解除申請者が直接市町村長に意見書をつけて同意を求めた上で知事に申請するという方法をとったために生じたものでございますから、通達の趣旨にそぐわないものでございます。でございますので、今後は知事みずから市町村長の意見を聴取するという通達の趣旨が徹底するように、よく指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  228. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうすると、さきに指摘した二つの通達があったわけですけれども、さらに通達を出して、誤解のないようにまたこれらの問題について明快な指導をする、こういうことですか。
  229. 福田省一

    福田(省)政府委員 御意見のとおりに、さっそく指導してまいりたいというふうに考えております。
  230. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 先ほど指摘しました群馬県利根郡の川場村の贈賄事件、また、群馬吾妻郡の高山村のゴルフ場の建設に伴う問題、これは長官は十分御承知でございますか。
  231. 福田省一

    福田(省)政府委員 承知いたしております。高山村の村長ですか、これが逮捕されたということも承知いたしております。新聞でも見たところでございます。
  232. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 長官も十分おわかりだと思いますけれども、こういった問題については、これに似たようなものが幾らもあるわけです。市町村としては、受益者代表として、どうしても保安林解除をしてもらいたいために、いろいろな贈収賄をしたり、あるいはまたいろいろな手を打ったりするわけです。そういったことで、こういったことがあとを断たない。実際はこれは自治省にも関係する問題だと思ったりするのですけれども、こういったことについては、通達でなくて、森林法の規定等の中で法的にきちっと明確にするというようなことは考えられぬものですか。その点はどうでしょうか。
  233. 福田省一

    福田(省)政府委員 御意見は十分尊重いたしまして、よく検討してまいりたいと思います。
  234. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これは時間の制約の中でやるものですから、いろいろ詳しく申し上げられませんけれども、これだけ指摘したわけだし、また、私は前もってこの問題をいろいろ林野庁にも通告して検討を願っておりますし、他にもたくさんの例がございますから、これに対してはきちっとした態度で臨んでもらわないと、今後いろいろ保安林解除が全国的にたくさん出てくるので、第二の川場事件、第三の川場事件が起きないとも限りませんし、市町村をかえって苦しめるということになります。そういった意味で、十分に、そして早急に検討して対処してもらいたいと思います。  次に、保安林の買い入れ問題で若干お尋ねしておきますけれども、林野庁の調べによりますと、保安林は実際に一号から十二号までありますけれども、一つは現在該当がないので十一となっておりますが、その中で、一号から三号の保安林の場合は、国による買い入れは、第一期が二十九年から三十八年で、達成率が四〇%と、低い。また、第二期は三十九年から四十八年で、目標面積が第一期の半分になったにもかかわらず、その実績というものが四十七年度末で二三%という、これまたまことに著しく低くなっております。ここ数年は年を追うごとに賢い入れがだんだん減少しているということでありますけれども、この原因についてはいろいろ指摘をされたところでありますので、一応了としますが、これは、林地や木材価格の値上がり等が森林所有者の売り渡し決意をだんだん鈍らせたまま価格交渉をやりにくくしてきた面もあろうと私は思いますが、その辺はどういうふうに考えておられるか。また、本法が通過した場合に、十年間の再延長となりました場合には、当然こういったことはますますきびしくなってくるんじゃ、ないかというふうにも予測されますし、さらには、これらの問題について、改正後の買い入れ目標というものはどの程度ぐらいに林野庁は考えておられるか。こういった問題について、簡潔でけっこうですから、保安林の買い入れの問題について二、三点、指摘しました問題についての御回答をいただきたいと思います。
  235. 福田省一

    福田(省)政府委員 保安林の買い入れの計画計画どおりにいかなかったということについての説明は先ほど申し上げましたので省略いたしますが、今後におきます民有保安林の買い入れは、民有保安林行政の強化の方向をも考慮いたしまして、水源涵養、それから国土保全上特に重要な流域の保安林であって、たとえば過疎の進行等を考慮しまして、経済的、社会的、技術的問題から見て、その機能を高めていくために国で所有する必要のあるもの、これを対象にしたいと考えております。特に、国有林野の分布の少ない流域を重点的に推進してまいりたいと思っております。  買い入れの財源につきましては、国有林野事業特別会計の収支の状況を考慮するとともに、国有林野の活用に関する法律の第八条の規定に基づきまして、この法律の活用にかかわる売り払いなどの収入は、予算の定めるところによりまして民有林野の買い入れ等に充てることになってもおりますので、長期的にはこの両者を均衡させることとしまして、さらに必要が生じた場合には、一般会計からの繰り入れについても検討していく必要があるというふうに考えておるのでございます。  さようなことで、現在のおおよその目標面積でございますが、先ほどもちょっとお話しいたしましたように、保安林の制度につきましては、いろいろと助成制度も拡充してまいっております。そういうことから、最低五万ヘクタール以上は確保したいというふうに考えておるところでございます。四十九年度の予算は五千ヘクタールの買い入れでございまして、経費は六億五千万円程度を計上しておるのでございますが、これは、いま申し上げました最低面積に基づく年間の数量を新しい整備計画のできるまで暫定的に取り上げた数字でございますので、参考までに申し上げておきます。
  236. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、さきのゴルフ場の問題等に関連してお尋ねしますけれども、開発業者がゴルフ場等への転用の目的のために保安林または保守林の予定地を買い入れている。午前中もちょっと指摘されておったようでありますが、こういった問題について、最近は開発ができなくて困っているものがたくさんあります。私が知っているものでも、九州から北海道に至るまで八カ所、大きなゴルフ場が開発できないということで、われわれが先日審議しました農用地開発公団のほうで買い取ってくれぬかとか、あるいは模範牧場に何とかもぐり込むというような話もいまあります。だけれども、値段が相当高いために、これをすぐに牧場として受け入れるということもなかなかむずかしい。そこで、大企業はしっかりもうけたんだから、大企業のもうけた金で罪滅ぼしに買って、研究機関にこれを貸し与えろというようなことをしたらどうだろうかということもいまいろいろと進めておるところでございますが、実際にこういったものが今後ますますふえてくるであろうと思います。既設のゴルフ場でも、もうすでに赤字経営で成り立たないというものもちらちら聞いております。そういったことから、このままでは保安機能の高度発揮も期待できないというふうにも考えられる。そこで、国あるいは地方公共団体がこれらを買い入れる——もちろんそれは相当な額になるわけでありますけれども、国または地方公共団体が買い入れて経営をしていくというようなこと、あるいは大企業が買って地元に貸し与えるというようなこと、これも言うべくしてなかなか簡単にできないことでありますけれども、そういうようないろいろな方法があろうと私は思うのです。いずれにしても、林業経営以外の目的で取得したところの林地というものは価格が相当高い。また、これらを買い入れる場合に、すなわち、国あるいは地方公共団体が買い入れる場合等を想定した場合に、どのように算定をして買い入れるかというようなことが今後問題になると思うのですけれども、こういったことについては林野庁はどういうふうに考えておられるか、検討をいろいろ進めておられると思うのですが、この機会に答弁を承りたいのであります。
  237. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいまの先生の御指摘のように、開発目的のために大企業等が森林を買い入れておるという事態は相当数あろうかと思います。そういうふうなものが、今度の開発規制なり、あるいは金融引き締めなりということで開発がむずかしいということになりますと森林が荒れるではないかという先生の御心配であろうかと思いますが、そういう点につきましては、現在の森林法の規定の中で、森林所有者は地域施業計画にのっとった施業をやっていかなければならないし、また、都道府県知事はそういうふうにのっとって施業をするようにという勧告ができるということになっておるわけでございますが、そういうような場合に、保安林であるというようなことで国に買い入れを希望するという事態もあろうかと思います。ただ、先生のただいまの御指摘のように、開発業者が手に入れた場合の価格というのは、転用目的のために買い入れたわけでございますから、相当高価である。そういうものを、国が、その開発業者が買い入れた額で買い入れるということになりますと、そういう開発業者が何ら損失負担もしないで投機ができたというようなことにもなりますし、大体、国が保安林を買い入れをするという趣旨は、そういう保安林につきまして、国が国土保全上そういうふうな土地を森林として経営していくということが最も妥当であるという観点から買い入れをするわけでございますから、森林を経営するとした場合にどういうふうな価格になるかという観点から評価をいたしまして買い入れをいたすということになるわけでございまして、その点で価格交渉が不調に終わるということもあろうかと思いますけれども、かりに価格交渉が不調でありましたとしても、現在そういう森林を所有しておられる方につきましては、最初に申し上げましたように、地域施業計画にのっとった施業を行なうべきであり、また、それがそういう形で行なわれるように都道府県知事が勧告をするという仕組みが現在の森林法の中にあるわけでございます。
  238. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの林政部長の答弁のとおり、私もそういうふうにおおむね思うわけですが、御存じのように、ゴルフ場というものは、しろうとが見ますと一見なかなかきれいで、緑があって自然が保たれているように思いますけれども、実際にはつくられた自然でありまして、自然の山柴がある原野とはずいぶん違いまして、災害なんかのときにはたいへんな洪水の原因になるし、あるいはまた、場合によっては、これが崩壊しますと大災害の原因になるということで心配をするわけです。そういったことで、地域施業の計画にのっとった施業でいろいろ検討していただくことは当然でありますと同時に、この買い入れ価格が、土地ブームによって企業は相当高価な買い入れをして保有しているわけですから、売るときにも相当きびしい価格であろうと思う。そういった点の調整等を考えないと、結局価格が折り合わないために、これらが何ら利用されずにそのまま放置されて、それが災害の原因になるというようなことになるとたいへんなことです。全国的にこういった問題があちこちにすでに出つつありますので、当局もこれは検討の中に入れて十分対策を考えておられると思いますけれども、各地の営林局を叱咤して、こういったことを十分監視、指導し、情報を入れた上で、これらについても十分な対策検討を進めて、国土保全に十分当たっていただきたい、そして林野の使命を果たしていただきたい、かように私は指摘をしておきます。  そこで、次は、保安林の中で保健保安林の問題がありますが、この買い入れ問題についてお尋ねするわけですけれども、お聞きしたいことは、要するに現行法では一号から三号保安林の国による買い入れを規定するのみで、実際には、四号から十一号保安林の買い入れについては規定がないわけです。これについて、国の負担をも含めて制度化をすべきじゃないかと私は言いたいです。  御承知のように、今後の計画としては、保安林の新規指定予定が国全体で約百万ヘクタールというふうになっております。うち五十万ヘクタールは保健保安林等に充てるということでありますけれども、実際には、この五十万ヘクタールの中で、いままでの保安林とダブっておるものがありますから、二十万ないし二十二万ぐらいがダブっているというように私は思うのですが、残り二十八万ないし三十万が新規の指定予定ということであろうかと私は思うわけです。こういったことで、四ないし十一号の保安林の買い入れについての規定をぜひ明確化していただきたい、制度化していただきたい、と、このことを強くお願いするわけですが、林野庁長官はどういうふうに検討しておられますか。
  239. 福田省一

    福田(省)政府委員 保健保安林につきましては、いま御指摘がございましたように、一ないし三号保安林に比べまして、保全対象の範囲が地域的に限定されていますので、地方公共団体により買い入れすることが適当であるというふうに考えているわけでございます。これを法制化することにつきましては、その保全対象が限定されておりますし、強制買い取りの手法をもってまで行なう必要はないと考えております。また、買い入れ主体につきましても、国あるいは都道府県、市町村とのいずれが適当であるかの議論もあることでございますから、法律に盛り込むことにつきましては、買い入れの手法及び買い入れ主体につきさらに検討する必要があると考えておるのでございます。  しかしながら、最近におきます生活環境の保全の必要性の増大にかんがみまして、とりあえず四十九年度からは、新たに予算制度としまして、都道府県が生活環境保全整備事業の一環として、保健保安林と、それから一ないし七号の保安林との兼種保安林を買い入れる場合におきましては、国がこれに対して三分の一補助をすることにしたものでございます。また、保健保安林機能強化の事業につきましては、従来保全林整備事業としまして、森林の造成、改良事業をパイロット事業として実施してきたところでございますが、四十九年度からは、これを生活環境保全整備事業としまして、本格的な事業としてこれを拡充していく考えでございます。それで、二分の一補助といたしておるのでございます。
  240. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 にわかには法制化は間に合わぬにしても、いまの長官の答弁では、一号ないし七号を兼種保安林として三分の一補助する等、いろいろ逐次前進しておるようにも受けとめられましたが、こういったことについて、保安林の重要性にかんがみまして、全国百万ヘクタールの中で五十万ヘクタールが保健保安林ということでございますし、今後これらはますます国民的要請が強いことになりますので、今後の検討課題にするということでもあるようでありますが、これは国民の健康のためにも大事なものだし、また、いわゆる人類の生命を守るためにも大いにけっこうなことでありますし、ますます人類がふえ、乱開発あるいは公害が激しい中で、これについてはぜひ強力な姿勢で進めていただいて、行く行くは制度化をするということで、十分前向きの検討をさらにお願いしたいと思います。  このことでもう一点伺いますが、保安林指定によって資産価値が著しく低下してくるということは当然考えられるわけです。市町村においては、御存じのように固定資産税がなくなるというようなこともありますし、いろいろ個人的にも打撃を受けるわけですが、たとえば都市緑地保全法というのがございますけれども、これは地方公共団体に対する買い取り請求ができるようになっておりますが、こういったことを考えるべきではないか。すでにこれは外国でも、フランスでもアメリカでもできておりますし、いままではどちらかというと強制買い取りでございましたが、こういう民主主義の世の中でありますから、こういった買い取り請求というようなことも当然今後考えていくべきであると思うのですけれども、本法提案にあたって、こういったことについてはどういうような検討をされておられますか、お答えいただきたい。
  241. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 保安林につきましては、先ほど来長官からお話しを申し上げておりますように、現在、保安林について買い取りをするという規定は一号から三号までの保安林に限られておるわけでございます。先生御指摘の点は、いま保健保安林について買い取り請求権を認めるべきではないかという御趣旨であろうかと思いますが、その点につきましては、先ほど諫山先生からも御指摘がございましたように、保安林の制限に対する見返りと申しますか、そういうものに対する代償というふうな形のものの一つ考え方として、先生の御指摘の買い取り請求権というものは一つの方法であろうというふうに考えられるわけでございますけれども、ただ、四号から十一号までの保安林につきましては、受益の対象が限られておるとか、いろいろの問題がございまして、とりあえずの措置としては、都道府県知事が買収をする際に、それに対して国が助成をするということを一応措置の第一歩として講じておるところでございます。
  242. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、この保健保安林については、保健休養機能を高度に発揮するということになりますと、先ほどからいろいろ林野庁長官も答弁しておられるように、林相の改良だとか、歩道の作設だとか、あるいは機能強化のためのいろいろなことが検討されておるけれども、私に言わせますと、もっと助成措置充実しろということを言いたいわけです。現行の保安林における造林補助の単価等を見ましても、まことに少なくて、大幅に上げなければならぬと思うし、さらには、林野庁の「保安林における造林事業補助制度」の中身を見ましても、「造林補助」では、「拡大造林では一般造林の四〇%補助に対し、保安林等造林は六〇%の補助を行っている。なお、再造林についても四〇%の補助を行っている」となっておりますが、これはもちろん一般造林にはないわけですけれども、こんなことではどうしようもないのではないかと思うのです。また、「育林補助」「除伐、保育間伐補助」等があり、「税制上の優遇措置」としては、不動産取得税あるいは固定資産税、特別土地保有税等が非課税になっておる。または相続税及び贈与税の軽減ということになってここに書いてありますけれども、実際、相続税及び贈与税の問題は、農業も林業もたいへんな問題で、これはよほど検討しないと、こんなことではなかなか後継者育成にもつながらないと思うのです。禁伐は七割、択伐は四割、単木選伐は六割、一部皆伐が二割ということでいろいろ検討され、また、「金融上の優遇措置」についても、伐採調整資金の貸し付け、これも昔といまでは木材価格がずいぶん違っておるわけなんで、従来のような伐採調整資金の貸し付け条件ではお話しにならぬと思う。これは農林漁業金融公庫法の改正等も含めて別途検討しなければならぬ問題でありますけれども、こういったことなんかもまことに旧態依然たるやり方である。伐調資金の貸し付けを見ても、利率が五分で、償還期限が三十年以内で、資金限度額が、毎会計年度森林所有者一人につき三十万円で、四十九年度より六十万円で、ようやくこれも倍ということだけれども、安際問題として、木材の価格の変動から見ますと、大きな木は一本で五万、十万する木があるのです。こういったことを思いましたときに、こんなみみっちいやり方でどうするか。林野庁もおくめんもなくこういったことを出しておるが、大蔵省にいろいろときびしく言われているとかなんとかいうこともあるかと思うけれども、昔といまはずいぶん状況が変わっておるわけですから、強力な保安林における造林補助制度あるいは税制上の優遇措置、金融上の優遇措置というようなことをもっと前向きにやって、いわゆる保健保安林保健休養機能をもっと高度に発揮できるようにすべきだと思う。こういったことではみみっちい、もっと大幅に上げるべきである、検討すべきである、こういったことを私は指摘せざるを得ないのですが、長官、これはいまさらにわかに変わるわけはないけれども、今後のこともあるので十分検討してもらいたいと思う。あなたはこれで十分事足れりと思っていますか、どうですか。
  243. 福田省一

    福田(省)政府委員 いま先生から詳細にわたって御指摘があったのでございますが、今後、保安林の拡充は、量的にも質的にもその内容を強化していこうというふうに考えているところでございます。反面、助成措置に対しましては、従来のようないき方じゃいかぬという、きついいまのおしかりでございますが、確かに、御指摘の点はわれわれも考えなければならぬと思っております。この補助制度等各般にわたる制度につきましては、もっと強化いたしますように真剣に取り組んでまいりたいという姿勢だけ申し上げておきます。
  244. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 指導部長に伺いますが、あなたは指導部長で、かつて九州の熊本営林局におられたが、九州は雨量が多く、生長量も、東北、北海道に比べると二倍半ぐらいある。木材価格も上がっており、伐採調整資金についても、部長も熊本営林局においてこの問題はずいぶん関心を持たれていたと思うが、民有林の指導にあたって、木材価格が上がっておる時点で、この伐調資金のような制度もいつまでもこういったことではお話しにならぬ。もっと強力に額も上げるべきだということでいろいろ考えておられると思うが、あなたの率直な意見をお聞きしたい。
  245. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  意見を申せということでございますが、先ほど長官がお答えしましたように、また、先生から御指摘がございましたように、伐調資金等につきましては、ようやく本年度から六十万になるわけでございます。なお、造林等の事業につきましても、労賃等がたいへん上がり、あるいは苗木等が上がってまいっておりまして、保安林について六割という補助率は適用はいたしておりましても、具体的な単価等について、実際かかる賃金等は十分支払えるだけの単価にしたいということで、せっかく四十九年度の御審議をいただいております予算においても、単価の増とか、あるいは一ヘクタール当たり二十三万円程度というような造林費用の標準単価を設けまして、一日も早く実勢単価に近づけるような、あるいは補助率を上げるような努力を当然すべきだというふうに私は考えておる次第でございます。
  246. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参ったようでありますので、あと、大事な問題を簡単に二つお尋ねして終わりたいと思いますから、御協力いただきたいと思います。  現行の森林法に定める保安林制度の中で、保安機能の多様化ということから、保安林の種別が森林法二十五条でいろいろ定めてありますけれども、抜本的な検討をせよということを私もかねがね申し上げておるわけですが、現在の保安林の状況を見ますと、保安林の中でも、場所によっては実際にいろいろとウエートが違うわけです。こういった内容については林野庁も十分対策を考えてもらいたいと思うのですけれども、その点はどういうふうに検討しておられますか、簡潔にお答えください。
  247. 福田省一

    福田(省)政府委員 現在、十一目的、十七種類保安林があるわけでございまして、これは長い歴史の集積の上に確立されたものでございまして、指定施業要件も保安林種ごとにきめられております。これはそれなりに合理性は持っておったのでございますが、しかし、現行の保安林種類はあまりにも細分化されておりまして、たとえば土砂流出防備保安林土砂崩壊防備保安林とを統合するなどの整理をすべきではないかという意見もございます。一方、社会的条件の変化に対応しまして、現在の保健保安林とは別に都市生活環境保安林を新設すべきであるとの意見もあるわけでございます。そういうことで、水の問題、国土保全の問題、環境の問題、大きくはそういった方向を踏まえまして、御意見のとおり長期的な視点で検討を進めてまいりたい、かように思っております。
  248. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後の質問ですが、本法は十年の臨時措置法になっておりますが、過去に十年ずつ回二十年、今回で三十年ということになります。今回の延長によって一応保安林整備をはかっていこうということでありますけれども、冒頭に指摘しましたように、保安林を取り巻く情勢がきびしく、そして多様化しておりますし、また、変化も著しい中で、林野庁からいろいろ答弁をいただきましたごとく、保安林指定内容に対する問題等もますますきびしい規制が行なわれるというような段階にあります。先般総括質問のときにもいろいろとお尋ねしましたように、自然保護憲章の国民運動が行なわれつつありまして、来たる六月五日午後、NHK大ホールにおいて、全国代表約四千名の参加を得て、自然保護憲章制定国民会議が開催され、自然保護憲章宣言式を行なうということでいろいろ計画をしておるところでありますが、こういった国民的、公益的機能の要請が強い中で、一応法的には十年間の延長をするとしても、早急に林野庁は検討して、森林法の中の二十五条に掲げてある保安林の種別の問題等を含めて、これを臨時措置法から恒久立法化すべきである。当局も前向きにこういったことは十分検討しておられるようでありますが、今年は国会も参議院選があるという関係もあって、四月二十九日に会期は終わる、期日もない、あまり対決法案を出してはたいへんだというようなことの配慮もあったろうと思うが、事実、森林法の一部改正によって、相当重大な法案の審議がなされた関係で、こういったことについてはとりあえず十年延長しろということであろうかと思うが、私は、実際これはけしからぬと思っておるわけです。これは当然恒久立法化して十分対処すべきだ、林野庁の怠慢だ、かように指摘せざるを得ないわけです。  きょうは農林大臣も来ておりませんけれども、大臣にもこれを十分進言していただいて、恒久立法化について重大な決意を含め、一応は十年の延長をするとしても、森林法の中身も含めた恒久立法化に早急に踏み切っていくという態度であってほしい、と、かように指摘するわけですが、最後に林野庁長官の御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  249. 福田省一

    福田(省)政府委員 最近の環境保全に対する要請あるいは水の問題、災害の問題を含めて、緊急にこれを措置しなければならぬということから十年の延長ということにとりあえず踏み切ったのでございます。御指摘の点は十分私も考えなければならぬというふうに思っております。  先ほど申し上げました保安林の種別の検討等を含めまして、御指摘の点につきましては、今後慎重に検討いたしたいと思います。
  250. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で質問を終わります。
  251. 仮谷忠男

  252. 島田琢郎

    島田(琢)委員 林野庁長官にお尋ねをいたします。  この法案の中身につきましては、十年間の三たびの延長というものが中心の法案の内容になっておりますけれども、いろいろ見てまいりますと、この機会に保安林というもののあり方を十分検討しなければならぬというふうな部面もあるようでありますから、限られた時間ですから十分な意は尽くせませんが、若干の問題点についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  その一つは、今回の法案改正にあたっての最も大きな柱が指定施業要件の見直しということを言われておりますが、見直しをするにあたって、どういう点をさらに重点としてとらえていこうとお考えなのか、この点をまずお尋ねいたします。
  253. 福田省一

    福田(省)政府委員 指定施業要件と申しますのは、先生御承知と思いますが、たとえば伐採の方法とか程度、あるいは造林の樹種とか、あるいはその方法というようなものを指定するわけでございますが、特に最近問題になっておりますのは、水源涵養保安林等におきまして、その保安林の内容をよくするという意味で、つまり、活力のある森林をつくるのが水源涵養保安林としての目的を達成できるわけでございますので、伐採も実はするわけでございます。そこで、その伐採の方法につきましては、いま申し上げましたように、ある程度の制限を付する場合もありますし、全然それを付していない場合もあるのでございます。そこで、最近の災害の発生あるいは水の問題等を考えまして、これの総点検と申しますか、点検のし直しをしたのでございます。  結論的に申し上げますと、いままで大面積の皆伐も差しつかえないとしておったところを、それはいかぬ、これは小面積にしなければならぬとか、あるいは皆伐はやめて択伐にしなければならぬとかいうふうな見直しをいたしまして、現在の中間報告によりますと、その結果は、やはり、約九割ぐらいは施業しなければならぬという結論が出ておるのでございます。
  254. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それにしても、地域とか土地の性状とか、いろいろな条件があって、画一的にはまいらぬと思うのです。たとえば水源涵養保安林というものの限定で考えるなら、水の保有量というものは、その地域に住んでいる人口だとか、そういったものにも非常に左右されるわけです。ですから、それを画一的に進めるということはなかなかむずかしいと思うのですけれども、何か段階を設けて、一つの基準に沿って、たとえば択伐にするとか、あるいは皆伐ということはないと思うのですけれども、そういう施業のあり方についても、一つの画一的なやり方だけではなかなかいかぬと思うのですが、そういう点なんかは今度はかなりこまかにきめていくという考えですか。
  255. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。北は北海道から南は沖繩まであるわけでございまして、そこにはえております木もいろいろございますし、また海抜高もいろいろでございますから、その地帯においてどういう木がいいのか、あるいはどういう伐採方法とどういう造林方法がいいのかということはその地域によって違ってきますので、それぞれの地域に応じた基準というものをつくるように指導しておるわけでございます。
  256. 島田琢郎

    島田(琢)委員 水源涵養保安林の関係で聞いたのでありますが、そこで、私は、保安林の中におきます防風保安林の関係について、いまの指定施業要件の見直しというような課題が出ておりますから、現地に起こっている実態をお話しして、これらも含めて御検討を願うという意味で、長官の考え方をぜひ聞かしていただきたいと思います。  実は、私の選挙区内では、非常な風害の常襲地帯と言われるところがあります。これはオホーツク海沿岸ですけれども、斜里郡というところです。網走から知床につながる地帯に斜里郡という郡がございますが、ここは火山灰の地帯でして、春先五月になりますと風が強くて、農作物が風害を非常にきびしく受ける地帯なんです。これが克服されれば、あの地帯は畑作物の主産地帯と言われておりまして、網走管内における宝庫と言われておりますが、たった一つの悩みは、毎年春先に受ける風害であります。長い間農業をやっておられる皆さんの知恵で、それぞれ二ないし五ヘクタールぐらいの範囲で防風林帯を設けて、みずから防衛策をやっているわけですけれども、しかし、なかなかこれがうまくいきません。カラマツを主体にして防風林を構築しているわけですが、一昨年のごときは、かつてないというたいへんな風害を受けました。わずか三日間ぐらいの間に、実に四億数千万に及ぶ被害を受けたのであります。このときに私どもは非常に痛切に感じたのですけれども、それは、この農家防風林の持っているこういうやり方でいいかどうかということです。長い間の歴史的な積み上げの中で、それぞれ知恵をしぼってそういうものをやってきておりますけれども、現実にはそれが役に立った都市と、全く役に立たなかった都市というように、最近になると非常にまちまちであります。こういう防風林の実態を見てまいりますと、ひとり農家の責任というものでもないし、また、地方自治体だけでの知恵ではなかなかこれは処理し切れぬものがある。すなわち、こういう地帯における防風林の設定という問題については、現地をよく調査されて、林野庁において相当責任を持った指導なりそのほかの施策なりが講ぜられていかないと、この地帯の常襲的な風害を回避していくことはなかなか困難だというふうに考えるのです。もちろんそればかりではだめですから、私どもは、水をまいて土砂が風によって飛び散ることのないように、かん水の方法などについても現在調査を進めているところであります。これと防風林とが一体にならなければ、あの地域の農作物の被害を未然に防止することはなかなか困難だという考えに立っているのですが、この斜里郡における実態というものは、長官はおわかりではないかもしれませんが、業務部長はおわかりじゃないでしょうか。北見におられた方がこの中におられるはずですが、きょうはおられませんか。  この指定施業要件の見直しという項目に当てはまらぬかもしれませんが、防風保安林考え方について、積極的にこの機会に考え方を持っていただきたいという一つの私の要請もあるものですから、実態を少しお話しして、防風保安林に取り組む姿勢をお聞かせ願いたいと思うのです。
  257. 福田省一

    福田(省)政府委員 実は、保安林は、最近特に大臣指定あるいは解除といいますものは、水源涵養土砂崩壊、あるいは土砂流出、これで九七%を占めておりまして、その他の十数種類は、面積からいきましてもわずか三%であるということから、そういった点について少し軽視された面があったこともいなめないかと思います。  私も、実ば、いま御指摘の斜里方面についてはあまり経験がございませんけれども、数年前にパイロットフォレストあるいは機械事業団関係の耕作地帯を見て回ったことがありますが、あの辺の防風林は非常にりっぱな防風林だと思って、実は感心して、いまでも記憶に残っております。いま御指摘の斜里の防風林はどの辺になりますか、あとでまたよく事情を伺いまして、対策を講じてまいりたいと思います。  お話しがございましたように、防風林の効果は、そういった蒸散作用を押えるということでもございますので、農業との密接な関係もございます。お話しを伺いまして、具体的に対策を立てるようにいたしたいと思います。
  258. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私が先ほど触れましたように、指定施業要件の見直しという中で、この項は都道府県知事の中に入っている。また、日本の列島全体を見渡してみても、いま申し上げたような、私のところの斜里郡のような、山地を中心にした風害のようなきびしいものはほかに起こっておらないかもしれません。したがって、地域に限定された問題だというふうにとらえがちなんですが、しかし、これは都道府県段階で取り組んでも、なかなか問題が大きくて困難を感じている面があります。これがたまに起こるもので、五年に一ぺんとか、十年に一ぺんとかであれば私もこういうことを申し上げないのですが、毎年必ず起こるのです。ビートも飛ばされ、まいた種イモの大きくなったものまで全部飛ばされてしまうのです。一昨年にたいへん大きな風害が起こったときには、防風林があることによってむしろ被害を大きくしたのではないかというところもあったのです。ですから、防風林の設定のしかたについては、技術的にもかなり考え直す必要がある。単に、ここに木を植えれば防風林になるというふうなしろうとの考え方でいいのかどうか、どういう方法が技術的に一番効果をあげるのか、また、樹種なんかもどういうものがいいのだろうか、こういう点について現地でもかなりの論議が行なわれておりますけれども、なかなか専門家の一致したところにいかないというのが、あの地帯の風害の防止にあたっての非常に大きな悩みなんです。  ですから、この指定要件の見直しにあたって、こういう地帯もあるということをぜひ頭に置いてやってもらいたい。場合によっては現地を一度見ていただけばよくわかるのですが、確かに、国道を走っておりますと、りっぱな防風林が一ぱいあるな、なかなかようやっているなという感じを受けるところがありますけれども、一歩中に入ってみますと、ただりっぱだというだけで感心して見過ごすことのできない大きな悩みを農家個々が抱いているわけです。所によっては離農する人さえもおるわけです。一昨年のたいへんな災害が起こったときには、何戸かそのことによって壊滅的な打撃を受けて、離農を余儀なくされた人も三戸ほどおるのです。これはたいへん大事なことなんで、この機会に見直しをする中にこの部分をぜひ頭にしっかり置いておいていただきたいと思うのです。  それから、いま建設委員会が中心になりまして生産緑地法案が取り扱いされておりますが、私は、ここのところ、この委員会あるいは昨日の連合審査にも出まして、この生産緑地法の中におきます都市農業のあり方を中心にいろいろと意見を申し上げてまいりました。たまたまこの法案の中には森林も含まれているのです。市街化区域内であっても森林が現に存在しているという事実があるわけですから、この市街化区域内にある森林というのは、三大都市圏でけっこうですが、林野庁では現在どのくらいの面積があるとつかまえておられますか。
  259. 福田省一

    福田(省)政府委員 市街化区域に指定になりました百二十万ヘクタールのうちに、約八万ヘクタールあるというふうに推定されております。
  260. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ばかにならない面積を市街化区域内に持っているわけですね。昨日も、市街化区域内におけるいわゆる都市農業の位置づけという問題で、相当大きな論議がありました。都市森林とでもいいましょうか、この線引き内における森林というものについては、林野庁としてはどういう位置づけでお考えになっていますか。
  261. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 都市計画区域内における森林というものにつきましては、森林の公益的機能の中で、特に生活環境の保全という機能が強かろうと思います。そういう意味におきまして、今回の生産緑地法案でも森林を生産緑地として指定していくという考え方に立っておろうと思いますし、私どもでも、今度、保安林の中で保健保安林指定をしてまいるということに考えておりますのも、そういう理由に出るものでございます。  保健保安林は大体団地として一かたまり、五十ヘク以上ぐらいのものを考えておりますが、生産緑地法案のほうでは、生産緑地としてはおおむね一ヘクタール以上ということで、規模の差があるようでございますが、両方とも都市の生活環境を保全するという共通の目的を持っておるようでございますから、林業経営の対象ということよりも、生活環境の保全という点に力点を置いた経営が行なわれていくべきものだと考えております。
  262. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それは林政部長のおっしゃるとおりなんです。ただ、こういう場合の、たとえば森林の撫育とかあるいは伐採とかいうものについては、この保安林法に盛られておる考え方と同じ考えで進めるのですか。そういう意味で私は聞いたつもりなんですが、私の言い方も悪かったと思うのですが、それはいかがですか。
  263. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 私どもで指定をしてまいります保健保安林につきましては、もちろん指定施業要件をきめてまいるわけでございますから、その中で良好な生活環境を保全するような森林の形成と申しますか、そういう意味から樹種なり林相なり、そういうふうなものについておのずから要請される姿があろうかと思いますから、そういう形のものとして経営をしてまいるのであって、生産緑地のほうは、私どもとしては、林業の対象ということよりも、むしろ林業の対象をはずれたというふうな形の、市街化区域の中の森林でございますから、もっぱら生活環境の保全ということに力点を置いたというふうな形のものであろうと思いますし、また、この点につきましては、ある程度ほかへ転用するということも、ある期間がたった後にはある程度やむを得ないという面もあるというふうな考え方に立っておられるのではないかというふうに見られる面もございますから、そういうような形で、生活環境の保全上どうしても森林として保全していかなければならないというもので、私どもが考えております規模以上のものでございましたならば、これはそういう指定をした後に保健保安林として経営をしていくということになろうかと思います。
  264. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そうすると、いまの指定要件に合致しない以下のものについては、これは林野庁としては全くアウトサイダーだ、宅地になろうが、切ってしまおうが、何であってもかまわぬというふうに考えているということですか。
  265. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 林業の対象として考えるということより、むしろ生活環境の保全ということに力点を置いた森林ということになろうということでございますから、もう都市化が完全に予定されておるというふうなことから申しますと、そちらのほうにウエートの置かれたものである。林野庁としてらち外に置くということではございませんで、もちろん十分めんどうは見てまいりたいと思いますけれども、力点としては、林業の経営の対象というよりも、生活環境の保全というふうな形のものとして観念をしていいのではないかというふうに考えます。
  266. 島田琢郎

    島田(琢)委員 部長がおっしゃるように、私もそう考えるのですが、われわれが去年から森林法をはじめとする各山の問題で議論をしているのは、林業上の問題として、いわゆる切ってもうけるとか植えるとかいう話はもう昔の話で、いまはやはり国民保健の上から山というものを根本的に見直さなければならぬということで、こういう立場に立って森林問題をわれわれは手がけてきている。長官もしばしばそういう考え方に立ってお話をされているはずですね。ですから、いま、こういう都市内における森林というものはたいへん大事にしなければならぬということが地域の住民から強い要請として出てきているんですね。それは緑であればいい、春になれば葉を茂らせ、冬になれば葉が落ちる、だから森林の形になっておればいいんだ、と、そういうことではこれは済まされない。そのことはいま部長も言っているわけですね。保健あるいは都市生活者にとっての大事な緑の確保という面でわれわれは森林機能をとらえていかなければならないと言ってきた立場から考えれば、私に言わせればちょっとこれは無責任に聞こえるのですよ。だから、こういう中における森林の取り扱いというものもやはり林野庁の責任の中でやるべきではないかという主張があるから、私はそのことを繰り返しお尋ねをしているのです。
  267. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 多少私の説明に舌足らずの点があったので補足させていただきたいと思いますが、林野庁として考えておりますところの地域森林計画の対象として考えてまいります森林は、おおむね〇・三ヘクタール以上というふうな形で考えておりますから、そういうような形のものでございましたならば森林計画の対象として捕捉していくということになろうかと思いますけれども、そういうような場合でも、どちらかと申しますと林業経営というよりも生活環境の保全ということに力点を置いた森林の姿に持っていくというような形になろうかと思います。
  268. 島田琢郎

    島田(琢)委員 その点はまだいろいろと議論をしなければならぬ点でありますが、私が言いたいことはこういうことなんです。つまり、きのうも、あるいは五日の日にも、実は生産緑地法で建設大臣と私は話をしたのですが、建設大臣は、都市サイドから見た農地だとか森林とかという一面あるけれども、しかし、その地帯に現に森林があり畑があるという場合の、その保全のしかたについては積極的にやらなければならぬと思う、これは都市生活者にとって欠かすことのできない重大な一つの要件だと言っているのですね。しかも、そのあと、この法律が運用される段階に入ったならば、当然それは諸官庁が責任を持って、森林なら林野庁、畑なら農林省のサイドできちっと一つの政策措置をしなければ困るということを建設大臣が言っている。ところが、肝心かなめの農林省や林野庁が、これはもうわれわれの手を離れてやがては宅地化するものだから、いまのところは緑が茂っていても、やがて切られていってもしかたがないと、こんなふうな考え方でいるとしたら、それは政策の一貫性を欠くのではないかというふうに私はきのうもきびしく主張しましたが、その点に対する責任ある回答がなかなか返ってこないので、私もこの点についていささか不安を感じている一人なんですが、いかがですか。
  269. 福田省一

    福田(省)政府委員 従来、林野庁は、山岳地帯の森林、原野に対することを重点にしておったというふうに見られておったかもしれません。しかし、環境の問題を取り上げまして、森林に対してそういった面での要求が非常に強くなってきておりますので、特に、都市の近辺におきます森林、現在ある森林はできるだけこれを保存し、現在ある森林が非常に悪い状態ならば、これを改善してよい森林にしていくという制度も、昭和四十五年からだと思いましたけれども、実施しております。市町村なりあるいは都道府県が、いまお話ししたような森林をつくったり、あるいは現にある森林を改良するという場合には、その事業費に対して補助もいたしております。四十九年度からは、今度は、特に都道府県がそういった生活環境に必要な森林を買おうとする場合には、三分の一補助を国がするということも実はいたしておるわけでございます。そういう意味で、都市近郊——これは大都市と限りませんが、中小都市すべてにわたりまして、そういったような森林を特に改良しあるいは造成していくということに対しましても、林野庁は前向きの姿勢でおるわけでございます。  なお、国有林なんかにおきましても、そういった場を提供するために自然休養林のような制度もとっております。数百町単位で、そういった中小都市の人たちに対する一つのレクリエーションの場としての森林を、現在約七十カ所ぐらいすでにつくっておりますけれども、百カ所ぐらいはこれをつくってまいりたいというふうなこともいたしておりますし、御指摘のような趣旨に沿って、具体的にいま申し上げたようなこともございますし、なお今後さらに強化してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  270. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、先ほども補償の問題について話が出ておりましたが、いろいろと説明されている中では、税制上の措置だとか融資措置をしており、それから造林をする場合の補助金を優遇しているというお話しがありましたが、しかし、この問題というのは、現地において解決するということもなかなかむずかしい面があるということは、ケース・バイ・ケースによってずいぶん事情も違うということもわかるわけです。しかし、森林の持つ公益的機能ということの立場から保安林必要性というものを地域の住民がみんな一致して考え、その場所もみんなで考え一つ指定をするという段階になると、少なくともその人にかなりの負担をかけていくことになるということは、現地でわれわれがやっている場合にもよくあるのです。この山は切ってもらったら困るというようなことを押しつけていくということは、口だけではなかなか了解をしがたいものですし、また、税制上の優遇措置だとかなんとか言っても、現実にはやはりぴたっとはだに触れたような感じに受け取れない向きがあります。おれだけが何か犠牲になってしまっているという感じがある。しかし、おまえさんには固定資産税をまけてやったとか、いろいろな税制上の措置をやっているとか、融資の場合の伐調資金の融通なんかも特別にやっているとか、造林の場合も優遇しておるじゃないかとか言っても、そういう面については、現ナマでふところに入ってくるのと違うからなかなか理解をしにくい場合があります。こういう点なんかの調整をとるときにも、これは非常に難儀をしておる面なんですね。そういう現地の実態があるということを承知しておいて何らかの補償措置を別建てで考えるということも検討してほしい事項だと私は思うのですが、いかがですか。
  271. 福田省一

    福田(省)政府委員 先ほど瀬野委員からもその点についてきつい御指摘があったわけでございまして、森林法の中にも、三十五条で、立木補償あるいは土地補償の制度はあるわけでございますけれども、そういった問題についても具体的な検討はしてまいりたいと思っております。  確かに、現在、補助金の問題とか、あるいは融資制度の問題とか、あるいは税制の問題とか、いろいろと制度を拡充しておるところでございますけれども、そんな程度ではなかなか問題は解決しないじゃないか、はだに密着した施策にならぬじゃないかという点もわかるところでございますが、この制度の拡充につきましては、さらに具体的に——保安林整備臨時措置法の検討は臨時的なものか、あるいはもっと恒久的にするのかという御指摘もございましたが、その中におきましても関連のあることでございますので、真剣に取り組んでまいりたいと思っております。
  272. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それからもう一つ保安林指定解除の問題で、森林法二十六条の中にある「指定理由が消滅したとき」ということについてですが、この「指定理由」というのは、いままでのケースからいきますと、一番多い理由はどんな点で、その次はどういう点によってという理由の順序があると思うのですが、この「指定理由」の順序というものをお示しください。
  273. 福田省一

    福田(省)政府委員 一つは、受益の対象が消滅したというときでございます。たとえて申し上げますと、落石防止保安林の保全対象でありますところの道路とか、あるいは公共建築物等がほかへ移ってしまってなくなったというふうな場合でございます。  第二は、自然現象などによりまして森林そのものが消滅し、かつ、森林に復旧することが困難なときなどでございますけれども、こういったことは、ほとんど例のないことでございますが、たとえば崩壊してなくなってしまったとか、火山の爆発でなくなってしまったとかいうようなことでございます。しかし、こういうケースはあまりないと思います。  それから、次は、この保安林機能を果たすべき代替の施設が設置されるなどの例でございまして、所定の要件を満たすものについても指定理由が消滅したもの、というふうに解釈いたしております。つまり、保安林機能にかわる別の施設ができたという場合に、これは消滅したという解釈をとっておるものでございます。これは相当多いケースでございます。
  274. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この保安林の解除というものはなかなか慎重にやらなければいけない点なんですけれども、現地の事情によっては、むしろ、保安林としてはいまはないほうがいいというふうに事情が変化しておる場合があるのです。これは解除ということになるとなかなかむずかしいのですね。ですから、私は、いまどういうことの場合に解除ということができますかという点をお聞きしようとしたのであります。  それから、もう一つ、公益上の理由によって農林大臣が解除をする場合がありますね。この「公益上の理由」ということについても、いままでのケースとしては、順序としては、どういうケースが一番多いのか。いままでどんなふうな公益上の理由というものがありましたか。
  275. 福田省一

    福田(省)政府委員 これは、保安林の持っています公益性と、それから保安林保安林以外の用に供するための公益性との比較考量によりまして、それで後者のほうが大であるという場合に行なうことになるのでございますけれども、しかし、実務上は、保安林の持っています公益性を極力失うことがないようにしようという指導をいたしております。  具体的なことを申し上げますと、たとえば道路でございまして、道路をつくったためにこれを解除したというケースが一番多いのでございます。ただ、しかし、かってに道路をつくったからいいというものではございませんで、土地収用法もしくはその他の法令によりまして、土地を収用もしくは使用できることとされている事業に供する必要があった場合というふうに限定して解釈いたしております。
  276. 島田琢郎

    島田(琢)委員 指定の解除ということは、実は、現地ではなかなかむずかしいですね。利害が相反する立場の人たちがいますと、いろいろな理屈と理由がそこに生まれてくるのです。そして、こっちの言うのが正しいか、こっちの人の主張が正しいかという判断が非常にむずかしい。だから、指定をすることよりも指定解除ということが非常にむずかしいのですね。ですから、こういう点が整理をされないと、現場におろした場合になかなかうまくいきませんぞということを私は言いたいわけで、また、現に私はそういう経験をしてきているのですけれども、これはなかなかむずかしい。ですから、一つの方針を明確に示すということは、法律の条文だけではなくて、いろいろな付帯するケースなども洗い直して、何がむずかしいかということ、どういう場合にはどういう問題点があるかということを——私はいまわずか二つの短い文句だけを質問しましたけれども、現場では、この短いたった二つの文句をめぐってなかなか問題がふくそうして解決が困難になるという場合がたくさんあるということを踏まえて、この改正にあたってはぜひ洗い直しをしてほしいと思うのです。  時間が来ましたので、私の質問はこれで終わりにいたします。
  277. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、午後七時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後六時三十八分休憩      ————◇—————    午後七時十一分開議
  278. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。柴田健治君。
  279. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣にお尋ね申し上げますが、今度の保安林整備臨時措置法は十年間延長するわけでありますが、この法案のできた経過というものは、あくまでも日本の山を守るということで、あらゆる災害から山を守っていこうという大原則に立ってこの法案ができた。そういうことから考えるならば、山に対する考え方というものにもっと力を入れていくべきではないか、保安林行政を含めて、森林行政全体の予算措置においてももっと十分に配慮して処置をとるべきではなかろうか、と、このように思いますが、大臣の見解を述べていただきたいと思います。
  280. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 全く御同感でございまして、ことに昨今、経済発展に伴って公害問題等がやかましく論議されるような時代になりまして、よけい森林の重要性が認識されるわけですが、将来わが国が逐次発展してまいり、また都市化の現象が出てまいりますと、先般も何かの法案の審議のときに、ここで委員の方の御質問に建設当局が答えまして、関東地域だけでも将来四十億トンの水不足を考えなければならぬというふうな話もございましたが、私どもといたしましても、国土保全と、それから水資源確保というようなことを考えましても、森林に対する政策というものは一段と力を入れるべきではないかと思いますし、毎年の予算編成にあたりましては、私どもも微力を尽くして、そういう点についての予算の獲得には努力をいたしてまいりましたが、まだ決して十分ではございません。そういう意味で、なお一そうの努力を要する次第でございますが、森林政策につきましてはより一段の力を政府も入れなければならないということにつきましては、お説と全く同感でございます。
  281. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣、決意だけはよくわかるわけですが、山の防災対策、特に保安林の保護というものは、何としてもそこの治山治水というものがやはり原則になる。治山治水事業というものを忘れてはならない。この治山治水事業の四十九年の予算を——これはあす参議院を通るのですが、ことしの予算を見ると、どうも、大臣が本気でやられるという気持ちより離れておるのではなかろうかという気がするのです。たとえば、治山事業は去年よりふえていない。ところが、一方では資材、人件費その他の大幅な値上がりを見ると、昨年度よりか事業の伸びというものが非常に減るのではなかろうかという気がいたします。  そこで、なぜこの治山事業というものが伸びなかったのかということですけれども、たとえば林道の改良補助にしても、昨年から言うと三億九千九百四十万円の減額になっており、パーセンテージで言うと、七〇・一%ということになるし、造林にしても伸びていない。造林の苗木代なり賃金なりを見ると、大幅に上げなければならぬ。こういうことになると、実質的には造林の面積というものは伸びていかないのではないかという勘定になると思うのです。大臣の一生懸命山に力を入れなければならぬという決意はわかるのですが、決意と予算措置では非常な違いがある。この点をどう解釈をしたらいいのか、理解に苦しむのですが、どうでしょうか。
  282. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先般来いろいろ予算のことでこの委員会でもお話しがございましたが、四十九年度予算の特別な性格で、総需要抑制ということで、私どもやむを得ず要求いたしました予算額を満たされなかったものもあることは御指摘のとおりでございまして、その点は私どもも遺憾千万でございますが、毎年、予算編成にあたりましては、公共関係の林道、造林等には特段の配慮をいたしてやってきたわけであります。ことしは特にそういうようなものの伸びが非常に縮まったというふうな点につきましては御指摘のとおりでありますが、先ほど申し上げましたような考え方に立って、なお今後とも農林省は森林政策について力を入れてまいるという立場は堅持いたしておるわけであります。四十九年度予算においては若干の伸びもあり、それから伸びない面もございましたことは御指摘のとおりでありますが、そういう点を補うためにさらに最善の努力をしてまいりたいと思っておりますし、防災につきましては、これの必要なことは御指摘のとおりでありますので、私どもはそういう点についてもさらに一そうの努力を続けてまいるつもりでございます。
  283. 柴田健治

    柴田(健)委員 ほんとうに森林政策を強く推し進めるには、やはり予算というものも考えてもらわないと、日本語だけではよくならないわけです。予算というものを十分考えてもらいたいということを大臣に強く要求しておきたいと思います。  山に財政投資をして、何としても育成、強化していこうとするときに、一方では自然災害というあらゆる災害を受ける。そういう条件の中に森林地帯があるわけですが、土砂流出などがあり、山地荒廃とか、いろいろな形で災害が起きておる。ところが、私たちがいま当面見ると、山林火災、林野火災というものがどんどん伸びておる。先般もお尋ね申し上げたときに、林野火災やそういう面を含めて防災対策はどうかと言ってお尋ね申し上げたら、林野庁長官からは、予算もうんととっておりますし、一生懸命やりますという御答弁をいただいたのですが、しかし、先般の答弁をしていただいた後に、林野火災の発生件数はどんどん伸びているのですね。それば、ちょっとに近年ない異常気象だということだけでは逃げられない。どこか狂っておる何かがあるのかという疑問をわれわれは持っておるのですが、この点について、林野火災対策についてどういう構想で今後対処していこうとするのか、この点は、資源を絶対守らなければならぬという立場からわれわれは痛感しておる点でありますが、大臣、どうでしょうか。
  284. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのございますように、健全な森林の維持、造成ということは、国土の保全、森林資源の培養、国民経済の発展等をはかる上においてきわめて重大であるということは私どももよく考えておるわけでありますが、そこで、従来から、森林災害未然防止をいたしますために、森林のうち特に必要なものにつきましては保安林指定をいたしまして、各種の施業制限を行なっております。  それから、計画的予防治山、それから復旧治山治水等の治山治水の事業をやっておるわけでありますが、ことにまた、適正な森林施業を確保いたしますために、森林計画制度におきまして、実態に即して施業の方法をきめてまいる。それから、特に、一カ所当たりの伐採面積の縮小、択伐作業方法の導入、人工林周辺の保残帯の設置、それから伐区の分散等をはかるようにつとめておるわけでございます。  それから、ただいまお話しのございました森林につきまして、特に林野火災を未然に防止いたしますため、国民各層に対する啓蒙普及の推進をはかりますとともに、防火用資機材の配備、空中消火体制の確立などを進めるようにいたしておるわけでございますが、森林病害虫等の防除をはかるためには、特に害の多いマツクイムシを重点に早期伐倒、駆除等の措置を進めたいと思っております。  いまお話しのございましたような防災に関しましては、これは大事な国の宝でございますし、最も大事にしなければならない森林に対してでございますので、火災、気象災害等によりまして損害を受けました森林所有者の損失の補てんとか経営の安定などをはかりますために、森林保険制度の整備をいたしますほか、そういう災害未然に防ぐために、なお今後ともわれわれといたしましては努力をいたしてまいるように指導いたしてまい  りたいと思っております。
  285. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣の言うのはどうも抽象論的で、具体的に言われないのでよく理解できないのですが、たとえば林野火災の多発地区というものは大体統計的にわかるのですから、多発地区についてはどういう処置をするとか、どういう指導をしていくとか——たとえば瘠悪林地の改良事業として、二十数年前に、国、県の相当の財政投資で山をもとの姿に戻した。それを火を入れて焼いてしまう。これも国有林だ。昨年農林水産委員会が第二班で視察に参ったときに現地で見た国有林地を、これまた八十町歩ほど焼いてしまう。この国有林の地帯があまりにも大きいし、何をしておるのだろうかという気がするのです。長官は一生懸命やっておりますと言うけれども、一生懸命やっておるのは、火をつけるほうをやっておるのか、消すほうをやっておるのか、とめるほうをやっておるのか、わけがわからぬようになってしまう。だから、火をつけるのに本気になっておるのか、予防措置に本気になっておるのかわからない。この点を本気でやっておる、本気でやっておると言われるが、本気でないという気がするわけです。たとえば予防対策をどうするか。道のつけ方、林道のつけ方をどういうふうに考えていくのか。また、防火用水槽をどうつけたらいいのか。また、同じ保安林でも種類はいろいろあるわけですけれども、大きく分ければ土砂流出水源涵養、これが大きな保安林の位置を示しておるわけですが、同じ水源涵養保安林の中でも、一級地、二級地、三級地ということで等級をつけて、それらの監視体制をやっていくほうがいいのではなかろうか。それから、重要森林地帯を順位をきめて、そういう地帯にはどういう処置をする、どういう施設をするというようにして、住民に対して、どこの地域住民にその山を守ってもらうというような具体的な指導要綱というものがあってもいいのではなかろうか。こういうわれわれの考え方なんですが、大臣、どうでしょうか。
  286. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 現在、水源涵養保安林、それからいまお話しの土砂流出防備保安林、それから土砂崩壊防備保安林は、受益対象が広い範囲にわたっております。きわめて重要でございますので、農林大臣みずからが指定解除を行なっておる次第でありますが、一方、この解除にあたりましては、保安林を重要度に応じまして区分して、重要度の高い保安林は特に慎重に取り扱うことといたしまして、上位の保安林につきまして解除の申請がありました場合には、下位の保安林を対象とするように指導いたしておる次第であります。それから、また、保安林の重要度に応じて取り扱いを行なうというようにいたしておる次第でありますが、今後も、必要に応じまして、保安林の重要度に応じた取り扱いを行なわせるようにいたしてまいりたいと思っております。
  287. 柴田健治

    柴田(健)委員 重要度に合わせてやっておるし、また、今後も重要度に合わせてやるということは、結果的には従前どおりということになる。従前どおりでは困るので、やはり等級をつけたらどうかと思うのです。等級をつけて、防災対策の予算措置にしても、もう少しきめのこまかいものをやらなければいけないので、国営森林保険があるんだから、この保険業務の中でもう少し林野火災対策をやらしたらどうかという気がするのですが、大臣、どうでしょうか。
  288. 福田省一

    福田(省)政府委員 確かに、御指摘がございましたように、保安林につきましては、一応大臣がいま御答弁いたしました重要度で分けてございます。いま先生のおっしゃいますのは、そういう重要なものとその次の段階に行くところに差を設けて防災対策を講ずべきじゃないかというふうな御指摘と存じます。そういったような考え方に基づきまして具体的に指導していくように、私たちも真剣に対処してまいりたいと思っております。そう申してはなんですけれども、そういう面に関しましては、いささか機械的になり過ぎたきらいがなきにしもあらずでございます。特に、岡山県地帯でございますと、あの辺は非常に木も少なかったのを苦労していろいろな木を植えて、ようやく育てたところでございますので、そういったところにつきましても十分注意してまいります。
  289. 柴田健治

    柴田(健)委員 多発地区に対する具体的な考え方はないですか。
  290. 福田省一

    福田(省)政府委員 現在のところ、新しく四十九年度からいわゆるパトロールの制度を民有林と国有林と並行して推進いたしております。これは県の職員を使う場合もございますし、県が臨時にそういった人を雇用する場合もございます。国有林の場合におきましては、それぞれ従事しておる職員、作業員がこれに従事するわけでございますが、いま御指摘がございましたように、非常な危険地帯におきましては、その点を濃密に段階をつけてパトロール等もしてまいりたいというふうに考えます。
  291. 柴田健治

    柴田(健)委員 あなたは一生懸命やると言うけれども、国有林を焼いて、ちっとは責任を感じているかね、長官。
  292. 福田省一

    福田(省)政府委員 先般も実は岡山県で国有林が出火いたしまして、原因を至急調査いたしました。何か、神社にお参りに行きました子供の火遊びと聞きましたけれども、原因がそれだからというので逃げるわけではございませんが、火が出た場合にはそれに対応できるような対策というものをしっかりと立てておくべきでございまして、そういう意味では、先生からも御指摘がございましたように、たとえば防火用水を置くとか、見回りのことをよく整備しておくとかいうことも重要なわけでございます。火事が出てからということでおわびをするんじゃ、おわびしただけじゃまことに申しわけないと思うのですけれども、なお今後さらに十分指導を強力にしてまいりたいというふうに考えております。
  293. 柴田健治

    柴田(健)委員 おわびというのは個人的な問題なんで、問題は公的な責任ですよ。われわれは消防団を長い間やりましたが、いまから一週間ほど前に、私の部下の分団長が自分のところの山を少し焼いた。焼いたら、直ちに責任をとってやめた。公務員でも何でもないけれども、自分のところから火を出したということだけでも自分の職を投げるのですよ。そういうように責任を感じて末端では消防活動をやっておる。そういう者の立場から見れば、国はいつも焼いてから、ただ責任がどうだとかこうだとか、火元がどうだとかいうだけで逃げているけれども、もう少し責任を感じないと林野火災の予防対策というものは十分できないという見方をしているわけです。おわびというのは個人的な問題だから、そんなことはいいのです。やはり、責任を持って、これからは林野火災をどう防ぐかということが国民に対するおわびなんであって、この点を十分考えてもらわなければ、私におわび申し上げますと言ったって、私の財産じゃない。あれは国民の財産ですよ。国民の財産をもっと守ってもらわなければならぬし、そういう責任を感じるだけではいけない。具体的に行動に移してもらわなければ困る。具体的に行動に移すというのはどうするのか、焼けたあとをどういう処置をするのか、どういう方法で復興をまたやるのか、こういうことが適切に行なわれないと、焼けたあとの処理をいつまでもほうっておくと、何だきたない山になったなということになる。住民感情から言うと、政府は山を焼けっぱなしにしておいて何にもしないじゃないか、ほったらかしにしているじゃないか、片づけもしないじゃないかということになるので、直ちにあと地を整理して、あとどういう作業をするかという具体的なものがないといけないんじゃないですか。どうですか、長官。
  294. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 林野庁長官がおわびを申し上げておりますのは、やはり国家に対しておわびをしているのでありまして、いまお話しのございましたところの、そのあとをどうするかということは、これはたいそう大切なことだと思います。いまちょっと聞いておりますと、そういうことについてもいろいろ考慮をいたしておるようでありますが、災害未然に防ぐことと、すでにありましたことに対して善後措置を十分にやるということにつきましては、なお一そう指導よろしきを得てやってまいるようにいたしたいと思います。
  295. 柴田健治

    柴田(健)委員 森林保険の特別会計を見ると、鳴かず飛ばずというのはこのことだと思うのですね。変化がない。だから、本気で森林保険制度を活用するという心がまえがないのではないかと思う。こういう事態であるから、ほんとうに森林行政をやっておるとは言えないという感じを持つわけでありますが、昨年よりたいした変化を起こさないというのは、森林保険制度を形式的に運用しておるのかどうか、この点の見解を聞いておきたいと思います。
  296. 福田省一

    福田(省)政府委員 森林保険につきましては、御承知のとおり、国営保険と、森林組合の共済事業としてやっております保険と、一般の会社がやっております火災保険とあるわけでございます。この三者を全部足しましても、加入の率はまだ三割程度でございます。そういうこともございまして、この原因は火災のほかにいろいろな気象災を入れたこともございますが、行政管理庁からの勧告が、特に、国営保険と森林組合のやっております共済事業の二つについてあったわけでございます。私たちは、この森林組合の行なっております火災保険と国営保険との関連をよく調整いたしまして、なおこの加入率が高まるように検討しておるのでございますけれども、その種目の問題、それから保険制度につきまして基本的に検討しなければならぬ問題もまだ残っております。鋭意検討を詰めまして、できれば来年度ぐらいにでも改正案を出したいくらいに思っておるところでございますが、ただいま真剣にこの両者の関係を検討しておるところでございます。
  297. 柴田健治

    柴田(健)委員 この森林保険制度はいい制度なんだから、これをうんと活用して伸ばしてもらうようにして、それらの森林保険活動の中で災害問題もある程度意味を持たせて対処していくという姿勢になってもらいたいという気がするわけですよ。だから、私が大臣にぜひ努力してもらいたいことは、これは農林省だけでは解決できないのですが、自治大臣と話し合いをして、山林の防災費というものをもっと交付税の算定基礎に——重要森林資源を持っておる市町村については、保安林面積または資源の容積について、そういういろいろなものを総合的に判断して、基礎的な問題を科学的に割り出して、自治大臣と話し合いをして、この地方交付税の算定基礎、財政需要額の中に大幅に入れてもらいたい。いまささやかに入っているが、これは入れてから期間が短いのですが、防災費について、市町村の任務の中で財政需要額を思い切ってふやすように努力してもらう話し合いができるかできないか、この点、大臣御意見はどうでしょうか。
  298. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 大臣がお答えになる前に、事務的にお答えさせていただきたいと思います。  ただいま御指摘のような点につきましては、地方交付税の積算の基礎の中に、森林面積が算定の要素の中に入っておりますので、その点から一応地方交付税の算定の要素としては加味されておるわけでございますけれども、ただいま先生の御指摘のような方向に沿って、自治省とも協議を進めて、できるだけ前進するような方向で努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  299. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 森林保険につきましては、林業経営の安定をはかることを目的として実施いたしておりますが、最近の災害の実態や加入の低調な実情にかんがみますと、内容的にも不十分な点があると思われておりますので、いまのお話しを含めてこれを検討してまいる必要があると思っております。
  300. 柴田健治

    柴田(健)委員 地方交付税の中の積算の基礎に何ぼか入っておる。これはたぶん四十三年か四十四年ぐらいから少し入ったと思うのですが、近年少し入ったのですが、この積算の根拠を林政部長は知っておりますか。何ぼ入っておると思うか。
  301. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 積算の要素の中に算入されておることは承知いたしておりますけれども、それが面積当たり幾らというところまではいまつまびらかにいたしておりません。
  302. 柴田健治

    柴田(健)委員 一ヘクタール当たりほんのスズメの涙ほどですよ。話なにならぬ。少し入れたというだけだ。キスをする前の、ちょっとべろをなめたぐらいのものですね。これでは、市町村のそういうあらゆる災害と取り組んでおる団体の立場から言うと、国は何という考え方だという疑問を持つのですよ。ほんとうに森林資源を守ろうとするならば、保安林指定権を持っておる大臣がただ指定を順次していけばいいのだというだけでは、日本森林資源というものは守れない。そういう第一線で守っておる者の立場の意見を十分尊重してもらいたい。そして、たとえばAの町村には水源涵養林保安林面積が幾らあり、土砂防備保安林はどのくらいあり、それ以外の面積が幾らあるから、その中で、針葉樹、広葉樹または雑木林全体を含めて、分類的にきめて、水源涵養保安林の地域にはどれだけの任務を持たせためには、交付税の算定基礎にはこう単価をきめていくのだというものがなければならぬと思うのです。いまは面積に合わせてつまんでやっているのです。こんなばかな積算の根拠はないと思うのです。これは農林省の罪だと思うが、大臣、この点はどうですか。
  303. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げましたように、保険制度それ自体にもまだ不備な点もありますので、いまお話しのような点については十分検討してまいりたいと思っております。
  304. 柴田健治

    柴田(健)委員 この点はぜひ直してもらいたいし、これは林野庁だけ責めたってなかなか山は守れるものじゃない。みんなして守る体制をつくらなければならぬ。国民も、地方公共団体も、また国も、みんなして、それぞれの機関が任務分担を持って、チームワークをとって山を守っていかなければならぬ。この山を守るためのいろいろな基礎的な積み上げ方式というか、積み上げた連携を持つような形をとらなければほんとうの山は守れないと私は思う。  それから、もう一つ防災面から大臣にお願いしたいのですが、森林開発公団が実施する大規模林業圏の中の林道、この林道の路線の中に何カ所か防火用水槽をつくってもらいたい。これはぜひつくってもらいたいと思うのですが、大臣の見解はどうでしょうか。
  305. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまはそういう制度がございませんが、これは大事なことでありますので、検討してみたいと思っています。
  306. 柴田健治

    柴田(健)委員 次に、造林の単価なんですが、どう考えてもこれは安い。賃金が平均二千四百円になっておる。これはどういう勘定をしたのだろうかというのが第一点。それから、苗木の単価、これはもう少し何とかならぬのだろうかという気がしますが、これは大臣よりは、長官、あなたから伺いたい。
  307. 福田省一

    福田(省)政府委員 造林の補助金について、先般の農水でもやはり先生からそういった御指摘を受けたわけでございます。特に、四十八年度におきましては、実勢に即するように大幅な改善を一応は行なったわけでございます。また、四十九年度におきましても、最近の情勢に対応しまして、予算単価をさらに改善するように、現在大蔵省とその実施の方法について協議中でございます。補助単価は、労賃単価の引き上げ等に応じましてその改善につとめておりますが、また、単価の適用にあたりましては、樹種、それから植栽本数ごとに標準となります単価を設定しますとともに、造林地の地利級、事業の難易等に応じまして、上下二〇%の範囲内で単価調整を行なうなど、極力実際の造林費用に対応した適用をはかっているのでございます。現状におきましてはほぼ実勢に即したものと思われるのでございますが、具体的にひとつ申し上げてみたいと思います。  労賃でございますが、四十六年、四十七年、四十八年、四十九年、それからこれは四十九年の実施計画の案でございますが、これを対照してみますと、四十七年におきましては対前年一二三%、四十八年には対前年一四三、四十九年の予算では一一九、実施計画におきましては一二九というふうに伸ばしてまいっております。絶対値を申し上げますと二千六百円ということでございます。また、ヘクタール当たりの造林単価でございますけれども、これは、再造林におきましては、四十七年は対前年一二四%、四十八年が一二六%、四十九年予算では一二〇、実施計画の案では一三七%というふうに伸ばしてまいっております。ヘクタール当たり十八万六千円でございます。それから拡大造林につきましては、四十七年が対前年一二五%、四十八年が一四四%、四十九年の予算では一二一%、四十九年の実施計画では一三五%、ヘクタール当たりの実際の単価は二十六万三千円、かように逐次実勢単価に近づけてまいっておるつもりでございます。まだこれでも不十分だとあるいはおしかりを受けるかもしれませんけれども、できるだけこれは努力してまいってきておりますし、今後もそういった方向で最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  308. 柴田健治

    柴田(健)委員 長官はまじめな人だから、本気で大蔵省と折衝して単価を引き上げる努力はされたと思うのですが、現実にこれでは本気でやれないと思うのですね。造林事業が伸びないと私は思う。もっと造林事業を伸ばそうと思えば、苗木にしても、賃金にしても、もう少し現実に合うような単価にしなければならぬ。いま二千六百円とあなたは言われたが、これは最一局を言っているのであって、平均すれば安いんですよ。二千六百円が平均ですか。これか平均ならば——これはまだ上がっていないのでしょう。これから上げようという数字を言うたのじゃないですか。
  309. 福田省一

    福田(省)政府委員 平均でございますが、男が二千八百五十円、女が二千百五十円、かようになっております。
  310. 柴田健治

    柴田(健)委員 これは、これから上げるのですな。
  311. 福田省一

    福田(省)政府委員 そのとおりでございます。
  312. 柴田健治

    柴田(健)委員 とにかく、今後そういう造林の単価の引き上げについては思い切ってやってもらいたいということをお願いしておきたいと思うのですよ。  それからもう一つ、造林を伸ばす一つの方法として、これは一つの提案として考えてもらいたいのですが、表彰制度というか、奨励制度の中で、山林功労者、森林功労者として、全国の植樹祭において個人的にはいろいろ表彰するとか感謝状を渡すとかするわけでありますが、個人といわず、団体といわず、造林をうんとやった人を対象にして——団体にも奨励金つきの表彰制度を考えたらどうかという気持ちなんですが、大臣、いかがでしょうか。
  313. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 造林を推進しますことは重要なことでありますので、現在、造林事業におきましては各種の助成措置を講じておるほか、功労者に対しては、緑化功労者として、毎年国土緑化推進委員会が中心になって表彰行事を行なっております。それから農林大臣林野庁長官等から感謝状を贈呈いたしておりますが、今後も、この造林推進施策につきまして内容の拡充をはかるために、こういう表彰のようなことをやることはたいへんけっこうなことだと存じます。そういうこともだんだん考えていく必要があるのではないかと思っております。
  314. 柴田健治

    柴田(健)委員 もう時間が参りましたから早くやめますが、大臣、外材輸入のことについてですが、いま大手商社と言われる商社十五社が外材の輸入権を大体持っておるのですが、この商社に輸入権を全部持たせるということは弊害を起こすもとになるし、そしてまた相手国に迷惑をかけるようなことにもなるのではないかと思う。同時に、また、国内の需要と供給のバランスをくずすという弊害も一昨年の末から起きているわけですが、輸入権を全部商社まかせるというのではなくして、農林省が窓口になるべきではないか、そして、国内産の資源と外材との調整をはかり、需要と供給のバランスを保つためには農林省が責任を持つべきではないか、と、こういう気がするのですが、この外材輸入の窓口を農林省が握るべきだという考えについては、大臣、どうでしょうか。
  315. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは木材のことに限らず、なかなかむずかしい問題がたくさんあると思います。いま、林野庁が窓口になるべきだというお話しでありますが、要は、円滑に、しかもあまりコストが上がらないように外材の輸入をするという方法にどういうやり方が一番いいかという問題だろうと思います。いまお話しのように、外材を輸入いたしておる商社等の輸入によってもし何らかの弊害があるならば、これはやっぱり改めることに最善の努力をいたさなければなりませんが、いまわれわれのほうで木材のみならずいろいろなものを民間を通じて輸入しておりますが、材木のような特殊なものでありますので、これは、そのやり方について、さらに私どものほうでも検討してまいるつもりであります。
  316. 柴田健治

    柴田(健)委員 この点は、農林省だけでとやかくというのはなかなかむずかしい問題だとは思いますけれども、国内資源の問題の調節ということを考えると、昨年の実績を見ると、国有林特別会計の黒字が六百数十億も出て、一方では、外材が入っておるにもかかわらずうまく流通のルートに乗せていかないなど、いろいろとそこに問題が矛盾として蓄積されていくのではなかろうかという気がするわけで、将来農林省が窓口になって、輸入権を全部握るということもなかなかむずかしかろうけれども、ある程度農林省がぜひ持つべきだという判断をわれわれはしておるわけです。  それにあわせて国有林の立木の払い下げの方法なんですが、依然として随意契約というものが行なわれておる。この随意契約というものは原則としてはいけない、やはり、競争入札というのが原則でなければならぬと思う。随意契約がやまないというのは何があるのかといろいろ研究してみると、競争入札になるとよそのほうの人が来て買うから地元の住民に不利益を与える、地元の企業に払い下げをするほうが該当の市町村も喜ぶだろう、こういうような理屈でやっているのだろうかというような気がするのですが、この随意契約はなぜやめないのだろうか、こういう気がするのですが、この点はどうですか。
  317. 福田省一

    福田(省)政府委員 おっしゃいますように、公売が原則でございます。随意契約につきましては、四十八年度以降できるだけこれを改正していきたいということで指導いたしております。具体的に申し上げますと、特に、いまおっしゃいました地元の産業振興のためにということで随意契約を地元工場にやっておったわけでございます。これは産業振興と申しましても、最近は非常に意味が違ってきておりますので、あの中にございます用途指定材、これが随契の非常に大きな部面を占めておりましたが、これは三カ年の経過措置をもちまして廃止したいというふうに考えております。それから、もう一つの随契は、これしか使えない、特に低質の広葉樹があったわけでございます。これらにつきましてもできるだけ競争原理を導入するような方法で販売方法を改善していきたいというふうに考えておるところでございます。
  318. 柴田健治

    柴田(健)委員 聞くところによると、ある会社で、林野庁だけを相手にして、国有林の払い下げだけで営業しておるという企業があるようでありますが、林野庁は、その企業を守るために立木の払い下げをしておる。考えてみると、林野庁はその会社の親会社か、子会社か、同じ系列資本かということに国民の目には映ってくる。それではいけないので、やはり、一つの線がなければいけない。ぴちっとした線を引いて、林野庁は林野庁らしい行動をとらなければいけない。私ばそう思うので、この随意契約については十分配慮してもらいたいと思います。  次に、私はお伺いをしておきたいのですが、今度の法律延長が新たに出てきた考え方としては、住民の休養、健康という、どちらかというとレクリエーションという意味での保安林として指定をして、国民の健康に役立たせていくというねらいがあるようでありますが、この点については、管理基準をきめないとかえって悪くなるのではないかと思うのですが、地方公共団体にどういう任務を持たせるのか、国がどういう基準で指導していくのか、その構想があれば聞かせていただきたいと思います。
  319. 福田省一

    福田(省)政府委員 御質問の趣旨は、保安林の制度の内部の指導を具体的にどうするかということだと思いますが、水源涵養保安林、それから上砂流出保安林、特に保健保安林というものを重点に今後これを拡大していきたいと考えておるわけでございますが、ただこれを量的に拡大していくばかりでなくて、内容の質の面でこれを拡充していかなければならぬと考えるわけでございます。したがいまして、従来指定施業要件をきめまして、伐採の方法なり、あるいはその大きさ、あるいは植栽の樹種なり方法ということをきめておったわけでございますけれども、現段階におきますと、さらにこれをきびしくしていかなければならぬという問題がございます。そこで、四十五年度以降具体的にその見画しをいたしておりますが、それらの結果を見ますと、相当変えていかなければならぬところがございます。具体的に申し上げますと、たとえば皆伐の面積をもっと小さくするとか、さらにそれを分散させるというふうなこともございます。そういったような具体的な基準につきましては、今後ともさらにこれをきびしく規制していく基準をつくりまして、指導してまいりたいということでただいま検討中でございます。
  320. 柴田健治

    柴田(健)委員 その地方公共団体、たとえば県なら県に、この保安林を、健康保安林保健保安林として、名前はどうでもいいのですが、そういう指定をする場合に、地域住民の健康を考えて、そこの保安林伐採をむやみやたらにさせない、また、指定解除もしない——しかし、それは、保安林の趣旨が土砂流出防備林でないのですから、管理体制というものを地方公共団体に十分させていかなければならぬと私は思うのです。地方公共団体にどういう任務を持たしていくのか、その具体的指導要綱というものを国が示す必要があると思うのですが、その点はどうでしょうか。
  321. 福田省一

    福田(省)政府委員 まさに御指摘のとおりでございます。ただいまそれを具体的に示すように検討いたしておるところでございます。
  322. 柴田健治

    柴田(健)委員 終わります。
  323. 仮谷忠男

  324. 諫山博

    諫山委員 昨年七月に福岡市周辺で起こった水害の二枚の写真を農林大臣林野庁長官に見ていただいたと思いますが、ごらんになられましたでしょうか。——この水害について、きのうの読売新聞が次のようなことを書いております。「三郡山系と呼ばれる山は、宇美町側からみると、明らかに異常である。山頂付近の一部を除いて、ほとんどスギとヒノキに覆われた山はだに、黄白色の、ツメでひっかいたような傷跡が無数にみられる。」「宇美町自然と文化財を守る会の天本孝志事務局長が「あれは、森林皆伐をしたところに、集中豪雨が重なり、土砂崩れで出来たツメ跡です」といった。」「三郡山系の宇美町側の森林は、七百ヘクタールが国有林(水源かん養保安林)、千四百ヘクタールが民有林。福岡営林署は毎年十五、六ヘクタールの広さで伐採を続けた。」少し飛ばしまして、「四十八年七月三十一日未明、この地方は一、二時間のうちに二〇〇ミリという集中豪雨に襲われた。翌朝、三郡山系の様相は一変、山はだには百か所以上の無残なツメ跡が残されていた。」「土地の古老は「明治時代にも水害はあったが、山があんなに醜くなったのははじめてだ」」ということです。これはきのうの読売新聞ですが、林野庁長官、昨年の七月三十一日の水害については調査されたようですが、大体ここに書かれておるような状況だったことはお認めでしょうか。
  325. 福田省一

    福田(省)政府委員 ただいま写真も拝見いたしました。さような状況だと思います。
  326. 諫山博

    諫山委員 この写真は水害が起こった翌日の写真です。見るからにむざんに山が削られておる状況がよく写っています。そして、林野庁長官の答弁では、やはり切り方に問題があった、切り過ぎたことが被害を大きくした原因の一つになっておるという答弁が先刻来ありました。こういう問題について農林大臣はどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  327. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 切り過ぎたということを林野庁長官が申し上げておるようでありますが、それならば今後は十分こういうことを注意していくようにしなければいけないと思います。
  328. 諫山博

    諫山委員 私がなぜこの問題を再び取り上げたかといいますと、この伐採というのは指定施業要件に合致しています。つまり、合法的な伐採です。それにもかかわらずこういう災害が起こった。ここに普遍的な問題がひそんでおるわけです。たまたま現場の責任者がかってないことをしてこういう事態が起こったというのであれば、これは例外的な現象です。ところが、林野庁が規定した要件に従って伐採した、それにもかかわらずこういう事態が起こったというところに問題の深刻さがあると私は思いますが、この点はいかがでしょうか。大臣からお聞きします。
  329. 福田省一

    福田(省)政府委員 大臣からお答えする前に私からお答えしておきます。  先刻も申し上げたのでございますけれども、合法的な伐採でございますが、結局これは指定施業要件の問題であるわけでございます。つまり、この保安林の伐採につきましては、伐採方法を規定しないということでございます。重要な保安林につきましては、伐採の方法につきまして、皆伐の面積を小さくするとか、択伐にするとか、それぞれ指定するわけでございますが、この場合におきましてはそれがなかったということでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、全国的に昭和四十五年から指定施業要件の見直しの作業をいたしておるところでございます。そういう基準を今後具体的に現地の実態に応じて、その場所、場所で指定施業要件をきびしくしてまいるという方針でただいま作業しております。中間の段階でございますが、全国的に見まして約九割ぐらいはそれを強化しなければならぬという実情にございます。例外ではございますけれども、緩和してもいいということは若干はございますけれども、おおむね指定施業要件を見直した結果は、この施業要件をきびしくするという方向で是正してまいるつもりでおります。
  330. 諫山博

    諫山委員 いまの詳細な説明で、大体林野庁の考え方はわかりました。私は、一日も早くこういう指定施業要件がもっと厳格にきめられて、そして、少なくともきめられたとおりやっている限り災害は起こらないという状態をつくり出すことが保安林制度の一番大切なことではなかろうかと思うわけですが、この点について大臣の所見を伺いたいと思います。
  331. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大事な山を保全するために、ただいま林野庁長官が申し上げましたような施業を実施してまいり、そのようにして山を保護することに万全を尽くしてまいりたいと思っております。
  332. 諫山博

    諫山委員 これもすでに林野庁長官に質問したところですが、保安林指定されるということは、山林の所有者にとって一般的には大きな負担になっていると思います。林野庁長官の説明でも迷惑ということばが使われたのですが、特に、売買の対象になるような山林、売りたいと思っているような山林が保安林指定されると、いろいろな制約を受けますから、経済的な価値も低くなるという結果がいろいろ生まれております。私は、必要があれば保安林にどんどん指定するということは大切だと思います。しかし、そのためには、保安林指定を受けた山の所有者が迷惑を受けるようなことがないようにしなければならない。具体的には、保安林指定を受ける人はいろいろ所有権の制約を受けますから、それに対する十分な経済的な補償が伴わなければならない。この点が不十分ではなかろうかと考えているのですが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  333. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 大臣がお答えになる前に、私から事務的に御説明申し上げたいと思います。  憲法の二十九条の三項に、「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という規定がございまして、森林法はそれを受けまして、三十五条で、「保安林指定によりその者が通常受けるべき損失を補償しなければならない。」という規定があるのは御存じのとおりでございます。現在、保安林につきましては、通常の林業的利用が期待できなくなるために生じる損失を補償の対象にすべきであるという観点から、規制に伴い現に発生した損失及び期待的利益のうち、確実に発生する損失という意味において立木補償を行なっておるわけでございます。土地の利用制限によりまして損失を補償することにつきましては、まず、保安林指定されたことによりまして林業経営に制約が加わるということで、森林の経済的価値が低下するという観点から補償をするという考え方一つございますし、林業経営以外の土地利用に関して制約が加わるために、より経済的に価値の高い土地利用を犠牲にしたということになるために生ずる損失に分けて考えるという、二つの立場があろうと思います。  前者の、森林の経済価値が低下することによる損失という点につきましては、立木補償による損失補償を行なうのが相当と考えられまして、これは、現在、森林法の規定に基づきまして私どもが実施しておる方法でございます。後者のケースにつきましては、私的所有権の本質でございます土地利用を規制することに伴う補償をすべきであるという御意見もございますけれども、このような補償につきましては、主観に対する補償というような見方、あるいは不確実な期待利益に対する補償というような見方で、いろいろ議論のあるところでございますし、また、自然公園法でも実現しておりますように、類似の法的規制においても、一定方式をもって継続的に補償するということは実施されていないというふうに承知いたしておりますので、私どもとしては現在立木補償ということを実施いたしておるわけでございますが、今後さらに検討を深める必要がある問題であろうというふうに考えているわけでございます。
  334. 諫山博

    諫山委員 私は、いまの説明を二回聞きましたから、重ねて聞くつもりはなかったのですが、そうすると、あなたの見解は、個人所有の土地で保安林指定されたとしても、いかなる意味でも個人に経済的な損失は与えていないということになるのですか。それとも、場合によったら与えている点があるから検討したいという趣旨ですか。
  335. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 先ほども御説明いたしたかと思いますけれども、保安林指定するということによりまして、通常の森林を林業の対象として利用してまいります場合に、伐期齢を越えて伐採に制限を加えられるというようなことから、経済的価値の損失があるという意味において、そういう損失に対して金銭的に代替補償をするということを現在のやり方で実施いたしておるわけでございます。  ただいまの先生の御指摘は、保安林指定することによって何ら迷惑はかけていないかというお尋ねの中で、森林を他用途に転用することを規制しておることによって損失を与えておるという点について配慮をしないのかというお尋ねではなかろうかというふうに考えますけれども、そういう点につきましては、都市計画法によりまして土地の利用について規制を加えるとか、あるいは建築基準法によりまして土地を限定いたしまして、建築について制限を加えるとか、類似の土地利用についての制限があるわけでございますが、そういうものにつきましても、先ほど申し上げましたような主観的な損失と申しますか、そういうものに対する補償は一様にまだ現在法的な補償の対象にしていない。そういうひそみにならいまして、森林法の保安林につきましてもそういう補償をしていないということを申し上げたわけでございます。
  336. 諫山博

    諫山委員 私が聞いているのは非常に簡単なことです。個人の所有土地が保安林指定されて、経済的な損失を与えていることはないと思っているのかという質問です。あなたの答弁は、経済的な損失は与えないという答弁ですか。それとも、与えているけれども、都市計画法とか、そういう例もあることだし、これはしかたがない、甘受すべきだという答弁ですか。どちらなんですか。
  337. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいま、保安林指定されることによって二種類の規制が行なわれている、そういう意味において、伐期齢に達した林木について、あるいは禁伐であるとか択伐であるとかいうことによる伐採制限を受ける、森林を林業的に経営することについての損害を受ける、そういう損害につきましては金銭で補償をする、だから、そういう意味におきましては損失が存在しておる、そういう損失については金銭をもって補償をすることをいたしております、と、こういうことを申し上げたわけでございます。
  338. 諫山博

    諫山委員 実は、私は、大臣に聞くつもりできょうは時間をとってもらったのですが、大体問題の所在はおわかりだと思います。いま答弁を避けられましたが、たとえば利用の制限を受けるわけです。家を建てようと思っても、保安林指定を受けると、木を切ることさえ制約を受ける。だから、経済的な価値が低下することは明らかです。たとえば私がどこかの山林を買おうとするとき、山林というのは、何も木を切って金をもうけるための山林には限らないわけです。家を建てようと思って山林を買おうとする。ところが、これが保安林だということになると、私はちょっと考え込むと思います。さて、これを買って、あといろいろな制約が出てこないだろうか、と。こういう制約が伴うのは、保安林である限り当然です。ですから、こういう場合、経済的な損失が伴うはずだけれども、これに対する補償は考えなくていいんだろうか、憲法二十九条は補償なしにそういうことをしていいことを規定しているのだろうか、ということを聞きたかったんです。これはぜひ大臣にお答え願いたいと思います。
  339. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 自分の山を保安林指定されて、自分の所有権に規制を加えられるという限りにおいては、損失があると思わなければなりませんが、同じような問題がずいぶんあると思います。たとえば国立公園の中で、自分の土地に対して自由に処分できないという、そういうことも、あるときにおいては自己の所有権の制限になるはずであります。  そういうことを考えてみますと、御存じのとおり、保安林というふうなものは、一方において、公共の利益のために必要やむを得ずして指定をするわけでございます。そういう場合にどういうふうな代償をすべきであるかというふうなことにつきましては、私は法律専門家ではありませんけれども、これはいろいろ問題のあるところだと思います。したがって、それらの点につきましては十分検討をしてみる必要があるというふうに思っております。
  340. 諫山博

    諫山委員 私は、個人の所有地を保安林指定することに反対しているのではありません。必要がある場合には大いに保安林制度を活用すべきだと思います。しかし、それによって個人が犠牲になるようなことがあってはならない。このことを強調したいわけです。検討するということですから、公共の福祉という名目で個人が犠牲になることがないように、ぜひ保安林制度を活用していただきたいという要望を述べたいと思います。  次に、保安林の買い入れ計画がなかなか予定どおり進んでいないという問題があります。たとえば、第二期の保安林買い入れ目標達成率というのはわずかに二三%ということを私はさっき議論いたしました。そして、買い入れが予定どおり進まない幾つかの原因について林野庁長官から説明もありました。私は、特にここで要望したいのは、国が保安林を買い入れる場合、十分予算を組んで、売るほうの側が、保安林を売って損をしたというようなことのないように取り扱うことが大切だと思うのです。この点、林野庁長官にはすでに意見を聞いたんですが、農林大臣から見解を聞かしてもらいたいと思います。
  341. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林大臣が申し上げても、林野庁長官が申し上げても、政府側から申し上げることは全部一体でございますので、そのつもりでお聞きを願いたいと思います。  いまのお話しにつきましては、林野庁の長官がすでにお答えいたしておるようでありますから、私のお答えもそのとおりとお考えいただいてけっこうでございます。
  342. 諫山博

    諫山委員 理屈はそのとおりかもわからないと思います。しかし、それなら、私は何もことさら大臣に質問するということを言わなくて済むのです。やはり、大臣がおられる以上、行政の最高責任者として私はこう思うという見解を表明されるのが至当だと思います。私、同じことになりますが、まず長官にお聞きして、そのあとで同じことをもう一ぺん大臣にお聞きしたいと思います。
  343. 福田省一

    福田(省)政府委員 先ほど、予定どおり買い入れ計画が進まなかった理由を申し上げたわけでございます。保安林整備臨時措置法の中には、強制買い入れの方法も実はあるわけでございますが、これは適用いたしておりません。いままでのところは、結局は予算措置についていろいろと問題があったかと思います。特に、国有林の特別会計制度の中におきましては非常に苦しい時代もございまして、それが影響したこともございます。しかし、特別会計が実施できない場合は一般会計から繰り入れることができるということもすでに法律にあるわけでございまして、今後の努力目標といたしまして、具体的に今度の整備計画ができますれば、どうしても国が買い上げなければならぬというものにつきましては、積極的にこれの対策を講じてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  344. 諫山博

    諫山委員 私、実は、いまの答弁はさっき聞いておったから繰り返さないつもりでずばり大臣に聞いたのですが、いまの長官の説明では、やはり予算措置にいろいろ問題があった。特別会計とかいろいろな問題についても発言されましたが、結局、財政上の問題がからんで、買い入れ計画が十年間のうちに二三%しか遂行されなかった。もちろん、これがすべての原因ではないと思いますが、こういう点があったようですから、大臣としては、予算の伴う問題でもあるし、どういうふうにお考えだろうかということを聞きたかったのです。
  345. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 林野庁長官が申し上げたとおりだと思います。
  346. 諫山博

    諫山委員 終わります。
  347. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明十日水曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時二十七分散会