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1974-03-27 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十七日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    上田 茂行君       小沢 一郎君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       島田 安夫君    染谷  誠君       中尾 栄一君    丹羽 兵助君       本名  武君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    美濃 政市君       湯山  勇君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         外務省欧亜局外         務参事官    加賀美秀夫君         農林大臣官房審         議官      下浦 静平君         水産庁漁政部企         画課長     新井 昭一君         資源エネルギー         庁公益事業部火         力課長     伊藤 栄一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任  米内山義一郎君     湯山  勇君 同日  辞任         補欠選任   湯山  勇君    米内山義一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四九号)  漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法  の一部を改正する法律案内閣提出第五〇号)  沿岸漁場整備開発法案内閣提出第七〇号)  農林水産業振興に関する件(昭和四十九年度  加工原料乳保証価格等)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、昭和四十九年度加工原料乳保証価格等について、政府から説明を聴取いたします。下浦審議官
  3. 下浦静平

    下浦説明員 お手元に本日の審議会に配付いたしました資料をお配りしてございますが、そのうち「六」と「七」という番号がふってあるのがあると思いますが、「昭和四十九年度保証価格等算定要領」及び「昭和四十九年度保証価格等説明資料」でございます。この「算定要領」のほうにつきましては、御参考にあとでごらんおきをいただきたいと存じます。  「保証価格等説明資料」のほうの資料に即しまして御説明を申し上げますが、まず、「保証価格」でございますが、ここに「算式」というぐあいに書いてございますけれども、要するところ、主要加工原料乳地域におきますところの推定生乳生産費を出しまして、それに主要加工原料乳地域における推定集送乳経費を加算いたしましたものを保証価格といたしておるわけでございます。なお、この主要加工原料乳地域でございますけれども、これは昭和四十八年度に用いましたと同様、一道四県の生産費をもとといたしております。北海道、青森、岩手、山形及び福島でございます。  結論から申し上げますと、試算の結果では、百キログラム当たり六千三百五十三円ということに相なっております。上げ幅で申しますと、一キログラム当たり十五円二銭ということでございます。  次に、「安定指標価格」でございますが、安定指標価格は、ここに書いてございますバター、脱粉、全練、脱練の、これらの四品目につきましての本年一月の実勢価格をとってございます。したがいまして、バター九百十四円、脱粉一万一千五百四十円、全練七千七百三十円、脱練六千六百円ということでございます。  三番目に、「基準取引価格」でございますが、これは算定方法をかいつまんで申し上げますが、まず、安定指標価格から卸売り業者のマージンを差し引きまして、さらに主要な乳製品推定製造販売費用を差し引くわけでございます。ここでこの主要乳製品につきましての、乳業者の、製造業者支払い可能乳代というものが出てまいるわけでございます。それを、それらの製品一キロ当たり製造に必要な乳量で割りまして、一キログラム当たり支払い可能乳代を出すわけでございます。これが「割るu」というところまででございます。  さらに、それで出てまいりました数値を、それらの乳製品製造に向けられます生乳、その生乳量総量に、それぞれの乳製品につきましてのウエートを勘案いたしまして、つまり加重平均をいたしまして、全体の一キログラム当たり基準取引価格算定をいたすわけでございます。  基準取引価格につきましては、二ページに書いてございますように、一キログラム当たり五十三円四十一銭ということでございまして、十二円九十二銭の上げ幅ということに相なるわけでございます。  最後に、「限度数量」でございますが、これは簡単に出し方を申し上げますと、生乳生産量推定量をまず出しまして、それから飲用向け生乳処理量推定量を差し引きます。さらに、自家消費向け生乳量推定量、これも差し引きまして、その上さらに、その他加工向け生乳処理量、これは不足払い対象になりません乳製品、これらのものにどのくらい向けられるか、こういう数量を差し引くわけでございます。それで出てまいります数量限度数量ということでございまして、二ページの一番下の欄に出ておりますように、百三十八万トンということに相なっております。  三ページ以下が、ただいま申し上げましたそれぞれの項目につきましての計算の基礎となっておりますが、そのうち「保証価格」につきまして、つまり三ページにつきましての御説明を簡単に申し上げます。  先ほど申し上げましたように、一番下の欄に出ておりますとおり、百キログラム当たり六千三百五十三円ということでございますが、このうち、まず流通飼料費でございますけれども、これは現数値つまり四十八年の生乳生産費でございますが、これを直近三カ月の、つまり昨年の十一月から本年の一月までの間の物質によりまして物価修正をいたしまして、さらにその上、二月、三月の乳牛用配合飼料価格上げ幅、これは一万円でございますが、これを加算をいたしております。  次に、飼料作物費でございますが、この中で農具建物関係費用が入っております。これらにつきましては、やはり物質修正を行なっております。これは昨年は修正をいたしません部分でございます。  それから、乳牛償却費でございますが、これは百キログラム当たり五百五十八円というぐあいになっておりますが、現数値償却費に十一月から一月までの搾乳牛価格変化率、これを乗じております。これは、前年度の計算では、更新されます搾乳牛のみ物価修正をやったということでございますが、四十九年度におきましては全頭数につきまして現数値物価修正、こういう方式をとっております。なお、前年度におきましては、廃牛価格につきましても評価がえをやりましたけれども、今年度はこのような現数値に対する搾乳牛価格変化率を乗じたという方式をとった次第でございます。  次の建物費及び農具費でございますけれども、これもこのうちの償却費でございますが、これらにつきましては、やはり同様に十一月から一月までの間の物賃によりまして物価修正をやっております。前年度は更新部分だけの修正ということでございましたが、今回は現数値にそのままかけておるということでございます。  さらに、副産物価額でございますが、このうちの子牛の点でございますけれども、子牛につきましては、雌子牛につきましては、過去五年間の搾乳牛価格に対しまする子牛の価格比、これを用いまして評価をいたしております。それから、雄子牛につきましては、十一月から一月の間の物賃価格変化率によりまして物価修正をいたしております。また、副産物価額のうちの厩肥の関係でございますけれども、これは三分の一の減耗率を採用いたしております。前年度は二〇%ということでございます。  それから、最後資本利子でございますが、資本利子につきましての、この中の固定資本でございますが、乳牛につきましては全頭数評価がえを行なっております。それから建物農具につきましては、更新分につきましての評価がえを行なっております。  なお、資本回転率につきましては十二分の二・五ということに計算をいたしておりまして、前年度は十二分の二という数値を用いておるということでございます。  以上で私からの御報告を終わらせていただきますが、この三ページにミスプリントがございますので、御訂正をお願いしたいと思います。下から四行目の「租税公課等」、これは「八〇」となっておりますが、手数料等が抜けておりまして、それを加えますと、「一六四」というぐあいに相なりますので、この「八〇」は「一六四」と御訂正をお願いいたしたいと思います。  それから、一〇ページから一一ページにかけてでございますが、下から七行目が「乳製品需要量’S2」となっておりますが、これは「S2」でございます。したがいまして、その下の計算式も、最初の行が「S2」になりまして、それからその下の下の行も「S2」となりまして、ダッシュがとれるということでございます。  それから、ページの「3」でございますが、ここに出ております「S2」にはダッシュをおつけをいただくということでございまして、「計算式」の下の行の「’S2」というところは、これはダッシュをとっていただきまして、「S2」というぐあいに御訂正をいただきたいと存じております。  以上でございます。      ————◇—————
  4. 仮谷忠男

    仮谷委員長 漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、及び沿岸漁場整備開発法案の各案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  5. 島田琢郎

    島田(琢)委員 先週質問を保留いたしました部分について、きょうは大臣がお見えでございますから、主として大臣にお尋ねをいたします。  その一つは、私の地元の問題についてお話しを申し上げたわけでありますが、大臣御承知と思いますが、サロマ湖がございます。サロマ湖は非常に古い歴史を持っているカキ生産地帯でありまして、古くは、養殖カキではなくて、自然なカキといいますか、特にイワガキのような種無のものが非常にたくさん生息をしておりまして、このサロマ湖からとれるカキというのはたいへん食味もいいし、非常に喜ばれておったわけであります。しかし、その後水面あるいは水温等変化等もありまして、養殖カキにとってかわられまして、養殖カキ並びにホタテガイ養殖が非常に盛んになってまいりまして、従来、このサロマ湖におきます水産というのは減退の一途をたどっておりましたが、養殖に切りかえることによって、ほとんど完全に近い蘇生をいたしました。いまたいへんたくさんな魚族がふえつつあるという現況で、ここに漁を求めております水産業者の皆さんを含めた漁業者の生活の程度も次第によくなっているということで、私どもは非常に喜んでおるわけでございます。ところが、この一月以来、かつて経験したことのない現象が起こりました。それは、流氷外海から流入をしてきたことであります。三分の二以上水面をおおうというたいへんな量の流氷、これが間もなく今度は外海に向けて逆に流出していくという季節に入りましてから、非常に心配が出てまいりました。当然、その流氷が入ってきた時点から、流出していくときの被害というものを想定して万全の措置をとらなければいけないということで、現地では、先般もお話ししましたが、砕氷船を繰り入れる、あるいはまたダイバーを海の底に入れて実態調査する、あるいは、先般は、三日間にわたって、自衛隊の航空演習というような名目のもとに空の上から融雪促進をやったというふうなことで、実は、いま、たいへんなお金をかけて苦労をいたしておるところでございます。しかし、これで氷が動き始めたときの被害を完全に食いとめられるかといいますと、きわめて悲観的な実情にございます。  たまたま昨年対象になりました養殖共済関係につきましても、その分野だけではとても救い切れないような被害が出てくるのではないかと思います。現段階ではまだ仮定の話にすぎないというふうにとられがちでありますけれども、完全に被害を避けることはできないというふうに私は見ております。しかし、いま申し上げましたように、その予防対策のためにすでにたいへんなお金をかけているという実態がありますし、いま私どもが聞いている範囲では、被害が積み上がってまいりますと五十億を下らぬだろうというふうに言われております。たいへんな状態にあるわけでありますので、これを今度の改正案の中で救えるかということについても、先週長官といろいろやりとりをいたしましたが、これはなかなかむずかしい。そうすると、一般災害といったような形でこれを救っていくという両面建てが必要だと思うのでありますが、こうした取り扱いについては、従来あまり例のないことでありますし、ことに、この流氷対策というのはたいへん——昨年、私も、水産三法の中でも、流氷対策をいかにしたらいいかということで、荒勝水産庁長官ともお話しをしたことがありましたが、流氷には実に困りましたということで、対策はもうほとんどギブアップの状態ですというふうな形に相なっていたわけであります。  今回のような状態というものが毎年起こってくるということを予測することは、あるいは行き過ぎかもしれませんけれども、しかし、ああいうきびしい条件の中にあるだけに、この地帯養殖漁業というものはそれだけにたいへん苦労が多いわけで、特別災害あるいは共済関係での救済という、こういう両面作業が非常に急がれるところだろうと思うのでありますが、まだ出ていないうちにどうしますということは答えられませんといえばそのとおりなんでしょうけれども、そういう実情にあるということを踏まえて、この取り扱いについては、部内でいまから十分かかって、いままでの努力しております部分ども金額上ではじき出して、しかるべき行政上の指導なり、あるいはまた被害を最小限に食いとめるための手当てなりを急いでいただきたいという希望を持っております。  あらためて先週の話を反復いたしましたが、こうした実情下にあるということを踏まえて、大臣としては、こういう問題についてのお取り組みをどうされようと考えておられるのか、お聞きしたいと思うわけでございます。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのございましたオホーツク沿岸は、流氷での漁業への影響等が多く、漁業にとりましての自然条件が悪いということは私どもも承知いたしております。このような条件下にあります本地域漁業振興をはかりますため、沿岸漁業構造改善事業等推進によりまして、魚礁設置、それからホタテガイ地まき拡大のための共同作業船の建造、それから流通施設整備などを進めてまいっておるわけでありますが、今後なお沿岸漁場整備開発法に基づきまして、総合的かつ計画的な漁場整備をはかり、そして、また、当地域漁業生産拡大安定化をはかって、あわせていまお話しサロマ湖等養殖適地におきましては、ホタテガイ等のこの地域に適した業種の振興をはかってまいるのがいいのではないだろうか、このように考えておる次第でございます。
  7. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、私は一つ提案があるのでありますけれども、実は、いまの流氷地帯におきます養殖漁業というのはたいへんな苦労があるということを、前段でも先週に引き続いて申し上げましたが、ところで、こういう海のきびしい条件を克服する方法として、あの地帯における養殖漁業の今後の発展というものをどうしても飛躍的にさせていかなければいかぬという考え方をわれわれは持っておりますが、いかんせん、この種苗対策というものはたいへん難儀な作業であります。したがって、私は、国立によるかなり大がかりな種苗センター設置ということが必要ではないか、また、そういう条件サロマ湖内においては非常に持っておる、と、こういう判断を一つしているのであります。そして、関係の漁村の町村長ともこういう問題を話し合ったことがございますが、町村長もそれぞれそんな考え方を持っておって、水産庁とも過般話し合ったことがあるようでございます。しかし、温度を上げていくというような施設も含めてのかなり大がかりなものになりますので、そのことについてはたいへん難色を示しておったようでございます。しかし、そこの地域養殖漁業家の期待としては、話し合ってみますと、これはたいへん大きなものがあるということも私はわかりましたので、こういう流氷対策の一環としての種苗養殖センター設置等について、ぜひ前向きに取り組んでもらいたいと思うのですけれども、私のこの提案に対しては、長官でけっこうですが、いかがお考えでしょうか。
  8. 内村良英

    内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣から御答弁がございましたように、基本的には、やはり、オホーツク海域漁業構造改善を進めていくということで対処しなければならぬというふうに考えておるわけでございます。その場合に、種苗センターをつくったらどうかという御提案でございますが、私どもといたしましても、先生御案内のように、瀬戸内海栽培センターをつくりまして、それから四十八年度から各県に栽培センターをつくっております。そこで、北海道漁業につきましても、将来栽培センターが必要になるのではないかというふうに考えておりますが、ただいま先生からも御指摘がございました技術的な問題その他一ぱいあるわけでございます。ただいま私ども北海道庁から聞いているところでは、いま直ちにそういう計画はないようでございますけれども、やはり、将来の問題として検討すべき問題ではないかというふうに思います。
  9. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、沿岸漁場整備開発法関係についてでございますが、この開発法全体を通じて、私の感じとして、どうも国の責任というものが鮮明でないという印象でございますけれども、どの部分で国の責任を持とうとされているのか、その部分を明らかにしていただきたいと思います。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この沿岸漁業は、わが国の漁業生産額の大体四割で占めるもので、私どもはきわめて重要なものであると考えております。  そこで、漁場環境の悪化、それから資源制約等もございまして、最近停滞ぎみに推移いたしておるわけでありますが、こういうことに対処いたしまして、今後の沿岸漁業生産の増大をはかりますためには、沿岸漁場としての生産基盤整備開発を促進いたすとともに、天然資源のみに依存してまいりました従来の漁業に加えて、いわゆる栽培漁業を本格的に推進することにいたしてまいりたいと思っております。そういう次第でありますので、新たに本法案を制定いたしまして、国みずから計画を樹立いたしまして、魚礁、消波施設設置あるいはまたしゅんせつ等沿岸漁場整備開発事業を総合的かつ計画的に行なってまいることといたしたいと思います。そしてまたこれら事業実施の目標、それから事業量を定めます沿岸漁場整備開発計画制度を確立いたしまして、漁業者みずからが栽培漁業等推進のため行なう特定の水産物育成事業をこれによって推進することといたしたい、このように考えておる次第であります。
  11. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大臣からいま国の責任分野についてのお話しがございましたが、私は、地域の自治体が積極的に取り組むということは、それは基本として正しいとは思います。ただ、そういう方式をとって今日まで、漁港整備五カ年計画だとか、沿岸のかかわりのあります構造改善事業推進であるとか、いろいろなことをやってきておるわけでありますが、なかなかそれが現実の問題として進んでいかない。そして、また、片や公害問題というような新たな敵に立ち向かわなければならぬというような事態が出てきて、この沿岸漁業整備という問題は、地方自治体の力だけではなし得ない非常に大きな資金と労力と、あるいはまたそのほかのもろもろのことをかかえ込んでいるという実情を考えますときに、たとえば数県にまたがるような問題については、国が全面計画から実行までやるべきだというふうに実は私は考えているのですが、この法案の中では、いま大臣のおっしゃるのを聞いていますと、そういうところもやるんだというふうなお話しとして受け取れるのですけれども、実際にはこの法案の中でそういうふうな点が明確になっていないように思うのですけれども大臣のおっしゃるとおりなんでしょうか。これはもう一度念を押します。
  12. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、今度の法律の第三条に、「農林大臣は、沿岸漁場整備開発事業の総合的かつ計画的な実施に資するため、沿岸漁業等振興審議会の意見を聴いて、政令で定めるところにより、」となっておりまして、この政令は五年を一期とするようなことを書くつもりでございますが、「沿岸漁場整備開発事業に関する計画の案を作成し、閣議決定を求めなければならない。」というところで、国が閣議決定までして計画をきめるわけでございます。そこでやる場合に、国がそれじゃ出ていくのかという問題でございますが、それは二条のところに、これは「定義」でございますが、「この法律において「沿岸漁場整備開発事業」とは、」云々とございまして、終わりのほうに、「たい積物の除去その他の政令で定める沿岸漁場整備及び開発事業で、政令で定める者が実施するものをいう。」ということになっておるのでございます。そこで、この「政令で定める者」に国が入るのかどうかということになってくるわけでございます。ただいま先生からお話しがございましたような数県にまたがる天然礁に匹敵するような大型魚礁というようなことになってまいりますと、それはあるいは県の事業ではとてもできないというようなことも起こってくるわけでございます。そういった場合には国が実施するということになるわけでございますが、そういった魚礁技術的可能性については現在いろいろ検討中でございまして、いま直ちにたとえば五十年度からそれをやるということをここで明言できるというような段階ではございません。
  13. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は、その点が非常に急がれると思うのです。というのは、これはいままでも去年以来ずいぶん議論になりましたが、国際海洋法会議がいよいよことしになりました。しかも、けさのテレビを見ておりますと、サケ・マスの、あるいはカニを含めての日ソの漁業交渉というのは非常にきびしい条件下に置かれているというふうに伝えられております。ことほどさように日本漁業はいわゆるたいへんな状態をいま迎えていると思うのです。少しオーバーな言い方をすれば、まさに水産もいま危機にさらされていると思うのです。内面的には公害その他の問題があり、そしてまた外延的な問題から言えば、いまの国際海洋法会議を含めた諸外国からの日本漁業に対する圧迫があり、また、近海にソ連の船が来たという騒ぎもこの間から起こっているわけであります。そういうふうに考えますと、従来のシェア、いわゆる遠洋沖合い沿岸、内水面を含めましての比率、バランスというものは大きく変えていかなければならぬ時期に来たのではないか。言ってみれば、遠洋沖合いに八〇%たよるというやり方を一刻も早く是正しまして、沿岸、内水面を含めた水産業の発展に方向を大転換していかなければならない時期に来ていると思うのです。そういう時期に、五年くらいの間では実際やるかどうかはまだきめておりませんというようなことではたいへん手ぬるいと私は思うのです。ですから、そういうきびしい条件にいまあるということを踏まえたときに、国の責任においてやらなければならぬ分野というものは一刻も早く計画を立てて手をつけるということをやりませんとたいへんだと私は思う。  同時にまた、先ほど公害の問題に触れましたけれども、昨年公害が起こったときの補償問題はやりましたが、瀬戸内海を除いたほかは大半原状に復帰させるというふうな対策も進んでいるとは言えないと思うのです。こんないろいろな作業がたくさん出てきているさなかでありますから、地方自治体における水産問題の取り扱いというものは非常にいま苦労が多いとわれわれは思っております。現に、私の町なんかも水産問題にほとんど町長は振り回されているという状態でありますから、そういう点で、国が相当の力をかしてまいりませんと、いわゆるきびしい条件下にさらされている日本水産の危機状態を打開していくことは非常にむずかしい。私はそういう一つの危機感を実は持っているのであります。ですから私はくどいように申し上げているのですが、せっかく沿岸漁場整備開発法というものをつくられようとするのであれば、国が積極的にやるという分野を明らかにして、そうして、地方自治体に協力を求めながら、地方も中央も一緒になって急いで日本漁業振興に全力をあげて取り組むべきだという趣旨を私は申し上げているわけであります。大臣、私の考え方はいかがでしょうか。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのように、むずかしい状況もたくさん漁業関係にはございますので、できるだけ国が指導して、所期の計画の目的を達成するように努力はいたさなければならない、われわれもそのように思っております。
  15. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大臣お話しでは、私はまことに消極的な感じでしか受けとめられないのですが、ぜひこれは積極的なお考えをお持ちいただきたいと思うのであります。  時間の関係大臣とさらにやりとりをすることができませんので次に進まざるを得ませんが、そこで、従来沿岸漁業振興法というのがありますが、この振興法と今回出されます沿岸漁場整備開発法との関連といいますか、この仕事の区分といいますか、こういうものが有機的に結合してまいりませんと、この法案は両方とも死んでしまうという感じが私はいたしております。たとえば構造改善事業一つとりましても、沿岸漁場整備関係と従来の漁振法との関係のなわ張りみたいなものが起こり、お互いにいいほうに引っぱり合えばいいのですけれども、困ったところはお互いが責任のなすり合いをするといったようなかっこうに法律上なるとしたら、この運用上たいへん困ったことになると私は思う。この運用をどのようにお考えになっておられるか。  たとえば開発地域の指定についてだって、私のところの北海道で六地域がいままで指定されたほかは、全国的にあとはまだ全然進んでいない。ことし一つ少し見込みがありますという先週の長官答弁でありましたけれども、しかし、実際にはもうこれが発足をしてから相当年数たっているにもかかわらず、この振興地域の指定さえも具体的に進んでいないというような実情を考えると、前段私が申し上げましたようなことが今回沿岸漁場整備開発法によって補完できるというものであるとすればよろしいのですけれども、それがなわ張りのいわゆるはねのけ合いというようなことで、都合の悪いところはみんな譲り合うというようなことになってくると、さらにこれがおかしくなってしまうというふうに考えられますが、長官、この辺はいかがですか。
  16. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘があった点は非常に重要な問題でございます。  そこで、まず法律の問題でございますが、本法案沿岸漁業振興法との関係でございますが、沿岸漁業振興法は、第三条に、「国の施策」として水産動植物の増殖による水産資源の維持増大、漁場整備及び開発等を掲げているわけでございますが、これはいわば本法案と沿振法との関係は、沿振法が基本法であり、本法案実施法たる性格を持っているということでございまして、その間に、むしろ、沿振法の精神をさらに具体的に実施する一つ法律として今度の法案提案しているわけでございます。  それから開発地域の指定の関係は、海洋水産資源開発促進法との関係でございます。そこで、本法と海洋水産資源開発促進法とは、増養殖推進により沿岸漁業生産の増大をはかることをねらいとしている点については共通しているわけでございますけれども、それぞれ制度の仕組みを異にしておりまして、それぞれ相まって運用されることによって初めて効果的な漁場整備開発が進められるわけでございます。したがいまして、法律におきましても、促進法に基づき都道府県が作成する開発計画は、沿岸漁場整備開発計画に即するものでなければならないというようなことを規定しておりまして、これによって国と都道府県の漁場整備開発に関する行政の一体化を進めたいと思います。  それから、構造改善との関係でございますけれども、これは先生のおっしゃるように、それぞれ責任のなすり合いになってはえらいことになるわけでございます。そこで、構造改善は、漁場整備以外に上物の整備その他がいろいろ入っておるわけでございますけれども、海の中のことにつきましては、構造改善事業との調整を十分とりながら、今度の法律に基づきまして本格的な漁場整備をやりたいというふうにしておりまして、その辺のところはよく有機的に連関をとってやらなければならぬということは先生の御指摘のとおりでございますので、私どもも、法律が通過した暁におきましては、そういうことで運営したいというふうに考えておるわけでございます。
  17. 島田琢郎

    島田(琢)委員 いま、海洋水産資源開発促進法の中での開発地域の指定というような問題が説明されておりました。また、海洋水産資源開発促進法の趣旨のお話しもございましたが、この法律との関連の中で、たとえば漁業法だとか水産資源保護法とかというふうな法律の運用というものも一つあるわけですね。並べ立てますとたいへんたくさんな法律が同じような名前で出ている。しかも、いろいろ説明を聞くと、みんな分野が違うということはわかるわけですけれども、しかし、現実末端は、一つ漁業組合で、一人の漁民が舟を使って魚をとり、やっていることはきわめて単純なんであります。仕事の中身は決して単純ではありませんけれども、立場というものは非常に単純な立場にいて、それぞれこういう法律の中で運用がごちゃごちゃになってきますと、末端の漁民は、どういう法律に乗っかって自分の漁業振興をやればいいのかということについても非常に戸惑いがある。私どもがいろいろと現地で漁民の皆さんと話してみますと、法律は知っているけれども、その法律がどういうふうに運用されていくのかという点についてはさっぱりわからぬところがあって困る、こういう法律というものはもう少し整理できないんだろうかと言っているやさきに、今度は新しい沿岸漁場整備開発法なんという法律がまた出されてくるというふうなことで、私も、実は、この辺はもう少し整理をして、何か一本の法律にすべきではないかというような感じもしておりましたが、いろいろとこの間から法案を読んでまいりますと、なかなか一本にまいらぬところもあるということもわかったのですが、結局は、漁業法にしても、水産資源保護法にしても、運用の中で有機的にうまく進めていくという、その運用の手段によるものだというふうに思います。  したがって、いまの間違っちゃたいへんなことになるという私の質問に対して、そのとおりですというお答えだけでは私も心配なんで、たとえば公害で、さっき触れました汚染海域の回復なんという問題も、水産資源保護法の中ではまたとらえる分野もあるでしょうし、あるいはまた海洋水産資源開発促進法の立場からもあるでしょうし、あるいは今度の沿岸漁場整備開発法の中でのとらえ方もいろいろできると思うのです。法律の中でそれができると思う。しかし、具体的には一体どうやってやるかという点になってきますと、さっぱりわからないのです。  この公害対策にしぼってお聞きをいたしますが、汚染海域の回復というような問題は、このようにたくさんある法律の中で具体的に進めていけるのでしょうか。その辺をちょっとお尋ねをいたしておきます。
  18. 内村良英

    内村(良)政府委員 沿岸漁場整備開発法の中で、汚染漁場の復旧というようなことはやれるわけでございます。そこで、沿岸漁場にとって一番大事なことは漁場整備で、その場合に、沿岸が一番汚染されているじゃないかということは、それもそのとおりだと思います。そこで、水産庁といたしましては、四十六年度から海底に堆積しております廃棄物等の除去事業実施しているほか、瀬戸内海の赤潮に対処するため、赤潮の発生基盤の一つと考えられております汚染海底汚泥の二次公害防止除去技術の事業をはかるため、四十八年度から計画的に事業化試験を実施しておりまして、さらに、漁場の改良、復旧を行なうための基礎資料を得るために、四十九年度におきましては、瀬戸内海におけるヘドロの堆積量、分布状況等の調査を行なうことにしております。これらの調査によりまして、はっきり計画的にどの地域についてどういう事業をしなきゃならぬかということを把握すると同時に、さらにヘドロの処理ということになりますと、二次公害の問題が非常に心配でございますので、そういったことが起こらないような技術的な開発をしなきゃならぬということで、現在鋭意そういったことを検討しているわけでございます。  そこで、一番汚染度がひどいのは瀬戸内海あるいは三重等もそうかと思いますけれども、そういった海域につきまして、どういうふうなところのヘドロをとりあえず除去しなきゃならぬかということを十分計画をつくりまして、計画的に、しかも二次公害を避けながら作業をしなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。
  19. 島田琢郎

    島田(琢)委員 足りない時間でのやりとりなものですから、どうも詰めが足りないままに次々と進まざるを得ないのですが、これはまた私のあとから立つ同僚議員からいろいろと詰めていただくことにいたしたいと思います。  いまのお話しについても、それだけでほんとうにいいんだろうかという感じがいたしてなりません。特に、育てる漁業に対して国は積極的に取り組むんだと、口の上では積極的ということを盛んに言われるわけですけれども、どうも、積極的というのは指導、助言の範囲にとどまっているきらいがありそうに思います。それじゃ、育てる漁業ということがいかに大事かということを、いままでもやりとりの中でもいろいろと明らかにされてきたわけでありますが、具体的にたとえばこの開発事業一つとってみましても、一体どれくらいの計画年次でどれくらいの事業量をもってやろうとされているのか、そういう点をお示し願いたいと思うんです。
  20. 内村良英

    内村(良)政府委員 今度の沿岸漁場整備開発計画で、国としてはどの程度の事業をやるかということでございますが、この点につきましては、先般も御答弁申し上げましたけれども、いずれにいたしましても、こういった漁場整備という問題は、現実に即して、現実的に行なわなければならないという性質の問題でございます。したがいまして、私どもといたしましては、四十九年度、八千五百万円ばかりでございますけれども、予算をとりまして、都道府県にまず調査を委託する。そこで都道府県から、ここで大型魚礁をやったらいいじゃないか、あるいはここで浅海開発をやったらいいというような計画を出してもらいまして、それを積み上げまして計画をつくりたい。そこで、そんなことをやっていると時間がかかるじゃないか、一体いつから始めるのかということになるわけでございますが、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、そういった基礎調査が必要でございますからこれはやる。そこで、できるだけすみやかに調査を終了いたしまして、五十年度を初年度とするということで、とりあえず第一次は五年計画くらいでやりたいというふうに考えているわけでございます。したがいまして、法案提出しながら規模がわからないのはおかしいじゃないかという御議論もございますけれども、私どもといたしましては、こういった事業をやる以上、腰だめでやらないで、十分積み上げたものを計画にしてやりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  21. 島田琢郎

    島田(琢)委員 いま、長官から、法案をつくってそのあと追いをしているという意味の答えがあったのであります。これは先週もずいぶんやかましく、法案をつくる限りは、事業一つのアウトラインなり、もっと具体的なものかあってこの法案ができるのではないか、これはあべこべではないかという指摘があったのですが、私もどうしてもそういう感じがしてならぬものですから、きょうあらためてまたこの点をお話ししたのでありますが、五十年度を初年度として五カ年計画で具体的に進めるというのではなくて、調査をするということがまず一つ行なわれて、それからやっと腰を上げるという感じになりますね。これでは非常にまだるっこいと私は思うのです。ですから、先ほどからくどくど言っていますけれども日本漁業はもはやたいへんな状態を迎えているという、こういう危機感の中から、特に食料問題というのは、海からとれるたん白資源の問題というのは、これからますますおろそかにできない重要な役割りを占めてくる。いままでも占めてきましたし、また、これからもそうなんです。そういう点を考えますと、一刻も早く具体的に国が指導して、そしてまた、国みずからも力を入れて進めていくということが一つ出てきて、初めてこの法案が生きてくると私は思うのです。ですから、この法案については、決して基本的に絶対反対という立場でいままで申し上げたのではありません。むしろ政府を叱咤勉励して、一刻も早く日本水産業をきちっとしたものにしていかなければならないという考え方のもとに申し上げてまいったのでありますから、どうかその点を十分腹に据えていただいて、この法案が他の法案との関連の中でスムーズに運用されていくように期待をするものであります。  最後に、一つだけお聞きしますが、私は、昨年五月に、漁業白書について本会議で実は質問いたしましたときに、漁業者年金制度の創設について触れました。この問題はいままでも議論されながら、なかなか軌道に乗ってまいりません。今度もまた政府側としてはこの問題に手をつけるお考えはないようでございますが、これはもう全然お考えとしては持っておりませんか。大臣、どうでしょうか。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御存じのように、農業者年金は、規模拡大と経営移譲を念願とする政策のために発想されたものでありまして、そういう意味で、あのときにも実は漁業について一緒にたいへん議論が行なわれたのでありますが、農業のそういう性格と漁業は違うということで、われわれは考えの中からはずすことにいたしたわけでありまして、そういう農業の特殊な考え方に立った農業年金制度でございますので、ちょっと漁業にはなじまないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  23. 島田琢郎

    島田(琢)委員 たいへん質問が言い足りませんけれども、時間が参りましたので終わります。
  24. 仮谷忠男

    仮谷委員長 湯山勇君。
  25. 湯山勇

    湯山委員 主として沿岸漁場整備開発について、新しくできる法律関係について先にお尋ねして、あと、災害補償の問題で若干お尋ね申し上げたいと思います。  基本的な問題については、いま島田委員からるる御指摘がございましたので、もう少し具体的な問題を中心にお尋ねいたしたいのですが、それに先立ちまして、日本の国民の食生活はどうあるべきか、その食料自給について、一体どれだけのものをどう自給するかというようなことをいろいろ私どもは検討してまいりましたが、その中で一番問題になったのは、特に動物たん白をどのように確保していくかということでございまして、ただいま審議会等で問題になっている畜産の問題は、えさの問題を中心にしていろいろ構想もあったわけですけれども、非常に残念なことに、日本の国民の最も重要な部分を占めている水産関係については、現状に立って判断するという程度の資料しか得られませんでした。それはどういうことであったかといいますと、現在の水産業の総生産を大体一千万トンということを基準にいたしまして、それであれば大体国民の二千六百カロリー、それから動物たん白、その中の二十五グラムというようなものは確保できるということで、ただ、問題は、もしその魚介願が現在の生産を大きく割る、たとえば七割になるとか、もっと悪く見て五割になるというようなことがあってはたいへんだというようなことをそのときに痛感いたしました。  そこで、食生活をいまのように適切な基準を守っていくということのためには、どんなに悪くなっても現在の生産は確保していかなければならないというような観点から今度の法案も拝見したわけですけれども、この沿岸漁場整備開発を進めていくというのは、どの程度まで進めていくか、どういうことを目標にしてやっていくかという点をまずお聞きしたいと思うわけです。  と申しますのは、四十五年の十一月に「沿岸漁業資源漁場開発の背景と対策」というものが出されております。これは直接政府が御関係になったものではありませんけれども、権威ある団体の代表者が全部加わってつくったもので、非常に大きな構想を持っているわけです。大体日本周辺の海岸線は二万七千キロメートルあり、その中の二百メートル水深よりも浅い地域が少なくとも二十六万平方キロメートルありますが、そこいらは当然今回の法律対象として、魚礁をつくっていく、あるいは防潮堤をつくっていく、消波堤をつくる、あるいはいろいろな悪条件を除去していくということで、そして、現在の魚礁というのは一メートル四角のコンクリートで、その面を四面全部使っておるとしても、いま言った中のどの程度になるかというと、まず、沿岸で当然整備しなければならないうちの二百二十五万分の一にしかならない、もし、一立方メートルの一面がそれに役立っていると仮定すると、整備しなければならない面積の八百五十万分の一にしかなっていない、それが今日の漁場整備状態であるということ、こういうことをこれでは指摘してあります。そうすると、二万七千キロ全部はとてもできないけれども、将来の日本水産業というものを考えていく場合には、少なくともその五分の一の五千キロは、当然、いまの大型魚礁で、あるいは魚礁でずっと囲んでいくというような構想でもって進めるべきだという指摘がありますが、その程度の大きな構想を持ってこの法律をお出しになったのかどうか、その辺のことをまずお伺いいたしたいと思うわけです。
  26. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 わが国の水産がきわめてむずかしい状況にありますことはもう御存じのとおりでございます。先ほど島田さんのお話しにもありましたが、たとえば遠洋の問題にいたしましても、ことし六月開かれます海洋法会議などでも、あれできまるとは思っておりませんけれども、いろいろわれわれに対する圧力が加わってきております。あれこれ考えてみますというと、お話しのございましたように、日本人のとります食料のうちの動物性たん白の中で半分以上を占めております漁獲につきまして、それも従来事が満足にいけているという状態でありますので、これに少しずつでも障害が入ってくるということになりますとなかなかむずかしい事態である。ことに、また、捕鯨の問題なども加わってきております。なかなか難物でありますが、われわれといたしましては、そういう国際関係のことについてはそれなりの努力をいたすことといたしましても、やはり、可能な限り沖合い沿岸に力を入れるということは絶対に必要なことではなかろうかと思います。なかんずく沿岸について、今日の状況を考えてみますというと、われわれの努力によりましてはまだ可能なものがある。そういうところに目をつけまして今回の三法等も考えておるわけでありますが、この計画対象となります沿岸漁場整備開発事業は、大別いたしますというと、水産動物の増殖、それから養殖を増進するために行ないます基盤整備事業、それから沿岸漁場の保全の事業でございますが、この具体的内容につきましては、この計画策定のための調査を行ないまして、沿岸漁業等の振興審議会その他関係方面の意見を十分に聞いた上で策定いたしてまいることになると思います。  現存計画対象といたしまして想定し得るおもな事業を申し上げますならば、従来実施いたしてまいりました大型魚礁設置事業、それから浅海漁場開発事業漁場造成事業漁場環境維持保全対策事業などが考えられると思うのでありますが、このほか、新たに、漁場の大規模開発を行なうために大規模な増殖場を——この増殖もかなり有望な点もございますので、増殖場の造成や天然礁に準ずる規模の大きい魚礁設置などについて、技術的観点からいろいろ研究いたしておるわけでありますが、先ほどもお話しがございましたけれども、こういう法案提案する前に計画が立つべきではないかということでございますけれども、やはり法律と並行してやらなければなりませんことは当然であります。漁業につきましては、ことに沿岸の仕事が多いわけですから、まず法律をつくらせていただいて、それに基づいて地方庁と十分連絡をとりまして、その協力の上で計画を進めてまいるということが円滑にいく方法ではないだろうか、と、こういう考えに立ってやっておるわけでございます。
  27. 湯山勇

    湯山委員 いまの問題につきましてはいろいろお尋ねしたいこともたくさんありますし、大型魚礁についても、従来のようなコンクリートの箱というようなものじゃなくて、もっと大きな構想のものを考えていく必要もあるというようなこともありますが、いずれにいたしましても、いまのような国際情勢、それから資源の問題等から考えて、手の届く沿岸漁業にもっとうんと力を入れなければならないということは大臣もいまおっしゃったとおりでございますが、幸いこれは非常な大構想でありまして、いま大臣のおっしゃったような計画を進めていくのにも非常に参考になると思います。このくらいまで沿岸漁業でやれば、日本の国民の食生活はこれがあるからだいじょうぶだというくらいな構想がございますから、これをぜひ御検討いただいて、また、こういう考えを取り入れてやっていただきたい。  そこで、先ほど、水産庁長官は、構造改善と本法との関係も十分調整してやっていかなければならないという御答弁をなさいましたが、具体的な例で一つお尋ねいたしたいのですが、それはヘドロの除去に関するものとの関連です。瀬戸内海は御存じのようにずいぶんよごれておりまして、愛媛県でこの前第二次構造改善事業指定の場合に、いまの汚染地域である燧灘、伊予灘などについても構造改善事業の指定をいろいろ要請したということでございました。ところが、その当時の水産庁のほうの御意見は、燧灘とか伊予灘というのはもう死んだ海であるということで、したがって、そこへいま構造改善事業をやっても意味ないということから、宇和海のほうへ一カ所指定になりまして、あとはそのままになっている。そこで、その当時の構造改善事業指定の場合に死んでいる海だという指摘をされた燧灘、伊予灘地区ですが、その汚染の中心は、田子の浦と同じように、製紙業から出る汚水、それによるヘドロが中心です。これはずいぶん大きい区域に及んでおりまして、香川県のほうからもその製紙工場に対して抗議が出ますし、あるいは、工場側のほうでそれを使って埋め立てをしようというものについても香川県のほうから抗議が参っておるというような状態なので、田子の浦のほうもずっと沖合い投棄をしておったのを、これも限度があってやめなければならないというような状態にある。そうすると、これらのヘドロの除去ですが、これは今度の法律では明らかに対象になると私どもは受け取っておったのですけれども構造改善事業の指定のときに、そのあたりは死んだ海だからやってもだめだというようなお話しも出ておったといういきさつから見ますと——回復すればもちろんこれは非常にいい漁場なんです。ですから、この漁場を回復するために行なう堆積物の除去の対象ですが、これらの田子の浦とか、燧灘、三島、川之江地区のヘドロの除去というものも一体対象になるのかならないのか、このことをまず具体的にお尋ねいたしたいと思います。
  28. 内村良英

    内村(良)政府委員 今般の沿岸漁場整備開発事業には、沿岸漁場の保全の事業として、ヘドロのしゅんせつ事業は含まれております。したがいまして、将来の問題として、そういった地域についても技術的な問題その他を解明しながら取り上げるということになるかと思います。
  29. 湯山勇

    湯山委員 そこで、それはだれがやるかという問題についてお尋ねしたいのですが、地元漁民がヘドロでもう使えなくなっているという区域は相当広範囲にわたっております。沖合いへ天体四キロ、東西へ十キロ、ヘドロの堆積は幅十一キロ、それから幅というか、長さというか、十二キロと二キロ、そういう区域にわたって大体三百万トンの堆積がある。ですから、そういうことから、地元の漁民は、漁業補償をしてもらって、あらためて要求するという権利をもうすでに失っているような状態である。それから会社側のほうは、七十五社で百一工場、一日四十一万トンの排水を出しているという状態ですが、この会社側のほうは、今度はもうすでに補償しているわけです。そうなってくると、これを除去することを会社側へ命令するというわけにもいかない。金を取るわけにもいかない。そうかといって、あなたたち漁業者に金を出してやれと言うわけにもいかない。結局、国がやるか県がやるか、いずれにしてもだれがやるかということの設定、その費用をだれが持つかということは非常にむずかしい問題が出てくると思います。そこで、いま島田委員からも、一体国がほんとうにやるのかやらないのかという質問がございましたが、これだけ大きくなりますと、とても一企業でやれるものではなくて、しかも、これを簡単に取ってのけるといいましても、第二次汚染の問題というものは非常に大きい問題ですし、そうなってくると、こういうものについてどうやってやるのか、大体の構想がおありならば明らかにしていただきたいと思います。
  30. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御質問のございました問題は非常に重要な、大きな問題だと思います。そこで、現在水銀の汚染ヘドロの問題が大きな問題になっているわけでございますが、これにつきましては、水銀等汚染対策推進会議決定に基づきまして、港湾なら運輸省とか、それぞれ所管省が中心となってすみやかに汚染泥質の除去に着手をすることといたしまして、処理方法につきましても、環境庁を中心に関係官庁で検討中でございます。その場合に、いまPPPの原則で汚染者がそれを負担するというようなことでやっております。PCBの汚染ヘドロにつきましても、原因企業によって、県等が主体となって除去がすでに一部地域では始まっております。ただいま先生から御指摘のございましたような漁業補償が済んだというようなヘドロの問題につきましては先ほども答弁申し上げましたように、まず技術的にどうやるかという問題がございます。それについて、水産庁は予算を四十八年から取りまして、その技術についてどうするかということを検討しております。  それから、この漁場整備計画全体につきましては、先ほども答弁申し上げましたように、県の調査を待って本格的な計画を立てるということになりますので、そういった調査研究を進めながら主体の問題についても考えなければならないのじゃないか、それはもちろん規模がかなり関係してくるのじゃないか、ということでございます。
  31. 湯山勇

    湯山委員 原則としては企業にも負担される部分もありましょうけれども、県なり国なりが責任をもってこれをやっていくんだという方針でしょうか。もう一度いまの点をはっきりお願いいたしたいと思います。
  32. 内村良英

    内村(良)政府委員 汚染者がはっきりしている問題はPPPの原則でやらなければならぬということは、これは国の基本方針としてきまっているわけでございます。それがはっきりしないものにつきましては、地方公共団体、国等が協力して処理していかなければならないと思っております。
  33. 湯山勇

    湯山委員 これはあまりゆっくりできない問題です。たとえばこれは新聞の切り抜きですけれども、「製紙カスを不法投棄 休耕田に六千トンも」という記事によると、休耕田へヘドロを捨てまして、上に砂をかけてわからなくしておったのがわかって問題になっています。それからごく最近では、いまこれは市議会の問題になっているというのですけれども、瀬戸内海の排水基準がありますが、基準を越えておったのを発表していなかったということで、悪意じゃないというので市当局が弁解しておりますけれども、問題になっている。そういう問題がすでにずいぶん起こっている。ですから、これはのんびりできない問題です。鋼矢板等で区画をして一部取り除いておりますけれども、PPPの原則でその企業にやれといっても、三百万トンのヘドロの除去というのはとてもできる問題じゃないと思います。  それらの詳細につきましては、すでに昭和四十六年度総合実態調査報告が出ておりまして、いまのような点で、御調査になろうと思っているような点はすべて出ております。これは国立国会図書館の調査及び立法考査局が発表しておりますが、ずいぶん詳しく出ています。だから、それらの実態調査というのはほとんど完了していると言って差しつかえない状態ですが、それならば五十年まで待たないで着手されるとか、適切な指導をなさるとか、せっかく今度法律が通れば、すぐ着手していただいていいのではないかというように思うのですが、そういう点はいかがでしょうか。
  34. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁場として利用するわけでございますから、単に汚染しているということと、同時に、漁場としての今後の利用度というようなものも考えながら、瀬戸内海については、現在これから調査を進めるわけでございます。
  35. 湯山勇

    湯山委員 もともとそのあたりは非常にいい漁場であったことは間違いないので、これはよく御存じのとおりだと思います。それがそういうふうになったわけですから、この法律の条文に非常によく当てはまるところであるという意味でいまのようなお尋ねをしたわけです。ただ、本年度すぐというのは予算の関係もおありでしょうけれども、いまのような国際的な状況の中で沿岸漁業を進めていくとすれば、早く着手していただく、あるいは早く適切な指導をしていただくということが大事だと思いますので、この点は特にお願い申し上げておきたいと思います。  時間の関係もありますから次の問題に移りますが、今度の沿岸漁場整備開発法案最後の第十六条に、「栽培漁業振興」という条項がございまして、わずか二行余りの条文ですけれども、「栽培漁業振興に努めなければならない。」ということが書かれてありますが、これは非常に問題が多いと思いますので、ちょっと基礎的なことを私はお尋ねしたいのです。  いただいた資料を見ますと、災害補償法の資料の一枚目をあけてみますと、そこに「漁業種類別生産量及び生産金額」というのがありまして、そこの「海面漁業」の生産量の中で、養殖業の、持にハマチが六万一千八百五十五トンとなっていますが、ハマチのえさに使われている部分がこの中にたぶん入っていると思いますが、それはどうなっておりますでしょうか。
  36. 内村良英

    内村(良)政府委員 ハマチのえさに使われる魚は、「海面漁業」の生産量の中に入っているわけでございます。
  37. 湯山勇

    湯山委員 どれくらい入っているかはわかりませんか。
  38. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま数字の持ち合わせがございませんので、あるいは今後調査しなければならぬ数字かもしれませんが、ございましたら提出したいと思いますけれども、ただいま持ち合わせはございません。
  39. 湯山勇

    湯山委員 常識的に判断しますと、養殖漁業でハマチを六万トン水揚げするということになれば、大体四十万トンないし五十万トン近いものが使われているんじゃないかというように思いますが、大体そうでしょうか。
  40. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもも、大体七倍ぐらいの魚が必要だということは聞いておりますけれども、正確な数字はございません。
  41. 湯山勇

    湯山委員 そういうわけですから、六万トンのハマチ生産に要する四十万トンのえさがこの中から抜けているから、生産量のトータルというものについては、国民の食料になるものというのはこれよりもさらに四十万トン引かなければならないという勘定になるわけですが、実は、いまのように食生活のことをやったものですから、気になったのでお尋ねしたわけです。  問題は、いま、漁業資源というものがだんだん少なくなっていって、しかも国際的な環境も制約も必ずしも楽観できないという段階で、魚をえさにして魚を育てるということ、同じ魚の肉をほかの魚に食べさして、それで収入をあげていくという漁業形態というものがいまの日本状態で一体奨励すべきものかどうかということ、これは検討を要するのではないかと思います。  実は、きょう資料として配っていただいたものの中に、漁家の収入がありますが、それで見ると、ハマチの養殖業というのは年間所得が昨年が六百万をこえておりますし、本年もそれを上回って、養殖漁業の中では一戸当たり平均が一番大きい所得を得ておる。こういう点から、漁業をやっておる人の家計の面から言えば、ハマチ漁業というものは非常にいい。だから、これは奨励すべきものだという一応の結論が出てくるのはわかります。けれども、今度は、もっと大きな日本の国全体の食料という面から考えて、いまハマチ養殖に何が多く使われているかというと、スケトウダラあたりじゃないかと思うのです。もとはイワシとか、イカナゴとか、アジとか、ずいぶんいろいろなものがあったし、サンマなどもかなり潤沢に使っておった時代がありましたけれども、いま、そのえさに非常に困っている。そのスケトウダラもだんだん型が小さくなってきている。そういうことが心配されている。そういうときに、特にハマチ養殖のようなものを奨励して、かりにいまの六万トンが二十万トンにもなれば、これはえさだけで百万トン以上、百五十万トンも同じ魚を消費しなければならない。この魚肉を魚肉にかえるということが一体ほんとうに適切かどうかという問題の検討を私は提起したいと思うのです。これだけ周囲に海のある日本で、ことに三重県がおそらくいま日本一で、愛媛県が二番目だと思いますが、どんどんこれを進めていって、現在の畜産物以上にえさの問題が深刻になってくるというようなことを考えますと、これに限度があるんじゃないかというように思うのですが、その辺はどのように考えておられますか。
  42. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のございました問題は、これは非常にむずかしい問題だと思います。確かに、カタクチイワシ、イカナゴその他の多獲性の魚類のうち、比較的需要の低いもの、あるいは食用に供されないものが従来えさに使われてきたわけでございます。それによってハマチの養殖を行なって所得をあげてきた。と申しますのは、そのときの水産物の需給事情というもの、あるいはもっと広く言えば国民経済全体のあり方の問題とも関連してくる問題ではないか。現在のところ、ハマチ等、中高級魚に対する需要が非常に強い。そこで、漁業者もそれに対する供給が十分ないので値段が上がっていく。それで、ハマチの養殖でそういった需要に追いついていくというかっこうになっているわけでございます。  そこで、それではカタクチイワシ、イカナゴ、あるいは最近はマイワシとかサンマなんかがまたふえてきているわけでございますが、そういったものが市場でどの程度消化できるかという問題もございまして、これは物的に見ますと、確かに先生の御指摘のあったようなことがございますけれども、いまの日本の経済の状況から見ていけば、やはり、現在ハマチ養殖が盛んに行なわれているような形になるのじゃないか。ただ、非常に食料が不足してきたときにそういうことを中高級魚のためにやるのは問題だということになってくるのではないか。非常にむずかしい問題の御提示だと私は思います。しかし、重要な問題だと思いますので、なお私どもとしてもそういったことを十分念頭に置きながら、ハマチ養殖の将来というものを考えなければならぬ問題だと思います。
  43. 湯山勇

    湯山委員 私が申し上げたいのは、ハマチ養殖漁業というものをやめろというのじゃないのです。そういうことも非常に大事なことではある。そこで、たとえばいまの三重とか愛媛とか、そういう先進県でそういう技術を保存して、しかも一定量のそういう養殖は進めていくことはいいと思います。しかし、この条文にあるようにむやみにこれを拡大していくということになると、それは大きな別な問題が起こりますし、いま、動物たん白は非常に重要な問題で、きょうからのエカフェでもおそらくそういった問題もあるのじゃないかと思います。そういうことを考えますと、この計画法案自体がさか立ちじゃないかとさっき言われたのですが、この政策もさか立ちではないか。ここまで来ると、たとえばハマチ養殖漁業は現段階でとめるとか、これ以上ふやさないとか、いま適地で適当に行なわれているのだからそこまでで一応規制して、あとは全力をあげてえさの研究です。魚たん白を同じ魚にかえるというような養殖じゃなくて、えさの研究をして、新しいえさを開発して、それによってハマチの養殖をする。今度はどんどんふやしていいのですから、それをやらなければ、いまの状態でこれをやることには問題が非常に大きい。えさ研究にはもっと金も入れるし、技術も投入して——石油たん白か問題になりましたけれども、これはいいかげんでやると問題です。しかし、ほんとうに研究して、これならだいじょうぶだというものができれば、そういう面からの新しいえさ問題を進めることもいいと思う。一番いいのは、アワビなんかはえさが海草ですから、アワビなんかの養殖はもう進めても進め過ぎということはありません。しかし、とにかくハマチ式の養殖というものについてはある程度の制限を設けて、えさ問題が解決するまではあまりふやさないということでないと、これはだんだんふえてくるし、えさは不自由になってくる。そうすると、結局たいへんな問題が起こってくるというように思いますので、そういうことを特に申し上げたいのです。  もう一度申し上げますと、ハマチ養殖は現状よりもあまりふやさないということにして、むしろえさの研究に全力を注ぐこと。えさの研究ができた段階ではいかように拡大してもけっこうだと思いますが、そういう順序を踏むべきだと思いますが、いかがですか。
  44. 内村良英

    内村(良)政府委員 確かに、先生の御指摘のような面もございますので、ハマチ養殖の飼料の開発の研究はやっているわけでございます。それで、現在までのところ、大部分なま魚が使われているわけでございますが、一部で、北洋産のホワイトミールを原料とする配合飼料が、まだ試験的の段階でございますが、試験的に使用されている程度でございます。そこで、今後、この養殖業は、ハマチ以外に大いに養殖業を発展させなければならぬわけでございますが、養魚用の飼料の需要が急増すると見込まれますので、私どもといたしましては、昭和四十四年から四十六年度まで都道府県水産試験場が行なう脱脂大豆及びパルプ酵母等の新しい飼料用のたん白素材の開発試験に対しまして助成いたしましたし、また、淡水区水産研究所が、昭和四十五年度から四十八年度まで、微生物たん白の飼料利用化と、水産加工場の加工排水から回収される魚肉のたん白の飼料化等について、水産大学校と共同して検討しておりますので、そういったことにも助成してきたというようなことで、養魚用の飼料の開発ということにはいろいろと一生懸命努力はしておるわけでございます。  ただ、問題は、現在までの技術的な段階では、ペレットに加工しますと、ハマチならハマチにそれがえさとして十分とられないという面がございまして、その技術研究はなお大いに進めなければならぬ問題が多々あるようでございます。したがいまして、こういった面の開発というものは非常に重要な問題でございますので、私どもといたしましても、今後大いに進めなければならない。ただ、現在まだ完全なものができていないという段階でございます。
  45. 湯山勇

    湯山委員 提案申し上げたのは、一つは、ハマチ養殖は現在以上にはふやさないでいくということ、あまり進めないということ。それから、えさの研究項目はずいぶんいろいろなところでいろいろな研究をなされているというのはよくわかりましたし、それもよく存じておりますが、ただ、きめ手になるような研究ができていないのです。研究が非常に弱いです。だから、本腰を入れて、とにかく一年間で仕上げるぐらいな覚悟で思い切ってやらないと、いまのままいけば、これもある、これもあると言いながら、じゃどれだということにはならない。これにはもちろん魚の習性の研究その他も必要ですし、成分の研究等いろいろありますけれども、しかし、ここまで来るとやってできないことはないと思います。まあ、この間の分析化学みたいなものは別ですけれども、いまの日本の科学技術をもってすればできないことはないということを思いますし、そう言っている人も決して少なくありません。そこで、ハマチ養殖は現状からあまりふやさないでいくという方針と、もう一つはパンチのきいた研究をするということ、この二つですが、これについてはいかがでしょうか。
  46. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生御案内のように、ハマチの養殖生産は最近非常に著しく伸びております。四十年に一万五千トンばかりであったものが、四十七年には七万六千トンになっております。これはやはり需要があって伸びてきましたし、それによって漁家の所得も増加してきたということもございますので、単にえさ問題だけの視点からこれを今後抑制するというようなことには、なお研究すべき問題があるのではないかというふうに思うわけでございます。
  47. 湯山勇

    湯山委員 問題は、伸びておるから心配なんです。伸びていなければそんなに心配することはないのです。稚魚の問題でも、まだまだ問題が多いですが、もう一つ慎重に検討していただくということで次へ進みたいと思います。  次の問題は、いまの養殖漁業とも関連を持つセンターの問題ですが、これにつきましては、瀬戸内海の漁業センターと、本年度からの日本海側の五カ所のセンターと、それから来年度からの太平洋側の七カ所のセンター、このセンターですけれども、形態が、従来の瀬戸内海漁業センターは国からの委託になっており、それから新しい十二のものは県営で補助事業になるということですが、その理由をお聞きしたいんです。
  48. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、第一に、瀬戸内海でございますが、瀬戸内海になぜセンターをつくってああいった国の委託方式でやったかということでございますが、御案内のように、瀬戸内海というのは各県の水面になっておりまして、漁業上の調整が非常にいろいろな問題がある海域でございます。現に、水産庁といたしましても、瀬戸内海につきましては、漁業調整事務所をつくりましていろいろ漁業調整をやっているというような特殊な地域でございます。  そこで、たとえば瀬戸内海で県営でやるということになりますと、ある県がやったものが向かい合っているというような関係もございまして、ほかの県の利益にもなるというようなこともございます。瀬戸内海というのはそういうように非常に複雑な海域でございますので、ああいった社団法人をつくりまして、それに国と県と漁協等も入りましてやっているというかっこうになっているわけでございます。ところが、その他の県につきましては、それぞれ固有の水面がございます。しかも、こういったことは、県がそれぞれ栽培漁業計画をつくりまして推進するということになっておりますので、県が非常に熱意を持っているわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、瀬戸内海はああいった特殊な海域なんでございますから、ああいったことでやってきた。しかし、今後の栽培センターにつきましては、なるべく県を主体として進めるほうが現実的なんじゃないかと思いますし、現に非常に各県が熱意を持っているわけでございます。そこで、県営で今後進めるということにした次第でございます。
  49. 湯山勇

    湯山委員 では、瀬戸内海の漁業センターは現在のやり方でずっと将来も続けていくということでございますか。
  50. 内村良英

    内村(良)政府委員 これは将来の問題として大きな問題になってくるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、現在種苗の量的生産をどんどん上げております。特にエビとタイにつきましてやっております。そういうような段階でございますので、一定の限度まで達しました場合にどうするかということは別な角度から考えなければならぬ問題もあるいは出てくるかと思いますけれども、現在のところ、まだそこまで検討しておりません。
  51. 湯山勇

    湯山委員 長官はちょっと歯切れの悪い御答弁ですが、さっきの御答弁は、瀬戸内海というのは地形がああいう地形だし、入り組んでおるし、そういうことで、県別にやることはぐあいが悪い、だから、総合的ないまのような形をとっていると言われた。これはよくわかります。ところが、その他は県別だ。そこで、瀬戸内海ですが、いまおっしゃったような理由ならば、当然将来もそれを続けていかないといけないのではないか。別に海の区切りが変わるわけでもなし、県境が変わるわけでもないのですから、続けていくというのがたてまえでなくちゃならない。しかし、いまの御答弁のように、今度はそれは将来また考えるんだということだと、さっきの御弁といまの御答弁とは全然立場が違っているように印象を受けますので、瀬戸内海はそのまま続けていく、他はこうだというような御答弁でないと納得できないのですけれども、それはどうでしょうか。
  52. 内村良英

    内村(良)政府委員 ちょっと私の答弁が不十分であったと思うのでございますが、現在のところは、瀬戸内海の栽培センターができましてからいろいろ技術的な段階を経まして、現在ある段階に達しているわけでございます。そこでそれぞれの目標を立てまして種苗の生産を大いにやっておるという段階でございまして、現在、私どもは、瀬戸内海のセンターを県営にするということは全く考えておりません。しかし、今後栽培漁業の技術的な進歩もいろいろあるだろうと思います。現在主としてエビとタイ、クルマエビとマダイということでございますが、その他の魚にもだんだん及んでくるのじゃないか、さらに今後県営の他の地域栽培センターも大いに拡充していくんだろう、そうなった場合においては、あるいはその関係の県からのいろいろな意見も出てくることもあるんじゃないか、こういうことは考えられるわけでございます。  現在のところは全くそういうことは考えておりませんけれども、そういうことが起こってきた場合には、いまの瀬戸内海のあれは、瀬戸内海は特殊性があるんだから、県の意向を無視して、何が何でも、あくまで現在の瀬戸内海のセンターでやるということでいいかどうかということは、検討すべき問題がその段階になれば出てくるかもしれぬという意味のことを申し上げたわけでございます。
  53. 湯山勇

    湯山委員 よくわかりました。  そこで、私が申し上げたいのは、実は、この県営のセンターをそういう形でばらばらにつくるということがはたしていいかどうかという問題です。それは、日本沿岸とか太平洋沿岸というのは県で区切りができましょうけれども漁業というのはそういう性質のものではなくて、同じような研究を日本海側でも何カ所でもやる、あるいは太平洋岸にしても何カ所も連携してやっていくということにおいて初めて効果の出てくるものがずいぶんあると思います。そういうことを考えると、県営になってくれば、外へは秘密にしていろいろな技術開発をやるとか、よそよりもぬきんでていこうとかいうようなことから、ともすれば、つい連携がとれなくなる。  それから、いま直ちに問題になるのは技術者の交流だと思います。瀬戸内海でこういうことを完成した人は、今度はどこにこういうものができるのか、岩手なら岩手へ行ってそれを研究するとか、あるいは島根なら島根へ行ってそれを指導するとか、そういうことができなければ、せっかくこういうものをつくっても、その効果は思うようにあがらない。ことに、日本の研究体制では、そういう調査実施体制の不備、資料の不足ということが基本的な欠陥として指摘されている。そうすると、そのセンターというものは相互連携をとってやっていくということが大事なのに、いまのように県がばらばらということになってくるとそういうことがうまくいかない。では、技術者をどうするかというと、まあ、いまならば、実際問題として、瀬戸内海のセンターの技術者を派遣するしかないだろうと思うのです。それは全然違ったところへ、水産庁にいる人が漁協へ行くというような形ですから、そこにも障害が起こってくるということを考えますと——それは府県に要望か強いのはわかります。しかし、そうだからといって県をばらばらにしないで、瀬戸内海と同じ場所がたくさんあっても、同じような形態で経営していくということのほうがセンターの役目から言って適切ではないか。単に補助が四分の三しかないとか、満度に補助があるとかという問題ではなくて、センターの機能、使命という面から言って、いまの瀬戸内海センター方式が全部に適用されていいんじゃないかと私は考えますが、その点はいかがでしょうか。
  54. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のあった御意見は、私どもといたしましても、そういうふうに考えたこともございます。しかし、昨今の県の非常な熱意——県も、自分のところで放流した魚類が他県の漁業者の利益になってしまう場合もあり得るということはよくよく承知しているわけでございます。それも承知の上で沿岸漁業の、特に栽培漁業振興のためにやりたいという非常に強い熱意を持っておりますので、県を主体にやる、それに対して十分な補助をしようという体制にしております。  それから、技術者の交流その他の問題は、ただいま先生の御指摘がございましたように、瀬戸内海のセンターという先進的な機関があるわけでございます。それを中心にし、さらに水産庁の技術員等も十分加わりまして、十分なる情報の交換、試験研究の調整その他をやっていかないと、各県が孤立してやるということはむだがあることは御指摘のとおりでございます。そういった点は十分考えながら、一方、県の持っている熱意を生かしてやるのがいまのところ一番現実的ではないかと考えたわけでございます。
  55. 湯山勇

    湯山委員 県の熱意説もわからぬことはないのですけれども、しかし、センターというものはもっと大事な使命があるわけで、単に県の熱意だけと言っても、それだけの能力がある県が一体あるのかどうかということを考えますと、せっかく熱意を持って発足したけれどもということになりかねないということを私は特に懸念しております。瀬戸内海のセンターがあれだけの効果をあげたということも、いまのような協力体制がかなりよくできていたというところに大きな原因があるわけで、長官もそういう方法が適当だということもお考えになったということですから、これはいま変えるということもなかなか困難かと思いますけれども、しかし、スタートも非常に大事ですから、県の熱意は熱意で生かす道があると思うのです。  それでは、瀬戸内海のセンターが愛媛県、香川県のためになっていないかというと、そうじゃなくて、ずいぶん役立っていて、県も感謝しておるし、漁民も感謝しているというような実情ですから、県の熱意ということにそれほどこだわらないで——私は長官の御判断のほうが正しいと思いますので、適当な機会に——発足はしてみたが、それでもてあますというものができてくると思います。そういう段階で、希望があれば切りかえていくということをお考えになってはいかがでしょうか。
  56. 内村良英

    内村(良)政府委員 御案内のように、まだ発足したばかりでございます。しかも、県が栽培漁業振興計画を全部立ててやっておりますので、そういったことを勘案しながら、やはり、将来の問題として検討する必要があれば検討しなければならぬ問題と思いますが、現在のところは始まったばかりでございますから、少し様子を見ていただきたいと思います。
  57. 湯山勇

    湯山委員 おっしゃることに間違いがあるのじゃないですけれども、ちょっともの足りない感じがします。せっかくあれだけはっきりした見解を持っておられる長官の御答弁としては非常にもの足りないのですけれども、しかし、これはほんとうにそう思うのです。各県のエゴではなくて、大きい立場から、さっき申し上げましたように魚礁も五百基、五千キロつくるというような構想に立てば、もっともっとたくさん要るわけですから、そういうことをもう少し本気でぜひ御検討願いたいというように思います。  それから、時間の関係もございますので次へ進みますが、今度は漁業災害補償法関係で、赤潮の問題が取り上げられていることです。この赤潮特約というのですか、これは「一定の水域において営む一定の養殖業に係る共済契約においててん補する旨の特約がある場合」という条件がついておりますが、赤潮というのは前もって予測できる面もありますし、なかなかできない面もありまして、うちのほうはだいじょうぶだと思っていても赤潮に襲われるということは間々あることでございます。特に、私の感じから言えば、北海道等にはほとんどないのだろうと思いますけれども、その他のところというのはほとんど全部そういう懸念があるわけですから、特に限定した地域あるいはそれだけを対象にするというのではなくて、全部を対象にして、こことここだけは抜いてもいいというようなことのほうが実際的ではないでしょうか。その点はいかがでしょうか。
  58. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、最初に、今後赤潮特約の指定水域をどのように設定していくかという問題と非常に関係のある問題でございますが、私どもといたしましては、指定水域は、赤潮が多発している水域及び海の富栄養化によりまして今後赤潮の出る可能性が非常に多いところをまず指定していきたいと思っております。と申しますのは、国の負担ももちろんでございますが、それ以外に、地方公共団体にも掛け金の負担をしてほしいということを私ども思っておりますし、それで一生懸命指導し、また、働きかけているわけでございます。そうすると、あまり赤潮の発生の可能性がない地方公共団体というものはやはり関心がないのじゃないかということもございますので、私どもといたしましては過去におきまして赤潮が非常に出たところ、これはかなりはっきり過去の形態を見ますとなっておりますので、とりあえず非常に多発的なところをやりたい。そうなりますと、瀬戸内海の中心、九州、三重その他の県が対象になるわけでございますが、そういったところをやりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  59. 仮谷忠男

    仮谷委員長 湯山委員に申し上げますが、大臣が参議院の予算委員会出席のために、十二時三十分に退席を予定しておりますので、大臣質問を含めてお願いいたします。
  60. 湯山勇

    湯山委員 はい。  それでは、西日本の、海岸を持っておる県で対象にならないというのはございますか。
  61. 内村良英

    内村(良)政府委員 まだはっきりどの県というところまではきめておりません。いま、県といろいろ話し合っております。ただ、過去のデータをいろいろ見ますと、西日本ではたとえば鳥取、それから沖繩なんか過去あまり出ていない。まあ、沖繩は途中で返ってきたという問題がございますから、あるいはアメリカ軍の占領時代に何かあったのかもしれませんけれども、そういうところはあまりデータがございません。
  62. 湯山勇

    湯山委員 県のほうが渋るというのは、何か理由があるのですか。三分の一の県の掛け金負担ですね。今度の四十九年度の地方財政計画にはその分は見込まれていると聞いておりますが、どうでしょうか。もし見込まれているなら、県のほうがそれを渋るという理由はないと思うのですけれども、その点はどうなっておりますか。
  63. 内村良英

    内村(良)政府委員 地方財政計画の中に見込まれております。私どもは、法律で県が負担しなければならぬ、地方公共団体が負担しなければならぬと書けなかったのは、赤潮の発生と県の負担の関係、たとえば下水処理について県が十分にやっていないから赤潮が起こるという因果関係が必ずしもはっきりしないというような法律上の問題がございまして、はっきり地方公共団体が負担するというふうに書けなかったわけでございますが、実際は当該県の漁業者にとって大問題でございますから、大部分の県は必ず出してくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  64. 湯山勇

    湯山委員 少しこまかいことを聞いて恐縮ですけれども、各県はその分の交付があるということはわかっておるのでしょうか。わかっておれば、その負担が見込まれるからとか、ほかへ回すからとか——交付税ですからひもはついていないけれども、財政計画に見込まれているんだということであれば、その交付を受ける県がこれに反対したり、それじゃ困るというようなことはないはずだと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  65. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもが県から事情聴取しているところでは、現在赤潮の多発的な県のほとんどすべては負担するつもりで、いろいろ地方財政上の用意をしているようでございます。
  66. 湯山勇

    湯山委員 何県ぐらいが見込まれておるのですか。
  67. 内村良英

    内村(良)政府委員 まだ確定したわけではございませんけれども、大体十七、八県ということになるのではないかと思います。
  68. 湯山勇

    湯山委員 その点はよくわかりました。  次にお尋ねをしたいのは、その赤潮の被害の認定です。これは非常にむずかしくて、瀬戸内海等におきましては、単に赤潮ではなくて、複合的な被害があった場合、数年前にもありましたし、昨年ごろもあったのではないかと思うのですけれども養殖ハマチが大量に変死した。漁民のほうは、これは工場の排水によるものだというようなことを言うし、工場側のほうは、うちはそんなにやっていない、赤潮によるんじゃないかというようなことで、いろいろ問題が起こって、赤潮とも言わない、それから工場排水とも言わない、悪水の被害だというので一般共済で補償したとか、そういうことも聞いておりますが、これは宇和海だったかと思います。それから燧灘の今治沖でもそういうことでトラブルがあったことを聞いております。これは数年前です。瀬戸内海のように赤潮と汚水関係というものが複合して起こった場合の判定、あるいはそういう場合に適用になるのかならないのか、適用するとすれば一体どういう適用のしかたをするのかという点をお聞きしたいと思います。
  69. 内村良英

    内村(良)政府委員 赤潮の原因が人災か天災かということは非常に議論あるところでございまして、問題があるわけでございますが、赤潮特約の対象となる養殖業に被害があった場合、その養殖業の養殖水域において、その当時異常な赤潮の発生による被害と確認されれば、特約によって救済されるわけでございます。  そこで、異常な被害とは何であるかということが問題になってまいります。異常な被害というのは、まず、第一に、赤潮によりまして、単位漁場区域内において赤潮特約の対象となった共済目的のうちの半数以上が死亡したという場合、それから、第二に単位漁場区域内における赤潮の滞留日数が長期にわたっておる場合、それからいま申し上げた一、二以外の場合でございましても、赤潮発生範囲及び赤潮を構成する生物の種類及び濃度から見て明らかに異常だというようなものを救済したい。そうすると、これはだれがきめるのかということでございますが、これは共済者である共済組合が判定するということでありますので、実際の漁民の被害に応じて合理的な補償が行なわれるようになるというふうに私どもは期待しておるわけでございます。
  70. 湯山勇

    湯山委員 むずかしいのは、複合汚染の場合には、通常の場合ならばこの程度の赤潮ならばだいじょうぶだという量でも、他の要素が加わってくると、それで被害が出てくるというケースが問題になるわけです。そうすると、その原因はどちらにあるかというと両方にあるわけで、そこで、一方は一方でこうだと言う。一方はまた違った論拠に基づいて反発する。結局、漁民が一番難儀をするというようなケースがずいぶん予想もされますし、過去にも幾つかそういうことがありました。そういう場合に一体どうするかという問題なんですが、赤潮で出たのだということが明確な場合は問題ないのですけれども、赤潮ではとうていそんな被害は出ないという程度の赤潮で、複合してそういう状態になった場合にそれをどうするかということをお尋ねしたいと思うのです。
  71. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましては、そういった場合も赤潮特約で、異常なる赤潮の発生であれば救済したい。ただ、明らかに第三者がその水域を汚染したためになったという場合には、当然その者が補償するということになりますけれども、今度赤潮特約という制度をつくるわけでございますから、漁業者被害が救済できるように運用したい。その判断は、共済組合で異常な発生であるかどうかということを判断させるというふうなやり方をしたいと思っております。
  72. 湯山勇

    湯山委員 ことばの上ではいまおっしゃったようにはっきり言えますけれども、具体的な実際問題としてはそういうわけになかなかいかぬ場合があるということはおわかりでしょうか。
  73. 内村良英

    内村(良)政府委員 確かに、先生の御指摘のような面があるわけでございます。しかし、こういう制度をつくるわけでございますから、われわれといたしましては、共済組合あるいは連合会その他の関係者と十分相談いたしましてうまく運用したい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  74. 湯山勇

    湯山委員 ちょっとこの問題はっきりしないのですけれども共済組合がかりに工場と対立した場合に、共済組合は、これは赤潮じゃない、あなたのほうからによる被害だと言い、一方は、うちのはこれだけ排出しておる、したがってこの測量値はこれだけであって、うちのほうからではその被害は出ないという複合の場合です。もっと言えば、はねかけ合いじゃなくて、赤潮も幾らかある、一方のものもある、複合して出たものだということを両方が認めた場合、そういう場合はどうなりますか。
  75. 内村良英

    内村(良)政府委員 そのような場合におきましては、共済組合は共済金を払いまして、払ったあとで保険代位でその加害者といろいろやる、こういうことになるのではないかと思います。
  76. 湯山勇

    湯山委員 その点はよくわかりました。それでは、今度は共済組合が企業と話し合う形になるわけですね。もう一度その点をはっきりと伺いたい。
  77. 内村良英

    内村(良)政府委員 そのようになるわけでございます。
  78. 湯山勇

    湯山委員 よくわかりました。  次にお尋ねいたしたいのは、これと関連して、海洋汚染に伴う漁業権の問題なんです。埋め立てとか、いまのようなヘドロ公害とか、あるいは水銀汚染とか、そういう場合に、ある会社ではその地域でとれた魚を無条件で買い上げる。そうしてその魚をどうするかというと、魚粉にしてえさに回したり、その他適当に使って、一般食用には売らないというような形で、とにかく買い上げの協定を結んでいる企業もあります。それから、あるところは、その地先漁業権というものを全部補償した形で、そこでは漁業もほとんどやらないというような形になっているところもあります。そういう場合に、具体的に言えば、今度瀬戸内海の沿岸に原子力発電所ができることになって、いまその工事が進められております。地元の漁業協同組合は、それに対して地先漁業権は放棄して補償を受けておった。実は、そこに慣行による入り会い権を持っておった漁協がありまして、入り会い権まで処分されては困るというような申し出があるのですが、そういう場合には一体どういうふうになりますか。
  79. 内村良英

    内村(良)政府委員 入漁権として認定されたものがあれば、補償の対象になるわけでございます。
  80. 湯山勇

    湯山委員 昔からずっとありまして、漁業権は以前に買い上げになりましたね。だから、そういうものはいまはありません。けれども、事実においてはあったわけです。したがって、漁民はそれによって被害を現実に受けている。その被害に対しての補償というものは——もともと漁業権というのは個人の漁業者に属するものであって、組合とか団体に所属するものじゃないというのが原則だと思います。だから、漁業をやっておる者がそれによってそういう損害を現実に受けている場合、それは補償の対象になるんじゃないかと私は思いますが、なりませんか。
  81. 内村良英

    内村(良)政府委員 法律的には、入漁権が認定されないと法律上の請求権があるかどうかという点は問題だと思います。ただ、私どもがそういうケースについて聞いておりますのは、実際問題としては、慣行的にそういうことがあるところでは、関係の企業と話し合って問題を片づけているというケースがございますけれども先生のいま御指摘の場所はどこだか具体的にちょっとわかりませんので正確な御返事はできませんが、はっきり認定されていないと、法律上は、これは慣行的な入漁権だということが言えるかどうかというのは問題があるのではないかと思います。
  82. 湯山勇

    湯山委員 私どもは、漁業権というのは大体こういうふうに解釈しておるのです。個人個人の漁業者漁業のできる権利がそれであって、補償というのは、どういう形にもせよ、従来できておったものができなくなった場合には、その個々の漁業者には補償を請求する権利があるというように聞いておりますし、そう理解しておったのですが、そうではないのでしょうか。
  83. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業法上の漁業権という問題と、それから実際に営業権みたいなものがそこにあってやってきたという問題があって、漁業法上の漁業権とはそういつものはちょっと違うのじゃないかと思います。
  84. 湯山勇

    湯山委員 それから、いまの関係漁民が補償の請求をするということはいけないのか、許されることか、その判断はいかがですか。
  85. 内村良英

    内村(良)政府委員 もちろん、その補償の請求をすることをやってはいけないというような性質の問題ではないと思います。ただ、補償するかどうかというのは、これは法律上の問題でございますから、最後は、こういうことを申し上げますとあれかと思いますが、裁判によって争われるべき問題になってくるのではないかと思います。
  86. 湯山勇

    湯山委員 いまのようなことをお尋ねいたしましたのは、原子力発電所というのはほとんど海岸にできておりまして、そういうことをめぐっていろいろ各地でトラブルがありますので、そういうことの一つのケースとしてお尋ねしたわけですが、温排水の問題とか、あるいは放射能の問題とか、原子力発電所の設置というものは沿岸漁業に非常に関係の深い問題が多いのです。そこで、それを認可する場合に、水産庁のほうへそれぞれ通産省なり科学技術庁なりから協議がありますか。そういうことがなくて進められておりますか。その点を伺いたいと思います。
  87. 内村良英

    内村(良)政府委員 原子力発電所の設置につきましては、電源開発調整審議会において審議されて承認される。その場合に、水産庁としてももちろん意見を述べることはできます。
  88. 湯山勇

    湯山委員 どの程度に意見を述べられるか。どの程度のことを聞かれるか。というのは、いろいろ資料を見ますと、ただ水産物に対する影響がこうだからというのじゃなくて、地元漁協との話がついたからということであって、むしろ金銭で解決しているというケースが大部分です。それだと、水産物というものは、ただ単にその地元だけの問題ではなくて、ずいぶん影響が大きい。だから、そこで話がついたからといって、全体の漁業の問題が片づいたのではないわけです。そこで、補償で解決すれば、もう水産庁のほうはそれでいいとしておるのか。そうじゃなくて、もっと純粋に、水産行政全般、資源全般の検討をした上で、それに対しての意見を述べておるのか。その辺私は非常に疑問だと思いますので、それを伺ってみたいと思うのです。
  89. 内村良英

    内村(良)政府委員 これは、私ども水産行政を担当しておるものにとって非常に大きな一つの悩みの問題でございます。もちろん、水産行政だけの立場からいきますと、原子力発電所などはできないほうがいいにきまっておるわけでございますが、一方、国民経済の他の要請もあるということで、そういった他産業の産業活動と漁業との調整をどうやっていくかということが問題でございます。そこで、現実問題といたしましては、各ケースについてそれぞれ説明を聞きまして、漁業にどういう影響があるか、それから関係漁業者の意向はどうであるか、やはりそこで漁業として業を営んでおるものでございますから、私どもといたしましてはそういったものの意向も十分聞いてやってくれということを言っておるわけでございます。一方、特に原子力発電その他発電の場合には温排水の問題がございます。これが漁業にどういう影響を与えるかという問題につきましては、水産庁において鋭意いろいろ検討しておるわけでございます。水産業だけの立場からいけば、およそそういうものは困る、汚染は一切困るということでやれるわけでございますけれども、現実問題としてそうもいかない面もあるということで、その辺の調整につきましてはケース・バイ・ケースで具体的にやっているつもりでございます。
  90. 湯山勇

    湯山委員 ほんとうにやっておりますか。というのは、補償で片づけて、実際には水産動植物に対する影響というのはほとんど調べられていないんです。そこで私はこういう疑問を抱いたわけですが、長官の言われるように簡単に、水産行政の立場から言えばそういうものは全部反対だと、そう言いっぱなすわけにもいかぬだろうと思いますし、それじゃ協議の必要もないと思うのですけれども、問題は、たとえばどういう海産の動植物がいて、それらに対してこの程度の温排水というものはこういう影響があるというようなことの調査資料というものは、私の知っておる限りでは、いずこの場合も、どこにもないのです。むしろ、科学技術庁あたりが異議申し立てを却下するのはそんなことじゃなくて、温排水が出た場合にはノリなんかには影響があるが、ところがこの地域はノリがない地域だから全然関係ない、と、この程度しか書いてないのです。しかし、ノリは栽培していないから影響ないので、ノリに影響があるなら他の海藻類にも当然影響があるはずだが、それは無視しています。その海藻類に影響があれば、いまの沿岸漁業でのいろいろな産卵状態とか生態などは変わってくるが、全然触れていない。だから、水産庁に協議があったのならこういうお粗末なことにはならないだろうというように思いまして、ぜひ水産庁にこの法律も出た機会にお尋ねしなければならないというように考えておりましたのでお尋ねしておるわけですが、一体どの程度の意見を述べておられるか。これは長官じゃなくても、直接担当の方でけっこうですが、もう少し詳しい具体的な説明ができればしていただきたいと思うのです。
  91. 新井昭一

    ○新井説明員 御指摘のような問題につきましては、先ほど長官から御答弁いたしましたように、電調審におきまして、関係各省が幹事会あるいは連絡会議等を持ちまして、意見の調整をしておるわけでございます。その際に、水産庁といたしましては、何と申しましても、地元の漁業権の補償問題あるいは温排水の漁業に対する影響の範囲、この辺が的確にとらえられて十分な補償がなされているかどうかということが一番重要な関心事でございます。それから、第二には、たとえば県の企画部等と水産担当部局との間で十分な意見調整がなされているかどうかというようなことも私どもはチェックをするわけでございます。  それらの状況をチェックいたしまして、その上で、水産庁として、まず地元の同意を十分とるということと、もう一つは、温排水の影響を極力少ない範囲で押えるようにいろいろ技術的に検討してくれというような意見を述べているわけでございます。
  92. 湯山勇

    湯山委員 それでは、結局、水産庁が直接タッチしないで、県のほうでそれでいいかどうか、地元漁協でそれでいいかどうか、そういうことで補償で解決したと言えば、じゃそれでよろしいという程度ですか。
  93. 新井昭一

    ○新井説明員 大体基本は県のほうにまかしてございますが、ただ、温排水の影響がどの程度まで及ぶか、あるいはそのとらえ方が正しいかどうかというようなことにつきまして、必要がある場合にはそのデータを水産庁のほうへ持ってきてもらって検討する場合もございます。
  94. 湯山勇

    湯山委員 従来検討された実例がありますか。
  95. 新井昭一

    ○新井説明員 ちょっと手元に資料がございませんので正確にはわかりませんが、そういう事例もあったかと記憶しております。
  96. 湯山勇

    湯山委員 非常に大事な問題でして、私はいまのようなことではいかぬと思うのです。そうでなければ地元漁民にも安心感が与えられないし、それから、消費者にも安心感が与えられない。水産庁としてはもう一つ科学的な検討の必要がある。海藻なんかはどういうものがあるということがわかれば、これはおよそ実験的にもやれることですし、しかも、とってくるにしても、塩づけにして持ってくればずいぶん長い間やれますから、やはり、そういうことを具体的にやってやらないと、いまの県段階でその検討をやれと言ってもできるものではありません。結局、いまのように補償で解決するということになってしまって、そのためには漁協の総会——それの運営なんかにもかなり問題がある。あるところでは、準組合員という名目で、実際に権利のある者を除いて、そして国会の強行採決のような形でやって非常にトラブルになったというような例もあるわけで、その指導というものはもう少ししっかりやってもらわないと、いいかげんにしておくことがかえってよくない結果を招いている。県も同様です。そういうことも事実あるわけで、たとえば伊方の問題なんかがそうでした。太平洋側と瀬戸内海側とにまたがっておりまして、瀬戸内海側へできる、その外海側のほうが組合員が多い、そういうことから、こちらのほうは組合員資格をずっとのけていって排除してやろうとしたので、結局大混乱になって、瀬戸内海側のほうが退場した。そのあとで百対二とかなんとかで議決したというようなことでして、そういうことをほんとうに指導するのが水産庁の役目だと私は思うのですが、それらの指導が、いまの科学的な調査と同様に抜けている。そのためにいろいろなトラブルが起こっている。そういう事実はお聞きになったことはございませんでしょうか。
  97. 内村良英

    内村(良)政府委員 発電所、特に、原子力発電と漁業との問題につきまして、各地でいろいろなトラブルがあるということは、私どもは十分承知しております。それから、さらに、漁協の漁業権消滅の決議等につきまして問題があるケースもあるということも承知しております。  そこで、放射能の問題でございますが、まず、これが魚に非常に影響がございまして、その結果人体に影響があるというようなことはとても大問題でございます。そこで、私どもといたしましては、原子炉等規制法によりそういったことはきびしく規制されておりますし、地方公共団体を含めまして、原子力発電所の周辺におきまして、環境放射能モニタリング体制をとっているわけでございます。私どもの研究者から聞きますと、現在のところ、放射能が魚類に異常に蓄積するということは、現在の規制でまずないのではないかというふうに承知しております。  それから、問題は温水の問題でございますが、ただいま先生から御指摘がございましたように、排出される温水の結果、確かにノリ等の植物が非常に影響を受けやすいということが出ております。反面、特に冬季の寒いところでは、温排水の結果魚類の成長がかなり早くなる。要するに、その時期においてもえさを食うというような問題がございまして、そういった面もあるということも私どものほうでいろいろ研究しております。  そこで、温排水の影響につきましては、先生御案内のとおり、政府といたしましても、四十九年度約五千万円の金を使いまして研究をしております。一方、そういったことでかなり影響がはっきりしてまいりますと、温排水の、水質汚濁防止法による規制をとらなければならないのじゃないか。そこで、そういった補助金を出しながら、私どものほうでも、水産庁の東海区水産研究所で、私どもの研究所自身も鋭意具体的に研究しております。そういうことで、研究を進めながら規制をやって、遺憾ないようにしたいと思っておりますが、ただ、人体に影響のあるような放射能の蓄積が魚類にはないということは、これは大体はっきりしておるというふうに承知しております。
  98. 湯山勇

    湯山委員 時間がありませんから多くは申し上げませんが、これはまだ各所でずいぶん問題になっています。それから、研究不足な点から言えば、ここの潮の流れがどれだけだから、速いからいいというような簡単な割り切り方もしているが、しかし、そうじゃなくて、瀬戸内海あたりはぐるっと回っていますから、結局、いまおっしゃったような放射能なら放射能にしても、あるいは温排水の影響にしても、蓄積があると思うのです。それは確かに流れていくが、その瞬間を、断面で見ればですけれども、同じところを回っている。その間の蓄積というものはかなりあると思うので、簡単に平面的な断面だけでの判断はできないという問題がありますから、もう手おくれだと思いますけれども、まだまだこれから原子力発電所はずいぶんできる計画のようです。そうなると、水産庁としてはそれらに対してどうするのだという審査の基準といいますか、判定の基準のようなものをおつくりになって、それによって、単に補償問題で解決するのだという体制を改めていただきたいというように思いますが、何か、そういう審査するときの基準を、不完全でもいいから、いまからでもおつくりになるということはできないものでしょうか。
  99. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在研究中でございまして、技術的な知見を深めておるところでございますから、そういったところを待って、将来検討すべき事項ではないかと思います。
  100. 湯山勇

    湯山委員 そうしないと、たとえばいまのように、伊方なら伊方の原子力発電所の場合、漁業権はそうやって補償していますから、解決したような形ですが、しかし、どういう名目でどうしたのかわかりませんが、そこだけじゃなくて、ずっとそれから北のほう、松山よりももっと向こうの漁協に対してもそれぞれ何百万円とか何千万円とかいう金が行っております。何の関係もないものならばそういう必要はないと思うのですけれども、そういうふうに、協力費というのですか、何かの名目で行っておる。そうすると、それは工事による被害がそこに及ぶというのか、あるいは工事によって海が濁り、透明度が下がれば、これも当然漁業に影響があるし、あるいは赤潮発生にも関係を持ってくると、そういうことを考慮してのものなのかわかりませんが、とにかくずいぶんたくさんの金がずいぶん遠方の漁協にも行っておることは間違いありません。そういうことを考えてみると、いまのように伊方漁協はそれで承知した、地元が承知した、それで水産庁のほうは終わったんだ、県のほうもそれでいいということだけではなく、大きい問題がずいぶんありますので、この問題と関連して、私は、特にこれは水産庁のほうにお願いもするし、要請もしたいと思います。  いま申し上げたような点について、具体的な問題をお調べ願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  101. 内村良英

    内村(良)政府委員 伊方のケースについて、私自身必ずしもつまびらかにしておりませんけれども、協力費というようなものが出ておるということは聞いております。  そこで、なぜそういうような協力費がでるかということでございますが、この地域のケース等を見ましても、これは漁業被害とか補償とかという問題とは関係がないようでございます。やはり、非常に心配だということで、先進的な地域を見に行くとか、あるいはその影響を調査するということで、協力費という名目で企業側がお金を出しておるということを聞いております。  伊方のケースにつきましては、なお調べて御報告申し上げたいと思います。
  102. 湯山勇

    湯山委員 協力費というのは、その付近ならよくわかるのです。しかし、そうではなくて、はるかに遠いところで、御存じと思いますけれども、いわばあそこの伊予灘のほとんど全域で、それに対して——しかもそんなに簡単な金額じゃないと思うのです。長官、総額でどれぐらいの金額を掌握しておられますか。
  103. 内村良英

    内村(良)政府委員 伊予灘につきましては、たしか関係漁協の協議会があって、そして協議会がいろいろ折衝に当たったということを聞いております。額としては一億以上であったと思います。
  104. 湯山勇

    湯山委員 それで、そういうところへ迷惑をかけるという意味ならば、簡単に汚染はないんだという言い分に問題がありますし、それから、全然そういうことはなくてそういうことをしたのだといえば、何のためにそういう必要があったのかという問題もあるし、両方あります。だから、それらのことにつきましても、非常に局地的な問題ですから、適当な機会に調べて御報告願いたいと思います。  もう時間もありませんから、これで終わります。
  105. 仮谷忠男

    仮谷委員長 午後は、二時より再開をいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  106. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。津川武一君。
  107. 津川武一

    ○津川委員 畜産危機が叫ばれている中で、それにも劣らず日本漁業が重大な局面に面していると思うのですが、政府はいまの漁業をどんなふうに考えておられますか。
  108. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 これはかねがねお答えをしておるわけでございますが、日本の畜産危機というものの内容を調べてみると、一つは、非常にえさが高騰した。それから、膨大なえさの確保について、それが戦略物資化された場合には、非常に困る問題が起きる。私は、この二つが大きな問題であろうかと存じます。  なぜ輸入飼料がばく大にふえたかというと、過去十年間に肉類の消費が四倍以上になった。ところが、肉一カロリーつくるのに七カロリー以上のえさを消費しなければできないために加速度的にふえたわけですから、それを国内で生産することは面積の上からもできないということになれば、日本で畜産をこれ以上飛躍的にふやすということは、口で言うのは簡単だけれども、現実には非常にむずかしい問題がたくさんある。ところが、この漁業の問題は、一兆二千億とも言われ、一千二十万トンとも量で言われておる。日本のたん白の半分も潤っておるということですから、畜産危機と比べて考える場合、漁業のほうが、これを維持し、あるいはこれを発展させる上においては、困難性もありますが、まだまだ希望の持てるたん白資源である。こういうことで、農林省はこれを非常に重要視していかなければならぬと思っておるわけで、非常に高く評価をいたしております。
  109. 津川武一

    ○津川委員 畜産に対する対策をお伺いしまして、ありがとうございました。  私が聞いておるのは、畜産に劣らず水産漁業もたいへんだから、それに対してどう考えておられるか、施策を聞いておるのですから、もう一度ひとつ……。
  110. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 前置きが長過ぎてはなはだ恐縮でありますが、漁業の問題は、そういうことで国民食料の確保という点で非常に重要でありますから、農林省としては、少しでも漁獲高をふやすために、沿岸漁業遠洋漁業等についてもいろいろな手を打っております。特に、沿岸漁業の問題については、これは今回水産三法というものを出して、資源の保護ばかりでなくて、積極的な資源の増殖をやっていこうということでございます。
  111. 津川武一

    ○津川委員 沿岸漁業整備はけっこうでございます。魚族の涵養もけっこうでございます。魚族の涵養もけっこうですが、漁業資材が非常に上がったのでは、重油がこんな状況では、そして輸送料が非常に上がるということでは、そういう状況に対して、魚価がそれに対応して上がらないのではたいへんなことになる。そこで、基本的にはそういう施策と一緒に今度の三法がやられなければならないかと思うのです。  そこで、資材の価格の値上げですが、これは三重県で私たちが調査した漁業協同組合の例ですが、ポリロープが、昨年の二月に一キロ二百五十円が、この二月には三・二倍の八百円に、船底に塗る塗料一かんが、これまた同じ時期に二千三百円から六千三百円と、二・七五倍に値上がりしております。この間八戸の漁業家に聞いてみましたら、八戸地方では漁網が四・九倍に値上がりしております。このため漁業の経営が非常に苦しくなっております。  そこで、どうしてこのように資材が上がったのか、まず答えていただきます。
  112. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもも、漁業資材の値上がりにつきましては、いろいろ数字等を調べておりますが、確かに、昨年の暮れからことしにかけて漁網等も、まあ、ものによって違いますけれども、二倍ないし三倍になっております。これが上がりましたのは、やはり、漁網の原料は合成繊維に依存しておりますので、一種の石油製品であるというところから、石油の値上がりの結果のはね返りもあるのではないかというふうに考えております。
  113. 津川武一

    ○津川委員 漁業振興するためには、資料を安定させて、あまり変化のない廉価で供給する必要がどうしてもあると思いますが、政府は、その点の施策はどうなっておりますか。
  114. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業用の資材の中で、一番大きいのは重油でございます。そこで、重油につきましては、昨年の十二月に石油危機が起こりました直後に、農林、通産両政務次官の申し合せに即しまして、中央に農林、通産両省並びに関係漁業団体及び石油業界団体からなります漁船用石油需給協議会を設けまして、また、同様な協議会を各県の段階に設け、その適切な運用を通じて、漁業者に石油の円滑な供給を確保する特別措置を緊急的に講じたわけでございます。その他、漁業用石油類の円滑な供給をはかるために、各県ごとに置かれました石油製品あっせん相談所というものも活用いたしまして、こういった協議会等を指導し、とりあえず昨年の暮れからことしの一−二月にかけまして、物の確保には遺憾ないように処置をしたわけでございます。  それから、さらに、漁船の場合には、国内で重油を積むばかりでなくて、特に、マグロその他の遠洋漁業等をやっておりますものは海外で重油を補給しておりますので、遠洋漁船に対しましては洋上補給というものをやったわけでございます。まず、とりあえずは外交ルートによりまして、相手国のほうで何とか日本の漁船に給油してくれということを要請すると同時に、内地から船を出しまして洋上補給をやったわけです。  そういうことで、物的な面につきましては大体確保がつきまして、あの非常にきびしい石油騒動と申しますか、石油危機の時期におきましても、漁船が特にとまってしまったというようなことは、うわさはございましたけれども、実際問題としてはそういうことのないような措置がとられたわけでございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  そこで、その結果原油が上がって、今度石油の製品価格が非常に上がったということがございますが、その場合におきましても、水産庁といたしましては、通産省と折衝いたしまして、漁業用のA重油については極力値上げ幅を押えてくれというところで、計算からいきますと一万四千円ぐらいの値上がりを八千九百円の値上がりに押えてもらったということをやったわけでございます。  それから、さらに、漁網等につきましては、原料になる合成繊維につきまして、その価格を押えてくれということを通産に申し入れまして、一応通産が価格を押えるものの中にそういったものは入っておるという段階になっております。  したがいまして、私どもといたしましては、行政上いろいろな手段を使いまして、漁業者が使う資材の価格は安いように極力努力はしておりますけれども、現実、御承知のとおり、石油製品の値上がりからいろいろなものが上がっておるということで、ある程度の値上がりはやむを得ないという状況になっているわけでございます。
  115. 津川武一

    ○津川委員 ある程度の値上がりはやむを得ない、だけれども、三重県でポリロープが三・二倍、八戸で漁網が四・九倍、これは少しいただけないのじゃないかと思うわけです。石油関係でないブリ箱が、去年の二月に一箱二百三十円が、いま二月三百二十円、これは四割、スチロール三キログラムが三十五円から九十円、これは二・六倍、少し上がり過ぎる、こうなっているのですが、政府はこれを、原価や、蔵出しや、卸等、漁業家に届くときの価格などというものを追跡していますか。
  116. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま御指摘のありましたケースにつきまして、そういうところも私はもちろんあると思います。しかしながら、全般的に、私どもが調べておりますところでは、漁網は大体二倍から二・五倍、それからロープも同じくらい上がっております。それから、石油は大体三倍ということで、物によってはもちろん四・何倍。あるいは地域によって差はあるかもわかりませんと思いますけれども、私どもの把握しております数字では、一般的に石油は大体三倍、それから漁網は二倍から二・五倍、それからマグロ等で使うえさのごときは一・二倍とかいうふうに、物によっていろいろ違いますけれども、そういう極端な例がないとは私は申しませんが、それが全般的に漁網が四・九倍になっているというような数字は私ども持っておりません。
  117. 津川武一

    ○津川委員 持っていないならしかたがないが、この間ガーゼ四百二十円、これが農林省がメーカーと卸から聞いたもの、実際の医療機関に届くのは五百五十円、漁網はあなたの言うようにメーカーから聞くと、二・五倍、実際の漁業家に届くときには四・九倍、ロープも同じ。そこで、追跡したかと聞いているのです。一部だからいいと言わないで、問題は、高くやられた人たちが死ぬか生きるかの問題なんです。そこに漁政が、政府の施策がなければならない。重ねてお伺いします。こういう点の追跡をしているかどうか、メーカーと卸から聞いたままの答えなのか、現実に漁業家のところに届いているところまで追跡しているかどうか、重ねて答弁を求めます。
  118. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁網につきましては、通産省の所管物資であるというような関係もございまして、水産庁として、もちろんユーザーでございますから、私ども価格の動向には深い関心を持っておりますが、今日までのところ、追跡調査と申しますか、メーカーから末端まで調査したことはございません。
  119. 津川武一

    ○津川委員 そうでしょう。問題はそこなんです。  そこで、農林省の価格調査官は、食品流通局にはだいぶおりますね。農蚕園芸局には十六名、畜産局には九名、食品流通局には四十八名、それから食糧庁十名、林野庁二十七名、本省総計百十名。これほど四・九倍、三・二倍と上がっているときに、水産庁価格調査官がなぜいないのか、追跡していないのか、ここいらあたりはどうなんでございますか。私がいま指摘したような状況について、すみやかに水産庁価格調査官を配置して、専任を何人か、兼任は何人でもいいから置いてこの状態を調べてみて対策を講ずる必要があるかと思いますが、いかがでございますか。
  120. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまのところ、水産庁所管物資で標準価格制度のもとにあるものはございませんので、価格の監視官を置いてないわけでございます。  そこで、漁網になりますと、これは通産省との所管関係もございますし、漁網自体がまだ標準価格の指定物資になっていないという関係もございまして、そのような措置をとっていないわけでございます。
  121. 津川武一

    ○津川委員 価格調査官は、標準価格の設定されたものだけでなく、現にほかのものもやっております。農林省でも、通産省でも、ぼくらが価格調査官に会って聞いてみるとそうだ。厚生省でもそうです。どうですか、水産庁に置いてみませんか。これが一つ。そして、どうですか、標準価格を設定してみませんか。これが二つ。この二つはいかがでございますか。
  122. 内村良英

    内村(良)政府委員 水産物は標準価格制度になじみがたい面もございますので、現在のところ標準価格制を水産物についてとることは考えておりません。したがって、価格調査官も、目下のところこれを設けることは考えておりませんが、漁業資材の問題については、私ども十分関心を持って注視はしております。ただ、それを標準価格のもとに置くかどうかというのは、これはやはり通産省と協議してきめなければならぬ問題でございます。
  123. 津川武一

    ○津川委員 標準価格を設ける点で通産省と相談すると言うけれども内村長官の気持ちはどうなの。あなたの気持ちがなければ、これは通産省は応じません。現にこれは二・五倍、八戸では四・九倍という状況です。木材のブリ箱が四〇%の値上がりですよ。これをそのまま放置しておいてはよくないと私は思う。現にあなたは追跡調査していないと言う。追跡調査する必要があると私は思いますが、ここいらはどうでございますか。
  124. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁網を例にとりましても、メーカーが七十、それから配給業者は相当多数いるわけでございます。それらを全部価格を押えるということは、現実問題としてやはり無理があるのではないかと私は思います。そこで、水産行政として問題な点は、そういった資材の値上がりによって漁家経営が困るというようなこと、あるいはそれによって国民に対する水産物の供給に支障が起こってくるということが起こってはたいへんな問題になってくるわけでございます。したがいまして、私どもは、今度の資材の値上がり、それに伴う漁家経営の問題につきましては、ただいまいろいろなことを十分注意深くながめておりまして、それによって対策を講ずる必要があれば対策をとらねばならないというところでいろいろ検討している段階でございます。  私どもとしては、あくまで漁家経営の安定、それからさらに国民食料としての魚類の安定的な供給に支障がないようにしなければならぬと思っておりまして、一々の資材の値上がりを押えようと思いましても、漁網の場合も七十のメーカーがいる。さらに、配給業者から小売りとたくさんの数がいるというものを完全に押え切れるということにはやはり問題があると思いますので、むしろ漁家経営の安定というところを中心に問題を考えているわけでございます。
  125. 津川武一

    ○津川委員 通産省と相談するという気持ちがあなたになければ、向こうは乗らないと言っている。あなたにその気持ちがあるのかどうかという点と、もう一つは、医薬品一万二千、メーカー七百、これは価格調査官を配置してやっております。価格をやっております。もう一回繰り返します。七百メーカー、一万二千品目、漁網は七十、種類はそんなにない。おやりになるのはあたりまえじゃありませんか。渡辺政務次官、どうですか。
  126. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 これは先ほど局長から再三答弁をしておりますが、非常にこれはむずかしい問題です。何ぶん自由価格になっておりますから、石油製品が上がって石油の原価が上がって、ナフサが上がって、そこから漁網をつくるのに、われわれとしては急激な値上がりは困る。したがって、行政手段で極力ここのところを押えてまいってきておるわけです。しかし、いつまでそれが続くか、現実のざっくばらんな話をすると、どうしても大量に生産をさして、お互いの両方の競争をさして、そして競争によって不当なものを押えていくということ、結果としてはそうならざるを得ないのではないか、その間、われわれとしては極力押えるように行政指導をさしておる、こういう先ほどの局長の答弁どおりでございます。
  127. 津川武一

    ○津川委員 政務次官、局長は追跡していないと言うのですよ。追跡する必要はありませんか。いかがですか。実際に役所がつかまえているのは、漁網は二・五倍、八戸では実際四・九倍なんです。次官、これを追跡する必要はありませんか、どうですか。
  128. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、漁網について通産とどういう話をしているかということでございますが、漁網綱の原材料でございますポリエチレン、ポリプロピレン、ベンゼン、トルエン及び合成繊維であるナイロン繊維、ポリエステル繊維については、価格引き上げにつき通産省の事前承認制を要することになっております。それはこちらもぜひそれをやってくれと言いまして、まず原料から押えていくということをやっているわけでございます。さらに、漁網用に使用される繊維としては、このほかにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維などがありまして、これらについても価格の抑制をはかっていく必要があるわけでございますが、これは比較的特殊用途であり、汎用性がないこと、また、地方の比較的小さい企業も入っているということで、これは個別指導でいこうというふうに通産といろいろ話をしているわけでございます。  そこで、私どもは、そういった原料を押えまして、その原料が漁網メーカーに適正な価格で渡るように十分監視するということ、それからさらに、漁網のメーカーから配給機構に渡る場合につきましても、価格指導その他を十分するように通産に頼んでいるわけでございます。
  129. 津川武一

    ○津川委員 渡辺政務次官、行政でやるというのでしょう。そこで、ちゃんと価格調査官という制度があるのだね。これはひとつ考えてみませんか。いかがですか。いま答弁できなかったら、私は質問の時間を保留するから、この次の委員会のときに皆さんが相談してきて答えてもよろしいが、その点はいかがでございますか。
  130. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 漁網綱やそういうものを標準価格をつくれというふうな御趣旨かもしれませんが、これは農林省が直接やるわけじゃありません。ただ、農林省としては、先ほど言ったように、行政指導で幾ら幾らというように石油の値段を押えて、ナフサの値段もかなり押えているわけですから、それでつくらしたものが大体このくらいなら売れるだろうというものが、時間がたってもやはりあなたの言うように四倍とか何倍とかということになっていれば、それはおかしいのです。ですから、あなたがそうおっしゃるのだから、いままでそういうケースがもちろんあったのでしょう。これは一種の便乗値上げだと私は思いますよ。だけれども、それをただ標準価格でともかく押えていく、値段だけ押えるというだけでは、結局やみができて、やみで売られたら何もならぬことなんだから、やはり量をふやして、必要な量だけは材料を与えて、漁網綱でも何でもつくってもらう。量ができれば、便乗値上げするといったって、もっと安く売ったってもうかる人があれば、適正な値段で売る人が出てくるのですから、そういうような行き方がいいのであって、最初から標準価格で押えつけるのだというようなことになっては、結局そのために品物が表にあらわれない、しかし、やみなら買えますということでは、これはまた何にもならないことになります。ですから、せっかく物価調査官があることですから、それは、上で幾らでつくったものが幾らで流れて、下へ何ぼでなら売れるはずだということについては調べさせてもいいと思います。
  131. 津川武一

    ○津川委員 流しておかないで、いま私が指摘した事実を調べるというならよろしいですが、それは価格調査官を使ってですか。
  132. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 それは価格調査官を使うか、何を使うか、一番使いやすいものを使ってやるのが一番いいと思いますから、それはこちらでやりいいものを選定してやらしてみましょう。
  133. 津川武一

    ○津川委員 このことを調べた結果、またもう一回次の委員会で質問することにして、その点を保留して進んでいきます。  その次に、鮮魚の輸送運賃です。これも三重県の漁協からのわれわれの調査ですが、名古屋まで四トン車で、一年前、昨年の二月には一万八千円、それからいまの二月は二万八千円で、五五%の値上がりです。東京までは、去年の二月が四万円、ことしの二月が六万五千円で、六二%値上がりしております。こういう実態を調べたことがございますか。
  134. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまの三重県から名古屋、東京までは調べておりませんけれども、東京を中心に部分的に調べたものはございます。
  135. 津川武一

    ○津川委員 ほんとうに生産者を保護して、消費者を保護するとすれば、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡というような大きな市場を中心にして、ここいらあたりは産地からぜひ調べる必要があると思いますが、いかがでございますか。
  136. 内村良英

    内村(良)政府委員 東京市場中心につきまして、若干調べたものがございます。
  137. 津川武一

    ○津川委員 内村さん、私はあなたの答弁を前の質問者のときにずっと聞いていました。いまも東京付近を若干調べたとあなたは言っているが、ぼくは、東京と横浜と名古屋と大阪と福岡で調べたらどうですかと言っているのです。正直に質問に答えていただきたい。さっきも東京で若干調べたのがありますと言い、いまも東京で若干調べたのがありますと言う。こんな愚問を繰り返すためにわれわれはここにいるんじゃない。答えてください。
  138. 内村良英

    内村(良)政府委員 必要があれば調査したいと思います。
  139. 津川武一

    ○津川委員 必要があると私は思っていますが、あなたはどうですか。必要があればと言う。これがあなたの答弁だが、あなたへの質問で、だれも問題を明らかにしていません。どうなんですか。大阪でやってみませんか。
  140. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもも、大都市の大消費地の魚の値段というものには絶えず関心を持っておりまして、調べております。そこで、大阪を調べるかどうかという問題でございますが、東京で大体一般的な傾向を把握しておりますので、大阪に特に特殊性があるような問題があるかどうかということではないかと思うわけでございまして、なお検討してみたいと思います。
  141. 津川武一

    ○津川委員 たとえば、青森からコンテナ列車が大阪に出ている。大阪の駅のほうではいろいろな事情で受け取らない場合があるのだ。そういうことが具体的にあるのですが、いかがでございますか。調べてみませんか。
  142. 内村良英

    内村(良)政府委員 大阪の事情について、特にそういう御指摘のような事実があれば、調べてみたいと思います。
  143. 津川武一

    ○津川委員 次は、先ほど話された漁業用の重油です。これは青森県の小泊ですが、昨年四月一日に一キロリットル一万二千円、ことしの一月十五日に二万三千三百円、そして、この間、原油の値上がりから石油の値上がりで、三月二十二日からは全漁連が八戸での末端価格を三万九百円に上げました。これはどんなに漁業に影響されると思いますか。
  144. 内村良英

    内村(良)政府委員 これは漁業によって、漁業のタイプによって違いますけれども、一番影響を受けるトロールあるいはマグロの場合には、漁業収入に占める重油の割合が、四十七年ぐらいにおきましては大体一割程度であったわけでございます。それが今度の値上がりを基礎に計算いたしますと、大体三割くらいになるのではないかと思います。ただ、沿岸漁業の無動力船の場合には油はもちろん関係ございませんし、漁業の種類によってはもちろん影響は違いますけれども、一番ひどい影響を受ける漁種をとってみますと、大体従来収入の一割くらいであったものが三割程度になるというような影響を受けるわけでございます。
  145. 津川武一

    ○津川委員 マグロでそういう指摘をされましたが、マグロが遠洋漁業で一番大きな影響を受けると言うが、青森県の小泊の漁業協同組合で三十九トン、四十七トン型のイカ釣り船で平均一千万円程度の水揚げをするとすれば、いままでは油が百六十万から百八十万で一割八分、今度ことしに入ってからは四百万と、これほど値上がりしてくる。そこで、あなたの言う一番食うマグロが三割で、それほど食わないイカがこうなる。ここらも官庁は報告を受けておるだけでなく、具体的に調べてみる必要があると私は思います。  そこで、このイカ釣り漁業だが、こういうかっこうになるので、この面だけからで廃業しなければならないと言うんですよ。あと人件費も払わなければならぬ、食糧費も入れなければならぬ、日用品も入れなければならぬ、機械も修理しなければならぬということで、非常に大きな影響を受けている。しかも今度は八戸でもそうです。大畑でもそうですが、日本海にとりにいく。ところが、山形に行って給油しようと思っても、実績がないから断わられる。したがって、ますます縮こまってしまっている。こういう点で、あなたはさっき遠洋漁業ならどこででも給油していると言うが、こういう人たちは、あの日本海岸のどこででも、実績がなくてもいまは給油できる状態になっておりますか。いかがですか。
  146. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業者によりまして、いわゆる系統から油をもらっている人と、それからまた商人系からもらっている人が、大体全体の重油の消費量からいきますと三対七くらいになっているわけでございます。そこで、従来そういう系統でもらっている人は、今日も従来の取引関係もあってもらっていると思いますが、日本の国内で港が違ったから油をもらえなかったという話を伺ったのは、実は初めてでございます。海外ではそういうことは聞いておりますけれども
  147. 津川武一

    ○津川委員 それでは、これも具体的に調べていただきましょうか。青森県大畑の林という九十九・九トンのイカ釣り船を持っておる人ですが、これを具体的に調べて報告してほしいと思います。現実に拒否されております。これはいいですね。
  148. 内村良英

    内村(良)政府委員 それは、拒否されたのはいつごろの話ですか。
  149. 津川武一

    ○津川委員 私が聞いたのは十四日の話です。
  150. 内村良英

    内村(良)政府委員 三月十四日ですか。
  151. 津川武一

    ○津川委員 はい。その本人から聞いたのはそうです。  そこで、このとおり一番大きな影響を受けるこの重油に対して、通産省と交渉して、一万四千円のものを八千六百円とか八千九百円にまけたとか、いろいろ言ったことはあるけれども、何としても日本人はたん白質源の半分以上を魚介類からとっているので、こういう値上がりというものは決定的な打撃を与えるので、ここに特別な奮発をしてもらって、重油特別価格をこういう漁業用の油に設定してみる必要があるかと私は思うのです。これは漁業家のかなり強いたっての要求でもありますが、この点はいかがでございますか。
  152. 内村良英

    内村(良)政府委員 先般の石油製品の値上げの際に、A重油の三分の一は水産で使われておりますし、水産にとってA重油はコストの中でも非常に大きなものでございますから、極力値上げ幅を小さくしてくれということで、そう言ってはなんでございますが、私どもといたしましては最善の努力をして、関係方面にいろいろ働きかけたわけでございます。その結果値上げ幅が一番小さくなったということでございまして、現在のわが国の石油製品価格政策から見て、特定なものについて、特に、A重油の場合は他産業との関係がいろいろございますから、特別価格を設定するということについてはなかなかむずかしいのではないかと考えております。
  153. 津川武一

    ○津川委員 特別価格の設定に対して検討したことはありますか。
  154. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもは、水産行政の立場から、そういうことは望ましいと思って検討したことはございます。しかし、なかなかむずかしい問題でございます。
  155. 津川武一

    ○津川委員 その検討の結果を私に届けてくださいませんか。
  156. 内村良英

    内村(良)政府委員 これは内部の検討資料でございますので、御容赦願いたいと思います。
  157. 津川武一

    ○津川委員 渡辺政務次官、いかがでございますか。検討の結果をわれわれに教えてくれませんか。
  158. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 検討と申しましても、それはいろいろ専門家の話を聞いて検討するわけですよ。私らもたとえば今回も上げ幅を、ではガソリンは消費抑制という点からうんと上げたらいいじゃないかとか、ナフサとかA重油というものはすぐにはね返ってくるからうんと少なく値段を押えたらいいじゃないかというようなことで、通産省あたりにも話をして、いろいろ専門家の間で検討してもらうと、やはり限度があると言うのですね。  それはたとえばC重油はうんと値段を上げる、A重油は極端に押えるということになれば、結局はうんと採算の合わないようなものはつくらないで、採算の合うほうへだけうんと回してしまう。原油は一定しているのだから、ガソリンを多くすればナフサが少なくなるとか、ナフサを多くすればガソリンが少なくなるとか、相関関係をみんな持っていますからね。その中であまり極端な押え方をするということは、結局押えないほうに回っていってしまう、こういうふうなむずかしいことがあるという話はわれわれは聞きました。それでA重油については、専門的な立場で通産省のほうでそれらの相関関係を考慮しながら極力押えるということで出てきたのが今度の数字であります。したがって、それ以上農林省が中に立ち入ってうんと厳格なことをやるという役所でもないし、話を聞いてみればもっともなことであるので、みんなこうこうこういう資料に基づいてこうでああでと、あなたにお見せするようなものは私は持っておりませんがね。ですから、もっとその関係のことを聞きたければ、通産省の人によく聞いていただきたい、そのほうがもっとわかりがいいんじゃないか、このように思っております。
  159. 津川武一

    ○津川委員 次官、あなたは通産省、通産省と言うけれども漁業を主管しているものは農林省ですよ。  そこで、八戸で去年の四月に小泊で一万二千円しておったものが三万九百円に上がって、それはしかたがないというふうに私は受け取ったが、そこで、そうなればかなり問題が出てまいります。それだけ資材が上がって、輸送費が上がって、重油が上がって、包装費が上がって、上がった分のものが価格に反映してくるならば漁業が維持できると私は思う。  そこで、水産物の価格です。これも三重県ですが、カタクチイワシで、市場価格で、去年の二月、四十四円から三十四円に、カジキで五百五十六円から四百八十五円に、キハダで千四円から七百三十一円に、ノリで、黒紺で一千七百五十八円から一千二百七十六円と値下がりしている。陸奥湾のホタテでは、去年の九月に二百二十円、これはキロですが、十月に二百十三円、十一月に二百二十五円、ことしの二月に百八十六円、三月に百六十二円。あのホタテをつくるかごが石油製品で、船は油を使う、それがこういうふうに上がっているときに、物は上がっているときに、魚価がこういうふうに下がってきている。この面が漁業一つの危機なんですが、どうしてこんなに魚が下がってきたのでございましょうか。
  160. 内村良英

    内村(良)政府委員 魚の産地価格の動向でございますが、確かに先生の言われたようなこともございますが、反面、上がっているものも下がっているものもあるわけでございます。と申しますのは、マグロについて申しますと、確かに、四十八年の十一月、昨年の十一月にはキロ当たり産地で六百十三円だったものが、水揚げが多いとか、あるいは需要の頭打ちというようないろいろなことで、二月には四百五十円になっております。ただ、反面、たとえばサバのごときは、昨年の十一月に三十二円であったものが、二月には七十二円になっている。スルメイカも、昨年の十一月が三百十五円が、二月は四百八十七円というようなことで、水産物の場合には、需給によってその価格が非常に動くという面がございます。  そこで、今度の石油製品その他の値上げの際に、資材の値上がりで私どもが一番心配しておりますのは、他の製造工業等と違いまして、漁業の場合には、コストの値上がりを直ちに価格に転嫁できぬという問題がございます。したがいまして、その対策が必要であれば当然対策をとらなければならぬということで、現在いろいろ調査し、いろいろなことを考えているわけでございますけれども、ただいまのところで見ますると、魚種によって違います。違いますけれども、必ずしも全部低迷しているわけではない。ものによってはかなり上がっているものもあるということもございまして、その辺はなお注視すべき問題があるというふうに考えております。  なお、御参考までに申し上げますと、過去五年間、魚価は大体毎年二割ずつ上がっております。
  161. 津川武一

    ○津川委員 内村長官、あなたの答弁を聞いていたらどうなりますか。平均だからよろしい、魚価全般だからよろしいと言うが、だが、現実に、漁網が上がり、輸送費が上がり、いろいろなものが上がっていて、そして現実に二百二十五円から百六十何円に下がった。ホタテで食べておる漁家はどうしますか。マグロで専業で食べている人はどうしますか。それを平均で毎年二割上がっているからとか、上がっているものもあるからとか言うが、これで水産庁の行政ができると思っておりますか。マグロが、あれだけ重油が上がって困っている。ホタテが、あの養殖するかごがあれだけ上がって困っている。このままほうっておくとつぶれていく。それに対してどうするかと言うと、価格はどうにもならないと言う。あるいは資材がどうにもならないとあなたは言うでしょう。重油はどうにもならないというのでしょう。輸送費はどうにもならないというのでしょう。それなら、価格で救う以外に道はありません。そう思いませんか。それを、需要と供給で関係するからということでほったらかしておいて、滅びるなら滅びなさいということですか。こういうふうに受け取っていいですか。
  162. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 極端な例をとればそういうふうな理屈も出るかもしらないけれども、そうかといって、農林省は、それは、一方は消費者の立場からして、大幅に上げるように宣伝するわけにも現実にはなかなかいかない。ちょうどいまの鶏とえさのような話であって、これだけえさが高くなって、三百二十円もした卵がいま二百何十円に下がっている。そのために鶏卵業者がつぶれるという話、同じ話が出ているわけです。つぶれちゃ困る。そこで、われわれとしては、やはり同じようなことであるから、一時的に下がったような場合に苦しいというような問題等について、低利資金の問題、金融でつなごうということもあります。それから、また、その需要と供給で値段が形成されているということも事実でありまして、むちゃくちゃに入荷をするというようなことも、秩序ある計画的な入荷というものもさせるように指導しなければならぬ。魚で一番むずかしいのは、定期的にきまった量をとろうと思ってもとれなかったり、そうかと思うと、いままでとれなかったイワシなんていうのは、でかいのがたくさんとれるようになってみたり、なかなかこっちの思うようにいかない。製造する工場と違うものだから、海相手、天候相手の商売で、変動所得だから、税金でも非常に変わって、なかなか計画どおりいかないというようなむずかしい問題なんですよ。だけれども、あなたのおっしゃるように漁家が困るという問題があるから、出入荷の計画化とか、合理化とか、あるいは市場の流通機構等に対する整備も必要だし、あるいはまた、うんとよけいとれたときには冷蔵庫をつくって、冷蔵庫で貯蔵させて、それで暴落を阻止するようなことをするとか、いろいろな総合的な施策をやって、適正な価格が形成できるように、農林省としては、水産庁としては行政指導をしておる、こういうことなんです。ですから、たとえば値段が上がった、売り値が安い、それはぶん投げておくのだ、と、そういうわけではありません。しかし、なかなかむずかしい点がありますということは、あなたも海の近くにいるのだからわかるだろうと思うのですが、できるだけのことはやっています。
  163. 津川武一

    ○津川委員 政務次官、一部の魚が下がったと言うけれども、そうじゃないのです。ここに三重県の長島の魚市場に揚がったもので言うと、キハダが千四円から七百三十一円、バチが千二百十七円から千百四十二円、カジキが五百五十六円から四百八十五円、ヒラゴで百十六円から百二十三円。だから、ほかのものの上がっているのにとうてい追いついていない。漁業の危機がここにあると私は言うのです。そうすると、価格を何らかの形でささえてあげるということを、流通機構だけでなく、価格プロパーを政府として考えてあげなきゃならぬ段階だと思うのですが、政務次官、どうですか。
  164. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 先ほど言いましたように、できるだけ適正な値段に魚価が維持できるようないろいろな手は打ちます。しかし、これは、たとえば一年を通して何カ月かが下がった、そのかわり何カ月かは上がるというようなこともありますから、ただ下がったときのその部分だけを見て下がっておる、下がっておると言われても困るんで、やはり、年間平均をしてその魚価が成り立つかどうかということが問題だろうと私は思います。したがって、部分的に非常に暴落することもある。暴騰することもある。残念ながら、そういう現象がある。しかし、ほんとうは暴騰も困る。暴落も困る。だから、先ほど私が言ったような計画的な生産計画的な出荷、あるいは消費地のストックポイントとか、あるいは生産者自体が、いままでは、ややもすると、陸揚げして持ってきて、自分の倉庫がないものだから大手の者に全部買われてしまって、その人たちがどこかに隠しておいて、値上がりしたときに売るということで、流通業者ばかりもうけるのじゃないかという議論があるのですよ。だから、生産者がそれができるようにこれからは極力指導をする。また、そういう予算等もつくって、着実に全国各地の冷蔵庫の整備等をやっておるわけです。足らないと言われれば足らないかもしれぬが、そういうことで、あなたの言ったような趣旨が具現化するように、今後とも極力努力をしてまいるつもりでございます。
  165. 津川武一

    ○津川委員 渡辺さん、ぼくは一般論で言っているのじゃないのです。これだけ物が上がっているから、この際はやらなきゃならぬと言うのです。あなたに聞くと、流通機構やいろいろなことを言う。  これは東京市場ですが、流通機構がどのくらい上がったかというと、ハマチで言うと、いままで流通経費が九・五%だったのが一二%に上がっておる。ブリで言うと、九・三%が一一・五%に、アジで言うと、九%が一四・五%に上がっている。サバに至っては、東京市場において、価格に対する諸経費の中で、八・四%から三〇・五%に、四倍に上がっている。流通機構、ここでふえているのです。こういう現実を踏まえて議論していただきたい。  そこで、価格面でかなり私は支持しなければならないと思うのだが、消費者もこれではたいへんだし、生産者もたいへんである。そこで、たとえばさっきのマグロだが、これは政府が認可している。とる人たちは専業化されている。そこで冷凍もきく。それからイカ、これも政府の認可業で、やっている人は専業。サバも、マグロも、イカも、国民の食費の中における比率はかなり高い。こういうものは豚肉の場合みたいに支持価格で、最高価格と最低価格で、それより下がったら政府が買い上げて冷凍する、それより上がったならば冷凍を解いてやる、こういう形のものをやってみるのが、いまのこの急速な諸物価の上がりに対して非常に具体的な処置じゃないかと思うのですが、ここらあたりはどうでございますか。感想でけっこうですが、いかがでございますか。
  166. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 津川さんの話を聞いていると、魚についても、価格保障か何かで、豚肉のように不足払いでもやれというふうなお話しなのかどうかよくわかりませんが、これは豚肉のような規格の統一したものならばやりやすいのだけれども、実際は、牛肉についてさえもなかなかむずかしいのです。これも種類が千差万別でして、同じ牛なら牛といっても、ビールまで飲まして太らせる牛もあれば、牡犢の肥育の牛もあれば、ともかくどこにその基準を置くかということが、牛でさえも、専門的になってくると学者の間でもなかなかむずかしい。まして、魚の場合は、牛と違って種類が多い。マグロから、ハマチから、コイから、イカから、ドジョウから、何から何までうんとあって、それについて規格ごとにみんな同じ値段で、一キロ幾らとか十キロ幾らとか値段をつくっても、それはただたん白とカロリー計算だけで同じだから、ともかく、ブリとマグロと同じ値段で、カロリーが同じだから同じでいいじゃないかといっても、なかなかそうもいかないで、カロリーからもいかない。目方だけからもいかない。やはり、魚の場合は種類によって違う。それもまた季節によって違う。あるいは鮮度によって違う。あるいはとってきた港によって違う。これは現実なんです。ですから、それが何か統一的な規格ができるというならば考えようがあるが、いまわれわれの知恵ではちょっとそれはないので、津川さんのところでうまい知恵があったならば検討して教えていただければ、われわれとしても一緒に——それは共産党の言っていることでも何でも、いいことはいいことなんだから、いいことがあればわれわれとしては一緒に御相談に乗ります。乗りますが、いまのところ不足払い制度というものはちょっと考えようがないというふうに私は思います。
  167. 津川武一

    ○津川委員 次官、さっきから居眠りしていたようですが、私の言うことをほんとうに聞いていたのですか。私はマグロとイカについてだけ話ししたのです。渡辺次官は魚一般にこれを解釈したのです。マグロで言うとある程度まできまっている。イカもかなり……。そうして、これが政府で認可されている。しかも、冷凍がきく。しかも、専業漁業家だ。そこで、一つ、二つに対して考えてみませんかと言って、私がきわめて具体的な意見を出している。そして、あなたは何かいい方法があったら教えてくれと言っている。それを聞かないで、魚一般論であれもある、これもあると言うのだが、これはいかがですか。
  168. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 私は居眠りをしていたのでも何でもないのです。あなたの話を聞いているのですよ。聞いておりますが、御承知のとおり、マグロというのは高級魚なんですよ。同じマグロ一匹をとってきても、それはからだの部分によって、えらく高いところもあり、その何分の一の値段のところもある。あぶらの乗りぐあいとか、そういうものは、われわれしろうとが見ると、同じマグロだから、このマグロとこのマグロは同じ値段でいいじゃないかと思っても、築地の市場に行くと、どこかのところをちょこっと切ってみても、専門家が見るとまるきり値段が違う。ですから、同じマグロでも、同じ一キログラムでも、そういうようにべらぼうに値段の高いものと、値段の低いものと、いろいろあるのですよ。ですから、私は、マグロの場合は特にむずかしいのじゃないかという気がします。イカの場合はどうなのか、私もよくわかりませんけれども、イカならイカだけつくるということになると、ほかに大量にとれる魚もということになって、まじめに考えて、事実問題としては、そういう方法はなかなかとりがたいだろうと私は思います。専門家の意見を一ぺん聞いてみますが、それは非常にむずかしいと思います。
  169. 津川武一

    ○津川委員 水産物の価格保障に乗り出す時期にあるので、マグロがめんどうなら、イカでも検討してみてくれませんか。価格保障はどこかでやると、水産物にできていくと私は思う。いま、魚介に対してその時期になっていると思うのです。それをやってみると言うから、次に進んでいきます。  次は、海洋法会議でございますけれども、外務省はこれに対してどんな態度をとっておりますか。この間もここで聞いたけれども、もう一度お願いします。
  170. 杉原真一

    ○杉原説明員 この六月からカラカスで第三回国連海洋法会議が開かれまして、そこでは、従来われわれが海の国際法の基本だと考えておりました海洋自由の原則を根本的にゆすぶるような新しい法秩序をつくろうとする動きが日に日に強くなっているということは、当委員会でいままで御説明申し上げたとおりでございます。これに対処すべく、わがほうとしては、あまりにも激しい法の改正というものは、安定的な、また永続的な法秩序を保っていくゆえんではないかという基本的な立場から、それが公正妥当なものになるように鋭意努力したいという一般的態度を御説明いたしまして、もし何か具体的なポイントがございましたら、おいおいお答えいたしたいと存じます。
  171. 津川武一

    ○津川委員 領海が十二海里、発展途上国で専管水域の海域が二百海里に、と、いろいろな点でその法会議で問題になるようですが、そのように解釈してよろしいですか。
  172. 杉原真一

    ○杉原説明員 ちょうど今週の月曜日から来週の末まで、ケニアのナイロビで、後進国と申しますか、開発途上国百カ国余りが集まりまして、海洋法会議に臨む基本的な原則を練っております。その中の中心的な議題として、先生がいま御指摘になりましたところの、領海十二海里及びそれに伴ってその領海の外に最大限二百海里に及ぶ資源管轄水域を設けるという原則が検討されていることは事実でございます。
  173. 津川武一

    ○津川委員 わが国はそれに対してどんな態度をとるつもりですか。
  174. 杉原真一

    ○杉原説明員 条約をつくるということは、結局、民主主義の原則に従って、最終的には表決によって事がきまるわけでございます。大まかな算定でございますが、沿岸国の資源管轄権を広くとるべきであるという主張をしている国は大体六、七十カ国、あるいは八十カ国に近い数があるかと思います。それに対して、従来海洋自由の原則に基づいて世界の海を大いに利用してまいりました先進海洋国が、東欧、西欧、日本等を合わせまして、約二、三十カ国あろうかと存じます。その中間に、沿岸の管轄権が広くなっても利益にならない諸国、具体的には海を持たない内陸国、あるいは海に面している部分が非常に少ない、地理的に不利な国、典型的な例が、シンガポールのように、海に面しているのですが、まわりがすべてよその国の領海ないし管轄権水域になってしまうような国、そういう国が大体四、五十カ国あるわけでございます。その間多少数的なズレはございますが、全体として世界に約百五十カ国の国があって、それが今度の会議に集まって、最終的には票によって事をきめるということになるわけでございます。したがいまして日本といたしましては、事沿岸国の漁業管轄権の問題に関する限りは、ソ連、イギリス、ポーランド等とともに、世界の海に雄飛して魚をとっておる遠洋漁業国に属するわけでございまして、沿岸国の管轄権が非常にきびしいものになるということに対してはできる限り反対する立場をとらざるを得ない。  反対する立場をとって、それではどうやってそういう排他的な管轄権ができることを防ぐことができるかと申し上げますと、これはたとえばの話でございますが、もし採択手続が三分の二の多数ということになりました場合には、沿岸国側が百票以上とるのを防ぐ方法を考えるよりいたし方がないわけでございます。したがって、仲間を少なくとも五十カ国以上持たなければならない。こういう点で、五十カ国の仲間をつくり得るような提案というものはどこにあるだろうかというと、わがほうとして現在出しております提案にそれだけの票が集まらないことは皆さま御存じのとおりでございます。したがいまして、他の利益をともにする国々と相談いたしまして、そのためには日本自身も硬直的な姿勢を維持するばかりが能ではないということはもちろんでございまして、少なくも五十カ国以上、あるいはできれば日本案自身が百カ国以上の票を集め得るような案に持っていくことが結局公正妥当な法をつくる方法であろうと考えるわけでございます。  実質についてお答えできませんのがはなはだ残念でございますが、いままだそこまで交渉も進んでおりませんので、お許しいただきたいと存じます。
  175. 津川武一

    ○津川委員 そこで、専管水域が発展途上国で二百海里になったとき、日本漁業がどんな影響を受けるかなどということを外務省は検討されていますか。
  176. 杉原真一

    ○杉原説明員 これは水産庁のほうが具体的な数字をお持ちになっておられるわけでございますが、私のほうも、外務省なりに、どのような影響を受けるであろうかということはもちろん検討いたしておるわけでございますが、先般来水産庁長官のほうから御答弁になっておりますように、日本水産業の約四割が遠洋漁業である。そして、その四割のうちの八割が北部太平洋に集中している。北部太平洋の相手国と申しますと、結局、アメリカ、カナダ、ソ連あるいは中国といった諸国になってまいるわけでございまして、これらの国との間が、先ほど来の発展途上国が主張いたしておりますところの、沿岸国の広範な漁業資源管轄権に関する条文そのままのかっこうで実施されるということは、日本と米ソ、中国等とのそれぞれの関係から申して、そういうことには一挙にはなり得ないだろう、したがって、多数国条約がいかなるかっこうをとるにしろ、わが国とこれら主たる関係国との間の二国間での交渉あるいは相互の信頼関係に基づいた漁業の協定というものは維持されなければならないし、また、そのようにわれわれとしては努力していくのが本筋であろうか、と、かように存ずる次第でございます。
  177. 津川武一

    ○津川委員 もう一つ外務省にお尋ねしますが、ここ数年来ソ連の船団が八戸沖、三陸沖、銚子沖、静岡沖なんかで魚をとって、日本の漁網なんかにかなり損害を与えておりますが、これに対して外務省はどんな処置をとっておられますか。
  178. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 これらのソ連漁業船団の操業によりまして日本側の漁具等に損害が生じました際には、そのつど損害をソ連側に通報いたしまして、厳重な注意を喚起して、善処方を要望しております。最近も、三月十四日にソ連側に申し入れを行なっております。
  179. 津川武一

    ○津川委員 そこで、水産庁にお尋ねしますが、発展途上国の専管水域が二百海里になったときに、日本沿岸漁業は、かなり大きな、四割という被害を受ける。そのときに、日本人のたん白質源である魚介類は十分補えますか。
  180. 内村良英

    内村(良)政府委員 その前に、事実問題でございますが、二百海里になった場合に、発展途上国の地先の沖合いで現在とっている数字でございますけれども、六十一万八千トンでございます。したがいまして、わが国の漁業が外国の沖合い二百海里以内の水域でとっている数字は四百七十八万トンでございますから、いわゆる発展途上国のものは六十一万八千トンで、そう大きな影響はないわけでございます。  問題は、先ほども外務省から御答弁申しましたように、北洋、特にソ連、アメリカ、カナダあたりとの関係が非常に問題になってくるわけでございまして、そういった先進国でございますので、現在も日米加漁業条約あるいは日ソ漁業条約と、条約がございます。それで、海洋法以後におきましても、多少そういった条約の修正が必要になるかもしれませんけれども、そういった関係国と交渉を持ち、現在の条約を維持しながら漁獲を続けていく。その場合に、もちろん資源保護等については十分協力して、資源を、最大持続性の生産性を維持するということをやりながらとっていけば、そう急にわが国の漁獲高が減るということにはならないのではないかと思いますが、もちろん、それ自体も海洋法以後の相手国の出方によって変わってくるわけでございまして、現在絶対だいじょうぶかということになると、現在、海洋法会議以前においてそこまでのことは申し上げることはできませんけれども、ただ、相手が先進国であり、しかも長い間漁業条約を結んで一緒にやってきた相手国でございますから、そう急に一気に二百海里になったのでおっぽりだすということは、まずあり得ないのではないかというふうに考えております。
  181. 津川武一

    ○津川委員 ソ連の漁船が日本の漁船の漁網なんかを破って損害を与えることに対して、水産庁はどうすればいいと思っていますか。
  182. 内村良英

    内村(良)政府委員 この点につきましても、先ほど外務省のほうから御答弁がございましたように、私のほうにすぐ連絡がございます。こういう被害があったという連絡がございますので、それを外務省に通報いたしまして、外務省から正式にソ連大使館に抗議をするという手だてをとっております。  反面、私ども漁業でまたソ連と関係を持っております。したがいまして、四十七年でございましたか、この問題についてソ連側の専門家と話し合いをいたしました。そのときに問題になりましたのは、日本の漁具が損害を受けるのは夜が多いわけなのでございますが、したがって、こちらからそれについていろいろクレームをつけましたところ、日本の漁具には標識がついていない、だから夜航行していてもわからないじゃないかと言うのです。しかも、それは公海であるというところから、私どもといたしましては、四十九年度に補助金をとりまして、それに夜の標識をつけるわけでございます。そういったことにいたしまして、わがほうの漁具の位置ということを明確にすると同時に、もう一度ぐらいソ連と近い将来にそういった専門家との話し合いをやる。ソ連としては同様の問題をヨーロッパの国で持っておるようでございます。たとえばノールウエーとソ連との間にはそういったことに対する協定があるようでございます。おそらく、他の東欧圏の国々とも同じような問題があるのだと思います。そこで、私どものほうといたしましては、できればまた専門家会議をやって、こうした問題については現実的に具体的に解決していく必要があるのじゃないかというふうに考えております。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  183. 津川武一

    ○津川委員 そこで、この日本の漁船とソ連の漁船とのトラブルについては好ましくないことだと私たちも思っておるわけですが、外務省は、根本的な解決策として何か考えておりますか。
  184. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 根本的解決策として何か考えておるかという御質問でございますが、これは、一つには、北洋漁業に関しましては日ソ漁業交渉というものがございます。その他の問題に関しましては、それぞれの問題の発生するごとに、必要があれば私どもはソ連側と交渉をする、また、先ほど水産庁長官から御答弁のありましたように、専門家間の会議をもってこれの解決をはかる、こういうことでございますが、根本的な解決策と申しますのは、いわゆる漁業政策全般ということでございますれば、これはむしろ農林省のほうのお考えになることでございましょうけれども、私どもは、外交の衝に当たる者といたしましては、水産庁とよく協議をいたしまして、問題の起こる前に未然に問題がなるべく起こらないようにする。そういたしましても、日本とソ連とは隣国でございますし、両国の漁業というものは継続的に発展をいたしております。したがって、問題が起こるのを完全に初めから予防するということはなかなか困難でございます。これは何も日本とソ連だけではございません。日本、アメリカ、カナダ等、いろいろな各国との漁業が発展いたしますと、その触れ合いも多くなる。したがって、問題が起こる可能性もございます。しかし、問題が起こった場合にも、これが大きな両国の関係を害するというようなことのないように、ルーチン化と言うのもおかしいことでありますけれども、通常の両国間の関係一つの問題としてこれを見て、そうして相互の協議によりまして円満に解決していく、こういうふうにいたしていきたいと思っております。
  185. 津川武一

    ○津川委員 根本的な解決策は農林省にということなのですが、農林省、いかがでございますか。
  186. 内村良英

    内村(良)政府委員 これはやはり専門家同士の接触を通じながら、たとえばそういったクレームの処理をどこでやるかとか、現実的に解決していかなくてはならない問題だと思います。ですから、私どもといたしましては、ノルウエーとソ連の条約等も研究しておりますし、そういうものを向こうも持っておりますので、同じようなことを——それから、わがほうもまた韓国との間には一つの条約がございます。そういうようなものを参考にしながら現実的な解決をしなければ、ただ理屈でどうだ、こうだという問題ではないのじゃないかというふうに思っております。
  187. 津川武一

    ○津川委員 私たちは一九六九年の二月二十一日と、一九六九年の三月十九日と、一九七二年の十一月二十六日と、三回にわたって政府に根本対策を申し入れております。水産庁にそれが入っているかどうかわかりませんが、申し入れている。それで、海洋法会議のことに対しては、領海は十二海里が至当だろう、それから、発展途上国の場合は専管水域が二百海里でもいいだろう、ただし、日本遠洋漁業家が平和五原則にのっとって相手国と十分相談して、相手国を援助し、相手国の利益になるような形での、無理押しのない、強引なところのない形でやるならば、いまよりもっと発展途上国の海域から、国民の必要としておるたん白源の魚介類を手に入れることができるだろう、と、このように思っております。アメリカやカナダやソ連に対してもそのとおりです。ただ、ここでその問題を障害しているものとして、この間八戸の熊谷漁業があのとおり北洋で密漁して、五千万円とか一億円のものを揚げた。実際向こうは知っております。日本の新聞にも書かれている。そういうことさえなければ問題はないと思うのですが、北洋漁業で言うと、サケ・マスのとき、ベニザケと普通マスをとってくるが、量がきまっておるので、ベニザケだけとって普通マスを捨ててくるというふうなやり方をやるので事が非常にめんどうであるというふうに考えておるわけであります。したがって、この点をどう指導していくかということですね。相手国とほうとうに友好的に、相互互恵的に、平和に、民主的な形でいくか、この点の施策を農林省と外務省に明らかにしていただきたいのです。  もう一つわれわれが政府に申し入れている点がある。根本的に日ソ間のこの紛争を解決するためには、はしなくもいま水産庁長官がソ連とノルウェーがやっている方式を言われたが、サケ・マス、カニのソ連との日ソ交渉をやって、資源を守ることと、とる区域、とる量というふうなことをきめるならば、われわれはソ連との場合で、公海においてのその点をきめなければならないのじゃないか。この間静岡県の銭州というところでソ連がサバをまき網でとっておった。日本の漁民は一本釣りをやっておるわけです。そこで一ぺんにとられていってしまうわけです。そこで領域をきめる、そして資源保護の立場から漁法をきめていく、こういう形でやるならば根本的な解決が見られると思うわけです。こういう点で、日ソの間の紛争解決のために、サバ、サンマの資源を守ること、これが一つ、二つには漁法を相談していくこと、それからとる海域をきめていくこと、そういう形のものをやらなければならないと思うのですが、このための前提条件は、やはり密漁をやらないこと、むちゃをやらないことで、平和五原則でお互いにそこのところを平和的に民主的に、互恵平等でいくという原則が成り立たなければならない。この二つを考えておるわけですが、この点で水産庁の方針を伺わしていただきたいのです。われわれこの対策を根本的にこういうふうに考えているということですね。いかがでございますか。外務省でも、水産庁でも、どちらでもいいです。
  188. 杉原真一

    ○杉原説明員 いま御指摘になりましたところは、領海十二海里、漁業専管水域二百海里というふうな制度ができた場合に、その中で日本遠洋漁業の利益をどうやって維持していくかという前提のある御質問だと存じますが、その点につきましては、御指摘のように、わが国自身も相手国と協力する、そして、相手国の、まだ発展途上国の小規模な漁業あるいはそれの施設、技術等について援助を与えて、ともに栄えていくという体制をとる、また、先進国との間におきましても、従来ややもすれば魚をとることのみに最大の重点が置かれておって、漁族を保護し、それを有効に活用し、そして新しい資源開発していくというふうな面での配慮が足りなかったのではなかろうかという点、これはわが国自身も反省しなければならない点が多々あるかと存じます。そういうふうな姿勢をわが国がとらない限り 先ほど申し上げましたように、わが国自身が少なくとも五十票以上あるいは百票にも達するような提案の主導権を持って積極的に海洋会議に臨むということは困難であろうかということ、これはまさに先生の御指摘のとおりのことだと存じます。
  189. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、相手国と協調して漁業をやっていく場合には、違反はいかぬということでございます。そのとおりでございます。私どもといたしましても取り締まりをやっておりまして、違反を見つけた場合にはそれを厳重に処分するということで、漁業取締規則がございます以上、それに対する違反については厳重な処分をするという態度で臨んでおります。  それから、他の、サケ・マス、あるいはカニ以外のものについても、ソ連と話し合って資源の保護をやり、漁場調整をやったらどうかというお話しがございましたが、この点につきましては、確かに銭州に入ってまいりまして、向こうはまき網でやってこっちは一本釣りで、そのとおりでございます。ところが、それではサバの資源全体について、ソ連と話し合ってサバの保護をしなければならぬほど資源が現在詰まっているかどうかという問題は、これはまた別問題でございます。現在の日ソ漁業条約というものは、やはり、資源保護というものを目標にいたしまして、それに両国協力してやっているわけでございます。一方、先ほどお話し申し上げましたソ連とノルウェーの条約というのは、漁業紛争についての話でございますので私どもは、銭州のような場合の漁業の調整という問題と資源保護の問題とを結びつけてしまっていいかどうかということについては検討すべき問題があると思います。したがいまして、ソ連と話し合います場合におきましても、資源保護の必要なものは資源保護として日ソ漁業条約でやり、それから、漁業調整と申しますか、漁場の競合あるいは漁船同士のトラブルというものはまた別な形で解決するということも考えられるのではないかと思いますし、それから、サバの資源が非常に詰まってくる、ソ連がもっとどんどん漁獲努力を拡大していく、わが国もサバをとり続けていく、サバの資源がなくなってしまうおそれがあるということになってくれば、これは日ソ両国協力して資源保護をしなければならぬということで、日ソ漁業条約の範囲の問題として考えるかというような問題もございます。その辺は現実の事態の推移に応じながら具体的に対処しなければならぬ問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  190. 津川武一

    ○津川委員 八戸沖ではソ連のそういうことがあるので、八戸の漁業家はロシア語でテープをつくって、マイクで放送して、こういう漁法なんだ、ここにこうあるのだ、あなたたちの漁法はこうなんだというように、トラブルを起こさないようにマイクで呼びかけておるわけなんですが、こういうことを民間にやらせないで、領海と専管水域をきめて、お互いにその区域などをきめてやるというやり方でやっているところが、われわれの調査では世界で四十五カ国もあるのですよ。したがって、このトラブルは日ソの間にとって決していいことでもないし、お互いによくないし、日本でもたいへんなことなんで、そういう立場からソ連との漁業交渉をぜひやってみる必要があるかと私は思うのですが、一度検討してみてくださいませんか。いかがでございますか。
  191. 内村良英

    内村(良)政府委員 その辺のところは、実は、内部においても十分検討しているところでございますが、サバ資源について、現在資源保護措置をとらなければならぬほどサバ資源が詰まっているというふうには日本の科学者はだれも見てないわけでございます。
  192. 津川武一

    ○津川委員 そうすると、依然として日本では一本釣りでやらして、向こうはまき網でやってもいいということなんですか。そこのところの相談協調が、私は、漁区と同じように両方が必要だと思うのですがね。
  193. 内村良英

    内村(良)政府委員 もちろん、そういうことを話し合って、そういうことの解決のための新しい取りきめを考えたらどうかということは考えられるわけでございますが、いまの日ソ漁業条約の中の漁種にサバを入れるかどうかということとそういうこととはちょっとまた話が違う、こういうことでございます。
  194. 津川武一

    ○津川委員 内村長官とのやり合いを少し繰り返したので、金融について質問する時間がだいぶなくなってしまったのですが、最後一つだけ金融について心配なことを聞きます。  これはおくれて水産庁に通告してありますけれども、山口県の防府市で、向島、三田尻、防府、防府地区、牟礼という五つの漁業協同組合が、県の信連から、一組合三千万円ずつ、合わせて一億五千万円借りて、これを鍾淵紡績会社に貸しているという事態が起きておるわけですが、こういうことは金融上で許されるんでしょうか。いかがでございますか。
  195. 内村良英

    内村(良)政府委員 実は、私どものほうでも、ごく最近に山口県に照会いたしまして聞いたわけでございますが、この五つの漁協の組合長が個人で信漁連から一億五千万円の金を借り、それを鐘紡に貸したということになっておるようでございまして、組合がやったわけではなしに、組合長個人が借りて、鐘紡が公害対策を積極的にやるんだと言っておるのでそれに貸したということのようでございます。そこで、これが山口県の県会で問題となりまして、県が調査した結果、どうも資金の性格が好ましくないということがございまして、つい直前に聞いたところでは、三月二十八日に返還させることになったというふうに聞いております。  そこで、それではこの貸し付けが水産業協同組合法上いいか悪いかという問題でございますが、そこで、まず、第一に、山口県の信漁連が漁協の組合長に融資したということについては適法でございます。これは組合員でございますから借りられるわけでございますが、ただ、借りる場合には、その人の事業なり生活に必要な資金でなければならないわけでございます。そこで、こういうものを借りるのはやはり問題があるということで、県が中に入って返還命令を出したのではないかというふうに想像されますが、なお、こまかい点については県に詳細を聞いてみないとわからないということでございます。
  196. 津川武一

    ○津川委員 県からそういう報告を聞いたのでしょうけれども、私たちのところに入った報告では、三田尻というところでは組合長名義なんです。連帯保証人が代表理事なんです。そして、代表監事までが連帯保証人になっている。そういう点が一つあるので、この点はさらに調査していただきたい。  それから、はしなくも水産庁長官が言ったように、組合長が個人で借りて利息をかせいだという、そういう浮き貸しみたいな考え方もある。というのは、最近金融が非常に引き締まったので、そこで、鍾淵紡績でも、そういう点での金利とか、そこいらあたりも調べて——まあ、返すということになりましたからいいですが、後刻私の覚えているところを全部だれかに連絡しますから、水産庁でだれかよこしていただいて、調査する項目などというものを打ち合わせて、間違いのないかっこうにさせていただきたいと思います。  これで終わります。
  197. 仮谷忠男

    仮谷委員長 井上泉君。
  198. 井上泉

    ○井上(泉)委員 漁業というものは全国民的なものであって、魚をたくさんとって国民生活を豊かにする、そして、漁業に従事しておる人たちが安定した生活が得られるようにする、そういうふうな条件をつくっていくことが漁業としての大事なことではないかと思います。  そこで、私は幾つかの質問をいたしたいと思っておりますが、いま問題になっておりますソ連のサバ漁業等についての問題等につきましても質問をいたしたいと思いますが、その点については津川先生からだいぶ質問をされましたので、私が用意しておったものは幾ぶん省略をして質問をしたいと思います。  北方で操業しておる日本の漁民で、現在ソ連当局に抑留をされておる漁民が幾らあるのか、そして、今日までソ連に拿捕されて船を没収されたものが何隻あったのか、そのことをまず承りたいと思います。
  199. 内村良英

    内村(良)政府委員 実は、その点につきまして質問の御通告がなかったので、数字をいま至急取り寄せます。取り寄せてすぐ御報告いたします。
  200. 井上泉

    ○井上(泉)委員 外務省はわかっていますか。
  201. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 お答え申し上げます。  本年度に入りまして、ソ連による拿捕件数は一件、拿捕されました人数は五名でございます。それから、帰還をいたしました船の数が本年に入りまして二隻で、昨年から抑留されておりました日本人の漁夫の十四名が本年になってから送還されております。それから、昨年度は本邦漁船の拿捕件数が二十三隻で、百六十九名になっております。
  202. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いままでに出されたのは、昨年度はそういう数字であるわけですけれども、私が調べたところでは、いままでに拿捕された漁船は千四百二十四隻、未帰還の漁船が五百二十五隻、こういうふうな数字を承知をしておるわけでありますが、これについて、いま、ソ連のサバ漁船で被害を受けた場合には、そのつど被害額を出して、それをソ連に要求をして補償を求めておるという答弁をなさっておられたのですが、いままでそういうものを幾ら出して、幾ら入ってきたのか、そこのことを示していただきたいと思います。
  203. 内村良英

    内村(良)政府委員 その前に、ただいま数字がわかりましたので、これは四十九年一月三十日現在でございますけれども、四島周辺で拿捕されたものが千四十九隻、そのうち帰還が六百二十八、未帰還が四百一、沈没等が十九、その他の海域で拿捕されましたのが三百七十六隻、したがいまして、今年の一月三十日までに合計千四百二十五隻が拿捕されました。帰ってまいりましたのが八百七十六隻、未帰還が五百二十五、沈没等が二十三、これは合計の数字がそうなっております。乗り組み員につきましては、四島周辺で七千六百九十三人、帰還が七千六百六十人、未帰還が十人、死亡が二十三人。それから、その他の海域では四千三百二十人乗り組み員がつかまりまして、四千三百十人が帰ってきて、一人がまだ未帰還、九人が死んでおります。したがいまして、合計一万二千十三人が拿捕されまして、帰還が一万一千九百七十人、現在まだ帰ってこない人が十一人、なくなった方が三十二人、こういうような数字になっております。  それから、それではわがほうの要求したものについてどの程度支払われたかということでございますが、私どもの聞いているところでは、まだ支払われたものはないように聞いております。
  204. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは、支払われておるものがないということはおかしいじゃないですか。そのつど厳重に被害額を調べて、その補償を要求をしておるものが、要求しただけであって、それが一銭も支払いを受けないということは合点がいかぬ話だとはあなたは思わないのですか。道理にかなった話だと思いますか。
  205. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 ソ連側に対する申し入れはいろいろございまして、いわゆる北方諸島周辺において拿捕されております船舶の問題と、それから、最近問題になっております北海道沖とか、千葉県沖、茨城県沖あるいは銭州沖等の問題とは一応性質を異にしております。先ほど私が答弁申し上げましたのは、近くのソ連の漁船の操業によります損害でございまして、これはソ連側に善処方を申し入れておる。それから、北方諸島におきまして拿捕されている日本漁船、漁夫の問題、これはすでに請求権留保を行ないまして、返還方を要求しております。  ただ、北の問題は、わが国の北方領土に対する領土問題、それに対するソ連側の態度、こういうことによりまして問題が複雑になっております。したがって、わが方は請求権を常に留保しておりまするけれども、実際にソ連側が損害賠償したという例はまだございません。
  206. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、何のために損害賠償の要求をするのですか。向こうは何にもしていないわけですね。それから、問題が発生したのはことしだけじゃないでしょう。ソ連の船団が銚子沖だとか焼津沖だとかいう太平洋の沖合いへ来て、公海上とはいいながらも、日本の漁民に対して多大の危険、迷惑、被害を与えておるわけでしょう。だから損害賠償を請求しておるのでしょう。それに対して抗議をしたとか、いろいろなことを言っておるけれども、大体いつのころからこの問題が起こって、そして、いままで何回やったのか、そのことを説明を願いたいと思います。
  207. 内村良英

    内村(良)政府委員 それでは、まず、水産庁から事実関係についてお話し申し上げます。  ソ連漁船のわが国近海への進出が見え出したのは昭和四十年ころからでございます。初めは数隻の漁船により、主として北海道近海で操業していたわけでございますが、昭和四十六年以降急激に増加いたしまして、その規模も、一万トン級の母船が二十数隻の漁船を伴って操業するというような形になってきたわけでございます。  そこで、わがほうが把握しておりますところでは、ソ連漁船による漁具の被害は、昭和四十六年が十九件、二十八隻、昭和四十七年が十四件、十六隻、四十八年が十八件、二十六隻、四十九年、ことしに入りまして急にふえまして二十五件、七十六隻というふうになっております。したがいまして、四十六年の段階では被害額も五百八十八万円というようなものでございましたけれども、四十九年になりまして、それが四千六百万円ぐらいになるというふうに、最近被害が急激に増加しているわけでございます。
  208. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのことについてのいままでの当委員会における農林省側の答弁も、外務省側の答弁も、そのつどそれに対する賠償要求をして云々と言っておるのですけれども、これはただ言っただけであって、向こうから応じてこないから、そのまま泣き寝入りだということですか。どうなんですか。
  209. 内村良英

    内村(良)政府委員 その点につきましては、たとえばソ連側は事実の確認がないとかいろいろなことも言っておるようでございます。そこで、わがほうといたしましては、具体的に場所その他をあげておりますけれども、ただソ連船ということで、船名がわからないとか、いろいろな問題がございます。そこで、そのつどこまかく被害の届け出がございますので、それを集めて抗議している。ところが、事実関係についていろいろ争いがあるということでございます。
  210. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、賠償要求をしたとかいうようなことは、ただここでの答弁であって、事実としては賠償要求をしたことはないということになるのですか。でたらめを言うたら困りますよ。
  211. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 対ソ申し入れにおきましては、水産庁からの御調査に基づきまして被害を通報いたしまして、ソ連側に対して善処方を要望している次第でございます。
  212. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは善処方ということであって、別に、これだけ被害を受けたからこれを漁民に対して支払ってくれというふうに要求したものではないというわけになるでしょう。それでは一歩譲って、外務省のほうで善処方ということでいままでやってきておる、そして、いままで水産庁から報告のあったことで、幾ら被害があったということをそのつど出しておると言うのですから、昭和四十六年のいつ、昭和四十七年のいつ、四十八年のいつというように、その回数と、その日にちを例示をしていただきたいと思います。そして、この場合にはこれだけの被害があったからこれだけの要求で善処方をお願いしたとか、この場合にはこれだけの被害があったからこれだけの善処方を要望したとか、そういうものを示していただきたいと思います。
  213. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 ソ連側に対する通報におきまして……(井上(泉)委員「通報ではなくて、ソ連側に対する申し入れ」と呼ぶ)  失礼いたしました。ソ連側に対する申し入れにおきまして、被害は毎回……
  214. 井上泉

    ○井上(泉)委員 毎回というのはいつといつですか。初めに申し入れたのはいつですか。
  215. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 本年の二月十四日に、ことしに入ってからはやっております。それから、第二回目は三月の十四日でございます。
  216. 井上泉

    ○井上(泉)委員 本年はいいのですよ。二月は本年だからね。いままで何回やったのですか。それで、本年の二月の十四日には幾らの損害の申し入れをしたのか。三月のなにはいつになるのか。いままで何回やったのですか。
  217. 仮谷忠男

    仮谷委員長 外務省、水産庁、よくそこを相談して、資料があれば資料に基づいて、おそくなってもいいですから、確実に答弁をしてください。
  218. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 ただいま本年だけの資料を持っておりまするけれども、それまでの資料は、後刻別な資料をもって御報告申し上げます。
  219. 仮谷忠男

    仮谷委員長 井上君に申し上げますが、それでよろしゅうございますか。
  220. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それはしようがないです。しようがないけれども日本でこれだけ問題になって、そして、日本の零細な漁民が苦しめられておる。その苦しめられておることに対して、あなたは、水産庁はこうした、外務省はこうしたと言っておるのですが、そんな、ただことばで言ったところで、これは信用できませんよ。いつ幾日に起こった事件については幾らの金額をソ連側に要求をしたと——あなたのことばでは要求ではない、善処方を言ったということだが、これはやっていないでおって、それでようぬけぬけと委員会で、私はソ連側にいままで通報して、そのつど賠償を要求したなんて、そんな大口が言えたもんだと思うがな。実際にそういうことを、事実関係をやっておったら、資料も何もないでしょう。そんなもので資料資料と言うてうろたえるような、そういう態度というものが、いかに零細漁民に対して恩情のない、情のない措置であるか、こういうことを指摘せざるを得ないわけであります。  そこで、もう一つお伺いしますが、北洋漁業で拿捕された船の中で、これが日魯漁業だとか、これが大洋漁業だとかいう、いわゆる大資本家の経営する漁船と、大資本でない零細な漁船と、その関係はどれくらいになっておるのですか。
  221. 内村良英

    内村(良)政府委員 そういう統計はちょっと調べてみないとわかりませんが、調べてないのではないかと思いますが、なお調べてみます。ただいまのところ、その資料を持っておりません。
  222. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは大臣に質問をせねばなりませんが、いま、そういうふうな水産庁あるいは外務省の態度をそこでじっと聞いておって、政務次官はどういう御心境ですか。
  223. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 あなたのおっしゃるように、そのつどどういうような要求をしておるか、私はつまびらかにいたしておりませんが、さらに調査をいたしまして、もっとはっきりした要求をするなら要求をするように、要求をしないというのなら、その理由は何であるのか、もう一ぺん検討してみたいと思います。
  224. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それはそつのない答弁ですけれども、大体、零細漁業というものを保護する姿勢というものが水産庁にも外務省にも全くないじゃないか。あるとするならば、あるということを言ってください。私もまた具体的にあるかないか質問したいですからね。零細漁民を保護する姿勢はありますか。
  225. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず、最初に、大資本のものと零細漁民の船と、拿捕されたものはどうなっておるかという点でございますが、私どものほうには、船の名前は全部わかっております。所有者もわかっておりますので、そこをずっと調べれば出てきますけれども、大資本、たとえば五大会社というようなことで分けて、至急に調べまして、資料として提出したいと思います。  それから、沿岸漁業と申しますか、零細漁業について愛情がないのじゃないかというお話しでございますが、私どもといたしましては、沿岸漁業及び中小漁業沖合い漁業と、漁業が三つあるわけでございますけれども、これまでのいろいろな水産行政の政策は沿岸漁業に最も重点を置いてやってきたつもりでございます。
  226. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 私どもといたしましては、零細漁業でございましょうと、巨大資本でございましょうと、日本の国益に変わりはございません。したがいまして、水産庁からの御要望と、その調査に基づきまして、ソ連側に申し入れをいたしております。その漁船が大きいものであろうと、小さいものであろうと、あるいはその主体がどうであろうと、国益に変わりはございません。
  227. 井上泉

    ○井上(泉)委員 国益に変わりはないことはあたりまえです。ところが、具体的に零細漁民を守っていくような仕事をやってこそ、言うことと実際とが一致するわけでしょう。水産庁長官はかわられたのだから、かわる以前の水産行政ということについてはあまりかまってはおれないというお考えがあるのかもしれませんけれども、二十五日の朝のNHKの「一〇二」、あれをごらんになったのですか。
  228. 内村良英

    内村(良)政府委員 私は、「一〇二」を見ました。
  229. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのときに沿岸漁業課長が、相手があることなので交渉も思うようにいかないということを言っておりましたが、相手があるので交渉もうまいこといかぬということはあたりまえのことであって、それなら、その相手と何回、何月何日にどういう申し入れをして、どういう交渉をしたということも、後日資料として出していただけますか。
  230. 内村良英

    内村(良)政府委員 直接ソ連側と接触しておりますのは外務省でございます。私のほうは、外務省に資料提出して、ソ連側に抗議をしてもらうことを要請しているわけでございまして、いついつというのは外務省でないと資料がないと思います。
  231. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、外務省に水産庁がこういうことでソ連と交渉してもらいたいという要請をしたところの、その件数をまた示していただきたいと思います。それは、いまここでなくてもけっこうです。  そこで、あなたがさっき津川代議士の質問の中でも、サバの一本釣りというものについてはそれほど資源的に問題がないというふうな話をされておったわけですけれども、サバの産卵期というのは一体いつですか。
  232. 内村良英

    内村(良)政府委員 サバの産卵期はちょうどいまごろでございます。  それから、サバは資源的な問題がないのではないかというのは、これは日本沿岸から沖合いにかけて、全体について言っておるわけでございまして、銭州というのはサバの産卵場でございます。そこで、産卵場の保護ということは資源問題とは別問題でございまして、それはそれとして、ソ連側とよく話し合っていろいろな保護措置を将来とる必要があるということを非常に強く痛感しておるわけでございます。
  233. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは現実にソ連がやっておるところをごらんになったこと、あるいは、その写真なり何なり、そういうようなものの報告を受けたことはあるのですか。
  234. 内村良英

    内村(良)政府委員 私はまだかわって二カ月で、なかなか出張する機会がございませんので、まだ見ておりませんけれども、写真その他では見ております。
  235. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのNHKのテレビ放送記者ですら、ソ連の漁船の近くまで行って、今度こういうふうにやられている、こういうふうにやられているということをテレビカメラでとらえて報告をされておるわけですが、あなたは国会の中でいろいろお忙しくて行かれないにしても、ああいうふうな地域で、漁民がどれだけこれに対して不安を感じておるかということの現地調査をなされるべきではないか。これが零細漁民に対する態度であるべきではないのか。一本釣りの漁師だから政治献金も何もない、かまっておれるかということで御指導がないのかどうか。一応現地調査ぐらいは当然すべきだと私は思う。二月から五月への産卵期に、その一番大切な漁場で、一万トンの船を母船として二十隻も三十隻もがやってきて、領海外とはいいながらも、自分たちの漁場のすぐ目の前でやられるところの漁民の心境というものを考えてみなさいや。それを見たときに、漁民としては、もう何とも言えない、ほんとうにやるせない気持ちにかられると私は思うのですが、そういうふうな情のある行政というものがなぜとられないのか。だれもそのことをやらないということは、言うこととやることが一体になっていない証拠じゃないかと私は思うのですが、どうですか。
  236. 内村良英

    内村(良)政府委員 ことしになりましてソ連が一番大量に操業したのは銚子沖でございます。しかも、十二海里の中に入っているというようなことを聞きましたので、私は銚子に出張しました者に現場を見てくるように言いまして、報告を受けております。それで、確かにおかの上から見える、目の前に見えるということで、日本の漁民感情をあれでは非常に刺激するということは私もよく知っております。  それから、さらに、これは私ごとに近いわけでございますが、先般ソ連の大使に会いましたときに、私自身はそれについて非常に強く大使に抗議はいたしております。
  237. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その大使への抗議は、外務省を通じての抗議ですか、水産庁じきじきの抗議ですか、どっちですか。
  238. 内村良英

    内村(良)政府委員 正式には外務省を通じて抗議しなければなりませんが、しかし、私はたまたまソ連の大使と会うチャンスがございましたので、その際、非常に困る、特に、銭州の問題は、日本のサバの産卵場であって、しかも、先生御案内のように一本釣りをやっているわけで、そこへ中層なりまき網でやられることは非常に困るということは強く申し入れてございます。ただし、これは、私が個人的に会ったときに、個人的にやったことでございます。
  239. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは、個人的と言いましても、やはり、日本国の水産庁長官ですから、それは個人のあなたではないのですから、それはそれだけのソ連への申し入れになったと私は思います。そのことは評価します。しかし、そういうことに対しても外務省は抗議するのでなしに、いままで被害を申し入れしてやっても、それがどうなったのか、全然入ってこない。北洋漁業の問題については、私は、また後日時間をいただいてから質問をしたいと思うわけですけれども、片や、日本は、もうばく大な生命、財産というものが犠牲になっておるわけです。北方領土の返遷ということもまだ解決をされない中でありますし、外交上いろいろむずかしい問題もあろうけれども、しかしながら、現実に日本の漁師が被害を受けたことに対して、これの善処方を申し入れするとかいうような、そういう外務省の姿勢でこの問題が解決すると思いますか。外務省、どうですか。
  240. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 ソ連側に対する申し入れにおきましては、水産庁のほうから損害賠償の要求がございますれば、ソ連側にこれを申し伝えます。ただいままでのところは善処方の要求でございまして、損害賠償請求という形では、私どもは申し入れを受けておりません。
  241. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それじゃ漁師が受けた被害については、私は非常に受け取り方を間違えておったのでしょうか。そういうことについてはそのつど損害賠償の要求をしたというように聞いておったのですけれどもね。水産庁のほうは、被害額が出た、これだけの被害があった、たとえば網を一統やられて十万出た、あるいは五十万出たということで、こんなになるから、困るから、日本の網をいためないようにしてくれ、日本の船をいためないようにしてくれ、と、こういうことを善処するということだけでやってきたんですか。一ぺんそこを確認しておきたいです。
  242. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どものほうは、それぞれ報告がございますから、その報告をまとめまして外務省に通報してきたわけでございます。
  243. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは外務省への通報であって、またずっとだんだんあとずさりになってきたのですね。最初私が聞いたときには損害の補償を要求したと言うたが、次には補償の要求ではなしに善処方をなにしたと言い、今度は善処方ではなしに通報というようにだんだん後退して、しまいには消えていきやせぬかと思うのですが、その心配はないですか。
  244. 内村良英

    内村(良)政府委員 水産庁といたしましては、「別紙図面のような海域においてソ連漁船による漁具破損等の事故が頻発しており、」と、このようになっておるということを言いまして、「その趣旨を徹底され、厳重注意を喚起されるよう配慮願いたい。」という文書を外務省に出しております。
  245. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、いままでに日本の漁民が受けた損害額というようなものはどうなっておるのですか。
  246. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまの文書の中に、損害額自体を入れております。
  247. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは零細な漁民ですが、その損害に対して国としてはどうしますか。損害を受けたけれどもしようがないということで放置するのですか。
  248. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまのところ、たとえばアメリカの漁船と同じような問題を起こしました場合には、民間ベースでその処理をやっておるわけでございます。たとえばアメリカの漁船が石油を流して漁業が影響を受けたというような場合にも……(井上(泉)委員「アメリカの漁船の場合じゃなくて、日本とソ連の場合」と呼ぶ)ですから、ソ連との関係におきましても、その損害賠償の正式な法律問題になりますと民間の問題だということになるわけでございますが、相手がソ連というような国でございますから、外務省を通じて水産庁としてはそのような申し入れをしているわけでございます。
  249. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのような申し入れと言うけれども、あなたはただ通報と言うたでしょう。その通報の中に、これこれの被害額があるから、この被害額は日本の漁民に対してソ連側が補償してくたさいと——補償をお願いしますでも、くださいでも、要求するでも、どっちでもいいですが、こういうことで補償をしてもらいたいということで交渉をお願いする通報を外務省に出してある、と、こういうことですか。
  250. 内村良英

    内村(良)政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、損害報告がございますから、それをまとめまして、これだけの漁具についてこういう海域て——これはこまかい表があるわけでございまして、こういう海域でこういう損害があった、その額は幾らであるということを外務省に通報して、厳重に注意してくれということを、ただいま申し上げた文書を出しておるわけでございます。
  251. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういう文書を出してあるけれども、それでは、その被害を受けた漁民に対して、その被害補償というものはどこがしますか。
  252. 内村良英

    内村(良)政府委員 その問題につきましては、ただいま御答弁申し上げましたように、法律論としては民事上の問題になってしまうという問題があるわけでございます。しかし、ソ連という国でございますので、ただいま申し上げましたような形で外務省を通じて抗議をしている、こういうことになっておるわけでございます。
  253. 井上泉

    ○井上(泉)委員 外務省を通じて抗議するのではなしに、現実に零細漁民が受けた被害をどうやって補ってやるのですか。日本の漁師が違反操業を北洋でやっておる問題とはまた違って、自分たちの沿岸の水域でやっておる者が被害を受けておるのですから、その被害を受けておることに対して、被害を受けた者に対して、これを補償してやらなければいかんじゃないのですか。ソ連と日本の漁師とが直接交渉なんかできる道理はないし、だから、外務省にそのことの交渉を申し入れておる。交渉を申し入れたけれども昭和四十四年から以降のそういう被害が出てきても、全然いままで一銭も支払いを受けていないという、この現状の中で零細漁民というものは困っておるじゃないですか。あなたは二十五日のNHKのモーニングショーで——これは清水のあたりの、焼津沖の漁師だけじゃないですよ。千葉県の漁師からも陳情が来ておる。茨城県の漁師からも陳情が来ておる。これは水産庁へも出ておるはずです。外務省へも出ておるはずです。そういう中で、現実に被害を受けた漁師をどうするのかということを私はお聞きしておるのですが、それは国と国とのことだから、漁師がどのような被害を受けておろうとも知らないというのですか。漁師は日本国民じゃないですか。
  254. 内村良英

    内村(良)政府委員 それはきわめて重大な問題だと私ども思っております。しかし、法律論的なことを申しますと民事上の問題だということになりますので、今後、そういったものについて、特に相手がソ連というような国の場合にどうするかという問題として検討しなければならない問題と思いますが、現在のところは民事上の問題だというふうに考えているわけでございます。
  255. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、あなたはもっとわかった答弁するかと思っておったけれども、ほんとうに腹が立ってしょうがない。民事上の問題と言っても、現実に漁師が被害を受けておるのですよ。被害を受けた者に対して、相手がソ連であって、そして、いままで数年前から被害を与えておるけれども、一ぺんも補償してくれない。そして、年を追うごとに傍若無人なふるまいでやってきておると言って漁師は嘆いておるわけだから、それに対しての手だてもろくろくされず、ましてや、受けた被害に対しては、民事上の問題だからということで何らの措置も講じられない。こういう形でほおかぶりをして通るということは、日本政府としての、日本国国民に対する国政のあるべき姿ではないと私は思うが、渡辺政務次官は非常に愛国心が強いということを聞いておるが、そういうことについてはどうですか。
  256. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 あなたと農林省、外務省の間の討論を聞いておって、国際法上の手続上の問題とか専門的な方法は私はわかりませんけれども、素朴な国民感情とすれば、やはり私はあなたと同じ意見です。当然それは民事上の問題と言っても、相手は国家の事業みたいなものでありますから、漁夫がそこで裁判をぶつわけにもいかないことなんで、だれかがそれは手助けをしてやらなければならぬということになれば、当然水産庁が一緒になって、外務省を通してそれに対する損害賠償なり——こういうことばが適当かわからぬが、実質上の損害をよこせという要求はすべきだと私は思います。  それから、その次には、そういうトラブルが起きないようにするためには、先ほど水産庁長官が言いましたが、ともかく夜そういう事件が起きるというんだから、標識をつくって、ソ連の船がそういうふうな場所を避けて通れるようにするとか、あるいは、どういうところではどういうことをやらないことにしようという取りきめをするとか、そういうような予防措置も必要だと思います。ほんとうにそういうふうな被害があったからといって、ただ外務省に取り次いで、ともかく厳重配慮方を願いますという程度では、私もちょっとこれは納得がいかない。  でありますから、あなたのおっしゃることは、感情論として全くそのとおりでありますから、何とかうまい方法があるはずだから、それについては私からももう一ぺん実情をよく調べさせて、また御報告いたします。
  257. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これでやっていると時間がたってしょうがないわけですけれども、まだどうも私は納得がいかぬのですが、千葉県の漁業組合、銚子の漁業組合のこれに関係した漁師の方たち、あるいは焼津の人たちの話を聞くと、こういうことを聞くわけです。ソ連との漁業協定、つまり北方における漁業協定を有利にするために太平洋岸でソ連がいわゆる領海外でこういう漁法をとってやるということなんです。何も、ソ連が日本沖合いまで来てサバを取って、かん詰めにして、サバの頭を海へほうって、またそれが海の公害をもたらすというような、そういうことをするような国だとは私は思いませんし、零細な漁民を苦しめるような社会主義国だとは思わないけれども、そしてまたそのことは日本政府——日本政府といえば、自民党が政権を持っているのですから、これは自民党政府と呼称したくなるわけですけれども、いわゆる北洋における安全操業を守っていき、北洋におけるいわゆる日本の大手の漁業資本家を保護するために、向こうでの協定を有利にするために太平洋岸のこういう漁民を犠牲に供しておるということを聞くわけですが、そういう事実はないですか。これは外務省のほうからと、水産庁からも答弁願いたいです。
  258. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在すでに日ソ交渉が始まっておりますけれども、私どもは、このことは全く別問題だというふうに考えております。
  259. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 私どもも、いま水産庁長官が御答弁された見解と全く同意見でございます。
  260. 井上泉

    ○井上(泉)委員 同意見だとなれば、伺いますが、ソ連と漁業交渉するときに、これだけの漁獲をしたいという日本の要求に対して、ソ連は、漁業資源保護のためにいろいろとこれを減そうとするでしょう。減そうとしないですか。水産庁長官に伺いたい。
  261. 内村良英

    内村(良)政府委員 これを減そうとするというのは、サケの話ですか。
  262. 井上泉

    ○井上(泉)委員 資源保護のために、全体の日本の漁獲高を少なくしようとするでしょう。そんなに、日本が言うほどとっては困ると言うでしょう。
  263. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいままでのところは、資源評価につきまして、ソ連側の科学者と日本側の科学者とやったわけでございます。そこで、ソ連の見方は、北洋のサケ——これはサケの種類によって違いますけれども、ベニザケとかシロザケというのは資源が減っている。日本は、一昨年は不漁年だったわけでありまして、大体一昨年程度の資源量はあると言っておりますけれども、その辺につきましては、ソ連の科学者と日本の科学者の意見が違っていて、結局、報告書には両者の意見を並記するという形になるということで、ソ連は、そういうふうに資源が悪いのだから漁獲を減らすべきであるということを言ってくるということになるわけでございます。
  264. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは日本のサバの問題でも言える。この産卵期の二月−五月に集中的にサバの漁獲をやるとかいうようなことは、サバの資源を保護するためにももってのほかだと思うわけですが、そういう漁業交渉に、北方における漁業交渉だから——太平洋岸における青森県から、静岡から、まだずっと土佐沖まで下がってくるかわからぬ、太平洋岸も、北のほうも、日本海も、日本の漁船はいつの間にやら影をひそめなければいかぬという状態にもなりかねないような、そういういまのソ連の漁船の進出の状態から見て、零細な日本の漁民を守るために、特に一本釣りの零細な漁民を守るために、そういう点は自然保護の見地からも強く交渉し、抗議をし、そうして与えられた被害に対しては、それこそすみやかに補償の措置を講ずるように、外務省としては、水産庁から要請があれば、その交渉に当たりますか。
  265. 加賀美秀夫

    ○加賀美説明員 私どもといたしましては、水産庁から要請がございますれば、必要な交渉をいたしたいと存じます。
  266. 井上泉

    ○井上(泉)委員 外務省は、水産庁から要請があればそういう補償問題についても交渉に当たると言っておるのでありまするから、水産庁も、通報だけではなしに、これこれで被害を受けておるし、これは大事な魚族の資源だから、サバの資源を保護するために——サバだけじゃないのですが、これでは困るからやめてくれということと、同時に、現在までソ連漁船に与えられた被害に対してはすみやかに補償してくれということを外務省から交渉してくれ、と、こういう要請を出すお気持ちはありますか。
  267. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 もちろん、このような被害が続出しては困るのですから、そういうことはやめてもらいたいという要求はいたします。  それから、損害賠償の問題についても、損害賠償ということばが適当かどうか知らぬが、実質上損害賠償をしてもらうということで、農林省としては、大臣とも相談をして外務省に要請をする、そういうことにいたします。
  268. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これで、この問題についての私の質問は終わりますが、外務省と水産庁、両方にお願いをしておきたいのですが、現在ソ連側に抑留されておる未帰還者の十一人が、いまどういう状態で、いつ帰れるめどがあるのか、つまり、向こうの刑がきまっておるのか、あるいはきまっていないのか、そういうことについての資料と、さらにはまた、本年一月十六日に拿捕された五人の乗り組み員は現在どうなっておるのかということ、そういうことを調査したものを報告を願いたいと思います。何も、この人たちは自分が食うために魚をとっておるのじゃなしに、われわれ日本国民に大切な魚を与えよう、とろう、こういうことでやったわけでありますので、その人たちがいまどういう状態になっておるのかということの報告と、それから、現在までに拿捕されたものを現在の金額に計上すれば、北方の水域においてソ連に拿捕され、没収された船の被害額というものが総計でどれぐらいになるのかということ、そのこともあわせて資料として提出を願いたいと思います。それを出すか出さないか、返事を聞いて、この質問を終わります。
  269. 内村良英

    内村(良)政府委員 拿捕された漁夫の状況につきましては、資料提出いたします。  それから、損害額がどれぐらいになるかにつきましても資料提出いたします。
  270. 井上泉

    ○井上(泉)委員 外務省はもうけっこうです。ひとつ日本国民のために奮闘してください。  そこで、次にお尋ねをするわけですが、先日、私は伊方の原子力発電所の設置場所へ調査に行ったわけですが、そのときに、漁業権というものがまだ消滅をしていない、漁業権がまだ存在しておるのに工事はもうどんどん進められておるということを聞くわけですが、この伊方の原子力発電所の地先における漁業権はどうなっておるのか。このことを通産省のほうから報告を受けたいと思います。
  271. 伊藤栄一

    ○伊藤説明員 伊方原子力発電所の前面海域で温排水の影響を受けると考えます漁協は町見漁協と有寿来漁協でございますが、町見漁協とは昭和四十六年十二月に、有寿来漁協とは四十七年四月に、おのおの漁業補償契約を締結いたしまして、解決していると聞いております。
  272. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私の承知をするところでは、磯津の漁協なんかもこれに対する金の受け取りを拒否しておる。三崎町も長浜町も拒否しておる。そして、現実に漁業権の問題は解決をしていないと、聞くわけですけれども水産庁、どうですか。この漁業権はもうなくなっておるのですか。
  273. 内村良英

    内村(良)政府委員 地先の組合につきましては、二つの組合につきましては、漁業権の消滅決議が合法的に行なわれております。
  274. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その問題についてはまた後日論議をすることにいたしまして、これはローカルの問題ですけれども、高知県の浦戸湾内で今度埋め立ての工事が施行され、浮き桟橋による工法が施行されようとしておるわけですが、その場合に、関係の漁民は、漁業権のあるところを荒されては困るということで県に対して抗議を申し込んでおるわけです。そこで、その地域漁業権というものは存在をしておるものと私は理解するわけですが、その漁協の了解なしに、漁業権の存在する漁民の了解なしにそういう工法ができるものかどうか、その点を承りたい。
  275. 内村良英

    内村(良)政府委員 私のほうで調べましたところによりますと、高知県におきましては、浦戸湾における港湾工事の施行のために、昭和三十七年に、湾内の刺し網漁業を含む一切の漁業について全面消滅の補償を行なっており、今回の工事着手は、昭和四十五年に一部着手したまま中断していたものを再開しようとするものであって、高知県としては、すでに浦戸湾の港湾工事にかかる浦償は完了したという見解のようでございます。現在刺し網漁業を営んでおる漁業者と県は十分話し合いを行なった上で適当な水産振興対策をとるように考えているというふうに聞いておりまして、これは漁業権の問題ではなしに、許可漁業の問題ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  276. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その許可漁業というのは許可なしにはやれない漁業ですから、許可してやっておるということになると、そこに漁師の生活権というものが存在をするわけですから、この漁師の生活権である許可漁業というものに対して、漁業者の理解、了解なしには、そういうようなところに、浮き桟橋であろうが何であろうが、そういうふうなものはつくり得ない。論理的にそういうふうになると思いますが、どうですか。
  277. 内村良英

    内村(良)政府委員 昭和三十七年に補償交渉をやりましたときに、補償は全部しましょう、しかし、工事に支障がない限り、漁業を営むことについては、県のほうもいいのではないかということで了承している、したがって、刺し網漁業等の漁業許可についても、許可が必要でございますから許可しているということで、補償の際に全部話がついているというふうに県は考えているようでございます。したがいまして、県といたしましては、しかし確かにいま漁業をやっているわけでございますから関係者と十分話し合いを行なった上で、別途適当な水産振興対策をとって、それによってその人たちの生活が困らぬようにしようということを考えているというふうに私どもは承知しているわけでございます。
  278. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういうことはそういう漁業者と話し合いを県のほうはつけた上でこの工事に着手をするという見解であるということは、結局、漁業者に対する一つの権利というか、そのものを認めた結果だと思うわけです。認めてなければそんなこと言う必要はないですからね。だから、そういう点からも、工事の是非について当委員会で論議をするのは適当ではないと思いますので、別の場所で論議をしたいと思いますが、漁師の漁業権というものをもっと大事に考えてやらないと——漁業権を放棄をするということ、一つの埋め立て工事をする、あるいは工場の敷地を造成するということで漁業権をなにするということは、結局、大事な公有水面というものがそこに帰属するようになる。伊方でも言えるとおり、この原子力発電所の沖合い水面漁業権について、漁師は、現実にこの漁業権はまだ存在しておる、これは何も補償されていないと言っておるのに、一方的に、その漁業権はもうないのだという報告を受けておるということで素通りをするということは、これは水産庁としても業務の怠慢じゃないかと私は思うのです。こういう漁業権というものについて、もっと大事に考えてやる姿勢というものが望ましいと私は思うのですが、どうですか。
  279. 内村良英

    内村(良)政府委員 ちょっと事実関係についてお話し申し上げたいと思いますけれども、県といたしましては、港湾工事の施行のために、湾内の刺し網漁業を含む一切の漁業についての全面消滅の補償をしているわけでございます。したがいまして、漁業権はそこで消滅いたしまして、昭和三十八年以降漁業権は設定されていないわけでございます。しかし、一方、そこに漁民がおられまして、そこでまだ工事が完全に全部終わらないし、したがって、その海域についてはまだ漁業ができるということで、県は、特にそういった漁業者の立場を考えて、そういった漁業をやらせるという立場をとったんじゃないかと思います。そこで、そういう漁業をやるためにはやはり漁業許可が必要でございますから、県としては、漁業許可は取り消さなかった。しかし、漁業権は完全に消滅して、補償は十分払われている。したがって、漁業権自体は昭和三十八年以来もう設定されていないわけでございます。したがって、漁業権は完全に消滅している。しかし、許可漁業は、港湾工事がまだそこまで及んでいないから、そこにいる人たちの漁業を継続したほうがいいという立場で漁業許可を残した、こういう話ではないかというふうい私どもは判断をするわけでございます。
  280. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それで、その漁業権というものに対する考え方はどうですか。
  281. 内村良英

    内村(良)政府委員 漁業権は、これはもちろん大事にしなければならないわけでございます。したがいまして、漁業権が消滅する場合には、漁業法に基づく手続その他水産業協同組合法に基づく手続で、全員の特別決議その他の手続を得て消滅しなければならぬという規定をきめております。したがいまして、漁業権自身は尊重されなければならぬわけでございますが、このケースの場合には、漁業権自体は昭和三十八年以降もう設定されていない。三十七年に消滅いたしまして、県としては補償を払っているということでございます。しかし、漁業許可だけは、それは許可漁業でございますから、まだ工事がそこまでいかないので、そこで、県としては、その漁業者の立場を考えてその許可を取り消さなかった、と、こういう話ではないかと思うわけでございます。(井上(泉)委員「伊方の場合は」と呼ぶ)  伊方の場合につきましても、漁業権は、私どもの聞いているところでは合法的に消滅しております。組合員が集まりまして、数字は正確ではございませんが、たしか百何対二で、反対者が二ということで、合法的に議決されまして、漁業権が消滅し、補償をもらっているというふうに聞いております。
  282. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは事実関係が違うと思います。現地では、まだ漁業権というものは存在をしておる、それにもかかわらず工事をどんどん進められて、大切な父祖伝来の海をよごされて困ると言っておる。八十歳のおばあさんまで原発の工事場へやってきて、自分はもう今晩死ぬかもわからぬけれども、しかし、自分の子や孫や、あるいはその子孫が海を放射能に汚染され、海を追われるということはせつないことだし、また、漁業権というものを現在私どもは持っておるのだから、この原発工事というものは絶対に阻止してもらわなければ困ると言っている。こういう強い行動を打ち出しておったわけでありますので、私はその人たちを信頼して、信用して、まだ漁業権が消失していないのに何で通産省はどんどん工事を進めるのだろうか、つまり、一号炉から二号炉へもう建設が準備をされておるが、こういうふうなことについて、あまりにも漁業権というものを形式的に処理するようなきらいが水産庁当局にあるのではないかという、そういう私の疑点からあなたに質問をしたわけでありますので、この漁業権というものについてはなお慎重に調査をして、確認をしてもらいたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、今度提案されておりまする沿岸漁場整備開発法案につきましては、けさの島田委員からの質問の中にもありましたように、役人は法律をつくるのが生きがいのように感じておるのかどうか、ほんとうにこういう法律がよく出てくるわけです。その法律が出てくるには出てくるだけの理由もあり、その法律には法律の目的があろうと思うわけですけれども、この法律によってものが実際生かされなければならぬ、現実にそこで携わっておる漁業者というものが守られていかなければならぬ、それでたくさんのものがとれなくてはならぬ、これはもうわかり切った理屈であります。そこで、沿岸漁場というものについて、漁船というものの役割りというものは、いわゆる小型漁船、二十トン以下の漁船の役割りは非常に重要なものを占めておると思うわけですが、この漁船に対する施策が非常に貧弱であると指摘せざるを得ないわけであります。たとえばある地域で漁師が船を買った、借り入れ金で買ったという場合に、わずか五年で五百万もの金を払わなければいかぬ。そうすると、年に百万払わなければいかぬわけですから、金利を含めますならば百万以上になるかもしらぬが、その場の漁法でそういうふうなものを払えるだけの漁業があるのかどうか、そういうことをお調べになって漁船建造の融資の年限というものをお定めになっておるのかどうか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  283. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生からお話しがございましたように、漁船につきましては、公庫資金、近代化資金その他の制度資金がたくさん使われておるわけでございます。そこで、償還期限が少し短いじゃないかという御指摘だと思いますが、木船の場合には、償還期限を一応六年以内にしているわけでございます。そこで、それじゃなぜ六年以内にしたかと申しますと、償還期限は漁船の法定耐用年数を勘案してきめているわけでございまして、私どもの見ているところでは、木船の場合には六年以内でいいのではないかと思っております。すなわち、現実の償還状況を見ますと、漁業近代化資金については、鋼船を含めて償還期限十二年以内となっているわけでございますが、鋼船を含めた平均償還状況は七年程度でございます。漁業者としては金を借りて船をつくる。しかし、その金利の負担は制度金融で安いといっても、なお負担をなるべく軽くするためになるべく早く金を返そうということもあるのかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、それだけの収益があって返せるという点から見まして、私どもといたしましては、木船の場合六年で大体いいのではないかと思っておるわけでございます。  もちろん、個々のケースにつきましては、たとえば自分の予定した漁業がうまくいかない、したがって六年では返せないというようなケースも出てくるわけでございます。そういった個別的なケースについては、金融機関が償還能力を見て、無理のない償還期限を定めて償還してもらうようにということは絶えず私ども指導しておるところでございまして、平均的に考えまして、木船の場合は六年で大体いいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  284. 井上泉

    ○井上(泉)委員 木船の場合六年という耐用年数でいいというお考えは、実際の現実とは合っていないと思います。これは委員長も承知しておると思いますが、小さい五トン、六トンの船が五年、六年で使えなくなってくるようであっては、漁師は生活が成り立ちませんよ。いま船をつくればどうしても六百万や七百万かかるのですからね。その六百万、七百万かかる漁船を使ってやっておる零細な漁民の水揚げというものは、平均して大体三十万前後でしょう。これが平均して四十万も五十万もあると水産庁のほうは掌握されておるのですか。
  285. 内村良英

    内村(良)政府委員 もちろん、その漁業によって、あるいはその漁船によって漁獲高は違うわけでございますから、ただいま先生の御指摘がございましたようなケースももちろんあり得ると私は思います。ただし、平均的に見ますと、法定耐用年数も六年でございますし、現在までの償還状況から見まして大体六年でいいのではないかと思っております。ただ、個別ケースについて、先生の言うようなケースがあることは当然でございまして、その場合には、融資した金融機関が実情に合わせて償還してもらうようにやってくれ、と、制度金融でございますから、そういった指導はしておるわけでございます。
  286. 井上泉

    ○井上(泉)委員 制度金融でそういう指導をするということと、その指導する以前に、制度資金の償還期限とかいうようなものを再検討してやるべき時期ではないかと思うわけですが、いまの木造船を六年で償還する問題にしても、耐用年数が六年でなくなるような、そんなお粗末な木造船というものは沿岸漁業の漁法の中でも使っていないというのが現実ですから、こういう償還期限を変える時期だと私は思うわけでありますが、そういう点についても全面的に検討し直す心組みというか、そういう気持ちがあるのかどうか、その点を承っておきたいと思います。
  287. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在のところ、耐用年数六年が短いか長いかという問題がございますけれども、私どもといたしましては、大体いいのではないかと思っておるわけでございます。
  288. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、耐用年数は六年でいい。しかし、個別的に困難な事情等を考えた場合、たとえば昨年のような汚染魚の問題でほとんど漁業収入が得られないのに、それが同じような償還期限の中に繰り入れられておるというような状態については、個別ケースにおいて検討し、金融機関に対して行政指導する用意がある、と、こういうことですね。
  289. 内村良英

    内村(良)政府委員 そのとおりでございます。
  290. 井上泉

    ○井上(泉)委員 最後に魚価の問題ですが、いま、乳価も、豚価も、あるいは生糸の価格等についても、おかの農産物関係価格についてはずいぶん論議もされております。それで、農林大臣のほうも、農産物価格については大幅に上げなければいかぬじゃないかというふうな見解も表明されておるように聞くわけですけれども、おかの産物と海の産物の二つが結合して、初めて私どもの肝心な食生活というものが充足されているわけです。ところが、海のものに対する価格というものはほんとうに不安定きわまる状態の中にあるわけで、これを安定させる政策を打ち出してやって、豊漁貧乏で漁民が泣くような状態、あるいは漁が少なかったからといって金持ちだけが魚を食うような状態、そういうようなものをなくしてやってこそ初めて漁師の生活の安定というものが得られるわけですが、特に、沿岸漁業の場合には、沿岸漁業でとってくる魚のほとんどが大衆の食生活の中に供せられるものばかりですから、その魚価の安定の問題、今日のものすごい物価高の中で、この魚価をどうやって安定させて、漁師の生活を安定さしていくのかということ、その辺についての見解を承りたいと思います。
  291. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)政府委員 先ほども質問がありまして、石油初め漁網綱等が値上がりをしているわりあいに魚の値段が上がらないというお話しがありました。それで、私は、話を聞きながら、「最近の主要魚種別水揚げと産地価格」という統計を見ておったのですが、たとえばマグロを例にとりますと、去年の十一月に水揚げが一千九百十二トンあった。そのときは価格がキログラム当たり六百十三円だった。ところが、だんだん、だんだん水揚げ量がふえてまいりまして、二月には二千四百四十二トンで、三割ですか、水揚げがふえた。ところが、値段のほうは四百五十四円というように下がって、結局、水揚げ量がふえると値段がずっと下がる。それから、サバとアジのやつもここで見ておるのですが、去年の十一月に千四百二十三トンの水揚げ量があって、そのとき、アジの産地価格がキログラム百六十四円であった。ところが、これが水揚げ量がぐんとその次の月にふえて、まただんだん下がって、現在二月末には、二月の統計が二千三百九十四トン、これも七百トンくらいふえたわけです。そうすると百六十四円の値段が百七円に下がってしまった。これは一つの例でございますが、サバについても似たようなことが言えるのです。サバは逆に、十一月は四万五千九百五十一トンで、非常に大きな水揚げがあったのですが、そのときは値段がキログラム三十二円だった。ところが、二月には三万五千ということで、一万トンもサバの水揚げが減ったが、とたんに値段が倍以上の七十二円に上がった。こういうのを見ると、供給と需要の関係が魚価の場合は非常に強いというようにどうしても見ざるを得ない。  そこで、問題は、どうしてもああいうものは腐敗をするし、とれたものをそのままとっておくわけにいかぬから市場に出す。したがって、豊作貧乏、大漁貧乏と言うのですか、そういうことが非常にはなはだしい。こういうふうなことでは困るから、計画的な出荷ができるように、生産者が自分で冷蔵庫を持つとか、あるいはストックさせるだけの金を持たせるとかいうようなことでコントロールをさすことが一番ではないかなという気がしておるわけであります。  魚の価格について、先ほどは不足払いをやれなんというようなお話しがありましたが、これはとても種類も多くて、また、きわめて変動的なものであって、不足払いには向かない。向かないから、実質的に何か調整できるようなことを、いま冷蔵庫等を通して各地区でやらしておるわけですが、そういうものをもっともっと広めていったほうがいいじゃないかと考えておるわけです。  それから、また、井上さん等は現地におっていろいろな実務的なことを知っているでしょうから、いい知恵があれば、この席でなくてもけっこうですから教えていただいて、みんなで魚価の安定をはかっていくということはやらなければならないと考えております。
  292. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのいい知恵というか、いい方法というものは、私より大先輩の仮谷委員長がおられますから——仮谷委員長の地元の土佐清水市なんかでも、メジカの宝庫で始末がつかないような状態がときどき繰り返されておるので、これは仮谷委員長の意見を実際行政が採用してやれば問題は解決すると私は思います。それだけの能力と実際の識見を持っておる人ですから、私に聞かぬでも、いいから手近な人に聞いてやっていただきたいと思います。  魚価の不安定というものがこれほど漁師の生活を苦しめており、これほど漁民を不安定におとしいれておるのでありますから、それに対して、これを安定させる方法をとるということが漁業振興の面で大切なことだから、これを真剣に考えていただきたいということを申し上げておるのでありますので、いまの政務次官の答弁について、仮谷委員長と十分協議の上で、ことばだけではなしに、具体的に——抗議をしている、補償を要求していると言うのですから、それなら、いつ何ぼ補償を要求しているかと言うと、ちっともその数字が出てこない。そんないいかげんなことではなしに、行政のレールに乗せるような姿勢というものをとってもらいたいと私は思います。そのことを私は要望する。  同時に、これは委員長に要請するわけですけれども、現実に千葉の銚子沖にでも行けばソ連の船がながめられるし、あるいは焼津でもそういうところが見られる。そういうようなところまで来るほどソ連の漁船というものが太平洋岸を横行濶歩しておるわけです。この現実というものを見たときに、この水産三法の審議というよりも——これはこのとおりにやれば別に問題はないと思いますが、そういう現実の漁民の苦しみ、現実の漁場荒らしというものを現実に当委員会で調査をして、これを国の政策に反映さすのが当然の仕事じゃないかと私は思うわけです。もしその機会がなければ、参考人なり何なりにその地域の人たちに来てもらって、関係の千葉の漁協あるいは茨城の漁協、静岡の漁協の、被害を受けた漁民の人たちの直接のなまの声を聞くとかいうような措置を委員会としてとれないものだろうかどうか、そのことを委員長にお尋ねをして、私の質問を終わります。  農林大臣もいなくて非常に腰を折られたけれども、政務次官が誠意のある答弁をしてくれたので、了解します。
  293. 仮谷忠男

    仮谷委員長 私への質問ですが、ただいまのあなたのソ連船の問題についての質問に対する外務省、水産庁答弁は何かちぐはぐでありまして、ぴったりと呼吸があっておらなかったことは確かであります。ただ、そういう意味においては、これから十分呼吸を合わせて、いい資料を確実に整えて、強力に推進するように、私のほうからも要望いたします。  なお、委員会においても、今後引き続きこういう問題が起こるとすればほうってもおけない問題でありましょうから、与野党共同してこの問題についての検討をする必要はあろうかと思うのでありますが、これはいずれ理事会にはかって相談をすることにいたします。  柴田健治君。
  294. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 きょうはたいへん気象条件が悪いので、なるべく早く終わりたいので、簡単に時間を切り詰めて、残った時間は来週に回したい。こういう考えで質問しますので、簡明にお答えを願いたいと思います。  水産庁長官というものは、もっと歯切れのいい、要領のいい答弁をせられるものと私は思っていたのですが、同僚委員との質問とお答えを聞いていると、どうもぴんとこない。たとえばいま井上君が、ソ連船によって日本の漁民が苦しんでおる実情を質問しているのに民事論を出している。あなたは何ということを言うのかと思うと、これは全くおかしい。もっとあなたは元気を出して、これはほんとうは立法措置を講ずべきです、水産庁も考えるが、農林委員会の皆さんもひとつ立法措置を考えてくれ、と、こう言うくらいの勇気ある答弁をすべきである。それを国際法に関係する民事論で答弁するということは、水産庁長官としては好ましくないということを申し上げて、本論に入りたいと思います。  水産三法で、近代化法、漁災法は、これは一つのルールが敷かれて、その上を修正するのでありますから、問題を掘り下げていけばいろいろ論議はありますけれども、私は、この新しい法案である沿岸漁場整備法案についてお尋ねしたいと思います。  水産庁の管轄で、現行の各種の法律があるが、その法律を完全に運用し、守っていく水産庁の任務がはたして完全に守られておるのだろうかという疑問を私は持っておるんですよ。現行の法律を完全に守っておられるのだろうかという疑問を持っておるがゆえに、今度また新しくこの沿岸漁場整備法案というものをつくるということについても、水産庁長官がかわるたびに新しい法案をつくるような感じが私はするのです。しかし、そういう法案をつくることが漁民にとってプラスになる、いいことだということの判断でおつくりになっておるのだろうと思いますが、何としても、法律をつくった以上は、それを完全に守っていくという体制が必要だと思うのですが、水産庁の現在の機構、人員で完全にやれる自信を持っておられるのか、その点の見解を聞いておきたい。
  295. 内村良英

    内村(良)政府委員 申し上げるまでもなく、沿岸漁場整備ということは、今後の日本漁業のことを考えました場合に、一番大事なことでございます。したがいまして、今般法案の御審議をいろいろお願いしているわけでございますが、私どもといたしましては、この法案が通過いたしまして法律となった暁におきましては、現在の水産庁の組織を動員して、ベストを尽くしてこれをやりたいし、また、できるというふうに思っております。
  296. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いままででもそうだが、これからでも、国際問題が非常に大きく出てくるだろうし、それから内政問題においても、公害問題一つ取り上げてみても、すぐ解決する問題ではないし、水産庁として、内政、外交を含めていろいろ行政的に取り組まなければならぬ問題がふえてくる。そういう中で新しい法案をつくっても、それをこなす能力と自信があるということをあなたは言い切ったのですが、万が一——先ほどの井上委員の質問に対しても、外務省にまるでどろをかぶせていくような感じの答弁があったように思うが、まあ、そういうことはあり得ないだろうとは信じますが、ほんとうにいまの機構と人員でそれを責任をもって運用していく、これは間違いないですね。確認しておきたいと思います。
  297. 内村良英

    内村(良)政府委員 現在の機構でベストを尽くしてやれるというふうに考えております。
  298. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 今日の一千万トンの漁獲高の中を見ると、遠洋漁業が三百九十万トン余り、それで三八%の比重を示しておる。沖合い漁業が三百五十八万八千トン、これは三五%、沿岸漁業と海面養殖業を含めて二〇%足らずということになっておるわけでありますが、今度の沿岸漁場整備は、この法案の趣旨から言うと、沿岸漁業と海面養殖業の中の二〇%ということに重きを置くことになるわけですが、現在のこの二〇%足らずのこの漁獲高を、この沿岸漁場整備をどんどん拡大していくことにおいてどの程度伸ばしていこうとするのか、何%ぐらい伸ばしていこうとするのか、その見通しをお聞かせ願いたい。
  299. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもが五十七年の見通しを立てておりますところによりますと、現在の魚の需要の伸びということを考えれば、千二百三十万トンぐらいの水産物が必要になるという見通しがございます。  そこで、その場合に、沿岸沖合い遠洋それから内水面、それがどういうふうになるだろうかということでございますが、現在までの趨勢で伸びていきますと、沿岸は、漁船漁業と浅海養殖を含めまして、約三百三十万トン程度の数字になる。これは、まあ、いまの趨勢でそうなるだろうというふうに見通しているわけでございますが、今度漁場整備あるいは育成水面等の措置をとりまして、こういったものをもっと伸ばしていきたいというふうに考えているわけでございますが、ただ、数字が幾らということは、現在、的確なことを申し上げることはできないわけでございます。と申しますのは、先般来御答弁申し上げておりますように、来年、各県に調査をしてもらいまして、そこで五年計画をつくるということになっておりますので、その計画をつくる際にはある程度数字的なものが必要でございますし、的確な数字を申し上げることができると思いますが、現在のところは、四十七年実績でいきますと、二百五十五万トンの沿岸漁業の漁獲高が、五十七年には、いまのままでいけば三百三十万トンぐらいになるだろう、それをもっと伸ばしたいというのが今度の法律漁場整備の基礎になる考え方でございます。
  300. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 第二次構造改善事業と今度の沿岸漁場整備との仕事の内容はどこが違うんですか。
  301. 内村良英

    内村(良)政府委員 沿岸漁場整備事業は、国みずからが沿岸漁場の大規模な整備開発を志向いたしまして、基盤整備事業推進するとともに、沿岸漁場の効用の回復のための漁場環境の保全の事業推進しようとするということになっているわけでございます。すなわち、御案内のように、今度の法律沿岸漁場整備計画をつくりまして、それを閣議決定して、それに基づいて施策を展開するということになっているわけでございます。現在までやってまいりましたところの、さらに、現在実施しておりますところの沿岸漁業構造改善事業は、沿岸漁業振興法第八条規定に基づきまして、地域実態に即応して、漁場利用の改善、生産基盤整備開発、経営の近代化施設の導入等を総合的に行なう事業としてやっておりまして、さらに、その中に大型魚礁設置等沿岸漁場の大規模な整備開発を志向した諸事業も、この沿岸漁業構造改善事業の一環として行なわれているわけでございます。したがいまして、今後展開しようとする沿岸漁業整備開発事業の中に、現在構造改善事業とダブる面があることは事実でございます。しかしながら、今日までの構造改善事業実施を見ました場合に、もちろん漁場整備にも相当の力は入れられておりますが、どちらかといいますと、共同利用施設その他近代化施設の導入のほうにかなりのウェートが置かれております。したがいまして、今度の沿岸漁場整備開発計画におきましては、海の中の漁場整備ということに非常に力を入れてやりたい。さらに、それにあわせまして、今度の法案提出しておりますように、栽培漁業の育成のために育成水面制度というものをとりたいというふうに考えておりまして、ただいまの沿岸漁業構造改善事業よりも、より一そう海の中の漁場整備というところに力を注いでやりたいというのが今度の沿岸漁場整備開発事業のねらいでございます。
  302. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それは第二次沿岸構造改善事業とダブる面があるということは、その県なら県の中で、大体四十五年度からこの構造改善事業で、五十年度で大体六十カ所ぐらいというふうに聞いていいですか、その点は。
  303. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生御案内のように、第二次沿岸漁業構造改善事業は四十六年度から始まっておりまして、百八地区を八カ年でやることになっております。そこで、現在は、四十八年は、調査が二十四、実施が三十六、それが四十九年は調査が三十、実施が四十八ということになる予定でございます。
  304. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 計画どおり、百幾ら五十年にできるわけですか。
  305. 内村良英

    内村(良)政府委員 計画どおり、百八地区についてやろうと思っております。
  306. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それなら、その中で、いままで構造改善事業で投資して、ダブる場合にはどうなるのですか。いままでの投資をした借金がある。今度の沿岸漁場整備でまた借金をかぶる。そういう二重の借金をするという地域が出てきた場合に、そういうダブる地域については、国が特別に財政的な処置を講ずるのかどうか、漁民が全部かぶるのか、県、市町村がかぶることになるのか、その点の、この投資に対する考え方はどうですか。   〔委員長退席、安田委員長代理着席〕
  307. 内村良英

    内村(良)政府委員 第二次構造改善事業をやっておるところにさらに新しい事業をやると、ダブって負担が非常にかさむのではないかという御質問かと思います。そこで、二次構をやってまいりました場合に、現在のところ、繰り上げ要望もございますし、それから一次構の経験でございますと、さらに追加して何かやってくれという要望もございます。したがいまして、私どもがとりあえず四十九年に県にいろいろ調査をお願いしておりますのは、そういった末端の現実的な問題もございますので、そういったものも全部考えながら県が意見を出してくるだろうということと、それから、計画をつくります場合には、また逆に法律に基づきまして、国といたしましては県の意見も聞くということになっておりますので、そういった面ももちろん現実問題として勘案しながら計画をつくっていく、こういうことになると思います。
  308. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 結局二重投資、過剰投資ということに矛盾が出てくるんじゃなかろうか。その場合に、県や市や今度の沿岸漁場整備法の考え方から言うと、国のほうが何か逃げるような法律じゃないか。たとえば栽培漁業センターは、国がある程度思い切って金を出すということで、地方は非常にありがたがっておる。これは任務が違うからいいようなものだけれども、片一方ではとる漁業から飼う漁業へということになれば、一貫性がなければならない。それから、栽培漁業センターから今度は漁場へ放流するわけですから、そうすると、投資の補助率というか、国の責任というものは同じでなければならぬという気がするわけですが、今度の法は県や市に責任を持たして国のほうはどうもうまく逃げようという気がするのです。水産庁は、これは農林省全体についても言えるのですが、この法律をつくる場合にはいいものいいものと言うのですが、どうもカミキリムシみたいなことをやっている。いいところだけ食って、悪いところは全部残しておくということの傾向が強い。カミキリムシ方式じゃ困るのであって、一貫性がなければ困る。あっちをちょびっと食い、こっちをちょびっと食うたんじゃ困る。だから、栽培漁業センターをつくった以上は、それに関連して、ほんとうに飼う漁業に育てていかなければならぬと思うのですが、その点はどうですか。
  309. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもも、カミキリムシのようなことをやる意図はさらさらないわけでございます。そこで、事業実施主体の問題でございますが、これは事業の規模によっていろいろ変わってくると思います。したがいまして、規模によりましては県がやったほうがいいもの、あるいは市町村がやったほうがいいもの、あるいは国がやるべきものというふうになってくるかと思います。したがいまして、計画をつくる際には、その辺のところは十分考えてやらなければいかぬわけでございますが、いずれにいたしましても、この際漁場整備を徹底的にやりたいという気持ちは強く持っているわけでございまして、国がその責任を逃げるということは全く考えておりません。したがって、農林大臣整備計画を立てるという法律になっているわけでございまして、私どもは、国が主導権を握って漁場整備を大いにやりたいというふうに考えておるわけでございます。
  310. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 日本列島は、御承知のように、周囲が全部海である。それから、日本の人口を海岸にみな立たしたら、大体二メートル半ぐらいの率で一億八百万人が並ぶという。一列に並ばすとそのくらいの海岸を持っているわけですけれど、魚の漁場として投資をして飼う漁業に発展さしていく場所というものは、そう無差別にできるわけじゃないと思う。そういう面から見ると、太平洋ベルト地帯ということで、政府は太平洋地域に集中的に工業基地をつくって、魚がたくさんとれる地域ほど工業開発をやって、一番打撃をこうむったのは漁民だ。公害問題を取り上げてもしかりだ。そしてまた漁港の整備で、あの整備計画を見ても、国の補助率を思い切って上げるのならいざ知らず、漁港整備の五カ年計画を見ても七千五百億、これまた改定しなければ、物価高で、おそらくどうにもならぬだろう。漁港整備から、あらゆる面を考え、漁民がどれだけ負担をしているか、市町村がどれだけ負担をしているか、漁業組合がどれだけ負担をしているかということをもっとあなた方は真剣に考えないと、たいへんな借金を負わしていくような政策におちいってしまう、という懸念がするわけですが、その点は水産庁はどう踏まえておるのか、どう判断し、どう理解しておるのか、お答え願いたい。
  311. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましても、漁民なり漁業者に過重な負担を課してやるということはいけないと思います。その場合には補助率についても考えなければなりませんし、その他現実の事業の執行あるいは計画の設計等についても、そういったことは十分考えながらやらなければならぬというふうに考えております。
  312. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 まず、とる漁業から飼う漁業へということで、今度大きく大転換をする、またしなければならぬわけだが、その場合に漁業協同組合がどういう任務を持つのか、漁連がどういう任務を持つのか。全漁連、県漁連、単協の三つの段階があるが、この三つの漁業団体がどういう任務を将来持つべきかということを考えたときに、飼う漁業というものは、正直に言ってとる漁業よりはむずかしい。相当の高度の技術者が要る。専門技術者というものを養成しなければならぬが、今日専門技術者が日本で何人おるのか、どれだけ各漁協に配置されておるのか、お答えを願いたいと思う。
  313. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまのところ正確な数字がございませんので、後刻提出したいと思います。  なお、御案内のように、漁業について改良普及員がおります。この改良普及員の数は、大体全国で五百四十六人ということになっておりまして、専門技術員が百八人、現実に養殖等の技術指導をしている改良普及員が四百三十八人、こういうことになっておりまして、この改良普及員が、特に養殖漁業につきましては、漁協等の今後の活動を助けていくということになるのではないかと思います。すなわち、養殖漁業の場合には確かに技術的な問題もございますので、試験場でいろいろ研究する、それを専門技術員を通じまして改良普及員に教える、そこで、改良普及員がそれによって漁協を指導してやっていくというふうな形になるのではないかと思っておりますし、現にそういう動きをしているわけでございます。
  314. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いま改良普及員と言われたのですけれども、これには生活普及員も、いろいろ含んでいる。それが、あなたが言われるように、将来三百三十万トンも沿岸漁業の漁獲高をあげるためには、相当の飼う漁業施設改善なり投資をしなければならぬし、それに携わる漁業者という場合と漁業従事者の二つに分けるわけでありますけれども、とにもかくにも、専門技術者の養成をして、それぞれの単協なら単協へ配置しなければならぬ。そのくらいの熱意がなければ、ほんとうに沿岸漁業へ力を入れたとは言えないと思うが、水産庁長官、どうですか。この後継者育成を兼ねて、そういう専門技術者の養成をするために、思い切って国と県がそういう養成費を考えて、将来配置していくという強力な人材養成の処置を講ずる意思があるかないか。ただ漁協にまかせるだけではそれは無理だと私は思う。やはり、国と県がそういう専門技術員を養成するという処置を講ずる必要があると私は思うが、どうですか。
  315. 内村良英

    内村(良)政府委員 今後栽培漁業を進めていく場合におきまして、人の問題は、ただいま先生から御指摘がございましたように、非常に重要な問題でございます。そこで、とる漁業の場合には、普及員の指導というのはなかなかむずかしいわけでございますが、養殖漁業は一番普及員の指導に乗りやすいという漁業でございます。したがいまして、改良普及員につきましては、現在、栽培センターあるいは試験場等におきまして研修をやって、技術の向上ということをやっております。したがいまして、今後要望があり、必要があれば、漁協の技術員の人についてそういった講習等をやって、技術能力を上げていくという必要はあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  316. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 講習程度で人材が養成できるのなら、それはけっこうなことだと思うが、そこに長官の認識不足があると思うのです。普及員とかなんとか言っても、とるほうはなかなかうまいのですよ。日本人は器用だから、国際的においても、とる技術というものは非常に優秀なんです。ところが、飼う技術というものはまだまだおくれておる。飼う漁業に転換するのですから、飼う漁業に転換する限りは、それ相当の技術的なものが要るわけですよ。その養成をするのに、いまある技術員がどういう任務をもってどういう行動をしておるか。いまは公害問題に追われてしまっておるのですよ。公害問題だけで手一ぱいです。そういういまの現実の上に立って、一生懸命やっておるなんというのは、それは一生懸命やっておるのは間違いないが、ところが、そこまで手が回っていない。公害問題で追いまくられておるというのが実態じゃないでしょうか。長官どうですか。
  317. 内村良英

    内村(良)政府委員 地域によりましては、普及員が、そういった行政の必要上から、行政のお手伝いということで公害問題等に追われているところがあることも聞いております。私は、そういうところもあるということは承知しておりますけれども、一般的に申しますと、やはり、普及員は普及活動にかなり力を入れてやっているというふうに考えております。
  318. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いろいろお尋ねする問題はたくさんあるわけですけれども、時間がございませんからもうやめますが、長官、これは来週までに勉強してきてもらいたい。日本沿岸漁業をどう発展させるか。これは漁場整備法をつくったらそれでこと足れりというものではないわけです。資金問題もあるでしょう。先ほど私が申し上げたような漁協を育成する方法もある。そして、また、漁業権の問題がある。海区の問題もある。そして、人材養成の問題もある。総合的な積み上げを考えなければならぬ。それは漁場整備法を出してただ市、県の計画をさせて、すぐやれるというものではない。要するに、人材養成は何としても急がなければならぬ。魚礁の改善というものは、何か埋めればすぐ何とかなる。それから、もう一つは、やはり漁民のことを考えなければならぬ。今度は飼う漁業ですから、無差別にそこらじゅうとるわけにいかない。そうすると、栽培漁業センターから稚魚を放流して、それを大きくするまでの何年間は禁漁区も考えなければならぬのじゃないか。その場合に漁民をどういう形で生活させていくかということも考えなければならぬ。禁漁区を設定せずに、稚魚の放流だけすればそれで魚は自然に大きくなるというのなら、そんなものは何も飼う漁業にならない。そういう点を含めて来週に答弁を求めますから、よう勉強してきてください。よろしいか。  きょうはこれで終わります。
  319. 安田貴六

    ○安田委員長代理 次回は、明二十八日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十七分散会