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1974-03-05 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月五日(火曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    上田 茂行君       小沢 一郎君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    中尾 栄一君       本名  武君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       美濃 政市君    瀬野栄次郎君       稲富 稜人君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君         農林省畜産局長 澤邊  守君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   島田 安夫君     粟山 ひで君  米内山義一郎君     湯山  勇君   中川利三郎君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   湯山  勇君    米内山義一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農用地開発公団法案内閣提出第四八号)      ————◇—————
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農用地開発公団法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田茂行君。
  3. 上田茂行

    上田委員 農用地開発公団法案につきまして、若干の質疑をさせていただきたいと思います。  昭和三十六年に農基法農政というものが展開されましてからすでに十二年に至るわけです。その後、その基本方針総合農政という形でさらに強められ、今日に至っているわけでございますけれども、その間、当初の、農業切り捨て論ではないかというような非難から、あるいは米の過剰問題等さまざまな問題が日本農政に生じたわけでございますけれども、まずもって農林省側は、そういう農業基本法の評価というものをいまここで一体どう見ているのか、そして、また、これからの農政を担当される上で、どのような基準でもって農業を、また農政を見ていらっしゃるのかということと、さらに、現在最も重要な課題として農林省が考えていらっしゃることについて、まずお答えを願いたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 上田委員お答えをいたします。  農業基本法制定になって十二年を経過をしておるわけでありますが、その間食糧需給高度化あるいは多様化というものに対応いたしまして、農業生産基本法精神に従って選択的に拡大をされ、また、生産性向上をしてきたということは事実であります。三十五年当時と四十七年の農業労働生産性というものを比較をいたしてみますと、三十五年を一〇〇として、四十七年が二二三、大体二・二倍くらいに農業労働生産性向上いたしております。年平均伸び率は六・九%であります。これは製造業年平均八・八%の労働生産性から比べますというと劣っておるわけではございますが、大体世界じゅうの農業生産性というものはそう高いものではありません。EECの三十五年から四十二年の平均農業伸び率というものは六・四%でありますから、日本農業労働生産性よりはむしろEECのほうが低い。こういうような点を見ましても、やはり、農業基本法制定以来の農業生産性はそれなりによかったというふうに私は見ておるわけであります。しかしながら、経済成長がきわめて高度であるというふうな中にありまして、何ぶん産業生産性と比べると落ちておることもいなめない事実であります。したがいまして、他産業農業との間に格差が多少広がっておりますし、自立経営農家のシェアの低下というような現象も見られております。また、一般産業が非常に経済成長したために、各地で事業が行なわれるということのために地価高騰等を招いて、農業規模拡大が非常にやりずらいというような、非常にむずかしい状態もあったことも事実でございます。  そこで、どういうふうにしてこれらの動向に対処していくかというふうな御質問でございますが、御承知のとおり、最近における食糧事情というものは世界的に逼迫をしておる。日本においてもごたぶんに漏れない状況であります。しかしながら、食糧というものは国民の基礎的な生活物資であって、外国がなくなったから日本もなくなってもしかたがないというふうなわけにはいかない。何が何でも食うだけは食っていかなければならぬということでございますので、特に、四十九年からは自給率向上させるというところに力を入れてまいりたいと考えております。そのために農業基盤整備を進めていく、あるいは、低位利用、未利用草地等公団をこしらえてどんどん開発をしていく、あるいは、麦類のように非常に不足をしておるものについては特別な助成措置を講じて、それの増産をはかっていく、あるいは、えさのようなもの等に対しましても長期的安定的な輸入契約を結ぶというようなことや、あるいは、ことしから備蓄政策をとるわけでありますが、備蓄政策をとっておって、いろいろな船舶事情その他で多少輸入が停滞をするというようなときがあっても心配のないようにある一定の量を確保していく、こういうふうなことをやっていきたいと考えております。  なお、価格の問題ということも、増産をさせる上においては重要なことでございますから、米は食管法において、あるいは牛乳等不足払いによって、あるいは豚の問題、鶏卵問題等々におきましても、それぞれの価格安定制度というものを一そう充実をさせて農家安心をしてつくっていけるようにする、こういうようなことなどを、生産性向上と含めて今後の農業の大きな柱にしてまいりたいと考えております。
  5. 上田茂行

    上田委員 いま政務次官のお話しを伺っておりまして、これからは食糧逼迫という問題が非常に大きな問題であるから、食糧の安定的な供給をはかるんだ、そのために、この農用地開発公団理由説明にも書かれておりますように、「国民食料の安定的な供給確保基本とした諸施策の展開が重要な課題となっており、」ということでこの法案が出されているのだというふうに理解しておりますけれども、いまの答弁にもありましたように、生産性向上は確かにECよりも大きなものがあった。しかし、製造業よりは低かった。これはどこの諸外国にも言えることでございまして、経済成長に伴って農業が他産業に比べては相対的に縮小するという鉄則があるわけでございます。しかしながら、昭和四十三年から相対的に農業がほかの産業と比べまして縮小するというような事態から、四十三年以後絶対的に農業生産というものが落ち込んでおるという統計の資料が出ているわけでございます。そうして、その逆に、農産物輸入というものは、たとえば四十六年を例にとりますと、前年に比べまして九・一%増しておりますし、四十七年ですと一七・九%という高い——もちろん物価の上昇ということが背景になっているとは思いますけれども、こういう高い伸び率を示しているわけであります。いわば、自給率は徐々に徐々に低下をしているということであります。もし安定的な供給ということが最大の課題でありますならば、過去四十三年からこういう事態が起こっているということにもかかわらず、政府農林省において何か対策に欠けていたのではないかということを思いますし、私は、農産物自給というようなものに対して、一体どの品物についてどの程度自給確保していかなければならないのか、そして、また、この世界の経済の中にあって、国際分業というような面からどの分野はどの国のほうにおまかせをするのかというふうなことについて、ある程度の明確な指針というものをここでもう一度与えていただけたら非常にありがたいと思うのです。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 確かに、自給率が少しずつ少なくなっておるという御指摘はそのとおりであります。ただ、牛乳乳製品等においては、自給率がむしろ維持されて、それよりも多少上向きだというのが四十七年までの統計であります。ことに、自給率が下がったのは、小麦のようなものが四十年度で二八%であるとすれば、これが五%以下になっておるとか、あるいは大麦裸麦のようなものが非常に自給率が減った。このことは、裏返しに申し上げますと、日本畜産というものが非常に伸びたという裏返しになります。食肉の消費等は十年前に比べると三倍半以上の大型な消費になってきておる。その大部分国内生産をされておるけれども、非常に輸入量が増大をしたということも間違いない事実であります。これは内側から見れば、たくさんのえさ類消費が行なわれるにかかわらず、日本生産はふえるどころか漸減ぎみである、こういうことが全体の自給率に大きく影響をしてきておるということも、これは間違いのない事実であります。また、米が四十二年、三年、四年、五年と過剰生産ぎみになっておりましたものを、これを政策的に減反政策を行なわせたというようなことからも統計の上から見ると自給率が減ってきたというふうな結果になって出ておるわけであります。  したがって、一体どの程度自給率農林省は考えておるのだという御質問でございますが、現在のところ、十年後の五十七年度を一応の目標年次といたしまして、米は当然一〇〇%ということを考えております。野菜も一〇〇%を考えております。果実類につきましては一応八〇%台、八〇ないし八八%、鶏卵についてもおおよそ一〇〇%、肉類につきましても、鯨肉を除きまして大体八二ないし九七%というように、大部分自給できるようにしたい。乳製品牛乳につきましても八七ないし九七%、九〇%前後ということを考えております。砂糖類は、特に砂糖の国際的な値段の高騰というような問題もございまして、約三割弱程度のものを国内確保したい。  小麦類でございますが、これはできることならば、現在の二倍から三倍ぐらいにやりたい。そのためのいろいろな方策というものを講じてまいりたい。それにしても、ともかく、二〇%を守るということは非常にむずかしいが、まあ一五ないし二〇%ぐらいのところを目標に修正をしなければならないのじゃないかという気もいたしておるわけであります。大麦裸麦あるいは大豆等につきましても、少なくとも一〇%以上、二〇%近くまで持っていけるように努力をしてみたいと考えておるわけであります。  したがいまして、全体をひっくるめますと七三ないし七七%程度、少なくとも現状程度自給率確保していくという考えでありますし、先ほど申し上げました米、野菜果実鶏卵肉類牛乳乳製品というような主要なものは完全自給ないし八割以上の自給ということを目途にしておるわけであります。
  7. 上田茂行

    上田委員 そういう方策によりまして食糧の安定的な供給というものをぜひはかっていただきたいと思うのですけれども、そのときに、まず、第一に問題となりますのは、生産性の上がる高度な機械を利用した近代的な農業を営もうとするならば、やはり、農業の人口というものをある程度減らしていかなくてはならないということで、これは事実だと思います。そこで、工場地方に分散させるというような政策をとりながら今日まで政府はやってこられたのですけれども、ただ単に工場地方に、また私たちのいなかに持ってきていただいても、実際に雇われる人たちは二十代あるいは三十代の前半までの非常に若い人たちばかりです。五十代あるいは四十代の後半の人たちほんとう働きに行きたいというような人たちには現実には職場がなかったということなんですけれども、農林省側は、こういう農業労働者に対しまして就業機会を与えるために、一体どのようにしていままで努力してこられたのか、あるいはまた、いままでそういう面で欠陥があるのなら、これからどういうことをやろうとしていらっしゃるのか、かような点についてお答えを願えればありがたいと思います。
  8. 杉田栄司

    杉田政府委員 お答え申し上げます。  御質問老化労働者就業機会確保について、農林省はどのような施策をとっておるかということでございますが、従来、農村地帯におきましては、地価関係等もございまして、言ってみると、工場の進出が無秩序であり、かつ無計画であるという面がなきにしもあらずでございまして、また、その企業の内容からいきましても、お説のとおり、中高年齢層就業機会が少ないというきらいがあったわけでございます。むしろ、逆に、農地スプロール化あるいは公害の発生等農業農村にとりましてマイナスの面が確かにあったことは否定できないと思います。こういうような状況に対しまして、マイナス面を事前にチェックいたしまして、農業と調和のとれた就業機会確保といいますか、工業導入ということを積極的に行なうために、四十六年六月に農村地域工業導入促進法制定していただきまして、これに基づきまして、農村地域への工業導入を計画的に積極的に推進しておるところでございます。この制度によりまして、農村地域工業導入が相当に進んではおりますけれども、それでも、なお、根本的な農村における就業機会確保についてはまだまだ道の遠いものがあるわけでございます。ことに、農業者は、一般に、単純労働者というようなかっこうに取り扱われるケースが多うございまして、農業者の技能を高めるとか、あるいはまた安定的な職業就業機会確保するというためには、どうしても職業訓練等充実が必要になってくるわけでございます。このために、労働省あるいは地方公共団体等とも御相談し、お願いをいたしまして、農村地域工業導入促進法精神に基づきまして、これら就業希望農村方々に、いわゆる雇用情報の提供、あるいはまた職業指導、あるいは職業訓練充実、また、職業転換する場合には給付金の支給というような、こういう必要な措置を講ずるようにしなければならないというふうになっております。これらの施策を拡充強化いたしまして、また、農林省におきましても、就業を円滑に進めるために、農村地域工業導入特別対策事業、これは昭和四十八年度、今年度から実施しておりますけれども、その事業就業改善センター設置事業というようなものを設けまして、積極的に前向きにこの困難な状況を打開するために努力をしておるところでございます。  なお、農業委員会系統組織を通じまして、農業就業近代化対策事業におきまして、指導相談というような面で活動をお願いしておるというような実情でございます。
  9. 上田茂行

    上田委員 そういう事業はぜひこれからやっていただきたいと思うわけです。せっかく農業基本法なり総合農政でうたわれておりますような農業近代化を実際にやろうとする場合には、これはどうしてもやらなければならないことだと思うわけです。特に、農業から出ていかれる人に対して職場を与えるということも重要でございますし、また、その一方、安定的な、自給率を高めるような農業を営むためには、農基法一つの大きな目的としてうたっておりますような自立経営農家育成というものを農業の中ではかっていくということも重要である。農業から出ていく人たち職場を与え、農業にとどまる人たちにも職場を与えるという、そういう二面的な政策というものがぜひ必要だと思うのです。ところが、実際には、残念ながら、自立経営農家というものは年々少なくなっておりまして、昭和三十五年の八・六%から、四十六年には四・四%と、半減をしているわけです。農業の真のにない手が非常にないということを、農村のいま農業に携わっていらっしゃる方々からよく聞きます。日本農業を真剣に考えるならば、ほんとう日本農業をになってくれる人たち育成というものに対して、農林省側はもっとこれからの努力をしていただきたいと思うのですけれども、その点については一体どのように考えておられるわけですか。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 上田委員の御指摘のように、自立経営農家の戸数というようなものが減っておることは事実であります。特に、四十六年に統計の上で減っておる。このことは何を意味するかと申しますと、自立経営農家は、農業だけの所得で他産業均衡のとれる所得のある農家ということでありますから、四十六年の下限の農家所得を百六十六万円と見た場合に四・四%というようなことになってくるわけであります。御承知のとおり、四十五年、四十六年は米の生産調整を行なって、米価の据え置きをした。何と申しましても、日本農業の大宗を占める米作について、過剰対策上そういう措置をとらざるを得なかったということのために農家所得が頭打ちになった。そのために低い数字が出ておるのでありまして、四十七年、四十八年の統計はまだ出ておりませんが、これよりもかなり上の数字が出てくるだろう、六%とか七%とかというような数字が出てくるだろう、と、まだきちんと計算しておりませんからわかりませんが、一応そういうふうにわれわれは推測をしておるわけであります。日本におきましては、農業のにない手となる自立経営農家、他産業製造業等勤労者と同じような均衡のとれた所得を持てる農家、そういうような農家育成していくことはどうしても非常に大切なことでございます。したがいまして、それらの方に対しましては、何と申しましても、耕作する農地がなければ規模拡大というようなこともできないわけでございますから、耕作する農地をふやしやすいように、先般来は農地法改正を行ないまして、小作料を撤廃するというような措置も講じました。しかし、実際問題として、それだけではなかなかむずかしいわけで、休耕制度はことしで終わりになるが、自分はほかにつとめてしまって、隣で専業農業をやっておる人があるのでその人に貸してもいいのだけれども、一ぺん貸すと十年間も返ってこないのではどうも不安でなかなか貸せないというような不安もございます。したがって、今国会に上程をしたいと考えておりまする農業振興地域整備に関する法律の一部改正、通称農振法と言っておりますが、その農振法の一部改正を提出いたしまして、言うならばともかく農地法の例外的なものとなることでございますが、貸借問題等につきましても、農民仲間であればもっと自由に貸借ができる、借りても、返してくれと言われた場合には二、三年で返す、そして、そのときに離作料の要求なんかしないというふうなことを講じてあげれば、自分はいまつとめに出るが、会社がどうなるかわからぬし、戻ったときにはいつでも返してもらえるのだというようなこと等を通して安心をしていただける、それで農地流動化というものをもっと促進をしていきたい、ともかく、それによって専業農家等規模拡大をはかれるようにしていこうじゃないかというようなことも考えているわけで、そういうことなども一つの手法であります。  それから、専業農家自立経営農家が少し大きく仕事をやりたいというような場合に、単協だけでそれだけの資金のめんどうを見るということはいろいろな制約がありまして、単協だけでは何千万という金はなかなか出しにくいというような場合に、信連なり中金が直貸しができるようにして、そういう大規模個人経営あるいは生産法人農家に対応できるような金融上の制度を用意いたしまして、大規模自立経営農家の維持並びに育成をはかっていきたい。ただ、ばらばらにそういうものができたのでも困るわけでございますので、そういうふうなものを集団的にやっていこう、そして、なお、そのまわりにある兼業農家も含めた集団的な一つ生産団地をこしらえて、有機的にそういうものを結合させて、むだのない、市場性の高い農作物をこしらえてもらうようにしよう、そのためには、第二次構造改善事業とか農業団地育成事業とかいうようないろいろなものなどもあわせてやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  11. 上田茂行

    上田委員 自立経営農家、あるいはまた出ていく人、いろいろな面があるわけですけれども、日本現状を見ていますと、ほとんどが兼業農家であるわけです。私も選挙区が滋賀県ですけれども、一町ぐらいのたんぼで、土曜、日曜少しだけやって、あとは働きに出る、ところが、農繁期とか四月の田植え時期、あるいは九月、十月の刈り入れどきになってまいりますと、一方でたんぼをやらなくちゃならない、止揚のほうにも行かなくちゃならない、工場のほうはどうしても休みがちになる、そうすると、工場のほうでは正規の社員というような目では見てくれない、そしてまたたんぼのほうを見てみますと、十年、十五年前に稲の穂がきれいにそろっておったのがまばらになっている、こういうような現象が起こっているのです。どちらも中途はんぱな状態がいまの兼業農家の実態であろうかと思うのです。私は、兼業農家なら兼業農家なりに所得がいつも安定しているような状況というものをつくってやるならば、それで兼業農家方々は満足し、また安心した生活が営めると思うのです。農業方々安心した生活を営まれるような農政というものを、こういう法案の出たときでございますから、今後ぜひともやっていただきたいと思うわけでございます。  農業の問題は非常に幅広い問題で、生産性の問題や所得問題等いろいろな問題がございますけれども、特に、この法案に関係しておりますのは食糧問題という分野でございますので、これから食糧問題について若干質疑を続けさせていただきたいと思いますけれども、国民生活が非常に高度化し、経済が成長してまいりますと、いままでめしを食ったり、あるいはまたでん粉を多く食べておった人たちが、たん白質中心の食事へとだんだん移ってくるということは、すでにずっと前から予測されていたことであります。ところが、そうした多様化に十分応じ切れておらないのがいまの日本農業だと思うのです。たとえば野菜ですが、これは外国から輸入を簡単にするということはできないものです。途中で腐ってしまったり、運賃の問題もございます。ところが、果実は、昭和三十五年に一〇〇%の自給率があったものが、四十六年では八一%になっておりますし、牛肉は、三十五年の九六%というような時点から四十六年の八二%と、だんだんと毎年減少しているわけです。私は、この農用地開発公団法という法律が、特に肉牛、大家畜育成というものを目的にされているということをこの理由説明からうかがうわけでございますけれども、この大家畜というようなものについてのこれからの食糧構成あるいは国内生産物輸入生産物を含めた供給変動というような面から、また、この価格変動は一体どうなっていくのかというような食糧価格の面から、いままでの実績と今後の見通し、対策というようなものについてお伺いをいたしたいと思います。
  12. 澤邊守

    澤邊政府委員 国民生活向上とともに、食品の中で、たん白質、特に動物性たん白質消費が漸次拡大してくるということは御指摘のとおりでございまして、数字で申し上げてみますと、動物性植物性を含めましてのたん白質摂取量が、昭和三十五年には年間一人当たり六九・五キログラムという数字がございますが、その中で畜産物は六・六キログラムということでございますので、一〇%をやや下回っておったわけでございます。四十七年度の実績について見ますと、動物性植物性を含めまして一人当たり年間七八・四キログラムでそれに対しまして畜産物は一七・一キログラムということで、約二二%ということでございますので、動物性植物性を含めましたたん白質摂取量の中で、同時にこれは供給量になるわけでございますが、畜産物のウエートは漸次高まってきておるわけでございます。  そこで、今回の公団法に関連いたしまして、濃密生産団地をつくる場合、畜産が重点になっておることは御承知のとおりでございますが、その中で、大動物といいますか、酪農及び肉牛につきまして、草地あるいは飼料作物あるいは林間放牧等を大規模利用しながら、粗飼料の自給率を高めながら生産拡大していきたいということで、一つの柱にしておるわけでございますが、同時に、豚なりあるいは養鶏といいます中小家畜につきましても、最近都市近郊等に立地しておりました経営が公害問題、環境汚染問題等でいろいろ問題を起こしておりますので、これを遠隔地といいますか、この公団事業の対象になっておるような低位利用、未開発の地域に立地移動しまして、環境汚染問題を回避しながら、中小家畜から排せつされますものを草地あるいは飼料作物の畑地に——これは主として大家畜用のものでございますが、それに土地還元をするというようなことを結びつけながらやりたいと考えております。  そこで、大家畜につきますと、同時に中小家畜についてもやるわけでございますが、問題の、御指摘のございました大家畜につきましては、現在、一昨年の秋に「農業物需給の展望と生産目標の試案」という文書を出しまして、四十五年度を基準年次にしてスタートしているわけでございますが、それと最近に至るまでの実績、これはまだ短期間でございますので、にわかに判断しにくい面がございますけれども、それを概観してみますと、豚肉とか、あるいは鶏卵とかブロイラーとかいう中小家畜関係はおおむね順調に伸びておりますけれども、酪農あるいは肉牛という大家畜につきましては、予定いたしました生産の増加テンポにやや及ばない点がございます。これはどの辺にネックがあるかということは、酪農と肉牛と若干差異はございますけれども、いずれにいたしましても、零細経営が漸次といいますか、かなり急速に脱落すると同時に、それをカバーすべき大規模な大家畜経営農家の伸展といいますか、育成というものが進んでおりますものの、零細経営が脱落するのを完全にカバーし切れるだけ伸びておらないという点があるわけでございます。  その理由としてはいろいろございますけれども、一番問題になりますのは、やはり、大家畜にどうしても必要な草地なり飼料作物あるいは林間放牧をやるための土地の取得が思うにまかせない。したがって、規模拡大するのがなかなか困難であるということでございまして、目標試案に比べましても、生産面で予想しましたテンポに及ばないということになっております。その結果、価格につきましても、牛肉等につきましてはかなり上がってきております。周期的な、あるいは年次的な変動がございますから、一時期をとってはなかなか判断しにくい面がございますが、傾向的にはかなり値上がり傾向に来ておるというように思います。  そういうようなことで、自給率につきましても、鶏卵とかブロイラー等につきましては予想したような形で伸びておりますけれども、肉牛につきましてはかなり予想よりも下がっておる。あるいは牛乳につきましても、先ほど言いましたような事情もございまして、さらに特別の事情といたしまして、昨年来のえさの値上がりあるいは諸物価の値上がりに伴いますコストアップというようなこともございまして、四十八年につきましては、初めて前年を下回るというような傾向を示しておりますので、われわれといたしましては、特に問題のあるのは大家畜、酪農と肉牛について一番問題が出てきておるのではないか、それを打開するためには、このような公団方式等によります草地なり林間放牧地なり、あるいは飼料畑地なり、そういうものの規模確保いたしまして自給率を高めることがこれらの大家畜の発展をはかるためにどうしても必要なことではないかというように考えておるわけでございます。
  13. 上田茂行

    上田委員 大規模にこういう開発をされ、そして国民の求めておる肉を供給するというような、そういう目的はなるほどよくわかるわけです。しかし、ある意味で零細企業というものがいま倒れていっておる、それはやむを得ないものであるということもよくわかるわけですけれども、それでは、こういう大規模生産というものがだんだん伸びていったときに、大きな北海道やあるいは東北のように、こういうものを誘致して開発できるようなところでは安い肉がつくれる。それはいいのですけれども、零細の規模のものでは、農林省側は大体三十頭ぐらいを零細の最小限の規模として保存しようとしているのか、あるいは四十頭ぐらいの牛を飼っておればこれからも生き残れるというようなことを予想されておるのかということをお伺いしたいのです。  というのは、実は、私たちの県で、過去十年ほど前に、県と国が共同いたしまして、一人当たり四町ほどたんぼを持たせて、そこに家を建てさせて、それを県と国が助成をして貸し渡して、そして皆さん方が共同でやってくれというような干拓地を利用した計画が試みられたわけです。ところが、いまから十四、五年前にはそこの四町程度で十分に生活ができたが、今では、四町ぐらいではとても生活ができなくて、その人たちがまた出かせぎに行っているというのが事実なんです。そうしたことを考えるならば、零細企業の人たちも非常に重要な人でございますし、そうした面の指導、つまり、四十頭、五十頭ぐらいまで飼っておればいまから生き残っていけるというような目安を与えていただければ、いま実際に非常に細々と自分の名でやっていらっしゃる零細企業の方々一つの目安になるのではないかと思うのですけれども、その点についてお答えを願えれば非常にありがたいと思います。
  14. 澤邊守

    澤邊政府委員 主として畜産関係の御質問かと思いますので、畜産関係についてお答えをいたしたいと思います。  畜産の経営規模目標をどの辺に置くかという点につきましては、先ほどもお答えいたしましたところの、一昨年秋に出しました「農産物需給の展望と生産目標の試案」におきまして、一応の目標を定めております。これは、現実に適用いたします場合は、地域の実情なりあるいは経営の実情等に従いまして、画一的に適用することはもちろんできませんけれども、まあ、モデル的なものといたしまして、専業的な経営と、それからただいま御意見のございましたような耕種関係、稲作その他と畜産との複合的な経営の場合等、いろいろございますので、それを分けて、一応五十七年度の目標ということで描いておりますのが、酪農につきましては、専業経営の場合には四十五頭ぐらい、複合経営の場合は十五頭ぐらい。肉用牛につきましては、肥育の場合ならば、専業経営では百十頭ぐらい、複合経営の場合は十九頭ぐらい。養豚の場合は、繁殖の場合には、専業経営で百頭、複合経営の場合は二十頭。肥育の場合は、専業で千百頭、複合経営で百二十頭。さらに、養鶏の場合で申し上げますと、採卵鶏の場合は、専業経営ならば二万羽ぐらい、あるいは複合経営で他のものと複合する場合には二千五百羽ぐらい。ブロイラーの場合はさらに大きくて、専業の場合は五万三千羽、複合の場合は八千五百羽。こういうような、一応の五十七年を目標にした規模の指標を描いておるわけでございます。もちろん、今度の公団事業の対象地域になるようなところは、専業経営を主として念頭に描きながら計画を立て、事業を実施していくつもりでおりますが、全国的に見ますれば、もちろん専業経営だけがすべてではないわけでございますので、都市近郊なりあるいは中間地帯等におきましては複合的な経営が主になると思います。他産業との兼業という場合もありましょうし、農業の中での複合経営という場合もございますので、ただいま申しましたものを平均的に描いておりますが、具体的に適用する場合には、その土地、土地あるいは経営の条件等によりまして、またかなりのバリエーションもあるかと思います。いずれにいたしましても、一方において規模拡大し能率を向上するというために専業的な大規模経営を描くと同時に、現実問題として、規模の小さい畜産経営というものも現にあるわけでございます。それもいまのままでいいということではございませんけれども、専業とは別の形の複合経営として育成をしていくというような考えで進めておるわけでございます。
  15. 上田茂行

    上田委員 非常に具体的に五十七年度を目標にした数字をあげていただいたわけですけれども、そうした確定的なある程度目標なり数字というものを肉牛を飼っていらっしゃる方々に広く示すこと、そして、また、そのように努力をすれば、決してそうした企業はつぶれることがないというような御意見だと私は理解させていただきたいと思います。  次に、農用地開発公団法というような、こういう一つのまとまったものをやっていこうとするならば、どうしてもまずまっ先に問題になりますのは土地の確保でございます。地価暴騰等のいろいろな問題もございまして、日本の国土に占める農用地の割合がだんだんと減りまして、三十五年の二〇%から、四十五年には一七%と、三%減っているわけですが、これからそうした優良農地確保のために、農林省側はどのようにこの整備をはかり、また、この供給確保されようとしているのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  16. 大山一生

    ○大山政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問の問題に二つあろうかと思います。一つは、新公団の場合にどういうかっこうで用地を取得するのだ、確保するのだ、こういうことが一つあるだろうと思います。その意味におきましては、われわれが考えておりますのは合理化法人、これにつきまして、四十九年度予算におきましても、従前の無利子資金のワクを倍にふやしまして、四十億の無利子資金による買い上げあるいは借り受けというようなことができるような措置を講じているわけでございまして、これから公団が現実にできるという段階にまいりました場合には、取得すべき用地というものにつきまして、合理化法人との間に密接な連絡をとる中で、用地の先行取得を合理化法人を通じてやってもらう、こういうふうなことを考えておるわけでございます。  それから、もう一つ、先生の言われましたのは、地価高騰というようなことの中において、いわば優良農地をどう確保していくのだという問題であろうかと思いますが、これは一般論としての問題であろうかと思いますが、その点につきましては、従前から、農地法というものによって転用制度の厳正な運用ということをはかっております。また、農振制度におきましても、農用地の設定ということをいたしているわけでございます。農用地区域の設定につきましては、いまピッチを上げて各市町村を督励しているというような段階にございまして、いずれにいたしましても、農地法なり農振法による農用地区域の設定等によりまして、いわば優良農地確保してまいりたいというふうに考えるわけでございます。その一環といたしまして、先ほど政務次官から御説明いたしましたような、いわば集団的利用関係の新たな措置ということも、その一つの材料として、これを農振法の改正で実施してはどうかということで、現在検討を進めているような次第でございます。
  17. 上田茂行

    上田委員 次に、この法律目的というのは、国民食糧、特に、今後さらに需要の増大が見込まれる畜産物等の安定的な供給体制を確立するためには、草地等の造成をはじめ、農業生産基盤の整備を強力に推進することが必要であるということを書かれておるわけですが、そこで、昨年土地改良長期計画が決定しましたけれども、その中において、草地をはじめとするような農用地の造成の計画はどうなっているか、その点についてお答え願いたいと思います。
  18. 大山一生

    ○大山政府委員 四十八年から五十七年までの間におきます土地改良長期計画におきましては、農用地の造成といたしまして、農地を三十万ヘクタール、草地を四十万ヘクタール造成するということにいたしているわけでございます。そして、農地の三十万ヘクタールの中で、十八万ヘクタールを飼料畑として造成するということで現在進めているような次第でございます。
  19. 上田茂行

    上田委員 こういう方策が、これからとられていく一応の目標となっているわけですけれども、いままで、この法案にのっとるような趣旨の事業を行う一つの方法としては現在の土地改良法があり、この事業等によってもっと強く実施していったら、この法案の意味はないのではないかというような意見もあるのですけれども、その点についてはどうお考えですか。
  20. 大山一生

    ○大山政府委員 土地改良法による土地基盤の整備ということは、今後とも長期計画に基づきまして推進しなければならぬというふうに考えているわけでございます。ただ広域の未利用、未開発の地域におきまして、畜産を基軸とする大規模開発を行なう、それを急速に行なうということのためには、ただ基盤整備をすればいいということではなくて、その上に造成さるべき畜舎なり、あるいはそれらとの関連における集出荷施設の用地といったような、いわば上物も合わせまし立体的、総合的に実施するということが、未利用低位利用の広域な土地における基盤整備といいますか、開発の方向としてはどうしても必要である。そういうことになってまいりますと、ただ基盤を整備すれば済むというような一般のところとは違って、やはり、新たな開発方式が必要であろう。そういうことになりますと、ここで考えましたような公団方式ということが考えられざるを得ないというふうに考えるような次第でございます。もし、かりに、それを国なら国が、あるいは県なら県がやるというかっこうでやれないかというお話もあろうかと思いますけれども、財政法、会計法の制約のもとで、上物につきましても急速に造成して売り渡すというような体制をとるといたしますと、やはり、それは公団というかっこうでやるのが最も適当であるというふうに考える次第でございます。
  21. 上田茂行

    上田委員 だんだんと質疑をするうちに、この趣旨なりあるいはこの目的なりというものがおぼろげながら明らかになってきたわけですけれども、この新公団は、広域農業開発事業畜産基地建設の二種類の事業を行なうと聞いておるわけです。そこで、この際、この事業の考え方をもう一度明らかにしていただきたいと思いますし、また、公団事業の将来の展望がどの程度であり、あるいはまた、その経営開発方針というものがどのようなものであるかということをできるだけ具体的にお答えをいただきたいと思います。
  22. 大山一生

    ○大山政府委員 新公団事業として行ないます広域農業開発あるいは畜産基地というものについてでございますけれども、これは地域によりましてそれぞれの特徴が非常にあろうかというふうに考えます。しかしながら、いずれにいたしましても、その地域の実情に合ったかっこうにおきまして、地元の立地条件なりあるいは地元の意向というものを十分に参酌するかっこうの中におきまして、広域農業開発でございますと、大家畜を対象とする飼料基盤の整備を通じます専業農家の創設、あるいは共同経営方式の活用によります既存経営の水準の引き上げというかっこうでやってまいるということに相なるわけでございます。また、一方、畜産基地建設ということの中で行ないます複合経営におきましては、大家畜と中小家畜を有機的に結合いたしました団地を建設するということによりまして、いわば、中小家畜のふん尿を草地に還元する。そこでまた大家畜を飼うというようなことを内容としているような次第でございます。  そこで、そういうふうな内容を内容といたしまして、公団事業の将来展望は現在どうなんだということになってまいりますと、御存じのように、現在、それぞれの地域に調査事務所を置きまして、可能性としては、およそどういう地域がどの程度規模においてあるかということを調査する。そして、その中で地元の意向を聞くなりして、団地として形成し得るというようなことから見て、地元の同意もとれれば、また、機械化施工による広域な能率的な団地が可能であるかどうかという地区を選定いたしまして、そしてその地区から逐次着工してまいる、こういうふうなことに相なるわけでございますので、将来明確に年次計画別にどういうふうになるかということは、この段階ではまだ明確に申し上げるわけにはまいらぬというような事態でございますけれども、いままでのところ、各地域ともこの事業に対しましてはかなりの意欲が認められますので、相当の事業の実施が可能であろうというふうに考える次第でございます。
  23. 上田茂行

    上田委員 農林省から農用地開発公団法案参考資料というものをいただいておるのですけれども、その予定地としてあがっておる個所を見てみますと、北海道とか、九州とか、東北とかいう、非常に都市から離れた遠隔地というものが予定地としてあがっておるわけです。蔬菜の経営と違いまして、畜産経営というのは、別にそれほど都会に近くなくても、冷凍がきくとか、あるいは品ぞろえをそれほどしなくていいというような有利な点は十分考えられるわけですけれども、しかしながら、やはり、蔬菜ほどではないですけれども、飼料や畜産物の流通面での不利性というものは免れないと思うのです。そこで、畜産経営自体が非常に遠い場所で行なわれるというようなことについて、その流通面での不利性というようなものについてのきめこまかい対策というものがいまのうちからなされておらなくてはならないと思うのです。そういう不利性をカバーするための政策というものについてお答えを願いたいと思います。
  24. 大山一生

    ○大山政府委員 先生の言われますように、遠隔地経営ということのハンディはどうしても存在するわけでございますので、これをどう補っていくかということが非常に大きな問題であろうかと思うわけでございます。そういうこともございますので、濃密な生産団地を建設するために、先ほど申し上げました上物、下物といったようなものを総合的、計画的につくるということ、さらには、集出荷施設といったようなものまで導入してまいるということ、こういうふうなかっこうでハンディの克服に当たるとともに、従前から行なっております広域農道あるいは農免農道といったような、従前からのこの事業のワクをはみ出すようなものにつきましても、この事業との関連におきまして、それを十分に考慮したかっこうで整備してまいるというふうに考えるわけでございます。いずれにいたしましても、遠隔地であるということのハンディを克服するためには、経営についての県なりの指導体制ということもこれとの関連にきわめて必要になってまいるであろうというふうなこともございますので、今度の公団法におきましては、従前の各種公団とは異なりまして、まず、県の申し出にかかる事業について実施するというようなこと、さらに、負担金につきましては一括県に負担してもらうということ、そして、県はさらに一部を地元なりに負担させるというかっこうで、すべての事業について県が共同体的なかっこうにおいて参画するというかっこうの中で、県の普及組織との密接な連絡等あるいはその他の諸施策との関連をつけてまいるというふうなことも考えているようなわけでございまして、これらの各種の施策をもちまして遠隔地の不利益をカバーしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  25. 上田茂行

    上田委員 県と協力するというのはわかったのですけれども、その前半が何かもやもやとしていてあまりよくわからなかったのですけれども、次の質問に移らしていただきたいと思います。  もう一つ、いま私があげた遠隔地の不利性というような問題のほかにも大きな問題があるのは、これは現在の農業でも一緒なんですけれども、耕うん機を買うにしても、コンバインを買うにしても、買うだけが精一ぱいで、月賦、月賦に追われる。あるいは、また、出かせぎをして、その機械の購入費に充てなくちゃならないというような状況が現在の農業にもひんぱんに見られるわけです。それは、やはり、農家というものが資金力に弱くて個人的な経営をやっているというようなことであろうと思いますけれども、この趣旨説明の中に「農業用施設の譲り渡し及び農機具、家畜等の売り渡し等の業務を行なう」ということが載っているわけです。このような農業用施設の譲渡なり農機具、家畜等の売り渡しについて、牛一つを例にとりましても、五頭や六頭の売り渡しじゃないと思うのです。また、この施設も非常に大規模なものだと思うのです。  そこで、そのような売り渡しをやる以上、個々の非常に弱い資金力を持つ農民の方々にあまり負担のかからないような方法をいまどのように考えていらっしゃるか、お答えを願いたいと思います。
  26. 大山一生

    ○大山政府委員 基盤整備部分につきましては、負担金を徴収するというかっこうでございまして、その限りにおきましては、国庫補助率以外の部分につきましては財投資金を投入してまいる、そして事業を実施してまいる、こういうかっこうになっております。そして、いま言われましたような畜舎から始まりまして、農機具といったようなものにつきましての補助残につきましては、これもやはり財投資金をもってつくる、そして、その結果は業務方法書によって県を通じて売り渡す、こういうふうなことを考えているわけでございます。したがいまして、いわば、補助残部分につきましては財投資金によって購入されたものを譲り渡すというかっこうの中におきまして、低利長期の資金でもってそれがカバーできるというふうな措置を講ずることにしているわけでございます。そのことにつきましては業務方法書の中で書いてまいるということにいたしております。
  27. 上田茂行

    上田委員 こういう大規模な計画、農用地開発公団というものがこれからの事業を行なわれるということに対しましては非常に賛成でございます。しかし、集団的な経営というものを考えられていらっしゃるのか、その点についてお伺いしたいと思うのです。  そこで、経営面についてお伺いしたいのですけれども、たとえばこれを公団側が初め一年、二年やって、そしてそのあとにその地域の協同組合というようなものを形成させて、そこにまかせてやっていくのか、あるいは応募者を募りながら、一つの協業組織というようなものにやらせていくのか、いろいろな方法があると思うのです。また、個人的な業者にそれをまかせる方法もございます。私は、日本人の体質から見て、協業というものを取り入れるのは非常にむずかしいということを感ずるわけです。どこでもいろいろな地域で協業というものがよいとわかっていながら、それに失敗している例というものを私たちの地域でも多く見受けるわけです。初め協業という条件をつけてもらいながら、そして、なおかつ県なり国からの補助金というものをもらいながら経営を始めた。いわゆる協業するのを条件にして経営を始めた団体が、一年、二年たたないうちに、その内部で、分け前の問題もありますけれども、いろいろな問題が起こって、結局は協業のいい点を取り入れないでくずれていった例というのは非常に多いわけです。特に、この事業は非常に大規模に北海道や東北の草原を利用してやられるということを伺っております。そうした面では、この事業完成後の経営指導というものに対していまから準備される必要がありますし、あるいはまた応募なさっている農業者方々一人一人を教育していくというような事業というものを熱心に農林省がやっていかなくてはこの計画は成功しないと思うのです。そこで、そういう点に十分配慮されておるとは思いますけれども、その点についていまどう計画を立てられているのかということについてお考えを述べていただきたいと思います。
  28. 澤邊守

    澤邊政府委員 協業経営について問題点を御指摘いただいたわけでございますが、特に、畜産経営の場合、植物ではなしに動物であるだけに、ある意味では、協業をやります場合にもいろいろむずかしい面が出てくるわけでございます。まあ、よく言われますけれども、動物が飼養管理を行ないます農家の顔を見ておるということをよく言われますので、協業経営で飼養管理の責任者がかわるというような場合、なかなかうまくいかないというようなこともよく言われるわけでございます。したがいまして、今回考えております公団事業の対象地域につきまして、これから地区ごとに調査をし、どのような経営を設定していくか、形成していくかということを考えながら慎重にやらなければならないと考えておりますけれども、広大な土地資源を草地として、あるいは飼料畑として、あるいは共同放牧地として、林間放牧地として利用するわけでございますが、これらの放牧地あるいは採草地といったようなものは、公共的な、あるいは共同的な、あるいは集団的な形で利用するということは、飼養管理の能率をあげるためにも、あるいは個々の農家の省力という面からも非常にいいことでございますので、それらのことは現在一般にかなり普及しておりますし、畜産局といたしましても既存のものについても指導をしておりますので、そのような形で、一種の協業的な形で利用するということが望ましいと思いますし、さらに、最近、肉牛の場合で申し上げますと、肥育関係はかなり規模が大きくなっております。かなり濃厚飼料も使うような形で、アメリカその他外国で最近普及しておりますようなフィードロット方式ということで、群飼育といいますか、五百頭だとか、あるいはそれ以下の場合ももちろんございますけれども、三百頭とか、そういうような群飼育のフィードロット方式による肥育というのはかなり伸びております。これらのものは、個人経営というよりは、農協あるいは生産法人等によります協業経営にふさわしいものではないかというように考えております。  さらに、先ほど申し上げました共同の牧場あるいは公共の牧場と関連いたしますけれども、酪農につきましても、肉牛につきましても、育成段階につきましてはかなり共同できる面が多いのではないかというように考えております。したがいまして、事業ごとに、あるいは部門ごとに実情に即しまして、しかも、それは各地域の成熟度によってかなり差がございますので、ここでいいからほかの地域でいいということは必ずしも言えない面がございますので、無理のない形で、協業といいますか、あるいは共同といいますか、そういう形を進めながら、必ずしも全面的に協業経営を推進するというばかりではなしに、個別経営できめのこまかい飼養管理、家畜の管理ができるというメリットがございますので、そういう点を組み合わせながら具体的に地区ごとに経営のあり方というものを考えていきたいというように思います。  したがって、繰り返しになりますけれども、何でも規模拡大するためには協業経営がいいんだという、あるいは協業化がいいんだという極端な考えもとりませんが、反面、個別経営だけでいいとも思いませんので、やはり、規模拡大という面では、牧場の管理なり、あるいは育成段階なり、あるいは肥育の一部の段階等につきましては、協業的なものを促進するということをケース・バイ・ケースで慎重に現地の成熟度に応じながら検討していく考えでございます。
  29. 上田茂行

    上田委員 現在でも農協の中には指導員というものを置かれておって、そして、各地区を回って農家の相談に応じたり、あるいはまた農家の経営状態の分析をしながら、こうしたらいい、ああしたらいいというような助言を与える人たちがいるわけです。しかし、残念ながら、そういう職員の方々に対する月給が低いとか、あるいは地位が低いというようなこともありますし、あるいはまた財政的な面でそういう指導員すら置けないというようなところが多くあると思うのです。それがために、いい経営をするためのその指導というものがなかなか行きわたっていないという半面もございますし、また、残念ながら、日本農業者の皆さん方は、日本の企業家の皆さん方とは違って、企業的な能力とか手腕というようなものに対しましては非常におくれている面があるわけです。こういう大きな事業をされる上で、やはり人間がやる問題ですから、そういう人に十分なる教育なり経営観念を持たせるような分野にまで農林省が立ち至ってやっていただきたいと思うわけです。  時間の関係上これくらいで最後にさせていただきたいと思いますけれども、次に伺いますが、農地開発機械公団というものがあって、それが解散されて、今回のものに引き継がれるわけです。この趣旨説明の一項に、「新公団は、職員の雇用関係を含めて、一切の権利及び義務を承継し、」ということが載っておるわけですが、たとえば、新旧公団の性格の相違によりまして、旧公団の運転士さん、整備士さん等は、その必要性がかなり薄れると思うのです。現在でも、昭和四十年に比べては運転士さんも整備士さんも減少はしておりますけれども、しかし、なおかつ両者で二百八十二名という人たちがいらっしゃいます。また、これは高い年齢の人たちです。そういう人たちに対しまして、身分上の十分な保障が今後されるのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  30. 大山一生

    ○大山政府委員 開発機械公団を今度解散することにいたしたわけでございますが、それは、かつては、民間にはないような大きな機械を保有して、それを貸し付けるとか、こういう民間にはないようなことに重点があったわけでございます。しかしながら、最近におきましては、民間におきます機械の装備なり技術水準というものも上がってまいりました。しかも、現在、農地開発機械公団というものが受託業務を中心といたしておるようなかっこうになっておることもあります。そこで、この際、機械公団の職員の、いままで農用地の造成改良に関しまして持っております技術と経験を新公団の業務に活用させるということから、農地開発機械公団は解散するけれども、新公団に一切の権利義務を承継させるということにいたしたような次第でございます。したがいまして、新公団を設立する場合には、機械公団の職員等はすべて新公団に承継されまして、従前からの雇用関係には何らの不利益も生じることなく新しい業務に活用されるということに相なるわけでございます。  そこで、現実の問題になりますと、新規事業というものも一つの計画的な線の中で逐次ふえていくというかっこうに相なりますので、機械公団が従前からやることとされていた業務も、当分の間に限っては続けてまいるというかっこうの中で、しばらくは、いま言われましたようなオペレーターでありますとかあるいは整備士の方々はそういう業務に関与してもらう、そして、その間に、本人の希望によりまして監督要員に転職するとか、こういうふうなことへの再教育をいたしまして、新業務のほうに活用してもらうような方向に逐次進めてまいるということにいたしまして、身分関係には何ら支障を来たさぬように措置してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  31. 上田茂行

    上田委員 与えられた時間内におきまして、ざっとした質問しかできなかったわけでございますけれども、最後に、政務次官に御決意をお伺いしたいと思うわけでございます。  農林行政というものは、天候のかげん、あるいはあまりにも早い経済変動、物価高、土地の取得のむずかしさというようないろいろな困難な目にあいながら、今日まで農林省の皆さん方が活躍をされてきたわけでございますけれども、いま私が数々の質疑をいたしました中にもいろいろな困難な問題があります。また、昨日の中日新聞を見ますと、農林省事態に対処するのがどうもおそいのではないかというような批評も下されておるわけです。このような公団をつくるのすらおそきに失しておったのではないかと言われるような現状でありますので、どうか、これから一日も早く農業の実情に沿える行政をやっていただきたい。そして、また、私たちのこの委員会におきます政務次官は青嵐会のボスでもありますし、また、大物の政務次官として私たちも期待をしておりますので、何とぞその点をよろしくお願い申し上げます。
  32. 渡辺美智雄

    渡辺(美)政府委員 御指摘のような、いろいろ示唆に富んだ点も十分に考慮して、今回上程の法案はいずれもあなたのおっしゃることを実現しようという一連のものでありますから、慎重に、そして、すみやかに御審議くださいますことをお願い申し上げます。
  33. 仮谷忠男

    仮谷委員長 次回は、明六日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時七分散会