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1974-02-14 第72回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十四日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 安田 貴六君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君       伊東 正義君    今井  勇君       上田 茂行君    小沢 一郎君       熊谷 義雄君    佐々木義武君       島田 安夫君    染谷  誠君       中尾 栄一君    丹羽 兵助君       本名  武君    井上  泉君       角屋堅次郎君    竹内  猛君       馬場  昇君    美濃 政市君      米内山義一郎君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         環境庁水質保全         局水質管理課長 山村 勝美君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      田口健次郎君         運輸省港湾局技         術参事官    大久保喜市君         日本国有鉄道貨         物局長     丸尾 和夫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   美濃 政市君     中澤 茂一君 同日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     美濃 政市君     ――――――――――――― 二月十三日  畜産経営安定対策に関する陳情書外一件  (第一五六号)  新農政の樹立及び展開に関する陳情書  (第一五七号)  近代的農業経営育成に関する陳情書  (第一  五八号)  静岡県の農政基本施策確立に関する陳情書  (第一五九号)  災害に対する自作農維持資金借入限度額の引上  げ等に関する陳情書  (  第一六〇号)  果樹農業振興に関する陳情書  (第一六一号)  食糧自給体制確立に関する陳情書  (第一六二号)  事前売渡し申込み限度数量超過米の買上げに関  する陳情書(第一  六三号)  休耕田の復元に関する陳情書  (第一六四号)  糖価引下げ等に関する陳情書  (第一六五号)  中山間地帯農業基盤整備促進に関する陳情書  (第一六六号)  食糧管理法堅持に関する陳情書  (第一六七号)  酪農振興対策に関する陳情書  (第一六八号)  飼料対策に関する陳情書  (第一六九号)  畜産物価格安定及び畜産農家救済等に関する  陳情書外六件  (第一七〇号)  水資源県造林事業並びに民有保安林に対する  国の特別財政措置に関する陳情書  (第一七二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ――――◇―――――
  2. 仮谷忠男

    仮谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬野栄次郎君。
  3. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林大臣所信表明に対する質問を行ないます。  農林大臣は、去る二月六日の所信表明の中で、冒頭、「最近のわが国経済社会は、石油供給削減と物価の著しい高騰等により、これまでにないきびしい局面を迎えております。農政の分野におきましても、農産物国際価格高騰農林漁業生産資材の需給、価格の問題、地価値上がりによる農業開発用地取得難等、きわめて困難な事態に直面しております。」と述べているが、どのようにきわめて困難な事態に直面していると感じておられるか。現状認識を、冒頭に具体的に述べていただきたいと思います。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御存じのように、最近の状況を見ますと、私どもが予期いたしておりませんでした、いわゆる石油危機と言われるようなものがあり、それに付随いたしまして、農業用資材等についても著しい高騰を見て、そのために、計画的生産をやっておいでになる農家方々生産にもいろいろ影響が出てまいっておる。こういうことを全力をあげて切り抜けていかなければならない、そういうむずかしい条件が加わってまいった、こういうことを申し上げたわけであります。
  5. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そこで、大臣所信表明に対していまから逐次質問をしてまいりますが、まず、最初に、つくられたパニックと言われる今回の石油危機、これをひとつ災いを転じて福となす、こういう真の意味をもって、農業基本法を再検討すべきであると、このことを、従来から本会議あるいは委員会で私はしばしば申し上げてまいりましたが、本日もこの点について、若干の例をとりながら、真剣に政府考えをただしていきたい。また、大臣も総理によく進言をして、これらの基本的な、農業憲法と言われる農業基本法についての問題を検討していただきたい。こういったことで、冒頭若干質問を申し上げてまいりたいと思います。  御承知のように、農業基本法昭和三十六年六月十二日に施行になりまして、自来十二年余を経過してまいりました。第一条に、「国の農業に関する政策目標」が示されておるわけでございますが、当時、池田内閣は、いわゆる所得倍増政策によって、三分の一ぐらいを農家人口として所得を増していく、すなわち、分母が小さければ分子は大きくなるという想定のもとに進められてまいりました。そして、自立経営農家育成選択的拡大といったことを大きな柱としてきたことは事実であります。その中でも、御存じのように、選択的拡大については、曲がりなりにも一応その効果をあげてきたとも言えますが、中でも、農業のビッグスリーと言われる果樹畜産、特に第二食管と言われる畜産等においては、あとでいろいろ述べますが、飼料値上がり等でぎりぎりの線までまいっておりまして、農家壊滅的状態に追い込むようなところに来ております。また、一方、果樹にしても、西日本ミカン等については、生産過剰によって農家にたいへん憂慮すべき状態がまいっておりまして、これまた、今後いろいろと検討をせなければならない問題が山積しておるわけでございます。自立経営農家育成といった問題については、もう御存じのように、現在すでに四・四%というわずかな数字になってきております。こういったことを見ましたときに、農家がだんだんオール兼業化の方向へ進んできていることはたびたび指摘してきているところであります。  また、食糧の圧迫も、最近とみにきびしくなってきているのも事実であります。三十六年の法制定当時と現在とでは、もうたいへん背景が違う。こういったことは十分御承知だと思うのですが、そういった農業基本法制定当時と、今日のこのような農業危機。特に、冒頭所信表明で、農林大臣は、きわめて困難な事態に直面しているというふうに、いまだかつてない強いことばで所信表明をしておられます。こういったことを思いましたときに、現状認識農林大臣はどういうふうに持っておられるか。農業基本法については、その精神は生かしていくというようなことをしばしば申されておりますけれども、その点、農業基本法を制定した当時と現在とはどういうふうに時代が変わっておるか、また、基本法そのものに対してはどうあるべきかという現状認識を、まず率直に大臣からお聞きをしたいと思うのです。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 瀬野さん御指摘のように、農業就業人口減少が続く中で、農家戸数減少は少ないようであります。御存じのとおりであります。経営規模拡大一般的には微弱でございます。しかしながら、お話しのありました畜産関係で、養豚、養鶏、酪農、それから施設園芸などの施設型農業におきましては、相当な規模拡大が進んでおります。それからまた、自立経営戸数及び生産額に占めるシェアもおおむね増大いたしておる傾向であります。今後も増大してまいることが期待される次第でございます。一方、稲作、それから畑作物等土地利用型農業におきましては、御指摘のように、経営規模拡大が遅々としておりますが、農地所有権移転につきましては、地価高騰背景といたしまして、資産的な保有傾向が強まって、伸び悩んでおる次第であります。また、農地賃借権の設定も依然として僅少にとどまっているという、こういうような事情であると思います。  しかし、農業基本法につきましてはいろいろな御意見もあるわけでありますが、基本法精神は、農業生産性を増大し、農産物増産拡大と、また国民選択的拡大傾向をキャッチしていくという、そういう方針につきましては、私どももりっぱな方針であると思っておりますので、この精神を体して農政を着実に進めてまいる必要があると、このように理解しておるわけであります。
  7. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 自立経営農家割合及び経営内容等を見ますと、農林省農家経済調査統計表によりましても、戸数及び農業生産割合というものが、昭和三十五年度は戸数が八、六%、四十二年は、ちょうど米が相当値段も上がり、さらに豊作等関係もあって一二・九%に上がっておりますけれども、四十六年には四・四%、これは農業白書においても示されております。こういうことになっておりますけれども、この点は、大臣、そのように認識しておられますか。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ちょっと、事務当局から御報告いたさせます。
  9. 大河原太一郎

    大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、四十五年、四十六年と、米の生産調整なり、過剰に伴う米価の据え置きというような点を反映いたしまして、たとえば四十六年度の農業白書では戸数シェアが四・四、あるいは粗生産額が二一%というようなことになっておりますが、最近集計いたしました農家経済調査につきまして同様の検証をいたしますと、その後の米価関係なり、あるいは他作物価格関係が総体的に有利であったというような関係から、四十七年度では戸数シェアが六%以上になる、また、粗生産額シェアも二八%以上になるというふうな状態になっておりまして、この点を先ほど大臣はお答え申し上げたわけでございます。
  10. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 私の申し上げたのが間違いないということで、なお、四十七年には、自立経営農家が六%、粗生産が二八%というような答弁がございましたが、それにしても、ずいぶん減ってきている。そこで、現在まで農林省自立経営農家育成を一枚看板にしてきたわけです。ところが、その方針とはうらはらに、いま申し上げた数字が示すような状態になってきて、まさに、自立経営農家ほんとうにわずかなシェアになってきております。  そこで、私は、今後農村はだれが中心的なにない手になるかということを憂える一人であります。去る二月七日には、九段会館で、第二十回を記念して、全国農協青年組織協議会が行なわれまして、そのあと、私たちは、各党代表が参りまして、青年の諸君と討論会をいたしました。そのときもずいぶん長時間にわたって論議をしたわけですが、もう限界に来た、われわれ後継者として希望をなくした、相続税あるいは贈与税、あるいは生前贈与税の問題、こういったことで減税または免除を相当考えてくれないと、もう明るい農村希望は持てないというようなことで、きびしい要請、批判等もございました。そういったことを見ましても、全国農協青年がこのような深刻なところまで追いやられている。現に、昭和四十七年なんかでは、新卒二万名が後継者として言われていますけれども、おそらく四、五年もたたぬうちには一万名を割るであろう、過去に大企業等が五千名や一万人近い人を年間採用した例を見ても、全国農業でこのように新卒後継者がわずかなようなことではたいへんである、こういったことを思いまして、日本農業の今後の、いわゆる自立経営または規模拡大をたいへん憂えるものであります。  そういったことで、私は、今後農村のリーダーはなくなってしまうのじゃないかと、かように思わざるを得ません。もちろん、日本の将来を考えますと、自立経営農家というものを育成していかなければならぬことはもう当然であります。全部が全部オール兼業となりまして出かせぎに行くようなことになりますと、秩序あるところの農業が保たれていかないということになりまして、日本の将来のために、また、国民食糧生産する上からもたいへん憂慮されます。何かの措置をとらぬと、ほんとう意味での農業近代化というものがなされていかぬことは当然でございます。そういった意味で、いま官房長からもお話しがありましたように、四十七年でも六%、現に、四十六年では四・四%に落ちておりまして、まさに、農業基本法とはうらはらに、逆な方向に進んでいる。こういった深刻なことを農林大臣は率直に認めておられるか、また、そういったことを深刻に理解されて、真剣に農業基本法の問題をどうするかということを検討しておられるか、その辺をさらに御見解を承りたいと思います。
  11. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 このことは、基本法をどのようにするかということよりも、政策の面において、いまぜひ必要であるとせられました自立経営農家、しかも規模拡大をしていくという方針、この方針につきまして、いま申し上げましたように、いろいろな社会経済発展の過程において若干の困難は伴っておりますけれども、やはりそういう方向で推し進めていかなければならないと、こういうふうに考えておるわけであります。
  12. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 そこで、もう一つ例をもって申し上げますが、現在は、農家あり方というものは、専業よりも、むしろ兼業のほうがよいというような結果になっております。また、事実、農家はそういう認識に立っております。農林省調査によるところの「経営耕地規模別農家経済」の「都府県二戸当たり平均」の表を見てみましても、〇・一ないし〇・三ヘクタールの土地所有者農家所得というのが、昭和三十八年で五百十九万二千円、四十六年で一千六百八万七千円、ちょうどこの所得伸び率が三一〇%になっております。ところが、二ヘクタール以上の場合を見ますと、昭和三十八年で八百六十六万九千円、四十六年では千六百五十二万一千円、この所得伸び率は一九一%、こういうふうに農林省から出されました統計の中から出ております。その間いろいろありますが、中は省略しまして、一番少ない〇・一ないし〇・三ヘクタールと二ヘクタール以上を比較対照したわけですが、このように、農家所得伸びが、経営規模が小さいものほど大きくて、経営規模が大きいものほど小さいという皮肉な現象になっております。こういったことを見ましても、今後いわゆる兼業農家というものがますます多くなっていく、農業を専念してやっていくとますます苦しくなっていく、所得が少なくなっていく、こういったことになっておりますが、大臣はこの点認識しておられますか。この点どう思われますか、見解を承りたい。
  13. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどお話しのありました農林省の出しております統計によりましても、専業農家よりも兼業のほうがはるかに多くなっておることは事実でありますが、その兼業方々、いま土地を若干持っていらっしゃって、しかも兼業をやっていらっしゃるような方々農地を、どういうふうに効率的に農業生産を上げるために使い得るか、これは大事な問題だと思っております。そういう小さな規模農地を持っていらっしゃるようなお方が兼業農外所得を多くしておいでになりますので、農家所得としては、一般の職場の勤労者平均に比較して若干上回っておるような傾向がありますのは、やはり、農外所得が大きくなっておるからでございます。この兼業農家あり方について、これはいろいろなケースがあると思いますけれども、そういう労働力というものをなるべく効果的に使っていただいて、現金所得を得られる方向、たとえば地方に工場を分散して持ってまいって、余った労働力現金所得を得ていただくという方法もあるでありましょうし、また、一方においては、そういう方の持っていらっしゃる方の土地を、合理化法人等によって規模拡大に協力していただくというふうなことでやってまいりたい、このように私どもとしては思っておるわけであります。  いまお話しのように、農外所得を含めた兼業農家所得が、自立経営農家所得に比較して、ときには、兼業農家所得のほうがはるかに上回っておるという現象は私ども認識いたしております。
  14. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林大臣認識しておるということですが、認識しておるならば、この基本法そのものあり方というものが大きな転換期に来ているということを十分検討すべきだと私は思うのです。要するに、いま若干の例を申し上げましたが、農業にいちずに専念している農家は、農業所得伸びがないために、どうしてもやはり兼業に走っていくという傾向にあるわけです。小規模面積農家兼業、大規模面積農家兼業がなかなかできない、こういったことで、いわゆる専業をしていても農外所得等が得られないために、だんだん兼業へ向いていく、こういう傾向が強いのであります。そこで、いわゆるいまの農業あり方はばかばかしくてしようがないといったことを農家はよく叫んでおりまして、みんな兼業になったらどうなるかということを私は心配するわけであります。そういったことから、いまの農業基本法というものはいまの時勢に合わない。いまこそ発想の転換をすべきときじゃないか。田中首相もそのことを常に言っておる。すなわち、食糧増産し、手厚い政策をすべきときが来ている。こういった意味で、いわゆる従来からの農業基本法格差是正のためにできて、食糧増産というようなことは一言も言っておりませんけれども、こういうように、次は食糧戦略という時期が来る懸念があるときに、いまこそこの大幅検討をすべきときではないか、かように思うわけです。いわゆる農業基本法というものは、いまやもう空文化しておる、従来の行きがかりにこだわりなく、大きくこれを改正または検討すべきときじゃないか、こういうふうに私は思っております。国の行政の誤りがこういった結果になってきているときでありますから、田中首相はせんだって施政方針演説の中でも、反省すべきは率直に反省し、改めるべきは率直に改めるというようなことを言っておりますが、そういった意味で、自民党の農政部会の方にしても、また、農業団体にしても、また、農林省事務当局にしても、各党においても、あらゆる人が、この農業基本法あり方については、これを検討すべきであるということを叫んでおりますときに、かたくなになぜこの農業基本法——農業基本法精神は生かしておることはいろいろありましょうが、なぜそれにこだわっておられるのかということを私は大臣に申し上げたいわけです。メンツやら、または政策の失態を指摘されることがいやだというようなことでもありませんでしょうけれども、そういった意味で延ばされるのか、なぜこんなになさるのか、それならば、農業基本法はこれで永久にいいとおっしゃるのか、その点、大臣、どうですか。
  15. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 基本法を制定いたしまして以来、わが国農業は、国民食糧高度化多様化に対応いたしまして、先ほど申しましたように、農業生産選択的拡大生産性向上ということを実現しながら、農業従事者所得生活水準向上を果たしてまいったと私ども考えておる次第であります。しかしながら、御存じのように、また、先ほどお話しのありましたように、経済成長が著しき伸びを示しましたために、農業はこれに必ずしも対応できておるとは申し上げられません。農業と他産業との生産性格差拡大自立経営農家シェア低下等現象は御指摘のとおりであります。また、地価高騰によります規模拡大困難等状況もあらわれておりますことも先ほど申し上げたとおりでありますが、そこで、わが国農業をめぐる内外の諸情勢一般にきびしいものとなっておりますけれども基本法に定められております農政基本的目標、及びその目標を達成するための根幹的施策方向は、現在においても同じねらいであると私ども考えておる次第でありますが、瀬野さんのおっしゃいますことは、よく私も理解いたしております。どういう法律であろうとも、時代の変遷に伴ってものさしが合わなくなることは間々ありがちなことでありますので、私どもといたしましては、基本法の差し示す大方針については、そういう方向に従ってやっておるのであるけれども社会情勢経済情勢の変化に伴って、現在持っておる法律、また、現在やっております方針について、常にかたくなに固守しようというわけではございませんで、時代に即応して検討を続けてまいるということはいずれも同じことでございます。
  16. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 大臣も、かたくなには考えておるわけじゃない、検討を続けていくことは十分考えているということでありますが、いままでは、どちらかというと、農業生産性を上げるという施策のみをあげてきたわけでございまして、他産業との格差をなくす、所得を上げるといったことであったために、食糧増産とか食糧安定供給、それから農業生産量的拡大というふうなことがどうしても二次的になってきております。その結果が、今日のこういった農業のいわゆる行き詰まりといったことになってきていることは明らかであります。  そこで、この農業基本法、これはいわば農業憲法でありますから、これに対して、私は何としても——三十六年当時、農林漁業基本問題調査会というのができて、農業基本法を数年間検討してきた。そして、今日の農業基本法を制定してきたわけでありますが、この農林漁業基本問題調査会というものをもう一度つくって検討すべきじゃないか、まあ、こういった考えを私を持っているわけです。倉石農林大臣がかつて農林大臣をしていたころ、昭和四十四年、または当時、農政国際分業論等もずいぶん打ち出され、今日、ある意味では、倉石農林大臣の手によってこういう農業危機が来たとも農家のみなさんが言っているように、農林大臣の手によってまた困難な時代を迎え、所信表明にありますように、きわめて困難な時代を迎えておると認識しておられるわけですが、基本法等改正を行ない、さらに、農家が安心するような農業体系を立て直すという方向にいってもらいたい。そのためには、基本問題調査会等をつくって検討するといったことがどうしても必要じゃないか、その時期に来ているのではないか、かように思うわけです。  いま、国民は、食糧危機ということでたいへん心配をし、国民の関心も高まってきたし、本年の農林予算を見ましても、とてもわれわれが満足すべき予算ではありませんけれども、きびしい中においては、まあまあという予算が一応は取れたとも思う。一応評価できる点もあるわけでございますが、こういうように政府も、また大蔵省当局もかなり認識の度が高まったときに、いまこそ、農業の基本的なこの基本法を改定して、そして、調査会等によって調査をさせ、さらには今後の体系を立てていく、そして農業にビジョンを持たせる、こういった思い切ったことをしなければ、これは怠慢と言える、また、国民に対して申しわけない、また、日本国民食糧をあずかる所管大臣としてたいへんな失政だ、こういうふうに言えるのではないかと私は思います。そういった意味で、農林漁業基本問題調査会等の設立と、また、検討等の用意があるのか、そういったことについて今後前向きに検討される考えがあるのか、こういったことについて大臣見解を承っておきたいのであります。
  17. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 現在、農業上の重要な問題につきましては、政府の諮問に応じまして研究をしていただく農政審議会がございますことは御存じのとおりであります。ここでは、各界の代表的な委員の方によりまして広く有益な意見が寄せられまして、これまでも、農産物需給の見通し、あるいは土地改良長期計画というような重要な問題について調査審議をお願いいたしておるところでありまして、今後も、必要な問題につきましては十分御論議を願ってやってまいるつもりであります。  それから、私が先ほど来申し上げておりまするのは、持っております法律について、時勢に応じて検討してまいることは当然のことでありますが、農業基本法に、御指摘のような問題も、御意見もありましょうが、基本法の大方針というもの、そういう法律の趣旨を体してやっておると申し上げますのは、基本法第二条に、「農産物生産の増進」ということと、それからさらに、「生産の合理化等農業生産選択的拡大を図ること」ということと、「土地及び水の農業上の有効利用及び開発並びに農業技術の向上によって農業生産性向上及び農業生産の増大を図ること」ということがありますので、こういう精神はいまもなお持ち続けていかなければならないと考えておりますということを申し上げた次第でありますが、なお、諸制度、諸法律につきましては、われわれとしては常に研究をいたしてまいることは当然のことでございます。
  18. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 この農業基本法が、だれが見ても現代の農業に合わないということは、もうこれはよくわかることでありまして、いたずらにメンツにこだわり、また、政府農政の失政を問われるというようなことでいろいろ責任を感じておられることも考えられますけれども、そういうことよりも、時代の変遷もあり、また、こういうような石油危機の次には食糧戦略というようなたいへんな心配が懸念されるときでありますので、田中首相も言っておられるように、反省すべきは率直に反省し、改むべきは改めるということで、農家が今後希望農業確立ができるように大英断をもって検討すべきである、私はかように強く訴えておきます。  そこで、食糧の自給問題に入りたいのですけれども、わが党の林議員に明日自給問題をいろいろ取り上げていただくことになりますので、次に、私は、三十万ヘクタールの農地転用問題についてお伺いをいたしたいと思います。  田中首相の指示で、農地転用促進が近く農林省事務次官名で通達されるやにわれわれは聞いております。まことにこれはけしからぬと実は思っておるわけです。農林省が幹事となって転用促進協議会をつくっておられることも承知しておりますけれども、この三十万ヘクタールは、今後、わが国食糧自給という点から言っても、農民感情から言っても、いわゆるわが国農地の約五%に当たる膨大な農地であります。この中には優良農地があることも当然であります。各種農業団体、地方自治体はもちろん、各野党においても、また、与党の中においても、この問題に対しては、撤回せよという強い意見があることは事実であります。こういった中で、まさに政府は冷静さを欠いた混乱農政をやっておるというふうに私は指摘したいのでありますけれども、この三十万ヘクタールの農地転用問題については、大臣はきのうも若干答弁をしておられたようでありますが、あくまでもこれは推進していかれるつもりなのか、また、近く次官通達の問題等が起きておるけれども、どういうふうに考えておられるのか、この点についてこの場で御見解を承っておきたいのであります。
  19. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この問題につきましては、しばしば他の機会に総理大臣も私もお答えいたしておるのでありますが、いわゆる三十万ヘクタール、これは、一方において宅地の不足が強烈に訴えられており、職場におつとめの方々が、退職金を目当てにして、晩年家をお持ちになって、家族と静かな余生を送りたいという生活設計をお持ちになっても、宅地のいたずらな高騰を招いてそういう夢を打ち砕かれるというふうなことは、これは国全体としてはなはだ困ったことでありますので、宅地の造成、公共用地の造成にはできるだけみんなが協力すべきであるという、そういう命題が一方にございます。そこで、宅地はあるんだということになれば、それだけいま申し上げましたような点も緩和されるわけでありますので、趣旨としてはりっぱな趣旨だと私は思いますが、しかし、そのために優良農地を荒廃させるようなことは絶対にいけない。これは総理の答弁にも明確に答えておられるところであります。  そこで、そういう三十万ヘクタールを実現させるについては一体どういうふうに研究すべきであるかということで、いま、関係省庁の担当者に集まってもらいまして、いろいろな検討を続けているわけでありますが、総理の答弁にもございますように、一年に平均六万四、五千ヘクタールの転用が行なわれておるという、そういうようなことを計算されてのお話しかもしれませんが、どうもこれがたいへん簡単に報道せられましたので、世間には誤解もあるようでありますが、そういう趣旨でございますので、そのことが可能なりやいなやは、やはり、関係省庁で検討すると同時に、私どもといたしましては、優良農地はどこまでも保護するというたてまえには変わりはない、こういうことでございます。  それから、通達を出しましたことにつきましても、通達の趣旨をよく読んでいただければわかるのでありまして、いま二つの話がありましたけれども、一つにつきましては、これは、全然そういうことと関係のない農地関係の通達であります。それから、もう一つは、私が今回就任いたしましてから出しました通達で、これは私自身が指図をして出さしたものであります。どういう趣旨であるかと申しますと、憲法上いやしくも主権者であると言われておる国民がそれぞれ必要なりと考え農地転用の願書を出しているものがあるだろう、そういうものを半年も一年も処理せずにほうっておくということは国民に対して相済まぬことであるから、なるべく早く処理をしなさい、そういうふうにして国民の要望にこたえるようにしなさいというものです。ただし、それは、転用願いを出してあるものを全部すぐやれという趣旨ではありませんで、つまり、これは可能なりやいなや、基準に照らして、許可すべきものであるかどうかということをすみやかに判断をして、だめなものはだめと早く処理をしなさい、やれるべきものはやると早く処理しなさい、こういう趣旨で、行政能率を促進して、国民の御期待にこたえるようにしなさい、国民に迷惑をかけないようにしなさいという、こういう考えで、私自身の責任においてこの通達を出さした次第であります。
  20. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 事務当局でいいから答えてもらいたいが、市街化調整区域内の農振地域を民間デベロッパーが買っている面積を、そこに手持ちがあればお答えをいただきたい。
  21. 大山一生

    ○大山政府委員 買い占めている土地という問題につきましては、各方面においていろいろのデータは出ております。そして、農林省におきましても、この前、昨年ですか、末端組織を動員して、農地の移動についての、あるいは買い占め等の動きについての情報は、迅速に、的確につかんで上に上げるようにという指示を出しました。そして、ものごとの起こる前に、あるいは起こりかけた段階において、極力それを是正するという方向で指導するように通達を出したわけでございます。  その面積につきましては、現在、各方面から出てきた情報というものをキャッチしておりますけれども、それによってどれだけ買い占められているか、その中で農地が幾らあるかということはまだ明確につかんでおりません。
  22. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 局長、それをつかまぬで、どうしてそんなことが検討できるかと思うのだがね。推定どのくらいですか。大体の推定でけっこうですから、どのくらいと思っていますか。
  23. 大山一生

    ○大山政府委員 四十七年から、現在といいますか、四十八年の十月ごろまでに、民間資本によっての土地の買い占めにからむ動きのあった面積といたしましては、大体二十五万ぐらいが出てきております。ただ、その中で、田畑は約一割弱というようなことをわれわれは情報としてキャッチしております。
  24. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 こういった数字がわからぬようでは、——まあ、わかっておってもわからぬと言うのかわかりませんが、四十七年から四十八年の十月までに二十五万ヘクタール、田畑がそのうちの一割ではないかと思うというような程度ですけれども、こういったことをキャッチしなければ、農業の今後の指導または計画というものは成り立たぬと私は思うのです。大臣もこういったことは厳しく監督指導して、よくキャッチをしていってもらわなければ困るわけです。もう全然お話にならぬです。私たちでもいろいろなデータをつかんでおりますけれども、信憑性を確かめるためにお聞きしているわけですけれども、これではもうお話にならないです。  そこで、私は大臣に申し上げたいのですけれども田中首相も、農林大臣も、口を開けば、三十万ヘクタール農地転用というものは土地価格を冷やすためだということを言われます。農地転用の真の意図は、われわれが承知しているところでは、また、有識者の間でもいろいろ取りざたしておる問題では、市街化調整区域内の農振地域を吐き出させようというのが真のねらいであるということが言われております。すなわち、民間デベロッパー等が買い込んでしまったところの、買い投機した土地を吐き出させるというところに、こういった三十万ヘクタールの農地転用の問題が起きてきた真の意味がある。いわゆる農民が金をもらってしまえば、もうおしまいであります。そういったことで、事前に指導し、また、いろいろと調査をし、検討をしているとおっしゃるけれども、すでにもう相当の土地がデベロッパーによって買い占められ、あるいは買い投機をされておるわけです。市街化調整区域はもうすでに凍結されております。そこで、今回の田中首相のこの発想というものは、この三十万ヘクタールの農地転用は、こういった市街化調整区域を買い込んだ大手の不動産業者から田中総理に対して圧力がかけられた、よって、田中首相はこんなことを勘案して、このような発想に及んだということが言われておるのですけれども大臣、この点、あなたはどういうふうに反論されますか。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 まあ、人さんのおっしゃることはいろいろあるかもしれませんが、私どもといたしましては、どのような地域にしろ、やはり厳格に農地法に農転の許可基準というものがあるのでありますから、法律に照らして厳重にいたすという方針においては変わりはありません。  でありますからして、たとえばいまお話しのように、農地について、基準に照らして許可すべきでないような地域がかりに売買が行なわれておりましても、これは最終的に決着がつくという条件でなければ、おそらく取り引きはしないでありましょう。取り引きをされたといたしましても、これは私どもの許可はもらえないのでありますから、そういうことで、一面において、先ほどからお話しのございましたように、いまはわが国でもそうでありますし、国際的にも、食糧の問題を非常に重大な問題として各国とも考えておるような状態でありますので、農地保存のためには、これを非常に大切にしなければならぬのは当然でありますので、そういう趣旨を貫いておるわけであります。
  26. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 局長、そこで、千葉県で、この調整区域について法務官が職権登記をしたということが明るみに出て、雑地としてしまったことについての収賄事件が告訴されておる事実があるわけですけれども、これは承知しておられますか。
  27. 大山一生

    ○大山政府委員 御質問の問題については、承知しております。  問題点は、従前の登記簿上の名義、地目、台帳地目が農地になっていなかったような場合におきまして、売買登記がある場合に、地目が農地でない場合は簡単に登記されてしまう。農地である場合には、その農業委員会の証明その他がいろいろ出てまいりますが、そういう問題がないところに問題があった、あるいは農地を簡単に地目変えした、こういうことでございますので、その後法務省ともよく協議いたしまして、現況が農地であって、地目が農地でないものについては、農業委員会のほうから一覧表を出した場合には、それに基づいて直すとかといったようなことをやりまして、今後、登記簿上の地目が現実に合うような措置をとらせるように法務省ともども指導している次第でございます。
  28. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 この問題に入っていると暗闘がかかりますので、三十万ヘクタールの締めくくりとして、大臣にさらに認識をしてもらって、田中首相に強く進言をしてもらって、この三十万ヘクタールの撤回をしてもらうためにあえて申し上げます。  昨年の十二月七日の日本経済新聞に、「農地三十万ヘクタール転用の行方」「地価抑制か食糧確保か」「首相構想に論議渦巻く」という見出しで記事が出ていますが、前後は略しますけれども、中の必要なところだけ若干読んでみます。「農相の煮え切らない態度に業を煮やした田中首相が農相のクビを切る(?)と言い出したのは消費者米価の引き上げを決めた直後のことである。首相の強い指示で、櫻内農相は「十万ヘクタールぐらいは転用したい」と田中首相に持ちかけたところ、田中首相は「十万ヘクタールでは少なすぎる。三十万ヘクタールを目標にせよ」と再度指示、これとともに宮脇全国農協中央会長に対し農業団体としてこれに協力するよう要請し、その際に「農相が受け入れないなら、私が三カ月ぐらい農相を兼務する」とまで言い切った。田中首相にそこまで言われたのでは櫻内農相も受けざるをえなかったのであろう。」云々、こういう記事が出て、昨年から、私たちは、このことについて、田中首相考えそのものがまさに農業認識のなさからきている、この田中首相のもとで農政を推進するということはむずかしい、これでは食糧危機というものをどの程度認識しておられるのかわからない、また、農業の置かれた立場という現状認識を知らないことになるのじゃないか、農業を侮辱し、農民の生産意欲を減退する以外の何ものでもないということで、かように思って、実はわれわれは憤りを感じております。これは新聞記事だからといって、根も葉もないことを新聞に出すわけはありませんし、また、われわれもこういったことはいろいろ聞いております。証拠として新聞記事をとらなければ、大臣もまた適当な答弁になろうと思ったので、あえて私はこの新聞の必要なところを読みましたけれども、大企業の農家の労働資本を吸収するといったことをまだ考えている総理のもとでは、いまのあり方では農林大臣もたいへんであろうとも思うし、さらには、日本のこの食糧危機に対する、自給率を上げていくという問題等を考えましたときに、これは簡単にはいかぬ。農林大臣の力強い田中首相に対する進言、そしてまた、農民を思うひたむきなその体当たりの力でなければ、田中首相はこの考えをなかなか変えることはないだろうというふうにも思いますし、根本は、こういったところから、以下申し上げる畜産問題あるいは農業機械の問題、あるいはいろいろな問題が起きて、農家は塗炭の苦しみに落ちていく、かように思います。日本農業を預かる主管大臣として、田中首相に真剣に進言をしてもらって、そして、三十万ヘクタールの撤廃問題と、また、日本農業の置かれている危機、そして、このような新聞に出ているような、君がこれを言うことを聞かなければ、おれが三カ月でも農林大臣を兼務してでもやるというような、こういういわゆる一方的な考え、これを直さなければ日本農業はこわれる、かように私は思っております。これに対して、農林大臣の、日本農業を思う立場にある主管大臣としての所信を、答弁を承りたい。
  29. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 瀬野さんが農政のためにたいへん御配慮いただいております御熱情につきましては、心から感謝申し上げる次第であります。今後もひとつ何ぶんお願いいたしたい。これは口先だけではありませんで、実際、われわれは、与党とか野党とかいう問題でなくて、国民全体としてありがたいことだと思っております。  いま、新聞の記事をお読み聞かせいただいたのでありますが、私は、初めてそういうことを承ったわけであります。どういうところでそういうことが出ましたか、私はさっぱり関知しておりませんし、総理とはいろいろな面で常にお話し合いをいたしておりますが、田中総理の農政に対する考え方の基本は、今回の再開にあたりまして、施政方針演説で述べております。あの施政方針演説の中の農政に関するくだりが、つまり、田中総理のほんとうのお考えでございますので、さように御了解を願いまして、その他のことにつきましては、私が話をいたしておりますので、私が申し上げることをそのままお受け取りいただいたらありがたいことだと思っております。
  30. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 大臣、一応あなたもおっしゃったけれども、こういうふうに新聞にも書いておるように、これはうそじゃないんですけれども、主管大臣として田中総理によく進言していただかないと、こういったことでは、日本農業はもうますます壊滅していく。しかも、これは、自給率の向上なんて大臣は言っておられるけれども、もうお話にならぬと思う。田中首相にこういったことは厳に慎んでもらうように、また、考えを変えてもらうように、強く進言してもらいたいと思うが、よろしゅうございますか、大臣
  31. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そういうことも含めて、全体の農政その他について、しょっちゅう会っておりますから、瀬野さんのそういうおことばのありましたことも、そういう機会にはお伝えいたしますが、くれぐれも誤解を願わないようにお願いしたいのは、総理大臣としてのほんとう方針というものは、施政方針演説に申し上げておるのが農政の基本思想である、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  32. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 次に、開発輸入について若干お尋ねをしておきたいと思います。  いわゆる国際経済協力問題でありますが、倉石農林大臣は、就任以来、この国際経済協力、すなわち開発輸入についてしばしば述べておられますけれども、この構想、いわゆる具体的な考えをまず明らかにしてください。
  33. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私が先般私ども考え方を申し上げました中にも申しておりますけれども、しばしばお話しのございます自給率を高めること、そのために必要な施策を着々講じてまいること、しかも、必要であって国内に乏しいものである大豆、麦、飼料作物等については特段の措置を講じて、これもまた増産対策をやってまいること、こういうことでございますが、それにもかかわらず、なお必要量がかなり不足しておるものがございます。これにつきましては、私どもといたしましては、これは農作物ばかりではありませんけれどもわが国は、つくづく考えてみますと、石油消費量の九九%近くが輸入にまっておる。あるいは飼料作物等でもそうでありますから、わが国ほど世界平和をほんとうに心から念願しておる国民はないのではないかと思うほどであります。したがって、そういう外交的な努力を払いながら、一方においては、アメリカ合衆国のような国は、従来引き続いてわが国に一定量の作物を供給しておりますが、そういうものの長期安定的な確保を努力することはまた大切でありますが、その反面におきまして、わが国に対して、開発途上の諸国で、技術協力や、それからその生産等に対するいろいろな協力を希望しておる国々がございます。そういう国々、それは国の事情に応じてやり方は違うかもしれませんけれども、やはり、それらの国々が希望される計画に技術的に協力をいたしまして、そうして相手方の国が開発途上国でありますので、食糧その他のものも必要とするでありましょうから、そういうものをある程度先方に供給することは当然のことであるが、その余力をもってわが国の必要量を満たすために、できるだけわが国のほうにも供給してもらいたい、そういうようなことをやりたい、そのために、今回、開発関係の、近く御審議を願うであろうと思いますが、法案を提出いたしまして事業団を設立してまいる、こういう趣旨でございます。
  34. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 昨日の質問に対する答弁で、大臣は、この開発輸入について申し込んでいる国が数カ国あるということを二回にわたって申されましたけれども、そこはどことどこの国ですか。
  35. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいま申し込んでありますいろいろな国がございますけれども、おもなものを申し上げますと、たとえばフィリピンがございます。これはトウモロコシ生産、ルソン鳥北部のカガヤン河流域約三百万ヘクタール、ここで米の生産とあわせてトウモロコシの開発を進めたいと言っております。それから森林の造成、ルソン島のパンタバンガン地域の焼け畑あとの荒廃地、これは六万ヘクタール、森林の造成をいたしたいという希望を述べております。これは、先般フィリピンの農業大臣が来られましたときにも、私も会っておりますが、そういうことを政府に申し入れておるようであります。それからマダガスカルがございます。これは肉牛生産であります。これで肉牛の開発を進めたい、これに協力してもらいたいということであります。それからもう一つはブラジルでございますが、ブラジルは大豆、マイロ生産で、ブラジル北部のサンフランシスコ流域の約三万ヘクタールで大豆、マイロの開発を進めたいということです。これは私個人でもよく承知いたしておりますけれども、もう少し幅の広い面積で、わが国の協力の姿勢の決定するのを待っておるということを、先般ブラジルから来た農業関係の諸君が申しておりました。  このほかにいろいろありますが、そういうものがございます。
  36. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 農林大臣大臣は、一方では国内の自給率の高度化をうたいながら、他方では開発輸入を強調するというような感じを受けるわけでありますが、このいずれに政策の比重を置かれるのかということをお尋ねしたいわけです。われわれは、当然、あくまでも自給生産をあげていくということが最大限の力を入れるべき方向であるというふうに認識をしておるわけですけれども、その点を確かめておきたいわけであります。
  37. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 国内自給を中心にしてものを考えていくのが私どものたてまえであることは当然なことでありますが、御承知のように、大豆、麦、トウモロコシ等につきましては、なかなかこれは自給ということは困難であります。そこで、先ほども申し上げましたように、われわれに協力を希望いたしておる国々の利益にもなり、そしてまた、その生産物の若干のものがわが国の供給源となるならば、やはり一カ国にたよるということだけでなくて、多角的にそういう供給し得る地域を持っておるということは、わが国農政安定のためにたいへん有益ではないかと、こう考えているわけです。
  38. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 この国際経済協力、すなわち開発輸入については、これはいろいろ問題があるわけで、慎重に進めなければならないと思います。御存じのように、政府は最近この開発輸入をかなり前面に押し出してきておりますけれども、ある意味では発展途上国のためというふうに言われますけれども、私は、これは、わが国の利益、なかんずく企業の利益のために、こういうふうにも言えるのではないかと思って心配をいたしております。いわゆるわが国のエゴに基づいての途上国への要請という発想から生まれたものではないかという懸念がされるわけであります。要するに、資本のひもになってはこれは困るということでございまして、相互扶助の精神に立脚した、かつての南北問題の解消というようなことであれば、われわれもこういったことば大いに歓迎してきたのでありますので、けっこうなことでありますけれども、これを進めることによって、最近起きましたところの、アルゼンチンのいわゆる農業植民地政策という問題が大きくクローズアップして、日本政府に対する激しい批判の表明となっておることも御承知のとおりであります。先般の、田中首相の東南アジア訪問の際の反日デモ等を見ましても、かなりの批判、反発があることも事実であります。こういったことを思いましたときに、いわゆる発展途上国の、弱小国の搾取というようなことになりますと、これはまたたいへんな問題になる。そうしてまた、この開発輸入がどれほど期待できるかということも、いろいろこれは疑問であります。  そこで、この開発輸入については、当然相手国が存在するわけでありますので、相手国の事情によっても開発輸入に対する反応はそれぞれ異なるわけであります。一がいに言えない面もあるのは当然でありましょう。そこで、私は、この開発輸入にあたっては、まず、次のことを特に政府はチェックしてやっていただきたい。まず、一つには、決して資本のひもになってはならない、手先になってはならないということであります。二つには、わが国における農産物の自給率の高度化を阻害し、あるいは農業者への圧迫という結果を招いてはならないということ。三つには、相手国の一部上層階級のみが富を増大して、他の多くの零細な農民、国民の反発等を招くような方式であってはならぬということ。こういったことはいろいろあげればありますけれども、この三つのことを特に注意をして、チェックをして、今後こういったことを検討すべきである、慎重に扱うべきである、と、かように私は思っておりますが、これらを含めまして、大臣見解をさらに承っておきたいのであります。
  39. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 瀬野さんのおっしゃいますことはたいへん貴重な御意見でありまして、もちろん、私どもも、そういう点は、一番十分に留意しなければならない点であると思っております。ただ、しかし、このたび私ども考えておりますことにつきましては、先ほど申しました三カ国とも、やはり先方からの要望でございまして、私ども政府側といたしましては、民間だけにまかせておきましては、いざというときに、一定量の確保、一定量の金額でその予定いたしておるだけのものが来ないような場合には非常に困るのでありまして、したがって、相手方政府と私ども政府とが基本的な協定を結びまして、そして、その開発途上国では、われわれが必要とするようなものももちろん必要とするのでありますから、向こうの民生安定のためにも、そういうものを相手方の国も大いに活用され、同時に、その余力をもって、われわれのほうと、一定価格、一定量のものをコンスタントに入れるような協定を結ぶことができますならば両方とも益するのではないか。そういうようなことで、つまり、東南アジアの国際的平和、それからまた、開発途上国の経済的発展を期するというふうな両得でもありますので、いま御指摘になりましたような大事な点はもちろん念頭に置きながら対処してまいりたいと思っております。
  40. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 次に、畜産問題、すなわち飼料問題について若干の質問をいたします。  本日は、午後一時半から、畜産危機突破緊急全国農協代表者大会を開いて、各党もまた激励等をすることになっております。さらに、昨日からは、茨城県の畜産団体等が中央会並びに全農にすわり込みをするという緊迫した情勢下に置かれております。御承知のように、飼料問題は、全畜種平均の飼料卸売り価格の推移等をトン当たりで見てみますと、昭和四十七年十二月に三万三千円であった飼料が、四十八年一月には三万六千二百円、四十八年三月に四万一千円、四十八年の九月には五万一千円、四十九年二月に六万二千円、そうして近くまた、三月一日からはさらに六百円アップして六万二千六百円ということで、四十七年十二月に比べてみますと、約二倍の値上げであります。御存じのように、昨年一月は値上げが三千二百円、三月四千八百円、さらには九月一万百十二円、そして今回二月に一万一千円、そうして三月一日からはさらに六百円上げて一万一千六百円という、まさに驚くべき飼料値上がりでございます。  そこで、今回値上げとなった一万一千円、並びに三月一日から予定されている一万一千六百円の内容について、政府としては、この算定基礎をどのように検討しておられるか、その根拠を明らかに答弁をいただきたい。
  41. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今回の二月からの配合飼料価格値上がりにつきましては、先ほど先生から御指摘がございましたように、各メーカーの畜種別の生産割合によりまして必ずしも一律ではございませんけれども、おおむねトン当たり一万一千円ないし一万二千円。若干こえるところもございますが、その程度の値上がりになっておるわけでございます。その主要な値上がり要因といたしましては、世界的な飼料穀物の値上がりということも一部ございますけれども、主としては、円為替レートの急落と、石油危機等によります海上運賃の値上がり、あるいは国内輸送費、包装資材の値上りが主要な要因でございまして、いわば飼料原料の需給事情以外の、他の物資と共通いたしますところの、国際的といいますか、あるいは一般的な要因によるものが大半であるというように考えております。メーカーごとにそれぞれ事情が違いますけれども、われわれの把握しておりますところでは、値上がりのうち、円安に伴う値上がり分はおおむね三分の一程度、輸入原料高による値上がり分は、海上運賃の値上がり分を含めましておおむね二分の一程度、残余が、その他の国内輸送費なり、あるいは包装資材費というものの値上がりによるものというふうに理解をいたしております。
  42. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 一万一千六百円値上がりするわけですけれども、それは妥当ですか。その内容、中身はどうですか。具体的にまだわかっていませんか。
  43. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほどお答えしましたような、主として国際的あるいは一般的な要因によるものというふうに見ておりますが、実は、昨年の十二月ごろから業界の一部に値上げをしたいという機運がございまして、農林省といたしましては、実施時期の延期あるいはその値上げ幅の抑制について指導してまいりまして、一月は見送るということになりましたが、ただいま申し上げましたような要因からいたしますと、二月以降さらに延期をするというようなことは畜産経営上は好ましいことではないとは思いますけれども、これ以上抑制するということは非常に困難な事情があるのではないかというふうに考えまして、便乗的な値上げ、説明のつかない値上げ幅というようなことは厳に避けるように指導いたしまして、現在程度の値上げ幅は、各メーカーごとにそれぞれ事情がございますけれども一般的にはやむを得ないものではないかというふうに考えております。
  44. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 これまで、過去には、値上げに対するかなりの対策を講じてきたわけですけれども、今回は何もやっていない、さっぱりやっていないというので、農家も不信を抱いておる。今回は放任状態みたいになっておりますけれども、この点はどういうふうに農林省は答弁、弁解をなさるのですか。
  45. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今回の配合飼料の値上げの要因が、先ほど来申し上げておりますように、一般的な要因であり、しかも国際的な要因であるということからいたしまして、配合飼料のみならず、一般生産資材あるいは生活物資等につきましてもそれぞれ値上がりをしておるような実情からいたしますと、前二回緊急対策として講じましたような対策は今回についてはなかなかとりがたいというような事情があると考えております。したがいまして、前回のような直接的な補てんあるいは低利融資というようなことは非常に困難である、基本的には、畜産物価格に今回の値上がり要因を適正に反映さしていくということが必要であるというように考えております。具体的な方法等につきましてはなお検討中でございますけれども、例年のことでございますが、三月末には、牛乳の保証価格、あるいは豚肉の安定価格等を行政価格として決定をする時期に参っておりますので、ただいま言いましたような、飼料値上がり要因によります生産費の上昇という実態を適正に反映させた価格を決定するように検討をいたしておるわけでございます。  さらに現在御審議をいただいております明年度予算におきまして、子牛の価格安定のための基準価格の引き上げ措置、あるいは鶏卵の調整保管を行ないますための液卵公社の機能の充実ということに関連する予算を提出をいたしておりますので、これが成立いたしますれば、価格の推移を見ながら的確に措置をしてまいりたいというように考えております。また、養鶏関係、鶏卵あるいはブロイラー等につきまして、特に、卵につきましては、ここ二、三年来生産過剰ぎみの傾向がございます。その中におきまして、生産費の中の約七割にも達しますえさの価格値上がりするということはかなりの経営の負担になりますけれども、やはり、生産団体を中心といたしました生産なり、出荷の計画的な調整ということによりまして、適正な市場価格が実現するように努力をしていただく必要もあるということで、現在、生産者団体と具体的な実施方法について検討いたしておるところでございます。  さらに、昨年の秋以降、牛肉価格が、特に、輸入ものと競合いたします乳用雄牛の牛肉価格が低落をしてまいっております。その点を考えまして、下期の牛肉の輸入分の一部につきまして、畜産振興事業団が輸入調整措置を講ずるというようなことによりまして、牛肉価格の低落によります畜産経営、肉牛経営農家の負担を軽減するという措置をすでに講じておるわけでございます。
  46. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 本日の畜産危機突破全国大会の議案がきょう配布され、全農においても、本日、トン当たり一万一千六百円の内容の試算が出されておりますが、おそらくこれはそちらの手元に入っておると思います。私、けさ急いで取り寄せたわけですけれども、これは持っていますか。
  47. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 きょうの提出資料につきましては、私どもはまだ入手をいたしておりません。
  48. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 いつかも農林大臣質問しましたように、全農に対しても、中央会に対しても、農林省は監督指導権があるわけです。こういう重大なことで国が騒いでいるときにこういうことですから、大臣、十分にひとつ注意してください。こんなだらしのないことでどうしますか。これは全国の農民がかんかんにおこりますよ。私でさえも、実はきのう手に入れたのです。もちろん、向こうも相当真剣にこの内容については検討してきたことは事実です。農林省も相当いろいろ知恵をかしたり、指導しておられたろうと思うのです。これはけしからぬ問題だと私は思うのです。一万一千六百円と、優に二倍に市場価格が上がって、すわり込みをする、大会を開くということで、畜産はもうほんとうにぎりぎりの線まで来ています。こういったときに不見識もはなはだしいと思うのです。おそらく、持っていても、困るので言わぬのかもしらぬけれども、私に言わせれば、こういった内容等を検討しなければ困るのだ。時間があればもっと詰めたいことがあるのですけれども、最近横浜に入っている配合飼料の原料と比較して、今回の値上がり幅が妥当かどうかということも実際検討しておられるだろうと思うが、検討していただかないと、農民はたいへんな不信感を抱いております。そういう農林省の姿勢でどうしますか。このトン当たり一万一千六百円の内容等を見ましても、原料費値上がりによる製品値上がりの額が九千二百五十五円、原料以外の値上がり額が二千三百四十五円、その内訳として、包装資材費値上がり額が千百四十五円、原料運搬費、製品加工料、金利等の値上がり額が千二百円、そしてさらに、三番目に、製品値上がり額が一プラス二——さっき言ったプラスをしますと、総計で一万一千六百円、こういう試算が出されております。こまかい内容等も試算してありますが、これをいろいろ詰める時間等もございませんけれども、これらの問題について、はたして妥当であるかどうか。農民が安心するように農林省としては指導監督をしていただいて、そして、今回の値上げはやむを得ないと——過去三回にはずいぶんと手厚い保護をして手を打ってきたけれども、今回は放任状態である。八方ふさがりというか、まさに、全農のほうももう無理は言えないという感じかしらぬけれども、あまり言い寄ってこない。自民党の農政部会においても、なかなか、強力なこれの推進をはかろうとしない。農林省も、何かしらぬが、その場に流されているようなかっこうだ。大蔵省なんかに言ってもとてもしようがないということで、腰砕けになっておる。こういったことではけしからぬと思う。畜産は、第二食管と言われるように、いわゆる米の次に大事なものです。米の保護を思えば、私は、畜産農家に対してもっと手厚い保護をするべきだと思う。二百十億円の、この間のいわゆる配合飼料価格安定基金の拡充措置、これらについても、大蔵省は返せと言ってきている。これはとんでもない話だ。返すどころか、まだ一千億か一千五百億ぐらいこの飼料の危機に補てんをして擁護をしてやるべきだ、これは国民が食べる動物性たん白質である、かように私は思うのです。  農林大臣、この点はどうですか。二百十億を返すことがないように強く大蔵省に迫ってもらいたいし、一千億か一千五百億ぐらい出すべきであると思う。大蔵省に強く言うべきだと思うが、大臣、いかがですか。
  49. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、当初この基金に二百十一億出しますときに、大体七年間ぐらいな目標で逐次積み立てて返済をするという話でこういう措置を講じた。財政当局にもそういうことを言ってあるのでありますが、これにつきましては、七年というのは、そういう畜産家が積み立てし得ることを予測し、両方ともそうだということでやったわけでありますから、その事業の推移によりましてはいろいろな手段を講じていくことは私は考えておりますが、これは返済しないという形にいますぐお答え申し上げるということは困難だと思います。
  50. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 いまおっしゃった答弁は全部記録いたしますから……。  そこで、二百十億円、これは農林大臣も腰が弱かったと私は思うが、農林省も弱かったね。これは、最初に二百十億円は絶対返さないことにしてがんばらなかったから、この次も、次も、今度は基金に補てんをしろと言っても、前例があるために、次から次からおそらく返す。どうせ返す金ならばということで、もうみんないろいろと二の足を踏むというようなことで、これは問題だと思うのですね。二百十億円は絶対返さないということで進めるべきだった。農林省はもっと強い腰で臨むべきだと思う。どうしても大蔵省に弱い。ほかのいろいろな予算要求その他の時期でもあったし、いろいろな要求もする手前、このことであまり強く前面に出せなかったのかもわからないけれども日本国民食糧をまかなう農林省は、畜産農家を救うためにほんとうに真剣に戦うべきだったと私は思うのです。もう残念でならない。これが前例となると、今後、次から次と、基金に補てんをせよと言えばやはり返さなければならぬということになってくる。私は、この際、この重大危機を迎えて、何としても二百十億は返さないという方向で進んでもらいたいし、さらに、基金に補てんということを真剣に考えてもらいたいと思う。トン当たり千円や二千円の補てんでは、これはもうどうしようもないわけです。この際思い切ったことをやらなければ、畜産農家はいよいよ壊滅的打撃を受ける、かように私は思っておる。そういう意味で、強い姿勢で臨んでもらいたいと思うわけです。  そこで、私は、畜産がたいへんな危機に到達しており、また、再起不能におちいるようなこのときにあたりまして、三つのことをぜひやってもらいたい。時間の関係があるので、三つを並べて申しますので、これに対する見解を承っておきたい。このことは、私は、本日の大会でるる報告しておきたいと思います。  まず、第一は、飼料畜産物生産目標を樹立すべきであるが、このことに対して検討しておられるかということです。二つには、飼料価格安定のための長期抜本対策の樹立が、これまた緊急に必要でありますけれども、これに対してどういう見解を持っておられるかということ。もう一つは、再生産所得確保のため、畜産物価格政策を抜本的に改めるべきであると思います。  たくさんありますけれども、以上三つのことを聞きたいのと、そうしてさらに、これらを含めて畜産振興審議会を、いわゆる酪農部会、食肉部会、畜産部会等を開いて、早くこれを検討すべきだと思うが、これらについて大臣見解を承っておきたいと思います。
  51. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 生産目標は、もちろん、私どもそういうものを置かなければなりませんが、「農産物需給の展望と生産目標の試案」をすでに作成いたしまして、現在、農政審議会において審議を願っておるところでありますが、この試案におきましては昭和五十七年の目標量を、生乳は八百四十八万二千トン、それから肉類は、牛肉を除いて三百四十五万五千トン、鶏卵は二百二十七万一千トン、飼料は三千五百七十三万五千トンといたしておりますけれども、最近の消費動向、それから国際情勢などの情勢変化を織り込んで、牛肉、飼料につきましては、見直し作業を行なうべきであるとの意見もございまして、目下、農政審議会において検討をお願いしているところであります。  先ほど私が二百十一億のお話しを申し上げましたのは、あの当時、私どもといたしましては、たいへん飼料値上がりを憂えたものでありますから、古米七十万トン、最終的にはこれをたいへん安い値段で払い下げをいたしましたことは御存じのとおりで、そのほか融資のめんどうを見ております。その上に二百十一億の基金繰り入れをいたした。こういうように、私どもといたしましては、全農のような、中核的に、この畜産家と一番密接な関係を持っておられる方々との話し合いの上で、これでけっこうでございますということでいたしたわけであります。そのとき、農林省として財政当局を説得いたしますためには、当然この基金の繰り入れでやりますので、将来着実に積み立てをいたしまして、七年の計画で返済するという一応の計画でありますが、これにつきましては、そのときの事情に応じて、さらにこれに対してできるだけのことをしてあげなければならぬということはもちろん考えられることでありますけれども、そのことは先のことでありますが、先ほど畜産局長もお答えいたしましたように、最近の事情で飼料のフレートが上がったり、対ドル相場の変動等によってコストが非常に高くなってきておるという事情を織り込んで、いま、一万一千円の値上げの話が出ておるわけでありますが、私ども畜産物価格を指導し決定してまいる中間におきましては、そういう諸般の事情を勘案して、そうして畜産家がやっていけるように最大の努力をいたすわけでありますので、このことは瀬野さんもよく御理解願えることだと思っております。私どもといたしましては、そういう趣旨で、政府もしばしば言っておりますように、自給度と申しましても、その自給度を向上していくためには、鶏、豚等についてはどうにかなるが、それの飼料が大きな問題であるということは常々言っておるわけでありますので、必要であるにもかかわらず国内で生産されないようなそういう飼料につきましては、特段の措置を講じて、畜産振興ができるように考えておるという原則においてはちっとも変わっておらないわけでありますので、この畜産家と飼料メーカーとの中間にあって、私どもといたしましては、これが適正に行なわれるように、さらに全力をあげていくことはもちろんのことでございます。
  52. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 飼料問題については、本日も大会がございますし、さらにまた、今後の畜産危機打開のためには、これはいろいろと問題点がございます。いずれ、また、当委員会等で関係省庁と詰めていかなければならぬと思いますが、重大な、せっぱ詰まった、ぎりぎりのところまでもう来ているという状況下にございます。  このことについて、私が今回特にふしぎに思うことは、従来、三回の値上げについては、いろいろと検討されて、手厚い方法で対策がとられてきたにもかかわらず、今回は放任状態みたいなことになって、もう値上げやむなしというようなかっこうになっております。先ほども指摘しましたように、一万一千六百円の積算の根拠についても、当局ははっきりと言明ができないという状態でありますが、実際にわかっていてもいま即座にはできないのか、ぐあいが悪いのか、いろいろ言質をとられることがまた心配なのかわかりませんが、農林省は、畜産農家に対する真剣な立場から、この内容等についてはもっと十分検討して、次の機会に、これらに対する見解を具体的にお聞きしたい、かように思っております。と同時に、畜産農家はたいへんな危機に遭遇し、まさに、すわり込みという異例のことまで全農あるいは中央会にはなされておりますし、さらには、各地で、畜産危機突破大会が異様なまでにも行なわれつつありまして、たいへんな重大なときを迎えておるのであります。大臣は、これに対しても、農業基本法の問題とともに、重大な決意をもって臨んでいただきたいということを強く申し上げる次第です。  時間も参りましたけれども、もうちょっと時間をいただきまして……。農業生産資材の高騰の問題で通告しておきましたので、それじゃ一点だけ承りまして、あとは若干の資料要求をして質問を終わりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思いますが、農業生産資材については、今回のつくられた石油便乗値上げ等によって、農業生産に不可欠な農業生産資材が軒並みに暴騰していることは御承知のとおりです。私が四十八年の十二月の農林物価指数等を見ましても、生産資材が、総合で、四十五年に比較して四三・四%の上昇となっておりますし、上昇が特に最近著しくなっておりまして、前年同月対比では、生産資材総合で三〇・八%も暴騰しておる。資材別のおもなものを見ましても、たとえば農業用ビニールが四四・二%、ポリエチレンが六八・八%、重油が五五・四%、ガソリンが四四・七%、飼料が四五・九%、果実用の段ボールが四〇・五%、農機具が一四・五%、肥料が一〇・五%暴騰しております。飼料、農機具、肥料については、今年に入ってまたさらに値上げされておることも御承知のとおりです。そこで、このオーバーな便乗値上げが原因であることがすでに明らかになっておりますけれども農業生産資材について、政府は、最近の生産出荷数量、生産コスト、卸値、末端小売り価格等をどう把握しておられるか。これらについては、答弁を求めると時間がかかりますので、資料をもってぜひお願いしたい。これは委員長に特にお願いしたいと思います。  なお、こういった問題について、最近の値上げ幅について、この妥当性はどうかということは、大臣はどう思っておられるか。さらには、こういった問題について、農業生産資材の高騰によって多大の影響を農家は受けておりますので、引き下げ勧告をなすべきじゃないかと思うが、こういったことに対してはどう考えておるか。この点を最後に簡潔に承りまして、答弁を求める次第であります。
  53. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今回の石油削減を背景にいたしまして、農業用資材、飼料、農薬等の農業生産資材の価格につきましては、最近上昇を見ておるようでありますが、原油価格や原材料のコストが上昇しておるので、その面ではやむを得ない面もあるかもしれませんけれども、これらの資材の価格は、農業者の団体でございまする全国農業協同組合連合会が、各資材メーカーとの協議できめておることは御存じのとおりであります。そこで、今後の価格の推移を見守りながら、私どもといたしましては、必要に応じて関係者と協議をいたしまして、関係団体等を指導して、便乗的値上げは厳に抑制するように、なおこういうことについては注目しながら、いまのような趣旨に沿って指導してまいるつもりでございます。
  54. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 この便乗値上げや、こういった機農具に対する問題は昨日もいろいろ論議されたそうでありますが、農民に対して重大な影響を及ぼしておりますので、対策を早急に立てていただきたい。先ほど申しました資料をぜひお願いしたいと思います。  さらに、私は、もう一つ資料要求をしておきますが、稲作転換協力特別交付金について、従来から現在に至るまでの使途についてどのように掌握しておられるか、これらについて資料要求をぜひお願いしたい。委員長にお願い申し上げる次第であります。  最後に、時間が少しなくなりましたけれども、もう一、二分時間をいただきまして、先日から通告しておりました問題ですが、米価審議会のあり方ですね。これは、私たちも、昨年の八月に、あの暑い中に、夏休みを返上して米価審議会にすわり込み等をやって戦ったわけでありますが、何としても、田植え前に米審を開いていただきたい。これがわれわれの念願であり、また、当時の機内農林大臣に対しても私たちは強く要求し、検討するということで進んでまいっております。昨年は、早期米がとれて、いわゆる品物ができて値段がきまる、こんなばかな話があるかということで、これはたいへん論議を呼んだところでありますが、こまかいことはいろいろ申しませんけれども米価審議会については、農林大臣の昨日の答弁によると、田植え前は無理なようなことを言っておるようであるけれども、昨年の例から見て、農民は相当異常なまでにも激怒しておりますし、これはけしからぬ問題であります。前農林大臣から引き継ぎも十分受けておられると思いますが、米審はどんなことをしても田植え前には行なうといったことで、強い姿勢で検討して、資料を精力的に集めて進めていただきたい。このことを一つ申し上げる。  と同時に、けさ私はテレビで報道を聞きましてあっと思いましたのですが、農林省が上米、中米に区分したところの値上げ抑制の指導価格というものを、食糧庁が準則を設けて、違反業者に対してはいろいろきびしい措置で臨むというようなことがテレビで放送されましたけれども、これについては、公開の席で——私たちはけさテレビで知ったわけですけれども、このことについての内容を簡潔に承って、次の機会にまたいろいろと質問をすることにして、以上の二つのことに対する答弁を大臣から承って、私の質問を終わりたいと思います。
  55. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 本年産の政府買い入れ価格につきまして、米審をいつ開くかということはまだきめておりませんが、政府買い入れ価格は、従来から、六月下旬以降七月にかけて決定するのがむしろ通例でございます。必ずしも田植え前でなければならないとは思われないのでありますが、その決定時期を早くすれば、買い入れ価格の決定に必要なデータが出そろわないという問題もございます。これはきのうもお答えいたしたつもりでありますが、現時点で、本年の政府買い入れ価格決定の時期を例年より早くしなければならないとは考えておりません。いずれにしても、本年産の生産米価決定の時期につきましては、所要の資材整備の上、状況を勘案して慎重に取り扱ってまいりたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  56. 三善信二

    ○三善政府委員 精米の小売り販売価格に関します指導でございますが、実は、御承知のように、精米の販売価格につきましては、最近消費水準が非常に向上してまいりましたし、特に、良質米に対する選好といいますか、好みが非常に高まってまいっているわけでございます。最近、消費者価格というのは全体的に見て大体安定をしていると私ども考えておりますが、地域によりましては、その消費者の嗜好、品質に対する好み、そういうことで自主流通米の一部等が多少高いという面も、適正な価格で販売されていないという面も一部にはあるようでございますし、また、そういった点で、先年来、国会等でも、一応そういう指導価格等をつくって指導したほうがベターではないかというような御意見もありましたし、私ども、一月の十八日でございましたか、米価審議会の懇談会を開きまして、こういった指導をしたいということではかりましたところ、それはあまり画一的な指導というのは好ましくない、むしろ、都道府県の実態によっていろいろ価格形成というのも行なわれているし、都道府県知事が主体的にそれをやっていくということが現実に即したやり方であるというようなことも言われておりますし、したがいまして、今後指導します場合に、都道府県知事がそういう実態に応じた精米の指導価格をやっていく、それに対して食糧庁は十分都道府県知事と相談し、協議をしながら、各県で非常なアンバランスがあると、これはまた好ましい結果にならないわけでございますから、そういう点も注意して、食糧庁で準則等をつくりまして、都道府県がこれを指導をしていくというようなふうにしていきたいと思います。これはやはり多少手続等がかかりますので、都道府県内でいろいろその意見も聞き、あるいは会議も持って、早いものは大体三月をめどにしてやっていきたいと思っておりますが、多少四月にずれるとか、そういうことで、そういう精米の価格指導について、都道府県別に、都道府県の実態に応じた指導をできるだけやっていきたいというようなことでございます。
  57. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間がないので、ここで論議するわけにはいかないけれども、私は、一応それは聞きおくことにしておきますけれども、実は、各県でも標準価格米というのがまだ店頭にないところがあるわけで、実際にまた品切れで、買いに行ってもない。標準価格米に銘柄米をもっと導入すべきであり、さらには、一般の庶民がほんとうに安い米を食べて、この物価が上がるときに標準価格米を大いに買うというふうに力を入れてあげなければならぬと、かように思うわけです。すでに、その標準価格米でさえも、現在、埼玉県なんかにおいては、袋代を一袋二十円の価格が取られる。千六百二十円。そこでもう、袋代だけでも二十円は上がっていた。これは全国的にはあちこちそういう声が多い。政府もそれに対してはほとんどやむを得ないというようなかっこうで、袋そのものが石油製品であるからしかたないというような考えのようであるけれども、これはけしからぬと思う。埼玉県だけでも、この袋代だけが一年間には二億円。全国四十七都道府県を見ましても、約百億ぐらいの金がかかるのじゃないかと思うけれども、こういったことに対してはどういうふうに考えておられるか。標準価格米にもっと銘柄米を導入し、これにほんとうに力を入れて、庶民のために、こういう高い物資のときだから考えてやるべきだ。また、こういう方向で、店頭に標準米を完全に置くように指導する、こういったことに力を入れるべきだ、こういうふうに思うのだけれども、その点は、長官はどういうふうに考えておりますか。
  58. 三善信二

    ○三善政府委員 標準価格米については、これは御承知のように、価格も指導して守られているわけでございまして、全県店頭には標準価格米を必置しておくようにということで指導しております。私ども食糧事務所を通じまして、置いてあるかどうか、そういう調査もいたしております。最近の状況では、小売り店は六万軒ぐらいでございますが、二%ぐらいいつも調査をやっておりますが、場合によっては二%ぐらい置いてないようなところも、たまたま調査時点であったわけでございます。そういうところにつきましては、私どもさっそく指導して、必ず置くようにということで、これは強力な指導をいたしております。で、標準価格米につきましては、御承知のように、非銘柄米を充てておりますが、全体で三百万トンぐらいは、これを標準価格米として店頭に置くように指導しておりますし、必置をして、御承知のように、大体基準千六百円でこれを売るようにいたしているわけでございます。  袋代の話が出ましたけれども、袋代につきましては、本質的には、こと標準価格米というのは袋代を含めない価格でございまして、その指導をやっているわけですが、県によっては、相当多くの県が袋代を別に取っているところもありますし、また、従来は、あの袋が大体四、五円、五、六円ぐらいの安いものでサービスをしておったところもございますが、最近、御承知のように、袋代が五円から二十円、二十五円ぐらいにはね上がっております。したがいまして、これはまた非常な負担にもなりますし、袋代についてどうしてもサービスできないというようなところについては、標準価格米というものはもともと袋代を別にしてきめているわけでございますから、袋代はやむを得ない場合には取ってもいたし方ないということで考えているわけでございます。現に、相当の県で袋代を取っているところもございます。そういうことで私ども指導をいたしているような状態でございます。
  59. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間がありませんので、以上で質問を終わります。
  60. 仮谷忠男

    仮谷委員長 なお、瀬野委員にちょっと申し上げますが、先ほど要求のありました資料は、一応委員長の手元へ提出を求めまして、提出されたら委員会へお配りする、このようにいたしますから、御了承ください。
  61. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 よろしくお願いします。
  62. 仮谷忠男

    仮谷委員長 この際、午後一時四十分に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  63. 仮谷忠男

    仮谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場昇君。
  64. 馬場昇

    ○馬場委員 農林大臣質問をいたします。  最近の石油危機、物価高、物不足、こういう状態の中で、国民の生活はまさに脅かされ、社会不安さえもある。私は、国民の生活にとって非常事態ではなかろうかというぐあいに認識をしておるわけでございますが、これはひとえに政府の大企業中心の高度経済成長政策の失敗であり、外交のまずさという点もあろうかと思いますし、さらには、石油という有限な資源に対する認識なりあるいは対策の甘さ、こういうところが原因でこういう非常事態にまで追い込まれたと私は思うわけでございます。石油危機という形でこのような状態になっておるわけでございますが、私は、この次に食糧危機というものが目の前に来ておるのではないかというぐあいに思うわけでございますし、それは気象が異常であるというようなこともありましょうし、世界の人口が今日三十七億人だ、これが二十年後には倍近くの七十億人になるという見通しさえもあるわけでございますし、そういう中で食糧危機というものが出てくる可能性がある。また、石油を武器に使うという状態も言われましたけれども、だれがいつ食糧を武器に使わないとも限らないという予想さえもあるわけでございますし、こういう問題につきまして、当面、食糧危機が目の前に迫ってきておるということに対して、いまから食糧の対策を立てておらなければ、再び石油危機以上の混乱が起こる。こういうことが予想されるわけでございますが、この食糧危機に対する大臣認識、さらに、これに対する対策というものを最初にお伺いしたいと思います。
  65. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 たいへん大事なことを御指摘になったわけでありますが、有限であるはずの石油等についての見込み違いといいますか、そういうようなことが政府の責任であるというお話しの点を除いては、あとの点は私どもも大体非常に憂いを同じゅうしておるものでございます。もともと、こういうことがある前から、政府といたしましては、食糧自給度の向上というふうなことには力を入れておりましたことは、長い農政の歴史をごらんいただければわかることだと思っておりますが、しかし、御指摘になりました世界全体の人口の増加——まあ、人口の増加というのは、大体かなり長期的な見通しがつくわけであります。厚生省の人口問題研究所あたりの話を聞きましても、この趨勢でいけば一九九〇年代には大体六十億になるんじゃないかということですが、そういう場合に、世界的な食糧がどうなっていくであろうか。それについて、耕作可能な面積、これは、開発途上国などでは十分な調査もできておらないかもしれませんけれども、こういう点を考えますと、全人類的な問題として大きな問題であることはお説のとおりだと思います。幸いなことに、日本は、北に亜寒帯から南は亜熱帯に至る非常にバラエティーに富んだ作物のできる国でありまして、こういう地理的条件をフルに効果的に動かすことによって、私ども国民の主食はできるだけ不安のないようにいたさなければならぬ。しかし、その中でも、現在あります耕地面積、それから可耕面積等を計算いたしてみますと、いま必要ではあるがわりあいに足りないというような食物、たとえば大豆にしても、麦にしても、飼料穀物等にしてもそうでありますが、そういうものは、やはり、国際的な程度の考え方で、これを安定的に確保するということに当面力を入れながら、国内のそれらのものについても、あとう限りの生産拡大をいたしてまいりたい、このように考えておるわけであります。
  66. 馬場昇

    ○馬場委員 今日の物価高、物不足と生活不安という原因について、いろいろ政府施策の失敗があったのじゃないかということについてはあまりお認めにならないようでありますけれども、私どもとしては、そこにやはり原因の大きなものがあるというぐあいに考ええているわけですが、食糧危機というものに対する認識というものはまさに一致しておるようでありますし、これについては十分対策を立てていただきたいということをお願いしておくのですが、同僚の議員諸君が各方面にわたって質問いたしますので、私は、特に、水産関係を中心にしてきょうは質問したいと思います。  まあ、大臣も御承知のとおりに、昨年、公害によりまして非常に海が汚染され、そして、また、魚介類の安全が問題になり、まさに、水産業にとっては壊滅的な打撃となり、漁民の生活というものはまさに塗炭の苦しみに追い込まれた。こういう状況が昨年あったわけでございます。しかし、今日私が感じますのは、昨年あれだけ壊滅的な打撃を受け、非常に重大な問題を惹起しておった水産業関係については、今日、この物価高、物不足ということが非常に表に出てきて、去年あれだけ問題になった水産業関係の対策が置きざりにされておる。忘れられたとまでは言いませんけれども、置きざり、なおざりにされている感じが私はするのですが、これ四ついての大臣見解を承っておきたいと思うのです。
  67. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのございました漁業に対する公害問題については、これは、たいへんこのごろは情報網が発達しておりますので、たとえそれが真実のことでなくても、伝播力は非帯に盛んなものでありますので、真偽取りまぜてずいぶんいろいろ喧伝されました。政府は、そういう問題につきまして、たとえば水産関係では、問題視されました九水域について十分な調査をいたしまして、その結果、御承知のように、その地域についての危険度について発表いたしましたことは御存じでいらっしゃると思いますが、そのほか、その中の、たとえば水俣湾等の問題あるいは徳山湾等の問題については、それぞれの指示をいたしまして、その指示に従って地方、県においても処理をいたしておることも御存じのとおりであります。なお、私どもといたしましては、ことに日本人は動物たん白の中の五〇%以上魚介類のたん白をとっておる国民でありますので、こういう点については、これからもさらに警戒を厳重にしてやってまいることは当然のことでございますが、全体の水産につきまして少し手抜かりではないかという御意見のようでありますが、政府としては、水産業については特段の努力をいたしております。  本委員会でも、すでに、ベネズエラで開かれます海洋会議の問題等を含めて、漁業の将来についていろいろお話しがございましたが、四十九年度予算編成にあたりまして、私どもは、沿岸の漁港の整備であるとか、漁業の構造改善等にできるだけの予算を獲得いたしたと思っておるわけでありますが、これで十分というわけではありませんけれども、そういう意味で、一つは、国際的になかなかむずかしい問題を控えておる。それを前提にして、沿岸の漁業についての拡大方針について、しかも、農業に劣らない努力を水産業にもいたしてまいるつもりであります。
  68. 馬場昇

    ○馬場委員 具体的な漁業振興策についてはあとでお尋ねいたしますが、特に、私は、ここで、汚染の問題についてさらに聞いておきたいと思うのですけれども、海は死につつあるとか、あるいは死んでしまったとか言われ、海を生き返らせろ、きれいにしろというのは、やはり漁民の熱望だと思うのです。  それで、ことしの四十九年度において、工場排水なり、あるいは汚水なり、こういうものが海に入り込まないようにするにはどうするか、あるいは、入り込んできたものをどうやってきれいにするか、汚染をどうやって排除して、海を生き返らせ、きれいにするかという、こういう面に対する予算的な裏づけと言いますか、予算を盛った対策は、どういうものを農林省として着手、計画されるのか。その辺について、少し具体的にお尋ねしておきたいと思うのです。
  69. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話しがございましたように、だれが考えてみましても、工場排水をそのまま海水または河川に放流しておくというふうなことは無責任きわまることではないかと考えるはずでございます。これが世界的に行なわれるとすれば、全人類的、全地球的な大問題でありまして、われわれの生存に関する問題でありますので、御承知のように、世界各国とも、そういうことについて非常な力を入れておるわけでありますが、わが国におきましても、さっき申し上げました水俣の問題にしても、徳山にしても、化学工場等において水銀の問題が出てくる。そういうことについて、その水銀を、そのまま使い古しのものを放出しないように、隔膜法に切りかえる操作をいまいたしておるとか、そういうことで力を入れておるわけでありますが、御指摘の問題はたいへん大事な問題であって、われわれも同じ考えでやっておるわけでありますが、農林省関係に関するいまお話しのような点につきましては、事務当局のほうから御報告いたします。
  70. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  水産庁といたしましては、四十八年度におきましては、PCB、水銀等による魚介類の汚染調査と、公害被害防止のための施設の設置及び器材の備蓄を促進し、あわせて、生産性の低下した漁場のしゅんせつ等による漁場機能の回復、赤潮被害防止事業、水銀等汚染被害業者等の救済事業等の措置を講じまして、予算の額といたしましては、四十八年度は約五億であったわけでございますが、四十九年度の要求におきましては、これらの施設を充実するとともに、新たに漁業公害の調査、被害防止指導体制の整備、一般国民を対象といたしました漁業の公害防止の啓蒙宣伝、それから、原因者不明の油濁による漁業被害の救済、赤潮発生の基盤と考えられる汚染海底泥の堆積量、堆積状況調査等の施策を行なうことといたしまして、合計二十五億五千七百万円の予算を四十九年度においては要求しているわけでございます。したがいまして、水産庁の予算におきましては、この面について画期的にふやしているという状況になっております。
  71. 馬場昇

    ○馬場委員 特に、水産業という立場から、汚染問題について画期的にふやしたと言われますけれども、二十五億というのは少ないのではないかと私は思いますけれども、この点については、今後、水産業という立場からの汚染問題についての発言といいますか、強硬な施策といいますか、それをさらに充実していただきたいと思うのです。  そこで、具体的にさっき大臣も言われましたように、水俣湾については指示をしたというようなお話しもございましたが、その指示の内容はわからなかったんですけれども、水俣湾のヘドロの処理の問題が現在どうなっておるのかということを聞きたいわけです。水俣病は、大臣ももう十分御承知のとおりに、ああいう悲惨な状況は世界の公害の原点だと言われておるわけでございますし、水俣湾のヘドロ処理というのは、まさに、世界の公害の原点の水俣病対策の重要な一環であるということは言を待たないものだろうと思うわけですし、さらには、海がよごされるのをどうやってきれいにするか、具体的に言うと、ヘドロがどうやって除去されて、きれいな海にあそこが生き返るかということ、このことは、漁業をする全国の漁民というものは注目をしておると私は思うのです。だから、この水俣湾のヘドロというものは一日も早く処理をしなければならないと思うんですが、先ほど、水産業サイドから公害問題についても相当がんばっておるというようなことを言われましたけれども、私が現地からながめました限りにおきましては、水俣に奇病というものが言われ出しましてから約二十年たっておるわけです。さらに、それが有機水銀の中毒だとわかりましてからも十五年たちました。それで、また、国が公害病として認定してからも五、六年たったんですが、その間に水産庁サイドから水俣湾をきれいにするというような声が出たり、施策が行なわれたということは、残念にして私は聞いていないんです。これは非常に怠慢ではなかったかというぐあいに過去のことを思います。だから、大臣、二十年近くたったあの場所で、水産庁、水産業関係からの発言なり施策がいままであまりなかったという反省も含めながら、水俣湾のヘドロの処理について——先ほど言いましたように、全国の漁民が注目しているし、あるいは世界の人々が公害の原点という立場で注目をしているという立場から、このヘドロ処理というものについての大臣の御見解を最初に伺っておきたいと思います。
  72. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもはそれぞれの担当がございまして、いまは、主として、環境庁が公害問題についてやっている。これも、問題が大きくなってまいりまする前に環境庁という役所ができまして、全国的な環境の立場からやっておるわけでありますが、魚について、いま水俣の話でありますが、ほかでもそういうお話しが出まして、水産庁といたしましては、検体をとりまして、それを分析し、研究をするということはいままでもやっておったわけでありますが、特に、水俣についてどういうことをいたしておったかということについては、これも事務当局から御報告いたします。
  73. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  ヘドロを除去する問題につきましては、現在、熊本県と運輸省、それから関係方面、環境庁で話し合っておるというふうに私どもは聞いております。  なお、水産庁としては、魚の汚染度につきましては調査をしておりました。
  74. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣の答弁にもあったが、いろいろ各省庁の担当があるということは私もわかるんですよ。また、いまの答弁でも、検討は環境庁とか運輸省がやっているということですが、担当は違っても、そこに対してものを言うとか、あるいは、おくれておれば急がせるとかいうことは、漁業並びに漁民という立場から、農林大臣あるいは水産庁当局としては当然強力な発言をしなければならないし、推進をしなければならないと思うのです。いま聞いておりますと、それはよそのことだということでもって、水産庁関係でも、この問題に対して十分な取り組みをしていないというような感じがするんですが、それはどうですか。
  75. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 漁業の面からは、先生御案内のように、ただいま水俣湾は仕切ってございます。そこで、その中で、漁業が自主規制でできなくなっておりますので、そういった漁業者が困らないように、他の、より沖で漁業ができる権利を与えて、そういった形で漁業を継続させるというような措置をとっております。  なお、調査につきましてさらに申し上げますと、たとえば水俣地区におきましては、昭和三十五年ぐらいから、水産研究所で一応の調査はしていたわけでございます。
  76. 馬場昇

    ○馬場委員 漁民の立場からいたしますと、あそこは魚が一ぱいおるのですよ。それがとれないわけでしょう。仕切っておるといっても、これは県が仕切っておるわけですよね。そして、また、魚を、今度仕切り網なんかをやろうとして、とって、とった魚を焼いたりなんかしているわけでしょう。問題は、よそでそれをやらせるというのじゃなしに、そこに魚がおるが、とれない、とった魚を廃棄しなければならない。こういう状態に対して、水産庁はどうだというのです。
  77. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 基本的には、その仕切っている中で漁業をするためには、ヘドロを取り除く必要があるわけでございます。したがいまして、現在、先ほど申し上げましたように、県と中央の関係の官庁との間で、さらにそれに原因者負担というような問題もございますので、そういった面も含めまして、ヘドロの除去については、四十九年度からなるべく早く取りかかりたいということでやっておるように私どもは聞いておるわけでございます。  さらに、最近の調査を見ましても、魚の汚染度というのはかなり低くなっておるというデータも出ております。しかしながら、そこで漁業をやるわけにはまいりませんので、私どもは、一日も早くそういったヘドロを除去して、水がきれいになるということが大切だ、こういうふうに思っております。
  78. 馬場昇

    ○馬場委員 聞いておるということで、私は、これはやはり怠慢ではないかと言うのです。聞いておるのではなしに、やはり、水産業という立場から、自分も中に入って、たとえば運輸省なり県なりがやっておるならば、しょっちゅうそこと話をして、水産業サイドから積極的にものを言ったり対策を立てるといったことの行動がないじゃないか、こういうことを実は私は言っているのです。聞いておる程度ではいけない。権限がどこにあろうとも、水産庁は主体となって動くべきだということを言っているわけですが、それ以上押し問答をしてもしようがないと思いますけれども、そういう立場でやってもらいたいと思う。  そこで、これは具体的にやっておるというところに聞きますけれども、ヘドロ処理の方法というのは、具体的に計画ができ上がっておるのか。これは、たとえば運輸省関係ではないかと思うのですけれども、ヘドロ処理の工事方法というものの計画ができ上がっておるかどうかをお伺いしたい。
  79. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  水俣湾におきますところの、水銀を含んでおる汚泥の処理の件につきましては、先ほど農林省から御答弁がございましたように、関係各省間で連絡をとりながら、その対策を練っているわけでございますが、まず、この汚泥の処理の方法で、先生の御指摘の工法はどうかということでございますが、これまで、水銀を含んでおります汚泥がどの範囲に分布しているかという調査をやってまいりました。これは熊本県が実施してきたわけでございます。それで、運輸省といたしましては、これに技術的な側面からお手伝いをしながらやってきたわけでございますが、大体、暫定除去基準を越える汚泥の分布している範囲がはっきりしてまいりましたので、それで、それをどういうふうに除去するかということについて、具体的な工法の検討をいま進めておるわけでございます。  それで、一つの方法として考えますことは、その範囲を全部封じ込めてしまうということが一つ考えられるわけでございます。それから、いま一つは、非常に濃度の高いものにつきましては、除去作業によって二次公害のおそれもございますので、これは封じ込めるとしましても、濃度の低いものは除去するということも考えられるのではないか。しかし、その場合も、二次汚染を避けるために一たん囲っておいて、その中で除去作業をしまして、それで有害のものは一カ所に、埋めてしまうという方法をとりまして、そのあと、きれいになった海域をまた開放するというような方法も考えられるというようなことで、工法の案が幾つかようやく事務的なサイドではでき上がった段階でございます。  それで、これをさらに具体的に着工いたしますためには、地質調査とか、そういうことによって、構造物としてだいじょうぶかという検討も要るわけでございますが、そこいらにつきましては、熊本県当局と、運輸省の出先でございます第四港湾建設局と相談しながら、技術的にその面の詰めをいまやっている段階でございます。
  80. 馬場昇

    ○馬場委員 私が調べた範囲では、熊本県はすでに工法の案を決定してあななのほうに示しておる、それに対して早く検討を加え、結論を出してくれというようなことを言っていると私は聞いているんですよ。ところが、いま、あなたは、こういうことも考えられると言うけれども、こういうことも考えられるじゃなしに、具体的な案が一つあるか二つあるか知りませんけれども、決定して、早くあななのほうがこうだという結論を出せ、それを早くしてくれと熊本県は言っているというぐあいに私は聞いておるのです。それについて議論はしたくありませんが、あななのほうでは、こういう工法でやるという結論をいつまでに出すのかという見通しをまず聞きたいと思うのです。  それから、さらに、具体的なことは、これは埋め立てをするにしても、しゅんせつをするにしても、ヘドロの拡散というようなことは絶対にしてはなりませんし、さらに、その工法を、どういう工法をとろうとも、たとえば魚やプランクトンが回遊をしてまた二次汚染を起こさないようにという、そういう回遊の防止なんかもしなければならぬし、いずれにしても、原則として、絶対に第二次汚染を起こしてはならないと私は思うのですが、これについて、まず、当然だろうと思いますけれども、基本的な考え方を伺いたいことと、それから、もう一つは、中央公害対策審議会の水質部会が答申をしておりますね。除去基準。これは大体暫定除去基準が二五PPMですが、それを基準に計画をするのかどうかということでございます。私は、これだけでは少し甘過ぎるのではないかと思うのですけれども、二五PPMの除去基準でやるのかやらないのか、そういう問題です。それから、あの湾を調べてみますと、二五PPM以上というところも、飛び地があるのですね。この飛び地というのはどういうぐあいにするのか、締め切った外のほうにやはり二五PPM以上のところはあるわけですから、そういう飛び地についてはどういうぐあいに考えておるのか、こういうようなことです。  それから、二五PPMでいきますと、水俣湾が百八十ヘクタールございますけれども、その大体三分の一の六十ヘクタールぐらいを処理しなければならないというぐあいに計算されますけれども、その中のヘドロの量というのが大体八十万トンから九十万トンぐらいあります。このヘドロをどうするのかということです。  それから、もう一つは、水産業サイドで言いますと、ここでヘドロを除去すればいいというものではございませんし、あそこは港でもございますから、港湾の機能というのは失わせてはならない。現地の希望でいきますと、大体いま三千トンとかあるいは四千トンぐらいの接岸能力があるのですが、あのいまわしかった水俣をこれから明るい水俣にしようというような希望もございまして、とにかく、このヘドロ除去にからんで工事をする場合、さらに港の接岸能力というのを大幅に大きくして、できれば、一万五千トンとか二万トンとかいうものが接岸できるような能力の港にしてもらいたいというような希望なんかがあるわけですが、この工法の中にそういう港の整備拡充というようなものは考えておられるのかどうかというような問題です。それから、これについて、水産庁関係になるかもしれませんが、漁業の補償問題はどうなっているのか。  こういう具体的なことについてお答えを願いたいと思います。
  81. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  先生の御指摘になりました順序どおりという形はちょっととりかねるのでございますが、まず、一番最後に御指摘のありました港湾の問題でございますが、実は、一番最初の御指摘の問題と相からむ問題でございますので、その辺からお答え申し上げたいと思いますが、先生も御承知のように、水俣湾のあの辺は、いわゆる水俣港の港湾区域で大部分がおおわれているわけでございます。それで、先ほど私がお答え申し上げました工法の問題は、実は、その港湾としての空間の利用計画と無縁のものではございませんので、まず、工法を考える際に、計画としてどういうふうにやるかということが一つ問題になるわけでございます。それで、港湾法のたてまえからいたしまして、港湾の計画は港湾管理者が立てるということがたてまえになっておりますので、そういう点から、私どもといたしましては、工法の問題を検討するときに並行して港湾計画としても考えてもらいたいということで、まあ、そういう点からしますと、熊本県がまず計画をつくって、その計画に従って実施をするということが手順であるということを熊本県の御当局に申し上げているわけでございます。それで、また、その工法そのものも、先ほどちょっと申し上げましたように、締め切ってしまうということと、締め切って有害物を含んでいる汚泥を処理したあと、また開放して、きれいな海にして開放して使うという方法と二とおりの方法がございますので、その辺を、国がきめるということよりも、私どももちろん技術的にいろいろと御協力申し上げますが、熊本県がひとつぴしっと計画を立ててほしい、それで、立てるについては、いろいろ技術的な面から御協力いたしますという姿勢であります。それで、その辺が、先生も御承知のように、実は、県としては直轄で事業を実施してほしいというような御要請もいろいろとありまして、その背景には、技術的に非常にむずかしいということ、それから、こういう大問題だから国がやってくれというような御要請もあると思います。それから、いま一つは、公害の事業者費用負担という原則からしまして、事業者が相当の巨額の費用を負担しなければならない、その金が出せるか出せないか、実際にその計画がきまっても、その費用が出てこなければ工事が進められないという、そういう点を非常に気にしておられまして、直轄でというような御要請があるわけでございます。それで、その辺につきましては、私どもといたしましては、直轄だ、補助だと、そういう議論を繰り返していたのではもう時間がたってしまいますので、ともかく、港湾の計画と工法とその技術的な側面だけ、四建と熊本県の御当局と共同して早くつくりましょうというようなことを申し入れしております。それで、そういう方法でその港湾の地域の方々の将来の希望を残すといいますか、その希望を育てるという意味合いからしまして、港湾計画もあわせてやりましたほうが、反面からしますと、また、公害防止の事業の事業費のほうもあるいは軽減できる部分もあるかもしらぬというようなことも考えられますので、いま、そういうことをやっている段階でございます。これが第一点と、一番最後の点のお答えでございます。  それから、いま一つ、いつまでに結論を出すかということでございますが、これは、私どもとしましては、何とか年度内に着工したいということで鋭意努力してきたわけでございますが、現在のところ若干調査もおくれてきたために、あるいは年度内というのが非常に困難かもしらぬ。しかし、ともかく、その目標というものは変えないで早くやりましょうということで、私ども努力いたしている次第でございます。  それから、二番目の二次汚染防止の問題でございますが、これは申すまでもないことでございますので、そのためには試験工事的なものもやって十分な対策を立ててまいりたいということを考えておるわけでございます。実は、これにつきましては、ほかの港で、やはり有害物を含んでいる汚泥の処理の問題がございまして、そういう実際の実績等も参考にいたしましてこの工法を考えてまいりたいということで、そのデータは、幸いなことに第四港湾建設局が持っておりますので、県とよく連絡をとってやっておる次第でございます。  それから、三番目の問題といたしまして、二五PPMの暫定除去基準でございますが、実は、私ども、いま県と御相談をして考えておりますのは、二五PPM以上のところを全部始末するという案で一応の案を固めている次第でございます。それで、いわゆる飛び地の問題がございますが、その飛び地のほうにつきましては、幸いなことに濃度が比較的低いということと、それから層も薄いといいますか、比較的その量も相対的には少ないということもございますので、これは現在ほかのところでもすでに実用されておりまして、要するに、汚泥物質が散らばらないような方法で吸い込むというような方法で始末できるというふうに技術的には考えております。しかし、この辺につきましても、先ほど申しましたような試験工法というようなことの実績を勘案いたしまして、慎重に処置したいというふうに考えている次第でございます。  それで、その有害物を含んでいる汚泥は、やはり最終的にはどこかに始末しなければならないということでございますので、先生の御指摘のように、埋め立て処理といいますか、まあ、そういうことでやるしかないと考えておる次第でございます。それで、その埋め立て処理をする場所は、先ほども申しましたように、有害物の濃度の非常に濃い地域はもう封じ込めなければならないと思われますので、そういう地域を埋め立ての区域とする。それで、その表土はもちろん土地利用可能なようにいたしまして、そこにいろいろな環境保全のための必要な土地もあろうと思いますが、そういうようなものに充ててはどうかというふうに考えておる次第でございます。  そういうようなことも含めまして、ともかく、あの地域の住民の方々に対するいろいろな行政、それから水産行政、それから公害行政、そういういろいろな問題について、行政の権限を持っております県御当局が総合的な観点から計画をお立ていただくということを期待しているわけでございまして、私どももできるだけそれに御協力申し上げるという姿勢で臨んでいる次第でございます。  御指摘の点は、大体このような程度でなかったかと思いますが……。
  82. 馬場昇

    ○馬場委員 たくさん具体的にありますけれども、時間が過ぎるので結論だけ聞きたいと思うのですが、年度内実施というのは公約でございますね。これはあとでもう少し詳しく言いますけれども、ここで、本工法というのをいつまで県と相談して運輸省でつくり上げるのか、そのめどをもう少しはっきりお聞きします。  次に、いま答弁にも、聞かなかったところもあったんですけれども、事業主体の問題ですが、これはあくまでも公害の原点のところですし、社会も注目していると思うし、こういう二百億近い事業なんというものは世紀の大事業だろうと私は思うんですよ。三木長官なんかも、熊本に来たとき、これはやはり県の能力を越えておる、国が取り組むべき問題だということも言明しておるんです。そういう意味で、私が聞く範囲においては、いまの法のたてまえから言うと、事業主体は県だということを言っておるという話ですけれども、私は、法の解釈次第によっては直轄事業もできないことはないと思いますが、もしできなければ、法律改正してでも、やはりこれはまさに、こういう悲惨な水俣病が起きた、そして海をきれいにする、それで漁民の生産意欲を高めるという一つのモデルにもなるわけですから、国が直轄事業でやるべきだ、ぜひそうしなければならない、こういうぐあいに思いますが、その事業主体について、現在の見解をお聞きしておきたいと思います。  それから、もう一つは経費についてですけれども、これはやはりPPPの原則というものもあるわけでございますし、これについては会社が最低七五%ぐらいは見なければならないということですが、それは当然なことだろうと思うのです。ところが、いまの会社の姿勢を見てみますと、患者に対する補償とか漁業補償なんかで金がないとかといって、金は政府まかせ、政府のお世話まかせというようなことで非常に逃げているという感じがしますが、水俣のチッソは、あの患者補償をしたときに、責任をもってこういう処理もしますという約束もしておるんです。だから、どちらかというならば、チッソが七五%と見てこのくらい用意いたしました、なるべく早くやりましょうと、チッソのほうから言ってきてしかるべきだと私は思うのです。ところが非常に逃げている。こういう面については、少なくとも、金がありませんと逃げるんじゃなしに、お世話くださいじゃなしに、自分で積極的に金を用意して、私の負担分はこれだけです、やりますから早くやってくださいと、そう言うのが企業のあるべき姿ではなかろうかと私は思うのですが、それについて、チッソの態度に対して、通産省はどういう見解を持っておられるかということを聞きたいと思うのです。  それから、いま一つは、年度内に着工するという約束をしておるわけですから、国の負担分というものも当然あるはずですが、国の負担分は予算のどこに組んであるのか。残った分の半分はやはり国、県でやると思うのですが、その残った国の負担分は来年度の予算のどこに計上してあるのかということを、計上してあるところからお答え願いたいと思います。  そこで、お答えをしてもらって、次の年度内着工はあとでやります。
  83. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  御指摘の四点のうち、通産省関係の分を除きまして、三点につきましてお答え申し上げます。  この計画をきめる期限の問題でございますが、私どもといたしましては、昨年、当時、現在もそうでございますが、環境庁長官がお約束いたしました年度内着工ということを努力目標といたしまして、現在も準備を進めている状況でございます。それで、そのためには、先ほど申しました計画、それから工法、そういうようなものをともかく確立しなければならないということで、実は、その工法の一部、工法をつくるための調査といいますか、そういうようなものはすでにかかっているわけでございますが、ともかく、いまの工法を早く確立する。これは、私どもといたしましては年度内に——年度内といいましても、もう一月半ぐらいしかございませんが、その間に、できますれば県と運輸省のほうと、あるいはそれ以外の方も含めて、技術的な面での検討委員会を開いてでも計画をきめたいということで、県にもそういうことを申し入れをしている状況でございます。  それから、二番目の直轄の問題でございますが、これは、実は、昨年私は環境庁長官のお供をいたしまして現地に参りましたが、先生も当時御一緒だったというように記憶しておりますが、その席でも、知事さんから、直轄でやってほしいという御要請がございました。それに対しまして、仕組みの上から直轄でやることが非常に困難であるが、直轄の技術力を使うという観点に立つならば、受託工事、国が工事を受託するというやり方も考えられますので、それで、そういうことを申し入れをいたしまして、その姿勢は現在も変わっておりません。それで、なお、途中の段階では、技術陣の人手が足りないといいますか、そういうような問題があれば、場合によっては人を派遣してもいいというようなことも申し上げたわけでございます。しかし、これまで県御当局も相当に技術陣を強化されまして、実際の現実的なデータは相当お持ちでございますので、私どもといたしますれば、国と県との協力体制で処置できるものと確信している次第でございます。  それから、四番目の予算でございますが、これは四十八年度におきましても、港湾公害防止対策事業といたしまして補助の予算を計上してございます。その補助事業としての、国の負担分、補助金に当たります国費でございますが、四十八年度は全国で八億四千七百二十万計上しておりまして、そのうち、現在未計画というのが一億三千三百八十万ございます。この未計画の中で、実は、水俣港の分が用意されているわけでございます。  それから、四十九年度予算につきましては、現在御審議いただいておるわけでございますが、その政府原案の中では、全国で十五億六千三百三十八万円を同様に港湾公害防止対策事業の費用として計上している次第でございます。
  84. 馬場昇

    ○馬場委員 通産省は……。来ていないのですか。
  85. 仮谷忠男

    仮谷委員長 通産省、来ていますよ。  馬場さん、もう一ぺん言ってあげなさい。
  86. 馬場昇

    ○馬場委員 これは非常に時間がたちますものですから……。  いま運輸省の話を聞きますと、年度内着工が努力目標であるみたいなことを言われましたけれども、私は、年度内着工という意味は、本工法をきめて正式に着手するということが年度内着工だというぐあいに思いますから、ぜひそういう立場でやってもらいたいということと、いま一つは、いずれの方法でやるかは県と話をされているようですけれども、世紀の大事業ですから、少なくとも、これはやはり国の直轄という方向でぜひ処理していただきたいと私は思うし、それから、いまの国の負担分は、二百億要るといたしますと、七五%を企業が負担した場合、残りの半分というものには、この予算では足らないんじゃないか、ほんとうにやる気があるような予算ではない、こういうぐあいに思いますので、そういう予算面についてのさらに努力というのもお願いしたいと思います。  通産省に聞きましたのは、会社は当然負担があるわけですからね。ところが、いま聞くところによると、いろいろ補償金なんかを払わなければいけないからないんだといって、よそを向いているようなかっこうですね。私が言ったのは、会社はあらゆる努力をして自分で金をつくって、私の負担分は用意しましたよ、早く着工してくださいということを言うべきじゃないか、また、そういうことを通産省は指導すべきじゃないか、これについてどうかという問題でございます。  それから、年度内着工についてはこういう発言をしておられるのです。閣議決定の水銀等汚染対策推進会議、これは三木長官が議長ですけれども、その第二回の昨年の会議で年度内着工というのは確認をして、決定してあるはずだと私は思うのです。そして、三木さんが水俣に来ましたときに、水俣湾のヘドロ処理は、政府と県が協力して年内に着工するということをはっきり水俣で言明されております。さらに、総理大臣も、本会議の緊急質問に答えて、水俣湾の堆積汚泥は年度内にしゅんせつに着工するということを本会議の席上で言明しておられるわけです。まさに、総理大臣から、副総理の三木長官から推進会議まで、年度内着工ということをきめているのです。地元住民というのはそれを知っておりますし、期待しておるわけですから、年度内着工というのをぜひ実現するようにしていただきたいと思います。これは農林省としても、そういう立場がございますから、年度内着工をして、漁民が安心するように、あるいは住民が安心するようにということを、これはあとで大臣のほうからもそういうことをぜひ働きかけていただきたいということを要望しておきますので、御答弁願いたいと思います。  私は三木長官と相当一緒に行動いたしましたから、すべてを知っておるのですけれども、三木さんが水俣に行ったときに、こういうことを言いました。私が水俣に来たのは、実情を見て、良心と責任感にむちうって、力の限り尽くしたいためだ、私のやることは、行政、政治に携わる者の深刻な反省であり、この上に立って、二度と悲惨な人災を起こさないという決意をし、それを裏づけするきびしい環境管理をやる、と、こういうことを熊本県民の前にも、全国民の前にもはっきりと言明しておるのです。私は、三木さんはうそを言われるとは思いませんし、誠実な人だと思います。こういう三木さんの発言も、さらに総理大臣の言明も、公約違反にならないようにぜひやっていただきたい。これはほんとうに現地住民の患者を含めた血の叫びなんですよ。あの状態を続けるということは、ほんとうに死人をそのまま放置しているというのと同じ状態だろうと私は思います。だから、、ぜひ一日も早く年度内着工で実現できるようにお願いしたいということです。  それから、いま一つは、他の汚染地域ですがさっき大臣も徳山湾とかいうことばを使われましたけれども、他の汚染地域については、こういう復旧計画、海をきれいにする計画というものを持っておるのかどうか、あるいは、日本の海を、よごれたところを元どおりに生き返らせる、きれいにする、そして漁業を振興するという復旧の長期計画というものを農林省ではお持ちであるかどうかということをお伺いしておきたいと思います。
  87. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまのお話しは、運輸省の担当者も参っておることでありますし、いまここで承りましたので、私からも、事の事情をそのまま運輸大臣にもお伝えいたしたいと思います。  それから、他の地域ですが、これは先ほども政府委員のほうからお話しを申し上げましたが、大体、たてまえとしては、加害者負担というような原則でやるんだということでありまして、先ほど申し上げましたように、ほかの九水域につきましては安全であるということを発表いたしておりますが、徳山につきましても、いまは徳山湾を一定に仕切りまして、その中でとれました魚の魚種によりまして区分けをいたしております。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  その魚種についてははっきり記憶いたしておりませんで、黒ダイほか五種類であったかと記憶しておりますが、そういうものに若干の疑いがあるということで、とれました魚は放棄いたしておる。それらのこと等もありまして、会社側のほうでは、そういうものに対して漁業者に補償をいたしておるようであります。ここにもヘドロの問題等もあるようでありますが、これも、先ほどの、国がもっと力を入れるべきではないかということは、これはもうそのとおりでありますけれども、県のほうでは、大体どの県も自分のほうでいろいろな計画を立てて、そして国に御相談があるわけであります。しかし、水産庁の側からいたしますというと、われわれが委嘱を受けて検体を調査いたす、わりあいに長時間かけてやったものでありますから、そこで、いま申し上げましたように、クロダイその他五種類ばかりの魚を指定して、これは食べないようにと、こういうことを言っておりますので、いま申しましたように、漁民はそれを放棄しておると、こういうような関係のようであります。  ヘドロ問題は、おそらく、ただいまのお話しと同じような問題と思いますが、私は、それをつまびらかにいたしておりません。  それから、一般の漁民で昨年たいへんな迷惑を受けましたのは、実際に調べてみたら、不安だ不安だということで魚の売れ行きが悪くなったことは全国的にあったことでありますのでこういうことに対しましては、御承知のように加害者があれば、それは加害者において負担するのだけれども、とにかく、この公害騒ぎによって迷惑を受けた該当者には三分の低利融資をいたして、その生活の安定をはかるという措置を講じまして、まだ私が農林省へ来る前でありますが、たぶん、そのころでも、総額百億あまりの融資はもう済んでいるはずであります。もっとふえておるかもしれませんが、現在、私はよく知っておりませんが、そういうような措置をしている。それから、また、関係しておりますところの、たとえばおすし屋さんみたいなもので、たいへん商売に被害をこうむっておるというふうな方にも融資をし、その他、若干大手の漁業者に対しても融資のめんどうを見ておることは御承知のとおりであります。  私どもといたしましては、検体を検査して、魚介類の安全性をまずよく確かめて、その上に一般方々に安心していただくようなことを第一にやりまして、並行して、関係省において、先ほど来ここで御答弁申し上げておるようなこととをいたしておるわけでありますが、徳山湾においては大体そういうことでございます。
  88. 馬場昇

    ○馬場委員 通産省……。
  89. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは私のほうの直接の仕事ではありませんけれども、これは通産関係のことでありますが、徳山では、例の水銀法というので、ある程度使用した水銀を湾に流しておったという話が伝わったわけであります、これについては、やはり、技術的にいろいろな意見もあるようであります。使った水銀全部を流してしまったとすればたいへんな量でありますが、いずれにしても、そういうことではないようでありますが、しかし、不安があるということで、通産省が水銀法を隔膜法に切りかえろという指令を出しまして、いまはそういうふうに各会社とも転換をいたしておるようであります。
  90. 馬場昇

    ○馬場委員 通産省は担当が違うそうでございますので、またあらためて質問をいたしたいと思います。  そこで、いま大臣の答弁もお聞きしましたけれども、緊急対策というものは去年いろいろやりました。そして、いま言われたようなこともやったのですが、私は、長期的に海を生き返らせる、きれいにするということの具体的な計画をつくって、早急に着工してもらいたいということを最後に申し上げておきたいと思うのです。  それから、特に、運輸省につきましては、年度内着工ということを重ねて申し上げておきますし、直轄事業で本工法を年度内に早くつくること、これについては、経過報告を私のほうにもぜひお願いしたいということを申し上げておきます。  次に、いま大臣お話しもありましたが、去年、大々的に魚介類の有害物質の含有量の調査とかをやりましたね。それから、さらに、環境調査として、水質とか底質の調査をいたしましたね。けれども、私から言わせますと、これはほとんど白みたいに出ていて、どうもおかしいなと私は思いました。しかし、一応結果として発表されたわけでございますが、それについて多くを聞く予定だったのですけれども、時間がございませんが、水産庁並びに環境庁もこれはそうでしょうし、その他の関係省庁もあるかもしれませんが、魚介類の有害物質の分析調査、さらには底質、水質等の分析調査、これをどこに依頼したかということなんです。これは相当たくさんの検体だったと思います。先般の衆議院の予算委員会で、日本分析化学研究所というのが、放射能の問題でえらいごまかしをやっておったわけでございますが、私が聞いた範囲では、このわが農林水産関係の魚介類の分析も、あるいは水質、底質の分析も、この日本分析化学研究所というところに相当多く依頼したというぐあいに私は聞いております。だから、まずお聞きしたいのは、この魚介類の分析調査、さらにはその水質、底質の分析調査をどこにどういう割合で依頼されたかということで、これの一覧表を出してもらうように私は申し出ておったのですが、詳しいことは要りませんから、それをどこに調査を依頼したかということをごく簡単にやっていただきたいということと、もう一つは、衆議院の予算委員会で、日本分析化学研究所がごまかしをやっておったことがわかったのですが、それがわかったあとに、たとえばこの魚介類の問題、水質、底質の問題で日本分析化学研究所にもいっているわけですから、これが間違いであったかなかったか、ごまかしをされていなかったかという調査をきちんと科学的に行政的にやられたかどうか、その結果がどうであったかということ。どこに依頼したかということと、さらに、問題になってから調べて、間違いがないかどうかを洗い直したということがあるかどうかということですが、あれば、結果を知らせていただきたいと思います。
  91. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先生御案内のように、全国環境調査のうち、魚介類の調査につきましては水産庁が担当しております。これは現地における漁業の実態等を十分に把握して行なう必要がございますので、水産庁は都道府県に委託したわけでございます。この場合、県によりましては、分析機関が整備されていない県もございますので、大学を含め、民間等の検査分析機関に再委託することを認めたわけでございます。その場合には、十分信用のある検査分析機関を選定するよう指導したわけでございますが、水産庁関係につきましては、日本分析化学研究所へ分析を再委託した例はございません。  そこで、どういうところに委託したかということでございますが、県が試験研究機関を持っているところは県の水産試験場等でやったわけでございますが、それ以外に申しますと、日本冷凍食品検査協会、日本食品分析センター等と、その他多少学校の機関とかがございますが、そういったところへ分析を依頼いたしまして、この日本分析化学研究所には、水産関係は依頼してございません。
  92. 馬場昇

    ○馬場委員 環境庁関係にお聞きしたいのですけれども、たぶん、環境庁は、日本分析化学研究所に、県の依頼等を受けてあっせんしたり何かしておると私は思います。だから、それを含めながら、どういうところにやったかということと、それから、水産庁は、県なんかがそのほかのところにやりましたということでございますが、だれだって、日本分析化学研究所というものも最初はみな信用しておったと私は思うのです。それでああいうことが起きたわけですから、おたくでやられたところも再調査、洗い直しをされたかどうかということを再度御答弁願いたいと思います。
  93. 山村勝美

    ○山村説明員 全国環境調査の中で水質、底質及び土壌、農作物につきましては、環境庁のほうから県に委託しまして、先ほど水産庁から説明がありましたように、県の分析能力を考えまして、民間に再委託をしてもいいというような方針で進めたわけでございます。ただいま、どういう会社にどれくらいいったかということを全国的に調査しておりますが、たとえば、熊本県の状態はだいぶはっきりいたしておりまして、調べたところによりますと、延べ項目数になりますが、延べ項目数にいたしまして、五千三百五十五項目のうち七%の三百七十五項目が同研究所に委託されております。その信懲性については、今後、環境庁といたしましては——その前に、この調査にあたりまして、同一検体の同じものを他の機関に分析させまして、つまり、クロスチェックをやらせまして、その妥当性を確認するという方法を一般に用いております。したがいまして、大体問題はないというふうに考えておりますけれども、なお、今日の問題で、国民その他に非常な不安を与えておるということも考えまして、いま、専門家による検討委員会をつくりまして、今後立ち入り等の調査を計画的にやっていこうというふうに現在検討を進めておるところでございます。  以上でございます。
  94. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 水産庁といたしましても、日本分析化学研究所の問題が起こりましたので、分析機関それぞれにつきまして、これをチェックしたわけでございます。ただいま環境庁のほうからお話しがございましたけれども、クロスチェックをやっているような分析機関もございます。
  95. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、熊本の例をいま言われましたが、やはり、日本分析化学研究所にやっているのです。だから、それについては相当問題になっておるのですけれども、クロスチェックをやっているというところで心配ないのだというような話もございました、その他熊本の例をとりますと、あと四カ所くらいに委託しております。それで、いやしくも人の命にかかわるような問題でもございますし、それから、すべての施策というものが、この調査結果に基づいて、それを基盤にして施策を立てられるじゃないかと思うのですよ。だから、この辺に間違いがあるとしたならば、命にもかかわりますし、さらに今後行なう施策も間違いを起こす。だから、この辺はきちんとしておく必要があろうということで、念には念を入れるという意味で、あの魚介類の調査とか、水質、底質の調査はいま検討委員会もつくってやっておるという話でございますけれども、ぜひ、すべてをもう一ぺん洗い直して確信を持っていただきたいということを大臣に特に質問をしておきたいと思うのです。
  96. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 十分調査して、やらせるようにいたします。
  97. 馬場昇

    ○馬場委員 以上で公害等に関する問題は終わりまして、次に、やはり、漁業政策とか水産業政策について御質問を申し上げたいと思います。  私は、今日の水産業、漁業の置かれておる立場というものは、もう漁業危機と言ってもいいくらいではないかというぐあいに思います。そういうように今日の実情は漁業危機というくらいに利は思うのですけれども大臣のこれに対する認識についてまずお伺いしたいと思いますし、危機であるとするならば、こういう状況がどういうところから起きてきたのかという反省といいますか、そういう反省の上に立って、漁業を今後どういうぐあいにもつていこうとしておるのかという基本姿勢といいますか、こういう点についてお伺いいたしたいと思います。
  98. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 漁業につきましては、国内的にも、国際的にも、いろいろ大事な問題がたくさんございます。遠洋につきましては、先ほどもお話しがございました海洋会議等も、そのきまり方によってはたいへんな影響がございますが、私どもといたしましては、やはり、沿岸について特段の努力を払う必要がある。そういうことのために今回法律案を提案して、これから御審議を願うわけであります。また、沿岸漁業の構造改善、それからまた漁港の整備等、そういうことにウェートを置いて、できるだけ沿岸の漁業をしっかりやりたい。もう一つは、やはり、養殖、これは魚種によって違いますけれども、かなり興味のある問題でございますので、こういう点にも力を入れてまいりたい。  いま申しました海洋会議等で大きな影響を受けますのはもちろん遠洋でありますが、遠洋につきましても、これからの推移によりまして、どういうふうになりますか、それに対処する策を講じていかなければなりません。このように思っているわけであります。
  99. 馬場昇

    ○馬場委員 沿岸漁業を振興したいという点につ  いては私も同意見なんですけれども、さらに、今日の状態が世界的にたいへな状態だというお話しがございましたが、日本にとっては特に危機的状況にある。これが何で起きたのかということにつ  いて、私は、日本のいままでの自民党の政治というものが、工業優先とか高度経済成長政策というものがやはり漁業を危機に追いやったということではなかろうかと思います。そうして、そのために先ほどから議論いたしましたように、海は汚染されて、死の海となってしまった。こういう状況も、やはり、その高度経済成長政策、工業優先というところからきたのではないかと、そういうぐあいに思うわけでございますし、特に漁業被害を見てみますと、私の調べでは、魚が死んだとか、いろいろ被害を受けますが、大体、昭和三十一年度は七・八億円ぐらいだったと思いますが、それが昭和四十六年には、十五年間に何と二十三倍も被害がふえて、百八十億円ぐらいの被害になっておる。これだけ漁業に被害を与えるということは、やはり汚染ということが中心でございますし、このことは、高度経済成長政策という政策によってこういうように被害が飛躍的にふえてきたと言えるんじゃないかと思うのです。  それから、さらに、臨海工業用地という問題で、漁場というものが相当工業用地に転換させられてきておる。これが私の調べでは、昭和三十八年から四十五年までに二万七千ヘクタールぐらいですか、漁場が工業用地に転換させられてきた。これも、先ほど言う高度経済成長政策のしわ寄せが漁業に来たというぐあいに言えるんじゃないかと思います。たとえば瀬戸内海の藻場ですけれども、これは、指定海域の六四%が工場排水でもうだめになってしまったという計算もあるわけでございますし、そういう問題で、やはり、高度経済成長政策、工業優先の日本の政治というものが漁場をこんなに危機状態におとしいれたということじゃないかと思いますし、それに対して、いままでの農林水産行政というものが、たとえば水産のサイドから工場進出を規制するということはほとんど行なわれなかったんじゃないか。言うならば、これは水産庁に対する悪口になるかもしれませんが、通産省水産局だと陰口をたたかれおりますよ。ほんとうに通産省の言うことに水産庁は従ったというようなかっこうで、水産サイドから通産を規制するなんということはほとんど行なわれなかった。こういうこともそのあらわれじゃないかというぐあいに思います。だから、こういう反省に立つならば、水産業を無視したところの工業開発というものは今後は直ちに中止させなければならない、こういう施策農林省はとるべきじゃないか、こういうぐあいに私は思うのですが、それについての御見解を承りたいと思うのです。  それから、もう一つは、やはり、政府漁業対策というものが、まず沿岸、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へと、こういう方向で進んできたのではないか。それで、先ほど大臣も言われましたように、沿岸が荒れてしまった。外国からの批判を聞きますと、日本は、自分の庭先はよごしてよそにばかり来るという批判もある。こういう状況もございますから、そういう点で、遠洋へということは、大企業中心の水産行政という方向に片寄っておったのではないかというような感じを私は持つわけでございます。そういうことで、たとえばいろいろな構造改善事業とか、あるいは近代化資金による事業なんかが行なわれてきましたけれども、それは、労働時間等は確かに短縮して、労働生産性は上がったけれども、非常に船を大きくする、外に行く、こういう装備をやって借金をする、その装備のいわゆる資産、それに対する漁獲量というのは減ってきておるということで、沿岸を無視して、外に装備の大きいものをつくって持っていって外でとるということで、いわゆる資産当たりの漁獲量はだんだん毎年減っておる。こういうことも沿岸無視ではなかったろうかというぐあいに思うのですが、そういうことについての見解をまずお伺いしたいと思います。
  100. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 一般的に、馬場さんのおっしゃったようなことが該当する面も多いかもしれませんが、私どもは、いわゆる公害問題というものを考えてみますときに、ことに、魚などに対する影響を考えてみますときに、化学工業というのは、人間の知識でああいうものを発明しているわけであります。人間の知識で生産されるものが、人間の知識で、ほかのものに害があるということがわかったときにそれを除去する知識がないということはおかしいじゃないかと思うのです。私は、むしろ、経済成長についていろいろな御意見もありますけれども、一方において、経済成長が行なわれなければ、わが国の今日の国民全体の生活水準国民所得、経済力というものはなかったのじゃないかと思うのです。それに非常に効果のあった工業というものを——これは、悪い面だけ見ればいろいろございましょうが、その面をひとつ——人間の知識で発明したものを、人間の知識で収束のできないはずはないし、現に、世界じゅうがそういうことについて非常な努力をいたしております。たとえば、さっき申しました電解ソーダの工場でも、水銀のたれ流しはおかしいじゃないかということによって通産省が号令をかけた結果、やはり、水銀法をやめて隔膜法に転換するというふうなこともやってきておりますし、出てくる煙突の煙から、亜硫酸ガスが出てくるやつから硫酸という役に立つものもつくっておる。人間の知識というもので、やはりたれ流しが悪かったのではないか——そればかりではないかもしれませんが、そういうことも考えて、人類のために公害をどのように除外するか、生産は必要であるが、これをどうやって除去するかということに、もっとくふうをしなければいけないのではないか、こういうことを考えるわけであります。  外国の例でございますけれどもおいでになったと思いますが、たとえばロンドンのテームズ川などは、一ころは、きたなくてもう話にならなかったが、このごろは魚つりの姿がたくさん見えると言われている。非常な努力をしてあのきたない水をきれいたしたようであります。隅田川でも、いまはかなり昔と違ってまいっておりますが、私どもの立場から申しますと、大企業に向かっては、やはりそういうことを要求したい。これはもうおよその見当がついているわけでありまして、われわれのとっている動物たん白のうちの半分以上が魚介類からとるたん白で、これが脅かされるということは、あらゆる産業に携わっておる全体の国民の死活問題でございますので、そういう角度から見れば、私は、やはり、かなりのチェックをする必要があると思っております。しかし、その間の調整をどうするか、調和をどうするかということが非常に大事な問題だと思うので、企業の方面については、いま申しましたように、漁業の障害になるようなことをしないための最大の努力を私どもは要求いたすのが当然でございますが、そうでなくても、御存じのように、日本の水産業についてはなかなかめんどうな問題がたくさんふくそうをしておるわけでありますから、そういう見地に立って、全体から考えてみまして、行政の上でもこれらは政府部内で十分調整をしながらやっていきたいと私は思っております。
  101. 馬場昇

    ○馬場委員 私も工業を否定するわけではないわけでございますが、いままでのやり方が、高度経済成長政策と工業一辺倒で、ウェートの問題で、漁業というものが軽んぜられてきた結果こういうことになったのじゃないかということでございます。だから、いま大臣も工業にもチェックしたいということでございますが、問題は、工業、基幹産業、あとはその従だというのではなしに、食糧危機ということが目の前に来ておるときであり、日本国民の健康にとって大事なたん白質の問題でもございますし、漁業というものは、基幹産業、工業と同じようにウェートを置くのだ、あるいは、工業によってよごれた場合は、危機の場合はそれ以上にやるのだという立場でぜひやっていただきたいということを私は申し上げておきたいと思うのです。  そこで、次に、日本人は魚食民族と言われておるわけでございまして、これは何千年来の伝統でございますが、動物性たん白のどういう需給長期計画を持っておられるかということを聞いておきたいと思うのです。国民の生活が豊かになりますと、動物性たん白の摂取量は増大するわけでございますが、それについて、どういう見通しを持っておるのか。たとえば、昭和四十六年で私が調べたところでは、国民一人当たりの動物性たん白は三十三グラムであった。こういう中で、魚介類が大体五二・四%を占めておると思いますが、農林省が発表しましたある資料によりますと、五十七年には四十八グラムぐらいになるだろうという数字を見たことがございますが、四十八グラムとるとすると、この中での、魚介類と肉との比率はどういうぐあいに考えておるのか。そういうことを含めながらの、動物性たん白の需給の長期計画というものについてお示しを願いたいと思うのです。  さらに、その内訳で、漁業について申し上げますと、四十六年度に九百九十万トンぐらい生産高があった、そして、昨年は一千万トンぐらいじゃなかったろうかということでございますけれども、沿岸の占めるパーセンテージは、四十六年の九百九十万トンのときに二六・一%、中小漁業の場合が四一・三%、大規模遠洋の場合が三二・六%というような生産高の比率になっているようでございますが、これを、長期計画では、さっきのものを大体四十八グラムとするならば、生産高を何方トンに見積もってあるのか。私の調べたのでは、大体一千三百万トンくらいに見積もってあるようだということでございますが、一千三百万トンに見積もるといたしました場合に沿岸とか、中小漁業とか、あるいは大規模漁業のこの比率はどういうぐあいに計算をしてあるのか。こういう生産高の沿岸、沖合い、遠洋の比率を含めて長期計画をお示し願いたいと思います。  さらに、いま一つは、昨年の四十八年度の魚介類の輸出と輸入の関係は、どれくらい輸出をし、どれくらい輸入をしているのか。こういう数字を聞きますのは、輸入が多くなりつつあるようですし、輸出を越えてしまったのではないか、それくらい多くなりつつあるのではないかと私は思うのですが、こういうことについても、ごく簡単でいいですから、結論だけでいいですから、具体的な数字をお示し願いたと思います。
  102. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございました五十七年度の数字の点でございますが、総たん白質が、五十七年度においては約九十グラム、そのうち、動物質が四十七・八グラムで、水産物は二十五・一グラム、それから植物質が四十二・二グラム、こういう数字になっております。  そこで、それでは、この水産の二十五・一グラムを一体どういうふうに供給するのか、沿岸と、沖合いと、大規模と、どう配分するかというような御質問かと思いますけれども、御承知のとおり、水産の場合には、資源の状況というものは非常に限りがございます。そこで、はっきり申しまして、五十七年におきまして資源の状況がどうなっているかということはわからないわけでございます。ただわれわれといたしましては、沿岸の資源というものをふやしていかなければならぬということを考えておりますので、政策目標といたしましては、いまでも沿岸の割合をふやしたい。しかし、これは、資源の状況の問題もござますので、何%、何%と申し上げられるようなものは持っていないわけでございます。  次に、水産物の輸入が最近ふえているじゃないか、場合によっては輸出をオーバーしているのではないかという御指摘があったわけでございますが、残念ながら、そのような傾向になっているわけでございます。そこで、数字を申しますと、四十五年におきましては、輸入が千百四十六億円、それから輸出が千四百七億円ということで、四十五年におきましては、水産物は輸出が多かったわけでございます。ところが、四十六年から逆転いたしまして、四十六年は、輸入が千五百三十三億円、それに対して輸出が千四百六十六億円になっております。さらに、一番最近の数字は、私の持っているところでは、四十八年、昨年の一月から十一月までの数字でございますが、それによりますと、輸入が二千六百四十八億円ということで、四十五年に比べまして倍以上になっているわけでございます。それに対しまして、輸出は千五百九億円と、四十五年とほぼ同水準ということで残念ながら輸入がふえております。  この輸入のふえた中を分析してみますと、五〇%近くがエビでございます。これは沿岸性の魚種でございまして、最近の需要の動向が、中高級魚が非常に伸びておりまして、特に、エビなどが非常に伸びておるわけでございます。これは、日本の沿岸の供給には限界がございますので輸入がふえておるという形になっております。
  103. 馬場昇

    ○馬場委員 国民の健康にかかわるたん白質が、輸入がふえて輸出が減っている、輸入にたよらなければならないということは、需給の関係で非常に問題があると思うのです。こういう傾向はよくない傾向だと私は思いますから、ぜひ改善するように努力を願いたいと思うのです。  次に、先ほどから大臣が答弁されておりますように、大規模遠洋漁業についての会議が、本年の六月に、カラカスで開かれるわけですね。その第三回国連海洋法会議の見通しですが、これについて、大体領海十二マイルとか、経済水域二百マイルなんというのは、もうほとんど圧倒的な国際的世論になっているように私は思し、そういう方向に行くんじゃないか。そういうことになりますと、遠洋漁業の受けるわが国の被害というものはばく大なことになるのではないかと思います。だから、そういうふうにでもなりますと、残存率は二〇%くらいになるのではないかという数字を私は見ているんですけれども、そうなりましたら、遠洋漁業というものはもう壊滅的な打撃を受けるどいうことになるだろうと思います。だから、この遠洋は非常に問題があるというこのときに、遠洋漁業というものを、ここでもう一ぺん見直す必要があるのではないかと私は思う。いま、大手の水産会社が非常に競争して何かやっておりますけれども、こういうものを、たとえば業種別に再編成をしてみたり、あるいは公社化をしてみたり、そういうぐあいにして、遠洋漁業を再編成して、計画的に、科学的にやらなければいけないのじゃないかと思いますが、とにかく、遠洋漁業は、そういう会議の結論の方向からしても、非常に生産高が減る。こういう状況はどうなのか、こういう状況が来た場合に、この減った分をどうするのかということを、まず第一点にお聞きしておきたいと思うのです。  それから、さらに、中小漁業、沖合いの漁業の問題についても、一千万トン、昨年は、まだそのくらい生産高があった。そうしますと、大体三百二十万トンがスケソウダラだというぐあいに言われておりますし、サバは全体の一三%ということでございますし、さらに、マグロなんかは、昭和三十七年が五十万トンあったのが、現在三十万トンぐらいに減っておる。こういう中小漁業、沖合い漁業の資源の減少の問題ですね。こういうこともございまして、遠洋水産研究所が、スケソウダラはやっぱり百万トンぐらいに押えるべきだという研究成果を発表しておるようでございますが、こういう中小漁業、沖合い漁業も、資源難で先の希望が持てないのじゃないかと思うのですが、そういう点については、どういう考えでおられるか。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、資源難で漁獲が少なくなってくることに対してどう対策をとるのかという問題でございますが、それに引き比べて、また先ほどから出ております沿岸漁業の問題ですけれども、これは二百五十万トンぐらいで、戦前の三百三十万トンにもまだ達していないという状況でございます。そこで、結局、遠洋漁業もお先まっ暗、中小漁業もお先まっ暗、そうすると、重点はやはり沿岸漁業に置かなければならないという結論にいくのじゃないかと私は思いますが、遠洋、中小沿岸、その見通しと、それに対する今後の対策、それをさらに具体的にもう一回御答弁願いたいと思います。
  104. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、わが国の漁業が直面しておる問題というのは、非常にきびしい問題が、遠洋、沿岸、沖合いそれぞれについてあるわけでございます。そこで、まず、海洋の関係でございますが、これの見通しがどうなるかということにつきましては、これは、ことしの六月にカラカスで、会議が二カ月間にわたってあるわけでございまして、これがどういうふうに展開するか。開発途上国等が、領海の拡大、それから二百海里の経済水域というようなことを言っておりますが、中には、先進国の中でもそういった主張に同調する国もございます。と同時に、漁業の立場からそういったことに反対であるという国もございますので、どういうことになるか、われわれといたしまして、現在のところ、その帰結について申し上げることはできませんけれども、われわれといたしましては、日本の漁業の立場、すなわち遠洋漁業国の立場というもので会議に臨みたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、それでは沿岸についてどうするかということでございますが、先ほどからお話しも出ておりますが、今年度予算におきましても、われわれといたしましては、沿岸漁業というものに非常に重点を置きまして、さらに、先ほど大臣から御答弁もございましたが、沿岸漁業の振興に関連のある三つの法律案の御審議を願うということに予定をいたしております。そういうことによりまして公害対策を強化するとともに、沿岸漁場の開発整備、栽培漁業の全国的な展開等をはかっていきたいというふうに考えております。  それから、総生産の四分の三を占めます沖合い及び遠洋漁業につきましては、海洋新漁場の開発をはかるとともに、開発途上国に対しましては、国際協力、経済協力、すなわち資本、技術の援助をしながら、そういった開発途上国の漁業生産力を高め、さらに、余剰があればそれを日本に持ってくるといういうような形で、海外漁場の確保につとめたいというふうに考えております。  それとあわせまして、これは基本的なことでございますが、漁港等の生産基盤の整備あるいは経営の近代化、流通、加工の合理化、さらに内水面漁業の振興というようなこともあわせてやっていきまして、今後、わが国漁業の健全な発達のために大いに力を尽くしたいというふうに考えておるわけでございます。
  105. 馬場昇

    ○馬場委員 さらに、時間がございますと、具体的に遠洋の問題、中小漁業の問題、沿岸漁業の問題の具体的振興策をお尋ねしたかったのですが、時間が大体きてしまったようでございますが、何といっても、これは大臣も長官も認められましたように、日本の漁業というのは、海洋染汚、公害によって沿岸漁業は伸び悩んでおる、あるいは、資源の悪化によって沖合い中小漁業もお先がまつ暗だ、あるいは、発展途上国を中心にした沿岸国の権益の確保という海洋法の問題によっても、遠洋もお先まっ暗だというように、たいへんな問題を水産業はかかえておるわけでございます。これは何としても、工業中心、高度経済成長政策の中で漁業が置いてきぼり食ったのであって、農業とともに食糧問題もございますので、何としても、漁業をある程度基礎産業というぐあいに位置づけて、抜本的な、特に沿岸を中心とした漁業振興策というものを十分立てていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  さらに、次に、そういう意味で、これは過去の失敗だろうと私は思うのですけれども、たとえば、今度の国会に沿岸漁場整備法というものを出されようとしておるわけでございますが、これと同じようなものが、六十五国会で、海洋水産資源開発促進法というものが出ておるわけでございますね。これによりまして、海洋水産資源基本方針というものを農林省は出しておられるわけでございますが、これによりまして、魚介類が二十二万トン、海藻類が九万トンと、三十一万トンを大体ふやしたいというような計画で、全国に沿岸水産資源開発区域を指定する、四十七年度に八十六カ所、四十八年度に五十カ所、四十九年度に五カ所、計百四十一カ所をそういう開発区域と指定するという計画を持っておられたようでございますが、四十七年度はゼロでございました。四十八年度は、北海道の六、そして今後、いま話しが行なわておりますのが石川の三、熊本の三、愛知の一、ほとんどこれは行なわれていない、こういう状態がございます。これについて、特に、なぜ行なわれていないんだということを聞きたいのです。サボっておったのかどうなのか。こういうことであったら、どんなに沿岸漁業を振興しようと思っても、法律をつくり、計画をしながら行なわれないということで、何にもならないわけでございます。これは行政のサボであったのかどうか、あるいはなぜ指定もできなかったのかということですね。こういう中で、たとえば例の海上保安庁との関係だとか、建設省との関係だとかというようなことでできなかったということも聞いておるのですけれども、なぜできなかったのかということを、関係当局からまずお聞きしたいと思うのです。そういうことがなければ、今度新しい法律をつくったって、破れ屋根にまた破れ屋根をかぶせるようなもので、沿岸漁業の振興にはならぬと私は思いますので、このところのきちんとした反省というものが必要であろうというぐあいに思います。  さらに、もう時間がきたので、全部質問をやってしまいます。  まず、水産業の資材について、たとえば油の問題で、非常に石油危機でございますたが、これは現在まで水産業にどういう影響を与えたかという問題と、一月以降は心配はないのかという問題でございます。特にこれは通産省にも聞きたいのですけれども、水産業用の資材について、最近業者が非常に悪らつであるというようなことが投書で来ております。それによりますと、ロープだとか漁網とかは大体石油製品であるわけですけれども、業者から漁連とかに売る場合、これが納品をするときに、先に価格をきめなくて、価格未定で納品をしておる。そうしてあとで仕切りをとり、あとで一方的に値段をつけるというようなことが行なわれておるということが私どものほうに知らされておるのですが、そういうことはいままでなかった。結局、値段もきめずにやっておいて、あとで、これだけだったんだぞ、払えと、こういうようなことが業者と漁協との間なんかでは行なわれているということですが、それはほんとうか。それに対してどういう指導をしておるかという問題でございます。たとえば、ノリ関係の資材等につきましても、従来は翌年の十二月に決済しておったのが、最近は翌年の三月に決済をする。一方的に早められておる。どういう原因でこうしておるのか、なぜ従来の慣行を変えたのかということについて、これは通産省にお伺いしたいと思いますし、水産庁は、こういうものの資材の安全供給対策というものにどんな手を打ってきたのか、十分考えていただきたいと思うのでございいます。  次に、今度は果樹の問題ですが、少し時間が過ぎましたけれども、ことしの生産量ですね。それはどういうぐあいに生果加工をし、どういう計画で現在処理されておるのかという問題ですね。それから、石油の不足というものが、こういう果樹について影響はなかったのかどうか。たとえば、熊本から甘ナツカンを北海道に千トン送りたいという計画があったのですが、貨車が十五トンが、一車両しかなくて送られないという状況もあるのですが、これは国鉄当局にもお聞きしたいと思います。  それから、もう一つは、今後の価格安定対策をどう考えておるのかということと、植栽面積というものは今後ミカンなんかでふやすのかどうかという問題ですね。  それから、品種改良について、研究機関に対する予算はどのくらい取ってやっておられるのかということ。  それから、大臣に、最後には、オレンジ果汁の自由化というものは絶対にやってもらいたくないということ。  以上で、質問を打ち切りたいと思いますが、御答弁を願います。
  106. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 まず、最初に、海洋水産資源開発促進法の開発区域の指定がおくれているのはどういう理由かという御質問にお答え申し上げます。  都道府県が沿岸水産資源開発区域を指定しようとするときには、先生御案内のように、県の内部部局及び関係行政機関の出先機関との間で意見の調整をはかりまして、それから農林大臣に協議することになっております。この協議に農林大臣が応じようといたします場合には、法律上、農林大臣は「関係行政機関の長の意見をきかなければならない。」ということで、関係行政機関との調整ということが非常に大きな項目になっております。現在までのところ、都道府県段階での調整を終えまして、農林大臣あてに協議がなされました区域は北海道ほか三件、十三区域でございまして、このうち北海道の六区域につきましては、ただいま先生からもお話しがございましたけれども、昨年、関係行政機関との調整が整いまして、指定をいたしました。区域指定がおくれている原因といたしましては、第一に、県段階における調整が手間どっているということでございます。第二に、これは運輸省、建設省等いろいろ関係行政機関があるわけでございますが、それとの調整に時間がかかっているのが実情でございます。したがいまして、水産庁といたしましては、今後とも都道府県段階での調整をなるべく早くやるように指導すると同時に、われわれも全力をあげて関係行政機関との調整に努力したいというふうに考えているわけでございます。  次に資材の問題でございますが、そこで、石油につきましては、石油危機が起こりましたときに、漁業用の石油の確保ということについてかなり心配されたわけでございますが、通産省等ともいろいろ相談の上、鋭意検討いたしました結果、中央及び地方に漁船用石油需給協議会を設置いたしまして、その適切な運営を通じて、漁業者に石油の円滑な供給を確保するという措置を講じております。その結果、私どもが聞いておりますところでは、大体、石油についてはあまりトラブルがないというふうなかっこうになっております。また、漁船の場合には、海外において給油を制限された遠洋漁船がございまして、これはえらい問題であったわけでございますが、国内の石油の積み出しによる洋上補給等によりまして操業の維持をはかっております。私どもが日鰹連その他から聞いているところでも、最近、海外においてもかなり事情は好転しつつあるというようなふうに聞いております。  さらに、漁網綱等の資材の問題でございますが、この漁網綱等の資材の問題につきましては、実は、もう統制がはずれて、長い年月がたっておりまして、いままであまり問題がなかったために、水産庁としては実態を必ずしも正確に把握していなかったわけでございます。これは石油製品が非常に多いわけでございますから、急遽そういった係もつくりまして、一生懸命実態把握につとめたわけでございます。その結果、漁網綱等の流通がどうなっているかという実態はほぼ把握いたしました。さらに、供給面を見ましても、一昨年と昨年の供給を見ますと、数量がふえているようでございます。それから、昨年の十一月までのところでは、価格の上がり方もそれほどひどくないわけでございますが、断片的に聞いているところでは、最近十二月、一月になりましてかなり値段が上がっているというような問題もございます。したがいまして、直接の生産面の担当は通産省でございますので、私どものほうの係官を通産省に派遣いたしまして、いろいろこういった点についても支障のないようにやってくれということをいま相談しているところでございます。
  107. 田口健次郎

    ○田口説明員 ロープ、漁網等の関係について御説明申し上げたいと思います。  ロープ、漁網等につきましては、原材料でございますポリエチレン、それからナイロンの原糸、糸の関係でございますが、これの供給が昨年末以来逼迫ぎみに推移しております。一方で需要が依然活発でございますので、こう見ておりますと、在庫がだいぶ減少ぎみでございますが、しかしながら、ことしに入りましてからは石油の供給が緩和しつつございます。なかんずく、化合繊糸用の石油については特配するということもいたしておりまして、原材料関係の供給も回復してきておりますので、ロープ、漁網等の供給は一応確保されるというふうに考えております。  価格につきましては、いま水産庁からも御指摘がございましたように、十二月、一月と上昇傾向を示しておりますが、いま申しましたように、原材料の供給状況もやや好転しておりますので、価格も鎮静化をするものと思います。  私どもも、国民に良質のたん白質を供給するという面から、ロープ、漁網等の確保の重要性というものを十分認識しておるつもりでございまして、農林省とも密接な連絡をとり、ロープ、漁網の安定的な確保をはかりたい。必要がございますれば、たとえば中小漁業者等でロープ、漁網等の入手に困難を来たしておるというようなことがございますれば、私どもも極力あっせんしたいというふうに思っております。  それから、御指摘の、一部で、販売業者が漁連に売りますときに価格をきめないで売る、あとになってから高い価格で売るというようなお話しがございましたけれども、これにつきましては、事実をさっそく調べまして、そのようなことがございますれば、妥当な取引方法と妥当な価格で売るように、取引するようにというふうに指導してまいりたいと思っております。
  108. 丸尾和夫

    ○丸尾説明員 北海道向けのかんきつ類の輸送につきましてお答え申し上げます。  北海道向け輸送につきましては、現在、御承知のような、東北、北海道を襲いました豪雪によりまして、実は、全国各地に御迷惑をかけております。大体、昨年末以来十日目ごとに大雪がこの地方を見舞いまして、除雪が終わりますとまた降るというふうな状態でございます。しかしながら、生活必需物資、生鮮食料品につきましては最優先で送るというたてまえでやっておりますので、現在も現地では一生懸命除雪をやっておりますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  109. 松元威雄

    ○松元政府委員 ミカン関係の御質問についてお答え申し上げます。  まず、第一に、本年四十八年産の温州ミカンの生産量及びその流通量についての御質問でございますが、四十八年産の温州ミカンの生産量は、これは十二月一日現在でございますが、前年に比べまして約七%減の三百三十三万トンというふうな目下の予想でございます。このうち生果用に向けられるものは約二百六十七万トン、加工向けは約六十四万トン、その他若干輸出もございますが、そういうふうに目下見込んでおる次第でございます。  それから、次に、ただいま国鉄のほうからも答弁があったわけでございますが、本年、特に、石油不足に関連いたしまして、果実輸送にネックはなかったかという問題でございますが、これにつきましては、確かに、一時、石油によって非常な懸念があったわけでございます。そこで、昨年末に、輸送燃料の供給事情が逼迫いたした事態に対処するために、農林省におきましては、果実等の長距離輸送の確保をはかるように、特に、遠距離の場合には帰りの燃料がないということが問題でございましたものでございますから、遠隔地産地から消費地にこれらの生鮮食料品を円滑に送りますために、緊急生鮮食料品輸送用燃料確保措置というものを講じておりまして、市町村長の輸送証明によりまして、果実等の生鮮食料品の輸送トラックに対しまして、輸送途中の給油に支障のないようにいたすという措置を講じたわけでございまして、これによりまして、その後の輸送には支障は来たしてはおりませんし、ただいま貨車のほうで若干の問題があるようでございますが、貨車と合わせましても、全体としますれば、果実の出荷はこれまではおおむね順調だというふうに私たちは理解をいたしておるわけでございますが、なお、今後、さらに輸送の円滑化に努力してまいりたいと思っております。  それから、ミカンにつきましての価格安定制度の問題でございますが、これは前々から御論議があるところでございますが、果樹の場合につきましては、これは永年性作物でございますし、したがいまして、まず、第一は、長期的な需要見通しのもとに計画的に植栽をするということが基本であるわけでございます。それとあわせまして、いわゆる隔年結果というものがあるわけでございますから、その豊凶変動を是正するようにする。たとえば摘果等をちゃんとやるというようなこと、そういうことを通じまして価格の安定をはかるということが基本だろうと考えているわけでございますが、そこで、そのためには、まず、長期的な植栽目標を示しまして、果樹農業振興基本方針というものを策定いたしているわけでございますが、それに従って計画的な生産を進める、それからまた、摘果の促進等によりまして生産変動を防止する、さらにまた、流通、出荷面におきましては貯蔵施設を整備する、そういうふうにいたしまして、計画出荷を促進いたします。それからまた、特に需要拡大のために果汁工場を増設するということ、それとあわせまして加工原材料用の価格安定対策を強化するということで、特に、四十九年産につきましては、大きな生産が予想されることでございますから、特に、四十九年度予算におきましては、果汁工場の増設に対しまして予算を多く充当いたしまして、その加工能力の拡充によりまして安定をはかってまいろう、こういう施策を総合的に講じまして価格の安定を期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それと関連いたしまして、ただいま、植栽につきまして、そういう目標に従って計画的に植栽を進める、しからば実際の状況はどうかということでございますが、御指摘のように、従来から計画的な植栽ということでやってまいったわけでございますが、ミカンにつきましては、従来はやはり進み過ぎる傾向にあったわけでございます。そこで、植栽抑制につきまして再三指導を行なったわけでございますが、特に、昨年以降は、補助事業や融資制度による植栽を中心にしまして指導を強化している。したがいまして、四十八年に至りますと、植栽面積はかなり減少いたしたわけでございます。したがいまして、今後も、長期的な需給動向に即応いたしまして、植栽についての目標の範囲におさまるようにということで、さらに指導を十分強化してまいりたいというふうに存じております。
  110. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 オレンジと、その果汁の自由化はいま全く考えておりません。
  111. 仮谷忠男

    仮谷委員長 柴田健治君。
  112. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 農林大臣にお尋ねを申し上げたいのですが、倉石農林大臣は、今度三回目の農林大臣就任ですね。相当の経験者であるわけであります。今度の大臣所信表明を聞かしていただいた中で、私は、森林問題、林業問題を中心にお尋ね申し上げたいのですが、まず、全国の農民の立場から申し上げると、倉石農林大臣農業を破壊した張本人だという位置づけをされておるようなんです。そして、倉石農政は暗い農政をつくり出した張本人だという言い方もされておる。この際、そういう暗い農政を打ち出した張本人だというようなことをなくするために、思い切って明るい農政を打ち出すような熱意がほしいという農民の声があることを御承知願いたい。これを前もって申し上げて、私は、本論に入りたいと思います。  所信表明の中で、林業振興について、ごく簡単にあなたは説明された。しかし、それは意味深長なところがあるのかもしれない。けれども、あなたのこの文章の中では、「住宅建設の増大に伴う木材の安定的供給の必要性が強まっております。このような情勢に対処して、」という簡潔な説明になっておりますが、それなら、そういう情勢をもう少し具体的にわれわれは知りたい。そういうように大臣が簡潔に言われますから、私たちも、農林大臣日本の林業に対してどういう構想を持っておるのだろうか、ただ、いままでのありふれた過去の実績の上に乗って、それを踏襲するというような考え方のほうが強いのではないかという気がするわけであります。  たとえば、一九六〇年に、日本の木材の需要量が五千六百五十万立方メートル、七〇年にはその倍に近い一億二百七十八万立方メートル、七二年には九千百五十四万立方メートルというように、木材の需要量というものは非常に伸びてきておる。この数字の中を見てみると、国内の木材の自給率は、六〇年には四千九百一万立方、七〇年には四千六百二十四万立方、七二年には四千三百一万立方というように下がっておる。需要量は伸びるが、自給率は下がっておる。過去の実績から言うと、自給率は八〇%台をくぐったことはないと言われている。多いときには八七%ぐらいあった。それが今日では四五%をくぐるというように、もう五〇%以上海外に依存しなければならぬというような日本の木材資源の姿である。と同時に、今日いろいろのことばが出ておる。「公益的機能」ということばもあなたは使われた。あなたははっきり言われておる。公益的機能を発揮させるために、いろいろ日本の森林資源の活用の分野が広がってきたということを考えたときに、ただ木材資源だけを取り上げてみても、あなたの認識というものがどういう形になっておるのだろうかという気がするわけですが、今日の日本の林業の姿に対するあなたの認識を聞かせてもらいたいわけです。まず、その第一点を聞かせていただきたい。
  113. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 もちろん、森林というものは、いまお話しのございましたように、わが国の国土保全、それからさらに国民全体の健康にも大きな影響のありますものでございますので、国土保全その他の重要な意味を持っております森林につきましては、これはもう林業基本法もございますし、国会においてもたびたび振興方策について御決議も賜わっておるわけでありまして、私どもも、そういう立場から、林業については特段の力を入れていかなければならないというふうな決意を持っておるわけであります。
  114. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 あなたはごく簡単に説明されたんですが、それなら、あなたが前に農林大臣をしていたときに、昭和四十六年三月に林興決議がされているのです。衆議院も参議院も、これはもう与野党一致で決議されている。この決議の内容をあなたは知っておられると思う。そして、今度あなたはまた大臣に就任された。あなたが前に大臣をしていたときに林業振興決議がされた。ところが、いま、国会で決議をされたことに意識をされて申されたんですが、その中身をあなたはよく御承知だろうと思うのですが、この点についてお答え願いたい。
  115. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは、国会でおきめになるときには、決議の案文について私どものほうにお話しがありまして、部内で相談をいたして回答その他それに対する意見を述べろということが通例になっておりますから、もちろん拝見をいたしております。
  116. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 中身を知っておってあなたはこれを守ろうとしないところにどうも問題がある。これは、この大臣所信表明でも明らかにすべきだ。国会の決議を尊重するということになれば、これを入れて、四十九年度においてはこういう方向でやるんだという所信表明がなされるべきだったと私は思うわけですよ。あなたが前に大臣のときに決議されて、そして今度また再び大臣になられたんですから、あなたは重大な責任があると思う。この六つの決議条項について、都道府県なり全国の市町村は、国会のなされたこの林興決議というものを各市町村議会や各地方公共団体の議会で支持をする、これを直ちに実行しなさい、実現してくださいという意見書を決議されているんですね。その数が約一千をこしていると言われている。約千の地方公共団体が強い要望をしておる。その決議の申請が国会にも提出されている。こういう実態をあなたはどう認識されておるのか、どう理解されておるのか、私はこの点をお聞かせ願いたいと思う。
  117. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 林政に対して、それぞれのお立場で、これを推進していくために、また振興してまいるために、いろいろな御要望が出るのはもちろんありがたいことでありますし、われわれもそういう考え方で行政をやるわけでありますが、諸般の状況もございまして、御趣旨はまことにそのとおりで、そういうふうにやりたいと思うが、実際の実行にあたりましては、すぐさまそれに着手できない面もあることは御理解いただけることだと思っておりますが、私どもといたしましては、基本法及びこういう皆さま方の御希望につきましてはできるだけ尊重して、そういうことの実現のできるように最大の努力をすると、こういうことでございます。
  118. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 林興決議の一は、国土の保全、水資源確保という大原則の中で文章が書かれておる。二番目は、立木の伐出、造林の充実、山村振興などのために、公共性の強いそういういろいろな林道施設についての配慮というものが書いてある。三番目は、自然破壊、山地災害を誘発するような過度の伐採、林地崩壊等の荒廃をもたらすような施業計画というものは十分配慮しなさいということを書いてある。薬剤散布の禁止のことも書かれておる。ところが、四十八年から、第二次林業構造改善事業約千カ所ということで実施されておるのです。この中を見ると、大臣、五〇%は大きな機械を入れることの予算措置にした。林興決議の趣旨から見ると、そういう自然破壊や山地の災害を起こさないような施業計画をしなさいという国会の意思表示がしてある。それにもかかわらず、林業構造改善事業の中身を見ると、補助のつけ方を見ると、半分は大型機械を入れて荒らすようになる。たとえば、林業構造改善事業であるクリ園でも、これは昔からの接木が一番いいのですよ。それを大型機械を入れてだだっと掘り起こして、それでクリの木を植えさせる。こんなクリ園は長くもたないのですよ。やはり、クリ園をつくるには接木が一番いいのですよ。それを、林業構造改善だといって、山を掘り起こして、それでクリの苗を植える。これは、見たところ、考えたところ、りっぱに技術が進歩し、科学が進歩して、いいクリ園ができるのだろうと思われるが、これはしろうとの考えることで、専門家から言うと、台木の上に接木をするというクリ園が一番いいのですよ。そういうものを一つも考慮しない林業構造改善事業、これは私はもっと勉強してもらいたい。そういう点、大臣、林業構造改善事業のあり方にもう一ぺん検討を加える必要があると私は思うのですが、お考えはどうですか。
  119. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 技術的な問題でありますので、長官のほうからお答えを申し上げます。
  120. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長官、聞いておいてください。もう平素からよく連絡をとって、大臣にも一応報告しておかないとだめですよ。大臣、そういうことを将来参考にしてよく勉強してもらいたいと思うのです。林興決議の中身を平素から理解をしてないから、一つの予算をつけるときに、補助事業その他の事業計画を立てる時分に、配慮が足らないという指摘が出てくる。大臣、そういう意見が出てくることを十分理解してもらいたい。だから、これからの林業施策を進めるためには、国会で決議された趣旨は、過去何年前にきめられておっても、それに十分気を配ってもらうという考え方に立ってもらいたいということをお願いするわけです。  それから、四番目に、国内の需要と外材、内外のこの需給の問題を書いてあるのですね。国内の自給率の見通しというものが、現在九十年のやつがある。それでは大きく狂ってしまっているのです。国内の自給率をどうするかという、五年先、十年先の計画をもう一回立てる必要があるという気がするのですが、どうですか、大臣
  121. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この点につきましては、これは常に研究を要することであるかもしれませんが、九十年の計画を農林省は立てておることは、いまお話しのございましたとおりでございます。そういう一応の計画に基づいて、私どもは年次的に林道、造林、協業等を押し進めてまいろうというわけでありますが、私どもといたしましては、毎年の予算編成にあたりましては、そういう意味で、林道、造林の予算等については特段の努力をいたしてやってまいっておるわけであります。
  122. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それなら、自給率の見通しという前提に立って、ある程度の、五年とか十年とかいう期限を切っての見通しの計画を出される意思はありますか。
  123. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 長期見通しにつきましては閣議決定をいたしておりますので、あの方針に基づいてやってまいるつもりであります。
  124. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長期の見通し、あの計画がずさんだとわれわれは判断をしているのですよ。長官がうしろからいいかげんな知恵をつけるから——大臣は知らないのだけれどもね。きょう私はどういう結論を出せとは言いませんけれども大臣、これは真剣に考えてもらいたい。それが出てこないと、ほんとうの国内の林業施策というものは生まれてこないという気がするわけです。林興決議の趣旨をあくまで生かしていく、これが何としても基本にならなければならぬと思うのです。  それから、五番目なんですが、日本の林業のにない手である林業労働者が山村に定着するような施策はどうしたらいいのかということがはっきり書いてある。たとえば雇用安定、他産業並みの賃金を確保すること、労働条件の改善、それから労働基準法や、失業保険法や、厚生年金法等の適用を完全に実施する、労働災害及び職業病の絶滅の措置をすると、ちゃんと具体的に書いてある。これをやっておると言われるが、完全に実施されていないところに問題がある。いま、第一次産業の中で、漁民でもそうですが、林業労働者、林家の就労の皆さん、また一般農業でもそうですが、これは平均年齢が非常に高い。これは大臣も御承知だろうと思う。農業の場合は大体五十歳をこしておると言われている。五十歳をこしておるということになると、先ほども兼業農家専業農家かという論があったのですけれども専業兼業という論議は別として、いま農業で、——林業でも同じでありますが、山で働いておる人、田んぼで働いておる人は、平均年齢が非常に高いことは間違いない。  それから、労働力をどう確保するか。労働力を確保する中で、ことばとして出てくるのは、やはり、農業後継者、林業後継者ということです。後継者をどうするかということです。先ほども瀬野委員の発言の中にもありましたが、いま、新規卒業者が百五、六万人ある。しかし、農村に残るのはそのうち二万だ。こういう数です。毎年毎年下がっておる。二万人では、十年で二十万人、二十年で四十万人ということにしかならない。五百万農家——あなたは、この前、第一回の農林大臣になった時分に、西村農林大臣と同じようなことを言われた。あまり日本農家が多過ぎるから農家戸数を減らすのだということを言われたが、どの程度減らされるか、あなたの腹のうちはまだ聞いておりませんが、一年に二万ずつ残したって、そのうち林業労働者としてどの程度残っていくかということを考えたときに、国土の六八%、二千五百二十万ヘクタールの山林原野をそういう労働者でどう守っていくか。国有林八百万、私有林千七百万——地方公有林を含めて、要するに二千五百二十万ヘクタールの山林原野を守るためにはどれだけの労働力が要るのか、林業労働者がどれだけ要るのか、いま八百万ヘクタールの国有林で働いておられる労働者が現在のままでいいのか悪いのか、この点、大臣、どうですか、労働力確保についてどうしたらいいのか、この点の見解を聞きたいのです。
  125. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのとおりでありまして、農業のほうは別といたしましても、林業においてもだんだんと若年の人が減って老齢化していく傾向でありまして、ことに民有林のほうを見ますと、そういう傾向が特に強いようであります。したがって、もうしばしば林野庁でも申し上げておりますように、社会環境をよくすること、それから、就業いたしておる人々が安定して職につとめられるような環境をつくり出すこと、それからまた、失業などの場合についてのめんどうを見てあげる措置を講ずること等、いろいろなことを考え施策をしておるわけでございますが、いまちょっとお話しになりましたように、新しい学校卒業生の就職希望を見ておりますと、他産業に比べて著しい減退であります。しかし、一方においては、やはり農業のほうもそうでありますが、若者たちで、むしろ農業に強力に将来の望みを嘱して特に出ていこうとする傾向もふえてきております。私どもといたしましては、若者たちがそこにとどまってやってもらえるような環境をつくり出し、そのための所得考え方をし、それからまた環境を整備する等のことが必要なことであるという考えで、待遇改善についてはできるだけの努力をいたしてまいっておるつもりであります。
  126. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 努力をしておると言われるのですが、それは努力しておられると思いますが、しかし、末端では、ほんとうは、それが具体的によくわからないのです。国有林、民有林を含めて、林業労働者に、いま山で非常にけが人がふえておるが、それらの処置と、それからもう一つは、省力化ということでいろいろな機械が入るわけですが、その機械からくる、いろいろな職業病、いま問題になっておる白ろう病と言われる振動病、腰や肩や心臓が悪くなるといういろいろな病気がふえておりまして、人間の賃金問題もよくしなければならぬだろうし、待遇改善に伴ういろいろなものを考えなければならないけれども、まず、日本で一番おくれておるのは、労働政策の中で労働衛生学がおくれておるのではないかという気がするわけです。実験も試験も何もしないで新しい機械を入れる。そして、省力化だということで農林省はすぐ補助をつける。予算措置をして入れるんだが、それを使う労働者のことをもっと真剣に考えるべきではないか。それから、その前提条件としては、やはり、労働衛生学というものをもっと勉強していただいて、この機械を使ったら人体にどれだけの影響があるのかということをもっと考える必要がある。たとえば、これを長時間使わせると、エンジンの音で耳が悪くなるのか、また、器官が悪くなるのか、振動病という、神経系統のそういうものが悪くなるのかというように、その機械を取り入れる前に、そういう労働者の健康に関する衛生学というものをもっと考える必要があると思うのですよ。倉石農林大臣が三たび就任されたんだから、農林省に思い切って労働衛生研究所をつくるという気魄があってほしい。金はないことはないと思う。大臣、今度は、国有林はどえらくもうけちゃった。国有林野特別会計は六百七億ももうけた。去年二千二百三十億か売り上げがあって、たいへんな利益を出した。この利益の中身はあとから聞きますけれども、労働者の一番基本的な問題は労働衛生学、これはよその国に比べて日本が一番おくれているんですよ。それから、労働衛生研究所をつくるというお考えがあるかどうか。この辺が、三たび大臣に就任したあなたの暗い農政から明るい農政への転換の第一歩だと思うのですが、どうですか。
  127. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 職場に働く人々というのは非常に大事な方々でありまして、先年吉田総理大臣がイギリスへ行きましたときに、チャーチル総理がパーティーのときに一人の男を連れてきて、この男がわが英国の繁栄の半分の力を入れてくれている人だからよく覚えておいてくれといって労働組合長を紹介したそうでありますが、私は、吉田さんからそれを承って、まことにいいお話しだなあと思いました。職場に働く人々の衛生を特に考えるということは、政府としても大事なことだと思います。白ろう病、それから山で働く者のじん肺等、なかなか難病もございます。したがって、こういう問題については、その機械を使う場合にはもちろん研究をしておかなければなりませんが、政府、つまり労働省には労働衛生研究所がございますからして、そういうところでも、いろいろなデータに基づいてずいぶん検討はいたしておるようでありますが、農林省でただいまそういうものを特につくるということは考えておりませんけれども、そういう権威のある機関で十分検討して、職場の人たちに災害をできるだけ少なくするということは必要なことだと存じております。
  128. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私が金があると言うたら、金がないという答弁。たいてい金がないんですと、こう言われる。私は、今度の国有林野の特別会計が六百七億も黒字が出たというのはちょっとびっくりしているのですが、考えてみると、昨年あれだけ木材の値上がりで、この委員会でもだいぶ問題になったのですが、こういうことを片一方で林野庁がやっておいて、農林省がやっておいて、木材の高騰を押えるというような指導をしたということなんだけれども、これはどうも、した結果でもないような気がするのですよ。これは、農林省もぐるになって木材の値上げをしたんではなかろうかというような気がするわけです。六百七億も黒字を出すなんということはいまだかつてないのですよ。そういう見通しなら、森林の保護という立場から、将来の需給の見通しというような総合的な判断で多少の処置をすべきであったという気もするのです。農林大臣、この点について、よく売ったな、よくもうかったなというような軽い気持ちを持っておられるのかどうか、どういうメスを入れられたか、どういう検討をされておられるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  129. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは御承知のように特別会計でありますから、林野庁の会計は外部とは関係なくやっておるわけでありますが、木材需給の関係で、一般に木材が値上がりをいたしました。その影響もかなり多いことだと思うわけでありますが、しかし、こういう状態は好ましい姿ではありませんので、四十九年度予算の基本方針でも申しておりますように、総需要を抑制して物価を安定させるというためにいろいろな苦労をしておるわけでありますから、したがって、諸般の素材が低落してくることを私どもも待望いたしておるわけであります。しかし、木材の需要は、一時的にはただいまのようなお話しでございますので、建築資材等も用途が若干にぶってまいりましたので、木材の価格、また輸入価格もやや安定的に推移をしておりますけれども、木材価格がそう騰貴していくということは好ましいことではありません。これは一時的に特別会計に黒字が生じたということでありますが、基本的には、やはり、物価が安定してまいることをわれわれは待望しているわけであります。
  130. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 好ましい姿ではないというお答えなんですが、昨年一月、二月、三月、四月と、木材が足りないということでたいへんな騒ぎをしたわけですが、この委員会でも、林野庁長官もいろいろ答弁をされたのです。外材の輸入の数量を調べてみると、相当入っているのですね。合板やチップ材をのけても、十二月はまだわかりませんが、十一月までに四千七百五十三万立方メートルも入っている。これだけの数量が入って、それで国有林のほうも、いまだかつてない、びっくりするほどの払い下げをしている。そう木材の価格が上がることは考えられないのに、でたらめに上がったということは、本委員会で長官もいろいろ答弁をされたけれども、どうも、腹のうちでは、上がったほうが国有林野ももうかるし、もっと上がればいいなという気がしておったのではなかろうかという気がするのですね。だから、木材の輸入量、それから国内の自給量という総合的な判断をしてみると、木材は足らなかったことはない、完全に需要と供給のバランスは保たれておったという気がするのですよ、大臣。それなのに、木材の価格があれだけ上がったということは、ぼくらふしぎに思うのですよ。そういうことは、あなたは大臣になって間もないのですから、これから大いに検討してもらいたいと思います。  次に、あなたの、この林興決議を完全にこの機会に守っていく、どうしても守ってみせるという決意が私はほしいのですよ。それを簡単にお答え願いたいのです。
  131. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御趣旨を尊重して、できるだけそれに近よるように努力いたしてまいらなければいけません。
  132. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 どうもあとのつけ足りが悪いのだな。それを尊重してと……。あなたは一流の政治家だから、逃げることもうまいし、日本語もうまいということになるわけですが、しかし、これは常識の問題だと思うのです。あなたが常識があるかどうかによって、この問題がこれから解決の方向にいくかどうかということになるという気がするわけで、ここから先は答弁を求めませんが、常識で判断してもらいたいという気がいたします。  私は、民有林、国有林含めて、日本の林業のやるべきことは何かという施策の中で、一番大事な点をあなたは忘れておると思う。四十九年度の予算を見てもそう言える。それは何かというと、災害対策ですよ。防災対策です。この防災対策について、今度の予算の中身を検討してみますと、たとえば、林野火災の対策は二千二百万円ですよ。去年は追加を入れて二千二百三十万円です。二千二百万円ほどの林野火災の予算で、二千五百万ヘクタールの山林を守るという考え方であるのか。あなたの答弁は、私は大体見当がつくんだよ。消防庁でやっていただいておりますと、こう言う。それじゃ発想の転換にならぬ。自分のものは自分で守っていくという気持ちがない限り、それはだめだ。行政官庁との協力、協調の精神でお互いにやるということはわかりますけれども農林大臣の管轄の財産は自分で守っていくという基本路線がなければならぬと私は思うのです。林野火災についてあなたはどう理解されておるのか、この防遏対策をどうしようとするのか、この点の見解を聞きたいのです。
  133. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 林野の火災につきましていろいろな予算を計上しておりますが、四十九年度においては六億余りであります。そのほか、いまの新しい考え方で、四十八年度まではありませんでしたけれども、四十九年度は、空中消防用の器材費を計上しております。これは私のほうの予算ではありませんで、消防関係でありますが。大体林野の火災は、道路網の整備と、それから林野への入山者が増加いたしていることなどによりまして、発生件数と損害額がともに増大する傾向にございました。そこで、農林省は、いま申し上げましたように、消防庁と協力いたしまして、特に消防活動に重点を置いて、出火防止のための啓蒙宣伝の充実をいたしますとか、森林の巡視を強化するということをいたさなければなりませんが、そういうことについて促進いたすように指導しております。  それから、予防施設の整備をはかることも必要でありますが、山村における過疎化とか老齢化の傾向は、消防体制を維持するにもいろいろ問題がございますが、そういう点につきましてもさらに強力な指導をいたしまして、従来の消防体制でこれに対処することが困難となっておりますので、いま申し上げましたように、空中防火というようなことを考えまして、四十九年度予算において新たにそういうことをいたしたわけであります。  なお、こういうことにつきまして、さらに技術の開発につとめてまいるつもりであります。
  134. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 よその省の予算は言わなくてもいいのですよ。今日、毎年毎年の植林の実態を見てみると、年々造林の面積が減っておるが、火災のほうは依然として減らない。四十八年度は九千ヘクタールほど焼けましたが、ことし一月からこっち、異常乾燥ということで、いろいろ問題はありますけれども、相当の山林火災が起きている。それに対する処置を見ておると、大臣、あまりしていないのですね。本気でやっておるというが、現在焼けておる山があるのですよ。一月から二月ごろにかけて相当山林火災がある。その現状に対して林野庁がどういう態度をとっておるか、どういう指導をしたのか、その点、大臣、あなたは知っておられるか。下から報告が上がっていないから、正直言ってあなたは知らぬと私は思う。だから、そういう点について、もう少し大臣みずから陣頭指揮をとってもらいたい。こういう場合にはどう指導するかというようなことについて、もっと地方公共団体を含め、関係者を含めて、林野庁のとるべき指導要項というか、指導性の基本というものを示す必要があるが、この点についての大臣としての見解を聞いておきたいと思うのです。
  135. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ほんとうに火災はもったいないことだと思います。林野庁でもそれぞれが計画を立てておるようでありますけれども、もちろん、十分その経過を聞きまして万全を期してまいりたいと思います。
  136. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 日本の林業がこういう姿になったということは、いままでの産業政策の目というものが山に向いていなかったということで、結局、先祖が残してくれた財産をかじって生きてきた。こういう姿になったのは、どちらかというと、安上がりの林業施策を進めてきたからだということが言えると思うのです。私たちは、その安上がり林業をこの辺でやめて、思い切って山に投資するという姿勢がなければならぬと思うのですね。そこに私たちは発想の転換を大臣に求めたいのですよね。国有林で六百七億もうけた。もうけた、もうけたと言うとおしかりになるかもしれませんが、収益があがったのだから、その金をもう一ぺん山に返すというぐらいな気持ちで、思い切った財政投資の方向を出したらどうか。どうも、ことしの予算を見ると、総需要抑制、抑制と言うておるが、総需要抑制論の同じワクの中に林業を入れなければならぬという考え方自体がおかしい。林業は違う。総需要の抑制論とは別だ。日本の林業を発展させるためには、そんなことではだめだ。総需要抑制論の中で、一山何ぼに扱われるところがわれわれは不満なんです。日本の林業は、総需要抑制論とは別だという考え方で投資を考えるべきではなかったか。大臣、その点はどうですか。
  137. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 林業の大切なことは、もうおっしゃるとおりであります。われわれも全く御同感でありまして、森林政策というものは、いろいろな意味において国の基本になる大切な問題だと思っております。したがって、いまのような場合に、これからもいろいろな変動があるであろうから、やはり、備蓄政策等もこの際進めてまいる必要がある。林道の開設等に対しても、私どもは、一般考え方にも増して大切なことだと思っております。  いまおっしゃいましたような、林政が大切だという意味においては全く御同感でありまして、われわれも、あとう限りの処置を講じて林政の安定を期してまいるように、これからもつとめてまいりたいと思っております。
  138. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 そういう考え方に大臣がなっていけば、国民の目も自然と山に目を向けてくれると思うのですね。いままでは、土地の乱売買、乱開発等いろいろな問題が起きておる。国民が、先祖の財産を売り払う、処分をする、たまには山火事で焼けてもいいじゃないかということで、平気で山でたばこを吸うというような、山を粗末にするという、そういう世相をつくり出したということは、大臣、何としてもあなたの責任ですよ。これをこの辺で直してもらいたい。それから、国、にそれを訴える迫力というものは、あなたがつくり出さねばいかぬ。あなたが依然として山に対する認識が欠けると、これはもう下まで影響していく。あなたがどんなに言うたって、いまの現行林野行政の中を見ると、鳴かず飛ばずですよ。たとえば森林保険制度、あれはあなたは知っているでしょうが、あれ一つ見ても、殿さま営業ですよ。造林で補助を出すところだけ、五カ年なら五カ年の掛け金を天引きして掛け金をかけさせる。あとは、それを拡大しようとも何ともしない。それから、火災被害やら雪害など、いろいろな山林被害に対するそういう保険制度、何のためにできたのか。どう拡大したらいいのか。どう活用したらいいのか、どれだけ恩恵を与えていくのがいいのかという保険制度、その意義すら活用していない。こんなことで、あなたがどんなに気ばってみたところで、現実の姿は何にもしていない、十年一日のごとく鳴かず飛ばずだ。これで、あなたが一生懸命やりますと言うたって、なかなか出てこない。だから、林業施策全体のいまの制度を根本的に検討するという、そういう気持ちがなければならぬと思うのです。大臣、どうですか。いまの現行制度の中で検討を加える、メスを入れるというくらいのお考えがありますか。
  139. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この問題は、林野庁の長官からもよく聞いております。これはさらに検討していかなければなりませんが、何か、あなたは老婆心でおっしゃっていただくのかもしれませんが、どうも、いままであまり林政当局が一生懸命でないようなお話しでございますけれども、そうではないのでありまして、林野庁においても、たとえば民有林を含めて、日本の森林政策について、民間人等の有識者にもお願いして、先年来いろいろな角度から検討して、なかなか勉強しているわけであります。そういうことの中で、いまの林業保険等、まだ不十分の点もあるかもしれませんが、改善すべきは大いに改善いたしますための検討を続けておる次第であります。
  140. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣はいろいろ言われますけれど、民有林を本気でやっておりますと言われるが、しかし、たとえば昭和三十年代の初年に自治法が改正された時分に、Aの県には、あなたは入口二百万以内ですから五部制ですよ、二百万をこしたら六部制ですよということで、人口で部の設置の基準をきめた。山林面積がどうあろうと、そんなことはおかまいない。そして、一斉にほとんど全国的に林務部をなくした。いま林務部が残っておる都道府県は十二であります。いま、私の記憶しておるところは十二だ。残りは林務部はない。みな農林部か何かの名前で合わしてある。それが都道府県ですよ。中央には林政審議会という権威ある機関がある。それで専門家の学識経験者を入れていろいろ研究をせられて、答申を受けておる。都道府県でも森林審議会制度が法律的にもあるが、大臣は、この森林審議会が都道府県で年に何回開かれて、どういうことをやっているのか、御承知ないと思う。答弁を求めませんけれどもね。民有林のことについても、あなたは一生懸命やっておると言われたが、そういうように都道府県に法律で審議会制度を設けなきゃならぬし、当然あるべきだし、また、活用もしなければならぬのに、機能が十分発揮されていない。これらの欠陥は、農林省の指導方針がゆるやかであるというのか、手落ちがあるのか、手抜かりがあるのか知りませんが、一つ一つあげていけば、本気でやっているとは言えない。この際私はこういうことを指摘事項として申し上げるが、民有林、国有林という区別でなしに、日本の林業をどう前進させるかという見地から、人口で押えられるような部でなしに、都道府県にもう一ぺん林務部を復活させるという熱意があってほしいと思う。都道府県に林務部をもう一ぺん復活さしていくと気持ちがほしいのですが、大臣どうでしょうか、この点については。
  141. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 気持ちは全くそのとおりでありますが、行政機構のことでございますから、いろいろそれぞれと相談をしなければいけませんが、林政を大事にしなければならぬという点においては全く御同感であります。
  142. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 十分検討してもらいたいと思います。  時間があまりないから進んでまいりますが、先ほど私は林業労働者のことで少し申し上げたのですが、国際的、国内的と、全体を含めて、日本食糧政策というものをどうするかというような論議が他の委員の人からあったからとやかく申し上げませんが、どちらにしても、日本の漁業、林業、農業、全体を含めて、農業の中でも私が一番関心を持っているのは畜産なんですが、畜産振興と言われますけれども労働力の確保、要するに後継者育成の問題、それから技術者をもっと養成するという考え農林省にあってほしい。技術者の養成というものについては、これは日本農林省だけの考え方というのもおかしいと私は思うけれども、当面は、農林大臣が本気になって、農業技術者を養成するということにもっと力を入れるべきではなかろうかという気がする。なぜならば、今度の油のバルブが締まるか締まらぬか。締まりもしないのにつくり出された石油危機なんですが、これからいずれ国際的な立場で外務委員会で問題になると思いますが、海外開発事業団の問題があるが、どちらにしても、国際的にも、日本農業技術者というものをこれから十分養成していかないと国際協力というものはできないんじゃないかという気がするわけです。アラブの国におても、金をくれということで——くれと言っては失礼な言い方になりますが、とにかく、技術協力というものは大事だ。それは、他の産業の面も大事でありましょうが、農業の技術者がアラブの国々には必要ではないかという気がするわけであります。あそこは、油資源はあるが食糧がない国だということも言えるわけですから、それぞれの国も、おそらく食糧政策に全力投球をされるだろう。その場合に、日本に向かって農業技術者の協力要請が出た場合に、国内ですら技術者がいまおらないのに、海外どころじゃないじゃないかという問題が起きるのではなかろうかという気がするわけです。アラブの国々は塩分の多い土質であるから、私は、相当高度の技術者が必要になるのではなかろうかと思う。塩分の多い土質というものは、地下何メートルか、アスファルトでもどっと敷いて、下から塩分が上がらないようにして、その上に農産物をつくるような土壌改善をするということに将来なっていくのではないかという気がするわけであります。だから、そういうことを考え合わせながら、国際的な面や国内的な面を考えて、農業技術者というものをもっと養成することを考える必要がある。今日、農業技術者はあまりふえていない。だんだん減って、老齢化しておる。いまのままでいくと、それぞれの都道府県を含めて、公共機関につとめる技術者職員も断層ができて困るのではなかろうかという気がする。それから、労働力の確保、後継者育成、出かせぎ対策もあります。けれども、技術者の養成というものは政策的にある程度考えてやらないといけないのではなかろうかという気がします。特に、畜産の技術者ですね。先ほど人間の労働衛生学のことを申し上げましたが、家畜衛生についても、大臣、もっと考えてやらなければいかぬのです。試験場の場長にまかせっぱなしというのはよくないと私は思う。大臣はこの辺にも目を向けてもらいたい。私は、日本のいまのあらゆる試験研究機関、衛生機関、衛生研究所の機関を見て、どうもお年寄りが多いような気がする。まじめにこつこつ研究せられて、長い歴史を重ねてこられたんだから敬意を表しますけれども、しかし、あとに続く後継者がないような気がする。それから、日本畜産衛生研究所で、専門的に見て、たとえば疫学、臨床学、病理学とか血清学という分類をして、そういう専門的な技術者という若い人が何人おるんだろうかという気がする。大臣農業関係全体の技術者養成も大事でありますが、特に、日本の試験研究機関の技術者職員について、政策的にこの辺で力を入れてあげなければ将来たいへんなことになると思うのですが、どうですか、この点は。
  143. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 全く同感でございまして、私どもは、農業関係の技術者をもっと教育して数をふやさなければいけないんではないかと思います。ことに、御指摘のありましたように、海外経済協力をいたします場合にはことさらそうでありまして、そういう方向でやってまいりたいと思います。
  144. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣、私は政策的な問題だけ申し上げているんですが、ここに局長、長官とみんなおられるんだから、これから内部的によく相談をしていただいて、これはどうするかということが具体的に形としてこの次は出てこなければならないので、期待をしておきますが、ことしの予算を見ると、飼料対策で、大豆だとか、その他いろいろな飼料対策予算を大幅にふやす、この面についても、試験研究の面が非常におろそかになっておるんではなかろうかという気がします。よその国のほうが非常に研究がよくできておる。たとえば大豆一つ見ても、アメリカの大豆は日本から行ったんだね。本家本元は日本なんだ。そのアメリカか大豆の品種改良をして——アメリカの大豆というものは、大豆油には適した大豆であったけれども、とうふや、高野どうふや、油揚げというものには向かないと言われた。ところがいまや、アメリカの大豆でも、とうふにでも、油揚げにでも、何にでもできるという、そういう品種改良をしてきた。肝心かなめのこの日本が、本家本元が、品種改良も何もしない。そして、今度の飼料対策で、大豆だ何だと言って騒いでおる。米だけは日本の技術は進んできたけれども、ほかの穀物類や飼料については、研究が非常におくれておる。  それから、草種の改良でも、もっと研究したらどうかという気がする。たとえば、私らのところでは、グズラカズラというものが野に——これは、家畜のえさには非常にいい。ところが、あれの一番悪い点は、どっどっどっと伸びて、そのつるが伸び過ぎる。そこらじゅう伸びて他の草をこわしてしまうというので困っておる。これをもっと品種改良して、つるが伸びないような改良をしたら、りっぱな粗飼料として使える。もっと研究すべきではないか。ウシネブリという木があるが、これについても品種改良したら、家畜のえさとして、和牛、乳牛には適しておる飼料なんだ。これらの研究を一切しない。現在日本に何万種類とある草の種類について、もっと研究したらいいじゃないかという気がする。それを一切しようとしない。単に、人がおらない、金がない、できないということでなく、大臣、あなたも日本人なら、日本土地に歴史的に育っておるいろいろな草があるのだから、こういう草の研究を思い切ってもう一ぺんやるときが来たんではなかろうかという気がするんですよ。これも政策的にあなたがどこまでも熱を入れて、よし、これにも予算をつけて研究をやってみい、よその国に負けぬようにやれと、このくらいの熱意で、こういう面の予算なり技術職員なりをふやしていくという考えがあってほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  145. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そのとおりだと思います。技術は非常に大事なことでありまして、技術が中心で生産が行なわれるわけでありますから、お話しのように、わが国は一時米に非常に重点を置きましたので、米の技術者はかなり大ぜいおいでになったようでありますが、飼料、穀物等についてはだんだんそういう方が少なくなってきた。やはり、お説のように、農林省といたしましても、現在方針に定めてありますが、国内で必要であるにもかかわらず海外にその需給を仰がなければならないようなものは、極力自給力を増強する考えだと申し上げておりますが、そういうことについての研究は、草をはじめもちろんやらなければいけません。そういうことで、おっしゃることは私どもも同感でございまして、そういう技術の開発に最善の努力を尽くしてまいるつもりであります。
  146. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 これも政策的な問題ですね。行政指導の面と合わせて大臣考えを聞いておきたいのですが、肥料だとか、飼料だとか、農機具その他生産資材の問題で、各委員がそれぞれの角度から質問されたのですが、たとえば、いま、農機具一つ取り上げてみても、価格が高い安いはいろいろ問題があります。業者が悪い、メーカーが悪いと、いろいろあるけれども、あまりにも消費経済の風潮が強く、消費も美徳ということで、そういう農業生産資材をつくるメーカーまでが耐久性を一つも考えない。二年か三年でつぶれたらいいんだという考えがある。この点は、やはり、政府のいままでとってきた経済政策の悪い面が浸透しておると思うのです。われわれがつくる機械は、五年でも、十年でも、二十年でももつんだという一つの使命感が必要ではないか。昔の左甚五郎は、おれは死んでも、おれの形見は何百年でも残っていくぞという使命感を持ってつくった。いまごろの企業は、使命感が全然ない。中身はどうでもいいんだからということで、一年置きに型を変えている。自動車産業のまねをして、農機具産業までがちょっと羽を変えてみたり、ギアを少し曲げてみたりして、いろいろ型を変えて、二、三年たったら前の部品をつくらない。ぽこぺんにしてしまう。このくらい資材を粗末にするような風潮をつくり出したあなたらの政府というものはむちゃだと私は思う。だから、少し手入れをすれば何年でも使えるものをつくるべきだ。大臣、田植え機械でもそうでしょう。いま、三十万円もするのですよ。十七、八万円で、箱をつけて二十二、三万円が、いま、ことしは三十万円もする。価格はいずれ次の一般質問のときに申し上げますけれども、きょうは政策的にあなただけに申し上げるのだから、聞いてもらいたいのですよ。三十万円の田植え機械は、一年に何日の稼働時間か、原価計算をしていくと、非常に高いものにつくのです。それで二年か三年しかもたない。それを十年もつような田植え機械をつくるという指導性ができないものか、農林省。肥料機械課長の前田さんというりっぱな人がおられるようだが、あなたは何をしておられるのか、どういう指導をしておるのかと聞くと、どうもあれは通産省の関係でなあと、こう言う。通産省に行くと、農機具の検査や何かは農林省ですなと、こう言う。どっちがどっちやらわけがわからぬけれども、それは別として、耐久性のある機械をつくらしていく、トラクターであろうと、散粉機であろうと、田植え機械であろうと何であろうと、十年以上もつような機械をつくった者には農林大臣が表彰をしてやる、ちっとは税の減免措置もしてやる、五年以内でつぶれるような農機具をつくった業者からはもう買うてやらない、あんなメーカーからは買うなというような、それくらいな指導性をこの辺で出さないと、資源のない国が資源を浪費するようになる。この点を農林省としては真剣に考えてもらいたい。  それから、もう一つは、肥料でも飼料でもそうだが、ことしも、農協なら農協の肥料の申し込みがある。毎年申し込んでおる。ことしの申し込みを見ると、肥料の名前はごく簡単で、ことしは肥料の見通しがないという判断に立っておるようです。それから、肥料がないものだから、いままでは配合肥料、飼料をたくさん書いて、農家の申し込みを、一年間あなたは何ぼ申し込むかというので申し込みを受けるわけです。ことしは肥料が入るか入らぬかわからぬけれども申し込みなさいという無責任な指導で申し込みをさせた。その申し込み用紙を見ると、肥料の名前が非常に数が限られておる。それからして、ことしはいよいよ肥料の見通しがないのだなという気がするのですが、この問題についてはいずれまたお尋ねをするとして、これは大臣に聞かなくても、行政それぞれの局長に聞けばいいのですが、結局、配合飼料という飼料の面については、六百種類もあると言われておる。なぜ六百種類もあるか。たとえば、メリケン粉の種類が八十種類ある。薄力粉、強力粉、普通粉と、大筋は三本だけれども、それに合わせて、クッキーの種類の厚い薄いでメリケン粉の種類ができる。パンが大きいかこまかいかによって——そこまでは私は知らぬが、とにかく、その種類に合わせて、メリケン粉の種類が八十種類もできる。それと同じように、過当競争から生まれた配合飼料か知らないけれども、六百種類もつくらしておる。飼料の品質に関する法律がありながら、六百種類もつくらせて、農林省はどんな中身の検査ができるのだろうかという疑問が起きる。その六百種類の配合飼料をどう少なくするのか。少なくできるはずだと私は思う。たとえば、養鶏の飼料でも、ひなの時分にはこういうえさです。少し大きくなったら、このくらいのえさですよ。成鶏になったらこのえさですよ。大体、六百種類も飼料は要らないと私は思う。それを手放しで、何ぼでも過当競争の中でつくらせているが、いま、今日、その配合飼料でどれだけ生産農民が苦しめられておるか。大臣、この点は、下から報告がないから知らないでしょう。知らないから、私はあなたに教えてあげるのだから、そういう面をこれから政策的にあなたにも勉強していただいて、不備のあるところ、欠陥のあるところ、そういう点を直していただくように最善の努力をしてもらいたいと思うのですが、そういう点について、農機具、肥料、飼料について、あなたにメスを入れてもらいたいという気持ちがある。それは農民の声なんですよ。その点についての見解をちょっと聞いておきたいのですよ。
  147. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 たいへん大事なお話しを承りました。十分参考にして検討いたします。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  148. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それから、もう一つ、今度は流通機構について、大臣、ふしぎに思っていることがあるのです。毎年毎年、農林省は大蔵省にどういう理屈をつけて予算を取られるか知らないが、果樹にしても、蔬菜にしても、食肉類にしても、流通機構の改善対策で相当の事業費を取るわけです。だから、毎年流通機構の改善をしているはずです。そして、流通機構の改善というものは、生産者を守り、消費者を守るということが前提になっておると思うが、それが、消費者であるほうが高く買わされて、生産者である農民のほうは安く売らなければならぬという結果になっておる。流通機構の改善をするのに、なぜ、毎年毎年消費者価格が上がるのか。これがふしぎなんですよ。  たとえば牛肉の問題で、あなたのほうのこの資料で、この間も私は言ったのですが、とにかく昭和四十五年を見ると、この卸価格と小売り価格で、小売り価格が卸価格の大体倍です。それが年を追うごとに高くなる。流通改善をしながら消費者価格が高くなるということがどうしてもわからない。結局、どこにそういう矛盾が出てくるのか。何のために流通改善をするのか。流通機構の改革で相当の金を出しながら、生産者側の手取りは少ない、消費者は高くなるということがどうして改善されないのか。よけい矛盾が広がってくる。大臣、こういう現象が起きておるのですよ。この点について、あなたは、これからどうメスを入れていこうとするのか。これについて大臣見解を聞いておきたいと思うのですよ。
  149. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 市場関係につきましては、ものによってずいぶん違いますので、具体的なお話しがございますれば、そういうことについて調べてみますけれども、大体、流通機構の間でなるべくロスを省きたいということをわれわれは考えておるわけでありますが、いまのお話しを要約して私が拝聴いたしましたところによりますと、生産者の出荷の金額は変わらない、それで、小売り業者の入手価格は上がっている。そういたしますと、その間におけるロスもあるでありましょうし、あるいは、今度のいわゆる石油危機みたいなもので、資材関係も上がっているものもあるでしょう。その中間の状況を調べてみないとわかりませんが、私どもといたしましては、この中間段階におけるロスをどうやってできるだけ合理的にやっていくかということが、この市場関係、取引関係に対する行政の目のつけどころだと思うのであります。それは先年、市場法を改正いたしましたときも、この委員会でいろいろ御論議がございましたけれども、そういうことについては、常に私どもはメスを入れて、ロスを省くように努力いたしておるわけでありますが、ものによってずいぶん違いますので、具体的なお話しがありますれば、それについてまたお答えいたしたいと思います。
  150. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 ここでは、時間がないから、具体的なことについてはいずれあらためて申し上げますけれども、あなたにひとつ大いに勉強してもらいたいということでお願い申し上げているのですよ。  一つの例を申し上げると、牛肉は、冷凍施設なり、屠殺場の改善なり、具体的にいろいろ施設改善をやって、そして、鮮度のいいものを早く消費者に供給していくという考え方であなた方は取り組んできておる。それがだんだん、生産価格よりか消費者価格が大きくなってくる。大臣、鶏卵は破損率は高い、輸送はめんどうだ、そして荷づくりもたいへんなんですよ。それでも、あの鶏卵のような非常に危険性の高いものが、なぜ生産価格と消費者価格が倍も三倍も違わないのか。鶏卵の流通機構の改善にいままではあまり金を使っていない。今度新しく、鶏卵価安定で公益法人をつくって予算措置をしておられますけれども、昔から、鶏卵は、生産価格と消費者価格と、そう二倍も三倍も違ったことはないのです。あなたも、新聞を見てもらってもわかるように、これは輸送は非常に困難だし、荷づくりもたいへんだし、流通はたいへんなことなんですよ。そういう品物が、そう変わらぬのに、一生懸命金を投資して施設改善をしておるものが、消費者価格生産価格がだんだん開いてくるというのはおかしいと私は思う。この点、一つの例だけ申し上げておきますから、ちょっとあなたも忙しかろうけれども勉強してもらいたいと思います。  そこで、私は、大臣米価の問題で聞きたいのですが、先ほど瀬野委員からも、また、その前にも質問があったのですが、六月、七月がどうも通例になっていると言うが、それはあなたの通例だと私は思うのです。あなたの一方的な通例だと思うのです。農民の側から言えば、こんな間違ったことはないと思うのです。おそくとも五月までには——田植えが終わるまでにはもうちゃんときめてもらわないと、生産計画やそうしたいろいろな計画が狂う。いま、価格変動が非常にひどい時期でありますから、特に、いままでのような時期とは違う。一カ月違っても、生産資材の価格変動というものは非常に大きい。そういういまの情勢の中にあって、それに対応するようにやらないで、実績というか、過去の通例でありますから、六月、七月で米価をきめてよろしいなんというあなたの発想は、やはり倉石農林大臣は暗い農政を打ち出すなあという気がするわけです。この辺で、資料が整うとか整わぬではなくして——すぐできるですよ、この資料は。だから、四十九年度の米価決定は、いまから作業ができるはずですから、四月までにどうしてもきめてもらいたい、これが第一点です。  それから、もう一つは、四十八年度の米価の追加払いをしてやる気持ちはありませんか。もう、昨年の暮れの——米価がきまって、その後農民が、次年度の生産の取り組みについて、資本がどれだけ要るか、あなたも御承知だと私は思う。そう見ると、価格の上昇率というものは、あなたも数字をよく知っているのだから、あれだけ予算委員会でそれぞれ言われているのだから、どれだけ上昇しておるかということはよく知っていると私は思う。四十八年の生産米価、あの価格は非常に低いと私は思う。追加払いをしてやる意思があるのかないのか。なければ、四十九年度の米価でさかのぼって考えて換算をするというお気持ちがあるのかないのか。この点を聞いておきたいのです。
  151. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 四十八年度産米価につきましては、御存じのように、米価決定のときも、前年に対比してかなり高率の上昇を、私どもは思い切ってやりました。その後の情勢を見ておりますが、結論として、追加払いをいたす意思はございません。  それから、次の生産米価の決定でありますが、これは、私は、この間ここでも——これは私個人の考えでありまして、政府は何もいまきめておるわけではありませんが、先ほどここでお答えを申し上げたとおりでありますけれども、大体、私どもは、なるべく米価決定近くまでのいろいろな要素を取り上げて計算の資料にするほうが生産者のために親切になるのではないかということを考えているのであります。そういうことから、いつがいいかということを考えますと、ただいまのところ、田植えの前にというふうなことはちょっとむずかしいと思いますが、いずれにしても、米審もあることでありますし、よく考えてきめたいと思いますが、事前に、稲の植えつけのころきめるというようなことはちょっとむずかしいと思います。
  152. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 あなたは、何でもむずかしい、むずかしいと言うて逃げられるのですが、いずれこの問題も次の機会にいろいろお尋ねしたいと思いますが、今度の新年度の予算の中を見ると、農林省はそれぞれいい名前をつけて新規事業をやられることになっている。林野庁でも十七、畜産局が三十、農蚕園芸局が三十九、構造改善局が二十というように、各局ごとに新規事業が芽を出している。ところが、その新規事業の中身を検討してみると、農林省ほど補助政策の数が多いところは少ないのです。悪いとは言いませんが、しかし、基準単価の引き上げを考えてやらないと、少しの予算をきめて、少しの補助をやって、受益者負担の原則だということを乱用されて、地方公共団体の持ち出し分ということを総合的に判断した場合に、この補助政策そのものが生きてこない。だから、補助率の、たとえば三分の二にしても、基準単価を低く押えられたらどうにもならぬわけですよ。農林省はなぜこの基準単価を低く押えられたのかということが第一点、疑問が起きるんですよ。何でもいい、まあ少し補助をつけてくれ、こういう言い方でもらったのかどうか知りませんが、基準単価が低過ぎるというところに、今度の新規事業補助率についても、まあ、予算をつけてもそれだけの効果が出るものだろうかという疑問が起きるわけです。いま、流通機構の改善だということで、たとえばライスセンター一ついままでの事業を見ても、資材はもう倍も上がった。補助率は低い。あなたは融資してやれというようになっておりますが、実際地元の持ち出し分というものは膨大な金になる。もうこれは断わるのではないかという気がする。農林省がたまたまやろうとしても、地元の負担が大幅にふえるという、こういう補助政策というものはもう一ぺん考える必要があるのではなかろうかという気がするわけですが、この点について、大臣、ひとつ御検討を願いたい。これが第一点。  それから、第二点は、いま予算委員会でも問題になっているのですが、物特でも問題になっているのですが、悪徳企業があるということは間違いない。その商社で、去年一年間農林省がたいへん迷惑をこうむった商社、たとえば木材、米をやみ買いをする、食管法に違反をする、豚肉の輸入で脱税をするというような悪徳企業、商社を具体的に出したら、そういう企業や商社と農林省関係を断ち切る決意があるかどうか、この二点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  153. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 補助率につきましては、私ども予算編成にあたりましてずいぶん努力をいたしましたけれども、今回のような基本方針予算を編成するにあたりましては、やはり、仕事はしていかなければなりませんので、当方としても決して満足しておるわけではありませんが、ああいう予算の編成をいたした次第であります。  それから、いま御指摘の、いわゆる不当な取引をいたしましたようなもので、農林省関係のある業者というものにつきまして、私はまだ十分の報告を聞いておりませんので、実情をよく調べまして勘案いたしたいと思っております。
  154. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 あなたは、都合が悪くなると調べて検討すると言うが、大臣、どうですか、万一そういうものが出たら、農林省に迷惑をかけた業者については縁を切るというくらいの——あなたは、それは仮定の問題だから答えられぬとまた逃げられるかしらぬけれども、具体的になってきた時分にはどう処置されるつもりか。具体的になってもまた検討するという答弁をされるのかどうか、それを聞いておきたいのですよ。
  155. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そう長く検討ばっかりしちゃおられませんが、その事案も、私、就任いたしましてからすぐに予算委員会のようなことで、いまお話しのような問題は、つまびらかにいたしておりませんので、十分研究してみます。
  156. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いろいろ申し上げたいこともあるが、時間が来ましたからこれで終わりますが、最後に、大臣に御注文申し上げておきます。  まあ、忙しいんでたいへんだと思いますが、とにかく、下からの報告をもう少し綿密に聞いていただいて、それに対して、適切なる指導措置というものをやってもらわないと、官僚政治そのものが続いていくということになると、農業そのものが発展しないということになるので、ひとつ、その点について十分な配慮というか、考慮をしてもらいたいことをつけ加えて、私の質問を終わりたいと思います。
  157. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次回は、明十五日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十三分散会