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1974-05-17 第72回国会 衆議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十七日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君   理事 小宮山重四郎君 理事 中山 正暉君    理事 野呂 恭一君 理事 箕輪  登君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       大石 千八君    笠岡  喬君       竹中 修一君    旗野 進一君       三塚  博君    吉田 法晴君       和田 貞夫君    木下 元二君       柴田 睦夫君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君  出席政府委員         内閣審議官   粟屋 敏信君         内閣審議官   小幡 琢也君         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         経済企画政務次         官       竹内 黎一君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         建設政務次官  内海 英男君         建設省計画局宅         地部長     大富  宏君         建設省河川局長 松村 賢吉君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局審議官  平井  進君         厚生省年金局年         金課長     坂本 龍彦君         社会保険庁年金         保険部国民年金         課長      金瀬 忠夫君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   瀬長亀次郎君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     瀬長亀次郎君     ――――――――――――― 五月十六日  靖国神社法案反対に関する陳情書外六十一件  (第五五九号)  靖国神社国家護持に関する陳情書外四十九件  (第五六〇号)  防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律  案の早期成立に関する陳情書  (第  五六一号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国土総合開発庁設置法案内閣提出、第七十一  回国会閣法第二三号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  四四号)      ――――◇―――――
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、第七十一回国会閣法第二三号、国土総合開発庁設置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この国土総合開発庁設置法関連して、国土総合開発庁の重要な仕事になる予定になっております国土利用計画法の問題について質問いたします。  国土利用計画法の附則によりますと、同法の国土利用計画にかかる事務は、国土開発庁計画局所管事務とされておりますし、また国土総合開発法全国総合開発計画は、同じく計画局事務とされております。国土利用計画に従った全国総合開発計画が立てられるということになると思うのですけれども国土利用計画国土開発計画との間には、何ら矛盾することがなくつくられるものであるかどうか、矛盾しないようにつくるという考えであるかどうかということについて、まず、お伺いします。
  4. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土利用計画法案国土総合開発法におきます全国総合開発計画とは、計画局が設置されました場合には、計画局におきまして、相互に矛盾しないようにつくるということを考えております。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 国土利用計画全国計画で定めるべき国土利用に関する基本的事項、こういう表現がありますけれども、具体的にいうと、どんなことを定めることになっているのか、その中身について伺いたいと思います。
  6. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土利用計画法案は、御承知のように、衆議院建設委員会提案法案でありまして、予定では、きょう参議院で採決されるというふうに私ども伺っておりまして、採決されました後に、国土利用計画法におきます第四条の政令を定めるということに明記されておりますので、その政令策定する際に、内容各省協議の上きめるという手続になっておりまして、現在政府として、この国土利用計画法に基づきます第四条の政令の御説明をするということは、今日不可能であります。しかし、この立法者である建設委員会の御趣旨が述べられておりますので、御参考に御紹介申し上げたいと思います。  この国土利用計画は、全国計画都道府県計画市町村計画という三段階になっておりますが、全国計画につきましては、国土利用に関するその基本的な方向なり、構想を示すということがございますし、特にその中心となるものは、都市地域農業地域森林地域自然公園地域等利用区分によります規模別あるいは配置というものに対する目標を示すということを考えておりますし、その目標を達成するために、土地用途は変化いたしますから、その変化に関して必要な方針を述べるということになっておりまして、そして全国計画にあっては、都道府県の作成の際、指針となるべき事柄を方向として定めたいというふうに御指示をいただいております。  都道府県計画市町村計画については、全国計画に準じた内容政令をつくるようにということを伺っておるわけでございます。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの答弁の中で、指示がなされた、こういうことを言われましたけれども、それは、どこからの指示ですか。
  8. 下河辺淳

    下河辺政府委員 衆議院建設委員会あるいは参議院建設委員会におきまして、その説明あるいは御質疑の中で、提案者のほうからお答えがあったものに基づいております。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いま一般論として言われました「国土利用に関する基本的な事項」、大体そういうことになるかと思いますが、その基本的な事項が定められた場合におきまして、結局、その国土利用が、開発を予想するというものであれば、その利用計画に従って開発計画が立てられ、そして開発実施する、こういう関係に立つわけでしょうか。
  10. 下河辺淳

    下河辺政府委員 立法者の御趣旨は、そうではありませんで、それぞれの開発計画は、それぞれの法令によって定められて、実施されるものというふうに考えておりまして、開発事業については、土地利用に関する側面だけではなくて、各方面の産業政策なりあるいは財政政策なりとの関連がいろいろ複雑にございますから、総合的な判断を要する手続を必要とすると考えております。この国土利用計画法案におきましては、それぞれの開発事業の行なわれることについて、土地利用側面から総合調整をするという役割りをになうものというふうに理解しております。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 個々の法律開発計画が立てられる、その開発計画には、当然土地利用するということが含まれることは、もう言うまでもないことなんですけれども、その開発計画に合った利用計画が立てられる、こういうことになるわけではないでしょうか。
  12. 下河辺淳

    下河辺政府委員 合った場合も、もちろん出てくると思います。しかし、その地域あるいは都道府県地域土地利用総合性から見て不適当であれば、事業主体のほうに対して、土地利用の観点から好ましくないということを発言することも、起こり得るというふうに理解しております。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 国土開発計画また国土利用計画、いずれもが総理大臣権限事項になって、一方では利用面で、一方では開発面で、その基本的な指針を示すということになるわけですけれども、その二つの間には、同じ人がつくり、役所も同じであるということから見ますと、開発利用とを一体のものとして進められると考えるのが当然だと思うのですけれども、総合的にはそういうことになるわけではないでしょうか。
  14. 下河辺淳

    下河辺政府委員 法制上の解釈としては、先ほど私から御説明しましたように、相互調整されるものというふうに私ども理解しておりますが、政府として国土利用計画法全国計画策定し、一方、国土総合開発法に基づきます全国総合開発計画をつくります際に、政府の中で二つ計画が、いずれの役所でつくろうとも矛盾するということは許されないというふうに考えますので、十分調整されたものをつくりたいというふうに考えます。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それから、国土利用計画がつくられたあとで、その利用計画と矛盾するような開発計画が立てられるというような場合において、この土地利用計画を変更する、そういうことも予想されていると思うのですけれども、そういうことでいいわけですか、変更することもあり得るわけですか。
  16. 下河辺淳

    下河辺政府委員 当然、計画というものは、ある時点考えられることで計画策定するわけでありますから、計画策定後、新たに必要と考えられる事項が出れば、計画を修正するということが法制上もあり得るというふうに考えております。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 現行国土総合開発法がありまして、昨年、経済企画庁のほうで、新国土総合開発法案というのを準備されたわけです。  全国総合開発計画に関する事項について、現行の国総法では足りなくて、開発計画に関する問題についても、新法案の必要があったかどうか。この現行の国総法の開発計画では、現在の政府が進めようとする開発計画に合わない、制限になるというような点があったかどうか。そういうことを含めての新国総法案提出だと思うのですけれども、そういう現行の国総法で間に合わないという点があるかどうか、お伺いします。
  18. 下河辺淳

    下河辺政府委員 政府提案として国土総合開発法案国会提出し、御審議をいただいたわけでございますが、その政府提案法律政府として一番考えておりました点は、やはり土地の問題についてということが、非常に大きかったというふうに思います。そして開発計画を立てたというだけで地価が上がってしまうというようなことや、あるいは土地の買い占めが始まるということは、遺憾なことでありますし、しかも土地の売買が終わってから開発行為規制をするということでありますと、やはり一歩既成事実ができているという欠陥がございますので、事前開発行為規制を十分やるための措置として、取引規制をしたいということも含めて、政府としては提案したつもりでございますが、そのほかに、昭和二十五年の法律におきましては、やはり国主導型の開発計画を立てて進める法案という、非常に概括的な言い方でございますけれども国主導型であるというふうに考えますが、昭和二十五年以来、今日の時点に立ちますと、やはり地方主導型のものに改めるべきではないかという点、あるいは公害、自然破壊の問題がございますから、環境アセスメント十分事前にすべきではないかという点、それからさらには、地域方々意向を十分くみ取って実施すべきではないかという、それらの諸点について、昭和二十五年の法律改正したいという考え方で、国会提案したわけでございます。  そこで、土地の問題に関しては、今度国土利用計画法によって実施されるということに相なるかと存じます。しかし、あと事項については、やはり私どもとしては、問題を残していると考えているわけでございますが、考え方といたしまして、計画が先行して制度をつくるのか、制度をつくって計画をつくるのかという、むずかしい問題があるように私は考えます。そして四十四年の新全国総合開発計画というものがございますが、これを総点検し、新しい時代の要請にこたえるものに改正したいという作業を始めておりますが、この計画をつくるにあたって、あらかじめ昭和二十五年の国土総合開発法改正しておきたいというのが、政府考え方でございましたが、今回の国会方向に従いまして、計画をまずつくりまして、その計画に従って、もし必要があれば、再び国土総合開発法というものについて、あるいは関連地域開発立法について、検討しなければならないのではないかというふうに考えております。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 説明を聞いておりますと、この新国土総合開発法案が出される根源は、結局は、開発計画が立てられ、その実施面での不備を補強するというような目的があった。そして中身については、地方自治体のエネルギーを発揮させるとか、それらのことが言われましたけれども、きのう参議院を通過しました国土利用計画法が通れば、大体予想された、新国総法案によって解決しようとした問題も解決するのではないか、こういうような考えでしょうか。
  20. 下河辺淳

    下河辺政府委員 ただいま御説明しましたように、土地取引規制あるいは地価の抑制あるいは開発行為規制という部分につきましては、今度の国土利用計画法案国会提案になります法案を忠実に実施することによって、所期の目的を達成すると考えておりますが、開発部分については、まだ若干の宿題を残しているのではないか。その宿題というのは、先ほども申しましたように、地方公共団体中心としてという点、あるいは環境アセスメントをするという点、あるいは住長意向をくむという点にあるかと思います。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、その宿題は、今後の利用計画実施する中で、現状を見ながら、なお法律改正が必要になるかどうかということを検討していく、こういう考えになるわけですか。
  22. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土利用計画法案改正になるか、あるいは国土総合開発法改正になるか、あるいは他の地域立法改正になるかというところは、今後の検討にまかせていただいて、御返答申し上げたいと思いますのは、これからの地域開発を進めていく上で必要な法改正というものは、このたびの国土総合開発庁を設置されました際に、全局をあげて検討させていただく課題であるというふうに思います。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういうことであれば、結局、土地利用計画法現行の国総法とを、一体といいますか、総合的に考えて、土地利用開発を進めていくという一つ根拠法として、なお、その目的が達成されるように、法規の問題も検討していくという趣旨であろうかと思うわけです。  ところで、国土利用計画法につきましては、政令で定める委任事項が非常に多いわけですけれども、この政令につきまして、先日のテレビの討論会を見ていましたら、自民党の理事の方が、その政令を四党のほうで検討している、こういう発言がありましたが、この政令については、企画庁のほうは、いま四党のほうから具体的な指示を受けて、その中身について相談されているかどうか、お伺いします。
  24. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土利用計画法案を四党で検討される際に、政令に委任するということになりました際に、この政令というものは、どういう形のものが一番適当であるかというお話し合いはございました。しかし、国土利用計画法案衆議院建設委員会で採決されますにあたって、木村委員長から主要な点の御質疑があり、政府側としてそれにお答えするという形をとりまして、その目的を四党の方々が達しているというふうに考えますが、法が制定されれば、政令委任事項は、政府責任において制定するわけでございますから、政府の中で政令を定めたいと思いますが、やはり委員提案であるという性格から見て、政令を定める際には、提案者である四党へこういう政令をつくるということを、御相談申し上げるということが適当かと思います。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの答弁でいいと思うのですけれども、その際、ひとつ確認しておきますが、結局、政令で定めるものとされた場合に、これは、もちろん政府がつくるべき性質のもので、法律提案者意見に従わなければならないという趣旨のものではないわけで、結局、提案者立法趣旨などは、聞いて参考にするということはあっても、それは、この法律趣旨に従った政令をつくることを、法的に拘束する根拠は何らないということであるわけですね。
  26. 下河辺淳

    下河辺政府委員 政令につきましては、先ほどお答えしましたように、政府責任においてつくるべきものということが基本でございますが、やはり立法者趣旨は、十二分にそんたくするということが、われわれに課せられた義務だと思っております。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 利用計画法の第五条四項ですが、内閣総理大臣全国計画をつくる場合において、都道府県知事意向が十分に反映されるよう、必要な措置を講ずるものとする、こういうふうに定められておりますが、この必要な措置というのは、具体的にどんなものが予想されるか、検討しておりますか。実際に実行する場合に、どういうことをやるということになるのか、お伺いします。
  28. 下河辺淳

    下河辺政府委員 これは、行政執行上の具体的なお話になってしまいますが、私ども、この国土利用計画法に基づく全国計画をつくるに際して、どういう内容計画をつくるかということを、まず知事にお知らせして、御理解をいただかなければならないと思いますし、その際に、もし御意見があれば、事前に出していただきたいということも、十分察していただこうと思いますが、おそらく最終的に、全国計画が決定されるまでの間は、各県知事さんと数度にわたって意見の交換をするという、かなり慎重な手続を講ずることが適当ではないかというふうに考えております。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 としますと、結局、知事意見を聞くという三項の規定の範囲を、実際上は出られないということになると思うわけです。  次に、都道府県土地利用基本計画、これは都道府県知事義務的に定めなければならないということになるわけですが、この土地利用基本計画があれば、都道府県国土利用計画、これは実際上は必要でないのではないか。具体的な実施面での土地利用基本計画義務的につくられるということになれば、その国土利用計画という一般方針を示すものは、これは実際上は実施するわけでないわけですから、必要でないのじゃないかというように思われるわけです。むしろ、この全国計画が最優位であるということを裏づける法文上の形にするためのものにしかすぎないのではないか、こういうふうな疑問を持つわけですけれども、この土地利用基本計画がありながら、なお都道府県国土利用計画法文にきめられている理由についてお伺いしたいと思います。
  30. 下河辺淳

    下河辺政府委員 第七条の都道府県計画と第九条の土地利用基本計画関係の御質問だろうと思いますが、都道府県計画という第七条におきましては、昭和六十年ということになるかどうか、まだ明確にきまっておりませんが、一応ある一定の年次を目標とした長期計画あるいはもっと言えば、長期構想というようなものとして決定されることになるというふうに私ども理解しておりまして、それがその地域におきます将来に対するある一つのコンセンサスであるというふうに理解しております。  しかし、第九条の土地利用基本計画は、土地取引規制であるとか、あるいは開発行為規制であるという、そのもとになります行政上の許可権に伴う計画でございますから、まだ未確定要素を持った構想というものを、この土地利用基本計画に入れるのは適切ではないということで、第九条のほうは、まさに許可権限その他と結びつくべき基本計画であるというふうに考えておるわけでございます。その計画に基づいて一件別に開発行為規制をする、あるいは取引許可権実施するにあたりまして、この土地利用基本計画をベースにして、そして将来の方向については、第七条の都道府県計画がその指針となるという理解をしているわけでございまして、やはり行政上あるいは計画技術的に見て、七条と九条とが相まって、初めてこの法案実施が円滑にいくものというふうに技術的な意味で考えております。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 土地利用基本計画は、国土利用計画に従わなければならないということになっておりますし、しかも土地利用基本計画は、総理大臣承認を受けなければならない、こういうように縛られているわけです。  そうしますと、全国国土利用計画がつくられますと、都道府県土地利用基本計画も、その拘束を受けて、土地利用に関しては、結局は政府の意思に反する利用というようなことはできないし、裏返せば政府の意のままに土地利用がなされる、こういう性質のものであるということを、法文にしているわけではないでしょうか。
  32. 下河辺淳

    下河辺政府委員 第七条の都道府県計画は、第五条の全国計画基本としておりますが、策定に際しては、やはり全国計画は、都道府県意向というものに拘束されるというふうに理解しておりますので、上から下からということよりは、相互調整してつくるというのが、この法案趣旨ではないだろうかということを考えますし、第七条の都道府県計画は、実は法文上は義務規定ではございませんで任意規定であります。知事が当然つくるだろうというふうに私ども予想しておりますが、法文上は任意規定でありまして、国が直接拘束するという形をとらないということで、内閣総理大臣への報告ということを考えているわけでございます。  しかし、第九条のほうの土地利用基本計画につきましては、実は五つの地域区分をいたしますが、この各地域ごとに、それぞれ実施法令との連結を予想しておりまして、その連結する法案につきましては、内閣総理大臣あるいは主務大臣の認可あるいは決定に伴うものが多々出てまいります関係上、総理大臣として、全省庁が十分認識し、確認しておく必要があるということから、第九条についてのみ、総理大臣承認を受けなければならないということにしたというふうに考えております。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほど、ちょっと説明がありましたけれども都道府県土地利用基本計画には、政令によって地域指定をするということになっておりますが、これは地域指定土地取引規制開発行為規制あるいは遊休土地に関する措置、これらのことを実施するための基本計画だと、こういうように解するということが、衆議院建設委員会でも言われましたし、いまも、その趣旨答弁がありましたけれども、この内容について、もう少し説明していただきたいと思います。
  34. 下河辺淳

    下河辺政府委員 第九条の二項で、土地利用基本計画は、次の地域を定めるということで五地域に区分してございます。都市地域農業地域森林地域自然公園地域自然保全地域ということで、地域を五地域に分けてございますが、一の都市地域は、都市計画法都市計画区域、二の農業地域は、農振法その他の農用地として保存すべき地域、三の森林地域は、森林法森林地域として認められるもの、四の自然公園地域は、自然公園法の全公園地域、五の自然保全地域は、自然環境保全法あるいは都道府県で行なわれております自然保全条例等を踏まえてつなぎたいという考え方をとっておりまして、手続的にも、それぞれの法律による手続も十分こなさなければなりませんし、その相互用途間の調整ということは、この土地利用基本計画調整をされなければならないということでありまして、この相互調整が終われば、この土地利用基本計画に基づいて、それぞれの法律に基づく手続をするということを義務づけたものというふうに理解しております。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 都市地域の問題ですけれども、この都市地域については、「一体都市として総合的に開発し、整備し、及び保全する必要がある地域とする。」となっておりますが、都市地域が定められれば、ここに書いてあるように、都市地域として開発する、都市機能を備えるための開発やあるいは工場地帯開発、そして、それ以外のものに使わせないという規制はあると思うわけですけれども、結局この都市開発、工場の基盤土地開発、こういう方向に進められるその利用方針をきめるのだ、こういうことになるのだと思うのですが、そういうことですか。
  36. 下河辺淳

    下河辺政府委員 第九条の定義に関します四項で、いま御質問がございましたが、「第二項第一号の都市地域は、一体都市として総合的に開発し、整備し、及び保全する必要がある地域」というこの定義は、実は都市計画法都市計画区域という、その定義と同義語というふうに私ども理解しておりますので、都市計画法上の都市計画区域と同一のものとして、この都市地域理解してまいりたいということでございまして、個別の開発事業というふうに、この地域の定義を理解はしておりません。
  37. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、この土地利用基本計画の中では、たとえば自然的、社会的条件が備わっているという地域について、新しい都市開発する、すなわち、いまの説明によれば、都市計画を定める、そういう場合の土地利用計画が立てられる、あるいは自然環境の保護や利用や産業立地基盤づくり、あるいは交通結節点づくり、こうしたものをつくるために、土地利用計画が立てられる、こういうことも当然あり得ると思うのですが、いかがですか。
  38. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いまのお尋ねは、計画の技術的なことから申せば、プロジェクトのお話をしておられると思いますが、この九条は、ゾーニングをきめるものというふうに考えておりまして、利用に関してのゾーニングをするということで五地域というものが明確にされているということでありまして、それをプロジェクトに結びつけるということは、また別の手続としてなされなければならないのではないかというふうに理解しております。
  39. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ですから、別の法律によって、そういったプロジェクトが立てられる、そうすれば、その計画一体になるような土地利用計画を立てるというのが筋だろうと思うので、そういうことも、この法律ともう一つのプロジェクトを実施する法律とを合わせれば、何ら矛盾なくできるのじゃないか、こういうことなんですか。
  40. 下河辺淳

    下河辺政府委員 それは、先ほどお答えしたとおりでありますが、この法律の特色は、かりに新都市をつくるというプロジェクトがありました際に、都市のプロジェクトを策定するという手続のほかに、農業地域から見てどうか、森林地域から見てどうかという各ゾーニングの相互間から見た立場というものが、この法律によってできるということから、プロジェクトをきめる際に、土地利用相互間からの考え方というものを、プロジェクトをきめる手続に対して発言をするということが、この法律の特色であって、プロジェクトがきまれば、機械的にうのみにするということでは、この立法趣旨にかなわないのではないかというふうに理解しています。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この土地利用計画法上の規制区域の定めがあるわけですけれども規制区域の定めというのは、国土総合開発法案の中でありました特別規制区域の定めと何ら違うものではないのじゃないか、こう思うのですが、経企庁の見解はいかがですか。
  42. 下河辺淳

    下河辺政府委員 政府がつくりました国土総合開発法案の中におきます特別規制区域につきましては、御承知のように指定の要件というものについて、かなり厳密な状態でありましたし、特に私どもが、法制上問題にいたしておりましたのは、小地域にといいますか、地域指定にあたって最小限の区域に限るという前提、あるいは指定期間は、三年で二年延長することができるということで、期限もできるだけ短期間ということで考えておったわけでございますが、今度の土地利用基本計画におきましては、「土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害を除去し、かつ、適正かつ合理的な土地利用の確保を図るため、」異常な状態が発生した場合には、いかなる地域でも指定できるということに、指定の要件を拡充しましたと同時に、区域については、やはり十分な区域を指定するということ、そして期間については、一応五年以内としておりますが、解除に際して、知事の調査に基づく判断によりまして、さらに再指定するということを義務づけているという点で、政府案よりは、かなり拡充された制限ではないかというふうに私ども理解しております。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういう拡充のことはわかるのですけれども、具体的に言いますと、この大規模な開発をやろうとする場合、プロジェクトを進めようとするような場合に、地価が、当然いままでの経験からいうと上がってくる、そして土地の確保が困難になる。ですから、ちょうど新国土総合開発法案予定しておりましたような場合、こういう場合にも、この規制区域の指定ということで、開発する場合の地価の上昇に対しても、地価を抑制しなければならないというように考える場合が出てくると思うのですけれども、このような開発にあたって、やはりこの土地利用計画法規制区域の指定ができるのではないか。特にここには総理大臣指示権、執行権もあるわけで、開発する場合においても、当然適用されるものであると思うのですが、そのとおりでしょうか。
  44. 下河辺淳

    下河辺政府委員 ある特定の開発事業計画が定まりました際に、他の地域から大型の土地の買い占め行為が行なわれる際に、やはり土地の買い占めなり地価の暴騰が、地域住民の方々へ非常に大きな支障になるという実例もないではないわけでありまして、そういう際に、この規制区域制度が活用されるということは、あり得るというふうに理解しています。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 指定要件を今度広げた、そして知事規制区域を指定するわけですけれども、その後の知事さんたちの意向が語られたのを見ますと、たとえば埼玉県知事は、全県を指定しなければならないというようなことを言われました。そうしますと、全国のどこが指定されるかわからない。相当範囲にわたって指定されるか、あるいは小部分であるか、いまのところは、もちろんわかりませんけれども指定されれば、その区域内では、その土地取引について、知事の許可を必要としますし、そして、その価格が一つの許可の判断の対象になる。そして大規模な指定をするとすれば、結局は全国の土地について、少なくとも指定の可能性のある土地については、土地の価格をあらかじめきめておかなければならない、指定する前にきめておかなければならない、このように考えるわけですけれども、この指定する前に価格をきめるという考えですか。
  46. 下河辺淳

    下河辺政府委員 法制上は事前に公示するようにという規定はございませんから、必ずしも必要がないといえるかもしれませんが、私どもとして許可権というものを行使する場合に、やはり事前にある一つの価格が示されているということは、必要ではないかというふうに理解いたします。特に標準地におきます取引価格の基準については、できるだけ示すべきではないかということで作業を急ぎたいと考えております。  しかし、現実には、御承知のように、基準となるべき価格が、地価公示法の施行を見ましても、まだまだ小地域にとどまっておりますので、規制区域をかけなければならないという実態が生まれました場合に、基準価格ができてないから、規制区域の指定を延ばさざるを得ないということになることは、むしろ対策から見て、適当とは考えられませんので、やはり場合によっては、区域の指定が先になって、標準の地価を示すということがあとになることも、あり得るとは考えておりますが、しかし行政上は、できるだけ早く標準地の価格というものを示すことがよろしいのではないかというふうに考えます。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この法律の施行が六カ月以内ということになっておりますし、指定をしたあとで価格をきめるということになれば、実際上、土地の売買をする人を、これが許可になるかならぬかわからぬというような不安定な状態に置いておく、それはまた、法律上も非常に問題のあるやり方であるし、当然、価格を許可の対象にするのであれば、やはりその土地一つ一つについて、幾らである、自分が申請すれば、これは許可になるということがわかるようにしておかなければならない、こう思うわけで、これは範囲を大きくすれば、非常な大事業になると思うわけです。  しかもそれが、法律の施行が六カ月以内ということになっておりますと、当然、土地の価格をきめる陣容などが問題になってくるわけですけれども、いま、まず一つは、土地の価格をきめる体制、それから、いつごろからその作業に入れるか、また、間に合う価格をきめるには、いつごろまでにできるか、そういう見通しについてお伺いしたいと思います。
  48. 下河辺淳

    下河辺政府委員 御指摘のような行政上困難な問題が多々ございます。そして私どもといたしましては、具体的に標準地それぞれの価格を示すことは、作業上膨大な作業量を伴いますので、法施行後、直ちに全国できるというふうには、困難と申し上げるほかしようがありませんが、しかし、算定のための政令というものは、六カ月後の施行するまでの間に、明確にしなければなりませんので、政令によりまして算定の方式そのものは明らかにするということで、一般の方々にわかるようにしたい。そのために、取引の個別の地点の価格については、その算定方式によって見当がつくということは、あるわけでございますが、具体的にその地域が、一平方メートル当たり何円であるかという具体的な指導までは、少し時間を拝借しなければならないということを、正直に申し上げているわけであります。  その段取りはどうかということにつきましては、私ども、これから政令をつくるための調査も少ししなければなりませんし、六カ月間、算定方式のための作業が急がれておりますので、いまその作業を始めております。さらに、この仕事は、都道府県の業務になっていきますし、一部市町村の事務になっていきますので、都道府県なり市町村のこの法案実施するための機構なり人員について、都道府県との話し合いにできるだけ早く入りたいということで、各都道府県からもこの法案の制定を急がれておるということと同時に、機構の整備に関して、国と相談を開始したいという意向がだいぶ寄せられておりますので、ぜひ急いでやりたいというふうに考えておりますし、なお、地価の評価につきましては、行政上専門家が非常に不足でありますので、どうしても不動産鑑定士法に基づきます不動産鑑定士の力をかりなければなりませんので、現在三千数百名しかおらない不動産鑑定士の協力を求めるということも、どのような方法でするか考えてみなければならないことだろうということで、体制づくりを急いでおります。  実は、少し余分なお答えになるかもしれませんが、企画庁の総合開発局におきましては、この土地の評価等に関する事務をするだけの余力が全くございませんので、ぜひこの都市局の新設を急いでいただかなければ、この法律を施行することが円滑にいかないということは、私から申し上げさしていただきたいと思います。
  49. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 たいへんむずかしいということをお伺いしたわけですが、私が聞いたところによっても、自治省でやっております固定資産税の評価額の評価がえ、いままであったやつを全国的に評価がえしていくにも、いまの現状をよく知っている市町村がタッチして一年ぐらいかかる。それから地価公示法による標準価格をきめるについても、非常に限定された部分であっても、まだ非常に極限された小さな場所しかできていないというようなことを考えますと、ほんとうの意味で広範囲に指定することができるようになるには、相当な期間を必要とすると思うわけです。  その反面、ちょうど国土総合開発法案予定しておりましたような小規模な地域指定するということであれば、これが、そんなに時間がかからずにできるということになれば、この区域の指定の問題も、結局は開発事業にかかる部分的なものにしか当面適用されないのではないか、こういうように私は考えるわけです。  それから法文では、近傍類地の取引価格を考慮して政令で定めるところにより算定した額、こういうことになっております。近傍類地の取引価格というのは、いわゆる時価を表現する場合に使われることばなんですけれども、このような法文のきめ方で、いわれておりますように時価の七、八割程度を目標として価格をきめるということがはたしてできるのかという疑問が生じると思うわけです。特に時価よりも安くする算定方式を政令できめるということは、これは財産権の内容法律できめるということから考えてみましても、やはり七、八割にするということであれば、これは法律によって定めるべき事項であって、政令に定めさせるというのは間違っている、このように考えるわけですけれども、この七、八割に下げるというような算定方式を出すということが、はたして可能であるかどうかお伺いします。
  50. 下河辺淳

    下河辺政府委員 提案者方々が、地価を七、八割ということでお考えになられましたのは、やはり異常な暴騰をしてしまった価格で凍結するということは、暴騰そのものを認めることになるのではないか、そうかといって、その暴騰した価格をあまり異常に低い価格できめることは、やはり他の条件から問題があるということから、市場で取引されている異常な価格の七、八割ということで、政策的な考え方をおまとめになったというふうに伺っておりまして、その政策をどのようにこの法律に基づいて実施するかということを、政令の中で私どもは検討することに義務づけられているというふうに考えております。  問題は、いま御質問がございましたことばの中に、時価のということばがございますが、時価とは何かということが、少し厳密に政令の際に議論さるべきものであるというふうに私ども理解しております。非常に不公正な、あるいは不自由な市場におきます取引といいますか、非常に異常な価格ということまで時価ということに含めるのかどうか。法律によりましては、適正な時価などということばもございますし、あるいは地価公示法によりますと、自由な取引を前提にした価格というようなこともございますし、収用法では適正な価格ということもございますし、そういった意味では、実は時価ということを、法律論としてもっと詰めなければならないというふうな見方をしておりまして、異常高値になりました市場の価格というものに対して、そのまま定着しておくということは、不適当であるという御趣旨に沿って、実はその辺の法律論をはっきりさせた上で、政令を定めたいというふうに考えておりまして、七、八割にするということ自身が政令内容でもないし、あるいはそのまま政令の文字として出てくるものではないということで、政策の御趣旨を十分尊重した上で、時価というものについての検討をさしていただこうというのが私ども理解であります。
  51. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 衆議院建設委員会での審議の中では、この価格の問題について、市場相場の七、八割程度というような表現が使われているわけですが、その場合に、土地収用法における収用価格あるいは公有地の拡大の推進に関する法律における買い取り価格、これらとここできめられる権利の価格とは違ってくると思うのですけれども、そういう点については、どのように考えますか。
  52. 下河辺淳

    下河辺政府委員 収用法の価格については、その手続が収用法に定められておりますから、一銭一厘違うかどうかということは、実は個別のケースについてもっと詰めなければならないと思いますが、制度考え方といたしましては、法律に基づいて政策的に価格を決定している際に、その決定されている価格といいますか、政策的な価格が、近傍類地価格ということになってまいりますので、私どもとしては、凍結価格と収用価格とは異質なものではないという理解をしております。
  53. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そこで結論のほうですが、きのうテレビの「総理にきく」の中で田中総理が、国土利用計画法は、国土総合開発法を名前を変えただけだ、このようにはっきりと言われました。この発言が問題になって、この国土利用計画法は、参議院の本会議にきょうはかからなくなったということでありますけれども、この総理の発言の、名前は変わって中身は実質的に取り入れられたという見解について、この法案を作成したほうから見た場合に、どのようにお考えになりますか。
  54. 下河辺淳

    下河辺政府委員 先ほど、最初に御質問がございましてお答えしましたとおり、国土利用計画法案というものは、土地取引あるいは開発行為規制あるいは遊休土地の処置について規定したものでありまして、政府が出しました国土総合開発法案改正事項全体について触れたものではないという点については、ここで明らかにさせていただきたいと思います。しかし、政府として地価閣僚協議会その他からいろいろと議論が始まって、政府提案国土総合開発法案となり、そして、その中でも先ほど申しましたように、土地に関する条文が多々入れられたことは、御承知のとおりでありますが、その土地対策に関する面については、やはり政府の案が相当取り入れられたということを、私どもとしては考えさしていただきたいというふうに思っております。  しかし、土地対策の中でも、先ほど御質疑の中で明らかにしましたように、規制区域の指定要件を強化するとか、あるいは遊休土地制度を入れるというようなことによって、さらに政府の案が強化されたという理解をしているわけでありまして、総理のテレビを私、拝見しておりませんが、総理もおそらくそういう趣旨で、かなり多くの土地対策の政府考え方を、衆議院建設委員会の中でお取り上げいただけたということを申し上げたのではないかというふうに拝察します。
  55. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 条文の内容には、もちろんいろいろ変えられた面もありますけれども、やはり基本的な問題については、国土総合開発法、特に現行国土総合開発法とあわせてこの土地利用計画法を見た場合に、基本線が全体的に貫かれているということは、私も考えるわけなんです。田中総理の発言は、列島改造論、国土総合開発法案、それと今度の法案は、どういう関係かということを聞かれて、名前が変わっただけだ、こういうようにはっきりと言っておられる。そして、全体を見てみますと、この総合開発計画は、この国土利用全国計画と矛盾なくつくることができますし、規制区域の問題にしても、ちょうど特別規制区域が予定しておりましたような開発関連しての地価の抑制ということもちゃんとできるようになっている。それから、大口土地取引についてのみ届け出を要する制度だとか、あるいは土地利用基本計画とこの開発計画と合わせれば、実際上特定総合開発地域指定したと同じような事業も大体できるというように見られるわけです。  いま遊休地の買い上げということが言われましたけれども、この遊休地の買い上げにいたしましても、実際上法律、特に規制法がなくても、政府あるいは自治体が必要とする土地の買い上げということは現実にもできるわけで、しかも最終的に都市計画その他の措置を講じて、未利用地を利用するということになっておりますけれども、それも自治体に対して努力の義務を課したものにすぎないし、現行法の体系のもとにおいては、特に新しいものを入れたものではない、このように考えるわけです。  そういうことから見てみますと、国総法案基本線が全体に貫かれているということがはっきりしていると思います。高度成長政策のもとでの土地政策に対して反省をしない、その上に立って大企業優先の開発とそのための規制、あるいは地方自治の侵害、こういう非民主性が貫かれているということで、ずっと国総法案については批判がされて、野党四党が撤回を要求してきたわけです。いま国総法案基本線と同じ考えに立つこの国土利用計画をはじめとする開発立法の推進役にこの国土開発庁がなる、その設置法は、そのためのものであるということを考えてみました場合に、このような大企業優先で、結局、国民の生活あるいは健康を守るということに主眼を置かないこの開発計画の推進というものに、私たちの党は反対でありますから、このような設置法はやめるべきであるということを申し上げて、質問を終わります。
  56. 徳安實藏

    徳安委員長 鈴切康雄君。
  57. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国土総合開発庁設置法、この法案が出されたわけでございますけれども国土総合開発庁設置法といっても、しょせんは器の問題であって、実際には中身は国総法のかわりとして国土利用計画法というものが、すでに法案が通っているわけであります。その国土利用計画法というのは、直接に開発事業実施法律の性格ではないという考え方から、総合的、計画的な国土利用を確保するという法律になっておるわけであります。国総法の全国総合開発計画都道府県総合開発計画というものは、この国土利用計画法の中には入っておりませんし、そういう意味からいって、国土利用計画法は、言うならば共産党を除く与野党の合意によってできた法律であります。これは考えてみると、現在土地の値段が急騰する、そういうものに対処して土地を鎮静させようという観点からできた法律であるわけであります。  そういう観点から考えますと、国土総合開発庁設置法というのは、国総法を実現するための法律として器ができているわけでありますから、そういう意味においては、名前自体も何かそれにそぐわない感じがするわけでありますが、その点について、総務長官の認識といいますか、御見解をお伺いしたいと思います。
  58. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまの国土総合開発庁という名前は、この際、私は委員会の御意思で変更していただいてけっこうだと思います。  いま鈴切委員の言われたような国土利用計画法、これは非常に時宜に適した基本法であると私は考えます。また、従来言われております開発ということは、地価の騰貴その他をむしろたいへんに促進したという批判が多いわけでございます。したがいまして、地価が高騰すれば、なかなか思ったような地方開発も、また都市の再開発もできないわけであります。むしろわれわれは、今後新しくできる役所は、利用計画法を主軸にいたしまして、地価の安定ということをまず実現する方向に努力し、あわせて先般来申し上げておりますように、大都市の問題や地方都市の問題を考えながら、また水資源の問題とかあるいは災害対策等につきましても、幅広く一元的な行政機関として活動していくべきだというように考えるわけでございます。
  59. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、おのずと目的それから任務ですね、この第三条の「国土総合開発庁は、国土の均衡ある発展を図り、豊かで住みよい地域社会の形成に寄与するため、国土の総合開発に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」ということは、これは国総法自体をまる受けをして、そして国土の総合開発という観点から考えられているわけでありますけれども、しょせん、そういうところは、任務等も変わってこなくてはならないわけでありますが、その点については、どのようにお考えでございましょうか。
  60. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 御指摘の第三条は、もちろん、これは国土利用計画というものを中心にやるということに改めるべきでございますし、また第四条におきましても、「地価対策その他土地に関する総合的かつ基本的な政策を企画し、立案し、及び推進すること。」というのが、一番の柱の一項目に入るべきものではないかというふうに考えております。
  61. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、第三条は、当然そういうふうなものの考え方から、国土の総合開発という部分というものは、やはり国土を適正に利用するという考え方で、さらに国民に奉仕するという部分が、かなり出てこなければならないんじゃないかというように思うのです。結局、産業中心、工業中心というのでなくて、むしろ人命尊重という立場から利用をされなくてはならないというふうに思うのですが、その点はどうなんでしょう。
  62. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 御意見のとおりと思います。
  63. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、国土利用計画法という法律ができた、その器をつくるということになれば、それは、やはり何といっても、土地の対策というものが非常に大きなウエートを占めてくると思うのです。  そこで第四条ですね、これは先ほどの国土の適正な利用に関する「総合的かつ基本的な政策及び計画を企画し、立案し、及び推進すること。」、これは私はそれなりにいいと思うんですけれども、やはりこういうふうな条文の中においても、順位というものが、かなりその政策のウエートを示すものではないか、そう思うわけでありますが、地価対策に対するウエートは、かなり後方のほうになっているわけでありますが、そういう点については、どのようにお考えでしょうか。
  64. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 先ほども、ちょっと触れましたように、この第六項目が、私は、むしろ一番最初に来るべきだ。並べ方によってウエートというものは、もちろん私は、読む人に与える印象が強いと思いますので、そのように国土利用計画法というものを中心にやるという姿勢を、第四条においても明確にいたすべきだというふうに考えます。
  65. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 内部部局及び所掌事務の問題になるわけでありますけれども、私の正直な考え方を申し上げますと、きのうはからずも総理大臣は、やはり土地と水資源というものは、国民の生活に欠かすことができない両巨頭である、こういうような御答弁をされて、むしろなぜ、私はこのことをもう少し強く言っておかなかったのだろうかという反省を言われておったわけであります。  そうなりますと、私も、やはり土地・水資源局という、全く違う問題についての二つを所掌するのを局にするというふうな考え方よりも、土地局あるいは水資源局という、そういうふうな考え方のほうが、より明確であるし、この水資源という問題は、おそらく今後一億一千万が、さらにこれから人口が増加をしていくという考え方からいいますと、当然この水資源というものは、土地の問題以上に、今後大きな将来計画として必要な問題ではないかというふうに思うわけであります。そういう意味において、当然私は、土地局、水資源局というふうな局をつくったほうがベターであるというふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  66. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 鈴切委員の御指摘のとおりでございまして、昨日も総理が申しましたことを受けて、国土総合開発庁の機構につきましても、土地局は、もうこれは絶対に必要である。水資源につきましても、土地局の中にそうした水資源部というのがあるのは、これは、やはり本末転倒であったという御答弁でございます。むしろ、この水資源部というものを局に昇格するという以前に、認識においては同じでございますが、むしろ長官官房に水資源部を置いて、そして、きわめて重要な資源としての水というものに対する総合的な施策を、前向きに進めるというようなことを皆さんお考えならば、われわれとしては、少しも異存がないというふうに考えます。
  67. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、いま大臣の言われているお考え方というのは、これは土地・水資源局という、二つ一つにした局というのでなくして、土地局なら土地局という完全な局をつくり、そして水資源部というものについては、大臣官房の中にそういうものを置こうというようなお考え方もあるということでしょうか。
  68. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 そのとおりでございます。
  69. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、国家行政組織法の立場からいいますと、大臣庁には局を置くことはできるわけでありますけれども、部を置くということについては、これはできないということになっているわけでありますけれども、その点については、どのようなことでございましょうか。
  70. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 いま先生御指摘のように、現行の国家行政組織法におきましては、いわゆる大臣庁と申しますか、総理府の国務大臣が長官である庁の局及び官房には部を置くことができないことになっているわけでございますけれども国土総合開発庁設置法案提案いたします際に、水資源の重要性ということについて、いま先生の御指摘がございましたように、いろいろ論議がございまして、われわれとしても、水問題というものが、将来その適正な利用という点できわめて重大な事務であるということで、何らか独立した部局というものがほしいと思ったわけでございますが、現在の事務量からいたしますと、局にまで持っていくということは、ちょっと問題がある。将来問題としては、必ずそういう問題が論議になろうかと思うわけでございますが、局に昇格できないとすれば、やはり部というものが必要であるという論議をいたしたわけでございます。  その際、現行の国家行政組織法上では、その点に疑義がございますので、御提案申し上げております国土総合開発庁設置法案の附則第三条におきまして、国家行政組織法の一部を改正いたしまして、部を設置することができるような規定を置いているわけでございます。
  71. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、ものの考え方とするならば、ほんとうならば土地局、それから水資源局というふうに、これは国民生活に一番密接な関係があるだけに、局にして、むしろ計画局とか調整局というのは、これは本来ならば、計画調整一つの局でできないなんということは——むしろできないというならば、それはやはり官庁のなわ張り的な考え方が強く働いているということであって、計画局調整局というものについては、一本でできるのではないか。しかも計画局調整局には次長を置くという、かなり大きなウエートを占めているわけでありますけれども、私は、土地利用計画法という観点から考えるならば、当然、次長は土地局のほうに置くべきではないか、そのように思うのですが、その点はどのようにお考えになっていましょうか。
  72. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 初めの構想では、審議官を官房に置きまして、その審議官に機動的に土地・水資源局の仕事を受け持ってもらうようにして、言うならばタスクフォースのように、幅広く動いてもらうほうが、きわめて困難な問題が多いからいいのではないかと考えておりましたが、先般来の当委員会におきまして、特に土地局に次長制がないということについての強い御指摘もございますので、私どもといたしましては、土地局に次長制を置く、他の局の次長を一つ削って回すというようなことにつきましても、別に基本的に困難は考えておりまません。むしろ、そうしたウエートの置き方のほうが、より土地局としての存在意義が明らかになるならば、それでもわれわれはけっこうではないかというように考えております。
  73. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かに、過密の問題、過疎の問題を取り扱うという意味においては、大都市圏整備局、地方振興局というのは、やはり必要な局ではないかというように私は思うわけでありますけれども、先ほど言われました計画局調整局、これ自体は、一つの局にまとめられる要素が多分にあるんじゃないか。確かに、調整とか計画とかいう問題は、多種多様になるにしても、しかし少なくとも国土庁なり、あるいは国土利用計画という観点から、その器をつくるということになれば——田中さんがお考えになっている、いわゆる国総法という観点から考えるならば、確かに計画局あるいは調整局というのが、かなりのウエートを占めてくるわけでありますけれども、いまの国土利用計画法という法律に基づいて土地の対策をやるということであるならば、私は、むしろ一本にしぼったほうがいいのじゃないかというふうに思うのですが、もう一度あらためてお伺いいたします。
  74. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 これは、従来からの行政の仕組みの関係が強いのであろうと思うわけでございますが、ここにあります計画局調整局は、国土庁が今後総合的な官庁として活動していくための、いわゆるマスタープランをつくるところと、マスタープランと他の実施計画あるいはその他の地方的な計画等のすり合わせをやるところですが、やはりこれは、別のほうがより効率的だし、同時に、日本の広い国土のすべての問題がここにかかってくるわけでございます。したがって、それを一局で計画し、調整するということは、ある場合にはチェック・アンド・バランスが欠ける場合もあるのではないか。いろいろと考えての局の設定だとわれわれは考えております。ただいまのような御議論も、有力な御意見として、われわれは十分将来の運営の中で、御指摘のようなことが起こらないような方向を踏まえていくべきではないかというふうにも考えております。
  75. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 全般的な問題について、これから少しお聞きしていきたいと思うわけでありますけれども国土庁というような考え方になってまいりますと、北は北海道から南は沖繩、全部網羅しなければ、国土庁としての総合的な観点からとらえるわけにはいかないわけであります。  そういう意味において、この法案においては、「国土総合開発庁は、国土の総合開発に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」というふうに第三条できめられておりますけれども、これは、おそらくある程度直されるものではないかというふうに思います。北海道開発法というものが、昭和二十五年に法百二十六で通っておりますけれども、これは現在まで放置をされているわけであります。そうなりますと、国土の総合開発という観点から考えますと、ちょっとおかしな感じがするわけでありますけれども、どうして北海道開発庁というものが、所掌事務としてこれに加えられなかったのかという点について、ちょっと理由をお聞きしたいと思います。
  76. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 北海道開発庁が、この国土庁に吸収されない一つの理由としましては、北海道は沖繩とはたいへん事情が違うとは申せ、今日まで北海道開発庁におきまして、いろいろな開発計画その他も進めております。そしてまた、特に現在第三期の総合開発計画が進行中であるということから、実務的に見て、北海道開発庁を国土庁に吸収するということは、いろいろ検討した結果の中で、やはり一応残していったらいいんじゃないか、入れないほうがいいんじゃないかという結論に達したわけでございます。基本的に、この国土庁そのものは、土地対策が中心でございますが、北海道開発庁は、それと違って、ある面におきましては、文化的あるいは厚生的、その他いろいろな問題において、なおまだ本土との間の格差が存在するとわれわれは思うわけでございます。そうした面についての推進ということも、なおざりにはできないわけでございまして、北海道開発庁を存続させておくということは、一つの政策としては理由があるようにも私は考えます。
  77. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 土地問題は、もう北海道あるいは沖繩を度外視して考える時代ではない。すなわち本土の土地の高騰というものは、直ちに北海道にもいろいろ影響していく。これは昨今の土地の値上がり等をお考えになっても、おわかりだと私は思うわけであります。北海道と沖繩を一応取り除いて、言うならば、これは国土庁というのでなしに、本土庁みたいなかっこうになってしまうんですけれども、少なくとも国土庁ということになれば、遠い将来に対して、北海道開発庁の問題については、どのように国土庁との関連が出てくるのですか、この点についてお聞きします。
  78. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 現在考えられておりますことは、国土利用計画法に関する限りにおきましては、国土庁が日本全土の問題を扱う、これははっきりしております。ただ将来の問題として、沖繩の本土との格差が是正される段階がどのように参りますか、現在のような縦割り行政の中で沖繩問題を取り扱っても、不公正がないということが明確になり、あるいは北海道におきましても、そのような事実が具体的に明らかになったときには、将来はやはりそうした北海道開発庁というものも、いろいろな意味で検討をする時期が来るのではないかと考えます。しかし当面は、ただいま御説明申し上げたような形で、土地の問題につきましては、われわれは、国土利用計画法に関する限り、国土庁がすべての責任を負って行動していくというふうに考えております。
  79. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 行管のほうからおいでになっていますね。  先ほどちょっと論議されたわけでありますけれども、御存じのように、大臣庁には局を置くという基本的な考え方から、部を置くことはできないということになっております。これは国家行政組織法の根本に関する問題だと私は思うわけであります。今度の国土総合開発庁設置法の中では、かなり大きなウエートを占める国家行政組織法のその部分を、言うならば附則で変えようとしているわけであります。そういうふうな行き方自体が、国家行政組織法の基本的な考え方から、はたして正しいものであるかどうかということ。それと、これが通れば、今度は附則で直してしまったからということで、環境庁あるいは科学技術庁のほうも、大臣庁に部を置くということが準用されるということになるのですが、いわゆる国家行政組織法の番人であるところの行管としては、こういうものを本来、附則でちょこちょこっと直すことがいいのかという問題について、国民の立場からいうならば、私はたいへん疑義があると思うのですが、その点をお聞きしておきたいと思います。
  80. 平井進

    平井説明員 お答えいたします。  確かに、先生のおっしゃいますお考えもあるわけでございますが、私ども考えましたのは、大臣庁でございます総理府外局の局中に、部を置くという必要性は確かに高まってまいりまして、行政需要がだんだん複雑膨大になってまいりますし、そういう基準が要るという判断に立ちまして、それを改正しようと計画したわけでございますが、その改正のしかたとしましては、先生御指摘のとおり、単独に出す場合あるいは他の法律一体で出す場合と二つあるわけでございますが、私どもといたしましては、国土総合開発庁設置法提案いたします際に、それと適用の問題と一体でございますので、単独に出すという説もあるわけでございますが、国土総合開発庁設置法一体として御提案申し上げて、国会で御審議をいただくということに考えたわけでございます。普通でございまして、何もない場合でございますと、基準法でございますから、単独で出すということもあり得るわけでございますが、今回は、たまたま国土総合開発庁と表裏一体関係がございますので、一緒に提案をしたわけでございます。
  81. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは、行政需要が非常に高まってきているから、そういう庁に部を置くという必要性に迫られてきているのだということであればあるほど、国家行政組織法の中できめられている大臣庁に局を置く、そういうふうに明記されているところからも、根本的にそういう理由を付して、単独で法律として出すべき筋合いのものではないか。附則でこれが準用されれば、次の庁にも準用される、その次の庁にも準用されるというふうなシステムをとるということは、国家行政組織法を非常に軽々しく扱っている行管の態度だと私は感ぜざるを得ないわけなんですけれども、その点について、もう一度明確な御答弁をお願いいたします。
  82. 平井進

    平井説明員 これは、やや法律技術的な説明をいたしまして、恐縮でございますけれども、先生御承知のとおり、一部改正を出します場合に、第一条、国土総合開発庁の設置、第二条、国家行政組織法の改正という並べ方もあるわけでございますけれども、たまたま国土総合開発庁設置法規定のしかたからいいまして、附則にならざるを得ないということでございまして、その辺は、やや法律技術的な面もあるわけでございますけれども、その重要性認識の問題について、いささかも欠けるところがないことは、申し上げるまでもないところでございます。
  83. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 重要であるがゆえに、そういう問題は単独法で出して、その法律の観点から、そういう行き方がいいであろうかということを審議することが必要ではないか。附則でちょこっと一緒に通してしまおう、通してしまったものは準用されて、ほかのほうにも部が設けられるという考え方は、私は、安直な取り上げ方であるというふうに思えてならないわけでありますが、行管のほうは、その点でけっこうでございますから、どうぞ……。  途中で話がたいへん横にそれてしまったわけでありますが、私は、本来、総合的な国土利用という観点を考えたときに、すべて一元化をしていかないと、てんでんばらばらの考え方で北海道は北海道、沖繩のほうは沖繩のほうにまかしておくような考え方が、はたしていいかどうかという問題があろうかと思います。沖繩の場合においては、確かに長期開発計画策定されて間もないという特殊事情があるわけでありますし、そしてまた、沖繩復帰後間もないという立場もあることもよくわかりますから、当面は沖繩開発庁の事務を切り離して実施することが——現実に即しているかどうかということには、かなり疑義があるわけでありまして、沖繩の開発行政を、いつまでも特別扱いをするということは、国土庁がもしできるということから考えるならば、私は、たいへん問題になってくるのではないかと思うわけでありますが、政府は、沖繩の問題について、いつまでそういう機構をお続けになるのでしょうかということをお伺いしたいわけであります。
  84. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 沖繩問題につきましては、ただいま鈴切委員の言われたような感覚あるいは考え方を持つ方が相当おると思います。しかし、ただいま政府といたしましては、なお復帰後二年たったばかりでございますし、数日前から三年目を迎えておるというわけで、まだ問題が山積しておりますし、特に沖繩開発庁そのものの仕事が、復帰後の混乱、そしてある程度の建設、安定へ進む、現在きわめて大事な時期でございますので、なおしばらくは、やはり沖繩開発庁という形の中で責任官庁が中心になってやるということが、一種の安心感を沖繩の県民の諸君に与える効果も踏まえまして、当面ここしばらくの間、沖繩開発庁をどうするかということについては、私は、その必要性を強く認めておりません。
  85. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今度の国土利用計画法というのは、土地対策であるというふうに私も認識しているわけでありますけれども、現在この法律が通らない前は、土地対策に対しては、まことに無力的な感じを実は受けたわけであります。  その土地対策に対して、今度器ができるわけでありますが、その器をつくるにあたって、関係法というものは、大体四十五本ぐらいの多きにわたっているわけであります。この関係法が、実は複雑なからみ合いといいますか、そういう関係性を持っているわけでありますけれども、これを有機的な観点から連動させて、所定の行政効力をあげるために、従来の縦割り行政の弊を改めなければならないと私は思うわけでありますけれども、その主たる任務を、それに依存するところの調整局の運用指針というものを、どのようにお考えになっておりましょうか。
  86. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま御指摘のような国土関係立法は、実に複雑になっておりまして、この国土利用計画法が通りますれば直ちにまたふえて、御指摘のように四十五ぐらいの法律案が施行されるわけでございます。これは、やはり一元的な運営と強力な土地対策、そしてまた強力に、前向きに国土を改善、改良していくというような考えの中で、この法律の連動性と、その不必要なものの統合ということは当然考えなくてはいけない、それが大きな仕事だと思います。  同時に、これだけたくさんある法律に基づく審議会が、現在十九ございまして、これが、たいへんな数でございますが、これは各省にまたまたがっておるわけでございまして、当然この審議会の数を減らすということが、一つの強力行政指針になることは、当然でございますが、それも、やはり法律の複雑多岐になっておりますものの整理統合ということが行なわれませんと、審議会の数の削減もできないわけでございまして、私は、調整局は、そのような仕事に前向きに取り組んでいくことが、きわめて重要な任務の一つであるというふうに理解しております。
  87. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる事業の実施調整という観点と、計画調整という観点、これが、おそらく調整局と計画局との分かれ目ではないかと思うわけでありますが、その問題について、総合的な立場からいって、この二つが、密接な連動というものがない限りはうまくいかないのじゃないか。そういうことで、分野調整といいますか、そういう観点から考えられます二つの局の問題は、どのようにお考えでございましょうか。
  88. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  計画局調整局との仕事の内容でございますけれども計画局におきましては、今般、御制定をいただきます国土利用計画法によります全国の国土利用計画策定をいたします。それと同時に、都道府県策定をされます都道府県国土利用計画等についても所掌をいたすということ。それからもう一つは、昭和二十五年の現行国総法が残っておりますので、国土総合開発法関係基本的な企画、計画をいたすわけでございます。こういうふうな基本的な全国計画策定するにあたりましては、関係省庁と十分打ち合わせをしながらつくってまいるわけでございまして、関係省庁の意見を反映をしなければならぬわけでございます。そういう意味におきましては、関係省庁との調整というものが、計画策定段階においても、生きてまいると思うわけでございます。なお、その他地域開発整備に関連をいたします、基本的な各省が持っております計画でございます工業再配置計画でございますとか、農村工業導入の基本方針等については、事務当局において調整をいたすわけでございます。  それと調整局でございますが、これは、むしろ各省庁で実施をいたします国土の適正利用あるいは地域振興の整備に関する事業、これが均衡がとれて行なわれるように調整をはかることを、主たる任務といたしておるわけでございます。たとえて申し上げますと、道路でございますとか、河川、港湾、空港、土地改良等、それぞれ各省が五カ年計画等の長期計画を持っておるわけでございますが、その事業実施に関する基本的な計画につきまして、調整をいたしますとともに、一つの大きな機能、これは、現在までの横割り官庁が持っておりませんでした予算調整権を持たすことにいたしております。予算調整権の内容といたしましては、特定の事業につきましては、予算の各省が要求をされる段階から調整をする、あるいはその配分をされる、いわゆる実施段階における予算の配分についても調整をする、そういうような役割りを持っておるわけでございます。
  89. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり国土の総合的な利用というものを考えたときに、わが党はわが党の考え方が実はあるわけであります。それは、むしろ国土庁なんて、そういうちっぽけな観点からとらえるのでなくして、もう国土省をつくるべきではないかというふうに私ども実は思っております。その国土省というのは、わが国の土地行政の立ちおくれは、社会資本の不足、経済成長政策に伴う都市の過密化現象、それらを解決するには、やはり近視眼的なやり方ではいけない、だから、土地、河川、都市住宅、生活環境都市交通等、関係事項を総合的に掌握して、従来の行政割拠主義的なやり方を排除して、新しい総合的視野に立った国土行政というものをやるために、そういうふうな強力な省が必要ではないかというふうな、一応簡単に申し上げれば、そういうふうな考え方を、私どもの党としては持っております。  アメリカ等も、またイギリスも、実は一九七〇年に住宅自治省、運輸省、公共土木省の三つを統合して環境省というものをつくられたというようなことから考えますと、やはりそういうふうな機構の統合、近代化という問題も、私は、今後たいへん必要になってくるのではないかというふうに思うのです。私どもの党の政策の上に立ってそう申し上げるわけでありますが、その点については、どのようにお考えになっているか。このような機構になったというのは、かなり役人のなわ張り的な感じからで、たいへんに調整がむずかしかったということも、私は聞いているわけでありますが、その点については、どうなんでありましょうか。
  90. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 現在の社会に起こっているいろんな事象を見ます場合には、私は、いまの御指摘のように、行政力がなるべく横割りに幅広く問題をとらえる形のほうがいいと思います。もちろん個々の問題につきましては、縦割り行政の中できめこまかくやることも重要でありますが、それは往々問題の全体を把握できないような情勢も、たくさん起こってきておりますから、いまの都市の問題一つとりましても、すべてを見ましても、縦割り行政の中間帯に落ちる問題が現実として非常にふえておりますから、そういう問題が、やはり政治の一番重要な課題になってきておると思います。したがって、環境庁ができましたのも、これの一つの必然的な結果であるし、今度、国土利用計画法が決定されれば、それに基づく土地問題を中心にしたこのような国土庁というような発想の横割り行政が出てくるというのも、これは、やはり社会の進歩に伴った必然だと私は考えておるわけでございます。  ただいま鈴切委員がおっしゃいましたような、もっと大規模かつ強力なものという御発想も、私は、ある時点において、それは当然十分配慮されなければならない御構想だと考えますが、とりあえず土地問題ということだけを、まず中心考えて、国土利用計画法に基づき、また現在起こっているいろんな過疎過密問題あるいは水の問題、災害対策等も含めて、国土庁というようなものを今度新設するということは、いままでの横割り行政にプラスした、もうちょっと新しい、さらに幅の広い横割り行政の庁だと考えておるわけでございまして、これを行政的に見るならば、一つの進歩ではないかというふうに考えます。  また、各省がこの組織に対してのなわ張り争いをやっているというお話でございますが、そのようなうわさも多少耳にいたしますけれども、やはりなわ張りはなわ張りといたしましても、こういう横割りの行政庁ができるということが、現在の国民の行政に対する要求にこたえるということについて、基本的に誤った考え方を持っているものではなくて、むしろ、いままで持っておる独特の、蓄積された技術や能力というものを、ぜひこの新設庁の中で生かしたいという善意の発想も、私は決して否定できないように考えます。そうした前向きの、協力しようということに基づく発想、発言というものは、大いに私はこれを歓迎していけばいいというふうに考えます。  問題は、なわ張りの中から権限争いみたいなことが、この国土庁の中にもし起こるとすれば、これはゆゆしいことでございまして、そうしたことについては、断固としてそうした傾向は阻止するという考えでおります。
  91. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、少なくとも国土庁の持つ意味というものが、これから多元的にかなり大きなウエートになっていくことは間違いないと思います。そういう意味から言うならば、ただ単に近視眼的な点だけを取り上げていくということになれば、これは、しょせん機構の屋上屋を重ねるものであるし、言うならば、そういうところに専任の大臣を置く必要はないのじゃないかと私、自分では思うわけでありますけれども、そういう意味において、より効果的なやり方というものが今後必要な時代がやってくる、私は、こういうように思うわけであります。  そこで、国土総合開発庁の新設の目的の中に、「豊かで住みよい地域社会の形成に寄与する」ということを第三条でうたっております。首相の諮問機関である経済審議会は、一月の十九日、国民総生産を補完する国民の経済福祉の尺度として国民福祉所得の中間報告を発表されたことは、すでに御承知のとおりであります。この中間報告によりますと、四十五年度の環境汚染と都市化で、国民は約七兆六千億円の損失を受けている計算であるということを発表されております。こういうふうな中において、今度新設を予定されるところの庁において、この七兆六千億円の損失をどの程度軽減し、あるいは豊かな地域社会というものの形成が可能になるかという問題がありますが、その点についてお伺いいたしましょう。
  92. 内田常雄

    ○内田国務大臣 現在の国民経済の計量的な立て方は、御承知のように国民総生産、GNPというものを中心に立てられまして、いわば物的の生産あるいはサービスの提供というようなものを、貨幣価値に直しまして、年間何十兆とかあるいは百兆とかいうような数字を出し、それを前年に比較いたしておることは申すまでもありません。つまり、経済成長ということばがあらわしますように、もっぱら国民生産の物的な増大を数字化しておるわけでありますが、しかし、これに対しては、いろいろの反省がなされてまいりまして、総理大臣の諮問機関でございます経済審議会の中におきましても、物的の生産増の立て方ではなしに、これも御承知のNNWと申しますが、ネット・ナショナル・ウエルフェア、こういう考え方をGNPに対しまして導入をすべきである。いまお話がございましたのは、そのことだろうと思いますが、その場合には、物的の生産量に加えて、物的の生産量の反面いろいろな国民生活にマイナス面を生じておるので、そのマイナス面をGNPから差し引いた計算をしなければ、物的の生産増加だけでは、国民の生活は必ずしも向上したとも充実したとも言えない、そういう考え方が実は取り上げられ、示唆をされました。  その考え方の結論は、まだ出ておりませんけれども、その際のマイナス面としては、まず第一にあげられますのは、公害による国民の生活上の苦痛とか健康の侵害とかあるいはまた大都市の出現などによる都市生活面における生活上のマイナスとかいうものが、幾つかのマイナス項目の中に立てられるわけであります。同時にまた、反対にプラス面も、このNNWの考え方によりますと、生ずるわけでございまして、たとえばレジャーの活用というようなものは、今日のGNPの計量の中には全く出ておりませんし、また、家庭の主婦のサービス、地域社会への貢献、だんなさんへの貢献というようなものも、GNPの場合には、お医者さんのサービスのように総生産の中に出てきておりませんので、そういうものもプラス面として計上をすべきだということも同時にあるわけであります。その差し引きしたものが、すなわちネット・ナショナル・ウエルフェアだ、こういうことになるわけでございます。  その際、一応昭和四十五年をベースにして、これも確定した数字ではございませんが、先ほど述べましたようなマイナス項目を集計してみると、それが七兆何千億でございましたか、そういう数字になるはずだ。しかし、これは確定した数字でもございませんし、これは、なかなかおもしろい発想でございますけれども、この発想を具体的な計量方式に組織立てた結論までは、実は出ておりません。しかし、それは非常に示唆に富むもので、そういう面のマイナスを、いろいろ政府の施策によりまして消してまいる。そのマイナスを小さくしてまいる。ことに、それは土地問題に関連するものがたくさんございますので、今度の国土総合開発法というようなたてまえではなしに、国土利用計画法といったような国会の与野党の皆さま方の新しい法律制度の発想の中におきましては、いま鈴切さんが言及されましたそのGNPに対するマイナス面を消すように、この法律を運用をしたり、編成をすべきことについて、幾つかの示唆を与えているように私は思うものでございます。
  93. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 企画庁長官は、そういうふうなお考え方で言われているわけでありますけれども、やはり私も、七兆六千億の損失があるということ、いろいろ積み上げてきて、そういうふうな数字を答申しているということは、たいへん示唆に富むものである、これは、ただ数字だけで放置をすればいいものではないというように思うのです。  そこで、この庁ができる中に、言うならば豊かな地域社会の形成というものがうたわれている以上は、この庁においてどういうところをカバーし、そしてまた、どういうところの損失を取っていくかという具体的な問題を、もう少し真剣に今後取り上げていって、その損失をなくしていくという方向へより精力的にやっていく必要があるのじゃないか。ただ単に七兆六千億円という数字は、なかなかこれは示唆に富むものであるという簡単な逃げ方でなくして、具体的にそういうものを取り除いていくということについて、この庁の受け持つ考え方というものを、またお聞きしておきましょう。
  94. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの問題のとらえ方、私は、全く企画庁長官と同意見でございます。また同時に、あなたのおっしゃいましたように、消去法というのですか、マイナス面を消していくということも——いままでのように生産力増大ということで、すべてをカバーしていくという積極的なプラス、プラス、プラスという発想よりも、現時点におきましては、むしろマイナスを消していくというそのような発想を、行政姿勢としてもっと色濃く取り上げていくことが、現在においては、きわめて有効であるというような認識も、同時に持っておりまして、この国土庁の今後の運営の中で、ただいま御指摘のようなことが、実は一応事務的には考えられておったと思いますが、たいへんいい点を御指摘いただきましたので、十分今後、御意見を踏まえて運営には当たるようにしてまいりたいと思います。
  95. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第四条に所掌事務のことがありますけれども、たとえば「国土の総合開発」云々で、「政策及び計画を企画し、立案し、及び推進する」というふうに書いてあります。この「推進する」ということは、具体的にはどういうことを意味をされておるのかという問題であります。たとえて言うならば、建設省設置法では、本省の所掌事務規定では、五で「都市計画事業を実施すること。」というふうになっておるわけでありますけれども、推進という考え方実施をするということはどういうふうに違いがあるか、この点はどうお考えでありましょう。
  96. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 いま先生お話しがございましたように、この国土総合開発庁は、たとえば今度の国土利用計画法地価対策を実施いたしますような、そういう実施面も一部受け持ってはおりますが、原則といたしましては、企画調整権能を行使する官庁でございます。  そこで、たとえば道路整備事業五カ年計画に基づきます道路整備事業というものは、建設省が実施をいたすわけでございますけれども、この国土庁とのかかわり合いにおきましては、先ほども申し上げましたように、調整局におきまして、その道路整備事業五カ年計画が、国の基本的な国土に関する政策なり計画に適合しているかどうかについて、調整をいたしました上で、建設省で御決定になるようになるわけでございます。  さらに、それを実施するにあたりましては、国土庁におきましては、その実施が国の基本計画に従って行なわれるようにフォローアップをする。行き過ぎた面につきましては、あるいは勧告をいたしましてチェックをいたしますし、また、たとえば生活環境道路の整備等のようなものにつきましては、これをフォローアップして、その推進、バックアップをしていくというようなことでございます。
  97. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第四条の八に、「総合的な交通施設に関し、」云々とあって、「並びに関係行政機関の事務調整すること。」というふうに書いてありまして、「調整」というこの字句は、この法案の中においては、まず第五号、八号、九号、十号、十一号、それから十二号、十三号、十四号に出ておるわけでありますけれども、これらの各号において取り上げる調整の実務というのは、それぞれ同じ程度の介入を意味をしておるのか、あるいはまた質的に違うのであるか、そういう具体的な問題についてはどうでしょうか。
  98. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 この調整内容でございますけれども、先ほど申し上げましたように、五カ年計画等につきまして、関係省庁が立案をし、閣議決定を経てきめられるわけでございますが、その事前におきまして、国土庁に協議をすることによりまして、国土庁は、これが基本的な計画に沿っているかどうかの点において、事業量あるいは事業の目標等について、調整をするという機能もあるわけでございます。そういう意味におきましては、計画の斉合性を保つというような面の調整一つございます。  それともう一つは、計画実施事務につきまして、調整をしていくという点がございます。  さらには、先ほどもちょっと私、申し上げましたように、具体的な予算調整権というものを持ちまして、特定の事業につきましては、予算の要求段階から調整をしていく。この調整のやり方といたしましては、特定の事業についての見積もり方針といいますか、予算要求の考え方についての基本方針をきめまして、各省にもお流しをし、各省がそれを受けて予算要求をされて、大蔵省の予算査定にそれを反映するということが一つ。それから、具体的に特定の事業について予算を配分されます場合に、財政法の規定によりまして、大蔵省の実施計画調整というものがございますけれども、その事前にきちんと国土庁におきまして予算の配分計画承認して、それに基づいて事業の実施をしていただくというような、調整という事務につきましては、いろいろ多角的な機能を持っておるわけでございます。
  99. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまのお話からいいますと、調整といっても、結局は、運用上の違いがあるから、多種多様であるということであろうかと思いますけれども、この調整ということばの中に、かなりの問題あるいは意味が含まれているならば、私は、やはり調整というものの運用上の明確な点を明らかにしていきませんと、ただ調整ということばだけでは、かなりフリーハンドであるために、結局は、その考え方によって違ってくる場合が出てくるというふうに思うのですが、その点は、どのようにお考えでしょうか。
  100. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 いま先生御指摘がございましたように、調整という意味は、いろいろな面を持つわけでございますが、この調整が非常に強権的になされましたりいたしますと、また各省庁との協調というものがうまくまいらない場合も考えられるわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、国の国土政策につきましての基本的な方針の確定というもの等を、国土総合開発庁はやるわけでございますけれども、それが円滑に行なわれるように、関係省庁多岐にわたる事務につきまして、関係省庁と十分な連絡をとりつつ調整をいたしまして、調整の実があがるようにいたしていきたいと考えておるわけでございます。
  101. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえて言うならば、先ほどもちょっとお話がありました、予算に関連する調整というものは、予算の一括計上権あるいは概算要求の際の見積もり要求権あるいは実施計画承認権のようなものを意味する場合があるのかどうか、その点は、どのようにお考えでしょうか。
  102. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 先生お話しの予算の一括計上でございますけれども、これは、関係事業の予算を一つの省庁に一括して計上いたしまして、その実施をする場合におきましては、関係省庁に移しがえをして使用する、これが一括計上でございます。  国土庁におきましては、離島振興整備事業と奄美群島振興特別措置法による事業につきましては、一括計上いたしておりますが、その他の関連事業につきましては、関係省庁に予算を組みまして、それについて必要な予算調整を行なうということにいたしております。予算調整の方法といたしましては、要求段階における調整と、それから配分をする、すなわち実施をする場合の調整が含まれておるわけでございます。  なお、予算の一括計上につきましては、これは予算措置だけでできる性格のものでございますので、現在のところ、予算の一括計上が許されているのを見ますと、やはり特定の地域を限ったものについて行なわれる場合が多いわけでございますので、当面、先ほど申し上げました離島と奄美に限っておりますけれども、将来、必要があれば、そういう方式も検討をしていきたいと思います。
  103. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 予算論上において、要するに、予算に関連する実質的な権限を、新設する庁が握りますと、既存の各省の予算に関連する実質的な権限というものは低下するんじゃないか。低下すれば、各省設置法を改めなくてはならないような事態が起こってくるのではないかと私は思うのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  104. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 予算の実施配分の責任というものは、依然として各省庁に残っておるわけでございまして、それを行使されるにあたりまして、国の基本的な計画国土の適正利用という方針に適合して予算配分がなされるかどうかについて、事前に御相談をいただくという趣旨でございますので、実施の権限は、依然として各省庁に残っておると考えておるわけでございます。
  105. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのほか、いろいろお聞きしたいこともあるわけでありますが、私も時間を大体一時ということで予定をしておりましたので、きょうは、これくらいに質問をとどめたい、このように思うわけであります。
  106. 徳安實藏

    徳安委員長 鬼木勝利君。
  107. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 総務長官がお見えになっておるようですから、お尋ねしますが、田中総理が、今度の国土利用計画法案は、内容は前と同じだ、ただ名前が変わっただけだ、いささかも変わりがないのだというようなことを、テレビで発表されましたが、それはそのとおりでございますか。そういうことになりますと、われわれまたちょっと考えなければなりません。その点を、まず冒頭に長官にお聞きしたい。
  108. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 私は、テレビを詳しく聞いておりませんでしたが、実は昨日の当委員会におきまして、総理は今度きめていただいて、現在、参議院にかかっております国土利用計画法というものができて、これは非常にりっぱなありがたい法律である、これで初めて土地問題に対してまっ正面から取り組めることになって、その点は自分としては非常に高く評価するし、ありがたいと思っているのだということを述べておりました。私は、それが総理の本心だと思います。  同時にまた、われわれから見ましても、いろいろ都市問題やあるいは地域開発等を考えましても、この地価の問題が、現在のような異常な状態で動揺しておりますと、いろいろな計画が進まない、これは事実であります。そうした意味から、今度の国土利用計画法ができて、土地という問題に対してま正面から取り組んで、ともかく相当大幅な私権制限的なことまで行なわれるということができたということが、総理の言う、いわゆる「日本列島改造論」というものを大いに助けるというふうに、総理が理解しておるというふうにも思えるわけであります。
  109. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 総務長官は、あまりテレビをよく聞いておらぬからというようなお話でございますが、これは与野党一致して提案をした、いわゆる国土利用計画法案でございますから、ああいうことを軽々に言われたのじゃ、実際ほんとうの話、これは困るんですよ。これは総務長官に文句を言っているわけじゃないけれども国土総合開発法案の名前が変わっただけだ、そういうことを言われたのじゃ——あれだけみんなで一生懸命衆知を集めて、せっかくつくった法が、ああいう簡単なことで片づけられて、国土総合開発法案の名前が変わっただけだ。そうしますと、これは、やはり日本列島改造と十分関係があるわけで、日本列島改造を、それこそ名前を変えて、国土利用計画法案とこうなしたのだ、こういう田中総理のお話になるんですが、この点は、ひとつはっきりしてもらわぬと、これは大きな問題だと私は思うんですね。  総務長官は、えらい簡単に御説明になったが、これはそう簡単なものではないと私は思うんですよ。国民は、ひとしくそういうふうに考えておりますよ。どういう意味であんなことを言うのか、冒頭にそういうことをはっきりしたいと思うんですがね。
  110. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 私たちの理解と総理の理解とは、別にそんなに違っておらぬと思うのでありますが、特に土地問題について、今度の国土利用計画法がきまったということが、これは従来も、もちろん国総法の中にも、そうした考え方が出ておるわけでありますが、特にその点が、明確に今度の立法によって達成されるという見通しがついたということ——鬼木委員は、たいへん簡単にとおっしゃいますが、やはりいまの日本の状態というものは、過疎過密を一つとりましても、現状でいいという人は、ほとんどいないんじゃないでしょうか。したがって、現状でいいと思わなければ、何とかこれを改造していくということは、当然一つの政策としても出るし、またビジョンとしても、みんな持つだろうと思うのでございます。  したがいまして、そういうような考え方で改造していくということについては、どなたもほとんど同一意見であるが、問題は、どういうものをべースにして改造を進めていくか、改造をやれば、土地の値段が上がって、ますます社会的に不公正が拡大するんだという意見と、いやそうではないんだ、改造、開発が進めば、そのことによって土地の価格は上がっても、それはパイを大きくできるから、国民にももっとたくさん分けることができるのだという発想と、二つあったと思うのです。  しかし、その二つある発想の中で、国会とされての一つの選択は、まず土地の安定をはかるということを最重点に置くという発想で、四党の共同提案国土利用計画法が固まったとわれわれは認識しておるわけでございまして、私らは、やはりその方向がいい。パイを初めから大きくするということを考えるよりも、まず土地を安定させるということに全力を置くというのが、いずれにしましても、日本の社会改造にはなくてならない基本的な条件が、これでだんだんと満たされるようになったというふうに考えて、したがって、この上に立っての国土のいわゆる改造ということが可能だというふうに総理が発言したのではないかと思います。この問題につきましても、いろいろと御議論があるようでありますが、私らの認識というものは、以上申し上げた点でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  111. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、それは総理とあなたのお考えが違っているとは思いません。それはもう御一緒だと思いますが、ああいう発言をされると、結局なしくずしでやはり日本列島改造に持っていくんじゃないか。いまあなたのおっしゃるように、土地の安定ということが大事だ、だからして各党がそういうことをみんな一致して提案して、国土に限って、土地利用に限って法案をしぼったというところは、いまあなたのおっしゃるような国土の安定、土地の安定ということに立った上の今度の法案だと思うんですよね。私はそうだと思う。あなたのおっしゃるとおりだと思う。それを拡大して、何、土地に限らないんだ、あれはつまり、日本列島改造の名前が変わっただけだというようなことを言われたんじゃ、せっかく与野党一致して土地の安定という見地に立ってつくった法が、ゆがめられていくんじゃないか、私はこのように懸念するのでございます。  だから、いま申し上げたわけでございますが、こういう点は、ひとつ総務長官もはっきりしていただかぬと、これは将来国土庁ができますから、長官がまたおやりになると思いますけれども、まずその点を私ははっきりいたしたい、こういうことで申し上げたので、あなたが発言されたんじゃないから、おれはそういう気持ちはないんだ、こうおつしゃれば、それで終わりますが、御参考に申し上げておきますので、十分心していただきたいと思うのです。田中総理が、どこでもここでもあんな放言みたようなことをやられては、実際の話困るんですよ。  そこで、次にお尋ねをいたしますが、国土総合開発庁ですかの機構は、いままで経済企画庁の中にあった、あるいはおたくの関係の首都圏、近畿圏あるいは中部、こういうのを全部今度の国土庁に一本にしよう、それで大臣以下一官房五局、それから部が一つ、これに詳しく載っておりますから、もう私がいろいろ申し上げるまでもないと思うが、しかも四百三十六人からの定員をもってやる。これは行管のほうにも直接関係があるようでございますが、その人員、機構、組織の問題について、長官に一応お尋ねして、それから、きょうは大臣がお見えでなければ、局長でもいいからその点をひとつ御説明願います。
  112. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お手元に差し出してあります国土総合開発庁機構図案というのでは、四百三十六人と出ておりますが、この中で各省より新設庁に参る人間の数が全体で三百三十六人でございまして、あと百人がさらに追加をされるというような構想になっております。  それから、大都市圏整備局、地方振興局、これは、いずれも現在ございます過密過疎の問題の解決のために、国土庁の中で実務をさらに推進していく必要があるというわけでございます。  さらに計画局調整局は、それぞれ計画をし、調整をするというようなチェック・アンド・バランスのこともあわせて行なうわけでございますが、官房に実は災害対策室を移します。これは、やはり国土庁というものの性格から見まして、災害対策を、現状のような機構よりも、むしろはっきりと国土庁に移管して、先般の伊豆の地震もございましたが、いろいろな面で災害対策を、さらに強力に推進する必要があるという考えで官房に一室を置くということ。  それからもう一つは、お手元に差し上げております案の中で、土地・水資源局というのがございますが、今日までの各委員の御議論の中で、この重要な水資源というものと、さらに重要な土地というものを一緒にしてやるというのはどうかというような御意見もございまして、われわれもまことに御意見のとおりだと考えまして、現在ではこの土地・水資源局を土地局というふうに改める御修正を、もしもいただくなら、われわれとしては異存はないというふうに考えております。そしてまた水資源でございますが、昨日も総理がこの委員会で申し上げましたが、土地よりももっと人間生活に大事なのは水なんだから、この水に対しての対策を、土地と一緒の局に置いておくということは、不適当であるとさえいわれるわけでありまして、この水資源についての重要性を考えまして、とりあえずこの部を、先ほども御議論ございましたが、長官官房につけておこうというふうにいたしまして、将来これがおそらく局に昇格していくという含みでございますが、そのような方向で全体を運営していくのがいいのではないか。同時に、この基本は、あくまで最初に御質問にお答え申し上げましたとおり、国土利用計画法という新しいこの基本法を一番の柱にして、すべての問題の処理に当たっていくというかまえを失わないで運営をしてまいりたいというふうに考えるものでございます。さらに詳細につきましては、担当審議官からお答え申し上げます。
  113. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまの御説明で私も同感な点があるのですが、まず四百三十六人のうち新規増員が百人、この点について行管のほうから説明を願いたいのです。それから、三十九年に近代化、能率化をはかるようにという臨調の答申があるんですね、そこで、百名の増員を簡単に、簡単というと、先ほど総務長官からおしかりをこうむったのだが、簡単じゃないでしょう、慎重審議でやられたのだと思うが、百名の増員は、どういうところからこうされたのか、その点。  それから、いま総務長官の御説明で、私も同感で、国土総合開発庁に長官官房及び次の部局を置く、これは先ほど申し上げたとおり。それに土地・水資源局を一緒にしてあるというのは、私は反対です。これは、いまおっしゃったとおり、こういう重要な局は、土地局、水資源局というように、おのおの独立すべきだと思う。  次に、計画局調整局、これは私、一緒にしても差しつかえないと思う。計画をするのも調整するのも同じようなこと。どのように調整していくかと計画していけばいいのだからね。計画局調整局を別々に設ける必要はないと思う。まあ、これでけっこうだと思うんですが、その点は、いまの大臣の御説明は、あなたはそういうふうにやりたいと思っていらっしゃるのですか。それは、やるように話し合いがついておるのですか。その点を三点お尋ねいたします。
  114. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 われわれは、やりたいと思っておるのでありますが、委員会のほうでのいろいろな修正の御意見があれば、私は、ひとつ謙虚に伺って、組織その他についても、十分考えてまいりたいという基本的な考えを持っております。
  115. 平井廸郎

    平井(廸)政府委員 まず第一点でございますが、国土開発庁の新設に伴いまして、各省庁からの移しかえ人員が三百三十六名であり、純増人員が百名であることは、先生御指摘のとおりでございますが、その内訳をざっと申し上げますと、計画局関係で五名、調整関係で十名、現在の土地・水資源局関係で十三名、大都市関係で五名、地方振興局関係で二十二名、さらに災害対策その他を含みます長官官房関係で四十一名というのが、純増人員の内訳でございます。  確かに臨調答申以来、政府としては定員について、規制を強化するという考え方で進んでおりますことは、先生御指摘のとおりでございますが、私どもは、同時に、新規の行政需要に対応する部面については、積極的な定員の増加についても、十分配慮いたしておるところでございまして、一方におきまして、このような国土総合開発庁の新設に伴います増員を行ないながら、四十八年度におきましては、全体として約三千名の定員削減を達成しておるという状況でございまして、いわば行政需要の消長に応じた定員の再配置という形で、こういう事態を処理しているわけでございます。以上が第一点のところでございます。  それから、土地・水資源局の分割の問題につきましては、新しい立法過程が、昨年の段階から本年度の段階におきまして展開しておられる実情から見まして、確かに総務長官の御指摘があり、また先生の御意見にもありますような考え方も、当然一つ考え方として尊重されるべきであろうというふうに私ども考えております。
  116. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 先生お尋ねの点の計画局調整局の問題につきまして、私から御説明申し上げたいと思います。  計画局の所掌事務でございますけれども、今般、御制定を見る国土利用計画法の中の国土利用計画に関する事務及び、これは昭和二十五年の国土総合開発法が残っておりますが、その全国総合開発策定の任務をいたすわけでございます。全国総合開発計画につきましては、先生御承知のように新全国総合開発計画というのがございますけれども、これの見直しの問題が非常に大きな問題として残っておるわけでございます。これは今般、御制定を見る国土利用計画法の適正な国土利用という見地からの利用計画、それを踏まえることは、もちろんでございますが、具体的な地方の振興整備、大都市対策の基本を、これで確立するにあたりましては、現在、経済企画庁で新全総の総点検を進められておるわけでございまして、その総点検の結果を踏まえまして、環境の保全等の見地から新しい計画が、将来策定されるであろうと考えるわけでございます。そこで、こういう国の国土政策の基本になる計画策定するためには、スタッフ制と申しますか、計画官を中心とする専門家グループを編成いたしまして、これに斬新な地域の経済社会情勢の変動に応じた知識を導入しながら、国づくりに専心をさすべきであるというふうに考え計画局を設けたわけでございます。  なお、調整局につきましては、これは具体的な事業に関連をする面が多いわけでございまして、たとえば現在各省庁で道路、港湾、下水道、住宅、土地改良等、事業実施基本でございます五カ年計画を持っておるわけでございますが、その五カ年計画基本計画との調整の面あるいは事業の実施計画と乖離をして、事業のほうが往々先行して問題を起こす、あるいは特定の事業のうちの環境関連の事業とかそういうものの進路がふさわしくない、そういうような場合も想定をされますので、予算調整権等をもちまして、関係各省の事業の調整を行なうというような任務を持っておるわけでございます。  したがいまして、性格的にはやはり基本的な計画を、スタッフ制を中心にして運用すべき計画局と、それから関係各省庁の事業について調整をいたします、特に予算調整権をもちまして調整をいたします調整局とは、別個に存在をさしたほうがよかろうという判断に基づいたものでございます。
  117. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 御説明は大体わかりました。そういうお考えであろうということは、一応推察できますが、大体、国土総合開発庁というのは、いま一言にしていえば、私は、調整機関だと思うんですね。実施機関ではないと思う。そうなりました場合に、調整局と計画局が別々になっておったのでは——では、かりに計画局のほうから出した、実施機関である、たとえば建設省なら建設省がいやだ、こう言った。そうした場合には、早速ここに一とんざを来たす。だから、計画を出すならば、よく調整をして、つまり各省の事業を一本化するように調整をする。その上に立って今度は計画する。こういうふうにいくのがスムーズにいくのではないか。  しかも調整局には、次長制が敷いてあるが、計画局には次長制はない。地方振興局には局長はあるが次長もある。土地・水資源局には局長はあるが、次長は置いていない。大都市圏整備局も次長は置いていない。非常に局に軽重をつけてあるようですが、それは、むろん軽重もあるかもしれぬ。あるかもしれぬが、こういうところは、私は、もう少し研究したらどうかと思うのだが、いまの御説明では、まだあまりはっきりしないようだな、どうもかゆいところに手が届かぬような説明で。子供にこう言うて聞かせるような説明じゃ、どうも隔靴掻痒の感があるが、もう少しはっきりした、五局を置くという根本理念というか、これは、よく推敲されたのであるかどうか。ただ五局を、あちらこちらからやってくるからやって、序列の上であれは何年組だからあそこの局長、あれは何年組だからこうだと、それで、ここには次長は置かぬでよかろうというような、そういううわさももうすでにあっているのだ。今度あの人が局長になるらしい、あれは何年組でございます、そういうことでやっているんじゃ、国土開発庁は、何の開発庁やらさっぱりわからぬ。局長開発庁か。(「頭脳開発」と呼ぶ者あり)頭脳開発ならいいけどな、ほんとうに頭脳開発なら。こういうところを、総務長官は御存じなかろうと思うのだ。だからそのたてまえを、もっとはっきり参事官、ひとつ御説明ください。あなたは何になるのか、今度。国土開発庁の次官に抜てきされるのか、はっきりせい、それを。
  118. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 ただいま人事の問題にお触れになりましたけれども、もちろんその人事を基礎にして組織をつくったわけではございませんで、土地政策をはじめといたします国土の政策を総合的に国民のニーズ、地域住民のニーズに沿うように展開をいたしていくためには、こういう組織体制が必要であるという見地から編成をいたしたものでございます。  なお、計画局調整局、このそれぞれの意義につきましては、先ほど御説明をしたところでございますが、繰り返すようで恐縮でございますけれども計画局はやはり国づくりの基本をなす計画をつくるものでございますので、スタッフ制度をとって、ほんとうに知識を集約して、りっぱな計画をつくろうというような見地でつくったわけでございます。調整局はスタッフシステムと申しますよりも、各省庁にまたがる事業の実施が円滑に進むように、要するに各省庁と十分な連係動作が保たれるような仕事を進めていきたいということで組織編成をしたわけでございますので、私は、それぞれそれなりに存在の価値が十分あると考えるわけでございます。
  119. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは、先ほどあなたが言われたのを、また繰り返して言われただけだが、この国土総合開発庁の、これは、あなたのほうから出たのか、だれがやったのか知らぬが、これを見てみますと、大都市圏整備局、これは局長で次長は置いてないが、首都圏整備あるいは中部あるいは近畿のこの三圏をこれに入れておるのだ、こう解釈するのだが、間違っておったら、ぼくはしろうとだから、あなたたちは専門家だから、だと思うが……。それから土地・水資源局か、これは新たにできておるようです。調整局も、これは新たにできておる。計画局はあったようだ。そういうことで、次長を置いているところ、置いてないところ、その説明はいまなかったが、これは、どういうわけでこういうことをしておるのか。局に軽重があるのかですね。軽重があるとも思われないね、これは全部必要。大事ななにであるが、そういう点について、もうちょっと明快な答弁をひとつしてもらいたいな、おざなりの答弁でなくして。
  120. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 基本的に申し上げますと、この国土総合開発庁の名称も、国土利用計画法が成立をしますれば、当然これは変わるべきものだと考えております。まず、それが第一前提でありまして、お手元に差し上げております組織図も、一応の国土利用計画法の成立を想定しつつ作成したものでございますが、その中で次長制を置くところと置いてないところとあるという御指摘でございまして、これは一見、局長の下にもう一つ次長というラインを置くのが適当なところと、またないところ、たとえばきわめて重要な土地局とかあるいは大都市圏整備局であるとか計画局等に次長を置いてない、これはラインを短くしているという発想でございますが、それでは、やはり機能が十分達せられないことも配慮されるし、また同時に、ラインだけでなしにスタッフ制度を活用して、非常に困難な問題を前向きに処理したいという考え方から、長官官房のところに審議官を十人、参事官を三人、これは非常に多数の人間を、一応原案としては配備をすることにしております。つまり、審議制度を活用いたしまして、問題が起こったときに、集中的にその局の仕事をやり、つまり、新しく発生して、きわめて困難な問題を処理する局に対しては、スタッフ制度を活用したい、ある程度問題がすでに行政ベースに乗ってラインで、システムで処理できるところ、つまり、それが今日まで相当に成果があがってきたような仕事のところには、次長制を置くという発想であったわけでございます。  しかし、ただいまも御指摘のございましたように、次長を置いてラインを強くするほうがいいというようなお考えがあって、特に土地局等について、次長を置くべきではないかという御議論も、この内閣委員会におきまして、ずいぶん大ぜいの方々から御指摘をいただいておりますし、また調整局の次長は要らぬじゃないかというお話も承っております。その辺につきましては、われわれはその基本的な理念としましては、困難な問題のあるところほど、審議制度によって事務量を縦横にさばいていこうという発想でございますが、ラインを強化することのほうが適当だという委員会の御修正でもあれば、われわれは、それに従っていくにやぶさかではございません。  ただ、こういう新しい省であり、かつ横割り行政の、これは環境庁以来の新しい行政仕組みだと私は考えておりますが、こういうものを考えたときに、環境庁でやっておりますいろいろな体験等も、十分事務的にはヒヤリングをしつつ、この考え方、つまり審議制度の活用ということも、一つのテーマになっておったわけでございます。そのような基本的な考えの中で、いずれにいたしましても、国土利用計画法中心国土をもっと住みよいものにしようということで、業務をまじめに運んでまいりたい、そのような考えでございます。
  121. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 さすがに総務長官、だいぶ答弁が具体的になってきましたが、では、今度は行管のほうにちょっとお尋ねするが、大体外局には局長は置かない。部は置かれる。ところが、長が国務大臣であれば、局も置き、その下に部も置かれるというようなことで、やたらに役名を、人間をふやす、局はどんどんつくるというようなことでやったんじゃないか。  先ほどの話を、ちょっと具体的に今度は繰り返すんですが、そういうふうに思われるんだ。簡単にわしはこう書いてきたんだが、今日、定員法で三年がかりであなたたちは、一生懸命〇・五減らすんだ、削減するんだというようなことをやっておるようだが、公務員の削減計画は、どのように進んでいるのか。行ったり来たり同じことばかりやっているのじゃないか。一歩進んだら、一歩後退というようなことで、結局プラス・マイナス・ゼロいうようなこと。むろんスクラップばかりじゃいかぬ、ビルドも大事だ、それはわかります。わかりますが、どうせ、これはまた行管庁それから環境庁のほうがかかることになっているから、そのときに、またじっくりお尋ねするが、一体どういうふうになっておるのか。あなたたちは、よくこういうことを研究した上で、合意の上でこの組織機構というものはでき上がっておるものか。
  122. 平井廸郎

    平井(廸)政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、行政管理庁と申しますか、内閣といたしましては、定員削減三カ年計画を、第二次の計画をただいま実施いたしておりまして、もちろんそのこと自体は、いわば各省庁における過去の機構なり人員なりの中に、全体として見ますならば、時勢の推移に応じて合理化すべき余地があるであろうという考え方に立ちまして、そういう努力を一方で重ねるということにいたしております。ただ、そういう努力を一方で重ねながら、新しい行政需要に対しては、積極的な定員措置を講ずるというのが、私ども基本的な考え方でございまして、そのような努力の結果、一進一退を続けているのではないかというような御指摘ではございますが、過去四十三年以来の状況から申しますと、全体としてやはり定員は縮減の傾向をたどっているという状況でございます。  次に第二点として、この国土総合開発庁の機構問題について、行政管理庁はタッチをしているかという問題でございますが、これは当然、機構並びに定員削減の立場から、ここに吸収されます各省庁の機構並びに定員等に配慮し、さらにこの国土総合開発庁で行なうべき任務の重要性その他を勘案いたしまして、現在の機構並びに定員が妥当であるという判断をいたしたわけでございます。
  123. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 一応そういうふうな御説明であろうということはわかりますが、これは、またあとでゆっくりお尋ねしましょう。こればかり引っかかっておると、先が進まぬ、時間がないから。  そこで今度は、私は、予算の問題でちょっとお尋ねしたい。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 国土総合開発庁は、いわゆる計画局あるいは調整局でいろいろ計画立案をされる。予算調整権の問題、それについて、概算要求なんかされるような場合の問題ですが、いままでの縦割りが、今度横割り行政ということでみな一本になった。これは簡単に率直に言っておきます。だから、仕事は非常にしよくなるのだというようなお考えだと思うが、実際に概算要求される場合に、実施する機関と調整機関と、先ほど申したように分かれておるわけですから、今度の国土総合開発庁、これは総務長官の言われたとおり、名前はまたどうかなるかしらぬが、結局ここに出ておる国土総合開発庁という機関が、実施機関じゃないのだから、これは率直に言って調整機関だから、実施機関の予算の折衝というか編成の場合に、大蔵省はこう言う、建設省はこうだとか、そういう実際の場合に、どのように——それで調整局がありますと、あなたはおっしゃるかもわからぬが、しかし、それはいわゆる開発庁そのものが調整機関なんだから、スムーズな予算の行使ということについて、ちょっと私らは気がかりなんです。その点ひとつ審議官から説明を……。
  124. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 先生のお話のように、今度の国土総合開発庁におきましては、予算調整権を持つということが、一つの大きな特色になっておるわけでございます。予算調整権の中身といたしましては、一つは、各省庁が事業費の要求をされる段階におきまして、要求段階の調整をいたしますことと、それから予算がきまりまして、予算を配分される際に調整を行なう、この二つの面を有しておるわけでございます。  地域の整備に関する事業の中には、たとえば琵琶湖総合開発事業のように、十年間にわたって四千億以上の金を投下する事業があるわけでございまして、かつその開発計画の中に盛られている事業を所管する省庁が八省庁に及んでおる、そういう事業がございます。こういうような、関係省庁が多岐にわたり、長期的に実施すべき事業につきましては、その関係省庁の事業が一体的に円滑に進められることを確保する必要がありますし、それは、また予算を通じて反映をされるわけでございます。  そこで、そういうような事業につきましては、まず各省庁で要求をされます前に、国土総合開発庁におきまして、予算要求方針を定めるわけでございますが、その要求方針を各省庁に流しまして、各省庁がそれによって要求をされ、また大蔵省もその査定に反映をされるというようなことが第一点でございます。  また、予算が最終的にきまりまして、これを各省庁が配分をされるわけでございますけれども、その配分をされます場合に、各事業間の進度なり何なりが円滑にいっているかどうかという点につきまして、国土庁におきまして調整をいたすわけでございます。なお、これらの調整機能の行使につきましては、大蔵省は国土庁の意向を十分反映するという了解を得ている次第でございます。
  125. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 少しは私の質問に答えが出ておるようだが、実際面において、たとえば例をとって言うと、建設省なら建設省が概算要求をやる。そうしますと大蔵省がチェックする。それから国土開発庁がチェックする。先ほど抽象的に言ったのですけれども、具体的に一つの例を申し上げるとですよ。そういうことになりますと、関係各省庁が実施がおくれやせぬか。迅速にやらなければならぬ場合に大蔵省からチェックされる。開発庁がまたやる。そうすると実際の実施機関である関係各省庁は、右顧左べんしてどうしていいのやら困るのじゃないか。ところが大蔵省は、国土開発庁のほうに全面的に依頼しておるとかいうようなお話がある、まかせておるとかというようなお話があったが、そういうことは法的には何も裏づけがない。そんなことを言ったって、やれ口では一口言うたかもしれぬけれども、総務長官に、あああなたの言うとおりにしますばいといって、だれか言うたかもしらぬけれども、それじゃどこにそういう法的な根拠があるかということですね。実施機関の概算要求に対しては、大蔵省は何とも言わぬ。この場合は大蔵省が、どうこう容喙すべき事項でないとか、あるいは開発庁において、これは実施機関のあれを十分に尊重して決定するとかいうもの、何かありますか。
  126. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 この予算調整権を設けました趣旨は、まさに多岐にわたる関係省庁の事業が、一体として進むように総合化をはかったわけでございますが、総合化をはかることによりまして、先生いま御指摘いただきましたような、大蔵省の権限との重複で屋上屋を架す、こういう御非難を受けることにならないように最善の配意をいたしたわけでございます。  なお、法的にどこかに書いてあるかという御指摘でございますが、これは法的にはございませんけれども国土庁の運営の基本的な方針として、御指摘のような屋上屋とか総合化をはかられて事業の実施がおくれる、こういうことが万一もあってはならないわけでございまして、これは最善の注意を払ってまいりたいと考えております。  なお、大蔵省との関係におきましては、この法案を内閣で提案をいたします際に、十分調整をはかっておりまして、大蔵省も国土庁のこういう調整機能については、十分尊重するということを言っておるので、念のため申し上げておきます。
  127. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 この問題については、まだ私はもう少し掘り下げて研究したいと思うんですがね、実際の話は。そのために調整局があるというので、調整するのでしょうが、決定的なきめ手になるようなあれがあればいいけれども、いたずらに談合、談合、話し合い、話し合いばかりで、予算編成時期になって概算要求なんかするときに、ごちゃごちゃごちゃごちゃやって、実施機関の希望どおりにはいかない。あっちへ行っちゃチェックされ、こっちへ行っちゃチェックされ、うろうろすることになりはせぬかという、この法案は多分にそういう心配があるんですね。これは、いよいよ発足するようになったら必ずそういうことになってきますよ。あれは鬼木がああ言いおったが、実際これは困るなというようなことがあったときに、そのときに思い当たってももうすでに時期おそし、ほんとうですよ、これは。  それから、まだたくさん聞きたいけれども、もう五分ばかり、内容は、もう申し上げぬでもわかりますけれども、この国土利用計画法案の要旨なんかは、もう言わなくてもわかっておりますが、相当の権限を知事に与えてあるようでございますが、これは地方の知事が、これを引き受けてやるということになりますと、人員もたくさん要ると思うが、まず一番に私、問題になるのは予算だと思う。予算、つまり、いわゆる財政援助というような点に自治省あたりともよくお話し合いができておるか、スムーズにいくだけの予算は考えておられるか、仕事は引き受けた、実際は人員もおらぬ、これは行管の問題になるが、また人員がどんどんかかる。だからといって、むちゃくちゃにふやされたのじゃ困る。  そうすると、予算の問題ですね。地方財政がこれによって圧迫される。このために地方財政が極度に逼迫してくるというようなことになった場合に困る。そういう点は、きめこまかい処置は十分に考えておられるかどうか、ひとつその点を。
  128. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土利用計画法案の第四十条で、経費の補助の規定がございまして、「政令で定めるところにより、」、地方公共団体に対して「経費の一部を補助する。」という規定がございます。このために私どもは、この法案が制定されれば、政令を定めることによって補助の内容をきめることになるわけでございますが、昭和四十九年度につきましては、実は政府提案国土総合開発法を施行するための経費として組んでいるものを使用することによって、四十九年度は補えるというふうに見ておりますが、この四十九年度予算の中におきましては、地方公共団体に対して、約八億六千万程度の補助を事務経費としてすることにいたしております。定員その他につきましては、自治省と相談をいたしまして、地方財政計画上の増員措置として具体的な措置を講ずるということで検討しております。  それから、さらに一番大きなものは、この国土利用計画法に伴います土地の取得に対する資金手当てが、非常に大きな額になっていくと考えておるわけでございますが、四十九年度につきましては、調整計画上の措置といたしまして、先刻公共用地先行取得債がすでに運用されておりますが、これを利用するということで考えたいということで、総需要抑制の中で公共用地先行取得債を増大することが不適当であるという見解もあったわけでございますが、この国土利用計画法の施行に必要なものについては、やはり増加するということが必要であるということで、自治省とも話し合いをしております。  そうして地方公共団体といたしましては、この債券によりまして土地を取得した際に、償還のための利子の支払いが大きくなってまいりますので、この償還利子の一部を補助するという道も開いておるということでございますので、四十九年度はそういう形で実施したいと考えておりますが、この五十年度の予算につきましては、新しく設置される国土総合開発庁都市局におきまして、五十年度の予算要求ということを通じて、次の対策を講ずるように検討してまいりたいというのが実情でございます。
  129. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 土地取引に対して知事に十分強い権限を与えておられるのはいいですが、その実態を地方公共団体において十分に調査把握する、あるいは監視体制を固めるというようなことに対しまして、私は、この地方団体の事務能力の問題、自治体の事務能力が問題になってくる、こう思うんですよ。法四十条で地方財政は援助することになっておる。だけれども、これは一部ですからね、一部補助する、それは私も存じております。だから、一部補助でございますから、私、第一に地方の機構、能力が非常にたいへんだと思うんですよ。  そういう点を十分詳細に——私が聞いた範囲では、さしあたり全国で三百数十万件あるそうですよ。そういう膨大な事務をやるのに、それは財政援助をやるようになっておるのだ。一部補助するということに法は書いてあるようですが、そういう点において、万全の処置ができるように、まず予算の問題ですね、そういうことについて、もう一度それをはっきりお尋ねしたいと思います。  そうしまして、行管の問題もございますので、まだたくさんお聞きしたいけれども、二時から本会議ですから、またそのうちお尋ねしましょう。その点ちょっと御説明願いたい。
  130. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いま御指摘の点は、まさにそのとおりでございまして、土地取引は現在、一年間に約三百数十万件ございますし、正式の取引以外に予約その他を含めれば、もう少し多いというふうに見ております。しかしそれは、全国許可制にした場合に、そういうことになるわけでございますので、事務能力から見て、なかなかそれだけは困難でありますから、最初は一定規模以上の届け出ということで事務を始め、そうして特定の地域から許可制をしくということで法案ができております。   〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、どのくらいの案件を処理するかということについて、これから検討するわけでございまして、御指摘いただきました点について、関係都道府県と十分打ち合わせをして、適切な措置を講ずるように努力してまいりたいと思います。
  131. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 では、これで私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  132. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後委員会を再開いたします。    午後一時五十二分休憩      ————◇—————    午後三時五十五分開議
  133. 徳安實藏

    徳安委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出、第七十一回国会閣法第二三号、国土総合開発庁設置法案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  134. 大出俊

    ○大出委員 最初に、予算の分科会以来の幾つかの懸案がありますので、それだけ先に承っておきたいのでありますが、一つは、建設省の皆さんとの間のやりとりの中で、事が前に進みそうでありますから、御遠慮することにいたしました。  もう一つは、横浜、神奈川県内を流れております各種河川、特に都市河川等を中心に、かつておたくの高秀さんが中心でやっておられた時代に、三、四年続けて質問をしてきた経緯があるのでありますが、これは横浜市港北区といわれるところの、いま緑区等とつながっておりますが、横浜市という自治体の土地開発計画、これとのからみがございます。そこで、河川改修というのは、どう考え、どう進めていったらいいのかということで、質問をしてきた経緯があります。ここに、いまの港北ニュータウンなどといわれるものとの関連もございますので——これも大きな意味でいいますと、地域開発一つ中心的な形になります。  本来、二十五年法いわゆる国土総合開発法中身等からいたしまして、自治体というものは相談をされる対象にしかならない。住民は協力をしいられる対象にしかならない。金というものは強いものですから、その金を自治体のいかなる機関に入れてみても、あるいは第三者等の総合的機関に入れてみても、結果的にその金の動きというものは、自治体の意思や住民の意思を離れて動いてしまう。それが実は鹿島なんかに見られる結果でありまして、むつ小川原なんかがどういうことになるかということも、例のトロイカ方式等について、非常に心配のあるところであります。  横浜等でも金沢地先埋め立ての問題をめぐりまして、先般、六省庁会議等でいろいろ御議論をいただいたわけでありますが、これは西ドイツのマルク債、つまりマルクを借金してまいりまして、横浜市という自治体が、外国から金を借りてやっていこうという、全くもって自治体主導型の開発事業であります。住工混在、つまり町の中に一般住宅と各種工場が混在をしている形、これを何とか整理して、年間十万余の人たちがふえていく横浜でございますから、さてこれをさばくのには、埋め立てを考える以外に道がないというところに落ちついて、四十六年ごろから始めたわけであります。  これは自治体が協力させられる立場でもなければ、住民が協力をしいられる立場でもなくて、一つの自治体の意思として、住民との間でいろいろな話し合いが行なわれて、そっちの方向を向いていっているという形でありますが、港北ニュータウン構想などというのも、そういう考え方が基礎でありました。そこを流れる河川。そこに流入人口による新しい町ができる。そうすると、この近郊河川の改修その他を含めまして、どういうことにしたらいいかという大きな問題が生ずるわけであります。  そういうことで、実はここに港北の区長さんあたりからも、あるいは鶴見川水害予防組合会議というものがございまして——毎年のようにこの川が洪水によりはんらんをする。大なり小なり被害があるわけであります。私が実は小学校の学生のころから、この川ははんらんが相次いでおりまして、いまだに満足なことにならない。こういうわけでありますけれども、冒頭にひとつ、私、何べんかものを言っておりますが、長年の懸案を今日どう一体予算的に、あるいは計画的にお進めであるのかという点を、まず承っておきたいのでございます。
  135. 内海英男

    ○内海(英)政府委員 お答えします。  鶴見川は御承知のとおり、下流を直轄河川でやっておりまして、上流は中小河川の改修ということでございます。また、その支川の早渕川は、下流を直轄、上流は都市小河川というぐあいに、それぞれ事業を実施しておるわけであります。これらの事業は、都市河川として改修が急がれることは御指摘のとおりでございますが、昭和四十九年度におきましても、引き続き事業の促進をはかってまいりたい、こういうことで建設省も措置をいたしております。  具体的に申し上げますと、鶴見川につきましては、昭和四十九年度の事業費に関しましては、昭和四十九年度の河川事業費の全体額が、先生御承知のとおり、公共事業抑制策によりましてやや減額をいたしておりますが、その中で都市河川の重要性というところから、鶴見川につきましては、特に直轄河川の改修費では、前年同額の十四億三千万円を確保いたしておるわけであります。また、中小河川の受け持っておる分につきましては、前年度の三億九千万円に対しまして、四十九年度は五億一千三百万を計上いたして、大幅に増額をいたした経緯になっております。  また早渕川の都市河川の改修につきましては、前年度の五億七千万円に対しまして六億六千七百万円と、これもまた、その都市小河川の重要性というところにかんがみまして増額をいたして、改修を促進をいたしておるわけでございます。
  136. 大出俊

    ○大出委員 川というものは、上から改修ができないんですよ。水というのは、上から流れてきますから、どうしても下のほうから改修していかないとうまくない。  そこで、この早渕川なんという川も、鶴見川から分流しておりますところに峯の大橋という橋があるのですが、そこから上が県単河川、そこまでが直轄河川、だから、いままでそこに非常に問題があって、早渕川なんという川は、古い人に聞いてみますと、ここに手をつけた政治家は、必ず落選をするというジンクスがあるというので、だれも手をつけなかったという有名な川なんですね、これは。私、手をつけましたが、幸いにまだ落ちていませんが、これから先はわかりませんけれども、そういういわくつきの川なんです。  だけれども、これを計算しますと、鶴見川で申し上げますと、いまたいへん御出世になっておりますが、昔、高秀さんという方がおいでになって、建設省の本省で河川局になりまして、課長補佐で一生懸命やっておられる。したがって、資料もその当時、私のほうからも持ち込みましたし、おつくりもいただきました。たくさんございます。したがって、しゅんせつ計画その他を含めまして計画があるのであります。大体これは、意見が建設省その他と違ってはいないのでありますけれども、これからまだ大体二百億から金を投入しなければできない。鶴見川の末端には、たくさんの釣り船や何かもずっと並んでいるわけであります。ところが一夜明けると、どろがさっと入ってきまして、一ぺんで埋まっちゃって、釣り船を表に出せない。そんなことが年じゅう繰り返されているんですね。  それは、なぜかというと、ちびりちびりやるものだから、せっかくわずかやってみたって、一夜明ければ——思い切ってやれば、そんなことはないんですけれども、投入した資金がむだになる。そういう実は実例まであるのでありまして、京浜工事事務所の所長さんに、私が何べんかものを言ったことまで実はある。ほんとうに親、子、孫という形で、三代にわたって改修悲願を持って、一生懸命やっている人もいるんだけれども、なおかつ、どうにもならない。これから二百億要る。にもかかわらず、いまのお話のような予算のつけ方にしかなっていない。  したがって、これは多くここで申し上げても、しかたがないのですが、時間の関係もございまして、そこで皆さんのほうで、都市河川あるいは中小河川について、それがたいへんな人口増加を見ている地域、しかもそこに大きな開発構想が自治体の手によって進められている地域、こういうところは、皆さんの特段の力の入れ方というものがなければならぬという気がするわけでありまして、あとから、実は本体のほうに関連をいたしますから申しますけれども、いま聞いておりますと、内海さん何べん聞いても、どうも同じ答えしか返ってこない。お義理でこれだけ組んでいますということにしかならない。それは幾らか、いまのお話で、これこれ伸びておりますとおっしゃいますけれども、それは早渕川にしても、五億九千万を六億六千七百万にした。そうすると、七千七百万確かにふえたけれども、資材、人件費その他の高騰を計算しますと——これは建設省ですからおわかりのとおり、何もかも工事中止で中断でしょう。それは、昨年並みのことを考えれば、これでも足りないんですから。だから実際中身は、昨年並みのことができない。堤防流域の用地買収一つ満足にできない。  だから、早渕なんというのは、学校から子供が帰るころになると、奥さんはみんな道路に出て待っているわけですね、家の前がみんな川になってしまって子供は帰れないですから。そこで、しようがないから、住民サイドから金を集めて、ポンプでその水を早渕川に落とすということを、住民の諸君に金を支出してもらったりしてやっている。建設省の京浜工事事務所はさすがに見かねて、できるだけわがほうでお金を持ちましょうということで、一緒になってポンプアップするポンプ場をつくってやっておる。そうなったらポンプでどんどんくみ出して、時間は少したちますけれども、ようやくうちに帰れるようになる。そして、はんらんしたら子供を含めてどこに逃げる、どこに集まる、その訓練をする。  そういうことをやらせておいたんじゃ、これは直轄河川ですから、建設省というのは、あるのかないのかということになる。そういうことも一つ満足にやらぬで、やれ大型プロジェクトどっち向いたとか、国土総合開発庁設置法審議してくれとか、話のほかだ。机上プランでは、ものごとは前に進まない。ここらを実は冒頭に申し上げておきたいのでありまして、内海さんにそれ以上こまかく申し上げても、お手元にあるものを読み上げる以外に、当面道がないのでありましょうから申し上げませんが、ぜひこれは、ひとつ担当の部門で、そういう状況にあるので、もう少し都市の現状というものをお考えいただきまして——たいへんな人口のふえ方をしておる横浜市でございまして、三十八年に私が初めて当院に議席を得させていただく選挙のときに、横浜市民というものは百六十万でございました。それから十一年目になりますけれども、二百四十万をこえてしまっておる。この間、宮城県知事選挙のときに、宮城県に行きましたら、県民百八十万というんですね。広大な宮城県が県民百八十万で、横浜市が二百四十万というんですから、したがって、そういう過密都市の、特に都市河川というものについては、これは、ひとつ、ぜひお考えをいただきたい。  もう一つだけ、あわせて聞いておきますが、河川の汚染という問題をめぐっていろんなことがございますけれども、これは工場排水が流れ込む、家庭用排水が流れ込むということに違いない。だから汚染する、魚が住まなくなる、こういう理屈でございます。だから、流域下水道などというものを本気になって金をかけてつくる気になれば、一ぺんで汚染は片づいてしまう、川に関する限りは。海は別な考え方があります。つまり、川の両方に下水道をこしらえれば、工場排水も家庭用汚水も川に入らぬ理屈であります。川は長いわけですから金はかかります。かかりますが、流域下水道を完全に整備すれば、間違いなく魚の住む川になる。これだけは単純な論理であります。  東京だって善福寺川という川があります。私は、かつてあのそばに住んでおったことがありますが、あの川はたいへん汚染されて、どうにもならぬメタンのわく川になっておったわけでありますけれども、今日あそこには、きれいなニシキゴイが目の前で泳いでおる。全く澄み切った水になってしまった。なぜかといえば、あそこはみんな各関係行政機関その他が努力し合って、完全に流域下水道をつくったからだ。流域下水道をつくったから、あらゆる汚水、排水は川に入らない。水は上から流れてくるのですから、間違いなくきれいになってしまう。川モもどんどん出てきている。新しく魚の増繁殖も見られる、こういうわけであります。  したがって、やはり一つの机の上で大きな計画をお立てになるにあたって、その辺のことも考えて思い切って都市を生かす、町を生かすという意味での金を使うというそこらあたりがなければ、これは鹿島の開発にしてもそうでありますけれども、ここに農工両全、農業と工業とを両立させるといって農民を説得した、だから、開発地域のすぐ隣のところは、補助金をどんどん出して、ここでいろいろなフレーム栽培だなんだというのをやらして、そして、こっちにこんな大きな臨海工業地帯ができるけれども、皆さん、おたくの町は心配ございませんと、農工両全ですから、農業も将来に向かって栄えていくことになっていた、机上のプランはそうなっていた、今日、全く逆の現象であって、農業は完全に破壊をされている、これが現実です。  だから、そこらのところを考えて、一つのものを考えるについて、開発なら開発考えるについて、そこまでの手当てを考えての計画がそのとおり実行されていくという、そのためには金はこれこれ導入したからいいじゃなくて、それを一体計画的に使っていく主体はどこなのかという、金のひとり歩きは許さぬという、やはりそこまでのことがなければ、私は、利用も、あるいは開発も保全もから念仏になってしまう、こういう気がするのでありますが、都市河川の問題を含めまして、そこらについての御意見をいただいておきたいのであります。
  137. 内海英男

    ○内海(英)政府委員 大出先生御指摘のとおり、都市河川の問題につきましては、私も全く同感でございます。  したがいまして、流域下水道等の事業促進をいたしまして、河川の汚濁というものを、できるだけすみやかに改善していきたい、こういうようなことで本年度は、補助率もアップをいたしまして、事業の促進をはかろうという気がまえで臨んだのでありますけれども、先生も御承知のとおり、総需要抑制のあふりを一番建設省が食いまして、私どもは、事業をやることについては、御指摘のとおりやぶさかではないわけでありますけれども、予算面で押えられました関係上、御期待のとおりの進め方がはかどらないわけでございます。その点につきましては、今後とも御指摘のとおり、大いにがんばって改修を促進いたしたい、こう思っております。
  138. 大出俊

    ○大出委員 鶴見川、早渕川等につきましては、あとから別な場所で皆さま方にひとつお考えを承ったり、最近新しい予算をつけておられるわけでありますから、どこまでどういうふうに手を伸ばしていくかというようなことについて——何しろ私が、これを取り上げたもう七、八年前は、神奈川県の河港課に行って聞いてみても全く資料がない。図面を見ると、こっちは山になっているんですね。峯の大橋から先ずっと見ると山になっている。山の表示がしてある。ところが、実際には山じゃない。みんな住宅になっちゃっているんですけれども、その県の担当課にある図面というのは依然として昔の山。だから片側堤防、片っ方の川の堤防だけ改修すればいいことになっているんですね。皆さん、それをお認めになっている。ところが、こっちはみんなうちになっちゃっていて山じゃない。ところが、依然として古い図面でこっち側だけ堤防つくるので、予算をこっち側だけくれというふざけた話でございましたが、そこらも全部直って今日に至っているわけでありますけれども、別な角度で別な場所でお願いの筋はお願いの筋、また皆さんの御意見をいただく場所はいただく場所で詰めさせていただくつもりでおりますから、別なほうに移らせていただきたいのであります。  そこで、まずいまの問題、つまり国土利用計画法が、きょうでございますか、参議院の本会議を通ったのだと思いますが……(「参議院は通らなかった」と呼ぶ者あり)通らないそうでありますから、これは重大事件でありますが、うっかり国土総合開発庁法のほうも、これは手を入れられなくなりました。総理の例のNHKの発言だと思いますが、これが何とかなるまでは、実は質問を待たしていただきたいのでありますが、たいへんどうも昔の徳安さんはそうでないのですが、最近は非常に先を急いでおられますので、少しだけ質問をいたしまして、あとはこの次の機会に、ものごとの衆知を集めた決着をつけたときに、あわせて政府側の御意見を、直接この席で承りたいと思います。そういうことで、大きなところを何点か承っておきたいと思います。  一つは、一番の基礎は、現行国土総合開発法、二十五年のいわゆる国総法だと思うのであります。この国土総合開発法改正を二十七年六月やっておりましたり、いろいろいたしますが、昭和二十五年五月二十六日、法律第二百五号——総務長官に承りたいのでありますが、これが実はいつの場合も問題になります。そこで、この国土総合開発法二十五年法なるものは、どういう契機でどういう構想でつくられた法律かという、これは基本になりますので、そこのところをひとつ大ざっぱにお答えをいただきたいのであります。
  139. 下河辺淳

    下河辺政府委員 昭和二十五年の国土総合開発法につきましては、それまでの間、戦災復興ということに追われていたのが実情でございましたけれども、その後、災害が相次ぎまして、国土の保全というものを総合的にしなければならないということ、並びに日本の国民の生きていくための食糧をぜひ確保しなければならないということ及び石炭等の資源開発をして、将来の日本経済の復興に役立てなければならないというような政策的な課題がございまして、そのことを縦割りの行政ではなくて、地域ということに総合化して計画を立て、実施する必要があるのではないかという主張が出てまいりまして、国土総合開発法という形にまとまったというふうに考えております。
  140. 大出俊

    ○大出委員 まさにそのとおりなんでありますが、私、幾つかここに人の著書を持っているのですが、これは佐藤さんのお書きになった著書であります。「地域開発公害への対応」という書物であります。その問題等に触れて、ここにももう一つございまして、これは伊藤善市さんの著書でございまして、「過密過疎への挑戦」という、これは沖繩の離島問題、振興開発計画等に触れまして、そこまで実は述べている本であります。なお、二、三の本を当たってみておりますけれども、これは、いまに始まったわけではありませんが、これには、なかなか意味のあることがございます。  当時、総司令部のまだある時代でございまして、ちょうど人事院ができましたのは、昭和二十三年でありますが、あのころというのは、妙なことになっておりまして、いまの公務員法なんかでも、宮沢俊義さんが原案をつくるときには、初代人事院総裁は浅井清とするなんて原案に書いてあった、これは、ばかな話で。そういう法律は、日本の法律にはなじまないなんということを、一生懸命総司令部に陳情して、やっと消してもらったなんという時代でございます。つまり、占領軍の政策を離れて法律は存在しないといっていい時代なんですね。  そうすると、この二十五年法という法律は、その意味でほんとうに日本の国会が、いまお話しのような、あるいは戦災復興であるとか、あるいは食糧の確保であるとか石炭であるとか、あるいは地域開発であるとかいう、これは読んでみて、たいへん理にかなった法律には違いないが、ここまでのことを、そんなに日本の議員の皆さんも、あるいは各省庁の官僚の皆さんも深く考えて、先のことを法律にしていく余裕があった時代だろうかとふしぎな気がするんですよ。  なぜ、こういうことを言い出すかというと、長く申し上げている時間がないから、こういうことを言うのですが、いま国土総合開発法改正案が出されて、これを廃案にする、そして国土利用計画法案というものを、各党集ってこしらえて通そうとしているという段階ですね、いま通ってないのと同じですから。ところが、さて国土利用計画法というもの、これをつくるときに、ほんとうのことを私に言わせてもらえば、二十五年の国土総合開発法は、実はつぶしておいてほしかった、新しい角度でほんとうにものを考えろというのならば。まだ旧法が生きていて、いつも首を出している、新全総だ、旧全総だというのがひっかかっている、たくさんのプロジェクトが一ぱい並んでいるということじゃ困るので、そういう過去の基本となるべきものをなくして、そして今回、国土利用計画法をつくるにあたっては、現在進行しているものもある、それが必要だというならば、それも取り込んで、新しい法体系をこしらえて、将来に向かっては規制なら規制というものを、あるいは利用計画なら利用計画というものを、どういう構想、どういう基礎で考えるかという基本をきめて、見直すべきものは全部見直して、これは、こう見直す、これは、こう見直すと見直して、さて、地方自治体の長の権限というものを大幅に取り入れようというわけですから、あるいは遊休地をどういうふうに引き出すかということですから、あるいは地価をどう押えるか——だから、そういう意味での実は出発をすべきであった。  まとめた方々に承ってみたら、この方々の話では、実はそうしたかった、したかったが、いろいろなものを取り込むということになると、これは、えらいことになるので、そのえらいことがかなわぬからそこは逃げた。そうすると、これは、仏つくって魂入れずになるから、利用ということば一つをつかまえてみても、これは国総法の幽霊じゃないか、新全総だ何だというのは、みんなここに入っちゃうじゃないかという反論が出てくるというのが現実なんです。わが社会党の執行委員会も、かくてまとまらぬというわけです。  だから、二十五年のその法律というのは、そういう時代のものであったということで、これは総務長官にはっきりしていただきたいのだけれども、これを、抜本的に見直すんだという姿勢がまずなければ、いかにこの国土総合開発庁をまとめようと思っても、なかなかこれはまとめがたいことになる。  そこで、けさの新聞に、参議院のほうで長官がお答えになっているのがありますね。これは、ほんとうかうそかわかりませんが、読売新聞、ここにありますが、「新法には開発計画作成の部分は含まれていないが(国土利用という点で)新法は既存の開発関係法令をも規制する」、これは長官じゃない、内田さんですな。経済企画庁長官は、きょう来なかったんですな。そうすると、総務長官が答えているんじゃないからうまくないのですが、話の順序なんで、ここに書いてあるんですけれども、そんなこと言ったのですか。どなたかお答えになりませんか。
  141. 下河辺淳

    下河辺政府委員 経済企画庁長官からお答えしました趣旨は、国土利用計画法が制定されまして、国土利用計画が制定された暁には、いままでありました計画の中で土地利用に関する面は、拘束を受けてしかるべきであるという趣旨のことを申し上げたんだろうと思います。したがって、もし、その点で非常に大きな計画上の矛盾があれば、相互調整を必要としますし、あるいはいままでの計画の一部手直しということもあり得るんではないかという趣旨を述べたものと思います。
  142. 大出俊

    ○大出委員 下河辺さん、あなたが内田経済企画庁長官の答弁要旨をお書きになったんなら、それでいいわけなんです。そのとおり内田さんがお読みになっていれば、それで事は済む。これは法的にあるいは制度的にという、厳密な意味で、そういう受け取り方をすれば、そう答えて当然なんですね。  ただ問題は、法律がひとり歩きするようになりますと、その法律を運用する運用者の意思というものが、政党政治ですから、つまり閣議でものをきめるとすれば、その行政責任者の決定意思というものが中心になって法律は動いていく。だから、そこのところが、新全総なりあるいは改正国土総合開発法なるもの、これは廃案になったわけですが、そこに頭があるとすると、制度的に法的にこの答弁が生きても、実際にはそうならない。  これは、念のために申し上げておくのですが、こういう答弁をほんとうになさったんだとすれば、法的にも制度的にもそうなるんなら、実態としてもそうなるように、これからの法の運用をお考えいただくという前提が必要であろう、時代が変わりましたからね。総理も、名を捨てて実をとるようなことを、きのうおっしゃいましたが、議論を巻き起こしたことに意義があるとおっしゃったんだが、巻き起こした議論の結果が、いささか産業優先の国土開発になり過ぎていたんじゃないか。この批判は受けてしかるべき批判なんです。  そういう意味で、この規制を受けます既存の計画でもという、このことを制度的にも法的にも実態的にもひとつそっちのほうで進めていく。われわれは、それについてチェックする場所は、国会ということでありますので、そういうところをはっきりさせておいていただけないかという気がするのですが、いかがですか。
  143. 下河辺淳

    下河辺政府委員 おっしゃるとおりでございますが、ただいま私、説明しましたのは、国土利用計画法が制定されたときの法制的な解釈を伴う判断を申し上げたというふうにお答えしてよろしいと思います。そのために、そのことを実態とつなぐために、具体的にはどうするかということに相なるわけでございますが、現在すでに始められておるものについては、始められているという実態に即して具体的な措置を講じなければならないと思います。そして、いまは始まっていないけれども、従来の政府計画の中で予定されるものについては、やはりこれから新しい事態を踏まえた新計画のもとで、やる、やらないということについての具体的な判断をしたいというふうに思います。  そして、それをさらに法制的に裏づけるためには、実は昨年、政府としては土地対策に対しての法令と同時に、昭和二十五年の法を改正しておきたいと思ったことは事実でございますが、そのことは、今度達成できませんでしたので、むしろ新しい事態に対応した計画をつくった上で、それに即した法制を早急に検討したいという前提に立って、既存の計画についても判断を具体的にしたいと思います。
  144. 大出俊

    ○大出委員 一つの机上の計画がたいへんに重宝がられ、かつ尊重されて、次々に計画が打ち出された、数年そういう期間があるわけです。情報化社会という問題を一つとらえましても、新全総などに書いてありますが、そういう傾向の一つであった。情報産業という名がついて、これは日本ではない先進国の中で、三Kなどといわれる電気製品などよりも、情報産業というものに巨大な資本投入が行なわれて、新しい産業として栄えていくんじゃないか。電電公社の改定五カ年計画あるいはその前の七カ年計画なんかながめましても、そういう中身になっているわけでありまして、あるいは新幹線構想なんかながめましても、ちょいちょいそれが入ってくるわけであります。  つまり、この二十五年法に基づく地域開発の形が幾つかここにあります。第二条で、「この法律において「国土総合開発計画」とは、」ということでうたっておりまして、「前項の国土総合開発計画は、全国総合開発計画、都府県総合開発計画、地方総合開発計画及び特定地域総合開発計画とする。」、それは、そのおのおのは、こういうものだという定義がしてあるんですね。  そこで、たとえば地域開発といまおっしゃいましたが、それが方々で行なわれてきた。それは拠点である。それを総括的に考えて、将来の計画として政府の大型プロジェクトをここに考えられている。それは新全総なんかに出てくるわけですね。三つのタイプなんというようなことで、ここにございますが、第一のタイプ、第二のタイプ、第三のタイプというようなことで、大規模開発プロジェクトの構想として計画にあげられているわけですね。それらのものが今日まで進められてきた。だが、ここでいうほんとうの、つまり大型な国の大規模開発というところまでまだいっていないんですね。いくとすれば、二十五万都市などというのを国の主導型でつくっていく、そこから先にあわせて数種のネットワークというような形で、情報のネットワークあるいは幹線網というような形で、そういうところに散っていってもいいようにということで、片や情報産業というものが大きくクローズアップされる、こういうことですね。与野党内部でも幾つかの集団、グループができているなんというなことがございます。  だがしかし、これは、まだそこまでいっていない試験、実験段階だと言ってもいい。その段階で、実は将来のここまでいく過程を実験したようなことなんだけれども、たくさんの弊害が出ている。机上のプランどおり進まない。この辺のところを見直すとすれば、どう考えればいいのでしょうか。突っ込んだことを聞くわけじゃありませんが、必要ならあとから例をあげますけれども、つまり、今日までやってこられた下河辺さんあるいは粟屋さんたちのものの考え方として、新法ができたのだからといまおっしゃったのだけれども、新しい計画考えてもいいということをおっしゃるのだが、いままで大型なプロジェクトを想定して進めてきたわけだけれども——拠点的な地域プロジェクトはあります。いろいろ多種多様な形であります。これは、むつ小川原のトロイカ方式なんというのは、苦肉の策だろうし、あるいは鹿島の六・四方式なんというのもございまして、いろいろなものがございます。  だが、その過程でいろいろなものが出てきているのだが、そこらを、土地利用計画法という、つまり改正しようとしたものがたな上げ、あるいはなくなって新しいものができた、その趣旨に沿うとすれば、そこらのところは、一体どっちの方向に進むのかという、そこらのところを、なかなかこれはお答えいただきにくい質問になりましたが、それよりちょっと表現のしようがないので、とりあえずその点、お答えいただきたい。
  145. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国土利用計画法案のほうの問題ということと、大規模なプロジェクトを実施するときの、私どもがいままで多年経験してきましたいろいろな問題点というものとあわせて御説明申し上げたいと思いますが、実は机上で必要であるということから開発を進めるということが、いろいろな面で問題がございますし、それを進めた場合に、また次の問題が出てくるということも御指摘のとおりでありまして、これを解決するためにどうしたらよいかということが、当然私どもとしても大きな問題だと思います。  その一つは、やはり計画をつくります際に、地域方々との意見調整ということが、かなり基本的な課題であるというふうに思います。さらには開発事業を決定する際に、事前に環境条件の基礎調査というものが相当綿密に行なわれて、その上で決定されないと、あとに問題を残すという問題もあると思います。  それから、先ほど御指摘いただきましたように、工業開発を進める場合に、周辺地域とどのような形で調和ある地域を形成することができるかということについては、一そうわれわれの努力を必要としているのじゃないかというふうに思います。  国土利用計画法を各党でお話し合いをしてきめておられる際に、一番問題になりましたのは、上からきめるのか、下からきめるのかという点であったと思いますが、私どもは、やはり計画をきめる過程におきましては、私どもも協力し、市町村からも協力を得て、上下から協力する体制をじょうずにつくらないとやはりいい計画にならないという考え方を持っておりました。  それから、政府提案しました昨年の法律の中では、特定総合開発地域制度という制度を実は入れておりましたが、これは昭和二十五年の国土総合開発法の中で特定地域制度がございまして、昭和二十七年の改正は、おもにそこを、国会で大いに議論していただいたところでございますが、それは、やはり国主導型でありましたから、やはり知事主導型にしようという点と、それから指定時と計画決定時と二回に分けて、住民の意向を聞いたり、公聴会を開くという制度をつけ加え、基礎調査をするということで、二十七年の、当時の特定地域制度を一歩前進させようという趣旨で、法律国会で御審議いただくようにお願いしたつもりでございますけれども、今回のようなことになりましたので、引き続き私どもとしては勉強したいと思います。
  146. 大出俊

    ○大出委員 いまの最後の、今回のようなことになりましたから、こういう質問をしているわけなんですが、それはなぜかというと、ここにさっき木の名称をあげましたから申し上げますが、佐藤さん書いておられる中に、「鹿島開発地域住民と直接接触する地方自治体(町村)からの発意によるものでなく、事実上の経緯においてナショナルプロジェクトのミニ版として天下ってきたものであり、新産都市などと異なり、実施過程において鹿島町に見られるごとき強い住民抵抗に遭遇する。」、ここから始まるわけですね。そういう意味で、ほんとうに詰まってないわけですから。「また農工両全」、つまり農業、工業の両方がうまくいくのだということ。「農工両全が声高に慫慂され、均衡ある発展が強調されたにもかかわらず、農業への影響はきわめて破壊的であり、また地方自治体の財源増加による新たな都市づくりが求められながらも、その都市形成はきわめて跛行的にしか展開せず、無公害が強調されたにもかかわらず、完全操業に至らない時点で公害化と工場事故を生み出すなど、種々の意味でナショナルプロジェクトとして推進される大規模開発を先取りするごとき形での問題点を提出している。」、だから、新全総以来、このままで大規模開発に入っていくという筋道を通っているんですけれども、そこまでいく前の試験的な段階でこれだけの問題が出ている。  だからこそ、皆さんが二十五年の国土総合開発法改正案をお出しになったが、それが通らないということになっているわけですよ。もちろん、そこに田中総理の言う「日本列島改造論」が出てまいりましたが、あれを読んでみて、別に二十五年の総合開発法、新全総等とそう変わったことを書いているのじゃない、実際問題としては。新全総だの、二十五年の総合開発法をお読みになっていない方が国民の大多数だから、騒ぎが起こるだけであって、そこに角さんの癖か、あれをお書きになったどっかの官僚の方の癖か知らぬけれども、その癖が顔を出すからよけい——きのう総理が、どうもいろいろ答弁にあたっては考えなければならぬことはたくさんあったのだというようなことを言いましたが、そうなっているわけでありまして、別に変わっているわけじゃない。だから、そういう抵抗が出てきて、住民の抵抗みたいなものが野党間にも出てきて改正案がすなおに通らない。国土利用法案になってきているという事情がある。ならば、そこは、やはりすなおにその方向を向いていただけぬかということ。そうしないと、修正してまとめるということも、なかなかうまくいかない、こういう気がするのであります。  ここに数字がありますけれども、鹿島開発で大きな工場ができる。そのすぐそばの町、神栖町というのですか、ここなどは、これは農林省の調査なんですが、農林省所得統計など、三十八年からまず始まっているのですけれども、これをずっと見てきますと、農民の農地への意識調査というのがある。大体他の地域、県北であるとか県南であるとか県の西であるとか、いろいろ分けられていますが、波崎であるとか鹿島であるとか、こうなっているんですが、財産として土地を持ち続けるつもりの農民、何と神栖という町は四三・五%しかないですね。残りの五七%近い方々は、これは、うまい条件で売れれば売りたいという。これは完全な農業地域ですね。ここを集約的ビニール栽培だとか何とかいってみんな補助金を出していったんですね。それは、つまり農工両全ということをねらったからなんですね。机上プランにあるとおり進めたわけですね。ところが、そこに工場がどんどんできてしまったから、地価がどんどん上がってしまう。上がってしまうと、もう農業なんというものは完全にやる気がなくなってしまっているわけですよ。やむなくやっている。補助金をもらったほうが得だということでやっている。だが、まだまだ上がる傾向だから持っているが、条件のいいところでいい仕事を見つけてぽんと売りたい、ほとんどそういう傾向になってしまう。全くもって農工両全どころじゃない。  それでは、そこを出ていった人は帰農するか。しないですね。沖繩だって、万博でサトウキビの畑をぶん投げて出ていった人は帰農しない。そうすると、万博が終われば、三万人ばかりの帰農しない労働者集団ができてしまう。五月二日に私は、連休のさなかですが、三日ばかり沖繩へ行って、一回り回ってきた。きのうここで質問をしていたVFWなんかのすわり込んでいる方々のところを、全部回ってみてきました。これは、たいへんなことが起こるという気が、この沖繩についてはするんです。離島問題もそうだ。もう本土の観光業者がみんな買ってしまって、この計画でいう離島対策なんというものは、どうにも手のつけようがないということに片っぱしからなってしまった。そこらのことをほんとうに考えて、土地利用計画法案をつくるならつくる、それを入れものとしてどう運営するかという機関をつくる、そういう現実をとらえてつくるのでなければ、私は、その点は意味がないと思うのです。  したがって、時間をあまりかけたくないので、連日どうも皆さんおそくまでかかっておりますから、たまには医者の言うことを聞かなければいけませんので、休養が必要でございます。そういう意味で長くしゃべりたくないのですけれども、まず承りたいのは、国土総合開発庁設置法、この名称の変更というのは、国土総合開発法が通らぬかもしらぬと私、思ったときに、関係の皆さんがお見えになって、私は、国土総合開発法が通らなければ通らないで、土地を所管する省庁というのはないのだから、沖繩の土地問題を含めて土地問題を片づける新しい法律もつくらなければならない、沖繩の解放土地を含めまして、はめ込み測量形式の土地というのは、いまだに所有権の確定ができない。つまり登記ができない。これは私、経済企画庁長官おいでにならぬけれども、木村俊夫さんが経済企画庁長官のときに、関係省庁みんなおいでいただいて、三時間近くここで土地問題を詰めた。土地問題をこまかく詰めた。ついに経済企画庁長官も答弁のしょうがない。いまの法律、いまの日本の行政システムでは、沖繩のこの土地の、解放土地を含めて所有権の確定ができない、国土調査法では手の打ちようがない、新しい立法が要るとお答えになった。法務省と相談して、そういうふうに考えます、山中防衛庁長官もそう答えた。答えたんだが、いまだに何の気配もないんですね。  沖繩へ行って聞いてみましても、全く土地の所有権確定問題というのは、争いの連続のままであって、読谷近辺から始まって、天願、安慶名地域から始まって、至るところそうです。所有権の確定をしないんだから、これだけどんどん沖繩までいろんな人が入ってきて、こうなってきて、自分の土地の権利を使って何かやろうと思ったって、やりようがない。そうすると、その意味では、新しい官庁をつくって、土地を確実に所管する、そういう省庁をつくって、いまの問題などを含めて何とかしなければならぬという意味で、この総合開発法が通る、通らぬは別として、これを直せるものは直して、一つ官庁をつくる、こうしたいと思って、そのときに皆さんに聞かれて、どうすればいいのですかというから、まず国土庁にしようじゃないか、こう私が口を切りましたら、いつの間にか国土庁という名前はなかなかいいじゃないかと総理が言ったとか、はね返ってきまして、何となく皆さんがもう国土庁にきまってしまったようなことをおっしゃっているわけですね。そうなるかならぬかわかりませんけれども、私が言い出したのですから、反対はしませんけれどもね。そこで、まず名前は、だから国土設置法であろう。  そこで、二十五年法である国土総合開発法というのは、そのにおいのするものは実は私は全部切ってしまいたい。先ほどの御答弁が、新しい法律ができた、われわれは改正案を出したがどうもそうはいかなかった、ならば、できたものについて勉強して新しい計画考えてみなければならぬ、こういうお話なんだから、その筋に沿うということになるとすれば、なかなか私どもの背景も通しにくい部門がありますので、二十五年の国土総合開発法という法律の残影みたいなものは、一切この中から除きたいという気持ちなんです。  あわせて、さて国土利用計画法案という法律のほうには、二十五年法の国土総合開発法の幻影はないのかというと、なくはない、ある。利用なら利用ということば自体にある。ありますけれども、それは別な論議にするとして、二十五年法といわれるものの形はこの条文から抜きたい。一つ残らず全部抜いてしまいたい。ただ、一つだけ認めなければならないのは、この法律の六ページの二十二の中の「次に掲げる法律(これらに基づく命令を含む。)に基づく内閣総理大臣の権限に属する事項について内閣総理大臣を補佐すること。」、補佐権限という形でこれは所管がきまってきているわけですね。この中に、「イ国土総合開発法」から始まりまして、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、ヲ、ワ、カと、こうなってずっと並んでいる、この中に、国土総合開発法、つまり二十五年法が入ってくるという、これだけは認めよう。これは現行法ですから、この法律をなくすわけにまいらない。もし、これをこの中に認めないとすれば、これは別な官庁にそのまま残しておかなければならぬ、スタッフはそっちに置いておかなければならぬ、こういうことになりますから、これだけは認めるということにするとしても、この法案全体の中での二十五年法にかかわるものは、実は全部これはなくしてしまいたいという気がするのであります。  ずばり聞きますが、そこらについての御見解を聞きたいのであります。
  147. 下河辺淳

    下河辺政府委員 設置法の具体的な条文のお尋ねでありますので、私からお答えすることが適当かどうか、ちょっとちゅうちょいたす面がありますけれども、確かに設置法を二十五年法を優先として考えるということは、いろいろ御疑念のあるところだろうと思います。ただし、私どもとしましては、具体的にいろいろ大きな開発が、公共というだけではなくて、民間部門においても、現実問題として出てくるということの避けがたい実情もあるわけでありますから、それを野放しにしておくというわけにはまいらないということで、新しい国土庁あるいは国土総合開発庁ができました際には、そういったことがはっきり調整できるような体制はおつくりいただきたいというふうに思います。
  148. 大出俊

    ○大出委員 たいへんわかった御答弁をいただきましたが、そこで長官に承りたいのですが、この六ページの二十二に、国土総合開発法の所管は国土庁である、大臣の補佐権限という形でここが所管するということが明定されてあれば、いまおっしゃる、これもあとで問題になってまいりますが、このでき上がる庁の行政機能の中で調整はできるはずであります。何もそのほかに、この前のほうに一々それらしいものを並べておく必要はない。大臣、これは、きのう総理から答弁がありましたが、補佐権限とはいっても、実はこの庁の責任者がやるわけでありますから、そうなれば、事こまかに並べる必要はない、こういうふうに私は思っているのであります。なぜならば、国土利用計画法案なる法律のワク内で対応する行政機関をつくれというのが、実は私ども社会党の執行委員会の決定なんです。そうすると、国土利用計画法案のワク内、それだけを所管するものをつくれといったら、七十人もあれば足りる。私も十一年間行政機構をやっておりますから、多くたって七、八十人あれば足りる。そうなると、これは庁にも省にもならない。そうなれば経済企画庁の外局だっていい。一つの局をつくればいい、こういう結果になる。大臣ももちろんない。それが実は私どもの執行委員会の決定です。国土利用計画法案承認するにあたっての条件であります。  しかし、先ほど冒頭に申し上げましたように、出先の私どもとしては、これをまとめたいと思っております。そうすると、そういうワクを与えられている私どもの党の立場からすれば、いま私が申し上げましたように、せめて二十五年法の形というものをこの中から抜いていく。かといって、所管はいずれにしても、ほかに持っていくわけにまいりません。だから、国土庁なる新しい官署の所管にしておく。だから、二十二号にそれが入ってくること、これはやむを得ない。入っている限りは、所管でございますから、調整はできなくはない。ことさらにほかのほうにいろいろなことを書いておく必要はない、基本をいえばこういうふうに実は思っているわけであります。  この点、長官どういうふうにお考えになるのか。これは実は聞きにくい質問なんですよ。というのは、提案者である長官に、修正に応ずるという言い方を求めること自体、筋としては問題があるのです。あるのですが、私この質問者の最後でございまして、きょうは理事会での相談もございまして、野党間で先ほど来相談をいたしまして、各党にお持ち帰りをいただいて、党機関で御相談をいただくという手続をとりました。きょうからあす、月曜にかけて御相談をいただいて、お持ち寄りを賜わるわけであります。  そこで、いろいろ申し上げたこともございますから、これは何も的確に、ここのところをこういうふうにするという意味じゃなくてけっこうですから、気持ちをお聞かせいただきたいのであります。そういう意味で御答弁願いたい。
  149. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの大出委員の御意見は、よく理解しているつもりでございますが、多少間違っていましたらまた再答弁いたします。  この国土総合開発庁の名称は、こだわるつもりはもちろんございません。また同時に、この第三条及び第四条、特に第四条でございますが、やはりわれわれは、国土利用計画法が成立をいたしますので、私は、これは現在の日本にとりましては、土地地価の問題を扱うということに、きわめて明確な線が出されておりますので、この国土利用計画法でやることが、この国土総合開発庁の最も重要な任務というふうに考えて、それをやはり第四条におきましては、一、二、三、四と出ておりますが、そのトップに出していくというようなことは当然ではなかろうかというふうに考えます。同時にまた、六ページにございますイ、ロ、ハにつきましても、やはりそのような考え方が生かされてもいいというふうにも思います。  そうしたことでございますが、基本的に申し上げれば、今回の国土利用計画法が四党の共同提案の中に成立をして、そして現在、われわれが直面して最も困難を感じておる土地の問題に関する一つの大きな基本的な法の体系ができたというふうに考えまして、きわめてこれを尊重していきたいというふうに考えます。  同時に、また先ほど企画庁の局長からも御答弁がございましたけれども、やはり過疎過密問題というのがございます。しかし過疎過密問題を幾ら口で騒ぎましても、土地の問題が解決しない限りは、どうともならないという認識を私は持っておりますので——もちろん、この過疎過密問題を同時に解決することの困難性はよく理解しておりますし、またわかるつもりでございます。しかし同時に、この問題を捨ててしまうということもできないわけでございまして、そうしたファンクションを国土総合開発庁の中に入れていくということにつきましては、ぜひわれわれの主張も大出委員のところでおくみ取り願いたい、そのように考えております。
  150. 大出俊

    ○大出委員 思想が違い、考え方が違うんだという受け取り方が、実はこの法律を別にこしらえようとした中心だったんですよ。何としても、個人の著書には違いないが、「日本列島改造論」というものがある。その淵源をさかのぼっていけば、二十五年法もあるし、今回出てきた改正案もある。各省がこぞって日本列島改造思想に寄せた計画を、次から次に実はお出しになってきた経過ですが、思想としては、その流れを変えようというわけです。  そのことが、たいへんこれは質問しにくいのですが、衆議院を通っちゃっておりますので、当院としては、それを認めたことになっておるわけですから、そこへこの修正前の法案審議しようとしているわけでありますから、本体のほうが先に別なものになってしまって、向こうに行ってしまっているわけですね。そこで、この中身が別のものになってしまっているのに、今度は入れもののほうを、入れもの、器というものを入るようにつくらなければいかぬわけです。それで、まさにこれは跛行的でございまして、ちんばな質問になるので困っているわけでありますが、そういう趣旨からすれば、これは思い切って変えさせていただかないと、せっかく努力しても、なかなか最後に皆さんのところでぶつかってしまう、こう思うものですから、ずけずけ聞いているわけであります。多少のニュアンスの相違がありましても、ともかく幅広くひとつものを考えていこうという長官の言い方だと受け取りましょう。  そこで次に、一つ問題がございますのは、この二ページの第四条でありますけれども、一の「国土の総合開発に関する総合的かつ基本的な」というこの項については、さっき御説明がありました。またるるいままでお述べになっているのです。しかし、ここで幾つか承っておきたいのは、「地方における都市及び農山漁村の整備に関する総合的かつ基本的な政策を企画し、立案し、及び推進すること。」、これは三号ですね。それから二号が「人口及び産業が過度に集中している大都市の機能の改善に関する総合的かつ基本的な政策を企画し、立案し、及び推進すること。」、この二、三、ここらのところは、突き詰めていうと、何をお考えになっているのか、ちょっとお触れをいただきたいのです。
  151. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 いま先生のお尋ねの点、まず第二号の「人口及び産業が過度に集中している大都市の機能の改善」、こういう問題でございますが、ここで申しております大都市は、いわゆる三大都市圏の、特に集中をしておる都市部分について申しておるわけです。いわゆる東京圏、大阪圏、名古屋圏、こういうものを考えておるわけでございますが、現在、都市人口が昭和四十五年で五千五百万でございますけれども昭和六十年時点では八千五百万ということが想定をされておるわけでございます。都市人口五千五百万といいましても、そのほとんどが現在、大都市に人口が集中しておるわけでございますが、ほっておきますと、やはり全部三大都市に集中をする、今後の増分三千万有余が集中をする事態が考えられるわけでございます。  そういう事態を踏まえまして二号、三号を置いたわけでございますが、二号につきましては、特に大都市の機能と申しますのは、これは大都市の中の住民の生活機能の問題がございます。それから、大都市は大都市としてのふさわしいそれぞれの首都機能でございますとか業務都市機能というようなものがあるわけでございますが、そういう住民の生活機能なり大都市の持つ機能というものを、住民の生活機能については充実完備し、また大都市の有する機能につきましては純化をするということが必要ではないかと思うわけでございます。  そういう点で、二号を軸といたしまして大都市政策を推進をしてまいりたいわけでございますが、具体的な施策といたしましては、大都市生活環境施設の整備に関する基本的な計画を立てますとか、あるいはこれ以上大都市に人口が集中をしないように、工業制限の問題でございますとか、あるいは事務規制の問題等について検討をし、結論を得ましたならば、それを企画、立案をして政策として実現をしていきたいということでございます。  第三は、それと対応的に、こういうふうに大都市集中の流れを変えますためには、やはり地方の整備をあわせて進めていかなければならないわけでございます。  そこで、地方の都市の整備でございますが、これは従来から関係各省において、たとえば自治省におきましては、広域市町村圏、建設省におきましては、地方生活圏、そういう構想がございますが、そういう住民の行動圏域の拡大に対応するような都市の整備をあわせて進めていきたいということでございます。  都市の整備にあたりましては、単に工業を拠点あるいは核として都市の整備を進めるということではなくて、職場も設ける必要があり、また教育の場も設ける必要があり、そういう意味で魅力ある就業、就学の機会をつくることも必要でございますが、あわせて住民がそこで快適な生活を営めるように、広域的な見地に立って都市の整備をしていきたいということでございます。  それから、農山漁村の整備でございますが、これは一部、四十八年度から農林省において農村の集落の整備、モデル事業を進めておりますが、要するに農村は、単なる生産の場でなく、同時に生活の場でございますので、そこに住まれる方々が、あるいは都市に行って都市の生活の便益を享受される必要もございますけれども、あわせて日常生活につきましては、その集落において、その便益を享受するように、農山漁村を整備していこうということでございますので、二号、三号あわせまして、わが国民が、いかなるところに住みましても、快適な生活が行なわれるような環境、条件の整備を進めていこうということがねらいでございます。
  152. 大出俊

    ○大出委員 何べんかそういう話を、この法案審議で聞いたのですが、それをもっと具体的に言うとどうなりますか。質問が悪いかもしれませんが、御存じのように私は横浜におります。最大の人口急増都市であります。比率からいいますと日本一であります。横浜市はどこよりも多い。まさにそれは、学校を建てるにしろ、用地確保するにしろ、道路をつくるにしろ、たいへんなことであります。港湾をおまけにかかえております。背後地というものを考えなければ港湾は成り立ちません。そういう集中的過密都市、それが日ごとに進行する都市、山はくずされる、住宅はできる、選挙区の中で私が一、二カ月行かなかったところに、新しいたいへんな集中的住宅都市ができている。あっけにとられることがよくある。そういう場所であります。  ここで言うことは、いとも簡単で、大都市の機能を純化する。純化するというのは、一体何をやるのですか。大都市の住民の生活機能、これもよくする。これも、どうやればよくなるのですか。三大都市圏の集中する都市、東京、大阪、名古屋、こう言うのですが、人口がふえる。そんなことはだれもわかっている。自然増もあれば社会増もあります。むしろ横浜は、社会増傾向より自然増傾向に重点が移りつつあります。定着しているのです。そうだとすると、快適な生活とおっしゃるのだが、一体どうすればいいのか。つまり、それはこれから計画を立てるのでございますでは済まない。大都市基本計画の政策をするなんておっしゃるけれども、それでは済まない。あなた方が一つの官庁をつくって、総理府の下で仕事がなくてお困りの皆さんが、そう言ってしまってはぐあいが悪いですけれども、入ってやろうと意欲をお持ちになっておられて出した。そうだとすると、そうきれいごとを言われてみたって、何をどうするのか。  いろいろなことを、ぼくらはこの十一年間やり続けてきているのです。国はたいしたことをしてくれてはいないのです。金沢地先埋め立てといったって、一生懸命マルク債買ってきたりしているわけですから、そこらのところは、どういうふうにお考えなのかという点。快適にしたいから金沢地先埋め立てを考えて、住工混在、まさに三軒先には工場があって、また住宅が三軒続けばすぐそのうしろに工場がある。シアンを使っている捺染などという仕事は横浜の特産です。外貨をたいへんにかせいできた産業です。スカーフだ何だをつくっている。早渕川などという川の周辺は片っ端からそれです。とにかく十万人の就業人口がいる。その工場というのは、至るところで住宅の中に点在している。本来そういう工場があった、そこへどんどん住宅ができちゃった。そうすると、これは何とかしなければならない。横浜市の行政考えれば市の外へ持っていけない。そうならば埋め立てをつくって、そこに工場群を持ってくる。みんな住宅の間に入っている工場群を抜いてしまう。そして、その工場群が実は十六号国道の幹線沿いに幾つもある。それをみな抜いてしまう。公共用地を考える。考えるとすれば、市に金がなければ買い取れない。たくさんの問題がそこにある。  つまり、そういった、とにかく自治体が一生懸命ものを考えてやってきているんですけれども、鹿島の場合にしても、どこにしてもそうですけれども、国のほうのものの考え方というのは、机の上で考えられているだけで、自治体が自主的にやっていること、住民と相談しながらやっていることの推進力にもならなければ先導役にもならぬ。金銭的にはうるさいことを言うけれども、金は何も出さぬ。口だけは出すけれども、金は一つも出さぬというようなことで——省庁会議にあがってくればいろいろな御意見が出ますよ。あと地はどうするのだ、あと地はどうするといったって、そんなことはわかっている。市の財政などというのは、三割自治以下なんだからわかっている。市がみんな買い取りなさいといったって、そんなもの買えるはずはない。そうでしょう。そこらを一体どうするのだということをあわせて考えなければならぬわけですよ。きれいごと言ったってだめです。  そうすると、そこらのところは一体どうなんだというあなた方にプランがなければ、こんなものをここに書いたって三文の価値もない。これから計画を立てますといったって、自治体はどんどん進んでいる。将来の青写真もあるから住民が支持して市長ができている。そうでしょう。そうだとすると、こんなことをうたい文句にする必要はない。お互い皆さんのほうに具体的なものがないならそんな必要はない。一項目ぽんとここに書いておけばいい。目ざわりならこんなものはとってしまったらいい。具体的に何かございますか。どうすれば都市の機能というのは純化しますか。どうすれば都市住民の生活機能というのは快適になりますか。いかがでございますか。
  153. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 私からお答えするのが適当であるかちょっと迷いますが、私も東京都の生活をしているものであるし、また東京都もいま横浜で起こっているのとほとんど大同小異の状態の中にありまして、結局、大都市問題というものを解決するときには、いままでのようなやり方では、計画をつくりましてもなかなか実践できないわけであります。特に基本的に国土庁というようなものは、自治体のプログラムというものをやはり優先的に取り上げて、そしてまた、地域の人だとか経験者だとか、そうした人たちとのいわゆる話し合いをやっていく。時間がかかっても、猛烈にその話し合いをやっていくという中から解決の方途を見出す。しかし、その場合には、ある場合には主張を曲げて協力していただかなければならぬ場合もあるだろうし、また案そのものを改定していかなければならぬ場合もたくさんあると思います。あまり固定的な発想で、あるいはきめたことだからこうしますというようなやり方では、国土庁そのものが運営できないだろうと思うのです。むしろ国土庁というものは、そのような能率が見て悪いかもしれないが、ほんとうに地域住民だとか自治体だとかの言う話をよく消化して、それにプラス国の財政的な力であるとか技術の力であるとかいうものを、集中的にそれに回していくというようなやり方が、一つ都市の問題に対するスタートになるんじゃないか、私は単純にそう考えております。  そういうことを考えましても、各省で今日のように、非常に複雑な縦割り行政でどこもかしこも都市の問題については口を出す、しかも、それは決して主流ではないというような形の中に放置しておくよりも、いまこのような形で国土庁というものができて、一つ基本的な法律もきまって動くわけでありますから——そういう一つの新しい雰囲気の中で問題を一元的に取り扱っていくという機能がなければ、都市問題はまさに一歩も進まないのではないかというふうにも私は思うわけでございます。私は、いまの答弁が適当であるとは思いませんが、私の生活実感から申しまして、そのような心がまえと方針を貫くことで、初めていま当面している問題の解決の土台がまずできるのじゃないかというふうに考えるものでございます。
  154. 大出俊

    ○大出委員 長官が建設省に長くおいでになったわけでもなければ、あるいは建設省都市局のプランをつくっておる大塩さん、いま大塩さんかだれか知らぬけれども、そういうことに深くタッチされておるわけでもない。ないから、いまおっしゃるような話が私にもぴんと来るのです。つまり、その中でものをやってきた人が言い出すと、たいへんきれいごとになってしまう。これは長官と私だから、同じように政治をやろうというのでいるからわかるので、全くおっしゃるとおりなんです。  横浜で一万人集会というのを開く。各区別に何名ときめて、登録の住民表をばっと無差別に抽出するわけですね。どこのだれべえかわからない。それを全部記載していって手紙を出して、一万人集会をやるのだから来てくれ。それで来るにあたって、人を派遣していろいろ御意見を聞いて整理していかなければなりません。そういうことをやって、各区別に場所をきめてお集まりをいただいて、市が、金沢という区はこういうふうに計画考えております、これからこういう準備をして、何年後にそういうことに着手をしたい、港北という区は、ニュータウンをつくりまして、ここにどのくらいの人を収容します、流域河川に鶴見川という県最大の河川があります、これは直轄河川だから、横浜市ではできません、そうすると、ここにべらぼうに大きな港北ニュータウンをつくれば、この流量はこれこれにふえます、国にそれに対応する計画を出させたいと思っているのだがというところまで話をして、意見を聞く。  金沢地先に埋め立て地をつくって、住工混在をなくしていくのだ、埋め立ては、単に埋め立てではだめなので、工場地域をつくったら、こっちに緑地帯をつくる、さらにこっちに、その工場地帯に見合う住宅街をつくる、商店街はこうできるという計画を出して、人工の島をつくって、海はなくなるのだから、ここを内海にします、河川、港湾の汚染があります、この汚染は横浜市だけではどうにもならない、その先は横須賀なんだから、だから両横の市に働きかけて、金をお互いに出し合って、つまり東京湾のこの部分の汚染をどうするか、そのいう提案をすると、たくさん意見が出てくるでしょう。  最近の住んでいる方々というのは、過密地域にいますから、みんな不満を持っています。頭にプランもあるのですから、次から次からひっきりなしに出てくる。そんなこと言ったって、その土はどこから持ってくるのだ、金沢の地先の釜利谷の向こうから持ってくるのだ、そんなことを言えば、わしらのほうがそっちに住んでいる、自然破壊になってしまえば困るではないかという話が出てる。そんなこと言ったって、住工混在でどうにもならぬこの状態、公害をやたらまき散らしている状態を整理しなければ困るのだ、ほかに方法がありますかという。地域が違うからいろんな意見が出てくるでしょう、自分の住んでいるところが中心になるのだから。  それを時間をかけて集約していって、よろしゅうございますかということになって、なるほどおれのところは、かってなことを言ってみたけれども、この海の沿線に古い住民が全部住みついている、山が開発されて、新しい地面がこっちに来る、こっちに来るから、ここで使った汚水は全部海に流れる、そうすると、古い住民はみんな汚水をまともにかぶっている、新しい住民にすれば、自然破壊は困ると言ってみても、古い住民にすれば、あとから入ってきさまたち何だという、あと始末だけは市がしてくれなければ困るじゃないか、あと始末するには、どうしたらできるのだという議論がずっと積み重なっていって、実は一つのものにまとまってくるという形なんですね。  それに対して、たとえばさっき申し上げた鶴見川の改修なら改修で、過密でどうにもならぬ、交通がふくそうしていてにっちもさっちもいかぬ、だから、国の責任で横浜市に人を入れてくれ、入れてくれなければいいですよ、それは国にはできないのだから、人は居住の権利があるのだからと入ってくる。しからば、それに対して、神奈川県の最大の河川鶴見川の改修というのは、先ほどの十二億だ、ちょうちんだと言ってないで、自治体の計画に合わせて国も考えようじゃないか。そうなっていかなければ、それが皆さんの調整というので練られなければ、都市の純化もできなければ、都市生活の快適なんてことはできやしません。  ところが、とかく革新市長ということになると、なかなかめんどくさい理屈が出てくる。しかし革新市長であれ何であれ、行政長官には変わりはないのです。そうでしょう。そういう選挙システムになっているのだから、市長というのは行政長官に間違いない。しかも、その地域の住民が支持をした、その人のプランに賛成をした。そうだとすれば、そういうことでなしに、国は都市河川をどういうふうに考えて、それこそ全体の都市機能の純化を、あるいは都市住民生活を快適なものにするか。こういかなければ政治信頼というのは出てこない。そこらがみんなぶつかり合って、そのうしろのほうに各省のなわ張り争いが渦巻いていては、私は、この法律審議にあたって、よけいなことかもしれぬけれども、まだこれから一生懸命——中には私のところの党みたいに大臣が要らぬというのもあれば、大臣を置くこの七条を切ってしまえというのもある。まっ向からこれ全体に反対だという党もある。それで構成している戦後議会制民主主義なる姿。  そうだとすると、まだこの議論がろくに行なわれていないやさきに、大蔵省に二人の有力な人物がいる。これは何年組の東大だ。どっちが角さんの時代に育てたんだ。どっちが福田の赳さんのときにやったんだ。だから、どっちがやってもどうだからということで、こっちの顔を立てて、こっちを次官にすると、こっちは国土総合開発庁の次官だなんということを、おもしろがって新聞が書いたのでは済まぬですよ。長官、そうでしょう。  そこに持ってきて、これは、あとから言いますが、この局の設置は計画局調整局と分けることはない。計画調整局でいいのではないか。土地問題がこれだけクローズアップされているなら、土地局でいいじゃないか。前に和田君からも質問が出ていたけれども、次長なんというものを、調整局と地方振興局に置く必要はない、土地・水資源局なんてクローズアップされているところに次長を置かないで。調整局は計画局と一緒で計画調整局でいい。おかしなことを、皆さんのほうでいろんなことを、私がそう言えばおっしゃるので、気になっていろいろ聞いてみると、この六つのポストのうちの四つは建設省がとるなんという、ほんとうに冗談じゃないですよ。  総務長官、いつか私は、迎賓館のことで言いましたが、これは、でき上がっちゃったからしようがないが、今後の問題については、十分そこはお考えになるという長官のそのときの答弁があった。そうでしょう。こんなところまで来て、なわ張り争いで大騒ぎをされてはかなわぬ。それで、調整局はどこから来るんだ。計画局はどこから来るんだ。計画局経済企画庁の分野だとか、調整局は建設省から出したいとか、首都圏整備委員会事務局なんて、小林忠雄さんというと次官候補だから、あまりこういうことを言ってはいかぬかもしれぬけれども、りっぱな方だから次官だっていいですよ、賛成します。大蔵省でおかしなことを言っているよりはよほどいい。長年文書課長から宅地部長からやってきたんだから。しかし、すっきりしたことにしてほしい、だれかがどうせやるんだけれども。いまのうちから、官房長から始まって、計画局長、調整局長、土地・水資源局長、大都市圏整備局長、地方振興局長の六つのポストのうちの四つは建設省によこせ、経済企画庁はこれは放しませんぞなんて、そういうふざけた話をやられておって、まともにものを考えられぬですよ、長官。そこら一体どうなっているのですか。
  155. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 各省のなわ張り争いということは、私は、非常に苦々しいと思うのですが、しかし、この国土総合開発庁が今度できる意味は、私は、非常に重要だと思います。したがって、各省のなわ張りという意味でなしに、今日まで蓄積された技術や技能を、この国土総合開発庁の運営に生かしていくという意味で、自分は能力があるんだからやりたい、やらせてくれというような気持ちの強い面を、最近は認めておるのです。  私は、単純になわ張り争いを、こういうところでやられることは許せないと思いますが、しかし一方からいうと、戦後の長い間の、高度に蓄積された技術とか技能とか、また対人関係とかいうものを、全く無視してしまうのももったいないことになるんだし、まず、さしあたりは、そういうような技能をフルに生かせるような仕組みを考えていくということで、むしろ国土庁のこれからの大事な仕事に対してのスタートが切れれば、おいおいまた、その中から基本的に直すものは直していくという方向考えておるわけでございまして、新聞等に出ているようなことは、われわれもこうやって委員会に出て、また委員各位も時間をかけて、長いこと議論をしながらできたものに、何もしないやつがただ入ってくるなんというものじゃ、これはちょっと、許せぬじゃないかということを率直に考えるし、そういうことも閣内でも話しておるわけでございまして、そんなようなことでございますが、単なるなわ張り争いで、この国土庁というものが荒らされているということは断じて許さないし、またないと思いますので、またそういう事実がございましたら御指摘をいただきたい。
  156. 大出俊

    ○大出委員 この数字は、前に出されたときの数字ですからあれですけれども、こっちに新しい数字がたしかあったはずですが、この各省から移ってくる人の数がございます。総理府本部が十名、近畿圏整備本部は三十八名、中部圏開発整備本部が二十六名、首都圏整備委員会が五十二(うち二人)と書いてあります。経済企画庁八十七名、大蔵省六名、農林省二十名、通産省六名、運輸省五名、郵政省二名、建設省五十八名、自治省が二十六名、計三百三十六名(うち五人は四十九年度新規増員である)、こうですね。これは間違いないですな。
  157. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 そのとおりでございます。
  158. 大出俊

    ○大出委員 そうだとすると、これは長官、大蔵省のだれかがどうのこうの言ったって、大蔵省は六人しか来やしない。いま長官がいみじくも言ったけれども、これは一生懸命、まさに縁の下の力持ちというんですよ、総理府の地下でおやりになっているのだから、推進本部というものは。一生懸命苦労をして優秀な方を集めて、何をやるのですかといったって通らない。ひまがあるときに一生懸命勉強しておけぐらいで皆さんやってこられた。そうでしょう。ようやくここまで来たというときに、新聞に出る話がおかしいのだ。  だから、やはり私は、農林省の側から、どうも農林省はあまりいいところへ行かないんだなという話が耳に入ったりする。これを見ると、調整局なんて、これは局長なんということになるとなかなかめんどうなんですよ、聞いてみたら。調整局をつくるかつくらぬかと私が言っているさなかに、調整局の局長からまず調整が必要だというんです。調整局の調整もできない、局長の調整もできないのが、調整局をつくるといったって調子よくないです。  ですから、そういうことでなしに、これは長官おいでになるから申し上げるんですけれども、やはりその辺は、この分野もあるわけでありまして、そして長官がおっしゃったとおりに、いろいろ苦労してやってこられている関係方々もおいでになるわけで、そこらのところを十分考えた、まず大騒ぎにならない調整が総務長官のところで必要ではないかという気がするわけであります。念のために、もう一ぺんひとつ御答弁をいただきたいのです。
  159. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 大出委員の御主張は、私も全く同感でございます。ただ新設庁の人事について、私がどれほどの権限があるかわかりませんし、ただ、いま法案提案者としての責任を引き受けてやっておるわけでございますから、願わくばわれわれといたしましても、国土庁の重要性にかんがみて、ここにございます三百三十六名の出向していただく方々は、それぞれのエキスパートであって、ほんとうにこれらの方々が結束をして、新しい日本の国づくりと申しますか、こうした問題に真剣に取り組んでくれる気魄を持ってきていただきたいということを強く念願しております。
  160. 大出俊

    ○大出委員 時間の関係がございまして、あまりやっていると切りがありませんのですが、ただ一通りは承っておきたいと思って始めてみたのですが、いまの二ページの四条の二、三のところでひっかかってしまいまして、どうも粟屋さんがあまりきれいに答弁なさるものだから、ついつり込まれちゃって恐縮なんですけれども、もう一点だけ露って、あとはひとつ、ものごとをまとめたあとにさしていただこうかと思うわけであります。  これは、たとえば四条の六号の地価対策を取り上げましても、宅地供給計画だとか土地税制だとか一ぱいあるわけですね。あるいは七号の水の長期的な供給に関する項を取り上げても、海水の淡水化から、あるいは水の再生利用から、あるいは農林等がやろうとしているものだとか、これらを総合的に調整するとかしないとかいう問題だとか、これは、たくさんございます。八号の「総合的な交通施設の体系の整備方針に関し、基本的な政策を企画し、立案し、及び推進し、並びに関係行政機関の事務調整すること。」、こうある。この八号なんかも、実は、ここでこう並べられていても、せっかく御提案なさるなら、やはり聞いておきたいのですが、この一つくらいで切りがなくなるからやめますけれども、非常にむずかしいことなんですよ。「総合的な交通施設の体系の整備方針」、これは人の移動を見ますと、運輸省がこの中に五名入っている、こっちへ来る人が。それが、この所管なんです。そうすると、これは、どういうことを考えておられるのか。さっきと同じ論法で申し上げれば、「総合的な交通施設の体系の整備方針」、それを御検討くださる、調整するというんですね、これは一体どうなんですか。
  161. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 人と物との移動に関連いたしまして、交通機関といたしましては鉄道あり、自動車あり、船あり、航空機があるわけでございます。それらに関連する施設といたしましては、鉄道、道路、空港あるいは港湾、こういうものがあるわけでございますが、ここで考えておりますのは、昭和六十年なら六十年を見通しまして、輸送需要というものを想定いたすわけでございます。その輸送需要を達成いたしますために、どういうように交通機関を運営していったらいいか、配置していったらいいか、また、それに関連をいたしまして、道路でございますとか、鉄道でございますとか、空港、港湾の施設をどういうふうに整備していったらいいかという問題に関する基本方針を立てるわけでございます。特に道路と鉄道との関係は、競合関係がかなりあるわけでございますので、将来の大量輸送機関としては、どちらが適切であるか等を含めまして、総合的に調整をした将来計画を立てる、それに基づいて所管をいたします建設省なり運輸省が仕事を実施していく、こういう考えを持っておるわけでございます。
  162. 大出俊

    ○大出委員 もうちょっと聞きたいのですが、国鉄の運賃値上げのときに国鉄再建法が出ましたね。あなたは、いま六十年とおっしゃったのですが、再建法との関係はどうですか。
  163. 下河辺淳

    下河辺政府委員 国鉄運賃法の御審議の最中にありましたことを、率直に申し上げますが、国鉄運賃の前提となります総合交通体系なりあるいは鉄道、その中の国鉄に課せられる需要がどのくらいであるかということが、当然再建計画にとって重要でありますし、運賃決定に必要でありますけれども、それを運輸省や国鉄当局だけできめるということが、はたして適当であるかという御審議がございまして、経済企画庁におきまして、総合的な判断をして、その需要あるいは方向について、明確な答弁を求めるといういきさつがございましたが、私どもとしては、今回は、国土総合開発庁におきまして、総合交通体系の整備方針を確定しておきますことによって、それらのもろもろの計画の前提となるべきものを、基準としてはかり得るのではないかという見方をしております。
  164. 大出俊

    ○大出委員 そこで、承っておきたいのですが、たくさんの問題、これを一つ一つとことんまで詰めるわけにいかない、時間的制約がありますから。冒頭に申し上げたように、皆さんお疲れですから、あまり長くかけたくないのです。しかし、幾つか聞いておきませんと、お考え方がわかりませんから聞くのですが、いまの下河辺さんの御答弁でいきますと、再建計画を国鉄がやるだけじゃぐあいが悪い、経済企画庁が総合的、全体的にこれをどういうふうに調整するかという問題でいろいろ検討した。不思議なことに、総合交通体系というものをおつくりになったのが一体いつかといえば、いろいろなのがありましたが、総合交通閣僚会議というのをやったのは、四十六年十二月十七日のはずなんです。四十六年十二月十七日に総合交通閣僚会議を開いて、総合交通体系が決定をされた。最近、何年間の中じゃこれだけです。  この総合交通体系から見ると、自動車をはじめ多くの交通機関が発達をしてきて、国鉄が斜陽になった。原因をいろいろ探求した。そして輸送機関としての国鉄の役割りというのを一体どう考えるか。これは縮小すべきではないのか。いまのお話のように、確かに国鉄も私鉄も空の飛行機も、あるいはバスもトラックも船舶もあるというわけです。そこで三千四百キロの閑散赤字路線を切りましょうというわけです。これが中心なんです。そこで、このときに新幹線計画が立てられて、四つの新幹線がきめられた。これは、間違いない。赤字路線を三千四百キロ切ろうという。遠隔の地域方々は、非常に困る人が出てくるわけですね。これが四十六年。  ところが、再建計画を出された昨年の国会では、百八十度これが変わっちゃったんですね。何で変わったか、「列島改造論」です。まさに列島改造を地でいっている。だから聞きたい。こういうことは、はっきりしておかないと困る。百八十度変わってどうなったかというと、赤字路線というものは全面的に取りやめるというわけです。三千四百キロの赤字路線を切って縮小をして、縮小再生産をしていこうというわけです、四十六年の総合交通体系をつくるための閣僚会議は。そうでしょう。四十六年十二月十七日です。この三千四百キロの赤字路線の廃止はやめた、全面復活。復活だけじゃない。山陽、東北、上越、成田、四十六年に四つきまっておった、これをさらにふやして、北海道、東北、北陸、九州、青森−盛岡間だとか博多−鹿児島間、博多−長崎間、これは五本追加した。そうでしょう。まさに百八十度の転換です。そして再建計画全体から見れば、四十八年、五十一年、五十四年に一五%ずつ運賃値上げをする。最後の五十七年には一〇%の運賃値上げだ。四回運賃値上げをする。これは初めからおっかぶせている。値上げをするのだけれども、三千五百キロばかりの新幹線計画ができて、そこに皆さんお乗りになれて便利になるのだから、料金が上がることについては、これは、まあある意味の免罪符ですよ。お許し願いたいというのが政府の言い分です。  四十六年と四十八年でこれだけ違いますね。総合調整役割りを果たす経済企画庁、今度はこっちへ入ってきて国土総合開発庁、名称は国土庁になるかもしれませんが、変わる。ここで調整する、こう書いてある。そうなると、ずいぶんべらぼうな、いいかげんな調整だ。いま一体、国鉄の赤字というものをどういうふうにお考えになりますか。赤字原因並びに単年度赤字、累積赤字を含めてどのくらいになっておって、そして、これを一体どういうふうにすれば、ここでいっている「総合的な交通施設の体系の整備方針」になるのですか。  さっきもあなたは、大都市の機能、これの純化、こう言う。大都市住民の生活の快適なあり方とおっしゃる。それじゃ困るから、私は皆さんに聞いたんだが、同じ意味でこの国鉄の問題をどうお考えになりますか。
  165. 下河辺淳

    下河辺政府委員 いま御指摘いただきましたように、四十六年当時と今日と総合交通体系に対する考え方に非常に大きな変化があるのじゃないかという御指摘をいただきましたが、それはそのとおりだと私は思います。  その大きく変化しました理由でございますけれども、いま御指摘いただいたような点が多々ありますけれども、さらに私どもといたしましては、やはり日本の国土で自動車の増加、モータリゼーションの増加に非常に大きな限界があるということ、つまり国土が狭くて道路というものの限界があるというだけではなくて、石油資源とも関連して非常に大きな隘路があるということを、究極的には総合交通体系の中で非常に大きく取り上げなければならない事態というものの認識が一つあると思います。  それからもう一つは、やはり過密大都市への集中というものについて、四十六年あるいは四十五年当時よりも、より限界性についてのきびしい考え方というものがあるのではないかというふうに思うわけでありまして、大都市集中を是とするという考え方あるいはモータリゼーションでよろしいという考え方というものを、組み入れることができないというようなことから、再び国鉄あるいは鉄道体系というものを見直さなければならない、あるいは大量輸送体系というものを見直さなくちゃいけないということになったという変化を踏まえて、大きく変化してきたというふうに理解をいたします。
  166. 大出俊

    ○大出委員 下河辺さん、そんな簡単なことじゃないですよ。あなたは何をお読みになったかしらぬけれども、そうじゃなくて、私も、たいへん詳しく調べて知り過ぎている。何で四十六年の総合交通体系なるものが、四十八年に百八十度変わっちゃったか。三千四百キロの不採算路線、閑散路線を切るという、この一番中心になっているのは、このときの論理は、国鉄が何で赤字になったかという問題とからんでいる。国鉄を取り巻く構造的な変化である。乗客が航空機にとられる。東名高速その他どんどんできますから、トラック輸送の面で貨物はとられる。そういうおのおの交通機関の競合というものが、非常に大きなウエートを占めている。片方はモータリゼーションですよ。このときは、声を大にして強調しているんですよ。そして借金経営である。しかも独立採算である。だから、このときの運賃値上げというのは、旅客二三・二%、貨物二四・一%、珍しくこうやって貨物を上げている。  さてしからば、この再建案を昨年国会提案されたとき、調べてみると、赤字というのが単年度で三千六百四十四億円であった。累積赤字が一兆一千六百四十億円であった。そして借金が三兆七千六百七十六億円であった。実はこういう経営状態、これを前提にして、さてどう再建するか。これは四十六年とまるっきり違った再建方式なんですね。値上げ政策なんです。四回の値上げをするのです。五十七年を一〇%、あと三回は一五%ずつ値上げをするというふうにここできめた。  四十六年の赤字の原因は、交通網の競合だったというわけです。だから、不採算路線を廃止する。バスも走るのだからというわけです。ところが何と、今度の四十八年の場合はそうじゃない。全国高速道路網をつくるというわけだ。たいへんなものをつくるという。全国の新幹線網をつくる。半日、一日交通圏というぐあいにつくる。明らかな競合ですよ、高速道路網と高速鉄道網というものは。競合すればするだけ不採算になるに違いない。それを四回の値上げをやろうというわけです。  ところで一体、何がその底にあるかといえば、明らかに列島改造ですよ。これはたいへんな金がかかる。地下鉄を繰り返しやっていると一緒で、これは、やればやるほどたいへんな金がかかる。競合はする。論理からいって国鉄の赤字解消にならぬ。だが、これは全国の土建屋さん、もうかってしょうがないだろうと思う。それこそ土建主導型計画の最たるものですね。  もう一つは、土地がからんでいる。郡山の市長選挙だって、秀瀬さんが立候補しているところへ高田さんが出てきた。現職の大臣の方々が、片方はこっちを応援する、片方はあっちを応援する。わずか十日間の選挙に現職大臣が片方に二回、片方に二回。この大臣は、こっちとあっちを応援しているんじゃないですよ。こっちは専門、こっちも専門。ただいまから何々大臣が参りましたということで、そのあとから何々大臣が来る。よくよく聞いてみたら、郡山というのは東北新幹線の入り口なんです。そこで駅をどこにつくるかによって、鉄道の線路はつながっているのですから、ほかのほうに行きやしないのだから——そうすると、こっちが当選すると駅がこうなる、こっちが当選するとこうなる。夜の懇談会に行って聞いてみると、そういう話が出てくるんですね。これは町のうわさです。そうすると、鉄道だけは途中からこっちへ行くわけにいかないですから、つながっているのですから、そっちの周辺土地というのは、たいへんなことになる。  そうすると、これは下河辺さん、あなたが考えるようなものじゃない。だから、一つ間違うと、これはとんでもないことができ上がると私は言う。だから、この役所の持つ役割り、使命というものについて、よっぽどこれははっきりしておかぬと、幻影じゃない、実際に改正して通そうとお考えになった二十五年法というものの改正案、このものの考え方、思想というやつが、国土利用計画法案にしたところで、生きてくるという意見も出てくるわけです。だから、そこのところは、抜本的に思想の変革を行なう必要があるのではないのか。  国鉄の問題だって、私も調べてみましたが、確かに国鉄の赤字と支払い利子というのは、長年ずっと通算するととんとんなんですよ。おもしろい。おもしろいということはありませんが、ふしぎな現象。国鉄というのは、私のここにある帳面を見ますと、三十九年の純損失が赤字三百億、ところが支払い利子が三百六十九億。赤字まり支払い利子のほうが多いのです。四十年は赤字が千二百二十九億、支払い利子が六百四十五億。確かにこのときは、赤字のほうが支払い利子よりも多い。四十一年は赤字が六百一億、支払い利子が八百三十五億。支払い利子のほうがはるかに多い。逆になっている。それで国鉄が借金しているのが三兆以上。四十八年提案では三兆一千六百四十億ですか、になっているんですね。それから四十二年は赤字が九百四十一億、支払い利子が千十二億円、支払い利子のほうがずっと多いんですよ。四十四年だって国鉄の赤字は千三百十五億、支払い利子は千三百八十五億。だから、利息を支払わなくすれば赤字は解消しちゃう。事は簡単だ。  にもかかわらず、四十六年の総合交通体系なるものと四十八年の再建法との間にこれだけ大きな、群八十度の転換が行なわれるということは、普通考えられやせぬ。そこに、つまりこの列島改造思想というものが持つ、二十五年の総司令部のあるときにできた国土総合開発法との関係がそこにある。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 だから問題がある。しかし、その路線というのは、今回、国土利用計画法案に変わっていったのだ、だとすれば、長官も先ほど答弁なさいましたが、その方向へ進んでいかなければならぬというのですから、あなたもその方向計画をお立てになる、勉強するとおっしゃるのだから、ならば、この入れものについても、二十五年のその国土総合開発法にかかわる各種の表現、各種の書き方は抜本的に変えていただいて、そして国土利用計画法案の文字づらではなくて、それを意図して各党がまとめたものを、やはり机上のプランに引き直していただき、実際の問題を優先させて、先ほど長官が言ったような開発対象の地域の住民その他というもの、あるいは都市機能の純化とおっしゃるなら、その対象になる都市の住民の考え方というものを自治体単位にまとめる。今度の土地利用計画法案だって、四十七都道府県知事に大きな権限を与えているわけでありますから、口だけ出すのじゃなくて金を出すという形を、国が考えてものごとを整理するということにしなければならぬだろうと思っているわけですよ。  そういう意味で、この法律を、これはできることならば、国土利用計画法なるもののワク内での入れもの、官庁をつくりたいわけです。もちろん、そうなれば大臣は要りません。次官の争いも消えます。調整局の局長をだれにするかなんといって、調整局の局長の調整から入らなければ、調整局ができないなんということにならないようになりますよ。なりますが、しかし、各党の御意見もございますから、そこらを踏まえて、できるだけひとつまとめてまいりたいと思っておりますから、ぜひひとつ、皆さんのほうにも、そこらをお考えいただいた土地利用計画法に対するさや寄せをお願いしておきたいと思うわけです。長官いかがでありますか。
  167. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま、きわめて適切な御意見をいただきまして、今後の国土庁の運営につきましても、実に心すべき点が多々あったと存じます。ただ、私、この国土庁の性格と今日的な意味というものを考えますと、やはり専任の国務大臣をもってこの庁の運営の全責任をとるというはっきりとした体制がないと、今日までずるずるしてまいりましたいろいろの問題点の解決にはなかなか踏み切れないのではないか、さような考えを持っておりまして、特に専任の国務大臣を置くということについては、特段の御考慮を賜わりたいというふうに存じます。
  168. 大出俊

    ○大出委員 それだけを最後に強調されましたが、それによってこの法律がどうなることやらわかりませんけれども、突発事故が起きそうな雲行きでもございますし、突発事故が向こうの別な議院から起こりそうな形成もございますし、なかなか複雑でございまして、そういう波の中にと思っていたら、役所がどこかで消えてなくなっちゃったということになりますと、どなたかのお話では、山より大きなイノシシはいないそうでございますから、別に驚きやしませんけれども、私どものほうとしては、そう簡単ではございませんということを率直に申し上げて、恩給の専門家が、この際恩給をやっておかぬとと言うので、これは繰り上げでございますから、ぜひそこらはお考えいただいて御質問いただくということにして、この辺でやめさせていただきます。
  169. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 他に質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。      ————◇—————
  170. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 次に、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。野呂恭一君。
  171. 野呂恭一

    ○野呂委員 恩給法の一部改正審議に先立ちまして、関係当局に明らかにいたしたいのは、まず先般、四月二十四日の公的年金と老齢者福祉年金の併給制限に関する裁判、そしてその判決についてでございます。原告二人ともに高齢なる普通恩給受給者であるだけに、今後、この老齢福祉政策はもちろんのことでありますが、同時に、恩給改善を進めていく場合におきまして、きわめて重要な問題を提起いたしておるのではないか、私は、こういう考えを持つものでございます。  原告お二人の裁判の争点は、一体どこにあるのかということは別といたしましても、御承知のとおりこの判決は、荻原、宮両氏の公的年金と老齢福祉年金の併給制限は、憲法第二十五条に違反しておる、また同時に、憲法第十四条にも違反しておるのだという訴えに対して、裁判所は憲法違反ではないという結論を出されたわけでございまして、お二人の老人を悲しませて、全国恩給受給者に大きなショックを与えたことは、事実でなかろうかと思うのであります。たとえば荻原さんのごときは、昭和四十三年当時、年額わずか九万五千円という普通恩給を受けておった受給者でございます。そして恩給以外に少しの収入もない。しかも家族一名を扶養されておる。そして老人にとって、医療費等の支出が多くなってまいりますから、したがって裁判に訴えざるを得ない。この心情に対しては、まことに同情に値するものがあるわけでございまして、この気の毒な老人の現状を認めなければならない、私はこう考えるのであります。  したがって、まず、今回のこの裁判の争点は一体何であったか、この争点について、おいでをいただいております法務省の訟務部長にお伺いをいたしたい、かように思います。
  172. 貞家克己

    貞家政府委員 お尋ねの二つの訴訟でございますが、去る四月二十四日に、東京地方裁判所におきまして、原告の請求棄却の判決がございました。二つの事件につきましては、ほぼ争点が共通しておりますので、一括して御説明申し上げたいと思います。   〔小宮山委員長代理退席、中山(正)委員長代   理着席〕  一つの訴訟の原告は、明治二十七年生まれの御老人でございまして、昭和三十九年に七十歳に達しましたので、老齢福祉年金の受給資格を取得されたわけでありますが、岡山県知事に受給権の裁定請求をされましたところ、受給権の裁定と同時に、恩給法による普通恩給を受けているからという理由で、支給停止の処分がなされたわけでございまして、原告は、この支給停止処分が無効であるという主張で、金二十万七千円の支払いを請求したわけでございます。  原告の主張をかいつまんで申しますと、この処分が無効である。一つは、先ほど御指摘のございましたように、憲法二十五条の規定に違反する、一つは、憲法十四条の規定に違反するという主張でございまして、憲法二十五条は、御承知のとおり、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した規定でございますが、原告は、恩給その他の公的年金の受給額自体が、老齢者の生活の保障のためには著しく不足している現状を直視いたしますと、公的年金の受給者であるということを理由にいたしまして、老齢福祉年金の支給を停止するということは、老人の健康で文化的な最低限度の生活を保障することを定めた憲法の趣旨に反するという点が一つでございます。  第二点は、憲法十四条の法のもとの平等に反するという主張でございまして、これにつきましては、原告は、三重の不平等を課せられているという主張をいたしました。第一に、公的年金給付を受ける者と受けない者と差別されている。第二に、戦争公務に起因いたしまして、負傷疾病により廃疾となった者あるいは死亡したということを理由にいたしまして、旧軍人またはその遺族に対して支給されます増加恩給あるいは公務扶助料の場合には非常に併給限度額が高くなっておる、これとの差別があるではないか。第三に、一般所得を有する者、これも一定額の所得を持っておりますと支給が停止されるわけでありますが、そういう人々との差別がある、したがって、憲法十四条に違反する、こういう主張を掲げたのでございますが、裁判所は、ほぼ国側の主張を認めまして、次のように判断いたしたのでございます。  まず、憲法二十五条の規定に違反するという主張に対しましては、裁判所は、老齢福祉年金というものが、従来の年金制度の対象外に取り残された国民に年金制度の保護を及ぼすという目的で制定されたものでありますから、この年金自体、老齢者の憲法二十五条一項にいいます最低限度の生活を保障するということを直接の目的とするものではない、したがって、老齢福祉年金というものを、他の公的年金を受けている者にまで併給することになりますと、むしろ制度趣旨に反することになるのでありますから、併給制限を定めた国民年金法の規定は、一応合理的な理由があるという判断をいたしました。  一方、憲法二十五条の生存権の保障でございますが、この規定は、累次の最高裁判所の判例が示しますように、これ自体によって直接国民に具体的な権利を与えるという規定ではございませんので、この憲法の規定の理念を実現するための施策をいかにするかということは、立法府の裁量に属するわけでございます。したがいまして、いま申し上げましたように、支給の制限ということに相当の理由がある、全く合理性を欠くというのではない以上、立法府の裁量にゆだねられました事項でありますから、憲法二十五条違反ということはいえないのではないかという判断を一つ示しております。  第二に、憲法十四条との関係でございますが、そのうちの第一点の、公的年金給付の受給者とそうでない者との取り扱いの差別ということにつきまして、この併給というものは、国民年金制度趣旨によって停止をするということになっておりまして、一応の合理性があるわけでありまして、従来の年金制度の対象者が従来より積極的に利益を受けることにはならないのでありまして、福祉年金額が公的年金の額、つまり、たとえば恩給の額よりも多い場合に、差額は支給が保障されるわけでございまして、恩給受給者がこの支給停止によって、決して不利になるということはないから、この点では憲法十四条には違反しない。  それから第二点の、戦争公務による者とその他の者との取り扱いに差別があるのではないかという主張に対しましては、この戦争公務による者に対します併給制限の緩和ということは、戦争犠牲者に対する精神的損害を賠償するというような、いわば慰謝料的な要素を含んでいるわけでありまして、若干の差別をするということは、これまた憲法十四条の法のもとの平等に反するものではないということができる。  なお、一般所得者につきましても、一定額以上の所得がございますと、支給が停止されるわけでございますが、それとの差別につきましては、これは一般所得による制限の措置と申しますのは、比較的所得保障の必要度の低い者までに支給するということは、不相当であるという趣旨でございますし、公的年金による制限といいますのは、これは国民年金制度というものが、従来も公的年金制度の保障の及ばない者を対象にして設けられているという点からの国民年金法本来の趣旨に基づくわけでございまして、趣旨、機能が両者の間で異なっておる。したがいまして、その意味での法のもとの不平等ということはないという判断をいたしまして、原告の請求を棄却、つまり、国側勝訴の判決を下しておるわけでございます。  もう一方の事件、これは、ほとんど同様のケースでございますが、主張がやや違っておりまして、憲法二十五条、憲法十四条に違反するという点は、ほぼ同じでございます。したがいまして、裁判所は、いま申し上げましたとほとんど同様の理由で、その請求が理由がないという判断をいたしております。  それ以外に、このケースについて特別の争点といたしましては、この原告は、昭和二十三年以来、恩給額が適正に改定されていない。つまり、恩給年額の改定につきましては、御承知のとおり、恩給法二条の二の規定があるのでございますが、その規定趣旨に反して上がっていない。それは恩給事務を担当する行政府の職員、具体的には総理府総務長官をつかまえているわけでございますが、総務長官の職務を怠った結果である。したがって、その損害を賠償しなければならないというのが原告の主張でございますが、これに対しましては、裁判所は、なるほど恩給法二条ノ二には、原告主張のような規定があるけれども、これをいかなる場合に、いかなる程度にまで改定するかということは、やはり立法府の裁量による判断にゆだねられている事項であるから、もしかりに原告の主張するように、恩給額が適正に改正されなかった、それから担当者が職務を怠ったということが原告主張のとおりであるといたしましても、両者の間に因果関係はない。つまり、行政府がそういう施策を講じたからといって、立法府がそれを採用するかどうかわからないし、かりに行政府がそれをしなくとも、立法府というものは、それを取り上げて、裁量によって履行する権限があるということを考えれば、原告主張自体において、そういった意味の因果関係がないのであるから、これは理由がないという、以上の理由をもちまして、これまた原告の請求を棄却したわけでございます。  非常にはしょって申し上げましたが、二つの事件の主たる争点は以上のとおりでございます。
  173. 野呂恭一

    ○野呂委員 いまお話しの、まず憲法第二十五条の関係でございますが、裁判所の判決に、「国が憲法第二十五条に規定する理念を実現するために、いつ、どのような要件の下に、どのような内容の施策を実施するかは、国の文化経済の発展段階に応じて決定されるべきであるが、その判断は、立法政策の問題として、立法府の裁量に委ねられていると解すべきである。」、これは先ほどお話しになったことでございますが、ところが、裁判所は続いて、「もとより、立法府がその与えられた裁量権を適切に行使することを怠り、右理念を具体化すべき職責を果たさないときは、憲法の要求を満たさないものとして、政治上批判を受けることは免れないであろう。」、こう言っておるわけでございます。したがって、この裁判を通して、お見えになっておる厚生省の年金課長に、一体これに対してどうお考えになっておるかということでございます。  確かにこの裁判は、政府側が勝つには勝ったけれども、たいへんあと味の悪いものを残しておるのではないか、こういうことでございます。政府は、裁判に勝ったけれども、少なくも福祉行政の実現を目ざすわが国にとりまして、立法政策において福祉行政の立ちおくれを、この場合において露呈しておるものだと私は言うべきだと思いますが、直接は、この裁判の進行にあたって法務大臣が国側の代表者である、そして、その法務大臣の指定代理人としてそれぞれ社会、年金局のほうが当たられたわけでございますが、さて、この裁判を通して、一体、厚生省の年金課長は、この問題をどうお考えになるか、まず御所見をお伺いしておきたい。
  174. 坂本龍彦

    ○坂本説明員 お答えいたします。  この裁判でも社会保障、憲法第二十五条の規定と国の施策、立法との関係というものが問題になったわけでございますが、個々の制度によりまして、すべて健康で文化的な最低生活を保障しなければならないかという点が一つ問題になったわけでございます。私どもは、国の施策全体として、そのような仕組みが確保されておれば、これは憲法の理念にも合致するものである、必ずしも単一の制度のみをもって最低生活をすべて保障しなければ、この理念に合致しないというものではないという主張をいたしまして、それが裁判においても大体認められたわけでございます。  しかしながら、現在の制度がそうであるからといって、すべて完全なものであって、問題がないというようには私ども考えておりません。従来から年金制度は年金制度なりにいろいろと改善を重ねてまったところでございますけれども、今後ともこの裁判の結果とはまた別に改善すべき点は改善する、そして、できるだけ老後の生活保障というものを充実させていくように、こういう立場で今後とも努力いたしたいというように考えておるわけでございます。
  175. 野呂恭一

    ○野呂委員 直接、憲法第二十五条には反してないということでありますが、私は、この判決の政府側の主張をよく調べてみますと、こういうことを言っているのです。とにかく憲法第二十五条は、社会生活水準の確保、向上を国の責務として宣言しておるが、個々の施策については、それは立法府が考えてきめていったらいいわけであって、必ずしも憲法上の要求を満たすために、たとえば老齢福祉年金等があるのではないのだということを言っておるわけであります。「すべての施策を一体としてみた場合に、健康で文化的な最低限度の生活が保障される仕組みになっていれば、憲法の要請は満たされているというべきである。」、こう述べておるわけであります。  つまり、今日のわが国の社会保障制度あるいは社会保障体系が、はたして憲法第二十五条の要請しております健康で文化的な最低限度の生活が保障される仕組みであるかどうか、ここにわが国の社会保障そのものの実態というものを、厚生省は十分に反省をしなければならぬではなかろうか。この点はどうでございますか。
  176. 坂本龍彦

    ○坂本説明員 社会保障制度には、いろいろ内容がございますが、大きく分けますと、これも考え方として、いろいろ見解の分かれるところではございますけれども、一般に社会保険、年金や医療保険のような社会保険による場合、あるいは社会扶助と申しますか、各種の福祉法といったものに代表される社会扶助の制度というものと、そして生活保護というような直接生活そのものを扶助するというようなものとに分かれているわけでございます。  現在のところ、社会保険なり、あるいは社会福祉の制度一つでは、必ずしも最低生活というものは保障されないかもしれませんが、そういった各種の施策あるいは個人の資産というものを、さらには扶養義務者の資産というものを最大限に利用いたしまして、なおかつ、どうしても最低生活が維持できないという場合には、生活保護の対象になるということになっておりまして、生活保護がそういった最後の下ざさえになっておるということから、これらの制度全体を合わせてみますと、健康で文化的な最低生活が保障されるという仕組みになっていると解しているわけでございます。
  177. 野呂恭一

    ○野呂委員 いまお話しのとおり、社会保障体系はわが国の場合二本立てになっておる。  そこで、この憲法第二十五条の要請を満たすべくつくられた法律一体何と何か、それをお伺いしたい。   〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  178. 坂本龍彦

    ○坂本説明員 たくさんございますが、おもなものを具体的に申し上げてみますと、社会福祉法といたしまして、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、老人福祉法、児童福祉法、母子福祉法というように、国なり地方公共団体なりが、こういった方々に対しまして、いろいろと施設に収容するとか、あるいは各種の医療を施すとか、その他の援護を実施することによって社会福祉を行なうというグループがございます。それから、社会保険の関係といたしまして、厚生年金保険、国民年金あるいは国民健康保険、国家公務員共済組合、失業保険といったような保険方式によります給付金の支給あるいは必要なる施策の実施というものによりまして、社会保障を行なうという法律のグループがございます。またさらに、主として疾病の治療等につきまして、公費をもってこれを行なうというものとして、結核予防法でございますとか精神衛生法等の公衆衛生関係法律がございます。さらに、いろいろな施策によっても、どうしても最低生活が維持できない人に対しまして、直接生活を保障する生活保護、こういうものがあるわけでございます。
  179. 野呂恭一

    ○野呂委員 それじゃ、具体的にお伺いしていきましょう。もちろん私は、この間の裁判をこの席で論議をして、復元しようという考え方は毛頭持っておりません。ただ荻原さんにしても宮さんにいたしましても、御承知のとおり普通恩給受給者である。でありますから、今回のこの恩給法の一部改正審議にあたりまして、お伺いをいたしておるわけでございます。  荻原さんが裁判に提訴したのは、昭和四十六年ということが記録に載っておるわけですが、宮さんは昭和四十五年、これは間違いございませんか。これは直接裁判に当たられた訟務部長でもけっこうですし、あるいは社会保険庁の国民年金課長でもけっこうです。
  180. 貞家克己

    貞家政府委員 御指摘のとおり、原告宮さんの事件は、四十五年でございます。それから荻原さんの事件は、四十六年でございます。
  181. 野呂恭一

    ○野呂委員 そこで、お二人の当時の恩給年額は幾らであったのか、あるいは恩給以外に収入があったのかどうか、その生活環境おわかりであれば、この際教えてもらいたい。
  182. 金瀬忠夫

    金瀬説明員 宮さんの四十五年におきます恩給額は、四十五年十月でございますが、十九万ほどでございますし、四十八年の十月現在では三十四万九千円ほどになっております。それから荻原さんの場合は、四十六年の十月で十三万九千円ほどでございますし、四十八年の十月では二十一万三千円ほどになっております。それ以外の収入につきましては、数字を把握いたしておりませんので、残念でございますが、お答え申し上げかねるところでございます。
  183. 野呂恭一

    ○野呂委員 そこで、もう一度厚生省にお伺いしますが、先ほど憲法第二十五条の要請を満たすわが国の社会保障の体系、そして、その関連法律について御指摘になったわけでありますが、この憲法第二十五条の要請に基づく社会保障体系の中に、恩給はどう位置づけされておるものか、これについて厚生省はどうお考えになるか。これは裁判を進行する場合において、原告は恩給受給者であった。したがって、その原告の立場から見て、憲法第二十五条の要請に基づく社会保障の体系のどの中に位置づけされておるとお考えになっておられるだろうか。
  184. 坂本龍彦

    ○坂本説明員 恩給法そのもののいろいろ性格と申しますか、意義と申しますか、これは私どもだけで完全にお答えできないわけでございますが、少なくとも年金制度におきまして、恩給も他の公的年金と同じグループに属する取り扱いがなされている面がございます。社会保障と申しますと、いろいろ広い意味や狭い意味やございまして、一般の場合に、どちらかといいますと、恩給は広い意味での社会保障の中に入れられる場合もございますが、これは単なる社会保障以外の性格も持っているという面もあると存じますので、全部が全部社会保障として考えるということにも、あるいは問題があるかもしれぬと考えるわけでございます。  しかし、いずれにしましても、年金制度の上では法律上、公的年金としての取り扱いが具体的になされておりまして、たとえば通算年金という制度がございます。いろいろな年金の間を移り歩いた方に対して、その加入期間を通算して年金を支給するという場合に、この恩給の期間というものも、恩給を受けているということも、その通算年金を受ける資格の一つになっております。あるいは国民年金のいま問題になっております福祉年金の併給の場合にいたしましても、恩給は他の年金と同じように、それを受けていれば、福祉年金の支給が制限されるというように、その機能の点に着目いたしまして、年金のグループに入れて制度が組み立てられているという現状でございます。
  185. 野呂恭一

    ○野呂委員 あなたの答弁では、わが国の社会保障体系の中で恩給がどういう関係を持ち、どういうところに位置づけされておるかということは明確じゃございません。これは、いずれ恩給局にお尋ねするといたしまして、問題は、宮さんがこういう主張をしているわけであります。つまり、裁判の提起のいろいろな原因はあるでありましょうが、その一つとして、併給制限は、また憲法第十四条に違反するとして、その項の中で「併給調整されてもやむを得ない程度の水準に達しているという絶対的条件が充足されていなければならない。」ということを主張している。恩給受給者であるが、それが絶対的な条件として、併給調整をやられてもやむを得ないんだとするならばいいけれども、今日の恩給のこの実態では、この裁判を提起せざるを得ないのだという意味のことを述べておるわけであります。  先ほどお話しになりましたように、荻原さんは当時十九万円、あるいは宮さんが十二万九千円、そうするとこの二人に対する健康で文化的な最低限度の生活保障の仕組みとして、一体何が与えられておると考えられるか。この二人の生活が健康で、しかも文化的な最低限度の生活を維持し、さらに進んで生活水準を向上させていくということができる仕組みになっておるとお考えになるか。ここは、やはり私は、わが国の社会保障を考える場合に問題としなければならないのではなかろうか。したがいまして、この裁判でそう主張しておるのです。仕組みになっておるではないかと政府は主張しておる。また、それに対してあなたは、いろいろな法律をあげて、この法律が仕組みだとこう言うが、はたして併給調整をやられても、やむを得ないという絶対条件があるとお考えになっておるか。十九万円、十三万九千円、それで十分に生活を向上さえさしていくような今日の仕組みでありますと政府は主張しておるのですが、その主張は、私は必ずしも正しいとは考えられぬが、これに対して厚生省はどう考えておるか。
  186. 坂本龍彦

    ○坂本説明員 確かに、この年金の額だけについて見ますと、これではたして最低生活が保障されるかどうか、多分に疑問はあるわけでございます。これは先ほども申し上げましたように、単に年金のみならず、その他の社会保障制度、そして、さらに最終的には生活保護、これらの全体をあわせまして最低生活が保障される仕組みになっておるわけであります。ただ年金制度におきまして、どの程度までそれでは給付を厚くすべきであるかという問題は、それとは別にございますので、その点につきましては、従来から年金制度そのものの給付もできるだけ厚くしていくという方向で検討し、努力してまいっているわけでございます。  また、御指摘にありましたように、かりに併給を制限されてもやむを得ない程度の金額になっておればという問題もあるわけでございますけれども、これは単に恩給だけの問題というよりは、各年金制度におきまして、現実に年金額の低い場合がございますので、そういった方々との均衡という問題もございまして、この併給の制限、つまり福祉年金だけを受けておられる方もおられるということで、他に年金があれば、その方は一応御遠慮いただくというような考え方は、制度ができましたときからあったわけでございます。  そういうことで、現在の年金そのものの給付額は、確かにいろいろな面で、まだ問題がございますが、これ自体といたしましても、今後できるだけ引き上げるように努力をするというように考えておるわけでございます。
  187. 野呂恭一

    ○野呂委員 先ほどから明らかになっておりますとおり、今回のこの裁判は、原告のお二人いずれも、恩給受給者であるということでございます。もちろん裁判に訴えられた昭和四十五年、四十六年当時とは、今日では恩給もかなり改善された、大幅改善をされておることは事実であります。もし当時において、このお二人に恩給が十分に与えられ、最低生活が保障されておったとするならば、この裁判は、あるいは起こされなかったかもしれない。宮さんの老齢福祉年金支払い請求、荻原さんの恩給と老齢福祉年金との併給制限の損害賠償請求、これもなかったかもしれないと私は思うのであります。  恩給と老齢福祉年金との併給制限問題以前の問題として、今日の恩給の実態にむしろ問題があるのではなかろうか。この裁判の原告お二人が受けておられるところの恩給年額、わずか年十九万円あるいはまた十三万九千円。いずれにいたしましても、きわめて低いということは、明らかなことでございます。  したがって、憲法第二十五条が要請しておる健康で文化的な最低限度の生活保障の仕組みの中にあるのだといっても、その仕組みの中にある恩給がその目的を果たし、その役割りを果たしていけるのか。その機能を発揮しておるとお考えになるのか。ここの問題になってまいりますと、これは恩給局の問題であり、総理府のことでございますので、この機会に、まず総理府総務長官に、この裁判を通して——二人ともいずれも恩給受給者であった。そして、わが国の社会保障制度の仕組みの中で、はたして健康で文化的な生活を維持していく、さらに生活を向上さしていくということはできないのではないか。そこで、先ほど訟務部長は、お答えの中で、あげて恩給に責任がありますことも、一つの争点であったということを指摘されたのでありますが、総務長官に御所見をまずお伺いしておきたいと思います。
  188. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 恩給とは何かということについては、別に規定はないと思いますが、しかし公務員がその職場において、忠実に国家に奉仕をしたということに対して、その公務員あるいはその遺族に対して、国が保障として支給する給付だというふうにわれわれは現在解しております。  したがいまして、この給付額が多ければ多いほどいいのは当然でありますけれども、同時に、これは最終年度におけるその公務員の人の俸給額あるいは勤務年限というもので、おのずからそこに制限が加えられざるを得ないと思うわけでありまして、私は、そうした面から——もちろん恩給そのものがもっと高ければいいし、また先ほど野呂委員が御指摘のように、憲法二十五条というものに対して、恩給だけでも十分その憲法の規定する水準が維持できるようになればけっこうでありますが、しかし、これは見方によれば、また全額国庫負担になるわけでございますので、等々の理由から見まして、やはり私は、恩給が即、社会保障制度だとはいえない面もあるのでありますが、個個のケースの場合には、やはり社会制度ではないけれども、社会保障的な意義を今後は加えていくべきではないかと思うと同時に、やはり他の福祉行政そのものが、先般も谷間の人々というような表現で問題が提起されたのを考えましても、もっと前向きに進んでいってもらいたいというふうに私は考えるのでございます。
  189. 野呂恭一

    ○野呂委員 そこで、いよいよ恩給とは何ぞやということになってまいったわけでございますが、総務長官の言われるように、恩給法に別段規定されていない。けれども、恩給とは公務員が忠実に国家に奉仕した、そのことに対して、公務員または遺族に支給する交付金である、給付金である、こういうことが恩給だというふうにお述べになったわけであります。  そこで、恩給局にお伺いしたいのは、今度の裁判の原告である宮さんが、老齢福祉年金受給資格確認等請求事件でありますが、この中で「戦争公務による公的年金給付を受けることができる者との差別の不合理性」という項の中で、恩給に対する解釈をこう述べておるわけであります。すなわち、「恩給は、公務員が公務に専念することを余儀なくされたために喪失した経済上の取得能力を補うために支給されるものであると解されている。」、こう言っておるのであります。  つまり、公務員が公務に専念するために余儀なくされた、その結果失った経済上の取得能力、これを補うために支給するのだ、こう原告は裁判で述べておるわけであります。いまの総務長官の恩給の意義と、若干ここに問題が違ってまいっておるわけでございますが、この原告の恩給に対する解釈を、恩給局長、どうお考えになっておられるか。
  190. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 いま先生がお述べになりました、経済上の取得能力の減損をてん補するのが恩給であるという考え方でございますけれども、そういうような一面もないことはないと思います。ただ、恩給は、先ほど総務長官がお答え申し上げましたように、公務員が忠実に国家に奉仕をした、そのことに対しまして、国が保障として支給する給付でございまして、もっといろいろな面を持っているのではないかというふうに考えております。
  191. 野呂恭一

    ○野呂委員 この宮さん、原告の恩給に対する考え方、解釈は、かつてやはり恩給の定義に関して、こういう考え方をしたことがあるのではなかろうか。その後、社会保障制度あるいは経済社会の情勢によって変化がきて、先ほど総務長官がお答えになった中で、公務員が忠実に国家に奉仕をしたことに対しての給付金なんだ、こう述べられたのでありますが、原告のその解釈というものは、かつてやはりそういう解釈もあったのではないだろうか、この点をお伺いします。
  192. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 そういう考え方は、かつて確かに、恩給法を最初に提案するときにも、そういう考え方の御説明に近いものがあったように記憶をいたしておりますし、いまのような考え方が全然否定されるわけでもありませんけれども、そういうかつての考え方よりも、もっと幅広い性格が恩給の中にはあるのではなかろうか。それが先ほど総務長官が御答弁申し上げましたようなことだと思います。
  193. 野呂恭一

    ○野呂委員 そこで、恩給の意義は、公務員が忠実に国家に奉仕したことに対して、その公務員または遺族に給付金として出すものだ、こういっそおるわけですが、言いかえれば、これは国家のために忠誠を尽くすべく拘束された者に対する給付金だということにもなると思うのです。したがって、その恩給の性格に、一体国はどういう責任を持っておるのか、あるいは恩給受給者自体は、国との関係において一体どういう関係を持っておるのであるか、これを明らかにしてもらいたい。
  194. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 かつて恩給は、恩給という名前が、恩恵的給与の略ではないかというふうにいわれたこともございまして——わが国の恩給は、そうでないかもしれませんけれども、諸外国等においても、恩給自体の発生においては、あるいは恩恵的なにおいがなかったとは言えないと思います。しかしながら、現在の恩給は、そういう恩恵的給与というものではございませんで、受給者にとっては当然の権利でございますし、岡は正当な支払いをする義務があるものというふうに承知をいたしております。
  195. 野呂恭一

    ○野呂委員 そうすると、恩給は国が保障して正当な支払いをする義務がある、また受給者は、これを受けるべき権利を持つ、こう申し上げていいわけですか。
  196. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 そのとおりだと思います。
  197. 野呂恭一

    ○野呂委員 それなら国が保障するというのは、一体何をどう保障するのか、この点はどうですか。
  198. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 何をどうということになりますと、これは、なかなか一言で言いにくいわけでございますけれども、先ほど恩給の定義のところで申し上げましたような趣旨に照らして、恩給は退職しました公務員なり、あるいはその遺族なりというものに保障をするわけでございます。
  199. 野呂恭一

    ○野呂委員 この保障問題を詰めていくと、これは、たいへん問題があると思うのでありますが、一体これは経済保障なのか、あるいは国のために忠実に奉仕をしてきたという身分上の保障か。身分上の保障といっても、これは身分上ということになったらたいへんなことになりまして、これを追及していくと、今日の恩給は、たいへん定義に相反するような実態であるということを言わざるを得なくなってまいりますから、これは、あまり追及しないで、この程度にしておきます。  とにかく国が保障するのだ、こういうことだけにしたいと思いますが、問題は、国が正当な支払いの義務がある。正当な支払いというのは、一体どんな支払いをいうのであるか。つまり、かつて公務員として国家のために奉仕をしてきた、それに対して国が、保障的なものとして少なくとも正当な支払いをしなければならぬ。正当な支払いという解釈、これもまた問題だと思いますが、それに対して恩給局はどうお考えになりますか。
  200. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 正当な支払いというのも、またたいへんむずかしゅうございまして、どう申し上げていいのかよくわかりませんけれども、そういうふうに国家に忠実に奉仕しました公務員なり遺族に対しまして、その方々がそういう長い間、忠実に国家に奉仕したそのことに対して、それに値するような支払いという意味ではないかと思います。
  201. 野呂恭一

    ○野呂委員 値するような支払いということが、いまの恩給の実態においてできておるとお考えになりますか。
  202. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 これも、なかなか抽象的なことでございますので、印しにくいわけでございますけれども、私たちといたしましては、先ほど来御指摘のございましたような低額の恩給ということが一番問題でございますので、そういうことにおいて、その改善等を通しまして、値するような給付額になるように毎年努力を続けているところでございます。
  203. 野呂恭一

    ○野呂委員 もう一つ、観点を変えてお尋ねをしたいと思うのですが、受給者にとって権利だということを申されるわけでありますが、憲法第二十五条の第一項でいう、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得る権利を保障する、この保障と権利、つまり、この憲法でいう権利と恩給の受給者にとっての権利と、その権利の関係はどうなっておるとお考えになっておられますか。
  204. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 これは、私がお答えしていいのかどうかよくわかりませんけれども、憲法二十五条一項にいうことと恩給法そのもの、先ほども年金のほうのお話がございましたけれども、恩給法そのものが、この実施規定としてイコールで結びつくという性格のものではないというふうに思います。
  205. 野呂恭一

    ○野呂委員 確かに生活保護法でいっておるような憲法第二十五条は、直接目的として制度化した生活保護と違っておることは確かでございます。しかし、その権利の内容は恩給としていろいろ法律規定する、この程度の恩給を支給するのだ、この場合においてはこうだ、しかも計算のたてまえは、退職当時の俸給というものを基礎にし、そして勤務年数というものが、そこに加わって恩給というものが計算されていることは確かであります。つまり、それはいわゆる権利の内容法律規定されるということになるわけでございますが、恩給の基本観念というものは、一般の社会保障でないと思います。  これは、おそらく肯定されるだろうと私も思うのでありますが、恩給こそ国が受給者に対して憲法第二十五条で明らかにしている、つまり健康にして明るい生存権、これの具体的に請求権を与えたものではないのか。むしろ恩給を積極的にそう解釈すべきではないか。ただ、生活保護と違いますということでなくて、憲法二十五条のその要請というものが、恩給ではさらに具体的なものとして、そういう請求権となっておる、そういう権利だというふうに、憲法第二十五条と恩給の受給者にとっての権利というものの関係を判断すべきじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  206. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの野呂委員のいろいろのお考えというものは、私も非常に理解できます。  それで具体的に申し上げると、今回の恩給の改正に関しまして、政府原案並びに党からの強い御支援をいただきまして、一般公務員の給与の引き上げ率による改善とか、一般公務員給与との差を二年間で詰めていくとかいうような具体的なことや、また最低保障制度の改善をやっていくというような、今回の恩給の改善措置、増額ということでございますが、こうした考えの中に、いま野呂委員の言われました憲法においての人権と申しますか、その考え方に近づこうという努力が、すでに昨年来始まってきて、四十九年度予算においても、御協力の中でそれがだんだんと実りつつあるという段階だと私は考えます。
  207. 野呂恭一

    ○野呂委員 共済年金、これは今日は恩給から共済年金に制度として移行しておるわけでありますが、共済年金と恩給というもの、その関係はどういう違いでありますか。
  208. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 共済年金の制度も、恩給と同様に公務員に対する年金制度でございますので、その面では非常に類似をいたしておるわけでございますけれども、共済年金のほうは、御存じのように、それぞれの組合員が掛け金をかけまして、そして、それぞれの給付を受けるという社会保険の形式をとっておりますので、その点から言えば非常に異なっているというふうに言えると思います。一番大きな違いは、そういうことだと思いますが、さらに精神的なといったら、ちょっとおかしいかもしれませんけれども、先ほど申しましたような定義的なことから申しますれば、恩給の場合と共済の組合の場合とは、そういう面でも違いがあるというふうに思います。
  209. 野呂恭一

    ○野呂委員 共済年金と恩給との違いは、単に負担の制度が、つまり共済年金は社会保険、保険的な形で進められておる、恩給というものはそうではない、定義で明らかにされたような形のものである。これの本質的な違い点というもの、これが私は、非常に問題であり、大切なものだというふうに思うのでございます。  そこで今度は、生活保護との関係でありますが、社会扶助の観点から考えて、資産、能力を活用しても、なお最低生活を維持できない場合に、国民の最低生活を保障していくというたてまえである、生活保護法は、それをたてまえとしておるわけでございますが、恩給は、国家のために忠実に公務に従事し、それがために拘束された者に対して、国が保障として正当な支払いの義務がある、そして、それが受給者の権利として与えられるものであるということになりますと、その権利の内容は、法律で定められるといたしましても、恩給額が生活保護費を下回っておるということが、はたして正当な支払いの義務があるといえるのかどうか。少なくも生活保護というものが、憲法第二十五条の要請しておる直接の制度である、恩給は、一方では国のために忠実に仕事をしてきた、それがために保障として正当な支払いの義務を持っておるのだといいながら、恩給額が生活保護費を下回るというようなことが、はたして正当な支払いの義務であるのかどうか。むしろ私は、正当な支払いの義務を怠っておるという今日のこの恩給の実態に対して、責められてもやむを得ないのではなかろうか、こう考えますが、総務長官、どう思いますか。
  210. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 恩給は、野呂委員は十分御承知なんでございますが、退職時の俸給に勤務年限をかけるわけでございますから、そうした基盤、基礎で計算をされているわけでございますので、退職時給与が低く、また勤務年限が低ければ、当然また恩給額も下がらざるを得ないというわけで、そこにいま御指摘のような生活保護基準にさえ達しないという方たちが、なお相当数おるというデータをわれわれも知っております。そして、これがいいことだとは少しも思っておりません。また同時に、そうしたことを、たてまえと実際に生活している人たちというもの——特に私は、これが遺族の場合に、この格差がはなはだしく出ることも承知しておりますが、だからといって、たてまえがそうだから、われわれは、そうなってもしかたがないということを、一方では言わざるを得ませんけれども、しかし、こうした問題の解決のために、先般来いろいろと御協力をいただいておりますように、恩給額の引き上げという問題を続けて追求をしてまいりたいというふうに考えております。
  211. 野呂恭一

    ○野呂委員 恩給受給者で生活保護の適用を受けておる者は、一体どれぐらいでございますか、これは恩給局長。
  212. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 実は、いまの御質問に的確にお答えするような資料が、手元にないわけでございますけれども、だいぶ古いことで、厚生省のほうでおやりになりました調査等から推計をいたしまして申し上げるので、正確な数字ではないのでございますけれども、おそらく一万人足らずぐらいいるのではないかというふうに、これは全くの推計でございますが、推計をいたしております。
  213. 野呂恭一

    ○野呂委員 その推定、的確な数字ではないと思いますけれども、約一万人。そこで、その生活保護を受ける人の年齢ですが、八十歳以上というのは、大体その一万人の中で何%占めておるかということはわかりませんか。
  214. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 申しわけありませんけれども、先ほどのも全く推定でございますので、そのうちのさらに詳細な年齢別等は資料ございません。
  215. 野呂恭一

    ○野呂委員 そして、八十歳以上の人が大体何%で、それから平均して恩給は幾らもらうことになっておるのかということも、あとでお調べをいただいたらけっこうだと思います。  いま総務長官お述べになったように、特に高齢者に対しての恩給の改善を、より進めていかなければならぬというお話でございますが、いずれにしても、八十歳以上の高齢者が、かなり生活保護を受けている人の中でパーセンテージが多いと思うのです。しかも月一万円とか二万円とかいったようなきわめて低額である。それで生活ができないという人が一万人もあるということは、国が正当な支払いの義務を怠って、受給者にとっては保障さるべき権利が剥奪されておる。少なくも曲げられておる。これは老齢福祉にも逆行することではないか、反することではないだろうか。こうした高齢者の恩給受給者を放置しておくことは、私は許されないと思うのです。恩給額が生活保護費を下回ることのないように、この解決をすみやかにされる御意思があるかどうか、この点をひとつ大臣のほうからお答えを願いたいと思います。
  216. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 私も、まことに同感でございまして、この問題につきましては、今後さらに努力を重ねてまいりたいと思います。  なお、ただいまの生活保護を受けておる人数等につきましては、最近非常にそういう問題が指摘されておりまして、調査がされてないということは、まことにわれわれの手落ちであろうかと思いますので、早急にひとつ、具体的な数字をつかめるだけつかんで、また御報告をしたいと思います。
  217. 野呂恭一

    ○野呂委員 恩給は、国の給付金で、すべてこの費用は国が負担しておるということでありますが、他の公的年金の場合は、社会保険の形式をとっておる。恩給は国の負担において一定の国民、すなわち恩給受給者に対して、その資格を持つ者に対して国が保障し、正当な支払いの義務を負っておる、こういう、言うならば公的扶助的な性格を持っておるということでありますから、その所得が不十分であるならば、これを補い、人間らしい生活が保障されなければならないと私は考えるのであります。  今回の裁判は、公的年金受給者は、一定の条件のもとに老齢福祉年金の併給が制限されるという、これは年金法のたてまえにおいて憲法に違反しないという、憲法上の罪は免れ得るといたしましても、立法政策上の罪は免れ得ない、私はこう考えるのであります。立法政策の上におきまして、恩給受給者が憲法の要請する健康で文化的な最低限度の生活が保障されるという仕組みになっておれば、先ほど申し上げましたとおり、こんな裁判は起こらなかった、二人の老人を悲しませるということもなかったであろう。今回の裁判がよって起こった原因は、併給制限に問題があったといたしましても、その根本は、今日の恩給の低額であるという実態に私はその責任があると考えるわけでございます。  どうも恩給に対する定義が明らかでないようです。先ほどお話もありましたが、大正十二年の恩給法にも恩給とは何ぞやということは答えてない。今日の恩給法も答えてない。だから、裁判上でも恩給の問題の定義についてはちっともとらえてない。しかし、訴えを起こした受給者は、恩給受給者なんです。それで、恩給とは何ぞやということに対しての国との関係あるいはその権利義務、そういったものが明確にされていないというところに、私はどうも問題があるのではなかろうか。おそらく、今日いわれておりますような国が正当な支払いをする義務がある、しかも国家保障的なものである、受給者にとっては権利なんだ、こういっておることは、戦前の旧恩給法も、その精神は十分に私は認めておるというふうに思うのでありますが、今日、これがための改善がなされなければならぬ。  これは、ひとつ総務長官に、恩給問題に対して特に十二分の配慮をいただきたいということを申し上げて、私は、恩給改善をするならば、どうあるべきかということの問題に触れていきたいと思うのでございます。  時間がないようでありますから、なるべくはしょってまいりますが、恩給とは何かという定義に基づいてどうしていくかということになれば、恩給改善の方向二つある。その一つは、恩給らしい恩給にしなさい、こういうことであります。もう一つは、今日のスライド方式から考えてまいりましても、現職に即応させよ。私は、この二つの要求あるいは願いというものが、恩給受給者にとっての改善の方向ではないだろうかというふうに思うのでございます。  老齢者がたいへん生活が苦しくなっておる。低額の恩給ではやっていけない。ところが、いままでの恩給改善の措置といたしましては、高齢者の優遇策は一般的に七十歳以上をとらえておる。大体七十歳以上ということでやっておる。それは満たされるけれども、八十歳以上は極度に恩給も低いわけです、古くやめた人なんかは。したがって、この最高齢者に対しての特別措置というものを、この際やはり考えなければならぬ。七十歳以上ではなくて、八十歳以上には特に特別な措置というものを考えなければならぬときではなかろうかというふうに思うのでございます。  いろいろ恩給改善の問題点はたくさんあると思いますが、時間がありませんから、問題の二、三を提起する程度にとどめておきたいと思うのでありますが、たとえばスライド方式を、いよいよ昭和四十八年からとることになった、これは公務員の給与の改善率にスライドするのだということであります。これは非常に画期的な改善策だと私は思うのでございます。また、今回の法改正の中におきましても、最低保障額を大幅に引き上げていく、これも高齢者の優遇措置として、底上げをやっていくということは、たいへん大事なことでありますが、この際思い切って、その最低保障額も、公務員給与の改善率にスライドしたらどうだろうか。年額の改定におきましても、公務員の給与の改善率にスライドするが、せっかく設けた最低保障額のこの制度を生かして、最低保障額そのものをスライドするというような考え方をお持ちになっていられないかどうか、この点をお伺いしたい。
  218. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 公務扶助料のほうの最低保障につきましては、今回もスライドをして上げております。  いま御指摘になりましたのは、たぶん普通恩給あるいは普通扶助料における最低保障を今度上げるのはよろしいけれども、その後においてもスライドをしていくべきではないかという御意見だと思います。実は、まだ今回の御提案を申し上げております段階でございますので、それより先のことについては、十分検討しておりませんけれども、御趣旨の点につきましては、十分にこれからも研究してまいりたいというふうに思います。
  219. 野呂恭一

    ○野呂委員 では、次に軍人恩給の問題であります。  軍人恩給におきまする加算年の恩給金額に算入をすることあるいは減算率の緩和もしくは撤廃の問題、このことについて、一言だけ触れておきたいと思うのでございます。  そこで、またこの裁判の問題をここに提起したいと思うのですが、先ほどからいろいろ論議をしております今回の裁判の中で、「戦争公務による公的年金給付を受ける者との差別の合理性」という項の中で、政府側がこう主張しておるわけでございます。「戦争公務による公的年金給付については、各制度とも一般公的年金給付より比較的高瀬になっているが、これは、国家補償の精神に基づく慰謝料的要素が含まれている」といっておるわけであります。戦争公務というのは、たいへん苛酷な環境の中で生命の危険にさらされつつ公務に従事してきた、これに起因して死んだ、あるいはまた傷害を受けた軍人、軍属等は、まさに戦争の最大犠牲者である、このとおりであります。だから、こういう者に対しては、特別に配慮しなければならぬ、少なくも国家保障、国家賠償の要素が含まれておるのだと、こういっておるわけでありますが、この点はお認めになりますか、恩給局長さん。
  220. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 いまの裁判の中身を引いての御質問でございまして、ちょっと的確に御質問の趣旨がわかりませんでしたけれども、戦争公務による公的年金の給付というものが、非常に苛酷な環境下において生命の危険にさらされるような公務に従事したことに対するもので、それは国家保障としての性格が一そう強いのだということは、これは判決にいっているとおりだと思います。
  221. 野呂恭一

    ○野呂委員 つまり、こういうことです。戦争公務による公的年金給付には、国家保障の精神に基づく慰謝料的要素、精神的損害賠償の要素が含まれておるというふうに裁判で政府側が主張しておるし、また裁判所もそのことを認めておるのでありますが、そのことを恩給局はお認めになるかどうか、こういうことであります。国家賠償的な要素があるのだ、つまり傷痍軍人に支給する傷病恩給あるいは戦没者の遺族に支給するところの年金、これらは、いわゆる国家保障の精神に基づく慰謝料的な要素である、かつまた精神的損害賠償だ、こういう要素が含まれておると裁判で論議をされておりますが、それを恩給局はお認めになるか、こういうことであります。
  222. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 ちょっとそこの判決のところを、十分熟読しておりませんので、お答えがずれるかもしれませんけれども、国家保障の精神であるその恩給が、そういう苛酷な勤務環境下における方々の負傷なり、あるいは死亡ということについて、国家の保障として差し上げる恩給であるということは、先ほども説明したとおりでございますけれども、そのあとの、先生御質問の中心点になるのかもしれませんけれども、国家賠償の要素が入っているかどうか、あるいは精神的損害の賠償的なものがあるのかどうかということにつきましては、これは判決を熟読玩味しておりませんので、もう少し考えさせていただきたいと思います。
  223. 野呂恭一

    ○野呂委員 とにかく、この裁判は政府側もそれを認めております。それから裁判所のほうも、それを認めておるのであります。ですから、現在の傷痍軍人に給する傷病年金あるいは遺族に支払う公務扶助料、その実態からいうと、裁判所では憲法違反だということになるのかもわかりませんよ、目下これを裁判していくと。いまの時点では、東京地裁はそういう結論を出しておる。問題の焦点は、併給の問題でありますから、そういうことについては、触れておりませんけれども中身として言っていることは、そういうことであるということであります。  まあ、それはそれとして、さて、その中でもう一つ問題になるのは、戦争公務による公的年金給付は、いま申し上げたように、「生命の危険にさらされつつ公務に従事し、これに起因する負傷又は疾病により廃疾となり、又は死亡した旧軍人等又はその遺族に対して支給されるものであるが、これと、これらの災禍を受けることなくして老後に至った軍人又は文官に対して支給される普通恩給その他の公的年金給付との間には本質的な相違がある。」、つまり普通年金の恩給の中に——老後に至った軍人ということで、確かに遺族やそれから傷病者に対する恩給とは違っておることは明らかだし、戦争の犠牲者はその二人が中心である。それも最大の犠牲者であるということは私もわかります。しかし普通恩給の中における文官と、それから、ただ年をとっていった旧軍人、軍人だから、これは戦争公務におきまする特殊性というものは認めないとはいっていないけれども、何かここに区別をされていないということでございます。  そこで、「災禍を受けることなくして老後に至つた軍人」というのでありますけれども、この軍人のうち九五%までは赤紙召集によったものなのです。そのほとんどが軍の命令によって戦地にかり出され、強制的に戦争という公務に置かれたわけであります。したがって、一般軍人も単に年をとっただけであるから、おまえたちは戦争公務によるところのいわゆる給付を受けるものではないのだといったような解釈がもしあるとするならば、先ほど問題を提起しましたとおり、精神的な損害、国家賠償的な要素が旧軍人一般には含まれでいないとするならば、これは、たいへんな問題になるというふうに私は思うのでございます。  少なくとも、文官と軍人の間にはやはり特殊性、戦争公務という特殊性を認めなければならぬ、これは、どうでしょう。
  224. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 文官と武官、旧軍人の間に、そういう差異があることは事実でございまして、そういうことをバックに置いたからこそ、たとえば普通恩給年限等においても、十二年と十七年というふうな差があるのじゃないかと思います。
  225. 野呂恭一

    ○野呂委員 さらにまた、この裁判で提起しておるのです。これも時間がかかると思いますからはしょりますが、「公務扶助料は、その全部が国家補償であるとみなす方が妥当であるとも考えられる。」という裁判所の判決。「後者は、社会保障の一環として位置づけられるものである。」こういっている。  そうすると、先ほどお伺いしました社会保障と、それから恩給とは違っておるということをお述べになっておるのですが、この裁判でいうところの政府側の主張は、公務扶助料は、これは、もう全部が国家の保障としてそういう方法をとるのが妥当であるが、軍人や文官は一般的に社会保障の一環だということをいっているわけです。これは恩給局は、その裁判に直接携わっていられないわけですが、厚生省のあるいは年金局にしても、あるいはまた社会保険庁にしても、この裁判を担当しながら恩給局の御意見をお聞きになったのかどうか。これは社会保障の一環として考えたらいいのだ、文官も武官も。そして公務扶助料については、全部が国家保障、こういうことをいっていらっしゃる。これは政府側の主張ですね。少なくともこの裁判は、国を相手取っての裁判である。だから、厚生省を相手取ったわけでもない、社会保険庁を相手取った裁判ではない。国を相手取った裁判であるとするならば、恩給局はこういう考え方をお認めになるかどうか、これをひとつただしておきたいと思います。
  226. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先ほどからお答えしますように、その裁判の判決は聞きましたけれども、いまのところ十分な記憶がございませんので、先生のおことばに従ってお答えをいたしてまいりたいと思いますけれども、なるほど公務扶助料、恩給のことばで申しますと公務扶助料でございますが、そういう点につきましては、その公務性が現象的に非常に強いということはいえると思いますけれども、先ほど総務長官が最初に申し上げましたような恩給の定義に照らして申しますれば、生存軍人といえども、あるいは文官といえども、そういう意味における本質的な、国家に忠実に奉仕をしたことに対する金銭的給付であるという意味においては差異はないと思います。
  227. 野呂恭一

    ○野呂委員 そこで、戦争という公務に直接参加させられて、身の危険にさらされた代償というものはどこから生まれてくるのですか。旧軍人に対する正当な支払いをする義務を持っておるのが恩給であるとするならば、その戦争の中で危険にさらされて、生命を代償としてあえて出しながら戦ってきた旧軍人は、一体恩給上においてどんな正当な支払いを受けるのであるか、これを明確にしてもらいたい。
  228. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 御質問の趣旨を取り違えているかもしれませんけれども、そういうふうな苛酷な勤務条件のもとにおいて、職務を遂行してきた方方に対する処遇として、先ほどちょっと申しましたけれども、文官のように十七年ではなくて、十二年で普通恩給が支給されるとか、あるいはそういう苛酷な地における勤務なり苛酷な勤務そのものにつきまして、加算制度というものがありまして、そういう点でお報いをするということになっておると思います。
  229. 野呂恭一

    ○野呂委員 そこで、問題の本質に入っていきます。  加算年の恩給金額算入ということ、これは戦前の旧恩給制度にあったわけでございます。それが昭和二十八年に、新たな制度として今日の恩給制度が発足をしたが、戦後の軍人恩給というものは、原則として加算年を金額算入することを認めないという立場をとっておるわけです。四十八年に七十歳以上の者に対して、この加算年を金額に算入するという、言うならば老齢福祉的な立場から取り上げたということなんです。  そこで旧恩給法では、戦争という公務に拘束された軍人の特殊性というものに対して、生命の危険にさらされた代償としての制度というものが、私は、加算年の金額算入の制度であったのではないか、こう思いますが、これはどう考えられますか。
  230. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 そのとおりだと思います。
  231. 野呂恭一

    ○野呂委員 とするならば、昭和二十八年から発足した新しいこの恩給制度の中においても、国が保障し、正当な支払いをする義務のある恩給において、加算年の金額算入は七十歳以上という老齢福祉だけの措置でなくて、旧軍人というものが置かれた戦争公務の特殊性に立って、その精神的な損害の賠償として当然適用年齢というものを引き下げていくことが必要であり、将来においては全面算入すべきものではないか、こう私は考えますが、これに対してどうお考えになりますか。
  232. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生御存じのとおり、また、いま御指摘がありましたように、戦後、軍人恩給が復活しましたときには、旧制度というものよりは、あるいは旧制度そのものの復活ということではなくて、新しい制度ということで、いろいろなそのときの条件もあったと思いますけれども、加算年というものは一切算入されていなかったわけでございます。その後、加算年の算入につきまして、恩給年限を最短恩給年限に達するまでという条件のもとに、かなり入れられてまいりましたが、四十八年、昨年に至りまして、ただいまお話のありましたように、七十歳以上の方に対する加算につきましては、あるいはこれと同じような扱いをする妻子等につきましては、戦前と同じように金額そのものに反映するような改正がなされたわけでございます。  そういうふうないきさつがございまして、将来の見通し等でございますけれども、昨年の改正におきましては、一方におきまして、老齢者の優遇というような観点等もございまして、それが一緒になっていまのような改正になったわけでございますが、さらにより必要な方々なり、あるいはその年齢引き下げという問題につきましては、いま御指摘がございましたようなことを踏まえまして、これからも真剣に検討してまいりたいというふうに思います。
  233. 野呂恭一

    ○野呂委員 最後に、それではこの問題をまとめとして総務長官にお伺いし、お願いしておきたいと思うのですが、この加算年の金額算入は、軍人恩給にとっては本質的な問題だ、単にこれは戦前の恩給制度を復活して軍国主義と結びつくんじゃないか、そんなものではないので、恩給の定義が明らかにしておりますとおり、当然、戦争公務というその苛烈な環境の中で、生命の代償として働いてまいりました旧軍人に対して、これを支払うことが正当な支払いであると私は思います。  したがって、そういう根本にわれわれは立ち返って、この軍人恩給に対しての改善がなされなければならないと思いますが、総務長官のお考えを承りたい。
  234. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 私も前の戦争のときには、だいぶ長いこと兵隊に行っておりまして、ずいぶん仲間がいろいろと不幸な目にあっているのを体験しておるわけでございます。また、その遺族もたいへんたくさん知っておるわけでございます。いまの野呂委員のお考えはきわめて私も理解し、またそうした方向に進むべきものだと考えております。しかし、その場合に、特に兵、階級の下の人たち、やはりこの階級の人たちは、先ほど申し上げたように、勤務年限も非常に少ない、また、その当時の俸給もきわめて少ないわけであります。こうした人たちを、やはりある程度底上げをしていくということが、まずなされなければならぬことではないかと考えますが、慎重にただいまの御提案を検討さしていただきたい。  同時にまた、こうした問題の、三十万、四十万に達する受給者のことを考えまして、ぜひ当委員会においても、十分なる御理解の中で御指導をいただきたいというふうに考えております。
  235. 野呂恭一

    ○野呂委員 これは、もうお答えをいただかなくてもけっこうですが、検討してもらいたいということでもう一つ、軍人恩給について考えなければならぬ問題があります。終戦時から昭和二十八年まで、恩給制度が新しい発足を見るまでの間、軍人恩給は停止をされておりました。その停止期間中の恩給について、国は何らかの保障をすべきではないか。もし、この問題を裁判に提起したならば、裁判所はどう保障に対しての返答を政府側に迫るかわからない。もちろん裁判をやるなら、こっちのほうが問題があるんじゃなかろうかと私は思うわけでございます。  したがって、その停止期間中の七カ年の問題を、格差是正の形でも何でもいい、何らかの方法において保障していかないと問題が残されておるということであります。  同時に、このことは、沖繩におきまする元琉球政府の職員の恩給についても、昭和二十一年、わが国の恩給法からはずされて事実上停止されてきた。こういう退職公務員に対しましても、その間の損失補償は何らかの形で補てんすべきものであると私は考えておるわけであります。これも争われたならば、政府側は負けるかもしれませんよ、今度は。こういう点も考えていくならば、恩給局は停止期間中のこの恩給に対して、どう扱っていったらいいかということを十二分に検討しておいていただきたいということを、お願い申し上げておく次第であります。  最後に、当面する問題を申し上げなければ、きょう私が質問した意味がなくなるわけでございますので、最後の本論に触れて終わりたいと思うのであります。  恩給改善におきますスライドの問題と、それから当面する改善実施時期の問題でございますが、四十八年から言うまでもなく恩給年額の改定は、公務員の給与の改善率にスライドするという方法をとってきたわけでございます。ところが、恩給法の第二条第二項の調整規定で、御承知のとおり「国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動が生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案」してなさるべきこととされておるわけでございますが、この運用が一番の問題だと思うのでございます。  したがって、スライド方式がどんなものなのか、あるいはスライドに対するその他の国の例はどうかということを質問申し上げたいわけでありますが、これも、もう質問なしにいたしますが、とにかくスライド制をとっておるけれども、ほんとうに恩給改善の本質になっておるのかどうか。いままで格差是正が十分なされていないために、それを残しておきながら、ただスライドしたらいいのだということになりますと、これは単なる将来起こるであろう格差是正の歯どめにすぎないのだということに私はなると思うのであります。  同時に、この制度というものを、恩給法第二条第二項の規定のままでまだ解釈をいたしておるわけでありますが、これは当然、すみやかに法制化する必要がありやしないか。恩給の定義の法制化と同時に、このスライド方式というものをなぜ法制化されないのか、この点をまずお伺いしておきます。
  236. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 第二条の二には、いまお読みいただきましたようなことが書いてあるわけでございますけれども、恩給の問題につきましては、従来、恩給審議会方式等と称しておりますけれども、物価と公務員給与の間でスライドするという期間が何年か続いたわけでございます。したがいまして、給与水準と恩給水準の間には若干の格差がございまして、格差のままでスライドをしていくのでは、いつまでたっても実際の実質価値の維持にならないのではないかという御指摘もあるかと思いますけれども、先ほど総務長官も申し上げましたように、本年におきましては、その格差を本年と二年計画で補てんをしようということで、格差是正を含めたものを提案申し上げているわけでございます。  そこで、昨年四十八年になりまして、公務員給与そのものにスライドするということができたわけでございまして、本年もまた原案におきまして、公務員給与そのものにスライドするという形で御提案を申し上げておりますので、こういう実績を積み重ねておりますので、特にいますぐ法制化をしなければならないということはないのじゃないかというふうに考えております。
  237. 野呂恭一

    ○野呂委員 最後に、実施時期の問題でありますが、実施時期を十月一日にしておる根拠はどこにあるのですか。
  238. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 恩給は従来、これは十数年あるいは二十数年の歴史を持っておりますけれども、ずっと十月でございまして、そういう意味では、当初におきましては、三年あるいは四年の幅がございましたけれども、最近におきましては、ずっと毎年一回ということで十月一日の改正をしているわけでございます。そのほか財政的な見地なり、あるいは他の年金との問題なり、そういうものも総合的に勘案した上で、十月一日ということが毎年繰り返されてきているというふうに思います。
  239. 野呂恭一

    ○野呂委員 公務員給与の改善率にスライドするということは、人事院勧告に基づく公務員給与の改善策に即応する改善策なんだ、こういうたてまえをとっておるわけであります。ところが、調整規定の恩給法第二条第二項の「変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」、それがどうですか、法律をつくっても実施時期は十月一日。改善のための法律規定しましても、実施時期は十月一日だ。何がすみやかなる措置であるのか。恩給の意義について、いまさら申すまでもありませんが、正当な支払いの義務があるというなら、十月一日は正当な支払いの義務であるとはどうしても考えられないのであります。正当な支払いの義務を、十月一日にすることによって果たしておるとお考えであるか、この点ひとつ聞かしていただきたい。
  240. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 これは、先ほど申しましたような理由が幾つかございますけれども、これらを総合して、十月一日になっているわけでございまして、公務員給与の率に準拠をするということに昨年なりました以上は、公務員給与の実施時期とのずれが少なければ少ないほどいいというのは、それはそのとおりだと思います。  歴史的な経過の御説明をさせていただければ、かつては三年ないし四年くらいの差があったのが、四十七年までにはだんだん詰まってきて二年半であった、昨年に至ってその二年半が一年半になったというふうな経過もございまして、できるだけそういう点に努力をいたしておりますので、将来ともそういう問題につきましては、十分検討させていただきたいと思います。
  241. 野呂恭一

    ○野呂委員 要するに、二年半おくれておったのを、四十八年度の改善におきまして、一年これを取り戻すことができたわけであります。しかし、先ほど申し上げましたとおり、変動後の諸事情を勘案してということでありますから、あとおくれておる一年半のうち一年だけは、諸事情を勘案してという調整規定を認めていくならば、これは私、やむを得ないとするのでありますが、公務員の給与の改善が四月一日だ、こういっているのに、すみやかに改善しなければならぬということがうたわれておりながら、その調整規定に対して違反し、調整規定を十分に順法していない、同時にまた、正当な支払いの義務を怠っておると私は考えるのであります。それこそ受給者の権利をそこなっておるのではないか。しかも、その理由として、いろいろ問題を出しておられますが、たとえば中には、法律は改善をしても、その支払いのためには、いろいろな事務手続上の問題でどうも四月一日からということはできない、したがって、十月一日だというようなことを理由にしておりますけれども事務手続で受権者に対する権利を制約しているということは、これは私、許されないと考えるのでありますが、どうですか。
  242. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 野呂委員の御説は、現在の社会情勢等を踏まえます場合には、恩給受給者保護というたてまえからはきわめて当然の御発言ではないかと考えます。同時にまた、われわれといたしましても、この問題については、先般の予算編成のときにおきましても、この二三・八%の引き上げを中心にする今回の恩給改正そのものも、たいへんに皆さま方のお力をいただきながら、苦労してやっと金額が達成されたような状態でございまして、その時点におきまして、支給時期の繰り上げということは、他の年金その他についても全く考慮されてない、最近のまた一連の動向でございますので、よくそうした事情も踏まえて、皆さん方の御意見には謙虚に耳を傾けてまいりたいと考えております。
  243. 野呂恭一

    ○野呂委員 これがほんとうの最後ですが、厚生年金、国民年金が物価にスライドして一六・一%、この際改善したのであるが、それに対して恩給は二三・八%、さらにまた老齢福祉優遇策なども考えてやっておる、恩給は大幅改善率である、だから、恩給だけは、今度の実施時期の繰り上げに対しては該当しないのだといったことを、大蔵省あたりは考えておるやに承っておるのであります。これは全く問題にならない考え方であります。  御承知のとおり、物価にスライドして年金あたりは一六・一%の改善である。恩給はそれよりも低いのです。一五・三%です。だけれども、格差是正の七・三五があるではないか、老齢福祉があるではないか、それは問題点が違うのであります。いわゆる年額の改定におきましては一六・一%、年金は。恩給は一五・三%しか改善されておらない。とするならば、これは国民年金、厚生年金が実施時期を繰り上げたのでありますから、私どもは、恩給についても当然、この機会に実施時期を繰り上げなければならない、こういうふうに思うのでございます。  そこで、今国会でこの実施時期を繰り上げさせていくのだ、こういうことに対して総務長官はどういう御所見を持っておられるか。同時に、四月一日までに一ぺんにこの国会でやるというお考えは、これは当然無理だと思う。無理であるとするならば、段階的にいつの時点において、四月一日実施にまで持っていくのかという考え方を総務長官にお伺いして、私の質問を終わっておきたいと思います。
  244. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 野呂委員のたいへん重要な御質問でございますが、私もそういう問題について、もちろん恩給受給者の問題を踏まえて考えていかなければならぬということは重々了承しております。しかし、いまこの時点でいつ支給を繰り上げるかということ、さらに四月まで繰り上げるかということについての具体的な答弁をお求めいただいておりますが、なお私に検討させていただきたいというふうにお答えさせていただきます。
  245. 野呂恭一

    ○野呂委員 野党の先生方は、どうしても繰り上げをやるのだということを要求した。自民党といたしましても、それに反対であるということはどうにもぐあいが悪い。どうしていただけるかという問題、これは、ぜひ総務長官、大蔵省と折衝され、党と調整をとられまして、いまお話しになりましたお気持ちは、よく理解いたすのでありますが、ぜひとも今国会において、この問題の処理に当たっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  246. 徳安實藏

    徳安委員長 次回は、来たる二十一日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時二十六分散会