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1974-05-09 第72回国会 衆議院 内閣委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君   理事 加藤 陽三君 理事 小宮山重四郎君    理事 中山 正暉君 理事 野呂 恭一君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       越智 伊平君    大石 千八君       奥田 敬和君    田中  覚君       竹中 修一君    旗野 進一君       藤尾 正行君    三塚  博君       大原  亨君    木原  実君       吉田 法晴君    和田 貞夫君       鬼木 勝利君    鈴切 康雄君  出席国務大臣         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         内閣審議官   粟屋 敏信君         内閣審議官   小幡 琢也君         内閣法制局第二         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         防衛政務次官  木野 晴夫君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       丸山  昂君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 田代 一正君         防衛施設庁次長 鶴崎  敏君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         防衛施設庁労務         部長      松崎鎮一郎君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省道路局長 菊池 三男君         自治政務次官  古屋  亨君         自治大臣官房審         議官      横手  正君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   佐々木英文君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 中村 四郎君         運輸省航空局飛         行場部長    隅  健三君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   笠岡  喬君     田村 良平君   近藤 鉄雄君     三原 朝雄君   田中  覚君     前田治一郎君   三塚  博君     天野 公義君 同日  辞任         補欠選任   天野 公義君     三塚  博君   田村 良平君     笠岡  喬君   前田治一郎君     田中  覚君   三原 朝雄君     近藤 鉄雄君 同月九日  辞任         補欠選任   田中  覚君     赤城 宗徳君   服部 安司君     奥田 敬和君   川崎 寛治君     大原  亨君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     川崎 寛治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国土総合開発庁設置法案内閣提出、第七十一  回国会閣法第二三号)  防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律  案(内閣提出第四五号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、第七十一回国会閣法第二三号、国土総合開発庁設置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 それでは、総務長官がお見えでございますので、まず提案者としての長官に初めに伺っておきたいのです。  われわれの手元にいまありますのは、あなたのほうからいただきました資料を含みましたこれだけなんです。国土利用計画法案がきょう成立するが、御承知のような経過がございまして、この役所は、それに関連をしていろいろとやってもらわなければならない要素もたくさんあると思うのです。それにしては、何といいますか、去年の法案を、いまこれからやろうというわけなんで、その辺について、何か提案者として考える余地というものはなかったのですか。
  4. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 昨日、国土利用計画法案委員会を通過いたしまして、本日、本会議で了承されるというふうに聞いておりますが、その利用計画法が決定されましたら、われわれは、それにもちろん十分沿っていきたい。したがいまして、国土総合開発庁という原案で御審議を賜わるようにお願い申し上げておりますが、私らといたしましては、十分、国土利用計画法精神を踏まえまして、この精神が、国土総合開発庁において十分生かされるような方向で仕組みを考えております。  しかし、まだきまったばかりと申しますか、委員会の御審議が昨夜終わったばかりのところでございますので十分なるあれはできませんが、しかし、心がまえといたしましては、それに沿ってまいる考えでございます。
  5. 木原実

    木原委員 それは、私どもの事情も似たようなものだと思うのです。しかし。もしそれならば、地価抑制ということに一つの焦点を据えて、建設のほうでも、あれだけの画期的な論議がありまして、ようやく大部分の野党の間が一致をして、一つのかなり前進的な法案が出た。これに対する期待というものが、われわれにもあるわけですね。しかし、ある意味では、それとの関連の中で、国土関係についての施策を集中してやろう、こういう役所をつくろうということなんですが、それにしては、いわゆる国土総合開発法時代の、いわば関連の中で、この役所の構成や理念や考え方というものが出たわけなんですね。  そうしますと、精神を体してやるとおっしゃるわけですけれども、それならば、私どもとしても、これは、まず役所の名称から始まって、多くの分野について、これまた、あらためて当委員会におきまして、審議のやり方なり、あるいはまた精神を入れる入れもののあり方について、一ぺん与野党の間で相当な議論をしてみなくちゃならぬ、こういう感じがするわけです。ですから、そうなりますと、いまの段階で、これを去年のままでどうぞ、こうおっしゃられて出されましても、これは、ああそうですかと言っていただくわけにいかないんですね。ある意味では、もう少し政府のほうだって、立法府動きについて関心を持たれて、意のあるところを体してやっていくという姿勢にならぬものだろうか。もっとも、総理府長官は、貸し座敷みたいなものでして、責めるのは少し見当違いなんですけれども、それにしても、提案者ですから、それぐらいの心がまえ関係当局に対して指示をされて、もう少しわれわれが審議しやすいものを出してこられるようなことが必要じゃなかったのか、こう思うのですが、どうですか。
  6. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 木原委員の御指摘のとおりでございますが、いずれにいたしましても、利用計画法が昨日でございます。もちろん、そういうことを踏まえて、一応のプランは事務的にはございます。そうしたプランを、いまここで申し上げることが適当かどうかも、ちょっと私、判断に苦しみますが、いずれにいたしましても、この土地の問題というのは、きわめて重要であるということと、それからまた、このような土地の問題を、ただ放置しておくということは、日本社会の全体の一種の地くずれみたいなものを、精神的にも、またあらゆる面におきまして起こす。したがいまして、この問題を早急に取り上げていくという一番の基本の利用法が決定されつつあるわけでございますので、それに沿った事務的な考え方を一応はまとめてございますが、もし必要あらば、そんなようなことを申し上げて、御審議の御参考にしていただければとも考えております。
  7. 木原実

    木原委員 それでは、いずれにいたしましても、長官のおっしゃるとおりですから、腹を割って、せっかくわれわれも審議をするつもりですから、別の見解がありますけれども——しかし何も、緊急に土地の問題というものが必要でないと考えておるわけではありません。そうなりますと、これを、このまま審議をしてどうですかと言われましても、冒頭申し上げましたように、われわれといたしましても、いただきかねる分野がずいぶんある。  だから、われわれの手で修正を加えたり削ったりする作業をやるか、それとも、いままでの立法府動き等について御勘案を願って、いま一応のというお話でございますけれども、お考え方方向があるならば、腹を割って出していただいて、そして、それではよりベターなものはどうなのか、こういうふうにしていけば、われわれもやりやすいと思うのですが、どうでしょうか。
  8. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 その点につきまして、どういう形式で御審議を賜わるのが一番いいのかということも考えまして、多少内々には検討いたしましたが、本件につきましては、委員長並びに当委員会において、ひとつ方向を出していただければ、われわれとしては非常にありがたいわけです。  同時にまた、基本的に今後きまりました利用計画法が非常にいい方向だと私は考えておりますので、これを十分生かし得るような組織、仕組み、そしてまた、行動力のある新しい担当官庁というものを考えておるわけでございますが、これはひとつ、委員長並び理事会において御検討いただければ、私としては非常にありがたいと思うのですが、その点につきまして、いまここで、私の事務的に考えております問題について、二、三考え方だけを述べさせていただく程度でいかがでございましょうか。
  9. 木原実

    木原委員 これは委員長、当委員会としましても、相当の作業をやらなくてはならぬという感じがするわけです。これは、われわれその労をいとうものではありません。しかし、それにいたしましても、去年のこれを出してというのでは、われわれもなかなか食いつきかねるわけです。  そこで、いま長官の発言もありましたが、これは、ぜひ当委員会——これは一人の国務大臣を含む新しい庁を一つつくるわけですから、ほかの並みの設置法修正案等とは違いまして、われわれも相当慎重にやらなくてはならぬと思うのです。そのことを踏まえまして、当委員会でも十分な成案が得られるような御努力を、委員長にお願いをしたいと思います。  そこで長官、やや理念的なことを、少し伺っておきたいと思うのですが、この役所をつくられて、一体何をやろうとしているのか、国民の前に、ともかくこれだ、これをやるのだ、これを、まずひとつ提案者として明らかにしてもらいたいと思うのです。
  10. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この役所をつくることによって、まず、なさねばならぬことは、現在もうほとんど常識化しております土地の問題、それから同時に、土地暴騰を押えていくということ、それから、同時にまた、土地問題を中心にして、現在非常にふくれ上がっておる大都市過密状態、また一方における日本の農村の非常な過疎状態、こうしたような問題を、ともかくここら辺で一応安定的な状態において均衡を保たせるということ、同時に、地価抑制ということについては、いろいろ議論があったと思いますけれども、やはり取引に対して制限を加えていく、第三者的な機関を通すというような方向の中でこれに取り組むと同時に、地価公示制等も、新しい役所においてどんどんこれを前進させていく。いずれにいたしましても、地価暴騰をここら辺で食いとめていくということ、それから、国土の全体の配分及びその基盤の上に立って、もっと正常化していくということが一番大きなねらいでございます。  それと同時に、従来、総理府で担当しております災害対策等も、この際思い切って、国土総合開発庁に移管をしていくとか、あるいはまた、現在、非常に重要な問題になっております水資源の問題も、これを総合開発庁の中で処理していく。また、先ほどもちょっと触れましたが、過密対策に対しては、首都圏あるいは近畿圏中部圏等のいろいろな各ファンクションが総理府の下部にございますが、これも大都市問題として一括してこの新しい役所に持たせるとか、同時にまた、調査能力においては、予算の配分についても強力な行動力を持たせる。  いずれにいたしましても、従来ばらばら行政の中で土地の問題、過疎過密問題が、問題の解決のしようのないような形で非常にこんがらかってしまっておったわけであります。これを交通整理をいたしまして、強力にその問題に対してこの一省庁をもって全力投球をしたい、そうして、これを解決していく、そのような方向を、この役所の一番重要な役割りと考えております。
  11. 木原実

    木原委員 私は、問題は二つあると思います。長官いまお述べになりました、何といいましても、いまの暴騰を続ける地価に対して、抑制一つの強力な機関にしたい、そのたてまえの議論は、私ども反対ではございません。この点につきまして、いま建設大臣もお見えでございますから、後ほどとくと承っておきたいことが幾つかあります。  ただ、その前に入り口の問題ですけれども総務長官、きょう実は、行管長官にもお出ましを願って伺いたいと考えておりまして、行管のほうからも局長に来てもらっておりますけれども入り口の問題としまして、特に当委員会としては、いままでの流れからいたしますと、やはり非常に大きな問題の提起だと思うのです。つまり、この役所をつくる中身の問題ではなくて、いままで、私ども委員会が、政府側から受けとめてきた問題というのは、行政機構簡素化であった。全体として、行政分野の膨張に対してできるだけの抑制を加えていきたい。御案内のように、行管中心にしまして、臨時行政調査会でしたか、その答申もあり、この委員会としては、かつては一局削減であるとか、あるいは総定員法であるとか、あるいはかなり機械的とも思われるような削減方針が出されてまいりました。あまりにも、これは機械的過ぎはしないか、行政需要というものの実態を踏まえてもっと考えたらどうだというような議論を、われわれもついこの間までしていたわけですね。ところが、ここのところへ来まして、御承知のように、この庁も国務大臣を一人置きまして、かなり強力な役所一つ新設するということですが、これはつい一、二年前までは、当委員会流れとしては考えられない提案なんですね。  そうなりますと、一体いままでの行政機構簡素化していくという政府の基本的な流れというものは、まさに変わったのかどうか、こういうことをまず明らかにしてもらいたいと思うのです。これは行管局長見えておりますけれども国務大臣ですから、おそらく御見解がおありだと思いますので、ひとつ御見解を承っておきたいと思います。
  12. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 行政簡素化ということは、現状のような縦割り行政をやっておる、縦割り行政中心にする行政機構簡素化することは、私は当然だと思います。やはり簡素化をしなければ、そこに当然、縦割りでございますから権限の凝結があって、しかも、血の通わなくなるというようないろいろな問題もあるし、また、横との連絡がうまくいかないということも、従来十分にみんながわかっておる点でございます。一方、現在のような社会の発展そしてまた複雑化、いろいろな問題が出てきておる中におきましては、私は、もう縦割り行政だけでは受けとめきれない問題が山積していると思うのです。都市の問題一つとりましても、これは、とても縦割り行政の中では、何とも手の下しようがなくなっております。同時にまた、過疎問題にいたしましても、そうじゃないでしょうか。同時にまた、現在いわれている土地問題等を見ますと、これはもちろん、各省が縦割りの中で努力をいままでしたと思いますが、それがばらばらであって、少しもそれが集中的な政策効果をあげ得ないということも、すでに十分国民はわかっておるのじゃないか。  いま、この国土総合開発庁のような横割り行政機構をつくって、そうして、いま日本の最大の問題である土地の問題に取り組もうという考え方は、行政簡素化という観点から、十分認められてしかるべきものであるし、むしろ、こういうような横割り組織体をつくって、それに強力な権限を与えて持っていくということが、これからの行政府の基本的な改善への第一歩になるのじゃないか、私はそのように考えます。  そういう意味で、今回、御提案申し上げている国土総合開発庁というような横割り行政機構を、今後はもっと他の面にも広げていかなければならない、そのようにも考えておりまして、行政簡素化ということ、くどいようでございますが、国民から見て簡素化されることが必要であり、国民から見てその役所が、自分らの生活に非常に有効に働いているのだという認識に立つべきだと考えまして、その際に、こうした横割りの強力な機構をつくっていくということは、むしろ行政簡素化ということと同じような意味を持つのじゃなかろうか。私自身も、この新しい機構にたいへん新しい行政の息吹きを感じておりまして、私自身は、ぜひひとつ委員各位の御理解をいただいて、これを前進させていただきたいというふうに思うものでございます。
  13. 木原実

    木原委員 いま長官がおっしゃったことは、かつてわれわれがずいぶん強調したこととよく似ているわけなんです。ところが、それに対しましては、かつて佐藤内閣時代、そうじゃないと言うんですね。それはそうだけれども、しかし、どうもそういうことを言っていると、いつの間にか役所機構というものは膨大になってしまって、とても歯どめがきかない、だから、やや乱暴であるけれども、たとえば一局削減だとか、あるいは総定員法で何%か人員を切るとか、こういうことをやらなくちゃならないのだ。しまいには総理も、理屈はないのだ、ともかくこれをやらなければどうしようもないのだというようなやりとりが、実はこの委員会でもあったわけなんです。私は、長官見解は正論だとは思うのです。  そこで、しからば行管当局見解を、私はこの際、あわせて聞いておきたいと思うのです。どうですか。
  14. 平井廸郎

    平井(廸)政府委員 従来の行政管理庁と申しますか、あるいは内閣方針といたしまして、確かに佐藤内閣当時から先生御指摘のような、機構についてはスクラップ・アンド・ビルド原則、定員については、いわば不拡充の原則と申しますか、そういう考え方を基調として仕事をしてまいったことは事実でございます。その考え方自体は、基本的には、現在といえども変わっておりませんし、たとえば、そういう例といたしまして本年度の、四十九年度における査定の内容を見ましても、いわゆる局レベル増設というものは、一切認めておりません。総需要抑制というような情勢もございましたが、いわば必要最小限度の部の増設三にとどまっておる。それも、実質的には相当官職を振りかえて設置するというようなやり方で、実質的には、そういう原則を極力貫くべく努力をいたしてまいっておる次第でございます。  ただ一方で、総務長官指摘のように、いわゆる縦割り行政に対する総合調整機能の強化というものの必要性も、新しい公害問題、環境問題、あるいはこの種の都市問題等につきまして、最近非常に強く出てきていることも事実でございまして、こういう新しい行政需要に対応する機構というものも、最小限度必要ではないかということも事実でございます。そういう意味におきまして、四十六年には、完全な意味スクラップ・アンド・ビルド原則から逸脱はいたしておりますが、環境庁の設置ということも認めておりますし、今回、国土総合開発庁設置も、そのような趣旨で最小限度必要なものとして認めた。  ただし、この場合におきましても、純然たる機構の新設にとどまることは、極力回避いたしまして、御承知のように、経済企画庁総合開発局首都圏整備委員会近畿圏整備本部中部圏開発整備本部建設省宅地部等既存機構を極力統合いたしまして、実質的には機構の増大一拡張にならないようにという配慮をいたしたつもりでございます。
  15. 木原実

    木原委員 それにしても、私は、やはり朝令暮改に過ぎるような感じがあるわけです。おっしゃるように、既存省庁の部局を統合したり抽出して合わせたり、そういう御努力があることは認めるわけなんです。しかし、せっかく臨調で出された中には、われわれの主張を含めている。われわれがいままで主張してきましたことは、ともかく国民生活が非常に複雑多岐になってきているし、それに対応する行政需要もいろいろ新しいものが相次いでふえてきている、やはりそれに対応していかなくてはならないではないか、こういう議論を、ここでもずいぶんいままで主張してきたつもりなんです。  ですから、繰り返すようですけれども、いまあなたなり長官がおっしゃった考え方に、私どもは決して反対するわけじゃありません。むしろ、われわれが主張してきたことを、おっしゃられるような感じがするわけなんです。しかし、ついこの間までは、この委員会あげてそうじゃなかったわけです。それは、たてまえの議論としては確かにそうなんだ、しかし、そんなことを言って、少し甘い顔をしたら役所というものはふえてしまって、ともかく公務員の数がふえてしようがないから、大なたをふるってやるんだ。そうなったら、結局、たとえば国民が一番欲しておる行政サービス部門、抵抗の弱いところが削られて、どちらかというと、管理的な部門のようなものがやたらにはびこることになりはしないか、こういう警告なども申し上げたと思うのです。今度の場合でも、たてまえの議論は、私も賛成ですけれども、実際には一つ大臣を置いて、非常に大きな管理部門がいきなり出てくるという形をとっているわけです。だから私は、このお尋ねをするわけです。それでは、この役所ができまして、地価の五%でも一〇%でも下げることができるのか、納税者立場国民立場から見れば、まず、その約束をいただきたいような感じがするわけです。  昨年でしたか、経済企画庁物価局というものをつくったわけです。私は、これは何んだと言ったわけです。だから、この物価局というものをつくったら、たとえば物価の一%も下がるのか、こういう約束を求めたわけですが、これは、まあ少し極端な議論だというのですが、ところが、皮肉なことには、物価局ができたとたんに、御案内のようにインフレ、狂乱でしょう。何をやっているんだということになるわけです。それほど物価問題が大事なら、私は、おにいさんに申し上げたのですが、物価局などというけちくさいことを言わないで、経済企画庁をあげて、かつてあったように物価安定本部なり物価省なり、そういうものに全部やりかえたらどうだ、こう申し上げたこともあるわけです。しかし、そうもいきませんで、物価局でやります、こういう話だったのですけれどもお互い政治というものは結果において批判をする、そういう宿命を持っているわけです。物価局などというのは、手近な例ですけれども役所はできた、たてまえはりっぱだった、しかし、その裏づけは一つも与えられなかった、結果においては行政機構だけは、しかも大臣を含めて非常に膨大になっていった、それをやはりおそれるわけです。  だから、それについてのきちんとした歯どめ、ありようというものについては、総務長官だけの御責任ではありませんけれども、特に保利さんを長とされます行管などには、一つ流れがあると思いますから、この段階でちゃんとした理念のようなものを打ち出してもらって、これからはこれでいくのだ、こういう方向を出してもらいたいと思うのです。  と申しますのは、この委員会には、いま一つ経済協力大臣を置こうという案が出ているのですね。私も、この委員会に長年席を置いておりますけれども一つの国会の中で、二人大臣をつくる設置法審議するなどということは未曽有のことなんです。しかも、あとでお伺いしますけれども、そればかりじゃありません。総理の御発言によりますと、今度は中小企業省だ、住宅省だというんですね。まごまごしておりますと、この一年の間に大臣があと三人も四人もふえてくる。そうすると、これは国家行政組織上の問題として、インフレ時代だからといって、一体こんなにやたらに大臣というものが膨張していいのか、こういう問題がある。この点では、私は、伝えられました閣内における山中防衛庁長官の発言というものを、一ぺん聞いてみたいという気持ちもするわけです。だから、総理の発言が次々に、報道によりますと、思いつきだとかいろいろなことをいわれておりますけれども、それにしても、あまりにも思いつきが過ぎるのではないのか。  そうなりますと、この入り口の問題で、やはりここではっきりとしたこれからの行政機関行政機構のあり方についてのちゃんとした理念を示されませんと、ここで私どもが、必要だといって甘い顔をすれば、それじゃ経済協力大臣、これも、ちゃんと大義名分は立つわけです。中小企業省、これも大義名分はつくわけです。これは、つい数年前までは、私どもが同じく中小企業省をつくれという議員提案を、法案を、実はここに提起をしてきたいきさつもあります。趣旨には反対のしようがありません。しかも住宅省だ、こういうふうに考えますと、この辺できちんとした行政機構のありようというものについて、政府部内の統一した意思といいますか、きちんとした理念を出してくれませんと、当委員会としては、ああそうですかというぐあいには、なかなかまいらない、実はこういう関連があるわけです。ですから恐縮ですが、再度閣僚として御見解を承っておきたいと思います。
  16. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 木原委員のただいまの御指摘は、まことに適切だと私は思うのです。やはりわれわれも、こういうような新しい国務大臣を置こうというわけでございますので、ただいま御指摘のような問題がなおざりになっておっては、これは、もう全く話にならないと私は思います。   〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕 そういう意味で、ただいまの御指摘は、この国土総合開発庁設置の基本の線に十分生かしていくということを前提に私は考えたいと思います。  同時にまた、環境庁のような、公害問題というものが一つ国民的な、あるいは市民の生活にとってきわめて切実な問題になって、一つ権限を持って環境庁ができました。その結果は、やはり総量規制という、いままで考えられなかったようなことが、実際面として実施されてきている。そのことだけでも、私は、国民生活にとってはプラスではなかったかと思います。  私は、環境庁の活動も十分に評価されてしかるべきだと思いますが、この土地の問題、そしてまた資源の問題、特に水の問題、過疎過密の問題、こういう問題は、とても一省の一部局のよく担当し得るところじゃないわけでございまして、先ほどからもるる申し上げているように、そうしたものを総合的に集約して、そして横割り一つの大きな行政体をつくって対処しなければならぬ。同時に、それを指導する国務大臣が、ぜひこれは国務大臣というポストの中で——閣内においての発言、そしてまた、政府一つの重要な役割りを果たすものとして国務大臣をもって充てるということは、この重要な国土の問題というよりも、土地の問題、それからこれは同時に大都市の問題、農村の問題、すべてにかかわる問題でございますので、やはり私は、こうした——屋上屋というような御観察もあるかもしれないし、また、その結果がどうかという御疑念も十分わかりますが、やはりそれは、担当する国務大臣がその衝に当たるという、その責任を明確にしておく必要があるというふうに考えるわけでございます。  先ほどの御指摘は、ほんとうにわれわれも、そうしたことが設立後二年、三年たったときに、十分成果があがったということを、この議場において申し上げられるような努力をなすべきものであるというふうに考えております。
  17. 木原実

    木原委員 おっしゃることは、私もよく理解できますけれども、しかし、もう少し突っ込んで考えますと、建設大臣の御見解も聞いておきたいと思うのですけれども、今度こういう役所をつくると、経済企画庁の関係、建設省の関係、いろいろいままで大臣権限のもとにあった分野というものが統合されていくわけなんですね。それで、ことばじりをとらえるようですけれども、いま長官がおっしゃったような、たとえば水の問題なり都市の問題なりについても、それじゃ、いままでの建設省としては、手に余るものになったのかとお伺いしたいわけなんですね。  つまり、おっしゃるように、それは、これだけ大きな問題ですから、一省をつくって、この新しい大臣権限を与えられて、統括をして総合的にやっていこうというのは、これは、もうたてまえや趣旨の議論としては、そのとおりだと思うんですね。いつの場合も、そういう形で問題は出てくるわけなんですね。実際にもう建設省の事務の分野では手に負えなくなって、そうしてある意味じゃ、権限をそれぞれ出し合って一省をつくる、こういうようにも読み取れるわけなんです。  そうすると、逆に言うと、いままで建設省は一体何をやっていたのだ、こういうことにもなりかねないので、ひとつ建設大臣の御見解も聞いておきたいと思うのです。
  18. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 手に余るというようなことは、全く考えてはおりません。ただ建設省設置法に、木原委員も御承知のとおり示してあるとおり、建設省としては実施省、実施官庁という色彩が非常に強いわけでございます。そういう意味におきまして、実は一昨年来、土地が非常に急上昇してくる気配を見せた、土地政策を進めたい、こう申しましても、建設省としては、所管事項じゃない面が実は法律的にあったわけでございます。それと同時に、いろいろ道路の計画あるいは河川の改修の計画、都市計画、もろもろの国土整備の計画を進めるにあたりまして、国土状態がつまびらかじゃない。国土調査法という法律がございますけれども、この法律が一向に、国土全般をおおうまでには、二十年、三十年、百年もかかるというような速度でしか進んでおらないということでございまして、国費を投入していきます際にも、非常に過剰投資になっておる面がある。  そういういわゆる国土の基本的な政策、計画を企画するといったような面につきまして、やはり一省庁をおこして、そこで統括的にまず国土調査という面から国土の実態、これは、ほんとうに宅地なのか、いま、たいへん大きな問題になっておるわけでありますけれども、その実態がはっきりと、どこの省においても、つかめていないという問題が実は現実でございます。しかも一物四価と申しますか、一つ土地に対して、自治省でやっております固定資産税の評価額、それから建設省でやっております公示価格、それから大蔵省の相続財産の際に基準といたします価格、それから時価、こういう一物四価といったようなのが現実でございます。こういう面を、やはり基本的に改善をしていかなければならないということになりますと、どうしてもやはり土地に対する問題、それから水にいたしましても、さようでございます。農林省、建設省、通産省ということで、それぞれ各省のなわ張りに左右されて、国民が実は非常に苦労しておることも、木原委員承知のとおりでございます。  そういう面を、この際ひとつきちんとした姿でこれを断行していこうということで、先ほど来総務長官からお答え申し上げておりますような、国土総合開発庁というものをつくりまして、国土総合開発の計画並びに企画、そういう面に対する基本的なデータをきちんと把握して、そうして、それに基づいて、各省がそれぞれの行政事項を、計画的に科学的に進めていけるような体制をどうしてもつくる必要があるということで、この国土総合開発庁設置についての法案をお願いしておるということでございます。  したがいまして、この法案を作成するにあたりましては、建設省といたしましては、積極的に協力をいたしまして、中途はんぱで仕事が非常にしにくいというような面の部門を、実は国土総合開発庁に移しがえをして、そうしてより強力な力を発揮してもらえるようにということで、実は建設省としては、積極的に協力をするという体制をとった次第でございます。
  19. 木原実

    木原委員 建設省ができる中で、いろいろな論議があったのを、私も記録で読んだことがございますけれども国土の保全ということが、建設省が生まれる前に非常に大きな理念としてあったわけですね。それからまた一時期、国土省のようなものをつくるとかつくらないとかいう議論が、われわれのサイドにもございました。いま大臣のおっしゃった御熱意は、わかるわけですけれども、しかし、別のことばで言えば、事務量がある意味では、非常に複雑になり膨大になってきた、しかも態様もいろいろ変わってきた、そういう部門を、結局抽出して統合して、より効率的なことをやったらどうだとお考えになったというふうに、私はおことばを承ったわけですけれども、しかし、考えようによれば、それならば建設省なら建設省のワクの中で、もう少し何かやりようはなかったのか。つまり大臣を新しく一人ふやす、そしてこれには、別の問題が出てくると私は思うのですけれども、あえて一省庁をつくらなければならない必然性——問題の大きさや何かはわかりますよ。しかし事務量は、さまざまに態様が変わりふくれてくる、そのつどに少しずつ統合してやっていけば、これは、もう田中総理ではありませんけれども、次々といろいろなものが必要になってくるような感じがするわけです。だから、それに押されて、それじゃというので、ある意味では便宜そういうものをつくっていく、これでは、もとに戻るようですけれども、一体この行政機構は、どこまでいったら調子が合ってくるのだという心配があるわけなんですね。  ですから、ここであわせて聞きますけれども総理の御発言の中に、住宅省云々という御発言がございましたが、私は、はなはだ奇異に感じたわけなんですね。官房長官も、おそらく総理の意を受けられて、何か新聞報道によりますと、来年度にでも検討したい。この住宅省が必要だという見解総理から聞けば、おそらく皆さんのおっしゃったと同じことをおっしゃると思うんですね。私も、たてまえとしては、これだけやはり住宅問題が出ているわけですから、それに対応するきちんとした行政機関があって悪いとは言いません。たてまえとしては、みんなわかるわけなんです。しかし、そういう形で必要だ、必要だということでやれば、けじめがないという感じがするわけです。  そこで、お伺いしたいわけですけれども、これは総理の御発言ですから、おそらく思いつきや何かではないと思うのです。来年度にはやろうというわけです。しかし、かりに住宅省なるものが必要だというその観点に立ちましても、じゃ、ここでわれわれは、国土総合開発庁なるものの新設の問題について、いま審議をし、考えていこうとしているが、たとえば、住宅の問題の半分以上は土地の問題だと俗にいわれますね。そんなようなことを考えますと、それじゃ住宅省をつくろうという構想があるならば、この問題と関連をして、国土住宅省でもつくったらどうかという、これは、まあ思いつきですけれども、そういう議論だって、私は成り立ってくると思うのです。  ですから、私は御見解を聞いておきたいと思うのですが、一つは、事務量が非常に複雑になり膨大になってくる。しかも、国民の要求なり声なりというものにこたえていかなければならないというサイドの問題もある。それで一つ省庁をつくっていこう、それは、それなりに筋は通ると思うのですけれども、ただ、それについてのけじめというか、歯どめというか、行政機構全体のあり方の中で何かを考えていかないと、いまおっしゃったように、次々と総理のような御発想になってくると思うんですね。だから、もし住宅省をつくるという考え方が示されました場合に、建設省としてはどんなふうにお考えになりますか。
  20. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 建設省は、現行法によりまして住宅行政を担当いたしておるわけでございます。したがいまして、総理が具体的にどのようにお話しになられたか、私は直接は総理から承っておりません。しかし、この間も建設省から発表申し上げましたように、国民の三五%は住宅に対して不満を持っておるという調査も出ておるわけでございます。特に三大都市圏においては、住宅問題はきわめて大きな政治課題であることも、木原委員承知のとおりでございます。したがいまして、こういう国民の要望にこたえなければならないという気持ちが、総理のおことばになって出てきたと私は実は受け取っておるわけでございます。  したがいまして、建設省といたしましては、とにかく機構を考える前に、まずいかにして宅地を造成し、いかにして住宅に苦労をしておる諸君に対して、住宅に対する不満を解消していくかということに全力をあげなければいけない。それにつきましても、幸い四党間で土地利用計画に関する法律も、昨日委員会で通過をさせていただきましたので、これで一応の、建設省は従来非常に地価問題に苦労してきておるわけでございますが、その点についての一つの大きな母法と申しますか、一つの法律を制定していただける段階になってまいりましたので、これを基本にいたしまして、従来なかなか住宅が建たない、土地が提供されないという原因を排除してまいる。これは、地方自治体の超過負担の問題でありますとか、あるいは過密の問題でありますとか、いろいろな地方自治体が、もうこれ以上人口はふやしたくはない、これ以上の超過負担には耐えられない、そういう面の現実を改善してまいりますとともに、やはり現に自然増する住民もおるわけでございますので、そういう方々に対する住宅をどうしても建設してまいらなければならないということも、これまた現実でございますので、これらをあわせ考えて、建設省としては効果ある住宅対策をとり得ると、実は私は最近は確信をいたしておるわけであります。  その一例を申し上げますと、実は先般、江東地区を見てまいったわけであります。災害対策の面からもたいへん大事な場所でございますが、あそこはもう御承知のとおり、大きな工場がどんどん疎開をいたしまして、そのあとにいわゆる高層住宅の建築、この住宅をつくるにあたりましても、緑地、緑化という問題も相当考慮に入れまして、それから公共施設等も考慮に入れまして、いわゆる再開発というような面についての努力もいたしておるわけでございまして、今国会におきましても、宅地開発公団の法案でありますとか、あるいは土地の再開発の法案でありますとか、御提案を申し上げて、御審議をいただいておるゆえんでもございます。  と同時に、実は政府といたしましては、機構を幾つもつくるじゃないかという御批判でございますが、それにつきましては、できるだけ定員は入れかえ、組みかえということでふやしていかないという一つのブレーキを持って取り組んでおりますことも御理解をいただきたい、こう思うわけであります。
  21. 木原実

    木原委員 そうしますと、総理もしくは官房長官の新聞を通じての御発言を見ますと、つまり住宅省についても、かねて検討してきたのだ、こういう意味の御発言もありました。私も、おやおやと思ったのですが、ただ、そういう総理の構想がもしあるとすれば、もうこれは、来年度にも検討する、こう新聞紙上で発言をしておるわけなんですが、建設省としては、住宅省をつくる方向努力をなさる、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  22. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 私としては、総理にさらに意向を十分確かめた上で決心をしていきたい、こう考えておりまして、新聞で私も読みましたけれども総理のお気持ちも、先ほども申し上げたように、住宅問題が非常に大きな問題になっておりますために、総理のああいう御発言になったのか、その辺の事情をよく検討した上でこの問題に対処していきたい、こう考えております。
  23. 木原実

    木原委員 あなたが担当大臣で、住宅問題については、いまたいへん御見識を披露されたわけなんですが、ああいう総理の発言を聞いておりますと、設置法を扱う委員会のメンバーの一人としまして、本気になって——本気になってというと悪いのですが、まじめに審議をする気にならなくなるわけですよ、一体総理は何を考えているのだと。繰り返すようですけれども、ついこの一、二年前までは、行政簡素化が至上命題で、いろいろな言い方はあるけれども、ちょっとゆるめれば、役所というものはどんどんふえてどうしようもないのだ、これでは納税者に対して申しわけないと、こう言ってきた。当時の総理は、理屈はないけれども、ともかくこれは認めてくれとまでおっしゃったんですよ。それに対して私どもは、これはおかしいではないかと、こう言ってきたわけですね。だから、朝令暮改に過ぎやしないかというのです。このままで突っ走られたのでは——ちょうど、たまたま総理の発言をつなぎ合わせますと、この庁をつくる、つくらぬという問題が、何か入り口の問題のような気がするわけです。  ですから、この行政機構のありようという問題について、先ほども申し上げましたように、政府の基本的な理念、考え方佐藤内閣時代と変わった点があれば、変わった点をしかと明らかにして、この委員会において、きちんとした表明をいただきませんと——たてまえは、総務長官から御説明ありましたように、まことにりっぱなんです。私どもも、それに反対するわけじゃありません。しかし、ひるがえって、これまた別の観点からいたしますと、これは、たいへんなことになるぞという感じがするわけなんです。いっそういうふうに政府は変わったんだという疑念を抱くわけなんです。それだから、くどいようですけれども、繰り返しこの入り口の問題で御質問申し上げておるわけなんです。住宅省の問題にしましても、担当大臣が新聞紙上で見て、これからは総理の話も聞いて、まだ決心がついていないという意味のお話でございましたけれども、決心はこれからされるというお話でございましたけれども、それでは困ると思うのです。  私は、ここで、もう少し観点を変えて伺っておきたいのですが、皆さんも閣僚の御一員としまして、閣僚の場合、定員という問題があるのかないのかわかりませんけれども、簡単にということばが適切かどうかわかりませんけれども大臣がともかくやたらにふえていっていいものかどうか、こういう問題が私は出てくると思うのです。これは国家行政組織上のかなりシビアな議論を一度しなければならない。皆さん方がその担当者でいらっしゃいませんから、きょうは避けたいと思いますけれども、やたらに、まあ粗製とは申しませんけれども、少なくとも乱造されたのでは、閣議のあり方、それから閣僚の責任、内閣全体の意思統一をはかってやっていく、そういう面からも問題が出てくるのではないか、こういう懸念を抱くわけなんです。  それで、とりあえず閣僚としての御感想だけ聞いておきますけれども大臣というものは、二十人でも二十五人でも、必要に応じてふえていってよろしいとお考えになっているのかどうか、その辺を軸にして御感想をひとつ聞かせていただきたいと思いますが、どうですか。
  24. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、先ほど来申し上げておりますように、現在の社会情勢全般が、非常に大きく変化していると思います。したがいまして、現在あるような行政機構縦割り行政だけではカバーできないということは、これは、だれでも認めているところだと思うのです。特に国土関係の問題、土地問題等につきましては、当然国務大臣を充てて、総合的な調整機能、それから今度はこの内容としても、税制とか金融等についても相当主体的に扱える、これは先ほど御指摘物価局とはたいへん違う点だと思いますが、そうしたような権限まで持たせていくというふうに考えますと、現在のこの土地に対する国民の関心と、また同時に、土地から起こっておる日本社会の中における不平等というようなものを考えた場合には、どうしてもこれに対して対応する役所を早くつくっていかなければならぬというふうに私は思うのです。  そういう意味で、ただいま御指摘のように、国務大臣がざらざらとたくさんできるのはどうかというような御質問でございますが、やはり行政は、国民のニードに沿っていくべきものではないか。こういうような横割り行政のシステムが、環境庁に始まって今度の国土総合開発庁という御提案申し上げているような役所、これができてくると、これからあとは、やはり従来の縦割り行政から基本的に横割り行政的な官庁組織行政機構というものが絶対必要だと私は思っております。そういう意味で、そのような方向に今度は進むべきだと私は思っておりますので、その進展の度合いに応じて、あるいは国務大臣をどうするかということも、その中で考えていっていいことではなかろうか。同時にまた、縦割り行政の一部が廃止されることだってあり得るわけでございます。   〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕 そのような、一つの変化の時代の中における行政機構のあり方というものについては、繰り返して申し上げますが、横割り的なこうしたようなシステムが必要だ、これにどんどんと移行していく世代であるというふうに私は認識しております。
  25. 木原実

    木原委員 私は、一般論しかお述べになれないお立場ではないかと思いますので、了承いたしますけれども、しかし、こういう形でどんどん役所ができていく、大臣がふやされていく、これは、立法府立場から見ますと、やはり行政権の基準のない、拡大の道を歩くのではないか、こういう憂慮を抱くわけなんです。そうなると、私は、立法府の一員としまして、こういう形で、ある意味では行政府の機構権限というものが、おそらく基準や歯どめのないままに、必要だからという形でふえていっていいのかどうか、こういう問題が残ってくると思うのです。確かにおっしゃるように、行政というものは、国民のニードによって、それに対応していくような姿でふえていく、あるいはまた役所等が新設をされていっても、これは国民の声にこたえていく道だ、行政サービスを拡大していくんだと、確かにその面は正論だと思うのです。それを否定するものじゃありません。しかし、それにしても、一つの限界なり歯どめというものがないと、それじゃ行政権がやたらに、ということばが適切かどうかわかりませんが、ふえていって、何でもオーケーかという問題もやはり残るわけなんです。  ですから、これは、突き詰めて言えば、立法府立場から見て、行政府のありようについて、かなりシビアな議論もしてみなくちゃならない。また、いま総理のいろいろの御発言が、行政機構の問題についてあるわけでありますけれども総理の真意というものをきちんとただして、もしわれわれが、それについて了解なり納得なりがいくものならば、それは、おっしゃるように、国民の声にこたえ、いまの行政需要にこたえていろんなものをつくっていくということについては、やぶさかではございません。しかし肝心かなめのところは素通りをしていって、これも必要だ、あれも必要だという形で問題が出されてきているように、われわれとしては、受けとめざるを得ないわけなんです。  そこで、これは委員長にお願いでございますけれども、この設置法もそうでございますけれども、この委員会には、この国会の中で少なくとも二人の大臣を新設するという法案がかかっているわけですね。一つ国土総合開発庁、いま一つは経済協力大臣、そして御承知のように、総理の御発言の中で、近い将来に住宅省もしくは中小企業省、こういうようなものをつくるのだ。相次いでいるわけですね。そういう行政府の責任者の発言がありながら、ああそうですかと言うわけには、なかなかいかない面が立法府としてはあると私は思うのです。適当な機会に総理の御出席をいただいて、それらを全部くるめて、一体、総理自身が、行政府のあり方、行政機関のあり方についてどのようなお考え方を持っているのか、真意を明らかにしてもらいたい。そういう機会をぜひつくっていただきたいと思うのです。  それからまた、私は、冒頭論議をいたしましたように、当委員会ではついこの間まで、行政簡素化ということが至上命題だという形で、政府から絶えず問題が出されてきたわけなんです。しばしばこの委員会の中でも論議になりましたことは、一局削減の問題であるとかあるいは総定員法の問題であるとか、そういう流れがあったわけですね。ところが、その考え方は生きているのだという御説明が、長官行管のほうからもありましたけれども、しかし、それが生きていながら、同時に新しい大きな省庁というものが、次々につくられていく方向での構想が打ち出されている。そのかね合いというものは一体どこにあるのだ。これらの点は、私はやはり行政府の最高の責任者から真意をただして、そして、この問題の審議に入るべきではないのか、こういうふうに考えるわけです。ひとつ委員長のお手元で手続的なお計らいをお願いしたい、このように思います。
  26. 徳安實藏

    徳安委員長 理事会で相談いたしまして、決するようにいたしますから……。
  27. 木原実

    木原委員 それでは、この問題をもう一つだけ念を押しておきますけれども、これは建設大臣に、先ほどの住宅省の問題でございますけれども、ひとつ腹を割ってお話をいただきたいと思うんですけれども、私ども総理の真意がどこにあるのかわかりませんが、推測をすれば、大臣と同じように、住宅問題がこれだけ深刻かつ重大な問題になってきている、しかも、この住宅に関しては、さまざまな複雑な問題もからんできている、ある意味では、手詰まりという側面もある、それに対して積極的に行政面でアプローチをしていく、そのためには、そこにいろいろな力を集中して、住宅問題解決の役割りをになう省を一つつくりたい、こういうたてまえのお話というのは、私どもも、その範囲の中においては、たいへんに賛成ができると思うのです。  ただ、それにしても、先ほど申し上げましたような問題のほかに、建設省としていままでやってこられたお仕事の中、それからまた住宅問題は、建設省の中でもかなり大きなウエートを占める仕事になっているわけなんですが、総理の意向というものが明らかになれば、建設省としては、当然検討をされるわけなんですが、住宅省というものを、この際それではつくっていくほうがベターだ、建設省のいままでのお仕事の実績を踏まえて、そういう方向に踏み切れますかどうか、いまの段階でのお考え方を聞いておきたいのです。
  28. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 戦後、荒廃した国土の上に、住宅政策によって今日一応の、先般の総理府の発表によりましても、あき家率が五%という段階にまで住宅建設が進められてきておるわけでございます。この間、建設省として全力をあげてきたわけでございますから、住宅政策のある程度の実績はあげてきておるわけでございますが、これ以上の、やはり国民の住宅に対する不満が三五%もあるという実態にかんがみまして、この三五%の不満を速急にやはり解決していかなければならないという責任が実は建設省にあるわけでございます。  したがいまして、私どもとしては——昭和四十七年、四十八年という両年度にわたりまして住宅の、特に公的住宅の建設の進度が非常にダウンをしてきたわけでございます。いろいろ理由はありますけれども、極端にダウンしたわけであります。それらのいろいろな原因、よって来たる理由等も検討いたしまして、やはり宅地開発公団でありますとか、あるいは都市の再開発の法案でございますとか、あるいは農住関係の制度でありますとか、いろいろ手法をきわめまして、国会に御審議をいただいておる次第でございます。したがいまして、私といたしましては、特に今国会において、土地に対する母法とも申すべき土地利用計画法がまず制定をされますことによって、この住宅問題については、相当積極的な実施の成績があげ得るものと実は考えておるわけでございます。したがいまして、おそらく総理も、そういう事態を急速に解決するためには、一つの省をつくって国務大臣を置いて、速急に国民の要望にこたえるというお気持ち、と同時に、建設省に対する叱咤激励と、実は私は新聞を見たときに受け取ったわけでございます。  したがいまして、先ほどもお答え申し上げましたとおり、総理の意中も十分お聞きした上に、私どもとして現在やっております面も、よく総理にもお話を申し上げまして、住宅省をつくったほうがいいのか、現行のままでも十分やっていけるのか、その辺のことをきわめていきたい、これが率直な私の考えでございます。
  29. 木原実

    木原委員 叱咤激励ということは、おまえたち何やっていたのだということにもなるわけなんで、建設省として一言あってしかるべきところなんです。私どもも、建設省が取り組んでいる、たとえば住宅問題についての取り組みが万全だとは申しません。しかしながら、それがすぐ住宅省という一省をつくることに短絡していっていいのかどうかということについては、首をかしげざるを得ないという立場なんです。  ましてや、まさに審議をこれから始めようとするこの国土総合開発庁設置法、この新しい役所に、われわれがもし期待するものがあるとすれば、やっぱり最大のものは、長官もおっしゃったように、土地の問題について地価抑制を徹底し、そのことによって、住宅問題を解決する一つの基盤をつくることだ、こういうことに帰すると思うのです。そうなりますと、やはり土地の問題について、めどがつくということは、住宅問題について半ばめどがつくことにもなる。それだけのものを背負う役所が、まさにできようというならば、どうしても住宅省というものを、独立させたいお考えがあるならば、これと一緒にやったらどうだというのは、当然私は出てくる考えじゃないかと思うのです。  これは、私もまだいま思いつきの段階ですから、とやかくのことは言いません。総理の思いつきよりも、私どもの思いつきのほうがより政府的じゃないかと思うのですが、どうも場所が違ったような感じがするわけなんです。われわれが押えていて、総理が何をやるのだやるのだ、こういうわけで、だから、インフレ内閣だなんていわれることにもなるわけですが、この点につきましては、私は、非常に重大な問題だと思うのです。一つには、行政機構のあり方ということにも関連をし、一つには、やっぱり住宅問題を踏まえて、いままでの行政上の仕事のあり方全体が問われるという側面があるわけです。それだけに、住宅の問題は、役所をつくればいいという問題じゃないと思うんですね。  冒頭にも申し上げたように、役所はできたけれども、結果においてはどうにもならなかったでは、これは、もう済まされないわけですから、大事なことは、やはり具体的に国民に安い土地を、これから安心をして住める住宅を大量に供給することができるかどうかということにかかっているわけなんですから、機構の問題とか大臣を一人ふやすとかどうとかいう問題ではなくて、何がやれて何がやれないのだという問題を絶えず明らかにしながら、必要なものを求めていく、こういう姿勢であってほしいと思うのです。  ですから、建設大臣のいまのお立場で、なかなかはっきり言いにくいような側面もあるかと思うのですが、やはりもっとこの住宅問題についての、き然とした建設省の態度というものを聞きたかったわけです。もう一度御決意をひとつ聞かせてください。
  30. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 木原委員の申されるとおり、いかにして住宅を建てるかということが、最大の課題であるわけでございまして、実は、住宅の建たないよって来たる理由が幾つか、先ほど申し上げたとおり実在してきたわけでございます。それは土地の問題でございます。価格の問題もあるわけでございます。こういう問題に対して、国会のほうでも、今回、明快なる結論を出していただけるということでございますので、そういう面を基礎といたしまして、私どもいただいま国会に提案をいたしております宅地に関する関係法案でございますとか、あるいは都市再開発の新しい手法を盛った法案でございますとか、そういう点を十分に駆使いたしまして、いかにして住宅建設を促進して、国民の住宅に対する欲求不満を解消していくかということが、私どもに課せられた至上命令であるということで、全力投球してまいりたいと考えるわけでございます。
  31. 木原実

    木原委員 繰り返すようでございますけれども、いま議題になっております設置法をはじめといたしまして、相次いで大臣を新任する省庁設置するという動きが、急を告げておるという状態でございます。しかしわれわれは、この委員会としては、当然のことかと思いますけれども、なかなかああそうですかというぐあいに、政府側の考えを承って通すというわけにはまいらない要因が多々あるということだけは、ひとつ政府側として胸にとめておいていただきたいと思います。私どもとしては、行政府のあり方、それから国民の要望、それにこたえ得る行政の効率的な運用、いろいろな面で、これからも論議を重ねてまいりたいと思います。  そこで、少しずつこの法案の内容に入っていきたいと思うわけでございますが、まず、この役所新設にあたって、長官の御説明もございましたけれども、まず何よりもアプローチをしていかなければならないのは、やはり暴騰を続ける地価抑制するということにかかってくると思うのです。  この法案の中に、この役所がやるべき幾つかの問題が列挙されてございます。この一つ一つについても、われわれは問題があると思いますけれども、何よりも、もしこの役所が新設をされるという形になれば、狂乱を続ける、もう異常な、社会的にも諸悪の根源といわれる地価暴騰に対して、どれだけの抑制効果をあげることができるか、そういうことが、新しく成立が予想されております国土利用計画法案の運用等とも関連をして最大の問題ではないのか、こういう観点から、幾つかお話を承りたいと思うのです。  つい先日も、四十九年の地価の公示がございました。報道されておりましたように、また幾つかの論評がございましたように、私どもとしましても、おおむねの予想はいたしておりましたけれども、全国平均で三二%をこえる地価の文字どおりの暴騰があった、しかも四十七年に続いて三〇%台の地価騰貴が続いておる、これは、まさに異常なことだと思うんですね。  これは、いろいろな原因があると先ほどの御発言にもございましたけれども、まず、こういう急速な暴騰を来たした原因を、主要な点を幾つかあげていただきたいと思うのです。原因をまず明らかにしてもらいたいと思うのですが、建設大臣、いかがでしょうか。
  32. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 やはり、価格は需要と供給というところから生まれてくるわけでございます。まず、宅地の供給と需要との間に大きなアンバランスができたというのが、一つの原因に数えられるわけでございます。それから一昨年以来の過剰流動の資金、これがその土地の買い占めというのに流れ込んで、仮需要をあおったというのが、その一つであろうかとも考えられるわけでございます。と同時に、先行投資と申しますか、いわゆる投機的に、金融がゆるんだということで、土地の購入資金として銀行が融資をした、こういう問題が地価の異常なる騰貴をもたらした、こういうふうに考えておる次第でございます。
  33. 木原実

    木原委員 ちょっと私は、ここでひとつ具体的なことを申し上げまして、関係当局の善処を求めたいことが一つあります。   〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕  よく道路が開設をされるとか、あるいは鉄道が敷かれる、こういうことになりますと、その周辺の土地が急上昇することがあります。あるいはまた、ある意味では思惑買いのようなことが行なわれて、その周辺の地価が著しく騰貴をする、こういうことがあるのです。ところが、私がいまここで御指摘申し上げたいと思いますことは、それに類似をすることなんですけれども、逆に、買い占められた土地の上を新しい鉄道が線を曲げて通る、こういうような事例が実は起っているわけなんです。  そこで、きょう運輸省のほうからも来ていただいておりますので、私は、事実を申し上げまして、善処方をひとつ要求したいと思うのですが、千葉県営鉄道、これの事業の免許をやりましたのは、いつでございましたか。
  34. 中村四郎

    ○中村説明員 千葉県におきまして、県営鉄道として千葉ニュータウンの足の確保と申しますか、輸送を果たすために、都営十号線と直結いたします鉄道の免許申請が出てまいりまして、昨年の十月に、運輸審議会の答申をいただきまして、免許した次第でございます。
  35. 木原実

    木原委員 その際は、この路線その他につきましては、もちろん十分お調べになりましたですね。県営鉄道ですから、県のほうでいろいろ計画が行なわれてきたわけですけれども、鉄道の路線その他につきましては、十分な御調査をなすって免許されたんですね。
  36. 中村四郎

    ○中村説明員 鉄道の免許の場合には、自動車の免許と異なりまして、自動車の場合は、道路というものを用いるわけでございますが、鉄道の場合には、路盤なり線路の敷設ということに相なっていくわけでございまして、したがって、免許の際には、当該申請にかかわる路線について、起点、終点それからおもな経過地、これは市町村単位であらわされるわけでありますが、これらを踏まえて、輸送目的にかなった輸送経路と申しますか、路線が選定されているか、それから申請者の資力なり能力なりあるいは計画、こういったものを検討いたして免許するわけでございます。  したがいまして、免許後におきまして、申請者側といたしましては、具体的なルートの選定、それから線路の敷設、こういうことにつきましては、地方鉄道法十三条の規定によりまして工事施行の認可申請、この場合に、線路実測図その他の書面が出てまいりまして路線が確定する、こういう段取りに相なっております。
  37. 木原実

    木原委員 そうしますと、路線の敷き方というのは、民営の場合は、民営のほうで出してきたものを、つまり工事その他の法に基づく、あるいは令に基づく条項にかなっておれば、路線のあり方、輸送目的にかなっておるかどうかというだけで免許されるわけですか。
  38. 中村四郎

    ○中村説明員 具体的な路線がどの地点を、地図の上に投影された形で確定するかということにつきましては、免許段階後の工事施行の認可という処分で確定するわけでございます。
  39. 木原実

    木原委員 端的に申し上げたいのですが、こういうことなんです。路線のことについて千葉県の県営鉄道、関係の地元に対しまして、いろいろな説明があったわけですが、著しくそれが変更されたものが出てきたわけです。それを調べてまいりますと、曲がっていった路線の方向に、ものすごい土地の買い占めが行なわれているのです。どう考えましても、買われた土地の上を走るという形で路線が決定をされる、こういうことなんですね。  地図を見ていただけば、どなたにでもこれは一目りょう然のような形なんですけれども、詳しいことは申し上げませんが、当初いろいろと説明をされておりましたのから、だんだんと決定の段階が近づくにつれて線路が変わってまいりました。いま敷かれようとしておりますのは、第一種の居住地域、住宅地域の中を通るようなかっこうになっているのです。そして新しい、これは千葉県鎌ケ谷市の中沢という駅をつくるのですが、その周辺がものすごく買われているわけなんですね。  私どもが調査をいたしましたところが、免許がおりましたのが、昨年の十月とおっしゃいましたが、一昨年の暮れあたりから昨年の二、三月ごろにかけまして、膨大な敷地が買われた。私ども調査をいたしますと、まず大成建設が七万九千六百七十二平米、約二万四千坪でございます。それから御案内の北総鉄道の関係が二十九万五千百平米、競合する電鉄であります京成電鉄が六万四千三百八十一平米、同じく京成不動産が一万九千百七十三平米、新京成電鉄が八万四千七百六十三平米、こういうふうに土地が買われております。しかも当初の坪当たり単価の三万円前後が、終わりごろには、いつの間にか十万円になってきている。しかも県営鉄道は、これらの業者が買った土地を、これから用地として買収をする、こういう関係になっているわけです。しかも土地を買われて、宅地を造成したりなんかしているのですが、その方向方向に線路が曲がっていっているというのです。そんなことはありませんと県は言うわけなんですが、それにしちゃあまりにも便利がよ過ぎるじゃないか、これは、だれしも抱く疑問なんです。  ずばり申し上げれば、そういう土地の買い占めと関連をする一つの政治路線として、県営鉄道が敷かれていきつつある。これは、もう地元に住んでおる住民の方たちは、そんなことは日常のことですから、感覚的にすぐわかるわけなんです。何をやっているのだということは、すぐわかるわけです。それが公然とまかり通っている。  もっと申し上げますと、ここの市長さんのお宅が、新しく新設される駅の近くにあるとか、あまり言いたくありませんけれども、地元のそういう自治体の責任者の人たち、有力者のところどころに、ちゃんと鉄道が行くようになっている。そうしますと、その周辺の土地はまた一段と上がる。これは私、非常に大きなスキャンダルじゃないかと思うんですね。  県のほうをただしますと、一体そういう路線の最終決定をするこの計画は、あらかじめ漏れていたのではないか、こう言って追及いたしますと、そういうことはないと言う。ところが、だんだん調べますと、幾つかつくりました、官庁でいう公表しない文書が、一通か、どこか行くえ不明になっているというようなことで県庁の中では騒いでいる。そういうようなことが、実はまかり通っているわけですね。  したがって、鉄道が入ってくるから便利になるから土地の値段が上がる、これは、いままでもあり得たことですね。それを今度は、もう意識的に計画的に、しかも私どもが許せないのは、大成建設というような大手、もしくは京成、新京成というような、同じくやはり鉄道で、鉄道関係についてはよく内情がわかり合うような企業もしくはその子会社が、その計画を予知して、競って土地を買い占めた。そして、この路線が、従来住んでおられた方々の静かな住宅地の中なんかを、傍若無人に通っていくというかっこうになるものですから、それはもう従来住んでおられる住民の方たちは、これは騒音問題その他で、何だという声もあがる、こういう形のものが錯綜してきているわけです。  そういうような状態がわかってきていてなおかつ、それは免許をしたのだからやれ、この路線はいろいろ検討してつくったのだろうから、このままおやりなさいと言うわけには、私どもとしてはなかなかまいらないと思うのです。監督官庁として、免許を出した当局として、私の要求したいことは、この実情をぜひ詳しく調査をして、かりそめにもそこにスキャンダルやもしくは住民に迷惑を及ぼすようなことや、不当な地価の値上がりを誘発するような、しかもそれが、特定の企業の膨大なもうけにつながるような、それに沿って鉄道の路線が動いているというようなことは、厳密にひとつ調査をしてもらいたい、その上で必要な措置をとってもらいたい、このように考えるわけですが、どうでしょうか。
  40. 中村四郎

    ○中村説明員 鉄道の路線の設定にあたりまして、ただいま先生が申されましたような、一部の特定のものの利益のためのみを考えた路線の設定ということは、おかしな話でございまして、また、そのためにルートが所期の交通目的を果たす使命から逸脱して、御説のように曲がりくねるというようなことに相なる場合には、私どものほうとしても、そういうことを認めるという考えはございません。   〔野呂委員長代理退席、小宮山委員長代理着   席〕  ただ、私どものほうの基本的な考え方としては、多数の方の輸送需要に対応するルートであるということを基本としまして、これが地形上あるいは技術上、資金上、それから地元の住民の方への影響、こういうものを含めまして、全体調和された姿で、本件について申し上げますと、千葉ニュータウンの足を確保する、それを本八幡まで延伸される都営十号線と直結させる、こういう観点からその内容を判断してまいりたい、かように考えております。
  41. 木原実

    木原委員 ついでに申し上げますと、先ほど私が指摘をいたしました、大成建設以下五社が買い占めました土地の合計は五十四万三千九十平米です。そして将来、路線に必要な面積、これは県営鉄道と御承知のとおり北総鉄道があるわけですが、両方合わせましてわずかに五万六千平米です。北千葉ニュータウンから鎌ケ谷総合駅までの路線の四割が、すでに買い占められている、こういうことですから、たいへんな買い占めが行なわれていたと私どもは判断せざるを得ないわけです。それから本八幡につないでいく。当初何年か前に関係の住民の人たちに対して行なわれておりました説明と、がらっと変わってきたわけですね、路線、あり方その他が。その変わったことについては、県営鉄道の当局者からは、一言の説明も地元にはない。それだものですから、よけい疑惑を生むわけです。  私としましては、住民の中にある意味ではそういう疑惑を生み、それからまた土地の値上がりを見越してというよりも、みずから値上がりをあおるような形での大きな土地の買収が行なわれ、しかも、どう考えても鉄道の路線が、その方向に沿って動いていくという疑惑がある以上は、少なくとも現在の路線については、白紙撤回をして再検討するなり何なりの措置が必要であろうと考えているわけなんです。そういうことですから、先ほど申し上げましたように、十分御調査を願って、どこまでも合理的な、それから特に最近のことでございますから、住民の皆さんの便宜ということ、あるいはまた必要以上の公害その他のことをもたらさないような措置、そういう措置を加えた路線をつくるように、もし指示できるものなら指示していただきたい、こういうふうに考えるわけですが、再度ひとつお考え方を聞かしてもらいたい。
  42. 中村四郎

    ○中村説明員 先ほど申し上げましたように、ここの県営鉄道の今後の路線につきましては、これから工事施行の認可申請というものが出てまいりまして、路線が具体的に確定してまいるわけでございますので、その際、ただいま先生申された点を踏まえまして検討してまいりたい、かように考えております。
  43. 木原実

    木原委員 それでは、この問題はこれぐらいにしまして、建設大臣、先ほどの話にまた戻りたいと思います。どうもありがとうございました。  いまお話を申し上げましたように、これは一つの事例だと私は思うのです。新しい国土利用計画法によれば、著しく地価が急騰するような地区に対しては、たとえば規制地域として指定することができるというようなことになるわけですから、もしこの新法が適切に運用されていけば、おそらくこういう問題についても、何らかの措置ができるのじゃないかと思うんですね。その点では、私は、やはり一つの大きな前進があるような感じがいたします。  ここで伺っておきたいのですが、もしこの法案がこの国会で成立をし、運用の段階に入るのは、報道によりますと十月とかあるいは十一月ごろ、こういうようなこともいわれておりますが、それはともかくといたしまして、この法案が運用される段階では、この地域に対して、たとえば都市計画地域ですから、さかのぼって規制の措置がとれるというようなことになるのでしょうか、これはひとつ官庁の方々に伺いたいのです。
  44. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 いま建設委員会で採決されました法律によりますと、法律制定後の土地取引規制をいたしますので、本則として取引規制はさかのぼることができません。  ただし附則によりまして、昭和四十四年一月一日以降の取得の土地につきまして、遊休地であるということになれば、その遊休地の土地に対して、行政上の介入をいたすことができるようになっております。
  45. 木原実

    木原委員 行政上の介入ができるというのは、遊休地ということに限られるわけですね。たとえば使用目的のはっきりしているような土地については、さかのぼることができない、そういう解釈ですか。
  46. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 そのとおりであります。
  47. 木原実

    木原委員 それでは、話をまた少し移しますけれども、先ほど大臣から地価の急騰の問題について、幾つかの御提起がございました。この中で、一つだけ、ここでお伺いしておきたいことがあるのですが、地価の公示という問題ですね。確かに一つのメルクマールになっておることは、間違いないと思うのですが、この制度は、御承知のように、地価を公示することによって、地価安定の一翼をになうんだということで制度としては発足したと思うのです。しかし、確かに一つの目安を与えてはくれますけれども、実際の運用は、どうやら法の趣旨に沿わない方向に動いている側面が多いのではないのか。つまり、暴騰を続けた地価のあとを追認する、あとを追って表示をするというような結果になっているのではないか、あるいはまた逆に、公に表示をされた地価は、この程度ですよということで、いわば下限の下ささえの役割りをしているように使われている。ある意味では、地価の急騰ぶりが乱調子ですから、事実上地価の表示制度そのものが、一つの限界に突き当たってきているのではないのか、こういう感じがするわけですが、地価の公示制度のこれからの運用について、何かお考え方がありましたら、示していただきたいと思います。
  48. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 確かに、この制度は、発足して日も浅いために、いろいろな御批判を受ける面が現実に出てきておることは、私どもも十分承知をいたしておるところでございます。  しかし、三十七万平方キロの国土のうち、市街地にわたりましてその土地の価格の実態というものを、ある一つの基準に乗せてとらえるということになりますと、実は固定資産税の台帳面積に載っております評価額というものがあるわけでございますけれども、これも御承知のとおり、三年おきということでございますために、その土地の価格というものがどういうふうに動いているのかということを一目でわかるようにしよう、そうして将来の土地対策の重要な参考資料にしたい、こういうことでこの制度がスタートしたことは、もう御承知のとおりでございます。たまたま昨年、異常物価の高騰と同時に、土地の異常なる上昇もあったわけでございます。したがいまして、高い土地の価格をあとから追認するという結果になりましたことは、もう御指摘のとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、公示価格を発表する際に、実は一月から三月までの分を、同じ起点で速急に調査を進めまして、これも実は一緒に発表をいたしておるわけでございます。したがって、この昨年一年分の指標とそれから一月から三月まで、ぎりぎりの線まで数字をつかまえまして発表いたしました傾向と、両方参考にしていただいて、今後の施策に資してもらいたい、こういう考えを持っておる次第でございまして、これは本法案が通りますと、国土総合開発庁のほうに、この仕事は移管することになりますけれども、そういう意味においては、画期的な土地政策の基本になっていくものと確信をいたしておるわけでございます。この制度が基礎になりまして、土地の価格というものが、ほんとうに国民のために安定した方向方向づけられてまいるということは、私どもの最も望んでおるころでございます。
  49. 木原実

    木原委員 おっしゃるように、発足したばかりの制度ですし、それなりに毎回努力のあとがあることは、私どもも評価したいと思うのです。もちろん、これだけで地価が安定をするとか抑制されるとかいう状況でないことは、ほかの要因があまり激しいものですから、それは認めるわけなんですが、しかし、同時に、ほかのいろいろな抑制策ともリンクしながら、さらにこの制度を、一歩も二歩も前に進めていくためには、もっと裏づけになるものをふやしていく必要があるんじゃないか。せっかく公示されましても、たとえば、それがいわば時価としては、なかなか通用しにくいという現実があるわけですね。これを時価としてきちんと押し出していく、そういう制度を充実していくということが必要じゃないのですか。  結論を申し上げますと、思い切って、これが基準価格だという、もう一つ強力な、強制力を持つような価格として押し出していく、そういうことが必要じゃないかと思うのですが、どうですか。
  50. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 この他価公示法を御審議いただく際にも、実は法律の中に盛り込んでおるわけでございますが、この地価公示価格は、一応は、公団でありますとか自治体でありますとかが取得する際の一つの基準価格といたしておるわけでございます。昨年からことしの一月にかけての急上昇といったようなものを基準にとることは、なかなかむずかしゅうございますが、できれば、これを半年に一ぺんぐらいずつ把握する。昨年でありましても、前半と後半では、だいぶ実は違っておるわけでございます。   〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕  そういう意味におきまして、この制度はもっともっと知恵を出して、ほんとうに土地政策、特に土地価格の安定のための基本施策として十分活用できるように、積極的に推し進めるべきであると建設省としては考えておるわけでございます。
  51. 木原実

    木原委員 あわせて伺っておきますが、新しい国土利用計画法の成立にあたりまして、土地の価格に関連いたしまして、時価の七〇%もしくは八〇%程度に云々という国会側の意思表示がございましたね。その場合の時価というのは、いわゆる市場の実勢の価格でいくのか、それとも公示価格を時価として公認するといいますか、それを基準にして、たとえば七、八〇%程度にと——将来の運用にかかわることなんですけれども、公示価格を時価と評価してよろしいのかどうか、御見解をひとつ……。
  52. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 国土利用計画法案におきます規制価格をきめる際の、各党間のお話し合いにおきますことを御説明申し上げますと、観点が三つございまして、一つは、規制価格をきめる場合に、追認的な価格をそのまま認めることは、政策的に不適当であるということがございます。やはり高値安定で規制するのでは問題がございますので、適正な価格というものを定めて、それによって規制をするべきであるということが第一点でございます。この点については、各党間のお話し合いがついているというふうに考えています。  第二点につきましては、それでは現在の実際の取引価格に対して、どの程度の価格で規制価格をつくったらよろしいかというお話し合いの際に、七割、八割ぐらいの相当額を、政策的な価格として定めることが適当ではないだろうかということも、意見が整ったように私どもは受け取っております。その限りにおきましては、実際に取引されておる価格ということで私ども受け取っております。  第三番目の問題といたしましては、そのことを政令に書きます際の技術論といたしまして、固定資産税評価額というものから出発して考えたらよろしいのか、あるいは地価公示価格を基礎として考えたらよいのかということにつきましては、実はまだ明確な話し合いが整っていないというふうに私ども思っております。特に、現行の宅地が取引される場合と、農地、山林が取引される場合とでは、公示価格がどうしても市街化区域の宅地に限定されているというような限界もございますし、固定資産税評価額あるいは相続税の評価額が、山村といいますか、山林、農地につきましては、まだかなりふぞろいの点もございますので、そのあたりの技術的なところは、政府部内でもう少し時間をかしていただきたいということでお話し合いをしておるつもりでございますので、政策的な目標として、現行の取引価格に対しての七、八割ということで検討させていただきたいというふうに理解しております。現在の取引価格と地価公示価格とがどの程度違うかということにつきましては、実は建設省のほうでかなり勉強していただいていますが、地域あるいは地目によりましてかなりの変化がございますので、もうちょっと検討した上で御説明申し上げたいと思います。
  53. 木原実

    木原委員 私も、大事な点だと思うのです。これは、せっかくの地価の公示制度のあり方にも、やはり関連してくるような感じがするわけです。いま実際に取引をされておる価格と公示価格の間が、地目等によっては著しい違いがある、こういうお話もございました。確かにそうだろうと思うのです。逆に公示価格のほうが高いという実情もあります。これは私どもが調べました、私どもの選挙区内のことですけれども、いま私どもの千葉県が、多少行政指導のような形で土地に対する対策要綱のようなものをつくりまして、造成されました宅地の原価主義ですね、原価プラス適切な利益、それを販売価格にしなさい、こういうことをしきりにやっておるわけなんです。新法ができますと、これは、かなり関連をしてくることがありまして、やっておるのですが、いままでは根拠になる法律がございませんでした。しかし、そういうことをやっておりましてね……。  その中で、幾つか事例を調べてみますと、実際に原価を明らかにするような書類を業者から出させまして、それに適切なと判断される利益分をプラスして販売価格をきめたものと、それから公示されました価格とを比べると、行政指導をした価格のほうが、逆に坪当たりにして五万円ぐらい安かったというような事例がつい最近もあるわけです。そういうことは、どの辺から来るのかということになりますと、やはり評価に当たられる鑑定のあり方その他についても問題があるのではないか、あるいはまた、いろいろな土地の、いまの複雑な取引関係の中で掌握しきれない要因があるのではないか等々、実はいろいろなことが考えられるわけなんです。  しかし、それにいたしましても、将来とも地価の公示という制度が権威を持ったものになっていくためには、単なるあと追いの追認だけのことに終わってはいけないし、それからまた、鑑定に当たられる立場の問題もあるだろうしというようなことを考えますと、繰り返すようですけれども、思い切って土地の要因を十分に加味して、なおかつ政策的な価格、あるべき価格、つまり基準価格、こういう性格を、将来はこれに持たせていくというような方向に踏み出していく必要があるのではないかと私どもは考えるわけですけれども、どうでしょうか。
  54. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 先ほどもお答え申し上げたとおりであるわけでございまして、私どもといたしましては、地価公示価格というものが、ほんとうに日本国土の価格の実態を正確に把握し得る一つの基準となり得るように、いろいろな面からの整理を今後続けて、木原委員指摘のような方向に向かって進めてまいりたい、こう考えるわけでございます。
  55. 木原実

    木原委員 大臣、これは、ちょっと議論になりますけれども、私ども見解を聞いてもらいたいと思うのですが、地価に対するやや統制的な機能みたいなかっこうになるのですが、土地の値段について、たとえばガイドプライスといいますか、指導価格、こういうものを将来にわたって設定していく、そういうような考え方はございませんか。あるいはまたそういう考え方というものは、少し飛びはねた考え方でしょうか、どうでしょう。
  56. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 土地の制度並びに価格そのものに対する法律的な方向づけというものは、実は今国会でしていただく形になるわけでございます。できるだけ安い価格で国民の要求する土地が入っていくという方向に持っていかなければならぬことは、申すまでもございません。したがいまして、いままでのような土地暴騰というようなことは——今度の国土利用計画法によりまして、指定を受けた地域内においては、土地取引が許可制になってくるわけでございまして、一種のガラス張りという中で、土地の取引が行なわれるようになるということになってまいろうかと思うわけでございます。  そういう中で、その実態というものを、全国一つの基準をもって、できるだけ多くの地点を定めまして、その価格を公示できる体制を整備するということが大事なことであるわけでございまして、いま仰せられたようなことまでやる必要があるかということについては、はっきりと私の気持ちを考えるまでに、まだ勉強いたしておりません。
  57. 木原実

    木原委員 これは、お互い政治の問題としまして、大事なことは、よく指摘をされておりますように、土地という問題についての理念といいましょうか、国民的なコンセンサスですね。イギリスには、土地は女王陛下のものだ、本来公共的なものだ、国土に付随したものなのだ、たまたま所有権あるいは使用権というようなものが、かりに伝承その他によって与えられているだけなのだ、こういう考え方があるわけなんですね。これだけ土地の問題が深刻になってきておる状況の中では、政治の問題としては、土地問題に取り組んでいく、アプローチしていく原点といったようなものを明確にしておく必要があるのではないか。しばしば、土地は単なる商品ではないのですよというようなことが、政府サイドからも言われるようにはなりました。しかし今日、たとえば宅地なら宅地の問題がたいへん深刻になっている背景の中では、依然として市場の中の取引の対象として、つまり商品としての土地というものを否定することができない形で動いているわけですね。  しかし、それにもかかわらず、私どもが、これだけ深刻な土地の問題にあらためて取り組んでいくのだということになれば、その理念というものはお互いに明確にして、その合意を国民に求めて、その範囲の中で、国民の権利に対する必要な一部の制限も加えていかなければならないのじゃないか。つまり、公共優先ということばがあるわけですけれども、その理念について明確にしていく努力が必要ではないか。土地というものについての大臣考え方を明確にしてもらいたいと思います。
  58. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御指摘のとおりでございます。土地は生産はできません。動かすこともできません。しかし、これは日本国憲法によって、私有財産であるというふうに立法化されておるわけでございます。ただし、社会公共のためには、その一部を制限されてもやむを得ない、こういうのが私の土地に対する基本的な考え方でございます。  したがいまして、実は政府におきましても、昨年国土総合開発法を国会に御提案申し上げます際にも、この点は非常に議論議論を重ねた結果、思い切った私権制限という点に踏み切ったゆえんも、そこにあるわけでございまするし、しかも、あれだけの私権制限の線を出し、また今回、国会において四党間においてあのような内容の論議がかわされておるわけでございますけれども、これは国民の世論として、ほんとうに円滑に受け入れられておるというふうに考えておるわけでございまして、私としては、このような、いままで申し上げたような線で土地問題に対処していきたい、こう思っております。
  59. 木原実

    木原委員 これは、特にお互い政治家として大事なことだと思うのですけれども、いずれにいたしましても、こういう形で土地暴騰を続けていて、それによって利得をあげられるということは、これはある意味では不労所得ですね。勤労の所得とは性格が違うような感じがいたします。思い切った措置が将来ともとられなければ、新法だけでは十分な成果があげられるかどうか、多少の疑念を持つわけです。  しかし、いずれにいたしましても、土地の持っておる公共的な性格というものを大きく打ち出していって、国民の理解を得ながら適切な施策を進めていく、こういう段階に来た、このことだけは、大臣と合意をしたということを表明しておきたいと思います。  たいへん時間を過ごしまして、もう終わらなければならないことになりましたが、あと幾つか端的に伺っておきたいと思うのです。  一つは、新しい法律が施行をされます。そして、たとえば遊休地等について自治体が買い上げなくてはならないとか、つまり法律はできたけれども権限は知事に与えられたけれども、資金的な裏づけのようなものは、国は一つも考えていないじゃないか、すでにこういう心配や批判があがっていると思うのです。いろいろな点の問題があろうかと思うのですが、この成立する予定の法律を、将来、適切に運営をしていくためには、自治体に対する、特に知事に対する権限委譲と同時に、それを国でバックアップをする財政的な裏づけ、この点について何か考え方がございますか。
  60. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 国土利用計画法の第四十条におきまして、この法律を施行する場合に、必要な経費につきまして、国の予算の範囲内で政令で定めるところによって国は経費の一部を補助するということが規定されましたので、私どもといたしましては、この政令で経費の補助として何を定めるかということを、これから検討したいと思います。昭和四十九年度につきましては、政府提案国土総合開発法案におきましても、これと同様の条文がございまして、そのために必要な経費を、若干四十九年度予算として組んでおりますので、四十九年度は法施行がおくれることもあって、それを流用することによって間に合うと判断しておりまして、五十年度予算から、この国土利用計画法に基づく国の補助体制を整えたいというふうに考えておりまして、特に、土地についての取得に関しての補助をどうするかということは、検討させていただきたいと思います。
  61. 木原実

    木原委員 これは、すでに指摘をされておりますように、富裕な県、それからゆとりのない県、いろいろあると思いますけれども、いずれにいたしましても、公共的な機関が、特に公共的な立場での土地取得を考えた場合に、裏づけがないのでは、ただ権限を振り回すだけのことになりまして、この法律の運用が失敗する非常に大きな裂け目になってくると思います。これからの問題だと思いますけれども、国として十分適切な補助なり、あるいは起債の方法なり何なりを考えてもらいたいと思います。  それから、話がまた飛びますけれども、住宅を建設していく場合に、たとえば三大都市圏の周辺の、実際の需要の予想に対して対応する宅地、あるいは対応する宅地になり得る土地、そういうものは、いろんな調査や統計によりますと、所有の形態はいろいろですけれども、総量として見れば、大体間に合う程度の土地は現にある、こういうような調査なり報告なりを見聞することがあるわけなんですが、当局として、実際に手段を尽くしてやれば土地がないわけではない、土地はあると御判断になっているのですか、どうですか。
  62. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 特に住宅難の激しい三大都市圏等に例をとってみましても、現在、市街化区域、調整区域という制度で都市計画区域を定めておりますけれども、その市街化区域を定めます場合にも、将来の需要を予測いたしまして、大体ヘクタール当たり六十人、七十人という基準で定めましたその積み上げの過程におきましても、いま先生の御指摘になりましたような、物理的な面積としては、それを十分こなすだけの量は確保されておる。さらに、市街化のスピードが進んでまいりますれば、調整区域を漸次市街化区域に編入していくことも、三大都市圏のような人口圧力の強いところでは必要になろうかと思います。これにつきましては、五年ごとに見直しをするという姿勢でおるわけでございます。
  63. 木原実

    木原委員 住宅公団が特にこの一、二年、計画を持っておりながら、なかなか建設が進まない。聞くところによりますと、土地は持っているのだ、しかし建物が建たない、こういう現象が起きていると聞いているわけなんですけれども、そういうことなんですか。また、その原因は何ですか。
  64. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 確かに、御指摘のそういう面もございます。しかし、そうばかりでない面もございます。土地があっても、なかなか建たないという面は、各自治体、県が、これ以上県の人口をふやしたくないという気分、と同時に、ベッドタウン式な住宅団地をつくりますと、そこに公共施設、学校、病院あるいは幼稚園、公民館、そういうものをつくっていかなければならない。そうしますと、それが自治体の財政負担に非常に大きな圧力になっておるということで、なかなか自治体の協力が得られないというのが、四十七年の下半期から四十八年にかけて、実ははっきりとあらわれてきておるわけでございます。したがいまして、その点を改善しない限り、三大都市圏においては、幾ら予算を組んでみても、住宅はなかなか建たない。  実は公営住宅に例をとりましても、東京都のごときは、一万九千戸お願いしても、三、四千戸しか消化していただけないという事態になっておるわけでございますので、こういう点を十分改善しようということで、実は宅地開発公団に特別任務をつけまして、宅地造成をする際に、あるいはニュータウンをつくります際に、公共施設を建てるべき土地を、あらかじめ十二分に取ってまいると同時に、それに投じた経費は、市町村の財政に直接直ちに圧力になっていくということを除いて、十年間は無償でやってまいる、その間の利子負担は公団が持つということを考えて、実は国会に提案を申し上げておる次第でございます。  したがいまして、いままでに住宅公団も宅地を造成していく、供給しなければならない任務は実は持っておったわけでありますけれども、住宅さえも満足に建て得ない、機構はますます膨大になるということでありますので、実は今回、宅地開発公団法という法案の御審議をいただいているということでございます。
  65. 木原実

    木原委員 ネックは、御指摘の点が多いと思うのです。ただ、早い話が、金で済む面はまだいいと思うのです。たとえば埼玉にいたしましても、千葉にいたしましても、県の方針として、人口の社会増については、これを抑制するのだということの中には、いま大臣がおっしゃいました要素が確かにありますけれども、それだけじゃないわけです。宅地になる可能性の土地は、まだ首都圏の中にあっても、人口抑制政策という面とぶつかってなかなか宅地ができない、こういう問題も出てくると思うのです。  そうなりますと、ネックの一つを解決するために、おっしゃったように、たとえば国、公団の側で当然施すべき施策はできるだけのことをして、自治体の負担にならないようにという配慮は一つの解決策だと思うのです。それは私は否定はしませんけれども、しかし、もっと大きな問題は、これ以上ふえてきたのでは、そういう問題を飛び越えちゃって砂漠になってしまうという配慮から、人口抑制ということが、どこの県でも強調されるようになった。あるいはまた市町村等におきましても、そういう考え方が濃厚になってきつつあるのですが、それらについては、それを乗り越えていく何かお考えのようなものはお持ちですか。
  66. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 この点につきましては、やはり国土の均衡ある発展をはかりまして、三大都市圏以外のそれぞれの県が、人口の減を来たさないような方向に持っていくという基本的な国策を打ち出さなければならぬわけでございまして、政府といたしましても、その方向にいっておることは、木原委員も御承知のとおりでございます。  と同時に、実は私、考えておりますことは、たとえば埼玉県に住宅を建てる、埼玉県というところは、非常に大きな自然増があるわけでございます。その自然増の人口を収容するために、ある程度の住宅建設をしていかなければならぬことは、御承知のとおりでございます。したがいまして、現在、住宅公団等で住宅団地を建設いたしました際の入居者の方法でございますね、入居者の方法は、公募にしておったわけでございますが、私も就任以来、そういう面は自治体に協力するゆえんではない、千葉県なら千葉県、埼玉県なら埼玉県に住んで、ある一定期間働いて、なおかつ住宅に困窮しておる人を優先して入れるような方策は考えられないのかということで、この制度をきちんとしてまいりますと、東京都における再開発という問題も、積極的に軌道に乗ってくるのではないかという感じも持ちまして、そういう面での検討も、実はいまいたしておる次第でございます。
  67. 木原実

    木原委員 もうだいぶ時間を過ごしましたので、この辺でやめなければなりません。この問題をやりましたら、切りがございませんので、あとは同僚に譲りたいと思いますが、最後に一つだけ。これは総務長官にお伺いしたほうがよろしいかと思うのですが、冒頭のこの設置法にかかってくるわけでございます。  どうしましても、私ども立場から見まして、理念的にも、それから行政方向としても、そぐわない要素が幾つか出てきております。それは冒頭御説明ございましたように、いずれこの委員会の適切な機関の中でお話し合いをするなり、修正の措置をとるなり、動きが出てくるかと思いますが、一つだけお聞きをしておきたいのですが、御承知のように、国土利用計画法案を作成するにあたりましては、いわゆる開発部門を分離する、こういうことが一つ前提になったわけですね。従来、たとえば総理等のお考え方の中にも、開発と地価抑制の問題は車の両輪のようなものだ、こういうお考え方も強く示されてまいっておりました。そして御承知のように、「列島改造論」こそすべてを解決する道だというお考え方は、なお総理のお気持ちの中には強いものがあるような感じを抱いておるわけなのです。しかし、すでに御承知のように、地価が値上がりをする背景などを考えましても、そこに開発をするという声がかかっただけでたいへんに暴騰してしまう。総理が「列島改造論」を主張されるというそれだけで、今度は地方の都市地価暴騰するというような、これはもう現実の姿が相次いで出てきているわけですね。  ですから、私どもとしては、この役所に期待をしたいことは、列挙されております幾つかの法案の運用なり仕事なりをおやりになるわけでありますけれども地価抑制ということにやはり非常に大きな、緊急にしかも大きな課題として取り組んでいただく、こういうことを、やはり重点施行をする役所として、あるいは法の運用機関として性格づけてもらいたい、こういう希望を持っておるわけなんですが、御見解を承っておきたいと思います。
  68. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 国土総合開発庁の主要な任務は、当面、やはり地価抑制にあるということは、私が先ほど来るる申し上げておるとおりでございますが、同時に、やはり地方の振興あるいは過疎地帯の振興とか、いろいろな問題も含んでおりますので、全く開発ということをネグるわけにもいかないのですが、われわれは、やはり地価抑制ということをベースに考えるときに、たまたま今回、国土利用計画がいい形でできているし、また国土利用計画法の運用の中に、きわめて民主的なものを私は感じるわけでございます。そうしたこの計画法を中心にいたしまして、現在あるいろいろな開発というものも、もう一回見直していこうということを、一つの基本的な方向として考えております。  したがいまして、開発優先ということではもちろんないので、むしろ利用計画法中心に運用して、そして開発をまた見直す、同時に、その見直す一番基本は地価抑制である、少なくともこれ以上暴騰しないということを、ひとつ歯どめにしていきたいというふうに考えております。
  69. 木原実

    木原委員 どうもありがとうございました。終わります。      ————◇—————
  70. 徳安實藏

    徳安委員長 次に、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  71. 大原亨

    大原委員 私は、自衛隊の基本姿勢、特に、これは自衛隊記念日で行なわれました広島市の市中自衛隊パレードの問題ですが、これは関係の広島県、岡山県だけでなしに、全国的な問題になっておりますので、自衛隊の基本姿勢の問題といたしまして、私のほうから二、三の点につきまして、防衛庁長官見解をただしたいと思います。  質問に入る前に、自衛隊で市中パレードをやっておる、そういう記念行事があるのかないのか、私は、まあないというように承知いたしておりますが、この実情について、政府委員のほうから簡単に御答弁いただきます。
  72. 丸山昂

    ○丸山政府委員 昨年の、四十八年度の観閲式の実施状況のうち、ただいま御質問のございました、いわゆる市中パレードというものをやっておるところがあるのかないのかということでございますが、いまお話にございました第十三師団、これが広島の県庁前で行なっております。それから西部方面隊、これは熊本でございますが、これが健軍駐屯地前で実施をしております。それから、あと駐屯地単位でございますが、これは善通寺とそれから松山が、善通寺の場合には市内、それから松山は市内の県庁前でございますが、ここで実施をしております。  以上でございます。
  73. 大原亨

    大原委員 この中央のパレードやあるいは各方面隊のパレードで、特に第二方面隊などは、そういう記念行事としてのパレードもやっていない。こういうことなんですが、大臣、これは防衛庁としては、どういう方針でやっているのですか。いかがでしょう。
  74. 山中貞則

    ○山中国務大臣 一応中央の観閲式というものは、毎年行なっておりまして、昨年朝霞でやりましたが、それぞれの駐屯地の行事というものについては、大体その地区の責任者、基地司令なり師団長なり方面総監なり、そういう者等が、交通事情の問題、あるいはまた県当局や市当局等とのお話し合いができたところは、そういうこともやりますが、できないところについては隊内でやる。特別に統一しておるわけではございません。
  75. 大原亨

    大原委員 隊内等で、自衛隊の実情について記念行事としておやりになるというふうな場合は、これは、いま私は一応論外といたします。  それで問題は、熊本、善通寺、松山というのがございましたが、しかし、かなりの大きな都市のどまん中で、しかも街頭でやっているというふうなのは、私は広島だけではないかと思うんですね。駐屯地前とかいろいろなことがありますけれども、あとは隊内でそれぞれ、中央の記念行事を含めてやっておられると思うんですね。特に私は、平和都市の広島で、しかも爆心地で、かなりの大きな反対運動等の中でこういうことを強行される。そして戦車や装甲車が列を連ねてやる。しかも、現在のような石油問題その他の情勢があるときでございますが、これは去年は別にいたしましても、そういう自衛隊の考え方ですね。これについて、私はかなり問題があるのではないかというふうに思うわけですが、これは率直にひとつ長官、御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  76. 山中貞則

    ○山中国務大臣 油の問題は、これは去年起こりました問題でございまして、来年度の予算でも、私たちは、四十七年度の予算の数量である主燃料七十四万キロリットルを七十三万五千キロリットルに、ネット増がふえておるにもかかわらず押えて、そういう努力をいたしておりますから、たとえば、すでに決定いたしました方針としては、ことしは観艦式はとりやめるというようなことをやっておりますので、今後は、石油事情というのは長期的に、高い対価を支払わないと、国家としても無限に、二億七千万キロリットルをこえて三億とか三億五千万キロリットルということは、国家経済指標からいってもなかなかむずかしい局面に立ち至っていると思いますから、ことしからは、少しそれらの問題について検討を加えたい。  なお、姿勢の問題ですが、広島が原爆の被爆第一号都市であって、世界にも類例のない悲惨な体験を持つ町であることは、十分承知しております。それだけに自衛隊というものがかつての軍隊というものとは違うということは、やはりわかってほしい気持ちもあるわけです。したがって、一般の市民の皆さまが、ふだんそう隊内においでになってごらんくださることは少のうございますから、そういう意味で、その機会に自衛隊に対する理解を持っていただければ、私ども立場からいえば、幸いであるという気持ちもあるわけでございますが、ことしは、全部含めて検討をし直したいと考えております。
  77. 大原亨

    大原委員 これは、私も一々取り上げて議論をしたくはないのですが、たとえば、最近師団長の発言として新聞報道がなされております。私も事実を確かめてみました。たとえばこういう発言があるわけですね。やはりいまの社会は、個人の利害を中心にしてやっておるという傾向があるからこれはけしからぬ、国家意識を養わなければいかぬ。そのことの議論は、私はさらに発展させる意思はありません。さらに進んで、石油危機に見られるごとく、日本はたいへんな時期に来ておる、そのためにも国防力の強化が必要だ、こういう発言があります。さらに、反対の意思表示について、警察が取り締まらぬのはけしからぬというような議論もついております。大々的に報道されておるわけですね。これは最近、山中長官が四次防についても、私どものコンセンサスは得られないでしょうけれども、そういう情勢を考えながら、やはり既定方針だからといって、予算は幾らオーバーしてもやっていくんだということはしないということについて表明をされておると思います。私ども、石油危機の問題を通じて、資源小国どころではなしに、日本は無資源国なわけですね。だから、外交に重点を置かなければ日本の安全はないということについて、だれでも私は常識だと思うわけですよ。特に、山中長官はどこかで発言されていると私は思うんですが、アメリカと中ソとの関係、こういうものも、新しい情勢で、日本を取り巻く情勢は、緊張緩和の方向にある、こういう情勢についての認識も発表されたことがあると思うわけです。  私は、できるだけ時間をはしょりたいから申し上げるわけですが、そういう長官の最近の発言やそういう方針と、現地の第一線の師団長等の発言というものが、矛盾しているのではないか、そういう独走ということがあってもいいのかどうかということについて、若干の危惧を持つわけですね。この点について長官、率直にいかがでしょう。
  78. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、まだその師団長の記者会見と申しますか、談話と申しますか、そういうものを見ておりませんから、ただいまの御質問の前提が、事実であるとしてお話してみたいと思うのですけれども、愛国心というものを、自衛隊が国民に向かって呼びかける立場にはないと思うのです。これは国の政治の問題であり、あるいは教育の問題であり、一人一人のまた国民の自覚の問題でもある。しかしながら、自衛隊員に対して言う場合には、自分たちが何のためにこのような訓練をし、最も最悪の状況においては、身命を賭することもあり得るということは、何のためなのかということの基本的な疑問は、やはり愛国心その他というものが前提に立ちませんと、そういう行動というものは考えられないということがありますから、隊内向けの問題は別であります。しかし、外に対して言うのは、それは政治の問題であり、あるいは国民全体の考え方の集結がどういう方向にいくかという問題である。国を愛しない者はいないわけですから、愛し方の角度はいろいろあるということでしょう。  それから、石油危機に際して国防が重大であるということは、ちょっと私は、意味がよくわかりませんが、石油危機に対して陸上自衛隊としては、非常な燃料節約その他で練度の維持に非常な苦労を、各種指示をいたしまして、維持につとめておるわけですけれども、非常に窮屈になりつつある。かといって、国防と石油という問題は何だといえば、日本が中東から海上軍事力をもって油を輸送してくるのかといったところで、売るほうが売らないというものを買えるわけはないのですから、ましてや、日本の海上自衛隊がマラッカ海峡防衛論なんというものは、全くのナンセンスであり、航路帯をかりに設定しても、一船団を守る能力しかないということを考えた場合に、そこらのところについては、師団長クラスであれば、十分にそういう体制は知っておると思いますので、その発言は、ちょっとどうかなという気がしますけれども、事実関係は、後ほど確かめてみます。
  79. 大原亨

    大原委員 私は指摘しておくのですが、これは冷静に議論をしたほうがいいと思うのですけれども、これは隊内において、隊員は国家意識を持てとか国を守れとかという議論ではないのです。対外的に最近の、たとえば住民運動等を指摘しておるのだと思うのです。あなたは、環境庁長官もして名長官だというふうに言われておるわけです、最近はよくわからぬけれども。それで、これは住民サイドに立ってやはり公害だって何だってやるということで、住民の意思は尊重するというたてまえでやっているわけですね。ですから、それを単なる個人的な利害にくっつけて、国家意識を持っていないからけしからぬというふうな、そのことが市中のパレードに対する反対運動になっているのだというふうな、そういう対外的な発言というものは、私は、自衛隊の基本姿勢としては、かなりこれは問題ではないかと思う。これは一つの新聞だけじゃないのです。ここにありますけれども、あとで長官、あげますよ。幾つかの新聞に出ているのです。最近も出ているわけです。石油危機以後においても出ているわけです。  だから私は、それはシビリアンコントロールの問題、あなたのコントロールの問題もあるけれども、一応これは議論をしなければならぬというふうに思って議論をするわけです。こういう考え方国民の合意を得るというふうなことは、およそ問題ではないか。参加した人は、たとえば軍人恩給などをもらっておる遺族会の一部の人なんかは、自分のむすこに会ったようだと言って感激した人もある。これは非常に少数な人だったと思うけれども、しかし大多数は、原爆の被害を受けて——受けない人が一ぱいおるわけだけれども、受けたような人などの議論を聞けば、単に国は医療程度しかやっていないわけですけれども、当時の悪夢がよみがえるというふうな気持ちで見る人があるわけです。だから、被爆者の心というものを無視した、そんな防衛というものがあるのかというふうなことを考えることは、私は当然だと思うわけです。だから、市民感情や国民感情とまっ向から対立するようなかっこうで、他のほうではほとんどこういう形の市中パレードはやっていないのにかかわらず、こういう問題を押し切ってやるというふうなことは、私は、やはり第一線の師団長としては、いま私どもも法規の関係を調べてみましたが、これは私は、明らかに出過ぎではないか、思い上がりではないかというふうに思います。この点は事実を調べていただきまして、善処してもらいたいと思います。
  80. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まあ、発言の場所、どういう環境でものを言ったのか、よくわかりませんから……。先ほど基本的には私が申しましたとおり、政治の分野の問題、国民の課題として国民自身の問題、あるいは石油危機の問題といっても、陸上自衛隊の師団長がそれに対処するような問題は、むしろ、いかにして燃料を節約して、練度を落とさないで本来の目的を維持できるかということのほうに、重点を置くべき時期に来ておるということでありますから、これは事実関係を調べて、その師団長ばかりではなくて、全体について、わが国の置かれた資源の状態、ことに石油の状態等が、実感を持ってみんなわかってはいますけれども、よくわかるように努力をしてみたいと思うのです。
  81. 大原亨

    大原委員 これは政府委員でよろしいのですが、昨年のパレードには、私の手元にも、一千名ほど参加した、そして海上自衛隊も参加している。一千名ではないのではないかと私は思います、私のほうへは一千名というようにありますが。  それからもう一つは、戦車や装甲車等は、やはり岡山県の日本原等から持ってきて、鉄道輸送いたしまして、県道、国道、市道等を通じましてやってくるわけですね。  そこで、私は調べておりまして、疑問な点があるから端的にお尋ねするのですが、道路法による車両制限は二十トン以上であります。しかし、これは建設省の省令で、自衛隊と協議をいたしまして例外措置を設けております。しかし記念行事の目的としてやるパレードは、二十トン以上の場合、省令で自衛隊が通知をすればよいというだけで処理をする教育訓練、せいぜい広げて考えてもそういう教育訓練、その範囲をやはり越えておるのではないか。そういう点については通知だけでいいのかどうか。がたがたがたがた猛烈な音響を立てまして、調べてみますと三十トン以上の戦車、装甲車、自走の大砲、そういうものが運ばれておるわけですね。そういう観点の法律関係については、手続上万遺憾なくやっておられるのかどうか。自治体の承認を得ておるのかどうか。
  82. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず、参加人員千名でございますが、これは隷下の米子の普通科連隊、あるいは善通寺、山口、海田市の各普通科連隊、その他海上自衛隊の地方隊、婦人自衛官、こういうものが入っておりまして、約千名でございます。  それから二番目の問題の、自衛隊の車両の運送について、所要の手続をちゃんととっておるかどうかということでございますが、ただいま先生がおっしゃいましたように、車両制限令十四条によりまして、自衛隊の治安出動あるいは防衛出動、その他編成、配置がえ、それから教育訓練の場合には、これを適用しないということになっておるわけでございます。  そこで、問題の観閲式のときの車両の運搬が、この適用を受けるのかどうかということになるわけでございますが、この点につきましては、観閲式それ自体の性格から見まして、平生訓練をいたしましたその成果を観閲官が見るということが本来の趣旨でございます。それにあわせまして、一般国民の方、住民の方々に訓練の成果を見ていただいて、自衛隊の実態というものの御認識をいただくということが観閲式の主たるねらいであるわけでございます。建設省とのお話し合いによりましても、観閲式に使用いたします車両の運搬については、教育訓練に含むという了解を得ております。各自治体の市町村の当局にも、そういうことで御連絡を申し上げてあるわけでございます。  なお、広島の場合でございますが、県、広島市それから海田町、こういったところに、それぞれ事前に御連絡を申し上げて、また車両制限の規格をオーバーする車両につきましては、それぞれ自治体のほうから、道路使用についての条件を付されておりまして、その条件を忠実に順守しておるという状況でございます。
  83. 大原亨

    大原委員 そこで、この問題につきましては、きょうだけで終わるということにはいかぬと思いますが、きょうの質問の一応の締めくくりといたしまして、時間はできるだけ急ぎますので、結論的に防衛庁長官にお尋ねいたします。  私は、こういう問題を、いたけだかになって意地を通すというふうな自衛隊の態度というものはいけないと思うのです。やはり時と場所を考えなければいけないと思う。それでひどいのは、警察が取り締まるのはけしからぬというふうなことを言っているんですね。これは自衛隊の師団長としては、非常に行き過ぎではないか。それから地元の、知事は今度新しくなっていますが、市長等も間に入って、非常にしどろもどろになっておるようですね。平和宣言を読みながら、おかしいじゃないかと言われたら、広島は——やはり原爆というのは、平和共存の基礎なんですから、これは議論をすれば、幾らでもあるわけですが、原爆というのは、平和の原点なんですから、現在の戦争か平和かのやはり原点ですから、そのことが平和共存の、米中や米ソの間における緊張緩和の原動力になっておるのですから、ましてや石油危機のときにおきましては、そういう原点を大切にしながら、平和共存の外交で日本の安全をはかっていく以外に大きな道としてはないではないか。そういう点については、賢明な山中長官は理解ができるのではないか。  ですから、そういう点で、まっこうから感情をさかなでするような、市中において、しかも教育訓練の仕上げであるというふうなことで……。しかし、これはこまかに議論すれば、そうなっておるかどうかわからないけれども、記念行事というのは、やはり理解と協力を求めるのだというPRにウエートがかなりあるわけですが、教育訓練だということで、二十トン、三十トン、四十トンに近い、しかも騒音公害をまき散らして、無神経にガソリンを使って走るというようなかっこうは、長官としては慎重に、行きがかりにとらわれないで、十分議論を消化していただいて、市民感情を無視しないような賢明な措置で、本年度の問題が集約をされる、収拾をされるということを、私は心から期待するわけです。それにつきまして、長官のまとめての御見解をお聞きいたしたい。
  84. 山中貞則

    ○山中国務大臣 国防の大前提は、平和外交であるということは、もう当然のことであります。平和外交によって、戦うというような、あるいはその国が攻撃されるというような事態を回避することが、安全保障の最も初歩であり、基礎であると思うんですね。その点は私も同感です。  ことしは、油の問題が、先ほど申しましたように、去年から大きく登場してまいりましたから、ふだんの燃料消費についても、非常な制約を加えておりますので、ことしの各種行事については、ただいま決定したものは、観艦式を取りやめたということを申しましたとおり、石油事情に対応して、国民と同じ対応をする自衛隊、まずそれよりも率先して、自衛隊が全国の国民の消費量に圧力を加えないような努力をしていくということでやっておりますから、ことしの問題は、あらためてまた検討をしてみたいと思います。
  85. 大原亨

    大原委員 しつこくは言わぬのですが、石油危機であるから国防力の強化と認識が大切だ、こういうふうな高飛車な議論が、一つの新聞紙だけかと思うと、かなり、三つも四つもあるわけですよ。対外的に師団長が表明している、あるいは記者に語っているということがあるわけですね。ですから、私はそういう点は、長官考え方は、そういう発言も十分消化をして、それから地元の住民の意思や自治体、知事や市長等の意見も十分聞いた上で、行きがかりにとらわれないで、この問題については、率直に言って取りやめることを含めて検討したい、こういうふうなお気持ちと理解をいたしたいと思います。よろしゅうございますね。
  86. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、中央観閲式の問題も同じでありますが、ことしは、石油の消費という問題からいろいろと検討を加えていきたい。ですから、非常にガソリンを消費するとかなんとかというものは、なるべくそれを少なくする努力をしたいという前提でいま検討しておるわけでありますから、その一環として検討していきたいと思うのです。  いまの談話の問題は、ちょっと事実関係はわかりませんが、石油危機というものは、売り手のほうが売らないと言ったために起こった問題でありますから、アメリカがソ連と並ぶ超軍事大国ですし、しかも中東依存度はわずか一一・一%ですが、それでも、アメリカにおいても、あのようにマイカーまで規制するきびしい措置をとるわけですから、軍事力でこれは解決できるものではない。そこらのところの論法からいっても、事実であればおかしいということでありますから、その問題は事実関係を調べます。
  87. 大原亨

    大原委員 それではこれで終わりますが、この問題は国会でも一応議論しておく必要がある、こういうことで、議論をいたしました。したがって、いままでの経過にこだわらないで、十分実情を勘案して処置してもらいたい。私どもは、石油危機だけだというふうに言われるわけですが、それもわかるのです。あなたの立場はわかる。しかし真意はわからないけれども……。軍備とは何かということを、もう一回、国民立場で考え直すべきではないか。ましてや原爆時代における平和共存、平和の原点の問題について、やはり自衛隊も根本的に考えてみることが必要であるという私の主張、これは、さらに議論すれば切りがありませんけれども、そういう点を明確にしながら、今年は十分冷静に善処して取りやめてもらいたい。しかるべき方法は別に皆さん方でお考えになる、こういうことではないかというふうに思います。  以上申し上げておきまして、私の質問を終わります。
  88. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後委員会を再開いたします。    午後一時二十二分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  89. 徳安實藏

    徳安委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田法晴君。
  90. 吉田法晴

    ○吉田委員 冒頭、山中長官に、この法案について再検討さるべきじゃないかということについてお尋ねをいたします。  というのは、私は、田中内閣というのは、かつての鳩山内閣にたいへんよく似ておられると思っておる。それは、鳩山内閣が日ソ国交回復を実現された。それから日ソ国交回復をしたからというので、いわばタカ派に対する配慮であったのかどうか知りませんけれども、そのかわりであったかどうか知りませんけれども、憲法改正を言われた。それから、偶然の符合でございますかどうか知りませんけれども、小選挙区制も考えた。田中内閣が日中国交回復をして、それから、いわば対照的に小選挙区制を考えられた、あるいは憲法違反の法律をどんどんつくっておられるのは、私はよく似ておると思う。  ただ、ここで問題になります基地の問題については、態度が違っている。国民の意思は政治に反映をしたいという話でしたから、私は鳩山内閣ができた当初、すぐに根本官房長官を通じて鳩山総理にお会いをして、当時問題になっておりました妙義恩賀の山岳訓練学校を再検討さるべきではないかということを申し上げた。朝鮮戦争をもう一ぺんやろうというわけではあるまいし、朝鮮の金剛山の山岳戦で敗れたから、日本でもう一ぺん山岳訓練をやる必要がどこにあろう、再検討願いたいと言いましたら、日米合同委員会で検討しましょうということで取り上げていただいた。田中内閣として、国際協力にも進んで努力したいと言われ、せっかく日中共同声明で平和五原則をうたわれ、そしてアジアにおける覇権主義を求めないと天下に声明をされた。いまの日本の防衛問題が、あのニクソン・ドクトリンによる日米連合軍事体制強化のために、在日米軍基地の合理化、統合をやっておる。それに、米軍との共同使用を前提にして、自衛隊基地の新設、確保を、日本国民の負担によって強力に進めようというのが、この法案ではないかと私は思うのであります。  その道は、国際的には、少なくとも国際協力の進展、あるいは日中共同声明で平和五原則をうたわれた方向と違うと私は思う。国際的に平和のために、あるいは緊張緩和のためにされる努力がどう評価されているか、これはブラントあるいはキッシンジャーの例を引くまでもなく、賢明な山中長官は御存じのことだと思う。閣内でも将来ある新進閣僚として、しばしば意見も述べられておるようでありますが、私は、政治の大きな方向として、ここでは考えなければならぬ重大な点だと思いますだけに、鳩山内閣を引き合いに出して恐縮でしたけれども、山中長官として、あるいは田中内閣の有力な閣僚の一人として、これらの点から考え直される意思はないか、まず承りたい。
  91. 山中貞則

    ○山中国務大臣 たいへん高邁な議論の展開でございまして、総理が出席したときに、ひとつそういう質問をしてほしいと思うのです。  私の立場から、この法律案について申し上げれば、先日も、たしか先生聞いておられたと思うのですが、現在の周辺整備法をつくりました際の論議、あるいは衆参両院の内閣委員会の附帯決議、その後、行政を展開してまいりまするについて、やはり地域の住民あるいは公共団体等の種々の御要望等に現行法律ではなかなか沿いかねる、あるいは限界があるというようなことから、この際新しい法律をつくろう。そして、基地がないほうがいいとおっしゃる。基地がなければ影響も阻害もないとおっしゃる。そのとおりであるけれども、私どもとしては、安保条約のもとの米軍基地も含めて、あるいは自衛隊の、わが国の最小限の防衛力を持つという、国力国情に応じた整備をすることに伴って、やはり基地というものはどうしても存在する、その現実はあるわけでありますから、したがって、周辺の市町村長あるいは知事さん等の御意向でも、存在しておる限りは、それに対してもう少し地元周辺関係の要望、受ける影響に対する防衛庁のもう少し積極的な努力の要望等がございまして、この際、新しい法律をお願いしたいという気持ちになったわけでありまして、特別に軍備強化とかなんとかという問題は、この法律では考えていないということでございます。
  92. 吉田法晴

    ○吉田委員 この法律によります障害の防止あるいは軽減によって、基地の設置あるいは運営を可能にするように、軍事基地の整理統合あるいは——私は、なくしたほうが関係住民の生活の安定、福祉の向上に役立つ、こう言うのですが、大臣は現実に基地がある、基地があるならその基地の弊害を、障害を防止し、あるいは軽減することが、地元市町村長あるいは関係者の希望に沿うゆえんだと言われましたが、この基地の問題をめぐっていろいろございましたことは、これは否定をすべくもございません。  私が関係をいたしました、いま申し上げた妙義の山岳訓練学校、それから二十八年に日米合同委員会で、砂川をはじめ全国十カ所で、当時B52の発着できる三千メートルの滑走路を持つ飛行場をつくりたい、こういうことで、われわれは、東京都下における原爆基地をつくらしてはならぬということで、全国の関係者が集まりました。これは最後は、千名のけが人が出た結果ではございますが、立川の拡張は取りやめになった。あそこで原爆を搭載した飛行機が発着し得るようにはならなかった。そして妙義では、妙義の恩賀部落の人たちが、採草地とそれから生活を確保して、あそこは夏のレクリエーションの場になっておるという話であります。それから砂川は、桑をつくっておった地元の人たちが、移転をしたら、熟田になっておる、まあ熟畑といいますか、何百年かつくってきた桑畑を捨てて、そこに移らなければならぬ、それは生活の破壊だとして土地を守ったのです。いま立川基地は、横田に集約されようとしておりますが、あそこで基地を拡張することが、住民の福祉につながったか、生活の安定につながったか、あるいはあそこで原爆基地をつくらせなかったことが、砂川の人たちの、あるいは立川の市民のしあわせにつながっておるか、私はむしろ後者だと思います。それから板付、伊丹等についても、これは関係市を含んで、福岡には板付基地移転促進協議会という市議会を中心にした組織がございます。これは情勢の変化もございますが、板付、伊丹も、いまや空港都市、基地としての性格は薄らいでおる。再使用が全くないとは考えませんけれども、情勢のおもむくところは、それを不可能にしておると私は思います。  それだけに、現実と言われ、あるいはその現実の上に障害の防止、軽減をすることが、そして基地の確保あるいは運営を可能にすることが、関係住民の生活の安定、福祉の向上になると、こう言われるけれども、法律はそういうたてまえをとっておりますが、私は、自分の経験からするならば、そうではないと思う。それだけに、大きな平和の問題、あるいは緊張の緩和に努力するか、あるいは極東戦略に協力するかという問題もございますが、法律が第一条にうたっております目的からしても、考え直すべきではないかと思うのですが、その点は、どうお考えでしょうか。
  93. 山中貞則

    ○山中国務大臣 第一条の目的で、しいて皆さまの立場から御議論があるとすれば、いままで運用ということばであったのが、設置も入っておるではないかということだと思います。これはしかし、取得という意味ではございません。すなわち、取得するために、この法律をつくるのではなくして、いままでは運用だけでございましたから、その基地の利用のしかた等によって影響を受ける人たちに対し、何かしなければならないという責任を、義務を果たそうとするものでありましたけれども、基地が存在すること自体、それが広大な面積である場合、市町村の行政区画の大半を占めておるようなところ等については、実際上その町村の発展計画も、あるいはまた地域の振興開発計画も、そこのところが空欄にならなければやっていけない。典型的なのは、沖繩だろうと思います。そういうようなことがありますから、基地があるということ自体が、やはり周辺の市町村に何がしかの、なければこういうことができたであろうという意味において、デメリットを与えているものであろう。だから、今回は設置ということ、そのこと自体もとらえたいということで考えたわけでありまして、特別にこの新しい法律をつくるから、それによって基地を拡大強化していくとか、そういう気持ちを持ってやったものでは全くございません。
  94. 吉田法晴

    ○吉田委員 その新しく獲得をしたいという点が、重点でないということはわかります。ただ、申し上げておるのは、関係住民の生活の安定と福祉の向上というものが、究極するこの法律の目的であるならば、それは、むしろ基地の確保あるいは強化ではなくて、再検討するほうが住民のしあわせになるのではないかと言って具体例をあげたのです。  もう一つ、心配をいたしますのは、この法律は、これは施政方針演説の中にも入っておったからというわけではございませんが、いかにも田中総理式のやり方、金は幾らかけてもかまわぬから目的を達する、あるいは基地の確保をやっていく。その結果は、いまの憲法なり、あるいは憲法のもとにおける法制、民法なりあるいは自治法なり、いまの憲法体制下における法律的な原則というものがくずれようとするのではなかろうかという心配を実は私はして、自治省の政務次官にも法制局にも来ていただいているところでありますが、この法律について、何が何でも、どんなに金を使っても、どれだけ援助をしてもという気持ちはわからぬではありませんけれども、その反面に、憲法上の原則、あるいは自治制度あるいは民法上のたてまえというものがこわされることは、やはりこれは慎まなければならぬのではなかろうかと考えるのですが、防衛庁長官の御答弁をいただく前に、自治省の政務次官、それから法制局の第二部長に来ていただいておるわけでありますから、お尋ねをいたしたいと思うわけです。  まず、自治政務次官にお尋ねをいたしますが、地方自治が、いまの憲法では、明治憲法と違ってわざわざ一章を設けて保障がしてありますのは、かつての明治憲法のもとにおけるいわゆる市町村制あるいは府県制というものが、だんだん中央政府、中央機関の一翼になっていったという、これは戦争中の実態も含めまして、反省の上に立っていることだと思います。ああいう失敗を繰り返さないために、憲法に地方自治という一章がうたってあって、その地方自治の原則を守りたい、あるいは貫きたいということだと思うのでありますが、陳情政治をしなければならぬところも問題になっている。これは自治省として、指導と助言、それから法律に基づいて、財源にしても、あるいは交付税交付金にしても交付しておるわけであります。この法律によりますと、政令の委任がずいぶん多いのですが、しかも、その政令で委任した場合に、障害の基準も、たとえば一種、二種、三種といったような特別施設の指定の方法あるいは交付金の額等についても、防衛施設庁長官にまかせるということに、たてまえはなっております。そうすると、せっかく自治省が自治体の自治を守るために苦心をしておられますけれども、それがこわれるのではないか、ということは、条文を読んでみて、自治体の衝にも当たりましたし、それから地方行政委員もやったせいもございますが、一番先にきた疑問であります。  法令に詳しく通暁しておられるかどうかわかりませんが、自治政務次官としては、あるいは自治省の行政を担当される責任者としては、おそらく同様の御心配がおありになったものだと考えますが、どういうぐあいに考えられますか、伺いたい。
  95. 古屋亨

    ○古屋政府委員 ただいまの御質問でございますが、自治省としましては、地方財政の強化、自主財源の強化、また地方行財政におきます現実におけるふくそうしております社会需要に応じまして、地方自治団体がいろいろ仕事をされますにつきましては、法律に基づきまして、地方自治団体の自主性を十分尊重しながら、そうして地域住民の福祉につながるように、いろいろの配慮をいたしておるのでございます。  先ほどお話がありましたように、この基地周辺整備法におきましては、防衛施設周辺地域の生活環境整備等について、国の対策を拡充強化するためのものでございますが、こういうような基地周辺対策は、ただいま御質問にもございましたように、地元地方団体の協力なしには実施が不可能であることは、私が申し上げるまでもないのでありまして、本法の運用にあたりましては、地元の意向が十分に尊重さるべきことは当然のことであり、また、本法の所管官庁であります防衛施設庁におきましても、そのように運営するものと了解をしておる次第でございます。  また、交付金の対象市町村の指定等につきましても、客観的な指定基準がつくられるものと承知しておりますので、自治省といたしましては、統制色が強まることのないように、ただいま御指摘になりました点もございますので、私どもは、そういう点に十分留意をしてまいりたい、かように考えております。
  96. 吉田法晴

    ○吉田委員 私どもとしては、地方自治の精神に従って運用されることを期待する、こう言われました。しかし、自治省との間に協議が行なわれるとは、どこにも書いてありません。大部分が政令にまかせる。その政令の案文を読んでみましても、防衛施設庁長官がきめるというのが大部分。これは法制局にも尋ねたいところですが、防衛施設庁というのは、いわば当事者です。その当事者が政令はきめる。それから省令もきめる。それから金額もきめる。算定方法もきめる。そうしたら、これはチェック・アンド・バランスではありません。民主主義は、やはりチェック・アンド・バランスだと思います。行政権の恣意を許さないために国会があり、またお互いにこうやって論議をしております。それからまた、労使で争ったら、その労使の争いを裁判するのに、行政機構ですけれども、専断的な行政機構でなしに、委員会方式できめる、いわば公正な第三者できめる、こういうたてまえをとっておる。それがいまの憲法であり、あるいは憲法に従う行政法にしても、大体そういうたてまえをとっておると思います。  ところが、この法律には、あまりに政令委任が多過ぎる。それから、その政令委任をして権限を行使するのは、当事者である防衛施設庁がきめる。算定方法も、あるいは規則も、省令は、おそらく施設庁長官がきめるのだと思います。そして計算それ自身もする、こういうことになりましたら、チェック・アンド・バランスがどこにある、この法律が通ってしまったら。  この間から防衛庁長官は、基地の周辺市町村について、革新であろうと保守であろうと、革新だから押える、あるいは保守だから優遇するということは、できもしないし、いたしません、こういう話だった。ところが、この法律をよく読んでみると、そういうチェックの方法がない。そして法律が通って、防衛施設庁がつくった規則に従って評価をし、運営をやっていくことになりますと、おそらくこういうことになるだろう。そういう事態が起こりまして陳情しましたら、協力をしてくれる町村と協力をしてくれぬ町村との間に違いがあるのは、あたりまえだという話になると私は思う。それがないように、保証をするということを、防衛庁長官は言われましたけれども、その言明を保証する制度がなければならぬ。それは、少なくとも自治法や、あるいは関係の法律の上では、ちゃんととられております。それがとられないで、地方自治の精神は、あくまで貫きたい。これは自治省に相談をすることになっていれば、いいですが、なっていない。関係行政庁の長が云々という点がありますが、これは、あとで審議しなければならぬところですが、聞きますと、それは通産省であったり、あるいは農林省であったり、それも自治省と協議をしないでやるのです。そういうのを、自治省として許されるかどうか。せっかく自治を守るために、一つ一つの自治体に対して指導をし、あるいは助言をしたりしてやっておられますが、それが、この法律ではくずれやしませんかというのですが、どうですか。
  97. 古屋亨

    ○古屋政府委員 ただいまのお話でございますが、政令を閣議で決定する場合には、御承知のように、各省事務段階で一応相談をいたしております。自治省も相談を受け、自治省といたしましては、地方自治の観点から、行き過ぎがないといいますか、そういう御指摘になりました弊害のないように、その間に入りまして、十分チェックしてまいる所存でございますから、そういう御心配はないと思っております。
  98. 田代一正

    ○田代政府委員 施設庁長官立場で申し上げますが、この法案には政令が多いという御指摘でございますが、政令は現実に閣議できめるわけでございますので、ただいま自治政務次官がおっしゃったようなことで、自治省と当然そこで相談されるという問題が一つございます。  それから、第九条の特定防衛施設の関係で関係大臣と協議するということで、公共用の施設整備に関連のある大臣に相談する、こういうことを私、一昨日答弁したことがございますけれども、当然、これは建設省とかあるいは農林省とかいう各省も入りますけれども、それ以外に、何と申しましても、地方自治体の行なう公共用の施設の整備でございますので、当然、自治大臣にも御相談申し上げる、こういうことになろうかと思います。  そういうことで、地方自治との関係におきましては、そういう形でもって自治省と非常にスムーズな連携その他ができるのではないか、こういうふうに考えております。
  99. 吉田法晴

    ○吉田委員 私が申し上げるまでもなく、憲法の地方自治の最後の条文は九十五条、「一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。」、これは「一の地方公共團體」ですから、一つの地方公共団体。私は記憶しておりますが、憲法ができまして間もなくの国会では、長崎だとか広島だとか、一つの市がその方向として、権利義務にも若干の関係があったかもしれないと思いますが、平和都市宣言をするのにさえ住民投票が行なわれた。この条文は実は最近は死んでいる。あまり運用されていない。しかし、基地を許すかどうか、あるいは米軍から返ってきた基地を自衛隊が使いたい、それを許すかどうかということで町をあげて争いになり、それで市町村長の選挙が行なわれていることは、御存じのはずであります。ですから、これはたいへん大事な問題であります。したがって、この法律で、いわば金の大判か小判か知りませんが、ほっぺたをたたきながら、どうですか、どうですかというやり方は、私は、少なくとも民主主義のやり方としては間違いだと思うのです。  いま、政令をつくるときには各省相談をして閣議にかかる、それから九条の指定の場合についても、各省相談をするということですが、問題は、自治政務次官に聞きますが、法上に明確に書いてあるなら——いま言われるように、自治体のことだから、税源、税収による財源、それから交付税、特交その他、とにかくいろいろ自治体を育てるについては、誤りをなからしめるためには、住民の福祉のためには、自治省は苦心をしておられる。ところが、それと関係があるかもしれぬけれども、横から相談を受けるだけで、基地のあるところについては、特別施設の指定をしたら、ほとんどの公共施設については十割、十分の十です。それから、そのほかにも、いままでの基地交付金のほかに新しく交付税をやろうという。その交付税とその他の交付税との関係等は、たてまえからいうならば、純然たるプラスになることかもしれませんけれども、金額が多くなりまして、ことしの予算は五億が計上されているようですが、おそらくだんだんふえてまいりましょう。  問題は、論理とそれから法律なり憲法なりの精神に従って、ほんとうに住民の福祉ということで選択がなされるならば、いま読み上げました憲法の条章のような、住民の意思に従って選択をされるならば、言うところはありません。言うところはありませんが、住民の意思の表現と、それから、いわば政府からぼたもちでほっぺたをたたいてのやり方との間には、私は矛盾が出てくると思う。まあ、そうはしませんと、こう言われるけれども、政令案を私どもも拝見いたしましたけれども、政令が閣議にかかる、あるいは九条指定の際に、閣議の決定だから、自治省にも相談をするということでは、やはり私としては安心ができない。それが、政令になるのかあるいは何になるのか知らぬけれども、制度としてこういたしますということを、はっきり言われぬ限りは、山中長官は、きのうでしたかおとといでしたか、大みえを切られましたけれども、それは通るまでの話であって、通ってしまったら、やはりこれだけ政令が多くて、防衛施設庁の長官権限が強ければ、民主的な運営というものは、なかなか困難だと思うのです。具体的な方法について、もしお気づきの点があれば、明らかにお示しを願いたいと思います。
  100. 古屋亨

    ○古屋政府委員 自治省といたしましては、ただいま申し上げましたように、地元の意向を十分尊重して、この運用をはかっていく。それについて、いま先生のお話は、具体的になにがなければ、ぼたもちでほっぺたをたたくようだというような御質問でございますが、私どもとしましては、この指定の際の協議を受け、あるいは政令を出す場合に、自治大臣とも十分協議をいたしまして、地方自治の本旨をゆがめないようにいたしていきたいと考えておるのでございます。  具体的にどうするというお話でございますが、ここでは抽象的に、十分地元の意向を尊重しながら、自治省としては、防衛庁と話し合いを進めていくというように考えておるわけでありまして、いまのお話と直接関係はございませんが、基地交付金の問題にいたしましても、あるいは自治省がやります広域行政の問題にいたしましても、十分地方の状況というものを、地方自治というものを考えて措置をしておるわけでございますので、お話の点では、政令にまかされる点が非常に多いから御心配ということでございますが、この点は、自治省としては、その最後的決定の前に、指定の場合あるいは政令の場合に、十分地方の立場というもの、地方自治というものを阻害しないように措置をしていくということが、自治省としての根本的立場でございまして、そういう点を御心配のないように、私どもとしては措置をしてまいりたいと思っております。
  101. 吉田法晴

    ○吉田委員 この法律の主務官庁というのは、自治省ではなくて、これは防衛庁、防衛施設庁ですね。ですから、政務次官がそこで幾ら言われたって、そのとおりにやられるかどうかは、法上の保証がなければ、政令か何かなければ、あるいは両大臣の協議がなければ、そのとおりになりません。そのことを言っている、具体的にどうされますかと。だから、これはむしろ、自治省のほうから聞いたってしようがないので、防衛施設庁のほうから承りたいと思います。
  102. 田代一正

    ○田代政府委員 吉田先生の御意見ですと、制度的な保証ということをしきりにおっしゃっておられると思うのですけれども、政令によって云々ということを書きますと、当然それは自治省、自治大臣に関係する問題でございますから、制度的には一応できているわけでございます。それからもう一つは、関係行政機関の長といったときに、それは自治省、自治大臣が入りますということを申し上げますと、やはり、そこは制度としてできているということだと思います。  したがいまして、先ほどから私が答弁いたしておりますように、制度的にも自治省あるいは自治大臣の御意見を十分に参酌してこのことを進めるという、制度的な保証と申しますか、制度的な体制はできていると私は考えております。  なお、非常にこまかいことを申して恐縮でございますけれども、この法律の中に、今般、公共用飛行場に関連いたしまして、全く同じような施策といたしまして一種、二種、三種地区というものができます。これは、防衛施設庁長官が定めるということに現実になると思いますが、それにつきましても、実態につきましては、あらかじめ自治省と十分相談をする、あるいは個々の基地ごとにそういう一種、二種、三種というコンター——コンターと申しておりますが、それを引いて、それで実施いたしますよという段階になりますと、事実上、地元の皆さんに、そういった御理解を願うということは当然でございます。  そういうことで、法律上のそういった問題もあるし、また実行上の立場といたしましても、私ども、現在そういうことを考えておるわけでございまして、何も防衛庁、防衛施設庁がひとりでもって何でもするということには必ずしもならない、こう考えております。
  103. 吉田法晴

    ○吉田委員 ちょっと法律の名前は忘れましたが、ことしか去年かできました法律で、環境庁長官の意見を聞かなければならぬという法律がありましたね、ちょっといま思い出しませんが。政令だから、それは閣議にかかる、だから自治省が関与する、あるいは指定をするときには、関係各省ということで自治省が出てくる、それだけでは、これは、やはり法上の保証があるとはいえぬと私は思う。なぜ、環境庁なら環境庁長官が同意を与えなければならぬというか、あるいは、これは瀬戸内海の法律でしたか、とにかく環境関係に、環境庁長官が閣議の席上で言われて条文が入ったのだとも思うのですが、そういうものが少なくとも自治体を対象にして、これだけの法のたてまえがなっている以上は、自治省については、自治大臣については、やはり協議をするということが、法文上どこかで明らかになる程度の保証がなければ、いわば相談をするというか、チェックをするということは困難ではないかと私は考えるのです。  その点については、法制局、いま来てもらっておりますから、お尋ねをいたしたいと思いますが、その問題からまずお尋ねします。
  104. 味村治

    ○味村政府委員 確かに、先生がおっしゃいましたように、環境庁長官と協議をしなければならないという条文が入っている法律があったと存じます。ただ、私も現段階でどの法律であったかということは、ちょっと思い出せませんので残念でございますが、それは政令の制定についてでは、たしかあったと存じます。政令は、先ほども自治政務次官からお話がございましたように、閣議でもってきめるわけでございますから、事務的にも、各省大臣の御了解を当然得なければならないわけでございますので、政令を定めるのにつきまして、そういった各省の了解を得ろ、協議をしろというようなことは、指定する必要がないわけでございます。
  105. 吉田法晴

    ○吉田委員 具体的な法律を持ってきてお聞きをしないと、私も具体的な規定のしかたを覚えていない、それから法制局も覚えていないということになると、それ以上のあれはございませんで……。普通でいきますと、ここで防衛庁長官に、心配のないように運営をしてくださいと、こう言うしかないのですけれども、その前に、少しお尋ねをいたしたいと思います。  法制局にお尋ねをしますが、いまの憲法体制といいますか、憲法の原則、それから民法——これは補償が入りますから、民法が入り民事私法が入ります。それから自治法等で、先ほど私が申し上げたところでありますが、民主主義の原則としてチェック・アンド・バランスの機構がそれぞれつくられておる。ところが、この法律の中には、政令あるいは指定の場合には、閣議にかかるかもしれませんけれども、関係行政庁の長との事実上の協議があるかもしれませんけれども、この法律のたてまえとしては、私はチェック・アンド・バランスの組織はないと思うのです。これらについては、これでいいと考えられますか、どうですか。  それからもう一つ、前に申し上げました、政令の委任が多過ぎる。そして、そのことは、法律の施行が行政庁によって恣意的に行なわれたかつての心配を、再び繰り返すことにならないか。これは、この法律だけでは、そういう心配はないかもしれませんけれども、あるいは全体の政治の情勢が変わったりしてまいりますと、行政官庁の事実上の権限というものが、だんだん大きくなってくると思うのですが、当事者であります防衛施設庁が政令、省令をきめる、あるいは算定方法あるいは金額の決定等についても、交付金等についても防衛施設庁の長官がきめる。それをチェックする方法が法上は講じてはございませんが、これらの点は、法制局は審議をされたのだと思うのですけれども、私は、問題があると思う。少なくとも、憲法が公布されました直後の法律なりあるいは行政法の中にも、それはちゃんとこしらえてあったと思うのですが、どういうように考えられますか、お尋ねします。
  106. 味村治

    ○味村政府委員 憲法の七十三条の六号をもちまして、「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」というふうに規定がございまして、一応これは法律によって委任される政令、いわゆる委任政令があるということを、憲法の法体系といたしまして認めておるというふうに解釈されているわけでございます。  ただいま先生のおっしゃいましたように、国民主権という立場からいたしますと、これは政令に委任するということは必要がないのに、むやみにやたらと政令に委任するということは、もとよりやるべきことではなかろうと存ずるわけでございますが、ただいま問題になっております防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律案、これは、現行法の防衛施設周辺整備等に関する法律、あるいは本年の三月二十七日付で改正法が成立いたしました公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律、こういった法律とほぼ同様の委任になっております。  もともとこの法律の目的が、自衛隊等の行為とか防衛施設の設置もしくは運用により生ずる障害の防止等のための、防衛施設周辺地域の生活環境の整備につき必要な措置を講ずるということでございますので、どのような障害が生ずるか、あるいはどのような対策を講ずる必要があるかというようなことは、法律で事こまかに書くということが適さない部面があるわけでございます。そのために、先生の御指摘のように、政令に委任しているということは、数としては多くはなっているかと存じますけれども、これは、いずれも政令に委任するということを必要とするという範囲のものであろうかと存じます。
  107. 吉田法晴

    ○吉田委員 おそらく、そう答弁しなさるだろうと私も思っておりましたが、それは前にも現行法があります。それから運輸省所管の航空機騒音防止法ですか、長い名前ですからフルネームは言いませんけれども、その制度がとられておる云々ということですが、しかし現行法の基地周辺整備法の審議は、私は関係しませんでした。関係しませんでしたが、しかし、この法律を読んでみて、いかにもその後の最近の傾向といいますか、政令委任があまりにも多くなり過ぎて、そして最初のチェック・アンド・バランスが、この法上にはほとんど考えられていない。時代の変化とともに憲法の精神が、民主主義の制度がくずれつつあるというのに、若干驚いておるところであります。  一つの例をあげましょう。たとえば、「著しい音響の基準」、その「音響の強度及びひん度が、防衛施設庁長官の定める限度をこえる場合に」、こう書いている。著しい音響の基準、その基準そのものも防衛施設庁がきめる。いわば当事者が、それに対してやめることを求める。犯人とまでは言いませんけれども、責任者の当事者が自分で基準をきめる、そして、それに合うか合わぬか、適合するかどうかの判断も長官がやるわけです。こういう制度が許されるだろうか。それに不服な場合は、訴訟をやればいいということがどこかに書いてあったと思いますけれども、それならば、初めからこんな法律は要らないでしょう。  もう一つは、この法律によって、障害に対する補償も規定されている。しかし、この法律のねらっておるところは、その損失の補償じゃなくて、賠償法ではなくて、その障害を防ぐための、あるいは減すための防衛施設周辺生活環境の整備のための法律です。その整備ということについては、市町村からの希望に応じて防衛施設庁が当たる。その希望をどれだけ取り上げるかということについては、これは恣意と言ったらおかしいけれども、政令はある、あるいは省令はありましょうけれども、それをチェックする機関はない。  それからもう一つ問題なのは、これは、どういう法理なのか知りませんけれども、従来は相当因果関係が必要だといわれておったが、この法律では、因果関係は必要ではないといわれる。その辺が私もよくわかりませんが、そうすると、因果関係も必要としないということになりますと、行政庁の判断ということになります。これは、民法上の差しとめ権に基づいて差しとめさせる、それを裁判によってやるというのならわかります。ところが、いま日本の法律の上では、この差しとめ権、インジャンクションというものは、認められてはおりません。少なくとも、これを制度的に、環境の整備ということで、障害を防ぐあるいは障害を減すという方法がとられておるならば、基本的には、法制的に考えると、インジャンクションというものが法制的には確立されておらぬけれども、あるいは判例は確立されておらぬけれども、この法律によってこれをつくる、こういうことになるでしょう。そうすると、そこにはいまの法律で、憲法なり民法なりあるいは自治法なり、そこらで働いておる制度というものが、法理というものが働かなければならぬと思うのです。この法律による独特の法理、これは外国にもない、日本にもない制度ですよ。そして、その間に弊害が出てくる心配がありますが、その弊害が出てくる心配はどうして防ぐか。これは具体的に法制局に承ります。
  108. 味村治

    ○味村政府委員 この法律は、仰せのとおり自衛隊等の行為等によりまして障害が生じた場合におきまして、生活環境の整備につきまして必要な措置を講じようという法律でございます。インジャンクションというものは、これを主として民事上の問題でございまして、ただいまのところ、この間の大阪空港の事件のように、民事上の人格権というものをもとにいたしまして差しとめを認めた判決もあるわけでございますが、この法律は、そういった既存の民事上の請求権をどうするこうするという、現在の民法体系によって認められております権利につきまして、それを変容するというようなことはないわけでございまして、それを前提としてと申しますか、それは外に置きまして、その上でこのような対策を講じよう、こういうものであろうかと存ずるわけでございます。  そこで、このような法律が公平に施行されるような、そういうことを保障する措置はどうなっているのかということでございますが、これは、たとえば先生の御指摘になられました本法の四条かと存じますが、「政令で定めるところにより自衛隊等の航空機の離陸、着陸等のひん繁な実施により生ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛施設庁長官が指定」をされるわけでありますが、その指定の基準は政令で定める。政令で定めます際には、閣議を経るわけでございますので、そこで各省で十分に協議をいたしまして、合理的な措置を、基準をきめるというような形で制度的な保障を行なっておるわけでございます。
  109. 吉田法晴

    ○吉田委員 私の尋ねたところにはお答えがなくて、法のたてまえを説明されましたが、法のたてまえの説明は、幾らか資料をいただいておりますから私どももわかります。  差しとめ請求権、あるいはインジャンクションと申し上げたのは、こういう障害——法律の一条の後段に、「自衛隊の特定の行為により生ずる損失を補償することにより、」と書いてあります。だから、損失補償もやはりあるわけです。日本の場合には、こうやって法律で根拠をつくる以外に、正直申し上げまして、判例で積み重ねるということが少ない。若干の公害裁判等については、大きな前進はございますけれども、これも一つの公害かもしらぬと思いますけれどもね。「自衛隊等の行為又は防衛施設の設置若しくは運用により生ずる障害の防止」、損害の防止とは書いてございません。損害の防止とは書いてございませんけれども、後段に、「損失を補償することにより、」ということですから、広義の意味においては、損害の賠償ではございませんけれども、金銭による補償ではございませんけれども、防止措置ということで、あとで出てきますが、農業用施設云々といったようなものもございます。これらのものは、これは農林省の補償要綱を思い出しますが、ダムをつくった、そこで家も、たんぼも、農道も水没した、そのかわりに耕地を提供する、あるいは家をつくったり、あるいは農道をつくる、実はこういう現物補償現物賠償の形が行なわれている。私は、広義の意味においては、障害の防止云々ということでございますから、法理的にいうと、広義の差しとめだと思うのです。ですから、損害の防止とそれから補償と二つを含んでいる法律だと思うのです。それを日本の場合には、判例で積み重ねない。だから、こうやって法律をつくるわけです。  そうすると、その場合に働く法理というのは、いまの憲法あるいは民法あるいは行政法、そういうものの共通の法理というものがこの中で働くでしょう。さっき労働委員会の話をしました。あるいは行政委員会の問題につきましても、公務員制度は民主的な公務員制度、その民主的な公務員制度についても、昔と違って人事院というものをつくったり、あるいは人事権なら人事権の行使についても、救済措置は講じております。公平委員会というものがある。いまでは、大都市についていえば人事委員会があります。そういう制度が、この法律の中にはないではありませんか。そうすると、それはどうして救済をしますか、こう聞いている。  これは、行政法で広義の防止措置を講ずる。それが公共事業の援助であろうが何であろうが、障害の防止の措置を講ずるのです。これは広義の差しとめ請求なり、あるいは差しとめ請求権に基づいて、私法上保障されておる請求権に基づいてインジャンクションを働かせる、差しとめを請求するというのではない、それはわかる。しかし、行政法なら行政法で障害を防止しようということには間違いないじゃないですか。そうしたら、他の行政法にある組織、チェック・アンド・バランスの組織というものが考えられなければならぬじゃないか。不服のある者は、訴訟でやったらいいということで済まぬのじゃないかということを、法制局には申し上げておるわけです。その具体的な方法を講じないで、いや、恣意にはまかせませんと、防衛庁長官は胸をたたかれるけれども、幾ら胸をたたいてみたって、制度上それが保障されなければいかぬじゃないかということを申し上げておるが、法制局はどうですか。
  110. 味村治

    ○味村政府委員 あるいは私の先ほどの答弁が、舌足らずであったのかと存じますが、民法上の差しとめ請求権は、民法七百九条に、不法行為に基づく損害賠償の規定がございます。それから最近は、人格権といったようなものに基づきまして、差しとめ請求ができるという解釈論があるわけでございます。そういった民法上の問題と、この法律で考えておりますものとは別だということでございまして、先ほど御指摘になりました一条の後段の損失の補償と申しますのも、民法上は、違法な行為による損害賠償が民法に規定されているわけでございます。しかし、ここに規定してございますのは、適法な行為によって損失を受けた人に対して、その損失を補償しようということでございまして、制度的に違っているわけでございます。  したがいまして、この十三条の二項におきましても、これは損失の補償についての規定でございますが、「前項の規定は、他の法律により、国が損害賠償又は損失補償の責めに任ずべき損失については、適用しない。」、損害賠償と申しますのは、民法の損害賠償なり、あるいは国家賠償法の規定であろうかと思いますが、そういう場合には、適用しないのだということを規定してあるわけでございます。
  111. 吉田法晴

    ○吉田委員 あまりここは議論をする場所ではないと思いますけれども、民法上の損害賠償は七百九条、それは不法行為による損害賠償と言われますけれども、いま世間でいわれております損害賠償なり、あるいは公害の補償にしましても、こういうあれにしても、民法の不法行為による損害賠償だけですか。そうじゃないでしょう。民法で済んでおるだけならば、あるいは外国のように、民事上の裁判からだんだん発展をしていって、それを制度化するという方法ならば、それでやっております。いまやっておるのは、たとえば、これもそうですけれども、あるいは公害なら公害について、昔は企業がたれ流しをしても、あるいはばい煙を出しても、それは適法行為でした。いまでいえば、適法行為であるか違法行為であるかということは、公害の補償については問題じゃないのではないですか。それは、資本主義のもとでは認められておる営業をやって公害を出して、それで人畜に被害があったら、あるいは財産に被害があったら、それをやはり補償するのが、いまの補償の実態で、公害問題の実態で、法制局の部長でそんなことを言っておるようでは話が通じませんよ。  問題は、これが行政法によって、法律によって不法行為か適法行為かというと、適法行為かもしれません。適法行為かもしれませんけれども、その適法行為によって障害が出る場合には、そしてそれが多くの周辺の人たちによって指摘をされており、また現実に被害を及ぼしており、眠れない、あるいは卵も産まぬ、牛乳も減った、こういうものに対して、その損害も補償しましょうが、それをやめるためにどうするか、法律上に義務づけてやらせるというのでしょう。それを市町村がやるものについては援助をする、補助をするというのが、この法律のたてまえでしょう。そのたてまえの上に、この法律に書いてあるところでは、あるいは政令に書いてあるところでは、大部分を防衛施設庁長官がきめる。そしてその額も、補助のしかたも、あるいは特別地区の指定も、これは閣議にかかるにしても、防衛施設庁がやはりきめる。それに対して、もし不服があったならば、あるいは妥当さを争うということになったら、訴訟をやりなさいということでなくて、この法上で、ほかの行政法についてはみんな規定がしてありますが、この法律で救済をするということになったらどうしますか。そのことは、法律で書くか、あるいは政令で書くか知りませんけれども、書く必要がありはしませんかと言っておる。そういうことを、私の言ったように法制局は認めなさらない。それには答えていない。ですから、だれか、関係者の中で言うことがわかるのなら、補足してもらってもけっこうです。
  112. 田代一正

    ○田代政府委員 私は、法律の専門家ではございませんけれども、やはり主管庁の長でございますので、私から申し上げたいと思います。  いろいろ聞いておりますと、私ども、昭和四十一年法も同じスタンスでございますから、今回の法律も同じスタンスだと考えていいと思いますが、ものの考え方は、先ほど法制局から話がございましたように、一般の民事法規というものの底に流れておる、それを全然否定するわけではございません、御存じのとおり。その上に、たとえば自衛隊の行為とかあるいは防衛施設の設置もしくは運用ということに伴う障害に対して、一体どういうぐあいに考えるかということを目して、この法律ができておるわけでございます。  そこで、まず一段がまえの方法といたしましては、いろいろな障害が出る、その障害を防止、軽減するという方法があるかどうか、こういうとらえ方をしているわけです。したがって、たとえば学校部門の場合をとらえますと、これは、まさに障害の防止また軽減というために、営々として過去何年間か防音工事を続けておるわけです。それからまた、たとえば一般の演習場があるといたします。演習場を使用いたしますと、若干荒廃現象が起こるかもしれない。そういたしますと、やはり地くずれとか何かが起こる。地元の皆さんに非常に御迷惑をかけちゃいけませんので、その防止工事をいたす、こういった形でとらえているのが、障害の防止、軽減という考え方でございます。  そこで、まずやってみまして、それでも現在の技術その他の水準から申しまして防止、軽減は完全にはできない、障害の影響は地元に残っておる、そこで、何がしかのことを地元の皆さん方にしなければいかぬという問題がございます。これが新法の八条を流れている民生安定施設、これの助成の問題でございます。  それで、なおかつ問題が残ります場合は、これは十三条以下にございますが、損失補償という問題がございます。たとえば演習場がある。演習場で若干の荒廃をいたしまして、水の流れが少し早くなる、そこで地元で牧草地が枯れてくるとかいう現象が起こるといたしますと、これは適法行為ではございますけれども、やはりそのままほっておいてはいけないということで、損失補償という問題がある。そういうことで、この法律は、いろいろな自衛隊等の行為または防衛施設の設置、運用ということに関連いたしまして起こった事象をとらえて、その対策をこの法規で掲げているわけでございます。  それから、主務官庁である防衛庁あるいはまた防衛施設庁が非常に独走で、チェック・アンド・バランスがきかないじゃないかというお話でございますけれども、これは、先ほどから何回も申しておりますように、重要な問題について骨格が法律にございます。さらに、それを受けました基準的な問題は政令事項になっております。政令事項については、先ほど申しましたように、関係各省の大臣の御了承をいただくということが前提になります。さらにまた九条で申しましたようなことで、特に大事な問題につきましては、関係大臣に協議するということに相なっております。したがいまして、そういったワク組みの中で防衛庁なり防衛施設庁が、この法律を運用するわけでございます。法律には必ず主務省がございまして、どこかの省が実施するのは当然でございますが、わが防衛施設庁が実施するにいたしましても、そういったいろいろな制約の中——制約と言っては、たいへん失礼でございますけれども、いろいろなワク組みの制約の中で法律の執行が行なわれるということでございますので、独走体制とかいうお話がございましたけれども、そういうことは当たらぬのじゃないか、こう考えております。
  113. 吉田法晴

    ○吉田委員 自治政務次官、お立ちをいただく前にちょっと済みません……。  まあ、心配は通じたようです。あとは、このやりとりにも出ましたように、自治大臣防衛庁長官の間で協議をしていただいて、そうして政府機関の中で、メモということもないかと思いますけれども、私が心配をいたします点は、法律ができますとやはりひとり歩きをいたします。それだけに、ぜひ何らかの機会に両大臣の間で、ちゃんとしたメモの取りかわしをお願いをしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  114. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大臣は、私がいまおりますので。  そういうお考えもごもっともかと存じますけれども、しかし四十八年度までは、自治省が交付しております基地交付金あるいは国有財産以外の米ドル資産交付金、こういうものがありまして、自治省と最初相談をしたときには、これは防衛庁のほうで引き取ろうかという話もしたのですけれども、これはやはり一般財源ということで交付しておりますし、したがって、総額の二五%については、自治省が防衛庁と協議して、それのまとまったものを二五%は、傾斜配分と申しますか、基地の態様その他を考えて配分するような制度になっていたわけです。  今度、四十九年度予算の編成にあたりまして、特定基地の交付金五億円でございますが、その性格というものを考えますときに、これはやはりつかみ金的な財政援助であってはならない、それは、やはり自治省の分野であるというので、これを設けるに際しましては、よく相談をいたしまして、自治省のほうに、現在防衛庁の発言権と申しますか、調整の分野としてありました二五%、金額はたしか、大体十八億程度の金額でありますが、そういうものは、こちらのほうは今度はしない。ですから、自治省で自分たちだけで御配分なさってけっこうである。これは固定資産税割りその他でおやりになるでしょうが、そういうことでけっこうであるということで、こちらのほうは、今度は、自治省のいままで相談しておりました分野から手を引いたわけであります。  そしてそのかわり、また自治省のほうは、今回この新しい法律によって地元負担というものが出ます場合におけるそれは、適債事業として起債を認めよう。当初、元利償還その他のこともいろいろ考えたのですが、これは、過疎その他等とも性格は違いますし、そこまではなかなか無理であるということで、自治省側のお考えになりました案である率のものについては、補助残の二分の一、定額補助のものについては、その定額補助額の二分の一というものを、当該年度の特別交付税で見よう、こういう非常に円満に話し合いをして、組み合わされてこれができておりまして、もちろん運用についても十分、これは結果的に地方自治体の工事であり、財政負担であり、起債であり、交付税であり、ずっと一貫して結びついておりますから、相談をしながら運用していくということは、間違いなく行なわれますし、それによって地方自治の侵害ということは、ちょっと考えられないことであると思います。
  115. 吉田法晴

    ○吉田委員 法制局も、防衛施設庁長官も、一般私法の原則とそれから行政法の原則とは、基本的に違うようなお考えのようです。私は、それは違うと思います。法律的な関係というものが私法か公法か、これは国家権力の関係が入るかどうかということもありますが、権利それ自身が実行されないときに、差し押え、強制執行の形をとります。あれがほんとうの権利の姿。ですから、本質的に私法と公法との間に違いはないと思います。少なくとも、こういう補償とかあるいは障害、損害を起こさないようにするという点からいくと、民法上の差しとめ請求権、それから公法上の差しとめ権というものも、本質的に違いはないと私は思うのです。——それはいいですよ。そこまで争おうとは思いません。  そこで、お尋ねをいたしますが、それは特別施設の指定があって、一種、二種、三種というような区別ができます。こまかいことは、あとで尋ねますが、防音装置を講じます。これは一種地域ですけれども、一種地域の防音施設のあれをするのは、二種も三種もかぶるわけですから、二種、三種の地域は、その防音工事や、一種地域にプラスされて施策が強化される、こういうことになると私は思うのですが、聞きますと、従来航空機が、騒音防止法でそうなっておるからということで、防音は一室に限るようですね。それから金額にしますと、いまのところ百万円限度以内。その一室の意味も、これは明らかでございません。  そこで、私は、伊丹の空港の近くのアパートに住んでおる、三DKのアパートというものを考えるのですが、一室といっても部屋は二つあります。そうすると、居間にするのか座敷にするのか。あるいは一部屋だけだということになりますと、隣に便所がありふろ場があり、一部屋だけ防音をしても音は入ってきます。ですから、これは現物賠償ではございませんが、実際に騒音を——これは現物賠償といったような言い方をすると、それは民法上の考えとこれとは違いますと言われるから、見解の相違がありますから、そこはやめますが、防音といいますか、騒音を防ぐということ、障害の防止ということについては、いいかげんでいいじゃないか、あるいは予算の関係があるから百万円程度以内ということでは、ほんとうのこの法の目的にはならぬのじゃなかろうか。  賠償について、賠償は完全賠償でなければならぬ。人の命は、だんだん高くなってまいりますが、まだ国際的な水準までまいりません。それはございますが、少なくとも賠償は、完全でなきゃならぬ。それから、もとに戻すという話になれば、それは完全でなければならぬと思う。少なくとも、この法律だからということで、政府がやることだから、政府が援助することだから、それはいいかげんでいいということにはならぬと思う。予算の関係で百万円までで切るということは許されない問題です。法理としては、それは一部分でいい、三つ部屋があるのに、一室でいいということにはならぬと思う。  それからもう一つは、騒音のために防音壁をつくるけれども、それは温度が上がっても、それから先は知らぬ。百万円限度で、百万円かけてやるんだから、あとは自分でクーラーをつけなさい。学校でもそうです。学校でも、二重窓にしたり防音装置を講じておりますけれども、温度が上がってしょうがない。それは政府がしてくれませんから、町村がやったりあるいはPTAがやったりしている。こういう点については、法制局にお尋ねするところですが、賠償なり差しとめなり防止は、完全でなければならぬと思うが、そうなってないのはどうしてなのか。それについてどう考えられるか。そういうものについて、それでは異議を申し立てるという方法について、先ほど来明らかになりませんでしたけれども、ほかの行政法については救済の道が法上講ぜられております。それは訴願をしたらいいじゃないか、あるいは国家賠償法を適用して云々ということを言われるのか。一つの法体系としては、私はほかの法律にはあると思う。公務員制度についてさっき述べました。あるいは労働関係なら労働関係についても言いました。これについてはない。それでいいのかどうか、どう考えられるのか、ひとつ承りたい。
  116. 味村治

    ○味村政府委員 民事上の損害賠償でございますと、これは、いわゆる相当因果関係に立ちます損害の全額を賠償するという請求権が発生するわけでございます。あるいは人格権に基づく差しとめ請求権でございますれば、極端な場合には飛行機は飛ぶな、この飛行場は使うなという差しとめの請求ができるわけでございます。いずれも私人に権利が生ずるというものでございますから、その権利を実現する手段は、裁判に訴えて強制執行までやるということになっているわけでございます。  この法案は、被害者を救済すると申しますか、生活環境をよくするという点では、先ほど例に申し上げました大阪空港の被害者に対する損害賠償と同じような趣旨ではございますが、たてまえが違っているということを私は申し上げたわけでございまして、民事上の損害賠償なり、あるいは差しとめという問題は別といたしまして、その上にと申しますか、さらにこういう助成なり補助なりを行なうのだというたてまえであると存ずるわけでございます。  したがいまして、これは民事上の、あるいは民事上と言わなくてもよろしいのですが、公法上の権利というふうな構成はとっていないわけでございますが、これは被害を賠償する、あるいは損失の補償は十三条以下でございますが、十三条までの分は、損失を補償するというようなことではございませんで、生活環境をよくするのだ、そういうたてまえでございますので、補助とか助成とか、そういう方法によっているわけでございます。したがって、法律的に申し上げますと、そのような補助とか助成というようなものにつきまして、請求権を与えるということはむずかしいわけでございますので、このような構成をとっていると理解しております。
  117. 田代一正

    ○田代政府委員 法律論的なロジックは、ただいま法制局から申し上げたとおりだと思いますが、先ほど御質問の中に、一室だけ、しかも百万円というお話がございました。これは、先ほど申しましたようなことを踏まえての考え方になりますが、できましたら、私どもは、全部防音工事ができるということになればと思っておりますが、何ぶんにも、一昨日たしか先生おられたときに、御答弁いたしたところでありますけれども、この四条を適用いたしますと、全国に一体何万戸くらいあるかということで、私どもの過去のいろんな、一級防音とかあるいは集団移転とかいう地区等々から勘案いたしますと、全国で数万、場合によっては十万近くになるのではないかと存じております。そういたしますと、非常に大きな額になる。十万戸といたしますと、一戸当たり百万円としても一千億円ですね。そういう巨大な金額を要するということにも相なります。そこで、とりあえず一戸一室程度のものを、なるべくたくさんの方々にやって差し上げたいという気持ちから出ているわけでございます。  それから、単価の問題でございますが、これも四十九年度予算のできております積算の根拠としましては、百万円程度ということでございますが、この点につきましては、新法が成立いたしました暁におきまして、運輸省にも類似の案件がございますので、十分よく相談いたしまして、現地における労務費が上がったとかあるいはまた資材費が上がったとかいう点もございますので、若干これが、見直すことによって上がってくるということはあり得るかと考えております。
  118. 吉田法晴

    ○吉田委員 もう一つ、クーラーは。
  119. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 クーラーと申しますか、効果としましては、遮音等のために部屋を気密状態にいたしますので、どうしても夏冬ともに温度と湿度の適当な保持をいたさなければなりません。したがって、従来から、現行周辺整備法で防音工事等を行なっております学校等につきましても、夏場窓を締めたことによって、温度保持、湿度保持のためにクーラーを必要とするような地域に関しましては、従来から、防衛施設庁におきましては、そういう設備を補助の対象の中に入れて実施いたしております。今回の新法案で掲げております個人住宅の防音に関しましても、その地域によりまして——一応学校の場合には、関東地方から以南の地区を対象にいたしております。東北地区、北海道地区に関しましては、いわゆる夏場の除湿、冷房というものは対象にはいたしておりませんが、個人住宅防音に関しましても、この法案成立後実施していく段階におきましては、学校防音の場合と同じように、個人住宅についてもそういう温度保持、除湿のために必要な、一般にいわれるクーラーの設備を補助の対象としてつける考えでおります。
  120. 吉田法晴

    ○吉田委員 いまのお二人の説明で、私の解釈なり意見というような立場が明らかになりましたが、それは民事上の損害ではないのだから、財産的な損害あるいは人格権の損傷ではないのだから、完全賠償はせぬのだ、こういうわけであります。これは社会政策についていえば、慈恵的な社会政策と同じことだと思うのですけれども、やはり人権に対する評価が違うということだと思うのです。飛行機が飛ぶにしても公共の施設だから、特にそれは防衛問題についていえば、そのために損害を受けても、それは国全体を守るために被害を及ぼすのだから、少々の被害はしんぼうしなければならぬというのが基本にあるように思います。したがって、因果関係は要らぬ、しかし、その防音をするために、障害を防止するために市町村がやってやる、それを国が補助してやる、こういう考え方です。  ところが、それで済まなくなっている。公害問題についていっても、昔の考え方でいうならば、工場から煙が出るのはあたりまえなんです。こういう話があります。八幡に来て、八幡製鉄の煙が問題になってから、もっと減してくれという申し出をしたところが、八幡に来れば、煙突から煙が出ているのはあたりまえな話じゃないか、煙突から煙が出ることを承知の上で八幡に就職している人間が何を言うか、こういった話があったということです。それで済まなくなっている。それで済まなくなって、ばい煙なりあるいはその中に一酸化炭素なり窒素化合物等があったら人間のからだに被害を与える、損害を与える、それが昔のように許されなくなったから公害問題というものが起ってきた。基地公害とかいろいろなことがいわれますけれども、なぜ、それが言われるようになったか。これはやはり人権の向上です。その上にこの法律ができているのじゃないですか。昔の考えのように、国がやることについて何を文句を言うか、黙れという思想なら別問題です。私はそうじゃないと思うのです。  まあ、基本的に立場が違いますから、法理的な考え方も違うようですが、少なくとも私はあなた方と、いまこの法律を必要とした、あるいは基地であろうと、その障害なりあるいは損害なり与えないようにしなければならなくなった、その現実、そこの認識が違うところです。防音にしても、あるいは障害を除こうとするならば、それは因果関係を必要としないけれども、そのかわりに完全に押える必要がある。一部分でいいのだ、財政的な予算の範囲内でというのは、私は間違いだと思います。  もし、それが通るということになるならば、それは、大阪なら大阪の空港の問題は起こらぬでしょう。あるいは新幹線なら新幹線の公害という問題は起こらぬでしょう。国鉄にもまだ若干あるようです。少なくとも法制局にそういう考えがあったのでは、法律を通じて国民の権利義務を守る、憲法に保障された人権が保障されるということがないということを申し上げて、これ以上の論争はいたしません。  そこで、食い違う点だけは明らかになりましたから、個々の具体的な問題について聞いてまいります。多少、法文の順序に従って聞いてまいりましたが、特定防衛施設の指定と関連市町村の指定の問題。総理が、周辺地域に及ぼす影響を考慮しと言われる、その考慮しというところに、相当因果関係は必要としないのかと尋ねようと思ったのですが、いまの説明で、相当因果関係が必要としない理由がわかりました。そこで、それは尋ねても無意味見解が違うのですから、考え方が違うのですから、それはやめます。  ただ、政令案も見せてもらいましたけれども、実際にはどこに適用されるかというのはたいへんわかりにくい。そこで、参考資料を見ておりましたら、現行法の五条、特定飛行場の基準ですね、政令九条に、「自衛隊等の航空機その他の航空機で、ターボージェット発動機を有するものの離陸又は着陸がひん繁に実施されている飛行場とする。」というのがあります。そしてこれは、それに基づく防衛施設庁の告示九号に、十七ですか、千歳以下新田原飛行場までの例がございます。その中には、私の地方の築城、芦屋等も含まれておるわけですが、WECPNL八十以上とか九十以上とか基準はございますが、この現行法での特定飛行場の基準等は、この特定防衛施設指定の際の基準になり得るのかどうか。これはWECPNL云々で基準が違っておりますから、そのものであるとは思いませんけれども、しかし、ターボジェットエンジンを有するものが発着をするということになると、ほとんどその大部分になるわけであります。ここにあげてあります十七、あとでどこかがつけ加わっておりますから十八か十九ですね、いかがでしょう。
  121. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 新法案の第九条の特定防衛施設という名称と、現行法の第五条にあります特定飛行場という名称とが、同じような特定ということばがついておりますために、まぎらわしくなっておりますが、ものの考え方は、全然別の考え方で構成されております。現行法五条におきます特定飛行場と申しますのは、これは、その飛行場の周辺におきまして、家屋等の移転措置を行なうための基準といたしまして、どういう飛行場を選び、その飛行場の周辺のどの範囲を対象区域にするかという基準を、法律及び政令、告示等で設けている次第でございます。新法案九条に述べておりますところの特定防衛施設と申しますのは、飛行場に限らず、演習場、射爆撃場、港湾、その他政令で指定する施設等につきまして、そういう特定の防衛施設が、たとえば広大な面積を有しているとか、あるいは砲撃音、飛行騒音等の障害音を発することによって、そういう施設の設置または運用によって、周辺の地域社会に対して種々の影響を及ぼしている、そういう影響を考慮して、そういった施設を特定の防衛施設として、一定の客観的基準をもって指定するということに考えておるわけでございます。  したがって、新法案第九条に申しますところの特定防衛施設を指定し、特定防衛施設周辺の市町村を指定するにあたりましての指定の基準というものは、現行法五条の角度とは異なったものになろうかと思います。しかし現行法第五条に掲げられておりますところのターボジェットエンジンを有する飛行機が離発着する飛行場と申しますのは、やはりそれ相応に広大な面積も持っておりますし、また、航空機騒音等も相当発しておる現状から、新法案の九条の特定防衛施設の一応対象として考えられる範疇に入るような飛行場になろうかとは思います。ものの考え方が、全然別の考え方に立っているというわけでございます。
  122. 吉田法晴

    ○吉田委員 別の考え方、別の基準だけれども、現行法五条にいう特定飛行場、それが告示であげられておる十幾つの飛行場は、その広さ、それからその周辺に与える影響等から考えてみて、新法の九条にいう特定防衛施設になるだろうということですが、もう一ぺん、では……。
  123. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 私の表現が、あるいは舌足らずでございましたかもわかりませんが、新法案の第九条におきまして、「次に掲げる防衛施設」ということばが冒頭にございます。そして、その「次に掲げる防衛施設」を、その条項のあとのほうで、一、二、三、四と列挙しております第一に、「ターボジェット発動機を有する航空機の離陸又は着陸が実施される飛行場」という表現がございます。そういう意味におきまして、この「次に掲げる」という第一項の、いま申し上げました飛行場の範疇には、御指摘の現行法第五条の特定飛行場は入るということでございますが、しかし具体的に特定防衛施設として指定する場合には、ただ単にターボジェット発動機を有する航空機が離発着しているというだけではなくて、その防衛施設の飛行場としての面積だとか、あるいはそれが所在市町村に占めますところの面積の割合だとか、あるいはその関係市町村の人口、あるいはその人口の動態、法文にもあります「開発に及ぼす影響」といった点が、そういった点でも考えられるわけであります。それから、飛行機の離発着の回数、そういった障害の度合いというものを判定の基準として考えまして、そういう判定の基準に立ち、ものさしを当てた上で、この飛行場の中から、どれが特定防衛施設になるかということは、これからきめていく問題になるわけでございます。
  124. 吉田法晴

    ○吉田委員 もう一つ、これは防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、岡垣の射爆場は、この間お尋ねをいたしましたが、これは再使用をされるにあたっての条件等について承ったところですが、この岡垣射爆場を中心にいたします四カ町村等から、防衛庁長官のところにも陳情があったりいたしておると思いますが、私にはよくわかりませんことは、「ターボジェット発動機を有する航空機の離陸又は着陸が実施される」という点は、いまの答弁でわかりましたが、その次の、「砲撃又は航空機による射撃若しくは爆撃が実施される演習場」、それから三、四に「港湾」と「その他政令で定める施設」と書いてありますけれども、その二の、「航空機による射撃若しくは爆撃が実施される演習場」の中に入ることは間違いない。それから、いまの説明でいいますと、関係の町村といいますか、市町村あるいは住民の人口云々という点がございますが、しかしそれが、それらの点についていいますと、政令といいますか、あるいは基準の計算方法その他がわかりませんから、WEC何とかの九十、八十とかいっているわけでありますけれども、それが実際にどういうぐあいにして算出されるかということは、まだお示しがございませんだけに——深夜の回数は云々といったような計算方法は出ております。出ておりますが、実際の計算例がわかりませんからわかりませんが、政治家として、防衛庁長官の、その御感想といいますか、御感触といいますか、承りたい。
  125. 山中貞則

    ○山中国務大臣 WECPNLというのは、国際的な航空機騒音についての環境基準の指針でありまして、加重等価継続感覚騒音基準というややこしい日本語になるわけですけれども、それは、日本の環境庁の定めた航空機騒音にかかる環境基準、こういうものを尊重しておりますし、運輸省の、民間飛行場の採用しております基準どおりで一種、二種、三種の区域をつくるということでありますから、この間においては何ら相違はないわけです。  ところで、岡垣の場合は、期限つきで使用さしていただいております。でありますから、期限が到来したならば、それが射爆撃場として使われないという約束をいたしておりますし、そのとおりにいたしますので、あと残りの期間だけを指定することができるのかどうか、現在のところは、まだ作業を進めておりませんが、あと何年たてば、ここからはそういう原因となる演習その他行なわれないのだという場所については、恒久的な——恒久的なと申しますか、特定防衛施設として指定するのにはどうであろうかという感じもいたします。目下検討中というところであります。
  126. 吉田法晴

    ○吉田委員 その次は、具体例でありますけれども、山田弾薬庫という北九州、西日本で最大の火薬庫ですが、いまは使われておりません。米軍から返還されて、大蔵省所管の一般財産として管理されております。これは地元の市議会で何べんも議決をし、それから大蔵省に陳情をして、市の平和利用といいますか、一般市民のレクリエーションの場その他として返還する可能性が強いということを、新聞紙その他で承知をしておるわけでありますが、この法律に関連をして、政令やらそれからいろいろ見てみますと、広大な火薬庫について火薬の爆発云々ということは書いてございますが、防衛庁のほうからすると、この法律をあの山田弾薬庫にも適用をするような意向があるのではないか。どういうようにこれは計算をされるのかわかりませんけれども、その辺のいわば条文の解釈を承りたい。
  127. 田代一正

    ○田代政府委員 山田弾薬庫は、御案内のとおり、米軍から返還になりましたけれども、現在、普通財産として大蔵省が所管している財産になっております。われわれがこの法律で考えておりますのは、防衛施設の中でかくかくしかじかということになりますので、防衛施設になっていないわけでございます。したがいまして、いまの段階では、山田の弾薬庫につきましては、この法律の適用はない、こういうことでございます。
  128. 吉田法晴

    ○吉田委員 これは、条文の解釈でございますが、「防衛施設の設置又は運用」というのは、運用はわかります。運用はわかりますが、設置ということばの意味、そして「その周辺地域の住民の生活又は事業活動が阻害されると認められる場合」、因果関係の関係もございますけれども設置または運用によって、その周辺の住民の生活または事業活動が阻害されると認められる場合というのは、具体的にはどういうことをいうのか。いわば逐条解釈の資料をいただいておりませんから、承りたいと思います。  それから、「生活環境施設」この生活環境施設というのは、これは第一条にもございますから、生活環境というのはわかりますが、「事業経営の安定に寄与する施設」こういうのがありますが、「事業経営の安定に寄与する施設」というのは、どういうのをいうのか。それと、いわば施設の設置、運用と事業経営の安定に支障があるような事態というのは、どういうことをいうのか。これは法文の解釈、具体例ですが、具体的に御説明願いたい。
  129. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 御質問は、第八条の点を指摘されているわけでございますが、「防衛施設の設置又は運用」の設置と申しますのは、防衛施設が現にそこに存置されておること、また防衛施設を新たに設置すること、この二つの意味が含まれるわけであります。そして従来、防衛施設の運用ということばだけで現行法は表現しておりましたが、、今回の場合、設置と運用とを並列することによりまして——運用ということばは、その防衛施設が機能を発揮するためのもろもろの作用をいうものであって、いわばその防衛施設の維持管理を行なうような動的作用も含めた考え方でございます。  それから、住民の「生活環境施設又は事業経営の安定に寄与する」ということでございますが、事業経営と申しますのは、具体的には、政令等に掲げておりますが、現行法におきます施設等でも、ごらんいただきますとおわかりになると思いますが、たとえば有線ラジオ放送施設をつくるとか、あるいは水道法にいう水道を施設としてつくるとか、屎尿処理施設、消防施設あるいは農林漁業用の施設、そういったものが、すべて住民の生活環境施設であると同時に、また事業活動の施設の面にもつながっている、そういうふうに御理解いただければと思います。
  130. 吉田法晴

    ○吉田委員 大体わかりましたが、その中で、事業経営に影響があるというのは、どういうことですかという質問に対しては答えがありませんでした。つくるほうは、農業関係あるいは林業関係、漁業用施設云々と、こう法案にあげてありますが……。というのは、これは、あなたたちのように、してやるのだという考えなら別問題です。それからまた、何かしてやれば、設置確保が容易になるという考えなら別問題ですが、私どものほうは、損害がある、あるいは被害がある、あるいは支障がある、それをかわりをつくるのだ、生活保障をするのだ、それは当然のことで、権利はないと言われましたけれども、私どもはあると思う。また、それが許されなくなってきたというところに、この法律があると考えるものですから、その原因は何なのか。もし、たとえば基地があって、固定資産税が入らぬだろうから、固定資産税のかわりにやろうというなら、それもまた別問題です。しかし一応、基地交付金とは別ものだといわれますだけに、やはり原因があるだろう、その原因は何ですか、こういうお尋ねをしておるわけであります。生産活動についての障害というのは、具体的にはどういうことですか。
  131. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 新法案第八条、これは現行法の第四条と考え方においては、ほとんど一緒なんでございます。同じく表現として使われております事業活動、その事業活動が阻害されるということは、具体的には、一番卑近な例で申しますと、たとえば演習場周辺等におきます農林業活動、あるいは対地射爆撃場周辺におきます漁業活動、そういった事業活動が阻害されていく。しかも、その阻害の原因と申しますのは、そういう防衛施設が設置されてあるということ、あるいはそこにおいて何らかの防衛施設の機能を発揮するような運用、活動が行なわれるということ、これが原因になりまして、それらの周辺の農林漁業等の事業経営に阻害を与えている、しかも、その阻害というものが客観的にも認識される、そういった場合に、この法文にございますように、地方公共団体が、そういった阻害というものを緩和するために何らかの施策を施そう、施設の整備を行なおうというお考えに立って、その地方公共団体がそういうことを実施される場合に、われわれのほうとしては、その費用の一部を補助するというたてまえになっているわけであります。  たとえば、農業関係の事業経営の阻害がある、そのために、それではその農業の事業経営が阻害されている状態を緩和するために、事業活動を安定の方向に持っていこうというために、その周辺におきまして地方公共団体が圃場の整備を行なうとか、あるいは畜産経営の近代化をはかるとか、そういった施策を考えられた場合に、それに対して補助を行なっていく、そういうのがこの八条の考え方でございます。
  132. 吉田法晴

    ○吉田委員 半分わかったようなわからぬようなことですが、具体例をあげます。  さっき岡垣の例をあげましたが、松原を切りました。松原を切ったために、農産物に被害が起こりました。これはもう十年以上になりますが、補償をもらっておる。これは実損に対しての補償で、これは完全補償をおたくのほうでもすべきだということでやってこられたと思います。多いか少ないかは別問題です。完全補償しているかどうかということは別問題です。たてまえとしては、完全補償をするように努力してこられたと思うのです。  ところが、いま聞きますと、農林関係あるいは漁業活動に阻害を来たしている。これは、演習をしますと魚は逃げます。だから、近海では魚はとれぬ。だから、それにどれだけの補償をするかということも、これもまた一つの問題でしょう。しかし、それだけじゃなくて、施設があるということ、そしてまた、そこで活動があるということで、事業活動に障害があるということで、圃場を整備するとか、それから林業関係について云々という話がございますが、たとえば、いままでの例でいいますと、農業用の施設という点からいうと、耕うん機等も買ってやる。くわが入るのかどうかは知りません……。それから林業用の施設としては、物見やぐらがあったという話であります。  それで、圃場の整備のごときは、生産力が落ちたから損害を補償する、失われた生産力を回復するために圃場整備をするというのですか。それとも、そういうことは直接関係はなしに、迷惑をかけているから迷惑料的にやるのか。いまの説明がわかりませんでしたから、十分納得がいきませんでしたから尋ねますけれども、具体的にその生産力の補償と、それからその穴埋め、あるいは見舞い金的なと申しますか、どういう性格のものですか。
  133. 平井啓一

    平井(啓)政府委員 ただいま具体的に岡垣の例で、あの岡垣対地射爆撃訓練場、米軍提供時代は、芦屋対地射爆撃訓練場と申しておりました中に、林野庁所管の防風、防砂、魚つき等の目的を兼ねましたところの国有林が海岸にあったわけであります。そういった林地の一部が伐採されたことに伴いまして、周辺の農業に、防砂の機能が乏しくなったことによる被害とか、あるいは芦屋の場合に、魚つき林関係の補償があったかどうか、ちょっと私、事案は記憶しておりませんが、そういう機能が低下したために生ずる漁業上の被害、そういったものにつきましては、この新しい法案におきましては十三条、自衛隊のそういった行為、自衛隊の防衛施設の管理上の行為から生じます損失につきましては、この新法案の十三条、それから米軍の施設に関します場合には、たしか昭和二十八年に成立しております特別損失補償法というのがございますが、それに基づきまして損失を補償するわけでありまして、その損失補償のたてまえは、先ほど法制局のほうから御答弁がありました趣旨でございます。  この第八条に申しますところの対策事業と申しますのは、そういう損失補償とは別個の観点から、その防衛施設の設置または運用によって生じますところの阻害、障害というものを踏まえまして、その障害を緩和するために、地方公共団体がその緩和に資するためのいろいろな施策というものを考えられる。したがって、その場合に、農業上の障害があった場合に、それを圃場整備という施策で選択されるか、あるいは畜産ということでカバーしていかれるか、そこのところの施策の選択というものは、まず地方公共団体のほうで考えられるわけです。  そこで、そういう施策について、障害の実態と周辺地域社会の産業構造その他の事情等とあわせまして、そういう選択をされた事業が、この八条の趣旨に合うかどうかということをお互いに検討した上で事案を採択していく、そういう性質のものになるわけでございます。
  134. 吉田法晴

    ○吉田委員 大体考えはわかりましたが、その整備調整交付金も、そういう意味で、自治体がこういうことをやりたいという、いわば自治体の出すメニューに従って補助をする、援助をする、こういうことだと思いますが、しかしそれには防衛施設庁の指導というものが入るのではなかろうか。これは私の言うような、賠償なりあるいは補償なりあるいは原状回復的な考えでやられるならば、それは当然の権利としてあれされますけれども、そうではなくて、いわば権利はないけれども、あるいは義務はないけれども、してやるのだということになると、選択の自由が出てくるのではないか、そういうことを考えておるわけでありますが、これは、こういうことを内閣調査室の駒沢君というのが、この法律に関連をして書いております。「通常の行政で処理すべき問題を基地の特性に着目して処理しようとするもので、現行法以上に軍事都市育成法としての性格を濃くしていくとか、特定防衛施設関連市町村に対する指定権により革新自治体の締め出しを図るのではないか」云々という文面を出されておったりしますが、これは整備交付金なりそれから助成の法的な性格にも関連をしてくると思いますけれども、そういうメニュー方式といいますか、市町村が出してくる方策について、選択なりあるいは指導なりあるいは恣意が加わるのではないかという心配に対して、もう一度具体的に、算定方法なりあるいは規則その他について基準があるならば、説明をしてもらいたい。
  135. 田代一正

    ○田代政府委員 第九条の特定防衛施設周辺整備調整交付金の問題かと思いますが、これは先ほど施設部長がお話しいたしましたように、まず特定防衛施設あるいは特定防衛施設関連市町村というものにつきましては、そういう客観的な基準に基づいて指定する。指定にあたりましては、先ほどから何回も申しておりますように、内閣であらかじめ関係行政機関の長と相談する、こういうことになっているわけでございます。また、その具体的な配分の問題といたしましては、第二項に書いてございますように、「政令で定める公共用の施設の整備を行うための費用に充てさせるため、」一定の基準に従いまして配分するということに相なるわけであります。  その場合に、配分するに際しましても、やはり客観的な基準に従いまして配分するということになりますが、これは普通の補助金と違いまして、一昨日、何回も申し上げましたけれども、普通の補助金ですと、補助団体である市町村が何かをやってほしいという話があって、よろしいということで金額がそこで最後にきまってくるという問題でございますが、今回は、この交付金の場合には、一定の算式で計算いたしますと何々村には一千万、何村には千五百万という式に算式で出てまいります。その算式が出てまいりますと、その中でメニューを、これは、また別に政令で定めるわけでございますけれども、メニューの中からどれを選びますかということで、このメニューを選択いたしますということで初めて、わかりました、では、そういうことにお使いくださるということで一千万なり一千二百万なりを交付いたします、こういうことに相なるわけであります。  したがいまして、恣意性と申しますけれども、客観的な基準に従って指定をし、かつまた配分基準もそういうことでやりますならば、恣意性が入るという問題はないのじゃないかというぐあいに考えておるわけであります。
  136. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと恐縮ですが、関連で一、二点お尋ねさしていただきたいと思うのです。  実は、基地周辺の生活環境の整備という法案を議題にいま審査が進められているわけですが、残念ながら基地が存在するがゆえに、いろんな不幸な事件なり地域住民に大きな被害を与えてきているというのが偽らない現状であります。昨晩からけさにかけて、沖繩でまたたいへんけしからぬ米軍の犯罪行為が起きたという報告を先ほど受けましたので、この件について緊急にお尋ねをさしていただきたいと思います。  時間の関係もありますので、まだ事件の全貌は明らかにされておりませんが、私のほうでかいつまんで申し上げますと、私の受けた報告では、昨日午後八時半から八時四十分ごろ、金武村金武の農道を歩いておった十七歳の少女と十四歳の男の子、十四歳の子は、この少女のおじに当たるようですが、農道を歩いていると三人組の米兵が、大体十八歳から二十歳程度の米兵だと聞いておりますが、その十四歳の少年に暴行を加えて意識不明にした上で、少女を裸にして車に押し入れて、読谷あるいは金武などを逃げ回って、その間四回にわたって暴行を加えた。輪姦といいますか、強姦的な行為をやっているという事件が起きたどいうことなんです。  これに対して、警察庁あるいは外務省はその報告を受けているのか。もし受けているとすると、どういう対処をやろうとしておられるか。アメリカ側にきびしく抗議を申し入れる必要があると思うし、当然だと思うのですが、その件について知っておられるのか、見解を承りたいと思います。
  137. 佐々木英文

    ○佐々木説明員 お答えをいたします。  事実関係につきましては、ただいま先生おっしゃったとおりのように承っております。  ただ、おじの年齢でございますが、私どもの報告を受けたところによりますと、二十四歳ということになっております。  事件の概要は、ただいま仰せられたとおりだと思いますが、これに対しましてまず私のほうは、すでに被疑者二名を緊急逮捕いたしておりまして、その他の一名につきましては、現在捜査中でございます。  状況につきまして、ごく簡単に御説明を申し上げますと、昨晩の八時四十三分ごろ、被害者のおじの二十四歳になる方から、石川市の金武幹部警察官派出所に口頭で届け出がございました。そこで、直ちに緊急配備を発令いたしまして、現場周辺一帯それから基地の全ゲートの検問、それから検索活動を実施したわけでございます。けさの六時ごろでございますが、読谷村の海岸付近で、犯人が遺留したと思われます犯行使用の軽乗用車を発見いたしております。さらにけさの八時十分ごろでございますが、この軽乗用車を発見した場所の付近で、別の自動車の車体検査証を発見いたしております。その付近を検索いたしておりましたときに、白人二名が乗車しましたこの車体検査証と同一番号のスポーツカーが通りかかったわけでございます。それを一応停車させまして、質問したわけでございますが、たまたまそのときに、現場を確認するために、石川署員が被害者の方を連れてこの場所に差しかかりましたので、この二名の白人を面通しさせましたところが、三人のうちの二名に間違いないということを言ってくれましたので、その現場でもって、十八歳になる少年の兵隊二名を緊急逮捕いたしまして、石川署へ連行していま取り調べ中でございます。なお、他の一名につきましても、現在捜査中でございます。  捜査状況は、以上でございます。
  138. 上原康助

    ○上原委員 昨年も、戦車による轢殺事件が、同じ金武であったし、その前にはキャンプ・ハンセンでの射殺事件などもあったわけですし、そのつど政府のこの種の事件に対する姿勢について、きびしく追及をし、また、きびしい態度で米側に臨むべきであるということを要求をしてまいりましたが、相次いでこの種の事件が起きている。これは基地の存在するがゆえの事件であるし、そういう意味で、私たちは、基地の存在そのものに問題があるということを、今日まで主張してきているわけですが、そこいらの点については、後日またお尋ねをさせていただくとして……。  先ほど、私も十四歳というのは、ちょっと疑問でしたが、二十四歳に訂正をいたします。  きょうの午前三時十五分ごろ、少女は石川市東恩納で車からおろされて、実に六時間半から七時間にわたって拉致をされて、三人の米兵に車で連行されておったという。しかも、この三人の米兵はその後、けさの午前六時過ぎごろですか、北中城村の島袋付近で、ある民家に押し入って五千三百円の現金を強奪した。その被害者の訴えで、緊急手配をして警察につかまった。いずれもキャンプ・ハンセンの米兵であるということが確認をされているということですね。このあとの金銭の強奪事件については、警察は御存じなのかということ。  時間がありませんから続けて……。そういたしますと、二人は逮捕されて、いま一人はまだ逮捕されていないということになりますと、基地に逃げ込んでいるとすると、当然逮捕権の問題が出る。また裁判権の問題というのもからんでくるのじゃないかという感じがします。明らかにこれは公務外の行為だと、私たちとしては、全容はわかりませんが思うのですが、これに対して政府はどういう処置をして、処置というより、アメリカ側と話し合っていくのか。この種の行為に対しては、未成年の少女を、しかもこのようにはずかしめるということは、実に野蛮きわまる行為であると言って過言ではないわけですね。全くけしからぬ。占領意識で、日本国民を何と思っているのか。これに対しては、きびしく米側に抗議すべきであると思うのです。外務省としてあるいは警察庁としても、どういう立場で臨んでいかれようとするのか、現段階で言える政府の態度というものを明確にしていただきたい。
  139. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昨晩起きました事件につきまして、ただいま警察当局から御説明があったとおりでございまして、私どもとしましては、きょうの午後、その事実につきまして、関係当局から事実関係を伺ったわけでございます。直ちに米側に対しまして、この点につきまして照会いたしまして、米側といたしましても、事実関係を至急調べるということでございますけれども日本側が調べている限りにおきましては、まことにけしからぬ行為だと思います。つきましては、直ちに米側に対しまして、日本側の調査ではしかじかこういうことでありますので、厳重に抗議を申し込んでおいたわけでございます。  なお、先ほどの警察の御説明にございますように、三人の被疑者のうちの二人は、すでに逮捕されておりますけれども、残りの一名の被疑者がなるべくすみやかに逮捕され、規定に従う適正な措置がとられることを希望する次第であります。
  140. 上原康助

    ○上原委員 昨晩からけさにかけた事件で、全貌がまだ十分つかめておりませんので、近々もっと明らかになると思うのですが、こういうことが起きるということ自体が、いかに米軍の占領意識といいますか、あるいはベトナム帰りの兵隊の本質というものを、まざまざと見せつけられたようなことなんですが、政府としてはいま抗議をなさる。きびしい態度で臨まないと、また同様な事件が起きないとも限りません。ですから、裁判権の問題を含めて、厳重に対処していくように、強くきょうの段階で求めておきたいと思います。  そこで、これは基地問題と関係がありますから、いま山中長官もお聞きになったと思うのですが、いかに私たちが法律をこしらえて、基地周辺の生活環境の整備といってみたところで、基地の存在そのものが元凶なんですから、その事件に対しても、単に警察庁や外務省にまかせるというわけにはいかないと思うのです。政府全体として、この種の問題については、きびしい態度で臨むべきだと思いますので、いま私が申し上げた若干の問題提起に対する、長官見解を求めておきたいと思うのです。御見解あれば聞かせていただきたいと思います。
  141. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まあ、全員が善人であってほしいと願うのは、これは国籍を問わずそうだと思うのですけれども、中には、そういうまことにけしからぬ者がおるということが事実でありますし、いま外務省からアメリカ局長が申しましたように、外交ルートを通じて直ちに厳重な抗議を発しておるということでありますから、これは警察庁の分野でありますが、私も完全に非公務だと思います。ですから、警察権の行使も裁判権も当然日本側に帰属すべきものであって、日本の法律によってきびしいさばきを受け、その罪に服すべきものと私は思います。  この三人は、どうせ二人つかまっておりますから、あとの一人も、おそらく直ちに引き渡しが行なわれるだろうと想像しますが、こういうことが、われわれの立場からする日米関係というもの、そしてまた日本人全体から見て、外国人によるこのようなわが国の国民に対する耐えがたい苦痛を与える行為というものは、私どもとしては放置できないという気持ちでおりますので、私が直接どうこうという問題とちょっと離れると思いますけれども、外務省ともよく相談し、やはりこういうことが起こらないようにしてもらわないと、私ども日本政府としても、日本における駐留米軍のあり方に基本的な問題を投げかけるおそれがある。いまおっしゃるとおりでありますから、不祥事が起こらないように、さらに厳重な申し入れ、あるいはそのための相談事がなされてしかるべきであると思います。
  142. 上原康助

    ○上原委員 いま抗議をする、あるいは非公務であるので、裁判権の問題も含めて、日本側の法律をもって対処していくという御答弁もありました。私は、これは政府全体として、当然そういう方向でやっていただかないと、過去の経緯からして、えてしてうやむやにされる、あるいは中途で政府がへっぴり腰になってしまって、被害者に対するますます大きな被害を加えているという結果になっているわけですから、そこらは、ぜひ踏まえていただいて対処していただきたい。  いまの山中長官の答弁にも、非公務であるという見解があったわけですが、警察庁としても、そういう受けとめ方をやっているわけですね。
  143. 佐々木英文

    ○佐々木説明員 私どもも、そういうふうに理解しております。
  144. 上原康助

    ○上原委員 私も、いずれこの生活環境整備の法案について質疑をさせていただきますので、それまでに、政府のこの事件に対しての確たる方針といいますか、対処のしかたを出していただいて、そのときに、またもっと突っ込んだ質疑をしたいと思いますので、きょうはこの程度にとどめておきたいと思います。
  145. 吉田法晴

    ○吉田委員 交付金の算定方法は、基準を設けて恣意にわたらぬようにやります、こういうことですけれども、この法案審議をするに際して、その政令案といいますか、それから計算方法等をいただかぬことには、恣意にはわたりません、こう言われても、信用できませんから、ひとつぜひ出してもらって、その上で審議に資したいと思いますが、出せますか。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 今回の法律で、政令委任が十八項目あります。したがって、これは先ほど法制局から申しましたとおり、政令にゆだねず法律に書くのにはなじまないものを政令に、逆に言うと落としてあるということでございますから、その内容を皆さんがよく——一応案です。決定は法律が通ってから作業を始めますので、こういう案で臨むつもりであるという内容を、内閣委員会の全員の皆さんにお配りするようにということを、前から私は申しておりまして、まだ何か全員にお配りしてないようで、会館あたりをお尋ねしたりしながらお配りしているようでございます。したがって、もちろん皆さんの審査に間に合うように、全部の項目について、現時点において私どもが考えておる政令案のすべてをお出しいたします。それで審議に資していただきたいと思います。
  147. 吉田法晴

    ○吉田委員 これで終わりますが、政令案の案というか、骨子だけはいただきました。けれども、計算方法その他については示されておりません。ですから、それを、ぜひいただきたいと思います。  これで終わります。
  148. 徳安實藏

    徳安委員 長鬼木勝利君。   〔委員長退席、加藤(陽)委員長代理着席〕
  149. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 時間がおそくなってお疲れでしょうが、しばらくごしんぼういただきたいと思います。  前回、防衛庁職員の給与の問題で、私、質問を残しておりました。長官ともはっきりお約束しておりまして、この次にするということでございましたので、給与関係の方にお尋ねします。  そこで、予備自衛官の問題でちょっとお尋ねしたいのですが、現在三万九千六百名と聞いておりますが、陸上が三万九千人、海上が六百人、空はいない。ところが、これは山中長官ではないけれども、たしか中曽根案であったと思いますが、将来九万人にしたいというお話を聞いておりますが、山中長官はどういうお考えを持っていらっしゃるか。なおまた、予備自衛官が現在三万九千六百名ということには間違いないのか。その点からお尋ねをしたいと思いますが、長官でなくても、どなたでもけっこうです。
  150. 山中貞則

    ○山中国務大臣 世に中曽根構想といわれる一連のものは、前期、後期十カ年の防衛力整備計画その他も含めて、全部なかったことになっております。したがって、その構想にとらわれて何かをやっておるということはありませんので、その点だけは私から申し上げて、あと防衛局長に説明させます。
  151. 久保卓也

    ○久保政府委員 四十九年度末で、陸上自衛隊が三万九千、海上自衛隊が六百、合計三万九千六百、お話しのとおりであります。  いま、九万人と抑せになりましたが、事実関係だけで申し上げますと、四次防原案といわれた当時の予定された数字は、六万人でありました。
  152. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまの長官のお話で、いわゆる世にいう中曽根案はもうないものだというお話でございますので、私も了承いたします。まことにけっこうで、これから山中案ということでまいりますから、中曽根案はもうなくなったものだ。本人はすこぶる元気だけれども、案はなくなったということはわかりました。  そこで、給与法第二十四条の二ですか、それに、予備自衛官に手当を支給する、手当の月額は二千円とする、こういうふうに載っておりますが、物価は日に日に高騰しておりますし、ほかのほうもみな上がっておるし、公務員の給与も上がっておるし、一切がっさいみな上昇しておるんだが、この二十四条の二に出ておる二千円というのはいつできたか、また二千円のままでいつまで行かれるのか。これは月給じゃないでしょうが、全然そういうことはお考えないのか。それから演習は二週間ですが、旅費とか、宿泊料は隊に泊まれば要らぬと思いますが、旅費、日当というようなものは実費弁償だろうと思いますが、そういう点はどういうふうになっておるのですか。  私が調べた範囲では、間違っておるかもしれませんけれども、昭和二十九年に法第百六十五号で月額千円であったのが、昭和四十二年に改定になって月額千五百円、四十七年に百二十四号で月額二千円になった。そうすると、二十四条の二というのは、四十七年の百二十四号で増額になっておる。四十七年といいますと、もう二年も三年もたっておるわけです。これは、むろん月給じゃないでしょう。予備自衛官の一つの拘束料ということで二千円になっているんだろうと思いますが、その辺のところは、どういうふうに長官は考えておられますか。
  153. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 予備自衛官の手当は、いま先生がおっしゃいますように、予備自衛官というのは、一般社会で職業を持って生活しておる者を任用しているわけでございまして、したがいまして、生活維持、いわゆるサラリー的な配慮を含まないものでございます。いまおっしゃいましたように、予備自衛官手当というのは、訓練招集に応ずる義務がございますが、その義務と、それから防衛招集に応ずる義務を負うことになっておりますが、そういったいわば精神的拘束に対する対価というふうに考えております。したがいまして、俸給というようなことではありません。したがいまして、毎年の給与制度の改定でベースアップがございますが、そういったことに対応して、必ずしも物価とか給与等の変動に直接結びつきませんで、数年に一回といいますか、そういった間隔で改定をいたしております。  それで、御指摘のように、昭和二十九年度に千円ということで設定されました。それから、昭和四十二年に千五百円ということでございました。それから、昭和四十七年に現在の二千円ということに改定になったわけであります。  それから、次に実費弁償の関係でございますが、予備自衛官が訓練招集を受けた場合には、訓練招集手当ということで日額三百七十五円が支給されることになっています。これは、予備自衛官が訓練招集に応じました場合に、雑費ということに充てるものとして支給されるものでありますが、他の一般の職員が出張して、昼めしが支給される場合に支給される旅費の中の日当と同趣旨のものでございまして、この場合におきましては、昼食が支給される場合には、いわば半日当が支給されるということで、三百七十五円というのは、七百五十円の半日当ということであります。それから、訓練招集時におきましては、この訓練招集の手当のほかに、往復に要する旅費の実費が支給されます。それから宿舎、それから食事、それからけがをしたという場合におきますところの療養等が、国から現物で支給されるということになっております。  これが、まあ予備自衛官手当、訓練招集時における招集手当並びに実費弁償等の経緯でございます。
  154. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体わかりましたが、これはお互いどうですかね。三百七十五円というようなお金を今日もらって、子供でも喜びませんよ、三百七十五円では。どうですか長官、あなたは。しかも、あなた、地方で有力な、生活もりっぱに立っている人たちが訓練招集で来られるのでしょう。三百七十五円やって、今度は帰りには、あるいは、おいどうだ、これで終わったんだ、ひとつみんな同僚で一緒に一ぱいやろうじゃないかというのに、三百七十五円じゃ、一ぱいどころか、これはあなた、女どもを見て、一ぺんにこっと笑ったらそれでもうおしまいだ。冗談もほどほどにしてもらわぬとね、ほんとうですよ長官。こういうことは、もう少しやはりお考えになったほうがいいのじゃないですか。どういう意味で自衛隊に予備自衛官を養成されているのか、大体想像はつきますけれども、あまりに……。しかし、それは希望だから、いやなら来なくたっていいじゃないか、こうおっしゃるかもしれないけれども、ほんとうに国民に親しまれた自衛隊と言っておきながら、そんな冷たいことでは、私は、これはほんとうに、こういうことでは不徹底だと思うんですよ。  どうです、長官、あなただって自衛隊の予備自衛官だって人間は同じものですよ。差別なんか断じてできませんよ。大臣に三百七十五円やって、あなた喜んでいただけますか。温情ある山中長官なら、もう少しお考えになってしかるべきだと思うんですがね。これは別に高瀬さん、あなたに文句を言っているんじゃないですよ。あなたにどうこう言っても、あなたが金を出すわけじゃないのだから。どうですか、長官
  155. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この月額二千円の問題も、これは、やはり横並び等も考えなければならぬと思います。まあ兼職禁止をされておる公務員とは違うわけでありますから、先ほど局長が申しましたような意味の訓練招集に応ずる義務を負い、予備自衛官たるの一応の日常の起居、動作その他も、自分は予備自衛官であるという立場にやはり縛られておるわけでありますから、そういうような職業その他収入の道は自由であっても、そのために支給しようというつもりでありますから——一方、過渡期であったとしても、無拠出老齢、母子福祉、身障等の年金額等がございます。こういうものと一緒に考える必要もないと思うのですが、それを越えてまでどうかという気持ちもいたしておりますし、それから三百七十五円の問題は、一方において横並びでは、公述人、参考人等の日当というものが今日相当高くなっております。そういうことを考えますと、やはり訓練招集してしごくわけでありますから、そしてまあ、出てきて御苦労であったという意味の、半日当という計算をしてございますが、そこらのところは、やはり国民から見て、まあ、それくらいはいいだろうと思われるような内容のものにすべきだろうと思います。  私ども、自分できめるというのでは、やはり自己査定みたいなことになりますので、どこまでが許されるかわかりませんが、一応給与制度調査会というものを、学識経験者もいろいろ含めて、国会で通していただきましたものができておりますので、これらの方々に、いまこのような問題を含めてお願いしております。答申は、来年度予算編成までに、一応当面の問題としての答申はいただけると思いますので、何らかの学識経験者を含む五名の答申を受けて、ただいまのようなおしかりを受けるような、まことに人をばかにしたような話ではないかと思われるようなものは、現実的に国民から許容される範囲内で、御苦労さんというだけの程度の金額にはしたい。まあ千円札以下というのは、まずいですね、そういう意味では。いまのは、私の金額に対する感想です。
  156. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、あなたのいまの御説明、全く同感です。そういう意味で私は申し上げているのです。これは、むろん月給じゃないんですからね。月給じゃないのだから、だから、他の公務員と一緒にベースアップをやれとか、スライド制とか、そういうことを申し上げているのじゃないのですが、いま全く長官のおっしゃっておるような私も考えで、少なくともやはり、訓練期間が一週間であろうが、十日であろうが、たいへん御苦労でしたと、帰りにはひとつぼっちゃん方に、お子さん方におみやげでも買っていってくださいやというような、金一封でも差し上げるというような、そういう慰労の気持ちがほしい、あたたかい気持ちがほしいと私は言うんですよ。そうせぬと、これは自衛隊そのものに対しては違憲、合憲、それは賛否両論であるでしょう。それは、またあってしかるべきだと思う。だけれども、隊員そのものに対しては、私は、何もどうだこうだと言うべきあれはない。あくまで隊員は優遇しなければいけない。隊員そのものには何にも罪はないのだ。ですから、私はそういう主張なんですよ。もう十年このかた、私は、隊員の優遇ということに対しては全力をあげて、今日まで長官にも御相談しておるわけなんです。ですから、そういう点をひとつ了解していただきたいと思います。これは、いまの長官のお話で、まあそういう意味においてはかっておるというおことばをいただければ、私は、もうこれでけっこうでございます。そういうお気持ちがあれば、さすがに温情をもって鳴る山中長官だと、大いに敬意を表します。  そこで、先ほど中曽根案はもう抹殺だ、それで了承します。ところが、将来は六万人にしようというようなお話がありましたが、内容はまだはっきり聞いておらぬが、陸海空をどういうふうに充足していかれるか。どういうふうにされるのか。空はいままだ全然ありませんですね。陸上と海上はありますけれども、空はない。将来も空はないのか。いわゆる空であるのか。どういうふうに六万人を充足していかれるのか。  それから、中曽根構想は、もう消えてなくなっておるのだということですから、それにはこだわりませんけれども、予備自衛官を設置するという根本の目的、方針ですが、警備連隊——また中曽根さんと言っては、はなはだ相済まんけれども、これは消えてなくなったものだから、まことに恐縮だけれども、中曽根さんの言ったような警備連隊というふうなものを、将来つくるというふうな意味ですか。それとも、旧在郷軍人的な性格を持ったものであるのか。それとも、これは陸上だけですけれども、二万五、六千人も足りない。だから、そういう場合の補充の意味でとっておくのだというような意味で、いわゆる在郷軍人的に縛りつけておくというのか。そういうふうな目的を、もう少しはっきりしてもらいたいと思いますね。でないと、われわれも協力のしようがないのです。最終の目的がわからなければ、一体おれはどこに行くのだろうかではちょっと困る。そういう点を、中曽根じゃなくして、山中長官のひとつ構想を……。
  157. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いわゆる六万人というのが、中曽根構想だったわけですね。それが、もういまはないわけです。でありますけれども、やはり空は文字どおり空にしておくのかじゃなくて、空も予備自衛官の本来の要請される目的、すなわち、最も緊要な場合としては防衛出動、そういう場合の、後方から逐次穴埋めして支援していくという役目を持つものでありますから、将来は、これはやはり法律事項でございますので、国会に御提案を申し上げて、ふやすときには御承認をいただかなければなりません。ことしはそれを、俗に言う防衛二法という形を出さなかった。一年休みにしたということでありますが、来年は出すつもりであります。したがって、来年は空にも、お許しを得られる範囲内と思われる新設というものをいたしまして、陸海空の予備自衛官を整えておかなければいかぬだろうと思います。  予備自衛官は何のためにあるかという問題は、もう先ほど申し上げたとおりでありますが、不断に練度を保持してもらわないと、かつて在隊時に操作に完熟しておった兵器等が、陳腐になって廃棄されたり、新しい訓練方法なりあるいは戦闘活動等の手段が近代化したり、兵器が更新して新しいものになったりなどいたしますから、そういうものにも絶えず、いつでも充当できて職務につけるような、そういう完熟、練度維持というようなものの目的のために訓練招集をやっておるわけです。  それで、いま私、問題に考えておりますのは、退官時の階級のまま、ずっと予備自衛官を何年やっても同じ階級なんですね。これではやはり励みがなかろう。三曹で退官して、予備自衛官を十年やって訓練招集を何回受けても、いざ自衛隊の招集があって組み込まれた場合には、また十何年前の三曹の地位につくというのもどうか。したがって、そういう逐次階級も昇進させていいような教育などもしながら、予備自衛官を、たとえば五年なら五年訓練招集を欠けることなくつとめて、一般社会においても、職場等においてきわめて優秀な評価を受けておるというようないろんな条件がありましょうが、そういう者は、予備自衛官の間においても昇任させようというようなことも、いま検討しておるわけであります。それをあまり安易にやりますと、その任に耐えざる者が、階級だけ予備自衛官で上がっていくという問題等もございますし、また、予備自衛官で准尉から尉官にどのようにして昇進せしめるかの問題等もまだ未解決でございますので、いまそういうことも含めて、予備自衛官になった者が予備自衛官の使命を自覚して、日常一般国民生活にいそしみながらも、いざというときに目的どおり役に立っていただけるような、そういう励みを半面において持てるようなものにしたいと、いろいろいま検討中でございます。
  158. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 予備自衛官の身分について昇進の道をわれわれは考えておる、こういう長官のお話です。それはけっこうだと思いますが、自衛隊法施行規則の三十四条、三十五条に、訓練期間中に非常に成績優秀である者は、これを昇進させることができる、こういう条文があるようです。この関連といまのお考えは全然別のものですか。三十四条で、「予備自衛官が自衛官を退職した後において高度の技術及び知識を修得している場合には、その者が自衛官を退職する時に有していた階級より上位の階級を指定することができる。」、それから三十五条は、「予備自衛官が長官の定める回数及び期間訓練を受け、且つ、優秀な成績を収めたとき、又は高度の技術及び知識を習得したとき、その者を現に指定されている自衛官の階級より一階級上位の階級を指定して昇進させることができる。」、こういうことがありますね。これは特定な技術を修得するとか、特に優秀な成績であるとか、高度の技術ということがあるのですが、いまの長官のお話では任期の問題で、いわゆる五年あるいは十年と長く予備自衛官を勤務した者は、昇進の道を開こうというように考えておる、こういうお話ですが、この三十四条、三十五条になお上のせしてそういうことを考える、こういう意味と解釈してようございますか。
  159. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私も、全部この法律を読んでいるのですけれども、三十四条と三十五条の適用——先ほど私が三曹の例をとったのがいけなかったので、士及び曹については、この規定に照らして一定の基準を設けて昇進をすることができるようにしてあります。私の言ったのは、幹部への道というものが、これでは現在のところ閉ざされておりますので、幹部にもなり得るような教養、統率、訓練、そういうようなものをして、そして幹部昇進への道も開こうということを言ったわけでありますけれども、おっしゃるとおり、曹、士の階級においては、三十四条、三十五条においてその道があるし、実行しておるということです。
  160. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、この予備自衛官というものは曹と士に限られておるのですか。これは尉官だってみな予備自衛官があるわけでしょう。ちょっと長官の言われることは、ぼく頭にぴんとこぬが、少し不勉強じゃないですか、長官は。私は、もう全部山中案だと思っていま聞いているのだが、中曽根案なんかどうでもいいんだが、これを、まず私お尋ねしたいのだが、高度な技術を修得した者とか、訓練期間中に優秀な成績をおさめたとき、これは大体わかるんですよね、非常に抽象的だが。次に、「高度の技術及び知識を修得したとき」こう書いてある。高度の技術、高度の知識を修得するというのは、一体だれが判定するのですか。高度な技術を修得するということを認める、その者自体が高度の技術を知らぬのだ。だれがこれは一体やるのですか。高度の技術を修得した者を認定する高度の知識を修得した者の、これは何か審議会かあるいはそういう昇進委員会とかなんとかあるわけですか。長官は、むろん最終的に判をばんと押されるだろうけれども、これは、どうせめくら判だろうが、一体これはどういう機構組織になっているか、これに対する細則というか、施行規則というようなものはないんですよね。法的にない。その点を御説明願いたい。
  161. 山中貞則

    ○山中国務大臣 防衛庁訓令第一号として、昭和三十七年にそのことに関連して出しております。「二等陸曹、二等海曹又は二等空曹以下」、これはいま空は予備自衛官はいないわけですけれども、一応そう書いてございまして、「以下の階級を指定された予備自衛官で、当該指定階級において三回以上訓練招集に応じ、通算して十五日以上訓練を受け、かつ、」、ここのところがだれかという問題ですが、「かつ、各幕僚長の定める基礎以上の成績を収めたもの並びに別に定める高度の技術及び知識を習得したものは、一階級昇進させることができる。」、その第二項として、「一等陸曹、一等海曹又は一等空曹以上の階級を指定された予備自衛官の昇進に関しては、別に定める。」となっておりまして、予備自衛官の准尉への昇進基準、一曹の在階級年数が十年以上の者で、三回以上連続して訓練招集に応じ、通算して十五日以上の訓練を受け、勤務成績優秀である者が准尉になる。その先のことが実はないわけなんです。ですから、准尉を五年やっても十年やっても、その人は、応招した場合にはまた准尉であるということでございますから、そこら辺のところが、まあ不備といえば不備でございますから、そこらのところは、現実にいま該当者も出てきつつありますので、幹部への昇進の道も開きたいということを申し上げているのでございます。
  162. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、その幹部の昇進の道も開こう、いま検討中だということはよくわかりますがね。  そうすると、いままでの事例として、特に成績優秀であったとか、あるいは高度の知識を修得した人というようなのがどの程度昇進したのか、過去における事例、それからパーセンテージ、おわかりでしょうか。わからなければあとでもいいです。
  163. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 過去における昇進の状況を申し上げます。  昇進は、いま大臣かちお話がございましたように、准尉まではよろしいのですが、准尉から幹部、幹部の中におけるところの昇進ということは、まだ規定が整備されておりませんので、ございませんが、過去におきまして昇進しました者の数を申し上げたいと思いますが、これは陸上自衛隊の予備自衛官につきまして申し上げますが、四十五年で一曹、二曹、三曹、士長へということで昇任しました者は、合計が千二百七十五名、四十六年が千四百六十五名、四十七年が千二百九十七名、四十八年が千二百七十九名という数字でございます。海上自衛隊の予備自衛官制度は、四十五年度に発足いたしましたので、日も浅いので、海上自衛隊の予備自衛官につきましては、いまだ昇進者数は出ておりませんが、本年度におきまして若干出る見込みであります。  ただいま申し上げました数は、いずれもいま御指摘の二種類のうちの、勤務成績の優秀な者ということでございます。勤評によりまして、勤評A、B、Cでございますけれども、A、Bの成績をおさめた者、そういう勤評のよろしい者の中から選びまして、先ほど申しましたような数字の昇任を…たしております。  それで、実は高度の技術を修得した者というのは、予備自衛官である者が一般の社会の中で、自分の職業としてといいますか、あるいは自分で独力で勉強してといいますか、いろいろな資格を得たりなんかした場合に、これを特に優遇しようという制度でございますけれども、いまだこれによりまして昇任いたした事例はございませんし、それから、いかにしてこういう技術を判定するかというようなことは、まだきめておりません。その点は、御指摘のように不備といえば不備でございますが、こういういろいろな問題を含めまして、五十年度の業計ではいろいろと検討するという、私どもそういった姿勢でおります。
  164. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体、いまの優秀な成績ということで、わかりましたがね。高度の技術を修得した者というのは、まだないといういまの御答弁ですが、わずかな期間に訓練招集を受けて、高度の技術をどうして修得できるのですかね。高度の技術修得というような内容は、私、少しわからないので、ただ単に三十五条は、これは法文を美麗化したにすぎないのであって、わずかな一週間か十日訓練を受けにやってきた、そうして高度の技術を修得する。一体だれがそれじゃ高度の技術の訓練をするのですか。こういうのは、あまりいいかげんなことを言うて——これは予備自衛官をつるのじゃないですか、こんなことを言って。もう少し検討する必要があると思いますね。  長官、従来、幹部の昇進のあれも検討中だとおっしゃるが、これをよく検討してもらいたいと思うのです。事実、高度の技術修得した者は一人もいないという。あるわけないでしょう。どうです、長官、できますか、そんなことが。一週間や十日で高度の技術を修得したといって——それは訓練に来なくて、在野で、野にあって修得した人なんです。訓練のわずか一週間か二週間のときに高度の技術を修得した、よってこれを表彰する、一階一級なんて、そんなちゃんちゃらおかしい、そんなことは。だれがそれじゃ訓練するのかというのです。だれが教育するのか。それだけの、一週間か十日で高度の技術を修得するような、そんな大家が自衛隊におるか。それは、在野の期間中に自分が修得した人であって、だから、私はこの法文を見て非常に疑惑を持ったのです。これは、予備自衛官をこんなこと言ってつるのじゃないか。非常に過激なことを申し上げてはなはだ相すみませんけれども、これは私がそう考えたのです。どうです。
  165. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 高度の技術の修得というのは、訓練招集は一年に五日ということでありますから、その間において修得するのは、いまおっしゃるようになかなか困難ですが、自衛官は退職時に、それぞれ技術を身につけて退職いたしますが、民間におきまして自分の職業を通じてとか、あるいは自分が独力で勉強しまして技術を修得する。その技術が、自衛隊のいろいろな職種がありますが、その職種の中で非常に役に立つというようなものがあった場合に、それは、たいへんよろしいということで規定しているわけです。
  166. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 しかし、これはあなたを責めるのじゃないけれども、そういう答弁はなざらないがいい。ここにはっきり条文に出ているでしょう。よろしゅうございますか。「予備自衛官が長官の定める回数及び期間訓練を受け、」ですよ、招集されて。「且つ、優秀な成績を収めたとき、又は高度の技術及び知識を習得したとき、」と書いてあるのだから、これは、はっきり訓練期間中じゃないですか。在野におけるときの修得というような意味は何もない。それはあなた方が非常に善意に解釈しておられるんですね。——善意じゃないね。牽強付会の辞というのだな。へ理屈という。これは、もうだれが法を解釈したって、全然そんな解釈は出てこない。だから、これは高瀬局長、あなたをどうこう言うのじゃない。あなたに言うたってしようがない。あなたをきょうやかましく言いに来たのじゃない。これは長官、よくお考えいただきたいと思う。そうせぬと、予備自衛官をうまいこと言うてつっているのじゃないかという疑問が起こるんですよ、私が考えたら、そんなできもせぬことで。だから、事実一人もそんな者はいないという。そんな高度の技術を習得して、昇進したとか表彰を受けた者は一人もいない。空文にひとしいということを申し上げている。文句言っているのじゃありませんよ。この法文を私はやかましく言っているのです。
  167. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その三十四条のほうで、「但し、当該予備自衛官が自衛官を退職した後において高度の技術及び知識を修得している場合」というのがありますから、これは何も訓練によって修得したとは書いてないわけです。したがって、いま高瀬局長が申しましたように、三十五条の「高度の技術及び知識を習得したとき、」というのは、この三十四条と同じ意味の、そういう知識を退官後修得して技術を身につけたということに解釈しても、法文的に誤りではないと思うのです。
  168. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 誤りです。三十四条と三十五条ははっきり違う。三十四条は退職後です。それから民間において修得した者とはっきり書いてある。そういう者は退職しても昇進させる。こちらは、期間中で、まだ退職していないのです。現職なんです。予備自衛官としての現職です。そして訓練期間中に高度の技術を云々とこうなっている。これは全然違います。だったら、三十四条と三十五条が別々にある必要がない。それは、長官が鬼木とは見解の相違だとおっしゃるかもしれぬ。まさに見解の相違。私は、それは承服できない。
  169. 山中貞則

    ○山中国務大臣 別段おしかりを受けることじゃないと思うんですがね。該当者がない点は、確かに問題があると思いますが、三十四条は階級の指定ですから、これは予備自衛官に対して書いてあるのであって、自衛官を退職して予備自衛官となった者が、退職したそのあとにおいて、高度の技術及び知識を修得している場合、より上位の階級を指定することができるという階級の指定であって、その次の昇進の場合も、訓練によって優秀な成績をおさめたということと、高度の技術及び知識を本人が修得しておるということで、これは、やはり同じことではないかと思うんですけれどもね。
  170. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まあ見解の相違だな。現実問題としてこれは美文にすぎない。現実問題として該当者がいないじゃないか。いいですか、長官、優秀な成績の者が、いまおっしゃるように四十五年、四十六年、四十七年、四十八年と千人以上もおるんですよ、ところが、こちらのほうは該当者がないでしょう。だからこれは空文にひとしい、単なる法令を美文化したものだ、実際的にはこれは適用できない、こういうことを申し上げているんですよ。だから、そういう点において一考する必要がないかと言っているのだから、何もむきになっておっしゃらなくたって、なるほど一考を要すべきものだなというぐらいの、もう少しソフトムードでやったらどうですか、山中長官。そういきり立たぬでも、私もこれを必ずしも全面的に否定しているのじゃないのだから。これは実際の看板と内容はちっと違いはせぬか、こういうことを言っているんですよ。——それじゃそれでいいですよ。長官も黙ってしまって黙して語らずだが、全然鬼木の言うことは相手にならぬということじゃ困る。
  171. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いや、そうじゃない。これは意地になっているのでも、そういう高ぶったことを言っているのでもないのであって、じゃこれをはずしたらどうかということになると、やっぱり民間の企業あたりに行って、エレクトロニクスなんかの分野に就職できた者で、その者の民間において得た技術が、自衛隊で使われるエレクトロニクス分野等において、ちょっとした訓練等を施せば、それがりっぱに役に立つというようなことがあり得ると思うんですね。これは見解の相違とおっしゃいますけれども、じゃ見解の相違があるから鬼木先生の意見を尊重して、これを削除するかというほどのものではないので、いままで該当者がなかった点が、私のちょっとつらいところなんですけれども、そういうものが、将来、該当者がある余地は残しておいたほうがいいのじゃないだろうか、こう思うのです。黙り込んでしまったわけじゃないんですよ。   〔加藤(陽)委員長代理退席、委員長着席〕
  172. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私も、それをいま削除せよとか、取ってしまえということを言っているのじゃないんですよ。こういう条文があるのに該当者は一人もないというような点については、皆さんはお考えになる必要はないかということを言っているんですよ。そういう点、そうしないと私のような疑惑が出てくる。これは単なる抽象的な美文であって、法令を美文化したものであって、実際には適用ができないんじゃないか、これは予備自衛官を集めるための一つのつり道具じゃないか、こういうふうに悪くとられても、やむを得ぬような点がないでもないじゃないか、だから長官も、この点はひとつよくお考えになったらいかがでございまするか、こう言っているのだから、何もむきになることはありはしない。
  173. 山中貞則

    ○山中国務大臣 決してむきになりません。私もこの昇進のさせ方について、自分自身で少し取り組んでみます。そして、そういう該当者があって、それを発見する努力をしていないのか、努力をしても該当者がなかったのか、ここらの点を、もう少し私自身も解明してみまして、そして一考を要すると言えとおっしゃいますから、一考も二考もいたしますと答弁しておきます。
  174. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まことにけっこう。  では、その次に自衛官の勤務時間の問題についてちょっとお尋ねしたいのですが、これは訓令に載っているんですね。一般の自衛隊員は、第四条になって朝の八時が出勤時間です。開始時間が八時。ところが第五条によると、「幕僚監部及び統合幕僚会議事務局に勤務する自衛官の通常の日課は、次とおりとする。」、月曜日から金曜日まで、課業開始は八時三十分とある。同じ自衛隊員で三十分のズレがある。むろんこれは最後に合わせてある。合わせてあるが、朝三十分のズレを、どういうわけでこんな時差がつけてあるのか。これは私は非常に不愉快な気持ちですが、どういうわけですか。
  175. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 幕僚監部の日課は、平日におきましては八時三十分から十七時まで、それから土曜日が八時三〇分から十二時三十分まで。そしてその間に休憩時間がありまして、平日の場合十二時十五分から四十五分まで三十分間が休憩時間です。この場合の一日の実働時間は、平日八時間、土曜日が四時間で、週の実働時間は四十四時間です。現地部隊の日課は、いま御説明のように幕僚監部の勤務者よりも三十分早く始まります。現地部隊の日課というのは、訓練やその他の勤務の場合におきまして、非常に肉体上の疲労が多うございますので、隊員の健康維持、それから、あるいは先生御承知のように、午前の日課と午後の日課につきましての確実なる区別をつけるというような教育訓練上の効果等をねらいまして、それで昼の休み時間を三十分だけよけいにとりまして、十二時から十三時ということにしております。したがいまして、課業開始をその分だけ三十分繰り上げて八時としているわけであります。終了時は幕僚監部と同じでございます。したがって、この場合の一週間の実働時間は幕僚監部と同様で、それぞれ八時間、土曜日四時間、四十四時間ということになっております。  要するに、繰り返しますが、趣旨は、非常に肉体労働が伴うので休養時間もよけいにとろう。それからもう一つは、教育訓練の上からいって、午前の部と午後の部をはっきり区別する、そういった点を勘案いたしまして、休憩時間を一時間とるために三十分繰り上げたということでございます。
  176. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、いまの御説明は、ちゃんと訓令に詳しくずっと載っておるんですよ。ズレと、それから休憩時間を長く見る。片方は八時に始まり、片方は八時半。それはみな詳しく載っております、あなたのおっしゃったのは。載っておりますが、部隊勤務の自衛隊員は八時、幕僚監部や事務局の連中は八時半だ。そういうことが私は根本的に考え方がおかしいと思うんですよ。  では、その八時から八時半までの間に、もしも一朝事があり、もしものことがあったときはどうしますか。そうするとあなたたちは、そういう場合にはこの限りにあらず、必ずそう言われると思う。それは、「業務に支障がある場合においては、この限りではない。」、ちゃんとここに書いてある。それは、もう言わぬでもわかっておる。あなたたちは、きっとそういうふうに説明されるだろうから、その前にぼくは言っておくけれどもね。そういうただし書きがあるけれども、大体八時と八時半にするということが、同じ自衛官でありながら、そういう差別をするというのがおかしい。では、公務員だって、同じ公務員でも忙しいところと忙しくないところで、朝の出勤を変えるなんということはとんでもない。これは時差出勤で、ほかの理由によることはありますよ。それはあります。だけれども、幕僚と一般自衛隊員と——疲れるからだとか、とんでもない。あんまりふざけたことを言うんじゃない。何のために三十分のズレをやるか。それは、一般の自衛隊勤務も部隊勤務も八時半にするのならけっこうだ。両方とも八時半ならいいです。鬼木がやかましく言うたから八時半が八時になって、おれたち三十分損したなんというとんでもないやつ、やつと言ってはあれだから、皆さんがいらっしゃるかもしれぬ。だから、ぼくはそうじゃなくして、だったらみんな八時半にしてもいい。引き上げて八時に合わせろとは言いませんよ。こういうことが、すでに自衛隊の精神の弛緩だ。精神がゆるんでいる。長官、いかがですか。
  177. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 これは、いまおっしゃいましたように、通常の場合の勤務時間を定めたものでありまして、その根底には、実働四十四時間というような点を基礎にいたしまして、そして時間をはじくわけです。そうしました場合に、先ほど申しましたように、幕僚監部以外の部隊等におきましては、教育訓練というものが非常に大事な毎日の仕事でございます。そういった場合に、幕僚監部等の場合におきましては、十二時十五分から十二時四十五分までの三十分というのが休憩時間ですね。それじゃ休憩時間としては非常に短いので、やはりそこはある程度くふうをいたしまして、たっぷり休みはとる。そして午前の部の教育訓練と午後の部の教育訓練は画然と分けて、気分の十分な転換をして教育効果もあげる、そして疲労も回復しようというくふうのあらわれが、一方を八時にし、一方は八時半にじたということでございまして、これは通常の場合でございます。ですから、いざという場合には、幕僚監部も部隊も全く一体になって仕事をしなければいけませんから、そういった場合には、こういった時間の規制はありません。  それから、八時から八時半までの間において部隊で何か問題が起こって、中央の幕僚監部にだれもいないというのは、おかしいじゃないかということはあるかもしれませんが、そういった場合には、ちゃんと宿直なり日直なりが厳然としておりまして、通信網は十分果たしておりますから、実際の支障のない運営ができるということでございまして、これは、あくまでも精神論ではありませんで、実働四十四時間というのをもとにいたしまして、その教育訓練の効果その他を考えると、こういうのが一番いい時間の組み方ではないかというふうに私どもは考えておるわけであります。
  178. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あんまりぼくはやかましく言いたくないけれども、そんな説明はもうよしなさいよ。これは、あくまで通常の規定でございます、それは、もうもちろんそうですよ。自衛隊、何だってみんな通常です。一朝まさかの場合は、それは違いますよ、当然。じゃ、一般公務員だってそうですよ。これは夕方五時までなら五時までときまっていますけれども、幾ら国会の職員であろうが一般公務員であろうが、まさかの場合には夜を徹してでもやることは、それはありますよ。あくまでもこれは通常の場合のことであって、それを言っているんですよ。だから、そういうわかり切った説明では納得できませんよ、そういうことは。  そもそも自衛隊自体を、これは仕事の重要度だとか疲労するからとか、そういうことを言ったら自衛隊員はみんなおこりますよ。日本の、わが国の自衛隊が、幕僚やら統幕の部員だけが自衛隊員か。そんな言い方しちゃいけませんよ。もう自衛隊員は、全員国土を守るという重責をになっている人であって、軽重はない。断じて軽重はない。あるわけがない。だから、そういうことで勤務時間の始まりをどうするというようなこと自体が、私はよくないと思うんですよ。だったら、ほかの公務員だって、全部これは段階をつけなければいかぬ。特に忙しいところは、まあどこということは言いませんけれども、朝十時でいいぞ、どことどこは朝九時でいいぞ、そういうふうにやられたんじゃ、私は最もよろしくないと思う、こういうやり方は。また、自衛隊の性質からしましても、こういうことじゃ精神が弛緩しますよ。長官やあるいは防衛局長、みなひとつはっきりその見解を言ってください。私、それじゃ納得できませんからね。
  179. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、第一線と言ったら変ですけれども、実際の各駐とん地、基地等の実動部隊、そういうものは何も出勤時間に差はないわけですね。  ただここで、私もどうしてこうなったか制定の経過はよく知りませんが、結果的に見れば、幕僚監部及び統合幕僚会議事務局に勤務する自衛官だけでございますから、あるいは一般官庁の出勤時間並みにしてあるのかもしれないと思います、その性格上。したがって、地方において師団長は三十分おくれてもいいとか、連隊長は三十分おくれてもいいとかいうことにはなっていないわけでありますから、中央官庁並みに扱ったのではなかろうか。これは志賀健次郎長官の時代ですから、昭和三十七年にきまっておるようでありますが、そういうことではなかろうかとしか、いまになって私としては考えられません。
  180. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 防衛局長……。二へんも三べんも言わすな。長官の次に防衛局長と言ったじゃないか。
  181. 久保卓也

    ○久保政府委員 所管に応じて答弁すべきだと思いますけれども、御指名がありましたので答弁いたします。  先生の御趣旨によりますと、幕僚監部と同様に勤務すべきであるということであれば、部隊は八時半から勤務することになります。そうしますと、いま人事教育局長の説明によりますと、昼の休みが三十分ということになります。  ところで、私は軍隊にいたことがありますけれども、最も楽しいのは、めしを食うこと、寝ること、休むことであります。訓練をきびしくすればするほど、やはり休憩をし、めしを食うこと、そういうものには非常に快適な環境を与えることが部隊を使うゆえんであろうと、私は自分の経験でも思います。そうすれば、部隊というものは、教育訓練が主でありますので、幕僚監部は中央官庁並みに行政組織としての機能を果たす、それに合う範囲の勤務時間を定めれば、部隊というものは、やはり教育訓練に適合する時間を設定するのが、部隊としてのありようであろうと私は思います。
  182. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 食事のときが楽しいなんというのは、自衛隊に限らず、だれでも食事のときは楽しいよ。自衛隊だけが食事のときが楽しいなんて、ふざけたことを言うな。全国民はみんな、家族が寄って御飯を食べるときが一番楽しいときだ。そんなことを言っているんじゃない。朝の出勤時間をそういう八時と八時半にするという、そんな考え方は根本的な間違いである。長官は、志賀健次郎さんか健太郎さんか、あの防衛庁長官の時代のことだと、自分もようこれは研究していないというようなお話であったが、これは私は絶対納得できませんね。同じ自衛隊でありながら、片方はのんべんだらりと八時半ごろぷらんとやってくる。部隊勤務は八時からせっせとやっている。これは、もう自衛隊全体の士気に関する。私は、こういうことには絶対賛成できない。あなた方、あくまでそれをこれで通されるということだったら、私も、あくまでこれはがんばりますよ。オール自衛隊員のために遺憾です、こういうことは。長官、いかがですか。もし、まだお考えが出ないというのなら、この問題は保留いたします。またやります、何らか皆さん方の統一見解が出るまでは。ここではっきり統一見解が出なくても、大体の方向、大体のお考えでも承れば、了承します。
  183. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まあ、私の考えですが、これは幕僚監部及び統合幕僚会議の事務局の自衛官のみでありますから、要するに、防衛本庁に勤務する者だけであります。でありますので、一般の内局、せびろの諸君は、これは公務員の規定どおり八時半に登庁してまいりますから、そうすると、桧町の防衛本庁の中で、幕僚監部及び統合幕僚会議の事務局の自衛官のみが、三十分早く本庁において出勤するという、またおかしなことも起こりましてね。  だから、おっしゃるように、三十分のズレに事が起こったらどうするのだということは問題があると思う、最高の指揮官がみんな三十分おくれですから。ただ、実際の部隊においては同じにしてありますから、そこらの点は問題はないと思いますが、制服を着ているものは全部同じ出勤時間、退庁時間であってよろしいということにいたしますと、今度は内局がございますし、その他にも施設庁その他せびろ組がございますから、その中で、三十分だけ幕僚監部と統幕の事務局の者たちだけが、その中でも自衛官だけが三十分早く登庁するということになりまして、防衛本庁の中の姿としては、ちょっとまたおかしくなることもあるんじゃないかと思うのです。
  184. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま、いろいろあなたが解明されたとおりですよ。そういう息が合わない、自衛隊全体の息が合わない。リズムがずれている。波長が合わない。これでは、ほんとの防衛行政とは言えないのです、私は。それはあなた、そうでしょう。本庁のえらい連中は三十分おくれ、ぷらんぷらんして、散歩でもするようなかっこうでやってこられたのでは、われわれは迷惑するんですよ。そういう自衛隊はもう認めない。ほんとうに精神が弛緩している。だから、全部八時半ならけっこうですよ。それに私は文句言っているのじゃない。差別するから、私は、そんな足並みのそろわぬようなそういうことは……。大体、私の気持ちは長官おわかりでしょう。どうぞ防衛庁の幹部諸君、何か反論があったら、あとでぐずぐず言ったってしょうがないので、あったら、何かひとつこの際……。
  185. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大西参事官からもうちょっと説明させますから、それでも御納得いかなかったらまた…−。
  186. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 教育関係を担当しておりますので、御説明申し上げます。  御承知のように、部隊は営内居住で、生活の場でもあります。したがって、教育訓練と生活が重なっておりまして、たとえば食事の時間のお昼を考えましても、給食という制度をとっておりますので、そこにどうしても一時間程度かかる。それに対しまして中央では、いわゆる行政官衙と同じでございますから、仕事だけで、食事の、給食の世話というものはございません。したがって、そこで三十分間で済むということがございます。それから、たとえば朝の訓練の開始の時間でございますけれども、これも寝泊まりをしているわけでございますから、なるべく早く起きて仕事を始めるということが効率的である。特に航空部隊等におきましては、早朝訓練等もございますので、八時半からやるということは必ずしも適当でございません。つまり、もう一度申し上げますと、教育訓練と生活の場というものを同時に部隊では持っております。それに対しまして中央では、生活の場を除いて仕事だけがあるということで、その点が非常に状況が違っております。  したがいまして、部隊と中央との時間のギャップをどうするかという問題でございますが、たとえば師団司令部とかあるいは方面総監部というものは、部隊の系列で八時になりますので、その限りにおいては矛盾はございません。あとは、中央と方面総監部との関係でございますが、これは当直等を立てるということによって、食い違いを避けるということはできると思います。  以上のように考えます。
  187. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 何もたいしたきめ手にはならぬね。同じことを言うただけのことで、ことばの表現が少し変わっただけで、同じことは一つことです。だから、実際部隊においてのあれは支障はない。本庁のほうでそういう問題が、ズレが起きてくる。だから、これが私は一番よくないと思うんですよ。全国の自衛隊の総たばねをするところの本庁において、特別待遇みたいな、八時半ごろぷらんとしてやってくるなんというのは。みな一様に八時半ならいいですよ。実際部隊においては八時から営々としてやっておる。そうしたら、やはり本庁においても八時からぴしゃっとやる。だから、それが八時に合わせることが無理であれば八時半に合わせなさい、こうぼくは言っている。だから、お昼休みの弁当を食べるのがどうだとか、楽しい時間が短くなるとかならぬとか、そういう操作はどんなにでもできる。御飯を食べる二十分、三十分の操作は、くふうすればどんなにでもできる。それではいまの説明は同じことですよ。何も納得はできません。
  188. 山中貞則

    ○山中国務大臣 おっしゃる趣旨は、私もよくわかります。要するに、上正しからざればということを引かなくても、上がむしろ先に立つべきであるということでありますから、少なくとも同一時間には勤務しておるべきであるというお話はよくわかるのです。  ただ、防衛本庁の中におる者だけのことでありますから、これだけの諸君を、一般の公務員の出勤時間と違って半時間操り上げて、そして隊と合わせれば、ほかの公務員は三十分のお昼休みを、幕の者、統幕事務局の者だけは一時間休むという、そこらにもちょっと防衛本庁の中では、他官庁のこともございますが、内局や施設庁や、そういうのがよけいおるわけですから、その連中だけは、今度は昼めしを一時間かかって、三十分多いということで部隊に合わせなければならぬでしょう。そこらのところは、なかなかむずかしいところがありますね。お気持ちは私もよくわかります。まず上のほうがぴしゃっとせいということですけれども、勤務している場所の問題があるのです。
  189. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは、わかりますよ。わかりますけれど、そこが問題ですよ。本足りて末生ず、本がはっきりしなければならぬ。ですから、みんなと一緒に八時半なら八時半に合わせて、そしてお昼休みが短くなるのならば、本庁が短くなるのならば、それは一般の自衛隊員よりも勤務時間を長くしたっていいじゃないですか。あとへ延ばしたっていいじゃないですか。みんなが苦労しているのに、本庁の者だけがゆっくり来て、そして自分たちが楽しようなんて、そこに間違いがある。自分たちのほうが苦労する気持ちがなければ。だから、それだけの操作をすれば、それはできますよ。そんな御飯を食べる時間なんて、一般隊員は御飯を食べる時間は長くしても自分たちは短くするというような考えがなければ。それが本足りて末生ずです。本がはっきりしなければならぬですね。ですから、同じ八時半にすると、むしろあとが少しずれる。それはずれたっていいと思うのです。だから、両方とも八時にすると、いままで八時半であったものが八時というと不平が出るかもしれぬけれども、全部一緒に八時半に並べたら同じでしょう。だから、戦時中だとかなんとかいうてやっているときは、それは昼も晩もないかもしれぬけれども、先ほど人事局長が言われたように、通常の問題なんですからね。平時の問題なんだから、朝合わせたって何も変わらない。これは当然合わすべきですよ。そして、その内容は変わってもいいと思うんです。御飯を食べる時間が、こっち側よりもあっちが短いとか長いとか、そういうことは操作はどうでもいいと思う。  いつも言うように、大幹部はまず隊員や一般の人を先に楽しませて、いわゆる先憂後楽だ。本省におって自分たちはふんぞり返って、朝八時半ごろゆっくりやってくる、ほかはみなどんどん一生懸命やっている、そのころぷらんぷらん八時半ころ来る、大体、ようもそんなことをやってきたものだと思うんだな。八時半ごろぶらぶら来るのは、背広組じゃないんだろう。制服組だろう、みんな。局長さん、そうじゃないか。八時半ごろぷらんぷらんやってくるのは制服組だろう。背広組じゃないだろう。
  190. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 みんな八時半にきちんと参ります。ぶらぶらじゃなくて、きちんと参ります。
  191. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 背広組か制服組かと言うんだよ。みんな制服組だろう。
  192. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 背広組も八時半に参ります。一緒に参ります。
  193. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ぶらぶら来ておらぬだろうけれども、ぶらぶら来ておるように見えるんだ。本人たちは、ぶらぶら来ておらぬと言うけれども、ぼくは言う、これは全部ぶらぶらして来ておる、八時三十分、山の上の景色でもながめながら。とんでもない。全自衛隊の士気に関する。これは、ぜひひとつ一考も二考も三考もしていただきたい。オール自衛隊のために、そういうことはよろしくない。
  194. 山中貞則

    ○山中国務大臣 あくまでも防衛本庁の中の問題としてとらえる場合は、たとえば部隊も一緒に八時半にずらせ、本庁のほうの背広組と一緒でないとおかしいというなら、部隊のほうも八時半に延ばせ、それならよろしい、こういうことですね。そうすると今度は、訓練にいそしんでいる連中ですから、昼食時間は最低一時間はとってやらなければいかぬと思うんですよ。そうすると、防衛本庁に勤務する者は、やはり部隊と一緒に八時半にそこの点は並びますね。そうなると、休憩時間をやはり隊と一緒にとらなければなりません。そうすると今度は、休憩時間を、幕と統幕の事務局の者だけが、自衛官だけが一般のほかの制服の内局、施設庁と比べて二倍とるということになって、そして退庁時間が三十分そこだけおくれるということになりますね。そこのところは、部隊にずっと居住しておる者、そういう者は連隊長から方面総監全部そろっているわけですから、桧町におる連中の問題だけだということになりますね。しかし、おる連中といっても、それは陸海空の責任者ばかり、その事務局あるいは幕僚監部の高級な諸君ばかりです。それが三十分朝寝をするというとらえ方のみて言われますと——私もやはりまず責任者がぴしっとした態度で処するということが、曹、士の諸君まで足並みをそろえていくほんとうの姿だと思うのです。したがって、それにそろえると、今度は防衛本庁の中において、統幕の事務局と幕僚監部の自衛官のみが勤務時間が食い違ってくる。  こういうことが起こるので、お気持はよくわかりますから、しかも、この訓令は古いものですし、研究はしてみます。研究はしてみますが、どっちかが狂っちゃう。そうすると、いまの三十分おくれのものは、桧町に関する限り、防衛本庁に関する限りは、それがきちっとそろって全部出てくるわけですから、登庁時間は統一されておるわけですね。そこのところは、乱れてもいい、部隊の苦労しておる曹、士の諸君と同じ時間にしろということになりますと、そこで防衛本庁の中の幕僚監部と統幕の事務局の自衛官のみが違った出勤時間、退庁時間になる。これはいまは市ケ谷分とん地から桧町の駐とん地に変わりましたけれども、ここだけが奇妙な現象が起こるということもあると思うのです。これは一緒の場所に勤務しておるものですからね。幕僚監部といっても、背広の者もおりますしね。その中で、自衛官だけが違った勤務時間というのもどうだろうか。もう少し研究させてください。
  195. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 内容は非常に複雑でしょう。そう一律に簡単にはいかぬと思います。いかぬと思いますけれども、問題は、自衛隊全体の士気に関することですからね。私はその点を憂うるのであって、だから、これは時間を与えてくれ、考えるからという長官のお話ですから、十分衆知を集めて、ぜひ考えていただきたいと思うのです。まだあと基地周辺の問題があるから、あまりこればかりやっても話にならぬ。  もう一つ、ちょっとお尋ねしたいのですが、婦人自衛官の問題で、これは最初婦人自衛官は昭和二十七年ですか、看護婦として採用されておった。それが今日だんだん多くなって、現在約千二百人ばかりおるとかいう話ですが、あとでまた違っておったら……。  昨年の十月末ですか、陸上自衛隊朝霞駐とん地の観閲式で、雨の降りしきる中に婦人自衛官が、全身しとどにぬれながら勇気りんりん行進を続けた。これに田中さんが非常に感激をされて、どうだ山中君、ひとつこれ少しふやさぬか。山中長官も大いに意を強うして、やりましょうというようなわけで、大々的に募集するというような話を聞いておりますが、現在は千二百名程度だ。今度どのくらい募集をされるお考えであるか。過去においては、たいへん応募者が多くて、競争率も四倍もあったというふうなお話もありましたが、私は婦人自衛官を何もいかぬと言うのじゃない。まことにけっこうだと思います。隊の中でもきれいなお嬢さん方がいらっしゃるというと、何となくやわらいでくる。しかも諸外国にも、そういう例はたくさんある。米国、ソ連、英国、スウェーデン、隣の韓国、イスラエル、スイス、これは、みな婦人自衛官を置いておるんですからね。  私は、これに対して異論を差しはさむものではない。けっこうだと思うのです。けっこうだと思いますが、これは自衛隊が二万数千人足らぬ、これの肩がわりをするのだ、そのためには婦人自衛官を採用することは大いによろしい、かつて島田事務次官がそういうことを発表しておられたようですが、しかし第一線に活躍しておるところの自衛隊諸君の肩がわりが婦人自衛官でできるかというんだな。私はしろうとだけれども、私はできないと思うんですよ。婦人自衛官は船にも乗せない、あるいは管制上の点にも携わることはできないようにしてあるとか、いろいろそういう制約があるらしい。そうすると、直ちに陸上自衛隊が二万数千人足らぬからその肩がわりするんだというような、安易な考え方は、はたしてできるのかどうか。  あるいはまた、予算面においても、男子の自衛隊員と婦人自衛官ということになると、経費の問題もたいへんなことだろうと思うんですよ。これは風紀上の問題からいたしましても、婦人自衛官だったら別棟ですね。別に婦人自衛官だけ宿泊するような宿泊施設もつくらなければならない。風紀上の問題もある。婦人自衛官は労働基準法の適用を受けない、だから、深夜勤務でもやらせるから都合がいいじゃないか、そういう考え方は、私はもってのほかだと思う。労働基準法の適用を受けないから、深夜勤務にさせるのに女でもかまわぬ、冗談じゃない。婦人自衛官であればこそなおさら、深夜勤務なんかは、私は遠慮してもらわなければ困る。そういうふうなことを新聞でちらちら言っておられるようだが、感覚がだいぶ私の考えとずれておるようだが、婦人自衛官そのものに対して、私は異論を差しはさんでおるのじゃない。それはけっこうだ。どういう考えで、またどのくらい募集されるのか、将来どういうふうにやられるのか、予算の問題あるいは婦人の活躍する部面、そういう範囲の問題とか、そういう点について承りたいと思う。
  196. 高瀬忠雄

    ○高瀬(忠)政府委員 婦人自衛官の現在の人員、それから募集の問題につきまして、申し上げたいと思います。  婦人自衛官には、実は二種類ございまして、一つは、一般の婦人自衛官と、看護婦ですか、看護の仕事をする、いわゆるナースと言っておりますが、その婦人自衛官と両方あります。一般のほうは現在官、曹、士合わせまして、三月末で千百九十七名、看護婦の自衛官は、ちょうど四百人おります。それから看護婦の卵、看護婦の学生を教育しておりますが、これが二百六十名ばかりおります。  本年度の募集関係ですが、実は曹、士で約四百五十二名、それから海空新たに募集いたします。海が幹部七名、曹十六名、計二十三名、空が幹部八名、曹二十三名、計三十一名。全部合計しまして、四十九年度の一般の関係でございますが、募集計画は五百六名になっております。それから看護婦の関係は、毎年、大体同じ程度で募集はする。  それで、募集が困難だから婦人自衛官で代替するというお話がございましたけれども、婦人自衛官の発足の趣旨というのは、婦人にも直接防衛の仕事を与える。それから婦人に対しまして、現実的な面で防衛の理解といいますか、協力をさせる。それから自衛隊の中にも、いまいろいろお話がございましたが、婦人に適する職種があります。たとえば通信というようなものとか、第一線の部隊に出て実際に仕事をするのではなくて、交換とかあるいはタイプとかその他の文書の仕事、いわゆる一般の後方的な仕事その他、そういった点で婦人に最も適する職場がありますから、そういった分野を担当せしめるということであります。そういうことで、海空におきましても、婦人自衛官の制度を採用するというようなことで、四十九年度から採用することになりました。  それから、勤務の条件でございますが、一般の婦人自衛官は、大体、一般の婦人の事務系統の人と同じような勤務の態様にしております。それから看護婦の場合は、御承知のように、看護婦として独特の勤務態様もありますかち、それに従っております。先ほど申されたような意味で、非常に深夜でも使いやすいから婦人自衛官を使うというような趣旨で、婦人自衛官制度を採用しているわけではありません。  それから、予算その他につきましては、あとで他の担当者からお答えいただいたらいいと思いますが、確かに管理の面では、男子の居住区と区別しなければなりません。御指摘のように、特別な建物をつくらなければなりません。そういうようなことで、少数の者のために特別な建物をつくりますから、当面は男子隊員よりは金がかかるということは、言うまでもないことであります。
  197. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 つまり、自衛官が二万六千人も足らないというので、WACにかわってもらおうというようなことには、確かに私は無理があると思うんですね。そのままにWACに肩がわりをさせるということは、私はできないと思う。仕事の内容も、いまおっしゃったように、管制には加えないとか、あるいは船には乗せないとか、だから、第一線部隊で働いているところの自衛官と同じようなことをさせて肩がわりをすることは、私は無理だと思う。WACにはWACに相当したお仕事があるわけなんですから、そういう点を、私は十分配慮してもらいたいと思うんですよ。婦人自衛官を擁護する立場から、私は、細心の考慮を払ってもらいたい。待遇はいささかも男子と変わらないというお話ですから、それはけっこうだと思います。  御承知のとおり、幹部は別ですけれども、幹部でなければ営内居住が原則ですから、そうしますと、WACは結婚もできないということになる。結婚すれば外部に泊まらなければならない、営外居住しなければならないから、結婚もできない。それから、転勤というようなことの場合も、やはり考えてもらわないと困る。だから、私は、二万六千人の陸上自衛隊が足らないから、WACを肩がわりさせるというような簡単な考え方は間違いだ。おのずから仕事の内容も違うし、いわゆる男女同権ではありながら、おのおの分野が違っておるから、そういう点を私は十分ひとつ考慮してもらいたい。WACは労働基準法を適用されぬから、深夜勤務をさせてたいへん都合がいいじゃないかというようなことは、看護婦なんかは別かもしれないけれども、一般婦人自衛官は、深夜勤務なんか、断じて私はやらしてもらっては困る。  どうでしょうか、長官、そういうふうな点、私の老婆心かもしれないけれども、ただ婦人自衛官はいいから、そら使えそら使え、ほら募集しろ、これに限るぞというような簡単なことではないと思う。それは遠謀深慮な長官だから、そんなことはないと思いますが、そういう点、ひとつ長官からはっきり……。
  198. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず、初めにお断わりいたしておきますが、主として陸上を中心とするやや恒常的、慢性的な欠員を、婦人自衛官で埋めようということを、だれが言ったのか、たしかさっき島田とおっしゃったのですが……(鬼木委員「島田次官がはっきり言っています」と呼ぶ)ところが、そういうことは全然考えておりません。また十八万名体制というものは、十八万名の編成、装備というもののもとにおかれているわけでありまして、それを女性でもって肩がわりさせる分野は、先ほどからお話があるように、おのずと限定されます。ただ、婦人自衛官、WACの中には、私たちも普通の曹、士と同じような訓練も受けさしてほしいというようなことを言う者もおります。あるいはまた、先ほど結婚の話が出ましたが、隊内居住をしておりましても、結婚式をあげて結婚した者、土曜の夜、日曜等は一緒に過ごせるわけですから、そうするとやはり妊娠する。おなかが大きくなり始めると、一定の月数がたつと、どうも肩をたたかれるらしいですね。そろそろどうじゃと言うと、いや、私たちはおなかが大きくても仕事はできますと言うて、直接私はWACに言われたこともあります。したがって、われわれとしては、婦人自衛官が働いていてもいい職場に限定をして、ある程度婦人自衛官というものを採用していく。しかし予算その他で、一人当たりの設備その他については相当金がかかりますから、そう簡単にふやすこともできません。  他方、ナースのほうでありますが、この自衛官というものは、昼夜勤務が当然の前提であるので、給与体系というものも、そうなっておるから、三百五十円の夜間勤務手当というものが一般の公務員の看護婦に支給されましたときも、自衛隊の自衛官たる看護婦は実はもらえなかったようです。もらえておりませんでした。それは、おかしい、やはりナースの自衛官であっても、勤務の態様は、ことに重症患者なりそういう者に付き添っておる者は、公務員の看護婦さんと同じ苦労をしておるのだからということで、折衝いたしましたけれども、いままでその理屈で防衛庁も引き下がっておりまして、三百五十円はどうしても復活できませんでしたが、夜勤手当が千円になりましたときに六百五十円、すなわち千円から三百五十円を引かれまして、それで大蔵省と総理府人事局との間で、やむなく妥結をいたしました。これによって、一般の公務員たる看護婦の諸君よりも三百五十円理屈の上では差がついておりますが、実際の、初任給からの手取りというものを見ますと、大体いまの他の公務員看護婦に比べて、夜勤手当についても著しい差はないという見通しがつきましたので、いまのところ三百五十円を差し引かれて夜勤手当を支給することにいたして、それなりの配慮は私なりにいたしておるつもりであります。
  199. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まだいろいろとお聞きしたいのですが、時間がなくなると困りますので、いま審議にかかっておるこの防衛施設周辺生活環境整備法案について逐次お尋ねをいたしたいと思うわけです。  これは、いままでありました防衛施設周辺整備法を今度廃止して、新たに環境整備法を制定しようというお考えのようでございますが、これは基地を撤去し、縮小するというたてまえからの法案ならば、国民も非常に大歓迎すると私は思うんですよ。ところが、根本的に出発が、これは基地の強化、固定化、永続化ということにつながるんじゃないかという、こうした疑問があるんですね。基地を縮少しよう、あるいは撤去しよう、それにはどうすればいいかというような、それを出発とした法案ならば、私は、大いに歓迎だが、これは、そうじゃなくして、基地を固定化しようという。これは米軍あるいは日本の自衛隊両方ともですが、いずれも基地の存在によって生じてくる周辺の市町村とのトラブルあるいは市町村の損害とかいうような、そういう問題を緩和する、そして基地を永続化していこう、固定化していこうというような法案ではないか。  これは、山中長官も御承知ですな。御承知どころか、あなたが一番立て役者だった、沖繩返還の場合の。沖繩の山中か山中の沖繩かというように、あなたが一生懸命、獅子奮迅の御努力をなさった。大いに敬意を表しますが、あのときにも沖繩国会で決議をしておりますね。御承知と思いますが、基地は縮小するように、撤去するように、これは超党派で国会で決議をしておる。だから、その決議を受けて、こういうふうにするための法案だというなら、またこれは話は別です。ところがそうじゃない。そういうところに、どうもこの法案に対して私は根本的に疑問を持つ。その点、まず冒頭にひとつ、長官に……。
  200. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、二つの面に分けて考えてもらいたいと思うのです。  一つは、これは各党の合意を得られていないのは残念でありますが、わが国が憲法の中で許容されると思われる範囲内のもの、そしてわが国に対する急迫不正の侵害を、わが国自体で日本に手を出すことをちゅうちょせしめるぐらいの、そういうことのないような力というものを持つ、これを私たちはいま自衛隊というつもりでおるわけでありますが、その基地というものは、これは恒久化とかなんとかいうことの以前の問題で、わが国が独立国として国際通念上の自衛権も持ち、そして、その自衛権の姿として自衛隊があるわけでありますから、その基地は、やはりこれは整理縮小の方向で一緒に議論すべきものではないと私たちは考えております。  しかし一方において、安保条約を締結したもとにおいて、アメリカの基地が日本に存在する。これはまた提供する義務があります。しかしながら、月日が非常に流れておりますし、国際情勢、極東の情勢等も、軍事的な情勢は変わりつつありますから、またアメリカ等は、ニクソン・ドクトリン等を打ち出しておりますし、そういうことの変化に伴って、われわれとしても、核のかさを中心とするアメリカの抑止力のもとに、われわれの自衛隊の存在の目的が初めてあるわけであって、そのために、基地を全部なくすることはできないと思うのです。私たちは、そういう立場であります。  しかしながら、例を沖繩にとられましたように、あまりにも日本の本土と違う状態の環境の中で、詳しく述べませんが、広大な面積を、しかも最もいい場所を占領されて基地ができておる。その基地の成立のいきさつも、一方的な武力によるものであったというようなことが証明されておりますから、なるべく——沖繩の米極東戦略からするキーストーンとしての価値は、それはアメリカ側としてのものがありましょうけれども、沖繩県民の未来の幸福、あるいは振興開発の青写真というようなものを描きます場合に、どうしても沖繩の現在の基地というものは、やはり大幅な整理縮小の方向努力をしなければならない、そういう本土の者すべての義務があると思います。その方面は依然として進めていかなければなりません。また昨年一月、ことしの一月、日米安保協においても少しずつでございますが、その成果を、先般も比率にして一二%ぐらい返還を同意せしめたわけです。本土においても関東計画なり、あるいは横浜海浜住宅の移転なり、横田集約とかその他いろいろありますが、そういう方向は出ているわけであります。  でありますから、自衛隊の基地は何も恒久化とか固定化とかということでなくて、独立国家であれば私たちは必要であると思う。そのためには、基地があるためにいろいろの面で御迷惑をおかけしているであろう。いままでは、基地を使うことによって与える御迷惑について配慮しょうとした法律であったけれども内閣委員会のその際の附帯決議あるいはその後、行政の運用をやってみまして、周辺地域の住民や市町村の皆さんから、この法律のままでは対応できない、御希望に対して沿えないというような限界をしみじみと感じておりましたので、そういう意味で、われわれの基地を許容してくださる周辺に対して、私どもがおこたえできる道は何かということで、新しい周辺の生活環境に関する法律をお願いしているわけであります。  米基地については、たてまえとして、鬼木先生のおっしゃるとおり、これは本土の全部の責任で沖繩の人々のおもしを取り除いてあげる努力をしなければならぬと考えておりますし、逐次その努力も実ってきつつありますし、今後もその努力を進めてまいります。
  201. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま長官のおっしゃるとおりです。それは私、よく承知しております。第二条にもちゃんと説明が書いてありますよ。「自衛隊の施設又は日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」と、いま長官か御説明になったとおり。この意味におけるところの本法案ですから、それはよく承知いたしております。おっしゃるとおり、これを全部なくしてしまえと言っているのじゃありません。  ただ、私が言いますのは、その基地をだんだん縮小していき、だんだんこれを返還していく、その対策の法案ならば、すぐにそのままのめるけれども、これでは、そういう点があるのじゃないか。いわゆる特色として、いままで市町村対象を今度は県にまで広げて、しかも迷惑料ということで出すのだ、それはよくわかっています。それはよくわかっていますが、重要基地を対象として特定防衛施設という指定制度を設ける。そして第一種区域、第二種区域、第三種区域というようになっておりますが、指定区域をどのようにしておきめになっておるのか。大体きまっておるのか。茨城県の百里あるいは静岡の浜松、石川県の小松等、全国十八カ所というようなことも書いてあるようですが、大体予想を立てて、それに対する予算というような点もお考えになっておるのかどうか。これは一条から十三条まであるようですが、九条まで私は逐条お尋ねしたいと思うが、これは、どういうふうになっておりますかね。  予算書もいただいておるから、私ここへ持ってきておりますが、内容は、補助率がいままで十分の六・五から今度は十分の八にする。それから補助の対象も広げると、各条にずっと説明してあるようですが、それに対する予算措置は、どのように考えられておるのか。いわば基地に協力をしておる県や市町村に対してはよけい出す、非協力的なところはあまり指定しないとか出さないとかいうような差別があるのじゃないか。長官、おわかりですか。革新団体なんかだったらあるいは協力しませんよ。そうすると、非協力的と協力しているところに対しての予算措置というようなものですな。今度第一条から第九条までの予算措置を——予算書もここにあります。こういうことで予算を組まれたのか。それもあとで、また一々条を追うてお尋ねしますが、まず、たてまえの根本をひとつお尋ねしたいと思う。長官でなくて、どなたでもけっこうです。
  202. 徳安實藏

    徳安委員長 ちょっと速記を待って。   〔速記中止〕
  203. 徳安實藏

    徳安委員長 速記を始めて。
  204. 田代一正

    ○田代政府委員 お答えいたします。  先生の御質問は、おそらく現行法と今度の新法との相違点という形でお話し申し上げたほうがよろしいのじゃないかと思いますので、まず、そういう角度で申し上げまして、あと予算の関係を申し上げたいと思います。  御存じのとおり、一つのカテゴリーといたしまして、施策の拡大をはかったものというグループがございます。これは特に第三条、いわゆる障害防止関係でございますが、その中の防音工事につきましては、対象施設を拡大いたしまして、診療所とか助産所を追加する。それから第八条、これは旧第四条でございますが、民生安定施設の助成、これにつきましては、弾力的な運用をはかるということで、先ほど話がありましたかと思いますが、「運用」のほかに「設置」という障害の対象を加えましたし、それから「著しく阻害」ということばを、「著しく」を削りまして「阻害」ということばにするとか、あるいは事業主体を、先ほど御指摘のように、「市町村」から「地方公共団体」というぐあいに広げるということにいたしてございます。  そこで、第二のカテゴリーといたしまして申し上げたい点は、新規の施策という観点で申しますと、これは新法の四条、五条、それから六条、七条という個条がございます。これは運輸省関係の公共用飛行場関係と相関連いたしまして、飛行場等の周辺を第一種、第二種、第三種というぐあいに区分けいたします。そこで第一種の地域につきましては、新たに個人の住宅防音というものをここで考える。それから第二種につきまして、移転補償、また移転をしていただく移転先につきましては、公共用施設の整備等につとめる。それから第三種につきましては、これは飛行場に非常に近いスペースでございますが、緑地帯その他の緩衝地帯を整備する、こういうしかけにしてございます。これが今回の新法の非常に大きな問題かと思います。  それから、もう一つの大きな問題といたしまして、先ほど御指摘のとおり、特定防衛施設調整交付金を支給するというのを入れました。これが新しい問題の第二でございます。  そういうことで、今回の法律関係で、この法律に関係いたしました総予算は、四十九年度予算で見ますと四百十四億になります。  条文別に申しますと、第三条関係でそのうち二百五十億、それから第四条の住宅防音関係で一億、第五条の移転関係でもって四十二億、それから第六条の緑地帯の整備等でもって、これはわずかですが千二百万、第八条の民生安定施設の整備ということで百十四億、第九条の調整交付金が五億ということになっているわけでございます。  そこで、これは全体の金額で申し上げたわけでございますが、新法の制定によって新しく計上した経費は、いかがかということに相なりますと、先ほどお話しいたしましたように、個人防音に関連いたしました一億円、それから調整交付金の五億円ということに相なろうかと思いますが、このほかに、従来予算措置でごく一部やっておりましたのを、今回法律ということにいたしまして、それに関連いたしまして、たとえば第五条関係の公共施設の助成の問題、それから第六条の第三種区域内緑地帯の整備の問題、あるいは第八条を拡大いたしたということに関連いたしまして、これは従来の市町村から地方公共団体ということに拡大したという経費が、大体七億五千万ばかりでございます。したがいまして、先ほど申しました六億と七億五千万を足しますと十三億五千万ということになるわけでございますが、それ以外に、実は予算が、これから実施計画を組まないと、まだはっきりわからないという要素もございます。  それは、たとえば第八条でございまして、先ほど申し上げましたのは、事務実施主体を、「市町村」を「地方公共団体」に改めるということだけを申し上げたわけでございますが、それ以外に、今回の改正では「運用」のほかに「設置」ということを入れてございます。それから「著しく阻害」ということばを、「阻害」ということに直してございます。それによりまして、採択の範囲が広がるという要素がございますが一これは今後、実施計画を組まないと、この金額がいかほどになるかということは、いまの段階では申し上げかねます。
  205. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 所要経費について、いまあなたの御説明で四百十四億五百四十二万円というお話を聞いたのですが、第三条から、四条、五条、六条、八条、九条、十三条とこうあるのに、これは事前調査をされて、この予算ははっきり組まれたのですか。そうしますと、この予算というものは、すこぶるあいまいになるんですがね。どういう意味でこんなこと書いてあるのか。ことに、「予算の範囲内において、」なんて書いてあるんだな。予算の範囲内に合わせていく、だったら、事実はもっとあってもできないということになるんですね。しかも、その費用の全部または一部を補助する、どういう意味か。これは非常に流動的な言い方なんですがね。  いま、あなたの御説明のように、第四条なんかは、わずかに一億ですね。第九条もわずかに五億。だから、整備交付金を五億と組んであるのは、どことどことどことどこで、どうしてこうなるのだ。住宅の防音工事も、一戸百万ぐらいな程度で、百戸分組んである。だったら、防音装置をする、実際に被害をこうむっておる住宅が百戸あるのを、予備調査、実地調査をやられたのかどうか。こういう点がすこぶるあいまいで、これは各条全部そのとおりのことを言われるんですよね。これは事前調査をして、そして、こことこことこことこうあるから、一戸百万ずつでこれは百戸あるからこうだ、あるいは整備資金はこうだ、調整交付金は指定地域がこことこことこことここで、これでこうなる、これは全額補助あるいは一部補助ということの積算ができて、それでこういう予算ができておるのか。  だったら、この予算の範囲内においてどうだこうだというようなことを言わなくたって、はっきり実態に沿うた予算を組んであるならば、これはきちっと説明できるはずです。これでは、すこぶるあいまいもこですよね。私は、こんな予算の組み方は、どうしてもわからぬ。どうですか、これは。まだ全部逐条やりますけれども、根本的な問題だ。
  206. 田代一正

    ○田代政府委員 お答えいたします。  予算をどうしてこう組んだかということでございますが、先生これは、おわかりと思いますが、防衛施設庁といたしましては、昨年の概算要求にあたりまして、新しい法律をつくるという前提のもとで概算要求いたしたわけでございます。ただいまお手元でごらん願っている法案は、できましたころ、それから若干の変更を受けて政府案として固まったものが国会に提案されておるわけでございますけれども、施設庁といたしましては、概算の段階から新法をつくるという前提のもとに概算要求をいたしたわけでございます。そこで、そういうしかけが一つあるということです。何も無縁で予算ができておるのじゃないということを申し上げておきます。  そこで、個々に申しますと、たとえば障害防止とか、あるいはまた移転の補償とか、土地の買い入れとか、移転先地の公共施設の整備とか、緑地帯の整備、それから大部分の民生安定施設の整備等につきましては、当時概算要求いたしておりましたと並行して、法律案をつくって一緒に並行して審議している途中で、財政当局としてさして異存がないというようなことで、こういう積算つきで、きわめて精細な積算がついたところで予算がきまったわけでございますけれども、新法の全く新しい施策としての個人住宅の防音の問題でございますとか、先ほど御指摘の第九条の調整交付金の問題、これは予算の最後まで非常にもめた問題でございますが、個人の住宅防音の問題から先に申しますと、これはさっき私、申し上げたかと思いますが、個人住宅防音をいたしますのは、第一種地域ということになります。一種、二種、三種と申しますのは、これは先生御案内のとおり、昨年末に環境庁からいろいろ勧告のございました環境基準、このもとになっております考え方がICAOの勧告に従ったいわゆるWECPNLという方式でございます。この方式に従いまして、正確に各飛行場等について計測をいたしまして、そこでこれは、このゾーンは八十五以上、九十以上あるいは九十五以上ということを正確に測定いたしまして、それで初めてコンターというものが引けるわけでございます。そのコンターをもとにいたしまして一種地域、二種地域、三種地域ということが指定になるわけでございます。  したがいまして、住宅の防音工事を始めるわけでございますけれども、そういったコンターを引くという作業が別個並行的に進んでおります。これは四十八年度中に、大体三カ所ぐらいテストでやっているわけでございますが、四十九年、五十年にかけまして、かれこれ二十ばかりの地区についてやりたいと思っております。そういった時間が、ちょっとかかるという問題がございまして、それからまた個人住宅の防音は、全く新しい、新規の問題であるということもございまして、とりあえず初年度は、試験的にと言ってはないへん語弊がございますけれども、一億円でまずやってみる。二年度以降は、そういったコンターの引き方という作業と並行いたしまして、相当飛躍的にこれを伸ばす、こういう考え方のもとに今度の予算ができておるわけでございます。  それから、第九条の調整交付金の問題でございますが、これも実を申しますと、防衛施設庁として当初考えていたのと若干予想が変わって結論を得たということになっておるわけでございますが、その間におきまして、いろいろな議論がございまして、初年度でございますから、この際、五億円程度でスタートしてはどうかということで、予算的には最終的にセットされた問題でございます。しかしこれも、これは先生おられなかったのですけれども、一昨日も、それからきょうの午後の吉田先生の場合にも、何回も御説明いたしましたけれども、やはり第九条の一項、二項ということで、指定にあたっても相当客観的なデータをもとにしてやりたい、また配分するにいたしましても、客観的がデータをもとにしてやりたい、こういう気持ちでございます。
  207. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だから、私が聞いておるのは、あなたが、概算要求でやったのだから、これはあるいは変わるかもしれぬ、それはそうだろう。それでいいと思う。だけれども、概算要求であっても、いわゆる概算要求ということは、その根拠があって概算要求をするのだから、まだ、この新法が通ってもいないのに予算だけは組んであるのだから、だから、事前調査をして、ある程度の根拠があって——ですから、この第一種の個人の住宅の補助ということは、防音工事をやるのだということは、もうわかっています。あるいは第二種は移転補償だ、第三種は緑地帯その他緩衡地帯をやるのだ、それは、もうおっしゃらぬでもわかっている。だから、そういうところは、この程度だ、あの程度だということで、大体の根拠があって、そして、こういう予算が組まれたのかということをお尋ねしたのです。  だから、それによってあなたは概算要求をされたのだ、だったら、大体どことどこにどれだけやるのだ、個人住宅ならば一戸百万円で百戸どことどこだ、——いま、あなたのおっしゃるようにWECPNLか、これによって調査した結果がこうだ、そういう根拠があって、これは、ずさんな予算じゃなくして、ほとんど決定的な、だいじょうぶだという予算かということを聞いているんですよ。それは多少の、流動的なあれはあるでしょう、いわゆる概算要求なんだからね。だけれども、まだ新法も通っていないのに、これを、あなたたちがつくっておられるから、よほどの自信があってつくっておられるのだろうから、それをお尋ねしているんだよ。
  208. 田代一正

    ○田代政府委員 特に、個人住宅防音とか特定施設調整交付金の根拠の問題かと思いますけれども、個人住宅の防音につきましては、これは運輸省とわが防衛施設庁でもって、数年がかりでいろいろなテストをやってきているわけです。たとえば入間基地におきまして、六つばかりの住宅を、たとえばRCの構造だとか木造だとか、いろいろな種類で六種ばかりの住宅をつくりまして、そこでテストをやりながら、どれだけの建設費がかかるかというような形でもってきたわけでございます。  そこで百戸というのは一体何ごとだと、こういうお話じゃないかと思うのですけれども、この百戸につきましては、残念ながら——まだ新しい、WECPNLという観念自身が、昨年の末の環境庁の基準にやっと登場したという程度で、非常に新しい概念でもございます。そこで、わが庁といたしましても、四十八年からこの測定にかかっているわけでございます。先生の御趣旨で申しますと、全国津々浦々まで全部測定しないと、予算要求するのはおかしいじゃないかという議論になると思うのですけれども、事柄はなかなかそうはいかない。こういった個人防音は、最近の基地周辺の問題から申しまして、やはり早くかからなければいけないということもございますので、やはりそういった測定と並行しながらこの予算措置を考えた、これが真相でございます。
  209. 徳安實藏

    徳安委員長 次回は、明十日金曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十三分散会