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1974-03-07 第72回国会 衆議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月七日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君   理事 加藤 陽三君 理事 小宮山重四郎君    理事 中山 正暉君 理事 野呂 恭一君    理事 服部 安司君 理事 上原 康助君    理事 大出  俊君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    竹中 修一君       旗野 進一君    藤尾 正行君       三塚  博君    吉永 治市君       吉田 法晴君    和田 貞夫君       木下 元二君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小坂徳三郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房管理室長   伊藤 廣一君         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    小林 哲一君         内閣総理大臣官         房参事官    平井 芳男君         警察庁警備局参         事官      赤木 泰二君         外務大臣官房儀         典官      野村 忠策君         労働省労政局労         働法規課長   寺園 成章君         建設大臣官房官         庁営繕部長   上山  勝君         自治大臣官房参         事官      栗田 幸雄君         自治省行政局振         興課長     田中 和夫君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   和田 貞夫君     中澤 茂一君   瀬長亀次郎君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     和田 貞夫君   不破 哲三君     瀬長亀次郎君     ————————————— 三月六日  外務省設置法の一部を改正する法律案(第七十  一回国会閣法第一四号)(参議院送付)  文部省設置法の一部を改正する法律案(第七十  一回国会閣法第一五号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一六号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田法晴君。
  3. 吉田法晴

    吉田委員 法案は二つの部分から成っております。一つ迎賓館に関する点、もう一つ同和対策協議会設置期限を五年間延長する点。そこで、迎賓館のことと同和対策について、限られた時間でございますけれども、順次お尋ねをいたしたいと思います。  先般、修理されつつある国会図書館あと建物を、現地について見せていただきました。たいへんりっぱなのに驚いたのですが、過去において迎賓館と称するものがあったと記憶をしております。それから、多少は聞いたところでありますが、この迎賓館使用目的として考えております国賓やあるいは国賓に準ずる賓客が、公賓がおいでになりましたときに、どういうぐあいにしておられましたのか、その施設あるいは取り扱い等について、外務省お尋ねをいたしたいと思います。
  4. 野村忠策

    野村説明員 お答え申し上げます。  過去におきましては、国賓等の外国の賓客日本に来られました際には、主として迎賓館という名前である民間ホテル、これはプリンス系ホテルだと承知いたしておりますが、このホテル、それから、あと帝国ホテルだとかホテル・ニューオータニ、ホテル・オークラ等におきまして、宿泊の便を供していただいた次第でございます。
  5. 吉田法晴

    吉田委員 吉田内閣時代に、目黒迎賓館という建物があり、その前には外務大臣公邸、あるいは総理大臣としての吉田さんも、その外務大臣公邸を使われたのかあるいは総理大臣公邸になったのか知りませんけれども、使っておられた。これは間違いない事実だと思います。私は、その後、迎賓館という名前で使われておりましたし、そこに何人かの国賓やあるいは公賓が泊まられたことも承知をしておりますから、実はあれは外務省かあるいは政府迎賓館かと思っておったのですが、そうではなさそうであります。そこで、その辺の——目黒公邸といいますかあるいは迎賓館というのは、実際にやはり国賓なり公賓迎賓館として使われたようでありますが、その関係と、現在の関係はどうなっておるか承りたい。
  6. 野村忠策

    野村説明員 ただいまお尋ねの、目黒にございます迎賓館と称するホテルは、昔、たしか朝香宮家所有になっておりまして、これがある期間吉田さんに使用を認めておりまして、それでその後……(吉田委員吉田さん個人ですか」と呼ぶ)いえ、政府が、個人ではございませんようです。それで、その後、この契約が解除されまして、その後は、民間ホテルとして、一応迎賓館という名前にはなっておりましたけれども民間ホテルとして使用されていたように記憶いたしております。それで、このホテルは、国賓警備等が非常にやりやすいという観点から、しばしば国賓宿泊の便に供していたように記憶いたしております。
  7. 吉田法晴

    吉田委員 説明をしていただいております方も、ずっと前から担当でおられるわけではないでしょうから、全部をあなたの責任としてお尋ねをするのは、多少酷かと思いますが、私は、目黒迎賓館があったということを記憶しておりましたから、あれを、政府迎賓館として転用された、所有権は別の問題にして、迎賓館として使用されたと実は理解をしたのです。  実際、承りますと、いまお話しのように、前には朝香宮邸であった。それを借り上げて、外務大臣公邸あるいは総理大臣公邸として使用した。朝香宮家とそれから外務省との間の使用契約ですか、借用契約を解除した後には、西武鉄道朝香宮から買い上げて、ホテル迎賓館として使用して今日に至っておる。なお、現在は閉館になっておるということであります。この西武鉄道、かつて衆議院議長をされた堤康次郎氏だと思いますが、西武鉄道朝香宮から買い上げたこの関係は、別にここで問題にすることはないと思いますけれども、いわば迎賓館として使っておられた。あるいはその中で、これは全部そこを使われたかどうかは知りませんけれども、この間に、モブツ大統領あるいはファイサル国王あるいはラザク首相あるいはカルロス殿下あるいはイタリアのアンドレオッチ首相、たくさんの国賓なり公賓が来られて、そのホテル迎賓館を使われた方も相当あると聞きます。  いまお話しのとおりに、あるいは赤坂プリンスホテルや、あるいはほかのプリンスホテルに泊まられたり、あるいは帝国ホテルを使われたりしたこともあるかもしれませんけれども国賓を迎え、公賓を迎えて泊めるというのは、これは外務省のお仕事、あるいは政府のなさることでありますが、迎賓館を建てるについて、まあホテル迎賓館であるのか、あるいはほかのホテルを使われるにしても、三十年から、あるいは暦年でいいますと、いま申し上げましたのは四十六年から四十八年に至る間でありますが、その間に迎賓施設として使われた、そのことと、いまの迎賓館をつくりたいという話とはどういう関係になるでしょうか、承りたい。  というのは、われわれは迎賓館として使われた、そして支障がなかったならば、あるいは支障があったならば、その段階国会相談があり、その上で迎賓館をつくりたいということで出発さるべきだったと思いますけれども、その辺があいまいでございますから、お尋ねをしておくのであります。
  8. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 吉田委員も、すでに御承知のことだと思いますが、このいきさつにつきましては、三十七年の十月に、池田総理時代に、迎賓館をつくる、そうしてまた、ちょっといまの御質問とはピンぼけになりますけれども白金迎賓館が適当か不適当かということについて、当時の池田総理から、次官会議で検討をするように発意があったようであります。そしてまた、新しくつくる場合の敷地あるいは規模等について、宮内庁の試案を求めたようでありますし、そうしたいきさつから、三十八年の五月に、赤坂御用地の西南すみに新しくつくるということを閣議決定をしております。  そうしたところから、この赤坂離宮——さらにその後に、いろいろと敷地問題等がございまして、三十八年以来いろいろと議論がなされて、旧赤坂離宮は、衆議院所管となっておって、これを迎賓館として使用することについて、総理府所管がえの手続がとられたのが、四十二年の七月十七日から二十六日の間でございました。さらに四十二年の七月の二十八日に閣議決定で、旧赤坂離宮を改修して迎賓館に充てることが決定され、さらに四十二年の八月には、臨時迎賓館関係閣僚協議会を設置することについての閣議決定がなされ、同月、同じく関係閣僚協議会が開催されて、迎賓館建設基本方針決定がなされた次第でございます。
  9. 吉田法晴

    吉田委員 そういたしますと、名前迎賓館だけれども、それは政府のものではなかった。そのつど、ホテル迎賓館あるいはその他のホテルを使っておったが、必ずしも十分ではないので、迎賓館をつくろうという議が昭和三十七年に起こって、それからいま御説明のような経緯をたどった、こういうことですね。  そこで、お尋ねいたしますが、そこのところがはっきりしなかったわけですが、だんだんしゃべてっいるうちに明らかになりました。そこで、次官会議なりあるいは関係閣僚会議はわかりますが国会に対しては、どういう手続をとられてきたのでしょうか、お尋ねいたします。
  10. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 これは、衆議院所管となっておりましたものを、迎賓館として使用することについて、総理府所管がえの手続が、四十二年の七月十七日から二十六日の間に行なわれたわけでございます。それで、これらの問題につきましては、所管がえの手続でございますので、この時点において、国会との関連が生まれたと私は了解しております。
  11. 吉田法晴

    吉田委員 所管がえの手続をされたということですが、迎賓館をつくるということについての国会の議決は、どういうぐあいに、何日どこで進められたか、あるいは国会承認がされたのか。所管がえといいますか、所有権を移すといいますか、先ほど宮内庁との協議云々でございましたが、宮内庁から国会図書館に使われたりいたしましたその使用関係は、ここでは問題ではございません。問題ではございませんが、迎賓館をつくるということを、国会承認を得て、自後三、四年にわたりまして、累計をいたしますと、先般承りますと、百億をこすようでありますが、その迎賓館をこういう規模でつくろうということは、いつ国会承認を得られたのですかと、こういうことをお尋ねしておるわけです。
  12. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 国会承認ということは、四十三年の国会において予算案スタートをしたという記録になっておりますので、その意味で、昭和四十二年の七月の閣議決定に基づきまして、旧赤坂離宮を改修して、迎賓館施設とすることがきまって、四十三年度からその予算についての国会の御審議をいただいておる、今日まで必要な経費を計上してまいりましたといういきさつになっておるわけでございます。
  13. 吉田法晴

    吉田委員 そこで、総務長官お尋ねをしたいのですけれども、四十二年の七月の閣議、これはわかります。それから四十三年の予算の中で、迎賓館をつくるという予算計上した。ところが、その当時、いまのような規模だとかあるいは内容だとか、そういうことの説明はあったのかもしれませんが、実際には関係者に承りますと、あまり具体的な質問がなかったから明らかにならなかっただけだ、こういうお話です。初め四十三年の予算のときには、ちょっと詳細を、いま手元に持っておりませんけれども、いまのような規模にすることについては、予算計上がなかったのだろうと思う。あるいは新しくつくられた日本式庭園建物、それは、そのときに審議する以外になかったと思うのですが、最初の機会には、おそらくそういうものはなかったろうと思う。  そうしますと、やはりいまから考えてみて、でき上がって、あるいは賛成するか反対するかしか残っておりませんが、幾らか意見があったとしても、もうでき上がったものについて、反対をしてこわせと言うわけにはまいりません。これは予算として計上をされただろうけれども、これを、やはり件名として、議案として、迎賓館をつくるということを、その当時の国会にかけるべきではなかったでしょうか。総務長官どう思われますか。
  14. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 閣議決定によってなされておりますけれども予算につきましては、四十三年度の予算から国会の御審議をいただいておるわけでございまして、おそらくその当時に、この概要等については、御説明を申し上げておったと私は思うのでございます。全く一切、あらゆる形における国会の議を経ずに——こうしたものが、その後も引き続いて予算をいただいて工事を進めておるわけでございますから、四十三年度の予算審議のときには、当然いろいろな面で、御審議があったものと私は思います。
  15. 吉田法晴

    吉田委員 四十三年度の予算、それから四十四年度、四十五年度と、これは今日まで工事は続いているのですし、だんだん最初規模よりも大きくなったようです。ですから予算計上されて、予算として承認されておることは、これは認めないわけではございません。しかし、内閣委員会にかかってまいりましたのは、いわば官制としての迎賓館の問題で、ここに、突如としてとは言いませんけれども、出てきた。いままで内閣委員会審議をされたということは聞かないのです。  そうしますと、四十二年の七月に閣議があって、四十三年に予算を、国会審議を求める際に、件名として、議案として出さるべきではなかったかということをお尋ねしているわけです。いかがでしょうか。
  16. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 吉田委員の御質問は、私も、そうしたことがなぜなされなかったのか、ちょっとわからない点でございますが、事務的な説明を私がする必要はないと思いますけれども、一応工事のほうはどんどん進んでいった、しかし、その迎賓館なるものを、内閣職能の中で扱うかどうかということについては、きわめて星雲のような状態に推移したのではないかと思います。そして、いよいよ建物が本年完成するということになって、あらためてこの迎賓館というものを、内閣職能の中でどこが担当するかというような問題が論議されて、そして、それを総理府所管しろということになったので、今回、設置法の改正をお願い申し上げたというふうに考えます。しかし、これは見方によれば、ものができてから、あと職制のほうも組織のほうも承認しろというような形は、私は、そう適当ではなかったと思います。  先般も委員会において、御質問もございましたのですが、こうした問題は、やはり建物をつくる時点において、むしろそれをどこでどうやって運営するかという問題まで含めて、一括して国会議論をしていただいてスタートすべきではなかったかというふうに私は考えております。
  17. 吉田法晴

    吉田委員 妥当な御見解が示されましたから、それで了承したいと思うのですが、やり方は、やはり政府優先といいますか、行政優先、そして予算承認を求めているからいいではないかということでどんどん進めて、その間に、全体的な討議というものがなされなかった。そこで今日、批評をしようにも批評のしようがないということになっております。こういうことは、再び繰り返さるべきではないという意味で、やはりはっきり妥当でなかった、最初から承認を求めるべきだったという言明をいただきたいと思います。  それに関連をして、実質的にそこのところをお尋ねしたいのですが、先ほど外務省から説明がありましたように、朝香官邸であったものを、外務大臣公邸として最初借り上げられた。それを、総理大臣を長らくやられましたから、総理大臣公邸として——これは吉田さん好みでしょう。吉田さん好みでしょうと思いますけれども、それを引き続いて使われる。そして二十九年には、朝香宮外務省との使用契約は解除されて、三十年に西武鉄道が買い上げている。あのプリンスホテルといわれるもので、ほとんど堤さんの西武鉄道に買い上げられておりますが、その買い方は、御承知のとおり、あの終戦の混乱期といいますか、宮家にそれぞれ融資をされたり、そして、その支払いができないので、公邸として買い上げてプリンスホテルにされた。  それの当否を言おうとは思いませんけれども、その段階でも、あそこが迎賓館として適当ならば、迎賓館としてどこを改造して、あるいは買い上げて使うべきかということがフリーに論議をされたと思うのです。今日では、元赤坂離宮国会図書館に、その国会図書館あと迎賓館にというのは、いまのお話でいきますと、佐藤総理のときですか……。最初朝香宮邸外務大臣公邸に使われたのは、吉田さんの個人的な嗜好も多分にあったようです。いわば行政府国会相談をしないで、あるいは国民代表相談をしないでやってまいりますと、個人嗜好だとかあるいは総理大臣大臣個人的な嗜好とかなんとかいうものが入る余地がありますだけに、それは、やはりちゃんとしなければならぬと、こう申し上げているわけであります。  それから、手続面でのそういう感想は、大体御承認いただきましたが、数年の経過を経て百億をこしておるようでありますが、既設のものを改造、使用するという点は、私どもも賛成をいたしますけれども、あるいは何人もそう反対はしないと思いますけれども、結果からして百億をこす予算をかけた、あるいはあの中心をなしますホールの絵だとかあるいはシャンデリヤだとかあるいは側壁だとか、こういうものを考えますと、国際的に見てみても、あの迎賓館として修理、復活をされたものは、一、二を争うといいますか、相当りっぱなものです。  そうしますと、百億の金があったら、いまの国民生活の中からいって、住宅にも困っておる国民がたくさんありますが、何万戸の家が建つだろうかという想像を、われわれ国民代表としてはついいたします。そうすると、そういう意見を述べることが国会としては事実上できなくなっている。あるいは、先ほどちょっと申しましたけれども、新たに日本式の食堂と庭園とをつくらなければならぬものかどうか。聞きますと、茶室は、専門家だそうですけれども、裏千家のくわしい方だということ。しかし、ああいうものを、日本式建物代表として私ども見るわけにいかぬと思う。あるいは庭園にいたしましても、ほんとう日本式なものかどうかということに多少疑問があると思うのです。どうしてあれだけのものを、新しくあそこにつくらなければならぬだろうかという問題も起こります。  これらの点については、事実上意見を述べる余地がありませんけれども個人的といいますか、あるいは総務長官としても、内容についてどう考えられますか、お伺いしたい。
  18. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほどの白金迎賓館というのは、ちょうど朝香宮の執事みたいなことをやっている中田虎一という人が、東京都の教育委員会の常田という文化課長に、このいきさつを述べた文書がございますが、ちょうどその当時、宮家のものが接収対象になっているのでまずいというので、外務大臣に頼んで、吉田さんが、それではというので、それを一応公邸に借りたというようないきさつが書いてございます。  これは、一つの歴史の中でのことでございますので、一言、その点について触れさせていただきたいと思いますが、これは何も、私、吉田さん個人が、ああいう非常に豪勢なものを趣味で持ったというふうには解釈したくないわけでございまして、接収をのがれるということの一つの方法としての外相公邸というふうにスタートはなったと聞いておるわけでございます。  それから、ただいまの和風別館でございますが、これも見てみますと、昭和四十二年、三年ごろには、和風別館をつくるかどうかについて、何度も協議が行なわれているように記録に載っております。御指摘のように、吉田委員は非常に御造詣の深い万でございますから、その和風別館のつくり方その他が、本物であるかどうかは、ちょっと私もわかりませんが、しかし、一応その議論の中の経過を見てみますと、迎賓館そのものの本体の赤坂離宮は、全く洋風でございます。したがって、日本的な零囲気を出すために、やはり別に和風のものをつくったほうがよろしいというような結論がるる出されておりますので、私は、そのような結果、議論の末、和風別館がつくられたというふうに了承しております。
  19. 吉田法晴

    吉田委員 こまかいことまで言おうとは思っておりませんけれども、おそらくいまの議論は、政府部内での議論でしょう。そうしますと、それが国会にかけられたら、国民の立場から是非善悪論議されただろう。総理個人とかあるいは総務長官個人でお考えになったことではないと思いますけれども政府の、総理あるいは外務大臣あるいは大臣クラス論議をされることと、国民サイドから見たあの迎賓館の中身というのとでは違うと思うのです。現に、私どもが見た感想は違います。それだけに問題を、初めから国会に投げかけて、国民代表承認を求めるということが必要なのではないか。  結果から見ても、あまりにもゴージャスです。あるいは初めは百億以上かけるということは考えられなかったのだろうと思いますけれども、今日でいえば、関係者に聞いても、国際的にいっても、あれだけゴージャスな迎賓館は、ほかにはあまり見当たらぬという話を聞きますだけに——それは国賓を迎えるんだから、できるだけいいのがいいにきまっておりますけれども、しかし、必ずしも貴族的な建物が、あるいは貴族的な趣味が喜ばれるわけでもないと思います。国と国とのつき合いは、前にも申し上げたことですけれどもほんとうにそれぞれの民族の対等なつき合い、それから上だけでなしに、国民国民との間の交流、ほんとう友好関係の樹立というものが指向されなければならぬのであって、かつてスカルノ大統領をもてなすときにも、私は問題があったと思いますけれどもスカルノ大統領を失脚させるような接待のしかたというものが、過去において日本で行なわれております。これは考えものだと思います。  そういう意味において、国賓迎賓のしかたというものにも、迎賓のあり方についても問題があり得ると思いますけれども、しかし、これは論議余地がないようになっていることについて、たいへん遺憾の意を表して——先ほど言われましたけれども、本来、国会承認を初めから求めておくべきだった。こういう点については、お認めいただきましたから、最後に、御答弁いただきたいけれども、こういう承認の求め方は、好ましくないことであります。今後、こういうことはしないことを、ひとつ御確約を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  20. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私の在任する限りにおいては、こういうような形のことはしないというふうに、はっきり申し上げることができます。
  21. 吉田法晴

    吉田委員 大体、私どもの言わんとするところを、御了解いただいたようですから、この程度にいたします。  次は、同和対策ですが、実は私も、同和対策という問題、部落解放という問題については、個人的にもだいぶ縁故を持っております。それから、基本問題については、先般、皇室経済法審議の際にお尋ねをいたしました。  同和対策審議会というもの、これは私もお願いをしてつくってもらった一人です。そこで、同対審の答申を完全に実施を願いたい、こういう運動を全国的に広げました。そして特別措置法ができました。特別措置法ができるときの経緯と、それから四党を代表して八木さんが質問をしました代表質問と、それから当時の佐藤総理関係大臣に感謝をした記録もあらためて読みました。  そして、きょうの質問に備えて、総理府やあるいは厚生省から来ていただきましたが、質問をするにあたって、いかに同和問題というものがむずかしいかということを、初めて、きのうあらためて知らされた。総務長官は、お育ちもお育ちですから、なかなかむずかしいと思います。御理解がしにくいと思うんですけれども、しかし担当大臣としては、ぜひあなたにほんとうに理解をしてもらって、本格的に取り組んでもらわなければならぬ。これは個人的にもですが、制度として、政府として、あるいは大臣として、取り組んでもらわなければならぬところですから、あらためて同和問題とその対策についてどう考えられておりますか、決意のほどをまず承りたいと思います。
  22. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 吉田委員の御指摘のとおり、この問題は非常にむずかしい。私は、まずその非常にむずかしい問題であるということを十分理解することから、この問題は取り組むべきだと考えます。簡単に、小手先の問題では解決しないということでございます。  したがいまして、この同和問題に対しては、やはり長い歴史の中で起こっておるところの日本社会におけるいろいろなひずみだと思うし、同時にまた、この問題を解決するのには、単に現時点までとられてきたような物的なと申しますか、施設、設備、そうしたような問題だけで解決するものではない。やはりこれは、教育の問題であるし、社会生活における平等の問題でもある、そうしたいろいろな問題を踏まえまして、むしろ物的な面についての措置というものは、過去においてある程度の成果はあがってきていると思いますけれども、問題は、もっと社会生活における平等ということ、しかし、これは日本国民全員の、あるいは地域社会に住む人々全員の理解と協力がなければ実現するものではない。それを、どうしてやるかということが、これからの非常な問題であると思いますし、同時に、そうした精神的な問題というものを、非常に重要なファクターとして考えて、今後は対処してまいりたいと思います。
  23. 吉田法晴

    吉田委員 同対審答申は、もちろんお読みをいただいたと思いますが、これは、いろいろな人に接触をしてみて、読んだだけではなかなかほんとうにおわかりをいただけるところまでは至らぬと思うんです。いま、一応お述べをいただきましたけれども、いまひずみと言われましたが、過去における厚生省を中心にしました同和対策は、おっしゃいましたように、ひずみを直すために、物的な施設、環境整備に中心を置きました。  ところが、いまや厚生省だけでなくて、政府全部で、あるいは政府と自治体を含んで、政治の全部の問題として、この問題に取り組んでいただいております。それだけ認識も広まったと思うんですけれども、それでもなお、結婚、就職あるいは教育の平等については、必ずしも認識は十分ではないように思います。  私は、全国行動をいたします際に、特にこの二、三回は、通産省担当におのずからなりました。おのずからなりましたが、政府大臣なりあるいは担当者に会っても、やはり問題は、ほんとうに認識させにくいということをつくづく、この何年かで感じてまいりました。それだけに、ほんとうにこの同和問題の中心は何なのか、これが原因については、いろいろ説がございますけれども、問題の中心はどこにあるのかということについては、いまの御説明だけではほんとうに核心に触れられておったとは思いませんが、重ねて、おそれ入りますけれども、お願いしたいと思います。
  24. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 これは、もう申すまでもなく、人権の問題である、そしてまた同時に、その人権というものは、自由ということだと私は理解するし、同時にまた、この自由が阻害をされているという歴史的な問題、これらについての非常に大きな社会的な問題だと私は理解しております。自由と同時に平等であるという、この平等が確保されておらないという現実に、私らは目をつぶってはならないというふうに思います。
  25. 吉田法晴

    吉田委員 人権の問題、自由、それから平等の問題あるいは社会的な問題だとおっしゃいますが、中には人種問題と間違える人もおります。しかし、答申にも書いてございますけれども、これは民族が違うわけでもございませんし、人種が違うわけでもございません。そして、それは人権、自由に関連をいたしますけれども、これは封建時代につくられました身分的な差別の問題が、その本質だと私どもは考えておりますが、いかがでしょうか。  そして、これは国際的に見ましても、一番——よその国のことを言って、たいへん恐縮ですけれども、もう十年以上になりますから、最近は多少違っておるかもしれませんけれども、インドにおいて、これも憲法上は身分差別がなくなっている、階級差別がなくなっていると思いますけれども、実際にはやはり階級差別の大きな残滓が残っていることは事実であります。日本の場合には憲法、明治の初めの太政官布告、そうして、その後の経過は答申にも書いてございます。日本の憲法では、思想、信条による差別あるいは貴族制度を廃止することによって、制度的なこういう差別はなくなっているはずであります、法律上は。しかし、なお実際的に身分差別がどういうぐあいに残っているか、その残り方については、お読みいただいたらわかると思いますが、人権あるいは自由、平等に関連をするその本質は何であるか、ということについては、私は、身分的な差別だと思いますが、長官はどう思われますか。重ねてお尋ねをいたします。
  26. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 市民的な権利とか自由というものが保障される、それが人間だと私は思っております。そうした問題がゆがめられて、職業選択の自由とかあるいは結婚の問題とか教育の機会均等とか住居の問題とか、そうしたことに今日なお問題が残されているというその現実を、私は目をつぶらないではっきり見詰めて対策を立てなければならないという考えでございます。
  27. 吉田法晴

    吉田委員 人権や自由やあるいは市民的な権利について差別がある、支障がある、そこで、それを除くためには、教育だとか就職だとかいった市民的な生活の自由の実質について保障する必要がある、これはそのとおりであります。そのとおりでありますが、その人権や自由における差別がなぜ起こってきたのか。それから、中にはそれは観念的なものである、差別観念だ、だから、教育を徹底すれば、その差別はなくなるというような意見がございますが、教育だけでは、思想だけではいかないものがあることも、答申は指摘をいたしております。その生活の実態、そして、その原因が何であるかということになりますと、一言の表現で言えば、旧身分的な差別だという以外にないのではないかとも思うのですが、その実態の、差別の根拠については、どういうぐあいにお考えになりますか。おそれ入りますが、重ねて伺います。
  28. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 吉田委員もよく御承知のように、日本の社会の発展というものの中の歴史をひもとけば、おのずからそうした封建時代もあるし、その前の時代もあるし、いろいろな世代を通ってまいりましたから、そのいつの時点にこうした問題が発生したかということは、私、つまびらかにいたしておりませんが、しかし今日のこの同和問題というものは、社会的、歴史的な人権問題というふうに私は考えておるものでございます。  いま御指摘のように、身分制度とおっしゃるわけでありますが、身分制度そのものといえども、これは、やはり社会的、歴史的な所産であるのでございまして、私は、身分制度そのものの可否を論じても、この同和問題の解決にはならぬ、しかし、そうしたものの積み上げの中に、今日の問題が残ってきたということは——これは一つの新しい日本の社会生活が、もっと平等と自由の中で繁栄をしていくということを、われわれは理念としておるものでありますから、そうした問題は解決する努力をすべきだ、真正面から取り組んで、すべきだというふうに理解をしております。
  29. 吉田法晴

    吉田委員 総務長官の答弁は、点数でいいますと、相当の点数をあげられると思うのですけれども、秀才的な答弁で、あまり実態は御存じないと見えるものだから、理解をされました程度で受け取っても、答弁としてはりっぱですけれども、もう少し血の通った認識をお願いしたいという意味で、先ほどからお尋ねをいたしたわけであります。  そこで、あまり原則問題をやってもしようがございませんが、実際はその認識から、ほんとうに血の通う認識から解決万策が生まれてくるから、若干の御質問をあえて申し上げたわけで、お許しをいただきたいと思います。  この同和対策問題が本格的に取り上げられてから、同対審答申とそれに基づきます特別措置法ができてから、予定をされました十年のすでに半ばに達しております。いままでの経験からしまして、このままでいきますと、ほんとうに同和問題、部落問題が解決するだろうか、こう私は思うから、ここであらためて取り上げておる。そして、いまのままでいったら、この十年の間に、ほんとうに法律が所期しました、答申が念願をいたしましたほんとうの解決ができないのではないかと実は危惧をいたします、正直に。  そして、その一番大きな原因は、法律ではあるいは口では、答弁では、そうおっしゃいますけれども、実際には国の計画というか、国の姿勢というものがあるかというと、私はないという気がします。それは全国的な調査もされました。それから数府県を対象にして精密調査もされました。しかし、法律に書いてございますが、国が責任を持って同和対策を進めるというならば、国がまず調査をやり、基本計画を持ち、そして国の基本政策を立てて、自治体と協力をして進める。自治体にはその住民の要望が反映をするでしょう。ところが、いまのやり方を見ておりますと、住民の、関係者の要求に基づいて市町村がまず立てる。ところが、市町村長の理解の程度に従って、市町村あるいは県の中にも著しいアンバランスがあります。これは、もう所管大臣として御存じだと思うのですが、相当のアンバランスがあります。そして自治体が進めます同和対策について、国がその裏づけをする、こういうのが実際の大勢ではないかと思うのです。  それでは、これだけの、何百年かかかりました問題を——それは予算も、年々ふえておることも知っております。ふえてはおりますけれども、予定をされた十年の間にほんとうに解決するかというと、なかなかだという感じが率直にいたします。それだけに、もう一ぺん国の態度といいますか、あるいは計画といいますか、再調査を一斉に、あるいは一斉にできなければ順次でもかまいませんけれども、精密調査もし、そして国の総合計画、長期計画を立てるべきではないかと思いますが、どう考えられますか、承ります。
  30. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 吉田委員の、このままいって十年たっても、たいしたことないじゃないかというような……(吉田委員「たいしたことないとは言いません。ほんとうに解決ができるか……」と呼ぶ)私は、やはり同じような危惧を持ちます。先ほど吉田委員は、私の答弁は、点数はやれるが心がないとおっしゃいましたが、私は、それは非常に不満でございます。私は、この問題は、きわめて重大な問題であるし、こういう問題が解決されて、初めて日本の社会がもっと平和で住みよいものになるというふうに思って、こうした問題を努力したい、その上にまた、いままでやってきたものを反省する意味もあって——物的の投資額については、吉田委員もおっしゃいましたように、相当の投資をやったということでございますが、問題は、さらに、先ほどから触れておりますように、心の問題をもっと大切にしなければならない。同時に、その心の問題は、一地域の住民の方々の心の問題であると同時に、日本人全体がこの問題を十分認識して、この長い歴史的な所産である問題を、もっと合理的に、もっとあたたかい気持ちで解決するという方向がとられなければならぬということは事実だと思います。  同時にまた、そうした面を補強する意味で、ちょっとお触れになりましたが、われわれは、四十九年度においては、なるべく早い時期に精密な調査をしていく。これは、いままでのように、物的なものは、大体四千億ないし五千億近い投資をすれば、まあまあというような試案が出ておりますが、それだけではいけないのであって、さらに心の問題や現実の生活面における困難な問題、いま吉田委員が御指摘されたような種々の問題についても、深く掘り下げて実態を把握して、同時に、同和対策協議会を、さらに五年間延長して大ぜいの方々の、有識者の御議論も承って、そして問題の解決の前進をはかりたいというふうに考えるものでございます。  ただ、御指摘のように国が何から何までやるべきだということは、私はちょっと考えられない。これは、もう明らかに国としては、全国民の理解と協力ということをとりたい、かちえたい。そのために同和白書も今回発表しておる。いままで、そういうことは触れないで通ってきたと私、思いますが、同和白書を出して国民の目に、この問題を十分に映じさせるという努力もしておりますけれども、問題は、やはり地域社会において、その地域地域で具体的に問題の処理に当たるべきが正当ではないか。そして国は、そうした活動に対しての財政的な援助や、あるいは総合的ないろいろな協力をしていくというたてまえで進むべきではなかろうかというふうに私は考えますが、いずれにいたしましても、同和対策室を今回つくらしていただいて、そして精密な調査を夏までに行なって、具体的な問題点を、もっとはっきりとした形でつかんでまいりたいというふうに考えるものでございます。
  31. 吉田法晴

    吉田委員 環境の整備については、ある程度、いまのことばで言いますと四千億といいますか、数千億もかければ、だんだんよくなっていく、それはそのとおりだと思います。ところが、心の問題といいますか、差別の根源について、ちょっとお触れになりましたが、そこは先ほどのような、御認識をただすことで進もうかと思いましたが、大臣もお触れになりましたから、もう一度ちょっとそこに返って、その問題について私の心配と、それからいわゆる狭義の同和対策以外に、差別の再生産という問題について、この間もちょっと触れましたけれども、もう一つ、それについて申し上げておきたいと思います。  それは、ほんとうの民主主義は、人の上に人をつくらず人の下に人をつくらぬという基本精神が実際に実現をされる、そういう意味においては、天皇制の問題も、あるいは軍国主義の問題も、私は、昔の明治憲法に返ってはならぬというのです。最近、国際的に日本の対外政策の問題が論議になりましたというか、批判をされました。あのときも、ちょっと触れましたけれども、実は一昨日も、在外公館の問題で外務大臣質問をしたのです。そうしたち、外務大臣は、先進国と開発途上国ということの比較をされました。あるいはまた、先進国、後進国という表現にしてもそうですが、私は、そういうのは国際的にも、民主主義の精神から言えば問題だと思うのです。  これは、この問題に関連をして申し上げるのだが、いわば国際的に日本は、アジアにおける先進国、そしてアジアの諸国は、後進国あるいは発達途上国、それに対して援助を与えればということになりますと、その援助のしかたも問題になる。援助のしかたについて、タンザン鉄道まであげてお話をしたのですが、これは国際的にも許されないことだと思います。あるいは国内的にも、いま問題にしておりますように、同じ人間の中で、日本人の中で人間以上のものがあってはならぬし、人間以下のものがあってもならぬ。これは御賛成をいただけると思いますが、いかがでしょうか。  ところが、実際にもう一つ問題なのは、経済政策の上で、あるいは労働政策の面で下請、孫請、そして、その上に日本の高度成長が進められておるのではないかということ、これは私一人の杞憂でしょうか。その問題と、それからこの同和問題というものは、私は関連があると思う。思いますだけに、いわば教育の機会均等、奨学金をやればいいじゃないかということでは、これだけでは片づかないものがある。そこのところは、どう考えられますか。総務長官、たいへん大事なところだと思いますので、心の問題とおっしゃいましたから、ちょっともとに返って恐縮ですが、お尋ねをいたします。
  32. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 外務大臣がどう言われたか、私、その場におりませんので、何ともそれは申し上げられることができないと思うのですが、やはり低開発国と言ったり、先進国と言ったり、一つの用語としてみんなが区別をしているということはあると思いますが、そういう見方がいいか悪いか、私は、やはりそういうことばを不用意に使ってはならないと思います。事実、社会生活そのものの中でも、そうした違いはどこのところにもあるわけでございます。ただ、それを先進国と言い、低開発国と言い、発展途上国ということを不用意に使っている、そういう心がまえが、やはり問題をいつも混乱させるもとになっていくように私も思います。  でございますから、そうした現実の区分と、そしてそれをどのように表現するかということ、そしてまた、現実の区分に対してどのようにそれを見ていくかということ、私は、そこに一つの考え方というものがあってしかるべきだと思います。
  33. 吉田法晴

    吉田委員 先ほど何もかにも国が再調査をして、基本計画を立てるべきではないかという点をお尋ねしたところが、調査の点については、四十九年度以降やることになっておるからという御説明がございました。五年間の実績を見ておりますと、自治体に案も立てさせて、そして自治体の案について三分の二の財政的裏づけをするというのが、実際のやり方のようだが、それでは、いまの基本問題、すべての根源を解決をするという点については、欠けるところがあるのではなかろうか。  何もかにも国がやらなければならぬということを、私が主張しているわけではありません。要求しているわけではありません。しかし国が基本的な計画を立てなければ、先ほど申し上げましたけれども、自治体の中のアンバランスというものは解決しにくいのではないか。あるいは首長によって、自治体の長、市町村長あるいは県知事の個人的な理解によって、うまくいっているところもあるけれども、いかないところもある。全体的に、基本問題の解決は、いわば国の基本計画として解決をするということであるなら、自治体まかせでないものがあるべきではなかろうかということ、このことをお尋ねしたのですが、この点について明確に御答弁がございませんでしたので、重ねて御答弁を願います。
  34. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 われわれは、国は、同対法やあるいは特別措置法の精神を十分に踏まえて、この問題に努力するということであると思いますが、いま御指摘のような問題が、各地域社会においてあるいは地方自治体においてあるというようなことも聞いてはおりますが、私は、やはりこの同和問題そのものが、まず第一義的には、地域社会における問題の解決でなければならないし、また同時に、地方自治体の中での解決を先行させるのが問題点の解決になると思う。国は、やはりそうした自治体の活動を、具体的に言うならば、三分の二の財政的な援助を繰り返し行ないながら、各自治体の活動をバックアップしていくということが一番いいのではないか。  ただ、御指摘のように、長期の計画をつくれというお話でございますが、長期計画となりますと、やはり物的な施設をどのようにしていくかということが一番把握しやすいわけでございます。しかし、いま問題になっている、この前期五カ年終わって、後期の五カ年に入った現時点における問題点というものは、それもやはりさることながら、同時に、先ほどから申し上げているような社会的ないろいろな自由や平等の制限の実態があるという、その問題と取り組まなければならないというふうに考えておるわけでございます。  そうしたものは、計画としての概論というものはできますが、しかし、それを計画にこまかく盛っていくということは、いささかできないわけでございまして、また同時に、あまり計画がスタティックと申しますか、固定的なものであってもならないというふうに考えておりますが、先ほどから申し上げているように精密調査をいたしまして、その実態を十分に把握すると同時に、対策協議会の活動を大いに促進しながら、計画化という意味合いを、もっと弾力性があり、かつ実際的に効果のあがるものを、できるならば後期五カ年についても、そのような考えを進めていってもいいのではないかと考えております。
  35. 吉田法晴

    吉田委員 どうも短時間に御理解を得て、基本方針について国でお立ていただくというのは、なかなかむずかしいと思いますが、多少別の表現をさせていただきます。  私は、松本治一郎先輩と一緒に中国に何度か参りました。中国にも、こういう問題はあったと思われますけれども、いわば農奴の時代から一ぺんに解放されて、前近代的な農民から近代的——まあ生産力が国際水準に追いつく過程にございますから、多少事情は違うと思います。しかし、これは身分問題ではございません。身分問題ではございませんが、中国の中における少数民族、それから水上生活者は、たいへん似ていると思います。水上生活者の生活改善問題というのよりも、私は解放と言ったほうが適当だと思いますが、その経過も見てきました。  それから、インドにはまだ残っております。これはホテルに参りまして、ホテルのお茶を世話してくれたり、いわば上の仕事をしている人と廊下をふき掃除している人たちとの間には、はっきり身分差別的な、取り扱いの差別がございます。そうして、このカースト解放の運動については大臣もおられます。大臣もおられますけれども、社会全体の中でやはり決定的に解決されつつあるかといいますと、なかなかのようであります。これはインドについての大きな問題だと思います。それからフランスは、そういう点は感心ですが、街頭で皮膚の黒い人とあるいは黄色い人と手を組んでいこうが、あるいはキスをしておろうが、プライベートの問題として何にも問題にしません。ところが、アメリカにも黒人問題がありますが、南アには深刻なそれ以上の問題があります。  これらの問題を考え合わせますと、いわば心の問題あるいは人権の問題以上の——いま考えられております、総務長官の頭の中にありますといいますか、あるいは各省でやっておられます同和対策の根源にさかのぼっての問題というのは、政治全体の問題として、もっとこれは広い、あるいは深い深刻な問題だと思います。それだけに、先ほど来は、いわば解釈の問題でお尋ねをいたしましたが、総務長官に基本計画の問題について、これは地域社会の問題だから地域にまかして、自治体にまかせて、三分の二の財政的な援助をすればいいという問題ではないということだけは、ぜひ御認識をいただきたいし、基本的に問題解決の方向については政府が出す以外にない、これは、ぜひそう決意もし、体制を整えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  36. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 全般問題についての政府の努力は、これは決して否定いたしませんし、またそれを促進したい。しかし地域の実際の村や町や、そうしたところの問題については、やはり第一義的にその自治体の活動に負うところを、それを大いに援助していくこと、それが根本問題への解決の大きな足がかりになるので、そうした積み上げをしていくべきではないか。  これは、いまもあなたがおっしゃいましたように、インドや中国やあるいはイギリス、アメリカの問題、そうしたような問題が、はたして政府の音頭だけで動いているかというと、私は、そうは思わないのです。やはりこれは、地域の人たちの理解と協力というものがほんとうに実って、初めてそこに新しい解決が生まれていると私は思います。音頭をとることは、いと簡単だと思いますが、しかし、それはから念仏に終わるであろうというふうにも思います。  同時に、そうしたことの弊を避けながら、しかも公正で、みんなに理解できるような政策というものを得るために、単に役所の機構だけの知恵ややり方だけではいけないのでありまして、先輩諸氏が、はしなくも同和対策協議会というようなものをつくってくだすっておりますから、私は、ここに集まる自由な民間の発想を持つ方々の御意見を大いにそこで出していただいて、それを、われわれは重要な参考として政策をきめていくという体制を進めてまいりたいと思います。
  37. 吉田法晴

    吉田委員 役所や機構だけで片づく問題ではないというのは、お話のとおりです。しかし国民の協力というのは、あるいは国民の中における差別の絶滅あるいは社会生活における差別を根絶するということは、地域の協力なくしてはという表現では、これはないと思うのです。ですから、国がこの同和問題について、基本的に責任を持つというのは、政府が持つというのは、基本的な方向について、基本的な政策を進める点については政府が責任を持っていただくべきではなかろうか。それは、同対審やあるいは、いまでいいますと協議会なら協議会の協力を得るについては間違いではございません。しかも環境整備について、あるいは施策の具体案について、それが地域の協力なしにはできぬことは、私も否定はいたしません。否定はいたしませんが、差別をほんとうになくするために国の基本計画が立っておるか、これはまあ、同対審に出ているではないかと言われれば、それまでの話でありますが、同対審のほんとうの精神それ自身も、各省交渉をしておりますと、それぞれの人たちが全部身につけておられるかというと、なかなかそうではないことにぶち当たりますだけに、基本計画については、もう一ぺん再検討を願って、それが政府の全体制として確立されることを求める以外にないではなかろうかという意味お尋ねをしたわけであります。  そういう意味では、具体的に言いますと、内閣審議室の拡充なり、あるいはお話がございましたけれども、各省担当の担当官等も、地方の計画を受けてこれを認定するかせぬかということでなくて、もっと積極的に部落とも接触をし、あるいは自主的な組織であります部落解放同盟との協力のもとに行政を進められるということが必要だと考えますが、基本精神とあわせて、具体的な審議室なりあるいはその姿勢について、各省の担当官の姿勢について御所見を伺いたいと思います。
  38. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 御満足いただける答弁ではないかもしれませんが、各国家公務員や地方公務員の方々には、この同和問題についての理解を深める研修会等を非常にひんぱんに開いております。また同時に、私、就任以来、六十一国会の当委員会における八木一男委員の御発言、この同和問題に対する長い苦闘の末にできた特別措置法、こうした問題についても、八木委員の御発言を繰り返し私は拝読をしております。当時の佐藤総理の答弁等につきましても、珍しい盛り上がりの中でこれが決定されたという歴史を深く心にとめて、今後は努力してまいりたいと考えております。
  39. 吉田法晴

    吉田委員 協議会の勧告、同対審の答申の中に、自主的な組織と自主的な努力との協力なしに真の同和問題の解決はないという意味のことがございますが、部落大衆の自主的な組織としては、私は部落解放同盟しかないと思うのです。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 同対審の答申の経過の中にもそう書いてございますが、現在は同和会とかあるいは部落解放同盟について批判的な部分の人たちが別に組織を持とうとしたりしております。この同和対策を、自主的な組織との協力のもとに、あるいは部落民の自主的な努力と協力とで進めるということが同対協の勧告の中にもございますが、これは、たいへん大事なことだと思うのですが、総務長官としては、どういうぐあいに考えられますか。大事なことですから、御所見を伺いたい。
  40. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、やはりこの問題は、地域社会に住んでいる方々の全般の理解と協力の中で進められるのが本筋でありまして、そうした方向を助成し、助長していくということのために、予算措置をし、単価を改定し、いろいろな施策を補助的に行なっていくべきだと思います。あくまでその地域社会の方々の全体の理解と協力ということを前提にして、問題の処理に当たってまいりたいと考えます。
  41. 吉田法晴

    吉田委員 地域社会全体の理解と協力といわれますと、はっきりしないのですが、四十六年八月十日付の同和対策協議会会長堀木鎌三氏名での、総理大臣と各省大臣あての「同和行政推進上の当面の諸問題について」という中に「同和行政は、地区住民の創意による自主的運動と緊密な連けいを保って、これを助長発展せしめるよう行なわなければならない」云々と書いてございます。  そのことと関連をいたしますが、いまの地域社会に住む人の全体的な理解、協力云々という話になりますと、いささかぼけるところがございますが、重ねてもう少し具体的にお答えを願いたいと思います。
  42. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、ただいま私の申し上げましたような範囲で、吉田委員の御了解を得たいと思うのでございます。  それで、私といたしましては、この次官通達そのものも、そうした精神の中で出されておるというふうに考えておるわけでございます。
  43. 吉田法晴

    吉田委員 問題の所在は、総務長官としては、知っておられると思うのですけれども、過去においては、これは町村長が、全国で幾つか、五つあるいは十になったかならぬかと思いますけれども、幾つかのモデル地区を設けて、そして、その地域をまず改善しようという段階がございました。そういうときには、いま言われるように、地域住民の全体の云々ということがいわれるかと思いますが、ところが、モデル地区を設けてそこだけを云々というのは、それは、やはり同和対策としてはおくれた段階のことでしょう。政府として、国と地方自治体の長とが、責任を持って同和対策を推進するということになったら、これは、その間にアンバランスが生じてもいかぬし、いわば全体の国民の間における部落差別の実態をなくすためには、おくれているところ、あるいは落ち込んでいるところを引き上げるためには、環境だけではなくて、就職やあるいは教育やその他の点について、万般について引き上げる措置をしなければならぬということで、御努力を願っておるのだと思います。  そこで、同和行政を同対審の答申に基づいて進められるにあたって、関係者との間はどうなるべきかという問題について、四十六年、同和対策協議会の会長名で「地区住民の創意による自主的運動と緊密な連けいを保って、これを助長発展せしめるよう行なわなければならない」と書いてございますのが、現実にはそうなっているところもあるし、そうなっていないところもあったりいたしますものですから、重ねてお尋ねをするわけでございます。  それじゃ、もっと申し上げましょうか……。これは私の住んでおります北九州等においても、だんだん進んでまいりますと、部落の中で、あるいは部落の周辺で道をだんだんよくしていきます。そうすると、組織に入っておろうが入っておるまいが、その道路は途中で切るわけにいかぬから、そこで部落の中での関係も、あるいは部落の周辺との関係も出てまいるわけです。同和対策を進めるについては、その自主的な組織である解放同盟との協力のもとに進めるという基本原則があり、そして、これは同和対策審議会をつくってもらうについても、あるいは特別措置法をつくってもらうについても、同対審の答申なり、あるいは特別措置法を完全に進める上においても、自主的な組織と密接な連係を保って云々ということにならざるを得ないと思うのですが、どうですかということをお尋ねしている。いかがですか。
  44. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 それは、一義的に申しますと、行政の面だけを申し上げるならば、やはり行政は公平性ということに立脚しなければならぬと思います。そうした意味合いと同時に、私は、特別措置法の三条、四条というようなことが、やはり今後の同和対策においても、現実の行政の面においても十分生かされていかなければならないと考えておるものでございますが、同時に、地域における、各自治体におけるそれぞれの方々のいろいろな活動というようなものが、自主的にそれが自治体を動かしていくというようなものであるならば、そうした運動は、それがどうであっても、われわれは拒否するものではないし、自治体がそのような行動の中で決定したものについては、われわれは協力を惜しまないという姿勢で、公平に進んでまいりたいと考えております。
  45. 吉田法晴

    吉田委員 それぞれいろいろの活動があるが、私が尋ねておりますのは、ここに書いてあります「自主的運動と緊密な連係を保って、これを助長発展せしめるよう行なわなければならない」、この自主的な運動というのは、部落解放同盟以外にないではないかということを端的にお尋ねをしておるわけであります。それとの協力のもとに、地方における、自治体における行政についても、その密接な連係のもとに進められることが、同和対策協議会から出されました要請文の趣旨に従うものではないかということをお尋ねしておるのです。端的にお答えを願います。
  46. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 自主的ということは、われわれがそれを判断するものではないと考えます。地域自治体の方々が、それが自主的な運動であると思われれば、それでよいのではないでしょうか。政府のほうが、あるいは総務長官として、それが自主的であるとかないとかいうことを決定する力は、また考えは私はございません。
  47. 吉田法晴

    吉田委員 地方の判断は、地方の自治体にまかせるという点はわかります。わかりますが、私は、この解放運動の長い歴史にも関連をしてまいりましたが、法律ができて国が同和対策について責任を持つ、これは何べんも繰り返して言われておりますし、答申の中にも、それから、その後の協議会の、いわばこれは何といいますか、政府に対する意見書等にも書いてございます。私は、一年に一度か二度、同盟から参りまして、政府に要請をするときに、これは問題の重要性にかんがみて、閣僚が会ってくださるということも了解をしてまいりました。しかし、法律ができてからは、同和対策について国が責任を持つと書いてあるところに、それぞれの各省の大臣にしても、あるいは皆さんにしても、お会いをいただける根拠があると私は思っております。  自主的な判断、政府が判断をすることと、それから自治体が判断することとは必ずしも一つではない。政府の判断によって拘束をしようとは思わぬという話ですけれども、部落の代表が、同盟の組織によって政府にその要望を伝えるときにお会いをいただけるのは、自主的な組織と協力で同和対策を進めようという法律のたてまえがあるからこそ、お会いをいただけるのじゃないでしょうか。それを、団体交渉権があるとかないとかいうことは別にして、私は、法的な責任に基づいてお会いいただけるし、また、その要望を聞いていただけると思うのですが、それはどうなんですか。
  48. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 もうすでに私も二度ほど、皆さんにお目にかかっております。おいでいただければ、私個人は、いつでもお目にかかっております。それですから、それが自主的なものであるかないかということとは別に、私に会って意見を申し述べたいとおっしゃる方とは、お目にかかっております。それで、いまの吉田委員の御質問は、どういう点をおただしになりたいのか、それを、差別といいますか、区分して、こちらに会う、こちらに会わないというようなことをお尋ねになっているのかどうか、ちょっと私も、御質問のお気持ちはわかるような気がいたしますけれども、私は、もうすでに二度、三度、就任以来、それぞれおいでいただいた方々とは、お目にかかってお話をいたしております。
  49. 吉田法晴

    吉田委員 あとの時間もございますから、適当なところで切りたいと思うのですけれども、なかなか切れないでたいへん恐縮ですが、いわばこの法律ができてから、お会いになるかどうかということは、任意的な問題ではなくなっているのではないですか。私は、お会いをしておりますと言われるけれども、いわゆる自主的な組織の判断は、自主的な運動であるかどうかという判断は、それぞれにまかせればいいことであって、それで自治体のそれそれの判断にまかせる——総理府が判断をするから云々ということではなくて、これは法の成立のたてまえからいって、解放同盟を自主的な組織として、協力すべき組織として法上認められたからお会いになるのであって、任意に、小坂総務長官が御理解があるから、そこで会っていただけるものだとは私は思いませんが、いかがですか。それは個人的な解釈の問題ではないと思います。
  50. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 そうした面会というか、コミュニケーションをとりたいという御希望があれば、それぞれ担当者がお目にかかるのは、あたりまえのことだと思います。
  51. 吉田法晴

    吉田委員 コミュニケーションあるいはお会いになることが、個人の任意的な問題ですか。自主的な組織との協力云々という点は、法の精神でもあると思うのです。同対審の中に書いてありますこと、あるいは法律のたてまえ——法律をつくるのはつくったけれども、部落の代表と会うことは、それは任意なことでしょうか。そうじゃないでしょう。ですから、小坂個人の解釈でなくて、私は、政府の解釈として、この問題についてははっきりしていただきたいと思うのです。
  52. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私に厳格な法律的なことをお尋ねいただいても、ちょっと困ってしまっているのですが、また後ほどよく検討してからお答えをさしていただきたいと思います。
  53. 吉田法晴

    吉田委員 それじゃ、別の機会にすることとしして、お尋ねをしたいと思うことを幾つかあげて終わりたいと思います。御答弁を一括してお願いします。  まあ、同対審の答申あるいは法の精神を認めていただいているようですが、具体的には、先ほど申し上げましたけれども内閣審議室の拡充と、それから研修はしているというお話がございましたけれども、実際に各担当者が生活の実態を知って、その中に入って協力をするという姿勢が足らぬように思いますが、それらの点について改善をすべきものがあるのではないかと考えますが、どう考えますか。  それから、同和対策協議会の設置は、期限がございますが、その同和対策協議会を延長する意思はおありになるかどうか。  それから、基本計画を立てるべきではないか云々ということを申し上げましたが、実際には自治体の施策について三分の二の財政的な援助をされておりますけれども、自治体を通じてこういうことをやりたいということについて、それが同和対策事業であるかどうかの認定という一つの関門があります。この認定が、選別をしておりますだけに、必ずしも十分な施策が——それぞれの自治体では、基本計画に従って進められないで、若干の時間もかかっておりますが、自治体の基本計画を認められるならば、その基本計画を推進するについての国の認定は、そのすべてについてなさるべきではないかと考えますが、どうでしょうか。  それから最後に申し上げますが、お気持ちを聞いておりますと、やはり歴史的な経過が十分おわかりにならないで、何百年かほったらかされておる。これは私の経験を申し上げます。北九州市のことですが、私のときになりまして、同和対策で上水道を引きました。それで小倉市になって何年になるんですかと聞きましたら、三十何年目でございますという。ですから、徳川の初めから計算をいたしますと、その前からの歴史もあると思いますけれども、何百年という間、行政の恩恵を受けないでほってこられたわけでございます。金額としては、政府としてはだんだんふやしていったと思われますが、生活の全般について予算計上すること、あるいは国の予算計上するということになると、ふやしていただいてはおりますけれども、やはりもっと画期的に予算をふやし、あるいは事業の認定をしていただかなければならぬと思います。その点については、同和対策を進めるについて、基本精神において十分な決意が必要だ、あるいは援助をしたい、こういう御答弁がいただきたいところでありますが、いかがなものでしょうか、それぞれお尋ねいたします。
  54. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 第一点の審議室を拡充する考えはないかということでございますが、今回、四十九年度から同和対策室をつくりまして、長以下十名の組織をつくりまして、後期五カ年計画の実施について十分の努力を払ってまいりたいと考えております。  それから、第二点の同和協議会の存続のことでございますが、今回の総理府設置法の改正にもお願い申し上げているとおり、さらに五カ年の延長を今回お願いを申し上げておるわけでございまして、ますます協議会の御協力と政策の推進にお働きをいただきたいというふうに考えております。  それから、各省で現在行なっております同対問題施策についての認定の判断でございますが、これは各省それぞれその判断を、地方自治体と協議の上きめておる実情でございまして、そうした協議の結果の認定がなされておる、これを変えることは、いまのところは考えておりません。  それからもう一つは、私が歴史的な事実について、きわめて理解が薄いということでございまして、上水道の例をお引きいただきましたが、そうした具体的な実例がございましたら、どうかひとつ、私のほうにどんどんとお話をいただければ、その限りにおいての行動をとってまいりたいと思っております。
  55. 吉田法晴

    吉田委員 それでは、また別の機会を期しまして、これで終わります。
  56. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 上原康助君。
  57. 上原康助

    ○上原委員 予定の時間がかなり狂ってしまいましたので、分科会のこともありますから、私も簡単に同和問題を二、三点、別の件でお尋ねさしていただきたいと思います。  すでに同僚先輩委員のほうから、この今回出されました同和対策協議会設置に伴う法律の改正についてのいろいろな質問なりはあったと思いますので、あまり重複はさせたくございません。  そこで、若干同じ質問になって、恐縮する点もあるかと思うのですが、今日まで同和対策を、政府特別措置法を制定されて、十カ年計画でいろいろ総体的な対策を進めてこられた。すでに前期五カ年の年期は過ぎようとしております。もういよいよ後期の計画に着手しなければいけない、そういうことも踏まえて、対策室の強化なりあるいは予算面の充実などを、政府としてもお考えになったと思うのですが、前期五カ年の同和対策といいますか、総合的な政策を進めてくる過程で、どういう面に最も欠陥があったのか、また、どういう面をより充実させ、今後、後期五カ年の施策の中に取り入れていかれようとしているのか、そういった基本的な面といいますか、その点を、これは事務当局からでもけっこうですから、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  58. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほども吉田委員にお答え申し上げまして、多少重複してしまうかもしれませんが、前期五カ年の中におきましては、ある程度物的な施設、設備、そうしたものにつきましては、計画は順調に進んだと考えます。ただ、後期五カ年に入るにあたりまして、われわれが現在反省しております問題は、この長い歴史的な所産であるところの同和問題が、たとえば就職とかあるいは結婚とか住宅の問題とか、いろいろな面でなお問題が残されておって、要するに、この問題は、物的の問題であると同時に、心の問題、精神的な問題を、ぜひ同和問題の政策の前進の大きな柱にしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  そうした意味合いにおきまして、これからは、そうした物的なものだけでなしに、もっと心の問題としてこの問題を取り上げ、同時に、その心の問題として取り上げることの背景には、国民全体が、この問題に対して深い理解を持つということを、大きく推進していかなければならないというふうに考えます。
  59. 上原康助

    ○上原委員 前期五カ年の計画を推進してこられて、物的な面、環境面とかあるいは就職の面、その他いろいろございますけれども、そういうことについては、かなり推進されてきたと御判断をしておられる。しかし反面、差別の根源といいますか、同じ日本国民であり、また同一民族でありながら、歴史的にも非常な差別をしいられてきた、そういった背景なり、政治的、行政的な面に対する根本的な対策というものが、まだ残されているんじゃないか。そしてこれを、後期五カ年においては、より積極的に推進をしていきたいというお考えのように受け取るわけです。  そこで、そういった精神的な差別あるいは精神的な被圧迫感といいますか、そういう点を克服さしていく、それが同和対策特別措置法のまた精神でもあると思うのです。したがって、特別措置法は、やはり憲法の理念というものを正しく踏んまえて、推進をしていかなければいけないということがうたってあると思うのです。  そこで、この部落解放問題、同和対策というものは、やはり日本国の戦後の平和憲法というものを、政府が、もちろんこの同和問題だけに限るわけじゃありませんが、憲法認識というものを、行政の面でも、政治の面でも、もっとより明確にする、より具体化をしていく、そのことが一番大事じゃないかという気がするわけです。  そういう面で、これは長官のほうからお答えいただきたいのですが、憲法の精神というものをどう理解しておられるのか。いま長官がおっしゃったように、精神的な面を、個々にいろいろ直して——直すというよりも改善をしていく、あるいは差別感を取り除くということには、もちろん先ほど来、いろいろの御議論もありますように、地方自治体やあるいはその該当者の努力というものも必要であるということは、私は否定はしません。しかし、なぜこういった差別問題が出てきたかという歴史的な背景、また同和対策事業特別措置法が制定されたその理由等を考えてみました場合に、差別をなくしていくということは、先ほどもありましたが、人間の平等性、差別をなくしていくその理念というものが、社会的にも、行政面においても、政治の面においても、あらゆる分野で確立をされて、初めて私は根本的な解決になると思うのです。  そういう意味で、憲法問題とのかかわり合いで、長官はどういうふうにお考えになっているか、御見解をいただきたいと思います。
  60. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、現在の憲法の掲げるところの各条項に忠実に従って行動しているということは、これは申し上げるまでもないことでございます。と同時に、こうした問題を、やはり第一義的には地域社会においてなかなかつみ取る段階に至っておらないのも現実だと思います。そこに一つ、私が先ほど申し上げた心の問題と申しますか、そうしたことを指摘を申し上げている理由がございますが、同時に、やはりこの地域社会においてのそうした問題が根強く解決されないままでおるということは、非常に重要なことでございまして、特別措置法にもございますように、これは全国民の問題なんだ、同時に、全国民の協力と理解が必要なんだということをはっきりと出されておるし、同時にまた、そうしたことを推進することは、国としての、あるいは政府としての重要な役割りなんだということが指摘されているわけであります。私は、そうした意味合いにおいて、国民全体がもっと大きな理解をこの問題に持っていくということ、それが、また同時に、社会の進歩につながるのだということを、もっと大ぜいの方々に理解してもらうような、そうした努力をしてまいりたい。その一つのきっかけとして、先般、同和白書というものも出して、これが広く大衆の目に触れ、同時に、この問題に対する理解を深めるならばというふうに考えておるわけでありますが、やはりこうしたことが、基本的な人権としての問題に対処しての解決を求める一つの大きな手がかりと私は現在考えております。
  61. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁は、一般論としては了解できるわけです。先ほど申し上げましたように、憲法を行政の中に取り入れる、あるいは政治の中に取り入れるということは、必ずしも同和問題だけに限って私は申し上げているわけではありませんけれども、最近のいろいろな政府の考え方あるいは動き等を見てみました場合に、憲法の精神ということ、あるいは平和主義、人権擁護、そういった最も根幹をなす面が、ややもすると否定をされる危険性なきにしもあらず。杞憂であれば、けっこうなんですが、そうは受け取れ得ない面もしばしば出てきているわけですね。先般も議論されました象徴天皇制の問題にしても、いろいろな御意見があります。したがって、人間社会の差別を、集落的にもあるいは集団的にもなくしていく、もちろん、それは社会全体の努力ということ、それぞれの地方自治体で果たしていかなければいかない役割りであるということは、十分理解いたしますが、国の行政、政治の権力を握る側が、どういう憲法認識で、あるいはどういう行政姿勢で、こういった差別、不平等、不公正というものを解決していくか、そのことを正しく国民全体に理解をさしていくかというたゆまぬ努力というものが欠けた場合は、私は、部落解放問題、いわゆる同和対策問題にしましても——確かに解放同盟や、あるいはいろいろな今日までこの運動を根強く進めてこられた方々の努力によって、財政面その他いろいろな面で前進はしてきております。  もちろん、補助金を与えてしまえば、それでいいというお考えではないかもしれませんが、また環境整備を幾ぶんやっていけば、差別というものがなくなるということにはならないと思うんですが——いま長官がお述べになったように、憲法の精神といいますか、それを正しく行政や政治の中に取り入れていく姿勢で今日までやってこられ、またやっていかれる、そうであるならば、この同和対策問題だけに限りませんが、政府は、もう——憲法記念日というのも、われわれあったような気がするわけです。しかし全然、そういう国の立場での平和憲法——まあ必ず平和をつけなくてもいいわけです、もしその面に抵抗があれば。しかし憲法を正しく国民に理解させる、そういう意味で同和問題、差別問題をなくしていく、人間の平等性、平和主義というものを、もっと国民全体のものにしていくということであるならば、当然、憲法を、祝うとかそういうことばは別にいたしましても、一つ政府の行事として、五月三日の憲法記念日というものを、もっと正しい意味国民にPRをしていく姿勢があってしかるべきじゃないかと思うのです。   〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕  しかし残念ながら、先ほど申し上げましたように、そのことが、私のいろいろ聞いた限りでは、昭和二十六年ごろまでは、そういう考えもあったようですが、その後全然ない。そこにも、歴史の変遷といえば、それまでかもしれませんが、あまりにも消極的な面がある。それが、いろいろな面に災いをしてきているんじゃないかという気がするのですが、その点については、長官はどういうお考えを持っておられるか、承りたいと思います。
  62. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、現在の政府の姿勢の中で、現行の憲法を無視するようなことはないと思います。また歴代の政治の中におきましても、また同時に、社会生活全般を見ましても、この同和問題という非常に不幸な事態は別といたしましても、全般として憲法というものが、国民生活の日常生活の中に十分とけ込んできておると私は思います。そういう意味で、いま憲法が無視されておるのではないかというような危惧の念を表明されましたが、私は、はっきり申し上げれば、そうしたことはないというふうに申し上げたいと思います。
  63. 上原康助

    ○上原委員 後段のほうにはお答えにならなかったわけですが、確かにそういう御答弁になるであろうと私も思いつつ、お尋ねをしているのですが、憲法をもっと国民にこうすんなりと——もちろん国民の間に、いろいろ憲法に対しても理解のしかたの違い、あるいは意見が異なる面も若干あると思うのです。しかし大半の国民は、いまの憲法をより大事にすべきである、憲法の精神というものを、政治や行政の中に正しく受け入れるべきだということが私は圧倒的だと思うのです。  そういう意味で、憲法記念日というようなことを、復活ということになりますか、あるいはそういう憲法をより国民にPRをしていく、理解をさしていくという意味で、何らか憲法記念日的なものを、あらためて国の立場で、政府の立場でやるというお考えは全然ないんですか。そういう面を通して初めて、やはりこういった部落解放問題、同和対策というようなことも、先ほどからおっしゃっている国民全体の認識の上で解決をしていく。そのことが、精神的な面においても差別をなくしていく、人間の平等性をより確立していくということにつながるんじゃないかという気がするわけですが、その点についてのお答えがなかったので、もしよろしければ、お聞かせをいただきたいと思います。
  64. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いまのお話でございますが、私は、人間だれでも自由であり、かつ平等でありたい、これは、もう憲法のいま示しておることで、だれも異存がない。しかし、いろいろな点について、いまあなたもおっしゃいましたように、多少意見があるというのも事実でございます。また同時に、この憲法そのものを、いかにもわれわれが全く無視しているような言い方をする方もおるので、やはりその点については、なかなかいまここで私は答弁が苦しいわけでございます。  そうしたいろいろな現実を踏まえながらも、祝日としてわれわれは憲法記念日を設定しておるわけです。そのときに個々の国民が、それぞれの自由な立場に基づいて、その祝日としての中で行事をやることを、われわれは一向にそれをとめておらないわけでありまして、そうした面から言うならば、これを国がきめて、何かお祝いごとをするということ自体も、むしろまた一種の強制になる。やはりそれぞれの考え方で、それぞれのグループが、あるいは個人が、憲法ができたということを、もう一回胸の中に思い起こすということは、自由にやっていただいているわけでございまして、そうしたわれわれの姿勢であることを御了解いただきたいと思います。
  65. 上原康助

    ○上原委員 この点は、これ以上突っ込んで議論しても、いまおっしゃるような言い合いといいますか、見解の相違ということで片づけられても困ると思いますので、これ以上は触れたくないわけですが、私は、確かにいま長官がおっしゃるように、自由であれ平等であれ、それぞれの主張があってしかるべきだし、また、それが民主主義の原理でもあるわけですから、そこを否定しようとは思いません。しかし、なぜ現在の憲法を私たちが大事にしていかなければいけないか。憲法の精神というものを、正しく国民全体に理解をさしていくという意味で、憲法を根本的に否定をするという立場で行政を考える、あるいは政治を考える、その中からまた新たな差別というものが生まれていく、そういうあり方というものは、憲法の精神から逸脱をするものだと思うわけですね。  国の基本法である憲法というものが、どう行政や政治の中に社会全般に正しく受け入れられるといいますか、導入されるかによって、このような差別の問題なりいろいろな点がなくなって解決をしていける、そういう立場であるならば、いま長官がおっしゃるような、消極的ないろいろな意見があるから、政府の立場でそういうことをすると、かえってまた複雑な問題をかもし出すというようなこと自体に、若干ひっかかりを感ずるわけですが、いま申し上げたようなことを踏まえて、この同和対策というものを、差別をなくして人間の平等性というものをより確立をしていくということを、行政の中でやっていかれようとするならば、もう少しそういった面も、明確な方針を確立していくべきじゃないのか、こういう気がいたします。  そこで、先ほども四十九年度中に実態調査を行なって、後期五カ年の計画を立てるという御答弁でした。そして、この後期五カ年の対策の中で、精神面をもっと充実さしていくということに力点を置きたいということですが、ちょっとばく然としているわけですね。後期五カ年は一体どういう計画で、また年次的な予算の面はどういうような方向で確立をしていくのか、その点についても、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  66. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げましたように、この計画化ということは、特に精神面の問題、就職の自由あるいは就業の自由とか、あるいはまた結婚の自由とか、そうした問題については、なかなか計量的には出せないから、そうした問題については、もう繰り返し申し上げておりますように、特別措置法の第一条の「日本国憲法の理念にのっとり」ということ、これは、私ら決して忘れているわけではございません。同時にまた、三条、四条における全国民の理解と協力という面も、やはり強くわれわれは国民に訴えていきたい。  それと同時に、物的な問題につきましては、四十七年度の調査で、これは、やや不完全ではございますが、物的の投資額を、その当時の単価で、物価水準で換算しますと、大体四千七百億円ぐらいの投資をすればいい、これに対して今日まで約千二百億円投資をしておるわけでございますから、これを、あと五カ年の間に三千数百億円投資していく、しかし、もちろん、これで十分というわけではございませんので、先ほどから申し上げておりますように、物的なものも含め精密な調査をこれからやりたいと思っておりますが、同時に、物価の動向もございますので、こうしたものを修正しながら物的な施設、設備を増進していく。  それと同時に、もう一つは、やはり地方自治体におけるこの問題に対する取り組み方が、いろいろな面で問題もあるようでありますが、しかし、あくまでこれは、地域住民の全体の人たちの、この問題に対しての理解と協力を得られるというようなことについての自治体の活動を、そうした面で大いにうしろからバックアップしてまいりたい等々のことを考えておるわけでございます。
  67. 上原康助

    ○上原委員 年次的な予算の立て方といいますか、その数字的な点については、いろいろ意見の分かれる点もあるかと思うのです。四千七百億程度で、すでに千二百億を充ててきたので、そういうことを一つの根拠にして、今後これからの計画を推進をしていかれる。私も十分勉強したわけではございませんが、大阪府だけでも六千億は必要だという数字も出ているわけです。  さらに、いま一つは、これだけインフレ、物価高という面がございます。これは一種の、社会保障と性格は異にいたしますが、特に弱い立場にある方々、政治や行政の日の当たらない方々をどう引き上げていくのか、生活レベルあるいは環境問題を含めてどうやっていくかという社会政策とも関連すると思いますので、申し上げるわけですが、政府の四十九年度予算を見ましても、総需要抑制とかいろいろな面がきびしく出てきております。おそらく、いまの政治経済情勢では、当分の間、年々そういう政策がとられないとも限りません。そういたしますと、やはりこういう同和対策なり予算面でも、画一的に切り詰められていく可能性がないともいえないと思うんですね。  したがって、今度実態調査を、地方自治体やそういう面とも協力をしながらやっていかれる、そして、いま大体の基礎的な予算は、こういう方向だということまであったわけですが、少なくともこの同和対策の事業を十分進めていく面での予算の切り詰めということは、いろいろなむずかしい面があっても、私たちはやるべきではないという判断をいたします。そういうお気持ちでやっていく計画を立てるのか。あるいは総需要抑制ということで、いろいろなしわ寄せがあるからということで、こういう面までも予算の減額といいますか、必要最小限度ということになるかもしれませんが、関係団体なり関係地方自治体から、こういうものについては、ぜひとも満たすべきだということまで切り詰められる、あるいは切り捨てられるということでは、十カ年計画そのもの——前期五カ年の計画が十分でないという面も含めたならば、より強化をすべきだという点なども考えた場合には、もっと財政的な充実化というものをはからなければいけないと思うのですが、それに対しても、いま申し上げたような方向でやっていくお気持ちなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  68. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 財政的な措置につきましては、同和予算は、今日まで五カ年間で大体伸び率が平均五五%になっておりまして、一般予算のほうは二〇%の伸び率でございましたので、その倍のスピードで走っております。全体の総額が五百億近くなってきておりますけれども、やはりこれで十分とは言い切れないかもしれませんが、しかし他の一般予算——今年度などは、総需要が非常に抑制されておりますが、同和予算につきましては、ほとんど従来どおりの線を走っておりまして、同時にまた、四十九年度におきましては、ただいま御指摘のございましたように、物価高というものがございますので、単価の改定等も、建設事業等については、六〇%くらい単価を引き上げ、あるいはまた運営費その他につきましても、二〇%近く引き上げて、単価の修正をやりながら、活動が、インフレによって縮小しないような措置もとる用意をいたしております。  私は、先ほどから申し上げているように、この同和問題というものは、三百年、四百年の前からある一つの、ほんとうにむずかしい歴史的な所産でございますので、こうしたことを、一挙にすぐ解決できるものではございませんが、しかし解決をする努力を決して放棄するものではないし、同時にまた、そうしたことの可能な財政的な問題につきましては、従来以上に力を入れて、国の援助、協力体制を進めていくという方向がいいのではないかと考えております。
  69. 上原康助

    ○上原委員 数字的なことについては、ほかの方々からも、いろいろ御指摘があったと思いますので触れませんが、いま長官もおっしゃったように、長い歴史的な差別の背景がある、不平等性があった、それだけにどれだけ苦痛な思いをしながら、その生活をしいられてきたかというようなことを考えた場合に、ないがしろにできない重要な政治課題であるということは御認識のようですから、今後もインフレあるいはいろいろなむずかしい面もあろうと思うのですが、どういう方針を出そうが、どういうりっぱな計画を立てても、それを実行していく財政的裏づけがなければ、これはほんとうに実を得ることができないわけですから、その点ぜひ持段の御配慮をお願いをしたいと思います。  あわせてあと一点、この件でお伺いしておきたいのは、同和対策といいましても、総理府が対策室を置いて窓口であるということは理解をしますし、またそれなりのいろんな努力をしていることもわかります。それから、予算問題にしましても、事前に部落解放同盟なり各団体が相当強く要求運動を起こして、初めて実現をしている事実も、また否定はできないわけですから、もっと積極的に、行政、政治というのは、言われて初めてやるということも必要な面もあろうかと思うのですが、要求がなければ、どんどん落としていくというようなことではいかないと思いますので、そういった面もぜひ御考慮をいただきたい。  いま一つ。各省庁にまたがっているわけですね。私は、沖繩問題なんか議論して感ずることなんですが、ややもすると、窓口がばらばらで、縦割りがあって、なかなか横の連携がうまくいかずに、こういった総合的な政策の立案といいますか、事業の遂行というものが、むずかしい面があるのじゃないか。そういうことはないかどうか。いろいろ密接な連携をとりながら、やっておられるとは思うのですが、その点についてはどうなっているのか。また欠陥はないのかどうか。あれば是正をして、総理府が積極的に窓口になってやるべきだという気がするのですが、その点についても、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  70. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいまの、最初の御意見でございますが、同和問題というものは、政府が先に気をきかしてやるべきことは当然です。特別措置法にも書いてあるとおりでございますが、こういう問題は、やはりこの問題を理解し、また解決しようとする方々の外部の熱意が必要なんじゃないでしょうか。言われてから初めて動く、結果的にはそうかもしれません。しかし、また同時に、こういう問題を解決するのには、大きな国民的な動きやいろいろなものを背景にして解決をしていくということもいいのじゃないかと思うのです。  そういう意味で、いろいろと御意見を述べていただきたいし、また本委員会におきましても、貴重な時間を使って皆さま方から非常に貴重な御意見を承る、ほんとうにありがたいことと思います。率直にそのことは申し上げたいと思います。  それから第二点でありますが、世の中の非常な変化に、行政がいろいろな面で縦割り行政になっておって、縦割り行政では対処できない事態が、次から次へと起こっていることは、御指摘のとおりでございます。同時に、起こってくる事態というものは、一省ではもてあますので、しようがないからほうり出してくる。ほうり出すと、それが総理府にたまってくるというような順序になっておるのじゃないか。しかし、この傾向は必ずしも悪いことではない。これが、複雑化して高度化してくる社会に対応する政治、行政の姿勢ではないかと思うので、そうした面で至らぬ点がたくさんあると思いますが、私らは努力をして、縦割り行政とこうした総合的な、社会的な一つの問題に取り組む熱意を欠いておるわけじゃないのでありまして、足らぬところは、ひとつ積極的にいろいろと教えていただきたい、努力をいたしてまいりたいと考えております。
  71. 上原康助

    ○上原委員 この点は、 この程度にしたいと思うのですが、いま長官の真剣な御熱意のある御発言がありましたが、確かに今日の民主社会において、市民運動、住民運動といいますか、いろんな民主的な要求を通して、初めてものごとが解決をしていくということは、ある面では好ましいことですので、また、この部落解放運動を見ましても、そういった歴史的な非常に長い戦いがあったわけですから、そこらについても、より理解していただいて、関係団体の要求なども十分取り入れた形で後期五カ年の総合対策というものを出して、一日も早い機会に、こういった差別といいますか、あるいは人間社会の不平等性を克服して、名実ともに明るい社会の方向を確立していく、実現していくという方向での御努力をいただきたいと思います。  そこで、あと一点ですが、これと関係あるといえば、大いに関係もあると私は思うのです。きょう総務長官がここに御出席ですから、お尋ねしたいのですが、沖繩問題も、どちらかというと、一種の差別政策だったとわれわれは受けとめているわけです。われわれが好んで平和条約第三条にぶち込まれたわけでもないし、二十七年余にわたってアメリカの軍事占領支配に置かれたわけでもない。国会に出てきたのもこの間で、勉強するにも非常に困って、いろいろ格差が出ているわけです。  そういうことを、いまさらぐちは申し上げたくないのですが、御案内のように三月の二日、十一時二十五分ごろ——四日に長官にもお目にかかって、党の要求なり考え方を申し上げて、対処を要求いたしましたが、政府としても、沖繩の小禄で起きた爆発事故に対しては、それなりに真剣に受けとめられて対処案を講ずる、あるいは政府部内に協議会を持つ、またすでに現地に関係職員を派遣して、実情を十分調べているということに対しては、一応その御努力に敬意を表しておきたいと思います。  そこで私は、せんだって沖特でも、官房副長官あるいは総理府副長官にもおいでいただいてお尋ねをしたのですが、やはり責任者は長官ですから、多くは申し上げませんが、今回のこの忌まわしい爆発事故が起きた根本原因というもの、責任の所在というものを明確にしていかなければいかないと思うのです。ですから、われわれは、この間も申し上げましたように、まず、沖繩にどれだけ不発弾があるのか、あるいは旧日本軍が埋蔵したと思われる地雷や爆雷その他の弾薬類を、この際徹底的に探査をし集約をして、二次、三次の類以事故を防いでいくという対策を根本的にとらないと、どうにもならないと思うのです。その点については、ぜひ真剣にお考えになっていただきたい。これも窓口がはっきりしないということなどもあって——爆弾みたいにやっかいものは、だれだってあまり歓迎しないわけですが、それじゃいかないと思うのです。それをどうなさろうとするのか。その点が一つ。  いま一つは、いろいろ政府の御発言、長官の御発言などを聞いても、また現地の新聞等も読んでみたのですが、今回、不幸にして四名の方々が死亡しておられる。当初三十二名の重軽傷者といわれたのも、ふえて三十八名で、その三十八名の何名かは非常に重体で、生命さえも危ぶまれているという報告もあるわけです。また、昨晩、県会議員の与野党の代表が来られて、先ほど沖特でも、陳述といいますか意見を述べました。  こういうことなどを考えました場合に、不幸にして被災をした方々に対する補償も、私は、この際明確にすべきだと思うのです。確かに、国家賠償法がストレートに適用されるのか、あるいは法律的にどうなのかという議論もあるでしょう。しかし、そういうことを、いま行政や政治の立場で言っておってはいかない問題だと思うのです。国の責任において、今回、死亡した方々あるいは重軽傷を負った方々、家屋も相当数の全壊、半壊が出ておるが、物的な損害に対して、もう少し明確に国として、政府として補償していくんだということがないと、私は、県民の怒りというもの、憤りというものは、ますますいろんな面に波及していくことが十分考えられると思うのです。そういう意味で、長官のこの問題に対する公式の場における御判断と決意を、ひとつ承っておきたいと思うのです。
  72. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 三月二日の爆発は、まことに残念しごくでございます。せっかく沖繩で海洋博も開かれ、新しいスタートの時期に、このような事故が起こって、四十人以上の方々がなくなられたり、負傷されたということは、ほんとうにお気の毒でございます。  私は、さっそくこの事態に対処して、月曜日に審議室を中心にしまして、各省の担当官全員集まってもらって、そこで、こうした事故の発生に関しては、今後どういう措置をとったらいいか、それからまた、その原因は何と理解するかという点についての打ち合わせをいたさせました。それで、これは正直に申して、すぐ結論が出ませんでした。それで翌々日、担当官を、建設省と沖繩開発庁から三名出しまして、現在、現地に行って実態の調査をいたしております。私は、役人的なお答えをしてはならないと思いますが、いずれにしても、この調査の結果を待って、さらに政府内部で十分検討してみなければならない。  ただ、第一義的に申し上げられることは、この工事の際に、一方においては、海洋博もいろいろ工事をやっております。しかし海洋博関係工事においては、こうした不祥事はまだ起こっておらないのは、一応この工事を施行する事前に、港湾については、そうした爆発物があるかないかを十分確かめてやること、それから道路等につきましても、事前に十分探査をすること、こうしたことを励行させてあったという報告でございますが、私は、やはり今度の、下水の工事でございまして、那覇市がその施工をやっておったわけでございますが、そのときの事前の調査、探査にやはり遺憾な点もあったのではなかろうかと心配しているわけでございます。  いずれにいたしましても、こうした爆弾処理というような問題は、先ほども上原委員が御指摘になりましたように、戦後に起こった一つのきわめてデリケートな所産でございまして、これに対しての政府の取り組み方も、現在、総理府にございます管理室が、一応予算の請求をまとめるということの仕事をいたしておるわけでございます。そういうような実態でございますが、やはり直轄工事等につきましては、それぞれ本省から厳重に事前探査をさせて工事をさせておりますので、現状においては、不幸なことはまだ起きておらないわけでございます。  しかし沖繩があれだけの大戦場になったという過去の歴史を、もう一度よく踏まえまして、ただいま御指摘の爆弾処理あるいは埋蔵あるいは危険なものがころがっておるという状態を一日も早く解消しなければならない。こうしたことについて、調査団が帰りましたら、内部的にも詰めた話を直ちにしてまいりたいというふうに考えております。  なお、先般の沖特で、小渕副長官から事後処理についてのお考えを述べられたようでございますが、私も、そうした考えには同感なんでございまして、さしあたり何らか早い手を打つべきだというふうに考えて、内部的な調整を現在進めさしております。
  73. 上原康助

    ○上原委員 時間があれですが、長官、いま慎重な態度をおとりになるのは、理解しないでもありません。しかし補償の件については、何か非常に触れたがらない印象を、私はこの間から持っているわけです。それじゃいけないと思うのです。国家賠償法というようなことがすぐ出たので、はたと法律論にすりかえられるというような話、というより、そういう考え方も、政府部内にあるような感を受けるわけですが、ここに、きょう、沖特でもいろいろ配られているのですが、警察庁保安部が、この事故についてお調べになった報告書が出されているんですね。その原因のほうでは、やはり旧日本軍が使用していた爆雷、直径七十センチ、高さ百センチの円筒型のものと推定されるが、詳細は調査中。旧日本軍が使用した爆雷ということが、警察の調べ、あるいは自衛隊の弾薬処理班の専門家の方々も見て、ほぼ間違いないということを言っているわけですね。  そういたしますと、第一義的に市の事業であるとか、あるいは県がそういう調査をすべきだという行政的な面を離れて、国の責任は免れ得ないのじゃないですか。一体だれが戦争して、だれがそこに爆雷を埋めてあって、今日まで残しておったかとなりますと、これは、またいろいろな面に論争が発展していくわけですね。私は、そういうことよりも、現に死亡事故が起きて、四十名近い重軽傷者が出たというこの事実を考えた場合に、家屋の損壊やあるいは物的な損害に対して、政府がこの際、被災者に対しては積極的に補償問題も考えていくんだということを確約をする、あるいは公にそういう見解を出すことが、県民に対する、あるいは、特に不幸にして被災を受けた方々に対するいまとるべき立場じゃないかと思うんですね。この点については、いろいろむずかしい面もあろうかと思うのですが、そういうお考えは全然ないのですか。その点ぜひ明らかにしていただきたいと思います。  もう、あえて県会から出たいろいろな要求書は読みませんが、これは革新だから、そういうことを何も言っていないんですよ。県会の自民党の方々も、きょう私が聞いてびっくりするほどきついことをおっしゃっているんです。自民党の議員のほうから、むしろやじが飛んだほど、一体戦後はいつ終わらしてくれるのかと、非常に激しい口調で、与野党を問わず、県民の憤りをいま訴えているわけですから、それに対して、総務長官があまりにも、冷たいとは言いませんが、消極的な態度では、ますます問題は解決しないじゃないですか。補償問題に対して、政府は責任を持ってやっていくのだということを、この際、国民の前に明らかにするのが、この問題に対して政府がこれまで努力してきたことに対しても、県民の理解を得られることじゃないかと思いますので、その点あらためて御見解を賜わっておきたいと思います。
  74. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 あなたから、たいへんしかられるかもしれないのですが、私らは、こういう事態、爆発によって四十数名の方々並びに住んでいる方々に非常な御迷惑がかかったという現実を、決して無視するものではないのです。ただ、国家が直接法律に基づいてこの補償をするかどうかということになりますと、これは、なかなか議論が多くて、まだその問題については煮詰まらないけれども、先般、小渕副長官が申し上げたとおり、政府としては補償措置をとりたいという気持ちで動いているということだけは、はっきり申し上げられるわけでございます。その程度できょうはごかんべんいただきたいと思います。
  75. 上原康助

    ○上原委員 政府としても、補償措置を含めて御検討をしておられるという御答弁ですから、もうこれ以上やりとりしませんが、私は、これまでの沖繩問題全部がそうであるとは思いません。また、政府がそれなりに努力をしてきたことも否定はしません。しかし戦後、もう三十年近くなって、じゃ、もしもこの付近で、爆弾がほんとうに破裂して、四、五名も死んだならば、政府は一体どうするかという気にもなるわけです。ある面では、それも差別じゃないのか。なくなった人、旧日本軍が使った爆弾によって生命、財産が破壊されたということであるならば、戦後処理の一環として、法的問題もさることながら、たどっていけば道義的、政治的にはやはり政府の責任ですよ。そのことは、長官も否定はしておりませんので、すみやかに、補償問題を含めて、先ほど申し上げた対処策についても特段の御努力を強く要求いたしまして、きょうはこの程度で終えておきたいと思います。
  76. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 関連して……。四十八年度の不発弾についての予算は幾らでございますか。
  77. 伊藤廣一

    ○伊藤政府委員 四十八年度におきます不発弾を処理いたします交付金は一億円でございます。
  78. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 四十九年度は幾ら要求しておりますか。
  79. 伊藤廣一

    ○伊藤政府委員 四十九年度として、政府の案としておりますのは一億円でございます。
  80. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 総理府は、それで不発弾処理ができるとお思いですか。
  81. 伊藤廣一

    ○伊藤政府委員 すべての不発弾処理が、四十八年度並びに四十九年度の予算をもって完了するとは考えておりません。
  82. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 大体、総理府は、そういう点は非常に消極的である。四十八年度の予算をつくるときも消極的である。四十九年度も消極的である。ですから、沖繩のような事件が起きるのです。皆さん方が、総理府予算をつくるときに、そういう消極的な態度では、いま上原委員のおっしゃったように、沖繩の、あるいは戦災を受けた地域の人々は安心して生活できない。もっともっと——いままで所属がわからなかった。どこの省がやるかわからなかった。それがやっと四十八年度できまった。四十八年度はよろしいとして、四十九年度予算が一億円とは、たいへん残念なことであります。少なくとも生命、財産に及ぶ問題でございます。ぜひそういう点を考えて、もし必要とあらば、予備費を使うくらいの決意がなければいかぬ。その点について、総務長官の御見解を聞きたい。
  83. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 小宮山委員から非常に適切な御指摘をいただきまして、反省をいたします。  なお、この爆弾処理等につきましては、一億円の予算の大部分のものが、特に東久留米の爆弾処理に充てられるというわけでございまして……(上原委員「じゃ、沖繩はどうするんだ」と呼ぶ)沖繩のこうした事態に対しての配慮が欠けておったという御指摘でございますが、今後よく検討いたしまして、私、先ほども答弁の中で申し上げているように、沖繩においては、根本的にそうした問題を一回総洗いしてみる必要があると考えておりますので、そうしたことを主張して、必要なる予算措置を要求してまいりたいと思います。
  84. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 時間がないから簡単に言いますけれども、東久留米だけじゃございませんよ。大きいのがまだありますよ。大宮にもあるし、沖繩にもあるし、全部の調査はまだしてないでしょう。それは一億なんかじゃとうていできない。もう一度、総務長官にお聞きしますけれども、必要あらば予備費をお使いになりますか。
  85. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 もちろん、こうした国民の生命に関することでございますから、事態が出ますれば、はっきりと要求してまいりたいと思います。
  86. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 以上です。
  87. 徳安實藏

  88. 和田貞夫

    和田(貞)委員 まず第一点として、迎賓館のことについてお尋ねしたいと思います。  それぞれ委員の皆さんから発言があったことであろうと思いますが、この事の始まりが、閣議迎賓館を新築したいという構想を三十八年に立てられて、四十二年になってこれを、旧赤坂離宮を改修するという構想に切りかえて、四十三年から四十八年まで六年にわたって改装工事が進められてきたわけなんですが、私は、まず第一点として、六カ年を費やして四月一日に開館を予定しておられるらしいのですが、それまでに備品、調度品を含めまして、迎賓館を開館するのに、最終的には総計どれだけの経費がかかるのか、お聞きしたいと思います。
  89. 佐々成美

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  迎賓館の改築等に要する経費でございますが、昭和四十年度に調査工事費として千四百九十万円、工事は四十三年から入りましたが、四十三年度に四億一千万円、四十四年度に三億九千七十万円、四十五年度に五億円、四十六年度に十四億円、四十七年度に三十二億円、四十八年度に三十六億四千百八十六万円、それに現在、御審議をいただいております予算の中に、四十九年度として一億五千万円入っております。以上を合計いたしますと九十七億七百四十六万円でございます。それで、四十三年度分は、内閣官房に迎賓館の設備費として入りました。それから四十四年度以降は、建設省所管の官庁営繕費として計上をされているものでございます。  以上が改築に要した費用でございますが、それ以外に家具の製作費として約七億円がございます。以上をすべて合計いたしますと、約百四億円に相なります。
  90. 和田貞夫

    和田(貞)委員 過去を振り返って、これからの見通しも含めて、この迎賓館で接遇しようと考えておられる国賓並びに賓客、大体どの程度一年間に来られて利用されるというように推定されておりますか。
  91. 佐々成美

    ○佐々政府委員 従来国賓公賓等が参りました数字に基づきまして、一年間に約十人程度というふうに予定をしてございます。
  92. 和田貞夫

    和田(貞)委員 一年間に約十人、六年間かかって百四億、でき上がってみてあ然としているというのが、私の考え方であります。  そこで、いろいろと用語がありますが、新しく建物を建てるのは、新営ということばがあります。あるいは改装ということばもあるし、改築ということばもあるし、あるいは補修ということばもあるが、これは建設省の方がおいでになったら、専門的に、改装というのは、どの範囲が改装という範疇層に入るのか、お聞かせ願いたい。
  93. 上山勝

    ○上山説明員 ことばの定義としては、私ども改装ということばは、日ごろ使っておりませんで、この場合は改修ということばで統一しております。新築と改修と、大きくわけて二つになろうかと考えます。
  94. 和田貞夫

    和田(貞)委員 改修ということになりますと、新しい建造物があらわれてこないということになるわけですね。
  95. 上山勝

    ○上山説明員 面積として新しいものができないということでございまして、国有財産的な価値は増大してもかまわないと思います。
  96. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうすると、迎賓館の本館に付随する別館、食堂に使用する別館的な建物、これはどうなんですか。
  97. 上山勝

    ○上山説明員 別館につきましては、これは完全に新築でございます。
  98. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうすると、先ほど総理府のほうから説明のありました、各年次にわたって改装費ということばが使われましたが、その中に別館に相当する新営費も含んでおったわけですか。
  99. 佐々成美

    ○佐々政府委員 補足して説明いたしますと、改築ということばを私、使いましたが、改築等というふうに、もし改築と言ったのであれば、お直しをいただきたいと思いますが、九十七億円の内訳は、本館の改修が約七十億円、それから和風別館の新築に費した経費が約六億円、それから庭等の外構施設に、外構は外まわりでございますが、外構施設に要した経費が約二十一億円、合計して九十七億円でございます。
  100. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうなってまいりますと、迎賓館のよしあしは別として、少なくとも新しい建物ができてくる。こういうことになりますと、単に旧赤坂離宮を改修する、そして迎賓館に使う、こういう性格のものではなかったんじゃないかと私は思います。  それが、建設省の官庁営繕費の中で六年間にわたって経理支出を行なって、でき上がってみれば別館もあり、庭園も新しくできるというような姿を私たちに見せつけられたときには、この予算の支出のしかた——全く国会審議を抜きにして、ただ改修するんだ、補修するんだ、こういうことで六年間日時を過ごして、 でき上がってから、迎賓館を見てくれ、これだけの経費をかけた、ぜひとも必要なんだ、四月一日から開館を予定するんだ、総理府の付属機関にするんだ、こういうような提案のやり方というものは、あまりにも国会審議を軽視し過ぎたきらいがあるんじゃないか、こういうように私は思うんですが、長官どうですか。
  101. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほども吉田委員にお答えしましたのですが、私は、やはりこうしたことは、事前に予算と、さらに迎賓館というものをつくる閣議決定もあるわけでございますから、その所属を総理府にするなら総理府にする、どこにするならどこにするということも、あわせて委員会の御討議を経たほうがよかったと思いますが、これは、閣議決定了解という線で四十三年度からの予算の御審議をいただいていると思いますが、いま、ここに総理府設置法の改正ということで御提案申し上げたことは反省をいたしております。
  102. 和田貞夫

    和田(貞)委員 建設省のほうも、六年間ただ日時を過ごして——いま長官が言われたように、やや、たてまえとしてはそうであるべきだ、いま反省しておる、こういうことでありますが、建設省もおのずから御自分の所管する、建設省が直接する営繕工事の権限の範疇というのがあるわけなんですが、言われるままに、ただ予算をつけてもらったから使っていったというだけではなく、この六年間に一度も総理府意見を言わなかったのですか。
  103. 上山勝

    ○上山説明員 予算審議を通じまして、国会のほうの御了解も得ておるということでございまして、私どもとしては、毎年ついた予算を使って、早く迎賓館をつくるということに努力してまいったわけでございます。
  104. 和田貞夫

    和田(貞)委員 予算をつけてもらったから、ただやってきたんだというんじゃなくて、建設省には建設省のほうで直接行なう営繕工事の範囲というものが、おのずからちゃんと法令によって明記されておるわけです。たとえば衆参両院議長の云々ということで、国会議事堂あるいはその周辺の施設、そういうものは建設省で直接するんだ、あるいは経費二百万円以下の補修に要するような官公庁の施設については建設省が直接するんだというように、総理府所管をして、これだけ大きな経費を使って、いかに改修とはいいながら、かなりの経費をかけて行なう工事、しかも、その中に小なりとも約六億円も使って、別館という形で新営の建物ができていくというような、六年間にわたっての工事の中で、建設省はおのずからこれはおかしいということで、所管総理府に何も言わなかった、一言も意見を差しはさまなかったということは、これは少し怠慢過ぎるんじゃないですか。どうですか。
  105. 上山勝

    ○上山説明員 これには閣議決定もございますし、さらに臨時閣僚協議会もございまして、そこできめられた方針がございますので、それに従っておったわけでございます。いま、そういうことについて、総理府に別に意見は申し上げておりません。
  106. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そんなことだから、しかたがないといえばそれまでですが、総務長官が先ほど言われましたように、これは、あなたの責任じゃないけれども、やはり建設大臣としても、いつかの時期に意見ははさむべきであった、このように私は思います。こういうことに時間をかけておってもどうかと思いますし、総務長官の御意見でよくわかりましたので、このようなことが再び起こらないように、総理府はもとより建設省に対しましても、厳重に注意を促しておきたいと思うわけです。  その次に、同和対策協議会という付属機関の五年間延期ということについてでありますが、同和対策協議会を五年間延長する、あるいは本年度から、おそまきながらも総理府に、いままでの同和対策に関する陣容に、人員も四人増員して、同和対策室というものをおつくりになるということ、これは私、同和行政の上からやはり前向きになった姿であろうということで評価をしたいわけなんですが、同和対策事業をやっていく、同和対策行政をやっていくという基本的な考え方というものは、何といいましても、同対審答申に基づいて措置法がつくられ、それにさらに関連して、閣議了解のもとに同和対策事業長期計画というものが立てられて、今日まで進められてまいったと思うわけです。  十年間という時限立法のもとに、十カ年計画で長期計画を立てられたわけですが、ちょうど本年度で前期五カ年計画が終了して、新年度から後期五カ年計画に入るわけなんですけれども、ここらで前期五カ年計画を振り返ってみて、いままで国が進めてまいった同和行政の結果、はたしてどのような効果があがっておるのかということを十分に把握しておらないと、新年度から始まる後期五カ年計画を終わりましても、この十年間の結果、部落の完全解放もなかった、人間解放もなかったということに終わるのじゃないかと思うわけでありますので、前期五カ年計画を終わる今日におきまして、どのような効果があったというように把握しておられるのか、この機会に御説明願いたいと思います。
  107. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 今日までの五カ年間で、われわれが考えてみますと、同和問題がもうずっと前から提起されて、松本治一郎先生をはじめ皆さま方の長い間の御活躍があったわけでございます。そうした時点の中で、きわめて消極的だったと思いますが、いろいろと施策がとられてきて、対策措置要綱等もできて、それで、いよいよ本格的な問題の取り組みに入ったわけでありますが、過去五年間における投資総額等から見ますと、物的な施設に対しては、一般の予算の動向に対しましても、同和予算は年率五五%の伸びでございました。また各自治体からの要請に対しても、それ相応にこたえてまいってきたと考えます。  ただ問題なのは、そうした物的な施設の改善、改良ということは、私は相当に評価していいと思いますが、しかし本質的な問題、同和問題の本質的な心と申しますか、精神面につきましては、なおまだ、われわれの政策の至らぬ点も多々あると考えまして、今後は、そうした問題を改善、改良するために、また大ぜいの日本国民みんなに、この問題に理解と協力をしてもらえるような、そうした措置を重点的にやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  108. 和田貞夫

    和田(貞)委員 同和行政は、精神面では私はどうにもならぬと思う。やはり事業を具体化していくためには、その裏づけというものがなくちゃならぬ。前期五カ年計画で、国が各省によって事業計画を進められてまいったのですが、五カ年間に要した経費というのは千百八十三億六千万、これで施策全般について、前期五カ年計画をなし得たと思っておられるのかどうか。その間において府県や市町村、いわゆる自治体が、この五カ年間にどれほどの経費の負担を余儀なくされたか、総理府把握しておられますか。
  109. 小林哲一

    ○小林説明員 先生十分御承知だと思いますけれども同和対策事業につきましては、国といたしましては、三分の二というかなり高率な補助を行なっておりますし、あと補助裏につきましては、地方債も見る、さらに元利償還等につきましては、地方交付税でも手当てをするといういろいろな施策を講じておるのでございますけれども、それでも、なおかつ地方公共団体において、その財政負担が増大してきているという事実は承知しております。そのような事情を考えまして、国としましては、従来から、ただいま総務長官がお答え申し上げましたように、国庫補助の増額等につきまして、鋭意努力を払ってきたところでございます。
  110. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そういう精神面的な援助じゃなくて、自治体はこの五カ年間に、大阪だけでも二千二百億円という経費を投じてきておる。その中には、大阪市というような財政の豊かな市もあれば、そうでない市町村もあるわけです。たとえば泉佐野市では、財政規模は非常に貧弱でありますが、三つの部落をかかえておる。同じように推進していかなくちゃならない。ただ補助率を、一般行政と比較して高率化しておるのだというようなことだけでは、市町村の財政援助にもならないし、財政能力のない市町村が、この法律に基づいて、長期計画に基づいて同和行政を進めるということは不可能に近い状態に今日なっておるということ、これは自治省が一番よくわかっておる。  そこで、私は申したわけですが、先ほど上原委員質問総務長官答えられて、他の各省庁の事業と違って、年々経費については高率にふやしてきたんだということを言っておるわけですが、五年前の初年度の支出した経費というものはわずか六十二億。もとの出発がその程度だから、いかに高率に積み上げていったところで——これは率じゃなくて額の問題です。いま申し上げましたように、市町村は、いかにこの率がふえたところで、額によって、財政的に非常に苦しい立場にある。しかし、それでもなお、同対審答申の精神を生かして、措置法を具体化するためにやらなくちゃならない、自治体の責務だという正義感のもとにやっておられるわけです。  それを、総理府がほっておくという手はないと思うのですが、そんなことでいままで五カ年間過ごしてこられたということであれば、私は非常に問題だと思うのです。そういう考え方では、新年度からの後期五カ年計画は非常に危ぶまれるわけなんです。  もう一度長官にお尋ねいたしますが、前期五カ年計画を振り返って、国としては法に基づく責務を全うしたとお考えになっておられるのかどうかということを、明らかにしていただきたいと思います。
  111. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 御指摘でございますが、総理府としては、この問題、不十分な点、多々積み残しもあると思いますが、まじめに問題の把握と努力はしてきたと私は考えます。また同時に、われわれの至らぬ点につきましては、先ほども申し上げましたように、この内閣委員会で各委員から、それぞれ適切な御意見もいただいておるし、そうしたことをむだなものにしないように十分承りながら、予算の足りないところは足で歩くなり、あるいは地方自治体を激励して勉強していただくなり、努力を積み重ねておるわけでございまして、今後もその努力の姿勢は、決して失わないつもりでまいりたいと思っております。
  112. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いまの御答弁もやはり精神面です。私が言っておりますのは、やはり事業を進めていこうと思えば金がかかるのです。経費が必要なんです。申し上げましたように、この五カ年間を振り返ってみても、国の負担をした額というものは、自治体全体が負担をした額と比べましたら、これは及びもつかない僅少な額です。こんなことで五カ年間努力をしてきたという考え方に立つこと自体に問題があると私は思う。やはり不十分さというものがあるのであれば、率直にそれを認めた上で後期五カ年計画に入っていく、そして部落の完全解放を、国の責任において行なう、こういう裏づけになろうと思うのです。  自治省お見えであると思いますが、私がいま申し上げましたように、自治体の同和行政についての財源負担というものは、国の財源措置によって十分であったというふうに思っておられますか。
  113. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 お答え申し上げます。  国のほうで補助金等の増額を、毎年はかってきていただいておるわけでございますが、現実の問題として地方の負担もかなり多うございまして、必ずしも十分ではなかったというぐあいに理解をいたしております。
  114. 和田貞夫

    和田(貞)委員 自治省は、いま言っておられるように、十分でないことを認めておられるんですよ長官。これは総務長官一人の責任じゃありませんが、せっかく同和対策関係閣僚懇談会というものがあって、同対審答申以前から発足されておるし、臨時に設けられた関係閣僚懇談会をもっと充実してほしいということも同対審の答申にはうたわれておるわけです。だから、関係閣僚が一致して、国の責務として措置法に基づいて、同対審答申の精神を生かして、四百年にわたるいわれなき差別を日本の国内から完全になくする、こういう基本的な態度に立っていただきたいと思うわけです。  自治省は、財政措置に限って自治体をながめたときに、不十分だというように把握をしておられるのですが、国のほうは、やはりあくまでも十分であったというように思っておられるのか、もう一度お答え願いたい。
  115. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 役人的な答弁ができませんが、この三百年、四百年あるいはもっと昔からかもしれないですが、こうした日本の社会におけるいろいろな秩序の変遷の中から出た問題というものを解決する努力は、予算が千二百億円程度しか使っておらないというようなことだけではなく——それは確かにおっしゃるように、物的ないろいろな施設というものが伴わなければ、口頭禅に終わるということもよくわかります。また同時に、そうした予算というものに対して、地方自治体がその地区それぞれの事情の中で仕事をし、設備をやったという努力も高く評価したいと思います。  そうしたことと国の予算が、少なくとも今日まで五五%の伸び率できたというてと、御指摘のように、スタートがたいへん小さいから大きな成長率だというふうにおっしゃられれば、それまででございますが、他の予算の動向に比して、また四十九年度等におきましては、総需要抑制の中におきましても、同和予算だけは、従来の線を少しもはずすことなく伸び率を示しておるところも御理解いただきまして——われわれとしては、全力をふるって、この長い歴史的な問題に挑戦をしていくという姿勢は失っておりません。また、そうした面からも、ぜひ和田委員も、この問題の解決のために、いろいろと激励をしていただきたいと考えます。また、御指摘の点は、十分理解もできますし、そうした面において、われわれの努力の足りなかったことも深く反省もしておりますので、今後また、いろいろな面で御指導を賜わりたいと考えます。
  116. 和田貞夫

    和田(貞)委員 長官は、ただ物的な面だけではないということを言われたわけですが、なるほど部落の解放というのは、物的な面だけで部落の環境がよくなったら、それでおしまいだということじゃないわけです。その事業を進める過程において、社会に普遍的にある国民の差別意識というものを完全になくしていく、これが基本でなくちゃならない。ところが、私が言いたいのは、国の財政措置があまりにも僅少であるために、自治省自身が認められておりますように、自治体においては、同和事業に対してかなりの財政負担をするために、一般行政にこと欠くというところまできておるわけです。そういう中で、このまま放置いたしますと、むしろ部落の学校がよくなった、部落の保育所がよくなった、部落の幼稚園がよくなった、部落の道路がよくなった、こういうことで、いままで部落を見つめるときの、きたないから、環境が悪いからという観点が、よくなったからということで、逆差別の傾向が事業を進める中で起こりつつある、起こっておる。こういうことは、総務長官把握しておられますか。
  117. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほども委員から、逆差別といいますか、そうした問題についての御指摘をいただいております。私自身は、まだそうした事態をよく承知しておりません。また同時に、この問題の対策は、地方自治体と地域住民との密接な関連の中で諸対策がとられていくのが一番いいと思っておりまして、それが行き過ぎであるとか、あるいは不足な場合は不足と申したいのですが、行き過ぎの場合もあるような事態において、それを行き過ぎではないかという指摘は慎むべきではないかと私は考えております。
  118. 和田貞夫

    和田(貞)委員 もちろんそうです。しかし自治体の中では、今日三割自治といわれておりますが財政規模におきましては一割自治、自主財源が一割というような自治体もあるわけです。二割という自治体もあるわけです。三割という自治体もあるわけです。そういうようなところでも、市町村長が法律に基づいて、国の責務であると同時に、自治体の責務であるということでがんばっておられる。それをいいことにして、事業主体は自治体だから、国は、それに財源的なカバーをしていったらいいのだというような考え方でやっては困ると思うわけであります。  そのことが、差別意識、逆差別というものが起こってくる原因にもなるわけですから、せっかくこの事業を進めるにあたりまして、長官もおそらく考えておられることだと思いますが、同対審答申の精神は、先ほども述べましたように、精神面も含めた人間解放というのが究極的な目的であるわけですから、いままでの欠陥を十分払拭して、今後、財政的な援助も国が十分に行なって、それに対処していくおつもりであるかどうかということを、しつこいようでありますが、明確に御答弁願いたいと思います。
  119. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま御指摘の同和対策事業に対する政府のと申しますか、国の補助というものは、原則的に三分の二行なうということは、もちろんでございまして、これを動かすということは、私は全く考えておりません。同時にまた、地方債等の発行につきましても、特別な措置を、今日まで積み上げてきた方式を、われわれは捨てるつもりはございません。  同時にまた、われわれといたしましては、いま御指摘のいろいろな問題についても、もっと具体的な実態を把握すべき必要があるし、また自治体自体が、この問題について非常に苦労している面もよくわかるわけでございますので、そうしたことを含めまして、四十九年度の予算をいただくならば、同対室を中心にいたしまして、精密な調査を行ないまして、実情の把握につとめるとともに、あわせて同対協議会を五カ年延長していただいて、民間の方々の自由な御意見、そしてまた専門的な御意見を十分いただきまして、今後のこの問題の困難さに十分挑戦をしてまいりたいというつもりでおります。
  120. 和田貞夫

    和田(貞)委員 後期五カ年計画の初年度に当たる新年度の予算で、長官、先ほど述べられたように、同和事業については、予算の伸び率をかなり高くしたのだということであっても、五百七十億円というのは、おそらくことしも去年もおととしも同じように、四十九年度におけるこの事業に対するところの自治体の財政負担と比較いたしましたならば、まことに僅少でありますが、この程度の予算で後期五カ年計画の初年度に当たる事業予算としては十分であるというふうに思っておられますか。
  121. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、十分であるかないかという判断は、もちろん主観的にも、また客観的にも、ある程度ものさしがあると考えますが、今日までの物的な投資というものの傾向から推定いたしますと、四十七年度に調査いたしましたときに、物的の設備の投資額は、総額四千七百億円ぐらいのものが計上されております。それが十分であるかないかという議論は別にいたしまして、一応四十七年度時点における投資総額というものが概定されております。それを基準にして、今日までの投資というものを考えてみますと、今年度の五百七十五億円の予算というものは、必ずしも低いというものではないと考えております。同時にまた、この四十九年度の実際の活動を、さらに円滑にするために、先ほど申し上げたようないろんな精密な調査をやったり、また同対室の活動を大いに促進したりいたしますが、同時に、各地方自治体の活動が、物価値上がりで実質的に目減りしないような措置も考えられておりまして、建設事業についての補助率は、大きいものは六〇%程度単価を引き上げるとか、あるいはその他の隣保館等の運営費につきましても、二〇%近くまで引き上げて、予算が目減りしない措置を配慮しておるわけでございます。  なお、そうした努力で、率直に申し上げるならば、この三百年来の問題が、ことし一ぱいでさらに非常に前進するかどうか。私は繰り返して申し上げますが、こうした物的な描置はむだではない、もちろん、やらなければならぬ、それはよくわかりますが、同時に、その地域社会の方々に、こうした問題に対しての理解と協力を得るような、一つのコンセンサスと申しますか、あるいは日本人全体のコンセンサスと申しますか、そうしたものがうしろだてにならない限りは、ただ物的な設備がたくさんできた、いいじゃないか——先ほど御指摘のような、逆な差別というものさえ出ているということを考えます場合に、やはり急ぐべきものは、この人間の心の問題、そうした問題にわれわれがもっと力を注ぎ、地域の方々の理解を深める、国民的理解を深めるということをなすべきではないかと考えるものでございます。
  122. 和田貞夫

    和田(貞)委員 同対審答申の結語、「同和行政の方向」ですが、これには、こういうふうに書いてある。「地方公共団体における各種同和対策の水準の統一をはかり、またその積極的推進を確保するためには、国は、地方公共団体に対し同和対策事業の実施を義務づけるとともに、それに対する国の財政的助成措置を強化すること。」、それには補助対象を拡大するということや、補助策を高率化していくということ、補助額の実質的単価をきめるということ、こういうことがうたわれておるわけですが、先ほど申し上げましたように、各市町村において、財政規模が異なるわけですから、同じ事業をやろうと思いましても、財政規模の中で容易にできる市町村と、容易にできない市町村とが、おのずから出てくるわけであります。  だから、補助対象や補助率を高めていくということだけでなくて、各種同和対策事業の水準の統一をはかっていくということ、これが、この一番大事なところなんです。そのような援助というもの、そのような財政措置というものは、いままで国がなされたことはないと私は思う。どうですか、自治省。
  123. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 同和対策事業の推進につきましては、各省でそれぞれの分野において推進をしているわけでございまして、それが結果的にどういう形になっているかということは、自治省としては意見を差し控えさせていただきたいと思います。
  124. 和田貞夫

    和田(貞)委員 意見を差し控えておったら、あなた方自治省の立場というのはどうなんですか。やはり自治体の実情というものを把握して——私がいま指摘したように、財政規模の異なる市町村が同和対策事業を推進するにあたって、同じような水準で事業がやっていけないということを把握しておられるのでしょう。しておられないのですか。
  125. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 先ほど申しましたように、年々国の補助がふえておりますが、地方の負担もかなりあるということで、そういう意味で国の補助をますますふやしていく必要があるだろうというぐあいに把握しております。
  126. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私が言うておるのは、補助率を高めていくとかあるいは補助対象を広げていくとかあるいは算定基準を高めていくとかいうことだけでは解決できない。これは算術的計算からいっても、二十億程度の財政規模の町と一千億程度の財政規模の町と、同じ施設を建てるとすれば、ウエートが異なってくることは火を見るより明らかだ。そういう中で同和事業を進めるにあたって、同和事業の統一的な水準を高めていくためには、率を高めるとか補助単価を上げるとかいうことだけでは解決しない。そういう面での財政措置というものを欠いておるから、自治体に対して非常に過酷な事業を押しつけておるというように見られる向きもあるわけなんです。  そういう点の解決をしないと、同和事業を進めるにあたって、先ほども申し上げましたように、むしろそのこととは反対になって、逆差別意識というものが一般地域の住民のほうから起こってくる、こういう原因をつくることになるわけですから、そういうような財政措置というものを、自治省としてはかってもらいたいという立場に当然立たなければいかぬと思うのですが、そういう立場には自治省は立っておらぬのですか。
  127. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 先ほどもお答えいたしましたように、同和対策事業につきましては、国の責任という立場で、各省でそれぞれの事業を分担しているわけでございまして、総理府がその調整に当たるということでございますので、各省で毎年度の予算を要求する場合に、そういった調和のとれた予算を要求されるということを期待しておるわけでございます。
  128. 和田貞夫

    和田(貞)委員 各省各省というけれども、自治大臣同和対策事業の関係閣僚会議の一員ですよ。よそごとじゃない。自治省が自治省の立場から、今日置かれている自治体の財政事情、そういう中で非常にむずかしい同和事業を進めておる、そのためには、かくあるべきだということを、あなたのほうの立場からでも、やはり関係閣僚会議等に意見を反映するということでなくちゃならぬじゃないですか。そういう立場に自治省は今後立ってもらえないのですか。どうですか。
  129. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 先ほど申しましたように、地方の負担がかなり多いということで、各省の連絡会議等におきまして、国の補助事業の拡大その他につきまして、各省に要請をいたしますとともに、自治省といたしましては、各地方公共団体の仕事をできるだけしやすくするために、起債の増額あるいは特別交付税の増額といった方面で力を注いでおるわけでございます。
  130. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ひとつ総務長官の立場からも、いま申し上げましたように、ただ率を高めてもらったり、額を上げてもらっても——いま申し上げましたような具体例のように、財政規模の小さな自治体が財政負担にならぬように、同和事業を、すべての市町村が同じ水準で進めていけるような財政措置、財政援助というものを施してもらうように、今後ひとつ努力してもらいたいと思うのですが、いいですか。
  131. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 和田委員の御主張は、よく理解できますので、今後そうした方向で努力をしてまいりたいと思います。
  132. 和田貞夫

    和田(貞)委員 御努力をお願いいたしたいと思います。  時間がないので、十分話せないわけなんですが、いままで進めてまいりました前期五カ年計画において、国のとった措置というものは、非常に不十分であるし、あまりにも自治体に過酷に事業を押しつけたきらいがあると私は思う。新年度にあたりまして、前期五カ年計面では、国が計画を持たなかったのですが——もちろん同和事業というものは、国のほうが計画をして、押しつけていくというようなあり方は、むしろ同和対策事業の面からいうならば逆であって、これは融和事業に結びつく結果になるわけですから、同和事業を推し進めるためには、やはり地区の住民の自発的な立ち上がりの中で事業が進められていくということが好ましいと思います。  だから、国のほうで計画を押しつけるということではなくて、地域の同和地区の住民の意思というものを、それぞれの市町村でまとめて、それをさらに県でまとめて、それを国で統括をする。統括をしておる以上は、自治体に対しまして、財政の負担にならないように国が責任を持って、先ほど申し上げましたように、全国どの市町村も、どの府県も、同一水準のもとに、あとの五カ年計画が十分できるようなためにも、国のほうで各年次別に五カ年にわたる計画というものを持ってもらって、国の責務を果たしていただきたい、こう私は希望しておきたいと思うわけであります。  時間がありませんので、触れられないわけなんですが、この機会に、これも部落の産業の一環といたしましての邦楽器、具体的には三味線ですが、この三味線というのは、ネコか犬の皮革を使わないと三味線の価値がないわけなんです。  昨年の七十一国会に議員立法で、動物の保護及び管理に関する法律が成立して公布されて、四月一日から施行ということになっているわけですが、この法律の基本原則として第二条に、「何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。」第十条に、動物を殺す場合の方法として「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。」、こういうようにうたわれておるわけなんです。  いま申し上げましたように、邦楽器のうちの三味線というのは、ネコと犬の皮革でなければ、どうにもならないわけなんです。いままで犬の場合は、市町村の保健所でのら犬の捕獲は行なっております。けれども、ネコの場合は、保健所は手間がかかるので、なかなか捕獲してくれない。屋根に登ったり、天上の裏に入ってネコを捕獲するということはできないので、住民の皆さんが保健所に苦情を言いましても、 ネコの捕獲は保健所はやってくれないわけです。そこで住民のほうでは、この産業で全国邦楽器皮革工業組合というのがあるのですが、そこへ依頼がありまして——これは個人の場合もありますし、団体の場合もありますし、旅館の場合もありますし、病院の場合もありますし、マーケットの場合もありますし、あるいは千葉県の船橋保健所、保健所自身が何とかしてくれというような捕獲の依頼もあります。  それで、この工業組合の皆さんが、いままでのらネコの捕獲をやり、それと同時に、捕獲したのらネコの皮革をこの産業の資源として使ってきたわけですが、それが、いま申し上げましたように、この法律の二条によって、何人も云々ということになりますと、この産業自身の資源が枯渇してしまう、こういうおそれがあるわけですので、四月一日からの法施行にあたって、この面での配慮を総理府としては持っておられるのかどうか、この機会にお尋ねしておきたいと思います。
  133. 平井芳男

    ○平井説明員 いま先生御指摘のとおり、この動物保護及び管理に関する法律、この二条に根本原則が規定されております。十三条には動物を虐待した場合の罰則等が設けられておりますので、そういう御心配が生じたものと思われます。犬につきましては、先生いまお話しのように、厚生省が狂犬予防法の関係に基づきまして、この法律施行後も、公衆衛生という面から野犬狩りその他は行なえることになっております。  そこで、従来とあまり問題はないのではないかと思われますが、ネコにつきましては、この法律で新たに引き取り義務、こういうものが生じてくるわけでございます。われわれも、先ほどお話の三味線関係の業者その他の御陳情を受けておりますが、これは日本の伝統芸術の基本となる三味線ができなくなる、こういうおそれだと思います。そこでネコの捕獲方法あるいはネコを捕獲した後の処置というようなこと、すなわち捕獲する場合一番問題なのは、さっと来て全部さっと持っていっちゃうというような方法、これがなかなか世の中の批判を受けるのではないかと思います。で、捕獲の方法等を考える、たとえばあらかじめ予告をするとか、そういうような方法を考えて、捕獲したあと一定期間それを抑留しておきまして、持ち主のあるネコであるならば、また申し出があれば、その所有者にお返しすることができる、こういうような機会を与える方法をとれば、国民感情あるいは法の精神に沿うものではないか、こう考えております。  この法律で動物保護審議会、こういうものも設置されることになっておりますので、政府としまして、この法の精神が十分生かされますように、その方法その他は、この審議会の御意見を聞きながら指導していく考えでございます。
  134. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いままでは、この法律がない場合は、先ほども具体例をあげましたように、のらネコに因っておるということで、直接に住民から苦情の申し入れがある。保健所でやってもらえないから、何とかひとつあなたのほうで捕獲してくれないか。あるいは静岡県の温泉街の旅館組合のほうからも、保健所でどうにもならぬ、何とかしてくれないかということで行ったり、病院等へ行きまして、その結果、非常にありがとうございましたということで、表彰状までいただいた例もあるわけなんです。  それができなくなってしまうわけでしょう。だから、いままで部落産業のために、この種の邦楽器工業組合の皆さん方が、そういう苦情があったら行くということだけでなく、みずからものら犬、のらネコと見られるものを捕獲して、その原皮を資源にしてきたのが、自由にその捕獲ができないことになるわけですね。だから、いま御答弁があったように、ただ申し出があるということだけでこの捕獲をしていくと、これではとても原皮が足らない、こういうことになってしまうのです。  だから、これにつきましては、やはり従来やってきておったように、苦情が直接あったら、それはもちろんのことでありますけれども、なくても、のらネコというように見られるネコ、各家庭で愛玩用に飼っておられるネコとは、すぐ区別がつくわけですから、そういうネコを資源確保のために捕獲をしておったわけですから、そういう捕獲の状況というものを続けていけるように配慮をして、この保護法の施行にあたって処置してもらわぬとあちらこちらで、法の番人としての警察と捕獲人との間にもんちゃくが起こることを私は心配するわけです。だから、そういうようなことを含めて検討してもらえるのかどうかということなんです。どうですか。
  135. 平井芳男

    ○平井説明員 いま先生のお話のありましたように、保健所に引き取りを受けました犬、ネコ、これもそのネコが一生涯そこにいるという趣旨でもございませんし、いずれ適当な日時をおきましてからは、新たな引き取り手などがない場合は、殺処分ということになると思いますけれども、そういう意味において、ある程度いまの資源もできるかと思うのであります。  いま先生の御指摘のありました捕獲の方法につきましても、御意見を十分承っておきまして、先ほど申しましたように、審議会にも事情をよくお話して、その捕獲の方法、限度等についても検討してまいりたいと思っております。
  136. 和田貞夫

    和田(貞)委員 具体的には、いままで説明いたしましたようにやってまいりました邦楽器皮革工業組合の捕獲人というのがあるわけですね、専門家がおるわけです。その人たちが資源確保のために従来やっておった。その人たちには、この法はこうであっても、その場合には組合員の証とかあるいは身分証明書だとかいうようなものを具体的に持たして、そういう事案が起こったときに、警察と一もんちゃくがないようにやってもらいたいということを、私は意見として言うておるわけなんです。そういう面を含めて御配慮いただくというように解していいですね。
  137. 平井芳男

    ○平井説明員 いま御指摘のありました点も含めまして検討してまいる、こう思っております。
  138. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ついでに、ネコだけじゃなくて、犬の場合もやはり資源になっているわけです。従来、いまも申し上げましたように、保健所がなかなかネコはとらないけれども、犬をとってくる。犬をとってきて、一定の期間保健所に置いておいて、そして飼い主の申し出があればお返しする、そうでないものは全部焼いておったわけですね。これは非常に資源が不足しておるときに、もったいない話なんです。この法律とは関係がありませんけれども、あわせてひとつ資源確保という意味で、捕獲をされた犬が、飼い主が見つからない、焼却しなければならないという場合に、希望があれば、この皮革工業組合のほうに、業者のほうにそれを差し上げる、提供するというような御配慮をいただきたいと思うのですが、これは直接総理府所管でないかもわかりませんけれども関係各省あるいは都道府県、市町村に行政指導していただきたいと思うのですが、そういう面はどうですか。
  139. 平井芳男

    ○平井説明員 われわれ、この問題も、確かに焼いてしまって灰にしてしまうということは、資源の面でたいへんもったいない、こういう議論をしておるわけでございまして、いま先生の御指摘のことにつきましても、まあ、私の省ばかりの関係でもございませんが、関係方面とも協議して検討してまいりたい、こう思っております。
  140. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ありがとうございました。ひとつよろしく万全の措置を講じてもらいたいと思うわけです。  私、質問を終わりたいと思いますが、同和対策事業の後期五カ年計画、いよいよ新年度から入るわけでございますので、五年後には完全に同対答申に基づく同和事業が完成しておった、そのときには、十年前と比較したならば、部落という存在が完全に解放されておった、国民のすみずみに至るまで差別意識というものは一切なくなっておった、こういうことになるように、先ほどからくどくど申し上げましたけれども、特に財源措置、この面について十分な御配慮を今後ともしていただきたいと思うわけです。  あわせて自治省のほうも、よその省庁がやっておることだからということではなくて、あなたのほうは、自治体の実情というものは一番よく把握しておられるわけですから、また申し上げましたように、自治大臣関係閣僚会議の一員でもあるわけですから、自治体の立場に立って十分ひとつ意見を吐いてもらって、全閣僚が一致して部落の完全解放のために一そうの御奮起を願いたい、このことを意見として申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  141. 徳安實藏

    徳安委員長 午後三時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後二時二十四分休憩      ————◇—————    午後三時二分開議
  142. 野呂恭一

    ○野呂委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、委員長が御出席になるまで指名により私が委員長の職務を行ないます。  総理府設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木下元二君。
  143. 木下元二

    ○木下委員 同和地域の住民の生活の実態、仕事や教育、環境などの実情は、依然として劣悪な条件下に置かれております。阪神間の西宮市の場合を例にとりますと、ここには芦原地区と呼ばれる同和地域があります。西宮市の総人口と芦原地区の人口に対する失業登録者数の千分比を見ますと、西宮全市に比較しまして芦原地区は約十五倍と、失対事業への依存度が驚くほど高いのであります。しかも単純労働の多くが、劣悪かつ差別的労働条件のもとでの最も人のいやがる仕事であるにもかかわらず、芦原の住民にとっては、これら現場労働が一番安定した仕事として受け取られております。このことは、この地域の住民が、今日においても身分的差別のもとで、通常の就職の道も閉ざされているという実態を示すものであります。  西宮市当局と神戸大学文学部社会調査室の共同でつくられました「芦原地域実態調査報告書」によりますと、同地域の住民は、大企業など近代的生産部門への就職がきわめて困難であることが報告されております。また、この報告書によりますと、こうした職業構成上のゆがみは、同地域における一世帯当たりの平均的収入が全国勤労者の六三・四%ときわめて低い原因をつくり、したがって、何人かの家族員の個々の収入を持ち寄って、かろうじて家計を維持するという生活基盤の弱さを生み出すと指摘をされております。さらに住宅、水道、下水、道路など著しく不備、劣悪な生活環境についても指摘をされております。申すまでもなく、こうした実態というのは、芦原地区のみではなく、全国の同和地域共通の問題です。依然として失業と貧乏の吹きだまり、これが同和地域なのであります。  こうした実情を見ますならば、同和地域対策事業特別措置法がうたい上げた、すべての国民に基本的人権を保障する憲法の理念にのっとり、同和地域住民の生活の安定、福祉の向上等に寄与するという目的達成には、まだまだほど遠いものがあるといわなければなりません。私は、政府同和対策を一そう積極的に推進し、同和地域住民の要求にこたえる責務があると思います。長官の同和対策を進める基本姿勢を伺いたいと存じます。
  144. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 木下委員のただいまの現場に沿ったお話は、非常に感銘深く伺ったわけでございます。芦原地区の実態がそのようなものであるということは、やはりこれは、同和対策事業が実際にはまだ不十分だということを示すものではないかと考えますが、私は、やはりそうした問題をありのままの姿の中でとらえて、そしてこれを直す努力をわれわれ一丸となってやってまいりたい。特に基本的な人権、そうしたものを、この際に一人でも多くの国民の方々が理解しながら、この問題の解決に前向きに取り組んでもらうような、そういう方向を、われわれは対策事業の全体の推進の基本に置いてまいりたいと考えております。
  145. 木下元二

    ○木下委員 四十九年度の同和対策関係予算を見ますと、約二百四十八億円ということで、前年度に比べまして一五六%の伸びということでありますが、予算は伸びておりますけれども政府予算全体の中で占める率というのは決して高くないと思います。これまでがあまりに低かったと思います。ことに、これまでは環境改善が主でありまして、住民にとって最も切実な仕事や教育などの要求にこたえていなかったと思います。しかも物価の急上昇で、予算が伸びましても、事業の拡大に結びつかないのであります。  とにかく、特別措置法の効力はあと五年しかありません。国が同和対策事業をもっと積極的、抜本的に推し進めていただきたいと思うのであります。特に、現状では、地方公共団体が同和対策事業を推し進め、国はただ財政的なバックアップをするような形になっております。しかし特別措置法のたてまえから申しますと、そうではないのであります。むしろ国自身が、必要な施策を講じなければならないことになっておりますし、また、施策の主体の中心は、地方公共団体よりも国のほうにかかっておるのであります。これは法律の四条、六条、八条などを見れば明らかであります。  この点から申しましても、残された五年間、政府同和対策事業を強力に推し進めていく重大な責任があると思います。長官は、この責任を十分自覚していられるでしょうか。重ねて、簡単でけっこうでございますが、お答えいただきたい。
  146. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 こうした同和対策事業特別措置法の精神は、われわれもよく踏まえて今後努力をしてまいりたいと思っております。
  147. 木下元二

    ○木下委員 さて、この差別をなくし、同和地域住民の生活に根ざしたさまざまな要求を実現して、生活の安定と福祉の向上をはかっていくという課題の達成を目ざしまして、政府と地方公共団体は重大な責務を負っていることは、述べたとおりであります。  ところで、この課題を実現していく上で大きな障害が横たわっております。それが、いわゆる窓口一本化の差別行政の問題であります。そこで、この問題について伺いたいと思います。  まず初めに、原則的な問題について確認をいたしておきたいのであります。政府は、これまで、大阪市、堺市、羽曳野市等で起こっている窓口一本化による差別問題に関しまして、再三にわたり、これは憲法や地方自治法にもとるものであるから改めるべきだ、特定の団体に入っておることによつて役務の公平を欠いたり、不公平な扱いをしてはならない、圧力団体や一部特定団体の圧力によって、行政の道が曲げられてはならないと答弁してまいりました。同時に、自治省も四十七年十二月、都道府県に対しまして、同和行政を推進するにあたっては、それぞれの地方公共団体において、行政の公平性の確保と同和行政に対する住民の信頼が確保されるよう格段の配慮をお願いするとの通達を出し、四十八年五月には、これと同趣旨の「同和対策事業の推進について」と題する関係各省次官通達を出しております。  そこで、伺いたいのでありますが、政府は、今日においても、一貫してこうした立場に立っていると思うのでありますが、そのことを確認いたしたいと思います。
  148. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お尋ねの趣旨のとおりでございまして、私らは、やはりその地域の方々に対して、同和問題の施策というものが公平に行き渡る方向をとるべきものだと考えております。
  149. 木下元二

    ○木下委員 次に、具体的な問題について質問いたしたいと思います。  まず第一の問題は、昨年の西宮問題の収拾に際しまして、市長以下各部局長が連名で、解同兵庫県連及び同西宮支部に提出しました、窓口一本化に道を開く五項目からなる「確認書」の問題であります。この「確認書」には、第四項で——ここにありますが、「真の解放運動をおこなう団体は、部落解放同盟以外にない。西宮市は、部落解放同盟を窓口として同和行政を進めてゆく。」ということを明記いたしております。これは明らかに、窓口一本化は改めなければならないとする国の基本方針に違反しております。  ちなみに申し上げますが、西宮市には、先ほど申しましたように、同和地区といたしまして芦原地区がありまして、世帯数は二千八百八十三世帯、人口は九千八百七十四人となっております。部落解放を目ざす組織としましては、公正、平等、民主的な同和行政の推進を主要なスローガンとしている従来からの同和対策推進協議会と、昨年解同兵庫県連がつくりました組織人員が二、三十人程度で、窓口一本化の行政闘争を主要な方針とし、暴力主義的な戦術をとることで有名な解同西宮支部と二つあるわけであります。同推協は、地区内の圧倒的多数の団体と住民を組織いたしております。  そこで、伺いたいのでありますが、第一に、この「確認書」は、西宮市の実態にそぐわないだけでなく、明らかに国の基本方針に違反しておると考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  150. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま御指摘の西宮の問題につきましては、私は、まだ具体的にそうしたことを聞いておりません。ですから、何ともお答えのしようがないと思います。
  151. 木下元二

    ○木下委員 具体的な問題がおわかりにならないということでありますが、私がいま申しましたように、この「確認書」によりますと、西宮市は部落解放同盟を窓口として同和行政を進めていくということを確認しておる点があるわけです。結局、具体的な事実関係は、おわかりにならないようでありますから、けっこうでありますが、この点は後に調査をしていただくことにいたしまして、問題は、同和地域内にある特定の団体、その団体を窓口として同和行政を進めていく。ほかに団体もあるし、あるいは同和地域にたくさんの住民がいる。しかし、そのうちの一つの特定団体だけを対象にして、窓口にして同和行政を進めていくということが、これはどうなのかということを伺っているわけであります。
  152. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答えにならないで恐縮でございますが、その事実関係を存じませんものですから、何ともお答えのしようがありません。
  153. 木下元二

    ○木下委員 ですから、私が質問いたしておりますのは、事実を離れまして、一般的な問題としてなお確認しておるのでありますが、同和地域内に一つの特定団体がある、その特定団体を窓口にして同和行政を進めていくということは、まさに窓口一本化ではないのか。そういうことが事実としてどうあるかということは、これは聞きませんけれども、そういうことは、窓口一本化として政府の方針に反するのではないかということを伺っておるのであります。
  154. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私たちは、やはり行政の対象といたしましては、地方自治体を相手にしております。したがいまして、その地方自治体の状態がどのような形であるかということは、別にそうわれわれとしては問題としてとらえておりません。やはり地方自治体の申請というもの、あるいは要求というもの、それが県にさらに集まって、そして、それがわれわれのほうにと申しますか、政府サイドに、各省を通じ、あるいは直接に話がもたらされるわけでございまして、その自治体の活動自身がどのような形になっておるかということは、私は存じておらないわけでございます。
  155. 木下元二

    ○木下委員 私の質問は、具体的な事実をお尋ねしておるのではないんですよ。西宮市がどうかということは、いまよくおわかりにならないと言われたから、それはさておきまして、一般的な問題をお尋ねしているのです。そういうおつもりでお答えいただきたいのですが、同和地域の中に一つの団体がある、それは、その同和地域の全住民を組織していない、むしろごく一部の住民しか組織していない団体である、その特定団体を窓口として補助金を交付するとか、あるいは教育の問題を進めるとか、そうしたいわゆる同和行政を進めていくというふうなことは、これは先ほど私が指摘をいたしました政府基本方針に反するのではないか、公平性に合致しないのではないかということを確認しておるのですが、それもお答えできませんか。
  156. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私たちは、地方自治体そのものが行動をしている、しかも、その地方自治体は、その地域住民の総意の中で行動していると解釈しております。それが、さらにただいま御指摘のような事態があるかないかということは別といたしまして、地方自治体の行動そのものは、われわれといたしましては、信用してまいるという方針でございます。
  157. 木下元二

    ○木下委員 どうも私の質問に対して、ずばりお答えになっていないように思うのですが、それでは、もう少しひるがえってお尋ねいたしますが、特定団体だけを対象にして、窓口にして交渉を進めるというのが、まさに窓口一本化の問題でありますが、その窓口一本化がよくない、それは改めるべきだ、これは以前からの政府側の答弁にも再々あるわけであります。ここに議事録もありますので、一つ一つ指摘をしてもよろしいが、私は時間の関係であえていたしません。そういう基本方針にはお変わりないのかどうか、伺います。
  158. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この同和行政の施行については、政府は昨年の五月十七日付の各省事務次官通達でその基本方針を示しておるわけでございます。具体的な事業の施行につきましては、関係地方の自治体がその通達の趣旨を十分理解して、地方自治のたてまえに沿ってこれを行なうべきものだというふうに考えております。
  159. 木下元二

    ○木下委員 そこで、各関係自治体が、その基本方針を踏まえて、行政を進めているかどうかということが問題として残るわけでありますが、それについては、総理府のほう、政府のほうは一切知らないということであっては、私は困ると思うのです。通達もお出しになり、基本方針も明確にしておるわけでありますが、一体それが、そうした趣旨に沿って地方自治体の同和行政が進められているかどうか。これは場合によっては調査もし、やはり政府のほうとしてはチェックもしていく、こういう基本姿勢が私は必要だと思うのです。そうでなければ、何のために基本方針、通達をお出しになったのかということにもなってくる。ですから、そうした基本方針に沿った同和行政が進められているかどうかということについての調査活動、これは、あまりおやりになってないような感じでございますが、ひとつこれも積極的に進めていただきたいと思います。いかがですか。
  160. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 御意見として承っておきます。
  161. 木下元二

    ○木下委員 意見として承るというのは、どういうことですか。それはやらないということでしょうか。
  162. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 あなたの御意見として承っておるのであって、やるかやらないかは、また別の機会にわれわれはこの問題について検討をいたします。
  163. 木下元二

    ○木下委員 この問題、もう少し論議をしたいと思いますが、私が言っておることに対して無理があるでしょうか。私が、いま各地方自治体における同和行政がどのように進んでおるか、政府基本方針にかなったものであるか、あるいは反したものであるか、そういったことについての調査活動はやるべきではなかろうか、こういう提案をしたのでありますが、それに対して、ここでひとつ政府側のいまのお考えを承っておきたいと思うのです。これは、通達は出したけれども、もうやりっぱなしであとのことは一切知らぬということであっては、これは、もうだれが見ましても困ると思うのです。だから、伺っているのです。
  164. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私のお答えが、あなたには御納得がいただけないかもしれませんが、やはり地方自治体というものの活動、そして特にこの同和行政というものにつきましては、地域の方々に公平に、平等にその恩恵が行き渡ることが一番期待されることでございますが、しかし、さればといって、その地方自治体がそうした方針をきめたことについて、中央政府がそれがいいとか悪いとかいうことを申すことは、自治体自体の問題とはたいへんに違うのではないか。むしろ自治体の行動は、自治体できめるということを尊重してまいりたいと私は思っております。
  165. 木下元二

    ○木下委員 私は、直ちに政府がいろいろ調査活動をやって、それに基づいて自治体に対して、こういうことをせよとかするなとかいう、干渉をせよということを言っているのではないですよ。それは大臣が言われるように、地方自治の本旨といった問題もあるし、地方自治体の尊重ということは、これは原則でありましょう。だから、そういうことを言っているのではないんです。もし一々干渉せよと、そういうふうにお受け取りになったとすれば、それは誤りであります。  じゃ、なぜ政府が通達を出して、基本方針を打ち出されたか、やはりこれは地方自治体の問題であると同時に、国全体の問題でもあるということで基本方針が出ておると思うのです。そうすれば、やはりその基本方針にのっとって実際に行なわれておるかどうかということを調査され、そしてまた、再びその基本方針を総括するとかあるいは新たなものをお出しになるとか、そういったことにも発展をするのであって、何も私は、自治体に干渉をするために調査をせよということは言ってないのです。誤解のないようにしていただきたいと思います。
  166. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいまの御質問が、西宮の問題ということから発展しておりましたので、私は、特定の地域自治体を対象にのお話だと思っておりましたが、この四十九年度の予算が御了承いただいた後には、先ほどからもるる申し上げておりますとおり、今日までの同和政策というものや同和対策というものは、もっと深い次元に立って前進をさせなければならぬ、そういう意味で、全国的な精密な調査を、各都道府県の協力、自治体の協力の中でやりたいということを申しておるわけでございまして、いま、この一つの問題点だけでなしに、全般として、今日までやってまいりました同和政策の言うならば見返しと申しますか、再検討の資料も得るために精密調査をいたすつもりでございます。
  167. 木下元二

    ○木下委員 私は、その西宮問題について、具体的な事実関係等を出していろいろ質問するつもりでおりましたけれども、もう第一問で、政府のほうは具体的な調査がやられていないということで、認識がないようでありますので、ただ問題の指摘にとどめておきますが、窓口一本化の具体的な問題ですが、いまいろいろと起こっております。  たとえば、特定の団体に対して、補助金という名目で運動資金を提供しておるという問題があります。あるいは同和建設事業をめぐる問題にいたしましても、県がその特定の団体に対しまして、地方自治法できめられた一般競争入札の原則を踏みにじって、受注者を、その特定団体に加盟しておる業者に限定をしたりしておるといった問題も起こっております。そして、いろいろな弊害が現実に起こっておるわけであります。私は、ここでもう指摘はいたしませんけれども、そうした問題等についても調査を願いたい、こう思います。  それから、これも具体的な事実として聞くのではなくて、一般的な質問としてお尋ねいたしますが、地方自治体の職員を、職務免除であるとか、あるいは出張扱いというふうな名目で、特定団体の行なう学習会あるいは糾弾会の動員に出しておるという問題があるわけでありますが、これも一般論として、具体的な事実は後で調査をしていただくとして、こうしたことが一体いいことか悪いことか、いかがお考えでしょうか。
  168. 田中和夫

    ○田中説明員 いまの先生の御質問でございますが、職員を出張させる、あるいは研修に参加させるというようなことにつきましては、これは任命権者が、それが必要であるかどうかを判断して、それによって決定する。これは職員の、たとえば研修に役立つ、あるいは教育に役立つ、あるいは意義があるというふうに判断しました場合には、出張させるというようなことになると思いますが、それは一にかかって任命権者の判断によるところでございます。
  169. 木下元二

    ○木下委員 任命権者の判断による、これは間違いありませんけれども、たとえば職員を職務免除とかあるいは出張扱いにして、その職員個人のプライベートな生活面のことに行かせる、そういうことはあり得ることでしょうか。そういうことがあっては困ると思うのです。それは、まさにもう懲戒に値すると思います。そうでしょう。いかがですか。
  170. 田中和夫

    ○田中説明員 先生のおっしゃるようなことを前提にして厳密にいえば、公務のために出かけるだけではなしに、同時に私用も果たすというようなことは、その私用の面についていえば、それは公務の命令の対象外ということになるわけでありますけれども、一般的には、現在、公務出張中に、公務が終わればいろんなことをやるというようなこともございまして、主たる任務を果たしておれば、それで公務を果たしておればかまわないと申しますか、それも任命権者の判断でございますが……。
  171. 木下元二

    ○木下委員 いや、私の質問に答えてください。私は、公務と私用を一緒にやったことを聞いていないんですよ。私用に出かける場合に、出張扱いというようなことが許されるか、あるいは出張扱いということで出ていって、何も仕事をしないでプライベートなことをやる、こんなことがあり得るかということを聞いているのです。
  172. 田中和夫

    ○田中説明員 先ほど来申し上げておりますように、任命権者がそれを私用と認め、私用であるということを承知の上で公務出張命令を出したということであれば、それは問題でございますが、それを公務であると判断して出したのであれば、それは任命権者の判断でございます。
  173. 木下元二

    ○木下委員 いや、問題は、任命権者がどう判断するかという任命権者の主観的な判断ではなくて、より基本的には、客観的にその行為が一体どういう性格の行為かということが問題でしょう。任命権者の認定いかんによって、さじかげん一つでどうにでもなるという問題ではないでしょう。その職員の実際にやった行為が、客観的にどういう行為なのか、それが一体私用なのかあるいは公務なのか、そこでしょう、判断基準は。
  174. 田中和夫

    ○田中説明員 おそらく先生は、具体の問題を頭に描きながら、仮定の問題としてお尋ねでありましょうが、この具体の事態というものを、私どもよく承知いたしておりませんので、仮定の問題としてお答えすれば、私用であるということを任命権者がはっきり知っておるのに、公用として出すということは、これはいけないことでありますけれども、任命権者が公用と認めて出すのであれば、それは任命権者の判断であると思います。
  175. 木下元二

    ○木下委員 まあ、議論はいたしませんが、問題は、糾弾会に自治体の職員がどんどん出ていっているんですよ。一体そういうことがあり得るのか。これは、かってにサボっていくということでなくて、職務免除あるいは出張扱いということで、ちゃんと任命権者の印をもらって糾弾会に参加している、こういう事態は、これは、もう当然改めるべきだと思うのです。いかがですか。
  176. 田中和夫

    ○田中説明員 繰り返し申し上げるとおりでございますが、もし問題があれば、それは監査委員の監査とか、あるいは住民の監査請求とか、あるいは議会の議員の請求による監査請求というような、いろんな道があるわけでありまして、その任命権者が不法に公費を使っておる、不法な公務出張を認めておるというようなことであれば、それは、その自治体の中のそういう手続によって、その自治体の中で解決さるべき問題であると思います。
  177. 木下元二

    ○木下委員 私は、その手続の問題を伺っているのじゃないんですよ。それは、いろいろな方法がありましょう。そういうことでなくて、私は、政治的に一体、こういうことは野放しにしておいてよいのか、改めるべきことかという、根本のところを聞いているんですよ。どうしてはっきりお答えになりませんか。
  178. 田中和夫

    ○田中説明員 仮定を置いての御質問でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、実態を詳しく存じておるわけではございませんので、いまは任命権者がそういう判断をしてやっておるのであろう、そのことが、もし間違いであれば、また是正されるような手続もあることだしということを申し上げておるわけであります。
  179. 木下元二

    ○木下委員 それから、その学習会、糾弾会の問題で、続いてお尋ねいたしますが、その費用の取り扱いをめぐる問題です。  その学習会、糾弾会の費用を自治体が負担しておる、こういう事実があります。たとえば芦屋市では、昨年十二月に解同県連を中心とする多数の人たち、五十人から、百五十人が市役所に押しかけまして、議員一人一人を糾弾するという異常な事態が起きましたが、このとき、このいわば暴徒の食事代約二十一万円、寝具代約二万円が市の公金から払われておるのです。西宮市では、昨年四月と六月に、それぞれ約五万円と約八万円、合計十三万円の糾弾会費用が市の公金から払われております。  これも、あなた方は、調査をしなければわからないと言われるでしょう。だから、私は具体的な事実については聞きません。具体的な事実は、ひとつきちんと調査をしていただきたい。その上で聞くといたしまして、私がここでお尋ねしたいのは、こういうふうな、一般的に特定団体の活動、これは市あるいは自治体の仕事には関係のないことなんですね。特定団体がやる活動、集会であるとかいろいろな活動に、自治体が費用を負担するというようなこと、これを改むべきことには、もう異論をはさむ余地がないと思うのですが、いかがでしょうか。
  180. 田中和夫

    ○田中説明員 先生御承知のように、地方公共団体が特定の団体に援助しておるという事態というのは、たくさんあるわけでございまして、公益上必要があるとか、その他地方公共団体の判断によりまして、現在でもいろいろな団体にいろいろな助成がなされております。  問題は、その助成のしかたなり、あるいは手続なり、いろいろなやり方について、おかしい点があるのではないかということになるのだと思いますけれども、その点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、いろいろな実態があろうかと思いますけれども、それらは、それぞれの地方公共団体において手続や、監査委員がちゃんとおるわけでありますから、そういうところが、しっかりしておると思いますので、そういうところで判断すべきものだと思います。
  181. 木下元二

    ○木下委員 問題は、それは、助成というのは一般的にあり得ると思いますが、一体どういう行為、何を対象に助成するかということだと思います。  糾弾会というのは、これは御承知だと思いますが、まさに糾弾する集会なんです。あるいは市の職員を糾弾する場合もあるし、市民を糾弾する場合もあるし、あるいは政党人を糾弾する場合もある、議員を糾弾する場合もあるでしょう。大ぜいで、一カ所に立たせて、何時間も糾弾するわけですよ。そういうふうな糾弾会に要する費用を、自治体が持つというようなことは、あり得べきことではないと私は思うんですが、そのことについてはいかがですか。
  182. 田中和夫

    ○田中説明員 先ほど来申し上げておりますように、具体の問題についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。問題は、その手続、方法その他が妥当であるかどうかの判断を地方公共団体がするということでございます。
  183. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、場合によっては、事情によっては、そういう糾弾会の費用を自治体が負担することがあってもいいんだというお考えですか。
  184. 田中和夫

    ○田中説明員 そういう具体の問題については、その是非と申しますか、適当かどうか、やっていいかいかぬかということの答弁は、実際の実情を知らないわけでございますから、差し控えさせていただきたいと思います。
  185. 木下元二

    ○木下委員 いや、私は、少なくとも糾弾会といったものには、自治体の公金は使われるべきではないというふうに考えるべきだと思うんだけれども、そうではなくて、内容、状況、事情によっては負担することもあり得るというお答えですね、あなたのは。そうですか、そう聞いていいのですか。
  186. 田中和夫

    ○田中説明員 その糾弾会というのが、どういう形なのか存じ上げませんが、たとえば研修会というような形、いろいろな形があると思いますが、どういうものであるのか、その実態を、地方公共団体がよく判断をする、出すべきであるか出すべきでないか、公益上必要があるのかないのか、公費で負担すべきものであるのか負担すべきものでないのかという判断を、地方公共団体が、第一義的には長が行ない、あるいは議会で審査し、監査を行なうというようなことになるわけであります。その監査の結果、その具体の事態について、公費で負担すべきものであるということに、その地方公共団体が判断したということであれば、一応それが妥当なものだといわざるを得ないと思います。
  187. 木下元二

    ○木下委員 その点は、あまり時間がありませんが、私は、もっと基本的に考え直してもらいたい点があると思うのです。  その問題に関連してお尋ねをしたいのでありますが、それは政府の行政指導上の問題にも関連した問題であります。  四十八年度の特別交付税の算定基礎資料とするために、都道府県に対しまして、特殊事情に関する一連の調査を指示いたしております。その中の同和対策費にかかわる特別財政需要額の調査において、解同の学習会や糾弾会の費用を計上させ、特別交付税の算定にあたっての基礎資料にしようとしておるのではないかと思われる点があるので、伺っているのであります。いかがでしょうか。
  188. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 お答え申し上げます。  いま御指摘のような事実があるかどうか、私たちの段階では把握しておりません。
  189. 木下元二

    ○木下委員 私の手元に資料があるのですが、ある自治体の機関が、関係する自治体に対して、同和対策費に対する財政需要額の調査を指示した文書と調査結果を集計する一覧表の写しがあります。この調査を指示した文書によりますと、調査結果は少なくない、一けたの部数の提出を指示してきております。また、この調査上の注意事項の中に、学習会、糾弾会に要した費用については、集計表のその他の欄に合計額を記載し、その明細については、別紙に支出済額と今後の支出予定額とに区分して明細するようにとの趣旨の指示をしてきております。さらに、本調査の目的につきましては、四十八年度特別交付税の算定資料とするためであると明記いたしております。  したがって、この調査は、この問題の性格、調査の目的、提出を求められている部数などから見て、国の何らかの指示によって行なわれたものであるとしか考えられないのでありますが、そこで伺いたい。  この調査は、国の指示に基づく調査なのか、それともその自治体の機関が独自にやったものなのか、いかがでしょうか。ここに資料がありますので、ちょっと見てください。
  190. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、特別交付税は、普通交付税に算入されないその地方公共団体の特別の財政需要に対して交付をするという制度になっておりまして、県分につきましては自治省で配分をいたし、市町村分につきましては県で配分をするというたてまえになっております。  自治省のほうで、いま御指摘のありましたような様式で、この特別の財政需要を報告するようにということはいたしておりません。
  191. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、自治省のほうは御存じない、地方自治体がやったものだ、こう言われるわけですか。
  192. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 ただいま申しましたように、市町村の特別交付税につきましては、県で配分をすることにいたしておりまして、もちろん自治省のほうで、各県ごとのワクをきめますが、そういった必要上、県で必要な資料として提出を求めたものではないかと思われます。
  193. 木下元二

    ○木下委員 地方交付税法というのがありますね。その五条で「特別交付税の額の算定に用いる資料その他必要な資料を自治大臣に」都道府県知事は提出をするということになっておりますね。そして、それは「自治省令で定めるところにより、」提出をするということになっておりますね。その定められた自治省令の中には、同和に関する費用等についての資料の提出ということがきめられておるのでしょうか。
  194. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 自治省令では、同和対策事業に要した費用ということで明記はいたしておりませんが、概括的に、その他特別の財政需要に関することということで、その団体におきまして、必要とされた事業その他について報告をいたしていただくということになっております。
  195. 木下元二

    ○木下委員 明記されていないということですね。  そして、この四条の七号によりますと、「交付税の額の算定のために必要な資料を収集」するのは、自治大臣ということになっていますね。こういうことになっておって、この文書によると、特別交付税の算定資料とするために、この調査をするとあるんですよ。この法のたてまえとこの文書の趣旨からいうならば、これは自治大臣のほうからの要請によってつくられておるということがうかがえるわけなんです。だから、伺っているんですよ。そうでしょう。
  196. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 特別交付税に必要な資料の様式その他につきましては、自治省では特に指定しておりません。
  197. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、これは自治大臣ではないということのようでありますが、百歩譲って、かりにこの調査が、あるいはこの調査項目が、自治体の機関の独自のものであるということであるとしましても、この調査は、地方自治体が学習会や糾弾会の費用をすでに負担しておるということ、あるいはその予定であるということを前提にした調査であります。しかも、これは、先ほどいろいろ言われましたけれども、学習会、糾弾会の、いろいろな事情であるとか動機であるとかいったことを問題にせずに、すべて計上をするようにということになっておるのです。  そういたしますと、これはやはり問題ではないか。政府基本方針であるといってきたことに違反する事態の存在を、放置してきたことになりはしないか。いかがですか。
  198. 栗田幸雄

    ○栗田説明員 特別交付税につきましては、先生御承知のように、特別の財政需要があるということで、自治省におきまして、できるだけ客観的な資料に基づいて配慮する、その具体的な事務は、市町村の分につきましては県で行なうということでございまして、県の段階でできるだけ合理的に配分をするように、自治省としては指導しているところでございます。
  199. 木下元二

    ○木下委員 私、あまり時間がありませんが、そういうことを聞いているんじゃないんですよ。問題は、私がいま示しましたような文書、これは結局、県のほうに集約をされて、県のほうから自治省のほうに出されておるということになっておると思うのです。これは、いまあなたが言われました五条のたてまえからいいましても、そういうことになっております。だから、これは自治省のほうに集約されておると思うのです。  そこで、財政需要額の調査を指示した通達の全文と、それからそれに基づく調査結果を、ひとつ提出願いたいと思うのです。
  200. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 理事会において御検討いただければと思います。
  201. 野呂恭一

    ○野呂委員長代理 あすの朝の理事会で検討いたします。
  202. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、それでは、それを提出していただいてから、さらに検討いたしたいと思います。  それから次の質問は、昨年の九月の十日ごろから末ごろにかけまして、西宮の市役所が、一部集団によりまして占拠をされたという事態があります。市長以下幹部十四名が、九月十六日に辞表を提出するという事態も起こりました。これは後に撤回されましたけれども……。職員も、この集団によりまして、糾弾に呼び出されたり、あるいは威圧、脅迫のもとに職務を行なう、こういった事態も起こったのであります。しかも、こうしたことのために、議員の自由な登院さえが、この集団によって妨げられるという事態も起こりました。市長室、助役室などで糾弾と称する暴行が行なわれました。鼻の中に水を流し込む、爪の間にきりを刺し込む、こういう残忍なリンチまで行なわれたのであります。  これに対しましては、私どもも調査に行きました。それに基づきまして、前の自治大臣兼国家公安委員長に対しまして、抗議を申し込んだこともあるわけであります。前大臣は、これに対しまして、あり得べからざることだ、直ちに措置をとる、こういうふうに言われたのであります。一体、これに対してどのような措置がとられたのかを聞きたいと思います。
  203. 赤木泰二

    ○赤木説明員 お尋ねの問題は、昨年の九月十日ごろから部落解放同盟の西宮支部の者が、市長交渉を要求して、連日市役所におきまして、夜間においても、一部の者が滞留を続けたと聞いておりますが、この問題であろうと思います。兵庫県警からの報告によりますと、昨年四月、部落解放同盟の西宮支部が、西宮市に対しまして、改良住宅への同盟員の特別入居、それから共同浴場の入浴料の値上げなどを要求いたしましたけれども、西宮市では部落解放同盟の……
  204. 木下元二

    ○木下委員 ちょっとお答え中ですが、長くなりそうなので、時間がありませんから、私は、どのような措置がとられたかを聞いているので、その点を……。
  205. 赤木泰二

    ○赤木説明員 はい、わかりました。  そういった状況の中で、九月十七日に三件の事件が起こっております。これにつきましては、それぞれ関係者からの告訴がございまして、すでに十一月三十日に捜査を終了いたしまして、十二月一日に被疑者七名を神戸地検に送致いたしております。さらに九月十九日に、今度は、市庁舎の内部で——先ほど申しました九月十七日の事件は、市議会等において起こった事件でございますが、九月十九日には、市庁舎の内部で「赤旗」を配布しておりました数名の者が、暴行を受けるという事件がございまして、これについても、告訴がございましたので、兵庫県警では、捜査員二十五名による合同捜査班を編成いたしまして、鋭意これが捜査に当たっておりますが、現在までのところ、被疑者を割り出しまして、逮捕状をとって、これが逃走中でございますので、全国に指名手配を行なって、なお目下捜査を継続中でございます。
  206. 木下元二

    ○木下委員 一名ですか。
  207. 赤木泰二

    ○赤木説明員 はい。
  208. 木下元二

    ○木下委員 その後もいろいろな事態が起こっておるんですよ。たとえば十二月三日には、西宮市の勤労会館で、差別をなくし民主主義を守る会の結成総会というのが持たれたのありますが、大ぜいの市民が参加をいたしました。そして、これは、その会の会員になるという人たちだけが入場をして、この集会が持たれたのであります。ところが、これに約二百名の集団が喚声をあげ、なだれ込んできまして、なぐる、けるの暴力もふるいました。そうした個々の暴力とともに、これは全体としてみましても、まさに威力業務妨害でございます。こういう事態も起こっておるのでありますが、これに対しては措置をとられましたか。
  209. 赤木泰二

    ○赤木説明員 いま先生御指摘の件は、当日、集会をめぐりましてトラブル等も予想されましたので、兵庫県警では、西宮警察署に二個小隊の警察官を待機させておきましたところ、午後六時五十五分ごろ、会館内でつかみ合っておるというような趣旨の一一〇番を受理いたしました。直ちに部隊を出動させましたが、その際には、すでに事態は終わっておりまして、集会の主催者側は、午後七時二十七分に流会をきめたということでございます。  ただ、兵庫県警では、なお事態の再発防止に備えまして、その出動した部隊を、引き続いて会場周辺にとどめて待機をさせておりましたところ、集会所から退去し始めました集会参加者と部落解放同盟の兵庫県連側と思われる人々との間で、会館の玄関前で再び激しい口論等がございましたので、直ちに部隊は、その双方の間に分けて入りまして、再発の防止にかかったというふうに聞いております。  この事件につきましては、昨年の十二月七日、差別をなくし民主主義を守る西宮市民の会代表人外十二名から、兵庫県警に対しまして、同じく威力業務妨害、傷害あるいは暴力行為等処罰に関する法律違反ということで告訴をしてきておりますので、目下、捜査を進めておるところでございます。
  210. 木下元二

    ○木下委員 警察の措置がどうも、なまぬるいのではないかといった批判も強いのであります。昨年秋、白昼公然とあの西宮市役所内でいろいろな暴行事件が起こっておる、これに対して送検をされた、あるいは逮捕状をといったことを言われましたけれども、現実に逮捕された者はおりませんし、しかもまた、送検ということでも、単なる書類上のことであって、現実にはあまり捜査の結果が形にあらわれておりません。こうした暴力分子に対して、泳がし政策をとっておるのではないかといった批判も非常に強いということでありますので、厳正な措置を、こうした問題に対してはとっていただきたいと要請いたします。いかがですか。
  211. 赤木泰二

    ○赤木説明員 申すまでもございませんけれども、警察は犯罪の予防、鎮圧、捜査を責務としておるものでございますので、その原因のいかんを問わず、違法行為に対しましては、所要の警察措置を講じてまいらなければならないと考えております。  したがいまして、事が部落解放運動に伴って発生したものでありましょうとも、その行為が法に触れる違法なものであります場合には、警察法の定めるところに従いまして、予防、鎮圧、検挙等の警察措置を講じて、法秩序の維持に当たってまいる。そのためには、厳正な捜査をしてまいりたいというふうに考えております。
  212. 木下元二

    ○木下委員 最後に、一つ伺いますが、本法案でも問題になっております同和対策協議会の構成の問題でありますが、この構成は、学識経験者十人ということになっておりますが、この中に部落解放同盟正常化全国連絡会議代表は入っておりません。全日本同和会の代表は二人入っております。それから部落解放同盟は二人入っております。当然、これは同対協の公正な構成をしてもらいたいと思うのでありますが、そういう趣旨から、これは、いよいよ四十九年五月二十三日で任期切れと聞いておりますが、それに際しては、ひとつこの正常化連の代表も加えていただきたい。それから、教育現場の職員を代表する人を入れるべきだと私は思います。特に、これは教育現場がいろいろと各地で混乱をいたしております。そうした問題もありますし、また同和教育の重要性ということが、やはり大きな問題でありますので、そうした点からいいましても、教職員の人を代表として参加させるべきではないかと思います。いかがでしょうか。
  213. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この協議会は、御承知のように、同和政策につきまして、きわめて重要な役割りを果たしていただきたいと思っております。同時に、われわれといたしましても、われわれの至らざるところを、この協議会において、民間の方々また現実をよく知っていらっしゃる方々の御参加をいただいて、政策の発展を期してまいりたいと考えております。  したがいまして、この委員の人選は、きわめて重要であると考えております。われわれの基本的な方針といたしましては、この問題がきわめて重要であればあるほど、公正な方々にお願いをしてまいりたいという基本的な方針をもっております。なお、現在は白紙でございますので、一応申し上げておきます。
  214. 木下元二

    ○木下委員 公正な人たちを入れたい、それは、もっともなことだと思います。正常化連の人たちというのは、同和行政の公正ということを一番強く主張しておる人たちでもあると思うのです。ひとつ前向きにこれは検討いただきたい。  特に、私いま言っておるように、ほかの全日本同和会とかあるいは解放同盟の人たちが入っておるということの均衡上からも、正常化連を加えていただきたい、こう思うのであります。もう期日は間もなくやってきます。いかがでしょう。
  215. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 木下委員の御意見として承っておきます。
  216. 木下元二

    ○木下委員 終わります。
  217. 野呂恭一

    ○野呂委員長代理 大出俊君
  218. 大出俊

    ○大出委員 二問だけ総務長官質問させていただきまして、あとの御予定がおありのようでありますから、総務長官がおいでにならぬところであと質問をさせていただきます。  最初の一点は、今度の迎賓館の問題につきまして、まことに不納得でございまして、つまり私どもの党の立場というのは、まっ向から反対であります。ただ、皆さんの法案の出し方がなかなかおじょうずでございまして、同和の問題と一緒に法律を出してくるという長官の頭のよさがございますので、どうも半分だけ賛成だという態度をとりかねる結果、結果的には賛成をせざるを得ないということになるのであります。  しからば、なぜ反対をするかという問題点でありますが、百億からの金をかけて、外交上の問題があるにせよ、今日まであれだけのものはなかったわけでありますから、それだけの金を動かし得る政府財政ならば、いま谷間にあえぐ方々がたくさんいるのでありますから、今回の母子家庭であるとか身障者の対策であるとか、あるいは施設に収容されている諸君の問題であるとか、春闘を前にして——春闘共闘委員会政府交渉の過程で得たものは二千円というわけですね、しかも一時金で。官房長官に、総額幾らくらいかかるのだと聞いたら、百二十億くらいでしょうと、こういうわけです。迎賓館にかけた金とそう変わらぬわけであります。  つまり、こういう時期にあれだけのことをなぜやらなければならぬのか。それでなければ外国のお客さんの接待ができないのか。行ってみて、えらい豪華なものに驚いた。わが党の立場からしては、片方に御主人が泊まると、はるか一里も先に女房が泊まるようになっている、それだけのことが何で要るのだという、実はそういう反対の論拠でございます。  もう一つ、この迎賓館をめぐりまして、いささか利権がいろいろな角度で表に出ている感じがいたします。この迎賓館御用ということにしたいホテル業界などでは、たいへんな実は争いめいたことが行なわれております。なぜかと申しますと、ホテル関係で申し上げれば、外務省の出身の方々が、実はいろいろなところにおいでになりまして、ホテル・ニューオータニの会長さんには、元ソビエトの大使でおいでになりました門脇さん、それからホテル・オークラは、さきのアメリカ大使をなさっておりました牛場さん、この方が最近、取締役に就任になっておられるわけであります。ここらから始まりまして、どうも一流ホテルというところには、外務省のもとのえらい方々が顔をそろえているわけであります。そこへもってきて、今回の人事でございますが、内定ということでございましょうが、迎賓館もできてしまってから法案が出てくる、その法案が通らないのに、初代館長を内定をする、やることが一々気に食わぬわけでありまして、けしからぬことをする、こう思っておるわけであります。  かつて、こしらえてからここへ出してきたときに、さんざん詰めましたら、自今そういうことはいたさないなんというようなことを言ったのでありますけれども、また出しているわけでございまして、この島津さん、これも外務官僚の長老でございます。ところが、初代館長をめぐっても、いろいろな人の名前が表に出ているわけでありますが、ホテル業界のてっぺんにおられる方々のほとんどが、外務官僚、そういったことで、また、ここに初代館長を外務官僚で迎える、まことにどうも不明朗でございまして、帝国ホテルから始まりまして、ホテル・オークラなりホテル・ニューオータニなり、取り合い合戦が、この迎賓館料理のプロジェクトチームなどをめぐりましても、利権をまじえてはなばなしく、国内でOBの外交合戦が始まるのではないかと思うのでありますが、どうもこういう人事は、せっかく皆さんが——ども立場は違いますが、純粋にお考えになったのだとすれば、好ましいことでないと断言をしたいわけであります。  まずもって、この辺のところを長官は一体どうお考えになるのか、どうもあまり気に食わぬ舞台がそろい過ぎているという感じがするのでありますが、いかがでございますか。
  219. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 大出委員のただいまの御指摘は、私もよく理解できます。もう過ぎてしまったことなんでございまして、いまさら、これをもとへ戻すわけにもまいりませんので、今後、政府といたしましては、このようなことをいたさぬように、各委員にもお答え申し上げたとおり、大出委員にもはっきりと申し上げて、この点について御了解を賜わりたいと考えます。
  220. 大出俊

    ○大出委員 これは、出た話でしょうが、帝国ホテルなど、当面迎賓館の用命は、日本ホテルに限るなんということを、力石という外務省の何課長ですか、課長さんがそう言っているんですね。ちょっと字が消えておるからよく読めませんけれども、まことにどうも外務官僚がそろってこういうことをするということは、納得いたしかねる筋合いであります。総務長官、覆水盆に返らずという形で、いまさらどうにもならぬとおっしゃるので、反対であるという意思表示だけを明確にいたしておきます。  あと関係がありますから、次に入りますが、きのうでございますか、総務長官が春闘共闘委の諸君と政府交渉をおやりになる、政府会見をおやりになる前に、春闘共闘委の代表との懇談を行なうにあたりまして、齋藤厚生大臣だとか長谷川労働大臣だとか、何人かの方が御出席の席上で、一つは、公労協のスト権問題にお触れになりまして、これまでのように違法ストに対して厳罰主義で臨むだけでは、スト権問題は解決できない時期にきている、もっと柔軟な姿勢が必要で、党としても弾力的な措置を考えてほしいと要望したと、こういう記事があるわけであります。私どもからすれば、たいへん歓迎すべき御発言でございまして、旧来財界においでになって、かつて私と一緒にやっておりました太田総評議長であるとか、たくさんの方とのいろいろなやりとりをされてこられました小坂さんでございますだけに、はっきりしたものの言い方をなさったことに、私どももなるほどここまではっきりしたことをおっしゃるかという気になっているのでありますけれども、こういうふうにお述べになりました真意を、差しつかえない限りにおきましてひとつ、やがてこの春の国内の社会問題としては、ある意味ではたいへん大きな問題にぶつかる春闘の時期でもありますだけに、できる範囲でけっこうでありますが、お述べおきをいただきたい、こう思うわけでございます。
  221. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま大出委員からお話のございましたその記事のことでございますが、実は昨日の会合におきまして、私は一言もそうしたことを述べません。にもかかわらず、何の関係か存じませんが、そういうふうに私が申したということが伝わってまいりまして、実は私、たいへんに驚いたわけでございます。  ただ、その場においては全く発言をいたしておらないことは、事実なんでございますが、しかし根本的に言うならば、現時点においての、今日かかえておるいろいろな問題に対して、力と力とだけで対決をするという世代は、日本の社会情勢として、そうした戦いというような形の中でだけ解決を求めるというやり方は、すでにもう数年前から過ぎているという基本的な認識を私は持っております。  そうした意味合いで、私が何も言わないうちに私がそう申したと出たので、実はほんとうに驚いたり、困ったりいたしておるのが実情でございますが、基本的に申すならば、こうした問題は、関係者がもっと十分に、現在の時点日本の置かれている立場を踏まえながら話し合いをして、そして、国民大衆に大きな迷惑を及ぼすようなことは避けていくという、そうした常識が——今度の賃金更改に関連する春闘というこの現実を踏まえて、よく認識され合わなければならないという基本的な理念を私は持っておるものでございます。御説明は、その程度にさしていただきたいと思います。
  222. 大出俊

    ○大出委員 たいへん前向きなお話をいただきまして、長らくその方面を手がけてきた私の立場からすると、それだけで長官の真意がわかる気がするのでありまして、政府全体がそういう方向でものを見直すという時期にきている、実はそういう気がするのであります。  長い時間とりませんが、一つだけここで申し上げておきたいのは、古いことですが、ILOのドライヤー調査団が日本にやってきた時期がございます。この問題に、私も大きくタッチしている一人であります。なぜならば、昭和三十三年のストライキのときに、私、いまの全逓の中央本部書記長でございましたが、時の郵政大臣は、ほかならぬ田中角榮現総理であります。徹夜でいわゆる角さんとやりとりをいたしまして、翌日ストライキを指令して、東京駅前の中央郵便局をからにいたしました。三十三年春闘でありますが、その責任をということで、総理が私の首を切ったわけであります。当時は郵政大臣であります。だから、私は、いまの全逓の一番初めに首を切られた人間なのであります。実は三十三年以来、今日まで長い年月がたつわけであります。足かけ十六年ぐらいになるわけでありますけれども、この十六年間、私をはじめとして、その以後全逓関係に、春闘のたびに、あるいはその他の紛争のたびに処分というものが行なわれ続けてまいりまして、組合員の三分の二をこえる処分者が現にいるわけでありますが、それにもかかわらず、ストライキという行動は、年を追ってふえていくばかりであります。  いまだに、この処分に基づく昇給の延伸から始まるあるいは減給という形で給料が減る、あるいは主任なり主事なりになれない、こういう俸給上のあるいは身分上の損失が十五、六年の間、そのまま続きっぱなしで、いわゆる実損の回復もただ一人行なわれていないというのが、郵政省と全逓信労働組合との関係であります。だから、たいへん険悪な労使関係になる。つまりドライヤー調査団の報告によりますと、これは十三節の二一二一号でありますが、なぜ一体、公共部門における労使関係がかくのごとき陰惨な対立的状態に置かれ、混乱をしたかという点を突き詰めてみた結果として、二十三年でございましょうが、政令二百一号——時の吉田内閣時代でありますが、「政令二百一号によってもたらされた公共部門のストライキの全面的、絶対的禁止が、その後の労働関係の雰囲気にかくのごとき影響を及ぼしたものだと確信をする。」、つまりストライキ権の絶対的禁止というものが、以後の労働関係をかくのごとき陰惨なものにしてしまったという分析を、ドライヤー委員会はしているわけでありますが、こゝまでくれば、ドライヤーが指摘している、つまり混乱したときには、原則に返れというのでありますが、原則に立ち返って、労使関係を見直す気持ちが、政府の側にあってしかるべきである。  なぜならば、ドライヤー勧告それ自体は、労使関係改善のイニシアチブは、政府が取るべきであるということもあわせて指摘をしているわけでありますから、そういう意味でこの問題は、言った言わないということは別といたしまして、長官の真意のほどが、そこにあるということであるとすれば、いま私が申し上げました原点に立ち返って、ひとつ見直してみるということ、そして新しい方向を打ち出していただくというところに力点を置いて、この春闘なるものの解決に向かって御努力をいただきたいものだという気がするのであります。  念のために、その辺のことを、先ほどは新聞記事について聞きましたので、記事を離れまして、もう一ぺん聞かせていただきまして、あとの御予定もあるようでございますから、長官のいないところの質問にいたしたいと思いますが、もう一度だけ御答弁いただきたいと思います。
  223. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 たまたま昨年の九月に出ました公務員制度審議会の答申、これは政府も、また公務員共闘もこれを尊重していくという合意事項もございます。その中に触れられております公務員のスト権の問題は、非現業の職員並びに現業の職員それぞれに分けられて公務員制度審議会の意見が付されております。私は、やはりこの公務員制度審議会の答申を、単にストライキ権というだけの問題としないで、もっと幅広く、あそこに盛られておる、八年の労作である公制審の答申の精神を、くめるものはくみ、またその中で可能なものについては、できるだけ早い時期にこれらの具体的な関係の調整をしてまいりたいという基本的な考えを持っております。  ただ、残念なことは、大出委員でございますので、率直に言わせていただきたいのでありますが、公制審の答申を尊重すること即三公社五現業の皆さん方に、現業の職員団体に対してストライキ権を与えるのだという解釈が、非常に簡単になされておる点でございまして、この辺のところを、私といたしましては、前向きに取り組む場合の一番大きなネックに感じております。しかし、そうしたことは、これからのいろいろのお話し合いの中で、また同時に、政府内部におきましても、この公制審の答申を尊重するという基本的な考え方は、十分理解されていると思いますが、具体的な問題になりますと、そこに、いろいろの——ただいまも大出委員が十六年前に受けられたいろいろな問題、そうした記憶というのは、なかなか根強いものでございまして、こうした考え方から前に進めるということが、内部的にも困難な状態にあるわけでございます。  しかし、そうした問題を越えても、この現在の日本の非常に困難な事態というものを認識しながら、国民全体が平和で、前向きに生活できる社会をつくるということを考えて努力しなければならぬという考えは、少しも変わっておりません。また別の面から、官公労と一括して言ってはいけないのかもしれませんが、現業の皆さん方のそうしたあせる気持ちはよくわかりますが、やはり基本的に問題を煮詰めて、長い日本の将来の社会の安定というものを、ぜひ実現するように、大出委員の御協力をいただければ、私は非常にありがたいと考えております。
  224. 大出俊

    ○大出委員 もうこれは質問ではございませんが、一言だけ、いまお話が出ましたからつけ加えさせていただきますが、確かに公制審八年の労作で結果が、最終答申が出まして、満場一致の形をとるべく相互に努力されたわけでありますが、それをどう見るかということなんでありますが、公労協側は即スト権の奪還というのにわが手がかかったというとり方を確かにする。だが、同じ意味政府のほうは、全くそれと正反対の立場をすぐまたおとりになる。これは、どっちもどっちだということですね、その意味では。  小坂さんは、組合の側だけおっしゃるが、政府は官房長官の談話が出ておるわけですね。書いてある中身は、「政府としては、これらの点に留意し、可及的すみやかに争議権の問題を解決するため」と書いてあるだけであります、主文の焦点は。だから、争議権の問題を解決するため、こういうことなんですね。争議権問題を解決するとすれば、争議権をよこせというのとやらないというのとの争いでございますから、そうすると、よこせというほうは、いきなりわが手がかかったり、こう言う。やらないといってきたほうは、争議権をやることを全く意味していないという談話になる。  そこに実は問題がございます。だから、そこを詰めていただかなければならぬのは、これからでありますから、そういう意味で長官がこれを言ったか言わないかは問いません。問いませんが、新聞に載っているここが、実は問題の焦点であるという認識をいたしますので、先ほど来、長官の考え方を承っていたわけでありまして、どっちもどっちだというかっこうに第三者が見ればなるわけでありますから、しかし書いてあるのは、「争議権という問題を可及的すみやかに解決する」、こういうわけでありますから、その詰めを、お互いにひとつまとまるような方向で進めていくのには、じゃどうするか、たいへんむずかしいところにきているわけでありまして、これ以上御答弁をいただく気はございませんけれども、ぜひひとつ——ILOの最終答申をめぐっても、また正反対な立場が出ているわけでありまして、かくて新聞の社説は、ILOの最終答申は、国際的な労働基準というものを踏まえて、きわめて常識的な結果であったと書いている。その常識が通用しないのでは困るわけでありまして、したがいまして、ぜひひとつ、そういう方向で今後の御努力をお願いいたしまして、長官のあとの日程がございますので、長官に関しまする質問は、これで終わらせていただく次第でございます。  たくさんの方が質問をいたしておりますから、多く申し上げる気はありませんが、労働省の方にお出かけをいただきましたので、二、三点聞かせていただきたいわけであります。  ただ、これは、おいでになった方のお立場からして、妥当な質問にならぬのかもしれませんけれども政府の考え方がおありだろうと思いますから、状況いかんでは場所を変えてまた承りますが、とりあえず承って、御答弁いただきにくければ、それはそれでけっこうでございます。  一つは、ILOの結社の自由委員会の百三十九次報告、私がいま使っておりますのは、労働大臣官房国際労働課の訳したものによります。皆さんのお訳しになったのを使うのが一番正しい、つまり皆さんにお答えをいただく面でいいんではないかと思いますから。この中に、九十九というところに、「一九七三年四月二十八日、政府及び組合代表は、公共部門及び民間部門の双方の数組合が参加したゼネストを終結させることのできた合意に到達した。」、この七項目、つまり時の官房長官と総評との間における、山下元利副長官も入りまして成り立ちました念書と申すものでございます。一の「労働基本権問題については、第三次公制審において今日の実情に即して速やかなる結論が出されることを期待するとともに、答申が出された場合は、これを尊重する、」、これは、いま私が総務長官とやりとりした場面であります。それから二番目に、「政府は、労使関係の正常化に努力する、」、これは政府の責任をここで明らかにしているわけであります。三番目に、「ILOの勧告、結社の自由委員会の報告等に対しては理解し、慎重に対処する、」、これまた私がいまILOの最終報告に触れて長官とやりとりしたところであります。それから四番目に、「処分については、公正慎重に行う、」、五番目に、「過去の処分に伴う昇給延伸の回復の問題については、引続き協議する、」、これは意味がございまして、大木総評事務局長と官房長官、山下副長官との間のやりとりは、ほかならぬ全逓の問題がございまして、私が先ほど申しました昭和三十三年の処分、これが最初であります。田中総理が郵政大臣のときであります。石田博英氏が労働大臣のときであります。  私はじめ七人ばかりが首になったわけでありますが、このときに首にならぬたくさんの処分者も出ております。以来、今日まで実際の損害の回復というものが、事、全逓信労働組合と郵政省の間に関する限りはゼロでございます。一人も回復されていない。また、いかなる軽減も行なわれていない。だが、他の公労協その他の組合は、国鉄などは一番進んでおりますが、大なり小なりほとんど実損は回復されてしまって、ないのであります。全電通なんかにおきましても、同様のことが言えます。  ということになりますと、労使間にいかなる難問が控えているにせよ、三十三年でございますから十六年目でありますけれども、十六年間、他にはほとんどもう回復して、なくなってしまっている実損が、今日まで残り続けているということは——ILOはストライキを行なったからといって、それが違法だからといって、身分上の差別であるとかあるいは俸給上の損害であるとかいうものが長期にわたってついて回ることはよろしくないと何べんも言っているわけですね。理屈を郵政当局がいかに言おうと、労働省がいかにおっしゃろうと、政府が言おうと、現に十六年間そのままというばかなことは、ILOの国際常識に基づく勧告から見て正しくはない。理屈は抜きであります。ゼロであるという現実が、ここにあるからであります。  そういう意味で、この念書の五項の「過去の処分に伴う昇給延伸の回復の問題については、引続き協議する、」、この背景は、全逓問題があるので、これを入れたのであります。以下二つばかりの問題がございますが、七項目の念書、これは一体あったのかなかったのか。当時、実は郵政当局は、最後まで念書はないと言い張った。私は、実はその念書はふところに入っていたわけでありますが、出して見せても、ないと言い張ったわけであります。これはILOの百三十九次報告に政府側から報告をしているわけですよ。ないと言った政府が、何で一体ILOという公の国際機関に、こういう合意をいたしましたと麗々しく報告をしたのですか。私どもにはないことになっていた。なぜ一体、国際機関に、ないと言った相手万があるのに、こういうことがございましたといって麗々しく報告をして、つまり、だから政府は努力しているのですから、政府の立場を御理解をという言い方をなぜするか。  まことにもってけしからぬ話でありますが、一体労働省は、おたくは、これを訳したのでありますから、この念書について、どういう理解をされているのかという点が一つと、いま私が申し上げました実損の回復にかかわるこの問題をどうお考えになっているか。実は、今回の春闘にあたって二、三の方々から、公労協の問題の解決を、これから詰めるにあたり、全逓問題のその実損回復、この問題で話をしたいということを言ってこられております、非公式な話でありますが。それだけに、おわかりになっているのだとは思うのでありますが、ひとつ道正さんにかわって、おたくからお答えをいただきたいのであります。
  225. 寺園成章

    ○寺園説明員 いま先生が御指摘になりました結社の自由委員会の第百三十九次報告の九十九項に書かれております、いわゆる昨年の春闘の際の四月に結ばれました七項目の合意書、これは、そういう合意をしたことはございませんということを申し上げたことはないと承知いたしております。したがいまして、こういう七項目の合意というものが政府、春闘共闘委間で結ばれたということは、はっきりしております。したがいまして、その事実をILOのほうにも報告をしたということでございます。  それから、第二点目の実損回復の問題でございますが、三公社五現業のうち一部については、すでに措置がされておる。それから郵政事業につきましては、この問題が措置をされておらないというようなこと、それからILOでも指摘をされておるということは、先生のおっしゃるとおり、私どももそのように承知をいたしております。昨年の七項目の合意におきましても、この問題について協議をするということになっておりますが、この問題は、最終的には労使の間の問題であろうかと思います。したがいまして、郵政におきまして、この問題につきまして、労使間で十分な話し合いがなされまして、円満に解決されれば一番いい形ではなかろうか、こういうふうに私は思っております。
  226. 大出俊

    ○大出委員 あなたに、これから先を詰めるのは、どうも少し御無礼かと思うのでありますが、ただ話に出しましたから、言うだけのことは申し上げておきます。  第一は、あの夜、合意書ができ上がってすぐ総評の大木君と私の仲ですから、その合意書が私のふところに入っている。世の中まだだれも知らぬ時分であります。それで官房長官公邸に電話を入れ、さて山下副長官のお宅に電話を入れて合意書の存在を確かめた。ないと、こういうわけですね。これは、あなたのほうでお調べいただけばすぐわかります。郵政省が、まさにいまの労使交渉で政府がないとおっしゃるからない、初めからしまいまでないと回答した。両方とも議事録をとっているんですから……。あなたは、ないと言ったことはないというけれども、あると言ったことは政府側は一度もない。だから、大臣がおれば、何でいままでないと言ってきて——あるのだということになるのですけれども、おいでにならぬから、この点は確かめるだけにしておきます。  それでは、労働省サイドとしては、今日はあるということを、これは政府の労働政策上、やはりおたくの担当でございますから、労働省はあることを認めたが、ほかの省は認めないというのでは困る。いいですか。使用者としての政府である郵政省と政府としての政府があるわけですから、ILOのことばをもってすれば、だから、いまのお話は、使用者としての政府である郵政省と全逓信労働組合の間の労使関係なんですね。そうでしょう。そこにもう一つ当事者能力の問題がある。  だから、公務員制度審議会でも、当事者能力の問題に触れて最終答申を出している。ふしぎな関係で、これはILOも指摘しているのでありますが、使用者としての政府とガバメントとしての政府との関係が明らかになっていないじゃないか、当事者能力がないじゃないか、だから、皆さんが当事者能力を郵政省という使用者としての政府に与えなければ、労使関係というもの、つまり労使間の問題というものは、前に進まないことになっていることは、御存じのとおりであります。そうでしょう。  だから、この存在をお認めになるならば、「引続き協議する」という一項目は、そのためにあるのでありますから、全逓と郵政の間における労使関係に対する念書はあるんですよ。この項目は、当時そのことのために「引続き」が入ったんですよ。ほかは全部回復しちゃっているんですから、普通ならば触れる必要ないんですから。そこらのところを明らかにする責任があなたの省にあるのですが、そこのところはいかがでございますか。
  227. 寺園成章

    ○寺園説明員 御指摘の昨年四月二十七日の七項目の合意書、これは政府と春闘共闘委との間で結ばれたものでございます。したがいまして、ここで協議をする対象というのは、少なくともこの七項目の合意書に関します限りでは、政府と春闘共闘委との間ということになろうかと思いますが、労使間の問題につきまして、話し合いによってもめごとを解決をしていくということは、この合意書のあるなしにかかわらず、本来的にあるべき姿であろうと思いますので、この問題につきまして、郵政当局と全逓労組の間におきまして、十分な話し合いが行なわれ、円満な解決がはかられるということが望ましいというふうに思っております。
  228. 大出俊

    ○大出委員 つまり十六年間も実損回復ゼロで今日に至っている。片やILOは、何べんもそのことに触れている。最終答申は、全逓問題に直接触れているわけでありますが、繰り返して同じことを言っている。そこで、ここでは念書を取り上げている。念書というものは、実はあなたがあることを、いまはっきりさせましたが、この春闘の中でもう一ぺん念書を表に出そうという、実はそういうものの考え方が労働省にもおありになる。  だから、なおのこと、やはりあなた方のほうが、これは、あなた直接という意味じゃありませんけれども、御相談をいただいて、郵政当局に対して、当時、念書はないとあなた方は言った、私がいま申し上げたとおりなんですが、それをお確かめいただいて、あるものはあるとお認めをいただかなければ、ガバメントとしての政府——春闘共闘委の中には、公務員でない諸君も入っているんですからね。つまり春闘共闘委で、この念書というものを、判こを押しましょうといって判こを押しているんですからね。現物も私はちゃんと手にしております。だから、約束をしたのです。それが、その中の使用者としての政府が、それを認めていない事実があるのですから、したがって、その点はそうではなく、あったのだということを明らかにしていただく。その点は皆さんに責任があると私は思っている。郵政省にそれは言うていただかなければ困るわけであります。その上で円満な解決をということにしていただかぬと、この問題の話し合いが、まず軌道に乗らない。それは、そういうふうにお進めいただきたい。  この予算の分科会の最中に、郵政当局とあらためてこの点は質問をいたしますけれども、つまり、そこのところを明らかにしていただきたくて、実は労働省関係の分科会に時間をとったのでありますが、ほかの人との関係で譲ることにいたしましたので、きょうここにお出かけをいただいたわけでありますが、その点はお認めをいただいたようでありますから、郵政当局がまた昨年と同じことを言わぬように、あなたがおっしゃったようにおっしゃるように、そういう話ができるように、これは、あなたの責任でてっぺんの方々にお話をいただきたいのでございますが、いかがでございますか。
  229. 寺園成章

    ○寺園説明員 先ほども申し上げましたように、昨年の四月に七項目の合意を見たということは、そういう事実がないということを申し上げたことはございません。したがいまして、この七項目は、はっきりとした形で存在をするということでございます。その点郵政当局がどのように理解しておりますか、私は、たぶん御承知だろうというふうに思いますけれども、その辺のところは、先生御心配の点がございましたら、私どものほうからも申し上げてみたいというふうに思っております。
  230. 大出俊

    ○大出委員 最後に、「公制審の答申が出た以後、可及的すみやかに解決するため」というところから、以後にいろいろなことが書いてありますが、このILOの最終答申の中でも、これに触れております。つまり、ストライキ権の解決という意味で、総理府としては、その後この点をどういうふうに扱ってこられたのか、またこれから扱おうとするのか、そこらのところを、ひとつ明らかにしていただきたいのであります。
  231. 佐々成美

    ○佐々政府委員 私、総理府の総務審議官でありますけれども、担当ではございませんので、こういう場合でございますので、返答を御遠慮させていただきたいと思います。
  232. 大出俊

    ○大出委員 労働省としては、一体その後——最終答申が出ましていろいろ書いてありますが、時間がありませんから、重ねて言いませんが、皆さんのほうは、何か相談をする機関をお考えのようでございましたが、以後どんなふうな形で検討する、あるいはしてきたということになるわけでございますか。
  233. 寺園成章

    ○寺園説明員 公務員制度審議会の答申に対しまして、これを尊重して対処するという方針は、政府の方針でございますし、労働省としても、当然その方針に従って検討を行なっておるわけでございますが、御指摘のスト権の問題は、御承知のように公制審の答申の取り扱いにつきましては、総理府に公務員問題連絡会議というものが置かれまして、その場で検討することになっております。労働省もそこのメンバーに入っておりますので、関係各省と十分連絡をとり、協議をしながら、この問題について検討を重ねておるということでございます。
  234. 大出俊

    ○大出委員 それでは、担当の方が、総理府おいでになりませんので、この点は保留をさせていただきまして、あらためて御質問申し上げることにさせていただきます。担当でない方に発言を求めることは、かえって御無礼をいたしますから……。  以上で終わります。
  235. 野呂恭一

    ○野呂委員長代理 他に質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  次回は、明八日金曜日午前十一時理事会、十一時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十分散会