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1974-05-22 第72回国会 衆議院 逓信委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十二日(水曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 廣瀬 正雄君    理事 宇田 國榮君 理事 阿部喜男君    理事 古川 喜一君 理事 土橋 一吉君       今井  勇君    小沢 一郎君       片岡 清一君    久保田円次君       志賀  節君    田中  覚君       高橋 千寿君    坪川 信三君       野中 英二君    村岡 兼造君       金丸 徳重君    松浦 利尚君       森井 忠良君    平田 藤吉君       田中 昭二君    池田 禎治君       小沢 貞孝君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 原田  憲君  出席政府委員         郵政大臣官房長 神山 文男君         郵政省郵務局長 石井多加三君         郵政省電波監理         局長      齋藤 義郎君         郵政省人事局長 北 雄一郎君  委員外出席者         外務省アメリカ         局外務参事官  深田  宏君         文部省大学学術         局視学官    五十嵐耕一君         郵政省電波監理         局放送部長   河野  弘君         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         日本電信電話公         社厚生局長   小沢 春雄君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     小野 吉郎君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    藤根井和夫君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   藤島 克己君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   松浦 隼雄君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   野村 忠夫君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   坂本 朝一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   斎藤  清君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     山本  博君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     川原 正人君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     中塚 昌胤君         参  考  人         (日本放送協会         経理局長)   堀場 仁徳君         逓信委員会調査         室長      佐々木久雄君     ————————————— 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   高橋 千寿君     足立 篤郎君   水野  清君     宮澤 喜一君   村岡 兼造君     田中 龍夫君 同日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     高橋 千寿君   田中 龍夫君     村岡 兼造君   宮澤 喜一君     水野  清君 同月二十二日  辞任         補欠選任   園田  直君     野中 英二君   中村 寅太君     今井  勇君   西村 英一君     片岡 清一君   長谷川四郎君     小沢 一郎君   水野  清君     田中  覚君   久保  等君     松浦 利尚君   米田 東吾君     森井 忠良君   池田 禎治君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     中村 寅太君   小沢 一郎君     長谷川四郎君   片岡 清一君     西村 英一君   田中  覚君     水野  清君   野中 英二君     園田  直君   松浦 利尚君     久保  等君   森井 忠良君     米田 東吾君   小沢 貞孝君     池田 禎治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本放送協会昭和四十七年度財産目録、貸借対  照表及び損益計算書  逓信行政に関する件      ————◇—————
  2. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これより会議を開きます。  逓信行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。阿部喜男君。
  3. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 先般もこの委員会大臣にちょっと御質問があったようでございますが、いわゆる郵便料金値上げの問題がかなり新聞等で報道されておるようでございますけれども、料金値上げ郵政財政の問題についていま大臣はどんなお考えを持っておられるのか、大まかな考えを承りたいと思います。
  4. 原田憲

    原田国務大臣 この問題につきましては先般もお答えを申し上げたところでございますが、本年度予算を編成する際にも、今日の郵便事業がたいへん窮迫をしておるということで、実は審議会のほうからも、三年間にわたる郵便事業健全化のための郵便料金改定を織り込んだ答申もいただいておるところでございます。しかしながら、その当時におけるところの政治情勢というものは物価抑制が第一番であるということで、実は小包を除きましては本年度予算には料金改定を織り込まないという態度をとったことは御存じのとおりでございまして、これが基本的な考え方でございますが、いまお尋ねのように、先般の仲裁裁定によりまして約三〇%という、金額にいたしますと相当な金額を要する、こういう事態がいま発生してきておるわけでございます。これに対しまして、基本的な姿勢、処置というものとからみ合わせてどう対処するかということをいま真剣に検討しておるというのが現状でございます。
  5. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵政財政あり方について郵便料金値上げがいいのかどうか、これはいろいろ議論のあるところだと思いますが、これは後ほどの議論にしたいと思いますけれども、ただ巷間伝えられるところでは、郵政審議会答申をした料金値上げ内容と、いま郵政当局でいろいろ検討されておる料金値上げ内容はかなりな違いがある。たとえば、はがきについては審議会が二十円ぐらいが妥当であろうということになっておっても郵政当局では三十円だ、あるいは第一種郵便については四十円を五十円とか、審議会答申を大幅に上回る内容のものでなければ郵政財政がどうも運用ができない、そういうことも承っておるのですが、その点はどうなっておりますか。
  6. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。  先般も当委員会でその点についての御質問があったわけでございますが、ただいま大臣からお答えになりましたように、基本的にこの収支不足財政状況をどうやって解決するかという最高の方針がまだきまっておりませんので、これからいろいろ関係各省とも協議いたしましてきめていくわけでございまして、一般会計からの繰り入れということも考えられると思いますし、また借り入れ金をもっとふやすというような解決もあろうと思いますし、また料金値上げということももちろんあるわけでございます。  昨年の十二月の郵政審議会答申で、手紙を二十円のものを三十円に、はがきを十円から二十円にということを基本にいたしまして、しかもそれぞれの上げる実施時期はことしの七月一日から、小包につきましては四月一日から、そういったような条件で料金値上げをすれば、今後四十九、五十、五十一年の三年間はもつであろう、そういったような答申がなされたわけでございます。先ほど大臣から触れられましたように、今般の仲裁裁定によりまして、当時の審議会答申に予想もしてなかったような大幅なベースアップが行なわれましたので、これによってあの二十円、三十円という審議会答申どおりの案では、答申にいっておられましたような三年間の収支の均衡をはかるということはむずかしいということがいえるわけでございますが、じゃ一体どうするのかということにつきましては、新聞等で伝えられておりますものも郵政省として正式にそういったものを議論しておる段階ではございませんで、いろいろ憶測等もありまして、二十円、三十円では足りないとすれば一体どの程度になるのかというようなことからいろいろな数字が出ておるものと考えられます。政府として、これからどうやってこの対策をきめるかということにつきまして基本的に態度がきまっておりませんので、われわれのほうでいま具体的な案を検討しておるという段階ではございません。
  7. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 まあそういう段階であればここで特に議論をする必要はないと思うのですが、ただお伺いしておきたいのは、郵政審議会答申がありましたが、もちろん郵政審議会も今回の賃金改定が相当大幅なものになるというふうな点について必ずしも見通しが明確でなかった。それが単に料金引き上げの時期がずれたということのほかの大きい要因になっておると思われます。そういったことを勘案いたしますと、これはもう仲裁裁定はきまったわけでございますから、私は郵政審議会というものの性格上、もう一回、郵政当局として郵政審議会にどうすべきかということについて諮問をする必要があるのではないか、そういうことを考えていますので、郵政審議会がせっかくあの当時の時点で考え答申をしてくださったものを、その後経済情勢が変化をした、あるいは引き上げの時期がずれたからということだけで、当局でかってに審議会答申を無視した計画を立てるべきでないのではないか、むしろ当局でそういうお考えがあるならば、それについて審議会のお考えをお聞きになる、ある意味では広く世論を結集するという意味からも必要ではないかというふうに考えますので、料金改定の問題がもし爼上にのぼるとするならば、その郵政審議会との関連について、大臣のお考えをもう少し明確にしておいてもらいたいと思うのです。
  8. 石井多加三

    石井政府委員 若干事務的なこともございますので、私からお答えいたします。  ただいま御指摘のありましたように、かりに郵便料金値上げを取り上げる場合、しかもまたそれが、前回郵政審議会から答申をいただいた線から大幅に逸脱するような形で考えなければならぬということになりました場合には、ただいま御指摘のとおり、当然郵政審議会に再諮問いたしまして、その答申を得て行なわなければならない、かように考えております。  ただ、これはよけいなことでございますが、前回郵政審議会への諮問は、御案内のとおり郵便事業の経営を健全化する方策ということでございまして、ただ単に料金値上げ諮問したわけではございません。いろいろの合理化とかあるいはサービス問題等基本に触れる事業あり方についての諮問をし答申をいただいたわけでございまして、したがって、前回は約一カ月半にわたってこの問題についての審議をわずらわしたわけでございますが、今回は、料金値上げだけの問題に限ってやるといたしますと、そんなに長期間は要しないのではないか、そういうふうに考えております。
  9. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その問題については、特に十分世論の動向を見きわめるという意味で慎重に対処をしていただきたいということを要望して、次の問題に移りたいと思います。  郵政省はかねて郵便外務員海外派遣ということを行なってきて、これは士気高揚とか、あるいは日常の労苦に対する慰労という意味も含められておるようでございますけれども、今年たしか第四年目になるのではないかと思いますけれども、本年の計画ございますか。当局のほうでけっこうです。
  10. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。  郵便外務員海外派遣問題は、ただいま御指摘のとおり昭和四十六年度から実施いたしておるわけでございまして、今年度も、来たる六月六日から十一日までの約一週間アメリカに、郵便外務員方々約百十人と管理者の人十一人、その他通訳を合わせまして百二十六人の海外派遣を、これは飛行機の一機をチャーターして行くというような計画を持っております。
  11. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 どのくらいの予算が必要になるわけでございますか。
  12. 石井多加三

    石井政府委員 全部で約二千八百万円というふうに考えております。
  13. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵政事業全体の予算からすればそう大きいものとは思いませんが、先ほど来議論をしておりますように、郵政事業が、特に郵便事業が膨大な赤字をかかえて、郵便料金値上げなりあるいは一般会計繰り入れ等措置が行なわれなければ破綻をしそうな状態になっておる、そういう時期に、どうしてもこれはやらなければ郵政事業が運用できないというものではない、ある意味では慰労であり、ある意味では士気高揚というふうな内容のものですから、私は平常の状態において、かかる計画について決して反対するものではありません。しかし、今年のような場合には今年の場合のような措置をとるのが事務当局の責任ではないかという気がするわけです。大臣、そういう計画をお聞きになっておると思うのですが、ことしのような時期に、どうしてもやらなければならぬ問題でないものに二千八百万という膨大な郵政予算をつぎ込んでおやりになるということについて、どうお考えになりますか。
  14. 原田憲

    原田国務大臣 これは阿部さんの御意見によりますと、こういうときには節約したらどうだ、反対ではないけれども、こういうときにはと、こういう御意見のようでございますが、いま郵便事業の中で一番大事なことは、一生懸命に皆さんがつとめて国民サービスをするということに対して、いま士気高揚ということばがございましたが、そういうことが大事ではないかと考えるわけでございます。一生懸命やる者が、よかった、またがんばろう、こういうことが非常に大事なことであろうと思いますので、ほかで節約することがあるならばまずそれを切り詰めるということで、そういうことについては、まあできれば、御苦労であった、しっかり頼みますよということはやってもよろしいのではないか、このように考える次第でございます。
  15. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は一利用者という立場から考えれば、来年かりに財政が許すならば倍の人を派遣することがあり得ても、今年のような時期には、国民に対して、郵政省もこれだけ予算を節約してがんばっておりますということを見ていただくためにも、やはり中止すべきだというふうに考えますが、大臣はやりたいという意向のようですから、どうしてもおやりになるとすれば、それに派遣をされる職員選考というものが当然行なわれると思うのですけれども、その選考基準は大まかにどういうことになっておりますか。
  16. 石井多加三

    石井政府委員 お答えいたします。  郵便外務職員の中で、勤続年数五年以上の職員であるということ、それから平素執務状態が良好で、事務についての研究心が強く、執務の能率が高いなど、勤務成績が優秀である職員対象にするということ、それからなるべく各県に一名が最低振り当てられるようにするというふうなことで、各郵政局にあとはそれぞれの管内での適格者を選ばせまして、最終的に先ほど申し上げましたその百二十人ばかりの職員を選ぶということでございます。
  17. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 一応私は緊急を要する問題だけですから、労使関係の問題にまで及んで議論をする意思はありません。ありませんが、この選考の中で、今回の春闘ストライキ参加をした郵便外務員方々除外をされるやに聞いておりますが、どうですか。
  18. 石井多加三

    石井政府委員 郵便外務員と申しますと、先生御案内のように全国で約七万人もいるわけでございます。四十六年から三カ年間にわたって、すでに毎年百人ずつの人を海外派遣いたしましたけれども、全体の中ではまだほんのわずかな人でございます。したがいまして、今回の選考も先ほど申し上げました基準によりまして選びましたわけでございますが、きわめて成績の優秀な人、そしてまた一つの県で一人ぐらいしか選ばれないほどの非常に厳選主義といいますか、限られた人でございます。そういう人を選びます際に、個々の郵政局でいろいろ平素状況を判断してきめるわけでございますが、今般の春闘等でストに参加したような職員でなくても、それ以外の職員の中に適格者が十分おって、そういった人がいま申し上げたような数に該当すれば、それで十分ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  19. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 ちょうど反対の言い回しになったわけですが、端的に言うならば、ストライキ参加した者は除外せよ、そういうことになりますね。そうでない人で十分適格者がおる、こういう言い方は、逆にいえば参加した者は除外せよということでしょう。七万人の郵務外務員の中では今回ストライキ参加した者は何人ありますか。
  20. 石井多加三

    石井政府委員 ただいまその正確な数字は持っておりません。
  21. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は、大体三分の二くらいは参加をしておるのではないかと思われます。そうすると、大体四万以上の方々が七万分の一という選ばれる可能性から除外をされるわけですね。そうでしょう、三分の二が参加をしておるとするならば。この方々は一体七万分の一の可能性を失ったときに、特に郵政当局方針として春闘参加した者は選考対象から除外をするといわれたときに、どういう感じを持つでしょうか。その可能性はまさに七万分の一です。けれども、七万分の一の可能性ストライキ参加したゆえをもって消されたときに、その職員はどういう感じを持つとお考えですか。
  22. 石井多加三

    石井政府委員 ただいま御指摘数字、約七万のうちの四万あるいはそれ以上の人が除外されるわけでございますけれども、何ぶん全国でわずか百人くらいの選考でございまして、勤務成績の非常に優秀な人の中でもまたその中で厳選されるわけでございます。ことしのそういった選考からは除外されましても、その人たちが永久に、来年も再来年も——事業財政がいろいろ苦しくてもこういった制度は私は続けるべきであると思いますが、そういった機会はあるわけでございまして、今年度それに漏れたからといって今後ずっと行かれないということではなく、また今後一生懸命やってもらえば当然選考対象になるというふうに考えていただいていいと思うわけでございます。
  23. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私はほかのことまで議論する時間の余裕はないのですが、今日のいろいろな若い人たちの、学生の紛争とかいろいろなものを考えて、あなたのようにいわゆる穏健な長期展望に立って、ことしはだめでも来年は何とかしてもらえるんではないかというふうに、いまの若い青年外務員方々がお考えになるでしょうか。先に出てくるのは反発ですよ。よし、ストライキをやったからおれたち除外されるのならば、何も進んで事業に協力する必要はないじゃないか、ストライキをやらぬで選ばれた人間にやらせればいいんだという反発のほうが、今日の社会情勢の中で現に起こっておる現象から考えて、はるかに強いものがあります。わずか百人の人間士気高揚とか慰労という意味でこういう措置を講ずるその経過の中で、ストライキ参加した者を除外したことがきわめて逆な効果を生んでくることは目に見えております。そのくらいのことが見えなくてあなた方は郵政行政を運営しておるのですか。大臣、どうですか。
  24. 原田憲

    原田国務大臣 これはストライキをやったからいけないとかいうことは、選ぶときに偶然といいますか出てきた問題で、大きくいえば何万人というものと百人ということでありますから、どだい初めから問題にならない基準ではないかと私は思います。だから、これは先ほど言いましたように、士気高揚して一生懸命やってくれというために、聞きますと四十六年から始めたことで効果があがっておるということでありますから、これは拡大していく方向をとるのか、今後はもっとほかの方法によって士気高揚をはかっていくのがよいのかというようなことが私は実際問題としてあると思います。いま外務員人たちはほかのなにと違って、ほかに何も報いるところもないからこういう方法でもひとつとってということで始まったと思っておりますから、ストライキをやったから連れていくのかいかぬのかということになりますと話がかた苦しくなりまして、ストライキはやれぬものをやったということで処罰される者を、それが一方では行けるんだということになったら、もとから議論がかみ合わないことになってしまうと私は思います。外務員に対しまして、私先ほど申し上げましたように、一生懸命仕事をする、そしてサービスをやるということのためにとった手段でございまして、このことにつきましてはよりよい方法があるならまたその方法をとってもよろしゅうございますが、いまのところこの方法をもってやっておりますので、これはいまのところやめることはないであろうじゃないか、こういうことを私は申し上げておるのでございます。
  25. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣次元が違うんですよ。私がやめようというのは、ことしはやめなさい、これは郵政財政の逼迫から、一般世論皆さんの御意見を聞いても、郵政財政の節約のためにやるべきでない、これが一点です。しかし、それはおやりになるというのです。だからそれはやめなくてもしようがない、おやりになるならしかたがないから。二点目は、その選考について問題があるというのですよ。これは次元が違うのです。この選考について問題があるというのは、ストライキをやったからということで三分の二の郵便外務員が行けるかもわからないという可能性をなくされたわけです。よしんば結果的にそれも含めて選考した結果、百人の中の二人になるか三人になるかわかりませんが、ストライキをやった者は最初からもうだめですよという、ストライキをしたゆえをもって差別をする扱い、これのいい悪いの論議があると思います。あなたの言うように、ストライキをやった者をこういう対象にするのはどうだろうかという気持ちがおありになるのもわかります。ならば、これを除外をしたならば一体どういう影響があるだろうかということについても考えるのがあなたのお仕事のはずですよ。それで私の考えでは、四万人という人たち除外することによる反発のほうが郵政事業に与える影響はきわめて大きいと見なければならない。どんなに張り切ってみても百人の人間のやることと四万人の人のやることは違うのです。圧倒的に数が違うのですからね。そのことさえも考慮せずにこういう選考をしたとするならば、あなた方の人事管理労務管理は一体どうなっているのか、そのことをお伺いしておるのです。ですから、私は、結果的にあなたのおっしゃるように、非常に少ない中ですから、その方々が入るか入らないか、それはわからない、そのことは当然だと思うのです。しかし初めから除外するという差別扱いが与える影響が大きい、それをどうお考えになりますかということです。
  26. 原田憲

    原田国務大臣 ストライキをやった者を除外をするということを基準できめておるとは思っていないのです一初めからいい人を持っていこう、こういうことが基準になっていますから、そのことに重点を置けば、百人ですから、百人と七万人ですか、もとから考え方——これが一万人も持っていくということになれば、これもしっかりした者から選ぶ、こういうことになりますけれども、だからこれは除外を特別にした、こういうことで反発を呼ぶというほど大きな問題ではないのではないか、私はこういうとらえ方をしているのです。
  27. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣のお考え、わかりました。そういうふうなら私もいいと思うのです。しかし明確になっておることは、ストライキをした者は除外するということになっておるのですよ、大臣、あなたは知らないのだから。あなたのお考えわかります。あなたは特に除外せよと言わないが、結果的にはそういうことになるだろう、こうおっしゃるわけですけれども、少なくとも選考に当たられておる当局は、その通達を出すにあたってあるいはその連絡をするにあたって、特に除外しなくてもいい——選考の結果どうなるか別ですよ、特に除外しなくてもいいという話をしておったのか、ストライキをやった者については一切対象にならないのだというふうに選考にあたって下部を指導したのか、残念ながら大臣お知りにならないけれども、ストライキをやった者は対象除外だと言っておるのですよ。
  28. 原田憲

    原田国務大臣 私はこまかいところまではわかりません。だけれども、それはストライキをやった者を連れていくのか、そうでない者を連れていくのかといったら、ストライキをやった者は連れていかないというほうにそれは選択されることになります。七万人の中ですから、先ほど言いますように百人ですからね、百人を選ぶということになれば、日ごろから一生懸命やっておる、その中でまた選ぶということになりますから、これはあなたがおっしゃるようにストライキをやった者が入らないということには、そうなってくるでありましょうけれども、きめるときに初めからそれを除外してきめようというようなことをやった、私はそういうこまかいことはわかりません。
  29. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 あなたはわからないでしょうから、事務当局から……。
  30. 石井多加三

    石井政府委員 ただいま大臣お答えになりましたとおりでございまして、実は先ほど私が読み上げました選考基準、あれだけで選考しておるわけでございます。成績の優秀な者を選ぶということで、ただ絶対数が全国で約百人でございますから、各郵政局に直しますと、小さいところは十人を欠くようなことになります。そういったような中で優秀な外務員を選ぶということで、各郵政局に割り当てて選んだわけでございます。結果的に、ただいま御指摘のようなストに参加した職員がその中に入ってなかったというだけでありまして、最初からそれは欠格条項があるから除外して、それ以外の中で選ぶということをしたわけでではございません。
  31. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私はことさらに政策的に二人入れろとか三人入れろとか、そういうことは言いません。しかし百人の中にただ一人も入っていなかったとするならば、これは明らかに除外された。そしてまたいろいろな話し合いの過程で、それは当然入らないということをあなた方おっしゃっておるはずです。そのことは必ず職員の耳に入っていくんです。そうすると、四万人のストライキ参加した諸君は、われわれは除外をされた——結果的にそうなったのならやむを得ぬですよ。できるならば、政策的にいうなら、三人なり四人なり入っていれば、率直に言ってまだよかったと思う。しかし、それを明らかに除外してしまった結果になって、しかもそのことをはっきり言っておる。ストライキに入った者はいけませんよと言っておる。そうすると、ストライキをやった者は、そんなことやってもらわなくてけっこうだから仕事のほうは向こうにやってもらいましょう、われわれは時間外まで協力するわけにはまいりませんよとか、いろいろな問題が起こってくることは火を見るよりも明らかです。あなた方の考えからすれば、当然いずれは行政処分もおやりになるでしょう。しかし、いままだ行政処分をやってないのでしょう。その段階で、処分をされておるからできないというならまだわかるのですよ。参加をしただけのゆえをもってもうすでに除外をする。これは何といおうと、明らかに参加した者と参加しない者を差別して扱っていることになります。率直に言って、これがいいか悪いか別ですよ。ただ事業に与える影響考えたときに、きわめてまずいやり方だ、これだけはいえるのですよ。どんなに強弁をされてみても。七万人の外務員のうちの四万人から反発を受けて、あなた方は正常な業務の運行ができると思っているのなら、それはたいへんな間違いですよ。郵政省は、もう少し知恵のある人事管理労務管理ができぬのか。私は情けないのです。どうなんですか。人事局長、所管はあなたじゃないですか。
  32. 北雄一郎

    ○北政府委員 本件は、先ほどから郵務局において答弁しておられますとおり、郵務局で基準を立て、郵務局で選考されたものであります。むろん私どももいわゆる省内事務手続として合議というものは受けておりますが、そういうことでございます。  それから、先ほどから郵務局長が答弁しておりますように七万名のうちから四万名をまず除外して、残りの三万名のうちから百名を選んだということではないという郵務局の考え方——七万名のうちから百名を選ぶわけでありますから、六万九千九百名は行けないのであります。百名が行く。これは何もこれに限ったことではございませんで、これと種類は違いますけれども、表彰その他いろいろなことがあります。これもやはり全体の三十二万という職員のうちの非常な一部分しか表彰というものはしないわけでございまして、だからといって表彰を受けなかった者が、おれはもう仕事は知らぬ、こういうようなことにはなり得ないものというふうに私ども考えておるわけであります。結論といたしまして、私ども直接本問題の基準等つくったものではございませんけれども、そういう郵務局の考え方には私どもも賛意を表するところであります。
  33. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 確かに、選考対象にならなかったから仕事はしませんぞとは言わないかもわからない。しかし八〇%が人件費でまかなわれておる、いわゆる個人の労働によって運営されている郵政省仕事というものは、あなた方が頭の中で考えているようなものではないのですよ。朝郵便の集配の出発が十分早ければ、帰ってくるのは一時間早く帰ってこられる。朝郵便の出発が十分おくれれば帰ってくる時間に一時間響影する。人間のやっている仕事にはこれほど心理的に影響があるんですよ。ですから気分的に、積極的に協力をするか、それとも非積極的になるか——勤務時間中サボっておらぬですよ、しかし、そのくらいの違いは明らかに出てくるんです。そういう反発を買うこともまず間違いない。私はもっとさらっと割り切って、処分すべきものは処分してけっこうだと思うのです。しかし除外をする、差別をするという取り扱いはやるべきでない。結果的にそうなった、あなた方がみずからを顧みて、そういう気持ちは毛頭なかった、しかし現地の局長選考した結果こういうことになりましたというならば、まだ私は話がわかると思うのです。大臣も言っておるように、どうもストライキをやった者は入らぬだろうというようなことを初めから頭の中で考え選考させれば、当然それは入ってこない。そうすると、われわれは対象から除外をされたということにみんな受け取る。受け取れば、積極的な協力が、積極的が欠けてくる。しかもその数が百対四万であるということに常に思いをいたしておかねばならぬ。このことについて人事局長は、この方針は誤っていない、正しいんだとおっしゃいますけれども、これからの郵政事業を運営していく上に、ただ額面どおり、算術の計算どおりに人間というものが動くものかどうか、そのくらいのことを考えぬでおやりになっておるとするならば、これは大臣、私は率直に言って、きわめて無能であるといわざるを得ない。もう少し能のある管理者ならば能のある運営のしかたがあると私は思うのです。あなたはこれを一体どうお考えですか。
  34. 原田憲

    原田国務大臣 何度も申し上げておりますが、全部がその仕事をやっておってみな万全を期し得られたら、これはもう理想的でありますけれども、一生懸命やる者がより一生懸命励む、こういうことで士気高揚していくことによって——いま阿部さんから逆に反発を呼ぶじゃないかという御意見もありますが、いやしっかりやろう、ことしは行けなかったけれども来年行こう、ことしはあやまちを——人間あやまちを一ぺん起こしたら永久にそれがついて回るものではありませんから、ここで誤ったけれども今度はがんばろうということもありますから、私は、制度として士気高揚をさせる方法の一つとして現在行なわれておることは、先ほども言いましたように、もっとほかにいい方法が見つかればそれに変えることにやぶさかでありませんが、一生懸命やろうということにつきましてはやはりこれは必要ではないか、そのように考えます。
  35. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 ストライキ参加をした人間が全部優秀な職員でないのだという断定を下すならば、郵政省郵便外務員の中に四万名優秀でない職員がおるということになるのですよ。これはたまたま立場は違う。私はきょうストライキ権の問題や労使問題について特に言及する意思はないのです。ないけれどもそれはそれなりに、ストライキがあったのです。現実の問題としてあったのです。しかしこの四万人の中には日常きわめて優秀な職員もおるはずです。その者を初めから除外せよというものの考え方が、はたして郵便事業を運営する上で妥当なのかどうかということについて私は疑問があるのです。ですから、ことしはこれできまったようですし、もう時間もありませんからこれ以上言いませんが、来年からの選考にあたっては、もう少しそういう点について配慮をした考え方があっていいのじゃないか。これは検討の課題として提起をしておきます。いいでしょうか。
  36. 石井多加三

    石井政府委員 この制度自体が、郵便外務員平素たいへん苦労していただいている皆さんに少しでも励みになって、日常の業務に精励していただく一つの契機になるのではないかということで始めた制度でございます。ただいま先生御指摘のようないろいろな考え方につきまして、御意見は十分拝聴いたします。今後とも、財政状況がどうこうなりましても、こういった制度は現場の職員としても待望していることでございますので継続していきたいと思います。また、選考につきましては今後も十分慎重に検討いたしたいと思います。
  37. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 じゃ次の問題に移ります。  これは三月二十八日の社会労働委員会で、わが党の森井委員から——当日郵政省の北局長も電電公社の小沢局長もたしかお見えになったと思うのです。旧逓信雇用人で業務に従事中に広島、長崎等において原爆被爆で死亡された方々、特に扶養の義務のなかった方々に限っておると思うのですけれども、この方々についての年金の支給の問題が議論をされた。これを国の援護法で直ちにやるべきものか、あるいはそれぞれ郵政省なり電電公社の共済組合での救済に該当すべきものかというような意見が戦わされて、最後に附帯決議までつけられた。聞いてみますと、残っておるのは旧逓信関係だけで、あとは全部、国鉄も含めて片がついておる。旧逓信雇用人の関係だけが残っておるというふうに私は聞いておるのです。もう多くは議論をしませんが、その後あの附帯決議の趣旨に従って速急に検討するということになっておりますので、その後の経過につてい郵政省並びに電電公社のほうから承りたいと思うのです。
  38. 北雄一郎

    ○北政府委員 実は制度的に郵政省それから電電公社の当時の職員の遺族に対する年金支給だけが残っておるということではございませんで、制度的には別にそのほか手を打たれていないところが多々あるわけでございます。これも推定でございますけれども、当時の爆弾の落ちた場所等との関連におきまして、事実上現在そういういわば谷間に取り残されておるのがほとんど郵政、当時の逓信でございますが、現在の郵政、電電公社の職員の遺族に対する年金の問題、こういうふうな理解でございます。  仰せのように当時四月に、たいへんむずかしい問題だけれども、関係の向きとも連絡をとりながら研究いたしたいというふうにお答え申し上げました。自後関係の向きといろいろ検討いたしておりますが、なお検討中でございまして、その後具体的にこの点まで行ったということを御報告申し上げる段階に実はないわけでございます。
  39. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 公社のお考えを聞く前に、郵政当局考えとしてはどうですか。具体的には進んでいないが、郵政当局としてはこういうことは考えられるというような点はございませんか。
  40. 北雄一郎

    ○北政府委員 年金ということになりますと、やはりこれは国とその年金の対象になる人と申しますか、国と個人との間に永続的な権利義務関係を発生する、こういうことになるわけであります。そうなりますれば、やはりこれは法律でもってささえなければならないというのが現在の法律制度のたてまえである、こういうふうに考えます。  しからば法律として何があるかということになりますと、先生御指摘の戦災者遺族等援護法という厚生省所管の法律がございます。この中へ入るかどうかという問題。ただこれは、聞くところによりますと、主として軍人軍属あるいはその系列に入る人々というようなことに現在の段階では相なっておるように思いますので、ここへ入れられるかどうかということについても非常にむずかしい問題がございます。それから、これまた先生御指摘のように、現在共済組合法というのがあるわけでございますから、この中へ入れてはどうかという御議論もあろうかと思うのでありますが、共済組合法は、現在でもたてまえが、やはり年金の支給対象者になりますのは、当該職員が生存中にその職員が家計をささえておった、生計を維持しておったということが一つの条件になっておりますので、いわばそういうことで若干時代逆行ではないだろうか、あるいは、当時すでに三十年前にこういった事態が発生しておるわけでございますから、それの年金等を支払うのに、当時と全く関係のない現在の組合員の拠出金をそれに使うということが妥当であるかないか、これまた非常にむずかしい問題でございます。それから特別立法をしてはどうかという御意見もあろうかと思うのでありますが、これも事実上、当時の原爆で被災してなくなった職員の現在ある遺族で、郵政、電電関係だけが取り残されておるという事実上の問題だけを立法理由にするということも、これまた非常にむずかしいというふうに考えてまいりますと、法律は絶対に必要であるが、いま考えております三つのいずれの手段もことごとく非常にむずかしい。  しかし、いずれにいたしましても戦災者援護法であれば、これは先ほど申し上げましたように厚生省の所管であり、その他の法律も共済組合法は大蔵主管の法律でございますし、それから特別立法ということになりましても予算を伴う問題でございますので、それぞれ関係の向きもございますから、関係の向きともそういう意味で連絡をよくとりながら、さらに何とかならぬだろうかという姿勢で検討を続けておる、こういうことでございます。
  41. 小沢春雄

    小沢説明員 お答えいたします。  昨年六月六日に、遺族会の代表者小松キクエさん外の方々から陳情を受け、遺族の衷情を承りました。同年七月十七日には全電通労働組合からもこの問題に関する要請書を受けました。電電公社といたしましては、先般遺族等援護法の改正法が衆議院通過の際になされました附帯決議にのっとり、法令措置が講じられました暁には、監督官庁の御指導を得まして所要の措置を講じたい、このように考えております。
  42. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これは大臣、あなたは会議録をお読みになったかどうかわかりませんけれども、結局あの当時広島、長崎等で勤務をされておった官公庁の職員の中で、逓信関係の雇用人の方々だけが取り残されておるのです。お聞きになっておると思うのですがね。そうすればこれはもう内容を申し上げませんが、あの当時の電信電話などというものはほとんど直接軍の指揮下にあって、警報の伝達とかいう責任が全部あったわけですよ。そういう仕事にあって、それからもう一つは、当時挺身隊というのが学校から学徒動員で派遣されてきておったのです。この方々は適用を受けておるのですよ。同じ逓信の職員になって、同じように月給をもらっておったのです。名前が挺身隊ということで学徒動員法によって出てきておったがゆえに、これは適用を受けておる。軍人軍属はともかくとして、軍雇用の職員も適用を受けておる。悪く言えば郵政当局はぼやっとして今日までほったらかしてあった、まあそう言うとしかられます、四十六年に一ぺん措置してありますからね。そう言うとしかられますが、しかしこういう法的な措置を講ずることについて努力が足らなかったと申し上げてもいいのではないかという気がするわけです。  そこで、先般の社会労働委員会で厚生大臣もちょうどいなくて、石本次官がお見えになっていまして、大臣帰ったら相談をして何とかできるようにしたいということで、それについて附帯決議までつけられて、この未処遇者の問題については早く具体的な措置をとれ、こうなっておるわけです。特に私がこれは緊急だと思うのは、早くしてあげないと、ほんとうに困っておるからこそ、いま電電公社からもお話がありましたように遺族の方々が陳情にお見えになっておるわけです。この物価狂乱の中で苦しいからこそお見えになっておるのですから、してあげられるものならば早くしてあげなければ効果が半減すると思うのです。その意味で、これはもう厚生省にまかせておいてできる問題ではない。郵政省のほうから働きかけ、電電公社のほうから働きかけて、その具体的な措置が、援護法を適用してその財政措置をどうするか、特別立法にするか、それはこれからの政府の中の話し合いだと思います。私がお願いしたいのは、この取り残されている逓信関係の雇用人についての措置だけは急いでもらわなければならない。お役所の仕事といえば、いま言い出して三、四年先でなければ間に合わないのですが、このころ遺族は死んでおる、そういうことではだめだと思うのです。せっかくここで早急に対策を立てよという決議があり、政府の答弁もあるわけですから、ひとつ人事局長郵政省のほうから積極的に働きかけてもらわなければ、厚生省のほうから、あの問題、郵政省さん、どういたしましょうかという筋合いのものではありませんよ、これは。だから残されておる郵政省が働きかけなければ、ほかのところはうまいこと——いわば向こうは親元があるということばを使っていますね、親元のないところは向こうでめんどうを見ましょう、親元のあるところはあなたのところでやったらどうですかと。漏れ承るところによると、行政措置で何とかやれませんかとまで言われているのじゃないですか。そのくらい厚生省としては逃げたいのですよ。ですからそれはどういう措置をとるかは別にして、郵政省のほうで公社と連絡をとりながら積極的に立法措置を講じてあげていただきたい。確かに技術的にむずかしい問題があると私は思います。思いますけれども、だからといってこれだけ取り残されてほうり出されておるものを、ほうっておくということになれば、これは郵政省というお役所のメンツにもかかわる問題ですよ。その意味でひとつ早急に積極的に取り組んでもらうというお約束をいただければこの問題を終わりたいと思うのですが、どうです。
  43. 原田憲

    原田国務大臣 この問題は、私から北君に、答弁を社労委員会でするとき、附帯決議を行なうとき等、綿密に話をして、前向きで検討せよということで私が取り上げておる問題でございまして、役人としては一生懸命やっておるけれども、非常にむずかしい問題があるということは阿部委員も御理解賜わっておると思います。四十六年に一時金でこういう問題につきましては全部片がついたというところが、また警防団員の問題が取り上げられてきて、それならばというのでその当時の逓信省につとめておった方々の問題も上がってきた。そこにはいま詳しく北君から説明をいたしましたような問題点があるが、私は何らかの処置をして、おっしゃるようにこの方々の陳情を私も聞きましたし、私はどちらかというと陳情を聞かなくても積極的なんです、この問題については。何とかしたい、こういう姿勢でおるということを御了解賜わりたいと思います。
  44. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それではひとつこの上とも積極的に、早急に、大臣をはじめ当局の御努力を要請して、この問題を終わります。  その次に、やはり緊急を要する問題、もう一点一般質問のほうでお願いしたいのですが、郵便集配請負人制度の関係でございますけれども、これはたしか四月の五日に私は社会労働委員会で、特にこの方々の身分上の労働基準法上等の問題もあってだいぶ時間をかけて議論をしまして、ちょうど郵務局長がほかに何か御用事がありまして次長がお見えになりまして、るる申し上げたわけですけれども、これまた急を要する問題なんです。すでに先ほどから議論しておりますように、今日の物価の情勢の中で特に劣悪な条件にある郵便集配請負の方々、これは月額が七万円だ、八万円だといってみても、一カ月三十一日、一年三百六十五日働いて、しかも一日八時間働いたときにそうなるという計算であって、一般の郵便集配の方々と同じ労働条件に直したならば、その給与というのは中卒の初任給とあまり変わらないことになるのです、この内容は。しかも片方はすでに仲裁裁定が出されて待遇の改善が行なわれようとしておる。同じ内容仕事をしておるのが制度上の問題でこれは今日放置されていいものでない。非常に急を要する問題だと思いますから、身分上の問題もあります、これらについても今後また議論さしてもらいたいと思いますけれども、とりあえずは、この皆さんの請負料と申しますか、請負契約料の問題についてどう郵務局のほうお考えか、承りたいと思うのです。
  45. 石井多加三

    石井政府委員 郵便集配請負人の処遇の問題につきましては、この問題は郵政省といたしましては前々からのかなり古い問題でございまして、国会でもたびたび取り上げられておる問題でございます。基本的な、ただいま御指摘になりましたような身分上の問題も確かにございますけれども、この問題はまた先般の社労の中での御議論もございました。若干時間がかかると思います。  待遇の改善につきましては、ただいま御指摘のとおりのような計算のしかたをいたしておりますけれども、昭和四十四年度をいまここに数字を持っておりますが三万一千円、この当時、郵政職員だけと比較するのもいろいろ問題があるわけでございますが、郵政職員のほうでは五万三千百七十六円ということでございまして、この基本料月額がその次の四十五年度は人夫請負料は一六・一%上がりまして三万六千円、郵政職員のほうは一五・八%上がりまして六万一千六百三十七円、ここは大体似たような数字でございますが、四十六年度以降は人夫請負料のほうは二三・一%ベースアップをいたしまして、郵政職員のほうは一四・八%というふうにかなり郵政職員を上回るアップをしたわけでございます。もちろん一年で片づく問題じゃございませんで、引き続きまして昭和四十七年度も人夫請負料のほうは二三・五%というふうなベースアップをいたしまして、郵政職員のほうは一三・五%でございましたので、これもかなり職員を上回るべースアップをいたしております。四十八年度も人夫請負料のほうは二三%上がりまして、基本料としては六万七千三百円、郵政職員のほうは九万二千八百六十三円でございますが、アップとしては一七・六というふうな数字になって今日に及んでおるわけでございます。ただいま御指摘のとおり、四十九年度のほうは郵政職員がすでに三割近いベースアップが出ましたのに対しまして、人夫請負料のほうは予算上の措置といたしましては二三%と、過去四十七年、四十八年と大体似たような数字予算上の要求はいたしました。それはすでに通過した予算で認められておるわけでございます。ただ、これでは郵政職員に比べまして、今年度についてだけ見ますとかなりの差がございますので、現在これをどこまで上げるかという上げ幅の問題それから従来この上げます実施時期は大体毎年十月一日ということになっておるわけでございますが、ことしはこういったような状況下でもありますので、少しでも早くできないものかということで関係各局と目下郵務局を中心に協議をしておるところでございまして、今日の段階では確たる数字を申し上げるわけにまいりませんが、最大の努力をして、少しでもこういった人たちの処遇の改善につとめたいと考えておるわけでございます。  なお、このほかにも、前回委員会でもお尋ねがございましたような、たとえばやめましたときの手当その他もございますが、これらはやはり基本的な身分の問題も関連いたしまするので、それらは全体の中で解決してまいりたいと思っております。
  46. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣も御存じと思いますけれども、確かにここ二、三年のアップ率は一般職員よりも高いのです。しかし、一万円の人を二〇%アップしたって二千円しか上がらないのです。二万円の人は一〇%アップしても二千円上がるのです。この違いが出てきたから、結果的に、一カ月三十一日、八時間ずつ働いて三百六十五日働くという計算でいったときに、やっと中卒の初任給と同じくらいのところで、しかも夏期手当、暮れの手当、これが職員の場合は五・二くらいになっておるのに、この方々は二カ月分くらい。おやめになったときも、郵政省の都合によって解約した場合を除いては一銭も差し上げないのですよ。これは、もともとこういう制度をつくったのは、郵政省が定員法の関係でよんどころなくつくって、当時常在職員であった者を向こうに追いやった経緯があるのです。そういうことから考えてみまして、せっかく努力中のようですから、さしむきの措置としては、身分上の問題はなるべく早い時期に検討していただく、したがって請負料をなるべく大幅に引き上げて、それから夏期、暮れの手当について考慮していただく、それと実施時期を早めていただく。いま郵務局長からお話ありましたが、そういう点について十分な配慮を大臣——予算上のいろいろ問題あろうと思います、すでに成立した予算の中ですから。しかし、郵務局のやらんならぬ仕事でございますから、ぜひひとつこれは——みんなもう待ち焦がれておるわけです、一般の職員は三〇%上がるというが、おれたちはどうなるんだろうか、そのことを非常に懸念しているわけですから、実施時期も一般の職員と同様四月一日くらいにして、少なくとも三〇%を下回らない、それから夏期、暮れの手当についても十分考慮する、それだけでもなお一般職員に比べればもとが安いのですから、まだ気の毒なんです。しかも退職手当もなければ厚生施設等についても十分でない。いろいろ問題ありますが、それらはもう社会労働委員会議論し尽くしたところですから、きょうは申しません。速急に待遇の改善について、いま申し上げた諸点について配慮していただく。どうでしょう。
  47. 原田憲

    原田国務大臣 いま局長から、阿部委員の意のあるところを十分聞き、また答弁をいたしておりますので、私もそのように取り計らうように努力をいたしたいと思います。
  48. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 せっかく大臣もそういうふうに努力されておるところでございますから、ひとつ郵務局長はじめ事務当局のほうでも私の希望をいれて、なるべく早い時期に改定をしていただくように要望しまして、一般行政に関する質問を終わります。      ————◇—————
  49. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、日本放送協会昭和四十七年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書を議題とし、審査に入ります。
  50. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、本件審査のため、本日、お手元に配付してあります名簿のとおり参考人として日本放送協会当局の出席を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  52. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 それでは、本件について郵政大臣から説明を聴取いたします。郵政大臣原田憲君。
  53. 原田憲

    原田国務大臣 ただいま議題となりました日本放送協会昭和四十七年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書の国会提出につきまして、概略御説明申し上げます。  これらの書類は、放送法第四十条第三項の規定により、会計検査院の検査を経まして国会に提出するものであります。  日本放送協会から提出された昭和四十七年度の貸借対照表等によりますと、昭和四十七年三月三十一日現在における資産総額は一千四百八十一億五千二百万円で、前年度に比し、百四十億六千六百万円の増加となっております。これに対しまして、負債総額は六百九十一億円で、前年度に比し、百四十七億二千四百万円の増加、資本総額は七百九十億五千二百万円で、前年度に比し、六億五千八百万円の減少となっております。  資産の内容を見ますと、流動資産百七十五億二千三百万円、固定資産一千二百九十五億九百万円、特定資産十億一千万円、繰延勘定一億一千万円であり、固定資産の内容は、建物五百六十三億五千四百万円、土地百四十八億三百万円、機械三百八十九億八千七百万円、その他の固定資産百九十三億六千五百万円となっております。  また、負債の内容は、流動負債百三十二億三千百万円、固定負債五百五十八億六千九百万円であり、固定負債の内容は、放送債券百一億円、長期借入金四百十三億一千九百万円、退職手当引当金四十四億五千万円となっております。  資本の内容につきましては、資本七百五十億円、積立金四十六億一千八百万円、当期欠損金五億六千六百万円となっております。  次に、損益について御説明申し上げます。  事業収入は一千九十九億七千九百万円で、前年度に比し、八十九億九千三百万円の増加であり、事業支出は一千百五億四千五百万円で、前年度に比し、九十九億五千二百万円の増加となっております。  この結果、事業収支差金は五億六千六百万円の支出超過となっており、これが当期欠損金となっているものであります。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  54. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、参考人、日本放送協会会長小野吉郎君から説明を聴取いたします。小野会長
  55. 小野吉郎

    ○小野参考人 ただいま郵政大臣から日本放送協会昭和四十七年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書の概要につきまして御説明がございましたが、委員長の御指名によりまして、補足説明を申し上げることといたします。  まず、当年度末現在の資産総額は一千四百八十一億五千二百万円で、この内訳は、流動資産百七十五億二千三百万円、固定資産一千二百九十五億九百万円、特定資産十億一千万円、繰延勘定一億一千万円でございまして、固定資産の内容は、建物五百六十三億五千四百万円、土地百四十八億三百万円、機械三百八十九億八千七百万円、その他の固定資産百九十三億六千五百万円でございます。  この資産総額を、前年度末に比較いたしますと、百四十億六千六百万円の増加となっております。  これは主として、当年度の建設計画に基づき那須芦野等二百二十地区のテレビジョン局の新設、岐阜ほかの県域放送を実施するためのテレビジョン局の新設、館山等四十局の超短波放送局の新設、放送センター総合整備、盛岡ほかの放送会館の整備、その他放送設備の整備等を行なったことによる固定資産百二十八億四千二百万円の増加によるものでございます。  一方、これに対します負債総額は六百九十一億円で、この内訳は、流動負債百三十二億三千百万円、固定負債五百五十八億六千九百万円でございまして、固定負債の内容は、放送債券百一億円、長期借入金四百十三億一千九百万円、退職手当引当金四十四億五千万円でございます。  この負債総額を前年度末に比較いたしますと、百四十七億二千四百万円の増加となっておりますが、これは主として、長期借入金の増加により固定負債が百三十四億三千六百万円増加したためでございます。  また、資本総額は七百九十億五千二百万円で、この内訳は、資本七百五十億円、積立金四十六億一千八百万円及び当期欠損金五億六千六百万円でございます。この資本総額を前年度末に比較いたしますと六億五千八百万円の減少となっております。  なお、当年度は沖繩の復帰に伴いまして、油放送協会から資産九億九千四百万円及び負債士一千八百万円を承継いたしました。  次に、損益計算書により事業収支について見ますと、まず受信料等の事業収入は一千九十九億七千九百万円で、前年度に比較しまして、八十九億九千三百万円の増加となりました。  これは主として、総合、教育両テレビジョン放送網の建設を推進いたしますとともに、放送番組内容の充実刷新及び事業の周知、受信者の維持増加につとめました結果、有料受信契約者数が、カラー契約におきまして、当年度内に三百八十二万の増加を示し、当年度末一千五百六十一万となったためでございます。一方、普通契約は、カラー契約受信者の増加に伴い、当年度内に二百九十八万の減少を示し、当年度末八百五十二万となりました。  次に、事業支出は一千百五億四千五百万円で、この内訳は、給与三百六十九億二百万円、国内放送費二百九十九億六千四百万円、国際放送費七億六千三百万円、業務費百三億八千八百万円、管理費百十六億三千七百万円、調査研究費十五億七千四百万円、減価償却費百五十四億六千九百万円、関連経費三十八億四千八百万円となっております。  これを前年度に比較いたしますと、九十九億五千二百万円の増加となりましたが、これは主として、放送番組内容の充実刷新、カラーテレビジョン放送時間の拡充、受信者の維持増加対策の推進及びこれらの事業規模拡大に伴う維持運用費の増加並びに建設工事の進展に伴う減価償却費の増加によるものでございます。  以上の事業収支の結果、当期欠損金は五億六千六百万円となりました。  これをもちまして、協会の昭和四十七年度末における財政状態及び当年度事業成績につきましての補足説明を終わらせていただきますが、今後の事業運営にあたりましても、公共放送としての使命と責務を銘記し、一そう放送事業の発展に努力してまいりたい所存でございます。  何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第でございます。
  56. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、会計検査院当局から検査結果について説明を聴取いたします。柴崎第二局長
  57. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 検査の結果について御説明申し上げます。  日本放送協会昭和四十七年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書につきましては、昭和四十八年十月二十五日内閣から送付を受けましたが、その検査を了しまして、同年十一月二十八日内閣に回付いたしました。  同協会の会計につきましては、書類及び実地につきまして検査をいたしましたが、検査の結果、特に不当と認めた事項はございません。  以上、簡単でございますが、御説明を終わります。
  58. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これにて説明は終わりました。     —————————————
  59. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部喜男君。
  60. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 会計検査院のほうの意見も特段のことがないようで、四十七年度決算についてはその意味でまことにけっこうだというふうに考えます。きょうはまたお忙しいところ出席いただきましてありがとうございます。  さっそくですが、この前この委員会でも問題になりましたけれども、例の内幸町のNHK財産の処分等にからみまして、NHK受信料の値上げは向こう三年間はやらないという前の会長の御意向もあり、またそれを受けて小野会長も五十年度まではやらない、こういうふうな御趣旨の御発言があったように承っておりますけれども、今日のような物価の上昇の中で、四十八年度の決算はできていないと思いますけれども、四十九年度にしても見通しとしては、いま計上されておるものくらいではどうしようもないような赤字が出てくるのではないかというふうに考えられます。したがって、単にそういう受信料の値上げとかいうようなことではなく、NHKそのものの運営を預かる会長として中期的な展望と申しましょうか、向こう四、五年間ぐらいのNHKの運営を基本的にどういうふうにお考えになっておるのか、その展望を承りたいと思います。
  61. 小野吉郎

    ○小野参考人 御説のとおり、ただいま非常に諸般の条件が変動しつつございます。そういう中で将来の経営の展望をいたしますことは、いろいろ未知数の問題をかかえておりまして非常に至難のわざと思いますけれども、場当たり経営は許されないことでございますし、私といたしましては、できれば将来五年ぐらいを見通した展望を持ちたい、これを基礎にして五十年度予算の編成にかかるべきできないかということで、せっかくいま作業をいたしてございます。四十九年度予算審議にあたりましても、いろいろとその将来の展望なりあるいはそれに対する御注意もいただいたわけでございますけれども、現在の状況から申しますと、いろいろな当時予想しないような事態も幾多生起しつつございますけれども、四十九年度の決算にあたりましては、できるだけ御承認をいただきました予算の範囲内で決算可能なように努力をいたしてまいるつもりでございます。  将来展望につきましてはせっかくいま作業中でございますので、現在どこがどうなるといったようなことは御説明申し上げる段階でございませんけれども、できるだけ努力をいたしまして、将来の経営の万全を期するように努力をいたしてまいりたいと考えております。  これに関連をいたしまして、事情変更は非常に大きゅうございます。前田前会長が五十年度末までは料金の改定はしないと公約をしておりますし、私もそれを受けましてできるだけそういう線を維持してまいりたい、このように申し上げたわけでございますけれども、この心境は今日でも変わっておりません。そういうような努力をいたしまして、おそらく収支均衡の点につきましては、そういう公約をいたしながらもやはり相当な収入不足といった面が出るでございましょう。その面からいえばすでに今日、公約は公約といたしまして、料金の調整に何か手を打たなければならぬ必要のある時点であろうとは思いますけれども、それよりも公約を尊重いたしまして、これを第一命題としてこの面を守りつつ、できるだけ収支のバランスの面につきましてはいろいろとくふうを用いてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  62. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 せっかく五十年度までは何とか受信料の値上げをせずにやりたいと思うがという御趣旨のようでございますし、非常にけっこうだと思います。それからまた五カ年間の早期的な展望についても、いま作業中ということでございますからこれ以上お伺いをするわけにはまいらないと思いますけれども、いずれにしても私は、NHKの公共放送としてのテレビの受信料というものは、考え方によっては非常に高いような気がするし、また考え方によっては非常に安いものだという気もします。これを新聞などと比較をすることの当否は別にしまして、低額の料金で長年にわたって据え置いてくる、そういうことから見ますと非常に安いような気がしますし、民放と短絡的に考えてみますと、片方は無料で見られる、片方は金を納めるのはおかしいじゃないか、それじゃNHKにひとつ広告業務をやってもらおうかという問題も起こってくると思うので、そういうことはしてもらいたくありませんので、そうすれば、その公共性を守り、NHKの使命というものを国民がどれだけ理解を深めるかによって、高いともいえるし安いともいえるのが受信料ではないか、そういう気がします。その意味からひとつ鋭意、国民皆さん、受信者の皆さんにNHKの使命、公共性について理解をいただき、この公共放送を残すためには応分の受信料はやむを得ないという理解を得るような努力をいただきたいし、ついてはまた、放送番組等についてもそういう理解を得られるような番組の編成をひとつ努力をしてもらいたいと思いますが、その点はそれで終わりたいと思います。  次の問題に移ります。NHKの業務報告によりますと、テレビジョンの難視聴の解消を積極的に推進されたということになっておりますが、この前私は聞きまして驚いたんですけれども、いま地方自治体、県や市町村等で非常に乏しい財政をさいて、テレビ難視の解消にその財政を充てておるという実態があるようでございます。私は予算上なおNHKでやれない地域があることは承知をしておりましたが、それを地方自治体が乏しい財政をさいて難視の解消に当たっておるということになれば、これは一体どういうものだろうかという疑念がわいてまいります。こういう実態は一体全国にどのくらいあり、地方自治体が負担しておる財政というのはどのくらいな額になっておるか、大まかでいいですから、わかっておればひとつお知らせ願いたいと思います。
  63. 藤島克己

    ○藤島参考人 お答えいたします。  全国でどのくらいあるかという御質問でございますけれども、四十八年の例をとって申し上げますと、一応この実態が二通りございまして御存じと思いますけれども、一番目は、非常に過疎地帯で、たとえて言うならば世帯数が二十世帯とか三十世帯ぐらいしかないようなところを農村振興の一環として地方自治体で直接おやりになっているものが一つと、それからもう一つは、NHKがいまやっております辺地の共聴というのがございますけれども、それにNHKのチャンネルだけではなくて民放のチャンネルも一緒に乗せて見れるようにしてもらいたいという希望がございまして、そういう点で民放分の負担、その分だけを地方自治体で負担してやっておられるというのと、二通りございます。それで、前のほうのほんとうの過疎地帯で住民福祉という点で直接やっておられるものが、四十八年度の例で申し上げますと、全国で九つの県で二百六十八施設できております。金額にいたしますと一億七千七百万円ということがあがっております。それから二番目の一部民放の分を負担するというたてまえでやっておられる助成が十二の県ございまして、施設の数でいきますと二百六十七施設ございます。金額にいたしまして八千一百万円ということ、両方合わせますと二億五千八百万円というのが四十八年度の実績のように聞いております。それからただいま九つの県と十二の県と、合わせて二十一県のように申し上げましたけれども、この中で両方が重複しているのがございますので、県の数で勘定いたしますと十六の県だということになっております。  以上でございます。
  64. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 民放を一緒に聞くために地方自治体が補助をする、これはNHK直接関係はないから、別にNHKはそのためにいろいろな拘束を受くるとか遠慮せんならぬ問題はないと思うのですけれども、三十ないし四十というふうな過疎地域の難視解消に地方自治体が補助を出しておる、どういう形で補助をお出しになっておりますか。
  65. 藤島克己

    ○藤島参考人 これはNHKのまだ計画外のところでございますので、全額地方自治体で——県のほうで負担され、それからなお市町村で残りの分を負担しておられるようにも聞いておりますけれども、いずれにいたしましても金額的には全額地方で負担しておられます。NHKといたしますと、お説のとおりにNHKの放送法上のたてまえから申し上げましてもたいへんぐあいの悪いことだとは思いますけれども、ここは先ほど申し上げましたようにたいへん過疎地帯でございまして、私どもが通常の施設のやり方で計算をいたしますと、一世帯当たりおそらく十万円以上、大部分のところが十四、五万円出しておられます。そういうところは私どもの計画からいいますとずっとあとになっておりまして、四十八年度の例で申し上げますと、私どもがいま実施しているところは一世帯当たり大体三万円ないし四万円という程度のところをやっておるわけでございますが、いきなりそれを十何万円というところまで伸ばしますと、とても私どもの計画としては成り立ちませんものですから、たいへん残念なことではありますけれども、地方自治体のおやりになることを私どもも別な面で御協力申し上げるということで、設計の面とか工事の面とか、あとの維持運用の面につきまして、全面的に御協力を申し上げるたてまえをとっていま進めておるわけでございます。
  66. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いろいろ内容があるようでございますが、私のところの県で、この前知事から話を聞いたのは、委員長がちょっと御質問されたのですけれども、大分県で二千万ぐらい年間の予算を組んでおられるのです。全国的だとすれば、ぼくは膨大な数字だと思ったのですが、地方自治体の気持ちはわかります、過疎対策として何とかその地域に残ってもらいたいから、せめてテレビぐらいは見られるようにしてあげたい。ところがNHKのほうでは予算上それができないのだからということで、地方自治体がお金を出す。これは、それがやむを得ない措置だとするならば、一体過疎の責任が地方自治体にあるのか国にあるのかということになってきまして、国にあるとなったときは国がそれをするのもやむを得ない、こういう理屈に発展してきます、理論を発展させますと。そうすると、国が補助を出してテレビの難視地域を解消してやるということになってくると、NHKの公共性、自主性、中立性というものから考えますと、私はゆゆしい問題だという気がするわけです。いまも技師長、お話しになりましたように、どうもNHKとしてはあまり好ましいと思っていられない。私もそういう気がします。だからといってむげに断わるかというと、これもむずかしい問題だとは思うのですが、この辺ひとつ英知をしぼって、監督官庁として大臣、あなた何かこれについていい考えありませんか。
  67. 齋藤義郎

    ○齋藤(義)政府委員 いまお話しの点につきましては、従来からいろいろ頭を悩ましている問題でございまして、NHKが置かれておる場所が全国で、一重放送としますと千七百カ所ぐらいあると思いますが、民放がそれに伴わないということで、千カ所ぐらいは民放が一つもないという場所があるわけでございまして、これをNHK並みにできるだけ早くするためにはどうすればいいのか。御承知のように民放は営利会社でございますので、何と申しますか、サービスエリアの面からいきますと、場所については千ぐらいおくれておるわけですけれども、難視聴という数からいきますと、NHKは約百万、民放は約二百五十万ということで、そこの千カ所のところはいわば非常に人口の少ないところということでございますけれども、民放ももちろん公共的な仕事をしているわけですので、郵政省としては機会あるごとに要請をしておるということでございますが、そういうような営利企業という面との両立という事柄がなかなかできにくいものですので、なかなかはかばかしくいかないというのが現状でございます。それで、いま私のほうでテレビジョン難視聴解消の対策調査会というのを設けておりますが、二つ目的がありまして、大きな目的の一つは、その地方の辺地の難視聴をどうして解消するか、その金をどうするかというような問題、もう一つは都市難視でございますけれども、その二つの問題をいま鋭意検討しておる。しかし、先生もよく御案内のように、なかなか名案が浮かばない問題でございまして、しかしいつまでも放置することは許されぬわけでございますので、できるだけ早く何らかの結論を出してこの問題に対処していきたいというのが郵政省考え方基本的な態度でございます。
  68. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 齋藤局長、私の質問をあまりよく聞いておらぬじゃったな。よそ見しておったのだろう。私はそんなことは聞いておりはせぬのです。民放は民放で、地方自治体が金を出そうとNHKと直接関係はないから、郵政省が電波監理全体の問題からいけば、それはあなたのお考えはわかるのです。そのことを私は聞いているのではないのです。NHKの公共性にかんがみて、いま地方自治体が負担をして難視の解消をやっておる、その理由は過疎対策等の理由がある、では、過疎という原因が地方自治体だけにあるのかといえば、これは国にも責任があるはずです。ならば、過疎対策として国がNHKの難視解消に乗り出して金を出したと仮定をした場合に、はたしてNHKの公共性、自主性、中立性が守られるであろうかという点について私は懸念をする、その点あなたはどう考えるか。あなた民放の話ばかりして、だめじゃないの。
  69. 齋藤義郎

    ○齋藤(義)政府委員 NHKの置局に対しては政府財政資金が入るということにつきましては、いまの放送法のたてまえ上、好ましいことではない、NHKの難視聴解消はNHKの力でやるのがたてまえではなかろうかという考え方でございます。
  70. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこまではわかっておるのです。そこまではわかっておるが、現実の問題としては、現に地方自治体で難視解消のために予算を組んで金を出しておるんですよ。地方自治体ならかまわぬが、国なら悪いと——あなたはいま国はやはり好ましくない、私も好ましくないと思うのです、放送法もそうなっているのですから。国は悪いが地方自治体ならかまわぬというのはどこにもないのですよ、放送法の中にも。ならば、地方自治体も金を出すことは悪いじゃないか、悪いのはわかっておるが、しかし一体この難視解消の問題をそれじゃ放置しておっていいかといえば、そうもいかぬだろう、そこで郵政省お知恵はありませんか、こう私はお伺いしたんです。そこまで言うてくれなければ、あなたがいま言うことぐらい私もわかっておる。その先の知恵を聞きたいのです。どうですか。
  71. 齋藤義郎

    ○齋藤(義)政府委員 なかなかむずかしい問題でございまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、いませっかく調査会を開いて、これは民放もさることながら、NHKにつきましてもちろん討議の対象にしておるわけでございますので、それの討議の結果を待って、ひとつ郵政省としての態度をきめていきたい。しかしなかなかむずかしい問題であるというぐあいに認識しておるわけでございます。
  72. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵政省もなかなかそう簡単に片づく問題ではないと思うのです。私も率直に言ってどうしたらいいかわからないんです。  そこで会長として、私はこのやり方が好ましいものでないということだけはわかるんですよ。地方自治体といえども、NHKの公共性から考えれば、地方自治体がNHKの難視解消に金を出すということが好ましくないということだけはわかるんです。だから私は、極端に言えば、あの放送文化基金なんかもつくるんじゃなかった、せめてあれでも充当してこういうことを少なくしていかなければならなかったという気がするのですが、さしむきNHKでこの負担ができないから地方自治体にやっていただいたとしても、将来NHKが逐次、これは一ぺん施設をつくれば毎年つくる必要はありませんから、逐次小さい部分までいけるわけでしょう。それから、いま極微弱電波ですか、何かあれでのお考えもあるわけですね、放送もやられておるようですから。そういうNHKの技術開発と予算的な措置と相まって、たとえば将来地方自治体にこれをお返しするとかそういうような措置もとれないものだろうか。いずれにしても、出しっぱなし出してもらうということは、私はNHKの公共性から考えてどうも気になってしかたがないのです。どうでしょうか、会長のお考えは、
  73. 小野吉郎

    ○小野参考人 お説のとおり、難視解消の問題は、地域住民の幸福の増進の上にとって非常に重大な問題であろうと思います。いま非常にそういった地点が多いわけでございますので、これは第一義的には私はNHKが背負って立つべき問題だと考えております。現在の共聴にいたしましても、当初は地元で組合をつくってもらって、そこが母体でやられ、その必要経費の一部をNHKが助成するというようなこともやっておったわけでございますけれども、これはNHKの使命の放棄ではないかということで、全額NHKが持ってこれを施行すべきだということで、四十三年度から発足をしておりますけれども、解決を要する数、地点が非常に多いものですから、財政上、技術能力上、一気にそれを解決することができません。そういうことで余儀なく、その必要度の高いところこそ非常に経費もよけいかかり、これを計画しないわけではございませんけれども、相当先の年度でないと手がつかないということで、地方の住民の方々はそれでは待てないということで、やむを得ずいまのような措置がとられておるものと思います。  しかし、一度施設をつくられましても、これはやはり何年かすればこれを整備、更改をしなければならないようなときもございましょう。そういうような際には、たとえ地方の財政をさいてつくられたそれでございましても、NHKのそういったものについてはNHKの責任としてこれを措置していくということは方針として持っておるわけでございますし、将来はそういう面で、完全にはまいりませんけれども、お返しをしていかなければならないのではないか、かように考えております。事態そのものは郵政御当局からもただいま御答弁がありましたように、また先生も同様な気持ちを持っておられますように、難視解消の所要資金を国費あるいは地方費で肩がわりをしてもらうということは好ましいことではないと私も考えております。
  74. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 明快な結論になかなかならないのですが、いまの会長のお話では、将来予算的に余裕ができるとか施設の改善を行なうとかいうような場合には、たとえば地方自治体で出しておるものを買い上げるということばが妥当かどうかわかりませんが、何らかそういう措置について方針としては考えてみたい、こう理解してよろしゅうございますか。——では続いて、その点については地方自治体の負担もかなり大きいようですから、可能な限り本来的にNHKの使命でございますからおやりになっていただく、どうしても手が届かない地域について向こうがおやりになる分までとめようとは思わないが、将来的にはそういう考えだ、こういうふうなことを地方自治体のほうにもわかっていただけるように、地方自治体もNHK支局とそれぞれ連絡をとりながらおやりになっておるわけですから、そのことを申し上げて、少なくともそれが負担になって公共性が失われることがないように十分な配意をお願いしたいと思います。  その次にお伺いしたいのですが、これは会長耳が痛いかもわかりませんけれども、先般この委員会で私は「総理にきく」という番組の数をふやしたことについて好ましくないのではないか、従来程度でおやりになったらどうですかという御意見を申し上げましたが、非常に希望者も視聴者の中に多い、それでこれはやりたいという会長のお話でずっと続けておやりになっておるようでございますが、私が聞く限りではあまり評判のいい番組ではございませんね、どうも。それであれからしばらくおやりになったわけですけれども、この辺でもう一ぺんほかの番組を入れて、一カ月に一回なり何かみんなが楽しめるような番組にかえて、田中総理一人しゃべりまくるあの番組は一ぺんぐらい削るように、従来の二カ月に一回ぐらいに番組の上でおやりになったらどうですか。
  75. 小野吉郎

    ○小野参考人 前回もこの点につきましては御批判なりまた御要望をいただきました。また阿部先生のほかの先生方からもそのような御意見もございましたけれども、私どものねらいは、この番組が非常に歓迎をされるとか、これもございますけれども、そればかりではなしに、いわゆる一国の行政と申しますか、政治の最高責任者がやはり政治のあり方なり考えなり、そういった面について国民にお話をされることが政治と生活との直結の面において非常に便するところが多い、こういう意味合いでつくった番組でございまして、その後そういうような趣旨を生かすために、当初要望しておりましたような線に近く回数も増加をいたしております。もちろんこれに対してはいろいろな御批判もあることは十分承知をいたしておりますけれども、問題は、私どもの考えといたしますところは、やはり政治と生活との関係において相互の密接不可分な関係に益するような面で取り上げた問題でございますので、まことに申しにくいのでございますけれども、回数をもとに復するとかあるいはこれを減回するようなつもりは持っておりません。ただし、これはやはりいろいろ番組全体では非常な公平を破っておるとは私は決して考えておりません。NHKが一方に偏しておるといったような姿勢をとっておるとは思いませんけれども、やはり有力なる野党の立場もあるわけでございますので、あるいは野党の党首さんにも必要によっては見解を披瀝していただくような場もつくってもいいのではないかと思いますし、あるいはいまの「総理と語る」のそれは、決して総理と語るでなしに総理は語るではないか、こういうような批判もございますけれども、これはアメリカでかつてありましたルーズベルトの炉辺談話のように、私どものこの番組を設定いたしました趣旨から申しまして、総理は語るでも私はいいと個人的には考えております。そういうような面から、いろいろ話し合いがうまくつくものなら各党首が一堂に会して、いろいろな問題を論議される場もあってもいいんではないか、かように考えております。いまの具体的な番組に関します限りひとつ御理解をいただきまして、このまま続けさしていただきたいと思います。
  76. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 NHKのこの番組の企図というものは私も理解ができないわけではありません。しかし率直に言って、私が懸念したように、この前何日だったか総理がしゃべりまくりまして、結局暴言か失言か知りませんが、やりまして、国会の審議がストップした。これは少なくとも総理があそこで語ったことが一方的であったからこういう事態が起きたことだけは間違いがない。そうすると、NHKの企図とは別に、総理だけがお話しになることが結果的にこういう事態を生んだ。これは明らかに総理の一方的な発言にしかならない、この点が非常に気になるわけです。私がこれをおやめになったらどうですかというのは、二つ理由があるのです。一つは、総理であると同時に一党の総裁ですから、それならばいま会長のおっしゃったように、ほかの党の党首にもそれぞれ発言の機会を与えるべきではないかということが一つ、それからもう一つは、この番組が、田中総理がいい悪いは別ですけれども、どうもあまり好まれていない、もうガアガア一人でしゃべりまくられると頭が痛くなるという人がだいぶおるようですから、その意味でおやめになったらどうですか、回数を減らしたらどうですか、この二点から申し上げておるわけですけれども、会長なかなか御執心のようでございますから、委員会が番組の編成の内容まで立ち入ろうとは思いませんけれども、そういう国民的な意見が二つの面からあるということについて十分御配意をいただきたいと思います。特に総理がしゃべるわけでございますから、一方的にならないように、これは司会者というのはむずかしいと思いますけれども、日曜日の放送討論会等は、なかなかうまく割り振りながらそれぞれの主張を聞いていくという措置がとられるのですけれども、こっちは一人でしゃべるのですからどうしようもありませんが、とうとうこういう事態を引き起こしたという結果になって、あれは一方的でないかとなれば、これはなお国民世論反発をすると思いますので、特にNHKが置かれている立場から考えても、この点についてもし回数が減らされない、むしろNHKの企画としては大事だというならば、国民が納得をするような他の措置をあわせてとるというふうなことをお願いしたいと思います。  それから次に、この業務報告を見ますと、受信契約の普及率でございますけれども、東京都だけが極端に受信契約が悪いのです。私どもの場合考えてみますと、何か前に新聞がいろいろ書き立てたことがございますけれども、私はずっと前からですが、わが党の皆さんにもお願いしてNHKと全部契約しておるはずですけれども、東京でテレビの契約を二つ持っておる、宿舎のほうとこっちの会館のほうと。世帯を持っていない私でさえNHKと二つの契約をしてあるというのが東京の実態であるとするならば、東京の普及率は世帯数に比べてかなり高いものにならなければならないと思うのです。たしか七五%程度でございましたが、そうですね、七五・九%ということになっておりますが、こういう低いところはほかにはないのです。東京は官公庁、旅館、いろいろ多いわけでございますから、世帯数に比較をするならば、この普及率はもっと高くならなければならない。なぜ東京だけがこんなに落ちくぼんでいるのか、しかもNHKのおひざ元でございます。この原因が一体どこにあるのか、いろいろ検討はされておると思いますので、東京が低いのはこういうわけですよと、国民皆さんが納得するような理屈があるなら教えてもらいたいと思います。
  77. 小野吉郎

    ○小野参考人 御説のとおり、東京は世帯の数ももちろん多いわけでございますし、またいろいろ生活の便も非常に多いところでございます。そういった面から申しましてテレビの普及も最高でなければならないのが実態ではないかと思います。実態はそのように考えておりますけれども、一〇〇%把握できるものといたしますならば、先生ただいま仰せのとおり東京はいわゆる普及率の関係では最高のパーセンテージであらわれてこなければならないものと思います。そこがこういった巨大な大きな都市になってきますと、生活態様が、一般的にやはりいろいろなそういう傾向はありますけれども、特に顕著に非常に把握困難なような実情が生まれてくるものと考えます。私ども決して手を抜いておるわけでございませんで、必要なところには必要な人員を配置いたしまして完全把握につとめておりますけれども、あるいは不在、あるいは共働きで家がいつもからっぽだというような事態が東京に限って特に多いものと考えております。そういった面から、一応現在の契約のたてまえでは、放送法三十二条によりまして契約をしなければならないとなっておりますけれども、そこには届け出の義務もございませんし、われわれのほうとしては調査する権限もございません。できるだけ足で動きまして御協力を得ながら契約をしていただくような努力をしておるわけでございますけれども、そこに生活実態とわれわれの努力限界との関係にギャップを生じまして、東京において特にそのような状況が出ておるものと考えております。まことに遺憾と思うのでございまして、現在の財政状況にかんがみまして、あわせて受信契約の公正を期しますために、大都市につきましては特に格段の施策、配意を要するものと考え、いませっかくその点について具体的にどうしたらいいか、こういったところを検討いたしておるような次第でございます。もっとも外勤の集金員諸君はほんとうに自分の事情を犠牲にして成果をあげるために努力はいたしておりますけれども、遺憾ながらそこにも一つの限界もございましょうし、まことに本意でないような数字があらわれておりますことは遺憾でございます。できるだけ将来そういった面につきまして実態に沿う契約の把握をいたすような努力を続けてまいりたいと思います。
  78. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 まあ会長としてはそういう方針でお臨みになるし、これまでも御努力されたと思うのです。しかし会長もお話しになっておりますように、世帯数に比較をするならば東京の受信契約普及率はもっとずっと高いものにならなければならない。たとえば、ベッドタウン的な性格を持っておる栃木県とか千葉県あたり、それから埼玉県にしても、特に栃木のごときは九八・九%、九九%世帯数に対しての契約がある。もちろん世帯の中で契約をしていない不心得者もあるかもわかりません。しかし同時に、ほかの官公庁とか旅館等が契約しておるからこういう普及率になったと思うのですが、どう考えてみても東京は他に比較して普及率がもっと高いものにならなければならないのに——普通だというなら、まだいまおっしゃた捕捉をしにくい面があるからやむを得ないということになります、低いというに至っては言語道断だ。日本の顔の東京で、しかもおひざ元で、特にカラーテレビの契約を見ましても五〇%です。どこかでNHKが手を抜いておるのです。どこかで手を抜いておらなければこういうことにならぬはずです。その点、どうでしょう。
  79. 川原正人

    ○川原参考人 私どもとしては、先ほど会長が申しましたとおりあらゆる手は講じておりまして、特に私自身といたしましてもこの数字の出方についてはかなり疑問を持ちまして、従来とも詳細に分析はいたしております。その結果、これは事実の数字として一つ申し上げたいのでございますが、数字的に三つの原因がございます。  一つは、世帯の中で、特に東京の場合、独身者の単身世帯が非常に多いのでございます。これは率がございますが、四十五年の国勢調査で単身世帯というのは全国平均しまして一四%くらいなんですが、いま御指摘の、たとえば栃木あるいは長野、新潟等の場合は単身世帯が一〇%以下、大体八%前後という数字、それに対して東京都は二五%、要するに四分の一が単身世帯、こういう数字が出ております。そしてその単身世帯の場合は、経済企画庁の推計でございますけれども、四十八年においてもテレビの所有率が五一%、つまり単身世帯の場合は半分がまだテレビをお持ちでない、こういうデータがございます。これが第一の基礎的な東京都の非常な特徴でございまして、大阪府でも単身世帯一六%くらいに対して東京都は非常に高いのです。  それから第二点は、移動といいますか、引っ越しの率が、これはまあ大都市なべて非常に顕著なわけでございますが、一般的に移動率が全国平均して、人口の比較でいいますと一二%くらいの場合に、東京を中心とする首都圏は一六%くらいの移動率ということになっております。中でも世帯を単位で移動率をとりますと、先ほど言いました単身世帯が多いということも手伝いまして、たとえば中野区、新宿区なんかの場合は世帯の一年間の移動率が、これは四十七年度のそれぞれの区役所の統計でございますけれども三〇%、約三分の一の方が一年間のうちに動いておられるということがございます。  それからもう一つは、これも大都市特有の状況でございますけれども、昼間なかなかおうちに家族の方が御在宅になっていない。これも私どもが四十七年に、全体ではございません、豊島区とか板橋区で約九千世帯を軒並み調べたのがございますが、そのとき、とにかく昼間不在の方が六二%、夜八時まで調べましてなお四五%の方が不在だ、こういうデータがございます。特にその中でもアパートにお住まいの方は、夜九時までこの面接の調査をしたのでございますけれども、それでも四〇%くらいの方はお目にかかれない。結局、移動が多くて不在が多いということのために、なかなか接触が私どもとしてはできないというのがデータとしてございます。ただこれは、あくまでこれをもって言いわけにはなりませんので、もちろんそれに対しては対策を立てなければならぬということで、結論的に申し上げますと、昼間通常の時間帯におたずねしたのではなかなか接触ができませんので、最近の社会通念としてはいろいろな問題がございますけれども、やはり休日あるいは夜間等にかけまして、私どもの職員なり集金の者を差し向けるということをしなければならない。その辺をいまいろいろ手を講じて——これは受信者のほうにしても、あまり夜分等に来られることは御迷惑と思いますし、われわれのほうにも労働条件その他の問題がございますのでむちゃなことはできませんが、やはりやらないとどうしても接触ができない。それから、もちろん文書等によって不在がちのお宅にも勧奨をいたしております。それから、あらゆる面で、単に現場の集金員だけでなくて協会の全機能をあげまして、東京、大阪を中心とした大都市圏に対しては集中的な対策をいま講じているわけでございます。
  80. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 独身寮などの場合は一人一部屋ずつの契約になるわけでしょう。
  81. 川原正人

    ○川原参考人 はい。これも原則といたしましてはそういうことになるわけでございます。
  82. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 独身者の場合でも、独身寮などの場合にはかなり話がしやすいのではないかという気がするわけです。寮長さんとか管理人がおいでになるわけですから、そことの話ができると思うのです。  それから、契約をしてもいいが、金を払わなければいかぬし、うるさい、そういう煩瑣な、手続のわずらわしさというのも手伝って契約してない方もかなりおると思うのです。これが風潮になるとたいへんですからね。東京はもう契約せぬでいいんだなどということになりますとたいへんですから、まず東京が一番契約率を高めてもらわなければなりませんが、たとえば、寮なら寮へ行っておつとめ先がわかればそこのほうで話をして、いろいろなチケットで天引きしてもらえるような、NHK受信料天引きなどというのはどんなものですか。お考えになったことがありますか。
  83. 川原正人

    ○川原参考人 御指摘のとおり独身者の場合には寮、まずそういうところでぜひひとつまとめてお願いしたいということで、寮の管理をしておられる方とか、場合によれば企業等にもお願いしております。それから、やはりアパートが問題でございますので、その管理人の方にもまとめてということが可能ならば、いまいろいろ重点を置いているところでございます。  ただ、管理人の方にお願いする、それから企業のほうにお願いする場合に、そのお立場によりましては若干——税金とは違いますので、個人の一つの立場といいますか、ございますから、企業が最初から天引きというのは若干問題もあるようでございますけれども、なおせっかくの御指摘でもございますから、もう少し検討してみたい。  それから、私どもとしてはいま先生の御指摘のように、とにかく一軒一軒二カ月ごとではすれ違ってしまう場合もございますので、やはり銀行口座からの振替とか、一括してのお払いとか、これには相当力を入れて、都市部ではかなり伸びてはきております。ただしまだまだ、御指摘のとおりもう少し努力を重ねなければいけないというふうに思っております。
  84. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 NHKの集金は、委託をすればだれでもできるわけですね。いまのシステムでは。そうすると、たとえばいまの寮の管理人とか寮長さんに、あるいはおつとめ先でおそらくそうなっておるのだと思いますけれども、集金の委託料を差し上げる。郵政省がよくごまかして、保険をとるのに、何か保険の一括払い込みをやると何%か返してそれで旅行に連れていきますというような、旅行保険のような名前をつけてうまいことごまかしてこのごろ問題になっていますが、いろいろありますけれども、私はごまかせと言うのじゃありませんけれども、ああいう委託集金料か何かでいろいろうまい方法考えつかないものかどうか、検討なさったことがありますか。
  85. 川原正人

    ○川原参考人 私どもとしてもそれはいろいろなことを考えまして、それから現場の営業所等を督励いたしまして、個別にそういう寮の管理人の方あるいはアパートの管理人の方、せっかくいまお話し合いを進めております。しかし現実には、なかなかこれがきめ手だというものが正直いまつかみかねておるという実情でございまして、あらゆる手を、何でもいいからできることはすべて手を打っていこうというふうに考えております。
  86. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 非常に御努力なさっているようですが、しかしどんなに努力をなさったとしても、数字の上で非常に契約率が東京都については低い、さらにまたカラーテレビの契約率が低い。東京の人はカラーテレビを見ないのだろうかというほどカラーテレビの契約率が低いわけですから、これはやはり十分対策を立ててもらわないと、これが一波万波になりまして、NHKの受信料というのは納めなくてもいいと東京の人が来てそう言ったということになりますと、東京の人の言うことはよく通りますからね、地方のほうでみんな納めないようになりますよ。特に十分気をつけていただきたいと私思います。  それから次に、先般の新聞の報道の域を出ていないのですけれども、沖繩のVOAの撤去の問題でございますけれども、あの沖繩返還協定の議論の際にもずいぶんこれについては議論があって、特に合意議事録でございますか、この五年間の期限が過ぎた場合でも、相手のほうで「予見されない事情」があって、代替施設ができない場合には居すわるのではないかという議論をずいぶんしたわけです。どうもこういう条項が入っているのは危険じゃないかということを、当時委員長大臣でございましたね、ずいぶん議論したのですが、外務省のほうではだいじょうぶだ、だいじょうぶだというわけで、五年たったらなくなるのだと言うものだから、われわれも沖繩を返してもらうのだから五年ぐらいしんぼうせんならぬのかということで、不満足ながら通ったわけですけれども、どうもこれが最近、何日でございますか、五月九日の読売や朝日等の報道によりますと、どうもアメリカは撤去をしそうにないというふうに報道されておりますが、この間の事情を少し御説明願えませんか。
  87. 深田宏

    ○深田説明員 ただいま阿部先生御指摘のように、五月の七日と八日に、アメリカとの沖繩返還協定第八条に基づきます協議を行なった次第でございます。まあ協定にも書いてございますように、協定発効後二年において協議に入るということでございました。これは協議が始まったわけでございますから、いまの時点で最終的な決着がついたということではございません。  いま御指摘になりました「予見されない事情」云々のために居すわるのではないかという点につきましてでございますが、わがほうのはっきりした態度、立場でございますのは、協定で認めております五年間、おそくとも五年間、できればそれよりも前に中継局を撤去してほしいということを終始徹底的に主張しておりますので、その点は御心配いただかなくてよろしいのだろうと思います。ただこれに対しまして、アメリカ側は、新聞等にも報道されておりますように、この放送は非常に無害のものなのだから、これを続けることに意味があるのだということをいまの時点では確かに申しております。したがいまして、日本側の非常に強い立場を本国政府に報告した上で次の段階の協議を続けるということになると存じます。このような次第でございますから、私どもに関する限り、この五年をこえて中継局が存続するということはないようにという最大の努力を払うわけでございます。  この合意議事録の解釈ということにつきましても、従来国会でも御答弁いろいろございますけれども、政府委員のほうから、あるいは当時の大臣からお答え申し上げておりますように、天変地異等と非常に限られた、全く人の力で及ばないようなものということで私どもは解釈しております。したがいまして、このような限られた事態を予想しているということはまさに矛盾するわけでございますから、結論といたしまして、五年ないしそれ以前の撤去を実現するということで努力してまいる所存でございます。
  88. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 外務省当局のき然たる態度を聞きまして、私も意を強くして、あのときの議論が間違っていなかったと思っておりますけれども、どうもアメリカの言い分の中に、報道によると、沖繩のVOAの放送活動に対し外国から批判の声が出ておらないから五年を過ぎても置いてもいいじゃないか、こういうような議論もあるようですが、これは郵政省の電波監理局長、電波の関係からいえば、あれは何条ですか五条ですかで、いわゆる外国の放送は日本で電波を使っちゃならぬとなっているわけでしょう。これが大体基本になって、五年間だけはやむを得ないとこうなったわけですから、日本の国内法のたてまえからいっても、これは五年をこすということになればたいへんなことになると思うのですが、郵政省は一体どう考えておるのですか。
  89. 齋藤義郎

    ○齋藤(義)政府委員 いまお話のございましたように、電波法の基本的な立場は外国性の排除ということでいやしくも外国の無線局を日本に存在せしめないというのが電波法のたてまえでございますので、そういう状態が一日も早く来ることを郵政省としては念願しておるわけでございます。
  90. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 この電波の関係では郵政省が一番法を守らねばならぬ立場ですから、単に願望したり念願しておるのではなくして、外務省に、そういうことでは困りますよと、特にこれは言っておいてもらわなければいけないと思うのですが、大臣、これはどうですか。
  91. 原田憲

    原田国務大臣 それは言っておるのです。言っておりまして、それで先般もいまお話しのように話が出まして、外務省から参事官がいま答弁をしたようないきさつになっております。
  92. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 外務省のお考えは私もよく理解ができてわかったのですけれども、ただこれは相手があるわけですね。特に相手の言い分は、予見し得ざる事情というのが施設ができない場合まで含まるのだとか、それから先ほど申し上げました批判がないからいいじゃないかとか、こういう理屈で日本の国内法を踏みにじられたのではこれはたいへんなことになるわけです。ただ、参事官おいでになったかどうか知りませんが、アメリカはどうしてせっかく約束をしておるのに、二年後の協議に入った時点で、どうも出ていきたくないというようなことを言い出したのでしょうか。どうでしょうか。
  93. 深田宏

    ○深田説明員 ただいま御指摘のように何ぶん相手があることでございまして、相手側の事情、これは一つのやりとりでございますから、全部が全部——わかるように把握につとめておりますけれども、一切わかるというわけではございません。ただ先方がいまそのような立場をとっておりますことは、御承知のようにアメリカも国会と行政府との関係で、行政府はいろいろ説明を一生懸命するわけでございますから、予算をとるという場合に、まあアメリカの行政府として簡単に予算がとれるわけではこれはもちろんございません。いろいろな行政府、議会の間のやりとりを経験いたしまして、できるだけフリーハンドと申しますか裁量の幅を持っておきたいという気持ちは非常に強いのではなかろうかと思います。  先ほど申しましたようにいままだ協議か始まったばかりでございますから、これから私どもが非常に強く私どもの立場を主張していく過程で、アメリカ側の考えが、私どもの期待といたしましては私どもの考えに近寄ってくるということが予想されるわけでございます。
  94. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大体日本語で解釈する限りはどうもアメリカの言い分のほうが非常に無理があるようで、当然いま参事官がおっしゃるようにわがほうの主張についてアメリカが納得し得るものと私もそういうように理解をしますが、早く協議をしていただいて、その時点になって居すわって、日本の国内法を無視するというような事態が起こらないように特に要望をして、私の質問を終わります。  どうもNHKの皆さん、御苦労さまでした。
  95. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十三分開議
  96. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土橋一吉君。
  97. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいま議題となっております日本放送協会四十七年度貸借対照表等の国会提出についての御質問をいろいろしたいと思います。  すでに御承知のように、四十七年度において日本放送協会が非常に多くの困難をかかえながら、沖繩返還、田中内閣の発足、日中国交回復、ミュンヘンオリンピック、また総選挙など、特にベトナム和平協定などについていろいろ奔走されまして、われわれ国民としてはたいへん喜んでおるものであります。自来、放送局は神南町に放送センターをつくりましてから格段の努力をしておられまして、特に大ホールのオペラであるとかあるいは音楽その他で非常に前進を見ておるとわれわれは考えております。しかしながらそういう一面、また他の面では、われわれがどうしてもこの委員会において取り上げなければならないというような問題もありますので、少しく質問をしていきたいと思うのであります。  第一の問題は、すでによく知られておりますように、放送法の規定によっても、放送する場合には四十四条の規定などに基づきまして厳格にその内容が行なわれておるのであります。私が申し上げるまでもなく、特に「協会は、国内放送の放送番組の編集に当っては、左の各号の定めるところによらなければならない。」というので、四十四条の第三項にはちゃんと基準を示しておるわけであります。これは大臣会長さんもよく御承知と思いますが、ここで書いておることは「一 公安及び善良な風俗を害しないこと。二 政治的に公平であること。三 報道は事実をまげないですること。四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」こういうふうに一つの番組の基準基本的に示しておるのであります。  ところが、あなたのほうで放送されました四十七年度におけるベトナム和平の問題を一つ取り上げてみたいと思うのでありますが、はたして日本放送協会はこのベトナム和平協定を国民に知らせるその過程の中において、一体ほんとうにまじめに事実を報道したかどうか、あるいは報道の面において、取り扱い方の面において、この問題についてはいろいろ私どもも調査し、あなたのほうの年鑑、資料等拝見しましてまず気づくことはどういうことであるかといいますと、たとえばニクソンとキッシンジャーが、ニクソンさんが十九回、キッシンジャーさんの問題が四回、合計しまして四百二十六分、二十三回で放送しているわけです。ところが一昨日ベトナム民主共和国の国会議員団の方々が日本を訪問されまして、そうして各党の方々にも表敬あいさつをされておると思うのです。私たちもこの代表団にお会いをいたしました。こういうことで今後ベトナム民主共和国と日本の国交の回復問題はやはり大きな国際的な焦点の一つであると私は考えておりますけれども、この放送番組の内容からいうと、いま申し上げましたように四百二十六分、二十三回も放送しておるにかかわらず、たとえばスワン・トイさんとレ・ドクトさんビン外相は一回ずつ合計三回であります。そしてその時間は四分の一にも足らない百四分しか放送していないわけです。そうなってまいりますと、当時のあなた方の解説その他のものを見ますと、たとえばこういうことがいわれておるのであります。北ベトナムが三月の中旬に大挙侵略をして、たしか四月十六日であったと思いますが、これに対してアメリカが猛反撃を加えて海上封鎖をした、こういうUPとかAPとか、あるいはアメリカ側を中心とするそういう国々の放送を中心に掲げて、実際はどうであったのか。臨時革命政府や、あるいはまたグエン・チュー政府に対して心よからぬと思っているそういう方々の闘争については目をふさいで、ただ大挙して侵入したから報復的な爆撃をしたというような口実を述べておりますけれども、まあテープがあることですからよく調べていただきたい。ところが実際は、和平協定を結んでみると、依然としてアメリカは侵略をしておった、ベトナム民主共和国がこれに対してもっぱらの防衛をしておったという態勢がはっきりして、協定の中にもさような文章が随所に出てきておるわけですよ。そうすると、NHKの取材のやり方その他についてはきわめて手落ちがある、放送法の第四十四条が規定する事実に基づいて報道していない、真実を伝えてない、こういう点があるのではなかろうかと私は推定するのであります。こういう点について、小野会長は当時副会長でございましたから、それは取材の上において困難があったとか、あるいはUP、APのほうが手っとり早くわれわれに見えるからやったとかいろいろあるでしょうけれども、いま私があなたのほうの資料に基づいて示したこういう内容から見ても、きわめて適正を欠いておるのじゃないかというふうに私は思うのですが、どうですか。
  98. 小野吉郎

    ○小野参考人 放送法第四十四条に掲げてあります原則に従いまして放送いたしますことは、NHKの基本的な守らなければならない線が明記されておるわけでございまして、私どもはこれを違反することなく守っていくことこそNHKの使命であり、これに反するようなことがあれば、NHKとしての存在理由がない、かように考えております。  そういうことで、御指摘のベトナムの問題等につきましてもそういった考えで放送に当たっておるわけでございますけれども、ただこのベトナムの問題は世界の関心を集めた重大事でございます。できれば北側にも入り、南側からも見、そういったことで放送法四十四条の原則に照らしてあやまちなからぬことを期すべきであったと思います。これはその過程から見ればまことに遺憾でありますけれども、特殊な事例でございまして、北の方面へも入るべく八方努力をいたしたのでありますけれども、NHKがそこへ入り得るビザがなかなかとれなかった。それでは全然ベトナム問題を取り上げないかということになりますと、世界人類の最大関心事であります限り、これを全然ネグレクトするわけにはまいりません。やむを得ず南のほうから見たそれが多かったことは事実としていなめないと思いますけれども、私どもの努力といたしましては、そういう真実と公正を保ちますために、北側にも入る努力を八方尽くしたわけでございます。遺憾ながらビザが取り得なかったといったような事例もございまして、私どももまことに思っているとおりにいかなかったということはございます。ただ和平成立後におきましては北側にも入れるようになりましたし、現在も入っておりますので、公正と真実を伝えるべく最大の努力をいたしておるのが現状でございます。
  99. 土橋一吉

    ○土橋委員 いまの小野会長の御発言で、一応そういう客観的な事実関係においては困難があったという御説明で、その点も私たちはわからないわけではございません。しかしながら、たとえば解放民族戦線がグエン・チュー政府の暴政に対していろいろ戦っておるとか、あるいは南ベトナムの平和を愛する一団の方々がグエン・チュー政府の施策についてはいろいろ批判を持っているというようなことについても、適切、妥当に放送しておったかというと、私の見るところでは必ずしもそうでない。こういう点がありますので、今後さようなことがないように、できる限り公平に、この原則どおりやりませんと、番組を組む場合の基本的な基準でありますので、私がとやかく言うまでもなく、これを守らないということになってくれば、日本放送協会基本的な使命を自分から投げ捨ててくるということになります。ぜひとも今後はこの基本的な原則を堅持していただきませんと、あなた方がいろいろなものを放送されましても、この原則をはずれたようなことが出てくると国民の信頼を失うわけですね。したがって受信料の問題にも関係してくるでしょうし、この点はNHKの、単に会長さんだけでなくて、すべての職員が銘記しなければならない問題だと思うのです。  さて、そういう御発言がございまして、そう遠くないつい最近の問題でありますが、いまも御発言があったのですけれども、私が新聞をもって指摘するまでもなく、きのうから公共料金アップ火ぶたを切るというので五六・八二%の各電力会社が大幅の値上げをしてまいりました。これは国民に対してまことに現田中内閣が物価問題についてはほとんど無能といっていいほど施策を行なっていないという一つの表現であるというふうに私たち考えておるわけです。郵政大臣もおられますけれども、こんな異常に物価を上げてきて、日々のいろいろな新聞その他雑誌にもあるように国民はほとほと困っておるわけですね。この原因をなすところの石油問題についてあなた方の放送がどういうことであったかといいますと、これは率直に聞いていただきたいのであります。四月三十日の朝日新聞に「報道のNHK どこへ」という題で書いてあります。これはあとでお見せいたしますけれども、(ら)という人が書いております。この内容を読んでみますと「連休も日曜日は、まったく久し振りの晩しゃくでホロ酔い気分。うつらうつらした後、ふろへはいってサッパリする。NHKテレビの「ニュース展望」(夜の9時45分)をみているうちに、完全にさめきってしまった。」その次が問題なんです。「「アラブの戦略」というテーマで、最近帰国した田中・前カイロ支局長に緒方解説委員長質問する番組だった。緒方氏はしきりに、四年間カイロに在住した田中氏を、わが国最高のアラブ事情通と印象づけていた。」印象づけておった。一生懸命持ち上げておった。「その田中氏は淡々と、現地での経験・観察に基づく判断を述べていた。私の注意をひいたのは、昨年秋以降のアラブ産油国の石油政策がもっぱら、日本を標的としていたという点と、それに対して日本外交はなすすべもなく、アラブ側のねらったツボにはまってしまったという見方である。わが国は産油国のかけひきに対して切りかえすだけの能力がなく、押し切られてしまった訳だ。NHKカイロ支局長は、そういう判断をキチンともっていた。それなのにNHKの石油報道や外交報道は、現地のそうした意見を積極的に採用しようとはしなかった、ということになるのではなかろうか。「報道のNHK」というイメージの風化を、まざまざとみせつけられる思いがした。」こう朝日新聞の(ら)という記者が書いております。これと同じような事実で、やはりNHKのある解説をやっている方の報道を聞きまして、この委員会でも私は指摘したはずです。その方が、社会主義の国はどうなっておるのか、日本のエネルギー問題についてどういう見解を持っておるかを示さないで、ただアメリカとかフランスがどうしたとかいうことだけを述べて、それが全世界の石油問題であるかのような解説をしておった。私は非常に異様に感じてそれも心にとめておるわけですが、この事実から察するならば——、要するに、御承知のようにメジャーがばく大な利潤をあげて、そして日本国民の物価高に対しては非常に悪い影響を与えておるのだ、だからやはりメジャーを排除して、できることなら二国間の協定その他によってやればもっと石油の問題もうまくいきますよというようなことの意味については、すでに新聞にも報道にもかなりいわれておるわけですよ。サウジアラビアのヤマニ石油大臣も日本に来ていろいろ述べておるわけですね。ところが、メジャーがどんなに暴利をむさぼっておるのか、どのように石油業界においてそういうことをやっておるかということについて、田中さんは淡々として述べておるにもかかわらず、あなたのほうの論説委員なりそういう方々は、その問題をできるだけ伏せるようにしておったという事実、これはやはり事実を報道していないじゃないか。いまあなたは、さっきおっしゃいましたように、できる限りやると言っているけれども、しかも四年間もカイロに駐在をしておって、それで事実をちゃんと的確に、メジャーの操作の上に立ってはいけませんよという主張も十分述べられておるにもかかわらず、依然としてそれをあまり取り上げて国民に知らせない。でありますから、この狂乱的な値上げ問題が起こってきたということにも関係するではなかろうかと私は考えるのであります。ですからやはりこの解説担当の方々も、現地の実際そういうことについては国民に正しく事実を報道するということをやりませんと、やはりNHKが、現政府がやっておるこういう問題や、ガスの値上げ、あるいは電気料金、タクシー値上げ、そういうことに一臂をかすような、そういう意味合いの報道をしてはならないということを私は指摘しておるのであります。いかがでしょう。
  100. 小野吉郎

    ○小野参考人 知り得た真実を曲げるつもりは毛頭ございません。御指摘のとおり、田中君がアフリカ担当の駐在員といたしまして、アフリカにおける石油産出国等の事情についても精通をいたしておることもそのとおりでございます。またハテムさんにも非常な信頼を得た人でもありますし、NHKとしては非常に重用をいたしております。そういうことで、いろいろ現地のそういう事情も踏まえながら、一面やはり現地だけでなしに、石油の問題は非常に消費国の問題もあり、また同じ石油の供給のそれにいたしましても産出国自体があり、またメジャーとも深い関係もございます。そういったいろいろな面を通じまして、ことさらに真実を曲げるといったような意図はございませんけれども、全般的公正を期するために放送をいたしたわけでございまして、一部のそういった産出国の事情に精通した田中君の所見そのものが全体ではないと思いますので、これも大いに取り入れておりますけれども、そういったことであるいはいろいろな御批判も受けることもあろうかとも思いますけれども、NHKといたしましては、放送法第四十四条に掲げられた原則に反する意図を持ってやったわけでは毛頭ございません。この真実を伝えるそれは厳に守って続けてまいった、かように信じております。
  101. 土橋一吉

    ○土橋委員 私の言うことはまだ会長さんにはのみ込んでいただいていないように思うわけですよ。私は何も田中さんと一面識も何もない。実はその放送も聞いておりませんけれども、同じような報道機関として、この朝日新聞の記事を書いた人が商売がたきというような意味がかりにあったとしても、ここに書いている本質的なものは消すことはできないわけですよ。つまり私の言うのは、メジャーと日本の業界の関係、メジャーと石油産出国の間においてどういうことが行なわれておるので、そのメジャーに対する日本の支配体制全体が、御承知の国会にわれわれが喚問することを要求をしているのに、それも自民党が茶々を入れてやらせない。メジャーの今度の、御承知のような、八千九百四十六円の大幅値上げについては、かなり一般その他に報道されておりますように千四百円台くらいもうけているのではなかろうかということがいわれておるわけですよ。だからわれわれは、軽油取引税やガソリン税を全廃するか大幅に削限をすれば、四千円程度の価格でおさまるのではないかということを日本共産党は主張した。ところがそれも何とかかんとか理屈をつけて、メジャーのことを言えばメジャーが風向きが変わっちゃって、電話一本でほかのフランスに移るなんというようなことを中曽根通産大臣は盛んに言って、メジャーをかばう態勢を依然として取り続けた。その結果こういう事態が引き起こっている、異常な物価値上げ問題について。私はその基本的な問題について、やはり放送法の規定を守って事実を国民にちゃんと知らせていかなければならない。私は、メジャーに対する批判、メジャーが不当なもうけをしておることについて、寡聞にしてまだNHKはキャンペーンを展開してないように思うが、何かそういう解説やキャンペーンをいたしましたか。
  102. 坂本朝一

    ○坂本参考人 お答えいたします。  メジャーそのものについてどうこうということではなしに、石油危機一般の問題について、協会といたしましては十月の石油危機発生以来かなりのたくさんのキャンペーンもいたしております。
  103. 土橋一吉

    ○土橋委員 そのキャンペーンというのはどういう形のキャンペーンをしたのか。これを排除して二国間の協定を中心としてやらなければならぬ、国民に、そのメジャーというものの機構がわが国の物価高や異常な石油困難についてどういう害悪を及ぼしているかということについて、あなたのほうは放送しましたか。
  104. 坂本朝一

    ○坂本参考人 お答えいたします。  いま先生の御指摘のような点を含めまして、石油危機全般の問題につきまして定時番組において十月以来年度末までの間に百三十六本、それから特別番組として十一本、合計百四十七本放送いたしておる次第でございます。
  105. 土橋一吉

    ○土橋委員 それじゃ、このメジャーについての放送はどんな内容であったか、あとで私のほうへちょっと知らせてください。お願いをいたします。  次は、炉辺談話、田中内閣総理大臣の問題でありますが、これは先ほども指摘がございましたけれども、これは放送法第二条の規定からいうと、どういう番組に当たるものでしょうか。教養番組ですか、娯楽番組ですか、それとも教育番組ですか。田中炉辺談話と称するこの番組は、何の番組に属していますか。
  106. 坂本朝一

    ○坂本参考人 当然、一国の行政の最高責任者の発言でございますから報道番組であり、その一部については教養番組でもあり得ると思います。
  107. 土橋一吉

    ○土橋委員 報道番組でもあるし、また教養番組でもある、こういう説明をいたしました。あなたは放送法第二条とそれ以下に書いてある放送の基本的な原則を知っておって答えたのですか。条文をよく読んで答えたのですか。条文をよく読んで、この放送の内容は、いわゆるあなた方の範疇からいってどういう——報道番組だと言うが、これは報道じゃありませんよ。だれが考えたって、田中総理がどこかの大学の先生と話しておるのが報道番組だなんて、あなた考えているのですか。もう一回、何の番組ですか。
  108. 坂本朝一

    ○坂本参考人 一国の行政の最高責任者の発言でございますから、それは当然報道にもあたりますし、なおかつ教養にもあたります、そう申し上げた次第でございます。
  109. 土橋一吉

    ○土橋委員 専門家のあなたがおっしゃるからまあそういうことであろうとも私は思いますけれども、これはいわゆる教育番組じゃないですか。あるいは少なくとも教養番組じゃないですか。もしいまの問題が娯楽番組とすればこれは問題にならない。そういう面も幾らか持っておりますけれども、国民の中ではね。しかしこれはまあ放送局が娯楽番組で田中さんを呼んだなんてことはおよそ言いたくても言えないでしょうからね。そういったところでこれは教養か教育番組であります。  そうすると教育、教養に関してはちゃんと基準があるわけですよ。つまりこの内容を放送することによって国民にどういう影響を与え、どのように教育をするのか、どのように国民はこの問題を通じて教養を高めるかという問題だと思うのですよ。ところが田中総理の御発言の中には、最近いろいろ問題を起こしておりますように——これは従来ならば佐藤さんとか池田さんのときはあまりそういうことは言わないことにするということになっておったわけです。ところがわれわれ見ておるいろいろな情報から見ると、まあ会長さんは自主的に自分のほうからお願いをしてやっておるという形をとっておるけれども、ほかの報道機関はそうはいっていない。政府の圧力によって、民放も入れて従来十二回であったものを、わざわざ二十四回も放送しておると書いておるのもあります。そうしますと、私はいまの事実に関しての報道の問題と、この田中さんのいわゆる政策、特に自由民主党として述べられる個所は非常に多いわけですよ。そうすると、一国の総理という範疇もありましょうけれども、自由民主党の総裁ですよ、田中さんは。そうなってくると、各政党、ここにも書いてありますように、論議の分かれるような問題については各政党が公平に意見を述べなければいかぬということの基準から見て、一体会長さんはどう考えておるのですか。「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」そうすれば自由民主党という政党の総裁が、二面は内閣総理大臣ということであるけれども、これはそう切り離すことはできませんよ。そうすれば当然各党の代表も同じように三十分とか一時間、田中さんと同じように五党が——ほかにたくさんあります、政党は何百とあるそうでございますけれども、まあ国会議員を出しておる政党といえば大体五党とかそういうところだ、なぜそれを公平にやらないのですか。やる気持ちがあるのかないのか、あるとすればどういう方法でやろうとするのか、答えていただきたい。
  110. 小野吉郎

    ○小野参考人 先ほど「総理と語る」の番組が一体番組種別ではどこに入るかというようなお尋ねに対しまして、坂本専務理事からお答えを申し上げましたが、当初はそうでなかったのでありますけれども、中間におきまして、この対談の中にはニュース性のあるものは入れないというようなこともございました。そうなってまいりますと、これは教養番組と申しましょうか、あるいは国民生活に直結した行政の方針なり現状なり意図なり、こういったものを周知する意味合いにおける番組であったと思います。最近におきましては、この番組の対談の中にニュース性のあるものも非常に入れるべきであろうと思いますし、これが当初のNHKの念願でございました。またそのように入っておりますので、その限りにおきましては報道番組だというような性格もございましょう。ニュース性を持つ意味におきましてそういったような性格のものもあろうかと思います。したがって、坂本専務理事お答えを申し上げましたように報道番組でもあり教養番組でもあり、いろいろ混在した姿になっておることは事実でございます。  そうなってまいりましたときに、政治と国民生活とのいろんなつながりにおいて、いろいろやはり国民にそれをお伝えしたほうが日常生活の設計なり運営なりに便するところが多い、こういう意味合いにおいて設定した番組でございますけれども、先生御指摘のとおり、政党内閣制の現状におきましては、一人でやはり政党の総裁であり片や行政の最高責任者である総理大臣、こういった場合に、事実問題としてなかなかこの両者の使い分けがむずかしいことはよくわかります。これはデリケートな問題であろうと思います。しかし、私どもが着目いたしますのは、自民党総裁としてではなく、行政の最高責任者であります内閣総理大臣として、内閣で行なわれる政治の現状なり将来のお考えなり、そういったことが国民に知れることが国民の生活設計なり生活運営に非常に役立つ、こういう意味合いにおいて取り上げておるのでありまして、その意味から申しますと、放送法の条章に照らしましても、これを取り上げたから他の政党の主張にどうこうという問題は起きないと思いますけれども、問題が非常にデリケートでございますし、また実際の政治は一党独裁でもございません。自民党だけでできるわけではございません。国会中継等におきましては、他国に例を見ない非常にあらゆる見解が国民にわかるような番組も組んでおりますし、また国会中継以外にも「政治討論会」「国会討論会」等の番組を編成いたしまして、実際の国の政治の動きと国民生活とのかかわり合い、この上に非常に参考になるような貴重な番組を編成いたしております。この全体を通じて考えますと、放送法の公正でなければならない、意見が分かれる問題についてはそれをみな取り上げなければならない、こういう原則に反しておるとは私は毛頭考えておらないわけであります。  それにいたしましても、いろいろなお考えもありましょうし、問題の万全を期しますために、野党の党首の方々にも先般も出ていただきまして、そういった見解を披瀝していただくチャンスもつくりました。また将来いろいろそういった話し合いができるものなら、個々でなしに、各政党の首長が一堂に会してある問題についていろいろ話し合われるような、そういうような番組があってもいいのじゃないかと私自身はそのように考えておる次第でございます。
  111. 土橋一吉

    ○土橋委員 あなたのお話は、総じていえば、バランスがとれておるのじゃないかという説明をするために回りくどくいろいろお話があったと思うのですよ。しかし、私はそれだけどんぶり勘定的なものでは済まないと思うのですよ、と申しますのは、国民が時間帯その他によって、聞くときとその場所が違ったりいろいろな関係がありますので、一つ一つの放送の内容が特に政治問題あるいは事実問題について意見があるという場合には、その場その場においてやはり対談とかあるいは片方の意見も聞く。何もその場合総裁いなくたっていいですから、ほかでとったものをちゃんと合わせて、やはり問題をピントを合わせて説明をさす。そうでありませんと、どんぶり勘定でやった場合には、それはあなたの主観としては、なるほど公平にやったというつもりであっても、全体から見ると、国民はその一場一場しか見てないわけですよ。ですから、やはりその一つ一つの一こま一こまごとにそういう体制をとりませんと、ここに書いておる内容はそういうことを意味しておるのであって、どんぶり勘定で大体おれはいいと思うということでは相済まされないということが明瞭だと思うのですよ。つまり集約的にいえばそういうことになるのだ、だからいいじゃないかということでは許されない。やはり一つ一つが勝負であるわけです、放送というのは。その都度、次の場合にまた違った人が見ておるかもわからないというようなことがありますので、その都度その都度にそういう体制をとらなければならぬということだと私は思うのですよ。これはいかがですか。あなたのように、どんぶり勘定で全体討論もしておるじゃないかというようなことでは済まされないので、やはり一つ一つがそういう積み重ねを講ずるようにしていただきたいということであります。
  112. 小野吉郎

    ○小野参考人 この点は先生と所見を異にするわけでございますけれども、個々の番組一つ一つについてそのような配意を下さなければならないとなりますと、問題は非常に窮屈なことになりまして、かえって非常に放送の本質であります大事な問題をお伝えするといったようなチャンスをのがす場合もあろうかと考えます。問題の「総理と語る」の番組は、これは討論番組と申しますか、そういったいろいろな意見をそこで言い合ってもらうという趣旨のものではございません。政治と生活との関連、これが政治の上にも反映されて非常にいい政治ができ、国民生活の面からいえば、政治の行くえが推察できることによって国民各自各自の生活設計なり生活運営なり、こういったものに便するであろう、こういうような考えでございますので、行政の最高責任者であります総理のお考え国民に伝える、これが非常に国民生活の運営の上に参考になるという趣旨のものでございまして、決してこれは討論番組として考えておるものではございません。先生の、個々の番組ごとに、やはりいろいろな異なる意見があれば同時にその意見を取り上げる、これも一つの方法でございましょうけれども、かえってそのことは放送のいろいろな必要なことをお伝えしなければならない機会を逸せしめて、放送の大本を非常に誤るおそれもある、このような考えを私としては持っておるような次第でございます。
  113. 土橋一吉

    ○土橋委員 これは、(「見解の相違だよ」と呼ぶ者あり)ここで見解の相違だということを言っておる人がありますが、これは見解の相違ではないのです。これは受信料を出しておる国民にNHKは公共放送としての使命を達するかどうかという問題であって、私たちはそういう国民の、要するに二千何百万世帯という方々が放送局をささえるために、つまり受信料を払っておるわけですね。それにどう対処するかという問題であって、単に、ここで私が論議したこととあなたが所見を異にするというような問題では済まされないので、すべての国民が納得できるようなものをどうして選ぶかという問題でありますから、そこのところを間違いなく……。あなたと私がここで論争していることではございませんので、私も聴視者の一人、あなたもひるがえれば聴視者の一人なんですから、その利益を守る観点から私たちは論議しておるのであります。この点をどうかひとつ間違いないように。  それでは、次の問題をお尋ねいたしますが、せっかく外務省からお見えくださっておるので、まことに御苦労さまで、感謝にたえません。ありがとうございます。  さて、先ほど他の議員からもお話がございましたが、五月の七日、八日の日米協議会の中で、VOAの撤去についてあなたのほうは一体どういう主張をし、アメリカ側がどのような答弁をし、どのような回答をしたか、これを明確にあなたの御記憶のある限り述べていただくし、どうしても記憶が薄らいだということであれば、特にアメリカ側がどういう答弁をしたのか、どういう意向を明らかにしたのか、VTRがあればそれを貸していただきたい、あるいは速記録があれば速記録を必ず私のほうへ見せていただきたいのですが、まず、その交渉の概要をここでひとつ、御苦労でございますけれども演出をしていただきたい。と申しますのは、新聞でいろいろなことを書いておるわけですよ。このとおりいろいろ書いておりますので非常に疑問が生じておるわけですから、だから、ひとつ御苦労でございますけれども……。
  114. 深田宏

    ○深田説明員 協議は二日間ございました。二時半からと四時からでございまして、都合五、六時間にわたっての協議でございます。ただ最初の日に、どうも考え方が違うようだということがわかりましたものでございますから、協議の場でございませんで、おまえの考えていることはどういうことかというようなことをその間に問いただしたりなどいたしましたので、二日間にわたってかなり充実した意見の交換をしたということを申し上げることができると思います。けさほども申し上げましたように、この協議は完結したわけではございませんので、その内容を速記録のような形でと申されましても、これはそういう記録はとってございませんし、時間にも限りがあると思いますので、要点を、私の記憶している限りでここで申し上げさしていただきたいと思います。  結局ポイントは、私どものほうの主張は、協定にございます協定発効後五年間にわたって中継局の使用に同意するというわがほうの立場、ということは、五年をたったらやめるかほかへ移っていただくということでございます。しかし、これは五年間と協定の上では書いてごいざますけれども、私どもといたしましてはできるだけ早くということでありますので、先方の事情が許す場合におきましては五年を待たずともそういう措置をとってほしい、これを終始強く主張したわけでございまして、二日間と申しましても、私どもが申し上げたことはほとんどそのことに尽きるわけでございます。これに対しまして先方が唱えましたことは、このVOAの放送が、これも新聞等にすでに出ておりますけれども、ニュースを伝えるあるいは音楽を流すというような一般的なものであるから、決してこれはほかからも苦情もないし、緊張緩和というような時代の要請に逆行するわけではむしろなく、それに即したものである。したがって、この放送を継続することはいいことなんだということを繰り返し主張したというわけでございます。  そこで問題は、これまた新聞等にも若干出ておりますけれども、例の合意議事録に、「予見されない事情」で代替の施設が五年間で完成しなかった場合に、先方からもう少し延ばしてほしいということを言ってくることもあり得るではなかろうか、その場合には、そういう要請に日本側が十分の考慮を払う用意があるのだというくだりがあるわけでございます。このあたり、先方といたしましては、けさほども若干申し上げましたけれども、できるだけアメリカ側として動き得る余地を、裁量の幅を持っておきたいということで、その解釈を非常に広くゆとりをとって解釈をしたいということを申しました。これに対しまして私どものほうは、過般来の国会での担当大臣、担当政府委員からの答弁にありますように、ここにあります「予見されない事情」というものは、真に予見されない、つまり天変地異等をいう非常に限られた限定的なものであるということを強く申したわけでございます。この点つにきまして、率直に申しまして彼我の見解が一致いたさなかったわけでございますので、二日間にわたりましてはその点をめぐっていわば押し問答のようなことが続いたわけでございます。それで二日間の協議自体の結論といたしましては、そのような、私ども非常に強く主張いたしました結果といたしまして、日本側の立場は非常にかたいものであるという印象は確かに与えることに成功したと思いますので、そのような事情を本国政府に報告いたしまして、それに基づきまして先方から、この次の協議をいつやりたいということを言ってくるものと期待しておる次第でございます。
  115. 土橋一吉

    ○土橋委員 この問題は、私が指摘するまでもなく、あなたのほうの外交的な、いまのお話が真実とするならば、一応六十点ぐらいの点数をつけてよろしいという外交交渉であったと思うのであります。これは満点というわけにはいきません。なぜかといいますと、第一、このVOAというのは、御承知のように大統領直属の放送を行なうということがいわれております。それで、これは過去、いわゆるベトナム侵略戦争にどういうことをやったのか、どのような媒略放送をやったかということは天下周知の事実であります。したがってこの問題については、現委員長が郵政大臣のときにこういう答弁をしておるのであります。沖繩のVOAの放送内容について、郵政省は五月十五日以降どこかの郵便局で録音することを検討しているということであるが、これについて伺いたいという質問が出ておる。これに対して廣瀬郵政大臣が、いろいろチェックすることについても答弁をされております。また、統一見解としてモニター制度をやるということになったようだが、その点はどうかというような質問に対して、これは六十七沖繩返還協定特別委員会における議事録でもいろいろ廣瀬郵政大臣は答弁をしております。最も重要なことは、すでにあなたさまもよく御承知のように、電波法の第五条第一項の規定によれば「左の各号の一に該当する者には、無線局の免許を与えない。」与えてはならないという禁止規定がございます。そこに「日本の国籍を有しない人」「外国政府又はその代表者」には放送の免許を与えてはならないという厳重な禁止規定を持っているわけであります。これは御承知だと思います。この禁止規定が、わが国の独立のため、言論、放送の自由のために保障されている一つの大きなとりでであります。そこへ持ってまいりまして、放送施設の移転として、VOAは、二年たったらその後の問題を相談するというのであるから、五年を待たずに、これは早くどこかに移すように、もっと決意を持って対処せよ、この点はどうか、こういう質問が六十七国会沖繩返還協定特別委員会でされています。これに対して佐藤内閣総理大臣はどういう答弁をしているかということを披露いたしましょう。佐藤さんはこう言っています。「VOAは、最初から実は問題があった。これは本来、日本の施政権下に返る場合に、外国の放送を許していない日本の電波法から見て、これは特例中の特例ということであるので、これの存在を認めない、やっている仕事がよかろうが悪かろうが、とにかく法制上そういうことは困る、こういうことでずいぶん強い交渉をしたのである。しかし、そこまでの実を結ぶことができなくて、期限を限って存続を認める、ということになったものである。しかし、これをもっと短縮できないのか、二年たてばわれわれは交渉に入り得る、その際に、わがほうの法のたてまえを十分説明する必要があるだろう。」こういうふうにもう二年前に佐藤さんもちゃんと言っているし、また現委員長の郵政大臣のときにもちゃんとチェックするいろいろな問題が出ておるわけです。これはちゃんと国会の速記録。こういう観点から言うと、あなたのいま御説明くださった内容は、肝心な電波法第五条第一項第二号の規定に反する、禁止規定を犯しているんだということと、万やむを得ず、とにかく例外の例外として認めているんだ……。むしろこれは困るということを時の総理大臣ですらも言っておるわけですね。それが二年たてばこの返還協定第八条の規定によってもう議題にのせて、いまちょっとあなたも言われたように、即刻出ていってもらいたい、こういう強硬な姿勢をとってはばからない内容のものだったわけですね。ところがあなたの先ほどの御説明、いまの説明を聞くと、害がないからいいじゃないか、ほかから批判が出ていないからいいじゃないか、またアメリカの国会の問題があるからしてフリーハンドで言ったんだろう、こういう御説明でありましたので、そういうフリーハンドを許す余地なんかないところのきわめて厳粛で、しかもきちっと狭いところの範囲で、もう二年たったらば当然アメリカはこの放送局を外国へ持っていくとかあるいは自分で撤去してしまうとか、こういうほぞを固めなければならない時期に来ておるわけですよ。それをいまのあなたの御答弁によりますと、またフリーハンドを持たしてみたり、なぜ外務省はそんな腰抜けの外交をやっておるのか。もう二年たったらあなた方はぼつぼつ撤去しなければならぬ時期、どこへきめたのか、朝鮮にきめましたか、アメリカへ持って帰りますかと、なぜそういう積極的な姿勢をとらなかったのかということをもう一回答弁願いたい。
  116. 深田宏

    ○深田説明員 先ほども御説明申し上げましたように、私どもとしましてはできるだけ積極的な姿勢をとったつもりでございます。つまり私どもが申しましたのは、繰り返しになりますが、五年ということは協定で確かに約束があります、しかし五年を待たずともぜひこれを撤去してほしいということで、撤去についての具体的な計画を示してくれということを強く申したわけでございます。端的に申しまして、私どもの期待——これは何ぶん相手があることでございますからやりとりがございまして、期待どおりにものごとが動くというわけにはまいらぬかと思いますけれども、私どもの期待といたしましては、実は五月のこの前の協議で先方からそういう具体的な説明があること、それを期待しておったわけです。遺憾ながらそういう期待が満たされなかったわけでございますので、率直に申しまして私どもとしてはかなり強い不満を表明しておるわけでございます。決して積極性のないやりとりをしておるつもりはございません。
  117. 土橋一吉

    ○土橋委員 あなたの御説明で、不満を表明しておった、これもまことにけっこうなことでございます、当然だと思うわけです。しかし問題は、先ほどから申し上げておるように、もう二年たてばアメリカは何とかしなければならぬ、その手を打たなければならぬ時期に来ておって、しかも、これは害がございません、他国からも批判がございません、こんなでたらめなことを言うとはまことにけしからぬことであって、とにかく手を打たなければならなくなっておる時期なんですから、当然アメリカはこのことについてはいろいろ配慮して、こういうところも考えております、ああいうこともやっておりますけれども、まだまだちょっとというならまだ幾らかかわいいところがある。しかし、何の害も与えていないとかあるいは批判も出ていないからこれはいいととだなんてえてかってにそんなことを言って、まことに不都合千万であります。つまりアメリカが沖繩返還協定の第八条の規定をどう見ているのか。軽く見て、しかもそういうようなことを言っておるとは何ごとであるのか。これは郵政大臣、どうですか。アメリカはこういうでたらめなことを言って、二年たてばやめる、どこかへ移転をすることについてちゃんと腹をきめましようということになっておる条約を、いま外務省の方がおっしゃるようなこんな人をばかにしたような態度でいる。どう思いますか、郵政大臣
  118. 原田憲

    原田国務大臣 これは沖繩返還というむずかしいことをなし遂げたときに残された問題ですので、佐藤さんが言っているように私どもの国の法律ではあり得べからざることだ、これは沖繩返還という大きなことを達成するために五年間という期限を限って残した。ほんとうは同時に解決していなければならぬ筋合いのものでありますけれども残した、こういうことでございますから、五年の間に目的を達成するために、わがほうの政府としては最大の努力を傾けなければならないつとめがあると思います。だから、これはもうアメリカさんが何と言おうと、私どものほうは、それに間に合うように一日でも早くそうなることをやらなければならない、こういうたてまえであろうと考えております。
  119. 土橋一吉

    ○土橋委員 私もそうだと思うのですよ。この点は郵政大臣と私は全く意見が一致しておるわけですよ。ですから、この問題について当時からいろいろ問題が出ております。当時の外務省井川条約局長も、たとえばこの合意事項は移転の場合に限るわけである、ちゃんと言っておる。この合意事項というのは移転をすることなんだ。ですから、アメリカがそんな問題を持ち出す前に、あなたのほうが移転することが中心なんだ、いまごろになってそんな寝ぼけたことを言ったってだめですということを強硬に主張して、移転することについてどういう意見を持っているのか、どういう処置をしたのか、そして向こう三年間にその見通しはどうかと、こういうふうな交渉をしませんことにはならぬと思うんですよ。今後この日米協議会についてはさらにそういう問題が起こると思いますので、いま私が申し上げたような点、研究してくださったと思いますけれども、この点を強調しなければ、いつまでもあの連中居すわるだけだ。居直り強盗みたいなことをやっておるわけですからね。ですから、これは当然外務省としてもその点をはっきりとしていただきたいと思います。それは、あなたも御承知のように戦後二十九年も日本にいるんですよ。ですから、こういう不都合なことを重ねておるアメリカの諸君に対して非常に厳重にしなければなりません。次のいろいろな経費の問題がどうしたこうした、土地の問題がどうだ、いろいろ書いております。書いておるけれども、いまのこの段階においては、もはやアメリカが遁走するかあるいはこれを解消して本国へ引き揚げてしまうかという段階でありますので、この点を重ねて私は強く要望しておきたいと思うのであります。また郵政大臣もぜひひとつ、第五条の一項二号の規定からそういう点を強硬に主張していただくように私からもお願いしたいと思うのです。
  120. 原田憲

    原田国務大臣 これはもうきまっておることを実行する今度は交渉の問題でございますから、強く言って目的が達成されるのか、なだめて達成されるのか、それは外務省が責任をもって交渉の矢面に立ってまいると思いますが、私どもはさまっておることははっきりと決着をつける、こういうたてまえだけは押し通してまいりたいと存じます。
  121. 土橋一吉

    ○土橋委員 大臣のおことばを返して申しわけないが、なだめて帰るような人じゃないのですね、この方々は。そんな日本のわれわれがなだめたなんと思ったら図に乗ってくるような方でございますので、なだめて帰るような人じゃございません。それこそ政府が赤旗を立てて徹底的なやはり攻勢態勢をとりませんと、はち巻きでもしてやりませんと、これはとてもじゃないが、なだめたりすかしたりして帰っていくような人じゃありませんので、その点をぜひひとつ強く強調しておきたいと思うのであります。  外務省、御苦労さまでした。あとでひとつ資料を必ずお願いいたします。
  122. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 土橋君、いまの、資料でございますか。
  123. 土橋一吉

    ○土橋委員 どういう回答をしたかということをね。
  124. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 それでは、資料の御要求につきましては理事会にはかりまして、適当な時期に提出することにきめたいと思います。
  125. 土橋一吉

    ○土橋委員 文部省の方、お見えでございましょうか。——ちょっとお尋ねいたしますが、最近の新聞では、あなたのほうの構想の放送大学という問題がいろいろ出ております。特に三月二十三日あたりは花盛りのように放送大学の問題がいろいろ出ておりますが、一体放送大学をあなたのほうは責任をもって——放送大学という仮称の大学でございますが、これは文部大臣が任命をする理事、学長を中心に放送をやるということになっておるようですが、この学校は国立大学であるのか、それとも私立大学の特殊法人であるのか、簡単に答えていただきましょう。そして放送する以上は、御承知のようにNHKさんが苦労されて今日まだ難視聴が百十七万世帯もある、民放さん、もちろん努力しておる。しかし全国にそういう放送局をつくるので、この新聞によると、あなた方の予算は四百数十億なんだ。四百数十億で放送局ができると考えておるのか、とてもじゃないが、そんな金ではできませんよ。そういうことに関係をして、一体どういうふうに考えておられるのか。あるいはNHKさんにはいままで実験放送などで協力をいただいておりますけれども、番組編成その他すべてそういう体制を整える考えでこういうことを発表しておるのかどうか、この点をひとつ簡単にお答え願いたい。
  126. 五十嵐耕一

    ○五十嵐説明員 お答えをいたします。  まず初めに設置形態の問題でございますが、先ほど先生からお話のございました三月二十三日に新聞にいろいろ出ているということは、実は三月二十二日に私どもの文部省で設けております放送大学(仮称)設置に関する調査研究会議が放送大学(仮称)基本構想というものを提示したことによるものだと思います。お尋ねの設置形態につきましては、同基本構想の中に特殊法人とするいうふうに書いてございます。  それから第二点の放送機構その他を一体どういうふうに考えているかということでございますが、私どもこの調査研究会議で御検討いただきました結果、これはあくまでも大学の一つの教育手段として使うということが基本でございます。そういたしますれば、その放送内容自体も大学が責任をもってやらなければいけないということに相なるかと思います。したがいまして、そういう大学自体が責任をもってやるということにおきましては、現在の放送法の規定から申しまして、この大学自体が放送の機構を持たなければいけないであろうということが、ここの構想で述べられている趣旨でございます。  それからただいまの金額その他の点でございますが、この金額その他につきましては、現在この基本構想に基づきまして、具体的にどのくらいの規模になるかということを検討を進めておる段階でございます。したがいまして具体的な数字をまだ申し上げられませんですが、やはり相当規模のお金がかかるものであろうというふうに私ども考えております。  それで、さらには現在ございますような難視聴地域の問題を一体どうするかというようなお尋ねでございますが、放送大学の設置計画につきましては、この基本構想の中におきまして、開設当初はまず一ないし二ブロック程度の広がりを持つものとして発足いたしまして、そこでいろいろな試行的な過程を踏みまして教育研究のシステムをつくりまして、それぞれ全国的に及ぼしていくというふうに考えております。開設当初のブロックの中におきましては、都市あるいは農山村それぞれの実態に応じまして、いろいろなスクーリング等を実施いたします地域センターを含みました教育全体のシステムをどうしたらいいかということを実践的にやっていきたいと思います。そこの中におきまして、いわゆる難視聴地域といわれるような地域におきます学生の入学希望の状況等も考慮しながら具体化をはかってまいりたいというふうに思っております。  以上でございます。
  127. 土橋一吉

    ○土橋委員 これは郵政大臣にもお尋ねをしておきたいと思うのですが、文部省がつくった特殊法人である、いわゆる大学令にのっとった放送大学あるいは開放大学、まあ名前はこれからつけるわけでございますが、放送大学にしろ開放大学にしろ、この大学は大学令に基づく文部省自身からの免許もとらなければいかぬ、つまり認可も得なければならない、一方放送する関係上郵政大臣からも無線局の認可を受けなければならない。  いま電波関係から出てくるところの放送局、すなわちNHKさんと民放さんを中心とするそういう放送、それに対して、いわゆる放送大学と称するところの放送を全国的に行なう一つのものが出てくるわけです。そうすると、日本の放送を二分をして、要するに民放、NHKを中心とする放送体系と、それからいわゆる放送大学と称する特殊法人を中心とするものが出てくるわけです。もちろん一定の要件を備えれば郵政大臣は免許を与えなければならないということになってくるわけですが、私が心配するのは、一体この放送大学というものをつくることによって日本の放送体系の法的な構成、これをおかす危険があるのじゃないかという気がしてならないわけですよ。つまり現在静穏に民放さんをはじめ放送局がやっておるのに対して、放送大学という特殊の分野をつくって、そしてこの放送をどんどん始めてくるということになってくると、その不偏不党性の問題あるいは番組委員会を中心とする教授の番組編成、同時に、スクーリングなんて簡単に言っておるけれども、NHKがNHK学園でスクーリング、地方の学校で非常にいま困って困難を感じておるのですが、そういうことも研究をされておると思うけれども、一体郵政大臣どう思うのですか。こういうのに免許を与えますとえらいことになってくる。
  128. 齋藤義郎

    ○齋藤(義)政府委員 御案内のように日本の放送法のたてまえとしましては放送事業者というものを二つに分けまして、NHKとそれ以外のもの、これは一般放送事業者と、こう言うわけですけれども、その二つに分かれるわけでございます。それで、いま放送大学が特殊法人になって免許を受けるという場合には、これは一般放送事業者の領域に入るということになるわけでございます。したがって一般放送事業者として、あるいはNHKも同じでございますけれども、放送法の基本的な原則はことごとく守っていただく、したがって放送法第一条の不偏不党の問題あるいは放送法第四十四条第三項の問題、これはことごとくその放送大学ですか、これにも妥当するという考え方を持っております。ただし一般放送事業者、いままでは教育専門局たる一般放送事業者があったわけですけれども、去年の十一月からそれが消滅したわけですが、この放送大学の場合には一般放送事業者たる教育専門局ということで、NHKは教育専門局を持っているわけでございますけれども、これと一般放送事業者の教育専門局として全国的な規模を張る、こういうことになろうかと思います。  なおかつ詳細な計画と申しますか詳細な法律上の問題につきましては、これから文部省がいろいろなことで詰めていくだろうと思いますので、それに即応して詰めてまいりたいと思いますが、基本的な原則はそういうことになろうかと思います。
  129. 土橋一吉

    ○土橋委員 齋藤さんもう少し……。大臣、聞いていただいて最後的な回答を……。  いまお話しのように、私は放送業界、NHKを先頭とする放送界と放送大学というものが、要するに放送法の規定をめぐっていろいろな問題が出てくるだろうということを指摘した。ところがあなたの説明は、NHKさん及び放送局以外の一般無線放送局の免許を受ける、そういう基準の中に入ってくるのだ、こう簡単に答えられたわけです。ところが文部省の考えというのは、たとえば免許はかりに三年ごととか一年ごととか免許の切りかえの、書きかえの申請もしなければいけない、そしてあなたの監督を受けて、つまり一定の技術者を擁して、そして全国に放送がいくようにする。ところがこの計画を見ると筑波大学方式で、しかも最初は東京グループあるいは大阪グループでやるといっているわけですね。ところが東京だ大阪だというようなところはそれこそ全国の何割を占めるほど大学がたくさんあって、夜間大学もあれば短期大学もあるというのに、何で一体この東京や大阪方面で放送大学というのをつくるのか、私は非常に疑問を感じているのです。むしろ放送大学をしたければ、地方においてたとえば老後で勉強をしたいとかあるいは奥さん方がひとつ大学の課程を終えたいとか——都会は大学は東京なんか相当なものですよ、しかも近くにある。何か逆のような感じを受けるのですが、文部省さんは東京とか大阪とか京都とかいうように大学がたくさんある学都で、そういうことを放送するのですか。
  130. 五十嵐耕一

    ○五十嵐説明員 ただいまの点でございますが、確かに東京あるいは関西地方に大学が集中していることは事実でございます。ただ従来の大学のパターンからいきますと、どうしても勤労している青年あるいは社会人というものが勉学がしにくいという点があろうかと思うのです。私どもが現在構想を進めております放送大学につきましては、電波その他の情報媒体を活用いたしまして、そういう就学に伴います制約というものを克服しようということがねらいであると思います。それにつきましては、都会であろうと地方であろうと、やはり同じような必要性が出てくるというふうに思っております。ただ、先生からただいまお話がありました東京とか京都とかということだけを文部省が考えておるのかということでございますが、ここの調査研究会議の中でも、とにかくこういう大学は新しい形態を持つものだから、いきなり全国に及ぼすというのにはいろいろ無理があろう、したがいまして、とりあえず特定の一ないし二ブロックを取り出しまして、そこの中でかなり試行的な過程を踏みながら実践的にやっていくという必要があろう、その場合におきまして、都会的な地域あるいは農山村地域、そういうものについての教育のシステムを一体どうしたらいいかということも固め上げていかなければならないというふうにありますので、決して都会だけを指向したものと考えておりません。
  131. 土橋一吉

    ○土橋委員 それはあなたのほうでそういう答申を得たということで、文部省がそういうことを発表されることは文部省の自由でございますので私はとやかくは申しませんけれども、普通常識で考えますと、東京あるいは京都、大阪方面は大学がたくさんございまして、夜でも何でも行けるような仕組みになっておるところへまず初歩的にやるというのですから、われわれの古い常識か何か知りませんけれども、どうも考えが少し重複しておるのじゃないか。と申しますのは、NHKは最近非常に努力して、特に教養番組あるいはそういうことについてはかなり力を入れておるわけですね。なるほどこれを聞いたからといって学位を受けることはできないかもしれぬけれども、学位を受けるかどうかが問題ではなくて、日本の国民がその放送を通じてどういうふうに教養や教育が高まってくるかということが基本であるわけですね。あなたのほうの構想を見ると、学位を与える、そして二週間に一回スクーリングをやるのだ、そして地方の放送局さんや大学に協力してもらう、こういうふうに非常に簡単にものを考えているように思うのです。というのは、NHKが定時制高校のNHK学園をやっておられるけれども、なかなか苦労しておるのですよ。いろいろ話を聞いてみるとたいへんなことなんですね。そういうことから考えまして、老婆心ながらこういう点を質問をしておるわけです。ですから、もしおやりになるとするならば、膨大な経費がかかるということ、しかもこれは番組その他についてはかなり専門の方々や先生との間の折り合い、それから難視聴を解消するという問題——。放送局は大正十五年前後から始めまして、大正十五年からいま四十九年かかったってまだ難視聴は解消できぬのですよ。法律の規定によって、放送局はあまねく放送の利益を享受させなければならないその義務を負っているところですらも難視聴解消ができないのですよ。放送大学を建設して難視聴解消するなんて、とてもじゃないが、たいへんな仕事ですよ。ですから私は、やはり当初問題がありましたように、結論は申しませんけれども、かなり研究していただく必要がある。また郵政大臣のほうにおいてもうかうか免許を与えますと、これがまたいろいろなことをやり出すわけですね。そういうことでいくと、放送局さんや民放さんは同じようなことをやるものですから、教養、教育番組というものは大きな影響を及ぼすということもあると思うのですよ。ですからよほど慎重に考えて、法的な体系をまず整備する必要がある。そして郵政大臣はこの放送大学に、放送法に関する基本原則はどうしても守り通させるようにするという体制を強化してもらわなければならないと思うのです。そうでないと法的な体系がめちゃめちゃになってしまう。そういう点について齋藤さんどう思いますか。
  132. 齋藤義郎

    ○齋藤(義)政府委員 先ほどもちょっと触れましたように、放送大学といえども放送局の免許でございますので、現在の放送法の基本的な原則は守るべきであろうということでございます。
  133. 土橋一吉

    ○土橋委員 それでは放送法の規定は、あくまでも法的な改正とかその他の措置を講じないで、現行の電波法の規定や放送法の規定を中心に、将来生まれるであろう放送大学はやはり厳守をしていく、その基準に従って放送する、こういう点をここで明確にしておきたいと思うのであります。  最後に、もう時間がぼつぼつ参りましたので、NHKさんちょっとお尋ねをいたしますが、NHKとしては現在神南町の放送センターをおつくりになりまして、たいへん御苦労なさっておられると思うのです。ところがそのほかに番組センターというのが石坂さんという方を先頭にいろいろな仕事をやっていらっしゃると思うのです。ところが、今年度予算では三億と九十五本の映画作品を贈呈をすることになっておりますね。それから文化基金としてまた特別の財団等をつくって、ここにもいろいろ放送局は力を尽くしておられると思うのです。また、政府命令によるいわゆる命令番組を国際放送でおやりになっておると思うのです。これらはどの部面を見てもNHKとしては金を出す、要するに痛い腹をどんどん切っていかなければならない部面だというふうに私は思うのです。  そこで私はお尋ねしたいのですが、一体放送番組センターというのは、いままでにおそらく相当の金をつぎ込んでいらっしゃるし、つくった映画をどんどんお出しになっているのですけれども、私どもが拝見しますとこういうふうになっております。「芸能百選」というので出てくるわけですね。そして、芸能百選で出てくる方々の名前を見ておりますと、石坂泰三先生を先頭に、日本の財界が全部顔を並べるわけです。どうもおかしいですね。自分たちは金を出さないでおいて、NHKや民放からどんどんそういうものをしぼり上げて、自分の名前だけはどんどんテレビで宣伝していく、こういう何か奇妙な存在が番組センターのように私は思うのです。そこであなた方は、今度その映画を積りたい、そのものを一回映したいというときは、放送局は金を払うのですか、無料で借るのですか。
  134. 坂本朝一

    ○坂本参考人 NHKは、放送番組センターに三億円出損しておりますけれども、それは一般放送事業者の教育、教養番組の向上がひいては放送界全般のレベルアップに役立つという目的で出損しておりますので、放送番組センターからNHKが番組を借り受けたり、もらったりという過去の事実はございませんし、今後もないと思います。
  135. 土橋一吉

    ○土橋委員 そうしますと、一体放送番組センターというのはどこにそういうものを貸したり——ただ保存しておくだけですか。
  136. 坂本朝一

    ○坂本参考人 放送番組センターは、NHKから入れました番組を一般放送事業者の用に供しておるわけでございます。
  137. 土橋一吉

    ○土橋委員 先ほど申し上げましたように、あのタイトルは何とかならないものかと私は思うのですよ。つまりあの人たちが金をかけてそういう芸能百選をつくったかのような顔をしてテレビに出てくるわけですね。そのもとは、NHKを中心として民放さんなんかが金を出したものである。こういうまことにふつり合いなことが行なわれておりますので、これはひとつ会長さんのほうでもよう研究をして、ああいう国民を欺瞞をするようなことをやめていただきたいと思うのです。それでなくてもこれがいま放送局ではたいへん重荷になっておると思うのです。  それから文化基金何とか財団というので百二十億、これも放送局から持ち出してしまったわけですね。それで、これがまたいろいろ活動されておるということを聞いておりますけれども、これもどうも名前は先ほどおっしゃったように何とでもつくわけですけれども、実態ははたして国民の期待しておるようなことであるかどうかということです。  もう一つは、国際放送について今年度は四億何千万でございますか、命令放送、私はこの問題については非常に疑問を持っておるわけです。というのは、従来のNHKさんが小さいときに、たとえば外国にいる邦人向けその他についてやるということはよく理解できますけれども、この資料を拝見しますと、二十何カ国語を使って多くの国々にこれを放送しておるわけですね。本来は日本の政府がかなり外交上力を入れなければならない点も放送局は引き受けておるんじゃなかろうかという感じが私はするわけですよ。ですから命令放送だけに限らないで、やはりこういう問題については、どういう方法がいいか私はわかりませんけれども、NHKの苦しい状態を黙って見るような体制でなく、それこそ石坂泰三さんのような偉い人が集まって金を集めて、それでNHKに協力するというようなことが必要じゃないかというように私ちょっと思うのです、金の出どころは別としましても。つまり、NHK自身の発展のために一いろいろなこういうものがたくさんおって、それが足を引っぱる、それはNHK自身の全体から見て非常に困る問題じゃないかという気がしておるのですが、これはどうですか。
  138. 小野吉郎

    ○小野参考人 いろいろ御質問を受けましたけれども、まず番組センターの問題につきましては、これはやはり放送界全体のレベルアップ、これを期待をいたしております。NHK自体の問題ではございません。民放さんのほうの番組を向上するためにつくられた、主としてのねらいを持っておりますけれども、このことはひいては、NHKも放送事業者の一端をになうものといたしまして、全体のレベルが上がりますことは大いに好ましいことだと思います。そういうことで昭和四十三年度以来でございましょうか、毎年三億ずつ出しております。今日では大かた二十一億ぐらいになっておろうかと思います。民放さんも応分な拠出をいたしております。これだけでは、やはり番組制作費もだんだんかさばってまいりますので、番組センターとしての所期の成果をあげるのに非常に金が足らないというようなこともありまして、お歴々をずっと並べてそういう方面からも大いに援助をしてもらう。問題は、できた番組を買ってもらうとかあるいはその他の援助方式がありましょうけれども、そういうことでNHKの三億と、民放さんがたしか一億五千万出しておられると思いますけれども、この財源の不足分をそういう方面に仰ごうという必死の努力をいたされておるようでございます。そのやり方等につきましてはあるいは非常に問題の点もあろうかとも思いますけれども、事柄自体としてはそういう方面に分野を広げられることもセンター設立の趣旨に非常に合う点ではないかと思いますので、この点について基本的には私ども異存はないわけでございます。  放送文化基金にいたしましても、百二十億NHKは拠出をいたしておりますけれども、これはやはりこのことが放送界全般に非常に役立ち、国民全体の期待に沿い得るような活動をされることを念願をいたしておりますし、そのためには基本財産の運用資金だけでの運営では非常に大きな活動もできないでございましょうから、これも漸次基金が拡大していくことこそ願っておるような次第でございます。かたがた、そういうような問題から、NHKといたしましては、NHKが国民の期待に沿い得るような活動をいたしますと同時に、民放さんともあわせ放送界全体の資質が向上していくこと、これはまたNHKの利益になることでございますし、そういった面で必ずしもNHKだけの犠牲に終わるものではない、かように考えております。  事国際放送の関係につきましては、昭和三十四年の法改正前は大体命令放送ということになっておりました。その当時でも政府交付金が少ないものですから、その足らずはNHKが出しておりました。これがいろいろ論議の対象になったわけでございますが、昭和三十四年の法改正にあたりましては、政府命令分と、NHKが固有に、自主的に国際放送をやる任務を与えられまして、いまその両者の併用によって行なっておるわけでございますけれども、国際間の理解を深め、親善を増していきますために放送が貢献し得る分野も多いわけでございますし、その面からいえば現状よりも——政府交付分は過去におきましてだんだん多くはなってまいっております。今年度は前年度と比べますと五千万円ぐらいの増にはなっておりますけれども、この面が国際間に及ぼすいい結果をやはり政府でもお認めになって、これが増額されることは私どもも期待するところでございますし、あわせてNHKの自主分といたしましてやはり応分の国際放送の自主性を貫いていく、こういう必要もあろうかと考えております。
  139. 土橋一吉

    ○土橋委員 それでは最後に一つだけ簡単に……。  この前も私は指摘をいたしましたが、横浜、世田谷、それから高島平からこちらの江東、市川方面の超高層ビルの建設のために電波障害が起こっている。これに対してNHKも非常に努力されておるが、さて具体的にどの程度大体解消したのか。映像が二重に映って困るという意見が盛んに出ておりましたのですが、NHKはたいへん奮闘されたと思うのですけれども、大体どの程度解消したんでしょう。簡単でいいです。
  140. 藤島克己

    ○藤島参考人 この前御質問いただきましたので一応お答えしてございますけれども、先生ただいま御質問の反射の問題と、それからこの前もちょっとお話が出ましたビルの陰の問題でございますけれども、陰の問題は現在進行中でございまして、かなり有効に解消しております。  ビル反射のほうにつきましては、ただいま御指摘のように北側は草加方面まで、東側は千葉、船橋あたりまで、南側は横浜方面まで、程度の差はございますけれども、いろいろ反射公害が出ていることは事実でございまして、その中に包含されておる世帯数を一応調べますと、大体二十万ぐらいがその中にあることになります。しかし、ちょっとした位置の関係や高さの関係で反射のあれが非常に違ってまいりますので、一応これから処置をしなければ困るであろうというものを克明に調査いたしました結果、全部合わせまして約三万軒足らずだろうと思っております。ただ、これは非常に広範囲にばらまかれておりますものですから、ビル会社との折衝の段階でも、これはまだその話題にはなかなかのらないわけでございまして、郵政省でもいま例の電波難視調査会をいろいろ検討しておられますように、なるべく原因者が中心になって解決をしていただきたいと思います。思いますが、非常に広範囲にわたっているということと、それからNHKといたしましても、かりに一世帯有線テレビで解決しようといたしますと約五万円ぐらい都市ですとかかりますから、三万世帯ですとそれだけで十五億円の金がかかりますので、これもNHKだけの手にはなかなか負えないものではないかと思います。そういう点でいろいろ技術的な検討をいたしております。それから具体的にどういうことで解決するのがよかろうかということも、いろいろ関係方面の御指導を受けなある、これを取得する場合には相当巨額な経費の支払いがある、こういうことで取得をした土地であるわけでございますので、そういう土地が当初の目的に反して実際に活用されないでいる、使用されないでいるということは、私どもこれは検査の一般論といたしましても、検査上、そういうものがあってはいかぬということで、常々関心を持って検査をいたしているところでございますが、福岡の局の場合には、いろいろと事情をNHKのほうにもお尋ねをいたしておりますが、これについては局舎を移転して建設をするそちらの予算がなかなかめどがつかないということで、四十五年以来そのままになっている、こういう御説明を受けております。  この点について、しからば検査院の判断はどうかということでございますが、要するに、これについては二通りの見方があろうかと思いますけれども、一つといたしましては、要するに用地の取得はあくまでもその用地を使ってそこに建築物あるいは構造物という施設を設置する、こういう目的で用地を取得するわけでございますから、それに引き続いて最も早い時期にその用地を用いての建築工事なり何なりが計画として組まれているということが最も望ましい姿であるわけでございます。そういう点から申しますと、言ってみますれば用地の取得と局舎の建設との間の長期的な計画面が必ずしも理想的にいっていないのではないかというような印象も受けますけれども、ただいま先ほど申し上げたようなNHKの財政上の事情というものもおありのようでございますので、現時点では特にこれを不当というような観点から見ることなしに、とにかく早急な措置をひとつお願いしたいということで御注意は申し上げているわけでございます。  またもう一つの観点といたしましては、用地の問題としてはなかなか用地が入手難であるというような事情から、適当な用地が目についた場合にはそれを早く手に入れておくという、言ってみれば先行取得といったような手だてもよく行なわれておりますので、そういう面から申しますと、結果論的に申しますと福岡局の場合にも、四十五年ですから、現在これを手に入れるとすれば相当な価格になろうかと思いますので、先行取得という効果はあった、こういうような見方もできるかとも思います。  いずれにいたしましても、ただいま申し上げましたように、最も理想的な姿といたしましては当初計画において用地の取得と建築物の工事とが引き続き行なわれ、そして早くそれが取得の目的に合した目的に使用される、こういうことが最も望ましいわけでございますので、そういった計画、それを実施に移す場合の予算措置、そういったものについての考慮が必要であろう、このように思うわけでございます。
  141. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま検査院のほうのお話によりますと、やはり会館の建設については計画がきちっと実行されるのが一番いいというような御発言でありますが、いまおあげになったのが福岡の会館のことで、私いつも福岡の会館のことで会長さんにお願いするなり何度か申し上げたわけでたいへんあれでございますが、そういうNHKが財政的にもたいへんな状態がもう昨年あたりから出ておる。そこで先ほどからも資産を再評価したらどうかというような話も出ている。しかしまた別な面からいえば、先行取得という、私はNHKがそういうために先行取得することがどうかということはNHKの経営上の問題だろうと思いますけれども、福岡の場合で見ますと、公園の一角に、たいへんいいところでございまして、ああいうところを先行取得ということはどうかなという気持ちもしますけれども、当時四十五年で四億数千万円の投資がなされておるわけでございますけれども、いまでいえば相当な価格になりますし、そういうものがあるとすれば、そういうことを考えるとすれば、かえって評価益というものも経営の上には考えておかなければならぬじゃないか、こう思いますが、この点、会長さんこれを一つのバネといいますか、決算を重要視していくという意味においての立場からひとつお考えを聞かせていただきたい。
  142. 小野吉郎

    ○小野参考人 建物の建設の計画と土地入手の関係の間には常にギャップがあるわけでございまして、建物の建設計画を樹立いたしまして、そして土地を得るということが実際にはいいことかもわかりませんけれども、やはり土地の入手難と申しますか有限性と申しますか、そういう面からいってなかなかそうはまいりません。したがって、やはり先に適当な土地があればそれを手に入れるということが大体の通例になろうかと思います。それも入手いたしまして、相当長期の間計画も立たないというようなことは決して好ましいこととは考えておりません。あの土地につきましては、たまたまこれはどこにでも売れる土地ではなかったように思います。護国神社所有の土地でありまして、NHKのようなところが会館を建てるなら譲ってもいいというようなことで入手をしたわけでございまして、その意味では非常に有利な入手であったと思います。四十五年からもうすでに四年を経過いたしておりますし、福岡放送会館も手狭でございますので、建設計画を早く立てまして、所期の目的のとおりあそこに会館を建設する予定であったわけでございますけれども、たまたま予算のやりくりが非常にむずかしい時期に逢着いたしましたので延び延びになっておりますが、できるだけ早い機会に建設計画を策定をいたしまして、あの地上に建設に着手をいたしていきたい、かように考えておる次第でございますけれども、いま具体的に五十年度には手をつけるか、こういうことになりましても、直ちに現在手をつけます、こういう段階にはなかなかいきかねるのではないかと思います。もちろん現在のNHKの会館の土地建物——建物はともかくといたしまして、土地は福岡でも非常に有数な地点にあるようでございますので、これの処分等の関係からも優に建設の経費は出ようかとも思いますけれども、一時のやりくり等の関係から、さなきだにやはり相当な赤字予算にもなろうかといったときに、そういった面が上のせの赤字にも一時なるというようなこともありまして、こう言っては非常に申しわけないのでございますけれども、ちゅうちょをいたしておるようなわけでございますが、できるだけ早い機会に何とか着手をいたしまして措置を済ませたい、かように考えております。
  143. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に受信料の把握ということにつきまして、やはりNHKにとりましてはこの受信料収入が柱となっておりますから、このことにつきましてはいままでもいろいろ、特に非世帯の受信料につきましては私たちもここで論議をいたしまして、それで把握も進んでおるようでございますが、どうも具体的に、端的に申し上げますと、この前も予算審議のときに申し上げましたが、四十九年度の非世帯の、これだけに当てていきますと、非世帯の受信料の把握については、検査院からの注意もあり、それをもう少し具体的に私は四国の問題をつかまえまして、全国的な非世帯の各業態、種類ごとにもたいへんまだまだ把握していただくべきだ、こういうことでお願いをしましたが、その結果が結局、私はあれは四十六年度の決算のときだったと思いますし、そういうものが四十八年度は実績として出てきた、その実績は非世帯で四十八年は当初三万の増加を見込んでおったが、実際は九万近く把握できた、こういう数字になっておるようでございますが、そこで四十九年度予算に計上されました非世帯の今後まだ把握できるであろう全体と、それから見積もられた増加の数というものは、私は、当然四十七年度の増加の状況から見ましても考えるべきではなかろうか、こういうことを申し上げたわけでございますが、どうもそういう点では決算の結果を、当初大臣からも会長さんからも十分反映もしていかなければならないというようなお話があったのですけれども、残念ながらできていないというような感じがしてならないのです。この点はいかがでございましょう。
  144. 小野吉郎

    ○小野参考人 おかげをもちまして、この面につきましては非常なお教えと御鞭撻をいただきましくことができるかという基本方針と、もう一つは、何か聞くところによると、ことしの償却のしかたは変えて、建物、構築物費等については、いままで定率であったものを定額にし、機械だけはずっと定率でやっておって、そういう定額償却、定率償却の方法を変えたことによってもまた償却費を減らしてと、こういう操作をされたそうであります。つまり、ことしは一般インフレで実態と違って償却が少ない上に、もう一つそういう率を変えるという制度上の変更をして償却を減らしている、こういうことではないか、こう思います。そうなると、いよいよもって償却は少ないじゃないか、建設費が少ないじゃないか、こういう疑念を抱くわけであります。いかがでしょう、そういうところは。
  145. 小野吉郎

    ○小野参考人 御指摘のとおり、建設費も逐年低下をいたしております。このことは、現在の収支のバランスが非常に窮屈になりつつあります情勢を踏まえまして、建設投資をできるだけ必要最小限度にとどめようということで減額をいたしてまいりました。特に四十九年度におきましては百七十億から百四十億に、三十億の削減をいたしておるわけでございますけれども、在来の償却方式を変えなければ、やはり百七十億の減価償却積み立てば必要であったと思います。これもやはり経常収入からまかなわれるわけでございますし、収支のバランスをとりますために、やはりその面でも何か現状に合うような方式はないものだろうか、そういうことで、建物、構築物等につきましては定率法を定額法に変えまして、これがちょうど建設費の減額分に相当いたします三十億の積み立て不要、このことが赤字をできるだけ縮小することに役立ったわけでございます。ただ建物も、一回建てますと、それはもちろん耐用命数はありましょうけれども、現在の本格建築のそれはかなり安全を見た耐用年数になっておりますから、定率を定額に変えても、そのために償却不足を来たして、将来蹉跌を来たすようなこともなかるまい、かように考えておりますし、問題は、機械、設備等の関係につきましては、これについてもいろいろ方式変更等もあわせ考えたのでありますけれども、この面ではやはり、積み立て金の積み立ての額を減少させますためにそういう方法をとりますと、この面こそ技術革新のテンポの早い状況におきまして、施設の状況を常にやはり更改していかなければならない、こういう必要に逆行いたしますので、依然定率法を用いておるわけでございます。ただ現在の情勢にかんがみまして、いろいろ貸借対照表の資産、負債の表示は、現実の実態に合うようなものを表示することが会計上の原則でございましょう。その面からいえば、諸物価の値上がり等におきまして、既存の資産もかなり増加しておるはずでございます。それを正直にあらわしますことは、あるいは貸借対照表の性格からしても財産、資産、負債の現状を明確に表示する面には合致すると思いますけれども、他面ではそういった面が——、やはり資産は非常にふえてき、貸借対照表上においては負債を多くかかえておれば、そこにやはり健全性が出てくると思います。NHKには、税法上の問題もございませんから、そういうことも一方法でございましょうが、そういう利点はありますけれども、他面には、ふくらんだ資産に対して一定の約束の減価償却をする、その減価償却のそれは年々の経常収入から食っていくわけでございますから、この方面の負担もあり、あわせて収支均衡にいまやっきになっております限りにおきましては、均衡し得るものが赤字になり、あるいは赤字の幅が大きくなる、これは損益計算面でいえば、資産を正当に表示することとは別に、収支の関係では非常に窮屈になるわけでございますので、こういった面については、現下の状況で直ちに諸物価高騰のそれで資産を再評価して適正に表示することがいいか悪いか、これは非常に問題であろうと考えております。
  146. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 ちょっと大臣にお尋ねしたいが、インフレ時代なものだから、人件費等は上がって、それにふさわしくやはり人件費は計上されて、予算審議のときに私質問したんだけれども、最初は、昭和四十五、六年ごろは二八、九%であったものが、いまは三七、八%と、こういうぐあいに業務費、人件費等はふえてきておるわけです。   〔委員長退席、古川委員長代理着席〕 ところがそれとは逆に、償却、それに見合う建設費等はぐうっと減ってきているわけです。というのは、インフレ時代にふさわしいように業務費、人件費のほうはふえるわ、それにふさわしいようにやっぱり評価がえをしてないものだから償却費は少ないわ、建設費も不足をしているわと、こういう形ではないかと、私はこう思います。さっきから聞いておれば、別に法律に基づかないでもよろしい。こういうことになっているんですから、これはもう適当な時期に郵政省と十分打ち合わせの上でやっぱり再評価をして、国民の財産ですから、財産というものを健全に維持していく、こういうことが必要ではないか。その場合に、NHKの料金を上げなければ償却もできないという場合が出てくるかもしれませんし、あるいはもっと合理化その他をやっていかなければ収支償わない、こういう問題も出てくるかもしれません。料金その他はインフレ時代にふさわしいように直っていないんだから、これだってまた考えようによれば直さなければならないことだ、こういうようにも考えて、やっぱり物価が上がった時点において再評価をする、償却もちゃんとふやしていく、業務費もふえるならふえる、こういうことで平常のときのNHKのバランスがきちっととれるようなことにすることが私は好ましいことではないかとこう思うのです。これは郵政省のお考え大臣のお考え、NHKのお考え……。
  147. 齋藤義郎

    ○齋藤(義)政府委員 確かに先生のおっしゃること十分わかるわけですけれども、御承知のようにNHKは放送法によって自主性が尊重される。経営委員会が最高議決機関として存在するわけでございますので、NHKがどういう態度をとるかということを待って、郵政省としては検討したほうがよかろうというような考え方を持っておるわけでございます。
  148. 原田憲

    原田国務大臣 局長が言ったことと同じことになると思うのですが、たてまえが、NHKの事業というものは、聴視料をもって国民が営んでおる企業といいますか事業といいますか、こういう形で行なわれておる特殊なものでございまして、予算の関係におきましても、したがって政府意見書を付してNHK予算というものはここで審議を願う、こういう形をとっておりますから、いま局長が言いましたように、NHK自体がこういうふうにしたいということを持ってきたときに初めてそれに対する意見を付するので、こうしたほうがいいんじゃないかということをこちらから言うということはちょっと筋が違うんじゃないか、そのように私は思います。
  149. 小野吉郎

    ○小野参考人 先生の御指摘の面には非常にやはり傾聴すべきものもあろうかと思います。ただ、これはNHKの立場から見ますと二律背反のような状況にもなりまして、資産の状況を現状に照らしてその価値どおりに適正に表示すること、これは会計簿記上の一つの要請であろうと思いますし、この面についてはやっぱり非常なその必要もあろうかと思います。ただし、そういうことをやりますことによりまして、一方損益計算と申しますか収支の計算から申しますと、かえって減価償却積み立て金を膨大ならしめまして、そのために、収支のバランス上では出なくてもいい赤字を出さなければならぬ、また出るべき赤字も必要よりもさらに大きな赤字になるというようなこともあろうかと思います。ただ利点は、そういう状況にはまだ今日NHKはないと思いますけれども、資産負債表と申しますか、貸借対照表上で再評価によって資産の充実をはかれば、そこにやはり債務負担の能力が増大するということはいえようかと思います。   〔古川委員長代理退席、委員長着席〕 いまの企業一般のそれは、現在の状況から見てやはり値上げをしなければならぬような状況の中で、できるだけそういったそれを赤字という形にあらわさないで、やはり適正な資産、負債のバランスをとるといった意味からいえば、企業の面では資産を適正に、現在よりも表示が低過ぎればこれを上げることによって、それだけ負債負担上の能力が出てこようかと思います。NHKの場合には現在さしむきそういうようなこともございませんし、現在の資産負債対照の内容ではNHKは借り入れ金もできないというようなことになってみれば、資産の充実をはかることも一つの方法でございましょうけれども、これは収支関係の計算のバランス上、いま何を役立たせるかといったことが、貸借対照表上の問題よりもNHKは喫緊の問題になっているようでございます。再評価によって、かえって収支関係のそれを悪化させるようなことになりましても非常に問題でございますので、いろいろ検討問題にさしていただきたいと思います。
  150. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 私の質問は大体そんなところなんですが、ただ、年間千一、二百億の受信料収入、NHKの総資産がやはり千二、三百億。一年間の収入ぐらいしかNHKの資産がないだろうか、こういうことは、考えてみれば実態とはあまりにもかけ離れていないか、これが一つであります。そういうことなものだから、突然内幸町、簿価はこれだけなんだけれども、時価は何百億になりましたぞというようなことが出てきて、これはもし赤字になったら、そういうところがまたどこかにあるから売って食いつぶして、食いつぶしてといってはおかしいんだけれども、売ってやっていけばまた収支相整うわ、こういう安易なことになりはしないか、こう思います。それよりは、やはり私は、新しく機械を更新していくなり何なり、必要な償却はきちっとする、そのためには国民から預かった財産というものは時価に正しく合うように評価をする、その結果どうしても収支が償わないなり何なり、こういう問題を自分の企業努力を十分なした上で、料金が足りないなら足りない、これはそのほうが、国民に明確に国民の財産を示して、やはり国民とともに収支をうまく合わせていく、こういうことにおいてはそのほうが必要ではないか、私はそう考えるわけです。これはぜひそんなぐあいにひとつ御検討いただくようにお願いしたいと思うわけです。  それから、大臣、これはとんでもない質問みたいに聞こえるかもしれませんが、財界でも資産再評価というようなことが起こってきました。NHKもできたらそうしたほうが私はいいと思います。そうなってくるとこれまた、これはNHKとは直接関係がないんだけれども、貯金の目減りをそれに見合ってどうしてくれるかといううらはらの問題がすぐ出てくると思います。民間から一般国民の貯金を集めて、それで工場なり何なり建設をした、それが時価に見合って二倍なり三倍に評価をする、評価をすれば利益が出るなり何なりする、そういう再評価をすることは、逆に預金をしていた人がそれだけの目減りをした、こういう問題ともまたうらはらになるわけです。これは大臣、たいへんむずかしい問題ですが、どうでしょうかね。
  151. 原田憲

    原田国務大臣 いま資産再評価と貯金の目減りの問題を提起されたのですが、預金の目減りの問題の基本は、いわゆる物価上昇というものが問題の基本になってございますから、これに対処してこれを抑制をするということ、基本的にはそれ以外に私はないと思います。それによって預金者の保護につとめる、こういうことに最大の努力を傾けていく、こういうことでございます。
  152. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これは大臣、唐突なようなことを言ったのだけれども、私はやはり、財界からも電電公社もNHKも資産再評価をすべきだ、こういうことに間違いなくなると思う。これは時代の要請ですから、昭和二十五年、六年、七年、八年、九年ごろやったでしょうか、それと同じことを間違いなくやると思う。やるときに一番大きな問題になるのは、ここの新聞にも出ているように「金融機関から借金をして購入した資産の価値がインフレの結果上昇したという理由で資産再評価を行う以上、同時に企業の設備資金の供給源となっている個人の預貯金の“目減り”対策も実施すべきではないか」という問題が生じてきます。これは世間一般がそう考えていますから、この問題については、郵政大臣の担当の目減りを防がなければいけない。だから内閣、政府の中、その他でそういう論議が起こるときは、その問題をすかさず解決してもらうようにしなければならない。そうでなければ公平を欠く。このことだけは大臣に特別注文をして、私の質問を終わりたいと思います。
  153. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 次に、田中昭二君。
  154. 田中昭二

    田中(昭)委員 NHKの昭和四十七年度決算につきまして、一、二お尋ねするわけでございますが、単刀直入に四十七年度の決算そのものについて、その中から、決算を審議するということはどういう意味があろうかということも考えまして、御質問申し上げてみたいと思います。  そこでまず、NHKの決算を会計検査院が検査をいたしまして、そして数字的には私は間違いなく検査もなされ、終了しておると思いますけれども、その決算が示すところの方向といいますか示唆といいますか、そういうものが大事であろうかと思いますので、予算決算ということにつきまして郵政大臣並びに会長からひとつ一言御発言をいただいておきまして、質問をしていきたいと思いますが、いかがでしょう。
  155. 小野吉郎

    ○小野参考人 決算の御審議をいただきますことは、その中に、いろいろ将来の運営にあたりまして相当考えなければならぬような問題があれば、それは将来の運営に非常に益することになろうかと思います。  この決算の関係につきましては、会計検査院御当局からもいろいろ実地の検査、書類による検査もつぶさに受けております。別段に非違もなし、不正もない、こういうような状況になっておるわけでございますけれども、これは検査院の御見解もさることながら、また権威ある国会でこの決算を通じていろいろ御指摘を受けますことは、将来の事業計画の策定、予算編成、予算の実行、これに非常に大きな反省の具と発展の一つの目安が得られようかと思いますので、私ども決算の審議は非常に重視しておりますし、いろいろこの決算審議で賜わります御意見に対しましては、そういった面を十分に体しまして、将来の運営に資していくといった意味合いにおいて非常に有益な御示唆と御叱正を賜わりたい、かように考えております。
  156. 原田憲

    原田国務大臣 国会で国家予算並びに決算を行ないますことは、まあすべて大事でございますけれども、行政府としてこれを提案し、国会で審議をしてもらうという一番大事な案件であろうかと考えております。  NHKも、法律にのっとって運営されているところの日本でたった一つの機関でありまして、しかもその予算は、政府意見を付することはできますけれども、NHK独自でこれを提案をし、国会で御審議をわずらわすということでございますから、ここに盛り込まれておる予算というものは、法律にのっとって、国民に放送事業を通じて法律の目的を達成するという一番具体的な問題でございまして、決算はそれが事実できたかどうかということをはっきり把握する機会でございます。したがいまして、いま会長が言われましたように、ここの場で論議をされたことはNHKがよく順守をして、目的を達成するために予算決算について、ただいまは決算の委員会でございますが、御審議を賜われればまことにありがたいことであると思っております。
  157. 田中昭二

    田中(昭)委員 当局も行政府郵政省も決算はたいへん大事なことであるという御認識でございますから、私もたいへん心強く思って期待するわけでございますが、そこで決算の妥当性というものを、検査なさいます検査院のほうの立場からひとつ伺いたいのは、まず検査院の行ないます検査というものがNHKにどういうふうに行なわれておるのか。といいますことは、一回指摘したこともございますが、検査院の検査がある面に片寄ったり、それから書面検査、書面調査といいますか、そういうものが形式に流れておるようなことがあってはならない、こう私は思いますから、まず四十七年度全国のNHKの決算の実地並びに書面検査をなされましたところをおあげになりまして、全体的な概況説明をお願いをしたいと思います。
  158. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どもでは放送法の規定に基づきましてNHKの検査を施行しているわけでございますが、NHKのやっております業務の内容、これは申し上げるまでもなく一般官庁の業務と非常に違った特殊なものでございます。したがいまして当然私どもの検査も、私どもが呼んでおります一般官庁検査の方式とは違った形で施行をする。どちらかと申しますと企業会計的な面、そういった面も多分に取り入れまして検査を施行しているわけでございます。したがいまして施行の内容といたしましては、経理のこまかい具体的な一々の内容を悉皆的に見ていく、こういう形は必ずしもとっておりません。また私どもに与えられました検査の要員の数からいたしましても、事実上悉皆調査は不可能でございますけれども、特にNHKの検査につきましては、NHKのやっておられます業務というものと密着いたしましてNHKの予算の執行が業務の健全な運営というものに効果的に使われているかどうか、こういったところをまず主たる眼目といたしまして検査をいたしているわけでございます。  そこで最初に数字的な点で申し上げますと、常時私どもではNHKから経理に関する書類、証拠書類と呼んでおりますが、これを役所に送付をしていただいておりまして、四十七年度について申し上げますと、約二万七千枚ほどの証拠書類の送付を受けております。これを在庁いたしまして内容を検討いたすわけでございますが、これだけではただいま申し上げましたような業務の実態に即した検査、密着した検査というものができかねますので、実地に現場に伺いまして検査をいたす、こういう方法をあわせてとっておるわけでございます。  この実地検査でございますが、四十七年度決算の分につきましては、本部、これは当然一カ所でございますが、本部のほかに、八地方本部のうちの四地方本部、それから六十一放送局のうちの四放送局について実地に伺いまして検査をいたしました。そのうちでも特に本部につきましては、かつては年に一回伺うという形であったわけでございますが、最近では年二回伺う、こういうことで、私どもの検査の眼目からいたしまして本部を最も重点といたしているわけでございますが、特に四十七年度決算の検査につきましては、前年までよりもさらに回数をふやしまして、本部に三回伺って検査を施行いたしました。こういうことで検査の実施をいたしておるわけでございます。  なお、四十七年度につきまして、しからば内容的にどういう点を特に主眼として私ども検査に当たったか、こういうことに若干触れて御説明申し上げたいと思いますが、これはすでに検査も済みましたことでございますので御披露申し上げさせていただきます。  従来は、四十七年度決算前までの検査におきましては、国内放送費の関係を主として検査いたしておったわけでございますが、この年度につきましては、たまたま放送センターの建設工事が四十七年度が完成年度であるというようなこともあり、かたがた放送機材、機器等の進歩改善というようなことで、NHKにおかれましても各放送局等の設備あるいは施設、そういうものの改善、更新を積極的にはかっておられる。こういうような事態に着眼いたしまして、国内放送用施設あるいは設備の取得なり更新というものをひとつ重点的に見ていこうということで、これを検査の重点の一つといたしました。  それからこれもたまたま四十七年度に、御案内の四十七年七月十四日、沖繩の本土復帰に伴いまして沖繩放送協会の資産をNHKが引き継ぐ、こういう事態がございましたので、その承継資産の関係も特に見さしていただくということで、沖繩放送局に職員派遣いたしましてその承継の関係を現地で確認をいたしました。  それから、これは従来から引き続いて私どもの検査の重点といたしまして現地を見てまいった事項でございますが、受信料の関係、受信契約の関係でございますが、そのうちでも、本日もしばしばお話が出ております非世帯用の受信契約、これの把握漏れが当時非常に多かったというような事情があり、これは四十六年度あたりから私どもでも検査をいたしましてNHKにも御注意を申し上げ、NHKでも非常に敏速にこれについての対策をお立てになって非世帯用契約の把握につとめられる、こういう体制をとられておりますので、その後の経過がどのようになっておるかということを、実地に伺いました地方本部なりにおきまして、その追跡調査と申しますか、そういう形でその後の経緯というものを見させていただく、こういったようなこと、以上申し上げましたようなことを検査の重点といたしたことでございますが、そのほかにも従来からやっておりました国内放送費関係の番組制作費とかあるいは資材の調達の関係とか、そういったようなことについてもでき得る限り目を洗いでいくということで検査をさせていただいたわけでございます。
  159. 田中昭二

    田中(昭)委員 引き続き検査院にお尋ねしますが、まず第一点、検査をなされた場所が地方本部は四カ所、放送局が四カ所ということでございますが、その名称、どこをやられたのか、それが一つ。  それからその放送設備に重点を置かれて検査をなさったようでございますが、その中で、何か聞くところによりますと、NHKのほうにも御注意をなさった項目があるかと聞いておりますが、そのことにつきましてもう少し詳しくお聞かせ願いたい。
  160. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 地方本部は、御案内のとおり八地方本部ございますが、そのうちの四地方本部、これは北海道、中部、近畿、中国の四地方本部でございます。それから放送局、六十一放送局のうち四放送局について実地に検査をいたしましたが、これはさいぜん申し上げました沖繩の放送局、それからこれは例年のように伺っておりますが福岡の放送局、それから施設の更新といったような主として工事関係の検査ということを含みまして津の放送局及び盛岡の放送局、計四放送局に伺って実地に検査をいたしたわけでございます。  第二の、私どものほうで四十七年度決算の検査をいたしました結果、NHKに対しまして照会を文書をもって差し上げて、御意見を徴したという事態が一件ございますが、これは進行波管と申しまして放送局から放送所に画像なり音声を電送する、こういったためのマイクロ回線の送信機、あるいはテレビジョン・サテライトにおけるところの放送装置用の放送装置、これの増幅管としてのものでございますが、進行波管と申すものがございます。これをNHKでは例年調達をいたしておるわけでございますけれども、これには種類が十七種類ほど管の構造によっていろいろございます。四十七年度におきましては一億四千万ほどの調達をなさっておられたわけでございます。この調達はどういうことでされるかと申しますと、この進行波管は新しいものを使用いたしました後、大体二年ぐらいで定期的に交換をする、NHKではこういう仕組みになさっておられまして、この場合に、いままで取りつけて使用されておったものをくずとして処分をされて、全くの新品をこれに取りかえる、こういう方法をとっておられたわけでございますが、たまたま私ども、同じように進行波管を多量に使っておられる電電公社の例などを見ますと、必ずしも全部を新品にかえるということではなくて、修理をして用いる。と申しますのは、構造上この進行波管が、要するに電球部とその外側のケースなりマグネット部といったようなもので構成されておりまして、電球部はかえなくてはなりませんが、その外側は部品として修理してもう一度再使用できるのではないかというような考えを私どもは持ったわけでございます。それがまた電電公社で実際にやっておられた形であったわけでございますが、そういうようなところから、ひとつそれはいろいろ技術上の問題等もおありでしょうけれども、そういった形で修理して再使用できるものはそのようなくふうをなさったらどうであろうか、そうすれば経済的であろう、こういうことで文書をもって照会を差し上げたわけでございます。さらに具体的に数字でちょっと申し上げますと、この進行波管は単体で十八万円から二十万円程度のものでございますが、ケース部なりマグネット部なりを再使用するということでいたしますと、一体につき五万円ぐらいが経済的になる、こういうような数字が出るわけでございます。  そういうことで文書でお尋ねをしたわけでございますが、これにつきましては、実際の問題といたしまして会社側が修理に応ずるかどうかというような問題もございます。またこの多くの種類の中には、要するに技術的な面で会社側に自信がないというようなものもございましたというような経緯がございまして、NHKでは会社側と種々折衝をされておるようでございますけれども、現在ではなお結論が出ていない、このように承っております。簡単でございますが、大体検査の結果といたしまして、具体的に私どもがNHKに御注意申し上げたのは、この一件でございます。
  161. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまの機械ですか、進行波管というものが具体的にあがってきたのですけれども、そういうものが二年間ぐらい使って捨ててあったというような実情がいまちょっと述べられたわけですけれども、これは電電のほうでもこういうものを修理をして使っているといるというようなことで、四十七年度だけで一億四千六百万の相当な機械が購入をされておる、その中から代表的なものをとりましても四千五百万の購入代の中で、そういうものをまた使えば、千百万ぐらいは節約できる、そういうことをいま確認したわけでございますけれども、私はもう少し検査院も遠慮せずに、国民の受信料でNHKは一生懸命がんばってもらっておるわけでございますから、そういう面においてはきびしく指導することが、私は国民に対するNHKの姿ではなかろうか、こう思いますから、その点は今後の検査の中におきます一つの問題として提起しておきたいと思います。  そこで、自民党の高度経済成長がずっと続いてきまして、もう三十年代後半からものすごい経済成長をしてきたわけでございますが、その中でいまの、昨年あたりの狂乱物価のインフレというものも三十年代後半からの政府の政策に基づくいわゆるインフレが着々進んできた。そういう中で私はNHKも経営の困難を乗り越えてやってこられたと思いますが、まずその中で、いま一番問題になっております土地を取り上げて、少し検査院の御意見をお聞きしてみたいと思います。  これは少し年度があれでございますが、四十一年度にNHKの持っておりました土地が約三百七十万平方メートル、四十六年度に四百四十六万、端数がありますけれども、こういう土地の収得というものが行なわれておるわけでございますが、その中で職員の方の宿舎関係の用地といいますか、用地並びに建物の状況を見てみますと、職員の方でNHKの宿舎に入居する職員の数はあまりふえてないのですけれども、このための用地買収というのは毎年行なわれているような状況でございますね。こういう点はNHKとしてはどういうふうな方向でいままで進んでこられたのか、これに対して検査院はどのような考え方をお持ちになっておったのか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  162. 斎藤清

    ○斎藤参考人 お答え申し上げます。  ただいま、職員の宿舎関係の用地、これの購入について、職員数があまり増加していない環境の中で土地がふえた、かような御指摘であったかと思います。この事情につきまして簡単に申し上げますと、従来、NHKの場合、職員の総体の数の増加をできるだけ避けて、全体の合理的な運営につとめておりますが、そのような環境の中で、全国的な組織でございますので職員全国的な異動というものがたいへんございます。現在の住居環境の中では、当初の状況では、取り急いでの状況では、借り上げ宿舎と申しておりますが、現地におきまして職員のための住居といたしましてアパートとか何かを借り上げて間に合わしてございました。それがやや長くになってまいりますと、安定した住居に居住していただく必要がございます。そういう意味で借り上げ宿舎があまり多いと不安定でございますので、ある程度のものは協会所有の住居というもので、それに職員に住まってもらう、かような方策をとっております。現在まで、昭和三十九年から毎年度、宿舎建設関係の予算といたしましては、建設の総費用の中で六億五千万円の予算を組みまして、その中で土地の購入並びに宿舎の建設というものを継続して行なってきております。さような経緯がございますので、過去から現在を引き比べますと、職員用の住居関係の用地が増加しているというような結果に相なったわけでございます。
  163. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまのお答えでございますけれども、何か借り上げの宿舎もあったというようなことでございますけれども、これを四十一年と四十七年で調べてもらっているのですけれども、借り上げ宿舎もその間、倍まではなっておりませんけれども、四十一年よりも四十七年で倍近くにふえておりますね。それと、入居率というのはどういうことでございましょうか、宿舎の入居率が四十一年は二十八%、四十六年末で三五%という入居率でございますが、これは一〇〇の家の中でまだこのぐらいしか入っていないということでございましょうか。その辺補足していただきたいと思います。
  164. 斎藤清

    ○斎藤参考人 お答え申し上げます。  職員のうち、現地で採用いたしましてその土地だけにずっと生活をします層と、全国的に移転、転勤などを行ないます層とございます。総体が約一万七千人の職員の数でございますが、そのうちほぼ一万四千人は番組の制作あるいは技術の保守建設等に従事します基幹要員でございますが、これらの人につきましては、全国的に異動をやっておるわけでございます。これにつきまして、それのうち、異動を行ないますごとに必要になってくる戸数は変動いたします。その場合の必要な戸数に対する、実際に入居しておるのが現在どこまでいっておるかというような計算をいたします場合に入居率といっております。そういうような意味合いでの数字かと思いますが、全体としての扱いはさような扱いで行なっておるところでございます。
  165. 田中昭二

    田中(昭)委員 ちょっと私の質問申し上げていることとお答えがぴたりとこないようですから、これはまた次に譲りまして、よくお尋ねしたいと思います。あくまでも私は、職員の方がそういう家にお困りになっておるということで仕事の上に差しつかえがあるというようなことがあってはいけないというようなこともありましてお聞きしたわけでございますが、また後ほど御説明を受けるとしまして、いまの土地の問題でございますが、どこの企業でも土地は遊ばしておる土地もあろうかと思いますけれども、特にNHKあたりではそういう遊ばしておる土地なんかは必要ではないではなかろうかというような感じもしてならないのですが、こういうことにつきまして、検査院は検査の結果、NHKさんの所有の土地でそういうものはあったかどうか、また遊休地に対してはどういう考えをお持ちになっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  166. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 用地の関係でございますが、具体的にいま私報告を受けて頭にありますのは、福岡の放送局、これはたしか四十五年の七月ぐらいであったかと思いますが、ここを放送局が手狭だということで移転をする、その移転のための用地ということで購入をされている。これにつきましては、さいぜんも申し上げましたが、福岡放送局には毎年のように伺っておりますので、そういう用地を取得された、それが現在でも局舎移転の建設のめどが立たない、まあいわば土地がそのままになっている、こういう事実については報告を受けております。要するに、とりわけ最近におきましては土地というものが非常に入手難にあるものであり、それだけに非常に貴重なものである、これを取得する場合には相当巨額な経費の支払いがある、こういうことで取得をした土地であるわけでございますので、そういう土地が当初の目的に反して実際に活用されないでいる、使用されないでいるということは、私どもこれは検査の一般論といたしましても、検査上、そういうものがあってはいかぬということで、常々関心を持って検査をいたしているところでございますが、福岡の局の場合には、いろいろと事情をNHKのほうにもお尋ねをいたしておりますが、これについては局舎を移転して建設をするそちらの予算がなかなかめどがつかないということで、四十五年以来そのままになっている、こういう御説明を受けております。  この点について、しからば検査院の判断はどうかということでございますが、要するに、これについては二通りの見方があろうかと思いますけれども、一つといたしましては、要するに用地の取得はあくまでもその用地を使ってそこに建築物あるいは構造物という施設を設置する、こういう目的で用地を取得するわけでございますから、それに引き続いて最も早い時期にその用地を用いての建築工事なり何なりが計画として組まれているということが最も望ましい姿であるわけでございます。そういう点から申しますと、言ってみますれば用地の取得と局舎の建設との間の長期的な計画面が必ずしも理想的にいっていないのではないかというような印象も受けますけれども、ただいま先ほど申し上げたようなNHKの財政上の事情というものもおありのようでございますので、現時点では特にこれを不当というような観点から見ることなしに、とにかく早急な措置をひとつお願いしたいということで御注意は申し上げているわけでございます。  またもう一つの観点といたしましては、用地の問題としてはなかなか用地が入手難であるというような事情から、適当な用地が目についた場合にはそれを早く手に入れておくという、言ってみれば先行取得といったような手だてもよく行なわれておりますので、そういう面から申しますと、結果論的に申しますと福岡局の場合にも、四十五年ですから、現在これを手に入れるとすれば相当な価格になろうかと思いますので、先行取得という効果はあった、こういうような見方もできるかとも思います。  いずれにいたしましても、ただいま申し上げましたように、最も理想的な姿といたしましては当初計画において用地の取得と建築物の工事とが引き続き行なわれ、そして早くそれが取得の目的に合した目的に使用される、こういうことが最も望ましいわけでございますので、そういった計画、それを実施に移す場合の予算措置、そういったものについての考慮が必要であろう、このように思うわけでございます。
  167. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま検査院のほうのお話によりますと、やはり会館の建設については計画がきちっと実行されるのが一番いいというような御発言でありますが、いまおあげになったのが福岡の会館のことで、私いつも福岡の会館のことで会長さんにお願いするなり何度か申し上げたわけでたいへんあれでございますが、そういうNHKが財政的にもたいへんな状態がもう昨年あたりから出ておる。そこで先ほどからも資産を再評価したらどうかというような話も出ている。しかしまた別な面からいえば、先行取得という、私はNHKがそういうために先行取得することがどうかということはNHKの経営上の問題だろうと思いますけれども、福岡の場合で見ますと、公園の一角に、たいへんいいところでございまして、ああいうところを先行取得ということはどうかなという気持ちもしますけれども、当時四十五年で四億数千万円の投資がなされておるわけでございますけれども、いまでいえば相当な価格になりますし、そういうものがあるとすれば、そういうことを考えるとすれば、かえって評価益というものも経営の上には考えておかなければならぬじゃないか、こう思いますが、この点、会長さんこれを一つのバネといいますか、決算を重要視していくという意味においての立場からひとつお考えを聞かせていただきたい。
  168. 小野吉郎

    ○小野参考人 建物の建設の計画と土地入手の関係の間には常にギャップがあるわけでございまして、建物の建設計画を樹立いたしまして、そして土地を得るということが実際にはいいことかもわかりませんけれども、やはり土地の入手難と申しますか有限性と申しますか、そういう面からいってなかなかそうはまいりません。したがって、やはり先に適当な土地があればそれを手に入れるということが大体の通例になろうかと思います。それも入手いたしまして、相当長期の間計画も立たないというようなことは決して好ましいこととは考えておりません。あの土地につきましては、たまたまこれはどこにでも売れる土地ではなかったように思います。護国神社所有の土地でありまして、NHKのようなところが会館を建てるなら譲ってもいいというようなことで入手をしたわけでございまして、その意味では非常に有利な入手であったと思います。四十五年からもうすでに四年を経過いたしておりますし、福岡放送会館も手狭でございますので、建設計画を早く立てまして、所期の目的のとおりあそこに会館を建設する予定であったわけでございますけれども、たまたま予算のやりくりが非常にむずかしい時期に逢着いたしましたので延び延びになっておりますが、できるだけ早い機会に建設計画を策定をいたしまして、あの地上に建設に着手をいたしていきたい、かように考えておる次第でございますけれども、いま具体的に五十年度には手をつけるか、こういうことになりましても、直ちに現在手をつけます、こういう段階にはなかなかいきかねるのではないかと思います。もちろん現在のNHKの会館の土地建物——建物はともかくといたしまして、土地は福岡でも非常に有数な地点にあるようでございますので、これの処分等の関係からも優に建設の経費は出ようかとも思いますけれども、一時のやりくり等の関係から、さなきだにやはり相当な赤字予算にもなろうかといったときに、そういった面が上のせの赤字にも一時なるというようなこともありまして、こう言っては非常に申しわけないのでございますけれども、ちゅうちょをいたしておるようなわけでございますが、できるだけ早い機会に何とか着手をいたしまして措置を済ませたい、かように考えております。
  169. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に受信料の把握ということにつきまして、やはりNHKにとりましてはこの受信料収入が柱となっておりますから、このことにつきましてはいままでもいろいろ、特に非世帯の受信料につきましては私たちもここで論議をいたしまして、それで把握も進んでおるようでございますが、どうも具体的に、端的に申し上げますと、この前も予算審議のときに申し上げましたが、四十九年度の非世帯の、これだけに当てていきますと、非世帯の受信料の把握については、検査院からの注意もあり、それをもう少し具体的に私は四国の問題をつかまえまして、全国的な非世帯の各業態、種類ごとにもたいへんまだまだ把握していただくべきだ、こういうことでお願いをしましたが、その結果が結局、私はあれは四十六年度の決算のときだったと思いますし、そういうものが四十八年度は実績として出てきた、その実績は非世帯で四十八年は当初三万の増加を見込んでおったが、実際は九万近く把握できた、こういう数字になっておるようでございますが、そこで四十九年度予算に計上されました非世帯の今後まだ把握できるであろう全体と、それから見積もられた増加の数というものは、私は、当然四十七年度の増加の状況から見ましても考えるべきではなかろうか、こういうことを申し上げたわけでございますが、どうもそういう点では決算の結果を、当初大臣からも会長さんからも十分反映もしていかなければならないというようなお話があったのですけれども、残念ながらできていないというような感じがしてならないのです。この点はいかがでございましょう。
  170. 小野吉郎

    ○小野参考人 おかげをもちまして、この面につきましては非常なお教えと御鞭撻をいただきました。その結果、年度当初三万増のものが六万よけいふえまして、九万増になっております。もちろんそれがベースになるべきでございましょう。四十九年度予算におきましては先般も御指摘をいただきましたが、低過ぎるじゃないかといわれる五万件を増加目標にいたしております。もちろんこの五万件で私どもは満足をいたしておるわけではないのでありまして、すでに九万増の実績もあるわけでございますし、非世帯の関係の把握につきましては世帯のそれ以上に非常に困難もありますけれども、そういった面については決して努力をおろそかにしておるわけではございません。目標は五方でございましても、実績の上におきましてはより多くの成果をあげるように努力をいたしてまいるつもりでございます。
  171. 田中昭二

    田中(昭)委員 あのとき大臣はよくおわかりにならなかったと思いましたが、いま会長さんのおっしゃったことは二回私ここで議論しているわけでございます。非世帯というのは御存じでございますね、大臣。(原田国務大臣「わかってます」と呼ぶ)それが昭和四十六年末で大体三十七万あったというのですね。四十七年はそれが四十一万ちょっとオーバーするくらい。結局大体四万くらいふえてきた。それが、四十八年の予算審議のときにいろいろ問題が出まして、四十八年末は五十万をこすだろう。そうすると四十八年、九万ですね。四十七年と四十六年は四万です。四十七年から四十八年にかけては九万、努力してもらってふえた。ところが四十九年度予算には五万しか見てない。全体がもう五十万でぎりぎり。全体を把握する対象が五十五万くらいしかないのならばわかるのですけれども、まだ二十数万、これはもう少し厳格にいえば私はまだふえると思いますけれども、いまNHKが把握してある分だけでも七十万をこす把握すべき対象の台数があるわけです。それを四十九年度五万というのはおかしいのじゃないか、これが第一点ですね。  その問題で、先ほど阿部委員質問で業務報告の中から、東京は受信契約の数がたいへん低い、私もこれを知りましてびっくりしたのですけれども、東京だからむずかしいとか、単身世帯が多いからどうだとか——単身世帯だからテレビを見ているという考え方もあるのです。全国で東京は非世帯の設置台数も一番多いです。どこの地方よりも一番多い非世帯の台数もありながら、カラーテレビで五〇%しか契約してないということは、やはり地方のほうがまじめで、いなかのほうがぼんぼん取られて——取られてということばはよくないかもしれませんが、東京のほうはおろそかになっている。これは税金でもそうなんです。東京が一番よくなくて、地方は税法どおりぼんぼん取られる、こういう傾向があることを私は感じます。問題は、カラー契約の東京の五〇%は、世帯と非世帯に分けて厳密にやらなければ、決算であれだけ非世帯のことをやかましく言っても、こういう結果が出ることはたいへん私は残念だと思うのです。ここで議論してみても始まりませんが、いまの非世帯のことについては数字だけで申し上げましたから大臣もわかっていただけたと思いますが、今後のNHKに対する監督という意味においても最後にひとつ御発言いただいて、できましたら委員長、この問題は、東京都が五〇%しかカラー契約がないことにつきまして、世帯、非世帯に分けて、NHKから資料を出していただきますことをお願いするわけでございます。それで終わるわけです。
  172. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 ただいま要求の資料につきましては、理事会で例によって協議いたしまして、出すか出さないかをきめることにいたしたいと思います。
  173. 原田憲

    原田国務大臣 四十七年度におきましては、冒頭に申し上げました予算決算が、事業収入と比較してみますと、大体決算を見まして、その当時ちょうどあなたが問題を提起されておるという話をいま伺ったのでございますが、けさほど、あなたもおっしゃったように阿部委員もこの点を指摘されておるのであります。このごろ自動車だとかテレビだとかの売れ行きが下がっておるというような報道もありますけれども、しかしながら、いまのテレビの出てきておる台数とそれによるところの収入というのを比べてみますと、御指摘のように東京都ではもっと努力する必要があるということは明確であろうと思います。先ほどの予算審議の際の意見書の中にも、私どもこの聴視料の徴収ということにつきましても御指摘を受けておるところでございまして、NHKもこのことはよく理解をしておると思います。むずかしいことでございましても最上の努力をするということが必要であろうと思いますので、私どももそのように処してまいりたいと存じます。
  174. 田中昭二

    田中(昭)委員 終わります。
  175. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  176. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  日本放送協会昭和四十七年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書について採決いたします。  本件について異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  177. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 起立総員。よって、本件は異議がないと決しました。  なお、ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十八分散会