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小野参考人 ただいま御
指摘の点ごもっともな節が多うございます。前
会長が当院におきまして、向こう三年間は値上げをしないと公約をいたしましたこと、事実でございます。これも全く根拠なしのそれではございません。しかし必ずしもこれは完全に経常収支における均衡
予算が組めるということを前提としたものではございません。いろいろな客観情勢その他を考えまして、できるだけ受信料についての手入れは控えたいという意味合いにおきまして、将来三年間は値上げをしない、こういう公約をしたことは事実でございますし、私もこの公約は守ってまいりたいと思います。将来三年間と申しますのは
昭和五十年度末まででございます。
一方経営の現状を見ますと、その当時とは事情が非常に異なってまいっております。御承知のとおり、その当時見込みました
物価指数等の関係も大幅に変わってまいっておりますし、そういう面から申しますと、当時の予測よりも、人件費を除いた物件費等の関係で四十七億円のより大きいしわ寄せが来ておるようでございます。人件費等を加えれば非常にばく大な
金額にのぼると思います。そういう困難な環境の中で公約を実施いたしますためには、いろいろな
施策を用いなければならないと思います。その第一点は、できるだけ
建設投資を必要最小限に
抑制する、こういう努力が
一つでございます。そのためには
昭和四十八年度百七十億円の
建設費の規模は三十億節減をいたしまして百四十億にいたしております。その結果はいろいろな影響が出てまいろうと思います。特に地方においては、最近新しく免許をもらわれた民放局に劣る機械設備をもって、これに良質なサービスをしていかなければならぬというくふうもしなければならないことに相なるでありましょう。また難視聴解消等につきましても、これはNHKが非常に重点
施策の
一つとして取り組んでまいった問題でございますけれ
ども、これも四十八年度並みの置局あるいは共聴の施設数を維持することができない、こういう状況にもなりまして、わずかではございますけれ
ども、四十八年度二百二十局の置局は二百局にとどめ、共聴施設は一千十施設を九百施設に落とさざるを得ない。しかしこれはやはり問題を軽視しておるわけではないのでございまして、現在までに地元その他から陳情を受けておりますこれは、その数の中で優にまかない得る、こういう成算も持っております。
第二点には減価償却のあり方でございます。これは在来定率法をもって償却をいたしておったわけでございますけれ
ども、財政の安定的展望の上に立ってまいりますと、年々その額が違う定率法よりも、同じ額が大体
予定される定額のほうがすぐれておる、こういうような見地もありますし、かたがたそういう減価償却理論の上に立ってのあり方のほかに、いま当面のこの非常に困難な財政関係のそれを、できるだけ均衡
予算に近くいたす努力の一端としてそのようなことも考えておりますし、またさらに事業の効率的運営のためには、切り詰め得る経費はできるだけ切り詰めなければなりません。
そういうことで、こういった社会環境の中できわめてむずかしいことではありますけれ
ども、しかも在来相当な程度においてそういう節約努力をやっておりましたので、いまの段階では、通常ではなかなかそのようなことも捻出しかねるのでありますけれ
ども、より一そうやはりそういう面にもできるだけの知恵をしぼらなければなりませんので、在来の既定費等の関係についても二十一億円の節約を期しております。
かたがた、そのようなことを総合いたしまして、形の上では均衡がとれた
予算になっておりますが、御
指摘のとおり田村町の土地建物売却益金のうち、将来の経営安定に資するために留保いたしました三十五億円、これは四十九年度、五十年度に分割配分でなく、四十九年度に全額これを投入せざるを得ないはめになったわけでございます。これはやはり経済界の激変のもたらす
一つの影響でございまして、この一部をということになりますと、足らずは外部の
資金を借り入れ導入しなければなりません。そのようなことを避けるためには一応四十九年度は全額投入もやむを得ない、こういうことで形式上均衡はとれておりますが、実質的には経常収支で四十五億の赤字である。
したがって、翌五十年度まで値上げをしないと約束をしたそれを果たしますために、一体五十年度はどうするのか、何の成算があるのか、
お尋ねごもっともでありますけれ
ども、現在的確に計数的に五十年度のそれを見通すことはきわめて困難でございます。困難でございますけれ
ども、経営の努力を最高限に発揮いたしまして、五十年度におきましても私は料金面に手をつけないで何とか
予算を組んでまいりたい。これは必ずしも赤字を出さぬで済む
予算であることを約束するわけではございません。かりにそういう借り入れ金導入のような事態になりましても、これは値上げの問題を取り上げるつもりは五十年度まではございません。通常でいえばもう今日すでに料金関係の面に手を入れなければやっていけないような状況でございます。それかといって、まず第一に私
ども考えなければなりませんことは、契約の開発努力を大いに進めまして経常の収入をふやすことでございますけれ
ども、四十九年度におきましてもそれを一ぱい一ぱいに
検討いたしました結果、むしろ地方の各部門から、来年度の見通しではこのくらいしかできない、こういうそれをさらに叱咜いたしまして、それに上のせした数字をのせた収入額が六十五億でございます。前回、八十億余の増収が見込まれる、こういうことを言ったじゃないか、こういうような仰せでございますけれ
ども、これは一応の取りまとめとしてそのような期待の額としてはあげておりましたけれ
ども、
予算に計上する額としてそういう
金額を現在
予定することはきわめて危険でございます。そのような状況から見ますと、四十九年度
予算でも収入の伸び率は五・六%、きわめて低うございます。しかも支出の面では、いまの客観情勢の中でどうくふうをし、努力をいたしましても、九%の伸びはこれはやむを得ない最低限の数字だろうと思いますので、その差額がやはり赤字
予算という形になりますし、それを赤字
予算にしないために、幸いに持っておりました将来保有
資金の三十五億すべてを投入し、十億はほかの方面から捻出いたしまして、いわゆる特別収入からその不足分を補てんして均衡をとったというようなことでございます。この際、ばく然としてではございますけれ
ども、五十年度も前
会長の約束をいたしました料金の値上げには踏み切らない、こういうそれはできるだけ守っていきたい、かように考えております。