○林(忠)
政府委員 当時、佐藤議員の御
質問に対して江崎自治大臣が、
先生御
指摘のような前向きの答弁を確かにいたしておりますし、私もその場に連なりまして、この善処をお約束した経緯がございます。
しかし、実際問題としてこの問題はたいへんいろいろな問題点を含んでおるわけでございます。戸籍あるいは
住民基本台帳というものが一応公開の原則をとっておるということも、たとえば取引とかあるいは結婚問題、そういう身分的問題その他に関連して、身分
関係あるいは住居
関係を天下に公表する唯一の制度である以上、公開の原則をとっておるということも非常に
意味のあることでございまして、直ちに鶴岡市の問題を契機といたしまして一足飛びにこれを非公開というわけにはまいりませんし、この公開の原則とプライバシーの問題ということの調和点をどこでとるか、たとえば閲覧を自由にさせるという制度がまずいから閲覧に制限を加えたらどうかということになりますとまた、どういう理由によって、だれが
判断して閲覧させるか、させないかということをきめるということもたいへんむずかしい問題でございます。じゃ出版だけを禁止したらどうかというような
意見もございますが、これも表現の自由、出版の自由というような関連がございまして、実は各方面と非常に関連が多い問題でございますので、江崎自治大臣がああいう御答弁をいたしましてから後、直ちに
関係各省集まりまして、法制局とかあるいは行政管理庁、法務省、私のほう、集まりまして、あるいは出版の自由の問題になりますとこれは文部省にも
関係してまいりますということで、各省の事務的な検討を直ちに始めたのでございますけれ
ども、ただいま申し上げたような問題点が非常に多く、なかなか一足飛びには結論に到達することはできない。
一方、鶴岡市に起こったような問題は今後どこに起こるかも全くわかりません。その
意味では急がなければならないが、一方には問題点があまりにも多過ぎて直ちに結論も出ないというジレンマにおちいりまして、さしあたり
自治省といたしましては、現在の現行法の中に、執務に支障がある場合は閲覧を断わることができるというような
規定もございます。この
規定もあまり恣意的に運用されますとまた非常に問題が起こる問題ではございますけれ
ども、一方において鶴岡市のような、全部を書き写して出版するというようなことになりますと、これはアルバイトでも雇って何日にもわたって全部を写し取るというようなことで、事実そういうことであれば執務に支障を来たすと認定される場合も多分にあると存じまして、一応昨年の十月末に通知を出しまして、このむずかしい問題についてはいま
政府内部で検討しているところだけれ
ども、さしあたりこの
規定の適正な運用ということを通じて無用なトラブルを起こさないようにという通知を府県を通じて全市町村にお出ししまして、それによって、ああいう問題が何らこちらの事態の検討が進まないうちに繰り返されるのを一応防ぐ、さらにその検討を急ぐということで進めておりまして、現在各省のいろいろな相談が進んでおりますし、さらに問題が戸籍にも移りまして、法務省のほうで戸籍全体の公開の問題その他を含めましての民事行政
審議会というのでもこの問題を取り上げて検討する空気も出てまいりましたので、江崎大臣お約束いたしましたように、できるだけ早くこの問題の抜本的
対策は講じたいという気持ちはやまやまでございますが、問題点が非常に多過ぎてということで、今日の段階ではまだこれに対して確固たる方針がきまっていないというのが実情でございます。