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1974-05-23 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十三日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 中村 弘海君 理事 中山 利生君    理事 山本弥之助君 理事 三谷 秀治君       大野 市郎君    武藤 嘉文君       保岡 興治君    渡辺 紘三君       井岡 大治君    小川 省吾君       細谷 治嘉君    山田 芳治君       小川新一郎君    小濱 新次君       折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 町村 金五君  出席政府委員         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         公害等調整委員         会事務局長   宮崎 隆夫君         経済企画庁長官         官房参事官   有松  晃君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         建設大臣官房会         計課長     森田 松仁君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君         自治大臣官房審         議官      横手  正君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省行政局公         務員部長    植弘 親民君         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君         自治省財政局長 松浦  功君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  能勢 安雄君         環境庁水質保全         局水質管理課長 山村 勝美君         環境庁水質保全         局水質規制課長 太田 耕二君         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 遠藤  茂君         法務省人権擁護         局調査課長   加藤 泰也君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   折田 貞雄君         農林省構造改善         局農政部農政課         長       関谷 俊作君         通商産業省立地         公害局鉱山課長 石川  丘君         労働省労働基準         局監督課長   岸  良明君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         自治省財政局財         政課長     石原 信雄君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 五月二十一日  辞任         補欠選任   細谷 治嘉君     山崎 始男君   小濱 新次君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   山崎 始男君     細谷 治嘉君   鈴切 康雄君     小濱 新次君 同月二十二日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     小川 平二君   大野 市郎君     天野 公義君   島田 安夫君     稲村 利幸君   細谷 治嘉君     武藤 山治君 同日  辞任         補欠選任   天野 公義君     大野 市郎君   稲村 利幸君     島田 安夫君   小川 平二君     愛野興一郎君   武藤 山治君     細谷 治嘉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治及び地方財政に関する件      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  地方自治及び地方財政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小川省吾君。
  3. 小川省吾

    小川(省)委員 まず最初に、公害原点といわれておりました足尾鉱毒公害について、去る十一日に公害等調整委員会で、古河鉱業群馬太田市毛里田地区の申請をしておった住民との間に調停成立をいたしたわけでございます。特にこの正規の調停をいただいた小澤公害等調整委員会委員長さんもお見えになっておりますので、若干お伺いをいたしてまいりたいと思うのであります。  百年鉱害といわれ、あるいはまた公害原点といわれた足尾鉱毒公害については、明治の田中正造翁の活躍以来、引き続いて鉱害をたれ流し続けておった案件でございます。五月十日に、政府公害等調整委員会に持ち込まれておりましたが、審議調停の結果、被害者側である太田市毛里田地渡良瀬川鉱毒根絶期成同盟農民たち加害者側である古河鉱業調停案が示されて、翌十一日に両者とも調停案を受諾いたしまして調停書に調印をし、長い鉱害闘争に対して一応のピリオドを打つことができたわけでございます。並々ならない御努力をいただいた公害等調整委員会小澤委員長に対して心から敬意を表したいと存ずるものでございます。  この調停案は、一応、被害者側農作物被害補償要求額三十八億七千七百万円に対して十五億五千万円という調停額を示しました。経済的といいますか、いわゆる金銭的な額での調停を示しているものでありますけれども地元の私どもといたしましてはそれもさることながら、政府がこの百年来、言を左右にしてかばってきた企業に対して加害者として認めた、そういうことに認定をしたというところに実は大きな意義を感じておるわけでございます。  今回の被害者側土地が、いわゆる銅分が一二五PPM以上の土地に限定をされておるわけでありますが、私ども現地として考えてみますると、実は川の流れの関係毛里田地区が汚染度が最も強いところだということは承知をしているわけでありますけれども毛里田地区の上の部分、いわゆる桐生市の広沢地区、あるいは毛里田のすぐ下流の太田市の韮川地区等においてはやはり一二五PPMをこえるところが若干あるのではないかというふうに考えておるわけであります。こういうふうな場合に、このような調停案を受諾して調停成立をしたという段階になるならば、当然これらに対する補償なり、あるいはまた、この十五億五千万円というのは毛里田地区の申請者に対してなされたところの調停でございますので、それらに対しても別な角度で均てんをしていくものではないかというふうに私は考えますけれども、あらためて申請をされなければ、一二五PPMをこえる地区に対してはそのままほっておかれてしまうものなのかどうか。かりに毛里田地区以外の一二五PPMをこえるところの補償に対してはどう判断をしたらよろしいのか、その点についてお伺いをいたします。
  4. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 ただいまは、今回成立をしました調停につきましてたいへん御親切なおことばをいただきましてありがとうございます。  御質問の御趣旨は、今回解決いたしました毛里田地区以外にもやはり足尾鉱毒による汚染地区があるので、その分についての救済はどうなるのか、新たな調停申請がぜひとも必要なのかどうかという御趣旨伺いましたが、この毛里田地区以外の分についてもある程度汚染地区があるだろうということは当然想像されますけれども、その具体的な地域、それから汚染程度等につきましては、今回の調停対象外でございましたので、私どもとしては具体的な内容はわからないのでございますが、もしそこにも同じような問題があるといたしますれば、当然、今回の調停手続中に得られたいろいろな経験なり資料なりというものを生かして、会社側としてはそれらの被害農民との間に円満な解決をはかられるのが望ましいことだと思います。  それで、その方法といたしましては、会社被害農家方々との間で円満な話し合いをするのが一番望ましいのでございまして、別に調停申請をしなければならないというわけのものではございません。ただ、どうしても双方の間に円満な話し合いがつかない場合には、次の手段として公害等調整委員会調停の申し立てをするなり、あるいは裁判所に訴訟を起こすなり、それぞれの道がございましょうけれども、それよりも、今回の調停紛争解決方向は明らかになったと思いますので、その線に沿って当事者間ですみやかに円満な話し合いをするのが一番望ましいように思います。
  5. 小川省吾

    小川(省)委員 次に、要求額に対する調停額でございますけれども、あれだけ長い時間を要してあのような調停額が決定されたわけでありますから、私は、積算基礎でありますとか、あるいはどうこうというふうなデータをお尋ねするわけではございませんけれども要求額に対して調停額が決定された根拠といいますか、関係、そういう点について、抽象的でけっこうでございますが、御答弁をいただきたいと存じます。
  6. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 本件調停事件でございまして、両当事者がお互いにその主張から譲るべきものは譲り合って、最終的に合意に到達して初めて紛争解決するものでございまして、調停委員会としてはそのため、合意に達するようにいろいろ力を尽くしたわけでございます。  おことばにもございましたように、そのいきさつの詳細を具体的に申し上げることは私ども許されておらないのでございますけれども、一般的に申しますと、本件でも当初の主張は、調停調書に載っておりますのですでに御承知かと思いますが、農民方々請求が一部請求として三十八億何がしになっておりまして、これの積算基礎は、鉱毒による被害率、本来の収穫率鉱毒によって妨げられて一定の割合減収を生じたということが積算の前提になっております。それに対して会社側主張は、統計上から見ても毛里田地区に減収は考えられない、会社としてはなすべき措置を尽くしているので、会社原因物質排出による減収は認めるわけにいかないという主張でございましたので、双方が全く百八十度対立しておりまして、譲り合うも何も、そういうことの考えられる状態ではなかったわけでございます。  それで調停委員会といたしましては、これを解決するために、双方の事実上の主張法律上の主張内容については十分耳を傾けまして、どういうことを主張されるのかということを把握すると同時に、双方の出しました資料を十分検討して、それだけではわかりませんので、調停委員会として被害農地、それから会社事業施設、そういうものを実地調査いたしまして、その結果得られた資料についてはさらに科学的な解析をいたしました。  その結果、当初に得た結論といたしまして、農民側の言われる割合による減収率、これは客観的にはそれを裏づけることが困難であるということ、言うとおりの率は困難であるということ、それから同時に、会社側で言う、全く会社側原因はないんだということも誤りであるということ、その両方がわかりましたので、さらに資料について慎重な検討を加え、また、いま得られたようなそういう事実を踏まえて、双方に、当初の主張は維持しないように、それをもっと客観性のあるものに譲歩するようにという一これは譲歩といいますけれども、本来権利のあるものを譲るというのではなくて、最初主張をそのまま維持することは本来無理ではないかということで、主張を改めさせるという意味譲歩に進みまして、そういうことの過程を経て、最終的には調停委員会の客観的に得られた資料に基づく判断基礎とし、そして被害者の公正な救済が実現されるように期待し、しかも、被害農民にとっては内金請求ということでございましたけれども、この足尾をめぐる百年の紛争にこの際終止符を打つことのできる最後の機会であるということを双方に話しまして、この結果、双方もその点は承諾しましたので、これに基づいて細心の配慮を行なった結果あのような金額調停案をつくったわけでございます。  これは、先ほど御指摘もございましたけれども金額もさることながら、原因者企業であることを認めるということ、それから将来の被害の除去に全力をあげてそれを解決するようにつとめるということ、そういうものと不可分一体となってできた一つの調停案でございまして、金額も、ほかのそういう点とにらみ合わせてそういう金額になったわけでございます。
  7. 小川省吾

    小川(省)委員 調停書の中にも、今後の公害防止なり、さらには山元対策あるいは農民側土地改良等に対するところの協力の義務等もうたわれておるわけでありますが、再び鉱害を起こしてはならないという観点から当然でありまして、これらに対する今後の監督なり督励なりが継続的に必要だと思っているわけでございますけれども環境庁あるいは通産省においでいただいておりますので、これらの調停が受諾された現在において、今後将来にわたっての環境庁なり通産省の考え方をお尋ねいたしたいと存じます。
  8. 遠藤茂

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  環境庁としましては、本調停につきましては権限がございませんけれども、その調停が実施されるように見守ってまいりたいと考えております。  なお、私どもは、これらの鉱害原因となった土壌汚染そのものを除去することを、関係各省とともに早急に実施してまいりたいということでございます。すでにカドミウムにつきましては地域指定が行なわれ、さらに銅につきましても本年度追加指定をいたしました。なお、県としましては本年度計画をつくりまして、なるべく早く、五十年度には事業を開始するという方向で進めてまいりたい。私どももそのような方向で、なるべく早くやるということで進めてまいりたいというふうに考えております。  なお、費用負担につきましても、これは都道府県知事がおきめになる事項でございますけれども、私ども原因者原因程度に応じて、適正な事業者負担が行なわれますように指導を行なってまいりたいというふうに考えております。
  9. 石川丘

    石川説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘がございました足尾鉱山鉱害防止策はどうなっておるかということでございます。足尾鉱山は昨年三月に製錬部門を残しまして閉山をいたしておりますが、東京鉱山保安監督部におきましては従前どおり足尾鉱山について重点的に監督をしてまいっておりまして、おおむね毎月一回程度鉱害防止のための監督検査を実施いたしております。足尾鉱山から排出されます坑廃水は、中和剤投入等所要水処理をいたしまして、そのあとで公共用水排出をされております。  それで、これの検査の結果でございますが、たとえば銅でいいますと、一律基準が三PPMでございますけれども足尾鉱山の場合は上のせをいたしまして一・三PPMということで監督をいたしておりますが、現在時点で排出基準に適合をいたしております。  通産省といたしましては、今後も引き続きまして坑廃水監督はきびしくいたしてまいるつもりでございますが、調停等でも指摘されております有越沢堆積場天狗沢堆積場崩壊防止という問題につきましては抜本的な対策が講じられますよう、昨年成立を見ました金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づきまして現在計画を作成中でございまして、それに基づきまして抜本的な対策工事を実施させるよう指導してまいりたいと思います。
  10. 小川省吾

    小川(省)委員 調停案の中に、群馬県並びに太田市との間に公害防止協定締結をすべきだというふうに示されているわけであります。私、当然のことだというふうに思っておるわけであります。今回のこの調停がいわゆる農作物被害に基づく毛里田地域鉱毒根絶期成同盟農民との間のものでございますからそれは当然だというふうに思っておりますけれども、実は水の使用について、農作物といわゆる飲用水との領域が違うわけでございますけれども、実は上水道の水源の大部分渡良瀬川に求めている桐生市があるわけでございます。私は当然、公害防止協定古河桐生市とも締結をすべきものと判断をいたしておるわけであります。  それで、この調停案が出て以降、当然桐生市においても古河との間に公害防止協定を結ぶべきだということが市議会等の中でも出ているわけでございます。私も非公式に古河にも打診をいたしましたけれども、当然そうすべきではなかろうかということを古河のほうでも申しておったわけでございます。群馬県なり太田市と公害防止協定農作物被害について結んでいるわけでありますが、飲用水の面についても、このような農作物被害に対して重大な支障を積年にわたって起こした渡良瀬川水質でもございますので、当然桐生市との間にも防止協定締結すべきだというふうに私は考えているわけでありますけれども政府としてはどのようにお考えでしょうか。これは調整委員会の直接ではないでしょうから、環境庁のほうでお答えをいただきたいと存じます。
  11. 太田耕二

    太田説明員 お答えいたします。  公害防止協定につきましても、本来これは法律にのらない当事者間の契約でございますので、本質的には政府がこれに容喙する、口をいれるということは必ずしも適当ではないかもしれませんけれども、あくまでも環境をよくして沿岸住民健康等に遺憾なからしめるという趣旨からいきますと、この実体論といたしましてはしかるべく妥当なものだと判断するわけでございます。  ところが、渡良瀬川につきましては、通常事態におきましてはそういった銅による汚染というのはございません。ただ洪水等におきまして、いわゆる環境上、渡良瀬川に銅の排出が非常に多くなってくるわけでございます。ですから、公害防止協定等につきまして、ただいま通産省のほうからお話がございましたけれども調停内容の中に堆積場からの異常な流出を防ぐための措置が今後講ぜられるということがございますので、その辺を含めました形でもって桐生市との間に当該事業場公害防止協定を結んで、地域住民のためにその健康を守るというふうなことは、趣旨としては私どもとしては非常にけっこうなことじゃなかろうかというふうに判断する次第であります。
  12. 小川省吾

    小川(省)委員 けっこうなことだと判断するのではなくて、たまたまこれは農作物被害補償という形での申請に基づく調停でありますが、その中でも、やはり農作物に対しても県並びに太田市との間に公害防止協定を結ぶべきだ、こういうのがあって、そして事実飲用に供する水、命と健康にかかわる飲用水の問題でありますし、水道法に基づく砒素が限界を示すことがときおり実はあるわけですね、これは増水の場合でありますけれども。そういう点を考えれば、政府としては当然そういうものを結ぶほうが望ましいと考えるのか。非公式の打診では、会社側もそのほうがいいんでしょうねということまで言っているわけでありますから、そういうものを結ぶことが望ましいと考えるのか。まあ、当事者同士のことなんだから結んだらいいんじゃないですかということですが、環境庁という、公害を除去して国民の暮らしと健康を守るということであれば、当然そういうものを結ぶことが望ましいというふうな返答だと思ったのですが、どうなんですか。
  13. 太田耕二

    太田説明員 お答えいたします。  法律のたてまえから申しますと、本来的には、そういった公害防止協定を結ばないでも十分になるようないわゆる渡良瀬川水質環境基準値を定め、現在定めておりますけれども、定めるとともに、それを守らせるということが必要なわけでございます。   〔委員長退席中村(弘)委員長代理着席〕 特に銅につきましては、実は環境基準というのはございませんで、流水基準という形でこれを監視しているわけでございます。ですから、そういった流水基準が守られるような形でもってその当該事業者がいろいろな手を打つ。今度の調停内容にもございましたのですが、それを関係各省、まあ通産省あたりと相談をいたしまして、県それから事業者等ひっくるめましてその対策を立てるのが第一義的に必要だ、こういうふうに私ども判断しているわけでございます。  しかしながら、先生も御指摘のように、地域住民の健康を守るという立場からいきますと、そういった国できめました監視体制なりいわゆる流水基準なり、それが必ずしも妥当でないというふうに判断されました場合、第一義的にはそのもとに戻って、国の果たすべき役割りというものを十分に果たさなければいけない、こういうふうに申し上げたわけでございます。ですから、念のためと申しますか、それにもう一段と安全性を担保するという意味におきまして自発的にそういった公害防止協定を結ぶということでありますと、その内容にもよりましょうが、私どもといたしましてもそれは非常にけっこうなことであるというふうに判断すると申し上げた次第でございます。
  14. 小川省吾

    小川(省)委員 いずれにいたしましても、この調停成立を見たということはたいへんけっこうでございますし、公害等調整委員会の御努力に対して心から敬意を表するわけでありますが、鉱毒解決の第一歩が始まったにすぎないのではないかというふうに地元の私どもとしては考えているわけであります。いまだに、山元対策でありますとかあるいは土壌の客土、排土等、問題は山積をいたしておるわけであります。そういう意味で、ぜひひとつ今後の鉱毒を根絶して、渡良瀬川を昔の清流に返すという状態になるまで、政府関係機関といたしましてはこの際徹底をして御指導なり監督なりに当たっていただきたいことを強く要請いたしまして、渡良瀬問題に関しては質問を終わります。どうもありがとうございました。  次に、地方公務員災害補償制度等に関連をしてお尋ねをいたしたいと思います。災害補償法審議の際に十分時間がとれなかったものでありますので、基本的な問題についてただしてまいりたいと思っているところです。  労働省においでをいただいておるので伺いたいと思うのですが、労災法のいわゆる法そのもの改正なり運用等について、補償制度全般的な要求改正等労働者労働組合意見を反映させる機関として、労働大臣諮問機関としての労災審議会が設けられていると思うのであります。これは労使、公益の三者構成という形になっておって、労災審議会審議内容労災審議会として審議されているわけでありますが、労働者を守るという観点から公、労、使という形で持たれているのだというふうに思いますけれども労災審議会運営状況についてまず最初に一言だけお尋ねをいたしたいと思います。
  15. 山口全

    山口説明員 労災補償保険審議会につきましては、労働者災害補償保険法の第四条に規定されております労災保険事業運営に関する重要事項審議するために審議会を置く。さらにその構成としましては、審議会委員労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者について同数を委嘱するという規定になっております。さらに、この本法規定を受けまして、政令におきまして若干細部的に規定されておりますが、その内容はただいまの四条の規定とほぼ同じでございまして、保険事業運営に関する重要事項審議、さらには本法に基づく施行命令等の草案についての意見聴取、さらには関係省庁に対する建議ということを規定しております。構成は十八名でございまして、したがいまして各側六名となっております。  最近における開催状況でございますが、一昨年は通勤災害保護制度の創設に関する審議事項が主たるものでございまして、さらに昨年から本年にかけましては今回の制度改善に伴う事項審議の中心になっております。
  16. 小川省吾

    小川(省)委員 そういたしますと、労働者といいますか、労働者組織体である労働組合意見は、労働者を代表する方々が出ているわけでありますから働く者の意見は十分に反映をされている、そういうふうに理解をしてよろしいわけですね。
  17. 山口全

    山口説明員 先生指摘のとおりでございまして、十分に各側の意見が反映されているものと思います。さらには、年度中に必ず地方実態を、労、公、使で数班編成して、施行状況実地視察を行なうことになっております。施行実態についても十分行政に反映されている、かように考えております。
  18. 小川省吾

    小川(省)委員 そこで自治省伺いますけれども地方公務員、国家公務員もそうだと思いますけれども、その災害補償についてこのような制度はないわけですよね。そうなってくると、公務員労働者意見政府に反映をさせることができないということは片手落ちではないかというふうにいわざるを得ないと思うのであります。これは労災法における労災審議会のようなものを当然設けるべきであるというふうに考えるわけでありますが、自治省の見解はいかがでしょうか。
  19. 植弘親民

    植弘政府委員 基本的には、小川先生よく御承知であると思いますが、地方公務員の災害補償は、労災基準といったものを考えながら、労災について改善がはかられる場合には、国家公務員と同じように地方公務員につきましても改善をはからしていただいているわけであります。そしてまた、国家公務員と地方公務員と同じ公務の立場にございますために、十分国家公務員の問題がまた尊重されなければならないわけでありますが、これにつきましては、人事院がいわば政府機関でありますが、独立的な中立機関の立場でそういう検討もしていただいて、政府なり国会に勧告していただく、こういう仕組みになっております。もちろん地方公務員災害補償につきましても、基金の中に運営審議会がございまして、この運営審議会のメンバーには使用者側といいますか理事者側、それから職員を代表する者、それから学識経験者、こういった三者構成のかっこうでいろいろな問題点について審議をわずらわしております。制度そのものを論議する審議会はございませんが、そういった人事院なり国の労災なりといったものとの均衡をはかりながら、現実的には運営審議会運営を通じて意見を反映していただく、こういう仕組みでございます。
  20. 小川省吾

    小川(省)委員 現実的な取り運びとしてやられておられることはわかりますし、あるいはときおり法改正をしようと思いますと何か地方公務員関係職員団体の代表等とも、制度ではないのでしょうけれども話し合いを持っているということはよく承知いたしておるわけでありますけれども、現在あるかどうかわかりませんけれども、そういうものはやはりつくるべきじゃないかという気持ちはないのでしょうか。あるいはそれまでの間はそういうふうな地公労等との間に常に有機的な話し合いを持ちながら、それにかわるような状態は果たしていこうというふうに思っているのですか、どうなんですか。
  21. 植弘親民

    植弘政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、基本的には労災保険というものがいわば母法みたいな形で、それと国家公務員との均衡をとるという立場でございますから、特に地方公務員だけについての災害補償制度はどうあるべきかということを専門に研究する審議会というのは、それほど必要じゃないんじゃないだろうかという感じを持っております。
  22. 小川省吾

    小川(省)委員 そうすると制度的なものとしてつくる必要はない。しかし、それにかわるものとしての話し合いはやっていこう、こういうことですね。  そこで、私はやはりつくるべきだという観点でいま論旨を進めているのですが、先ほども言われましたけれども補償基金の中に運営審議会が置かれていますね。いまも言われたように、この審議会には労働者代表も入っておるようでありますが、これは労働者代表ということで入っているんじゃないんですね。学識経験者ということで入れているのでしょう。労働者を代表する者として入れていないわけですよ。そういうふうな実にあいまいな態度で——働く者の意見を反映するといいながら、確かに入ってはいるんですよね。いるけれども、これは学識経験者ということで入れてあるのであって、働く者を代表するという状態で入れていない。こういういわばへんぱといいますか、まっとうでないような形にしておいてはいけないというふうに思っているのです。  さらに、この審議会は、いわゆる制度が妥当であるかどうか、法律が妥当であるかどうかということを審議する機関ではないと思っているのです。基金の業務運営をするような、いわゆる基金の運営委員会的なことが要素だと思うんですね。理事長の諮問にこたえるという形での、基金の運営を協議する審議会だと思うのです。そうだとするならば、労災における労災審議会とはえらく違っているのではないかというふうに実は私は思っているわけであります。そういう点で何としても、労使、公益を含めても当然でありますから、それらの意見を含めた審議会をつくって、制度そのものあるいは法そのものをどうするかというふうな関係について審議できる機関を設けるべきだというふうに思うのですが、いかがですか。
  23. 植弘親民

    植弘政府委員 同じお答えを申し上げて恐縮に思いますが、先ほど労働省補償課長から御説明ありましたように、政府全体として、そういった働く者の業務なり公務によって生じた災害に対する補償をどうするかということは、専門的な審議会で御検討いただいております。したがって基本的には、労災審議会のほうの検討結果によって、地方公務員も一般の労働災害と均衡のとれた姿で制度をつくらしていただければいいのじゃないかと思いますし、また公務員という特殊な立場に立って考えるといたしました場合には、人事院で国家公務員について相当の研究もしていただいておりますので、その権衡もはかって、これは先生承知と思いますが、地方公務員災害補償法の思想もそういったような規定がされておりますので、十分とまでは言えないかもしれませんが、制度の趣旨は十分実施されているものだというふうに考えておるわけであります。
  24. 小川省吾

    小川(省)委員 都合の悪いときだけ公務員の特殊性を持ち出されてしまうと困るのですが、考え方はわかりました。十分にそういう意見をくんでいこうという善意はあるわけですからそれは認めましょう。しかし、そういう意味ではぜひひとつ、自治労でありますとか教員の職員団体でありますとか地方公務員関係職員団体と、私はそれを制度化しろとは言わぬけれども、あらゆる機会に必要なつど十分話し合いを持って、そして法の運営やあるいはこの法の改正等の問題についても十分に意見を聞くような形に当面進めてほしいと思いますが、現在もやっておるわけでありますから、よろしゅうございますね。
  25. 植弘親民

    植弘政府委員 昨年地公災法の改正をお願いいたしました際に、特に通勤災害というものを公務災害類似の災害補償として制度化さしていただきましたが、その運用等につきましても、当委員会から御指摘ございまして、十分具体的な職員団体の意向等も聞きましてやっております。いま先生指摘のように、こういった制度のあり方につきましては十分話し合いを重ねていって、よりよきものにするということが大切だろうと思っております。
  26. 小川省吾

    小川(省)委員 釈迦に説法でございますが、やはり公務員労働者といわゆる経営側の接点、しかもその最高である自治省が、地方公務員労働者との間の接触については特にスムーズにすることが大切でもございますし、少なくともこういう機関といいますか、問題等を通じてもぜひ今後とも十分に意見をくみ上げるような形を自治省の側でとっていただきたいことを強く要請をいたしておきます。  次に、地方公務員災害補償基金審査会委員の選任の方法についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  現行では、基金の理事長が学識経験者の中から委嘱をしていくという形になっているわけですね。しかし労災法では、労働保険審査官及び労働保険審査会法第二十七条で、委員の任命については衆参両院の同意を得て任命をすることになっているわけですね。任命の方法についても、先ほど来のいろいろのお答えがあるわけで、運営のしかたが違うわけですから、審査会委員の任命についても違うわけですよ。あまり権威がないわけですね。理事長の恣意で任命されているわけです。そういう任命の方法をやはり私は改めるべきではないのかというふうに思うのです。少なくとも地方公務員災害補償法の審査会の委員の選任等については同様の扱いをすべきではなかろうかと思いますが、たてまえがたてまえですからそういう扱いにはできませんか。
  27. 植弘親民

    植弘政府委員 審査会は、御承知のようにいわば準司法的な機関として、補償の認定について問題のある事案ごとに審査をするわけでありますが、その委員はやはり法律家だとかそういったものを中心に考えておりまして、制度的な直接的なつながりはないのかもしれませんが、いわば司法機関の前提的な審議を行なうわけであります。そういう意味ではいまの委員の任命方法でもそれほど支障はないかと思いますが、御趣旨もございますので、それらの点は今後の研究課題にさしていただきたいと思います。
  28. 小川省吾

    小川(省)委員 まあ研究課題ですからけっこうですが、研究課題ということは、往々にして役人の答弁というのはそのままにほっておくということを意味すると役人百科事典の中にはございますので、もしもそういう状態がむずかしいとするならば、それに準ずるような形で、少なくともわが地方行政委員会理事の間には同意を得るくらいな方法を講じて、委員の選任についてのいわば権威といいますか責任といいますか、そういうものを持たせるくらいの方法が必要なのではないかというふうにも私は思っているわけであります。いま言われるように研究事項でございますから、それも含めてひとつ研究事項に加えておいていただきたいと思います。  次に、地方公務員の労働基準監督行政についてお尋ねをいたしてまいりたいと思っています。  地公法の五十八条では、職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の取り扱いについて、人事委員会を置く地方公共団体では人事委員会の委員が、人事委員会を置かない地方公共団体ではその長が行なうことになっているわけですね。そのとおりですね。そうでしょう、五十八条は。
  29. 植弘親民

    植弘政府委員 そのとおりであります。
  30. 小川省吾

    小川(省)委員 これをどのように実施をされているのか。私は、地方公務員法の五十八条というのは、どうも規定そのもの自体があれですし、実にあいまいなんだろうというふうに思っているわけなんですけれども、具体的にどう実施をしているのか、明らかにしていただきたいわけです。はたしてほんとうに労働基準監督がやられているのかどうか、実は疑わしいというふうに考えているわけであります。  さらにまた地公法の五十七条の、いわゆる単純労務職員及び地方公営企業職員については地公法五十八条の適用はなく、直接労働基準監督署が職権を行使することになっているわけですね。そうですね。結局、地方公務員に対しては人事委員会、地方公共団体の長、労働省労働基準監督署が労働基準監督権を行使することになっているわけです。私は、どの程度これを行なってきているのか、先ほど申し上げたように、どうも疑わしいというふうに思っています。地方公務員の労働基準というのは、安全等は守られていないのではないかというふうに実は思っているわけであります。地公法施行以来どの程度監督権限を行使してきたのか、実は伺いたいわけなんでありますが、まず労働省に、単純労務職員なりに労働基準局が直接労働基準監督権を行使する案件について、地公法施行以来、そんな昔からのことでなくてもいいですから、最近の数年間でけっこうですから、どの程度特に立ち入って労働基準について監査、監督をしたのか、少なくとも回数だけでもお伺いをいたしたいと思います。
  31. 岸良明

    ○岸説明員 ただいまお尋ねの件でございますけれども、御指摘のとおり、地方公営企業の単純労務者は労働基準法の全面適用がございます。ただ災害補償に関しましては適用が除外をされております。  そこで監督実態でございますが、地方公営企業施行以来どのくらいの回数立ち入りをしているか、こういう御質問でございます。ただ、統計の上から申しますと、これは民間の企業も公営企業も区別なく私どものほうは扱っておりまして、実態としては相当数立ち入りその他監督をしておると思いますけれども、数については現在の段階では明確にいたしかねます。
  32. 小川省吾

    小川(省)委員 それでは自治省伺いますが、人事委員会が労働基準に関して行なってきたところ、あるいは地方公共団体の長が行なってきたところについて、回数とまで言わぬけれども、どんな状況を把握しているのか、伺いたいと存じます。
  33. 植弘親民

    植弘政府委員 回数等につきましていま資料を持っておりませんが、たとえば三六協定みたいな問題とか、こういったものにつきましては相当の件数があるように聞いております。
  34. 小川省吾

    小川(省)委員 いまの公務員部長の答弁にしても、あるいは労働省の答弁にしても、民間との区別がないなどと言ってはおりますけれども、ほとんどないのだろうと私は実は思っているわけであります。おそらくこれは明らかにできないだろうと思うのです。このことは、おそらく労働省にしても自治省にしても、心の中ではまあまあそんなことなんだということを認めておられると思うのです。反論があったらやってくださいよ。事実そういう状態で来ていると私は思うのであります。  それじゃ具体的に伺います。特に労働省伺いますが、いまあなたが、事実かなりやっているだろうと言われるわけだからお伺いするわけですが、昭和四十二年の清掃事業における安全衛生管理要綱と、昨年、昭和四十八年の学校給食事業における安全衛生管理要綱の設置に伴った監督を、どの程度、どこの県で、どうやられたか、お答えをいただきたいと思います。
  35. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま突然のお尋ねでございますので、手元に資料がございませんけれども、必要がございますなら調べまして御連絡いたします。
  36. 小川省吾

    小川(省)委員 それじゃ資料を出してください。私はほとんどないだろうと思う。先ほど来あるような話をやられておるけれども、少なくとも私の県では全然ないですよ。  そういう点で、公務労働に対しての監督というのを実際にじゃどう反省されていますか。民間企業に対すると同様に、同じような基準で同じようなペースでやっているというふうにあなたは思っていますか。
  37. 岸良明

    ○岸説明員 先ほどお答えいたしましたとおり、基準法の規定は、災害補償を除きまして全面的に適用があるわけでございますし、当然、清掃事業その他地方公営企業で行なわれております事業につきまして——もちろん監督機関の現在の状況から見ますと、これは全事業で平均いたしまして約八%しか監督ができないという実情でございます。そういう面の制約はございますが、やはり必要なことについてはやっておる、こういうふうに信じております。
  38. 小川省吾

    小川(省)委員 おたくのほうの労働基準監督の出先は人員が圧倒的に少ないわけです。やはりぜひふやしていただいて、働く者の安全が守られるような状態にしてもらわなければ困ると私は思っております。なかなか行き届かない面があるのはわかるのですが、どうしても公務員のところというのは避けがちの状態になっているわけであります。ですから、実際には労働基準法が公務員に対しては守られないという状態にあると断ぜざるを得ないのであります。適用されていても、監督機関が、非常勤の人事委員会の委員であるとかあるいは使用者である市町村長などに監督権限をゆだねているわけですから、これは実際不合理きわまる条項だろうというふうに私は思っているのです。働く者の労働基準というものが守られないというふうに思っておりますし、そういわざるを得ないと思うのであります。そういう意味で、公務員職場の安全衛生でありますとか、あるいは労働災害防止等を何としても守っていくには、いまの状態、五十八条では何ともならないというふうに思っております。こういう不合理なばからしい規定を、地公法というものを自治省は当然洗ってみて、変えていかなければならぬと私は思っておるわけでございますけれども、これらについて改正するなり検討するなり、そのような考え方をお持ちでしょうか。
  39. 植弘親民

    植弘政府委員 御承知のように、同じ公務員と申しましても、国家公務員の場合は基準法が全部適用除外されております。それで、御指摘のように地方公務員の場合は一部適用だとか全部適用だとかいうふうに、いろいろと勤務条件に関する適用法規が異なっている点は非常に繁雑でございまして、人事委員会等におきましてもこの間の整理をもっとすべきではないかという意見もございます。それからもう一つは、労働安全衛生といいますか、そういう関係では従来わりと十分に実施するというようなことがなかったように私ども感じております。昨年労働安全衛生法が分離されました機会に、私どもといたしましても特別に条例整備その他の指導を行なっております。  いま先生指摘の、地方公務員法の中における地方公務員のそういう勤務条件に関する規定をどうするかという問題これは非常に重大問題でございまして、私どもとしては、人事委員会の側からも職員団体の側からもいろいろな意見を聞いておりまして、研究いたしておりますが、地方公務員法の改正は非常に重大な問題でございますので、そう軽々には手をつけられませんが、たとえばいま労働基準監督署の持っておる権限を人事委員会に移して、人事委員会の持っておる権限でも比較的技術的な、ないしは専門的な知識の要るようなものは監督署に移しかえてほしいといったような整理の方法は現在検討中であります。
  40. 小川省吾

    小川(省)委員 わかりました。  大臣、いまお聞きになるような形ですから、何らかの研究、検討をするべき段階に来ているというふうに判断をされますので、大臣の御所見を一言だけお聞かせください。
  41. 町村金五

    ○町村国務大臣 いろいろ御指摘もございましたが、地方公務員の災害補償の問題について、今日まで、御承知のように人事院において常に深い検討をしていただいて、その勧告を尊重しながら現在の法ができ上がっておることは申し上げるまでもございません。われわれといたしましては、いま御指摘にもございましたが、そういう点を十分念頭に置いて、さらに今後きめこまかく検討をしてまいりたい、こう存じます。
  42. 小川省吾

    小川(省)委員 次に、コンピューターシステムの普及の問題とプライバシーの保護についてお尋ねをいたしてまいりたいと存じます。  七十一特別国会でわが党の佐藤議員のほうから、特に鶴岡市の住民基本台帳の販売というような問題に関連をいたしましてお尋ねをいたしたわけであります。その際、当時の江崎自治大臣は、プライバシーの保護について、また住民基本台帳法について、前向きの方向改正をするよう善処をしていきたいということを確約してまいったわけでございます。しかし本国会では自治省はまさに音なしのかまえでございます。この点について現在まで、江崎自治大臣が前向きの姿勢で対処し検討をするというふうな確約をしていただいて以降、どう検討をし、どう進め、現時点では具体的にどうなっているのか、その御返答をお願いいたしたいと存じます。
  43. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 当時、佐藤議員の御質問に対して江崎自治大臣が、先生指摘のような前向きの答弁を確かにいたしておりますし、私もその場に連なりまして、この善処をお約束した経緯がございます。  しかし、実際問題としてこの問題はたいへんいろいろな問題点を含んでおるわけでございます。戸籍あるいは住民基本台帳というものが一応公開の原則をとっておるということも、たとえば取引とかあるいは結婚問題、そういう身分的問題その他に関連して、身分関係あるいは住居関係を天下に公表する唯一の制度である以上、公開の原則をとっておるということも非常に意味のあることでございまして、直ちに鶴岡市の問題を契機といたしまして一足飛びにこれを非公開というわけにはまいりませんし、この公開の原則とプライバシーの問題ということの調和点をどこでとるか、たとえば閲覧を自由にさせるという制度がまずいから閲覧に制限を加えたらどうかということになりますとまた、どういう理由によって、だれが判断して閲覧させるか、させないかということをきめるということもたいへんむずかしい問題でございます。じゃ出版だけを禁止したらどうかというような意見もございますが、これも表現の自由、出版の自由というような関連がございまして、実は各方面と非常に関連が多い問題でございますので、江崎自治大臣がああいう御答弁をいたしましてから後、直ちに関係各省集まりまして、法制局とかあるいは行政管理庁、法務省、私のほう、集まりまして、あるいは出版の自由の問題になりますとこれは文部省にも関係してまいりますということで、各省の事務的な検討を直ちに始めたのでございますけれども、ただいま申し上げたような問題点が非常に多く、なかなか一足飛びには結論に到達することはできない。  一方、鶴岡市に起こったような問題は今後どこに起こるかも全くわかりません。その意味では急がなければならないが、一方には問題点があまりにも多過ぎて直ちに結論も出ないというジレンマにおちいりまして、さしあたり自治省といたしましては、現在の現行法の中に、執務に支障がある場合は閲覧を断わることができるというような規定もございます。この規定もあまり恣意的に運用されますとまた非常に問題が起こる問題ではございますけれども、一方において鶴岡市のような、全部を書き写して出版するというようなことになりますと、これはアルバイトでも雇って何日にもわたって全部を写し取るというようなことで、事実そういうことであれば執務に支障を来たすと認定される場合も多分にあると存じまして、一応昨年の十月末に通知を出しまして、このむずかしい問題についてはいま政府内部で検討しているところだけれども、さしあたりこの規定の適正な運用ということを通じて無用なトラブルを起こさないようにという通知を府県を通じて全市町村にお出ししまして、それによって、ああいう問題が何らこちらの事態の検討が進まないうちに繰り返されるのを一応防ぐ、さらにその検討を急ぐということで進めておりまして、現在各省のいろいろな相談が進んでおりますし、さらに問題が戸籍にも移りまして、法務省のほうで戸籍全体の公開の問題その他を含めましての民事行政審議会というのでもこの問題を取り上げて検討する空気も出てまいりましたので、江崎大臣お約束いたしましたように、できるだけ早くこの問題の抜本的対策は講じたいという気持ちはやまやまでございますが、問題点が非常に多過ぎてということで、今日の段階ではまだこれに対して確固たる方針がきまっていないというのが実情でございます。
  44. 小川省吾

    小川(省)委員 いま局長御答弁をされておりましたけれども、あれ以降プライバシーの問題が続出をいたしておるわけですね。特に来年度の統一地方選挙を控えて、甲府市であるとかあるいは宇都宮市等においてはいわゆる有権者名簿が販売をされるとか、あるいは市川市においては出生届けの公開の問題とか、宮崎市においての住民基本台帳の問題とか、まさにプライバシーが商品化をされるというふうな状態で、プライバシーについて保護できるのかどうかという危機的な状態に現在は差しかかっていると思うのであります。  こういう点について政府としては一体どう対処するかということで、いまもお答えのように、行政管理庁としては諸外国のデータ法とかいろいろな点を勘案しながら、いわゆるコンピューターのシステム化に伴う統一データ等の取り扱いについての検討を進めてきているはずでありますが、現在における進捗の状態はどんな状態ですか、お答えをいただきたいと存じます。
  45. 能勢安雄

    ○能勢説明員 お答え申し上げます。  一般的に申し上げまして、先生指摘のとおり、情報化の進展の度合いに応じまして、それに伴いますプライバシー保護対策を講じていく、あるいは法制制度を考えていく必要があろうかと思うのでありますが、諸外国の状況を見てまいりますと、スウェーデンのようにすでにデータ保護法というようなものが施行されておる国もございますし、またドイツのようにデータ保護法案というものが目下国会で審議されておるというふうなところもございます。またイギリス等におきましては特別委員会を設けまして、そこで審議をしているというふうな状況も聞いております。ただしかし、このプライバシー問題は単に行政機関だけの問題ではなく、民間を含めた非常に広範な問題でございまして、私どもといたしましてはとりあえず諸外国のそうした立法例等につきまして目下検討をいたしておるところでございます。  なお、これとは別途に各省庁のデータ保護研究会というのも目下開催しておりますが、ここでは、行政機関に導入しておりますところのコンピューターの運営管理を適正に行なっていくための運営管理基準の設定につきまして、目下検討を進めている段階でございます。
  46. 小川省吾

    小川(省)委員 何としてもプライバシーというものは保護されなければならぬわけであります。  法務省においでをいただいておりますが、法務委員会の中で論議もかなりされたようでございますが、法務省では民事行政審議会ですかに諮問をするということで、三月十三日に戸籍部会を設置したようですね。公開原則を調整して戸籍制度を改善するという方向で検討を進められているようでありますが、この進捗の状況はいかがですか。
  47. 加藤泰也

    ○加藤説明員 私、直接民事局の担当でございませんけれども、事務当局のあれを聞きますと、今月の三十日に第一回の会議を開くことになっています。   〔中村(弘)委員長代理退席、中山(利)委員長代理着席
  48. 小川省吾

    小川(省)委員 第一回の会議を開くだけで、まだ具体的には進められていないのですか。  そうすると、戸籍公開の原則というのがありますね。それとプライバシー保護との調整をやっていくということだと思うのですが、公開の際に本人や家族の同意が必要だという意見がこの戸籍部会の中では出ているというふうに聞いておるのです。どうも少し場当たり的な方向じゃないかというふうに思っていますが、戸籍制度の改善ということでどんなふうに進められているわけですか、その点を伺いたいわけです。特に戸籍法の中の十条ですか、公開の原則が閲覧、謄本、抄本という形できめられているわけですね。何人でも手数料を納付すれば閲覧なり、謄本、抄本なりがもらえるということなんですが、この中で、「但し、市町村長は、正当な理由がある場合に限り、本項の請求を拒むことができる。」というふうになっているわけであります。戸籍制度の具体的な改善という状態での審議の状況、そしてまた戸籍法十条にいう市町村長の「正当な理由」、これは法務省としてはどのように解釈しておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  49. 加藤泰也

    ○加藤説明員 これは民事局担当のことで、ちょっと局外のものですが、いま聞きましたところによると、それも含めて審議会の対象として議論していくという方向で、まだ白紙の状態だそうです。
  50. 小川省吾

    小川(省)委員 わかりました。局が違うのではやむを得ません。現在私が質問をしたものについての現在の状況について、後ほど文書でけっこうですからひとつ私の手元へ出してください。  鶴岡市以来の一連の問題から見て、戸籍制度だけではなくて、住民基本台帳についても当然公開原則の調整が必要だというふうに思っています。ある意味では住民基本台帳のほうが戸籍よりも重要な場合というのが起こり得るわけですね。たとえば内縁といいますか、いわゆる同棲生活をしておる、同居の女がいるわけでありますから、ある意味では住民基本台帳のほうが戸籍の場合よりも重要な要素を持っておるというふうな場合が出てくるわけであります。これについて自治省としてはどう検討をされようとしているのか。あの際に江崎自治大臣が、住民基本台帳についても検討をするということを確約をしているわけでありますから、具体的にどのようにお考えになっているのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  51. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 確かに、この問題の発端となりました鶴岡問題でも、これは戸籍ではなくて住民基本台帳でございましたし、現実にそこに住んでいる方々のいろいろな問題についての公証でございますから、重要性というのは戸籍に劣らないというか、場合によっては戸籍よりもさらにシビアな問題が住民基本台帳において起こるということは十分考えられるわけでございます。ただ、この住民基本台帳制度というのは、戸籍の寄留制度から住民登録制度、そういう経緯を経まして住民基本台帳制度としてこの数年前に完備したという経緯もございまして、いわば母法が戸籍法であるということもいえるのではないか。そこで、そのもとの起こりの戸籍法のほうの検討と全く離れて住民基本台帳だけでこのプライバシーの問題を処理するわけにもまいりませんので、一方においては戸籍に関するそういった審議の進行もかたがたにらみながら、かつ住民基本台帳の記載事項の問題その他についてこちら独自の検討もさらに進めていかなければいけないというところに立っておるわけでございます。  そこで、前の江崎自治大臣がこれを前向きに検討するということをお約束したのは確かにそのとおりでございますし、これはほうっておけない問題という認識はわれわれも十分持っておるわけでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、戸籍との関連があり、あるいは出版の自由その他との関連もあり、それからいまの先生の御質問の中に選挙のために使うという話もちょっと出たようでございますけれども、あるいは世論調査というようなときにもそういう台帳の公開制度というものに乗ってサンプリングをするというように、世論調査というものもある意味では公益上非常に重大な問題でもございますが、そういう問題もございましてたいへん問題点が多い。やはり急いでこれら一つ一つを解決していかなければならない、それには鋭意努力を払ってまいろうと存じておる次第でございます。
  52. 小川省吾

    小川(省)委員 林さんは地方自治法を通過させるために頭が一ぱいだったと思うのですが、行政局も林さんだけで回しているわけじゃないんで、下に部長もあり課長もあるわけですから、もう少し具体的な研究、検討をされないと困るのですよね、もう少し具体的な回答が出てきませんと。  要するに、個人情報を記載した行政書類及びシステム全体についての検討がいままさに必要だというふうに思うのですね。行政管理庁に伺いますが、こういうものに対してどう対処されようとするのか、考え方をもう一回ひとつ聞かしてください。
  53. 能勢安雄

    ○能勢説明員 このプライバシーの問題でございますが、先ほども申し上げましたとおり、単にパブリックだけの問題でなくして、民間も含めました非常に広範多岐な問題でございます。したがいまして、各省庁統一的な調査研究、あるいはこれに対処していくことが必要かと思うのでありますが、このプライバシーに取り組みます取り組み方といたしまして二つの大きな問題があろうかと思います。一つはやはり管理レベルの問題だと思います。それからもう一つは立法レベルの問題かと思うのでございますが、われわれといたしましてはさしあたって緊急性の高い管理問題を中心といたしまして、特にコンピューターの運用管理体制あるいは運用管理基準の設定等に重点を置きました調査研究あるいは対策等につきまして推進をはかってまいっておる次第でございます。
  54. 小川省吾

    小川(省)委員 能勢さん、そういう管理問題と立法問題だということですが、当面管理問題を十分先行しながらならなければいかぬし、ある時点では当然立法をし、プライバシーを守るという形の中でともにやらなければいかぬと思うのだけれども、大体めどといいますか、どのくらいのスピード、実際に少なくともこの年度の段階ぐらいまでにはこういう方向に行きたいのだという、少し前を向いたスケジュール的な計画を聞かしてください。
  55. 能勢安雄

    ○能勢説明員 お答え申し上げます。  各省庁の個人データ保護研究会というものを実はことしになって発足さしておるわけでございますが、ここにおきまして、コンピューターを現に導入しております各省庁が集まりまして、先ほどもお答え申し上げておりますコンピューターの運営管理規定について検討を進めてまいっておるわけでございます。プライバシー問題を厳正に行なって保護していきますには、この管理規定を設定することが一番緊急な問題かと思うのでございますが、この管理基準につきましては早急に基準案を定めまして、各省庁等におきまして統一的に実施を進めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  56. 小川省吾

    小川(省)委員 たいへんな作業でありますし、ぜひひとつ鋭意努力して対処していっていただきたいと思います。  このように、確かにいわゆるプライバシー保護の問題については現在まさに非常に重大な局面を迎えていると思うのです。しかし、各地方自治体でもプライバシー保護を確立しなければならないにもかかわらず実際にはされない状態のもとで、現に広島なりあるいは徳山等でも続々住民管理システムを導入して、実際に事務のシステム化をはかってきているわけですね。いま行政管理庁の能勢管理官が言ったような、早急に管理問題についてやりたいのだと言っている中で、自治省自体がまだ独自のものをお持ちでないと思うけれども、しかし、いわゆる自治省傘下というか、自治省が管轄をしている自治体の中では続々管理システムが発足をしているわけですよね。こういうものについて自治省はどう考え、どう指導しているわけですか。
  57. 横手正

    ○横手政府委員 現在地方団体におきましても、行政事務処理の効率化の面からいたしまして電算機導入がかなり進んでまいってきております。ただ、電算機はその利用方法いかんでは、先ほどから先生が御指摘のような心配も生ずるおそれがあるわけでございます。私ども、コンピューター処理に伴います個人の秘密の保護ということにつきましては、地方団体に対しましてあらゆる機会を通じまして細心の留意を払うよう指導してまいってきておりますが、今後ともそういうような方向指導してまいりたい、かように考えております。
  58. 小川省吾

    小川(省)委員 当面取り組んでおる非常に微妙なきびしい問題だと思いますので、なかなか納得を得るような御返事がないが、さらに皆さん方の、各省庁のぜひひとつ前向きの取り組みをお願いをいたしたいわけであります。  個人の情報処理システムが非常に増大をしているわけでありますが、そういう中ではどうしても個人の記録が標準化をされてきて、個人の個性が奪われて、個人データの収集や蓄積というものが、個人の機密性はもちろん極端に侵害をされてまいりますし、個人がまるで記録の中に取り囲まれたという形で、記録の中での囚人というふうな状態にもなりかねないような状況を生みつつあるわけであります。そういう点で、ときには個人の忘れ去る権利の侵害さえも、あるいはデータの収集なりたくわえというものは持ち来たらすわけでありますから、この際政府としては、ぜひ個人のプライバシーが侵害をされることのないようあらゆる保護対策を講じて、法的に、しかも管理の面で一刻も早く確立をしていただきたいというふうに思っているわけであります。情報化社会に対処する上で特に強く要請をされる一面だというふうに思っておりますので、一段と努力をお願いをいたしておきたいと存じます。大臣の所見を一言だけ伺いたいと思います。
  59. 町村金五

    ○町村国務大臣 こういう情報化社会に入ってまいりまして、この便利なシステムをできるだけ人類の進歩のために活用していくということは非常に大事なことであることは言うまでもないわけでありますけれども、一面そのために個人のプライバシーが侵されるということは、私はこれは許しがたいことだ、こう考えるのでございます。  そこで、このたびの鶴岡の事件に関連をいたしました住民基本台帳の公開問題とプライバシーの関係については、やはり私は基本的には、個人のプライバシーをあくまでも守るということを基本として今後のこれらの制度の改正というものに当たってまいるべきではないか、こう私は考えております。
  60. 小川省吾

    小川(省)委員 自治大臣にぜひひとつ強く要請をして、国全体のものについてはこれは各省庁が立てているでしょうが、自治省傘下の各市町村がいわば先取りというふうな形で、具体的に個人の情報管理体制というものがつくられつつあるわけでありますから、自治省としても十分意を用いて対処していただきたいと存じます。  最後に、若干清掃事業関係についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  実は厚生省からおいでをいただいておるわけでありますが、特に大都市等におけるところのいわゆるごみ戦争あるいはまた産業廃棄物等で、まさに清掃の問題はいまや都市における大きな問題となりつつありますし、これはまた近代国家として基本的に解決を迫られている問題でございます。そういう点で厚生省として基本的な政策が出ておるのだろうと思うけれども、清掃事業に対する当面の基本的な政策、あるいはまた五年計画、十年計画なりというふうな基本的な政策を、あるいは私が不勉強で読んでいないのかもしれないですけれども、ごみ戦争に対する厚生省の基本的な見解をまずお尋ねをいたしたいと思います。
  61. 折田貞雄

    ○折田説明員 ただいまの先生の御質問にお答えいたします。  御承知のように、廃棄物に関しましては廃棄物処理に関する法律がございまして、その法律の理念に即しまして特に国の責務が規定されておりますが、私どもといたしましては清掃の技術の指導、財政の措置等につきまして特に配慮をいたして清掃事業の行政を国として行なっておるわけでございます。この廃棄物の政策は、住民の福祉の観点に立ちまして地方自治体の指導に当たることになるわけでございますが、清掃事業等の推進のための体制の整備につきましては、あくまでも地方自治を尊重いたしまして、地方の特性を考慮してこの問題を解決してまいらなければならないかと思っております。そういう意味におきまして地方の各都道府県あるいは市町村の指導をしてまいっておるのが現状でございます。
  62. 小川省吾

    小川(省)委員 清掃問題が現在のようにクローズアップをされてきたのは、何としても清掃事業というふうな事業をいわば取り残してきたといいますか、比較的軽視をされてきて、常にあらゆる仕事のあと回しにされてきた。そういう中で、三十年代から高度経済の成長が始まっていく中で産業廃棄物等も非常にふえてくる、都市に対する人口集中もふえてくる。こういう状態の中でようやくごみ問題に気がついて、この対策がおくれた。こういうところに清掃問題がいま解決し切れないほどの難問をかかえている、これが現状なのではないだろうかというふうに私は思っていますが、そういう反省は厚生省にありませんか。
  63. 折田貞雄

    ○折田説明員 ただいま御指摘の点につきましては全く先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもといたしましてもここ数年間急速にごみに対する、先ほど申し上げました特に財政問題について、国の援助につきまして予算措置を、十分にとは申し上げませんけれども、特別に力を入れてまいったわけでございます。しかしながら、これにつきましても確かに先生がおっしゃられるように十分ではないという御批判を受けるかもしれませんが、私どもとしても今後ともこの問題については積極的に大いに努力してまいりたいというふうに考えております。
  64. 小川省吾

    小川(省)委員 特に国の廃棄物処理行政というのが、私は基本方針が少し欠如をしておるのではないかというふうに思っています。現代社会の生産、流通、消費、こういうものを総合的にとらえて対策が立てられていないのじゃないかというふうな感じもするわけであります。そういう観点でありますから、国として一貫した政策がなかなかない。それに対するところの財政的な裏づけあるいは計画的な施策、こういうものがいわゆる清掃事業については欠けているというふうに思っていますが、その主要な要素というのはどうも、厚生省がこれは取り扱っているわけでありますから精一ぱいの努力をされているのでありましょうが、厚生省として清掃処理行政に対する財政的な問題で、大蔵省に対するところのいろいろな意見があると思うのですけれども、その点についてはいかがですか。
  65. 折田貞雄

    ○折田説明員 財政の問題でございますが、いま先生の御指摘のとおりでございまして、廃棄物の排出量につきましてはいま申されましたように非常に増大してきている。それから質的に見ましてもいろいろなものが出てきた。そういうことによって施設整備がそれに追いついていかなかったという点もあります。  その一つの大きな問題といたしまして、地方財政に対する負担が非常に大きかったという点もございまして、私どもといたしましては現行の補助率あるいは起債のワク、地方交付税等につきまして十分だということは思っておりませんし、いま御指摘のありましたようにもっとやらなければいけない。いわゆる既存の財政的な援助の拡充は大いにやっていかなければならぬというふうに反省をし、また今後もつとめてまいりたいというふうに思っております。また、新しくいままでなかったようないろいろな、たとえば埋め立てその他排水、廃棄物処理施設のいろいろな高度技術をどんどん導入した施設の整備をしていくようにつとめてまいりたいというぐあいに、反省と同時に今後の努力を私どもはしていきたいと思います。
  66. 小川省吾

    小川(省)委員 私の記憶があるいは誤りかもしれませんけれども自治省に聞きますが、四十九年度の清掃処理施設に対する補助金は、大体現在ではトン当たり千二百万の建設費がかかるというんですね。ところが国の大蔵の措置というのはトン当たり二百八十一万五千円で、しかもその四分の一の七十二万五千円しか認めていないと思うのです。こういう状態では、自治体が何とかして清掃処理に立ち向かっていっても、みすみす大きないわゆる超過負担を見越してなかなか処理施設にも踏み切れない。だから一部事務組合でなどということを、林局長に聞くと言われるかもしれないけれども、そういう超過負担が続出するような状態の中では地方公共団体は処理施設にも困る。こういう状態を、現状をもう少し、あまりにもひど過ぎるような状態というものを大蔵に対して認めさせていくところの手だてはないのかあるのか。方途はないのか。まさに清掃に対するところの政府全体の軽視ではないかというふうに思うので、ちょっと伺っておきたいと思います。
  67. 石原信雄

    ○石原説明員 先生指摘のように、清掃施設に対する現在の国庫補助金の積算単価は、自治体が現実に建設しているものと比べますとかなり大きな隔たりがあります。これについては、いろいろ施設の内容、処理技術の問題等がありまして、まさに日進月歩の感がありまして、どういう方式をとるかによっても非常に差があるわけであります。それから実際に出ている差の中には、現在出ているごみよりも今後のごみの処理量の伸びをどの程度見込むかといった点について、実際の補助金の積算基礎と自治体が計画しているものとの間には差がかなりあるようでございます。  私どもは、いずれにしましてもこの大きな差の相当部分はやはり国の補助金の積算単価のほうに問題があるのではないかということで、関係省にはその改善方をお願いしておるわけでございます。しかしこの問題は現実に放置できない問題でありますから、たとえば地方債の配分等におきましてはいわゆる実行単価、実施ベースというもので、それを基礎にして、補助単価を基礎にしない方式をとっております。しかし基本的には、これは補助単価がさらに是正されるべきものであるというように考えております。
  68. 小川省吾

    小川(省)委員 清掃やさらに屎尿問題というのは、これは近代国家が進歩をしていけばいくほど重要な問題であります。ぜひひとつ、これから以降、厚生省も自治省も、清掃、屎尿等の問題について従来の考え方を一てきして、新しい見地から完全にこれらの問題を解決をする、こういう観点に立って大蔵省にも臨んでいただきたいし、これらの問題を住民の健康やしあわせにつながる問題としてとらえて取り組んでいただきたいことを強く要請をして、質問を終わります。
  69. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 三谷秀治君。
  70. 三谷秀治

    ○三谷委員 公選法の解釈についてお尋ねしますが、百三十六条の二の「公務員等の地位利用による選挙運動の禁止」という項目がありますが、地位利用というのは、公職の候補者となろうとする者のためにやることも含むという解釈はそれでよろしいでしょうか。
  71. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 そのとおりでございます。
  72. 三谷秀治

    ○三谷委員 地位利用に該当すると認められる事例としましては、公務員などの内部関係において、職務上の指揮命令権、人事権、予算権等に基づく影響力を利用して、公務員等が部下または職務上の関係のある公務員等に対し、選挙に際して投票を勧誘すること、これはこの解釈でいいでしょうか。
  73. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 大体そのように解釈をされております。
  74. 三谷秀治

    ○三谷委員 地位利用による選挙運動準備行為の事例としましては、たとえば〇〇省の〇〇局長が、職務上関係のある地方出先機関、府県の関係課長、市町村長等に投票の割り当て、ポスター張りを指示すること、あるいは地方出先機関、府県の部課長、市町村長等が、部下に対して投票の割り当てを行なう等の行為をすること、という解釈でいいでしょうか。
  75. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 その立場上、そういった影響力をかなり持っておる者が、ただいま御指摘になりましたような、部下に対して割り当てをするとかいったような行為を行ないます場合は、ただいまの百三十六条の二違反のおそれが十分あるということでございます。
  76. 三谷秀治

    ○三谷委員 最近明らかになりました和歌山県の金屋町の助役の文書に基づきます参議院候補者の票の割り当て、この事案につきましては御承知になっておるでしょうか。
  77. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 昨日の新聞の夕刊で、御指摘のようなことが問題となっておるという事実を知ったわけであります。
  78. 三谷秀治

    ○三谷委員 調査になっておりませんか。
  79. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 昨晩それを知りましたので、本日、県その他を通じまして若干の事情は調査いたしておりますが、具体の事実はまだ正確にはつかんでおりません。
  80. 三谷秀治

    ○三谷委員 いま、調査されました、そして明らかになりました状況について御説明願いたいと思います。
  81. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 和歌山県の金屋町の助役が個人の資格で地元の自民党の選挙対策会議に出席した、その席で票の割り当て表というものを作成して、それを紛失したらしい、それが問題とされておるということのように聞いております。票割り当て表に基づきます具体的な指示があったかどうかということについては、まだ下のほうへ具体の割り当てを指示したといったようなことはなかったようであるというふうに聞いておるわけでございます。
  82. 三谷秀治

    ○三谷委員 個人とおっしゃいますが、この文書によりますと、参議院の予定候補者について、町の担当課別に得票目標を定めまして割り当てをしております。この割り当てがすでに行なわれたか行なわれる前であったかということにつきましては別としまして、そういう割り当てがなされております。そうしてこの割り当てがなされましたのは、本人が言っておりますのは、県の人から頼まれた、あるいは県事務所の担当課についても聞いた、こういうことを言っておりますし、それからこの文書を見ますと、県事務所の担当課として、それぞれ県事務所の事業別の担当課が記載されております。  たとえば元建設省事務次官の坂野重信君ですか、これは湯浅土木事務所が担当課になっておる、これが県の窓口になっております。町ではこれを建設課で担当する。小林国司君につきましては、県の事務所の農地、かんがい排水課、林業指導課が担当する。町では産業経済と建設課、森林組合が担当する。村上正邦君につきましては、県事務所の普及所が担当する。町では住民課が担当する。鳩山威一郎君につきましては、県事務所の総務、税務、会計課が担当する。町のほうでは総務課が担当する。山東昭子君については、県事務所の民生課、湯浅保健所が担当する。町のほうでは福祉課が担当する。佐藤信二君につきましては、県事務所の担当課は産業課でやる。町の担当課は記載しておりませんが。  こういう行政の機構別の割り当てが行なわれておりますが、こういう状況につきましてはどのような御見解でしょうか。
  83. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 私どもが聞いておりますのも、担当課別かどうか、そこらはわかりませんが、いろいろと割り当てをつくっておるということはあるようでございます。ただそれが、その地位を利用して作成をして、また実際上、具体的にそういったことに基づいた票集めの指示をしたとかいうようなことがあるかどうかということについては、ないように聞いておるわけであります。したがいまして、単にその場で作成された割り当て表を持っておるということだけでは直ちに問題にならないのじゃないか。もちろん具体的にそういった指示、それに基づいた指示行為等がございますればいろいろと問題が出てくるであろうというふうに考えております。
  84. 三谷秀治

    ○三谷委員 ないように聞いておるとおっしゃいますのはどこでお聞きになりましたか。どの範囲の調査をされましたか。
  85. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 急なことでございましたので、とりあえずは県の地方課等を通じて聞いておるわけでございます。したがいまして、まだ事実の正確さについては私どもも確信が持てないわけでございます。
  86. 三谷秀治

    ○三谷委員 そうしますと、ないように聞いておるというふうな断定はできるものじゃありません。御承知のように、ここでは、金屋町に割り当て数としまして票数もちゃんと書いておるわけです。いまおっしゃいますように、個人として思いつきを書いたというふうなことをおうしゃるとしますと、これは明らかに信憑性、蓋然性に反するものです。明らかにこれは県の指示があったということを言っておる。指示とは言ってないけれども、県の人から頼まれたと言っている。そしてどんなルートでだれに頼まれたかということについては、これは言えません、こういう答えを本人がしているわけです。ですから、その割り当てをしました、あるいは依頼をしました県に聞き合わせをするというだけでこの問題の実相が明らかになるわけがない。むしろこれは、この資料によりますと、明らかに地位を利用しました、そして候補者に関係のある部課に割り当てをするというものであることが非常に明確なことになっております。こういう実態というものが金屋町では発覚しましたけれども、まだ、この状態から見ますと全県的に行なわれておる可能性が十分にあるわけでありますが、この事態に対してどういう処置をおとりになろうとしておるのか、お聞きしたい。
  87. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 ただいまの問題は、それぞれ具体の事例に照らして判断をしなければならないと思うわけでございますが、私ども、先ほど申し上げましたように、正確な事実はまだつかんでおりません。なお知り得る範囲内で十分調査もいたしたいと思いますけれども、少なくとも社会的に多大な影響力を有しております地位にある者は、十分公私を分別いたしまして、地位利用したのではないかといったような疑惑を招くことのないように慎重な行動をする必要があると思っております。私ども、いつも選挙の前にはそういったことについて、これは公務員部からの指示でございますけれども、そういった行動については十分留意をするように前からいたしておるような次第でございまして、私どもよく事実を調べた上で、こういうことが、疑惑を持たれるようなことがあっては非常に困るわけでございますので、その点十分注意をしてまいりたいと思っております。
  88. 三谷秀治

    ○三谷委員 一般的な注意をしていくということでなしに、この種の事態が発生しましたときには、真相を究明して、そして具体的な事例に基づく処置というものをとっていかなければ、いまおっしゃいますように一般的な努力だとかいうことではものごとは実際には解決しないわけであります。  この問題を見ますと、明らかに地位を利用して、そして候補者の票の割り当てまでやっておる。しかも、これが町だけでなしに県、地方事務所、そして町村という縦割りの線で、しかも職務上の関係を利用して行なっておるということが非常に明確になっております。たとえば、坂野重信君ですか、建設省の出身の方のようでありますが、この方の県庁の本部というのは、責任者が土木部次長、副責任者が監理課長ほか、そして県庁の下に地方事務所があり、地方事務所に地方事務所本部ができておる。その下に町村という、そういう組織関係が明確に示されておるようでありますけれども、そういう中で行なわれておりますこの金屋町の票の割り当てというものが公職選挙法に違反する、あるいは公務員法に違反するという疑いを多分に持っておることは争う余地がないと思います。  この事態に対してどういう処置をおとりになりますのか。一般的に調べてみるというようなことではこれは不十分です。これを県に聞き合わせてみるとか地方事務所に聞き合わせてみまして、そんな事実はありません、助役が思いつきで何か落書きをしたものでありますというようなことでこの問題は済まされるという性質のものではない。そうしますと、どのように調査をして、どういう態度でこの問題に当たるのか、これを明らかにしてほしいと思います。  それから、大臣は国家公安委員長もなさっておりますが、これにつきましてはどのような処置を進めていくおつもりか、お尋ねしておきたいと思うのです。
  89. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 地位利用の選挙運動に当たるか当たらないかということは、これは先ほどから申し上げますように事実をよく調べなければわからないわけでございますが、もしそういった事実に当たるということになりますれば、御承知のように罰則等もあるわけでございます。ただ、そこらになってまいりますと、いささか私ども選挙の管理、執行の立場を離れまして、捜査当局でないとそこから先へどうも進めないという気がするわけでございますので、私どもとしては先ほど申し上げましたように、十分公私を分別いたしまして、そういった疑惑を招くことのないようにするように指導するということをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  90. 町村金五

    ○町村国務大臣 いま、和歌山県のある町村の助役がその地位を利用して選挙の運動をしておるという御指摘でございました。実は私もいま初めて伺ったところでございまして、事情は全く承知はいたしておりませんが、いずれにいたしましても、公務員がその地位を利用いたしまして投票の勧誘、割り当てをするということは、現在の選挙法において許されないことでございます。したがって、この点は関係者をして十分事情の究明に当たらせて、適切な処置を講ずるということにいたしたいと思います。
  91. 三谷秀治

    ○三谷委員 そうしますと、いまおっしゃいましたのは、警察としましてもこの問題については十分に調査をし、究明をするという意味で理解していいわけでしょうか。
  92. 町村金五

    ○町村国務大臣 よろしゅうございます。
  93. 三谷秀治

    ○三谷委員 富田林市長の不当労働行為、団体交渉の拒否、組合破壊に基因します紛争につきましては御承知になっておりますか。
  94. 植弘親民

    植弘政府委員 存じております。
  95. 三谷秀治

    ○三谷委員 自治省としてはどのような指導をなされておりますか。市長との間に連絡があるわけですか。
  96. 植弘親民

    植弘政府委員 先生承知と存じますが、現在この事件は大阪地裁と高裁に係属中でございます。したがいまして、現段階では自治省としてはこれについて特別の意見を申し上げる段階にないと存じます。ただ一般的には、その事件は係属中は係属中といたしましても、労使関係を正常化して話し合いを持つようにということは常々指導いたしておるところであります。
  97. 三谷秀治

    ○三谷委員 しかし、この自治省の態度というものを見ますと、「地方公務員月報」に公務員第二課長課長補佐をなさっている浜田さんという方が「富田林市に対する地労委の命令について」という見解を発表されている。これが自治省の見解でしょう。
  98. 植弘親民

    植弘政府委員 私ちょっとその事件のときのものを承知いたしておりませんが、たぶん公務員月報は、そういった事案等の研究についてその補佐の個人の資格で出したものでございますから、自治省が公式に事件に対する解釈を表明したということにならないと思います。
  99. 三谷秀治

    ○三谷委員 そうしますと、これは個人的見解で、自治省の責任の持てぬものですか。自治省編さんの公式出版物に対する課長補佐の見解が自治省見解としてとられて、それに市長が依拠をするというような事態が起きました場合の責任はどうなるわけですか。
  100. 植弘親民

    植弘政府委員 一般的には、そういった研究事項についての問題でありますから、そういう具体の事例が起こりました場合には自治省として正式な立場で見解を表明する、ないしは、かりに市長なら市長、その他の方から照会があればそれについては公式に回答をする、こういうのが従来からとっておるところでございます。
  101. 三谷秀治

    ○三谷委員 自治省が編さんをしました公の出版物に対して、公務員問題を担当します課長補佐が見解を出している。その見解に対して、市町村長がこれは自治省の見解だと考えました場合、それに依拠をして紛争に対する姿勢というものをきめておる場合、自治省の責任はどうなるか、こう聞いておるわけであります。
  102. 植弘親民

    植弘政府委員 一般的には、そういった学術的に研究したものを出しておりますので、そのことが、公務員月報自体が自治省の編集にかかるものでございましても、一般的には市町村ではそういった研究的なものであるということは理解されておると思います。もしそれによっていずれかの事態が起こったといたしましても、これはそれについて個別的に判断すべき問題でございますので、直ちに責任という問題とはちょっと別問題じゃないだろうかと思います。
  103. 三谷秀治

    ○三谷委員 おっしゃることがよくわかりませんけれども、公務員関係の事務を扱われております、指導的な業務をやっていらっしゃいます課長補佐が一定の見解をお示しになる、しかしそれは自治省としては責任が負えるものではない、全く個人的なものであって、自治省の見解は別にある、こういうことになるわけですか。
  104. 植弘親民

    植弘政府委員 自治省が何らかの解釈とかそういったものを示します場合には公式に公文書をもって示しておりますので、多くの場合そういった事案を考える場合の参考になると存じますが、公式のものとして自治省が正当に手続を経てきめたものというふうには理解されていないというふうに信じております。
  105. 三谷秀治

    ○三谷委員 実際の問題としまして、市町村がこの問題について相談に来る、その窓口の課長補佐が見解を発表されておりますならば、市町村が相談をしに来て課長補佐に会った場合に、課長補佐は公表しました見解を述べるにきまっている。それによって指導されるにきまっている。そうしますとそれは当然自治省指導になってくる。そうしますと、あなたがおっしゃいますように公式な通達でないからそれは自治省の責任に属するものではないということは、現実の問題としては通用しなくなってくる。この点はどうなりますか。
  106. 植弘親民

    植弘政府委員 考え方の基本は先ほど申し上げたとおりでありますが、もし間違った見解を出しまして、先生も御指摘のように、それがあたかも自治省の正当な通達と同じような効力を持つように理解されるということになりますと、その点は非常にやっぱりまずい点もございます。したがいまして、そういった研究事項を発表する際でも、できるだけそういった基本的な自治省の考え方と抵触するようなものは出させないように注意しているところでございますが、具体の問題でそれがどうなったかということになってまいりますと、その点は個別の問題として研究させていただきたいと思います。
  107. 三谷秀治

    ○三谷委員 個別の問題でなしにこの問題でお尋ねしている。一般論ではない。この具体問題についてはどうなのか。
  108. 植弘親民

    植弘政府委員 申しわけございませんが、私はその浜田補佐の書いたものをちょっといま存じておりませんので、どの点が先生指摘のように自治省の従来からの公式な見解といいますか、そういうものに抵触しているか十分いま承知いたしておりませんので、そういうように申し上げているわけでございます。その点は御了承いただきたいと思います。
  109. 三谷秀治

    ○三谷委員 この富田林の問題といいますのは、四十五年以後組合の団体交渉を受けつけない。今日に至るまでそれは続いている。労働基本権を無視している。この件につきましては、いろいろ問題の発端等につきましては経緯がありまして、人事院勧告の実施を求めて団体的な行動をとった。それについて市長が組合委員長、書記長を処分する。これは減給、昇給の延伸、こういうことをやった。そこでこれを不当労働行為として地労委に提訴した。地労委は四十四年の十一月と四十五年の六月にわたりまして現地調査等をいたしまして、処分の取り消しの命令を出した。ところが富田林市はその命令に従わない。そして大阪地裁に対して地労委の命令の取り消しを訴えたわけです。これに対して大阪地裁は、地労委の命令を守れという緊急命令を出した。ところが大阪地裁の緊急命令を不服としまして市長がまた大阪高裁へ抗告した。大阪高裁はこの抗告を却下した。こういう事件です。そして四十七年からの団体交渉拒否に対して組合が地労委にさらに提訴しましたが、昨年になりましてから、当然団体交渉を持つべきだ、持てという命令を出した。これに従わない。こういう事件なんです。浜田君が出しました論文というのはこの地労委の裁定に対しての反論的なものを出している。その内容はあとでお尋ねしますけれども、こういう経過によりまして、地労委の命令も聞かない。地裁の命令も聞かない。高裁の抗告却下も受け入れない。そしてなお上訴をする。いましておると思いますけれども、そういう状況になっておりまして、その間団体交渉に全く応じない、こういう態度をとっている。  こういう事態に対して、自治省は従来富田林市からの何らの相談にも応じていないかどうか。相談に応じておるとすれば、どのような指示をして指導されてきたのか、お尋ねしたいと思います。
  110. 植弘親民

    植弘政府委員 訴訟の問題につきましては、これは弁護士もついておりまして、法律の解釈はどうかというようなことで、解釈論は相談を得ております。  それからもう一つの、話し合いといいますか、交渉といいますか、その問題につきましては、やはり従来から私ども一般的に指導いたしておりますように、十分に交渉のルールを守って交渉すべきであるという言い方は相談に来たときにも申し上げております。
  111. 三谷秀治

    ○三谷委員 相談をしに来たときに申し上げるというのじゃなしに、いつまでもこういう不当な行為を行なって、そして労働基本権を認めないという態度を市長はとっているわけでありますから、これについてはもう少し強力な指導、処置をとりまして、これを改善させていくということをしなければ、これはたいへん市民も迷惑をしますし、労働者自身もたいへんな迷惑をしている。しかもこれはなんでしょう、地労委も市長の言っていることはだめだと言っている。裁判所もだめだと言っている。そしてまた市議会も、従来の慣行に従って交渉すべきである、そういう決議をやって、市長に対して勧告をやっている。がんとして聞かないわけだ。要するに、これは全く今日の労働慣行を無視し、そして公務員法を無視した暴挙を依然として続けておるわけなんです。これを、相談に来たら乗るけれども、来なければそのまま放任しておくということでは指導上の責任が果たせない。
  112. 植弘親民

    植弘政府委員 私の申し上げましたのは、相談に来たかというお話でございましたので、相談に来た際にもそういう指導をいたしておりますと申し上げたのでございますが、やはり事件が裁判所等に係属いたしますと、行政指導の限界といいますか、立ち入ることのできない面もございますので、その点は、その事件そのものについてはとかくの評論をするつもりはございませんが、現実に東京にときどき来られまして寄っていかれますときには、十分にルールを守って話し合いはしてくださいということは繰り返し話しております。しかし、これはその現地における交渉ルールが確立されない限りは、不正な状態ではやはり市長も応じがたいというふうなこともあるようでございます。
  113. 三谷秀治

    ○三谷委員 その不正な状態とは一体どういう状態でしょう。
  114. 植弘親民

    植弘政府委員 失礼、不正常な状態であります。
  115. 三谷秀治

    ○三谷委員 その不正常な状態とはどういうことです。
  116. 植弘親民

    植弘政府委員 従来から交渉ルールをきめておるようでありますが、最近において、この事件が起こりましたころからはそういった従来の交渉ルールが守られていなかった。たとえばいろいろな、人数をきめてもそれをこえてやるとか、時間を非常に超過するとかいったようなことで、だいぶ険悪な状態があったようでありまして、したがって交渉もなかなか行なわれなかったようであります。そのルールが、従来からきめられておるような、労使双方で話し合っておりましたルールがそのまま適用されるならばやると言っておるのですが、そのルールについて、どうもまだ市長と職員団体の間では十分の疎通をしていないように聞いております。
  117. 三谷秀治

    ○三谷委員 それは市長が言っていることです。ですから、そういう労働紛争におきましては第三者機関というのが存在をする。公平委員会がある。あるいはこの場合は現業労働者でありますから地方労働委員会がある。これは一つの国家的な制度なんです。その第三者機関というものがいろいろな調査をして、市長の言っていることには根拠がない、だから団体交渉に応じなさい、あるいは処分もやめなさい、そういう勧告をしているわけだ。もう一つは、市議会にしましても、これはいろいろな立場の方が集まった市議会において、慣行に従って団体交渉しなくちゃだめだ、こういう決議を満場一致でやって勧告をしている。そういう状況の中におきまして、しかも裁判所におきましても、これは地労委命令を守れという緊急命令を出しておる。高裁に持っていきますと、そういう申し立ては却下するということになっているわけでありますから、客観的に見ました場合、だれが言っていることが無法なことなのか、だれの立場が正しくないのか、これはこういう第三者機関等によりまして明確に審判がなされている。それをあなたはいま、市長の言っていることだけを取り上げて、交渉のルールができていない、そんなことを言っておって労働基本権を守っていくという立場がとれますか。御意見を聞きたい。
  118. 植弘親民

    植弘政府委員 私がいま申し上げましたのは、私どもといたしましては基本的にはルールを守って話し合いをすべきであるという指導をしているわけであります。それが、いま先生指摘のように話し合いをしないとするならば、そこに不正常な状態があってやっていないのだろう、市長のほうもそう言っておるようでありますと申し上げたわけであります。したがって、私どもとしては、そういった不正常な形を排除してルールを確立して話し合いをしなさい、こういうふうに指導しているわけでございます。
  119. 三谷秀治

    ○三谷委員 その指導と、浜田君が公務員月報に出しました論文とは全く違っているということなんです。浜田君が公務員月報に出しました論文を見ますと、これは明らかに地労委の審決というものが誤りであるという立場に立っている。この浜田君の見解の要点というのはこういうことになっている。  まあ、これは最初すわり込みをして要求したんだ。そこでこのすわり込み闘争が同盟罷業の一態様だから争議行為である、これは地公法で禁止されておるものである、こういうことを言っている。地労委がとりました見解というのは、争議行為の全面的な禁止論には立っていない。住民に対して実際の損害を与えない、日常事務に対して影響を与えない、そういう実情だからこれは争議行為とはいえないという立場を地労委はとっている。浜田君は、すわり込みは同盟罷業の一形態であって、争議行為だ、こういう態度だ。  御承知のように、この問題につきましては裁判でもずいぶん争われておりますし、それから今回出ました第三次の公制審の答申によりましても意見が一致しない、複雑な要素を持っているものです。ですから、最高裁判決によりましても、文字どおりすべての地方公務員の一切の争議行為を禁止して、これら争議行為の遂行を共謀し、そそのかしあるいはあおる等の行為をすべて処罰する趣旨と解するものではない、こういう見解を述べている。これは都教組事件の見解です。ですから、それをすれば違憲の疑いがある。違憲でないがためには、争議行為というものを、国民生活全体の利益を害して国民生活に重大な支障をもたらすおそれのあるものに限定して、それ以外の争議行為は適法な争議行為にするという限定解釈の立場をとっている。ですからそこが地労委と浜田君の見解の根本的に違う点です。  もう一つは、この和歌山地裁の判決にもありますけれども、この一切の地方公務員の争議行為というものを禁止することは、これは労働基本権を保障した憲法二十八条に反するのだ、そういう態度をとっておる。ですから、憲法二十八条の労働基本権に違反しないためには、ストライキ行為というものは制限があるんだ、そういう立場なんです。浜田君はそうでない。これはすべて地公法に該当する争議行為であると、単純な官僚的な見解を示している。こういう内容が発表されておりまして、市の理事者はこれをやはり力としていると推定される要素があるわけです。そうしますと、あなた方がルール、話し合って交渉をやれという話と、地労委の団体交渉をやれという命令と、浜田君が述べている見解というものとは違っているのです。この違ったところに、市長などが今日なお団体交渉をやろうとしない根拠があるとしたならば一体どういうことになるのか。
  120. 植弘親民

    植弘政府委員 その点はちょっと何か話がいろいろとまじっているような感じがいたしますが、私がいま申し上げておりますのは、事件についての考え方このものと、現在事件は事件として、正常な姿で交渉をやりなさいということは別問題だと私は思って、いま二つの答弁をしてまいりました。  そこで、いまの憲法二十八条の公務員に適用問題となってまいりますと、いま先生が地労委の審判理由といいますか、審決理由といいますか、そこであげられましたのは、御指摘のように昭和四十四年の四月二日の、都教組事件のときの最高裁大法廷の限定解釈論をとったものと思います。しかしあの四・二判決は刑事事件に関するものでございまして、行政処分については何ら触れているものじゃございません。傍論におきましても行政処分はおくとしてと断わってございます。しかしそのときにおきましても、いろいろと四・二判決をめぐる解釈は論議がございまして、その後における地裁なり高裁の判決でも、四・二判決の趣旨に従ったもの、従わないものというふうに司法界が混乱してまいりました。そこでそのときに浜田君がその一つの考え方を示した点については、少なくとも自治省の公式見解でないにいたしましても、考え方としては一理あると思います。  この四・二判決は、先生もよく御承知いただいておると思いますが、昨年の四・二五判決で大法廷が四・二判決をひっくり返してございます。したがって、浜田君はどういう立場で書いたのか、私よく読んでいませんからわかりませんが、たぶん考え方としては昨年の四・二五判決の線のような立場で書いたものじゃないだろうかと推定いたします。そういうことになってまいりますと、四・二五判決でそういった考え方を示されておりますから、決して浜田君の考え方が間違ったとも思われないのでありますが、その点は一ぺん本文を読ましていただきましてから検討させていただきます。  事件についての考え方はそうでありますが、私どもはそういうことを抜きにいたしましても、労使関係というものはほんとうに正常なルールのもとに、やはり対等な立場で話し合いすべきだという基本理念をもって、事件は事件として、話し合いを再開しなさいという言い方をしているわけでございます。
  121. 三谷秀治

    ○三谷委員 その話し合いをしなさいとすすめて、話し合いをさせていく努力をもっとしなくてはならぬと言っているのですよ。  それで、浜田君の見解につきましては、いまおっしゃいましたようにいろいろと見解のある問題であって、これは司法上の問題であって、行政上の一官僚がそこまで介入して特定な見解を述べるべきものではない。これは司法上の見解にゆだねていくということが必要なものであって、浜田君がとりましたのは、そういういろんな意見の違いのある、法律解釈の上における未解決な問題について、個人見解であるか何か知りませんけれども、これを自治省編さんの雑誌に発表してきておる。  そこで、あなたはいま、この事件についての考え方と、そしてその後の団体交渉をしないという問題を別に考えるとおっしゃいますけれども、市長はこの事件について解決をしなければ団体交渉に応じないと言っているわけであって、別個の問題としては考えられないわけです。ですから、この事件に対する考え方、これが非常に重要である。その事件に対しては、いまも言いましたように、第三者機関というものが明白な審決を下してきておる。それに従って労働基本権を尊重するという態度をとらすことがいまの場合は必要なわけです。それについてあなた方は一向に努力されておりません。これは放任されております。どういう努力をされましたのか、一度具体的な事例で説明してもらいましょうか。
  122. 植弘親民

    植弘政府委員 日にちは忘れましたが、最近も市長が何か他の用件で東京に来ましたときに私のところに参りましたから、もう交渉は再開しましたかと言いましたところ、まだこちらが従来のルールで示していることを職員団体側が認めないので、まだ交渉は再開しておりません。しかしそれはそういうルールを十分話し合って、交渉は再開すべきであるということをまた強く市長にも話しておきました。
  123. 三谷秀治

    ○三谷委員 これはもう少し自治省としても積極的な指導をしてもらう必要がある。たとえば市長の見解というものがあります。それから議会の見解もある。労働委員会の見解もある。裁判所の見解もあるわけだ。そういうものをよく研究をして、そうしてなおそれに従わないというふうな不当な、頑陋な態度をとらしてはならぬわけであって、それについての指導のしかたはもう少し方法があると私は思っております。そして、五回の訴訟に敗れておりますけれども、それでもなお訴訟を係属しまして、訴訟費用二百七十万円を計上するというようなことまでやってきて物議をかもしておるわけでありますが、この二百七十万円というのが特別交付税で見られたという話を聞きましたが、そういうことがあるかどうか、これもお尋ねしたいと思う。
  124. 石原信雄

    ○石原説明員 訴訟費用をそのままずばり特別交付税で見たことはございません。
  125. 三谷秀治

    ○三谷委員 ずばり見ないけれども、横っちょから見たとかなんとかということはあるの……。
  126. 石原信雄

    ○石原説明員 市町村の特別交付税の算定につきましては、基本的な計算方式を自治省令によって定めておりまして、各省令の定めるところによる具体的な算定は地方課にお願いしておるわけであります。その過程におきまして、災害とか伝染病とか、あるいは大都市周辺であれば大都市周辺の児童生徒急増に伴う特殊財政需要、こういったものを積算しておりますが、訴訟費用を取り上げて見たということは私どものほうではいたしておりません。
  127. 三谷秀治

    ○三谷委員 なければけっこうですけれども、そういう口吻が市の理事者から漏らされておって、そういうことがあり得るのかということが私どものほうに照会されてきておりますのでお尋ねをしたわけでありますけれども、いずれにしましてもこの問題につきましては、もともと言いますと人事院勧告の実施をめぐるところから始まった、この要求から始まっている。  御承知のように、いま公務員のスト権の問題を問題にします場合には、必ずこの救済処置といいますか、代償処置といいますか、これを抜きにしてスト権問題は考えられないことは言うまでもないわけでありまして、そのスト権禁止の、あるいは争議行為制限の代償処置である人事院の勧告に従わないというふうな状態が行なわれますならば、これは明らかに地方公務員の労働基本権というものは頭からじゅうりんされてしまう、そういう性質のものであります。この発端というのは、この人事院勧告の実施の問題から紛争が起きまして、その後、その団体交渉の場所でつばをかけたとかあるいは市長室に乱入したとか、そういうことを理由にして、それを謝罪すれば団体交渉する、しなければ応じない、こういうことを言ってきた。このつばをかけたとかあるいは乱入したとかいうことは、これは地労委の調査によりますときわめて根拠が薄弱であって、大きな声を出してそこでつばが飛んだのをつばをかけたとか、あるいは市長室に集団で入ってくるのを乱入したとかというふうな表現をした類のものであって、それは事実としては認めがたいという立場を地労委はとっている。ところが市長はそれを謝罪しなければ絶対に応じない、こういう態度をとっておるわけであります。でありますから、まことに言っておりますことが児戯に類することを言っているのですよ。ですからいま申しましたようないろいろな機関におきまして、市長の態度につきまして審決がなされ、勧告がなされるという事態になってきている。これをこのままほっておくのでなしに、自治省としても、要するにこれは地方行政の適正な運営だとか、あるいは地方財政上の問題にも関することですから、人でも派遣をしてもう少しこれは調べていくという態度をとるのが当然だと私は思っておりますが、その点はどうでしょう。
  128. 植弘親民

    植弘政府委員 やはり、労使間の問題といいますか、交渉というのは、当事者である市長、それから職員団体、こういったものの自主的な話し合いというものが前提になるべきものだと思います。したがって、私どもは不正常の形のものは正常化しなさいという指導はできますが、それでもどうしてもやらないものを、変なたとえで恐縮なんですが、川原まで馬を連れていきましても水を飲むか飲まないかは当事者の問題ということになりますので、そこらのところは自治省の行政指導にも隔靴掻痒といいますか、若干そういう点があるわけであります。しかしいずれにいたしましても、本来話し合いを進めなければならないものを、先生児戯に類するとおっしゃいましたが、児戯に類するのかどうかよくわかりませんが、そういったようなことで角突き合わしているばかりでは労使間の正常化は成り立たないわけでありますから、十分ひとつその点は、府もあることでございますから、指導させたいと思います。
  129. 三谷秀治

    ○三谷委員 労使間の話し合いだとおっしゃいますけれども地方公務員法というのは、地方公共団体の当局は職員団体からの交渉の申し入れに応じなければならない、要するにそういう労働基本権を尊重する立場というものが明確にうたわれているのでしょう。要するに、任意な処置を期待するというのでなしに、そういう一つの義務規定ができているわけだ。それをやらない場合に、当然これは指導するのはあたりまえであって、それをあなた方は、労使間の問題だから、川原に引っぱっていっても水を飲むかどうかは、と言いますけれども法律に違反する場合におきましては、これは水を飲んでもらおうということは当然の話であって、そういう立場に立つ処置を自治省としてはもっと強めていくべきだということを私は言っている。
  130. 植弘親民

    植弘政府委員 御趣旨は全く私も同じような立場でお答えしたつもりでございます。十分、府を通したり、直接にも、すみやかに正常な状態話し合いが持たれることになるように指導したいと思います。
  131. 三谷秀治

    ○三谷委員 この団体交渉に関しては、使用者と組合は誠意を持って交渉に当たるべきだ。当たらぬから困るのですよ。交渉して、そこで市長が水を飲むか飲まないか、ここまでは干渉できない、おっしゃるとおりなんです。しかし、法律規定されておりますし、ILOの全逓提訴に関する中間報告におきましても、交渉しなくちゃだめだということはうたっておるわけであります。ですから、私が言っていますのは、労働者要求を市長にのませろと言っておるのと違います。のむ、のまぬは、それは市長が判断すべきものであって、あるいはまたいろいろな権衡等の問題もあるわけでありますけれども、まず交渉するということですわ。このことはいかなる市長といえども当然応じていくべき義務があるし、やっていかなければならぬものであって、それを指導することは、これは自治省の当然の責任だと私は思いますが、どうでしょうか。
  132. 植弘親民

    植弘政府委員 先ほど五十五条ですか、交渉に応ずべき地位に立つという点を引用されましたが、あれはいわば登録団体が一つの要件になっておりますが、公務員制度審議会の昨年九月三日の答申にも、交渉は進めなさいということがございましたので、その公務員制度審議会の答申の趣旨も生かしまして、非登録団体といえども、単に登録がないということだけで交渉に応じないということではいけません、十分にルールをつくって交渉すべきであるということは、公制審答申のあとにも指導いたしておりまして、そういう考え方で、交渉は当然やはり正常なルールを土台にいたしまして行なわなければならない、このように思っております。
  133. 三谷秀治

    ○三谷委員 その、行なわなければならないでなしに、行なわす指導をしてください。確かに、この組合は混合組合でありますから、いまおっしゃいますように登録組合じゃない。しかしそのことは別問題であって、要するに労働者というものは自主的に団結をする団結権を持っている、団体行動権を持っている、団体交渉権を持っているわけでありますから、それには応じていくということは当然労使間の慣行として守っていかなくちゃいけませんし、それは当然指導する責任があるものだと私は考えておりますが、自治大臣、この問題につきまして大臣の見解を承っておきたいと思います。
  134. 町村金五

    ○町村国務大臣 先ほど来御質疑を伺っておったわけでありますが、自治省としては、市長が団体交渉に応ずるということは当然であるので、それは行なうべきだという指導をいたしておるのでございます。ただ、市長がいままでその交渉に応じないのには、従来の経緯から交渉のルールがなかなかまとまらぬということで、いまはこれに応じていないというのが実情のように承知したわけでございまして、市長としてはやはり正常なルールをすみやかに確立をして、そして団体交渉に応ずるというような指導を私ども自治省としてはすべきものだ、かように考えております。
  135. 三谷秀治

    ○三谷委員 いま大臣がおっしゃいました点でありますが、これはさっきから言うておりますけれども、ルールにつきましては、これは話し合いしていけばいいわけですけれども、何にしても交渉しなければ話し合いにも何もなりはしません。ルールというのも一方的なものであってはいかぬわけであって、交渉の中で生まれてくるわけなんです。でありますから、市長の言い分が聞かれなければ交渉に応じないということになりますと、これは全く労働基本権の侵害という結論になってくるわけであります。当然これは相互的なものであって、しかも富田林市でありますから近辺に市町村がたくさんあって、そこにおきましても一定の平準的な団体交渉の持ち方が存在しているわけですから、そういうものに従って、普通常識的にやっていくということをやってもらえば問題はないわけなんですよ。特殊なことをここで要求しているわけでも何でもないのであって、そういう点に立って団体交渉をやらしていく、そして労使間の関係の改善をはかるということについて努力をしてもらいたいと思いますが、これにつきまして少し具体的に聞かしてほしいのだ。どのようにやっていくつもりか。少し実態を調べてもらう必要があるのですよ。一方の意見だけ聞いておったのではわかりはしませんから、両方の意見もよく聞く、そしていろいろな第三者機関などの意見も聞く、そして適正な指導ができるわけですから、そういう処置をおとりになるかどうか、聞かしてもらいたいと思います。
  136. 植弘親民

    植弘政府委員 だんだん先生から御指摘ございましたように、訴訟も五件も係属しておるといったような状態で、長い労使間の考え方の違いといいますか、行き違いというものがあってこういうようにもつれてきているんだと思います。やはり一つ一つを解きほぐしていくという努力双方でやっていかなければならぬと思いますが、府も通じたりいたしまして、できるだけ早い機会に話し合いが持たれるように指導してまいりたいと思います。
  137. 三谷秀治

    ○三谷委員 訴訟五件もやっておるのと違いまっせ。いままで五件やりましたが、全部これは市のほうが負けたと言っているのです。それにもかかわらずまたぞろ、大阪高裁で却下されましたものを、最高裁に持っていったのですかね、さらに上訴するという態度をとってきている。そのために二百七十万円の訴訟費を計上するということまでやってきているわけですから、これは常識で判断できない状況になってきている。ですから、いまおっしゃいますように、出向くなり、あるいは労使双方に来てもらうなり何なりの方法をもって、もう少しこれは具体的な指導をしてもらって、この公務員法で定められておりますような団体交渉の権利というものを保障していくべきだという考え方が私の考えでありますが、これ、いまおっしゃいますように緊急に努力していただけますか。
  138. 植弘親民

    植弘政府委員 できるだけ早い機会に正常な労使関係、ルールに乗った交渉が持たれるように努力したいと思います。
  139. 三谷秀治

    ○三谷委員 これで終わります。
  140. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後三時三十七分開議
  141. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  地方自治及び地方財政に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。小川新一郎君。
  142. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、昨日自民党と自治省との間で合議が成立したといわれておりますところの電気税について若干お尋ねいたします。  これは一昨日、五月二十一日、電力会社九社の大幅な電力料金の値上げが認可され、政府は、電気料金の改定に伴い電気税の軽減をはかるため所要の措置を講ずることになっているということでございますが、これは自民党の案なのか、それとも自治省独自の考えの中からこういった大衆課税というものを引き下げるのか、この点についてまずお答えいただきたいと思います。
  143. 首藤堯

    ○首藤政府委員 今回の電力料の改定の問題でございますが、前に地方税法を御審議いただきましたときにも御質問等ございましてお答えを申し上げておりましたとおり、今回一せいにかなり大幅な電力料値上げというものがございますと、それに伴いまして地方税の収入も増収を見る、こういうことになりますし、また住民の負担も増高するという事態が生じますので、これに対して応分の減税措置を講ずべきであろう、そういう方向で検討いたしますということを申し上げておった次第でございます。そのような線に沿いまして自治省でもいろいろ検討いたしました結果、そのような方向をとろうと、このように省としては考えておるという次第でございます。
  144. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、その内容についてお尋ねいたしますが、お答えいただきたいと思います。
  145. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいままでの自治省での考え方は、今回の電気料値上げによりまして、現行のままの電気税の状況でまいりますと平年度約四百八十七億、四百九十億弱でございますが、ほどの増収がございまして、住民負担も増高するわけでございます。  それで、これに対応いたします手段として、第一は免税点の引き上げでございますが、現在千二百円と御決定をいただいておりますが、六月から実施の千二百円でございますが、これを二千円程度に、それから税率を一%引き下げてはどうか、このように考えておる次第でございます。
  146. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは小口の家庭用電気の供給のみならず、工場用の電気にも当てはまるのですか。
  147. 首藤堯

    ○首藤政府委員 免税点につきましては、これは御案内のように家庭用だけでございます。それから税率の一%減はすべての電気に適用いたしたい、こう考えております。
  148. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、家庭用と工場用ではどれくらいの金額が上がるのでございますか。
  149. 首藤堯

    ○首藤政府委員 現行のままでございますと、家庭用の電気料金改定による増収額が電気税で百六十四億と考えております。それから電力関係では三百二十三億ほどの増収と考えております。ただいま申し上げました措置を講じますと、家庭用では二百二億ほどの減税になりますので、三十八億程度、約四十億弱、これは税額の持ち出し減税とでも申しますか、そんな感じになろうかと思います。それから電力関係では百三十九億ほどの減収見込みに一%で相なりますから、差し引き百八十四億程度は増収、こういうことに相なりまして、合計百四十六億程度の増収が見込まれる、こう考えておる次第でございます。
  150. 小川新一郎

    小川(新)委員 この問題については政府と自民党とが話し合ったそうでございますし、また説明もあったそうでございます。その内容については私たちは新聞で知ったわけでございますが、野党のほうにはそういったお話がなかったので、その辺のところは私どもも非常に残念に思いますが、いずれにいたしましても、工場等の電力関係の、免税点でない、率のほうですね、これは租税特別措置という問題にからめてみても、さらにそういった面で租税特別措置というように思えるのでございますが、この点についてはどういう御見解をお持ちでございましょうか。
  151. 首藤堯

    ○首藤政府委員 御案内のように、今度の電力料金の引き上げの率でございますが、家庭用にはわりかし率が低うございまして、電力関係ではかなり高い率と、こういうかっこうに相なっております。そこで現行の税法をそのまま適用いたしました場合には、先ほど申し上げましたように電力関係の増収が非常に大きな額で出てまいります。そこで一%引き下げましても、現行よりなお、いま申し上げましたように百八十数億ほどの増収に相なりますので、この点は税率を一緒にいじりましても電灯と電力との間のバランスがとれるのではないか、こう考えております。  なお、例の非課税の特別措置の整理問題でございますが、これは今後の問題として、お約束を申し上げたように鋭意進めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  152. 小川新一郎

    小川(新)委員 工場用の電力のほうの率の問題は中小零細企業にも当てはまりますので、私ども一がいには申せませんけれども、今回の標準家庭の一カ月当たりの支払い電気料、これは九社の平均によりますと、使用量二百キロワット時の料金は三千三十一円、電気税は現行だとこの六%が課税されますから、減税の方針一%を貫いて五%といたしましても、約百八十円から百五十円へと、三十円ぐらいの金額にしか三千三十一円からなりません。そこで家庭用の問題については、わが党では撤廃の方向で話を進めてきました。でありますが、地方公共団体の財源等の問題もいろいろございますので、これからこの辺のところに議論が集中すると思いますが、私は工場のほうの率と家庭の率と一緒になっているということにいささか疑問があるのでございますが、こういう点については、お考えはこのまま貫く方針なのでございますか。
  153. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいまも申し上げましたように、今回の料金値上げの比率が電力と電灯とでかなり違っておりますことを前提に置きました場合、このような措置がバランスとして適当ではないかと一応考えておるわけでございます。  それからもう一点、家庭用の電気につきましては二千円程度まで免税点をアップをいたしますと、標準家庭とでも申しますか、百四十キロワットアワー程度までは全然税金がかからない、世帯数にいたしましてほぼ半分程度の世帯までが免税点以下になる、このようなかっこうになりますので、そのバランスも適当なのではなかろうかと、もちろん案としてでございますが、現在の時点では考えておる次第でございます。
  154. 小川新一郎

    小川(新)委員 それは確かに半分までの免税ということはございますが、金額にいたしますと、いま私が申し述べたように家庭の小口需要家の納める負担というものは、二百キロ当たりで三十円程度金額しか税金の面で軽減にならない。そういうところが、数字のトリックといいますか魔術と申しますか、そういう面で非常に大きく大衆にアピールしたように思いますけれども、実際を見ればそういうことになっております。これは法案が提案された時点においてまた議論がされると思います。いまのところは案でございますし、新聞紙上で報道された中で私が質問しているわけでございます。  そこで、これは大臣にお尋ねいたしますが、電気といえばガスということになりますが、こういった問題は当然、いまの物価狂乱の中で第二ラウンドといわれる物価高騰の引き金が公共料金である、こういわれる中で、電気税に対しては自民党と政府が非常に配慮したように見受けられるのでございますが、その内容についてはまだまだ検討しなければなりませんが、これと同じように、いま電力会社に次いで、さらにその前から大阪瓦斯だとか、またいろいろと各方面のガス会社の料金値上げという問題が問題になってきております。御存じのとおり、電気ガス税といえばこれは市町村の固有財源でありますから、そういう点も考えながら私お尋ねするのでございますが、まず第一点に電気の減税分、先ほど申し上げましたこの案に示されたとおりになりますと、工場のあるところと家庭用小口の多いところとでは、その市町村の税収の面において相当の影響が出てまいります。この面についての配慮はどうなされるのかまず伺いたいのと、次にお尋ねするのは、ガスもこういった問題と同じ性格でございますならば、こういった減税のお考えがあるのかないのか。この二点をあわせてお尋ねしたいと思います。
  155. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいま御指摘がありましたうちの前段のほう、つまりいなかと町との問題でございますが、御指摘のように電灯用を免税いたしまして、特に免税点を二千円に引き上げるということになりますと免税世帯が確かに非常にふえてまいりますので、むしろ痛手は町村のほうがわりに大きくて、都市部の電力の多いところはわりに少ない、こういうような事態が起こってこようかと思います。しかしこの点は、電気税全体としては先ほど申し上げましたように百数十億の増収に相なりますので、財源措置そのものとしては、地方交付税の配分でございますとか、こういったものを通じてある程度ならされてこようと思いますし、また今後の問題としては市町村税源そのものの全般的な充実、こういった本来の命題にも取り組んで十分な措置を考えていってみたい、このように考えておる次第でございます。
  156. 町村金五

    ○町村国務大臣 ガス税につきましては、御承知のとおり大手のガス会社から値上げの申請が、三社のうち一社がようやくなされた。他の二社についても相当大幅の増額をするのではないかというふうにいわれておるわけでございます。したがって、そういった値上げの幅が相当大幅になるというような場合には、私ども、電気税と相呼応いたしまして、相当の減税、合理化をはかるということにいたさなければならない、かように考えておるところでございます。
  157. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、ガスの値上げのパーセントとかそういうものにはこだわらずに、少なくともいま申請されている一社の値上げが大体標準と考えて、値上げが申請されてくれば、ガス税においても、こういった大衆課税、また大口、小口の需要に合わせて、課税最低限並びに課税率についてはお考えをいただける、こう理解していいのでしょうか。
  158. 町村金五

    ○町村国務大臣 このたびの電気の料金引き上げに関連をいたしまして電気税の軽減をはかる、それと同様の考え方でガス税にも臨みたい、こう考えておるところでございます。
  159. 小川新一郎

    小川(新)委員 その具体的な数字はいまお持ちでありますか。
  160. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいまのところでは、大口の供給者であります東京、大阪、これの申請もまだ出ておりませんので、値上げの率等も一切わかりません。したがって、具体的な数字は現在考えておる段階ではございません。
  161. 小川新一郎

    小川(新)委員 もちろん私どもはこのガスの値上げを歓迎して言っているわけではありませんし、これは阻止しなければならぬ問題でございますが、やはり企業採算という問題もございますし、越すに越さされない問題も出てまいると思います。そこであらかじめ、こういう問題は好ましいことではないけれども、公共料金の、生活必需品の重要なかぎを握りますところの電気、ガス、これはもう家庭生活にもまた工業の発展のためにも欠くことのできないものでございますのでお尋ねしたわけでございますが、そういたしますと、現在のところはまだ値上げの幅がわからないからその数字については答えられないけれども、上がると仮定すれば電気と同様の措置をとる、こう理解してよろしいのでございますか。
  162. 町村金五

    ○町村国務大臣 さように考えております。
  163. 小川新一郎

    小川(新)委員 そこで、その問題はよくわかりましたので終わらしていただきますが、次に、農地の不動産取得税についてお尋ねいたします。  農地の不動産取得税はどこに入るのでございますか。
  164. 首藤堯

    ○首藤政府委員 不動産取得税は、税目は府県税に相なっておりますので府県の収入に相なります。
  165. 小川新一郎

    小川(新)委員 昭和四十八年度の農地の不動産取得税の総額は幾らでございますか。   〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席
  166. 首藤堯

    ○首藤政府委員 不動産取得税の収入見込みでございますが、四十九年度の見込みはすべてを入れまして千九百億程度でございますが、内訳は、農地そのほかに分かれて積算をいたしておりませんので、ちょっとわかりかねます。
  167. 小川新一郎

    小川(新)委員 四十七年度の決算においての数字でけっこうでございます。
  168. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいま数字を持ってまいっておりませんものですから、調査をいたしましてすぐお答え申し上げます。
  169. 小川新一郎

    小川(新)委員 では数字のこまかいことはあとでお尋ねいたすといたしまして、これは年々どれくらいのパーセントで伸びておりますか。伸び率だけでもお聞かせいただきたい。
  170. 首藤堯

    ○首藤政府委員 不動産取得税の伸び率でございますが、四十八対四十九の見込みは二四・五%、約二割五分程度の伸びでございます。
  171. 小川新一郎

    小川(新)委員 くしくもいま二四・五%ということでございますが、これは一年間の土地の値上がり、大体平均いたしまして、昨年の地価公示価格の値上がりが三二%でございますか、平均が大体二五%、一年間の農地の不動産取得税の大体の伸び率が二四・五ということは、くしくも地価の値上がりの二五%とやや同じである。ということは、いかにこれは関連が深いかということでございます。  そこで私は具体的な問題といたしまして、これは農林省にお尋ねいたしますが、この農地の問題は農政の非常に大きな問題になっておりますが、日本全国で一番農地が宅地につぶされている県はどこでございますか。
  172. 関谷俊作

    ○関谷説明員 府県別の数字につきましてはいま手元に持ち合わせておりませんが、全国的な傾向という意味で申し上げますと、昭和四十七年の農地転用面積で私ども調査しましたものが全国で六万三千ヘクタールございます。それで市街化区域内がその中の一万七千ヘクタールございますので、市街化区域を持っておりますような大都市所在県、そういうところが農地転用面積が量的にも、また農地に対する割合としても高い、こういうふうに考えております。
  173. 小川新一郎

    小川(新)委員 農林省は、農林地すなわち農地を確保するための指導というもの、または通達というものがございますが、農業委員会等に対してどのような通達を出し、どのように指導しておるのか、概略御説明いただけますか。
  174. 関谷俊作

    ○関谷説明員 農地の確保につきましては、一般的には農地法に基づく統制がございまして、その農地法の統制の励行をはかっておるわけでございます。しかし、最近と申しますか、この二、三年来非常に農地のいわゆる投機的な取得がかなり行なわれるというような傾向もございますので、昨年から農林地移動情報の収集組織を整備したらどうか、こういうことで、全国は農林省と都道府県の段階、それから市町村段階につきましては市町村と農業委員会を活用するという体制で指導いたしております。お尋ねのありました農業委員会につきましても、その農林地の取得等の状況をできるだけ早く把握する、こういう意味合いで、その情報収集の組織の中で情報把握に活動してもらう、こういう指導をいたしております。
  175. 小川新一郎

    小川(新)委員 いまの「農林地移動情報収集実施要領」というので結果はどういうふうに出たのですか。
  176. 関谷俊作

    ○関谷説明員 昨年この組織が発足しましてから調査をいたしておりますが、現状と申しますと、大体農地等の取得は御承知のようにある程度隠れた状況で実際上進められておりますので、全国的には、こういう取得の情報があった、こういうことが私どものほうに逐次出てまいるような状況でございまして、残念ながらこれを面積的にあるいは件数的に集計をする、いまこういう状況にはまだきておらないような段階でございます。   〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 小川新一郎

    小川(新)委員 昭和四十八年四月二十日に、農林大臣官房長、構造改善局長、畜産局長、林野庁長官の名によっての「農林地移動情報の収集について」の中に、「仮登記の有無等については、市町村は、管内所在土地について関係登記所において原則として月一回調査を行なう。」こういうふうに一番目に出ているのですけれども、この月一回の調査というのは行なっていらっしゃいますか。
  178. 関谷俊作

    ○関谷説明員 仮登記の調査につきましては、いま御質問の中にございましたような指導をいたしております。ただ現状では、登記所に参りましたときにその登記簿あるいは仮登記の状況をつぶさに調査をする、これはなかなか事務的な手間もございますので、全国的にはこういうような調査がまだ組織的には行なわれておりません。ただ、幾つかの県で仮登記ということで調査しまして、農業会議等の協力も得ながら農地の取得状況を調べた県別の若干の事例調査がいまあるような状況でございます。
  179. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、この実施要領のとおりにはやっていらっしゃらないようでございますので、これはひとつそのとおりやらせるようにお願いしたいと思います。  そこで、ここから私の話が大事な話になるのでございますが、農地を農地法三条ないし五条、御存じのとおり三条というのは農地を農地として譲渡する、その所有権が移転する。それから五条というのは農地が宅地として譲渡される。当然そういうことは知事の許可を受けるわけでございますね。市街化区域、特に市街化区域でございますが、または市街化調整区域でございますが、市街化区域、調整区域を問わず、農地を県知事の許可を受けない段階で取得をした場合にはこれはどうなるかということで私はお尋ねしたいのでございます。これは大臣も北海道知事をやられておられたからよくわかると思うのでございますが、知事が許可をしない、仮登記のままでAからBに移った場合には、取得税というものはかかるのですか。これは大臣が北海道知事をやられているときにどういうふうに御指導なさっておられたのでしょうか。
  180. 首藤堯

    ○首藤政府委員 不動産取得税における取得でございますけれども、これは先生御案内のように所有権の移転をさすのだ、こういうことになっておりまして、これはその登記があろうとなかろうと、実質上所有権が移転をした、こういう時点でつかまえる、こういう考え方に相なっております。  そこで、御指摘の農地の所有権の移転でございますが、ただいま御指摘がございました三条の許可、それから五条の許可、これがございませんと、その譲渡するといいますか、それが無効であるというように法律に明示をされております。したがいまして、法律上その許可がない限りは所有権が移転をしていない、こういうかっこうにならざるを得ないものでございますから、そのような不許可の場合の移転は、仮登記があってもなくても原則的には所有権が移転をしていない。所有権が移転をしていなければ不動産取得税を課することができない、こういうしかけに相なっておるようでございます。
  181. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは自治省お尋ねしたいのですけれども、不動産の取得の認定というのはどういうことなんですか。
  182. 首藤堯

    ○首藤政府委員 不動産の取得でございますが、これはただいま申し上げましたように所有権の移転をさすのだ、こういう解釈に相なってずっと続いてまいっております。そして、これはあれにもございますが、その移転の内容は有償であろうと無償であろうと、それからまた原因が売買であろうと交換であろうと贈与であろうと、どんなかっこうであろうと、それから取得のあり方そのものが、たとえば原始取得であろうと承継取得であろうと、こういうことは一切問いませんで、所有権が移転をしたという時期をさすものと、こういわれております。それでその取得の時期は、通常の場合でございますと契約内容その他で総合的に判断をいたしまして、いついつ、何月何日、こういうようにきまってまいるわけでございますが、この点は登記をしようとしまいと、そのこととは関係なしに時点をきめる、このように相なっております。
  183. 小川新一郎

    小川(新)委員 そこでお尋ねするのでございますが、農地を、仮登記のままであろうと、登記があろうとなかろうと、登記しようとしなかろうと、所有権が移転した場合には、これは公正証書を結んでもそうでございますが、私とあなたと農地をやった場合には、まだ登記してなくても所有権があなたに移った場合には、ここでいうとおりに「不動産の取得の時期は、契約内容その他から総合的に判断して現実に所有権を取得したと認められるときによるものであり、所有権の取得に関する登記の有無は問わないものであること。」しかもその前には、「不動産の取得とは、有償であると無償であるとを問わず、又はその原因が売買、交換、贈与、寄附、法人に対する現物出資、建築、公有水面の埋立、干拓による土地の造成等原始取得、承継取得の別を問わないものであること。」こうなっておりますと、私があなたに、たとえば知事の許可を得ないで、登記の有無を問わずに、契約内容その他で金銭の授与はあろうがなかろうが、あなたに所有権が移転した場合には、あなたは取得税を払わなければならぬというように私は理解しておるわけです。それがいままでの農地の売買の実例なんですね。これが今度あなたから丙という方に渡ったときには、小川新一郎からあなたにいって、あなたからまた丙という方に移った場合には、その丙の方が正式に知事の許可を得たときに初めてその丙が取得税を払うということになると合法的脱税じゃないですか、これは。ここが私は納得できないのですね。ところが山林においてはこれは農地と違う扱いをされておって、AからBに移った時点において、登記の有無を問わず、これは取得税を払う。なぜ農地だけはそういうふうになっているか。  いまの土地問題の一番大きなかなめは農地です。農地を供給することで、一次造成、二次造成、これが素地であるか、完成された土地であるかということの利ざやがいま問題になってきております。ところが、農地を、知事の許可を受けない範囲におけるところの売買のときには、甲から乙に移った場合には、乙はなぜ取得税を払わないで済むのか。しかも払わないまま丙に転売する。その丙が初めて、農地法三条なり五条の知事の許可を受けたときにのみ取得税が出る。だから、お百姓さん、農家から不動産会社が買ったときの時点においては、仮登記の時点においてはまだこれは取得税がその不動産屋にはかからない。これは日本じゆうで合算したらばたいへんなものになる。そこに生み出される所得については、買うために動いた金については、売ったほうは譲渡税がかかる。どうして受けたほうが取得税がかからないのか。こういう非常に不合理な合法的脱税が行なわれているのですが、これは農林省はこの実態をよくおわかりだと思うのですが、大体これがかからないのは、次の不動産取得税の「第1 納税義務者及び課税客体」の中の、これは依命通達というところにございますが、これは地方税法の中なんですけれども、その中に、「ただし、農地法の適用を受ける農地又は採草放牧地を承継取得した場合の取得の時期は、同法第三条第一項又は第五条第一項の規定による道府県知事の許可があった日であること。」こういうただし書きがあるのですね。これによって現在日本の農地の売買におけるところの合法的脱税が行なわれているのです。これについては農林省としては一体どうお考えになっていらっしゃるのか。
  184. 首藤堯

    ○首藤政府委員 私から先に不動産取得税の課税の問題についてお答えをさせていただきたいと思います。  もう先生、百も御案内のように、第三条、それから第五条の場合でございますが、これは知事の許可を受けないで行なった行為は効力を生じない、こういうように農地法上明文があるわけでございます。したがいまして、その当事者間には、知事の許可を得ないで行なっておりますそういう行為、これはその当事者間同士の契約に基づく権利義務というものはあるいはあるのかもしれませんが、許可を受けないでした不動産の移転というものは無効であって、依然として、AとBの間に取引があったとしても、許可を受けない場合にはAが持っておるもの、このように農地法上、法定できめられておるわけでございます。それをさらにBが実質上占拠していろいろ工事をやるとかなんとかいうようなことをやりました場合には、これも農地法の八十三条かなんかの規定で原状に戻せとか工事をやめろとか、こういう停止命令等の措置をやりましたり、あるいは刑事罰等の罰則があるわけでございますけれども、それはともかく税法上らち外の問題といたしまして、所有権は移転をせずに依然としてAが持っておるという、こういうかっこうに法律では規定されておるものですから、税法上は所有権の移転の際にかけるよりほかに現在のところいたし方がないわけでございます。  それからさらに、日にちを「許可があった日」と、こういう通達を出しておるのは御指摘のとおりでございますが、これはその日にちにつきまして「許可があった日」というメンションをしただけでございまして、この通達がいわばあろうとなかろうと、所有権が移転をしない、無効だ、こういう法律規定があります以上はその間の事情は同じかと思うわけでございます。したがいまして、この問題は、農地法上いつ所有権が移転をしたのか、ほんとうに移転をしたのかどうか、この判断が一番重大な問題になり、税法はそこから課税というものの原因が初めて起こる、こう解せざるを得ないような現在の法体系でございます。
  185. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、たとえばここに農民の方が二十二人いらっしゃったとする。その二十二人からA産業が土地を購入した。その目的は宅地造成の目的で農地を購入した。これは間違いなく農地を購入したのですね。そのA産業がB産業にその農地を転売した。転売した時点においてのA産業というのは取得税がかからないのですか。
  186. 首藤堯

    ○首藤政府委員 この場合、農地法上のたてまえでございますと、農民からA産業が宅地にするために土地を取得するという行為自身は農地法上の許可がどうしても要るわけでございますから、この許可なしにそれをやっておればこれは違法の行為でございまして、B産業が所有権を取得するということができないわけでございます。これはもう事実できない。そこでBからCに転売をするということも、法律上はそれが明らかであればできないはずでございまして、それはBからCに移るという許可があってはならないし、またそういう行為をした者は農地法上の罰則に触れる行為であろうと私ども考えるわけでございます。そこで間々ありますことは、便宜上の措置として、Aと申しますか、農民そのものからC産業が直接購入したと申しますか、そういうことで許可をもらう例があるのかないのか、そういう事態が起ころうかと思いますが、ともかく許可を得ずにBが取得をして、そのままCに譲るということは法制上できない、こういうたてまえに相なっておりますので、Bが所有権を移転をして確定するということはあり得ない、こういうたてまえにあるように考えております。
  187. 小川新一郎

    小川(新)委員 現実には、あなたはそういうふうにおっしゃっていますけれども、農地の売買はすべてそういう契約の形をとっています。ところが農民から買ったAは仮登記のままで、要するに五条ですか、まだ正式に知事に届け出てないわけですね。農地を農地のままで買い上げているわけですね。だから全額支払ってないのです。七〇%ないし八〇%支払う。そして残りのお金は正式な手続をとったときに全額払う。これは当然の契約だ。そこには公正証書は取りかわされますが、そうしておいてA産業はB産業へその土地を転売する。B産業から初めて知事に申請が出される。するとこのBは、確かにその出された農地の転用の許可を受けた時点においては取得税がかかりますね。これはわかります。だけれども、トンネル会社であるAはかからない。現実においてはこれが売買の実例として日本国じゅう至るところで行なわれておることはあなたもよく御存じだと思うのですが、要するに、これが総合計されますと、取得税というのはばく大な額になってきますね。これがどうして課税されないかというのが、いまのただし書きだと私は思うのです。これは大臣、私の話を聞いておって非常に不都合だと思いますか、思いませんか。これはどうなんですか。
  188. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいま御指摘のような事例があるいはあろうかとも思いますが、この場合の税制上のあり方といたしましては、やはり最初に取得をいたしますA産業と農民の間の当事者同士の申し出に基づきましてそれが許可をされ、正式にAが取得をして、それからAからBにまた譲渡をされるというのが本来の筋でございまして、そういう筋がとられる限り、Aも払えばBも払う、こういうことに相なってしかるべきものであろう、こう考えておるわけでございます。
  189. 小川新一郎

    小川(新)委員 Aも払ってBも払うということは、あなたの考えておるセオリーどおり農地の売買が行なわれているならけっこうなんですが、日本の農地の売買というのは、そういう教科書どおり、税務署がちゃんときちっと押えられるような行為の中で土地の移譲が行なわれていない。現実にはいま私が指摘したようなわけだから大臣に所感を求めているのですが、こういう問題について、ただその逃げ口は「ただし、農地法の適用を受ける農地」云々というところのただし書きがある。その前に、いまあなたがおっしゃったように登記の有無は問わないとありながら、その農地については特例の措置が講じられておるから、そこで合法的な脱税行為が行なわれてくるのだと思うのです。これは改めるべきだと私は思うのですが、大臣の御所見、いかがでございましょう。
  190. 町村金五

    ○町村国務大臣 これはただいま御指摘もございましたが、いまの、農地がAの方に譲渡される段階で不動産取得税が支払われ、さらにまたAからBに移転をするときに支払われるというのが私は本来の当然のたてまえのものであろう、こう考えておるのでございますが、事実は、いま小川議員の御指摘になりまするようなことが現実には相当行なわれておるというふうに私どもも聞いておるわけでございます。これはおそらく現行法のたてまえから申しますると、そのことが現実に行なわれてもどうもやむを得ないような法のたてまえになっておるのではないか。これは私は十分検討はいたしませんで、ただ、いま小川議員の御指摘に対しての私の所感を申し上げたわけでございます。
  191. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは現実に、ある県が依命通達によって課税をしたのです。ころが裁判で争われて、これは却下になっている。そこで不動産の取得というのは、先ほどから私が言っているように、登記の有無にはかかわらないのです。農地は、仮登記であろうと本登記であろうと、登記の有無にかかわらず不動産の取得というのは取得としてされるのだということを先ほどから言われているのです。だから、不動産の取得というのはどういうのかということを私は聞いているのです。登記の有無にかかわらないのですよ。知事の正式の許可がなければ、登記されるとかされないとかではなくて、不動産の売買においては登記の有無にかかわらず、売ろうと貸そうと、上げようと譲渡しようと、そういうことは関係ないのだ。不動産取得というものはそこに取得が当然生じるのだ。ただし農地については云々と、こうあるから、現実においてこれで合法的脱税が行なわれているから、これは取ったほうがいいのではないですかと大臣の所見を聞いているわけです。  もしもいまの問題でこれを取ったら、たいへんな県税の増収になるわけです。そしてそこに不当な利益を生じている、農民からA、AからB、このころがしていく過程におけるところの第一次のA社については、この取得税を納めない。超過利潤と申しますか、不当利潤と申しますか、合法的利潤と申しますか、これは不当とは言えないわけです、こういうふうになっておるから。そこで私が本委員会で言っていることは、この農地のただし書きを取れ。そうするならば、地方税法の「不動産取得税の納税義務者等」の中に書かれているように、登記の有無を問わずということでひっかけられるわけです。これをどうしてやれないのかということをいま聞いているのです。
  192. 首藤堯

    ○首藤政府委員 おっしゃっておられますことはよくわかるのでございますが、法律のたてまえといたしまして、先ほども申し上げましたように、農地法の第三条それから第五条に、「許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。」こう書いてございますものですから、登記のあるなしにかかわらず、所有権が移転をしておるから、取得をしておるからというところが成立をしないわけでございます。つまり、頭から所有権が移転をしないわけでございます。そこで、通達で許可の日を日にちとしますよと書きましたのは、単なる念のためのメンションだけでございまして、この通達のこの文句があろうとなかろうと、農地法第三条の「効力を生じない。」という事項があります限り、これで所有権は移転をしないのだ、こうきめられてしまっておりますものですから、法律上所有権が移転しないときめられておるものにかけていくというわけにまいりません。この移転をしないという農地法上の考え方、ここが一番基礎でございます。したがって、通達の文句とはその面では関係がございません。
  193. 小川新一郎

    小川(新)委員 それは農地法の問題ですね。あなたが先ほど説明してくれたのは不動産取得のほうですね、有無にかかわらずというやつは。地方税法のほうでは不動産取得というものはどういうことかという定義があるわけですね。だからそれはどっちをとるかということなんですよ。  だから私は、いまのような非合法的なことではない、確かに合法的なんですが、合法的であるけれども納得できないんですよ。現実においては農民からA社に取得されているんですから、仮登記で。登記の有無は問わずとにかく取得してあるんですから。それはどうして取得するかというと、そこに契約内容がある。それは合法的に、客観的に見ても不動産を取得したということなんです。ただし、農地法のいまあなたが読み上げたところがあるから合法的になって税金を課することができない。そうです。私もわかります。だからそれを改正しなきゃならぬじゃないか。いまのような農地の移転状況を見たときに、これはたいへんな合法的脱税ではないかという気がするのであえてこの問題を出したのであって、私は正しいことをいまあなたから聞こうとしているんじゃないんです。  政治というものは、そういう客観的いろいろのものの総合的判断によって法改正するんでしょう。毎回毎回二百本近い法律が出てくるのは、そういういろいろなことに合わなくなるから法律改正が出るんであって、何でもこれが金科玉条、いいんだというなら法改正なんか要らないんですね。だから私は、当該地方公共団体の、すなわち県の税収をあげるためでなくて、土地のモラル、土地問題、日本の土地の大きな観点からいってもこのところはおかしいんじゃないか、いまの農地法からいっても。そういう考えからいま述べているのであって、その所感を大臣にお尋ねしているんですよ。だんだんおわかりになったようでございますが、いかがですか。
  194. 町村金五

    ○町村国務大臣 先ほど来税務局長がお答えを申し上げておるようなことで、いまのAからBに仮登記のままで移転をして、そしてBが最終的に不動産取得税を払う、したがってAは利得を得るだけで、不動産取得税を払っていないという現実が、少なくとも現行法においてはそれは違法ではないということになっておるそうでございますけれども、しかし、私はやはりいま小川議員が御指摘になりましたように、確かにそれは不当であり、当然課税されてしかるべきものではないかという感じをいま持っておりますが、なおこの点はひとつ今後の重大な問題としてぜひ関係省の間で検討をいたすべき問題だ、かように感じた次第でございます。
  195. 小川新一郎

    小川(新)委員 私の説明不足の質問に対してたいへん御配慮ある御答弁をいただいたんですけれども、当然、大臣のお答えの中でそこまで御配慮いただけなければ、土地問題、日本の農地という問題、食糧問題、こういった問題解決のためのこれは閣僚としての見識の問題になってまいりますので、あえて失礼な質問をしたのでございますけれども、非常に前向きな御答弁をいただきました。ひとつ当該各省においては御検討いただきたい。  これは農林省ちょっと、いま大臣からお考えが出ましたが、こういった農地の転売の実態という問題を見たときにおいて、当然、農地の譲渡に関し、取得に関して、いまの法律では違法ではないけれども、あなた方は専門家の立場として、こういうことが農地の荒廃につながっていくんだ、こういうところが悪質デベロッパーのえじきになっているんだ、不当にもうけているんだ、一部の笑いがとまらない会社が出てくるんだ、こういうことは、私は社会正義の上からいっても許されないんじゃないかと思うのです。法律で許されればいいんだという問題じゃないと思う。農林省の御見解を承って、次に進めさせていただきます。
  196. 関谷俊作

    ○関谷説明員 農地法の統制と農地の所有権移転の効力については自治省のほうからお答えがあったとおりでございまして、農地については、売買契約が行なわれましても、売買契約のいわゆる完結がありまして、完全にそれが終わっていった場合に所有権移転という問題が起きるわけで、その所有権移転について農地法は許可を必要としていますので、許可がない場合には効力が生じない。したがって、いわゆる所有権移転の俗称本登記については、許可がない状態では受け付けられない、こういう扱いになっておることは先生よく御承知のとおりでございます。  ただ、こういうことが、税法の扱いとは離れまして、土地の投機的な取引の抑制なり、お尋ねにございました農地の保全という意味で、はたしていいかどうか。これはもう全然別の問題でございまして、よく御承知のように、代金全額を支払わないでも実際上売買契約がなされ、買い手たる地位が非常に転々と移っている、こういう例が仮登記の例でも見られることが実態でございまして、そういう点をよく事前に把握して、農地法のたてまえからしますと最後の所有権移転のところでそこを押えているわけでございますけれども、その前の段階をよく把握すると同時に、最初から、農地として保全すべきところでそういう買い占めあるいは転々売買、つまり実際上の売買が行なわれないように、そういう面の指導については先ほど申し上げました情報把握、こういうことも行ないながら今後とも指導してまいりたい、こう考えております。
  197. 小川新一郎

    小川(新)委員 きょうは下河辺さん来ていらっしゃいますから、国土利用の専門家でございますのでちょっとお尋ねしたいのですけれども土地の値段を定める場合の基準というものは、あなたの御所見でけっこうですが、幾つかあると思いますか。  まず、法務省の土地の登記の標準価格、それから大蔵省の財産相続税の路線価があります。それから自治省の固定資産税を定める路線価があります。それから建設省の地価公示価格があります。そのうち、建設省の地価公示価格をさらに上回っているといわれているものに近傍類地の宅地建物取引の類例があります。こういうふうに、大きく分けて五種類ある。  その五種類の土地の価格を定めるのに、やはりそれぞれいろいろな問題があると思うのでございますが、一体、こうしてわが国の土地問題をいろいろ考えたときに、今回議員立法になりました国土利用計画法においても、規制地域、許可地域、こういう、開発規制というものが取り除かれた土地の規制だけにしぼられたわけでございますが、知事が規制区域を設けてゾーニングを定める。その場合の定める値段の路線価は取引価格の七割といわれておりますが、二円五十銭の国有農地、この国有農地の旧地主には取引価格の七〇%で国は払い下げるといっている。たとえば四十八年の十二月に国有農地の払い下げの申請をした人が、農林省がいろいろ調査して、いろいろな手続上で、地主に返ってくるのは約一年かかるといわれているのですね。その四十八年十二月時点の宅地の取引類例の七割が、今回の議員立法が出て宅地の七割だといたしますと、私の計算でいきますと、国有農地を払い下げる価格のほうが議員立法で出た国土利用計画法の地価よりも高いものが出てくる、こういう計算が出てきた。そういたしますと、国は地価高騰の引き金をさらに上回った引き金を引こうとする結果になる。こういう問題については下河辺さんはどのように御理解なさっているのか。またそうなった場合には、国土利用計画法の七割の線を下回るように法を改正すべきであると私は思うのです。  旧地主に払い下げる国有農地の七〇%というのは、昭和四十八年十二月に申請した時点の宅地取引類例の七割、ところが今回のはもうそれに七割ですね。現在政府がやっているのは、そういった事例の七割が国有農地の払い下げの旧地主に対する恩典であるといっているのならば、定まった七割のさらに七割でなければならないということになってくる。場合によっては、四十八年十二月の時点の地価のほうが高かったらば、いま金融引き締めで地価は下がっております、その時点の七割よりも高い七割になってくる。そうなってまいりますと、旧地主に払い下げる恩典というものはないばかりでなく、政府自体が高い土地を、昭和四十九年五月以降、すなわち参議院を通過した時点において施行になるこの国土利用計画法によるところの土地の値段より高いものを旧地主に払い下げるということになりますが、こういう点は専門家であるあなたはどのようにまずお考えになりますか。
  198. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 国土利用計画法におきます規制価格の算定につきましては、提案者である建設委員会の諸先生方から、規制価格は市場価格の七、八割ということを政策的な目標にするようにという御指示がございました。政府側といたしましても御趣旨に沿って政令を定めたいというふうに考えておりますが、その御趣旨は、やはり非常に暴騰してしまいました地価をそのまま高値安定で規制するということは政策的に好ましくないわけでございますから、適正な規制の対象となるべき基準価格を定めるようにという御指示だと考えておりまして、その算定の方式について現在検討をしておりますが、いま御指摘いただきましたように、相続税の場合あるいは固定資産税の場合あるいは地価公示法によります地価公示価格の場合、かなりいろいろなものが現実には存在しておりますので、私どもとしては早急にその相違点等に関します調査を少しいたしまして、法律施行までにはっきりした算定方式を見出したいということが今日の実情でございますので、必ずしもいまお尋ねの点について正確なお答えをすることが困難であるというふうに思います。  しかし、せっかくのお尋ねでございますので若干の感じを述べさせていただくわけでありますが、国有農地等の売払いに関する特別措置法に基づきます時価との関係になるわけでございますけれども、これにつきましては実は、御存じのとおりに国土利用計画法の規制区域というものは期限をきめて指定をするという性格を持っておりますので、その指定される前あるいは指定解除後あるいは指定中というものとの関係をどのように判断したらよろしいかというような点もございましょうし、あるいは凍結中に、凍結価格をはたして国有農地払い下げの基準となるべき地価とどのように関係させたらよろしいかというようなことにつきましては、実は正直に申し上げて、まだ農林省、大蔵省とも十分打ち合わせておりませんので私から正確なお答えはできませんけれども、政策的な意味で、国有農地等の払い下げというものは時価よりも少し安い価格でもともと持っておられた方々に払い戻そうという御趣旨でありますから、その御趣旨に沿って、一度農林省、大蔵省と相談をさせていただいた上でお答えをさせていただきたいと思います。
  199. 小川新一郎

    小川(新)委員 下河辺さん、それは無責任だと私は思いますよ。現実にもう計算が出て、地主のところへ回ってきている書類を見ますと、あなたがおっしゃったようにこれから相談するような値段はどこできめるのですか。だからこの質問をしているのです。国有農地を払い下げるということは国の施策です。その国の施策が、国土利用計画法の土地の値段のきめ方よりもさらに上回ったものがもしも出たら国はどういう責任を負うのですか。だから私は心配で聞いておる。あれには罰則がたしかあったはずですね。体刑ですよ。二年間以上の体刑を受けるのです。きめた価格よりも上回った値段での、知事が定めた規制地域における売買が発覚したときには、罰金かもしくは体刑を受ける、そういうきびしい議員立法がいま参議院を通過しようとしているときに、国が国有農地を払い下げるという基準があいまいで、それよりもさらに上回った基準が出たときには国が体罰を受けたり罰金を受けたりするようなことになって、逆に地価高騰の引き金になり、地価の高騰の混乱の原因をかもし出す。それがまだ大蔵省と農林省と経済企画庁なんかとできまらない。  では、いま通達をされてきた、地主にきまった値段というのはどこが基準になって出されたのですか。どうなんですか、農林省。
  200. 関谷俊作

    ○関谷説明員 お尋ねの国有農地の売り払いは、農地法の八十条の第二項によりまして、いわゆる農地改革時の旧所有者に対する売り払いであろうかと思いますが、これにつきましては、御承知のような経過で国有農地等の売払いに関する特別措置法が四十六年に制定されまして、それに基づく政令の中で、この旧所有者に対する売り払いの対価は、「その売払いに係る土地等の時価に十分の七を乗じて算出するものとする。」こういうことで政令に規定されておるわけでございます。  現在の運用は、この「時価に十分の七を乗じて算出する」この時価の評価につきまして、これは大蔵省とも協議の上で評価要領をきめておりまして、実際には民間精通者の鑑定評価額、これを基準として評価をしております。つまり、実際のいわゆる時価をそういう方法で決定をいたしているわけでございます。  その場合に、評価上の地目は、現況宅地であれば宅地として評価をするし、宅地でない場合にも宅地見込み地として評価するわけでございますので、現在までに旧所有者の方から買い受け申し込みがありまして、私どものほうから御提示をしておるその予定された売り払い価格は、旧所有者の方から買い受けの申し込み書が提出された日、それがたとえば四十八年十二月であれば四十八年十二月ということになるわけでございますが、その時点の時価を民間精通者の鑑定評価額を基準として出しまして、それに七〇%をかけるわけでございます。  なお、さらに、今後どうなるかということで、国土利用計画法のいわゆる凍結価格との関連等が国土利用計画法の施行のとき出てまいるわけでございます。これにつきましては、私どもの検討もまだ確定的にはなっておらない点はまことに申しわけないのでございますが、国土利用計画法が施行されまして、その規制地域に当該地域がなる。その規制地域について国土利用計画法による土地取引の許可制が適用されまして、いわゆる凍結価格がきまってまいりまして、その凍結価格でなければ売買できない、こういう状態になってきたときには、その凍結価格が先ほど申し上げました政令の中の時価になってくるべきものではなかろうか。たとえば、民間精通者の意見をとりますれば、その精通者の意見の中で時価として凍結価格が認識されてくる、こういうような手順になるわけで、そこのところは私どもは大いに研究をいたすわけでございますが、実際問題としては、規制地域になって凍結価格が適用されていく時期までにはまだ時間がかかる。それまでの売り払いは、その地域については、規制地域でない状態では従来の、先ほど申し上げました評価方法、売り払い方法で法令によりましてやらざるを得ない。規制地域になりましてからの問題は、いま申し上げましたような考え方で実際にどういうふうに評価をするか、これをきめていくことになろうかと考えております。
  201. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、下河辺さんの御意見も全くそのとおりなんですか。先ほどのあなたの御意見では、大蔵省と農林省とはもう一ぺん話し合わなければならぬということだったけれども、現実には、農林省では旧地主が申請を出した日の取引価格の百分の七十ということですね。これはもう現実にきまっている問題なんですね。あなたがいまおっしゃったのはもっと先の考え方をお述べになったのですか。
  202. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 つまり、国土利用計画法が施行されてからのことをお話し申し上げたわけでございますけれども、先ほど申しました一つの重要な点というのは、各法令に基づく時価というものにつきましては、算定の方式あるいは現実の評価額の上におきまして多少の差異があるということに私ども注目しておりまして、したがって、国有農地等の売払いに関する特別措置法におきます時価かける七〇%というときの時価が、はたして国土利用計画法でいいます規制価格とどの程度差があるかということを詰めた上で考えたいということでございまして、この払い下げ法におきます時価に七〇%をかけるというところは、法の定めるところでありますから農林省と同じ考えになります。
  203. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは確認をとっておきたいのですけれども、あなたはいま相当大事な御説明をしてくださいましたが、そういたしますと、知事が、新法であるところの、国土利用計画法の規制地域に認定された当該地域が旧地主に払い下げられるということになりますと、申し込みの時点よりも地価が計算して下がっている場合、国土利用計画法の、取引価格の大体七〇%ないし八〇%という規制地域はその下がったほうに合わせるのか、下がろうが上がろうが申し込みの時点で、いまの現行法でやっていくのか。そこのところが一番大きな問題になると思うので、そこをいま下河辺さんも心配しておそらく練り直しということで言われているのだと思うのです。私の意見も全くそのとおりです。  埼玉県のように、規制地域を全般に県内にかけるということになりますと、知事の権限におけるところの地価の抑制ということでの規制地域は埼玉県全土に及ぶ。そうなると、その県内全土におけるところの払い下げ要求の旧地主の地域というものは、網の目からこぼれるわけにいきませんから、当然そうなってまいります。その規制地域、その出た時点において地価が下がった。現実にはいま地価が下がっていますね。大体建設省の地価公示価格なんていうのは前半だけのトータルで、後半のトータルがあまり入っていないのです。いま金融引き締めで相当とまっています。とまってはおりますが、さらに、この金融の引き締めと国土利用計画法と、行財政ミックスした土地対策が功を奏して急速にダウンしてきたときには、四十八年十二月現在の時点ではないのだ。その新しい価格制度に基づいた時点で旧地主に払い下げないとなると、国は土地問題に対しての見識を疑われるし、逆に混乱を巻き起こすのではないかということを私は指摘しておるわけでございますから、その辺のところを、いまあなたが言ったようなことをもう一ぺん確認したい。
  204. 関谷俊作

    ○関谷説明員 旧所有者への売り払いの評価時点が買い手の申し込み書の提出日になっておる、ここのところから問題が出てくるわけでございますが、従来は、ざっくばらんに申し上げますと、地価はむしろ下がるというよりは上がる傾向にございますので、簡単にいえば早く申し込み書を出した方のほうが、申し込み書の提出された時点で評価をいたしますので、より安いというか、値上がり前の時価で評価がされた。これは実態としてもそうなっております。  ところで、この規制地域の適用との関係でその辺が非常に微妙になってまいるわけでございますが、これは、規制地域が実際にどういうふうに指定されるか、その凍結価格がどういう水準になるか、これと、実際にどうなるか、その時点でなければわからない。これは現在ほんとにそういうことだと思うのです。  評価の問題につきましては、その規制地域の凍結価格をどう国有財産の評価に取り入れるか。これは国有財産の総括官庁であります大蔵省とも協議しながら扱いの方法をきめなければならないわけでございますが、もしも万一そういうふうな下がる傾向が非常に見通される、というようなことがありました場合の問題も現実には出てまいるわけでございます。従来の扱いとしてはそういう例はございませんでしたけれども、買い受け申し込み書の提出自体は、現状では旧所有者の方の任意でございますので、その買い受け申し込み書の提出日、こういう問題で将来の見通しとの関係で処理される、こういうふうに考えております。
  205. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは先の問題ではなくて、現実にいま起きているのです。私が試算したところによると、農林省が出した値段よりも現実の地価が安いという地点が出てきてしまった。だからこういった問題を老婆心ながら言っているのであって、あなたが先の先なんて考えているよりも、もう世の中の動きというものはものすごい勢いでいま流れておりますから、ひとつ念のために御検討いただきたいと思います。  そこで自治省土地の譲渡所得税、これは、非常に初歩的ですが、どこに入るのですか。
  206. 首藤堯

    ○首藤政府委員 国税でございますので、国のほうからお答えをいただきたいと思います。
  207. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは、当該市町村に入る土地の譲渡所得税というのはないのですか。
  208. 首藤堯

    ○首藤政府委員 まず国の所得税のほうで取られまして、その所得税に取られました場合のあとの問題として、住民税のほうには影響があるわけでございます。
  209. 小川新一郎

    小川(新)委員 直接はないけれども、間接的には出てくるわけでございますね。  そこで関係があるからお尋ねいたしますが、現在個人が五年以上保有しておいた土地を売った場合、その売却益を他の所得と分離して、四十五年、四十六年は一〇%、四十七年、四十八年は一五%、四十九年、五十年は二〇%とする仕組みになっております。これは税制面からの土地放出促進でございまして、昭和五十年までこの税制の中に盛り込まれておりますが、これは五十年以降続けていくのかどうか。これは当然国税ですから大蔵省のほうになるのでございますが、関連といたしまして、こういうものの考え方は自治省としてはどうお考えになっているか。いまも一億円以上の高額所得者六千三百七十人の百傑のうち、九十七人は土地の譲渡所得によるところのものとして長者番付にランクされておりますが、そういう方々に対する税の優遇というものが当該市町村、公共団体に及ぼす関連において、自治省としてはこの五十年以降については大蔵省とはどのように話し合いを進めるのか。またこの問題をどう把握なさっていらっしゃるかをお尋ねいたします。
  210. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいま御指摘をいただきましたとおり、これは税制といたしましては国税を中心とする土地対策、こういうことで考えられております措置でありますことは御承知のとおりでございまして、当初ねらっておりましたのは、土地の放出を促進をするという目的のためにとられた措置でございますが、土地の規制問題は、私どもから申し上げますと何でございますが、単にいま税制だけで措置をするというのには非常に大き過ぎる問題でございまして、税制が先行いたしました結果、先ほど御指摘のように高額所得者の所得税がえらい減ってしまう、こういうような状況が起こったのは御指摘のとおりでございます。われわれといたしましても、土地政策全般の問題の一環の税制としてこれを把握いたさなければならぬ、根本的にはそのように考えておるわけでございますが、現在のように単に減免をしていくというだけの措置、これは必ずしもそう適当だとは言えない措置ではなかろうか、こう考えておる次第でございます。国におきましても五十年以降こういった問題について十分な見直しをする、こういうことでございますので、それに関連をいたしまして私どもも十分検討を続けたい、こう考えておる次第でございます。
  211. 小川新一郎

    小川(新)委員 結論からいうとどっちなんですか。どうするのですか。やめるのですか、続けるのですか。
  212. 首藤堯

    ○首藤政府委員 所得税におきますこの措置をどのように変えていくのか、それとの関連を住民税としても持たざるを得ませんので、そこが一番の問題であろうかと思いますが、土地政策の一環としてどのようなかっこうにするのが適当か、これは十分今後とも税調そのほかの御審議もいただきたい、こう考えております。
  213. 小川新一郎

    小川(新)委員 五十年までなんですよ。非常にタイムリミットは迫っておりますが、私はその方針を大臣にお尋ねしたいのです。
  214. 町村金五

    ○町村国務大臣 私はどうも十分検討をいたしておりませんので確たることはお答えいたしかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、現在のような分離課税をさらに続けていくのがよろしいかどうかということになりますと、これは税制上かなり重大な問題であろう、こう思うのでございまして、先ほども税務局長からお答えを申し上げましたが、要はこれによって、法のねらったところはおそらくできるだけ土地を放出させるという効果をねらったものではないか、私はこう思うのでございます。したがって、もしこれを総合的に所得税を課するということになりますと、当初ねらったことが十分効果をあげにくいという問題が一面あるわけでございましょう。しかし一方、最近における地価のやや下落というようなこと等もございまするので、そういった情勢を全部総合勘案して、今後税制としてどうあるべきかということもひとつ根本的な検討が行なわれるべき課題ではないか、私はかように考えておるところでございます。
  215. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、土地問題については田中総理は非常に勇気があると思うのです。非常に勇敢だと思うのです。それは、五月十六日のNHKテレビで総理の、私も聞いておりましたが、国土利用計画は国総法の名称が変わっただけだ、この発言が大問題になっております。また、国土利用計画地方自治体の行なう地域政策との関連などについても御質問がありましたが、固定資産税、特別土地保有税などで地方自治体に入る税額は幾らかということが私がお聞きしたい問題なんです。  そこで、なぜこういう問題を聞いているかと申しますと、田中総理がなぜ勇敢かということは、その次の私が言いたい問題の中で、五月十六日のNHKテレビで総理は、土地関係の税収が減ることなどをあげて、公有化はできるだけ少なくとどめるべきであると発言しているんです。これは全く勇敢過ぎるほど勇敢だと私は思うのです、こういう発言は。公有地になっちゃうたら税金があがらない。さっき言った譲渡所得だ、保有税だと、私は一連の土地の税金の問題を聞いてきました。それはここへ来ているわけです。総理の考え方が、日本の土地は一体公有地拡大の方向に進んでいくのか。そしていま言ったような国土利用計画法やさまざまな問題が出てきまして、一年、二年前のときとは土地問題が全然変わってきている。そういう中において自治省としてどうあるべきかということを、やはり総理との関連の田中内閣の一環として一体どう考えていくかということの位置づけを私はきょうは聞きたかった。しかし、公有化はできるだけ少なくとどめるべきである、こういう問題は私は土地政策と大きく矛盾しているようにも考えられるのです。であれば、その国土利用計画ができて、私が一番心配するのはその財源ですね。買い取り請求権を出した。知事が規制区域を定めた——この問題は下河辺さんにお尋ねする段階なんですが、こういった問題、経済企画庁としてはまずいまの総理の考え方はどう考えるのか。それから地方公共団体、都道府県が規制地域を知事の権限において定める。その定めたときに、三年以上ほうっておいた未利用地、空閑地についてはその所有している法人並びに個人について買い取り請求権を出すことができる。買い上げる。この財源問題どうするか。こういうことは経済企画庁として国土総合開発の上から非常に大きな問題になりますので、第一点の総理の考え方と、いまの財源問題とをあわせてお尋ねしたい。
  216. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 第一点につきましてはテレビということで、私からお答えするのは適当じゃないかと思いますけれども、常日ごろ総理から私ども言われております点は、国際的に見まして、わが国の場合、特に都市部におきまして公有地が、公園、道路、その他から見まして非常に不足であるので、十分なる公共用地をとって快適な都市をつくるべきであるという御指示を得ている点から考えまして、公有地の拡大ということに総理は決して否定的ではないというふうに私は思います。ただ、総理が御指摘になりましたのは、憲法上土地というものが私有財産として認められているという前提に立ちまして、すべての土地が国有化、公有化という制度になることについてはきわめて疑義があるということで申し上げたのではなかろうかと拝察いたします。  二番目のほうの、国土利用計画法を施行するにあたります問題につきましては、法の四十条で政令で定めるようになっておりますので、政令が定まる段階ではっきりさせたいということでございますけれども、昭和四十九年度の予算におきましては、実は規制地域に類する特別規制地域の制度を提案していたという経緯もございまして、その中でやはり買い取り請求権の問題がございましたので、自治省の財政当局とも御相談をいたし、大蔵省とも御相談をいたしまして、四十九年度におきましては一部地方債を活用していただくということで話し合いを進めておりますが、その地方債を償還いたします際の利子につきまして、一部財政上都道府県に対して補助をしようということになりまして、一部補助のための予算を計上しているというのが現状でございます。ただ、それはまだ政府案当時の予算の仕組みでございますから、昭和五十年度の予算編成にあたりまして、御指摘いただいたような点について大蔵、自治省当局と十分打ち合わせまして、買い取り請求権あるいは遊休土地の買い上げに関します財政措置を講じさせていただきたいと考えます。
  217. 小川新一郎

    小川(新)委員 時間が参りましたのでこれでやめさせていただきますが、最後に重点施策の問題で、昭和五十年度の問題をいま語るのは早いかと思いますが、四十九年度重点施策の土地政策のかなめは国土総合開発、国総法、この大型開発、昭和六十年までのわが国の国民総生産四倍を基調とした、田中総理のいうところの日本列島改造計画が基盤となった重点施策が自治省で織り込まれておりますが、こういった問題はもう四十九年度で終わりになる。四十九年度もこれはもう終わってしまったのですが、重点施策がうやむやになっております。この重点施策のあり方という問題について、五十年度は違った角度の土地利用という問題が土地という問題について出ると思います。この重点施策という問題について、ひとつ来年の見通しなりを土地問題に限ってお尋ねして私の質問を終わらせていただきますので、よろしくお願いします。
  218. 松浦功

    ○松浦政府委員 非常にむずかしい御指摘でございますが、いずれにいたしましても、土地利用の問題につきましては自治省は従来から深い関心を持って、いろいろこれに取り組んできておることは御承知のとおりでございます。政府提案の法律が議員提案の土地利用法に変わったわけでございますが、それを十分踏まえて検討させていただくべき問題である。いまここでにわかにどうこうということを申し上げると、いろいろまたあとでおしかりをいただくようなことになると思いますので、ひとつお許しをいただきたいと思います。
  219. 小川新一郎

    小川(新)委員 私はあえて苦言を呈するわけではございませんけれども、公有地の問題についても、法律は公有地拡大促進法案などというものをつくっても、いま下河辺さんおっしゃったような、憲法第二十九条、私有財産権の問題に抵触すると法律が後退するような、総理の考え方に左右されるような自治省の重点施策であってはならないという観点から御質問しているのでありまして、どうかその辺のところを御配慮いただきまして、訂正に次ぐ訂正、後退に次ぐ後退でないところの重点施策を来年は期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  220. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、明二十四日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十九分散会