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1974-05-16 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 中村 弘海君    理事 中山 利生君 理事 村田敬次郎君    理事 佐藤 敬治君 理事 山本弥之助君    理事 三谷 秀治君       愛野興一郎君    片岡 清一君       島田 安夫君    住  栄作君       武藤 嘉文君    井岡 大治君       小川 省吾君    細谷 治嘉君       多田 光雄君    林  百郎君       小川新一郎君    小濱 新次君       折小野良一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 町村 金五君  出席政府委員         自治政務次官  古屋  亨君         自治省行政局長 林  忠雄君  委員外出席者         厚生省医務局総         務課長     金田 一郎君         運輸省自動車局         業務部長    真島  健君         自治省行政局行         政課長     砂子田 隆君         自治省行政局振         興課長     田中 和夫君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     田村 良平君   大野 市郎君     金丸  信君   島田 安夫君     林  義郎君 同日  辞任         補欠選任   金丸  信君     大野 市郎君   田村 良平君     愛野興一郎君   林  義郎君     島田 安夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第七一号)  地方自治法等の一部を改正する法律案井岡大  治君外六名提出衆法第二四号)  地方自治法の一部を改正する法律案三谷秀治  君外十名提出衆法第二三号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる地方自治法の一部を改正する法律案井岡大治君外六名提出にかかる地方自治法等の一部を改正する法律案及び三谷秀治君外十名提出にかかる地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。林百郎君。
  3. 林百郎

    ○林(百)委員 自治省当局にお尋ねしますが、これはもう言うまでもなく、野党としては、民社党さんで一部賛成部分もありますが、野党全体としては評価自民党と異にしておる複合事務組合と、そして自民党をも入れて評価が大体基礎的には一致しておる東京都の場合の区長公選、これをいつも抱き合わせにして出してくるというのは一体どういう意図なのかですね。もしほんとう区長公選を一日も早く実現しようという意図与党自民党にもあるとするならば、与野党が一致しておるその部分をまず出して自治法改正して、そして問題の評価与野党で異なっている部分あとから出して十分審議をするということにすべきだと思いますが、この点についてはどうしてこういつも抱き合わせで出してくるのか。その辺を大臣とそれから行政局長にお尋ねしたいと思うのですね。
  4. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 実は、複合一部事務組合、前はこれを市町村連合といっておったものでございますが、御承知のとおりこのほうが先行しておりまして、これに関する法律改正案区長公選の議が起こる前から実は国会で御審議をお願いしておりまして、まあそのときのいろいろな都合成立を見なかったわけでございます。これは、第十三次地方制度調査会広域行政をどうするかということで御審議いただきましたときの答申でこういう制度をつくることの示唆を受けまして、それに基づいて出したわけでございます。その後、東京都の区長公選運動が非常に高まりまして、その二年後の第十五次地方制度調査会で今度は区長公選に関する御審議が行なわれまして御答申が出た。この第十三次答申及び第十五次の地方制度調査会答申——この地方制度調査会というのは、先生も御承知のとおり、学識経験者地方関係団体のほかに、国会議員各党それぞれ加わっていただきまして、いろいろな御議論の末、こういうことを設けたらいいだろうという意見の一致を見たものでございまして、政府もまさに同感をいたしまして、そういう制度と申しますか、自治法改正をやらなければならないということで出すことになったわけでございます。  そこで、この二つ答申は、実はいずれも地方自治法の一部改正、しかもその地方自治法のうちの第三編の「特別地方公共団体」に関する改正でございますので、政府としては、この二つ答申に基づく改正をぜひやっていただきたい。その改正中身について賛成反対は、それぞれの各党のお立場でおありだと思いますが、政府としては、区長公選もぜひやりたいが、それよりも前の地方制度調査会答申に基づく市町村連合というのも、現在広域行政が非常に必要になってまいっておりまして、全国市町村の強い要望もございまして、これも実は一日も早く成立させたいという気持ちがございまして、たまたまこの二つ一つ地方自治法改正案となって、ある国会にかけるとなりますれば地方自治法の一部改正という形で一つ法案で出すのがきわめて自然な筋であろう、そう考えて出したわけでございまして、わざわざ抱き合わせという御批判はしばしば受けますけれども、私たちのほうはぜひこの二つとも審議を尽くして御可決をいただきたいという気持ちで出しておる次第でございますので、ひとつよろしく御審議をいただきたいと考えておる次第でございます。
  5. 林百郎

    ○林(百)委員 町村さん、こういうのですよ。御承知のとおり抱き合わせになっておる。市町村連合というか複合事務組合と申しますか、今度出たものは複合事務組合ということのほうが正確な表現だと思いますが、これはもう共産党社会党も公明党さんも非常に自民党評価を異にして反対しているわけですね。そういう意味で、いつも抱き合わせで出してくる法案国会議決を経ることについて支障を来たしてきているわけです。東京都の区民の間からは、区長公選をされたいという要望は非常に強いわけなんでして、これには自民党皆さん賛成しているわけなんですね。ところがこれが、野党が反対している部分もあるものですからこの法案が通らない。そうすると自民党皆さんは、区長公選を通さないのは野党だということを演説会などで言って歩いて、いかにも区長公選野党は通さないようにしているんだというようなことを意識的に宣伝しているんですよ。しかしそれは抱き合わせで、こういういかにも意地の悪い出し方といいますか、こういうやり方をしてくるんでそういう結果になるんで、これは、自民党まで含めて賛成しているというものは何よりも先にまず地方自治法改正して通すべきのが民主的なあり方だと思うわけなんですね。  これについてひとつ、それならば、そういう与野党の間で評価の違っておる複合事務組合についてはじっくりと審議を尽くしてもらうことにして、長い間の運動であり、そして自民党までも含めてもうすべての政党が一致しておる区長公選だけはとりあえずこの国会でまず通していただきましょう、こういう方針には、大臣、ならないですか。それが民主的なあり方だと思うのですけれどもね。われわれだって複合事務組合審議をしないというわけではないのですが、これはいろいろな問題がありますから十分審議を尽くしていかなければならないわけなんです。しかし区長公選というのは、来年の一斉地方選挙というタイムリミットもありますから、これは至急通さなければならない問題ですから、これを分離して、共産党社会党もそういう意味で対案を出しているわけなんですが、そういう考え方にはおなりにならないですか。町村さんの民主主義的な考え方一つの試金石になると思うのですが、いかがですかね。
  6. 町村金五

    町村国務大臣 私、昨年の十一月の末に自治省に参りまして、直ちに予算、それからこの通常国会提案をいたします法案等についていろいろ省内の説明をまず聞いたわけでございます。その場合、地方自治法の一部改正案についての従来の経緯というものも説明を聞いたわけでございまして、野党の方々の間からは、賛成のものと必ずしも賛成なさらないものとを一つに抱き合わせた、たいへん何か意地の悪いやり方だという御批評も確かに一部にはあるけれども、一面、いまも行政局長お答えを申し上げておりましたように、この二つ内容の違うものではございますけれども、二つともかなり強い御要望もあり、ぜひこの際早く実現をしたいものだという要望等もございます。したがって、これはともにひとつこの際解決をしていただくようにお願いをすべきである。  また、いまの複合一部事務組合につきましては、いろいろこれに対する御批判もあるので、その御批判にもひとつできるだけおこたえをするように、内容については、そういった、いわゆる府県と市町村との間に何か新しい一つ地方団体を特別につくるというようにとかく誤解を招くような一面もあるが、全くそういうようなものではないので、むしろ現在の地方状況からすると、やはりこういうようなものによって必要なものは解決をしていくと申しましょうか、処理のできるような体制をつくり上げていくということがたいへん大事なので、これはぜひあわせてこの際提案をしたい、こういう意見であり、私もまたそれが至当であろうというふうに考えまして、実は御指摘のような一種の抱き合わせといったようなかっこうのものではございますけれども、この際あわせて御審議を願い、ぜひひとつ御可決を願いたいものだ、こういうことで御提案をする決心をいたしたのでございまして、いまこの段階に至りましてこれを切り離そうということは考えていないわけでございます。
  7. 林百郎

    ○林(百)委員 複合事務組合について自治省一定見解を持ち、また与党としての自民党一定見解を持っていることはわれわれもわかっております。しかし、その評価については野党はおのずから異なる見解を持っております。市町村連合に通ずる、あるいはさらには、ひいては道州制への萌芽ではないかというような評価もあるので、この点は十分論議を尽くしてみる必要があるわけなんです。そういう十分論議を尽くさなければならぬいろいろの問題点を含んでおる部分と、自民党をも含めてもう問題なく基本的には一致できる区長公選とをいつも合わせて持ってくる、提案してくるというところにわれわれは非常に不満を持っておるわけなんです。  たとえば地方事務官廃止問題につきましても、これは政府部内の不統一を理由にして今回の改正を見送っておるというようなこともありまして、やはり政府のほうでも、そういうように部内意思統一しない場合は延ばすということもあり得るわけなんですから、ましてや、政党間で完全に基本的には意見が一致しておる問題と、そして異なっている問題とは分離するということは当然あり得ると思うわけです。  この問題についてはいずれわが党の東京都出身の青柳委員からあと質問がありますけれども、ここで一つ聞いておきたいことは、ほんとう自民党並び自治省区長公選実現について熱意があるかどうかという、これはもう抱き合わせで出してくるというところにわれわれは大きな疑惑を持たざるを得ないわけです。それと、もう一つは、もし野党がまた複合事務組合部分に反対することによってこの法案議決支障を来たす、あるいは衆参両院議決を万一得られないというようなことがあるとするならば、もうこの次には区長公選の分は出さないというようなこともちらほら耳に入っておるわけなんですけれども、これは自治省の本意なんでしょうか、どうでしょうか。大臣局長と両方にお聞きしておきたいと思います。
  8. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 政府としては、先ほど大臣も申し上げましたように、区長公選も来年の統一選挙を前に控えてぜひ実現したい、この熱意は、こうして提案しておるわけでございますからお疑いいただくまでもないことだと思います。  同時に、この複合事務組合は、これも、野党の間に御議論があるのはもちろん承知もしておりますし、前にこの複合事務組合連合という形で御提案申し上げたときにも審議の過程でいろいろ御批判がありましたので、その御批判を取り入れて法案中身をだいぶ手直しをして、その御批判に一部こたえるといいますか、全体としてのお考え方の相違はありますけれども、野党としての御批判も受け入れた形であわせて出したのでございますので、この複合組合区長公選、この二つはもうぜひ早期成立させていただきたいというつもりで出しておるわけでございまして、抱き合わせにしておって、区長公選のほうは不熱心であるということは毛頭ございません。  それからいまのお話、この国会でもし議決が得られなかった場合、一つの仮定の問題でございますけれども、区長公選するという選挙をするというだけであれば、まあ来年の統一選挙までまだ一年ある。ある程度、たとえば選挙後の特別国会ないしは秋に予定されるかもしれません臨時国会でも間に合うのじゃないかと一見思えるわけでございますけれども、実は今度の特別区の制度改正につきましては、単に公選だけではございませんので、かつての公選制をとっておったときのいろいろな弊害その他にかんがみまして、区長公選と同時に、住民の身近な事務はなるべく区に渡すという区への事務移管、それから区長人事権をなるべく強化するという意味での都の配属職員制度廃止、こういうものをあわせて三本の柱として御提案申し上げる。これらの事務移管とか人事配属職員廃止とかいうことが実は相当な準備期間が必要でございまして、この法律が施行されますまでの間にそのいろいろな人事配置その他もやらなければなりませんし、事務移管のためのいろいろな準備、器材の購入とか職員の研修とかいうこともやらなければいけませんので、提案しております私のほうとしましては、もうこ国会にこの法律成立しない場合は、現実に来年の統一選挙にあわせて区長公選をすることは実際できないのではないか、こういう心配を持っておりますので、あと特別国会なり臨時国会なりに再びこの法案を出すということは、もう時間的に不可能じゃないかという考え方を持っておる次第でございます。ですから、先生のおっしゃるように、これが流れれば意地悪をして出さないというようなことは毛頭ないので、区長公選もぜひ実施したいし、同時に連合もぜひ早期制度化して、各市町村広域市町村圏要望にこたえたい、この熱意はたいへん持っておるわけでございますけれども、時間的にその余裕がなくなることを非常におそれているというのは確かに事実でございます。
  9. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう技術的な問題があって、一応のタイムリミット自治省としては考えておられるということは、一応御説明があったことはお聞きしておきます。  基本的には、そういう人為的な障害があるにしても、区長公選をいつの時期か必ず実現する。もちろんわれわれも一日も早くこれを実現するために全力を尽くしたいのですけれども、いずれにしても前のほうにわれわれが同意できない部分があるものですから、これをさておいて、区長公選があるから何でも政府のいうとおりにしていこうというわけにはわれわれとしてもいかないわけなんですね。  そこで、基本的な方針をそれでは自治大臣にお聞きしますが、とにかく東京都の区長公選するという基本的な方針ですね、これは、人為的な時期だとかいろいろな問題があっても、自治大臣としてはどこまでも貫くお考えであるかどうか、その点を締めくくりとしてお聞きしておきたいと思います。
  10. 町村金五

    町村国務大臣 これは私がいまあらためて申し上げますまでもなく、かつて一度公選制を戦後実施いたし、その後これをやめてすでに二十年以上を経過いたしております。その間、現在の制度によります区長選挙というものが現実にはなかなかいろいろなことでうまくいかない。御指摘もあったように、ある区のごときにおいては区長不在期間が四年以上にものぼるというようなこともあったりして、やはり現在のやり方にはいろいろ問題点もある。さらにまた、いまの東京都の行政万般にわたる執行状況というようなものについてもまたいろいろ御意見がございまして、やはりもっと区のところに仕事をおろしていったほうが住民に密着した行政をやっていくのにはたいへん好都合ではないのか。そういう都合のいい面が非常にたくさんある。そういったようなこととあわせて、やはり準公選というような機運が起きて、そういったことも事実行なわれたところが若干あるようでございますけれども、これも法の認めていないやり方をやっておるというところに、どうもせっかく行なわれた準公選も必ずしも関係区民の十分の意思の反映が行なわれていない。そこまで来ておるのなら、むしろこの際公選に戻って、そのかわり過去における経緯というものを十分考え、また現実のいまの都と区との関係行政事務配分等についてもこの際ひとつ十分検討をして、今度は前のような弊害と申しましょうか、そういったことの起こらないという体制のもとにこれを進めていくべきだ、こういう考えが、御承知のとおり地方制度調査会をはじめ各方面から非常に強く出てまいりました。  私どもといたしましても、この際これは公選制にすることが適当であろうという各方面の判断と全く同様に考えることになりましたので、ぜひこれを今度の国会において御成立をさせていただいて、そして明年の統一地方選挙には間に合わせていただくということにぜひしたいものだということを念願いたしまして、今回御審議を願うということに相なったわけでございます。
  11. 林百郎

    ○林(百)委員 なおこの問題については私のほうの党の次の質問者に譲ることにしまして、いわゆる複合事務組合のほうの質問に移りたいと思うのですが、これは当然広域市町村圏との密接な関係がありますので、それとの関係質問をしていきたいと思います。  全国で三百二十九カ所の広域市町村圏設定というのは一応終わったと見ていいでしょうか。
  12. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 大都市の周辺市町村につきましては、ちょっとこれは別の体系でやらなければいけないと考えて現在研究を進めておりますので、東京大阪、名古屋の周辺市町村部分は未設定でございますが、これは近い将来広域市町村圏として設定する考えはございません。大体九割九分終わったと考えておりますが、なお福岡県の一部と、それから仙台、宮城県の一部、その辺に未設定地区がございます。これはその地区市町村意思が合致し、県からお話があれば設定をする予定でございます。
  13. 林百郎

    ○林(百)委員 大体概要的な数字からいいますと、全国二千九百二十団体の自治体、市町村があるわけですが、これは大体圏域に組み込まれ、いま言ったような若干の例外がありますけれども、人口の約六〇%が圏域生活をするということになっていると考えていいのか。要するに、約六〇%の住民がこういう圏域に組み込まれ、そしてそこでは事業計画の策定も大体終わって、それに基づいて現在事業が進行している、そういう中で生活しているといってよろしいのか。そうなりますと圏域あり方というものは地域住民生活に非常に大きな影響を及ぼしてきますので、大体こういう数字でいいのかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  14. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  15. 林百郎

    ○林(百)委員 広域市町村圏事業市町村連合との関係について、われわれ若干問題を意識しておりますのでこの点をお聞きしたいと思うのですが、自治省が発行した「広域市町村圏」というパンフレットによりますと、「広域市町村圏の施策は、市町村の新しい生活圏行政を展開しようとするものである。」といっておるわけですね。しかしその実はやはり将来の市町村連合方向意図しておるものと考えていいのかどうか。この「新しい生活圏行政を展開しようとする」ということの意味ですね。これはどういうことなのか。将来市町村連合方向をも目ざしているのだというように解釈してよろしいかどうかですね。
  16. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 将来市町村連合方向と、先生のおっしゃいます意味が実は私よく受け取れませんのは、前の法案では確かに「市町村連合」ということばを使いました。この市町村連合ということばは、将来市町村一緒になってしまう、極端にいえば合併にまでいく、あるいは合併にまでいかなくても、その連合というものが非常に強い段階になりまして、それをまた大いに育成していく、そういう方向かという御趣旨であれば、私たちは必ずしもそこまでの方向意識してはいないわけでございます。  つまり、広域市町村圏は新しい生活圏行政を展開する、そのことば意味は、とにかく社会経済が進歩しまして住民生活水準が上がってまいりますと、従来よりも、たとえばある農家の一家族というのをとってみましても、その生活圏域というのが当然広くなっていく。従来であれば、たとえば町村合併前の村の中で自分の田畑を耕して、そしてその村の中で雑貨屋か何かで日常の生活用品はほとんど済んでしまって、県庁所在地に行くというのは年に一ぺんぐらい何かの用事があったときというような、非常に狭い範囲生活であったものが、生活水準が上がってまいりますと、畑は旧村にありましても、長男は地方事務所につとめるとか、次男は国鉄につとめるとか、たとえば生活の資を得る範囲もずっと広がってまいりますし、同時に生活水準が上がれば、いままでの農村の娯楽以外にもっと都会的な娯楽なり教養なりを求めて、中心市のほうに娘も一週間に何べんも往復するという形で住民生活圏域が広くなっている。  広くなっていきますと、やはり自分生活している場をもって自分住民意識といいますか自治意識がある。そういう意味では、必然的に道路その他も整備されてまいりますし、住民生活意識、したがって自分の郷土という意識と申しますか、それが広がっていく。広がっていくのに対応して、行政内容も高度なもの、技術的なものが要請されるとなれば、旧来町村の狭い範囲でものを考えていたのではそれに対応し切れないものがある。  そのし切れないものを受けとめるために、一つ方法町村合併をするという方法も確かにございます。また昭和三十年代の初めに行なった合併である程度そういう要請をあの時点では満たしたこと、これはまた否定し得べくもございませんが、それにもかかわらず、その後の社会経済の進歩、生活圏広がり生活水準の向上というものはとどまるところを知らぬでどんどん進んでおりますが、昭和三十年代の初めに合併をして、いまここでまた第二次合併をやろうというにはいかにも時期が早過ぎる。旧来三つ町村一緒になったとすれば、その一体性の感覚が出てくるまでは十年、十五年かかるので、前の合併がやっといま定着したという時期にまた合併をというのはいかにも時期が早過ぎるし、同時に、行政内容によっては個々の市町村がそれぞれ独自にやって十分にこなし得、また住民に最も身近なところでやるということで民主的にも合うという行政もまだたくさん残っている。しかし一方、広い区域でやらなければならない行政というのはふえてきておる。  そこで、それをどういうふうに展開するかということで、第二次の合併にはそれを求めないで、それぞれの町村自主性独立性は保障しながら、ひとつ協同してその広い区域行政一緒にやっていこうじゃないか。そこを広域市町村圏に求める。そういう意味で、新しい生活圏広がりに対応する行政の展開をするというのはそういう考え方で進んだわけでございます。  ですから、これが将来、ずっとこの広がりその他も進んでまいりまして、住民意識も、自分生活圏域というのはもっと広いんだということが定着して、それぞれの市町村意思が合致して合併にいくということがあるいはあり得るかもしれませんけれども、無理にそちらのほうに引っぱっていこうとか、あるいは個々の市町村自主性考えずに、無理に広域市町村圏行政機構にものを取り上げようとか、そういう指導理念は毛頭持っておりません。いまの先生の御質問が、将来の連合を目ざすというのがそういう意味であれば、それは違う。現在共同処理をするのが合理的であるものを共同処理するために広域市町村圏設定し、共同行政機構を設ける、そういう趣旨のつもりでございます。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれも、現在の社会生活が、交通の関係その他から広域的な要素を持ってきたことを別に否定しているわけではありませんけれども、しかし、地域住民にきめのこまかい手だてを講ずるための地方自治体というものが、そういう社会的な広域性が濃くなってきたという面だけを強調してそのほうへ広がっていきますと、また一方では今度は過疎地帯などにおいては、都市中心の行政が行なわれて、過疎地域は地方自治体の日の当たらない地方行政しか受けられない、そういう側面も出てくるわけなんですね。  そういう意味で、法制的にこういうように広域的な行政をするんだということではなくて、それはやはりそれぞれの地方自治体の地域住民の必要性に応じて、自治体の自治性を確立しそれを保障しながら、協議したり民主的な方法できめていけばいいように思うわけなんですけれども、局長お話を聞いていますと、複合事務組合を通したいという一念から出ていることはよくわかるのですけれども、その広域的な面だけが非常に強調されているわけですね。広域的な面だけが強調される一面、あまり広域的なところへばかりいっちゃうものだから、今度は逆に、私なんか長野県の出身ですけれども、長野県のような過疎地帯では、病院へ行くのに、自動車はない、歩いて行くわけにもいかない、一時間も自動車に乗らなければ広域市町村圏でつくった病院へ通うことができない、あるいは学校へ行くこともできないというような側面も出てきているわけなんですね。そういうところは、やはり広域市町村圏という名のもとに、実はその中の中心的な都市、人口の多い、経済的にも力のある都市、そこへいろいろなものが集中されてくる、そういう側面も持ってくるわけなんですよ。やはりそこのところを考えていかないと、この複合事務組合にしても広域市町村圏にしても、これは必ずしも地域住民の利益にならないという側面も持ってくるのではないかというように思うわけです。私のほうも、この法案が出ましたものですから、実は長野県のほうの広域市町村圏で、まあ長野県というのは過疎地帯もありますので、若干人口急増地帯とニュアンスが違うものですから、ここでいろいろ研究してみたわけなんです。  そこで、長野県に佐久市というのがあるが、ここは広域市町村圏の中心都市になっておるわけです。南北佐久が一緒になって、そして目玉の市が佐久市と小諸市になっているわけです。  そして佐久市の議会で市長さんが、これは佐久広域行政組合の組合長ですけれども、こういう発言をしているわけです。「自治省におきましても、当然広域市町村圏設定してやるには将来は全部かきねを取り除くべきだと、こういう考え方にあるのでありますが、」「二市二郡の広域市町村の中でかきねを取り除くという方向で、われわれと議会と一体制でまいらなければならぬと思います。ことに発展的解消という問題になりますと、人口二十万をもつ新しい大きな都市を建設するんだという心がまえで、仕事を進めてまいらなければならない」。  「かきねを取り除く」というのはどういう意味か、これは市長に直接聞いてみなければわかりませんけれども、しかし、要するに、二市二郡の市町村のかきねを取り除くというのは、やはり市町村連合かあるいはさらにもう一つスケールの大きい合併か、こういうことを考えているというよりほか道がないんじゃないかというように思うわけです。それがしかも、「自治省におきましても」と、自治省の出向している職員のようなことを言っておるわけですが、これについてはどういうようにお考えでしょうか。
  18. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 この佐久の市長さんが「かきねを取り除く」ということばをどういう意味でお使いになったか、それはまあ御本人に聞いてみなければわからないことかと存じますが、いま先生の御指摘になったように、市町村連合とか、さらにもう一歩進んだ大合併ということも「かきねを取り除く」ということばで表現しようと思えばできることではないかと思います。現に三十年代の初めの町村合併が行なわれましたときに、かきねを取り除くということは、ひとつ大同団結しよう、合併しようということばにだいぶ使われたということもございます。  しかし、それを現在の事態に合わせて最も妥当に解釈をする場合は、かきねというのは、よそ者意識、隣村は隣村、自分の市は自分の市だ、別だ、こういう隔てる意識、これをひとつこの際捨てようじゃないか、こういう意味にとっていただきますと現在の広域市町村圏考え方にぴったり合ってくる。  つまり、先ほど申しましたように、広域だけをうんと強調する場合は、それこそ広域市町村圏とか共同処理とか、まどろこしいことを言わぬで、ひとつ合併しよう、大いに合併しなさいと推進するのが早道だろうが、そこで広域市町村圏をつくった意味は、さっき申しましたように、広域も、生活圏広がりとか社会経済の発達で大事だけれども、反面、それぞれの村の自主性独立性というのも、きめのこまかい行政のためにはこの際大切である。さらには、現在市町村の行なっております行政のうちには、それこそ広域でやらなくてそれぞれの市町村がやったほうが現実妥当性があるものも、小学校の経営とか保育所とかいうようにまだ一ぱい残っている。  そういう時期に、広域だけを強調して合併を進めたり連合を進めたりするよりも、それぞれの自主性をもってやるほうが妥当なものはそこでやって、しかし広域をもってやらなければならない仕事は確かにどんどんふえてきているので、広域をもってやらなければならない仕事を消化するために、他町村意識と申しますか、他人意識というかきねを取り除いて一緒に共同して仕事をしようじゃないか、そういう趣旨でそのことばが使われたとしたら、いまの広域市町村圏考え方には合致しておりますし、ぜひそういうふうに運用していただきたい。また御相談その他あれば、そういう方向での仕事のしかたについて御助言なり御参考の意見を申し上げる、そういうことで今日までも運用してまいりましたつもりですし、今後もそういう趣旨で運用してまいろう、そう思っておる次第でございます。
  19. 町村金五

    町村国務大臣 実は私、複合一部事務組合のことについて、この法案を御提案申し上げるに際して部内説明をいろいろ聞いて、私はこれは出してしかるべきものだというように当時判断をいたしたのであります。  この法案に関連をしていろいろ御質問を先般も伺い、きょうもまた伺いながら感じたことでありますが、いかにも自治省としては、現在の市町村のかきねを取り除いてしまって、将来は大合併をする前提としてこういうことをやっておるのではないかというお感じをたいへんお持ちになっていらっしゃるように伺ったのであります。しかし、実は自治省としてはそういうことは全く考えてもいないし、また考えるべきではない。地域の住民に対して市町村ができるだけきめのこまかい配慮のできる行政をやってまいるというのには、市町村合併をし、あまり大きなずうたいになった市町村は、少なくとも自治体として住民のために行き届いた行政をやるには不適当だという感じを私は深く持っておるわけでございます。したがって、十数年前に自治省が特に自治体の合併をずいぶんやらせましたが、これなども、場所によりましては人口だけを土台にいたしまして、八千人以下の人口のところは全部合併させるのだという一つ方針を打ち出したようであります。これが地方の実情にはかなり合わないところのものがあったということを私どもは感じておる一面もございます。人口だけでもって市町村の規模をきめてしまい、人口の少ないところは全部合併してしまうのだという一律の考えはまことに不適当であった。私は当時の合併方針については実はそういう感じを持っておるわけでございます。  したがって、確かに交通機関も便利になり、お互いの生活水準も上がってまいりましたので、先ほど行政局長が答えておりましたように、昔のように他の町村には生活的にはほとんど出ていかなかったという時代とは違って、確かにおっしゃるようないわゆる生活圏というものが広がっておることは事実でございます。しかし、生活圏が広がったからといって、市町村区域をその生活圏に従ってどんどん広げていくのだというところまでいくことは非常な飛躍であると思います。われわれ自身は、なるほど今日は世界的にもどこへでもどんどん出かけておるわけなんであります。昔とは全く違っておるわけなんです。だからといって、私どもが住んでおるところの地方自治体の区域を、ただ生活圏域広がりに従って広げていけばいいのだということは自治省としても全く考えていない。  今度の一部事務組合というのは、大体現在の市町村区域を、行政区域はそのままにしておいて、しかしそれでは住民のためにたいへん不便だというものを処理するための複合一部事務組合だ、実はこういうふうに私は考えておるわけであり、その点は、自治省が何か将来大合併をやる前提として、まずそのことはこの際は隠しておいて、当面こういうことから一歩前進させていこうという底意のもとにやっておるのだというふうに御判断を願わないほうがよろしいのではないか、こういう考えでおります。
  20. 林百郎

    ○林(百)委員 一応お聞きしておきます。  自治省考え方の中で非常に危険なのは、われわれの生活が現在非常に社会的に広域的になってきた。それはそうでしょう。飛行機で行けば大阪まで三、四十分で行けるわけですし、新幹線で行けば三時間とかからないわけですから、そうすれば東京と大阪を合併したっていい。その距離と時間との関係からいっては、二時間や三時間で行けるところなら一緒にしてもいいのではないかという考え方も出てくる危険性がある。しかし一方、われわれの生活がそういう広域的な側面を持ってきたと同時に、きめのこまかい、長い間の慣習に基づく生活感情だとか、あるいは病院の施設だとか、あるいは学校の施設だとか、あるいは伝染病の施設だとか、あるいは消防の施設にしてもそうでありますけれども、非常に広域だということで広域行政区域ができて、そこに一つだけの消防施設が中心的につくられるということによって、事実上は、同じ広域市町村圏の中における非常に遠いところに位置する部分の便益が犠牲になるという側面も出てくるわけです。  だからそこをよく考えていきませんと、われわれの生活というのは、そういう広くなる側面と同時に、その地域の身近な人たちがまとまって、身近な人たちの日常の生活の向上をはかりたいという気持ちも側面に出てくるわけですから、ただ生活が広くなるから広めるんだ、広めるんだということをあまり強調されることは、自治体の本来のあり方としては好ましくないのではないかと思うわけです。建設省で高速自動車道路をつくるとか、あるいは本四架橋を三本つくるとか、そういうことなら、各省のそういう観点の考え方なら、それはまたどうか知りません。共産党は別にそのことについて全部賛成とは言っておりませんけれども、しかし、その地域に住んでいる人たちの一人一人の要求になるべく沿うような、きめのこまかい日常の行政をするのが自治体なんですから、あまり広域的なことを強調されることについては危険があるということを私はこの際警告しておきたいと思います。  局長もまた大臣もそうおっしゃっておるのですが、第二次合併はいま考えていないとか、あるいはこの際これを基礎にして合併を誘導することは考えておらない、こういうように言っておるわけですけれども、しかし地方に行きますと、先ほどの佐久市の市長さんのおっしゃるように、自治省においても当然広域市町村圏設定し、あるいは将来は全部かきねを取り除く。かきねという意味局長さんの言うような意味のかきねならいいですけれども、行政的な区域を取っぱずして二市二郡全部を一つの自治体の行政区域にするというようなことになりますと、これはえらいことになりますので、そういう点を私は十分警告を出しておきたいと思います。  さらに実例を申しますと、市町村合併しましたいわき市や鹿角市など、広域的な市町村に対しても、これを広域的な市町村圏とみなして引き続いて必要な行政上の措置を講ずるということを考えているようです、私のほうのこの調査によりますと。それから広域市町村圏振興整備措置要綱を見ましても、合併連合等を考えていることは否定し得べくもないと思うのです。  全国でこうした広域市が生まれた場合には、当然今度は県の役割りが相対的に低下してくるということもありまして、これはきのう同僚の佐藤委員からも質問があったのですけれども、そういう広域の合併市が実現するということになりますと、いま持っている県の役割りが相対的に低下することになって、県の持っている役割りは一体どういうものかということがあらためて問題にされるとか、あるいは、そういう市町村行政を補完的にしておる府県ならばこれを合併してもいいじゃないか。さらには一つの、首都圏、中部圏、近畿圏というような圏にしてしまって、その首長は大臣を任命すればいいじゃないかというところまで連鎖的に構想が発展する可能性がないとも限らないわけなんで、そういう意味で、広域市町村圏についてもう一度自治省としては十分実情を考慮して考えてみ、そして、広域市町村圏でなければ財政的な援助をしないとかいうようなことで、財政的な面、そのほかの行政指導の面で、ただ広域的だというところだけを強調していくような自治行政をされていくということは、非常な危険な側面を持っているのではないかというように思うわけですね。  もっとも、大きな資本力を持った企業は、市場が広くなりますから、そういうところへ一つの大きな、たとえば長野県なら名古屋の大きなデパートの資本が進出してくるとか、高速自動車道路を通じて進出してくるとか、そういう場合、一つの広域な市があれば、消費力も相当持って市場も広いというような便益もあるかもしれません。しかし、そこに住んでいる住民にとっては、あまりに広過ぎるということがかえって日常の生活に不便を感じさせることになるし、それからあまりに広い市ができてき、それが財政的な援助を受け、財政的な力を付与されるということによって、府県が補完的な役割りを持つということになり、そのことが道州制に通ずる、そういう可能性も出てくることをわれわれは憂えているわけですが、その点についてはどういうようにお考えでしょうか。
  21. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 先生の御指摘はごもっともでございまして、私たちのほうも、まさにいまの先生の御指摘のようなところを考えまして広域市町村圏の指導と申しますか、設定をやってきたつもりでございます。  いま申し上げましたような、広域だけを強調するならば、個々の市町村まで早く大きな規模で合併せい、こういうことになるわけで、そうではなくて、いま先生のおっしゃったような大事なことが残っておりますので、それぞれの市町村自主性というのはちゃんと確保しておく。しかし、広域でやらなければならない仕事も国民の生活水準の向上とともにふえてまいりますから、そういうものを受けとめる機構として広域市町村圏というものを考える。したがって、先ほどの佐久市長のことばでも、「かきねを取り除く」というのを今日の市町村段階では、まさに、私が申し上げたような他村意識、他町村意識というものをこの際やめて一緒に協力しようじゃないかということにとっていただくならば、一番今日の状態に適すると存じております。  先々、たとえば十五年、二十年先に、もっともっと交通その他も進歩し、交通通信網も整備され、住民生活圏域もいまの段階よりもはるかに、思い及ばないように広がっていくという、そういう段階になって、それぞれの市町村が、もうこの際は一つの自治体になろうじゃないかという合意ができて合併するということはあるいはあり得るかもしれませんけれども、私たちのほうが広域性を特に強調してそちらに引っぱっていこうというつもりは現在毛頭ございませんので、先生の御指摘になったようなことを配慮しながら、逆に言えば、広域行政圏、広域市町村圏について行政機構を設けても、そこに何でも持ってこいではなくて、まさにみんなで共同してやったらいい合理性のあるものをそこに持ってくる。それぞれの市町村で、住民の身近なところできめこまかな行政をやることが適したものはそれぞれの市町村が自主的にやっていく。そういう運用をしてもらいたいし、そういう方向で今後も対処してまいりたい、こう思っております。
  22. 林百郎

    ○林(百)委員 ことばの上では非常にりっぱなことになるわけなんですが、現実をいいますとなかなかそういかないわけなんですね。  自治省の「広域市町村圏」というパンフレットを見ますと、一三ページに「公共施設を集中的に設置すべき公共施設整備の拠点地区を定める。」こう書いてあるわけですね。これは合理化やいろいろの観点からこういうことの必要な側面もあるかもしれません。しかし、これが実際のその地域の住民にどういう影響を及ぼしているかと申しますと、つまりその拠点になる市にはそういう施設、公共施設整備の拠点地区には施設が設定されるのですけれども、それがしかも周辺地区の、ことに町村の負担金によって施設がつくられることになるわけですね。ですから、人口が集中し、経済力があり、自治省考えている広域市町村圏の中核的になるその部分については、住民が非常な便益を受けることになる。しかし、これを利用することを半ば強制されて、費用を負担させられる周辺地区住民にとっては、その施設の拠点地区まで行かなければいかぬわけですね。広域市町村でなければ、各市町村でそれぞれなりの医療施設なりあるいは屎尿処理施設なりあるいは学校施設なりが持てるわけなんですけれども、こういう公共施設を集中的に設置する公共施設の整備の拠点地区設定して、そこへつくる。しかもそれは広域市町村圏としてやるべきだ。その市一つとしてはいけないぞというような行政指導をしていることもわれわれ事実知っているわけなんですよ。  そうしますと、長野県みたいに、たとえば下伊那郡なんという、一つの郡で高知県一県もあるようなところでこれが広域市町村圏設定されまして、そうして飯田市なら飯田市というところに病院が一つある。これは広域行政圏の病院だということになると、そこの病院に通うのに二時間か三時間も自動車で通わなければならない。しかしバスは、採算が合わないからといってもうバスは通らない。じゃ、マイカーはあるかというと、マイカーをそんなに農村のものがみんな持っているわけにもいかない。となると、この公共施設設備が、結局拠点地区設定された地域の住民には便益であるけれども、それから離れた地域の人たちには、費用は負担させられ、強制的にそこへ行くことはしいられるけれども、便益は受けないという側面が出てくるわけなんですよ。  そういうことを将来どういうように調整していくか。林さんは広げるほうだけは非常に強調なさるのですけれども、広げることによって出てくる矛盾、これがやはり地域の住民にとっては切実なんですよ。ことに人口の過疎地域では切実な問題なんですよ。これをやはり自治省としては考えていかないと、やたらにわれわれは広域地方行政について賛意を表するわけにいきませんし、今度の複合事務組合についてもやはり批判的な態度をとらざるを得なくなるわけなんですね。その辺、どうお考えになっていますか。そういう実情をお知りでしょうかどうですか。あまり山の奥には行かないのじゃないでしょうか、自治省の役人は。大きな市にだけは行くけれども、山の奥にまでは行かないということじゃないですかね。
  23. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 中央におって、さっぱり現地の実情を知らぬのじゃないかという御批判、あるいは一部そういうこともあるかもしれません。私たちもなかなか、過疎のほうの実情を拝見したいと思いながら拝見する機会に、あるいは時間に恵まれない面、あるいは不行き届きの点があるかもしれないことはみずからも反省する次第でございます。  ただ、いま先生のおっしゃいましたような配慮というのはほんとう行政の基本にあるべきもでございまして、この広域市町村圏設定し、その共同処理を促進するといっても、私たちのほうが広いほうだけを一生懸命やれとすすめているわけではございませんので、まさに広いところに集めるのが合理的なものを集めろということを言っておるつもりでございます。  たとえば、いま例にあげられました施設につきましても、個々の構成市町村一つ一つ単独に施設を持つという場合、それは施設の内容なり規模なり——たとえば病院ということを考えますれば、最近のたいへんな医学の進歩その他によって、ただ建物があって医者がおるだけの診療所からはだいぶかけ離れた、大きな機械設備を持ち高等な治療設備を持つような病院もこの医学の進歩に伴っては必要でございますけれども、たとえばそういうものを個々の市町村一つ一つ持てというのは、まさに負担能力、財政的な問題からいっても無理だ。かりにこういう場合に、これらを一緒にして、たとえば中心地の市に、ある程度といいますか、相当高度な施設を持った病院をつくる。それぞれの市町村にはまた診療所なりを設けまして、通常の病気はそれぞれの地元でまかなえる。しかし、非常に珍しい複雑な病気については、その広域市町村全体の力を合わせまして、施設の整った病院を一つまん中に持つ、そういうのが合理的である場合もございます。病院を一つしかつくらないで、あとの者はみんなそこへ通えというと、いま先生のおっしゃるような、まさに地元は恩恵に浴さないということがありますが、医療体系というものを広域的に考えます場合には、いま申しましたような比較的簡易な診療所というのは要所要所に全部つくる。あわせて今度は交通体系を整備して、道路なり、病院車の運搬がスムーズにいくような整備を一方しつつ、中央にはより高度な施設をみんなの力を合わしてつくる、こういうことであればそれなりの合理性は持てるかもしれない。  そういうような合理性を常に考えてこれは運用したいし、そういう趣旨で御相談に乗りたい、そういうふうに考えているわけでございまして、何度も申し上げますが、私のほうは広域のほうだけ重視し、そのことに引っぱっていこうという気はほんとうに毛頭ございません。合理的なものを広域でやり、それから住民の身近できめのこまかいものは、それぞれの市町村が独自の御判断なり独自の力でやっていただく。これらをあわせて、住民に身近なもの、今度はもう一つ高度なもの、両方のサービスを行き渡らせたい、そう思っている次第でございます。
  24. 林百郎

    ○林(百)委員 御意見を聞いていると、はなはだどうもりっぱな御意見ですけれども、現実がなかなか林さんのおっしゃるようにいっていないから問題があるわけなんです。  私は、広域市町村圏の中核的な市になっているところもやはりそれなりの悩みを持っているということを申し上げたいと思うのです。それは財政的な問題で、おまえのところは中核的な都市なんだから広域市町村圏の全体の、たとえば特殊老人ホームもおまえのところが中心になって持て。しかしそれは広域市町村圏の特殊老人ホームだぞというようなことになって、費用はそこが負担しなければならない、そういう側面も出てきているわけなんです。私は決して、中核都市だけが便益を受けてあとの人は疎外される、したがって中核都市ばかりが利益を受けているとも言えないと思うのですね。これはまた複雑な側面がいろいろあると思うのです。いままで実は広域行政事業を推進するために、一圏域当たり二年間に限って二千万円か何かの補助金を出しておりましたね。これは一市町村当たりにすると、割ってみるとどのくらいになるわけなんですか。
  25. 田中和夫

    ○田中説明員 一圏域二千万でありますから、五カ町村のときには四百万当たりになりますし、二十カ町村であれば百万当たりになるということでございます。
  26. 林百郎

    ○林(百)委員 これは二年で打ち切ったわけですか。
  27. 田中和夫

    ○田中説明員 そうです。
  28. 林百郎

    ○林(百)委員 また来ると思って期待していたところが二年で打ち切られたという中核都市がだいぶありますので、だから財政的にもいまの広域市町村圏をもう一度洗い直してみなければならない問題が中核都市のほうでもまた起きていると思うのですね。だから、これは広域市町村圏を推進するというよりは、いまある現状をもう一度洗い直してみて、中核都市になっているところは中核都市になっているところの問題をどう合理的に処理していくか。また中核都市から離れた辺地にある町村の持っている問題はどういう問題かということを、もう一度ここで自治省としてはきめのこまかい洗い直しをしてみる必要があるのではないかというように思うわけなんですね。  一つの問題として足の確保の問題について、これは運輸省の方が見えておられるのでちょっとお聞きしたいと思います。第十三次答申では「交通通信手段の発達に伴う広域行政の要請に対処するため」といって広域行政を推進するということになっている。要するに交通通信手段が発達してわれわれの社会生活が広域的になっている。これは林さんも先ほどおっしゃっていたわけでありますが、そこで住民の足がはたして確保されているかどうかということを少しきめこまかく考えてみたいと思うのです。  そこで運輸省にお聞きしますが、最近における過疎地域の住民にとって必要な交通手段であるバスの現状ですね、これは採算がとれないために路線を廃止せざるを得ないという問題があちらこちらに起きていると思いますが、この趨勢は全国的にどうなっているのでしょうか。全国的な情勢と、あわせて、もし長野県の情勢でもわかったら説明していただきたい。
  29. 真島健

    ○真島説明員 私ども実は資料として、毎年の全国的なバス路線の廃止状況というのは一応まとめております。これによりますと、最近の二、三年間、前年度末の免許キロに対しまして約一・五%程度の廃止がございますが、この廃止を、実は先生のおっしゃるような過疎地域と都市地域というふうな分類をしておりませんので、この数字がそのまま過疎地域の状況を反映しているかどうかということを正確には申し上げられませんので、これまた後ほど調査をいたしたいと思います。  長野県について調べてみますと、実は四十八年度中におきましてはバス路線の廃止はございません。しかし全国的には、過疎地域においてやはり会社側の経営の悪化ということである程度の廃止が行なわれているのではないか。ただ、私どもそういう場合に、地元の市町村の方々と運行しておるバス会社の間での十分な話し合いのつかないものについては認可をしないという方針で進めております。
  30. 林百郎

    ○林(百)委員 全国的に廃止になった路線の数字か何かわかりませんか。それが最近どういうような傾向にあるかということ。
  31. 真島健

    ○真島説明員 非常に正確な数字ではないのでちょっと申しわけございませんが、四十五年度と六年度の数字だけがいままとまっておりまして、四十七、八年について、バス事業が非常な状況におちいっておりますので、綿密な調査を続行中でございます。  四十五年と四十六年の状況について申し上げますと、大体前年度末の免許キロが十九万キロ前後でございますが、それに対しまして四十五年度が二千七百キロ、四十六年度が三千六百キロ、一・五%から二%くらいの廃止がございます。ただこれは、新しい道路などができまして旧道路から新しい道路にバスの路線が変更になるという場合に、旧道路のやつが全部廃止に入って数字が出てまいりますので、先生のおっしゃるような意味で、もうちょっと綿密に調査をいたしませんと正確ではないかと思っております。
  32. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣、これは大臣に警告を発しながら申し上げておきたいと思います。  モータリゼーションが発達したので、何かすべての人が自動車を利用できる、バスにしてもあるいはマイカーにしても、こういう考えから広域市町村圏の整備のためには道路をよくすればいいのだというようなことで、自然と中心の町に住民が集まってくるように考えられるわけですけれども、実際はそう単純にばかりいかない。辺地で生活している人々は、やはり日々の通学や買いものなどで、特に生活力の弱いいわゆる弱者と称する人たちを中心に足の問題が非常に深刻になってきているわけですね。現在のところ、これらの問題が住民の負担や当該自治体の負担ということで解決されております。広域行政組合がこれらの解決に乗り出しておるというところまではいっておらないわけですが、かりにあってもずっと先の計画になっているということで、広域市町村圏が、足が早くなったから、だから道路を改善すればいいといっても、それだけで問題が解決されない。モータリゼーション、マイカーの恩恵を受けない人人が辺地にたくさんいるということも考えて、広域市町村圏の問題を考え直していく必要があるんじゃないか。  もう一つ、ごみ処理の問題。これも私のほうで調査して報告を受けたのですけれども、佐久地域の広域市町村圏で、要するに、佐久広域事務組合というのがありまして、ここで計画して、広域事務組合でごみ焼却場を設置しようとしましたところが、反対が起きているわけです。反対の理由をよく調べてみますと、幾つかあった清掃の一部事務組合を一本化しよう、こういう計画のもとで、広域のごみを一カ所に集めて、そしてそこで焼却する、こういう計画を佐久広域事務組合が立てたわけです。この結果どういうことが起きているかというと、辺地のごみを山すその中継点までおろす。そしてそれをさらに、車の燃料費を費やして中心の焼却工場まで運ぶ。今度は工場近くの住民は何と言っているかというと、何で人の家の庭先に他人のごみを持ってくるのかというような反対連動が起きてくる。また一方市町村では、そういう広域的な地域のごみ焼却工場設置ということでばく大な負担金を迫られている。したがって、現在の焼却事業費の負担の上にそういう大きな広域地域のごみ焼却場をつくらなければならないという新しい負担と、二重の負担に苦しんでいるという問題が起きておるわけなんです。  こういうような問題、機械的に、広域だからそこの広域地域を一本にして清掃事務を一本化していく、こういうことが必ずしも地域住民の期待に沿っておらない。地域住民としては、いまある一部事務組合のそれぞれの焼却場のほうがむしろいいんだ、こういう運動が起きているようなんです。これは私のほうで行って実情を調べてきたわけなんですが、こういうことがある。  それから消防についても、何でそんな広い大きな地域を一つの組織として消防をつくらなければならないのか。まあ、十分、不十分は差があっても、狭い地域でそれぞれの消防組織を持って、それでいいじゃないか、こういう声のほうが強いわけなんです。  だから、自治省のこの複合事務組合というのが、これが適合するようなところもあるかもしれません、それは人口の密集地帯あるいは急増地帯もあったり過疎地帯もいろいろありますから。しかし、日本の国の全体から申しますと、いま地域住民が望んでいるのはむしろもう少しきめのこまかい、地域が一定範囲の一部事務組合のそういう消防だとか焼却だとか病院だとか、そういうことのほうを望んでいるほうが強いんじゃないでしょうか。  そういう意味で、最初の議論に戻りますけれども、いま自治省野党の反対を押し切って、どうしてもこれを入れてくれ、そして区長公選もという、そこまで無理していまここでどうしてもやらなければならないという情勢かどうか、自治省としてはやはり一応洗い直してみる必要があるように私は思うのです。もっともこれは長野県の調査だけですから、いや、もっと全国的にはこうだということは自治省がつかんでいるならつかんでいるで説明を願いたいと思いますけれども、長野県の佐久の広域圏の事務組合を調べたらそういう声が起きているのです。それで反対運動が非常に起きて、いまの狭い地域でも一部事務組合のほうがいいんだという声が強いのですが、こういう点はどうお考えですか。
  33. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 いまの、先生の例にお引きになりました佐久でございますか、そこのごみ焼却の問題ですが、元来ごみ焼却の問題というのは、この広域市町村圏でなくても、たとえば東京都の杉並区と江東区というように、常に問題が起こりやすいテーマであることは間違いございません。焼却場をつくられる付近の住民は何が何でも反対の気持ちになりましょうし、さりとて、ごみというのはどこかで処置しなければ住民全体が困る。非常にむずかしい問題を含んでいる問題でございますけれども、いま先生が例に引かれましたように、まさにそれぞれの適当な規模の組合でやるほうがいいんだということであれば、これを無理して広域市町村圏に持ってくる必要は全然ないと私は思うのでございます。  ですから、おそらくそういう議論が出てきておるのは、一方においては従来のものでわりあいと合理的に処理しているんだけれども、何か人件費がかかり過ぎるとか、それだけじゃ負担にたえなくて、これは広げて一本にやったほうがたとえば経費が安くあがるとか、何か合理性があってそういう計画が出る。出はしたけれども、またその過程においてはえらい二重の負担金になってみたり、あるいはよく調べてみたら案外それが合理性がない。むしろ、ごみを一生懸命燃料費を費やして運ぶよりも、従来の小さい規模で、それぞれそこで処置して何ら支障がないならよっぽどそれのほうがいいわけでございますから、そういうときに、私たちのほうが広域を強調して、何が何でも広域一本でやれという指導をするつもりは毛頭ございませんし、長野県の実情に即して、地方課あたりでも、ごみならばそういうふうに従来やっていたのが一番合理的であり、支障がなければそれがいいだろうと指導すべきだと思います。  そこで、今度設けようと思います複合事務組合も、この制度ができたから、とにかく三百二十幾つの広域市町村圏でみんなこれを使え、できるだけここに仕事を集めろなどという指導は全然するつもりはございませんで、一応制度としてはこういう複合事務組合をつくった。同じ、先生の長野県でございましても、私も詳しく実情は存じませんけれども、一つ広域市町村圏にそういう一部事務組合が三十もある。これは三十を全部統合する合理性は全く乏しいと私は思いますけれども、そのうちの幾つかのものがあるいは統合できれば、三十のうちのたとえば十くらいが一つの組織でもって支障なく合理的にやれるということになれば、それだけでも、管理者は一人で済むし、議会も一つで済むというような合理化が行なわれる。それが結局住民のプラスになり福祉に貢献するものなら使っていただきたい。従来のとおりやるのが住民の福祉に最もつながるなら、何もこの制度を使っていただく必要はない。その実態に合わした合理的な運用をしていただきたいし、またそういう指導をするつもりでございまして、これをつくったから何が何でも全部これを使えというような指導はもちろんいたしませんし、現実にいま先生が御指摘になった例のようなところではまさに何も共同処理する必要がないところでございますから、それはそれで従来のやり方でやっていただくのが最も合理的であり、住民の福祉に貢献するものであろうと思います。その場の実態に合わした使い方をしていただきたいし、そういう指導をするつもりでございます。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 運輸省の方はけっこうですから、お帰りください。  林さん、国会の答弁じゃそうおっしゃいますが、事実上は起債や補助金や——補助金は自治省が出す場合よりは各省が出す場合が多いのですが、起債やいろいろな点で、それはなるべく広域市町村でやれ、広域市町村でやれという行政指導を実際はしているんじゃないですか。やっぱりそれの行き過ぎがあるように思いますので、それはもう一度よくひとつ洗い直していただきたいと思うのです。  厚生省の方がお見えになっておりますから厚生省に聞きますが、無医地区圏ですね、無医地区を持っている圏域、この広域市町村圏はどのくらいですか。これはわかりますか。
  35. 金田一郎

    ○金田説明員 無医地区を有する広域市町村圏数は二百六十二でございます。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、それはパーセントにすると七〇%ぐらいになるということですか。
  37. 金田一郎

    ○金田説明員 そのとおりでございます。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 自治大臣、そんなようなわけで、広域市町村圏はできたけれども無医地区が七〇%だというわけですね。これに対して自治省はどういう指導をしておるかというと広域市町村圏考え方で、中心となる市に総合病院のような医療施設をつくって、あとは患者移送車や救急車で圏域をカバーする、こういう考え方のようですね。指導はそういう指導のようです。無医地区をなくしていこうという厚生省の考え方はこういう考え方と私は考えています。こういう方向自治省としても考えておられますか。それで厚生省もどう考えているか、ちょっとその点をお聞きしたい。これは国民の健康に関する重大な問題で、広域市町村圏で無医村が七〇%もあるということはこれは捨ておきがたいことですから、両方の意見を聞いておきたい。
  39. 金田一郎

    ○金田説明員 厚生省といたしましては、一応広域市町村圏という単位を無医地区対策の今後の方向として考えているわけでございますが、これはなぜそういうことになったかと申しますと、現在お医者さんがなかなか僻地、無医村へ行ってくれないわけでございます。かなりの多額の給料を出しましても、子弟の教育だとか、あるいは日進月歩の医学技術に追いつかないということで行ってくれないわけでございます。そこで厚生省といたしましては、当初は無医村に診療所をつくる対策を進めてまいったわけでございますが、せっかく診療所をつくりましても開店休業になりまして、お医者さんが来てくれないというところが出てきているわけでございます。  そこで私どもといたしましては、人口の多い無医地区につきましては診療所をつくる。しかしそれ以外の地区につきましては、病院のほうから医師を派遣するとか、あるいは無医地区に患者移送車を配置しまして、病人等が出ました場合には直ちに中心の地区へ患者を移送する、そういったことを従来から実施してきたわけでございます。  それと同時にもう一つ、ある一定単位のところに、県庁所在地といいましても遠くなりますので、やはり広域市町村圏程度の単位のところの病院を強化いたしまして、その病院へ来れば、お医者さんが日進月歩の医学技術に追いつくことができるような研修もできる。また、お医者さんは医学的に孤立することを非常におそれておりますので、無医地区にいる若いお医者さんが患者の検査をいたしました場合に、その検査データがはたして正しく判断できるかどうかを、病院と通信施設等によりまして相談できるようなことも考えていこう。そういうことで、どうしても一定の無医地区を応援するための中核病院のようなものが要るであろう。これを私どもは広域市町村圏単位に求めまして、今後の対策を進めていこうと考えているわけでございます。
  40. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 医療機関の配置の専門的なことはいま厚生省でお答えになったこと、そのとおりだと私も思います。  それで、私も同様でございますけれども、この進歩した医学に、高度な治療方法その他に、ひとしく全国民がその恩恵にあずかるようになることはもちろん理想でございます。そのために、個々の市町村に全部高度の病院ができればこれにこしたことはございませんけれども、医師の問題とか財政の問題でそれが不可能な場合に、広域市町村圏の中心になるところにそういうものを整備していただいて、それからあとは直ちに患者移送車というわけに当然まいらぬと思いますので、それぞれある程度の集落には当然診療所があってしかるべきだ。いま厚生省のお話しのような、非常に住民の少ない無医地区についても、むずかしい病気の場合は患者移送車ということで中央の病院まである程度早く来れる。そういう考え方で整備するのはたいへん合理性があるのではないかと考えております。
  41. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がだいぶたちましたので、厚生省の方に簡単にお聞きしたいと思いますが、無医地区を持っておる市町村が、国や府県に要望していることはどういうことなんでしょうか。
  42. 金田一郎

    ○金田説明員 無医地区を有する市町村の七〇%を占める六百八十九の市町村が、無医地区に対する医療対策につきまして国及び県に対する要望事項ということで、私どもに対していろいろ出てきております。その要望内容といたしましては、医療従事者の充足対策に関する要望と補助制度に関する要望に二大別されるわけでございます。  医療従事者の充足対策に関する要望につきましては、医師の充足対策が、私どもが照会いたしましたものに対する回答市町村総数の三八%を占めております。次いで保健婦を置いてほしいという要望が一二%を占めております。  また、補助制度に関する要望につきましては、現在の国庫補助率等の引き上げ、基準額の増額等、現行補助事業内容の充実強化が四六%、また地域市町村の中心的医療施設の施設整備など新規補助の創設、これが一〇・四%、それから道路とかあるいは橋の新設改良事業に対する補助を要望しておりますものが一六%、ざっとこういう状況でございます。
  43. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、やはり中心的な地域に新規の医療施設をほしいというのは一〇・四%で、むしろ、無医地区を持っておる市町村としては、その市町村が何とかして独自でそこに医師や看護婦を充実し、それから補助率を上げてもらいたいというパーセントのほうが飛躍的に高い、こう見ていいのでしょうか。
  44. 金田一郎

    ○金田説明員 地元の方々といたしましては、人口が幾ら少なくとも、とにかくお医者さんがそこにいてほしいという気持ちがあることは事実でございますが、実際問題としてお医者さんはどうしても居ついてくれないというのが現状でございますので、先ほどから申し上げたようなことをどうしてもやらざるを得ないということでございます。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと大臣にお聞きしますが、実情がこういうわけで、お医者さんが居つく、居つかないは別として、広域的な地域へ中核的な近代的な医療施設をつくるということもさることながら、これも一〇・四%要望があるわけですけれども、むしろ、各市町村にできたら医者に定着をしてもらいたい、それから保健婦も置いてもらいたいという希望のほうが強いわけなんですね。これを充足してやることが必要だと思うわけなんですけれども、こういう点についてはどういうようにお考えでしょう。これは国民の健康に関する問題ですから、大臣に答弁していただきたいと思います。
  46. 町村金五

    町村国務大臣 このことはいまも厚生省のほうからお答えがございましたように、どんな僻地におられる方でも、身近にお医者さんがほしいということはこれはもう当然の要望だと私は思うのであります。ただ実際問題としては、お話が出ておりますように実際には医者もなかなか行ってくれない、保健婦等も行ってくれないというようなことで、やむなく、どこか中心のところに病院ができれば、そこへ何とか医療のときには行くのだということは、これはもうやむを得ざることだと、私はこう思うのでございます。  したがって、先ほど来だんだんお話が出ておりますが、自治省としてのこういった広域市町村圏をつくっていくということについての考え方は、そういった広域市町村圏の中に包含をされておる多くの人口の希薄な、いわゆる僻地といわれておるようなところに必要なものを置くことができないから、それを中心都市に置くということによって解決をしていこうという実は考えだけのものではもとよりないのでありまして、先ほどもちょっと消防のお話が出たのでありますが、消防などにつきましても、先ほど下伊那のお話が出ましたけれども、たとえば下伊那のような広い地域のところで、中心のところにちゃんとした消防施設があるならばあとはたいしたものをつくらぬでもいいじゃないか、こう申しましても、火事のような一刻を争うようなときには、やはり比較的近いところに相当な消防施設を置かなければならないということはこれはもう言うまでもないのであります。そういった点の自治省としての指導方針なり、あるいは財政的な裏打ちをするという場合にはそういうところを相当きめこまかく配慮しておるのであって、広域市町村圏の中心のところに何でもかんでも一切集中的に持っていって、あとはそれを利用させればいいのだというような簡単な考え方自治省としては持っておるはずは全くない、実は私はかように考えておるのでございます。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。  最後に、これは一部事務組合の議会の問題ですけれども、これは同僚の佐藤議員も質問されたのですが、一部事務組合の議会と本来の自治体の議会との関係で、われわれとしては自治権が侵害されるというように考えて、それでこの法案について反対の態度をとっているわけです。  一、二の例をあげていきますけれども、たとえば組合議会の構成と議員の選出の問題ですけれども、自治法の二百八十七条の規定によりますと、組合議会の組織と議員の選出方法は規約で定めるとされているわけですけれども、実際には、私のほうが現にいま行なわれている広域行政区域に行きまして、佐久地域の広域行政組合の場合を調べてみたのですが、議員定数が三十四名ということになっております。それで市は議員が三名、町村は二名ということになっているのですね。そのうち一名は議長ときめられているわけです。こういうわけですから、各構成市町村を代表してくる議員の数は非常に少ないわけですね。二名で、しかも一名は議長ですから。そうしますと、たとえば社会党だとか共産党だとか、本来の町村へ戻ればちゃんと議会に議席を持つ、そういうところの会派の議員が事務組合に出られないわけですね。  それからもう一つの問題は、今日の一部事務組合でも、一部事務組合で処理する事務については市町村議会において十分の審議をする機会が与えられておらないということですね。要するに簡単な報告で処理されるという可能性があるわけなんですね。しかも、今度の複合事務組合によれば、自治体が本来やることが実質的に複合事務組合へいろいろと持ち込まれてきて、その事業量も非常に多くなるし、地域住民にも切実な影響を及ぼす問題になってくる。しかもその審議は組合の議会で行なわれる。組合の議会で行なわれた結果だけが報告されるということになりますと、そうすると、本来の自治体でまだ絶対多数を取っておらない社会党だとか共産党だとか、こういう会派の意見というのはどうやって反映するのでしょうか。大体議長さんというのは、地方へ行きますと自民党系の方が多いので、そうすると、自民党さんの意見だけで事務組合が運営されるということになると、これは民主化に逆行することになるわけなんですね。しかもきまったことはあとの報告だけだということになりますと、各自治体に本来いる社会党共産党の議員というのは、そういう重要なことの議決内容審議に参加できないということになるんじゃないでしょうか。この点、どうでしょう。
  48. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 その問題は、今度設けます複合事務組合のプロパーの問題ではなくて、要するに一部事務組合制度全般に共通する問題であると考えます。  そこで、確かにおっしゃるように、たくさんの会派の意見を反映しようということで一部事務組合に出る議員の数を多くすれば、十カ町村も入った一部事務組合の場合にはやはり膨大な議会というものができる。それもまた事務の効率化、合理的な運用について問題がある。さりとてそれを少なくすると、もとの町村に返った小会派が出られないという問題は、まさに理論的には指摘されたとおりでございます。  ただ、私たちがこれについて考えておりますのは、一部事務組合というのはあくまでもそれ自体が独立な団体ではなくて、もちろん独立な法人格を持っておりますけれども、その実質は、関係市町村がまさに意思の合致に基づいた共同処理機構の一つである。そこで、一部事務組合一つ一つの議案についての審議ということには関係市町村の議員の方は参加できないことはおっしゃるとおりでございますけれども、一部事務組合の全体的な運営については、それこそ運営自体が、毎年毎年関係市町村が出します一部事務組合への負担金その他によって、それを基礎にして、かつ関係町村の合意の上で仕事が運用されている。そういう事態から、その関係市町村が、その一部事務組合の運営について今後どういうふうに改めるべきか、どういうふうに持っていくべきかという意向を関係市町村の議会で御議論になって、関係市町村の意向として今度は一部事務組合に反映させる。いわば間接になりますけれども、そういう手段のもとに一部事務組合にチェックを加える以外には現在どうも手がないと思います。  それじゃまずいからということになりますと、これを共同処理するための機構をさらに飛び越えて合併というところまで行ってしまわないと話は徹底しないことになりますが、それではやはり個個の市町村自主性なり独立性なりその他の問題がございますので、個々の市町村はそのまま置き、そこでやることが合理的な仕事はそこでやらして、ある種の仕事について共同処理機構をやろうとする場合は、それぞれの町村を代表して数の少ない議員が出ておられる、その議員を通じてそれぞれの市町村の意向を反映させる。その意向を反映させる方法について、それぞれの町村の議会で十分御議論していただくという間接的な手段を通じてやる。またそれである程度、十分と言ったらあるいはしかられるかもしれませんけれども、関係市町村のたとえ小会派といえども意向というのは政治的に反映していくものであろう、そういうふうに考えております。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、この複合事務組合ができますとそれは間接的になるのじゃないでしょうか、各自治体の持っている議会の意思の反映というのは。直接的には複合事務組合の議会が審議してきめるわけなんです。そこにはおそらく、町村では議長とあるいは首長が出ていく。あるいは市でも三名ですから、おそらく絶対多数の与党が出ていくというだけですから、あなたの言うようなことにはならないのではなかろうか。しかも財政的に大きな負担を持つ中核的な市の発言というのが非常に強いわけなんですから。それでわずか二名しか出てない、議長と首長だけが出ていくというようなそういう形では、そういう財政力の弱い、しかも仕事に対してはいろいろ切実な要求を持っておるところの町村意見がその複合事務組合の議会に反映されない、そういう要因が出てくるように思うのですが、どうでしなうか。
  50. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 それはございますが、複合事務組合だけの問題ではございませんで、現在の一部事務組合制度そのものがもうそういう要素を持っておるわけでございます。したがってそこでは本来の住民意思の反映が、それぞれの個々の町村の議会のように直接でなく、町村というものを間に介した間接になるということはまさに御指摘のとおりでございます。  ただ、明治以来この一部事務組合制度がございまして、それが二カ村の学校組合という規模の小さいものから、十何カ村も入った大きな医療組合その他もございますけれども、そういう点、比較的今日まで問題なく運営されてまいりましたのは、個々の町村の仕事と違って、一部事務組合に持っていく仕事というのは、それができますときに、関係町村が全部、これは一緒にやろうじゃないかというある種の一つのコンセンサスの上に立ったものであるがためであろうと思います。  その意味では、今度の複合組合をつくりましても、その複合組合に預ける仕事をどうするかということはそれぞれの市町村で十分御議論になっておきめになることだと思いますので、一つのそういうコンセンサスの上に立っておって、一部事務組合の政策自体が、たとえば主義主張といいますか、ものの考え方によって右に行ったり左に行ったりするという事項は比較的少ないのではあるまいか。病院とかごみ処理とか、一定のきまった仕事について、まず出だしがコンセンサスの上に立っており、毎年の運営がそれぞれの市町村の負担金の上に立っておる、そういう事情から比較的いままでそういう点についての問題が少なかったのだと思いますし、それはこの複合事務組合ができても同様であろうというふうに考える次第でございます。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう一部事務組合が持っている矛盾が、複合事務組合になるとなお拡大される危険があるように思うわけなんですね。たとえば、複合事務組合に参加しているある町村の議会ではノーという意見になった、それが複合事務組合の議会へ行って特殊な議決方法、まあこれは規約でいろいろきめるんでしょうけれども、イエスということにきまってしまった。そうすると、本来ノーであった町村の議会の意見というものは複合事務組合へ行くとイエスの中へ巻き込まれてしまうわけじゃないんでしょうか。しかも自分関係のない仕事にまで関与されることになるわけなんですから。こういう制度を……(「それが民主主義だ」と呼ぶ者あり)いや、民主主義の原則はそうじゃなくて、自治体がノーであったらノーで、いまの自治体の単位でノーならノーを貫かせるべきであって、自治体がノーであるにもかかわらず、複合事務組合へ行けばイエスになるということになればそれは自治体を形骸化することになる。いみじくも自民党の議員の諸君はそれが民主主義だと言うけれども、自民党の諸君の言う民主主義というのはそういう、自治体を形骸化することが民主主義になることになるというように私たちは心配しているわけですね。だからこの部分については与野党がちっとも一致できないんで、だから区長公選だけを早くやれと最初に言ったわけなんですけれども、そういう点はどうなんですか。全く市町村自主性というものは形骸化されていくんじゃないでしょうか。
  52. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 そもそも一部事務組合というのは関係市町村の合意の上に初めて根拠があり基礎があり、その合意がくずれてしまうと基礎を失ってしまうので現実に動かなくなると思います。したがって、数字的にはいま先生のおっしゃいましたような懸念は確かにあると思いますが、今度の複合事務組合の場合に、たとえば議決について特例を設けることができるということ、あれに基づいて規約で定めるのも一方法でございまして、複合事務組合であれば全部が共通した事務ではございませんから、複合事務組合の議会の過半数の賛成のほかに、その事務関係している町村出身の議員の過半数も要るとかというようなことをきめてまいれば、関係のないところからの数の多数決によってということも幾ぶんか緩和されていくということで、そういう特別な議決のきめ方その他によってある程度配慮もできるように実は考えている次第でございます。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 あと二点ほどで私の質問を終わりたいと思います。  私のほうの調査によりますと、広域事務組合職員ですね、ことに事務局長というような非常に中枢的な地位の人が、県の職員が天下ってきて、それが自治省の意向をくんで指導していくという方向が見られますので、実は佐久の広域行政組合の事務局長もそうだったわけですね。ひとつこれを調べていただいて、そういう本来の組合を構成している自治体から出るならまだしも、それがまた上から天下ってきて、それがしかも中枢的な地位にあるということになりますと、ますますそれを構成している自治体が形骸化される可能性がありますので、これはひとつ、ここですぐ数字を出せと言っても無理かもしれません、わかっていたら答弁していただきたいし、その点はひとつ洗い直していただいて、自主的に、やはり一部事務組合にしても、できるだけその地域の自治体の意思が反映するような方向へ行くような努力をする必要があると思うのですが、その点、どうでしょうか。
  54. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 数字のところは現在押えておりませんけれども、こちらが必ずそういうところは県から優秀な人間を天下らせろというような指導は絶対いたしませんし、かりに県から人を借りてまいりまして、借りてといいますか、もらってまいりましても、私たちのほうがそれを通じて、さっき先生がおっしゃるような、何でもまとめてしまえというような指導も毛頭するつもりはございません。県から人を借りてくるというのは、ある意味ではその人はその地元出身かもしれませんし、あるいは県の行政に長く携わって、ある意味では、地域から出るのと違ってその地域性というものにわずらわされないとか、ある意味ではある程度広い視野を持っているとかいうところを買って県から人を下さいということをいわれる場合もあると存じますが、それが地域の実情を無視してどんどんかってにやっていくということであれば困りますので、そういう運用はされないように、あるいは県としても十分配慮していただくと思いますけれども、私のほうも常に全体の運用は気をつけていきたいと考えている次第であります。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 ではこの一問で終わります。  大臣、いろいろ質問をしてまいりましたけれども、いまある広域市町村圏の一部事務組合でもいろいろ問題がありまして、それを構成している自治体の自治権というものがだいぶ薄められている危険性があるわけなんですが、いま出されておりますこの複合事務組合によりますと、これはどういうものでも持ち込むことができるようになっている。それはまた、その組合を構成している自治体の一部がノーであっても、一部がイエスならばその仕事を組合としてやることができる。その組合の議会には、さっき私が申しましたように各自治体を代表する者が二名かそこいらしか出ない。それは一人は議長で、一人は多く首長だのというようなことになる。  そこで、その組合できまったことは、この法案によりますと事後、議決があったときに通知するということになって、議決があった後に議会の審議になる。林さんの言うには、その前にいろいろ問題がわかるから、議会であらかじめ審議していくこともできるじゃないかと言いますが、法文からいうと、当該議会の議決があったときは議決を報告するということになっている。となりますと、これはやはり野党のわれわれが心配しているように自治体の自主権を侵害することになるんじゃないか。  いまどうして急いで、各党が一致しているこの区長公選、何回も言うのですが、それをもあえて無視して、これを抱き合わせでいまどうしてもやらなければならないのか。区長公選ならきょうでもきまるわけなんですが、それを、これがあるためにわれわれは東京区民皆さんの期待に、一日でもできることが、こたえられなくて、こうやって審議を続けなければいけないという実情にあるわけですね。これをこの東京の千二百万の区民要望している区長公選とどうしてもくっつけて、これをいますぐやらなければならないという必要性ですね、これはどうしてあるのか。それはいろいろの審議会の答申などにあるということはわかりますよ。しかし、いまある一部事務組合でもやっておりますし、その一部事務組合でも、広域市町村圏事務組合へ行ってみますとやはりいろいろ、事実上そこを構成している市町村の自治権を形骸化するような危険な傾向が見られているわけなんですから、これを当然除いて、共産党社会党の言うように、区長公選をまずきょうでもきめて——きょうきめるといえばすぐきまりますから、それからこの問題はもう少しいろいろ洗い直して、そして審議にかけるということがどうして考えられないのですか。私はどうしてもわからない。非常に意地の悪いやり方だと思うのですよ。自民党各党が一致して協力できるものへ、どうしても野党賛成しないものをくっつけてきて、おまえはこれを食いたかったらこの毒も一緒に飲めと言うのと同じだと思うのですよ、このまんじゅう食べたかったら二の毒も飲めというのと。それはわれわれは選択せざるを得ないわけなんで……(「東京だけの問題ではない、全国の問題だ」と呼ぶ者あり)いや、全国の問題であるからこそ、自治権を形骸化するようなことをわれわれは慎重に審議せざるを得ない。こんなものを、東京都民が一致して要望しているものとくっつけてこられては困るわけなんですよ。そこを、どういうことなんですか。
  56. 町村金五

    町村国務大臣 先ほど来いろいろ御質疑をかわしてこられたのを私もよく伺っておったわけでありますが、自治省としては、いま御指摘のございましたような、地方自治体の自治権を形骸化するというようなことは実は全く考えていないのでありまして、もしそういうようなことをあえてするということであるならば、自治省みずからの自殺行為と考えざるを得ないのでございまして、さようなことはもとより考えておりません。  先ほど来、いろいろな点について御懸念についての御指摘がございました。この点は、失礼でございますけれども、やや思い過ぎをしておられるのではないかと感ずるところも私はございますけれども、しかし運営上については、ただいま御指摘になりましたことはわれわれとしてもひとつ今後十分念頭に置きながら、いやしくも、この複合一部事務組合をつくることによりまして、これを組織しておりまするところの各単位の地方自治体の自主性がこれによってそこなわれるというようなことは絶対に防止していかなければならぬ、こういう基本的な考えで私どもは進んでまいりたいと考えておるのでございます。したがって、野党の皆さまの言われておりますることと私どもの考えとの間には、実はあまり大きな違いは実質的にはないのじゃないかというふうに考えておるのでございまして、そういった趣旨から申しましても、この法案は、ぜひひとつ御賛同をいただきたい、こう考えておる次第でございます。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 私の質問は終わります。
  58. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 この際、午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  59. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。折小野良一君。
  60. 折小野良一

    ○折小野委員 今回の地方自治法の一部改正について御質問申し上げますが、まず最初に特別区制に関する改正につきまして……。  東京と申しますと、これは何といってもわが国において最大の大都市でございます。今日、地方行政の問題の中で大都市行政というのは一つの大きな問題になっておるわけでございますが、その東京におきまして特別区制というものがあるということは、大都市行政一つ方向として特別区制というものがあるということなのか。あるいは、東京都は日本の首都である、そしてまた江戸時代以来の歴史的な経過を持っておる、こういうような面からいたしまして、特別区制というのは東京だけの特殊な制度、こういうふうに認識をされておるのか。自治省における基本的なお考えをまずお伺いいたしておきたいと思います。
  61. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 先生のおっしゃいます、むしろ後段に近い感じを私たち持っております。東京都の特別区というのは多少沿革的な意味がございまして、だいぶ長い間、法人格を持ち、議会を持っておったという歴史がございますが、そのほかの大都市、名古屋、大阪、その他はずっと行政区で来ております。  大都市行政というのは、その部分部分自治意識独立性というものと、それから全体の統一性というものの調和を常に考えていかなければならないものでございますので、今回の特別区の改正というのは、その意味でいえば、どっちかといえば部分部分独立性を強めるという方向にいくことは確かでございます。この改正意味からして、あるいは先々、つい数年前の東京と同じように名古屋市が育ち、大阪市が育った場合に同じことを考える余地があるかということは、予想される点ではございますけれども、現在のところ、特別区というのは沿革その他から考え東京都だけのものである。これを近い将来、名古屋とか大阪とかあるいは北九州とかに広げるという考え方は、現在のところ全くございません。
  62. 折小野良一

    ○折小野委員 次に、現行自治法における特別区の区長の選任制、この問題に関連をいたしまして、特別区の性格というのが法律的にいろいろと問題になっておるように聞いております。判例からいたしましても、東京都の特別区は憲法にいういわゆる地方公共団体でない、こういう意見もあり、あるいはまた憲法にいう地方公共団体である、こういう説もあるようでございますが、今回の改正によりまして、そのような説の根拠になる制度というものが基本的に一つ変わってくるわけでございます。  したがって、そういうことになった場合、すなわちこの改正案が通りまして、そうして区長公選というものが実施される、こういうことになった場合の東京都の特別区というものは、憲法にいわゆる地方公共団体であるかどうか、自治省としてはどういうふうにお考えになっていますか。
  63. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 今回の改正によりまして、特別区は区長公選制も採用する、事務も原則として一般の市並みに近づけるというような意味からいえば、特別区の自治体としての独立性を強める方向であることはまさに間違いございませんが、しかし政府といたしましては、今回の改正によって特別区の性格が変わるという、従前憲法上の自治体でなかったものが憲法上の自治体になるとは考えておりません。  その理由は、一応独立性を強め、区長の選任方法区民の直接選挙にまかせることにはいたしましたものの、なお特別区二十三区を通じての一体的な事務を、他の団体では市が行なうべき事務を都に保留するものが幾つか残っておりますし、さらに課税権の問題、それから財政上の独立性につきましても、従来より強めますものの、なお東京都の調整機能というのを残しておる。それから都と区の間の事務についても、都に調整条例をつくるという権能はそのまま残しております。そういう意味では、大都市としての一体性という意味でなお都に保留されている事務なり権能なりが相当残っておりまして、したがって、特別区の法的な性格としては従来の延長上にあるというふうな考え方に立っております。
  64. 折小野良一

    ○折小野委員 憲法の第九十三条には、公選された議員による議会を持つということと、それからその団体の長が直接住民によって選挙をされる、こういう二つの要件を掲げて地方公共団体というものを規定をいたしておるわけでございます。その内容の実態につきましては、ただいま御答弁がございましたようにいろいろな程度はあろうかと思いますが、憲法が明らかに示した要件からいきますと、今度の区長公選制によって二つの要件を特別区は備えたということになってまいります。といたしますと、憲法が掲げる地方公共団体であると、こういうふうにはっきり申していいんじゃないでしょうか。従来からの考え方の延長線上にあるということは、なおそこに疑問があるということなんでしょうか。
  65. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 憲法は、憲法でいう地方公共団体に当たるものはこれらの要件を備えなければならないと書いてございますので、その裏返しでこれらの要件を備えたものを憲法上の地方公共団体と呼ぶのだという考え方はとっておらないわけでございます。  そこで東京都の特別区の性格を見ますと、大都市行政のいわゆる個々の区域の自治権、独立性と、それから全体の統一性との調和の上に常に立つ。逆にいえば、個々の区域が仙台とか広島とか、ほかの市に比べましてある程度、統一性の前に譲歩して、その権能の一部を都に譲っているという形になりますので、これが極端になります場合は自治体としての性格を失って行政区になってしまうかと存じますし、それから法人として法人格を持ち、それぞれの独立の機関を持つ自治体としての性格を備えながらも、全体としての調和性の前に譲歩して一部権能が少ない、ないしは課税権も少ないという場合、都の内部機構という性格と独立の自治体という性格が、その度合いによっていろいろ判断されるわけでございます。  今回、先生のおっしゃるように、直接公選の議会、長を持つという性格は備えますが、それによって憲法九十三条にいう地方公共団体に直ちに特別区がなるというふうには考えておらないわけでございまして、一つの特別法人として、憲法上の地方公共団体に保障されました二つの機能は備えますが、そのほか全体の権能とか財政権その他から見て、なお大都市機構の一環であるという性格も残しておる。その意味で、今回の改正が特別区の性格を変えるものではないという考え方に立っておる次第でございます。
  66. 折小野良一

    ○折小野委員 それじゃもう一つ前の段階でお伺いします。  憲法九十三条におきましてはただいま申し上げましたような地方公共団体の要件というものを定めております。これを受けました地方自治法の第一条の二におきましては、地方公共団体を普通地方公共団体特別地方公共団体というふうに分けて、具体的に特別地方公共団体はどういうものだということをここに書いてあるわけでございます。その特別地方公共団体の中には東京都の特別区も入っておりますし、一部事務組合、こういうものも入っておるわけでございます。それを比較してみますと、形式的な要件と実質的な内容という問題はあろうかと思いますが、憲法の九十三条の規定と地方自治法の第一条の二の規定、これとどうも符合しない面があるように考えられるわけなんですが、この点は、憲法と自治法との関係として別に問題はございませんのですか。
  67. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 憲法が九十三条に「地方公共団体」ということばを使っておりますが、それの定義はもちろんしておりませんので、もっぱら解釈にゆだねられるわけでございます。  そこで、これを解釈いたします場合に、憲法にいう地方公共団体というのは、いわばゼネラルなといいますか、一般的な、しかも総合的なと申しますか、こういう地方公共団体をさしているものであって、わが国の場合には府県と市町村がこれに当たる。そのほかに特殊な目的を持つ地方公共団体として、自治法に規定する法人格を持った団体として、御承知のとおり特別地方公共団体として一部事務組合、全部事務組合、役場事務組合それから財産区、事業団と、こうございまして、そのもう一つの種類として東京都の特別区があるわけでございます。ですから、この場合は憲法上にいう地方公共団体には当たらないけれども、自治法の中の一つの体系、わが国の地方制度を定める体系の一つとして、一つの特殊目的を持った地方公共団体という中に特別区が位置しておる。ただ、この特別区は特別地方公共団体のうちでは最も普通地方公共団体に類似しておる形態を持っておるわけでございまして、この方向と申しますか、それがどんどん進んでいく場合には一般の市と何ら選ぶところがなくなって、これを憲法上にいう地方公共団体に見ざるを得ないということも、制度のいじり方によってはその段階にいくことが予想されます。現在はまだそこまではいっておらない。ということは逆に、東京都の二十三区の区部においては、ある面では都が一般の市町村の背負うべき機能を背負っておる。それから特別区も今度事務がさらに移譲されまして、その機能を背負うものが大きくはなっておりますが、それは他の市町村の域にまではまだ達していない。そういう意味でこういう改正を御提案しているわけでございます。  したがって、自治法の中に、憲法でいう地方公共団体ではないけれども、地方公共団体としてあげております幾つかのうちの一つだというふうな見方をすれば、必ずしも憲法と自治法の一条の二との間に矛盾があるとは言えないのではないか。憲法上の地方公共団体として都道府県、市町村考え、さらに特別な目的を持った地方公共団体としてそれ以外の幾つかの種類を規定する、こういう考え方統一的に理解できるのではないかと考えておる次第でございます。
  68. 折小野良一

    ○折小野委員 憲法の九十二条と自治法の一条の二、この二つの規定を並べて考えました場合に、地方公共団体というものの実質的な性格を考えれば、大体いまのような御説明は成り立とうかと思いますが、法的な形式という面からいきますと、自治法において普通地方公共団体特別地方公共団体とに分けておる地方公共団体というものが、直ちに憲法上の地方公共団体にそっくりそのまま同じものだというふうにはまいらぬような気がいたします。そういう面からいたしますと、何もきょうの問題じゃないのですが、自治法できめております地方公共団体のきめ方というのは、地方公共団体と準地方公共団体、むしろこういうような形に規定すべきものじゃなかろうか、こういうふうに考えるのですが、いかがでございますか。
  69. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 まさにそういうきめ方と申しますか、たまたま現在の地方自治法特別地方公共団体といっておるものは、いま先生のおっしゃいました準地方公共団体に当たるものに当たっておるわけでございます。ただ、すでに廃止をされましたけれども、特別地方公共団体の中にかつて特別市という制度がございまして、これが現実にもしどこかで施行されておるとすれば、この特別市は憲法上の地方公共団体といわざるを得ないというものであったはずでございます。したがって、自治法でいう特別地方公共団体というのは、「特別」と名前がついておるから憲法上のものではないということでは全くございません。特別地方公共団体のきめ方の中には、かつての特別市のように憲法上の団体考えざるを得ないものが入ってくる可能性も十分にあるし、現在の東京都の特別区も、これからの改正によってより自主性独立性が徹底してまいりますれば、あるいは憲法上の地方公共団体、一般の市町村と変わらないと考えざるを得ないようなことも将来はあり得るのじゃないか。そういう方向改正を今度御提案してございますが、現在はなお徹底を欠いている。そういう意味で従来の性格の延長と考えつつ、また大都市の一体性とそれぞれの区の独立性の調和をどこに求めるかという手探りの上の改正でございますので、憲法上の性格そのものは変えないという考え方の上に立って対処した次第でございます。
  70. 折小野良一

    ○折小野委員 次に、現在の制度のもとにおきまして、区長の選任の方法に事実上準公選、こういう方法が実施をされてまいりました。この方法というのは、これは現行法制上は本来企図されていないやり方であろうというふうに考えるわけでございます。こういうような事実上の問題に対するいろいろな評価、いろいろな考え方、こういうものもあって、今回の区長公選制の採用ということになってきておるのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございますが、今日まで事実上行なわれてきた準公選、こういう事実についての自治省としての見方、とらえ方あるいは評価と申しますか、そういうものについて一般的な御意見をまずお伺いいたしておきたいと思います。
  71. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 いわゆる準公選というのは、区長公選制が廃止された直後から、東京都の特別区の住民の間に区長自分の手で選ぶべきだという一つ住民運動というのが起こりまして、結局はそれのある種の高まりからこういう姿にまで発展していったものと受け取っております。  そこで、準公選自体を考えますと、法律的には多分に疑問があるということをわれわれは言い続けてまいりました。現在の、区議会で都知事の同意を得て選ぶというのも一つの選任制度、言ってみれば間接選挙のような形でございまして、それなりに一つ意図一つ意味を持っていたわけでございます。そこで区民が直接選挙するのでなくて、区民の代表の議員の多数でもってきめる。間接に区民が選ぶ。しかもそれも、東京都区一体性の見地から都知事の意思もそこに加わる。都知事の同窓を得てという、これも一つ意味のある制度だったろうと思っております。  これに対して準公選というのは、本来議会が白紙で選べるべき、言ってみれば議会に完全に権限がゆだねられているその区長の選任について、議会にある種の制約を加えることになる。たとえば準公選条例のきめ方いかんによりましては、これははっきり法律意図しないもの、法律違反ともいえるものでございまして、準公選条例によって、最高点の当選者をもって区長にすることが議会に義務づけられるようなことになっては明らかに違法であるといわざるを得ない。しかし現在制定されておりますのは、少なくとも字句上は投票の結果を参考にするだけにとどまっておりますので、言ってみれば、区議会が自分で候補者をきめる場合に世論調査をするのと同様のものではないかという見方もあるし、条例のきめ方で、参考にするといって、区議会の自由意思を拘束しないのだということをしておればはっきり違法とは断定しにくい。しかし実際には、投票が行なわれ、最高点者がきまりますと、事実上は区議会が拘束を受けることも間違いない。そういう意味では現在の法制度の予期せざるもの、法的には多分に疑問があるものとは思っておったわけでございます。  ただ、これは純粋な法律理論でございまして、実際問題としては、これだけの住民運動が起こり、現に準公選条例が制定され、現に準公選が実施されるという事実は受けとめなければなりませんし、その事実を肯定いたします場合には、法的にそうはっきりしない姿のままでとどまるよりも、この辺で法的にもむしろはっきりした姿にしたほうがよりベターと申しますか、住民のほうにも疑問点がないということで、今回の改正に踏み切ったわけでございますので、この改正成立いたしますればこの準公選というものはその姿をなくしますし、いま私が申し上げましたようなあいまいな点、疑問というものも一掃される、そういうふうに考えておりますので、従来の準公選についてはそういう考え方で対処してまいったわけでございます。
  72. 折小野良一

    ○折小野委員 この準公選につきましては、各区におきまして、いろいろな内容はあろうかと思いますが、条例のできておるところもあるようでございます。それに対する考え方、ただいま局長からお話がございましたが、違法の疑いがある、こういうような見解はすでに発表されておるようでございます。そういうような場合に、今回の場合はこの公選制が採用されることによってこういう事態は一応解消されるということになりますでしょうからそれで解決つくといたしましても、すべてがそういう形で解決がつくとばかりは言えないだろうと思うのです。そういうふうな違法の疑いがあるような条例ができる、こういうような場合におきまして、いわば上級団体と申しますか、都あるいは自治省、こういうような立場におきましては、そういうものに対して本来どういうふうに処理すべきだというふうにお考えになりますか。いままではいろいろと見解は述べておられるようでございますが、しかしそれは見解を述べたにとどまるし、片一方のほうはそれを聞いたにとどまるということのようなんですが、一般的に、こういう場合に対して何らかの措置を必要とするという事態は間々起こってくるのじゃなかろうかと思います。そういうような場合の、この場合でいきますと都知事なりあるいは自治大臣なり、そういうような立場における処理の方法と申しますか、あるいはなすべき責務と申しますか、そういうものはどういうふうに考えたらよろしいのでしょう。
  73. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 法治国におきます最低の原理は、現在有効な法律が制定されております間は、その法にもとる行為があればそれを是正するということに全力を傾けるのが国民の責任であり、行政当局の責任であろうと考えます。ただ、法律もやはり人がつくったものでありますから、すべての意味で万全ではないということは十分考えなければならないし、社会経済情勢の進展その他によって事情が変更してまいりました場合に、現在の法規をたてにとってといいますか、それ一点ばりで対処することがはたして全体としての妥当性にどうかというような問題にもしばしばぶつかる。そういう場合には、現在の法制に違反する状態がある間はそれの是正につとめることが責任であると同時に、そういう状態があるという根本的原因を探りながら、その法制度の現状への適応ということ、言ってみれば法制度改正ということも常に研究を怠ってはいけないという気がいたします。  この場合も、区長の準公選ということは法的に疑問がある、条例の制定字句いかんによってははっきり違法であると考えられます場合に、その違法であることを表明し、それを善導する努力とともに、一方において、社会情勢の変転、それから住民運動の高まりというものも考慮に入れた場合に、今回は法改正によってこれに対して対処するという態度をとったわけでございますが、常に法改正によって態度をとる、あるいは常に現在の法律を金科玉条としてそこへ引っぱり込む、どちらに徹することも、そのときの事態に対してはあるいは間違いであることもあるのではなかろうか。そういう反省を常に続けながら、法治国としての最低の基準というのを常に守っていくということにつとめなければならないと考えております。
  74. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまの問題に関連をいたしまして、こういうようなことが起こったその原因は、それぞれの区議会における区長選任権、これを行使しなかった、あるいは行使することができなかった、そこに一番の根源があるように考えられるわけなんですが、権利を正しく行使しないということによっていろいろな事態が発生をしてまいります。それをそのままやむを得ないということで放置するのか、あるいはその不行使に対しまして何らかの方法を講じてあくまでも行使するように強制をするのか、あるいは不行使によるいろいろな弊害その他をなくすために、その権限を行使しなかった組織自体を変えてしまうのか、いろいろなことが考えられると思うのですが、行政法上、こういう権限の不行使というものについては一般的にどういうふうに考えたらいいのか。  たとえば個人でございますと、当然なすべきことをやらないで一定の損害あるいは危害を及ばすという者に対してはいわゆる不作為犯、こういうような考え方も一応成り立つわけでございます。しかし、事は行政法上の問題でございますから、個人に対すると同じようなわけにはまいるまいと思うのです。ところが、議会が当然なすべき権限をなさないというのは、議会そのものがその使命を果たしていないということになるわけなんですが、そういう点については、この問題に限らず、もっと何とか考えていかなければならない面があるのじゃなかろうか。そういう面については自治省としてはどういうふうにお考えになっていますでしょうか。
  75. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 この前の、公選制廃止しまして、国会で現在の制度法律改正していただきました時点では、まさか区議会がこの権限を行使せずに、一年以上にもわたって放置するなどということは全く考えられもしなかったことであろうと思います。区長を選ぶということは、いやしくも自治体として最も基本的なものでございますので、各区の議会でそれを選ばないで放置するなどということは考えてもみなかった。現実に議会の議長は、もめながらも必ず選んでおられますが、場合によれば議長よりもよほど重要な職責であるべき区長というものを議会が選ばないなどということは考えてもおりませんでしたし、したがって、こういう事態に対して何らかよそから強制する手段ということもあえて法律には規定していなかった。  ところが現実の状態では区長を選ばないままに一年以上も過ぎる。一年は極端でございますけれども、三十日、四十日というのはざらに例が出てまいりました。これは区議会として非常に不適切な行為であったと思うわけでございますけれども、その実情をいろいろ調べてみますと、同じ党派の間にもいろいろ派閥的な対立もあり、その間の話がつかないで、という形になってまいります。かりにそういう形でも、区長というものが一日でもなければ済まないものであれば、議長のように議長がきまらなければ議会活動が動かぬものであれば、何とかしてでも選んだのかもしれませんが、放置したまま助役なり代理でもって動いておったというのが現実でございますので、この制度は、当初つくった当時思いもしなかった欠陥を、現実の場合に当てはめてみる場合に蔵しておったということも言えるわけでございます。しかし、一つの合理的な間接選挙という制度でもございましたし、いまの選任方法をそのままにしておいて、選ばない場合の規定を入れるというのも一つ法律改正方法かとも思いますけれども、あわせてまた逆に、そういう区長不在期間が長かったということも因となり果となって、区長住民が直接公選するという運動が高まったということも考え合わせまして今回の改正に踏み切ったわけでございます。  そこで、御質問のこういう場合にどうするかということは、まさにその場その場で最も妥当な方法というのを常に考え行政指導に乗り出し、あるいは法改正考える。その一つ方法として今回の改正案を御提案した次第でございますから、その場その場の状況に応じた適切な解決方法にわれわれは努力すべきものだと考える次第でございます。
  76. 折小野良一

    ○折小野委員 いずれにいたしましても、これまで準公選ということが行なわれてきまして、その結果として今回の公選制の採用ということにつながってくるわけでございますが、このことは、結局公選制実現するための住民運動の成果と申しますか、そういうふうに評価するという見方もできようかと思いますが、行政運営の責任者という立場における自治省としてはどういうふうにお考えになりますか。
  77. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 成果というとそこに何かの価値観が入っているような気がいたしますが、現実にわれわれのほうでは、成果と申しますか、こういう改正考え、またこれに踏み切る結果をもたらした大きな原因として、区長の不在と、それに刺激された住民運動というのがあるわけでございます。  そこで、区長をきめるには公選制にするのが、住民運動もあるし、手っとり早いというか、最も明快な方法であることは間違いがない。しかし東京都の特別区の場合は、かつて公選制度をとり、そこにいろいろなデメリットを生じてそれをやめたという経緯がございますので、いかに住民運動の声が高かろうと、あるいは不在期間があって現在の制度の運営がまずかろうと、その前にデメリットがあってやめたという経緯考えないで公選に踏み切るということはどうしてもできない。  そこで、それらをあわせ考えまして、今回公選に踏み切ると同時に、たとえば事務の移譲であるとかあるいは人事権の確立という改正を同時に行なうことによって、前に公選制であった時代のデメリットの愚を再び繰り返すまいという努力を払いつつ、こういう方向改正を決意したわけでございます。それは住民運動の成果といいますか、その重要な原因であり、区議会の運営がまずかったことと、それに刺激された住民運動の高まりというのは、これらの改正を決意する大きな動機となったことは間違いございません。
  78. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまのお話にもございましたように、東京都の特別区の区長の選任の方法につきましては、過去におきまして公選制も経験をいたしました。そしてまたそのデメリットを改めるという意味におきまして、いわば間接公選制といいますか、それに近いような、議会が知事の同意を得て選任をする、こういうような現行法も経験をしてまいったわけでございます。そして再びここに公選制を採用しようということになったわけでございますが、方法につきましてはいろいろと考え方もございましょう。そしてそれぞれの制度にはそれぞれの制度の一長一短というものがあろうかとも思います。世の中が進むと同時に、それに対応する行政もまたいろいろ変わっていかなければなりませんが、しかしそれはやはり過去の経験を踏まえて、そしてまた過去にありましたいろいろなメリット、デメリットを検討しながらよりよいものにしていくというのが当然なことであろうというふうに考えます。  そういう面からいたしまして、今回の改正は当然、今日までの公選制のいろいろの難点を克服しながら、よりいいものということで考えられたことだというふうに考えますが、具体的には、前の公選制と今回の公選制との間の差と申しますか、そしてその中においてどういうような難点をどういうふうに改めて今回取り入れたのか、具体的な点がございましたらひとつお知らせをいただきたいと思います。
  79. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 ただいまもちょっと触れたつもりでございますが、前の公選制を採用したときのいきさつは、何といっても占領時代において、戦前のわが国の体制をいわゆるアメリカ流の民主主義体制にあらゆる面において改めるというその一環として、とにかく地方自治体の独立制を強め、従来任命制であった知事も公選制に改める、市町村長も直接公選にする、婦人に参政権を与えるという一連の民主化の一つの項目として区長公選制も採用した。そこで何らかの考慮を欠いていたとすれば、公選制は採用しながら、特別区というものの立場が公選制の首長をいただくのに値しないと申しますか、少し不十分なままで公選制に踏み切ったという面があるのではないかといわれておりまして、その具体的なものとして、区に与えられた権限とそれから区の財政的な自主性の欠如、そういったものがあげられるわけでございます。  これは具体的にどういうことかと申しますと、公選で出てまいります以上、区長さんはいろいろ自分のやりたいことを公約に掲げて、住民の共感を受けて当選をしてこられる。ところが、当選をして区長のいすにすわってみると、重要な権限はほとんどみんな知事が持っておる。自分の公約を十分に果たすだけの権限が与えられていない。かつ自分の部下である職員はほとんどが都の配属職員といいまして、区長さんが人事権を持たない職員が幹部にすわる。幹部どころじゃない、当時は九〇%以上配属職員だったようでございますけれども、人事権も持たない。財政的な自主性も与えられない。そういうところに非常にすわりごこちが悪いと申しますか、違和感がありまして、そこに具体的には都と区との間の財源配分、権限の配分をめぐって争いが絶えなかったという事態が出てきたということがいわれておるわけでございます。  そこで今回は、先ほど申しましたような経緯を経て公選制を採用しますにつきましては、できるだけ従来のそういう都と区の不和、紛争を再び引き起こさないためにということで、公選制の採用と同時に、まあそれまでも住民の身近な事務は身近なところでということでだいぶ区へおろしてまいりましたが、今回は保健所をはじめとしてできるだけのものをおろす。公選で出てこられた区長さんのできる仕事の幅をできるだけ広げるということ。それから人事の問題につきましても、長年やってまいりました都の配属職員制度というものもこの際思い切って廃止をして、区長さんの人事権も強化する。財政権も、財政調整制度というのはなお一部残しておりますけれども、従来に比べて、より区の自主性が高まるような規定も入れまして、そういう点でも強めていく。従来の経緯にかんがみましてそんな点に考慮を払いまして、権能の拡大と自主権の強化と区長公選というのを三本の柱にして改正をしようということで、御提案をしておる次第でございます。
  80. 折小野良一

    ○折小野委員 今度、区長公選制を実施するのにあわせまして、事務をできるだけ区におろすということで具体的にいろいろな措置がとられておるわけでございます。基本的には、先ほどの御答弁にもございましたが、普通地方公共団体である市町村にできるだけ近寄せる、こういうような考え方の改善が考えられておるようでございます。それはそれなりにけっこうだと考えます。すなわち、いわゆる自治権の実体というものをできるだけ与えていこうということだろうと思います。  ところで、東京都は御存じのように非常に過密な大都市でございますので、その実態というものも当然考えられなければならない。その辺である程度やむを得ない面もございますが、しかしできるならば市町村、と申しますよりか、市と同じような権限を区に与える、こういう方向考えてまいりますと、今回の改正で残されたものにつきましても、経過的な問題もあるいはあるかもしれませんが、今後なお考えていっていい面がいろいろとあるのではなかろうか。  たとえば財政の問題につきまして、都区財政調整制度というのが都の条例によって設けられ、今日まで運営されております。これは今後もそのまま継続していくことになるわけでございますが、しかしこれも考え方におきましては、一般の市町村に対する地方交付税の制度を運用することもできないではないんじゃなかろうかというふうに考えられます。  あるいは税源といたしまして、固定資産税とか都市計画税あるいは法人税割、こういうものはなお都が持つということのようでございますし、これに関連をする都市計画事業等はやはり都がやらなければならない面が非常に多いということは一応言えるわけでございますが、こういうような財源につきましても、できるならば区のほうで一般の市町村と同じように徴収をして、そして都との間の財政調整という意味において、いわば区から都に財源をやる、こういう形もとれないではないんじゃなかろうか。  あるいは衛生関係で、伝染病院とか隔離病舎、こういうものの設置、運営は都に残すという意向のように聞いておるわけでございますが、こういうような問題も、各地において、それぞれの市町村が単独でやる場合以外に、一部事務組合でその設置、運営をやっていくという例は現実にも非常に多いわけでございます。といたしますと、東京都の特別区をできるだけ市町村と同じようにして、したがって隔離病舎や伝染病院等につきましても一部組合でやっていくという手もできないことはないと思うのであります。  そういう面からいたしますと、いろいろな面について実質市町村と同じようにしていく、そういうふうに自治権の拡大というものをもっともっと広げていく範囲は相当大幅にあるのではなかろうか、こういうふうに考えます。経過的には、いろいろございましょうからある程度はやむを得ないと考えますし、また将来そういう方向もあろうかと思うのでございますが、自治省としては将来にわたりまして、そういう面についてはどういうふうにお考えになり、どういうふうにしていこうと考えておいでになりますか。
  81. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 今度の改正は、特別区を、できるだけ一般の市に近い権能を持ち、その自主性を強化しようという方向であることは間違いございません。しかし、その方向のみが正しいと思っているわけでは実はございませんので、大都市制度がかかえている永遠の課題として、各部分部分自主性独立性、自治権内容の強化ということと、それから全体を通ずる一体性の確保ということの調和を常に考えていかなければいけない。これが大都市制度の持っている一番むずかしい面だと存じます。しかも現在これだけ過密になったこの二十三区部分東京都というものを考えます場合に、たとえば大気のよごれ、交通渋滞一つを取り上げてみましても、全体として統一的な行政を進めなければ解決できない問題が、減るどころか、ますますふえているという現状でございまして、むしろ世界の大都市制度、たとえばロンドンとかパリとか、大きな都市を考えますと、いかにして一体性を強めるかを苦労しているというのが、あるいはいまの時代の流れかもしれないとも思うような状態でもございます。  こういう面にありまして、今回の改正としては確かに一つの試みと考えざるを得ないのでございまして、いままでの区長の選任制の実態その他から公選制をとるに伴いまして、先ほど言ったかつての公選制のデメリットをカバーするために、その自治権を強める方向もあわせてお願いしておりますけれども、これはとりもなおさず、大都市の一体性の確保という点からいえば一体性の確保がしにくくなると申しますか、その辺の弱体化につながるものでもございます。そこで、現在考えられて、おそらくこれはだいじょうぶと思われるものはあげて区に渡し、区の自主性を強めるという方向でここまで現在出してございますが、なお二十三区を通じての一体性の確保のためにどれだけ都へ残すべきか、あるいは財政の自主権についてもどれだけのものを都に保留すべきかということは、一つの調和の問題としてその妥当点を考えていかなければいけない。これがわれわれの苦しい立場でございまして、もし特別区の自主性を強めることのみが善なりとすれば、いま先生のおっしゃったような体制をあげて今度やってしまうしまうということも十分考えられますけれども、この一体性の確保という点でまたたいへん配慮しなければならない問題がふえているという現在においては、現在御提案しましたのが一つの限度だと考えております。  今後、社会情勢もいろいろ変化してまいりますし、都民意識区民意識もさらに向上してまいります場合、より独立性を強めつつ、かつ一体性をそこなわないという段階になりますれば、いま御指摘になりましたような体制をさらに考えることもあり得ますし、反面、今回相当独立性を強めたが、これがまたばらばらになって、大都市行政一体性の上で非常に支障ができるということになれば逆の方向考え考えなければいけない。そういう意味で、改正案の御審議をお願いしているのはいまの段階でわれわれは最善と思っておりますけれども、これは一つの試みと考えざるを得ないので、これが絶対正しいものであり、これ以上も以下もないというようなおこがましい気持ちは持っておりません。
  82. 折小野良一

    ○折小野委員 現実には、独立性と都の一体性と申しますか、そういう面との調和をはかりながら現実に即してやっていかなければならない。そういう点は変わらないと思いますが、私は、自治権を与えるということは、やはりそれぞれの区あるいは区の住民に責任を感じてもらうということが一つなければならないんだと思うのでございます。したがってそういう面におきましては、ただ単に、独立性を与えることは一体性という立場からいってマイナスである、こういうふうに断定することはできないんじゃないか。独立性を与える、あるいは自治権を与える、その範囲内におきまして十分責任を感ずる。東京都の中の一部である、そしてまた自分たち区民であると同時に都民でもある。こういうような立場から考えますと、自治権を拡大するということは、今後の大東京行政運営の面におきましても決してマイナスではないんじゃなかろうか。むしろそういう面を新しい区の行政の中に注入していく、期待をしていく、そういうところに今後の指導の重点を置いていくべきではなかろうか、こういうふうに考えます。  もちろん今後の経過というものもございますし、それに応じていろいろと対応策を講じていかなければならない、こういうこともあろうかと思いますので、今度の改正によって問題の解決がついたということだけでなしに、これをひとつ契機といたしまして、東京都における行政あり方あるいは大都市における行政あり方、こういうような面から今後も十分関心を持っていただき、あるいは積極的ないろいろな施策をやっていただいたら、こういうふうに考えます。こういう点につきまして、大臣の基本的なお考えを少しお伺いをいたしておきたいと思います。
  83. 町村金五

    町村国務大臣 このたびの特別区の区長公選制に移行するということに関連をいたしまして、先ほど来行政局長からもお答えを申し上げておりますように、区民のためにできるだけきめのこまかい行き届いた行政を推進させるという意味で、従来都にあったところの権限等をかなり区に移管をするということも、当然これと関連して行なわれておるわけでございますが、先ほど来だんだんお話のございましたように、東京都というものは、非常な狭いところにまことに膨大な都民であり区民が毎日の生活をいたしておるわけでございますので、そういった点を考えまして、結局、都民あるいは区民の日常の生活が現在より以上になおよく、福祉が向上されるというところに今度の改正の大きな重点があることは申し上げるまでもございません。  したがって、このたび区長公選を行なうということで、従来都にあった権限を区にまかせる。これによって、この狭いところにこれだけたくさんの人々が生活をしていらっしゃる、そのためには当然一体的に処理をしていかなければならぬという行政が非常に多いわけでありまして、そういうものも無理をして区に持っていって、そのためにかえって都民の生活が逆の結果をこうむるといいましょうか、いまおっしゃったデメリットが出てくるのを当然避けていかなければならぬということは言うまでもないのであります。  要は、都民、区民というこの一千万近い人口の方々に対して、都政の立場、そして区政の立場、両方から、その生活あるいは福祉がより向上をされるということを十分念頭に置きながらどうあるべきかということから今度の改正案というものも立案せられ、これを実現をしたいというように考えたもの、私どものものの考え方の基本としては、そういうようなつもりでこれに対処してまいったのだというふうにお答えをいたしておきたいと思います。
  84. 折小野良一

    ○折小野委員 現在の制度ができまして直ちに区長不在とかいろいろな問題が出てまいりましたし、局長お話によりますと、改正のときには予想しなかったような事態が発生をした、こういうようなことでございました。今回の改正後の情勢につきましても、そういう点につきましては予断を許さないと申しますか、どういうことになるかわかりませんし、また世の中もだんだん変わってくる、こういうようなこともございます。しかしながら、何といってもわが国の首都である東京行政あるいは自治権というものにつきましては、やはり非常に重要な問題であろうと思います。今後の情勢というものも十分考えながら対応していくべきじゃなかろうかというふうに考えますので、その面は、ただいまの大臣お話もございましたが、十分ひとつ御配慮をお願いをいたしたいと思います。  次に、一部事務組合の問題につきまして一、二、簡単に御質問申し上げますが、最初にちょっと大臣にお伺いをいたします。  ・今回、いわゆる複合一部事務組合をつくれるように法の改正をするということでございます。これはいわゆる広域行政一つの手段として新しい  一部事務組合の運営を考慮してのことであろう、こういうふうに考えられるわけであります。この改正につきまして一般に、将来の広域行政について政府は道州制への道を開こうとしておるのではないか、こういう意見がございます。したがって、自治省として今回このような法改正をされるにあたりまして、将来のいわゆる地方制度、したがって今日の広域行政の行くえ、こういう面についてどのようなビジョンを持って制度を変えていこう、あるいは現在の地方行政をどういう方向に推進していこうとされておるのか、お考えをお伺いいたしておきたいと思います。
  85. 町村金五

    町村国務大臣 実は、私はまだそういった点について、自治省に参りましてから深い検討を加えて私なりの何らかの構想を固めるというところまで至っていないのでございます。したがって、十分考えを練らないままのことを申し上げるということでたいへん恐縮に存ずるわけでございますけれども、先ほど来、だんだんお話も出ておりましたが、このたび御提案申し上げておりまするこの複合一部事務組合を設けていこうという考え方は、申すまでもなく一般の生活圏というものが非常に広がってまいった。従来の市町村区域というものをはるかにこえた生活圏というものがだんだん現実にでき上がりつつある。したがってそれに対応した措置をやはり行政的にも講じていく必要があるというようなことが、今回の複合一部事務組合考えをまとめるに至った最大の理由である。したがって、いろいろ御説もあるようでございますけれども、将来はこれをもっていわゆる市町村の大合併を行なう、その前提としてこういうものを構想するに至ったというふうには私は全く考えていないのでございます。  いま御指摘のございましたように、もし現在のいわゆる広域生活圏一つの都市になってしまうというようなことに相なりますれば、確かに現在の府県制度というものはこのままの姿でよいというわけにはおそらくまいらないのではないか。そうなりますれば道州制といったところまで進んでいくことにだんだんとなるのではないか。また、あるいは自治省はそういう考えを腹の中に持ちつつ、当面こういうような考え方を打ち出したのではないかというようにお考えになるようでございますけれども、実は私自身の考えといたしましては、地方自治体というものは現在でも、少し人口が集中し過ぎたせいもございましょうけれども、やや大きくなり過ぎてしまっているのではないか。むしろ、ほんとうに理想的な自治体というものは、いわゆる隣保扶助のできるような、お互いに顔見知りの人たちがその地域に生活していて、そしてそれを中心として自治行政が行なわれるというのがほんとうは私は望ましいことだというふうに考えますけれども、現実には御承知のように非常に都市に次第に人口が集中をするというようなことで、私どもが胸に描いておりまする理想的な自治体の姿とはだんだんと変質するような状況に相なってきておりまするので、そういうことを考えてみますると、いまおっしゃったような方向があるいはだんだんと激しくなってくるということは私どもも考えざるを得ないのでございます。しかし、その傾向にはありながらも、なおかつやはり自治体というものはあまり大規模でない単位自治体というものが、今後の日本の社会というものを発展させていく上に非常に必要なことだという感をいまでも深く私は持っておるわけでございます。  したがって、私どもは道州制という問題についても、私は私なりの多少の考えがないわけではございませんけれども、しかし少なくとも道州制ということになりますれば、これはもう自治体としてはあまりに大き過ぎて、いわゆる現在いわれておりまするような道州制というものは、これはむしろ、御承知のとおりたくさんの国の出先機関がございますが、そういうようなものを統合した、一つの総合的な、国の地方行政機関を集大成したようなものが一種の、道州制と言うならば言うということであって、これは私は、自治体としてはあまりに区域が大き過ぎて、自治体にはならないのじゃないかというような感じがいたすのでございます。  私は、いまのような複雑な社会状態になってまいりますと、確かに現在国が持っております多くの出先機関を統合したような形のものが必要だということは、これはまた一つ考えだと思います。思いますけれども、それをもって直ちに道州制だというふうな考え方にいくのはやや飛躍した考えではないかというような感じがいたすわけでございまして、私個人といたしましては、ここ当分の間を見通した場合におきまして、そういった国の大きな出先機関というものをつくることは必ずしも適当でないのではないかという感じがいたしておるのでございます。したがって、御指摘のございましたような、複合一部事務組合の今回の制度を、将来府県の合併、さらには道州制移行の前提で私どもが考え、御審議を願うということになったものでは全くないというふうに私は考えておる次第でございます。
  86. 折小野良一

    ○折小野委員 現実の世の中は非常に変わってまいっておると申しますか、進んできておると申しますか、距離的な広さというものも非常に狭くなってきておる。こういうような点から、行政の面におきましても便宜的に広域的な考慮をしなければならない問題がいろいろ出てきておる。これはもう事実だというふうに考えます。たとえば、下水はそれぞれの市町村区域内で行なわれておる。しかしそれだけで解決できない広域的な下水処理というものが必要になってきておる。こういう現実に対応するためにやはり広域的な行政処理が必要だ。こういう点は今後ますますふえていくのじゃなかろうか。そしてまたその情勢に応じて行政としては対応していかざるを得い。そういうところに広域行政現実的な必要性があるということを私どもは十分考えて対処しなければならないと思います。  しかし、御意見の中にもございましたように、いわゆる自治体というものはただ単に仕事だけのためにあるものではございませんし、いわゆるふるさと意識と申しますか、そういうようなものがなければならない。そういうものがほんとうの自治体であろうという考え方もございます。この前でしたか、たしか村田さんからの御質問で、ゲゼルシャフトとゲマインシャフトというようなお話がございました。いずれにいたしましても、そういう面を考え合わせながら今後の地方行政を推進していく必要があろうかというふうに考えます。  そういう点から、私どもの立場といたしましては、ほんとうの自治体というのはやはり市町村だ。それが中心でなければほんとうの自治体というものは健全に育つわけのものじゃない。しかし、世の中の進行に合わせて便宜的にいろいろな事務を協力してやっていく、こういうようなものも当然あり得る。その辺をごっちゃにしないようにしてやっていくということが一番大切なことじゃなかろうかというふうに考えます。今後の広域行政の指導等につきましても、十分その辺の御配慮はお願いしておきたいと思うのでございます。  ところで、現実の一部事務組合の運営についてでございますが、もちろん一つ事務を一部事務組合でやっていくにつきまして、それに結局まかせるという形になるわけでございますが、現実の問題といたしましてはなかなかそうとばかりもまいりませんで、総論には賛成であっても各論になったら反対だというようなことが間々ございます。たとえばごみの焼却場をつくる、そのことにつきましては関係者全部賛成をする、したがってこれはは広域的にやっていこうということでも意見が一致する。ところが、それならそのごみ処理場をどこにつくるかという具体的な場所の問題になりますとなかなか意見が一致をしない。こういうようなことで、組合の意見あるいは組合の計画決定と、その組合を構成いたしております地方団体考え方、計画決定とが一致をしない。そこにいろいろと紛争を繰り返すというような事例を私どもも聞いておるわけでございます。こういう面につきましてはやはり何らかの調整というものを制度的にも配慮しておきませんと、せっかく広域的な行政処理がうまくいくことを期待して一部事務組合をつくりましても、かえって問題をこじらしてしまうというようなことがございます。今度の複合一部事務組合制度に関連をいたしまして、そういう面についての調整もある程度お考えになっておるようでございますが、今度予定されておりますこの改正案の中におきまして、具体的にはどういう方向でそのような調整をはかろうとしておいでになるのか。その点、ございましたらひとつ御説明をお願いいたしておきたいと思います。
  87. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 いま例にお引きになりましたごみ処理ないしはごみの焼却場というような問題は、一部事務組合の処理につきまして確かにいまおっしゃったような紛争があること、しばしば耳にいたします。しかしこれは一部事務組合ということでなくて、単独の市町村がやる場合も同じように、総論賛成、各論反対、ごみ処理場をつくられる付近の反対というのは常に起きますので、問題が起きやすい事柄でございます。  そこで、今回の改正につきまして、そういうための調整を特に設けたということはあまりございませんので、むしろ、組合である種の決定をしたときに、従来であれば、組合は各町村からその町村を代表される議員さんが出ておられますので、その議決は当然その議員さんが帰って関係町村お話しになることを予想しておりながら、現実の運用として話が案外通じていないために、組合で議決したのを関係町村が知らなかったということもありまして、それが紛争の種になるというケースもあったことにかんがみまして、多少ともお役に立つつもりで、そういう議決があったときは必ず関係市長村にその組合の管理者が通知しろということを書いた規定を今度一つ設けておりますが、これも複合組合だけの規定ではございませんで、一部事務組合一般に関する規定としてそれをつくってはございます。  ただ、一部事務組合というのはあくまでも関係市町村の合意の上に立った共同処理機構でございますので、さっきのごみ処理のような、そもそも紛争が起きやすい問題についての紛争は決してないとは申しません、しばしば耳にいたしますけれども、全般としては、学校組合、病院組合というような組合の運営というのは、関係市町村意思と組合の意思が合致しなくて大きな紛争になったということが非常に多いかというとそれほどでもございませんので、むしろそういう比較的機械的なと申しますか、紛争の起きにくい問題を処理しておる。つまり、各町村の合意の上に立たなければ、組合をつくるときはもちろんでございますけれども、その後の組合の運営についても、組合自体が財政権を持っているわけでなく、課税権を持っているわけではなくて、各市町村の分担金の上に立つものでございますので、その合意がないものを強引に押し切るというような形になっておらないという点もありまして、従来の組合の運営は比較的うまくいっているというふうに私たち見ておりまして、特に紛争の起きやすいごみ処理みたいなものでの紛争というのはしばしば耳にいたしますし、そういうときはたとえば県知事が仲へ入るとか、あるいは組合を構成する町村長だけが寄って相談をするとかいうことで解決をしていっておると思いますけれども、今回それに別に新しい調整方法を加えたというのは、さっき申しました通知義務の規定程度でございますし、従来の運用にかんがみまして、今後運用で十分カバーしていただける。もっぱら合意の上に立った共同処理機構であるという特質から、それはやっていけるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  88. 折小野良一

    ○折小野委員 一番大切な問題は、御意見のとおりに運用だと思います。現在の制度の中におきましても、運用さえうまくやればそういう紛争の大部分は起こさないで済む、こういうことだと思います。しかし、制度の面でもやはりそういう面をある程度保障するようなやり方をやっておくということは大切なことでございますので、組合の決議があった場合にそれを関係市町村に通知するということもこれもいいことかと思いますが、できるならば、やはりそういう問題を議題とする際にあらかじめ連絡をするということが必要なことじゃないか。できてしまってからということになりますと、やはり解きほぐすのはなかなかむずかしいと思います。その点はぜひ考えておいてもらいたいと思います。  それからもう一つ、少し御見解を承っておきたいと思うのですが、一部事務組合は、大体においてそれぞれの仕事をする市町村一緒になって、組合をつくって仕事をやっていくということでございますが、その仕事に関係のないところに影響をするという問題があるわけであります。たとえば、一つの川の上流の数カ市町村におきまして屎尿処理場をつくる。これはその関係の数カ市町村の屎尿をそこに集めて処理をするということなんです。で、その仕事に関係のある数カ市町村一緒に組合をつくったわけでございますから、それはもうそれでけっこうなんです。ところが、その影響はその市町村でなしに、それに関係のない下流の市町村に影響が及ぶ。すなわち、その排水によって下流の市町村がいろいろな面で問題を起こす。現実にそこに伝染病が発生したとかなんとかいうようなこともあるかもしれませんけれども、そういうようなことはなくとも、いわゆる不安とかあるいはこれに対するいろいろな考え方というものが紛争の原因になる、こういうような事態もあるわけでございます。  したがって、この一部事務組合に加入させる場合に、その仕事をやる直接の関係地方公共団体だけでなしに、その仕事によって影響を受けるであろう関係地方公共団体もまたそれに加入することができる、こういうことにすることが特に必要なことじゃないか。これは業務の種類にもよりましょうけれども、必要なことだと思いますが、その点、いかがでしょうか。
  89. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 従来の規定ですと、まさに関係する市町村の下水を共同処理するためで、関係のない市町村が組合に入るということはまず考えられなかったことでございます。それは、上流に組合をつくる場合は組合対下流の市町村、それから上流に組合はつくらないけれども、上流の市が自分で独自に屎尿処理をつくる場合の、その下流の市町村に対する問題ということにもなるわけでございますので、従来はそれが組合に加入するということは全然考えられもしなかったことでございますけれども、今回、たとえばこの複合組合をつくりまして、この複合組合が全体の共同した計画を立て、それらの事務の一部を共同執行していくという場合に、全体の計画の中に、たとえば上流のほうの下水処理に関する計画があり、あるいは全体の計画があったりいたしまして、それを今度の複合組合で処理していくという場合は、ほかの仕事も一緒にやるから複合組合ではございますけれども、この下水だけでいえば、複合組合の一員として下流のほうの市町村がそこに議論を展開するということもあり得る。先生のおっしゃいますようなことが、組合の内部において調整ができるというようなこともあるいは期待できるのではないかと考えられる次第でございます。
  90. 折小野良一

    ○折小野委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
  91. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 佐藤敬治君。
  92. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 この前の積み残しですから中途から始めますが、一番先に一つお聞きしたいのですが、この組合ができますと、この組合でできないものは何か、ちょっと教えていただきたいのですが。
  93. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 非常にむずかしい御質問でございますけれども、およそ、法文の規定によりますと、市町村事務市町村の機関の事務、何でも話さえまとまれば共同処理ができるということになりますので、できないものはないというお答えになるわけでございますが、本質的には結局、先ほどから申し上げておりますとおり、それぞれの構成の自治体の自主性を尊重する、つまりそれぞれの構成の自治体でものごとを処理するのが原則でございまして、たとえば、それぞれ構成する自治体で学校とか保育所とか、その区域限りでその自治体の自主性をもって処理すべき、またするのが合理的な事務がまだたくさんあると存じます。それと同時に、生活水準の向上と生活圏の拡大で、それぞれでやるよりも、まとめて広い区域で計画を立ててやったほうが合理的だという事務があり、これがまた逐次ふえつつある。そこで、できるものといえばその後者でございますし、できないものというよりは、その組合でやるのが適当でないものはまだたくさんございまして、それぞれの町村自主性でやるべきもの、これは組合でむしろできないものと言ったほうがいいくらいの感じを私たちは持っております。
  94. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 この間も言いましたとおりに、私もそうだと思うのですよ。理論的にはこれは全部できると思うのですよ。できないものはたった一つありますね。それは議会です。議会はこれは直接選挙しなければいかぬことになっていますので、議会だけは一部事務組合をつくるわけにはいきません。議会以外のものは全部できる。事実上これは全部事務組合みたいなかっこうになるのですね、議会を除いて。だから、これをこのままにしておくと、これは必ず一本になる危険性がある。私はまずそう考えてこの間から質問しておるわけです。  これはこの間もちょっと話しましたけれども、集団というのはおそろしいもので、一ぺんその集団が結成されますと、決してそれは解体しようとしないのです。この間も言いましたけれども、心理学でも集団の保守主義といいまして、もう絶対に解散しない。さらに今度はパーキンソンの法則とかいうのがありますね。一ぺん一つの組織をつくりますと、どんどん化けものみたいに広がっていく、こういう法則もあります。貧乏人が貧乏なときは、普通の人と同じようになりたいなと思うのですけれども、普通の人になると、もっと金をもうけたいなと思うのですよ。だから、そういう可能性があるとどんどん広がっていく。現に見なさい。いまは地方事務官、こんなものは要らないと各党全部一致していても放さないでしょう。それと同じことなんです。一ぺんつくられますと、必ず自分を膨張しようとする、これはもう当然の結果なんです。  だから、そういうふうになってしまいますと、これはもう一部事務組合なんというものではなくて、完全なる市町村の上に立つ上部自治組織になってしまいます。その危険性が非常にあるのです。いろいろこの間からの議論を聞いておりますと、決して上部団体にする意思はないと、はっきり皆さんが言明しておられます。そうであるならば、こういうふうになるような道というものを全部ぶった切っておくべきだ、私はこういうふうに考えるのです。残しておけば必ず一緒になってしまう。そういう可能性がありますので、その可能性を最初につくるときから切っておくべきだ、こういうふうに私は思います。ただ、あなた方がどうしても切ることに同意しないということは、やがてこれが大きく成長してやろうという底意があるならばこれは別ですよ。だけれども、それがないということをさっきから言明しておりますので、それならば私はこういうような、将来一本になる可能性がある芽はいまのうちにつんでおくべきだ、こういうふうに思います。いかがお考えですか。
  95. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 だいぶこの間から御答弁申し上げたことのある意味では繰り返しになるかと思いますけれども、一部事務組合というのはあくまでも各団体の合意の上に立った、また合意の上に基礎を持った組織でございますので、従来のままの一部事務組合制度でも、相当大きな組合をつくろうと思えば実はできるわけでございまして、従来は組合の制度というのは、わりあいと学校なら学校、病院なら病院だけの組合が多かったわけでありますけれども、広域市町村圏が始まりましてから、相当たくさんの構成員をもって幾つかの事務を処理している組合も現在までぼつぼつはできております。従来の組合でもたくさんの事務を取り込めば、その極端な例が全部事務組合でございますけれども、そこまでいかぬにしても一つの組合でたくさんの事務を取り込むということはできたわけでございますが、いま先生のおっしゃるように、それができて、どんどんふくれて、ほかのものを侵食してしまう、それは一、二と申しますか、そういう例は皆無ではないのかも存じませんが、私たちはそういうことはわりあいと多くは聞いておりませんので、従来の一部事務組合というのは各市町村の合意の上に立って、比較的争いが少ない事務についてじょうずに運営されてきておる、こういうふうに見ておるわけでございます。  今度複合組合ができますと、たくさんの事務一つの組合で扱うというケースが従来よりもふえてはまいりましょうけれども、ただ、これができたからといって、突然鬼子ができてあたりを食い散らすということにはならないのではないか。そのならないという論拠は、一部事務組合は、つくるときも、それからその後の運営につきましても、関係市町村の合意がない場合に強引に押し切るということはできない組織になっております。自分自身の課税権があったり、自分自身の財源を持ったりしてということなら別でございますけれども、これらにはそういうものもありませんし、つくるときにはもちろん、毎年の運営も全部分賦金の上になされていくということにでもなりますれば、それほどこの組合自体が大きく育つということはないであろう。従来の一部事務組合の運営の実態、これは明治以来からずっとわが国の市町村に深く習熟しました一つの共同処理の方式でございますけれども、それにかんがみまして、おっしゃるような御懸念は、行政指導にもよりますし、運用する方々の適否にもよりますけれども、比較的少ないのじゃないか、私たちのほうはこう考え、またそういうことがないように、指導はしっかりしてまいりたいと存じております。
  96. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 従来の一部事務組合にそういうどんどん大きくなるようなのがあったらたいへんなんですよ。一つの組合は一つの仕事しかやっちゃいかぬというはっきりしたあれがありますから、それがどんどん大きくなっていくということはあり得ないのです。だから、あなたの言われるようなことはいままではあるはずがないのです。これはあったらたいへんなんです。ところが今度はその壁をぶち破って大きくするという可能性をここにつくる、だから危険だ、こう言っておるのですよ。その点は食い違って、なかなかわからないようですが、新しい一つの自治組織としてつくる意思がない、こういうことはよくわかりましたので、それはその点で了解したいと思います。  この間から聞いておりますと、何か複合事務組合というのは化けものみたいな感じがしまして、あるときは一部事務組合になってみたり、あるいは全部になってみたり、複合は全部なり、複合は一部なりといって、どっちだかさっぱりわからない。怪物みたいな矛盾を感ずるような存在なんですね。私どもはやはりこの矛盾を解決しなければなかなかすっきりいかないと思うのですよ。これは何べんも言っておりますし、くどくど言っておりますけれども、この点が一番の問題点だから言うのですが、このままでどんどんいきますと、この間もちょっと触れましたが、一部事務組合のほうが予算量から事務量からずっと大きくなると私は思うのですよ。  たとえば、まずこれに入る可能性があるのは病院、上下水道、清掃、屎尿、交通。このほかに、たとえばいま市町村でやっている国民健康保険みたいなもの、それから税を賦課する賦課事務だとか、いろいろな問題がここに入っていく可能性がうんとあるのです。そうしますと、母体よりもこっちのほうがずっと大きくなる可能性がある。現実の問題としてはどんどん大きくなっていってしまう。  一部事務組合だって、たとえば普通の市町村の議員が一部事務組合に出ていくと、都会議員か県会議員になったようで一級上だ、こういう感じを必ず持つのです。だから争ってそれに出ていきたい。普通の市町村会議員よりもおれのほうはちょっと上だというふうな感じを必ず持つのです。ですから、母体のほうでそれを討議しようと言ったって、一級上の意識を持っているものだからなかなか言うことを聞かない。私は十何年もやってきてよくわかるのです。必ずそうなるのです。今度は何人もそういう人がいれば、いままでの一部事務組合、一組合一事業という組合と違って、もっと非常に大きなものになる。母体にはたとえば二十人か二十五人しか議員がいない。ところがこの新しい議会はもっともっと大きな議会になるのです。そうなれば、とてもそういう二十人や三十人の議会では太刀打ちできないような議会としての大きな力を獲得すると思うのです。そうなりますと、私は反対ですと言ったって、さっきも林さんですか、やっていましたが、ここで反対、そっちでは賛成に回されてしまう。これは当然です。それが民主主義だといえば民主主義であるかもしれませんが、私はやはり疑問があると思う。  これは、末端の一番基礎的な自治体である市町村というものを否定することになると思う。ところが、市町村というものは憲法でちゃんと位置づけられたほんとう意味の民主政治の基礎団体だ。だから、これを否定するということになれば新しい複合事務組合というものは非民主的な存在になってしまう、こういうふうに考えるのです。これは必ずそうなると私は断言してもいいと思うのですよ、あなたそうならないと言いますけれども、おとといでしたか、オニヒトデでだんだん食い散らすという話が出ましたけれども、オニヒトデでなくて、ヘビだと私は思うのです。自分で母体を食ってしまう。もっと危険ですよ。民主主義も食い散らすから、これはマムシ法案だと思うのですよ。非常に危険な法案だと思うのです。ヘビ法案のマムシ法案ですよ、このままで通すならば。  いまも折小野先生からお話がありましたけれども、私どもは広域的な意味というものを全然否定するわけじゃない。やはり広域的な行政というものは必要だと私は思います。しかしそれが末端の市町村を食い散らす、こういう危険な形で出てくるというのは許されないと思う。これは一種のごまかしですよ。これがこのままで通っていくならば、市町村というものを一方では否定し、一方では県というものがそのうちになくなる、こういうふうな形になる。それがいいか悪いか一応たな上げして、これは明治以来の市町村制ができてからの地方自治体、地方自治制度の最大の変革です。  そうであるならば、私はもっともっと時間をかけて、国民的な合意を得て、その上でこれを実施すべきだ、こういうふうに思うのです。そのディスカッションを、あなた方からいけば第一次から今度は十五次まで、ずっとこういう流れが出てきて、十分ディスカッションしたと思われますけれども、だれも知らないのです。私は政治に、特に地方自治には長いこと、二十年もやっていますから非常に関心があるけれども、私でさえよくわからない。国民がわかるはずがない。しかも国民というのは市町村の中に住んでおる。自分たちの周囲がどうなるかということをもっと理解させて、それからこういう制度というものを出してくるべきだ。これはこのまま通れば確実に市町村が否定され、確実にそのうち県というものがなくなりますよ。そういう意図がなくとも必ずそうなりますよ。それをも私は否定するのじゃないのです。将来そうなるかもしれませんよ。だけれども、こういう大変革というものはもっともっとディスカッションして、ほんとうに国民的な合意を得て、そしてやるべきものだ、こういうふうに私は思います。その点はどうですか。
  97. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 先生のお感じと申しますか、お考えとして、そういう御懸念があることを非常に強調をなさったわけでございますが、ある意味ではおことばを返すようなことになるかと存じますが、これはあくまでも従来の一部事務組合一つの変形である。しかも、従来の一部事務組合も、運用としては一組合一事業というのが非常に多うございますけれども、法律的には、一つの組合で、関係市町村が全部の共通の事務であれば、三つ、四つ、五つというような事務を処理することができるわけでございます。つまり、従来の一部事務組合制度でもある程度広域的な事務をたくさん扱うということはできたわけでございまして、今回はそれが全部の町村の共通事務でなくてもいいということだけをはずすわけでございまして、従来も共通事務でさえあればこういう大きな組合もつくり得た。ただ現実にはそういう組合はあまりできておりません。皆無ではございませんで、幾つかの事務を共同処理している、構成町村の相当多い事務組合もいままであった。しかしそれがおっしゃるように急激に鬼子のように育つという現象は現在までもございませんし、今後もそうあるまいと思うのです。  あるまいと思うという根拠は、先ほどから繰り返し申しますように、あくまでも関係市町村の合意の上に立たなければ身動きできないというのが一部事務組合の持っております性格でございまして、つくるときはもちろんでありますけれども、その後の運用につきましても、自分自身が課税権を持ったり財政自主権を持ったりしているわけではなくて、結局はみんなの相談の上で、みんなのオーケーと言った計画を実施するというだけにとどまっておるものでございますために、一部事務組合全体の傾向として、そういうふうに構成町村の上になり、強くなるという心配は比較的少ないのではないか。もちろん運用によりますし、指導にもよりましょうが、運用、指導につきましては万全を期します。いま先生のおっしゃるようなことになりますならば、これはほんとうにたいへんなことでございますし、わが国の地方自治を否定するものでございます。そういうことはわれわれとしても毛頭考えておりませんし、そういう御心配になるような動きにならないようには一〇〇%気をつけますが、一部事務組合自体の持っている性格として、そういうふうに直ちに連なるとはわれわれもとうてい思えないし、いままでの一部事務組合の実績もそれを実証しているのではないか、こういうふうに見ている次第でございます。
  98. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いま指導しないというお話があったので、いろいろな疑問があるのでちょっとお伺いしますけれども、例の協議会方式と一部事務組合の方式がありますね。協議会は計画を立案する、そして一部事務組合事業の調整をする、そして一部事務組合では仕事をする、そういうふうになっていますね。今度はこれができますと、協議会というものはそのままいまの複合一部事務組合に移っていくのですか。
  99. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 これはその地区の御相談の結果どちらでもなります。つまり、従来のままの協議会という姿で相談をして計画だけつくる、管理、執行する協議会も自治法上にありますけれども、法人格も持っておりませんので、事務を共同処理する場合には従来の協議会を一部事務組合に改組されるところも出てまいりましょうし、共同して立てた計画に従って、事業はいままでどおり各市町村かやっているこの体制でいいということであれば、この制度は使わないで、協議会のままで今後お続けになるというふうに思います。そのどちらを選ばれるかは、全くその地域の市町村の自主的な決定におまちするということでございます。
  100. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうすれば、結局協議会がそのまま複合一部事務組合に移行するということではなくて、それはそれとして残ってもいいし、仕事は一部事務組合でやってもいいし、あるいは各市町村がそのままやってもよろしい、こういうようなことと理解しておきます。  それから、何かこういう感じもするのですよ。いままでそういう指導はしない、しないと皆さんに言明しておるようですけれども、三億円なんか使って、道路のあれで補正して交付税を受け合ったりしているでしょう。あれは誘導じゃないのですか。
  101. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 これは共同処理組織とは実は何の関係もございません。広域市町村圏というものをつくって、生活圏広がりに対して行政を広域的にしなければならぬという場合に、やはり一番先に問題になるのが道路であろう。一緒に共同して仕事をしようといっても、道路が整備されていなければ、たとえば消防の仕事をしようとしたって、道路ががたがたで消防車が走らなければ共同にもできませんし、それから屎尿処理とかゴミ処理を共同で計画しても、ゴミの運搬車がスムーズに動くためにはやはり道路網の整備が必要だ。どうしても生活圏広がりに最も直接関連があるのが道路網であろうということで、これは一部事務組合をつくるつくらぬにかかわらず、広域市町村圏一単位について何がしかの道路費を、交付税の計算上上のせするという措置をこの数年続けてまいったわけでございます。広域市町村圏であれば計画だけはとにかく共同で現在つくっておりますから、計画だけは共同でつくって、それぞれの市町村自分市町村道を、一圏域幾ら、いま大体三億を措置してまいりましたが、それによって道路網を整備する、そのための財政措置をしたわけでございまして、この組合をつくったところにやるがつくらぬところにやらないなどということは、従来したこともございませんし、今後も全くするつもりはありません。
  102. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 非常にうまく言うのですが、結局その逆も言えるのですよ。広域市町村圏をつくれ、そうすれば金をやる。直接そう言わないかもしれませんけれども、それに近いことが次々と行なわれております。これはもう否定できないと思うのですね。道路が必要だ、だから道路をつくるためには広域市町村圏をつくれ、そうすれば金をやるぞ、こういうような形の誘導がかなり行なわれている、私はこういうふうに思うのです。  それで、この広域市町村圏である間はまだそれでも私はいいと思うのです。今度ははっきりと法律によって、こういうあれをつくりなさい、つくれば金をやるし、つくらなければ金をやりませんよ、こういう誘導をされたのでは、もう市町村は金がない、三割自治でいつも貧乏で、あなた方にいつも願っておるけれども、いつまでたっても三割自治だから、これは貧乏な市町村はすぐ飛びつきますよ。すぐつくってしまう。こういうような利益誘導というものはやるべきじゃないと思う。これをやればまた疑問が出てきますよ。そういう利益誘導などは絶対にやらないと約束できますか。
  103. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 こういう機構をつくったからやる、つくらなければやれないということは、これはもうやらないという約束どころじゃございません、交付税法上そういうことはできません。(「起債でやる」と呼ぶ者あり)そこで、たとえば起債でやるとその辺からお話がございますけれども、起債はそれぞれの事業の妥当性その他を査定してやるわけでございますけれども、そのときに、この機構をつくればやる、つくらなければやらないということは、これはお約束でございます、絶対いたしません。
  104. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 これは林さんと大臣を信ずるよりしかたがないのです。これはことばだけでなくて、実質的にこれをやらないようにしていただきたい。これをひとつお願いします。  それからもう一つお伺いしますけれども、いま公営企業が赤字になって盛んに問題になっているわけですけれども、私は、これができますと同じような現象が起きてくるのではないかというような心配があるのです。事業集団になるような心配がある。たとえば病院だ、上下水道だ、清掃だ、こういうものがこの組合の中に入ってくる。そしてこれは事業ですからね。こういうものが多く入ってくるのですよ。そして事業集団みたいなかっこうになる。そうすると、当然そこに企業的なインセンティブがかかってくるのですよ。赤字を出してはいかぬ、こういうようなインセンティブが必ず私はかかってくると思う。そうすると、それをのがれる方法は、どんどん料金を上げていく、あるいは下請にどんどん出していく、こういうような現象がいままでだと必ずあらわれてくる。私はこういうようになると思う。何かこれを見ますと公団か公社みたいな感じもするのですよ。これに対するお考えはありますか。
  105. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 これは、この組織になるからということでは私はないと思います。現在も公営企業に関する組合というのは病院とかその他だいぶございますし、それは医療費が上がるとか、健康保険の負担金、保険税ですか、これがあまり上げられないということで、公営企業全体として相当赤字に苦しみ、かっこの赤字を解消するために値上げに走り、あるいはサービスが低下するというのは、公営企業自身の持っている必然的な運命と申しますか、それを克服していくことが責任者の責任だと思っておりますけれども、公営企業につきましては現在も企業団という制度がございまして、組合をつくっておるので、そういう企業的なものと一般行政事務をあわせて一緒にこの組合でやるというのは実はあまり適当でないような気もいたしております。  ですから、そういうことは、公営企業だけはまた別に組合をつくってということにもなるかと思いますが、そういう場合でも、これは組合をつくってやると単独でやるとの区別なしに、料金の問題、採算の問題と公益のかね合わせ、あるいは一般会計からの繰り入れの問題、そういうのをあわせて配慮して措置していくべきものだと存じますので、この組合になって非常に経理がずさんになるとか、値上げがぽんぽんやられるということには直ちに私はつながらないのではないか。むしろ、現在当面しております公営企業の苦しみというのは、これは私のほうでも財政局で公営企業に関していろいろいま法的措置、財政措置を配慮しておりますが、そういう手段を通じて、健全な運営、サービスの低下の防止ということに配慮してまいらなければいかぬ事柄ではないかと考える次第でございます。
  106. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 わかりましたけれども、私はやはりそういう可能性がかなりあると思うのですよ。というのは、組合の内部の団体の力の強弱によって、ある地域は値上げをしなければならぬ場合が出てくると思うのですよ。力のあるところと力のないところが一つの組合をつくりますと、やはり力のないというか、狭い——たとえば市なんかと比べますと、清掃の事業なんかの場合、村なんかただのところがうんとあるのですね。ところがそれが市だとかと一緒合併になりますと、これはもう当然、市の施設なんかによけい経費がかかって、料金を取っているものだからそれに右へならえして上げられる、こういうような可能性が私はかなりあると思うのですよ。その結果が、さっき言いましたように、結局値上がりだとか、それから労力の合理化だとか、いろいろなそういうものに結びついてくる危険性がある。そこらのところを指導する場合には十分にこれは指導してやりませんと、これができたためにかえって住民から苦情が出る、こういうような可能性が出てくると思うので、こういう点には十分気をつける必要があるのではないか、こういうふうに考えます。  結論的に申し上げますけれども、この一部事務組合という法律の中にこれ自体を押し込むということは、やはり私はかなり無理だと思いますよ。あなたはきのうから、単に一部事務組合複合になるだけだ、こう言うのですよ。ところが、単に一部事務組合複合には、ここに大きな問題があるのです。さっきから言っていますが、この点が非常に大事なので私はくどく言っているのです。単に、ではないのです。性格ががらっと変わってしまうのです。それを私は非常に考えているのですね。だから、一部事務組合というこの条項に、極端にいうと迎合の制度を持ち込む、押し込むということは私は無理だと思う。やるならばもう一つ別に章を改めて、これは一部なんかと違って、複合組合、そういう名前でもつけて、新しい章を設けて堂々と出すべきだと思うのですよ。少し卑屈になって、何かおっかなびっくりでこうして出しているのです。一部でないものに「一部」の名前をつけて複合一部事務組合なんという、複合だか一部だかわからないような出し方をしているのですよ。さっきから私が言っているように、こういうことが必要であるかもしれないというのです、現在のような状態になりますと。だからそれをごまかさないで、根本的に地方制度の変革として検討するために、こういうような「複合」に「一部」なんかつけて複合一部事務組合と、どっちだかわからないような出し方をしない。ごまかしをしないで、もっと堂々と出して、堂々と検討したほうがいい、こう思いますよ。だから私はこれを撤回したほうがいいと思うが、どうですか。
  107. 林忠雄

    ○林(忠)政府委員 従来の一部事務組合と別条を起こして実はこの制度を出したのでありまして、いま先生のおっしゃいましたように、住民生活圏広がりに伴って広域行政の必要性が高くなっているということ、これはずっとこの前からの御審議を通じましてこの点には皆さんも御異存がないわけで、ある程度広域行政の必要性が高まっておる。現に広域市町村圏というものが発足してすでに五年ぐらいたっていますが、その広域市町村圏の側から、何かこういう合理的な行政組織を設けてほしいという要望も長年にわたって何度も繰り返し受けておるわけでございます。それを受けまして、地方制度調査会で「連合」というものを設けるべきだという答申がございまして、お手元にもその答申が届いておると思いますが、その連合の中では名前も「連合」というものを使い、それから、一部事務組合と同じような性格ではございますけれども、事務局長とかあるいは議決の委任とか、いろいろな従来の一部事務組合になかった制度も取り入れてやるべきだという答申がありまして、当初国会に御相談した案は、確かにそういうもっと違ったものというか、新しい規定を設けたものも御提案した次第でございまして、その審議の御過程で、いま佐藤先生のおっしゃいました危惧その他も含めましていろいろな御議論が出まして、それらを参酌して今回出しましたのは、一部事務組合一つの変形という形で、しかしそれも別条を起こしまして、特にこういった広域行政を総合的にやるためには適した組織だという考え方で出しております。それで、単にというのが、非常に程度が軽いものだという意味ではございませんで、組織の性格として、従来の一部事務組合、つまり各市町村の全く合意の上にしか基礎を置けない組織として、それ自体がかってに動けない組織としてこういうものをつくったらという考え方で出しておるわけでございます。
  108. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 これで終わります。
  109. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、明十七日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十五分散会