運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-04-03 第72回国会 衆議院 地方行政委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月三日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 小山 省二君 理事 中村 弘海君    理事 中山 利生君 理事 村田敬次郎君    理事 佐藤 敬治君 理事 山本弥之助君    理事 三谷 秀治君       片岡 清一君    亀山 孝一君       木村武千代君    島田 安夫君       住  栄作君    武藤 嘉文君       保岡 興治君    岩垂寿喜男君       小川 省吾君    細谷 治嘉君       林  百郎君    小川新一郎君       小濱 新次君  出席政府委員         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君         自治省財政局長 松浦  功君  委員外出席者         参  考  人         (全国市長会守         口市長)    木崎 正隆君         参  考  人         (全国市長会江         刺市長)    渡辺 長純君         参  考  人         (学習院大学教         授)      恒松 制治君         参  考  人         (法政大学教         授)      高橋  誠君         参  考  人         (大阪市立大学         教授)     吉岡 健次君         参  考  人         (全日本自治団         体労働組合副委         員長)     安養寺俊親君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 四月二日  個人住民税課税最低限引上げ等に関する請願  (金子満広君紹介)(第三二六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提  出第四一号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる地方交付税法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案につきまして参考人の御出席をお願いいたしております。  参考人方々は、全国市長会守口市長木崎正隆君、全国市長会江刺市長渡辺長純君、学習院大学教授恒松制治君、法政大学教授高橋誠君、大阪市立大学教授吉岡健次君、全日本自治団体労働組合委員長安養寺俊親君、以上の六名の方々であります。  この際、参考人各位にごあいさつを申し上げます。  参考人方々には御多用中のところ、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序につきましては、初めに参考人の方方から御意見を約十五分程度お述べいただき、次に、委員諸君からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。  なお、参考人方々の御発言の順序につきましては、はなはだかってながら委員長に御一任願いたいと存じます。  それでは、木崎参考人からお願いいたします。
  3. 木崎正隆

    木崎参考人 全国市長会都市過密化対策調査特別委員会委員長をいたしております守口市長でございます。  地方行政委員会先生がたには、日ごろ地方行財政の問題につきまして、格別の御配慮を賜わり、感謝申し上げている次第でございます。また今回は、都市側意見をいろいろ御聴取願う機会を得ましたことにつきまして、厚くお礼申し上げます。  昭和四十九年度地方財政につきましては、法人課税強化市町村道路財源充実等中心とする都市税源拡充地方交付税基準財政需要額の算定の強化等、まことに画期的な御配慮を賜わっておりますが、なかんずく人口急増地域に対する財政措置として、学校用地取得費に対する国庫補助率拡充幼稚園消防施設国庫補助率引き上げ等格別の御配慮をいただき、私ども特に感謝申し上げておるところでございます。  本日は、過密地域における問題点について意見を申し述べろということでありますので、特に人口急増市町村における財政上の問題点中心実情を申し上げて、若干意見を申し述べたいと存じます。  すでに御案内のとおり、人口急増市町村におきましては、人口の急激な増加に伴いまして、小中学校保育所清掃施設等公共公益施設の緊急な整備をはじめとする膨大な行政需要に対して、財政が全く対応できない現況でございます。  すなわち、関係市町村における決算状況から見まして、その特徴を二、三申し上げますと、まず、歳出規模に占める普通建設事業費の比率が一般市町村に比べ非常に高く、その中でも小中学校清掃施設等にかかる経費のウエートがきわめて大きいことでございます。当然の結果といたしまして、他の事業にしわ寄せがきて、社会福祉をはじめとする市民の要請にどう対処していくかということが大きな悩みとなっております。  次に、歳出面における問題点は、用地取得費をはじめとする単独事業が多いことであります。特に、用地取得費人口急増地域における地価上昇が著しいこともあって、普通建設事業費の三割にも達し、用地取得費建設事業の実施に当たっての大きな隘路となっております。  また、歳入面においては、人口増加に比較して、市町村税国庫支出金の伸びが小さいため、膨大な財政需要に対応し切れず、地方債の発行や債務負担行為の設定によって収入不足を補っている実情であり、このことは、後年度における財政負担の激増を招き、将来における財政状況の悪化が強く懸念されるところであります。  以上のように、人口急増市町村においては、現在すでに財政が行き詰まっているのに、なお今後もふえ続ける増加人口に対する施設整備が、さらに財政圧迫要因として重苦しくのしかかっているわけであります。  ちなみに、昨年十二月に人口急増都市協議会が取りまとめました該当二百五十七市町村昭和四十九年度から五十二年度までの四カ年間における整備計画による増加量を御参考までに御披露しますと、義務教育関係で、児童生徒百八十二万六千人、必要学級数四万二千二百六十三学級屋内運動場千八百八十二カ所、学校プール千六百七十三カ所、給食施設六百九十八カ所、用地二千二百三万三千平方メートルを必要としまして、これに要する事業費は一兆八百五十八億円の巨額に達する見込みでございます。現行制度により財源構成をはじきますと、国庫支出金が千八百八十六億円、地方債が五千三百二十五億円、一般財源が三千五百七十五億円、その他七十二億円を必要としております。これに幼稚園保育所ごみ屎尿処理施設消防施設都市公園を加えた場合の整備計画事業費総量は一兆九千二百九十億円、これに対し現行制度による地方負担としては、地方債八千九百八十六億円、一般財源六千八百九十五億円と、膨大な経費を要するわけでございます。  昭和四十九年度地方財政計画におきましては、その策定方針として、石油問題を契機とする異常な物価の高騰に対処し、物価の鎮静をはかるための総需要抑制の見地から、歳出を極力圧縮することとされております。そのため、財源重点的配分行政経費効率化につとめて、地方行政の節度ある運営を期待しておられることと思われます。このことにつきましては、私ども地方団体としても十分理解するところであり、その協力を惜しまないところであります。  しかしながら、私ども市町村は、教育生活関連施設社会福祉等住民に直結するいわゆる待ったなしの行政をあずかっているのであります。学校をつくれないからといって、児童生徒の入学を待ってもらうわけにもまいりませんし、ごみ道路に置き去りにするわけにもまいりません。住民の財産を守るための消防力強化も必要であります。先ほど申し上げましたとおり、人口急増市町村においては、多額の借金をかかえている上に、こうした緊急を要する行政経費だけで、今後四カ年間に二兆円に近い経費が必要とされているわけでありますので、この点につきましては、特に深い御理解をいただきたいと存じます。  そこで、以上のような実情を背景として、当面早急に考慮いただきたい点について申し述べますと、まず第一に超過負担の問題であります。  この問題につきましては、人口急増市町村のみならず、地方団体すべての重要な問題でありますが、守口市が昭和四十八年度に実施した実例を申し上げますと、橋波小学校建築費が一平方メートル当たり九万四千八百円、第四中学校では八万五千円かかりましたのに対し、国の補助基本額は五万三千七百円にすぎません。また藤田保育所につきましては、一平方メートル当たり建築費が十一万五千五百円に対し、国の補助基本額は五万二千円でありまして、建築費に対する補助割合は、橋波小学校で五六%、藤田保育所はわずか四五%にすぎない実情であります。これは、本市がぜいたくをしているわけでも決してありません。各都市とも同じような実情にあることは、先生方十分御承知のことと存じます。最近、政府においても、超過負担解消につきましては積極的に取り組んでいただいておりますが、実情とあまりにもかけ離れており、地方財政を圧迫する大きな要因となっておりますので、単価の是正はもちろんのことでありますが、補助対象範囲補助基準等をも含めて早急に解決をはかっていただきたいと存じます。  第二に、超過負担と関連し、国庫補助率の問題でありますが、私ども人口急増市町村実情から見て、人口急増市町村等が行なう公共施設及び公益的施設整備事業にかかる国庫補助率引き上げについて、これまで強く要請してきたところであります。幸い、小中学校校舎につきましては昭和四十八年度に、また幼稚園消防施設につきましても昭和四十九年度予算において措置していただくこととされておりますが、それ以外の施設につきましてはまだ実現を見ておりません。特に、屋内運動場につきましては、児童生徒の体位の向上は学校教育において学習と一体をなすものでありますので、ぜひその実現をはかられるよう要請いたします。  第三に、小中学校用地取得費に対する国庫補助金の問題でありますが、本制度は、足切りと称して補助金交付率一定率で押えられており、そのためりっぱな制度がありながら、実態関係市町村に十分な恩恵を与えていないきらいがあります。従来、この交付率は五〇%でありましたが、昭和四十九年度より六〇%に引き上げられることに相なりました。先生方の御尽力に対し深く感謝いたしておりますが、都市における地価実態を考慮し、なお引き続き交付率大幅引き上げをお願いする次第であります。  最後に、公共用地確保の問題でありますが、都市部においては、地価の急激な上昇用地不足のために、公共用地確保が非常に困難となっております。したがいまして、公共用地取得に対しましては、政府資金による地方債の大幅な拡充をはかられたいと存じます。  また、当面緊急を要するものとして、土地開発公社等に対する用地取得資金確保の問題があります。昨年末実施された選別融資措置により、土地開発公社等の行ないます公共用地先行取得に必要な資金の調達が例外なく規制対象とされたため、地方団体はいま非常に困っております。もとより、総需要抑制のための緊急対策としてとられた諸般の政策の一環であるということは、十分承知しているところでありますが、その選別規制があまりにもきびし過ぎるため、緊急に整備を要する学校生活関連施設等の計画的な整備に重大な障害を来たしている実情であります。  そこで、土地開発公社等が行ないます土地先行取得のうち、国及び地方公共団体の確たる事業計画に基づくものについては、融資制限を全面的に解除されるよう強く要請いたします。公有地確保につきましては、昨年国会の諸先生方の御尽力により、公有地拡大のための推進法を成立していただいたばかりでありますので、せっかくの法律が十分活用できるよう、御配慮賜わりたいと存じます。  以上、簡単でありますが、人口急増地域における実情を申し上げまして御参考に供したいと存じます。たいへんありがとうございました。(拍手)
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次に、渡辺参考人にお願いいたします。
  5. 渡辺長純

    渡辺参考人 ただいま委員長から御指名を受けました岩手県の江刺市長渡辺でございます。  本日は、諸先生方の御努力によりまして制定されました過疎地域対策緊急措置法に基づき、過疎地域の指定を受けております市としての意見を申し述べるものでありますが、日ごろ地方自治の進展に多大の御尽力を賜わっております諸先生方に、まずもって深く感謝をいたすものでございます。  さっそく、本日の議題となっております地方交付税法の一部を改正する法律案について意見を申させていただきますが、結論といたしましては、すでに新年度にも入り、異常な経済情勢のもとで住民福祉行政を推進しなければならない立場から、原案に賛成いたすものでありまして、すみやかに成立することをお願いいたします。  引き続き、わが江刺市の実態を御参考までにお話しし、あわせて今後の過疎対策上の問題点と、それに対する希望意見を申し上げたいと存じます。  江刺といいますと、よく北海道江差と間違えられまして、何か会合に出ますと北海道のほうの話をされます。ところが、エサシというのはアイヌ語だそうでありまして、アイヌ語意味では、非常に暮らしやすい、自然の資源の多いところという意味があるそうであります。北海道江差は、御承知のようにニシンのとれる本場でございますが、私のほうは、昔から北上山系まん中でありまして、北上山系が急になだらかになったところであります。しかも、北上川ほとりでございますから、非常に天然資源が多くて、たくさんの原住民が住んでおったようであります。原住民と申しますのは、坂上田村麻呂将軍東北征伐に参りました際に、わが江刺市では五年間これにこらえた、五年間官軍と戦ったという強い先祖を持っておるわけでありますが、これは、おそらく資源が多くて、人口が多くて五年間もこらえたという地域であると思います。後に胆沢鎮守府が設けられるわけでありますが、当時は、川の関係で、いまの私のほうの江刺市内に半分ぐらい胆沢城がありました。胆沢城は、開拓移民でありますから、土地のいいところを選んでつくったようでありまして、米も非常に良質の米がいまでもとれますし、なおまた、地名の字に天竺老婆というところがございます。天竺老婆とはインドのばばあですから、綿を栽培しておったようであります。当時すでに綿花を持ってきて栽培し、綿織物を織って着るということを日本政府が教えた地域でもございます。  そういう点で、早くからたくさんの人口がおりまして、しかも鎮守府の影響もありまして、農作物もありまして、たくさんの人間が住んでおりました。そういうところでございますから、この間の農地改革に際しましては——大体五分の一が他町村から流れ込む収入でございました。まあ近在あるいは宮城県あたりへ与えた高利貸し的土地所有と申しますか、そういうものがございまして、五分の一が他町村収入でございました。それが農地改革によりまして、ほとんどみな自作農になれたわけでございますけれども、いま言ったような歴史的経過から、非常に面積が狭い農家経営でございます。したがって、今日のようになってきますと、平均で見ましても六〇%は農外収入というようなことになりました。  農産物は非常に優良なものがとれます。江刺金札米と言って自慢しておりますが、戦前、三越で一番高く売れておった米だ、こういわれております。なおまた、その他のものも、農産物等は非常に優良なものがとれますし、いまでは蔬菜の産地にもなっております。  そういう地域でございますが、経営面積が狭いものですから、結局は就業する産業が少ないというところからみな流出しておる。若年流出が多いのでございまして、過疎化の現象から申しますと、昭和三十年に、その当時は郡でございまして、一町九カ村でございましたが、それを合併しまして市制を施行したわけであります。そのころは五万市民、こう言っておったのです。私、市長になりましたころ、三十年そこそこには五万市民、こう言っておったのですが、最近は三万八千ぐらいになりまして、どうも市民の数も呼びにくくなってまいりました。毎年千人近く減っていくのです。昭和三十年の四万九千三百五十六人が昭和四十五年には三万八千百七十六人、減少が一万一千百八十人になっております。年齢階層は、六十歳以上が、三十五年には九・一%でありましたものが四十五年には一四・三%、人口動態から申しますと、いかに過疎といえども、やはり生まれるほうが多いのでございまして、四十一年から四十五年の五カ年の統計でございますが、生まれたほうが二千三百四十人、死亡が千七百八十七人で、自然増として五百五十三人出生が多いのであります。ところが転出転入になりますと、転入のほうは五千五百八人、転出は九千九百十八人でありまして、結局マイナスの四千四百十人、自然増と差し引きしましても三千八百五十七人、五カ年間にこれだけの減少を見ております。  この転出が一番の人口減少のもとでございますけれども転出は何かと申しますと、ほとんど新規学卒者の、中学校、高校の卒業者が集団で就職しておるというようなこともございまして、それが中心でございます。  残っております者の産業別就業状態は、第一次産業は六二・六%、まあ農村市でございます。第二次産業が一二・八%、第三次産業のほうが二四・六%でございます。もっとも、所得からいきますれば、第一次産業のほうは一人当たり二十六万二千円、第二次産業のほうは七十九万六千円、第三次産業のほうは百二万一千円。所得水準からいえば、御承知の、国が六十二万六千円、県が四十二万円でございますのに、江刺市は三十二万四千円、これは第一次産業就業者が多いということを物語っております。  財政内容から申しますれば、これは昭和四十七年度でございますが、歳入の二十七億円のうち、市税は三億円でございます。地方交付税十億円、国庫支出金が七億円、地方債が三億円で、依存財源が二十億。二十七億のうち依存財源が二十億でございます。その他が四億。歳出のほうは、人件費が二四・九%、物件費が七・九%、投資的経費が三九・九%、その他が二七・三%。この投資的経費は、過疎市といえどもこれからの発展ということを考えて、先行投資だということで、いろいろな財源を得まして、極力投資的経費を多くしておるという現状でございます。  税のほうは、若年所得層がほとんど転出しておりますから、いまの税収入が極限でもあるというふうに考えられます。  地方債のほうは、いろいろ事業規制がございますから、なかなか思うようにまいりません。それに最近、人件費増大、それからベースアップもございますし、過疎市といえどもいろいろな施設が必要でございますから、福祉施策、特にこのごろ青少年ホーム、あるいは少年自然の家、あるいは老人福祉センターというようなものを建設にかかっておりますが、これらのものはすべて人件費増大につながるものでございます。  そういうことが江刺市の現状でございますが、市としては、何としても過疎解消は、いまのいろいろな学校統合補助とか、あるいは集落移転とか、そういうことじゃなくて、産業を持ってくることが最も大切なことであるというふうに私は考えております。幸い、新幹線が当江刺市を、これはまだ駅はきまっておりませんけれども、通過することになりまして、あるいは駅ができるやも知れないという情勢でございます。高速道路もインターチェンジが近くにできましたから、そういう点で、今後の高速時代に、あるいは過疎解消して伸びることができるのではないか。しかし、その過疎解消は、あくまでも産業を誘致しなければならぬというふうに考えております。産業がないものですから、みんな労働人口が流出するのであります。労働人口が就職する、その産業地域に持っていきたいというふうに考えております。  そういう点では、一郡一市といわれる江刺市でございますから、三百六十平方キロございます。お隣の水沢市あるいは北上市の四倍もございまして、しかも北上山系まん中でございます。北上山系のどまん中で、非常になだらかになった丘陵地帯北上川ほとり平たん地帯でございまして、そういう広大な面積を持っておる。それから平地林に近い山林原野を持っておる。そういう点で、将来のいろいろな産業を持ち込んでこれる条件を持っておるというふうに考えております。しかも労働力が非常に豊富でございます。水も豊富でございます。去年の干ばつにも、水道の水も、かんがい水も切らさなかったのであります。  そういう点で、水も豊富、空気もいい、緑も多い、面積も広い、労働力も豊富なところでございますから、産業の誘致には最もよい条件を持っておりますが、いままでは交通に不便という点でそれがなされなかったのであります。今後新幹線高速道時代に入って、しかもいま過疎債等によりまして、道路やあるいは通信網の完備をはかっておりますが、これができれば産業が興るのではないか、よそから来るのではないかというふうに期待をしております。  特に、過疎に対しまして過疎債融資をいただけるということになりましたので、過疎債を利用していろいろな仕事をやっております。私たち市長としては、過疎債が最も役に立つというように考えております。事業規制もございませんし、いろいろに使える面がございますから、まず過疎債道路交通網通信網整備をやっております。道路に対しまして、これは県が直接やってくれるものもございますが、過疎債を投入しまして、次次といままで果たされなかった道路をつくっております。従来の市道あるいは県道ではなかなかできなかった部分がございます。県道は網の目がどうこうということもございますし、市道としては、これもなかなか費用がかかるものですからできなかったのですが、過疎債を得るに至って道路交通網整備ができております。  と同時に、いま考えておりますことは、通信網の点において、有線過疎債によりましてほとんど完備しました。また有線市内全部、七千戸を統一した一本の有線に直しました。この四月一日からいよいよ開始いたしました。将来はこれを、環境整備事業有線テレビにしようという考え方を持っております。有線テレビ環境整備で半額の補助がございますが、これにも過疎債を利用することができますれば、これは非常に金がかかる問題でございますけれども、簡単にできるのではないかというように思います。農村地帯ではよく公民館を大きくつくって、なるべくたくさんの人が集まろうという話がありましたけれども、最近は、ほとんど何があっても集まりません。これは各戸にテレビがあるからであります。そのテレビに、有線で市からみな放送してあげようという考えを持っております。こういう過疎地帯の広い地域に点在している農家に対して、有線テレビでいろいろな情報を流すことができれば、一段と市の発展につながるのではないかというふうに考えております。  もう一つは、北上山系中心でありまして、江刺大豆産地でございました。日本大豆の種は、ほとんど私どものところから出ておったのであります。それから、御承知のように大豆はほとんど日本ではつくりません。私はアメリカに行きました際に、アメリカ大豆をつくる方法を見せてもらいましたが、アメリカミネソタ大学教授も、実はアメリカでは豆をつくっていなかったのだ、日本が満州を占領してから一つもよこさなかった、こういう話でありまして、私も戦争に加わった者でありますから、あなたのほうでは油をよこさなかったじゃないか、こういうことを言いましたが、ともあれ、アメリカではそういうことで、機械によるドリルでまいて、コンバインで刈るという方式で大量の大豆を生産しておるところを見ました。  最近に至って、アメリカから大豆が来ないから、とうふがない、納豆がないという事情になりましたが、わが江刺市は日本における大豆の種の産地でございますから、これを復元しようということで、実はこの間、機械方式による大豆の生産機械を五セット買いました。ワンセットが百馬力のトラクターで、トラクターは、いま使っているのはほとんど軽馬力のものであります。日本ではよく、経営規模が小さいから小さい馬力のトラクターを使え、こう言いますけれども、いかに経営規模が小さくても土の重さは同じでありまして、特に日本は雨が多いですから土が重いんです。そういうところで、経営規模が小さいから小さな馬力のものを使えということは、私は全く逆だと思うのであります。やはりアメリカ、ソ連で使っておりますような百馬力のトラクターを使おう、それにドリルで播種をしよう、そうしたらあとはコンバインで刈るという方式で、カナダの大豆のコンバインを五セット入れました。実はこの間、市議会で二億ほどの予算を盛ったものでありますから、この間の市議会も、ほとんど大豆議会だといわれるぐらい大豆論議が行なわれましたが、私は、技術革新によっていまの日本大豆の根源をつくってやろう。いまのうちは、足らぬといえば、納豆だ、とうふだと騒いでいるが、ほんとうに足りなければ、みそ、しょうゆもなくなるわけでありますから、日本民族の生活上最も必要なみそ、しょうゆまでなくなるということになっては、これは日本発展にもつながることであるから、われわれは、米の良質なものを出すよりは大豆を出そうということで、ことしから大きな予算を組んでやり始めました。  もっとも、いまのところでは、稲作転作で一反歩三万五千円もらえますから、そしてまた大豆の指定地域ですと一俵二千五百円の補助が出ることになりましたから、大体米をつくるくらいの収入はあがります。たんぼで豆をつくっても間に合うわけです。ただ、基盤整備がなければたんぼでは豆はつくれませんけれども、そういうことを始めましたが、半額は畑作振興で補助をもらいました。あとの半額は過疎債を投入しようとしておるのであります。過疎債を投入すればわりあい簡単にこの機械の導入ができて、かつての豆の産地が再現できるだろうというように考えております。大体、大豆は北方の植物でございまして、日本では開発輸入ということばがありますけれども、南方に行って開発輸入しようとしても大豆ができないはずであります。でありますから、日本における大豆の供給は、北上山系でやろうというように考えてやっておるわけでありますが、これも過疎債を投入すればのことであります。  しかし、これに過疎債を投入すれば、ほかの過疎債事業はできなくなりますから、こういう際にひとつ過疎債のワクを広げてもらう、あるいはそういうような過疎債のうち、基礎的なものは別ワクにしてもらうという必要があると思います。この点も、特にお願い申し上げる次第であります。  いろいろ申し上げましたが、以上が江刺市の実情でありますが、要するに、過疎市町村といえども基礎的地方公共団体であることには違いございません。もちろん、一般的には自主財源強化が要請されるところでありますが、いかんせん過疎市の場合、税収の増加は現実にはなかなか期待できません。したがいまして、地方交付税に対する期待は一般に比して大きいものがあり、今回の改正内容においても、小中学校費、保健衛生費を中心に、過疎地に対する配慮がなされ、加えて人口等の測定単位の数値にかかる数値急激補正が適用されていることは、きわめて有効な措置であり、感謝にたえないところであります。  御承知のとおり、過疎法は十年間の時限立法でありまして、すでに四カ年を経過したわけでありますが、現下の経済社会情勢からいたしますと、過密過疎現象はそう簡単には解消するとは思われませんので、交付税の特別措置についても、引き続き強化する方向で御検討いただきたいと存じます。  さらに、過疎債も年々増加してまいっておりますことはまことに心強い限りであり、今後さらに増強されることを要望いたしますとともに、各種施設用地費も過疎債の対象にしていただきたいことと、最近の金融政策に伴う一連の金利引き上げ措置による償還費負担増高の緩和についても、さらに配慮を加えられることを期待するものでございます。  なおまた、国の補助の特例の場合にあっては、地方財政の共通問題として、超過負担解消とあわせ、国の補助基準の改定を強くお願いするものでございます。  幸い、本年度国の予算編成に際し、各種の補助金等について単価の是正措置がとられたことは感謝にたえませんが、現下の異常な物価高騰の趨勢もあわせ、今後の財政上の課題として、一そうの解消措置をお願いするものであります。  以上、種々述べましたが、この過疎対策は過密の問題とあわせ、新全国総合開発計画の中で取り上げられ、制度的にも、いわゆる過疎法の制定を見たものであり、まさに国策の一環であります。したがいまして、過疎対策一般の問題としては、自治省のみならず各省とも特別な措置を十分検討すべきであり、たとえば、国の各種開発計画の中で過疎地域の位置づけを明確にすること。二としましては、工場再配置についても実質的な誘導策を加味すること。三、過疎バス対策についても、会社に対する規制よりも住民に必要な対策として考慮していただきたいこと。四、土地改良事業は小規模なほど自己負担率が高く、過疎地域では小規模な事業が多く、負担方法の修正など、関係各省とも過疎地域振興のために、実効あるきめこまかい対策を推進することを希望するものであります。  最後に、過疎市といえども住民福祉の向上のために、快適な生活環境づくりは必要であります。過疎市は、住民の環境としては最適のところでございますけれども、しかし、文化的な施設というものは少ないところでございますから、そういう点でこれからの建設が必要だというふうに思います。しかも、国土の均衡ある発展が要求される中で、その特性に応じた町づくりこそ、市町村行政の課題であります。幸い、過疎地域行政に対しましては種々の財政上の措置がなされておりますが、将来の快適な町づくりを担保する意味におきましても、過疎市にとっては地方交付税が最大の財源でもありますので、激動する経済情勢のさなか、諸般の困難はございましょうが、将来にわたり地方交付税総額の確保と、過疎地域についての算定上の十分なる御配慮を切望いたしまして、私の公述といたします。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次に、恒松参考人にお願いいたします。
  7. 恒松制治

    恒松参考人 学習院大学の恒松制治であります。  ただいまお二人の市長さん方から、地方団体財源拡充について非常に強い御要望がありました。このことは、こうした経済の非常に高い発展と、あるいは現在ではその混乱の中で地方団体と中央政府との間の財政上のすべての分野にわたる問題であると言ってよろしいかと思います。究極的には、行政事務を国と地方でどう配分するか、またそれに対して財源をどのように配分していくかという基本的な問題が解決されないと、根本的な対策にはなり得ないと思います。本日ここで問題になります地方交付税の改正につきましても、この地方交付税を論ずることはそのまま地方財政全体を論ずることになると思いますので、ここでは、今度の国会に提案されております交付税法に即して地方財政の問題を考えてみたいと思います。御参考になれば幸いだと思います。  四十九年度地方財政計画では、財政収入のほぼ二〇%を地方交付税が占めております。それは、地方財政の運営をかなり強く左右するほどの質を持ち、また量を持っておるように思われます。したがって、その配分をどうしたらいいのか、あるいは比較的変動の強い交付税を、安定的な地方団体財源にするには一体どうしたらいいかということを、ここら辺であらためて考えてみる必要があるように私には思われます。  その配分につきましては、できるだけ地方団体間に公正が保たれるような方法が望ましいわけでありますけれども、できるだけ公正を保とうとすればするだけ、地方交付税の配分の仕組みというものはたいへん複雑になっていっております。私ども地方財政を勉強する者にとりましても、交付税の中身というのは、なかなか容易に理解しがたいほどに複雑になっております。この複雑になるということは、そうした地方団体間への配分を公正にするという面ではたいへん重要なことではございますけれども、一方では、地方財政あるいは地方税制の仕組みに対して国民が関心を持たなくなるというマイナスの点を持っております。この点をどのようにうまく調整するかということは、これからの大きな課題であると思います。  それから第二番目には、交付税の原資は国税三税の三二%でございます。この国税のうち、所得税、法人税というのは、景気に対して非常に敏感な税種であります。言いかえれば、所得弾力性の大きい税金というふうにいわれております。したがって、景気の変動の影響を受けやすいために、地方団体の安定的な財源確保するという面におきましては、かなり大きな問題を持っているように思われます。  そういう一般的な問題を踏まえまして、以下この改正法律案に即して意見を申し述べてみたいと思います。  今回提出されております改正案は、大きく分けますと二つございます。その一つは、基準財政需要額の算定方法に対して改正を加えるということであります。それから第二番目の点は、地方交付税の総額の中から約千六百八十億円を減額するという問題であります。この二つの問題が、今度の交付税法の一部改正の主要な論点であろうと私は思っております。  そこで、まず第一点の基準財政需要額の算定方法の改正につきましては、幾つかの内容を含んでおります。  その一つは、改正案のうちで、教育費や社会福祉費をはじめといたしまして、下水道費あるいは清掃費など住民生活に直接関連する施設整備のために単位費用を引き上げたということであります。このことは、文句なく高く評価されていい改正であると私は考えております。もちろん、この単位費用を引き上げることによって確保されますところの財源が、先ほど両市長さんからもお話がありましたように、たいへん膨大になっておりますところの地方団体行政需要を、十分に満足するものであるかどうかは問題があると思いますけれども、それは、個々の地方団体がそれぞれの地域的な条件に応じて運用することによって、かなり大きな改善が期待できるだろう。少なくとも単位費用を引き上げるという改正の方向については、私は全く賛成の意を表したいと思います。  それから第二番目でありますが、基準財政需要額の算定方法の中で、前年度まで存在しなかった測定単位が二つあります。両者とも四十九年度限りのものとされておりますけれども、これについては私は若干意見がございます。このいままで存在しなかった測定単位の一つは、土地開発基金費というものであります。もう一つ財政調整資金費というものでございます。この二つはいままでなかったわけでありますが、この二つの問題について共通して問題にすべき点は、四十九年度限りのものとしてこの改正法律案の中では提案されているわけであります。地方交付税制度というものは、本来経常的な行政費をまかなうための財源保障という性格を持っておりますために、したがって、四十九年度限りといったきわめて臨時的な財政需要を、こうした交付税の中で財源手当てすることが、はたして適当であるかどうかということについて、私は若干の疑問を感じております。しかしながら、現在、狂乱物価というようなことばで表現されますように、経済条件が非常に変動しております社会の中では、ある程度やむを得ない措置であろうかと思います。この額が、ある程度やむを得ない措置としての額であるかどうかというのは、ひとつ国会で十分に御審議願いたいと思っております。  それから問題の第二は、それぞれの内容についてでございます。  土地開発基金費というのは、この提案の理由によりますと、公有地拡大等に資するためにこういう基金費を設けるということになっております。これは先ほど守口市長さんからも、特に過密都市の場合には、公有地拡大あるいは公共用地取得というのが非常に困難である、そのための財源がたいへん必要であるということを申し述べられました。私もその必要性を決して否定するつもりはございませんけれども公有地拡大のためにこうした基金費あるいは財源を手当てするということについては、私は基本的には反対であります。  なぜかと申しますと、公有地拡大政策の目的には三つの目的があると私は思っております。その一つ地価の抑制ということであります。第二番目には乱開発を防止するということであります。第三番目は公共施設における土地費用の上昇を防止する、言いかえれば、土地取得いたします場合に非常に費用がかかる、その負担を軽減するということでございましょうけれども、これらは財政の措置によって行なわれるべきものではなくて、本来土地利用計画をしっかり立てて、そしてその土地利用計画を厳格に実施することによってでなければ解決が困難な課題であると私は思っております。したがって、公有地拡大のための財源手当ということは、言いかえれば次善策でありまして、むしろ、土地利用計画を厳密に実施することができないことによって生ずる、いわば防止対策としてならば意味あると思いますけれども、こういう形で問題を解決すべきではないと私は考えております。  それから第二番目の財政調整資金でありますけれども、この財政調整資金は、提案理由によりますと、社会経済情勢の変動に対処して弾力的な財政運営ができるために財源の留保を認めたものでございます。私は、多くの地方団体では四十九年度の予算編成にあたりまして、あるいは予備費という形をとるか、あるいはその他の形をとるかは知りませんけれども、とにかく何らかの形で、こうした経済情勢の変動に対して弾力的な財政運営ができるような措置をおそらく講じておられるだろうと思います。したがって、その財源を交付税の中に見込んだということは、私は評価できると思っております。  しかしながら、原則論から申しますならば、予算というものは本来政府の活動指針と申しますか、政府の公共活動の指針を示すものでございまして、言いかえれば、経済情勢の変化に応じてそれを弾力的に運用するということよりは、できるだけ経済情勢の変動がないような、言いかえれば、安定的な経済社会をつくるには一体どうしたらいいかというのが、政府の予算活動の指針になるべきものだと私は考えております。したがって、原則論から申しますならば、こうした経済情勢の変動が非常に目まぐるしいからそれに対応するような予算措置を講ずべきではなくて、経済変動を少なくするような、言いかえれば、安定化するような政府の対策を講ずべきであるというのが、私は原則だとは思いますけれども、しかし、地方団体というのが、そういう経済に対して積極的な役割を果たすほどの力はありませんし、またそういう立場にはないという意味で、地方団体財政の中で、こうした変動に対して弾力的な財政運営ができるような措置を講ずるということは、私はやむを得ない措置であろうと考えております。  これが第一番目の、基準財政需要額の算定方法の改正に関するおもな点について、私の考えておりますところの意見を申し上げたわけであります。  それから第二番目の、今度の交付税法の改正の重要な点は、地方財政の状況にかんがみて、昭和四十九年度分の地方交付税の総額は、現行の法定額から千六百七十九億六千万円を減額するということであります。これはもう釈迦に説法で、御存じのように、先ほども申しました国税三税の三二%が交付税額として国から地方へ移転される、トランスファーされる性質のものであります。このトランスファーという形は、中央政府が地方に対してそれを与えるというものであるのか、あるいは、国税三税の三二%は本来地方団体の税であって、それをただ国税庁が徴収の事務を実施しているだけのものという、いろいろな解釈のしかたがございます。私は、地方自治という立場から申しまして、国税三税の三二%分は地方団体の税であるんだけれども、その徴収の事務は国が行なっているというふうに私自身は解釈しております。そういたしますと、約千六百八十億円を減額するということは、地方団体の課税権に対して中央政府がこれに干渉するということになりかねないわけであります。あるいはなると考えております。  しかしながら、私は、国と地方との財政関係というのは決して相互に相対立するものではなくて、国民経済の安定化あるいは成長に対して、国と地方が協力的に行政サービスを実施するという性質を持っていると思っております。したがって、今度の一般会計の予算にあらわれましたように、総需要抑制という立場で国が一般会計の財政規模を縮小しようという方向に向かいます場合には、当然地方団体財政規模もそれだけ縮減をして、いわば総需要抑制に対して協力をするということは、あってしかるべきことだと私は考えております。言いかえれば、地方団体一つの国民社会における独立国ではなくて、やはり行政サービスを実施する上では、中央と地方とで協力してやるべき、そういう関係にあるわけでございますから、したがって、中央政府財政規模を縮小した、しかしながら、地方団体では行政需要がたくさんあるから、地方団体はひとつ放漫に公共支出をしてよろしいということには私はならないだろうと思っております。ただ、こうした公共支出を抑制するという国民社会全体の要求に対して、国と地方団体との間で財政支出の配分をあらためて検討し直すということは、私は考えていいことだと思っております。  たとえば、景気変動にたいへん大きな影響を持ちますところの公共事業、これは削減する、したがって中央政府一般会計の予算の削減率は、ことしは一九%台にとどまりましたけれども、たとえば一四%ぐらいにする、そのかわり、地方団体財政規模の伸びは二五%にふやす、こういうような一つ財源の配分のしかたと申しますか、あるいは行政事務の配分のしかたを考えることは、私は必要だとは思いますけれども、少なくとも現在の段階では、私はそういう立場にはないと思います。したがって、この四、五年の計数をとってみますと、国の一般会計の規模の伸び率あるいは縮小率と地方団体地方財政計画の伸び率、縮小率は同じ方向を向いてリンクしております。たとえば、国の一般会計が二四%伸びれば地方団体は二三%伸びる、今度のように一九%に下がれば同じように一九%に地方財政計画も縮小する、こういう方向をとっているということは、国と地方団体との財政の協力関係をかなり明確に示すものとして、よろしいと思います。  今度の千六百八十億にのぼる財源カットと申しますか、減額措置が可能になりました背景には、地方団体がいろいろな公共事業、あるいは補助金によるところの公共事業を実施いたしておりますけれども、その公共事業が抑制されましたことによるところの地元負担の減額部分があるために、私は、地方団体としては十分にこの千六百八十億円の減額を消化し得るというふうに考えております。もちろん、こうした国の公共事業によって生じますところの地元負担部分を、地方交付税の中で見るということ自身に私は疑問を持っておりますけれども、これは、現在の制度をかなり大幅に変えていかなければならないものでございますので、ここでは、現行の制度の中で問題を考えてみたわけでございます。したがって、地方財政の状況にかんがみて、この千六百八十億円の減額措置というのは、地方団体にとってはかなり苦しい財政運営をしいることになるとは思いますけれども、これは、中央も地方も含めて公共支出抑制政策という点から、やはりある程度地方団体としては、耐えると言うとたいへんきつい言い方になりますけれども、耐えていかなければならない問題であろうと思っております。  以上、この改正案に即して私は意見を述べました。私の意見の背景にありますものは、国と地方とは行財政の運営の上で一体どういう関係に立たなければならないかということが背景にあって、こうした意見を申し述べたわけでございます。  現在、地方自治というのは、そういう意味では、経済の発展過程の中で大きな曲がりかどに来ていると思っております。それは、ただ単に自主財源が多くなったから地方自治が伸びるとか、あるいは地方財政財政規模がふえたから地方自治が伸びたというふうに、単純には言い切れないような内容を、私は現在の地方自治というものは持っておると思っております。したがって、ほんとうに地方自治を育て、あるいは地方自治を育成するためには、一体どういう制度が必要であるかということを、こうしたきわめて変動的な経済条件の中で、私はもう一度考えてみる必要があるように思います。  以上でございます。(拍手)
  8. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次に、高橋参考人にお願いいたします。
  9. 高橋誠

    高橋参考人 法政大学の高橋でございます。  地方交付税の改正に関する法律案につきまして所見を述べよとのことであります。この機会を得ましたこと、たいへん光栄に存じておりますが、何ぶん時間の制約がございますので、十分意を尽くし得ないと思いますが、あらかじめ御了承いただきたいと思います。  私は現在、日本財政の当面している課題というのは、長期、短期、大きな二つの課題があろうかと思います。  まず、短期の課題といたしましては、言うまでもなく、現在進行しているインフレーション、これにどう対応するかという問題だと思います。これは一つは、インフレを財政政策の側面から克服するということでありますが、また同時に、四十七年以来のインフレの過程で生じているもろもろの社会的な不公正、あるいはまた四十九年度においても同様の事態が予想されますし、さらにそれにスタグフレーションというふうな事態も予想されております。こういうふうなインフレの克服とともに、それに伴う社会的な不公正を是正していくということもあわせて考えなければならない。これは短期の重要な財政課題だと思います。  また長期的には、これはもう長い間いわれてきているわけでありますが、いわゆる成長型の財政を福祉型の財政に変えていく、こういう重要な課題であります。このことは、成長型の財政の運営の一つの柱になりました、いわば中央集権的な財政運営というものを分権的な財政運営に変えていくという、こういう長期の課題も追及されていかなければならない、かように考えるわけであります。  こういうふうな観点から、現在問題になっております地方交付税にかかわる改正という問題について、私の所見を述べてみたいと思います。  ただいま恒松さんに御整理いただきましたように、今度の改正案は、大きくいいまして二つの問題を持っております。第一は基準財政需要の算定方法にかかわる改正であります。第二は約千六百八十億の減額措置、この問題かと思います。  前者につきましては、私の見るところでは、インフレに対する財政上の対応、つまりインフレで人件費あるいは物件費、その他財政上の諸単価が上昇してまいりますから、従来の行政水準を維持するためには、単価を引き上げてそれに対応しなければならない、こういう受け身の措置というものが大体大きな内容をなしていると思います。またそれに加えまして、新たに財政調整費というふうなものが新設されました。これもほぼ同様の意味を持つものであります。地方財政は、言うならばこのインフレの過程においては、ある意味では社会的な弱者でありますから、インフレからの被害を受ける、これにいろいろな財政上の措置がとられている、私はそれはそれなりに理解できると思います。  なお、私が主として問題にいたしたいと思いますのは、第二の点、つまり地方交付税の総額から約千六百八十億の減額、この措置でありまして、これは私の考えるところでは、以下述べるような諸点で納得のいかない措置だというふうに思います。  私が、この措置が納得いかないというのは次の諸点であります。  第一点は、これは恒松さんが明快にお述べいただいたわけでありますが、地方交付税そのものの性格というものであります。これは私は、ただいま恒松さんからお述べいただいた意見と本質論においては全く同様でありまして、地方交付税というのはこれは地方の財源であって、制度的にあるいは法律論として、これを国が簡単に減額するというふうなことは問題があると思います。もちろん、いついかなる場合においても減額してはいかぬという説はとりませんけれども、それはそれなりに十分な理由がなければならぬというふうに考えます。これは、ややあげ足をとるようで恐縮ですが、委員会の事務局から法律案の資料というのをいただきまして、なぜ減額をしたかということを、私は注意深く読んだわけでありますが、わずかに、地方財政の状況にかんがみたというふうに書かれているのみでありまして、これは、地方団体あるいは広く納税者というものに、はたしてこういう理由で納得がいけるかどうか、はなはだ疑問であります。この種の官庁文学と申しますか、なるべく抽象的にやるのが極意だそうでありますけれども、私ははなはだ了解に苦しむわけであります。それはおきまして、これが第一点であります。  それから第二の点は、まさに地方財政の状況にかんがみて、減額に賛成できないというふうに思うわけであります。それは先ほど来申しておりますように、地方財政は、一方においてはインフレーションによって諸単価の上昇、その他人件費上昇という形で被害を受けますが、また同時に、この過程で生じてくるいろんな諸問題、特にインフレから生ずる社会的な不公正、弱者の救済とか、あるいはさらに四十九年度に予想されますところの、すでにそのきざしは出ておりますが、スタグフレーションにかかわる不況の問題、こういうものに待ったなしに対応しなければならないという性格を持っている。  そうしますと、確かに、地方財政計画の示すところによりますと、地方税の伸びは約三〇%という非常に高い伸びでありますが、しかし、これはインフレ過程においてはまさにフィスカルイリュージョンであります。そのベースになる物価が二〇%、あるいは消費者物価と卸売り物価と違いますが、そういう上昇をベースにして考えなければならない。つまり、従来のように消費者物価がせいぜい数%というふうな事態とベースが違うわけであります。それから他方、支出面でも、事こまかくは申しませんけれども、新しい待ったなしの課題が地方財政にかかってくる。こういう点から、地方財政の状況にかんがみて、いま地方財政からこの種の減額をするという財政的な余裕があるというふうには、私には思えないのであります。  それから第三点でありますが、これは長期の財政的な課題、つまり国と地方の財政関係のあるべき姿と申しますか、あるいは国の地方への財源の交付のあり方というものとして、交付税に代表されるようなこの種の一般的な交付税、わが国の交付税は、こまかいところについてはいろんな問題を持っておりますけれども、ともかく個別補助金に比べまして、ひものつかない財政資金を交付する、その点で地方団体の自主性あるいは独立性を尊重するという点では、すぐれた財源交付の方法であることは言うまでもないわけであります。むしろ、今後この方向が積極的に追求されるべきであります。  ここで、わざわざ世界の傾向を申し上げることは必要ないかと思いますけれども、たとえば、一九七二年アメリカで始まりましたゼネラル・レベリング・セアーリング・システムというふうな、連邦レベルでの地方あるいは州に対する財源交付の方式、あるいはイギリスがここ十数年来積極的に追求しております財源交付の方法、つまり、従来の特定補助金を全面的に一般補助金に切りかえる、レート・サポート・グラントと申しますか、補助金あるいはそういうふうなものが増大して、世界的に、ともすれば中央集権になりやすい、それをいかにして地方の自主性を尊重していくかということに非常に苦労してまいっておるわけであります。  こういう点で、わが国でも積極的に地方交付税拡充していく、あるいは場合によれば、個別補助金を再編成するということが志向されるべきだと思います。こういうふうな点からいって、やや逆行だというふうに思うわけであります。  それから、おそらく、こういうふうに述べますと、それではインフレの克服、いわゆる総需要の抑制に地方財政は無関係であっていいのか、こういう反論が十分になされるかと思います。私はそれに対して、これはもっと別の方法で行なわれるべきであるというふうに考えます。たとえば、この二〇%以下の抑制というものが、他の経費によって削減できなかったかどうか。つまり、この千六百八十億というものを他の財源によって得ることができなかったかどうか。あるいは財政の規模だけ問題にされますけれども、確かに財政の規模というのは一つの象徴ですから、これは一九%より一八%のほうが小さいということは確かでありますが、この総需要の抑制というものは総合的に考えなければならない。たとえば、減税のあり方というふうなものと総合して実は評価されるべきであります。ここで百歩譲りまして、地方交付税の千六百八十億というものを削減することによって、何がしかの総需要抑制政策を打ち出すということがなされなければならないという前提で議論するとすれば、私は、もっと賢明な方法があったと思います。  それは、地方団体の自主性を生かす形で、たとえば、現在の地方交付税及び譲与税配付金の特別会計にある種の特別勘定というものを設けて、この額をたな上げする。それで、現行の措置では、千六百八十億は、いままで地方に回っていたのが国に回るというだけのことでありますから、最終的な配分についての保証というものは確保されないわけであります。むしろ総需要抑制という形ではっきりと、千六百八十億が地方交付税特別会計の中にたな上げされておるということになれば、現在のやり方よりもより総需要抑制政策の性格を明確にすることができますし、かつ、地方団体の自主性というものもそこなわないで行なえると思います。  なおかつ、恒松さんが盛んに強調されましたように、現行の地方交付税は、御存じのように三税という非常に所得弾力性の高いものに依拠しておりますから、地方税としての安定性に欠けるという点は私も認めます。それで、それを現在千数百億削減して、あとでまた何年間でそれを返すというのでは、この返す時点での問題がまた起こってまいります。そこで、むしろ取り上げたものを、そのときの景気の情勢に応じて、地方財政の状況等を勘案して取りくずしていくというやり方のほうが、地方財政の自主性をそこなわず、かつ国、地方を通ずる景気調整的な要請にも対応できるというふうに考えます。  それで、最後になりますけれども、やはりこういう、そのときの国の便宜、と言うと少し言い過ぎかと思いますけれども、あまりちゃんとしたルールがないままに貸し借り、あるいは減額というふうなことが繰り返されるということは、私は決して望ましいことではないと思います。景気調整の必要ということも私は認めますし、現在の制度を前提にすれば、確かに地方交付税というのは景気に対してかなり変動的でありますから、それに伴う安定性というふうなものもある程度検討しなければならないとすれば、よりこれをはっきりした制度のもとに位置づけるということが必要かと思います。しかし当面は、私が申しました一、二、三の理由で、この減額の措置というものには賛成いたしかねる、こう考えるわけでございます。  ちょうど時間が参りましたので、これで失礼いたします。(拍手)
  10. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次に、吉岡参考人にお願いいたします。
  11. 吉岡健次

    吉岡参考人 御紹介いただきました大阪市大の吉岡でございます。  時間の制約がございますので、問題はいろいろあろうと思いますが、枝葉の問題は省いて、問題点を三点にしぼってできるだけ簡潔に申し上げたいと思います。  御承知のとおり、昭和四十九年度地方財政計画は、物価を押えるためのいわゆる総需要抑制政策で貫かれておるというのが特徴でございまして、この地方交付税法の一部改正法律案もこの政策の一環と考えられるのでございますが、私は、総需要抑制政策の性格に問題があるのではないか、これが問題の第一点でございます。  すなわち、この総需要抑制の思想は、インフレーションの発生については政府や企業だけではなくて、消費者である国民にも責任があるのだから、政府も企業も消費者もみんなががまんをしよう、こういう考え方でございまして、これはまるで、かつての戦争責任についての国民総ざんげ的な考え方の押しつけではないかというふうに私は考えるのでございます。こういう考え方は、結局、インフレーションの根本原因がどこにあるか、高度の蓄積を求めるところの大企業の行動や、それを助長する国の財政金融政策に根ざすものであるという点に十分メスを入れないで、責任のない国民大衆に責任をかぶせて、国民大衆の負担でインフレを抑制しようとする、つまり大企業本位のインフレ抑制政策ではないか、これではインフレの収束はむずかしいのではないか、これが問題の第一点でございます。  第二点は、物価を押えるための総需要抑制の名のもとに、地方財政に対する中央集権的介入が強化されるおそれがあるのではないかという点でございます。  たとえば、地方交付税で申しますと、一つは、昭和五十五年までに返還すればよかった千六百八十億円を、国が借り上げる形で四十九年度に一挙に返還をさせて国が吸い上げてしまうという点でございます。  もう一つは、先ほど来お話のありますように、千三百億円の財政調整資金を設けた点でございます。これは、予想される異常な物価高騰に備えた国の予備費的な性格を持ったものであり、地方交付税からあらかじめ財源を留保して各自治体に配分をして、経済変動に応じて自治体が機動的、弾力的に運営できるように配慮したものだというふうにいわれております。しかし、問題を突き詰めてまいりますと、結局、次のようなことが明らかになると思われるのでございます。  一つは、地方交付税の中から千三百億円の予備費を抜き取るということでございますから、地方交付税財源が千三百億円減らされたのと実質は同じことでございまして、それだけ地方財政の節約を迫っているということになります。もう一つは、インフレーションの進む中で予想されるところの新規財政需要は、国に新しく財源要求をしないで千三百億円の中で処理をさせるということでございます。結局、インフレーションの中で急速に膨張が予想されるところの地方財政規模を、現在のワクの中に圧縮しようというのがそのほんとうのねらいではないかと思うのでございます。これが総需要抑制の問題であろうと思うのでございます。  しかし、こういうやり方の自治体コントロールというものは、強い表現で申しますと、国は自治体の自主性をそこなってはいけないという地方財政法の精神から見て、いかがなものであろうかというふうに私は考えるのでございます。  さらに、財政に対する中央集権化の問題として付言いたしたい問題がございますが、それは国の通達行政の問題でございます。最近大蔵省は、金融機関に対しまして選別融資の通達を出して、この融資規制の対象の中に、地方自治体の縁故債なども含めるように指示をしているといわれております。この自治体の縁故債の中には、学校用地取得のためのような住民生活に直結した融資もあるのでございますから、これらの点は、よほど慎重に考慮する必要があると思うのでございます。  また、昨年十一月二十日、自治省は、都道府県知事に対しまして、「地方公共団体事業執行の繰り延べについて」と銘を打って、十一月二十日現在において契約を終えていない事業は、原則として起債を認めないという趣旨の通達を出しておられます。しかし、これらの事業は、国の大規模開発プロジェクトのような性質のものではなく、中には住民生活に必要な事業で、建築資材値上がりのために入札契約がむずかしくて繰り延べになっているものがございまして、これらの事業が、このような通達で結局泣き寝入りになってしまうというケースもあるというふうに聞いております。  私は、地方財政が国の景気調整政策、物価抑止政策などに、従属するのじゃなくて協力をするということ自体は、必ずしも反対すべきいわれはないと思います。しかし問題は、どういう性格を持った国の政策であるかという点でございまして、しかも、いままでのようなやり方では、景気政策とか総需要抑制政策に名をかりて、財政を通じて地方自治体を中央政府の下請機関化し、中央の政策に一方的に服従させようとする政策になってしまうのではないかという点を憂うるのでございます。  第三点は、総需要抑制政策に地方財政を従属させることは、地方財政の危機と住民生活の危機とを一そう深刻化させるのではないかという点でございます。  まず、地方財政の危機の点でございますが、現在のインフレーションの中で、大都市地域も農村地域もひとしく財政危機が深化していることは皆さん御承知のとおりでございます。大都市地域では巨額の赤字と借金が累積し、農村地域でも、きわめて低い行政水準にもかかわらず、起債現在高はふえ、町村財政を圧迫しているのが現状でございます。  大阪を例にとりますと、大阪市では昭和四十九年度現在、緊急整備を要する、現在直ちにやらなければならない事業に一兆五千八百億円も金がかかるといわれております。しかし財源がないために、四十九年度から五十二年度までの四カ年計画でやるほかなくて、それでも一般財源ベースで三千六百億円の財源不足であるといわれております。また、昭和四十八年度から六十年度までの大阪府の、住民福祉のための最小限度必要とされる経費は十五兆四千一百億円、府下市町村では十五兆七千七百億円という膨大な額に達するといわれております。しかし、一般財源ベースで、大阪府では一兆三千二百億円、府下市町村では一兆一千八百億円という巨額の財源不足が予測されております。  このような原因の一つは、結局は中央集権的な財政構造という点にあるのでございまして、この点については、根本的には地方の自主財源、地方税源が乏しいという点にあるのであります。しかしながら同時に、国庫支出金地方交付税などの地方の財源措置が不十分であるという点も、財政窮乏をひどくしておると思うのでございます。たとえば公営住宅、学校建設ごみ処理、保育所、下水道など住民生活に不可欠の行政に対する国庫補助、負担金は、皆さん御承知のとおり不当に削減をされるために、巨額の超過負担が起きております。大阪府では、昭和四十七年度におきまして八十七億円、大阪市分では七十三億円、その他市町村分では百六十八億円を計算しております。この超過負担は、インフレーションの進行に伴いましてますます拡大傾向にあるのでございます。  このようなインフレーションと地方財政の危機状態に対しまして、国は地方財源の充実をはかるのではなくて、その反対に総需要抑制政策によって、前述のように地方交付税を削減をし、また公共事業費の圧縮で国庫支出金の伸びを前年度の半分以下に押えました。さらに地方債も、前年度に比べますと八・四%削られております。この地方債というものは、潜在的赤字であるというふうに私は評価いたしますけれども、しかし、一般財源の充実を前提とするならば、むしろ国の許可制などはやめて、自治体の自主性のもとにそのワクを拡大してしかるべきものと思うのでございます。  ところが、以上のように地方財源の引き締めによりまして財政危機は促進をされ、そこから住民生活の破壊も進められようとしておるのではないかと思います。すでにこれまでにおきましても、都市問題、農村問題など、つまり現代における新しい貧困といわれる現象が深刻化しておることは、皆さん御承知のとおりでございます。しかるに、この上に公共事業費は圧縮されましたので、問題は一そう深刻化することが予想されます。最も伸び率の高い住宅や義務教育学校建設でさえ、建築資材の高騰で大きな打撃を受けておるのが現状でございます。体育館、プール、保育所あるいは身体障害者や老人のための諸施設ども同様の事態に立ち至っておりますし、また、すでに契約ができた工事も、資材の大幅値上がりのために工事費を割らなければ工事が続行できなくなっておるというふうにいわれております。下水道補助金などは補助率が引き上げられました。この点は評価いたします。しかしながら、そのかわり地方交付税投資的経費にかかる測定単位は落とされて、交付税は減額をされるし、地方債も減らされております。  一方、住民の租税負担を見ますと、負担は一そう重くなろうとしておると思います。一体インフレーションというものは、それ自体が国民所得の最も不公平な再配分を行なうものであることは皆さん御承知のとおりでございます。しかしながら同時に、インフレーションのもとでの税制というものは、おそろしく大衆課税的な税制に曲げられるものであることも、皆さん御承知のとおりと思うのでございます。現行税制は、勤労所得は完全に捕捉いたしますけれども、資産所得は優遇をしております。特にインフレーションの過程では、高額所得者の土地、株式の譲渡所得はおそろしく増大をしております。また、大企業は租税特別措置をはじめとして数々の減免税措置が講ぜられております。インフレーションの抑制の効果をあげるためには、実はこういう所得を捕捉すべきでありますけれども現状はそうなっておりません。  一方、所得税や法人税は一般庶民や中小企業には重くなっております。インフレーションのもとでの所得税は、名目所得が上がれば累進税率の網の目にとらえられて自動的に増税になる仕組みになっております。法人税は御承知のとおり比例税で、やはり中小企業に重くかかります。  こうして、税法上の減税が行なわれましても、庶民には増税が課せられて、巨額の自然増収が生まれております。一九六〇年から七一年度までの税の自然増収は、国税では八兆四千億円の巨額でございまして、このうち減税に回されたのはわずか一兆一千億円にすぎませんでした。地方税も同じ期間に三兆九千億円の自然増収が生まれて、そのうちで減税に回されたのは四千七百三十二億円にすぎませんでした。結局、国税、地方税を合わせまして十二兆三千五百九十五億円という自然増収があったのに対しまして、減税に回されたのはわずか一三%の一兆六千五百五十八億円にすぎませんでした。  このような傾向は、インフレーションの進行する中で避けることができません。四十九年度地方財政計画を見ますと、税法上の減税をいたしましても、府県民税所得割は前年度に対し一三四・七%ふえております。市町村民税分につきましては一三九・一%ふえております。  特に、私はここで注目すべき点は、市町村民税法人税割の対前年度伸び率が一六〇・四%という高率になっておる点でございます。この点は、市町村財源強化という点でこのこと自体は望ましいことでありまして、大都市、府県の財政危機を無視して、府県民税法人税割の税率が五・六%から五・二%へ減らされたのと比べますと、大いに評価できる点であると思います。  しかしながら、ここで見落としてならない点は、中小企業に大きな圧迫が予想されるという点でございます。その一つは、インフレーションの中で在庫品の名目的な値上がりによって、所得六百万円以下であったものがそれをこえますというと、そのことによって法人税の税率が二八%から一挙に新しい税率四〇%に引き上げられます。こういたしまして起こるところの法人税の増徴を通じまして、さらに法人税割がふえるという点でございます。もう一つは、市町村民税法人税割の税率自体が九・一%から一二・一%に引き上げられました。これを通じて、さらに中小企業の税金が重くなるのではないかという点でございます。  結局、要するに、総需要抑制政策は、一方では地方財政の危機を促進し、他方では行政水準の低下と住民負担の増大という形で住民生活の危機をひどくするおそれがあるということでございまして、これを反面から申しますというと、国はインフレ抑制のための総需要抑制政策をば、地方財政の危機と住民生活の犠牲によってささえようとしているのではないか、これが第三の問題点でございます。  終わります。(拍手)
  12. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次に、安養寺参考人にお願いいたします。
  13. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 参考人の安養寺でございます。  私は、地方自治体につとめる職員の全国組織であります自治労の役員でありますが、地方交付税法の一部改正案に対し、職員の立場より、また納税者として一国民の立場から、参考意見を申し述べたいと思います。  第一の意見は、地方財政制度の一環としての交付税制度の趣旨と、現実の運用から見た問題についてであります。  日本国憲法第八章には、御承知のごとく、地方自治の本旨に基づくとして、日本一般的統治方式を示しています。すなわち、地方自治体は、自治の精神によって、住民の日常生活に直結する行政を配分され、住民の意思により、かつ住民の選んだ首長と議会により、住民のための政治が行なわれることになっています。この原則を達成するために、地方行政地方財政制度もその精神に基づくことは当然でございます。  ところが、一般的に民主主義の学校といわれる地方自治体が、絶えず中央集権の危機にさらされ、財政的には、三割自治とか一割自治ということがいわれているのが今日の状況であります。このことが、まず問題とされなければならないのであります。  このような地方自治の問題は、第一に、道州制、府県合併、市町村合併という、財政窮乏を理由とした中央集中の動きであり、最近では、一部事務組合方式を巧妙に市町村の機能集中に使い、あげて産業基盤の整備に奉仕をさせようとするなど、地方自治体を住民の手から次々に遠ざけようとしている方針に対し、私たちはまず反対でございます。  第二は、財政面からの中央集権でございます。このためには、常に地方財政を窮乏の状態に追い込み、地方税は取りがたい税源を充て、その上、補助金制度と起債の許可権を各省と自治省が掌握をし、地方自治体の死命を制しているのが現状でございます。  第三は、自治省を中心とする各省官僚を、人事交流という名で自治体に一方的に派遣をし、実質的にこれらの制度を操作しているということでございます。そしてこれらは、各省の縦割り行政のセクショナリズムを基礎としているので、各省は、それぞれの行政の中で住民に直結している部分についてまで、口実を設け、中央や国の出先に集中しようとする傾向もますます強くなっているのが現状でございます。こういう現状に対応した地方財政調整制度を考えることが必要であると思います。  私たちは、第一に、住民に直結する行政事務を一切地方自治体に移し、その上で十分その事務が遂行できる財源を分配すべきであると考えます。第二は、新しく大幅に委譲したあと、どうしても地方自治体である期間、委譲事務を行なう必要がある場合には、地方自治体の持ち出しにならないように、必要にして十分な負担金を国が全額支出すべきであります。  第三は、財源については、最も簡素に取り入れられる直接税をまず地方自治体の税制の基礎とし、その上で国の税制を考えるべきであります。  第四は、政府地域開発、新しい産業基盤整備による人口移動や都市集中により経済力の偏在が極端にひどくなっていますが、そのための税収の偏在について、財政調整制度を考えることは当然でありますが、これは、経済力の偏在の度合いが激しくなるほど多額を要するわけです。まして総需要抑制政策下においては、福祉面での節減はなかなかできがたいものでありますから、中央、地方を通じて産業基盤強化費をさらに削減をして、地方調整費はさらに増加すべきであり、今日ある交付税制度に基づいて言うならば、四〇%ぐらいに増加をすることを考えるべきであります。  この見地から言いますと、本年度千六百八十億円を交付税額から削った今回の法律上の措置は、政府がいかに福祉を軽視しているか、住民に直結した問題の解決をおくらせようとしているかを明らかにするものと考えます。  第四に、今日の意見の主題ではございませんが、補助金とあわせて、当分の間、地方自治法施行令のただし書きで自治省が許可権を持つ起債についても、もっと地方自治の本旨のもとに、民主的方法をとる必要があることを申し添えておきます。  次に、二つ目の意見でございますが、地方財政調整制度としての地方交付税についての意見でございます。  基本的な問題を述べましたが、これを抜きにいたしましても、今日の交付税制度ほどわかりにくい制度はほかにないと言って過言ではございません。地方自治体につとめておる職員といえども、まことに難解でございます。それだけではありません。交付税に関する担当職員でも、その自治体に交付される額をみずから予測し、計算することははなはだ困難でございます。  その理由は、最も具体的な数字こそが問題である財政関連法律であるのに、測定単位や単価や補正係数などが、法律案提出時にも十分な資料を得ていないということでございますし、八月三十一日までに普通交付税の額が法により示されても、その計算根拠のすべてが明らかになるのは、その年の十一月になってしまうのが通例であるという現状からきているのでございます。まして、特別交付税は、ルールにのっとって計算しているといいますが、その根拠は秘扱いであります。これは、行政事務や法令の内容が、最も簡素に、明確に国民に知らせられるという民主主義の原則に逆行するものであります。その実態は、前年度より増加をすると予想される額を前提に、まず何の事業に何億円をと先に分配をして、それを逆計算をして、測定単位や単価や補正係数を決定しているということからきた複雑さにほかならないと考えます。これでは、補助金以上に中央が財政による統制をする道具としてこの制度が使われることになりまして、中央集権の基礎をつくり、陳情政治の弊を生むことになるわけであります。  まして、特別交付税になれば、マル秘のベールの中で何なわれるだけに、つかみ金的運営が行なわれていくこととなり、災害や予期しなかった必要に備えるといたしましても、すでに実額二千億円になる特交制度は、基本的に考え直さなければならないと考えます。  私たちは、現行交付税制度に対し、まず総額を増加すること、千六百八十億の削減には絶対反対の主張のほかに、第一に、もっと国民にわかりやすい方式により計算されるようにくふうをこらすべきであると考えます。  まず、財政の弾力性を増すために、基準財政需要額と対比すべき収入額を、都道府県八〇%、都市町村七五%とあるのを、七〇%以下ぐらいまでに下げ、地方財政にゆとりを持たせることにした上で、各省の分担しておる事務の総合的最低線を毎年地方財政計画とともに発表し、ナショナルミニマムとして国民に明らかにし、できれば財政、外交、経済方針のほかに、生活福祉の方針として、毎年総理の施政方針演説とともに公表して、国民の前に明らかにすることにより、この制度に新しい民主的な息吹きを与えることを考えてはどうかと提案するものであります。  第二に、その上で、技術的計算を行なう際、もっと権限を持った地方団体の代表による分配委員会を設置して、公開の原則で政治の介入の度合いを国民の前に明確にすることが必要であると考えます。  第三に、ナショナルミニマムを交付税制度上、標準団体についての方向で明らかにするために、都市町村については大都市、中小都市町村に区分をして、これを標準団体として併用すれば、さらに国民の目に地方財政実態が明らかになると思います。検討することをお願いいたします。  第三は、特別交付税は、その運用の実態と総額の増加から、ルール計算分をまず普通交付税に移すことを考え、できれば三%程度を目標に圧縮することを考えるべきであると思います。  第四は、その上で、いわゆる積み重ね方式で全体の需要額を計算する必要があり、そして地方財政計画と完全に連結することで、地方財政調整制度を正しい道に乗せる基礎を確立すべきものと考えるのであります。  その実証をあげますと、毎年財政計画と決算と対比すると、大体二〇%以上も決算が上回っているのが実情でございます。地方税、交付税、国庫支出金等は決算でほとんど変化をしておりませんから、この伸びは、結局借り入れ金、使用料、手数料、雑収入の増収によることになっているわけであります。これでは国民は、国の制度で交付税を締めつけられたことにより、借金を背負うか税外負担を余儀なくされることになります。このことも、交付税額の引き上げを要求し、またことしの削減に反対をし、地方財政計画の客観的算定を必要とする理由であると主張するものでございます。  次に、第三に具体的な問題について幾つか申し上げます。  一つは、基準財政需要額の中における職員の人件費の低さについてであります。この法律では、一方では一般財源といいながら、一方では交付基準の設定を通じて、地方行政の計画的運営を保障することが目的として示されておりますから、人件費単価が不当に低く、かつ定員が実情に合わない数字となることは、職員にとってはまことに不当な取り扱いがなされる原因となります。もし国の基準を地方に財政上押しつける制度をとりたいならば、当然労使間の問題として、中央交渉権を含む労働基本権を明確にして、これを地方に及ぼす方式をとることを要求しなければなりません。  地方自治体の人件費上昇していることが誇大に宣伝されていますが、決算上の伸び率は、毎年人件費の伸びより大きいのが最近の傾向であります。また、四十八年度に見る市町村の交付税上の算定人件費単価の加重平均は、われわれの計算では六万五千九百四十円、これと対比すべき国家公務員の賃金を同じように計算をしてみますと七万七千九百三十三円で、一万二千円ほど交付税単価が国より低いし、都道府県は比較はむずかしいわけでありますが、やはり低いというのが実態でございます。この是正を必要とするのであります。また、都道府県の人件費は、教員と警察を除けば一般の職員は二〇%前後というのが普通でありますし、また市町村の場合人件費が多いといわれるところは、大体において福祉施設や福祉行政が充実されているところこそ多いのでございます。こういう現状を十分認識した上で、人件費を交付税単価に正当に織り込むべきであると思います。  特に、数年前から、国家公務員より期末手当が多く支払われているという理由で、超過分を特別交付税から減額をして、懲罰的運用をしていることはまことに不当であると考えます。地方自治体が一般財源を何に使うかは、その自主的決定にまつべきであります。まして、国は一般的に低い水準分しか計算上支出していないのですから、なおさらであります。  たとえば、国に存在しない福祉関係の有能な職員が確保できないこととなったならば、人間尊重の行政の第一線を充実できなくなり、住民のための行政にふさわしくなくなる結果を招来するということをどう考えるのでしょうか。現在、競輪、競馬などの収入の半額を交付税上減額をしておりますが、これは、できればその収入を基準財政収入額として全額計上して、人件費についての懲罰的減額は、これを取りやめるべきだと考えます。  二つ目は、補正係数をもっと正しく運用すべきであります。たとえば、昭和四十八年度の港湾費の単位費用を見てみますと、一〇%アップということになっておりましたが、実際に補正係数を最終的に乗じて出てきました需要額は三七・八%と、たいへん大幅に上がっておりますし、逆に都市清掃費を見てみますと、一三・六%という計算であったはずなのが、実際には係数をかけた後は九・九%と下がっているのであります。このように、産業基盤育成の費用は補正係数によってどんどん上げられ、福祉関係のほうは表看板より補正係数によって逆転させることができるという実情、また同じ年の失業対策費は、逆に、発表したよりもずっとマイナスになっているということなど、多くの問題があり、この点、補正係数についてもすみやかな公表制度、あるいは内容の是正を必要とすると考えるのであります。  三つ目には、補助金がつくと需要額が増加する事業費補正のようなものや、私たちが反対をしております連合法案の財政版ともいうべき広域市町村補助係数などを取りやめること、あるいは建設投資については一般財源と起債でまかない、元利償還分を一般通常経費として保障する方法を考えたり、零細補助金を大幅に整理をして、一般財源として調整制度に取り入れるなど、補助金制度の弊害を少しでも除去することにつとめるべきであると思います。  四つ目には、本年度の福祉関係の予算を見てみますと、社会福祉施設を都道府県標準団体で十六カ所ということにして、昨年の児童福祉施設七十カ所に振りかえておること、市については幼稚園は四カ所から五カ所と一カ所増でありますが、保育所は九カ所のまま据え置きであるということ、清掃については、ごみ収集車を十九台からわずか一台の増、人員も百二名からわずか三人増をしているということは、まことに現状に合わない是正措置でありまして、これらについても、一つ一つの費目についてさらに国会において十分な検討をする必要があると考えます。  以上、大きく分けまして三つの意見を端的に申し上げ、幾つかの問題提起をあわせて申し上げまして、参考意見とする次第でございます。(拍手)
  14. 伊能繁次郎

    伊能委員長 以上で参考人からの意見陳述は終わりました。  この際、午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ————◇—————    午後一時十一分開議
  15. 伊能繁次郎

    伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本案についての参考人からの御意見の陳述は終わっておりますので、これより参考人各位に対する質疑を行ないます。  なお、質疑の際は、参考人の御氏名をお示しを願います。  それでは、質疑の申し出がありますので、これを許します。山本弥之助君。
  16. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 先ほどは、各参考人から実情に即し、またそれぞれ地方財政の御検討を願っております諸先生から貴重な意見を拝聴いたしまして、まことにありがとう存じました。  時間が制約されておりますので、一括して簡単に御質問を申し上げて、御意見を承りたいと存じております。  まず、今回の地方交付税の改正を含めまして、私どもといたしましては非常に不満に存じておるわけであります。ことに交付税の減額ということにつきましては、私どもは、税制におきまして国が大幅の減税をいたしておるわけでありまして、地方税の、いわばインフレの影響を受ける中低所得者層の課税最低限の引き上げは、昨年よりも幅はむしろ開きができた、むしろそれらの減税をすべきであって、国税の減税は、やはり低中所得者層を中心に減税すべきで、高額所得者の減税は避けるべきである。そのことによりまして、場合によっては、交付税の減額措置というような地方の独自の財源を国の予算の関係で減額する、本来なれば五十二年度以降に償還すればいいものを国の財源に回すという、国の都合で減額することについては非常に不満であり、また起債等も圧縮されておりますので、補助事業等の関連で超過負担が十分解消されないという場合には、地方公共団体としては非常に苦しい財政事態に当面する。ただ、先ほど守口市長さんや渡辺市長さんのお話があったように、過疎対策あるいは過密対策につきましては、補助金引き上げその他交付税の改正によりまして、多少前進を見ておるわけであります。しかしそれ以上には、こういう苦しい財政の中で国に協力するにいたしましても、独自に必要な行政需要にこたえるという余地が全然ないんじゃないかという感じがいたしておるわけであります。  そこで、守口市長さんには、こういった苦しい財政下において国が措置をいたしました、あるいは教育費、あるいは下水道その他も、仕事は後退し、ほとんど地方公共団体としては住民の要望にこたえ得る仕事が、はたして人口急増地帯でできるのかどうか、どういうやりくりをしておられるのか、この点を聞きたいと思います。  渡辺市長には、過疎対策は、お話がございましたとおり、前期五年間が一応終わるわけでありますが、さらに五年間の対策をやるわけであります。はたして、過去五年間の実績で将来五年間の計画を立てる際に、地方の計画として何を最も計画について考え、また、それの財源措置をどう考えておるかということをお聞きしたいと思います。  私は、過疎対策が議員立法でできました際に、本来、この過疎地帯は、課税最低限の引き上げその他により、また人口減少によって、重要なところの自主財源が伸びていかないので起債に依存するということはむしろ逆行である、そのかわり、起債に依存するならば、過疎対策は元利償還を全額、ということは辺地債との関係もあるが、少なくとも辺地債の八〇%交付税で元利償還を見ることは妥当であるということを強く主張し、自治省もある程度まで、この点は一両年のうちには考慮するという答弁を得たので議員立法したわけでありますが、いまだにこれが実現していないわけであります。この点につきまして、どういうふうにお考えをしておられるか。もっとも、増額することを歓迎することは当然だろうと思いますけれども、御意見を承りたいと思います。  なお、この過疎対策につきましてのそういった意味のことは、恒松先生は、山村振興の報告書か何かの小論文だったと思いますが、全額交付税で措置すべきだというふうな御意見を持っておられますが、それが先生の立場で妥当であるかどうか、それを主張する根拠等につきましてお聞かせ願いたいと思います。  なお、高橋先生、吉岡先生には、ことしは私ども代案を出し、修正案等を出してやりましたけれども、税制の関係は固まり、また交付税もあと何回も審議しないうちに解決を見るわけであります。非常に私どもとしては不満のうちに、地方公共団体に申しわけない気持ちがいたしておるわけであります。今後の情勢の推移によりまして、あるいは来年度地方税の住民税につきましては、いろいろ資産優遇の措置の是正、あるいは当然所得控除が大幅になっておる影響を受けるわけであります。そういう際に、私はやはり自主財源を、多少普遍的な税源というような性格を失いつつありますけれども、やはり中心の税でありますので、住民税につきましては税率の変更を行なうべきであるということを私ども強く主張しておりますが、これらの点につきまして御意見を承りたいと思います。なおその点は恒松先生にもちょっとお聞かせ願いたいと思っております。
  17. 伊能繁次郎

    伊能委員長 ただいま山本君から、関係参考人方々にお尋ねがございましたので、逐次お答えをいただきたいと存じます。木崎参考人
  18. 木崎正隆

    木崎参考人 過密都市といいますか、人口急増都市といたしましても、私ども先ほど申し上げましたように、現在のような国の状態といいますか、総需要抑制の至上命題のもとでは、現行制度におきまして、やはり国、地方の協力を前提としてやむを得ない措置だと考えております。もちろん、たとえば千六百八十億ですか、その程度の繰り上げ償還といいますか、あれはやはり過去の交付税総額の足らないときに借りておった分を返すということでございまして、そういう意味から、大きな目的のもとにはやむを得ないというふうに考えておるわけでございまして、そういう意味から一例を申し上げますれば、一時的に、たとえば急増都市であればもちろん学校は建てまするけれども、木造校舎を新しい学校の開設と同じように鉄筋に変えたいというようなものは一時延期しようということです、当然使用できるものでございますので。あるいは体育館にしましても、市民体育館にしましても、一例をとりまして、私ども守口市としても大きなものを考えておりましたけれども、いずれは、ある程度の経済抑制の効果が出ますれば、国のほうでも早々にお考えいただけるものとして、そういうことを前提といたしまして、これを一時的に延期するということで、大体地区の住民も、こうした非常事態でございますので了承してくれるものと私ども信じ、また市会のほうでも、何ら異議なく進んでおるという状態でございますので、冒頭申し上げましたように、国、地方を通じて協力していかねばならないという基本的な考えを持っておりますことを申し上げておきます。
  19. 渡辺長純

    渡辺参考人 山本先生のお話にありましたとおり、過疎地におきましては、何といっても交付税が一番大きな財源でございます。先ほど申しましたように、三億に対して十億というのが私の市の情勢でございますが、ことしの新しい予算におきましては、十二億八千万ほど交付税を当て込んでおります。もちろん、市税も一億ほど伸びましたけれども、四倍くらいはいつでも交付税にたよっておるという状況にございますから、交付税が多く出るということは、最も望ましいことであります。  なおまた、過疎についての対策でございますが、いろんな補助金とかそういうものにつきましても、過疎実態をそのまま認めて、過疎になったのだからこれこれ出すということなんです。たとえば、学校を統合するのに出すとか、あるいは道路に出すとか、ことに集落移転をさせるとか、そういうものが出てきますけれども、これは、いまの過疎実態を認めただけにすぎないのですね。過疎を解決する、過疎をなくするという方向にはほとんど手が打たれていない。集落移転などは、私のところでも少しはやっておりますけれども、ほとんど手がけておりません。どうも集落移転するということは、市内で五キロぐらい山のほうから持ってきたといっても、そこに産業がなければ絶対固定しないのです。五キロ出るよりも、五百キロ出て東京へ出てしまうというのが合理的でありまして、産業のないところで、いかに集落移転してもむだなんであります。  そういう点からいって、江刺市のようなところは、立地としてはいい条件を持ちながら産業が来ていないということでございますから、やはり過疎債等で、過疎債はわりあいにワクが広いのですから、それで産業を誘致できる状況をつくっていくということでなければならぬと思います。したがって、私たちは、むしろ過疎債のワクをもっと広げていただいて、さっきも、豆つくりも有線テレビもやると言いましたけれども、そういうふうなことで、過疎債でもって過疎解消をはかっていくという施策に手を打ちたいと思うのです。  なお、過疎債の償還につきましては、お話ありましたように、全額というのはたいへんけっこうでございますが、私たちはむしろ、過疎債は返還するという条件があっても、それだけ市が発展すれば返還の条件ができる。したがって、過疎債のワクを多く出してもらって、いま七百が八百になればなおいいですが、七百でもけっこうですから、多くワクをもらって過疎解消して、これを返していくという方途をとりたいと考えております。もちろん、これが全額交付税であるなら、なおけっこうでございます。
  20. 恒松制治

    恒松参考人 ただいまも過疎の問題で、渡辺市長さんからお話がございましたけれども、先ほど御質問に、私の立場でどう考えるか。どうも私はそう立場にこだわりませんものですから、かってなことを言わせていただきますと、いま過疎地域過疎債が配分されておりますけれども、私は、いま渡辺市長さんのおっしゃいましたように、過疎地域過疎債を投入して開発をはかって過疎解消するということは、ほとんど不可能だと思います。私は、過疎債の性格というのはそうではなくて、現在公共サービスの水準の低い地域に何らかの形で財源を与えたい。ところが現在の交付税制度の中では、態容補正とかあるいは密度補正等の補正がありましても十分にはいかない。したがって、一時過疎債によって財源の手当てをして、そしてその七五%を将来基準財政需要額で見るというのがいまの制度だと思っております。  その点を強調いたしますならば、この過疎債というのは、借金というよりはむしろ一般財源である。そうだとすれば、一時手当てをした財源の返還あるいは償還にあたっては、全額交付税で見るのが財源の性格からいって当然のことだ。これは決して最近言い出していることではなくて、ずいぶん前から、過疎法ができましたときから、私はそのことは主張しているつもりでございます。
  21. 高橋誠

    高橋参考人 ただいま山本委員からの御質問でありますが、特に今後の地方財政のあり方ということで、地方税及び地方交付税、特に地方税の問題についての御質問を受けたわけであります。  御指摘のように、今般の税制改正によりましても、国税につきましては課税最低限等の大幅な引き上げがありました。しかし地方税、特に住民税につきましては若干の措置はなされておりましたけれども、両者の格差がうんと開く、こういうふうな状況であります。  こういうことで、今後地方税のあり方をどう考えたらいいかということでありますが、まず、この住民税について申しますと、この住民税は一応地方税として独立した形をとっております。しかし、国税と非常にリンクしておりまして、特に資産所得に対する課税、利子とか配当とかあるいは株式譲渡、土地の譲渡、まあキャピタルゲインと一般に呼ばれているものでありますが、この種に対する国税の課税というものが、御存じのように各種の優遇措置によって必ずしも十分に行なわれていない。これが地方税というたてまえからいいますと、独自にそれぞれ課税し得るわけでありますけれども、これは事実上の問題として不可能であります。これがそのまま地方税にはね返ってきている。この点をやはり是正していかなければならない。  これは、まず国税のほうでこの点についての積極的な措置をとってもらわなければならないわけでありますが、加えて課税最低限が低目に押えられている。これは従来は、いわゆる受益者負担の原則というふうなことから、あるいは応能原則というふうなものから、地方税については能力主義とは別の考え方で、違うのがあるのが当然だというのがある意味では定説になっておりましたけれども、しかし、私は所得課税という形で一本に考えて、国税、地方税ともに課税最低限は一本化していくという方向を目ざすほうが、むしろ現代的な住民税のあり方としては望ましいのではないかと思うわけであります。そのためには、やはり所得課税につきまして一部国税から地方税に移譲する、税源の移譲ということも考えてしかるべきではないか、こういうふうに思っております。そういう点で、今後地方税を一方では強化し、かつ内容を充実していくということが志向されるべきではないかというふうに思います。  御指摘のように、地方税と交付税というものは両輪でありますから、交付税につきましても、各参考人の方から御指摘ありましたように、もう少し配分の方式というものを簡素化すると同時に、量的な拡大もはかってまいらなければならぬ、かように考える次第であります。
  22. 吉岡健次

    吉岡参考人 私も、大体高橋さんの御意見に賛成でありますが、山本さんのおっしゃるとおり、自主財源中心一つ住民税を持ってくる、私はこの方向は賛成だと思います。四十九年度市町村税の法人税割、今度税率を引き上げましたけれども、すでに御報告申し上げましたように、そのこと自体は私はたいへん評価すべき点であろうと思います。この点は、都道府県民税の法人税割のほうは、むしろ逆に下がっておりますが、これは法人税の税率が上がりましたから、すべてが上がるというわけにいかぬだろうというふうなことで下げたのであろうと思いますけれども、これはいわれなきものであろうと私は思うのでございます。これはむしろ後退であろうというふうに思います。しかし、ただ道府県税の場合は別に事業税がございますから、東京都の財源構想のように、事業税の法人税割を引き上げるということが考えられますから、道府県税の場合は市町村税の場合ほどのことを考える必要はないと思うのです。やはり市町村税の場合は、市町村民税が中心にならなければならぬ。  そういう意味では、私は、今回の改正そのこと自体は、自主財源の増強として評価をいたしますけれども、すでに申し上げたように、中小企業に非常に重圧がかかる。ですから、そういう点をもう少し考慮しなければならない。  それから所得割の場合も、やはり高橋さんがおっしゃったように、課税最低限の点、さらには均等割の点なんかも、もう一回見直していかなければならぬじゃなかろうか。つまり、応益原則主義というものは私は賛成じゃないのでございます。そういう点が、将来の方向じゃなかろうかというふうに考えるのでございます。
  23. 伊能繁次郎

    伊能委員長 安養寺参考人には御指名がございませんでしたが、よろしゅうございますか。——細谷治嘉君。
  24. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まとめて御質問申し上げますので、お答えをいただきたいと思います。  最初に守口市長さんと吉岡先生にお尋ねいたしたいのでありますけれども、例の公有地拡大法に関連いたしまして、公社が昨年続出いたしたわけでありますけれども、昨年暮れに大蔵省の銀行局長通達によりまして、民間と同じように規制を受けました。そのために全国的に、なかんずく大阪でたいへんな問題が起こっております。この問題は国会でも取り上げられたわけでありますけれども、大体、大蔵省当局は、学校等の緊急必要な公有地についての融資については必ず裏づけをしますと、こういうことになっておりますけれども、すでに四十八年度年度末は終わったわけでありますが、一−三月の規制が現実にどういうことになっておるのか。その点と、私はむしろ問題は四−六月の第一・四半期をどう越すかということこそ、今日緊急な課題になっておるかと思うのでありますが、たまたま特にこの問題に火がつきました大阪に関係がございますから、お二方からこの問題、現状と当面する一・四半期と、どういう状況になっておるか、これを教えていただきたい、こう思います。  第二番目の問題点は、三先生にお聞きしたいのでありますけれども恒松先生は、千六百八十億の削減措置は、総需要抑制という国の大方針から妥当である、こういう御意見であり、高橋先生並びに吉岡先生は、それは反対である、こういう意見表示があったかと思います。私も、交付税というのが、地方の自主財源というよりも自主税源という前提に立つならば、こういうような形で総需要抑制というのは誤りである、こういうような見解をとっております。言ってみますならば、いわゆる二〇%以内に国の予算を押える、こういう形で千六百八十億円が削減されたのであって、総需要抑制ならば、それを入れて、特別会計で使わなければ総需要抑制になるわけでありますから、総需要抑制はほかの方法でしかるべきであって、言ってみますならば、国の予算編成のいけにえに自主税源である交付税がされた、こういうふうに理解をいたしておるわけであります。  ところで、そういうことになりますと、四十四年に当時の大蔵大臣、いまの大蔵大臣でありますけれども、それからなくなられました野田自治大臣との間で五項目にわたる協定があります。その第一項目に、当分の間、双方とも地方交付税率の変更についてはものを申さぬということ、そして交付税の年度間調整について検討をする、こういうことになっておるのですけれども、その年度間調整というのは、四十四年から今日まで五年を経ましたけれども、まだ何らの具体的な方途も示されておらない、こういう状況であります。  そこで、年度間調整に学者の間から幾つかの提言があります。もちろん、それは地方交付税が地方の自主財源であるという前提に立っての方針でありまして、一番理想的なことは、地方団体に配って、地方団体自体が自主的に調整すればいいわけでありますけれども、それがむずかしいとすれば、特別会計の場において調整するかどうかは別として、いずれにしても年度間調整というのは具体的に検討し、結論を急がなければならぬことではないかと思うのでありますが、それらについてひとつ御構想をお聞かせいただきたい、こう思います。  この交付税の問題に関連いたしまして、三先生にお尋ねしたいことは、二兆数千億というばく大な地方交付税になっておるわけでありますけれども、交付税の補助金化というふうにいわれておりますように、いわゆる地方交付税法十三条に基づいていろいろな補正が行なわれますが、単位費用は法定されますけれども、各種の補正というのがすべて政令にゆだねられております。その政令も、極端な場合になりますと、こういう問題をやるかやらぬかは自治省令できめて、計算のしかたも自治省令できめて、減額のしかたも自治省令できめるというので、自治省令で三段ぐらいできめてしまっているのですから、全く補正のやり方というのは、単位費用をきめても抜け穴——まあ都道府県の場合、これは安養寺さんの意見にも関連ありますけれども、標準団体というのが百七十万でありますから、東京の一千百万と、それから少ないところでも八、九十万でありますから、あまり人口の比がありませんから、都道府県にきまった単位費用というものを補正でかけた場合には、多くても単位費用からの隔たりというのは二、三倍くらいのところでおさまっております。ところが市町村は標準団体十万でありまして、少ないところは一万足らずの町村から、多いところは三百万の大都市を十万でくくって、その単位費用で補正するわけでありますから、極端になりますと、その単位費用の百倍くらいの偏差が起こっておるわけです。  そうなってまいりますと、法律できめた単位費用が、政令の補正係数において完全にひっくり返ってしまった、言ってみますと、法律よりも政令が優先して歩いておる、こういうことになります。具体的にその補正のしかたについて、ある部分を政令にゆだねなければならないものでありますけれども、いまのような現状は許されない。しかも補正で出てくる数値というのは、二兆数千億の少なくとも二割をこしておるわけですね、現状は、補正で出てくる増加需要額というのは。これは法律を国会で審議して、あとは官僚ベースで普通交付税すらも壟断されておる、こういうふうに申し上げることができると思うのであります。  そういう点で、三百万を十万の標準でくくるなんということはもともと不可能に近いことでありますから、たとえば一万か二万ぐらいの標準団体、十万ぐらい、それから五十万なり七十万ぐらいの三段階ぐらいで、やはり単位費用をきめて適用をしていくということになりますと、この補正の問題に対する基本的な問題は現行法よりはっきりと法定できて、政令がひとり歩きする、こういうことにならないかと思うのであります。こういう点についてひとつ両先生、特に安養寺副委員長もその点発言されておりましたから、この点について御意見をお聞かせいただきたい、こう思います。  それから、いろいろの御意見がありましたけれども、具体的に交付税四〇%という御意見もありました。私は、前提条件がなければ、交付税四〇%という議論はむしろ地方にとっては毒になる、こういう考えを持っておりますが、四〇%という場合にどういう前提条件をお考えになっているのか、これをひとつお聞きしたいと思います。  それから、最後の点は、地方財政計画というのが交付税法に基づいて作成されておるわけでありますけれども、いまやこれが国民あるいは自治体の財政計画ではなくて、自治省の官僚の計画という色彩をどんどん濃くしていっておると思うのであります。したがって、四十八年度を例にとりますと、歳入面において三割以上の乖離が起こっております。歳出面において二割幾らかの乖離が起こっております。こういうことでは、地方財政計画の意義というものが失われてくると思うのでありますが、現在に対応できる本来の地方財政計画の意義を全うしていくためにはどういうつくり方をすればいいのか、この辺について御意見をお聞きしたい、こう思います。  以上です。
  25. 伊能繁次郎

    伊能委員長 まず、当初の御質問に対して木崎吉岡参考人からお答えをいただきたいと思います。木崎参考人
  26. 木崎正隆

    木崎参考人 昨年十二月の銀行局長通牒によりまず融資の引き締め問題でございます。土地開発公社が行ないます分について、いまおことばのように、一般業者と同じような制限を受けるということになりましたので、私ども、特に過密あるいは人口急増都市は、大阪府下の市町村はほとんどそれに該当するわけでございますが、そういう意味から、土地先行取得をやっておったわけですが、それが急遽そういうような結果になりましたので、たしか一月二十二、三、四と、全部の市長が三班に分かれまして、自治省なり大蔵省等へ強い要望をかけたわけでございまして、先ほど申し上げましたように、土地開発公社が行なう先行取得のうち、国及び地方公共団体の確たる事業計画に基づくものについては、融資制限を全面的に撤廃してほしいということを申し上げたわけでございます。  そういう意味から、府におきましてもこの事態を憂慮し、実質的にどの程度の金額が契約したことによって支払うべき金額かということで詰めていただいたわけでございまして、それが大阪府では、たとえば一月末あるいは二月上旬にかけて、大体百八十億程度だったと記憶いたします。私、数字的な責任者でございませんので、多少相違あるかもしれませんが、その点はお許しをいただきたいと思います。そうして三月一ぱいで詰めていただいたら二百五十億程度だったと思いますが、しかしながら各地方自治体におきましても、市町村におきましても、できるだけの努力をいたしました。そして管内の農協その他にも働きかけまして、その金額を縮小いたしますとともに、国におきましても特別な事情をしんしゃくしていただきまして、一応四十八年度は全部予定どおり済んだように聞いておるわけでございまして、私の市も同様でございます。  したがいまして、いま四月から六月にかけての期についてのおことばがございました。この点については、いまさら申し上げるまでもなく、開発公社は学校用地、公園、保育所幼稚園の敷地等先行取得するわけでございます。まだその点がはっきりしないということではございますが、私の市を例にとりますれば、すでに開発公社で買い受けましたものを四十九年度の市の一般会計予算に計上いたしまして、つまり開発公社の分を市の所有にするというものが、これは私のほうの開発公社の四十九年度の計画でございますが、土地取得計画としては約五十億の予定をいたしております。市のほうに四十九年度予算として載せております工業用地を買います分として二十二億程度を見ております。そうすると二十八億ほど足らぬということになりますが、そう一ぺんに五十億、四十九年度中に買収するというわけでございますので、市へ売却いたしますについて、二十二億の金は公社から一応銀行へ返し得る金でございます。これを振りかえまして利用していくということにすれば、少なくとも四月から六月だけでなく、九月程度までは十分処置していけるものというふうに考えております。たぶんよその市にしましても、大体、金額の差はございましても、一・四半期といいますか、その程度は十分こなし得るものと考えるわけでございます。  以上、お答えいたします。
  27. 伊能繁次郎

    伊能委員長 吉岡参考人吉岡参考人には、第二段の問題についてもあわせてお答えを願います。
  28. 吉岡健次

    吉岡参考人 まず開発公社の問題ですが、これはお話しのとおり非常に激増しておるわけです。私は、この開発公社というのは実はあまり好かぬのです。というのは、一つは、開発公社に公共的な性格の仕事をやらせるということは、自治体という公の団体ではなくて、分身的な性格と申しますか、しかし自治体ではないのですから、そういう団体にそういう仕事をやらせるということは、一つの側面では、住民には一体何をやっておるかということがわからなくなる。つまり、従来自治体がやっておった仕事がだんだんともぐっていって、顕在化しなくて、一体何をやっておるかということ、自治体行政の全貌というものがわからなくなるという意味で、私はあまり賛成じゃないのです。   〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕 しかし、そうかといって、現状は自治体に対して起債のきびしい規制があるものですから、これはもうどうもこうもしようがないのですから、そういう組織でもつくってやらざるを得ないからこういう団体がたくさん出てきておる。そういう意味で、もう一つはやはり住民の要求にこたえる側面もあるわけです。そういう意味で、私は二つの性格を持っておると思うわけでありまして、これはやはりいい方向へ活用していかなければならぬものであるというふうに考えるわけです。  そして御指摘のように、私も先ほどの午前中の御報告の中で申し上げたように、大蔵省はかなり選別融資をやっておるのですね。私はこれは反対だということを申し上げておるわけでございます。私はその実態はどうか知りません。どういうことになっておるか、ちらほらと、そういうことは非常に困るんだということを聞いておりますが、大阪の地域でどういうふうな実態が起きておるかということは、申しわけございませんけれども私は存じません。
  29. 恒松制治

    恒松参考人 ただいまいろいろ御質問をいただいたわけでありますけれども、簡単に一つずつ順を追ってお答えしたいと思います。  まず第一番目の、今度の千六百八十億円のいわば削減措置については、われわれ納税者から見ますと、幾らか公共支出が抑制されて物価の鎮静にもし役立つならば、役立つかどうかは私はまた別の考えを持っておりますけれども、役立つならば、国の段階でやっても、地方団体の段階でやっても、あるいは両方の段階でお互いに協力し合って削減をするほうが望ましいと思っております。したがって、削減するということは、現在の行政事務の配分を前提にいたします限りは、私はむしろ当然のことであろうと思っております。必ずしも地方団体がいけにえになっているとは私は理解しておりません。  と申しますのは、総額が削減されるということと、それを、たとえば過疎とかあるいは過密といった財政需要のたいへん逼迫しているところへ重点的に配分し直すという問題は別問題でございます。したがって、削減そのものについては、私は地方団体がいけにえになっているというふうには理解しておりません。  それから第二番目の、交付税を景気の上昇、下落に伴って年度間調整する必要があるのじゃないかということは、私はずいぶん前から主張しております。その一つの方法は、たとえば、経済の成長率がある一定の基準を越えた場合には交付税率を下げる、また成長率が一定の率を下回るような低成長の場合には交付税率をふやすという形で、言いかえれば、地方財政財源をできるだけ景気にとらわれないで安定させるという意味では、そうした一つ年度間調整のしかたもあるのではないかというふうに私は考えております。しかし、この問題は、先ほど御指摘になりましたように、四十四年以降全くたな上げにされているわけでございますけれども、早急に大蔵省と自治省とで制度化して、地方団体財政の安定化をはかるべきだと思っております。  それから第三番目は、交付税のいわゆる補助金化という問題でございますが、残念ながら現在の制度の中には、残念ながらと言っていいかどうかわかりませんが、たとえば事業費補正といったようなものは、私は若干交付税の補助金化の一つのあらわれと見てよろしいように思っております。私は前から、あまり交付税の配分方法が複雑になるということは、地方自治の観点からいっても望ましくないということを主張してまいりました。  その一つは補正でありますけれども、たいへん卑近な例を申して失礼なのですけれども、たとえば現在人口急増補正であるとか、人口急減補正であるとか、あるいは寒冷地補正等のいろいろな補正が行なわれておりますが、たとえば、もし人口急増地域に対して補正するのだったら、あるいは人口急減地域に対して補正するのだったら、むしろ、現在人口がきわめて停滞しているような地方団体というのは、もっとそれをよくする必要がありますから、人口停滞補正というものもほんとうは設置すべきだろうと思いますし、また寒冷地補正があるのだったら、常に台風の災害に見舞われている南九州地方には、たとえば台風補正というのがあってもいいかもしれない。こういうことを考えますと、長い日本列島のことでございますので、それぞれその地域地域に特殊な補正の要因というものが私はあると思います。したがって、そういう補正を全部積み重ねますと、ないにひとしい。したがって、むしろ極端な言い方をいたしますならば、補正なんというのは、人口密度による補正以外はむしろ私はないほうが望ましい、こういうふうに思っております。  それから、それに関連いたしまして、この交付税制度あるいは平衡交付金制度ができましたときに標準団体としてとりましたのは、実情に合わないことはおっしゃるとおりだと思います。したがって、実情に合うような新しい単位費用の計算を、私はこの際すべきではなかろうかと思っております。  それから、第四番目の地方財政計画でございますけれども、平衡交付金のときに、言いかえれば、地方団体財政需要を計算する、あるいは積み上げて計算するという意味で重要性を持ちましたところの地方財政計画は、現在の制度では全くその存在理由を失っております。したがって、私は現在の地方財政計画というのは、いわゆるプランというのではなくて、それは地方団体財政運営をしていきます場合の指針として、あるいは指標になるものとして地方財政計画というのは存在の意義があるように私は考えております。したがって、先ほど御指摘ありましたように、財政計画と実際の決算の間には大きな隔たりがあったといたしましても、それはあまりにも地方財政計画を過大に評価されているために生じてくる問題だと思っております。  以上でございます。
  30. 高橋誠

    高橋参考人 細谷委員からの御質問にお答えいたします。  第一点は、千六百八十億の減額に関連いたしましての問題でありますが、これに関する意見は午前中申し述べたとおりであります。その際にも申しましたように、景気調節という点から見てどういうふうに評価されるかということでありますが、非常にラフに申しますと、どうしても四十九年度の予算の規模を二〇%以下に押えて、緊縮予算というふうなかっこうをつけたいというのが、おそらく国のほうの強い意思であったかと思います。そういう点で、この削減の措置がとられたというふうに私は理解しております。  しかし、その景気調節という点に重点を置いてやる場合には、ただそれは地方で使うものが国に回ったということでありますから、必ずしも景気調節としての一貫性を持たないわけであります。つまり、二〇%以下ということになって、一種の、予算の規模というのはアナウンスメントエフェクトというものを持ちますから、押えられた、こういう心理的な効果が確かにあることは認めますけれども、実体的に言えば、その削減されたものをリザーブしておくという措置がとられないと、景気調節の措置としての一貫性を持たないというふうに私は考える。そういう点から、たとえば現在の特別会計の中に調整勘定というものを設けて、そこにこの際はためておくというのも一案であって、むしろそちらのほうが筋は通るではないかということを申したわけであります。  それに関連をいたしまして、年度間調整の問題が議論になっておるわけでありますが、私も午前中に申しましたように、現在の交付税制度、これは変えれば別ですけれども、景気の変動によって税収の所得弾力性が非常に高いという点がありますから、年度間の調整をとるということは必要かと思います。  その場合に、御指摘のように、各地方団体がそれぞれ一応もらうけれども、この際はためておくというのが、地方団体の自主性を尊重する上からは望ましいことですけれども、各地方団体がそういうマクロ的な経済情勢を判断して運営するということはなかなか困難がありますから、現状においては、いま私が申しましたように、地方交付税及び譲与税配付金特別会計の中にそういう調整勘定というふうなものを設けて、そして一般的には好況期にはそこにためておく、不況期にはこれを取りくずす、こういうふうな形での方向というものをむしろ詰めてみるべきではないか、こう思っております。最後の点はまためんどうでありますから、時間の関係でこの程度にとどめたいと思いますが、これが第一点であります。  それから二番目の点は、交付税の算定方法が非常に複雑だという点の御指摘でありまして、これは私も細谷委員並びにただいまの恒松さんの御意見にも全く賛成であります。ちょっと私はイギリスとアメリカのことを申しましたものですから、ついでに悪乗りしてもう一つのことを言わしていただきますと、ここにイギリスの一般補助金の計算方法が出ておりますけれども、非常に簡単なものです。簡単に言いますと、これは人口であります。それにただ地域的な補正を若干加えているということでありまして、アメリカの場合も大体同様か、もっと簡単だと思います。おそらくこれは、日本の政治というものは、よく言えば非常にきめこまかくやっているということでありますし、これをやっておられる日本のお役人の方も非常に優秀でありまして、そういう非常に精緻なことに気を配られているというようなことかと思いますが、結局、こうバランスしてみると、恒松さんの先ほどお話しになったように、人口であっても変わらぬというふうなことになっているので、この際思い切ってこういうものを簡素化という方向に進むべきじゃないかというふうに考えます。  そのためには、やはりまず経常的な支出とそれから資本的な支出についてのものをはっきり分けて、やはり問題があるのは資本的な支出の部分でありますから、経常的な部分については、多少日本地方財政が変動性がありますから、なかなか正確に算定できないということはありますが、経常的なものはかなり大まかな基準でやってもそれほど大きなあれが出てこない。それから、地方債だと非常にがんじがらめに統制されておりますから、そういうこととの関連、あるいは補助金関係、そういうものと全部一体になっていろいろのものがからんでおりますから、なかなか交付税だけで取りほぐしていけないという側面もあろうかと思います。  それから三番目には、交付税を三税の四〇%というのに引き上げろというのが、ある方面での大かたの目標、というわけでもないでしょうけれども、この交付税というふうなもののリンクの制度ですが、いま三税の三二でありますが、もともとそれを何にリンクさせるかということについては、必ずしも私は三税がいいかどうか、もっと安定したものにリンクをさしたほうが、あるいは国税全体とか、あるいはもっと、国債をも入れたものというようなものを考えてみるという、そういう点が一つあります。これは積み上げ方式との関連もありますけれども、一応リンク制度というのは頭打ちというデメリットもありますけれども、他方では、それだけ財源確保するといういわばもろ刃の剣みたいなものでありますから、現在のリンク制度というものを一応尊重するとすれば、もっと別のリンクというようなものも検討してみるべきではないかという点と、それから前から申しておりますように、こういう一般的な補助金、つまりひもがつかない金をふやすということが地方財政にとって一番大事な点でありますが、これをどんどん拡充していくことは大事ですけれども、それと見合って補助金を一体どう考えるのか、補助金の整理あるいは統合というふうなものとからんで考える、あるいはもっと進んでいくと事務の配分というふうなものとも関連をいたしますから、運動のスローガンとしては、とにかく交付税を非常にふやせという点では私も了解いたしますけれども、なおこまかい点では、検討すべき点があるのではないかと思います。  それから最後に、地方財政計画の問題が、これは細谷委員御指摘のように、もともと地方交付税の算定と関連して提起されたものであります。つまり、問題はおそらく二つありまして、一つは現実との間の誤差の問題、これは一つは、日本の経済変動が非常に激しくて、そういう予測が正確になかなか行ない得ないという点と、それから他方は、予測の技術そのものが非常に未熟で、そこで実際との間に乖離が生ずるというふうな、いわば計画技術上の問題というのがあろうかと思います。  ただ、おそらくここで問題としていらっしゃる点は、これが一つの、国の地方に対するコントロールの手段というふうなものに転化しているのではないかという御懸念の表明かと思います。私もそういう点が多分にあろうかと思いますが、これは両面がありまして、地方団体の側がこれをどう受けとめるかということも関連をしておりますから、あまりこんなものをもともとそう重視する必要はないということであれば、それなりのそういうものとして位置づければいいので、またこの種の計画があることは、全体の地方財政の国民経済における位置づけを見たりあるいは方向づけを見たりという点では、ある種の存在価値があることを認めますけれども、一種のガードラインみたいなものとしてこの計画を位置づけるということには、あまり賛成ではありません。  以上、四点にわたってお答えいたしました。
  31. 吉岡健次

    吉岡参考人 最初の年度間調整の問題でございますけれども、これはどういう景気調整なのかということが一番問題だろうと思うのです。諸外国では御承知のとおり補整的財政政策、フィスカルポリシー、つまり、景気が非常によくなっているときにはできるだけ公共投資を押えて、そして余った財源をとっておいて、不況になったときに公債を発行して、その公債の財源にあてがう、つまり短期的には不均衡でも、長期的には均衡をとろうというふうな、そういう財政政策というものが、もうすでに前から実施されておるわけですが、日本の場合には、そういうふうな財政政策というものの実態を見ておりますと、景気の調整じゃなくて、景気変動というものを調整するのではなくて、むしろ逆に拡大をするというふうな傾向が従来あったわけでございます。つまり、景気がいいときには自然増収が多くなりますから、それでもって大いに積極的にますます大規模な建設的な事業をやるわけでございますから、いよいよ刺激を与えるわけであります。そして今度不況になった場合には、それではそういうふうな産業関連の投資なんかは手控えるかというと、若干は手控えるけれどもあまり手控えない。むしろ生活関連の経費のほうを圧縮してくるということでございまして、つまり、産業関連は好況、不況を問わず大々的にやってのけて、不況になったときには生活関連のほうを締めてくる、そういうふうな実態であったので、私はあまりけっこうな景気調整だとは思わないわけであります。ことしは総需要抑制で、若干すでに申し上げたような性格のものを持ってきておるわけです。ですから、私はほんとうにりっぱな景気調整政策をやるのであるならば、これは自治体といえども協力すべきことであるし、今日の世の中では社会の有機的構成が非常に高いので、国と地方との関係というものは、国は全然そっぽを向いておって、地方はこっちを向いておるというわけにはまいりませんから、それは必要でありましょうけれども、国のそういう景気調整政策に自治体を一方的に、いやおうなく押しつけてくるというようなやり方というものには私は反対である、こういわざるを得ないのでございます。  それから、あとは簡潔に申しますが、交付税についての補助金化の問題、お話を聞いておると、私もそうだなというふうな気がしてくるのでございます。しかし、これはよく検討してみないとわかりません。すぐにそれがいいか悪いかということをここで申し上げるには、それほどの自信を持っておりません。これは検討してみたいと思います。  交付税の四〇%の問題、私はやはり、いま地方財政は困っておりますから、三二%より多いほうがいいと思います。しかし私は、これは長期的な方向としては、所得税、法人税、酒税の何%というふうなことじゃなくて、かつて私は終戦直後地方財政委員会事務局におった者の一人でございますけれども、あの当時の下からの積み上げ方式というものは、これはやはり民主的なものであり、りっぱなものであったというふうにいまでも考えるのでございます。それは一説によると、いや、そんなことより、やはりいまのように法律で、交付税法で何%とやっているほうが、大蔵省の地方財政引き締め政策に対する防波堤としてはいまのほうがいいのだ、そういう説があります。現実はそうかもわかりません。わかりませんが、そうかといっていつまでもこういうことじゃなくて、やはり目ざす方向としては、地方財政委員会というものがあって、自治体の代表が出てきて、そして下から、ちゃんと自治体を尊重してというあのシャウプ勧告、あの精神はりっぱなものであったというふうに私はいまでも考えております。ですから、私は、長期的にはその方向を目ざすべきである、さしあたりのところはやはり交付税は三二%をもっとふやしてもらいたい、こういうふうに思います。  それから、最後の地方財政計画でございますが、計画というものはこれはどういう場合だってなくてはならぬ、これはもうあたりまえのことでございますが、現実は、地方財政計画実態とかなり違うじゃないか。私は、そのこと自体は、地方財政計画自体はもともとこれは一致するはずはないのでございまして、その点においてはかまわぬのですが、ただ、現実の実態というものは、住民の要求に対応して自治体が財政膨張、ふやさざるを得ない、ところが計画のほうはえらいすぼんでおるということで、乖離をしておる。そういう意味では望ましいものではありません。ですから、私は、計画自体をつくることはこれはあたりまえのことで、いいのだが、やはりおっしゃるとおり、計画を一体どういうふうにつくるかということであろうと思うのです。やはり自治体の実態からかけ離れたような計画をつくるということではいかぬのですよ、基本的に。しからばどういうふうにしていくか。これはちょっと私の手に負えませんからお答えできませんけれども、やはりその基本的な精神というものは、自治体の現状をもっと見てもらって、実態を見てもらって、そしてそれに合うように計画をつくってもらわなければいかぬ、大蔵省から引き締めをやるようなことでは困る、こういうことでございます。
  32. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 二点だけお答えいたします。  先ほど恒松先生からも話がありましたが、私は、いまのような複雑な、だれにもわかりにくい調整制度というものは、これは民主主義の原則から基本的に離れていくことはもう必至だ。したがって、非常にラフでもいいから簡素なものにして、そのあとで、その市町村がどういうその種の重点的な施策をやるかはその市町村の自由にまかせる、こういうことが一番原則でなくてはならぬと思うのです。しかし同時に、一方では、現在の地方自治体が非常にまだまだ充実してない、しかも格差が非常に激しいという現状から、国が一定の最低のものだけは目標を示す、こういうことはまた一つの方法かとも思うのです。そのためには、交付税制度の標準団体におけるいろいろな数値というものを、ナショナルミニマムということで最低の線として国民の前に明らかにしていく、それによってやる。そういうようなことを考えて着々とその方向へ行くとしても、いまのように、県の場合はまあまあとしても、市町村の場合にはあまりにも差が多過ぎる。したがって、いまある法律の書き方によりますと、地方公共団体の種類ごとに分けてやるということなのですが、実は種類はまだほかにも分けようがあるので、指定都市という種類もありますし、それから町村という種類もあるわけですから、したがって、市町村一本ではなくて、指定都市と市と町村という分け方だって、いまの法律ということから考えてもできるのじゃないか。しかし、漸進的に進むとしても、せめて三つぐらいの人口の、標準団体とは言わないまでも、人口の団体はこの程度のものになる、一方ではナショナルミニマムで、保育所というものは何人人口がおれば一つは最低設けるというようなことは国民に示され、その上で、たとえば三十万の市だったら大体こういうことになるのだということを、毎年やはり国政上最低の線として明らかにするということが、複雑怪奇でわかりにくい交付税制度にほんとうに国民が関心を持ち、民主的にそれを討議するのにふさわしいものになっていく道筋ではないか、こういうふうにお答えを申します。  それから四〇%という前提の話ですが、私は前提にしたのは、いまの交付税制度を一応是認するとした上で、今日でも四〇%は必要だと言っているわけであります。いまは最低生活費そのものもあぶないわけでありまして、したがって、最低と、その上にその自治体が自主的に重点施策をするという前提から考えますと、また特にことしいろいろな新しい事業地方自治体に義務化させられてきておること、あるいは福祉国家と申しますが、福祉施設はまさに金も非常に要る、金を使うところでありまして、別に生産をするところではないわけですから、これこそたいへん金が要るわけですね。したがって、そういう意味で、今日の財政制度の上からいっても四〇%、また新しく基本的に制度が変革すれば、そのときにはまた新しい計算ができると思うのですが、そういう前提で申し上げたつもりでございます。
  33. 細谷治嘉

    ○細谷委員 恒松先生、先ほどお答えで気がかりな点がありましたので、はっきりしておきたい。  いわゆる交付税の年度間調整ということについて、交付税率を上げたり下げたりという意味の調整というおことばがございました。そうなってまいりますと、どこで国と地方との間の歯どめをするかということになりますと、平衡交付金制度に返って、そして積み上げた全体の地方財政計画、ナショナルミニマムを保障する、こういう形においてやるのか。平衡交付金制度に返らないで、そうしてただ現行制度で、三二%を景気変動等によって上げたり下げたりという調整は、これは地方団体関係する者としては、今日の政治情勢の中からはやはり何らかの歯どめが要る、こういうことだと思うのですよ。いまの三税というのは税の中でも一番弾性値の大きいものですから、これは三二%の是非は別として、一定率という歯どめがありませんと国と地方の間の関係は乱れてしまいますから、この制度そのものは認めて、三二%をどうかは別として、一定率という形において、やはり景気変動に対応して年度間調整というのは自主的に、特別会計の場において何らかの機構をつくってそこでやっていく、こういうことが一案として考えられると思うのですけれども、先生のおっしゃったのは、交付税率を上げたり下げたりということは平衡交付金制度に返るということなのか。そういうことになりますと、やはり積み上げでありますから、全体としての地方財政計画の意義というのはきわめて重要になってくると私は思うのですよ。そこをちょっとはっきりしていただきたいと思うのですがね。
  34. 恒松制治

    恒松参考人 いまの年度間調整の問題は、平衡交付金制度でないとどうも意味がないというようなお話でございますけれども、私は……
  35. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうは言っていないですよ。平衡交付金制度でなければ意味がないと言っているわけじゃないのです。私が言うのは、先生のは、一定率を上げたり下げたりしろということであるとするならば、それは平衡交付金制度に返るという御意思なのか。
  36. 恒松制治

    恒松参考人 いいえ、そういうことではございません。私は、地方団体財源が常に景気によって不安定になるということを避けるために、たとえば国税三税、特に所得税、法人税というのは景気の弾力性が大きい税でございますから、したがって、景気がいいときには、地方団体に入る分も一定率にいたしておきますと、地方団体に入る分が非常にふえる、今度は景気が悪いときには非常に減ってくる。そういう不安定な財源地方団体が依存するということはかえって望ましくないと考えております。したがって、景気が非常にいい場合、言いかえれば所得の成長率が高い場合には交付税率を下げて安定化する、景気が悪いときには交付税率を上げて財源の補てんをはかるという制度のほうが望ましいのではないかと私は考えているわけでございます。
  37. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうすると、その際には何が歯どめになるのですか。景気がいいか悪いかということになると……。
  38. 恒松制治

    恒松参考人 ですから、たとえば経済の適正な成長率、国民所得の適正な成長率というのを八%にしておきますと、たとえば成長率が一〇%になったときには交付税率を逆に下げる、成長率が八%より以下になった場合には交付税率を引き上げる、こうすれば、交付税総額はかなり安定してくるのではなかろうか、こういう案でございます。
  39. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうすると、国と地方との間で結局やるということですか。
  40. 恒松制治

    恒松参考人 そうです。
  41. 細谷治嘉

    ○細谷委員 吉岡さんのほうは、自治体の年度でこぶを直して安定化しようと、こういう御意見ですね。先生のほうは、国と地方との間でやれと、こういうことですね。
  42. 恒松制治

    恒松参考人 はい、そうです。
  43. 細谷治嘉

    ○細谷委員 わかりました。終わります。
  44. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 林百郎君。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 時間の関係もありますので、まとめてお聞きしたいと思います。  最初に、恒松高橋吉岡教授にお聞きしたいのですが、基本的に本年度地方財政計画、それからその計画に基づいて交付税の算定、あるいは基準財政需要額の算定等も行なわれたと思うわけですけれども、これは御承知のとおり、政府の経済見通しが、昭和四十九年度は卸売り物価が約一四%、消費者物価が約九%のアップを対前年度比、するだろうというような、基調的にはそんなような計数から出てきているわけです。しかし、これは昨年の十二月あたりそういう計数で国の予算もつくられ、地方財政計画もつくられたと思うわけですけれども、現実はこの一、二月——三月は若干高値で横ばいという形になっておりますけれども、一月、二月を見ますと、対前年度比卸売り物価が約三〇%、消費者物価が約二〇%というような異例な高騰を示しておるという、こういう中で、教育施設だとか福祉施設だとか、あるいは下水道施設等の補助率も上げたりしておるわけでありますけれども、こういう非常に物価がドラスティックに上がってきており、それからインフレもギャロッピングになっているというようなことからいきますと、昭和四十九年度地方財政計画に若干の手直しはしてありますけれども、それを越えてのしわ寄せが地方財政にくるのではないかというようなことが非常に心配になりますので、先生方の見通しとしてはどうだろうか。  当委員会政府に対する質問で、われわれも千六百八十億の調整の問題、それから財政調整資金の千三百億の問題もいろいろ質問したわけですが、大体政府側の考えとしては、四十九年度地方財政はわりあいにゆとりのある年になるだろう、したがって、ゆとりのあるときに借金を前返しにすることは当然ではないかということで、千六百八十億の前返しの理論的な根拠にしておりますし、一方では景気の変動を考慮しての財政調整資金というようなものも千三百億考えている。その辺は、必ずしも統一した見解とはいえませんけれども、自治省としても、一方では経済のドラスティックな変動に備えての千三百億というものを考え、一方では余裕があるだろう。たとえば、先ほど吉岡先生もおっしゃっておられましたけれども市町村の法人所得割が対前年度比六〇%アップというような計算をしておりますので、そこで千六百八十億は早く返したほうがいいじゃないか。私たちは、インフレが今後進行するんだから、余った金で返す、まとめて返さなくても、ちゃんと法律できまった返すときに返していけばいいじゃないか、こういう立場に立ったのですが、自治省のほうとしては、余裕があるときに早く肩の荷をおろしたほうがいいではないか、こういう見解だったのです。その辺の見解をお聞きしたいと思います。  それから木崎参考人渡辺参考人、これは現実に自治体の財政運営をしておられる方ですけれども、四十九年度地方財政が非常に——非常にということばは使わないにしても、余裕があるから、先へいって返したらいい借金でも、ことし返しておいたほうがいいのではないかという、そういう余裕が一体四十九年度地方財政の中で認められるのかどうか。これは実際、実践的な皆さんの見通し、これをお聞きしておきたいと思うのです。  それからもう一つは、千三百億の財政調整資金というのは、わかったようなわからないような、もし人件費が高まった場合にはこれから出すような、要するに国の予備金的な性格を持ったものとして考えております。そうすると、自治体としてはこれは手をつけていいのか悪いのか、使っちゃったらあとで自治省からしかられはしないか、そうかといって、交付金として来ているんだから使うのは当然だと思われるだろうし、その辺のところをどういうふうにお考えになって処置していくか、実際の地方行政の運営を担当される皆さんのお考えを参考までに聞いておきたいと思います。  以上でございます。
  46. 恒松制治

    恒松参考人 いまの千六百八十億円を返す場合の根拠として、地方財政にはゆとりがあるという——ゆとりというか、判断の基準というのはたいへんむずかしいと思います。おそらくあとで木崎さん、渡辺さんからお話があると思いますけれども、現実の地方団体というのは、やはりやることは一ぱいあって金がないというのが現実だと私は思います。そういう面から見ると、確かにゆとりがない実態だとは思いますけれども、しかしおそらく、これは自治省側からの御説明があったと思いますが、公共事業が大幅にことしは削減されましたために、その地元負担金を負担しなくて済むという地方団体側の事情から申しますと、これは、それだけはゆとりあるんだ、こう考えてもよろしいかと思います。そのゆとりの判断のしかたは問題があるといたしましても、いわば公共支出の抑制という意味で、中央政府地方団体が協力の姿勢を示すという点では、この減額は適当であるというふうに私は判断しております。
  47. 高橋誠

    高橋参考人 林委員の御質問のゆとり論でありますが、私はこういうふうに理解しております。  つまり、今度の地方財政計画は、先ほど恒松参考人も触れられましたように、国の公共投資抑制政策というふうなものが地方財政側にも反映しているということであります。要するに、地方財政というのは、私も実際にはよく知りませんけれども、ともかく事業をやれば苦しくなるし、何もやらなければゆとりがある。ただ、事業をやらないということが長期にわたって地方住民に利益になるかどうかということはまた別問題であります。当面はとにかく事業を縮小されている。日本の公共投資というのは、林委員もよく御存じのように、みな国、地方連動式でありますから、ともかく国が押えれば地方も自動的に押える。仕事をしないからという点で、自治省側の説明のゆとり論というのが出てくるのではないかと、私はこう理解いたします。  それから経済見通しとの関連でありますが、地方財政計画は、御指摘のように予算に関連しております経済見通しに合わせて、つまり消費者物価の見通しとしましては九・六でございますか、卸売り物価は十何%、これをもとにしてできているわけでありますが、ただ、四十九年度物価動向がこれでおさまらないことはもう明白でありまして、これが何%になるかということをここで予測することは、現在の時点では困難ですけれども、いますでに一般でいわれておりますように、卸売り物価については若干鎮静のきざしが見られておりますけれども政府見通しの十数%でおさまるということは困難なようでありますし、加えて、消費者物価はまあ大体この倍ぐらいになるというのが常識でありますから、そうすると、それが地方財政にはね返る問題というのをわれわれは非常に心配しているわけであります。  これに対して、いま御指摘の財政調整資金というのは、ある程度人件費等の面でそれにこたえようという、これはおそらく自治省側の苦心のところだと思いますけれども、ただ、その前提は、おそらく実際に予想されている物価動向よりもかなり甘いものではないかというふうに私は理解しております。
  48. 吉岡健次

    吉岡参考人 昨年の十二月に国の予算をつくるときに、一つ物価上昇の見通しを立てておったわけですけれども、現実はどんどん上がっていって、それはおっしゃったとおり、若干手直しした、しかしもっともっとそれを越えて財政需要がふえていくのじゃないか、私もそういうふうに思います。そして、おそらく国もそう考えているのだろうと思います。ですから、そこに私は実はこの千六百八十億と千三百億の意味があるのだろうと思うのです。つまり、なるほど確かにことしはゆとりがある。しかしあるとは思っておらぬでしょう。むしろゆとりをつくっていこう。それじゃどういうふうにしてつくっていくか。それは一つは、やはりおっしゃった、まさに御指摘になった税の自然増収の問題だろうと思うのですけれども、しかし、そのこと以上に、実は物価上昇財政需要がおそらく増高する。そうすると、やはり総需要抑制という基本的な政策というものを通していこうという、その意味が、千六百八十億と千三百億の中に込められておるのだろうと思うのであります。  交付税総額の中から千三百億の調整資金というものは先に取っておるのですね。だからそれだけがまんをしなさいといって行政を節約させるわけですからね。節約させて、そうしてさらに新しく財政需要が出てきたものについては、その取ったやつで、千三百億で、この金額のうちで処理してください、物価が高くなって人件費が上がったり何かしても国は別に財源を見ませんよ、この金額のうちで処理してください、そういうふうな総需要抑制の考え方というものがここに貫かれておるのだろう。これは、やはり国だって物価上昇の見通しはこんなものじゃないだろう、将来出てくるだろうというぐらいのことは国も見ておるだろう、こういうふうに私は考えております。
  49. 木崎正隆

    木崎参考人 四十九年の地方財政の見通しということでございますが、やはり国の総需要抑制ということに対しては、私ども、国だけでなく、国、地方が協力してこの政策を実行すべきであるという基本的な考えからいたしますと、いま先生方がおっしゃったように、事業面では、先ほども申し上げましたようにある程度、たとえば木造校舎でも、従来は格差是正といいますか、新しい学校は鉄筋で建てております。古い学校でも、堅牢なものであったとしても、ただ格差是正ということで鉄筋にせざるを得ないというような住民要求がございますが、これもやはりそういう政策に従いまして一年間延期する。あるいはこの景気抑制策は、私どもは、年度内中にそれらがある程度功を奏しまして、また公共事業が多少でもふやしていただける時期を、一日も早いということを希望いたすわけでございます。そういう意味で、これの政策に私ども協力の意味で、ある程度事業の繰り延べをいたしております関係上、したがって、一応現在の見通しとして、四十九年の地方財政としてはやっていけるというだけの予想を持っておるわけでございまして、そうしてそれ自体が、やはり住民直結の施策を進めるわけでございますが、住民にも納得していただけるというふうに考えておるわけでございます。  また、財政調整資金等につきましても、それらは、地方財政がいまの抑制が長引きまして苦しい実情になりますれば、またお考えいただけるものだと期待を持っておるわけでございます。  以上、お答えいたします。
  50. 渡辺長純

    渡辺参考人 財政調整資金につきましては、人件費やら福祉政策の伸びで当然使わなければならぬというふうに考えています。また使えるものと思っています。  それから税収の伸び等につきましては、これは税率の引き下げも行なわなければなりませんから、現に四十九年で固定資産税を少し引き下げました。ということで、収入の伸びということはほとんど考えられないと思います。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 安養寺参考人にお尋ねしたいと思いますが、私たちの見るところによりますと、政府のほうでは物価を速戦即決の方向で鎮静していくということを、田中総理も大蔵大臣も言っているわけですけれども、しかし、経済の見通しから申しますと、六月ごろを前後にして石油の第二次値上げがありますし、電力料金の値上げがきびすを接していますし、国鉄運賃の値上げあるいは私鉄運賃の値上げ等公共料金の値上げもあると思うわけですね。そういう中で、一応の皆さんのほうのベースについても、アップするための財政需要額の計数の手直しもしておるわけでありますし、それからまた、先ほどの千三百億の財政調整資金も、これは地方自治体にとってはなかなか、何かぼたもちをたなに置いておいてただ見ているようなもので、経済情勢によって人件費が上がった場合にはこれに手をつけるなんというのですが、交付税の中に別にしるしがついているわけじゃありません。これは財政調政資金の千三百億のもので手をつけちゃいけないものだ、これはよろしいのだという区別がありませんので、財政調整資金をどのように運用するかということは、実際の自治体としてはなかなかむずかしいと思うのですね。こういう中で、本年度の交付税交付金の計数から見て、あるいは地方財政計画から見て、地方公務員の皆さんとしてはどういうことを要望されるのか、あるいはどういうところに将来問題が起きるというような見通しをお持ちになっているのか、ちょっと聞かしていただきたい。ことに、労働条件だとか賃金問題にからんでどういうところに問題があるのだろうかというようなことを、お聞かせ願いたいと思う。
  52. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 現在すでに、総需要抑制ということで相当財政が引き締められておりまして、それからきますいろいろな労働条件の悪化、あるいは当然福祉関係施設をつくって増員をしなければならないのに、増員さえもなかなか議会で認めない、大混乱が議会で起こる、こういうようなことも各地で起こり始めております。インフレの原因が何であったかというようなことは抜きにいたしまして、昨年とあまり変わらない程度のインフレが進行するということは、だれも常識的に見通しを持っておるわけです。  そうしますと、われわれの生活条件、いわゆる賃金も当然それに追っかけて上がらないと、これは実質賃金引き下げになるわけですから、これはもう当然大幅に上げてもらわざるを得ない。そういたしますと、地方自治体がみずからの事業をやるためには、購入する物品にしても土地にしても建物を建設する下請の費用にいたしましてもたくさん上がる。また内部の人件費その他についても大幅に上がる。こういうことですから、おそらくいまの地方財政の抑制政策というものは、ただ単に押えておこうというんじゃなくて、現実には削減政策という状態になるに違いないと私は思っております。  そういう中で、自治体と運命を共にしているわれわれ職員が、賃金面でもあるいは身分の面でもあるいは労働条件の面でも、非常に悪化をするだろう。これはもう必至でございます。特に民間と違いまして、福祉関係の職員というものは、先ほども申し上げましたように、施設増加すればするほど人間はたくさん要りますし、特に福祉関係の職員というのは、大体マン・ツー・マンの行政なんでありますから、有能な職員というものを機械に変えたりするようなことは、民間と違ってなかなかできがたいというのが普通の状態であります。最近でもたいへん問題になっておりますホームヘルパーというような問題でも、あれはほかのものにかえるわけにいかないのです。しかも、非常勤というような状態で長らく置いておくことさえ問題があるように、常勤化をし、さらに常勤化の中でも重労働を課せられている。こういう状態なのに、現実には安い賃金で、アルバイトしたほうがいいみたいなことでは、ほんとうに誠心誠意働く職員が結局損をしてしまう、まじめに働く職員が損をしてしまうというような結果になれば、これは人材を得ることさえ、逆に言えばむずかしくなる。したがって、長期的に言えば、国の政治の一番基礎でありますそういう福祉政策さえうまくいかないということになる原因をつくるのではないかと心配をしておるわけであります。  われわれ職員団体の立場から申しましても、今日の地方財政の状況は非常にゆゆしき問題であるということで、われわれの運動も強化をしたいと思っておりますし、また地方自治体もたいへんだろうと想像して、一緒にやらなければならぬ面もたくさんあると考えておるのが今日の状況であります。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 終わります。
  54. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 小濱新次君。
  55. 小濱新次

    ○小濱委員 本日は貴重な御意見をお聞かせをいただきまして、心からお礼を申し上げておる次第でございます。私は、各参考人それぞれに数点お伺いをしていきたいと思います。  まず守口木崎市長江刺渡辺市長にそれぞれお伺いをしていきたいと思います。  交付税は財源保障、この機能の面から重要な財源であるとの御意見がございました。そこで地方財源充実の面から、地方税は大都市中心強化し、交付税は過疎中心に配分することが本来の機能を果たす上でよい、こう思うわけでございます。この点、いかがでございましょうか。また人口急増地域に対してのあり方について、これも御意見をお聞かせ願いたいと存じます。  質問を全部申し上げてお答えをいただきたいと思います。  次に、恒松先生にお伺いをしたいと思いますが、国と地方との財政の体系につき、いろいろ貴重な御意見を伺いました。   〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕 その中で、この財政調整資金が今回新たに設けられた御説明がございました。インフレが続く現在、今後ともこの制度を続けていったほうがよいとお考えになられますか、ひとつ御意見をお聞かせいただきたいと思います。  次は、高橋先生にお願いいたします。土地開発基金は交付税に入るべき本質でない、こういう御意見のように伺いました。緊急を要する地方自治体の公共用地取得の緊急性にかんがみまして、今後も続けるべきであると私どもは考えるわけでございますが、この点のお考えをお聞かせいただきたいと思いますし、また、交付税で見なければ他にどのような財源をつけるべきであるのか、先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。  次に吉岡先生にお伺いいたします。国と地方の税の自然増に対して、減税は、現在の日本経済情勢から見て、また地方公共団体財政上から見て、国民の税負担軽減という面からもどのくらいが妥当であるか、先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。  次に安養寺先生にお尋ねをいたします。御意見の中に、ギャンブル収入を基準財政収入額に入れるべきであるとの御意見のようでございました。ギャンブルの問題が反公共性を持っている現状から判断いたしまして、単に地方公共団体財源面からのみ論ずることは妥当ではない、このように私は考えるわけでございますが、この点のお考えをどのようにお持ちになっておられるのか、御意見をお聞かせいただきたい、このように思うわけでございます。  以上であります。
  56. 伊能繁次郎

    伊能委員長 それでは順次お答えをいただきます。
  57. 木崎正隆

    木崎参考人 地方交付税についてのお話でございます。私ども人口急増地域としては、当初に申し上げましたように過疎地に対すると同様、人口急増地域については同じように法制化を受け、そして学校生徒急増などのために校舎がないというようなことで待たすわけにもいかないから、そういう意味補助率アップというようなことでお願いしておったことが、ようやく四十八年、四十九年で幼稚園消防施設等まで補助額が増額されたことは、感謝いたしておるわけでございますが、そういう意味で、やはり現在の地方交付税におきますいわゆる種地といいますか、都市圏補正の増加が必要であるということを特に申し上げたいと思います。現在、市町村を甲地、乙地、丙地に分けて、おことばのような大都市といいますか、中核都市とでもいいますか、これを甲地、その周辺市町村を乙地、したがって私の市は乙地になっております。ところが、その他の団体を丙地としておられますが、大阪のような大都市周辺市は全部いわば甲地にしていただかなければならぬということも言えるわけであります。ということは、中核都市とその周辺市との行政の差はほとんどない現状でございまして、そういう意味からでも私は、大都市だけを地方財政で特に特別扱いする、あるいは過疎中心地方交付税を見るということじゃなしに、やはりそれぞれ補正をしていただいて、そうしてそれぞれの事業がやれるようにお願いいたしたいと思うわけでございます。  したがって、現在の交付税制度でほとんどの市が該当しておるという実情を見ていただいても、やはり交付税制度は全市町村を対象にやっていただくということを、特に申し上げてお願いしておきたいと思います。
  58. 渡辺長純

    渡辺参考人 先生の御意見に大賛成でございまして、過疎中心に交付税をいただくということはけっこうでございます。ただ、過疎になったから財源不足であろう、また過疎はかわいそうだから交付税でということでなくて、過疎から抜け出すために、過疎解消資金を、ぜひ政府資金を大幅にちょうだいしたいと思います。その点をお願いします。
  59. 恒松制治

    恒松参考人 結論から申しますと、こういう財政調整資金というのは、恒久的な措置として続ける制度ではないと私は思っております。その理由の一つは、予算というのはもっと積極的に、言いかえれば、非常に不安定な経済を安定化するという政策目標を予算というのは持っていいはずだと思いますので、本質的にそういうものを恒久的な予算の中に組み入れるということは、私はできないと思います。それが第一点。  それからもう一つの理由は、こうした予備費的なものが多くなりますと、それをどう使うかについて、とかく行政当局と申しますか、あるいは理事者側と申しますかの専断にまかせられる部分が多くなってくると思います。したがって、議会を通じて住民の監視の場に置くためには、やはり最初からちゃんと予算化すべきものだと考えております。したがって、恒久的な措置にはなるべきではないと思っております。
  60. 高橋誠

    高橋参考人 土地開発基金に関する御質問でありますが、私は公述の中でこの点については明確な意見を述べることを避けたつもりであります。つまり、賛成とも反対とも申していなかったつもりでありますが、あるいはお聞きになって、これに必ずしも賛成でないというような御印象をお受けになったかと思いますが、非常にずるいと思われるかもしれませんが、意見を明確に述べることを慎重に避けたわけであります。  と申しますのは、一つ公有地の拡大という、土地取得というふうなものは、財政の原則からいって主として起債によるべきだというふうに考えますし、また他方で、交付税の中身をいろいろ複雑にすることにあまり積極的になれないということがあったからであります。  しかし、現状について申しますと、起債につきましてはかなり大きな統制がありますし、また地方団体によって起債力にアンバランスがあるわけでありますから、それを一律に規制することはできないと思います。また当面、公共地の拡大という要請があるわけでありますから、これを交付税の拡充によってその措置を講ずるというふうなことは、やむを得ないものだというふうに考えております。あまり積極的に賛成はいたしませんけれども、現行の制度からすれば、まあやむを得ないもの、こういうふうに考えております。  以上です。
  61. 吉岡健次

    吉岡参考人 先ほど私が、六〇年代に税の自然増収がこれだけ出てきておって、そしてそのうちのわずか一三%ぐらいが減税に回ったんだというお話をしましたけれども、それは、そこでの私の申し上げたかったことは、たいへん税負担というものが大衆負担に傾いておって、そういうことから起きておるところの自然増収が非常に巨額にのぼっておる。ところが減税が非常に少ないじゃないか、そのパーセントは一三%だということを申し上げたわけでございます。  しからば、おっしゃるように、どれだけにしたらいいのだろう、御質問はそこにあるわけでございますが、それをどの程度にしたらいいかということ、それを考えるならば、その前にやはり一体どういう性格の仕事、行政事務の内容の問題、それをどういうふうにすべきかということを、経費の問題とにらみ合わせていかなければならぬし、それからさらに税負担の重みというもの、つまり自然増収の内容、税負担の重みというものをどこに置くかという問題、さらに減税というもののどこに重みを置いていくのか、減税の内容、どこを減税するのか、そういうふうな問題とあわせて考えませんと、そういう中身を考えませんと結論は出てこないわけでございます。しかし、かりにその中身をはじき出していって、それではこれだけでいいんだというふうなことには私はならぬ。やはり根本的な精神としては、できるだけ住民の軽減する方向において、それはちょっとでも減税というものが多くなればいいということでありまして、何%、これだけでいいということにはならぬ、そういうふうに私は考えます。
  62. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 ギャンブル収入財政面だけから考えちゃいけないということは、私もそのとおりだと思います。幾つかの地方自治体ではギャンブルをやめて、これはモラルの問題だということで敢然とやめられたところもあります。しかし、現実に革新的な政策を打ち出しているところでも、まだ続けているところもあるわけです。ただ、駅頭あたりでは、ギャンブルの新聞がどんどんたくさん売れて、非常に隆盛をきわめているという社会的な現象もあるわけであります。これは日本だけではなくて、外国でもそのような現象は、少額か多額、いろいろやり方はありますが、各国である状況なんです。  しかし、最近では、憂うべきことは、ただ単に一般の人がギャンブルを好むということだけではなくて、自治体がギャンブルをやるということで、悪銭身につかずといいますか、そういう一部事務組合の経費の使用について、相当多くの疑惑が起こり、追及がなされ、幾つかの議会で問題になっているのがあるのですね。いずれにしても、やはりこういうことは、私は前向きになくす方向で考えなければならぬ長期的な問題だと思う。  それを逆に、今度は財政問題で何か是正する方法はないのか。それはギャンブルをやったところは裕福であるという状態が、やはり私は基本的に問題がある。したがって、当然基準財政収入額というようなものにそういう一般財源的に組み入れることができるならば、ギャンブルをやったからといってそんなに大きくプラスにはならないことになりますから、自然にギャンブルというものを違った社会現象面で考えるような風潮がふえてくるのではないか。そういう逆の考え方で、私は、特交というところで半分切るぐらいではなくて、一般財源的な見方をしたほうがいい、こういうふうに言ったわけでございます。
  63. 小濱新次

    ○小濱委員 どうもありがとうございました。
  64. 伊能繁次郎

    伊能委員長 島田安夫君。
  65. 島田安夫

    ○島田(安)委員 いろいろ貴重な意見を拝聴させていただいたのですけれども、私ども地方財政拡充強化といいますか、こうした点を平素から非常に強調いたしておりますので、そうした点について二、三お尋ねしておきたいと思います。  最初に、木崎渡辺市長さんにお願いしたいのですけれども地方財政拡充強化といいましてもいろいろな面があると思います。たとえば、現行制度の中で地方の負担を軽くするために補助率のアップとか、積極的には独自財源の新しい捕捉であるとか制定であるとか、加えてまた、いま話に出ております交付税の問題、引き上げの問題、こうした問題があると思うのですけれども、私、現在の国の行政の中で、地方住民が現在要望しておるいろいろな事業というものが、いまの制度の中ではどうしても実現できないというのは、各地方独自な特色があると思うのですけれども、こうしたものを消化するためには、住民の要望にこたえるためには、どうしてもやはり地方自治体独自な財源というものがますます増高されなければならない、こうした傾向にあることはいなめないと思います。  そうした意味から、いま御意見を拝聴しておりますと、いわゆる国と地方は同一歩調であるべきだ、今回の総需要の抑制、景気の調整のためには千六百八十億の減額措置もやむを得ないというように、きわめて消極的な意見のように私は拝聴したのですけれども、私は、むしろこういう時期にこそ地方財源強化、これを促進すべき時期ではないかというふうに考えておるわけでございます。いろいろ話を聞いております際に、何とか景気の調整ができれば、またその上に立って積極的に国に援助してもらいたいというような話もありましたけれども、いま言いましたように、こうした時期が地方財源の自主強化拡充強化に最も適しておると思うわけなんです。  そこで、現在昭和四十九年度の予算編成も終わったと思いますけれども、私は、最近一番問題になっております超過負担、あるいは過密過疎地域を代表してお二方に参考意見を述べていただいたと思うのですけれども、過密の問題あるいは過疎の問題にいたしましても、現状の中で、私は一年といえどもなおざりにできぬような状態にある、非常に切迫しておる、そのように思うのですが、そうしたいま両市の当面しておられる問題の中で、この千六百八十億の減額に伴って、特殊な事情で規制なりあるいは減額されたものがあるのかどうか。もしありましたら参考までにお聞かせ願いたいと思います。いわゆる一般財源の圧縮に伴って、やりたかったんだけれども見送ったというようなものがありましたらお答えいただきたいと思います。  恒松参考人にお伺いしたいと思うのですけれども、いわゆる配分の適正化をやれば、今回の千六百八十億の減額措置というものは必ずしも地方に犠牲をしいておらない、こういうふうにおっしゃったのですけれども、なるほど、地方公共団体というのは、いわゆる積極的に事業を推進するかどうか、これによって財政需要が異なってくると思います。幾ら赤字がありましても、一年事業を抑制しますと財政的には何ら問題がない、こうしたことにつながると思うわけなんですが、私は、やはりいま地方の住民によって迫られておる、自治体が果たすべき役割りというのはかつてないほど非常に切迫しておる。そうした意味で、今回の減額措置というものが適正でない。適正でない理由の一つといたしましては、景気の調整をこういう交付税というような制度に持ち込んで考えることはそもそもおかしいじゃないか。たとえば国がやっておりますいろいろな公共事業、最近聞いたところによりますと、東京都内の高速道路で一番事業費を高額に必要とする個所、これは千メートルで六百七十億というような個所もあるようでございます。そういうことから考えますと、高速道路を千メートルや二千メートル抑制することと、こうした地方の財源を、いわゆる総需要、景気の調整ということで規制することと、どちらが適正なのかというようなことまで考えてみなければならないと思うわけなんです。これは地方財政拡充強化を重点に考えていくべきなのか、あるいは一連の国と同一基調によって景気を抑制する、こういうふうに考えていくべきなのか、そうした点にあると思うわけなんですが、そうした点に対して、いまお考えになっていることをもう一回確認しておきたいと思います。  それから、最後の結びといたしまして、こうしたときにこそ地方行政のあり方を再検討すべきじゃないかというような意見がさいぜんございました。私も、地方行財政のあり方、確かに見直す時期だとは思いますけれども、しかしながら、先生御承知のように、国におきましては地方制度調査会、これはずいぶん長く続いておりますし、いろいろな貴重な意見が出されておると思います。しばしば参考人の方から発言がありましたように、たとえば行政事務の再配分、これ一つを取り上げましても、相当な地方自治体の行政効率化、こうしたものは促進できると思うのですけれども、これにはやはり地方財源強化ということが伴ってまいりませんことには適正な効果はあがらない、私はこのように考えるわけなんですが、これにつきまして考え直す時期というよりか、私は、結論はもういろいろ出されており、またお互いに自覚できるじゃないか、これをやるべき時期ではないかというふうに考えるわけですけれども、先生のみならず、高橋吉岡参考人にも、これにつきまして御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
  66. 木崎正隆

    木崎参考人 当初、参考人として申し上げたのでございますが、超過負担の問題でございますが、これは人口急増市町村のみならず、地方団体すべての重要な問題でございまして、私、守口市の例を申し上げたわけでございますが、四十八年度に行なった分で、一平米、小学校で九万四千八百円あるいは中学校では八万五千円かかったものに対して、国の補助基本額が五万三千七百円というようなことでございまして、相当差がある。また保育所につきましても、十一万五千五百円かかったことに対して五万二千円であるというような事情でございます。そういう意味から、最近政府においても超過負担解消については積極的に取り組んでいただいておりますけれども実情とほんとうに大きくかけ離れておるわけでございまして、したがって単価の是正、補助対象範囲補助基準等を含めて早急に考えていただきたいということを、重ねて申し上げておきたいと思います。  そうして、何かやめた事例はないかということでございますが、これも先ほど申し上げましたように、私どもまだ計画中でございました市民の体育館、これだけは、相当な多額な金額にものぼるわけでございますし、現在計画を進めてはおりますが、一応ある期間、少なくとも一年は延期しまして、その間に十分練った上で実行に移したいということでおるということを、つけ加えて御報告申し上げたいと思います。
  67. 渡辺長純

    渡辺参考人 お話のありましたように、保育所等につきましては過疎地でも各地に必要でございます。ことに、最近幼児教育が問題になってまいりまして、幼稚園にするか、児童館にするか、保育所にするかという問題でございますけれども、やはり保育所のほうが一番建設等にも都合がいいのではないかということでございますが、超過負担がございます。のみならず、これができれば今度はまた人件費の負担がございます。そういう点で、保育所がまだ全体に行き渡っておりません。これもいまのところ、先ほどお話のありましたような条件でできかねました。なおまた運動公園、児童公園等の要望もございますが、これもなかなか予算上困難でございました。  なお、診療所あるいは市民会館。診療所は、医師がこんな古い診療所にはおれない、都会地へ出ていくというのを、診療所をつくってやるからと押えたんです。押えは押えましたけれども、どうも財源的に何とも見通しつきません。補助等の問題もございます。市民会館も、市民の文化的なそういう施設がほしいという要望が強いのですけれども、これも財源的見通しができないで、とうとうできかねました。
  68. 恒松制治

    恒松参考人 お答えいたしたいと思いますが、たいへんむずかしい問題なんで、十分にお答えになるかどうかわかりませんけれども、私、先ほど、千六百八十億円の減額措置というのは、地方団体間への配分をし直すことによってもある程度その地方団体の圧迫が緩和できるのではないかと申しましたのは、千六百八十億円の減額ということで、地方団体財政運営上苦しいということはもう全く明らかなことだと私は思います。それはもう減額しないよりはしたほうがずっと苦しいということは当然のことでありますけれども、しかし、その苦しさといいますか、財政運営のむずかしさというものは、私は地方団体によってずいぶん違うだろうと思います。それで、先ほどから木崎市長さんもおっしゃっているように、人口が急増している地域なんかでの苦しみ方と、そうではない地方団体財政運営上の苦しみ方とはかなり違いがありますので、その点は、現在国と地方の全体で政府の公共支出を抑制しようというところですから、そこを、その配分を変えることによって、その地方財政の運営の苦しさ、困難さというものを回避できるのではないかというふうに申したわけでございます。  それから第二番目に、地方団体が景気調整をやるというのは、本来そんなことはやるべきじゃないじゃないかというお説、全くもっともだと思います。ただ、景気調整を財政政策上でやります場合には二つの方法がございまして、一つは、たとえば公共投資を積極的にどんどんふやして景気を盛り上げる、浮揚させる、そういうやり方と、それからいま申しました、現在行なわれておりますように、どちらかといえば公共支出を抑制するというしかたもあると思います。そういたしますと、前者の場合にはおそらく、地方団体というのは完全にオープンシステムの経済でございますから、あまり効果はないと思いますけれども、公共支出を抑制するというような形での景気調整の役割りは、地方団体でも十分に効果のあるやり方だと私自身は考えております。  それから第三番目に、たとえば高速道路と生活関連の公共施設とをお比べになりまして、地方団体がやっております生活関連の公共施設整備のほうが、ずっと大きなウエートを持つじゃないかとおっしゃいました。これは全くそうだと思いますが、その二つの政策の価値判断というのは、これはなかなかいろいろ意見の分かれるところでございまして、高速道路にそれだけの金がかかるから、それはやるべきではないというふうには必ずしも言えないと思いますし、また、現在地方団体で生活関連の公共施設にいたしましても、率直に申しますと、ここに両市長さんいらっしゃるのですけれども地方団体によってはずいぶんむだな投資がなされているというような面も私はないわけではないと思います。したがって、そういう点は比較をして、一体どちらがどうだというような価値判断はなかなかできにくいと私は思っておりますので、国がそういう公共施設を圧縮するときには、地方団体も同時にいろいろな公共施設を抑制することによって、景気調整の、あるいは物価安定の手段にするという方向は、やはり考えられてよろしいのではないかと思います。  ただ私は、先ほども申しましたように、そういう地方財政拡充するという場合には、いま島田先生のほうはまず地方財政拡充をしろ、それで行政事務の再配分をしろ、こうおっしゃいましたけれども、逆に、行政事務を国と地方で、どれを地方がやったらいいか、どれを国がやったほうがいいか、まずはっきりさしておいて、そしてそれに見合うような財源拡充の方法をとりませんと、財源拡充拡充と叫んでも全く根拠のない議論になってしまうのではないか、こういうふうに思っております。そういう意味で、地方財政拡充をやるべき時期だとおっしゃることには私は全く賛成でございますけれども、その前に、ある根拠として行政事務をどう分けるか、どういう原則で明確にするかということははっきりさせて分けるのがまず先決ではなかろうか、こういうふうに私自身は考えております。
  69. 高橋誠

    高橋参考人 島田委員の御質問にお答えします。  まず最初に、島田委員の見解をお述べになったわけですが、この景気調節と関連して地方財政のあり方ということについて一言だけつけ加えさしていただきたいと思いますが、しろうと受けしますから、歳出の規模の伸びというようなものは確かに一つのシンボルにはなります。しかしこれは、その歳出を一体どう使うのか、つまり公共投資に使うのか、あるいは振替支出に使うのか、あるいは経常的な支出に使うのか、その配分がどうなるのか、こういうことを厳密にやりませんと、国が二〇%以下に押えた、今度は地方もそれに合わせて押えるというのは、しろうと受けの議論としてはわかりますけれども、またそれに関連して減税をどうやるのか、どこの層にどれだけやるのかという、こういうきちっとした議論がないと、単に歳出が押えられればそれで景気調節になるというのは、私はきわめて単純な議論だと思います。  また、このインフレ期における国と地方とは、財政の機能が違います。地方団体がインフレの抑制に協力しなければならないということは当然であります。したがって、今度の四十九年度の予算のように、大型の投資を中心として公共事業を押える、それに関連して補助金が削減される、あるいは地方債計画が圧縮されるという点は、私は大筋においてはそう異論はありません。しかし、地方団体は国とは違ってインフレのあと始末をしなければならぬ、その場で、現場においてあと始末をしなければならぬという機能を持っているわけですから、それに関連してある程度財政の支出がふえるということは、これはやむを得ないことだというふうに考えます。  それから第二の点で、この際地方の行財政の改革というふうなものを、もう議論している段階ではなくて、取り組むべき段階だという御説でありますが、御趣旨としてはよくわかります。私もそういうふうに考えますが、問題は、そういうことをどういうところから突破口を開くかということで、つまり具体的な戦術の問題をどう考えるか、こういうことがむしろ大事ではないかというふうに思います。これについてここでこまかく述べるわけにはいきませんけれども、しかし、私は事務の配分合をいまさら議論してということも、これは確かに大事でありますが、ともかく現行の制度の中で地方団体が許されているものを最大限に利用していく。たとえば、地方税というふうなものでがんじがらめにいろいろな束縛はありますけれども、それはそれなりに活用して、そして地方団体はその自主性を発揮していくというふうなことを、むしろ積極的にやっていくべきだ。こういう点で島田委員御指摘の、いま実行のときだという点に賛成する次第であります。
  70. 吉岡健次

    吉岡参考人 仰せのとおり、いま地方行財政改革の時期に来ておるという点について、私も賛成でございます。  ただ、どういうふうな財政改革をやるのか、私はやはり改革の基本理念というものをはっきりさせなければならぬと思うのです。私は、やはり財政改革の基本理念というものは、少なくもいままでのような経済成長優先主義、それから中央集権的な財政構造、中央集権的なやり方、そういうものじゃなくて、住民福祉と地方自治、これを伸ばしていくということが財政改革の基本理念でなくてはならぬのでありまして、そこがはっきりいたしませんと、具体的な改革をやる場合にとんでもないことになってくると思うのでございます。  先ほど来、恒松高橋両先生から行政事務再配分のお話もありましたけれども、私もその点に関する限りは賛成であります。税金をよけい取りさえすればいい、地方の財源がふえさえすればいいということではない。一体どういう仕事をするのか、国も地方もどういう仕事をするのか、その基準となるものはやはり住民福祉ということでございますから、そういうことで行政事務を国と地方を洗っていかなければならぬ、これがまず最初にこなければなりません。  そうしてその次に、それではそれに対応して国と地方のどういう税体系をつくるのか。いままでのような大資本本位の税体系じゃなくて、非常にたくさんの租税特別措置をはじめとするような減免税の措置、大衆には非常に税が重い、そういうものじゃなくて、やはり住民福祉というものを中心にして、そして税体系というものを考え直していかなければならぬと私は思うのでございます。  ずいぶんと税収入がふえてくるだろうと思います。そうして、そういうふうな税体系の中で、それじゃ国と地方にどういうふうに税源を再配分をしていくかということについて、先ほどたいへんいい御意見をおっしゃっていらっしゃいました。大都市は地方税源というものを伸ばしていこうじゃないか、農村地域は交付税だ。私は、これはなかなかりっぱな御意見だろうと思うのでございます。それは税収入をふやせば、農村なんかどうせたくさん出てくるはずはないのでございますから、やはり税源というのは都市へ集中しておるものでございますから、そうして地方自治ということで、税源をできるだけ地方のほうへ移譲をする、自主税源というものを拡充をしていく、その方向には私は賛成でございます。  しかし、それと同時に、やはり現在の地方財政の窮乏の原因であるところの地方交付税制度国庫補助金制度、そういうものを改善していかなければならぬと思うのでございます。その点については、たとえば国庫支出金については超過負担というふうな問題がある。やはりこれを解消していかなければならぬ。交付税というものについても、いまのような削減をする、まさに逆のような方向じゃ困る。それからその他地方債についても、もう少し地方に自主権というものを与えてもらいたい、拡充してもらいたい。さまざまな方法があると思うのでございます。しかし、そういう根本的な大改革を一挙にやってのけるというのは、それはとてもできることじゃございません。そういう方向を目ざして一つでも前進するように、一歩一歩その方向に近づけていくように、そういうことが大切なことであろう、こういうふうに思うのでございます。
  71. 島田安夫

    ○島田(安)委員 ちょっと誤解があるようですので一言申し上げたいのですけれども、私が主張したいのは、たとえば公共事業を抑制しますと、それだけで国と地方を通じて景気の調整はできるわけなんですが、最初に両方の市長さんに聞きましたのは、体育館、保育所、いろいろなことをやりたい、しかし国の総需要抑制施策によって地方も押えられた、これである意味では目的は達しているのではないか。その上に地方の自主財源中心になっております交付税というものを減額すれば、まさに二重パンチではないか。だから、国と地方と同一の歩調をとる、これはいわゆる公共事業の抑制等でその目的は達成しておる。あとは、こういうときにこそ、財源が乏しいために、地方公共団体としていろいろ措置すべき問題が山積しておる、これを解決することは、景気の刺激にもならないし、加えてまた国の施策にも、公共事業の抑制でその意思は貫かれておりますから、いまそうした問題を解消する時期であった。にもかかわらず、千六百八十億というものを減額したことは、せっかくの好機をむだにして、依然として、地方公共団体はあまりにもやるべきことは多い、しかるに財源が乏しいために積極的な行政展開をはかることができない、これは残念だ、御意見はいかがですかと、こうお伺いしたわけでして、若干その辺の私のことばが足らないために誤解があったようです。  いろいろ話はありましたけれども、私も都道府県の議員を代表して、第七次と第八次の地方制度調査会の委員を仰せつかっておりました。いろいろな議論の中で、国と地方の行政事務を再配分すべきだという結論は数回にわたって出されておる。しかしながら、それの障害になっておりますことは、いろいろな問題はありますけれども、一番大きなネックは、いわゆる中央のなわ張り争いといいますか、事務の削減に伴う、官僚独特の一つの主張というものが障害となってこれが推進されない。そこで、地方財源拡充強化することによってそれが解決されるとは思いませんけれども、もちろん両者相まっていかなければなりませんが、幸いに先生のほうで、この際地方制度全般について考え直す時期だ、こうおっしゃったから、そういう見直す時期としてはこういう時期こそ適切じゃないか。これはもう十数年にわたって論じ尽くされ結論の出たものを、こうした時期にこそ一つでも二つでもやっていく、こういうことを強調したわけでありまして、おそらく先生も同意見だと思います。  きょうは、貴重な意見をどうもありがとうございました。
  72. 伊能繁次郎

    伊能委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位に申し上げます。  長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  73. 伊能繁次郎

    伊能委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  ただいま建設委員会におきまして審査中の、内閣提出にかかる生産緑地法案について、建設委員会に連合審査会開会の申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時等につきましては、両委員長協議の上決定し、公報をもってお知らせいたしたいと存じます。御了承をいただきたいと思います。  次回は、明四日木曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十九分散会