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1974-04-05 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月五日(金曜日)     午後零時三十一分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    奥田 敬和君       金子 一平君    鴨田 宗一君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君      小宮山重四郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    山下 元利君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       村山 喜一君    山中 吾郎君       田代 文久君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君  委員外出席者         人事院給与局給         与第一課長   加藤 圭朗君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   小林 政子君     田代 文久君 同日  辞任         補欠選任   田代 文久君     小林 政子君     ――――――――――――― 四月三日  昭和四十九年産葉たばこ収納価格引上げ等に関  する陳情書  (第三七五号)  キャンプ朝霞ゴルフ場等返還に伴う跡地利用  に関する陳情書  (第三七六号)  自動車関係諸税増税計画再検討に関する陳情  書(第三七七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第二六号)  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣久方ぶりにお見えでございますから、大臣IDAの問題に関連をいたしまして、日本対外経済協力あり方の問題についてお尋ねをしてみたいと思うのでございます。  GNPの一%はそういう経済協力に回すんだというのは、これは内閣方針だというふうに承っておるわけでございますが、政府開発援助というのですか、これはGNPの〇・七%を充てるんだ、これも政府方針だろうというふうに考えるのでございます。ところが、七二年の実績を外務省のほうで調べてみたのでありますが、民間経済協力まで含めた場合には、政府資金も含めての話でございますが、これは一九七二年の暦年計算で〇・九三%、総額二十七億二千五百万ドルということで、これはまあ成果をあげているというふうに見られるのでございます。ところが、政府開発援助というものは率にいたしまして〇・二一%しかございません。金額にして六億一千百万ドルということに終わっているようでございます。  そこで、私がお尋ねをいたしたいのは、この国際機関に対する拠出金IDA問題等も含めての問題でございますが、この政府開発援助あり方をことしの予算の中で、あるいは今後の予算執行の中で、どういうふうに進めていこうというふうに考えているのか。やはり資金を出すほうは大蔵省でございますので、外務省だけではございませんから、そういうような意味から、この政府借款の問題なり、あるいは技術協力無償資金協力なり、あるいは国際機関拠出金の問題をめぐりまして、現実に支払いをした額で計算をされるのでございますが、これに対する政府考え方を、特に大蔵大臣所見をお伺いいたしてみたいと思うのでございます。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 対外経済協力をどういうふうにこれからやってまいりますか、これは基本的には、ただいま国全体としての経済運営をどういうふうにやりますか、まあ経済がこのような混乱をした、その混乱前の状態混乱を収拾した後の行く道とは、これはもう根本的に変えなければならぬし、変わってくるであろう、こういうふうに思っております。そういう中において、今日この段階がまさに過渡的な段階であります。そこで、この過渡的な段階を終えて、いよいよこれから新しい日本の歩みをきめなければならぬ。そういう際に、基本的問題の一つとして政府対外協力をどういうふうにしてまいるかということをきめなければならぬ、こういうふうに思いますので、いま私は多くをお答えすることが困難なわけであります。ただ、その気持ちといたしましては、量的援助から質的援助へという方向をたどらなければならない、こういうふうに思います。  いま村山さんの御指摘のように、量的問題については、GNPに対する対外協力全体としますと〇・九三、これは世界でももう胸を張れるようなところにきておるわけです。しかるに、ODAと申しますか、政府開発援助におきましては、それが世界的な目標とされておる〇・七%、それに対しましてわずかに〇・二一の程度である、こういうことであります。七三年といいますか昭和四十八年、この年は前の年よりは幾らか改善を見ておるわけでございますが、それにしても、〇・七%が国際的に目標とされるべきだといわれるときにそのような低い状態であること、これは非常に重大な問題であるというふうに考えまして、この政府開発援助ODAのほうにつきましていろいろまた格別努力をしなければならぬ、かように考えておるわけであります。政府系統資金協力をふやす、また条件の緩和、そういうものに特段の配慮をする。そして量的の問題はまあまあいいところまできておる、かような認識をもって進めたい、かようなことでございます。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 まあ七三年はこのODAの分につきましてもまだ集計中でございまして、一体どれくらい伸びるのかということについてのなには、作業中でございますからということで答弁がないわけでございますが、若干、気持ち程度は伸びるんじゃないだろうかという見込みであるようでございますが、いずれにしても、DAC諸国平均値から見ましても、やはり低過ぎることはいなめない事実だと思う。そのことを考えますと、今度の予算の中で輸銀あるいは基金を通じての直接借款計画を見てみましても、これはその他の政府資金の流れの中に入るわけでありますから、いわゆるODAの部類に入るものではないというふうに私は思うのです。それは一般会計経済協力費の中に一千六百五十九億余り計上されておりますが、その点から計算をしてみましても、二百六十五億程度はふえてはいるものの、その中で重複しているものもありますし、このDAC報告書の中に載せられないような経費のものも私はあると思います。そういうような面からいったときに、はたして現在明らかになっています〇・二一%というものが、この七三年、七四年という年にはどの程度までになっていくのだという一つ見通しをつけながらやっていらっしゃるはずではないだろうかと私は思うのですが、この点は松川国金局長のほうから、その見通し計画があるならば、その外交方針に基づいた一つのプログラムを示してもらいたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、いまちょうど経済変動経済基本方針の大改定というか、その過渡期なものですから、まあ対外経済協力ばかりじゃないのです、あらゆる長期的な計画というものがいま過渡的な段階にある。あらゆる問題を見直さなければならぬ、そういうときなので、したがって、この対外経済協力長期見通しというものにつきましても、これはいままではいままでといたしまして、新しい形で出発しなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、長期的な見通しはないのです、率直に申し上げますが。四十九年度においてはどのくらいでありますか、政府委員からお答え申し上げますが、改善をとにかく当面はしなければならぬ、こういうことで予算の編成に当たっておるという状況でございます。
  7. 松川道哉

    松川政府委員 四十九年につきましては、DACの統計は暦年ベースでやっておりますが、暦年ということになりますと、私のほうでもちょっと計算がしかねますので、四十九年度の予算で見込まれておるもの、これをベースにいたしまして試算いたしますと、〇・二九ないし〇・三〇%になるのではないかと計算されます。この中には、ただいま御審議をいただいておりますIDA増資の分も含まれております。
  8. 村山喜一

    村山(喜)委員 わかりました。  そこで、時間の関係がありますからもう一点だけお尋ねをいたしますが、この前、大臣が御出席にならない段階の中で、石油危機の中から中近東外交特使派遣やあるいは田中総理が東南アジア、ASEAN諸国を回ったそのときにいわゆる約束をしてまいりました経済協力案件について、いろいろと質問をしたわけでございます。そのときに、いままでに確定をしたのは総額千二百億円程度であって、四十九年度支出の分は大体それの三分の一程度であろう、こういうような話でございました。  ところが、まだ未確定の、これから話し合いをするんだというものが相当案件残っているわけでございまして、なおそのほかに、シベリア開発問題等輸銀資金を使うという問題も外交上の問題として出てきている。あるいは、新生ラオス経済発展援助の問題がまた出てくるであろう。あるいはアフリカに対する外交を見直ししなければならない段階にきている。いろいろなそういう対外経済協力の問題が出てくる可能性があるわけでございますが、もちろん、日本狂乱物価を克服して、新しい経済の秩序が生まれる中から対外的な経済援助あり方という問題にも取り組まなければならないでありましょうが、そういうようなものに対する今後の支出要因と申しますか、やらなければならないものが控えているのに対して、大蔵大臣として全体をながめる中で、どういうような方針でいま懸案として残されている問題に取り組んでいかれるおつもりであるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  9. 福田赳夫

    福田国務大臣 今後のわが国国際収支考えてみますると、長期的には私は不安は感じておりませんけれども、当面、石油価格値上がり、また農産物、林産物、そういうその他の輸入価格値上がりということを考えますと、この二、三年は非常に苦しい時期に当面するのじゃあるまいか。国際収支に不安が生ずるということになると、これはたいへんな問題になってくるわけでありますので、いやしくも国際収支においていささかの不安もないという姿勢を内外に対して確立し、これを理解していただかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけです。  国際収支当面の問題としますと、やはり長期資本収支改善という問題があろうと思うのです。これは長期資本収支は百億ドル内外赤字だ、こういう趨勢でございます。これをどうしても私は四十九年度、この期間におきましては、まあ大体赤字を一挙にということはできませんから、半分くらいに減らしたい、こういうふうに考えておるわけであります。また、昭和五十年度において幾ばくを減らしますか、いま考えておる最中でございます。そして、国際収支体制を磐石のかまえとするということでございますが、その長期資本収支の中での支払いの部分、つまり資本輸出、その部門におきましてはやはり民間投資というものにつきましても、いままで外貨減らしというようなことで、あるいは外国の土地を買うための投資が行なわれるとかなんとかがありましたが、そういうものにつきましては、これはもうそういうことはいたさないというようにいたしますとか、あるいは仮需要その他のものにつきましても、仮需要に基づく投資というものにつきましてはこれを抑制いたしますが、政府の担当するいわゆるODA、この部門におきましても、あるいは海外のホテルを建設するためへの投資でありますとか、そういうような、わが国から見ましてもそう外国として緊要な事業とも考えられないというようなものにつきましては極力これを抑制する。しかし、わが国の存立のために必要であるところの資源投資、これにつきましては投資を惜しむところがあってはならない。もちろん、これは厳選しなければならぬとは考えまするけれども、わが国資源対策上必要な投資というものに対しましては、これを充足するというかまえをとらなければならぬ。しかし、そうでない、不要不急と認められるようなものにつきましては、なるべく遠慮していただくというふうな考え方で臨みたい、かように考えております。
  10. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、国際収支危機というのは、政府努力というのですか、為替管理強化策、いまおっしゃったような形の中である程度めどがだんだんについてきた、そういうように私は思うし、また貿易収支の動きを見ましても、これは経済見通し計画をしているものよりも輸出は大幅にふえるであろう、そういうような前提に立ちまして、大臣対外経済協力あり方について、懸案事項で残っておる問題にこれからどういうふうに取り組んでいかれるのかということをお聞きしたわけです。たとえば、例として申し上げましたシベリア開発問題等に、どういう形で取り組んでいくのかということの説明を願いたいという質問をしたわけでございますが、その点だけ承りまして、時間が参りましたのでかわります。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 約束をすでにいたしたものは、約束に違反することなく必ず実行いたしたい、こういうふうに思います。目下交渉中の案件につきましては、ただいま申し上げましたような方針で対処してまいりたい、かような考えでおります。
  12. 安倍晋太郎

  13. 広沢直樹

    広沢委員 それでは、短い時間でありますが、大蔵大臣にいま審議中の国際開発協会への加盟に伴う措置、この問題について、二、三点所見を伺っておきたいと思います。  もちろん、IDAに対する第四次の増資については、わが党としては基本的には反対ではありません。賛成であります。むしろこういった国際協調の確保ということは、今後もはかっていかなければならない重大な問題ですが、しかし、そういう重要性を帯びているがゆえに、内容的にいろいろこれから吟味していく必要があるのではないか、こういう観点から伺っておきたいと思うわけです。  まず第一点は、第二世銀の第四次増資については、昨年九月の世銀IMF総会について激しい議論の末、閉会寸前でようやく実質的合意に達した。これは松川さんの報告の中にもそう書いてあるのですが、ちょうど九月の末ですから、その直後に石油問題が起こっているわけですね。そこで、世界経済運営等についていろいろ再検討しなければならぬだろうということで、ことしの一月の十七、十八日の両日だったと思いますが、大臣出席された二十カ国の蔵相会議がローマでありました。そこでいわゆるオイルダラーの還流問題、リフロー問題が重要な議題として取り上げられております。こういったように経済が非常に流動的になり、構造が変改している状態の中では、今日まで考えてやってきた世銀あるいはIDA、第二世銀のこういう発展途上国における経済援助の基本的なあり方というものは、やはり再検討されるべき段階にきているのではないだろうか。いままで先進工業国国際収支においても黒字基調で、そして開発途上国に対する経済援助を進めてきた、こういうようなパターンであったわけでありますけれども、国際収支の構造的にも変化が来ておるという状態の中で行なわれるということになれば、やはり基本的な経済援助あり方考え直す必要があるのじゃないだろうか、こう思われる点が第一点であります。  それから第二点は、今度の一部改正ではこの第四次増資が必要であるという背景がるる述べられておりますけれども、わが国の第三次増資までの出資合計は二億八千五百二十三万ドル、シェアにおいては五・五四%、今度の第四次増資については四億九千五百万ドルですから、一一%のシェアになる、こういうふうに大きくなってきております。そこで、IDA資金は、その目的からするならば、今回の増資に限られるものではなくて今後も増大すると考えられるが、その点はどうなのか、それについてわが国の割合も比重が多くなってくると思われるけれども、その見通しについてはどう考えておられるか、大体その点からまず伺いたいと思います。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本の足取りと申しますか、経済の進み方につきましては、ちょうど過渡的段階にあるわけでございます。そういうようなことで、これから先の対外経済協力をどうするかということをいま具体的には申し上げかねるわけなんですが、私は、新しい経済体制のもとでは対外経済協力というものの扱い方はかなり変わってくるべきである、こういうふうに思います。つまり、量的にいままでの調子で対外経済協力を拡大していくということは、非常に困難になってくる。混乱前十五年間、一〇%以上の経済成長をした、こういうわが国といたしますと、かなりの対外経済協力許容力があったわけですが、これから先の日本経済はそういうわけにいかないですから、かなり低目の成長になる。そうすると、それにつれて対外経済協力の量というものも、いままでのようにやっていくわけにはいくまい。ただし、その中におきましても、協力の質の面で、どうも日本経済協力はしてくれるけれども条件がきびしいとか、あるいはどうも自国本位立場わが国立場をあまり考慮してくれないとか、いろいろな苦情もまた聞くわけであります。そういう点を考慮いたしまして、私は、質的な側面において改善強化するという方向へこれからの対外経済協力を進めていかなければならない、さように考えます。  それから第二の、第二世銀に対してこれからどういうふうな援助をするか、協力をするか、こういう問題ですが、これは当面の問題と将来の問題があると思うのです。当面は、日本といたしましても、苦労をしてもODAを強化するために格別配慮をするということでなければならぬと思うのです。いまわが国外貨事情からいいますと非常に苦しい立場であります、そう多額の協力はできないという立場でございますけれども、第二世銀融資対象となる発展途上国というものは、これはオイルショックの影響で非常な困惑の状態にあります。そういう際でありますので、わが国といたしましては、それらの事情も考慮いたしまして、苦しい中ではありまするけれども、できる限りの援助をしなければならぬ、そういう立場に置かれておると思います。  しかし、長期の問題となりますと、わが国経済成長自体速度が鈍化する、そういう傾向でありまするので、そのわが国の力とそういうものと見合いながらの協力体制ということになるであろう、こういうふうに思うのです。今日までは、わが国はかなり急速にこの協力度を増してまいりましたけれども、今後長い先々のことを考えますとそういう速度協力の量をふやしていくということはなかなかむずかしいのではないか。しかし、当面、世界のおくれた国々、そういう国々は非常な混迷の状態でありますので、わが国としても全力を尽くしてこれらの方々に対する協力の手を差し伸べるべき立場にある、さような見解でございます。
  15. 広沢直樹

    広沢委員 大体わかりましたが、しかし、このIDA目的からいいまして、いまの国際情勢の中では、当然、開発途上国に対して相当の援助をしていかなければならない。三機関あるわけでありますが、IDAについては、これは特に世銀だとかあるいは国際金融公社とかの対象にならない分をまかなうわけですが、しかしどの程度資金量といいますか、そういうめどというものが必要なのではないだろうかと私は思うのです。ただ第一次、第二次、第三次と増資をしてきて、第四次になって、今度もたいへんだということでいろいろ議論がある。そしてやっときまる。しかし、世銀総裁の演説なんかも読ましていただいたのですが、それによりましても、今後まだ相当そのウエートは高くなっていかざるを得ないということを言っておられる。事実、現状からしてもそうでしょう。そうなってくると、不足をしてきたから増資をする、そしてそのつどいわゆる一部国に相談をするというような形では、この趣旨からいって、援助を受けるほうもあるいは援助をするほうも、どちらにも目標が明確じゃありませんので、これは問題じゃないだろうかと思うのですね。  いま、量的に援助することから質的な援助と申されましたけれども、やはりそれは確かに必要なことでありまして、GNP基準として量的に推しはかってきた援助あり方を、今度は社会的ないろいろな分野に当てはめて質的にその状況を見ていかなければならない、こういう問題が指摘されてくるのは当然のことだろうと思いますが、いま言うように、IDAというものの使命の上から考えてどれだけの資金というものを用意し、それによってどれだけの開発効率というものをあげていくのか、こういう算定がないと、いま言ったように、出すほうも援助を受けるほうもいろいろ問題があるのではないか。いわんや援助を受ける側に立ってみれば、こういうIDAの性格や目的から考えて、基準も非常に緩和された基準でありますし、長期にわたっておりますし、また債務、これも受けた国によってはものすごく今後ふえていくわけですね。ですから、そういうようなことを勘案していかなければ、やはりそのつどそのつど問題になって、こういう重要な機関であり重要な使命を持ったものが、スムーズにいかないのではないかということを懸念するわけでありますが、その点についてどうお考えになるでしょうか。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまわが国も非常な混乱、激動期であり、かつ国の歩むべき方向といたしましては、ちょうど過渡期にある。わが国ばかりでない、世界全体としてもまたそういう状態の時期であります。  そこで、今回の第二世銀に対する資金供与、これはここ二、三年の間の必要資金を充当する、こういうことなんです。ですけれども、おそらくこの世界的な混乱、その最中においてはもちろんでございますが、その後におきましても、経済協力を受ける国々需要というものはますます大きくなってくるのではないか、そういうふうに思います。しかし、今日これだけの大混乱のあと、数年先、ずっと長い間の需要というものを測定するということはとても困難でございます。またわが国といたしましても、そう長い先の、一体、第二世銀に対する協力ワクをどうするかということも測定しがたい、そういう状態でありますので、当面は当面ということで、今回この二、三年の間の需要ということでひとつ御審議願いたい、こういうことをお願いしているわけであります。  経済混乱が収拾できた、その後におきましては、先々の経済協力をどういうふうにしていくか、ボリュームにおいても質の面におきましてもいろいろ考え長期展望を得たい、かように考えております。
  17. 広沢直樹

    広沢委員 おっしゃることはわかるのですが、長期展望は非常にむずかしい。ただし、私は援助していくには、いままでの経済援助の反省というか、それはやはり援助をされた国も援助をする国もともにそこに効率というもの、効果というものを考えなければ、そこに一つの大きな問題が残されてくると思うわけです。ですから、今回の措置は確かに三年間を一つめどにした措置にほかなりません。ですから、これをしなくていいというわけではない。現状は非常にきびしい問題がありますから、当然これは行なわなければならないと私も思います。しかし、それはそれとして、いま申し上げているように、やはりその効果というものをできるだけ推しはかって、その上においてどれだけの面をどうアップしていくかという見地に立って、どれだけの資金量が要る。ですから、第一次にはこれだけ、第二次にはこれだけ、第三次にはこれだけと、やはり一つめどというものがあってこそ初めて——それはあり余って持てる国であるならば、それはそれでいいのでしょうけれども、それぞれ国内的にもいろいろな問題があります。しかし、それを乗り越えて、会議の中で問題になっておりましたように、絶対的貧困と相対的貧困に分けて、絶対的貧困はいま何としてもそれを救わなければならない、議論段階よりも現実の目でそれを見たほうが、そのことがわかってもらえるのではないかというような切実な話も出ておったようでありまして、そういった問題に対して、いつまでもそうであるからというわけにいきませんので、やはりめどというものがどうしても必要じゃないか。  それについて、わが国も総務国でありますから、当然それに対しての意見も持たなければならないし、またそのシェアわが国についはどんどん高くなってきているという段階においてはなおさらのこと、そういう一つめどに基づいた投資あるいは開発援助、こういったことがなされなければならないのではないかと思うのですが、そういう意味合いで、特に今日のように高度化された国際社会においては、政治的にせよ、経済的にせよ、文化、教育、あらゆる面で非常に連帯感を強く持ってきているわけですから、この「経済協力現状と問題点」の中にも、確かに人類運命共同体といいますか、そういった認識の上に立ってこれからの開発援助というものを考えていかなければならぬということが指摘されておる。まさしくそのとおりであると思うのですね。そういう見地から考えていくならば、当然そのバランスのとれたあり方まで持っていこうというこの援助あり方の基本には、やはりそれだけの一つめどというものを描かれた、そして、それに対するある需要というものを考えた、そしてそれから割り出してきたという形がなければならないと思う。  確かに、このIAが三十五年に発足したときの状態は、そこまで研究がいかないで、とにかく現状を何とかしなければならぬという趣旨から生まれたかもしれません。しかし、今日、約十年になんなんとしているわけですから、世界のいろいろな情勢の中からそれを割り出すぐらいの考え方はあってもいいじゃないかと思うのですが、その点もう一度お伺いしておきたいと思います。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 第二世銀は特定の国々に対して融資する機関でございますから、個々の融資を実行するというにあたりましては、その国がこの融資によってどういう国づくりのための効果を上げていくかということは、当然、研究調査し、その調査の結論に従ってそれを実行する、こういうことになっておると思います。これに融資を行なう機関として当然のことです。同時に、その融資がいかなる効果をあげたかということにつきましても常に心する、これも当然のことだ、こういうふうに思いますが、ただいま御指摘の点はまことにごもっともな点でありますので、総務国の一員といたしまして、その点につきましては常に強調してまいりたい、かように存じます。
  19. 広沢直樹

    広沢委員 終わります。
  20. 安倍晋太郎

    安倍委員長 竹本孫一君。
  21. 竹本孫一

    ○竹本委員 二、三の問題についてお伺いをいたしますが、最初に韓国に対する援助の問題について、政府では近々その効果を測定するために民間に委嘱をして調査団を派遣しようというような考えがあると承っておるわけですけれども、はたしてそういう調査団派遣のプランがあるのかどうか。また、その場合にはやはり経済的効果以外に政治的な問題が重要でございますから、それ以外の効果についても見なければならぬと思いますけれども、どうであろうか。また、そういう計画外務省のイニシアのもとに行なわれるのかあるいは大蔵省のイニシアのもとに行なわれるのであるか、そういう点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのような話を伺っております。まあ詳しいことはまだ話がありませんけれども、民間の方々に依頼いたしまして、韓国の経済状態は一体どうであろうか、また、わが国が供与したもろもろの経済協力、そういうものがどういう効果をあげているだろうか、そのようなことが目的だというふうに承っております。詳細は、まだ具体的な話は承っておりません。
  23. 竹本孫一

    ○竹本委員 金大中さんの書物なんかを見ますと、あの人は野党側でございますから、経済援助についても別の角度でいろいろ問題を見ておる。願わくは、要望でございますけれども、政治的ないろいろの側面を調査するように期待をいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  それから第二の問題は、いまも御議論がございましたけれども、大体、わが国の海外経済協力については五年に一回くらいの割合で調査団等を出してレポート等も発表しておられるということになっておるように伺っておるわけでございますけれども、やはり調査はよほど正確にいろいろデータを分析してもらって、これをフィードバックさして、次の経済協力一つの積み重ねをしなければならぬと思うのでございますけれども、ただ思いつきでそういう調査団を出すということでなくて、制度としてちゃんと経済効果、政治的効果等も見るようにしなければならぬのではないか。ときどきやってみるということでなくて、制度的にシステムとしてそういうことを考えておられるかという点が一つ。  それからもう一つは、大体、援助協力というものはもちろん緊急の必要に応じて政府でお考えいただいておると思いますけれども、もう少したとえばアジアならアジアの全体的な計画というものがあって、それを五カ年計画なら五カ年計画で消化していく、こういうふうにならなければならぬのではないか。今度の場合も第四次の増資でございますけれども、第何次、第何次と次々に継ぎ足していくということでなくて、初めから東南アジアなら東南アジアの総合開発計画といったようなものを、なかなかむずかしい条件もありますけれども、一応立てられて、それを次々に消化していく、こういうようにしないと、ある場合には重複したり、ある場合には押しの強い国が勝ったりして、全体的な効率を妨げるのではないかと思いますけれども、そういう点については大臣のお考えはどうですか。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 お考えとしては私はそういうふうに思います。ただ、定期的にというふうなことをきめて、それに間違いなくやっていくというのもあまり機械的に過ぎるのじゃないか。やはり緩急の順序というものもそのときそのときの状況によっておのずから違ってくるということもありましょうから、年次をきめてどうこうということは実際的じゃないのじゃないかと思いますけれども、これはもう常に対外経済協力につきましてはその効果をフォローいたしまして、そして次の協力の重要な参考資料に資する、こういうことはぜひやってみたい、かように考えております。
  25. 竹本孫一

    ○竹本委員 局長がおられますからちょっと伺いますが、国連で、先進工業国としては後進国の開発援助についてはこういう目標がなければならぬという一応の目標設定をしているように伺っておるのですけれども、そうであるか。  それから、日本援助協力についても、突然でございますからあれでいいですけれども、いま私が言うのは、経済的効果のほかに政治的効果も考えろということだけでなくて、次々継ぎ足すのではなくて、初めに総合開発計画なり総合開発援助計画というものがあるべきではないか。日本としての役割りはどの程度のものであるか、どこまでいけるものであるかといったような、個々の努力のほかに総論がなければならぬではないかと言っておるのですけれども、どうですか。
  26. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま竹本先生御指摘のように、援助のフィロソフィーそのものを国連のほうで採択したということは、私、ちょっといまのところ思い当たりがございません。ただ先生御案内のとおり、たとえばUNCTADと称されております国連の貿易開発会議であるとか、あるいは国連の国際開発戦略の目標であるとか、そういったことで、受け入れ国のほうの開発のためにはかくかくのことが必要であるというもう少し具体的なところのものにつきましては各種の決議があり、その中で、それぞれ前文その他でうたわれております。そのほか、これは国連そのものではございませんが、御審議いただいております国際開発協会の協定の前文そのものに、先日も朗読いたしましたが、先進国と後進国の間ではこういうことが大事なんだということがうたわれております。
  27. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣、私が言っているのは、いままでの援助というものはGNPの一%とか、政府が〇・七%とか、あるいは援助条件はこういうふうに緩和しろとか、ある意味において経済事務官的な感覚で議論をしていますね。それ以外にもっと大きなステーツマンシップが必要ではないか。こういうようなところまで後進国の開発を援助してやるのだ、それで第一次の援助ではここまでいく、今回千三百億円増資をやる、日本協力する、その結果はどこまでいく、こういう政治的総論が要るではないかというふうな点を私はいま言っているわけです。いままでのは何だか数字ばかりを言って一それは〇・五より一%のほうが多いということもわかりますけれども、何のためにやるか、どれだけの効果があがるかということについては、もう少し政治計画といいますか、政治的な見識というものが要るのではないか、こういう点を言っておるのですが、いかがですか。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはお話しのとおりだと思います。いま論ぜられているのは、どっちかというと経済協力の量的側面だと思いますが、この問題にはやはりもう少し高次元の考え方、そういうものが必要であろう、こういうふうに思います。IMFにいたしましても、あるいは世銀にいたしましても、第二世銀にいたしましても、それは世界経済を一体どうするのだ、そういうことは常に議論をして、また年次の総会等におきましては、当局はその考え方を発表いたしておるわけでありますが、そういう方面につきましても、この上とも私どもも配意をしてまいりたい、かように存じます。
  29. 竹本孫一

    ○竹本委員 次は、ちょっと問題を離れまして恐縮ですけれども、一般質問をきょうはやめますのであわせて伺いますけれども、この間からいろいろ議論が出まして、外務省の役人さんが前の半分しかいない、三千人ぐらいしかいないとか、あるいはドイツやその他の国に比べても少ない。イギリスは一万一千人からおるというので、非常に少ない。確かに予算の面でもあるいは職員の人数の面でも、日本外務省あり方が少し弱い。それで、経済外交だけではなくて、いろいろな面で差しつかえが出てくるだろうということもよくわかるのですね。しかし、外務省の悪口を言うわけではありませんけれども、私は率直にいって、日本外務省というよりも外交官のあり方というものについて一度検討しなければ、人数を五千人にする、一万人にするという問題の以前に、重大な問題がありはしないかということを感じておるのです。  言いにくいことですけれども率直に申し上げますと、たとえばアメリカの問題について言うならば、NHKのアメリカ特派員をしておった日高という人が「アメリカを知らない日本人」という本を書いておる。日本はアメリにはめくらのパイロットを置いておるというのですね。めくら、目が見えない、めくらのパイロットを置いておるといったようなことを述べておるようであります。めくらかどうかは一応別としまして、たとえば沖繩の返還交渉にしても、あるいは繊維交渉の問題にしても、われわれが聞いているところの外務省の情報あるいは駐米大使の意見というものは、当たった場合よりも極端に言えば当たらない場合のほうが多いかもしれぬ。非常に情報の把握が不適確である。私は、これは愛知外務大臣のころでありましたが、予算委員会においてもその点を指摘したのですけれども、結局、情報というものは必ず二つ入ってくるというのです。AとB、まるきり逆な情報が入ってくる。それをどう理解するかということは、受け取る人の頭の程度、あるいは見識の程度によって違うと思うのですね。だから、問題は、その見識の問題、ステーツマンシップの問題になると思うのですけれども、どうも外務省のあれは逆の情報のほうが多いような気がする。いま言った繊維の場合でも、沖繩返還の場合でも、全くできないようなことを言ったが、結果においてできた一たとえば核抜き早期返還というものは絶対だめだという情報のほうが新聞でもたくさん流れました。われわれはそういうことを言っているものだから、特にそれを敏感に受け取って勉強しておりましたけれども、結果はそうなった。そうすると、初めの情報というものは、初めからでたらめであったとは申しませんけれども、間違っておったことは事実だ。結局、その段階その段階に応じて適確に情報を判断するという頭といいますか、センスといいますかが欠けておるのじゃないかということをぼくは非常に痛感をするんですね。でありますから、二千九百人を五千人にすることも必要でしょうけれども、その前にもっと大事な問題があるということを、これは特に大蔵省立場からは考えてもらって、その上で人をふやしてもらうということにしたいと思うのです。  さらに、アメリカの問題だけでなくて、私が歩いた例も一つ申し上げますが、経済問題でいいますと、たとえばロッテルダムに参りました。この場合にはヨーロッパの港だとかなんとかいうことで、あそこは各国がみな出ております。大臣も御承知のように、日本の企業だけは全然出ていないのです。全然出ていない。そこで、私は、日本がECと経済的に大いに協力をしていこうとか、あるいはヨーロッパに向けてアメリで押えられた輸出を今度は振り向けていこうとか、エコノミックアニマルの問題は別としまして、欧州市場が大事であることは間違いない。その欧州市場に対してオイロポルトといわれる、ヨーロッパの港といわれるその港がどの程度重要性を持つかということは、少し経済重要性のわかる人ならすぐわかる話です。そこで、ここに日本関係会社が一つもないということはどういう意味かと言って、私はいろいろ聞いてみましたけれども、初めは一つぐらい会社が出てこようというようなことであったけれども、そのうちさたやみになりましたというのが報告ですよ。しかし、私は、この大事な港に全然一石も打ち込んでいないということはおかしい。現に外国はみんな手を打っておる。日本だけがぼんやりしておったということじゃないかということを言った記憶があるのです。  そういう意味で、やはりほんとうに生きた経済戦略、そういうものがわかる人が大使館にも一人ぐらいはいないと、結局、こんなところへ港ができます、その港がどの程度のウエートを持つものか、あるいはヨーロッパの経済に対してどれだけの影響力を持つものかということについての十分な解説がなければ、商社は商社でいろいろやるのでしょうけれども、日本の会社もチャンスを見のがすような場合も多いだろう。悪口じゃありませんが、田中さんもシンガポールへ行かれたときは、そのオイロポルトが世界一の大きな港になっているということは何か記憶になかったらしくて、外務省の事務官から注意されたというのがゴシップ欄に出ておりました。  要するに、日本の会社、あるいはわれわれ政治家も、とにかく世界経済の生きた動きを常に適確につかんでいなければならぬのに、政治家をはじめ、いろいろわれわれがミステークが多いじゃないか。特に現地におる人はそのためにおるのですから、外交官が適確につかまなければいかぬじゃないか。これは経済問題ですね。  それからもう一つ、これはいまのアメリカの問題でもそうですけれども、これからの問題は経済のための経済問題というものはありませんので、一つは思想の問題について理解のある人がいなければ困ると思うのですよ。その例としては、私はタンザニアにアフリカに参りまして行ったこと一がありますけれども、あそこは、御承知のように、中国が非常な積極的な努力をしておる。事の起こりは何かといえば、タンザニア鉄道なんです。四億ドルの経済援助の問題なんです。そのときに資本主義国にいろいろ働きかけたのだそうですけれども、あんな山の中に二千キロかの鉄道をつくってみたところでペイしないということで、みんな断わった。ソビエトまで断わった。そのときに中国がよろしいということで引き受けて、タンザニアに鉄道をつくった。そのタンザニア鉄道が取り持つ縁で、あそこは紡績工場も農事試験場も分校をつくることまで全部中国がやっている。さらに教育も全部、私は学校にも行ってみましたけれども、共産主義教育になっている。  さらに言うならば、台湾を国連から追放して中国を加盟させるかさせないかという問題のときに、政府のお見通しではあまり当たらなかったと思うのですけれども、私はアフリカから帰ってきたちょうどその直後にテレビを見ておりましたら、中国代表の隣だったと思うのですが、タンザニアの人がおるということを聞いて、アフリカの五十五票か五十票かは別として、大きなまとまったものがタンザニアが中国の隣にすわっているようでは相当大きく動いているなということを直観しましたよ。だから、百三、四十票のところで五十票もまとまって動けば、中国のほうが加盟の問題について非常に有利な票数を持つではないかということを直観いたしました。  そういう経過のこまかいことは別といたしまして、とにかくアフリカについてわれわれ自身も不勉強で、あまり理解や知識がないのですけれども、しかし、将来の世界政治の中でアフリカの五十票の票というものがどんなに大きな役割りを持つかということについては、政治家として常に計算の中に入れておかなければいかぬ。いまはドルの情勢も少し変わりましたけれども、一時はドルをもてあまして困ったこともあるのですから、四億ドルなんというのは問題じゃないです。しかも、大部分は現物出資だ。そういう際に、どれだけのことの情報が外務省に入っておるか。外務省はそれをどこまでとらえておるかということはあらためてまた論議もしたいと思うのですけれども、私が言いたいことは、タンザニアの問題一つ考えてみても、新しい思想の動きというものについて適応性がない。ロッテルダムの問題を一つ考えてみても、ヨーロッパの生きた経済戦略についての理解がない。アメリカの情報の送ってこられたものを見ても、アメリカの動きというものの根底を掘り下げた見識のある見方というものがない。そういうふうに、外務省攻撃をやる意思はありませんけれども、日本外交には一番大事なセンスが、思想的にも経済的にもないのじゃないか、あるいは足らないのじゃないか、そういう問題も考慮した上で、外交機能の充実とか職員の増加とかいうことを考えてもらいたい。大臣のお考えを承って質問を終わります。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 あまり外務省のことに立ち入って話をしますと、またいろいろむずかしいことになりますから差し控えまして、とにかく海外経済協力、こういうことを一つ取り上げてみましても、これはただ単に金を出すということだけで終わるものじゃないのです。その相手国の社会をどういうふうにしてよくしてやるかという基本的な考え方、こういうことが大事ではなかろうか。とにかく、わが国は、世界の中で孤立していくわけにはまいりません。やはり国際連帯社会の中でわが国は生きていくほかないのでありますから、そういう気持ちを持ちまして万遺憾なき外交政策を展開してもらう、その一環としての経済協力の実をあげる、こういうふうにいたしたいとが考えております。
  31. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  32. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  33. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  34. 安倍晋太郎

    安倍委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  36. 安倍晋太郎

    安倍委員長 本会議散会後再開することとし、この際、暫次休憩いたします。    午後一時三十三分休憩      ————◇—————    午後四時七分開議
  37. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計、税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  38. 村山喜一

    村山(喜)委員 けさ三公社五現業の賃金改定の問題について閣僚協が開かれて、田中総理出席をして有額回答についての政府の最終方針を出すのだということが記事に出ておりましたが、大蔵大臣も御出席になったのだろうと思いますが、そこではそういう方向確定を見たわけでございますか。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 本日の労働関係閣僚会議におきましては、人事院の勧告について報告がありまして、その報告を尊重するということを決定したことが第一。第二は、春闘に対します対処方針というものについて懇談したのですが、きまったことは、有額回答を行なう、こういうことでございます。その時期及び内容につきましては追って決定する、かよなことであります。
  40. 村山喜一

    村山(喜)委員 その内容の問題等は追って決定をするということでございますので、ここでは触れませんが、私はこの際、政府関係機関の特殊法人の労働基本権の問題、いわゆる三公社五現業以外の公社、公団等百十二の特殊法人がございます。その中で、労働組合法の適用対象の法人数が百九あるわけです。この関係の職員が、御承知のように、春闘を目ざしまして理事者側といろいろと協議を重ねながら、なおストライキという手段に訴えまして、これは合法的にできるわけでございますので、三月の一日、それから二十日、二十六日、四月の一三日、四月の五日というような形で、また四月の十一日からストライキをかまえて、とにかくわれわれにも有額回答をしてもらいたいという形で要求を続けてきているわけであります。ところが、六年間理事者側のほうからはゼロ回答、こういう状態が続いているわけであります。  そもそもこの問題を考えてまいりますと、この特殊法人というのは、本来ならば行政がやらなければならないけれども、官庁組織の中でやれば非常に効率もよくないしということで、それぞれ企業の形態をとったそういう特殊法人にして、その中で運営の効率的な措置を講ずることによって業績をあげようということから幾多の法人が生まれてきたと思うのであります。そういう中から、これは当然労働法上の権限というものが憲法上保障されて、しかも、その法律の上においても保障をされておる。ところが、予算制度上の制約がありまして、今日までそういうような有額回答が出し得ないという状態にあります。ことしはどうかということでいろいろ聞いてみると、この法人関係のいわゆる経営者団体といいますか政府関係特殊法人連絡会議、政法連と呼んでいるようでございますが、この団体のほうでは今度は何とかしてもらいたいということで、大蔵省のほうに早く決定ができるような措置をとってもらいたいということで要請をしているようでございます。大臣はそういうようなことについてお聞きになっておいでになりましょうか。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府関係機関は厳重な予算制度のワク内にあるわけでありまして、そういう意味合いから、これはなかなか軽々に動きがたい、こういう立場にあるわけです。もとより団体交渉をすることができない、こういう立場じゃありませんけれども、しかし、それにいたしましても、さような予算等の制約がある、こういう立場にありますので、実際問題とすると労使関係というものはそう自由に動きがたい、こういう立場にあるわけでありまして、今日のこの法制下におきましてはやむを得ざるところである、かように考えております。
  42. 村山喜一

    村山(喜)委員 それで、役職員の給与についてはその主務大臣の承認を得なければならない、その場合に主務大臣大蔵省と協議しなければならない、こういうことになっているようでございます。そういうような内容の中で、いわゆる当事者能力というものがこの事業主体の特殊法人の場合には与えられていない、そこで、決定権がない。しかし、団体交渉権等は与えられておる。そうすると、片一方、国会の承認案件というのは公庫関係では九公庫と二銀行がその対象になっているけれども、そのほかは国会の承認を予算の上において与えなければならないという制約はない。したがいまして、そういうような公庫以外の公団等が八十六あるようでありますが、そういうような形の中で、一体だれがその責任者なのか、だれが当事者能力を持っているのかという状態の中にありますが、片一方、三公社の場合はストライキ権を与えられていないけれども、事実上は先ほどお話がありましたように有額回答をしようじゃないか、予算執行上の問題等もあるにもかかわらず、いろいろ社会的にも大きな影響をもたらすから、このものについては有額回答だ。こちらのほうは労組法上の権利は与えてあるけれども、幾らストライキを打っても回答はよこさないという仕組みになっている。きわめて不自然な姿だとお考えになりませんか。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは政府関係機関が中間的な性格を持っておる、つまり政府職員でありますれば、これは人事院勧告という制度があるわけなんです。ところが、政府関係機関につきましてはそういう制度がない。それにかわるような仕組みといたしまして主務官庁がありまして、それが大蔵大臣に相談をする、こういうことになっている。つまり、現行の制度上は労働権はある、しかしながら実際はそれが非常に行使しにくい、こういう状態になっておる。制度を変えればこれは格別ですよ。人事院みたいなものをつくるか、そういうことになれば格別でありまするけれども、現在の制度とするとそういうことになっておる、かように御理解願います。
  44. 村山喜一

    村山(喜)委員 労働三権は保障されておる、にもかかわらず、相手が当事者能力が与えられていない。そこで、この問題を解決をするためにはストライキをやらせておけばいいじゃないかということじゃないと私は思うのです。今度は七十二時間やるというのです。そういうような状態の中でこれを放置すべきではないと私は考えるのですが、そういうような合い議を求めてきた場合にはそれに対して大蔵大臣が承諾を与えるという形になっておりますので、何といっても大もとは福田大蔵大臣にあるというふうに受け取らなければならないと思うのです。ですから、私は、この不自然な状態を解消していく努力というものは前向きにされる必要があるのではなかろうかと思うのですが、そういうように積極的にお答えになるお気持ちはございませんでしょうか。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも現行の制度からいうとなかなかむずかしい問題だと思います。私どもいろいろ考えてみますけれども、どうも運用で同意ということはできない。主務大臣が協議をしてくる、それに対してどういう応答をするかというのが大蔵大臣とすると精一ぱいの措置じゃないか、そういうように思うのです。制度論としてどういうことにしますか、第二人事院というようなことまでも考えるどうかいろいろあると思います。思いますけれども、現行の制度からいうと、どうも裁量の幅というものが狭い制度になっておる、こういうふうに思うわけでありますが、しかし、まあ何とかして、いままでもそれで動いてきた、これからも意は用いまするけれども、制度論に入る以外に、行政上の幅の中で解決するというのはなかなかむずかしいんじゃないか、そんな感じがいたします。
  46. 村山喜一

    村山(喜)委員 押し問答をやっておってもいかぬわけですが、民間の春闘の結果が近いうちにほとんど線が出てきますね。それから、公共企業体の場合も一つの調停等が出されてくる、そうなってきますと、大体春闘の相場というものが確定をする。これを受けて人事院が勧告をするという形になる。ところが、それが出た段階で、人事院の勧告まで待たないでも、公共企業体の問題についての調停案等が出た段階で、私はやはり主務大臣が、その特殊法人の理事者に、その時点においてはもう予算も決定をしているわけですから、その範囲の中で有額回答ができる措置をするということが現実の運営の中でもできるんじゃないだろうか、そういうように考えるのですか、やはり人事院勧告が出される、そういう時点まで待たなければこの問題の解決はできないというふうに、かたくなにお考えでしょうか。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも政府関係機関というものの性格が問題だろう、こういうふうに思うのです。これはとにかく準政府職員ですね。そういう性格を持っている。その方々の給与をどうするか、こういう問題です。政府職員のほうは、人事院という制度があるわけなんですね。それに準ずる政府関係職員の給与をどうするか、こういう問題ですから、いまの制度からすると、主務大臣大蔵大臣に協議をしてくる、その協議を受けて大蔵大臣が諸般の事情を考慮して適正な回答をする、こういうことなんです。それで大体動くんじゃないか、そういうふうに思います。  ただ、村山さんがおっしゃるようないろいろ問題がないとは私は言いません。ですから、そういう制度論としては問題を提起する、こういうことはできると思いまするけれども、現行の制度の中で、その運用でこの問題を解決しよう、これはなかなかむずかしいんじゃないか、そういうふうに思います。
  48. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題はずっと今日まで続いてきた、理事者側にとってもたいへんな悩みなんです。また、そういうところで働いている労働者は、基本的な労働三権は認められながらも公務員に準ずるものという形で処理をされてきていることに対して、非常に不満を持っている。その不満の中から、ストライキに訴えてでも自分たちの要求を取ろうということでやっている。今度七十二時間も連続したストライキを打てば、それだけ業務が停滞をすることは事実であります。それは好ましいことではない。  とするならば、やはり春闘の相場が出、公共企業体の給与が大体出そろうならば、そのあたりにおいて理事者側が、内々それは主務大臣と相談をしてもいいでしょうが、その段階で自分たちの線ではこの程度はできる、そしてまた、人事院勧告がありましたその中で公務員の給与改定の問題が出ましょうから、二段がまえの措置でやるという方式でも考えてもらわなければ、現実に毎日交渉をしている職員と理事者側の間では、話がどんなに詰めてみても詰まらない。これでは憲法上保障された労働基本権が現実に行使をされない。ということになると、まさに制度が違法な措置をとっているというふうに私たちには思われてならないのであります。そういうような働く立場から法律というものを考えて、制度というものを運営していく、そしてこの春闘の問題は同時解決を目ざしていく、私はこれが今日の近代的な労使関係の確立ではなかろうかと思うのですが、再度その点についてお尋ねをしたいと思います。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府職員には人事院制度があるんです。これで円滑に動いておる。政府関係職員は準政府職員というような性格を持っておるのですから、この政府職員の給与とかけ離れた解決というのはなかなかむずかしいのじゃないか、そういうふうに思います。  実際問題として、人事院勧告が出る、それで政府職員の給与がきまる。その前にこの政府関連職員のほうがきまりましても、その人事院勧告との調整を一体どうするのか、こういう問題も残りますね。そういうことで、まあ現行の制度とすると、どうも運用でこの問題を改善するという道はないのじゃないか、私はそんな感じがします。
  50. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がありませんので何ですが、これは予算総則の中にみだりにこういうようなことをしてはならないという規定があるだけで、その給与については許認可事項になっているわけですが、許認可事項ということは法的な制約事項の中に入るのでしょうけれども、内示の行為——内示をするという制度をとっているわけですが、内示の行為は法律上の制約ではないのだ、こういうようなことが言われて今日まできているわけです。これは去年の四月三日の社会労働委員会における山本政弘君の質問に対しても、労働省も大蔵省もそういうように答えております。したがいまして、私はこのやり方は内示という形の中で処理をする方式をとっていくならば、いま言われたように、制度上非常に困難であるという大臣の答弁でありますが、もっと前向きの形で何らかの対策ができるのではなかろうかと考えるのです。それで、大臣がこれらの問題をもっと前向きに処理ができるようにひとつ検討を願いたいと思うのですが、最後の質問でございますが、それらの面について検討していただく御意思があるかどうか、答弁を願いたいと思います。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 内示制度について検討するか、こういうお話ですが、これはその問題に直接そうしましょうというお答えをすることはむずかしいのです。しかし、当事者能力を運用上——非常に幅の狭い問題と思いますけれども、どういうふうに広げていくか、こういうことについてはひとつ前向きに検討いたしましょう。
  52. 村山喜一

    村山(喜)委員 では終わります。
  53. 安倍晋太郎

    安倍委員長 山田耻目君。
  54. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣、だいぶ騒然としてきつつあるように思えてなりませんが、いよいよきょうが五日です。政府のほうも昨日あたりから、何とかして春闘のゼネストと呼ばれるような大がかりな闘争については一刻も早くやめてほしい、終息をしてほしいということで、いろいろと問題点の整理に当たられておるようですけれども、私も過去何回かこういう場面を育てる方向で仕事をしたこともありますが、日本で労働運動が組織されまして、陸海空が一斉にとまるし、電話、郵便もとまるし、基幹産業といわれる民間産業もストライキに入る、こうしたことが一応ゼネストと呼ばれておるのですけれども、世界にはときたまやられておりますが、日本では実は初めてであります。昭和二十一年に計画をされたことがありましたが、これは不発に終わりました。  今日のこのような異常事態というのが起こってきました大きな原因、主因と申しますか、それは今日の狂乱物価といわれる異常なインフレの傾向の中で起ってきたわけです。だから、私は、こういう事態に対処していくのに、政府というものが無関係だという顔もしてはならないし、もちろん、それによって国民大衆の受ける影響というものも大きくあるわけですから、無関心であってはならぬ、このように思うわけです。そういう意味から、きのう、きょうと、けさ朝早くから給与関係閣僚協議会をお開きになりまして、何らかの方向を、大綱をおきめになったものだと思うわけです。それがいま村山委員質問に答えての中身であったと思いますが、私は問題が問題でありますから非常に慎重な態度をおとりになることはわかりますけれども、ものごとに取り組んでいく真剣さ、こういうものが過去の政府のとり来たられた中には、私はどうも不足をしていたような気がいたします。  もちろん、労使問題というのは、労使関係で片づければいいことなんだ、こういうふうな理解というものが、私は間違っているとは思いませんけれども、ゼネスト的規模になってくる労働争議というものは、それにはそれにふさわしい原因がある。その原因が今回の異常な物価高騰、インフレの状態の中で起こってきたことは、これはもう否定できないのですから、そういう面から考えていけば、政府の側にもっと真剣な、積極的な対応策というものが立てられてしかるべきではあるまいか。もちろんその立場にお立ちになって、きのう、きょう早朝から議論をなさっているのだと思いますけれども、皆さんたちの胸の内にそういうものが去来をしておるということだけでは、私は対応策として万全だとは思えない。やはり具体策をお立てになったら、それがこのゼネストを少しでも鎮静化させていく有効なものだというふうに思われたら、私は大胆率直に外に向けてものをおっしゃるということが必要だと思うのです。  しかし、きょうは四月五日ですからまだその時期じゃない、時期来たりなばそれは言うよとおっしゃるかもしれませんが、この大蔵委員会は特に財政の支出に関する部分については主の委員会でございますから、ここで大臣の話も聞きたいし、質問もしたいのですが、実はきょうしかないわけです。九日、十日は参議院の予算総括で大臣はおられませんし、私たちが参議院に入ってお聞きするわけにもいかないし、だからきょうお聞きする、ここに若干時間的なズレというものがあります。ありますが、そういう事情にこの大蔵委員会はあるのだということを踏まえていただいて、大臣として、この時期じゃまだ少し早いがと思われることはそうおっしゃってもらってけっこうだから、やはり大臣気持ちの中に去来する事柄等について私はお話しいただきたい。それは前ことばをつけてもらってけっこうですからお伺いしたい、こういう気持ちでいるわけです。  そういうことで、ひとつこれから話を伺うわけですが、いま村山さんのお尋ねしておりました三公社五現業に有額回答を出す、その大綱はどうやらおきめになったようだと思うのです。ところが、いろいろと私たちが集める情報というのは、不正確のものもあろうかと思うのですけれども、新聞を見たり聞いたりすると、私鉄の第一回回答がきょう午後出るというふうに見ておったのですが、若干もつれまして今晩のようです。私鉄の第一回回答は、私鉄自体の経営が運賃値上げが抑制されておりますから、なかなかむずかしい。私鉄の運賃、バス、こうした料金の改定を年内にやってもらう、そういうことが賃金を定めていく一つの前提になる、こういうふうにかなり一般にはいわれておりました。ところが、私鉄なりバス関係の料金については、これも新聞ですけれども、九月ごろ料金の値上げをしたい、こういうことが伝えられております。そういたしますと、若干これとのからみ合いで、きょうの夕刻第一回回答が出るのが、去年の私鉄の賃金の引き上げ額は一九・四%でございますから、大体この前後にとどまるのではないかといわれておる説をもう少し上回るんじゃないか、料金値上げの背景を受ければもう少し上がるんじゃないかということが述べられています。  三公社五現業の有額回答は、この私鉄の回答を見て中身をきめたいということであるとするならば、大体見当というものはつくわけですけれども、大臣のほうで積極的にお述べいただくことがむずかしければ、私のほうからお聞きするわけですが、去年の三公社五現業のベースアップは単純平均で一七・六%前後です。その一七%ちょっとこえておるこの去年の基礎が有額回答になるのか、大体一つの目盛りですが。それともこれにプラスアルファをつけた、言いかえたら、私鉄の運賃、料金の値上げというものを背景にしてプラスアルファというものを考えて二万円前後にするのか。ここらあたりがいまお考えになっておる有額回答の大体の大綱的なものじゃないだろうかと私は思うわけですけれども、私の思っておることが、とんでもない間違いであるというふうにお考えなのか、思っておることがやや近いものであるというふうにお答えになるのか。あなたのほうから積極的に御意見を求めることが、この時期ですからむずかしいようですから、私のほうのそういう思惑についてお考えいただければありがたいと思います。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 なかなかむずかしい答弁になりますが、まず山田さんは、政府があんまりこの春闘問題に熱心に取り組んでおらぬと、こういうような前提のようですが、これはそうじゃないんです。これは日夜、この問題をいかに順調に解決するか、これは苦慮している。アヒル外交じゃありませんけれども、もうアヒルのごとき努力をいたしておるんです。ただそれが目につかぬというだけの話なんですがね。  いま私は、国の流れ、そういうことから見まして、この春闘というものは、戦後、ことしは格別な重要な意味合いを持つ、こういうふうに思うんです。われわれは戦後初めて重大な時局に当面した。この暮れからの混乱状態を早く解決しなければならぬ、そういうさ中に春闘がこじれる、しかも、これがストライキに発展するというようなことになると、これはその混乱処理、これに非常に大きな影響があるだろう。私は、物価が上がった、働く方々の生活が非常に苦しくなっておる、これはわかります。よく承知しています。ことに自分で働けない能力の人々、いわゆる社会保障対象者、こういうような人々は、もう非常な困窮な状態におちいっておる、そういうことはよくわかります。わかりますが、この春闘の措置を誤るということになりますと、これはひとり政府の問題でもない、あるいは使用者側の問題でもない、これは働く人々の問題にも発展するわけなんです。ですから、これはもうほんとうに国民がお互いに英知を発揮して、今日のこの混乱の中での春闘問題をいかに合理的に解決するかということにお互いに努力しなければいかぬ、こういうふうに思うのです。わいわい騒ぐばかりが能じゃない。私どもは静かに日夜考えておる。  そこで、いま御質問でございますが、とにかくきょうは閣僚協議会におきまして有額回答はいたしましょう、こういう決定をしたのです。その額、またその回答の時期、これはまだきめないようにしよう、いろいろ諸般の情勢を見なければならぬ。これは労働省が中心になって諸般の情報の収集、そういうものをやっております。また国鉄については運輸省、また電電、そういうところにつきましては郵政省というところでつぶさに情勢の点検をいたしております。その他一般の民間の企業の動きというものがあるわけであります。そういう動きを全部点検いたしまして、そして政府がいかなる回答をするか、これがきめられる、こういうことになるのですが、私は、山田さんの御質問、つまり去年の率が基準になるのか、あるいは私鉄の妥結状態基準になるのか、そういうことについて答弁せよ、こういうことでありますが、去年の妥結された額なりまた率なり、これは十分にらむ、横目でにらむどころじゃない、ちゃんと正面からにらむぐらいなにらみ方をします。また同時に、私鉄、これはもう近年ずっと私鉄の動きを見てはきめておるのです。そういう慣例もありますので、私鉄がどういう動きになるか、これもまつ正面からよく見なければならぬ、こういうふうに思いますが、さて、そのにらみ方の結果、どっちをどういうふうに採用するのかということにつきましては肯定も否定もできない、こういうふうに答えさしていただきたいと思います。  いま非常に差し迫った段階で、まことに申しわけございませんけれども、その程度でごかんべん願いたいと思います。
  56. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私は真剣みが足りぬということを最初に言ったのですが、有額回答というのは、ある意味では直接の雇用者が福田大蔵大臣ではないし、田中内閣総理大臣ではないことはわかっておるわけですが、しかし、やはり予算総則その他でがんじがらめになっておるわけなんです。それは必ずしも三公社五現業だけとるのではなくて、さっきの政労協の皆さんもそうです。そういうことなどもありまして、有額回答の持つ本来的な労働政策上の意義は一体何なのかということが、やはりこれから問われてくる時代に入ると私は思うのですが、しかし、その有額回答そのもの、確定的な要素を持たないその有額回答というものが、まじめであらねばならないし、真剣であらねばならないし、現実にできるだけ沿ったものでなくちゃならぬということは、私は当然だと思うのですよ。  なぜ私がこういうことを言うかといいますと、昭和三十六年に最初の有額回答が出たと私は記憶しておるのです。そのとき、たしか官房長官は大平さんだったと思いますが、そのときの有額回答は幾らだったと思いますか、たったの百円。出しましたよ、有額回答でしょうがと、そういう立場だったのです。その年の賃金引き上げはたしか七百円だったと私は覚えております。七分の一が有額回答。翌昭和三十七年の有額回答は、たしか五百円だったと私は記憶する。その年の労働大臣が石田博英さんでしたが、二千三百円の賃金決定をいたしました。これも大体四分の一強です。この一つの、過去最初に展開された有額回答の政府の態度というのは、決してまじめなものではなかった。ただ政府として有額回答しましたよというアリバイをつくったにすぎないのです。  私は今回、いま行なわれようとしておる三公社五現業に対する措置、あるいはいま政労協に対して何とかして配慮してやってほしいといった措置などは、いわゆる労働政策、労働行政として、人間を雇う雇用契約、こういう現代社会の中に仕組まれておる賃金を支払う側と受ける側の基本的な権利は平等でなくちゃならぬはずなんですから、そういう立場から行なわれていく賃上げ要求に対してこたえられる態度というのは、私はまじめであってほしい。申しわけ的にやったということだけであってはいけない。その金額が少なくとも最終結論に近似値を持つものであるということが私の願望なんです。しかし、私は、その過程は非常にまじめであってほしいし、だから大綱をおきめになったようですから、どうかひとつ、金額をお出しになるときには、なるほど福田さんが大蔵大臣になられて、閣僚になられてやられる措置はまじめだ、りっぱだとみんながほめそやすような態度で結論を公表される時期を私は待っておる。その金額は、私が一つの自分の思いだということで申し上げたことがほんとうは的確でないほうがいい。そうならぬほうがいいし、もっとプラスアルファというのが、物価上昇の動きなどを見定められて的確に積算されていったものであってほしいという希望だけは強く持っておるわけです。こうした全体を踏まえて御措置をいただきたいと思うのです。きょうは注文をする委員会になってしまいましてほんとうに私も残念なんですが、時期的にしかたがございません。  時間もありませんから、今度はもう少し違った問題でお願いするわけですが、今度の春闘の中で、二番目の柱として共闘委員会の皆さんが要求なさっておる中で、直接労働者にかかわってくる問題じゃないけれども、ゼネストを組んでいった背景として、やはり大きな要素を占めておるインフレ弱者の救済、これまた非常に答弁がむずかしいと思いますが、春闘でこういう事柄を解決したということとして私もきょうの場合は理解しませんから、そうして大臣もその理解にとらわれずに私は御答弁いただきたいと思うのですが、いま前段に申し上げました賃金を要求して、もらって、それでこのインフレ狂乱時代を切り抜けて生きていく、労働再生産を果たしていく、こういう人たちとは別に、国とか県とか市が財政支出をして生活を守ってあげなければどうしはうもない人たちがいるわけですね。生活保護世帯とか福祉年金をもらって生きている人たち。この人たちは、私は、こういうことを言ったらことばとして適切でないかもしれませんけれども、賃金をもらう人たち以上に気の毒な人たちであります。その人たちを何とかしてあげるということは、春闘に結集する労働組合の皆さんの要求とは別に、私は政府として考えてあげなくちゃいかぬじゃないか。それを一つ考え措置として、先般百三十億ばかりお出しになりましたね。厚生大臣が、かつてない実績だと言ってたいへん誇っておりましたけれども、これを見ますと、福祉年金の受給者とかあるいは生活保護世帯などは大体二千円。消費者物価が二六・一%も上がっていく。これは全平均です。しかし、この人たちが生きていくために最低のものといえば何かといったら、全く食べること、着ること。こうした衣食の関係の物価の高騰というのは異常なものがあるわけです。とても二六・一%どころの上昇じゃない。しかし、この人たちに三月末で二千円しか支給していない、これでは私は、政府として十分なことをしてやったという立場はとれないんじゃないだろうか。一体、今日、春闘とは別にいたしても、この物価狂乱の時代に、この人たちを今後どう対処していくのか、どう救済していくのか、ひとつの大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 その問題になりますと、私はこれは春闘とは別の問題だ、こういうふうにはっきり区分けをして考えております。春闘の組合の皆さんと話し合うという考えを持っておりません。しかし、この国会の場におきまして、山田さんからいま話があった、これはまつ正面からお答え申し上げます。  こういうインフレの世の中で、これは国民全体がたいへんな被害を受ける。その中で、一番の被害者はだれだといえば、申すまでもない、これは、社会保障対象者です。この方々の生活というもの、これはいまインフレ対策だといって総需要抑制政策をとっておるわけです。しかしながら、そういうきびしい政策をとっておる中ではありまするけれども、この方々には格別配慮をしなければならぬ。そういうようなことで、公共事業費なんかはもう、一文もふやさぬ、少し減らす、こういうくらいの予算を組んだわけです。御指摘のとおりです。しかし、社会保障対象者に対する対策、社会保障対策費は三七%もふやす、これまでの予算を組んでおるわけです。その予算が十日には成立しようとしておるわけなんです。この予算は、かなりそういう方面に大きな傾斜をつけておりますので、いま経済事情の推移が一体どういうふうになっておるか、つぶさに点検をしておりますが、その点検の結果、社会保障対象者の生活にこれはどうもお気の毒だというような点も出てくるかもしれない、そういう点検の結果を待ちまして、いろいろ財政上の仕組みもあるんですから、そういう社会保障費もずいぶん組んである、予備費も組んである。そういうような予算措置もありますので、これはどういうふうな対策をとるべきか、そういうような点につきましては、これは真剣に考えてみなければならない。  いずれにいたしましても、いま私どもが当面する問題は春闘問題です。この問題をなるべく、いま国のこういう危局である、そういうさなかにおいてなだらかに解決されるように御協力願いたい。この問題を処理したあと、そういう弱者がどういう状態に置かれるであろうか、春闘の状態にもよります。そういうようなことを十分検討してみるということは、私も十分心得ておるつもりでございます。
  58. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 まだ予算も十一日までは通らぬわけですから、内容などについてあなたのお考えをただすことは、私も若干早計だと思います。しかし、いまあなたのお気持ちの中には、特に社会保障の対象になっておる人たち、私流にいえば、インフレ弱者の人たちはほんとうに気の毒だから、これは予備費も計上してあるし、総需要抑制政策をとっておるけれども、この人たちには何らか予算措置をとりたいというお話を伺ったことで、私も非常にうれしく思うわけです。  しかし、問題は、お気持ちは非常にうれしく、ありがたく聞くわけですけれども、時期、内容というものが困り切っておる人たちにとっては大事なわけですね。私はこんなに困っておるが、いつ幾らどういう方法でということが非常に重要になってくるわけです。ですから、十一日に予算が通りましたら、こんなものは漫然日を過ごすわけにもいきませんから、早急に措置されるものと私は理解いたしますけれども、これは大臣当然でございましょうね、いかがですか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま、きょう、その問題をお答えすることは差し控えたいと思います。私の気持ちだけは申し上げますが、これは大蔵大臣としても——主務大臣は厚生大臣ですから、そういう方に考えていただく問題でありますけれども、大蔵大臣である私といたしましても、インフレによる弱い被害者、こういうものの立場というものは心から心配しておるということだけははっきり申し上げます。(「大蔵大臣は仏さまだよ」と呼ぶ者あり)
  60. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 その仏さまに重ねてお願いしておくわけですが、確かに主務大臣は厚生大臣でございますけれども、さいふの口をしっかり締めておるのはあなたなんですね、仏さまなんですよ。  そこで、私は、せんだって二月までの税の動向についての報告書大蔵省からもらったわけですが、これの試算、新聞にも出ていましたが、大体一−三月の自然増収が四千億をこえそうですね。一月段階で試算されましたときには、二千五、六百億だろうかというふうに私たちも見ていたんですけれども、四千億をこえるという異常な自然増収になってきておる。ここに大蔵大臣のお持ちのさいふの中には、すかっと予想もせぬ金が入り込んできた。  それから、三十日に参議院を通りました会社特別税。この会社特別税も、これでどれぐらいの税の増収が見込まれるかといろいろお伺いしてみると、低目に見て千七百億、まあちょっと上に見れば千七百五十億程度である。これは大蔵大臣もいつかお述べになったことがあるように私記憶しておるのですが、これも入ってきた。もともとこの会社特別税は、私たち社会党の案を骨格として自民党さんのほうにも御了解いただいて、いわゆる自社共同提案ということで各野党取りつけてやろうとした寸前、こわれていったわけですが、あの自社共同提案のときには大体二千五、六百億の増収という目算だったわけです。その法律を通すとき附帯決議の相談がございまして、その附帯決議をするときの第一は、これは総理も本会議で答弁なさっておられましたように、このインフレで不当にもうけた企業から超過利得税で取り上げて国民に還元するんだ、こういう大みえをお切りになっている。私たちは、同感だという気がいたしました。そういうもろもろな状況を受けまして、この附帯決議は、この会社特別税によって徴収したお金は原則として国民に還元する、なかんずくインフレ弱者にそれを返していきたい、こういうような附帯決議がついていたわけなんです。しかし、それがああして結果として自民党さんのほうでお出しになった単独の法律のほうが通ったということになりました。しかし、その内容たるや、わずかに違っていたのは資本金の二〇%、多いほうで処理をするということだけなんですから、附帯決議がどうしてつかなかったのか、私、党の理事をしておってほんとうに恥ずかしいと思うのですけれども、つかなかった。しかし、それがついた、つかぬは別として、本来その立法の精神というものはそこに返るべきものなんですから、いまの税の自然増が四千億をこえていく、そして会社特別税は一千七百五十億程度入る。こういうものが大蔵大臣の袋に入るわけですから、さいふの首を締めるよりも中からはみ出しはせぬかと私は思っている。  これは私の注文ですが、いま二千円ずつお出しになっている。二千五百円の施設もありますけれども、百三十億、これを一万円にするためにせめてあともう八千円お出しいただいたら五百二十億予算が要るのです。自然増収の四千億、会社特別税の千七百億、これを合わせた中のたったの一割、せめてこの一割ぐらいはインフレ弱者に還元をしてあげたい、こういう気持ちを私は持つわけなんですよ。そこらあたりについては、さっきからのお話の中で大臣もよく気持ちを蔵せられておることは承知をしておりますので、そういう問題を含めてひとつ御配慮いただければと思う。これは時期は早急に、内容は大臣の御答弁はいただけませんでしたけれども、その内容は、いま私が申し上げたように、すでに二千円三月末までに出しているから、残り八千円程度。これは予算が通ったあと、春闘とかかわりはないと言われてけっこうですから、春闘とかかわり合いなく当然の救済措置として政府はとる。その内容は、最低あと五百二、三十億の予算の持ち出しでインフレ弱者を救済してあげてほしい。それ以上になっていけば、ほんとうにまたこれもお礼を言わなければならぬのですけれども、そういう措置をひとつお考えいただけないでしょうか。最後でございますので、その点を一つお伺いして質問を終わりたいと思います。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 山田さんの御熱心な御提言を傾聴したわけでありますが、インフレ弱者、そういう問題について、その内容についていま触れる段階ではない、私はこういうふうに思いますけれども、これは山田さんもずいぶん一生懸命考えておられると思いますが、私もこれは山田さんに劣らず、弱い立場の方々のことは考えておるのです。そういうことは真剣に考えておるのです。そういうことははっきりお答え申し上げます。(「態度であらわさなければいかぬ」と呼ぶ者あり)  これをいかに態度にあらわすかという問題は、これは諸般の情勢をよく検討する。これは何といっても主務大臣は厚生大臣でありますから、厚生大臣の御意見等もよく承らなければならぬ。気持ちは私は山田さんに劣るところはない、そのことだけははっきり申し上げておきます。
  62. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 たいへんありがとうございました。私の気持ち以上に考えておるというおことばで、実は私も安心しました。私の気持ちは正直に数字まで並べて申し上げたのですから、それ以上の御配慮があるものというふうに私は思うのです。  ただ、さっき大臣は、総需要抑制政策で工事費などはうんと押えたけれども、社会福祉にかかわる問題については三六%の増額予算を置いたのだ、こういうことをおっしゃっていました。あの社会福祉予算の増額というのは、こういうインフレ傾向に入る前の事項なんでしたね。だから、ほかを押えたけれども、それだけは押えなかったというところの中には、総需要抑制という面から見たメリットはこの人々にはあります。それはそれでありがたいと思うのですが、私は厚生大臣のお話をよく聞いていますと、もう福祉関係者に対しては、ことしは大幅な引き上げをやったのだ、だから、それはもうそれでがまんしてもらわなければということばを聞くことが多いわけです。しかし、それはこういうインフレ傾向に入る以前の国の基本的な構想であったわけですから、それはそれでありがたいと思うけれども、しかし、その上にこのインフレ傾向というものを加味して救済する以外には現実の救済にはならない、こういう気持ちも持っていたものですから、その点もひとつあわせて申し上げておきたいと思うのです。  しかし、きょうの質問時間が、もうございませんので、いま大臣がおっしゃっていたように、四月十一日に予算も終わりますと、厚生大臣とよく相談をして、私が申し上げたような気持ち、それ以上の気持ちをもって解決していただく、こういうことを、ことばのやりとりじゃなくて、いまのこの時代に、生きることに希望を失うような状態にまで、極限の状態にまで立ち至っておる人々を救うためには、ほんとうに真剣な気持ちで善処していただきますように強い要望をいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  63. 安倍晋太郎

    安倍委員長 増本一彦君。
  64. 増本一彦

    ○増本委員 いままでのお話を伺っていまして、国民は、この時期にきて政府がどういう政策や態度を示すかということについては、非常に関心も持っているだろうと思うのです。  先ほど来の議論の続きでお話をまず伺いますけれども、いま年金の問題では、野党では賃金スライド制の導入を考えてくれということを政府にも要求しているわけです。それに対して厚生大臣のほうで、年金の再計算期を早める、そして来年度については年金額の引き上げをはかっていく、こういう答弁が出されているようであります。私は、大臣が社会保障対象者に対してもっと生活を見ていくために前向きで検討をする、そういうお気持ちがあるならば、財政をあずかる大蔵大臣として、さらに今日のこのインフレ、高物価の状況で、もっと早めた抜本的な検討というものを大蔵省としても積極的になさるべきではないかというように考えるわけです。その点でどのようにお考えなのか、まず態度をはっきりさせていただきたいというように思います。いかがでしょう。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 年金につきましては、昭和四十九年度予算でスライド制を採用するとか、あるいは年金額の増額を行なうとか、諸般の対策をとっておるわけでありまして、私はいまこれらのものにつきまして、本年度においてこれを改定するという考え方はいたしておりませんです。
  66. 増本一彦

    ○増本委員 政府の今回の社会保障関係費の増額、これは内訳その他を見ますと、結局、法律できめられている事項を進めていくというそのための経費であり、しかもスライドの問題でも、時期的にも先になるし、そして国民が要求しているいわゆる賃金スライドではない。そういう意味では、私は新しみに非常に欠けているということをいわざるを得ないというように思うのです。大臣がここでほんとうにインフレで苦しんでいる人たちの生活を守っていこうということであるならば、もっと新機軸をはっきり打ち出していただくということが私は必要だというように思うわけです。その点を年度内に実現していただくという道筋や手だてというものがほんとうにないのかどうか。それは先ほど来の自然増収や新しい税の創設による税収によっても一定の部分はまかなうことができるし、さらにまた財源の振りかえ等については、それはわれわれもこれまでに法人の課税所得を拡大するとか、あるいはその他の見返りの財源を見つければ見つけることができるということで政府に対しても提言をしてきたつもりであります。そういうことを考えれば、もっとその点ではくふうをしていただくべきではないかというように考えるわけです。ほんとうにこれは再考の余地のないものなのかどうか、もう一度確認させていただきたいと思うのです。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 昭和五十年、つまり来年度以降の問題としては、いろいろと本年度中に検討はいたしまするけれども、本年度の問題といたしまして、年金の手直しをする、これはとにかくあれだけの予算が成立しようとしておる、また成立するその前から、この予算はまた修正するんだと言うことはちょっと無理じゃないか、こういうふうに思います。  来年度以降の問題につきましては、とにかくいま私は物価を鎮静させたい。これに全力を尽くしておりますが、とにかくこれだけ大荒れに荒れたあとの昭和五十年度という年度でありまするから、その荒れたはだをどういうふうになめらかにするかという問題はたくさんあると思うのですよ。そういう問題は、国会でも済みますれば直ちにどういうふうにするかということを検討しなければならぬ、こういうふうに思っております。いましかし、昭和四十九年度の予算をここで修正をせい、こういうのはいささかどうも難きをしいることじゃあるまいかというような感じがするのです。
  68. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、時間がありませんので、次に移ります。  きょうの夕刊を拝見しましたら、有額回答の方向が三公社五現業について出ている。それと対応して、官房長官談話でストライキの中止を強く要求されているわけですね。これは政府の見解であろうと思うのです。ストの中止というような、これは再三にわたっていろいろ発言もありましたけれども、有額回答の方向が出て、それとのかね合いで官房長官談話が出ているということを見ますと、やはり三公社五現業の労働者が真に満足できる内容の回答であるべきだと思うのですね。大幅な賃上げ、そうして生活を守るというここのところを一つの大きな要求の柱として今日の事態を迎えているわけですから、その点ではやはり財政担当の大臣としてその内容を大幅に引き上げ、労働者の要求を満足させるような内容のものを出すべきであるというように思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ組合側の要求というのはかなり大きなものでありますので、満足していただけるような有額回答はとてもむずかしいと思います。政府といたしましては、一般の企業の状態はどうだろう、特に中小企業の状態は一体どうなんだろうというようなことを考えますと、そう求められるような多額のものを出しますというふん切りはつかないですね。やはり政府が行動する一つの目安を与えるというようなことにもつながる、中小企業の人たちはそれを見てどういう感触を抱くかというようなことを考えますときに、そうそう多額な御要望にすぐ応ずるというような態度を政府がとるということは、非常にむずかしいのです。ですから、総理や政府は、いままで民間企業のほうでどういうふうな動き方になっておるか、また経済社会全体を見渡しまして、各界各層がどういう影響を受けるだろうかというようなことをつぶさに検討いたしまして、妥当な額を出すということになる、かように御理解願います。
  70. 増本一彦

    ○増本委員 賃金というのは労働力再生産費ですから、単に支払い能力や他とのバランスということだけでかね合いをきめるということもできないだろうというように思うわけです。  ところで、三公社五現業については有額回答の方向が出ている。民間もいま自主的な解決のために非常に努力をしている。そういう中で、公務員の人たちだけが人事院の勧告待ちで宙ぶらりんなんです。政府が使用者ですから、しかも公務員の皆さんにも職員団体がある、人事院の勧告を待つという受動的な態度で終始するのではなくて、この際、やはり組合との自主交渉で公務員労働者についても有額回答を出し、早期にこの問題も自主的に解決をはかっていくということが必要ではないかというように考えるわけですが、その点はいかがですか。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 現行制度のもとにおいては、さようなことはできませんです。公務員給与につきましては、特に人事院勧告という制度がある。この制度を尊重するほかはないのです。制度を変えて別な仕組みだ、こう言うなら格別でございますけれども、私は人事院勧告という制度はとにかくよくくふうしてできておる制度だと思うのです。その制度が現存をしておる、そういうさなかにおきまして、これと違った道筋をたどるということは妥当でない、かよう考えます。
  72. 増本一彦

    ○増本委員 その問題は、結局、労働基本権の主要な部分を禁止している、いわばその見返りとして人事院がある。しかし、その人事院の勧告というのはいつも八月になるわけですね。その間公務員労働者が、しかもここへきてインフレ、高物価ですべての国民が苦しんでいる中で、未解決のままで、実施されるのが結局半年先あるいは一年先になる、こういう状態ではたしてよいのかという問題だろうと思うのです。制度の運用として今日まで、人事院勧告が出され、それを待って実施をしていくということでは、結局、公務員労働者はその間やはり苦しい生活をしいられざるを得ない。  そこで、一つ提案なんですけれども、一応公労協が妥結をした時点で、少なくとも妥結額の範囲内で公務員労働者にも内払いをしていくという手だてがとれないものか、こういうように考えるわけです。  人事院お見えでしょうか。——先に、公共企業体とそれから公務員の人たちの、この数年間の基準内賃金の引き上げ率の状況がどうなっているのか、公務員労働者のほうがアップ率が高いのか、その辺のところをちょっと数字で御説明いただければと思います。
  73. 加藤圭朗

    ○加藤説明員 最近五年間の数字につきまして御説明したいと思います。  人事院勧告のほうから申し上げますと、四十四年は一〇・二%でございまして、五千六百六十円でございます。それから公労委の仲裁裁定は一〇・一%、四千八百十七円でございます。四十五年は人事院勧告が一二・六七%、八千二十二円でございます。公労委のほうは一二・五一%、六千七百五十一円。四十六年は人事院一一・七四%、八千五百七十八円、公労委一一・六八%、七千二百九十四円。四十七年が人事院一〇・六八%、八千九百七円、公労委一〇・六〇%、七千五百六十六円。四十八年は人事院一五・三九%、一万四千四百九十三円、公労委一四・七四%、一万一千八百七十円というふうになっております。
  74. 増本一彦

    ○増本委員 もう一つ、今度教育関係の労働者と、それから看護婦さんについては賃金の引き上げが行なわれて、その結果、民間と公務員関係の労働者の賃金の比較方式が変わってくると思うのですね。そうしますと、官民の賃金の比較ではどのくらいの格差が出てくるものなんですか。より以上の格差の是正をはかっていくというやり方にならざるを得ないと思うのですが、その点はどうなんですか。
  75. 加藤圭朗

    ○加藤説明員 従来人事院がとってきております官民の給与の比較の方式といたしましては、官民共通の職種につきましてすべてを比較する。その比較のやり方といたしましては、職務の責任あるいは年齢とか経験とかそういったものを基準として、それぞれのポストを基準にいたしまして比較してきたやり方をとっておったわけでありまして、それぞれの官民の共通の職種でございます十の俸給表につきまして、それぞれの俸給表ごとに格差を計算をいたしまして、さらにそれを人員のウエート等を使いまして総合して格差を出す、こういう方式をとってきたわけであります。  教員と看護婦の問題につきましては、昨年の勧告において、さらに一そうの改善をはかる必要があるということを指摘したわけでございまして、今回、教員につきましては一月から実現していただいたわけでございますし、看護婦につきましては近く御審議いただくということになっているわけでございます。  ところで、従来人事院が特に教員と看護婦につきまして一そうの改善をする必要があると申しましたのは、やはりその二つの職種につきましては、その職務と責任等から見まして、どうも民間と比較いたしますと、公務のほうが若干高い。言うならば、公務が先導するような形をとっておる職種ではないかというふうに、従来のそういう比較方式から出てまいるわけであります。したがいまして、その従来低かったところに特別な改善をいたしました関係上、従来とっておりましたいわゆる総合格差方式というのは、やはり再検討する必要があるだろうということを指摘したわけでございます。したがいまして、特に改善をいたしました教員と看護婦さんの給与につきましては、それを除いて格差を算出するという方式にならざるを得ないだろうというふうに思われるわけでございます。格差はその分だけ若干ふえるだろうというふうに思っております。
  76. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、大臣、最初の質問に戻りますけれども、これまでの過去五年間ぐらいとりましても、アップ率では、最終的に人事院勧告で出るアップ率は公企体よりも高いわけですね。しかも、今回教職員についてと看護婦さんが官民の比較でも対象から抜けて、いままで十職種だったのが七職種になって、官民の格差がその分だけ開きが大きくなるわけですね。そうすると、人事院としてもさらにその官民の格差を埋めるためには、より多くの賃金アップの勧告をしていくという方向にならざるを得ないだろう。ですから、そういう事態で、人事院の最終的な勧告を待つのではなくて、いまここで三公社五現業について有額回答が出される。その線に沿って公務員の労働者についても内払いで支給をしていく、そして最終的に人事院勧告の出たところで再度調整をする、こういうことでその間のブランクの穴埋めを公務員労働者にしてあげるということも、私はこの時点ではたいへん必要ではないかというように考えるのですが、そういう方途はとれないものでしょうか。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは法律でそういうふうになっているそうでして、この法律を改正しなければできない問題、こういうことでございますが、人事院の勧告があって、政府がこれを受諾するということになりますると、四月に遡及してこの額が支給されるということになるので、せっかくの御提案でございますけれども、そうたいした違いもないんじゃないか。そういうことでございますが、いずれにしても、制度的にどうも法律はそうはなっておらぬ、こういうことでございます。
  78. 増本一彦

    ○増本委員 時間なので、最後に一つ要望だけ申し上げておきますけれども、いま非常にインフレ、高物価のもとで、働く人たちすべてが苦しんでいる。こういう状態ですから、春闘の状況あるいは特に公務員労働者あるいは公共企業体で働いている労働者、そういう労働者の生活を真剣に守っていく、また生活保護者をはじめ社会保障の対象者に対しても、やはり手厚い保護をしていくのが政治のつとめであると思うのです。そういう点でひとつ一段の御努力をお願いしまして、質問を終わります。
  79. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、来たる九日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十分散会