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1974-04-02 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    鴨田 宗一君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    山下 元利君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       松浦 利尚君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       広沢 直樹君    内海  清君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君  委員外出席者         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 三月二十八日  臨時資産税法案村上弘君外三名提出衆法第  一三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第二六号)      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。     ―――――――――――――  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 安倍晋太郎

    安倍委員長 まず、政府より提案理由説明を求めます。中川大蔵政務次官
  4. 中川一郎

    中川政府委員 ただいま議題となりました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  国際開発協会は、昭和三十五年に設立され、開発途上国に対しきわめて緩和された条件での融資を行ない、その経済的、社会的開発促進に大きな役割りを果たしております。わが国は、その原加盟国として当初出資を行なったほか、それ以後の三次にわたる増資の際にも応分の出資を行なってまいりました。  前回の第三次増資は、同協会昭和四十六年七月以降三カ年間の融資約束に充てる資金をまかなうものであり、予定どおり本年六月にはその全額融資約束済みとなる見通しであります。このような背景のもとに、去る昭和四十七年九月の総会において、同協会の第四次増資提案され、その後、関係国間で累次にわたり検討が行なわれました。この検討結果に基づき、昨年十月の理事会において、本年七月以降三カ年間の融資約束に充てる資金をまかなうため、総額約四十五億ドルの出資及びその分担等に関する総務会決議案が採択され、直ちに総務会投票に付されました。この決議案に対し、わが国は、本年一月賛成投票を行ないました。また、各国の投票も逐次行なわれ、本年一月三十一日に至り、所定の要件が満たされ、決議が成立いたしました。  ここにおいて、わが国といたしましては、同決議の定めるところに従い、同協会に対し新たに千三百十四億七千二百万円の出資を行なうため、所要の国内措置を講ずる必要が生じたものであります。したがいまして、この法律案により、新たな出資についての規定を設けることとし、この法律案の成立後、出資分担を引き受ける旨の正式通告を行ないたいと考えております。  さらに同決議によれば、今回の増資は、少なくとも先進十二カ国が出資を行なう旨の正式通告を行ない、かつ、通告を行なった国の出資額合計が三十五億ドル相当額以上となった日に発効することとされております。かりにその発効が本年七月以降におくれることとなった場合には、開発途上国の需要にこたえて国際開発協会が継続して活動し得るよう、増資が発効する前においても、関係国が同協会からの要請に基づいて出資を行ない、これを後日増資が発効した場合にはその出資とみなす措置がとられることも予想されます。  このような情勢となり、他の主要国がこれに応ずる場合には、わが国といたしましても、この法律案規定に基づき、必要な措置をとることも考慮しております。  なお、国際開発協会に対する出資は、国債で行なうことが認められておりますので、今回の出資前回と同様、国債で行なうことを予定しております。  以上がこの法律案提案理由であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  6. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより質疑に入ります。  質疑通告がありますので、順次これを許します。山中吾郎君。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、この法案を調べておるうちに、出資条件その他の各論の前に、この母体である国際開発協会のあり方に非常に深い興味を持つに至ったわけなんです。  その第一は、こういう国際開発協会という構想が世界平和を願う人類知恵から生まれてきたものなのか、あるいは大国主義の側に立って、第二の経済進出の手段に考えられてきたのかということは、これは見きわめておく必要があるということを第一に考えたわけなんです。  それから第二に、もしこれが世界の平和を願う人類知恵として生まれてきたならば、将来世界平和機構としてどのように発展をさす可能性があり、またこれに参加しておる日本政府がどういうことを考えておるのか、この辺を見きわめておくことが、この法案の趣旨に賛意を表したり、また将来、増資がたくさんあるわけですから、それに対して国会がどのように考えていくかという非常に大事なものを含んでおる。  この法案を調べておるうちに、その辺に私の関心がずっと入ってきた。そういう観点から質問をしていきたいと思うので、外務省からも来ておりますから、その辺を明確に、平和憲法を持っておる日本外交方針と深い関係があるわけですから、正確に御答弁をいただいて、こういうものについての本質的な解明を、ひとつこの法案審議の中でしておきたい、こういうふうに思うのであります。  それにつけても、この出資条件その他の各論に入る前に、国際開発協会沿革目的性格構成というようなものを含めて、総論的なことをお聞きいたしたいと思います。  まず、こういう協会基本的理念といいますか、そういうものについて日本政府はどういうふうに考えておるのか、どういう理念でこの協会賛意を表し、参加をし、そして融資に積極的に協力をしておるかということを私は見きわめたいと思うのであります。これは外務省に聞いたほうがいいのか、大蔵省がこの法案執行責任者ですから、両方ともにお聞きするのが適当と思いますので、本協会をささえておる基本理念、これは何かということをお答え願いたいと思います。
  8. 菊地清明

    菊地説明員 お答えいたします。  国際開発協会のそもそもの理念ということに関する、それから日本政府のそれに対する態度という御質問でございますが、御承知のように、いわゆる私たちが世界銀行と称しております、正確に申しますと国際復興開発銀行というものが、戦後の一つ国際的な制度といたしまして、戦争によって被害を受けた諸国の復興開発援助するためにできたことは御承知のとおりでございます。これをいわゆる世銀とかりに略称いたしますと、世銀が戦後の世界経済復興において非常な役割りを果たしました。ところが、その活動の間におきまして、世界銀行というものが普通の銀行でございますので、どうしても銀行的な採算というようなものを度外視するわけにはいかないということでございまして、これにかわるもっと貸し出し条件のゆるやかな機構をつくろうということで、これも俗称でございますけれども、第二世銀というような形で国際開発協会というものができたわけでございます。これが一九六〇年でございます。当初十億ドルで発足いたしました。  この国際開発協会というふうな訳語から、あるいは非常に国際の平和というものに直接つながる機構ではあるまいかというふうな考え方もあり得ると思いますが、実はこれは完全な金融機関でございます。開発のための金融を行なう機関でございます。御質問世界の平和とかそういうものに対する国際開発協会との関連ということでございますけれども、これはあくまでも発展途上国経済開発を助ける、それによりまして世界平和の促進をはかる。別なことばで申しますと、国際経済を均衡ある発展にまで持っていく、南北の格差をなくしまして均衡ある経済発展というところに持っていく、それによって世界の平和を確保するということでございます。わが国がこれに参加いたしておりますのも、まさにこの国際開発協会発足理念そのものに賛同いたし、それにのっとった態度をとっているわけでございます。
  9. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま外務省菊地参事官から御説明がございましたが、若干補足して御説明させていただきたいと存じます。  それは、この協会ができましたのは昭和三十五年の十二月でございます。そして、この協定そのものが作成されましたのは三十五年の一月でございました。そこで、当時の国際的な環境というのを思い起こしてみますと、たとえば独立国の国の数でございますが、これは現在、私どもの手元の資料で、国際連合加盟しておる国の数が百三十五でございます。ところが、昭和三十五年の初めにはそれは八十三カ国でしかなかった。そして昭和三十五年中に、新たに十七カ国というのが国際連合加盟いたしております。しかも、その十七カ国のうちの十六カ国はアフリカにおいて新たに独立した国である。その後も昭和三十六年から本日まで、三十五という新たな国々ができたわけでございますが、世界の中にはそのような若い国、新しい独立国がたくさん生まれてくる、その機運のちょうど生じかかった段階であったかと思います。  そこで、このような新しい国々は、どちらかといいますと、それまで存在しておりました国々と比べましてあるいは経済力が弱い、あるいは政治的にもその貧困が災いして安定しておらない、そのようないろいろな事情がございまして、そこで、ただいま菊地参事官からも御説明がございましたように、従来のいわゆる世界銀行だけでは足りないのではないかということで、新たにこの国際開発協会ができたのでございます。  その理念は、この国際開発協会協定世銀協定と若干違いまして、その前文におきましてこの協会理念というのを高らかにうたっております。これは世界銀行協定と比較してごらんになりますと、世界銀行のほうの協定はどちらかといいますと事務的に「次の規定に従って設立し、且つ、運営する。」これだけ書いてございますが、これに対比いたしまして、第二世銀、この国際開発協会協定のほうは、前文におきまして、「建設的な経済目的世界経済の健全な発展及び国際貿易の均衡のとれた増大のための相互協力は、平和の維持及び世界繁栄に資する国際関係を助長するものであること。低開発国における生活水準の向上並びに経済的及び社会的進歩を増進する経済開発促進は、これらの国のためのみならず国際社会全体のためにも望ましいこと」である、このようにこの協会が設立された理念がはっきりとうたわれておるのでございます。  そこで、先ほど菊地参事官からのほうの御説明もございましたように、わが国といたしましてはこれらの理念を積極的に支持いたしまして、われわれとしてもそのような考え方を分かち合うものであるということで、進んでその一員となりまして、この活動を通じて世界のいわば先進国一員としての日本国際的な責務を果たしていきたい、このように考えて行動してまいった次第でございます。
  10. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大蔵省考え方のほうが私の理解に近いわけなんです。外務省のほうではいわゆる銀行という考え方が一番最初に出ておるように思うのですが、すでにいわゆる第一世界銀行というのは最初からその条約の題名から復興開発銀行となっているが、これはいわゆる協会と、最初から銀行とうたっていない。そして前文世界平和という一つ理念が、哲学が明確にされてあるので、やっぱりこの協会というものといわゆる世界銀行とは理念は違うのだという理解日本政府がこれに参加をし、意見を述べ、世界平和に持っていくべきではないかと私は思うのですが、外務省答弁では、大蔵省と比較をしてそういう考え方が非常に薄いように思う。どうですか。
  11. 菊地清明

    菊地説明員 ちょっと私の説明が足りなかったと思いますが、私の申し上げようとしたのは、いわゆる世界銀行のほうが銀行的な色彩が強いので、それではいわゆる発展途上国、特に、おくれた発展途上国のうちでもさらにおくれた国に対する要望を満たすことができないので、それを銀行的色彩を緩和して、非常な条件のゆるい借款を与え得るようにするためにこの第二世銀というものができたということを申し上げたかったわけであります。
  12. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私の感じでは、日本外務省のほうが大蔵省答弁したような理念で、それから金融という直接の関係から大蔵省が、あなたのおっしゃったような答弁がちょうど自然だと思う。逆なんですね。日本外務省というのは、そういう意味における世界平和に対する理念とか、そういう理想主義的なものが非常に少なくなってきているんじゃないかという感じを、お二人の答弁で受けるのですが、どうもその辺はぴったりしないわけです。  なぜこういうことを申し上げるかというと、やはり最初から条約の命題が、片一方銀行片一方協会なんですね。そうしてこの融資の内容を見ると、還付期間が五十年である、そして無利子なんです。この協会における融資条件というのは、金融ベース最初から乗っていないでしょう。だから、銀行でなくて、やはり発展途上国に対する生活水準を引き上げて、貧困戦争の土壌ですから、世界地域の貧富の差というものが死をかけての戦争にかり立てるのであって、これはどうしてもこの貧困を解消すべきだという理念が非常に深く、私は、いわゆる開発銀行に対して、協会の名において金融ベースを越えた援助理念がここに入っていると解釈したい。そういう解釈が政府も私と一致することの上に、どんどんともっと融資をしてやるべきで、そうすればこの法案賛成の意欲が出てくるわけなんですが、どうも肝心の外務省考えがそうでないのは、まことにもの足らないと思うのです。  ことに、五十年というと、明治全体が四十五年ですよ。五十年無利子で貸すということは、それはもうその国に対してほんとう開発援助するという思想が裏づけられて初めて、五十年の貸与期間というものがあるんだ。その国が責任感を持つために、補助するのでなくてこれは貸与ですよと言っているだけであって、ほんとう意味における自主独立の精神を前提としながら、私は、無条件援助をしておる思想というものがあって初めて、五十年の返還期間、無利子という思想が出るのだと思う。どうもその辺が私はぴったりいたしません。また、そうありたいし、私の思想がそうなんでそう解釈していこうとしているのかもしれませんが、この辺は明確にしてもらわないと、この法案に対する評価のしかたが非常に違ってくるので、この辺は次官に御答弁願っておきたいと思う。
  13. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘のとおり、五十年間、利子は取らない、手数料が若干ある程度でございますから、これは金融ではない、まさしく援助性格そのものだと思います。そこで、世銀性格は異なるとはっきり言っていいと思います。しかもこれは、国際平和、世界繁栄という、直接ではありませんけれども、間接的にそういうことを片方ににらみながらやっておる経済協力でございますので、先生御指摘のとおりだというふうに思います。  ただ、発足が、世界銀行でやっておりましてはその目的を達成できないというところから、第二世銀といわれるような形でできたという経緯を外務省が言ったまでであって、思想理念は、先ほど国際金融局長が申し上げたとおりであり、山中委員指摘のとおりと、こういうように考えていただいてけっこうでございます。
  14. 山中吾郎

    山中(吾)委員 発足沿革からだんだん離脱をして、日本政府一つの有力な総務の立場から、そういう方向に、理念を持って運営とか発言をして、持っていかれるべきであるということを切望いたしたいと思うのです。  そのとき、一つわれわれの国内政治との関連で少しちぐはぐに思うので、これも次官とひとつ意見交換だけしておきたいと思うのですが、国内政治の場合には、不毛の土地を美田に変革するためのいわゆる開拓農民ですね、十年、二十年開拓して初めて採算のとれる、収益があげられるという開墾事業に対して普通の利子を取り、還付年限も二十年、三十年ぐらいにする、そういう思想が、今度は国際的に五十年、無利子という思想にすぐ発展をするというところの中に、どうも日本政治思想にちぐはぐな感じ一つするのです。後進地域に対しては、五十年還付と無利子に双手をあげてその地域貧困を解消しようじゃないかという思想、しかもこれは、アジアの数百年来ヨーロッパの植民地政策のもとに追い込められた貧困なんで、アジア一員としての考え方の中に、私も含んでそういう思想があるんだが、今度は、国土の不毛の地を開墾する場合には非常にけちけちしているという思想、そこに非常にちぐはぐがある。国際関係では何か大国主義の変な考え方から少し積極的な意見が出ておるので、カモフラージュがあるような感じがする。この思想国内政治国際政治も一致するような方向にあって初めて本物なんじゃないかというふうに私は感ずるものですから、その点、この機会に政治家としての次官意見を聞いて、次に移りたいと思います。
  15. 松川道哉

    松川政府委員 次官の御答弁の前に一言、ただいまの点につきまして、外国でも同じような議論がなされておるということを御説明させていただきたいと思います。  これは、私ども外国のいろいろな議事につきましてできる限りのフォローをいたしておりますが、たとえばアメリカの下院でいろいろ議論がございましたときにも、米国の中にも注目すべき貧困の問題があるではないか、この貧困の問題を差しおいて、この第二世銀に対して協力するのは間違いではないかという思想が述べられております。これに対しまして、開発途上国における貧困、これは、先進国国内における貧困とはもう程度の全く異なった、非常に程度の低い貧困である、そういうこと、それから、先ほど御説明申し上げました国際的な協調と申しますか、そういったものの必要性、こういったものから考えて、先進国内にはそれぞれの貧困があるけれども、やはりこういったものには積極的に協力すべきでないかという意見が強く述べられております。外国事情で、蛇足かもしれませんが、御参考までに御説明させていただきました。
  16. 中川一郎

    中川政府委員 いま局長答弁した問題のほかに、私はこういうふうに見ているのです。  実は、私も開拓者を扱う役人をしたことがありまして、いま言ったような議論をしたことがあるのですが、開拓者に対しては、確かに金融では、この協会金融条件よりはきびしくなっております。しかし、そのほかに補助金というまるっきりくれてしまう金が相当あるわけです。たとえば開拓でいうならば、かつて六割の開墾作業費補助というものをあげています。大体補助金でやって、その補助金でできない裏づけを金融で補完をするということでありまして、外国に対しては補助金はやっておらないわけですから、そういった補助金的なものを含めるならば、金融を緩和してあげる、金融一本で条件をよくするということでバランスがとれておるのではないかというような気持ちもして、開拓者の場合、この協会のような五十年の、ただのというものを必ずしも採用しなくても、補助金と一体としてやるならばいいのではないか、こういう考えも持っておりますし、その上に貧困の度合いが非常に違うことは御承知のとおりであって、開拓地といえども業であって、採算がやがてとれるという性質のものであるというところからいくならば、差があってもいいのではないか、このように考えます。
  17. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これは話題に提起しただけですが、ただ、日本の歴史の中に、奈良時代開墾政策で、開拓した者には三代の間免税するというふうな政策まで立てて、国土の不毛の土地を開墾した者に対する非常な手厚い政治があったということから考えてみて、貧困じゃなくて、国土に刻み込んで不毛の地を生産地にするという事業に対する思想が、どうも一般金融ベース考えたり、一般補助政策考えたりすることで解決したとしているように思うので、話題に提起をしたわけです。  次に、協会理念をもう少し確かめたいために一言だけお聞きしておきたいのだが、一部国家、二部国家という区別をしておりますね。そうして、一部国家というのは大体豊かな国のほう、いわゆる大国のほう、二部国家は借りるほうという、差別でもないが、区別をして取り扱っておるようでありますが、こういう分け方をしなくていいのじゃないか。こういうことの中に大国主義が入ってきて、やがてまた金融ベースに戻っていくというふうに考えられるものですから、この辺はどうでしょう、一部国家、二部国家という構成日本政府としては賛成をして、そういう運営に今後も持っていくつもりなのかどうか。こういう協会基本的理念と比べて御意見をお聞きしておきたい。
  18. 松川道哉

    松川政府委員 この国際開発協会が非常に緩和された条件での融資を行なっておるという性格からいたしまして、これに対して資金的に協力できるのは限られておるのではなかろうかという考え方から、一部国、二部国という思想が生まれてまいりました。ただ、この一部国、二部国の間の基準というのは非常に固定的なもので動かないものだというふうにお考えになりますと、若干現実とは違うのではなかろうかと思います。  具体的な例を一つ引いて申し上げますと、第一次の増資の場合には一部国の数は十七カ国でございました。それが第二次になりますと、クウェートがあとから一部国のほうに入りまして十八カ国になっております。それから、十八カ国のほかにさらにスイスが特別にこれに対して協力をいたしております。第三次の増資になりますと、一部国の数は十八カ国でありましたが、アイルランド、スペイン、ユーゴという二部国のうちで比較的豊かである三カ国がこの増資参加いたしております。さらに、スイスが貸し付けをしたことは前回と同様でございます。今回の第四次になりますと、一部国の数が二十一カ国、二部国は三カ国、さらにスイスが一カ国、合計二十五カ国というふうになってまいりまして、だんだん積極的に原資を供給する側に立つ国の数がふえてきておることは、この事実で御理解をいただけるかと思います。
  19. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一方は富める国、一方は貧しい国、そういう差別前提区別をしているならばこういう区別をしなくてもいいのじゃないかと思ったのですが、そういう差別思想はないんですね。だんだんと所得が上がっていけば一部になってもらうということなのか。要するに、なぜこういう区別をしているかということを聞きたかったのですが、何かほかにありますか。大体感じはわかったが……。
  20. 松川道哉

    松川政府委員 もう一つ一部国と二部国とを区分しております理由は、比較的富める国であればこの出資全額交換可能通貨で払い込んでもらいたいというのが、当初、一部国、二部国の分け方ができましたときの思想でございます。と申しますのは、これに対比いたしまして、二部国、比較的に貧しいほうの国は一〇%は金または交換可能通貨でいいけれども、九〇%は自国通貨で払ってもいいですよ、こういうことで、その払い込みの方法自体に払い込みやすい特別な配慮が二部国になされましたために、一部国、二部国の区分が残っておる次第でございます。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大体わかりました。たいした差別観念があるわけじゃないということですね。  次に、この協会国際法人として法人格が与えられておる、そして構成員が通称国際公務員としての国境を越えた一つの特権が与えられておるということが調べてみて明らかになって、私は非常に驚いたというのか、国際法上に新しい概念が生まれて、国境を越えたいろいろの世界機構発展をしつつあるのだと思って、実は非常に希望を持ちながらうれしく思ったわけでありますが、こういう法人格をこの協会に認めたということは、この協会協定という多数国条約に基づいて認められたことになると思うのでありますけれども、こういう条約性格はどういう性格として考えればいいのですか、一定の組織に法人格を与える条約というのは。
  22. 菊地清明

    菊地説明員 国際協定条約におきましてある機関国際機構を設立する場合に、それに大体の場合法人格を与える。この場合、法人格というのは契約の当事者になり得る、債権債務の主体になり得るということでございまして、ことにこの国際開発協会のように出資を受け入れ、それから貸し付けを行なうということは、完全に、ちょっと語弊があるかもしれませんけれども、私法上の契約の主体となるわけでございまして、これが法人格を持つということは当然なことでございまして、そのほかの類似の機関においても、ほとんどの場合、国際機関というものは法人格を与えられております。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 個人の場合にお互いに一つのクラブをつくるとか協会をつくるとかいう場合には、みずから法人格を与えるわけにはいかないので、そこに国家があって、一定の人間の集合に対して社会的単位として権利義務の主体を認めるという場合には、その当事者以外のそれを公認する権威があって、そして法人格を与える。したがって、こういう国際開発協会という組織に対して国際的な法人格を与えるについては、国境を越えた一つの権威があって法人格を与えるという論理が私の頭の中に入ってくるものだから、したがって、多数国間のこういう法人格を与える条約というものは、何か国境を越えた国家連合というふうな機構が想定をされて初めて法人格が与えられるという感じがするものですから――私が一べつをしての感じですよ。そうすると、こういう法人格を与える内容を持った条約は、暗黙といいますか、国家連合というものをすでにそこに想定しているんだ、これはおもしろい、世界連合への一つ国際法上の芽だというふうな感じがしたものですから、その辺は外務省のほうで、こういう条約を新しい性格づけをして、世界平和機構に持っていくような考え方で特殊な条約解釈をしそれを運営していくとか、そこから新しい条約として国際法の概念を発展さすとか、そういう考えを持ってはどうかと思いながら質問しているのですが、この辺の論理は皆さんはどうお考えになっているのですか。
  24. 菊地清明

    菊地説明員 二つに分けてお答えしたいと思います。  最初のほうの、法人格を与えるものは自分たちじゃなくてそれを越えたある第三者、それを越えたものが与えるべきであるという論理は非常によくわかるわけでございます。ところが、現段階におきます国際社会にはそういった超国家的な組織はないわけでございまして、法論理から申しますと、国際の合意そのものによってそういった法人格をそこで創造するということしか方法はないわけでございます。国際という名がついておりまして、まさに名のごとく国際間の合意によっていろいろな権利義務が発生するということでございまして、その権利義務の中には、一つ機関をつくり上げ、それにいかなる人格を与えるかということも含み縛るというふうに解釈せざるを得ないわけでございます。  それから第二の、国家連合といいますか、世界連邦ということばもときどき使われますけれども、そういったものに国際社会が動いていくべきじゃないかということに関しては、一般的に私たちもそう考えております。こういった国際協定、私たちはこれを国際間の行政協定と称しておりますけれども、こういった国際行政に関する協定がたくさんできればできるほど国際関係が綿密になりまして、より多くの分野が国際行政協定によって実施されていくということになりますと、そこにだんだんと国家連合的な色彩が強くなっていくということでございまして、世界平和のためになるもの、それから世界人類の福祉に貢献するもの、その分野において国際間の協定が多くつくられていくということは、非常に望ましいことではないかと思います。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大体その論理はよくわかったので、そういう方向発展することを期待するわけですが、第八条の第二項に「協会の地位」という見出しで「協会は、完全な法人格を有し、」と、「完全」ということばをわざわざ使っているのですね。訴訟能力だけじゃなくて、財産の所有権、それから契約能力がずっと書いてある。だから、国際財産というのですか、どこの国にも所属しない財産がここにあらわれてきているわけでしょう。私は、非常におもしろい国際的な存在が、こういう条約の中から生まれてきていると思う。こういう多数国間の条約というものをどんどん進めて、そして国際連合的な新しい芽をつくっていく方針というものは、やはり外務省において指導方針として持ってしかるべきではないか、こういうことを考えたのでお聞きしたいのですが、大体参事官もそういう考えのようですから、けっこうだと思うのです。  そこで、この協会国際連合との関係はどういうふうになるのですか。
  26. 菊地清明

    菊地説明員 国際開発協会は、国際復興開発銀行と同じく、国際連合のいわゆる専門機関という範疇に入ります。専門機関でございます。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 専門機関というと国際連合の下部機関というような感じがするわけですが、どこを見てもそういう関係は見当たらない。だから、日本の用語としては、専門機関というのはどうもぴったりしないのですがね。全然無関係でもなさそうである。しかし、専門機関という概念には入らないんじゃないですかね。その辺の関係を少し見きわめておきたいと思う。
  28. 菊地清明

    菊地説明員 専門機関と申しましたけれども、私たちは世銀グループと称しておりますが、世銀、第二世銀、その他IFCとかいろいろございます。この世銀グループというのは、専門機関でございますけれども、かなり独立のステータスを持っております。ですから、カテゴリーといいますか範疇上は専門機関でございます。国連の専門機関の中に入っております。しかし、機能その他におきましてかなり独立の地位を認められておるということでございます。
  29. 松川道哉

    松川政府委員 ただいまの御質問の専門機関につきましては、国際連合憲章五十七条という規定がございます。この規定を読み上げますと、「政府間の協定によって設けられる各種の専門機関で、経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的分野並びに関係分野においてその基本的文書で定めるところにより広い国際的責任を有するものは、第六十三条の規定に従って国際連合と連携関係をもたされなければならない。」こういう規定がございまして、専門機関を置くことができる。しかし、これは国際連合と連携関係を持たなければいけないというたてまえになっております。そして、このようにして国際連合と連携関係を持たされる機関を専門機関と呼ぶ、そういう趣旨を定めております。  さらに、この連携関係は、ただいまも触れました国際連合憲章第六十三条によりまして、経済社会理事会と当該機関との間において上記関係を持つための条件を定める協定を結ぶことにより成立する、このようになっておりまして、いわゆる世界銀行ないしこの国際開発協会は、その意味国際連合憲章にいう専門機関となっておる次第でございます。
  30. 山中吾郎

    山中(吾)委員 半分ぐらいわかったような感じがするんだが、連携はとる関係で、上下の関係ではない。たとえば、国際連合の総会において何か決議をしたものは、この協会を拘束することになるのですか。そういうことは関係ないのですか。ILOとかあるいはユネスコとか、そういう関係とどこが違うのか、そういうものを含めてもう少し説明してください。
  31. 菊地清明

    菊地説明員 独立の地位を持っておりまして、国際連合世界銀行その他はそれぞれ独立した機関として機能いたしまして、相互に容喙をしないということになっております。ただし、両者は、国際的な開発問題についての協議や情報交換を行なわなくちゃいけない。それから、毎年定期的に、国際連合経済社会理事会にその活動を報告するということが義務づけられております。  御質問の、たとえば全く意見が違ったとか、そういうような場合には、互いに容喙しないという立場にございますので、国連の決議がそのまま自動的に世界銀行ないし国際開発協会に適用されるということはございません。
  32. 山中吾郎

    山中(吾)委員 国際関係機関だから国内法の概念に合わぬものがたくさんあるでしょうから、大体理解したことにしておきたいと思うのですが、いろいろな発展をしていくのだろうと思います。いずれにしても、私は、この協会について日本政府としてもしっかりした理念を持って、ことに平和憲法を持っておる政府でありますから、しかも融資の対象はアジアグループが多いのでありますので、単なる金融機関というのでなくて、人類連帯意識の上に立って、恒久平和を究極の目的として、地球上の地域における貧富の格差をなくしていく、そして戦争の芽を取っていくんだという高い理念を持って運営をしていただきたい。それを前提としてこの法案を正しく評価すべきだと思うので申し上げたわけであります。  そこで、私は二、三各論についてお聞きをして質問を終わりたいと思うのでありますが、この五十年の返還期間を経て、そしてその国が返還ができない場合にはどういう処理をすることになっておるのか。この協会の基本精神いかんによっては非常に違った処理が出てくると思うので、そういう場合にはどういう処理をすることになっておるかをお聞きしておきたい。
  33. 松川道哉

    松川政府委員 五十年という非常に長い期間、しかも無利子であるという非常にゆるい条件、これらを定めましたのは、ただいま山中先生御指摘のとおり、その返還にあたっていかなる貧しい国であっても過重な負担がかからないようにと、こういう配慮から出ておるものでございます。しかも、この第二世銀融資は原則といたしましてプロジェクトに対するものでございまして、このプロジェクトがどういうふうにその国の経済に役立つか、そしてまた、それがその当該の国の将来の返済能力に対してどういう関係を持つか、こういった点は十分勘案された上でそれぞれの融資が決定されておるのでございます。  そして、ただいま御質問がございましたが、五十年たったときに返せない状態が出たらどうするかという御質問ではございますけれども、まだこの協会発足いたしましてから間もないことでございます。したがいまして、その返済のケースというのはたくさんあるわけではございませんが、このような慎重な配慮の上になされました金融でございますから、その返還は現在までのところスムーズにいっておりますし、将来も心配がないのではなかろうか、私どもはそのように考えております。  ただ万一、これは仮定の問題ではございますが、返済を行なえない国が出た場合にどうするかということでございますが、そのような場合にはこの協定の五条三項によりまして、融資条件を修正いたしましたり、なお緩和したりすることができるような配慮も加えられております。
  34. 山中吾郎

    山中(吾)委員 融資条件にその国の国民一人当たりの所得が三百七十五ドル以下という条件があるわけですから、貧困の水準をあらわしておる。したがって、国民一人当たりの所得が三百七十五ドル以上に達した国と達していない国によって、そういう返還の条件を実情に即して緩和をし処理していくということが最初理念の線に沿うた処理だと思うので、一応そういうことを聞いてみましたが、大蔵省答弁で私は満足をいたします。  次に、大蔵省から配付された資料の中で、各国の増資の割り当て額を見ますと、日本は大体シェアが一一%である。アメリカが一番多くて三三%。一一%台が西ドイツと日本とイギリスで、まあ第二順位に並んでおるようでありますが、私は最初理念さえ明確ならば、余力のある限りこのシェアを上げてしかるべきだと思うのです。現在、大体、日本がこういう水準にあるわけでありますが、ある意味においては、明確な指導理念を持てばもっと増資をして、アジア、アフリカに対する日本国際的な平和理念をもっと強調してもしかるべきだと私も思うので、したがいまして、このシェアの基準はどういうところにあるか聞いておきたい。
  35. 松川道哉

    松川政府委員 この増資を各国間でどのように分担するかということにつきましては、冒頭政務次官のほうからの提案理由にもございましたように、ほぼ一年という長い期間にわたりまして種々の検討がなされまして、その上できまった率でございます。もちろん、その検討いたします際に基礎となったデータがあるわけでございますが、これは第二世銀の側が提出いたしました資料が基本になっております。これは一九七〇年をベースにいたしまして、一部国の各国のGNPのシェアが幾らであるかということを示しております。その中でわが国のシェアは一一%でございます。また、その後七一年につきましてのシェアが発表になっておりますが、これは一二・四%となっておりまして、その意味で、ただいまの一一%より七一年のデータをもとにすれば若干上がるわけでございます。さらに、私ども別途IMFが出しております国際金融統計を用いまして、スミソニアンレートを使いまして七二年のGNPのシェアを計算いたしてみますと、約一一・一%でございます。そのような意味から申しまして、わが国のシェアが一一%というのは、おおむねGNPのシェアとバランスがとれておるのではないか、かように存じております。  さらに、わが国の負担がもっと引き上げられてもいいのではないかという趣旨の御質問でございますが、ひとつ事務的な観点から申しますと、このIDAが各国に金融をいたしておりますが、この金融されたもののうちそれぞれの地方で消費されますローカルコストを除きました分につきまして、日本の調達比率というのがこのシェアよりも高うございます。その意味から申しましても、もっと高くていいのではないかという議論もございました。それからまた、事務的ではなくてもっと高度な政治的な理念から申しましても、日本の率がもっと上がってわれわれの積極的な姿勢を示すべきではないかという御意見もございます。  ただ、いずれにいたしましても、今回のこの増資が絶対量におきましても相当大きなものでございます。したがいまして、第三次のときのシェア、第三次のときの絶対量から今回の額にふえますと、わが国の負担といたしましては相当飛躍的に大きくなるものでございますから、われわれのほうの財政的な全体の見地から見ましても、またその他いろいろやっております各種の援助とのバランスから申しましても、このGNPのシェアそのものをわれわれのシェアとしていいのではないか、私どもかように判断した次第でございます。
  36. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大体了解をいたします。  次に、提供された資料の目的融資関係でありますが、目的融資の額の推移についてお聞きしておきたいと思うのです。  農業、林業、漁業に関しては、一九六一年から一九六四年は大体一七・一%である。それが一九七三年になると三二・一%で、融資の額が累進的にふえております。ところが、一方に、電力、通信、教育という関係になってくると、ほとんど融資額はふえていない。それで、この協会基本理念から考えて、私一つの疑問があるのは、五十年無利子という融資の場合には、農業、林業、漁業なんという産業よりも、電力とか通信とか教育とかいう方向にむしろ力を注いでやるほうが、その地域ほんとうの自力を養う融資になるのではないかと私は思うものでありますからお聞きするのですが、大体、ヨーロッパの植民政策の伝統からいっても、後進地域に対する経済政策は、いわゆる第一次産業、原材料の供給地域として利用し、工業化を阻止するということが植民政策の伝統ですね。そういうことで現在の貧困を生んでおるわけでありますから、そういう数百年のヨーロッパの植民政策の反省として、発展途上国を均衡のとれた国際経済に持っていこうということがこの協会目的ならば、しかも、第一世銀融資のベースに乗って行なうのに、この協会はその融資のベースを越えて、五十年無利子という一つの理想のもとに融資をするならば、農業、林業、漁業の率はだんだん少なくなり、基本的な交通、電力、あるいは五十年ですから、これは教育事業に一番いい長期の融資だと思うので、この方向目的融資の率が上がっていくのが、私の先ほどお聞きした理念と合う目的融資発展の姿ではないか。この表からは逆のような感じがする。この点について御意見をお聞きし、これは私の希望する方向に持っていくべきだと思うので、次官の御意見も聞いておきたい。
  37. 松川道哉

    松川政府委員 長期的に見ますと、この第二世銀目的融資のシェアというのは、ただいま山中先生御指摘のような方向に行くべきであろうかと私どもも存じております。ただ問題は、その順序であり、そのテンポであろうかと思うのであります。  一例を申し上げますと、国際開発協会ができまして、第一号の融資はハイウェーの建設でございました。この資料でもおわかりのとおり、当初は運輸関係の比率が非常に高うございました。これはやはり国内のいろいろな交通を便利にする、そういう基本的なところに、ある程度の重点が置かれておった。そして現在に至りましても、運輸というのは、相当の比重を依然として占めております。  そこで、その次に、何がそれぞれの国の経済的水準を上げるのに一番大事かということを考えますと、農業というのが非常に大事な問題でございます。これは一歩誤りますと、大国が後進国を原料産地として支配する、その方策に使われる危険があることは先生御指摘のとおりでございますが、この運用に当たりましては、全体の四割はかんがい、洪水の調節のプロジェクトに向いておるということで、それぞれの生活に非常に直結したところに融資が行なわれておるのでございます。  さらに、教育であるとか、人口問題であるとか、これからの開発途上国の行く末を考えますと、こういった面に重点が置かれるべきであるということは、第二世銀の事務当局も十分に理解をいたしておりまして、徐々にそちらのほうに重点を移しております。ただ、具体的な融資の金額になりますと、必ずしもすぐにそれが、シェアがものすごく大きくなるというところまではいかない。したがって、時間をかげながら、そちらのほうに重点が移っていくというのが現状でございます。
  38. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘のとおりでございまして、要は、借り受けをしようという国の希望に従ってやっていくべきではないか。その国々によって、あるいは世界情勢によって、借り受けする目的が多様化したり、変わってきたりすることは当然でありますが、要は、借り受けする国の希望に沿っていくならば、いまのような方向にシェアが変わっていくものではないかというふうに考えます。
  39. 山中吾郎

    山中(吾)委員 次官、それは少し違うのですね。この協会の場合には、厳密にプロジェクトを審査して、特別の委員会を置いていく。五十年還付であり、無利子であるがゆえに、こちらはしっかりした理念があって、その地域ほんとう開発のために、植民地政策にしないために、厳密な委員会を設置すると書いてある。したがって、向こうの言うとおりならば第一世銀であるべきでありますが、そうでないのだということを間違いなく――そのために、先ほどから私は、理念を何回も繰り返し聞いておった。次官は、その辺の理解が、まだ十分いまの答弁ではない。その辺は明確にしておいてもらいたい。大体、政府考えはわかりましたので、最初のそういう理念を明確にして、この協会世界平和機構に貢献するように発展することを切望いたしたいと思うのです。  いままでこの法改正が四回、国会に増資のたびに改正案が出ておるわけでありますが、見てみますと、だんだんと野党の反対が賛成になり、わが社会党も、第四回目には反対から賛成に回っておる。共産党だけはまだ理解が行なわれていないようである。おそらくその理由は、協会目的理念が明確でないから、野党が十分賛成するところまでいっていない。ですから、この協会の基本精神を明確にされ、政府においても疑いのない答弁が出れば、各党は、日本世界平和に向かった、人類全体の仕組みに立った政策として、私は賛成すると思うのです。前回から賛成に回っておるのは、それだろうと私も思い、その辺を考えながら御質問を申し上げた。最後に次官答弁が九仞の功を一簣に欠いた点があるのでまことに遺憾でありますが、その辺は、もう少しこの協会目的を明確にしていただいて、私の質問を終わりたいと思うのです。ただ、ひとつ名誉のためにもう一度御答弁を願って、終わりたいと思います。
  40. 中川一郎

    中川政府委員 どうも御指摘いただきまして申しわけないと思いますが、私の言った意味も、決して野方図にやるというつもりではなく、もちろん委員会審議のもとに、しかもこの協会をつくりました目的の範四内でやっていくべきですが、この目的からはずれるものになっていくようなことであってはならないという意味と、それからあまりファッショ的な査定というものもどうかという気も私は若干あったものですから、そういう点を少し強調し過ぎたと思いますが、あくまでも世界平和のために、しかも貧富をなくするというプロジェクトに尽瘁して、しかもこれが拡大をされていく。日本としても、今後ともこの制度は積極的に支援をしていくべきだというように考えておりますので、御了解願いたいと思います。
  41. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ちょっと関連で。いま山中先生の、返済ができないような事態の場合にはどうするのかという質問関連して、私も一点だけ心配しておるのはインドのことでございます。インドはすでに二十四億二千万ドルも累積融資を受けておりますね。これが一九七二年度の場合も返済ができないで、再融資を受けて、返済を猶予するというような形をとっている。  そこで、インドは人口が多いから他の国より四倍も五倍も融資を受けざるを得ないのか。それとも国際機関を通じて、インドが完全に立ち直り、返済も可能になり、こういうプロジェクトをこう実現していけばインドのGNPも何年ごろにはこうなるのだ、そういうようなインド全体の開発目標というか、実現可能性というか、そういうものを国際的立場からどのように検討しているのか。特に、インドが二十四億ドルで、第二位の約五倍の融資額を受けているという点を私はたいへん重視をして、たとえば宗教の問題、無学文盲の多い事態、あるいは産児制限ができない事態、いろいろな原因があると思うのですが、ひとつインドにライトを当てて、インドの問題を政府はどのように見通しているのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  42. 松川道哉

    松川政府委員 確かにインドは人口も多く、そしてまた対外の債務も多く、経済的にいろいろと問題の多い国でございます。しかも、現政権であるガンジー政権ができました直後に飢饉がございまして、食糧が非常に乏しくなったというようなことで、当初からいろいろと苦悩をなめつつ今日まで至っておるのでございます。その間にありましても、しばしば新聞にも報道されておりますように、人口問題一つとりましても、かつてのインドであれば行なわなかったのではないかと思われるほど思い切った政策をとりまして、真剣な努力をインド政府は傾けております。  そこで、インドに対しまして種々従来から関係のございました国際機関または国々が毎年一度集まりまして、ことばは悪うございますが、インドに対する債権国会議というのを開きまして、どうしたらいいかということで、インドに対する援助のあり方の全体について、毎年再検討いたしておるのでございます。その中には、第二世銀からの融資も、ことしはこのくらいいくであろう、この部分はいわゆる収益率が悪いから、そしてまた長期的なプロジェクトであるから、これはIDAに頼みましょう、これは別な形でやりましょう、そういうことで総合的に各種の条件の違った資金源を有効にかみ合わせて、しかもその資金を供給し得る国々ないし国際機関と、これを受け取るインド政府とが緊密な意見交換をしながら、現在、経済の自立に向かっての努力を傾けておる段階でございます。  したがいまして、本件にしぼって申し上げますれば、五十年の期間がきたときにどうなるか。私どもといたしましては、インド政府の努力が功を奏して、IDAの資金について返済の遅延が起こるとか、そういったことの起こらないようによく希望し、また期待をしておる次第でございます。
  43. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 外務省はいかが認識されておりますか。ぼくはインドに行ったことがないからわからないのですが、インドというのは地理的に、気候的にどうにもならぬのか。それとも政治経済政策を適切にやるならば、何年後ぐらいにはインドというのはこんな形になるのだ、そういうような見通しというのは、この国際会議外務省あたりはどのように認識をされておるのか。さらに二十四億ドルに上積みをしてまで貸し出しも可能なんだ、それともこれが限度で、これ以上は全く貸せないのだ、インドに対しての外務省の見方というのは一体どうなんですか。大蔵省は金のサイドから大体ながめているのでしょうが、世界全体の立場からながめて、インド問題をどう考えているのですか。
  44. 菊地清明

    菊地説明員 私、直接の担当でございませんけれども、私の承知している範囲内でお答えをさせていただきます。  現在のインドの政治情勢その他経済情勢をどう見ておるかということでございますが、御承知のように、ネール政権時代のインドと現在のインドというのは明らかに国際的な威信といいますか、そういったものが違うということは事実でございます。それで、現在のガンジー政権が国内経済開発を一生懸命やっているようでございます。御承知のように、経済協力というものをやる場合の一つの指針は、その国の国民一人当たりの所得でございます。つまり、人口でGNPを割ったものでございますが、それによって援助をする場合に、インドというのは国際的にも、つまりOECDその他においても、パキスタンなどと並びましてより貧困なる国の範疇に入っております。したがいまして、わが国を含めまして国際的にも、インドというものの国内経済開発を進めていってやるべきであるということで意見が一致しておりまして、この点につきましては、インドはどうしても将来見込みのない国だからもう援助はしても役に立たないというような考えを持っているという人はいないと思います。  御承知だと思いますけれども、インドは確かに国民一人当たりの所得は低うございますけれども、技術水準と申しますとわりと高うございます。たとえば技術協力などという面から申しますと、インドが実はほかの国、よりおくれた発展途上国に対して、技術協力をしている例すらございます。したがいまして、インドは確かに膨大な貧困な人口をかかえておりますけれども、他方、技術水準は高いというふうに考えておりますので、この技術と勤勉をもってすれば、しかも、足りない資本というものは外国及び国際機関より提供することによってインドの経済開発というものは進められるし、現に年次計画をもって進めておるわけでございます。
  45. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 何かもうちょっと聞きたい点に触れていないんだね。人口が多いから、それで国民総生産を割ると一人当たりの国民所得は少なくなる。それはわかる。しかし、なぜインドがそういうGNPが低いのか、その原因をちょっと触れてもらって、したがって、国際的にはこういう協力をしていけばやがてこうなるという見通しを明らかにしてもらいたいというのが、いまぼくの希望なんですね。  それは他の国よりも人口増加率が極端に多いためなのか、それとも地理的、気候的に幾ら開発をやろうといっても、もう限度があって、農産物でも何でもそれ以上できないんだ、あるいは無学文盲があまりにも多くだめなんだとなれば、いま山中先生がおっしゃるように、教育や医療制度や、そういうものに援助を徹底的につぎ込んで、産児制限の教育を普及するなり、あるいは学校で徹底的にもっと知能水準を高めるなり、そういうところに集中的な援助がいくべきで、どこにインドが置かれている最大の原因があって、どういう処方せんを書けばいいのかということは、日本政府だってやはり関心を持たなければいかぬですよね、幾ら他の国であっても。それは内政干渉じゃないのです。援助するからにはそういう展望をもってやらなければいけない。  私が言いたいのは、日本の海外協力援助というものをどこが責任をもって全体的な大きな構想を描いて統一的にやっておるかというと、どうも予算書を見てもばらばらなんです。そういうところが、結局、ただ国際会議できまったからということで、義務だけを果たせばいいんだという形で金を出している、こういう姿勢はいかぬ。したがって、日本政府自体がそれぞれのそういう特定の国についても関心をより深く持って、適切な援助をするようにしなければいかぬのではなかろうか。そういう点で、特に一カ国だけ、インドを取り上げてその姿勢をただしてみたのだけれども、どうももうちょっと納得する話を聞きたいなあと思うのです。
  46. 松川道哉

    松川政府委員 インドが累次にわたりまして経済計画を立てまして今日に至っておりますことは、御案内のとおりでございます。そこで、現在やっておりますと申しますか、一九七四年の四月から七九年の三月までをカバーいたします新しい第五次五カ年計画がございますが、これにおいては、この計画の末年において外国からの援助のネットインフロー、新しい取り入れはゼロでも済むようにやっていきたい、こういう計画を立てております。  そこで、一体そのような計画が可能かということでございますが、この内容をつぶさに点検いたしますと、農業に相当のウエートが置かれております。こういう公の場でございますから、私どもあまり具体的なこまかいことは外国の批判になるので差し控えたいとは思いますが、非常に抽象的に申し上げますれば、インドが独立した直後とってまいりました政策は、先ほど菊地参事官からの御説明もございましたように、技術水準は高い。したがって、ある程度のいわゆるプレスティージインダストリー、国の誇りになるような工業が持てるということで、高度な工業をある程度持つという政策をとってまいりました。それが裏では農業軽視につながり、またその農業軽視が――たまたまその期間は、アメリカからの余剰農産物がございましたので、これがその農業のギャップを防ぐことができたということで参ったのでございますが、その後、アメリカからの余剰農産物の状況は変わってまいりました。また、農業軽視ということで来ましたので、農産物のほうで問題が生じた。そこで、先ほど私が申し上げましたように、飢餓が起こりましたり、農産物の輸入のために、貴重な外貨をたくさん使わなければいけなかった。  その問題を現政権はよく認識いたしまして、この新たな第五次五カ年計画におきましては、相当農業部分に力を入れております。その意味で、私ども、今回の計画というのは、過去の五カ年計画に比べまして好ましい方向ヘインド経済を引っぱっていくのではないか。ただ、この目標である七九年三月時点において外国援助がゼロになる、これをインド政府は目標といたしておりますが、それが達成できるかどうかは、いろいろなほかの状況もございますけれども、そこのところは疑問なしといたしませんが、私どもといたしましては、政策方向はそちらに向いているということは高く評価してしかるべきものと考えております。
  47. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間が来ましたので、これで終わります。
  48. 安倍晋太郎

    安倍委員長 村山喜一君。
  49. 村山喜一

    村山(喜)委員 IDAの問題でございますが、日本の国が一一%の寄与をするということになっているようでございまして、内容的に各国の負担分を見てまいりますと、アメリカが最大でございますが、アメリカの場合には、まだ議会においてこの批准が成立をしていないという状況を聞いているわけでございますが、アメリカはいつ議会のほうを通過するような努力をしているのか、その見通しについて、まず説明いただきたいことが第一点でございます。  それから第二点は、この対外経済協力の問題の一つとして、一つ国際機関の中でこういうような協力が行なわれているわけでございますが、予算の関係は一体どういうふうになっているのだろう。いろいろ調べてみますと、国債整理基金特別会計の歳入歳出の予算書の中にこれが出ているようでございますが、それはどういう形で支払いをするのかということでございます。国債出資するという形で、そしてその後請求があったときに支払いをするという形になっているようでございますが、現在の時点においてそれだけの財政支出は伴わないにいたしましても、やはり三年で均等に支払いをするということになりますると、それだけの債権債務の関係が出てくることになりますので、そこら辺をどういうふうに処理をしようとしているのか、まず説明をしておいていただきたいと思います。
  50. 松川道哉

    松川政府委員 第一の御指摘の点、すなわち米国におきます審議の状況並びに見通しについて、まず御説明いたしたいと存じます。  米国におきましては、まず下院の銀行・通貨委員会に付託されまして、昨年の十二月十四日、この委員会において可決されました。そして、下院の本会議に回ったのでございます。しかしながら、この本会議におきましては、これは去る一月二十三日でございますが、この法案は否決されました。この理由といたしましては、いろいろなことが言われておりますが、たとえば、この否決にあたりまして、与党である共和党のほうが賛成四十七票に対して反対百三票であって、これが非常に影響したということがいわれておりまして、その原因として、アメリカの国内的な政治的な問題があったのではなかろうかという推測がなされております。  そこで、このことは私どもにとりましても非常に驚きでございましたが、アメリカの財務省当局におきましてもこれはまことに予想外であったそうでございまして、さっそくわが国の大蔵大臣に対しましてアメリカのシュルツ長官から、われわれとしては、本件を可決するよう最善の努力をするので、日本側としても、一たん下院で否決されたからといって、わがアメリカの政策が変わったんだというふうに考えてほしくないという趣旨の手紙をよこしております。現にこのあとでございますが、この法案は上院に回りまして、上院の外交委員会におきまして、三月の二十一日、二十二日にシュルツ財務長官を招いて公聴会を行ないました。そこで、財務省当局はこの公聴会におきましても、本件の増資に応ずることが非常に大事であるということを力説いたしております。さらに、これから国務長官もこの委員会に招致して、意見を聞くスケジュールになっております。  そこで、この外交委員会レベルでの表決は、おそらく今月下旬か来月上旬ぐらいに行われるものと思われます。その上で、五月中旬ないし下句には上院の本会議が通るのではないか、さらにその上で、これがもう一度下院に戻されまして、去る一月の表決をくつがえすための採決をまたやり直さなければならないのでございますが、この時期につきましては、現在のところ、はっきりした見通しを私ども持つに至っておりません。アメリカから入ってまいります情報では、おそらくことしの秋になるのではないか、このように聞いております。  次に、第二の予算関係の点でございます。この点につきましては、援助関係の予算と申しますか、経済協力関係の予算は、現金で出しますものにつきましては一般会計の予算に計上されておるものでございますし、輸銀ないし基金を通じますものはこれらへの出資として予算上計上されております。ただ、本件のように出資国債をもって出資するものにつきましては、直接一般会計の上にこの第二世銀国債償還のための経費であるということが明示的にあらわれておる項目はございません。これは申すまでもございませんが、本件の出資は、現金でなすことも交付国債でなすことも認められております。しかしながら、現実の支出というものはこの融資の約束が行なわれましてから相当長い年月にわたってあとに尾を引くものでございますから、わが国といたしましては、その間わが国の貴重な財源を寝かせておくのはもったいないではないかという配慮から、出資国債という形をとって処理いたしておりますことは、先生よく御案内のとおりでございます。  そこで、しからば予算書の上でこれがどこに入っておるのかということになりますと、あるいは理財局のほうから御説明するほうが分明かもしれませんが、一般会計の中に国債費といたしまして計上されております八千六百二十二億が、国債整理基金特別会計に入っております。これがそのほかの種々の歳入、すなわち借りかえによって得られるところの公債金であるとか前年度剰余金収入であるとか、そういったものと合わせまして、歳出にあたるところの国債償還に必要な経費九千四百八十一億円、これは特別会計の中の金額でございますが、そこに含まれておるのでございます。この一つといたしまして、ただいま御審議いただいております四十九年度における出資国債の現金化の分がまかなわれることになっておりまして、その金額は現在のところ二十五億円を予定して予算を処理いたしております。
  51. 村山喜一

    村山(喜)委員 ちょっといまの点もう一回説明いただきたいのですが、この計画によりますと、一千三百十四億七千二百万円を三年間にわたって均等に拠出をするということになる。そうなると、四百三十八億二千四百万円という所要金額が必要になるわけですね。とするならば、それは国債整理基金特別会計の歳入歳出の中の予算繰り入れ分の四百四十億五千七十一万九千円ですか、この中から充当されるべき筋合いのものだ、こういうふうに受け取っておるのですが、たしかいま二十五億円とおっしゃいましたが、それは本年度分の支出分に相当するわけですか。
  52. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま村山先生御指摘の金額は、本年度発行する交付国債の総額でございます。私が申し上げました金額は、その国債が現金化されて特別会計から支出されていく金額でございます。
  53. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは支出見込みだ、こういうことでございますが、そういうふうに、四百三十八億のうち二十五億程度しか支出は見込まれないのだということのようでございますが、そういうような推計ができる根拠はどういうことになりますか。
  54. 松川道哉

    松川政府委員 従来の例を見てまいりますと、国債自体が現金化されますには五年ないし七年という年月を要しております。しからば、国債を交付するのもしばらくたってからでいいのではないかという御疑問があろうかと存じますが、この点につきましては、第二世銀のほうで国債ないし現金を各拠出国から受け取りましたその裏づけのあるものだけ融資のコミットができる、こういうたてまえになっておりますので、第二世銀のほうで新たな融資を行なうためには現金ないし国債がその裏づけとしてなければいけない、そういう事情がございますので、私ども国債を本年度はその三分の一、第二世銀に渡すわけでございます。しかし、この国債は普通のと違いまして金利がついておりません。したがいまして、ある意味ではこの金額まで第二世銀融資の約束をしていただいてもけっこうですという一つのあかしになるだけでございます。  そのあと、この融資が現実に行なわれまして、そしてそのプロジェクトに対して所要の支払いが行なわれる、その段階におきまして現金化の要望が参ります。したがいまして、本年度、過去の経験的な割合から見まして新たに増資いたします分につきましては二十五億円程度ではなかろうか、このような推計をいたしておるのでございます。
  55. 村山喜一

    村山(喜)委員 とするならば、三カ年間で一千三百十四億七千二百万円を拠出する必要性はないのじゃないか。いまの説明では、国債をそういうような形で請求をしてくるのは六年、七年もかかるということであるならば、これを三カ年間で出資する必要性は私はないのではないかという計算になると思うのです。初年度は二十五億円程度で済みそうだ。そうなると、来年度は一体どれぐらいになるのか。三年間で支払いを済ませなくても、そういうような債務を背負わなくても、もっと長期的に割合をきめたほうが実際的ではなかろうかという印象が強いのでございますが、その点いかがですか。
  56. 松川道哉

    松川政府委員 第二世銀からの要求に二種類ございます。一つは、国債そのものを出資してほしいということ。二つは、これを現金化してほしいということでございます。その前者につきましては、国債出資いたしませんと、これに見合いの融資契約ができない、こういうことでございまして、二番目の現金化するというほうは、現実の事業が行なわれてまいりますときにこの支払いができないということでございまして、一つ融資の約束のため、一つは現金の支払いのため、この要望が二種類ございます。  本年度三分の一を出資するのはその前者の要望に対するものでございまして、ことしの六月末になりますと、従来増資して持ってまいりました資金、これは現金ないし国債としてはまだ手元にあるわけでございますが、ある意味では全部融資のひもつきになっておるということで、新たな融資の約束ができないから、その意味でことし年割りでございます三分の一を出してほしい、これが三分の一ことし出資する理由でございます。  私がただいま二十五億と申しましたのは、その新たな増資の約束に基づいて日本国債を渡す、これを裏づけにして第二世銀が新たな融資の約束をする、これが現実に動いてまいりまして、そのうち支払いを要する段階に至る、その要する段階において国債をキャッシュにしてほしいという要望が参りますが、この見込みが二十五億円だということでございます。そしてまた、特別会計の上では、国債自体の段階ではなくて、そのキャッシュにされる段階が予算上の計数となってまいりますものですから、私、先刻二十五億円が含まれておりますというふうに御説明申し上げた次第でございます。
  57. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはわかりますが、この効力が発生をするためには、総額四十五億ドルのうち三十五億ドルがそういうような批准の手続をして処理されなければ効力が発生しないわけですね。そうなると、いわゆるアメリカの割り当て分は三三・三二%ですか、その数字の上から考えますと、どうもアメリカの関係で効力はことしの秋までは成立をしない、こういうことになりますね。それに伴う計画が立たない。効力は生じないわけですから計画は立たないということに伴いまして、IDAがその機能を発揮しない責任というものは一体どこが負うべきなんですか。
  58. 松川道哉

    松川政府委員 御指摘のように、アメリカが引き受け通告を期限内に行なわなければ、当初の予定である六月末の本増資の発効がおくれることと相なります。そうなりますと、現在IDAが手元に持っております新しい融資の余裕ワクというのは、現在計画的に六月末までに行なっていくように仕事を運営しておりますので、新たな増資の発効がなければ、そこでギャップを生ずるということと相なります。  これは、これだけ二十カ国ばかりの国が集まりましてこのようなことをいたしますと、どうしてもそのような事態は避け得ない要素が含まれておりまして、過去の例を見ましても、第二次の増資は当初の発効予定期限が一九六八年六月末でありましたものが、現実の発効は六九年の七月二十三日と、約一年あまりおくれております。前回の第三次の増資におきましても、一九七一年六月末が発効の予定日でございましたが、これも七二年九月二十日に現実には発効いたしております。  そのようなことで過去にも例がございましたが、万一発効がおくれるようなことになっても、そこで第二世銀の新たな融資活動が停止するような事態が起これば、これは世界全体のためにも好ましいことではないということで、私どもこの増資につきまして国会におきまして御承認が得られますならば、これをあらかじめアドバンスすることもあり得る。ただし、その場合には、ほかの国も同様な措置をとり、また増資前に交付いたしましたものが将来の増資の一部として必ず組み込まれるものであるということがはっきりいたしますれば、そのような措置をとることも考えられるものではないか。そのようにしてこの協会活動にギャップを生ずることがないように持っていきたい、これが第二世銀を通ずる経済協力に対するわがほうの基本的な考え方を具体化する道であろう、このように考えております。  ただ先生御指摘のように、そのときに、ある特定の国がおくれたために発効がおくれたのならば、一体だれが悪いのかという問題が起こってまいりますが、これは私どもといたしましては、ある特定の国がかりにおくれました場合にも、その国を責めるよりは、その国の国内手続がとりやすいようにいろいろわれわれとしてできる限りのことをして、そして先進国が一体となってこの増資予定どおり動き縛るように、そしてまた、万一予定どおりの発効予定日にできないとしても、そのギャップの期間ができるだけ短くて正式の増資が発効するように努力すべきではなかろうかと考えております。
  59. 村山喜一

    村山(喜)委員 今回の石油危機を中心にいたしまして、相当これは世界的な経済の変動というものが起こってくるわけですね。資源所有国に外資が蓄積をされてくる。GNPにしてもいままではあまり大きくなかったけれども、それが今度はオイルの資金が手に入ることによりまして、ずいぶん金が集まってくるという場面がこれから予測されるわけですね。そうなってきますと、いままでの先進工業国の場合には、ほとんど外貨事情というようなものが乏しくなっていく、そういうような経済的な世界の変動という問題が現に生じつつあるわけですね。  そうなってきた段階の中で、いま向こう三年間のそういう出資予約をしなければならないような状況の変化は、この二十カ国余りの出資割り当て額が出されておりますが、それは妥当なものとして受けとめて、国際会議の割り当てできまったのだからそのとおりやっていくんだという方針でございますか。それとも、そういう事情の変更というものによって再度会議を開き直してやり直すというようなことが、まあ本年度は無理としましても、その途中において出てくるものであろうか。その点については、日本政府としてはどういうような考え方をお持ちなのか、その点を明らかにしていただきたい。  それから、ついでに、日本に対して国債をキャッシュにかえてくれとかあるいは現物で品物を渡してくれという形できた場合には、その二十五億円は大体金でくれということになってくるだろうと思いますが、その場合の取り扱いは外貨で支払いますか、日本円で支払いますか。その点もあわせてお答えいただきたい。
  60. 松川道哉

    松川政府委員 ただいまの二つの御質問、御説明の便宜のために二番目のほうを先に御説明させていただきたいと思います。  これはある支払いの必要が起こりまして、そして出資国債をキャッシュにしてほしいという要望がなされます。その場合に、たとえば、この第二世銀融資にかかる事業の支払いを受けるべきものが日本の業者であります場合には、この国債はキャッシュにされまして第二世銀の勘定へ入りますが、すぐそこから日本の業者に円で出てまいります。かりにそれが外国の業者である場合には、そこで外貨に交換されまして、それなりの銀行へそこから移されるという手続がとられます。  そこで、第一の問題に戻るわけでございますが、今回の増資と外貨収支との関係、特に石油において基本的に事情が変わってきたこの外貨事情との関係でございますが、もし日本のIDA関連事業に対する調達比率が、先刻山中委員に御説明申し上げましたように、一四%とかそれ以上のことであるならば、端的に申しまして、われわれの引き受けシェアである一一%以上であるならば、これは国債が現金化された円が、多少出入りはございましょうが、全体として見れば、全部国内のだれかに支払われるということになってまいります。したがいまして、国際収支の観点から見ますと、これなかりせば外貨で輸出できたかもしれないものが、円のままで外貨のかせぎにならなかったという形で影響が残ってまいります。もしその率が一一%をこえるものであれば、そのこえた部分は、この増資を通じまして日本の輸出がふえたという形で、外貨の手取りがかえって逆にふえるようになると思います。  そこで、問題は、わが国の業者の輸出競争力があるかどうか、それからまた第二世銀の実施いたします融資事業の中でいわゆるローカルコストが非常に多くなってまいりますと、これはその現地に落ちるわけでございまして、先進工業国ないしはそのものを調達した国とは関係ないわけでございます。御説明の便宜のために、かりにローカルコストが六分の一あるといたしますと、日本出資比率が一一%でございますから、その五分の六倍である一三・二%まで日本が調達すれば、これは日本の外貨事情に対しては中立的である、それ以上であれば日本の外貨事情はよくなるということでございます。  したがいまして、問題は、日本経済的な競争力、これは先進国間での競争力でございますが、これが今後悪化するかどうかということでございます。ただいまのいろいろな事情から見ますと、私ども石油のショックというのは日本だけではなくて、ごく一部の先進国を除きましてほかの先進国も同様な影響を受けておるわけでございますから、日本国際的な競争力というのは、全体の経済政策にして誤りなき限り過去と同じように強いものであろう、そうすれば、この石油のいろいろな外貨事情の変化がございましても、この問題がわが国の外貨収支に対して悪い影響をもたらすものではない、このように考えております。
  61. 村山喜一

    村山(喜)委員 日本を中心にしていま説明があったわけですが、世界の所得の均衡論の上からGNPを一つのものさしにしてその拠出の割合等がきまっているものだろうと思うのですが、かりにオイルダラーがそういう産油国のほうに集中をするというような形になってきた段階の中で、国際的なそういう情勢の変化に応じた会議というものが開かれるものかどうかを尋ねているのです。   〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕
  62. 松川道哉

    松川政府委員 いわゆるオイルダラーの額というのが非常に巨額になってまいります。そういたしますと、このオイルダラーを何とかして開発途上国経済協力の中に組み込めないか。また産油国といたしましても、そういうことを検討してもよいというような意向を漏らしておるようでございます。  そこで、二月にワシントンで開かれましたいわゆるワシントンのエネルギー会議、これを受けまして、その後続いております調整グループといったところの会議におきましても、このオイルダラーをいかにして還流させるかという問題が討議されておりますが、その還流の際に、いわゆる開発途上国援助とその還流とをいかに結びつけるかということがその一つの項目として議論をされることになっております。私が、ことになっておりますと申し上げたのは、まだ実質的な討議がそこまで進んでおりませんので、これから近い将来にそういったことも討議されることになるであろう、そのように考えます。  またその際、産油国に相当大きな額につきまして開発途上国への還流を要望するというようなことになれば、あるいは世銀、第二世銀のマネージメントと申しますか、そのスタッフの中にももう少し産油国の意向を反映させるようなことを考えてもいいのではないか、このようなことまで含めまして、これから議論されることになるだろうと思います。
  63. 村山喜一

    村山(喜)委員 日本経済協力費が四十九年度は千六百五十九億余り予算に計上されておるわけですが、この内容を調べてまいりまして、それから田中総理や三木特使、中曽根通産大臣あるいは小坂特使がそれぞれ約束をされたその内容のものと照らし合わせていったときに、千六百五十九億余りの経済協力費という予算費目の中から支払いができるものなのか。あるいは予備費を充当しなければならないような段階にきているのではなかろうかと思うのでございますが、まずそのことについて質問をいたしますので、これらの人たちがどういうような政府ベースの経済協力の約束をしてきたのか、外務省のほうから説明を願った上で、予算との関係において、これはとてもじゃないが、この千六百五十九億余りの経済協力費の中ではまかない切れないというものは何と何なのかということの説明を願いたいのです。
  64. 菊地清明

    菊地説明員 まず最初に、事実関係を申し上げます。一月の総理の東南アジア訪問、それから三木特使の中近東訪問、それからその後に中曽根通産大臣がイラン、イラクにおいでになり、それから小坂前企画庁長官が北アフリカ及び若干の中近東諸国を回られまして、いろいろ日本からの経済協力というものについて話し合いをされまして、いわゆる口頭の約束をされたものにつきまして概略申し上げます。  まず総理から始めますけれども、タイにつきましては新たなる借款の供与は約束しませんで、現行の借款の条件の緩和を約束されました。マレーシアにつきましては第三次の円借款として三百六十億円、それからインドネシアに関しましては、これははっきりした約束はされませんで、ただこれは例年のことでございますので、インドネシアが必要としている外資の総量から食糧援助の分を除いた分の三分の一を日本としては引き受けようというお話をされました。  それから三木特使の場合には、エジプトに対してスエズ運河の拡張計画に関して三百八十億円を借款として提供しよう。それから、これは特使の訪問中でございませんでしたけれども、その後ハテム副首相が日本へ参られまして、その際に日本政府との話し合いの結果、三百億円の商品援助及びプロジェクト援助を提供するということを約束しました。それからシリアにつきましては、製油所の建設について協力をしようということで、これは金額はその場ではきまりませんでした。イラクに関しましては、経済技術協力協定を締結するということで原則的な同意がありました。イランにつきましては、種々意見を交換され、その後中曽根大臣もおいでになられたのですが、製油所の建設をめぐりましていまだ両国政府間に合意が達成されておりません。  それから中曽根大臣の訪問の場合には、イランの場合いま申し上げたとおり。イラクにつきましては、大体、政府借款と民間借款、合計して十億ドルを製油所の建設と、それからLPG生産工場のために借款を提供するということを約束しました。  それから小坂特使の場合ですが、三十億円をモロッコ、それからヨルダン、スーダン、この三カ国に約束いたしました。それからアルジェリアに関しましては百二十億円ということでございます。  それで、これはいままで確定したものだけを申しますと、おそらく千二百億ぐらいになるのではないかと思います。以上でございます。  それから、予算の関係大蔵省のほうにお願いしたいと思います。
  65. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま先生が御質問の中でお読みになりました数字は、この予算の説明をごらんになってのことと思います。  ただいま外務省のほうからお話がございましたいろいろなケース、この相当部分は輸出入銀行を通ずる政府借款の形をとるであろう、またその一部は基金を通ずる政府借款の形をとるであろうと思います。  そこで、これにつきましても、この約束をしてまいりました事業が進みまして現実に資金が出てまいりますときに予算の問題となるわけでございますが、はなはだ恐縮でございますが、うしろのほうの財投の計画の説明の一五ページに、日本輸出入銀行というのが出ております。そこの右の行のまん中から下のほうに日本輸出入銀行というのがございまして、この下のほうに「貸付計画の内訳は、次のとおり」ということで、直接借款四十八年度千二十億に対しまして四十九年度千百八十億、こういう数字が載っております。この千百八十億のうち、ただいま外務省からお話がございましたような種類の政府借款に向かいます額は、今年度八百億円を予定いたしております。この千百八十億円のうちの八百億円でございます。そしてこの輸出入銀行に対します原資は、お戻りいただきまして特別会計の六三ページをごらんいただきたいと思います。産業投資特別会計、右側にございます。この右の下のほうに出資金といたしまして、日本輸出入銀行に対しまして四十八年度六百三十億、四十九年度六百億、これがさらに財投のほかの資金と一緒になりましてこの輸出入銀行の原資となっておるのでございます。  なお、基金につきましては、うしろのほうの二九ページをごらんいただきたいと思います。この左の行、海外経済協力基金のまん中よりちょっと下に「事業計画の内訳は、次のとおり」とございまして、四十八年度千四百十億円、四十九年度千七百三十億円、こういうふうに掲記いたしております。  ただいま外務省のほうから御説明のございました各種の経済協力案件につきましては、それが現金化されていきます段階におきまして、ただいま読み上げました項目からの支出になっていくものと存じております。
  66. 村山喜一

    村山(喜)委員 外務省の参事官にお尋ねしますが、千二百億円というのは確定をした数字でございますか。先ほどの説明の中では、たとえばインドネシアの場合等の日本からの非食糧に対する援助の三分の一分は、金額を説明されなかったのですが、大体二億ドルというふうに聞いておりますし、それからLNGのプロジェクトですか、これが五百六十億円の供与と、こういうようなふうに説明を書いたものをもらっておるのですが、こういうようなものも入れて四十九年度の確定をした支払い分として千二百億円と、こういうようなことでございますか。
  67. 菊地清明

    菊地説明員 先生御指摘のインドネシアに関しましては、非食糧援助の三分の一というのは二億ドルで計算しております。それから、千二百億円と申し上げましたのは大体の規模を御説明するために用いた数字でございまして、内訳までお示しできるようなものではございませんので、たとえばおっしゃられましたLNGの借款、それから石油借款、これはこの千二百億円を集計しました後でございますので、これは入っておりません。  それから、かりに千二百億円という数を使わせていただきますと、これの実際の支出はもちろん四十九年度内に全部起こるとは考えませんので、私たちの目の子では大体三分の一ということになっておりますので大体四百億円、それに向かいまして予算化されておりますものが、先ほど国際金融局長からお話のありました基金の千七百三十億円とそれから輸銀の八百億円、合計いたしまして約二千五百億円というものが用意されてございますので、この千二百億円というのは不正確でございますけれども、大体の規模をおわかりいただくために申し上げた次第でございます。
  68. 村山喜一

    村山(喜)委員 私がお尋ねしているのは、輸銀なりあるいは基金のほうで予算が二千五百億程度ある、その中で総理なりあるいは関係の各大臣が約束をしてこられたものなのか、それ以外にはみ出た形で約束をしてきたのか、この問題がやはり――たとえば、いまのインドネシアの場合等は二億ドル供与の問題にいたしましても、五百六十億円の供与の問題にしても、これは全体のワクの千二百億円の外にあるという説明も聞きました。そうなってきたら、いままで予算書の中で審議をしてきた内容は、ほかにもあてがあったものが、そういうような輸銀なり基金なりの資金を使って他の地域においてもやらなければならないようなものが、政府の特使が約束してきたためにその既定の計画がくずれてくるということになれば、全体的な調整が不可能になってくるという事態が生まれるわけですね。ですから、この問題についてはもっと詰めた説明を承らなければ納得ができないわけでございますが、その点はだいじょうぶですか。
  69. 松川道哉

    松川政府委員 輸銀並びに基金の予算につきまして直接責任ある答弁をいたすべき者がここにおりませんので、私がかわって御説明させていただきます。  先ほど来外務省のほうから、総理、副総理あるいはその他の大臣、特使の方々がいろいろなところで話をされてきたその数字の御説明がございましたが、これらの方々は日本を出発される前に十分いろいろな話し合いをして、ある程度のことは頭において出発されたと私ども承知いたしております。そして時間的に見ましても、この予算の最終決定に至ります段階でそれらのことは考慮に入れ、そしてまた輸銀ないし基金の事業計画と申しますのは、それぞれの国々事情があってある程度フラクチュエートするものでございます。そしてまた、この約束をいたしましても、これから手続的には交換公文を結び、さらに貸し付け契約を結び、そしてそれから現実の支出が起こるということになってまいりますので、現実問題として、今年度をとりましても、金額的には相当大きい約束ではございましても、今年度の支出はさしたる額にはならないものと予想されます。したがいまして、これらの点も十分考慮に入れて、ただいま参議院で御審議をいただいております予算案ができておるものと承知をいたしております。
  70. 村山喜一

    村山(喜)委員 それならばお尋ねいたしますが、二月の外貨準備高が百十九億ドル、こういうふうに承っております。三月は実績が出たのですかね。それはふえたのか減ったのか。外貨貸しの償還分を含めたらそれは事実上ふえたことになるでしょうが、それを差し引いた残りでもふえてきているのか。その点について説明を願いたいのと、それからもう一つは、ドル借款の形で外貨建てで借款を供与する、あるいは円建てで借款を供与する、こういうような形の協定でそういう約束をしておいでになるようでございますが、それらの二国間の経済協力に伴う外貨準備の上にもたらす影響がどういうふうになってくるのか、その点を説明願いたい。
  71. 松川道哉

    松川政府委員 まず、三月末の外貨準備でございますが、百二十四億二千六百万ドル、二月末に比較いたしまして、五億二千六百万ドル増加いたしております。その理由は、一つには、私どもが持っております外貨準備が利子を生む面がございます。それからまた、米軍との取引は市場に入らないで、直接こっちへ売り渡してくるというものがございます。しかしながら、この五億余りふえました相当大きい部分は、先生が御指摘になりましたように、私どもが持っておりました居住者に対する外貨債権の一部が返済されて、これが外貨準備に入ってきた、この理由に基づくものでございます。  それから次に、先ほど来御説明のございました、いろいろな援助ないし経済協力の金額がわが国の外貨準備に及ぼす影響でございますが、これはこの資金をもとといたしましてなされます調達が日本からなされる場合には、この金額は円のままで日本の業者に支払われることになりますので、これは外貨準備の上には影響がございません。しいて申し上げれば、先刻も申し上げましたが、これなかりせば、ドルないしはほかの外貨がかせげたかもしれない、その種の輸出がわが国の円建ての延べ払いになるという形で、間接的に影響があることはございますが、しかしながら、現在の外貨準備に対して直接マイナスの効果を持つものではございません。  そこで、これだけ大きな金額になりますと、その相当部分がどうしても日本から出て行くことを確保していただきたい。これが私ども財政当局ないしはわが国の外貨準備を管理いたしております者の心からの願望でございまして、先ほど来、るる御説明がございましたプロジェクトのうちの相当の部分は、これは日本からの援助と結びついておる、いわゆるタイドの援助ということで話が進められておるようでございますので、外貨準備に対する影響は、その意味ではないものと思います。大部分がタイドと申し上げましたが、ひもつきでないものの中で、たとえば一つ大きいのは、インドネシアのLNG借款、これはひもつきではございません。この借款を使いまして調達しなければいけない機器が、日本の国産ではなかなかむずかしいものも含まれております。そのような事情もございまして、これはアンタイになっておりますが、相当の部分につきましては、わが国からの輸出に結びつけられておりますので、外貨準備の関係は中立であるとお考えいただいてけっこうだと存じます。
  72. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは、日本の資材が振りかわった形で外国に出ていくという形のものが円借款の場合には多いだろうと思います。しかし、そのことは、勢い国内における製品、資材というものが、国民が消費するものが外国に出回るという形になってくるわけですね。  私がお尋ねしておきたいのは、この一月には、中近東のオイルが九ドル九セントで入ってきた。そして二月には十ドルをこえたという話も聞いております。それのいわゆる決済の時期が、一月に入ってきたオイルについては四月、大体三カ月おくれでございますから、四月にその決済がなされるであろう。これからそういう形で外貨の流出が原油の値上がりに伴いまして相当大幅にふえていくということになってきた場合には、この三月末には、おっしゃるように、百二十四億ドル程度確保できた、しかしながら、そのふえたうちの五億二千六百万ドルの中にも、貸し付けに回しておった外貨貸しの償還分が相当部分含んでおるということになるならば、あまり好転をしたというふうに受け取ってもこれは問題があろう。そうなったときに、四月から五月の――四十九年度、新年度になりましてからの外貨持ち出し要因というものが、国際収支の上においては非常に大きくなっていく。そのことを考えていきますと、どういう見通しの上で皆さん方のほうで計画を立てていらっしゃるのか。これが対外的な経済援助の問題、経済協力の問題とやはり不可分の関係にあるので、私はその点をお尋ねをしているわけでございます。
  73. 松川道哉

    松川政府委員 初めにささいなことではございますが、一つ申し上げさせていただきますと、油の決済は大体四カ月おくれで参ります。したがいまして、一月末ごろから高い油が到着いたしておりますから、五月の後半から六月にかけて、この辺から高い油の決済というものが始まるのではなかろうかと思います。  そこで、ただいま御指摘がございましたように、石油の値段というのは、相当高くなってきております。私ども一月中旬に、本年度の経済見通しを企画庁と協力いたしまして作成いたしましたときも、油の値段が相当上がることを予定して計画自体を組みましたが、現実の勢いは、それをさらに若干上回りそうな勢いでございます。  そこで、これに対して、これからどう対処していくかということになりますと、一方では、ただいまの国際収支の赤字要因の最大のものが、資本勘定における赤字要因であることは先生御案内のとおりでございますので、この点につきましても、私ども昨年の十一月以来、種々の検討をいたしてきておりまして、これが二月、三月あたりからさらに効果を及ぼしまして、若干のドルの流入というものが現に始まっております。そしてまた、わが国の本邦資本が外国へ出ていきますものにつきましても、相当程度の為替管理の強化というのをやっております。  一言蛇足かもしれませんがつけ加えさしていただきますと、わが国資本のうち、出ていきますものの中でも、たとえば輸出に関する延べ払いであるとか、あるいはただいま審議していただいております開発途上国に対する借款であるとか、あるいは資源開発に直接関連した投資であるとか、こういったものはなるべく抑制しないでいきたい。しかし、その他のものについては、抑制的な態度で当たっていくべきではなかろうか、このような考えをいたしております。  さらに、貿易関係につきましては、これも御案内のとおり、基本的な対策というのはいわゆる総需要対策でございます。これによりまして、石油以外のものの輸入がかつてのような急速な増加を示さないように、また、できれば多少は減るぐらいのことでやっていきたいと思います。そしてまた、この総需要対策ないしは金融引き締めを通じまして輸出がしやすい基盤ができていく、そういったことを頭に置きながら、経済全体を運用してまいりたいと思っております。  しかしながら、どうしても最後にはやはり何百億ドルという黒字が産油国にたまるような状態になりますと、わが国としても若干の赤字は避けられない。そのためにも、いわゆる居住者に対する外貨債権で流動性の乏しいものにつきましては、機会を児ながら、そしてまた無理のかからない限度で、この流動性を高めて外貨準備に取り入れていきたい、こういう政策をとってきた次第でございます。したがいまして、これらの政策がうまくいきますならば、その高い原油の支払いが始まりましても、わが国の外為市場に大きな混乱を生ずることなく、そしてまた、わが国の外貨準備にも加重な負担のかかることなくしのいでいけるのではなかろうか、このように考えております。
  74. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間の関係がありますので、もうそろそろ終わりますが、経済見通しでは、四十九年度は原油の輸入量を二億七千万キロリットルと計画しておりましたですね。そしてその購入単価は、九ドル五十セントぐらいでたしか計算がされておったと思うのです。それが現実にCIF価格で船賃まで入れまして日本に入ってくる価格というのは、これからはやはり十ドルをこえるんじゃなかろうかというふうに見るのが正しいと思うのです。昨年、四十八年暦年で日本に入れました原油の量は大体二億九千万キロリットル、こういうのが関税の通関実績の中に出ておるようでございます。とするならば、その程度のものを入れるということになる場合には、あるいはもう少しふえるということを考えの中に入れて大体三億キロリットルぐらいの原油が入るものと予想をした場合、十ドルで計算をいたしますと、百八十億ドルから百八十九億ドルぐらいの金が原油輸入のために必要になる。もちろん、それは日本の円の価値がドル換算して高くなったり低くなったりすることによって若干の違いはありますが、そういうような状態があり得るのではなかろうかというふうにいわれておりますが、替為管理を強めたりあるいは外貨の流入政策をとったりいろいろくふうもされるでしょうが、この経済見通しを変える必要性というものはございませんか、現段階においては。そのとおりで処理ができるものだというふうに見ていらっしゃるのか。この点は中川政務次官のほうからお伺いをしたいと思うのですが、いかがでございますか。
  75. 中川一郎

    中川政府委員 石油によるドル不足は、国民の非常に関心の深いところであります。確かに単価が上がりますからそれだけドルが出ていく。そこで大蔵省としても、ドルがなるべく減らないようないろいろな政策をとりまして、バランスをとることにつとめております。今後どうなりますか、異常な事態の起こらないように対処していくというのが大蔵省の現在の考え方でありまして、私どもの見るところでは、そう心配なくいくものだというふうに見ております。
  76. 村山喜一

    村山(喜)委員 どの程度原油は買えますか。当初計画のとおりですか、それとも多少ふえるという見込みで処理をせざるを得ない、そのためには輸出をもう少しふやさなければならないとか、現在の輸出の見込み額というものはもっとふえるであろうとか、いろいろ私は経常収支の動き等についても非常に変動があるのではなかろうかという気がしてなりません。そういうような点から見直しをしなければならないのではないか、それとの関係において対外援助の問題も考えていかなければならない段階に来ているのではなかろうかという気がいたしますので、その点を最後に国際金融局長にお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  77. 松川道哉

    松川政府委員 本年度の経済見通しでございますが、確かにその後の、すなわち経済見通しを作成いたしました一月の十九日でございますか、その日以降の事態の進展を見ますと、輸出、輸入ともに控え目な見通しではなかったろうかという感じをただいま持っております。しかしながら、本日は新年度の二日目でございまして、しかもこの石油の価格につきましてもいろいろな見通しがございまして、あるいは下がるのではないかという見通しを立てる人さえございます。まあそういったことで、われわれはいまの段階で、現在のデータで取り急いでこの計画をどうしても練り直さなければいけないという感じは持っておらないのでございます。私ども控え目かもしれないという反省をしながら、現実の国際収支の動きを見てまいりまして、それによって、当初の考え方にとらわれることなく為替管理その他の政策も弾力的に運用していけば、わが国経済、特に国際収支面からくる経済の制約要因というのは、経済が混乱しない程度に排除しながら運営していくことができるのではないか、現段階ではそのように考えております。
  78. 村山喜一

    村山(喜)委員 ということは、経済見通しを、現在、まあきょうで新年度が始まって二日目でございますから、いま変えるということを言われるはずもないわけでございますが、原油の輸入は、これは二億七千万キロリットルということで押えておいでになるんだけれども、去年よりも二千万キロリットルも少なくやっていくんだという方針でございますか、その点だけ最後に確認をしておきたいと思います。
  79. 松川道哉

    松川政府委員 現在とられております各種の総需要抑制対策、これが有効に働いてまいりますならば、経済計画で予定しております経済成長に対しましては二億七千万キロリットルの輸入でもって十分であるということで、それ以上輸入できるから入ってくるであろうという前提に立つのか、現在の計画であればこの輸入でもって必要かつ十分にまかなえるものであるという判断に立つのか、その点の違いがあろうかと存じますが、私ども、現段階では二億七千万キロリットルの原油の輸入を確保する、しかも、それが国際収支面から制約がないように動かしていく、これが私どもの責任であろうと考えております。
  80. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題につきましては、やはり責任ある大蔵大臣に出席を求めまして見通しをお伺いをしなければ、去年までは二億九千万キロリットルも入ってきた、その上に成り立つ日本経済というものが、ことしは二億七千万キロリットルで適当である、そういうような見通しの上に立った経済見通しというものでは、私は納得ができません。したがいまして、それは外貨の問題にも関係がありますし、輸出の問題にも関係がありますし、あるいは今後の国内経済、産業政策にも関係があることでございますので、これらの大臣に対する質問は留保いたしまして、本日の質問はこれで終わります。
  81. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 増本君。
  82. 増本一彦

    ○増本委員 私は、IDAの資金の配分と運用の問題について、政府の所信を伺いたいと思うのです。  実は世界銀行とそれから国際開発協会の問題について、すでにカナダの前首相のピアソンが委員長になったピアソン委員会というのが報告書を出しております。その報告書を見てみますと、IDAが「適切な規模で増資されると仮定するとき、こうした資金はいかに分配されるべきであろうか、」こういう設問を立てまして、「現在、IDAによって用いられている配分基準は、(a)信用力、(b)経済的パフォーマンス、(c)受容可能なプロジェクトの有効性、および(d)貧困、に重点を置いている。信用価値とパフォーマンスについての一般的基準は十分には明確にされていない。そして実際には、受容可能なプロジェクトの有効性という基準が、資源の配分において最も影響する要因であり、貧困という基準は、わずかに、条件とされているにすぎない。」こういうように指摘をして、そしてこれからのIDAの配分基準は修正する必要がある。根本的には経済的パフォーマンスに基づかなくてはならない、こういう勧告と指摘をしているわけであります。  これは、これまでのIDAの実態を見たときに、それなりの重大な反省を含んでいるというように考えるわけであります。この勧告と指摘は、第三次の増資を前にして指摘がなされたものですが、昨年の十一月のナイロビ総会で新たな増資の問題が議題になり、決定を見たわけでありますけれども、このときにこのピアソン委員会のこうした勧告や指摘というものがどのように論議され、またそれがどのようにくみ取られて第四次の増資計画というものがつくられるようになったのか、その点。そしてまた、日本政府は、このピアソン委員会のこういう指摘に対してそれをどういうように受けとめて、そしてIDAそのものをどのように運営していくべきであるというように考えているか、この二点について、まずはっきり答弁をしていただきたいと思います。
  83. 松川道哉

    松川政府委員 ただいま引用がございましたピアソン報告は、一九六八年の八月にマクナマラ世銀総裁の個人的な諮問機関として発足いたしましたピアソン委員会が一九六九年十月に発表したものでございます。そしてこの中には、大きいワク組みといたしましては八つのワク組みがございますが、項目で数え上げますと、六十七ばかりの具体的な勧告をいたしております。そしてただいま御指摘の点もこの一つとしてあるわけでございます。この勧告を受けましたマクナマラ総裁のほうは、この六十七ばかりの項目のうち、直接世銀グループの活動または政策関連いたします三十三項目を選びまして、その分析をいたしますとともに、コメントをつけながら理事会にかけて、そのフォロースルーをやっておるわけでございます。  そこで、理事会のほうにおきましてはすでに数十回にわたって検討が行なわれまして、中には受け入れられたものもございますし、中には受け入れられなかったもの、あるいは修正されたものがございます。  そこで、今回の増資との関連において、ただいま御指摘のございました点について触れますと、現行の貸し出し基準についてのコメントがあったことは事実でございます。  しかし、世銀自体のほうの考え方は、現在の貸し出し基準、すなわち、ただいま御指摘ございましたように、信用力であるとか、経済的なパフォーマンスであるとか、あるいは受け入れ可能なプロジェクトがあるかどうか、または貧困である、こういった貸し出し基準にかわって何か適切なものがあるかということを模索したようでございますが、これにかわる適切な基準はどうもなさそうであるということで、その後現在に至るまで、この点については見直しが行なわれておりません。  そして、先ほど御指摘の第四次の増資にあたりましてどのようなことが行なわれたかということにつきましては、これは御案内のとおり、ピアソン報告の中にはIDAへの拠出は一九七五年までには十五億ドル台に達しなければならないということは書いてございます。その量的な面につきましては、ピアソン報告のその部分につきまして十分配慮しながら最終的な決定がなされたのでございますが、ただいま御指摘の貸し出しの基準につきましては、ピアソン報告にもう一度触れるということなくして本日に至っております。  次に、わが国政府のこれに対する方針でございますが、先刻山中委員の御質問に対しまして私が読み上げましたこの国際開発協会前文に書いてございます理念、これにのっとりながら国際開発協会関連する一連の問題を処理していきたい、こういう考え方に立ちますと、今回の増資につきましても、わが国としては積極的に賛意を表し、そうして積極的にその引き受け通告を出すべきであろう、このように考えております。
  84. 増本一彦

    ○増本委員 実態を調査したこのピアソン委員会が、実は貧困というのがわずかに条件とされているにすぎないという指摘をしている。そうして、プロジェクトの有効性という基準がこの資源の配分で最も中心となっている基準になっているという指摘をしているわけですね。だから、もっとこのパフォーマンスをそういう意味では考えていく必要がある、こういう指摘で「追加されるIDAの借款は、根本的には、パフォーマンスに基づかねばならない。そして、二国間援助の最も重大な不均衡を相殺するようにしなければならない。パフォーマンス原則にしたがうならば、緩和された条件の二国間援助をほとんど受け取っていないか、あるいは、ほかの国際的組織からほとんど援助を受けていない国は、IDAなどから、より大きな援助を得ることができようし、また、開発水準の低いこれらの国は、開発が進行している国よりも大きな一人当たりの援助を受け取ることができよう。」というビジョンを出しているわけですね。  ところで、こういういままでの配分の基準がいろいろ問題があるという指摘は、いろいろ観点の違いがあっても、やはり現実の実態から見ると、それなりに考えなければならない問題がたくさんある。先ほどインドについての他の委員からの指摘もありました。  そこで、この七三年六月三十日現在の各国の融資承諾額という資料を見せていただきますと、インド、パキスタン、インドネシア、バングラデシュ、トルコ、エチオピア、韓国、エジプト、タンザニアというところが非常に金額としても多いわけです。これらの国のそれぞれのプロジェクトの内容というのは一体どんなものなのか、それは調査をし、把握をなすっていらっしゃるのか。資金の有効利用という観点から見て、わが国としてもこの点はよく見ておく必要があるのではないかというように考えるわけです。まずその実態について、もしここでおわかりになるのでしたら御答弁いただきたいし、その点についての詳細な資料をひとつ当委員会にも提出をしていただきたい。そして、先ほど局長が引用されたこの協定の第一条の精神から見て、実態ははたしてよいのかどうか、日本としてこの点はどのように考えているのか。また、今後そういう点についてよく調査もし、実態を把握していくという方向にあるのかどうか、ひとつはっきりさせていただきたいと思います。
  85. 松川道哉

    松川政府委員 まず初めに、現行の貸し出し基準の中で経済的パフォーマンス云々が非常に重視されておる。この点に対して、ピアソンの批判ないし指摘があったという点に関連して、一言ふえんさせていただきたいと存じます。  これはその後の世銀の貸し出しの累計別の計数をごらんいただきますと御理解いただけるかと存じますが、たとえば、人口問題であるとかあるいは教育問題であるとか、こういった分野にも新たな融資がなされております。これはことばといたしましては、経済的パフォーマンスとかあるいはプロジェクトの有効性ということばであらわされておりますが、その解釈にあたりまして、ピアソンが指摘したような精神をくみ入れながら運用を広げてきておるものと私どもは了解いたしております。しかし、これを他の概念でもって置きかえるには適切なことばはないということで、その限りで現在もそのままの用語が使われておる次第でございます。  第二の御質問でございますが、各国の融資残高を見ますと、確かに御指摘のような国々がたくさん出ております。そこで、これはインドの例で申し上げますと、七二年の七月から七三年の六月までに行なわれましたものが、農業信用関係が二口ございまして、元本が三千三百万ドルと三千八百万ドル、次にアグリカルチャラルインダストリーと申しますから農産品に関係する工業だろうと思いますが、これが八百万ドル、教育関係で千二百万ドル、開発金融で二千五百万ドル、工業関係で五千八百万ドル、それから工業関係の部品その他の輸入で一億ドル、電力で八千五百万ドル、通信設備で八千万ドル、水道事業で五千五百万ドル、こういった幾つかの融資が行なわれております。  そこで、このそれぞれにつきまして私どもがどのように関与しておるかという点でございますが、御案内のとおり、私ども日本を代表する理事世銀グループに対しても送っております。そして、このそれぞれの案件につきましては世銀当局のほうからこまかい説明がございまして、これに対してわが国を代表いたします理事もその討議に参加して、ただいま先生が御指摘のような疑問があれば、これをそれぞれの段階で明らかにしながら現在に至っておるわけでございます。もしその中に、この第二世銀の精神から見て好ましくないような融資が入っておる場合には、その旨を発言して再考を求めていく、このような手続になっております。  さらに、ただいま資料が見つかりましたので、七三年六月末現在におきます幾つかの国々につきまして、目的別の融資承諾額を御説明させていただきたいと思います。  これは一九七三年六月末でございますが、インドにつきましては、農林漁業関係が四億五千百万ドル、運輸が四億八千九百万ドル、ノンプロジェクトが七億八千万ドル、電力が二億三千九百万ドル、教育が千二百万ドル、通信が三億一千九百万ドル、工業が五千五百万ドル、給排水が五千五百万ドル、人口関係が二千百万ドル、合計いたしまして二十四億二千百万ドルでございます。  次に、パキスタンにつきましては、農林漁業が一億五千八百万ドル、運輸が八千万ドル、ノンプロジェクトが一億四千五百万ドル、電力が二千三百万ドル、教育が千三百万ドル、通信が二千四百万ドル、工業が二千六百万ドル、給排水が三千二百万ドル、その他五百万ドル、合計いたしまして五億六百万ドル。  インドネシアにつきましては、農林漁業関係が一億八千七百万ドル、運輸が八千五百万ドル、電力が一億百万ドル、教育が二千四百万ドル、通信千三百万ドル、工業四千五百万ドル、人口関係千三百万ドル、その他一千万ドル、合計いたしまして四億七千八百万ドル、このような状態になっております。
  86. 増本一彦

    ○増本委員 その他の国についても、わかる範囲で一覧の資料としていただけますか。   〔森(美)委員長代理退席、松本(十)委員長   代理着席〕
  87. 松川道哉

    松川政府委員 何せ国際開発協会融資をいたしております国は数十カ国にのぼっておりますので、その全部ということになりますと若干時間がかかるかもしれませんが、おも立った国でございますれば、できるだけ早く御要望の形の資料を整えてみたいと存じます。
  88. 増本一彦

    ○増本委員 一億ドルをこえているところがインドからタンザニアまで九つあるわけですね。そのあたりでけっこうですから、資料を出してください。  ところで、世銀融資とかあるいはIDAの融資も、一部のそれぞれの国の支配階級を富ますために運用されているのではないか、こういう疑惑を持つわけです。というのは、局長も出席されたのだと思いますが、二十八回のIMF・世銀の総会でマクナマラ総裁が演説をしたわけです。その中で「この一〇年間の開発途上国のGNP伸び率が未曽有のものであったにもかかわらず、」「開発途上国全人口二〇億人の四〇%にあたる八億の人々は、USドルの購買力に換算して約三〇セントでその日の暮しをたてており、その生活は、栄養不良、文盲、不潔さの中で過ごされています。」「四〇の開発途上国をみると、二〇%の上層階級が五五%の所得を得ており、二〇%の下層階級は五%しか所得を得ていないという事例があります。」こういう実態が指摘をされているわけですね。  ですから、私が先ほどから言っているように、それぞれの融資にあたってそのプロジェクトの内容やそれからパフォーマンスを十分に吟味をして、そして局長、あなたもおっしゃった協定の第一条のその精神が具体的に生かされるような運用になっているのかどうか、ここのところが実は増資をする際にも最も重要な問題だというように思うのです。  それで、世銀の総裁が総会でこういう演説をしている。それを前提にして第四次の増資の問題が議論をされているにもかかわらず、その点についての資金運用の問題等を具体的にどういう方向でこれからやっていくのかということが、これまでの実績についての反省の上に立ってなされているようには受け取れない。局長が「ファイナンス」の去年の十一月号に報告を書いていらっしゃいますけれども、この中での「第二世銀増資問題」という項目を拝見しても、その点についての議論があったということすら一行も書かれていないわけですね。  そういう点を見ますと、いまここで無批判的に、国際的な協力で、しかも約束までしたものだからお金を出すんだということだけでは――これは実質的には国民のお金ですから、それが有効に国際的に活用されるということが前提になって初めて国民の納得の得られるものである。ところが、そういう実態になっていないとか、貧困の度合いが一そう深刻になっている。しかも、そういうところにお金を出しておきながら、実質的には二〇%の上層階級が五五%の所得を得ているというようなぐあいにまでなっている。ここのところに対して、もっと深くメスを入れたものが私は必要なのではないかと思う。  そういう意味で、理事国でありそして総務国として、大蔵大臣まで出席をして議論をするような場所でこの問題が議論されていないということをきわめて遺憾に思いますし、その点について日本政府としては、どういう態度でこれからどういうようにやっていこうとするのか、ここのところをやはりどうしてもはっきりさせていただきたいというように私は思うのです。いかがですか。
  89. 松川道哉

    松川政府委員 このマクナマラの演説は、私も総会に出席いたしておりまして傾聴をいたしました。その中に、ただいま先生が御指摘のような所得の配分に関する批判的な意見が挿入されていることも事実でございます。しかしながら、この演説をずっとごらんになっていただきますと、いままでやってきたけれども、まだここの段階である、したがって、これから先どうするかということがずっと書いてございます。たとえば、構造改革が必要である、そしてその中で一番緊急性を要するものは土地改革でありますというようなことを言って、土地改革のことに触れております。さらには、貧困の追放のために、極貧層の追放のために、種々な政策をとらなければいけない、そして絶対的貧困と申しますか、栄養不良であるとか文盲であるとか幼児死亡率であるとか、こういったものを絶滅しあるいは低減して、先進国並みの暮らしが送れ、そして先進国並みの平均寿命が達成できるような、そういったいろいろな政策をとっていかなければいけないということをマクナマラは言っております。  そこで、しからば、なぜその初めの叙述にあったような貧富の差というものがいまでもあるのかということに戻ってまいりますが、非常に開発程度のおくれておりますところでは、その経済的な発展を導き出すためには、あるいは道路であるとか、あるいはその他非常に基本的なものから手をつけていかなければいけないということで、現在までに――現在と申しますのは、ごく最近の二、三年を除きまして、設立以来政策が進められてまいったのでございますが、これだけではそれぞれの開発途上国にある、そしてまた特に貧困開発途上国にありがちな貧富の差というのを縮めるのにはまだ不十分であるということで、さらにいろいろ新しいこの貧富の格差の追放に対する手段ないし経済政策というのを、マクナマラがあるいは「農村開発の戦略」というタイトルをつけて種々提案しておるのでございます。  そこで、私の報告の中にはそれに触れていないじゃないかという御指摘でございますが、先ほども説明いたしましたとおり、この第四次の増資はこのナイロビ総会の一年前にそれに取りかかろうということがきまりまして、それから数次にわたりましていろいろと検討がなされてきておるのでございます。そのプロセスにおきましては、これからのIDAのあるべき姿、それをカバーするためにはどれだけの金額が必要であるかということもるる議論をされてきております。このIMF・世銀の年次総会と申しますのは、非常に限られた時間に各国のトップクラスの財政当局の責任者が集まりますので、これが集まってある問題を検討する時間というのは非常に限られております。したがって、その意味で過去一年間、それに先立つ一年間において種々議論されましたことについては、あらためてナイロビでの議論は行なわれませんでしたが、ここであらためて議論が行なわれなかったということが、各国がただいま先生御指摘のような問題点について全く配慮してないかというと、そういうことではございませんで、それまでの実績並びに総会時における時間的制約、こういったものから、先生が御期待のような形ではこの総会の記録には残らなかったということでございます。
  90. 増本一彦

    ○増本委員 マクナマラは、私の読みましたその指摘のあと、結局「一〇年間の急速な経済成長とともに、多くの開発途上国内では所得配分がさらに不公平となっており、特に農村において深刻な問題となっていると思われます。鉱業、工業および政府分野の生産は増加しており、これらの分野に従事する人々の所得は上昇から取り残されています。ほとんどの開発途上国において、経済成長促進のための政策は四〇%の上層階級を主として利することになり、公共サービスおよび投資資金の配分の不公平さがこの傾向を助長させていると結論しえましょう。」というところまで指摘している。  問題は、私はこういう実態を見たときに、どういうプロジェクトで、それがまたどのようにそれぞれの政府でプロジェクトが遂行されていくのか、それがほんとうにそのそれぞれの発展途上国一般国民大衆に利益が及ぶような仕組みになっているのかどうか、ここのところまでしっかりと目を据えて深く検討をしてみなければ、ほんとうに第二世銀というのが理想と現実との間にあまりにかけ離れがあるということにならざるを得なくなるのではないか。ここがいま第二世銀の問題では一番大きな問題ではないかというように考えるわけです。  松川局長の「ファイナンス」のレポートを拝見しますと、第二世銀増資問題では、アメリカの態度が議会との関係からあいまいになりがちで、これが会議の合意をおくらせがちである。先ほどもアメリカとの関係でまだいろいろ問題があるという指摘もありましたけれども、アメリカが総裁を送り込み、そして開発途上国に対する援助だ、援助だということでやっていながら、実質的にはそれぞれの開発途上国では高度経済成長政策をとり、それが、国民は貧しく、一部の支配階級だけが冨を自分のふところに入れるというような結果になっているということであれば、これは大問題だと思うのです。ここのところが、実はこれまでのこの種の国際開発についての協力の問題では、政府から正確な実態や正直なそれぞれについてのレポートというものを国会では受けていないというように思うのですね。政府はそういうものについて、国民の資金が流れていくわけですから、それがどのように有効に使われているのかどうか、どこに問題があるのかということをもっと正直に明確にすべきであると思うのです。そういう方向で私は当然検討をしていくべきであるというように思うのですが、その点はどうなんでしょう。
  91. 松川道哉

    松川政府委員 まずマクナマラの演説で、先生が御指摘のように、所得配分がさらに不公平となっており、特に農村において深刻な問題になっておるという叙述はございます。これは先ほどの所得の分配がうまくいっていないという部分のすぐあとにございます。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 そしてそれらを受けまして、先ほど私もちょっと触れましたが、緊急を要するものは土地改革とかその他いろいろございまして、結論的に世銀がとろうとしている行動計画をごらんになれば、そういった現実に対してどういうふうに総裁が考え、そしてどういうふうにしてその解消につとめていこうと考えておるかということが御理解いただけるであろうと思います。  次に、この種の国際機関の行動ないしはその活動につきまして、私どもが何らかの形で国民にもっとPRをすべきではないか、そしてかりに問題があるとすれば、それを国民にもっと知らしむべきではないかという先生の御意見に対しましては、私も同感でございます。たとえば、私どものできます限りで、このIMF・世銀総会における各国総務のいろいろな演説であるとか、あるいはその際われわれが入手し、また発表してもよいという資料につきましては、いろいろな形態を通じまして発表いたしております。たとえば私がただいま先生が引用なさいました「ファイナンス」に一筆を弄しましたのも、こういった機会を通じていろいろなことをPRすべきであるという考え方から行なったものでございます。ただ、いままで私どもがやってきたそのやり方が不十分であるという御指摘でございますれば、私どもとしましても、なおそのほかいろいろな面、さらには質的にもこういった国際機関活動の内容を国民の前にもっとはっきりわかるような方法を考えていき、そしてできるだけこういった、特に経済協力関係国際機関活動を正当に国民に評価してもらいたい、このように願うものでございます。
  92. 増本一彦

    ○増本委員 このナイロビの総会には、アメリカは四十人をこえる国会議員を連れていったと書いてありますね。ところが、批准ができない。アメリカはアメリカなりのIDAについての問題意識があるのだと思うのですよ。それは私がいま言ったような問題とは違うかもしれません。あるいは共通している面もあるかもしれません。アメリカ国内のスラム街を中心にした貧困の問題や黒人の人種差別の問題、こういう問題をまず解決すべきだという世論もほうはいと起こっているということも事実です。そういう中で、日本と西ドイツが非常に積極的な姿勢を示して会議をリードした。それはやっぱりもっとIDAの資金が有効に使われるということを前提にして、そして有効に使われていない現実の実態があったとすれば、まずそれに深くメスを入れて、その問題を解決していくという姿勢と結びついた上でなければ、実はほんとうにこのIDAの制度を生かしているということにはならないのではないかという点で、まだまだ疑問があるわけなんです。  最後にひとつ伺っておきたいのは、なぜアメリカは消極的であいまいな態度をとっているのか、この点についてはどうなんですか。
  93. 松川道哉

    松川政府委員 これはほかの国の政治情勢につきましてこのような席でこまかく批判がましいことを言うのはいかがかと思いますが、私が基本的にふしぎに思っておりますことは、先ほどの答弁の中でも引用いたしましたが、与党の大統領がやっておる法案に対して、野党のほうは反対が少なかったと申しますか、相対的に反対の割合は少なくて、賛否相半ばしたのに、与党のほうが非常に大きい反対投票をしておる。これはあるいはアメリカの国内の何らかの政治的な問題が、この法案の処理について取引に使われておるのではなかろうかという印象ないしは疑問を私は個人として持っております。そのほか、アメリカでの審議の際にいろいろな意見が述べられておりまして、ただいま先生御指摘のように、このようなことがあればあるいは受け入れ国の富裕階層を利することがあるのではないかという御批判もございました。しかし、これにつきましてはいろいろな説明がなされておりまして、過去においてはそういうものがあったかもしれないけれども、だんだんそういうのはなくなって、たとえば農業事業であれば農業に従事しておる農家のそれぞれまでがその恩恵に浴するようなプロジェクトを取り上げ、そしてまた人口問題その他でもそうですが、そして教育問題で学校を建てましたり、器具をそろえましたり、いろいろやっておりますが、そのようなこともそうでございますけれども、貧しいほうの階層の人に対しても恩恵が行き届くように、第二世銀自体がその運営を改善し、そして、IDA協定前文にありますような理想に向かってなるべく近づけるように努力しておるところでございます。
  94. 増本一彦

    ○増本委員 結局、発展途上国というのは、社会制度から見ても、半封建的なものが依然として強く残っているし、だから少数の大地主が広大な土地を持っていて、そのもとに農奴に近いような小農がたくさんいるわけですね。そして、その一方で資本家もふえてきている。だから、そういうときに土地改革のための投資をやっても、それが少数の一部の地主に膨大な利益を与えて、しかし小農は少しも所得の配分にあずからない。あるいは大きなプロジェクトをやっても、それが一部の資本家階級や富裕階級を利することはあっても、それはまだ全体として所得水準を引き上げていくということにならないというようないろいろな問題があるわけですよ。ですから、そういう問題に対して十分な考慮を払ってやっていくにはどうしたらいいのか、これは社会制度の改革そのものが必要な面もあるでしょう。しかし、それはその国のそれぞれの国民の問題ですから、それに容喙するということはもちろんできません。しかし、そういう現実があるんだということを前提にものを考えていけば、一〇〇%この制度がそのまま美化できるものであるかどうかということについても、やはり本質的な問題というものもあるのだろうというように思うわけです。ですから、そういうことを前提にして、やはり国民の資金国際協力という形で流れていくというときには、それぞれの運用されている実態については、その資金を供給する側としても十分責任を持って処していくということが何よりも重要だし、その点でのこれまでのトレースは決して十分ではなかったということを私は指摘したいというように思うのです。その点を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  95. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、明三日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十一分散会