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1974-03-19 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十九日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       小林 政子君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         国税庁次長   吉田冨士雄君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   伊豫田敏雄君         国税庁税部長 田邊  曻君         国税庁間税部長 横井 正美君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 三月十八日  中小業者に対する減税措置に関する請願(松尾  信人君紹介)(第二七二一号)  同(鈴切康雄紹介)(第二七六九号)  国家公務員共済組合法施行前の退職者処遇改  善に関する請願谷垣專一君紹介)(第二九六  七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  昭和四十九年度税制改正に関する陳情書  (第二四八号)  所得税減税及び勤労者預貯金減価補償に関  する陳情書  (第二  四九号)  公共用地譲渡所得特別控除に関する陳情書  (  第二五〇号)  自動車重量税増税反対に関する陳情書  (第二五一号)  昭和四十九年産葉たばこ収納価格引上げ等に関  する陳情書外二件  (第二五二号)  バナナの輸入関税率引下げに関する陳情書  (第二五三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。増本一彦君。
  3. 増本一彦

    増本委員 昨年以降経済が異常な状態になってきて、本年度予算案の審議をしていた時期あるいはそれ以前の時期から、法人税基本税率引き上げ急務だということを私たちは強調してきたわけです。私たち予測どおり、今日の異常な経済状態を見ますと、法人税率引き上げはあまりにおそ過ぎたという感を免れません。この政府の責任はきわめて重大だと思うわけです。過剰流動性の吸収や、そして景気の鎮静化をはかっていくためにも、特に法人税にも累進税率をとるべきだという主張まで私たちはしてきたわけですが、今日の事態に至って、政府はどのようにお考えになっているか、ひとつ反省を含めた御答弁を、まず政務次官からいただきたいと思うのです。
  4. 中川一郎

    中川政府委員 今日の物価高、インフレ傾向を鎮静するために法人税率引き上げは必要であるということは、当然御指摘のとおりであります。そこで、今回税制改正をお願いしておるわけでございますが、累進税率についてはいろいろ議論のあるところであって、われわれとしては賛成しかねるところであります。  過去にさかのぼってやるべきであり、あるいはおそかったのではないかという点については、これもまた議論のあるところだとは思いますが、総需要抑制のために金融引き締め公共投資繰り延べ等かなり思い切ったことをやりまして、ようやくその効果も出始めたというふうに考えまして、今日の段階では、まあまあよろしきを得たのではないかというふうに思っております。
  5. 増本一彦

    増本委員 いま政務次官がよろしきを得たという点は、私はいただけないと思うんですね。実際に、卸売り物価が現にまだ三〇%、それが若干勢いが弱まってきているのかどうかというところでの見解の違いはあるにしろ、いま現にものすごいげたをはいている。そして来年度に向かおうとしているわけですね。消費者物価の二四%、しかも、四十八年の上期をとりましても、大手の企業中心にして営業利益は二八%伸びる。そして今生度税収見込み、特に法人所得伸びは四〇%というぐあいに見込んでいるわけですね。ですから、実際に四十八年度から法人税率引き上げて、過剰流動性を吸収するということは急務であったというように思うのです。  しかも、それをやらなかったから今日この段階で、先取り値上げ便乗値上げ売り惜しみ買い占め、いろいろな経済事犯まで出るようになって、だから、今回の事態で、不当利得あるいは超過利得に対する課税をしなければならないというような特別の手だてまでとらざるを得ないという状態になっているわけですね。こういう点を考えれば、おそきに失したことはもはやはっきりしている事態ではないでしょうか。そういう点についての反省がない限り、これからの経済運営操作、特に財政金融政策税制を含めた政府の適切な措置というものはとうてい期待できないというように私は思うわけですが、もう一点、その点を含めて政務次官の意見を伺っておきたいと思います。
  6. 中川一郎

    中川政府委員 今年度税制を御審議いただいた昨年のいまごろの事態は、為替レートの不安定な問題もあり、中小企業が非常に苦しいという段階でありましたので、法人税をいじくるという踏み切りをするような情勢になかったことは御承知のとおりでございまして、今年度に入りましてから非常に情勢が変わってきた。  そこで、来年度税制においては、今年度状況を見て、基本税率改正するということに踏み切ったわけでございまして、年度途中に税制改正をやればよかったではないかということですが、これもなかなか年度内改正ということは容易でないということから、いま超過所得についてだけは何としてでもこれを吸収したいということで、近々党と相談の上法案を出したい。御指摘のように、途中でやればよかったかなあということについては、あるいは反省しろと言われれば、そういう決断を、年度内改正をやらなかったということについては、御批判を率直に受けておいていいのではないかと思っております。
  7. 増本一彦

    増本委員 政務次官の前段の点は、私は異論があるのですよ。つまり、中小企業為替の変動のためにきわめて極端な危機におちいっていた、おっしゃるとおりです。でも、いまこの時点で、法人税率引き上げる問題を審議しているこの時点でも、中小企業は非常に危機的な状況にあることも御承知のとおりです。法人税法では、法人税率については中小企業と一般の基本税率とは、しかく分けているわけです。私が問題にしているのは、三六・七五%をしかるべく引き上げるべきだというところを問題にしているので、中小企業税率引き上げるべきだということを言っているわけではない。
  8. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘のとおりでございまして、中小企業税率は区分けしておりますから、御指摘の点はわかるのでございますが、やはり下請けその他を通じて、大きいほうをいじくりますと、中小企業にも間接的に影響がある、こういう点を配慮したわけでございます。
  9. 増本一彦

    増本委員 中小企業法人税率については、私たちは実はまだ高いというように考えておりますが、この点はあとから申し上げることにしたいと思います。一応、政務次官も、おそ過ぎたという指摘については、その点もくんで反省もしているというお話ですので、次に移りたいと思います。  主税局から「税制改正の要綱、租税及び印紙収入予算の説明」というパンフレットをいただいておるのですが、実は昭和四十九年度法人税収見積もりがあまりに甘過ぎるのではないかというように私は考えるのです。これは局長にお伺いしたいのですが、生産が九四・九%ということになっていますね。これは経済見通しから見ましても明らかに過小ではないか。経済見通しによりますと、鉱工業生産は一〇一%ということになっているわけです。これが一点。  それからもう一つは、物価上昇率が一二二・二ということになっていますが、先ほど指摘しましたように、昭和四十八年度げたをはかせても、これは政策目標だといえば皆さんはそうおっしゃるかもしれないけれども、しかし、現実のこれからの物価推移を予測しても過小に過ぎないか。ですから、インフレ利得を含めると、所得率による調整九五%とか総合一一〇・二%も実質的には低過ぎないか。個人事業所得を見ますと二五%となっている。ですから、法人所得が一一〇・二%しか伸びないというのは、これはどう見ても見積もりが低過ぎる、甘過ぎないか。これを前提にして法人税税務行政を進めていくということになれば、実は個人事業所得との間にもアンバランスが生じ、法人税の税の徴収の面でもゆるやかにならざるを得なくなるんではないかという気が私はいたします。この点は、主税当局としてはどのようにお考えなのか、はっきりさせていただきたいと思います。
  10. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十九年度歳入見積もりのうち、法人にかかる分でございますが、これは率直に申しまして、見通しが非常にむずかしいということでございます。この見通しを立てました昨年十二月の段階におきましては、御承知のように、その前提となる日本経済見通し作業もやや動揺しておりましたし、だいぶ様子はわかってまいりましたけれども、現在でも、四十九年度歳入を十分見通すということはまだむずかしい。特に、法人税のように経済情勢に対して敏感なものの税収見積もりは、かなりむずかしいわけでございます。  法人税収を立てます場合には、経済見通しに乗って立てておるわけでございますけれども、本年の経済見通しでは、上期には若干弱目に見ておりまして、下期である程度回復するという考え方で年度間を見ておるわけでございますが、税収見積もりのほうで見ますと、下期の影響というのは、むしろ五十年度税収になって響いてくるわけでございまして、決算期に反映してそれが税収になってあらわれますについては、そのときそのときによって違いますけれども、大体四カ月から五カ月くらいのズレというものがございます。過去の経験値から申しまして、経済の波と税収の波は約四、五カ月のズレ、特に法人税についてはそういう傾向がございます。そういうことを頭に置きまして、現在の経済見通しのうち上期、下期の状況勘案をいたしまして見込みましたのが、九四・九という数字でございます。  物価につきましては、おっしゃるように、いろいろな見方があると思いますが、これはある種の政策意図を含んだもので経済見通しができているということもございます。しかし、何としてもこの辺に押えなくちゃならぬということで経済見通しができておりますので、税収見通しもそれを前提としているということでございます。それらの総合、それから所得率による調整を見まして、結果的に約一割の増ということを見ておることは、弱気の見込みということがいえるかどうか。これは現に目前に迫っております三月期の企業見込みというようなものも全くまだ見通しがつかないという現状でございますから、私どももこの一一〇という見通しが絶対確実といいますか、これ以外にないというようなほどのいわば十分の見通しを持ったものではございません。しかし、御指摘のように、これが少し弱いということの御見解については、現段階では、私どもはとてもこれがそう弱いとはいえないんじゃないかというぐらいの感じでおります。
  11. 増本一彦

    増本委員 来年度下期は五十年度影響がある。とすると、四十八年度の下期がやはり四十九年度のこの税収には影響を持つものであるということになると思うのですね。大蔵省から伺ったところによると、全体として四十八年度法人所得伸び率というのは四〇%というお話でしたね。そうですね。そうすると、四十八年度後半での卸売り物価が三〇%をこえている、消費者物価も二四%だ。そして今日この段階、石油の価格もさらに引き上げがきめられ、もう実施に移されている。こういうことを勘案すると、物価上昇率が一二二・二だということの根拠というのは、これは政策目的ばかり強くて、実質的な経済の動態的な動向を踏まえたものではないのではないかというように考えざるを得ないのです。これが一つです。  それからもう一つは、特に九月期決算以降ですね。十二月の中間の段階での決算は、大企業中心にして、経常利益前期と比べて二十一倍のところもあるとか、あるいは一一・三%の増益があったとか、それぞれ相当に利益も伸ばしている。そしてまた、三月期決算についても、利益をどのように隠したらよいかということが企業会計の上で大きな問題になっているということも新聞などでも報ぜられているというような経済実態を見ますと、どう見ても、一一〇・二%という法人所得伸びというようなことは、経済の動態的な実態を踏まえたものではないというようにいわざるを得ないと私は思うのです。こうした経済動向実態をどのように踏まえて、どのように積算されたのか、その根拠をひとつ御説明いただきたいし、それに関する資料がもしおありであれば、当委員会にも提出をしていただければたいへんけっこうだというように思うのですが、この二点について伺いたいと思います。
  12. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御指摘のように、四十八年度法人税収入実績状態は、対前期大体四〇%ぐらいの非常に高水準でございます。これを見込みまして、先般の国会で御審議願いました四十八年度補正予算におきましても、法人税収入見積もり追加計上をいたしたわけでございます。ここにあります一一〇というのは、そのようにかなりの巨額の追加計上をいたしました四十八年度実績見通しの上に立って、なお一割伸びるという前提をとっておるということでございます。  九月期の決算が非常に好調であったということは事実でございますが、この九月期の決算というのはすでに四十八年度税収として入ってくるわけでございますので、これは四十九年度収入には関係がないわけでございます。十二月の決算のものにつきましても、十二月決算は二月末申告でございますかち、これも四十八年度収入になってくるということになるわけでございます。でございますから、四十九年度収入中心をなすものは、四十九年三月と四十九年九月の決算でございます。  そこで、四十九年三月の収入見込みでございますが、これは新聞報道でもごらんのように、いろいろ乱れておりまして、ある時期には非常に増益増収になるだろうという見通しを報ぜられたこともございますが、最近は、価格を押えるということであるとか、企業サイドがいろいろな意味で萎縮をしておるというようなことから、あまり多くの所得申告が出てこないのではないかというような見通しも出ておりますし、最近の株価等推移を見ましても、かなり悲観的見通しを織り込んだような株式市場が成り立っておるというような現状でございます。でありますので、この九月はどうなりますか、見通しを立てることがほとんど現在の段階では不可能でございますが、三月の場合でも、対前年はたして一割伸びるというようなことになるかどうか、これはなかなか見通しが立てにくいわけでございまして、私は現在の段階でこの一割と見ました見込みというものがそう——この一割というものを立てましたのは、率直なところ、予算編成手続との関係から、十二月の二十日ごろに見当をつけておる数字でございますが、そうして、それを最終的に一月の段階予算最終案をきめますときにチェックをしたものでございますけれども、現在の段階でも、当時立てましたこの一割の増収見込みというものが著しく間違いであったのではないかというような感じは、いまのところは持っていないわけでございます。  次に、物価見通しの問題について、経済見通しというものの上に立っておる、その経済見通しというものが若干政策的なものであるということから、この見込みが低いのではないかという御指摘でございますが、その点は、そういう傾向があるということは、過去の経験値からいっても言えないわけではないと思うのでございます。ただ、現在のところ、何も税収だけではございませんで、すべての予算につきまして、一応一貫したたてまえのもとに予算編成を行なうということから、歳入につきましても歳出につきましても、すべて経済見通しの数値に基づきまして組み立てていくということを政府やり方としてやっておりますので、私どもといたしましても、経済見通しに掲上されておりますところの物価動向というものについては、私どもだけが独自の批判をそれに加えて違う数字を入れ込むということではなしに、経済見通し数字をそのまま使っておるということでございますので、その意味で、いままでのやり方と特に違っているわけでもございませんし、これはこういう見通しの立て方をすることで御了承を願いたいと思うわけでございます。  なお、あと計算方法は、ここにあります生産の九四・九とか、物価の一二二・二とか、相乗、そして所得率というようなことがございますが、その所得率というのは、もっぱら主として所得発生期間税収期間ズレの問題でございます。また三月期、九月期というようなところにかなりのウエートがあり、一年決算では十二月決算法人が多いわけでございますが、そういうものについて、四十八年の経済見通しのしっぽの影響を受ける部分と、四十九年の経済見通しを月別にねらいをつけまして見当をつけておるわけでございまして、それ以上別に特にそうむずかしい計算とかなんとかいうことをやっているわけではないわけでございます。
  13. 増本一彦

    増本委員 それでも、個人営業の場合、事業所得が一五%の伸びになっているのですね。そういうこととの勘案から見ても、私はこれは低きに失すると思います。これ以上議論を続けましても時間がありませんので、次に移ります。  今度基本税率が四〇%になって、そのために実効税率が三〇%の配当を前提にして四九・四七%になった。  この問題はひとまずおくとしまして、先ほどお話が出ました中小企業軽減税率が二八%に据え置かれているという点が、私はたいへん重大な問題だというふうに思うわけです。政務次官も、現在の中小企業金融引き締めの一番のしわ寄せを受けてたいへんな状態にあるということは、御承知のとおりであります。しかも、中小企業を土台にして、いわば大企業がヒエラルキーのようにそそり立っているのが日本経済の構造ですね。実効税率国際比較で、アメリカが五一・六四%というようになっていますけれどもアメリカ比較で見ましても、アメリカ中小企業については二二%の普通税率しかかけていないのですね。それに七%、八%の州税がかかるだけです。今度軽減税率適用範囲を七百万円に拡大した。しかし、税率アメリカよりも六%高い。こういう諸外国との比較から見ましても、私は日本中小企業軽減税率も、少なくとも五%は引き下げるべきではないかというように思うのですが、その点は政府としてはどのようにお考えなのか。また、将来そういう方向で検討なさる御意思がおありなのかどうかお伺いしたいと思います。
  14. 高木文雄

    高木(文)政府委員 アメリカにおきましても、低い税率適用になりますのは年三万五千ドル以下の所得部分でございますから、やはり大体、日本と同じように六、七百万円くらいまでの部分についてでございます。それで、中小企業軽減税率の問題というのは、一つ法人の仕組みでございますから、当然、法人税の問題として考えなければならないのは言うまでもございませんが、それよりも中小法人の場合には、個人所得税累進税率とのバランスの問題、これが問題になるわけでございます。  それで、世界の中で日本が目立って特色がございますのは、日本企業が、非常に小さい規模の企業に至るまで法人組織をとる傾向があるということでございまして、よく御存じのとおり、法人の数が年に五%以上もふえるということで、現在約百三十万の法人があるということになっております。ちょっとしたお店であれば、大体、法人組織でやっていくというのが日本の姿でございまして、これは商法その他の関係もございますし、その他税以外の要素によってそういうことになっていった部分も多いのであって、決して税の問題だけではないと思いますが、やはり税の問題としても、個人とのバランスは絶えず考えていかなければならないということでございまして、どんどんと個人経営事業がいわゆる法人がえをするということが望ましい傾向かどうかということは必ずしも言えないのではないかと思うわけでございますが、そういう点も考えながら、中小法人税率考えるべきでなかろうかと思うのでございます。  今回の改正にあたりまして、法人税税率は改定をいたしませんでしたけれども、しかし、その低い軽減税率適用対象所得を三百万円からとりあえず六百万円まで、制度としては七百万円まで幅を拡大することにいたしましたから、結果的には所得が数千万円の企業につきましては、軽減適用幅が拡大をいたしたということになります。  その結果は、クロスポイントを見てみますと、ちょうど四十六年で申しますと、所得のうち三割を配当するものとして、七割を留保するものとして計算いたしました場合に、現行法の三百万円まで軽減税率適用のときに、所得千二百二十万円の方が四二・九九という実効税負担であったわけでございますが、今度の改正によりまして、片一方三六・七五の税率が四〇に上がりましたけれども軽減税率適用幅が広がりました結果、ちょうど千二百二十万円以下の方については若干軽減になる。それ以上の方は、三六・七五から四〇に上がるほうの上がり部分影響が大きくなって、そこから上は若干負担増になるというようなことになっております。その辺を頭に置いて、今回税率は据え置き、ただし適用範囲をその辺まで広げたということでございます。  しかし、御指摘のように、この問題は所得税軽減されてきたということもございますから、なお今後におきまして、法人軽減税率のあり方というものは絶えずよく見ていく必要があるわけでございまして、その点は増本委員のおっしゃる点をよく頭に置いて今後やってまいりたいというふうに考えます。いま直ちにこれをどうすべきか、どういうふうにいたしましょうということまでは申し上げかねますが、絶えず見ていかなければならない問題であるというふうに考えております。
  15. 増本一彦

    増本委員 アメリカ比較しましても、アメリカの場合は法人所得で二万五千ドル以下が二二%、これは今度ようやく七百万円に日本の場合に適用範囲がなって、大体とんとんくらい、いまの為替レートでいくと、三百円とすれば七百五十万円。これはアメリカは二八%でなくて二二%なんですね。国際比較だってこれだけ差があるわけです。これが一つ。  それから、局長がいまおっしゃった中小零細業者が法人成りしていくという問題は、一つには税金の問題が非常に大きな契機になっているということは、御承知だと思うのであります。ですから、所得税の面で、これはやはり人的控除を拡大し、そういう点で事業所得者も実質的な減税の恩恵が受けられるような手だてというものを一つは自主的にとっていくということも、非常に重要だというように思うわけです。  それからもう一つ、ついでに中小企業の問題でお伺いしておきますけれども、今回、同族会社の留保所得についても拡大がなされているわけですけれども、留保所得に対して課税するということを撤廃する、そういうお考えというのはないのでしょうか、その点はいかがなんですか。
  16. 高木文雄

    高木(文)政府委員 留保所得につきましては、いろいろ考え方があろうかと思います。しかし、やはり同族会社の場合には株主総会、その他を通ずる経営陣に対する監視というようなことがないわけでございますから、どの程度配当し、どの程度留保するかということは、いわば自由でございます。そこで、留保を予定いたします場合に、個人企業形態をとりますと、これは留保とか配当とかいうことと関係なく、事業所得に対して一定の課税が行なわれる、法人形態をとりますと、そこは留保なり配当なりといういろいろなテクニックがある、また給与の取り方等についてもある程度の弾力性があるということを考えますと、やはり過大な留保ということがありました場合には、留保は企業の体質を強化する面においては決して悪いことではないので、望ましいことでございますけれども、あまりにも過大な留保が行なわれるということになりますと、やはり問題はあるということから、個人形態の企業法人形態の企業とのバランスをとるという見地から、留保課税の問題があるわけでございます。  日本の場合には、まだ非常にいわゆる大企業といわれますものの中でも同族会社がございます。そういう見地からいたしますならば、留保課税を全廃をするというわけにはなかなかまいらぬと思うわけでございますが、ただ小規模の企業について留保をふやして、そして会社の実質的な基盤を強化をしていくということは決して悪くないことなのでございますから、そういう意味で、留保課税を漸次ゆるめていくということが望ましいと考えられるわけでございまして、ほとんど毎年のように何らかの形で留保課税の緩和を行なっておるというのはそのためでございます。御指摘のように、全廃をしてしまうということにはいささか抵抗感を感ずるわけでございますが、だんだんやめていく方向というか、軽減する方向というか、そういう方向に向かうことについては、御意見に賛成でございます。
  17. 増本一彦

    増本委員 そこで、これまでにも多くの委員から指摘がありましたけれども実効税率が高くなったといいましても、配当軽課制度がそのままで、課税所得の拡大が十分になされていない、こういうもとでは非常に法人税法そのものをゆがめたままで置いておくということになる。私は配当軽課制度を一体どうするつもりかということを、税制調査会の事務局に対してお伺いするのではなくて、政府としてどういう政策の選択をするのかという立場でお伺いしたいと思うのです。  確かに、法人税法の基本的な仕組みについての結論と相まってこの問題を処理するというのが税制調査会の答申でありますけれども、しかし、今日この段階まで、この問題は受け取り配当の益金不算入制度の問題とともに十分論議が尽くされてきてしまっている問題ですから、政府としてどういう政策の選択をするかということだけが、いわば政府の決断だけが残されている問題だというように私は考えるわけです。一体、そういう意味でどうするおつもりなのか、ここで明確な御答弁をいただきたいというように思います。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この問題は、非常に長い間検討されてまいりました。にもかかわらず、あまり明快な結論が出ていないということで、早く結論を出せというお気持ちをお持ちのことはよくわかるわけでございますが、しかし、そうはなかなかいかないわけでございます。なかなか結論が出ませんのは、やはりそこに問題の深さ、むずかしさということがあるからでございまして、にわかにそう決断を下すというわけにはなかなかまいらないのではないか。  何と申しましても、私どもから申しますと、日本の産業構造、企業の構造に問題がある。このように自己資本比率がどんどん低下をいたしまして、企業が借り入れ資本に依存している程度が高くなりますと、いわば金融機関の支配力というものが相対的に強くなるということでございまして、先般来、国会でのいろいろな御討論の中でも、企融機関の特定企業に対する融資ワクを設定したらどうだというような御議論さえ出ておる現状でございます。そのことは、やはり別の角度から、いまの日本企業の資本の構成がよくないということを別の表現で言っておられることになるわけでございますから、そちらのほうの角度からいたしますれば、配当軽課をやめろという議論にはならないわけでございまして、何としてでも相当な広範な手だてをもって日本企業構造の改善をしなければならぬという現状にある段階において、配当軽課制度をやめるということにそう簡単に踏み切ることはむずかしい現状にあるわけでございます。  ただ、私どもは、税の立場といたしましては、あくまでこの制度はおかしいといわざるを得ないわけでございまして、日本法人税制はあくまで配当につきましては受け取り段階での調整を原則といたしておるわけでございますから、その上に配当軽課制度があるということはおかしいわけでございますので、基本的にはなるべくそっちの方向に行きたいと思いますが、そっちへ行くのについては、ただいま申し述べましたような企業構造の点をにらみ合わせまして、しかるべき時期を選ぶべきである、もう結論を出すべきだということにはなかなかなりにくいという現状でございます。  そのことは日本だけでなくて、各国とも悩みに悩んでおるわけでございまして、御存じのように、最近イギリスも制度を変えました。若干、日本でいいます所得税の配当控除制度の拡大のようなことをやっております。ドイツは、配当軽課制度の縮小をはかっておるというようなことでございます。各国とも非常に悩んではおりますが、なかなかこういうものを全くやめるということにはならない、そこに法人税のむずかしさがあるわけでございます。そこをひとつおくみ取りいただきたいと思います。
  19. 増本一彦

    増本委員 ともかく企業所得がある、それに対して課税するというこの実態は、もう法人税の歴史が誕生してからずっと動かせない事実ですね。擬制説だとか実在説だとか、あるいは企業税でいけとか、いろいろな議論があるということも私も承知しています。しかし、そういう問題は問題としても、もう今日まで法人税という税が存在し課税をしてきたという実態を踏まえて、そこで税負担の公平をどうするかというもっとリアリスティックにものを考えれば、いま局長もおっしゃったように、こういう制度があるというのはおかしいんですね。これはもうはっきりしていると思うのです。  それからもう一点は、日本企業が自己資本比率が低いという問題は、これは自分の出した手で自分の頭を打つような議論だというように思うのですよ。税制当局それから金融当局はセクションは別かもしれないけれども政府として実際にもう過去この二、三年の歴史をさかのぼってみたって、金融については超緩慢政策もとってきたし、自己資本の比率を高めるようなそういうやり方というのは、むしろ逆にとっていないですね。やるとすれば、それも税制で誘導していこうということで、その面は租税特別措置を膨大に肥大化させていくというようなやり方でしかやっていない。だから、この制度をまずやめるということからふん切りをつけていくということが必要じゃないでしょうか。これは私は、ほかの面で税を重くする項目をつくるよりも、簡単にできる問題だと思うのです。配当軽課の適用所得昭和四十七年が、大蔵省からいただいた数字によりますと一兆一千三百九十二億円。法人所得昭和四十八年には四〇%の伸びだということですから、四十九年は、先ほど議論しましたように、私は低いと思いますけれども、一〇%とすると、全体で四十七年対比で五四%の伸びになるわけですね。これが同じように、同率で配当軽課適用所得伸びるとしますと、この法人税だけで二千百五億円も実は減税してやっているのと同じことになると思うのですね。これはもう明らかに税負担の公平をそこなっているということの典型じゃないでしょうか。いかがですか。
  20. 高木文雄

    高木(文)政府委員 二つのことをお答えいたしたいと思います。  一つは、増本委員おっしゃるように、配当軽課をやっても一向自己資本が充実してこないじゃないか、だから、これはあまり意味がないからもうやめてしまえ。いまの自己資本充実論はセクションは違うにしても同じ大蔵省の中のことなんだから、別途考えなさいということでございます。これはある意味において、私どもに対する御激励として非常にありがたく思うわけでございます。税はやはりあまり他の政策目的のためにいろいろな仕組みをつくっていくということは望ましくないので、そういう意味においてはなるべく単純明快であるべきでございましょうし、そういう点では配当軽課をやめ得るものならばやめるべきであると思うわけでございます。  ただ、しかし、一方において、明治以来日本の産業の発展過程におきまして、資本市場と金融市場とがアンバランスに発展をいたしてまいりました。諸外国の例に比べますならば、日本の場合は著しく金融市場中心に発展をしてまいったわけでございます。そのことがいいのかといえばそこは非常に問題でございますので、大蔵省全体として考えまして、金融市場と資本市場のあり方の問題との関連でものごとが判断せられるべきであるということでございます。私どもも何とかおっしゃるような方向にいたしたいと思いますけれども、そう簡単に踏み切るというわけになかなかまいらぬという事情は、長い歴史的背景とそれを直そうという方向とがあるということで御了解いただきたいと思うのでございます。  それから、配当軽課税率のために現在でも千二百億、あるいは四十九年度に置き直してみれば二千億以上の軽減をしているではないかという御意見でございますが、これは私はちょっと見解を異にするわけでございます。  法人の税負担は、大体どのぐらいがよろしいかということに一つ問題がございます。それで、今回政府が提案しております案では、実効税率を五〇%にしようということでございます。私どもは大体これで国際水準になったというふうに思っております。ただタックスベース、課税標準のほうにまでいろいろ問題があることは御指摘のとおりでございますが、税率水準といいますか、負担水準としてはこの辺のところがかなりいい、よその国との関係においていい水準になっているというふうに思います。もしこの配当軽課制度をやめるのであれば、四〇%の基本税率を下げるか、事業税を下げるか、法人の住民税を下げるかいたしませんと、配当軽課税率を上げただけで終わりということでありますと、実効税負担が四九・四七よりも上がってしまうわけでございますから、住民税や事業税に影響を及ぼさないで法人の税のフィールドにおいてこれを調整しようということであれば、配当軽課制度をやめるときには、今度は基本税率を下げなければいかぬという関係にあるわけでございます。  したがって、この千二百億なり二千億なりという問題が法人税軽減だということではなくて、これはいわゆる配当の多い法人と配当の少ない法人との間の調整の問題であるというふうに私ども考えるわけでございまして、配当軽課制度を将来何らかの形でやめて一本税率にするときには、四〇と三〇の中間のところに一本税率を持っていかなければならぬという関係にあるというふうに理解をいたしておりまして、そういう意味で、これが法人税の減収要因になっておるというふうには必ずしも考えていない。直ちに三〇を四〇に上げただけでありましたならば、法人の税負担水準が何%か上がっていく。そのことがよろしいというのであればまた別でございます。それはまた別の問題として議論するとして、全体の水準が五〇でよろしいという前提であれば、これを廃止して、それで基本税率据え置きということには必ずしもならないという関係にあるというふうに私ども考えております。
  21. 増本一彦

    増本委員 配当性向の高い企業に配当軽課制度が有利に作用している、それはおっしゃるとおりです。この配当性向が高い企業で税負担の不公平をもたらしているというのは、主として大企業ですよね。いま局長は、実効税率が五〇%をこえるようなことになるとまた一つ考えなければならない問題があるとおっしゃったけれども、だったら、所得、そして資本階級も考慮して、やはり法人税にも累進税率適用するようにしたらいかがですか。そうすればもっと配当性向の高い企業とその他とのバランスもとれるようになるでしょうし、あるいは配当軽課にまつわるいま指摘されたような欠陥の是正も、そういうような面での検討も必要ではないかというように思うのです。  ついでに、同じような問題ですが、受け取り配当の益金不算入制度、これも、時間がありませんから長い御答弁は要りませんけれども、配当軽課と同じような御趣旨のお考えなんでしょうか。その点はいかがですか。
  22. 高木文雄

    高木(文)政府委員 法人税累進税率を入れることは私どもはちょっと考えられないというふうに思っております。なぜ考えられないかというと、それは技術的に非常にもうどうにもならないというふうに思っておるわけでございます。それは少しこまかく申し上げれば御理解いただけると思いますが、時間がかかりますので、省略をいたします。  何と申しましても、資本別に税率を変える、あるいは所得別に税率を変える、あるいはその相互を組み合わして何かを考えるということでございましょうが、法人には例の期間計算という問題がございますので、また大企業ほど景気によって影響を受けやすいという関係がございますので、期間ごとに所得の出が大きくなったり小さくなったり波を描いておりますから、したがって、累進税率をやりました場合には、どうしても期間損益の調整の問題が非常に複雑きわまりないことになってまいりますので、非常にやりにくいことになるということでございます。  第二は、受け取り配当の益金不算入の問題でございますが、これは配当軽課の問題とは全く質の違う問題でございまして、二重課税をどうやって回避するかということでございます。二重課税なんかかまわない、親子間でありましても、どういう関係でありましても、どんどん課税してかまわないということであれば別でございます。その場合、もう配当の二重課税の調整をやらないということになりますれば、受け取り配当の益金不算入制度もやめまして、それから所得税における配当控除もやめればよろしいわけでございますが、そうなりますと、日本のように中小企業の同族会社が非常に多い場合には、そこがもろにショックをかぶることになります。現在、中小企業では株主さんが大体一人か二人の方に片寄っているわけでございますから、中小企業が配当いたしますと、その配当を受けた中小企業者は、今度は所得税のほうで配当控除ということで調整を受けているわけでございますが、それが全くなくなるということになりますと、これはまたそこに非常に大きなショックが出ます。  それから、いわゆる大企業のほうにおきましては、今度は親会社、子会社を持ち、孫会社まで持てば三重という課税になってきますから、企業集中が行なわれるということになっていくわけであります。むしろそういうことのためには、前提としては一種の連結決算制度か何かをさらに研究していきませんと、簡単にいかないというふうに思います。配当軽課制度というのは一種の政策制度でございますが、受け取り配当の益金不算入制度、配当控除制度は税法上の仕組みの問題でございますから、別の意味でこれはなかなか簡単ではないというふうに思います。
  23. 増本一彦

    増本委員 いま御指摘法人の期間計算等の問題は、これをそういう面でより複雑にしているのは、法人税本法と租税特別措置との税務会計と企業会計とのやり違いや、いろいろそういう問題からも派生している問題だというように思うのです。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 ですから、本法の引き当て金、これは損金経理ですから、ここのところの縛りや整理もきちっとし、租税特別措置法の場合には利益処分で損金経理というものは必要条件になっていない、こういうところの関係をきちっと整理をするということによってその複雑さというものは大いに緩和できるし、いま御指摘になったように、連結決算その他も、やはりきちっとさせて縛りを強めていくというようなことも考えなければならない問題だ、そういう形で解決できる問題だというように私は思うのです。この受け取り配当の不算入額を見ても、四十七年で二千五百二十一億円ですね。やはり四十九年は、四十八年を前提にしても五四%アップだとすると千五百五十三億円。こういう面が税収で大きくブレーキになっているという問題は、私は否定できないと思うのです。法人税法の基本的な仕組みの問題だというようにおっしゃいましたけれども、基本的な仕組みであれば、もっと論理的な斉合性というものを大いに尊重される必要があるのではないか。特に、法人実態との関係でいけばもう実在説だということになっているし、そういう議論を抜きにして考えても、法人というものが所得を得ていればそれに対して課税をしていくという実態は、やはりきちんとあるわけですね。だから、そういう意味でも、この問題はひとつリアリスティックにとらまえて考えていく性質の問題ではないかというように思います。これは非常に消極的な御意見なので私は承服いたしかねるということを申し上げて、次に移りたいと思います。  ところで、政府がおっしゃっている租税特別措置の中には、実は先ほど局長お話しになった個人の受け取り配当の税額控除などの調整の問題、あるいはいまお話ししました配当軽課制度、受け取り配当の益金不算入、それから引き当て金、それから本法上の増加償却、あるいは国庫補助金や買いかえ資産に関する圧縮記帳とか、譲渡所得、一時所得、山林所得、退職所得などのいわゆる課税所得計算の特例、こういうものは含んでいないのですね。これが私はたいへんおかしいというように考えているのです。労働者やサラリーマンは、御承知のように給与所得控除しか認めず、いわば収入がまるまる課税対象になる。中小零細業者や自由職業者、農民という人たちは、自家労賃が不完全にしか控除されていない。ところが、いま七つあげたこういう制度というのは、みんな課税所得あるいは税額の計算についての特例を認めている。これがやはり税負担公平の原則という点から見ると例外になっていると思うのです。ですから、こういうことも税負担公平の原則の例外に当たる制度なんだということをはっきりさせて、租税特別措置と同様にこの減免税の実態というものを国民の前にはっきりさせて、そして税負担がより公平にいくように、そういう意味での問題の提起をやはり政府としても大胆にやり、そして国民の立場からもいろいろな意見をくんで、より正確で適正な税制というものをつくっていく必要があるのではないか、こういうように考えるのですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  24. 高木文雄

    高木(文)政府委員 租税特別措置による減収額試算ということで国会にお示しいたしておりますものにつきましては、どこからどこまでの範囲のものをお示しすべきかということはいろいろむずかしい問題がございます。したがって、ただいま御指摘になりましたものの中にもいろいろの性質のものが混在をしておるということではないかと思います。まあいまおっしゃいました中で、たとえば退職所得の特別控除のような場合には、これは何ぶん二十年なり三十年なりの間の勤労に対する一種の対価として支払われるものでありますから、そこでやはり何らかの意味において老後の生活に備えるという意味もありましょうけれども、いずれにいたしましても、そういう長い期間の勤労に対する対価的な性格を持っておる関係で、その特別控除額というものをいわゆる政策的な特別措置と見るべきものなのか、むしろ基本的な控除額と考えるべきものなのかというような議論があるのではないかというふうに思われます。  山林所得のことにお触れになりましたが、山林所得についてのもろもろの特例というのは、やはりこれは山林所得特有の、現在の所得税では律し得ないものがあるからそこに出てきておるわけでございまして、また山林所得についてはなかなかこれは現実問題としてどういうふうに計算を出すのかというような問題がありまして、いまのところ特別措置としては計算をお示しをいたしていないということでございます。  それから、増加償却等につきましては、これはむしろ償却の年数が省令で一律にきまっております。しかし、ある現場におきましては、その省令をきめます際に頭に置きましたような機械の使い方をするのでなしに、もっと激しく機械を使うということでございますから、現実に機械がどんどん消耗していっているわけでございますから、それは片方において、税法上償却制度を弾力的にしないで一律に年限をきめていることによる矛盾を一種の救済をしているということでございまして、これをはたして特別措置的ないわゆる政策的なものと考えるのか制度的なものと考えるのかというあたりに、議論がいろいろあるわけでございます。  いまほかにもいろいろおあげになりましたが、一つ一つについて相当基本的にどういう性格のものかという問題があるわけでございまして、この特別措置による減収額の表は、これはこの当委員会におきますところの十年以上の長い間の御審議の過程を通じて、こういう計算をやってみろ、それはなかなかできませんというようなことを申し上げながら、積み上げていって計算してきたものでございます。多分に経緯的、慣例的なものでございます。したがって、おっしゃるように、理論的にはこのほかにもまだあるいは計算すべきものがあるかもしれないと思います。思いますが、いまおあげになりましたすべてについてそういうことが可能かどうかは、一つ一つについて相当検討し論議しなければならない問題だと思っているわけでございます。また、いまここに掲上しておりません非常に多くのものは、実際上計算不能というようなものが多いということもお含み願いたいと存じます。
  25. 増本一彦

    増本委員 私が申し上げるのは、結局、一般原則に対する特例、例外を認めて、その例外を認める制度の趣旨、それが合理性があるかどうか、これは合理的なものであれば、そして現実の問題から出発して、たとえば退職所得の場合、一定の程度のものについては当然労働者なども引き上げを要求しているわけですし、現実の経済実態から見れば合理性を持っている。それは当然国民の合意の得られる問題だと思うのです。しかし、そういうのにまぎれて、何か制度に合理的な理由があるのかどうかということも国民自体がはっきりしない、あるいはそういう制度があるかないかということ自身もはっきりしないというような問題が、いま私が指摘したような問題の中にもたくさんまぎれ込んでいる。だから、これを根本的に洗い直して、そして税制はこういうぐあいに一般原則と特例で成り立っているんだ、これをどういうふうに改廃、合理化して、そして整理をして、いいものは残し、悪いものはそれを直していくというようにしていくかということで、もっと大蔵省当局がそういう面ではっきりさせる必要があるんじゃないかという趣旨で私は申し上げているわけです。  一般的に言えば、経済学的に、あるいは財政学的に言えば、こういう所得計算あるいは税額の計算の特例というのは、国庫補助金とか、あるいは無利子の国庫融資をしてやっているのと同じような結果にもなっているわけですね。税金を特別にまけてやったり、あるいは特別償却で一時に払う税金を繰り延べしているということですからね。だから、それだけにその制度の合理的な根拠というものを国民がやはりはっきりと理解するような手だてをとるということが何よりも重要だというように思うわけです。よく納税義務の高揚とか、いろいろ言いますけれども税制の仕組み全体が、そうしてその中でどういうようにこの特例があり、それがどういう機能を果たしているのかというようなことが多くの国民の理解が得られていないような状況で納税義務の高揚だなんて言ったって、それは片手落ちだというようなことでもあると思うのですね。だから、そういうことではっきりさせていただきたい、こういう趣旨なのです。いかがですか。
  26. 高木文雄

    高木(文)政府委員 若干は十分同感するところがあるわけでございます。一つはっきりさせておきたいのは、特別措置ということでいままで御提示をいたしておりますものは、ただいまお触れになりましたように、何らかの意味において個人または法人に対する補助金的なもの、あるいは金融助成的なものという意味で、そういう政策的な意図で導入されておる制度を租税特別措置によるものというふうに認識をしておるわけでございます。  それに対しまして、別途仕組み的なものと申しますか、別の表現をとりますと、本法的なものというものは区分をして考えているわけでございます。しかし、本法的なものといえども決して問題がないわけではないわけでございまして、しばしば当委員会で御指摘を受けております金融機関に対する貸し倒れ引き当て金のごときは、本来制度的には本法的なものと申しますか、会社経営において当然認められるべきものだと思いますが、その率の立て方なり仕組みのあり方というようなことになってまいりますと、御批判を受けなければならぬ点がいろいろあろうかと思いますし、さればこそ最近わずか数年の間に二回にわたり改正をお願いしておるということでございます。  でございますから、そういうことについては、やはり本法的なもの、基本的なもの、仕組み的なものとい、えども随時洗い直しを行なうべきであり、それがためには広くその実態を見ていただいて、そうして御批判を仰ぐということの態度で臨まねばならぬと思うわけでございます。ただ、それが持ちます意味というものを、政策的なものと本法的なものとを区別してお考えいただきたいという気持ちで先ほどちょっと申し上げたわけでございます。それは現在の段階では国税庁で集計をいたしまして発表いたしておりますもろもろの印刷物等によって御承知願える状態にはなっておるわけでございますけれども、しかしなお、不十分の点がいろいろありますということは御指摘のとおりでございますので、どういう方法によったらよろしゅうございますか、私どもも多くの方に知っていただけるような方法を今後とも研究をいたしまして——何かいやしくもそれを世の中に明らかにすることを避けて通っているかのごとき印象を持たれますことをむしろおそれるものでございます。そうしてぜひそれを広く批判をしていただきたいというふうに考えます。
  27. 増本一彦

    増本委員 それじゃ区切りがいいですから、いまの局長の御答弁で大いにそういう点は明らかにしていただきたいというように私は思うのです。  実はいろいろ調べたのですけれども、たとえば国庫補助金や買いかえ資産に関する圧縮記帳、この実態なんかも実は何にもわからないのですよ。これは数はそう多くないでしょうから、そういうものまで含めて、ひとつ全般的にこの点は考えていただきたい。特に、税金をまけてやっている手口といいますか、ことばは悪いですけれども、そのやり方を見ましても、非課税とか分離課税、税率軽減、こういうのは法人税法の基本的な原則から見てもどうかなという点もあるし、それから所得税法の高度累進税率をこわしているという面もある。それから課税所得計算の特例は、やはり所得を減らし、損金をふやすとか、課税所得に例外を認めて——実はここが大事だと思うのですが、企業会計原則と税務会計との間の乖離をつくり出す一つの原因にもなるんですね。本法では引き当て金は損金経理だ、租税特別措置利益処分だ、損金経理が絶対条件になっていないというようなところの問題が、非常に重要な問題だというように思うのです。そういう会計学上の面から見ても、あるいは税法上の面から見ても、こういう制度についてはいろいろ問題がある、だからこそその制度の合理的な根拠、理由というものがやはりはっきりしていないと、そしてなぜそういう仕組みがつくられているのかということ自身がもっともっと明確になりませんと、やはり今後税制をどうしていくかという問題について、当委員会での論議はもちろん、国民の中でも高まっている税に対する関心に正しくこたえていくということができないというように考えるわけです。その点での善処を強く要望申し上げて、ちょうど区切りがいいので、午後にあと質問を回さしていただきたいと思います。
  28. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  29. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦
  30. 増本一彦

    増本委員 午前に引き続きまして、政府当局にお伺いしますが、午前から言及してきましたけれども租税特別措置法による準備金、特別償却は損金経理が絶対条件でない。本法の引き当て金その他の、かりに本法上の特別措置と言っておきますが、これは損金経理が原則になっている。そこから公表利益と課税所得との間にやはり大きな隔たりが出てきているという問題があるわけですね。法人税法上の特別措置は損金経理が原則のために、課税所得の過少計算が生まれる。これは公表利益の過少表示。特別措置法の場合には、準備金、特別償却は損金経理が絶対的条件ではなくて、利益処分として費用化することができる。これが公表利益の過大表示になって、いま申し上げた公表利益と課税所得との間の隔たりを大きくしている。これは、企業会計が一義的に真実を反映するという立場から見ると非常に重大な問題だし、そういう意味で、企業会計の公的性格というものも、これ自体もともと神話であるというように私たち考えますけれども、その神話すらくずれてきている。これを一体、税制の立場でどういうように処理をすべきなのか。現実の問題として政府がこういう問題に対してどういう検討をし、どのようにこれを改善しようとしているのかという点を、まずはっきりさせていただきたいというように考えます。
  31. 高木文雄

    高木(文)政府委員 第一義的には、企業会計の上に立って所得計算を行なうべきである。ただ、もろもろの租税特別措置というものは本来の企業会計上のたてまえとは全く違う立場から、政策的な見地から行なわれておるものでございますから、必ずしも企業会計上の経理処理と一致さすことを強制といいますか、必須条件とするという必要はないという考え方に立っているわけでございますが、その辺の細目については私自身あまりつまびらかでございませんので、一課長から答弁をいたさせます。
  32. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 ただいま局長の申し上げましたとおり、課税所得計算は、一応公表決算と申しますか、そういうものにまず第一義的に乗ってそれに租税政策上必要な除加算等を加えて課税所得を把握するというのが現在の法人税制のたてまえかと考えております。したがいまして、税は執行を持っておりますので、その執行上の問題も含めまして、従来、昭和三十八年ごろまでは一応全部損金経理、いわゆる確定決算基準をとっておりました。しかしながら、やはり商法の改正が行なわれ、あるいは企業会計も次第に固まってくるというふうなこともございまして、われわれといたしましては、商法並びに企業会計考え方、これを税の面からじゃまをしないというたてまえをとるということから、昭和四十二年の改正において、租税特別措置法に関する準備金、特別償却について、これを利益処分によって行なう方法を認めたわけでございます。  したがいまして、ただいま局長の申しましたところを骨にいたしまして、現在の税の形と申しますのは、税制計算上商法に反し、あるいは商法に反することを税がすすめるようなそういう形を避けておる。大体どのような商法あるいは企業会計にのっとって計算が行なわれましても、これに対して税が対応して計算ができるような形にされております。
  33. 増本一彦

    増本委員 しかし、それがあなた方がおっしゃるとおりに実際の面でいっているかどうかということ、それからもう一つは、租税特別措置の中でもそういうものを企業会計原則に一致させていくということを、実はそれすら無視しているものもあるわけですね。たとえば、例のドル・ショックのときにできた長期外貨建て債権の為替差損の問題でも、これは会計処理すら必要なしに、ただ納税申告だけすればいいというたてまえだったわけでしょう。こういうものがあるし、だから、もうそこで企業会計原則を基準にするんだといっても、こういう制度でまず一つはこわしている。  それからもう一つは、たとえば貸し倒れ引き当て金にしましても、実際の補てん額と、それから純増で積み立てるその内訳の中には、それを将来の貸し倒れの見込みまで含めてやるために、これが損金経理になっていながら、やはり長い間の経理の慣行ということで、実際の実態企業会計原則ではっきり見るというんじゃなくて、いわばこの貸し倒れ引き当て金で積み増していった分がどんどんふえて、それが過剰流動性になって高度成長をささえたり、そして今日の悪性インフレをもたらすというような面でも、もう完全に破綻しているというか、ほころびが実際に非常に大きくなっている。それをまたそういう制度をつくっていっている、こういう問題があるんじゃないでしょうか。  ですから、ここのところをどうするかということが一つ緊急の手だてとして必要である。ですから、抽象的、一般的におっしゃるだけでは、いまの公表利益と課税所得との間の大きな隔たりというものを解決することができないというように私は思うのですよ。その点で、ではこういう問題を真剣に皆さんが御検討になっていらっしゃるのかどうか、そこの点も含めてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  34. 高木文雄

    高木(文)政府委員 企業会計のあり方と税のあり方とをどの程度結びつけていくべきか、またどの程度離れたものであることを容認していくべきかということは、非常にむずかしい問題でございます。企業会計のたてまえというものも、これは御存じのように、必ずしも法令上のものではございません。一つの経理基準であり、それが公認会計士の監査基準であるということで動いているということもあります。そういうものによってあまり税そのものの計算が強く動かされるということはいかがかという議論も一方から出てまいりますし、一方からは、やはり税だけの立場で所得計算を左右するということではいけないということから、大原則は企業会計考え方の上に乗っていくんだという考え方に立ちまして、もろもろの政策的なものはそれとは切り離して、特別措置で処理をするという考え方になっているわけでございます。  おっしゃるとおり、そのことについての基本的態度というものは抽象的に論じましても意味がないわけでございまして、個別個別の具体的な制度などをつくります際に、私どもかなり慎重に論議をしておるつもりでございます。その中で、ただいま御指摘になりました長期の為替差損益の調整の問題などは、それを意識をして企業会計考え方と切り離して処理をした最も典型的な例でございます。あの場合は、いい悪いは別といたしまして、長い間なれ親しんでまいりました三百六十円というレートから切り離れていく。そうして主として造船なりプラントの輸出につきまして、三百六十円というレートを前提にして長期の契約が結ばれておる。それから造船会社その他は為替上の一種の保険をする道が閉ざされておった、強い為替管理がございまして、それが閉ざされておったというときに突然ああいうことがあったという場合に、何らかの調整措置が必要だと思われますが、その調整措置を商法上の措置として考えるか、また企業会計上の措置として考えるか、税法上の措置として考えるかということが非常にむずかしかったわけでございます。あの際にはあまりにも急激なショックであるということでございますから、何らかの処理をしなければならぬということで、実質的には損失が出た。したがって、本来配当ができない状態にあるが、その損失を一挙に計上することを企業会計上も強制をいたしませんで、そして税務上は実態に即して、実際損が出ておるわけでございますから、それは税務計算上は損として申告調整で認めるという、きわめて特例的なことを行なったわけでございます。これはまさに最近行ないましたもろもろの租税特別措置の中でも最も企業会計と商法と税務会計との間の調整に難渋した事案でございまして、しかし、その場合でも、そこのところを踏み越えることのよしあしということについてはかなり当時慎重に検討もいたしましたし、御審議も求めたつもりでございます。  その他いろいろの点につきましては、個別には検討いたしておるつもりでございますが、御指摘のような問題は、法人税法の持ちます宿命的な基本問題でございますので、長期的にも私どももまた商法も企業会計もそれぞれ考えてまいらなければなりませんし、また、個別具体的な条項の処理につきましても、慎重に検討していかなければならぬと思っておるわけでございます。
  35. 増本一彦

    増本委員 企業会計の面では、上場会社については有価証券報告書等々の一定の公開の問題があるわけですけれども、税務会計の場合にはそれがない。ですから、実際にどのくらいの隔たりを持っているのか、現在の法人税法租税特別措置法によって、この課税所得と公表利益との間の具体的な隔たりの実態というものが、実は国民の前にも明らかになっていないという問題があるわけですね。現にインフレを抑制し、物価を押えていくために大企業の経理を公開したり、あるいはそういう問題も国会での審議に付すべきだという意見や世論も強くなってきていることは、皆さんも御承知だと思うのです。ですから、現在の税制企業会計原則とのあり方の問題そしてそれが実際にどういう実態になっているのかというようなことも、もっと国会の場では明らかにされてしかるべきではないか。そういう問題から、やはり特に法人の課税所得を拡大し、そして税負担の公正もはかっていくというような手だても、私は必要になってきているというように思うわけです。  ですから、まず、御検討なさることは大いに御検討していただくこととして、この具体的な隔たりの実態をやはり当委員会等にも、たとえば資本金十億円以上の企業で大体どういう実態になっているのかというような問題を、これを資料として提出されて、全体の検討に付して、この国会の場でもそういう問題についての検討を加えていくというようなことで、積極的に政府の側でもそういう姿勢をお示しになるべきではないかというように考えるのですか、この点はいかかでしょうか。
  36. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいま御指摘になりました点は、企業会計上の計算と税法上の計算との乖離が非常に大きくなっておる面があるから、そこを何らかの形で明示すべきだということでございますが、その御主張なさるゆえんのものは私どもも十分理解できるところでございます。何らかの形においてその乖離の状態というものを明らかにすることが必要であるということについては、基本的には私も同意見でございますけれども、個別企業の問題、あるいは所得税でいいますれば個人の問題ということになりますと、これはまたきわめて重要な問題でございまして一個人あるいは企業の秘密を保持することが、秘密性の保持という意味において必要であるというだけにとどまらず、その職務上知り得た秘密を守ります、表へは出しませんということが現在の申告なり税務調査の基盤になっておるわけでございまして、その一線が守れませんときには、いろいろな意味において、申告につきましても、また調査につきましても、それが公表されますことによるところの影響を考慮した個人ないし企業の自己防衛本能が働いたような行動というものがとられてくることになりますので、一面においてその両者の乖離を把握する機会を持つべきだ、国会において明らかにすべきだという面では、御主張はわかるのでございますけれども、反面におきまして、またそれによる弊害がきわめて大きいということで、長年にわたりまして国会におきましても課税状況あるいは申告状況の公表ということは議論はされておりますが、やはりより守秘義務を重視するという点で今日に至っているわけでございます。これは言ってみれば永久の課題のような問題でございますが、私どもの申します守秘義務の持ちます意味というものをひとつ理解をしていただきたいと思うわけでございまして、にわかに所得その他の公表というわけにはまいらないと思うのでございます。
  37. 増本一彦

    増本委員 しかし、特に大企業の場合には、先ほども局長も認められたように、この租税特別措置というのがいわば国庫からの補助金的な性格を持ったり、あるいは国庫融資の性格も持っている、こういうもので積み増されて成り立っているという事態考えれば、それがどういうように運用されているかという点の点検、検討というのは、当然われわれ国会の場でもやって、よりよい税制を生み出していくということが必要だし、そういう意味では大企業企業の秘密ということを云々する資格すらないというように私は考える。  国税庁にお伺いしますけれども、いまの議論で明らかなように、課税所得と公表利益との大きなアンバランスがある、こういうものについての実態の調査というものはおやりになっているのでしょうか。もしおやりになっていないのだとすれば、これこそ十分に追跡調査し、検討し、その実態は国会にも報告をされるべきではないか。企業の個々の名義は出さなくても、それはこういう実態なのだということがさらに明確になっていくことが、これは執行面でも非常に重要な問題だと思いますが、いかがですか。
  38. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 個別案件の事跡につきましては、ただいま局長お話しのように守秘義務の関係がございまして、特に任意調査でございますと、それぞれの調査官と納税者との間である程度お互いに秘密を出さないという前提でいろいろ調査が行なわれておりますので、これを出すことは将来の調査に非常に悪影響があるので、われわれとしてはこれについてはお出ししないことにしております。ただ、いま御指摘のように、全般的な問題といたしまして、その間の乖離と申しますか、公表利益と課税所得との乖離の問題等につきましては、私どもとしては、現在は法人の各種の統計は、これはまた仕事の都合と営業関係で最小限度にやっておりますが、その間で統計的な数字としてどの程度これが分析できるか。それから、またさらに、最小限度の数字しかとっておりませんので、できない場合に、国税庁といたしましては、サンプル的にかなり悉皆がわかるような、全体がわかるようなサンプルで法人企業実態調査というのをやっておりまして、これに基づいてできるだけ法人の課税の実態等を把握したいと考えて、そういう調査をやっております。
  39. 増本一彦

    増本委員 いまの次長のお話を聞いても、特別深い問題意識をお持ちになっていないように感じるんですね。その点、私はたいへん遺憾であるというように思います。こういう問題について、やはり集中的に意識的にこの実態を正確に把握し、その面から企業会計原則との間の乖離を縮め、そしてその実態が具体的に問題ならば問題だとして、少なくともトータルだけでもわれわれにも調査の結果を報告し、国会の審議の場にのぼせていくという姿勢と態度というものが必要ではないかというように思います。  時間がありませんので、問題は次に移りますけれども、本法の引き当て金を見ましても、いろいろ議論はありました。貸し倒れ引き当て金がいろいろ問題だ。退職給与引き当て金も問題がある。賞与引き当て金も問題がある。いろいろこれまでにも各委員から御指摘がありましたけれども、私も試算してみますと、この資本金十億円以上の企業で積み増し分を見てみますと、昭和四十七年で貸し倒れ引き当て金で四百九十二億円。ですから、もっと縛りをきかせていけば、実質的には税額は百八十一億円くらいになる。退職給与引き当て金も積み増し分だけで二千六十六億円、これも税額で見れば七百五十九億円、賞与引き当て金も資本金十億円以上で見れば、積み増し分が五百六十八億円、税額で見ても二百九億円というような、こういう金額になっていくわけですね。この三つの引き当て金だけで一千百四十九億円くらいになる。こういうことを見ますと、これが四十八年の法人所得伸びなどを考えれば、さらに利益の過少表示につながっていくだろうし、現に十二月の決算を見ますと、利益を隠そうとして、退職積み立て金やあるいは引き当て金をさらに大幅にふやしているというような決算もあるわけです。キッコーマン醤油なんていうのはその典型だと思うのです。こういうところで資本金の大きな企業についてやはりもっと縛りをきびしくし、税収の確保も進めていくというような手だてというのが必要なのではないか。洗い直し方式にしたというようにおっしゃるけれども、しかし、いまの実態経済から、さらにその辺についてのもう一歩突っ込んだ検討というものを私はすべきであるというように思いますが、その点はいかがでしょう。
  40. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私は引き当て金については、やはりその債務性なり、それからいままでの会計慣行として認められてきつつある実態なり、それから漸次各企業がこれらの制度の利用をふやしつつあるという実情なりからいたしまして、一種の政策的な特別措置法によりますところの各種の措置とは違いまして、本来の企業会計の経理の健全性というものと税務上の財源確保の必要というもののいわば一種のぎりぎりの妥協点として認められてしかるべきものではないかというふうに基本的には考えております。ただ、貸し倒れ引き当て金につきましては、現行の税法上の率が妥当であるかどうかというような内容的な点につきまして、制度ではなくて、具体的な積み方の点等につきまして問題がございますので、それらの点については、単純なことばで申しますれば、少し甘過ぎる点もありますので、これは是正を重ねていかなければならないと思うわけであります。  なお、いまおあげになりました数字でございますけれども、これはやはり経済が大きくなってまいりますれば、貸し金もある程度はふえるわけでございますし、人件費がふえれば退職給与の引き当て金の所要額もふえるわけでございますし、賞与も同様の実情にあることを考えますならば、その積み増し額が直ちに政策的な減税であるというふうには理解できないのではないか。その伸び方が経済伸び方に比べて著しく大きいということであれば、考え直さなければならないわけでございますけれども経済伸び方に応じて積み増しが行なわれていくという程度であれば、それは認容されてしかるべきものではないかと思います。
  41. 増本一彦

    増本委員 実態を見てみますと、いま局長もおっしゃったように、貸し倒れ引き当て金などというのは、これはどこで債務性の線を引くかということを考えても、実態から非常に隔たって、これがいわば過剰流動性の大きな原資になっておる。これは批判が集中してきた点ですよ。ほかの退職給与引き当て金にしましても、賞与の引き当て金にしましても、実態や運用がどうなっているのか。債務性があるとおっしゃるなら、どこで線を引くかという点まで含めた具体的な検討というものをいまやなすべき時期にきているのではないかと思うのです。この点は後ほど揮発油税その他の石油の問題と関連しまして、私は夜の大臣への質問でさらに申し上げたいと思いますので、これはこの程度にしておいて、問題の指摘だけにとどめたいと思います。  時間が来ましたので、あと一つの問題だけ国税庁にお伺いをしたいと思います。  税務調査の問題なんですが、ごく一般的にまず伺いますけれども、中小零細事業所得者に対して税務調査をする場合の職員の心がまえとか、あるいは職員はどういう事態のもとで調査というものができるというように指導なすっておられるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  42. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 税務職員の調査におきましては、二つの面から私どもとしては大ざっぱに分けて指導しておるわけですが、一つは、税法上から見まして、あやまちのないように、特に質問検査権の行使につきましては、税法の定めているとおりにやるように、いささかもそれを逸脱することのないようにということを厳に戒めながら指導しております。  もう一つは、できるだけ納税者に対しては親切に当たるように、申告納税の本来の趣旨から見まして、納税者の言うことをよく聞いて、そして親切にやるようにという点で配慮いたしております。もちろん納税者によりましても、申告等について、あるいは調査の際の応対等について、非常にすなおに応じていただく場合とそうでない場合とございますが、基本的には、質問検査権の範囲内で、それを逸脱しないように、税法の執行を確実にやると同時に、納税者に対しては親切に調査をやるようにという態度で指導をしております。
  43. 増本一彦

    増本委員 いまのお話にありましたけれども、たとえばこういうのはどうですか。私のところにこういう手紙があります。これは税務署長が納税者に出した手紙なんです。  「法人税調査に関する質問書」、「貴社の法人税調査に関して必要がありますので、別紙の質問事項について昭和四十八年十一月二十四日までにご回答下さい。」十一月の十七日の日付になっているのです。「なお、この質問は、法人税法第百五十三条(質問検査権)の規定に基づくものですから、もし回答をしなかったり偽りの回答をした場合には法人税法第百六十二条第二号の規定により一年以下の懲役または二十万円以下の罰金に処せられることがありますので念のため申し添えます。」  こういうのを納税者に送りつけて、そしてそれに回答しろ、回答しなかったら一年以下の懲役または二十万円以下の罰金だ、こういうやり方というのは、いま次長が言われたその基準から見てどうなんでしょうか。
  44. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 庁といたしましては先ほど申したような方針でやっておりますので、その場合、質問検査権のことまで、しかも罰則のことまで書いたのは、私どもから見ましたならば、いささか行き過ぎではないかと考えております。
  45. 増本一彦

    増本委員 非常に穏当を欠くという御答弁なので、次に移ります。  納税者のところに実調で行きますね。これに酒を飲んでいくというようなことはどうなんですか。
  46. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 好ましくないと思います。
  47. 増本一彦

    増本委員 納税者から飲酒の事実を指摘されて、その事実が明らかになった、こういうときにはどういうような処置をとったらいいのでしょうか。
  48. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 問題は、その朝飲んだのか、前の日に飲んだかの問題でございまして、御指摘の場合には、おそらく前の日に飲んで、非常に特殊な体質のために若干酒が残っていたということを実はある案件で聞いておるのですが、その問題の場合ではないかと存じますが、ケース・バイ・ケースによりまして、その朝飲んだというようなことであれば、先ほど申しましたように、われわれとしては絶対いけないことだと考えております。
  49. 増本一彦

    増本委員 その前の晩に飲んだ残り酒だったらそれでもいいのですか。納税者に対して親切にする——納税者との間に、少なくとも公正さというものが、その中に納税者のほうに感得できるような、そういうものでなければいけないと思うんですよ。だから、少なくともそういう場合には行くことすら差し控えるということのほうが、一番最初に次長が言われた、その基準にかなっているというように私は思うのです。ゆうべ飲んだ酒だったら、それはかまわないというような性質のものではないと思うんですがね。どうでしょう。
  50. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 本件の場合には、おそらく本人は前日飲んだお酒が残っているということをあまり知らなくて行ったのだろうと思いますし、どの程度残っていたか存じませんが、これが実は問題になりましたので、私どもとして調べてみましたところ、かねてやはり本人としては、からだもあまりよくないので、なるべく飲まないようにしていたようでございますが、たまたま前日おそく隣の人が入院いたしまして、その方を非常によくめんどうを見てあげたということで、あとで少しお酒を飲んだようでございまして、それがやはりからだの状態であるいは翌朝まで残っていたかもしれないというケースではないかと思います。その場合にでも、明らかに酒のにおいがあるような場合には遠慮すべきだろうと考えております。
  51. 増本一彦

    増本委員 次長は、具体的な事実に関連させてお話しになった。私は、そういう具体的な事実をこの問題であれすると、当然その職員の名前や何かにまで触れるようなことになったりするといかぬから、また所属の税務署まで暗示するようなことになってもいかぬと思うから差し控えていたのですけれども、結局、こういうように納税者に不信を持たれるような事態になったら、その人が最後まで担当して更正決定までやるというようなことは、私は少なくとも両者の、まあ対立関係や対抗関係みたいなものはあるかもしれないけれども、しかし、少なくともその更正決定について無用の一つの紛争の種を持つと思うんですよ。  あなたが具体的なケースに関連させて申されたから言いますけれども、上司のほうは、その職員ははずして、別の人にこの更正決定についての最終的な結論は担当させるということを言っておったらしいのですが、結局、その人の担当であるかのように、最後まで電話やその他までかけてきて、かなり短期間に更正決定まで出ているという事実もあるわけですね。ですから、私が言いたいのは、こういう状態というのは、一つにはほんとうにまだ納税者の権利を尊重するというような立場での教育というものが行き届いていないというか、あるいは実際にどの程度やられているのかどうかということに非常に疑いを持つわけです。  もう一つは、所得計算そのものについての紛争ですね。これは大いにあると思うのです。特に、納税者の自覚が高まってくれば、税務署との間にそういう計算関係上のいろいろな問題が起きるのは当然だと思います。しかし、それ以外の調査の過程や調査の手続上で起きた問題、しかもこれがそういう公正らしささえ疑うような事態になるということ自身、これは大いに戒めなければならないというように考えるんですよ。まずその点は確認していただけると思うんですがね。それを確認していただければ、最後に一言、意見だけ申し上げて終わりたいと思うのですが……。
  52. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 本人がその翌日あるいはその以後に正常な状態に戻っていた場合には、やはり署長といたしましては、その人を担当の案件に当てるか、あるいはほかのほうの案件に当てるかは人繰りの関係もあると思いますし、それぞれ署長の判断でなすべきことだと考えております。まあ一般的に申しまして、私どもといたしましては、できるだけ納税者の信頼関係を保った上で仕事をしていくという立場は基本的に変わっておりません。
  53. 増本一彦

    増本委員 いや、私が言っているのは、それは正常に戻れば、酒の酔いがさめれば、そのあとやってもいいと言うけれども、それ以前の段階でトラブルが起きていたときに、それでその更正決定の中身は真実を反映しているんだからいいんだということだけで押し通せるのかどうか。それで納税者の納得が得られるかという問題なんですよ。このケースでいけば、二人で行っているんですよね。一人が酒を飲んでいて、一人はしらふだった。だから、その人が調査に携わっているんだったら、しらふのほうがあとそのままやれば、それでもまだ公正さは少なくとも保障できるという面があったかもしれない。ところが、そういうことが全然なされていない。その一方で上司のほうは、人をかえるということまでほかの関係者には話をしているという事実もあるんですね。だから、あなたのおっしゃることだと、しらふになればそれであといいんだということで、はたして納税者の納得が得られるのかどうかという、そういう問題だと思うんですがね。私は、その点はどうも次長の答弁は納得できないんです。
  54. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 本人の体質的な問題で、前夜、そういうやむを得ず酒を飲んだというケースでどこまで責められるかの問題でございますが、その辺、納税者の方が、それはそれとして、今度ちゃんとした、いわゆるしらふのときに調査に来た場合には、当然、それなりに応じていただける場合にはそれでいいと思いますし、もしそうでない場合には、やはり署長としてはそういう判断を臨機応変に、人繰りも考えましてやるのが通常であろうと思います。
  55. 増本一彦

    増本委員 私は、どうも次長の考えというのは非常に官僚的だというように思いますね。人繰りやいろいろあるかもしれない。けれども、二人で行っているのだから、そのうちの正常なほうがあとをやれば問題がなくなるような事案でしょう。それで、あなた、ゆうべ飲んだと言うけれども、目がまっかで酒くさかった、およそゆうべ飲んだような状況じゃなかったということを関係者は言っているんだ。だから、そういう事実関係を私があなたとやり合っていたら、時間が幾らたったって解決できる問題じゃなくて、ただ税務行政の一般のあり方として、そういう点はもっと検討してみる必要があるんじゃないか、その点ははっきりと指摘をしておきます。  こういうようなことが起きる一つの原因は、やはりいまの税務職員の職制、機構、特に中高年齢の層が非常に多くなっている。しかも、統括官とか専門官とかいうようなシステムでごく少数の者しか役付になれない。それで、みんなストレスを持っているわけですよ。地方の税務署だったら、どこかで手柄を立てなければ上へ上がれないというような事態、そういうようなことと、それから皆さん方のいわばけつたたきの指導が相まって、結局、納税者との間に不要なトラブルをたくさん起こしていく、そういう土壌を皆さん方自身がいまの状態の中でつくり出しているんじゃないかというように思うのです。  こういう中高年者をはじめ税務職員の待遇改善の問題について、これはもっと夢や希望を与え、そして民主的な税務行政ができるような体制をきちっと保障してあげるということが何よりも必要だというふうに思うのですね。そういう面での努力というのは一体どういうようになすっておられるのか、その点を最後に伺って質問を終わります。
  56. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 この点は全く先生と同感でございまして、私ども中高年対策につきましては、税務行政の今後の一番大きな柱の一つとして考えてやっております。御案内のように、終戦直後に三万七千人の税務官吏を採用いたしまして、それからインフレのときとかあるいはその後の高度成長の間非常に苦労して、いまや四十五歳、五十歳になりつつある方が非常に多うございます。大体税務官吏の五五%以上が四十歳以上という中高年層になっておりまして、御指摘のように、いわば逆円錐型と申しますか、そういうかっこうになっております。したがいまして、私どもとしましても、この点につきましては万全の努力を払っておるわけでございまして、まず税務俸給表の級別格差につきまして、この前までは九・五%を一〇・三%に引き上げましたが、なお、今度教員法案で三年間に三〇という一つの方向も出てまいりました情勢を踏まえて、これにつきまして一そう努力したいと考えております。  それから、基本的にはやはり何と申しましてもポストと申しますか、上位等級の問題でございまして、ただいま先生の御指摘のように、統括官以上は約六千しかポストがございません。それで、五十歳以上の人がそれに近い人数でございます。専門官につきましては、専用官以上ですと、専門官上席を入れまして約二万ぐらいポストがございますので、この点は比較的よろしいのですが、やはり上席から統括官、署長というランクの人の将来、大体これから五年後にかなりその点で大きな問題が始まると思いますが、いまからその点については一つ一つ手を打っていかないと、その場合にはもう間に合わないということで、いろいろ努力しております。この前、四十六年に課制から統括官制にかえまして、これは税務の合理化の問題でやったわけですが、結果的には統括官のポストを約八百とりまして、それからその後も漸次その増加に努力しておりますが、なおなおわれわれといたしましてはあらゆるケースをつかまえてやっていかなければならないと考えております。
  57. 増本一彦

    増本委員 私は、実はあなたと基本的な問題で見解の相違があるのだというように思うのですよ。私は、もっと組合の意見も聞き、組合がそういう人たちを代表しているわけですから、そしてその中でよりよい仕組み、システムというものをつくり上げていくという、そういう面での特段の努力というものが必要だというように思うのです。そのことを最後に指摘しまして、私の質問は終わります。
  58. 安倍晋太郎

    安倍委員長 松浦利尚君。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  59. 安倍晋太郎

    安倍委員長 速記を始めて。  松浦利尚君。
  60. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、大蔵委員会で質問するのはきょうが初めてですが、税制についてはたいへんしろうとでありまして、あるいは質問がピントはずれになるかもしれませんが、その点はひとつお許しをいただきたいと前もって申し上げておきたいと思います。  そこで、まず冒頭に、これは大蔵大臣がおられるときに質問をするのが至当だと思うのでありますが、そういう時間もありませんから、政務次官でもけっこうですし、具体的にお答えをいただきたいと思うのです。  それは昨年の三月一日、予算委員会の一般質問におきまして、なくなられました愛知前大蔵大臣と、物価減税の問題について議論をしたことを思い起こすわけであります。そのときに、最終的に四十八年度に五・五%以上消費者物価が上がった場合には、政府年度内減税をさらに行なう意思があるのかどうかという質問に対しまして、なくなられました愛知国務大臣は次のように答弁をされておるのであります。読み上げますと、「ですから、これで十分ではございますまいか。その仮定のことは考えておりませんけれども、そういうふうなことになりますならば適当な措置をするということは、減税も含めて適切な措置をいたします、こう申し上げております。」このように愛知前大蔵大臣は御答弁なさったわけであります。  御承知のように、経済企画庁は、すでに四十八年度物価指数目標五・五%を最終的に改めまして、今日では一三%に引き上げておるわけであります。ところが、この一三%自体も、四十八年度は、たいへん消費者物価の異常な上昇によりましてあぶない、こういう事態が現実問題として来ております。逆に言うと、昭和四十九年度政府物価見通しの九・六%、これに大幅にげたが食い込みまして、四十九年度政策目標すらあぶなくなるという現実の姿が、今日の消費者物価指数であります。  わが党は、すでに野党共同いたしまして、四十八年度年度内減税法案を、臨時措置を本院に提出済みであります。少なくとも、死人に口なしではなくて、責任を持った大蔵大臣が予算委員会において明確に答弁をした減税年度内措置というものが、いつの間にかうやむやになってしまっておるということは、たいへん私は重大な政治責任だと思う。この点について、福田大蔵大臣がおいでになっておりませんから、中川政務次官、具体的にこの愛知蔵相の答弁がどのように政府部内で議論をされたのか。これはまやかしであったのかどうか、その点をひとつ的確にお答えをいただきたいと思います。
  61. 中川一郎

    中川政府委員 愛知大蔵大臣が昨年の予算委員会において、御指摘のような答弁をしておることは承知しております。  そこで、十一月ごろになりまして、秋口になりまして物価が上がり始めた。そこで、愛知大臣は十一月に、減税を約束しておった、そういう意思を持っておったということも気にいたしまして、心配をしておったようですが、ああいった時期に減税をやりますと、また消費を刺激するのではないかということから、見送らざるを得ない、そのかわり、それ以外の金融引き締めとか財政支出の繰り延べというようなことで、この際、物価の問題に対処することがよかろう、そして減税の必要なこともわかりますから、四十九年度にそういった気持ちも含めて減税をやっていこう、こういうふうに考えておったと聞いております。  私どもも、また福田大臣も、あの後、大蔵大臣のあとを引き受けまして、そういった声も耳にしておりましたし、それも一つの方法かもしれないが、やはり年内においては消費抑制ということの政策をとるべきだというところから、総需要抑制、特に金融引き締め、財政支出の繰り延べというようなまともな方法でやることに決意し、就任以来そういう方向でやってまいりました。したがって、約束したことは事実でありましたが、いま年度内にやることがほんとうに国民にとっていいことだろうかということを考えた結果、そういう意思は当初持っておったようですけれども、実行しないということに踏み切ったわけでございます。
  62. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 どうも私は矛盾があると思うんです。現実に物価が異常に上昇しまして、総理府の統計においてすら、政府はいやだいやだと言っておったんだそうですが、結果的に四%の実質賃金の低下という指数が発表されておりますでしょう。そういう実態から見ますと、この愛知大蔵大臣が発言をしたことは、物価調整減税ということばはたいへんまずいのですけれども、これは皆さん方はあまりお好きではないことばですが、実質賃金が低下をする、実質所得が低下をするものに見合って減税をしてやる、手当てをしてやるということは、何も個人消費を伸ばすということにならぬと思うのです。総需要抑制策としての公共事業の繰り延べ、こういったことがあることは事実、あるいは公定歩合の引き上げ等による金融引き締めがあることも事実、しかし、だからといって個人の実質所得が目減りしておる、実質所得物価高によって低下しておるものについて減税措置を行なわないというのは、私は逆に言うと、インフレによる犠牲を一方的に個人にしわ寄せされておるということになると思う。だから、大蔵大臣は、これは政策目標だから、五・五%以上になったときにはさらに年度内減税をいたしますという約束を、四十八年度予算審議の冒頭に国民に約束された。そのことを私たちは期待をしておったのです。  ところが、こういう異常物価上昇になったにかかわらず、ただ極端な物価狂乱だということだけでこの約束がほごになる。総需要抑制のワクの中で減税というものが葬り去られる。これでは私は、何のために予算委員会における審議があったのか理解に苦しむんですよ。これは愛知大蔵大臣が前もって約束したことだから、あなた方がそれは知りませんと言うならこれは別です。しかし、少なくともそういうことも踏まえて議論しておるわけですから——中川政務次官というのは筋を通す人でしょう。国民の立場に立って、いまの行き方ではいかぬということを盛んに主張されるのを、私は新聞でよく読んでおるんですよ。そういう政務次官が、こういう約束をしたことについて、いま言われたような御答弁ではやはり国民は納得しないと思う。私個人はこれくらいのやりとりで納得するかもしれないけれども、全体の国民というのは納得しないと思うのですよ。  この問題について、私はもう一ぺん政務次官の御答弁をいただきたいと思うし、こういうことがまず明確にならないと所得税法律改正案に私は入れないんですよ。そのことを政務次官、もう一ぺんお聞かせいただきたい。場合によっては休憩して、参議院の予算委員会で大蔵大臣から聞いてきてください。
  63. 中川一郎

    中川政府委員 確かに御指摘のように、庶民的感覚といいますか、これだけ物価が上がっているときには、やはり減税でもって調整をしてやるべきだという気持ちは、松浦先生御指摘のとおり、私もそう思います。思いますが、いままたそれ以上に石油問題等でまだ非常な狂乱状態にあるときに、減税ということも財政的にはなかなか問題があるところでございますので、もう日にちも半月そこそこという段階でございますので、四十九年度には大幅に減税をして、庶民感覚にこたえたい、こういう気持ちで、四十九年度は大幅な減税をしたわけでございます。総需要抑制政策からいっても問題がありますけれども、この際はということで、福田大蔵大臣が田中総理と相談の結果、こういうインフレ下に減税をやるということはいかがかという議論も一方ではあるわけですけれども、それを乗り越えてやったということは、松浦委員にお答えをしておった気持ちも含めてやったと御理解いただきたいと存じます。
  64. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 どうも政務次官の言われることは、わからないでもないのですよ。しかし、そういう議論をした上で言っておられるわけだから。しかも五・五%が一三%ですよ。倍以上ですよ。政策目標の変更が一三ですからね。五・五が一三でしょう。この一三がさらに伸びるのですからね、現状でいくと。四十九年度げたが幾らになるかすらまだ計算できない狂乱状態ですよ。九・六の政策目標もむずかしくなるのです、このげたがぐっと広がりますから。来年度政策目標は三・二くらいしかないのです、われわれの計算では。げたのほうが多くて、そういう状態で、いま言われたように、四十九年度の大幅所得減税の中に入っておりますよ、こう言われても、われわれはどうも納得できないのですね。もう時間もない、こう言われるけれども超過利得税だってあげようと思えばあがるのでしょう。ぱっと衆参あがるのですよ、やる気があれば。ほんとうに国民の立場に立って政府減税案を出すというなら、年度内減税についても協力していいですよ。野党案も出されているわけですから、野党案はまさしく愛知前大蔵大臣の意思に従って出しているわけですね軒約束を守らないから。この点どうですか。  政務次官の言っておられることは、まじめに答えておられるのだから、私は決してそのことに水をさすつもりはありませんが、あなたが四十九年度に大幅減税をしたと言われたので、そのことはほんとうに間違いないかどうか、そのことについて確認をしてもらえぬでしょうか。大蔵大臣が参議院におられるので、どうも質問がしにくいのですけれども、大蔵委員会だけは特別の委員会で、政務次官が出て日切れ法案が多いからやるということで、野党も協力をしておるのだそうですから、私もそれに協力をするつもりですが、政務次官、こういう問題を的確にお答えにならぬと、ほんとうをいうと前に進まないのですよ。委員長、この処理をどうすればいいでしょうか。
  65. 安倍晋太郎

    安倍委員長 大蔵大臣が予算委員会の終了後、本日こちらに見えまして、午後六時過ぎから三時間にわたって野党の皆さん方の質問に答える予定になっておりますので、いまの松浦委員の質問は、その際さらに質問をしていただいて、大蔵大臣から直接に答弁をしていただきたいと思います。どうでしょうか。
  66. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 委員長のそのことを了解いたします。ただ、私はこのことが出発点になっているのですよ。しかし、それはもう委員長がそういうふうに裁量されたのですから、私もそれに従います。  それでは、四十九年度減税はどういう減税かという表を、私は事前に大蔵省の事務当局にお渡ししましたね。いいですか、この表を見ておわかりのように、あなた方は四十九年度は大幅減税だ、大幅減税だというが、高額所得者はたいへんな減税になっておるけれども、下のほうは、確かに減税率だけは高いけれども、手取り額は一つもふえておらないのです。事前に出しておるこの表は間違っておりますかどうか、まず確認をしてください。この計算は間違っておりますか。一つは、給与の増加がない場合の旧法による減税額調べ、四十八年度、四十九年度一つは、三〇%所得が増加した場合の旧法と今度の減税との調整差、数字に間違いありませんか。
  67. 高木文雄

    高木(文)政府委員 申しわけございません。一々検算はしてございませんが、大体間違いないと思います。
  68. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大体間違いないそうです。これを見ておわかりのように、かりに給与が全然上がらなかった場合にどうなるか、独身で百万円の人は、手取りは一・五一%しかふえないでしょう、減税の恩典というのは。確かに独身者百万円の人は、税率としては三四・〇五%減額された措置になるけれども、実質手取りとしての増加は一・五一%しかない。夫婦で百二十万円の人はどうかというと、率では三四・七七%減税になっておるけれども、実質的の手取りは一・〇八%しかふえておらない。夫婦子供二人、百五十万円の人で初めて率は一〇〇%減税措置になるが、そのことによって手取りはわずかに一・九四%しかふえないでしょう。収入の増加がない場合ですよ。ところが、五百万円の人は、率は三七・七%の減税率になるが、手取りは五・三四%ふえますね。七百万の人は手取りが八・〇三%ふえる、一千万円の人は二・九二%、二千万円の人は一四・一二、三千万円の人は一七・四八、七千万円の人は一七・一三というように、上に行けば行くほど手取りがどんどんふえるでしょう。下のほうはやっとわずか二%台になるかならぬかということですよ。所得がふえなくて、今度の改正法律でいくと、上は手取りがどんどんふえるけれども、下のほうはこれぐらいしかふえないという数字でしょう。  かりに春闘その他があって三〇%所得がふえたときに、この人は四十九年度どうなるか。独身者で百万円の人は、かりに三〇%上がって百三十万円の所得になっても、三〇%ふえないのですよ。税金を取られるから、二九・九六%しか増加額がない。春闘で三〇%ふえて、三〇%手取りがふえるかと思ったら、そうじゃない。今度の税率のおかげで二九・九六%しか手取りがない。夫婦で百万円の人が二九・六一%、夫婦で百二十万円の人が二九・九三%、一生懸命首切られるぐらいの闘いをやって三〇%上がったって、税金で持っていかれるから手取りがないのですよ。三〇%ふえない。夫婦子供一人の百二十万円でやっと三〇・一二、夫婦子供一人で百五十万円の人で三〇・三三、あるいは夫婦子供二人で百五十万の人で三〇・四二、二百万の人で三〇・七七、二百五十万の人で三一・一九というように、三〇%ふえて減税に浴する率というのはたいへん少ないですね。ところが、高額所得の五百万以上の人はどうかというと、五百万の人が三三・〇五ふえる。一億の人で四一・九一%ふえるのです。三千万の人で四二・九五ふえるのです。一千万の人で三七・三一ふえるのですよ。三〇%所得が上がれば、上の人たちは上になるだけ今度の減税の恩典がずっとふえる、手取りがふえる。下のほうになればなるほど、逆に手取りはふえないのです。  これで、愛知大蔵大臣が私を通じて国民に約束した減税措置が含まれているということになりますか。先ほど高木主税局長は、私の出した表は正しい、こう言われた。政府が出した法律に従ってこういう計算をしてみたら、現実にそういう事実が出てきたでしょう。低所得者ほどきびしいんですよ。高額所得者ほど税率は手取り額が非常にふえる仕組みになっておるでしょう。これが国民に約束した減税だと断言できますか。中川政務次官はさっきそう言われた。高額所得者だけじゃありませんか。これが、愛知大蔵大臣が私に約束をした、四十八年度物価政策目標五・五%をこえた場合は年度内減税もするんだという、そのことを含めた減税措置ですか。その点をひとつもう一回明確にしていただきたいと思うのです。
  69. 中川一郎

    中川政府委員 非常に興味のある表で、さすがこういう見方で減税というものを考えなければならないのかなあと思います。われわれは、いままで納めていただいておった税金の額が少なくなるということについて、下のほうに配慮をするということでやってきたわけですが、先ほどの松浦先生からお話のあったことは、極端なことをいえば、税金を一銭も納めていなかった人は一つも恩典がないということになります。ですから、先ほどの答弁でもちょっと漏らしたのですが、たとえば減税でもってめんどうを見るとすれば、この異常な物価高で、税金の納められない人に戻し税みたいなことまでしなければつり合いがとれないのじゃないか。現段階ではそういう財源的余裕もありませんので、とりあえずはこの火を消すことに最善を尽くすことが国民に対するサービスであるという観点。  それとよく似ておるのですが、来年大幅減税をやりましても、税金を納めていらっしゃらない方には一つも恩典がない。また、納めておりましても額の非常に少ないほうの人は、率としてはかなり引きましても、これが実質手取りになると、それほど大きな影響はないという結果でありますけれども、実際われわれのやってきた税金を納める額を少なくするという意味においては、少なくとも最低限が大幅に上がった。生活ぎりぎりの方々については相当の人がゼロになった。やはり物価の問題に一番泣いておる、税金を納めた方々の一番下のほうを全部ゼロにしたということからいくならば、かなり愛知さんの気持ちを入れた、こう言い得るのではないかというふうに思うのです。
  70. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 高木局長さんにお尋ねしますが、納税人員の所得階層別分布、四十八年度は出ておりますか。まだ出てませんでしょうな四十七年度大蔵省案をここにいただいておるわけでありますが、これはこのままで理解してよろしいですか。
  71. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十七年度分につきましては、予算委員会の資料として御提出申し上げたものがございます。合計で三千百二十七万人、源泉所得税が二千六百三十七万人、申告所得税が四百九十万という数字でございますが、お手元の数字がそれでございましたら、それでよろしいと思います。
  72. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 二千万円超の人が五万人、源泉六百人、申告四万九千人というのをあとで追加していただいたのですが、私の手元にある資料と、いま局長の言われたのは食い違っておりません。そうしますと、この中で最も多数を占めておるのは二百万円以下、こういうことになりますね。それは間違いありませんでしょう。
  73. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この分類でいきますと、百万円と二百万円の間が一番比率の多いことになるわけでございます。
  74. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そうしますと、その層の人たちがこの減税の対象になっておる数字、先ほどあげたような形で手取りというものはふえておらない。中川政務次官にお尋ねいたしますが、かりに百三十万円の手取りのある人が百万円生活費に使った、三十万は貯蓄したという場合に、昭和四十九年度物価が九・六%上がったということになれば、この人はインフレによって幾ら持ち出したという計算になりますか。
  75. 中川一郎

    中川政府委員 九万六千円ということになります。
  76. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、この人が減税の恩典に浴した額は幾らになりますか。
  77. 中川一郎

    中川政府委員 独身ならば一万四千円かと思います。
  78. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま物価が九・六%上がったら九万六千円の支出増になるわけでしょう。これは手取りで計算していますが、減税のほうでは率でいきますから、そうすると一万六千円しか減税がない。その差額は結局持ち出しになるのじゃないですか。だから、インフレというのはいかに国民の生活を犠牲にしておるかということがこの数字でわかると思う。そのインフレによる犠牲を防ぐ方法としては、もう愛知大蔵大臣が明確に言ったように、政策目標以上に出た場合は減税してやる、その分だけは返してやるという措置をする、これが政治家のつとめなんですよ。そのことが四十九年度の大幅減税の中に繰り込まれるとすれば、逆にいうと、高額所得者の手取りがふえるというような減税の仕組みではなくて、インフレ、物価値上げによって苦しんでおる大多数のところに減税の恩典が具体的にあらわれてくれる数字でなければ、大幅減税だ二兆円減税だ——実質的には一兆四千五百億くらいでしょうが、二兆円減税だと宣言してみても、国民はそういう減税をされたとははだで感じないのです。私の言っていること、政務次官、間違いがあるでしょうかね。その点ひとつお聞かせください。
  79. 中川一郎

    中川政府委員 松浦先生御指摘のとおりでございます。でございますけれども、まあ税というのはやはり国民としては納める義務といいますか、納めることにまた意義があるということになると思います。  そこで、最低限百七十万の人までは税金を納めなくてもいい、平年度百七十万、初年度百五十万という最低限の切り上げというところまで行ったとすれば、これは国際的に見ても相当大幅なものであって、国民も了解といいますか努力は買ってくれるものだ思うのです。私ども数年前は、百万円までは百万円まではということで八、九十万円のところをさまよっていた時代がありました。百万円か実現をし、いよいよ百七十万円というところに行ったとするならば、高く評価をしていただいていいんじゃないかと思っておりますが、先ほども指摘のように、九万六千円物価で損して、一万四千円税金をまけてもらったってということに確かになります。  そこで、われわれとしては、何としてでも物価を上げない政策というものに総力をあげるべきだというところから、極端な金融引き締め、そしてまた公共投資の抑制ということをやり、本来ならば、そういうときには減税というものもやらずに、しばらくの間はきびしく泣いてもらって、国民全体が協力し合ってインフレの火を消すということではありますけれども、いま言ったような問題、松浦先生の御指摘のこともありましたので、若干インフレには逆行するけれども、大幅な減税をやろうというので、百万円とかいう低所得の人は、独身者で約五〇%の減税、夫婦子二人でまいりますとゼロになってしまうということ、率からいきますならば絶対低いほうが多い、そして上のほうが、今回少し給与所得控除というものの頭打ちを切りましたから、これもこの間から議論のあったところで、こういう大幅減税のときには経費性というものも入れていこうというところから解除いたしまして、全体としてバランスをとってあるというふうに思いまして、まあまあこんなところがいいところじゃないかなと私も思っておるのですが、最低限を引き上げたというところをひとつ評価していただきたいと存じます。
  80. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 問題は、世界各国を言われましたけれども日本のように卸、消費がぐっぐっと上がる国というのはないのですよ。世界標準並みに物価が上がっておれば、こんなことを私は議論するつもりはありません。しかし、物価の上昇というのは、石油危機が各国あったにかかわらず、日本は異常ですね。その点は全く世界と日本物価というものは違うわけですよ。現状認識が全く違う。税金だけ底上げしたから底上げしたからと言っても、違うものを頭から度外視して、底上げを世界よりも先進的に引き上げたのだと言われても、問題は解決しないわけですよ。  ですから、政治家というものが、政府というものが、政策目標を五・五%なら五・五%、四十八年度は努力目標としてやりますぞ、これ以上は絶対上げませんといって、いろいろな物価政策その他の経済財政政策というのがあるわけでしょう。そういう段階ならこれは話は別なんです。その政策目標を越えてしまいますと、逆にいうと、インフレの加速が加わってきますと、それを食いとめる方法がない限り、インフレで泣くのは国民でしょう。物価高で泣くのは国民でしょう。そのインフレというものを押える政策があれば、物価調整減税などというのは必要ないのです。しかし、幾ら政府が五・五だといったって、五・五に入らない。一三、一三にも入らない、また上がる。こういう条件の中ではもはや、その物価の上がった分だけは税金を返してやるという、その物価調整減税以外に救済する道はないのですよ、はっきり言うと。だから、愛知大蔵大臣も私にそういう約束をなさったのです、この前予算委員会で。政府かほんとうにやる気があって、そこまででとめてくれるという保証があれば別ですよ。そうじゃないのです。ということになれば、やはりある意味では、物価調整減税的なものが減税の中に入ってこなければいかぬ。だとすると、一番インフレ弱者である低所得者に対する、減税手取りというものがふえるように法律というものを改正していかなければならぬのです、ほんとうは。それが上も下もただ免税点を引き上げるというところだけに焦点をしぼったところに、今度のインフレ下における減税政策の誤りがあるのですよ、いま政府のやっているのは。高額所得者は笑いがとまらぬですよ。低所得者は、これでまた物価が上がったんじゃたいへんなことですね、目減りばかりで。おそらく減税の恩典というのはぱっと一年ぐらいで飛んでしまうでしょう。  そういうことを考えますと、政務次官は、やはり大蔵政務次官ですから、評価を自分自身に与えたようですけれども、われわれから言わせれば、インフレ弱者、所得の低い者から言わせれば、こんな減税は、もうたいへんな高額所得減税だといわざるを得ないのですよ、評価としては。結果的にそうなってしまっておる。それは結局、数字合わせしたところにこの減税の問題がある。異常なインフレ下における減税はいかにあるべきかという議論が出発点になっておらぬところに、今度の法改正の根本的な誤りがあるのですよ。われわれ野党としても賛成できませんね。愛知大蔵大臣が言われたことがどこに生かされているのか、私たちは理解できませんし、わかりませんですね。
  81. 中川一郎

    中川政府委員 確かに、国際水準からいっていばれた数字じゃない。物価の問題もありますし、またアメリカ等のようにもう住まいを持っているというような、生活力も違いますから、日本のように、そういう住宅のない、生活力の弱い人に税金を求めていくという点からいっても、そうアメリカ比較してどうだとか、西欧諸国に比較してどうだとかということは、あまり自慢はいたしませんけれども、曲がりなりにもその水準に持っていった。特に言いたいのは、百十五万円のものを百七十万円、一番弱い層だけは税金は一切いただかない、この踏み切り、この上げ方、これは過去においても、絶対額においてはもちろん、率においてもこれだけ上げたことはないわけなんです。ですから、やはり思い切った所得税減税ということはいえるんじゃないか。  見ようによっては、松浦先生のような表をつくれば、あるいはそういう見方もできるのかもしれませんけれども所得税最低限を引き上げた、そして弱者からは税金をいただかなくしたということは、評価されていいんじゃないかと思うのでございますが、一人で百万とか二百万、百五十万取っている人の税金の率が多いとか少ないとか——確かにいまの時代ですから百万、二百万の人が高額所得者とはいいませんけれども、ほんとうの意味の弱者、その日の生活に困るような方々かということを考えるときに、まあまあのところではないのか。御指摘の、三〇%ベースアップして三〇%切るとおっしゃいますけれども、三〇%も月給がふえて税額がそうふえておらぬという表を見れば、いかに減税幅が大きかったかということもいえるのではないかという気がいたします。まあひとつぼくらも、こういう時代に低額所得者が税金で泣くということについては十分配慮しているつもりであり、また、これで減税が終わりというわけじゃありませんでやまだまだ年を追うてやっていきたいということでございますので、一生懸命やった気持ちだけは買っていただきたいと思います。
  82. 村山喜一

    村山(喜)委員 関連。いま中川政務次官の発言を承っておりますと、非常に課税最低限の額の問題について大幅に引き上げたということで自画自賛をしていらっしゃるわけですが、この前山田耻目君のほうから資料要求をいたしましてこの委員会に出されております資料を見てみますと、「昭和四十八年分の給与収入が四十九年度改正政府原案による課税最低限(初年分)以下の者を対象として四十八年分の所得税を免税とする場合」、これは九百億。これは入るわけですね。それから、第二の「昭和四十八年分の所得税の税額が三万円未満の者についてその税額を徴収しないこととする場合」、これで千五百億の減税になるわけです。ところが、これをそのまま引き延ばしていった場合には、四十八年の年度内減税の額のほうより、あるものについては、四十九年度の新しい税制改正分のときにはかえって重税になる、そういう場合があり得るわけですよ。とするならば、一兆四千五百億円の減税をするといわれるけれども、千五百億の課税最低限度額の年度内改正をわれわれが要求しているそのことから見ましても、それが四十八年分について減税された場合に、四十九年分についてはかえって増税になる場合さえもある、私たちはそういうふうに承っておるんですが、そうするならば、自画自賛をされましたその数字そのものがきわめておかしいということになるじゃありませんか。この点は、高木主税局長のほうからお答えをいただきたい。
  83. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この前御要求がございまして、計算の上御提出申し上げました三万円までの税額控除の場合に、三万円までは戻すといったことをいたしました場合には、千五百億ぐらいに減税額がなります。しかし、その場合には、そういう状態にいたしますと、むしろ、四十九年度では部分的に増税になりますということになるわけでございますが、それはどういう関係かと申しますと、政務次官が申し上げております百五十万というのは、夫婦と子供二人の場合でございます。夫婦と子供二人の場合でございますと、軽減額が大体二万九千円になりますから、夫婦と子供二人の場合でちょうど現在百五十万の方の場合は、三万円減税になる場合とほぼとんとん、こういうことになりますが、たとえば、同じ百五十万円でございましても、独身の場合で考えてみますと、私どもが御審議をお願いしております案での軽減額は去年度分が二万六百二十円でございますから、三万円に至らないということでございまして、したがいまして、三万円案でございますと、独身者、夫婦者、夫婦子一人の場合という場合には、たとえば同じ百五十万円でもそこまでは至らないというかっこうになるわけでございます。そこらが政務次官が申し上げております夫婦子二人を中心にした減税の拡大と、それから一律三万円案とを含めました場合に、はっきりその差が出てくるわけでございます。   〔委員長退席、山本(幸雄委員長代理着席〕  それは具体的には基礎控除よりも扶養控除のほうが非常に上げ幅が大きくなっております関係で、子供さんの多い家計の軽減割合が大きくなっているということからそういう結果になるわけでございます。
  84. 村山喜一

    村山(喜)委員 いまお話がありますように、政務次官、税額において三万円減額を年度内にした場合を考えてみましても、標準世帯においても、四十九年度の新しい税制改正案、政府原案に比べた場合には、なお三万円のほうが減税幅が大きいということになる。そういうようなことを考えますと、たとえば一千万円の所得のある場合には九十万円近いものか減額になるけれども、課税最低限のぎりぎりの人の場合には、三万円にもならないというような状態が現実に今度の政府案として提案をされているわけですよ。そうなれば、一兆四千五百億の減税ということで太鼓をたたかれるけれども、中身は重役減税じゃないかという松浦議員の指摘というのは正しいじゃありませんか。あなたはそのことを盛んに、これだけ大幅減税をいたしましたと言われるけれども、実際はその試算をしてみれば、そうじゃないということを私は指摘せざるを得ないのであります。これについてはいかがですか。
  85. 中川一郎

    中川政府委員 税額三万円以下の人は低所得者だから、それは全部やめてしまえということも一つ計算の方法だろうと思いますけれども、給与所得者について人的控除なり基礎控除なりというものを大幅に引き上げて、そして課税最低限を引き上げる、その結果、百十五万のものが百七十万まで夫婦子二人においていったということは、それ自体やはり高く評価していただいていいんじゃないかと私は正直に思うのです。まあ、ひねりようによって、三万円以下のものは全部やめてしまえという単純なやり方もあるいは国民受けするやり方かとは思いますが、税金というものは三万円以下の者は一文も納めなくていいというやり方は、税制の上でどんなものかなという感じがいたします。  やはり一定のルールに従って控除すべきものは控除して、そして少ない税額であっても税はやはり国を維持する上において必要なお金でありますから御協力をいただいて、少ない人でも税負担のあるところにはやはり納めていただくというやり方のほうが合理的なやり方ではなかろうか。税金でもって国民のふところをよくする、悪くするということも必要ですが、そうなってくると、税金を納められない方にも三万円は全部返すのだということの踏み切りができた場合には、これはあるいは一つの方法かもしれません。納税者には税額控除という方法、納税のできない人には三万円戻し税としてやる、こう踏み切れる段階ならばあるいは一つ考え方と思いますけれども、そちらのほうについては手だてがない。まあ生活保護法についてはベースアップという方法がありますけれども、生活保護法と税金を納めておる方々との間の税金を納められない階層をどうするかということになりますので、私としてもやはりこの物価高を押える、そしていままでの高度経済成長がもたらした庶民の負担というものを軽くするために、安定成長、そして物価を押える、これにしぼっていくべきだ。  まあ、ここ一、二年、しばらくの間御迷惑をかけますが、長期的にはひとつそういうふうに、福田さんも思い切った転換をすべきだと言っておりますし、私どもも政治家として、その根っこの問題を直すことに取り組まなければ、税金の納められない、手当ての届かない方々に対して申しわけないことだ、このように思っております。
  86. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私はしろうとですからわからないのですけれども、大体、税金というのは所得の高い者からたくさん取って、所得の少ない者はできるだけ軽減をしていく、要するに、所得税の納税人口のうちから所得の低い者はどんどん切り捨てていくのだ、もう納税しなくてもいいように免税点をどんどん引き上げていくのだ、それが私は一つ税制の基本でなければならぬと思うのですね。だから、課税最低限はどんどん上がっていくわけでしょう。税金を所得の高い者からよけいにもらって、少ない者からはだんだん税金を取らない、納税人口をだんだん減らしていく、そういう政策がとられて初めて税制というものの体系が成り立つので、私はしろうとで、中川政務次官みたいな専門家でないからわかりませんけれども、私の言っていることは間違っておりますか。
  87. 中川一郎

    中川政府委員 まあその限りでは正しいのですが、それじゃ金持ちの人から税金をそんなに取っていないかというと、この税率表を見ていただいても、六十万以下の人については一〇%しかいただきません、六百万円の人になりますと二七%いただきます、これは上積み税率ですが、だんだん上にいって八千万超の人については七五%の税率ということですから、これは相当の累進性がありて、高額所得者にしても、もう税金のために働いているというぐらい不満のあることも事実なんです。七五%、上積み税率でありますけれども、上のほうにいけばそれだけ取るという累進性から見ていただくならば、これはひとつ御理解がいただけるのではないか。ただ、減税額ということになってくると、少ない税金を納めた人ですから、少ない額しか減税にならない。   〔山本(幸雄委員長代理退席、委員長着席〕 まあ上の人が七五%も納めている段階では……  (松浦(利)委員「全部でですか、全部について七五%取っているのですか」と呼ぶ)いや、全部でなくて、上積みで。累進制ですから。それにしても、ある程度以上、まあ八千万円が上積みになれば取られるしかけになっているのですから、これはやはり上の人の意見を——ぼくら上の人の味方をするわけではないですけれども、高額所得者は税金のために働いているという不満のあることも事実でございますから、ひとつその辺は上の人も下の人もともに御協力いただいて、いい国家をつくるというふうにこの際は御協力をいただきたいものだと思います。
  88. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 主税局長、いまの政務次官の御答弁、補足しておかなくてよろしいですか。
  89. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御指摘のように、所得税の非常に大きな仕事といたしまして所得再分配機能ということがあるわけでございますから、おっしゃるように、低所得層は税が低く、高所得者は税が重くということでなければならないわけでございます。ただ、その再分配機能をどの程度に配分すべきかということで、松浦委員の御見解中川政務次官の御答弁とで食い違いがあるわけでございます。  日本の場合は、大体サラリーマンの場合、今度の減税におきましても七割強の方に税を納めていただくということになり、納めなくてもよろしいという方はサラリーマンの中で三割弱である。この程度のバランスでよろしいのかどうか。まあ直接税にウエートを置く国と間接税にウエートを置く国といろいろ違いますけれども、私どもは、いままではあまりにも多過ぎましたが、今度減税していただいた七割強というぐらいのところでないと、日本のように直接税のウエートが高い国の場合の再分配の形としては、所要財源の調達にも事欠くのではないかという感じを持っております。
  90. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それで、政務次官、上のほうのことをさっき言われましたけれども、下のほうもそうなんですよ。課税最低限から課税所得に対して一ぺんにぽっと一〇%に飛ぶんですよね。課税最低限から課税される者はぽっと一〇%の税率がかかるわけですよ。そうでしょう。その中には累進性は何もないのですよ。低所得者の人たちは初めからぱっと一〇%かかるわけですから、ここになぜ累進性を入れないのですか。
  91. 高木文雄

    高木(文)政府委員 税率を何%から始めるかということと、それから課税最低限をどこに置くかということは相互に関連があるわけでございます。御指摘のように、いきなり一〇%から始めませんで、もう少し低い率から始めるかわりに、あるいは課税最低限をもうちょっと幅を広げさしていただくという方法もあり得ます。いまのやり方は、もし税率を、たとえば二%なり三%から始めた税率を組んだ場合と比較いたしますと、一ぺんそういう税率で組んで税額を計算して、それ以下のところは免税点を置いたというような組み方になるわけでございます。  日本は、御存じのように、過去においては、一番低いのは三十七年ごろに八%から始めた時代がございます。一番高いのは、昭和二十二年当時には二〇%から始めておりました。まあこれは両方やり方がございます。アメリカは現在一四%から始まっておりますし、西ドイツは一九%から始まっておりますし、イギリスは三〇%から始まっております。しかし、三〇というのはひどいじゃないかということかもしれませんけれども、ある意味からいいますと、そのかわり課税最低限のほうで調節すればよろしい、こういうことになるわけでございます。  その御議論は当委員会でも毎度所得税の御審議の際にいただいておりますが、私どもはあまり複雑になりますことはいかがかということで、最低税率を一〇に置きますかわりに、課税最低限をそれに見合ったところからスタートしているというふうに考えておるわけでございます。
  92. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 極端にいうと、徴税事務の簡素化という意味で、ぽっと一〇%に飛ぶんだと思うのですよね。そうすると、そこの間に入った人は、確かに従来の四十万円が六十万円に引き上がりましたが、しかし立っている部分というのは依然として不公平が出てきておるわけですね、累進性がないわけだから。そうでしょう。だから、そういうことを考えていきますと、やはりこの際、税体系全体を見直す必要があるんじゃないか、そういった意味でほんとうに正確に累進性を持たすべきじゃないか。これは私の意見ですが、そういう意見を持ちます。  そこで、政務次官、なぜ今度の所得税減税が重役減税かという私たちの主張の理由はおわかりになりましたですか。
  93. 中川一郎

    中川政府委員 松浦先生の言う趣旨はよくわかりました。
  94. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それじゃ、少なくとも減税というなら、ほんとうに国民の生活に減税という実感があらわれるように——これを撤回するということは、もう出されておるんですからおそらく今度はないと私は思うのですけれども、今後われわれ野党の意見にも耳をかして、検討し直すというお考えは、政務次官、ありますか。
  95. 中川一郎

    中川政府委員 私、大蔵省へ入りまして、当委員会議論のあったことが、当年度は取り入れられない場合が多いのですけれども、翌年度は相当取り入れていかれておりますので、私がさすがだなと思って感心しているぐらい主税当局は、国民の声を代表した当委員会議論に対してはまじめにやっております。ですから、先生の御意見も今後十分——拝聴に値するこういう特別の表などというのは大蔵省では見なかった数字でございますので、これらも来年以降の税制においては十分考えてみるべきあれではないか。  ただ実感としていえることは、所得が三〇%上がった人の税金は大体ふえておらぬ。まあ、ふえても千円とか二千円とかいう程度である。大体二九%台、三〇%は確保されるということからいくならば、国民の皆さんにも、まあ月給は三〇%上がったけれども税金は前よりそうふえておらんなあということで、喜んでくれる人もいるんじゃないかという見方もできますが、下の人方、低所得者の方々が税金で苦労をしないように、実質的被害がないような税制というものを考えていくことについて、十分配慮してまいりたいと考えております。
  96. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま政務次官が下のほうを言われましたから私も上のほうを言いますが、三〇%上がりたら四〇%も手取りがふえるんですね。一千万円の人で三七%も手取りがふえますね。上の人は三〇%上がったより以上、減税でまた手取りがふえるんですよ。そういう表であるということも事実なんです。  まあしかし、政務次官が来年度十分検討を加えるということですからあれですが、愛知大蔵大臣がなくなられたのが非常に残念に思うのですよね。愛知大蔵大臣と私たちの約束はそんなことじゃなかったのですよ。だから、そういった意味では、引き継がれて、四十九年度所得税減税の中に組み込まれたというので私たちはいま長い時間ずっと議論をしましたけれども、結果的には、昨年の予算委員会の意図はこの中にあらわれてこなかった。一つのメリットは、こういう数字も検討に値するのでこれから取り入れたいという政務次官お話ですから——政務次官はまじめな人たから、おそらくうそを言わないと私は思うのですよね。私は、そういう意味では政務次官の御意見を了解いたしまして、この所得税減税問題についての質問は一応終わりたいと思います。  それから続いて、一つ非常に不合理なことがあるので……。  本委員会でも再三議論をされておってまだ実現を見ておらないということがあるんだそうです。それは事業継続性の原則ですね。相続税の関係です。お医者さん、農業あるいは中小企業、こういった人たちは親から子、子から孫と事業が継続をしていくわけですけれども、そのことによって所得は発生しておらないのです。ところが、相続税を取られるんですね。そのために事業の継続がなかなかむずかしいという事例が、お医者さんの場合とかあるいは中小企業、農業の場合にもある。ですから、そういったものに対しては、所得が発生したときに支払うという延納措置というものを認めるようにしてもらいたい。そうしなければ事業の継続性の原則というものが、相続税のために、相続税の範疇からくずれてしまう、そういう御意見があるわけでありますが、所得が発生した時点で相続税を納めるように延納措置というものが認められないかどうか、その点をひとつ……。
  97. 高木文雄

    高木(文)政府委員 実はちょっとお尋ねの趣旨がよくわかりませんが、そういう議論がございます。ございますが、昨年度の、四十八年度税制改正かなりその点は改善されたはずでございます。  ちょっと申し上げますと、従来から五年間の延納という制度がございました。相続財産のうちに、不動産であるとか、立木であるとか、事業用償却資産であるとか、同族会社の株のような非上場株式であるとか、そういうすぐにお金にかえることができないような性質の財産が相続財産の中で五割以上こえます場合には、十年に延長をするということに四十八年度改正でなっております。それで、もともと中小企業、農業等については、そういう制度である程度配意してまいったのでございますが、これでは不十分だという御指摘がいろいろございまして、四十八年度改正で、その際主として金利がどうも高い、こういう御議論がございましたから、従来延納金利を七・三%にいたしておりましたのを、五年間は六・六%に引き下げました。そして、いま申し上げました不動産立木、事業用償却資産、非上場株式等のウエートが高い納税者の相続の場合につきましては、つまり十年延ばすことができる場合につきましては、この七・三から六・六でなしに六%まで下げるということをいたしたわけでございます。  あるいはなお、これでまだ不十分だということで、それはもうわかっておるじゃないかということかもしれませんが、とにかくその程度の手直しは四十八年度改正でやらしていただいたわけでございます。しかし、実はいろいろと相続財産の評価額が上がってきておることとの関連がございまして、相続税にはいろいろ問題を含んでおります。できましたならば、四十九年度にもまた引き続いて相続税の改正案を出させていただこうかとも思いましたけれども、いろいろな手順等の都合でちょっと間に合いませんでした。来年度はぜひ相続税のことを全般的にまた洗い直しをいたさなければならぬと思っておりますので、その機会には御趣旨の点をなお詳しく承らしていただいて、その際に検討の対象とさせていただきたいと思います。
  98. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 四十九年度に相続税を見直して検討を加えるということですから、それでけっこうだと思います。具体的な問題はまた、きょうの委員会は別にいたしまして、直接局長のほうに内容等の説明をいたしたいと思いますから、御配慮いただきたいと思います。  それからもう一つは、最近ややこしい病気がふえまして、いま高額医療負担というのがたいへん国民生活の重荷になってきておるのです。ところが、調べてみますと、高額医療負担の場合、百万円が限度でございますね。それで、それ以上は切り捨てになっておるわけですが、実際に高額医療負担で悩んでおる人たちはたいへんなんですから、できればその上限の百万円をもっとふやしてもらうことの検討と、同時に、翌年度繰り越しということもある程度考えてやるべきじゃないか、そういうふうに私たちは思うのですが、その点は局長のほうからひとつ御答弁いただきたいと思うのですが、どうでしょう、そういう手続は。
  99. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私どもの周辺にもそういうことで非常に困っている人がおります。それで、最近医療の内容が充実をしてまいりましたこととの関係で、かなり手厚い治療法ができてきたということがございまして、確かに百万円をこえる例が、つまりそういうケースが起こる例の頻度がふえてきたわけでございます。確かにおっしゃるようなことは、そういう意味で検討してみなければならぬと思いますが、実はこの制度ができましたのは昭和二十五年でございまして、当時限度額が十万円でございました。その後十五年たちました昭和四十年に、三倍にいたしまして三十万円にいたしました。四十五年にさらにまたわずか五年間で、今度三倍にいたしまして百万円にいたしましたということで、過去の歴史だけでものごとを判断するのはいけませんけれども、現行制度ができました百万円という水準は、かなり思い切った水準のつもりでおるわけでございます。  それで、これを全部実額までしていいかどうかという問題、あるいはそうでないにしても、この限度を上げてはどうかという問題、さらにいま御指摘の繰り越しというような問題、これはいずれも医療費控除制度のあり方としていろいろ考え得る問題でございますが、かなり基本的な問題でございますので、先般また、今度は他の委員から足切りのほうの御指摘も受けましたので、全面的にこれはまた研究してみなければいかぬということでございますから、その際に、ただいま御指摘の点も含めて検討課題とさせていただきたいというふうに考えます。
  100. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 局長のほうから検討課題ということですから、ぜひ政務次官も責任者として、高額医療負担に泣く国民のために実施をしていただきたい。研究で終わらずに結論を出すように、実施するようにお願いをしておきたいと思います。
  101. 中川一郎

    中川政府委員 承知いたしました。
  102. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 次に、もう時間があれですが、租税特別措置法関係について、これも原則的なことからお尋ねをしておきたいと思うのですが、実は四十八年度、四十九年度租税特別措置による減収額試算というのを私は事前にいただいて調べてきました。ところが、前に建設委員会に所属しておりましたときにもいろいろと問題がありましたから議論をしたことを記憶しておるのですが、実はこの租税特別措置というのは、一つ政策目標があるから、その政策目標を実現するためにこそこういう措置がとられるんだ、これが私は租税特別措置の原則でなければならぬと思うのですが、その点政務次官、間違いありませんでしょう。
  103. 中川一郎

    中川政府委員 そのとおりでございます。
  104. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、これは具体的になりますから高木さんでけっこうですが、お答えいただきたいのです。  実は土地税制で法第三十一条に「長期譲渡所得の課税の特例」というのを設けましたね。これは住宅を建設するということが政府の最終の政策目標で、この土地税制に対する特例措置ができたんですね。それで、お尋ねをしておきたいのですが、一体、土地はどれくらい放出をされたか、そしてこの租税特別措置によってどれくらいの減収額が出たのか。その点をひとつお聞かせいただきたい。
  105. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いま数字を申し上げますが、昭和四十四年度からあの制度ができました。それ以来の譲渡所得の納税人員はたいへんふえておりますし、譲渡所得金額もふえております。四十五年の納税人員は二十九万人、四十六年が四十三万人、四十七年が四十四万人。金額が四十五年が一兆七千億、四十六年が三兆三千五百億、四十七年が三兆二千二百億ということでございまして、かなりその前の時代の数字、ここにちょっとございませんが、ああいう制度がない時代に比べますれば、昔から持っておった土地を売ってくださいという趣旨は果たしたと思います。  四十三年の数字がございますが、これは税務統計では三千百億しかなかったのでございます。四十四年は、これは従来の制度と新しい制度がまざっておりますので、あまり比較するのに適当な年でございませんから、四十三年と四十五年とで見ていただきたいわけでございますが、その三千百億ないし二百億という数字と、四十五年の一兆七千億なり、四十六年、四十七年の三兆円台ということを見ていただけば、それなりに土地の供給があったということだと思います。  ただ、問題は、それが今度は住宅につながったかというあたりでございまして、その点につきましては、しばしば御指摘を受けておりますように、せっかく先祖伝来の土地を手放すということには役立ったけれども、それが住宅が建つということに直ちにつながらないで、相当の部分がまだ中間段階で滞留をしておる。その中には、法人の土地買いと企業の土地買いというようなものもあるではないかという議論があるわけでございます。  反面、それに対して関係者の間では、土地を売ってからそれが住宅になるまでには、どうしても途中四、五年はかかるのだから、そうものごとを性急に考えなくてもいいではないかという議論もございます。しかし、御指摘の、しばしば各委員会から御指摘を受けておりますように、せっかくその土地が手放されたが住宅対策につながらないという点は、問題点であるというふうに認識をいたしております。  それから、お尋ねの、これによって増減収がどういうふうになっているかということでございますけれども、これは申しわけございませんが、本法のほうは、サラリーなり、事業所得なり、雑所得なり、山林所得なりがありまして、その上に譲渡所得がのるわけでございますので、もしこれを総合課税にいたしましたならば何ぼになるべきはずの人が、この結果何ぼに下がったか、これで納めていただいた税額は、四十五、四十六年については一〇%、四十七年については一五%でございますから、先ほど申し上げました譲渡所得金額にその率をかけていただけば納めた税額のほうは出ますが、本来幾らであるべかりしかということは、一人一人について計算しませんと出ませんものでございますから、これの減収額が算定できないという状況にあるわけでございます。
  106. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまの問題は、本委員会でもいろいろな租税特別措置の効果の問題について議論されて、税金はまけてやったが政策目標には何らつながらない、最終目的である住宅建設のために土地を放出させる、そのために租税特別措置による減税措置をとってやった、ところが、結果的には土地成金が生まれて、あるいは中間段階に土地が滞留して、結局、住宅の供給は停滞をしておるという現実の姿になっておるわけでしょう。そうなってくると、この租税特別措置という政策目標達成のための手段が、全く効果をあらわしておらない。もっと平たく言えば、土地成金だけがもうかっておる、その人たちだけは確かに得をしておる、しかし、政策は全く生かされておらぬという、そういうきわめてあいまいな、しかも国民にとってはまことに了解しがたい結果が生まれてきておるのですね。  ということは、逆に言うと、大蔵委員会だから金額ではじくんだろうと私は思うのですが、やっぱり実績が、金額ではなくて、ほんとうに政策目標として住宅がどれだけ供給された、これだけやったから今年度はこれだけの住宅が建ってきた、そういう効果というものがここの委員会に出されないと、ただ租税特別措置による金額だけが議論されてきて、あるいは租税特別措置そのものだけが議論をされて、政策目標であるものが逆に議論をされない、結果が出てこない、私は、これでは租税特別措置というものの意味をなしておらないと思うのですね。こういう点について、私は、この際、この政策目標がいかに完遂されたかという実績を表にして出すべきだ、そういうふうに思います。そうしてこそ、実際に住宅なら住宅について、中間段階に滞留してしまったなら中間段階で滞留してしまいました、これだけの土地が確かに放出されたが、最終的にこれだけの土地はどこどこに、どんなところに滞留してしまった、政策目標が達成されなかった、だから今後どうあるべきだという新たな政策議論というのが出てくると私は思うのですよ。それでなければ、ここで租税特別措置議論なんかするほうが無意味だと私は思うのです。その点について、事務当局並びに政務次官の明確な御答弁をいただきたいと思います。
  107. 高木文雄

    高木(文)政府委員 たいへん恐縮でございますが、私どもが言いたいことを全部おっしゃってくださったような感じを受けるわけでございます。  実は、この制度ができます際に、とうてい税制で住宅対策をやることは無理ではないかということをさんざん議論をいたしました。政府税制調査会の中に特別の部会を設けて、いろいろ議論をいたしました。税制調査会の中でも、どうもこれを税制でやるのは無理ではないかという議論があったわけでございますが、やはりまず税でやってほしいというのがかなり強い世論的なものでもございましたし、必ずや他の政策も追っかけてやるからということでスタートをしたわけでございます。  ところが、政府部内におきましても、非常に不満なんでございますが、建設省その他のいろいろな政策というのが若干おくれぎみでございまして、おっしゃるように、どうも税のほうにしわが寄り過ぎた感がいたしますし、私どももまたおしかりを受けておりますが、政府全体といたしましても、土地の動いたものがどこへどうなっているのだということについての調査が行なわれない。あるいはこれは税のフィールドでやるべきことかもしれませんが、他にも調査項目もあるわけでございますから、かねがね建設省のほうにも調査をしてほしいと、われわれとしても求めておるところでございます。  ちょうどこの制度が五十年末に切れますので、ことしの秋には、どうするかということをどうしても最終的に詰めまして、来年度税制改正にもお願いいたさなければならぬのでございますから、その前に早く調査を頼みたいということは政府部内でも要請しているわけでございますが、なかなか動かない。私どもは調査権限がございませんものですから、税金をいただいた資料だけは残っておりますけれども、その税金の資料は土地を売られた方から提出があるものでございまして、買われた方からは、資料は何も関係がないものでございますから、ある種の調査権が及ばないという関係もございます。しかし、そんなことをぐちをこぼしておりましてもいけませんので、政府部内でよく協議をいたしまして何とか措置をいたしたい。それを参考にして来年度税制改正の資料といたし、またそれをベースにして御審議を求めることにいたしたいと思っております。
  108. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま局長からお話があったのですが、中川政務次官、私は明らかにこれは失敗だったと思うのです。率直に言って、住宅というものが供給されなかったということは、この措置は失敗だった、税制だけでやったところは失敗だった、その点は認められますか。この税制措置政策目標を達成することができなかった、局長もそう言っておられるのですが、そのことは政務次官としてお認めになりますか。
  109. 中川一郎

    中川政府委員 この特別措置の功罪といいますか、(松浦(利)委員「功はないです、罪だけです」と呼ぶ)罪の部分については、不動産会社とかあるいは土地ブームを起こしたというものもありますけれども、何といっても当時土地を手放さないということが一番の住宅問題であったことは御承知のとおりでありまして、少なくとも手放しやすくなった。先ほど数字を申し上げましたように、何千台のものが何十万人、三兆円からの土地が手放された、この事実は、やはり効果があったのではないか。その手放された土地の上に家が建たなかったのか、また建ってもとの程度——土地たけで家が建つわけではありませんから、その上に国総法なりあるいは財形なり金融なりいろいろなものの集積によって家ができるわけでして、そちらのほうの手当てが悪かった。特に昨年は、非常な物価高、資材高が住宅建設の促進を阻害した、こういう事実も見のがされないことであります。  これからはひとつ、局長が言いましたように、この税制がどういうふうな結果をもたらしたか、十分調査をいたしまして、改廃といいますか、これをどうするか扱いをきめるわけですが、結果として私は、手放した点においてはプラスがあった。しかし、住宅が建たない、建ち方が少ないという点については反省をし、そちらのほうの促進ということも前向きでやっていって、補完をして、少なくとも手放された土地が有効な、国民の願望である家の建つ方向への努力、そしてまた、これを続けるかどうかは別途ひとつ検討してみたい、このように思います。
  110. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 土地を手放したということもメリットなら、それは効果があったと評価されてもいいのです。それはただ減税をしてやったということだけなんです。土地成金をつくったということだけなんですよ。  問題は、この税制措置というのは最終目的である住宅を国民に供給するという政策目標があってあるわけでしょう。現実にそれは効果を生まなかったわけでしょう。個人から土地が手放されたことは事実だけれども、土地が放れやすくなったことは事実だけれども、しかし、実需者の側である国民の側にはそれはいかなかったわけだから、そういうふうな考え方に立ってこの租税特別措置というのを理解しないと、要するに、租税特別措置というのは金額だ、幾ら税金をまけてやったかという金額だけでいいんだ、最終目的である政策目標がどうであったかということを度外視して、ただ減税の額が幾らだったか、まけてやった額が、幾らだったかという試算だけで進むなら、私は租税特別措置なんかやめるべきだと思うのです。租税特別措置というのは、政策目標、最終目標があって初めて租税特別措置だから、そういう意味では、私は全部洗い直す必要があると思うのです。この租税特別措置というのは効果がないなら、政策目標が達成されないなら、すべて洗い直す必要があると思いますよ。だから私は、土地の問題一つに焦点をしぼってお尋ねしておるわけです。
  111. 高木文雄

    高木(文)政府委員 土地の問題を例に引いてお尋ねでございますからそれにお答えをいたしますが、四十四年段階では実は現在いわれておりますような線引きさえまだできていなかったわけでございます。線引きができて、調整区域とかいろいろなことがあって、そうしてどういうところは農業を振興すべきだ、どういうところは住宅を建てるべきだ、どういうところはたとえば鉄道を敷いて開発をしていくべきだというようないろいろな計画ができて初めて、どういうところに住宅を建てるべきなんだから、そういう地域については特例措置を設けるとかなんとかいう方向にいくのであればともかく、その前にまず土地を手放しやすくするという面には、相当疑問があるということがございました。そのことは当時の税制調査会の審議経過を書いてございます書面にも、るると述べられておるところでございます。そういう意味で、私どもは、実は率直に言って、ややちぐはぐになっておるという感じがするわけでございます。  しかし、幸いその後線引きもできましたし、それからいろいろの公有地の拡大というような精神もだんだんできてまいりましたし、それからまだ御審議中でございますが、新しい土地の取得についての規制というようなことを盛り込みました法案も御審議中でございますし、そういうものが整備されていきますならば、おくればせながらある種の効果があらわれてくるのではないかというふうに思います。一般的には、先生御指摘のように、租税特別措置にはすべてそういう問題がつきまとっておりますので、税だけではなかなかできないことが多うございますから、絶えず他の政策目標との結びつきを考えて処理をしていかなければなりませんし、効果を見守っていなければならぬことは御指摘のとおりでございまして、心してまいりたいと思います。
  112. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは政務次官一つの御提案があるのですが、やはり租税特別措置で特例を認める場合には、こういう政策目標がある、こういう具体的な措置をする、そして税制としてはこういう措置をとるんだ、こういう政策にプラス税制措置としてはこういう方法をとるのだというそのすべてを大蔵委員会に出していただかないと、国民の期待をする大蔵委員会税制議論というものは私はできないと思うのですよ。これからの租税特別措置の新たな提起については、そういう方法をとっていただくように要望として政務次官に申し上げたいのですが、政務次官よろしいですか。
  113. 中川一郎

    中川政府委員 確かにそのとおりだと思います。今度の場合でもやはり規制をして、ほんとうに住宅を建てるとか線引きの問題とかいろいろのことをやってやればよかったのですが、何ぶんにも土地を手放さないことが家が建たない火のついた原因だというようなところから、ああいった思い切った政策をやったわけでございます。  ただ、全く効果がなかったという先ほどからの御指摘ですが、やはり土地が手放されたことによって住宅供給公社等、あるいは個人、私どもの知った範囲内でも相当住宅も建っておるし、建てる予定で土地を持った人も相当ある、その実態がどれくらいになっているかつまびらかでないところは残念ですが、効果はそれなりにあったのだ、ただそれ以上に土地成金がこの制度を利用したということも事実でありますから、この辺は今後はっきりしていかなければならぬ点だろうと思います。
  114. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もうあまり時間がないようですが、今度逆の場合をひとつ申し上げておきたいと思うのであります。  たとえば第七次道路五カ年計画がありますね、予算総額は十九兆五千億ですね。ところが、どうでしょう、これはまず計画がきまるのですね。十九兆五千億という、まず計画が先行するわけです。そうすると、今度のこの租税特別措置によるガソリン税あるいは地方道路税、こういう増税案というのが出てくる。だから、御承知のように、自動車重量税は一般財源、ところが、地方道路税あるいはガソリン税というのは、これは目的税で道路にいく。少なくとも計画をする段階には、税収というものが議論されておかなければなりません。目的税だから、この目的税はこれだけ入るのだ、こういう基礎があって、十九兆五千億という第七次道路五カ年計画というものが出るべきなんです。ところが、計画が先行してしまって、計画である道路緊急措置法という法律は、もうすでに四十八年度に国会を通っておる。これを裏づける税制措置というのがいまこの大蔵委員会議論されておる、計画と税収がばらばらでいくわけです。これも私は明らかに矛盾だと思います。  しかも、その計画の実施経過というものが、道路に限らずすべての国の長期計画がそうなんですが、金額でくる。支出総額がこれだけだ、進捗状況はこれだけだ、そういう数字で出るのですよ。私は一ぺんこのことは本会議場でも議論したことがあります。そのときに、佐藤総理だったと思うのですが、約束された。そういうことのないようにしますよと約束なさったはずだ。ところが、やはり実行計画というものが実質的にこれだけだというふうに出てこない。しかも、計画と財源とがばらばらに出されてくるという弊害というものは、依然として今日も改まっておらないのですよ。こんなもの私は当然ぴしりと一致させて提出すべきだと思うのです。そうしなければ、道路緊急措置法が通っておるから、十九兆五千億は通ってしまっておるのだから、何らかの形の財源を見つけなければいかぬ。それじゃ地方道路税を上げろ、いやどうだ、こういうふうにあと追いで税金が上げられてしまう。一緒に議論させるようにするのが私は少なくとも審議だと思うのですよ。  そういった面について、これもたいへん重要な問題で、私は何べんも議論してきましたけれども、依然として改まっておりませんので、局長がいま手をあげておりますが、局長に事務的な立場でお答えいただいて、そのあと政務次官に、今後こういうことをどうするのか、その点をひとつはっきりお答えいただきたいと思います。
  115. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃるような問題があるわけでございます。ただ少しずつは進歩しておるということを言わしていただきたいのでございますが、道路計画について申しますと、四十八年の二月の十六日に第七次道路計画がきまったわけでございますが、この道路計画がきまりますにつきましては、その数日前の四十八年の二月十三日に閣議できまりました経済社会基本計画を見ました上で、道路計画がきまったということでございます。今日までのいろいろな長期計画はどうもばらばらにきまるということでございましたが、このときが初めて基本計画があってその基本計画との斉合性を持ちながら道路計画がきまったという最初の経験でございます。  さらに進んで言うならば、御指摘のように、この計画がきまるについては、もう少し財源措置とのつながりをつけるべきであるということは、まさに御指摘のとおりだと思いますが、残念ながらまだその改善の割合が十分でございません。二月十六日の閣議決定には、必要な財源措置は四十九年度子算編成時までに所要の検討を行なうということで、お茶を濁したといいますか、この点は改善されなかったということでございます。  今後の私どもの心がまえといたしましては、主税局、主計局を通じまして、大蔵省といたしましては経済社会基本計画のような基本的な考え方をまずきめていただいて、その上に立って各もろもろの長期計画が整備されていく。その際には、歳出サイドと同時に歳入サイドもある程度の見当をつけながらものごとが進んでいくというふうに進めていきたいということを考えておりますし、これは私の所管ではございませんが、大蔵省の中の関係でございます財政審議会等におきましても、そういう方向の仕事をもっと進めなければならないという角度で、昨年の夏から比較的そういう点に重点を置かれまして財政審議会の審議が進んでおりますので、はなはだスローテンポで申しわけございませんが、お示しのような方向に動きつつあるという事実だけ私から申し述べさせていただきます。
  116. 中川一郎

    中川政府委員 確かに道路財源がはっきりしないままに第七次道路整備計画ができた。ところが、ほんとうは一年たったあと、すなわち、ことしはっきりするという一年ずれた形であったのですが、ことしになりまして、御承知のように、日本経済がどうなるかわからぬ。日本経済だけで経済議論するわけにはいきませんで、国際的影響が非常に大きい。特に油の問題が大きくなってきまして、日本経済も基本的に資源問題から考え直さなければいかぬという異常事態を迎えましたので、ことしは二年度に限った改正を緊急的にお願いしておりますが、日本の今後の経済がどうなるか。経済社会基本計画という新しい意味のものをつくって、それに見合った、先ほど言った道路とか港湾とかいろいろありますが、そういう各種の基本計画の見直しもはかり、またその財源もどうするかというようなことは、一回総洗いをしなければならぬ段階に来ているというふうに見ております。  目下そういうことの検討も進めておりますが、とりあえずはこの緊急避難、物価を押えるということに鋭意努力をしておりまして、その見通しを得次第、そういう基本的な問題に取り組んでいかなければならぬ、その中でのガソリン税ということになり、租税特別措置もそういった中で検討されなければならぬ、こういう順序になっていくと思います。
  117. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは私は非常に重要な意味を持っておると思うのです。いま政務次官が言われたように、これは私は新聞あるいはテレビで見ておったのですが、参議院の予算委員会でしたか、田中総理がこういう事態を踏まえて、経済社会基本計画の変更、見直しをするということを公式の席上で具体的に答弁をなさっておられる。だとすると、当然その第七次道路五カ年計画というものも見直されてこなければならない。そうすると、その財源の裏づけであるガソリン税あるいは地方道路税というものについても、もう一ぺん検討し直すべきなんですね。たとえば、目的税であるこれは、一般財源に入れるべきだという議論も当然出てくるだろうと思うのですよ。何もこれを、道路を目的とした税金としてじゃなくして、一般財源として取るべきだという見直しもあるだろうと思う。  いずれにしても、今日では道路という目的を持った税金として取られておることは事実ですね。だとするなら、そういう全体の問題が解決されるまでは、租税特別措置によるガソリン税等の引き上げというのは待つべきじゃないか、私はそういうふうに思いますね。ただし、問題は、これは道路税じゃないのだ、要するに、マイカーを規制する、抑制するための税制措置なんだ、こういうことであれば、また目的は変わるわけでしょう。ガソリン税なり道路税の目的は、抑制だということになれば変わるわけですね。しかし、いまのところは、これはあくまでも道路を建設するための目的税なんですよ。ところが、その基本である経済社会基本計画というものは見直さなければならぬというところに来ている。それが背景にある第七次道路五カ年計画というのも当然見直さなければならぬ。ということになれば、これをいまこの大蔵委員会議論するということは、一体、適当だろうかどうだろうかという疑問が非常に生ずるのです。その点についてどうですか。
  118. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回のガソリン税及び自動車重量税の増税は、第七次道路計画を意識いたしまして検討をスター十いたしたわけでございます。昨年の春以来検討いたしました際には、先ほど申しました昨年の二月におきます閣議了解に基づいて、七次の道路計画の財源については四十九年度予算編成時までにきめるということでございますので、その線に基づいて検討を開始いたしました。  しかし、その後事情がすっかり変わりまして、四十九年度予算編成にあたりましては、四十九年度予算におきます道路の予算につきましては、七次計画を必ずしも前提といたさないことになりました。むしろ四十九年度は四十八年度と同額というようなことで予算が組まれることになったわけでございます。したがって、財源措置につきましても、最終的な七次の道路計画の財源措置を検討することは、適当でない時期になったわけでございます。  しかしながら、四十九年度の道路予算を四十八年度と横並びといたしましても、かなりいわゆる特定財源比率が下がるという結果になりますので、とりあえずの措置といたしまして、この財源比率、一般財源と特定財源の割合が六次計画あたりと差が出ませんようにという程度で暫定的に、目的財源であるところのガソリン税及び実質的な道路財源——制度的には道路財源てはございませんが、沿革的に道路と結びつけて考えられております自動車重量税税率を上げさしていただく。その結果、ちょっと数字を申しますが、もし全く改正をいたしませんでしたならば、特定財源比率が六八・三になる。これは重量税の八割が道路に充てられたものと仮定した場合の計算でありますが、六八・三になるというはずでありました。そういうはずのところを、今度の改正によりまして八四・一まで上げさしていただくということにしたわけでございます。これは六次の計画がスタートしたときのこれに対応いたします率が八九・八でございます。スタートいたしましたと申しましても、例のまた財源措置が一年おくれでございましたから、一年おくれ後の六次計画における特定財源比率が八九・八でございました。それが、ほうっておきますと、いまの七次計画を前提にいたしますと六四・八まで下がりますので、いろいろ議論しまして、予算は今度は伸びませんでしたけれども、とりあえず四十九年度予算におきましての特定財源比率がまあまあというところになるまでということで、やらしていただいているということでございます。  と同時に、道路とは別の意味で、やはり消費抑制なりマイカー抑制なりという気持ちがあって、ガソリンの値段が上がり、また自動車等の値段も上がる時期ではございますが、むしろこの際抑制ぎみであってよろしいのではないかという見地があって、増税に踏み切るということにいたしたわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうことでまことに暫定的なことでございますので、そして道路計画も、場合によりましたならばもう一ぺん洗い直しが必要かもしれませんので、そこで、基本法を直すということでなしに、特別措置法で二年間の暫定措置ということで御審議をお願いしているわけでございます。
  119. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、そういった状況があればあるだけに、やはりもう少し慎重に配慮すべきであったというふうに思います。しかし、そのことはまたあらためて討論する機会もあるかと思いますから、そのときに議論をさしていただきたいと思います。  そこで、お尋ねをしておきたいのですが、個人による株式売買高というものを調べておられますか。
  120. 高木文雄

    高木(文)政府委員 申しわけございません、手元にちょっと資料を持っておりませんので、ごかんべんを願いたいと思います。
  121. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 個人における譲渡益、これは年間五十回以上二十万株以上は問題だけれども、それ以下はカットされるのですね。そうでしょう。それで、資料がないのはどういうわけですか。そういう措置議論をされなければならないのに、なぜそういう資料がないのですか。
  122. 高木文雄

    高木(文)政府委員 資料はございますけれども、いまちょっとここへ持っておりませんので、済みません。
  123. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、来られた方に、正直に、こういう点に関して質問するからというふうに御通知申し上げておったはずなんです。  これは大和証券の株式需給表から私自身がとった表なんですが、私の言っていることが間違っているかどうかは別にして、暦年四十八年一年間に、買い入れ金額が十三兆六千三百二十七億、株数にして五百四十三億六千四百万株、これは買い入れです。それから売却、これが金額で十三兆六千三百十八億、株数にして五百四十七億七千百万株です。これほど個人の株式売買というものがひんぱんに行なわれておるわけですね。だとすると、こういった譲渡益の制限回数、制限株数、こういったものについてはもう見直すべきときにきておるのじゃないですか、その点についてどうですか。
  124. 高木文雄

    高木(文)政府委員 問題は三つございます。  一般的に譲渡所得は非課税とする。これはいつも申し上げておるところでございますが、売買の事実はある程度つかむことはできましても、それによって実際得た利益が幾らであるか、幾らで買ったものを幾らで売ったのかということでないと所得になりませんので、売った額はわかっておりますけれども、買った額の把握が非常に困難だということがございますために、一般的に自主申告前提としている現行の税務制度におきましては、その正しい申告を期待することが非常に困難でございまして、過去におきまして、昭和二十年代の末に、どうも譲渡損のほうだけ申告があって、譲渡益のほうの申告がないというようなことになってしまいましたために、これは二年間だけ課税をいたしまして、その後ずっと非課税になっておるという経過でございます。  しかし、一つ考え方といたしましては、世の中も変わってきておりますし、納税思想もだんだんよくなってきておりますから、その当時うまくいかなかったからといって、今日もうまくいかないとは限らないのでありますからして、何かそこで知恵を出す方法はないかということで研究をいたしております。  もう一つの系統の、二十万株、五十回以上という売買につきましては、これは普通の方の譲渡所得とは違いまして事業所得である。つまり、いわゆる株の売買の概念よりは、八百屋さんが野菜を売ったり、魚屋さんが魚を売ったりするのと同じじゃないか、年に五十回も売ったり買ったりするということはもう事業じゃないかということから、それは課税をするということになっておるわけでございます。そちらのほうも実はなかなか実態把握は困難でございまして、まだ十分の申告を期し得ない状態でございます。この間の殖産住宅の場合に査察等で該当しました事案でありますとか、その他非常にレアケースとしてはそういう課税の問題が起こっております。そっちのほうにつきましても何か研究しなければいかぬというふうに考えております。  そのことにつきましては、本年度税制改正の際にも、何かできないかな、せめて入り口を見つけることはできないかなということで関係者間で相談をいたしましたが、私どもと私どもの証券局との間で相談いたしましたところでは、この春から専門家グループによる研究を開始しようではないか、証券の正しい意味での民主化ということからいいましても、どうもあそこのフィールドが、非常に悪いことばで申しますれば、ああいう脱税の巣みたいなことになっていることは、証券の民主化ということ、特に最近株が法人に集まって非常にぐあいが悪い、個人の株式の所有者が減ってきてぐあいが悪いという問題との関連もございまして、何とかしなきゃならぬということで、はなはだ松浦委員には歯がゆいと言われましょうけれども、まずあそこの部分の研究を即刻開始をいたしたいということで、関係者間で話し合いをいたしておるところでございまして、何とかもう少し、全般的な株式の譲渡所得の課税までは無理といたしましても、御指摘の二十万株、五十回という、あの辺の制度を若干拡充整備していくということにいたしてはどうかという方向で研究を始めたいと思っております。
  125. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は大蔵委員会で質問をするのは初めてなんですが、こういった問題は、やはり野党からも常に議論があったことだと思うのですよ。ところが、どういうわけかこういう問題の結論がなかなか出ない。先ほど政務次官は、いや、議論があったら翌年はちゃんとこう出ますよと、こういうお話でしたが、経過で見る限りにおいては、その効果が出ないですね。おそらくきょう答弁されたようなことが、やっぱり答弁されておるだろうと思うのですよ。  たとえば、配当所得の問題にしたって、確かにアップ率は下がっていますね。結局、これは、昭和四十八年度が二百七十五万七千円だったものが昭和四十九年三百五十七万円、二九・四%アップ。一般課税最低限の場合、四十八年百十二万一千円だったものが昭和四十九年百五十万七千円、三四・四%アップ。確かに控除率は下がっておるけれども、非課税限度額は上がっておる。ところが、常識的に考えてみまして、配当所得者が三百五十七万も配当所得がある、これは、御承知のように額に汗をしない、勤労によらざる所得ですよね、その人は三百五十七万円まで税金がかからない。片一方は、一生懸命額に汗をして働いて働いて、苦労して苦労して、そして百五十万七千円以上になれば税金がかかる。非常にアンバランスでしょう。こんな議論というのは、私は、当然しょっちゅうなされておると思うのですよ。なぜこういうものを今度のこの委員会でもっと、三百五十七万円と課税額を上げるんではなくて下げるというようなことをしなかったのか、そういったものについても矛盾を感ずるんですよ。私が言っておることは、もういままで何べんも野党が議論をしておることだと私は思うのです。  それで、もう主税局長でなくて政務次官、これは政策的な問題ですからね。過去のことはいろいろ言っていたってしようがないのですよ。これからの問題について、ほんとうにまじめに、配当所得なりあるいは譲渡所得等について国民のコンセンサスを得るように、国民が、何だ、おれたちばかり税金を納めて、そして高額所得者はぬくぬくとしておるじゃないか——これはもうすでに本委員会で、佐藤委員の御説明によると議論があったそうですからあまり触れませんけれども、この大和証券の四十八年版の「税金読本」、これなんかは、いかにうまく税金をごまかすかということを教えておるのですよ。表現も「ムダな税額も多額になります。」とかね。源泉徴収をされておるほうは全くびしびし取られる。一方のほうではこういう形で、それは、商売上こういうのを出すんでしょうけれども、なかなかうまく書いてあるんです、読んでみたら。いかに税金をごまかすかということがきわめてうまく書いてあるんだ。ほんとにうそじゃないよ、すべてにわたって書いてあるのです、「所得税のABC」から始まってずうっと。そして最終的には「株式投資と税金」というところで、いかにうまくやるか、株をやればどうだ、総合所得だ、あるいは分離課税だと、こういうふうにね。申告したほうが得な場合、あるいは申告しないほうがいい場合、これを全部教えておる。  片一方では、こういうものがやはり租税特別措置によって全部税金を減算しておる、まけてくれておる。一方のほうでは、先ほど議論されたように、いろいろ意見の違いはあるけれども数字的にいうとたいへんな犠牲を受けておる。税金を納めることが犠牲だと言っておるのじゃない。やはり税というのはあくまでも公平でやることが原則なんです。税という仕組みを通じて所得の再配分をするというのが一つの税の目的なんです。ところが、租税特別措置法あるがゆえに、租税特別措置法によって高額所得者がたいへんに恩典を受けて、低所得者が苦しむという、そういうものについて、まじめに毎年毎年予算のたびに非常に議論があっておると私は思うのですよ。政務次官、こういったものについて、租税特別措置全体について、来年は少なくともこういうばかげた議論がまた行なわれることのないように徹底的に見直していただきたい、改めていただきたい、そのことだけを希望として申し上げたいと思うのですが、政務次官どうですか。
  126. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘の点はごもっともでございますので、大蔵省としても毎年見直しをして、できるものについては改正をしていく、改善をしていく、あるいは廃止をしていくということをやってきております。それでもなおかつまだ残っておりますのには、またそれなりの一つ一つ理由があって、今年はできないけれども来年、たとえば株の売買益に対する課税などは、確かに国民の批判のあるところですから、何とかしたいと思いますけれども、いま言うように、制度はつくってみても、みな損したことだけ申告してくるというようなことであってもいけないので、その辺をどうしたら的確な課税ができるかということについて、まじめなくふうをしていることも御理解いただきたいと思います。  しかし、松浦先生の言うとおりでありまして、金持ちだけがうまくやって、一般庶民は重箱のすみまでつつかれて取られてしまうという税に対する不公平感のあることは事実でありますから、そういう点については今後ともさらに旧そうがんばっていきたい、こういう考え方でございます。
  127. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと技術的なことだけお答えさせていただきますが、配当につきましては全般的に問題もございます。そして先般佐藤委員にもお答えいたしましたとおり、いろいろむずかしい問題もあるわけでございます。ただいま御指摘のありました配当控除の問題、三百五十七万円までかからないという配当控除の問題は、これは法人課税の配当につきます二重課税調整の問題にからんでおりますので、非常にむずかしい問題であるということでございます。  一方、先ほど御指摘のありました譲渡益の問題のほうは、これは当委員会でもしばしば御批判を受けておりますが、証券業界でもこれは問題であるということで、少なくとも証券業界自体が、現在、最近動いておりますカナダの方式等を自分で研究するというところまで動いてまいったことでおわかりいただけますように、やはり当委員会でいろいろ御議論いただいておりますことが、非常にテンポはおそいといってしかられましょうけれども、とにかく動いていることは動いているわけでございまして、そっちのほうの問題は何とか徐々に解決に向かって入り口を見つけ出したいというふうに思っております。その二つの問題はやや似て非なる問題でございますので、その点だけ触れさせていただきます。
  128. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 せっかく三百五十七万円の配当所得に対する特例の問題が出ましたので、私も松浦委員のあと、この問題についてもう少しお伺いをしたいと思っていたわけであります。  まず政務次官にお伺いをしますが、その前に事務当局でけっこうですが、局長、三百五十七万円の勤労所得があったら、いわゆるサラリーマンの三百五十七万円の所得だったら、現在一体幾ら税金がかかるのですか。いろいろ計算のしかたはありましょうが、ざっと……。
  129. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十九年で十八万八千円でございます。(「何人家族」と呼ぶ者あり)夫婦子二人の場合でございます。給与収入でありましたならば十八万八千円かかるわけでございます。
  130. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は、前半のときにも御質問しましたように、こういう三百五十七万円までなぜ配当所得に対しては税金がかからないかという理屈はわかるわけです。それは皆さん方の言う理屈はわかりますが、政務次官、どうですか、いま松浦委員も言われましたように、配当所得のみの場合には三百五十七万円までは一銭も税金がかからないわけです。ところが、勤労所得の場合、まさに額に汗をして働いて三百五十七万円得た人——いま大体勤労所得の一番多い階層が百五十万から二百万でありますから、三百五十七万という方もかなり多いわけでありますけれども、額としては平均よりかなり上の方でありますが、その方ですら十八万八千円税金を払う。これは配当所得に対するいろいろなことが考えられる、法人税との二重取りだ云々という問題がありましょうけれども、国民感情として、配当所得は三百五十七万円までは一銭も税金はかからぬ、苦労してかせぐ勤労所得については十八万八千円という税金がかかるということ自体は、これはどう見ても国民感情から合わぬわけですよね。  ここに福田大蔵大臣がいれば、福田大蔵大臣は絶えず公正と連帯ということを口にされるわけでありますけれども、いま福田大蔵大臣いらっしゃいませんので、代理として政務次官、どうですか、これで公正ということが税法上言える、国民は納得する、そういうふうにお考えになりますか。どうでございますか。
  131. 中川一郎

    中川政府委員 確かに、先ほどから御指摘がありましたように、また従来からも議論があったところですが、給与所得者に比較して株の配当利益について甘いではないかという御指摘があることは事実なのですが、それだけで済むのならば当然これは課税対象にして勤労所得と同じようにすべきなんですが、繰り返すようですけれども法人税の二重課税という問題をどう処理するのか、すでに納めている税金が先取りといいますか、先納めというのか、その段階で税を負担している。この問題を解決しないで二回かけるということは、これまたいかがかという非常に厚い壁があって、悩み続けておるというのが偽らない気持ちでございます。ほんとにむずかしい問題ですが、この点しろうとにはわかりにくいにしても、専門家である先生方にはひとつ御理解をいただきたい、このように思うわけでございます。
  132. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 十年一日のごとくやはり同じことの議論の繰り返しだと思うのですよ。先輩の委員にお聞きしましたら、そういう議論はもうずっとやられておるそうです。御答弁もやはり連続して、むずかしいむずかしいでずっときておるのですね。ところが、こういうことが残っておるから、税の不公平という実感が国民にあることだけは事実ですよ。  だから、少なくとも来年度の大蔵委員会では、おそらくまた租税特別措置についての議論があると思うのですが、そのときにはほんとうにぴしっとして、ほんとうに税の不公平感、不平等というものをなくす、特例中の特例だけが租税特別措置に残っておるのだという見直しをすかっとして、そして出していただきたい。もうこういう議論は私たち自身あんまりしたくないですよ。もう同じことを幾ら言ったってしょうがないですよ。やる気がなければやる気がないと言えばいいのだけれども政務次官お話を聞いてもわかるように、非常にやる気、前向きの答弁ですわね。結果はしかし、やる気がないことで終わっておるわけです、実績がないから。  この点、政務次官、大蔵大臣がおられませんので、もうこれ以上は議論しませんが、来年度はこういうつまらぬ議論がないように、見直してくるのならぴしっと見直して、整理をするんだ。できないものは、できませんでした、こういう理由でできなかったということを国民の前に明らかにする。その点について、ひとつ的確にお答えいただきたいと思います。
  133. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先にちょっと私からお答えいたします。  過去におきましても、当委員会においていろいろそういう御議論をいただきました。そのことで、いわば激励を受けて、たとえば輸出に関するいろいろの奨励措置あるいは重要産業の合理化機械の特別償却制度というようなものは、特別措置の中から、税法から姿を消すようになってきたということでおわかりいただけますように、私どもといたしましても、できますものからそれなりに努力をいたしておるつもりでございます。  ただ、いま御指摘の配当控除の問題というような問題になりますと、これは決して日本だけにあります特別措置ではございませんので、世界各国とも法人税につきまとってある制度でございまして、そういう基本的な仕組みの問題に関連した問題については、なかなか議論が尽きないということをお含みおき願いたい。もちろん、いろいろの政策上のもので直すべきものであり、かつ直し得られそうなものもございますから、順次整理をしてまいりたいというふうに考えます。
  134. 中川一郎

    中川政府委員 税は公正でなければいかない、これは基本原則だと思うのですけれども、実際問題として、公正とはどこにあるのかということになると、これは非常にむずかしい問題だと思います。  そこで、これは私個人見解でございますけれども、諸外国において付加価値税というものが発達してきたのもこういう点にあるのではないか。直接税でありますと、不公、平感、負担感が強いというので、付加価値税というものを取り入れて、そして富の分配は、配分のときだけにきちっとけじめをつけていく、こういう考え方が出てきたのは無理もないかなという感じをもって見ております。しかし、日本において付加価値税がまだなじまない制度であり、しかも、物価高の今日においては考えられない税制であろうという点を考え、長期的にはそういうものが取り入れられるようになってくれば、こういった問題も解決できるのではないか。  たとえば課税最低限を三百七十万円ぐらいまで上がるように直接税の軽減をはかって持っていけるような段階になれば、そういった問題も解決してくる、あるいは解決に近い形になってくるというようなことも考えますけれども、それはまだ当分の間、付加価値税が国民の合意が得られる段階にはないということからするならば、なかなかこの問題、むずかしいわけでありまして、この点については検討するとか、ましてや来年前向きで改めますといえる段階にない。非常にきびしい二重課税という問題をどう処理するか、私どもには現段階においては何ともいえない。税制全体としての検討は加えてまいりますけれども、この問題をお約束できる段階にないことを御理解いただきたいと存じます。
  135. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 十年一日のごとく同じ議論があって、できない理由も私は国民の前に明らかにすべきだと思うのですよ。こういうことでこれはできません、そういうことをぴしぴしと明らかにしてくださいというのが私の希望なんです。できなかった理由はこういうことでできません、これはこういうことでできませんでした、これはできました、こういうことを具体的に来年のこの委員会提出してください。作業としては、そういうことだけはできるじゃありませんか。そういうことを私は政務次官にお願いをしておるんですよ。十年一日のごとくやります、やりますと言って、結果的に何もできなかった。また同じ議論。そういうことでは問題が解決しないから、その点を明確にしましょうや、こう言って政務次官にいま私が要望しておるところなんですよ。それはできるんじゃないですか。
  136. 中川一郎

    中川政府委員 ですから、この所得法人段階において税金が納まっておる。先納めしておるというまで言えるかどうかわかりませんが、そういう性格のものであって、単なる所得とは違うんだということを申し上げれば、一〇〇%納得いかないにしても、なるほど違うのかなという程度ぐらいはわかっていただけるんじゃないか、このように思いまして、繰り返しそのことをお答え申し上げておる次第でございます。
  137. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は一つの例として申し上げているんですよ。まだたくさんあるんです、言おうとすれば。これから何時間かかったってやりますよ、書いてあることは一ぱい書いてあるんだから。やろうと思えば、租税特別措置一つ一つやるだけで、私だけでも十時間か二十時間はやるんです。そういうものを一つ一つここでやっておったんじゃだめだから、一つ二つの例を具体的に申し上げているんです。  だから、あなたは一生懸命いま配当所得のことだけ言っておられるけれども、そうじゃない。全体の租税特別措置の中で不公平感を国民に押しつけておるようなものについて、整理できないものはこういう理由でできませんということを明らかにしたらどうですかということをいま言っておるのですよ。配当所得のことだけ言っておるんではないのです。これは一つの例なんですよ。その点をひとつわかってもらわないといけないと思うのですがね。どうですか。
  138. 中川一郎

    中川政府委員 私も大蔵省へ入る前にはそういった感じを持っておりましたが、入りまして一つ一つやってみますと、やはりそれなりの理由がある。どうも理由がなく、説明がつかないし、やってやれないことはないのにやれないのはあの七二%の問題、これなどはやるべきだというふうに考えますが、それ以外は、詰めて見てみるとそれなりの理由がある。しかし、来年、再来年になれば、これはまた改正してもいいというものもあります。しかし、何もそういう問題について頭を使わないで、国民をごまかして、大企業といいますか、特別の人だけにいい制度をのんべんぐうたらとやっているという性質のものではなくて、ほんとうにまじめな検討を加えていることだけはひとつ御理解をいただきたいと存じます。
  139. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 どうもかみ合いませんけれども、もうこれ以上このことで議論しておってもしかたがない。しかし、おそらくまた来年同じことで議論せざるを得ないと思うのですよ。結局、重税感が国民にあるだけで、何だ、不公平じゃないかという印象が国民に残るだけ。そうでないようにいかにすべきかということを私は提起しておるんだけれども、やはりむずかしい、むずかしい。中川政務次官をしてむずかしいと言わしめれば、これはもうだれが政務次官をやったって、大臣をやったって、租税特別措置はふえるばかりで、整理されていくということは期待できませんね。期待がないものを幾らここで議論したってだめだから、もうそのことに期待はしない、全然もう来年もだめだということで理解をしますわ。そういうこと以外にないですね。こちらはそういうことの十年一日のごとくの議論に終止符を打って、少なくとももっと前向きに議論をするように、できないものはなぜできないかという理由を具体的に知らしめるようにしたらどうかという提起までしたんだけれども政務次官はむずかしい、むずかしいの一点ばかりだから、そうであれば、もうここで議論したってしようがないのでやめますわ。  それで、今度東京都が発表した例の資本金別法人の税負担率調査ですね、これが新聞に大きく出て、たいへんなセンセーションを巻き起こしておるのですが、具体的にいうと、いろいろな租税特別措置その他の減税措置によって、逆進課税になっておる。資本金の大きいものほど税率は低い、税負担は安い。そういう数字が実は東京都の税調から出されたわけですね。ところが、これに向かって大蔵省から挑戦をしておられる。あれはうそだ、そうではない、資本金の高いものほどやはり税負担は高い、累進になっておるのだ、逆累進ではないのだということの局長新聞談話が出ておることも私は読みました。これは東京都に行ってとってきたのです。東京都が社会党の都議会議員に対して出した数字ですね。一枚の半ペラ紙ですよ。これが一枚出されただけ。これに間違っておるところがあれば指摘してください。どこが間違っておるのか。そして、これが間違っておるとするならば、こういうものに従った政府の資料を出してください。そして比較検討しようじゃありませんか。この点、高木さんどうですか。
  140. 高木文雄

    高木(文)政府委員 最初に弁明をいたしておきますが、この新聞に報道されましたときに私の談話が同時に載っております。その点、弁明をさせていただきますが、これは真夜中に電話で照会がありまして、現物を見ない状態でどう思うかと言われますから、それは現物を見なければ評価のしようがないと答えたのでありますけれども、要するに、法人税は資本階級別に逆進税率になっていると思うかということでございますので、いや、逆進税率にはなっていない、租税特別措置等の問題があって、必ずしも基本税率軽減税率との関係がそのとおりにはなっていないけれども、逆進になっているということにはなっていないと思うということを、電話で答えたものを非常にうまく書かれたものでございますので、その点は御了解を得ておきたいと思います。  それから、逆進か累進かという問題は、これは私ども見解は、昨年当委員会に四十六年分について御提出をいたしました。四十七年分について近く御提出を予定いたしておりますが、阿部委員から御指摘をいただきまして出しましたあのいわゆる資本金階級別の実効税負担の表が、私どものいま考えております実際の負担額でございます。これによりましても、いつも御指摘を受けておりますように、必ずしも資本金の大きい企業実効税負担率が高いという結果にはなっておりません。それはなぜかと申しますと、配当軽課税率関係があることがあり、それからいろいろの特別措置関係があるからでございます。しかし、東京都が出されたということで報道されておる数字ほどの、私ども新聞で見ておりますが、こういうひどい、ひどいといいますか、著しい逆累進という形になっていないということでございます。  これはどこに誤りがあるかということにつきましては.先般当委員会におきましてしばしば御引用いただきました私が東洋経済に私の名前で出しましたものにも詳しく述べておりますように、法人税額の数字が違っておるということでございます。この法人税額の数字は納付税額の数字でございますから、源泉徴収税額なりあるいは外国税額なりというものの控除後の数字があがっておるわけでございます。本来、税法上納めるべき額というものがあって、これを普通算出税額ということばで呼んでおりますが、算出税額からすでに利子、配当等について源泉徴収を受けました額、あるいは外国へ納めました額、そういうものを差し引きました残りを法人税額と呼んでおるわけでございますが、それは実質の負担を意味しないわけでございまして、いまの源泉徴収制度のもとにおきましては利子、配当、外国税というものにつきましては別途納めまして、そしてそれを算出税額から引きまして、そして納付するわけでございます。ここにあがっている数字は、算出税額でなくて納付税額でございますから、法人の税負担を見るわけにはいかないわけでございます。そういう点がございます。  そのほか事業税——法人税のほうは、ここにあります国税庁発行の「法人企業実態」という実際の税金の額から出ておりますが、事業税のほうはこれは理論値計算でございます。それから、法人税法人住民税のように益金処理といいますか、そういうものも、事業税のように損金処理になるものも一緒に合計してある数字でございますので、負担率としては意味をなさない数字なのでございます。これはしかし、どういう意味でものを理解するかということにもよるわけでございまして、ある意味ではこういう数字は、数字そのものは違っていない、こういう根拠も示してございますから間違っていないということでございますけれども、この数字の持ちます意味というものは、あまり意味がないのではないか。益金処分のものと損金処分のものを足してみてもあまり意味がありませんし、それから、これは法人税額に住民税率や何かを掛けてありますけれども、住民税率というのは、これは法人税額の納付税額にかかるのではなしに、算出税額に掛けなければいけないというところの計算違いが一つでございます。  ちょっとそういう意味で、もともといろいろの理論上の点もあり、そういう点に相違があります。  あとは特別償却の減価償却費とか、あるいはその他のB欄というところにあがっております数字についてどう理解すべきやということは、これは見解の相違の問題でございます。退職給与引き当て金とか貸し倒れ引き当て金とかいうものを一体どう評価すべきやというのは、これは見解の相違によるものでございますから、いろいろ議論があってしかるべきでございますけれども、そういう点がいろいろあるわけでございまして、私は、この数字をもってそのまま法人の税負担が逆進的になっているという批判は当たらないというふうに解釈をいたします。必要がございますれば、いろいろその解説等、解説というと悪うございますが、何か資料等で御説明を申し上げてもよろしいと思います。
  141. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまいろいろ言われましたね。これはしかし、少なくとも東京都の財務局の専門家が、これは確かに理論数値ですけれども実態がわからないから理論数値によらざるを得ない部分もあることは事実です。であれば、これは高木さん、ひとつ資料を的確に出していただいて、その資料を中心にして、東京都のこの資料と大蔵省の出した資料といずれが正しいか、どういうところに問題点があるのかというのを議論しようじゃありませんか。あなたはそういう意味新聞に資料を出すというふうに言っておられましたので、この際その資料を本委員会に出していただきたい。しかも、東京都のこの数値に従って出していただきたい。また、これにつけ足すものがあればつけ足していただきたい。その資料が出た段階でこの問題についてはお互いに議論をし合うということで、ひとつ委員長のほうで御配慮いただいて、そういうふうにしたいと思いますから、資料を出していただけますね。   〔委員長退席、山本(幸雄委員長代理着席〕
  142. 高木文雄

    高木(文)政府委員 けっこうでございます。ぜひとも私ども法人税について御理解をいただくために、そういうことの御説明をさしていただく機会を持たせていただきたいと思います。
  143. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それはいつごろ出ますか。もうしばらくすれば、こんなのはすぐ出るでしょう。
  144. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは四十六年の数字でございますから、ある意味からいいますと、先般来当委員会において御質問の際に引用されました東洋経済に昨年の八月でございましたか九月号でございましたかに出させていただきましたあの資料と突合すればよろしいわけでございますので、そんなに時間をかけずにできると思います。
  145. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、それが出てきた段階でこの問題はまた議論をさしていただくということで、一応留保させていただきたいと思います。早急に出してください。  それからもう一つの問題は、これはもうやめますが、いつもわが党も主張し、本委員会でもいろいろと議論されたことがあると思うのですが、実は広告税の問題ですね。これは一体具体的に政府はどこまで広告税について議論が進んでおるのか、その点ひとつはっきりさせてください。
  146. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは前国会において、当委員会においても非常に御指摘を受けましたし、また与党方面からも、非常に強く考えたらどうかというサゼスチョンもありました。税制調査会を中心にいたしまして、相当御審議をお願いしたわけでございます。税制調査会の答申では、このような新増税についてはその負担の及ぼす影響やこれを具体化した場合の制度上、執行上の各種の問題点についてなお引き続き検討を加える必要があるということでございまして、まだ政府といたしましてもその可否を決定するに至っていないわけでございますが、そのおもな理由は、広告というものがもろもろの販売拡張手段の中で特別に罪悪が大きいというか、そういう意味において抑制的であるべきかどうかということが一つと、それから、それが要するに一種の、自由競争を前提とする資本主義体制の場合に、商品を知らせるという意味においてはやはり何といっても一つのフェアな方法ではないかというような問題、それから、企業ごとに広告、販売促進手段の態様が違う。広告を通じて販売促進をすることに便な企業と、他の販売促進手段を選ぶほうが便な企業と、いろいろある。それが広告についてだけ抑制をするということになりますと、特定業種や特定企業に差別的課税になるのではないかというような問題がいろいろ議論されたわけでございます。  同時に、具体的には、ことしの場合には、四十八年の十二月の段階で、新聞の用紙の割り当ての縮小というようなことであるとか、テレビの放映時間の制限というようなことで、税によらずしてより具体的な方法で広告の持ちます消費促進の悪い面を押えるような具体的なことが考えられましたこともありまして、もう少し様子を見てはどうかということになったものでございます。
  147. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは大蔵省からいただいた資料ですが、これは株式会社電通の調べによるのですが、媒体別支出額、四十七年度分八千七百八十二億円、これは間違いありませんね。
  148. 高木文雄

    高木(文)政府委員 電通の資料そのままのものでございますので、その意味で間違いございません。
  149. 松浦利尚

    ○松浦(利)政府委員 広告税の問題は、やはり交際費と同じ問題だと私は思うのです。たまたまこれは物価の問題を調査するので、有価証券報告書を取り寄せたのです。たまたまですよ。これは昨年の九月期の決算なんですが、要するに、広告を媒介して販売をやっておる製薬会社の代表として武田薬品、それから洗剤関係の花王石鹸、これの決算書を見ますと、こういうことが出るのです。交際費は一億四百六十三万一千円、これは花王石鹸です。ところが、広告費及び拡売費というのは六十三億七千九百六万五千円使われておるのですよ。交際費が非常に少ないですね。逆に広告費がものすごく多いですね。それから武田薬品工業の場合、これも同じように宣伝費は三十三億一千七百万。交際費は二億九千二百万。ですから、こういう花王石鹸とか武田薬品に見られるように、この媒体別、業種別の広告の支出比率が非常に大きい企業は、交際費が非常に小さくて済むのです。広告費の非常に少ないところは、逆に交際費が非常に大きい。  ところが、その交際費には課税されておるわけでしょう。広告費のほうは野放しなんですよ。しかも、いまや交際費と広告費というのは、同じ目的を持ち、同じ効果を持つものになってきておるのですよ。ところが、片方は課税して片方は課税しないということになると、これは明らかに不公平だし、逆にいうと、その広告が正常の形の広告ならまだいいけれども、往々にして誇大広告とか、あるいはライフサイクルを短くして、同じ企業で百円なら百円の製品を五つも六つもたくさんつくって、その宣伝効果によって全体の購買力を増す、そういう政策も現実にこういう企業ではとられてきているのです。ということになりますと、やはり広告税というのは、一定の比率まではいいけれども、それ以上を越える過剰な宣伝については課税をするという、その方針がぴしっと立って広告税創設についての見直しをするという政策にしないと、広告税というものだけを念頭に置いて議論をすると、永久に広告税はとらないということになると私は思うのですよ。そういった意味で、私はたまたまこの有価証券報告書を見てそういうことを感じましたので、政務次官、ひとつ広告税の創設について、こういった面も含めて検討し直す、見直すということについて、にこにこ笑っておられるようですが、政策ですから、政務次官から発言してください。
  150. 高木文雄

    高木(文)政府委員 政務次官も広告税の課税については非常に御熱心でございまして、しばしば私どもに御下命があったわけでございます。それで、まさに先生いま御指摘のように、広告税と交際費のいろいろ入りくりといったような問題がございまして、そういう角度からはある意味で何か片手落ちという論議があるのでございます。  ところが、もう一つ、いまおあげになりました中に入っているのか入っていないのか、そこが非常にやっかいなんでございますが、交際費と広告費のほかに、別の方法による拡売費というものがあります。それは企業会計上、つまり有価証券報告書の上でどの欄にどういうふうに計上しているかがわからないのでございますが、その拡売方法としていわゆるリベートという方式が一つございます。それからもう一つは、人手を使って売り込んでいくという方法がございます。たとえば、化粧品なんかについても、広告をやってどんどん売っていくという方法と、自宅訪問で売っていくという方法とがございます。そうすると、その場合には人件費のほうに入ってきてしまうというような問題がございまして、おっしゃるように、交際費、広告費の問題がございますが、さらに他の方法による拡売費の問題がございまして、果てしなく広がってきまして、どこで切るべきやという問題が出てくるのでございます。  いまも申し上げましたように、政務次官からもいろいろ御指導、御指摘もございましたので、調査をいたしたり、数字を拾ってみたり、いろいろいたしたのでございますが、どこまでどういうふうに広げていったらいいか、どうするのが公平かというようなあたりに、なかなかむずかしい問題が出てきたわけでございます。そういうことで踏み切れなかったというのが実情でございますので、その事実だけを申し上げておきます。
  151. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 有価証券報告書を見ますと、それぞれ計上のしかたが違うのです。宣伝費ということでぴしっとやっているところと、宣伝費と拡売費とが一緒になっているところと、拡売費と宣伝費がばらばらになっているところがあるのです。ですから、この有価証券報告書の関係を統一しさえすれば、そういう区分はぴしっと出るわけですね、拡売費と広告費とぴしっと分けて出すようにさせれば。これは技術的な問題だと思う。問題は、政務次官も広告税については熱心だそうですから、ひとつ創設について努力してみてください。
  152. 中川一郎

    中川政府委員 実は広告税につきましてはいろいろな問題がありますが、特に最近は、消費抑制という時代に必要以上の広告があり過ぎるのじゃないかという点も着目いたしております。  それからもう一つは、必要のない広告と思われるものがずいぶんあるのです。たとえば電子計算機の広告を一面扱っている、こういう広告が大衆に一体何の関係があるのだろうかという内容のものもあります。  それからもう一つは、たとえばコカコーラのように、原価がどのぐらいかかっているかわからぬけれども、テレビをつければスカッとさわやかコカコーラと、そうして広告だけでコカコーラのようなものだけが伸びて、日本古来のラムネだとかサイダーのようなものが埋もれていってしまう。言ってみるならば、中小企業と大企業の分解作用を起こす。大企業で広告のできるものはどんどん太っていくけれども、広告のできないものは食われてしまう、こういう面もあります。  あるいはまた、テレビのチャンネルが一体これほどたくさん日本に必要なんだろうか。世界じゅうを見ても、二チャンネルか三チャンネルがせいぜいである。それから放送の時間も、朝から晩まで鳴りっぱなし、たいがいの国は昼間だんなさんやむすこさんが働きに行っているときには放送はお休み、これくらいが普通なのに、どうしてこんなに多いのだろうか。しかも、放送する内容がそれほどいいものが多いかというと、どちらかというと視聴率をあげることに重点が置かれている。  いろいろな点を考えてみて、広告税というもので規制をするのかモラルでいくのかわかりませんが、過当広告の部面だけは税の対象にすべきではないかと、私は理論的に思うのです。ところが、むずかしいのは、言論の抑圧という大義名分も一つあるわけなんです。言論は自由にさせるべきだ、それを押えるというところにいくんじゃないか、ファッショ的発想だという考え方も一方にあります。  それから、交際費と違うのは、社会悪といいますか、交際費は飲んだ食ったで、会社のためにやっているのか個人のためにやっているのかわからぬという点があるが、これとは若干違います。違いますけれども、もうそろそろ広告税について真剣に——われわれは決して言論を弾圧しようというんじゃなくて、必要な広告はもう当然のことですからいいんですが、不必要な、しかも過当と思われるものについては税を求めるというのが正しいあり方だという気持ちは変わっておりません。  そこで、ことしも何とかと思ったんでございますが、いま局長の言ったような問題もありまして、検討課題として残っておる。その点については、今後とも野党の皆さんの御理解も御協力もいただきたいものだと考えております。
  153. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 政務次官の言われたこと、結論は賛成ですが、ただ内容的に若干違うのは、われわれはその内容に立ち入って言っているんじゃないんです。そのことを内容に立ち入って、これはくだらぬからとかなんとか、こう言っているんじゃない。要するに、問題は、一定規模以上の広告については税金を課すべきだというところに私たちの広告税創設の目的があるのであって、その放映の内容とか、広告の内容に立ち入って云々というつもりはございません。その点は政務次官もわかった上で政務次官のお考え方を述べられたんだと思うのですが、広告税の創設をしなければならぬ、一定限度以上に過度と思われるものについて税を課したらどうかというのがわが党の主張であり、われわれの考え方だということだけ最後に申し上げまして、私の時間が来ましたから、これで終わります。
  154. 山本幸雄

    ○山本(幸雄委員長代理 佐藤観樹君。
  155. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は先週、いまの税法全体を見てみますといわゆる産業優先の税制になっていて、これから福祉優先の経済に対応するには税制も対応していないのではないかという話をして、企業部分だけで終わったので、きょうは残り、許される時間で個人の問題について少しお伺いをしたいと思うのです。  先ほど松浦委員からも御指摘がありましたように、いわゆる勤労所得と資産所得の問題です。これは、四十九年度で三百五十七万円までの配当所得の人のみには課税されずに、これが給与所得の場合だと十八万八千円の税金がかかるということについては、だれが見ても不公平だしおかしい、国民感情からいっても合わぬと思うのですね。先ほどの御答弁のように、皆さん方は必ず二重課税だということを言われるわけです。ところが、いわゆる法人擬制説なるものがきわめて古ぼけた考え方であるということについては大体一致をしてきているし、大体皆さん方の頭の中にも法人実存説をとられている部分もあるわけでありますから、もう少しここで、やはり税の公平ということから考えてみなければいかぬじゃないか。  皆さん方は二重課税ということを言われるけれども法人税でいわゆる法人が取られる配当に対する課税の問題と、個人が配当を受け取ったときの配当課税の問題この意味からだけいえば、確かに二度取られているようでありますが、しかし、これは両方合わせてみて、では合わせて何%だから二重課税だ、合わせてこれ以下ならば二重課税じゃないという原則はないわけですね。ですから、今度の改正においても、配当軽課措置は二六%から二八%になっているわけです。そして配当所得の特例については一〇%の据え置きのままでありますが、四十八年度の二六%の配当軽課の場合も、今年度二八%に上げた場合の問題でも、これは皆さん方の理論からいえば、二重課税という面では全然変わりないわけです。  それならば、国民感情に合わない、三百五十七万円までの配当所得の人のみは税金がただであって、そして勤労所得でこれだけを取るとすると十八万八千円税金がかかる、この矛盾を解決をするためには、いま一千万円までの配当所得の人については税額控除が一〇%されているわけでありますが、せめてこれをサラリーマン並みに課税をするという見地に立って、この配当控除の一〇%を五%にしますと、大体十八万幾らかの課税額が出てくるわけです。これだっていまだに二重課税であることは間違いないわけです。法人部分で配当軽課で二八%の税金がかけられ、個人所得に入るときに配当控除が少なくなりましたけれども、税金がかけられることは変わりないのです。いずれにしろ、これは二重課税だという皆さん方の論からいえば変わりはないわけですけれども、国民的見地に立って公平というならば、この配当控除をせめて一〇%から五%まで下げて、そしてやはりせめてサラリーマン並みに税金を課すべきではないか。これだって二重課税ということからは全然離れたわけではない。  本委員会の冒頭の質問で自民党の野田委員は、本来、この配当所得に対してはむしろ勤労所得よりも重課させるべきである。私もそう思うわけです。そう思うが、一ぺんにそう言ったら、皆さん方それはいかぬというでしょうから、せめて勤労所得と資産所得の課税については同額程度の課税をするぐらいに一歩前進をさせるべきではないか、こう思うわけです。これだって二重課税という問題は一向に解決するわけではないですけれども。どうですか、この配当控除をいま一〇%というのを五%に下げる、こうすればせめて勤労所得も資産所得も三百五十七万円の収入があった場合にはまあまあ同じ程度の税金がかけられる。これで私は少なくも一歩は前進になると思うのです。この点についてはいかがでございますか。
  156. 高木文雄

    高木(文)政府委員 配当控除は本来は二〇%でございました。それが昭和三十七年に法人のほうの配当軽課税率ができまして、配当部分については税率が四分の三だけになりました。四分の一だけ軽減されましたときに、配当控除のほうもそれにバランスする趣旨で二〇%の四分の一削りまして一五%になりました。そこまでは二重課税排除の制度として確立をしておったわけでございます。その後昭和四十五年の際に、その一五という配当控除を一〇に下げたということがございます。この一〇に下げた段階から、二重課税排除ではございますが、その趣旨が必ずしも徹底をしないということになっておるわけでございまして、そんなことならばついでにもう少しそれを落としたらどうだというただいまの御指摘は、現実的な御提案として承るわけでございます。  そこで、問題は、法人税の問題として二重課税論として先般来御説明しておりますし、二重課税論との関係から申しますと、一挙に配当控除をやめることはなかなかむずかしいというふうに御説明をいたしておりますが、もう一つ基本的には、何度も繰り返して申し上げておりますが、金融資産のあり方の問題として、預金と配当とをどういうふうに考えたらよろしいかという問題がございました。どうも私どもは、やや偏しておるかもしれませんが、日本の今日までの金融形態が預金のほうに片寄り過ぎておる。個人金融資産として持つ形式として預金は一般的でございますが、株はあまり一般的でない、そのことが日本経済をある意味で曲げておる。金融機関のわが国経済における地位をあまりにも高め過ぎる結果になっておるという問題がある。と同時に、個人の持ち株がどんどん減りまして、法人の持ち株に移っていっているというやっかいな問題があるというようなことを総合的に判断いたしますならば、現在の段階で、個人株主がますます減るようなことになるおそれのある方向にものごとを考えることは、税法の問題を離れまして、政策論として考えた場合に、非常にむずかしいという問題が一つあるわけでございます。  でございますから、この問題はぜひとも広範囲に皆さまの間も含め国民各層の間で御議論をいただきまして、何としても基本のところの、国民の保有金融資産形態として、一体、預金で金融資産を持つのがいいのか、株で持つのがいいのかというあたりのところの基本問題との関連、それから、企業のあり方の問題として借り入れ資本に依存をして商売をやっていくのがいいのか、自己資本によりウエートを置くべきなのかというところの議論をもう一段と詰めていただきませんと、税だけでこっちの方向へ行け、あっちの方向へ行けと言われましてもなかなかむずかしい。私どものほうはいつも負担論、公平論からいいますと、いまの制度はちょっとわかりにくいという問題もありますので、何とかしなければならぬと思っておるのでございますが、やはり背景にそういう二つの貯金手段の選択の問題、それから企業サイドからいいますと、資本の二つの調達方式の問題、直接金融か間接金融かという問題、これがありますので、なかなかうまくいかぬということなのでございます。
  157. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それを言われるのでしたら、勤労所得いわゆる給与所得と、いわゆる資産所得という対比のしかたよりも、問題は配当所得か利子所得か、これの優遇策をどう考えるかという問題を比較しなければいかぬと私は思うのですね。  それで、さっき私もちょっと松浦委員の関連質問をしましたが、三百五十七万円という所得は、これはいま所得階層をとってみれば、百五十万から二百万がたしか大体四一、二%の所得階層になっていたと思うのです。それからいきますと、三百五十七万という数字はきわめて高い数字なんですね。ですから、その部分で、では税が利子所得か配当所得かということの誘導策にはたしてなっているのかどうなのかということも、もう少し私は詰めてみなければいかぬと思うのですね。きょうはあまり時間がないものですから、そこまで十分できませんが、これはもう少し私自身も検討課題として検討してみたいと思いますが、いままではとにかく二重課税だ二重課税だということで、この配当控除についてもきわめてアンタッチャブルな部分にしてきたものですから、それならそれで、利子所得に対する課税の問題と配当所得に対する課税の問題とを考えるということに、やはり観点をしぼって考えていく必要があるんじゃないかと思うわけです。  もう一つの問題は、今度確定申告をしなくていい限度額が五万円から十万円になった。これは一見何でもないようでありますけれども、私はかなり大きな問題を含んでいるんじゃないかと思うのです。これは御存じのように、税調の答申にもなかった問題でありますけれども、一銘柄十万円の配当までということは、いま配当しているところは大体平均一割。二割、三割もありますけれども、大体年配当を一割とすると、一銘柄につき百万円の株を持っている人ということになるわけです。そうしますと、大体十銘柄持っているとすれば、一千万円の株式を持っている人ということになるわけですね。大体推察をしてみて、一千万円の株式を持っている人ということになると、年所得がやはり一千万円ぐらいないと、一千万円の株式というのはちょっと持てないんじゃないか。  こういうふうに考えてきますと、確定申告不要の限度を十万円にするということにしますと、この一千万円に対しては上積み税率五〇%を加えて本来ならば住民税も払わなければならぬ部分について、源泉徴収の一五%だけで済んでしまうということになるわけですね。そうしますと、源泉分離課税の二五%すら払わないという非常な特典か——この配当所得に対して税法上確定申告をしなくていい額が五万円から十万円になったというだけで、きわめて影響する背景は大きいわけですね。これはもう税調の答申にもなかった。これはおそらく他の額との比較で一挙に二倍に上げられたと思うのでありますが、一体これはどういう関係でこの確定申告不要限度というものを五万円から十万円になさったのか。これはいかがでございますか。
  158. 高木文雄

    高木(文)政府委員 税調答申の問題は、マル優の百五十万から三百万への拡大の問題も含めまして、一種の租税特別措置であるということでございますので、事実上の御報告はいたしておりますが、個別個別には税制調査会に御審議を求めておりません。税制調査会の先生方は一般学識経験者の方が大部分でございますので、租税特別措置にあがっておりますいろいろなこまかい問題について、バランスをとって判定をするという意味での知識経験の持ち主というわけにまいりませんものでございますから、一般論として洗いがえをやるべきだ、また租税特別措置を拡大してはならぬぞというような意味での御答申はいただいておりますが、個別個別についての御審議はいただいていないということでございます。  それから、ただいまの申告不要制度についての御指摘はまさに非常なポイントの問題を御指摘になったわけでございます。これは利子のほうは全く非課税である。そのかわり、一人三百万円である。そのかわり、また郵便貯金やら国債別ワクやらということであれば、先般他の委員会で御指摘がありましたように、それを単純計算をいたしますと、千四百万までできる、それが全額非課税である、こういう点がいかがかという問題がございます。  それから、いまの配当の申告不要制度は、かりにそういう高額の株を持っておっても、元本でなしに利子が一銘柄五万円でございますから、かなり大きなところまで恩典がある。ただし、源泉の税率は一五%である、こういう関係になっております。  もう一つ、利子と配当の双方につきまして源泉選択という制度があって、これは総合前提としつつ、かつ源泉選択という制度があって、それが二五%ということになっているわけでありますが、それらの仕組みが相互にどのようにバランスをしているかという問題、それは配当控除の問題も含めまして、きわめてむずかしい比較になるわけでございます。  その問題につきましては、昭和五十年の末で利子配当についての源泉選択税率二五というものが期限がまいりますので、五十年度税制改正では、その利子配当についての源泉選択税率の期限がまいります機会にただいまの点も含めてなお検討しなければならない問題であるというふうに考えております。  本来ならば、そういう時期まで非課税貯蓄の限度ワク百五十万円の改定も、それから申告不要制度五万円の改定のほうも譲りたいというのが私どもの気持ちでございまして、それらの貯蓄の奨励に関しますもろもろの税制改正は、四十九年度税制改正にはでき得るならば織り込みたくないというのが私の率直な気持ちであったわけでございますが、何ぶんにも十一月、十二月にこういう物価情勢になり、何とかして貯蓄の奨励を進めるべきであるということがかなり広範囲な御意見になってまいりましたので、来年まで待ってくださいというわけにもまいらなくなってまいりまして、そこまで踏み切りをやむなくされたわけでございます。
  159. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 本来、源泉分離課税というのも問題がある上に、一挙に確定申告不要額が倍になったということで、源泉分離課税の二五%すらも払わないで、源泉のみの一五%で済んでしまうという、配当所得者にとってはたいへんな恩典が与えられるというわけですね。大体、源泉分離課税か、あるいは源泉のみで済ませるかの選択制度というのも、きわめて実はこれはややこしい制度でございまして、そういった面からもかなりいろいろと問題があったところなんですけれども、これは五十年に考えられるということですので、これ以上言ってもまた時間がむだでありますから言いませんが、とにかくこういった面で、配当についても、きわめて不労所得についてはたいへんな恩典が与えられている。  片や一方、去年もこれは問題になったのでありますけれども日本のいまの税制ではいわゆる未成年者からも税金を取っている、これはいかがなるものか。去年もこれはやったわけでありますが、あまりこのことについては進歩がないわけですね。もう時間がむだでありますので話を前に進めますけれども、皆さん方から出していただいた資料によっても、課税最低限と中学卒、高校卒の初任給の差が、中学卒の場合には四十八年度の場合には大体十万円、高校卒だと二十万円近くあるわけですね。つまり、この分が課税の対象になっているわけですね。いま未成年者の納税人口というのは大体どのくらいあるのですか。おそらく四十七年度数字しかないと思うのですが、大体どのくらいあるのですか。
  160. 高木文雄

    高木(文)政府委員 それは前にも御指摘がございましたが、実は、ほとんどの未成年者の納税者は源泉徴収でございますし、源泉徴収義務者のところに年齢別の調べというものをお願いいたしておりませんので、前にも御要求ございましたが、実は把握をいたしておらないということでございます。
  161. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 去年この未成年者の課税に対する問題がたいへん問題になったわけでありますけれども、それではこれが一体今年度、四十九年度改正でどれくらい未成年者の納税人口が減るものか、これもわからぬわけですね、いまの御答弁から延長しますと。
  162. 高木文雄

    高木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  163. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 推察するに、まあ人数はわかりませんけれども、皆さん方の資料によっても、四十八年度の課税最低限が四十二万九千九百七十八円、中学の新規学卒者の給与が五十三万三千百六十四円でありますから、ここの差でも年間について十万円の差、高校の初任給が六十万一千九百十四円でありますから約十七万円の差、こういうことになっているわけでありますから、この数字から推察するに、ほとんど源泉徴収ということでありましょうけれども、ほとんどとにかく中学卒一高校卒の方々も就職をすれば税金を取られている。このことはお認めになりますね。
  164. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十八年度はおそらく人数にして、中学卒、高校卒の方の七割か——これは平均値でございますから、七、八割の方が課税対象になっているということであろうかと思っております。
  165. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それで、去年の委員会でもたいへん問題になったのでありますけれども、このことに対して主税局長は、課税最低限を引き上げるということで、その中で解決をしたいと御答弁になっているわけでありますが、しかし、課税最低限を引き上げても、当然初任給も上がっていくわけでありますから、一体その人口がはたして減るものかどうなのか。初任給が上がった分だけ課税最低限が同じ率で上がったのでは、これは人数としては減らないわけでありますから、初任給が上がる分以上に課税最低限の幅を上げていかないことには、この場合、事実上は独身者なわけでございますけれども、未成年者に対して課税をなるべくしないようにするということについては解決になっていかないと思うわけです。その辺のところの配慮が今度の四十九年度の独身者の課税最低限を引き上げるにあたって、一体どのくらい考えられたのか、これについてはいかがでございますか。
  166. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほど四十八年分については課税最低限が四十三万九千円であるのに対して、就職初年度の平均給与額が、中学卒五十三万五千円、高校卒六十万二千円という数字の御指摘がございましたが、四十九年度につきましては、課税最低限は四十三万九千円から七十万五千円に上がりました。中学新卒者の給与水準はどのくらいになりますか、これはまだよくわかりませんけれども、大体初任給の伸び率を一八%と見まして、中学新卒者の初年度平均収入額は六十二万九千円と推定いたしております。また、高校卒の初年度収入額は七十一万円と推定をいたしておるわけでございます。  そういたしますと、中学卒業者については、現在はまず八割近く、七割から八割の間、課税になっておるかと思いますが、今度はそれが三割五分か四割くらいの人数に減るのではなかろうか、それから高校卒は五割ぐらいになるのではなかろうかということになるわけでございますが、これはしかし、あくまで初任給の水準を前提に置いた数字でございますから、最近の給与の伸びぐあいからいいますと、あるいはそこまで減らないかもしれない。中学で五割を切るところぐらいであり、高校では五割を若干上回るところにいくのかもしれないという状況でございます。
  167. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは政務次官にもお伺いをしたいのですが、いま未成年者に対して、中学卒、高校卒の方々に対しても課税がされているという話をしているわけです。それで、私は、これは民主主義の基本の問題だと思うのですね。というのは、つまり納税するについては、その取られた税金が一体どういうふうに使われていくのかという発言権を与えなければ、これは一方的に取られっぱなし、取られた税金がどういうふうに使われるか、賛否すらあらわすことができない、こういう現実になっているわけですね。あえて言うまでもなく、中学卒というのは十五歳から十六歳、高校卒というのは十八から十九であります。ですから、選挙権がないわけでありますから、税金は取られるけれども、それが自衛隊に使われるのがいやだとか、あるいは橋をつくるのがいやだとか、道路に使われるのがいやだとか、あるいはこの税金は少し高過ぎるのではないかという発言権ですね、これは与えられていないわけですよ。  それじゃいまの納税している人にも発言権が与えられているかというと、これは直接には与えられていないにしろ、間接的に選挙という制度で、これは現予算に対して賛否をあらわす、あるいは間接的でありますけれどもあらわす権利があるわけです。ところが、十五歳あるいは十八歳の中学、高校卒の人々は、税金は取られていくけれども、その税金の行く末についてこれが正しいとか正しくないという発言、あるいはそれを表明する権利すらないわけですね。これは私は日本の民主主義からいって、きわめておかしなことだと思うのですね。やはり納税をするからには、その納税をした予算というもの、税金というものは一体どういうふうに使われていくか、それが妥当であるか妥当でないかという発言をする権利は与えなければ、日本の民主主義の根底というのはきわめておかしなものになる。逆のことをいえば、国の政策の基本というのは予算にあらわれてくるわけでありますから、選挙権がない限りは、やはり基本的には税金を取らないというのが民主主義の基本じゃないか、私はこう思うのです。政務次官どうですか。
  168. 中川一郎

    中川政府委員 私は納税と選挙権とは関係あるとは思わないのです。その議論があるなちば、ばく大な税金を納めたんだからばく大な発言をさせろということにも通じますし、あるいは税金を納めていない人は選挙権を持つななんということは言わないにしても、税の額、納めた納めないでもって選挙権と関係をつけることは妥当ではない。それならば、法人は一体ばく大な税金を納めているのに、そういう問題もありますし、私は選挙権と結びつけるべきではないというふうに考えます。  ただ、未成年者からまで税金を取るのは、何か酷だなという感じは持ちます。持ちますが、そこはやはり課税最低限をいじくることによって未成年者の普通の勤労者は課税がかからないというほうに持っていくべきであって、未成年者だから幾ら所得があっても税金をかけないというのは公平感を欠くものだ、こういう感じでございます。そして成年になったらどかんと税金がかかるというのもいかがかというふうにあれこれ考えまして、やむを得ない措置である、できるならば未成年者の平均的な人が課税がかからぬという、最低限をいじくるところがぎりぎりのところではないか、このように考えます。
  169. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 その最低限をいじくるのは、課税最低限を上げても民間あるいはその他の給与所得が上がってきますと、現実にはほとんど課税になってしまうということと、それからいま政務次官が言われた、それでは税金を納めていない人は選挙権がないのか、あるいはばく大に納めていれば発言権が多いのか、これは少し次元が違う問題だと私は思うのです。それを言っていけば、戦前のいわゆる納税をした人だけが選挙権を持っているという問題になってしまうわけで、問題は、税金を納めている以上、自分たちの働いた所得で税金が納まっていくわけでありますから、その税金の行く末についてやはり発言権を与える。また、それが逆に選挙権ということで与えられないならば、やはり未成年者控除と申しますか税額控除と申しますか、これはいまの課税最低限、たとえば四十八年度を例にとれば、一応所得と課税最低限の差というのは中学卒の場合には十万円、それから高校卒の場合には十七万円ぐらいあるわけでありますから、その未成年者控除といったものを創設することによって救っていくべきではないか。どう見ても、中学卒の方からまで税金を取らなければいかぬほど、税源として日本の財政が貧困しているとは私は思わないわけです。  こういうふうに言いますと、おそらくそれでは桜田淳子は何千万かせぐから、こういう人はどうするのだ、こういうことになるのです。必ず言うのです。それだけは言っておきますと、ああいう人は個人的には桜田淳子のものになっていないのです。みんなプロダクションになっていますから、実際は中学卒、高校卒と、そういった芸能人等によるところの不公平は、現実にはほとんど生まれてこないと思うわけです。  そういった意味で、現実に課税最低限を引き上げるといっても、独身者の場合でいきますと二十以上の人も当然入ってくるので、これは、皆さん方につくっていただいたこの数字を見ても現実には救われていないわけですから、いま言ったような選挙権の問題をあまり詰めていると時間がありませんからいたしませんが、未成年者控除、こういったものを、十万円から十五万円くらいの控除を設けて、やはり二十歳以前の勤労者の方々については税金を原則的に取らない。そして成人式を迎えたときには、これから参政権もあり、選挙権もあり、そしておとなの世界で政治に参加をしてもらう、これが一番民主主義の観点から見て妥当なのではないか、こう思うわけでありますけれども、未成年者控除の創設についてはいかがお考えでございますか。
  170. 中川一郎

    中川政府委員 やはり税は所得のうちから経費的なものを取り除いて課税をしていくという考え方からいくならば、未成年であるからといってたくさん経費を使うものではない。逆に経費が少なくて済む、多くはない。そんなこともありまして、しかし、未成年者が税をみんな納めているというのもこれまたいかがかということで、今度は定額控除の部分かなり大幅にふやして、平年度七十七万八千円、初年度で七十万五千円、大幅な引き上げをして、実質的に未成年者が税金を納めないということが筋であろう。  選挙権の問題については、これは何度議論いたしましても、選挙権と納税というのは、考え方によってはないとはいえませんけれども、それを言い出すと、どうしてもそっちのほうの、ではたくさん税金を納めた人はたくさんの発言権で三票分、五票分よこせ、あるいは税金を納めていない人は三人で二人分だ、一人分だということになっていくのではないかと思いますので、あくまでも所得部分をとらえて課税していく、それで割り切っていくべきだろう。  もう一つの理論は、たとえが未成年の人が気の毒だということになったら、未亡人は気の毒だとか、あるいは身体障害者が気の毒だというふうに、だんだんと気の毒料といいますか、そういうことで、今度は税の体系がくずれていく。やはりきちっとした一線だけは守っていかなければならぬという立場から、せっかくの御議論ではあり、前々からずいぶん検討されたのですが、この点について納得を得られる段階でないことを申し上げざるを得ません。
  171. 高木文雄

    高木(文)政府委員 未成年者控除の問題は、昨年の国会でいろいろと御議論いただきました。したがいまして、私どもも相当勉強したつもりでございます。それで、どうだろうかということで、やるならばこんな制度かしらということも検討いたしてみました。最後に実は行き詰まりましたのは、いま政務次官は障害者の問題とか未亡人の問題を言われましたけれども、これは障害者控除なり寡婦控除なりの問題である程度は解決がついているわけでございますが、どうにも解決がつきません問題としては、パートタイマーの問題が出てまいったわけでございます。それで、低所得者で成年でパートタイマーという場合と、未成年の問題とを比較してどう議論すべきかということをだんだん議論していきますうちに、結局、非常に冷たい議論かもしれませんが、収入から経費を引いた所得の大きさで議論して線を引くよりしかたがないのではないかということになったわけでございます。  なお、諸外国の制度ももちろん研究はいたしてみましたけれども、諸外国にも未成年者控除という制度がない。特に、諸外国では日本のように完全雇用になっておりませんものですから、まだ未成年者であっても就職をして税金を納めるということがあっても、片方に若い人で失業しておる人があるという関係がありますものですから、就職できて収入があるということはむしろハッピーだと考えるべきだというような思想がありまして、未成年者控除ということはあまり話題になってないということでございました。  そういうことがいろいろ議論されました際に、たまたま給与所得控除の全面改正ということになりまして、最低金額保障みたいな制度に切りかえるということになりましたから、その際、その最低金額保障の金額を相当引き上げることによって実質的に解決をしていくということでおこたえしてはどうかということになったわけであります。御指摘のように、今回の措置では就職初年度から納税者になるというようなことは、収入が平均以下の方であれば避けられることになったわけでありますが、まだこれでは不十分だという御指摘の点は、私ども感じております。今後とも、そのどこに水準を置くべきやという問題としては、引き続き検討してまいらなければならない。二年目、三年目になったら課税になってもしようがないということでいいのかどうかという問題は、議論を続けていかなければならないと思いますが、未成年者控除をつくる問題については、しばらくこの措置によりまして様子を見ていただきたいというふうに思います。
  172. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この問題は、つまり現実に独身者控除といっている場合には、独身者でありますから、二十二でも二十三でも二十五でも、あるいは未成年者でも、独身である限りはこの範疇に入ってしまう。ところが、問題になる未成年者控除といっている場合には、つまり二十歳以下、正確には十九歳以下ということになるわけですね。そうすると、中学卒から考えますと、四年から五年の間かある。いまの税法ではこういった——私が冒頭に資料をといっても、いやそういった資料はありませんといわれるように、そういった年齢についての考えというのはいまの税法ではほとんどないわけですね。相続税では、なくなられるまで何年とか、七十歳まで何年間掛ける何%とか、幾らとかという数字はありますけれども、いわゆる未成年者の問題を考えるときには、範疇としては独身者の課税最低限の問題になってしまう。そうしますと、ここには年齢という問題は入ってこないわけですね。私はやはり選挙権も与えられていない未成年者に対して税を取る——局長の御答弁は、課税最低限を上げていけばというけれども、これは少なくともいままでやってきた課税最低限を上げたところでは、今度は、四十九年度はこれで救われると言われるのだけれども、まだ四十九年度の初任給というのはわかりませんから、これは議論にならないわけでありますけれども、そういった面で、税法の中で二十という年齢については何も考えていないわけですね、独身者の課税最低限という範疇に入っておるものですから。その面では、私は税法上欠けていると思うのです。局長からなお一そう今後考えるという御答弁がありましたので、時間の関係もありますから、未成年者控除の問題については、これで終わらしていただきたいと思います。  その次は、たまたま先ほど政務次官も言われましたが、いわゆる身体障害者の方々の問題なんです。これについても、やはりいろいろな意味で税法上きびしいのではないかという問題です。  一つは、身体障害者の方々の相続税の問題なんですけれども、もう時間がありませんから簡単に概略を申し上げますと、去年でしたか、身体障害者控除というのができたわけでありますけれども、まだまだこれも現実にはきわめて額が少ないということで、現実に起こっている問題は、お医者さんのお子さん、お子さんといっても四十四歳の御夫婦でありますが、それにまだ十七歳のお孫さんがいらっしゃる。こういったところで、たいへん健康な方だったけれども身体障害になられて、そしていまは寝たきりである。それで、このお医者さんの親御さんがたいへん心配をされて、何とかとにかく自分たちが死んだあと自活できる道はないだろうかといって考えたのが、アパートを子供たちにつくっていってやりたい、身体障害者の方につくっていってやりたいということだったわけです。  ところが、これは、たとえば三千万のアパートをつくっていくとしますと、相続税の身体障害者控除、これを引いても六百八十一万五千円の相続税が今後かけられるということになる。これはいまの身障者控除制度でいきますと、百四万円の控除額にしかならぬわけですね。この辺からいきますと、どうももう少し何か税の面で考えられないだろうか。私たちは、相続税というのは、いつも論議をしておりますように、横の相続について、つまり妻あるいは夫の横の相続についてはなるべく軽減をしたい。それから縦の相続については、やはりスタートを一緒にさせる意味で、かなりきつくてもいいのじゃないかと思うわけでありますが、これはあくまでスタートを一緒にさせるためのものであって、身体障害者の方々のように、不幸にしてそういったハンディを持たれた方については、さらに何か考えていかなければいかぬのじゃないか、こう思うわけです。  この制度について昨年から身障者控除制度というのができたわけでありますが、この額もきわめて少ない。こういった実例に対して、何かもう少し救える方法が税ではあるのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでありますが、このことについてはいかがお考えでございますか。
  173. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 佐藤委員のお話の御趣旨、私どもとしてもまことに共感する点が多いわけでございますが、まあそういう意味もございまして、ただいま御質問の中でお触れになりました障害者特別控除というようなものを相続税にも持ち込みました。さらにまた、特別障害者については控除額を割り増しするというような試みをしておるわけでございます。今後の問題といたしまして、この特別控除の額がもう少しふやせるかどうか、全体の課税最低限との関係でなお研究をしてみる、そういう行き方がもちろん一つあろうかと思います。  それともう一つ、私自身が経験いたしましたことでもございますが、御承知の、主として地方団体が音頭をとっております心身障害者を扶養するために一種の共済制度をつくるというようなことがございまして、現行法におきましては、その共済制度のほうで、残されました障害児の方がそこから給付を受けるという場合には、その給付を受ける権利を相続財産からはずすということにいたしております。これは将来の方向といたしましては非常に望ましい一つの動きではなかろうか。私は必ずしも来年度とかなんとかいって期限を切ってお答えする立場にはございませんけれども、たとえば信託会社がもう少しこういうふうなものを商品として考えてくれないだろうか。そういう信託が出てまいりますと、その信託の受益権というものについて相続税法上配慮をする。  特に、障害者と申しましても御自分でそれなりに働ける、あるいは財産管理能力のある方はまだいいのでございますが、重度身障で御自分で財産管理能力のない方について、相続税法上だけで何か配慮をしてみても、あとその財産がどうなってしまうのかということが実はもう一つ深い問題だという気もいたしますので、やはり共済制度とか信託制度とかそういうものとあわせて何かもう少し、ほんとうに、何と申しますか、いわば役に立つ、実のある解決方法はないのかどうか、なお引き続き勉強してみたい、そういう心境でございます。
  174. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 むしろこういったたとえば信託制度とか保険制度にかかれる人というのはまだしあわせなほうでして、実際には、こういった例というのは私は少ないほうじゃないかと思うのです。そういった意味では、さらに国の制度も充実をしていかなければいかぬわけでありますが、そこまでいくまでについても、やはりいま審議官からお話があったようなこと、あるいは相続税における身障者控除、これについてももう少し配慮していく必要があるのではないか、こう思う次第です。  それから、その次に、やはり障害者の方々の問題ですが、これも昨年からだと思いますけれども、いわゆる障害者の方々を使った場合に、その工場なり企業の機械の特別償却を認めるという制度ができたわけでありますけれども——もう時間がないから途中はしょりますけれども、いまの制度が、雇用者の方々のうち身障者の方々が三〇%以上いらっしゃらないと実際には適用にならぬ。身障者の方々を認定するというのですか、これが非常にめんどうでなかなかむずかしいということで、この制度というのは、はたしてどれだけ運用されているのかどうか、その辺きわめて疑問を持つわけです。   〔山本(幸雄委員長代理退席、委員長着席〕 これは何か対象企業というのは大体七百社くらいあるというのでありますけれども、現実にこの特別償却制度というのは、実態上一体どういうふうに使われているのですか。
  175. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいま佐藤委員おっしゃいましたとおり、何せ四十八年度改正でつくったばかりの制度でございますので、申しわけございませんが、まだその実績を把握するまでに至っておりません。  なお、御質問の中で、身障者であるかどうかの判定が非常にやっかいだという御指摘がございました。その点につきましては、なおよく国税庁と相談いたしてみたいと思います。
  176. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ここでもいつも論議になるのですけれども、また局長も言われるのですけれども、あまり過大に何でも税でやろうというのは問題じゃないかと私は思うのですね。そして私の聞いた例は、具体的には六十人の従業員のうち十八人の方が身体障害者の方々だという楽器会社の例でありますけれども、十八人というとぎりぎり三〇%ということで、限度ぎりぎりだということなんですね。こういった場合に、機械の特別償却という制度がはたしていいものかどうなのか。むしろこれは、身体障害者の方々の雇用の現場を広げるという意味で、やはり補助金なり何なりのほうが現実にはすっきりするんじゃないか。あるいは税額控除一人につき幾ら、そうすると三〇%というワクははずされるので、機械の償却を早めるというよりも、税の運用からいって現実的ではないかという気が私はするわけですね。その辺のところももう一回考慮する必要があるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  177. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの御指摘は、私どもの立場からしましてもまことにそのとおりだと思う次第でございまして、実は四十八年度改正にその御要望が出ましたときに、さんざんそういう議論をいたしました。やはりおっしゃいますとおり、むしろこれは歳出のサイドで、もちろん歳出としてのバランスとかそういう問題もございましょうけれども、何らかの配慮ができれば、そちらでやるというほうが筋ではなかろうか。  お話の中で、税額控除というお話もございましたが、税額控除というのは実はほとんど歳出と同じでございまして、唯一の違いは、税金を納めている企業ならば補助金がいくけれども、たまたま税を納めないでいい企業には補助金がいかないという意味で、それは補助金のほうがより合理的であろう。したがって、いわば税として何とかしておつき合いできる制度がないかといってさがしました苦心の結果がこの制度であるということでございまして、その意味では、税として恩典を与えるとすれば、機械設備が、雇用者の中での障害者の割合がある程度多ければ、それなりにその特有の設備が必要になるとか、そういう結びつきでの説明ができるのではなかろうか。したがって、ある程度以上の割合を雇ってくださっている企業に限ってしか適用ができない、それがおのずから税で公平に取り扱う場合の限界であろうという気がいたしております。ただ、先ほども指摘がございましたように、ほんとうに実績でどう動くか、その辺をなおよく見ました上で、期限到来までにもう一度この制度は考え直してみたい、そういうことを考えております。
  178. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それから、身体障害者の方々のためのいわゆるチャリティーショーの入場税の課税の問題なんでありますけれども一つ例にとれば、あゆみの箱のような、きわめて皆さんの善意でやっているものについて、いままっとうに法的にいえば入場税がかかる、ただし、厚生省の認可をとれば免税興行ができるということになっているわけでありますけれども、いろいろ話を聞いてみますと、この免税興行をする手続がきわめてむずかしいということを聞くわけでありますけれども、うちの名古屋でやった第二回のあゆみの箱のときに、結局この手続をとらずにやったために、八十一万円が国に入場税として納まっているわけですね。国税から見て八十一万円というのはたいへん少ないわけでありますけれども、こういった善意でこれが身体障害者のいろいろな施設に配られるということになりますと、八十一万円というのは私はたいへん生きてくると思うのですね。  そういった意味で、こういった善意に満ちたチャリティーショーについて、本来私たちはあらゆる入場税について撤廃をせよという論に立っているわけでありますが、そこまではいかぬにしても、何かこれを具体的にもう少し免税興行というものがたやすくできないものだろうかというふうに疑問を持つわけでありますが、いまは一体どういうような手続になっているのですか。
  179. 横井正美

    ○横井説明員 私ども、社会福祉施設等に対して寄付をするというふうな場合の興行につきましては、そういう御趣旨にかんがみまして、税務署長のほうへ免税承認の申請を出すということによって処理いたしております。この申請にあたりましては、あらかじめ収入、支出、それから収益の見込み額、純益の支出先、これを記載した申請書を出してもらうということにいたしております。
  180. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ところが、この収益の支出先というのがなかなか、たとえばあゆみの箱のように全国的なものになりますと、一年間収支をとってみないことには現実には出てこないということで、何か便宜上とにかく各施設からの領収証ということのようでありますが、金ももらってないのに領収証というのもおかしな話で、この辺のところでもう少し具体的に免税措置がとれるようなことができないものだろうかと思うのですが、その措置はできないのですか。
  181. 横井正美

    ○横井説明員 通常の場合でございますと、興行が終わりましてから短期間内に収益がはっきりし、寄付先が確定するということでございますので、入場税法では興行の終わりましてから十日以内に税務署のほうへ寄付先を出していただく、こういうふうにいたしておりますが、しかしながら、お話しのように、直ちには収支計算あるいは純益の寄付先もはっきり確定しない、こういう場合もございますので、ある程度の期間の延長を認めるというふうにいたしております。  ただ、いまお話しのあゆみの箱の場合について具体的に調べてみますと、年度を終わりまして、翌年の六月ごろになりましてから収益の内容、それから寄付先が確定する。極端に申しますと、四月の初めごろに開催いたしました免税興行につきましての寄付というのが約十五カ月たったころに行なわれる、こういうふうなことになるわけでございます。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 そのように長期にわたりまして免税の興行の結果が不安定に置かれるということは、制度の趣旨から考えましてもいろいろ問題があるところでございまして、私どもといたしましては、そういう制度の趣旨から考えまして、免税興行の主催者の御協力も得て興行ごとに収益ははっきりさせる、またそれを最終的に寄付をするのは若干おくれるといたしましても、その収益を安全に、たとえば預金をしておくとかいうふうなことをいたしていただきませんと、執行上いろいろむずかしい問題もあろうか、かように考えております。そういう意味合いにおきまして、まあ期間の延長を考えますけれども、主催者のほうにおきましても御協力をいただきたい、かように考えております。
  182. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 せっかく善意に満ちたものが、これにも税金がかかるかということになりますと、やはり税法の本来の趣旨からはずれると思うのて、その辺のところはひとつ適宜——ただ、法律がある以上、その裏をかくやつというのが必ずいるものですから、これがまたきわめて遺憾な話なんですけれども、ひとつその辺のところは見きわめて、できる限り運用していただきたいと思うわけでございます。  もう時間がありませんが、あと二点だけお伺いしておきたいのは、一つは酒の税の問題であります。これは今年度は出ていないのでありますが、全体的な間接税移行の中でと私は思うわけでありますけれども、いままで従量税であったものを従価税に変えていくということが論議になっているわけであります。これは単に方式が変わるというだけではなくして、どうもこのごろ飲酒の量が伸び悩んでいるので税収伸びない、聞くところによると、清酒の値上げとこの従量税から従価税に移行するというのを業界と大蔵省のほうで、取引ということばは正しいかどうかわかりませんが、取引をして、清酒業界側も五十年度からということに納得をしたというふうに新聞では書いているわけであります。この点がひとついかがなるものかという問題。  それからもう一つ、ビールの問題でありますが、御存じのように、キリンビールが六二、三%のシェアを占めているということで、ビールの価格の値上げにもこのシェアの問題がたいへんからんでいる。これは私は、事ビールに限らず、あらゆる業界が大体こういう寡占状態になっていることにいまの物価問題の基本的な問題があると思うわけでありますが、それはさておくとしましても、ビールについて何らかのことを考えなければいかぬということで、国税庁の中にビール寡占問題研究会をつくられて、ここの審議を待って行政指導をするというふうに聞いているわけであります。ところが、行政指導といって、一体どういうことができるのか、私はきわめて興味が深いわけであります。六二%のシェアを持っているキリンビールにどういった行政指導をして——問題はシェアを減らすことでありますが、これは国民の嗜好の問題ですから、なかなかそういっても、サッポロ飲め、アサヒ飲めというわけにもいかぬし、やれるのはやはり企業分割しかないと私は思うのです、やれるとしたら、ほんとうにやるつもりならば。ですから、行政指導するというのですが、一体どういう行政指導ができるのか、私はきわめて興味が深いわけなんですね。この二点についてお伺いをしたいと思うのです。
  183. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 第一点の酒税の制度の問題について、まず私からお答えをさせていただきたいと思うのですが、これは佐藤委員よく御承知のとおり、去る四十六年の長期答申におきまして、酒税の制度についてはより一般的な従価税制度を導入する方向をとってはどうかということが、いわば中期的な方向として指摘されておるわけでございます。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕 現在、御高承のとおり、ウイスキーについて従価税制度が入っておりまするが、当面、一番問題として研究されておりますのは清酒でございます。  清酒につきましては、この長期答申が出ましたあと主税局内の検討の結果を非常に非公式な一種の試案と申しますよりも、さらに熟していない私案という形で、関係業界に検討を依頼した経緯があるようでございます。これにつきまして、業界ごとにそれぞれの製造しております酒のグレードあるいは販売シェアなどから見まして、それなりの御意見が寄せられております。一般的に従価税に反対であるということをおっしゃっておられる部面もあるわけでございますが、これにつきましては、私どもの基本的な考え方を機会を見まして詳しく御説明するということで、なぜ従価税制度という問題が税調で指摘されておるか、将来の方向として私どもが従価税制度の一般的な導入を少なくとも研究してみたいと考えておりますゆえんは、くどくなりますので省略いたしますが、間接税一般につきまして、たびたび申し上げますいわゆるおくれがある、このおくれをせめて調整いたしたい、できることならば、一種の比例税的な制度にできるものから間接税を切りかえていきたいというのが基本的な方向の一つになっておるわけでございますが、具体的にどういう案で清酒について従価税に移行いたしますか、その問題は、率直に申し上げてまだ政府としての成案を得るに至っておりません。  したがいまして、この問題が、おっしゃいました値上げとからんで取引に使われておるというようなことはございません。基本的な制度でございまするし、当面の値上げの問題の是非あるいは時期、幅というようなものと、この従価税制度の問題とは全く別の問題として検討を続けさせていただきたい、このように思っております。  ビールにつきましては、国税庁のほうからお答え申し上げます。
  184. 横井正美

    ○横井説明員 先ほど御指摘いただきましたように、キリンビールのシェアが六〇%をこえた、こういう事態になっておるわけでございます。そのメリット、デメリットをどのように見るか、これにつきましてはいろいろの議論があろうかということでございますので、私ども、昨年の九月に経済企画庁の物価安定政策会議第二調査部会所属の専門委員の四名の方々をお招きいたしまして、ビール問題研究会を数回にわたりまして開催したわけであります。その研究会の中間取りまとめを昨年の十月十九日にいただいておりますが、それによりますと、先ほど御指摘いただきましたような、たとえば企業の分割というふうなことも一つの手段であるけれども、しかしながら、現にいわゆるガリバー型の寡占が進行しつつあるという現実の事態を見ますというと、これをそのまま放置をいたしておきまして、いよいよ独占の弊害があらわれたという段階で分割をするということではおそ過ぎるのではないか。したがいまして、そういう極端な事態にならないように、むしろ早手回しに行政指導をしたほうがいいのではないか、こういうふうな御指摘がございました。  その内容のおもなものを申し上げますと、一つは、ただいま御指摘をいただきましたいわゆるシェアをこれ以上ふやさないように、あるいは少しスローダウンさせてはどうか、こういうような点でございますが、お話しのように、消費者の自由な選好というものを極端に阻害してはいけない、こういうこともございますし、また企業の意欲というものを大幅に減退させてもいけないということでございますので、そういう点に配意をいたしながら、トップ企業の自主的な認識に基づきます調整措置によりましてシェアがふえないように、あるいは幾らかずつダウンしていくというふうな指導をしてはどうか、こういう御意見をいただいております。  第二は、下位企業の場合でございますが、経営の合理化あるいは経費の節減というふうなことをさらに進めるべきではないか、こういう御意見をいただいております。現在のメリット、デメリットにつきましては、懇談会の先生方の御意見は、現在の時点で寡占の弊害が顕著に出ておるということではない、しかしながら、現在の事態をこのままにいたしておきますと、たとえば、企業の合理化意欲を減退させるとか、あるいは品質の改良を怠るとか、あるいは独占価格を形成するとかいうような弊害が出てくるような事態になるおそれがあるということでございます。そういうことから、いま申しましたような二つの方向によりまして、今後、業界の指導をいたしてまいりたい。もちろん行政指導には限界がございますので、この辺を心得ながら寡占の問題を解決してまいりたい、かように考えております。
  185. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 まだ時間があるようなんで、さらに少しお伺いしますが、行政指導したいということなんだけれども、行政指導といっても、六二%ぐらいのシェアを持っているキリンビールについて、あまりシェアをふやすなといっても、これは一つの民間企業である限りは、それなりの営業を続けていく。しかも、昨年の夏飲んだ量のふえた分だけほとんどキリンビールだという話ですね、そういわれているわけですね。そういうことになってきますと、行政指導をすると言うけれども、何を選択するかということじゃなくて、たとえばどういうことが行政指導としてできるか、この事態までなったときに何ができるのかが私にはわからないわけなんですよ。キリンビールだけまさか税金をたくさん取るわけにはもちろんいかないし、行政指導と言われるけれども、何をするというのか、行政指導といった場合にどういう内容があるのか。それは何をとるというのではなくて、これはまだ研究会の結論も出てはいないわけですから言える段階じゃないと思いますので、それはけっこうなんですが、たとえば、こういうことと、こういうことと、こういうことは行政指導でできるのだという、選択はまた別のことでいいですから、行政指導という中身を教えてください。
  186. 横井正美

    ○横井説明員 まあよって来たるところを考えますと、現在さほどの弊害は出ておりませんけれども、いま御指摘のように、消費の伸びの大部分がトップ企業にいってしまうというふうなことからいたしまして、下位の企業のコストアップ要因が非常に大きくなる。これは下位企業にとってみますならば、ひんぱんに値上げをしなければやっていけない、こういうふうな状況になるおそれがあるわけでございます。その辺から考えますと、下位企業に経営の合理化をしてもらうのはもちろんでございますが、それにも限界がございますので、たとえば新規の工場の設備投資、こういうふうなものについて若干スローダウンをしていただくというふうなことなどを含めまして考慮してもらいたい、かように考えております。
  187. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私、きょう実は後半、直接税から間接税へだんだん移行していくという方向にあるんじゃないかということの具体的な例として、もっと詰めてお話をお伺いしたかったわけで、そこで、実は酒の税の問題、酒に関連をしてビールの問題も、上すべりでありますけれども、実はお伺いをしたわけなんです。  もう一つ、実は物品税の問題についてお伺いをしたかったわけであります。これは第一種の製品、つまり小売り課税のものについては古物にも物品税が課せられるということで、この方式でいくと、二重、三重、四重、五重と第一種のものについては何でも課せられるんじゃないか。ということになると、やはりこれは考え方として、具体的に付加価値税のような形にしていかないと、少なくも物品税の範疇では考えられないことだと私は思うわけです。これについては裁判にもなっていますので具体的にお伺いをしたかったわけでありますけれども、とてもそれをゆっくりやる時間がありませんので、この問題についてはまた別の機会にやらさしていただきたいと思うのです。  きょうの私の質問は、これで終わります。
  188. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  189. 安倍晋太郎

    安倍委員長 速記を始めてください。     —————————————
  190. 安倍晋太郎

    安倍委員長 この際、福田大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。福田大蔵大臣。
  191. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今回の税制改正におきましては、所得税の大幅減税を行なうこととし、特に給与所得控除について抜本的な拡充を行なうことを提案いたしております。  この改正は、サラリーマンの負担を大幅に軽減するという趣旨によるものでありますが、当委員会の審議の過程におきまして、阿部助哉委員、小林政子委員等から、今回の給与所得控除の改正、特にいわゆる頭打ちの廃止につきましての政府側の趣旨説明や提案理由説明等における説明が、従前の頭打ち制度を前提とした答弁との関連において不十分ではないかとの御指摘を受けましたので、この機会にあらためて政府案の考え方について御説明いたします。  従来の制度は、給与収入が一定限度をこえると給与所得控除額を増加させない、いわゆる頭打ちになっていたのであります。つまり、従来の税制においては、給与収入が一定額をこえればそのこえた部分についてはもはや追加的な必要経費のしんしゃくを与えなくてもよいのだという制度になっていたわけであります。  ところで、今回、大幅な所得税減税を行なうに際して、特にサラリーマンの税負担の軽減を最重点とし、税制調査会において給与所得控除制度の基本的な見直しが行なわれました。その審議の内容と結論は「昭和四十九年度税制改正に関する答申」に詳細に述べられております。ここでそのまま引用することは差し控えますが、要点は、  一、いわゆる頭打ちについて、事業所得者の経費が一定の収入に対応するところで頭打ちになるという考え方がないのに対して、給与所得控除の場合には、勤務に伴う必要経費の概算控除と説明されているにもかかわらず、収入の増加に応じて何がしかの経費が増加するという事実を反映した仕組みとなっていないのは理論的に不徹底であること。  二、諸外国の例をみても、それぞれの実情に応じて勤労性所得と資産性所得の負担のバランスにくふうをこらしているが、わが国の場合は、給与所得控除の仕組みを活用して、両種の所得の実質的な負担の調整をはかることが一つの解決方法であること。など各般の見地を総合して、給与所得控除の仕組みを基本的に見直すこの機会に、頭打ちを廃止することに踏み切るべきであるとの答申であります。  政府といたしましても、課税最低限が百七十万円と大幅に引き上げられ、低所得層の負担も大幅に軽減されるこの機会に、以上述べました税制調査会の答申に即して、給与所得控除の頭打ちを廃止するように制度を切りかえることが適当であると考え、今回の改正案を御提案いたした次第であります。  以上、給与所得控除の頭打ちの廃止について、従来の説明を補足して説明した次第であります。     —————————————
  192. 安倍晋太郎

    安倍委員長 質疑を続行いたします。小林政子君。
  193. 小林政子

    ○小林(政)委員 ただいまの趣旨説明につきましては、これが初めの提案理由の中で非常に不十分であった、あるいは舌足らずでその説明の詳細を欠いていたということで、今回ここであらためて説明をすれば、それでこと足りるのだというような性格のものでは私はないと思います。事はいわゆる税制の根本にもかかわるような内容を持つ重要な問題ではなかろうか、このように考えるわけです。  この問題について、先般来いろいろと質疑を行なってきたところでございますけれども、必要経費の考え方については、いわゆる客観的な条件というものは変わってはいないけれども、しかし、その中で、全く従来とってきた考え方と相反する考え方を今回とったんだ、こういうことは、私は、これは単なる大臣がここでその点はたいへんどうも不十分でありましたというようなことだけでこと足りる問題ではないのではないか。要は、納税者全般に大きな影響力を持つ中身でもございますし、この点について大臣からただいま説明がございましたけれども、それだけで済むという問題では私はあり得ないというふうに考えます。  今回、異例の措置として大臣が提案理由の補足の説明をされたということでございますけれども、しかし、私はやはりこの問題の持つ重大性、重要性という点から考えまして、なぜ今回このように変えてきたのか、それは従来の考え方というものは一体どういう考え方から成り立っていたのか、それを今回このように変えるということについては、いま税制調査会の答申の内容に触れられての御説明がございましたけれども、しかし、それについて全くいままでの説明の中では何ら触れられない、こういったようなことが行なわれてよいのかどうかという点について、私は御説明を願いたいと思います。
  194. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま小林委員からのお話につきましては、まあ全然説明に触れないというわけではないのだけれども、この制度の考え方につきましていろいろ変遷があったというようないきさつもありますので、この際特に補足して御説明申し上げたわけでございますが、私、昭和四十年から中ちょっと置きましたが、五年間大蔵大臣をしておりました。その時期に、いろいろ議論があったわけです。つまり、所得税の経費の概算控除、それを頭打ちに一体していいのか、こういう問題であります。  私はかって、いまでも覚えておりますが、細見君が私が前に大臣をしておりましたとき主税局長をしておりまして、これはたいへんむずかしい問題なんだ、いろいろ学者の間においても、実務家の間においても議論がある、こういう話をいたしておったのですが、しかし、当時は課税最低限を百万円までに持っていくか持っていかないか大論争のあった時期であります。そういうきびしい所得税制の時期でありますので、これはやはり百万円まで持っていく、とにかく持っていく努力をしなければならぬ。そのためには、甲論乙駁ありますけれども、頭打ちの制度をとるという選択をするほかはない、こういうのが当時の意見であったようであります。  今度、百七十万円まで課税最低限を引き上げる。この際に、この従来議論のあった問題、しかも、他の所得者、つまり事業所得者でありますとかあるいは資産性所得者でありますとか、そういう者の税制とのバランス考えるとき、こういう際にこの問題に終止符を打たなければ、この問題解決の時期はいつ来るのか、こういう問題が出てきたわけであります。  そこで、税制調査会におきましてもたいへん議論があった。初めのうちは頭打ち撤廃について否定的な見解を持っておる人がかなりおったようであります。しかし、だんだん話をし合っていくうちに、これはほとんどの人がこの際この問題にけじめをつけるべきだ、こういう結論になり、その結論が政府に対して答申をされた、そういうことに相なるわけでありまして、これはそういう事情をずっとフォローしていただきますと御理解をいただける問題じゃないかというように思いますが、ひとつ、この機会を除きますとなかなかこの問題に決着をつけるチャンスもない、また他の所得税制の部門とのバランスとかいうことを考えますと、この際ふん切りをつけることが妥当である、こういう考えを持つに至ったのでありまして、御理解のほどをお願い申し上げます。
  195. 小林政子

    ○小林(政)委員 給与所得控除の限度額の廃止——この経費の概算控除という考え方、これは経費とはいってもなかなかその厳密な計算が困難でできない、そこで、一応の概算控除といいますか、政府の説明によれば、概算で大体どのくらいかかるであろうか、こういうようなことで給与所得控除というものがいままでやられてきていた問題でもあります。この際、考え方を急遽この時期に変えられて、いわゆる青天井といわれるような状態をここでつくられたということは、一〇%というものはどこまでいっても、高額所得者でもずっと続けていくのだ、こういうことは、経費の概算控除的な性格を持つという点からいって、国民はなかなか納得ができない。ましてここで頭打ちをはずして青天井にしたということは、これは大臣、ちょっと国民的に納得ができない内容を持っているのじゃないか。いわゆる概算控除としての性格とこの青天井という問題とを一体どのように結びつけて今回はずされたのか、この点について、もう一回お伺いをいたしたいと思います。
  196. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この経費の概算控除はお話しのとおりでありますが、しかし、それだからこそ青天井になるというのが、これが自然の筋じゃないか。幾ら高額の人でありましても経費がかからぬということはないのでありますから、それに着目いたしまして天井を取っ払う、こういうシステムにいたした、こういうことなんです。それは他の事業所得者などとのバランスからも、そういう考え方をとることが妥当であろう。これはあれだけの税制調査会に人が集まっておりまして、ほとんどの人がこれはそうするのが筋だ、こういうことなんです。  私も、大蔵大臣に十一月の二十五日でしたか就任をいたしたわけなんですが、それまで新聞では、いろいろ批判の声なんかを見ておったのです。ああこれはどういうものかなと思っておったのであります。そこへ私が大蔵大臣に就任するということになる。それで、よく経過を聞いてみると、ただいま申し上げたとおり、初めのうちはいろいろ議論があったが、最後には圧倒的に多数の人がこれでいかなければいかぬということになり、政府に答申をするということになったのです。
  197. 小林政子

    ○小林(政)委員 この青天井を取り除いたということで、世間一般でもいわゆる重役減税ではないか、こういうことで、今回の税制に対してきびしい批判が集中しているわけです。その中身などを検討してみれば、当然そういう批判というものは当たるんじゃないか。  私はこれはこの前もここで質疑を行なったわけでございますけれども、年収五百万の場合は、実際には七十万二千円であった控除額が百四十五万円になるのですね。これは一〇六・五%の増加率です。そうして七百万円の場合は、七十六万円であった控除額が百七十五万円になるのです。一三〇・二%の増加率です。一千万円の場合は、本来であれば七十六万円のものが二百五万円、一六九・五%の増加率でありますし、二千万円の場合には、七十六万円が三百五万円、三〇一・一%ですね。そうして五千万円の場合には、七十六万円が六百五万円ですから、六九六%の増加率。経費の概算控除といわれるいわゆる青天井をはずしたということによって、従来ならば七十六万円であったものが、五千万円の場合には六百五万円にもなる。これは明らかに減税になるわけでございますから、そういうことを考えますと、実際に一般の勤労所得で、汗を流して家族四人で働いている百五十万くらいの所得の人に比べて、ここにものすごい開きが出てくるのです。経費の概算控除というものは、たとえば一千万円になるとほんとうに二百五万円もかかるのかどうなのか、二千万円になれば三百五万円もかかるのかどうなのか、五千万円になれば六百五万円もかかるのかどうなのか、こういう状態について具体的に御調査なさって、六百万必要なんだ、あるいは三百万必要なんだというようなことで、青天井を取り払って給与所得控除、いわゆる経費の概算控除というものをここで認められたのかどうなのか、私はこの点は明らかにしていただきたいと思います。
  198. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話しのとおりの数字になるのですが、その一〇%という制度をとりますと、もとの大きな人は自然にそうなっちゃうのです。そこを小林さんは、妥当じゃないじゃないか、こうおっしゃるんだろうと思いますが、しかし、すなおに考えてみますれば、所得のワクが幾ら高くなりましても、その所得を得るための必要な経費、これはあるはずです。ないはずはない。そのないはずのないものを一体幾らに見るか、こういうことだろう、こういうふうに思うのですが、高額の人につきましては、これは一〇%だ。しかし、低額につきましては三〇、二〇だ、そういう段階を設けましてこの制度を採用しよう。これはとにかく税制調査会のおえら方がほとんど一致で答申してくれたわけなんで、これをわれわれとしても無視するわけにはいかぬ。また、これはとにかくいろいろ主税局におきまして多年にわたって議論のあった問題で、これに終止符を打つ、これも妥当な考え方ではあるまいか、そういうふうに私は思います。
  199. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は税制調査会がどういう御議論をなさって、そしてこれが妥当だというふうに全会一致できめられたのかどうか、その辺の内容はわかりませんけれども、いまこのような実際に物価高、インフレというような状況の中で、国民生活がきわめて脅かされているというような現状のもとで、高額所得者優遇のこのような青天井を取り払う、しかも経費の概算控除という非常にあいまいな考え方のもとに、経費というものは収入に従ってふえるのは当然だ、こういう考え方で、青天井を取り払ったということにつながる今回の——青天井ではございません、頭打ちを取り払って青天井にしたという、こういう問題というものは、これはやはり高額者優遇じゃないか、重役減税ではないか、このようなことが一般の納税者から言われるゆえんではないかと私は考えます。  しかも、実際に、税の公平ということはいま非常に重要な問題として論じられているときに、私は所得の多い者が税負担についてもこれを負担するということは当然のことだというふうに思いますし、そういう点から考えても、今回のこの頭打ちを取り払ったというこの問題については、とうてい納得することはできませんし、その財源をむしろ人的控除なり、あるいはまたさらに二百万以下の収入状況下にある人たちのほうへ回すべきではないだろうか、このように考えますけれども、大臣、この点について矛盾をお感じになりませんか。
  200. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 矛盾は感じません。ただ、私、率直に申しまして、私が大蔵大臣に就任する前は、まあ主税局は何を考えているのかなというような感じは持っておったのです。それで大蔵大臣に就任して、それで事こまかに、いきさつそれから考え方、そういうものを聞いてみますと、ただいま申し上げたようなことで、税制の理論としますと、これはやはり、幾ら高額の者といえども必要の経費がないというわけではないのであります、あるのですから、これを無視するということは妥当ではない。それから、他の所得税体系の中の所得者とのバランス、たとえば事業所得者、そういう者とのバランスなんかを考えますと、これはやはりこの際踏み切る。百七十万円まで課税最低限がいった、税率調整も大幅に行なわれる、この際こそ、この問題を解決すべきときじゃないか。私は、税制調査会の答申は妥当な答申である、こういうふうに考えたわけであります。
  201. 増本一彦

    増本委員 関連。いま大臣は、事業所得と給与所得との間のバランスで、これは税調の答申でもそのバランスをはかるために青天井にして一〇%の給与所得控除がずっと続くのだ、これのほうが斉合性があるという、こういうお話でしたけれども、しかし逆に、事業所得の場合には、これは所得を得るためにはその経費は確実にかかるわけですね、商売をやっていれば。しかし、その一方で、事業所得者は、それぞれ勤労性の側面の強い要素をその所得の中に持っていながら、実は事業所得者自身は勤労性所得に見合うだけの必要経費というものが実質的には十分に保障されていないという問題もあるわけですね。たとえば、自家労賃を経費として認めてほしいという要求が事業所得者の中には非常に切実にある。しかし、そういう面での所得税法の現在の税制はきわめて不十分だ。だから、そういう不十分さというものを事業所得者の場合には持っている。これは、給与所得者のほうは青天井になっていく中で、ますます事業所得者のこの勤労性所得に対する必要経費の部分は取り残されていくという意味で、逆に事業所得者と給与所得者との間にアンバランスが生まれてくる、こういう面もあると思うのですよ。ですから、大臣がおっしゃるほどに、事業所得者と給与所得者とのこのバランスが、論理的な斉合性が、この青天井によって保たれるのだというふうに、しかくいかないように私は考えるわけです。  一つは、大臣にお伺いしたい点は、ここでこの事業所得者の自家労賃なり勤労性所得に見合う分についての必要経費ですね、これを十分に今後見ていくような手だてをおとりになるかどうか、そういう面での前向きの検討というものをなさるべきだというように私は思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  202. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 事業所得者の課税につきましては、これは事業による収入からその収入を得るに必要な経費を差し引いて、そうして所得計算するということになっておる。その引き方にこまかい御議論のあることはよく承知しております。そういう御議論の中から白色申告者の控除制度、そういうようなものも生まれておる。こういうことになっておるわけでありまして、議論があるからといって給与所得者と事業所得者との斉合は必要はないんだ、こういうことにはならぬと私は思うのです。事業所得者の所得をどういうふうにきめるのが妥当であるかということにつきましては、大筋はきまっておるけれども、いろいろ議論がある。議論を詰めればそれでいいんです。しかし、その大筋と大筋とを対比いたしまして、高額な給与所得者はこれを得るに必要な経費はないんだ、それでいいんだ、そういうふうにはいえないのじゃないか、さように考えます。
  203. 増本一彦

    増本委員 では、もう一点お伺いしたいのです。それでは、事業所得者の勤労性の所得に見合う部分の必要経費というもの、白色申告者の控除等の問題を含めて、その点についての引き上げは御検討なさる用意があるかどうか、その点をはっきりさせていただきたいと思います。そうでなければ、ますます乖離が大きくなるといわざるを得ないと思うのです。
  204. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは事業所得者のその所得のきめ方について、いろいろ御意見があることは私もよく承知しております。しかし、いま現行の事業所得者の所得をどういうふうに算定するかというその算定基準につきまして、これを変更するという必要を認めておらぬ、こういうことです。
  205. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題、私は実態の伴わない、いわゆる経費というものは収入に応じて必要なんだということだけで、給与所得控除が高額所得者ほど額としても大きくなってきているという点については、これはここでいま論議しても——大臣はこれは正しいというふうに御認識だということでございますけれども、勤労所得の場合には、実際の経費というものは大体どの程度かということを一々チェックすることはなかなかむずかしいということで概算控除ということになっております。しかし、少なくとも一千万、二千万、五千万というような高額所得者の場合には、どのくらい経費がかかるかということを具体的に調査して、これだけほんとうにかかるのだということをひとつ出していただきたいと思います。直ちに調査をすべきではないか、このように思いますけれども、大臣いかがですか。
  206. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 そういう調査をするのが非常にむずかしいものですから、そこで概算控除ということになると思うのです。(小林(政)委員「それは筋が通らぬ、現実的に大臣、ひとつ高額所得だけでも調査してくださいよ」と呼ぶ)なかなかそれはむずかしいことでありまして、冠婚葬祭がどうなるか、交通費がどうなるか、給与所得収入のしかたにつきましてもいろいろ千差万別だろうと思うのです。それを一々調べる、それができないものですから概算控除、こういうことで一〇%だということにいたしたわけでございます。
  207. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は少なくとも一千万以上の高額所得者の場合には、会社の重役なり何なり、相当の社会的な地位にもつかれている方である。そうすれば、交際費というようなものも、これは当然事業所の経費として適当に保障もされているし、あるいは冠婚葬祭その他——ごく私的な問題は別にしても、それらのさまざまな経費というものは、ある程度やはり社会的な地位からいって企業なりあるいは事業所なりが当然持ってしかるべき問題だ、こういうふうに考えます。私は何も勤労所得者全体の経費が一体幾らかかるかということを大臣に計算をして出してくれと言っているのじゃないのです。少なくとも高額所得者の実態というものを明らかにもしないで、ただ給与所得控除が必要だ必要だということで多額の控除を設けるということは、国民感情からいっても私は納得できませんし、当然調査を行なうべきではないか、このことを強く要望をいたしたいと思います。見解を伺いたい。
  208. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 御意見の存するところはよくわかります。わかりますけれども、実際問題としてそういうことはできない。できないものですから概算控除、こういうことになるというふうに御理解を願います。
  209. 小林政子

    ○小林(政)委員 非常に熱意のない御答弁で、私はがっかりいたしました。資産所得ども五百万からの収入の場合にはふえてきている。こういう点等から考えれば、私はやはりこの問題については実態の調査をまず行なって、その上で、このくらいは必要なんだ、こういうことをはっきりとさせた上で提案をなさるということが筋ではないか、いまの大臣の御答弁は非常にうしろ向きの姿勢、ほんとうに政治姿勢として、減税政策というものに対する政府の姿勢というものについて、私は大きな疑惑を持つものでございます。  もう時間がございませんので、特に、この点一点だけ申し上げたいと思いますけれども、きょう「給与所得者の昭和四十九年度所得税減税額の給与収入階級別試算」というのを大蔵省から提出をしていただきました。これで見ますと、一千万をこえる収入の方は、納税者で四十七年の数字ですけれども、一万人なんです。いまは少しふえていると思いますけれども、一万人なんですね。そしてこの数字で見まして五百七十億円の減税額、これを機械的に一万人で割ってみますと、一人当たりの減税額というものは五百七十万円になるのです。一千万以上の収入の人の場合には、五百七十万からの減税になる。あるいはまた五百万というところで線を引いて調べてみますと、五百万超の金額が二千百九十億円ですから、これの納税人口というものがどのくらいいるかというので調べてみますと、十六万人です。そうすると、一人当たり百三十六万円の減税なんですよ、機械的に計算してみますと。いかに今回の減税が、政府が試算をして出してきたこの数字から見ても、高額所得者優遇の大幅減税であるか、いわゆる重役減税であるかということは、私は明らかだと思います。  逆に百万以下、いわゆる五百万以下の収入の場合を検討してみますと、五百万以下で減税額が一兆一千四十億円ですから、これを納税者二千六百二十一万人で大臣割ってごらんなさい。わずか一人当たり四万二千円です。百万をこえて二百万以下という場合を計算してみれば、減税額三千五百五十億円ですから、これを納税人口の千二百八万人で割れば、わずか二万九千円にすぎないのです。いかにどこに有利な減税になっているかということは、政府がきょう計算をして出してくださったこの資料によっても明らかになるわけです。私はこのような減税については、国民がいま重役減税だ、金持ち減税だ、こういうことを言っていることが全く妥当なものであって、この点を改めるべきが当然ではないか、このように考えますけれども、この点についてお伺いをいたしたい。  時間ありませんので、最後に御意見を聞かせていただくと同時に、ひとつ資料要求をいたしたいと思います。  きょうここに出していただきました所得税法改正による減税額の税率緩和による減税分は給与収入の階級別にそれぞれどのくらいになるのか、あるいは給与所得控除の拡大による減税分がきょうお出しいただいたこの資料と同じような給与収入の階級別で幾らぐらいになるのか、出していただきたいと思います。それから、納税人口につきましても、四十七年の古い資料で私ども計算をいたしておりますけれども、新しい最近の納税人口の実態も明らかにする資料を提出していただきたいと思います。  以上、資料の要求と大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  210. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この資料で明らかなように、一千万円超の者につきましては五百七十億円の減税になる、こういうことでございます。これはいままでとにかく控除制が適用されなかった、その人に初めて控除制が適用になる、こういうことでございまするから、それはしかも高額の所得者でございまするから控除額も多くなる、こういうことなんであります。あなたが言われる趣旨はよくわかりまするけれども、これはこういう制度をとればこういうことになる、そういうことかと思います。  なお、資料につきましては、主税局長がお答え申し上げます。
  211. 高木文雄

    高木(文)政府委員 前回お答えいたしたと思いますが、この減収の計算は、給与所得控除とそれから人的控除と税率の組み合わせでできておりますので、したがいまして、前回お断わりいたしましたように、それの総体としての給与所得控除で幾ら、人的控除で幾ら、税率で幾らということの推定計算は総体としてはできますが、これを所得階層別あるいはまた収入階層別に組み直すということはきわめて困難でございますので、公式に責任を持ってお出しする数字としてはかんべんいただきたいと思います。
  212. 小林政子

    ○小林(政)委員 理論的に給与所得控除の減税分が八千四百二十億、そして税率緩和が二千二十億、そのように出ているわけですから、私はやはりこの問題については所得階級別に計算してできないというふうには何ら考えられませんので、むずかしい面はあるかと思いますけれども、ひとつ御苦労でもぜひその資料を委員会に御提出をお願いいたしたいと思います。
  213. 高木文雄

    高木(文)政府委員 検討いたしてみますが、これから作業してみなければなりませんけれども、相当いろいろの組み合わせになりますので困難をきわめるということでございますから、しばし御猶予を願いたい。検討いたしてみます。
  214. 安倍晋太郎

    安倍委員長 荒木宏君。
  215. 荒木宏

    ○荒木委員 私が大臣にお尋ねをしたいのは、物価と税金の関係でございます。  先ごろ政府は、石油製品価格の大幅再値上げを認める発表をいたしました。いまは物価の非常事態であり、国民生活の危機であります。この物価を下げるためにはあらゆる手だてを尽くして政策のすべてを検討する。こういった心がまえが必要であり、政府にはその責務があろうかと思います。御承知のように、この問題はすでに参議院の予算委員会でわが党の春日議員が取り上げて質問をいたしました。端的に言いますと、石油製品価格の値上げを押えるために石油関係の税金をやめるかあるいはそれを減らすか、この手だてがどうしてもとれないものかどうか、私が本日お伺いしたいのはこの点であります。そしていろいろな質疑の中で、かわりの財源が問題である、こういうふうな答弁もありました。きょう私の質問時間は非常に限られておりますが、かわり財源のために公債を発行することもできない、これは当然であります。問題は、租税特別措置法に限らず、いま大企業税制上受けておる特別の減免税、これについて一から十まで全く指を触れる余地がないのかどうか、この石油製品価格の大幅値上げを押えるために、まずこのことについて大臣にお尋ねしたいと思います。
  216. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 春日さんからきのうそういう御所見を承ったのです。  そこで、そういう財政措置をとりまして石油製品価格を押える、こういうためには一体幾らくらい要るのだろうか。これは二兆円をかなりこえるわけです。それだけの規模の財源を一体どうやって捻出するか。春日さんは、いま荒木さんからお話しのように、積み立て金があるじゃないか、準備金があるじゃないか、それが三兆円もある、その半分も取りくずしたらどうだ、こういうような話でありますが、そういうわけにもいかないのです。取りくずしてそれに法人税率を掛けたものが税額にはなりますけれども、それとてもなかなか二兆円を上回る財源措置というわけにはいかない。かりにいくといたしましても、法人から一体それだけの額が徴収できるか。これは、いま超過利潤税を課するということだけでもあれだけの議論がある。私は、とうていこれはできないことであり、非現実的なことである、こういうふうな趣旨のお答えを申し上げたわけなんです。  私は今度の原油の問題は、率直に考えまして、やはりわが国は石油資源がない、これは大事に使わなければならぬというので、一面におきましては石油価格が上がる、そして消費の抑制力として働く、こういう場面というものはあってしかるべきである、こういうふうに考えます。ただし、それが一般の物価に波及してはならぬ。そこで、関連の企業の製品、そういうものの値上がりは防止する、これの対策をとらなければならぬ、そういうふうに考えまして、いわゆる目張り対策というものが通産省で、あるいは関係各省で、ほんとうにできるのかできないのかということをチェックにチェックをして、最後に石油製品価格引き上げということに私も賛同をいたしたわけであります。  財政措置のほうは、かりにそういうことをいたしましても、これはいっときの問題です。カンフル注射です。いずれは財政措置を取り下げなければならぬ、こういうことになるわけです。これを毎年毎年やっていたらたいへんなことになる。これはドッジさん以前の日本経済のような形になっちゃうのです。そんなことであっては断じて相ならぬわけですから、いずれは、半年後になりますか一年後になりますか、そういう措置は撤廃しなければならぬ、そういうことになる。そして撤廃するときに、また石油製品価格引き上げ問題というのが起こる、問題の解決をあとにずらすことにとどまるのですよ。そういう認識のもとに、今回、通産省で石油製品価格を上げたい、こういうのに賛意を表したわけであります。
  217. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの大臣の御答弁は二つの点で問題であります。  一つは、かわり財源が約二兆円、これをどこに見つけるか。つまり二兆円耳をそろえて、きっちりそろわなければやれないという、そうまではっきりおっしゃいませんけれども、そのことが一つ前提になっている。私ども一つずつ吟味をしていって、そうしてかりに八千九百四十六円、これを半分に下げる手だてはないか、あるいはこれを七割方下げる手だてはないか、オール・オア・ナッシングという考え方はとりません。それはむしろ非現実的ではないでしょうか。つまり、本法で六種類ありあるいは特別措置法で十何種類あるその一つ一つを吟味していって、そうして国民生活を守るために、やれるものはやろうではないか、これを申しておるわけであります。  もう一つは、いまの原油の値上がりがいつまでもいまの状態で続くと考えるのは、かえって非現実的ではないでしょうか。申すまでもなくDD原油の価格はきわめて流動的であり、一時期に比べて上がり、また下がりがあります。  そこで、私は論を進めるために、まず貸し倒れ引き当て金の問題を取り上げたいのです。  御承知のように、法人税法の本法では、貸し倒れ引き当て金は貸し倒れ見込み額について政令で定める限度は損金算入するというふうになっています。しかし、一つは、まだ発生していない見込み債務である。そうしてもう一つは、現実に損が発生したときには損金処理をするという別途の手だてがある。そういう手だてがありながら、先のまだはっきりと確定していない、しかもその条件の基礎すら法律的にきまっていないものを計上して、これを課税対象からはずす。金額はあとで申し上げましょう。こういったことが、いまの国民生活を守るときに、大企業から少しでも税を取り立てる余地がないかどうかという点の検討に値しないのかどうか、この点大臣のお考えを伺いたいと思います。
  218. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 大企業、大企業とおっしゃいますが、大企業所得がなければ納税することはなかなか困難です。(荒木委員「この問題に限っておっしゃってください、具体的に提案しているのですから」と呼ぶ)いや、これに触れてくるわけですから申し上げるわけですが、所得は度外視して過去の積み立て金を取りくずす、そうしてそれに対して課税をする、これはちょうど、内容は違いますけれども、資産再評価をこの際して、その差額に課税しようというのと実態は非常に似ておる、そういうような考え方だろうと思います。  とにかく、いま経済界が非常な混乱をしておる。そういう際に、所得法人税法によって納税する、それを四二%に引き上げるべしという人もある、われわれは四〇%の引き上げが妥当だといっておる、その辺の議論が行なわれている今日におきまして、もう何十年来積み立てておる引き当て金を一挙に取りくずしまして、そうしてそれに課税をする、これは私は非常に非現実的じゃないか、そういうふうに思います。  ただ、前のあなたが指摘された問題、私はあなた方が二兆円なら二兆円耳をそろえて用意して製品価格引き上げを阻止せよと、こういうお話かと思いましたが、それはまあ大体半分だとか、そういうようなお話ですから、そういうふうに理解しますが、それにしても問題は同じだと思います。私は一兆円なら一兆円、それだけの額をどこから一体持ってくるのだということになりますると、とうてい名案は考え得られないと思います。
  219. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの御答弁にはさらに二つの問題があります。  長年の間積んできたものを一挙にやめる。貸し倒れ引き当て金は毎年洗いがえをやっているのです。毎年毎年、これは一ぺんまた益金に戻入をして、そしてまた一からやり直すことをやっているのです。ただ、そういったことをやる会計慣行はあります。しかし大臣、問題は、その会計慣行、つまり基礎のはっきりしない見込み額を損金算入をして課税対象からはずしちゃう、そのことによって内部留保があり、そのことが投機資金に向かい、そのことが過剰流動性のもとになり、高度成長のもとになり、いまやその政策は転換をすべきであると政府みずからおっしゃっておるのじゃないでしょうか。  そしてまた、もう一つの問題は、一ぺんに取りくずすことには問題があると、こうおっしゃる。洗いがえの方式をとっていることはいま申したとおりです。私はこの問題について、それでは具体的に貸し倒れ損害の現実発生額と、いまこうして法制上認めて積んでおる額との比率は一体どうなのか。このことを大臣にお尋ねしたいのです。これは実際の発生額にまあまあ見合ったというふうなものを積んでおれば、あるいは現実に影響がありましょう。あと数字は詳しく銀行局のほうからも言っていただきますけれども、まあおよそ月とスッポンぐらいずっと離れているのですよ。実際に間に合うような貸し倒れ損失を計上しておいて、それとは別に余分に課税対象からはずすという貸し倒れ引き当て金なる慣行を税制上取り入れて、しかもその限度は政令できめられる、皆さんがその気におなりになれば、これは一定の期間ずっと下げることができる。私は先のことについていま申しておるのじゃありません。当面国民みんなが困っているこの再値上げの問題について、いまの時期にこのことを国民に責任を持つ政治としてはやるべきではないでしょうか、こう申し上げておるのです。  したがって、質問は限定をさしていただきますが、この貸し倒れ引き当て金について、現実の貸し倒れ損失以外に計上しておる理論的根拠、政策的根処は一体何か、ひとつこれははっきりお答えいただきたい。そしてまた、そのことにいま一指も触れられないということはなぜなのか。これはあと数字に見合って申し上げますけれども、もしもほんとうに資本金十億円以上についてこれを一年間やめるとおっしゃれば、今度皆さんが提案なさっておる揮発油税の九百九十億円については、これは場合によっては、かわりでまかなうこともでき得るめどは十分にあります。この二つについて、はっきりとお答えいただきたい。
  220. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まあ貸し倒れ引き当て金につきましては、これは現実と違うじゃないかという説があります。たとえば、現時点の貸し倒れ補てん、そういう額と準備金の積み立てが見合うかということを比べてみますと、必ずしも一致しない。ことに金融機関なんかにおいてそういう乖離が非常にあるわけです。そこで、たとえば金融機関なんかは、ある特定時点においてそういう貸し倒れという事態が起こらない、したがって、それに対して過当の積み立てをしておるじゃないか、そういうような議論が起こりやすいですが、しかし、経済の先々を考えて、一大異変があったというような際に一体どういうふうに対処するかというような、平均的なことを考えているのです。でありまするから、今日、この事態の現実の乖離状態を見て、その引き当て額が妥当でない、こういうふうに一がいに論ずるというわけには私はいくまい、こういうふうに考えております。ただ、金製関につきましては、それにしても少し積み立で額が多いんじゃあるまいかというような考えを持っておりまして、一時は、私が前に大蔵大臣をしておったときには何%でありましたか、千分の十五でありましたが、だんだん引き下げてまいりまして、現存十二まできておる、そしてさらに来年はこれが十になる、こういうような状態でございます。これをまあこの際やめちゃえとか、あるいは大幅に減額しちゃえ、こういうのもまた非常にきびし過ぎる考えではあるまいか、そんな感じがいたします。
  221. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣、いま私が申し上げておりますのは、通常の状態のときに、平均的なお考えで、この貸し倒れ引き当て金の計上限度額が妥当であろうかどうか、こういうことを申しておるのじゃありません。まず、いまの事態が異常事態である。あの再値上げがどんなに国民生活に対して大きな脅威を与えているか。目張りもいいでしょう、しかし、私は、そのもとのことを問題にしておるのであります。そして、そういう事態に、そういう認識に立って、これは手をつけられない聖域なのか、こう伺っておるのであります。  いま若干、その内容についてのお話がありましたけれども、しかし、実際に銀行局のほうからいただいた資料によりますと、四十七年の下期と四十八年の上期、現実に都市銀行で積んでおります貸し出し残高の数額に対して、現実の貸し倒れ損は十万分の四であります。いま積んでおるのは千分の十とおっしゃいましたが、これは十万分の一千でしょう。四対一千。私は、このことをいまの非常事態に、ほんとうに手をおつけになる気があれば、ここから財源は取れないのだろうか。そして引き当て金の残高は、これは同じ期を見ますと、実際の貸し倒れ損に対しては四百倍をこえておるのです。なるほど、大企業サイドから見ますと、いろいろな論がありましょう。しかし、国民の立場に立ってこの問題を見ますときに、いまの時点でここにひとつメスを入れて、そしてこれから幾ら税金が取れるだろうか。  この積んでおります金額、もちろんこれは増加分を問題にしなければなりません、洗いがえ方式ですから。その増加分について配当性向を二一・三%として計算いたしますと、八百四十二億円の税金を取ることができます。これは大蔵省の銀行局からいただいた数字をもとにして、計算方法もまた、この貸し倒れの積み増しの伸び率を大体一六%、過去十年間の平均をとりました。この計算方法については大かた異論はないはずであります。ですから、そのうち大企業について、かりに七割といたしますと、これで五、六百億ということになる。そうすれば、私は順番に、いわゆる特権的減免税といわれる諸措置についてお考えをただしていくつもりでありますけれども、まずこれによって、今度の揮発油税の増税は一応まかなえるめどがそれなりについてくるではないか。  もちろん、二兆円と申しましても、何も一つの袋に二兆円入っておるのじゃありません、それぞれの項目にあるわけですから。ですから、いま問題にしておりますこの引き当て金や、いろいろな特別措置法上の問題を一つずつ取り上げて、これは理論的に検討する余地はないか。そして、それに道理がないなら、あるいはまたいまの時期に、政策的に見て国民のためにならないということなら、その金額を計算して、そしてかわり財源の一項目にはめていく、これがほんとうに現実的なやり方であり、それが国民の期待にこたえる道だ、私はそういうふうに思うのであります。  先ほど来、大臣のこの問題についてのいろいろなお考えを伺いました。私が申し上げておりますこういったやり方について、検討に着手なさる御用意があるかどうか、そのことを伺いたいと思います。
  222. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 恒久的な税制としてはいろいろ問題がありましょう。ですからこそ、当委員会でもいろいろ特別措置についても御議論があるわけなんです。それは大蔵省としても検討してまいります、恒久的税制として千分の十二がいいのか、悪いのか、こういう問題は。しかし、いまこの臨時緊急の措置として恒久的な税制のものをくずしていく、そういう考え方は、私はあまりにも感情的なとらえ方ではあるまいか、そういうふうに思うのです。しかも、これはつまるところは法人税の増税ということですよ。法人税の増税と観念せざるを得ない性質の考え方である、こういうふうに思いますが、いま法人にそれだけのまた負担力があるかないか、そういうようなことを考えますと、そう簡単に結論は出し得ない問題である、私はそういうふうに思います。  いずれにいたしましても、私は特別措置をいま臨時に改定する、そして大幅に特別措置をくずす、そうしてそこから財源をひねり出す、そういう考え方は妥当でない、かように考えます。
  223. 荒木宏

    ○荒木委員 いま感情的というお話がありましたけれども、私は少しもそう感情的になって申し上げておりません。(福田国務大臣「考え方が感情的だということです」と呼ぶ)考え方についてもそうであります。問題は、いまの企業会計原則では発生主義の考え方をとっており、そして現実に発生したものがその期の正確な損益である。ただ将来の分についても、蓋然性があり、その期に企業収益対応の点かち計上するのが妥当だと思われるものについてはその扱いをしておる。ところが、いま申し上げたように、実態と離れて、課税の対象からはずれている。これはむしろ増税ではなくて、普通の状態、つまり企業会計原則上、通常あるべき状態ですね。そのあるべき状態から課税が少なくなっている。だから、そういった減税の恩典を受けておるところを、この際だから普通に近づけるようにしたらどうでしょうか、こう言っておるわけであります。  ですから、いま大臣が、比較考量の点で、はたして大企業あとそういった税制改正に耐え得る余地があるかどうか、こうおっしゃいましたが、国民のほうはどうでしょうか、この相次ぐ物価高の中で生活はたいへんな危機です。ですから、問題ははっきりしているのです。いまこの状態の中で、企業会計原則の理論に反して減税の恩典を受けておる、たとえばこの項目について、大企業にもう負担能力がないというふうに見てそっちのほうを救う立場に立つか、あるいは国民の生活こそいま圧迫をされておる、それを救おうではないかということで、いまの時期に緊急の手だてとしてそれに着手をするかどうか。なるほど検討の過程で問題が出てまいりましょう。ただしかし、それを検討すらされないということは、私はどうしてもうなずけません。  ことに、この引き当て金計上項目が、実際の損害発生の額とまた別に、これが売り上げ経費の一つになっております。たとえば銀行の財務諸表分析によりますと、この貸し倒れ引き当て金の引き当て額は経常費用の一項目だ、こういうことになっております。ですから、そこに、課税対象としないで、この計上をずっと認めることによって、はっきり言えば、資金コストはそれだけ高く維持されておるわけです。物価を下げてほしい、物価安定が最大の急務だと大臣みずからもおっしゃっているのです。だとすれば、国民生活の圧迫になり、そしてまた物価をそれだけ底上げしておる部分については、これはやはりはずす方向の検討をなされるのが当然じゃないかと思う。   〔委員長退席、山本(幸雄委員長代理着席〕 なるほど、先の問題はまたいろいろとありましょう。しかし、いまこの時期にこの問題について検討なさるということが、私は政府としてとられるべき立場だと思います。いかがでしょうか。
  224. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 恒久税制の問題とすると、いろいろ議論の余地があると思います。しかし、いま多額の財源を生み出すという趣旨のもとに、臨時的にこの制度を修正、改正する、こういうことは私は妥当でない、こういうふうに申し上げているのです。この考え方には私は変わりはございません。
  225. 荒木宏

    ○荒木委員 まあ考え方の方向についてはいろいろありましょうけれども、問題は実際の効果であります。また、政策の実行であります。ですから、政府が恒久的なやり方一つとしてかりにとられようと、その考え考えとして、今の事態に現実に即応するような形で、趣旨は恒久であろうと、何であろうといいのですよ。この問題の検討に着手をされるかどうか、すみやかに着手されるか、このことを私はお尋ねしたいと思うのであります。  と申しますのは、いままでこの引き当て金が認められたのは、端的に申しますと、債権者保護ということがあります。内部留保で散ってしまえば、投資家は困る。あるいはまた配当でどんどん出れば、これは債権者の保護に欠けるであろう。債権者保護とそれから株主保護、いまの時点でこれに加えて、消費者、国民大衆の保護ということを、やはり政策上どうしても考えていただかなければならぬと思います。ですから、お考えのめどは、いまのところを向いておろうと、先を向いておろうと、私はどっちでもいいと思うのです。この問題の検討にすみやかに着手される、そしていまの最大の重点とされる物価対策にも資するような形で検討をされることをぜひ期待をして、御意見を伺いたいと思います。
  226. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 繰り返して申し上げますが、この種の税制は、恒久的な問題とすると、これはなかなかいろいろ議論があると思うのです。ですから、私どもも毎年毎年洗いがえをしよう、こう言っておるのですが、この制度を改正することによって多額の財源を生み出そうという考え方、これは法人税をこの際増徴して石油価格引き上げ軽減しようとか、あるいは据え置きにしようとか、そういう考え方なのですが、これは私は妥当な考え方ではない、こういうことを申し上げているわけです。
  227. 荒木宏

    ○荒木委員 多額の税金を生み出すというお話でありますが、多額であるか少額であるか、これは比較考量の問題であります。御案内のように、昨年の九月期決算では、東証一部上場で実に経常利益合計が一兆二千億をこえました。私が言っておりますのは、この特別的な措置のうちの一項目である数百億から総額八百億の問題であります。たまたまこの金額は、いま皆さんが御提案になっておる揮発油税の増税見込み額とそんなにけたが違うほど離れてはおりません。ですから、検討のたてまえは別として、そしてまたその額については、いろいろな見方がありましょう。いまの時期に二万五千倍もあるようなものをそのまま放置なさるのかどうか、私はこのことをお尋ねしているのであります。
  228. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 つまり、貸し倒れ準備金というのは、単年度のことを考えておるわけではないのです。将来、いろんな事態が起こり得るであろう、そういう将来の不測の事態まで計算に入れまして、その率をきめておる、こういう長期性を持った考え方なんです。それを当面の物価問題というか、石油価格に関連いたしまして停止するとか、あるいは改正するとか、そういう考え方をとるのはこれは妥当じゃない、こういうことを申し上げているのです。  長期的な見地から十分検討して、それが長期的な見通しの幅の中において、銀行の貸し倒れ準備金の千分の十二というのがはたして妥当であるのかないのか、そういう点につきましては、検討いたします。
  229. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣は、私が提案しました項目について、検討に着手をするということは御答弁いただきました。ただ、その着手する検討のたてまえが、恒久的制度だと、こういうようにおっしゃっているわけですが、私は検討に着手されるということ自体は早急にやっていただきたい。ただ、そこからもう一歩進んで、恒久的な措置であり、不測の事態に備える、こういうお話がありましたので、それについてひとつ申し上げたいのであります。  これは世間の常識で、あえて論拠を申し上げるまでもないのですが、大体、貸し金については、それに見合う担保が設定されております。現に四十八年版の銀行局の金融年報によりましても、担保設定は厚くされておるという趣旨の記載があります。これは数字実態を申し上げなくたって、いわば世間の常識であります。そして、その言われる不測の事態というのは一体どういうことでしょうか。なるほど観念的、抽象的には不測の事態があるということは私もわかります。また、遠く歴史をさかのぼって、いろいろな事態をひもとけば、なるほどそういったことはありましたでしょう。しかし、当面の政策を立てる上で、いまおっしゃるような意味の不測の事態がはたして過去にどういう時点であったか、たとえば田中内閣が成立されてから、あるいはまた大臣が御就任になってから、この二万五千倍にもなるような、これでなおかつ予防措置が講じられないような不測の事態ということの現在の蓋然性の根拠は一体どこにあるか。  私がこういったことについて申し上げておりますのは、これは先の一般的なことでありましょう。ありましょうけれども、ずっと先の先のことよりも、そういう長期的なたてまえということでもよろしいから、いまの目の前の国民の生活にどうか目を向けて、そして結果的には検討の着手をすみやかにされ、それが十分実のあるようなものにしていただきたい。ですから、検討の着手をお約束いただいたその上に立って、さらにそれを効果あらしめるために、大臣のお考えを伺っておる次第であります。
  230. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これはもうほんとうに国民に目を向けているのです。これは間違いなくそういうふうにお考えくださって支障はないと思います。どうやって国民の生活を安定させようか、これが私ども考え方の基本でございます。そういう立場に立ちまして、財政金融の運営をやっておる。そういう中において今回の石油価格の上昇に対してどういうふうに対処するか、こういう問題に当面しておる。それはまあ石油の輸入価格が四倍にもなるのですから、どうしたって製品価格引き上げないということは不自然だ。そこで、上げましょう、上げますが、国民に及ぼす影響をその価格引き上げから断ち切ろう、こういう考え方からいわゆる目張り政策というものをとっておるわけであります。ほんとうに国民のことを日夜考えての結論がこういうふうになってきておるわけであります。  そこへ荒木さんが、幾ばくかの金を法人からまき上げて、そして幾らか引き上げ率を軽減しろ、こういう御提案でございますが、いまの銀行の貸し倒れ準備金、これにつきましては、いまの率が一体恒久的に見て妥当であるかどうかということについては、これは十分検討します。毎年毎年洗い上げする、こういうふうに宣言しているのですから。しかし、石油問題ゆえにこの制度を大幅に変えてしまって、そしてそこから財源を求めようというのは、これは法人税を増徴しようという考え方そのものなんです。これを私は、今日の法人の負担力から見て妥当ではない、こういうふうに申し上げておるわけです。
  231. 荒木宏

    ○荒木委員 二十項目余りあります問題の一項目で時間が来たわけでありますけれども、私は引き続いて、大臣は御都合があってお出にならぬと思いますけれども、順番にこの項目それぞれについてお尋ねをしていくつもりであります。私が申しておりますのは、まず会計理論的におかしいじゃないか、社会的に不条理ではありませんか、政策的にもまずいまとるべき手だては、私どもの申しておるほうが国民に支持をされるのではないでしょうか、こういうことを申しておるわけであります。  一口に引き当て金、準備金、いろいろ申しますけれども、きょうも参議院の予算委員会政府が御答弁になりましたように、それぞれにそれなりの経過があり、それなりの内容があります。したがってそのそれぞれについてお尋ねをしていくつもりでありますので、いま言われました検討に着手するということは、これはやっていただきたい。それから、恒久的な手だてとしてこの問題の検討に着手するという点は、ぜひ私がいろいろ申し上げた点を踏まえて、そのお考え自体も再検討をいただきたいということで、たいへん残念ですが、時間か来ましたので、きょうはここで終わらしていただきます。
  232. 山本幸雄

    ○山本(幸雄委員長代理 武藤山治君。
  233. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 福田さんが大蔵大臣に就任する前に、当委員会で、昨年の三月二十八日でございましたか、田中総理大臣の出席を求めて、財政金融政策のあり方について、実は私が質問をしたことをいま思い出したのであります。その時に、たまたま西ドイツのブラント政権は、インフレを起こさせないために財政金融政策において思い切ったことを展開しようということが報ぜられ、大蔵省を通じてその西ドイツの考え方を取り寄せて実は質問したわけであります。  一つは、西ドイツは物価上昇を押えるために、まず一億マルク以上の資本金の法人に対して一〇%の法人税付加税をかけたのですね。それから、個人で二千マルク以上の年間所得者に一〇%の所得税の付加税をかけた。第三に、安定国債を発行して、利子に対する税金は全額非課税措置をして安定国債の発行に踏み切った。西ドイツはこの三つの柱で物価問題に対処するというたいへんなかまえを示したわけですね。  当時、私は田中総理大臣に、西ドイツのような政策を日本でやらないとたいへんなことになるのではないか、物価はいよいよ上昇し、田中内閣にたいへんな傷を負わせる結果になりはしないか、思い切って西ドイツのようなことを日本も直ちにやるべきではないか、こういう提言を実は本委員会でいたしたわけであります。当時、田中さんは、日本はインフレにはならないよ、物価は西ドイツのようにそんなに上がらないよ、こういう経済認識を持たれておったわけであります。ところが、一年間のトータルの物価上昇の状況を見ると、西ドイツは卸売り物価八・一%の上昇、消費者物価は八・三%の上昇でおさまっている。心配はないよ、物価問題はだいじょうぶだよと言った日本の総理大臣のもとにおいて、卸売り物価は三六・七%、消費者物価は二四%、福田蔵相をして、まさに狂乱物価と名づけしめるに至ったわけであります。  私はまことに残念でならぬのであります。もしあのときに野党の言に耳を傾けていたとするならば、日本経済情勢は違った方向に進んだに違いない。福田さんは、当時、党内野党で、田中内閣の行く末をながめていたのでありますから、福田さんにいまここで申し上げても、それは酷な話だとは思いますが、一たび政権の中枢についたからには、やはり西ドイツのブラント政府がやったような思い切ったことをやるべきだったのではないかという反省、そういうものを今日持たれているのか、持たれていないのか。総需要抑制というこの手だてだけで、時の流れを見ながら、いつかは鎮静をするであろうという、この歯がゆい総需要抑制のいまのやり方に対して、国民はいらいらを押えることができないほどやきもきしているのが偽らざる感情であります。  私はそういういまの物価情勢について、自由民主党の大きな大黒柱としての福田さんはどのような反省をされていらっしゃるのか、まず反省点についてちょっと気持ちを聞かしてもらいたいのであります。
  234. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は大蔵大臣になる前から、総需要抑制、これをやり抜かなければいかぬ、こういうことを主張してきたわけであります。そのことをそのままやっておりますので、別に今日その反省というような必要を認めませんが、いまわが日本が置かれている立場とドイツが置かれている立場、これを同じく見てはいかぬです。まるっきり違うのです。ドイツは外貨を三百数十億保有しておる。しかし、トリレンマなんということは一言もいっておりません。もうどうしても財政金融を詰める、そうして物価の安定をはからなければならぬということをずっとやってきているのですよ。  わが日本は、その同じ時期に外貨減らしだと、こういうようなことで、内においては拡大政策がとられ、外に向かっては外貨の流出政策をとる、そういうようなことで暮れの石油危機を迎える、こういうことになってしまったのです。ドイツと同じ状態じゃないのですから、処方もおのずから変わってこなければならぬ。ドイツを引き合いに出されますから申し上げますが、ドイツがずっと前からやっておる総需要抑制政策的考え方、これを強力にいまやらなければ、わが日本事態は解決できない、こういうふうに思います。  現に、総需要抑制政策をとり出してから三カ月、今日あの狂騰を続けておった地価、全国は頭打ちだ、あるいはとにかく市町村なんかの話を聞くと、いままでは先行取得というので、どうやって土地を手に入れるかということで頭痛の種だったそうですが、今日は売り手が来てそれをさばくのにたいへんだ、こういうような状態、非常な変化が起こっている。主要資材だってどうですか、もう大体頭打ちで、この二月になりますと、下落傾向に入ってきておる。私は一歩もこの道をゆるめない。これで進みますれば、わが国のこの乱れた状態というものは克服できる、こういうふうに信じておりますので、この道をばく進します。御声援をお願いいたします。
  235. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私がいまあなたの心境を聞きたいと言ったのと、あなたは次元の違うところで答えている。実は去年の春の段階で、そういう手だてにもう着手しておれば、その後の状況がこんな異常な狂乱にいかずに済んだのだ、国民の心理も引き締まったし、事業家の姿勢というものも変わったし、そういう点まことに残念でならぬ。福田さんは当時大蔵大臣じゃありませんから、福田さんになってから短期決戦で、いま急遽総需要抑制が浸透し、かなりのひずみが今度またあちこちに出るという事態が起こりつつあるというところまで来ているわけでありますから、その手だては福田さんの処方せんとして、私は現状に適合した果敢な手法だとは思います。しかし、それ以前の政府を担当した自由民主党政府のやるべきことを怠ったということのツケが、いま来ているのですよ。その反省を聞きたかったのです。  いずれにしても、物価はもう上がってしまったのです。とにかく二月末現在二四%も前年比で上がってしまったのです。福田さんは、これから下げるのだから、それまでみながまんせよ、こう言うのか、まあ上がったのだから少々は国民の被害というものを救済してやることが国民のための政治ではないかと考えるのか、その考えるところに私は問題があると思うのであります。  第一に、私が蔵相の意見を聞きたいのは、四十八年に物価がもうこんなに上昇してしまって、預金の現実の目減りも、実質生活水準も、労働省の発表によると四%実質生活水準は低下だ、こう実は発表されている現状であります。でありますから、零細な貯蓄者、零細な庶民のわずかな預金というものについて、やはり物価上昇のおりであるから何らかの形で預金金利を引き上げてやる必要がある。  私は前に、愛知さんがおなくなりになる数日前の大蔵委員会の質問で、この際、法人預金と個人預金を分離して、個人の分だけはひとつ思い切った預金金利の引き上げをやってほしい、それに対して愛知さんも、それも一つ考え方であり、検討いたしますと答えたわけでありますが、残念なことをして実現を見なかったのでありますが、今日の事態では、私はそう大金を認めるわけにはいかぬと思います。したがって、一世帯五十万、しかもその期間は一回限り、まあ六カ月ぐらい、そしてマル優とは別ワクにして、そういう零細な貯金の目減りだけは何とか一時ここのところは六カ月間ぐらいの間、国民にあたたかい思いやりある施策をとってみよう、ひとつ大蔵大臣としてもう一度ここで——もういろいろ広瀬委員からも質問もあり、各党の委員からも預金金利を引き上げよという要望は強かったわけでありますが、大臣なかなか歯切れが悪くて、答えがわれわれの耳によう響いてこない。  きょうは大蔵委員会の大詰めで、もういよいよ年度末も近づいたことでもありますから、ひとつこの辺で、われわれがなるほどと思う大臣の回答をぜひ聞かしていただきたい。預金金利引き上げについての見解を聞きたいと思います。
  236. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 武藤さんからも、また他の皆さんからも、預金金利について御配慮にあずかりまして、大蔵大臣といたしましては感謝いたします。  いま武藤さんから、一世帯五十万円に限り六カ月定期の預金金利を一〇%に引き上げる、六月からこれを実施する、こういう具体的な御提案でございますか、この案は金利負担の面や実行上の困難性、その他金利体系に対する影響などの点から、きわめて困難な問題だと思います。ただ、預金者にとって少しでも有利な預金がつくられないかということは、常に私の念頭にあることなのでありまして、ボーナス貯蓄預金の期限切れ後の問題も含めまして、ひとつ熱意をもって検討してまいりたい、かように考えます。
  237. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 熱意をもって検討されるという前向きの姿勢をお示しいただきましたので、年末のボーナス預金も六月で大体期限が終わる、さらに宝くじつきの預金も、銀行筋では四、五月で一応終わるということになりますと、やはり六月のボーナス期を目当てに、大衆消費の拡大を押えるという意味からも、いまの前向きの検討を私は期待をして、次の第二項目に移りたいと思います。  この委員会でいろいろ質疑の中で、政府としてこの程度のことはやっても無理ではないではないかと思われる項目、政府と同じ土俵の上に乗って議論をした場合の問題点——平行線をたどるような大きな問題はきょうはさておいて、このくらいなことはひとつ大蔵省としてやってしかるべきじゃないか、こういう問題について、二、三点伺ってみたいと思います。  その一つは、大臣も御存じのように、医療費控除の問題であります。いま家族が病気になった場合、薬剤師あるいは医師等にかかった場合、医師は無料の場合が多いわけでありましょうが、それでも保険のきかない医療あるいは家族の七割給付の場合の三割負担、あるいは五割給付の場合の五割負担、こういうものがかなりあるわけであります。特に難病、長期療養の場合には、やはりたいへんな負担になるわけであります。そういう場合に、いまの税法では、医療費というものは所得の五%以上でないと該当しないわけであります。もしくは十万円との比較で低いほうの金額ということですね。そうなると、たとえば所得百五十万円の人が五%というと、七万五千円以上の医療費出費がなければ該当しない。特に福田さんのような高額の所得者になりますと、五%というと一千万の人は五十万円の医療費を払わないと、五%以上もしくは低いほうで十万円ということになるのですか。そういうような五%というこの線と十万円というやつを、この際一回洗い直して、実額で一万円以上にするとか、あるいは五%を二%程度に引きおろすか、何らかの検討をしてしかるべきだと思うのであります。   〔山本(幸雄委員長代理退席、委員長着席〕  これは私が落選する前に一回大蔵委員会で取り上げて、一度直したことがあるのです。前は七%か八%だったんですよ。それを私の大蔵委員会での質問で、五%におろすことを大蔵省も検討してくれたわけですね。今回、いまの実情からいくと、所得も上がったことでもあるし、諸般の状況勘案したときに、この制度は検討してしかるべきではないか、こう思うのでありますが、大蔵大臣の率直な御見解を承りたいと思います。
  238. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話の御趣旨はよくわかります。この制度は、通常程度の医療費の支出については、本来、課税最低限のワク内で考慮さるべきものという考えから、医療費控除足切りという制度になったわけでありますが、そういう同じ趣旨から、四十九年度税制ではこのような事情を考慮いたしまして、課税最低限の大幅引き上げをやったわけであります。しかし、いまお尋ねの趣旨も十分理解し得ますので、この問題は昭和五十年度税制改正までには、税務行政との関連等を考慮しながら足切り限度の引き下げを行なうことについて前向きでやってみたい、かように考えます。
  239. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣が前向きに、それも五十年度を目ざして改善をはかりたいというお答えでありますから、せっかく御努力を期待いたしたいと思います。  第三の問題は、通勤者の通勤手当の非課税の問題であります。現在、人事院の勧告に基づいて主税局は手直しをしてきているわけでありますが、一応頭打ち七千円という限度がきめられているわけであります。また、九月には国鉄運賃が二四%も上がり、バス代も上がり、それぞれの交通料というものも改定されるやに承っております。総理大臣は昨日の参議院での質問に答えて、国鉄運賃の凍結は延期できない、九月には解除やむを得ないという回答を総理みずからもいたしているような状況等々もこれあり、これらの問題をも加味いたして考えてみますと、この通勤手当の七千円という頭打ちの問題も、来年度についてはひとつ検討してしかるべきではなかろうか。改善方について大蔵大臣の御検討を期待をするのでありますが、いかがでございましょうか。
  240. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 現在、勤務先から支給される通勤手当につきましては、一般の通勤者につき通常必要と認められる分、すなわち月額七千円まではすでに非課税となっていることは御承知のとおりであります。この非課税限度額は、人事院が民間事業所における通勤手当の支給状況を参考として、公務員給与について行なっている勧告に従ってきめておるものであります。したがいまして、政府といたしましては、今後とも人事院勧告を尊重し、通勤費の推移に応じ得るように、この限度額について適宜見直しを行なってまいります。
  241. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だいぶ大臣、前向きの答弁をすらすらときょうはされておりますけれども、次の四点目はそうすらすらといきそうもないのです。  先ほども共産党の小林議員から、重役減税という批判があり、なぜそういう措置をとったのかという指摘がございました。私も同感であります。いま給与のベースアップがどのくらいあるかということは、まだ確定いたしませんが、まあ二五%から三〇%ぐらいではなかろうか。NHKが大体二五%で妥結をいたしておりまするから、大体その辺が見当になって賃金の平準化運動というのは行なわれますから、大体そういう水準にいくのではなかろうかと私は推察をいたします。  そういうアップ率を勘案をしてこの減税案というものを見ますと、特に夫婦者で年間百万円から百二十万円程度の所得者が、たいへん減税の恩典が薄いのであります。それは野党にも責任があると思いますが、夫婦子供二人の標準世帯に照準を当てて、こればかりに議論を集中したために、そこを中心にして課税最低限はどうなるかという作業かおそらく進められたのではないか。そういう点から、夫婦百万の場合をかりに計算してみますと、四十八年の税金が二万一千三百円。かりにそれか三〇%アップされたとして、四十九年に百三十万の所得になると、三万一千五百円の税金を納めることになります。税金のふえる分だけで一万二百円。そのふえる分と給与の上がった分とを割って弾性値を出してみると、この層は一・五九になる。本来なら、減税といえば、一・〇〇がちょうど物価調整、貸金アップの調整が済んだところになるのでありますが、一・五九、たいへん高いのであります。百二十万の夫婦者が一・〇六、百二十万で夫婦子供一人になると〇・七六ぐらいになるのですね。  こういうような点を見ると、百五十万以下の所得者にもう少々厚い減税の恩恵を与えて、大きいほうをもう少々切るべきだったんじゃないだろうか。たとえば四〇、三〇、二〇、一〇という給与所得控除を、もう一つ刻みをつくって、三千万以上は五ぐらいにしてよかったんじゃなかろうか。私が残念でならぬのはそれなんであります。従来六百万でもって頭打ちで、七十六万の定額控除になっていたのが、それが今度は全部一〇%を控除するとなると、三千万の人も五千万の人も一億の人も一〇%というのはいかがなものだろうか。やはりこれはもう一つ刻みを置いて、三千万までが一〇%、三千万以上は五%ぐらいという形にもうちょっと配慮すべきだった。  なぜそういうことを私が申し上げるかというと、実額の手取り額を調べてみて実は驚くのであります。かりに所得二千万のところで今度の改正案で計算をいたしますと、四十八年の手取りが九百六十七万七千円だった人が、四十九年は手取りが千二百六十九万三千円なんです。いかにも大きいほうの手取りが多くなる。減税額を調べてみても、住民税を含めた計算をしてみて、二千万の人が四十九年の減税額が二百二十二万一千円、それが五十年になりますと三百一万五千二百五十円、これだけ減税の恩恵を受けるわけですね。減税を受ける絶対額を見ても、またパーセントを見ても、さらにそれが三千万以上、四千、五千万となりますと、たいへんな手取り額のふえ方なんであります。  そういう点を勘案すると、どうも夫婦者あるいは子供一人の家庭、それで所得が百五十万以下、こういうところの減税の恩典が非常に希薄である。こういう点を比較すると、まさに四十九年度改正案は、重役に少々重きを置き過ぎているといううらみがあります。  いままでの頭打ちというものが悪平等であり、公平を欠いてきたという点は、私も幾らかは認めます。全く六百万の人も二千万の人も同じ七十六万だというのは悪平等のような気がします。しかし、全部一〇%で、一億まで全部一〇%というのは、これまた悪平等ではなかろうか、そんな感じがするのであります。大臣、いかがでございましょうか。
  242. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その御指摘につきましては、私も大蔵大臣になる前は、新聞報道等でこの税制改正案を見まして、いま武藤さんがおっしゃられるような感じを持ったのです。それで、私が大蔵大臣に就任するときの交渉でも、田中首相との間に、いままでのいきさつにとらわれないで再検討させてもらいたいということを申し上げて、了承を得たわけなんです。  そのとき、一つはこの問題、いわゆる重役減税問題というのが頭にあったわけなんですが、さて、私が大蔵大臣に就任いたしまして、いろいろ調べてみる、また税制調査会の意向を聞いてみる、こういう段階になりますと、圧倒的に、もう今回はこれはふん切るべきだ、しかも、高額者もこの一〇%の恩典に浴すべきだ、百七十万円まで課税最低限が上がるこの際こそ、従来の議論に終止符を打つべきだ、こういうことになったいきさつもありまして、ちょっといまこの税率控除の刻みを変えるというのは困難な事態じゃあるまいか、さように考えます。
  243. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 政府が閣議で決定をした法案を、しかも与党も了承した法案を、ここで一〇%、五%というふうにもう一ランク設けることは困難であることは、私も百も承知であります。そこで、重役のほうに全部一〇%の恩恵がいくならば、百五十万世帯以下で子供一人あるいは夫婦者、このランクが一番私は今度の減税の恩恵を受けていない層だと思いますので、この百五十万以下の層の人たちについて何らかのやはり調整をすべきである。しかし、いまここで法案を審議しているときに大蔵大臣が、いやすぐ直しましょうなどと言えるしろものでないことはよくわかっております。おそらく参議院の予算委員会も終わっていないのに、ここでうっかり、いやその分を直ちに直しますなんて言ったら、それはたいへんなことになることはよくわかります。  そこで、四十九年度中に、それらの問題点と物価の問題等十分勘案をして、一回これは十分勉強し検討する必要があるなとお感じになりませんでしょうか、どうでしょうか。
  244. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まあ税制につきましては、四十九年度はこれでぜひお願いしたいと、こういうふうに考えますが、五十年度には、期限づきの税制につきましてこれをどういうふうに処置するかというような問題もありまして、これはまたかなり大幅な改正案を御審議願わなければならぬ、こういうふうに思います。  ただ、所得税の問題につきましては、ここまで固まっておりますので、なかなかこれをどうするかということは非常に困難な問題でありますが、将来の問題として、所得税についてその控除をどうするとか、そういうような問題について検討する、そういう際には、そういう問題があることを覚えておくということで、ひとつ御了承願いたいと思います。
  245. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ちょっと不満ですね。将来ということばがひっかかります。私がいま言っているのは、このわずか十日間しかない年度内に三万円戻しなさい、去年四十八年分の勤労者の税金は重過ぎたんだから、物価が上がって調整減税が足りなかったんだから、三万円戻してくれというのが野党の要求なんです。だけれども、私はそれを言っても、あと十日しかないから福田さんはオーケーと言わないと思うから、少しことばを濁して、四十九年度中にそういう諸般の情勢勘案して検討する場合もあり得る、その辺までくらいは言ってもらわぬと、東畑会長自身ここへ来て、いまの卸売り物価情勢消費者物価状況等を勘案すると、いまの減税物価上昇と比較したら、これはもう一回検討する必要があるかもしれない、そう言っているのです。先ほどまでは、税調がこうやれ、こうやれと言ったからと税調の責任にしたんだから、今度は税調の会長がそう言うんだから、それを追認しなければ、大臣、話に一貫性がなくなってしまいますな。
  246. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この四十九年度税制が永久に変わらぬというものじゃない、これは言うまでもございませんが、この所得税制の改定を加える必要がある、そういう時期がいずれやってくるだろう、こういうふうに思うのです。その際には、十分武藤さんの御所見を覚えておきます、こういうことであります。
  247. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いずれ検討の時期がやってくるだろう。いずれは、予算が通ったあとの四月の終わりごろになるか、あるいは休会中の六月ごろになるか、私も楽しみにして、大臣ともう一回ここで減税論争がやれることを期待をしておきたいと思います。  次に、保育料の問題ですが、大臣は孫がおればあるいはお感じになるかもしれませんが、保育料がたいへん高いのです。特に共かせぎ夫婦の場合、片方どちらかが乙表適用者の場合、扶養家族をおやじのほうにおっつければ奥さんのほう、あるいはどっちかが控除を受ける、そういう夫婦の場合に、保育料というのがべらぼうに高い。隣近所の事業家と比較したり、何とも高過ぎるという不満が強いわけであります。そういう実態を、一体、主税局は御存じなのかどうかわかりませんが、私はこの際、この保育料については、共かせぎの場合だけ、どちらかが乙表適用の源泉所得者になっている場合には、何らかの形で控除制度の中に見てやるべきだ。教育費というのは見られないということを再三主税局長が答弁しているから私はいま触れないのでありますか、保育料については、この場合にはあまりにも保育料が高いので、何らかの形でこれは税制の面で見てやる必要がある、かように思いますが、いかがでございましょうか。
  248. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 保育料のお話、私も保育料、保育所の問題が、たいへん家庭の大きな問題になっていることはよく承知しております。でありますが、この問題は一般教育費と同じ問題だろう、こういうふうに法的には言わざるを得ない問題です。(武藤(山)委員「共かせぎだけですよ」と呼ぶ)そういう関係にあるこの問題等の措置のために、今回は扶養控除を大幅に引き上げるということにしておるのです。その面で大かたカバーし得る性格の問題ではあるまいか、そういうふうに考えます。せっかくのお話でありますが、御了承願いたい。
  249. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これはペンディングで、あとでまた主税局長と少しやり合ってからでないと、大臣よくまだ理解できないようでありますから、あとにします。  それから、大臣、今度の税制改正で、内職収入、いわゆるパートタイムは六十三万七千五百円まで税金がかからなくなるわけです。そこで、事業所得者にこの問題が関連をしてきますね。青色申告の専従者、白色申告の専従者、こういう者が六十三万七千五百円以下の給与だった場合、扶養控除を認め、家族手当は——まあ家族手当は無理かもしらぬが、扶養家族として認めてしかるべきじゃなかろうか。たとえば、白色申告は今度二十万から三十万に引き上げるわけですね。三十万というと、パートタイムから見ると、まだずっと低いですね。パートタイムの半分ですね、六十三万七千五百円というと。そこで、事業者に対しても、大体個人零細事業者ですが、これに対して私は、白色申告の場合もパートタイマーの給与の非課税限度額まで何らかの措置考えないと、どうも均衡を失するような気がするのであります。これは早急に検討すべき条項ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  250. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 白色事業専従者控除について、今回の改正で現行二十万円から三十万円に引き上げたというので、大かたカバーし得る問題ではないでしょうか。  御質問は、妻がパートタイムに従事する場合に、改正案、平年分で年収七十万円までは課税されないとともに、夫の所得から配偶者控除二十四万円が控除されるのに対し、妻が事業専従者である場合には、白色事業専従者控除や青色事業専従者給与が控除されるものの、配偶者控除の適用がないのは不均衡ではないか、そういう御指摘ですか。
  251. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それともう一つ、いま言った六十三万七千五百円までは認めていいではないか。
  252. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただ、白色専従者控除は、事業に専従している親族について、給与の支給の有無にかかわることなく、配偶者控除や扶養控除にかえて控除する性格のものである。でありますから、あわせて配偶者控除もというのは本来無意味な話ではなかろうか、こういう見解ですがね。
  253. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あまり目くそ鼻くその議論で小さ過ぎるから、大臣にはちょっとまだのみ込めてないんですね。こういうことなんです、大臣。(「課長でいいよ」と呼ぶ者あり)これは課長か係長の問題かもしらぬ。しかし、恩典を受ける人は全国二、三百万の零細業者ですよ。これは大問題です。非常に関心深いわけです。青色申告会でも要求しているわけです。  というのは、今度の改正で、たとえばパートタイムで奥さんがよそへちょっと働きに行く。毎日八時間じゃないけれども、きょうは五時間、あしたは四時間、ときには八時間というようにパートタイムがありますね。このパートタイムでつとめの人の女房がつとめに出たときには、六十三万七千五百円までの賃金に対しては所得税は課税しない、同時に亭主の扶養家族として認める、家族手当もつとめ先からもらってよろしい、こういうことなんですよ、パートタイムは。白色専従の女房は毎日うちの仕事を手伝って、おとうさんの手助けをやりながら三十万円までしか認めない、おかしくないか。そうすると、事業者の女房はおとうさんの手伝いをするよりか、パートタイムで近所へ働きにいって、税金がかからないほうが得だという議論にならないか、こういうわけなんです。だから、これもひとつ検討して、パートタイムとの均衡がとれる線はどこかということを、理論的にも、現実の状況に照らしても、なるほどと思うところに改善をすべきでないか、こういう議論なんであります。
  254. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 わかりましたが、御所論は、今回控除ワクを二十万から三十万に上げた、その三十万が妥当であるかどうか、こういう点かと思います。その点は議論のあるところだろうと思います。私どもは三十万円が妥当である、こういう見解で御提案を申し上げておるわけでありますが、これはなお議論のあるところであるというふうには考えますので、なお検討することにいたします。
  255. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは高木さん、どうしてパートタイムとの均衡上、もうちょっと突っ込んだ検討を主税局はできなかったのでしょうか。
  256. 高木文雄

    高木(文)政府委員 従来、白色専従者控除の額は本人の基礎控除の額と扶養控除の額の中間にあったわけでございます。ところが、扶養控除の額を基礎控除の額に合わせましたので、二十四万以下では意味がなくなります。したがって、二十四万以下ではなくて、上へ上げなければならぬということでございますが、そういたしますと、今度は一緒に働いている場合におとうさんのほうは二十四万だ、おかあさんのほうは三十万だという問題がちょっと起こってまいりますので、どうも基礎控除との関連をどうすべきかという問題が、一つ片一方にございます。片一方には、いま御指摘のパートタイマーとの関連の問題があるということで、白色専従者控除の水準のあり方ということをどこに求めたらいいかということは、なかなかむずかしい問題になってきたわけでございます。率直にいって、その点の検討が必ずしも十分でなかったということを考えますので、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、白色専従者問題というのを制度論としてよく洗い直してみる、同時に水準論として検討してみたいと思います。
  257. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 検討するということですから、来年度を目がけてひとつ検討願いたいと思います。  大臣、次に、恩給年金受給者の非課税の問題であります。  いま年間六十万円までは非課税になっています。月五万円までであります。ところが、昨年の厚生年金法の改正で、昨年から新規裁定を受ける者は五万二千円に引き上げられたわけであります。そうして今度は、平均五%以上物価が上昇した場合には、物価上昇にスライドすることに厚生年金が変わったわけであります。そうなりますと、現在もう六万二千円、六万五千円という人がだあっと出てくるわけです。いまは六十万の非課税限度なんです。恩給年金から税金を取らなくてもいいでしょう、月十万円以下くらいは。したがって、六十万の非課税限度を八十万か八十五万くらいに引き上げるのは当然の措置ではなかろうかと思うのでありますが、来年度に向けて、大蔵大臣、ひとつ来年度はこれをいじろう、何とかしょう、こういうお答えをいただけませんか。
  258. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その問題は問題が二つございまして、おっしゃるようにいろいろ物価が上がる、それに伴って恩給、年金の水準も将来だんだん上がっていくだろうということとの関連において考えなければならない問題でございますが、同時に、現在の六十万の非課税というのはいわゆる公的なものに限定をいたしております関係で、私的な恩給年金制度との関連についてどう考えたらよろしいか、昨年当委員会におきましてたいへんおしかりを受けまして、私的年金についてのそういった問題も同時に何か研究すべしということで、宿題をいただいたままになっております。  宿題をいただいて、私的年金のほうは大いに研究いたしましたが、だいぶ複雑でございまして、結論を得ないので、これは実は昨年の宿題にお答えを出していない形のままになっておりますので、そういった問題も含めまして、来年度税制の問題としてよく勉強させていただきたいと思います。
  259. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 来年は勉強してもらって実現できるようにしてください。  それから、今度は肉牛。肉牛を市場を通じて売った場合には無税、免税にするという規定になっていますね。今度の特別措置で、さらにそれを農協を経由したものも免税にする、こういうことですね。これは結局、日本は畜産が非常にごくわずかで、しかも、なかなかコストが高くついて農民もやりきれないということでこういう免税措置ができたのですか、主税局長。
  260. 高木文雄

    高木(文)政府委員 もともとは二つの問題がありまして、一つは肉牛の飼育を大いに奨励する必要があるというところから出たのが一つと、もう一つは、公の市場を経由して牛が出てくるようにすべきである。公の市場を通じて出てまいりますと、どうしてもいろいろ取引が表へ出てくる。ところが、従来のいわゆる私的な民間の業者を通じて出てくる場合には、なかなか現実問題として、言ってみれば把握度がよくないということがありまして、そのことのためにせっかくの公の市場をつくってやっても、そっちへ出てこないということから、こういう制度が臨時措置、奨励措置ということでスタートしたわけでございます。  しかし、今回は肉用の牛でなしに、乳用牛のうちの子供の雄について、これを同様に、肉牛が足りませんので、流通するようにしたいということからスタートしたわけでございますが、乳用雄牛は従来の市場のある地域と違いますということがございまして、そこで、特別の生産者団体というものを指定すれば、肉用の雄牛の場合と同じようになるようにするということで、乳用雄牛を肉用に回すことの奨励というような趣旨でスタートしたものでございます。
  261. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その場合、特定の農協を経由した場合とこの法案には書いてある、特定の農協というのはどういう農協をさすのですか。
  262. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは農林省のほうの指導によりまして、乳用牛をたくさん飼育している地域であって、しかも、そこではあまり肉用牛が飼われていないために従来市場がないというような地域についてでございます。そこで、そういう地域を指定しまして、あまり従来は肉用牛がいませんから、その市場がない。しかし、そこで農協その他がそういうことをやる、その農協に限って指定をしまして、そこを通過して出てくる牛を、それを肉用牛として育てる場合に地域を限定しようということでございまして、その地域の限定は、もう少し正確に申しますと、農業協同組合または農業協同組合連合会がいわゆる価格安定事業というものを行なう場合というふうに大体限定するような腹づもりでおります。
  263. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いまのような制度でもって牛を育てて売った場合は免税になるんですよ、農家は助かりますね。いまえさが高くて、トウモロコシやマイロはばんばん上がって、しかも相場が上がったというので、一年間に倍になって——私はゆうべNHKのテレビを見て泣きました。自分のところで飼っている豚を殺しているのですよ。えさが買えない、高くてとても採算がとれない、日本の畜産をつぶすのかやらせるのかという、ゆうべNHKの特別番組でやりましたね。私はあれを見て涙が出ました。農民はみじめだ、哀れだ。これに対する政府は適切な手だてはないのか、残念でたまらなかったのであります。  いまの話は余談ですが、そこで、大臣、せっかく牛を免税措置にするようになったのですから、豚をやったらどうでしょうか、牛だけでなくて、豚も一緒に。なぜ豚をはずしたのでしょうか。豚も入れたらいいじゃないですか。
  264. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この問題は、ある意味におきまして農家対策という意味で行なわれますと同時に、牛の取引がよく御存じのように、とかく不明朗なところで行なわれている。それで公設の市場等を通じて牛が流れてくるようにしましょう。そうしませんと、いつまでたっても牛の取引が明朗にならないということがございまして、家畜市場であるとか中央卸売り市場であるとかいうものを通すようなルールをつくりたいというところから、農林省のほうから強い御要請があってスタートしたものでございます。  豚について取引がどうなっておりますか、そこらのところをいろいろ研究いたしませんと、牛と豚とでアンバランスだという点だけではちょっと解決がつかない問題でございます。なおしかし、いままであまりその点勉強しておりませんので、御指摘がありましたから勉強してみます。
  265. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、豚と牛の話で笑い話のようでありますが、いま農家にとっては飼料がべらぼうに上がっちゃって、ほんとうに日本の畜産は崩壊寸前ですよ。これはひとつ農林大臣と相談して、豚も所得免税にして、大いに日本の豚と牛くらいの大家畜の振興ははからなければならないし、農民の救済もしなければならぬ。いまみんな借金かかえて畜産農家はたいへんですよ。ひとつ大臣、前向きで、これは閣僚の一員として他の閣僚とも連絡をとって、前向きの答えが出るように尽力願いたいのですが、いかがですか。
  266. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 牛が豚までいきますと、今度はブロイラーをどうするとか、いろいろ問題があるんじゃないかと思いますが、これはよく勉強してみたいと思います。
  267. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あと二つだけ。  大臣、いま成田空港がいよいよ始まると騒音でたいへんだということで、騒音対策で今度の特別措置改正案の中に、飛行場周辺の特定区域内の買いかえ資産の特例を認めよう。ところが、その区域が異常に狭い限定だ。滑走路から直線で延長二キロ、滑走路の両脇は〇・六キロ、六百メートルですね。とてもこれでは住んでおれないというので、具体的には千葉県の稲毛平、それから西和泉、芦田、荒海という部落はもう土地を買いかえしてよそへ出ていきたい、こういう人たちが非常におる。したがって、この区域をあまりにも狭い区域に適用されたのでは、住民は騒音対策にならぬ。これは浜田さんの県ですね、千葉県。したがって、こういう買いかえ資産の特例を認める場合に、十分ひとつ現地の状況を調査して、線引きをするわけですから、ここからここまでときめるわけですから、御配慮願いたいと思うのですが、大臣いかがですか。
  268. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは法の定めるところを曲げるわけには……(武藤(山)委員「法じゃないのです、まだ。法できまっていないのです。これから政令できめるのです。」と呼ぶ)政令ですか、政令で定める問題だと思いますが、運輸省ともよく相談をしてまいります。
  269. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 最後に、今度のやはり特別措置改正で、農業振興地域の農用地区内の農地を譲渡し、一定の埋め立て地、干拓地へ買いかえをした場合に、買いかえ資産の特例を認めるというのが出ていますね。これは具体的にどういう該当があるのでこういう法律改正をやるのですか。
  270. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは一戸当たりの耕地面積の非常に狭い地域に住んでおられる農民が干拓地等に移ろうということになりまして、それで、従来長年住んでいた先祖伝来の土地を売り放しまして、干拓地のほうへ移るということになる事例が出てまいっておるわけでございますが、前の土地を売って干拓地に買いかえるという場合に、従来は特例措置がなかったわけでございます。それはある意味から申しますと、法の欠缺と申しますか、そういう事例があるならばむしろ特例対象にしてよろしいものではないかということで、従来他の制度とのバランスをとりまして、今度は、その新しく買いました資産についてのいわゆる買いかえの特例を認めるということにしたわけでございます。つまり、その買いかえの特例というのは、結局、個人であればその部分について一種の非課税にするということでございます。
  271. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私が聞いておるのは、そういうことじゃなくて、具体的にどこかにそういうことが起こったので、おそらくやろうということになったと思うのです。  そこで、それに関連して、公有水面を埋めた場合、これは私はいま特別な保護をしていると思うのです。たとえば、東京湾にしても、千葉海岸にしても、岡山にしても、公有水面を埋め立てをした場合に、この土地を住宅地として売っても、工場地として売っても、二〇%の法人の分離課税はかからないんですね。したがって、干拓地もおそらくそうだと思うんですね。私はおかしいと思うのですよ。たとえば、千葉県の海岸を三井不動産が埋め立てをやった。埋め立てをやった土地は原始取得だ。もともとなかった土地、海が土地になったんだから、これは原始取得なんだ。したがって、分離課税の二〇%の税金を取らないというんだね。これはおかしい。漁業補償とか利用権を手に入れるために払った補償金がある、会社は。それに埋め立ての土を持ってきて埋めた。これが原価だと思うのですよ。したがって、原価は当然出るわけですね。その原価よりも高く売ったものは当然やはり利潤じゃないですか。したがって、大蔵省の土地特例による二七%か三七%か、去年つくったあれよりも上積みになる部分については、当然、税金二〇%を取ってしかるべきだと思うのですね。  大体いま公有水面がどのくらい埋め立てされているか、主税局長知っておりますか。現在、埋め立て造成中の土地が四億五千百七十七万平方メートル、かなりの面積ですよ。(「どのくらいだ」と呼ぶ者あり)どのくらいだか、おれもわからない、あんまりこう広くて。そのうち約二〇%が公共団体ではないものがやっているというのが報告だ、建設省と運輸省を調べたら。それが全部税金ゼロなんだよ、何ぼもうけて売ってても。おかしくないですか。時間がないからこれ以上やりませんけれども、おかしいですよ。
  272. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昨年、法人の特別土地税制のときに議論いたしたわけでございますが、一つには、あの制度は所徴税の長期譲渡所得について分離比例税率にいたしました。そして、それが住宅地等に供給されることを期待してそうしたわけでございますが、それを買った法人がそのままじっと持っていて手放さないとか、それでもうけるとかいうことはまことにけしからぬではないかというところから、やや罰金的な意味での特別法人税ということになったわけでございます。ところが、新しく土地を造成する、自分でこしらえるということになりました場合には、確かに漁業補償の問題はございますけれども、土地を買って右から左へ売ってもうけたというのとはだいぶ性質が違うわけでございますので、そういう部分についてまでやや罰金的な意味を持ちますところの特別税率適用することがよろしいかどうかということにいろいろ議論がございまして、やはり干拓というのは国土を広げるわけでございますから、そういう意味でありましたならば、右から左へ売って処理をするという場合とはやはり差があるのではないかということで、あのような措置にいたしたわけでございます。  今後の問題といたしましても、干拓の問題というのはいろいろございますので、それがまた著しく暴利で売られるというようなことになりますと、御批評のようなことがあろうかと思いますが、少しく推移を見てまいりたいというのが私どもの気持ちでございます。
  273. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 暴利である証拠をあと提出して、ここでもう一回論争いたします。  私の割り当て時間を超過しましたので、質問を終わります。
  274. 安倍晋太郎

    安倍委員長 山中吾郎君。
  275. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私はあまり税の専門家でもないので、武藤委員のような具体的な問題をお聞きする気はないのですが、大臣と論議をして意見を聞く機会はなかなかないので、大臣にお聞きするつもりで簡明にお聞きしますから、お答え願いたいと思うのであります。  一つは、税改正の問題。先ほど武藤委員も言われましたように、現在の価格暴騰を前提としないで東畑会長が今度の三法改正考えられた。このように暴騰するならば、やはりもう一度再検討しなければならぬという答弁があったわけですが、さらに今度政府が新しい価格体系を発表した。そうして石油価格の値上がりを原点として、大体六二%程度の値上がりで、大蔵大臣自身のことばで言っても、新しい価格体系だと思うのですね。これがこれからの日本価格体系のベースになって、それを前提としてさらに物価政策をされることになるだろう。ただ、現在の物価を抑制するという立場で、一応価格凍結をするものは五十三件ありますが、これを一定の時期に解除することになると思うのです。そういうことをさらに考えますと、この減税も含んでの税制の手直しというものは、これを前提としなければならなくなるのではないか。それはいかがでしょうか。
  276. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 東畑さんの御所見というのは、私、新聞で見ただけで詳しいことは承知いたしません。おそらく私の感じといたしますと、東畑さんの調査会で立案した二兆円減税、これは物価が非常に異常な状態になるその前の段階のものであるが、それにしても非常に大規模な減税であるので、何年か続き得るものである、こういうふうに考えておったところ、その後、異常な事態になってきた。そこで、それに即応した考え方というものがいずれは必要になるのじゃないかというような発言のように承知しておるのです。まだ私は会って聞いたわけではありませんものですから、ほんとうの真意はわかりませんけれども、私が紙面を通じて感じ取ったのは、そういうことだろうと思うのです。  まさに東畑さんがそういうふうな御趣旨だとすれば、私は東畑さんの考えがよくわかるような気がするのです。とにかく二兆円減税、しかも、それは所得税中心だ。欧米諸国をずば抜けまして課税最低限を百七十万円まで持っていきましょうというのですから、この体制というものは、もう相当続き得る税制として考えたのではなかろうか、そういうような感じがいたします。  ただ、その後、物価が非常に異常な事態になってきた。いまそれに対しまして物価の抑制政策を進めておるわけですが、その抑制政策をとった上、日本経済の姿が一体どうなるか、これは今後の問題になってくるわけです。いま激動中です。激動中でありますので、この御提案申し上げております税制改正案をこの段階でどうのこうのということは、私は妥当ではない、こういうふうに考えます。考えますが、経済が一応の落ちつきを見た、その後財政は一体どういうふうに動いてくるか、こういうような状態を見た上で、将来の問題として、東畑さんが考えておったような長期的にこれが続くんだということでなくて、もう少し早目に検討を要する事態になってくる、そういうふうに思います。
  277. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 東畑会長の答弁の要旨も、出席しておりましたからよくわかっているのです。大体その答申をする当時、昨年の終わりごろからことしにかけての物価の暴騰を予想してつくったんじゃないんだ、いまのような状況ではやはり手直しせなければならぬのではないかという答弁なんです。  ところが、今度の政府の新しい価格体系、これはもちろんあの答弁は、その次に予想してないものだったと思うのです。石油原価が三倍になり、そして政府が今度は日本の今後の価格体系を発表した。大体石油関係は平均六二%くらい引き上げる、しかも、それは昨年四十八年十二月の実勢価格平均値に対してさらに上積みをする、そしてそこにずっと全体の価格体系を安定さそうということなんですね。政府がそういう方向に持っていったら、当然にこれが実施をされて、これは今度下がることはないのですから、したがって、四十九年内にこれが確定したときには、もう一度手直し、減税その他をすべきじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  278. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 東畑さんの税調で答申した、それをいま税制改正案として御審議願っておるわけなんですが、これはもう東畑さんとすると、相当大規模のものだ、これは数年続くんだ、そういう考え方でおられたわけなんです。しかし、事情が変わってきておる。東畑さんがお考えになったより早く検討するという事態が来るかもしれませんけれども、しかし、いまこの時点でこの御提案の骨格を変える必要はないのだろうと思うし、またそれは妥当ではない。つまり、新物価体系といいますけれども、新物価体系はまだ出ておらない。一方において、電力料金問題がまだあります。私鉄の問題があります。国鉄の問題があります。そういうような物価を動かす要因というものがあるわけなんです。同時に、まだこれからいよいよ総需要抑制政策が効果をあげていこう、こういう段階になってきておるわけです。その暖流、寒流の交錯がどの辺に落ちつきますか、そこで初めて新物価体系、こういうことになってくるのだろうと思うのです。まだ新物価体系というのじゃなくて、全く流動的な物価状態である、その段階物価の動きのゆえに税制の根幹を見直すということは、妥当でもないし、また必要でもない、そういうふうに考えます。
  279. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それはよくわかるのです。今年十月ころに米価の凍結解除の問題が出るでしょうし、その上に電力料金もおそらくことしの十月前後出てくるのですから、そういう段階にやはり減税その他のものを同時に考えるべきではないか。いまではないのですよ、そういう段階になれば手直しをすべき問題ではないか。ここで凍結した品目も解除するというふうなものも前提として、そういう段階になると、そこで電力料金も含んで大体全体が確定をする、その段階に来たときにそれは検討すべきではないか。それはいつになるかわかりません。政府の政策ですから……。
  280. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この減税案はかなり大幅なものであります。これからの経済情勢見通しますと、物価がいま流動しておりますが、いずれは新価格体系というところになってくる。同時に、わが国の経済の動きというのが、これは非常に低成長になってくると思うのです。第一、油の問題一つ考えてみましても、これはもう国際収支の観点から見ましても、たいへんな重圧になってくるわけなんです。そうそう輸入をふやすわけにもいかぬ、どうしたって低成長、そういうことになってこざるを得ない。そういう際に、企業状態が一体どうなるか、またそれを受けて財政がどうなるか、よほど総合的に検討してみないと、この五十年度税制改正がどういう性格のものになるかということは予見できません。  とにかくこれだけ大幅な減税をやるのだから、五十年度税制という段階におきまして、また所得税減税案というようなことを考えることはなかなかむずかしいのじゃないでしょうか。私はいまおぼろげながらそんな感じがいたします。
  281. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 いまそういう御答弁しかできないと思うのですが、ぼくはたいした減税じゃないと思うのですね、いまの物価を見ますと。数字からそう思われるのかもしれないけれども、実際の反響から見てもたいした減税でない。それから武藤委員の誓われたようないろいろな欠点もあるわけですから、おそらく負担の不公平の関係から重圧感も出るだろうし、いまのような新しい価格体系が出そろったときには、やはり私はいまの欠点を補うという面も含んで検討すべきではないか、こう思うので、一応意見を申し上げます。  それから次に、これも大臣のいないときに問題になりましたが、いわゆる古くて新しい問題として、例の医師の必要経費、これはもうすでにいろいろの議論を越えて着手すべき段階に来ているのではないか。提案的質問をしますと、盛んに全国から反対の電報が来たりしておりますが、これは診療費の問題、いわゆる点数その他の改定の問題との関係で社会保険診療報酬分を免税にしていることがいつもからんでこの特別措置が硬直化している、いわゆる既得権化しておるわけなんですが、これは別問題として考えるべきではないのか。  大体、現在の税の負担についての不公平という論議の例に、これがいつも出てくるわけですね。末端の税務行政担当者も、これがあるために、税思想を普及する懇談会のときにはこれを例に出されて、税務行政が悪事を働いているような言い方をされる、一番苦痛であるという訴えをする。あるいは最近の私立医科大学の裏入学について、最高三千万というような裏口入学の寄付をするということとも無関係とは思わないのです。そういうことも考えて、一応七二%の免税は、いままでの税制調査会の報告も含め、五〇%ぐらいが適当であるという資料も出ておるのですから、年々五%づつ少なくしてもいいと私は思う、医師会の意見も聞きながらね。そうして五〇%におろした場合の増税は、局長から聞きますと九百何億と言いましたね。
  282. 高木文雄

    高木(文)政府委員 五〇%をこえますと、千億ちょっとこえるということになります。
  283. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は、税は税で公平な立場をとって、点数その他において不合理があるならば、その千億分は他の政策として医師に返してもいいと言うのです。何かそういうことでやるべき段階がある。日本の知識階層の最高級のお医者さんであるのですから、税の不公平ということでいろいろ論議があるときに、そのために医師に対する非難もまた出てくるというようなことは、医師自身も本意ではないと思う。どうもそういう意味において、これはまじめに着手することを前提として検討すべきであるという意見を述べておるのですが、大臣の御意見はいかがですか。
  284. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 山中さんのお話の御趣旨はよくわかります。この問題はなかなか古いいきさつがありまして、いま山中さんの御指摘のように、点数単価の問題とからまって生まれたものですから、その処置が非常にむずかしいというので今日に至っておるわけなんです。ほんとうは医療制度の根本的改革という問題がある。この問題とからめてこれを解決するということになりますと、これがたいへん円滑にいくのではあるまいか、そういうふうに考えておるのですが、そういう根本的解決自体がなかなかむずかしい問題で、それがいわれてから今日もう数年経過しておる、こういう状態でございます。  そこで、税制調査会のほうでも特別部会をつくりまして、この問題をどういうふうにさばくかということを検討し始めまして、東畑税調会長も非常に御熱心なのです。ですから、税調がどういう判断をとりますか、これは一番客観性があると思うのです。その意見なんかを聞きまして結論を出すということにしたらどうだろうというふうに考え、本年度はさしあたり手をつけない、こういう措置をとったわけなんです。東畑先生が非常に熱意をもって検討しておりますので、その推移を見たい、かように考えております。
  285. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 本年度は着手できないとすれば、来年度あたりから着手するということを前提として進むべきである。方法は医師会の意向も聞き、もっと民主的にやればいいと思うのですが、税行政としてはこれに手をつけないと、あらゆる他の税行政の推進に影響を与えるから、当然これは医師会もわかるのではないか。だから、私は、参考人として武見会長を呼んで、その辺の医業のあり方から一般の論議も含んで率直に意見交換をして、この大蔵委員会において来年度からの着手を前提とするような決定をすべきだという主張をして、大体意向はみな賛成のようだったが、またどこかで雑音があるようであります。  私は来年度着手を前提としてやるべきである、これは政治家としての最低の責任ではないかという感じがしておるのです。東畑会長自身もやりやすいように、大蔵委員会でそういう姿勢を示してやるべきであると考えておるから、ことしとは言わない、少なくとも来年からの着手を検討すべきであると考えるのであるが、もう一度大蔵大臣の御意見を聞いておきたい。
  286. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この問題は古くて新しいという問題であります。山中さんのおっしゃるようなそういう御意見も、税調の中にもだいぶ出てきておるのです。ですから、税調の特別部会、なお税調会長がこれをどうさばくか、非常に税調会長も関心を持っておりますから、その推移を見まして善処いたしたい、こういう考えであります。
  287. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 まずは委員長の善処を期待して、次に移りたいと思います。  今度の三法の改正について、私ずっと審議のしかたについて自分なりに視点を二つ置いて見てきたわけでありますが、一つ企業優先成長型の税制が少しでも福祉型のほうに前進しておるかどうかということを一つの視点に置いてずっと税法の改正の内容を見せてもらいました。第二には、所得の格差、富の格差を少しでも縮小する方向に改善されておるかどうか、この二点についてずっと見てみたのですが、どうもその辺が進んでいないという結論になるものでありますから、この三法の改正について、高い評価はなかなか出せないわけなんです。  第一の企業優先型の税制の構造を福祉型のほうに持っていくということについては、やはり政治全体の新しい価値観の形成がないと、そこに進む決断は出ないのではないかと思うのでありますが、どうしても企業中心の特別措置というものが、すでに既得権として残ってしまっておる。  それで、私はたとえば一つの例で大蔵大臣の考えを聞きたいのでありますが、これは田中総理大臣が東南アジアに行ったときに、シンガポールに行ってリー・クアンユー首相との会談のときに、向こうのリー首相が一つの特別措置の例として、私有庭園維持管理費についての特別措置所得控除、道路に面しておる家の道路側の庭について、いわゆる都市の緑化に協力する意味も入るものだから、まあ一間ぐらいの幅でしょうが、木を植えてある私有の庭の維持管理費、大体年三百ドルというから九万円ぐらいでしょう、そういうものに対して免税措置をとっている、そして市街地のいわゆる並み木に協力をさせる奨励特別措置だと思うのですね、それをやっておる。田中首相は、これは検討に値し、取り入れる価値があると答えたという記事が出ているわけですが、こういうふうな一つの提案があるときに、大蔵大臣が抵抗を感じないでそれをひとつ特別措置に持っていこう、そういう考えというものが出て初めて、こういう特別措置企業優先型から福祉優先型の税制に移行する心がまえになるのではないか。どうもそういうものは特別措置に値しないという抵抗感を感じて、そして企業の場合にはすぐ引き当て金、準備金というものをたやすく設定するといういままでのものの考え方というものがある限りは、これはなかなか飛びつかない。現在、大都市について緑がなくなり公害問題として論議をされておるときに、やはり道路に面して個人の庭を所有する場合に、維持管理費ぐらいは所得の中から特別措置として控除するというようなことの提案はあってもいいんじゃないか。それについてどうも特別措置として不適当であるとお考えになるような考え方をとるべきではない、こういう着想を認めることがいわゆる特別措置に対する新しい福祉社会への方向転換になるのだと思うのですが、そういう考えはどうですか。これはひとつ実例があるものですから申し上げました。
  288. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まあシンガポールとたとえば東京を比較する、東京あたりはもう人が密集しちゃって住むに土地なくというので困っている人のほうがむしろ多いのじゃないでしょうかね。ですから、私どもの市民感情とすればそんな広大な庭を持っている人は、その代償としてうんとよけいに税を納めてもらいたいというような感触もありますがね。シンガポールのようにそう過密ではない、しかも、もう大体きれいな町づくりもできておる、そういう際の考え方と、東京のようなぐじゃぐじゃ人が密集しているという地帯の考え方とは、ちょっとその感じ方が違うのじゃないでしょうか。皆さんどういうふうにごらんになりますか。わが東京にそういう制度を適用しようというてもなかなかむずかしいのじゃないでしょうかね。
  289. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は東京に限定しているのでなくて、一つの税の改正、特別措置を発想するときの考え方に、日本の場合は、企業の特別措置ばかりに偏向されておるから、それで日本全国の中都市も含んで、また大東京のようなあやまちをおかさないように、道路に面して小さな庭園でも持ち、そこに並木に応ずるような木を植える建築構造があれば、それについては特別措置で奨励的な免税をするとかいうふうな着想が抵抗なしに考えられるような価値観にならないと、口では幾ら福祉社会の方向に向かって考えるという——税制でも提案理由によく書いてあるが、私はそれはうそだ、こういうものにするっと入るような考え方にならなければその改正はできないのじゃないか。いまこういう例を出したときに、すぐ東京を構想して、事情が違うのじゃないかという大蔵大臣の考え方、その辺が何か少し古いのじゃないか、そういうことを私は申し上げるのです。どこか考え方を変えなければならないのじゃないですかね。どうですか。
  290. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 山中さんのおっしゃることはよくわかるのですよ。わかるのですが、ある程度街路整備なんかできておりまして、そうしてその整備をさらにきれいに整えよう、こういうことで市街化が、街路づくりが進んでおる、そういう地帯については御発想のようなこともあるいは考えられるかもしれませんが、いま私らは東京におるものですから、すぐ東京のことが頭にくるわけですが、東京あたりをちょっと考えてみると、空閑地税だとか、そういうようなほうが先に頭にきますね。そういうものと山中さんがおっしゃるような緑の街路をひとつつくりましょうというようなことが交錯するというようなことであれば、まあまあ市民感情にも合う措置かとも私は思いますが、広大な土地を持っております、それが庭園風になっております、それが街路に面しております、町の美観を添えます、がゆえに、ひとつ特別の配慮をいたしましょう、所得税を控除いたしましょうとか、そういうようなのじゃなくて、たとえば空閑地税を設定します、しかし庭をきれいに保存している人には空閑地税について何か特別の考えをいたしましょうとか、その辺の結びつきがないと取り入れられないのじゃないかというふうな感じがしますがね。
  291. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 試みに提案をしてみて、大蔵大臣の反応をちょっと聞いただけです。そういう構想の方向にいかなければ、経済優先の政策を福祉優先に転換したとか幾ら政府がいっても、こういう具体的な発想がなかなか出てこないから、そういうことを一応提案をして、お互いに考えるべきだと思って私は申し上げたのです。  その次に、今度法人税率を四〇%に上げた。これはたいへんな引き上げだと私は思うのです、法人税率の四〇%はですね。実効率が大体五〇%ですから。私は、これはいままでの企業観とかものの考え方を転換して、新しい価値観を一方に形成しなければ、やがてまた引き下げ運動が必ず出る、四〇%というのは相当なものですから。中小企業法人については、相当重いものになって、景気の変動その他の中に、また引き下げ運動が出ると思うのです。いままでの法人税率の変化の歴史を見ましてもね。  したがって、この四〇%までの引き上げ、実効率四九・四七、これで安定さすのには、中小企業と大企業の間にもう一つ緩慢なる累進税制度をとらない限りは、中小企業の圧力によってまた下げなければならないというふうになってくるということを、私は非常におそれるわけなんです。そういう意味において、やはり七百万以下の軽課税ということだけでなくて、その上に大法人と中法人の間に少なくとも緩慢な累進制をとらなければ安定しない、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  292. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 山中さんのいまおっしゃるのは、いまの中小法人に対する税率がありますね。それから大中法人に対する税率が一方にある。その中にもう一つ設けたらどうか、こういうのですか。そういうことをおっしゃる人もあるし、あなたの社会党あたりでは、所得額に応じまして累進税にしたらどうだ、こういうことをおっしゃいますが、いずれにいたしましても、法人に対する税率の刻みを複数化していくということになりますと、法人というものが自然人と違う、そこに問題があるのです。あるいは規模を見ましても、構成内容を見ましても、いろいろな会社、企業の形態がありまして、その所得について累進税率を設けるということになりますと、いろいろの複雑な問題が出てくる。  それから、一番考えられますのは、そういう際には高い税率の会社、つまり大規模の会社でおくと税法上損だというので、みんな小さくしますよ。そんなことになったら、いま世界の中の日本というか、日本はとにかく資源が少ない。どうしたってそれは世界の経済の中で貿易立国という立場をとらなければならぬ。そういう際に、非常なおくれをとるという問題もあるわけです。これは理論的には一応考えられない問題ではないかもしれませんけれども、これは自然人と法人というものがたいへん違った内容のものであるという問題もある。と同時に、そういう、会社をこま切れにしちゃう、その結果、企業能率というものを非常に低下させる。またその結果、さらに国際社会に臨むわが国の全体の経済体制を弱体化する。こういう問題にもつながる問題でありまして、これはそうそう簡単な問題じゃない。私は、にわかに賛成はできません。
  293. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 その辺がどうも大蔵大臣は古い偏見があって、そう思われるんじゃないだろうか。ぼくが言っているのは、現在すでに政府の提案をしている税率が四〇%なんですから、これをさらに上げろと言っているんじゃないんですよ。ただ、それより、たとえば日鉄のように、年間の純益が一千億以上だ、それの五〇%なら五百億で、あと五百億の利潤は残るんですが、年間一億以下あるいは五千万ぐらいの利益を通常とする中小企業法人の場合に、同じ四〇%を取るときに、この法案出ているんですから、成立するんですから、そうすると、下のほうから、不況になったときには、必ず下げろという圧力が出る。上からは出ないですよ。また日鉄が分裂するというようなことはないんじゃないですか。  いまのあなたのおっしゃることは、非常に論理に合わぬと思う。私が言うのは、現在の税制改正前提として、中小企業についてはやはり階層的段階を置かなければ、法人間の負担の不公平から、下のほうから引き下げの圧力が出る。上からは出ないと思う。そういう意味において、やはり累進税をもうとるべき段階に来ているんではないか。法人と自然人とが違うという点については、私は、法人の性格はもう変わってきているんじゃないか。大法人からすでに社会的責任論まで出てきておるんですし、大地主になっておるし、大株主になっておるんだから、その点は私は検討すべき段階に来ておると思うのですが、いかがですかね。いろいろの脱税を考えるとかという技術は別ですよ。大原則としてそういう段階をとらないと、この法人税率は安定しないと私は思う。どうですか。
  294. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 どうもその点になるとおっしゃることがよくわからない。法人税率が安定しないという点です。この刻みをこまかくしますと、これはどうしても上の刻みの企業は、次の刻み、またその次、すなわち下の刻みの企業タイプに持っていこうという傾向が起こってくるだろうと思うのです。税率が違うから自然そういうことになるだろう、こういうふうに思います。それは企業の中に大変動というか、そういうものが起こってくる可能性というものがあるわけですね。そういうことを考えますと、これはなかなか、そう簡単に結論を出すというわけにはいきませんね。なお私も勉強はしてみますが、そう簡単な問題ではないということです。
  295. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それはもちろんここで論議をして結論が出るわけじゃないんですから……。しかし、すでに零細法人に対しては低い税率をきめておるんです。現在どんどんと法人が巨大化してきておる。十年前とたいへんな違いがある。そこで、一つのまた段階を置く。こういうふうなことの条件は、もうすでに下のほうは一つつくってあるんですよ。いま非常な法人の格差が出ておるわけです、資産の格差から所得の格差。いまの比例税率のままでいけば、必ずやはり逆に矛盾が出るということも常識ではないかと思うので、これはあまり偏見を持たないで検討していただきたいと思うのです。  最後に、これはこういう大蔵大臣がおるときに一度基本的な問題をお聞きしておきたいと思うのですが、いまの物価問題全体は経済法則できまったものでなくて、大蔵大臣は、いまの物価は相場だと言った名言がありますが、一つの世相の退廃現象だと私は思っておるわけです。したがって、物価三法、生活安定法とか石油規制法とか買い占め規制法ができておりますが、ああいう立法ができても、現在のエゴイズムの価値観を前提として、企業の経営者も最大利潤を追求する権利があるという思想であれば、利潤の制限を受けるような立法ができたときは、心の中で心服していないのですから、やみカルテルとかやみ価格というものは、またすきがあれば出てくる。さらに取り締まりを強化しなければならぬ、そうしてやがて統制経済と、寄ってたかって統制経済をつくっておるようなものになると思うのです、現在の価値観を前提とすれば。やはり新しい価値観を形成して、それによってささえられる立法でないと、皆さんの一番願っておる自由経済は保持できないと私は思うのです。その点について、大蔵大臣は基本的にどういう考えでいまの物価抑制についての方法をお考えになっておるか、この機会ですから、最後に聞いておきたいと思うのです。
  296. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 物価に対しましては、私はこれは経済原則に従って需給の均衡をとる、これが基本だろうと思います。ところが、いまこういう資源の状態である。そういう際に供給をふやすわけにはいかぬ、また供給をふやそうとして設備を拡大すれば、それがまた物価高を呼ぶ、こういうことになる。やはり需要を抑制するほかはない、こういう基本的な考え方です。それで総需要抑制政策を進める。これはしかし、非常に目の荒い政策でありますから、そこでお話しのような物資三法、こういうもので目の荒いところを詰めていく、こういう考え方をとるわけです。私は、これで一応狂乱状態を克服し得るということを確信いたしております。  ただ、問題となりますのは、これは山中さんがいま御指摘のような問題だろうと思うのです。やはりこの際、国民全体が反省をする必要があると思うのです。ほんとうに、物の世の中だ、金の世の中だというそういう世の中の風潮、これはもう社会連帯というか、そういう考え方に立ち返る必要がある、こういうふうに考えております。ですから、私は、教育については、教育問題というよりもっと高い次元において、つまり社会風潮をここでたたき直す必要がある、こういうふうに考えております。そこで初めて私は、物の問題、物価の問題というのも定着し、安定してくる、こういうふうに考えるわけです。そういう世の中に早くしなければならぬと念願しております。
  297. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は、いま寄ってたかって政治が統制経済へ持っていく努力をしていると心配をするのは、やはり現代のエゴイズムを前提として、企業そのものに利潤追求の自由というものを認めれば、社会的責任を持つという新しい価値観に企業経営者が変わらない限りは、決して腹の中では順奉しないんだから、取り締まりとやみカルテルその他が悪循環して、さらに締めなければならぬということになるから申し上げたんだが、その自由経済を保持するためには、私は、企業のほうが組織化しておるのに対して、消費者を組織化させて選択の自由を持たす、それから国民全体の価値観の転換しかないだろうと思っているわけです。  ところが、現在の三法というものをささえる価値観は、やはりいままでの社会に対する対立概念としての個人主義に基づいた自由だと思うのです。だから、自民党の自由民主主義というのは、一体こういう個人主義を前提とした自由民主主義ならば、それは夜警国家の政治哲学だと思うのです。防衛と治安だけを国の任務として、あとはもう全部自由にまかす。そこでエゴイズムのもとに、弱肉強食の姿で、大法人はどんどん金もうけをすることが正当な行為である。そうでなくて、いまのすでに三法というのは、やはり社会連帯の意識の上に立った民主主義というものにささえられない限りは、その法律の正当性を認めることにはならないから、やみカルテル、やみ価格というものの横行しかない。最後には道義の退廃と統制だけが残る。そういう点についてもっと真剣に考えなければならぬと思うので、その場合にやはり政党自身の政治哲学も変えるべきではないか。おそらくいまの三法は——大企業家は参考人で非常に低姿勢で来ておるが、腹の中ではそう心服していないはずなんだ。しかし、企業そのものは、やはり社会的存在なので、企業が巨大化するにしたがって市場を支配する影響力がある。したがって、われわれは社会的責任があるのだという経営者自身が新しい企業観を持つならばできるだろう、そういうことを真剣に考えてやるべきではないか。  そこで、私は、大蔵大臣の財政演説の中の最後に福田さんの哲学をちょっと言っておるものだから、それを聞いて終わりたいと思って話題に出すのですが、一番終わりに「物さえあれば、金さえあれば、自分さえよければという物と金とエゴの支配する時代は、過去のものにしなければならないと存じます。心のゆとりと落ちつきを取り戻し、金では買えないものの価値を再認識し、社会の公正と連帯の中で、みずからの生きる喜びを感ずるような、人間主義にあふれた新しい社会を建設しなければならない」と、財政演説で一国の総理大臣級の哲学を述べられておる。そのエゴを克服する価値は何かということをお考えになっておりますか。これを前提としなければ、私は、いまや統制経済に一路邁進するのだ、そうして法律の取り締まりと企業の反抗とが悪循環をつくり、かぜ薬に新薬ができれば新しいビールスができると同じようになると思う。それに気づかれてきっと言われておるのでしょう。どういう価値観をお考えになっておるかお聞きしたいと思うのです。これは企業観の問題ですから、企業法人がいかなるものであるかという考え方の延長線に法人税のあり方があるわけですから、非常に深い関係があるのです。私はそこまで論議をしませんけれども、一言聞いて終わりにいたします。
  298. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 世の中、いまとにかくお読みくださったように、金さえあれば、物さえあれば、自分さえよければ、こういうのが今日の風潮だと思うのです。こいつを克服しなければならぬというのが私の考えなんです。その考え方を山中さんがお尋ねですが、やっぱり人間は一人で生きるわけにいかないのです。友だちをつくり、また社会をつくり、国をつくり、大きくは世界をつくって、その中で自分というものを完成していく。ですから、人に対して害悪を及ぼす、これは悪である。また人のために協力をしてやる、これは善である。こういうことに個人企業も徹すれば、これはもう物資三法なんか必要なくなっちゃうのです。  そういうふうな社会風潮、ごみをそこらに捨てる、こういうようなことは恥である、あるいは人の迷惑を顧みず、買いだめ売り惜しみをすること、これは恥である、そういう社会風潮の中では、あのような企業の行状というものはあり得ないのです。あるいは公害をたれ流してまでも自分の利益をはかろうとする、そういう行為はあり得ない。ところが、戦後三十年間、そういう金と物と自分と、こういう世の中になっちゃった。そこに日本の社会の非常に大きな黒点がある、私はこういうふうに考えます。その黒点を取り除く、これと経済の運営とが並行しなければ、ほんとうにいい経済にもならぬし、ほんとうにいい社会にもならぬ、そういうふうに考えます。
  299. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 これで終わりますが、だから、世の中を離れて一人では生きていかれないという考え方を前提として、いわゆる十七、八世紀の個人主義人間観を基礎にした自由民主主義の価値観では、いまの立法はささえられないのではないのか。私は個人主義に対する社会主義という意味で社会主義ということばを使っているのですが、階級的な、イデオロギー的な狭い意味の社会主義ではなくて、人間は社会的存在だという認識の上に立って、その人間を原点とした民主主義という価値観に転換をしなければ、立法をささえる価値観にはならないんだ。そういう意味において、与党がもしそういう意味個人主義を原点とした自由民主主義ならば、私はそういう政治哲学から国民を指導しても現在の三法をささえる価値観にならないし、法の取り締まりの強化とやみ価格と悪循環になるのではないかと思うので、研究課題として提起をして、これで質問を終わります。(拍手)
  300. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、明二十日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後九時三十一分散会