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1974-03-13 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十三日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    奥田 敬和君       金子 一平君    鴨田 宗一君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    小林 政子君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      東畑 精一君         参  考  人         (立教大学教授         ・国民税制調査         会事務局長)  和田 八束君         参  考  人         (全日本自治団         体労働組合中央         執行委員)   金井 浩正君         参  考  人         (税制評論家) 谷山 治雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日午前に御出席いただきました参考人は、税制調査会会長東畑精一君であります。  東畑参考人には、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、税制改正各案のみならず、税制一般の問題についても忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見十分程度にお取りまとめいただき、そのあと委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、東畑参考人にお願いをいたします。東畑参考人
  3. 東畑精一

    東畑参考人 御紹介をこうむりました東畑でございます。  きょういろいろ御意見を拝聴いたす前に、簡単でありますが、昨年十二月二十一日に税制調査会が「昭和四十九年度の税制改正に関する答申」というのを総理大臣提出いたしました。それにつきまして若干のお話をいたしたいと思います。この答申は、今度の国会へ御提出になっております税法に全部盛られておりますので、どうかひとつこの答申皆さんに御尊重願いたいということをあらかじめお願い申し上げておきます。  それで、若干の点を申し上げたいと思います。五点ばかりございますが、一つ所得税減税問題であります。  実は、長い間、この所得税減税につきましては税制調査会でやっておったのでありますが、いつも減税の財源といいますか、それほど大きな額がございませんので、思い切ったような減税案というものは答申することができなかったのであります。幸いにいたしまして、来年度の見通しその他からいいまして、相当大規模な減税ができる、こういうことになりました。たしか初年度一兆四千五百億円、平年度一兆七千億ですか、こういうような見通しがつきましたからであります。  今度の所得税減税は、一番の特徴はサラリーマンの税負担を大幅に軽減する。勤労所得であります。その減税を中心問題といたしまして、給与所得控除を拡充するということ、人的控除を引き上げるということ、税率を緩和する、こういう三点にしぼったわけであります。  最初に簡単な人的控除の引き上げについて申し上げますが、前々から皆さんの御議論の中にも、教育費控除と申しますか、それについて控除を設けろというような御意見もずいぶん拝聴いたしておりました。非常に御要望が強いということをよく知っておりました。どういう形でそれを盛るかということでいろいろ検討いたしまして、結局、扶養控除を大幅に引き上げる、こういうことで御要望の趣旨をいれることができるのじゃないか。それで、従来よりも扶養控除を非常に大幅に引き上げて、基礎控除配偶者控除と同額の控除にいたした次第であります。  それから、一番重点は、給与所得控除を拡充したことであります。これも昨年のこの委員会でも、私、若年労働者税負担軽減をはかるという見地をなるべく生かしたいということを申し上げたのでありますが、われわれの税制調査会といたしましてはいろいろ検討した結果、定率控除制度に一本化して、控除率を四〇%、三〇%、二〇%、一〇%、こういうことにいたしました。この一〇%は青天井であります。限度なし、こういうことにいたしました。これは勤労性所得資産性所得というもののバランスをはかりたい、こういうことであります。  それから、税率を緩和いたしまして、三千万円まででありましたが、従来の累進構造、累進税の税率を多少緩和いたしました。  それが所得税についての重点でございます。  それから、第二点は法人税でございますが、前々からたしか特別措置といいますか暫定措置といたしまして、法人税本則が三五%でありましたが、それに一・七五%付加するということになっておりました。その期限が四十八年度で到来いたしますものですから、再びまた検討をいたしまして、国際的な競争力にたえるように日本がなってきた、産業基盤も非常に変わった、こういうこともございまして、法人に対しましても応分の財政負担を求めたい、こういうことで、法人税を引き上げることにいたしましたので、全体といたしまして、法人実効税負担水準を一割程度引き上げるようにいたしまして、基本税率を三五%から四〇%にする、これに対応いたしまして、配当軽課率を二六%であったのを三〇%にする、ただし最初の一年間だけは二八%にする、こういうことにいたしました。  なお、いままで所得税につきましてはずいぶんいろいろ検討したのでありますが、法人税につきましては、なおまだ十分検討すべき問題がたくさんございまして、そういう意味からいいまして、配当軽課制度といいますか、この問題と、それから、法人受け取り配当益金不算入の制度個人配当受け取り所得税において配当控除する等、いろいろな基本的仕組みにつきましては十分な検討をまだいたしておりませんので、ことし、おそらくはこの国会が済みましたころから、税制調査会の中に特に法人税関係特別部会を設けまして、ひとつ徹底的にこれをやって決定しよう、こういうことにいたしております。  それから、第三は間接税でございますが、いろいろ税体系の中で間接税をどういうふうな地位に置くかということをしょっちゅう検討いたしておりまして、また、間接税の性格ということ、あるいは役割りということにつきましても、いろいろ検討いたしておるのでございますが、今年度は、ある意味において、考えとしてはきわめて簡単なのでありますが、一つは、印紙税税率を引き上げるということであります。  これはもうすでに、昭和四十二年以来ですか、だいぶ長い間もとのままになっておりましたが、その後の取引状況その他を検討いたしまして、従来の従量税的なものから従価税のほうへ税率構造を変える、こういうことにいたしたのであります。これが一番大きな点であります。  それから第二点は、間接税では、自動車関係の諸税の税率を引き上げたことであります。揮発油税地方道路税自動車重量税につきまして、資源の節約あるいは消費の抑制という観点から、二年間でございますが、暫定措置として税率を引き上げた。これは政府が御提出になっている法案のとおりでございます。  なお、自動車重量税につきましては、物価問題といいますか、輸送料金に影響を及ぼすことが多いものでありますから、営業用自動車につきましてはもとのままの税率に据え置く、こういうことにいたしました。  それから、第四項目といたしまして、租税特別措置整理合理化という問題でありまして、引き続きそれをやっておるのでありますが、一番大きな問題は、社会保険診療報酬課税の特例でございます。これは特別部会を設けましていま検討を進めておりますが、ことしの十二月には間に合いませんで、別途答申をする、こういうことにいたしております。  それから、土地税制につきまして、法人土地譲渡重課制度法人特別土地保有税制度、これをつくったこと、固定資産税評価額課税の徹底という措置を講じたわけでございます。これは四十八年度の改正であります。われわれとして、今度の調査会におきましては、土地全般につきまして、土地税制の果たし得る役割りが何であるかということも検討をいたしたのでありますが、まず、一般政策補完的役割りであるとか、あるいは多少誘導的な役割りであるとかいうこと以上に、土地税制につきまして土地政策検討するのは無理じゃないかというふうに考えました次第であります。  それから、個人長期保有土地譲渡所得でありますが、これも五十年末の期限の到来ということで、あとどういうふうな課税制度にするかということにつきましても、いろいろ総合的な判断、及び土地政策全般につきまして、それを見ながら慎重な検討を続けたい、こういうことになっております。  大体、荒っぽく申しまして以上のごとくでありますが、ちょっとしばらく人前でしゃべっておりませんので、何か話がしにくくてごつごつしておりますが、御了解願いたいと思います。  あと質問に応じましていろいろ……。     —————————————
  4. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。阿部哉君
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 税調会長には、お忙しいところ、たいへん御苦労さまでございます。いまお触れになった問題もありますけれども、三点ばかりお伺いをしたいと思います。  まず第一に、いまも検討されたと、こうおっしゃるのでありますが、利子配当分離課税等は、これはもう長年のこの委員会における問題点であります。特にことしは、資産性課税土地検討されたとおっしゃっておりますけれども、土地利子配当、こういう分離課税というものが、累進制をこわし、むしろ逆進的とさえなっておる現状、これを踏まえてどのように検討されたかを、ほんとうはお伺いしたかったわけであります。ところが、いま検討はされたと、こういうのですが、特にこれはもう来年は期限の来る問題であります。それだけに私はどのような態度で臨もうとしておるのか、検討されたならば、簡単にこれからの方向づけをひとつお伺いしたいと思うのであります。
  6. 東畑精一

    東畑参考人 これから申し上げることは、税制調査会全体として合意したとかなんとかということはございませんので、恐縮ですが、東畑個人考え方として御了承願いたいと思いますが、根本の考え方といたしましては、日本資本蓄積といいますか、非常に乏しい時代、その時代と、今日のように資本蓄積が相当進んだ、こういう時代とは、考え方を変えざるを得ないと思うのです。問題としては、つまり、勤労性所得ですね、これは一番大事なものじゃないか。続いて資本性所得、これは第二次的地位に置くといいますか、そのことによって日本資本蓄積ということが妨げられては困る。そこらの兼ね合いということで私はいかざるを得ないのじゃないかと思っております。  今度の税制改正でも、一番そういうことに関連が多かったのは、先ほど申し上げました給与所得控除ですね、これを非常に優遇したということは、実は、いま申しましたような見地が多少働いておるのじゃないかと思います。  それから、いま阿部さんのおっしゃいましたように、利子配当問題ですね、個人所得税の問題としての利子配当問題、これはどうしても法人税の全体系の中で考えざるを得ない問題であります。おそらくことしの四月、五月ごろから特別部会で鋭意これをやってまいりたい、こういうことです。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは期限もくることでありますので、ぜひ早急にいい結論を出していただきたいと思います。  第二に、特別措置は、これも幾らか検討されたようなお話でありますけれども、前からその効果検討して、これは既得権化をしないようにという皆さんの御決定があるわけでありますが、私たちわきから仄聞するところ、どうもあまり租税特別措置検討されていないんじゃないか。たしか三十四、五年ころはいろいろと租税特別措置検討をされたようでありますけれども、最近はどうもその検討があまりなされていないように私は聞いておるのでありますが、この検討はどの程度されたのか。私たちにとってみれば、租税特別措置というのは税法体系を乱したり、税の公平を非常に害したり、そうしながら現実は既得権化しておる、こう見ておるわけであります。それだけに、税調のそれに対する審議の御様子をお伺いしたいのであります。
  8. 東畑精一

    東畑参考人 私ちょっと記憶がございませんけれども、ほとんど毎回特別措置というものは検討していたわけです。非常にたくさん特別措置がございまして、ある意味において、私どもが検討する能力もない小さい問題がございます。これは大蔵省なり各省にまかすよりしかたがありません。また、そのために各省というのはあるのじゃないかと思っております。大きな問題につきましては、大体は毎回触れております。  ただ、昨年度だけについて言いますというと、御承知のように、所得税の大改正をやるとか法人税の大改正をやるとかいうようなことがありまして、そちらに奪われた精力というものが相当多うございました。税制調査会といたしましては、昨年だけで二十五回ぐらいやりましたですか、ずいぶん精力を費やしておったのですが、思うところ、どこまで特別措置を議したかとおっしゃいますと、はたしてどれだけやったか記憶いたしておりませんけれども、これは特別措置じゃないんだそうでありますが、金融機関のいわゆる貸し倒れ引き当て金です。私はあれは特別措置だと思っておったのですが、頭の中で特別措置のつもりでひとつ聞いていただきたいのでありますが、これなんかも相当検討いたしました。また事実貸し倒れに対する引き当てということがどれだけ行なわれておるかということも検討して、これほど大きな引き当て金を充てる必要はないだろう、こういうことになりまして、千分の十にいたしたわけです。その前は千分の十二でした。その前はもう一つ千分の幾つかだった。そんなわけでやっておりますが、しかし、特別措置の非常に大きな部分は、少額貯蓄あるいは保険免税になっておるものです。金額が大きいものだから、ばかに特別措置がえらいことをやっておるという印象を与えるのですけれども、ほとんど大部分というものは少額貯蓄保険の掛け金の免税制度、こういうことになっております。  あと残った検討すべき大きな問題は、先ほどもおっしゃいました利子配当の問題でございます。それから、お医者さんの社会保険収入ですか、それをやりますから……。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまお話しのとおり、日本では特別措置というのはたいへん多過ぎるのでして、この辺で思い切って効果検討し——この委員会では、次から次へと三法の審議の中の中心は特別措置の問題にかかってきておるのでして、この委員会空気もお考えいただければ、日本くらいこんなに特別措置の多い国というのは珍しいし、また、これをこんなに多くやっておれば税体系そのものがめちゃくちゃになってしまうということを考えれば、税調のむしろ一番大きな任務としては、特別措置整理であろうかと思うのです。医師の問題も近く検討されるそうでありますし、われわれの委員会も一応の決議をしようという空気が強いのでありまして、特別措置に対してはもう少し真剣に整理の方向へ向いていただきたいと思うのであります。  第三番目には、どうも見ておりますと、この二年間、皆さん税調結論は、これは自民党税制調査会ですか、これの発表した翌日に同じものが出てくる。何のことはない、自民党案を見れば税調案そのままだ、自民党の案の正当化に役立つだけだという印象をわれわれに与えておるのであります。おそらく国民もそうだろうと思うのです。独自性がなくなってしまったのじゃないか。自民党案が出たその次の日に税調案が出た、それが同じようなものだということになりますと、これは何か税調というものの存在がおかしいのではないだろうかという印象を受けます。税調は各界の代表が集まり、そこにコンセンサスを得よう、こういうことだろうと思っておったのでありますが、最近のこの二年間の税調発表あり方等は、たまたま一緒になったとおっしゃるかもしれないけれども、二年間続けてその翌日に発表される、しかも内容は同じだというようなことは、どうも誤解を招くおそれがあるのでありまして、その辺会長さんはどのようにお考えになっておられるか、お伺いしたい。
  10. 東畑精一

    東畑参考人 その前に、特別措置お話がありましたのですが、非常にたくさんあるというのはごもっともです。ところが、これはどこから出てくるかといいますと、国会議員から出てくるんじゃないかと私は思うことがある。(阿部(助)委員「われわれじゃないですよ」と呼ぶ)それはそこまでは言わない。そこから出てくるということがずいぶんあります。非常にこまかい問題が多いのであります。消せばまた出てくる、また出てくるというようなことで。小さい問題はともかくとしまして、本来、政策目的であったのが特別措置であります。その意味では、初めから不公平をつくっていくという点でございます。これは御了解願えると思いますが、その点が十分目的を達してもまだ持続しておる、ここが特別措置の一番大きな問題じゃないかと思います。  一番いい例は医師社会保険収入ですか、実はあれは国会で御決議になりましてきておるのですが、昨年でしたか一昨年でありましたか、国会のほうから税法審議の際の附帯決議として、税制調査会しっかりしろ、こういう激励をちょうだいいたしておりまして、これは拳々服膺したいと思います。そういう意味からいいまして、皆さんも大いに考えていただきたい、これをひとつ希望申し上げます。  それから、第二点の自民党税制調査会とべったりじゃないか、このお話ですね。ちょっとそういう印象はあるだろうと思います。おっしゃるとおりでありますが、過去二カ年じゃありません。過去三カ年なんであります。いつも自民党税制調査会発表が一日ずつ早くなっておる。それで、まるで自民党あとをたどっておるじゃないかと言われますが、そこはこういう問題でありまして、これは私いつも申し上げることでありますが、自民党はどうしてそういう案をつくられたかという問題であります。私は、相当税調の論議を御参考になっているのではないかということを実は知っておりまして、もしかりにわれわれが一日先に発表して自民党が縦日発表なさったら、自民党税制調査会のまねをしているんじゃないか、こういうことにはならぬと思うのでありまして、実はわれわれの議論というものは、半年以上にわたりましてやっておりますし、そのものは私ども非公式でありますが、自民党税制調査会ですか、そこへも知らしてあります。ですから、それをおそらくは自民党も御検討になるのじゃないかと思います。  一日先に発表した、翌日発表したと言うが、これは一日であんなでかいことできっこないのです。そういうこともありますし、それから、われわれはいつも申し上げることでありますが、結局、税制調査会というのは行政庁内の一つ委員会にすぎません。そこは結局何をやるのが本来の使命かといえば、私はいつも申しているのでありますが、税についての技師だ、技術的役割りしか持っていないのだ。それからいいビジョンがあれば、いい考えがあれば、いかにしてそれを生かすことができるかということを考えるのが税制調査会で、それ以上の役割りというものを持っていない。でありますから、もしわれわれの意見と同じものがあっちこっちたくさんあればけっこうじゃないか。一日先に発表してどうだと、そういう気持ちは全然ございません。ですから自民党が一日先に発表なさろうと、三日先に発表なさろうと、われわれとしてはそういうことは関せずえんという次第であります。しかし、どういう意味か、自民党は、先に発表なさることはお好きのようであるということは確かであります。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 時間ですからこれで終わりますけれども、先ほど来申し上げました特別措置の問題、たいへん多過ぎます。そして税体系を乱す、公平の原則を乱すという点は、皆さんが前に御指摘なすったとおりなんです。ただ、指摘はされたけれども、御意見はあまり出てこないようであります。特別措置は、私、何か皆さん介入外にほん投げられているんじゃないかとすら感ずるのでありまして、確かに多過ぎます。そういう点で思い切った、特に年次が終わる、来年終わるというような期限の来るものには、特に厳重な皆さん態度で臨まれることを希望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  12. 安倍晋太郎

  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 税調会長にお尋ねをいたしますが、会長も御存じのように、いま政府の施策の失敗から物価が異常に上昇して、卸売り物価は二月末で前年比三六・七%、消費者物価も二四%という異常な物価上昇で、労働省の試算による発表でも、実質所得水準は四%減少した、こういう事態ですね。こういうときに、四十八年度の減税を考慮し、さらに四十九年度の今回の減税案を参酌しても、この減税は思い切った大幅な減税に値する減税ではない、物価上昇があまりにもひどいので。そういう問題点について、答申の中でこう書いておりますね。  最近の物価動向もとでは、物価騰貴に伴い分配所得の不均衡、税負担不公平化が進行するおそれが強い。このような不公平化を調整するため、事情の許す限り所得税負担軽減適正化をはかるべきだ。軽減適正化というところに問題があるわけであります。「また、活力ある福祉社会にふさわしい安定した生活を築くためには、家計における蓄積の充実を図ることが肝要であり、このような観点からしても、所得税負担所得水準の向上に対応した適正なものに維持していくように努力」しなければならない。適正な水準とありますね。  そこで、税調会長として、そういうような物価動向を勘案して考えたときに、所得税のあるべき姿、適正水準、一体どの辺を、何をめどにそういう適正水準というものを想定して考えておるのか、その辺をひとつ御意見をお聞かせ願いたいと思うのです。
  14. 東畑精一

    東畑参考人 武藤さんのお話、なかなか重要な問題でありまして、私個人として正直に申しますと、物価騰貴がこの程度までいくということは、実は残念ながら、また恥ずかしながら、見通しはできませんでした。ですから、この税制調査会の案を熟考しておるころは、もちろん昨年のことであります、昨年の秋ごろになっておったと思いますし、石油ショックが起こる前から実は始めておりまして、相当画期的な税制改正ができると思っておりました。その後の物価変動、いまおっしゃったようなことになってきました。実はあまり画期的だ画期的だというても、実際的にどうかという問題は確かにあると思います。これは即時断行ということはできないのが今日の制度でありまして、どうしても半年とか、あるいは法律のいかんによりましては一年もおくれてくる、こういうことになりますので、多少手おくれという点もあるかと思うのであります。  それでも今年度の税制改正というのは、物価調整的な意味では私は相当な役割りはしている、こう思っております。あと蓄積かどうかという問題になってきますと、初めに考えたようには期待できないのではないか、こういう点もございます。これは私も経済学というものをずっとやっておったのでありますが、どうも日本の貯蓄といいますか蓄積でございますが、一般人のこれがなかなか経済的につかみにくい。つかみにくいということは、解釈しにくいということですが、今日のように物価騰貴いたしておりましても、まだある意味において貯蓄はふえている。こういうこともございまして、いいお答えをあなたにできるかどうか実は疑問に思っておりますが、しかし、十分努力する。それで、物価のいかんによりましては、これで済まぬ。  私は、一応、昨年の秋ごろの話では、所得税改正ということは、ずいぶん大幅にやりまして、いままでは小幅なのを、思い切ったことをやれたのですが、もうこれでしばらくは所得税減税という問題は議さなくてもいいだろう、こう楽観いたしておりましたが、物価のいかんによりましては、必ずしもそういう楽観は通じない、こういう所存でおります。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 以前は、中山会長時代は、国民所得に対する租税負担割合というものはこの程度をめどにしょう、そういうものの一定のめどがあって、そのめどよりとにかく高くならぬようにしようしようという積極的な姿勢が税調自体にあったのです。だから、税調一つのめどを持って、国民大衆のために積極的な役割りをある程度果たした時期があった。最近の税調というのは、いま阿部さんがおっしゃるように、何か政府のやることの隠れみのに税調が使われていて、税調自身が国民大衆に期待されるような積極的な役割りを果たしておらぬのではないか、こういう不満があるわけです。これは野党だからではなくて、国民も、そういう何か歯がゆさを感じていると思うのです。何か適正水準はこの辺に置きたいのだという会長御自身の大きな柱というのはあるのですか。
  16. 東畑精一

    東畑参考人 中山会長時代あるいはそれ以前から、国民税負担はどの程度がいいか、ほぼ二〇%——ちょっと数字ははっきりしませんか、二〇%前後になっておったと思います。それは今日ももちろんしょっちゅう頭にあることでありますが、われわれといたしましては、国民所得がふえてきたということと、社会保障その他社会資本の充実ということを考えたら、もっとふやせる、若干パーセントはふえてもいいんじゃないか、こういうめどにいたしておりますけれども、今度のやつが何%になるか知りませんが、おそらく二〇%はこしていないのじゃないか。二〇%を切っているという状況であります。しかし、何%が正しいかということを固定的に考える必要は一つもありません。国費の支出というものは、新しい点から非常にふえております。一番大きいのは社会保障でございましょうし、社会資本の充実でありますし、公害の防止とかいう問題がありますので、どうしてもこれはある程度まで国民に適正な形において負担の増加ということを願わざるを得ないんじゃないか、こういう観念でおりまして、決してめどなしに盲目的に働いておるというわけではございません。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 適正ということばを答申の中でしきりに使っているんですね。したがって、私は適正とは何か、こう尋ねているわけですが、適正の中身は、たとえば、生計費がこうだとか物価上昇がこうだからこうだという会長にこれを聞くのはちょっと酷かもしれません。税調というのは、会長のスタッフに十人なり十五人の事務局というのはおるんですか。その事務局がきちっと独立機関としておるというなら、独自的な判断もなされ、前向きの施策というものも打ち出せる。  先ほど、くしくも会長は、税調というのは現在の機能だと技術的な問題だけしかやれない、こうおっしゃるものですから、これは深く会長にお尋ねしようとしてもなかなかそういうこまかい中身のことは、大蔵官僚がつくったものをただそれぞれの業界の代表や学者の何人かが集まって、まあこの辺でよかろう、まあまあということで——これは主税局長が去年の八月段階にもうすでに描いていた構想が今回の減税案なんですよ。それ以後の物価上昇率というのは、べらぼうなんです。だから、そういうものは全くこれには加味されていないんですよ。できてしまってから、文字だけ一応物価上昇考えとかなんとか書いてあるけれども、主税局長が非常に熱心に減税問題に取り組んだのは、とにかく去年の八月段階で骨ができたんです。それが新聞にもちらほら出ていたんです。所得税減税のこの三本の柱は、去年の物価上昇がまだ一四、五%の当時の案なんですね。それをそのまま税調が追認をするという税調の姿勢に問題があるということを、私はいま問いただしているわけなんです。  したがって、結果的に物価がこんなにも上がったら、やはり年度内に少々調整減税をすべきじゃなかろうか。二千億出るか、二千五百億出るか、自然増収がどのくらいになるか、まだ的確にはわかりませんが、しかし、いま主税局の発表しておる税収を見ましても、源泉所得が一番収入状況がよくて、一月末で九二・二%の進捗割合ですね。でありますから、サラリーマンは名目所得をとにかく一〇〇%捕捉されて税金をぶっかけられるのですから、これはやはり取り過ぎですよ。そういう場合には、これは大蔵大臣からこういう点いかがですかと問われなくとも、積極的に税調としては、やはり提言をしてしかるべきなんじゃないでしょうか。いかがでございましょうか。
  18. 東畑精一

    東畑参考人 あまり申し上げたくないですが、主税局長が去年八月、案を立てたということですが、実は私は六月、大体のことを考えました。当時の愛知大蔵大臣でありますか、大蔵大臣とも話をしたことがあります。少し思い切ったことができるという観念でおりましたから、その後もずっとやっておりますが、大蔵省の役人はなかなか有能でして、こっちの言うことをずいぶん調べてくれるのですが、必ずしもわれわれに対してどうのこうのということばかりではありませんで、逆にこちらから教えることもあります。だから、その点はあまりやかましくおっしゃってくださらないようにお願いをいたします。  私は、結局、国税といいますか、こういう大事な問題につきましては、大蔵省がどうの、税制調査会がどうのという問題じゃありませんで、やはり国会政府と、これは大蔵省に限りません、それからわれわれとが一致した意見をお互いに持ち合ってやりたい、こういうことにいたしておりますので、それが完全にいかないということはよく承知しておりますけれども、気持ちといたしましては、その気持ちでずっと税制調査会をやっておるわけです。初めのころは無我夢中でやっておりましたが、何年か重ねているうちに、そういう考え方が一番いいのではないかと思うようになったのです。ですから、国会の御議論なんというものは、こさいに検討しているのです。政府のおっしゃることもずいぶん検討しております。個々的には思いつきのような話もずいぶんあちこちに出るかと思っておりますが、そうではなしに、実現の可能なような意見は一体どうであるかという形においてやっておりまして、それがこういう大きな問題を議する根本的態度じゃないか、そういうふうにやっております。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 会長とここで論争するつもりは毛頭ございませんが、私らがまだ大学の学生時代からりっぱな学者だと思って崇拝をしてきた東畑先生でありますから、私個人は、国民の立場に立って、庶民大衆のふところというものをよく公平に判断をして、税調のしかるべき前向きの姿勢を堅持できる、りっぱな、超政府的、超党派的、そういう会長であることを信頼をしております。そういう立場である税調会長なら、もう少々積極的姿勢を示してしかるべきではないかという期待をいたしたくなるのであります。  しかし、時間がわずか四十分でありますから、一問で終わるわけにまいりませんので先へ進みますが、今度の改正案の税負担を具体的に計算してみますと、たとえば、夫婦者で四十八年に百万円の年間所得だった者を例に考えてみて、今度の賃上げの率などを、NHKが二五%すでにきめておりますし、大かたの状況からいきましてかりに三〇%の賃金アップと見ますと、四十九年は夫婦者で賞与を入れて百三十万円になる。その場合に、四十八年の税額は二万一千三百円、四十九年の税額は三万一千五百円となりますね。実際には前年より一万二百円税額はふえるわけであります。そうすると、納税者の立場は、減税減税と言われると、去年より納める税金が少なくなるんじゃなかろうかという感覚がまずありますね。だから、こういう形では負担感というものは消えないですね。  特に、私は、ここで問題にしたいのは、一定の所得者をとってみると、給与の上昇率よりも税額の上昇率のほうがパーセントが高いということです。その階層は、独身者の場合、それから夫婦者、夫婦子供一人までのランクですね、この辺は弾性値が一を全部上回っているのであります、所得の伸びと税金の伸びの弾性値を比較してみますと。特にひどいのは、所得百万円の夫婦者ですね、これが一・五九になるのであります。所得百二十万の者が一・〇六ということになるのですね。どうもその辺の階層、低所得の階層、これが今回の改正案の中で見ると非常に恩恵が少ない。上のほうが恩恵率が高い。これは技術的に、税調であれば私はこういう点は直せたと思うのですね。直すべきではないか。どうも標準世帯ばかりに焦点を合わせ過ぎたきらいがあって、その下のランクの連中の負担感というものは減らない、実際に納める税額というのはかなりふえる、こういう結果に相なっているので、こういう点税調はもう少々しさいに検討してしかるべきじゃないか。  おまけに、そういう百万から百二十万程度の低所得者階層には実際の実額税額はふえるにもかかわらず、反対に、高額所得者の三千万以下の人たちには累進構造の緩和をはかり、また給与所得控除制度も青天井にして、上のほうのランクの人たちの必要経費分はかなりふえる。こういうことでは、税調答申案に書いてある公平化という観点から見ると、やはり重役減税だというような批判が出てくるのですね。だから、ほんとうの意味での公平化というものをもう少々あらゆる角度から検討なされてしかるべきではなかったのか。その反省を、一体、会長としてなされていらっしゃるのかどうか、所見を伺いたいと思います。
  20. 東畑精一

    東畑参考人 税の負担の公平ということは根本使命になっておりまして、あらゆる場合に出てくるのですが、いまおっしゃいました弾性値の問題は、課税最低限を上げちゃうものですから、落ちちゃった人があり、その次になるものですから、多少高くなるということは事実なんです。これは課税最低限を上げたということに伴う技術的結果じゃないか、こう思ったりいたしておりますが、しかし、いまのことは、ちょっと私もあまりお聞きいたしませんでしたような御質問だったと思いますので、なお検討いたしてみますが、弾性値が高くなるのはしかたがありません。いままでのところを上げちゃったのですから、境目のその次の段階の人には、多少おっしゃるようなことに響くかもしれません。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまおそらく大蔵省からの意見があって、そう答えたのかも知れませんが、たとえば百万で独身の場合でも一・〇二です。百万で夫婦者が一・五九、百二十万で夫婦者が一・〇六、百二十万で夫婦子供一人のところでようやく実質減税になる、〇・七六になる。百五十万で夫婦子供二人の場合が〇・二七で、最高に減税の恩典を受けるのです。だから、百五十万というところにライトを当て過ぎちゃって、その下のランクにどういうしわ寄せがいくのか、公平に行き渡らないかというところに対する検討が欠如しておる、欠落しておる、こう私は見ます。しかし、こんなこまかいことは会長と論争すべき大きな問題点ではありませんが、ただ会長に、こういう事実があるということを頭に置いていただいて、所得税減税についての今後の取り組みにほんとうの意味の公平化を実現してほしい、こういう期待をかけて申し上げてみたわけであります。詳細については、後刻、主税局長との論争で中身を明らかにしたいと思います。  それから、先ほどやはり阿部委員がちょっと質問をいたしました社会保険診療報酬のお医者さんの課税問題ですね。現在、医療法人についてはそういう制度は適用していないわけですね。個人開業医については七二%を認め、医療法人については税率二三%で、農協とかそういうある程度公共性のある法人みたいな形で、二三%の法人税率になっているわけですね。そうすると、実際の医療法人の必要経費を税調で調べた結果、一体、医者の必要経費というのはどのくらいが実際の姿になっておるのですか、調査の結果は。それはどうでしょうか。もしおわかりにならなければ、大蔵省から答えてください。
  22. 東畑精一

    東畑参考人 法人もそんな特例はないと思っております。公益法人になれば別でございます。ちょっとこれは技術的な問題ですから……。  どれだけの経費になるかということはなかなかむずかしい問題でありますが、私の知っている限りを見ましても、青色申告を国税庁で調べた、四十六年度でありましたか、その結果は聞いておりますが、非常なディスパリティといいますか、剰余のことはありますけれども、大まかに申しまして五〇%から五五%ぐらいがころ合いではないか、こういうような予測を持っております。そういう意味から申しまして、いまの七二%問題というのは、その見地からもひとつ検討しなければならぬのじゃないか、こう思っております。
  23. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 技術的な側面でございますが、社会保険診療報酬の経費率の特例は、個人だけに限定されてはおりません。したがって、法人もこれを利用できるわけであります。ただ、実際の場合には、法人の場合には経費率がかなり高い企業が多いために、現実に特例の適用になっているのはそう多くはないのではないかと思います。
  24. 武藤山治

    武藤(山)委員 私の聞いた範囲では、あまり医療法人では七二%適用は申告していない。大体二三%の法人税率割合を利用しているようですね。
  25. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 その二三%という御指摘は、適用税率のほうでございますので、適用の経費率といたしましては、申し上げましたように、現実に特例を利用しておられる法人というのはそう多くないということでございます。
  26. 武藤山治

    武藤(山)委員 それで、税調答申では、別途答申する。先ほど阿部さんの質問では、十二月に間に合うようにという会長の御発言でありますが、ことしは間違いなくこの社会保険診療報酬については、税調としては、いかなる妨害、国会議員の陳情、こういうものがあっても、やはり妥当性のないものはこの辺できちっと姿勢を正させる態度をとる、そういうことを明言できますか。
  27. 東畑精一

    東畑参考人 いまの気持ちとしては、実は私の任期が秋なんでありますが、特別部会というものを運用して、特別部会長も私は実は兼ねておりまして、ぜひやりたい、こう思っております。何らかのめどをつけなければならぬ。また、そうしないと国会の御激励に対してこたえなかったということになるものでありますから、やろうかと思っております。おそらく委員の諸君も賛成だと私は思っております。
  28. 武藤山治

    武藤(山)委員 ぜひ将来にわたって税制会長東畑先生の名が歴史に残るように、この辺でひとつ大英断を下していただきたいと期待を申し上げておきます。  それから、法人税改正でありますが、世界各国の税率と比較して日本は低過ぎる、先進国と比較して低過ぎる、今回はようやくちまたの批判や国会の論議を通じて法人税も四〇%に引き上げよう、こういうことに政府も決断をしたようでありますが、四〇%もまだ低過ぎる。やはり四二%ぐらいのところは当然ではなかろうか。というのは、大蔵省の資料によっても、大法人の実効税率というのは非常に低いのですね。資本金百億以上の会社の実効税率は三一%だ、一億以上百億以下の大法人は三四・八%だと発表しているわけですね。そうしてみますと、いまの法人税率というのは、四二%に中心を据えて、さらに段階的に、資本金五十億あるいは百億以上というような資本金階級別にある程度段階税率を設けるべきではないか。そういう考え方については、会長としてどのようにお考えになっていらっしゃるか。  世界の例を見ても、アメリカは五一・六四、西ドイツは四九・〇五、フランスは五〇%である。担税力は十分ある大商社や巨大産業、いま怨嗟の批判を受けている、暴利をむさぼっているようなこういう大企業について、やはり段階的な税率にこの際改正すべきでないか、こういう野党としてたいへん強い社会党案まで提案をしているのでありますが、会長としての所見はいかがでございましょうか。
  29. 東畑精一

    東畑参考人 現在、法人税につきましては段階は二つになっておるわけでありますが、それをさらにふやせという御意見のようであります。地方税を入れますと相当の税になっているということは確かなんでありますが、国税につきましては四〇%、もともと国際的競争力ということが日本一つのあれになっておりまして、法人税は一時四二%まで上げた。それは御指摘のとおりでありますが、その後ずっと下がってまいりまして、連続して下がって三五%まで下がった。そこで、この勢いを食いとめまして、数年前であります、それからまあ上がりぎみになっております。しかし、今度はずいぶん一ぺんに上げたわけです。ですから、四二%と急激に一体いくかどうかということは、なかなかむずかしい問題じゃないかと思っております。  それから、段階問題でありますが、これはつまり額の問題と率の問題がございまして、百億の法人がかりに二十億もうけるということと、資本金五億の法人が六千万円もうけるのとは、率からいうと上より下のほうがもうけ過ぎておるということになります。そういう意味から申しまして、企業の規模、その他からいって、かりにやりたくても一体できるかかどうかという問題、それは昨今非常に問題になっております超過利得税ですか、これの御審議がどうなるか知りませんが、これをごらんになりましても、法人の規模ということに伴う利益の額の大きさということと、利益率の大きさということとは必ずしも並行しない、そういう問題が私は非常にあると思う。ですから、いま急に法人税の段階ですね、おっしゃったような段階を導入するということは、非常にむずかしいことではないか、こう思っております。また、考えとしてはたしてどうかというのが、私の考えであります。しかし、先ほど申しましたように、法人税検討特別部会を今度、制度としては発足さしたわけでありますが、そこではそういう問題は当然議するのではないかと思っております。
  30. 武藤山治

    武藤(山)委員 税調がそういう消極的な姿勢でいるから、超過利得税の問題も行ったり来たりして、政府案ができないというようなことにまでおそらく影響があるのですね。やはり私はそういう点、あまり大蔵省の専門家の役人の言うことだけを聞いて、税調がからに閉じこもっていたのでは、もはや今日、国民の要請にこたえる税調にはなれない、私はそう思うのです。  そういう意味で、資本金十億以上の会社だけでも約二千社あるのですね、だから、少なくも資本金十億あたりからは特別な税率を適用して−担税力はあるのですから、担税力という観点から見るなら、それはいまの電気ガス税を取ったり、零細な庶民のふところからわずかずつの金を、取りやすいからといって取るよりも、資本金十億以上の会社の二千社から少々余分に取っても、担税力の面からいくならへのカッパですよ。私はその姿勢の問題だと思うのですね。  しかし、きょうは論争じゃありませんからやめますが、そういう点で、せっかく法人税の段階税率についても本格的に、大資本、大所得、そういう場合には両方を加味してもいいですよ、何かいい方法はありますよ。社会党がいま出しているこの超過利潤に対する捕捉のしかたは、資本金階級別、同時に所得階層別に税率をぶっかけるわけであります。でありまするから、これは確実に捕捉できるのです。自民党案のように、超過利益というものを前二年間の何%以上なんときめるから、みんな準備金に逃げちゃったり、引き当て金に逃げちゃったり、給与に逃げちゃって、所得率が落ちる。それじゃ捕捉できないじゃないかという議論が出てくるのですね。  だから、税調あたりも、法人税体系全体の問題をやはりそういう担税力がゆうゆうある大企業と、それよりも低いところというものを、ある程度類型に分離をする必要があるのじゃなかろうか。そのほうがより現実的であり、実態に即した税のあり方ではなかろうか。あまりにも大法人に気がねをし、奉仕し、おまけに至れり尽くせりの租税特別措置で、実効税率三一%なんというべらぼうなことが行なわれているのですね。そういう面から見て、私は、この際、段階的税率税調は踏み切って、今後の検討を期待いたします。  次に、先ほども阿部さんからちょっと指摘された租税特別措置の洗い直しでありますが、本年かなりの数が期限到来になるわけであります。ところが、どうもこの期限到来になって廃止するのは一つですね。あとは全部二年間延長、一年間延長で、そのまま延長されている。だから阿部委員は、特別措置についておそらく真剣な本格的な検討がなされなかったのではないか、こういう指摘をしたわけであります。  たとえば、会長、海外投資損失準備金というようなのは本年期限が切れたんですね。いいチャンスだったんです。いま海外へ資本がどんどん逃避をして——利益が出れば、その利益を海外に投資すれば、後進国の場合五〇%はこの海外投資損失準備金に積み立てできるのですね。だから、国内の本社で利益がうんと出れば韓国に行ってしまう、台湾に持っていく、インドネシアに持っていく。一年間に一千社も海外へ資本をどんどん持っていくわけです。ひどいのはブラジルあたりで、事業をしないで土地だけ買っておくという企業があらわれている。そういうものをやはり国策の見地から、国民経済的視野に立って、今日は外貨がどんどん減っていって、資本の逃避をどうしようかと深刻に考えている事態なんでありますから、海外投資損失準備金や技術等海外取引に係る課税の特例、海外市場開拓準備金、あるいはいま投機でもって怨嗟の批判を受けている商品取引責任準備金、これは一年ずつ延ばしたんですね、海外も商品取引も、ことし期限が切れる。海外と技術は二年延長、これはことしあたり本格的に真剣に洗い直しをして、徹底的に縮小をするべきものではなかったか、こういう感じが私はするのです。税調としては所得税のほうにすべての中心がいってしまって、租税特別措置の洗い直しというのに少々欠落、手抜かりがあったのではないでしょうか、会長いかがでしょうか。
  31. 東畑精一

    東畑参考人 手抜かりは別にないと思っておりますがね。相当議論をし、廃止すべきものは相当廃止した。ちょっと名前は出ませんけれども、輸出振興関係のものはずいぶん整理いたしましたですね。整理しておりますが、またあとから相当のものができたと思います。  どうも武藤さんのお話を聞いておりますと、ごもっともな点が多いのでありますが、それは少し税に対して御期待が多過ぎるのではないかというような気がするんですよ。これはそういう問題よりも、本質的には日本の対外経済政策とでも申しますか、そこの議論から築いていきませんと、なかなか税でもってそれをやるということは非常にむずかしいような気がします。一番いい例は土地税制なんであります。土地の税を幾らやっても、土地政策そのものが確立されておりませんと、逃げ道は出てくる。私が特に希望いたしますのは、法人税につきましても、法人利益の算定方式、これにつきましていろいろ教えていただきたい。利益をどういうように勘定するかという問題その会計上の問題になるかと思います。その点が非常な重点じゃないかと思っております。
  32. 武藤山治

    武藤(山)委員 本格的には大蔵大臣ともその問題を論争しております。もっと日本全体の財政経済、金融政策、海外政策観点から議論もしているわけであります。ただ、たまたまきょうは税の専門家でありますから、税の面からもこれは検討してしかるべきじゃないかという提言をいたした次第であります。  私、四十二分までであと二分でありますから、あとちょっとまとめて、税調のとった姿勢についての御意見をお聞かせ願いたい。  一つは、広告税課税が昨年たいへん騒がれておりましたが、広告税課税についての税調の見解、処置、態度、どういうことになったのか、これが一つ。  それから今度の答申の中で、電気ガス税、相変わらず廃止をしないで、ガスと電気という大衆消費の中から税金を取ろう、従来六%だったのを今度五%にする、ちょっぴり減税をする。免税点は、ガスの場合二千百円を二千七百円に免税点の引き上げをやろう、電気も千円から千二百円に免税点を上げるというものです。大体、電気ガス税というものはもう大衆課税の最たるもので、逆進性の非常に強いものである。しかも、大企業の大量消費する電気料などは免税になっておるわけでありますね。こういう電気ガス税は、私の見解では、もう廃止すべきじゃなかろうか。なぜ税調はこういうものを一%ぐらいちょっぴり税率を減らす程度にとどめたのか。  それから第三点は、申告納税の際に、医療費控除というのがありますね。家族が医者にかかった場合、あるいは普通の医薬品を買って飲んだ場合、その場合控除される。ただし、それは所得の五%以上でなければだめだという規定ですね。五%というと、かりに各日所得がどんどん上がっちゃって、百五十万、二百万の層がかなりふえちゃった。五%というと、かりに二百万にして十万円お医者さんに代金を払わないと七万円ではだめ、八万円でもだめ。私は、この制度税調として当然再検討して、医療費控除の率を五%からもっと二、三%に引き下げるべきじゃなかろうか、こういう見解なんでありますが、税調会長としていかがでございましょう。  この三点について、もう時間がありませんので、結論をお聞かせ願いたいと思います。
  33. 東畑精一

    東畑参考人 広告税につきまして一ぺん検討したことがございますが、詳細に検討したという時間はございませんでした。と申しますのは、広告と交際費とが非常に交錯をいたしておりまして、技術的に非常に困難である。その点がおもな理由になるかと思っております。  電気ガス税は一%と先生おっしゃいますけれども、これはもとは連年一%ずつ下げてまいりました。ちょっとストップしまして、またことしからでしたか下げておる。本来申しますと、こういう生活用品については課税ということはなるべく減らしたほうがいいのじゃないかと思っておりますが、これは何しろ地方の財源になると申しますか、しかも非常に、これはバランスがとれてないと思いますが、そういうことに食い込んでおりまして、一ぺんに景気よくはなかなかむずかしいんじゃないかと思います。  医療費の控除、これはひとつ一ぺん考慮いたします。ちょっとそこまで存じませんでしたから。
  34. 武藤山治

    武藤(山)委員 終わります。
  35. 安倍晋太郎

    安倍委員長 増本一彦君。
  36. 増本一彦

    ○増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。どうもきょうは御苦労さまでございます。  今回出されました税制調査会答申で、実は答申をお待ちする段階から、私どもは所得税減税もさることながら、法人税改正がどのようになるかということを注目してまいりました。先ほどから所得税減税についてはいろいろお話がございますので、時間がありましたらあとからお尋ねするとしまして、主として法人税改正の問題について御所見を伺いたいというように思うのです。  今日、インフレを押えて物価を安定させるということが、国の政治の最重要課題の一つになっているわけですね。そういう点から見ますと、今回の法人税法改正というのは、時期的に見てもおそきに失したのではないか。  それからもう一つは、答申が時間をかけたわりには懸案の問題の解決がなされていないということに、実はたいへん失望しているわけです。昨年の国会から、あるいはそれ以前から、法人税率を引き上げて過剰流動性を吸収する、そして内部留保の積み増しも規制をして、法人課税所得の拡大もはかっていくということが、国会の中でたいへん論議になってまいりました。昨年一年間の経済の異常な状態、大企業の売り惜しみ買い占め、便乗値上げ、それを反映した昨年九月期の決算やことしの三月の決算予測などを見ますと、文字どおり昨年中に法人税率を引き上げておくなどの十分な手だてをとるべきではなかったかという感を非常に深くするわけですが、そのように先生はお考えにならないかどうか、まずその辺からお伺いしたいと思います。
  37. 東畑精一

    東畑参考人 どうも一年単位でものをやっておりまして、いま増本さんのおっしゃった手おくれだという点は、あるいはあるかもしれません。ですけれども、われわれとしては、大体は御承知のように、春からものを始めて、暮れまでにものは解決する、その先に起こったいろいろなこと、たとえば、最初に申しましたように、物価が上がる、この調子で騰貴するというようなことは、実は残念ながら予想がつかなかったのでありまして、その意味で手おくれだとおっしゃることはあり得るかもしれませんが、また長い期間を見ますと、一体こういった——三月決算は多くなると思いますが、ことしの秋の決算は一体どうなるかということを考えますと、こういう調子は私は絶対に続くものではない、こういうふうに考えております。
  38. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、それにしても法人税率の引き上げについては、四〇%でもまだ低いのではないかという意見がある。もう一つの問題は、法人の実効税率の問題を考えますと、表面税率の四〇%の問題とあわせて、あるいはそれ以上にウエートを持つのが配当軽課措置であると思うのです。今回の改正によりまして基本税率が四〇%に上がったことに対応して配当軽課の税率が三〇%、ことしは二八%、こういうことになっているわけですけれども、これで勘定しましても、二八%の場合が配当三〇%として四八・八三%、配当分が三〇%になった場合でも実効税率が四九・四七%でしたか、そういうことに一応なっているわけですね。結局、配当分にどのくらいとるかということによって実効税率が非常に違ってくるわけです。  そこで、配当軽課制度をどうするかということ、これも久しく議論してきた問題でありますけれども、今回の答申を読ませていただきますと、法人税基本的仕組みに関する結論を得ることなくこの制度を一挙に廃止することは適当でないという御趣旨のことがあって、結論がまた先に延ばされている。  そこで、お伺いしたいのは、第一点は、この法人税の基本的な仕組みというように答申でお述べになっていらっしゃるわけですが、どんな構想をお持ちになっていらっしゃるのかということ、それからもう一つは、今回の改正のように、基本税率の引き上げにリンクして配当軽課税率の引き上げだけをやっていくということでは、結局、配当軽課制度をやめる考えがないようにも判断ができるわけで、これをほんとうに廃止する方向でお考えであるのかどうか。もし廃止するのだとすれば、そのためにどんな条件が必要だと考えていらっしゃるのか、この点は受け取り配当の益金不算入の問題や配当控除制度の問題でも同じような趣旨のことが述べられておりますので、ひとつその点にしぼって御所見を伺いたいと思うのです。
  39. 東畑精一

    東畑参考人 いまおっしゃいましたように、実効税率の問題、基本税率と実効税率の差という問題と、それに関連して配当軽課の問題、益金不算入の問題、個人所得、それからさっき配当控除といいましたが、こういう問題、引っくるめて検討する時期が少なかったわけです。実際の問題といたしましては、利子配当の問題につきましては、私が税制調査会に関係してから以後、毎年毎年実によくやりましたが、議論がわりあいに進展していなかった。私はいつかも感想を述べたのですが、議論が進展していない。しかし、議論のやり方は委員の諸君はうまくなりましたねとひやかしたことがあるのですけれども、いろいろ議論をしておりましたのですが、景気が少し悪いときはこういう問題はしにくいのです。法人所得がふえてくるというようなときはやっぱり一番チャンスじゃないかと思っておりまして、特別部会を設けましたゆえんは、そういうところにでございました。  昨年、国会で、参議院でありましたか衆議院でありましたか、ちょっと記憶いたしておりませんが、ある議員の方から、法人税を引き上げるということを考えているが、非常な不景気になってもやるのか、こういう質問がありまして、どなたでしたかちょっと忘れましたが、ぼくはその方に、それはきょう一番痛い質問なんだ、悪くなってもやるかということは、やりますと皆さんの前に約束はなかなかちょっとしにくいと思っております、と答えたわけであります。一本参った質問なんでありますが、幸いにして法人所得というのはふえておりますから、今度は相当全面的なものに関連いたしまして改正したい、こう思っております。議論としてはもうほとんど尽きておるぐらい、皆さん議論しておりまして、どういうふうに実行案、たてまえを立てるかということが問題になっております。
  40. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、先ほどもちょっとお伺いしたのですが、こういう問題は、法人税の基本的な仕組みをどうするかという問題とのかかわり合いで処理されていくということになるわけですね。一番伺いたいのは、それではどういう構想、プランでこの法人税をこれから料理なさろうとするのか、そこのところは、実は長期答申を拝見しても、私のほうでは必ずしもイメージがわいてこない。先生としてはどういうような構想を基本的な仕組みとしてお考えなのかということを、ひとつ明らかにしていただけるとたいへん幸いだと思います。
  41. 東畑精一

    東畑参考人 法人税のそういう問題につきましては、実は税制調査会でも、百人百様というとちょっと言い過ぎでありますけれども、実にいろいろな議論がございまして、どうまとめるかということは苦労せざるを得ないと思うのです。私自身は、どうもいい考えがないのです。それで、しょっちゅう国会なんかに来て、どういう考え方がおありですかということを聞きたい。増本さんから、きょうここでと、そんなことは申しませんが、ビジョンを聞かしていただいて、私どもとしてはそれに応じて技術的な完成をはかるといいますか、そういう次第なんであります。
  42. 増本一彦

    ○増本委員 実は先生からそうおっしゃられますと……。そうすると、先ほどお話ししました配当軽課制度や、受け取り配当の益金不算入とか、配当控除制度ですね、こういうものが全部基本的な仕組みの結論を得なければ、実は処理できない問題であるかのように答申では書かれているわけですね。そこへもってきて、いまの先生のお話しですと、この基本的な仕組みについてのビジョンが各人各様でまとまらない。そういうことですと、税調としては、結局、このような配当軽課その他いま申し上げたような法人税にまつわる問題点というものの解決はできなくなってしまうのではないか。どうも税調では、そういう問題についての解決の能力が、現在のところ百人百様の意見のために出てこないというような感を深くするのですが、いかがなものでしょう。
  43. 東畑精一

    東畑参考人 そこが増本さん、どうまとめるかという、私の腕ですかね。大きなことを言うつもりはありませんよ。そういう問題があります。何とかしてまとめたいのです。おそらくはまとめるということについて反対意見を持っておられる方はないと思うのです。どうまとめるかというのが問題であります。  それともう一つは、どうも私としてわからぬ問題は、いわゆる法人擬制説と実在説的な考え方がございまして、それは日本として決着していないのですね。ことに商法の問題なんかございまして……。だから、問題は非常に広範なんですが、この答申のときに、全体に触れないでは部分的に何もやらないのか、そういうことでありませんで、何か全体のビジョンを描きながら一城一郭をこわしていく、こういうことでいくよりしかたがないかと思うのです。景気よく一挙にやりたいのですけれども、なかなかそれは実際問題としてむずかしいのです。ただ、頭に描いている一種の理念を考えながら一つ一つこなしていったらいいじゃないか、こう思っておりますので、少し長い目でこれはひとつ考えていただきたいと思います。少なくとも過去十年以上にわたってたびたびこれは議論した問題であります。
  44. 増本一彦

    ○増本委員 先生も、この配当軽課税率が大企業、特に配当性向の強い企業に非常に有利に働くということはしばしばお認めになってきたことであると思いますし、これは一般的にもいえることであるというように思うのです。その上先ほどからも議論になっています租税特別措置軽減効果というのも、大蔵省からいただいている資料を見ましても、やはり大企業に特に手厚く働いているというようにいえると思うのです。準備金や引き当て金などは、特に今日のような経済情勢のもとですと、買い占め資金にもなっている。これは経済危機の根源の一つとしてやはり重視しなければならぬ。しかも、この特別措置というのは外国にもあまり例がない。このことが資本金の小さい企業と大きい企業との間の法人税の負担の公平を阻害する要因になっているということも、これは大蔵省からいただいている資料によってもはっきり指摘できるというように思うのですが、これは再検討されるというように先ほど御答弁がございましたけれども、やはりこういう誘導税制を、今後の経済の状態、日本の進むべき経済の方向をにらみながらどう料理していくのかといいますか、そういう明確なプログラムというものを私はこの際、税調としてはお持ちになるべきではないかというように思うわけです。そういう点で、単に四月から十二月までの間に翌年度の税制をどうするかという問題とあわせて、いまここへきて高福祉の経済をつくっていこうという条件のもとで、こういうような誘導税制をどういうように再検討し吟味するかというようなプログラムがぜひとも必要になってきていると思いますが、その点はいかがでしょう。
  45. 東畑精一

    東畑参考人 申し上げたいと思うことが一つありましたのでちょうどいい機会ですが、どうも税制調査会といたしましては問題は二つありまして、毎年毎年の減税問題あるいは増税問題につきまして、エネルギーを奪われることが非常に多いのであります。私はそれよりはもう少し長期の考え方といいますか、それこそ基本的仕組みという問題に重点を置いたそういう税制調査会、それが本格的なわれわれの働く任務だと実は思っております。ところが、毎年毎年の問題になってきますと、それに実際はエネルギーを奪われまして、ことに一昨年のごときは事業主報酬制度、あれにはもうずいぶんエネルギーを奪われまして、何回やったか記憶いたしておりませんが、ああいうこともありました。あれは残念ながら、自民党と一致できなかったのです。  そういうこともありましたが、そういうそのときそのときの問題は一体国会がおやりになったらどうだ、率直に申しまして。多少なりとも役に立つのであれば、長期的な考え、基本的な考えというもの、そういうふうに税調を運用したら一番いいじゃないか。私の過去十年の経験ではそうなのであります。やめるときですから、そういうことはひとつ大蔵省にも考えてくれないかということをよく申して、あるいは国会で少しそういうこともやっていただきまして——それは個々的に三十何人、それぞれのエキスパートなんですけれども、委員というのはそうそれに専念できませんということもございまして、毎年毎年の問題になってきますと、なかなかこれはそのときそのときの事情ということを、日本は目の色が変わるように変わるものでありますから、それを私どもがフォローするということは正直なところなかなかむずかしいのではないか、こういう考えでおりますので、きょうお聞きしたことなんか気がつかない問題もございます。それはもちろん検討いたしますが、大局的なそういう意味では、税調そのものを一度考え直せということも政府に対して言っていただければ非常にありがたいことだと思っております。
  46. 増本一彦

    ○増本委員 せっかくの先生のそういう御趣旨でございますから、その意はやはり積極的に体して進めていくようにしなければならないというように思います。  多少個別の問題にわたりますけれども、この特別措置の中での特別償却の問題なんですが、実は大企業であればあるほど、この特別償却を使う比率が非常に高まってきている、しかも、新しい機械設備の定額法ではなくて定率法による償却をするようになって。現在では、機械設備の耐用年数も非常にふえているようになっているわけですね。ちょっと統計を調べてみましたら、減価償却率が一九三六年には六%弱であったのが、五五年に一一%、最近は一五%をこえるというような状態なんですね。これは実質的には、費用を大きく見せかけてもうけを隠すというような役割りも果たしているわけですね。こういう特別償却についても、私はこれは特に資本金などで、たとえば資本金十億円以上というような形で、一定の線を引く必要があると思いますけれども、こういう問題も十分お考えになる必要があるのではないかというように実は考えているのですが、そういう点は税調などで議論にはならないものなんでしょうか。
  47. 東畑精一

    東畑参考人 いまのお話は、私、ごもっともだと思っておりますが、実は戦前、過去と申していいかもしれませんが、過去におきましては、それほど大きな技術的革新ということはございません。戦後、ことに昭和三十年以後は技術革新ということが行なわれるようになりまして、それはどうしても大きいところが最初に手を打っていく、小さいところは打てないということになる。そういう形で特別償却ということがいわゆる大企業に有利に働くといいますか、ということはあり得ることだと思います。それから設備が非常によくなりましたので、耐用年数ももちろん長からざるを得ないと思う。何年が正しいかどうかということは、これはちょっとよくお答えいたしませんけれども、大勢としては高くなってくることは事実なんです。大企業が技術革新をやる、固定資本というものは非常に多くなってきた、そのことが償却ということにつきまして有利に働いているということは、これは大勢だと思っております。これはおっしゃるとおりであります。  これについて、どういうふうな税制でやるかということは、一つの大きな問題であるかと思っております。法人税の問題につきまして、先ほど申しましたように、利益計算の基礎、やり方、これをもっと検討しなければ、ほんとうの法人税問題にメスを入れるということはむずかしいのではないかと思います。
  48. 増本一彦

    ○増本委員 時間がありませんので、あと一間にしぼりたいと思います。  もう一つ法人の課税所得の拡大に関連しまして、交際費課税の問題について若干お伺いしたいと思うのですが、今回千分の一にさらに圧縮をするようになったわけですけれども、まだその超過分の二五%が損金算入ということで残っているわけですね。資本金の大きい会社について特に問題になると思うのですけれども、一体、この二五%の損金算入が現実に必要なのかという問題が、やはり疑問として依然として私は残っているわけなんです。この問題は、私のほうは廃止すべきではないかという考えを持つのですが、その点は先生はいかがなのかということ。  もう一つは、交際費と関連しまして、いま社会的に問題になっているのは政治献金の問題です。政治献金が会費とか寄付金の名目で損金に算入されて、これが実は一般管理費、販売費と一緒に総原価として加算されて、結局、そのツケが国民にいろいろな形で回ってくるというようなことにも実態はなっているようであります。この政治献金の問題というのは、政治資金規正法の抜本的な改正によってもちろん正当にアプローチをしていく、これがオーソドックスな考え方であるし、それをやらなければならないと思うわけですが、やはり税制の面でも、この政治献金が名目のいかんにかかわらずいろいろな意味で損金になることのないように、道をやはりふさいでいくということも一つの手だてではないだろうかというように考えるのですが、税調でそういう御議論があるのかどうか、また先生としてはどのようにお考えであるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  49. 東畑精一

    東畑参考人 政治献金につきましてあまり議論したことは実はございませんが、われわれ新聞から知ること以上は存じませんけれども、これは実によくわけのわからぬものでして、選挙費用と政治献金というのは最も、つまりわからぬものの一つであります。これを——いま増本さん、盛んに先生、先生と言われて、どうも少し恐縮なんですが、あまり先生と言わずにおいてほしいのですが、これを何とかするということになってきますと、これは事実上われわれとしては不可能なんです。これは皆さんお互いにひとつ話し合われたが一番賢明なんじゃないか。政治献金はいかぬとかいくという問題ではなしに、私個人としましては、今日のように選挙に金がかかり、議員としての体面というものを保つためにはずいぶんお金がかかるようなんです。しかし、これは逆に言いますと、国民が悪いのですよ。議員は何でもやるべきものなんだということで、結局、日常でも支出をずいぶん心理的に強制してくるというようなこともありまして、これはどうも日本の政治の運行上、決して好ましいことではないと思うのであります。しかし、おまえどうするのだと言われますと、頭を下げざるを得ないのです。いわんや先生、先生と言われると、なおぼくも恐縮して、この点だけは許していただきたいですな。
  50. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、最後に、中小企業法人の軽減税率の問題についてちょっとお尋ねしたいのですが、実はアメリカの法人所得税を見ましたら、普通税が二二%で、二万五千ドルをこえる所得に二六%ですかの付加税がつくということになっておりますね。それで、実はいまの為替レートで計算してみましたら、大体二万五千ドルというのが七百万円から七百五十万円ぐらいのところにいくわけですね。今度、法人税法で中小企業の軽減税率の適用範囲がちょうど七百万円に拡大される。これはたいへんけっこうなことだというように思うのですが、そういうバランスで見ますと、アメリカと比較してみますと、まだ実は中小企業の法人の軽減税率は、アメリカの普通税の税率二二%よりも六%高いという計算になるわけですね。ここで、中小企業の日本の実態を見ましても、やはり五%ぐらい引き下げてもよいのではないか。また事実、中小企業法人の中にそういう要求もあるわけですが、一方で大企業に対して引き上げると同時に、日本の中小企業のいま置かれている状態を考えますと、そういう税率軽減という面での配慮もやはりすべきではないかというように考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
  51. 東畑精一

    東畑参考人 ちょっとアメリカの事情を頭に入れておりませんが、ごく一般的なぼくの気持ちをお話しいたしますと、中小企業を優遇する、その経済的発展をはかるということは当然のことであります。ことに、日本のように中小企業の多いところは当然のことなんでありますが、ただこういう点をひとつお考え願いたいのでありますが、現在の日本における富の流れといいますか、所得の流れといいますか、あるいはお金の流れというものは、戦前からずっとわれわれが持っておった常識と少し違っているのではないか。ある種の中小企業というのは非常にたくさんのお金を持っている、非常に高額な所得をあげておるということ、これはなかなか把握しにくいのであります。予想ですから、感じでありますが。  日本の所得問題あるいは資本蓄積問題については、それがはっきりしないと、ほんとうの本格的なことはできないのではないか。おそらくいかなる場合においても、十年とか十五年かからないと流れはわからないのじゃないかと思う。とんでもないものがとんでもないところで売れているなどということは、これは必ず中小企業とは申しませんけれども、一般的な意味で、ことに給与所得、それから大企業、そういうところでつかまれる範囲外のことが相当多いのじゃないか。これが将来の日本にとって非常に大きな影響になってくると思いますので、そういう点につきましても、十分御考慮願いたいと思っております。  ただ、表面的な意味では、中小企業を大事にすることは当然のことであります。いわゆる中小企業というものの名において、必ずしも中小企業ではない、こういう所得の流れと資本の流れというものが、いまの日本にあって、なかなか芽が水面に出てこない。これが日本の将来の経済という問題を考え一つの大きな長期的課題だと思っております。こういう心持ちも実は持っております。その他の点につきましては、ごもっともな点が多いと思います。
  52. 増本一彦

    ○増本委員 時間ですので、どうもありがとうございました。
  53. 安倍晋太郎

    安倍委員長 広沢直樹君。
  54. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、三点ばかり東畑会長にお伺いしたいと思います。  まず第一点は、東畑会長も現在の経済社会情勢、特に本委員会、予算委言会でも問題になりましたいわゆる超過利得といいますかあるいは不当利得といいますか、そういうような大商社とかあるいは企業の先取り値上げの問題等もお聞きになっていらっしゃると思うのですが、その中で特に問題になってきたのは、やはり超過利得をどうするかということ、それが税金ということになればわれわれの所管にかかってくるわけですし、当然、税制調査会としても単に傍観的に看過できない問題じゃないか。大蔵省においても、その問題が起こってきたときに、一応それなりの見解は持っておったようでありますが、現在、各党の案が出て、これから相談するというような段階にきておるようであります。いずれにいたしましても、それは臨時立法でもありますし、こういうような社会情勢、経済情勢に合わせて、税制のあり方というものを基本的に考えてみなければいかぬのではないかと思うのです。  そこで、税調としても、こういう不当利得とかあるいは適正利潤率とかいったものについて御研究なさるあるいは御検討なさるお考えがあるかどうか、そのことを最初にお伺いしたいと思います。
  55. 東畑精一

    東畑参考人 昨今いろいろ新聞その他で拝見いたします超過利得税ですが、これにつきましては、超過利潤税ですか……。
  56. 広沢直樹

    ○広沢委員 いろいろな言い方があります。
  57. 東畑精一

    東畑参考人 それにしても、いろいろなかなかむずかしくてあれしませんが、どうも私は少々悪いことをしてもうけたやつをいじめて金を取り上げるというのはちょっと痛快なんですけれども、しかし、どうも税にそういうような罰金的な思想を盛り込むということになれば、これは反対せざるを得ない。税制というものはそういうものではないのだ。国民が国家の運営に必要な金を出し合ってやっていくというものなのであります。罰金を取るということでないと思いますが、そういうにおいがあるのではないかという点が頭にひっかかる点であります。  それはともかくといたしまして、もう一つひっかかる点は、一体、超過利得というものは何なのか、こういう問題なんです。それで、千載一遇の好機でもうけた人もありましょうが、営々と、具体的な名はあげませんけれども、努力しまして、技術改良していくということで非常な利益をあげておる人もございますので、超過利得というものを定義するということ自身が非常にむずかしくて、変に定義いたしますと、それを帳簿上全部隠してしまう、そういうこともありまして、私は超過利得税にはあまり賛成しかねる気持ちでおります。  ただいろいろな案が出ておりましたが、また——まだというとことはは悪いかもしれませんが、たしか社会党の案ではなかったかと思っておりますが、若干法人税に付加するということですね。付加するが、ただ段階的にどうのこうのという問題は別といたしまして、法人税に対する付加的な観念というのが一番フィージブルじゃないか、こういう観念を持っております。あとはどうも技術的にむずかしいのじゃないか。ちょっと案を立てろといわれましてもできないということと、それよりも心配なのは、そういうことがあれば超過利得を消すといういろいろな操作というものが非常に行なわれまして、これは私はどうも好ましいことではない、こういう観念であります。それほどあまり検討したことはありませんけれども、ちょっとした感じではそうであります。
  58. 広沢直樹

    ○広沢委員 この問題についての御所見をお伺いしたわけでございますけれども、ただ、もう一点申し上げておきますと、これは当時の予算委員会におきましては、政府当局も、そしてまた、テレビ、ラジオを聞いておった国民も、すべての方々がその指摘されたあくどいやり方については憤りも感じたし、そういうふうな国民の犠牲の上において利益を得ていこうというものについては何らかの方法を考えなければいかぬじゃないかという中から、財政当局の大蔵大臣も、何とか対処をしなければならぬというようなお考えも示していらっしゃるわけです。したがって、そういうものに対する税の体系考えたり、あるいはまた、そういうものに携わる者としては、やはりこれについての研究なりあるいは検討なりということは、結論がどうなるということはその検討の結果でございますから、はっきりどうなるということはやってみなければわからぬでしょうが、やはりこれからの税制のあり方を社会の現象、経済の状況に合わせて御検討なさる税調においても十分検討し、論議すべき問題ではないだろうか、こう思いますので申し上げたわけでございます。個人としての御所見はお伺いしましたけれども、それに対して御検討の余地がある、あるいは議論の価値があるということであればと思いますので、もう一度お伺いしてみたいと思います。
  59. 東畑精一

    東畑参考人 私は検討を否定するわけではありませんよ。大いに検討していただきたいのでありますが、検討一つの項目といたしまして、つまり、利益計算のやり方ですね、会計上といいますか簿記上といいますか、これについて検討が最も大事じゃないかと思っております。まあそういう点が主眼点じゃないか。検討し、これが問題になっていることは事実なんです。一罰百戒とかいうことばがありますが、それを税のところに持ち込むということは厳に慎まなければならぬ。ちょっと痛快みたいなんですがね。あれは選挙なんかにはいいんですよ。だけれども、それは私は慎まなければならぬ、こう思っております。
  60. 広沢直樹

    ○広沢委員 それじゃ第二点の問題に移りますが、過日参院の本会議におきまして、税法三法の趣旨説明に対する質疑がありました。その中で田中総理は、重税感という問題の観点から、いわゆる直接税中心主義の方向を転換するという意味合いの意向を明らかにされておられるわけでありますけれども、今回の改正におきましても、先ほど東畑会長から御説明があった中にも、間接税の強化、立場はどうあるべきかという御示唆がございましたけれども、今回の改正印紙税の増税だとかあるいは自動車関係税の増税、いわゆる間接税の増徴というものをはかられておるわけでございますが、そういう一環として見ますと、やはりこれからの福祉財政ということを念頭に置いて考えた場合に、これまでは大蔵省としては、税務当局としては、現在の直間というものはこういう体系のままで一応いくんだという方向を答弁されているし、示されていらっしゃるんですが、税調としては基本的にはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  61. 東畑精一

    東畑参考人 直接税、間接税をどういう割合に置くかということについて、委員の方それぞれ意見がございました。税調としてそれをどういう比率がいいかということは、議論したことはたしかなかったと思います、われわれとして別に何を本位にするかという考えは特に持っておりませんので。  ただ、間接税問題につきましては、いまの個別物品税というのは相当の不公平——不公平というとおかしいのでありますが、よく御承知のことかと思いますが、ものによりましては全然無税になってしまう、似たようなものでも非常に税がかかる、ああいうこともございまして、私個人といたしましては、これは将来の問題になるかと思いますが、例の付加価値税ですね、ああいうものを導入したらどうだという議論もございます。また西洋諸国もだいぶ導入しているわけでありますが、そこまで一挙に考えないで、もう少し一般的な物品税と申しますか、そういう形をだんだん近寄せていくということが大事ではないか。個別物品税はどうも不公平感が強くなる、だから、一般的なそういうことにしたい。と申しますのは、全体として日本の所得というのはふえてまいりまして、可処分所得というものもえらい片寄らないで、ずいぶん一般大衆のものになってきた。そういう意味に照応いたしましても、一般的な取引税といいますか、それをやるのがまず第一歩ではないか、こう思っております。その結果が、間接税が多くなるか直接税が多くなるか、これはちょっとわかりませんけれども、その比率——比率は戦前に比べましてもう非常に逆転いたしておるのでありますが、それを戦前に返すとか、そんなことは石頭で、そんなことを考える必要は一つもないかと、こう思っております。
  62. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、最後の第三問の質問をいたしたいと思います。  四十九年度税制改正にあたっての税調答申、いろいろつぶさに読ましていただきました。今回は所得税のいままでにない大きな減税をしておりますし、そしてまた法人税においても、いままで再三議論されてまいりましたけれども、基本税率が引き上げられている。その他先ほど御説明がありましたことで、相当いろんな面で大きく変わってきていることは認めます。税調におきましても、こういうような大きな変革でありますから、先ほどもいろいろお話がありましたように、相当御苦労なさったということで、小さい面まで一つ一つつぶさに御回答なさっていらっしゃる。それに基づいて出てきた政府提案というものは税調答申どおり、まあほとんど、ほとんどというか全部税調答申どおりになされているといってもいいくらいですから、たたき台を検討された税調なのか、税調がいろいろな面を総合しておつくりになって、それをこういうふうな形で提案されているのか、どちらにしましても、相当いろいろな問題があります。  しかし、こういう大幅な改正が行なわれておりますけれども、なかんずく、先ほども話がありましたように、法人税改正に私どもも非常に注目をしておったわけであります。もちろん、所得税の大幅減税もいままで主張してまいりましたから、そのことについても注目をしておったわけでありますけれども、なかんずくというのは、やはり産業構造の転換ということがございますれば、当然それに伴って税制もそれに即応した体制というものはとっておかなければならないからであります。  そこで、いままで数々問題になってきておった分が、いろんな面でまだペンディングになっているのです。先ほども御指摘がございましたいわゆる所得の中の社会保険診療報酬課税の特例の問題につきましても、長いこと論議されてきて、大蔵当局としては税調に諮問してある、答申が来るまでという話になっておりますし、さらには、法人のいわゆる配当軽課あるいは受け取り配当の益金不算入の問題にしましても廃止しろという議論が行なわれておりますし、われわれもそれを主張しているわけですが、この答申の中にはつぶさにその両方の議論を、こういう議論もあるということを正直に載せていらっしゃるわけですね。  どちらにしましても、結論は、そういう問題点になったいわゆるいままで企業優遇ではないか、もう少しそれを強化すべきではないかと議論になった点が、折衷案的な形にとどめられているのもあるし、あるいはペンディングになったままのものもあります。それは先ほども話がありました、いわゆる法人税の基本的な仕組みを検討してからということになっているようでありますが、やはり税調において、こういう基本的な税制の仕組みというものを検討するには、相当の期間と鋭意検討が必要であろうと思うのですが、大体の目安というものがなければならないだろうと思うのですね。竜頭蛇尾に終わらないように、いまから研究に入って、いつまでというわけではなくても、やはり目安を立てて、現在の社会情勢、経済情勢、これからのあるべき姿に即応して、その時点に立って一つの方向づけを出す。このようにこまかく一つ一つしてきたことが、すべて法案になって提案されてくるということじゃなくても、先ほども話がありましたように、長期的にあるべき姿の方向はこうだという結論を出す意味からも、やはり法人税につきましても、あるいは所得税につきましても、ペンディングになっているものについて、目標期限といいますか、そういった目安というものをはっきりさせて、ひとつ今後お考えいただきたいと思うわけであります。  それで、いま申し上げました法人税のペンディングになっております企業優遇といわれている仕組みの配当軽課の問題あるいは受け取り配当の益金不算入の問題等については、大体いつごろまでに結論を出されるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  63. 東畑精一

    東畑参考人 いろいろなペンディングの重要なものは残っております。これはわれわれとして任期一ぱいやる。終わらなければ次に渡していくわけでありますが、しかし、期限の来ている問題がたくさんあります。これは期限内に、いずれにしたってやらざるを得ない、こういうことになっております。あとはうまくいけば、今年中には長期もできるでしょうが、長期税制を考えると、なかなかそう簡単にはいかないのじゃないかと思っております。  それで、先ほども申し上げましたように、私といたしましては、税制調査会は主として長期の問題を十分議論して、毎年毎年の問題につきましては、これは政府なり国会におまかせするのがいいのではないかと思っております。と申しますのは、私も昔からいろいろな政府委員会に関係したことがあります。そういうことはかなわぬというのでやめた米価審議会、これも六、七年やりましたが、これは一本答申以外は出さないということで、みんなを納得させて出したのです。それを政府が実行することはめったになかったのですね。翌年実行したということはあります。そんなことにはあまり努力したくない。それで、そういう気持ちが十分起きまして、だから、政府調査会というのは、最初に申しましたように、行政庁内の一つ委員会であって、私どもは技師なんですよ、正直のところ、それ以上は望むべくもない。こういう形でずっとおりますから、実行できることは早くやる、できないことは十分練る、こういうことでございます。  だから、ペンディングのものを今年中に片づけろと言われても、それは何とも申し上げることはできない、こういう次第でありますが、少なくとも期限が来ている、解決しなければならぬ問題というものはやります。また事実、期限が来ると、日本はまとまるのです。妙な国でありまして、期限が来ないとなかなかまとまらないのであります。期限で攻められているということはある意味でまとまるということにつきましては、ありがたいことであります。
  64. 広沢直樹

    ○広沢委員 税調の運用の中に立ち入ってはなはだ恐縮なんですけれども、やはり一応当局に対しましては、われわれがいろいろ見解を述べ、議論もします。しかしながら、税調に諮問をしてあるというようなことで、その答申待ちという考え方が非常に強いものですから、やはり税調のほうにおかれましても、そういういろいろな問題を御検討なさるときに、目安というものを立てて、早く答申をいただきたいのもあるし、あるいはその方向づけを決定していただきたいのもあるわけでございまして、一つの例として申し上げた、いわゆる診療報酬の問題にしましても、長年の問題ですし、まだ答申結論が出ません、一体どうなんだろうという議論を繰り返しておってもしかたがないですし、あるいはいま御指摘しました、いわゆる法人税配当軽課の問題についても、これは税制の基本を変える段階においては、いち早く結論をいただきたい。これも長い間の法人実在だ、擬制だという議論が固まっていないというお話も先ほどありましたが、やはり社会情勢から見ましても、財界におきましても、あるいは税調答申の中にありますように、社会的責任というものを企業自体が負うということがはっきりしている時代が来ているわけですし、その方向についても、これは税制の一番の基本であろうと思うのですが、それぞれのその時点においての見解も必要でしょうし、これからのあるべき姿の見解ももうそろそろ示すべきではないかと思うわけでございまして、その点を要望として申し上げながら、御質問を終わることにいたしたいと思います。
  65. 安倍晋太郎

    安倍委員長 竹本孫一君。
  66. 竹本孫一

    ○竹本委員 東畑参考人には、毎年どうも御苦労さまでございます。すでに同僚委員から大部分の問題は言われましたが、少し角度を変えながら、二、三の点だけお伺いをいたしたいと思います。  第一点は、税制調査会のみならず、すべて調査会というものは、政府から諮問された場合に、それに答申をする、いわゆる非常に受け身の、パッシブな形だと思うのですけれども、従来、税制調査会が独自の立場において政府のほうに積極的に建議、提案をされた例があるかどうか。  それから次には、いま懸案事項の処理等についても、いろいろ御議論がございましたけれども、もし積極的に出すというような例があり、また今後もやろうという場合に、東畑会長としては、まずどういう問題を、むしろ政府に働きかけても、税制改革の上において実践をしたいというようなお考えを持っておられるか。その点をひとつお伺いしたいと思います。
  67. 東畑精一

    東畑参考人 もちろん政府の諮問委員会でありますが、ものによりましては、諮問の内容というものは総論でございまして、たとえば長期税制の答申なんというのは、別に政府案のいうものはあったわけではございません。われわれがつくったということであります。ですから、諮問委員会という名のものは、何か具体案を出されて、どうのこうのということもございますけれども、そればかりではないということを御記憶願いたいと思います。  今後やりたいのは、先般の答申に出したペンディングの問題が残っております。たとえば今度法人税全般検討特別部会も設けるわけであります。これは当然、法人税の、それに関連の税制の検討をいたしたい。きょうだいぶ皆さんから具体的な問題についてお聞きしました。それもやりたいとか、あるいは社会保険診療報酬問題ですか、これもやることになっておりますし、間近な問題というのは、これは約束しておる問題でありますから、やらざるを得ない。はたして十分やれるかどうかは別問題でありますけれども、おそらくは、国会が済まないと大蔵省もちょっと余裕ができないのじゃないか。そのころから見合って、あるいはその前から税制調査会を再開いたしまして始めたい、こう思っておるのであります。
  68. 竹本孫一

    ○竹本委員 第二の問題ですけれども、いまの問題に関連をいたしますが、東畑先生もおそらくそう感じておられるのではないかと思いますが、私ともの立場から申しますと、日本のいまの——ごく最近は総需要抑制ということで変わりましたけれども、大体、政府がインフレ指向型である、それからわれわれを含めて政治家というものは大衆迎合的である、こういうことで、日本の経済政策というものは正しく経済の論理に従ったものではなくて、時の政治的な勢いとか配慮とかいうもので筋が曲がる場合が多いというふうに私は思うのです。たとえば、インフレの問題にしましても、フランスの例を見ても、ドイツの例を見ても、ちゃんと、インフレの方向に動き始めた瞬間に五人委員会とか九人委員会とかいうものがありまして、この際増税もやれ、総需要も抑制しろ、あわせて金融も引き締めろ、こういうふうにやっておる。ところが、日本の場合は、御承知のように、ごく最近までは金融引き締めをばかの一つ覚えでずっとやってきている。こういう意味で、私は、財政あるいは税制の面からの時代の必要に対応するしかたが、いろいろ立場、事情もありましょうけれども、なまぬるい、こういうふうに思うのです。そういう意味で、税制調査会の権威の皆さんが集まっていられるわけでありますから、これは要望ですけれども、今後とも大いに積極的に、時代の必要に応じた弾力的な税制の運用なりあるいは新しい税制のあり方なりを打ち出してもらうように要望いたしておきます。もちろん、これは政治家が自分でやらなければならぬ問題ですから、東畑先生のほうに責任を転嫁するという意味ではありません。しかしながら、あわせてそういう要望を申し上げておきたい。  次に、先ほどもちょっと御議論がありましたが、臨時利得税の問題ですけれども、これは一方からいえば、技術的にかつ事務的に非常にむずかしい問題を含んでおるし、へたにやれば逆効果になるというところまでいくかもしれませんし、少なくとも所期の目的を達するにはなかなかむずかしい。あるいは大蔵省やわれわれが考えるようなこと以上に、商社なり大企業なりのほうが悪知恵がありますから、裏をかかれるという心配もある。そういう技術的、事務的な困難性は十分私もわかりますけれども、しかしながら、一方において税に関して一番いわれることは、先ほど来御議論がありましたように、公平の原則があるし、それから税ということを中心に日本の政治のあり方を考えた場合にも、やはり政治に対する信頼、裏からいえば不信感、そういう問題を払拭するという大きな課題があるわけですが、やはりこの際は、技術的な困難を乗り越えて、国民感情に沿うあるいは政治に一つの正義を貫くものを持たせる意味においても、臨時利得税というものは、超過利得税というか不当利得税というか、呼び方にもいろいろ問題がありましょうけれども、とにかく臨時の応急の措置をとるべきだと思いますが、もう一度先生の御意見を端的にお伺いをいたしたいと思います。
  69. 東畑精一

    東畑参考人 先ほど申しましたことを繰り返すようになりますが、臨時利得というものは技術上の問題であります。技術上は突破してというお話でありますが、それは税のようにこまかい問題につきましてはできないかと思います。総論はたいがいみな一致しているのですよ。みなこれは各論的な問題になります。臨時利得というものの概念自身が、非常にやっかいな問題である。それを変にやれば、先ほどあなたがおっしゃったように逆効果といいますか、裏をかかれるということがびまんいたしまして、どうも困難であると思います。そういう点が中心になっておりましてむずかしい。  それよりも、所得がふえていくのですから、そこから法人税というものをうんと取れ、こういうふうなのが筋道ではないか。あんまりそのときそのときの必要に応じて複雑な税制をつくってくるということは、どうも私はあまり賛成いたしません。税制そのものは、非常に簡単であるが、まんべんなく網に引っかかる、こういうことでありますが、臨時利得税のいろいろな御議論を聞いておると、まんべんなく引っかからないのですよ。そこが一番の問題であると思います。かえって不公平を増すのではないか、こういう考えも持っております。これは私のただの思いつきかもしれませんが、そういう感じを持っております。どうも臨時利得税にあんまり賛成したくありません。これはしかし、税制調査会皆さんはどうか存じません。
  70. 竹本孫一

    ○竹本委員 先生の言われるのもよくわかりますが、しかし、政治における一番大きな課題というものは、先ほど来の公平感、公平の原則を貫くとか、あるいは社会正義的な国民感情を尊重するとかいうことですから、やはりこの際は、私は臨時利得税というものは設けるべきである。ただし、これはいま御指摘のように、また私も言っているように、いろいろ矛盾がありますから、長く考えるべき問題ではなくて、暫定的な、時限的な立法でやるべきではないか。しかし全然やらぬということでは、いまの政治はそれこそ大企業にべったりだとか、あるいは商社の前に力がないのだというようなことで、不信感のほうがふえるわけでありますから、臨時利得税なら臨時利得税というものをつくった場合における先生のお話しの不公平がふえる面と、それからやらない場合の不公平というものとのバランスの問題だと思うのです。どちらがより大きく不公平であるかという問題から考えまして、かつてイギリスで、ポエティカルジャスティス、詩人的正義を追求するか、ポリティカルジャスティス、政治的正義を追求するかということが議論になったことがあると思いますが、この際は詩人的あるいは事務的な議論でなくて、レベルを高めて、政治的レベルの正義、政治的正義を貫くということのためにやはり実行すべきであるし、先生においてもそうした角度から御検討を願えるとありがたい、かように思います。これも要望にとどめておきますが。  次に、いま先生からお話がありました複雑になっては困るという問題から、一、二簡単に御質問をしたいと思うのです。  まず第一に、税のあり方の問題で、先生の言われるように、もう少し複雑でない組織というものを考えるべきではないか。たとえば、いま税だけで考えて簡単にいいましても、今回も問題になっておりますけれども、自動車に関する税金というものは地方税まで含めますと九つありますね。これはもう少し交通整理をしようということは、前回の国会で重量税が問題になったときにも問題になったのですけれども、いまだに整理されていない。そういうわけでとにかく自動車関係の税は、性格は違いますけれども、あれこれ入れて九つもある。これをもっと簡素化する必要がありはしないか。法人税も、先ほども段階を多くしたらどうかという意見がありました。私も実はその意見に賛成なんですけれども、しかし、これも複雑だとかむずかしいという事務的な意味の反対論があります。それにしても、すでに二つあるし、そのほかに配当の軽課といったような考え方もあるし、受け取り配当は益金不算入だとかといったような制度もありまして、法人税といえども必ずしも簡単明瞭にはいっていない。それらを含めて、とにかくすべての税体系というものをもう少し簡素化しなければいけないのじゃないかという点が一点。  それから、税制調査会は、租税制度に関する基本的な事項を取り扱う。基本的な事項とはどこまでか私もちょっとわかりませんが、その意味において、あるいは税調の直接の問題ではないかもしれませんが、一つ税法の文章、法文の表現の問題ですね。これはよほどの専門家でないと読んでもわからないと思うのです。そういう意味で、いろいろ税制改革をやられる場合、ひとつ考えてもらいたい点は、私は二つありまして、一つは、きのうもわれわれ理事会で税の担当の職員からもいろいろ話を聞いたわけですけれども、この十年間、税務担当の第一線の職員はほとんどふえていない。六百人ばかりふえただけですね。六百人ばかりふえて五万二千人になっている。ところが、課税対象というようなもの、あるいは収入なんというものは二倍、三倍、税収のごときは四倍半くらいになっている。したがって、いろいろ税制を考える場合に、一つはそういう法律をつくってみても、はたしていまの国税庁の職員、国税庁の事務消化能力で消化できるかどうかということをどの程度考えておられるか、せっかくきびしいような税金を考えましても、業界に裏をかかれるだけの税制になってはどうにもなりませんが、人は変わらない、それから能率もそう変わるものでもない。ただ法律だけたくさんできる、こういうことになると、事務的消化能力を越えておるのではないか、あるいは越えるではないか、そういう一つの消化能力の面をもう少し考えるべきではないかという点が一つ。  もう一つは、国民大衆が税に一通りの理解を持てるような形にならなければいかぬ、そういう意味から申しますと、税の筋道がもう少し簡素化されることと、それから税法の文章がもう少し庶民が読んでわかるような文章にならなければ何を書いているのかよくわからぬということではどうにもならぬと思いますが、その点について伺いたい。
  71. 東畑精一

    東畑参考人 いろいろな御要望のことよくわかりましたから考えてみますが、税法の文章ですか、これは私が読んでもわからぬことが多うございまして、というのは、私はもうおそらく竹本さん御賛成だと思いますが、やはり法三章式のようなものが一番いいと思うのですけれども、世の中は複雑なものですから、うまくカバーするために、どうしてもむずかしくなってくる。それと悪いやつ——悪いやつということばは悪いですが、たくさんおるのですから、それを押えるということのために、ああいうことになったのです。善良な国民なら読まなくてもいい点が多いのですよ。みな悪いやつを押えるという文章になるとああなってくるのですかね。その点がずいぶんあると思いますが、税制調査会といたしましても、前々回でございましたか、一昨年でしたか、一昨々年だと思いますが、だいぶ時間をかけまして税法の簡素化という問題をやりました。これは相当の効果があったと思っております。  それからもう一つ、税務職員の問題でありますが、これは私も非常に税務職員には同情いたしております。とにかく人員はほとんどふえておりませんし、それから課税対象が非常にふえておるのですね。額がふえるのはかまわないのですけれども、会社の数がふえないというなら簡単なんでありますが、給与所得税の対象になる人間も非常な勢いでふえている。これはまだしも、法人が非常にふえておるのであります。これをやるのは、私は税務当局としては非常な苦労ではないか、こう思っております。しかし、長い間の経験でタイプというものはだんだん税務行政をやる上において出てくるものでありますから、その意味の能率というものはふえてくる、しかし一般的にいいまして、税務官吏はオーバーワークをやらされておるということは、これは確かであります。
  72. 竹本孫一

    ○竹本委員 法文が複雑化したりしてきた経過はわかりますし、悪いやつの多いこともよく承知いたしておりますが、しかし、悪いやつは具体的にこまかく書けば書くほど裏をかくということがやりやすくなるわけですね。そういう意味で、やはりこれはもうこの辺でこれ以上法律はふやさないというぐらいの決断が必要ではないか。  それから、なおこれは、あるいは主税局長あたりに言わなければならぬことかもしれませんが、ちょうど教育の場合に、先生御存じのように、指導要領というのがありますね、テキストがあって、あとで指導要領というのがまた別に書いてある。あれと同じように、いまの法律を大部分、いわゆる法三章にはならぬでしょうけれども、そういう簡単なものにする。それからいまの税法で書いているようなものは、備考に入れるか、注に入れるか、あるいはその指導要領といったものに入れればいいので、とにかく税に親しみが全然持てないというような、あるいは税法に親しみが持てないようなあり方は間違っている。したがって、私はちょうど中間をとりまして、きわめて簡単に税法を書いておく、しかしながら、こまかい、悪いやつに裏をかかれないようにする用意としては指導要領のほうで、まあ各省の通達、大蔵省の通達等で微に入り細をうがって書けばよろしい。しかし、庶民の悪いことをしない人間は、何もそんなこまかいことには関係ないのですから、一般庶民が開いて読んでもわからないというような税法はひとつ変えたらどうか、こういうことでございますから、御検討願えればありがたい。  最後に、もう一つだけでございますが、税の教育あるいは税の宣伝といいますか、PRといいますか、そういうものについてでございますけれども、今日、学校教育等において正しい納税意識というものをどの程度に教えているのか。これはまた別の機会に論議すべき問題だと思いますが、もう少しその点で力を入れるべきではないか。  それからもう一つは、たとえば納税意識の問題だけでなくて、納税の方法等につきましても、御承知のように、三月十五日所得申告をやりますね。あれもずいぶん懇切丁寧に指導してあるのだけれども、自分でやれる人というのは幾らもいないと思うのですね。だから、私は少なくとも高等学校の生徒くらいには、将来独立して一社会人になった場合に税を納めなければならぬし、税はこういうふうに使われているという基礎知識のほかに、こういうふうにしてやればいいのだという一つの最小限度のコツというか方法というものは、会得せしめるくらいなやり方をしたらどうかというのが一つ。  それからもう一つは、正しい納税意識の確立の問題に関連してですけれども、たとえば専売局、同じ大蔵省ですけれども、たばこの宣伝というのをずいぶんやりますね。ところが、たばこの専売益金の収入の何倍にもなる税というものについてどれだけの努力をしておるかということを考えると、まだまだパンフレットが一部、二部出ていただけじゃ足らない。もう少し正しい納税意識の確立、それから正しい納税のしかたの教え方、あるいは納税、租税に関する教育というふうなものを努力すべきじゃないかと思います。これは税調の直接の問題とは思いませんけれども、先生の感じを承って終わりにしたいと思います。
  73. 東畑精一

    東畑参考人 竹本さんのおっしゃること、何も反論することはございません。おっしゃるとおりなんであります。国民の税の意識というものは、昔に比べて非常に強くなりました。また、知識も非常に私は強くなっておるかと思います。これははなはだどうも言いにくいいやなことなんですが、脱税というものが新聞に出るということは、税の意識を逆に非常に強めるということなんです。こんなことで税の意識を強めたくないのですけれども、あれが非常なことになっておりまするし、また税についての関心というものは非常に強くなっているのじゃないかと思います。  それから、一般的に多少昔と違って、所得税を例にとれば、以前は所得税を納めるという人はほとんど少なかったのであります。今度はもうほとんどすべての人が納めているということでありまして、税に対する関心といいますか、知識も非常にふえている。ですから、政府として、専売局のように宣伝するかどうかは別としまして、いろいろ政府もやっておりまするし、最もいいのは、何かいろいろな会社だとか、商社だとか、証券会社、あれが配ってくるのです、税はこうなりますというのを。あれを見ておると、なかなか教えを受けるということにもなりまして、政府がやらなくても民間でやってござる。こういう点もずいぶんありまして、一般的な意味では、私はそういう知識というのですか、それは必要がある。大体いまの憲法には義務という観念が少ないのです。だから、納税の義務とかなんとかというようなことは国民一般的な常識になってほしいというのが私の考えであります。そのためのいろいろな手段はやはり尽くすべきじゃないか、こう思っております。
  74. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  75. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  東畑参考人には、御多用のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後一時三十五分開議
  76. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後に御出席いただきました参考人は、立教大学教授国民税制調査会事務局長和田八束君、全日本自治団体労働組合中央執行委員金井浩正君、税制評論家山治雄君の各位であります。  参考人各位には、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。税制各案について、忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見十分程度にお取りまとめいただき、そのあと委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初に、和田参考人よりお願い申し上げます。
  77. 和田八束

    ○和田参考人 和田でございます。ただいま御紹介いただきましたように、国民税制調査会と申します学者、研究者を中心として国民的立場から税制問題について考えようということで昨年つくりましたものの事務局長をやっておる者でございます。  本日は、四十九年度税制改正につきましてのごく概略的な点につきましてまず意見を申し上げまして、あと三点ほど私の考えを申し述べたいと思います。  まず第一に、四十九年度予算につきましては、すでに御案内のように、総需要抑制政策によるところのインフレ抑制ということを中心課題として編成されたものでありますし、なおかつ、この激しい物価上昇下での国民生活に対する被害をいかに救済し、社会的公正を実現していくかというところにねらいがあっただろうと思います。したがいまして、税制改正もそういった観点で行なわなければならないということは言うまでもないところでありまして、総需要を抑制すると同時に、低所得者におけるインフレによる税負担上昇というものを救済し、かつまた、社会的な公正をそのもとで実現していくということでなければならないわけであります。そういった観点でこの税制改正案を見ますと、どういうことになるのかということを以下申し上げたいと思います。  まず最初に、所得税制でございますけれども、所得税の納税者は大部分一般勤労大衆でありまして、しかも、年所得二百万円以下程度の低所得者層に集中しているわけであります。そういうところがインフレ下での名目所得の上昇によって負担の増大が非常に激しくなっているわけでありまして、ここを救済する、こうした負担増を調整するということが、本年度の緊急的な租税政策の課題でなければならないというふうに考えるわけであります。しかしながら、同時に、減税規模が大きくなることによって需要を刺激するということは、財政政策の目標からいいましても戒めなければならない。したがいまして、低所得の勤労者層に対しては大幅な調整を行なうと同時に、高所得層に対してはむしろ増税をこそ行なうべきであるというふうな考え方に立つものであります。  したがいまして、国民税制調査会では、昨年の十二月に一つの提言をしているわけでありますけれども、そこで提言いたしましたのは、戻し税方式と申しますか、あるいは税額控除によるところの還付を行なうべきである、このような形で調整をすべきではないかということを提言をいたしました。そして同時に、年所得一千万円以上の所得層に対しては付加税をかけるべきであるという、この二つの点を中心とした提言をしたわけでございます。これは、先ほど言いましたような二つの目的にかなうものではないかというふうに考えるわけであります。  それに対して、政府案のほうでは、このインフレ下における調整を主目的とする。すなわち、インフレ下における負担の増大を救済するということではなくて、むしろ減税を通じて税制の不公平を拡大するような減税になっているというふうに考えるわけであります。  つまり、それはまず第一に、課税最低限を引き上げる、すなわち所得控除を引き上げるというふうな方式をとっていることから、減税の内容がきわめて不公平になっているということであります。たとえば、四十八年度税額に対する軽減額の割合を見てみますと、二百万円の収入層では五六・八%の軽減割合になるわけであり、かつ、それが一千万円の収入層では三五・五%というふうになっておりますが、逆に、収入額に対する軽減額の割合を見てみますと、同じく二百万円層では二・二六%の軽減割合であり、一千万円所得層では九・一一%の軽減割合というふうになっておりまして、累進税率もとで必然的に、このように収入額に対する軽減額の割合は高所得者ほど有利になってくるというふうになるわけであります。  また、インフレ下における負担の調整措置としては、このような所得控除方式は非常に不十分でありまして、かえって調整を行なうことができない形になるわけでありまして、むしろ税額控除制度といいますか、先ほど申し上げました戻し税方式、還付税方式という形にするのが、インフレ下での減税方式では非常に好ましいと思うわけであります。  それからもう一つ、今回の税制改正で中心になりましたのが給与所得控除の大幅な引き上げでありますけれども、これは従来いわれてきました、サラリーマンといいますか、勤労者における税負担の不均衡というものを是正する姿勢がきわめてそこでは出ているというふうに評価すべき点もあるわけですけれども、しかしながら、給与所得控除におけるたとえば頭打ちをなくするというふうなことによって、これまた、高所得者ほど有利な減税になっているというふうに考えるわけであります。  もちろん、収入額が百万円あるいは二百万円層におきましても、従来に比べますとかなり給与所得控除の割合が大きくなるわけでありまして、収入額百万円のところでありますと五〇%の控除があるというふうになるわけですけれども、同時に、高所得者におきましてもこの頭打ちがないということから、無限に給与所得控除が行なわれるということでありまして、これはかえって事業所得との不均衡すら出てくるのではないかというふうに考えるわけであります。  それから第二点として、法人税の問題に入りますけれども、法人税につきましては、今日のこういう経済状況のもとで、法人間あるいは個人法人との間の不公平を是正するということがまず第一の基本目標にならなければならない。それから第二番目としまして、便乗値上げ等のインフレ利得の吸収あるいは超過利得の吸収といいますか、こうした目標が法人税制においてはとられなければならない。それから第三番目に、それが物価対策にもつながらなければならないということであります。  法人における所得あるいは資本金の格差が非常に大きくなり、系列化が進み、いわゆる寡占化が進行しており、そして法人の地主化あるいは法人による株主化が非常に進行しておるというふうな状況から考えますと、従来いわれておりましたように、単に法人税負担が国際水準までいけばいいという目標だけでは不十分でありまして、いま申し上げたような目標をさらに強化しなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。  そうしたところから、国民税調などでも、法人税における累進税率の採用——累進といいましても、多段階税率という形にさしあたりなると思うのですけれども、そうした税率の採用、あるいは中小法人と大法人に対する法人税制における区別を明らかにするということ、それから受け取り配当を益金に算入する制度を採用すべきである、それから交際費広告費等の課税を強化すべきであるというような形で、いわゆる法人利潤税的な考え方に立った法人税制を採用するという方向を提言しているわけでありますけれども、要するに、先ほど申し上げましたような超過利得の吸収といい、物価対策といい、あるいは法人の負担が非常に不均衡であるというふうな点を考えましても、このような方向、持に累進税率を採用するということは、当然行なわなければならないことではないかというふうに考えるわけであります。  この点は、さきにこの大蔵委員会でも発表されました、昨年、四十八年九月に資料が出されておりますように、資本金規模別の実質税負担率というのは、きわめて格差があるわけでありまして、高い資本金の会社のほうがむしろ税負担率が低くなっているということは、他の資料によっても明らかなところであります。また、法人税の製品価格への転嫁の問題ということを考えましても、累進税率のほうが転嫁しにくいわけでありまして、物価への反映が少ないということになろうかと思います。  それから第三番目に、租税持別措置の問題でありますけれども、租税持別措置法は、従来、税制上の不公平、税負担の不公平をきわめて大きくするものであるということで、批判の大きなところでありますが、四十九年度の税制改正案を見ましても、減税分のほうがむしろ多くなっているわけであります。従来整理統合というふうなことがいわれてまいりましたけれども、整理される部分よりも新設される部分のほうが大きいというのが、やはり四十九年度の場合についても実情であろうかと思います。  租税特別措置につきましては、所得税を中心とした個人税制にかかわる部分と、それから、法人企業税関係の部分と二つに分かれますけれども、個人部分につきましても、利子配当の分離比例課税、それから土地の長期譲渡所得の分離比例課税というふうな現に行なわれております分離比例課税は、きわめて税負担の不均衡をもたらしているものであり、さらにこれは地方税制にも影響力を持っていて、地方税収の減少をも招いているわけでありますけれども、高所得者層ほどこうした分離所得が大きいわけでありまして、所得の不均衡を増大させ、所得税制の所得再分配効果をそこなっているという代表的な例になっていると思います。  さらには、株式譲渡所得に対する非課税の問題というのも早期にこれは廃止されなければならない。つまり、キャピタルゲイン課税の実施が行なわれなければならないというふうなことを考えるわけでありますが、こうしたこともあわせて個人税制における租税特別措置の廃止というものが進められるということが、特にインフレ下における社会的不公正を是正するという目的からは、緊急な課題であろうかと思います。なお、個人の高所得層に対しては、財産税あるいは富裕税の採用ということも考えられなければならないのではないかと考えるわけであります。  それから、企業に対する特別措置といたしましては、引き当て金、準備金、あるいは特別償却など、数多くあるわけでありまして、これらが企業税務会計上の処理を通じまして、いわゆる利潤の費用化というふうな実態を生み出しているわけでありまして、利潤がこのような準備金あるいは特別償却という形で費用となって隠れてしまうという事実は、社会的に見て大いに問題のあるところであろうというふうに考えるわけであります。こうした点につきましても、再検討の上、早急な廃止が必要になってきているのではないか。こうしたことがインフレーションの現在の経済状況における企業の土地投機あるいは株式投機等に対する批判に対して税制面からこたえる手段ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  以上、簡単でありますけれども、国民税制調査会の提案などを中心として、四十九年度の税制改正につきまして私見を申し述べた次第でございます。
  78. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次に、金井参考人にお願いいたします。
  79. 金井浩正

    ○金井参考人 自治労の金井であります。私は現在労働組合の役員をしておりますけれども、本日はそのような立場よりも、サラリーマンの一人として、源泉所得税制度による納税者という立場で、税制の不平等性、名目所得上昇に伴う税負担の拡大、来年度税制改正上の問題点政府税制調査会のあり方など、四点にわたって意見を申し上げたいと思います。  まず第一に、現行税制度の、とりわけ所得税法の持つ不平等性について申し上げたいと思います。  私は地方自治体の一職員といたしまして、かつて昭和三十八年から四十一年まで、地方税の課税事務に携わっていた経験を持っているわけであります。もちろんその間に、私は数多くの住民の皆さんから、地方税の申告相談を受け付けたことがあるわけでありますが、その中で私は、一つのことに気がついたわけであります。そのことは、納税申告相談の中で、ある事業主の方とその事業主に雇われている従業員の方の申告相談を連続して受け付けたわけでありますけれども、そのときに、事業主の方の収入額は従業員の方の収入額の約数倍あったわけでありますが、事業主は青色申告をしているために、所得税額はゼロでありました。ところが、そこの従業員の方の所得税は、源泉所得税によって約二万円ほど納付されたわけです。  本来、社会通念的に申し上げますと、事業主が自分が雇っている従業員よりも所得が少ない、収入が少ないということはほとんど考えられないわけでありますけれども、しかし現実に、この税制上ではこういう問題が発生してくるわけでありまして、私はその辺に大きな疑問を感じたのであります。もちろん、いなか町でのことでありますから、私はこの両者の生活実態の一定の状況について承知をした上での話でございます。  もちろん、このような抽象的な一つの事例をして、直ちに税制の不平等性について論ずることははなはだ軽率かと考えますけれども、しかし、このような傾向は、国民、とりわけサラリーマンの多数に税制に対する疑惑の目を向けさせる事実となっているのではないかというふうに考えるわけであります。  特に、近年の所得税納税人口の推移などを見ますと、給与所得者の納税者割合は、昭和四十四年以来急激に増加をいたしております、たとえば、昭和四十三年給与所得者数三千百四十八万人、そのうちの納税者数は千八百九十一万人であります。そして納税者割合は六〇・一%であり、それが五年後の昭和四十八年度には、納税者数が約一千万人増大いたしまして、納税者割合は七九・六%、この数字は推定でありますから、最近のインフレ傾向などを勘案すれば、さらにこれを上回るものと考えられるわけでありますが、実にこの五年間で一九・五%という比率が増大しているわけでありまして、その結果、サラリーマン十人中八人までが所得税の納税者となってしまっているわけであります。これに対して、農業所得者、またはそれ以外の事業所得者のそれらの率はきわめて低いものでありまして、これらにつきましても、やはりサラリーマンが疑惑の目を向けるところではないか、このように考えるところであります。  また、これらのことは、今回の税制調査会答申書の中の所得税減税の基本的な考え方の中で、給与所得者の納税者割合がアメリカと並んで、世界先進諸国中の最高のものであることも明記されているわけであります。  次に、制度上の問題点について具体的に申し上げてみたいと思います。  まず、私たちサラリーマンの場合は、申告する権利というものが認められておりません。また、もちろん必要経費も認められておりませんし、さらに滞納する権利も認められていないわけであります。このような制度は、わが国の税制度を給与所得者に対して一そう理解しがたくしているばかりか、租税負担感を喪失させ、そして納付した税がどのように使われているか、そのような関心を希薄にするものではないかというふうに考えるわけでありまして、さらにこれは、政治に対する無関心に連結していくものではないかというふうに私は考えるところであります。  次に、サラリーマンの場合は、家計上の必要または業務上の必要から、ときたま時間外勤務を行なうことがあるわけであります。御存じのとおり、時間外勤務あるいは深夜勤務等を行ないました場合は、労働基準法によって割り増し賃金が保障をされているわけであります。しかし、税法上は、これらに対して何らの保護も加えられていないわけでありまして、かなりきつい疲労あるいは余分な経費等を投入いたしましても、これらに対しての保護は一切加えられない。こういうことでありますから、まさに働けば働くほどばかを見るというような結果につながるのではないか、こういうふうに考えます。  それから、いま一つの問題としまして、極端な例を一つ申し上げたいと思うわけであります。それは通勤手当の問題であります。最近、住宅事情あるいは交通事情などで、サラリーマンの通勤圏域というものがきわめて拡大されていることは御存じのとおりであります。また諸物価高騰などと相まって、運賃の値上げが非常に目立っているわけであります。そういう意味では、サラリーマンの通勤費というものは最近きわめて高額なものとなっております。しかし、雇用関係その他から、人手不足などでこれら通勤費に要する費用は、ほとんど全額が雇用主負担というふうになっているのが実態ではなかろうかと考えるわけであります。ところが、このような通勤費を支給されましても、これは本来非課税所得の範囲に当然算入されるべきであるわけでありますが、制度的には七千円で打ち切りということになりまして、七千円をこえる部分については、すべて課税所得となってしまうわけであります。これは税制度上のきわめて不均衡な問題だと私は考えるところであります。  それから次に、不平等性を最も端的にあらわした一つの計算例がございます。昨年五月の週刊現代という週刊誌で、一つのモデルとして計算されたものであります。一家四人の標準世帯で年収二百五十万円といたしまして、サラリーマン、弁護士、医師の三者を比較いたしております。それによりますと、サラリーマンの場合は所得税が十二万四千四百円となります。住民税が九万五千百五十円となりまして、合計その二つの税負担額は二十一万九千五百五十円となるわけであります。ところが、これに対して弁護士の場合は、所得税が七万八千二百円、住民税が五万二千八十円、合計十三万二百八十円ということになり、そしてさらに医師の場合には、所得税はゼロであります。わずかに住民税が八千二十円ということでありまして、合計税負担額は八千二十円ということになるわけであります。一体、このような現実を私たちはどう理解したらよろしいでしょうか。そしてこれらはもちろん税だけではなしに、税以外の税外負担として関連してくることは、いま申し上げるまでもないと私は考えるのであります。西ドイツあるいはフランスなどにおきましては、必要経費の概算控除と実額控除との選択制をとっているようであります。わが国でもこの選択制度の道などを早期に開くべきだと私は考えるところであります。  次に、第二の問題でありますが、狂乱状態とまでいわれております悪性インフレは、必然的にサラリーマンの名目所得を押し上げ、そのことによる税負担が一そう拡大しておりますことについて申し上げます。  インフレ問題については、いまさら私が申し上げるまでもないわけでありますけれども、このような状態の中で、ことしの春闘でも勤労者が大幅な賃上げをせざるを得ない状態に至っております。しかし、そのような状態の中で、政府は来年度の税制改正の中で、労働者の賃上げの見通しを一八%というふうに見ておられます。このようなことを基礎として計算されることが妥当かいなか、これには私も一定の疑問を持つところでありますけれども、たとえば昨年の公務員の場合を申し上げますと、人事院勧告によって一五・三%の賃金改善が行なわれております。そしてさらにこれに定期昇給を加えますと、この一八%を上回ることは事実であります。これは昨年の賃上げでありまして、ことしはそれをはるかに上回ることは当然だというふうに私は考えているところであります。このようにして、インフレと相まって給与所得者の名目所得は必然的に急上昇をいたしております。  最近政府は、毎年税制改正を行なってまいりました。しかし、その改正額はきわめて少額でありまして、たとえば基礎控除配偶者控除扶養控除など人的控除は、わずかに一万円ないし二万円の上積みにすぎませんでした。先ほども申し上げましたように、給与所得者の納税人口が著しく拡大した背景に、このようなことがあったのではないかと私は考えるのであります。  所得の階級別人員について、特に昭和四十七年度のものについて見たいと思います。昭和四十七年度の給与所得者の中での納税者人口は、二千三百四万人であります。このうち所得額が百万円から二百万円までの者が一千三十二万人でありまして、率で申し上げますと四四・八%を占めるということになりまして、ここに一般的なサラリーマンの納税者が集中しているというふうに考えるわけであります。そしてさらに七十万円から百万円という階層が五百三十四万人でございまして、二三・二%になるわけであります。これら合計で千五百六十万人、六八%が七十万円から二百万円という階層に集中しているわけであります。このような結果は、サラリーマンにとって過去の減税措置はきわめて不適正なものであったといわざるを得ません。より一そう重税感を増すことになったことはいなめない事実ではないか、このように私は考えるところであります。  第三に、昭和四十九年度税制改正案の問題点について申し上げたいと思います。  今回の税制改正案におきまして、政府は、給与所得者に焦点を合わせサラリーマン減税を推進すると主張されています。しかし、その内容の幾つかに私は疑問を持つものであります。  その第一は、減税規模一兆四千八百十億円中八千四百二十億円を振り向けた給与所得控除改正で、上限をなくしいわゆる青天井にしたことは、たいへん問題があると考えます。給与所得控除の拡大は、高額所得者がきわめて有利になることは申し上げるまでもありません。先ほども申し上げましたが、サラリーマンの大半は百万円から二百万円の階層に集中しているのであります。もしこのような政府の案によって計算をいたしますと、二百万円の場合には、昭和四十八年中の給与所得控除額は四十九万四千円でありましたが、四十九年には六十五万円となりまして、増加額は十五万六千円ということになるわけであります。これに対して一千万円の部分について計算をいたしますと、昭和四十八年には七十六万円でありましたが、四十九年には百六十六万円になりまして、実に九十万円の増加ということになるわけであります。  次に、税率緩和の問題について申し上げたいと思います。税率緩和は、最近でも昭和四十四年から四十五年、四十六年と連続して緩和をされております。たとえば、これらの時点でそれぞれにポイントをつくってみますと、課税標準額四百万円のところで見ますと、昭和四十一年には課税標準額四百万に対して四五%という数値になっております。ところが、四十四年の税率緩和で四二%、四十五年には三八%、四十六年には二三%、そして今回は二一%という率になるわけでありまして、実にこの五年間で半分の率になるという結果だろうと私は考えるわけであります。この税率緩和に振り向けられました減税額二千二十億円は、実に年収五百万円以上の高額所得者に集中するであろうと私は考えるところであります。  次にいわゆる人的控除の問題について申し上げたいと思います。
  80. 安倍晋太郎

    安倍委員長 簡潔にお願いします。
  81. 金井浩正

    ○金井参考人 はい。扶養控除の大幅引き上げは、私は一定の評価を申し上げたいと思います。しかし、基礎控除及び配偶者控除が二十三万二千五百円、扶養控除が二十二万円とされた算出根拠が全く不明であります。もしこの金額で私たち勤労者に一年間生活をしろというならば、物価高のおりでもあり、憲法第二十五条にいうところの健康にしてかつ文化的な最低限度の生活は保障し得ないのではないかと考えるわけであります。もしほんとうに低所得者を中心とした減税考えるならば、これら人的控除こそもっと大胆にかつ大幅に引き上げるべきだと私は考えます。  最後に、第四点になりますが、税制調査会のあり方について申し上げます。  私は、昨年十月十九日正午ごろ、税制調査会長代理及び高木主税局長と大蔵省内でお会いすることがありました。その際、私たちは、勤労者に対して大幅な減税をしていただきたいということを要望申し上げたところであります。ところが、高木主税局長のお答えでは、大幅減税はインフレを助長することになるのできわめて困難であると言われております。しかし、その同じ十月十九日の午後には、田中首相は、関係閣僚及び自民党幹部を集めて、昭和四十九年度税制改正の基本構想を示していたのであります。この基本構想は、今回の税制調査会答申書とほぼ一致するものであります。このような税制調査会の姿勢を見たとき、私は国民各階層の代表であるならば、もっと主体性を発揮すべきであると感じ入ったところであります。  以上、私の意見陳述を終わります。たいへん失礼いたしました。
  82. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次に、谷山参考人にお願いいたします。
  83. 谷山治雄

    ○谷山参考人 谷山でございます。私は税制経営研究所というささやかな事務所の責任者で、かつ二つの大学の講師を兼ねておりますが、きょうは評論家ということで比較的フリーに私の意見を述べさせていただきたいと思います。  いま最初に和田さんのほうから、国民税制調査会の構想を基本にして御意見がございました。私も大体基本的には大筋としましてはほぼ賛成でございますが、時間の関係上、若干補足的な、あるいは追加的な意見を述べさせていただきたいと存じます。  まず第一に、税負担の全体の問題についてちょっと申し上げたいのでありますけれども、政府の資料を見ますと、いつも年度が過ぎまして実績が明らかになりますと、国民所得に対する税負担率の割合が必ず上がっているわけでございます。時間の関係上こまかい数字は省略いたしますけれども、四十七年度は、予算のおりに発表されました税負担率と実績とでは一・二ポイントの差がございます。四十八年度の数字を見ますと、当初予算の見込みと補正後予算、つまり実績見込みでは、やはり同じく一・二ポイントの差がございます。この評価につきましてはともかくとしまして、とにかく日本経済が一応発展といいますか、振興し、税制が実行されていく過程で、負担率が必ず上がっているというのがこの二、三年間の状況なんで、その点から考えますと、税負担全体の問題につきましては、少なくとも現在の減税のワクをもう少し追加すべきではないだろうか。少なくとも国税について七千億なりあるいは九千億なり、その程度のものを追加すべきではないかというふうに考えるわけでございます。これはもちろん過去の実績に立った一つの推測でございますから、四十九年度の経済の見通しその他について問題はございましょうけれども、一応そういうことをまず第一に申し上げてみたいと存じます。  第二に、減税の問題でございますが、私は、何でもかんでも減税すればいいというものではなくて、現在の経済情勢を考えますと、もちろん減税すべきものにはもっと減税するし、減税すべからざるものについては減税をしないか、むしろ逆に増税すべきであるというふうに考えているわけでございます。  そこで、今度の所得税のいわゆる減税と申しますか、税制改正の中身を見ますと、もう言うまでもございませんが、一つ一般的な人的控除の引き上げ、第二が給与所得控除の拡充、第三が税率の緩和ということになっているわけでございます。  これについてまず第一に申し上げることは、減税が非常に低所得者にとってはまだまだ少ない。たとえて申しますと、給与所得者について、四十九年で七十万五千円という課税最低限になるということでございますが、これは一時金が四カ月として考えますと、月収が四万四千円でございます。人事院によりましても、四万四千円という初任給は昨年の中卒ないし高卒の給料なんでございますから、とても四十九年の初任給の水準には満たないということになるわけなんで、まず第一に課税最低限はまだまだ低い、こういう問題が一つございます。  それから次に、給与所得控除の拡充につきましては、いまお二人の方から青天井を取っ払った問題について御意見がございましたので、省略させていただきますけれども、給与所得控除のいわゆる青天井の撤廃と税率の引き下げとが相まちまして、いわば高額所得者に対する大幅な減税になっているわけでございます。一体、こういう時期になぜこんな減税をしなければならないのか、たいへん疑問といいますか、不審に思うわけでございます。時間の関係上数字はあれですけれども、政府の資料には一千万の収入までしか出ておりませんが、それ以上の収入になりますと、さらに大幅な減税になるわけでございまして、簡単に申し上げれば、たとえば千五百万の給与収入がございますと、約百五十万の減税になります。これは初年度分でございますが、二千万ありますと、百九十七万の減税になるというたいへんな減税なんで、私は、一体どうしてこういうことをやるのか、全く不可解というふうに考えるわけでございます。  そういうわけで、今度の所得税減税というのは、いろいろ努力のあとは私もうかがえると思いますけれども、まだまだ課税最低限の引き上げが少ない。給与所得控除の拡充につきましても、いわゆる青天井の撤廃によって高額所得者層に不当に有利になっている。こういうふうに考えられるわけでございます。  そこで、私は、さらに一歩進めて考えてみますと、この所得税減税一つの欠点と申しますのは、あえて欠点と申しますが、一般的な人的控除の引き上げがたいへん少ないという問題がございます。統計を見ますと、いつからとってもよろしいのでございますが、課税対象になる所得に占める一般人的控除の割合が、非常に急速に低下をしております。四十九年度の税制改正を見ますと、給与所得控除の拡充によって給与所得者についてだけはやっと昭和四十五年の水準になる。そういうぐあいで、たいへん人的控除の比重が低下をしておるわけで、私は人的控除の拡大は非常に重要であるというふうに考えます。  次に、給与所得控除の問題につきましては、低所得者のサラリーマン、給与所得者を減税するために定額控除を五十万にするとか、いろいろなことは私も認めるわけでございますけれども、税の理論から考えてみますと、これは一つのフィクションではないか、つまり虚構ではないかというふうにも考えられるわけなんで、その点税制理論としてどのように考えるべきか、私は問題が非常に多いのではないかというふうに考えるわけでございます。給与所得控除の拡充が一つの虚構といいますかフィクションになっておるという問題は、単に給与所得者とその他の所得者とのアンバランスの関係だけではなくて、実は事業所得者の中におきましても、青色申告者と白色申告者の間で非常に極端なアンバランスをつくり出すわけでございます。この問題については、ぜひ強調しておきたいというふうに存じます。  次に、法人税の問題でございますけれども、法人税につきましては、先ほど和田さんが言われましたことに基本的に私も賛成でございまして、今度のいわゆる資本金一億円超の法人に対する税率の引き上げはまだまだいわばなまぬるいということでございまして、少なくとも昭和二十七年には四二%という税率であったのでございますから、当時まだ資本蓄積水準が低かった時代にこういう税率をやったわけでございますから、私は、四〇%の税率はさらに引き上げ、また累進税率にすべきであるというふうに考えております。  この法人税の問題にからみまして、実はこれは租税特別措置の問題とも関連をするわけでございますが、法人所得の課税標準のつかまえ方というものが非常に問題になってくるわけでございます。御承知のように、租税特別措置の中心をなしますものは、特別償却であるとか、準備金であるとか、引き当て金引き当て金の中には法人税法の本法に含まれているものもございますけれども、全体を含めまして法人の課税所得が非常に過小に、少な目に計算されるようにできているわけで、これが法人の実効税負担を非常に少なくしている。私はこれが大きな問題であるというふうに考えるわけでございます。  したがいまして、法人税の問題につきましては、四〇%をさらに引き上げて累進課税にすると同時に、租税特別措置の問題も含めまして、課税標準のいわゆる洗い直しについて徹底的に考える必要があるのではないか。もちろん法人税は、法人の所得にかかるわけでございますけれども、一応ものの考え方といたしましては、法人の粗利潤というものを一度お考えになってみたらどうか。そうして考えますと、減価償却であるとか、準備金、引き当て金であるとか、そういうものの控除が非常に多いことがわかるわけでございまして、この機会に、法人の課税標準の適正化といいますか厳正化といいますか、そういう問題についてぜひ御検討していただく必要があるのではないかというふうに考えます。  なお、法人税の問題に関連いたしましては、先ほども和田さんが言われましたけれども、現在異常な物価高とインフレーション、いわば売り惜しみとか買い占めとかいうような問題がございますので、この機会に、そういった大法人に対します超過利得税と申しますか、そういう一つの臨時的な措置でももちろんけっこうであると思いますけれども、緊急的な課税をすべきではないか、そういうふうに考えているわけであります。  時間の関係上、私の意見は簡単にさせていただきますけれども、超過所得税考え方につきましては、超過所得は何であるかという定義に関係いたしますと非常にどろ沼のようになりますので、税制というものは非常に厳密さが必要でございますけれども、同時に一定の仮定とか前提というものを設けてやるということも必要なのでございまして、この機会に、超過所得税の問題についてはあまり定義の論争にこだわらずに、実態の利潤の大きさ、利潤の伸びというものに着目してやるべきではないかというふうに考えているわけでございます。  時間が参りましたが、最後に、租税特別措置の問題についてもう少しふえんをさせていただきますけれども、私は、準備金、引き当て金、特別償却等によります租税特別措置は、原則として廃止すべきであるというふうに考えております。これはもう定説になっておりますけれども、隠れた国庫補助金であり、隠れた無償の国庫からの貸し付け金である。これがいわゆる負担の不公平を助長する、あるいは国会審議権にもいろいろ関係する。これは定説でございますから省略いたしますけれども、とにかくこれは原則として廃止すべきである。もしかりに百歩譲って廃止できないならば、この準備金、引き当て金、特別償却によって減税される分を、少なくとも企業の任意によって使わせるのではなくて、国全体と申しますか、社会全体の立場から使うように考慮すべきではないか。つまり、時間の関係上簡単に申しますけれども、租税特別措置一つの大きな問題は、減税が結局私企業の社内留保の増大に役立つということであって、これが一体、国全体の政策なり社会全体の政策なりに役立つかどうかは、極端に言いますと、全く関係ないという問題が大きな問題でございます。私は、もし租税特別措置が廃止できないならば、次善の策として、減税分を国全体あるいは社会全体のために使うような、そういう措置が必要ではないかというふうに考えるわけでございます。  まだたくさん申し上げたいことがございますけれども、時間も参りましたので、あと質疑に応じて私の意見を開陳させていただきたいと存じます。どうも失礼いたしました。     —————————————
  84. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。山田耻目君。
  85. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 どうも三先生、たいへん御苦労さまでした。  和田先生のお話を伺いまして、従来ともそうであったのですけれども、所得税税体系というのが、特に今回の青天井などの措置をすることによりまして、改正案というのは非常に逆進性が強まってきておる、こういう気が私たちはいたしておるわけです。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 税というのは本来公平でなくちゃなりませんものが、ますます不公平になり、不平等を強めている、こういうことを実感として私たち審議の過程で述べているわけです。  それから、いま一点は、税の再配分の機能から見ましても大きな問題があるのじゃないか。一体、こうした実態というものを改めるためには、どういう税体系をとれば最良というものに近づいていけるだろうか。私たちここで審議をしております中で、いつも念頭を去らないのはその点でございますけれども、これについてひとつ御意見を聞かせていただけたらと思いますが、よろしくお願いします。
  86. 和田八束

    ○和田参考人 私も同様の印象を持っているわけであります。どのように現実に逆進的になっており、どのように再分配をそこなっているのかというふうなことにつきまして、十分な調査あるいはその資料というものが公表されなければならないというふうに、特に私ども民間で研究をしている者には痛感されるわけであります。  さきに東京都の新財源構想研究会でこうした問題の一端が具体的な資料として出されましたわけですけれども、そこの資料で拝見しましても、そこではたしか六百万円以上の所得層の実際の税負担率というものを調査して発表しているわけですけれども、そこでは明らかに逆進的な負担率というものが出てきているわけであります。こうしたことを国家的なレベルでやはり明らかにされたいというふうに考えるわけであります。  現在の御質問の問題でいいますと、先ほども言いましたように、特に所得税における総合課税の原則というものが、非常に不徹底であるというのが一つの大きな原因ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。所得税が累進的な性格を発揮して所得の再分配を行ない得る非常にすぐれた税であるということは、一般論としていわれるわけでありますけれども、その際、やはり一番その所得税の長所として中心にならなければならないのは、各所得に総合的に課税するということであります。その点でいいますと、現在の利子所得、配当所得、それからキャピタルゲイン、株式の譲渡所得ですね、それから土地譲渡所得というふうなものが、租税特別措置法あるいはその他基本税法において分離あるいは非課税ということになっている、そういうことが最も大きな原因になっているというふうに考えるわけでありまして、その点を是正するといいますか廃止するということが、所得税の再分配効果を高める最も大きな課題ではなかろうかというふうに考えております。
  87. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 こうした非常に問題点を含んでおるいまの税体系でございますが、特に、狂乱物価と大蔵大臣も言われるのですけれども、異常なインフレになっておるわけでございまして、ますますその格差というものは拡大をされていくし、不平等は拡大をしていく。今回大蔵大臣の安定へという強い決意がいろいろ述べられまして、総需要抑制という立場もとられてきておるわけですけれども、私たちもやはり税制問題とインフレの進行状態というものと無関係で考えられないわけですよ。  ですから、当面第一の緊急課題は、インフレを抑制するということに中心が置かれて進めておることについて別に異論はございませんけれども、実際の税を払っておる国民の側から見たら、毎年毎年減税措置がなされるけれども、完全にこれはイタチごっこであって、何の効用もない。だから、インフレにたえ得る税制度というものが考えられないだろうか。国民のために、さっきお話のございました戻し税とか、何らかの諸措置を講じて救済をするということは、いつもあとから追っかける手段でございますが、その間の納税者のデメリットというものは大きなものがあるわけです。だから、税制面から見てインフレにたえ得る税制というものが考えられないだろうか、こういう気持ちを私は審議を通しながらいつも気持ちの中に抱くわけですけれども、御専門でいらっしゃる先生方の御意見を、ぜひともお考えならば聞かしていただきたいし、そして御遠慮なさらぬで、何でもいいから思い切って話していただきたいと思うのです。谷山さんのほうからも、あとまた何か御見解がございましたら一緒にひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  88. 和田八束

    ○和田参考人 実はいまの点でございますけれども、インフレ下で名目所得が上昇いたしますと、所得税におきましては相当程度の負担の増大があるわけでありまして、名目所得がインフレを追いかけて上がっても、かえって税負担のほうが大きくなるということがあるわけであります。この点は、たとえば四十八年の年末調整等におきまして、あるいは年末のボーナスといいますか、年末手当などにおける税負担が非常に高くなったということで、各サラリーマンの間に実感としてあるのではないかというふうに考えるわけです。したがいまして、国民税調では、昨年の九月に緊急的な問題といたしまして、四十八年中の自然増収については四十八年中に国民に戻すべきであるということを申し上げたわけであります。  従来の減税といいますのは、ごく部分的な調整でしかないというふうに私は判断しているわけでありますけれども、その場合でも、年度当初の見込みの自然増収に対する減税率が幾らというふうな計算が発表されているわけであります。たとえば、所得税の自然増収が四十八年につきましては一兆一千五百九十六億円あるというのは当初見込みでありまして、これに対して三千百九十一億円の所得税減税を行なったということになっているわけであります。この割合が二七・五%ということであります。ところが、御承知のように、四十八年といいますのは異常な物価上昇が続いたわけでありまして、この間に名目所得の上昇がある。したがいまして、所得税の自然増収もかなりの程度出てくるわけであります。自然増収全体でいいますと一兆円をこえているわけでありますから、所得税の自然増収につきましても、当初見込みの五割ないし六割くらいの増大がすでに見込まれるのではないかと思いますけれども、ともかくそうした場合に、自然増収が年度中に発生してくるというのはそのような物価上昇過程で出てきたものであり、国民からの取り過ぎ分であるというふうにいわざるを得ないわけであります。その分は年内にといいますか、少なくとも年度中には国民の手に戻すということが行なわれなければ、こうした非常に短期間に物価、所得の上昇がある場合には追いつかないわけでありまして、四十九年度の減税もたいへんけっこうですけれども、その前にまず四十八年度の取り過ぎ分を返すべきであるというふうに私どもは考えるわけであります。社会保障関係などでもそうですけれども、こういう場合には、なるべく早くやらなければならないということであります。  それと同時に、そうしたインフレ下における減税方式というのもこの際考えていただきたい。といいますのは、これも先ほど少し申し上げましたけれども、従来のような所得控除を引き上げていくことによって課税最低限を引き上げていくというだけでは、これに対応し切れないわけでありまして、特に、インフレの被害を受ける低所得者に対してはきわめて不十分な形でしか行なわれないということになりますので、したがって、所得税の自然増収の一定割合を戻すというふうな方式を考える、あるいは税額から一定額を還付するというふうな方法を考える、あるいは課税標準を名目金額ではなくて実質換算をして、そうしてこの実質金額に対する減税考えるとかいうことで、幾つかの方法があろうかと思いますけれども、そうした方法によってインフレ下での減税方式というものをこの際考えるべきではないかというふうに考えるわけであります。
  89. 谷山治雄

    ○谷山参考人 インフレに対する防御として、所得控除よりも税額控除のほうが有効であるという御説も、私は全く賛成でございます。  そこで、私は一つ国会でのやり方ということに関連すると存じますけれども、いまも和田さんの言われましたように、四十八年度は三千百九十一億円の減税をやったということでございます。いただきました資料を拝見しますと、そのうち物価調整分というのは、消費者物価を五・五%上昇と見込んで千三百七十億円と書いてあるわけでございます。ところが、御承知のように、非常に物価騰貴が激しいわけでございますから、おそらくこの三千百九十一億円という減税物価騰貴を調整し切れなかったというふうにも考えるわけなんで、そういう意味で、私はもう四十八年度中に、たとえば補正なら補正という段階で年内減税なり年度内減税なりを考えるべきではなかったのか、あるいは考えないのか、そういう点が私は一つの問題になるだろうというふうに存じます。  次いで、四十九年につきましても、九・六%の消費者物価上昇を見込んで、その物価調整減税が二千二百六十億円である。そういう資料が出ておりますけれども、これを拝見しただけでも、この二千二百六十億円というのは、一般的な人的控除の引き上げがこれで全部飛んでしまうという計算になりますので、実際減税にはならない。したがって、先ほど申し上げましたように、たとえば大幅な減税を追加する必要があるのではないか、そういうことを冒頭に申し上げたわけでございます。  なお、この税制上の問題としまして、政府側といたしましては、控除につきましては消費者物価上昇ということが一つ考え方の基礎になっているとすれば、政府のこの経済見通しが狂って消費者物価騰貴が非常に激しい場合には、自動的に減税できるような措置が講ぜられないのかどうか。この点私は、インフレに対して勤労者あるいは低所得者の生活を防衛するという観点から検討が必要なのではないかというふうに考えます。  なお、私に対する御質問ではございませんけれども、所得の再配分、税の再配分という問題でございますが、資産所得に対する課税を一そう強化することだけでなくて、たとえば資産所得に対する課税というのはむしろフローに対する課税でございますから、この辺でストックに対する課税、言うなれば財産税というような問題ももうそろそろ検討をされるべきではないかというふうに考えますが、これらをどういうふうにお考えになるか。これはいろいろ議論があると思いますが、日本もいわゆる高度成長で世界第二位の水準に達して、俗に申します金持ちというものが相当多くなってきたように考えられますので、この機会に、そういったフローとしての資産所得に対する課税を徹底するだけではなしに、ストックとしての財産税の課税も検討すべき時期に来ているのではないかというふうに考えます。
  90. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 こうした異常なインフレ下のときの税制として、最近私たちは、従来と違って新しい見解だと思いますけれども、戻し税制度ということをよく聞くわけです。先生のいまおっしゃっていたお話の中にも出てきておりましたが、先般私たち野党の四党で、この委員会にインフレ弱者の救済、低所得者層の救済、こういうことも一つの柱に立てながら三万円の戻し税をやりたいということで、法案の提出をいま行なっているわけです。そういうことで、部分的ではございますけれども審議も進めておるわけですけれども、ただ問題は、さっきも金井さんのほうのお話の中にもありましたが、勤労者の源泉所得を受ける層が非常に大きいものでございますから、三万円を給与所得者から戻し税いたしますと約八千億財源が必要だ。大体、低所得者層と見られる年収二百万、標準世帯ですから夫婦と子供二人、この人たち以下に限って最高三万円を限度にして払い戻しをしてあげるということにすれば五千八百億程度ふえる。こういうことでなかなか、すでに確定をした予算に基づいてなおこれを行なうとすれば補正予算を組まなくちゃならないし、財源もない、こういう議論というのがすぐ追っかけて出るわけなんです。  この一月から三月まで、ことしの四十八年度内ですけれども、なお自然増収が二千億をこえるのだと思いますけれども、こうしたものを財源としてでも、いまのインフレ弱者なり低所得者層に対して救済をするという方途が、いま両先生のおっしゃった御意見の中にうまく合うものかどうなのか。私たちこういう審議を進めておりますけれども、先生のお話を伺って、私たちはますます決心を固めて努力をしたいと思いますけれども、そういう戻し税制度というものが従来の税体系の中になかったものですから、そういう一つのあり方というものが、新しい一つの芽ばえとして、あるべきインフレ下の税制措置として当然の措置だというふうに私たちは受け取りながらそういう作業を進めておるわけなんですけれども、そのことと税体系とその筋道が合うのか合わないのか。両先生の専門的な立場から見て、ひとつお話を伺えればありがたいと思います。
  91. 和田八束

    ○和田参考人 戻し税といいますか、還付ということですが、私どもが四十八年の年内減税、あるいは四十九年度におけるインフレ下での緊急減税措置として戻し税ということを申し上げたわけですけれども、一つの戻す基準といたしましては、自然増収というのがあるわけでありまして、自然増収のほとんどが、そうしたインフレ下での名目所得上昇によって出てきた、これは所得税の場合ですけれども、取り過ぎ分であり、あるいは納税者の側からいうと、取られ過ぎた分であるというふうに考えることができるわけでありますから、その範囲内で還付する。  どのように還付すると一番公平なのかということでありますが、下に厚く上に薄く還付するのが公平であろう。しかも、先ほど谷山先生も申しておられましたけれども、年度中においても自然増収の発生した限りにおいては減税すべきであるという考え方からいいますと、最も簡便でわかりやすいということがよろしいわけでありまして、税法の基本をそのつど変えなくても、物価あるいは所得が一定水準上がった場合には、あるいは自然増収がどれだけかふえた場合には、総額として幾らをどういう形で還付するという原則をきめておけば、年度中において何回か行なうことも可能であるわけですから、その意味では、簡便かつわかりやすい方法であろうというふうに考えるわけです。  それともう一つは、一般の納税者に対して、減税ということで、これまで十数年あるいは二十年ぐらいですか、毎年減税が行なわれてきたわけです。減税ということばは、これはたいへん悪いですけれども、不当表示性というものがあるわけでありまして、実質的な税負担軽減ではなくて、部分的な調整でしかないものが減税といわれて、そしてあたかもこれが国民といいますか、納税者に対する恩恵として出されてきたということは、こういった不当表示性というふうにもいえるようなことではないかと考えるわけです。その辺を分けて、実質的な税負担の改定、これは所得税において相当程度改定すべき点が多いわけでありまして、税率のあり方あるいは給与所得控除のあり方、その他多くの基本的な問題というものが残されているわけでありますけれども、それとインフレ下における緊急的な調整というものとを分けて示す。そして、その辺の区別というものは納税者のほうにも明らかにして、最も簡便な方法で取り過ぎ分を返すということが必要であり、そのためにはさしあたっては戻し税方式といいますか、あるいは還付方式というのがよろしいのではないかというのがわれわれの考え方でございます。
  92. 谷山治雄

    ○谷山参考人 私、いまの点について、お答えといいますか、申し上げてみたいと思うのですが、この税額控除というやり方そのもの所得税の基本的な仕組みに関する問題で、高額所得者にはあまり有利でなく、低額所得者に有利だという点については、所得控除よりも税額控除のほうがむしろ望ましい形というふうに私は考えております。  それはそれといたしまして、いまの御質問は、緊急措置としての戻し税という問題が税体系上どうか、そういう問題であると存じますが、私は、税体系上から考えますと、税額控除による戻し税というのは、人的控除の緊急的な追加であるというふうに考えてよろしいと思いますので、そういった意味で、戻し税というものを税額控除で行なう場合には、いま申し上げましたように、人的控除の緊急的な、追加的な控除である、こういうふうに考えればよろしいのじゃないかというふうに考えます。  こういう席上で技術的なことを申し上げては恐縮でございますけれども、もしも四十八年中の所得税についてそういう戻し税がこの国会で可決されると仮定いたしましたならば、所得税の確定申告は三月十五日でおしまいでございますけれども、これを延長いたしまして、すべてのそういった対象者が申告をすることによって税を戻してもらうということは、技術的には可能であると存じますし、将来の問題につきましては、いま和田さんが言われましたように、随時行なえるような体制ももちろんできないことはないというふうに考えますので、これは趣旨から申しましても、税体系の点からいいましても、もっともであり、かつ可能な問題で、おかしくない、しかも非常に必要な問題であるというように私は考えます。
  93. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 いろいろありがとうございました。  次に、今回、インフレ短期決戦ということで、たいへん力を入れてそれぞれの政策も強化をしているわけであります。問題は、インフレの収束と税の調整機能をどうとらえたらいいのか。これをひとつお聞かせをいただきたいと思いますが、特に今回、短期決戦でございますから——短期決戦になるかどうか、私、多少頭をかしげるのですけれども、しかし、短期決戦という立場に立ちまして一切の政策を強化しておりますから、その場合、どう対処して措置したらいいものか。ここらあたりについて御意見をお伺いしたいと思います。
  94. 和田八束

    ○和田参考人 つまり、今日の極端なインフレーションの原因というのは幾つかあると思いますけれども、何よりもやはり外貨政策を中心としたところの政策上の誤りと、それから四十七年以来の財政金融政策の誤り、この二点が最も大きかっただろうと思うのです。この二点がいわゆる過剰流動性を、企業、特に大法人の手元に多くさせて、これがさまざまな形でインフレを刺激してきたというふうに考えるのが、最も中心の筋になるのではないかというふうに考えるわけであります。  この財政政策につきましては、四十九年度予算におきましてインフレ抑制というふうな精神で編成されましたので、この成り行きが注目されるわけでございますけれども、過剰流動性等が企業の手元に行って、そしてそれらがさまざまな形でインフレを刺激してきたというこの根本的な日本における大企業の体質というものは、やはり財政上から是正すべき点がかなりあるのではないかというふうに考えるわけです。  これは一つは、土地税制の問題があるわけでありまして、法人企業が土地投機に走るということに対する税制上からの規制というものは十分に可能であるわけですし、これはもっと強力に行なわれなければならない。それから自己資本を蓄積して、これらでもって株式を取得したりあるいは中小企業の系列化をはかるというふうな問題があるわけでありますけれども、こうした問題につきましても、税制上から十分に規制が行なわれ得ることでありまして、先ほど来私どもが申し上げているところの企業の内部留保になるような準備金あるいは特別償却等の租税特別措置による優遇というものを是正することによって、廃止することによって、そうした企業が自己資本を蓄積して、これらを土地あるいは株式に投機するという問題に対しては十分に税制上から行なえる規制措置ではなかろうか、こうしたことを今日の時点ではもっと強力に行なわなければならないということであります。  それから、税率の問題も、これも先ほど指摘しましたけれどもあるわけでありまして、定率の比例税率というものは、今日の非常に格差の大きな法人の間では現実的ではないわけでありまして、資本金の大きな所得の大きな大法人と、それから個人的に資本を調達するような中小零細資本と同一レベルでもって法人税制が適用されているということは、これは非常に大きな矛盾を持っているのではないか。したがいまして、累進税率あるいは段階税率というようなものがかりに採用されますならば、税負担を価格に転嫁するということがかなりの程度防げるというような意見もあるわけでありまして、もしそれが真実であるならば、そうした面からも、物価対策上、法人税制の活用する余地というものがあるのではないか。むしろ今日の物価上昇のかなりの程度の原因といいますのは、従来の大法人、あるいは土地、株式等の取得者、所有者個人等も含めたところの高所得者に対する税制上の甘さというものが大きな原因になっているのではないかというふうに痛感する次第であります。
  95. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間があまりございませんので、金井さんにお伺いをいたしたいと思いますが、従前もそうでしたが、特に最近のインフレの中で、さっき金井さんのお話しくださいましたように、大衆、特にサラリーマンの税負担感というものは、私はたいへんなものだと思うのです。こういう負担感の実態などについて、たとえば税外負担等も多くあると思うのですけれども、その税の負担感について、少しつけ加えてお話しいただきたいと思います。
  96. 金井浩正

    ○金井参考人 ただいまの御質問について非常に抽象的な話になろうかと思うのですけれども、実は御存じだと思いますが、昨年の十二月に、非常にインフレがひどいということで労働組合などがインフレ手当を出せ、こういう戦いをしたことがあります。その際、公務員について年度末手当のうちの〇・三カ月分を繰り上げて十二月に支給しょう、こういうことで実は話がついたということで、私どもの職場の下部末端までいろいろ徹底をしたわけであります。しかし、すぐはね返ってきたことは、一体それはどうなんだ、埋め合わせのつくものなのか、そうではなくて単に繰り上げただけなのか、こういう疑問であります。なぜそういうことを言うのかと言いましたら、もし十二月に繰り上げて支給されるだけならば、ただ税金を余分に取られるだけで、その何%かは税金で徴収されるのだからそんなばかげたことはない、それだったら労働金庫に行ってお金を借りたほうがずっと率がいいんじゃないか、こういうような下部末端の組合員の率直な意見が、直ちに私どものところにはね返ってきたわけです。この一事を見ましても、国民大衆、特に給与所得者にとっては、この税負担というものは最近非常に深く、鋭く入っているというような印象を受けます。  それからまた、非常に名目所得の上昇に伴いまして、昨年末の臨時給与、つまり年末手当などが支給された際には、ほとんどの人たちが四万円、五万円といういわゆる源泉徴収を行なわれております。そういうことに対して非常に若い人たちまで、いままで税というものに非常に無関心であったけれども、昨年末には、これは税金問題で黙っていられない、そういう実感が実は出てきておるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。  それから、いま御発言がありました特に税外負担との関連であります。所得税によって住民税がやはり同じく決定をされていくわけであります。比例をしていきます。それからまた、単に住民税だけではありません。たとえば保育料などの問題も、所得税額がどのくらいか、住民税額がどのくらいかということによってランクされ、決定されていくわけであります。それからまた、国保料などについても同じ傾向を示します。またそのほか、たとえば地域の自治会などの会費、これらについても、非常に関係をしていきます。したがいまして、私も全国各地の勤労協などに呼ばれていくことがあるわけですが、一体この自治会の会費を徴収するときに市役所やあるいは町村役場でそういう課税の実態を見せるのか、そういうことに承認は要らないのかというような質問も出ますし、ああいうことは直ちに廃止すべきだというようなことが非常に強い意見として出されるわけであります。そういう意味から見ましても、いわゆる税だけでなくて、サラリーマンにとっては税外負担まで非常に負担が重くなっている。こういう印象を強く受けるところであります
  97. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 確かに税の負担感については重い感じを持っておられるということは、私たちもよく承知をしておるのですが、特にプラスしまして税外負担が最近非常に大きな量を占めている一しかも、範囲も広まってきておる。こういうことなどで、こうしたものを組み込んだ審議も、これからしっかり深めていきたいと思います。また税外負担については日をあらためて、資料などもいただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。  それから金井さん、私は変なお伺いをするのですが、いま税の問題で原告として裁判闘争をやっておられますね。このことを少しお聞きしておきたいと思うのですが、どのような理由で裁判闘争を起こされているのか、一体中心点は何なのか、いつごろからお始めになったか、その経緯を少しお聞かせいただきたいと思います。
  98. 金井浩正

    ○金井参考人 ただいまの御質問にお答えをいたしたいと思います。  私は昭和四十四年の十月十八日だったと思いますが、長野地方裁判所あてに源泉所得税制度違憲訴訟として、これは民事訴訟でありますが、私が納付した源泉所得税を全額返還を求める訴訟を起こしております。もちろん相手は国であります。そういう意味では、昭和四十四年の十月以降現在まで四年半にわたって裁判が係属されておりまして、この間開かれました裁判は十七回であります。  なぜ私が裁判を起こしたかという御質問でありますが、先ほどもるる申し上げましたけれども、どうも私ども給与所得者に対して現行の税制度があまりにも不公平ではないか、こういうふうに考えたわけであります。つまり、先ほど申し上げましたように、私たちには申告する権利がない。そしてもしもそれがあやまちがあっても、たとえば救済を求める手段すらもあるいはないのではないか。こういうようなこと、あるいは必要経費が認められていない。これらのことについて現行税制度は違憲である、こういうことであります。つまり憲法十四条の平等の原則に反する、こういう問題と、もう一つは、いまの人的控除というものがあまりにも低過ぎる、このことは憲法二十五条に保障するところの生存権を侵害する、こういう意味で私は違憲訴訟を起こしているわけであります。  なお、所得税法第六条の中ではいわゆる源泉徴収義務者には納税の義務を課しておりますけれども、私ども給与所得者個々に対してはいわゆる納税の義務を課した条文がないのではないか、こういうことも法廷の論議の中で明らかにされているところであります。  なお、私は昨年の七月二十三日の法廷で、私の家計実態と、わが長野県のいわゆる長野市を中心として総理府が行なった勤労者の家計実態調査、あるいは人事院の標準生計費、あるいは長野県人事委員会の標準生計費というものとを対比いたしまして、そして私の家計支出と標準的なそういう勤労世帯における家計支出のバランスは一体どうかということの書面も提出いたしまして、現在これらの問題をめぐって審理中でございます。  ただ、私はこの機会に、この場でこんなことを申し上げるのははなはだ恐縮でございますけれども、実は昨年の七月以降開かれています裁判はわずかに二回でございます。七月の次が十月でありまして、その次が二月七日であります。そしてこの次は本年の六月十三日という予定であります。その意味で、実にこの間が三カ月ないし四カ月も開く、こういうような実態にあるわけです。その原因というものは何かといいますと、実は国側が私の裁判の中で常々、原告のほうが具体的にどのようにして損害を受けたか、権利を侵害されたかということを示せ、こういう要求があったわけでありまするけれども、私どものほうで私の家計簿を、昭和四十五年一年分についてでありますが、明確に分析をいたしまして、これを書面にして昨年の七月に提出をしたわけであります。ところが、それ以来国側は、それらに対して真正面から、たとえば現行の人的控除の根拠が何かというようなことを明確にしますと言いながら、実は裁判をおくらしているわけでありまして、たとえば十月の法廷におきましても、裁判長からもそのような訴訟指揮を受けました。そして三カ月間期間をいただきたい、こう主張しながら、実は二月七日の日に私ども大いに期待したところでありますが、これまたそれに対しての答えはありませんでした。そしてまた、二月から四カ月後の六月十三日へと裁判が遅延されているわけでありまして、私は国民の一人として、裁判を受ける権利を持ちながら、このように不法にして不当に裁判を遅延させられている国の態度、姿勢に対して、強い怒りを持つものであります。
  99. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 非常におくれていますね。私、裁判の実態はよく承知いたしませんけれども、まあ違憲訴訟的性格を持つからという理由で、憲法に関することだからという理由でおくれておるとも思えませんし、中身はかなり具体的に例示されておるようですからそうとも思えませんけれども、いまあなたがおっしゃっていた、裁判の進行度合いが非常におそいのはただ単に国が怠慢であるということだけでしょうか、もっとほかに何か原因がありますか。
  100. 金井浩正

    ○金井参考人 ただいまの御質問でございますが、確かに私は国の姿勢そのものも若干の問題はあろうかと思いますが、これはこういう場所で申し上げてよろしいかどうかわかりませんが、実は前回二月七日の法廷が終了して法廷外に出てから、国側の代理人と若干私語をかわしたことがあります。そこでお聞きしたところでは、代理人の方は法務省の訟務部の方ですけれども、大蔵省の御協力がなかなか得られないので、そのために資料の提出がおくれておる、こういうようなことをお聞きをいたしまして、同じ国の間でありながら、なぜそのようなことについて十分な連携がとれないのだろうか、そういう疑問を私は抱いたわけでありまして、いま少し国の、政府各省庁間の連携というものも円滑にいかないものだろうか、こういうふうに考えているところであります。
  101. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 訴訟を起こされています中に、権利の侵害ということで、所得税法第六条は徴収者に義務が負わされておる、いわゆる雇用者のほうに義務が負わされておる。いわゆる被用者である納税者のほうには源泉徴収されるという義務はない。そういう条文はない。これは去年のこの委員会でもいろいろ議論をいたしまして、そのことについては確定的な見解ではございませんけれども、かなりそれに沿う態度は述べられて議事録にあるわけですが、いまのような源泉徴収はいけない、申告制にしなくちゃだめだ、権利の侵害だ、こういう立場を貫いて裁判をおやりになっておるのか、いずれでもいいという選択制を制度として制定をし、そのいずれでも自由にわれわれの側に選択をさしてくれという主張をなさっているのか、そこをちょっとお知らせいただけませんか。
  102. 金井浩正

    ○金井参考人 お答え申し上げます。  権利侵害の部分については、やはり権利をあくまで私は主張したいと考えているわけでありますが、私、最初の冒頭の意見の陳述の中でも申し上げましたように、やはり必要経費というものを給与所得者にも明確に認めるべきではないか。そうしてそれは、概算的なものであるか、あるいは実額であるか、その選択制を認める、こういう制度をぜひとっていただきたい、こういうふうに私は考え、訴訟の中でもそういうことを主張しているわけであります。
  103. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ちょっと私のお聞きしたのが当を得なかったがと思いますが、いわゆる権利侵害の件で、必要経費控除と一応切り離しまして、給与所得者は全部申告制に制度化しなくちゃいけないという立場で権利侵害と見られておるのか、いまの源泉徴収制度と申告制と二本立てでいずれをも選択できるという立場でお認めいただくような姿で訴訟を起こされておるのか、その点の選択制を伺っておるので、その点について。
  104. 金井浩正

    ○金井参考人 お答えいたします。  一応、源泉徴収制度というものは私はなくしていただきたい、こういう考え方であります。  ただ、申告のときに概算控除ということでやはり一定の法定額を出すか、画一的なものでいくか、あるいは全く自分の家計実態なり必要経費というものを明確にした実額控除でいくか、こういうことでありまして、源泉徴収制度そのものをなくしていただきたいと私は考えておるのであります。
  105. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 では、時間がたちましたのでこれで終わります。  どうもたいへんありがとうございました。
  106. 松本十郎

    ○松本(十)委員長代理 高沢寅男君。
  107. 高沢寅男

    ○高沢委員 参考人の先生方、御苦労さまでございます。よろしくお願いします。  私は初めに、これからの日本の経済構造というか、あるいは産業構造というか、そういうものとの関連の中で、税制のあり方をどういうふうに考えたらいいのかということでお尋ねをしたいと思います。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  これは和田先生と谷山先生にお尋ねをしたいと思いますが、先ほどインフレにたえる税制ということで、インフレという経済情勢の中で税制としてあるべき姿なり、あるいはその場合に必要な措置については、すでにいまの山田委員質問とのやりとりでかなりお示しをいただいたと思いますが、これからの日本の経済が、いままで経済は高度成長、そうしてインフレ、こういうふうな姿でずっと来たわけですが、これからもそのままでいく、そういう姿でいくということは一つの可能性だと思います。それからもう一つの可能性は、経済成長としてはかなり落ちてくる。しかし、インフレは進む。まあインフレという観点で見れば、おそらく世界の資本主義の各国は、日本も含めて、どうもいまの世界の資本主義はインフレという病気を直すことができないというふうなことではないかと思います。つまり、経済の成長としては落ち、そしてインフレと結びつく。こういうふうな状況の中で税制というものを考えた場合に、どういう税制というものがあるべきかということをひとつお尋ねしたいと思います。  いままでの場合には、所得税なりあるいは法人税なり、こういう直接税というものが果たす役割りが非常に大きい。その直接税は、いま言った高度成長なりあるいはインフレの中で非常に大きな自然増収が出る。その自然増収の一部は減税に回るし、一部は政策財源になるというような形で、予算編成なり何なりが行なわれてきた。こういうふうに考えますけれども、もしいわゆるスタグフレーションですか、経済の伸びとしては非常に停滞的な伸びになっている、しかし、物価は上がるというような状況が来た場合に、客観的に見て、いままでのようなそういう税制の仕組みでいけるのかどうか。そこへ前から検討課題になって浮かんだり消えたりしておる間接税の面における付加価値税とか、そういう一般消費税なり何なりというものがまたどういうふうに位置づけられるかということもからんでくるのじゃないか、こういう感じがするわけです。  今度また石油の値上げが行なわれる。こういうことで、その石油の値上げが波及するのをとにかくいろいろな形で押える、そのためには最大限行政指導というものを発揮するということをいま政府では言っておりますけれども、私はいま言ったインフレというものがこれから資本主義が続く限り必ず続くという立場に立てば、行政力で押え込むということはそんなに続けることはできないだろう。そうすると、またそこから全体の物価が上がってくるということが必ず来る。そのときにいままでと同じような経済構造や産業構造で物価水準が一段階上へ上がっておさまるということになるのか、あるいは石油というものを起点にして物価が一回り上がる中で、そういう物価上昇を実現できる力の強いところと実現のできない力の弱いところ、そういうふうな格差が出て、いままでとまた違った経済構造なり産業構造になるのかどうか。ここら辺は必ずこうなるという予測はなかなか立てられないと思いますけれども、そういうことも考慮の中に入れながら、インフレは進む、しかし成長としては鈍化していくというような前提にもし立てば、そのもとで税制というものはどういう姿であるべきかというような点について、たいへん大まなか議論で恐縮ですが、和田先生と谷山先生からお聞きをしたいと思います。
  108. 和田八束

    ○和田参考人 たいへん大きな問題でありまして、私も財政学をやっていることになっておりますが、経済全般につきましてはやや専門外のことになりますので、経済の見通しということにつきましてはなかなか明確な意見を申し上げることはできないわけですけれども、長期的にはいろいろなまた変化があると思いますけれども、短期的に見てみますと、いまおっしゃいましたように、スタグフレーションと申しますか、低成長高物価といいますか、物価上昇率が高いというふうな形、あるいは成長率における名目と実質との乖離というところが大きく出てくるのではないかというふうに大体考えてよろしいかと思います。国際的にも、各国においてやはり物価上昇が大きくなってきておりまして、資本主義の病というふうにいわれておりましたインフレーションが一段と進んできて、病が一段と国際的に見て大きくなってきたということがいえるわけですけれども、その中においても、日本物価上昇率というのは格段にまた大きいということでありますから、これはやはり日本の従来の資本蓄積的な経済政策の結果によるところであろうというふうに考えるわけであります。  これまでの税制は、一言で言いまして資本蓄積型の税制であるというふうに言って差しつかえないわけでありまして、その代表的なものが企業に対する租税特別措置である、あるいは法人税制であるというふうに言って差しつかえないと思います。こうした資本蓄積税制を足がかりにしたところの高蓄積型の経済が、国際的に見ても日本物価水準を非常に高めてきたという原因になっているわけでありまして、このような経済体質を転換しなければならないということが今日の国民経済における最も大きな課題であり、それに対して、インフレを抑制すると同時に、そのインフレがかりに進んできたとしても、その中において国民の生活権を基本的に保障していくということが税制、財政の課題でなければならない。そのような意味で、税制における福祉といいますか、あるいは福祉税制というものがこの際確立されなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。そのためには、これまでのこういった経済体質をつくり上げてきたところの資本蓄積型の税制というものを、この際、基本的に改める、そのような税制をなくしていく、廃止するということが必要であると同時に、先ほど谷山さんのほうからも発言がありましたけれども、財産課税の徹底というふうな問題も含めまして、高所得層あるいは大法人に対する課税を強化することによって、福祉財政を実現していくということが必要だろうと思うわけであります。  そのためには幾つかの問題があろうかと思いますけれども、一つの重要なポイントといたしましては、国と地方の財政関係といいますか、あるいは国と地方の税の配分というものを、この際、根本的に考え直す必要がある。特に、国民福祉を促進さしていく一番大きな基礎になるところのものは地方自治体であり、地方行政であろうと思いますので、そこのところを拡充しなければ国民福祉の拡大はあり得ないわけでありまして、また、きめのこまかい生活権の保障ということが実現できないわけでありますので、国と地方の財源配分を改めていくということが、国の側からいっても大きな課題であるのではないか。そのためには、法人税の地方移譲というふうなことも主張されておりまして、四十九年度税制におきましては一部実現されようともしておりますけれども、もっと根本的に、たとえば所得税の大幅な移譲というふうなことも含めて、地方財源を拡充するということがこの際必要ではないか。  それからもう一つ自動車関係税が今度の新税制では引き上げが予定されているところでありますけれども、これも今日の自動車を中心とする産業構造と、それからモータリゼーションのマイナスというふうなことを考えますならば、自動車の抑制ということと同時に、自動車に社会的な費用を負担させるという点からいいましても、引き上げの余地があるのではないか。と同時に、従来、自動車関係収入の多くは目的税として道路投資にもっぱら投入されてきたわけでありますけれども、財政政策におけるこのような道路中心の公共投資というものも再検討されるべきでありまして、道路中心の公共事業が異常に高いというこの日本の財政構造が、やはり世界的な需要を創出し高度成長を促してくる非常に大きな要素になっていたわけでありますので、この点からいいましても、道路投資の抑制、そのために自動車関係収入というものを福祉財源として用いるというふうな方向で、目的税ではなくて一般財源として用いるというふうな方向が考えられなければならないのではないかというふうに考えるわけでありまして、要は、言で言いますと、これまでの資本蓄積税制から福祉型税制といいますか、こうした大きな転換が行なわれなければならない、そういう時期ではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  109. 谷山治雄

    ○谷山参考人 いま言われました資本蓄積型の税制からの転換という点は、基本的には同意見でございます。  いま御質問になりました点で、ちょっと補足的な点を申し上げたいと思うのでありますが、経済見通しが、従来のような設備投資を中心とする経済の成長が鈍化して、インフレーションはさらに進むであろうという、これは非常にむずかしい問題ではございますが、基本的にはそういうふうな方向になる可能性が強いというふうに考えております。となりますと、インフレーションによる所得の配分がどのようになっていくか、そういう点に着目をした税制というものが、いま大事になってくるんじゃないかというふうに考えるわけでございます。  ということになりますと、実際にはどうかということなんでございますが、先ほどの御質問の中に、従来は高度成長の中で、直接税を中心に自然増収をあげてきて、それが減税に回り、財政支出の膨張にもなったという御指摘で、それは全くそのとおりでございますが、しかし、先ほどからも言われておりますように、そういう高度成長下における直接税の増大、自然増収の増大という中に、先ほど申しましたように、法人所得、特に大法人所得、それから資産所得、こういったものが分離課税とか比例税とか、あるいは租税特別措置等々によって、実際、課税をほとんどされていないといいますか、少ないということは大きな問題になるわけなんで、私は、こういうインフレに対処する税体系としまして、従来そういうふうに欠落をしておりました大法人の所得なりあるいは資産所得なりといったものに対する課税を徹底していくというのが、結局は、インフレに対する税制になるのではないかというふうに考えているわけでございます。  そういった意味では、いまの段階で、一般消費税である付加価値税を考えるということはもちろん不適当なわけでございまして、こういう税金をかけますと、ますます大衆の実質賃金、実質所得が切り下げられるわけでございますから、そういった経済の段階、見通し考えますと、付加価値税はもちろん適当ではないというふうに考えるわけでございます。  そこで、先ほども申し上げましたように、重複するようで恐縮でございますけれども、とにかく過去の高度成長の中で、法人個人を問わず、俗にいう金持ちでございますが、相当大きなストックを持ってきている。卑俗な話でございますけれども、一億円のマンションに住んで、さらに別荘を三軒も五軒も持っておる、数千万円するゴルフの会員権を持っている、こういうような人が、数はともかく、続出をしているわけでございますが、一方、非常に貧困に苦しむ庶民が多いということでございますから、今後の税体系といたしましては、フローとしての資産所得やあるいは超過所得をつかまえるということだけではなしに、そういう高度成長の中で蓄積された財産というもの、ストックというものに着目して、それを再配分の形でもって移しかえる、そういう税制が必要ではないかというふうに考えるわけでございます。  そういうわけで、今後どういうふうになりますか、いろいろ問題がございますけれども、基本的には、いままで欠落しておったそういう大法人や資産所得に対する課税を強化することをまず最初にやるべきであって、たとえば付加価値税とかいろいろな問題がございますけれども、これは現在、また近い将来の経済見通し考えます場合には、適当ではない、やめるべきである、そういうふうに考えるわけでございます。  なお、時間の関係であまり長くおしゃべりしても恐縮でございますけれども、このキャピタルゲインの課税についても、いろいろな技術的な問題がございまして、たとえば有価証券の譲渡所得税は捕捉困難だということでもって、いままで見送られてきておるわけでございますが、私はそんなことは絶対にないと存じます。時間の関係上、詳しいことは省略させていただきますけれども、たとえばの話を申し上げますと、現在有価証券取引税として一万分の三十という流通税がございますが、これをかりに、全くこれは仮の話でございますが、売却価格の一〇%という課税にした場合に、もちろん証券界の方は反対されるでしょうけれども、その場合には、売却価格の一〇%も課税されてはかなわぬということで、売却所得を申告したほうがむしろ得であるという人も出てくるわけで、そうなりますと、有価証券のいわゆるキャピタルゲインというものも、一〇〇%ではないにしても相当程度捕捉ができる。もしかりに捕捉できなくても、有価証券取引税をそういうふうに一〇%に上げれば、現在五百八十億円しかない有価証券取引税が一兆円ぐらいになるわけでございますから、財源にもなる。これはまだ仮の案でございますからあれですけれども、そういうふうに、さっき申し上げましたように、資産所得に対する課税というものを当面強化していく。これは私は、現在あるいは近い将来の経済見通し考えた場合、そういった税制、税体系になるべきではないかと思います。  先ほどのインフレ防衛に対する税制については、申し上げましたので省略させていただきますが、いま和田先生も言われましたように、地方税についての配慮も、これは当委員会のあれではございませんようですけれども、同時に非常に必要であると存じます。  以上、お答えいたします。
  110. 高沢寅男

    ○高沢委員 私、この機会に政治献金、政治資金の問題の関係で、ひとつ和田先生と金井先生にお尋ねをしておきたいと思います。  いま行なわれている国会の代表質問の中で、参議院のほうでですが、社会党の藤田進議員が政治資金の問題に触れたわけです。結局、田中総理なりあるいはそれぞれ各派閥の領袖として、自治省の届け出の中で何々派が何億円という、そういう名前の出る方がずっと大臣席にいるわけですから、そこで藤田さんが、それぞれの大臣からその問題についての見解を聞きたい、こう言った際のお答えの中に、こういう答えが出ておりますね。つまり、企業が政治献金を出してくれるということは、これは一つ国民の自発的な政治参加の形である、そういう自発的な政治献金というものを断わるつもりはない、それはいわばありがたくちょうだいする、こういうふうな答えなわけであります。  企業のそういうふうな政治献金の姿というものは、これがいまの自発的なということの関係で浮かんでくるのは、前に八幡製鉄の有田さんという株主の方が、八幡製鉄が自民党へ政治献金を出したということはこれは株主の利益を守るという役員会の義務に反しておる、こういう訴訟を起こして、それに対して最終的には、最高裁の判決の中で、企業といえども国に対して税金を納める義務を負っておる。そうすると、この企業も、憲法の第三章にいろいろな国民の権利の規定がありますけれども、ああいう自然人としての国民と同じように、自分が支持する、あるいは自分がいいと思う政党へそういうふうな政治献金を出す権利があるんだ、そういう点においては全く自然人と同じ権利があるんだというようなことが、最高裁の判決で出たわけです。つまり、企業あるいは法人というものと自然人である国民とは全く同じ権利があるんだというふうな考え方が示されたわけですが、一方、税制の法人税なら法人税というふうな考え方で見れば、実在説か擬制説かというふうな議論があって、いまわが国の法人税としては、私は基本原理は擬制説の上に立って、そしていろいろ実在説的な政策も加味しておるというふうな形になっておると思います。そういうところから配当に対する控除制度配当軽課、いろいろな措置がとられて、これが今日批判を受けておるいろいろな側面になっておる。そういうふうに、税制の面では、法人は自然人である株主個人の集合体であるという立場から税制の運営がなされる。政治献金の面では、自然人と同じ権利があるんだというような論理でなされるということはたいへん矛盾だ、こういうふうに私は考えるわけです。  そこで、この点は当然政治資金規正法において抜本的な改正をやるべきだし、かねてから私たち主張してきておりますが、これはまだいまの政治の力関係の中ではそこまで実現するところへいきませんが、これはいずればそういう改革は必ずしなければならぬと考えております。私は和田先生には、そういうふうな法人の実在説かあるいは擬制説かというような関連でいろいろ税制が運営されておりますが、それとの関係でいまのこの矛盾した点の御見解をお聞きしたい。  それからもう一つ、金井先生には、労働組合の御関係もありますので、そういう議論が出るとき必ず政府側から出る議論は、労働組合だって政治献金を出しているじゃないか、こういうふうな議論が出るわけなんです。私は、労働組合は確かに法人ですけれども、それは株式会社のような営利法人とはまた性格の違う法人であるし、しかも、労働組合としての政治的な目的に資金を出すという場合には、大会なり中央委員会なり、いわば組合員全員の総意を確認した上になされておる、こういうふうなたてまえで、いまの企業の政治献金のあり方とは全く違うというふうに考えるわけですが、そういう労働組合の立場から金井先生の御見解をいまのことに関連をしてお聞きをしたい、こう思うわけです。
  111. 和田八束

    ○和田参考人 企業の政治献金の実態につきましては、私はほとんど知りませんので、具体的には意見を申し上げられませんけれども、企業が多額の政治献金をするとした場合に、まずそれらの政治献金が可能であるところの利益というものが、先ほど私どもが申し上げておりますように、租税特別措置法などによって優遇された形で、つまり一種の補助金あるいは財投というふうな形で企業に与えられたものがあるとするならば、そうしたものはやはり社会的に用いるべき責任があるわけでありまして、そうした社会的な責任を持って用いるものよりも政治献金のほうが優先されているとするならば、納税者としてはかなり問題があるところであろう。さらに、都市問題あるいは公害問題等におきまして、企業の社会的責任を果たすべきところが非常に多くあるにもかかわらず、それらの責任が十分に果たされていないにもかかわらず、政治献金という形で特定政党などに配分されているとするならば、やはり納税者としての批判があり得るであろうと思うわけであります。  その場合に、企業が独立した自然人と同様の主体であるというふうな議論が出てくるわけですけれども、その結論と税制上の結論とは必ずしも結びつくかどうかということは、これまたわからないところでありまして、問題があるところでありますけれども、税制自体についていいますと、今日の社会化された大法人あるいは社会的に資本を調達しているところの大法人が独立した一つの経済主体である、あるいは人格であるということは、実態としてもいえるわけですし、また経済学的な議論としても、所有と経営の分離された今日の大企業の理論的、実情的分析から、そのようなことはすでに明らかになっているところでありまして、常識的になっているわけであります。  また、外国の税制を見ましても、アメリカなどの税制におきましては、その当初から法人税制というものは法人が独立した課税主体であるという考え方に立ってできているわけであります。また、法人企業が個人企業と区別があまり明らかでなかったという歴史的な実態を持っているところのイギリスにおきましても、一九六五丑年には法人実在説的な考え方に立ったところの法人税が採用されているというふうなことでありまして、先進諸国におきましては、ほぼいわゆる法人実在説的な税制というものがすでに常識化されているわけでありまして、日本だけがそのような古い形の法人観に固執しているという理由はないわけであります。むしろ、そのような法人観に固執しているということは、現実の法人の実態と大きく乖離することによって、いたずらに法人に対する税制上の利益を大きくしているというふうにいわざるを得ないわけでありまして、私は、いわゆる法人実在説的な立場に立った法人利潤税といいますか、そうした考え方で税制を新しくつくり直すべきである、こういう考え方を持っているわけであります。
  112. 金井浩正

    ○金井参考人 ただいまの御質問の中で、前段の部分については、和田先生からいろいろお答えいただきましたので、特に私は労働組合の問題についてお答えを申し上げたいと思うわけであります。  こんなことは私がもう申し上げるまでもないと思うわけですが、労働組合そのもの一つのメリットを求めて金を出す、こういう性格のものではありません。したがって、私どもがたとえばそういう金を必要とする場合は、先ほどの御質問の中にありましたように、大会なり中央委員会なり、そういう機関で決議をし、全組合員の了解を得た上で行なうのは当然でありますし、また、その金は個々の組合員から特別なカンパとして寄せられるものでありまして、利益の一部をそれに充てるとか、そういう性格のものでは全然ないわけでありまして、企業の政治献金と私ども労働組合との違いはそこに明確にあるのではないか。もとより、私ども労働組合の目的というものは、あくまでも組合員の、そしてまた、その家族の社会的かつ経済的な地位の向上とか、あるいは民主主義擁護とかいうことが目的でありまして、われわれが利益そのものを直接求めているものでないことは、すでに御存じのとおりであります。
  113. 高沢寅男

    ○高沢委員 超過利潤税の問題についてお尋ねをしたいと思います。これは先ほど、最初参考人として見解を述べられた谷山先生の御意見の中にもあったかと思いますが、この点については、三人の先生方からそれぞれお考えをお聞きしたいと思います。  ことに、昨年の暮れ以来の非常な不当な便乗値上げというふうなことに対する社会的な非難が強い。そういう中で生まれた不当な超過利得というものは、これを税金で取るべきだというふうな意見国民の中からも当然わき上がってきて、私たちもその立場であるわけです。いま、この超過利得税、あるいは自民党案では臨時利得税というふうな名称になっておりますが、それが国会のほうにおいても、いま案がそれぞれ検討されておる過程であるわけです。その中で、私たち社会党の考えとしては、このことは当然やるべきであるけれども、しかし、それといわゆる所得政策の関係——いまインフレをおさめるには何といっても総需要を押えるんだという政府の言い方は、われわれの見るところでは、どうも労働者なり勤労者の所得を押えるという方向へ向かってくるという感じがするわけですが、そういう所得政策というものにつながるということがもしあるとすれば、そこのところはどうしても切断していかなければいけない、こういう考え方を私たちは持つわけです。  先般、自民党から社会党へこういう案でどうかと示された臨時利得税という案の中にも、そういう税をかける課税標準の考え方の中に、過去三年間の基準所得を上回る臨時利得というものと、それに、ただし基準年度の人件費のX%、このXはまだ出されていないわけですが、それをこえて支払った人件費があるときは、そのこえる人件費相当額を臨時利得として加算する、こういうような条件がついてきているわけですが、この人件費のX%をこえる部分というふうなここのところに、言うならば、企業として支払うある程度当然な人件費に基準というものを置いていくという、そういう考え方があると思いますが、これは結局、逆に裏返してくると、それを上回るような賃上げはいけないとかいうふうなことになってきて、これが結局所得政策というものにつながるんじゃないのか。そういうことで、われわれとしてはこのことは、不当な利得に対しては当然課税すべきであるけれども、それと所得政策と結びつけることはいけないということでやってきているわけです。  そこで、そういう立場からわれわれとしては、法人税の今度四〇%になるその税率の上へ、資本金の段階に応じて臨時の付加税を課するというようなやり方でやれば、先ほどから御意見として出ている法人税も次第に累進制の方向へ進むべきだという方向へまあ実態としては行くことになりますし、その累進という性格が出てくれば、当然大きな資本金あるいは大きな所得の法人はより多くの税を負担する、またより高い税率の税を負担するということになって、この中でこの問題も当然解決されるではないかというように、われわれ社会党としては考えているわけであります。  ただ、それに対して政府側から、臨時利得税というふうな考え方が出てきておりますし、これは他の野党に関していえば、社会党以外の他の野党の場合には、臨時超過利得税というような立法の形をとろうというお考えがあるということであるわけですが、こういうふうなところをこれから私たちとしても十分整理をしていかなければいけないんじゃないか、こういう考えですが、そこのところについて三人の先生方に、それぞれお考えをお聞きしたいと思うわけであります。
  114. 和田八束

    ○和田参考人 インフレ利得の税による吸収ということにつきましては、過去、各国において歴史的にインフレ経済というのは何回か見られたわけでありまして、そうした状況のもと考えられたり、あるいは試みられたりした例というものは、幾つかないわけではないわけであります。インフレ利得といいましても、名目的に得られる利益と、実質的なインフレ利得というふうに一応形式上分けることができようかと思いますし、またフローにおける利得と、ストックにおける利得というふうなぐあいに分けることもできるだろうと思います。またインフレ利得を吸収するために、短期的なねらいを持った税制と、かなり長期的な形で税制の中にビルトインしていくというふうな形も考えられようかと思います。今日問題になっております超過利得税といいますのは、過去において日本におきましても、これは必ずしもインフレとの関係ではなかったかと思いますけれども、実施された経験もあるわけですけれども、これは主として短期的に、しかもフローを吸収するという性格を持っているものだろうと思います。  それで、昨年のいわゆる便乗値上げ以来、こうした問題が出てきたわけですけれども、こうしたものの税としてのねらいといいますか、あるいは国民の側からの期待という点からいいますと、きわめて短期的に、しかも効果的に実施してほしい、実施されなければならない、こういうことだろうと思うわけです。これはいわゆる便乗値上げ的な企業に対するかなり懲罰的な色彩も持っているということでありますので、あまりこまかい議論をしないで、短期的に、しかも懲罰的に、しかもより効果的に行なえるということが肝要ではなかろうかと思います。したがいまして、あまりこまかい議論で長引くよりも、その利益が隠れてしまわない時期にともかく行なうということが必要ではなかろうかと思うわけです。  この場合、御質問の中で所得政策とのかかわりというのが出てまいりましたけれども、いわゆる超過利得課税と所得政策との関係というのは、必ずしも私もよくわかりませんし、ストレートに関係があるというふうにも言い切れないのではないか。むしろそれとは別個に、やはり所得政策の問題というのが出てきている。所得政策に対しては十分に警戒しなければいけないわけですけれども、この税が所得政策にストレートにつながるというふうには必ずしもいえないのではないかというふうに私は考えるわけです。  いま御紹介になりました自民党の案と、それから社会党の案というものを比較してみますと、自民党の案の、内容ということではないのですけれども、いわゆる超過利得税とされているもののほうが、より短期的な感じを持つわけですし、それから社会党案のほうは、やや長期的なねらいで、法人税制の内部にこうしたインフレ利得を吸収していくという装置をつくり上げていこう、こういうねらいを持っているわけでありまして、私は、どちらかと言われれば両方賛成でありまして、両方やってほしいということになるわけでありまして、どちらがいいとか、どちらでなければならないかというふうに、二者択一的にはどうもなりにくい感じを持っております。  しかしながら、短期的な意味合いというのが超過利得の捕捉等で非常に薄められて、あまり性格的に意味がない、もう実施しても先ほど言いましたような吸収する意味がないというふうな時期にどうもなりつつあるような感じがするわけでありまして、そういたしますと、やはりもう少し長期的な意味合いも含めて、累進税率の採用という案のほうが、現在となっては現実的ではないかというふうに考えるわけであります。  なお、そのほかに、インフレ利得の吸収といたしましては、ストックに対する吸収というふうなことが必要でありまして、たとえば土地資産の再評価、その再評価益に対する再評価税というふうな、ストックに対するものもぜひとも必要でありまして、フローだけでは不十分ではないか。  さらに、実質的なインフレ利得の吸収ということでいえば、債務者利得の吸収というふうなことも、過去に、ドイツでしたか、経験があるわけでありまして、借り入れ金が減価するわけでありまして、先に借り入れた金額というものが減価することによって利益を得るわけでありまして、そうした債務を今日の物価水準で換算をして、そしてその利益に対して課税をするというふうなことも一つの案ではなかろうかというふうに考えております。  以上です。
  115. 金井浩正

    ○金井参考人 私の場合は、いま和田先生が多く述べられましたし、ほとんど和田先生の御見解と意を同じくするものでありますから省略させていただきますが、ただ一、二の問題について申し上げますと、御指摘いただきましたように、人件費をX%以上にする場合を課税対象にするのだというふうなことになりますと、やはりこれは相当所得政策の導入ということと関係してくるのではないか、こういう印象を持たざるを得ません。したがいまして、このXというものの求め方あるいはそれに対する規制のしかた、このことによってかなりその場面が違ってくるのではないか。ですから、このXという問題をあくまではっきりとしない限り、私どもはかなりそういう所得政策の導入の危険性が十分あり、こう考えざるを得ません。  もう一つは、超過利潤税の問題について、これを短期的なものとするか長期的なものとするか、こういうようなことでありますけれども、最近の一連の企業の動き、情勢などを見ておりますと、私は、やはり長期的なものにすべきではないか、こういうふうに感じているところでございます。  以上、簡単でございますが……。
  116. 谷山治雄

    ○谷山参考人 大体、和田さんとほぼ同じようなことを言うことになるかもしれませんが、いまおっしゃられた付加税方式というのは、非常にテンポラリーなといいますか、臨時的な超過所得税という構想よりはむしろ法人の基本的な税率を累進税率にしていこう、そういうことが土台にすわっているようで、私も累進課税そのものはもちろん大賛成でありますから、そういう点は大いにいいと思いますが、いま世上でいわれておりますいわゆる買い占めや売り惜しみや、あるいはその他便乗値上げや、そういうものに対する、何かさっき懲罰的ということばが使われましたけれども、税収そのものが目的というよりはむしろそういった不当ないわゆるもうけ過ぎというものを規制するという意味では、累進課税化という土台の上にといいますか、あるいはそれと並んで、何か短期的なそういった超過所得税というようなものも考えていいのではないかというふうに考えるわけです。  先ほど申しましたように、いつを基準にするかとか、超過とは何をいうかとか、定義をしておりますと、それだけでもう時間が空費されてしまって、世論に対応しないことになりますので、先ほど申しましたように、税制は厳密でなければなりませんけれども、場合によっては一定の仮定や条件をつくってやっていくことも必要なんで、そういうことでもって、国会でこの法案ができることを望むわけでございます。  それからもう一つの問題は、人件費のX%云々という問題でございますが、もちろん企業の場合、人件費と申しますと、労働者の場合だけでなくて役員の場合も含まれるわけで、いわゆる超過所得をエスケープするといいますか、回避するものとして大きいのは、企業として大きいというよりも問題として大きいのは、役員報酬等の引き上げによる回避が多くなるということが十分予想できるわけで、これはやはりチェックすべきではないか。そのことは労働者、サラリーマン等に対する所得政策にはならないわけですから、労働者はかまわないと思うわけです。  問題は、従業員、広くいえば労働者、サラリーマンに対する所得政策にならないかという問題でございますが、私はもちろんこういった基準を設けること自体に反対であります。なぜかと申しますと、なぜこの超過利得税が問題になるかといえば、いわゆる超過利得の定義は別といたしまして、いわゆる非常にばく大な利益を得て、それを賃金引き上げに回すというのではなしに、むしろ新たな設備投資であるとか、あるいはまた買い占めであるとか、そういったことに利益が使われる、あるいはまた非常に高率な配当が行なわれるということに世論の非難が集中しているわけで、それを押えるのが超過利得税のねらいであるわけでありますから、人件費かけるX%云々という構想は、超過利得税をなぜかけるのかという一つの立法の趣旨から考えますと、私は当を得ない措置になるというふうに考えます。  そこで、それでは人件費かけるX%というのを取っ払った場合、それこそ超過利得税を免れるために労働者の賃金を大幅に引き上げた場合はやはり一種の回避になるのではないか、そういう御批判も出てくるかもしれませんけれども、この問題につきましては、税制そのものというよりは、むしろ総需要抑制策というものは一体何を抑制すべきなのか、その政策的な観点が一番根本的に大事なわけでありまして、もちろん総需要抑制策というのは賃金の抑制が大事だというふうにお考えになっている方もいらっしゃるわけですけれども、従来のいわゆる高度成長、インフレーションというものを考えてみますと、民間設備投資や在庫投資がそのプロモーターになっているわけで、決して賃上げがそういう物価騰貴やインフレーションのプロモーターになっているわけではないと私は考えますし、そういう考え方に立てば、人件費かけるX%というのはもともと意味なものであるし、超過利得税の趣旨にそぐわない考え方ではないか、そういうふうに私は考えます。
  117. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう時間がありませんので、最後に一つだけ、これは金井先生にお尋ねしたいと思います。  いま私たちの大蔵委員会の論議の中でも盛んに出ているのが、インフレによる預金の目減り、こういう問題であります。それで、これに対しては、そういう預金金利を上げることによって目減りを防いでいくということをやるべきじゃないか、ずいぶんそういう主張を出しておりますが、いまのところは、まだたいへん政府与党の壁が厚いわけです。  そこで、きょうはまたサラリーマンという立場でもおいでになった金井先生のほうから、一般の勤労大衆の預金の値打ちを守るという立場から、預金金利を上げるということは、これは一般的な主張としてありますが、具体的に、たとえばいま制度としてあります少額貯蓄の非課税限度、今度は三百万までになりますが、そういうような一つの項目を設定して、これについてはそういう措置をとるというふうなやり方が現実には必要になるのじゃないかと思いますが、そういう面で、こういう方式をやってほしい、やるべきだという御主張がありましたら、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  118. 金井浩正

    ○金井参考人 ただいまの御質問につきましては、私は、やはり特定な部分についてはより大きな保護を加えるべきである、そしてまた、一般的な預金についてもやはり一定の保護を加えないといけないのではないか、こういうふうに考えています。  いま、御存じのとおり、勤労者大衆は、異常なインフレの中で、自分の持っている預金利子の何倍ものインフレの中で、たいへん苦しんでいるわけです。しかし、それでもなおかつ預金をせざるを得ないというような実態に置かれているわけであります。そして、たとえば家をつくろうということを目標にしながら一生懸命貯金をしていくわけでありますけれども、預金金利というよりも元金そのものの価値が相当大きく減価いたしまして、何年、何十年積み立ててみても、とてももう都会地では家はできない、土地も買えない、こういうあきらめにも近いところまできているのではないか、こういうふうに考えますので、いま御質問いただきましたような、たとえば住宅購入を目的とした預金に対してはより一そう厚い保護を加える、その他の目的であっても一定の保護は、このような異常インフレの中では、加えらるべきではないか、こういうふうに考えているところであります。
  119. 高沢寅男

    ○高沢委員 時間になりましたから、以上で終わります。どうもありがとうございました。
  120. 安倍晋太郎

    安倍委員長 小林政子君。
  121. 小林政子

    ○小林(政)委員 参考人皆さんにはきょうはほんとうにありがとうございました。どうぞよろしくお願いをいたします。  まず最初に、私は、所得税の今回の改正に見られます税率の緩和、この問題が所得税法本来の高度累進に反しているというふうに思わざるを得ないわけでございますけれども、この点について御意見をお伺いをいたしたいと思います。この点につきましては、谷山先生にお伺いをいたしたいと思います。
  122. 谷山治雄

    ○谷山参考人 先ほど申し上げましたように、所得税減税のうち一つの柱が税率の緩和ということになっているわけでございますが、いま御質問がございましたように、今度の税率の緩和は、緩和による軽減額から申しますと、高額所得者に非常に大きくなっているわけで、簡単に申し上げますと、たとえば課税所得四十万六千円以下の場合——課税所得四十万六千円以下と申しますと、大体夫婦子供二人の場合には年収二百万ぐらいの給与所得者になると思いますが、これ以下の場合には、全然税率の緩和がないわけなんで、それ以上になりますと税率の緩和がある。時間の関係もございましょうからこまかい数字は省略させていただきますけれども、これが所得二千万円ということになりますと、初年度分で、税率緩和だけで百九万幾ら、平年分では百四十五万六千円、三千万円以上になりますと、初年度分で百四十七万、平年分では百九十五万という、こういう非常に大きな減税税率緩和だけで行なわれるわけで、私は、所得税というのは、いま御質問がございましたように、累進課税をモットーとするということでございますから、税率の緩和によってそういう累進性が非常に弱まってくる、そういう意味では適当ではない改正であるというふうに考えます。  さらに若干つけ加えますと、一方では資産所得に対する課税が、先ほどいろいろ申しましたように、欠落しております段階で、なおかつこういう税率の緩和が行なわれるということは、所得税の本来の意味からいいましても、現在の時点から考えましても、適当ではないというふうに私は考えます。
  123. 小林政子

    ○小林(政)委員 今回の税制の改正は、税率の緩和と、もう一つには給与所得控除の拡大ということが大きな、国会で取り上げている問題点でもございました。この給与所得控除の限度額が今回廃止をされまして、従来、六百十六万円、七十六万円という頭打ちの限度額が一応取りはずされたわけでございますけれども、こういうことは、従来の経費の概算控除であるという性格から見ても反するものではないかというふうに私には思われますけれども、この点につきまして、谷山先生並びに和田先生から御見解をお伺いいたしたいというふうに思います。
  124. 和田八束

    ○和田参考人 私もそのように考えるものであります。給与所得控除につきましては経費の概算控除であるというふうによくいわれているわけですけれども、従来の説明ですと、たぶんそれだけではなくて、捕捉率が高いとか、あるいは源泉徴収による利子分を算入してあるとかいうふうな説明もありまして、一体、給与所得控除とは何かということにつきましては、必ずしもはっきりしているというふうにはいえないのではないかと思うわけです。経費の概算控除であるというふうな性格が一番強いといたしましても、従来、給与所得者が特に経費については不当な扱いを受けているということは、サラリーマン、給与所得者から相当意見が出ているところでありまして、そういう意見あるいは批判あるいは重税感というふうなものが反映されて、今回かなりの程度この給与所得控除の引き上げというようなことになったと思いますので、これは税制上の問題を明確にした上でそのような措置が導入されたというよりも、かなりいろいろな考慮、政治的考慮といいますか、そうしたものがその中に含まれているのではないかというふうに考えざるを得ないわけであります。  また、経費の概算控除であるといたしますと、たとえば事業所得者の場合でいいますと、収入額から経費を差し引いたものから所得控除が行なわれるというふうになっているわけですが、そしてその町得控除額がいわば課税最低限ということになっているわけですけれども、給与所得者の場合には、収入額から給与所得控除を差し引いて、それからさらに所得控除分を差し引くというふうに普通計算する場合に行なわれているわけですけれども、ところが、課税最低限という場合、給与所得控除プラス所得控除を課税最低限といっておりますので、つまり、概算控除分も課税最低限の中に入ってきてしまうというふうなことは、事業所得者の場合と比べましても非常におかしいわけでありまして、その辺も概念がきわめて不明確であるということにならざるを得ないわけです。また、経費の概算控除を明確にするということであれば、実額経費とのたとえば選択性というふうなこともあわせてそこでは考えられなければならないわけでありまして、給与所得者の経費とは何ぞやということも、そこでは議論されなければならないと思うわけです。  そのように考えてまいりますと、今回いわゆる頭打ちなしといいますか、あるいは青天井というふうな措置を導入いたしますと、事業所得者の場合でも必要な経費の範囲内で経費の控除があるということになっておりますが、給与所得控除の場合には必要な経費の範囲内ということではなくて、ともかく頭打ちなしということで、この点からいいますと、事業所得者の経費概念と今度は著しく異なった性格になってこざるを得ないわけで、まあ今回の給与所得控除の引き上げというのは、ある程度サラリーマンの経費を見るというふうな精神は入っていると思うのですけれども、ところが逆に給与所得控除とは何かという概念がますます不明確になってきている、そして同時に、最初に私もちょっと申しましたように、所得が多くなればなるほど控除額が大きくなるというような形になっているというふうなこともあわせて、この問題はもう少し根本的に検討すべき点ではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  125. 谷山治雄

    ○谷山参考人 いま和田さんのおっしゃったことで私も大体そうだと思いますけれども、一つ問題なのは、給与所得者の場合、私は、基本的にはその必要経費というのは形の上では生活費という形でもってあらわれてくると思うわけなんで、そういう意味で、この労働者、サラリーマンという納税者の生活費を控除するというのが私は根本的な考え方だというふうに思うのです。ところが、そういう考え方は、いまの税法の上ではいわゆる家事関連費は必要経費にならぬという概念のもとに退けられているわけで、結局、人的控除にたよらざるを得ない。そうすると、給与所得者に対する課税が非常に重くなるわけで、そこでいろいろな担税力とか、捕捉率とかという問題もからまってきて、給与所得控除というものが設けられていると私は思うのです。  そうなりますと、給与所得控除でもってカバーされる必要経費というのは一体何であるかということになるわけなんですが、これは私はたいへんあいまいだというふうに思うわけです。結論から申しますと、人的経費が非常に低く押えられているために、そういったサラリーマンの不満を解決するといいますか解消するために給与所得控除というものを無理して何かつくっているという感じがするわけで、たとえば、私、冒頭に意見を申し上げましたように、そのために給与所得控除というものが一種の虚構と申しますか、いわゆるフィクションになっているという点は、私は税制上大きな問題だというふうに思うわけであります。  と申しますのは、時間の関係もございますので、二つだけ申し上げてみたいのでありますが、いま和田さんも言われましたように、青天井を取っ払った結果、高額給与所得者の給与控除が非常に大きなものになるわけで、給与控除をかりに職業費というふうに考えますと、これは税制調査会答申でも直接職業に要する支出というふうに書いてございますが、そう限定いたしますと、たとえば、年収一千万というクラスの職業費を今度の控除引き上げで二百五万というふうに見る、さらにその上になりますと、三百五万とか四百五万とかたいへんな金額になるわけなんですが、年収一千万という、私は会社の社長か重役だろうというふうに思いますが、二百五万、月にしまして約十八万の職業費というのは一体何であるかという問題であります。これはもちろん人によって違うでございましょうけれども、大会社の社長、重役となりますと、直接職業費と考えられます交際費であるとか、あるいは図書研究費であるとか、研修費であるとか、そういったものはだいぶいわゆる社用で、会社の経費でまかなわれているのが実態なんで、一体そんなに月に十八万も二十万も職業費としてポケットマネーを使っているのかどうか、これは人によって違うでしょうけれども、疑問でございます。  そうなりますと、いま和田さんも言われましたけれども、青天井を取っ払ったことによる給与控除という意味はあるのかどうかたいへん疑問になってくるということで、私はあえて虚構、フィクションであるというふうに申し上げましたけれども、もしそういうことが言い過ぎであるとすれば、少なくとも給与所得者の所得階層別に職業費というものは一体どのくらいかかっているのか、実態調査をすべきじゃないか。税制調査会の以前の答申を見ますと、三百万円クラスの方まではたしか調査があって、職業費の率は一〇%ぐらいであるという答申が出ておったように記憶するのでありますが、それ以上の高額給与収入者に対しては、調査は私の知っている限りではありません。したがいまして、あえて虚構、フィクションだと申し上げましたけれども、百歩譲ってこれが正しいとしても、私は実態調査をすべきである。と申しますのは、この青天井の撤廃につきまして税制調査会答申を拝見いたしますと、事業所得者の場合には収入が幾らふえてもちゃんと必要経費が控除されているじゃないかということをいっているわけなんでありますけれども、事業所得の場合には、実際に仕入れとか修繕費とかかかっているから必要経費になるのでありまして、高額給与所得の場合にかかっているかどうかよくわからないのに、なおかつ大幅な概算経費控除としての給与控除を認めるというのは私はおかしいんじゃないかというふうに考えているわけで今回の税法改正においては、青天井の撤廃だけはぜひ私はやめていただくほうが適当ではないかというふうに考えております。  もう一点でございますが、最低限度控除五十万にしたということは、低額の給与所得者にとっては減税になるという点では、私はもちろんいいことだと存じますけれども、しかし、そのことによってやっぱり一つのフィクションがあるわけでございまして、たとえば早い話が、年収五十万円というごくささやかな内職程度の労働者の場合には、五十万全額が職業費ということになるわけで、これは非常におかしいことなんで、内職をやっておる非常に低収入の労働者の収入は全部職業費であるというのは、税制理論としてもむしろまことにこっけいであるというふうに考えるわけであります。そのことか、具体的に申しますと——簡単に申しますけれども、たとえば雇用されれば五十万の職業費が認められる。したがって、課税最低限が七十万五千円になるというふうに、低いわけでありますが一応なる。ところが、雇用されずに同じ仕事を自家営業でやりますと、結局、控除は二十四万円しかない。同じ仕事をやっていて、片方は雇用されているがゆえに控除がある。片方は違う。これは非常におかしな話なんで、私はこの辺で根本的に給与所得控除の問題については洗い直す必要があると思うわけで、そういうことで、私は今回の改正に関してだけ申し上げれば、青天井の撤廃はやめるべきではないか、ちょっと御質問をそれたかもしれませんが、私はそういうふうに考えます。
  126. 小林政子

    ○小林(政)委員 いま内職の場合を例に引かれてのお話も出ておりますけれども、私は、前々から常々、これは国会でも何回も取り上げてまいりましたけれども、事業所得の場合の青色申告と、それから特に白色申告者の控除の格差というものが年々拡大をしてまいってきておりますし、この格差が相当の開きを示してきていますけれども、この問題については、政府は常に同じ答弁をしております。それはどのようなことを言っているかといいますと、青色の奨励という立場から差が出るのは当然なんだ、こういうことがいわれております。しかし、私は青色申告の奨励策としての範囲をすでにもう越えて、むしろこれが何か白色申告者と青色申告者との間の差別政策にすらつながっていくものではないだろうか、このようにすら感ずるわけでございますけれども、今回また一そうその格差が広がってまいってきております。  これは税負担の公平だとか、あるいはまた法のもとではすべて平等であるという原則の立場から考えましても、非常に不合理ではないかというふうに考えておりますけれども、この問題について、先生方の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  127. 谷山治雄

    ○谷山参考人 お答え申し上げます。  青色申告の問題は非常にむずかしい問題があるわけでございますけれども、いま御指摘になりましたように、青色申告につきましては、いわゆる家族の完全給与制と事業主報酬制度というものが採用され、それがさらに今度の給与控除の拡大でもって有利になる、そういうことになるわけでございます。私も冒頭に意見のところで一言申し上げておいたわけでございますけれども、給与控除の拡大が青と白とのいわゆる差別と申しますか、非常な違いに発展をしてくる、いわゆるエスカレートしてきているわけでございます。  あまりこまかい数字を申し上げるのも恐縮でございますけれども、たとえば、青色申告者が事業主報酬でいわゆる課税最低限ぎりぎりのものをおとりになる、それから専従家族がやはり同じように課税最低限ぎりぎりの給与をおとりになるというように仮定をいたしますと、夫婦子供二人の世帯で、そのうち夫婦と一人のお子さんが全部事業主報酬と専従者給与としますと、いわゆる課税されない線と申しますのが約二百三十万円ぐらいになってまいるわけでございます。これは当然なんで、給与所得者の課税最低限は独身の場合七十万円でございますから、そういう計算になるのです。  ところが、白色の場合には、今度白色控除が設けられると申しましても三十万、去年が二十七万五千円でございますから、そんなに多くはなりませんで、いま申し上げた夫婦子供二人で、夫婦と子供一人が専従者であるという場合を考えてみましても、百八万くらいにしかならないという、大体倍以上の開きが出てくるわけで、これはいま御指摘になりましたように、帳面をつけるということが経営にとって一つの、成り立ちの要求であって、それに対して政府が誘導政策をとるということは、それ自体としては私は全面的に間違っているとは思いませんけれども、しかし、そういった誘導政策が行き過ぎになりますと、一つの差別ということになってまいるわけであります。  いま申し上げたように、また御指摘もありましたように、今度の税制改正で青色と白色の課税される線が倍以上に広がっていくということは、少し誘導政策としては行き過ぎである。ということは、青色申告者に対する減税が不当であるということを私は申し上げているのではなくて、むしろ白色申告に対する措置が非常に不十分といいますか、あるいは不適当であるというように私は考えているわけであります。
  128. 金井浩正

    ○金井参考人 いま谷山先生のほうで申し上げられたとおり私も感じております。
  129. 和田八束

    ○和田参考人 私は事業税について十分な知識を持ち合わせておりませんので、その点につきましては谷山先生が権威でございますので、ただいまのお話でそれ以上つけ加えることはありませんので、そのように御了承いただきたいと思います。
  130. 小林政子

    ○小林(政)委員 次に、今回の所得税法改正政府案に対して、野党四党が対案をつくりまして、そうして提出をいたしたわけでございますけれども、この内容については、先生方きっとごらんいただいているのだというふうに思いますけれども、この四党の所得税改正案は、先ほど来からお話も出ておりますとおり、税額控除を行なうなど、相当抜本的な中身になっておりまして、政府案に対比しまして、一般国民に非常に厚く、国民減税要求というものにも沿うものであるというふうに確信をいたしておりますけれども、この際ひとつ御所見や、また御意見などもお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  131. 谷山治雄

    ○谷山参考人 先ほどから和田さんからもいろいろ申し上げているとおりなんで、そういった税額控除という、高額所得者には有利ではなく、低額所得者に有利な控除方式を採用したということはやはり画期的なことでもありますし、また低額所得者に対する税負担を非常に効果的に救済する、そういう観点から、私はいい案であるというふうに考えるわけでございます。  この問題は、今度の野党各党の提案を新聞等で拝見いたしますと、一応現在まだ基礎控除配偶者控除扶養控除は四十八年度の平年分のままにしておいて、それさえも税額控除を加えて減税する、そういうぐあいになっておりますが、そしてこれはあくまで緊急的な提案というように私は考えておりますので、将来は所得税減税について、先ほど来いろいろ御質問にお答え申し上げておりますように、今後は減税すべきものはどんどん減税すべきであるけれども、減税すべからざるもの、増税すべきものについてはもっと税金を取るべきだという観点に立ちますと、こういう野党の共同提案が出ました機会に、所得税控除制度の問題なり減税のしかたなりについて、根本的にひとつ御検討を願いたいというふうに考えます。
  132. 和田八束

    ○和田参考人 やはり現在の経済状況というのは、通常の状況ではないということを十分に認識しなければならないのではないかと思うのです。こういう激しいインフレ下で国民生活が圧迫されて被害を受けているという状況のもとで、税制としてどういうことをやるのが最も効果的なのかということを先決にしなければならないと思います。したがいまして、先ほどからも申しておりましたように、所得税の自然増収を税額控除方式によって還元するということが、この点でいいますと最も明確で、国民税負担の急増というものを救済する一番いい方法であるということで、私もその考え方を支持するものであります。  もちろん、税制自体の中には、先ほどの給与所得控除等も含めましていろいろな問題があるわけです。税率そのものを公平に改善しなければならない、あるいは人的控除等の改善というふうなことも当然行なわなければならない、そしてまた、国民の重税感というものを基本的に緩和していくという必要があるわけでありますけれども、その問題とインフレ過程での税制上の措置というふうなものは一応分けて考えて、こういう時期に、一方においてインフレ状況に対して対応するかのような形で、しかし、実は内容的にはいわゆる金持ち減税であるというふうな形で、両方を結びつけて、言ってみれば、便乗的な減税政策が行なわれるということは、国民にとってはきわめて不明確なものではないかというふうに考えるわけです。  私ども国民税調が行ないました戻し税の提案におきましても、大体、所得二百三十万円層あたりまでを重点に置いて考えているわけでありますけれども、政府減税案によりますと、五、六百万円層あたりのところが税率等の緩和においてもかなり重点考えられている、むしろその辺を重点考えたいのだというようなことが言われているわけです。確かに五、六百万円層といいますのは部課長クラスといいますか、あるいは年齢的にも中年層でありますし、それから子どもが独立してしまって夫婦だけになってしまう、一方所得においてはわりに多くなってきた、そこへごそっと税金がかかってくるというふうなことで、重税感が特にきびしい階層であることは否定できないと思います。  総理府の世論調査などを見ましても、やはり五、六百万円層で年齢が四十代の後半から五十代の中ごろまでの方々というふうなところが、一番重税感の大きな部分になっていることは否定できないわけでありまして、その辺を無視するということは——無視するというよりも、むしろその辺に重点を置きたいという気持ちはわからないでもないのですけれども、いま言いましたように、特にこういうインフレ下において最も被害が大きいところはどこかという問題点と、それからインフレ抑制という全体の財政政策の立場からどう判断するかということを考えてみますならば、この辺の問題というのはもう少しあとに延ばして、税制全体の基本的な構造も洗い直す中で考えていくというふうにするべきであって、現時点で五、六百万円層を特に優遇するということは控えたほうがよろしいのではないか、こういうふうに考えます。
  133. 金井浩正

    ○金井参考人 先ほど来、谷山先生のほうで幾つかの問題についてのフィクションという問題が言われているわけですけれども、実は私も今度の案を見ておりましてしみじみ感じたわけですが、言われています課税最低限、これが大幅に引き上がったといわれているわけです。しかし、その主体は何かということを考えますと、これは給与所得控除であります。先ほど来谷山先生もいろいろおっしゃっておりましたけれども、一体、給与所得控除の性格というものは何だろうか、こういうことでいろいろ考えざるを得ないわけですけれども、この給与所得控除が大幅に引き上がったことによって課税最低限というものが、非常に上がったように感じられて、大衆にさも大幅減税があるように見えるわけです。しかし、先ほど谷山先生からも御指摘いただきましたように、低額所得者についてはほとんど関係ない話でありまして、その意味では、課税最低限は決して上がっていないわけであります。  ですから、私は、課税最低限というものには少なくとも給与所得控除額というものは含めるべきでなくて、その他の所得者も含めて、給与所得控除というものは、経費の概算控除であるならば絶対含めてはならない、それを含めない部分についてこそが課税最低限ではないか。つまり、人的控除等を中心としたものが課税最低限になるべきではないか、こういうふうに考えているわけであります。  これに対して、いま御質問にありました野党四党の共同修正案につきましては、少なくもこれら人的控除を中心とし、しかも家族構成によって税額控除、こういうことになっておりますので、私は全面的に賛意を表するところであります。
  134. 小林政子

    ○小林(政)委員 次に、法人税の問題についても、すでに各先生方のいままでのお話の中で、これは今後やはり累進制を採用していくべきではないか、こういう御意見が出ておりますけれども、この問題について政府では、法人税は比例税率ということでいままでは大きく二段階に分かれているだけであって、そういうことは非常にむずかしく、できないという意味のことを言われているわけです。しかし、私どもはぜひともこの際、特に現在のインフレあるいは高物価、こういう中で投機をほんとうに押えていく、あるいは物価を安定させていく、こういう立場からも累進制をとるべきではないかと考えておりますけれども、ひとつその点にまで触れられて見解をお伺いいたしたいと思います。
  135. 谷山治雄

    ○谷山参考人 お答えいたします。  法人税累進制につきましては、先ほどからおそらくこの三人がみな強調しているところと思うわけでございますが、まず政府がどういうふうに具体的に言っておりますか、私も詳しく存じませんけれども、発表されました税制調査会答申その他主税局の方の書かれたもので読みますと、法人税を累進にしない一つの理由は、所得の再分配というのは個人所得に限るものであって、法人所得についてはそういう考え方はなじまないのだ、こういうことを一つ言っておられるのと、それからもう一つは、いわゆる法人擬制説というものに立っているのと、それからもう一つは、いわゆる応益原則というものに立っている。この三つがあると思うわけであります。  第二と第三の点はもうあまり言う必要もないと思うのではありますが、第一の点につきましても、法人個人と同じように所得分配の場としてなじまないというのは、これはどうも理論的にも実際的にも成り立たない議論で、先ほどもこれは和田さんからも言われましたけれども、現在のいわゆる社会化された巨大企業というものの所得は、これは単なる株主の集合された所得ではもちろんありませんし、所得の実態から見ましても、その管理運営の方法からいいましても、その企業の何と申しましょうか、支配者集団とでも申しましょうか、そういった人によって管理運営されているわけで、その限りでは、法人所得というものはその実態において、法律的な形式論はともかくといたしまして、実態論からいいますと、私は累進制にできないことはない、そういうふうに考えているわけであります。なお、先ほどもこれは和田さんも言われた点で、大事な点でありますけれども、法人税の転嫁ということが言われております。累進制にいたしますと、所得が非常に多く出ますとそれだけ税金が多くなるわけでございますから、効果としては、累進課税による税金をさらに転嫁しようという動きももちろんないとはいえませんけれども、しかし、かなり抑制的な効果も同時に出る。したがって、それは物価対策等にとっても有効だという点では評価してもいいのではないかというふうに考えるわけで、法人税累進制という問題につきまして、できないということは、私は少なくとも理論的にも実際的にもおかしいのではないかというふうに考えているわけでございます。  なお、ついでに一つだけつけ加えておきたいのでございますが、いまこの累進制という問題はもっぱら大法人からもっと取るという方向での議論がずっとあったわけでございますが、それと並びまして、中小法人に対してどうするかという問題も累進制の中では当然ある。つまり、税率軽減するという問題として出てくるわけなんで、今度の法人税改正によりますと、資本金一億円以下の法人の場合は、所得が七百万ということでもって税率が分かれてくる。最初の一年間は六百万円ということでございます。故意か偶然か私にはわからないのですが、この七百万円という限界はアメリカの法人税と同じになるわけでありまして、アメリカの場合には二万五千ドルが限度でございますから、二百八十円レートをかけますとちょうど七百万円になりますし、三百円だと七百五十万円になるわけで、これは期せずしてアメリカと全く一致する法人税ということになるわけで、アメリカ人にとってはたいへんわかりやすい税制になるだろうというふうに思うのであります。  それはともかくといたしまして、累進税制という観点から考えますと、アメリカの場合に二万五千ドル以下の場合には、たしか二二%の法人税と七%の州税によって成り立っているというふうに、これは大蔵省の資料でございますがなっておりますので、そういうふうに考えますと、実効税率が二九%以下になるわけで、日本の場合、中小法人の場合にはそれが高くなってくるわけでございますから、法人税なら二八%、それから事業税は最低が六%、さらにそれに法人の住民税が加わりますから二九%ではもちろん済まないわけで、アメリカよりも高い。もちろんアメリカよりも高いからいいとか悪いとかということは直接関係はございませんけれども、一応とにかく累進制考えます場合には、そういった中小法人に対する軽減ということも同時に考えるべきである。これは補足でございますが、ちょっとつけ加えておきたいと思います。
  136. 和田八束

    ○和田参考人 私もいまの谷山さんの意見と同じでございまして、もうつけ加えることはほとんどないわけですけれども、やはり日本の現在の税制自体は、どこから見ましても、たいへん不公平であるということは否定できないことだろうと思います。特に法人税制のところに、租税特別措置も含めて不公平が大きいということであります。法人個人との税負担の公平、それから法人間における税負担の公平、これをいかに実現するかということが非常に大きな問題であろうかと思います。その中心になるといいますか、かなめになるのがいま問題に出されました法人税率の累進税化ということでありまして、今日の社会化された企業を見ますときに、個人法人との間の税負担の均衡をはからなければ社会的な不公正は是正できないということでありまして、税制調査会議論のような古典的な負担不均衡論では、現実に適応し得ないのではないかというふうに考えます。  それから、法人間の負担の不均衡というのは、これは先ほどもちょっと申しましたけれども、当委員会に出されました大蔵省の資料を見ましても、あるいは東京都が独自に調査したものを見ましても、著しい不均衡になっております。また、法人と一口にいいましても、社会的に資本を調達し得る大企業と個人企業的性格を持った法人とでは著しく違うわけでありまして、日本の実態からいいますと、そうした大企業、たとえば資本金十億円以上の大企業というのは全体の一%ぐらいの数でありまして、きわめて少ないわけですけれども、それらが所得の六割から七割ぐらいをあげているという実態でありますので、そういう法人税制をどうするのかということが基本になると同時に、そうした大法人と中小法人、それからさらに個人企業との間の公平性というものをいかに実現していくかということが税制の大きな課題になるのではないかと思います。  なおここで、別のあれになりますけれども、ちょっとつけ加えさせていただきますと、租税特別措置法においては公害関係に関する特別措置がかなり多いわけですけれども、これらは公害防除施設の原因者責任の原則、いわゆるPPPの原則に従って税制上優遇するということは、事実上このPPPの原則ではなくて、補助金による公害対策ということになってしまうわけでありますので、問題のあるところではないかというふうに考えます。それからいま一つ、これは租税ではありませんのでここで申し上げるのはどうかと思いますけれども、実質的に租税と同様の負担になっております社会保険料の負担、これがだんだん増大してくるわけであります。これが逆に課税最低限を引き上げる原因に皮肉にもなっているわけでありますけれども、この社会保険料の負担というものも、やはり比例税的で逆累進的になっておりますので、こうした社会保険料の負担もあわせて国民負担という場合にはお考えをいただきたい。この点ちょっとわき道にそれましたけれども、つけ加えさせていただきました。
  137. 小林政子

    ○小林(政)委員 租税特別措置の問題につきましても、すでにいままでの先生方の御意見の中に、こうあるべきだ、あるいはこうすべきだという御見解が出ておるわけでございますけれども、特にその中でも、御承知のとおり、これは大企業に対する非常に特典的な減免税だということで国民的にも前々から、こういうものは廃止すべきである、あるいはどうしても必要なものについては再検討すべきであるというようなことがいわれておりますし、本委員会の中でも、この問題は何回かその立場で論議がされているわけでございます。特に、引き当て金、準備金、特別償却などの問題についても、先ほど来いろいろ御意見が出ておりました。谷山先生のほうから、原則としてはこれはやはり廃止をすべきではないだろうか、しかし、すぐにということが直ちにできないという場合には、減税分を社会全体の立場から何らかの形で使うようにすべきだという御意見も出ておりましたし、これらの問題について、私どももぜひ廃止をすべきだ、このような見解を持っておりますが、その社会全体の立場から使うという中身は具体的にどんなことなのか、この際お聞かせを願いたいというふうに思っております。  それから、時間がないそうでありますので、もう一点続けてお伺いをいたしたいと思います。それは、やはり今回の税制改正の中で、今回特別措置として出てまいりましたいわゆる揮発油税などの燃料諸税についてでございますけれども、いま石油製品の価格の再引き上げなどということでいろいろと問題が出ておりますときに、私どもとしては、やはりこの際増税ということはやめて、廃止なりあるいはまた減免措置を税制の上でとるべきではないか、このように考えております。そのことによって物価の安定、あるいはこれは道路財源ということでもございますので、高度成長の政策転換、こういう視点からも、この問題について非常に重視をいたしておりますけれども、この問題についての先生方の御見解を、ぜひひとつこの際お伺いをいたしたいというふうに思います。
  138. 谷山治雄

    ○谷山参考人 非常に重大な問題なんで、なかなか簡単にお答えしにくいのですが、第一点の租税特別措置の運用のしかたでございますが、私の考え方はもちろん私見でございますから、いろいろ御批判をいただきたいと思うわけでございますが、租税特別措置による減免税が企業の内部留保になって、言うなればかってに使われておる。実質的な国庫補助金ないしは無利子の国庫貸し付けであるにもかかわらず、国会審議権も及ばない、そういうことがいろいろ問題になっておるわけでございますから、私は、もしこの特別措置を廃止できないで減税にせざるを得ないという場合には、この減税分を、具体的に申しますと、たとえば資金運用部に強制的に預託させて、それで財政投資の原資として使う、こういうことも一つ考えられるわけであります。  こういうやり方は実はスウェーデンの投資準備金という制度が、私どもとちょっと違いますけれども似ているわけでありまして、スウェーデンの場合には投資準備金というのがございまして、減税分が国立銀行に預託をされる、これがいわゆる経済政策の全体のために使われるという制度があるわけであります。私はそのとおりやれということではございませんけれども、そういった租税特別措置減免税分というものを、いまおっしゃるように、企業の自由に使わせないで、資金運用部がいいかどうかはわかりませんけれども、そういったところに預託をさせて、それで全体のために使う、こういう構想を、廃止できないならばという次善の策としてさっき申し上げたわけであります。それからまだいろいろあるのですが、要約すればそういうことでございます。  次に、燃料課税の問題で、租税特別措置法自動車重量税それから揮発油税等のいわゆる税率引き上げの案が出ておるわけでございます。この問題は、いま御指摘にありましたように、今回いわゆる石油危機、特に原油価格の高騰、こういう問題の側面から一つと、もう一つ日本の道路政策というものをどのように考えていくべきかという点が一つ。もう一つは、いわゆるモータリゼーションという問題もそれに関連して考える必要がある、そういうふうに考えますので、基本的に燃料課税の問題をどのようにすべきかということを検討するのには、私は慎重な、かつ全面的な政策に立った検討が必要であろうと存じます。  ただ、原油価格の引き上げという問題が必至ということであり、かつこれの波及する度合いが非常に多くて、それが国民の生活に大きな圧迫を加えるということであれば、私は今回の燃料課税の増税を一たん見送って、さらにまた場合によっては、一時的にこれも租税特別措置で廃止すると申しますか、全部なくしてしまうのではなく、とりあえずこれをやらない、こういうような措置でもって切り抜ける、こういうことが必要な措置になるかもしれない、そういうように私は考えております。  そういうわけで、根本的には日本の道路政策その他諸般の政策からこの問題は一つ税体系として考えなければいけませんけれども、その緊急の原油価格の高騰という問題に着目をいたしますと、増税の中止ないしは軽減ということを緊急措置として考えることが妥当ではないか、そのように私は考えます。
  139. 小林政子

    ○小林(政)委員 和田先生に……。
  140. 和田八束

    ○和田参考人 租税特別措置につきましては私も同意見でありまして、基本的には全面的に廃止する、必要な部分があれば本則でもって措置をする、あるいは場合によっては、たとえば投資に対する景気政策的な目的を持った税制であれば単独で立法措置をするというふうなことも必要になってくるかもしれませんけれども、租税特別措置法という膨大な法体系を持っているということについては、これは、全面的に廃止すべきであるというふうに考えます。  これは個人特別措置も含めてでありまして、いろいろ問題がありますけれども、たとえば個人の場合でいいますと、住宅取得あるいは住宅貯蓄に対する減免措置、優遇措置、あるいは勤労者財産形成政策によるところの措置というようなものもありますけれども、ああいうふうなものも税制でもってあまりつくるべきではなくて、基本的な住宅政策を拡充するということで行なうべきであろうというふうに考えます。  それから、公害対策等につきましてはこれは昨今特別措置の中で拡大をしていきまして、特別措置も企業優遇だけではなくて、公害対策もしているのだというふうな印象もないわけではないのですけれども、実はそれは公害の負担原則に対する逸脱ではないかというふうに考えるわけであります。そういう意味で、基本的に廃止の方向に賛成です。  それから、自動車関係税、揮発油税等でありますけれども、私は自動車消費者が社会的費用を負担するという意味合い、それから特に都市部におけるマイカーの抑制、あるいは輸送機関におきましてもできるだけトラックから鉄道へというふうな方向を促すという意味合いからいいましても、揮発油税関係は、国際的に見てもまだ低い部分もありますので、これを引き上げるということに賛成です。ただ、大衆公共輸送等につきましては据え置く、あるいは負担の軽減をするということが必要でありまして、バスそれから近距離用のトラックあるいはタクシーというふうなものについては、別途軽減措置考えるべきではないかと思います。  特に、バス等に対する問題が出てくるわけですけれども、これらは現在の地方公営企業のあり方、あるいは大衆輸送機関としてのバス輸送のあり方というようなこともあわせて、こうした大衆の足を基本的に安く確保するということで、別個の政策もあり得ると思いますので、そういうものとは別に、特にマイカーに対する負担の増大というのはあってしかるべきではないか。しかし、その財源は道路に固定するのではなくて、いま言いましたような都市交通の確保、あるいは都市計画の拡大、あるいはそのほか福祉的な政策等にも自動車関係税が用いられるように目的税のワクを撤廃していくべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  141. 小林政子

    ○小林(政)委員 どうもいろいろとありがとうございました。
  142. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来たる十五日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十七分散会