○広瀬(秀)
委員 大臣、そういうことはわれわれもわかっておるのですけれ
ども、さらに問題を具体化してみますと、大体、
大臣のお考えは根本的にわれわれと食い違うわけなんです。というのは、まずそういう
預金の目減りに対して補償をするというような考えそのものがないとおっしゃるのだけれ
ども、これはしかし考えてみれば、国民の中でもインフレヘッジということができる力を持っておる者、それはやはり物持ちである、資産家である、
土地を持っておる者だ、事業を持っておる者だ。企業家ですね。あるいは株を持っておる者、大きな資産を持っておる者、そういう者は大量の資金力にものをいわして、資産にものをいわして、物にものをいわして、幾らでもインフレヘッジができるのです。
できないのはやはり賃金労働者。そして、その賃金労働者、勤労者は、大体苦しい家計の中から政府の
方針に従って一生懸命貯蓄をやってきた、そういう人
たちがインフレの被害を受ける。その人
たちはインフレについて、何らの責任もない人
たちなんですね。これはまあ幾らかトイレットペーパーがなくなったといって、奥さんが目を血走らして走り回って、少し、一カ月分くらい買いだめたというくらいがインフレから逃げる道だという、そういうあわれなあわれな――というと語弊がありまするけれ
ども、そのくらいのことしかできない存在なんです。インフレヘッジなんということが全くできない。まさにインフレの波を、被害をもろにかぶる以外に抵抗力がない人
たち、そういう階層であるということ、しかも、その人
たちは汗水流して働いている人
たちであるということ、これが
一つですね。
それからもう
一つ、もっとひどい人
たちは、まさにインフレ
福祉手当ということで何らか手当てしなければいくまいといわれている母子世帯であるとか、身体障害者であるとか、あるいは老齢
福祉年金を受けているような老人であるとか、寝たきり老人であるとか、さらに
生活保護世帯、こういう階層があるわけです。いろいろな
社会福祉施設に収容されて国の
措置を仰いでいるような人
たち、こういうような人
たちは、これこそほんとうにインフレ、物価高の中で一番どうにもならない、みじめな
状況に突き落とされている人
たちですね。その人
たちのことについては
あとから伺うつもりでおったのですけれ
ども、これはこれでひとつ政府にもう一段の要求をしたいと思っているのですが、政府は、インフレによるそういう形の階層の人
たちのところだけをとってやる方法はないか、こういう具体的な考えを示しているのですから、全体的にもう基本的な、根本的な立場で、そういう目減り補償というようなことはやりたくありません、やる意思は全くありませんというようなことではなしに、もう一ぺんひとつ考え直していただきたいと思うわけであります。
大体
預金を見ますと、法人
預金と個人
預金、こう分かれますが、これは大体六、四ぐらいのところだろうと思います、大づかみにいって。それから定期
預金の保有額を中心にした分布の
状況を見てみますと、五十万以下の定期
預金、これが人数といいますか件数、口数で見ますと七五・九%、こういう
状況なんですよ。その五十万円以下の定期
預金の額というものは、合わせまして六兆四千億ぐらい、六兆四千五百二十五億。それで、これを全体的に
あと百万未満とか一千万未満、一億以上というようにしてとっていきまして、この十万未満あるいは五十万未満というものの累積の金額の構成比を見ますと、一六・五%にしか当たらないんですよ。しかも、先ほ
どもちょっと言いましたが、かりに五十万ということで限度を押えて四人世帯だったら一世帯で二百万までそういう恩恵に浴するというか、現在の六・二五%の倍ぐらいの金利をつけてやろうということにすると、そういう人
たちの
預金というものは、金額的にはわずか一六・五%なんですから、そういう人
たちにその程度の親心を示すということがどれだけ金額的に大きい問題になるだろうか、そういうことを考えたら、これはその政策が全般に波及してどうにもこうにもならぬということにはならないと思うのです。これはもちろん
大蔵省の立場では、公債なんかの金利に当然響いてくるだろうというような
財政負担能力、あるいは郵便貯金も当然そういうことになっていくだろうというようなことであるかもしれぬけれ
ども、そういうような条件にして、一切高額所得者が乱用するというようなことを許さぬ、一億も二億も分割してやるというようなことをやらせないために、何らかきちんとした証明
制度みたいなものを、これは私案であるけれ
ども、たとえば健康保険証の名前のところに一口やったら判を押しておくということにして、もうそれ以外には認めないんだということにすれば、これは高額所得者が
預金の分散のためにやるなんということもあり得ないということで実現可能性もあるし、そういうことを要求している大衆の期待にこたえるということでまた貯蓄増強の方向に向けていく、過剰な購買力を
預金に吸収していく。そうすれば、有効
需要抑制とか、投機、買い占め、売り惜しみというようなものに走らないような効果も発揮されていく。さらに、金利全体が、中小のところなんかで
貸し出し金利が当然上がらざるを得ないだろう、そういうようなところがある程度上がることによって、むしろ買い占めとか売り惜しみというようなものが逆コストになってしまって、そんなことをして蔵に積んでおいて売り惜しみをするというようなことができなくなる、在庫吐き出しをやらざるを得なくなる、こういういい面にもつながっていく。そしてまた高金利になることによって、これからの新しい時代に即応した、新しい
福祉社会にふさわしい、最も効率のいい投資にその資金が回っていくというような、資金配分のルートを変えるというようなことにもいい結果としてつながっていく、こういうようなメリットだって当然考えていいのだろうと思うのですよ。必ずしもいつも低金利に押えておく必要はないのじゃないか。これは日本は輸出国だから、したがって海外競争力をそういう面からだけつけるというのじゃなしに、その問題は別な方途でまた幾らでもやる方法があるのですから、こういうものはこういうものとして処置をしていく。
私は、この際、短期決戦ということを言われる
大蔵大臣なんだから、割増金付
預金なんというようなまさに人をばかにした、射幸心のある者だけ飛びつけばいいというようなことでなく、これもどれだけ効果があるかわからぬけれ
ども、ほんとうにこういうような形の本格的な取り組みをやれば、これはやはり政策的に貯蓄を増強するということにもつながるし、目減り補償にもつながるし、しかも長期的に見ても、効率のいい新しい時代にふさわしい投資にその資金が配分されていくということにもつながっていくだろう、こういうふうに思うのです。もう一ぺんひとつお答えいただきたい。