運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-07 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月七日(木曜日)     午後二時五分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       大西 正男君    鴨田 宗一君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       野田  毅君    坊  秀男君       佐藤 観樹君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省証券局長 高橋 英明君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         国税庁次長   吉田冨士雄君  委員外出席者         国税庁税部長 田邊  曻君         文部省管理局教         育施設部助成課         長       西崎 清久君         建設省計画局宅         地部宅地開発課         長       吉田 公二君         自治省行政局行         政課長     砂子田 隆君         自治省財政局地         方債課長    小林 悦夫君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   小林 政子君     不破 哲三君   田中 昭二君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     小林 政子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 たいへん時間がわずかしかありませんから、最初に個別のこまかい問題を一、二点、他の省にわたる問題でありますが、同時に国の会計にもかかわり合いがありますので、大蔵委員会は森羅万象ことごとくこれ関連があるという立場からお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、県立高等学校建設問題でありますが、各県とも県立高校をもっとふやさなければならぬという希望はたいへん多いと思うのであります。そこで、文部省は、県立高等学校新規建設の際には国は全くかまわぬ、県に一切一〇〇%まかせ切りだ、こういう現状ですか、それとも文部省はどんな指導をなさっているのですか。
  4. 西崎清久

    西崎説明員 簡単に経緯実情を申し上げたいと思いますが、先生指摘のとおり、昭和四十九年度から五十二年度までの間に、高等学校生徒数は約二十七万人増加するのではないかという推計がございます。それに伴いまして、高等学校設置計画相当数にのぼっておりますが、この点に着目いたしまして、昨年の段階でございますが、各都道府県の要望もありまして――財源措置の問題につきましては、いろいろと議論の分かれるところがございます。  すなわち、交付税措置起債措置等で従来行なわれてきておりまして、国庫補助制度というものについては、高等学校については行なわれていなかったわけでございます。そういう点につきまして、財源措置につきましてはいろいろ意見が分かれるところではございますが、要望に基づきまして一応の予算要求の形といたしまして三十億を計上して、概算要求段階を一応通り過ぎたというふうなことであったわけでございます。  その後いろいろと経緯がございまして、昨年末の予算編成の最終の段階までまいったわけでございますが、その時点において、関係各省と種々相談をいたしたわけでございます。すなわち、従来公立学校につきましては、先生承知のとおり、設置者設置管理をし、経費負担をするという原則がございまして、義務教育については、これは国としても責任をもって施設設置をすべきであるという考え方のもとに国庫補助制度をとってきたわけでございますが、高等学校についてはそういう考え方ではなくて、交付税措置地方債措置という形で従来やってきたという実情がございます。  これらの点を勘案し、政府関係各省相談の結果、四十九年度においては、地方債措置並びに交付税措置、特に地方債措置拡充によりまして四十九年度の高等学校建設計画については一段と拡充をはかりたいという結論に達しまして、関係省において所要の措置を講じていただいたわけでございます。そういう意味におきまして、文部省といたしましても教育のことでございますので、高等学校に対する国の財源措置について全然無関係ということではもちろんございません。その点について関係各省と御相談の上で、姿としてはただいま申し上げましたような姿になっておる、こういう実情でございます。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 三十億円概算要求をしたけれども、残念ながら切られてしまった、こういうことですね。三十億円は、ことしは全然補助金としてないのでしょう。四十九年度には一銭もないのでしょう。
  6. 西崎清久

    西崎説明員 先生のおことばではございますが、私どもの理解といたしましては、現段階における高等学校施設に対する財源措置としましては、やはり種々の措置が可能となります地方財政措置としての財源確保ということが最も適当ではないかということに関係各省意見が一致したわけでございます。その点においては、文部省も合意のもとにやっておるわけでございますから、私どもは必ずしも予算が切られたからというふうな気持ちではないわけでございます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、文部省は、高等学校新設については、設置者は県だから、地方債借金は認めるが、国のほうとしては交付税なり大蔵省査定補助金なりというものは一切出さない、地方債でまかないなさい、こういう方針ですか。
  8. 西崎清久

    西崎説明員 私どもが現段階におきましての高等学校増設に対する財源措置を考えます場合には、先生指摘のような姿に現在なっておりますので、地方債措置において、あるいは高等学校に関する交付税措置によりまかなっていただく、そういう考え方でございます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 自治省交付税の中に高等学校新設の場合の交付税はどのくらい四十九年度は予想しておるのですか。そして、どういう場合にその交付税が交付されるのですか。新設高校の場合だけに限っていま聞いているのですが、どうですか。
  10. 小林悦夫

    小林説明員 私、ちょっとその担当でございませんので、お答えしにくい点もございますが、交付税積算につきましては、高等学校数というものを積算いたしまして、それについて単位費用その他におきまして措置する形になっておりまして、その金額はちょっと私いま手持ちがございませんので、後ほど御報告したいと思います。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま自治省がお答えになったのは、すでにできてしまった高校については、高校生徒一名について何ぼとか、高校校舎数について幾らという算定基礎には入っておるということなんであって、私が聞いておるのは、もう生徒が増加し、人口が増加して、高校をどうしてもつくらねばならぬという事態の場合、新規につくった場合の土地取得なり、校舎建築なりについては、交付税は全く見てない、国の補助金も全くない、すべて県で何とかしなさいということなんですな、現在の自治省文部省指導は。自治省、どうですか、新規建設高校土地代校舎の代金というものが交付税で見られますか。
  12. 西崎清久

    西崎説明員 自治省所管事項でございまして、私から詳しく申し上げるわけにもまいりませんが、現在、四十八年度で申しますと、生徒一人当たり一万二千七百円という高等学校投資的経費が見込まれておるわけでございます。その積算につきましては、新設にかかわる部分も若干考え方としては入っておるというふうに私どもは承っておりますが、その積算についての詳細は、ちょっと私ども承知いたしておりません。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 私が聞いておるのは、新設高等学校土地取得、建物、これについては全くないんでしょう。  辻主計局次長いかがですか、大蔵省査定の中で、新設高校に対する交付税の計算というのは入っていますか。
  14. 辻敬一

    辻政府委員 交付税の問題は私も直接承知しておりませんが、ただいま文部省からもお答え申し上げましたとおり、四十八年度で申しますと、単位費用生徒一人頭一万二千七百円、総額にいたしますと五百三十七億円と承知をいたしております。四十九年度は大体それが二五%程度伸びるのではないかというふうに考えております。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 だから、それは現在できてある高校についての交付税があるということなんで、生徒が現に入っている。私がいまここでいろいろ確認をしたいのは、新しく高校をつくる場合のことを言っておるわけなんで、その新しいことについて三人とも全然答えてくれぬのですよ。ないのでしょう、何も。
  16. 辻敬一

    辻政府委員 ただいま申し上げました中には、これは学校建設費一般財源充当額でございますので、校舎屋内体育場プール建設、それから新増設高校分付帯施設及び初度調弁費その他を合わせて言っておるわけでございまして、それが生徒一人当たりにいたしますと一万二千七百円、一校当たりにいたしますと八百五十七万三千円ということに承知いたしております。これは四十八年度の数字でございます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 ここで大蔵大臣にちょっと、政治家として大蔵大臣としての見解を伺いたいのでありますが、これは栃木県の自民党の知事も、高校をあちこちつくらねばならぬということでたいへん苦慮して、私たち国会議員与野党全員の前で、大蔵省は一銭も見てくれぬのだ、何とか高等学校新設についても財源措置を援助してもらわぬことには、県としてはもう学校をつくれない。そこで、県は財源がなくてつくれないとなると、市町村に、おまえのところで土地をみんな買って出せ。そうすると、市町村土地を買うのに、いまの地価が高いから、敷地を買うだけで十億も十二億もかかるわけですね。おまけにさらに校舎を建てるわけでありますから、したがって、県立高校をなかなかふやせない、こういう状況なんですね。  そこで、私は、新しい制度福田大蔵大臣手元で、高校新設の際にも全部借金でやれという酷なことではなくて、何らかの財政措置検討してしかるべきではなかろうか。たとえば、新規に、土地取得した場合には、その土地取得の何%ぐらいは交付税の中で見てやろう、それから新設の場合の校舎建築費についても、交付税で何ぼかぐらいは見るべきではなかろうか、そうして国、県、市町村お互い応分負担をして高校ができるようにしたらどうか、こう私は感じるのでありますが、ひとつ財政を預かる大蔵大臣として、新しい前向きの姿勢を明らかにできないでしょうか。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 中央地方の全体の財源調整につきましては、私もたいへん苦慮をいたしておるわけでございます。また無理もしておる、こういう実情は御承知と思いますが、そういう全体の中央地方財政上のつながりをどうするかという全面的な考え方の中において、まあ国が助成を必要とするというものにつきましては助成、つまり補助金を出す、こういうことで、義務教育施設につきましてはそういう補助体系をとっておるわけであります。  しかし、高等学校となるとこれは義務教育ではない、こういう問題がありまして、そしていま政府委員からお話がありますように、交付税という問題で考えておる、それで救い切れない部分は、これは起債等において国も協力しよう、こういうたてまえになっておる、そういうふうに承知しておりますが、いま私はお話を承りまして、補助金というのはそういう中央地方全体のことでありますのでなかなかむずかしいと思いますが、交付税基準財政需要というか、そこへどういうふうに織り込むかという点につきましては、なお自治省のほうとも検討してみる、こういうふうに思います。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 さすが専門家福田大臣でありますから、各市町村なり県の基準財政需要の中に、いまの高校新築の場合の土地校舎現実に入っていないので、したがって、今後入れるような方向で努力をしていただきたい、こういうのがいま私が質問している趣旨なんです。これは全国の知事知事会でも要求しているのです。高校建設には困ったものだ、交付税に全然入ってないのですから。いま入っているのは、でき上がっている高校について、生徒一人一万二千七百円という単価だということなんで、いま一番困っているのは、校舎を建てる土地を買う、それから校舎を建てる費用、これは土地だけ全部市町村にぶっかけるわけです。ですから、小さい市町村には高校ができないのです。その土地がとても出せない。こういう騒ぎで、これは全国的な問題ですから、せっかくこの点は十分御検討――ただいま検討するとおっしゃいましたから、検討を期待をいたしますから、基準財政需要の中に含めるような前向きの姿勢で、ひとつ御検討願いたいと思います。  そこで、これに関連して第二の問題は、昨年暮れに、銀行局長通達が出されて、選別融資が強化をされて、土地取得資金は一切もう融資をふやしてはならぬ、しごくもっともだと思います。しかし、問題は、それぞれの地方自治団体市営住宅とかあるいは社会福祉施設とかいろいろなものの土地をとにかく先行取得しなければならぬという土地手当てですね、その中のすべてはずせとは私は申しませんが、せめて小中学校。これは、人口急増地帯では、もう再来年には何人生徒があがるというのは年齢構成で全部わかっているわけですから、いまのうちに校舎を手がけておかぬことには生徒が入れない、こういう問題が小中学校に出てくる。その土地取得の金をいまの金融引き締めで、開発公社なりそういうところが市のかわりにみな土地を買うのでありますが、金が借りられない、こういう問題が起こっているわけですね。せめて小中学校敷地だけは取得資金融資してやれるような、やはり各銀行窓口をもう一回精査して、教育施設についてだけはひとつその土地取得資金引き締めからはずそう、そういう配慮がもう必要な段階ではないかと思うのでありますが、その点は銀行局はどんな指導をなさっているのですか、大蔵大臣
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは武藤さんもよく御承知のところと思いますが、いま総需要抑制政策がだんだん浸透してまいりまして、全国的に土地の価格はもう頭打ちである、こういう傾向になってき、これから土地の値段も下降傾向に入ろうとしておるわけです。そういう地価状態、しかも、この地価というのは今回の物価混乱引き金的役割をなしておる、そういうことを考えますると、この地価の扱いにつきましてはきわめて峻厳でなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。  そこで、金融抑制政策の運営上、選別融資をやっている。その中におきまして不動産投資に要する金、これは新規のものの抑制はもちろんでありますけれども、なお、既存の貸し出しが切りかえになるという際におきましても、慎重に配慮しなければならぬという指導をしておるわけなんです。しかし、そういう一般方針でありまするけれども、その中におきましても、教育でありますとかあるいは福祉でありますとか、そういうものにつきましては弾力的な配慮を願いたい、これが一般的な方針です。  そこで、いま現実の金の動きを見ると、たとえば昨年の第三・四半期、つまり十月から十二月の金の動きを見てみると、一般金融機関におきましては、大体三%ないし五%くらい貸し出しがふえておるわけです。ところが、そのワクしかふえない融資の増額の中で、地方開発公社に対する貸し出しは実に二二%ふえている、こういうような状態です。それは、一つ土地を持っておれば値が出る、こういうようなことで、土地を大量に買った、しかし、そういう人が、先の地価の見通しなんかよりも、この際売りたいというような向きもありまして、それで住宅公団でありますとかあるいは国鉄だとかという政府機関に、かなり買い入れ方の申し込みがあるわけです。それから同時に、地方開発公社に対しましてもある。こういうことで、開発公社に対する資金需要というものがかなり多くなっておるという状態です。  そこで、金融機関に対しましては、一般原則は先ほど申し上げましたとおりの方針を示しておりまするけれども地方公共団体につきましても、これはもう考え方としては例外ではない。ただし、学校だとかあるいは福祉施設だとか、そういうものにつきましては例外的に配慮せられたい、こういうことであります。  それで、その実施状況を見ておりますと、やはりだいぶ摩擦の起きているところもあります。そういう面につきましては、自治省と十分相談いたしまして、ケースバイケースでこれをさばいておるというのでありまして、基本原則はあくまでそうでありまするけれども学校なんかでどうしても、特に急増地帯における学校、そういうようなものにつきまして、せっぱ詰まった対策だというものにつきましては、金融のほうはとにかくきびしい中でありまするけれども支障のないように動かしておる、こういうのが実情でありまして、だいぶケースバイケースの問題でいろいろ自治省から相談を受けておりますが、私が聞いておるところでは大かた解決されておる、こういうことでございます。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの大臣答弁では、銀行局長学校についてのそういう土地取得については、金融機関窓口は閉ざしていない、ケースバイケースでこまかい点を精査して許可するようにしている。そういう配慮があの銀行局長通達の中で読み取れますか。私の読んだ範囲では、ちょっと読み取れぬのでありますが、いかがでしょう。
  22. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 あの通達の中で、教育住宅その他生活関連のあるものについては優先度を優先して扱えという項目がございます。そういう一般貸し出しに対する考え方というのは、最後の第三のところで、地方公共団体についてもこれに準じて扱うようにということで指導いたしております。  なお、具体的には、一月末にさらに地方公社等に対する選別融資という形で、先ほど先生が御指摘になりました問題について、資金使途地方公共団体の本来業務に密着し、国民生活の基盤として不可欠のもの、たとえば義務教育施設用地優先順位が高い、道路、スポーツ施設等緊要度が低いというような形で、具体的に私のほうの課長から財務局を通じて指導いたしております。  なお、先ほど大臣答弁いたしましたとおりでございますが、具体的に申し上げますと、たとえば栃木県の場合に、地方公社からの申し込みが二百億をちょっとこえる状況になっております。それに対しまして、栃木県にあります銀行貸し出しワクが百三十億ぐらいであるというような状況でございまして、これでもって中小金融もまかなわなくちゃいけないところに、それをオーバーするような公社需要になっておるというのが実態でございます。  その中で、先生の先ほどの御指摘のように、学校に対しては優先的にやるべきではなかろうかということでやっておるわけですが、学校のほうの需要も年間を通ずるような計画が出てまいりまして、私どものほうとしては、一-三月というのが一つの区切り、四-六月が一つの区切りというようなことですから、債権債務関係が差し迫ったものから順次めんどうを見さしていただこうじゃないかという形で、対象となる土地が必要となる時期から見て、現在融資することがほんとうに必要かどうか、あるいはすでにもう契約ができておって支払い期日が確定していても、その変更がどうにもできないかどうか、そういうような基準からの優先順位で御協力しておるというような実態でございます。  全国的に見ますと、二月分はやっと話し合いがそれでついた、一番問題は三月だろうと思いますが、将来にわたってこれはお引き受けいたしますということがなかなかできないというところに問題のむずかしさがあるように思います。しかし、できるだけ具体的な話で銀行から言ってきてもらいまして、文部省なり自治省相談してやっていきたい、かように考えております。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 一応、小中高校などの教育施設土地取得については、さらにきめこまかく実現できるような指導をしている、こういう答弁でありますから、もしネックに突き当たった個別問題のときには、大蔵省に直接話し合いをするように指導願いたいと思います。  次に、他の省の方に先に帰っていただく都合上、先にお尋ねいたしますが、労働金庫公金取り扱い指定金融機関になれない理由、それから労働金庫指定金融機関にしてはならない通達、どんなものがあるのか明らかにしていただきたい。
  24. 砂子田隆

    砂子田説明員 労働金庫の問題につきましては、労働金庫法がその業務について大綱を示しておりますので、それに従った労働金庫の運用が中心になると思います。  私たち指定金融機関指定するというときにあたりまして問題になりますのは、一般指定金融機関というのは現金を取り扱いますほかに、証券による納付でありますとか、あるいは隔地払いをしなければいかぬ、あるいは為替業務が付随的に起こるといういろいろな問題が起きてまいります。そのことが一般住民に全部使えるということがたいへん大事でございまして、そういうことでもない限り、租税を納めるということにつきましてもたいへん不便を来たすということがあります。  たまたま労働金庫法の内容を見てみますと、会員に対しては非常に門戸を開放されておりますが、一般住民全体に開放されているというわけではないので、指定金融機関としては無理であるというふうに考えておるわけでございます。これは前に一応、まだ地方自治法財務規定改正にならない前に、昭和三十年ごろに公共団体からのそういう質問があったときに、要するに、まだ本金庫と支金庫については労働金庫指定はできないという解釈をいたしております。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 その解釈をしたものは、どういう通達で下部に流れておるのですか。だれの名前の通達でそういうことがきめられておるのですか。
  26. 砂子田隆

    砂子田説明員 これは昭和三十年の地方自治法解釈として流した実例で発表しております。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 では、その解釈実例あとでリコピーしたものをひとつ手元に届けていただきたい。  それから、公金取り扱い指定を受けられないそういう労働金庫に、市町村預託をするという行為は、公金取り扱いに該当するのか、預託支障ないのか、それはいかがですか。
  28. 砂子田隆

    砂子田説明員 これは先はど申し上げました昭和三十年といまの地方自治法財務改正などとの規定のからみになるわけですが、昭和三十年といま申し上げましたのは、要するにそういうことでありまして、一般的にできないというように解釈いたしております。  そのあと地方自治法改正になりまして、指定金融機関のほかに、収納代理店ができるという形ができております。その後労働金庫の中には収納代理店としての役目を果たしているものはあると私は思います。これは労働金庫法の中に公共団体預金はできるという規定がございまして、そのために公共団体預金をする、もっと厳密に解釈すれば、租税債務の履行だということをあまり議論し過ぎますと、なかなか労働金庫収納代理店にすることがむずかしいという議論が起きると思いますが、一般的には、公共団体のためにする納付であれば一応認めようということで、収納代理店としての形の公金の納入は認めていいという考え方を持っております。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 なるほど、私はそれを聞きたかった。それが認められるならば大前進なんですよ、収納代理店なら労働金庫ができる。しかし、現実にはやれないでおるでしょう。それは何か通達を誤解しておるのか、法律の実例で、あるいは末端は解釈が違うのかしらぬけれども、収納をやっている労働金庫というのはありますか。
  30. 砂子田隆

    砂子田説明員 いま収納代理店を持っております市町村は、私は正確な数字はいまここには持っておりませんが、全国で五、六十あると思います。ですから、部分的にはそういうことが取り扱われていることは事実ですから、そのことについて私のほうで、それは違法ですという話を申し上げたことはないはずです。ですから、先ほど申し上げましたように、昭和三十年ごろ出た法律の解釈と、法律改正になったあとでの取り扱い方は異なっておりますので、たまたま前のほうの実例が残っておりますから、そういうことが起きるのだと思います。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、収納代理店としての機能は許されるが、市町村からの預託金を預かる行為はできない。預託金もかまいませんか。
  32. 砂子田隆

    砂子田説明員 先ほど申し上げましたように、労働金庫法自身が公共団体預金ができると書いてありますから、それはできると思います。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは文部省自治省のほうはけっこうでございます。  それから、建設省においでをいただいているので先に、大臣がいる時間もったいないのでありますが、大臣ちょっとお許しいただきたいのであります。  これも一問だけ、いまの市街化調整区域内に建設のできる建物、これは都市計画法第二十九条第三号で、開発行為の許可ということで許されているのがずっとこう列挙されているわけですね。その中で、調整区域でも県営住宅住宅公団の建てる建物はよろしい、しかし、市町村がやる市営住宅団地はいけない、こういうことになっているのですね。市街化区域内に住宅を団地として建設することは、非常に困難だという地方都市もかなりあるわけです。  そこで、市営住宅団地を、ちょっと離れた郊外にまとめてつくりたい、こういう希望が市町村にあるわけですね。まあ村にはないと思いますが、市の段階ではかなりあるわけであります。県や国の建てるものはよろしいが、市という自治体はいかぬというのは少々片手落ちのような気がするので、この際、人口何万以上の都市については、市営住宅の場合でも市街化調整区域内でも建設ができる、そういう方向に改善をすべきではなかろうか。そういう意見は、私一人ではなくて方々の市で、安い市営住宅を大量につくろうと考える市ではかなり強い要望になっている。すでに建設大臣知事手元に、市議会で決議をして要望が出ている状況だと思うのであります。これについて建設省は、何か検討しよう、検討してしかるべきだという方向なのか、全く木で鼻をくくったようなことになるのか、この辺をひとつ御回答願いたいと思います。
  34. 吉田公二

    吉田説明員 ただいま御指摘の市街化調整区域におきます建築の開発許可の問題でございますが、御存じのとおり、開発許可制度と申しますのは、その市街化の傾向が著しい地域におきまして適正な土地利用を担保するという意味で線引きを行ないまして、開発許可制度をとっているわけでございまして、線引き区域の中におきましては、建築物の設置を目的とします開発行為は、すべて許可の対象とするという前提をとっているわけでございます。  ただ、二十九条の中におきましては、これは許可を要しないものといたしまして幾つかのものをあげておりまして、先生指摘の第三号におきましては、条文を読みますと「駅舎その他の鉄道の施設社会福祉施設、医療施設学校教育法による学校」これはカッコして、大学及び各種学校は除いております。それから「公民館、変電所その他これらに類する政令で定める公益上必要な建築物」というものをあげてございまして、この中では、たとえばごみ焼き場でございますとか、あるいは郵便事業の用に供する施設でございますとか、電信電話公社の公衆電気通信の用に供する施設とか、各号に列挙してございまして、いずれもいわゆる公益的な施設でございまして、市街化区域、調整区域であるとを問わず、属地的に必要な公益的な施設というものが三号に列挙されているわけでございます。  この場合、住宅というものはどうかということでございますが、住宅が市街地の拡大という意味からいきますと非常に大きな要素でございまして、これは一応チェックの対象と考えるというのが、この制度そのものの基本的考え方でございますので、この三号の中には、公営住宅というものは対象として考えていないわけでございます。  なお、先生言われました住宅公団とかあるいは県営住宅という問題は、そのあとに四号として、国、都道府県等の行ないます開発行為というものは、これは開発許可権との関係におきまして、他の立法例等も同様な趣旨から、一応国あるいは都道府県の行ないます開発行為については許可の対象に入れていないということでございますが、この考え方は、積極的にそういうものは市街化調整区域の中で建てていいということではございませんで、運営上は、開発許可などを担当いたします知事のもとにある県が、そうした市街化調整区域の指定の目的に、非常に中心的な問題でございます市街化の促進というために、非常に大きな貢献をする住宅を積極的に建てるということを必ずしも肯定しているわけではないわけでございまして、立法の形といたしまして、一応許可権限を持っている県というのははずしているという形でございます。むしろ、先生がいま御指摘の点、市街化区域のとり方が狭いとか、あるいはそういう適地がむしろもっとあるのじゃないかというような考え方がまだあり得ることと思いますが、そういう場合には、むしろ市街化区域そのものの見直しとかいうようなアプローチのしかたももちろんあるのではないか、かように考える次第でございます。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 市街化区域をさらに広げるアプローチのしかたがあるだろうというけれども、これはなかなかむずかしいんだ。これは手続的になかなか、建設大臣までの認可をとるのが、そんな局部的なものを飛び地でとれるはずはないんですよ。だから、やはりこの二十九条三号による「政令で定める公益上必要な建築物」、この公益上必要な建築物の中には当然市営住宅は含めていいんじゃなかろうか。だから、法律は改正しなくも、この政令の中でそういう公益上必要という概念の中に市営住宅が入るのか入らぬのかといえば、私は入れて至当ではなかろうかと思うのです。それはどうですか。
  36. 吉田公二

    吉田説明員 公益上必要という範囲も、この開発許可制度の基本的な考え方との調和の問題でございまして、公益上必要であるということは、その地域にとって必要不可欠なものであるということが一つと、それから、なおその線引きあるいは開発許可制度との関連上、市街化促進のおそれが少ないという、どの地域であっても必要だという施設に限定して三号は書いてあるわけでございまして、どうもそこに市街化そのものの一番中心的な住宅を集中的に建てることまで入れるのは、現在のところちょっとむずかしいと私どもは考えておるわけでございます。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは一課長ではちょっと論争できない政策論の問題になると思うのです。田中さんは三十万ヘクタールの農地をつぶしても、開発をもっと広げようという考え方ですね。  大蔵大臣、いまの私と建設省の議論を聞いていて、市営住宅はできるだけサラリーマンに安く、しかも大量につくってやりたい。ところが、三、四年前にきめた市街化区域内には、そう広い面積を市営住宅に取り入れてきて、しかも、家賃ができるだけ安く済むような住宅を大量につくることは不可能な事態になっているのです。市街化区域内にそんなに広い土地がないんです、市営住宅団地をばんと一画とるようなところが。そういう実情等々を加味して考えると、この政令の「公益上必要な建築物」の中で、市営住宅団地というものは一定の何か面積をきめて許可をするような方向に政令を直すべきじゃないでしょうか。政令を直せる権限を持っているのは国務大臣ですね。閣議できめるわけですね。だから、福田大蔵大臣も輔弼の責任があって、連帯責任の大臣として、見解どうでしょう。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 住宅問題は、これは国をあげての大問題でございますので、住宅問題を円滑に遂行するというためには、かなり思い切った施策が必要である、こういうふうに思うわけです。市営住宅が市街化区域の中に封じ込められまして、なかなか建設しにくい、こういうような問題につきましては、これは考えてみる必要があるのではないでしょうか。建設省出てきておりますが、ひとつ御検討願います。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 建設省、お帰りいただいてけっこうです。  次に、新聞によると、たぶん大蔵大臣の号令で、都市銀行に対する特別検査を行なって、企業金融のだぶつき現象を調査する、そして適切な指導方針を打ち立てるんだ、こういうことが実は新聞で報道されていますね。現在、その検査は幾つか済んだのか。済んだとすれば、いまここで述べられる特徴点、検査した結果こんなところが特徴点のようだ、全部を見なければ確実なものは報告できないけれども、現時点の銀行局が把握している検査の結果はこうだ、こういうようなものをちょっとここで御発表願いたいのです。
  40. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 御指摘のとおりの方向でいまやっておるわけでございますが、これは単に資金繰りの調査ということだけではなく、むしろことしに入りましてから本格的に始めました選別融資というものについての実地調査及びそれのできれば指導をしていきたい、かように考えておる性質のものでございます。一つには、物価がかなり、卸売り物価については今月と申しますか、二月は多少寝てまいりましたが、今後の動向いかんによっては、さらに非常に憂うべき事態も起こり得る。そういう場合に、金融面からの条件をできるだけ少なくしておこうという意味での予防的な措置ということも含めて着手しようとするものでございます。  そういうような考え方のものでございますので、さしあたりは都市銀行ということを考えておりますが、都市銀行だけではなくて、順次地方銀行その他の金融機関にも及ぼしていきたい、かように考えております。さしあたり考えておりますのは都市銀行十一行でございますが、これに対する考え方といたしましては、とりあえずは現在の全産業、二十五業種にわたるわけでございます。公益事業を除きます全産業について、大体その売り上げ高の半分くらいをカバーする程度の企業を選びまして、その結果約百二十余りの企業について企業金融の内容を調べたい、かように考えております。そういう性質のものでございますので、ここ数年にわたる過去にさかのぼってのデータもほしいというところから、現在のところでは各金融機関にその資料を徴求しておる段階でございます。  そういう資料を手に入れました上で、実際に入りますわけでございますので、三月の中旬ぐらいに実地に乗り込む予定でございます。非常に資金繰りあるいは在庫の数量というようなこまかいことを調査いたします関係上、その結果というものを取りまとめられるのは、かなり時日を要するように思います。四月末にできればと思いますが、おそらく五月に入らないと全体の調査の姿はわからないのではないか。  なお、その他の金融機関、信託銀行、興長銀にも重なり合っていたしますように考えております。したがいまして、全般が終了するまでよりは、むしろ中間的に御報告できるような形でまとめてみたい、かように考えておりますが、やはり五月ぐらいを目標としてまとめられるのではないか。しかし、問題は、その間にあって融資指導をしていきたいということでございますので、実は先月末に選別融資のさらに具体的な細目を通達いたしまして、在庫のうち買いだめと見られるような在庫については、融資をストップするとか、あるいは貸し増しを停止することとか、あるいは従来のクレジットラインをそのまま惰性をもって貸すことなく、もう一度再審査すること。それから土地融資については、実情をさらに調査して、再審査することという通達を出しました。そういう通達を受けてその考え方というものを実地に乗り込んで指導していきたい、かように考えておるわけでございます。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、銀行局金融引き締め指導方針は、総需要抑制はもちろんですが、新規融資を全く停止する、これが一つの範疇ですね。これがいま局長のお話では、在庫積み増し資金、これだけですか。それ以外に全く新規融資はしてはならぬというものは何と何と何ですか。
  42. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 金融でございますので、おのずから非常に抽象的といいますか、原則論にならざるを得ないことをお許しいただきたいわけでございますが、むしろその通達の文書を読み上げたほうがいいかと思いますので、ちょっと読み上げさしていただきます。  二月二十八日に出した通達でございますが、「このたび、日本銀行窓口指導を一段と強化し、特に流通関係等につききめ細かな抑制指導を行なうこととしたのも」金融引き締めの浸透状況に跛行現象が見られるからであるという考え方のもとにおきまして、金融機関におきましても、「金融引締めの影響が健全な中小企業経営に不当にしわ寄せされることのないよう配意しつつ、今後数か月間における融資態度が物価の動向にも極めて密接に関連することに十分」配意をして、次の事項に留意の上、厳正な態度で融資に臨むべきこと、そしてその実行状況については当局あて報告してもらいたいということで、三つの点を述べております。  一つは、「業種のいかんにかかわらず、この際、改めて融資先企業の在庫動向の把握に努め、過度に在庫の積み増しが行われていると認められる場合には、新規融資の停止、既往融資分の計画的回収等の措置を的確に講ずること。  なかんずく、流通段階の在庫保有等が問題となっている実情にかんがみ、この面に対する融資を更に抑制するため、卸・小売業に対する融資については、必要最小限の資金にとどめるよう特に厳格に審査を行うこと。」これが第一点でございます。  第二点は、「既に設定済の手形割引枠内の融資等についても、従来ともすれば受動的に貸応じてきた態度を改め、厳格に審査の上、必要最少限の融資にとどめること。」  第三は、土地関連でございます。「土地取得関連融資については、既往融資分についても、土地保有の目的、保有の状況等について、改めて審査を行い、不適切と認められるものについては、手形の書替え、約定の更新に応じないほか、計画的に回収を図る等の措置を講ずること。」  こういうのがその内容でございます。しかし、これの運用のしかたによりましては、非常に経済界に無用の混乱を起こすおそれもございます。また、健全な企業というものがこれによって不当にしわ寄せを食ってはならないということもございますので、これをやっていくためには細心の注意が必要であろう。そういう意味から、調査にあたりましても寛にわたらず、さりとてむやみに厳にわたらないように、その辺のところをやはり金融機関の社会的責任という判断で良識をもってやってもらいたいということで指導していきたい、かように考えておるわけでございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういう過度の金融統制的な選別融資が強化されている昨今でありますが、一年も金融引き締めを続けて、一年後になって、いままたそういう強硬な選別融資体制に入るというのは、過去のやり方にやはりしり抜けのところがあった結果なんですね。私はここで銀行局長を責めようとは思いませんが、窓口指導で都銀、長銀、信託銀行に対して、十大商社に対する貸し出し抑制する、こういう方針を昨年早々きめたわけですね。  その大蔵省方針では、昨年一月から三月の間には、四十七年十月-十二月期の増加額の二分の一に押える。商社に対する融資を前期三カ月の二分の一に押える。さらにことしの一月から三月までの間は、それをさらに下回る水準に商社融資というのを押えるのだ、こういう方針をとにかく去年の一月にきめているわけですね。にもかかわらず、十大商社の金融状況というものは、さっぱり大蔵省が意図するような方向にならなかったと思われる。  現実は、去年の一月、大蔵省が大商社に対する融資規制をやると発表して以来の目標というものは達せられたのか、達せられないのか、どんな状況になっているのですか。
  44. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 昨年、そういう姿勢をとりましたときに、たとえば都市銀行の十大商社に対する貸し出し額は約千八百億余り、千八百八十二億でございました。それが昨年末では五百六十八億ということで実績が出ております。増加額ベースでございます。それで、さらにこれを一-三は五百億ということに予定しておるわけでございます。増加額ベースとして私ども申し上げたわけでございますが、その限りにおいては、総体的には行なわれておるというように考えます。  なおかつ、現在の引き締め状況が締まってないではないかという御趣旨につきましては、私どもは総体的には非常に締まってきておると考えておるわけでございますが、なお、そういう部分的な問題についてさらに強くやっていきたいというのが今回の趣旨でございます。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 具体的になって恐縮ですが、たとえば、銀行局長、三井物産と三菱商事の場合だけを考えても、去年の九月期で、一行から、三菱銀行から三菱商事が借りている金が千四百九十九億円、三井物産が三井銀行から千四百八十六億円、これは長銀も入っていますな、この大蔵省の数字には。私のほうの数字で言ったほうが、一行だけでいいかもしらぬね。去年の九月、三井銀行が三井物産に貸している金が一千十九億です。三菱銀行が三菱商事に貸しているのが一千四百億、この貸し出し金融は現在どうなっているだろうか。まず大きいところの二社だけを――十社全部やるわけにはいきませんからね。それから、この二社の現金及び預金、三井物産が昨年九月、二千三百八十八億円の手持ち現金及び預金、三菱商事が一千九百四十四億円の現金及び預金、この数字が現在どのように推移していますか。
  46. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 はなはだ恐縮でございますが、いまその関係の資料をちょっとさがしておりますが、見当たりませんので後ほどお答えしたいと思いますが、現金なり企業の資金繰りの数字については、私ども現在持ち合わせておりません。そういうことも把握するために今度調査をするということでございまして、企業サイドの資金繰りの数字について、有価証券報告書の数字以外は実は持ち合わせていないというのが率直なところでございます。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、いま申し上げましたような、これは証券報告書で私、自分で抜粋をしたのでありますから間違いないと思います。そういうような十大商社の資金状況、借り入れ状況、こういうようなものをやはり少しきめこまかに早目にやらぬと、五月に結論が出るということでは、これはちょっとおそいですね。五月になると、大臣、経済情勢はいまとはだいぶ変わりますよ。大臣の決意の結果、短期決戦ということで、この三月の終わりから四月にかけては、日本の金融、経済動向というのは、私はいまよりはたいへん違った形になると思うのです。どうなるかというのはなかなかむずかしいですが、かなり変わることだけは間違いない。そのころになってから十大商社は内容はこうでしたという結果を追っかけたんでは、検査をする意味が、効果がなくなってしまうわけですね。  したがって、私は、代表的な二つ三つの商社をまず一回きちっと早目に検査をやってみる、そうして、なるほど検査の結果、二、三をやったらこうだぞ、五月を待たずに早急に――これは二、三社なら、大蔵省の能力をもってやるならば可能だと私は思うのです。そうして、いまの資金の状況というものを早く把握をする、こういう必要があるのではないかと思います。  それで、大蔵省は、自己資本の二〇%をこえる貸し出しを今度規制しようとか、大口規制をどうしようかとか、いまずいぶん苦悩しているようですが、なかなか名案がない。それは一社に対して千四百億も千三百億も都市銀行は金を貸しているのでありますから、これを自己資本の二〇%でこえるとなったら、これは商社がたいへんなことになるもんだから、あんまり大きくふくらんでしまって貸し過ぎてしまっていて、現実は、そういう貸し出し比率をきめるということが大蔵省としてなかなかやりにくい状況になっていると思うのですね。  そういうものを国民の目から見れば、都市銀行というのは何ということはない、みんな国民から一生懸命預金を集めて、三井物産や三菱商事へどんどんつぎ込んで貸しておる、そしてそれがまた買い占め、売り惜しみをやって、たらふく金もうけをしておる、そういう悪い面ばかり国民の前にはわあっと映りますね。だから、これをチェックするかしないかは、かかって大蔵省の能力しかないのです。だれもほかの人にできないのです。  これは大蔵大臣の厳命で、こういうものをすみやかに、ひとつ五月を待たずに、二、三の例をきちっと一回調査をして、そういう結論を繰り上げて一回出してみる、そういう方向で努力をしていただきたいと思うのですが、大臣いかがですか。数字の論争をやめます。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度やろうとする特別検査は、これはその検査の結果を集計いたしまして、統計数字が出てきますとか、あるいはいろいろ気づいたところなどを整理させるとか、そういうことは主たるねらいじゃないのです。もう政策目標は私どもは出しております。先ほど銀行局長通達の趣旨を申し上げましたが、三点ちゃんと目標を示しておるわけなんです。それが適切に行なわれているか行なわれていないか、そういうことです。それからそれが行なわれておらなければ指導をする、こういうのであって、今度の特別検査の主体は検査過程における指導にあるわけなんです。  ですから、何も便々と五月まで待って、そしてその効果が初めて出てくるという性質じゃないのでありまして、私どもは検査が進行する進行の過程においてしょっちゅう話を聞き、そしてまた次の検査の参考にもする、そういうのですから、五月まで待って初めて効果を期待をするという考えは毛頭ありません。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当ての時間になってしまいまして、ちょっと金融問題に入ったばかりで、前段の時間を取り過ぎてきょうは終わりになってしまったのですが、最後に、大臣に伺いたいのは、石油の値上がりは目の前に迫っている、一バーレル九ドルの原油を輸入するということになると上げざるを得ないということで、いま与党内は、通産省、企画庁、大蔵省それぞれ担当大臣は、この原油の値上がりが物価問題にどうはね返るかということで、たいへん神経を使っている問題だと思うのです。  この九ドルの原油が入ってくる、値段が上がる。そうなると、電力料金も値上げをしてくれという要求が強くなる。電力料金がかりに五〇%上がったとすれば、今度は電力を必要とする諸生産物資がみなまた値上がりをする等々の問題が、いま目の前に控えておる。おまけに九月からは消費者米価の値上げだ、国鉄運賃の凍結解除だ、こうなってくると、せっかく物価問題に取り組んだ蔵相の短期決戦の成果が、またけし飛んでしまうという不安がありますね。大臣、全く不安ありませんか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 不安がなければ日夜かように精励はいたしておりません。私も、物価問題の前途というものはたいへんきびしく見ております。ただ、総需要抑制政策はもうかなり浸透してきてまいりまして、先ほど土地の問題でお話がありましたが、地価の下落傾向はもう一押しだ、こういうところまできておる。あるいは鋼材にいたしましても、昨年の秋ごろはトン十一万円した。これが今日もう七万円台だ。こういうところに落ちついてきた。繊維も同様に、三分の一の下落を示しておる。そういうことで私は、いまの金融財政政策をまっしぐらに進めてまいりますれば、これはもう先高見越しの売買が行なわれる、したがってまた非常に不正常な価格体系というものができるというような余地はなくなる、こういうふうに確信をいたしております。  ただ、いま御指摘のありましたように、この前途を妨げる要因というのは、いろいろありますけれども、私が一番心配しておるのは、石油、電力問題、それからもう一つは春闘、これなんです。  石油、電力問題につきましては、電力は当分さわらぬ、そういう基本方針をとるべきだ。差し迫っての石油の問題をどういうふうに処置するか。石油問題につきましては、石油の元売り価格、これはどうも早晩、タイミングはあとで申し上げる問題を見てきめなければなりませんけれども、早晩上げなければならぬ、こういう形勢にある。そこで元売り価格が上がりました場合に、石油消費産業、つまり石油関連産業といわれますが、その産業の製品の売り値をどうするかという問題です。  これは通産省その他物資所管官庁で、たとえ元売り価格の引き上げがありましても、その元売り価格の影響は受けない、つまり、いままでの価格を原則として凍結をするという措置ができるかできないか。それから、さらにこの際、さような第二次石油使用産業の製品価格の中で、元売り価格の上昇にもかかわらず、さらに価格引き下げをやる余地はないかどうか、そういう詰めがいま進行中なんです。その詰めができたその上に立ちまして、この元売り価格のほうをどういうタイミングで、どういう幅でという考え方に移ろうということです。いまその前提条件のほうの詰めをしておる、こういう段階で、何とか私は、石油消費産業の製品価格は原則として当分凍結、そして総需要抑制政策の前途に暗い影響を及ぼさないというようにぜひしたい、こういうふうに念願しております。  それから、もう一つは春闘ですが、賃金の上げ幅の問題もあります。あるいはストライキというような問題もありますが、この際大事なときなんで、何とかこれは労使の間で良識を発揮されまして、円満に妥結してもらいたい、こういうことを念願をいたしております。  そういうことで進みますれば、総需要抑制政策の効果というものは的確に出てくる。この二、三月の間に、日本経済の流れというものはもう目に見えるようによくなってくる。総理は夏ごろまでと言いますが、夏ごろまでには鎮静化ムードがもう非常に高潮してくるであろう、そういう鎮静化の中で新しい価格体系というものがきめられていく、こういうふうに考えております。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 最後に、いまの石油の元値が上がってきますから、いつかどこかで、自由経済である限り、これは上げざるを得ない、私はそう見ています。  それから、電力料金も私企業である以上、この赤字を何とかしたい、上げたいという問題が起こってくる。大臣は当分は上げさせないと言うが、当分というのはそう遠くない当分であって、近き将来にそういう事態に政府は直面せざるを得ないだろう。  そこで、政府は、いまのような総需要抑制をやって、公共事業費を先へ延ばして、あの手、この手をやっている。この間委員会で私が大臣に提言をしたもろもろの長期計画も、全部洗い直すということが新聞に出ていた。やはり福田さんは私の言うことをよう聞いて、ちゃんとやるなと思って、実はけさの東京新聞を見て、やはり実力大臣だなと思って感心したのでありますが、そこで、原油の値上がりがエネルギーの原動力である電気料にはね返ってくるという事態だけは避けるために、この際、揮発油税の使い方について再検討すべきじゃないか。来年度予算、ガソリン税六千九百四十億円ですか、このガソリン税を活用して、せめて電気料金の値上げだけは食いとめるという立場から、価格差補給金か何か別な面を考えて、国民すべてに影響のある電気料だけは値上げを食いとめる、そんな方法も考えられるのじゃなかろうか。そういう価格差補給金みたいなものはどうだろうかという提案をして、私の質問を終わりたいと思いますが、どうですか。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 理論としますと、ここでガソリン税といわず、何らかの財源措置をして、それで石油あるいは電力の価格引き上げを押えたらどうだ、こういうお話ですが、これは問題の解決を先に延ばすだけです。これはもう全くカンフル注射をいたしましたというだけに終わるのでありまして、やはりこれだけの大問題に当面しますと、ここで正統的というか、オーソドックスな解決をしておくべきだ、これが私の考え方であります。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは値上げを認めることになりますな。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは、先ほど申し上げている第二次関連企業といいますか、石油精製業者から石油を受けて、そしていろいろ企業を営む、その企業の製品価格をここで原則として凍結をする、こういう措置をいま検討しておるわけですが、それができるということになりますれば、私はその上に立って、大所高所の正統的判断をすべきである、こういうふうに考えております。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当ての時間が終わりましたから、終わります。
  56. 安倍晋太郎

    安倍委員長 広瀬秀吉君。
  57. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私は、インフレ対策というか、インフレ補償という面と、有効需要を総需要抑制の線に沿って調整をしていく、こういう二つの観点から、預金金利の引き上げをやるべきではないか、これは幾つかの条件がありますけれども、そういう方向というものがやはり政策的に非常に有効ではないか、こういう見解をもって、大臣の所信をひとつただしてみたいと思うわけなんです。  まず、三十年代半ばから日本の高度成長経済政策がずっととられてきた。これをささえてきたものは、やはり人為的な低金利政策という問題が根っこに一つあったろうと思うのです。そういうようなことで、GNPも今日世界第二位というような状況にまでなってきたし、あるいは完全雇用を実現した。一人当たりの国民所得もかなり前進を示してきた。そういういろいろないい面があったかわりに、インフレを阻止し得なかった。もう恒常的にずっと消費者物価が上昇を続けてきた、三十年代には年率六%ないし五%程度であったけれども。  さらに、最近の物価上昇の状況は、まさにあなたがおっしゃる狂乱状態に達して、しかも今度は、かつて三十年代には日本の消費者物価が六、七%ぐらい上がるのはどうということはない、卸売り物価が一%程度、あるいはせいぜい上がっても二%以内でおさまっているではないか、こういう日本の高度成長政策における神話がくずれて、最近では卸売り物価もまさに狂乱的な、一月で対前年比三一・六%というような、戦後ほとんど経験したことがないといってもいいくらいの、終戦直後の特殊な混乱状況を別にすれば、初めてというような状態になってきた。  こういうことになって、しかも、それが今度は、消費者物価ももうすでに対前年比二〇・四%も上がるというような状況の中で、これから本格的に卸売り物価の上昇が消費者物価にはね返ってくる、こういうような形で物価上昇がとどまるところを知らない。前の武藤委員の質問の中にもありましたように、三月の上旬から中旬の段階では卸売り物価が若干横ばいということで、ちょっとほっとしたというような状況が見られるようですけれども、これが三月を越しますと、原油の問題も四月になれば、今度は正式に上げざるを得ないということになりましょう。そうすると、これはたいへんなことで、蔵相のおっしゃる短期決戦というものもややあやしくなる。短期決戦はなかなかできないのではないかという悲観的見方も強まってくるし、短期決戦ができないでいるうちに、今度は凍結された米価あるいは公共料金、特に国鉄運賃というようなものが上がってくるというようなことになったら、これはたいへんなことだというように考えておるわけなんです。  それがみな国民の、特に低所得大衆にものすごいしわ寄せになってきているということは、もういまさら言をまたないわけですけれども、そういう低金利政策の中で大衆は、特に家計と企業というように分けてみれば、家計のほうはこれはもう常に預貯金の出し手であって、常に貯蓄超過型である、企業は常時借り入れ超過型である、こういう形になってきた。このインフレの中で貯金以上に物価が激しく上がるというようなことになれば、これはもう貯蓄が減価をし、いわゆる目減りをするということは避けがたいことで、その出し手がほとんどみな貯蓄の目減りという形で大きな被害を受けざるを得ない。借り手のほうは、何千億借りても何兆借りても、これが物価上昇率と金利との乖離によって、その分だけ借金のほうが目減りをする、インフレ利得がそういうところにはころがり込む。そういう点でインフレに弱いものと、インフレによって利益を得るもの、こういうものが画然としてきている。  そういう点で、この段階で、短期決戦もちろんけっこうだし、全体的な総需要抑制ということを推し進められることの一つの有力な手段として、この際、預金金利を引き上げる。特にこれはまたあとから論議をしますが、その面から、短期ものの預金金利を引き上げることによって、インフレによって被害をこうむり損害を受けた者に対する補償という面を重視しよう、これはもちろん有効需要抑制、消費需要抑制というようなことにもよき結果があらわれることは当然でありますけれども、そういう立場で、この問題に踏み切るお考えがあるかどうか、まずひとつそのことについて率直に大臣の所信を伺いたいと思います。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 この際預金金利を引き上げたらどうか、こういうお話で、しかも話の通りからいうと、かなり大幅に引き上げたらどうだ、こういう御所見でございます。私は、預金金利の引き上げというものにつきましてはたいへん関心を持ってきたのでありますが、しかし、それは限度がある。その限度を越えてこれを引き上げるということは、なかなかむずかしい問題である。結論としては、そういう所見です。  いまのインフレ、物価高を克服する道は、私は総需要抑制政策以外にはない、こういうふうに思います。これをやっていけば、必ずインフレは抑制できる。これをまた同時に確信をいたしておるわけなんですが、その総需要の中で、とにかく二割を占める政府、地方公共団体財政需要、これは御承知のような財政方針で押え込む。それから同時に、金融引き締め政策を通じまして、他の二割を占める産業設備投資需要を押え込む。これはおそらく財政よりはもっとよけいな効果を生ずるのではないか、そういうふうに見ております。  そういう体制をいまとっておるのですが、総需要の中で五割を占める国民の生活需要、この面につきましては、私はこれを法的に調整するという考え方はとらない。これは法定を置いていいかというと、そうじゃない。これは国民の自発的な協力を期待する、こういう基本的な考え方であります。その国民の自発的な協力の道筋というものは、まあいろいろありまするけれども、一番大きなきめ手は貯蓄であります。  そこで貯蓄につきましては、昨年もずっと四回にわたりまして金利の引き上げをして二%引き上げております。そういうことのほかに、また貯蓄資産の多様化ということで、六カ月定期、あるいは割増金付定期預金だとか、あるいはマル優制度の拡大でありますとか、いろいろのくふうをこらしておるわけなんですが、さて、そこでさらにこれを引き上げるということになりますと、その及ぼす影響というものを検討しなければならぬ。  まず第一に財源預金金利を引き上げるということになると、その財源を一体どうするのか、こういう問題です。その財源金融機関が持てということになったら、これは貸し出し金利の引き上げというところへ波及をするわけです。そういうことになると、これは証券対策も考えなければならない、また、債券対策も考えなければならない、あるいは国債の条件改定ということも考えなければならぬ、いろいろなことにつながっていくわけであります。  そこで、また一方には、それならば国家資金でその差額を補給したらどうですかということを言う学者なんかもおりますが、そうなりますと、また非常に大きな問題なんで、それだけ多額の金を預金者に配分をするということが、一体国政として許されるか。預金者どころの話じゃない。まだ預金もできない困った人がたくさんおる。そういう人のほうが先決じゃないか。それなのに、ただ単に預金をしているということのために、貴重なる租税財源を使うということが、はたして財政として妥当な行き方であるかどうかという問題もあり、あるいはそういうことになれば、財源として国債を発行する、その利息を一体どうするんだ、こういう問題もあり、またそれに加えて、国債の金利調整ということに伴うところの財源をどうするんだという問題も起こり、あるいは郵便貯金の金利差額をどうするんだという財政の問題も起こり、これは結局、預金金利引き上げ論というものは、そういうことだけを考えてみましても、日本経済における金利水準というものを全体的に押し上げるという以外に解決の方法はないと私は思うのです。  そうすると、わが国は資源小国であり、そして貿易立国というたてまえをとらなければならぬ、その中で世界に臨む経済体制として、そういう高金利で一体太刀打ちできるかという問題もある。また国内的には、そういう高金利体制のもとに物価というものが一体どうなるのか。物価の構成の要因としての金利、こういうものをどういうふうに解決するんだということで、これはなかなか容易ならざる問題なんであります。そういうことで、私は、預金者の立場も考慮しながらいろいろ施策は講じておりまするけれども、さあ、言われるような大幅な引き上げというものはなかなかむずかしい、そういう中において、貯蓄手段の多様化というようなことを通じましてどのくらいのことができるか、こういう問題だろうと思うのです。目に見えるような大幅なことはできないのです。非常に苦しい立場であります。
  59. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣の言われることは、それはそれなりに、大臣の立場ではいまのところそういうことをおっしゃるだろうと思うのですけれども、私が言っているのは、インフレ下において国民大衆の家計の側からの貯蓄というものは、もう借りるほうはなくて貯蓄する一方という形で、常に貯蓄超過型、そうして、その預金の利子率が常に物価上昇率よりも低い。しかも今日では、消費有物価を例にとっても二〇%、一年ものの定期預金の金利をとっても六・二五%、この間にこんな差がもうできるというようなこの異常な事態に、預金のいわゆる目減りという問題に対して、政府は何もせぬでいいのか。  なるほど、それは全体的な金利水準の引き上げというようなことを伴わざるを得ないということは、ある程度この際はがまんをしなければならぬだろうと私は考える。特に、この狂乱インフレの中で、預金の目減りがこんなにひどい状況になっている。しかも、政府は、そういう人たちに対して、貯蓄をあらゆる点で奨励に奨励をしてきたわけです。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕 そういうものが政府のインフレ政策でこういう状況になっている。その預金の目減りに対して、やはり政府はこれを補償する責任があるのではないか。これは労働界からも、少なくとも郵便貯金については政府の責任は免れないではないかという形で、訴訟まで提起をされるというような状況にある。こういうことを前提に置いて、そういうものに対する補償をどうするお考えかということをまず一つお聞きしたい。  私どもが言っている立場は、いまの預金金利を無制限に、全面的に引き上げろと言っているわけではないのです。これはわが党でもまだ一本の線が出て方針が固まっておるわけではないけれども、低所得階層、特に勤労大衆といいますか、全国勤労者世帯の一世帯当たりの平均預金保有量は、大体百七十万円程度と今日推定されておるわけでありますが、あるいはこれが幾らか上がっているか、あるいは若干減っているか、最近の異常な物価高で預金をおろすというようなことも、換物運動からあるかもしれませんが、いずれにしても、百七十万から二百万ぐらいのところだろう。こういうようなことを考えると、私どもは、まず個人預金であることという前提を置いているわけです。しかも、非常に限定して、たとえば税法上の標準世帯で夫婦子供二人、こういうものに例をとるならば、一人当たりたとえば五十万まで、夫婦子供全部名義を使えば二百万、あるいはもう少し額を上げて、三百万ぐらいのところまで一世帯でいくかというようなところにわれわれは押えたい。さらに、貯蓄の種別につきましても、三カ月ものあるいは広げても六カ月もの、こういう程度に限定をする。こういうような限定を設けてもなおかつ中小金融機関あるいは労働金庫というようなところなどにとっては、経営上非常に支障が生ずる、あるいはとてもそういうことではやっていけないというようなこともあるだろう。それはそういう力の弱い中小金融機関に、むしろ傾向として比較的そういうものが集中していると思うからであります。だから、そういう点は何らかの方法で、いままで与えていなかった政府資金を導入する方法とか、あるいはその他いろいろな助成の方法というようなことを考えていく。そういう形でどうだろうか。そういうことならばかなり限定されてくる。全体の金融資産というように幅を広げれば、今日百七十兆に近い。広義に解釈してそういう預貯金あるいは証券なんかまで入れればそういうことになるわけですけれども、そういうもの全部の預金金利を上げろ、こう言っているわけじゃない。そういう限定した立場で考えるならば、私は、インフレによって収奪されている立場にある少額の預金者に対してインフレ補償をするという意味というものを十分重視して、預金金利の引き上げというのは当然考えられてしかるべき政策であろうと思うのですが、そういう具体的にわれわれの考え方を示した段階における、大臣のお考えをひとつまたお聞きしたい。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 まずあとのほうの、少額零細なものについて特例的な措置はできないか、こういうお話ですが、そんなことができないものかどうかと、これはいろいろ頭を使っているのです。しかし、それとても先ほど申し上げました貸し出し金利への影響だとかあるいは社債だ、証券だ、あるいは国債だ、そういうようなものに対する影響というものをよほど慎重に考慮しませんと、結論の出しにくい問題だという段階でございます。  それから、第一のほうの御質問で、目減りを補償する考え方はないか、こういうのですが、そういう考え方は、結論を申し上げますと持っておりませんです。  これは私は、インフレというものはいろいろな害毒を流すわけです。一番大きな害毒は、何といっても社会の公正を害する、こういう点にあると思うのです。力の強い人はよけいに強くなってくる、力の弱い人は押しへされてしまう、そういう性向を持っておる。このインフレというものに対して何かびほう策は、あるいは根本的な対策はと、こう考えていますが、びほう的な対策はいろいろとれますが、しかし、たとえば、いま御指摘預金の目減りをどうするかというような問題になりますと、これは対策はありませんです。やはり私は、インフレ対策はこのインフレをなくすることである。そこで短期決戦だ、こう言っておるわけでありますが、そりインフレを退治するその方向に国の政策の全部を集中していく、それを阻害する政策はとらない、これに徹すること、これが当面最大の政治課題である、そういうふうに考えております。
  61. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私はどうも、補償をやらないということについては、やるべきじゃないかと思う。これは国民の常識ですよ。大衆は、もう家計はみな積むほう、預金をどんどんふやすほう、それ一方で、それを政府も奨励している。そしてインフレになれば、もうどんどん目減りをして減価していく、こういう状態にさらされる。一方、借り手のほうは、これは大企業であり大商社である。そしてそういうものは――国民がそういう目減りを覚悟しながらも将来に備えて、将来病気になったらどうだろうか、老後になったらどうだろうか、子供の教育はどうだろうか、家を何年かの計画で建てたいというような、必死の気持ちで貯蓄をしている。その人たちはどんどんインフレで目減りしていく。片方は、それをたっぷり借り受けて事業をやる、企業をやる。そういうような人たちは、これはもうその借金がどんどんまた目減りしていくという形で、インフレ利得をたっぷり受けておる。そしてそれによって、また、設備投資をして生産も上がる。そして、いままでよりも倍も生産物ができる。しかも、新しいオートメーション化された工場、機械で、これはもう生産コストは下がってくる。そういうような形で、二重にも三重にもインフレ利得を収受する。これはまさに月とスッポンほどの違いになる。しかもその果てに、一部の大商社やあるいはその他国会に参考人として喚問され、また証人要求をされているようなああいう悪徳商法が今日国民の前に明らかになっているけれども、そういうことまでやる金は、結局みんなインフレによって目減りをする大衆預金者のふところから収奪をした金でそういう悪いことができるんだという、こういう今日の金融構造というか経済構造というか、そういうものが成り立っている。こういう段階では、私はやはりインフレによる貯蓄の目減りに対して、何らかもう少し政策当局としてこれに対してあたたかい補償の措置を考える、高金利という問題もそういう点から、これはたとえば西ドイツから見ましても、アメリカから見ましても、イギリスから見ましても、フランスから見ましても、今日の日本の金利はまだまだ安い状況に置かれている。これはやはり大企業優先という思想が常に政府の頭にあるからだ。そういう企業優先、生産第一主義というようなところから福祉への転換だということを大蔵大臣も常々言われているが、そういうような立場が一つもお答えの中からは具体的な政策として出てこないわけですね。これではやっぱりほんとうの大臣の腹は、口ではうまいことをおっしゃるけれども、ほんとうはインフレの中での経済的弱者というものに対してあたたかい思いやりある政策なんというものはやろうとしていないんだな。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 福祉型へどこでどう転換をしたんだ、こういうようなことを疑われてもしようがないじゃないでしょうか、そういう面からどうお考えですか。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 インフレは、先ほどから申し上げておるとおり、たいへんな害毒を流すわけですね。いまお話しの問題もその一つなんです。しかし、全部じゃないのです。つまり金銭債権者、これはみんな被害を受けるわけです。金銭債務者は逆に得をする、こういうことになる。それで、預貯金だけがまた金銭債権ではないのです。われわれ同士の間でも金の貸し借りがあります。貸しているほうは損をする、借りているほうは得をする、こういうことになる。それから、金銭債務関係だけじゃないのですね。インフレになれば、とにかくわれわれ国民全体が生活上多大な影響を受けるわけです。そういうものに対して一つ残らず対策をとらなければならぬ、こういうことになると、そういうもう網の目のこまかい、漏れのない対策というものは、これは絶対にとり得ない、私はこういうふうに思うのです。  そこで、拾い上げて、まあ生活に非常に困窮している人に対して対策をとる。御承知のとおり、昭和四十九年度予算ではあれほど公共事業なんか押えちゃった。もう前の年よりもめり込ましておる。こういう状態であるが、社会保障費は実に三七%もふやす、こういうことをやっておる。それはインフレ弱者というものに対する対策ですよ。預貯金しておる人だけがインフレの被害者だというのなら、それは対策も立ちましょうが、これはそうじゃないのです。もうインフレというものは国民全体に、生活をはじめとしていろんな悪い影響を及ぼしておる。それに対する対策を全部総合してやってのけるということは、これはとうていできないことです。  そこで、そういう目立った弱い立場の人、そういう者に対して対策をとらなければならぬ、こういうふうに思いますが、やはり私は前から申し上げているのですが、インフレ弱者に対するきめ手というものは、そういうきめこまかい、ほんとうの弱者に対する手当てをするということもしなければなりませんが、根本的にはインフレを一刻も早く根を断つ、こういう一点に尽きると思うのですよ。そういう政策を進めているのだと御理解願いたい。
  63. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣、そういうことはわれわれもわかっておるのですけれども、さらに問題を具体化してみますと、大体、大臣のお考えは根本的にわれわれと食い違うわけなんです。というのは、まずそういう預金の目減りに対して補償をするというような考えそのものがないとおっしゃるのだけれども、これはしかし考えてみれば、国民の中でもインフレヘッジということができる力を持っておる者、それはやはり物持ちである、資産家である、土地を持っておる者だ、事業を持っておる者だ。企業家ですね。あるいは株を持っておる者、大きな資産を持っておる者、そういう者は大量の資金力にものをいわして、資産にものをいわして、物にものをいわして、幾らでもインフレヘッジができるのです。  できないのはやはり賃金労働者。そして、その賃金労働者、勤労者は、大体苦しい家計の中から政府の方針に従って一生懸命貯蓄をやってきた、そういう人たちがインフレの被害を受ける。その人たちはインフレについて、何らの責任もない人たちなんですね。これはまあ幾らかトイレットペーパーがなくなったといって、奥さんが目を血走らして走り回って、少し、一カ月分くらい買いだめたというくらいがインフレから逃げる道だという、そういうあわれなあわれな――というと語弊がありまするけれども、そのくらいのことしかできない存在なんです。インフレヘッジなんということが全くできない。まさにインフレの波を、被害をもろにかぶる以外に抵抗力がない人たち、そういう階層であるということ、しかも、その人たちは汗水流して働いている人たちであるということ、これが一つですね。  それからもう一つ、もっとひどい人たちは、まさにインフレ福祉手当ということで何らか手当てしなければいくまいといわれている母子世帯であるとか、身体障害者であるとか、あるいは老齢福祉年金を受けているような老人であるとか、寝たきり老人であるとか、さらに生活保護世帯、こういう階層があるわけです。いろいろな社会福祉施設に収容されて国の措置を仰いでいるような人たち、こういうような人たちは、これこそほんとうにインフレ、物価高の中で一番どうにもならない、みじめな状況に突き落とされている人たちですね。その人たちのことについてはあとから伺うつもりでおったのですけれども、これはこれでひとつ政府にもう一段の要求をしたいと思っているのですが、政府は、インフレによるそういう形の階層の人たちのところだけをとってやる方法はないか、こういう具体的な考えを示しているのですから、全体的にもう基本的な、根本的な立場で、そういう目減り補償というようなことはやりたくありません、やる意思は全くありませんというようなことではなしに、もう一ぺんひとつ考え直していただきたいと思うわけであります。  大体預金を見ますと、法人預金と個人預金、こう分かれますが、これは大体六、四ぐらいのところだろうと思います、大づかみにいって。それから定期預金の保有額を中心にした分布の状況を見てみますと、五十万以下の定期預金、これが人数といいますか件数、口数で見ますと七五・九%、こういう状況なんですよ。その五十万円以下の定期預金の額というものは、合わせまして六兆四千億ぐらい、六兆四千五百二十五億。それで、これを全体的にあと百万未満とか一千万未満、一億以上というようにしてとっていきまして、この十万未満あるいは五十万未満というものの累積の金額の構成比を見ますと、一六・五%にしか当たらないんですよ。しかも、先ほどもちょっと言いましたが、かりに五十万ということで限度を押えて四人世帯だったら一世帯で二百万までそういう恩恵に浴するというか、現在の六・二五%の倍ぐらいの金利をつけてやろうということにすると、そういう人たち預金というものは、金額的にはわずか一六・五%なんですから、そういう人たちにその程度の親心を示すということがどれだけ金額的に大きい問題になるだろうか、そういうことを考えたら、これはその政策が全般に波及してどうにもこうにもならぬということにはならないと思うのです。これはもちろん大蔵省の立場では、公債なんかの金利に当然響いてくるだろうというような財政負担能力、あるいは郵便貯金も当然そういうことになっていくだろうというようなことであるかもしれぬけれども、そういうような条件にして、一切高額所得者が乱用するというようなことを許さぬ、一億も二億も分割してやるというようなことをやらせないために、何らかきちんとした証明制度みたいなものを、これは私案であるけれども、たとえば健康保険証の名前のところに一口やったら判を押しておくということにして、もうそれ以外には認めないんだということにすれば、これは高額所得者が預金の分散のためにやるなんということもあり得ないということで実現可能性もあるし、そういうことを要求している大衆の期待にこたえるということでまた貯蓄増強の方向に向けていく、過剰な購買力を預金に吸収していく。そうすれば、有効需要抑制とか、投機、買い占め、売り惜しみというようなものに走らないような効果も発揮されていく。さらに、金利全体が、中小のところなんかで貸し出し金利が当然上がらざるを得ないだろう、そういうようなところがある程度上がることによって、むしろ買い占めとか売り惜しみというようなものが逆コストになってしまって、そんなことをして蔵に積んでおいて売り惜しみをするというようなことができなくなる、在庫吐き出しをやらざるを得なくなる、こういういい面にもつながっていく。そしてまた高金利になることによって、これからの新しい時代に即応した、新しい福祉社会にふさわしい、最も効率のいい投資にその資金が回っていくというような、資金配分のルートを変えるというようなことにもいい結果としてつながっていく、こういうようなメリットだって当然考えていいのだろうと思うのですよ。必ずしもいつも低金利に押えておく必要はないのじゃないか。これは日本は輸出国だから、したがって海外競争力をそういう面からだけつけるというのじゃなしに、その問題は別な方途でまた幾らでもやる方法があるのですから、こういうものはこういうものとして処置をしていく。  私は、この際、短期決戦ということを言われる大蔵大臣なんだから、割増金付預金なんというようなまさに人をばかにした、射幸心のある者だけ飛びつけばいいというようなことでなく、これもどれだけ効果があるかわからぬけれども、ほんとうにこういうような形の本格的な取り組みをやれば、これはやはり政策的に貯蓄を増強するということにもつながるし、目減り補償にもつながるし、しかも長期的に見ても、効率のいい新しい時代にふさわしい投資にその資金が配分されていくということにもつながっていくだろう、こういうふうに思うのです。もう一ぺんひとつお答えいただきたい。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 広瀬さんのおっしゃる話が、零細な貯蓄については何か特別の金利は考えられないか、こういう御所見とすれば、これは私はあなたのおっしゃることにまともにお答えはできます。ただ、補償せい補償せい、こういうことを前段で言われるものですから、補償というのは、これは考えられませんよ。つまり補償ということは、財政手段によってこうむった損失を補てんせよ、こういうことなんですね。これはひとり預金者だけがインフレの被害者じゃありません。他にも金銭債権者というのは幾らでもあります。また国民全体がインフレによって被害を受けているのです。そういうようなことを考えますと、補償ということは考えられない。これはもうはっきり申し上げます。  ただ、零細の貯蓄者に対して何かくふうはないかという点になりますと、私も何かそういう点は考えられないかと思って、あれやこれや考えておるわけなんです。しかし、与える影響は非常に大きゅうございますから、さあ広瀬さん伺いました、よろしゅうございます、やりましょう、こういうふうな御返事は申し上げませんけれども、あれやこれや考えておる最中だ、かように御理解願いたいと思います。
  65. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣、ぜひひとつ、われわれの言うのもそういう意味でありますから、全面的に補償という……(福田国務大臣「補償と言うものだから……」と呼ぶ)補償ということばが悪ければ、目減りに対する何らかの優遇措置を講じて、それを少なくしてあげましょうという政策配慮で、先ほど私が、具体的にある程度提言の形で申しましたけれども、そういう趣旨で、やり得ることをひとつ検討してもらいたい、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 なかなかむずかしい問題なんですが、一生懸命考えております。
  67. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 関連して。ただいま広瀬委員のほうから零細な貯蓄者に対する金利をこのまま据え置いてはこのインフレの中で完全に食いつぶされてしまう。しかも、この貯蓄の目的というのが、老後のことを考えたり、病気になったことを考えたり、子供の進学のことを考えたり、あるいは家が古くなったときの修理を考えたり、まさに人間として最低の生活を維持する条件を、何とかして社会保障の薄いわが国ではみずからの努力によって維持をしたいという気持ちが零細貯蓄を行なわしめているわけです。しかも、それが百七十兆という総預金の中の約四〇%、五十兆、その中の一六%ちょっとでわずかな金額でございます。これがイタリアの二倍以上といわれる高い消費者物価高騰の中で、目に見えて目減りが行なわれていく。国民の気持ちとしては、私は耐えがたいものがあると思うのです。  二月十五日の本委員会におきまして、この問題について福田大蔵大臣の見解も伺いまして、翌日の新聞には、そうした金利制度についても検討したいという意味のような、何となく気持ちが沿っていただけるような報道もされておりましたし、私も心から何とかなりそうだなという気持ちを抱いておりましたが、きょうの論議の過程の中では、何となくまた背中を汗が流れるようないやな感じがいたしております。  そこで、このことについて重ねて関連の質問をするわけですが、大臣のおっしゃる気持ちの中には、一つは総需要抑制政策をとっておることだし、何しろインフレの影響を受ける人は全国民だし、このインフレを短期決戦で収束させていくというのが最も第一のねらい。そのことのために、補償するという立場のことから考えたら、預金者だけに問題をしぼって考えるというわけにはいくまい、問題はインフレ収束が第一だ、こうおっしゃっておりますが、そのことは私もよくわかります。  しかし、最近の学者の中では、預金金利を、たとえばカナダであるとか、あるいは韓国であるとか、あるいはインドネシアであるとか、あるいは欧州諸国では特にイギリスは高金利をとっておりますが、前者三つの国々では、物価にスライドする金利政策をとっておる。そういう立場をとっていけば、いま広瀬さんもちょっと触れておりましたが、在庫投資の意味がなくなる。だから、需給のバランスが新しい角度から生まれ始めてくる。だから、預金金利も引き上げて、貸し出し金利、貸し付け金利というものも引き上げたらどうだ、こういう議論がなされておる向きも私たちは見させていただいておりますが、やはり金利を引き上げていくことによって在庫投資が無価値なものになっていく。在庫投資をすることによって物価を上昇させ、売り惜しみをすることによって現在の低金利をはるかに上回る利益をおさめることができる、この一つ考え方にくさびを打ち込むためには、貸し出しの金利も引き上げてみたらどうなのか。これが大臣の言われている財源の問題でしょうけれども、そこらあたりについては、いまコールが大体一割二分程度でしょう。一二%程度ですから、その程度並みには引き上げてみたらどうなのか、こういう意見一般論としてはあるわけです。  しかし、いまこの委員会で議論されておりますのは、零細貯蓄者、特にそのことのためにある意味では生活をしぼってでも老後のことを考え、諸般のことを考えて貯蓄しておる人たちの目減り分は何とか考えてやりたい、こういう気持ちを中心に述べてきておられるわけです。ですから、一般的なインフレを短期に収束させる手順の問題と、そのインフレの中で、非常に生活権を奪われようとする人たち、ささやかなその零細貯蓄まで水泡に帰してしまうような人たちに対して、どう救済をしていったらいいのか、この点、その部分に限って金利を引き上げることを考えてみたらどうか、こういうことが中心に述べられておるわけでございまして、私たちも二月十五日の本委員会でその立場は申し上げ、大臣からそういう答弁をもらっておって、やれ一安心という気持ちは抱いていたのですけれども、その点にしぼって、いま検討中というお話を伺いましたけれども、具体的にひとつ一歩踏み込んでいただけるように措置を願いたい。いつもの委員会で聞くように、ただ検討するということだけでなくて、もっと具体的に一歩踏み込んでいただいて、インフレ弱者の救済に乗り出す、そして総体的にはインフレ収束に大きな網を打っていく、しかもそれは短期決戦である、こういう両面備えて今日の措置をしていただくというふうに、一歩踏み出した御検討をいただきたいということを特に要望しておくわけですけれども大臣のお考えを重ねて私からも伺っておきたいと思います。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 一般的な目減り補償論というふうなことは、私は先ほど申し上げたとおり、これは考えられない。これに対応する考え方というのは短期決戦以外にはない、こういうふうに考えますが、零細な貯蓄者に対して、一般の金利水準に影響を及ぼさないという範囲内において何か考えられないかということを、ずっと思いめぐらしているのですよ。しかし、これとてもいろいろの方面に影響がありますので、ここで、お話を承って、さあそういたしますというふうな責任のある答弁はいたしかねます。かねますが、御意見はよく拝聴いたしまして、なお精力的にそういう問題を検討してみる、かように御了承願います。
  69. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣の立場も、このインフレ収束に短期決戦で臨むんだという不退転の決意だろうと思いますから、その中での一環として、やはり短期決戦の中にこの作戦も取り入れる、こういうことでこの問題を実施できるように真剣な検討をさらに強めていただきたい、こういうように要望をいたしておきます。  最後に一つだけ伺いたいのですけれども、インフレ弱者、先ほどから言っております生活保護世帯、母子世帯、あるいは施設に収容されておる人たち、児童手当を受けている人たち、あるいは身体障害者、難病にかかっておる者、いろいろあるわけですけれども、こういう人たちに対して、いまのところ政府が一応やろうというのは、平均二千円ぐらい、最高二千五百円ぐらい、あるいは千五百円ぐらいのものもあるようでありますが、種別によってそれぞれ違いますが、そういうものを考えておる。というのは、やはり四十八年度予算の予備費の支払い能力といいますか、まずそういうものを限界に置いて考えられておるというところからこういうものが出るのだろうと思うのですが、これはもうずっとこれから追加して出そう、毎月出していこうというのじゃなくて、一回限りのものなんですね。インフレに対して抵抗力が全くない、全くこれ以上弱者はないといわれるほんとうにどん底のきびしい生活をしている人たちに対するインフレ福祉手当というような形での一回限りの措置なんですね。しかも、それが二千円程度のもので、総額百二十七億程度、百三十億にも満たないというのでは、あまりにもこれは情けないことではないか。去年が福祉元年で、ことしは福祉二年目に当たるわけですけれども、それにしてもいかにも情けないわけであります。  そこで、少なくともこれをせめて二倍から三倍程度まで引き上げるというようなことを考えていったらどうか、そのほかインフレ弱者である人たちに対する年度内減税というようなことも、これは強く要求はしますけれども、いよいよこれが財源上だめならば、それはもう遠慮してもいいと労働者階級の人たちも言っているわけです。そういうことで、せめてこれをもっとふやしてもらいたい。それは予備費のワクで考えるのではなくて、第二次補正で私は財源というものを組めるのではないかと思います。  補正後における税の自然増収も少なくとも二千億をこえることはほぼ確実だろう、こういう見通しも立てられると思うのであります。また、企業の不当超過利得というようなものも吐き出させろといわれておるし、予算委員会でもかなりきびしい追及が行なわれた。政府はそういう企業の不当と思われるような、あるいは不正と思われるような大もうけのインフレ利得の上に乗っかって、黙って税金だけは自然増収という形でよけいいただける、こういう立場にあるわけですから、そういうものはインフレ弱者に還元しよう、こういうことをやはり身をもって政府みずからの立場で言うならば――税の自然増収、しかも補正後においてすらなお二千億も出るだろう、二千五百億ぐらい出るだろうということが今日いわれておる。そういうものを財源にして洗いざらい、さらに今度は予備費も、予算の不用額等も洗いざらい、ことしはインフレ短期決戦、そしてインフレによってひどい目にあった人たちに対する救済というような形で吐き出そうではないか、こういうことこそがほんとうに福田蔵相のあの財政演説で言われた趣旨を具現する道でなかろうかと思うのです。  ここは基本的な政治姿勢にも触れる問題でありますが、ときには政府もそのくらいの姿勢を国民の前に示してこそ、初めてインフレ防止に今後さらに協力してくださいと言うことがほんとうに生きてくる、国民にもしっかり腹に落ちてもらえる、こういうものだろうと思うのですが、大臣いかがでございますか。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回とりましたインフレ弱者対策といいますか、あれは一人当たり二千円、二千五百円、こういうことになりますが、これはもとがあるのです。たとえば、生活保護費につきましては五万円になっているわけですね。その五万円の家庭、夫婦子二人という家庭をとりますと、今度は五万八千円になる、こういうようなわけで、四十九年度予算を一刻も早く成立さしてもらいたいのですが、そうなりますれば、この予算ではとにかく二〇%も保護者に対する費用を増額いたしておるわけなんです。そこに至る今月のつなぎだ、こういうことであの措置をとったわけでありまして、厚生省でも、これはずいぶん慎重に検討してくださったのでありますが、いろいろな角度から見まして、バランスのとれた妥当なところではあるまいか、そういうふうに申しておるわけでありまして、いまこれを変更するという考え方は、政府として持っておらないのであります。(広瀬(秀)委員「第二次補正を組む考えはないか」と呼ぶ)ただし、広瀬委員の御熱心な御意見は傾聴いたします。
  71. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それでは時間も来ましたので、これで終わりますが、大臣、第二次補正を組むというようなことはなかなか政府としてはやりにくいことだろうと思いますが、こういう異常な、あなた自身が今日の物価はもはや物価というものじゃない、投機だ、ばくちだ、相場だ、こういうようなことを言われる。このような狂乱状態、あなたの表現は実にすばらしい、言い得て妙といわれるあれなんですけれども、そういう事態だからこそ、普通はやらないことを破格的にやるという姿勢を強く大臣に求めて、私の質問を終わりたいと思います。
  72. 安倍晋太郎

    安倍委員長 増本一彦君。
  73. 増本一彦

    ○増本委員 先月の二十三日にわが党の三谷議員が予算委員会で大臣から答弁をいただいて、地方財政、特に学校建設についての銀行からの借り入れの問題で、一定の積極的な施策が明らかになってきているわけです。きのうも私は予算委員会の分科会で、岩瀬審議官から一定のお話も伺ったのですが、さらに若干大臣にこまかく手だてをとっていただきたい問題がありますので、その問題に限ってお尋ねをしたいと思うのです。  御承知のように、十二月二十五日の銀行局長通達では、きちんと読めば「医療、教育住宅国民生活の基盤として不可欠なものに必要な資金」は優先的に配意するものとなっており、地方公共団体地方公社等に対する融資についても、こういう措置に準じて「その適正化に努めるものとする。」というようになってはいるんですね。しかし、どうも実態をいろいろ調べてみますと、必ずしもそのとおりになっていない。政府側の御答弁を伺っても、結局、金融機関地方自治体との間で十分話し合って、そしてきめてほしいという方向で指導をされているような感じもするわけです。  しかし、御承知のように、こういう金融引き締め状況のもとで、しかも、資金需要は非常に多いわけです。そうなりますと、一種の貸し手市場になっていて、地方自治体もいますぐ必要な融資も、特に学校建設などを中心にして、受けられないという実態がまだ依然としてあるということはいなめないというように思うのです。  そこで、いままでの答弁の趣旨を踏まえて、地方自治体の特に人口急増地域を中心にした学校建設住宅、あるいは医療施設というようなものの融資については、金融機関がほんとうにきめこまかく優先的に貸し出しをするような、もっと基準をこまかくした指導通達をお出しになるべきではないかというように考えるのです。いわば十二月二十五日付の通達は総論であって、そういう指導基準が明確になった各論通達というものをさらに出して、きっちりと金融機関に対する指導を一元化し、明確にするということが私は必要ではないかというように思うのですが、これまでの実態を踏まえて、まず大臣の御所見を伺いたいと思います。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 この前もたしか増本さんじゃなかったかと思いますが、お答え申し上げているのですが、あの通達で疑義があるという金融機関がありますれば、どこに疑義があるのか聞いてきてくれ、こういうふうに思っておるのです。これは文章でこまかくしたってなかなかむずかしいです。いろいろなケースがあるわけですから、そのケースケースに応じて、抽象的でありまするが、この趣旨に従ってやってもらいたい、こういうほかないのだろうと思うのです。  これはいろいろなケースがありますから、いろいろなケースケースに応じまして疑義が起こる、そういうこともあろうかと思います。そういう際には、大蔵省としては、自治省相談いたしまして、しなければならぬということにつきましては金融機関に対してあっせんを行なう、こういうふうにしますが、いろいろなケースを想定しまして、こういうケースはどうする、こういうケースはどうする、これは非常にむずかしいことじゃあるまいか、さように思います。
  75. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 基準をつくってもらえば、地方公社としてもできるだけ協力しやすいという御趣旨だろうと思います。ただ、私ども具体的に見ておりますと、御指摘のように、人口急増地帯地方公社資金需要というのは、間々その地にある銀行の総貸し出し額をオーバーしておるというような地域もございます。また、場合によってはそれほどでもない地域というのが、たとえば東北地方というような場合にあるわけでございまして、そういう具体的なケースによって初めて、金繰りの中でどれだけが認められるか認められないかということがきまってくるわけでございます。  一がいに基準となりますと、ある地方では、たとえば道路までもごめんどうを見れるかもしれない、一方の地域では、学校だって全部はごめんどうを見れない、こういうむずかしい問題も起こってくるわけでございます。  そこで、私どもは、先ほど御指摘通達あとで、さらに一月末に事務的な連絡をして財務局で指導さしておりますのは、まあ学校というような義務教育施設用地優先順位を高くし、道路、スポーツといったものはできるだけ劣後に考えてもらいたいという、きわめて抽象的な基準一つつくっております。それからもう一つは、そういう対象による基準とは別に、債権債務関係が差し迫っておるかどうかという意味での基準もつくっております。たとえば、対象となる土地が必要となる時期から見て、現在の時点で融資することがどうしても差し迫っておるかどうかということ、あるいは、すでに契約したもので支払い期日が確定しており、その変更をどうしてもできないかどうか、さらには、融資をあらかじめもう承諾しておるかどうかといったような、そういう形式的な基準ということはつくれますが、全体を通ずるような、学校は全部お認めするというようなことはなかなかむずかしい。学校の中でも、差し迫って三月分に御用立てすべきものはどれだけであるかというのが、銀行としてぎりぎり判断できることであって、学校計画全体、たとえば四十九年度の年間を通ずるような性格の計画のものはやはりお断わりせざるを得ない。そういった具体的な問題となりますと、なかなか基準というものはつくりにくいというような問題がございます。  したがいまして、趣旨は非常によくわかるわけですが、やはりケースバイケースで判断し、ある程度われわれがその中に立って指導していくというのが一番実際的ではなかろうか、かように考えております。
  76. 増本一彦

    ○増本委員 問題は、自治体と金融機関との話し合いに対してどういう立場で指導をしていくかという問題だと思うのです。一月末に事務連絡をお出しになったそうですが、これはもしよろしければあとでその詳細を資料としていただきたいと思います。  しかし、いまやっぱり自治体と金融機関とのお話し合いで、貸し借りをきめていくということになりますと、いかがですか、結局、金融機関がこれはと思うものには貸すけれども、だめだというものには貸さないということで、言ってみれば、事業の施行自身が金融機関の態度いかんにかかってくるというような実態ではないかと思うのですが、そういうようなところの実態まで踏まえて、御調査あるいは御指導をなすっていらっしゃるのでしょうか。
  77. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 観念的にはそういうことも考えられると思いますが、実際問題としては、その話が起こってくるのは、大体、県の指定金融機関である地方銀行である場合が非常に多いわけであります。県当局と地方銀行といった場合には、もう常日ごろから非常に密接な関係があって、そう銀行のほうが一方的に判断をしてお断わりして済む性質のものではなかろう。だからこそ今日、金融機関のほうもまた、自分の貸し出しの規制の中でいかにしてこれをめんどうを見れるかということで非常に苦慮しておるのだろうと思います。  たとえば、一月から三月の間の全体の資金需要というのは非常に大きいわけですが、大体二千億ぐらいの資金需要があるように思います。その中で大体千七百億ぐらいのものについては、話が済みつつあるというような状況が全国的な状況でございます。ただ、地方によっては非常に銀行としてめんどうを見切れないような資金需要計画としてあるという例としては、もう先ほども申しましたある地域では、総貸し出しワク以上の地方公社資金需要、こういうことでございまして、その中で、もちろん民間金融機関ですから、まず一義的にはその銀行が判断をするということが基本でなければならないと思います。私ども融資命令をするという立場にないことはもとよりでございますが、しかし、私どもは、できるだけ義務教育学校施設ということについてはほかの資金を削ってでも回すように、しかし、その回し方については、やはりその計画についてできるだけ詰めていただきたいという交渉をすることは、これはもう当然だろうと思います。この辺のところは、むしろ具体的なケースとしていろいろ判断をしていく以外にはしかたがないと考えております。
  78. 増本一彦

    ○増本委員 いまの局長のお話の中で、貸し出しするかどうか、一義的には金融機関がきめる。そこで、話し合いが自治体と金融機関との間でつかないという場合、個々の自治体はどこへ苦情を持っていったらよろしいでしょうか。大蔵省銀行局まで来なければならないのか、出先の財務局でそういうあっせんまでしてくれるのか、その辺はいかがなんですか。
  79. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 それは、銀行が貸さなければならないという前提がまずあるかどうかというケースによると思います。その内容がどうしても地方財政として必要であるものかどうかということであるのなら、やはり自治省とまず御相談を願わなくてはならぬ。その上の判断で、自治省がまた私どもにも御相談をいただくという性質のものではなかろうかと考えております。
  80. 増本一彦

    ○増本委員 先ほど一番最初大臣から、こういう金繰りで困った場合にはあっせんをするというような趣旨のお話がありましたね。ですから、それが具体的にシステムとして大蔵省の中で、自治体がお金を貸してくれと銀行へ行って、話し合いも十分したけれども、なかなか思うように貸してくれない。自治体のほうはすぐやりたい。しかし、金融機関のほうはもうちょっと待ってくれ、もう少し先でもいいじゃないかと、実際にはそういうことで、融資が半分しか借りられない。だから、あとの半分は、農協とかほかのところから高い金利で借りるというようなことになっているわけですね。  ですから、そのときに、自治体とすれば、どこへ持っていけば融資のあっせんをしてもらえ、納得のいく解決が得られるのか、ここのところがたいへんいま大事な問題だというように思うのです。ですから、まず最初に、自治省に行って相談してくれ、自治省のほうから大蔵省銀行局のほうへ来れば、そこでまた詰めて、その上での話だというのであれば、これはたいへん困る話なので、あっせんをするというように大臣もおっしゃったわけですから、このあっせんに具体的に持ち込めば何とか納得のいく解決が得られるという仕組みを、むしろそれだったらお考えいただきたいというように思うのですが、いかがですか。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま総需要抑制政策は非常に大事な段階に来ておりますので、国でもそうでありますが、地方自治体でもそうだ。そう金融が順便に受けられるという状態でないことは御理解できると思うのです。しかし、それにもかかわらず、大蔵省金融機関に対しまして、とにかく学校の問題、福祉の問題、これは特別に配慮してくれという要請をいたしておるわけなんです。ですから、それに従って大体さばかれておるというふうに思いますが、なかなかむずかしいケースもあるらしいです。  そのむずかしいケースというのは、そうたくさんはないのじゃあるまいか、私はそういうふうに思いますので、そういうむずかしいケースにつきましては、これはやっぱり自治体の問題でありますから、自治体は自治省相談をされる、自治省の要請を受けて大蔵省が、あるいは本省か、あるいは出先かがあっせんに乗り出す、こういう筋のものです。この筋は金融問題ばかりじゃないんです。あらゆる問題について定着しているわけでございますから、さよう御了承願います。
  82. 増本一彦

    ○増本委員 でも、銀行局長通達で、いわばこれが縛りみたいになっているわけですよね。中身をよく読んで、そのとおり忠実に金融機関がやるのだったら、あるいはこれほどの問題は起きなかったかもしれない。しかし、実質的にはそれが縛りになって、それが口実になって、借りられなくなっているという実態があるわけですよね。  恐縮ですけれども、具体的な例で、神奈川県の相模原市というのはものすごい人口急増地帯でして、一年間に三万人ぐらいずつ人口がふえるところなんですね。ここなんかで小学校五つ、中学校三つをどうしてもつくらなくちゃならぬというので、四十億の申し込みを横浜銀行にしたけれども、三十億貸しましょうといって、しかし、現金は二十億しか来ない。あとの十億は、すでに前から借りていた金の返済に充当されちゃうんですね。この困っている時期に、かつてまだ安い七・二五%ぐらいの金利のときに借りていた金の弁済に充てられちゃって、そして九・二%の金を三十億借りたというようなことになっちゃっているわけですよ。こういうようなことがあって、それであと、しかたがないから残りの二十億は、一二%の農協の金を使わざるを得ない。  もう一つ、その隣に座間という市がありますけれども、ここも小学校一つ、中学校一つで十億円のお金を借りようとして申し込んだけれども、結局、五億五千万しか借りられない。しかも、そのうち一億三千万については、三月三十一日までに返済をしろという条件がついている。こういうような、もうすでに借りちゃったが困っているという事態がある。だから、これからの先行きの不安が解消されていない。  これをどうするかということになると、やはり大蔵省がこういう通達を出して、それのもとに窓口規制をやっているわけですから、大蔵省銀行局なり財務局で、出先の財務局が事務通達に基づいて指導をなすっていらっしゃるという事態であれば、そこのところで納得のできる、これはこういう事情だからこの程度でがまんしてくれという場合もあるでしょう、しかし、少なくともそこへ持っていけば、借りられる、借りられないは別にして、納得のいく解決ができるようなあっせんはしてもらえるというような窓口を、ぜひひとつそれぞれの出先に開いていただくということも必要なのではないか。これは個人の融資についてのしりを持っていくわけではありません。それぞれの公的な自治体のやることですから、そうひんぱんに多数が押しかけて、事務に忙殺されるという性質の問題でもないと思うのです。そこのところをひとつ窓口を開いていただくように取り計らっていただくことが大事ではないかと考えますが、いかがでしょう。
  83. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 お話の趣旨を私は誤解しておるのかもしれませんが、いまのような御趣旨でございますと、大体現実にやっておるのはそういうことではなかろうかと考えております。自治省からもお話がございますように、同時に、銀行のほうから私どものほうに具体的な、ただいまのお話でございますと、相模原あるいは座間その他のことで相談に参っております。そのときに、できるだけこういう考え方に従ってやるようにということで私ども指導しておりますが、その市当局との交渉自体としては、やはり銀行と市当局が交渉するという形にはならざるを得ない。銀行は私どものほうに、こういうかくかくのことで困っておるという話の相談はございます。また、自治省のほうからも具体的な相談もあるという形でやっておるわけでございます。実際問題としては、そういうふうに進めておるように思います。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 くどいようですが、いま非常に大事な時期でありますので、各方面に御迷惑を及ぼしておるのです。しかし、その中でも学校生活関連、そういうものにつきましては特別な配慮をせい、こういうたてまえをとっておりますが、やはり問題があれば、自治体のことでありまするから、自治省に、あるいはその出先に御相談を願うべきものなんです。  それで、自治省では、学校ばかりじゃありません、いろいろな当該自治団体の財政状態を見ておりますから、ああ、あなたのところはこんなでっかい公民館をいま建てているから学校のほうが窮屈なんですというようなことも言うケースもあるいはあるかもしれない。そういうようなことで、自治体は自治省に御相談くださる。かたがた金融機関は通牒があることでありまするから、大蔵省にも連絡がある、こういう筋になりますが、どこまでも主体は自治省並びにその系統機関と相談した上、その後のことにしてもらいたい、こういうふうに考えます。
  85. 増本一彦

    ○増本委員 まあ多少妥協しますけれども、自治体は自治省にも行く、しかし、大蔵省にもそういうことで相談に行ったら、ひとつその相談には乗って、それで大臣が言われたあっせんですね、そういう方向でひとつ積極的に動いていただきたい、その辺のところは局長、どうですか。
  86. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 もちろん、従来からもできるだけそういう形でやっておりました。もともと窓口ということは、なかなか限られた人数でございますのでやれませんが、そこは実際的にひとつ時宜に応じてやりたいと考えております。
  87. 増本一彦

    ○増本委員 あとの荒木委員の質問もありますので、これで最後にしたいと思います。  そこで、もう一つは、ここで銀行からは高いことは高いけれども九・二%、もっと高い農協の金も借りている。これの借りかえ返済をやはりやって、自治体の金利負担を減らしていくというような方向もどうしても考えていただかないと、自治体はたいへん困るということだと思うんですね。その辺のところもひとつ御検討をいただきたいのですが、いかがなものでしょうか。
  88. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 もともと金融引き締めの政策といわれておる問題自身にかかわることでございまして、金融機関自身の総貸し出しワクの中で、できるだけ優先的に選別的に融資を行なっていくということでございますから、その中で選ばれたものと選ばれないものの関係というものが、自余の金融機関に回っていくという形にならざるを得ない性質のものではなかろうか、かように思います。  したがいまして、地方自治体の資金需要についてはこれをすべて認めるというような形でやるということになれば別でございますが、現在の選別融資そのものが、やはり地方自治体といえども選別融資の中で行なわれるように指導しておるわけでございますので、おのずからそういう形での金利差、借り入れ主体の相違ということでそういう形になっていくということは、今日の事態としてはやむを得ないのではなかろうか。むしろ農協については、農協の資金自身が金融引き締め政策のしり抜けになっておるのではなかろうかという問題があり、別途そちらについては、またそういう規制をやっていかざるを得ない事態でございますので、むしろ金利について特に優先的な姿を自治体に示すということは、きわめて困難であると考えております。
  89. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、来年度の交付金も一部千六百八十億近い金は自治体に回さないでありますね。こういう資金を使って利子補給というのはできないのでしょうかね。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 利子補給は、目的目的によりましてありますけれども、農協から金を借りた、その利子が一般金融より幾らか高い、その利子を補給します、こういうことはどうもなかなかむずかしいように思いますがね。つまり、自治体におきましては、国といろいろ関係のある事業、これにはたとえば国が補助金を出します、そういう事業が一つあるわけです。それから、そういう国との関連なしに、自治体自身で単独でやる事業、こういうものがあるのです。最近の自治体の傾向といたしましては、この単独事業が非常に膨大化してきておるわけです。それで、その結果、金融機関に金を借りに行く。その金は、学校建設なら学校建設ということだけから起こっているのじゃないのです。その原因をたどりますと、自治体の財政運営全体としてのしりがそこへきておる、こういう性質のものなんです。  でありまするから、私は、自治体で問題がありますれば、まず自治省に行ってもらいたい。そうすると、自治省では総合的の見地から、どうしても融資をしなければならぬ立場にあるとかなんとかいうことの判断がつくだろう、そういうことなんでございます。地方自治体と国との間には、あるいは交付税の問題もあり、あるいは補助金の問題もあり、あるいは負担金というような問題もあり、いろいろな関係で結ばれておりますが、そういうことで財政全体のしりがたまたま農協に行って、その金利負担が他の金融機関で借りた場合と違う、そういうことのために利子補給をするという考え方はとりかねます。
  91. 増本一彦

    ○増本委員 そういう公的な、しかも義務教育、憲法から端を発している問題ですし、補助金もつく公的な事業ですよね。こういうものが高金利で地方自治体の財政を圧迫するということは、まことにゆゆしい事態であるというように思うわけです。これは私のほうとしては、ひとつ前向きに検討していただきたい。一つ要求しまして、私の分の質問は終わりたいと思います。
  92. 安倍晋太郎

    安倍委員長 荒木宏君。
  93. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣にお尋ねをいたしますが、この一月以降の原油の大幅値上がりに伴って、石油製品価格の再値上げ、この問題がいま政府で作業中であるということであります。こういうことで、いろいろ伝えられるところによりますと、大蔵省のほうでは、なるべく早い時期にきめるがよろしい、その上げ幅は小幅がよろしいのではないか、こういうふうな意見だということも報ぜられ、また大臣が先日、千葉のほうで記者会見で御意見をお述べになったというふうな報道も見られますし、国民生活に非常に関係の深い問題であり、そういった政府部内のいろいろな意見についての推測だとか、またさまざまの思惑だとかいったことがあるように見受けられます。  私は、むしろ、いまの時期に、政府の方向というものをはっきりと、再値上げ問題について態度をきめられる時期、それからその金額、関連をいたしまして価格を凍結すると言われる品目の数、これらについて明確な態度、方針大蔵大臣としてお示しいただくことが必要じゃないかと思いますので、初めにその点についてお尋ねをしたいと思います。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 石油の元売り価格、これは時期はまだきめておりませんが、上げなければならないという傾向にあるわけなんです。そこで、この問題が通産省から提起をされました。  政府全体としての姿勢は、その問題はしばらくおく。つまり、値上げの幅の問題があり、タイミングの問題がありますので、それはしばらくおく。いまさしあたり問題とすべきことは、この元売り価格を幾ら上げたら石油関連企業の製品価格にどういう影響があるか、こういう点を詰めてみようということなんです。通産省でいまこれを詰めておる、こういう段階です。  政府全体の希望といたしましては、通産省の作業によって、この石油製品の、石油関連企業の、たとえばセメントだとか鉄材だとかあるいは石油化学工業だとかいろいろありますが、それらの製品価格を原則として凍結状態に置くことができるかできないか、その辺を通産省に詰めてもらいたい。その詰めを見て、元売り価格の幅をどうするか、あるいは時期をどうするか、こういうことを議論しようじゃないかという段階で、まだ前段の段階で、後段には入っておらぬ、かように御理解願います。
  95. 荒木宏

    ○荒木委員 一言関連して時期の問題を重ねて伺っておきますが、いまは作業中であるというお話で、さりとてこの問題は、政府としていつまでも態度未決定というままでは置かれぬ問題だと思うのです。ですから、タイムリミットというと少しニュアンスが違うのですけれども、いまの経済情勢といったものに関連をして、少なくともいつごろまでにはというめどがあろうと思うのですけれども、その辺についてのお見通しをお伺いしたいと思います。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 通産省は一刻も早く元売り価格の引き上げをやってもらいたい、こう言っているのです。それに対して、その問題はまだ議論はしない、その前提として、元売り価格の上がったその高い油を使う石油関連企業の製品価格が、一体押えられるか押えられないか、こういう点についてひとつ議論をいたしましょう、こういうことで、ぼつぼつそういう議論に入ろうといたしておるところでございます。
  97. 荒木宏

    ○荒木委員 私は、伝えられておりますような方向での検討態度については、賛成はできません。しかし、きょうはこの問題について質問する予定ではありませんので、そのことだけ申し上げておいて、次の質問に移らせていただきたいと思うのです。  いずれにしても、この物価高のおりに、大臣御自身が狂乱物価と言われたような時代に、いま春闘の時期にあたって春闘共闘から出されております要求、またさきには二月の二十一日に労働四団体の代表が総理と面会をして申し入れをしたような国民的な要求については、これは何よりも優先して政府は誠実にその実現のために努力をするべきである、誠意を示すべきである、こういうふうに考えておるわけであります。  先般これに対する回答として、なべて申しますならば、一人二千円、総額で百三十億円余り、こういった回答が出たのでありますが、これはすでにもう指摘があったかと思うのですけれども、予備費は四百三十一億ということから見れば、政府として筒一ぱいの努力を今後にするべき余地はまだ十分にある。いま春闘は、まさに大きく生活防衛の点で発展をしておるわけであります。政府がこの問題に誠意を持って当たるということが、生活防衛の上からも、また日本経済の危機を解決する方向に向けていく上からも非常に必要である、かように思いますので、大蔵大臣のこれに対する誠意のほどを披瀝していただきたいと思います。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 いわゆるインフレ弱者に対する対策といたしましては、これは四十九年度予算でかなり大幅な対策をとっておるわけなんです。それまでのつなぎを一体どうするかということを政府は検討してきたわけでありまするが、とにかくもう新年度予算が施行されるのも間もないわけです。そのつなぎといたしまして百三十億円を支出する、こういうことにいたしたわけであります。  この額等についてのいろいろな御議論かと思いますが、これは厚生省が各般の権衡等を考慮いたしまして、まあこの辺が妥当なところではあるまいかというその結論に基づくものであります。いま私どもは、これを増額するということについては考えておりません。
  99. 荒木宏

    ○荒木委員 私は、きょうの質問では、全体としての要求はありますけれども、具体的に預金者金利の問題でお尋ねをしたいと思います。時間も限られておりますから、いまの回答には納得ができませんけれども、それは今後運動の上でおのずから回答が出ると思いますから、次の質問に移らしていただきますが、他の議員からもこの点についてはお尋ねがあったようであります。  私のほうで伺いましたところでは、目減りということ自体は、政府ももちろん認めざるを得ない。しかし、金融機関の経営を圧迫する、あるいはそれに対する財政援助は、これまた別の観点からできない。また、広く債権者全体の救済ということになると、とてもいまの政策の範囲ではまかなえない。そういったような趣旨の回答を伺ったように聞いたのでありますけれども、先ほど他の議員が御指摘の定額預金者に対する保護、これも補償はできかねるというふうな経過を踏まえて、私が申し上げたいのは、郵便貯金の利子について検討すべき余地はないか、こういうことであります。  これは言うまでもなく、国が扱っておる事業であります。預金者の金利は、ことし一月に入りまして郵便貯金のほうは引き上げられました。いまたしか普通預金で四・三二%、一年定期で七%、こういったことのようでありますが、しかし、国の関係の機関から借りる場合は、たとえば中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫から借りる場合は、基準金利が八・九%であります。  だから、国に預けてそしてうんと目減りをして、今度さて借りる段になると、政府の関係からは、普通預金でいいますと、それの倍以上の金利を払わなければならない。どんどん目減りをしていって、本年に入ってからは二〇%をこえるような消費者物価の上昇があり、卸売り物価に至ってはもう三〇%をこえておる、こういう状態の中で、政府対預金者、あるいは国と郵便貯金預金者の関係を見ますと、往復の関係では非常に不合理ではないか、こういうふうに思いますので、その点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 国は郵便貯金ばかりじゃありません、あるいは大ぜいの人から国債として金を借りておりますとか、あるいは保険というような形で金を借りておりますとか、ずいぶん債務者としての立場があるわけなんです。郵便貯金だけは特別のものである、ですからこれは何とかしなければならぬ、こういうような考え方はとりません。郵便貯金について、かりに貯金金利を上げますということになれば、これは金融政策全体の角度から、他の金融機関につきましても上げなければならぬ、こういう問題も起こってくるわけであります。  とにかく、インフレによる被害、これを預貯金者が受けるということは、もうそのとおりでございますが、それに対して損害を補償する、補てんするという考え方の施策というものは、非常にむずかしいと思います。そうなりますと、一波万波でいろいろなインフレ被害者というものに波及いたしまして、これはもうとてもそういう政策はとれないということは御理解いただけると思うのですが、とにかく、郵便貯金の貯金金利を論ずる場合におきましては、これは他の預貯金者との権衡問題というものも特に考えて臨まなければならぬ、こういう性格のものと存じます。
  101. 荒木宏

    ○荒木委員 これはしかし、郵政省自身が、これは特別のものである、たとえば預金の預け入れの限度額はきまっております。そしていま残高が約十四兆円余り、全体で百二十兆円余りのうちの一割そこそこなんですが、これは主として零細な預金を国のほうで責任を持って預かっている。そして、公共のために運用するというふうなたてまえでありまして、一般の営利を目的とする金融機関のたてまえとは根本的に違っておる。これは政府機関自身がおっしゃっていることです。  私が言っておりますのは、例を郵便貯金にとりましたけれども、いまいわれておる預金者が受けておる被害、これをいろんな点で、たとえば先ほど他の党の議員が、それじゃ低額の預金者はどうだ、こういうお話になると、当初に申し上げたような理由でそれはできませんと言われる。それでは国自身がやっておる郵便貯金、これは零細な預金者であって、国がそれを保護するたてまえでやっておるこの部分はどうだ、こう言いますと、いや、それはほかとの権衡があってできない。結局、何を言ったって、やる気がないし、やりはしない、こう言い切ってしまいますと、あるいは御答弁の趣旨を正確に理解していないかもしれませんけれども、しかし、すなおに受け取ればそういうふうな理解にならざるを得ないのです。  ですから、私は、損害補償というよりも、生活防衛の上から、物価を下げるためには最大限の努力をしなければならぬと思いますが、同時に、いわれておりますこの被害を少しでも食いとめるということなら、国がやっておる事業について、しかも少額の零細な預金者の人たちがほとんどの部分であるこの分野で、再検討するということは当然のことではないか、こういうふうに思うわけであります。ここから入りました分が財投に回って、たとえば、それが流れます輸出入銀行では、援助のほうでは貸し出し金利が四%あるいは四・五%、それ以外の分でも五・五%から八・五%、こういったような特別の優遇を大企業に対して与えておる。これは物価の点とか、あるいは海外からの輸入対策の点とか、開発の点もあると思います。しかし、その点は物価にほとんど反映されていない、全くないと言っていいかと思います。ですから、むしろその辺に対する貸し出し金利を上げれば、別に金融機関の圧迫だとか、あるいはほかとの権衡だとか、そういった点はさておいても、零細な郵便貯金の預金者の金利を上げる方向に、財政をいじらなくても回すことができるわけです。  そして、たとえば、輸出入銀行から金がいっておる大企業、大商社は何をしているか、これはこの前の委員会で大臣に申し上げたとおりであります。系列金融を強化して、公取が指摘しておるように支配力をうんと強めておるのです。ひどいのは脱税さえしておるではないか。そんなところの金利をうんと下げておいて、国がやっておる事業の零細な郵便貯金の金利さえ動かせないようでは、これは生活防衛としての政策とはとても言いかねるのではないか、私はこう思いますが、いま申し上げた諸点を含めて、再度大臣の御見解を伺いたい。
  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 荒木さんのおっしゃる意味が、目減りがあるから補償せよ、こういう意味でありますれば、これは補償はいたしません、できません、こういうふうにお答えせざるを得ないのです。  ただ、社会政策的な配慮でありますとか、あるいは零細貯蓄増強というような趣旨でありますとか、いろいろな点を考慮いたしまして、零細な貯蓄について何か考えたらいいじゃないかというような政策論だといたしますれば、私は理解はできます。私もこの問題については深い関心を持っておるわけでありまして、全体の政策の中で、政策にひびを入らせない、そういう範囲内においてどういうことがができるか、こういうことについては終始頭を悩ましておる、こういう状態でございます。まだ具体案はできておりませんが、なかなかむずかしい問題でありますけれども、一生懸命取り組んでおる、こういうふうに御理解を願います。
  103. 荒木宏

    ○荒木委員 関心を持たれて頭を悩まされて、一生懸命勉強している、こういう御答弁を伺ったわけであります。つまり、前向きに検討を進めるつもりである、こう伺ってよろしゅうございますね。いかがでしょう。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 一生懸命に勉強しておる、かように御理解願います。
  105. 荒木宏

    ○荒木委員 最後に、いま確定申告の時期でありますので、そういったことに関連をいたしまして、申告にからまる税務行政の問題を一、二お伺いしたいと思います。  国税庁に伺いますが、いま民間には納税者の皆さんのいろいろな団体があるわけですけれども、国税当局としてそういった団体に対して、特にこの団体は有利に扱うとか、あるいはこの団体は特別に不利に扱うとか、そういったような御方針がおありになるかどうか、いろいろな話を耳にいたしますので、そういった基本的な姿勢方針について、まず伺っておきたいと思います。
  106. 田邊曻

    ○田邊説明員 国税庁の仕事は、御存じのとおり、税法を正しく執行することでございますので、その場合には個々の納税者に対しまして適正な申告と納税が行なわれますよう、その実現をはかる手段をいろいろと講じているわけでございます。その過程におきまして各種の団体がございまして、それぞれ自主的にいろいろな活動をやっておられることに関しましては、私ども特別にこの団体がどう、あの団体がどうでないというようなことは何ら考えておりません。すべて公平な課税の実現をはかるよう、努力していくということでございます。
  107. 荒木宏

    ○荒木委員 時間がありませんから、三つの質問をまとめて申し上げますので、一括して簡潔にお答えをいただきたいと思うのです。  まず第一は、納税協会というのがあります。昨年の十一月二十一日、京都宝ヶ池で三十周年記念大会が行なわれました。ここには高木主税局長も御出席になり、また、その会合の模様が報道されました会報には、国税庁長官もごあいさつをしておられますが、その会合に出席された大阪国税局長が、今後の税務行政の方針として、「具体的には、年間の所得三〇〇万円程度以下の会員で」、納税協会の会員ですね。「誠実な努力をはらっておられる方々に対しては、調査をせず、もっぱら指導によって皆様方と接触させていただくということを考えております。」こう述べております。  私がお尋ねをしたいのは、誠実な努力を払っている人たちに対して、三百万円以下ならもう調査をしないんだ、指導でいくのだ、これはこれとしてひとつ今後十分研究をしていただいてはどうだろうかと思うが、問題は、納税協会の会員であるという条件がついておるのです。私は、いろいろな人がありますから、納税協会の会員の方はよく存じ上げませんけれども、全部誠実である、それ以外の団体に入っている人は誠実な人はいない、そんなことは言えぬと思うのです。ですから、先ほど部長のおっしゃったところからいきますと、こういう方向を進める上で、ある特定の団体に入っているから調査を省略する、そうでないところはそれは適用しない。これは先ほどおっしゃった基本方針に反すると思いますから、その点の是正をしていただきたい。これが一つであります。  それから第二点は、これは大阪府の泉佐野税務署から参りました通知であります。一昨年の十一月でありますが、記帳相談をいたします、つきましては、次の日に来てくださいということで、そのあとになお書きがあります。問題はここです。「出席にならないときは、他の適当な日に変更しますから、電話等により次へご連絡ください。」ところが、この「次」というのは、普通でありますと、これは税務署の文書ですから税務署かと思うのですが、そうじゃないのです。全然別のところの民間のある団体の連絡場所が書いてある。しかもそればかりか「白色申告分の方に自主申告会について御相談申し上げたいのでおいで下さいませ。」税務署から参ったはがきが、いろいろ税の相談ということをなさるのは当然かもしれませんが、自主申告会という民間の団体のことについていろいろ相談をするから来いというのはいかがなものであろうか。先ほどおっしゃった基本方針からして、こういったやり方は是正されるべきではないか。これが質問の第二点であります。  それから第三点は、本年の二月十四日大阪府下の泉大津税務署におきまして、その職場における全国税の労働組合と当該署長さんとの団体交渉がありました。これはいろいろ職場の条件が話し合われたのでありますが、その中で民主商工会のことが議題になり、ここのところですね、特定政党と関係がある団体であり、反税団体である、こういう指摘があるのです。そこで、私はこれはよくわかりません、これを見ただけでは。特定政党というのは、一体、五つの政党のうちどこをさしているのか。特定政党との関係があるということで、有利に扱い、不利に扱い、扱いを異にする、こういったことが一体許されるのか。事実をお調べいただいて、先ほどおっしゃった基本方針に反する部分があれば是正をされるべきではないか。  以上、申し上げた三点について、御意見と、それから実態調査と、その調査結果の御報告をいただけるかどうか、これを簡潔に伺いたいと思います。
  108. 田邊曻

    ○田邊説明員 ただいまお話しの三つの事例、具体的な問題でございますので、よく調べさしていただきたいと思います。  ただ、先ほども申し上げましたとおり、税務は公平な税法の執行でございますので、特定の団体につきまして差別的な取り扱いをしているつもりはございません。ただ、個々の団体がそれぞれ自主的に御主張になっている点と、われわれが取り扱っております仕事と、両方一致する点につきましては御協力をお願いする点はございます。そういうような基本的な考え方と、ただいま御指摘の三つの点、どのようにかみ合うものか十分に調査いたしまして、お答えする機会がございますれば、お答えしたいと思います。
  109. 荒木宏

    ○荒木委員 いま事実を申し上げたわけですから、あるいはにわかな御答弁、御判断より、若干の時間をおいたほうがいいかと思うのですけれども調査をしていただくのはいいですよ。それは適当な機会じゃなくて、いま申告の時期でありますから、調査をなさって、事態が判明をすれば、間違っておるところは正して、そしてなさった処置について報告していただきたい。それが民主的な税務行政を進める一つの方途であるかと思いますから、調査、報告、是正措置、この三つをひとつお約束いただけますね。
  110. 田邊曻

    ○田邊説明員 御趣旨に沿うよう努力したいと思います。
  111. 荒木宏

    ○荒木委員 質問を終わります。
  112. 安倍晋太郎

    安倍委員長 広沢直樹君。
  113. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは大蔵大臣に二、三の問題についてお伺いしておきたいと思います。  第一点の大きな柱は、今後の物価の動向と政府の対策、第二点は、いま三月の決算期を迎えておりますが、先般の予算委員会で問題になりましたいわゆる超過利得に対して、いろいろな面を総合しまして、これを隠しているのではないかということが最近盛んに報道されているわけであります。したがいまして、そういった問題に対して国民の疑惑を解く意味からも、あるいはそういった問題があれば徹底的にこれを追及する上からも、ひとつ明確にしていただきたい、このように思う次第であります。  昨年から特に大蔵大臣は、物価は狂乱状態であるとおっしゃいました。多少この問題については、経済企画庁だとか通産省だとか、各省にまたがる問題があるかと思います。しかし、最有力の経済閣僚のお一人としての大蔵大臣に、今後の物価の動向について私は伺っておきたいと思うわけであります。  最近はちょっと卸売り物価が横ばいになってきている。それについては、先日のテレビを私見ておりましても、国民が受け取っているテレビの話によりますと、一応そういう状況にどうして落ちついてきたんだろうかということに対して、三つの点をあげておりました。一つは、先取り値上げが一巡したのじゃないかということ、もう一つは、この強力な財政金融引き締め政策が浸透してきた、もう一つは、節約ムードというものがそれに相乗している。こういったようなことから一応落ちついてきたんではないかというような受け取り方をしているのでありますけれども、私は、そうではないだろうと思う。  むしろ、これは一時的に、今日まで問題になりました異常な物価に対する反省を含めて、いまのところそういう意識的なものが働いているのではないか。したがって、むしろ物価の最大の問題というのは、これから四月-六月期、あるいは七月-九月期、後半にいろいろな問題がさらに出てくるのがはないかと思うのです。現在卸売り物価が横ばいになったからといって安心すべきではありませんし、今後どういうふうに考えておられるか、まず最初にその点からお伺いしておきたいと思います。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価の先行きに対しましては、非常にいま心配はいたしておるのです。しかし、私は、総需要抑制政策の効果が出てきており、二月の卸売り物価に出てきておるようなああいう傾向がこれからも強くなってくる、こういうふうに思います。ただ、いま心配しておると申し上げましたのは、石油の元売り価格の引き上げ問題というのが出てきておるわけであります。   〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕 この措置を誤りますと物価鎮静コースを乱す、こういうことになりかねない。それから、もう一つ心配しておるのは春闘なんです。これが非常に激しい状態になるということになると、これがまたこのコースに対して大きな阻害要因になる。  こういうふうにいま考えておりますが、とにかく、いま総需要抑制政策をひたむきに進める、その結果、これらの障害をなるべく順調にさばいていって、そしてこの二、三カ月の間には鎮静のムードを打ち出す、そしておそくとも夏ごろまでには、経済はもう先行き物価高というような事態にならないように誘導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  115. 広沢直樹

    ○広沢委員 それは予算委員会におきましても、田中総理も、夏ごろまでには物価は何とか鎮静さすんだ、こういう意向をあらわしておられるわけでありますけれども、先ほどもお話がありましたように、やはり三月にどうしても原油の値上げがある。そういうような関係で、石油関係あるいは電力関係、あるいは石油をもととしたガス関係もそうでありますが、そういった一切の値上げがもくろまれている。先ほども大蔵大臣がお答えになっておられましたように、通産省としては、原油の輸入価格の値上がりがある以上、これはやはり原油並びにそういった製品についてもある程度の値上げはやむを得ないんじゃないか。時期の問題はどうだということはありましょうけれども、少なくともいま予想されているところによりますと、三月、四月ごろまでには何としても上げなければ、どうにもならないというような状況に追い込まれているようであります。  そうなりますと、これは元が上がるわけでありますから、石油製品についても上がってまいりましょうし、あるいは電力だとかガスだとかいうものに影響してくるということになれば、これは一切の生活の基礎物資的なものにまですべて影響してくるんじゃないか。それが四月、五月ごろに消費者物価の動向に直接影響を与えてくるんじゃないかという一つの心配があります。  それが終わりますと、いま緊急対策として公共料金を凍結しています。消費者米価にしても、あるいは国鉄運賃にしてもそうでありますが、そのほかの運賃だとかあるいはすべての公共料金についても、これがその後において、やはりいつまでも凍結しておくわけにいかない、こういう状況も出て来ようかと思うのですが、そうなりますと、いまかりに先行きを考えた場合は、物価が鎮静するという要因というものはないということになってくるのではないか。  基本的には金融引き締めだとかあるいは財政を圧縮しているという面で、徐々にきいてくるかもしれませんが、実際に、卸売り物価というよりも消費者物価は、むしろ上げ幅が大きくなっていくのではないかという心配まであるわけですね。そういう面で、夏までに何とか物価は鎮静さすんだと言われますが、しかしながら――これはなぜ私がこの問題を取り上げているかといいますと、石油危機の問題が起こったときに、関連しない商品、いわゆるトイレットペーパーとか、そういったものまで異常な値上がりをした。また、パニック状態が起こった。これは情報の不足だとか、あるいは適確な政府の指導がなかったということかもしれませんが、とにかくそういった現象が起こったということは、はなはだ遺憾なんです。  しかし、いま報道やあるいはあらゆる雑誌だとか、すべてのわれわれ国民の目に映るものが、今後の四月-六月あるいは七月以降の消費者物価の動向についても、公共料金をはじめとして、あるいは石油関係の基礎材の値上げというものがどうしても控えている、そういう不安があるといっているわけですね。したがって、それにまた適確な政府の手がおくれるということになれば、またそういう現象が起きないとも限らない。したがって、それに対しては具体的に、そういう心配がないんだということを今度は事前に――事後において、現実に物が目の前からうせてしまってから、いやあるんだ、何とかなるんだということを幾ら繰り返してみても、国民は信用できない。そういうことを勘案して、今後の動向について、もう一度明確に、その点心配がないのだということを、もう少し具体的に御説明いただきたいと思います。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、これから先、春闘問題の帰趨というのを非常に心配しているのですが、これは労使の協力によってまあまあ妥当なところで乗り切る、こういうことになりますれば、私は総需要抑制、この政策が多少の賃上げというようなものを乗り越えまして、そして大きな力となって鎮静効果を実現するであろう、こういうふうに確信をいたしております。  とにかく、この総需要抑制政策を推し進める。そうすると、いままでは一体どうであったかというと、先は物を持っておれば値上がりするであろう、こういうことからみんなが買いあさった。そういうようなことで、想像もつかないような仮需要が起こってきたわけであります。その仮需要車素というものが、総需要抑制政策の浸透とともになくなる。むしろ仮需要どころじゃない、持っているものを吐き出すというような事態になる。そこで、日本の経済界を包む全体の空気が鎮静化する、こういうふうに見ておるわけであります。そういう状態を一刻も早く出現させたい。この二、三カ月の間には、先は物価は高くなりますよ、いまのうちに買いだめておきたいというような、そういうムードが一掃されるように念願しつつ諸対策を進めておる、こういうことであります。
  117. 広沢直樹

    ○広沢委員 それに加えて、今日の物価高の要因の一つに、輸入インフレといいますか、海外要因が大体四〇%ぐらい影響を与えているということをいわれておりまして、ちょうどアメリカにおきましてもこの四月の末に物価上昇のガイドラインがはずされるというようなことから、アメリカからの輸入というものは、食糧にしましても非常なウエートを占めておるわけでありますから、そういったものも総体的に上がるんじゃないかというような見通しさえもいま出ております。  エコノミストのいろいろな方々の意見を聞いてみましても、私が先ほどるる申しましたような、消費者物価が後半において値上げされる要因というものが非常に、たくさんあるということから、やはり物価の第二ラウンドが少なくとも四月以降にまた起こってくるんじゃないかという心配は、どうしても消えないわけですね。その面についての具体的な政府の対策というものをお伺いしたいし、基本的にはいまの引き締めというものをまだずっと、消費者物価がある程度鎮静するという確固たる見通しが立つまでは続けていかれるのかどうか。最近、特に金融引き締めというものが非常にさいてきでおりますし、したがって、中小企業の倒産というものも非常に多くなってきておるわけです。そういう関係から、一部には、何かこの辺で金融緩和もあるんじゃないかという見通しも出てきておるようでありますが、そういう点も踏まえてひとつお伺いしたい。
  118. 福田赳夫

    福田国務大臣 一部の人の間で、参議院選挙があるからその前に金融はゆるむんじゃないかなんというようなことを言う人がいますが、さようなことは考えておりません。とにかく国が当面する最大の問題は、これは何といっても物価を押え込む、こういうことだというふうに考えておりまして、いまお話もありましたが、この引き締め体制というものを、ほんとうに物価が安定し定着するまでは続けていく。多少の摩擦が起こる、それに対しましてはそれぞれ手を打ちます。打ちますが、この基本体制につきましては微動もさせるところはない、こういう考え方です。
  119. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、先ほど各委員からお話がございましたけれども、いわゆる狂乱物価といわれる中で一番被害を受けているのは、何といっても社会的に弱い立場にある人たちでありまして、今日春闘をはじめとして国民の一つの世論として、こういった人たちに十分なる施策をして、インフレの被害から救済していかなければならぬ、こういう運動が巻き起こっておることは御承知のとおりであります。  それに対して政府は、ある程度はそのことを認めたんでしょう、いままでと違ってインフレ福祉手当というものを若干出しているようでありますけれども、先ほどもお話がありましたように、それでは少な過ぎるじゃないか、少な過ぎるというよりも、私は、そういう方々が今日の狂乱物価の中で現実にどういう生活をしているかということを十分御認識になっているかどうかということが、まず第一の問題だろうと思うのです。当然、財政当局としては財政の立場から、赤字を出してもというわけにいかぬということは、それは常識論では言えるわけでありますが、そういう現実の上に立っていけば、できるだけ限度一ぱいのことはしてあげなければならないと思うわけでございます。  社会保障研究所が実態調査をしているのが出ておりますけれども、それを私ずうっといろいろ分析し、あるいはまた雑誌をいただいているわけでありますけれども、満足に食生活もできないといういわゆる生活保護世帯だとか、あるいは年金の方もそうですし、あるいは身体障害の世帯の方もそうですし、母子家庭の方もそうです。そういう具体的な実態が載っているわけですね。少なくとも今日の中では、この結論としては、月に約四千円から一万円、母子世帯では九千円から二万一千円、これだけ不足しているのだ、したがって、それだけの食費を切り詰め、あるいはその他の生活を切り詰めなければいま暮らせないのだ、こういう実態になっているわけですね。  したがって、当然、今日、先般の新聞の報道によりましても、自然増収というのが補正後におきましても、二、三千億、これはまあ、もっとあるのじゃないかと思うのですけれども、それが出てきているということは、インフレの影響による、いわゆるそれなりの利益があがってきておるわけですから、そういう観点からしましても、いまある予備費ぐらいは全部出して、そちらのほうへ回すというくらいの積極的な手を打ってあげなければならぬ。福祉だということが絶えずいわれるようになっても、実際に、具体的に、われわれがそれを感ずるような今日の施策がないということがよくいわれております。したがいまして、いつもこれであっては困るわけで、こういった特異な事態のときには、政府も思い切ってその人たちのために尽くしていくという姿勢が必要ではないか。それについては担当の厚生省がやっておるようでありますが、財源を握っておる大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 弱い立場の国民に対する配慮は厚くしなければならぬ、そういう広沢さんの御所見につきましては、私も御趣旨はよくわかります。そこで、四十九年度の予算ではかなりそういう対策費を伸ばしたわけでございますが、それまでのつなぎをどうするかということにつきまして、厚生省でもずいぶん慎重に検討され、また、総合的な権衡問題も考えられまして、先般百三十億円の支出を行なう、こういうことをきめたわけでございますが、大体あれでつなぎができるのじゃないか。こういう際ですから、ずいぶんお苦しいということはわかりますけれども、四十九年度までのつなぎだ、こういうことはこれで大体つけられるんじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございます。いま補正予算を提案するとか、そういうことは考えておりません。
  121. 広沢直樹

    ○広沢委員 予備費におきましても、当然もう期末まで来ているわけでありますから、百三十億でつなぎができるのだという財政当局のお考えは納得しかねるわけです。やはり、できる限り精一ぱい確かに努力したと、いわゆる納得される線にあれば、それは限られた財源の中でありますから、十分とまでいかなくてもある程度しかたがないところもあろうかと思いますけれども、まだまだいま言ったような線では十分納得できないと思うのです。その点については各委員からもお話があっておりますし、十分銘記していただいて、今後さらに努力を願いたいと思う次第であります。  時間の関係で、次の第二問のほうへ参りたいと思うのですが、石油危機に便乗した値上げで、いわゆる超過利得といいますか、いろいろな言い方をしておりますけれども、大企業がいま合法的にいわゆる俗にいう利益を隠しているんじゃないか、こういうことが巷間伝わっております。したがって、大蔵省国税庁におきましても、それに対する対策としてはいろいろ考えられておることもすでに報道されております。したがって、大蔵省として、そういう巷間いろいろ伝わっているものに対しては、あれだけ予算委員会で、不当利得に対してはそのことを認めて返すと言った企業もあるわけですし、そういうようなことがはっきりしてきたわけでありますから、それに対しては適切な手を打っていかなければならない。いま超過利得税ということで新しい制度もそれぞれ考えているようでありますけれども、なかなかそこまでいかない。したがって、いま三月の決算期がもう来ているわけでありますから、それに対して具体的に、いまある法律を最大限に活用し、そういうような不当利得を得たものに対しては、できる限りの手を打って、それを吐き出さしていかなければならぬと思うのですが、それに対する考え方、それから姿勢というものをまず伺っておきたい。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 これからの徴税方針についてのお尋ねでございますが、確かに去年の暮れあたりは物価が非常な異常状態であった。この異常な状態に乗じまして過当な利益を得た企業は多々ある、こういうふうに見ておるわけであります。したがいまして、これからの徴税方針といたしましては、過当な利益を得たであろうと想定されるような企業につきまして、重点的にいま調査を進めたい、こういうふうに考えておるわけであります。  同時に、こういう際には、えてして利益操作というものが行なわれがちであります。この利益操作に対しましては、これまた厳重な態度をもって臨む。たとえば、償却方法の変更というようなものにつきましては原則としてこれを認めない、こういう方針で臨み、もしこれが変更の必要があるというような事案でありますれば、財務局長は国税庁長官に協議した上、その承認を受けなければならぬ、こういうふうにいたしますとか、利益操作につきましては特に心してまいりたい、かように考えております。
  123. 広沢直樹

    ○広沢委員 姿勢としてはけっこうでありますけれども、そこで、具体的にすでに明らかになっておりますので、私、事例をあげながら伺ってみたいと思うのです。  すでに四十八年の十二月末の決算報告というものが、各会社十二月決算のところは出ております。それによりますと、確かに物価急騰のいわゆる狂乱物価といわれたときからの決算がその中に含まれてきておるわけでありますけれども、前期、いわゆる十二月決算でしたら六月ですね、それに比べて非常な利益、売り上げ高をあげておる。そしてまた、経常利益においても、いままでにない経常利益をあげている。ところが、そういった十二月決算の会社をずっと一覧表にしてみますと、当期の純利益といいますか、いわゆる課税対象になる所得の分でありますけれども、それは今度は非常に小さくなっている会社、むしろマイナスになっているところもあるのです。  この中で極端なのがありますので、私、その決算書の写しをもらってみたのですけれども、東亜燃料という会社がありますね。これは四十八年十二月のいわゆる当期の決算では、前期に比べて二七・八%増の売り上げ高をあげています。経常利益においては三四・八%、ところが、その当期の利益として出ているのは、対前期比マイナスの二八・六%、こういうふうになっているわけです。その内訳はどうなっているかといいますと、やはりいまお話がありましたように、いま租税特別措置で設けられているいわゆる準備金だとか引き当て金だとか、そういった面が前期と比べて、あるいは前々期と比べまして相当にふくれ上がっておる面が明確に出ています。  たとえば価格変動準備金、あるいは貸し倒れ引き当て金、それから海外投資等損失準備金、こういったものも、ゼロであったものが組まれたり、あるいはもう何十倍というふうにふくれ上がって組まれている。むしろこれは合法的なものでして、別にそれを組んだら悪いというものではないのです。しかしながら、前期、そしてまた前々期、四十七年の十二月決算と比べてみましても、そういったものが法外に組まれているといった問題については、どういうふうにお考えになるのか。これは合法的だからしかたがありませんよということであるならば、結局、いままでそういった退職引き当て金にしましても、あらゆる面のこういう大きな利益があがったときの操作というものは、現行法の中で合法的だということでできるわけですね。その点をどういうふうな見方でいかれるのか、まずその点をお伺いしておきたい。
  124. 吉田冨士雄

    吉田(冨)政府委員 ただいまお話しの十二月決算期の法人に関しましては、御案内のように、申告書が出てまいるのが二月末でございまして、私どもはさっそくその申告書を見まして準備調査に入っております。個々の問題についてはまだこれからの問題でございますが、大勢といたしましては、ただいま大臣がお答えのように、前年実調で相当詳しく調べる予定でございますし、すでに九月期あるいは十月期のものについては実行しております。  引き当て金あるいは準備金あるいは償却方法その他につきまして、いろいろな積み増しのやり方があるわけでございまして、場合によれば、税金を払って有税で積み足すというようなケースもございますし、法律で認められているぎりぎりの限度内で積み当てるという場合もあると思います。引き当て金等、たとえば退職給与引き当て金等につきましては、再々この委員会でも御議論があるわけですが、たとえば労働協約で一つの方向がきまっておれば、要するに、協約が改定されて一つの協約できまっておれば、それによって機械的に税法上認められますので、こういうものについては、現在としては、合法的である限りこれは認めざるを得ないと思います。  ただ、ただいま大臣お話しのように、償却方法とかあるいはたなおろしの評価の方法とか、こういうものにつきましては、利益操作といたしまして、その期に利益が非常に出ている場合には、いままでたとえば定額法をとっていたのを定率法に切りかえるとかいうようなことがよくあるわけでございまして、これにつきましては、法律、政令によりましてその事業年度の開始前にまず出さなければならない、途中ではいけない。かりにそういう変更の申請が出てきた場合にも、もちろん法令の定めるところによってケースバイケースで判断するのですが、原則としてはこれを慎重に取り扱って、問題のあるときにはこちらのほうへ持ってきて、税務署所管の分については国税局長、それから国税局の所管については長官のところで慎重にやっていきたいと考えて、その間に利益操作的なものが入らないように慎重にやっていきたいと考えております。   〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 広沢直樹

    ○広沢委員 別に東亜燃料を問題にしているわけじゃないので、これは一つの例で、ほかにこういうふうに指摘していけば、同じように、それは確かに利益があがっているときには、いままでの調整をしたりいろいろなこともするでしょうけれども、あの異常な物価高の中で、予算委員会であれだけ一つ一つ取り上げるたびに、確かにそれは便乗値上げであるとか、いわゆる不当利得であるとかいう面が明らかになってきているわけですね。特にこういった石油関係のところにおきましては、そういう面が予算委員会でも明らかになっておりますし、そういう会社の内容を見ましても、その他いろいろありますけれども、減価償却につきましても、これはいまおっしゃったとおりです。ですから、これは年度初めですから次の期じゃないとだめで、三月期のときはすでに定額法でいっているところは定額法、定率は定率でいっているはずでありますから、三月期から超過利得というものは吸収しようじゃないかという話になっても、いまの減価償却のことは当てはまらないと思うのですよ。それは先に定額を定率にするということを認めるか認めぬかという問題にはなると思います。その点きびしくやられてけっこうですがね。  それから、いわゆるたなおろし資産の問題につきましても、これも適確にやっていただく、これはいいことだと思うのですが、いま言うように、いままでのいわゆる準備金だとか引き当て金だとかその他の損失、こういった損金に算入していくような制度をいままでと違った形で法外にふやしている場合、これはもう合法的だからしかたがないということになるのか、あるいはそれはいままでのずっと過去と比べてみて、ここであまり急激にふやしているということは、税法上から考えても好ましくない、いわゆる企業会計の上から考えまして合法的だといっても、異常な利益をあげているときにそういう面で異常にふやしていると見受けられる場合には認めないのか、その点の姿勢の問題なんです。  いま超過利得税の問題がこれはやろうということで、政府側も、もう大蔵大臣予算委員会で、けしからぬものからは取るべきだということを言われておる。いろいろなやり方についてはこれからの問題でしょうけれども、基本的には各政党も、政府も、みんな認めていらっしゃるわけですから、いま三月期の決算へ入っている中で、こういうようなやり方――あるいはこれだけじゃなくて、今度は子会社の関連における仕入れ原価の問題だとか、五〇%以上出資しているいわゆる密接に関連のある会社、あるいは九十何%出資しているまあ同族会社と同じみたいな会社に対しても、赤字であるものをこの際全部解消して、あるいはもとの親会社に合併したという例も出てきておるわけですね。  もう時間がありませんからいろいろ述べておる時間がありませんけれども、こういうような超過利得あるいは不当な利得だといわれている中で、いわゆるインフレによる法外な利益をあげる、あるいは法外じゃなくても、ある程度の利益はインフレによって企業というものはあげ得たと思うのです。したがって、こういうようなやり方について、現行法で合法であるいっても、やはりもう少しきびしくチェックしていかなければならないのじゃないかと思うのですが、その点が明確にならなければ、やはり国民が心配しているように、また予算委員会の中でもきびしく追及されておりましたように、超過利得といわれたものがほとんどこういった中に吸収されてしまって、だんだん目に見えなくなってくるのではないか、こういうことを心配するものですから、再度その基本的な考え方について大蔵大臣にお伺いいたします。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 国民の感情もたいへん高ぶっておるときでございますので、当面の税の執行にあたりましては厳正に対処する、特に利益操作につきましてはきびしい姿勢で臨んでいく、はっきりそういうふうに考えております。
  127. 広沢直樹

    ○広沢委員 終わります。
  128. 安倍晋太郎

    安倍委員長 竹本孫一君。
  129. 竹本孫一

    ○竹本委員 簡単に二、三の問題をお伺いいたしたいと思います。  まず第一は、景気の見通しの問題であります。福田大蔵大臣の短期決戦、われわれは多くを期待しておるわけでございますが、幸いにして景気が次第に鎮静しつつあるということがいわれておる。私は、これで普通に進んでまいるならば、四-六期、四-六月のの間は、鎮静というよりも、落ち込みといいますか、一番きびしい事態になるのではないかと思っておるわけです。  その理由は、いわゆる短期決戦、金融引き締めといった政府の努力が次第に下部にまで浸透してくるであろうということが第一。次には、財政も四-六期になれば揚げ超になるだろうという点もあります。さらに、最近の生産やあるいは販売等の動き等から考えてみまして、製品の需給のバランスもその辺になればややバランスがとれてくるということになるのではないか。四番目には、何と申しましても日本の経済の高度成長を引っぱってまいりました設備投資が、あるいは予想以上に鎮静化するのではないか、またそうさせなければならぬと思うわけですが、そういういろいろの条件を考えてみますと、四-六期には相当きびしい条件が出てくる、こういうふうに思うのでございますが、しかし、きびしいことと同時に、国民からいえば、一つの大きな見通しというものがなければならぬと思いますので、大臣にお伺いしたい点は、一つは、四十九年というものを一-三期、四-六期、七-九期というふうに四半期に分けて考えた場合に、四-六期が一番きびしい時期になるというふうに私は見ておるのだけれども、それは間違いであろうか。  それから第二は、そのきびしさは普通にいわれているよりも、あるいはより多くきびしいものであろう、また、きびしくなければほんとの意味での政策効果というものを期待し得ないのではないか。何となく二・五%の成長を、場合によっては各四半期ごとに、その辺で横ばいでいくのではないかというような意見も、希望的な意見かもしれませんがありますが、そういうことでは政策に大きな節ができない。  やはり短期決戦と大臣が言われる以上は、まあ一-三期は、前からの続きで金をもうけたやつもおるわけですから、ならしてみればそれほど深刻にならないかもしれないけれども、四-六期になれば、せっかくの政策努力というものがみんなある程度浸透してくる。浸透してくるということは、四-六期というのはきびしい三カ月になるのだということであるだろう、また、なければならぬのだ、かように思いますけれども、四-六期が一番きびしい、年間を通じても一番きびしいということが言えるのかどうか。そのきびしさもいま普通にいわれているような、いまの程度の横ばいというものよりも、もっときびしくなるということを国民に覚悟させるということでなければならぬと思うのですが、その点についての大臣のお考えを伺っておきたい。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、大体、竹本さんのいまのお話と同じような観測をしているのですが、四-六というのが非常にきびしい時期になってくるだろうと思うのです。その四-六のきびしさというものは、これはちょっと予想外のきびしさになってくるだろう、こういうふうに思うわけです。そうしてそのきびしさの余韻は、なお七-九の時期、第二・四半期、ここにまだ引き継がれるであろう、こういうふうに考えております。  年度全体を通じますと、年度というか一年を通じますと上半期、これは非常にきびしい。そのきびしさがなおだんだんと増幅してくる。下半期は、スタートはきびしい。しかし、だんだんと末になるにしたがいまして正常化というか、そういう方向へのきびしさも出てくる、こういうふうな観測をしております。
  131. 竹本孫一

    ○竹本委員 なお、この機会に、もう一つだけお伺いしたいのですが、設備投資の動向について、御承知のように十二月、一月ともに機械の受注等もずいぶん落ちておるようでございますが、下村さんのごときは、いまの設備だけでもう生産が余るぐらいなのに、去年やった設備投資が稼働してきて生産力化すると、いよいよもって物は余るような状態になるし、したがって、これからの日本経済は成長ゼロである、ゼロあるいはマイナスである、そのおもなるファクターは設備投資がぐんと落ちるからだ、こういうふうに言っておられる、しかし、下村さんの意見はいつもぼくと違うのですけれども、今度の見方についても、私はちょっと見解が違う。  そこで、結論的に、時間もありませんからお伺いしたいのですけれども、ことし、あるいはことしだけでなくて、今後における設備投資というものを、それほど悲観的に見なければならぬのかどうかという点についての大臣の大きな見通しをひとつ伺いたい。
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 設備投資は、とにかく私は当面は非常にきびしい状態に置かれるだろう、こういうふうに思います。つまり、財政におきましても、金融におきましても、抑制政策をとっておる。需要が減退するわけですから、したがって、そういう状態下において新規の設備投資をするということは、きわめて例外的な場合以外はなかろう、こういうふうに思います。  ただしかし、公害対策でありますとか、そういう特殊なものにつきましての投資、これはそう少なくなるというわけでもなかろう、さように思います。  やや長期的に見ますと、先ほど申し上げましたような経済の動き、つまり、上半年は設備投資は非常に鎮静状態に入る、年末に近づくに従って設備投資もやや頭を持ち上げる、こういうような状態になろうか、こういうふうに思いますが、まあしかし、それにしても、われわれは年度間の成長率を二・五%と見ておるのです。そういうような状態をつくり出すべく財政金融政策を進めますので、今回の混乱以前のような勢いの設備投資ということは、とうてい考えられません。非常に落ちついた姿の設備投資復活ということ、そういう状態において徐々に、かつなだらかにそういう状態が出てくるのではあるまいか、そういうふうに考えます。
  133. 竹本孫一

    ○竹本委員 これからの経済というのは、いまの油の値段の問題もあるし、さらに春闘の動きもあるし、また輸出の環境がどう変わるかといったいろいろな問題がありますので、簡単に割り切って結論を出すことはむずかしいと思いますが、いずれにいたしましても、短期決戦という大臣の決意を、先ほども参議院選を前にして金融緩和があるかないかというような御議論があったようでございますけれども、いずれにしても、短期決戦の初心を貫いてもらうということを要望して、次に参ります。  次は、中小企業問題でございますけれども、これは政府のほうもいろいろと努力をしていただいておるけれども、倒産はだいぶん多くなった、千件とか、負債総額が千億円をこえるとか、いろいろの問題があります。そしてまた最近では、財投のほうで三月の初めには五百五億円の追加ができるということになったようであります。ただ、この点について私は、どうも中小企業対策、これはいままでの財政政策も、とかく金融に過大期待というものがあるような感じがするのです。と申しますのは、引き締めるときももちろん金融引き締めだけで総需要抑制しようとして、最近に至るまで財政を押えるということを手ぬるくやっておった。今度また中小企業を救済する場合も、金融からということも必要でありますが、まず五百五億円というようなことで、年末は年末で三千四百億円を出すということ、これ自体はけっこうなことで私は一つも否定いたしませんが、それに関連して二つだけ大臣意見を伺いたいと思います。  一つは、金融面というならば、下請代金支払遅延等防止法とかいうむずかしい法律がありますが、この関係で、銀行から幾ら補給してみても、親会社のほうから払ってくれるやつがだんだん手形が長くなったりしてさっぱり要領を得ないということになるのではないか。この点で何としても親会社からの下請代金の支払いをちゃんとやらせるということについての努力が見落とされているような気もいたしますので、その点はどうでしょうか。  それから、もう一つ大事なことは、中小企業を守っていくということから申しますと、そういう金融政策以上に大事なことは、中小企業をそれぞれ技術革新のこの過程の中で大いに専門化をする。それから同時に、大企業が進出してくるのについて特殊契約を結んだらどうかと中曽根さんも言っておられるようだけれども、そういうことも必要でしょうが、より根本的には、やはり商社、大企業その他がどんどん出ていって中小企業の分野を荒らしておるということからいって、やはり日本の経済の将来の大きな展望の中で、大企業、中小企業の受け持つべき分野を大体それぞれ線を引いてやるということで、中小企業が技術的にも経営的にも成り立つようにしてやるという努力のほうが、金融の当面の補給ということも大事でございますけれども、より以上大事ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 中小企業につきましては金融対策、これをやっていることは申し上げるまでもありませんけれども、同時に、御指摘の下請企業に対する支払い問題、これも気をつけなければならぬ問題だと思います。それから同時に、歩積み両建て、この問題も金融引き締め体制下ではややもすると頭をもたげる、こういう傾向がありますので、これも気をつけなければならぬ問題だ、こういうふうに考えております。ただ、いまのところ下請企業に対する支払い問題につきましては、そう苦情を強く聞いておりませんけれども、よく状況を注視いたしまして、そして適当な対策をとりたいと思います。法律もあることでありますから、この法律もフルに活用しなければならぬ、かように考えます。  それから、中小企業と大企業との業務分野、これはやはり何かくふうをこらしたらどうかというような感じがいたします。これは大蔵省の問題じゃございませんけれども、通産省にお願いいたしまして、さような方向の構想を進めたらどうだろう、こんな感じがいたします。
  135. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、過剰流動性の吸収の問題でございますが、まず銀行局長がいらっしゃるからひとつ伺いたいのですが、貸し出しを締めるほうは大いに窓口規制その他をやっておられるが、貸し出した金を回収するということの努力がどうも私は足らないと思うのですけれども貸し出しの回収についてどういう指導をしておられるか、あるいはその指導一つの変化なり刷新なりが行なわれておるのか、その辺をひとつ具体的にお伺いしたい。
  136. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 通常の場合でございますと、貸し出した場合に、その借り入れの時期が参りますとそこであらためてまた交渉が行なわれて、再貸し出しをするかしないか、あるいは手形を切りかえていくかというような形で事態が進んでいくわけでございます。総量のワクを締めるいわゆる引き締め下になりますと、貸し出し増加額ということの中で金融機関にとってみれば選別的に融資をやっていくということで、おのずから新規貸し出しについては困るとか、あるいは何といいますか、特に貸し出し金利の引き上げの場合に、一つの交渉の時点あるいは見直しの時点において、公定歩合の引き上げ後三カ月くらいに新しい貸し出し金利に移っていくというような形で、大体、従来の場合でございますと、そういう金利面での変化ということしか行なわれていないのではなかろうか、かように考えております。したがって、御趣旨のように、新たに貸し出しを回収するというような動きというのは、率直に申しまして、比較的少なかったように思います。  そこで、むしろそういういわば過去の慣行といいますか惰性からくるところの貸し出し態度について、この際、やはり見直していくべきではなかろうかというところから、実は二月末に一つ通達を出して、これによって実際に指導していきたい、かように考えておるわけでございます。その趣旨といたしましては、特に流通関係などについてきめこまかな指導をしていくことによって、いわゆる引き締め下の跛行現象をできるだけなだらかにしていくということがねらいでございます。したがいまして、特にこれからの数カ月間の銀行貸し出し態度というものが物価の動向に非常に密接に関連するという趣旨から、十分注意してもらって、健全な中小企業経営にしわを寄せないようにやりながらも、特に次の点について注意してもらいたいという通達を出しました。  一つは、「業種のいかんにかかわらず、この際、改めて融資先企業の在庫動向の把握に努め、過度に在庫の積み増しが行われていると認められる場合には、新規融資の停止、既往融資分の計画的回収等の措置を的確に講ずること。」特に流通段階の在庫保有が問題になっておるわけでございますので、「卸・小売業に対する融資については、必要最少限の資金にとどめるよう特に厳格に審査を行うこと。」というのが第一点でございます。  第二は、「既に設定済の手形割引枠内の融資等についても、従来ともすれば受動的に貸応じてきた態度を改め、厳格に審査の上、必要最少限の融資にとどめること。」  それから第三番目は、土地関連でございますが、すでに融資してある分につきましても、この際あらためて保有の目的等を審査をいたしまして、手形の書きかえ、約定の更新などについて不適切と認められる場合にはそれに応じないように、また計画的に回収をはかるようにという指導をしております。  もっとも、こういうことは形式的にこれを指導するということでは、実際問題としてはなかなかむずかしいと思います。基本的には、金融機関の最終的な社会的な立場を考えての判断によるわけでございます。こういう通達を背景として、この際、金融機関にいわば一種の特別調査という形で実地指導をしていきたいということで、現在準備をしておる状況でございます。
  137. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは銀行貸し出しの惰性的な慣行を改善するという上からいって、ただいま局長が通達でいわれ、御指摘のあった点、私一々もっともだと思います。ただしかし、どこまでも遠慮がちというか、不十分のような感じがするのですが、たとえば、こういう一つ基準を、別にもう一つ設定したらどうかと思うのです。  それは一つは、無担保貸し付けの問題がこの間からだいぶ問題になっておりますが、調べてみると、全国銀行でも二三%前後のものは無担保貸し出しになっている。都市銀行の場合にはもっと多い。商社に対する場合は、まだ統計が十分どこにもないようですけれども、四割からあるいは五割くらいが商社貸し出しのうちで無担保になっている。これは銀行経営の健全化というようなことなり、あるいは銀行とそうしたものの癒着の問題等から見ても、そういう深い関係があるから無担保でも貸すわけなんですから、そこで、いろいろ問題になっている体質改善という角度から、いま御指摘になった三つ四つのポイントのほかに、一つは無担保貸し出しを一定の計画で少なくしていくのだ、あるいは多いところは半減するのだというような目標を立てて、あわせて回収をさせるように指導されたらどうだろう。  それからもう一つは、これもまたよく問題になっておるわけでございますが、自分の資本の多いところは六〇%、七〇%も系列に貸しておるところがある。問題になったようでございますが、そういうものも抑制させるという一つ基準をつくって、いま御指摘になったいわば事務的な回収促進のほかに、金融のあり方、体質改善という大きな政治的な目標をも加味しながら回収を進めるということはいかがかと思いますが、どうですか。
  138. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに過去の、戦後の二十年間にできてきた経済の秩序を背景として金融の秩序なり金融の慣行ができてきたということでございますので、両者の関係はお互いに相影響することでございます。新しい、たとえば経済の成長を安定的にしていくというようなものの考え方の場合には、それに伴った金融の慣行を確立していかなければならないという御指摘だろうと思います。私どもが大口融資というものについて、この際、新たに考え直していこうという趣旨も、むしろ基本的にはそういう考え方でございまして、現在の物価問題に対応するということももちろん間接的には影響があろうかと思いますが、大口融資のものの考え方というのは、むしろ今後の新しい経済における金融の構造をいかにしていくかという形から取り組むべき問題だろうと思います。  そういうような問題として大口融資の問題もいま検討しておるわけでございますが、しかしながら、銀行あるいは金融機関融資の場合の担保をどう考えるかということについては、私はいささか違ったように考えたいと考えております。と申しますのは、現在金融機関貸し出しの中で、担保のあるものとないものとの状況を見てまいりますと、大別いたしまして、不動産を担保にいたしておるものが大体二割程度だろうと思います。特に、その中では土地建物が全体の中の一三%くらいでございます。その残りは、たとえば有価証券担保、あるいは預金担保、その他でございます。むしろ大きいのは、保証でございますとか、あるいは信用による貸し付けをしておるというのが実態でございます。  私ども金融機関の場合には、一つは資産の健全性ということで、検査の場合には担保というものに対して非常に厳格に考えて指導をしております反面、あまりにも担保主義ということになりますと、またそれなりの問題がございまして、特に中小金融機関の場合には、過剰担保というような問題も厳格に考えていって起こっておる。むしろ適正な担保、あるいは場合によっては信用をもう少し考えていってもいいのではなかろうかというような指導もしておるわけでございます。  たとえば、大企業に対して特に無担保であるというのは確かに一つの問題であろうかと存じますが、しかし同時に、やはり金融でございますので、ある程度信用力というものを総合的に判断してやっていくということも、金融機関として必要ではなかろうか。担保主義ということの弊害を同時に考えていかざるを得ないのじゃなかろうか、かように考えております。
  139. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの局長の御答弁はちょっといただけないのです。一つは、私は過剰担保をとれというようなことを言っているではなくて、無担保のものが多過ぎるということを指摘して、銀行の経営の健全化のためにも、いまの経済の体質を改善するためにも、回収をやる場合にも、無担保のものは減していくという大きな政治目標を掲げてやるべきではないか。これには貸さぬほうがいい、これは回収したほうがいいというような単なる事務的な対案以上に、日本の経済あるいは金融の体質改善をねらいにした、それを含めた貸し出し金の回収という努力があってしかるべきではないかということを言っているんですよ。  そこで、まず、どうも私の真意が局長に伝わらないようだから逆に聞きますが、いま全国銀行貸し出しについて、たとえば全体的に無担保金融が何%あるか、あるいは問題の商社等については特にどの程度の無担保があるか、統計の数字だってないのじゃないですか。ありますか、きちんとしたものが。あれば出してもらいましょうか。
  140. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 四十八年の上期末におきます都市銀行貸し出しを担保別に見た数字で、構成比でお知らせいたしますと、担保のあるものが全体の二九・三%でございます。その担保のうち、不動産担保が約二〇%、それから有価証券預金、債権その他というものを集めまして大体三割でございます。それから四〇%が保証でございます。それから残りの三〇%が信用という形になっております。この保証と信用を集めまして七割が担保なしである、こういう関係になっております。
  141. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が言うのは、問題のあったたとえば商社なら商社というものに対しては、調査がありますかということを言っているのです。いま御指摘の全体の数字は私もわかっておるけれども、いま問題になりました商社のごときは、無担保金融についての調査をやるだけの問題意識があったかどうかを聞いているんだが、ありますか。
  142. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 商社については現在そういう統計はございません。この際調べてみたいと思います。
  143. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が先ほど来言っているのは、日本の経済や金融のあり方を改善しなければならぬ、そういう問題意識を持って、窓口規制をやるにしても、貸し出し金の回収をやるにしても、一つの大きなねらいが根底になければいけませんよということを言っているのです。商社の問題がこれほど起こるという点についての問題意識も十分でないから、商社に対する貸し出しについて無担保がどのくらいあるかということは、いま局長が正直に言われたように、これから調査するのでしょう。私はその問題意識のないことをいま問題にしているのです。そういう意味で、高度成長ということをわれわれはどうしても改めなければいかぬ、これは大臣も言っておられるとおり。そういうことになれば、間接金融というものもだんだんにウエートを減していかなければいかぬ。そういうことになれば、貸し出しについても大いに考えを変えなければならぬし、また貸し出し金の回収についても考え方を改めなければならぬだろう。そういう意味で、私が先ほど来言いましたような集中融資の問題にしても、あるいは無担保金融の問題にしても、いま問われている経済、金融のあり方の問題を含めて、すべての問題を考えなければいかないのではないかということですが、いかがでございますか、大臣
  144. 福田赳夫

    福田国務大臣 伺いまして、非常に貴重な御意見だ、こういうふうに思います。こういう際に、金融機関につきましても、その体質を改善するということは非常に大事なことだと思いますので、精一ぱいひとつ努力してみたい、かように考えます。
  145. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に、これは大臣一つだけお伺いしたいのですが、いまの過剰流動性の吸収の問題について、いよいよ割増金付預金というものも始まるということになり、一兆円とか一兆五千億円とか期待しておるわけでございますが、さらに、大蔵省にも一時あったように承っておるのですけれども、何という名前にするかは別として、たとえば私のことばで言うならば、福祉を中心にして考えるから、福祉定期と言ってもいいし、何でもいいのですが、また、定期でもいいし公債でもいいのですけれども、一〇%くらいの優遇した利子をつけて、これで、確かに一方からいえば金利体系全体に大きな影響もありますけれども、しかし同時に、一方からいえば、ある程度他に影響があるような片寄った政策をとらなければ、中央突破の効果はない。そういう意味で、私はあまり賛成でないが、割増金付預金も考えられた、これで大衆の持っている一般的な購買力というものを吸収するというのは、いまの大蔵省あるいは大蔵大臣としては、大体一応の成果が期待できて、これで終わりだというようなお考えなのか、あるいはさらに第二弾として、いま申しましたように一〇%くらいの有利な金利をつけて、それで購買力を吸収するために、定期預金でいくか公債でいくかは別としまして、購買力を凍結するという次の手もさらに検討される御意思があるのかないのか、その辺だけ伺って終わりにします。
  146. 福田赳夫

    福田国務大臣 一〇%というような高金利の貯蓄手段、これは考えておりませんです。これはいろいろ及ぼす影響が深刻でありまして、とうていこれを採用することはできない、こういうふうに考えます。現行の金利水準の中でどういうことができるだろうか、こういうことぐらいがいまのこの段階とすると精一ぱいじゃないか。そのことにつきましては日夜頭を悩ましておる、こういう状況でございます。
  147. 竹本孫一

    ○竹本委員 現行の金利体系の中だけでどれだけのことができるか、いろいろまあ御苦心をいただいておると思うけれども、いまの体系の中ではぼくはできないだろうと思うのですよ。しかし、これは時間がありませんから、またあらためて論議をすることにしまして、きょうはこの辺で終わります。
  148. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、明八日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十二分散会