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1974-03-06 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月六日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       大西 正男君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君   小宮山重四郎君       三枝 三郎君    野田  毅君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    山下 元利君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       小林 政子君    田中 昭二君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         国税庁次長   吉田冨士雄君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局計画官  小池  力君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   田中 昭二君     岡本 富夫君 同日  辞任         補欠選任   岡本 富夫君     田中 昭二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  所得税法及び災害被害者に対する租税減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  所得税法及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、おはかりいたします。  すなわち、ただいま議題となっております各案について、来たる三月十三日水曜日、参考人出席を求め、その意見を徴取することとし、その人選につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 安倍晋太郎

    安倍委員長 質疑を続行いたします。山中吾郎君。
  5. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、現在の税構造あり方がどうあるべきかということを考えながら、現在提案になっておる税三法について網羅的にお聞きするのではなくて、現在の税のあり方をどう評価するかということを考えながら、家計支出教育費についてどう考えておるのか、また、いわゆる医師の例の必要費、これをどういうふうに考え、どう取り扱っていくのか、さらに酒税あり方、この三つの点を例にしながらお聞きしていきたい、こういうふうに思うのであります。  お出しになっておる資料、その他法案全体を各論的に私が見ても、皆さん専門家のように一つ一つ一〇〇%理解はできないので、それを各論的にやりますと、どうも技術的に矮小化されてきますから、構造的にものを考えながらお聞きしていきたいので、そのつもりで対応していただきたい。大臣がおれば、その基本的な問題についてお聞きしたいと思っておりましたが、おられないので省いていきたいと思います。  まず第一に、大蔵省の現在の税行政に対する基本的な思想について、端的にまずお聞きしておきたいと思います。次官でも局長でもけっこうです。
  6. 高木文雄

    高木(文)政府委員 非常に広範な御質問でございますけれども、いまはいろんな意味において転換期にきておる。これは経済全体が転換期にきておるということと関連いたしまして、税の制度につきましても、一つ転換期にきておるというふうに考えております。  その転換内容というのは、主としてやはり戦後の復興はまず経済復興から行なわなければならない、そしてそれは同時に、特に産業の復興から行なわなければならないということで、昭和三十年代の初めから数年前までにかけまして、税制を通じて企業の体質を強化するということにかなりのウエートが置かれてまいりました。たとえば法人税の税率などにいたしましても、四二%から一時は三五%まで下げられるということであったわけでございます。その後、日本経済が国際的にもたいへん強くなったということもあり、一方、国内におきまして、もう少し生活といいますか、人間重視考えをとるべきだという考え方が高まってきたことと関連いたしまして、よくいわれております福祉型の政策漸次転換がはかられてきたということと関連いたしまして、税制におきましてもそういう転換が起こってきておるということが、一番大きな最近の動きではないかと思います。  と同時に、もう一つの問題は、税の構造としては、所得、収入に着目した直接税が戦後ずっと定着してまいりました。戦後の混乱期におきましてたいへん混乱を起こしておりました申告制度というものも、だんだん定着をしてまいりました。その結果もありまして、所得税法人税は、まだまだたくさん問題はございますけれども、だんだん慣熟しつつあるということはいえると思います。そういうこともありまして、税構造の中における直接税のウエートは高まってきたわけでありますが、これはいつの時代にも言われますように、直接税と間接税との適当なバランスというものが必要である。直接税が非常に重くなりますと、やはり負担感というようなことにも関連してまいりますし、その結果として、実行上の一種の回避行為のようなものが起こってまいります。また、制度上もなかなか累進構造を維持できないというような形になってまいります。そういうことも関連いたしまして、租税構造の問題として、やはりもう一度間接税を見直すべきであるという動きが出てきておるということが、最近の特色であろうかと思います。  これは、かなり税の中のプロパーの理論でございますが、しかし、間接税、直接税という問題は、同時に、どういう形で負担を求めるかということではありますけれども国民の一人一人の負担に影響する影響のしかたが違うわけでございますから、そういう意味におきまして、今後とも一つの問題になってこようかと思っております。  お尋ねのことにお答えしていることになるかどうかわかりませんが、最近の問題点ということをあげますならば、その二つの点が問題ではないかと思うわけでございます。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)委員 局長の御答弁をこっちで整理をしてみますと、直接税、間接税バランスの問題というのは各論的なものなので、私のお聞きしたのは、現在の税構造をささえる基本的な大蔵省考え方は何かということなんです。最初に言われた福祉社会への構想というそこにあるんだと思うので、もう一度確認したいのです。  あなたのほうの国税庁から出しておる「私たちの税金」、非常にわかりやすいのですが、これに皆さん思想が出ているのだと思うのです。その一番初めの安川長官の序文の中に「租税福祉社会への参加費用である」と、明確にその基本思想が出ている。私はこれが基本思想だろうと思う。大蔵省の、現在の税をどういうふうに改正し、どういう方向に持っていくかという基本的な思想は、「福祉社会への参加費用である」という基本的考えが根本ではないのか。それはどうですか。その辺を確認して質問に入りたい。
  8. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いろいろな考え方があると思います。安川長官がそう書いております点だけがいまの大蔵省の税についての考え方のすべてではないと思いますが、非常にポイントをついておるという意味においては、私も同感でございます。
  9. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これだけではないのですか。これは国税庁責任で書いておるものなんですから、もう一度聞きます。
  10. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在の税の問題として、福祉社会への対応ということが一つの大きな問題であるということは間違いないと思います。しかし、税の問題を福祉社会への参加費用だということだけで見ていいかどうかという点については、またほかの見解を持つ人もあろうかと思います。しかし、現時点における認識としては、何といいますか、非常に当を得ているということではないかと思うのでございます。
  11. 山中吾郎

    山中(吾)委員 何かはっきり言えないようですが、現在の税の構造は、いろいろの歴史的なものがあるし、そのものがこの定義にはまらなくていいと私は思う。ただ、毎年度皆さん改正を出される指導理念として、そういう福祉社会への参加費用という方向でお出しになるのかどうかということを聞いているのですから、現在の税構造そのものが、これに合わぬものがあってもいいのです。指導理念はどこにあるか。基本的思想ですね、それを聞いておるので、ずばりそういうふうに答えられないについては、別な何か基本思想もプラスになっているのかどうか。はっきり言えないようでありますが、もう一度聞いておきます。あまりかたく考えなくていいのです。
  12. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在の経済財政考えます場合に、福祉の問題というのが非常に中心課題であるということは間違いないところであると思うのでございますが、その福祉社会の実現ということを考えます場合に、財政の中でそれをどう取り上げていくかというときに、これは税だけの問題ではなくて、歳出サイドといいますか、そういう問題がございます。福祉社会を実現していく上において、財政の中で税がどのような役割りを果たすべきか、それから歳出がどのような役割りを果たすべきか、もっと申しますというと、今後社会福祉を充実していく場合に、たとえばもろもろ社会保障制度を進めていく場合に、あるいは教育制度をより充実していく場合に、どの程度税という形でいわば財源調達を行なってそれを実施していくのがよろしいのか、それからどの程度関係者自己負担によって行なわれることがよろしいのか。その場合の関係者というのは、保険の場合には雇い主も入りましょうし、従業員自体も入ると思うのですが、そういった点についてのあり方というものが、現在の段階において、私どもの間においても、また政府全体といたしましても、まだ必ずしも明確でない点がいろいろございます。したがって、税だけのファンクションによって福祉社会の建設をやっていくということはなかなか実態に合わないわけでございまして、財政全体を通じてそれを実現していかなければならぬわけでございます。  そこで、ただいま私が申しました意味は、その福祉社会への参加ということだけで税をとらえることでよろしいかどうかということについては、私は率直に言って、若干疑問を持つわけでございます。ただ、今日的課題としては、福祉社会への参加費用だという認識のもとに税の問題をとらえるということは、最も今日的テーマをとらえているという意味において、そういう表現はよろしいというふうに理解できるのではないかと思うのでございます。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)委員 税ということばで聞くからそうなったので、現在の財政の基本的な思想はどうかと聞けば、あるいはよかったかもしれない。  いずれにしても、弱肉強食の十八世紀、十九世紀のいわゆる公式的な資本主義国家でなくて、貧富の差を縮め、所得の格差を縮めて、福祉というものを国の理念として考えていく、いわゆる福祉国家思想というものが、現在日本の国政の大体の常識になっておるのではないか。その一環として税の思想もあって、いろいろの法案皆さん提案理由の中に、福祉政策推進のためということを一番大きく取り上げて税改正提案がされておるから、そういう立場でこの法案を評価して、私なりにこれはよろしい、これはどうだろうという立場で一度見てみたい、そう思って申し上げておるのです。あまりかたくならないで聞いてもらっていいです。  そこで、そういう点から、現在の憲法が制定される前とあとで、皆さん税行政あり方について改めたものがあるのですか、ないのですか。前とあとは同じなのか。現在の憲法というのは、十八世紀自由権保障のほかに、二十五条の生存権保障、二十六条の教育権保障、あるいは労働権保障というものがあって、弱肉強食国家観夜警国家から、国民福祉を主眼とする国家観に移る基礎として現在の憲法があるから、資本主義社会主義かというのでなくて、憲法のささえる国家観というものは福祉国家であろう、そういう中に、いろいろの人権保障が出ておる。自由権のほかに、そういう文化的生存権保障まで入っておるわけである。そういう憲法ができたあと戦前の、明治時代からの税のあり方を反省して、どこか変えておるか、そのままなのか、お聞きしたい。
  14. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現実に戦後の憲法ができましたというところから、直ちに右から左にぽんと変わったということが指摘できるような事実はないと思います。ただ、憲法理念が、すべての政治なり経済なり行政なりを通じましてだんだん具体化していくという過程を歩んでいるわけでございますから、それに対応するように、税の構造も変わってきておる。たとえば、具体的には戦前——戦前と申しましても、非常に古くは明治時代日本の税の中心をなしましたのは、御存じのとおり、地租酒税でございました。地租酒税というのはどういう意味かと申しますと、結局、お米というものが中心になっておった。それは地主さんから国が徴収したということでございますけれども、その地主負担は、あるいは小作料という形を通じ、あるいは酒の消費者負担という形を通じて、大衆が負担するという形のものであった。そういう酒税なり地租なりというものが、非常に税の中のウエートが高かったわけで二ざいます。  それが漸次、これは新憲法のもとにおいて急に変わったということではございませんので、その前から漸次変わってきておりますけれども所得税制度ができ、法人税制度ができ、昭和十五年の税制改正によりまして、ある程度日本税制は整備されました。  さらに、戦後、憲法が変わりますと同時に、もろもろの諸制度が変わることに伴いまして、所得分配についての観念も変わってまいりました。戦前の財閥に見られるような大規模のお金持ちさんというものは姿を消したわけでございますし、戦前における所得分配考えと戦後における所得分配考えとは、すっかり変わってきたと思います。それに対応して、具体的に所得税制度考えます場合にも、また所得税にどの程度ウエートを置くかという点におきましても、また所得税の中でどんなふうな所得の再分配を頭に置いて所得税考えるかという場合におきましても、また財産税考える場合におきましても、やはり戦前と戦後とではたいへん変わっていると思います。  それは私は、憲法におけるものの考え方が変わりましたということを受けまして直に税のほうを変えたということではなくて、憲法理念に基づいてもろもろ行政制度財政制度社会制度というものが変わっていくのに伴って、税もそれに対応して変わっていっているということではないかと思うのでございますが、たとえば三十年前、五十年前、七十年前の税の構造と並べてみますと、かなりはっきりと変わってきた点を見受けることができると思うのでございます。
  15. 山中吾郎

    山中(吾)委員 若干そういう変わったということの説明はわかるのですが、もっと主導的に大蔵省憲法を意識して、構造的に改造をしていこうという意欲をもっと持ってもらいたいと私は思うのです。所得の多いところから多く税金を取り、取った税金は法制によって所得の少ないところに流していくという財政が、福祉社会への参加費用としてのあるべき姿だと思うので、その点はいま局長が説明した考え方の奥に、一応明確に意識しなくてもあるように思うのでそれはいいのですが、私、これをなぜ言い出したかというと、憲法との関係において、この所得税のほうの改正に一歩前進すべきものがあるのではないか、それがなかなか形に出てこないということを強調したいので実は取り上げた。  一つは、憲法国民権利人権として保障されたものを実行する費用だけは、これは税制関係においても課税対象にしないという思想が何か常識化さるべきではないのか。憲法の規定した権利人権を行使するために所得から支出するものは、せめて減免をすべきではないか。営利事業に対しては奨励の意味において特別措置がたくさんあるが、もっと国家観の上に立って、憲法理念の上に立って、憲法保障しておる国民人権を行使するについての費用、これは税制からも考えるべきだ。  その中で、二十五条の生存権一つとして、家計から支出する医療費については、若干減免しているのですね。医療費については控除しておる。しかし、二十六条に教育を受ける権利という保障がある。その家計からの学習費に対して免税をするという思想がなかなか生まれてこない。私は税制調査会の答申も読んであるのです。せめて非常に家計に重い負掛をかけておる子供の学習費については、特別措置で、これこそいいほうの特別措置思想減免すべきであると思うのだが、なかなかこれが税制思想の中に常識化していないことは、私にとっては非常に遺憾なんです。局長、いままでの経過も含んで、率直にあなたの考えをお聞きしたい。
  16. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この憲法二十五条、二十六条をどういうふうに経済なり財政の上に実現していくかという場合に、特に財政の面で申しますと、日本の場合には、教育については主として歳出面で見てこられたというふうに思います。かなり早い時期に義務教育が全国的に徹底をいたしまして、そしてその義務教育費用というものについて非常に長い歴史がございますけれども、やはり漸次、国、都道府県の財政の中で教育費というものはウエートを置いて考えられてきたと思うわけでございます。戦後におきましても、いろいろな形でそれが拡充をされてきたわけでございます。たとえば、ただ義務教育段階でどう考えるかという問題と、それから現在の高等学校なり大学教育なりについてどう考えるかという問題については、財政の面ではかなりウエートに差があるという見方をしておったということはいえると思うのでございます。  これを税のほうでどうとらまえるかという問題でございますが、今日までの非常に大きな流れとしては、日本の場合には、教育の問題というのはどちらかといいますと、財政の中では歳出の問題としてウエートを置いて考えられてまいりました。所得税考えますときに、最低生活費保障というような意味で、基礎控除配偶者控除扶養控除という制度がございますが、その控除制度考えるときに、特に教育だけを抜き出し考えるということじゃなしに、全体として考えるということで今日まで組み立てられてまいりました。したがって、教育費控除というような形でいまの税の中に組み込まれているものはございません。そのことのよしあしはいろいろ御批判があろうかと思いますが、大きな流れは、私がいま申し上げましたような意味で、財政ではどちらかというと歳出の面での受けとめ方のほうをより重視して今日まで来ているものというふうに理解をいたしております。そのことのよしあしについてはいろいろ御議論があろうかと思いますが、大きな流れとして、そういう流れをたどってきたということではないかと理解をいたしております。
  17. 山中吾郎

    山中(吾)委員 客観的に答弁されておるので、よそごとのような答弁になってしまうのですが、あなたはやはり税政策推進責任者ですから、自分の考え方としてお答え願いたいと思うのですが、現在の特別措置の中には、他の人権を阻害するようなものにさえ免税をしておる。憲法保障された命を守るための二十五条の医療費、命を育てる教育保障するこの人権を行使するのに、薄給のサラリーマンの所得まで税の対象になるというふうなことは、これは思想上もよくない、精神衛生上も。こういうものを考慮するのが現代の政治思想として一番大事なことではないかと思うのです。  文部省のほうから、四十九年度の要求の中に、家計支出修学費免税についての要求があったと聞いておりますが、ありましたか。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これは、教育費控除的なものを設けたらどうかという御提案がございました。そういう御要求がございました。
  19. 山中吾郎

    山中(吾)委員 少し内容を説明してください。
  20. 高木文雄

    高木(文)政府委員 金額を示して一人幾らという形ではないのでございますけれども高等学校までを含めて、修学児童を持っている親の所得から一定金額を控除する制度を設けたらどうかというものでございます。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)委員 局長は見ていないんだな。
  22. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この問題は、率直に申しますと、一昨年の十二月に大蔵大臣に前愛知大臣が就任されましたときに、教育費控除を設けてはどうかということを就任早々のときに明らかにされました。それで、実は愛知大臣は、前に文部大臣をしておられますときに、予算のことに関連をいたしまして閣僚折衝で、ずいぶん前のことでございますけれども大蔵大臣との間で教育費控除というものを強く主張されたことがございます。  そこで、四十九年度の問題といたしましては、私は愛知大臣との間で、教育費控除論を盛んに議論をいたしたのでございます。そういう意味で、四十九年度において教育費を税の上においてどのように受けとめるべきかという議論を展開いたしました。文部省との間でその問題を論議したということよりは、私どもの中においてそういう論議を展開したということのほうが印象に強く残っております。それは事実でございます。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この当時の十二月の予算編成の時期に、その当時の新聞なんですが、これはそうすると間違いなんですか。  「文部省は、子ども教育費必要経費として所得控除する「修学費控除の新設」などを柱にした四十九年度税制改正要望事項をまとめ」これを提出した。「さし当たり義務教育以外での授業料学級費実験実習費修学旅行費などの学校納付金について、一定限度内での所得控除をするよう要望している。全児童の約六割が幼稚園に入り、八割以上が高校に進学している現状から、義務教育以外であっても「教育費支出は不可避的な必要経費の性格を有する」としている。  幼稚園高校大学などの一人当りの学校納付金は、文部省の四十九年度試算によると、国公立の場合は幼稚園年平均二万円(私立は七万円)高校二万円(同十一万円)高専二万円(同十二万円)大学・短大四万円(同二十万円)。同じ試算世帯主が四十五−五十四歳の勤労者、年収二百四十八万円の家庭を例にあげると——上の子が私立大、下の子が公立高校に入っている場合の所得税減免額は計四万六千二百円、二人とも私立なら六万五千百円、二人とも国公立だと一万二千六百円の減税になる計算という。  この修学費控除は同じ内容で昨年も要望が出されているが、日の目を見なかった。この修学費控除による総減免推定額は国税七百三十二億円、地方税三百六十五億円になる。来年度減税経費控除を主体にしたとしても、減税相当部分がこの修学費控除で占められるので最終調整にはなお曲折が予想される。」と書いてある。  ここまで具体的に書いておるのですから、大蔵省はまじめにこれを論議したと私は推定をして質問しているのですが、局長はわれ関知せずというような答弁のようでありますけれども、ちょっとふまじめだと思いますが、もう一度答えてください。
  24. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昭和四十九年度の税制改正の際に、教育費の問題を税、特に所得税でどういうふうに受けとめるかということは、非常に大きな問題の一つでございました。結論的には、御承知のように、従来はいわゆる基礎控除が二十一万円、配偶者控除が二十一万円、扶養控除が十六万円ということで、基礎控除配偶者控除扶養控除の間に五万円の差額がございました。それを今回、基礎控除につきましては平年度計算で二十四万円にいたしましょうということで、三万円を引き上げることにしたわけでございますが、扶養控除につきましては十六万円から一挙に二十四万円にするということで、八万円上げることになったわけでございます。それは、片一方の基礎控除配偶者控除の上げ幅は三万円で、扶養控除の上げ幅は八万円である、三万円と八万円で五万円の差があるということに結論はなったわけでございますが、そのような結論になりました一つの大きな理由は、いまの教育費控除の問題、修学費負担の問題ということが要素になっておるわけでございます。  もともと従来の考え方からいたしますならば、家族構成一人の場合の生活費と、二人の場合の生活費、三人の場合の生活費、四人の場合の生活費というものは、人数の増加に応じて二倍、三倍、四倍になっていくのではない。漸次増加はいたしますけれども、逓減的に増加をするんだという考え方が常識でございました。そのこともありまして、基礎控除配偶者控除扶養控除というものは差額が設けられておったのでございますが、その後配偶者控除扶養控除の中から抜き出されまして、扶養控除基礎控除の間の額にきめられた時代がございますが、最終的には基礎控除配偶者控除が同じ額になりました。基礎控除配偶者控除は同額になりましたが、扶養控除だけが低い額であったわけでございます。現に生活保護の基準をつくります場合にも、一人の場合、二人の場合、三人の場合、四人の場合と考えてみますと、その基準生計費は逓減的に増加をするという前提のもとに生活保護基準が組み立てられておるわけでございます。そういう生活費の実態と、それから教育費負担あり方というものと、それから所得税におきますところの控除のあり方というものを組み合わしてどのようにすべきかということを議論いたしました末で、今回の改正は従来のものとはかなりその点では画期的な意味を持つものでございまして、扶養控除基礎控除配偶者控除と同額にすることにしたわけでございます。その段階におきまして、文部省のほうから、ただいま御指摘がありましたような趣旨での要請なり要求なりがあったことは事実でございます。  しかしながら、一方、私どもの間では昨年、というよりも、昨年の春から四十八年度の税制改正の御論議が当委員会においてありました当時から、すでにこの問題はいろいろ議論が出ておりました。大体かなり早い時期から扶養控除基礎控除配偶者控除と合わせようじゃないかという角度で問題が進んでおりましたので、その辺の事情を文部省ともよく話し合いをいたしました。そういうことであれば、従来に比べれば、幼児なりあるいは義務教育なり、高等学校なりへ行っている子供を持たれる家庭についての税負担は、そうでない家庭の場合に比べて相対的に相当改善されることになるからということで御了解を願って、それならば、本年度は従来に比べれば非常に改善である、実質的に教育費控除が認められたことと同じような結果になる。先ほど御指摘の数字と、ただいま私が申し上げましたような五万円という数字と比較していただきますと、そのことが証明できるのでございますが、そういうことを通じて、それでは特別に控除を設けることをしないが、控除額をそういうふうに直そうということで、四十九年度改正が組み立てられたわけでございます。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一般の控除をしたからそれでいいのだというその思想を変えなければならぬのじゃないかということで私は論議をしているので、大体、植林に対する経費なども特別措置にしている。四十年あとに植林の効果が出て、そういうために、現在の消費を節約をして植林に投資をするということはたいへんなことである。そういう植林の投資に対する特別措置は正しいと私は思う。教育だって、これは植林投資と同じような教育投資という思想に立てば、三十年、四十年後に教育効果が出るのであり、あるいは死後にその子供が日本の文化の伝達日本の文化を伝承して、また新しい文化を創造していける人間として育てていく。そういう教育、それが教育ということになる。現在の物価上昇の中で、子供を大学までやるのにどれだけ費用がかかるかわかりますか。それを親の愛情ということだけで、かってにしろというわけにはいかない。  そこで、私は、憲法の根拠を持ってくるわけなんですが、その特別措置という政策目的の例、その措置を考えるならば、営利事業に重点を置いて、歯どめのない経済成長政策で、公害を生んだり、物価の暴騰を来たしたりするようなことをしている。教育費というものは、いわゆる営利の立場に立っての植林経費に対する措置以上に、何十年後にその投資の効果が出る教育投資、これはもっと広く言えば、文化を伝承し、身につけて、そうして新しいものをつくっていくための投資なんです、これをなぜ減免対象に特に考えることが不適当なのか、そこら辺をよくわかるように説明してもらいたい。だからこそ、私は一番最初に現代の税の思想は何だ。福祉社会への参加費用だというあなた方の指導思想というものが、大蔵省出版の本の、しかも一番最初に書いてあるから、それを確認して私は質疑をしているのです。
  26. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃることはよくわかるわけでございます。ただ、それではその教育の問題なら教育の問題に限って、これを税制の上にどう取り上げるかという場合に、あるいは教育費控除という制度でそれを評価をして、制度的にそれを組み立てる、あるいは特別措置で何らかの措置をするということをすれば、それは教育について税制上何か考慮したことになる。しかし、本来の制度であるところの扶養控除制度というものの額がいかにあるべきかということを考える際に、教育というものを頭においてきめられるという今回のようなやり方をしたという場合にも、それは税として、福祉の問題、教育の問題を受けとめたことにならないというわけではないのではないか。そこは新しく何とか控除制度というものを設けるということによってそれを受けとめる方法もございましょうけれども、同時に、従来ありますもろもろ制度の中でそれを特別に掲記することはしないけれども、額の算定上、最近のような教育費の実態を考慮して、その点を思い切って、先ほど申しましたような五万円なら五万円という額を増額してみるというやり方もあるのではないかというふうに理解をしておるわけでございます。  なくなられました前の大臣文部大臣をやっておられたころから、一つのぜひ実現すべきことであるということで、教育費の問題については、私ども非常に強く大臣からその必要性を説かれたのでございまして、そしてその受けとめ方としては、従来から主張されていたような教育費控除という形で受けとめる方法もあるだろうし、扶養控除を直すという方法で受けとめる方法もあるだろうし、その辺はいろいろ方法があるだろうけれども、とにかく教育費の問題に重点を置いた税制改正を行なうべきであるということについては、強く御指導、御指摘があったのでございます。  私どもの今度の改正は、ある意味では、それをすなおにそのまま受け入れたというつもりでございまして、他の控除に比べまして三万円対八万円という関係に、基礎控除配偶者控除が三万円であるのに対して扶養控除が八万円という改善幅にするという仕組みにいたしたのは、そういう趣旨であるわけでございます。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 愛知さんの思想、私もよくわかっている。文部大臣のときにわかっているのだが、そういう思想を税の中にあらわすのには、医療控除に対して教育控除というふうに独立の項目として出さないと、思想というものが税の上にあらわれないと思うのです。出したならば、どれだけ国民にいい影響を与えるかわからない。  現在の経済政策に片寄った特別措置に対して、あなた方が言っておる福祉社会への参加費用としての思想を具体的に示すのにこれくらいいいものはないじゃないか。客観的に幾らでも算出できる。基準教育費が出せる。私は将来に向かってそういう思想に一歩でも二歩でも前進をしてもらいたいし、そういう考え方をもっと掘り起こすべきであるというので質問をしておるので、いま直ちにどうということではないが、これはとにかく税の特別措置の問題として、今後とももっと関心を深めてものの考え方を進めながら前進をしてもらいたいということを特に要望しておきたいと思うのです。  現在一人の子供を幼稚園から大学まで出すのにどれくらい家計からの支出が必要かというので、お茶の水女子大学教授の伊藤秋子さんが出しておる数字を見ると、四十八年度で四百十万円の家計からの支出費用が要るのです。これは養育費ではないのです。先ほど言った養育費とは全然質が違うのですよ。授業料とかそういう純粋の教育費が四百十万円要る。数年前の物価の低いときには二百三十八万円であったのが、四十八年には四百十万になっている。それを扶養控除の中にただ入れて、それでちゃんと控除したんだというわけにいかないじゃないか。また、思想的に、教育控除を出すことによって、国政の思想福祉政策に一歩前進したということが初めて国民にわかるような説明になるのではないか。  税に取り上げるのは不適当だ、これは予算支出で処理すべきものだ——予算支出で処理すべきものは、学校施設の充実であるとか、施設設備の問題、教員の給与の問題なのです。父母の支出に対する措置の問題は別途の考慮の中にすべきではないかと思うので、その点は、局長思想が非常に昔からのままで一歩も前進していないなうに思うのですが、ことに、今度の税制改革、所得税の改革で、世論の中では、部課長減税ではないかとか、金持ち減税ではないかといわれて非難をされておるのであるが、それでもなおかつ皆さんのほうで、その非難を受けて、なお現在の所得税改正をなぜ出しているのです。それをまずお聞きしたいのです。私は家計教育費と非常に深い関係があると思うので、なぜ部課長減税、金持ち減税といわれておる現在の所得税改正出しておるか、あなたの動機を説明してください。
  28. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その前に一つお答えをいたしておかなければならないのでございますが、教育費の問題を何らかの形で税制に受けとめるべきであるという立場に立ちました場合に、今回の改正案で御審議をお願いしていますような形で、つまり、扶養控除を充実するという形がよろしいか、それとも教育費控除というものを新たに設けることがよろしいかということは、両方あり得るわけでございます。どっちでなければならないという決定的なものはないわけでございます。  その場合に、山中委員のおっしゃいますように、教育費控除というようなものを設けるほうが思想がはっきりするではないかという点は、おっしゃるとおりでございます。そういう意味で、新しい控除制度でありましても、そういうものを設けたほうがよろしいのではないかという考え方一つございます。  しかし、一方におきましては、現在でも現在の税制というものが非常に複雑である、もっと簡素にできないか、いまあります控除もでき得べくんばこれをやめる方向にして、そして基礎的な控除額をふやすという方向にしたほうがより簡明になるのではないかという議論があるわけでございます。  また、教育費控除に限らず、他にいろいろな意味での生計費控除の御要請が各方面からいろいろあるわけでございまして、そういうことを総合的に考えまして、おっしゃるように思想税制の上ではっきりしたほうがよろしいという考え方もございますけれども、そういう形をとりますと、果てしなく現行の制度が複雑になるおそれがあるということから、実体的に教育費用にいろいろ負担の多い家計の税負担が軽減するように考慮しながら、しかし、そうかといってあまり制度が複雑にならないようにということも一方において考えましたのが、配偶者控除基礎控除扶養控除を同額にし、扶養控除の上げ幅を大きくしていくということでございまして、それは御批判はあろうかと思いますけれども、そこに教育控除というような看板を掲げることによって初めてこの思想がはっきりするということではなくて、そのいろいろの控除額の算定の過程において、それを考慮に入れた計算が行なわれるということも一つの方法であろうと私ども考えたわけでございます。その点を追加的に説明をさせていただきたいと思います。  次に、ただいま御質問の重役減税、部課長減税、金持ち減税ということの批判を受けながら、なぜそれをしいてしたかというものの考え方を聞きたいということでございますが、その点は、まず第一に、所得税の非常に重要な任務といたしましては、所得の再分配機能ということがあるわけでございます。つまり、低所得層からは税をあまり多くいただかない、所得の大きい方からは相当いただくということを通じて、国民間の分配の調整という機能が所得税にございます。これは税制全体としてそういう役割りがございますけれども、その中でも所得税が最も再分配機能を多く負っているものでございます。  そこで、再分配機能をどの程度に働かしたらよろしいかということが、所得税の組み立ての場合に最も慎重に検討しなければならない点なのでございますが、再分配機能が強くなれば強くなるほど、ある意味におきますと、たとえば勤労意欲が失われてくるというような問題がございます。それからまた、もう少し具体的には、いろいろな形での租税回避行為が行なわれてくるということがございます。いわゆる脱税ということではございませんが、いろいろと回避行為が行なわれてくるということがございます。  そこで、現在を見ておりますと、たとえばベースアップのときに、給与が一割五分なり二割なり二割五分なり上がるということで労使間の交渉が行なわれますという場合に、それを所得階層別にどういうふうに分けるかというような交渉が労使間に行なわれるわけでございますけれども、だんだん税の累進カーブがきつくなってまいりますと、その賃金分配を行ないます場合にも、ものごとがゆがんでくる。つまり、たとえば平均一割上げましても、平均二割上げましても、税引きで考えますと、その上がりました給与の持つ意味というものがすっかり変わってくるということがあるものでございますから、一方において正規の賞金での分配だけではものが片づかないということで、言ってみれば、第二給与的なものが発生してくるという時代にだんだんなってきておるのでございます。そういう現象から見まして、どうも最近は、まあ部長さん、課長さんあたりを中心にして、少しくこの分配機能が強くなり過ぎているのではないかというふうに私ども理解をいたしておるわけでございます。  そこで、それを数字的にいろいろ当たってみましても、たとえば、これは適否は問題でございますけれども、諸外国における所得税の累進カーブと日本の累進カーブを描いてみましても、どうもやや最近は急激にカーブが、累進度が高くなってきております。また、過去におきますわが国の所得税の累進カーブと四十八年度の累進カーブを描いてみましても、著しく高くなってきております。過去において、非常に大きな改正が行なわれました昭和三十二年の税制改正のときと今日とを比べてみますと、現在の収入金額で四百万円から五百万円の間ぐらいの収入階層から以下の収入階層につきましては、昭和三十二年から四十八年までの物価上昇率よりも所得税の軽減率が大きくなっておりますけれども、それをこえますと、物価上昇率よりも所得税の軽減率が低くなっております。つまり、大体四百五十万ぐらいを境にいたしまして、物価との関係で考慮しただけで、税負担昭和三十二年よりも実質的に重くなっているというようなことがあります。  そういう意味で、現在の、四十八年度税制におきます所得税の再分配機能というものは、少しくきつ過ぎる。そのことがいろいろな形で弊害を生じてまいりました。たとえば、しょっちゅう御指摘を受けております利子の分離課税の問題とか、土地の分離課税の問題とか、いろいろな分離課税の問題を本則の総合課税に直すべきであるというような議論がございますけれども、現在のような累進カーブを前提にいたしますと、あまり累進カーブがきつ過ぎるために、なかなか分離課税を総合課税に戻すことがむずかしいというような現状にもございます。  そういったことをいろいろ考慮いたしまして、何年かに一ぺんはやはりこの分配構造累進構造を直す必要がある。毎年毎年物価調整減税ということで課税最低限の調整だけをやっておりますと、それをやればやるほど分配カーブはきつくなりますから、これを適宜是正する必要があるという考え方でございます。その意味において、現象的には部課長減税というようなことになりましても、それは何年かに一ぺんはそういう思い切った構造的改善をする必要があるということで、今回の所得税の手直しの機会に、相対的に累進カーブを、税率だけでなくて、控除と税率と組み合わせました結果の累進カーブの上界率というものをなだらかにするということに、非常にウエートを置いて考えたわけでございます。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いろいろ長々と御説明があったのですが、部課長減税といわれることについて、私はある意味においては理解をしているのです。その時期は支出が多い。だから、収入の分について累進税を採用した場合に、課税をされるほうからいえば、非常に重圧感がある。生活必要経費が多い人が、重圧感を感ずるはずですね。その場合に、三十代から四十代の人が大体年二百万から三百万の収入になっておる。納税人口の比率からは七・六%であるが、納税額は二〇・三%になっている。そして、そういう人たちが非常に重圧感を感じておるというようなことが、皆さんのほうでこういう三、四十代の人々に対する累進税の緩和を考える実態であると思うのですが、それなら重圧感を感ずる家計支出の一番大きいものは何か。  ちょうど子供が大学に入るときの教育費が一番重圧感があるのじゃないか。ぼくはそこを言うんだ。小中高は大体月二万、三万でいいのであるが、大学に入れば年五十万、六十万は一度にかかる。おそらくこの教育費が、そういう中間の、三、四十代から五十に至る、二、三百万の収益のある人が税に対して重圧感を感じている一番おもなものである。  住宅については、月給が高くなったから倍の家賃のところに入るというふうなことはおそらくしないので、その必要経費はそう変わらない。しかし、同じ本省の役人でも、親譲りの住宅を持っておる課長と持っていない課長の話を聞くと、精神状況が全く違う。それほどいわゆる衣食住足りて礼節を知るの住が抜けておることはわかるんだが、しかし、その給与の上がるに応じて大きい住宅に入るわけではないんだから、必要経費は変わらない。だから、基礎控除とか何控除というものによって——私は、一般の特別措置はそれでいいと思うのですよ。  しかし、教育費というものが急に何倍かになるというところに、あなた方が今度の税改正で部課長減税といわれても、なおしなければならぬという実質上の理由があるのではないか。そういうときに教育控除というものを特別措置のほうに持ってくれば、そういう非難を受けるような税改正をしなくていけるのではないか。だから、特別措置の場合に、収入だけに着眼するのではなくて、支出の中で、しかも、親の生きがいは子供の教育でしょうから、あらゆるものを犠牲にしてそれを最低の必要経費として支出する、その教育費考えておけば、矛盾のない累進課税の改正ができる。  ところが、その教育費というものは、あなた方の長い偏見の中で、特別措置対象として不適当だとか、あるいは子供を学校に出さない者との不公平だとか、そんなことをいえば、大体企業に対する特別措置はみなそうである、やっていない人については何も特典がないんだから、その辺の考え方に大きな間違いがあるのではないかと私は言うのである。一千万以上の収益のあるような人たちは、これはもっと累進課税をしてもいいが、四十代、五十までの人々は、たとえば、二十七で結婚をして、三十で子供を生み、四十八になったときは子供が十八歳で大学に入る。そのときに非常な税の重圧感を感ずると私は思うので、申し上げておるのである。  教育控除を入れることによって非常に繁雑になるというふうなことも、これもあとでの理屈なので、皆さんのやっておる企業に対する控除なんというのは、私は見てもわからない。耐火建築物に関する何々、公害に関するもの、あるいは登録免許税についての、こうずっと並べても、幾らでもあるじゃないですか。教育費一つ入れたために混乱をするという理屈は、一つもないじゃないか。そこのものの考え方を角度を変えていくことが、この教育控除という問題の一番大きな課題ではないかと私は思うのであります。わかりますか。  だから、現在の福祉社会という一つ思想と、憲法の設定に基づいたものの考え方と、現実に皆さんで部課長減税といわれるようなことをしなくて措置するためにも、この教育減税教育に対する税制上の手当てがされるべきではないかということを私は主張しておるのであって、この法案の直ちに修正ということを論議しておるのではないですから、未来に向かって角度を変えて、国民が重圧感を感じないようなすっきりした税改正をするためにも、教育控除の問題を真剣に検討してもらいたい。  次官は途中で来たから、中間の論議は聞いていなかったと思いますが、あなたの御意見を聞いて、次に移りたいと思います。局長答弁をしてください。
  30. 中川一郎

    ○中川政府委員 この問題はしばしば議論のあるところであり、大蔵省としても真剣に考えておるところでございます。ただ、山中先生御指摘のように、一つには、税金を納められない方が教育している場合には恩恵がない、税金を納められるような力のある人に恩恵を加えるというアンバランスの問題も配慮しておかなければならないと思いますし、それから個別の事情をしんしゃくしてこれを織り込んでいくということになりますと、ここにも一つの問題がある。  しかし、教育問題がたいへんであるという背景はわれわれもよく承知をいたしておりまして、そこで、扶養者控除をことしは十六万から二十四万円、五割アップの八万円、従来にない控除をいたすことにいたしたのも、そういった背景があったからでございます。しかし、今後とも、教育問題について父兄が非常な負担をしていらっしゃる実態もありますから、今日この制度をやるということはまだ言いがたい状況にありますが、十分考えていきたいと思っております。
  31. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先生の御指摘の点と私ども考えとは、基本的には、教育に重点を置かなければならない、教育のためにいろいろ支出が多い家計の税負担を軽減しなければならないという点においては共通でございます。ただ、それをどう表現するかという点で、先生のおっしゃるように、もっと理念を明確にせよというところをおっしゃっているので、その点にいま議論のすれ違いがあるということでございます。  先ほどおっしゃいました、子供を学校にやっている中堅階層の家計の税負担を軽減するということは、それは一つの表現では扶養控除の額をふやしたということでございますが、全体の構造を見ましても、たとえば収入金額三百万円の場合のサラリーマンの軽減率を見ますと、夫婦ものの軽減率は平年度分で四二%になっておりますが、夫婦と子供一人の場合は四八%になっておりますし、夫婦と子供二人の場合は五五%になっております。  なぜこの夫婦と子供二人の場合が軽減割合が多くなっているかというのは、やはりその扶養控除の引き上げ幅を大きくしたことの影響でございます。そういうところに、教育に経費がかかる中堅の家庭の負担軽減を結果的には織り込んでおるということを、ひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それから、もう一点、議論になりますけれども租税特別措置法を読んでもわからないといいますか、いろいろと複雑な仕組みになっているではないか、それを考えるならば、教育費控除所得税の中に織り込んできても、それが複雑になり過ぎて困るということにはならないではないかという御指摘がございましたが、企業に対するいろいろの措置のもろもろの規定は、これは非常にたくさんございまして、なかなかややこしいことになっておりますけれども、しかし、該当企業は、措置法のいろいろな規定のすべての適用があるわけではないわけでございまして、それぞれの該当企業から見れば、その該当規定だけについての理解を持っていればよろしいということで済みますけれども所得税のほうは、全納税者に影響するわけでございますので、簡素化の要請というものは法人税の場合とは違いまして、所得税の場合には強く要求されるということでございます。  それから、企業というのは、もともと営利を目的としてやっているわけでございますから、もろもろの経理規定、税務規定というものについては、自分の利害の伴いますことでございますので、みずから進んで相当積極的に研究し、勉強しておるという前提で仕組んでよろしいのではないかと思いますけれども所得税のほうは普通の方がすべて関係してくるわけでございますので、どなたでもわかるというか、わかりやすいような形に仕組んでおく必要がございます。  その意味におきまして、おことばではございますが、やはり所得税の簡素化ということは法人税の場合とはちょっと——法人税といいますか、所得税でも営業をやっていらっしゃる方に適用になるような税制の場合と、それから一般の方に適用なるような税制の場合では、やはりその簡素化に対する必要度といいますか、それが違うということがあるわけでございます。その点を、これは意見になりますけれども、申し上げておきたいと思います。  しかし、いずれにいたしましても、教育の問題というのは非常に重要な問題でございますし、今後とも福祉時代ということとの関連で、より焦点を当てていかなければならぬ問題だと思いますので、より理念を明らかにせよという御主張については、とくと胸に置いておきたいと思います。
  32. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この点は将来に期待して、私も実現するまで質疑はやめないつもりでおるので、御検討願いたいと思います。  次に、いわゆる世間でいう医師の必要経費、いわゆる社会保険診療報酬ですが、これはだれかが取り上げないと、税制全体に対する国民の不信感がつのるので、私はあえて取り上げるのです。  現在の特別措置の中で不公平負担の最たるものは、やはり医師の必要経費七二%である、これはもう国民の常識なんです。そこでなぜ、税制調査会の答申が何回にもわたって、これは是正すべきであるという答申があるにかかわらず、どこかで消えてしまっている、国会段階になると何もない。その真相を、うそを言わないで率直にここで述べてもらいたい。
  33. 高木文雄

    高木(文)政府委員 七二%の制度は、もともと今日ほどにはいわゆる健康保険の制度が一般化しておりませんでした時代に、その保険単価をどうきめるかということと関連をして、保険単価を十分に引き上げることができなかった見返りとして発生してきたものであり、それで税としては非常に困るということであったわけでございますけれども、最終的には、それを議員提案という形で、国会で特例的にお認めになったものでございます。ただし、その当時からこれは臨時のものであるということは、当時の立法に御関係になった方々、提案者の間でそういう考え方を持っておられたことは、当時の議事録にも明確に載っておるわけでございます。  それが、その後今日まですでに二十年たちましたのに、なぜ解決をしないかといいますと、一番大きな点は、利害関係者でありますところの医師のほうからいいますと、今日の単価はなお不十分である、適正診療単価ということは言えない。当時の事情と、事情の変化が全くないとは言えないけれども、しかしながら、当時の事情、つまり財政事情によって点数が押えられておるという事情は、何らかの関係で今日まで残ってきておる。いつ羊でもこの制度をやめてもらってもけっこうだけれども、そのかわりには当然に社会保険診療の、簡単にいいますと、点数を利害関係者のいわれる合理的なものにすべきである。そのもとを放置したままで、当時の経緯もあるのに、税制のほうだけ手をつけるということについては賛成できないという主張があるわけでございます。  事が医療に関する問題でございますし、確かに社会保険診療のような場合に、非常に多くの患者さんを扱うお医者さんが、経費にいろいろ手をとられるというようなことがあっては適当でないわけでございます。何かお医者さんにとっても税のことのためにあまり負担が多くなるということは、望ましくないということもあるわけでございまして、そういう意味からいって、簡素なものであるということが必要であろうと思います。ですから、私は、現在の制度は、このままでは決してよくないと思うわけでございますけれども、それでは完全にこれをやめてしまって、普通の営業の方、小売りの仕事をしていらっしゃる方とか卸の仕事をしていらっしゃる方、製造の仕事をしていらっしゃる方と全く同じように扱うべきかどうかということについては、いささか疑問を持っておるわけでございます。それはやはりお医者さんにはお医者さんにふさわしい税制でなければならない。どこにそれを求めたらいいかということについて、申しわけございませんが、私どもにもまだ、これならばお医者さんにものみ込んでいただける税制であるというところの発見がなかなかむずかしいということで、いろいろ税制調査会から御指摘はございますけれども、それを具体化して、これならばいかがでしょうかという案に、なかなか至っておらぬということがあるわけでございます。  しかしながら、税制調査会の中ではすでに特別部会が設けられておりますし、実は、いろいろ資料も収集をいたしまして、お医者さんの経理状況等の実態もいろいろ調べておりますし、それから、確かに適正診療単価かどうかについては異論があるかもしれませんけれども、かなり点数の改善も行なわれてきている今日でございますから、何とか早く結論を出したい。これは税制調査会の事務局の立場にあります私どもといたしましても、その立場からも何とか結論を出したい、そして受け入れ得るもの、現実的な案をつくってみたいというふうに考えておりますが、これはそういう実態がやはり非常にデリケートな問題である。何か政治的にむずかしいとか圧力があるとかいうことがないとはいえませんけれども、それだけではなくて、やはり実態に本来むずかしい点があるということも否定できないということであろうと思っております。
  34. 山中吾郎

    山中(吾)委員 議員立法と言われたので、国会の責任をちょっと感ずるのだが、議員立法なら、国会でわれわれは議員提案をし直す責任もあるんじゃないかという感じもするので、これはひとつ理事皆さんの御検討も願わなければならぬと思います。ただし、議員立法でできたものであっても、できたあと政府提案で修正するのは一向差しつかえないし、してしかるべきでありますから、それはあとでひとつ論議をしなければならぬと思うのです。どうも議員立法では理想主義的な議員立法もあるが、中には困ったものもだいぶあるので、われわれも責任を感ずべきだと思う。ただし、当時の状況とは状況変化があるので、これについては何年後と言わないで、現実において改正すべきことについて論議すべきだと思うが、だれからも論議がないし、改正されてないというところに、私は取り上げざるを得ないのです。  それなら、いま局長の言われたどこまでしたらいいか。これは答申の中で五〇%。調査をした結果、七二%はどう見ても実態からいって不適当である。必要経費の計算をして、五〇%が妥当だということは答申に出ておるんじゃないですか、あなたわからぬと言ったが。それはどうでしょう。
  35. 高木文雄

    高木(文)政府委員 答申では、この制度をやめるべきであるとか、あるいは縮小すべきであるとかいう答申になっておりますが、どういうふうに改正すべきであるという御答申は出ていないのでございます。  それで、山中委員がいま五〇%ということをおっしゃいましたが、その五〇%という数字は、お医者さんでブッキングをきちっとやっていらっしゃる方の数字をある程度抜き出してみますと——と申しますのは、お医者さんは全部か社会保険診療だけを扱っていらっしゃるわけじゃなくて、自由診療の場合がございます。自由診療の場合には、普通の営業と同じように、収入が幾らで経費が幾らだということで、所得税の申告をされるわけでございますので、お医者さんの申告の中に、自由診療部分についてはブッキングがあって、それに基づく経費の主張があって、それで申告が出ているわけでございます。それで、その申告書を単純に集計をいたしましたもので、経費率が大体五〇%、したがって所得率のほうも五〇%、したがって、現在の所得率二八というのは低過ぎる、もう少し所得率は多いはずであるという数字が出てまいりますけれども、これは実は申告書の集計でございます。その申告書の集計については、実は医師側には、そういうものを根拠にして所得率をきめられては困るという事情がまたあるわけでございます。その率を、直ちに現在のところ、この率ならばよろしいではないかという率は見つけ出してない。  そこで、でき得るならば、お医者さんの経営の実態調査ということを行なうことができるならば、ものごとが一歩前進するわけでございますけれども、これは御存じのとおり、従来から、点数をきめます場合のために中医協等でたいへんな議論があるわけでございますが、調査は三年に一ぺんずつ行なわれてはおりますけれども、しかし、この調査の結果は、相互に発表しないというような前提で事が進んでいるというような経緯もございまして、なかなかお医者さんの経営実態の客観的把握が困難だというようなことがあるのでございます。そのあたりから漸次解決をしていく必要があるわけでございまして、現在、税制調査会の中にあります特別部会等におきましても、そこらをどう判断したらいいかということで、いろいろ御議論が進んでおります。
  36. 山中吾郎

    山中(吾)委員 少しも私にとって説得力がないのですが、大体一千万の収益がある、医師の収入に、七百二十万は課税対象からはずして、残りの二百八十万が純益だといって課税するなんということが、公然として通っておる。これを直すことができないような政治ならば、国民から信頼を受けることは私はできないと思う。ことに、出先の税務署長に聞いてみると、税務署長も、税務懇談会をやり、納税の思想を普及し、また協力を願うという会をしても、医師の七二%の免税ということが取り上げられて、そのために全部われわれのやっていることが不正に聞こえて、非常に情けない、これではとても、私らが一生懸命に努力をしても、われわれがやっているものは全部不公平だというふうな偏見の中で苦労しているので、せめて根本の国会でぜひ直してほしいというのが、おそらく全国の税務署員の痛切な叫びだと思うのであります。だから、これはいろいろの理屈を捨てて、少なくとも来年必ずやるということだけはこの国会で明確にすべきではないかと思うのであります。  どう考えても、この必要経費の根拠が、私が相当理解する立場で見ても、どこにも出てこない。国税庁がわかりやすく解説をしておる本の中に、「特別措遺の合理性の判定」という、これは九三ページにあるのですが、こういう場合には特別措置において措置をすべきだということで、イ、ロとあって、それで内訳をしてさらに四つあげているのですが、「税制以外に政策的措置があるかどうかおよびその効果」、次に「政策目的の合理性、緊急性」「政策手段としての有効性」「付随して生ずる弊害と政策効果とのバランス」「他の施策との整合性」、どれを見ても一つも当たらない。一つくらい当たるならばいいのですが、当たらない。こういうものがなお存在しているということは、これはもう政党とか利害関係を捨て、政治家としては処理すべきだ。もう理屈も何もないというふうに私は思うのです。次官はどう思いますか。
  37. 中川一郎

    ○中川政府委員 私も全く御意見のとおりに思います。非常に不公平な制度で、国民税制に非常な不満を待つ大きな柱だと思います。そこで、これは早急に改正をすべきものであるという考え方は全く一致いたしております。  そこで、われわれも何とかこの不公平な点を改正したいということで、政務次官になるとならざるとを問わず主張し続けてきておりますが、何ぶんにも、いま局長から御説明申し上げましたように、発足が、医療の単価是正の穴埋めみたいな形で発足したゆえんがあり、今日まだなお単価について医師側との間に一致点を見出し得ない時点においてこれを是正するということは、非常に困難性のあることも事実でございます。しかも、医師側が非常に強くて、大事な国民の生命を預かっておるお医者さんでもありますから、この問題を強行するということも、またほかの職業とは違ったむずかしさもあり、しかし、これは何とかしてやりたいということで鋭意いま社会保険診療報酬課税特別部会において研究中でありまして、私としても、何とかこれが来年というか、ごく近いうちに解決するようにして、税の不信に対する国民の感情を払拭するようにやりたいものだと考えております。
  38. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この必要経費制度と現在の私立医科大学の裏口入学の寄付金との関係は、私は関係ないとは思っていないのです。四十六年度の文部省の発表によっても、平均の寄付金が六百万円である。最近はだんだん相場が上がって、四十八年で三千万が寄付金の最高になった。三年、四年前は一千万、一番多いのは二千万だった。そして、それまで金を出して入学させるのは医師の子弟なんです。開業医は子弟を、自分の家業を継続さすために、何千万という金を出して入学をさしておる。このことがどれだけ医療がいま有利であるかということも説明しておるのであって、それに対する七二%の免税というものは、どう考えても、一体、根拠は出ないじゃないか。むしろ裏口入学を奨励しているのじゃないかということが、私の考えの中からどうしても離れるわけにいかない。  さらに、医は仁術だという昔の思想が前提となって、こういう七二%の免税制度が出たのではないかと心理的には思うのですが、現在は医は計算だといわれておるのです。一つの事業として他と特に区別をしなければならない質の違いは、私はそうないと思うのであります。もし医療関係において福祉社会における政策をとるならば、むしろ治療を受ける国民の医療の方向——いまのような公営医療の思想もそうだし、税の上ならばむしろ治療費の特別措置免税をもっと大きくすべきである。経営者のほうにこういうやり方をするのは、私は、現在の医業の形態と医療の思想との間にギャップが非常にあり過ぎると思うのであります。  そうしてまた、七二%の必要経費を認めて税制上の恩典を与えておれば、医者の諸君がその残りの納税には忠実に守る納税思想ができておるかというと、逆に、全部脱税思想方向にむしろ行っておるわけである。逆になっている。納税思想はゼロになっているんじゃないか。また大病院に行けば、患者が治療を受けるについてその治療費の証明があれば特典があるので、免税の措置を申告できるために証明を要求しても、なかなか書いてくれない。全国の高額納税所得者の番付にはずいぶんと医者がどこにも多いのであるというところから、私は、いろいろのことは別にして、これだけは処理すべきである。点数の問題、あれは別問題であって、これとの関連において考えるべきものではないと思うのであります。  実際問題として、この問題を解決するについては、年次計画で七二%を来年は五%引く、その次は五%、その次は五%といって、いわゆる四カ年計画で五〇%に持っていくこともできるでしょう、摩擦のないように。その方法は具体的に検討して、来年からこの問題を解決しない限りにおいては、一般の国民の納税思想に対してマイナスだけを残すと私は思うのであります。そこで、もう来年から必ずやるということを含んで、私は政府の御答弁要求するのです。次官の御答弁を求めます。
  39. 高木文雄

    高木(文)政府委員 社会保険診療報酬に関する特別部会というのが税制調査会の中にございます。そこで今日まで何回か会合が開かれたわけでございますが、そこで問題になっております点は、この経費率が法定されているという制度に問題があるということが一つでございます。この経費率というものは非常にむずかしいものでございますが、法定されておりますのは、給与所得控除制度、今度の改正で百五十万円まで四割、次の三百万円までが三割、六百万円まで二割、あと一割、こういうふうに給与所得控除の概算控除ということで法定されておりますが、それ以外には、法定されている制度がきわめて例外であるという点が一点でございます。  それから第二点は、収入の大きさのいかんにかかわらず率が一定であるというところでございます。それは、普通やはり収入が大きくなれば固定経費部分は減ってくるはずでございますので、所得率というものは収入の増加に応じてやはり大きくなるはずである。ところが、収入の大きさのいかんにかかわらず、そこが一律になっておるというところに一つ問題があるということが問題になっております。  それから三番目には、先ほどちょっと触れましたように、医師の経営実態がわからない。これを調べることについて、問題が進展をいたさないということが問題であるということになっております。  いずれにいたしましても、すでに診療報酬制度の特別部会ができましてから相当な期間を経過いたしておることでございますので、現在の税制調査会の任期はことしの十月の初めで切れることになっております、税制調査会委員の任期は三年になっておりまして、三年目の任期がこの十月で切れることになっておりますので、それまでには何とか結論を出そうということで研究をされておるところでございますので、私ども税制調査会の事務局の立場におきまして、まずその場で何とか少し——いままでのようにこの制度はよくないとか廃止すべきであるとかいうことでなしに、具体的な内容を盛った意見を出していただくようにお願いをしておるところでございます。何とか山中委員の御指摘の点について、御期待に沿うようにわれわれも努力をいたしたいと思います。
  40. 中川一郎

    ○中川政府委員 実はこの問題、御指摘のとおりでございまして、裏口入学の発生、あるいは納税思想の低下、あるいは地方へ行きましても一番高所得者は軒並みお医者さんになっておるということから、この問題について特にひんしゅくを買っておることは事実でございますから、何としてでもこの問題を解決したい気持ちはありますが、御承知のように、この問題は税制の面からだけで解決はできない。医療制度の現在のあり方全体の中での一つの仕組みに定着しておりますから、これだけを取り出すということは非常にむずかしい。そこで、この問題の解決は医療制度改正というものとからめなければ、言うはやすく行なうはかたいと思っております。  医師の問題としては、たとえば、技術のいいお医者さんも技術の悪いお医者さんも、点数で全く一銭の違いもないというようなことや、あるいは乱診乱療の問題、それを規制する措置もない。あるいはまた、ただ紙切れで請求だけしておる、架空のことによって多額の収入をあげた医師も、摘発された者も全国的にありますが、摘発できない仕組みになっておるという実態、こういうことが重なって今日の医療行政が非常な問題になっており、税制の面だけではない、多くの課題をかかえておる事実があります。  ですから、この問題の解決は、厚生省というよりは政府全体の問題として、また大蔵省だけではなく、あるいは国会においては、与党だけではなく野党の皆さんの協力もいただいて、抜本的な改正の中でこの問題を解決していくにあらざれば、大蔵省だけでこれをやれと言われても、私はやりたい気持ちはやまやまありますし、できるだけのことはしたいと思いますが、むずかしい事情もひとつ率直に聞いていただきたい。来年からこれだけ抜き出してやれと言われましても、やりたい気持ちはありますが、むずかしい事情もありますので、重ねてお願いしておきます。
  41. 坊秀男

    ○坊委員 山中委員の御意見に対しまして、私は双手をあげて賛成であります。私はもっと強い意見を持っておるかもしれませんけれども、私は山中委員質問に関連質問ということですから、これについての総論から各論についてここで申し上げて御質問しようとか、そういうつもりはございません。ただ、これの実行ということを、ぜひとも政務次官も、局長も、真剣になって考えてみていただきたい。早急に実現をしてもらいたい。  と申しますことは、これは私だけの意見ではない。自由民主党の税制調査会におきましても、ことしはこれを改定すべきであるということを答申の中に付言しておることは、これは主税局長もよく御存じのとおりであります。これは自由民主党の意見でもあるのです。  そこで、山中委員が申し上げなかったことについて、たくさん申し上げたいことはありますけれども、一言だけ私は申し上げたいと思うのであります。  厚生省は、大蔵省よりよっぽど早くこの問題については、これを廃止するとかなんとかいっておりませんけれども、これを是正しなければならないというような意見をすでにきめて、中医協に審議をしてもらいたいということを、これは厚生大臣の名においてすでに申し入れておる。ところが、中医協におきましては、審議が確かにおくれております。それはどういうことかというと、診療費というものを、物価、人件費にスライドする、こういうことを厚生省がきめて、そしてこの案を中医協に対して審議してもらいたいということを申し入れておるのです。物価、人件費に診療費をスライドさせていくというようなものに、一体そういう特例が要るかどうか、こういうことなんです。  これは普通の自由診療なんです。お医者さんの診療費というのは、自由診療の費用です。これが国民皆保険であり、かつまた保険診療であるということですから、物価、人件費にスライドしていくということは必ずしもめちゃくちゃだとは私は思いません。そういったような意見も出てくるのも一つの意見だと思いますけれども、それをやっておきながら、その診療費の課税標準と申しますか、経費率といいますか、これを税制で、こともあろうに七二%なんというようなこんなものを、このままでほったらかしておくということは、全然これはめちゃくちゃだということを考えなければならない。そこで物価、人件費にスライドするということが、おそらくは中医協において早晩これは審議をせられることであろうと思う。そういうことから考えてみましても、厚生省ももうすでにきめて審議させるようになっているのです。  いまの大蔵省の政務次官、局長のお話を聞いておりますと、なるほどこの制度というものは非常に不合理である、これは改定しなければならぬものであるということはただいまお聞きしたのですが、しかしながら、これを改定することがきわめて困難であるという、いわばやらなければならぬけれどもやれないのだということに非常に重点を置いて——中川政務次官は私は正義の人だと信じておる。昔から信じておる。その政務次官、しかも正義の人であり非常な勇気を持った、いまの国会議員の中ではまれに見る人材だと思っておる。冗談じゃないですよ。その政務次官がこの問題に関して、何だかやれないことに——少々無理なことでもやる性格を私は中川政務次官に見ておる。それをこの問題に関する限りは、きわめてじみというか、あれだけの勇気のある中川政務次官が、その答弁では私は満足するわけにはまいらない。そういったようなことから考えてみましても、事務当局はひょっとしたら弱いことは私もわかる。事務当局というのはいろいろなことで制約を受けたりして、おそらくは腹の中では、主税局長以下各課長は何とかしてこれを実現したい、こういう気持ちのあることも、長い間のおつき合いから、私はよくわかる。しかし、そういったような良識、そういったような正常なる判断、これを私は中川政務次官が勇気を持って、こういう正しい税制を打ち立てていく。税制の恥部を是正していくということについては、中川政務次官が事務当局を——大臣がおったらもっといいのだけれどもおらない。事務当局を叱咤激励して引きずっていく、私はそういうような指導を中川政務次官にぜひともひとつお願いを申し上げたい。あなたの在任中にぜひともひとつこれをやっていただきたい。これは自由民主党の税制調査会の決定でもあるということを頭の中に置いていただきたい。  それから、いまの山中委員はこれまた社会党における——私はこの方をよく知っている。私と同じ郷里の人なのです、選挙区は違うけれども。その山中委員がおっしゃることは、これは私は社会党でもそういう御意見が非常に強いのだろうということを考えます。ぜひひとつ、きょうは——私はめったに質問したこともないが、中川政務次官が政務次官であり、かつまた山中委員が勇を鼓しておっしゃられたということでつい感奮興起いたしまして、飛び入りで、正義のために私は御意見を申し上げるとともに、政務次官及び局長答弁をお願いしたいと思います。
  42. 中川一郎

    ○中川政府委員 御指摘のとおりで返すことばもないのでございますが、ただ、答弁の中に少し勇気が足りないということでございますが、勇気は持っておりますが、それを上回る難物なことも事実でございます。(「逃げちゃいかぬよ」と呼ぶ者あり)逃げるつもりはありませんが、たいへんな難物であります。しかし、やらなければならないということは政治家としての、また政務次官としての立場からもはっきり申し上げ得るところでございまして、正直なところ、いま局長とも何とかできないか、こう言っておったところでございますが、せっかくの委員会あげての、党派を越えての強い御声援のあることでもありますから、真剣に努力してみたい。私は言った以上はこれはやる——たとえば来年からやると言っててきない場合には責任問題になりますから、そこまではお許しをいただいて、ひとつしっかり取り組んでみたいということを申し上げて、しばらく時間をかしていただきたいと存じます。
  43. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほどお触れになりました社会保険診療報酬のスライドの問題ということが具体化いたします段階におきましては、これは当然にいまの七二%の特例問題は基本的に矛盾をすることになりますので、考え直さなければならないということは言うまでもないことでございますが、そうなりません場合にも、やはりこのままではいけないというふうに考えておるわけでございます。物価、貸金のスライド制というのはどういうことになりますか、なかなかこれは財政的にも、また保険に加入しております従業員サイドの問題といたしましても、負担の増加を来たす問題でもございまして、なかなか早急に解決できるとは限らないと思いますが、私どもは実はそれとは関係なくても、何らかの形において、先ほどちょっと山中委員からも一挙にいかなくてもというお話がございましたが、私どももそういうことも含めまして、先ほど触れましたように、税制調査会委員の任期切れの前までには何とか具体案をまず出していただくということで、一歩一歩進めていきたいというふうに考えております。
  44. 坊秀男

    ○坊委員 主税局長にお尋ねしますが、私申し上げたのは、物価、賃金にスライドしなければやることは要らぬ、こういう意味ではないんですよ。物価、賃金にスライドするということを厚生省が厚生省の案としてもうすでにきめて、そうしてこれを中医協にはかっておるということを私は申し上げたのであって、厚生省が政府として物価、賃金スライド方針というものをすでに大臣がきめて、そうしてはかっておるのだから、そういったようなことを一方で決定してはかるということであるならば、それに伴って大蔵省は、いまやもう診療報酬に対する特例というものを是正してもらいたいということを大蔵省として決定して、税制調査会にはかったらいいでしょう。自民党に聞かれてもいいです。自民党も返事をしておるのだから、これは社会党でも各党でも、私は喜んで審議してくれると思う。さような意味において、私は、ぜひ大蔵省がこういう考えであるということをはっきりさして、しかるべき機関において審議をされるというふうに持っていくことを要求しておきたい。それはおそくとも来年の国会には——ほんとうを言ったらいまやりたいのだけれども、そこまで言ってもあるいはむずかしいかもしれないから、それは私は親心をかけておるのですよ、長い間のおつき合いだから。おそくとも次の国会においてはこれを審議してもらいたい。私の親心のあるところを十分了として、真剣に考えてもらいたい。
  45. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 関連質問。坊さんがかなりお話しになりましたので、多くを言う必要はございませんが、そもそもこの関連するやつが議員立法で出てきて措置されたものですから、おっしゃっているように、自民党、私たち野党四党、それぞれ意見の交換を十分いたしておるとはいえませんが、みんなやはり基盤の上に立ってそれぞれ意見を持っておるわけですけれども、私はこの国会で大蔵省のほうから見解が述べられることを非常に期待しております。おりますが、どうしてもこの国会ではいろいろな事情もこれあってできないとおっしゃれば、来国会では片づけていただくということを明確に答弁をいただきたい気持ちで一ぱいなんです。それがそうされなければ、やはり議員立法の経緯を踏まえておるだけに、私たちも措置しなければならない強い決意も持っておるわけです。  そこで関連する質問に入るわけですが、大体、昭和四十八年の社会保険診療費が約三兆円ですね。この中で約四〇%、一兆二千億は薬代、薬価でございます。ところが、現在の薬をつくっておるメーカー六社の大体の年間売り上げを見ますと、医療費以外のものを含めて、たとえばサロンパスとかこういうものを含めて、約八千億程度じゃないかと思います。しかし、診療保険が払う金は一兆二千億程度金額になっておるように思うのです。  そこで、私、以前の国会で議論もございましたし、予算委員会でも若干議論があったと思いますが、お医者は最近の傾向として七二%の必要経費を引いてもらっている上に、技術を売る医者でなくて薬を売る医者になり下がっている。しかも三日くらいの施薬をするものを、一週間も十日も薬をやっている。そうして、その薬袋が鏡台のうしろとかたんすのうしろに一ぱいたまっている。これは診療保険制度の中身の問題として私たちは指摘をしたいと思うのですが、きょうは税制ですから、その制度の問題と違って考えなくちゃならぬのは、たとえば薬屋が医者に試薬というものを大量に持ってきます。これは一つの例を出して恐縮ですが、アリナミンにいたしましても、ポリタミンにいたしましても、錠剤を持ってきます。かなり多くの量が試薬として医者に提供されています。しかも、これらの量は試薬ではなくて、たとえば十万粒買ってくれたら五万粒無償提供する、三十万粒買ってくれたら三十万粒無償提供する。しかもそれにプラスして胃カメラを提供する、こういう添加措置の例がたくさんあることは、数年前の社労委員会でも明らかになりました。その制度についてきびしい追及がなされておりまして、参考人として薬品製造業の各社長さんたちも呼ばれまして、その事実は認めております。そのことが片一方で医者の収入を大きくふくらましているわけです。ある意味ではそれは一つの脱税行為になったり、いろいろな疑惑を生む要素になっているわけです。その上に七二%の必要経費も引いていただく。至れり尽くせりの措置が医者の上には与えられている。このことを社会的に承知をしているわけなんですが、そういう面から見ても、この問題については、私は結論を下していただかなくちゃ困る。税の公平の原則の立場に立っても指摘できると思うのです。  そこで、これは局長も中川次官もそうですけれども、いまのように非常にばく大な量の薬がただでメーカーから支給されておるということの実態をどう把握されておるのか、ここに脱税的な措置はないのか、こういうものを税制の上からどのように現状把握をなさっているのか、その点が聞きたいし、そういうものを踏まえて、なおその上に七二%という必要経費控除をしている。このことともからめてみていけば、医師に対する特権的な控除措置というものは改めてもらわなくちゃ困る。もう社会的な常識はそこまで進んでいますし、坊さんも、厚生省のいろいろな苦しい今日までの諸措置を述べられておりました。私は全く理解することにちゅうちょしません。そういう立場も踏まえて、どのような措置をなさってきたのか。くどいようですけれども、重ねて、本国会で修正なさる意思はないのか、ないとするならば、一体どうするのか、これらについて、やはり私の気持ちも坊さんの気持ちもそこにあるわけですから、もう一度見解を明らかにしておいていただきたいと思います。
  46. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほど御指摘の寄贈薬の問題につきましては、本来ならば、課税上の問題が起こるはずのところでございますけれども社会保険診療の部分につきましては収入の七二%を経費とする、二八%を所得とするということで算出しました額と、それから実際に計算をいたしました普通の計算方式によって計算してみました額と、いずれか医師にとってより有利なほうを選択できるという制度になっておりますので、その七二%の特例制度が適用される場合には、その薬の部分についても追及できないというたてまえになるわけでございます。そういう意味も含めまして、いまの七二%の法定制度というものには非常に問題があるわけでございます。  そこで、それを具体的にどうするかという次のお尋ねでございますが、それは先ほど来お答え申しておりますように、たしか八回か九回にわたりまして税制調査会でもこの是正方を政府に申し入れておるわけでございますが、政府としてそれができないまま今日に至りました。そこで、今度は税制調査会自身が具体的案をつくるということを前提にいたしまして、社会保険診療報酬特別部会が設けられたわけでございます。社会保険診療報酬特別部会では、その任期の終わりまでに必ず具体的に案を出すという心がまえで事が進んでおりますので、私どもは現段階ではまずその御答申をいただきたいという気持ちでおりますし、それをいただきますならば、その線に沿って、次の機会に改正の御審議をお願いするような段取りにいたしたいというふうに考えております。
  47. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 もう一点すみません。非常に矛盾があるし、何とかしたいというお気持ちは先刻から聞いておるわけですが、診療報酬の引き上げの措置につきましても一九・五か七、最終決定はわかりませんけれども、おやりになるし、その中で薬価の引き下げを二ないし二・五おやりになるということです。しかし、それはそれなりに一つの見解、意見というものは大きくみなあるわけですけれども、ただ、それを契機に七二%の必要経費措置については決着をつける、それを契機にやる、こういうふうにいまの御答弁は私には聞こえるわけですよ。薬価の引き上げや診療報酬の引き上げをやってまた食い逃げをされる、このことをわれわれは心配するんですよ。しかも、初めてでしょう、厚生大臣の弾力条項四%を今回適用するのは。こういうことをやりながらまた食い逃げをされていく。  それは来年の国会になりますと、何とかしたいとおっしゃるけれども、私は食い逃げをされる危険があると思う。きょうまでかかってきて、多くの立場から指摘をされてきてなぜ実現できなかったのか。さっき中川さんのお話では、何かもっと強力なものがあるようなニュアンスを私は受けます。では、その本体は何なんですか。日本医師会でしょう。その人たちをここの委員会に呼びまして、これから明確に進めていくという態度もとらなくちゃならないし、そこらあたりの腹のくくり方をまず当委員会がしなければだめだと私は思う。そういうことを含めて、もう一ぺん今度は中川さんのほうからの見解を伺って、私の関連質問をやめたいと思います。
  48. 中川一郎

    ○中川政府委員 私が難物だと言ったのは医師会をさしたつもりでもありませんが、医療行政全体が非常にむずかしくなっておる。この中で、これだけ大蔵省が来年必ずやりますというには、なかなか難物だということでございますが、いま局長答弁申し上げましたように、せっかくできております税調の特別部会も、ことしの十月には結論を出したい、おそらく何らかのものが出るだろう、その結果を見てやってみたい。(「自民党は出してあるんだ」と呼ぶ者あり)自民党からも出ておりますが、具体的にごうごうというものはまだないようでございまして、抽象的なお気持ちは自民党からもいただいております。それから野党も一致しておるようですが、具体的にどうするかということになると、まだ成案を得るには至らない現段階でございます。  そこで、われわれとしても、いま言ったように、ほんとうにまじめな意味で前向きに検討させていただきます。特に大蔵委員会において、与野党の先生方から一致してそういう要望があり、特に山田先生からは、参考人として医師会の意見も聞いてみたいというならば、これもけっこうなことではないか。ひとつ御協力をいただいて、この問題の解決に、われわれもまた委員会の皆さんにも御協力いただいてやっていきたい。(「大蔵省はどうするのだ」と呼ぶ者あり)大蔵省もやるのですが、先ほどもちょっと御指摘があったように、これは議員立法でございますから、議員の皆さんにもひとつ責任を持ってもらうということがあるのではないか。ともどもにひとつ解決のためにやってもらいたいと思いますから、どうかひとつわれわれも真剣であることだけは了解をいただいて、これから見守っていただきたいし、また力もかしていただきたいとお願い申し上げます。
  49. 安倍晋太郎

    安倍委員長 午後二時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ————◇—————    午後二時三十四分開議
  50. 安倍晋太郎

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山中吾郎君。
  51. 山中吾郎

    山中(吾)委員 午前中に引き続いて、もう少し医師の必要経費の結論を得るために質問しますが、局長、これを実際に実施をする場合に、必要経費をどこまで下げるか。かりに五〇%としても、年次計画で、来年は一〇%、その次は一〇%、三カ年で完成するという行き方もあるでしょうし、税の関係からいったら、絶対不合理だということ一は万人が認めておるのであるし、日本国民の最高のインテリジェンスの層をなしておる医師自身が、そういうものに協力をしないということはあり得ないと思うのです。点数の点について改善をするときに、その分は、必要経費を削った分がここに入っているというような計算でもできると思う。  そこで、かりに五〇%、七二%から五〇%にした場合の税金の増加は幾らになるのですか。わかりますか。
  52. 高木文雄

    高木(文)政府委員 昭和四十九年度の租税特別措置による減収額につきましては、まだ計算を完全に終わっておりません。数日中に御提出申し上げることになっております。ただ昨年度の、四十八年度の七二%によりますところの減収額というのは、当委員会に御提出いたしましたように、八百八十億ということになっております。八百八十億という計算をする場合には、大体必要経費の実態が七二でなく五〇であるということを前提にして計算したものが八百八十億ということになっております。  四十九年度につきましては、若干、一方において医療費収入かふえておるという面があり、他方において所得税減税が本法のほうで行なわれているということがございまして、これよりもふえる要素と減る要素がありますが、差し引きいたしまして、結局、八百八十億よりも若干さらにふえて、千億前後になるのじゃないかというふうに考えております。
  53. 山中吾郎

    山中(吾)委員 正確な数字がまだ出ていないようでありますが、もう少しあとで五〇%にする場合の税金の変化、それをお聞きしたいのですが、時間があと三十分ということですから、これを次にまた保留をしてお聞きしたいと思うのです。
  54. 高木文雄

    高木(文)政府委員 いまのは五〇%にした場合でございます。
  55. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いまの八百何億ですか、わかりました。そうすると、一〇%ずつぐらいとすると、年間三分の一ずつぐらいの税の変化があるということですね。  そこで、委員長に私ぜひ実現してもらいたいと思いますが、一つ参考人として本委員会に公立病院の関係の者も、一般の開業医も、あるいは医師会長も堂々と呼んで、明確にこの問題の結論を得る機会を、理事会にはかってつくってもらいたい。  それから、これは何回も繰り返しておることですが、議員立法であるということでありますから、この国会の中で決議の形であろうがどんな形であろうが、少なくともこの国会中に修正できなければ来年から着手するという政治的な責任が明確になるような結論を出すように要望いたしたいと思いますので、委員長答弁をお聞きして終わりたい。
  56. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ただいまの山中委員の御提案でございますが、理事会で相談をいたしまして、何らか結論を出すような方向で努力してみたいと思います。
  57. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは、次に移りたいと思います。  質問の最初に申し上げましたように、酒税についてお聞きいたしたいと思うのでありますが、これは、現在、日本間接税の中核をなしておる。酒の税金間接税の一番重要な地位になっておるわけでありますが、この酒税ほど、いわゆる福祉社会における参加費用という現在の税思想からいえば、時代錯誤的な感じがするものはない。この酒税の存在は、私にとっては、古い封建国家における収奪という感じの性格が非常に濃厚である、その酒税の運営のあり方が、昔の、税源として取りやすいからというだけで惰性的に運営されておるように思えるのでありますが、この機会に、酒税に関するものの考え方について、私は明確にしておきたい。  それで、現在の酒税について、局長が、だんだんと酒税の財源がふえるのが望ましいと思っているのか、少なくなるのが望ましいと思ってこの酒税行政をやっているのか、どちらだか聞いておきたい。
  58. 高木文雄

    高木(文)政府委員 別に、特にこれがふえることが望ましいとか、減ることが望ましいとかいう、ふうな、いま直ちにお答えできるような感覚を持っておりません。ただし、現在において、これは非常に技術的なことでございますけれども酒税は、大部分が従価税でなくて従量税になっております関係で、酒税ウエートというものはだんだん下がってきております。税自体の問題といたしましては、直接税と間接税関係の問題、つまり間接税ウエートが下がっていっているという問題が一つ問題であり、間接税の中で酒税が最も定額的であるために、そのウエートの減少が著しいということが問題になっております。  そういう税の面からの問題といたしましては、やはり酒税の現在のままの状態では好ましくないのであって、若干、酒税税制全体の中における地位というものをもう少し強化する必要があるのではないかというのが、従来の私ども考え方でございます。
  59. 山中吾郎

    山中(吾)委員 酒税の総税額の地位から言われておりますが、酒税の税収の絶対額はどんどんふえておる。昨年の酒税が七千百五十九億円ですが、すでにあなたのほうからいただいた「収入額調」によると、補正後の予算額で七千九百十六億円になっておるのですけれども、年々酒税はふえておるのでしょう。
  60. 高木文雄

    高木(文)政府委員 酒税の絶対額は、御指摘のように、年々ふえておりますけれども、国税の中での酒税ウエートというものは、年々減っているという関係にございます。
  61. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そのとおりなんです。だから、私、酒税の絶対額を問題にしているのです。  この酒税が、あなたのほうの「私たちの税金」というのをちょっと見たのですが、明治以来から戦争ごとに酒税の増税をはかっている。軍備を拡張するときに、酒税の税率を上げておるのですね。それで、一番最初は、酒税は、地主が酒をつくるいわゆる特権階級であって、そこから酒造冥加金として進上させたということから発展をしてきている。そういう特権者に対する一つの領主の冥加金として出てきておる。明治以後になってくると、結局、まだ夜警国家時代で、軍備拡張その他で、人間の、国民の弱点をうまく利用して、一番取りやすい酒税というものを増税して、軍備の財源にしておるわけなんで、日清戦争のとき、それから第一次世界大戦のとき、太平洋戦争のとき、酒税の増徴をはかっておるわけなんです。したがって、この酒税という性格は、いわゆる現在の福祉国家の観念のもとにある税でなくて、夜警国家時代の国防、治安ということだけを考えるときの性格のものではないかと思うが、どうでしょうか。
  62. 高木文雄

    高木(文)政府委員 手元にいま十分の資料を持ち合わせておりませんので、若干不正確かもしれませんが、酒税だけでなく、どうしても税というものは財源調達のためのものでございます。したがって、戦争のときは非常に経費がよけい要る、財政支出がよけいかかる、したがって、財源調達をしなければならぬということでございますので、戦争のあったときに酒税が増徴されたという事実は全く御指摘のとおりでございますけれども、それは酒税だけの問題ではなくて、やはり税全体の問題ではないか。戦争が終わりましたならば、本来なら元へ戻るべきところでございましょうけれども、戦争のあとやはりいろいろ財政負川が急には減らないということがありまして、税全体が戦争を契機として増税をはかられたり、新税の創設をはかられたりするのがそのまま残る、これは日本だけじゃなくて、すべての国の場合でございます。  でございますから、私は、酒税の増徴が戦争というものと結びつけて行なわれたということから、直ちに酒税というものが他の税以上に福祉時代にふさわしくないものであるという面から御指摘になりました点については、必ずしも先生の御意見に賛成いたしかねるのでございまして、酒税がすべての税の中においてとりわけ福祉時代にふさわしくないものだというふうには、直ちに断定できないのではないかというふうに思います。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、酒税廃止論を言っておるのではないので、そんなに無理をして酒税の歴史的性格を否定する必要はないのです。ただ、国民の健康を保持するために高い税金を加えておるのではないのですね。半分近い高い酒税を加えておるために、大衆の嗜好品としてはずいぶん高い酒を飲まされておるわけです。一級酒で大体四〇%ぐらいの税金なんです。  そこで、少なくともその酒税の存在を、昔の歴史的な惰性によらないで、やはりどこか国民の健康を守るという点で、酒税について罪滅ぼしをすべきじゃないか。日本の場合に、アル中にかかって精神病院に入れかわり立ちかわり入っている者が大体十万近くある。希望するけれども病棟が足らぬために入れないで、家庭が崩壊しつつある、アル中になったために生活保護を受けてずいぶん国民税金を使っておるというような者もたくさんおる。そういう者に対して、これだけ税金を取っておれば、罪滅ぼしに還元をしてやる用意がないと、私はこの酒税というものの存在はマイナスだけだと思うのです。  それで、たとえば七千億の酒税の千分の一を、三十年も税金を飲んでアル中になった者に還元をして、還元ということばでなくてもいいが、そういうものに使ってやるというやはり政治の裏づけがないと、油税などなるたけ多く取るようなことだけを考え考え方は、福祉社会における財政思想としては、片手落ちもはなはだしいと私は思うのです。それでこの問題を取り上げておるわけなんです。  現在、久里浜の国立療養所と武蔵療養所にだけわずかにアル中患者だけの別棟のベッドがあります。そのほかは全部いわゆる精神病者と同じようにほうり込んで、それに治療するようなことをしないで、二、三カ月入って、また出る、また元に戻る、また入るということを繰り返しておる者が非常に多いわけであります。最近、特にまたふえておる。だから、この税金のせめて千分の一、七千億の千分の一といえば七億、その七億ぐらいはやはり政治の部面において、アル中患者を矯正する国立療養所あるいは国立療養所の別棟にそういうものを特につくってやって、希望者は全部入れるくらいのことはしてやるべきじゃないか。酒税を運用する思想として、主税局長は、私は直接関係ありませんというのでは困るのであって、大蔵省全体として、それくらいの予算の裏づけを考えながらこの酒税の運用をしてもらいたい、これがぼくの質問の要旨なんです。わかりますか。
  64. 高木文雄

    高木(文)政府委員 非常にしかつめらしく申し上げますと、税制の中で酒税は歴史的にも非常に中心的な税でございますし、現実に日本だけでなく、どこの国でも重要な財源になっているものでございます。したがって、御指摘のように税収と歳出とをある程度結びつけて考えるべきであるという御意見については、山中委員の御意見と私は考えを異にするものでございますけれども、しかし、現実問題として、一方において非常に多くの酒税収入をいただいておる。まあ何といいますか、消費者に多くの負担を求めておるという事実があり、一方においてアルコール中毒患者があとを断たないという事実があるという二つのことは、全く無縁だとはいえない。それを常識的にどう考えるかといわれますれば、おっしゃるとおりであります。  私どもといたしましても、これは歳出面の問題ではございますけれども、やはり絶えず関心を持っていなければならない問題であって、いま御指摘を受けて、こまかい実情を伺ったわけでございますが、アルコールの中毒患者対策が不十分であるという御指摘がありましたから、その点について私どもも、今後ともよく歳出当局とも連絡をとりまして、漸次改善をはかっていかなければならないという気持ちは持つものでございます。
  65. 山中吾郎

    山中(吾)委員 おそらくアル中になるような者は、毎日五合程度のものを三十年ぐらい飲んでいると思うのですが、税金に換算すると五〇万、もっと飲んでいるのでしょう。そういう意味においては、国の税金のために最大の功績のある者ということになるのだから。そして本人自身はたいてい奥さんや子供からもてあまされて、家庭が崩壊しつつある人、中には離縁をされてしまった人、それでも自分ではなおしたいと思って精神病院に入っている。精神病院のお医者さんは、ただ入れておるだけである。何回でも繰り返しておる。だから、その療養所から出る場合に、アル中からみずからの意思によって立ち上がった人々で、集団治療といいますか、断酒会をつくってそういう人々を救済して、薬ではなおらないけれども、集団の激励の中に社会復帰をしておる者が出ておるわけですから、そういう酒害相談事業費とか、あるいは国立療養所の別棟をつくるというようなことについて——いまたしか厚生省の予算では三百万ぐらいです。せめて七千億の千分の一の七億ぐらいは還元して、最小のヒューマニズムからやったらどうかと私は思うのです。  この点については、大蔵省全体の問題として、酒税と一般行政関係認識して改善をしてもらいたい。テレビその他のコマーシャルというのは、どれを見ても酒をすすめるテレビばかりなんです。少しは何とかしないといけない。年々ふえておるのです。ヨーロッパの予算を見ると、大体どこへ行っても十分の酒害対策費が計上されておる。日本政治はこの点が一番無関心であると思うので、税制の問題の延長線として、酒害対策費の計上を含んで改善をしてもらいたいと思うのです。したがって、主税局長立場だけでないものですから、主計局その他も含んでの大蔵省行政でありますから、次官からその点についての御意見をお聞きしておきたいと思います。
  66. 中川一郎

    ○中川政府委員 御指摘の点はよく理解できるのでありますけれども、御承知のように、この税は目的税ではないというところから、千分の一であろうと、限られたものをそこへ回すという性格はなじまないのではないか。しかし、アルコール中毒者の撲滅ということは、国家にとっても必要なことであり、また納税されたからできたということであるかどうかは別としても、納税者の貢献度の高い人という見方をするかどうかは別といたしましても、この患者の対策については万全を期すように、酒税の中でやるやらぬは別として、十分配慮していくべきことである。ことしの予算その他についても配慮したつもりではありますけれども、詳細は主計局か来ておりますから答弁させますが、今後とも意を体して、その方面の予算措置を講じてまいりたいと考えております。
  67. 辻敬一

    ○辻政府委員 アルコール中毒対策につきましては、山中委員からいろいろな機会にたびたび御指摘をいただいているところでございまして、私どもといたしましても、問題はよく承知しているつもりでございます。  私どもは、酒税収入と直接結びつけて考えてはいないのでございますけれども、アルコール中毒対策の重要性にかんがみまして、従来から所要の予算を計上しているところでございます。たとえば、アルコール中毒症の研究でございますとか、あるいは患者治療の充実、特に先ほど御指摘のございました医療施設の整備でありますとか、相談指導の事業でございますとか、さらにはまた思想の普及でございますとか、いろいろな面におきまして対策を進めているところでございます。  なお、アルコール中毒対策全般の基本的な考え方につきましては、厚生省におきまして中央精神衛生審議会にはかって検討を進めていると承知をいたしておりますので、その検討の結果を待ちまして、必要がございますれば、さらに施策の充実に努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。  それから、先ほど御指摘のございましたように、確かにアルコール中毒対策費といたしまして特別に別掲して計上しております予算は少ないわけでございますが、御承知のように、国立医療機関でもただいまアルコール中毒症の患者は約二百名程度入院をしているように承知をいたしております。その分の金がどのくらいかかっているか、区分計算することはいたしておりませんし、なかなかむずかしいわけでございます。ただ、一人当たり大体百八十万円程度かかりますので、かりに二百人いるとすれば、三億六千万程度金額にもなろうと思いますし、そのほか国立病院のほうの精神ベッドにも患者が八十人ほど収容されております。さらにまた、国立の研究機関でございますとか国立の大学等においても研究をいたしているわけでございますので、その総体をお考えいただけば、全体としてかなり対策を進めているということがいえるのではないかと考えております。
  68. 山中吾郎

    山中(吾)委員 半分ぐらいは理解してもらっておるようでございますが、一つは酒の価格が高い。すなわち、税金が半分近くあるわけだから、高いものだから家庭で飲めない。家庭の主婦からいえば、主人にうちで飲まれると家計に一番大きいパーセンテージが出る。家庭ではなかなか出さない。だから外で飲む。それがいろいろのアル中をつくっているのであって、酒税が高いためにむしろ家庭の中で酒は飲めないというデメリットが出ておると私は見ておる。そういう点もあるから、行政的にこの点は主計局と主税局は相談をして、大蔵省行政の中にも少しヒューマニズムを入れて、もう少し検討をしてもらいたいということ。  それから、アル中になりかけたような者はたいてい失業をして、生活保護対象になっているんですね。そしてそういう者はなおると能力かあるものですから、大体アル中にかかった者はもともとそう質の悪い者ではない、相当の知識階級の者もおる。したがって、それがなおると生活保護家庭から卒業をして、ちゃんと生計が立つものですから、国の税金についても、生活保護の対象にしておるときには年間八十万も使っておる、それを節約もできるわけです。そういうこともあるので、これは非常にささいなようなものでありますけれども、やはりわれわれの政治の中においては、そういうものに心を深く持つということが、実は政治思想のある意味の大きな進歩なのでありますので、来年度予算その他について川当者のほうからそういう対策の要求があるときは、大蔵省では関心を深めて対処してもらいたい。  大体私の言わんとすることは認識されたようでありますので、要望いたしまして、私の時間はきっちり三時までといいますから、約束を守って、一応質問は終わりにいたします。
  69. 安倍晋太郎

    安倍委員長 荒木宏君。
  70. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣がお見えになる前に、政府委員に二、三お尋ねしたいと思いますが、まず初めには、住宅貯蓄控除の問題でございます。  いま住宅要求は、国民の中でたいへん強い要求であります。私どもの見ますのに、政府のこの点の対策はたいへんおくれておると思います。しかも、持ち家主義ということで設けられておると思われますこの住宅貯蓄控除にも十分要求が反映されていない面が見られる。こういう点から一、二お尋ねをしたいと思うのでありますが、住宅貯蓄控除の認められた趣旨を、簡潔に初めにお伺いしたいと思います。
  71. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在、税制の上で住宅奨励のためにあります制度が三つございますが、その中で住宅貯蓄控除制度というのは、主としてサラリーマンであろうかと思いますが、住宅ローンを活用して、それで住宅を建てることをしやすくしたらどうだろうか、その場合に、住宅ローンの場合には通常頭金が要るわけでございます。そこで、頭金を自分で積み立てるという場合にこれを奨励する、多少とも国でお手伝いするということにしたらどうだろうか、そこで住宅貯蓄ということで住宅を建てる目的で事前に積んでいく、その積んでいく期間のうち一定期間について、実質的に預入利子分がふえますようにという趣旨で、一種の補助金のような意味で税額控除をやっておるということでございます。
  72. 荒木宏

    ○荒木委員 住宅を建てる目的、そういうふうな目的に沿うように実質的な補助金という話を伺ったのですが、そういう目的だとすれば、そういう目的が認められるものについてはできるだけその趣旨に沿うような扱いをしていくべきじゃないか、こういうふうに思うのです。そういう点から見ますと、今度の租税特別措置法の四十一条の三の一項六号、これは住宅貯蓄契約をして債券を購入する場合に、その債券を保管委託する、こういうことが要件になっておりますが、たとえば債券の中にも転々流通するものと、それからそういったことが法制上あるいは契約上制約があって予想されないものとがある、こういうふうに思うのでありますが、この両者についての取り扱いはこの四十一条の三の一項六号からしますと、どういうふうなお取り扱いになりましょうか。この点について御説明をいただきたい。
  73. 高木文雄

    高木(文)政府委員 すべての債券について保管委託をするということを要件にいたしております。
  74. 荒木宏

    ○荒木委員 先ほどおっしゃった住宅建設の目的、その目的がある程度実体として担保されておるということなら、これは適用を認めるという方向で検討されてしかるべしと私は思うのでありますが、たとえば住宅公団の債券などのように、ほかに移転することが本人の意思によってできないというような場合には、それを認めるような方向で検討される意思はないでしょうか。
  75. 高木文雄

    高木(文)政府委員 実はこの住宅貯蓄制度については、この貯蓄のうちの、住宅を建てます、そのために頭金を預入いたしますという方に限って税額控除をしておるわけでございますが、預金についての税額控除というのは非常に異例でございます。ほかにも順金について税制上いろいろな意味での奨励措置をとったらどうかという御議論があるわけでございますが、非課税貯蓄制度のように税を取りませんよというものはございますけれども、さらに加うるに、補助金を出すという形のものは異例なのでございます。  そういうこともございますために、住宅貯蓄控除制度については、ただいま御指摘になりましたことのほかに、かなりいろいろと厳格な要件が付されているわけでございます。そのために、住宅貯蓄控除制度が必ずしも思うようにいま活用されていないという問題がございます。この問題は、ただいま御指摘の点も含めて、なおわれわれの手元でいろいろと検討に値する問題だと思っております。したがいまして、いま荒木委員から御指摘がありましたような点で、別に預入なり保管の委託なりをしなくても確実にこれが頭金として使われることが担保されるというようなものでありますれば、その検討事項の中の一つとして考えさせていただきたいと思います。  ただ、私どもも知識が十分ございませんで、御指摘の住宅公団等の宅地債券等について、転々流通するものとしないものとどういう関係になっておりますか、いま直ちにはちょっとお答えできませんのですが、もしそれが何らかの形において全く流通しないものである、また御本人だけしか活用できないものであるということでありますならば、確かに御指摘のような問題があろうかと思いますので、少し時間をいただいて研究してみたいというふうに思うわけでございます。
  76. 荒木宏

    ○荒木委員 全く転々流通しないというところで歯どめをかけられたのですけれども、私が申しておりますのは、たとえば、住宅公団の住宅債券のような場合に、本人の意思だけでは他の目的に流用できない。制度の趣旨というのは住宅建設ということでありまして、いま局長もそういう趣旨で制度が設けられておる、こうおっしゃったわけですから、本人の一存だけで他の目的に流用できないような何らかの担保がある場合、たとえば住宅公団の承諾が要るとか、あるいはまた契約の相手方の同意が要るとか、そういったような意味で、本人の一存だけで他の目的に流用できないような歯どめがある場合には、この制度の恩典を受けられるような方向で検討をしていただきたい、こう申しておるわけであります。  ですから、先ほどいただいた御答弁で、この点を含めて研究してみたい、こういうお話のようでありますが、研究していただきます方向をいま申し上げたような趣旨で、そしていま申し上げたような内容で検討をしていただけるかどうか、あらためてもう一度答弁を伺いたいと思います。
  77. 高木文雄

    高木(文)政府委員 冒頭に申しましたように、これは頭金を積んでいただくことをしやすくしようということからスタートしているわけでございます。そしてその人がある程度頭金が適当な額に達しましたならば、ローンその他と結びつけて、結倫としては家か建つというところへ結びつけようとしているわけでございますから、そういう意味で、家が建つというところに保証が得られるということであればけっこうだと思うのでございますが、その点が、ただいまの転々流通してしまってはもちろんだめでございますし、その他の面におきましても、家が建つということとの結びつきが十分かどうかということで、その担保さえあればそう要件をやかましく言う必要は全然ないわけでございますので、その点を検討してみたいと思うわけでございます。
  78. 荒木宏

    ○荒木委員 わかりました。その点は早急に検討して、前向きに改善されるように希望しておくことを申し上げておいて、関連してもう一問お尋ねしたいのです。  この四十一条の三の一項一号に「三年以上の期間」という制限があります。これは前の国会で問題が出されまして、四十八年十一月十三日付で国税庁の長官の通達が出ておりますけれども、実際に金融機関のほうの取り扱いの上で、住宅貯蓄契約が締結された、ところが当初から住宅貯蓄控除を受けるというふうな取り扱いにならないで、初めのうちはいろいろな将来の資金計画その他を慎重に検討して、いよいよ残りが一、二年というときになって、これでだいじょうぶだろう、住宅貯蓄控除の適用も受けたい、こういった場合に、三年以上という期間に満たないというふうなことで適用が受けられない事例もあるというふうに聞いておるわけであります。したがって、この際、そういった金融機関の取り扱いも含めて、また住宅貯蓄をしておる人たちの希望も十分考慮していただいた上で、この四十一条の三の一項一号の「三年以上」というのは、契約の始期から三年であって、貯蓄控除を申請した場合の残存期間ではない、このことをひとつはっきりしていただきたいと思うのですが、政府の御見解を伺いたいと思います。
  79. 高木文雄

    高木(文)政府委員 これはなかなかややこしい制度でございますが、まず貯蓄というのはいろいろな貯蓄がございます。そのうちで、ある人が自分は将来家を建てたい、それにはどうしても頭金が要るだろう、頭金が要るについてはいまのうちから積んでおこう、その頭金に充てますよという貯蓄についてだけ、こういう特例措置を設けようということになっておるわけでございます。  そこで、初め預金をしてありました、しかしそれは頭金とかなんとかいう意識でなしに通常の預金でございました、ところが、途中からそれを頭金に回すことにしたいということになったときに、その三年という要件でございますが、当初預入をしたときには別に家を建てるとか、家を建てるための頭金だとかいう認識がなくてとにかく順金がありました、途中からあれを頭金に充てたいと思いますというところまで含めるか含めないかというあたりに問題が起こってきたわけであります。  これはやはり大いに家を建てていただきたい、それがためには頭金を積んでいただきたいという趣旨から始まったものでございますから、やはり住宅貯蓄だ、つまり、これは住宅を建てるための頭金ですよという認識を預入者自身が持ってから三年間たってということでないと、本来の趣旨をはずれてくるのではないか。この問題は、実は最初のうちは住宅貯蓄控除の適用を受けませんでした、途中から自分は住宅貯蓄控除の適用を受けたい、そして預入期間から勘定すれば三年である、自分が住宅貯蓄控除の適用を受けようと思ってからまだ三年になっていないという方で、ぜひそういう仲間に入れてくれという御要請が非常に熱烈にあるのでございます。  そういう方は、数は少ないのですけれども、そういうことを非常に熱心に言っておられる方がありまして、毎度毎度私どものところにも言ってこられるのでございますが、制度の趣旨がいま申しましたようなことでございますので、やはり預入の時点からすでにこれは住宅を建てるための頭金に充てるのだという認識を十分持っておるということが必要であり、そのことの認識があったかないかということの判定の一つの基準として、住宅貯蓄控除の適用の手続をとったというところから三年たっておるということでないと、やはりぐあいが悪いのではないかというふうに考えております。私どものところにも、しきりにそういう御要請に見える方が何人かおられるのでございますけれども、それはどうも制度の最初の趣旨からいいまして、途中からそういうふうになったからという場合に、そこまで入れていくというのは際限がなくなりますので、いまのところはお断わりをしておるということでございます。
  80. 荒木宏

    ○荒木委員 少し質問の趣旨をお取り違えになったようですが、出発の当初からそういうはっきりした目的でやっておる人に対する規定である、途中乗車は制度目的からしていまのところは認められない、そういう解釈はいま伺ったわけですけれども、かりに途中からでありましても、あと三年あればいまの法律でも問題はないわけです。私が言っておりますのは、そうではなくて、初めからそういうことで出発をした、しかし、住宅貯蓄控除を受ける受けないは、これは当該預金者の自由でありますから、将来の資金計画その他から考えて、もし途中でおりる場合には、これは控除を受けた税額を返さなければならぬ、そういったことも含めて、控除を受けないままでずっとやってきて、あと二年、一年ということに相なった。いよいよこれで終点のめどもついたから貯蓄控除をこの際受けよう、しかし残りの期間は二年、一年である。さりながら、この契約当初にさかのぼって期間を算定すれば優に三年以上の実績を経ておる、このような場合には適用が受けられるということを明確にするべきではないか、こう申し上げておるわけであります。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕
  81. 高木文雄

    高木(文)政府委員 もしかりに、そういうふうにしたらどうかという御提案のような制度にいたしますと、自分は家を建てるか建てないかをきめていない、建てるかもしれないという方は、とにかくそれでは住宅貯蓄の仲間に入っておいて、しかし、あとで返せとかなんとかいうトラブルが起こるといけないからということで、住宅貯蓄控除の適用は受けないでおく。そしてだんだん時間がたって、やはり家を建てることに腹をきめた。そこから住宅貯蓄控除を受ければそれでよろしいか、こういうことになってくるわけでございまして、本来実はそこのところがむずかしいところで、そもそも多種多様の貯蓄があるという中で、住宅貯蓄控除というものだけを引っぱり出して、そこだけ奨励のために税額控除をやっているというところにそもそも実は相当無理があるものでありますから、そういう問題が起こってまいります。  必ず家を建てるのですよという決心をしないと、何かあとで返せとかなんとかということで、せっかく住宅貯蓄控除を受けても、受けた控除額をあとで返せということに規定がなっておりますので、金融機関がめんどうな点がありますために、いまなかなかこの制度が進まない。それを改善するためには、いま荒木委員御指摘のように、あまりそこは縛らないでおいて、とにかく住宅貯蓄ですよと本人は言う、しかし貯蓄控除の適用は受けないでおく、そしてどこかから、頭金にすることをきめたということから、住宅貯蓄控除の申請をしたら、それを認めてやったらいいじゃないか、こういう御意見になるわけでございます。  そういう御意見は、かなり一般的にもあちこちからいま伺っておるわけでございますが、一体そういうことでいいのか。そうじゃなくて、初めからとにかくどうしても家を建てたい、これを頭金に使いたいということをきめて、そして三年以上もがんばって貯蓄を続けておられるという方を奨励するということで、まずまず第一義的にはよろしいのではないかということでスタートをいたしておりますので、いまのところは、なかなか乏しい収入の中から積んでいく話でございますから、そういう強い決意をもって預金を始められたという方に限定をするということでよろしいのではないかというのが私ども考え方でございまして、途中下車ではないが、灰色のところにしておいて途中から色彩を明らかにするというところまで入れるということについてまでは、実はまだ踏み切りをつけていないということでございます。
  82. 荒木宏

    ○荒木委員 初めに伺った制度の目的、住宅建設の国民の広範な要求を実現する、そういった点、それからいままでの運用の実績の点、さらに実態から申しまして、政府の高官の皆さんのように、初めからはっきり目的を立てて資金的な手当てもできるというふうな場合は別として、広い国民の中では、必ずしも一律にそういった期待はできないと思うのです。実際問題としては、零細な、いろいろ資金調達のあれこれを思案しながら、将来の希望として細々と貯蓄をしていくといった層も決して少なくありません。ですから、そういった意味から、制度の最初の目的、趣旨は伺ったわけでありますけれども、いま申し上げたような点も含めて、将来、要求を実現するための検討の御用意があるかどうか、その点は今度はひとつ政務次官にお伺いしたいと思います。
  83. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと政務次官の前にお答えをいたしますが、実はこの制度が発足してからかなりの時間がたちます。しかし、率直に申しまして、あまり活用されていないのでございます。この制度がスタートいたしますときにはむしろ関係金融機関等が、こういう制度をつくってもらえれば金融機関としても住宅ローンをどんどん拡充していきたいというようなことで、非常に熱心であったわけでございます。ところが、どうも制度ができました結果、もう一つうまく商品が売れないというような形になっておるわけでございまして、単に税だけの問題ではなくて、金融機関側の、何と言いますか、商売の上の態度という問題にも非常に関連をいたしておるわけでございます。  そこへもってまいりまして、今回改正をお願いしております財形関係の住宅貯蓄控除という制度がございますが、これは四十八年度の税制改正でスタートすることになったわけでございますけれども内容を今回さらに充実させていただいているわけでございますが、そちらのほうの場合には、途中に事業主、雇い主が入ります関係で、比較的ものがうまく動きそうだというようなことになっております。  そこで、私どもは、この住宅貯蓄控除制度の問題につきましては、事業主が中へ入ってやる四十八年発足の制度のほうと、旧来からあります一般金融機関等がやっております住宅貯蓄控除の制度のほうと一体いずれがより現実的であるのか、いずれをよりよく活用していただくほうがよろしいのかというあたりを中心にしながら検討をいたしたい。御指摘のような問題もございますので、検討は十分いたしますが、その際に、この制度ともう一つのほうの財形貯蓄にかかわる住宅貯蓄控除制度とのからみのところもあわせて検討してみたいと思っておるところでございます。
  84. 中川一郎

    ○中川政府委員 これからの日本で大事なことはやはり住宅問題であり、住宅があまねく国民、特に勤労階層に行き渡るようにすること、これが政策でありますから、内容の充実等いま言ったようなことについても今後とも検討を進めて国民の期待にこたえていくようにしたいものだ、こういうように考えております。
  85. 荒木宏

    ○荒木委員 時間があまりありませんから、次に進みまして、豪雪地域、積雪の非常に激しい地域については、御承知の豪雪地帯対策特別措置法というのがありまして、いろいろ国の対策が講ぜられておりますけれども、私が見ますのに、大蔵省関係のこういった面についての対策が非常に少ないようであります。関係の審議会でいろいろ各省が意見を出しておられるのですけれども、ほとんど大蔵省関係ではこれといったものは見当たらない。  そこで、現在のこういった豪雪地帯、積雪地帯に対する大蔵省所管の特別の対策、それから今後考えておられる対策、それを簡潔にお知らせいただきたいと思います。
  86. 高木文雄

    高木(文)政府委員 たいへん広範な御質問でございますが、豪雪といいましてもいろいろな面があると思います。歳出面におきましてもいろいろ問題がございますが、税だけに限って申しますと、いまの制度では、まず第一は、今回所得税と一緒に改正をお願いしております災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律というのがございます。これが災害時の一般法でございまして、災害がありました場合に、それによって、被害を受けた方には、その被害の程度が大きい場合には、その年の所持税を軽減をいたします、あるいは徴収猶予等の措置をとりますということがございます。これが税についての災害に関する基本法でございまして、豪雪の場合にも、その規模に応じてではございますが——通常どこから豪雪というかというあたりに非常に問題がございます。他の災害と違いまして、通常の年の雪と異常の雪との境目をどこに置くかというあたりに、豪雪問題はちょっとややこしい問題がございますが、いずれにしても、この租税減免徴収猶予等に関する法律で処理をすることになっております。  それから、納期の延長に関連をいたしましては、国税通則法の十一条というところに、災害等による期限の延長という制度一つございます。これは国税局長、税務署長、税関長は、災害その他やむを得ない理由によって、もろもろの書類の提出とか納付とか徴収について期限までに事ができない場合には、その期間を二カ月延ばすことができるという規定でございます。  それから、もう一つは、所得税法上の雑損控除の規定でございまして、これは豪雪に限りません、災害がありました場合に、災害の掛かり増し費用についての所得控除の規定でございますが、これが所得税の七十二条でございます。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つは、法人税法のほうで耐用年数についての特例規定が置かれております。これは法人税法施行令の五十七条の規定でございますが、これで耐用年数について特例措置がございます。  まだあるいはほかにもあるかもしれませんが、いま私の頭に浮かびますものは以上のようなものでございます。
  87. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣お見えになりましたので、いまの点もう一問だけ続けて、その上でお伺いしたいと思うのですが、いま伺った点は、実際に災害が発生した場合の取り扱い、あるいはそれ以外は法人税法の特別償却、こういった点がおもなことだと思うのですけれども、しかし、実情から申しますと、たとえば、ことしは秋田県の横手などは二メートル近いたいへんな積雪でありまして、そういった面でこの雪害の対策、実際災害の発生に至らない前のそういったいろいろな費用がかかり、また得べかりし利益の喪失がある、こういうことは再三災害対策特別委員会のほうでも指摘されておるとおりであります。  この点について具体的に要望を申し上げて、御意見を簡潔に伺いたいのですけれども、たとえばこの雪害の予防費、家がたいへん傾きそうになるのでそれを除雪するとか、この場合に実際に出費をした場合もありましょうけれども、つとめを休んでその仕事をやった、そめために当日分賃金が支給されなかったといったふうな状況も生じてまいりますし、そういう意味での税の上での対策を検討されるべきではないか。現行法上はいろいろ問題があると思うのですけれども、いままでこの問題が指摘されますと、いやそういうことになれば、今度は暑いほうの地域の台風のことも考えなければならぬとか、ほかの事例があがって、やらない方向での説明が繰り返される。そういったことではなくて、特別措置法もあり、各省庁ともにいろいろな財政支出面その他でも前向きに取り組んでみえておるわけですから、ぜひこの税の関係でもそういった面の検討を進めていただきたい。  それからなお、いまお話がありました特別償却については、たとえば損失金額だとか手元資金やつなぎ資金、また経営状況などの記載が非常に煩瑣でなかなか利用しにくい、こういう実情がありますから、これの手続の簡略化の方向も検討をしていただきたい、こう思いますが、御意見はいかがですか。
  88. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 災害予防費を全額かあるいは一部か控除せい、こういうお話かと思いますが、予防費というのを一体どういうふうにとらえていくか、技術上はなかなか繁雑な問題じゃないか、こういうふうに思いますが、これは主税局長にひとつ検討してもらいましょう、うまくいく性質のものであるかどうかですね。  それから、特別償却の手続の簡素化、これはまあ簡素化ということは常に考えておるわけでございます。しかし、これがまた乱用されてはならない、こういう問題もあるわけでありますが、これまた御意見として承りましたから、またよく検討してみます。
  89. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは十分前向きの方向での検討をお願いいたしまして、大臣が見えましたので質問させていただきたいと思いますが、まず第一は、先般来いろいろいわれております超過利得税の問題であります。  御承知のように、この石油危機に便乗いたしました値上げ、荒かせぎの手口が幾つか明らかになりました。四十八年の十月、いろいろな事件が起こりまして、世間でいろいろ石油危機ということがいわれたわけでありますが、その後四十八年の十一月、十二月に幾つかの大企業の決算が公表されました。それを見ますと、従前の利益に比べて、超過利得が発生をしておる。つまり、経常利益がずいぶんと伸びている、そのふえ方が非常に大きい。しかも、時期がそういった時期である。こういうところから、超過利得を吸収せよということはいまや世論になっていると思うのであります。  すでに、御承知のように、野党四党ではそれぞれ法案要綱まで発表をされておりまして、私どもの党も、御検討いただくようにすでにそれぞれのお手元に差し上げておるわけでございます。ところが、政府のほうは、さまざまなお話がありますけれども、一向にスタートダッシュがかかるような気配が見えない。一体これはいつごろお出しになるおつもりか、この点をまず伺いたいと思います。
  90. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 超過利潤につきましては、これに課税を強化すべし、こういう声は私は一般化しておる、こういうふうに見るわけであります。私自身もまた何らかの対策を構じたい、こういうふうに考えております。  まあ幾つかの考え方を固めてみたのですが、どうも一長一短がありまして、その短の部分について皆さま方からきびしい追及があるだろう、こういうふうに思う。そういう際に、その追及に対していかに答弁をするか、これはなかなか自信ができないのです。そういうことで戸惑っておるこういう状態だったわけです。たまたま、いつでありましたか、野党四党の書記長、それから自由民主党の政調副会長、それと私が参加しまして、テレビ討論会をする機会があったわけです。その席で、私は何とかしたいのだが皆さんひとつ知恵を出していただけぬか、こういう御提案を申し上げたところ、出しましょう、相談しましょう、こういうことになったので、私もこれはまあいいことになったと、こういうふうに存じまして、それに飛びついたわけです。  そこで、その後の各党の動きを見ておりますと、野党四党からは、それぞれ御提案があったわけです。自由民主党のほうが、ある程度方向出しながらも、まだ固まった正式の提案をなさらない、そういう状態が今日の状態でございます。そこで、その残された自由民主党から、もう余日はないと思うのですが、提案があるだろうと思います。そこでこの五党間で話し合いが始まる、こういうことになるだろうと思う。  それで、私見ておりまして、大別して非常に食い違う点が各党案にあるのです。その最も著しい点は、社会党案が従来の法人に対しまして付加税率方式をとる、そしてその税率のもとで累進税を行なう、こういうことなんです。他の四党は、自民党はまだ正確なあれをして出しておりませんけれども、傾向的にこう見ますと、共産公明、民社と同じく超過利潤方式をとる、こういうような動きになっておる。  そこで、そういう基本的な問題についての考え方の違いがあるので、これが一体どういうふうに調整されるものであろうか。しかし、まあとにかくそういう調整をやってみようという方向でスタートしたのですから、スタートしたそのコースに政府が介入するのもいかがであろうかというので、その成り行きを見ておる、こういうのが実際、率直に申しましての今日の情勢かと思う。こういうふうに思うわけでございますが、まあひとつ御協力願って、何とか各党間でこれはという案をまとめていただきたい。  どうも、どの案をとりましても一長一短がありまして、しかもそれを具体的な事例に当てはめてみるという際に、世間で一般にうわさされるような、そういう企業に重課される結果になるのかならないのか、その点になりますと、これはなかなかむずかしい問題なのです。まあしかし、私も注意深く五党間の話し合いを見守りたい。その上どうするかということについて決断をしてみたい、かように考えております。
  91. 荒木宏

    ○荒木委員 私は自民党の幹部としての福田さんに御意見を伺ったのじゃありません。政府の、この領域についての最高の責任者のお一人である大蔵大臣にお考えを伺っておるのであります。つまり、政府はいつ出されるのか、このことをお尋ねしたのでありまして、各党でそれぞれの意見があることは私も承知をしております。ただ、それぞれの意見がなかなかコンセンサスが得られない、見通しのほうも伺ったのでありますが、問題は政府の態度でありまして、たとえば、従来与野党間で、各党間でいろいろ見解の違いがあったとしても、それを強行された事例は決して少なくありません。いまそのことを一々あげつらうつもりはありませんけれども、たとえば前回の国会をごらんになっただけでも、各党が一致をして政府政策に指示を与えたというものは、むしろ少ないじゃありませんか。  ですから、いま国民的な世論として超過利得を吸収すべし、こういう声があって、大臣もそのことをお認めになっていらっしゃる。だとすれば、政府責任者として、それに対してどうするか。いま検討中であるのかないのか、あるいは検討すらされておらないのか、いつごろ出されるのか、そのことを明らかにされるようにお尋ねしたわけです。しかし、いまお答えが各政党のことにわたりましたので、そのことは置いて、政府の態度ということにしぼってお答えをいただきたいと思います。
  92. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は一政党員としてお答えしておるわけじゃないのです。これは大蔵大臣としてお答えしておるわけなんです。その大蔵大臣としてのお答えがただいま申し上げたようなことなんであります。  つまり、五党間で話し合いを始めてくださることは非常にいい傾向だ、こういうふうに思うのです。そのいい傾向が出てきた。それなのに政府がちゃちゃを入れるというか、介入するということもいかがであろうか、こういうふうに考えまして、政府としてはその成り行きをしばらく静観をする、そういう態度である、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  93. 荒木宏

    ○荒木委員 手順についてのお考えはそれなりにいま伺いました。私は中身についてのお考えを伺いたいと思うのでありますが、この十一月、十二月に発表されました企業の決算内容は、これはまだ時期的に有価証券報告書の提出が期限のきていないところもありますから、新聞の報道その他によるほかないのでありますが、たとえて申しますと、ミヨシ油脂は前期の二十倍以上の経常利益をあげている。また帝国石油は前期の倍、それから片倉工業は前期の四倍、あるいはまた昭和電工は前期の三倍余りと、いずれもこの期間に発表されましたところは、いままでに比べて経常利益の伸びがずいぶんと著しいわけであります。これは超過利得というべき筋合いのものではないか。つまり、一般法人税の税率を上げるという全法人並みの扱いでは、この問題の対処はできないのではないか、こういうふうに思っておるのでありますが、この点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  94. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その辺になりますと、私、この間の本会議での御質問に対してもお答えをしたのですが、社会党以外の四党の超過利潤方式、これは超過利潤をとらえるという点におきまして、国民感情にはよく合う。しかし、超過利潤とは一体何ぞやということになりますと、なかなかこれはむずかしい問題がある。社会党の提案されておる法人税に特別税率を付加する、こういう方式は国民感情としての超過利潤徴収論、これにはそぐわない。しかしながら、これは政策の立案あるいは税務の執行、それが簡明直截であるということから、私はその簡明直截さに対しましては魅力を感ずる、こういうふうにお答えをしておるのです。私は率直にそういうふうに思っております。  そういう点を五党間でどういうふうにおとりになられるか、これからその調整が始まろうというやさきでありますので、その推移を注意深く見守りたい、こういうふうに考えます。私は、とにかく何らかの措置を講じなければならぬというふうに非常に熱意を持っておるということは、最初から今日まで変わるところはない、こういうことでございます。
  95. 荒木宏

    ○荒木委員 少し質問のほうがあるいはことばが足りなかったかもしれませんが、各党案についての御意見、それはそれとして、私が言いましたのは、いま社会の実態として、いままでに比べてうんと利益をあげている企業がある、これは社会的実態であります。この社会的実態についての大臣の御認識を伺ったのです。これは通常の利益とごらんになるのか、超過利益とごらんになるのか。各党の案についての御意見ではなく、目の前にある社会の実態、企業の実態について、これが通常の利益なのか、超過利得と認識をされるのか、その点を伺ったわけです。
  96. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 九月期決算でありますとか、十月決算でありますとか、そういう段階で出てきた利益、これが通常の利益であるのか、あるいは特別の利益であるのか、この辺はかなり判定がむずかしい問題じゃないか、そういうように思うのです。問題は、あの石油危機以来、私が狂乱と言っているような状態が現出しておる。その状態の中で企業がどういうふうな利得をあげたか。その辺を踏まえて、いま世論が大きく問題にしておる点じゃあるまいか、そういうように思うのです。  ですから、問題となるのは三月期以降の決算状態が一体どうなるのであろうか、そこらに問題があるのじゃないか。その三月期をにらんで、その辺で大体の国民感情に沿うような具体的制度をどうするかということになると、非常にむずかしい点がある。昨年の十月以前の決算ということになると、これが異常であるのか、あるいは正常であるのか、ちょっと判定の非常にむずかしいところがありはしないか、そういうふうな感じがいたします。
  97. 荒木宏

    ○荒木委員 たいへんむずかしいという御答弁を伺ったわけであります。といいますことは、これは裏を返せば、もしだれが見ても、いままでの企業実績、企業形態から見て、大体傾向なりあるいは率なり、そういったいろいろな要素から、従来とほぼ変わりがないというならば、それが正常であるかどうかというふうな価値判断は別として、大体従来並みだ、いわば通常だという判断は容易にできると思うのです。つまり、むずかしいとおっしゃることは、それだけ従来の傾向とは違った面があるから判断がむずかしい。これは少しことばの論理だけになるかもしれませんが、そういったことは否定できないと思うんですね。  ですから、そういった実態を踏まえて、さて政策としてはどうあるべきか。税の面でも、申すまでもなく政策目的が貫徹されなければならぬわけですから、いま第一の政策は、申すまでもなく物価抑制、引き下げであります。大臣、日ごろからおっしゃっているとおりであります。そうすると、いまの時期にもうけ過ぎても、これはだめだ、つまり税金でもって吸収されるんだ、こういったことを政策態度としてはっきりしておくことは、いまの時期にあるべき物価に対する対策としては十分検討すべきことではなかろうか、私はこう思いますけれども、そういった意味で、物価対策という面からいいろいろな荒かせぎの手口というものは具体的に国会の審議の中でも明らかにされておるわけですから、そういう面で、値上げをしても税としてこの点は特別に吸収される、こういうことを明らかにする必要があると思いますが、大臣のお考えはいかがですか。
  98. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、昨年の石油危機が出てからの物価の動向というのはほんとうに混乱状態だ、こういうふうに思うのです。その混乱状態というものはどうして起こったか、こう言いますれば、大かたの企業あたりが投機的行動に移る、価格にはおかまいなしに利益を追求するという手段に出るというところから起こっておるので、ほんとうの超過利潤、純粋というか、大かた超過利潤と断定してもよかろうという利潤は、私は石油危機以来の問題ではなかろうか、そういうふうに思うのです。ですから、そういうものに対して重課すべし、そういう考え方をとる、それは私は妥当な考え方だろうと思うのです。  荒木さんの御指摘のように、その考え方をとったその結果、将来の企業のマナー、モラル、そういうものに対して影響があるということも、私は否定いたしません。そういう傾向は持つであろう、こういうふうに思います。でありますから、その両面を考えまして、超過利潤の徴収というものに何らかのくふうはできないかという立場にあるわけであります。
  99. 荒木宏

    ○荒木委員 そういう点から申しますと、技術的な問題はいろいろあると思いますけれども、たとえば、いま審議中であります租税特別措置法で、揮発油税その他の増税の政府案が提出されております。国庫収入という点からいいますと、そういった揮発油税を増税して、それが物価の上昇にまた影響していくといった法案改正を出されるよりも、むしろいま大臣もおっしゃった、両面の効果があるというそこから税金を取って、そして間接税などを押えていくというほうが、物価安定、物価引き下げという方向にも沿うし、また先ほど大臣がお認めになったような政策目的にも沿うわけですから、そのような意味からも、臨時超過利得税法案政府としても提出なさるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  100. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 臨時超過利得税につきましては、政府のほうでもあれやこれやと考えておったのです。おったのだが、いきさつはただいま申し上げたようなことであります。つまり、五党間で話をひとつやろうじゃないかというようなことになってきておるのであります。そういういきさつを踏まえますと、私はとにかくこのいきさつを尊重するという姿勢をとることが当面妥当である、こういうふうに考えております。
  101. 荒木宏

    ○荒木委員 しかし、私どもの党のほうは、お話は全然何も伺っておりませんよ。この法案要綱についてはすでに増本理事が、正式な理事会の席上でありますかどうかは知りませんけれども、各党にごらんをいただいて、政府のほうへも差し上げておると思いますけれども、しかし、それについての御意見も何も伺ってはおりません。私は手続の経過といいますよりも、むしろ政策についての政府のお考え、これを伺っておるわけです。  ですから、いま超過利得をあげているところから税を吸収するという考え方、これは両面からうなずけるというお話があったわけですね。だとするならば、物価を上げる揮発油税その他の増税よりも、こっちのほうをやったらどうですかと、こう言っているわけですよ。大臣のおっしゃる物価抑制にも両てんびんでかかるわけですから、そういう考え方方向はいかがでしょうか、こういうことです。
  102. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 荒木さんのお話はよくわかりました。つまり、ガソリン税等の間接税の増徴はやめて、そして臨時超過利得税で課税強化したらどうだ、こういうことのようですが、私のほうは両方考えておるのです。臨時超過利得税、これも何とかお話をおまとめ願いたい、こういうこと。同時に、ガソリン税につきましては、とにかくガソリン税強化の結果はガソリンの消費に非常に影響があるであろう。いま何といっても、ガソリンの消費を減らすということは大きな国家的課題になってきておるわけであります。それに対して影響力を持つこのガソリン税の強化、これは少しも超過利潤徴収の考え方と矛盾するものではない。両々やっていきたい、こういうのが私の考え方です。
  103. 荒木宏

    ○荒木委員 つまり、政府案はお出しにならぬということですね。この点はっきりしていただきたい。
  104. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま政府案を出すとも出さぬとも申し上げません。ということは、いませっかく五党間の話し合いが正式に始まろうとしておる。そのやさきに、この五党間の話し合いをお願い申し上げました私が、政府案は出すのです、こういう立場にはありませんです。これはよく御理解をお願いできる問題じゃないか、そういうふうに思うわけであります。
  105. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは三月末までに、手順や方法はいかようであろうとも、必ずこれを日の目を見させるという決意はおありですか、この点伺います。
  106. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ぜひ五党間で話をまとめてもらいたい。そのまとめるためのお手伝いは一生懸命してみたい、かように考えております。
  107. 荒木宏

    ○荒木委員 話のことでありますから、いろいろな成り行きはありますけれども、もしまとまらぬときには、政府はどうなさるのですか。
  108. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まとまらぬときにどういう、かうにするかまでまだ詰めておらぬですが、私はお願いをいたしましたいきさつもありますので、何とかして五党間で話を煮詰めてもらいたい、こういうふうに念願をいたしております。
  109. 荒木宏

    ○荒木委員 いろいろ伺ったのでありますけれども、いずれも話は五党の話ということになりまして、政府としてのはっきりした態度表明がなかったことは非常に残念だと思います。いま国民の世論は、この石油危機に便乗して超過利得をあげたところから吸収すべしという世論が圧倒的でありますから、その点について政府のいまの姿勢は、国民の声にこたえていないということを、私は残念ながら申し上げざるを得ないと思います。  そのことを申し上げて、今後のことについてそういうふうな態度をおとりになっておるなら、せめていままでのことについては、もっとき然たる態度をとられるべきだ。こういう点から、いわゆる大企業の所得に対する課税態度と申しますか、こういった点についてお尋ねをしたいと思います。  先ほど来申し上げておりますように、大企業の反社会的なやり方というものが幾つかすでに明らかになりました。大臣には前に政府系金融機関の融資について、反社会性ということを問題にしてお尋ねをしたことがありましたが、そのときには、そういった企業に対する融資はしない、ただし、その認定にあたっては慎重でなくてはならない、こういう御趣旨の答弁があったわけであります。私は昨年一年の国会の審議をずっと見てみますと、春には商社をはじめとする大企業の投機行為の追及がありました。ある企業などは、食管法違反でついに起訴をされるといったような関係にまでなったわけであります。またそれに続いて、同じ企業が脱税行為の指摘を受けて、国会で国税庁長官も事案の内容をお認めになる、こういったことが起こったわけであります。  そこで、私は、まず最初に、一般的に伺っておきたいのですけれども、反社会的と一口にいわれます大企業のビヘービアに対して、金融面は前に伺ったのですが、課税の面で行政の指導方針はどのような態度で臨んでいらっしゃるか。
  110. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ついででありますので、金融のほうもこの前荒木さんから御質問がありましたのでお答えしておきますが、金融措置につきましては、これは反社会的行為をとった法人に対しては政府金融をどうするかという点について、これは考えるという方針を固めたわけです。それで、それに基づきまして、反社会的行為というものをどういう基準で認定するか、またその認定が下った場合にどういう手続で物資所管官庁から大蔵省へ連絡してくるかというようなプロセスについて、ルールですね、そういうものについていま打ち合わせ中である。しかし、多少時間がかかりますので、そういうルールの手順のきまるまでの間も、疑わしき企業につきましては、これは輸銀だとか開銀だとか、そういう政府金融機関による融資を留保しておく、こういう措置をとったことを、ついででありますので、お答えしておきます。  それから、大法人に対します税務につきましては、従来とも厳正に調査をやっておりますが、特に最近の時局にかんがみまして、異常な価格騰貴から、生活関連物資等の取り扱いを通じまして、多額の所得が見込まれる大法人につきましては、重点的に調査をするという方針を固めまして、もうすでにその運用の実行段階に入っておるというところでございます。特にその中でも、こういう傾向が指摘されるわけです。つまり、何らかの経理上の調整をいたしまして、そして三月期以降の決算、それの利得を隠蔽しよう、こういう動きが指摘されておるわけでありますが、そういう動きに対しましては、そういうことのないように、減価償却の問題等かなり厳重な手順をきめまして、さようなことから締めるような体制をとっておる、かように御承知願います。
  111. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 大法人の調査対象につきまして補足して御説明させていただきますが、御案内のとおりに、大法人、五千万以上の資本金がありますのは調査課法人でございまして、各国税局でやっております。これは中小法人の税務署におきます調査よりははるかに濃度の高い、また調査日数も長い調査をいたしておりますことは御案内のとおりでございます。特に、資本金六十億円以上の大きな法人につきましては、その中でも特に特別調査官制度を設けまして、連年実調ということを従来もやっておったわけでございますが、ただいま大臣もお話しのように、生活関連物資を中心にいたしまして、特に利益をあげている特定の業種、商社等につきましては、おもに東京、大阪、名古屋の国税局の調査課が中心でございますが、そういうところは、特に集中的にそういう業種に調査体制を向けるように現在実施いたしております。
  112. 荒木宏

    ○荒木委員 私がこの委員会で特にお尋ねをしたいのは、青色申告の取り消しの問題であります。これは前に国税庁の担当の方にごく簡単にお尋ねをしたのでありますけれども、去る予算委員会の審議の中で、これは他党の議員の質問に対する国税庁長官のお答えの中で、この三年間に七十八件、百二十七億八千九百万円というのが大企業の脱漏所得と申しますか、更正所得対象になったというような数字の御答弁があったわけでございます。この中で青色申告の取り消しになった事例は何件であるかということをお伺いしたいと思います。
  113. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 ただいまお話しの数字は、おそらく大法人の中で海外取引との関係で不正のあった過去四十五事務年度から四十七事務年度の三カ年間の法人の件数だと思います。これに関しまして青色申告の取り消しをやった件数はございません。
  114. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、個別の企業は一応さておきまして、いままで国会の中で明らかにされた事実、これは大臣もよく御承知でございますけれども、いま次長の御答弁の中にありました海外法人を利用してやるというふうなやり方、たとえば一例ですが、経費のかさ上げをしたり、あるいは証憑書願関係を偽造したり、こういったやり方は一普通常識的に考えますと、これは悪質ではないかというふうに思われるのですけれども、この点についての政府当局の認識はいかがでありましょうか。
  115. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 法人税の青色申告の承認の取り消しにつきましては、御案内のように百二十七条でやっておりまして、基本的には、その帳面の備えつけがないとか、記録の保存がないとかいう問題あるいはそういう法人が申告書を期限までに出さなかったというようなこの百二十七条の一号、二号、四号の問題につきましては、比較的事実関係もはっきりいたしております。それによって青色申告の承認の取り消しの可否を決定いたしております。  ただいま御案内の問題は、おそらくこの三号によって青色申告の承認を取り消すかどうかの問題でございまして、この三号におきましては、その帳簿書類に仮装隠蔽の事実が全部あるいは一部あった場合、その他帳面の記載事項の全体について真実性を疑うに足る相当の理由がないと取り消せないわけであります。通常の場合は、仮装隠蔽がありましたならばわれわれは重加算税を取り、さらに修正申告、更正を打つわけでございますが、その際に、その仮装隠蔽の事実が記載事項のどの部分にある、それではたして帳面全体が真実性を疑うに足るかどうかという認定はなかなかむずかしい問題があるわけでございまして、そこにどちらかというと、比較的慎重な判断を行なっておるというのが事実でございます。
  116. 荒木宏

    ○荒木委員 質問の要点にお答えいただきたいのです。私は、法律内容の御説明を伺ったのじゃないのです。国会の審議の中で明らかにされたやり方があります。これはずっと委員会に出ておられたのですから、政府委員皆さんもよく御承知だと思うのです。あれは悪質なやり方だというふうにお考えにならないでしょうか。そのやり方、手口についての評価を伺ったわけであります。
  117. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 悪質という定義でございまして、なかなかむずかしいと思いますが、われわれとしまして税の立場から評価した場合に、仮装隠蔽を行なって脱漏を行なうということは好ましくない。したがって、重加算税の対象にすべき行為であると考えております。
  118. 荒木宏

    ○荒木委員 そういたしますと、先ほど、三年間の中で取り消しの対象にしたものは一例もなかった、こういうお話でありますが、この法人税法百二十七条の規定に該当した場合に、取り消しをするとしないとの区別は一体どこで引いておられるのですか。政府としてその線引きをどこに置いていらっしゃるのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  119. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 おっしゃいます百二十七条でも、一号、二号、四号は比較的事実関係がはっきりしておるので、比較的簡単と思いますが、問題は、三号の場合は非常に事実認定がむずかしゅうございますので、ケース・バイ・ケースで判断しております。
  120. 荒木宏

    ○荒木委員 それではあれですか、担当した方の全くのさじかげんだ。これはことばがあるいは適当でないかもしれません。しかし、おのずから行政の公平だとか、斉合性とかいうことを問題にする以上は、その間に線引きと申しますか、基準というものがあろうかと思います。全くないのですか。それとも、一応そういったことについての目安というものをおきめになっておるのか、この点はいかがですか。
  121. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 基本的にはかなり事実認定の判断の問題でございますので、ケース・バイ・ケースでございますが、おっしゃいますように、そこに何もなければある程度バランスを失するという問題もございますので、実はわれわれとして内部的には、外部には出しておりませんが、秘の通達をつくりまして、それによって一応の目安を置く、それによって個別のケースを判断してもらって、そこにケース・バイ・ケースの判断を行なうわけでございます。  その通達の基本的な考えとしましては、申告の中におけるどの程度の割合が重加算税の仮装隠蔽の部分であるかというものを、一番基本的な考えとしております。
  122. 荒木宏

    ○荒木委員 大体行政当局の考え方を伺いましたから、大臣にひとつお尋ねしたいと思うのであります。  先ほど来申しておりますような、たとえば領収書関係の偽造でありますとか、あるいは海外法人を使っての架空経理の計上とか、これはいまの社会情勢から見まして、やり方は言うなれば悪質だというふうに、社会の一般の見方はそうだろうと思うのですけれども、その点、大臣はどうごらんになりますか。
  123. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは個々具体の問題についてでなくて、抽象的、一般的なお尋ねなんで、お答えが非常にむずかしいのですが、少なくとも好ましからざる行為であるということについては、私はそう断ぜざるを得ない、かように考えます。それ以上突っ込んで、これが法第何条のどれに違反するかどうか、こういうことになると、ケース・バイ・ケースの判断に待たなければならない、かように考えております。
  124. 荒木宏

    ○荒木委員 その好ましからざるものについて取り消しをするかどうかというふうな判断の場合に、市場支配力が非常に大きいもの、社会的影響力の大きいもの、そういったことは考慮の要素に入れられるのかどうか。いやもうそれはどんなに社会的影響が大きくても別だ、こういうえ考えなのか、その点はいかがでしょう。
  125. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それはもう業容の大小ということで判断の違うべき問題じゃない。あくまでも大であろうが小であろうが、その行なうところの行為、それによって判断すべき問題である、かように存じます。
  126. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、先ほど行政当局の説明でおっしゃった一たとえば企業の規模に対する一定割合、これによって一応の目安ということにしておるという点とお答えが食い違いはしませんか。つまり、先ほどおっしゃった内部の通達では、私は内容まで全部明らかにしてほしいとはいまは言いませんけれども、しかし、規模の大きいのと小さいのとで、それぞれ刻みをつくっておられるように聞いておるのです。ですから、企業規模だとか、そういうことによって取り扱いは変わっておるはずなんですけれども、その点はいかがですか。
  127. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 さっき政府委員がお答えしたのは、資本金五千万円以上でありますとか、あるいは六十億円以上でありますとか、そういうことによりまして調査のやり方が違うわけでございます。五千万円以下の法人につきましては、税務署が担当する、またそれ以上のものにつきましては国税局が担当するという違いはある。それから六十億以上というものにつきましては、いま鋭意厳重な調査をしておる、こういうことを申し上げたので、別に、六十億以上のもの、五千万円以上のもの、また五千万円以下のもの、六十億円以下のもの、そういうことによってそれに適用する法規が違う、こういうことじゃありません。
  128. 荒木宏

    ○荒木委員 いま中身までお話がありましたから、私は中身を申し上げてお考えを伺いたいと思うのです。  国税庁に伺いますが、昭和四十二年の二月三日に出された青色の取り消しに関する通達では、更正所得金額金額段階刻みで取り扱いが異なるというふうにしておられるのじゃありませんか。
  129. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 秘通達の内容でございますので、ここであまり詳しくは申し上げられませんが、基本的にはおっしゃるような線で考えております。
  130. 荒木宏

    ○荒木委員 そういたしますと、いま実際おやりになっているのは、そういった企業規模だとか、それから企業活動に伴う所得の大小とかということによって取り扱いを変えていらっしゃるのじゃないですか。
  131. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 これは最初申しました三号の考え方で、仮想隠蔽等の事実によって記載事項の全体について真実を疑うのにどの程度の判断を必要とするかということで、過去のいろいろな事例を集積いたして、その当時に一つのランキングをつくったわけでございまして、これはたしかこの前、先生の御質問に対しまして直税部長がお答えしたと思いますが、いろいろ問題がございますので検討してはおりますけれども、基本的には四十二年の段階におきまして、そういう過去の実績等をもとにいたしまして、一つの階級区分によって割合を出しました。そういうことでございます。
  132. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣にお尋ねしますが、いままでの質疑で、私は二つの点が問題になると思うのです。つまり、資本金でありますとかあるいは所得階級でありますとか、そういったいわば活動範囲だとか規模の大小とかいったことが、やはり取り扱い上違った扱いになってきておる。これはいま次長が認められたとおりであります。  それともう一つは、やり方の問題、これはいろいろ程度があります。先ほど好ましからざるというふうな表現をされたのですけれども、好ましからざる程度がどの程度であるかということによって、当然取り扱いが異なってくると思うのです。ですから、これは大臣に伺う前にもう一度国税庁に念を押して伺っておきますが、そういった大きさによって取り扱いが違う、それからもう一つは、手口の程度によって取り消しということと、そうでない点がある。従来はそういう取り扱いでしょう、この点はいかがですか。
  133. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 基本的には、大きさと申しますか割合が基本でございまして、いまおっしゃいます手口の程度というのは、おそらく犯したやり方の、いろいろやり方いかんによって判断が違うかという問題かと思いますが、これにつきましては、むしろケース・バイ・ケースで、やはり実態を見ないと、一つの基準だけでは形式的になり過ぎるということで、ある程度担当の署長なりあるいは局長の判断をケース・バイ・ケースによってやる余地を残しているという意味がございまして、おそらくその点が手口いかんによるという御指摘かもしれませんが、そうであればそのとおりでございますが、それ以外に、いろいろ仮装隠蔽のやり方の種類ごとに別な判断を行なうということはいたしておらないはずでございます。
  134. 荒木宏

    ○荒木委員 ちょっと二番目の点を念を押しておきますけれども、この不正欠損金額が年百五十万円以下、つまり刻みとしては一番低いところ、その段階でも仮装隠蔽の手段が特に悪質であるというやつは、これは青色の取り消しをするのだ、こういうふうな取り扱いに従来なっておるのじゃありませんか。その点は国税庁のほう、いかがですか。
  135. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 その点は、そういう考え方で、特に悪質なものというものはそこでメンションをするということであります。
  136. 荒木宏

    ○荒木委員 それからもう一つ伺っておきますが、こういったことのあったその後の企業の態度ですね。こういったことも取り消しをするかどうかという判断の要素になるのじゃありませんか。
  137. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 おそらくいわゆる宥恕規定と申しますか、その後適正な申告等が認められる場合があるかどうかという点の判断はもちろんいたしております。
  138. 荒木宏

    ○荒木委員 ここで大臣にお尋ねいたしますが、一般に反社会性、こう申しますけれども、その中に含まれる要素が幾つか明らかになったわけです。つまり、その規模だとか企業活動の大きさとか、そういったことが一つ判断の要素になっている。そういたしますと、国会の審議の中で明らかにされた幾つかの類型は、これは言うまでもなく大企業に関する事例であります。それから、やり方の手口と申しますか、これについても悪質なものは別な扱いになっておるという点も明らかになっておる。だとしますと、国会審議の中でいろいろ取りざたされたやり方は、あれは大臣も好ましからざるというふうな言い方をされておるのですが、これはやはりやり方の質はよくない、悪質だ、こういうことになろうかと思うのです。  しかも、あの件が問題になったあとで、直ちに事実を認めた企業というものはある石油会社一社だけで、これは社長が引責辞職されましたけれども、しかし、その企業ですらいろいろな点で口実を設けて、予算委員会に提出された資料では、まだ社内のいわゆる行政指導に反する文書が全部は提出されていなかったわけであります。こういったことが明らかになってきているわけですね。大企業であって、社会的影響が大きく、やり方が悪質である。しかも、その後、企業の態度にはなお十分に社会の要請にこたえるという態度が見切れない。  こういったような点から申しますと、この青色申告の特典、恩典を、この後もこういう種類のこういう願型の法人に対して与え続けるのかどうか、この点について、これは大臣政治的な御見解を伺いたい。
  139. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 ただいま企業規模別に割合があるというお話でございましたが、私が申しておりますのはその所得金額、調査しましたならば増差所得が来ますが、更正所得金額、更正所得金額別に、階層別に割合がございまして、ある場合には、大きな企業は更正所得金額が多い場合もあると思いますが、更正所得金額の階層別に占める不正所得金額の割合でございますので、必ずしも企業規模とは関係ないと考えております。
  140. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 税務行政は税法を忠実に実行しなければならない、こういう立場にあるわけでありまして、税法において税の執行を企業の大小によって区分すべし、こういうようなことがありますれば、そのとおりにいたします。しかし、そういうもののない限りにおきましては、企業の規模が大であろうと小であろうと、適用されるところの徴税原則にはいささかの違いもございませんので、問題とされておる青色申告の承認の取り消しの点につきましては、「取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、」その上こういうことがついているわけですね。「その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること。」こう書いてありますので、それに該当いたしますれば、小法人であろうと大法人であろうと青色の申告取り消しになる、かように御理解いただきたいと思います。
  141. 荒木宏

    ○荒木委員 それは振り出し質問に対する御答弁でありまして、私が伺っていますのは、手口という点も取り消しをするかしないかの要素になる、こうおっしゃったわけですよ、行政当局は。つまり、これは法律の規定がどういう場合に取り消しを発動するかということについて、行政上一定の目安がある、こうはっきりおっしゃったのです。ですから、その目安に照らして、こういう手口でやっている、しかも社会的影響が大きい、企業活動の範囲も広い、こういう場合には、先ほどおっしゃった基準からいえば、取り消しの部類に入るのか入らぬのか、この取り扱いを伺っているわけです。
  142. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 先ほど申しましたように、たとえば……
  143. 荒木宏

    ○荒木委員 端的にやってくださいよ。もう説明は要りませんからね。あなたがおっしゃった基準——すみません、もう一ぺん、答弁を正確にしていただくために質問を繰り返しますが、あなたは一つの目安があるということをおっしゃった、取り消しをするかしないか。そのあなたのおっしゃった目安に照らして幾つか国会で明らかになっておるこの手口、この規模、この社会的な影響ですね、こういった企業は入るのか入らぬのか、これをおっしゃってください。
  144. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 一つの目安はあくまでも目安でございまして、ケース・バイ・ケースで判断いたします。今度のケースはおそらく入らないだろうと思います。
  145. 荒木宏

    ○荒木委員 では、一般的に入らない理由を、一番大きな理由を言ってください。
  146. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 先ほど申しましたように、仮装隠弊の事実がその記載事項の全体について真実性を疑うに足るまでに至っていないと考えております。
  147. 荒木宏

    ○荒木委員 こういうやり方は、それじゃ悪質ではない、こう見ておられるのですか。端的に伺いましょう。いま国会の審議で明らかになった事実は、あなた方の通達でおっしゃっている悪質だということに当たらない、こういうことですか。
  148. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 先ほど最初のお答えで申しましたように、仮装隠蔽の事実というものは好ましくないと思いますが、ここで判断の基準になりますのは、その記載事項の全体について真実性を疑うに足るかどうかという点でございまして、その点では、まだ相当の理由があるまでに至っていないと考えております。
  149. 荒木宏

    ○荒木委員 いま国民の間に、この問題についての社会的な非難が高まっている。これは大臣も、政府関係皆さんも、御承知のとおりだと思います。そのときにあたって、大企業に対する課税の態度は厳正にやると、大臣は当初におっしゃったわけです。そしてまた、反社会的な企業に対して、金融面では一定の措置を検討し、それを実施する、こういう内容のこともおっしゃいました。  いま、先ほど来伺っておりますと、私どもは、ああいうふうなやり方については好ましからざるどころか、あれはけしからぬと思うのです。これは非常に常識的な見方であり、特に理屈だとか、持って回った理由が要らない、非常に素朴な見方だと思いますね。ああいうやり方はけしからぬ。そういうところに引き続いて青色の恩典を与え続けるというには、だれもが納得するような理由がなければ、これは国民は納得しないと思うのです。  ですから、私は、この際、いま全体について真実性を疑わせるような相当ななにがあるかどうかという点が基準だとおっしゃったけれども、やり方の手口は明らかになっているわけですよ。そうしてまた、それによってどのような金額だということも、これも明らかになっているわけです。にもかかわらず、あれが悪質ではない。なぜそうなるのか。その点について、当局のほうから納得のいく説明を私はこの委員会にきっちり報告をしていただきたい。その点を委員長にお願いいたしますが、理事会で御検討いただきたい、こういうふうに思いますが、よろしくお取り計らいを願います。
  150. 安倍晋太郎

    安倍委員長 聞いておきます。——聞いておきます。(増本委員「検討の議題にしてください」と呼ぶ)検討します。
  151. 荒木宏

    ○荒木委員 では、その点は御検討をお願いしまして、私はもう少し端的に実は伺いたいのですけれども、個別の問題は従来から公に答えるようなことではないというようなことで、なかなか御回答をいただけなかったのですけれども、それじゃ法人、個人を問わず、国税庁の関与された範囲内で個別の問題がほかに開示されておるような事例は絶対ないと、はっきりそうおっしゃれるでしょうか。そのことをまず最初に伺っておきます、次の質問に移る前に。
  152. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 まずはっきりいたしておりますのは、われわれは一定金額以上の所得は公示しております。それからあとは、ちょっといまのところ思いつきません。あるいは査察の話かと思いますが、査察につきましては、直接こちらから査察内容について公示することはございませんが、査察についてはわりあいに多くの人間が一時に動員されますので、取材活動はかなり活発な場合もございまして、その結果、漏れることもときどきはあろうかと思います。
  153. 荒木宏

    ○荒木委員 実はそれに関連してお尋ねをしたい質問がありますけれども、ここで一応質問を終わらせていただいて、この続きは留保させていただきたいと思います。  ただ、先ほど理事会で検討をお願いしました内容をあらためて申し上げておきますけれども国税庁の大法人の青色の取り消しについての基準ですね。それから先ほど申し上げたような、国会審議で明らかになった幾つかの要素が青色の取り消しにならない理由について、納得のいくような報告をいただきたい。それから、更正されたということは、これは長官が答弁でおっしゃっているわけですから、その更正の理由、それを開示していただきたい。
  154. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ただいまの御提案については、あらためて理事会で相談をいたします。  田中昭二君。
  155. 田中昭二

    田中(昭)委員 私は、きょうは税の取り過ぎが数兆円あるという問題を中心にして、お尋ねなり意見をただしていくわけですが、せんだって、私、党を代表いたしまして本会議で福田大蔵大臣質問をいたしました。そのときに大臣の御答弁があんまり簡明過ぎたところもございまして、私としてはたいへん残念に思っております。きょうはひとつゆっくりその点を詰めていきたい。  まず最初に、これはもう当然のことだと思っておりますが、わが国の予算は、歳出予算額が大体きまりますと、それをまかなうための税収その他の収入によって歳入予算もきまっていく、これはもうこのとおりでございますね。お認めいただいておるようでございますが、そうしますと、四十九年度の歳入予算の中の税収その他の収入、その他の収入は省きますが、税収につきましては、この前の質問大臣は、過小な見積もりはしていない、そういう一方的な御答弁であったわけです。そこで、それはいまから先のことでありますから、そういうふうに絶対過小見積もりしていないと言うことも、だれだろうとできないだろうと思います。また、過小見積もりしておるのだということもわかりません。ですから、四十九年度の税収につきましては、そういうふうに大臣だけが過小見積もりしていないんだとどんなに力んでみても、これはわからないことですから——それともわかりますか。はっきり四十九年のこの税収のとおりにいきますか。まずそれを聞いておきます。
  156. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 四十九年度の歳入見積もり、これはあくまでも見積もりでありまして、そのとおりにびた一文もふえることもなければ減ることもない、こういうようなわけではございませんけれども、とにかく見積もりが適正でなければならない。それには一定の経済状況の判断を固めておかなければならないというので、経済見通しというのをつくっておることは御承知のとおりであります。その経済見通しから見積もりまする税収をもって、これを四十九年度の税収見積もりとする、こういうことになっております。  これは、それをやってみたらどうなったと、こういうのは神ならぬこの私にもわからないことでございますが、とにかく経済情勢を経済見通しのごとしとすれば、税収見込みはこういうふうになるであろう、こういう数字でございます。
  157. 田中昭二

    田中(昭)委員 まあいかな福田大蔵大臣も、私はいまの答弁はすなおであってよろしいと思う。ということは、どこがいいかというと、経済見通しのいかんによってはわからないということですね。わかること自体がおかしい。神ならぬ身だとおっしゃったから、そういう点だけは、まず基本的にわかってもらわなければいけない。  そこで、四十八年度も大半は過ぎましたね。四十八年度は現在までの実績とあと一カ月、いやもう一カ月もないですね。ですから、そういう時期にあたりまして、私は四十九年度の税収がわからないということはそのままおきまして、いままで政府の見積もってきた税収が、いかに実績とはかけ離れたものであったかということは、四十八年以前の過去と、それから四十八年の現在とを見てみれば大体わかるのだ、こう思います。  そこで、最初に私が申し上げました、税の取り過ぎが数兆円ある。これは根拠のないことではないのです。ということは、四十八年度分でございますから。四十八年度分のここに報道されておるところからいけば一兆七千億ですけれども、私はこれもそのとおりだとは申し上げません。明らかに減税になった。「昭和四十八年度四十九年一月末租税及び印紙収入、収入額調」によりますと、最初に掲げてあります補正後の予算額、これ自体が四十八年度の当初予算よりも相当税収が伸びるというところでこの補正後予算額ができておりますね。一番左の端の十二兆五千八百億、端数は切りますが、当初予算が十一兆七百八十六億、この差額が大体一兆五千億ですね。これは間違いございませんね、事務当局。
  158. 高木文雄

    高木(文)政府委員 間違いございません。補正に追加いたしました額は約一兆五千億でございます。
  159. 田中昭二

    田中(昭)委員 その内容は何ぞや、四十八年度の当初予算政府の見積もりにおいて、補正予算段階でもう一兆五千億の、経済見通しによるところの税収増があったということをここで政府ははっきりと認めたわけです。その内容は、所得税が約五千五百億、法人税が七千五十億ですか、そのほか、あと三種願の税金がわずかずつふやされております。  そこで、この一月末段階におきましてはどういう推定ができるかといいますと一まず部分的に言ってみましょう。所得税の中での源泉所得税、これは四十八年度分ですよ。四十九年一月末、四十八年度のまだ二カ月を残しておる源泉所得税の収納額は、四十七年度一年間の決算額の一二〇%かそれ以上の増収がある。申告所得税においても、数字は略しますが、とにかく相当の増収になっておる。でありますから、申告所得税、源泉所得税両方合わせて所得税としましても、大体、昨年四十七年度分の決算収納額と匹敵するものが、あと二カ月を残して一月末収入であがっておるということなんです。一〇〇%ちょっと切りますけれどもね、ほとんど同じです。それに、もう一つの大事な税目であります法人税は、同じく昨年度一年間の決算額を上回ること六千億です。二カ月残してですよ。六千億ということは、これまた昨年度一年間分の二割ですよ。そういう増収になっておる。  そこで、一般会計の合計でいきますと、一月末で十兆円、昨年度一年間の決算額は九兆七千七百億、端数は切り捨てます。そうしますと、昨年度一年間の一般会計の税収をもう十カ月ではるかに突破しておるわけなんです。あと残されたこの三月の所得税の確定申告、それから昨年からぼろもうけをした大企業等の法人税の収納、そういうものを考えますと、現在一月末と昨年度一年分の決算並びに昨年一月末の数字を簡単に対比しただけでも、四十八年度の税収は相当な金額になるのではなかろうか、私はこう思うのです。  これは、当局が何か試算したものがあればお聞きしたいのです。私の感じでは、この割合から単純な算術でいっても十三兆円をこすのじゃないかと思いますが、大体の感じとしてどうですか。端数を言いますとあれですから、あと二カ月残して三兆円ぐらいの収入はどうでしょうか、大ざっぱな勘で。
  160. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十八年度の決算額がどのくらいになるかということは、まだ見当がついておりません。御存じのように、所得税法人税、いろいろございますけれども法人税あるいは間接税等は大体もう年間の十カ月分が歳入になっておりますから、ほとんど見当がつきます。肝心の問題は所得税でございますが、所得税につきましては、田中委員よく御存じのとおり、三月十四日、十五日というところでほとんど確定をいたすわけでございます。  ことしの三月の申告がどういう状況になるかということにつきましては、二つの見方があると思います。昨年一年間は法人の調査等でもわかっておりますように、かなり企業活動が大きくなっておりますから、その意味で高水準の申告が期待されるだろうということもいえると思います。しかし反面、最近急に経済の調子が冷えてきておりますので、申告という制度の関連上、私どもの経験で申しますと、三月時点の経済状態というものが納税者の方々の心理に非常に影響してまいりますものですから、三月時点の水準と申しますか、経済の調子が、よろしくないとか、金融の引き締めがきついとかいうことがありますと、必ずしも昨年一年の経済の実勢を反映したような申告になるとは限らないわけでございます。  もう一つ非常に大きな要素は、土地の譲渡所得の問題がございまして、これが最近の私どもの悩みの種になっております。御存じのように、土地の譲渡所得というのは非常に金額が大きくなっております。したがって、土地の譲渡のボリュームが大きいか小さいかということは、かなりの単位において年の税収に影響いたすわけでございます。最近は、御存じのように、比較的土地問題は冷えておるといわれております。しかし、もう一つは、四十九年から御存じのように税率が上がるという関係もございまして、四十八年分はかけ込みがあるはずだというような問題がございます。そういった要素がいろいろございますので、申告の伸びはなかなか見当がつきにくいわけでございまして、いまのところ順調に推移はしておりますが、いま御指摘のように、現在の十二兆五千八百億円の補正後の見込み額が十三兆の台になるかどうかということは、ちょっと見当がつきかねておるわけでございます。
  161. 田中昭二

    田中(昭)委員 あなたがそういうことを言って見当がつきかねているなんと言ったら、おかしいですよ。専門家に教えるのはあれですけれども、あなた、申告所得税というのは、十二兆円もの一般会計の収納の中の千三百億か千五百億じゃないですか。そんなところ、どんなに転ぼうと大勢に影響はないんですよ。何言っているんですか。
  162. 高木文雄

    高木(文)政府委員 所得税の申告分は、いまの予算で見込んでおりますのはそういう小さい数字ではなくて、一兆三千六百億でございますから、この水準はやはりかなり影響いたすわけでございます。千億とかなんとかでございましたら、それはおしかりを受けてもごもっともでございますが、申告所得税の大きさは一兆三千億でございます。そしていままで収納しております分は、昨年分を基準に計算されております予定納税分が入ってきておるわけでございます。そういう状況でございますから、やはり所得税については、三月の状態を見ないとわからないといわざるを得ないわけでございます。
  163. 田中昭二

    田中(昭)委員 大臣、私いまこちらからこまかく申し上げましたね。その趣旨は、簡単に言いまして、十二兆五千八百億ですから大体十二兆六千億ですね、この補正後予算額は。いま私が申し上げましたように、法人税にしろ、申告所得税、源泉所得税を含めましても、昨年の一年分の収入額と比較してみても、相当オーバーしているということを申し上げたわけでしょう。十二兆六千億が十三兆になるか、その前後になるかというようなことが見当がつかぬなんていうことは、私はあまりにも、わかっておりながら言わないというようなことに感じられてしかたないですよ。それであったら、あなたたちは、一年間の税収を見積もる場合、そんなことをわからぬでやっているのですか。それじゃこまかく入らなければいけませんよ。あなたたちがここに「税制改正の要綱」なんていっていますけれども、それじゃこれにちょっとでもミスがあったら、私、徹底的に追及しますよ、自分はないと思っているかもしれませんけれども。ここは大蔵委員会ですから、こういうことを言うと大蔵委員会を侮辱することになって申しわけありませんけれども、この中に書いてあることがたいへんお粗末なことが書いてある。ほかの役所の書類だったらこんなことないということはあとで指摘しますけれども、それは別にしまして、大臣、十二兆六千億の補正後予算がいま申しましたように法人税だけでも——いまの一月の累計にも、新聞報道等にもございます、これはただ算術計算でできるのですから……。法人税だけでも、いまでも七千億からふえているわけでしょう。それにもう迫ろうとしているのですよ、あと二カ月を残して。この分の増徴だけでも十二兆六千億は十三兆円に近くなるじゃないですか。そんな常識的なことをお答えできないのですか。
  164. 高木文雄

    高木(文)政府委員 現在十二兆五千八百億の歳入見積もりにつきまして、これを確実に上回るだろうということはいえると思うのでございますが、これが御指摘のように、四千億も上回るかどうかというような見当というものは、繰り返し申し上げましたように、事が所得税で最後の結着がつくということの関係上、ちょっと見当がつきにくいということでございます。この点は率直に申しまして、三月十五日になってもなかなかわからない、三月二十七、八日に全国集計を見まして、毎年私どもほっとしたり、びっくりしたりするというのが経験でございまして、なかなかそれがわからないというのが実態でございます。
  165. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、十二兆六千億をちょっとこえるぐらいのことはあり得るというようなことにしておきましょう。十三兆円にそんなにこだわる必要はないと思うのですが、もしも十三兆円近くになったら主税局長どうします、あなた責任か何かとるのですか。——まあそれはいいですよ、そんなことはできませんから。大臣、十二兆六千億から十二兆円ぐらいになる、その感じ一笑体間違わぬでしょうね。一応大臣の勘でけっこうです、私も勘で言っているのですから。
  166. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 どうも税収の見積もりだけは私の勘も響かないので弱るのですが、とにかく最近の租税収納の進捗率を見ますと、これは確かにお話のように、所得税では進捗率が伸びておるわけです。ところが、法人税のほうでは引っ込む、こういうことになります。十二兆五千八百億、これに対する対前年度進捗率が、つまり総計において一・三とこう出る。この一・三というものがどういうふうに評価さるべきか、こういう点になりますと、私もまだ見当もつきませんが、とにかく伸びる傾向の数字であることは確かであろう、こういうふうに思いますが、これはどの辺までいくのか、その辺になりますと、これは高木主税局長が感じ取るほかはない、こういうふうなところが率直なところでございます。
  167. 田中昭二

    田中(昭)委員 私ははっきり十三兆円をこすと思って、言っておきます。もちろんそれが当たったら、大臣、何かごほうびでもいただきますかな。だけれども、勘でございますから……。とにかく、いまのお話から見て、十二兆五千八百億をこえることは大体間違いないであろう。これくらい入らなければたいへんなことになりますからね。かりに十二兆六千億ですか、五千億でもいいのですけれども、それにしましても、当初予算よりも一兆五千億の増収は間違いない、そういうことですね。  それで、私はここで、いろいろ新聞報道や大蔵省の説明を聞くといつもみんな間違いやすい、ごまかされますから、大蔵省の書いておることばの意味から確認しておきますが、毎年税制改正で見積もりがされる場合に、これは主税局長大臣も一緒に見ていただきたいと思います、もうおわかりになっていると思いますが、収入予算額の見積もりですね、この場合に、一番最初に前年度の補正後の予算額が出てきておりますね。それで、その税法でそのまま税がとられた場合に、いわゆる現行法による収入見込み額ということで出てきておるわけですが、その現行法による収入見込み額と前年度の補正後予算額との差額が自然増収というふうに、いつも私たちは説明を聞いておる。これは間違いございませんね。
  168. 高木文雄

    高木(文)政府委員 自然増収ということばはあまり適当でないのでございますけれども、ほかに表現がありませんので言っておりますが、三ページに書いております現行法による収入見込み額と前年度の予算額との差額、これがいわゆる自然増収といわれているものでございます。この数字でございますと、二兆一千七百七十四億というのがいわゆる自然増収でございます。
  169. 田中昭二

    田中(昭)委員 その自然増収というのは、大蔵省税制改正をするときにお使いになることばですよ。私はそれだけ確認すればいいのです。  そこで、税制改正によってこれだけ減税しますという額が出てきますね、それを差し引きますと当年度の予算歳入額、いわゆる歳出をまかなう歳入としては、こういう税収を予想して歳出をまかないますという金額が出てくるわけですね。  そこで、私は一応いまおっしゃった自然増収というものと——話は戻りますが、四十九年度は見積もりはまだはっきりしたことはわかりませんし、四十八年度もまだわからないということでございますから、四十八年度並びにその以前にさかのぼって、毎年の税制改正で出てくる自然増収を私も自然増収と呼びます。そして当初予算額からその年分に収納されたいわゆる収納税額を比較してみますと、そこに差額が出てきます。いまの時点のことといまから先のことはわかりませんから、いままでの実績、四十七年でいきます。いいですか、大臣、おわかりいただいておるでしょうか。そこで、四十七年度の当初予算額と四十七年度の税収納額との差額を、私は増収と一応呼んでいきます。それで、高木主税局長も、私がいまから問答する場合に、そういう考え方を適当であるかないかは別にして、あなたのほうが当初予算を立てる場合に減税の財源とする税収を自然増収というから、それをそのまま私も受けて自然増収とする。そこで、当初予算と決算収納額、これとの差額を私は増収と呼んでおきます。もう一つあります。年度途中で補正しますからね。四十八年度の十二兆五千億というように、政府が当初予算額の一〇%以上も補正してふやすわけですから。大体この補正した額は、いま四十八年度分でただしましたように、大蔵大臣も大体これに近いところが間違いないと言う補正額、その補正、額とさらに決算収納額との差額を私は純増収と言っておきましょう。取り過ぎなんて言うと感情をすぐあれされますから、純増収と呼んでおきましょう。いいですね。ですから、もう一ぺん頭の整理のために、当初予算のときの自然増収、それから決算収納額と当初予算額の差額を増収、そして年度中途において当初予算を補正するから、この補正額は大体その年度の税収の近似値に近い、大体間違いない額だから、それと決算収納額がさらに差額が出た分を純増収、そういうふうで見ていきますと、なぜ私がそういうことを言うかといいますと、過去四十七年から九年間さかのぼってみまして——十五年間さかのぼってみまして、たった二回ですよ、全体として増収と純増収が出なかった年は。源泉所得税法人税、申告所得税なんかは毎年毎年増収と純増収が重なってきているんです。  ちょっとこれを大臣に見せてください。これは私、グラフにしましたから、わかると思いますけれどもね。せっかくつくりましたから、見てやってください。  これはグラフがちょっと完全に入りませんから、九年分、三十八年からになっております。ここでは一般会計収入とその上に法人、申告、源泉と、こうあらわしておきました。ですから、一般会計というのが全体の一般会計歳入額の合計です。合計の全体の金額を書いておりませんが、全体の金額をここで申し上げれば、たとえば四十七年で申し上げますと、一番右の下になりますが、一般会計収入で一番下に相当する部分は当初子算額でございますから、八兆八千四百八十五億円、これは間違いないはずです。そうですね。それはここに数字は書いておりませんけれども、それとプラス九千百八十二億円が決算収納額なんです。それを赤であらわしているわけです。あとは同じく、法人税が黒の部分ですね。大臣、見ていただいておりますか。黒の部分の法人税は二兆五千九百十七億、それにプラス赤の部分三千九百五億円、それが決算収納額で、二兆九千九百二十二億円、この数字がここには入っていないんです。その差額のところだけ数字をあらわしております。私が申し上げた増収の部分の差額が数字としてここに出てきておる。いいですか。  たまたまこれは九年分さかのぼりましたが、十五年間に逆のマイナスが政府のほうには都合よく二年分出てくる。四十年と四十六年。四十年はわかるでしょう、だれが総理大臣になってめちゃくちゃな財政になったかというときの証拠なんです。それから四十六年度は、年度内減税をやって、たいへんなことになったときなんです。それ以外あとは、三十四年から見ましても、この十五年間にこの二回分だけです。ですから、いずれにしろ九年間にしましてもこの二回分だけマイナスであって、あとは全部一般会計から見ても増収です。税金のおもな三税、所得税法人税酒税を見ていきますと、いま言うように、この赤の部分が毎年毎年増収、純増収を続けておるわけです。  ですから、そういう現実を見てみますと、これは何を物語っているのでしょうかね。大臣は、私が説明申し上げましてピンと何をお考えになりますか。
  170. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは、政府が景気の抑制努力をする、その考え方に立ちまして経済見通しをつくる、それにもかかわらず成長率が高くなる、その影響を受けまして物価もまた見積もりよりも高くなった、こういうことが租税収入に反映された、こういうふうに考えます。
  171. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうすると、そういう見積もりが反映された結果、過去十年、十五年さかのぼってみても、いつも増収、純増収になっている対象は、一番国民が関心のある所得税所得税の中でもサラリーマンの税金。それを逆からいえば、サラリーマンの税金からだけ増収と純増収を取って、ほかの税金では少しでこぼこが出てくるから、源泉徴収というのは税を取り立てる場合には一番経費がかからなくて、よく取れて、毎年よけい取れ過ぎる税金だということを立証しておることになる。(福田国務大臣「そうはならぬね」と呼ぶ)どうしてですか。九年間全部源泉所得税が一番増収が多いじゃないですか、割合からいくと。(福田国務大臣「源泉より法人が多い」と呼ぶ)それは、法人は全体の税率が大きいからですね。  いずれにしろ、いま大臣がおっしゃったように、収入見積もりより実績がよくなるから増収になる。ということは、大蔵省立場に立てば、一番堅実な見方をして、国民から税を取り立てる場合には、法人税も含めて、一番収入見積もりよりも多く実績が出るやつ、増収、純増収が確実に出る税目についてはそれを貫いていくということですね。これはほんとうに四十八年度の税収なんか見たら、税金を返せとか年度内減税しろと言うとあなたたちがすぐ反発するから私はそこまで言わぬけれども、この十五年間、十年間のこの源泉徴収の納税人員の増加についても、私は四十二年にこの国会に参りまして、四十二年にもうこういう議論をして、サラリーマンの納税人口のふえ方は多過ぎる、早く対策を立てなければたいへんですよと、税制総点検も行ない、重税のこともるる申し上げてきた。それがたまたま、ことしの税制改正に対する税制調査会の答申の中にはっきり出てきているじゃないですか。私が四十三年に言ったことが、ようやく四十九年の税制調査会で答申されている。税金というのはそんなにおくれて答申されてもらっては困る。それはまた次の議題でございますからやめますけれども、ひとつ大蔵省は、こういう実態を国民に明らかにしなければいけませんね。  本年の四十八年度についても、私はさっきから言っているように、源泉所得税だけでも相当な増収、これはおそらく純増収ですよ。補正後よりもふえることは確実ですから。申告所得税も含めた段階でも、増収が五千五百億ですよ。純増が二千億ですよ。私か先ほど確認した増収が五千億、純増収か二千億。それが一年でない、ずっと続いておる。こういう実態を一ぺん国民皆さんに明らかにして、大蔵省もきちっと税法どおり取ってくるのですから、国民の協力を得るために、この実態というものを明らかにして、そしていま世間はこれだけ発想の転換という議題に直面して、大臣も、いままでの政策の中にはいろんな不公正なものもあった、それを公正に戻すために私は大蔵大臣を引き受けたのだというような財政演説をなされた。どうですか、この辺でひとつ発想の転換をして——全然収入の見積もりが間違いないようにしろ、それはできませんよ。それは私もわかります。しかし、こういう過去に出てきた実績に対しては、国民の貴重な税金ですから、何らかの発想転換か、それとも収入見積もりを正しくやるか、そういう方向に一歩前進しなければ私はおかしいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  172. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 田中さんの御指摘の問題は、まあ国政、経済運営がいかにむずかしいかということを物語っておると思うのです。つまり、田中さんの御指摘のような自然増収だとかあるいは純増だとか、そういう現象が起こりますのは、結局、年度間におきまして経済成長率を中心とした経済見通しが変わってきた、こういうことを端的にいま表明しておる、そういうことなんですね。私は、そういう見通しを立てた、それがまた年度の途中で変わるというようなこと自体がないようにしなければならぬ、こういうふうに思うのです。  しかし、いままでの実績は、不幸にして、年度の途中においてかなり成長率の見込みに狂いが出てきている。また、それに従いまして、物価、賀金、こういうものにも変動を招来しておる、こういうような実態ですね。私はそういう過去の税収の推移を見て、そうしてそれは何だといえば、経済運営、これが見込みと実績において大きく違っていたということを示すものでありますので、経済運営のこの見通しとその実行というものにつきましては、特にまた配慮していかなければならないということを痛感いたします。
  173. 田中昭二

    田中(昭)委員 経済見通しが違ったためにそういう結果をあらわすものだという点は、私も理解できます。そのことについては、いま大臣の最後のおことばがちょっと出てこないのですけれども、また繰り返すようですが、経済見通しの狂いというのは、補正予算というものを組む以上は、補正予算を組んでいわゆる歳出に見合う税収を確保する。税収の伸びもいいというようなことで、いわゆる補正後の税収というのは、私は大臣のおっしゃることで、筋と現実がそういうことになるだろう。経済見通しが年度中途で変わるのだから、それに見合った税収を立てて、これはもう大体間違いない、そういうものをあらわすのだ。ところが、私は、もう一つそれに、いわゆる純増に当たる部分だけでも、ちょっともうこれはせっかくのあれですから、大臣によく認識してもらうために申し上げておきましょう。  申告所得税法人税と源泉所得税、三十八年は、その純増に当たるものは源泉所得税で百十億円、その年の法人税と匹敵します。逆にこれが、法人税が千億近くで、そして源泉が百十億というなら大体あれですけれども、さらに申告所得税は百四億円。三十九年は、源泉所得税が百七億円、申告所得税が百十二億円、この年の法人税が九十六億円。四十年は、これは補正をやったあとで源泉所得税も約九十八億、やはり百億ぐらい出ている。  こう見てみますと、源泉所得税もいまの純増は毎年毎年百億、二百億と、こう出ているんですよ。一年もこれは少ないときはないのですよ、過去九年間、ふしぎに百億台ですね。ほかの税目は純増が二百億とか三百億になったことがありますけれども……。こういうことでございます。  それから、一般会計の決算額、会計検査院の検査の結果の歳入予算額と決算額を調べてみましても、これまた参考までに申し上げておきます。  これは四十年からここに書いておりますが、四十年では歳入予算額よりも収納歳入額が二百八十三億、これは歳入予算額に対して〇・八%多く収納されている。四十一年は七百四十九億円、一・七%。四十二年は九百六十億円、一・八%。四十年は二百億だったのが、二年後の四十二年は九百六十億になっている。四十三年は、何と千四百二十五億円、割合でいっても二・四%。四十四年は千七百八十四億円、二・五%。四十五年は二千四百六十億円、二・九%。四十六年は、何と六千八百八十一億円、割合が七・一%。金額も二百億から始まって、たった六年間に二百億が七千億に迫ろうとしておる。割合も〇・八から一・七、一・八、二・四、二・五、二・九、七・一と収納されておる。こういう数字、まだそのほか検査院の指摘事項から見ましても、いつも私がこの問題を取り上げますと、税法に従ってきちっと取っておりますから取れたものには間違いありませんと言いますけれども、毎年毎年検査院から指摘される徴収不足額、そして徴収不足額と反対の取り過ぎ分、件数、金額ともに毎年、毎年著しい増加をしておる。だから、私がこの前本会議でその点を指摘しましたけれども、その点に対しては、大蔵大臣は全然触れられなかったから、ひとつ触れていただいて、御見解をお聞きしましょう。
  174. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほどから申し上げておるのですが、これは経済見通しに狂いが出てくるわけです。そういう結果、もう自動的に租税収入の見積もりと実績が違ってくる、こういうことになるわけです。ところが、秋ごろというか、年末ごろに補正が組まれる。その際に、その自然増収を財源として使うということになる。その前提として、経済見通しの改定が行なわれる。その改定されました経済見通し、それとその後の租税実績というものは、そう多額には狂わない。まあ多少のことはあります。  しかし、私は、そういう過去の実績であるにかかわらず、四十八年度というのは非常にむずかしいのじゃないかと思うのです。というのは、これは暮れにああいう経済変動があった、その響きが一体源泉申告の所得税あるいは法人税収入、そういうものにどういうふうにあらわれてくるのだろうか、この見当が非常にむずかしい、あるいは、あなたがおっしゃられるように、収入がかなりふえるということがあるかもしれませんし、あるいは逆に、そんなにふえないというようなことにもなるかもしれない。その辺は非常にむずかしいのですが、要は、いやしくも経済見通しを立てる以上は、それにのっとって経済運営というものがほんとうに着実に行なわれなければならぬ、こういうふうに私は思います。それでないと、ほんとうに田中さんからるる御指摘があるように、何の見積もりかというようなことになってくる、こういうふうに思うのでありまして、私は大蔵大臣としてはもとよりでありますが、国務大臣としても、経済見通し、それにちゃんとのっとった経済運営をしなければならぬ、そういう方面に格段の努力をしていきたい、かように考えます。
  175. 田中昭二

    田中(昭)委員 格段の努力が、国民のささやかな減税要望等にも沿うような方向で御検討をいただくことをお願いしておきますが、どうしてもまた指摘しておかなければなりませんのは、経済見通しの変化によって税収は変わるが、それは大体そう違いがないようなところでやっておるというような御答弁ですけれども、その税全体の中の税種目によって、いま私が言いましたように、補正予算よりも毎年よけい収納される、源泉所得税とかそういう種目で見た場合、過去十何年も補正後の予算額よりも税収のほうがふえるということをぜひひとつ頭に入れておいてもらいたいと思います。  こればかりやっておりますと、時間があれですから次に移りますが、これも私のようなしろうとがこういうことを言ったらおこられるかもしれませんが、税制調査会の問題です。  税制調査会はたいへん学識経験豊かな先生方が最善の努力をしておることについては、私も敬意を表しますけれども、これはどうもほんとうの機能をしていないというような見方をする人もおりまして、税制調査会政府与党のお先棒かつぎじゃないか、御用委員会じゃないか、御用委員会もはなはだしい、こういうことを言う人もおるのです。これは批判的な立場でこういうふうに言っておると思いますが、これはたいへん大事なことだと思います。いまおっしゃったように、大蔵大臣としても、国務大臣としても、党の実力者としても、そのことにつきましてどのようなお考えをお持ちになっておりますか、お尋ねしておきたい。
  176. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 税制調査会につきましては、これが適正に審議が行なわれ答申が出されるということを切に期待をいたしておるわけなんでありますが、よく調査会、審議会が行政府の隠れみのになるということをいわれる、そんなことがあっては相ならぬ、こういうふうに私は思うわけであります。  私、税制調査会にタッチしておりますが、さような傾向があるというふうには考えません。調査会は調査会としてかなり自主的な議論を展開され、また、その自主的な議論の上に立ちまして自主的な意見をまとめられる、そういうふうに考え、大いに税制調査会の意見を高く評価し、この上とも適正な御意見を税制に対して出していただきたいということを念願をいたしております。
  177. 田中昭二

    田中(昭)委員 私も大臣と大体同じような意見を持っていままできたわけですけれども、それをもう一ぺんくどいようですが確認いたしますと、税制調査会というのは中立的な委員の先生方で、特に学識経験豊かな人たちが中心になって運営されていく、それはもう当然でございます。その中に——その中にというよりも、さらに各界の代表や、具体的にはマスコミの代表者の方々とか、あるいは委員外の方々とか、いろんな立場の方がいらっしゃいますから、そういう方々の意見もよく聞いた上で、そこで出てきた一つの案を取りまとめて、さらに税制調査会委員の学識経験者の皆さんでその案をまとめて、それを政府が受けて、政府はそれを参考として、そして国会に税制改正案として提出する、これが本筋ではないか、私はこう思うのですけれども、それはそのとおりでようございましょうか。
  178. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 さようなふうに私も考えます。
  179. 田中昭二

    田中(昭)委員 ところが、ことしの税制調査会の答申を見てみますと、ちょっと違いますね。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 ことしは与党の自民党案の税制改正案が出た翌日に、税制調査会の答申案が出ている。そうしますと、いま私がこうあるべきだと言ったことに大臣もそのようであるべきだと言ったことと、これは内容は別としまして——内容は別にしてというよりも、内容はいいものだとしましても、ことしの税制調査会の答申は、ほとんど自民党の案と同じだ、与党案と同じものが翌日税制調査会から答申されて、それをそのまま大蔵省は国会に提出した、これはどういうものでしょうか。
  180. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 税制調査会は、与党においても非常に重要視いたしておるわけであります。そこで、税制調査会がどういう雲行きであろうかというのは、与党の税制調査会におきましても常に関心を持ち、それに対して批判をすべきものは批判をする、しかしながら、同調すべきところは同調する、そういう態度をとってきておるわけです。税制調査会のいうことはかなり権威のあることでございますので、やはり与党の税制調査会といたしましてもそれを尊重するという傾向が出てくるのは、私はこれは当然だろうと思うのです。  その答申の先後がどういうふうになった、どっちが先だ、どっちがあとだ、こういうふうなことは問題じゃないのです。要するに、正しい構想が出てくるということが大事なんです。正しい構想が出てきた、与党がそれにたいへん感謝し、これに共鳴をするということになれば、与党も税制調査会に引きずられてというか、同じような結論を出すということになるのも、これは自然の勢いであろう、私はこういうふうに思います。
  181. 田中昭二

    田中(昭)委員 大体大筋はそれでいいのですけれども、ただ途中にちょっと私もひっかかる、おそらく大臣もそう言われればそうだなと思われるところは、先ほど言ったように、税制調査会でいろんな意見を戦わして、そしてまとまった成案を自民党、与党のそれぞれの方々並びに政府は受けて、そして法律案として出すというのが本筋ですね、そういうことを先ほど御確認いただいたわけですけれども、ことしは時期的にそれが特におかしい。いままではこういうことはなかったのですから。いままではその本筋どおりきたのです。ところが、ことしは与党案が先に発表になって、その翌日に税制調査会の答申が出て、間もなく政府案が出た。このことはもう少し内容を詰めながらいくと、またおもしろい問題が出てくると思う。  きょうは時間がございませんから結論にしておきますが、同じようなことですが、そこで、税制調査会でまとまった改正案、そういうものは中立的な意見の集約であって、そして国民負担の公平からも国民要望にも一応かなったものである。その案は現時点においては、時宜にかなった、いわゆる時宜に相応した税制改正案であるが、その案はあまりにも理想的てあって——過去の税制調査会ですよ、ことしのやつは異例ですから。いままでの税制調査会のあれはあまりにも理想的な改正案であったために、いままでは政府、与党の取り入れるところとならない面がたくさんあった。  簡単に縮めて言いますが、そこで税調委員としては、そういうふうに政府で取り入れられないとするならば、その委員会で論議したことについてのつとめが果たされない、また税調の存在意義も薄れてくるし、ない。そういう現実の、真実で具体的な、そういう税調のいままでとってきた行き方があるといわれておりますが、それはお認めいただけますか。
  182. 高木文雄

    高木(文)政府委員 四十九年度につきましては、党のほうできめられました案と政府税制調査会できめられました案とでは、ほとんど結果としては大きなそごはございません。ただ、四十八年度のときには、御指摘のように、たとえば事業主報酬制度のように、政府税制調査会では採用すべきでないというような意見が出されたものがございます。過去においても、そういうふうないろいろ違いがあった場合もございます。それはそのときそのときの案件の内容によりまして、御意見が違うこともありますし、合うこともあるわけでございまして、その違うことがあるというのは、それぞれが独自性を持っているということの証明ではないかとむしろ思うのでございます。別に両者が、どっちかがどっちに拘束といいますか、引っ張られておるという関係にはないと思うのでございます。  そのことについて、実は四十九年度の分につきましては、政府税制調査会の中でも問題になったことがございました。党の税制調査会のほうが一日先にあったということが非常に問題になったことがございましたが、政府の調査会のほうは各委員が全部いろいろそれぞれお仕事をお持ちでございますので、大体日程を一週間ないし十日前からきめてございます。それと党のほうが日程をおきめになることは必ずしも予定していないことでございますので、先になったりあとになったりするのでございますが、そのことが全体の御答申に何らかの意味で影響があるということではないと私は思っておるのでございます。
  183. 田中昭二

    田中(昭)委員 もう時間も来まして、大臣にはちょっと質問できないような段階になりま。して、たいへん残念でございますけれども、またこの次に時間を与えていただいて論議したいと思います。  きょうはこれで終わりにします。
  184. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 御苦労さまでした。  次に、竹本孫一君。
  185. 竹本孫一

    ○竹本委員 税法の改正を審議している過程でございますが、言うまでもなく、租税には税法としては公平の原則が貫かれなければならないと思います。さらに、税を取っておる、徴税の事務を担当しておられる皆さん立場に即していえば、どこまでもあたたかく親切な態度でやってもらわなければならないし、また、しかしながら同時に、ある場合には非常にきびしくやっていただかなければならぬというふうに思います。  最近の国民世論の動き等にかんがみますと、いわゆる臨時の大きなもうけがあった。それに対して、税金は十分取ってもらいたいというような声が非常に多いのでありますが、私が見るところによれば、現在、会社というものが大体百三十万ある。その中で、大蔵省の国税局あるいは税務署といったようなところで、実際に実地調査を徴税の立場でやっておるものは大体その一割くらいではないか。さらに、実地指導といったような形において接触しておるものが、また同じくらいの程度ある。いずれにしましても、二つ合わせて約二割。しかし、指導というのは、やはりいわゆる指導であって、単なる接触にすぎない。したがって、税務署が税務署本来の機能において実態を調査するというような立場で実際にやっておられる事務の消化というものは、大体、法人について一割であるというふうに思いますが、国税庁のほうからひとつ、現在、国税庁対象にしておられる法人の数並びに一事務年度において具体的に実地調査ができる数あるいは実地調査をした数、その割合はどれくらいになっておるか、数字があれば数字で御報告を願いたい。
  186. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 四十七事務年度、つまり四十八年六月で終わりました事務年度の実績がございますので、これについてお答え申し上げたいと思います。  まず、対象といたしまして、われわれがいろいろ処理すべき対象件数は百二十三万二千件でございます。それに対しまして、いまおっしゃいました実地調査をやりました件数は十二万六千件でございます。したがいまして、それを分母にして割りますと、一〇・三%、これがおっしゃいましたように実調率でございます。それ以外に、銀行指導、その他の指導がございます。その指導を入れました実調率になりますと、各一〇%くらいの大体二割程度だと思います。
  187. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうしますと、百二、三十万あるところで十二、三万実地調査をやる。接触したものは接触にとどまるわけだから、具体的にあまりたいして期待はできない。実際にやっておるのは一割だ。裏かり言うならば、十年に一回会社に行くだけだということになると思うが、事実十年に一回だけしか会社には実地調査で臨んでいないのか、もう一ぺん念のために聞いておきます。
  188. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 おっしゃいますように、調査対象件数は非常に多く、本来やるべき件数は多くて、それに従事しております法人の担当の職員はあまりふえませんので、したがいまして、私どもは能率的にそこを執行するように、納税者の対象、法人の対象、過去のいろいろな税務の税歴と申しておりますが、税の実績によりましてある程度分離いたしまして、比較的に何回も違反といいますか逋脱を繰り返しておる、脱漏を繰り返しておるというような法人に対しましては、場合によれば、連年調査、毎年調査あるいは三年に一回調査ということでやっておりますし、そうでない方にはほとんど指導だけで、いわゆる優良法人といっておりますが、指導だけで済ましておる法人もございます。それから、そのちょうどまん中にあります法人につきましては、五年に一回、三年に一回とか、そういうぐあいに法人を、ある程度、調査対象をこちらの必要性から分離して調査をやって、できるだけ効率的な運営をやりたいと考えております。
  189. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一度念のため聞きますが、会社の良心的な協力といったようなものに期待をして、百三十万なら百三十万のうちある程度のものは立ち入りというか実地調査をする必要がない、しかし、調査をする必要のあるものが全体の何割ぐらいあって、そしてそれらに対して何年に一ぺんしか行けないのか行けるのか、もう一ぺんその辺を具体的に聞きたいと思います。
  190. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 先ほど申しました優良法人あるいはそれに準ずるような準優良法人と申しますのはほとんど指導だけでございまして、五年に一回の洗いがえをいたしますけれども、大体指導だけでございます。このグループは大体二割ぐらいの見当でございます。それ以外の八割の対象につきましては、ある場合には非常に連年的な調査、それからある場合には五年に一回ぐらいの調査、さらにもう少し内輪では若干分けておりますが、いずれにしましても、優良、準優良法人は約二割ぐらいの感じでございます。
  191. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは大臣、ひとつ大事な点だから聞いていただきたい。いま聞いてみると、会社が約百三十万ぐらいあるんですね。その中で二割ぐらいは優良法人だからインチキはやっていない、信頼してよろしい、八割ぐらいはまあ場合によっては調べに行かなければならぬだけの必要がある、しかし人の数も少ない、いろいろの関係もありまして、十年に一回というのが数字の上の平均だけれども、三年に一回か五年に一回しか行かない、こういうことになっておる。  そこで、われわれが新聞を読んで大蔵省に期待し、国税庁の誠意ある努力に期待をして、インチキというか便乗というかは別としまして、非常に大きな利益をあげたものについては、今回は特に手きびしく実態調査をして課税をやるのだ、またそうしてもらいたいんだという期待をわれわれは持つけれども、実態の数字を見れば、十年に一回か三年に一回かは別にして、いずれにしても、これはたいへん実態調査というものが手薄ではないかという感じを受ける。これは一つの大きな問題点であろうと思いますので、あとでまとめてひとつ大臣の御見解を承りたいと思うのです。  第二に承りたいのは、国税庁、その実態調査をした場合に、更正割合というものはどのくらいあるか、それから更正にまでは至らないけれども、修正をさせたというものはどのぐらいあるか、そしてその結果、増差所得というものはどのぐらい出ておるかということを聞きたい。
  192. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 その前に、先ほど四十七事務年度百二十三万件と申しましたが、この中には休業または清算中の法人が十三万件ございます。それから、いわゆる赤字でない有所得法人というのは、大体全体の六割から七割程度でございます。補足いたします。  いまお尋ねの更正、決定あるいは修正の件数でございますが、実はこまかくそこは分けてとっておりませんで、更正と決定と修正と合わせて三つの件数の合計が九万四千件。実地調査をやりましたのが十二万六千件、そのうちの九万四千件が更正、決定、修正でございます。修正は大体この中の、一見当としては半分ぐらいじゃないかと考えております。  それから、増差の問題でございますが、増差の問題は、先ほどの実地調査による更正、決定、修正が九万四千件で、増差の所得金額は三千九百六十三億でございます。それから増差の税額のほうは実は統計上とっておりませんので、ちょっと手元でわかりませんが、増差所得としては三千九百六十三億円でございます。
  193. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまのは法人についてですね。
  194. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 はい。
  195. 竹本孫一

    ○竹本委員 個人所得についても大体八割から九割は同じようなケースで修正されるか更正されておると思うんですね。そこで、両方の場合を合わせて考えてみますと、とにかく手薄でなかなか、何年に一ぺんしか実地調査はできない。しかし、調査をしてみれば、三千九百億ですか、それだけの所得については申告が落ちておるということになると、われわれがここでいかにまじめに税法改正について論議してみても、その結果が完全に実を結んで生かされておるということにはならぬと思うんですね。  そういう点から考えて、一体いまの税務署、国税の関係は五万人ぐらいおると思うのですけれども大臣、いままでの実態は、いまお聞きのように、八年か五年かは別として、そのくらいに一回しか実態調査はできない。調査をすれば八割、九割の件数があがってくる、こういう実態でありますから、これは採算の関係から考えてみても調査は引き合う、ペイする仕事であるが、しかし採算以上に、国民租税正義、国民の税に対する不信感や挫折感を払拭する意味においても、これはやるべきものはちゃんとやる、取るべきものは取るのがほんとうだと思うんですね。それに対して五年に一ぺんぐらい行ってみてやったぐらいでは間に合わないと思うのですが、結局、これは税務署の職員数が足らないのか、あるいは待遇が悪くて能率が悪いのか、あるいは税法が複雑過ぎるのか、あるいは事務が複雑過ぎるのか、裏から申しますならば、もっとてきぱきと能率よく、国民の期待に沿うように徴税事務をあたたかくやる面もある、しかしきびしくやる面もある、少なくとも手ぬかりがあってはならない、そういう意味で、人の上で、あるいは待遇の上で、あるいは税法の上で、あるいは徴税事務の簡素化の上で何らかのくふうが要ると思いますが、その点について大臣のお考えを承りたい。
  196. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま竹本さんの御指摘の点は、私はそのとおりだと思うのです。つまり、これは、まあ採算を申し上げるのはいかがかとも思うのですが、とにかく一番大きな問題は、租税は公平に執行されなければならない、こういうことを考えますと、もっときめのこまかい税務の執行ということが必要だろう。いまそういった点で問題がありますのは、やはり人手の問題もある。それからまた、税法が御指摘のとおり非常にむずかしいものになっておるという問題もある。いろいろありましょうが、とにかく税務は公正にこれが執行されなければならないという基本的な考え方の上に立ちまして、なおいろいろくふうをしてみたい、かように考えます。
  197. 竹本孫一

    ○竹本委員 中国では毛沢東さんが、国難成金ということばを演説で使っているんですね。ぼくは非常におもしろいというか、うまいことばだと思うんですね、国難成金。要するに、経済危機に臨み、経済国難に際してかってな動きをして金をもうける、その国難成金は許さないということを、毛沢東さんが演説したことがある。日本においていまいろいろ問題が起こっておるのも、この問題だと思うんですね。国難成金だ。これはわれわれの立場においては、なおさら道義的にいっても許すべきではない。それに対して税金をかけて、もうけたものは取るんだという世論が非常に盛り上がってまいりました。大蔵省はこれにこたえて、今度は実態調査もきびしくやるんだということが新聞に出ておりましたので、私がいま質問いたしましたのは、きびしくやるとおっしゃっているけれども、実態はそれに伴ってやれるようになっておるであろうかという心配をしながら、いま御質問を申し上げたということであります。  たまたま、御承知のように、今日の政治の課題に臨時利得税の問題が出ておる。これもその国難成金をひとつ税の面から、税を取り上げていこうということでありますが、これに関連して一口お伺いをいたしたいのでありますが、私は、国難成金を征伐する意味において、これは早くやって、三月決算に間に合わせなければ何にもならぬと思うのですね。ところが、われわれ野党のほうは、実のところ、自民党さんから案が出されるというので、一日千秋の思いで待っておるわけだ。もう先月の暮れから、来週だ、再来週だといって一ぺん一ぺん延ばされて、いまだにいつ御相談を受けるのかわからない。野党は野党なりにそれぞれ案を発表いたしておりますが、肝心な自民党さんが出ない。一体これは間に合わせるだけの意思があるのかないのかさえも、われわれは心配をしなければならぬような状態であります。  そこで、大臣に伺うのだけれども一つは、こういう租税正義の根本に関する問題については、自民党さんやってみろ、議員立法で考えてみろといって責任を転嫁する、ということばが悪いかもしれませんけれども、お預けにならないで、なぜ政府がみずから租税正義を貫く立場において臨時利得税というものを考えられないのだろうか、どうもこの点が納得できない、その点が一つ。  それから、もう一つは、自民党さんでおやりになるというからまかせたんだということを官房長官が言われたこともありますが、それにしても、いま申しますように、毎週毎週引き延ばされて、もう三月も終わってしまうというような心配すらあるのですけれども、これは一体間に合うようにできると大臣は見ておられるのかどうか、二つの点をお伺いいたします。
  198. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 臨時超過利得税徴収問題についての私の考え方はすでに御承知と思うのですが、私は何とかこれを実現いたしたい、かように考えているのです。ただ、具体案になりますと、これは一利一害というか一長一短、その害の面あるいは短の面につきまして、責任をもって国会で応答できるという自信のある案ができかねておったのです。そういう段階におきまして、野党の書記長それから自由民主党の政務調査会副会長とテレビ対談をする機会がありまして、そして御相談申し上げましたところ、ひとつ相協力してやりましょう、こういうことになったのであります。私はそういういきさつがありますので、政府といたしまして、いまその協力関係に対しまして介入をするというのも妥当でない、こういうふうに考えておるわけなんです。  御指摘のように、自民党のほうの案がいまのこういう状態でありますことはまことに遺憾でございますが、早く自民党にもきめてもらいまして、そして話し合いが始まって、それが三月期の決算以降につきまして適用されるということになるよう期待をいたしておるわけであります。そういういきさつで、私は決して責任を人に転嫁しておる、こういう状態、そういう心境じゃございません。私はやってみたい、こういうふうに考えますが、そういういきさつになっておるので、しばらく事態の成り行きを静観しよう、こういうことであります。  それから、三月期に間に合うのか間に合わないのかというお話でございますが、希望といたしましてはぜひ間に合わせたい、こういうふうに考えます。では、それができるのかできないのかということになると、政府提案ということになりますと、また皆さんからいろいろの御批判を受けてなかなか短期間ではむずかしいことも考えられます。まあ各党全部がまとまった案ということになれば、あるいは急速にこの御審議が進められることにもなろうか、こういうふうに思いまして、でき得るならば、提案の形はいかにせよ、とにかく五党間で話がまとまる、これを切にいま期待をいたしております。
  199. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣の御答弁を承っておりますと、大蔵省というか政府は、非常に謙遜をしておられるようでもあるし、また野党あるいは国会、自民党も含めて、それに過大の期待を持っておられるような気もするし、あるいは野党の口を封ずる意味での議員提案にしたいんだというふうにも受け取れます。しかし、それはどういう解釈であってもよろしいが、要するに、これは実行しなければ国民感情が許さない、そういう立場に立ってぜひ前向きに、私どももその責任の一端をになって何としてでも三月期決算に間に合うようにやりたい、われわれもひとつ努力しなければなりませんが、大臣においても十分その点を考えていただき、取り組んでいただき、推進していただくように要望を申し上げておきます。  もう一つだけ国税庁にお伺いをするのですけれども、最近の脱税のやり方ですね。いろいろ知能犯的に技術が巧妙になりましてやっておると思うのだけれども、私が例をあげるが、そのどれがいま一番はやっておるか、代表的であるか、また、どれが一番悪質なものであるかということについて、国税庁が最近調べられた実態に即しての答弁を求めたい。  一つは、評価方法を変更するというやり方である。二つは、減価償却の方法を途中から変えるということである。三つは、収益を翌期に繰り延べるというやり方である。四つは、債務の繰り上げである。五番目は、不良会社を買い取りて利益を薄めてしまうというやり方である。六番目は、準備金や引き当て金の積み増しである。大体考えられるのは、ほかにもまだあるでしょうが、このぐらいのところだと思うのです。  これらのうちで、いま一番はやっておるやり方はどれであるか、それからまた、最も悪質なものと思われるのはどんなものであるか、これは実態を調べた上での、その実態に即しての御答弁でけっこうです。どういうものがあるか。
  200. 吉田冨士雄

    ○吉田(冨)政府委員 私どもも現地で行なわれておりますすべての調査の内容を存じておりませんが、そういう調査で非常に目立った実績をあげたと申しますか、逆に申しますと、かなり大きな通脱あるいは脱漏があったような場合には、われわれのほうにもいろいろ報告がくるわけでありますが、そういうものをもとにして判断いたしますと、何と申しましても、私どもがやはり税の面から見まして一番強く処罰すべきものは逋脱犯査察事件でございまして、この場合にもいろいろなやり方がありますが、通常の場合には、売り上げを何かの架空の操作によりまして脱漏いたす、あるいは仕入れを何か架空の操作によってふやすというような仮装の事実をもとにいたしまして、そういう架空の経理をしまして、しかもその財産を、さらにそれによって得ました所得を、たとえば仮名預金であるとか、場合によっては、ほかの会社の土地にするとか、いろいろなことで資産を隠すというぐあいのやり方で、まず所得を脱漏するやり方についてもいろいろな仮装のやり方をする、しかも、それが最終的にいろいろ利益としても隠されているというのは、われわれとしてはなかなかつかまえにくい。そういうものは税の面からいって好ましくないわけでありますが、しかも、それにプラス初めから逋脱の犯意がある、初めから脱税の意思をはっきりと持ってやっておるというのを査察事件の対象といたしておりまして、それがわれわれとしては一番重点的に調査しておるものでございます。  次は、いわゆる査察逋脱まで至らない、刑罰をかけるまで至らないけれども、そのやり方といたしまして、仮装あるいは隠蔽の事実をもとにしまして脱漏、逋脱をはかるというやり方で、これは重加算税の対象になるわけです。そういうものがかなりございます。  いまおっしゃいましたそれ以外のいわゆる収益の繰り延べ等につきましては、期間損益的なものはいずれどこかの段階で表に出てきて税として払うわけでして、どの期に払うかをずらすというようなものにつきましては、それが仮装あるいは隠蔽の事実がない場合には、税の立場から見ましたならば、そこまで追及しないということになっております。  それで、どの案件が一番多いかと申しますと、やはり業態によりましてばらばらでございまして、ちょっと判断しかねるわけでございますが、比較的最近多いのは、一つは不動産の取引にからみまして、たとえば造成費を過大に、しかも仮装に計上するとか、あるいはちょっとお話のありましたように、不良会社、赤字会社、こういうものとの取引関係を仮装いたしまして、本来はたとえばAからBにまっすぐ五十億で売ったものを、まん中にCという赤字会社をつくって、そこをトンネルにしまして、Cには十億でしか売らない、CがBに五十億で売るというぐあいに、赤字会社を利用してやるというようなやり方が、比較的土地の売買の関連では多うございます。  それから、海外取引につきましては、御案内のように、現地の法人を使いまして、売り上げを仮装に除外したり、あるいは多くの仕入れをしたように仮装したり、あるいは同じような手口でリベートをごまかしたりというようなケースが比較的多いように思います。
  201. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは法人税を引き上げてみても、それから臨時利得税をつくってみても、裏をかいて所得を隠してしまう、ごまかしてしまうということになれば、われわれのせっかくの努力も全く意味がない。そういう意味で、私は、これはきょうは時間がありませんからこれだけにとどめますけれども、やはり脱税の方式というものは大体こんなものだという基本方式をちゃんと示して、その中で、第一項目については、何々会社はこういうことをやった、第二項目は、こういう会社がこういうインチキをやったということを、ほんとうは発表してもらいたいと思うくらいですね。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕 そうすれば、非常に脱税のインチキをやったやつが社会的な制裁を受けるし、また国税庁もその手は食わない、ちゃんと知っているんだということで、牽制球にもなりますので、一ぺんこれはまたあらためてもっと具体的に追及してみたいと思うのです。  しかし、いずれにしても、われわれがまじめに税法を論議してみても、裏をかかれるような脱税をやられたのでは意味をなさない。それからまた、国民も、今日重税感があるということで、いろいろ怒りを持って運動を起こしておる面もあるわけですから、やはり一つ租税公平の原則、国民の信頼をつなぎとめるためにも、税における不公正あるいは不徹底、インチキといったようなものは許さないということにするように、お互いにこれは努力してまいりたい。国税庁もその点はしゃんとしてもらいたいという要望を申し上げて、次へ参ります。  次は、もう一つだけですが、これは租税特別措置法でございますけれども、その中に今度大きな柱として、自動車関係諸税の税率の引き上げの問題が出ております。私の計算は間違っておるかもしれぬが、二千六百億ぐらい、あれこれ入れて増収を考えておられると思うのだけれども、そこでまず大臣にお伺いいたしたいのは、この前、ちょうど福田さんが大蔵大臣であったと思いますが、重量税の問題が出たときに、重量税の使途について、大臣答弁はこういうふうに言っておられる。おもに道路であるが、具体的な将来の使途については、総合交通政策ができた上できめたい。  前回の重量税の審議にあたって一番大きくわれわれが聞かされた問題は、何と申しましても、総合交通政策を確立するということが急務であるということであったと思うのです。細見政府委員も、第六次道路整備五カ年計画以降については総合交通体系の樹立を待ちたいというような答弁もしておられる。いずれにいたしましても、総合交通体系の整備ということが、わが国の、重量税だけに関する問題だけでなくて、一番大きな問題であったと思うのであります。  そこで、総合交通体系というものは、今度は重量税も二倍になるわけですけれども、一体できたのですか、できないのですかという点について、まずお考えを伺いたい。
  202. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 竹本さんがおっしゃられるとおり、この自動車重量税が創設された当時、政府といたしましては、これと関連して総合交通体系をつくりたい、こういうことで、そしてそのための閣僚協議会をつくりましたりいたしまして、この問題をどういうふうにするか検討いたしたわけであります。  それで、結局、なぜ総合交通体系を必要とするかといいますと、自動車重量税の収入を一体どういうふうに使うのだ、こういうことが当時問題になったわけなんです。それには多分に、この自動車重量税財源に目をつけまして、こちらに持ってきたらどうだ、あちらに持っていったらどうだという議論がありまして、まあ何かその辺決着をつけておく必要があるといういきさつからなんでありますが、いろいろ閣僚協議会なんかをつくりまして検討いたしましたが、その問題は、結局、実質的には結倫が出ないということにいまなっておるわけです。つまり、この財源の何割は道路であり、何割は鉄道関係であり、何割は航空機関係であるというような、そういう結論は出ない。逆に、この財源は、これは財政の見地から見て特定財源というふうにしないでおくほうがよかろう、こういう結倫になったのであります。  一方、交通体系の実体の問題につきましては、これはこの閣僚協議会というよりは、企画庁におきまして経済社会基本計画、これを策定するということになりまして、そちらのほうに問題は移って、そうして結論的には交通問題をどういうふうに処理するか、その実体問題はこの基本計画の中に取り入れられておる、こういうのが実態でございます。
  203. 竹本孫一

    ○竹本委員 総合交通体系、これから企画庁に伺いますが、財源の使途だけでなくて、交通体系そのものが一体できたかできないか。それが十分できないときに重量税のほうだけがまた倍になるということは、この前の審議の際に、重量税という問題についてもこれは総合交通体系を先行させなければならぬと、ある意味において御説明があり、お約束があったと思うのだけれども、その総合交通体系ができないときに、税金だけは倍になるほうが先に出てきたということになれば非常に矛盾であると思うのですけれども、その点はどうかということ。  それから、経済企画庁については、一体、総合交通体系はできたのかできないのか、明確な答弁を聞きたい。  それからもう一つ、時間がありませんからまとめて申し上げますが、たとえば、橋本さんが運輸大臣のときには、総合交通体系がまとまりましたならば、国鉄の輸送分野も確定しますので、抜本的な財政再建策を提案しますというようなことを、運輸大臣として橋本さんが言われたことがある。そういう意味で、国鉄の受け持つ分野というものがきまれば、もちろん自動車の受け持つ分野もきまるわけでしょう。そういうことも含めて、いま大臣がお話しになったのはこれじゃないかと思うのですが、四十六年十二月の総合交通問題閣僚協議会で一応その体系というようなものが考えられて、そこでは、全体としての考え方は、国鉄の在来鉄道の選択的整備が考えられるというようなことであって、どちらかといえば、国鉄よりも自動車のほうがベターだということで、これから後、交通体系の重点は自動車に移すというようなことが考えられたと思うのだけれどもどうか。  その関連において、地方の閑散線、赤字線は、三千四百キロを廃止するというドラスチックな案も考えられたことがある、それはどうであったか。  さらに、それが、田中さんの列島改造で福祉国家建設の美名のもとに全部復活して、さらに新幹線五本が追加されたということがあるように思うが、一体、今日の総合交通体系の結論は、国鉄でいくというのか自動車でいくというのか、そのどちらかにきまったかということを聞きたい。  これは財源をどこへばらまくかという問題だけではなくて、たとえば、この前の油ショックのときも、その油をどこへ使うかということについては、日本の産業の効率的再編成というものを考えなければ、大事な油をむだなところへ、あるいは非能率的なところへ使うようなことになってもいけない。したがって、その油を輸入する量が幸いにして三億キロリットル入りそうだから一応いいとしても、将来またこういうショックを受ける場合もありましょうから、いずれにしても、どれが日本の交通体系の中の中心部門をなすのか、だれがほんとうに中心でわれわれの輸送を背負っていくのかということについて、総合交通体系はできたのであるか、できた結論は、鉄道と自動車のどちらに重点をかけておるのか、その点を明確に聞きたい。
  204. 小池力

    ○小池説明員 お答えいたします。  お尋ねの御趣旨の総合交通体系でございますが、これは四十六年の四月に、いま先生からお話のございましたように、臨時総合交通問題閣僚協議会が設置されまして、それから以後関係各省と十分審議いたしまして、同年十二月に「総合交通体系について」という形で取りまとめてございます。その総合交通体系の考え方と申しますか、総合交通体系で取りまとめましたものは、これからの交通を安全に、効率的に持っていく施策の基本的な考え方を取りまとめたものでございまして、これをつくります過程で十分関係省庁とも審議した過程がございますので、具体的な施策につきましては、この考え方にのっとって各省庁が現在進めている段階でございます。  それから、先生お尋ねの鉄道か自動車かという問題でございますけれども、この基本的な考え方では、おしまいのほうに、自動車交通についての考え方、それから鉄道についての考え方というふうに分けて記載してございまして、自動車交通につきましても、やはり端末の輸送、たとえば鉄道で運んでまいりまして、あと最終消費地、生産地まで動きます端末の輸送でございますとか、それから地方の交通になりますと、やはり自動車が主たる役割りをになうであろうというふうに考えてございますし、鉄道につきましては、都市間の中長距離の旅客の輸送でございますとか、それから大量の貨物輸送でございますとか、あるいは大都市におきます通勤通学の輸送、そういったものはやはり鉄道が主となるべきだというような考え方をここに入れてございます。  それから、先ほど大蔵大臣のほうの御答弁にもございましたように、たとえば経済計画という形で、これは基本的な考え方でございますから、その基本的な考え方を受けまして、今後五年間の交通政策はどうかというものを大きくマクロ的にとらえましたものが今度の経済計画でございます。経済社会基本計画の中でやはり交通に関しましてのいろいろな施策を織り込んでございます。  なお、先生お尋ねのございました資源の制約の問題、エネルギーとか労働力等でございますが、こういった問題に関しましては、確かにいろいろ各方面からも御指摘がございます。現在の経済計画等でも、必ずしも十分に織り込んではいないという点の御指摘が方々からございます。それらにあわせまして、現在経済社会基本計画のフォローアップ作業というものを続けてございますので、その中で、交通政策につきましても、今後の資源供給の制約というものの日本経済の長期的な展望、そういったものとあわせまして考えてまいりたいというふうに考えております。
  205. 竹本孫一

    ○竹本委員 御答弁がいろいろ親切丁寧でありました関係でよくわからないので、念のためにもう一ぺん聞くのですが、要するに、国鉄の輸送分野がおのずから定まる、これは橋本さんの運輸大臣としての答弁の中にあるわけですけれども、それはもちろん国鉄でいかなければならぬ場合、さらに自動車によらなければならぬ場合、いろいろありますから、全部を国鉄でやるとか、全部を自動車にするなんというばかなことは考えられません。それは御答弁で一々詳しく承らなくても当然のことだと思うのです。  ただ、私どもがこれから政治家として考える場合に、総合交通体系の結論というものは、より国鉄に重点を置こうとしておるのか、より自動車に重点を置こうとしておるのか、その辺についての感触をわれわれが知るということが一番大事だと思うのです。その点だけ、要するに、たとえばいま言ったように、三千四百キロをどうするかとか、また復活するといってみたり、減らすといってみたり、しょっちゅう政府考え方が変わっているのですよ。そういう意味で、どちらにほんとうに重点を置くのか、政府考えは現在の時点ではまとまっておるのか、まとまっていないのか。まとまっておるとすれば、どちらにより多くの重点をかけるのか、その辺を、端的にただ一音で答えてもらいたい。
  206. 小池力

    ○小池説明員 お尋ねの点は、地方の交通における鉄道と自動車の役割りというお尋ねだと思います。これにつきまして、今度国鉄の財政再建でこの辺の考え方が整理されたわけでございますけれども、地方開発、地域開発の見通し等を勘案して弾力的に進めることとしているのですが、基本的な考え方といたしましては、交通体系の場合と同じように、当該地域の実情とか、それから代替交通機関の整備等を考慮いたしまして、地元の同意を得て進めていこうというふうになってございます。  おわかりにくいかと思いますが、答弁がまずくて失礼いたしました。地元の同意を得まして、道路交通への転換をはかっていくということでございます。
  207. 竹本孫一

    ○竹本委員 私がお伺いしておるのは、地方だけでなくて、地方も含めて日本の総合交通体系というものはどうなるかということを聞いておるのでございますが、御答弁が親切過ぎてよくわからないのです。これは時間がありませんから、何となく総合交通体系の明確なものはまだきまっていないという感じを私は受けます。いずれこれは、あらためてどの程度固まっておるかということを具体的に吟味をしてみたい、きょうはこのくらいにとどめて、今度は、交通体系のほうの問題でなくて、税の問題についてちょっと伺います。  そこで、自動車関係税金については、この前重量税のときに、いま申しました総合交通体系の問題とともに、いま燃料課税としては、揮発油税、地方道路税、これは地方道に渡すやつですが、軽油引取税、それから石油ガス税という四つのものがある。それからさらに、物品税と自動車取得税がある、それから重量税がある、七つあります。この七つのものについて、前回の審議のときにも、これは複雑怪奇であるから、少なくとも三つくらいに整理ができるのではないか、整理したらどうであろう、その案を委員会としてまとめるかというところまで、当時は藤井さんがたしか中心であったと思うが、いろいろ議論をしたことがあります。  いずれにしましても、自動車関係の税が、結局それは一つに全部七つかかるわけではありませんけれども、われわれの概念整理として自動車税の交通整理をして、大体三つなら三つのグループに整理して、先ほどの話ではないが、簡素化したほうがいいではないかということになっておったと思うのです。  ところが、それから何年たったか、とにかくまた税の引き上げの問題が出てきたのだけれども、この自動車関係税が、整理統合、簡素化されたという話は聞いていないように思うが、その点はどうなっておるか。
  208. 高木文雄

    高木(文)政府委員 今回の租税特別措置法による重量税の引き上げに関連をいたしまして、御指摘の点はいろいろ検討したわけでございます。いま全部で九税目あるわけでございます。それを何とか簡素化できないかということは、前回の創設当時の当委員会の御審議の中できわめて重要なポイントであったことは私どもも心得ておりますので、その点を検討してみたわけでございますが、これらの税目は、それぞれの課税態様の担税力に応じて負担を求めておるものでございます。これはまた財源としてもいろいろに分かれております。  それをいろいろ合わせてみた場合にどういうことになるかというと、現在、制度としては非常に複雑ではございますけれども、現時点のものをくっつけたり離したりした場合に、現在よりもより負担関係が公平になるかどうか、簡素という意味では確かに簡素になりますが、バランスがとれた何かうまい案ができるかということになりますと、なかなかいい案を得るに至らないということであったわけでございます。特に、今回の場合には、非常に特殊な事情によりまして、全般的に、前回の御議論のときにありましたように、単に総合交通体系の整備のための財源という角度からではなくて、それもないとは申せませんけれども、むしろ消費抑制とか自動車消費を若干押えぎみに持っていったらどうだというような観点もありまして、重量税なり燃料税なりの引き上げも行なわれた経緯もあり、かつ二年間の暫定措置であるということもございました。今回の場合には、せっかくこの前御指摘があり、お約束になっております簡素化の問題につきましては、基本論としては残ってしまったということでございまして、私どもとしては、いわば宿題のままお預かりをした形になったということでございます。
  209. 竹本孫一

    ○竹本委員 主税局長は宿題がそのまま残っておると言うんだが、残っておることがけしからぬとぼくは言っておるのです。前回のときに交通整理をして、いまおっしゃるように、地方の税金、県の税金、市町村の税金まで入れると九つある、あまりにも複雑怪奇ではないか、交通体系を言う前に、自動車税の交通整理をしようではないかとちゃんと言ったのです。そして大体三つにしようという案まで出たのでしょう、委員会で。大体グループを三つにしましょうということまで話があった。  しかるに、心得ておるが、検討はしたが、特殊な事情だ、こういうようなことで、そのまま宿題を解決せずに出されるということは、いささか怠慢ではないか。イージーゴーイング過ぎるではないか。主税局長からいえば、タックスコレクターの本能にかんがみて、要するに、税金を取ればいいんだということで、先にこういう税を出されるのかもしれないけれども、やはりわれわれの政治立場からいえば、全体の体系を簡素化する、整理統合すべきものは整理統合して、国民にもわかりいい、また納めるほうが納めやすいような税体系に整備再編成をしようという約束だった。そして一つの案も出ておった。それがそのまま九つなら九つの分列行進曲をやりながら、取るだけ取ろう、こういうことはどう考えても納得できません。大臣、いかがですか。
  210. 高木文雄

    高木(文)政府委員 おっしゃることはよくわかるのでございますし、私どもとしても、申し上げましたように宿題になっておるわけでございますが、いい悪いは別にいたしまして、今回の案は、営業車につきましては重量税は引き上げない。言ってみれば、重量税自体としては完全には筋が通ってないような形になっておりますし、それからもともと二年間ということでございまして、現在の道路財源という観点から見ましても、必ずしも十分なものではないというようなことになっております。いずれもそういった問題は、全体の水準の問題を含めて二年後に総洗いをするという前提でありまして、さればこそ租税特別措置ということで御審議をお願いすることになったわけでございます。そういう臨時暫定のものでございますので、どうかその辺をおくみ取り願いたいと思うわけでございます。
  211. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これはどなたが見ても、自動車全体として九種類の税金がかかる、これはもうあまりに複雑過ぎるじゃないか、こういう感触になるだろう、こういうふうに思うのです。  そこで、簡素化ということについて主税局はずいぶん勉強もしたのですが、どうも二つ問題があるんですね。一つは、簡素化して公正な徴税ということになり得るか、こういう点を問題にした。一つは、国も、あるいは都道府県も、あるいは市町村も関係してくる。この関係をどういうふうに整理するか、こういうことで苦慮する。そういうことがあってじんぜん今日に至った、こういうのすが、主税局でもこの問題につきましてはたいへん関心を持っておりまして、今度諸税の税率引き上げをいたしまするけれども、これは恒久税にはしない、時限にする、そしてその間十分にやろう、こういうかまえでありますので、ひとうまたいろいろ御意見を聞かしてもらいたい、こういうふうに思います。  とにかくガソリンという問題が大きな問題になってきた。そこで、その後においても事情が大いに変化して、またこれからもかなりの変化を見るであろう、そういう際でありますので、自動車関連あるいはガソリン関連の諸税は、全般的にもう見直しをしなければならぬところに来るのじゃないか、そういうふうに思います。臨時措置にしておるのはそういう意図であるということを御了察願いたいのであります。
  212. 竹本孫一

    ○竹本委員 一つだけまだ大臣に伺いたいのですが、いまの主税局長の御答弁並びに大臣の御答弁を聞いておると、困難な点があることもよくわかりますが、何だか二年間宿題がまた預けられたような感じも受けます。この時限立法が終わるときまでは、大体いまのままで全部いくんだということになるような感じがしますが、それとこの税法とは別にして、一応、総合体系の簡素化、整備ということについては、別途より早い時期において取り組む御意思はありますかありませんか、その点だけ伺いたい。
  213. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 税のほうはとにかく時限になっておるわけです。しかし、自動車、ガソリンをめぐる客観情勢というものはもう非常に大きく変わり、またさらにそれが変わろうとしておる、そういうようなことから、これは自動車、ガソリンばかりじゃありません、交通全体としてどういうふうにするかということは、これは根本的に見直さなければならぬ、こういうふうに思います。
  214. 竹本孫一

    ○竹本委員 主税局長、ついでにもう一つだけ。  この関係で言いますと、重量税というのは重さの税なんだ。ところが、今度の改正ではマイカーねらい撃ちみたいなかっこうになっておる。マイカー必ずしも重量が重たいということではないんだな。そうすると、重量税といいながら、重量だけを中心にした考え方というものが、そこでまたあいまいになる。その点はどうですか。
  215. 高木文雄

    高木(文)政府委員 その点は御指摘のとおりでございます。ただ、当面物価の問題が非常に問題である。そこで、トラックにいたしましても、その他にいたしましても、営業車両についてこの段階負担を求めるということには非常に問題があるのではないかということで、重量税の本質論からいいますと非常に問題があるわけでございますが、その点をある程度忍んで、営業車については重量税も増税がありません、燃料税につきましても軽油引取税は増税がございません、またプロパンについても動かしません、こういう形になったわけでございます。  重量税の本質論からいいまして、そこがおかしいではないかといわれますと、まさに重量税の本質論の角度だけから申しますと不徹底といいますか、論理が、話の筋道が少しはっきりしない点があるということは、おっしゃるとおりでございます。
  216. 竹本孫一

    ○竹本委員 今度は、最後の課題は、自動車産業をいかに位置づけるかという問題ですけれども、時間の倹約で少し簡単にまとめて申し上げます。  私は、日本の自動車産業というものは、総合工業というその事業の本質から考え——日本はいままでのとおりの高度成長ということにはならぬでしょうし、また、そうあってはならぬと私も思います。この点は福田大臣と私は考えは大体同じですけれども、しかし、それにしても、日本の産業構造ということを考え、そのレベルアップということを考えればなおさらのこと、自動車産業のような総合工業というものは、大事なものとして位置づけなければならぬ。そういう意味で、今後自動車産業がどうあるべきかということについては、特に重大な関心を払わなければならぬ、こう思うのです。  そこで、最近の状態を考えてみると、まず、短期決戦、引き締めということでどの産業も大きな打撃を受けておるでありましょうけれども、アメリカにおいても日本においても、自動車産業は非常に大きな直撃を受けておるのですね。数字を見ましても、大体三〇%から四〇%、小型乗用車のごときは四六%二月は新車の登録台数が減っておる。その他でも大体三、四〇%です。アメリカでも四〇%ぐらいやられておる。そういうことを考えますと、すでに自動車産業は、注文がなくなった、新車の売れ行きがとまったという点で非常な打撃を受けておる。さらに外国のほうも、いま申しましたように、アメリカ自身が非常な打撃を受けておるし、十万人ぐらいの一時解雇が出たということもあるし、フォルクスワーゲンあたりでも十五万人ぐらいの、八日か十日ぐらいだというのだけれども、レイオフみたいなものが行なわれるという、ふうなことになっておるようであります。  そこで私が驚いたのは、今度アメリカのほうでは、油がなくなったものだから大型を小型に切りかえる。ところが、アメリカ自身が言っているのは、小型に切りかえるのは三、四年かかる、少なくとも二、三年かかる、こう言っているのです。二、三年かかるというところの虚をついて、トヨタ、日産もまた大いにアメリカへ出そう、こういうことになった。ところが、その手は食わぬというわけで、アメリカのほうでは最近は一時解雇十万人といったようなことも受け、また注文が三、四〇%減ったということも受けまして、これは労働組合の米国の合同自動車労組というのが、シカゴ発の時事の電報によると、そこのウッドコック委員長が世界貿易会議の昼食会で演説をして、時局は重大で、小型車に移行するというのだけれどもたいへんなことだ、一時的に輸入数量の制限をしなければならぬ、特に来週議会で証言をするためワシントンに向かうが、その際は上下両院の主要な議員と会って輸入制限法案を成立させるように働きかける、こう言っているわけです。  あれこれ考えまして、自動車産業というのは、国内がだめだから、そして為替の二百六十五円が三百円になった、その辺もうまく利用しながら、この際だっとアメリカに出よう、小型に切りかえる二、三年のギャップをついて出よう、こういうことで大いに期待したと思うのだけれども、それもだめになって、逆に輸入制限をされる、国内では売り上げは三割、四割と落ちる、外国へ出ようと思えばこれが今度輸入制限まで受ける、こういうようなことになれば、自動車産業としてはたいへん重大な危局に直面をするであろうと思うのだけれども、それに追い打ちするように油が上がる、税金が上がるというようなことになると、自動車産業がつぶれるかつぶれないか、私まだわかりませんが、少なくとも非常に苦しい立場に置かれる。  しかも、これは日本の総合工業の基幹産業である。この産業を一体どういうふうに位置づけ、受けとめ、今後自動車産業行政というものを行なわれるつもりであるか、それへの一環として自動車の税金、これは自動車産業に直接かけるわけでもありませんけれども、自動車税というものをまた考えられるのであるか、総合的な判断に立って大臣のお考えを承って終わりにいたします。
  217. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今回の自動車関連諸税の引き上げは、実は公害の問題あるいは資源節約の問題というところに着目して御提案申し上げることになっておるのです。ところが、御指摘のように、総需要抑制政策がかなり浸透してきておる。そこに自動車産業のほうは、道路交通事情というものが自動車の生産になかなか追いつかないというので、交通渋滞だとかそういう問題も出てきておる。また、特に公害問題は非常なうるさい問題になってきて、一つ転換期というか、そういうところへもってきてまたガソリンの値上げ問題、しかもこれは極端な値上げにならざるを得ない、そういう事態になっている。そういうことで、いま非常にむずかしい立場に来ておるんじゃないか、こういうふうに思うのです。事実あなたがいまお話しのように、二月の登録台数というのは、メーカーの最大級の内需からいうと半分になってしまった。わずかにそれを輸出の増加で補っておるが、とてもとても補い切れたものじゃない。こういうことになっているのです。  私は、自動車産業全体といたしましては、資源がこういう状態になってきた、また、それに伴いまして世界の自動車産業というものは非常に大きな変化を受けつつある、そういう中においてこれからどういうふうに持っていくべき産業なのか。これはいまのここで私は結論を申し上げるわけにはいかぬ。いかぬが、これは非常に注意深く検討して、そして結論を出すべき段階に来ておるんじゃないか、そういうふうに思うのです。ですから、この税の問題につきましてもこれをいま二年の時限の御提案を申し上げておるわけです。税が一体どういう立場に立つべきかということにつきましても、これは根本的な検討を要する問題である、そういうふうに考えます。
  218. 竹本孫一

    ○竹本委員 きょうのところは、このくらいで終わります。
  219. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、明七日木曜日午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十六分散会