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1974-02-26 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十六日(火曜日)委員長の指 名で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  税制及び税の執行に関する小委員       栗原 祐幸君   小宮山重四郎君       三枝 三郎君    野田  毅君       坊  秀男君    松本 十郎君       村岡 兼造君    山下 元利君       佐藤 観樹君    武藤 山治君       村山 喜一君    増本 一彦君       田中 昭二君    竹本 孫一君  税制及び税の執行に関する小委員長                 松本 十郎君  金融及び証券に関する小委員       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       金子 一平君    萩原 幸雄君       村岡 兼造君    村山 達雄君       毛利 松平君    森  美秀君       広瀬 秀吉君    山田 耻目君       山中 吾郎君    荒木  宏君       田中 昭二君    竹本 孫一君  金融及び証券に関する小委員長 森  美秀君  財政制度に関する小委員       大西 正男君    奥田 敬和君       鴨田 宗一君    小泉純一郎君      小宮山重四郎君    塩谷 一夫君       浜田 幸一君    山本 幸雄君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       松浦 利尚君    小林 政子君       正木 良明君    内海  清君  財政制度に関する小委員長   浜田 幸一君 ————————————————————— 昭和四十九年二月二十六日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       奥田 敬和君    金子 一平君       鴨田 宗一君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君   小宮山重四郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       野田  毅君    葉梨 信行君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    塚田 庄平君       広瀬 秀吉君    村山 喜一君       山中 吾郎君    荒木  宏君       小林 政子君    田中 昭二君       内海  清君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君  委員外出席者         農林省農林経済         局国際部長   山田 嘉治君         農林省食品流通         局砂糖類課長  永井 和夫君         通商産業省貿易         局輸入課長   真野  温君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      田口健次郎君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     松浦 利尚君 同月二十五日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     安宅 常彦君 同日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     松浦 利尚君 同月二十六日  辞任         補欠選任   大西 正男君     地崎宇三郎君   奥田 敬和君     葉梨 信行君   荒木  宏君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   地崎宇三郎君     大西 正男君   葉梨 信行君     奥田 敬和君   不破 哲三君     荒木  宏君     ————————————— 二月二十二日  所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、  徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第一三号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第二五号)      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより会議を開きます。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、国政としての関税政策を全般的に触れてみたのは初めてであります。海外旅行の行き帰りに、通関手続に個人的な関心を持ったことはあるのですが、関税制度全体について、公的な立場において触れたのは初めてです。  本法案についていろいろと検討して、国政立場で調べてみたというのが事実なんでありますが、そうして関税制度を全般的に一べつをした私の感想は、思ったより日本経済構造と非常に深い関係がある。したがいまして、日本貿易構造関税との関係については慎重に対処すべきであるというのが、実は私の結論なんです。そういうことの感想を持ちながらお聞きしたいと思います。いま国会では、物価問題を中心として激しい審議が行なわれておりますが、関税に関しては、長期的な展望に立って、静かな審議がやはり一面国会の中で働いていかなければならない、そういう感想も持ちながらお聞きいたしたいと思います。  そこで、この法案提案要旨をいただいておるのでありますが、そこには「最近における内外経済情勢変化に対応し、国民生活の安定、関税負担適正化等に資するため、」という三つの柱が羅列をされておりますが、やはりこの「内外経済情勢変化」というのが関税政策を考えるときに一番大事な柱で、国民生活の安定という立場現実の物価問題に対処するのには、あまり関税政策は深入りしないほうがいいのではないか。また「関税負担適正化等」は、これは税制の通則なので、書いても書かなくても当然のことですから、内外経済情勢変化に応じてこの関税政策長期的展望に立って考えるということが、非常に重要であると私は思うのです。  そこで、内外経済情勢変化については、この関税法改正についてどういう変化を皆さんで見きわめて提案をされておるか、お聞きしておきたいと思います。
  4. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいま御指摘のとおり、関税というものの持ちますところの性格というのは、今日までいろいろな変遷はございましたけれども国内産業の保護という観点、こういう観点が各列国とも非常に大きな意味を占めていたわけでございます。  ところが、最近の南北問題あるいはある先進国間同士におきましてもだんだん貿易自由化あるいは世界的な交流というものが盛んになるにつれまして、関税を一般的に引き下げてお互い貿易をより広く伸展させよう、そういう観点から、御承知のようなケネディラウンド、さらにはそれに引き続きまして新しい国際ラウンドというようなものが、ガットの場におきまして、昨年九月、各国の大蔵大臣が東京に集まってまいりまして大臣会議を開きまして、新国際ラウンドをやろうではないか、こういうような世界的な情勢になったわけでございます。  ところが、昨年の九月以降におきまして、世界的にも石油問題を中心といたしまして、非常に大きな変動が参ったわけでございます。最近の国際情勢見通しに関しましては、いろいろとこれが一体どういうふうな進展を遂げるかということは、非常に見通しがむずかしい状況でございます。  一方、国内におきまして、いわゆる物価問題というものを中心といたしまして、関税を引き下げて外国からできるだけ安いものを入れて、物価の観点からもそれに対して役立てよう、こういうような考え方もございまして、今回、私どもが「内外経済情勢変化に対応し、」と考えましたのは、新国際ラウンドが今年度から始まりますにつきましては、今年度は関税に関しましてはそう大幅な手直しをするべき年ではない、ただし、国内の物価問題と関連をいたしまして、国民生活に深い関連のあるもの、こういうもので関税を引き下げれば、それが民生の安定に資する一助になるであろう、こういうふうに考えられますごく限られた品目に関する関税の引き下げについて今年度は国会の御審議をお願いする、基本的にはこういう立場で、今回、法案審議をお願いいたしておるわけでございます。
  5. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、日本経済あり方貿易構造というものが非常に深い関係があるので、したがって、この関税操作というものがそこにかかわりが出るのだと思うのです。基本的に資源が乏しく、市場は全部海外依存をしておる。したがって、貿易抜き日本経済は成り立たないわけです。輸出輸入というものを媒体として日本経済発展がある、そこに貿易立国とかいろいろなことばを使うわけですが、そういうことで、目先の国民生活の安定ということで関税が上がり下がりするのでは、やがて全体として日本貿易構造にひずみを生むので、あとで取り返しのつかないものがたくさん出てくるのではないか、現にそういうことがあるのではないかということでお聞きしたいと思います。  そういうことで、日本の現在の貿易構造は、日本経済あり方からいって決して理想的なものじゃない、ひずみがある。これをどこへ持っていくか。あるべき日本経済貿易構造をどこに持っていくかということを関税担当者が原案を作成するときにしっかり持っておって、そして現実内外経済情勢変化に対処するというのでなければ、非常に危険ではないかと思うのです。  そこで、質問の形をそれならば少し変えて、日本のあるべき貿易構造はどうなのか、どういうように考えられて提案されたのか、そういう質問のしかたで聞いてみたいと思うのです。
  6. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、昨今の石油問題以来、新しい石油価格というものを中心といたしました新しい価格体系というものができ上がらなくてはならないという現状であろうかと思います。  したがいまして、こういう新しい価格体系ができ上がるまでは、しかも、現在、御承知のように、まあ通貨フロートをしているわけでございます。通貨フロートをしておりますということは、かりに円の切り上げなりあるいは切り下げなりがございましたならば、これは経済的には関税切り下げあるいは関税切り上げ、これと同じような経済効果をもつものでございます。と申しますのは、要するに、国際競争力観点から申しますると、関税を引き下げることと円を切り上げることとは同じ効果を持つわけでございまして、こういったような観点から、私ども通貨フロートのもとにおきまして、また新しい石油中心といたしました価格体系がはっきりいたしません段階におきましては、御指摘のように、確かに将来の日本経済構造にとりまして非常に大きな影響を持っておりますところの関税体系というものに関しまして、基本的にこれに手をつけるということは軽々にはいたすべきではない、かように考えておるわけでございます。  ただし、御承知のように、関税がかけられております品目の中には、非常に多数の品目があるわけでございまして、この中で日本国内経済にとりましてさほど影響がない、国内産業にとりましてさほど影響がなく、しかもこれを引き下げれば外国から安い品物が入ってくるという、国民生活関連をしたきわめて限られた品目に関しまして、今回の御審議をお願いしているわけでございます。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)委員 二時間ぐらいと思ったら一時間という話ですから、こういう論議をしておりますと時間がなくなるので、次官にお聞きしたいのですが、いまの局長答弁は、私の質問に対する答弁とは違うのです。  日本貿易構造というものがどうあるべきかということ、それが関税あり方に非常に大きい影響があるので、長期的展望に立って日本国際的経済地位というものを考えて、現在の貿易構造でいいのか、やはりここへ持っていかなければならぬかということを見きわめて、この関税法案審議をしたいので、聞いているのです。どういう貿易構造日本国際的地位、固有の国際的地位ですね、資源は乏しい、市場海外に行かなければならぬ、そして現在世界二つに分かれ、最近多極化してきたが、こういう中で日本貿易構造をどこへ持っていくか、そういう原点のもとに個々の関税政策をどう動かしてどうするのかということが出てくるので、それを聞いたんですがね。局長の話は各論的な話、もっと総論を私は聞いているのです。次官にお聞きしたいと思います。
  8. 中川一郎

    中川政府委員 御承知のように、日本資源のない国でございます。大部分は外国から依存し、これに加工を加えて海外輸出をして経済を保っている国、総体的にはそういうふうに見て差しつかえないと思います。  ところが、最近、資源問題が行き詰まってきたということから、できるだけ資源国内でまかなうような方向に持っていかなければならないし、一方では、根本的な問題として、経済規模拡大資源問題から限度があるという二つの面があると思います。すなわち、順序は逆になりましたが、第一番目には、高度経済成長を押えていかなければならぬということ、これは資源問題からですが。第二番目には、国内資源を活用する、こういうことがこれからの長期的に必要な根本的な問題だと存じます。  そういう中で、資源外国から依存しておる現在、あるいは将来は何とか緩和をしなければいかぬ現段階における関税が、その中にあってどうあるべきかということでございます。  関税は、御承知のように、一つには、外国から入ってくるものを規制して国内産業を育成する、あるいは国内資源を活用するという面があります。一方ではまた、そのことによって一般大衆利用者側には迷惑をかける、すなわち国内資源は高い場合が多いわけですから、そういう二律背反する二つの面を持っておると思います。  そこで、関税については慎重な扱いをしていかないと、一方では、関税が高いと国民生活マイナスになり、一方では、資源の活用という面でマイナスになるという相反したものがありますので、そう軽々にこの関税の問題は動かせないのでありますけれども、現段階としては、物価問題、特に石油に端を発していろいろな問題がありますから、そういう面での若干の手直しは必要だというふうに見て、今回の改正をお願いしたわけですが、まあお答えになっておりますかどうか……。  これからの貿易構造とはいかにあるべきかということについては、いま言ったような、長期的には国内資源を活用する、そしてなるべく輸入依存度を下げていくという方向に持っていくべきではないかというふうに思います。
  9. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私が期待している答弁とはやはり少しずれておって、だから、私は、これは問答はやめます。また別な機会に自由に論議していきたいと思いますか、外国資源を求める日本の基本的に条件から、また、貿易以外に立国の道はないのですから、したがって、現在は、世界二つに分かれている関係から片貿易で、終戦後アメリカだけの片貿易が、国際経済情勢の多極化に従って、ソ連中国共産圏との貿易もだんだんと伸長して、ある程度のひずみは是正されてきておるが、やはり日本が生きるためには、中国ソ連その他の共産圏とも、経済的には貿易をもっと進めなければ成り立っていかない。そういう意味貿易構造の改定がやはり長期的展望に立って行なわれなきゃならぬという立場から、関税操作が出ておるのかどうかということを一つ聞きたかったのです。  それから、戦前のように、軽工業製品中心貿易構造から、機械、金属その他の重工業製品型の貿易構造に移ってきておることも望ましいが、さらに、それをどういう方向へ持っていくか。国内の低賃金労働を利用したいまのような歯どめのない輸出政策によって国内に矛盾を来たさない用意をしながら、貿易構造をどうするか、そういうものを根本的に検討しておかないと、そのつどつどの利害、打算、あるいは企業からの圧迫その他の中で、収拾のつかない関税政策が出るではないか。そういうことを見きわめて論議をしたいと実は考えてお聞きしたわけで、御答弁が少し私の期待とはずれておるわけなんです。これはしかし後日に残します。ぜひそういう長期的展望に立った観点お互いに見きわめながら法案審議をしたい。  先ほど言ったように、現在の国民生活の不安を解決するための緊急課題として、激しい物価問題の審議も必要ですが、やはり静かな長期的な立場に立った審議も、同じ国会の中の機能に残さないといけないと思うので、申し上げておいたのでありますが、これは保留しておきます。  そこで、この関税全体の中で、私は今度質問するためにこの法案を一覧したのですが、そのとき私が一番印象に残っておることは、大体、各種の食糧が全部無税になっている。いわゆる農作物自由化ということが、現在の関税政策一覧表の中に最も顕著に出ておると印象づけられた。  それで、農作物自由化が、これは成功したのか。私は、失敗をした一つ政策ではないかと思う、日本貿易構造一つの要素として。高度の加工産業製品自由化は、やはり日本経済的な条件からいって、いわゆる開放経済体制立場に立って、できるだけ関税を少なくして国際的な経済機構をつくるべきではあるが、農作物自由化だけは、先にやるべきでなくて、あとにすべきではないか。それをわが貿易政策は先にしておる。そこに関税政策が非常に協力してきておるということは、私は誤っていたのではないかということを痛感をしておるのであります。  そこで、農林省が来られておるようですが、農林省は、いわゆる国際分業論によって、安い農作物を入れ、利潤の多い工業製品輸出して、経済成長をはかればいいという単純な政府政策のもとに、農作物自由化をはかってきたのであるが、最近は、世界食糧危機その他の経験から、食糧自給体制をある程度回復すべきであるという方策に転換をしたと聞いております。  そういう立場に立って、農作物自由化農作物のいわゆる無税政策、これについては、農林省立場において、これでいいのか、やはりいままでの行き方は間違いであった、あるいは修正すべきであるとお考えになっておるかどうか、お聞きしたいと思うのです。
  10. 山田嘉治

    山田説明員 農産物につきまして、関税の問題あるいは自由化政策等について、従来、私どもとして間違っていたのではないかという御質問でございますが、国の経済全体といたしまして、貿易自由化によりまして貿易拡大をしてまいるということが、日本経済全体の発展に資するという観点に立ちまして、自由化は推進されてきておりましたわけでございまして、農林省といえども政府の一部門でございますから、その政策に協力してまいったのでございますけれども農産物につきましては、工業製品等と違いまして、申すまでもございませんけれども、その生産自然条件により左右されておるということがございます。それから、何と申しましても、国民の生命を預かる食糧でございますので、他の工業製品と同じように、単なるコストと申しますか、比較生産性によって一律に自由化をすることがよろしいということで、自由化をしてまいったものではございません。  ただ、先ほどお話もございましたように、日本の国土は非常に狭隘でございまして、限られた耕地の中で、すべての農産物の自給自足をはかるということはもちろん困難でございますので、従来、自由化の推進にあたりましても、農業生産の長期的な見通しに立ちまして、国内生産でまかなうべきものと、これはある程度輸入依存せざるを得ないというものをよく見分けまして、その上で、国内農業生産に悪影響を与えないように配慮を払いながら、関税対策等所要措置も講じながら、自由化を進めてまいりました。  決して農産物が先頭に立って自由化をやったということはございませんで、御承知のように、農林水産物につきましては、まだ二十三の残存輸入制限ということで自由化をいたしていないものもございますし、最近の、先ほど先生指摘がございましたように、世界食糧事情変化等にかんがみましても、これはやはりハードコアと申しますか、大事なものはできるだけ国内生産を確保してまいるということが大事であるという観点に立って、政策を進めている次第でございます。
  11. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大豆国内産が四%、小麦もほとんど同じようなものである。昨年アメリカ大豆輸出制限をしたときに、非常にあわてふためいた。ソ連のほうは、自国の食糧不足を補うために、アメリカから二千万トンも大豆輸入した。そういう国際社会の中において、食糧自給という体制は、少なくとも私は七、八〇%は確保しておかなければいけないんだ。そういうことからいって、食糧を確保する責任のある農林省が、農業自由化を最後まで残しておくというような着意が、非常に少ないような感じがいまの答弁ではする。これはきっといつかは日本国民生存立場からいって、大きな後悔をするときがくるのではないか。そういうことから、最近、ある得度の自給率の向上についての政策転換を発表したはずですが、局長答弁はどうもその辺があやふやである。  通産省のほうにお聞きしますが、国際情勢貿易自由化圧力のもとに、工業製品自由化は財界その他の圧力のためにむしろあと回しにして、一番抵抗の弱い農業製品自由化を先にやったのではないかという疑いを私は持っている。この点、通産省自由化政策について、農作物自由化についての政策について、通産省からも御意見をまず聞いておきたい。
  12. 真野温

    真野説明員 ただいまの貿易自由化についての通産省考え方についての御質問でございますが、先ほど農産物につきましては農林省からいろいろお答えがございましたが、私どもの所管しております産業はやはり工業関係で、相当幅の広い、たとえば中小企業問題であるとか、いろいろな問題をかかえている分野がございます。ただ、先ほど農林省からお答えがございましたが、工業関係につきましては、確かに国際競争力とか自然条件影響度が少ないというようなことから、できるだけ合理化をすれば国際競争力を持ち得るということで、自由化の点におきましては、農林水産部門よりも先に自由化ができる体制にある、それが現実日本の姿であると思います。  自由化全般につきましては、先ほど先生の御意見の、いわゆる国内の供給なり生産産業というものに対する配慮ということは、従来から当然いたしておりますが、同時に、私どもは、先ほど政務次官から御説明ございましたように、貿易依存する国家として、国際貿易の中において相互に自由な資源輸入なり輸出の確保ができるという全体のバランスなり配慮の中で自由化を進める必要がございますので、その辺を含めて全部、政府部内におきまして、いろいろ関係各省とも十分検討の上、従来、農産品につきましても、工業品につきましても、政府の一致した政策として自由化を進めてまいったわけでございます。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は、関税政策というものは、一度関税を引き下げれば、また引き上げるということは、国際関係で相手のあることであり、なかなかむずかしいから、長期展望に立って慎重にすべきであるということをこの機会お互いに戒めておく必要があると思って聞いておるのですが、私の意見を出してもあまり権威がないようだから、これは伊東光晴氏の「現代の資本主義」という著書の中の一節でありますけれども、二六七ページ、私はなるほどと一つの共鳴をしたので、これに基づいてもう一度お聞きしたい。  少し古いのですが、「グレープ・フルーツを自由化せよ。こうしたアメリカの要求に対して、日本は、温州みかんの実質上の自由化を求めた。一九六九年のことである。今まで自由化問題で受身以外のなにものでもなかった農林省が試みた政策——正論であった。ただ不幸にしてそれは大きな声とならず、力とはならなかった。アメリカはグレープ・フルーツの自由化要求を一時のばし、これを主張した農林官僚の退陣を待って、温州みかんを自由化することなしに、グレープ・フルーツの自由化を求めようとしている模様である。」こう書いてある。「だが、もしも両国とも自由化しているならば、アメリカの消費者も、安い温州みかんを買うことができるようになり、日本人もグレープ・フルーツを手軽に味わえる。しかも日本生産者は、グレープ・フルーツで失う市場海外に求め得たはずである。しかしアメリカはこうした相互主義の自由化を実施しようとしない。それには理由がある。日本がとってきた工業製品に対する各種保護措置である。アメリカが本当に求めてきたのは、日本工業製品に対する保護措置の撤廃であった。だが日本はこの点について、実にたくみに保護を加え、十分対抗力をそなえるようになるまで、実質上、自由化をのばすという政策をとってきた。その対価として選ばれたのが、農産物自由化であった。」  歯どめのない工業中心経済成長政策のために、工業製品自由化をできるだけ巧妙な方法で保護をして、そのかわりに、一番抵抗力の弱い農作物自由化においてつじつまを合わしたということが論駁されておる。  その次に、「農林省を手玉に取った通産省」という見出しで、これはあなた方をけんかさす気はないのですが、「最近私は、ある気骨ある農林官僚の書いたものを読んだ。彼は、「真にアメリカの求めたものは工業製品自由化であるのに対して、日本は農林物資の自由化で答えた」と書いている。「国内農業の保護をしていない先進国がどこにあるのか。」「なぜ我々が工業の犠牲にならなければならないのか。」」こういう立場を堂々と訴えておるという一節です。  これは私は、従来の自民党政権の一つの失敗ではないかと実は考えておるのである。大体ヨーロッパ諸国を見ても、先進工業国においても、農作物の保護関税、保護政策をとっていないところはない。裸の国は日本だけではないのか、私はそう思うので、農作物自由化というものを国民食糧の自給という視点に置きかえて考えれば、非常に重要な問題ではないか。政策転換関税政策立場においても再検討すべきであると私は思う。ここに日本の主体的立場に立って貿易構造を考えていく一つの課題があるのではないかと思うのであります。  この文章を読んで、農林省局長、どう思いますか。
  14. 山田嘉治

    山田説明員 先ほど私、御答弁申し上げましたように、農産物生産自然条件に制約されるだけではなしに、国民の生命に関係いたします食糧が主でございますので、身の安全という観点から申しましても、これはできる限り自給できるものは国内で自給していくという政策をとるべきだというように考えております。  したがいまして、私、先ほど申し上げましたように、貿易自由化日本経済発展に全体として役に立つという認識は持っておりますが、そのために、農産物工業製品の犠牲になってほしいというようなことは、私はもちろん毛頭考えておりませんし、それから、先生御存じと思いますが、最近の食糧世界的な需給状況にかんがみまして、政府といたしましても、本年度の予算から、大豆、麦、飼料作物等につきましては、これは私どもとしましてはかなり画期的なものであると思いますが、生産奨励金を予算に計上するというようなことを考えておるわけでございまして、国内の自給度の維持向上ということにつきましては、十分の意を用いておるつもりでございます。
  15. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大豆、小麦の自給率をどこまで持っていく政策を現在立てておりますか。
  16. 山田嘉治

    山田説明員 農林省といたしましては、五十七年度を目標にいたしまして十カ年計画で自給率をこういうふうに持っていきたいという一つの案を持っておりまして、それによりますと、大豆は現在四%程度でございますが、約一〇%程度まで上げる、それから小麦につきましては現在五%程度まで落ちていると思いますが、これも若干引き上げたい、八%程度まで引き上げたいというように考えております。
  17. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その目標は、私は食糧自給体制からいって非常に低いと思うのですが、いずれにしても、関税政策もそれに協力をしないとなかなか解決がつかないのじゃないか。現在のままであれば、国外からの食糧輸入というものの量は減らないのですから、国内農業生産について価格の保障をしても、国内における一定した需要に見合う生産であって初めて成り立つわけですから、国内生産自給体制を確立するに比例をして、外来食糧輸入を減らすということが裏になければならぬ。そこで、関税政策もこれに一役買う必要があるのじゃないか、こういうふうに考えるので、食糧自給体制という長期的な一つ政策転換に応じて、農作物自由化関税政策の再検討というのはやはりまじめに考える一つの課題である。これは一つ提案ですが、ひとつ次官の御意見を聞いておきたい。
  18. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘のとおりでございまして、これからどうしても日本食糧は自給度の向上をはかるというところから、関税については、軽率に自由化して外国依存度を高めるという政策は誤りであろうと存じます。  私も、個人的ですが、選挙区が農業地帯でございまして、いま牛肉だとか雑豆といったようなものに対する自由化の波も非常に強いのでありますけれども、非常な抵抗を示してこの自由化を阻止しておるわけでございます。過去においても、御指摘もありました大豆等は、確かに自由化をして減った品目一つだと思いますが、これもわれわれとしては少し早かったのではないかなという率直な気持ちがいたします。  ただ、北海道で大豆が減ったのは、自由化のほかに、米が非常に伸びた。米については御承知のように価格政策が徹底してといいますか、ほかのものに比べると比較にならない政策があるわけです。毎年五%から多いときは十数%、ことしなどは一六%も価格が上がるということになりますと、どうしても大豆をつくるよりはお米をつくったほうがいいということで、北海道における米のシェアが非常に大きくなって大豆が圧迫をされたというところから、価格で刺激をしないと大豆が伸びない、米に食われてしまうというので、ことし大豆については二千五百円の奨励金をつけたわけでございます。いまのところはっきりした数字は出ませんが、ことしの作付けは相当大豆が伸びるのではないかという見通しもあります。こういう緊急避難をしなければならないということは自由化影響でありますし、今後も農産物についての自由化は慎重にやっていくべきだと考えます。  ただ、御指摘のように、農産物自由化が少し早過ぎたのではないかという御議論ですが、いま残っております三十一品目のうち実に二十三品目が農林物資であって、工業関係では八つ残っておりますけれども、それも石炭だとか牛革、馬革、ぞうり、はきものというようなものであって、まあ残っておりますのは電子計算機と集積回路、この二つでございまして、財界の圧力に屈して他の工業製品農産物を犠牲にしたと、こういうことはちょっと言い過ぎではないかという感じもいたします。しかし、農産物自由化は慎重にやらなければならないという先生の御指摘はそのとおりであって、今後とも慎重を期してまいるべきものと考えます。
  19. 山中吾郎

    山中(吾)委員 言い過ぎに思わないのは、食糧全体の自給という立場から、十年ぐらい前は全体の国内自給体制が大体八七%ぐらい、九〇%近くあったが、現在は全体の食糧自給体制が六九%になっている。一億国民を養うというカロリーからいったら四〇%だと学者が報告しておる。そういう農業の、産業という立場を越えて国民食糧自給体制という観点から見ると、自給体制が非常に低くなっている。そのことは、その足らぬ分は外国食糧で補っておるということですから、農作物自由化という一つ政策がこういう影響を与えておると私は見るものだから、なすべかりしものを先にしたというそういう立場で言っておるので、品目を何品目まだあるからという、各論的に言えば、そういう感想をお持ちかもしれぬ。  しかし、政治家として考えるときに、この基本は、やはりどんなに開放経済体制をとっても、世界戦争はなくても、局部戦争はあちらこちらにひんぱんに起こるし、あるいはソ連中国関係なりがもう少し激化をするとか、アメリカソ連中国関係変化の中に、少なくとも日本列島の中における国民食糧自給体制はもっと上げておかなければならぬという立場から言いますと、そういう感想を持つので申し上げておるのです。しかし、方向としては同じ感覚を持っておられるようですから、これから関税をいじくるときには、その観点を忘れぬように、ひとつお互いに着意をしたいということだけは確認をしておきたい。  総論的に私の申し上げたいことはこういうことなので、さらに自由化問題というものをもっと深めて、われわれが日本の主体的立場において冷たい頭で見る必要がたくさんあると思うので論議したかったのでありますが、持ち時間一時間と言いますから、各論に入りたい。  そこで、具体的な問題で一、二お聞きいたしたいことは、これは農林省関係ですけれども、東北六県、ことに太平洋海岸において、十数年来ずいぶん苦心をして養殖ワカメというものが最近非常に進んできた。生産も増強し、とる漁業から栽培する漁業にだんだんと発展をする、非常に大きい意味を持っておると思うのですが、ところが、韓国からワカメがどんどん入ってきておるために、岩手、宮城、福島、あるいは九州もそうでしょう、お手あげの養殖漁家が非常に多いと聞いておる。どうも裏では、韓国に対してワカメ養殖の技術も提供して、そして向こうに奨励をして、つくったワカメについてはむしろ輸入を保証してやるというような、少し行き過ぎのせっかいまでして援助をして、そして現在せっかく努力をして基礎をつくった国内の養殖ワカメ漁家を苦しめておるという非常に矛盾した結果を生んでおるように思うのでありますが、こういうものに対して関税政策立場で対処すべきものはないのか。これはあるいは担当者はいないかもしれぬ。農林関係の人から一言、これに対してどう対処するのかお聞きしておきたい。
  20. 山田嘉治

    山田説明員 関税その他で何か適当なこれに対する歯どめの措置はないだろうかという御質問と承りましたが、現在ワカメは、輸入自由化されておりまして、関税は一五%というように承知をしておりますが、いま先生指摘のございました韓国に日本が技術の提供等をして現地で増産させ、それを価格の保障等をして引き取ってやっておる、援助の行き過ぎがあるのではないかという点につきまして、ちょっと私十分な情報を持っておりませんので、いますぐお答えできない次第でございますが、実態を至急調べさしていただきたいと思います。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)委員 質問の内容について皆さんに言っていなかったから担当者もいないかもしれぬが、調べて、どういう対策があるのか、これは緊急の問題でお聞きしておきたい。  それから、関税を引き下げた場合に、そのときにはいろいろの動機があるでしょう。国内産業の保護の場合、国民生活の安定の場合、いわゆる緊急暫定税率の引き下げというのはそういう目前の政策操作でありますから、どういう効果が出ておるかということを、関税行政の中でやはり絶えず実施の効果を追跡調査する必要があるのではないか。そういうものがないと、将来に対する関税行政の客観的な根拠を持たないままに、そのときどきの思いつきで上げたり下げたりするということになると思うので、そういう追跡調査というのはしておるのか。しておれば、ひとつ一、二、実例を出して参考にお聞きしたいと思うのです。
  22. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに、先生指摘のとおり、関税を引き下げれば輸入価格が下がって国内の物価が下がるとか、あるいは関税を引き下げることによって輸入が増大をする、こういう効果があるわけでございますが、何ぶんにもその価格が下がるか上がるかという問題に関しましては、必ずしも関税の引き下げによって一体その輸入がふえたのかどうかという判定をいたすわけにはまいらないわけでございます。関税を引き下げることによりまして、輸入は確かにふえることがございます。これは国内経済状況の影響もございますし、あるいは外国における輸出先の経済の状況、あるいはいろいろな取引先の状況等もございまして、これが一体関税を引き下げた影響かどうかということの判定は、現実問題としてはむずかしい問題でございます。  したがいまして、私ども関税をこれだけ引き下げれば、理論的に、いわゆる関税の弾性値と申しますか、関税引き下げによる輸入増加の弾性値と申しますか、理論的な計算はいたすことができるわけでございますけれども、それが現実にどれだけ関税を引き下げたから輸入がこれだけふえたのだということを、後に至って実記をすることはむずかしいかと思います。  たとえば、理論的な計算値で申しますと、今年度いろんなものの関税の引き下げをお願いいたしておるわけでございますが、今年度に関しましては、私どもの試算によりますと、今回の関税引き下げによる輸入増は約五千万ドル程度というふうに試算をいたしておるわけでございまして、そのうち食料品に関しまして約四百万ドル、機械類に関しまして一千三百万ドル、その他の製品に関しまして三千三百万ドルという弾性値を過去のデータに基づいて推計をいたしたわけでございまして、これは推計に終わるかと思います。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 物価のほうはどうですか。
  24. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 物価に関しましてもやはり同様の問題がございまして、関税の引き下げに伴って物価にどのくらい影響をするか、ほかの条件において全く同一であるならば、関税を引き下げればそれだけ物価が下がるはずでございますけれども、かなかなこれが、物価という問題は、むしろ関税以外の要素によりまして動く面が多いものでございますから、関税の引き下げが一体どの程度具体的に物価の引き下げに影響をしたかという試算は、むずかしいわけでございます。  たとえば、今年度、LPGの関税に関しまして、一トン当たり八百八十円であったものを五百五十円に引き下げることをお願いいたしておるわけでございますが、御承知のように、現在LPGの標準価格と申しますものが十キログラム千三百円でございます。したがいまして、具体的に申しますと、千三百円の標準価格の中に関税の引き下げ分の効果は八百八十円か五百五十円になりますから、十キログラム当たりになりますと三円三十銭引き下がるはずだという計算は出てまいりますが、関税を引き下げたがゆえに物価が一体どうなったかということの試算になりますと、これもやはり弾性値を使って試算をいたさなくてはならないわけでございますが、今年度お願いをいたしておりますところの関税の引き下げは、私どもの試算によりますと、これによりまして約百億円関税収入として減収をする、こまかく申しますと九十七億円という試算が出ておりますけれども、何ぶんにも国民生産百二十兆円の中の百億円ということでございますから、これが一体物価の引き下げに対してどの程度影響をするかと申しますと、これはなかなか数字としてあらわれるような数字にはなってこない。マクロ的に申しますと、そういうことになろうかと思います。  ただ、関税と申しますのは、御承知のように、非常に個別商品に付属をして個別性の強いものでございまして、それぞれの物価に関しましては、私ども、少なくともこれが引き下げる方向には動く、かように考えておるわけでございます。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ぼくがいまお聞きしたのは、関税を下げても物価には少しも影響ないのだというむしろその研究が必要じゃないか。いま物価問題で問題になっておる六大商社だけで、日本輸入量の大体五割を引き受けておる。そして流通機構まで支配をして、消費者価格については引き上げ操作があって、少しも関税引き下げの影響がないということが、いま盛んに論議になっている。流通が価格を決定する、関税の引き下げというものが、追跡調査の結果、たいして影響ないとすれば、わざわざ「国民生活の安定」というふうな提案理由を書いて出すことは、これはまくらことばであって、何の意味もないのだ。そうすれば、わざわざ国の財源を減らす必要はない。国際情勢のおつき合いのことは別ですが、わざわざ引き下げて、そうして消費者に影響がない、そうして国の収入を少なくする、そういう積極的理由はないのだ、逆説的にものを言えば。  したがって、内外経済情勢変化日本経済構造貿易構造をどこへ持っていくかということが関税政策の一番重要なものなので、何か時流に投じて、提案理由に、国民生活の安定、物価を押えるためだというふうなことをいって関税を下げても、国内価格機構というものを改正しなければ少しも効果はない、そういうふうな感想をこの法案をずっと見て感じたので、追跡をして何ぼ下がったか。これだけしか下がらないのだから反対というのではない。なぜ下がらぬかということを、逆にもう少し調査をして見きわめたほうがいいのじゃないか。
  26. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、私ども関税を担当しております者といたしましては、私どもいろいろと苦労をいたしまして関税をせっかく引き下げた。この関税を引き下げるということは、国民生活、いわゆる消費者物価にこれが直接反映をしてくれなければ、これはきわめて遺憾なことであろうかと思います。したがいまして、私ども関税を引き下げる場合には、必ずその所管省に対しましても、この引き下げの効果が直接消費者物価に反映をするようにできるだけ努力をすることを、常に機会あるごとに要請をしておるわけでございます。  確かに、その関税を引き下げましたものの中に、その後追跡調査をいたしまして、現実価格が下がっているものもあることはございます。しかしながら、これは確かに、現在のところ、全体的な物価が上昇している段階におきまして、きわめて限られた品目でございまして、これは非常に例外的なもので、これがはたして関税の引き下げによってこの物価が下がったのかということの証明をいたすわけにはまいりません。おそらく実態問題といたしましては、あるいはほかの原因によって引き下げられたという面もあるのかもしれません。また、関税を引き下げたにもかかわらず現実の物価は上がってしまったというものは、これは率直に申し上げまして、非常に数多くございます。それらはやはり原因を調べますと、流通段階——私どもの調査では、とてもなぜ引き上げられたかということがわからないようなものも中にはあるわけでございまして、ただ、私ども考えますのに、こういう時代に、幾らかでもこの関税国内産業影響を及ぼさない限りにおきまして引き下げますれば、これが国内の同じものをつくっている人たちに対して値段を合理化をしなくてはならないという影響も出てまいるはずでございますし、そういったような意味におきまして、関税の引き下げが全く効果がなかったというふうには考えておらないわけでございまして、要するに、やはりそれなりの引き下げの姿勢を示すということは、これはきわめて重要なことではないか、かように考えておるわけでございます。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そういうふうな関税政策について偏見を持たないで、少し別な角度で検討すべきものがたくさんあるような感じがしておるので、問題提起のようなかっこうで質問しておるのですが、そういうことを考えて——関税を決定するについての審議機構がありますね。税制調査会においては、相当長期的な立場で深い論議をしてきめておるようでありますが、これを見ると、関税審議会と書いてありますね。関税そのものでなくて率だけを審議する。実に各論的な、日本貿易構造をどうするかというふうな識見など少しも要らない、そんなことはしなくてもいいのだという、大体、関税審議会という名前からして、どんな機構で何をしているんだかちょっとわからないのだが、そういう関税審議会じゃなくて、せめて率の字を取って、もっと識見の高い審議会を置いて、こういうものを処理すべきじゃないかというふうに思うのですが、大体どういう構成になっていて、どんなことをやっているのですか。
  28. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに名前は関税審議会になっておりますけれども関税審議会に審議をしていただきます事項は、単なる関税率だけではございませんで、関税定率法の第二十二条にございますが、「関税率に関する重要な事項を調査審議するため、大蔵省の附属機関として、関税審議会を置く。」ということになっております。  この委員の構成といたしましては、各界の代表の方々、労働界から消費者の代表の方にもなっていただきますし、また新聞界あるいは産業界の方々にもそれぞれ委員になっていただいておるわけでございます。  この関税審議会は、現在各種の政府関係審議会がございますが、一番数多く、まじめに御審議を現在していただいている審議会の一つであろうかと私は考えておりまして、今年度、昭和四十八年度におきましても、各調査部会あるいはいろいろな部会を通しまして、合計をいたしまして十七回この年度間に開いておりまして、それぞれ忙しい委員先生方も非常に熱心に御討議をいただいておりまして、関税率をきめるときのみならず、年度間を通しまして月に一回ないし二回お集まりをいただきまして、議論をしていただいているものでございまして、これは現実問題としては、単なる床の間の置き物的な審議会に終わっているという実態ではございません。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私も実態がわからないので、一応感想的な質問をしたのですが、実は私もあの改正案を見たが、何ぼ見ても中身がわからぬ。専門家でない者が幾ら見てもこの中身が妥当かどうかのことはわからないから、またわかろうとは実はしていないのですが、ただ一般的に見ると、暫定税率ですね、暫定税率というものは毎年延長して、暫定税率が十年もずっと続いているのがある。基本税率は空洞化されている。空洞化されて、暫定税率が実際の基本税率の位置についているようなものもあるので、これは全体の貿易の構造とか関税構造全体が変化しているのだから、そういうのを再検討するというようなことも何か必要になっているのじゃないかという感じを持ったので、そこで、審議会というものが関税審議会と書いているから、どういうことだろうと聞いてみた。まあいずれにしても、まじめにやっているというお話でありますが、そのまじめの根拠は、もう少し長期的展望に立った基本問題が論じられておるかどうかを聞きたかったわけです。  これはまあそれでいいですが、最後に一つだけ密輸入についてお聞きしたい。  関税制度があるが、それを無視した密輸入についての状況、これはどうにもならないものなのか。ことに、麻薬の密輸入というものはとにかく絶えず新聞の種になり、国民の健康をそこねておるわけでありますが、この密輸入の大体のからくりというのですか、そういうものを説明してもらいたい。
  30. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに、密輸事犯につきましては、逐年これは増加の傾向にございます。昭和四十八年、すなわち昨年の一月から十一月までの間に、関税法違反として、密輸事犯として検挙いたしました件数は、七千七百八十一件でございます。そのうち密輸入の件数は六千三百八十五件でございまして、昨年に比べましても、若干ではございますが逐年増加の傾向をたどっております。  特に、最近におきます悪質事犯、これは最近だけではございませんけれども、悪質事犯といたしまして麻薬類について見ますと、ヘロインであるとかモルヒネ、こういったようなものの密輸入、これは昭和四十五年が非常に多くあったわけでございまして、これを一つのピークといたしまして、若干はそのヘロイン、モルヒネ系の密輸入は減少をいたしておりますけれども、反面、覚せい剤であるとか、LSDあるいは大麻とか、こういったようなものは増加をいたしておるわけでございます。  さらに、銃砲関係につきましては、これは例のハイジャック事件を契機といたしまして、外国におきます取り締まりも非常にきびしくなってきている。こういうような実態を反映をいたしまして、私どもが摘発をした実績は漸次減少をするような傾向にございますが、何ぶんにもその手段や方法がだんだん先方も知恵をつけてまいりまして、非常に巧妙化してきていて、その検挙が非常にむずかしくなってきているという実態は、これは否定できないかと思います。  と申しますのは、日本の空港におきまして一日に入ってくるのは、現在、羽田の空港の例で申しますると、約七千人からの人々が日本の中に入ってくるわけでございまして、これはあまり厳重に検査をいたしますると、やはり税関の通関が非常にうるさいと、一般の善良な方々からはかえって非常な非難を招く一つの道になる。一方、これをあまりゆるやかにいたしますると、密輸事犯等に対してこれを利する立場があるということで、そこらあたりのかね合いと申しますものが、一番むずかしい問題として私ども頭を悩ましているところでございますけれども、やはりあの窓口に立ちますところの係官の長い間の経験によりまして、その場におきましてこれを検挙し得るような事例も相当数多くあると同時に、外国からの、要するに外国における公館その他からの情報によりまして、密輸事犯をつかまえるという事例もございまするし、それから、非常に卑近な例でございますけれども、いわゆる女性が陰部に麻薬を隠して入ってくるというような事例を最近つかまえた例もあるわけでございまして、彼らのいわゆる持ち運びの方法というものは時々巧妙化しつつあるので、私どもといたしましては、これに対応する策をいかにしたらいいかということに関しましては、日夜頭を痛めておるわけでございますが、できる限りこの取り締まりに万全を期したい、かようなつもりで各税関に対しましてその指導をいたしておるわけでございます。
  31. 山中吾郎

    山中(吾)委員 密輸のことをお聞きしたのは、私、知らないものですから、お聞きしたわけです。  次官に、この国会の会期中に、農作物自由化関税定率の関係食糧自給体制貿易構造関係その他をひとつ御検討願っておいて、一定の機会にまた意見交換したいと思います。  これで終わります。
  32. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 塚田庄平君。
  33. 塚田庄平

    塚田委員 先ほど正直だといいますか、とにかく関税の引き下げというのは、物価に影響する度合いというのは正確にはつかめないけれども、そうたいしたことないのだ、まあそういうことばじゃございませんが、そう重要な要素ではないというお話がありましたね。私も、率直に書ってそう思うのです。  そこで、今度これだけ税金を下げる。関税負担率は大体三・九%の見込みという数字が出ています。三・九%といいますと、ケネディラウンドの始まった当初から比べますと、大体半減しているわけです。ケネディラウンドの目標というのは、大体五〇%くらい下げようじゃないかという話だったと思うのですけれども日本は忠実にこれを守っておるといいますか、その線で来たわけですね。  それで、先ほどからのお話のとおり、東京ラウンドと申しますか、新しい次期の国際ラウンドが模索されておる。しかも、これは日本が提唱国といいますか、主要な役割りを演じておるわけですね。そういう国際的な関税政策の主役を演じようとしておる。そこで、関税率を上げた状態、少なくともケネディラウンドのねらっておる線からずいぶんはずれた水準を維持していたのでは、どうも主導権を持ってこれからの新しい国際ラウンドを指導していく、あるいは発言を大きくするということに、何だおまえのところやっていないじゃないかということで、また非常に不都合な状態になってくると思う。  その辺の国際的な威信といいますか、また約束したこと等についての過剰な意識というか、これがまず働いて、国民生活関連物資法案とかなんとか言っていますけれども、しかし、実際はこれはあんまり効果がないけれども、とにかく関税の負担率だけは一定の水準に下げていこう、こういう気持ちが先に走ったのじゃないか、こう私は思うのですけれども、どうでしょう。
  34. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 率直に申し上げまして、私どもそういう頭は全くないわけでございまして、御承知のように、関税率それ自体は、ケネディラウンド以降日本もいろいろと努力をしてまいりましたし、またほかの国におきましても徐々に下がってきておりまして、特に日本が高いといわれておりましたところの製品関税の平均関税率は、ケネディラウンドが始まります前には、ほかの国が大体製品関税に関しましては平均六%台でございましたのが、当時日本は一〇%以上の平均関税率であったわけでございます。それが現在、昭和四十八年度の段階になりますると、日本も製品関税の平均関税率も六%台に下がっておりまして、ちょうど列国並みには製品関税率も下がってきておるわけでございまして、関税そのものに関しましては、日本が現在関税率が高過ぎるという批判は、全く聞かないわけでございます。  したがいまして、私どもは、関税率それ自体に関しましては、むしろ国内産業影響のない限りにおきまして、やはりできるだけこれを引き下げて、外国の品物をできるだけ安く入れるということは、国民生活にとってプラスになるという判断が強く働いておるわけでございますが、今度ことしから行なわれますところの新国際ラウンドは、関税率の問題ももちろん審議の対象になっておるわけでございますが、むしろ関税以外のいわゆる貿易障壁となっておりますものとか、あるいはセーフガードの問題であるとか、熱帯産品の問題であるとか、あるいは後進国、要するに開発途上国の問題であるとか、むしろ関税率以外のいわゆる世界貿易にそれぞれ関連をしております問題が全部取り上げられるということでございまして、ケネディラウンドのときには関税率が問題になりましたけれども、今回の新国際ラウンドの場におきましては、関税率もその議題の一つではございますけれども関税率以外の、世界貿易発展をさせるために現在問題になっている事柄を、国際的に話し合いをしようではないかという趣旨でございます。
  35. 塚田庄平

    塚田委員 いま答弁をいただいたが、私は一つ例を出したいと思うのですよ。今度の関税改正で灯油が下がっていますね。灯油というのは一体どのくらい輸入しているのですか。
  36. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 四十五年に十七万トン輸入していたと思いますが、ちょっと調べます。——十七万七千トン四十五年に輸入しておりますが、それ以降四十六年、四十七年におきましては、輸入をいたしておりません。
  37. 塚田庄平

    塚田委員 灯油というのは、局長、これは輸入しなくたっていいんですよ。原油から一定の割合、灯油の場合は、大体二二ないし二五%蒸留過程で出てくるのですよ。だから、ああいうつくられた灯油の値上がりの騒ぎがあった、品不足だ、そういっても最近は余って輸出しなければならぬという声さえちまたにあるでしょう。これは聞いていますね。灯油はあまり入ってこない。ほとんどゼロだ。四十六年、四十七年はゼロなんですから、この関税を下げるというのは、まさに先ほど山中さんの言った見せかけ減税だと言われてもしかたがないでしょう。LPGは入ってきていますけれどもね。どうですか。
  38. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに現実問題といたしまして、四十六年、四十七年に灯油が輸入をされた例はございませんが、四十五年、非常に寒い冬に、十七万七千トンの輸入実績があったわけでございまして、これは確かに実態的には私ども見せかけというようなつもりは全くなかったわけでございますが、例の石油日本におきます消費地精製主義ということに関します考え方というものは、これだけ石油の問題が問題になってまいりますと、必ずしも日本での消費地精製ということだけではなくて、今後石油の原産地で精製工場をつくって、それを日本に入れるということもやはり考えていかなければならないという事態が来ているわけでございまして、そういうことも徐々に進展させるべきではないかということで、今年度灯油の関税を一部引き下げていただくことをお願いいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  39. 塚田庄平

    塚田委員 局長、これは実はたいへん専門的な質問で、私も調べただけで申しわけないのですが、三三二という番号は、これは五つか六つに分かれていて、今度の場合、ジェット燃料はこれで非常に得をするわけです。一般の家庭でたく灯油とか何かは余っておるわけですから、こういうことをやっても、何ら価値がないということを言いたいのです。  そこで、次官、いまの局長が産油地の精製主義ということについて触れましたね。この傾向について一体どう考えるか。進んでいく傾向だ、これは確かにそうだと思うのですね。日本としてはどうか、いろいろな要素があると思いますが、その点についての観点と、もう一つ関税の面から言うと、たとえばアジア、アラブから言わせると、日本の水ぎわで関税をかけられるよりは、現地で関税をかける、どうせそれが上置きされていくんだから。現地関税主義ということが、いま資源ナショナリズムというか、その一環として行なわれておるのですけれども、そういう事態に、あまり必要でないものの関税無税にしていけば、その精製品を輸入することに拍車をかけていくんじゃないか、私はこう思うのですが、次官どう思いますか。
  40. 中川一郎

    中川政府委員 石油の問題は国際的に非常にむずかしい問題で、情報が変わる可能性も十分あります。私どもが原案をつくりました当時には、非常な異常事態のもとで案をつくっておりました。ところが、最近に至っては、また石油が余っておる。ただ価格が非常に高いというような問題が残っておりますけれども、量そのものでは当時考えたほどではなかったのでありますが、また今後どう変わるかわかりませんことを考えると、この際、灯油とLPGについては、減税措置を講じておいたほうが国民の要望にこたえるものではないか。確かに、見せかけと言われますと見せかけですが、四十五年には実績もありましたし、あるいは産油地における精製という声もあり、現実問題については通産省の所掌でございますから、私ども詳しくはわかりませんが、受けざらだけはつくっておくことが必要だと考えて、提案をした次第であります。
  41. 塚田庄平

    塚田委員 灯油にだけは早いね、受けざらが。そういうことで、大蔵省も、灯油に対してはこう下げたのだ。まさに山中さんの言う見せかけですよ。そういう姿勢になれば、ますます原産地における精製主義というのは、おお日本も下げた、それじゃこっちから精製して輸出しよう、こういうことになりかねないし、特に石炭会計との関係からいえば、これは関税審議会でも、よくそれを注意しながら審議しなさい、検討しなさいと言っておるのですよ。どうですか。あまりにもこれは唐突じゃないですか。見せかけじゃないですか。大体いま輸入していないのですから。
  42. 中川一郎

    中川政府委員 減税の額もキロリットル当たり五百円そこそこ、五百十円でございますから、外国における産油地の精製が促進されるほどの、支配するような引き下げではないのじゃないか。  しかし、あの当時、私ども北海道ですが、塚田先生も北海道で、灯油不足だというので非常な不安な時代がありましたし、実は原重油についてすら下げてはどうかという意見もかなりあったくらいでございます。ただ、原重油については、石炭対策上、どうしてもこれは踏み切れないというので、原重油だけはごかんべんを願って、製品である灯油とLPGについて三分の一程度の引き下げをはかっておいて、受けざらだけはつくっておこうという趣旨でやりましたので、決してこれを大上段に振りかざして、国民生活の安定というものが灯油にだけかかったものではない。灯油についていばってやったつもりはありませんで、ひそかなる気持ちで引き下げをお願いいたしておるところでございます。
  43. 塚田庄平

    塚田委員 これはもう時間もありませんから深く追及しません。実は灯油だけじゃないのですよ。たとえば、パルプあるいは脱脂綿、LPG。パルプ四%については無税、こういった措置も、どうも時の情勢に何とか政府としても態度をひとつ出しておいて、どこから突かれてもという姿勢がありありと見えるような気がするのです。これはそれでおきたいと思います。  そこで、局長、新しい国際ラウンドを模索しながらいろいろ努力しておるわけですが、いま国際ラウンド加盟を見込まれる国はどのくらいか。その中で、特に発展途上国、開発途上国、アジアの国はどういう国が数えられるか、ひとつ教えていただきたい。
  44. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 二月七日現在、ガットからの報告によりますと、現在のところ新国際ラウンドの参加国は総計八十六カ国となっております。このうちアジアからの参加国といたしましては、バングラデシュ、ビルマ、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナムの諸国が交渉に参加しておりまして、換言すれば、中国を除きますほとんどすべてのアジアの国が、この交渉に参加手続をとったわけでございます。  御承知かと思いますけれども、この東京宣言の中にもございますように、これはガットに加盟をしている国も、また加盟をしていない国も、ガットの事務局長に対しまして参加を通報いたしますれば、この新国際ラウンドに参加をできることになっておるわけでございます。
  45. 塚田庄平

    塚田委員 この八十六カ国の中に、石油産油国は入っていますか。
  46. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 私どもの手元にございますところの参加国、ガットからの通告の中には、イラン、イラク、ナイジェリアあるいは南米のベネズエラ等、そういった国々が現在参加を申し込んでおります。
  47. 塚田庄平

    塚田委員 イラン、イラクが申し込んでおるということですが、大部分のそのほかの産油国というのは、これにためらいを示しておる。そこで、なぜ一体これらの石油という大きな資源を持っておる国が、この新国際ラウンドにある疑念を持っておるか、これはどう思いますか。
  48. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 アラブ諸国は、今日までもガットのメンバーになっている国はほとんどなかったわけでございます。それで、要するに、アラブ諸国の産業と申しますのは、石油という単一の産品がその持つ唯一の資源ということで、おそらく今日までは、世界との国際貿易と申しますか、そういう観点から申しますと、石油には関心があるけれども、ほかの産品と申しますか、貿易自由化であるとか、そういったような問題に関しましては、あまり関心がなかったのではないかと私は推測いたす次第であります。
  49. 塚田庄平

    塚田委員 そういう観点もあるかもしれないけれども、やっぱりいままでの国際ラウンドというのは、発展途上国、未開発地域に対するあたたかい配慮が少なかったという面も多いのじゃないか。今度の場合でも、特に日本の提唱ですから、そういう懸念が大きく働いて、先行きについて見きわめがつきかねている。いま言ったとおり、ガットに入らなくても、これは入れるのです。しかし、足並みがそろわぬというのは、そういう懸念もある。  私の希望としては、この東京ラウンド、まあ仮称ですが、これはそういった国々に対する配慮、向こうをいままでのようにとにかく収奪してくる、大きな先進国はただ原料だけとってくればいいのだというようなやり方から一転して、やはり静かに育て、あるいは先進国は若干の犠牲を払ってもそれらの国々の発展を促進するという精神が、やはりこれに貫かれなければならぬと思う。特に日本は、次官のことばじゃないが、資源がないのですから、そういう役割り、配慮をしなければ、この東京ラウンドというのは実質的に成功をおさめないのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  50. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 その点に関しましては、私も先生の御意見と全く同感でございます。現在参加を申し込んでおりますところの八十六カ国のうち、過半数はいわゆる発展途上国の申し込みでございまして、そういった意味におきましては、発展途上国もせっかくこの新国際ラウンドに参加をし、討議の場に出てこようという意欲を示しておるわけでございますから、それに対してこたえるためにも、先生指摘のような基本的な姿勢で、この新国際ラウンドには臨むべきではないかと考えておるわけでございます。
  51. 塚田庄平

    塚田委員 だんだん時間もなくなってきましたので、石油関連してきましたので、ひとつ質問をしたいと思います。  それは、重油の脱硫減税についてお伺いしたいと思うのです。この脱硫減税というのは、どういう仕組みで減税しているかということをまず説明してください。
  52. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 重油の脱硫減税制度と申しますのは、亜硫酸ガスの発生源であるところの燃料重油の低硫黄化をはかるために、その重油脱硫を行なうところの石油精製業者に対しまして、脱硫重油の原料として輸入される原油並びに粗油に対しまして、一定の脱硫条件を満足した場合に、その輸入関税の一部、すなわち脱硫重油一キロリットル当たり五百円を軽減することによりまして、いわゆる重油脱硫設備の建設を促進する、こういう観点から、昭和四十五年の七月からこれは実施されておるわけでございます。
  53. 塚田庄平

    塚田委員 それは私もわかっているのですよ。どういう仕組みというのは、この脱硫減税は、どのぐらい脱硫してどのぐらいの量だということを確定しない前に減税するのでしょう。どうですか。
  54. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 おっしゃるとおり、この減税額の算定は、低硫黄燃料油の製造のために水素添加脱硫装置に投入されることが予定されている原料油の数量を基礎といたしまして計算をされるわけでございまして、いわゆる予定減税と申しますか、そういう方法によりまして減税をいたしておるわけでございます。
  55. 塚田庄平

    塚田委員 これは関税参考書によると、昭和四十七年度百十七億というたいへんな金です。これだけ減税しているわけですよ。そこで、これは予定だ。予定ということは、これは石油会社が申告をする、それをそのままのんで一応減税をしておると思うのですよ。その一番末端、一体どのくらい脱硫が行なわれたのかということについての確認、もしそれより少なければこれは当然税金を返してもらわなければならぬでしょう、実際やっているかどうか。
  56. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 このいわゆる低硫黄燃料油の製造用原油の減税分の事後確認といたしましては、私どもは、少なくとも年に一回製造終了後提出されるいわゆる製造終了届けというものから製造工場に出向きまして、当該製造工場から提出されておりますところの製造終了届けにつきまして、製造工場が作成している操業日報、これは油の量の記録でございますが、原油の受け払い日報、硫黄分析成績書等を調べておるわけでございます。
  57. 塚田庄平

    塚田委員 それがゼロというのはどういうことですか。全然ないでしょうゼロでしょう、返してもらったためしがない。また虚偽の報告を出したということで罰したためしもない。百十何億ですか、やりっぱなしでしょう。
  58. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 それによりまして今日まで追徴いたしました実績は、昭和四十六年度におきまして十三件、四十七年度におきまして十二件、昭和四十八年度におきまして二十四件、合計四十九件ございまして、それによりまして追徴いたしました額は二千七百、五十三万円、それから延滞税を含めまして二千七百五十四万円ということになります。
  59. 塚田庄平

    塚田委員 二千七百五十三万円というのは何年分ですか。
  60. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 年度別に申しますと、昭和……(塚田委員「いいです。何年分ですか」と呼ぶ)三年分でございます。
  61. 塚田庄平

    塚田委員 三年分で二千七百万。減税額を三年分合わしたらどのくらいになるでしょうかね。三百億近くになるでしょう。返してもらったのは二千七百万。どうですか、これは一体。  それから、この資料によりますと、価額と減税額との合計比が出ているわけですよ。その価額と減税した比率ですよね。大体、技術水準はそんなに変わるわけじゃないですから、ここ二、三年大体変わらぬはずですよ。たとえば脱硫しなければならないそういう残留油ですか、それが五〇%なら五〇%、五一%なら、五一%というのは技術的にきまるのですから、その比率は変わらずにくるはずなんですよ。ところが、その比率がどんどんどんどん、昭和四十五年度は一・四%、昭和四十六年度三二、四十七年度四・九、四十八年度六・二と、ずうっとウナギ登りに上がっているのはどういうわけですか。
  62. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 脱硫原油の対象となりますのは、入ってきますところの原油の硫黄分の多寡によって違ってくるわけでございます。したがいまして、結果的には、要するに、硫黄分が多い原油の入ってくる量がふえるに伴いましてこれが多くなってくる、こういう事態はあるかと思います。私どもといたしましては、できるだけその事後確認を十分にやりまして、誤りのないように追徴をすべく努力をしておるわけでございます。
  63. 塚田庄平

    塚田委員 いまの局長のことばですと、毎年毎年、逐年だんだん硫黄分の多いものを輸入してきたということになりますか。
  64. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 硫黄分の問題につきましては、後ほど、どういう種類の硫黄分の多い原油が入ってくるか、私ども調査をしてみたいと思いますが、その間、もう一つの理由といたしまして、四十五年の七月のときには三百円の減税であったものが四十六年の十一月から五百円と、その減税分の金額が上がっていることも一つの原因かと思います。
  65. 塚田庄平

    塚田委員 それは局長だめですよ。かりにあなたの言うことがそのとおりだとしても、四十六、四十七、四十八年という統計を示したのですから、あなたのところから出ているこれで。それがぐうっと上がっていると言うのですよ。四十七年度は上がったわけじゃないでしょう、五百円から上がっていないでしょう。だから、そういう答弁じゃ困るわけです。その点はひとつ資料で出してください。いま硫黄分が上がってきているという答弁でしたが、どういうふうに硫黄分が上がってきているのかということを具体的に入れた数量、それから、私も資料はありますけれども、会社別に減税した数量、金額を出してください。これも大蔵では出せないから通産あたりとひとつ協力して出していただきたい。
  66. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現在のところ、過去の実績につきまして会社別に資料が——もちろん減税をやっておるわけでございますから、税関別に過去の資料を全部一回集めればできる理屈になるかと思いますが、現在のところ会社別の資料をまとめて統計をとっているということはやっておりませんので、現実問題としてどのくらい過去にさかのぼってこれができるかどうかはちょっとこの場でお答えをいたしかねますので、検討してお答えさせていただきたいと思います。
  67. 塚田庄平

    塚田委員 この際、この資料に基づいてもいいですよ、ただ四十六年度は御指摘のとおりだ、三百円から五百円になっていますからね。しかし、おたくの統計で四十四年から実はずっと出ていますから、この統計に従ってそれを仕分けしていただきたい。いいですねこれは。検討ですか、できますね。
  68. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 できると思いますけれども……。できる限り努力をいたします。
  69. 塚田庄平

    塚田委員 ぜひ出してもらいたいと思うのです。  それから、先ほど言ったとおり、これは三百億、四百億という減税の中で、返ってきたのは二千七百五十三万円ですね。これは少な過ぎると言ってはなんですが、あまりにも会社側の申告をそのままやって、率直に言って、ほかにほとんど手をつけなかったんじゃないですか。結果について調べなかったんじゃないですか。私はそういうことを聞いているんですよ。どれだけになっているかということを調べてないでしょう。
  70. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは各税関は自分たちのところでは必ずやっております、こう申しているわけでございます。
  71. 塚田庄平

    塚田委員 そういう答弁はないでしょう。ぼくはあるところで調べたら、それはやっていません、長い間にプラスマイナスになってしまうのではないかというような話もあるんですよ。こういう関税のかけ方ってありますか。いま石油というのは、国民の注視の的なんですよ。脱税はやる、公取からは告発される、そして関税をごまかす。いまのような答弁を聞いたんじゃ、国民承知しないですよ。
  72. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 私ども石油の減税制度に関しましての重要性は、御指摘のとおり、非常に重要な問題であろうと思いますので、実績をいかに検査をし、いかにあれするかということに関しまして、さらに気をつけまして、十分にこの事後確認その他が行なわれるように徹底をさせたいと思います。
  73. 塚田庄平

    塚田委員 局長、これは減税なんですよ。そこに私は大きな問題があると思うのですよ。だから、これは金を取るときには追徴なのですね。つまり、還付金とか何とかと違うのですよ。だから私は重要だと言うのですよ。減税するのですから。おそらく現場職員なりあるいは現地の税関のほうでは、減税という、もう切っちゃったのですから、そこにやはりもう終わったんだからという考え方、業者はそこにつけ込んで、申告をどんどんごまかしていく、こういうやり方じゃないかと思うのですよね。どうですか。
  74. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 先生おっしゃるようなことのないように、ひとつもう一回過去の実績もこちらでよく確認をいたしますと同時に、今後この事後追跡に関しましては、税関におきましても非常に重点的にこれを行なうように指導いたしたいと思います。
  75. 塚田庄平

    塚田委員 この件については、あすあたりまた大臣に対して聞きたいと思いますが、と同時に、これは減税ですけれども、原油等については関税の還付制度もあるわけです。減免還付制度が別にもあるわけですよ。たとえば、国産原油はいいですが、あるいは石油化学製品、この還付のしかたも、いま言ったようなのと類する状態なのですね。あちこちに見られるわけですよ。こういう還付制度というものをもうなくすべきじゃないか。特に低硫黄については、もうそろそろ十分できておるので、さらに五十年三月三十一日まで延ばす必要はないでしょう。どうですか、現実に。
  76. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 還付制度という問題あるいは低硫黄原油の脱硫装置の減税の問題、これは時限的にいつまでやるべきである、あるいはいつやめるべきであるということは言えないかと思いますけれども、こういう性格の政策の問題でありますから、いつまでやらなくてはならないということは、はっきり申し上げられるように種類の問題ではないかと思いますけれども、この点、国会におきましてそういう御意見があったということを前提といたしまして、今後私ども検討させていただきたいと思います。
  77. 塚田庄平

    塚田委員 一つ前に戻りますが、先ほど重油の脱硫減税についてはいろいろ調べると言われましたが、そこでもし過剰な減税があったら、これは明らかに脱税行為と見ていいですか。当然そうですね。局長どうですか。
  78. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 調べました結果、過剰な減税がありましたら、これは脱税行為だと私は思います。
  79. 塚田庄平

    塚田委員 なお、この問題については、ひとつ大臣に、若干質問を保留しておきたいと思います。  それでは、次に移りたいと思います。  この問題に関連して、これはあすも聞くのですが、石油精製会社への、これは同僚議員もいろいろとこの前質問したのですが、大蔵省の関税の係の天下り再就職というのが非常に多いわけなのですが、つかんでいますか。
  80. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 大蔵省の人が石油精製会社に行っているという事実は、私、存じております。
  81. 塚田庄平

    塚田委員 これも私はあとで——人事院のほうではいま調べている最中で、具体的なあれは出てきませんが、相当多い。そういう中にやはりこういった、長い間やっていて、最後になったらプラスマイナスだからというような、そういう思想が出てくるのじゃないかと思うので、この点触れておきます。  第三点は、保税地域の滞貨の問題についてちょっと触れたいと思うのですが、これは国会、予算委員会等でもずいぶん問題になっておりまして、現在ごく直近の時期で調査をされたかどうかですね。
  82. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 保税地域の貨物の蔵置状況の調査につきましては、昨年の十一月以来毎月、月末現在の蔵置状況を調査をすることにいたしておりまして、現在、一月末の蔵置状況の調査ができております。
  83. 塚田庄平

    塚田委員 どのくらいですか。
  84. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 本年一月末現在におきます保税地域におけるその在庫量は、六千四百五十五万四千トンでございます。
  85. 塚田庄平

    塚田委員 これは上屋、倉庫全部入れまして、大体、倉庫、上尾収容能力の何%ぐらい占めておると思いますか。
  86. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 私どもこれをつくりますにあたりまして、いわゆる収容能力というものはいろいろと算定の方法があるわけでございますが、いわゆる公共的な一般的ないまの保税地域というようなものは除いているものもございますので、私どもが統計をとっておりますところの収容能力は、指定保税地域に関しましてはカバー率が四二%、それから保税上屋に関しましては全部一〇〇%カバーをしておりますし、保税倉庫につきましても一〇〇%カバーをしておりますし、保税工場に関しましては一四%をカバーをしているわけでございます。それのいわゆる収容能力と対比をいたしますと、現在の六千四百五十五万四千トンという在庫量は、平均在庫率といたしまして五二%に相当いたすわけでございます。
  87. 塚田庄平

    塚田委員 相当高い比率なんで、一体これをさばく、荷出しをやるという点について、こういう情勢ですから、どういう具体的な手段、方法をとって指導していますか。
  88. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 この点、御承知のように、保税上屋におきましては、その一カ月以内に輸入申告をしなくてはならない。それから、保税倉庫に関しましては、倉庫に入ったあと二年以内に輸入申告をしなくてはならないという法律構成になっておるわけでございます。  私ども今日まで、いわゆる輸入申告が期限前に行なわれませんでしたときには、これは法律にそむくことになりますので、この輸入申告をさせることになるわけでございますが、いわゆる保税倉庫というものは、一般の倉庫、いわゆる民間の倉庫でございます。これは要するに、倉庫の中に品物を入れたまま通関手続を認めてもらう種類の倉庫でございまして、輸入申告を一たん済ませますると、普通の倉庫でございますので、いつまでその倉庫に物を置いておきましても、法律上はよろしいわけでございます。したがいまして、今日まで、税関といたしましては、その保税倉庫に一体物がどのくらい入っているかということに関しましては、輸入通関が行なわれた後のものに関しましては、あまり関心がなかったのが率直なところでございます。  しかしながら、昨年の十一月以来、特に石油問題を中心といたしまして、保税倉庫の中に一体物がどのくらい入っているかということを税関といたしましてはつかまえなくてはならないということで、各税関を督励いたしまして、保税倉庫の在庫量を捕捉いたすことの仕事を始めたわけでございますが、これは法律的には確かに、通関手続がすでに終了をして倉庫の中に入っておるものに関しましては、普通の営業のものは倉庫業法によって監督をされておるものでございますから、税関には監督権限はないわけでございますが、その中で、長く蔵置をされているものに関しまして搬出を促進するということを、行政指導によって税関は始めたわけでございます。  たとえば、各品物、特に生活関連物資に関しまして、長い間倉庫の中に入っている小麦なら小麦、これは現実に当たってみますると、品物によって非常に違うわけでございまして、いわゆる端境期まである程度倉庫の中に保存をしておくということは悪いことではないと思いまするし、また、物によりまして、買いだめ売り惜しみの目的を持って値上がりを待って蔵置をしておくことは悪いことである。この善悪の判断と申しますか、何の目的を持って長い間倉庫に蔵置しているものかということの判定は、なかなかむずかしい面があるわけでございます。  私どもは、少なくとも現在蔵置をしております量はこれだけありますよという正確な数字を産業所管省に連絡をいたしますと同時に、税関におきましても、長い間蔵置されております品物に関しましては、法律的な権限はございませんけれども、行政指導によって、これを搬出するべく指導をいたしておるわけでございます。
  89. 塚田庄平

    塚田委員 法律的な権限がないと言いましたが、搬出命令という最後の伝家の宝刀があるのじゃないですか。
  90. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 搬出命令と申しますのは、関税法百六条で、要するに関税徴収上支障がある際にはこれを搬出させることができると、税関長に与えられておる権限でございまして、これはたとえば、倉庫が満ぱいになりまして、あとから入ってくる品物が入りきらない、したがって、関税徴収上支障があるという場合には、前にある荷物の搬出を命令する権限があるわけでございますが、その倉庫がかりに満ぱいになっていない、要するに在庫率が五〇%であるという状況であります場合には、関税法百六条に基づきますところの搬出命令を出せるかどうかということに関しましては、問題があろうかと思います。
  91. 塚田庄平

    塚田委員 実は、私はきのう本牧へ行ってまいりました、雨の日でしたが。それできのう、実は委員会に三十分ぐらいおくれたわけです。  どういうことかというと、きのうは月曜日ですが、横浜あたりから品物の転送がどんどん行なわれるわけですよ。つまり、横浜に揚げて、横浜の保税倉庫に入れようとする。そうすると、すでに内国貨物が一ぱいになっていてどうにもならぬから、転送許可を受けてこっちへ持ってくるというふうなこと等もずいぶん行なわれておる。保税倉庫とか上屋というのは、私企業と言いましたが、ある程度公共性があるし、そうであればこそ、銀行が優先的な融資体制をとって建てていると思うのですよ。それが大部分内国貨物の倉庫になっておる。  ブリヂストンタイヤが一つの倉庫に一ぱい詰まっておる。しかも、これは保税上屋ですよ。一体いつからやっているんだと言ったら、ブリヂストンタイヤのごときは、昨年の九月七日から倉庫に一ぱいですよ。これは一体輸出するのかどうかと言ったら、これもわからぬ、全然輸出しないと思われるものもありますと、こういう状態ですよ。一体、局長はこういう実態を見ているのかどうか。その点非常に不都合だと思うのです。やはり公共性を優先さして、場合によっては、いま言ったとおり、内国貨物で一ぱいだから、通関に非常に支障を来たすから出しなさいという命令をやるべきでしょう。  品物によっては、こういうのもあるのですよ。倉庫に置いたまま転売転売されるのですよ。七回という話を聞きました。だから、持っていくにしても、一番末端ですから、わずかなものをちょっと持っていく。また別な人が来てちょっと……。そして出しなさいと言えば、いや私のところではもうあっちへ転売していますからと、こういうことですよ。一体これはどうなんですか。
  92. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 そういう保税倉庫の中の実態に関しまして、私どもも昨年の十一月以来、一体、実態がどういうことになっているのか、また物がどのくらいあるのかということに関しましては、文字どおり税関のほかの仕事が若干犠牲になっても、そういうことをいまの段階においてはやるべきであるということで、相当各税関職員に無理を申しまして、各税関倉庫の実態調査に力を注いでいるわけでございます。  各税関長も真剣にこれをやりまして、また、もちろん個々の倉庫に関しましては、全体の在庫率といたしましては、先ほど申し上げましたように、五二%という数字か出ておりますけれども、各個別の倉庫によりましては一〇〇%になっているところもありまして、そういうところに荷物がたまっておる場合には、関税徴収上支障があるということで、各税関長も相当思い切っていわゆる搬出命令を出すことを心がけておるわけでございます。  現在、なぜ長いこと倉庫に物がたまっているかということを実態的に、これは若干の時間がかかるかと思いますが、理由別にも調査をしておるわけでございまして、東京税関、横浜税関等、連日夜の十一時ごろまでかかって努力をしておる最中でございます。何とかしていわゆる保税倉庫の中の実態を、私ども税関の立場としてでき得る限りのことをして調べ、この搬出を促進させたい。これは搬出をさせましても、この搬出をする先がまたいなかの倉庫に持っていかれたのでは何にもならないという面もあるわけでございまして、私どもなかなか通関をしたあとのものを追跡するわけにはまいりませんけれども、少なくとも税関の目の届く範囲内にあるところの荷物につきましては、在庫量を正確に把握して、それを産業所管省に連絡して適切な処置をしていただくように、最大の努力を傾けたい、かように考えておるわけでございます。
  93. 塚田庄平

    塚田委員 そこで、私、最後に質問したいのですが、例の搬出命令については、通関業務に支障を来たすということで出すのでなければ、私はあの滞貨——たとえば一階の倉庫は一〇〇%ですね、ブリヂストンのタイヤで。これは輸出するものですよ。それをいつまでたっても輸出手続をしないわけですよ。その下は約三〇%。あとは何かといったら、輸入した石綿。石綿なんかもひどいですよ。シーローダーですね。そしてやっている業者というのは、大体きまっていると言うのですよ。わりと力のある業者ですね。だから、強力な手段でなければこれは出ないと思うのですね。どうですか、場合によっては搬出命令を出す、そういう検討を進めなければならぬ時期だと思うのです。
  94. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 私どもといたしましては、私どもができる範囲内におきまして、もちろん必要な場合には搬出命令を出すことはいとうものではございませんし、現実にかなり思い切った、要するに拡大解釈と申しまするか、柔軟な解釈をいたしまして、搬出命令を出すように現在考えているわけでございます。
  95. 塚田庄平

    塚田委員 そういう内国貨物が一ぱいになっているので、他所蔵置というか、そこに入れられないからほかへ持っていって保税地域外にさがす、そういうことがやられるのですよ。さっき言った交通、これはものすごいですね。繁雑になるだろうし、手数料から何かからいって、たいへんな問題なんですよ。だから、その辺を考えないと、これは流通の問題にも関係してくるし、最近の東京のような状態になると交通にも関係してくる、こういう状態ですよ。あっちこっち倉庫を求めてうろちょろ歩いているのですから。どうですか。
  96. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のような状況があると思います。  ただ、私ども先ほどから申しておりますように、いわゆる保税倉庫と申しますのは、倉庫の中に置いておいたままで輸入手続をすることが認められている種類の倉庫ということでございまして、営業倉庫は倉庫業法に基づく監督を受けておるわけでございまして、一たん通関をいたしました荷物につきましては、関税徴収法上かなり支障があるという理由が曲がりなりにも見つかりませんと、関税法百六条に基づく搬出命令を出すということは、現実問題としてむずかしい面があるわけでございます。単に物がそこにあるからと、たとえば七〇%倉庫にあって、ほかの荷物を入れようと思ったら入れられぬという状態でありますときに、この荷物は長く置いてあるから持って出なさいと、税関長が命令をして出さすことは、なかなかむずかしい面があろうかと思います。  したがいまして、そういう際にはほかの観点から、いわゆる産業掛当省に、こういうものが長くありますよということを通告をいたしまして、その物がかりに国民が非常に切実に要求をしているものであるとするならば、その権限を持っているところの官署から、その倉庫の荷主に対しまして、この品物は出しなさいということで指導をしていただくのが一番正しい道ではないか、かように考えておるわけでございます。税関長権限といたしまして、かかる場合にその搬出命令を出すということに関しましては、相当慎重に検討をする必要があるのではないかと考えておるわけでございます。
  97. 塚田庄平

    塚田委員 保税倉庫の認可は大蔵省でしょう。
  98. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 おっしゃるとおり、保税倉庫は申請に対しまして私どもが認可をしているわけでございます。
  99. 塚田庄平

    塚田委員 認可するには、保税倉庫としての役割りを十分果たしてもらいたい。そのために、金融的にも相当優遇されているということは事実なんですよ、建てるについては。政府資金も相当低利に入ってくるし、それはそういう公共の用に供するからということを理由にして、いろいろな便宜をはかっておると思うのですよ。もしそういう用途をとっていないならば、認可を取り消したらどうですか。
  100. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 一方において、御指摘のように、非常に輸入物資が急増をしているということでありまして、倉庫全体の絶対数という問題もからんでまいりますので、保税倉庫の数が多ければ多いほど、やはり輸出入に関しましては、全体的な国民経済的に見てプラスになるという面もあるわけでございます。  また、倉庫業者と、それから倉庫に荷物を預ける荷主の立場というものはそれぞれ違うわけでございまして、その倉庫業法に基づく倉庫業者というものに、現在荷物を持っております荷主が倉敷料を払いまして、長いこと倉庫の中に物を置いておるという面があるわけでございまして、そこらあたり実態問題といたしまして、できるだけスムーズにいくように、行政指導によって、税関もこれに関して積極的に関心を持って、その荷物がスムーズに外に流れていくということに努力をするのが一番いい方法ではないか、かように考えておるわけでございます。
  101. 塚田庄平

    塚田委員 この問題は、時間もないので、ほかにもありますので、大臣に対する質問のほうに移していきたいと思います。  その次、これは砂糖の問題、先ほど山中さんから詳細に、農業保護の立場からいろいろ議論があったのですが、砂糖について標準価格をつくる、つくらないがいろいろ議論され、審議されてきておりますが、どういう状況ですか。
  102. 永井和夫

    ○永井説明員 御説明申し上げます。  先生の御質問は、国民生活安定法に基づく物資に指定するかどうかということでございます。砂糖は昨年末以来、非常に価格の高騰がございまして、生活関連物資として非常に重要な問題であるということで、価格関係が非常に話題になったわけでございます。したがいまして、私どももこの価格安定につきましては、当然生活安定法の施行の趣旨に従って、国民生活安定法に基づく物資に指定すべきかどうかということで検討を加えたわけでございます。  ただ、先生承知のように、現在、国際相場が非常に大きな変動を来たしております。砂糖に関します原価構成の中で、粗糖価格の占めるウエートが非常に高い現在におきまして、この粗糖相場というものが相当大きな変動を来たしておる段階におきまして、一定の標準的な価格帯を切ってこれに押し込めるということにつきましては、今後の見通しを十分立てないとその辺は非常にむずかしい。したがいまして、それよりは行政指導によりまして、家庭用を中心といたします小売り価格を押えて末端の価格を規制してまいりたいということで、販売協力店というような指定店舗を設けまして、末端価格の指導を現在行なっておるという状況でございます。
  103. 塚田庄平

    塚田委員 農林省の話はわかりましたが、局長、今度砂糖については二月十七日からですか、弾力関税に踏み切ったわけですよね。ところが、砂糖というやつは、やっと言っては悪いんですが、ものすごい価格の激動というか激変というか、これは価格じゃないですね、相場なんですね。ロンドンで相場が立つわけですよ。そして、各国にずっと相場が波及していくのですけれども、毎日動いているわけです。  そこで、これは弾力関税を適用したけれども、私が非常に危惧するのは、いまは上がっているから、弾力関税でひとつ関税をなるべく下げてやろうということだと思うのですね。しかし、この時期に、ゆれ動く相場をうまく利用して、実際の相場よりも高く申請する。これは豚肉の場合と同じですよ、弾力関税の場合は。そういう懸念が非常に出てくるし、あるいはまた、利益を海外に出してしまうというようなこと等も、大手商社では考えられると思うんですね。一体、そういう懸念は全然ないか。つまり、そういった調査網なり、海外における何なりをきちっとしていなければ、弾力とはいっても弾力がなくなって、かえってそれは大手商社に悪用される、こういうことになるんですけれども、どうでしょうか。
  104. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 その点は、砂糖に関しまする減税のメカニズムは、全くそういう心配がないようにできておるわけでございます。と申しますのは、関税を減免をいたします限度額と申しますのは、いわゆる国内糖価安定法において定められておりますところの国内の上限価格、要するに安定上限価格と、それから平均輸入価格との差を減税するということになっておりまして、平均輸入価格と申しますのは、毎月二回、十五日ごとにロンドン相場を前提として客観的にきめられるわけでございまして、輸入業者が作為的に輸入価格操作するということはできないようなシステムになっておるわけでございます。
  105. 塚田庄平

    塚田委員 時間も参りましたので、まだ二、三残っておりますが、その中からよりくくって、あとはあすの大臣に対する質問に移したいと思います。  とまれ、今度のいろいろな減税措置は、生活関連物資とはいうものの、一つ国内産業に相当影響する物資もありますし、それから、先ほど言ったとおり、下げたけれども見せかけじゃないか。現に砂糖のごときはどんどん上がっている。弾力関税はしたけれども、その海外の動きについての調査もなかなかとれない、つかめないという状態。いまやかましくなっておる石油については、先ほど重油の脱硫ついて言ったとおり、全くふらちな見のがしをやる。  いずれにせよ、今度の関税率の引き下げということについては、私どもどうも承服できないいろいろなものか含まれておると思います。こういう点について、ひとつ最後に次官、いかがですか。
  106. 中川一郎

    中川政府委員 いろいろな御指摘をいただきまして、われわれも調査もし、検討も加えなければならぬところもあると思いますので、万全を期していきたい。たとえば、先ほどの脱硫減税五百円がうやむやになっておるんじゃないかというような点は、ほんとうに検討して、妥当でない点があるとするならば、許されることではありませんから、やめるということではないかと思いますが、厳正、公正を期するように断固としてやっていきたいと存じます。
  107. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 午後二時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  108. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦君。
  109. 増本一彦

    増本委員 この関税定率法法案審議に際しまして、午前中も議論になったようでありますけれども、初めに、いま大蔵省は、税関を通して、輸入業者に対して、貸物の滞貨をなくして円滑に流していこうということでいろいろやっていらっしゃる。その具体的な指導の内容と、それから実績、実態ですね、これについて御報告をいただきたいと思います。
  110. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 午前中の委員会におきまして一部お話をいたしましたけれども、御承知のように、昨年の九月の委員会におきまして、先生から冷凍肉の滞貨状況に関してのお話がございまして、当時たまたまその時期が夏でございましたので、冷凍倉庫の中にはいわゆる夏特有のアイスクリームのような種類のものが非常に入っていたわけでございます。したがいまして、当時は冷凍倉庫それ自体が満ぱいという状態になっておりまして、輸入貸物、たとえば冷凍肉なり冷凍魚なりを入れようと思いましても、倉庫が満ぱいであるために、なかなか倉庫に入れることができないという事態であったわけでございます。  こういう事態に相なりますと、いわゆる関税徴収上支障かある、こういうことで、百六条を発動をいたしまして、要するに冷凍肉その他の搬出を促進をするという行政指導も、税関当局の立場からいたしますと非常にやりやすい、またやるべきであるということでございますが、現在、個別の冷凍倉庫で満ぱいになっているところもございますけれども、平均的に見ますると、十一月末、十二月末の冷凍倉庫におきます在庫率と申しますのは、約八〇%ということになっているわけでございます。  冷凍肉等の在庫の絶対量は、去年の七月当時と変わっておりません。むしろ若干ふえているような状態かと思いますけれども、そういうようなときに、いわゆる関税法の百六条に基づく搬出命令を出し得るかどうかということに関しましては、午前中もお話しいたしましたような問題かあるわけでございますが、私どもといたしましては、ことに冷凍もの等を中心といたしまして、たとえば東京税関におきまして、要するに大口な輸入業者と申しますか、六大商社も含めまして、大口の輸入業者二十三社を東京税関に呼びまして、早く物を出すようにということを税関のほうから指導をいたしましたり、あるいは港湾業者で結成されておりますところのいわゆる協議会の場におきまして、それぞれ中小の業界に対しましても搬出促進を指導をしている、こういうような手段をとっておるわけでございます。  その他個別物資に関しまして、私どもがいかにもその理由なく長期に蔵置されていると考えられますものに関しましては、個々の荷主を呼び出しましてこの搬出を促している、こういうような手段をとっております。
  111. 増本一彦

    増本委員 いただいたこの資料によりますと、東京税関が輸入業者二十三社に対して指導なさっている、いままでは倉庫主を通じて搬出指導をしていたけれども、今後は荷主の直接指導もあわせて行なう。それから、もう一つは、保税上屋に搬入後四十五日以上経過した未通関貨物については、税関が荷主から具体的に滞貨理由を聴取する、こういうことをやっていらっしゃるのですか、これはいつからおやりになって、特に保税上峰に搬入後四十五日以上経過したものについて具体的な滞貨理由をお聞きになっていらっしゃるはずですし、その実績や実態というものはどうなっているのか、この点についてひとつ御報告ください。
  112. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 具体的に保税上屋に長い間滞留をしているものに関しまして、東京税関に呼びまして特別検査をいたしたわけでございますが、いろいろなものが実はございますが、おもだったものといたしましては、たとえば契約不履行と申しますと、いわゆる品質であるとか、そういった面において、契約と違ったものが相手国側から送られてきて、これを引き取るわけにはいかない、こういった引き取り交渉中のものであるとか、あるいは食物検疫を待っているところであるというようなものであるとか、それからかん詰め、落花生等の場合に、品質不良であるために売却不能であるからこれまた引き取らないというような事態もございますし、いろいろの理由か個々別々にあるわけでございまして、一応、各品物に関しまして相当詳細に、東京、横浜等の税関におきまして、この実態調査というものをいたしておるわけでございます。
  113. 増本一彦

    増本委員 皆さんがこの東京税関でおやりになったのは、二月四日、管内の主、要輸入業者である大手商社六社を含む二十三社を呼び出して、蔵置貨物の状況把握について協力を求める、そしていま申し上げたような指導をやった。この結果についてもう集約ができているのでしょうか。いかがですか。
  114. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 その結果につきまして、ただいま集約作業中でございまして、間もなくこれができ上がる予定と聞いております。
  115. 増本一彦

    増本委員 では、その集約ができた段階で、ぜひひとつ当委員会にその全体を資料として提出して御報告いただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  116. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 委員会に資料として提出いたします。
  117. 増本一彦

    増本委員 局長のほうから先ほど冷凍食肉の問題が出ましたけれども局長もその中でおっしゃったように、むしろ十一月、十二月の段階では、東京を例にとりましても、在庫量が十一月の末で肉類で七万九千トン、魚介類が七万二千トン、十二月の末で肉類が七万五千トン、魚介類が六万五千トン。暮れに需要がかなり伸びたということを見ましても、八〇%というお話がありましたけれども、昨年の夏と状況が変わっていない。むしろ十一月はふえて、十二月も肉類では若干のふえかある、こういう状況だと思うのですね。  問題は、それだけのものがストックされて、ずっとそのままであるというものもあれば、入ってきてかなり回転していくものもある。両面ありますから、これが全部一がいに買い占めとか売り惜しみだということには必ずしもならないかもしれないけれども、しかし、それにしても、やはりいまの状況を見ますと、いろいろ在庫が依然としてふえつつあるような傾向というのは、これは流通そのものは所管でないにしましても、そういう側面から見ても好ましい状態だとは必ずしも言えないというように思うのです。  ましてや、マイナス二十度、三十度というところでかなり長期間にわたって保存のきくものばかりですから、皆さんのほうも保税地域についての効率的な利用をはかっていく、その面が通関政策関税政策と流通政策とのいわば接点としても非常に大事な問題だと思いますし、この点についての荷の回転状況というのは、一体どういう状態になっているのか。この点についてきちっと正確な実態の把握ということをまずおやりにならないと、いろいろな点での行政指導の具体的な手が打てないというように私は思うわけですね。  ところで、他方、こういう冷凍倉庫の場合ですと、いわば自主管理方式になっていて、業者まかせで、そのためになかなか検査も行き届かないということが、私の昨年の夏お尋ねしたときに皆さんのほうからも、荷物がふえて人数が足りないという問題等もあって、これが大きな矛盾であるというお話もあったわけです。しかし、だからといって、この自主管理をそのまま放置しておくというわけにはいかない。だから、これについての検査や手だても、きちんとそういう意味でしていく必要があるというふうに思うわけです。  この点、この夏以降、こういう問題が起きている上で皆さんのほうではどういう手だてをお考えになり、また実行されていらっしゃったのか、そしてまた、今後はどういうようにやっていこうとしておるのか。そこの辺はいかがなんでしょう。
  118. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 まさしく先生指摘のような問題点があるわけでございまして、私ども午前中も申し上げましたけれども、今日まで税関は、要するに通関が終わった荷物に関しましては、正直に申し上げましてあまり関心がなかったわけでございます。しかしながら、現在日本の物の状況がこういったような状況になってまいりますと、保税倉庫の中に一体何がどの程度あるかという在庫状況を把握しておく一つの義務のようなものが税関にもあるということで、昨年の十一月からいわゆる倉庫の在庫量調査を、毎月月末現在において正確に把握するという作業を始めたわけでございます。  ただ、御承知のように、倉庫というのは、物を置いておくためのものでございまして、いわゆるランニングストックに相当する、正常な価格を維持するためにはある程度倉庫に物が入っていたほうが物価押し下げ要因の一因にもなるという面も、逆にいえばあるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、これを行政指導する上におきまして、正常に平生あるべき在庫量と申しますか、そういったようなものをやはりつかむ必要がございますが、そのためには、ある程度の期間にわたりまして倉庫の在庫量というものを、平生の状態からどういうふうな変化があるかということをつかんでまいる必要があると思います。したがいまして、私どもほかの仕事を相当犠牲にいたしましても、この方面に対しまして税関といたしましては力を入れまして、在庫量の正確なる把握ということから若干経験を得まして、保税地域における正常な物の在庫量というものを物資別に私どもとしても見当をつけたいと思いますが、もちろん、正常の在庫量調査と申しますのは、税関に本来与えられた職務ではございませんで、やはり物資を担当しておる省においてこれは所管をしていただかなくてはならない種類のものであろうかと思います。  したがいまして、私どもがこれ以上立ち入りますことは、現在でも実は保税関係の職員の事務が、その在庫量調査のために相当過重になっておる面がございますので、ほかの物資担当所管省のほうに正確なる在庫量を税関といたしましては報告することが第一歩であるということから、そういう面に現在重点を置いておるわけでございます。
  119. 増本一彦

    増本委員 私は、実際に港の特に保税上屋を中心にして調査をしてみましても、保税上屋が本来法律で一カ月というように荷物を置く期間がきめられているのに、そういうものが全然無視されているという実態だと思うんですよ。こういういまの実態をどうやって改善していくかということがありませんと、保税地域に滞貨している荷をほんとうに流していくということはできないと私は思うのです。  そういう点で、一つは、私は先ほどさらりと読み上げましたけれども、保税上屋に搬入後四十五日たっても未通関の貨物、この貨物だけなぜ滞貨しておるのか理由を聴取するということでは、何か四十五日まではそれは置いてもいいのだというようなことにもなりかねないし、そういうことで、この法律をきちんと厳守させて、いまみたいに物置きみたいに何でも何カ月も積んでおくというような実態をまず改めていくというような、保税上屋、保税地域から大掃除を始めていくということが必要ではありませんか。そういう点では皆さんはどういう手だてをお考えになっているのか、あるいはまたどういうことをやろうとなすっておるのか、この点はいかがなんでしょう。
  120. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 保税上屋の場合、もう大部分の貨物と申しますのは、要するに三十日以内にその通関がされるものでございまして、大体三十日をこえておりますものは全体の七%ないし八%でございます。しかも、その原因別を調べてみますと、先ほどもちょっとお話しいたしましたように、要するに、保税上屋に残っております貨物と申しますのは、なかなかそれぞれの理由がございまして、いわゆる契約に合わない品物であるから自分は引き取れないとか、それぞれの滞貨しておりますものに関しまして調べてみますと、いろいろな理由があるわけでございまして、何らの理由もなく保税上屋に長期間滞留させておくというものはほとんど見当たらないわけでございます。  したがいまして、この保税上屋に何らの理由もなく、ただ単なる売り惜しみであるとか買い占めであるとかの原因で蔵置してあるものであれば、もちろん税関長といたしましては、これを収容をいたしまして、公売に付するというような手段を講ずるわけでございまして、全体の一割足らずのものに関しまして、ある滞貨のものに関しましては、できるだけこれを早く引き取らせるように指導をし、必要に応じて収容という方策もまじえましてこれに対処をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  121. 増本一彦

    増本委員 契約の品物に合わないということで契約上いざこざが起きた場合、そのときに上屋に置いている荷主というのは一体だれなんですか。これは、買ってきた商社でしょう、あるいは輸入業者ですね。それはどうなんですか、そのとおりですか。
  122. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 いろいろなケースがあると思いますけれども、御指摘のとおりだと思います。
  123. 増本一彦

    増本委員 それで、そういう取引の当事者間の争いがあって、だから置いておいてもやむを得ないんだということに、はたしてなるのかということだろうと思うのですよ。それはもっと別の公共的な理由があるのなら別ですよ。それを民事上の、注文に合うような品物じゃなかったということで、それはその当事者間のそういう契約の争いですから、それがすんなり注文どおりの品物を本来持ってこなければならないのに、持ってこなかったということでクレームがついているのでしょう。しかし、これは品物の管理保管は、全面的に荷主である商社のほうにあると思うんです、まだ引き渡していないわけですから、自分の所有物ですから。だから、自分できちんと責任をとらせていく。  ここのところを大目に見るということが、何か私にはたいへん解せない。むしろ大手の商社なんかの場合ですと、そういうことでかえって横暴にわがもの顔に、そういう上屋を倉庫料さえ払っていればいいんだということで使っているきらいがあるんじゃないか。だから、そういうところもきちっと筋を通していくようなことをやっていかないと、実は保税上屋についての大掃除はできないというふうに私は思うのですが、いかがですか。
  124. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいま申し上げましたように、筋が通らないと私ども考えます場合には、収容することによりましてこれを公売に付するという手段も認められているわけでございますし、現実にそういう手段を講じているものもございます。ただ、むしろこういう場合には、大手商社と申しますよりは、もはや引き取り主に引き取りの意思がないという品物が、もう相当まじっているわけでございます。むしろこれはもう捨ててしまったほうが損が少ないと考えるのかどうかわかりませんけれども、要するに、荷主をさがしましてこれを引き取れという指導をいたしましても、もういかなる処分をしていただいてもけっこうでございます、こういうようなことを申す事例もあるわけでございまして、こういう取引は非常に多種多様にわたっておりますので、一律にこういう場合にはこうするということをきめると、かえっていろいろとそれを利用されるという面も現実問題としてはあるわけでございます。
  125. 増本一彦

    増本委員 皆さんのほうで筋を通していく、筋の通らない理由のときには収容もなさる。その基準というのはどういう基準をおつくりになって運用していらっしゃいますか。
  126. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 要するに、法律的には、これは関税法の七十九条にあるわけでございますが、法律的に収容できるのは「保税地域の利用についてその障害を除き、又は関税の徴収を確保するため、」という抽象的な表現であるわけでございますが、具体的には、これは取引の多様化、多様な取引の形態に基づきまして、やはり個別にきめこまかくそのもの一件一件の荷主との話し合いで事情を聴取をしてみませんと、一律に基準をきめることは、かかる場合にはむずかしいと考えます。
  127. 増本一彦

    増本委員 それから、通関税務と通関手続きが終わったけれども、まだ品物をそのまま入れておく、こういうので非常に極端なものは、大きい倉庫ほど、そしてかなりいま値の上がっている品物ほど私は目立つというように思うのですが、こういうものは一体どういうような手だてをおとりになるのですか。
  128. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、保税倉庫の場合に二年以内に通関手続をとらなくてはならないわけでございますが、通関手続がとられてしまいますと、これは営業倉庫の場合、営業倉庫業法の監督下に入るわけでございまして、現実問題として、法律的には輸入通関終了後は税関の手を離れるというのが実態であろうかと思いますが、先ほど来御説明いたしておりますように、いわゆる保税倉庫の中に長期間滞留されております品物につきましては、私どもそれぞれ現在二十三社を呼んで東京税関において搬出促進方を行政指導したということを申し上げましたように、少し法律を拡張解釈をいたしまして、税関のほうにおきまして、輸入通関終了後の荷物の搬出促進に関しましても、税関としてもできる限りのことをやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  129. 増本一彦

    増本委員 倉庫じゃなくて、保税上屋でそのまま動かないでいるという品物はないのですか、通関手続後。これはゴムとかアルミとか銅とか、こういうものは、横浜、東京の港の保税地域の保税上屋をずっと見てみますと、ずいぶんたくさんあるというように思うのですが、実態はどうなんでしょう。具体的に私が確認したものをあげてもけっこうですよ。
  130. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 いわゆる輸入許可済みの貨物で三カ月以上長期に蔵置されております貸物の割合は、一月末現存で七%という数字になっております。
  131. 増本一彦

    増本委員 この七%のうち、一つは中身が問題だというように思うのですよ。たとえば、私が確認してから二カ月たって、きのうまた確認をとってもまだあるのを具体的に申し上げましょうか。  横浜の鈴江組の倉庫と、それから本牧の三井の倉庫、ここにそれぞれ大体二千トンくらいずつゴムがあるのですね。これは二カ月以上、三カ月近いですね。それで、荷主は丸紅、加商、伊藤忠、野村。いま御承知のように、天然ゴムはものすごく上がっているわけですね。あれは商品取引所の相場ものでしょう。  そこで、実はこの保税上屋で入札をやっているのですね。あんまり値が高いので、ブリヂストンと横浜ゴム以外手が出せないというのが、あそこの倉庫関係者の間では常識になっているのですね。一日に二十トンから三十トンぐらいしか出ない。多く出ても百トンにいかないという状態。そして毎月、横浜の場合だと、税関の皆さん御承知だと思うけれども、あのエバレット汽船の貨物船でゴムを積んできて、荷揚げするわけですよ。こういうようにゴムが滞貨し、そして商品取引所の相場はどんどん上がっていく。むしろ一挙に出さないで、こうやって売り惜しみや買い占めに近いような、あるいはそのものずばりの行為を港の保税上屋を使ってやられているのじゃないだろうか、そういう見方を私はせざるを得ない。いま上がっている品物で、しかも原料、資材でたいへん重要なこういうものについて、単に通関手続が終わっちゃったからもう私のところはということでは、なぜ保税上屋という地域の指定をし、認可もし、そして皆さんが監督をしていくのかという、ここのところにまでさかのぼって考えるべきではないかと私は思うのです。一つの例ですけれども、こういうような実態に対してどういう対策をおとりになるか、ここが私はたいへん大事だと思うのです。この点はいかがでしょう。
  132. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 基本的な問題にさかのぼりますと、御承知のように、いわゆる港湾行政の一元化というような問題とも深く関連をしていくかと思いますけれども、御承知のように、現在、港湾の管理者はその都道府県になっているわけでございます。さらに、倉庫の問題に関しましては、倉庫業法に基づく倉庫業界の監督は運輸省が監督をしている。いろいろそういう面におきまして、港湾行政が一元化でないという点に関しましてのいろいろと検討すべき問題は、私率直に申し上げてあるかと思います。  ただ、現在、私ども税関に与えられておりますところの権限の問題から申しまして、もし保税上屋そのものがそういう方面に利用されているということが私どもに感ぜられました場合には、現在の段階におきましては、相当強い行政指導によってその搬出の協力を求めるという方法以外に、法律的には権限としてはないと思います。ただし、その保税上屋がそのために非常に一ぱいになって、ほかの荷物をそこに持ってこれない、こういうような事態であります場合には、そこにある荷物を持っていけという搬出命令を税関長が出すということはなし得ると思います。
  133. 増本一彦

    増本委員 搬出命令までなし得るとお考えであるならば、もっと、特にそういう七%の中には契約不履行だとか——それは私も見ましたよ。南京豆の、えさのあれに使うくずもののやつがうずたかく積まれて、もうはしけにまであふれちゃっていて、引き取り手がなくて船主自身が困っちゃっているというような例だって、枚挙にいとまがないわけです。そういう小さな船主泣かせのけしからぬやり方というのは、これはこれでまた別途考えなければいけません。しかし、産業経済の基本的な資材、原料が保税上屋に積み込まれて、そこでせりが行なわれるというような事態、これはもうもってのほかだというふうに私は思うのです。  大体、保税上屋というのは、そういうことのために認可しているわけじゃないですね。これは通関手続を順調にやるために、船に置いておくわけにいかぬからひとまず上に揚げて、そのかわり一カ月以内に早くやってください、そして関税も納めてください、そうしたら自分の好きな倉庫に持っていきなさい、そういういわば中間の小さなダムでなくちゃならぬわけですね。このダムに何カ月も置いて、しかもそこで商売をやるなんというような不届きなやり方というもの、この実態をもっときちんと調査をし、検査をし、それに必要な人員、人数が足りなければそういう人数を——価格調査官だって専任にしようという世の中ですからね。そういうことまで含めて、やはり抜本的な検討が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  134. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のような趣旨から、私どもも、税関が今日までやっておらなかったことを昨年の十一月以来やろうということで、現在税関が最重点項目として努力をしているわけでございまして、しかも、その行政指導の内容といたしまして、船主のみならず、荷主それ自体を税関に呼びまして、それぞれの滞貨の理由を聞き、早く搬出をするように強く行政指導をやっておるわけでございまして、これは相当に効果のある方法であろう、かように考えておるわけでございます。
  135. 増本一彦

    増本委員 その辺の搬出命令を含めた強い行政指導を、これは私からも強くお願いしておきます。  まだあるのですよ。アルミニウムもたいへん上がっているのですね。たとえば川崎の東洋埠頭の倉庫には、半年ぐらい三千トンもアルミのインゴットが積みっぱなしなんですね。大体アルミニウムというのは、いまコンテナで運ばれてくるのが普通なのに、これだけばらものなんですね。これも契約上のいろいろな問題があるのかもしれない。しかし、ここも保税上屋なんですね。こういうのがそのままにされておるということにも、もっと目を光らせておく必要があると思うのです。  それから、アルミのコイル、板状で巻いたやつですね。これも本牧の三井倉庫に一個二トンのやつが五十トンぐらいやはり眠ったままです。  それから、アフリカ産の銅ですね。これは横浜港にいらっしゃればすぐわかりますが、大体はしけに積みっぱなしのままです。銅のコイルですよ。いま電線業者の皆さんは、電線がないといってあっぷあっぷしているのでしょう。それが、そこへ置きっぱなしになっている。あれは保税地域ですよ。あの岸壁のところに、はしけに積まれたままです。私が十二月の末の段階で確認したら、実は三カ月ぐらい前からもうそのままはしけに置きっぱなしだというのですね。それで、それじゃ年が明けて荷が揚がったのかと思って、また最近確認したら、まだそのままになっているのです。これはやはり大手の商社です。三井物産だったと思いますね。  これはばらもので、それからもうクレームのついているものもあるかもしれません。いま市況から見て安いものとか、そういうものほどそういうことで引き取り手がなかったり、いろいろ契約関係でもクレームがつく性質のものだと思うのですね。しかし、その七%の一方で、こういうどんどん値が上がっていく原材料、資材がやはり同じように陸揚げもされない、そして高値を待っているような状況、これが港の保税地域や保税上屋を使ってやられているという実態をもっともっと厳密に点検をし、ほんとうに強力な指導をすることが必要だというように私は思うのです。  いま私のほうでこまかく指摘したような点については、ぜひ一度検査をし、荷主も呼び出して、強力に指導も徹底する。ましてや、保税上屋を使って入札なんかやっているというような、そういう不届きしごくなことはやめさせる。ちゃんと品物を持っていって、それこそ正規の流通機構にのせてちゃんと品物を放出させるというような手だてを、もし大蔵省だけでそれがとれなければ、通産省当局などとも、それこそお互いに官庁同士相談をし合って、きちっとした手だてをとるということが、いまの関税の問題とからめても、物価問題に直接皆さんが貢献なさる道ではないかというように思いますが、いかがですか。
  136. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のような点を踏まえまして、私どもといたしましては最善の努力をいたしたいと思います。  なお産業所管省とも緊密に連絡をとりながら、現在の物価問題に対してできるだけ役に立つように、税関としても努力をしてまいりたいと思います。
  137. 増本一彦

    増本委員 通産省、お見えですね。実は特恵関税などの関係で、いま輸入品で中小業者の皆さんと競合している問題、これがいつも言われていて、国内の地場産業や中小企業を擁護していかなければならぬということは、通商政策上しょっちゅう皆さんもおっしゃっていた点だと思うのですよ。ところが、それにもかかわらず、いま一番極端にこのしわ寄せを受けているのが繊維業者ではないでしょうか。  たとえば、愛知県の尾北の織物工業協同組合では織機をとめちゃって、そして自主休業をやって、何とか市況の安定をはかっていこうというような、言ってみれば、みずからの骨身を削って何とか先行きの見通しを確立しようという、ほんとうに泣けるような実態でありますね。なぜこういう実態がいま繊維業者の中に生まれているとお考えになっていらっしゃるのか、まず、その原因からひとつ伺いたいと思います。
  138. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明を申し上げます。  御指摘のように、特に昨年の繊維製品の輸入が、相当大幅に顕著にふえたわけでございます。数字を申し上げますと、繊維製品といたしまして昨年約十六億七千九百万ドルの輸入が行なわれております。一昨年に比べますと三倍、三二、二倍ということで、昨年はたいへんな急増を示したわけでございます。これは昨年曲半の繊維の市況が相当好況であったというようなことから、昨年前半に非常に多額の輸入契約が行なわれ、特に下半期に入りまして非常に輸入品が入ってきた。  一方、国内の景況が、金融引き締め等に伴いまして、夏をピークに、秋になりますと国内需要のほうもいわゆる増勢が鈍化してきている。特に年末になりますと、金融引き締めの影響が非常に及んできたということで、ちょうど輸入が増加した時点で国内の景気もいわゆる下降に転じたということから、現象的に、たとえば機屋さん等におきましても、工賃が下がるとか受注が減るとかということで窮状にございますことは、先生指摘のとおりでございます。  その原因につきましては、いろいろ見方があるかと思いますが、基本的には、やはり非常に中小、零細企業が多うございまして、繊維製品全体で、約十四万六千の企業がございます。中小企業が九九・六%、二十人以下の零細企業が約八割といったようなことで、どうしてもやはり過当競争をしやすい。いろいろ設備制限等もやっておりますけれども、それにしてもやはり供給圧力が強い、そういった国内情勢一つと、それがら御承知のように、国内の貸金が相当大幅に上がっております。それから発展途上国のほうがやはり工業化の第一の手段として繊維工業をやるという方向をとったものでございますから、ここ数年、特に発展途上国の繊維産業の力が強まってきておる。貸金等につきましては発展途上国のほうが非常に安いといったようなことから、同じ品質の品物をつくっておっては、なかなか輸入品と競争しがたいということかと思います。  今後の方向につきましては、別途特定繊維工業構造改善臨時措置法を改正する法律案を今国会にお出ししてございますけれども、やはり高付加価値化をはかる、商品開発をはかるということで、品質のいい、非常に着やすい、付加価値の高い、かといって発展途上国では簡単にはつくれない品物に転換していくということのために、財政あるいは財政投融資金を使うということで考えております。  それから、短期的には、昨年末から非常に景気が悪いという産地がございましたので、私ども中小企業庁と相談いたしまして、中小関係金融三機関でございますけれども、ここにお願いして、どこそこの産地のどこの業種については少なくともこれこれ以上の金融をしてやってほしいというあっせん要望をいたしまして、一部の産地にはかなり回っている面もあると思います。  それから、この二月、三月と、特に四月、五月が悪いのではないかといったような声も強うございますので、年度末の中小企業金融の追加につきまして、現在、関係御当局と折衡中であるという段階でございます。
  139. 増本一彦

    増本委員 去年の一時期、繊維の好況の時期に輸入がふえて、三倍以上の輸入量になっている。この時期に通産省として、国内のこういう中小企業が非常に多い、零細企業が多い繊維業界を守っていくような手だてというのが通商政策の上でもとられてしかるべきではなかったかと思うのですよ。ここのところが抜けて、そして暴落を呼び起こしている非常に大きな原因になっていませんか。その点はいかがですか。
  140. 田口健次郎

    ○田口説明員 御高承のとおり、繊維製品の輸入につきましてはすでに自由化してございますし、国内の一部中小企業で、輸入規制をすべきではないかという声が昨年から起きていることも確かに事実でございます。  しかしながら、私ども実は国全体を考えまして、わが国が繊維製品の輸入規制をやりましたときに、特に発展途上国等におきまして、逆に日本に対して食糧なりエネルギーなり資源なりというものの輸出についてどういう態度をとるか等々の問題を考えますと、なかなかやはり輸入規制ということには踏み切れないというふうには考えておるわけでございます。しかし、具体的品目に応じまして、やはり非常に国内中小企業と競合性の高いといったような品目につきましては、たとえば特恵関税を与えないといったようないわゆる例外品目にするといったような扱いもやっているところでございます。  それから、特に昨年末からことしに入りまして、輸入規制とは別に、わが国商社の輸入のしかたが、三倍とか、物によっては四倍とか、非常に多額の輸入を一挙にする、それから入ってきた品物も実は必ずしも品質が十分よくないといわれるような品物もあるわけであります。こういったことから、もっと秩序ある輸入行動と申しますか、こういったものを輸入商社がとるべきではないかということで当省としても指導してまいりましたし、それから具体的には、たとえば綿織物の関係でございますけれども日本綿スフ織物工業連合会、いわゆる通称綿工連というのがございますが、綿工連が輸入商社とよく話し合いをしたいということで、当省といたしましてはあっせんいたしまして、いわゆる国内中小企業と正面から競合するものについては極力輸入しないようにするといったようなこととか、今後は国内需給とかあるいは輸入契約といったものの情報交換をよくやっていくということで、もっと秩序ある輸入をするという方向で行政指導しておるわけであります。すでに一月に第一回目の会合を持っております。
  141. 増本一彦

    増本委員 景気が悪くなってから、実は綿工連と商社との会議が開かれるわけですよ。だから、そういうところも一つは後手だということがあるのと、それからもう一つは、確かに発展途上国の品物が非常に多い、これを輸入規制ということはちゅうちょする、それは気持ちはわかるのです。これは何か機械的に一律にそういうことをやると、これはやったときの相手国に対する影響ということも十分配慮しなければならぬ。しかし、こういう糸へん景気なんというのは一時的なものでしょう。そのときに、日本が景気がいいからということで日本目ざしてどっと出すと、それがほんとうに発展途上国の繊維産業を守ることになるのかということですよ。もっとやはり長期の見方も必要だと思うのですね。  韓国にしたって、それからほかの東南アジアの国にしたって、あの時期を目ざして、結局、日本の商社が織機を逆に輸出し、その量もふえたり、それから生産量もふえる。それで、今度日本が景気が悪くなった、輸入先どうするんだ、向こうでもやはり操業短縮だというようなことも考えなくてはならないというような事態だってあるでしょう。ですから、あなたのおっしゃる秩序ある輸入、適正な輸入、こういうものをきちんとしていくということ。これはやはり日本産業を守ると同時に、向こうのそういう産業を守っていく、この両方をリンクしてちゃんとやっていかなければならない。それがほんとうの友好的な通商関係なのだと私は思うのですよ。そこのところが全然抜けている限り、この問題というのはいつまでたってもイタチごっこになって、解決できないと思うのですがね。その辺で、もう一つはっきりした答弁を伺いたいと思います。
  142. 田口健次郎

    ○田口説明員 御指摘のように、特にわが国繊維産業の場合には、やはり好況、不況の波が非常に変動が激しい。一つの原因としては、やはり原綿、原毛等の原料が国際的にいわゆる価格の変動が激しいということもあろうかと思います。国内では、先ほど申しましたように、特に中小企業はやはりいま非常に過剰供給ぎみの状態が続いている、これも御指摘のとおりです。実は昨年の輸入の契約動向が具体的にもっと早目にわかればよろしかったのではないかと思いますけれども、当時は輸入契約の数字を必ずしも十分に把握しておらなかったという事態もあったと思います。  それで、先ほど申しましたように、ことしに入りましてからは、輸入商社からも輸入契約についての情報を出させるというようなことで、やはり輸入契約が非常に一挙にふえるというような事態が今後起きますときには、早目に、これは行き過ぎではないか、もっといわゆる安定したような、輸入をふやすにしても漸次ふやしていくというような指導を今後はいたしたいと思います。
  143. 増本一彦

    増本委員 そこで、あなたのほうでは、先ほど機を織る人たちの工費が下がってきているというお話ですが、困っている問題は、一つはこれが下がっているという問題、それから糸が高いという問題がありますね。一番大きな原因は糸の値段だと思うのですよ。  いまたとえば綿でいきますと、輸入価格というのは一コリ四百ポンドを基準にしまして一体幾らなのですか。綿花ですと幾らになりますか。
  144. 田口健次郎

    ○田口説明員 恐縮でございますが、実は私は繊維製品で、織物以降のほうを所管しておりますので、原綿とか糸については詳しくございません。
  145. 増本一彦

    増本委員 それはあとわかりやすい資料でひとつ出してください。その資料の内容は、綿花のCIF価格、そして、それが今度糸になるのですね、その製造コストが幾らなのか、製造原価ですね。そして、それが今度織物屋さんに渡るときには一体幾らになっているのか。  いま国内産のほうが輸入ものよりも高いですね。たとえば綿糸の二十番ものでずっと価格を追ってみましたら、これは国産と、あとパキスタン産があるのですね。それで、四十八年一月は、銘柄は双幅というのですが、二十番もので六万四、五千円であったのが、三月に十万三千五百円、このときにパキスタンものは九万三千五百円、そして七月に国産ものは十二万八千円になり、ところがパキスタンものは九万八千円、八月に若干落ちて十一万二千円に国産ものがなったときに、パキスタンものは九万五千円。現在どうかというと、四十九年二月で国産ものが十三万五千円、パキスタンものが十二万五千円なんですね。  特に、糸やあるいは綿を買ってきて糸屋に紡がせ、そしてそれを織り屋のほうに渡していく、その過程では、いま大手の商社が非常に繊維業界に食い込んできていますね、これは皆さん御承知だろうと思うのですよ。そうなると、ここのところで糸の値段を適正な値段に押えていくという手だてをきちんととっていく。そのために、商社に不当なもうけがあったらそれも削らせて、糸の値段の安定をはかっていくことを強力に進めていくということがやはり必要ではないかと思うのです。この辺の手だてについてはどうお考えなのですか。いかがですか。
  146. 田口健次郎

    ○田口説明員 まず、先ほど申しましたように、私は繊維、織布以降を担当しておりますので、原綿、糸等についてはあまり詳しくは存じませんが、若干あるいは話すことはあるかと思いますけれども、まず、綿花のCIF価格とか、あるいは綿糸の価格、あるいは織物の工費、たとえば綿織物の工賃といったようなデータはお渡しできると思います。しかしながら、コストにつきましては、私ども実は正確なことを把握しておりませんので、これはむずかしいかと思います。  それから、糸の値段でございますけれども先生指摘のとおり、昨年は春三月をピークに綿糸の価格が非常に上がりまして、それからいろいろ冷やす手段、措置を講じまして、若干緩和してきた。  ところが、年末、石油の危機が勃発いたしまして、石油が足らなくなると合成糸が足らなくなるのじゃないか、合成糸が上がる、そういたしますと、綿糸も引きずられて上がるということで、昨年の十二月には相当暴騰いたしました。たしか四十番手の綿糸が、ポンド四百九十八円という高値を呼んだと思います。  こういったことでは、中小の機屋がいわゆる原料高の製品安ということになりまして、とてもこれでは経営もなかなかやっていけないということで、ことしになりましてから極力綿糸の価格抑制につとめまして、最近では大体三百六十円程度まで下がってさた、相当大幅に下がってきたということで、何とか糸価の安定に若干でも効果があるように、ことしに入りましてからは心がけておるつもりでございます。
  147. 増本一彦

    増本委員 それでは、出せる資料はひとつ出してください。  そこで、政務次官に伺いたいのですが、関税政策とのかかわり合いでいっても、発展途上国の産品とわが国の中小企業との間に競合を起こす、そしてそれか非常に深刻な問題になる、そのつど特恵関税、最特恵関税の問題とのかかわり合いで当委員会でも議論がなされてくるのですが、関税政策としては特恵品目をふやしたい、それに対してはいろいろ手だてがとられるけれども、依然として総合的な政策として、中小企業あるいは地場産業をほんとうにきちんと守っていくという手だてになると、いまのお話にもあるように、非常に後手後手になって、通商政策当体としてもかみ合っていかない、ここら辺の改善が、やはり中小企業をほんとうに守っていくという意味では非常に大事な問題だと思いますが、ひとつ政務次官の所見を伺いたい。
  148. 中川一郎

    中川政府委員 確かに二律背反する非常にむずかしい問題でございます。両方とも大切であって、開発途上国に対する特恵関税もわが国として前向きで進めていかなければなりませんし、同時に、そのことがまた中小企業に圧迫になっては、これは国内問題としてたいへんであります。でありますから、両面が成り立つようにという接点を求めつつこの問題を解決していかなければならない。われわれとしても、中小企業が特恵関税によって圧迫を受けるということのないように十分配慮し、慎重に進めていかなければならない重大な問題だと考えておりまして、今後ともそういった点については、きめこまかく処置してまいりたいと考えております。
  149. 増本一彦

    増本委員 特に、特恵関税といっても、国と品目さえきまっていれば、特恵関税になってしまうわけですよ。しかし、いま東南アジアにしても、南朝鮮にしましても、そういうところに商社や大企業が出かけていって、そしてそこで企業を起こし、そこでつくったものが日本に入ってくる限りは、やはり特恵関税ということになってしまうわけですね。繊維なんというのは、そういう傾向が非常に強い。そういう実態もひとつ十分に調査をして、先ほど向こうの国の産業も大事だ、中小企業も大事だ、この接点をというお話がありましたけれども、しかし、その中でも日本の中小企業、地場産業をきちっと守っていくということは、なお今日のこういう事態のもとでは非常に大事な問題だと思うのです。そこのところをひとつ力点を置いてやっていただきたい。  最後にあと一問だけ。今度の法案で、関税率の引き下げの中に、燃料用揮発油、液化石油ガスそれからパルプ、こういう工業用原料製品といいますか、これの引き下げがあるわけです。燃料用の揮発油は、基本税率キロリットル当たり二千百五十円、それが千七十五円になる、半分になるわけですね。それから液化石油ガスもパルプも、パルプについてはこれはフリーになる。こういうことが直接卸売り物価そのものを引き下げていくということに、いつの関税率の引き下げでもならないわけですね。皆さんも追跡調査をやられたけれども、一律関税率の引き下げのときには、それがなかなかならない。下がったのはタコだけだったというお話も、昨年でしたかあったわけです。  そうゆうことを考えると、この関税率を引き下げたけれども、しかし、それを扱う商社や大企業が得をするだけで、その分は利ざやになってもうかって、しかもさらに一そう価格が上がっていくということでは本来の趣旨に反するわけですね。これは皆さんも物価対策の一つの目玉とされていらっしゃるわけで、ここらのところの物価対策と関連の手だてをどのようにお考えになっておとりになっていくか、その点については他省との関係でどういうようになさろうとしているか、この辺についてはいかがなんでしょう。
  150. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 午前中もちょっとお話をいたしましたように、現在の変動する社会経済の中におきまして、関税率それ自体に大きな変動を加えるべきではないということを法本的には考えて、今年度の関税定率法改正をお願いをしておるわけでございますが、しかしながら、それでは何もやらなくてもいいかと申しますると、御承知のような物価問題その他が非常に国内の最重要問題になっているわけでございます。したがいまして、私ども国内産業に対しましてあまり大きく影響しない種類のもので、かつその品物が国民生活にとりまして相当重要な地位を占めているものの関税率はできるだけ引き下げたい、かような観点で各省と品目を調整をいたしたわけでございますが、御指摘のように、確かに私ども、この関税率を引き下げたからといって値段がその分だけ引き下がるということを、直ちにこれが実現をし得るという自信はございません。  しかしながら、関税率が下がりますと、それだけ輸入が魅力あるものになりまして、輸入が増加をすることは少なくとも期待できるわけでございまして、安い品物が外国から入ってまいりますると、国内の同じものをつくっております人たちに対しましても、それと競争をする必要上、やはり物価を引き下げる方向に少なくとも関税の面からは働くということは否定できない事実ではないかと思います。  したがいまして、私ども今年度の品目を選ぶにつきましては、国内産業影響を与えないという範囲にまず重点を置きまして、なおかつ国民生活上必要な非常に密接に関連のある物資ということから、関係官庁と連絡をいたしまして品目の選定をしてお願いいたしておるわけでございます。
  151. 増本一彦

    増本委員 特にこういう工業用の石油関係あるいはパルプのような資材、こういうものの関税率の引き下げが直接物価問題に影響を及ぼすことがなく、むしろ逆に、特に揮発油とか液化プロパンガスなどの分がいわば大企業の利ざやかせぎだけになるという、ここのところが非常に大きな問題になるし、またそのこと自身が、石油関係でいえば、国際石油資本を利するだけの話にもなりかねない。この辺のところの手だてがきちっととられない限り、関税政策で下げたからこれが物価政策の目玉になるということはとうてい言えないというように私は思うわけです。その点について、政府はさらに厳密な詰めと手だてをとっていただきたい。このことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  152. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 佐藤観樹君。
  153. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょう予算委員会のほうでは、石油関係の業界の各社の社長が来て、まさにつくられた、あるいは業界自身がつくった石油危機であったことについて一つ一つ暴露されているわけでありますけれども、この石油輸入の問題というのは、大蔵関税局と無関係ではないわけであります。  私がまずお伺いをしたいのは、つくられた石油危機だったわけでありますけれども、しかし、これは関税をかけあるいはこれが石炭特会に入っていくという国のきわめて重要な物資であるわけでありますから、関税局のほうで、あるいは具体的には税関のほうで、どれくらい入ってきたのか、いわゆる中東戦争が起こった十月の半ばから一応政治的な解決が終わった一月くらいまでの間、一体関税局あるいは税関としては、石油輸入量というものを具体的にどういうような形でつかんでいたのだろうか、これが私は非常に疑問に思ったわけであります。  つくられた石油危機だということがわかったのが、新聞に出たのが一月二十二日、発表になったのは二十一日でありますけれども、十二月の輸入実績をつかむにしてもずいぶん時間がかかったのじゃないか。十月の半ばあたりからの石油危機、あるいは中東戦争にからんで石油供給削減という事態が起こってから、皆さん方のほうではこの数量について何らかの新しい把握をしたのか、あるいは通産省にその量のことについて報告なり何なりをしていたのかどうか、そのあたりからまずお伺いをしたいと思います。
  154. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、私ども日本の国に入ってくるもの、あるいは出ていくものを通関統計によって毎月ごとに把握をしておるわけでございまして、中でも主要なる物資に関しましては、品目別に一体どのくらいの数量がわが国に入ってきて、しかもその価格が幾らであったかということを毎月把握し、発表をしてまいったわけでございます。  したがいまして、石油に関しましても、毎月わが国に幾らのものがどのくらいの量入ってくるかということはつかんでいたわけでございまして、私ども通関統計の数字に関しましては正確なものであった、かような自信を持っておるわけでございます。通関統計は毎月十四日、年度末等には一日、二日おくれることもございますけれども、毎月十四日に発表をいたしておるわけでございます。
  155. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これはまた結論的にあとからお伺いをしますが、あれだけ毎日毎日、石油で騒いだときに、ほんとうに日本の将来はまっ暗になるんじゃないかと思われるくらい、石油輸入量についてはたいへんな問題だったわけですね。そのときに、いま御答弁にありましたように、結局月末から二週間かかるということだと思うのですね。そういうことになると、たとえば十二月のものは一月の十四日に統計ができるということなんでありますけれども、私はこの前、福田大蔵大臣にも申したのでありますけれども、これだけの経済危機というのは、再びあっちゃいかぬわけでありますけれども、逆にいえば、これだけの経済危機においては、いろいろ出てきた問題というのを一つ一つ解決をしていく必要があるだろう、こう思うのです。その意味では、何といっても石油というのは産業中心でありますから、もう少し早いこと、実はこれだけ入っているんだ、たとえば十一月の上旬にはこれだけ入っているんだ、中旬にはこれだけ入っているんだというのを、一リットルまでこまかいものでなくても、大体正常に入っているんだということを国民の前に示せたならば、あれだけ混乱は起こらなかったのじゃないかという気もするわけです。  ただ、これを発表すること自体が、ああいうかなりファナティックになっているときでありましたから、よしやあしや、これはまたひとつ観点があると思うのですが、私もいろいろとお伺いをしたいのですが、八千品目ぐらい扱っている税関でありますから、なかなかこれは技術的にむずかしいことがあろうかと思いますが、石油に限って、もう少し早く全国統計ができるような何らかのシステムというものは考えていかなきゃいかぬじゃないか。それを表に発表するしかないかは、これはそのおきのいろいろな事情があると思います。新聞その他がかなり大げさに書いたのも事実だと私は思うので、その辺のところはあれでありますけれども、とにかく技術的に、たとえば、上、中、下旬ぐらいで、もう少し早いこと輸入量というものがわかるようなシステムというものは、今度のことを機会にしてつくっていく必要があるんじゃないか。そのあと発表するかしかないか、これはまた別の観点になると思うのですが、いかがでございましょうか。
  156. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 年末におきまする石油危機の際に、私ども先生と全く同じ感じを持ちまして、十二月に入りまして各税関に命じまして、実はこの通関統計は、各税関から輸出輸入申告の原資料を本省に取り寄せまして、それを電算機に入れて計算をいたしておるわけでございますが、特に石油だけに関しましては、旬ごとに、どのくらい日本石油が入ったかという正確な数量を把握いたしますために、その税関から本省に早く取り寄せまして、その集計をいたしまして、十二月に日本に一体幾ら石油が入るか、あるいはどのくらい入ってきたかということの算出をいたしまする参考資料に、産業所管省のほうに報告をいたしてまいっておるわけでございますし、今後、私、石油の問題が一応客観的に見て安定をするというめどがつきますまでは、やはり日本に対して入ってくるところの石油の量を、旬ごとに把握してまいりたいと思います。  ただいま先生からお話がございましたけれども、政治的にこれを発表するかどうかということに関しては、若干の問題がある点はわかると御指摘いただきましたけれども、たとえば一月の例で申しますと、上旬が四百四十万キロリットル、中旬が七百四十八万キロリットル、下句が一千九十四万キロリットルということで、入ってくる船が最近非常に大型タンカーになっておりますために、たとえば、上旬にわずかに四百四十万キロリットルしか日本に入ってこなかったんだというようなことで新聞発表いたしますと、この三倍であるところの一千二百万キロリットルしか一月には入ってこないかというようなミスリードをなさる方もあるかと思いますので、この点入ってくる船によりましてかなり大幅に、上、中旬に分けますと入ってくる数量が違ってまいりますので、この発表いたしますということに関しましては、私どもよほど慎重に考えなくてはならない。ただ、参考のために産業所管省には、これを早急に連絡をするということはやっておる次第でございます。
  157. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、いま局長からお話があったように、いま旬つまり十日ごとにデータはとられておるわけですけれども、これをすぐあのときに発表したら、逆にまさに火に油を注ぐ形になったかもしれないわけですね。だから、私も、発表することについては、若干いろいろとそのときの状況によって考えなければいかぬことがあると思うんですが、それにしても、いまのシステムですと、大体、上旬のことにしても二週間おくれ、大体このくらいしかいまのやり方ではできないわけですね。  ですから、その辺が、今度のこれをいい教訓にして、はたして二週間おくれぐらいでいいんだろうか。またそれぐらいのもので、あまり早くしても、いま言ったような数字から考えてみて、あまり意味がないということかもしれませんが、そのあたりはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  158. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 石油の句ごとの計算ができ上がりますのは、大体一週間たちますと、その旬の前の旬の数字がわかるように早めておりますけれどども、御承知のように、何ぶんにも現在日本輸入の案件が年間百五十万件をこえるような非常に膨大な量になってきておりまして、電算機で集計をいたすわけでございますが、原資料は各税関から本省が取り寄せるわけであります。それを正確に集計をいたしますためには、毎月、前の月の分の通関統計を翌月の十四日に発表するというのが、私どもといたしましては、精一ぱい早く発表するという現在の方式だと考えております。
  159. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 わかりました。あれだけ、ほんとうに日本の将来はまっ暗になるんじゃないかと思われる中で、片方ではタンカーで積んできたけれども、タンクが一ぱいで、タンク繰りができなくて、ほかの港へ行ってくれなんというのが幾らでもあったようにいろいろ聞こえてくるわけですね。そういうことになってくると、何か国民は、何だということが先に立ってしまって、しかも、また石油を武器に使って今後アラブ諸国がやってくるということについて、私は、必ずしももう再びないということは言えないんじゃないかと思う。この前の回教国会議でも、大きな柱は石油を武器に使っての新しい経済秩序ということのようでありまして、また再びこういうようなことが起こることがあり得るんじゃないか。その意味では、局長もちょっと先ほど言われたが、やはりその辺の体制というのを、今度のこの事態を機会にして十分つくっていく必要があるんじゃないか、こう思った次第であります。  その次に、豚肉の不正輸入の問題。いわゆる差額関税、スライド関税を使っての豚肉の不正輸入の問題があったわけであります。これは告発が済んでいると思うのでありますけれども、私もこの前、七月ですか、大蔵委員会質問したのでありますが、これは一応告発が済んで、これから裁判になるわけでありますが、この差額関税というのは、悪用しようと思えば幾らでも悪用できる点がかなりあるんじゃないか。これからも、この差額関税はふえていくというように聞いているわけなんでありますけれども、今度のこの豚肉不正の事件を顧みて、いまの差額関税というのはこのままのやり方でいいのだろうか、この辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  160. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、現在スライド関税を含めまして差額関税を採用しております品目は、合計十品目あるわけでございます。確かに差額関税と申しますと、御指摘のように高い価格で仕入れたということにすれば、それだけ関税を支払う金額が少なくて済むという面におきまして、税金を脱税する誘惑にかられやすいというような声が、この豚肉関税を摘発いたしましたときにも、商社の側からも出たわけでございます。  一方、この差額関税と申しますものの特色と申しますのは、やはり一方において、海外価格が安いときには国内生産者を保護いたしますし、また海外価格が高いときには関税をまけて消費者を保護するという面で、理論的には非常にうまい仕組み、システムではないかと思います。  しかしながら、もちろん関税というようなものはできるだけ単純なシステムであるほうが行政の上から申しましてもいいという面もあるわけでございまして、この差額関税というものの適否に関しましては、私どもも十分に慎重に検討して今後対処してまいりたいと思いますが、少なくとも差額関税というものができ上がりました以上は、法律に基づいて正しくこれを守ってもらうということで、商社の側から差額関税制度はおかしいではないかということを申される筋合いはない、かように考えておるわけでございます。
  161. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、私も七月のときに、もう少し現地の額がわかるように、たとえば係官をもう少し派遣する必要もあるだろうし、というようなことも事実上申し上げたのでありますが、とにかく豚肉の不正輸入については、一応告発という段階になった時点で、その辺のところはもう少し何か手を打つ必要があるんじゃないか。この差額関税というものを生かしていくには、この事件を顧みてもう少し何らかの手があるんじゃないかというふうに考えるわけなんですが、その点はいかがでございますか。
  162. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに今回豚肉の脱税をやりましたのは、先般も御説明いたしましたように、いわゆるシッパーと共謀をいたしまして、実際の価格ではない不正の価格をインボイスに書きまして、それで日本に送ってきた。税関ではそのインボイスが正しいものという前提のもとでとかく見がちなものでございますから、そのインボイスが不正であるかどうかということを判定いたしますのは、海外価格が大体現状どの程度の水準にあるかということを、税関のほうで知っておく必要があるわけでございます。  したがいまして、私ども税関といたしましては、海外の大体の現状の値段というものをおもな品目に関しましては知る必要があるということで、いわゆる税関の検査をする人間の横にビジブルカードと申しますものを置いておきまして、現在の海外の市況のおよそ大体の値段というものが検査をする人間にわかるようなシステムにいたしまして、インボイスをチェックする、かような手段も講じておりますが、いかんせん、相手方のあることでございまして、その後の事後調査その他におきまして、できるだけもし誤ったものがあれば、これが摘発できるように今後とも努力をしてまいりたいとかように考えておるわけでございます。
  163. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私はこの次、これにからんでスライド関税の銅についてもお伺いをしたいのですが、とりあえずこの豚肉の不正輸入事件について、法人名九つありますね、法人とその逋脱額と、それからその逋脱額に至るまでの脱税の回数、それをちょっと一応あげてください。
  164. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 豚肉事件に関しまして私どもが告発をいたしました会社の名前は、金額が大きいほうから申し上げますと、伊藤万、トーメン、兼松江商、日本ハイネブラザース、ゼンチク、東京丸一、丸紅、日畜、野崎産業、この九つでございます。  金額は、一番大きい伊藤万の場合、逋脱税額が五千七百五十一万一千円でございますし、告発されましたものの中で一番少額であった野崎産業が一千一百万円でございます。  回数につきましては、ここに手持ち資料を持っておりませんが、回数が多いものに関しましては十数回、回数の少ないものに関しましては二、三回というようなものがあるわけでございます。
  165. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 うそだよ。あなた、そんな数字じゃないぜ。これは新聞の記事ですから、私は確認をしたいためにあらためてお伺いしたのですが、脱税の額については、一番多いのは五千七百五十一万円。伊藤万は脱税回数が、新聞の記事によれば百二十六回ということになっているのです。その次のトーメンは六十五回、兼松江商が三十五回、ゼンチクが十九回、丸紅が三十四回、日畜か二十五回、野崎産業は十六回——いま局長かが言われた数字が正しいとすれば、脱税という行為のはかり方、回数のとり方が違うのかもしれないけれども、そこで私は確認をしたかったのでありますが、新聞記事によれば、とにかく伊藤万が百二十六回、この豚肉について、したというのですね。それで額が五千七百五十一万円だというのでょう。百二十六回ということは、輸入するたびにやったということですね。そこで、ちょっとこの差額関税というのは具体的に考え直さなければいかぬじゃないかということなんですがね。もしその数字が違ったら、ちょっと一言ってください。
  166. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 回数につきまして、私、現在手元に資料を持ち合わせておりませんので、後刻調べまして——先生指摘の回数は、おそらく新聞記事でございますから、私ども新聞に回数を発表した記憶はないものでございますから、調べまして御説明いたしたいと思います。
  167. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それと関連をして、その直後にやはりスライド関税を利用してまた銅の不正があったわけですね。これは二つの大きな問題があると思うのです。  一つは、今度はこれをやった会社がたいへん多いということですね。これは、告発になったのは日商岩井とジェー・イー・オーレル・エイジェンシーズ、輸入代理店ですね。これもまた新聞記事によっていろいろと違うのでありますが、告発されたのはとにかく商社として日商岩井と輸入代理店の一社、そして残りは十四法人ともいうし、あるいは数えると全部で三十二社ですか、脱税行為があったというのでありますけれども、その告発された商社については発表されておりますのでわかるのですが、いわゆる一千万円以下の脱税額については、これは追徴金ということにしてその合計か一億八千四百七十五万円、これはあくまで罰金に相当する追徴金という形になっているようなんでありますけれども、まず、名前をあげるのはいけないというならば、告発以外は一体何社あったのですか。
  168. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 銅の事件に関しましては、ことしの一月十六日に、日商岩井その他一法人及び二行為者を逋脱の嫌疑によりまして告発をいたしまして、この一月二十八日に起訴されております。その他、輸入商社等の脱税が三十社ございまして、その合計の逋脱税額が三千九百九十八万円ということになっております。これはことしの一月十六日に通告処分に付しまして、すべて履行をされておるわけでございます。
  169. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その三千九百九十八万円というのは、三十社の逋脱額の合計ということですか。
  170. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のとおりでございます。
  171. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その辺もちょっと額が新聞等とはかなり違うのでありますけれども一つの問題は、三十社というきわめて数が多いということですね。銅の輸入を担当したところはおそらくほとんどじゃないかと思われるくらい、しかもいま問題になっている丸紅とか伊藤忠とか兼松江商、安宅産業、こういった大手の商社がこれに入っているということ、これが一つ問題だと思うのですね。きわめて範囲が広いということですね。これは豚肉の不正輸入なんかよりもたいへん数が多い。脱税額は若干私の調べたのと違うようでありますけれども、とにかく数が多いということ。  もう一つは、金額とからんでくるのでありますけれども、告発になったのは日商岩井と輸入代理店一社ということで、残りは脱税額が一千万円以下だということで罰金のような形になっていると思うのですが、これはどういうふうになっているのですか。そしてこの罰金というのは、いわゆる所得税なんかですと、重加算税とかあるいは過少申告の一〇%の罰金がつくわけですね。これにはこういうものはないのですか。
  172. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいまの逋脱税額は三千九百九十八万円でございまして、十四法人に対しまして罰金相当額合計八千九百五十万円を、さらに行為者三十九名に対しまして罰金相当額合計九千五百二十五万円を、関係税関長がそれぞれ通告処分をいたしたわけでございます。
  173. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 わかりました。そのくらいの額になれば話が合うのだけれども、どうも逋脱額と罰金相当額との数字があまりにもかけ離れていたものだからちょっと疑問に思ったのです。  そういうことで、いま最初にあげた豚肉の不正の問題、これも差額関税、それから銅の場合も、これは正確にはスライド関税ということになるのでありますけれども政策的にはよかれと思った制度が、実際にはこういうふうにきわめて広範囲にわたって、扱う業者がほとんど脱税をするというようなことに使われているということになると、これは何らかの手を考えなければいかぬのではないか。  それで、私は、また冒頭の質問に戻っていくわけでありますけれども、おそらくタマネギとかトウモロコシとか他の差額関税をやっているものについても、調べられたと思うのでありますけれども、こういったものについては何もなかったのでしょうか。
  174. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 豚肉の問題あるいは銅の問題がございましたので、私どもその他の差額関税制度が適用されておりますところのその他のケースに関しましても相当重点的にこれを調査をいたしましたが、これらの問題に関しましては、逋脱はございませんでした。
  175. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、また冒頭の質問に戻りますが、制度的にはインボイスをもう少しよく調べるというやり方でこういった脱税行為をなくするようにしていって、この差額関税なりスライド関税なりというものを続けていく、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  176. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 差額関税なりスライド関税なりの場合に、タマネギの場合であるとか、豚肉の場合であるとか、銅の場合であるとか、それぞれ少しずつその制度の仕組みが違っているわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、そのスライド関税、差額関税制度それ自体が持ちますところの機能は、先ほど申し上げましたように、メリットもあるわけでございますが、関税制度それ自体といたしましては、できるだけ単純明快な制度のほうがよろしいという基本的な問題もございますので、これらの問題も含めまして、スライド関税に関しましては一回見直してみたい、かように考えておるわけでございます。
  177. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次の問題に移ります。  それは、先ほどわが党の塚田委員からもちょっと触れてたのですが、時間がないので私もそう深く入ろうとは思わないのでありますが、いわゆる糖価安定事業団がやっている糖価安定の問題であります。  粗糖の値段がだいぶ上がってきて、ほとんど糖価安定事業団の資金がなくなった。したがって、今度は、関税を軽減する、あるいは免税をするということで、糖価安定をはかるということでありますけれども、この弾力条項に必要なと申しますか、一体幾らぐらいまでこの糖価安定のために関税を、食いつぶすという言い方はあまりいい表現じゃないのでありますが、どのぐらいの額まで糖価安定のために弾力条項を続けていくのですか。
  178. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは現在、御承知のように、糖価安定法によりまして、国内に安定上限価格というものが毎砂糖年度にきめられるわけでございます。今日まで糖価安定事業団に資金がございます段階におきましては、この安定上限価格とそれから平均輸入価格との差額を糖価安定事業団から交付をしておったわけでございます。  平均輸入価格と申しますのは、これは毎月二回きめられるわけでございまして、ロンドンに砂糖の市場が立っておるわけでございますが、いわゆるロンドン相場価格を基準といたしまして、平均輸入価格というものがきめられる仕組みになっておりますが、この平均輸入価格と安定上限価格との差額を糖価安定事業団から交付をする、かようなシステムになっておったわけでございますが、最近いわゆる平均輸入価格が徐々に上昇をしてまいりまして、糖価安定事業団から交付するところの金額が非常に大きくなりまして、糖価安定事業団の資金が枯渇をしてしまったという状態になりました。   〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕  そういたしますと、今度はこの糖価安定事業団が交付する資金のかわりに、いわゆる安定上限価格と平均輸入価格との差額を限度として、現在きめられておりますところの関税から、これを減免をするという制度であるわけでございます。  したがいまして、この輸入者にとりましては、要するに、今日まで交付していたものより以上に関税の減免によって利益を得るという種類のものではございませんし、また砂糖の価格がいかに高くなりましても、限度はそこできめられておりますので、砂糖の価格を実際よりも高く申請をしたりあるいは低く申請をしましても、ロンドンの相場、はっきりした客観的な相場を基準としておりますので、それを利用してもうけるというようなことはできない仕組みになっておるわけであります。
  179. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その仕組みは大体わかるのですが、結局、その安定事業団の安定資金がゼロになった場合、関税をその平均価格に合うように軽減したり減免したりするわけですね。では、それを永久にやっていけるかといえば、これもまた、ロンドン相場がどうなるかわかりませんが、いま山のてっぺんなのか、まだ中腹におるのか、これから急にまたあしたから下がるのか、それはわかりませんが、関税といっても永久にやっていけるわけじゃないですね。その意味で、では関税でめんどうを見れるのは一体総額としてどのくらいの額なのか。糖価安定ということに関税でめんどうを見れる総額というのは幾らぐらいのことなのかということなんです。
  180. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、私ども、最近の国際的な国際糖価の現状からいたしまして、明年度におきます予算といたしましては、関税の面から上期におきまして大体三百五十億円くらい減免をしなくてはならないであろうという前提のもとに、この予算は計上をしておりまして、たしか明年度の砂糖の関税の収入は、私どもは大体六百五十億と見込んでおりますが、今日までの実績は、一千億円程度の砂糖収入を昨年まで見込んでおったわけでございまして、明年度の場合、三百五十億円の砂糖の減免ということを、一応予算上は計上をしておるわけでございます。今後の国際糖価の推移によりまして、これが若干少なくなったりあるいはこれをオーバーするということはあり得るかと考えております。
  181. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 わかりました。まあ砂糖というのは投機品ですからわかりませんが、しかも、いろいろ聞いてみると、日本だけがばか高いものを買わされているという話もありますしわかりませんが、大体目安としては、三百五十億減免という範囲くらいまでこの関税によって糖価安定ということを続ける。万が一これ以上出ていくような場合には——三百五十億というのは、過去の実績から見れば、糖価安定事業団の支出している額から見れば、かなり大きなものだと思うのです。その意味で、制度としては、もしこの三百五十億を上回るような事態になった場合には、これは原糖を値上げせざるを得ないというシステムになるわけですね。
  182. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 先ほど御説明いたしましたように、安定上限価格と、それから平均輸入価格の差額を、要するに関税で減免をする。安定上限価格と申しますのは、毎砂糖年度、すなわち十月から始まる年度に、年に一回農林省できめておるものでございまして、この安定上限価格を値上げいたしますと、平均輸入価格との差額が縮まりまして、すなわち関税を減免する分がそれだけ少なくて済むということになりますから、今後ずっと国際糖価が高目で推移をいたします場合には、この安定上限価格も必然的にこれは引き上げてきめなくてはならない、かようなことになろうかと思います。
  183. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その次、最後にお伺いをしたいのは、私も去年のときにお伺いをしたのでありますけれども、いわゆるタリフエスカレーションの問題なんです。この提案理由説明を見る限り、その辺の配慮かどういうふうにされたのだろうかということが、どうもあまりぴんとこないわけであります。  石油危機あるいはその他のいろいろな資源問題というのが大きな問題になっている昨今でありますけれども、片方で、やはりわが国の公害の問題というのも相変わらずあるわけなんで、何もそう原料ばかり日本に持ってこないで、ある程度のものについては製品で輸入をすればいいじゃないか。ただ、過去の日本関税の経緯というのは、原材料については非常に安いけれども、製品については高い、そういうタリフエスカレーションになっておりましたから、その辺のところを直すというのは、大体毎回、関税定率法改正のときには絶えず議論になっていたわけでありますけれども、今度の改正案の大きな柱の中には、この辺のところがどういうふうに考えられて改正がなされたのだろうかということが、どうもあまりはっきり私にはわからぬような気がするのです。その辺は、今度の改正ではどういうふうになっているのですか。
  184. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 確かに先生指摘のように、昨年までは、日本関税はいわゆるタリフエスカレーション、わが国の関税体系において、原料品に非常に低く、製品に対して非常に高い、いわゆる傾斜構造になっていたということはございまして、——と申しますのは、ガットのタリフスタディ、要するに関税に関するスタディにおきましても、日本は一九七〇年におきまして、原料品の平均関税率が三・四%で、半製品が六・三%に対しまして、製品関税の平均関税率は一二・七%ということになっておりまして、これは列国の西欧先進諸国の製品に関します平均関税率が大体八%台であったのに対し、日本は一二%台と、七〇年まで非常に高かったわけでございます。  したがいまして、わが国といたしましても、これを是正をしなくてはならないということで年々努力をしてまいりまして、一九七三年度になりますと、わが国の製品に関します平均関税率というものは八・四%ということになりまして、これはほかの先進諸国と比べましても決して見劣りのないところまできているわけでございます。  それから、午前中来御説明いたしておりますように、今年度新国際ラウンドが始まりますので、今年度は、関税率に関しまして基本的に大変革を加えますのは、今後の国際交渉をも控えましてあまり適当な年ではない、こういうこともございまして、今年度は大幅な改革は関税率に関しましては手をつけませんで、ただ国民生活に身近な問題、あるいは国内産業にとってあまり影響のない生活必需品を中心といたしまして、できるものだけ関税率を引き下げるということで、いわゆる製品関税率を全体として引き下げてまいりたいというタリフエスカレーションの問題に関しましては、あまり重点を置いておらない次第でございます。
  185. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、全体的な国際的な関税率引き下げ交渉との見合いの中で、まあ日本の歴史的な傾斜構造については一応これで一段階終わったのじゃないか、あとは国際的に全体的にどうやって下げていくか、こういう問題である、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  186. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 基本的には先生指摘のとおりであろうと思います。ケネディラウンド以来、一応関税率に関しましては、各国とも相当下げられるものは下げてまいったという気持ちを持っておりまして、新国際ラウンドの長期目標といたしましては、確かに長期的には製品関税率をゼロにすることを目標とするということになっておりますが、さしあたってすぐにゼロにできるはずのものではございませんで、今度の新国際ラウンドにおきましては、一応関税のみならず、いわゆるBTNの貿易障壁の問題であるとか、あるいはその他の問題を議題の対象とするということになっておりまして、もちろん関税率も対象になりますけれども、タリフエスカレーションの問題に関しましては、一応わが国として一段落ついた、かように御理解いただけばけっこうかと思います。
  187. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  188. 浜田幸一

    浜田委員長代理 どうも御苦労さまでした。  竹本孫一君。   〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
  189. 竹本孫一

    竹本委員 最初に、国民生活関連物資にかかる弾力関税制度というものについて、二、三伺ってみたいと思いますが、これがいままではどういうふうに運用されてきておりますか、その点伺いたい。
  190. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 関税定率法の第十二条におきまして、豚肉であるとか、ただいま佐藤先生からの御指摘の砂糖であるとか、あるいは米、もみ、大麦、小麦等の主要食糧品六品目に関しまして弾力関税の制度があったわけでございます。
  191. 竹本孫一

    竹本委員 豚肉とかそれから砂糖、こういうものについて、もう少しいわゆる弾力的運用があってしかるべきでなかったか、こう思いますけれども、その点はどうですか。
  192. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 過去におきまして、この十二条が発動されまして、豚肉に関します関税の減免が行なわれましたのは五回ございまして、昭和四十三年の六月三十日から十二月の三十一日まで、さらに昭和四十五年、昭和四十六年、昭和四十七年、昭和四十八年と、それぞれ豚肉に関しましては時期を限りまして関税の減免政令を発動いたしておりまして、豚肉の輸入価格の変動に伴いまして、かなり弾力的にこれを発動してきた、私どもかように考えておるわけでございます。  さらに、砂糖に関しましては、ただいま御指摘のございましたように、今年の二月十六日から、これは初めての経験でございますけれども、砂糖の減免政令を発動いたしております。
  193. 竹本孫一

    竹本委員 今回の拡充については、構想はどんなものですか。
  194. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 関税と申しますのは、本来、国内産業の保護という側面と消費者の利益という二律背反的な二面性を持っておるわけでございまして、関税はそこらあたりを調整しなくてはならないという機能があるわけでございます。したがいまして、経済的に考えますると、一方において、関税を引き下げるということは消費者にとりましてプラスの方向に働くことになり、関税を引き上げるということは国内産業においてプラスの方向に働くということになるわけでございます。  それから、一方、昨年の委員会においても若干御議論があったわけでございますが、租税に関しましては、法律で定めなくてはならないということが憲法に掲げられておるわけでございますが、関税に関しましては、かなり弾力的に、今日までも関税定率法の十二条にもお認めをいただいておったわけでございます。  これらの問題に関しまして、最近の物価問題に関連をいたしまして、非常にきびしい三つの条件を付しまして、非常に緊急必要なことであり、国民生活に不可欠なものであること、国内産業にあまり影響を及ぼさないこと、それから輸入価格が非常に高騰し、あるいは高騰するおそれがある場合というような、そういう三つの条件を付しまして、弾力的に関税を一時的に引き下げる権限をお認めを願いたいということをお願いしておるわけでございまして、午前中来議論もございましたけれども、私ども具体的に関税を引き下げる場合に、たとえば国民生活安定法におきまして、標準価格というようなものが国民生活必需品の中に設定をされますような場合に、関税を引き下げますれば、それだけ低く標準価格をきめることができる。すなわち、関税を引き下げることがそのまま消費者の価格に反映をさせ得るという自信が政府としてあるような品物について、一時的に関税の引き下げを適用することをお認め願いたい、かようなことを考えておるわけでございます。
  195. 竹本孫一

    竹本委員 これは政務次官局長と両方に伺いたいのですが、私は関税制度というものをうまく、それこそ弾力的に運用をして、一つ国内物価の引き下げに積極的に役立たせる。それからもう一つは、私はいつも政党性悪論を申し上げて恐縮だけれども、政党というものはお互いにこれはいろいろ事情もありまして、筋を通すということがとかく曲げられる。そういうことで、たとえば、いま日本産業はいろいろの分野において、なおかつ合理的な再編成をしなければならぬ分野がたくさんあると思うのです。ところが、いまも局長答弁の中にありましたように、国内産業の擁護とかいうようなことで、それがみなとまってしまう。  しかし、私は、やはり日本産業のほんとうの意味の合理的な再編成なり再出発をやるためには、ある時期に政治の決断で、一つ関税制度の弾力的運用といったようなものも大きなてことして、日本経済の再出発をひとつ願うというような考え方で、この関税制度を見ておったのですが、ところが、実際には、いまの物価の問題についても、あるいは産業のほんとうの意味の能率的な再編成の問題についても、この関税というものが積極的な意義のある役割りを果たしたとはどうも思われない。事務的に聞けばいろいろ事情があることもよくわかりますけれども、われわれが国内的な面から見て関税制度の運用に期待するものは、大体以上の二点ではないか。  その点について、過去の努力というものを次官並びに局長はどの程度に評価しておられるか、あるいはそれで満足しておられるのか、あるいははなはだ不満足と思っておられるのか、今後はもっと思い切って、ほんとうの意味でこれが弾力的に運用されるような決意をしておられるのか、単なる事務的レベル以上の立場で、お二人のお考えを承ってみたいと思うのです。
  196. 中川一郎

    中川政府委員 関税制度も最近のような国際的に複雑になってきた段階においては、できるならば弾力的に、刻々変わる世界情勢あるいは国内産業情勢に対処して変えられる弾力条項というものが数多いほど、しかも幅が大きいほど有効な働きをする。これは大蔵省、あるいは私自身もそうでありますが、大幅に採用すべきではないか、そうでなければ、ほんとうの意味国民生活あるいは産業のいま言う再編成に関税制度が生かされないという感じは強く持っております。  しかしながら、一方では、租税法定主義という憲法できめられた縛りも強く働いておりまして、これを乱用することに対しても、また非常な歯どめがあることは事実でございます。そこの接点を考えて、今回この程度の弾力条項をお願いしたわけですが、私は政治家としても、今後とも弾力関税は許される範囲内において、国民の皆さま、国会の御理解をいただいて、大幅に取り入れていく方向にあるべきものだ、このように考えます。
  197. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいまの先生のお話、過去における関税日本経済に及ぼしてきた影響という点に関してでございますが、私ども関税を扱うものの立場から申しますと、関税を引き下げればそれが輸入の増加につながり、さらには、国内の物価の低下にもつながる。ある意味におきましては、関税を引き下げると申しますことは、国内産業をある程度犠牲にするわけでありますから、いわゆる物価に対して役立ってくれなければ、せっかく関税を引き下げた意味というものはあまりないという結果に終わる可能性があるわけでございます。  したがいまして、今日までも、できるだけ物価の引き下げに関税が役立つように、私どもといたしましても努力をしてまいったつもりでございますけれども、結果といたしましては、物価というものは関税だけによって動くものではございませんで、また関税をどのぐらい下げたらどれだけ輸入が増加をするかということを、計数的に把握をすることもむずかしいわけでございますが、少なくとも世界の中で今日の状態まで日本が参りました段階におきましては、関税政策において、本来の国内産業保護ということの機能を主体とした関税体系から、昨年度関税審議会からいただいた、新しい関税体系あり方という答申の方向に向かって、関税率そのものの体系を考えていくべきである、私はそれが正しい方向ではないかというふうに感じておるわけでございます。  今後、新国際ラウンドに臨みますにつきましても、わが国の関税体系あり方に関しましては、昨年度答申をいただいた関税体系あり方という基本線に沿った方向で私ども対処をしてまいりたいと思いますが、今回お願いをいたしているところの弾力関税制度と申しますのは、国民生活が非常に今日のようないわゆる狂乱の状態にございますときに、かりに関税を引き下げることによってある物資の輸入が急増し、それが国内物価の引き下げの方向に一応役に立つという場合に、これを時期を限りまして関税の一時的な引き下げをお願いいたしたいということでございまして、特に関税と申しますのは、国際的には、一回法律をもって引き下げてしまいますと、日本のような国がまたこれを引き上げるという際には、国際的には非常にむずかしい問題もあるわけでございますから、そういう点も勘案をいたして、この条件を付してお願いをいたしておるわけでございます。
  198. 竹本孫一

    竹本委員 いずれにいたしましても、物価政策  の要綱の中にもちゃんとうたってあることだし、産業の能率的な再編成とか合理的な再編成という  ことはうたってありませんけれども、われわれはひそかにその面における役割りも期待しておったわけでありまして、制度の改正をやられるならば、今後の問題としては、そういう積極的な——もちろん関税の役割りには限界のあることも、私、わかっていますけれども、積極的な意義と役割りのあるようにひとつ心がけてもらいたいと思います。これは要望にとどめておきますが……。  次に、加工輸入の減税制度の品目を拡充するということになっておるようですけれども、これは一体どういう見地からやられるのかというその基本的な考え方と、それから具体的な対象品目、どういうものをどういうふうに拡充しようとしているのか、その各論的な具体論と二つを伺っておきたいと思います。
  199. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 この加工輸入税制度と申しますのは、いわゆるわが国から輸出されました原材料が外国加工をされまして、それが再びわが国に輸入をされますような場合に、わが国から当初輸出されましたところの原材料相当部分の関税を軽減するために、昭和四十四年度から創設をされた制度でございます。  年々この制度の対象になる品目が増加をしてきておりますが、これは要するに、わが国をめぐりますところの近隣発展途上国の人々から、日本に対しまして、日本から原材料を輸入してそれに加工をして日本に再輸出をする、こういうような品物をふやしてほしいという要望もかなりございまして、まあ西欧各国もこれと同じような制度を実施しておりまするし、発展途上国に対する援助の  一環という意味におきまして、私どもも、年々わが国の国内産業に支障がない範囲内におきまして、この対象品目というものをふやす方向で検討をいたしておるわけでございます。
  200. 竹本孫一

    竹本委員 これは安い労働力を活用するというところにねらいを置いておられるのか、あるいは発展途上国にそれだけの購買力を落としていこうというところに重点があるのか、どういうところにほんとうのねらいがあるのですか。
  201. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは、先生が一番先に申されましたような、いわゆる発展途上国におきまする安い労働力を雇用しよう、こういう趣旨は、結果としてはあるいは一部伴うこともあるかと思いますけれども、そういう意図は全く含んでおりませんで、むしろ発展途上国に対する雇用の機会を増大したり、あるいは先方に対していわゆる加工質を落とすという面においてわが国が協力をしようということでございまして、近隣東南アジアにおける発展途上国におきましても、この制度に関しましては、非常にわが国に対して感謝をしておるところでございます。
  202. 竹本孫一

    竹本委員 次に、ガットの問題について一口伺いたいんだけれども関税貿易ということが中心になってガットということになっておると思うのだけれども、私はやはり関税貿易だけでは——ある段階においては、それで経済対策としての役割りを果たした、あるいは国際的な経済秩序のささえの柱にもなったと思いますけれども、現在の段階では、そんなものだけでは間に合わない。まあ通貨の問題もあれば、資源の問題もある、あるいは人口、食糧の問題もある。こういうふうに世界経済の実態がすっかりガットができたときとは条件が変わっていると思うのですね。  それに対して、日本政府としては一体どういうふうに取り組もうとしておるか、新しい段階にですよ。あるいは裏から言うならば、ガットの限界をどの辺に認めておられるのか。そしてまた、日本の特別な立場から見て、これに対してどういうふうな再編成なり再出発なりを考えようとするのか、しないのか。その辺について伺いたい。
  203. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 非常に関税のみならず全般にわたる問題でございまして、関税局長である私から御答弁するのはあるいは適当ではない御質問かと思いますけれども、少なくともガットに与えられた機能と申しますのは、貿易関税ということに限られてございます。その限りにおきまして、御指摘のように、ガットに与えられた使命の限界というものは、確かにあろうかと思います。  特に、関税率がこれだけ下がってまいりますと、関税が果たす機能と申しますものが以前に比べてかなり少なくなってきていることも、これは否定できない事実でございまして、ケネディラウンドであるとか、ああいうようなことで一応関税に関しましては一わたりのことをまずやった。その後に通貨の問題が起こってき、通貨の問題が起こってまいりますと、通貨切り上げ切り下げという問題と関税率の切り上げ切り下げの問題というのは、ある意味においては、経済的には同じ機能を果たす面があるわけでございまするし、さらにその後、石油問題が昨年の末以来起こってまいりまして、こうなってまいりますると、私どもといたしましても、今年度から始まる新国際ラウンドに対して、私どもが一体どういうスタンスをもってその新国際ラウンドに臨むべきかということに関しましては、昨年の秋まで考えておりました状態とは事態が相当変わってきておりまして、今日までは、要するに貿易立国であるわが国の立場といたしましては、ガットの精神をあくまでも掲げまして、いわゆる自由貿易ということが世界のあるべき姿である、それがそのまま国益に合致するという面があったかと思います。  しかしながら、資源の有限性ということにぶつかりまして、国内産業の面におきましてもかなり私ども、生きていくためには国内産業を保護しなくてはならないという側面も前以上に強くなってまいった面もございまするし、今後、新国際ラウンド、これは関税だけではございません、いわゆる貿易障壁の問題であるとか、セーフガードの問題であるとか、先進国がどうやって発展途上国に対して援助をするかという問題であるとか、いろいろな議題が取り上げられるわけでございますが、こういう問題に関しまして、私ども真剣に、わが国の国益にとって何が一番プラスになるかという観点に関しまして、ただいま私どもなりに勉強をしている最中でございまして、最終的に日本政府としていかなる態度で臨むかということが決定をいたしておりまする段階ではございません。今後この問題に関しましては、今年度の一番重要な問題として私ども勉強をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  204. 竹本孫一

    竹本委員 この問題はまたあらためて掘り下げなければならぬ問題でございますので、きょうはこの辺で終わります。
  205. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 次回は、明二十七日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時十一分散会