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1974-02-01 第72回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月一日(金躍日)     午後五時二分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 浜田 幸一君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 山本 幸雄君 理事 阿部 助哉君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    大西 正男君       金子 一平君    鴨田 宗一君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    地崎宇三郎君       野田  毅君    坊  秀男君       毛利 松平君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       松浦 利尚君    武藤 山治君       村山 喜一君    山中 吾郎君       荒木  宏君    小林 政子君       田中 昭二君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房長 中橋敬次郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         中小企業庁長官 外山  弘君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 昭和四十八年十二月十五日  辞任         補欠選任   竹本 孫一君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     竹本 孫一昭和四十九年一月二十一日  辞任         補欠選任   広沢 直樹君     田中 昭二君   伏木 和雄君     正木 良明君 二月一日  理事荒木宏君同日理事辞任につき、その補欠と  して増本一彦君が理事に当選した。     ――――――――――――― 昭和四十九年一月二十八日  昭和四十八年分の所得税臨時特例に関する法  律案山田耻目君外四名提出衆法第一号) 同月二十九日  割増金付貯蓄に関する臨時措置法案内閣提出  第一一号) 昭和四十八年十二月二十日  所得税年度内減税に関する請願鈴木善幸君  紹介)(第二一三号)  盛岡市に専売公社地方局設置に関する請願(鈴  木善幸紹介)(第二一四号)  滋賀県彦根・長浜地区国民金融公庫支店設  置に関する請願宇野宗佑紹介)(第二一五  号)  中小業者の経営安定のための国民金融公庫の原  資増額に関する請願米原昶紹介)(第二八  九号)  昭和四十九年産葉たばこ収納価格引上げ等に  関する請願赤城宗徳紹介)(第三八六号) 昭和四十九年一月十七日  所得税法における修学費控除に関する請願(中  澤茂一紹介)(第七六六号)  同(原茂紹介)(第七六七号) 同月二十三日  所得税法における修学費控除に関する請願(吉  川久衛紹介)(第九〇七号)  同(羽田孜紹介)(第九〇八号)  同(井出一太郎紹介)(第一〇五〇号)  同(下平正一紹介)(第一〇五一号) 同月三十日  所得税減税等に関する請願小平忠紹介)  (第一一二五号)  同(小宮武喜紹介)(第一一二六号)  同(玉置一徳紹介)(第一一二七号)  同(永末英一紹介)(第一一二八号)  同(宮田早苗紹介)(第一一二九号)  所得税法における修学費控除に関する請願(中  村茂紹介)(第一一三〇号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一二九七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 昭和四十八年十二月十九日  昭和四十九年度税制改正に関する陳情書  (第一〇号)  貸金業金利調整に関する陳情書  (第二五号)  電話加入権差押えの執行に関する陳情書  (第二六号)  昭和四十九年産葉たばこ収納価格引上げ等に関  する陳情書(第  六八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件(財政金融  の基本施策)      ――――◇―――――
  2. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任及び補欠選任についておはかりいたします。  まず、理事荒木宏君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  次に、ただいまの辞任による補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、理事増本一彦君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、金融に関する件について、来たる二月八日、参考人出席を求め、その意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 安倍晋太郎

    安倍委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 安倍晋太郎

    安倍委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、福田大蔵大臣より、財政金融基本施策について所信の説明を求めます。福田大蔵大臣
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 現下経済情勢に対処する財政金融政策あり方につきましては、さきの財政演説でその基本的な考え方を明らかにしたところでありますが、関係法律案の御審議をお願いするにあたりまして、少しダブるところもありますが、本委員会で重ねて所信一端を申し述べたいと存じます。  この新しい年は、わが国が当面する試練を克服し、落ちつきのある、そして公正な社会への展望を開く、転換基礎固めの年であると考えます。  わが国はこれまで、恵まれた環境のもとで、経済成長成果の多くをさらに次の成長に振り向けながら、急速な発展を遂げてまいりました。申すまでもなく、いまわれわれが享受するこの豊かな生活、そして国際社会における今日の地位は、この偉大な経済発展成果であります。しかし、反面、このような成長過程において、物価公害過密過疎等の諸問題が発生し、そのすみやかな解決をわれわれに追っておることもまた否定し得ない事実であります。  経済成長発展は、それ自体が目的ではありません。その成長成果を踏まえて、国民に安らかな暮らしを約束し、国民の一人一人が生きがいを感ずるような健全な環境を整備することにこそ今後の経済政策の重点を移していかなければならないと存じます。  このような経済政策方向転換することは、従来のような高い経済成長の姿を、経済各部門間の均衡のとれた落ちついた成長の姿に変えていくことを意味するものであります。わが国がすでに持つに至っている経済力財政力をもって国民みな一体となってこの道を進むならば、直面する諸問題はことごとく解決され、新たな福祉国家建設は、必ずや可能となるものと信ずるのであります。  今後のわが国社会の長期的なあり方について、私は次のように考えます。  われわれ明日のわが国に期すべきものは、第一に、心のゆとりと落ちつきを取り戻し、金では買えないものの価値を再認識し、社会的な連帯の中でみずからのしあわせを感ずるような、人間主義にあふれた公正な社会実現であります。物と金とエゴの支配する時代は、過去のものとしなければならないと信じます。  第二は、国際社会の安定と繁栄のため、新たな国際経済秩序の確立と開発途上国発展に貢献し、物価公害資源等の諸問題の国際的解決に寄与する平和国家日本建設であります。  私は、今後の経済政策の使命が、この新たな日本創造経済的基盤を整えることにあると考え物価国際収支資源環境の諸制約に十分配意しつつ、財政金融政策運営に万全を期してまいる決意であります。  ところが、この転換への門出にあたりまして、わが国はいま、異常な物価高という憂慮すべき障害に直面しております。  物価問題は、わが国がすべてに優先して克服すべき現下政策課題であり、その解決のためには、何よりも総需要抑制をはかることが肝要であると考えます。当面の財政金融施策運営にあたり、私は、その眼目をこの一点にしぼって臨む決意でありますが、この施策は、国民生活安定緊急措置法等に基づく個別物価対策の強力な推進とも相まって、現下経済の諸動向鎮静化し、物価問題を解決するきめ手となるものと信じます。  このような観点から、昭和四十九年度予算の編成にあたりましては、公共事業圧縮等を通じて財政規模を厳に抑制し、公債発行額を縮減するなど、政府が率先して総需要抑制につとめ、物価異常事態を克服する決意を明らかにすることといたしております。  ただその中にありましても、財源の重点的かつ効率的な配分を進め、社会保障、文教及び科学技術の振興、中小企業対策など当面する諸問題に対処するための施策につきましては、特にその充実をはかることにいたしております。  昭和四十九年度の税制改正におきましては、国民負担の軽減、適正化を推進する見地から、所得税について初年度一兆四千五百億円にのぼる給与所得者中心の画期的な減税の実施に踏み切ることとし、他方、法人の税負担について適正な水準への引き上げをはかるとともに、印紙税及び自動車関係諸税の税率を引き上げることといたしました。租税特別措置につきましても、各種の政策目的に応じ、所要措置を講ずるほか、電源開発立地対策を推進するため、電源開発促進税の創設とこれに伴う特別会計設置を行なうことにいたしました。  なお、関税率及び関税制度につきましても、内外経済情勢の変化に対応し、国民生活の安定、関税負担適正化等に資するための所要改正を行なうことといたしております。  金融政策運営が、財政政策と同様の方針のもとに行なわれるべきはもちろんであります。  このような観点から、累次にわたる引き締め措置に加えて、先般公定歩合の大幅引き上げ等措置が講じられ、その効果も、量的にはかなり浸透しつつあるのでありますが、その質的側面につきましても、特段の意を用いてまいる所存であります。資本市場におきましても、長期資金の調達について、産業界証券界等の節度ある態度を期待しております。  なお、中小企業金融につきましては、その健全な発展をそこなうことのないよう十分配慮してまいります。  貯蓄を奨励し、国民の堅実な消費生活実現をはかることは、健全な経済発展を確保していくための重要な要件であると考えます。  このため、政府は、預貯金金利引き上げ等各般貯蓄増強策を講じてまいりましたが、さらに、割増金付貯蓄制度の導入、勤労者財産形成制度の拡充をはかることといたしております。  最後に、最近における国際収支動向について申し上げます。  わが国国際収支は、昨年春以来、輸入の著しい増加によって、貿易収支黒字幅が縮小するとともに、長期資本が大幅な流出超過を続けた結果、全体としてはかなり赤字傾向となり、これに伴って外貨準備高も減少してまいったのであります。さらに、石油問題の動向いかんによりましては、わが国国際収支は少なからぬ影響を受けるおそれもあります。  このような状況において、私は、当面の経済運営にとって、国際収支の改善は物価問題と並んで特に重要な課題一つであると考えます。  もとより、現在進めている財政金融政策効果が浸透し景気が鎮静化してまいりますれば、貿易収支面においてかなりの好ましい影響が生ずるものと期待されます。同時に、資本収支等の面におきましても、かつての大幅な黒字基調のもとに講じられてきた諸施策につきまして、先般来逐次その転換をはかっている次第であります。  政府は、今後とも国際収支の好ましい姿を実現するため、国内経済運営及び対外経済政策に一そうの努力を傾注してまいる所存であります。  以上、財政金融政策に関する私の所信一端を申し述べました。  本国会において御審議を願うべく予定しております大蔵省関係法律案は、税制大幅改正をはじめ昭和四十九年度予算に関連するもの九件、その他一件、合計十件でありまして、本委員会の御審議をお願いすることになると存じます。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  9. 安倍晋太郎

    安倍委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。野田毅君。
  10. 野田毅

    野田(毅)委員 大臣、昨年暮れ大臣が御就任されましたおりに、かねてからの安定成長論者である大臣就任されたことについて、これはお世辞ではありませんで、国民物価抑制ということに対して非常に大きな期待と、これまでの路線が修正されるのではないかという一つの安堵の気持ちを抱いたことは事実でございます。いわばそういう意味では、自民党にとっても、わが日本にとっても、エース登場というような気持ちで受けとめたわけであります。  今日まで次々といろいろな手を打ってこられたわけでありますが、その中で、特に、私ども自民党の若手のメンバーがいろいろ昨年夏ごろから提言をしておりましたもろもろの昭和会物価安定のための施策の一部を取り入れていただいたこと、あるいは非常にきびしい環境の中で、思い切って物価抑制、総需要抑制という予算を組まれたこと、あるいはまた金融面においても非常に大きな決断をされたこと、いずれも私どもは高く評価をするものであります。また、先般の財政演説においても、決して小手先だけでなくて、ひとつ抜本的にこの日本経済の体質を改善したい、こういう意気込みが感じられたこと、こういうことは、私ども期待を非常に大きくふくらましたものであります。  しかしながら、御就任以来二カ月を経た今日、でははたして物価現実鎮静化方向に向かっておるのか、あるいは鎮静化しておるのかと申しますと、事期待に反して、大臣みずから申されますように、いわば狂乱の状態、狂騰の状態にあるわけであります。それでは、国民期待が大きければ大きいほど、その期待にこたえられない場合の反動というものもまたきわめて大きいものであります。国民は決してそういう姿勢だけでなくて、現実に、具体的に、物価を下げてもらいたいというのが国民の願いであります。そこで、就任以来大臣は、物価短期決戦のかまえで取り組むということをよく口にされたわけでありますが、ただ精神論だけでは、そのかまえというだけでは、国民は納得いたしません。先般、総理が、夏ごろまでとかあるいは四月から六月にかけてというような答弁をされたようでありますけれども、やはりここは直接の責任者でありますし、単に大臣財政担当大臣という以上の重みを閣内において発揮されておられるところでありますから、私どもは、総理の答えのほかに、どうしても大臣短期という場合の目標時期、これをぜひとも明確に明らかにしてもらいたいのであります。その点いかがでございましょうか。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、今日の物価情勢というものを非常に心配しているのです。理由はとにかく、この状態を長続きさせることはできない、こういうことなんですが、なぜそういうことであるかというと、いま世界情勢というものが、戦前というか第二次世界戦争直前のあの経済競争、確執、そういう時期に比べまして、比較にならないほどむずかしい経済情勢になってきておる。  私は先般、二十カ国蔵相会議でローマに行ってまいったのですが、この会議はもとより新しい世界決済手段を模索する、そのための準備会議であります。しかし、その集まったIMF所属百二十六カ国の蔵相等、そういう方々の間でどういう議論が戦わされておるかというと、石油問題です。石油問題は一体どういう決着になるか、その話をずっと聞いておりましても、実に利害がふくそうするのです。先進国開発途上国、また産油国消費国、またそれぞれのグループの中にいろいろの利害の対立がある。しかし、これが軌道に乗って何らかの調整の道が見出されませんと、これはたいへんなことになって、大混乱になるのじゃないか。  それから同時に、これは口には大きくは出ませんけれども、私は身の毛のよだつような思いがしたのは、資源ナショナリズムという空気がわあっと出てきておる。そういうことになったら一体世界はどうなるのだろう。私は第三次世界戦争が起こるなどとは思いませんけれども、それだけに資源を、武力にかわる政策国策遂行手段として国際社会で行使するという風潮が出てくるおそれもある。とにかく世界最高指導者たちが、何とかそんなふうにならぬように努力をしなければならぬ歴史的モメントであると考えますが、それに成功いたしましても、とにかくその過程までにはかなりの激動があるだろう。その中で、資源小国たるわが日本がどういうふうなかじ取りをするか、こういうことを考えますと、ほんとうわが国の立場というものは非常な困難に当面しておる。  まあしかし、何といいましても、わが国わが国姿勢というものを固めなければならぬ。そうしてこの荒波を乗り切らなければならぬ。ところが、わが国一体どういう状態であるかといえば、やはり言っておられるとおり、物価問題ですよ。これを放置しますと、これは家庭でもまた事業家でも、あすの設計ができない。  それからもう一つは、こういう経済変動というものはどうしても世の中に不公正というものを招き、それをさらにさらに拡大するということになる。  そういうことを考えますと、この事態をどうするか。私はまあ二つの方法があると思うんです。一つは、なだらかな方法で時間をかけていくという方法がありましょう。しかし、これはそれだけの余裕を許さない状態である。私は、きびしい施策にはなり、かなりの摩擦も出てくるだろう、反動も出てくるだろう、しかし、そのきびしい方法を用いまして短期にけじめをつけなければならぬ、こういうふうに基本的に認識いたしまして、短期決戦、こういう姿勢を打ち出したわけなんです。  しかし、これが幾ら短期といったって、まだ私は大蔵大臣就任いたしましてから二月だ。二月でその成果があがる、こういうふうにはお考えにはならぬと思いますが、私は、いまそういうことになりますればどういうふうにこの短期収拾実現するかといえば、やはりきわめて厳粛な総需要抑制政策をとらなければならぬ、こういうふうに思っております。それと並行いたしまして、いわゆる物資三法、これを強力に運用する。つまり総需要抑制政策で大きな網をかけるわけですね。しかし、この網は網の目が荒いでしょう。それで、このこまかい目の詰めをしなければならぬ。これがこの三法ということになると思いますが、この姿勢をずっと続け進めていくならば、いまいつになったらというお尋ねがございますが、いつなんて、そんなに時間はかからぬと私は思うんです。もう数カ月のうちに、経済情勢というものは一変をする。そうして物価情勢というものも、これは非常に鎮静化する、こういうふうに見ておるのですが、私は私なりに確信を持ってこの短期決戦の戦いを進めておる、かように御理解を願います。
  12. 野田毅

    野田(毅)委員 総理が四−六月から夏ごろまでというような話に後退したのに比べて、いま大臣から数カ月という返事をいただきまして、私どもも非常にやりよいわけであります。現在くにへ帰りましても、ほんとうに一番聞かれるのは、一体いつになったら安心して家計をまかない、企業を営むことができるかというそのめどがほしい、一年かかるのか、半年かかるのかというようなことをしょっちゅう聞かれるわけであります。巷間いろいろなことを言う人がおるものですから、ここでひとつ大臣の権威ある御答弁がいただきたかったわけであります。  そこで、これはきょうの新聞だったと思いますが、すでに四十九年度の大蔵省見通しで、原油輸入額が七十億ドルの見通しが一挙に倍以上の百五十億ドルに達する、こういう見通しになっている。そのほか物価についても、数日前の新聞にも出ておりましたように、思ったよりもなかなかうまく政策効果が浸透していないという面もありまして、この調子では、先ごろ決定されました政府経済見通しというものが一体どうなるんだろうかという危惧の念を持っておるわけであります。  もちろん、これには大臣の言われる短期決戦成果をも踏まえた上でこういう見通しをつくられたと思いますけれども事志に反して、こういう特に国際収支の面、あるいはまた、最近おそらくもうお感じのことと思いますが、就業者数等について、ひょっとしたら今年度をあるいは下回るかもしれないぞというような若干の不景気風を予測する向きも出てきておりますし、こういう経済見通しについて、はたしてこの政府見通しどおり大臣は自信を持っておられるのかどうか。場合によっては、もちろんいまから申し上げるのは早いのですけれども、成り行きによっては、年度途中においても経済見通しをやはり修正しなければいけない事態も予想されるだろうと思うのですけれども、その際には当然、その経済見通しの上に立った予算というものもかなりの補正を要する、そういう事態も到来するのではなかろうかというふうに懸念をしておるわけでありますが、この点について大臣のお考えはいかがでありましょうか。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、ことしの経済というものは大体あの経済見通しの線で動いていく、こういうふうに見ております。これはもとよりこの短期決戦、これを前提としておるのです。私は、いまの物価というものが、いわゆるもう物価じゃないんだ、これは投機的要因というものをかなりかかえた相場である、こういうふうに観念しておるのです。まあメーカー段階でもそういう要因がある。それから流通段階でもそういう要因がある。それで売り惜しみ、買いだめ、そういう現象がずうっともう国のすみずみに展開をされておる、こういう状態。これはなぜ起こったかといいますれば、これはもう先は物価が高くなりますよ、こういうことで、どの辺まで高くなるのか、いろいろの思惑もありましょう。そういうようなことで思惑できめられた物価体系だ、こう見て私はいいと思うのです。  それだけに、私は、この物価問題につきましてはこれは救いがあると思う。暮れの十二月の卸売り物価が前年に比べまして二九%も上がりました。これがほんとう物価、つまり生産費プラス利潤、こういうようなことで、そうして需給の関係である程度のフレがある、そういう形できめられた個別物資の集計である、こういうのなら、これは私はなかなか救いはないと思うのです。ところが、そうじゃない。水ぶくれです。水を抜くことが可能である、こういうふうに考えたんです。総需要抑制政策を進めますれば、また物資三法、これを活用してまいりますれば、これは国民が相当早い時期に、さあ、これはためておいても先高にはならぬぞという認識を持つ。その認識を持った時点から、この物価、それから経済の勢い、こういうものは様相を一変してくる、こういうふうに見ておるのです。  そういう国内的な問題と、それから貿易収支を中心とする国際収支の問題があるのです。この国際収支の問題にも、いま当面は物価物価といって論議が集中しておるのですが、ここにも非常な問題が出てきておるのです。これに対する対策というものも、私はやはりこの経済動向鎮静化させるということが中心にならなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。これが鎮静化して設備投資が沈むということになりますれば、これはどうしたって輸入が減ります。国内で売れませんものですから、海外へ商品をさばくということになる。貿易収支かなりの改善を見る。  それからもう一つ物価の問題と同じように、いまのこの国際収支の悪化に私は救いがあると見ておるのは、この悪化したゆえんのものは何だというと、貿易収支の面でもありますよ、ありますけれども、それ以上に長期資本収支、これが九十億ドルの赤字を出した。四十八年一年間の国際収支の百億の赤、そのほとんど大部分というものは資本収支からきておる。この資本収支というものは、私ども政策のかじのとり方でこれを大体半分ぐらいにすることができる、そういうふうに思うのであります。  それから、とにかく国内で拡大政策が行なわれた。やはり対外的にもゆるみが相当出てきておる。ですから、貿易収支以外の貿易外収支、これのほうも、たとえば旅行者の状態を見ましても、実に、表面にあらわれてくる数字だけでもとにかく十二億ドルが使われるというような状態です。これも是正することができるというふうに考えます。お話しのとおり、石油の価格が上がるということに伴いまして、昨年は石油の輸入額は七十億ドルだった、ことしは百五十億ドルを見込まなければならぬというような状態でありますが、反面において、国際物価水準というものも上がる、わが国の輸出価格というものも上がってくる、それから先ほど申し上げた国内政策影響を受けまして輸出の増進という傾向も出てくる、したがって私は、国際収支は大いに改善し得る、こういうふうに思っておるわけであります。ただ百億ドルも出る赤字を一挙に解決する、これはなかなかむずかしいのです。少し時間をかけても改善の方向へ堅実なスタートをしたい、こういうふうに考えております。  なお、そういう状態でありますので、経済見通しを変える必要はありません。したがって、予算案にその関係で修正を加える、補正をするという状態にはないのであります。
  14. 野田毅

    野田(毅)委員 きのうの新聞でしたか、日銀総裁の談話か何かがちょっと載っておりまして、公定歩合をまた引き上げる、あるいはそれに伴って貸し出し金利、預金金利というものも一緒に引き上げるみたいな感じの、そういうことを示唆するような発言があったというふうにちょっと見ておったのですが、その辺、私自身の個人的なことを申し上げますと、いま一般的な預金金利の引き上げ論も強いのですが、そういうことになると、どうしても貸し出し金利のほうにも響いてくる。どうもいまの中小企業の段階を見ておりますと、もうこれはかなりの限度に達しておるのではないか、これ以上一般的に金融引き締めをやっていくことがはたしてプラスになるのかどうか。  先ほど大臣もおっしゃいましたように、いまの物価問題は、単に総需要抑制というだけでは割り切れない要素も含んでおるわけなんです。ですから、そういうことも考えますと、そういうことよりも、むしろほんとう貯蓄を増強し、資金を吸収したいということであるならば、一番大事なことはやはり貯蓄物価に対しても強いぞというようなものがなければいかぬわけなんです。今度出される元本保証つき宝くじというか割増金付預貯金というものよりも、むしろ物価に対して強い預金の種類をつくるのだ、すなわち物価スライド金利つき預金というようなものぐらい考えてもいいんじゃないか、場合によっては、それが貸し出し金利に響かないようにひとつ利子補給措置ぐらい、これは暴論かもしれませんが、考えてもいいぐらいの状態ではなかろうかというふうにも考えておるわけなんです。この辺、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 預金をこういう状態下においてどういうふうにするかということは非常に重要な問題でありまして、私も貯蓄を非常に大事にしなければならぬということを前々から言ってきておる貯蓄増強論者でございますが、いまこの段階におきまして、あるいはスライド制とか、あるいは高額の国家資金の補給でありますとか、そういうことを提唱する人があるわけです。私もそれには耳を傾けるのです。しかし、これはまた相当問題がある。預金だけにスライド制をとるということになったら、ほかのいろいろな問題についてスライド制を非常に広範に採用しなければならぬというような問題もあります。  それで私は、そういうような預金をどういうふうにするかという問題から考えても、やはりこの事態短期に片づけるという考え方をとるのが一番いいと思うのです。これが正道であり、王道である、こういうふうに考えます。いろいろ預金を保護するというために預金に魅力を与えるための施策をとること、これは他面においていろいろなデメリットがあることは、野田君もよく御承知のとおりと思いますが、それよりも何よりも、預金者にはまことに気の毒だとは思いまするけれども、やはり預金者に報いる道というものは、だらだらと小手先のびほう策を講ずるということじゃなくて、この事態短期解決するのだ、物価を早く安定するのだ、これが私は貯蓄する人にほんとうにおこたえする道となるんじゃあるまいか、そういうふうに考えております。  スライド制をとる、それは敗戦主義じゃないか、ある人に私はこう言ったことがあるのですが、貯蓄にスライド制をとれば、これは貯蓄する人はたいへん満足されます。しかし、もう経済の動きについてきびしい目は光らせない、こういうふうにもなっちゃう。もう物価の安定ということを、不可能だ、あきらめたというときには、そういうことまで考えなければあるいはならぬかもしれませんが、そうじゃない、短期にこれをおさめる、こういう前提なんでありまして、いろいろ考えてはおりまするけれども、スライド制とかそれに準じた措置はなかなか困難である、こういうのが現在の私の心境でございます。
  16. 野田毅

    野田(毅)委員 わかりました。  先ほども需要抑制のみでは効果をあげ得ない、いろいろな水ぶくれの状態であるということを大臣もおっしゃったわけですが、財政演説の中でも、非常に社会正義あるいは社会的公正ということを強調されたわけで、私どももくにへ帰っていろいろな話を聞いておりますと、必ずしもみんなは、もちろん乏しきも、物がないことも憂えてはおりますけれども、それを奇貨としてぼろもうけをするような、そういうひとしからざるを特に憂えておるのが実態でございます。  この問題について、先般来、超過利得税あるいはそれに類するような案がいろいろ出ておるわけであります。当初総理も非常に乗り気の発言をされておったんですが、だんだんだんだん、大蔵大臣はじめ大蔵当局のほうから、行政的、技術的問題があるのだということを聞かされるに及んで、ずうっとしりつぼみになってきておるというのが実態ではなかろうかと思います。もちろん、これをほんとうにやろうとするには、場合によっては、所得政策の第一歩のようなこともやらなければいかぬかもしれませんし、あるいは従来の所得の概念も変えなければならぬかもしれません。そういういろいろなむずかしい問題はありましょうけれども国民のほうは必ずしも一〇〇%の緻密さを要求しておるのではない。端的に申せば、何かこういうどさくさにまぎれて悪いことをしてもうけようとするやつをやっつけてほしい、そういう正義の味方がほしいのだ。それを特に社会的正義、公正という問題を非常に強調しておられる大蔵大臣期待をしておるところが大なんです。別に超過利得税、このことのみにこだわるわけではありませんが、ひとつこういう事柄を、どうやって水ぶくれのその水を抜いていくか、何らかの具体策というもの、あるいはこれに関連して、今後、国民春闘という名前で、いわば中小企業の労働者やあるいは農家の立場を非常に無視したような形で、大企業労働者のためだけ、それだけがよくなるような形の春闘が行なわれようとしておる。人によれば、この際、所得政策を導入すべきではないかと言う人もおる。こういうもろもろの問題を含んでおりますので、ひとつこの所得政策に対する大臣のお考え、あるいは超過利得税導入に対する大臣のお考え、あるいはそういうものでなければ、どうやって水を抜くのか、その辺のお考えを伺いたいと思います。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 水抜きというか、これはやはり総需要抑制政策が主軸です。そして需要が非常に減ってしまう、もう幾らためておっても高くは売れないという認識を広く持つという段階になれば、もう持っているものをみんな吐き出します。これはあり余るような物資の需給状態になるのじゃあるまいか。それにつれまして、価格というものはがたがたと落ちてくる、私はそういうふうに見ておるのです。そういう体制を、総需要抑制政策を主軸としてやるのでありますが、しかし、これはきめが荒い。そこで物資三法、これも添え木として大いに活用しなければならなぬ。この二つが並行いたしますれば、必ずそういう事態実現し得る、私はこういうふうに考えておるわけなんであります。  それにいたしましてもとにかく国をあげて物価問題というものを心配しておる、そういう際に投機行為に出て、そして巨利を博するというような一部の者に対しましては、私はほんとう国民的な怒りを感じます。こういうものをどういうふうに制裁するか。そういうことにつきましては、やはりいろいろ考えても、税ということになります。  そこで、先般来あれやこれや、いかなる形の税でこれに対する制裁的手段とするかということを考えておるのですが、その方法が、野田委員におかれましても御了知の問題ですが、いろいろなメリット、デメリットがありましして、そのデメリットということを考えますときに、なかなかむずかしい。いろいろの案を考えてみました。そのいろいろな案の共通した欠陥は、社会的正義の観点に立って超過利潤を吸収するということになりますと、どうせ政府に取られちゃうんだ、使っちゃえ、こういうことになる傾向があるのです。その点に対してどういうふさぎをするか、そこに問題があるのであります。私はまだそれについて自信のある提案ができない。  そこで、自由民主党にも何か案はできないものだろうかということもお願いしておりまするし、また国会の審議の場等を通じまして、各党に対しましても、何かお考えはないでありましょうか、御教示願いたいというような姿勢をとっておるのですが、私は、この超過利潤、つまりそういう不当な経済的な行動に出た人に対して制裁を加える、これは国民感情だと思うのです。その国民感情を国の施策の上に実現していくという考え方に号つきましては、いささかも当初以来変わっておらないのです。ただ、その方法というものを模索しておる。何とかひとつこの問題は決着をつけたいという考えでございます。
  18. 野田毅

    野田(毅)委員 もう予定した時間が参りまして、まだあとだいぶ質問したいことがあるのですが、あとはそれぞれ大蔵省あるいは自治省のほうへ個別にお伺いすることにして、最後に大臣にあらためてお願いをしておきたいのですが、最初に申し上げましたように、まさに大臣は、一大蔵大臣というだけでなくて、閣内において国務大臣として最重要閣僚であられるわけです。ですから、今日、この物価の問題以外においても、非常に重要な問題がある。あるいは外交に関する問題、あるいはその他に関する問題、こういう問題について、やはり大臣も高みの見物ということではなしに、ひとつ国民全体のためにお働きいただきたいということを、特に強くお願いを申し上げておきたいと思います。  以上で質問を終わります。(拍手)
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 御激励にあずかりまして、ありがとうございました。
  20. 安倍晋太郎

    安倍委員長 武藤山治君。
  21. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは、新大蔵大臣——新ではありません、かつてやったことがありますが、初めて大蔵委員会で蔵相の御答弁を聞けるわけでありますから、財政、経済物価国際収支自民党の政治姿勢等々について、時間の許される範囲でお伺いしたいと思っておるのでありますが、ひとつ大臣には簡明にお答、えをいただきたい。  現在、物価は狂乱状態で、天井知らずの高騰で、二十年間分の物価上昇を一年でやってしまったというのが卸売り物価情勢であり、また石油危機、外国為替相場の混乱、先進国にいま見られ始めた景気の後退の徴候、外貨減少による輸出入政策の根本的な転換、保護貿易主義の台頭、通貨切り下げ競争への可能性等々、内外経済動向はたいへん不確定要素が多くなっている事態だと思うのであります。これはまさに資本主義体制の危機といっても過言でないと思うのであります。  こういう環境の中にあって、新大蔵大臣は四十九年度予算編成に取り組んだわけでありますが、こういう中で特に印象にたいへん強く残ったのは、かつてゆとりある家計、蓄積ある企業昭和元禄などという名セリフを残した福田さんが、今日の事態に直面をして、金さえあれば、物さえあれば、自分だけよければというモラルを、この際過去のものにしよう、新しい公正と連帯の社会をつくろう、こういうキャッチフレーズを国民の前に明らかにしております。これは本会議における財政演説の中にも明らかに言われているのであります。  金さえあれば、物さえあれば、自分だけよければという人生観は、自由経済、資本主義経済の根本的な思想なんですね。もし、それをかなぐり捨てて新しい社会を創造するとなれば、もはや資本主義の哲学では解決できない。公正と連帯とは一体どういうことを意味するのか。何を何と比較して公正にし、だれがだれに連帯をするのか。大企業や大商社や巨大資本が、いまも大臣がおっしゃたように、今日の物価問題はすでに経済問題ではなくて投機だ、投機の横行により、相場によって卸売り物価がつり上げられておるのだ、そういう行動をとっているのはだれかということは、国民の目に明らかであります。そういう人たちに連帯をするのか、だれに連帯をするのか。それともこういう政策の失敗を行なった自由民主党に連帯させようというのか。一体、公正と連帯の中身は何なのか。大蔵大臣考えている、あなたが期待をする社会像、人生観、それをひとつここで明らかにしてください。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 武藤さんは初めからなかなか挑戦的で、あるいは資本主義を批判され、あるいは自由民主党の過去の失政というようなことを言われますが、私は何々主義だなんてあまり抱泥しないのです。とにかく世の中がよくなればいい、そのよくなるためには、あらゆる英知をあらゆる方面から吸収して、そうして国づくりというものをしなければならぬ、こういうふうに考えている。  私は、いまの日本社会というものは、私が財政演説で申し上げましたように、金さえあれば、物さえあれば、自分さえよければ、このことばに尽きる、こういうふうに思うのです。それが資本主義だ何だと、そういう理解じゃありませんけれども現実としてはそういう社会情勢なんだ。これは私は、なかなか長いいきさつを経てそこまで来ておるのだろうと思う。  終戦直後のあの混乱、それから欠乏、そういう中から根ざした、自分さえ食ってのければ、もう人はかまっているひまはないというようなこと。それから、そこへまたアメリカの民主主義というものが導入される。その導入された民主主義というものが、またはき違えられて、これは自分さえよければというふうにとられちゃった、そういうこともありましょう。そこへ朝鮮戦争というものが勃発して、日本の思わざる経済発展のバネとなった。そこでまた何というか、成り金といいますか、物さえあればという考え方、こういうものが根ざしている。それがずうっと高じてまいりまして、特に今日におきましては、そういう風潮が最高潮に達した。  しかし、私は、この風潮は是正しなければならぬと思います。今日は是正する非常にいい機会である、こういうふうに観念しております。石油問題が発生した、そういうようなこと、これは私は、ある意味におきましては、日本国の行き方に対する大きな天譴とでも受けとめるべきじゃないか。そういう立場に立ちまして、これからの政策運営に当たらなければならぬというふうに思いますが、まあとにかく、やはり人間社会というものをここで考え直してみなければならぬのじゃないか。  人間は一人で生きるわけにいかないのです。やはり人間は、何といったって、それぞれ生まれ持った資質は違いますよ、その資質を違うなりにみがいて、そうして助け合う。助け合うことによって、ずいぶんその自分というものが伸びていくよすがになるだろう、私はこういうふうに思います。やはり自分だけではほんとうの自己が完成されない、運命は一応国民みんな共同体である、こういう意識、これを取り戻さなければならぬ。自分さえよければ——いかぬです、これは。そういう相寄り、相助けるという社会、人のためになるということと喜びを感ずるような情操に人々がなっていくという社会、そういう社会を目ざして一つ一つ施策を進めなければならぬ。財政金融政策、それも大きな一つ方向としてその辺をとらえていかなければならぬ、こういうことを申し上げているわけであります。
  23. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 精神訓話ならばわかりますが、自由民主党は具体的に権力を握っているのですね、やろうと思えばどういうこともできるのです。公正ということは、世の中にあまり不公平がない、なるべく平等に近づける努力をする、正直者がばかをみない世の中をつくりたいというのですね。  ところが、いま、国民の正直者のほうが数が多いのに、そういう者が物価高で、相場師や投機によって被害を受けている。また、土地を買いだめして、ぼろもうけをしている者がある。そういう者に対して、公正な世の中をつくろうとするならば、四十九年度に思い切って再評価税をぶっかけるとか、そういう不当な買い占めをしてもうけたやつに高額な税金をぶっかけるとか、そうして世の中のアンバランスを直すという施策が、具体的に政治の中に実現をしなければいかぬのです。そういうものがなくて、ただ精神訓話で、金さえあれば、物さえあればという、これは資本主義の唯一の原理ですよ。資本主義は自由経済なんです。強い者勝ちなんです。弱肉強食なんです。そういう社会原理の上に立っている自由民主党の政府が、おこがましくも他人ごとのように、公正と連帯だというからには、こういう社会を想定し、こういう連帯なんだというためには、やはり物質的な財政や金融やあるいは大企業に対するチェックや適切な措置をとらなければ、単なる精神訓話に終わるじゃないですか、大臣。  私は、この問題一つを論争してもかなり時間のかかる問題でありますから、いまの福田さんの説明では、あなたの人生観、あなたの社会観、納得するものは何もない、単なる精神訓話であるという受けとめ方をして次の質問に入っていきますが、こういうような高度経済成長論が音をたてていま崩壊をして、日本経済は大転換をしなければならない時期に入った。したがって、経済がそういう情勢ならば、財政も新しい曲がり角に立って、財政の運営方法、構造、こういうものに対しても一大メスを入れて、やはり今日の環境に適応する財政の姿勢をとるべきだと私は思うのであります。  池田内閣成立以来、高度経済成長政策がとられ、ほぼ一貫して積極財政が続けられてきたことは、だれしも承知しているところであります。その間、いわゆる四十年不況のときが一つの財政の転機だったと思います。その際は、当時の田中角榮蔵相の残した不況とおおばんぶるまいによる財政の赤字という置きみやげのあと始末をする責任を、福田さんの登場によってなさねばならぬことになりました。そのときまであなたは、安定成長論者です。この四十年不況克服のときに登場した福田蔵相は、初めて公債不発行主義というものをやめて、国債発行の財政政策に踏み切りました。当時、われわれは反対しました。これが将来、日本の財政上たいへんな禍根を残し、インフレを加速させ、将来の日本経済にたいへんな汚点を残すに違いないという質問をここでしているはずであります。  そして公債を発行する財政に切りかえて、財政新時代の幕をあけて、高度成長というものを安定に持っていくのかと思ったら、逆な、また高度経済成長路線を突っ走る福田蔵相になってしまった。これはまことに皮肉で、第一幕は安定成長論、それを高度成長に切りかえて喜劇に終わったが、今度また保守党のエースとして登板をした。この危機における福田新蔵相の第二幕目は、喜劇になるか悲劇になるか国民はまさに注目をいたしておるところだと思うのであります。  そこで私は、保守党の政治的危機といわれる日本経済のこのピンチを切り抜けるために、新蔵相は、いま行なっている程度の財政運営方針、財政構造の手直し、総需要抑制金融姿勢等々で今日の危機を突破できると思っているのか。まだ事足りぬ、ここをこうすべきだった、ああすべきだったという反省を、予算編成を経過した今日、お持ちになっているのか、持っていないのか。この点ひとつ聞かしていただきたい。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 それにお答えする前に、私が何かえらく考え方を七、八年前の佐藤内閣の発足以来変えたんだというような御指摘ですが、私は考え方は変わっておりません。安定成長論者です。(武藤(山)委員「論者であっても、現実がないじゃないか」と呼ぶ)つまり現実もよく見てもらいたいわけですよ。私は、安定成長というものは物価国際収支、最近においては資源という問題をつけ加えております。また環境、つまり公害問題もつけ加えなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、まあそれまでの段階、当時におきましては、物価情勢を阻害してはならない、また国際収支をいためてはならない、この範囲内において成長というものは高いほうがいい、こういうふうに考え、そういうふうに申し上げてきたはずです。  そこで、私の大蔵大臣在任期間は何年であったか、五年余りになります。その間自民党の幹事長を二年やっておりますが、私が大蔵大臣をやっておるこの五年間、これは物価は、消費者物価がまあ五%ないし六%でしょう、上がっている。それはそのとおりです。それから卸売物価は大体横ばいでございます。それから公債はどうしたかといえば、私は公債を発行しましたが、公債政策運営は厳に慎しみます、これはそのとおりにして公債漸減方針をとり、当大蔵委員会におきましては、公債をゼロにするのかという質問まであって、火種だけは残しておくんだということを申し上げたことも覚えております。国際収支はどうだ、こういえば、国際収支は非常に堅調でありまして、二十億ドルの外貨保有高が着実に四十億ドルの線に向かった。そういう歴史で、私は決して私の財政方針を曲げて運営したというふうな御批判を受けるということはない、こういうふうに思います。  それから、これからの財政経済運営はどういするのかという問題につきましては、これは予算の編成を終わって、いま御審議を願っておるわけです。しかし、先ほど申し上げましたように、今日のこの時局というものはたいへんな時局だ。私は、これはもう日本国とすると、いまだかつて当面したことのなかったような非常にむずかしい事態に直面している、こういうふうに見ておるのです。でありますから、私は予算を編成し、またいろんな法律案を御提案申し上げております。おりまするけれども、よりいい施策があるということになるならば、建設的な御意見がありますれば、十分耳を傾けて、私は御協力を得たい、こういうふうに考えております。  また、予算編成に先立ちましては、きょうは堀さんも見えておりますが、堀さんにもいろいろ御意見を承ったくらいの姿勢をとっておる次第でございます。その辺はかたくなな考え方は持っておりません。皆さんにひとつ御協力を願いたいという気持ちで一ぱいでございますから、さように御了解願います。
  25. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣の弁解は弁解として承りますが、たとえば国債発行だって、あなたが大蔵大臣のとき、二千億円まず国債の発行に踏み切った。翌年は三倍以上にふえた。今日は国債の残が五兆八千百八十六億円、利息だけだって一年間に四千五百六十五億円払うんですよ。いかに財政新時代といって財政をふくらませるために公債発行に踏み切ったことがガンを残したかということは、この数字を見て明らかだ。私はそれを言っているのです。ほんとう福田さんの腹の中は、成長目的じゃないんだ、国民のゆとりある生活、人間味あふれる公正で連帯の実現する社会福田さんはイデーにしていると思うのです。その自分の事志と違った方向に高度財政成長をはかっていったことは間違いない。  そこで、私は、今後が問題だと思うのです。あなたは教示してくれと言われました。私は教示するほどの能力はないけれども、これから次から次へ新しい提案を申し上げるつもりでおるのです、あなたのほうでやらないから。  それで、あなたがこの財政演説の中で言っている「今後の経済運営にはこれまでのような高い成長期待することはできません」というのは、したがって、これからは高度経済成長という方向はやめて、福祉型の日本をつくっていくんだ、福祉型の財政運営をやっていくんだという思想が、私はこういう表現になっていると思うのです。そうじゃないですか。(福田国務大臣「そのとおりです」と呼ぶ)そのとおりですね。だとしたら、今日の予算編成の中で福田蔵相がせっかく骨を折って、ここでもってかりに緊急事態を回避したにしても、いまの財政構造では、財政体質では、またまた高度経済成長路線に逆戻りをして、もと一年のもくあみで突っ走る危険性が今日の日本の財政編成方針の中に秘められている。  それを具体的に申し上げるならば、長期財政計画の中にいろいろ公共事業の計画がありますね。たとえば第七次道路整備五カ年計画、四十八年度から五十二年度まで十九兆五千億円、都市公園等整備五カ年計画九千億円、第四次治水事業五カ年計画四兆五千億円、第四次下水道整備五カ年計画八兆五千億円、第五次港湾整備五カ年計画五兆円、新幹線鉄道基本計画、着工している五線二兆二千九百億円、新線十二線七兆一千億円、こういう長期計画が軒並みずっといじられずにそのまま残っているわけですね。福田蔵相が、安定成長にもっていって、再び日本経済がこういう混乱を引き起こさないためには福祉型財政に定着させるのだというあなたの願望が本気のものだとするならば、これらの計画を私の考え経済的な運営方向に全部一ぺん洗い直してくれ、検討し直してくれ、そしてこの程度の財政の上昇でもっていきたいのだから、少なくともここ五年くらいの間はこうしたいのだということで、これをいじるのは財政当局として当然過ぎるくらい当然の措置だと思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 お考えはよくわかります。ただ、長期計画というものはそう簡単にはできるものではない。一年の準備、二年の準備、そのくらいの時間はかけて長期計画というものはできるのです。  そこで、当面の問題とすると、それらをたな上げいたしまして、そしていままで続いてきた事業、これを続けてある程度やっておこう、こういうふうにしたわけなんです。おそらく私は、この緊急事態を切り抜けたあと、国際情勢から見ましても、国内の諸政策考えましても、いままでのような高成長ということはもうとうていできない。私は、せいぜい国際社会の水準程度のことでいかなければならぬ、こういうことになると思います。しかし、そういうことになれば、いままでの長期計画というものは、根本的に洗い直しをする必要が出てくるわけです。しかし、そのいとまがありませんものですから、それはそれとしてたな上げしておきまして、当面これをしなければならぬという措置だけをするというのが、ことしのたてまえなんです。これはもう当然洗い直しを必要とする、こういうふうに思います。
  27. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ことしのたてまえということは了解いたします。わかります、それは。私が言っているのは、ことしはこういう財政方針、経済方針でやっていくが、一応下火になると、いまの緊急目標問題が解決するような方向にいけば、こういうものがこのままあると、またこれが頭を持ち上げてきて、事志と違う方向に財政の体質がいってしまう。したがって、この一年間、来年の予算編成期までの間に、こういう長期計画というものは全部洗い直して、五十年度の予算編成の前に、一年ありますから、もう一回これを全部検討し直して、大蔵省考える財政方針の基本があるのだから、そういう方向に沿ったものに全部練り直してくれと、あなたが要請すべきじゃないですか。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、来年というふうなことを考えると、なかなかそう簡単にいかぬじゃないかという感じもいたします。つまり、これから長期的な国づくりに新しい視点で出発しなければならぬ。これは再出発になると思うのです。そのときのスタートというか土台になるものは何だというと、この緊急事態というものを相当あらごなしをして、そして出てくる新しい状態でございます。これはどういう形になってくるか。それからもう一つの問題は国際情勢という問題がある。国際情勢一体どういうふうな状態になってくるであろうか、こういうふうな感じもするのです。そういういろんな要因を踏んまえまして新しい展望を立てなければなりませんから、そういう展望を持ち得る時期というものが一体どの時点になるか、そういうことを考えておかなければならぬ、こういうふうに思います。  それで、そういう展望のできる時期からスタートしまして長期計画をつくるということになると、かなりこれはまた時間がかかるのではないかと思います。まして社会経済発展計画というようなああいう基本的計画となれば、あれはつくるのに三年とか四年とかかかるのですから、そう簡単にはまいりません。しかし、お話しのような筋、気持ち、そういうものでとにかく五十年度というものは取り組まなければならぬ、そういう筋合いだと思いまするけれども、いま私が新しい展望をつくって、五十年度の予算というものはそういう展望の一つの仕組みとしてやるんだ、こういうことを申し上げますと、あるいは私が間違ったことを申し上げる、そういうことになるかもしれませんけれども気持ちはそういう気持ちでやっていくということを申し上げます。
  29. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 気持ちはそうだというけれども、やっぱり予算編成の過程を見ると、結局、こういう長期計画があることをにしきの御旗にして、うちのほうの予算はこうしてくれ、ああしてくれ。しかも、この中には社会保障五カ年計画は入っていない。福祉型の財政に転換するんだ、キャッチフレーズはこう出しておっても、実際の中身は、そういう公共事業関係ばかりは長期計画がだあっとメジロ押しにあるけれども社会保障関係の計画というのは全くない。こういうものをこのまま放置しておいたのでは、またこれをにしきの御旗に持ち出されて、成長路線の方向に財政体質がいってしまう。したがって、それをきちっとやはりこの辺で洗い直そう、もう一回検討し直そう、そのくらいなことを閣議で大蔵大臣が提案できないようでは、財政と個々の予算要求というものとが一致した方向に歩いていかないじゃないですか。そんな財政方針というのでは、私は、真に日本国民期待するような福祉型の財政にはならぬと思うのです。  しかし、私は、福田さんに挑戦をして、ここでもってあなたをただやっつけようというだけで議論をしようとは思っておりません。ただ、現実のそういう具体的なことを指摘してみると、日本の財政全体の大きな問題として、たいへん重要な姿勢の問題として、私はこの問題はどうしても論ぜざるを得ないわけなんです。確かに、堀政審会長や野党の政審会長と年内に会見をしたテレビを見たときに、やはり福田さんというのはなかなか雅量がある、野党の政審会長の意見を聞いて適切な措置をとろうと考えているのかと、私は期待しました。確かにあなたのやった今回の四十九年度予算に対する短期決戦決意、あるいは公定歩合の九%への引き上げ、米や国鉄運賃の六カ月の凍結、公共投資の抑制、財政投融資計画も四千億円の原資を余しても削減した。不十分であるが、法人税率の引き上げをやろうと決意した。ちょっぴりではあるが、交際費も少々課税を強化する。これだけです、福田財政の新規に今回努力をしたのは。まだまだやらなければならぬ問題がたくさんあったはずです。  たとえば、具体的に言うならば、社会の公正を実現するために、一番いま非難を受けている大法人。法人が配当を何億円もらおうが、その配当は利益でない。益金不算入だ。企業間の配当なんというのは全部課税すべきです。なぜやらぬのですか。いい案があったら提示してくれというから言うんですよ。なぜやらぬのですか。  第二に配当軽課措置、どうですか。最初の三〇%にしようというのも、だんだん財界からの圧力で煙のみになっちゃって、わずか二%、ちょっぴりしか改善しない。配当軽課措置なんというのは、もっと思い切って公正な世の中をつくるためには改善をしなければいかぬ、私はそう思う。  さらに、社会保険診療報酬課税特例の存続だってそうでしょう。お医者さんだけこういう特例を認めて、公正な社会だと思いますか、国民は。まさに不公平、でたらめじゃないですか。強い者勝ちじゃないですか。改善すべきじゃないですか。これが第三点。  第四には、資産所得の優遇措置というものは一切この際やめるべきです。そういう不労所得に対する課税の重課の方針も全く出ていない。われわれは、特にそういう不労所得あるいは社会のこういう情勢に便乗して金もうけをする連中に対しては、高額所得への臨時的付加税をぶっかけるべきだと思います。  なぜ、四十九年度財政で野党の政審会長と懇談までしながら、これらの問題が実現しなかったのですか。率直にあなたの見解を聞かしてください。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ野党の政審会長と話をするのですから、そういうこまかい具体的な問題までの話は、私はしておりません。(武藤(山)委員「こまかくない、それは。大問題です」と呼ぶ)これはとにかく、時局に取り組む基本的な考え方、こういう問題について大体話し合いをいたしておるわけなんです。  私は先ほども申しましたが、非常に皆さんが御協力してくださる、そうして私どもも納得する、こういう案があるならば、私は、もうそういう姿勢で、各党各派とかなんとかという立場でなくて、これはほんとう日本丸という同じ船に乗っておるんだ、こういう意識で取り組んでいかなければならぬ、それくらいな認識を持っていまこの時局に当たっておるわけです。ですから、いまいろいろ配当の問題、またお医者の問題、いろいろありましたけれども、これはそれぞれむずかしい問題もあるのですよ。そういう立場もまた逐次聞いていただきたい、こういうふうに思いますが、とにかく、私も大蔵大臣就任したその翌日から予算編成、そんなそう急に、何もかもどこから見ても問題はない、こういうふうなことにまで至らなかった点はあるかもしれません。これは率直に私はそう考えます。しかし、ベストは尽くしておる。
  31. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いまの最後の答弁は率直で、まことに同感であります。  そこで、主税局長、不労所得を優遇する措置、こういう社会が不平等になり格差がついておるときに、何で配当所得の申告不要限度額を五万円から十万円に引き上げて不労所得を優遇するのですか。これは大臣の命令ですか。それとも税制調査会の号令ですか。主税局長の感覚でやったのですか。この五万円を十万円にする配当所得優遇については、どこからこういう指示が出たのですか。
  32. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 今年の税制の中で一つの大きな流れをなしておりますのは、貯蓄の奨励ということでございます。かなり思い切った措置として、銀行預金その他のいわゆるマル優、これを百五十万円から三百万円まで引き上げる。郵便貯金にしましても同様、百五十万円から三百万円に引き上げる。また、財形貯蓄についても、非課税限度額を引き上げますと同時に新しい措置が講ぜられるということであり、生命保険、損害保険等につきましても、やはり一種の貯蓄奨励という趣旨で限度額が引き上げられました。  これと歩調を合わせまして、やはり株式投資による貯蓄という形態につきましても、これは金融資産のどの金融資産についての貯蓄だけがよろしいという、そこに色合いを持つことはできません。やはり平均的に引き上げるほうがよろしいのではないかという見地から、私ども考え方といたしまして、大体ほかのものと同じように、倍に上げるということをいたしたわけでございます。
  33. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それからもう一つ、いませっかくマル優という話も出たから、不公平の問題で……。  銀行の預金は何年積んでおいても、定期預金につく利息は、その限度額の範囲内ならば非課税ですね。主税局長、それは間違いないですね。三年でも五年でも定期をずっと積んであれば、その年度分の利子については、五年間でも六年間でも非課税ですね。
  34. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 はい。
  35. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで、債券類の場合ですね。債券類の場合には、現在新規に発行するものだけが非課税になって、既発債のものについては非課税にならない。なぜそういう差をつけるのですか。
  36. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これは、実は非常に長い間議論があるわけでございますが、そのことは戦前からございます国民貯蓄組合の時代におきましても、社債とか国債とか、そういう資本市場で流通しておりますものにつきましては、新発債だけについての優遇ということになっております。お時間の関係もございますから、その理由その他はいまここでは申し上げませんが、普通の預金のようなものと、社債のようにかなり転々流通いたしますものとの関係上、そこにどうしても差が出てきておるわけでございます。  資本市場育成の見地からいたしましても、それは旧の、新発債でないもの、古いものについても何か優遇措置を同様にしてはどうかという意見は、前々から資本市場のほうの要請としては出ておりますけれども、税のほうではやはりそれは新しい貯蓄奨励ということにはなりにくいのではないかということから、長い間反対をしてきて今日に至っておるという経過のものでございます。最近また、このように古い国債等における、あるいは社債等の市場価格の低下ということもございまして、関係方面、省内からもそういう要請が参っておりますが、いまその点は議論中でございます。
  37. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、いまお聞きのとおり、議論中だ。これは法律事項じゃないのですね。政令ですから、直す気なら簡単に直せるわけですね。大臣、この預金と債券類との格差、差別、これについて改善する意思はありますか。
  38. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 大臣にまだよく御説明してございませんので……。  私も、つい最近のこういう金融状態から、国債、社債の消化の問題に関連いたしまして、非常に強く要請を、いま話を聞いておるところでございます。いずれ御判断を求めることにいたしたいと思っております。
  39. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは大臣、常識で考えても、やはり同じ制度の恩恵を受ける場合には、預金も債券を買うのもやはり貯蓄手段としては同じことなんですから、それはやはり公正にすべきじゃないですか。どうですか大臣、常識的に考えて。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 ほんとに私もまだ聞いておりませんので、聞いてみまして考えた上、また御返答申し上げます。
  41. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あなたは主計局長までやり、大蔵省の役人をずっとやったんですから知らぬはずはないのですけれども、そこは公正と連帯の社会を主張するからには、やはり不公平なもの、不公正なものは、できるだけ大蔵省で除去できるものは除去しなければ、公平な政治じゃないですね。  次に、物価問題にちょっと移りたいと思いますが、十二月三十日の日本経済新聞で、大蔵大臣が対談をいたしております。その中で、大体卸売り物価は四%程度の上昇で押えることを目標にしたい、こういうことを話しているのですが、いつごろまでに四%程度を目標にして卸売り物価を鎮静させようと考えておるのか、いつごろですか。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは年内の上昇率です。年内の四月から十二月までの上昇率をまあ四、五%としているのですが、そこには四%と書いてありますか。
  43. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、四月から十二月までは卸売り物価は四%ぐらいになるだろう、こう考えていますか、いま。いまの見通しはどうですか。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 ことしの四月から来年の三月まで、この間の卸売り物価の上昇幅を大体四、五%、その辺に持っていきたい、こういうように考えております。
  45. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、ことしの一、二、三の三カ月間で、大体一〇%ぐらい卸売り物価はまだ上がるという政府見通しですね。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 経済見通しに出てくる物価上昇率というのは、これは前の年の一年間の平均といいますか、それと次の年の平均との比較なんです。ですから、いわゆるげたという問題がありまして、かなり高くなるわけです。私がそこで申し上げておりますのは、そうではなくて、年度間の上昇率、上げ幅、これは四、五%ぐらいにしたい、こういうことなんでございます。
  47. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 なりますかと聞いておるのです。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうふうに考えております。
  49. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あなたの国会の答弁の中でも、また新聞記者会見でも述べておるのですが、特に総理大臣はこの間の予算委員会で、安定とはどういうことだと聞かれたとき、先進工業十カ国の平均水準で物価が押えられれば安定だと言われた。そうすると、一体、いまのあなたの考えておる目標というのは、先進工業十カ国の平均水準ですか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 平均水準といいますか、大体、私は、国際水準から非常に離れて、それよりも低い安定というのはむずかしかろうと思います。大体、先進諸国の中の優等生になればほめていただかなければならぬ、こういうふうに思いますが、来年という年の国際経済の動きは石油の問題があり、そしてその関係物価が上がるという要因があるわけなんです。  でありますけれども、他方におきまして、IMFなんかの試算によりますと、アラビア諸国に六百五十億ドルのドルが積まれる、こういうことですね。世界銀行ではもっと大きないろいろなことを言いますが、IMFでは六百五十億ドル。そうすると、石油消費国をはじめ発展途上国等に、それだけの外貨の不足を生ずるわけです。おそらく世界じゅうの国が、適度ではありましょう、極端ではありますまいが、景気調整政策をとる、つまり国際収支の防衛政策をとるであろう。これは物価抑制のほうに非常に響いてくるわけであります。  その辺を彼此総合いたしますと、そう高い物価上昇という状態にもならないのじゃないかというふうにも思いますが、とにかく世界情勢の今後の動きですから、ちょっとよその国のことは、そう私どもには責任は持てません。
  51. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 新蔵相の考えている短期決戦の目標の中身は、卸売り物価のことを中心に考えているのですか。消費者物価は、あなたの見通しではどういう見通しになりますか。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 消費者物価のほうは、卸売り物価の鎮静よりもおくれて出てくる、こういうふうに見ております。そのおくれがどのくらいになりますか、まあ学者はよく半年のおくれだ、こういうことを申しておりますけれども、いろいろ施策も進められておりますから、なるべく早く消費者物価のほうにもこれが影響するということを期待しております。
  53. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 物価問題を論議しておっても、先ほど大臣も、単なる物価上昇じゃなくて、これはまあ相場だ、投機だと言われたが、そういうものをやる元凶はだれですか。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 やはりこれは事業活動をしておる人じゃないかと思います。それで、その事業活動の中にまずメーカー、これをあげなければならぬ。それから次いで、流通諸段階というものがある。これを総合いたしまして、みんなが買いだめをいたしておる、そうして価格の値上がりを待つ、こういう大勢にある、それが今日のこの異常な状態を現出する、こういうふうな見方でございます。
  55. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国は租税特別措置法で恩恵を与え、至れり尽くせり輸出入銀行で保護をして商社の金もうけを手伝っている、あらゆる機械も特別償却を認めて、金もうけを政府が大いに手伝ってやっていた、産業振興という名のもとに、あるいは外貨獲得という美名のもとに。そういう大企業や大商社がどうして、総理大臣や蔵相が相場や投機はやらんでくれ、公正と連帯の世の中をつくりたいのだということを言っても、言うことを聞かないのです。なぜ言うことを聞かないと思いますか、あなたは。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、物価先高だ、こういう認識を持っているからだ、かように思います。
  57. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういう認識を持っていれば、先高、まだ上がる、品不足にしておいてもっと上げようという人為的な操作をやっても、先高が見込めるわけです。そういう行為を国民のためにやめてくれ、日本の危機だ、自由民主党の危機だと幾ら総理大臣大蔵大臣が叫んでも、言うことを聞かぬのだ。けしからぬですね、いろんな補助をしているのですから。(福田国務大臣「けしからぬ」と呼ぶ)  なぜ言うことを聞かぬか、私はこう思う。自由民主党がこれらの財界になめられておる。なぜなめられているか、政治献金をしこたまもらっているから。去年一カ年間で、国民協会が集めた金だけでも百九十六億円。その金を出している先をずっと調べてみると、いま国民の怨嗟の批判を受けている団体、企業だ。これは福田さん知っているでしょう。去年一年間に、東京銀行協会四億円、日本鉄鋼連盟四億円、日本自動車工業会三億六千八百万円、これは会費以外ですよ。会費はまたあとで言いますから。石油連盟から一億二千万、地方銀行有志から一億二千万、日本貿易会一億二千万、セメント協会八千万、特に生命保険協会とか損保協会とか軍需品をつくっている三菱重工とか、こういうところがみんな金を出している。あなたはいま、私がけしからぬと言ったらけしからぬと言ったけれども、本気でけしからぬと思うなら、手だてがあるわけですよ。こういうことではちょっと政府も言いたくても言えない点があるのじゃないですか。どうでしょうか、全くないと言い切れますか。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 政治資金というものは、最近相当かかるようになってきた。私も過去を回想してみまして、とにかく世の中というか、政界における金というものがずいぶんかかることになった、弱ったなとは思っておるのです。それを言い出しますと、たいへん問題が広範になりまするから、その点にはあまり触れませんけれども、問題は、私は政治資金というものはその質にある、こういうふうに考えておるのです。これは、きたない金である、こういうことでありますれば、断じてさような資金が集まっては相ならぬ。しかし、これがほんとうに政治に参加する、そういう純粋な資金であるということでありますれば、これはもう必要であるその金を調達する、これは理解せられるべきである、かように考えております。
  59. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きたない献金ときたなくない献金、それはありますよ、私はあると思います。テレビで仕置人とか仕掛人というテレビがあった。いまは「助け人走る」というテレビをやっている。これはみな悪玉をやっつけるために、一両、二両、ちょっと金のあるやつからは十両もらって悪玉をとっちめる。正義の味方。だから、弱きを助け強きをくじくから、視聴者はテレビを喜んで見ておる。自民党はどうなのか。強きを助け、弱きをくじいている。これでは国民は拍手かっさいしませんよ。福田派の政治献金というのはみんなきれいなのかどうか、じゃ少し聞いてみましょう。  福田さんのところは時局経済問題懇話会というのをつくって、去年一年間で自治省に報告している金が八億六千七百八十一万六千円。千代田経済懇話会、これも福田派と書いてある、四億七千九百万円。新政治経済研究会三億二千七百万円。みなはんぱはありますよ。合わせて大蔵大臣の所属する派閥で十六億七千四百万。たいへんな金ですね。それ以外にずっと調べたら、紀尾井会というのがある。それから十日会というのがある。ここに官報があるのです。官報をきょうずっと朝から調べてみたら、新政治経済研究会の三億二千万、だれから来たのか私はずっと調べてみた。そうしたら、紀尾井会からも来ているし、十日会からも来ている。何のことはない、自分の派閥で集めた金を、また自分の派閥の関係団体に寄付している。(福田国務大臣「重複がある」と呼ぶ)だけど、ここに出ている十六億七千四百万は、重複がないのでしょう。これはきたない寄付なのか、きれいなのか、天地神明に誓ってきれいな寄付だと言えるのですか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は多年にわたりまして政治活動をいたしております。その間、福田赳夫氏に大いに国のために働いてもらいたいという、心と心のつながりを持った人がたくさん出てきております。そういう人たちが集って後援会を組織している。そういうのですから、これは全くきれいな金であります。
  61. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかも大蔵大臣は、さすが大蔵省にいて、税制のことを知っていますから、あなたのところは時局経済問題懇話会も千代田経済懇話会も、寄付という名称では一件も集めていない。全部会費ということにして、どこから来たかというのがわからないようになっている。  ところが、田中総理のところは、越山会、財政調査会、政治経済調査会、新政経振興会、経済社会研究会、もらった先も全部官報に出ている。官報にきちっと出しているほうがきたなくて、官報に出ないように金を集めているほうがきれいでガラス張りなのかね。しかも、中曽根さんのところが八億四千三百万、大平さんのところが十三億九千七百万、総理のところが十三億四千七百万、三木さんのところが十億五千万。大体総裁レースに出るようなところがぐっと多い。よく週刊誌などでは……(福田国務大臣「それは何年度ですか」と呼ぶ)四十八年です。官報は七月三十日の官報に出ています。(福田国務大臣「七月三十日、四十七年じゃないですか」と呼ぶ)四十七年です。四十七年一年間、それが官報に出ています。四十八年はまだ官報に出ませんけれども、おそらくもっと多いんじゃないかと思うのです。(福田国務大臣「そんなにないです。それは総裁選挙だ」と呼ぶ)総裁選挙ですか。しかし、総裁選挙にかかったとすれば、福田さん、十六億七千四百万は最高だったから、総裁に当選しなければまずかったね。(笑声)結局、これはだれかが言うことを聞かずに、から鉄砲を撃ってしまったという結果に相なるような気がいたしますね。  そこで、こういう政治献金を集めて、国民がこれを新聞で知っていて、財界がやみカルテルをやってみな値をどんどん上げる、あるいは先高見込みで何でもどんどん上げる、自民党政府は何にもおきゅうがすえられない。みな歯がゆく思っている。どうしてなんだろうか、ばちっとパンチのきいた政策がとれない。そうでしょう。自民党多数なんだから、独禁法の改正をちゃんとやって、やみカルテルをやった場合には、もとの値段におろすという法律改正をしたらいいじゃないですか。悪徳の隠匿業者を国会に呼びつけて、証人としてどの委員会にでも呼びつけて、与野党一致して提言をし、注意をし、けしからぬとさっき言うのですから、けしからぬやつをけしからなくないようにしなければいかぬ。ところが、そういうときには抵抗してやらせないんだ、自民党は。なぜか、国民はまた反問する。  結局、戻ってくるのは、この政治献金だなということになるのです。しかも、国の財政、税制を扱って、公正と連帯を説く大蔵大臣が、一年間に十六億七千四百万も金を集める。企業にぺこぺこ頭を下げて、その企業をとっちめることができますか。できませんよ、常識で考えて。これが日本の政治を毒しているものです。福田さんは本気で、勇往邁進国難におもむくと新聞に書いてある。国難におもむくという一兵卒の気持ちがあるとするならば、四十九年は物価情勢がこうだから、政治献金は全部辞退いたします、率先してそういう声明を天下に出したらどうでしょうか。範を国民に示して、公平、公正な姿勢を示したらどうでしょうか。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 武藤さんは政治資金がどういうふうにして集まるかという実態、実情を御存じないように思います。私は、率直に言いまして、理解者、協力者はたくさんおるのです。これは何百人、何千人というふうになりましょうか、そういうふうにおるわけなんです。その人たちが寄り集まって、福田赳夫を応援しようじゃないか、協力しようじゃないか、大いに国家のためにやってもらおうじゃないか、こういうので、私ほんとうに一々の内容につきまして——知っているものはありますよ。ありますけれども、大かたは私は承知しておりません。それはそういう団体に世話人がおりまして、世話人がそういう取りまとめをやっている、こういうようなのが実情でありまして、そういう盛り上がるような気持ちで、日本国のために身を賭してやってくれ、そのためには資金も要るだろう、これだけ提供する、こういうような感じですから、その辺はひとつ万々誤解のないように願います。  それから、先ほどから十何億とか言っておられますが、その年はちょうど、おととしですよ、それは。自由民主党の総裁の選挙がありまして、そしてわれわれの周辺のそういう理解者、協力者もたいへんハッスルした、そういう年でありますので、額は多額にはなっておりますが、とにかく私は天地神明に誓って言うことばでありますので、不浄な金は絶対にこれを受け入れるというような、そういう考え方はしておりません。
  63. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国民協会というのは、自民党に政治資金を供給する外郭団体ですね。これは朝日新聞によると、一カ月の会費がまたべらぼうに高い会費を取っている。財界に聞くと、たいへん強く要求されるので、しようがなくて返事をしたというような意味も書いてある。ちょっと大どころ、建設業界から月一千万ですよ。不動産会社から月六百万、私鉄から月六百九十万、石油精製会社、これから六百万、これはみんな月ですよ。セメント五百万、鉄鋼、不況カルテルなどを認めて、一トン十二万だ十三万だといってぼろもうけしておる鉄鋼業界から大枚月二千二百八十三万。これは会費ですよ。これ以外の献金は別だ。自動車月一千八百万、造船が一千九十五万、化学関係が一千四百四十五万、たいへんなことですね。都市銀行が月二千万、証券が一千万、生命保険四百万、これだけの会費を国民協会が集めるのですね。たいへんな金額ですよ、一年間にしたら。そういうことをやっていて日本の政治が公正にできますか。財界べったりになるでしょう。財界に癒着するでしょう。これで癒着しないなんということは弁解だな。これはやはり改めるべきです。  そこで、大臣に質問するのは、そういう寄付金というのはどういう形で出るかといえば、いまの税法上認めているからですね。税法上、法人税法三十七条に寄付金の規定がありますね。どういう規定になっているか、大臣、だれにも聞かないで、ちょっとわかりますか。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 政治資金は一般の寄付金と同じ扱いになる、こういうことであります。
  65. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一般の寄付金というのはどういうことで制限をされ、どういう規定になっているかと申しますと、資本金の千分の二・五プラスその年の所得金額の百分の二・五、それの半分。商社や鉄鋼のように資本金の大きいところ、かりに一千億円の資本金の会社だとすれば、幾ら政治献金を出せるか、寄付金二億五千万。一千億の資本金だけで二億五千万、さらに所得金額の百分の二・五ですから、これがまた二億五千万、合わせて五億になる、それの二分の一だから二億五千万出せる。日本にいま百億以上の法人というのは幾つありますか、千三百七十五社と主税局の統計表には出ている。大体、都市銀行は資本金五百億だ。そうすると、一銀行で一億二千五百万の献金ができる、この限度でいくと。これは改正すべきじゃないか。こんなに寄付ができるような規定は少し制限すべきじゃないですか、大臣。法律改正すべきですよ。国民はそれで初めて公正と連帯の響きが本物に聞こえますよ。どうでしょうか。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の乏しい知識からいいますと、大体、政治資金、献金は、その制限のワクをはみ出るのではないかと私は思います。ですから、そう制限の恩典に浴しておるという状態ではないのではあるまいか、そういうふうに私は思います。  いずれにいたしましても、この政治資金問題というのは、これはもう過去において選挙制度調査会でずいぶん検討され、それから国会にも何度か改正案が出て、これが成立をしない、こういう経緯も持っておるわけであります。やはり政治資金には、私は問題があると思います。思いますが、これは選挙諸制度一体として見なければならぬ問題ではあるまいか。私は常に車の両輪論というのを主張しておるのです。これは選挙制度とこの政治資金の問題は車の両輪のごとき関係にある、そういうことを主張しておるのであります。そういう幅広い問題でありますので、政治資金のある一角をとらえて論議をするということは妥当でない、こういう見解でございます。
  67. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いまあなたがおっしゃったのは、この寄付金というのは税金がかかっているのだ。そうじゃないですよ。寄付金のほうは課税されていないでしょう、この限度内ならば。主税局長どうですか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 限度内であれば、これはもちろん法の規定によりまして課税の対象にはならぬ。ところが、おそらくこれははみ出ているのではないかということを申し上げているわけです。そういう状態になっておるのではないか。ですから、課税の対象になっておるのではないか、そういうものが多いのではないかということを申し上げておるわけであります。
  69. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 委員長にひとつお願いを申し上げておきたいのでありますが、はみ出ているかどうかということを、この際、あとで理事会に寄付金額の多い企業の名前を社会党は出しますから、ひとつそういう企業の社長を呼んで、いまの大臣の言明があまりにも認識現実離れしておるから、証拠をきちんとあげて私は追及いたしたいと思いますから、後日理事会でおはかり願いたいと思いますが、いかがですか。
  70. 安倍晋太郎

    安倍委員長 理事会で相談いたします。
  71. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、今回、四十九年度税制改正の中で交際費課税だけはちょっぴり強化しよう。そうすると、租税特別措置法六十二条に基づいて、交際費というものの範囲がきまっているわけでありますが、これは四百万円プラス資本金の千分の二・五だったわけでしょう。それを今度の改正で千分の一にしょう、そして課税範囲を広げよう。交際費もそういう形で、現実に商売に必要な、企業に必要なものも縮める、そして課税対象を広げるのですから、寄付金のほうだって、この際は、所得金額の百分の二・五というのを百分の一にするなり、やはり公正な姿勢をとるんだということを示さなくちゃ、額の多い少ないより、私はその政府姿勢が肝心だと思うのですよ。いまの交際費の改正は、主税局長、間違いないですな。主税局としても、やはりこういう交際費をいじるときには、当然寄付金も考えるべきじゃないですか、考えたのですか。
  72. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 寄付金の問題についても、十分検討いたしております。  それで、ただ寄付金は、ただいまのお話では国民協会の問題からお話が出ておりますけれども、各種各様のものがあるわけでございまして、私どもも詳しくは承知いたしておりませんが、なかなか一般の寄付金だけでは処理がつかないということで、たとえばいろいろ福祉事業であるとか、教育事業であるとか、あるいは研究事業であるとかいうものにつきまして、御存じのような一般寄付金以外の指定寄付金の制度をもう少し活用すべきであるというお申し出もよくあるわけでございまして、現に相当数指定寄付金の制度大臣名による指定を行なっておりますが、そういう実情から申しますと、企業ごとに非常に実態は違いますが、やはり必ずしもいまの寄付のワクが大き過ぎるとも言い切れない。そして寄付によって社会福祉事業なりあるいは研究事業なり、その他の文化事業なり、国際交流事業なりというものについて、各企業の判断である程度のことが進められることも望ましいことだというようなことを考え合わせますならば、やはり交際費の場合とはやや趣を異にするのではないかということから、今回は結論といたしまして、手直しはいたさぬということにしたわけでございます。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕
  73. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 やはりだめですね。財政転換姿勢が見られない。福田さんは短期決戦を唱え、高度経済成長の世の中に再び戻らぬ、不退転の決意で国難におもむくなどと言っているけれども、ことばばかりだ。  そこで、この次は国際収支の問題でありますが、先ほど野田君の質問に対して、蔵相は長期資本収支が九十七億ドルも赤字で——七億は言わなかったけれども、九十億ドル赤字で、この問題がたいへんな問題なんだということをおっしゃいました。長期資本収支がこんなに赤字になった最大の原因、どうしたならば期待するような効果があらわれるのか、この二点について大臣の見解を。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 なぜ長期資本がそういうふうな赤字になったかというと、昨年のいまごろは実にわが国の外貨は、保有高が百九十億ドルをこすというような状態になったんです。これが国際社会で非常な摩擦がある、こういうことで外貨減らし政策というものがとられたわけであります。それで、外国に資金が使われるということを奨励するような施策、また逆に外国の資本がわが国に入ってくるのを阻止する、こういうような施策、そういうものが外貨政策上とられると同時に、国内政策におきましても拡大政策というか、前の愛知蔵相はトリレンマなどというようなことも言っておりましたが、そういう国内でのスペンディングですね、そういう方向施策がとられた、こういうようなことだと思います。その勢いがずうっと尾を引いてまいりまして、年間に百億ドルの赤字を出す、こういうことになり、特に長期資本収支におきましては九十億ドルという赤字を出す、こういうことになった、そういうことだと思います。
  75. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国際収支の項の中の長期資本が、四十五年、六年、七年、八年を比較しますと、とにかく四十八年が四十七年の倍、一挙に倍ですね。四十七年が四十四億八千七百万ドル、今度は九十七億一千八百万ドルの赤字、海外へどんどん資本が出ていったということのあらわれであります。四十六年度以降の直接投資の許可状況をちょっと調べてみると、四十六年が直接投資で許可をされたものが八億五千八百万ドル、四十七年は二十三億三千八百万ドル、一挙に三倍。四十八年がおそらく四十七年と大体同じくらいのところにいくのではなかろうかと思いますがね。  国際金融局長いますか。どんな状況になりますか。
  76. 松川道哉

    ○松川政府委員 四十八年の第一・四半期、四月−六月が、許可ベースで九億八千二百万ドル、七月−九月の第二・四半期で七億三千七百万ドルでございます。
  77. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その後わかりませんか。
  78. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいまちょっと手持ちの資料はそこまでのようでございます。
  79. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 四月から九月の段階ですでに十七億一千九百万ドルということですから、やはり四十七年度のベースに乗るぐらいの数字になるだろうと思いますね、直接投資だけで。ところが、直接投資を今後大蔵省としてはどういう指導をし、行政措置を講じ、あまり流出しないようにどういう手だてをやるのですか。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 結局、大まかにいいますと、昨年一月ごろの状態下においてとっておった外貨減らし政策の裏返しの政策をやる、こういうことになろうかと思います。具体的には局長からお答えいたさせます。
  81. 松川道哉

    ○松川政府委員 全体の傾向はただいま大臣から御説明がございましたとおりでございますが、一つ御留意いただきたい点は、最近の直接投資が非常に大きくなってまいりますのは、特に資源関係の直接投資の金額が一件当たりの金額も大きゅうございますし、これが相当数入ってきておるということが、金額的に非常に大きくなってきておるもとでございます。そうしまして、来年度におきましても、この資源関係の直接投資というのは、わが国の将来を長く展望いたしますと、決して引きとめるべきものではない、機会があればこれはやはり実施すべきものである、このように考えております。
  82. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あなたの答弁答弁になっておらぬですな。そうすると、外貨がどんどん流出するのは避けられないということですか、いまの答弁だと。資源企業にどんどん投資するのだから、それじゃ制限できないじゃないですか、チェックできないじゃないですか。
  83. 松川道哉

    ○松川政府委員 長期資本収支の中には、御案内のとおり、いろいろな項目が入っております。ただいま私は資源関係の直接投資だけを抜き出して申し上げましたので、ただいまのような誤解を招きましたが、たとえば今年度の赤字を来年度どうして減らすのかということにおきまして、四十八年度前半までにおきましては、外貨の流入というものを極端にきらいまして、これをほとんどとめておりました。この点につきまして、つい最近ではございますが、方針を変更いたしまして、インパクトローンを引くとか、そのほかの手だてをやることを予定いたしております。この外資関係の点だけをとりましても、四十八年度の見込みでは入るのをとめておりまして、返済ばかりでございましたので、約七億ドルの赤字というのが見込まれております。これが、来年はこの政策転換いたしますことによりまして、十一億三千万ドルの入ってくるのを見込んでおります。この点で約十八億三千万ドルという大きい改善が見込まれるのでございます。来年入ってまいります十一億三千万ドル、これはあるいは楽観に過ぎるのではないかという御批判があると思いますが、たとえば四十三年度には十億ドルをこすものが入ってきておりますし、四十四年度にも十二億ドルをこすものが入ってきております。そして先ほど大臣の御説明にもありましたように、オイルダラーの問題がこれから問題になりまして、このアラビアに集まりました金が、あるいはロンドン、あるいはニューヨークという金融市場へ通じまして、これをどこかの国が引いてこなければいけないということで、この外国からの資金が日本に入ってくるということは、傾向としてこれから大きくなってくるであろうということが見込まれるのでございます。  また、国内の資金が出るほうにつきましては、この中身といたしましていろいろなものがございますが、たとえば一つの例で、われわれが外外貸し付けと呼んでおるものがございます。これは、本邦の為替銀行が国外で資金を調達いたしまして、第三国に融資しておるものでございます。本年度、この四十八年の中にはこれが二十七億ドル入っておりますために非常に大きく見えておりますが、これに対しましては、日本国際収支事情が悪くなれば、引いてくるものはできれば国内のほうへ引いてくるほうを主にすべきではないか、そして外外取引のほうはだんだん減らしていくべきではないか、このようなことを考えておりまして、たとえば借款の部門におきましては七億ドル超、八億ドルと申し上げたほうがいいかもしれませんが、八億ドル、証券投資においても八億ドル、そういったものの流出の減を見込んでおる次第でございます。
  84. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いまの説明で、長期資本収支の内容が直接投資が二十三億三千八百万ドル、それから証券投資、援助、延べ払い輸出、こういうものを全部含めて九十七億ドルの赤字になる。これからは外貨が入りやすくするいろんな手だてをする。東京銀行など、ヨーロッパなど国外で調達した資金をブラジルやほかの国へ融資する、そういうものについても、これからある程度行政指導で減らす。いまこういう意味の説明があったわけですね。  そこで私は、大臣にひとつ検討願いたいのは、この間私もブラジル方面、南米を視察して驚いたのは、日本企業があまりにも集中的に進出をしつつあることであります。従来ブラジルは百二十五社ぐらいしか日本企業が進出していなかったのが、四十八年の末ごろには二百六十社ぐらいになりますという大使館の説明であります。一挙に倍になるわけです。したがって、中にはたいへんいいかげんな企業もおそらく入ると思うのですね。あるいは中小企業の中からも入ると思います。何でそんなに投資の件数がふえるのか。たとえばいま直接投資の証券投資、株の取得、これの件数だけをちょっと調べてみると、四十六年が六百四十六件、四十七年は千二百三件、一挙に倍も海外進出しているわけですね。四十八年が四月から九月で八百五十三件ですから、これも千件にすぐなると思うのですね。こういうように海外へどんどん企業が投資をし、有価証券を保持する。なぜそんなに流れていくかという一つの手助けが、いまの税制の中にもあるのじゃないか。海外投資損失準備金というようなものは、外貨減らし政策の当時とこれからの時代では、違う角度から再検討してしかるべきではないだろうか。  大臣、いま海外投資した場合に税制上どういう優遇措置になっているか、大体のところおわかりになりますか。局長に聞かなくちゃわかりませんか。こういうことなんですね。  日本の国内で企業に利益が出る。利益が出ると、それは単年度単年度税金がかけられる。ところが、その年度内に海外へ投資をすると、投資した金額の半額を五年間税金たな上げ、六年目から五分の一ずつ課税対象にするということになっている。これはなかなかうまいメリットですね。そうすると、たとえば国内で所得が二億出ちゃった。税金をばちっとかけられたのではたいへんな税額だ、何かうまい方法はないか。では、ことしはひとつ韓国で工場あるいは会社の株を取得しよう、台湾にあるいはフィリピンにというように、低開発国へそういう有価証券投資をやると、五〇%認めてくれる。先進国の場合一〇%、ヨーロッパ、アメリカの場合ですね。しかも、資源の場合には一〇〇%そっくり認める。銅とか石油とかそういう資源企業に対する投資については、一〇〇%そっくり五年間全部課税対象据え置き、六年目から五分の一ずつの課税、これがいまの海外投資損失準備金というやつですね。  こういう時勢のときには、こういうように海外へ進出すればこういう税制上のメリットがあるぞなどということは、少々制限すべきじゃないのでしょうか。私はそうしてしかるべきだと思う。そうでないと、政策一体性がないんですよ。気がつかなかったで済まない。やはり政策一体性というものは、全体にそういう方向に、資本収支なら資本収支を、この際は少しでも出ていくのを減らして、入ってくるのをふやして、外貨準備というものをある一定水準に保持しなければならぬ。そういう努力をするためには、海外投資損失準備金というものはこの際再検討してしかるべきだと思いますが、大蔵大臣の見解はいかがですか。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど局長が話しましたが、海外投資が非常に拡大されちゃったわけです。これはどうしても抑制しなければならぬ。ところが、抑制するとは言いまするけれども、必要なものがあるわけなんです。これはまさに資源開発投資です。ですから、そういう角度で海外投資政策をやらなければなりませんが、それを為替の方面でやる、これは本筋だと思います。それで救い切れない、こういうような場合に、一体、税がどういうふうに働くか、こういう問題になってくるだろうと思いますが、私もなお、為替当局との関係が非常に深い問題ですから、よく検討してみます。
  86. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は全部をそうしろと言っているわけじゃないんですね。やはり銅とか日本にない地下資源、そういうようなものについては、これは資源確保上一〇〇%でもいいと思うのですよ。私が言っているのは、これを全部やめちゃえというのじゃないのです。先進国は一〇%、後進国は投資した金額の五〇%が準備金に積み立てできるわけですね。資源の場合、投資した金額が一〇〇%そっくり準備金に計上できるわけですよ。だから、いまこういう時勢のときに、そんなに五〇%も認める必要があるのか。特に韓国なんかはあまりにもいいかげんな企業がどんどん進出するために、日本の新植民地政策だとか、いや帝国主義的進出だというような非難がいろいろある。だから、やはりどこかで一回ふるいにかげながら検討して、海外投資というものに対するいままでのようなゆるい情勢というものは締めていかなければならぬ。それにはやはり、いまの税制というのは現状にマッチしない。  大口の投資十社の名前だけちょっと大蔵省から出してみてくれというので私調べたのですが、上のほうはやはりほとんど商社だ。丸紅、三菱商事、三井物産。阪本紡績というようなのも韓国に一年間に二回にわたって投資をしておりますが、こういうようなものをやはりどこかで、適正なものは認めるが、これは好ましくないなというやつ、税金のがれのために海外へ出かけると思われるような企業は、チェックしなければいかぬ。とにかく国内でごそっと税金を取られるよりは、最高十年間ですからね、準備金に積み立てちゃって、五年据え置きなんですから。これはうまい方法ですからね。こういうのは大臣、早急に検討して、改善すべきものは改善すべきだと思いますが、もう一回きちっと答えてください。
  87. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは対外投資政策自体の問題とからまる問題ですから、それともかみ合わせながら検討してみます。
  88. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 積極的にひとつ御検討願いたいと思います。  それから次に、外貨問題では、一ドル三百円のいまのレート、これは日銀が一応介入をするレートになっておる。大臣の見解では、これは外貨準備がどのくらい減るまでは三百円を維持するように努力しよう、外貨準備がこの程度いったときにはもう買いざさえ、介入できない、その限度というのは大臣はどの程度に見ておりますか。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、外貨準備はその額にはそう大きな関心を持っておりませんです。つまり、傾向が大事だ。幾ら百九十億ドル持っていても、一年間に百億ドルも赤字を出すという傾向が続いたら一体どうなるのだ、たいへんなことになってきます。私はその傾向を健全化させよう、こういうふうにいま考えておりまして、いま三百円をどうこうするということは念頭にありません。
  90. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、二十カ国蔵相会議に蔵相は出席をされて、いろいろ話し合われた。このコミュニケの内容をちょっと読んでみますと、ことしの六月十二日、十三日ごろワシントンで最終的な改革の作業をしょう、こういう意気込みでコミュニケの内容を発表されておりますが、フランスのああいう事態日本の円の切り下げ、こういうような事態がずっと最近二十カ国蔵相会議以後に起こっているのでありますが、大体六月の段階で作業を完了できるような見通しですか。それともまた、国際通貨問題というのは全く新たな振り出しに戻るという状況ですか。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 この会議は、ちょうど石油問題の激しい影響のあるそういう時点において開かれたのです。  これは二つの面に石油問題が影響をしておると思うのですが、この七月末までに新決済手段、この大綱をきめるというスケジュールが狂うと、さなきだに石油をめぐって混乱しようとする国際通貨情勢に悪い影響があるんじゃないか。そういうことで、これは何とか石油危機の際であるだけに、はっきりした結論をローマ会議では出さなければならぬという影響一つあったのです。  同時に、そうはいうものの、激しい変動期でありますから、大綱はきめるにいたしましても、細目まではきめられない、こういう影響もまたあったわけです。その暖流、寒流の交差点というのがコミュニケになってきておる。  こういうわけでございますが、結論といたしましては、一つは新国際決済手段、これはどういう性格のものであるべきかという点をこの七月末までというスケジュールに従いまして、それを待たず六月の十二、十三日の会議においてきめようじゃないか、これが一つ。  それからそれと並行いたしまして、いわゆる二十カ国蔵相会議というものは単なる申し合わせによる協議機関でございまするけれども、これに類似したIMFの正式の諮問機関をつくりまして、そしてこの諮問機関にそれから以降の措置をきめさせようじゃないかということ、これがきまったわけです。  それから同時に、今日の見通しからいいますと、新しい通貨の性格はきまるにいたしましても、具体的にこの決済手段がどういうものになるかということについての決定というものは、かなりおくれるんじゃないかという見通しなんです。  そこで、そういうことになりますと、今日のフロートが、これがかなり長い間続きそうなんです。フロートが続くというその状態は、国際通貨体制がきわめて不安な状態なんです。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、フロート下における各国の国際通貨政策のマナーの問題について一つのルールはできないか、こういうような問題を、ひとつできたら六月十二、十三日の会議までに詰めて、それもきめることにしようじゃないか。その他いろいろ問題がありまするけれども、できるだけ六月十二、三日の会議までに詰めてみようというのですが、まあおそらく見通しとすると、その三つぐらいの点じゃないかと思うのです。まあそんなところであります。
  92. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だんだん時間がなくなりますから、国際収支の問題にあまり時間をとれませんが、日本政府がいまたいへん心配をしておる外貨準備の状況のときに、一月二十三日ですか、ドル買いが一日で七億ドルをこす、こういうような事態があって、日銀も、これはだれかが投機的に動いたんだろう、不心得者がいるに違いないというので、調査をした。その調査の結果、どういう企業、どういう商社がドル買いをやったのですか。
  93. 松川道哉

    ○松川政府委員 確かに、御指摘のように二日間東京の市場を閉鎖したあととは申しましても、一月二十三日の東京市場におけるドルの商いの量は非常に多うございました。そこで私どももいろいろ心配をいたしまして、さっそく銀行関係のデータをすぐ当たりました。そういたしましたら、二十三日に、これは主要都市銀行十四行でございますが、これが自分の円で買って手持ちしていたドル、この高が二億四千万ドルばかり減少しているということがわかりました。ということは、銀行は全体といたしましてお客からの注文に応じてドルを買った。しかし、それが市中で買い切れなかった分は、自分の運転用として持っておるドルの一部を顧客へ渡したということがわかりました。  そこで、そうなりますと、問題はどうも顧客のほうではなかろうかということで、この顧客全体になりますと数も何万とございます。私ども早急に把握できるわけではございません。そこで、さっそく日銀に為替銀行を通じまして概況を至急調べてほしいということを頼みました。それに対しまして日銀のほうでは、自分のほうは強制的な調査権というものはないんだ。しかし事柄が非常に重大でもあるので、自分のほうの業務上の情報であって外へは漏らさないからという約束をしながら、いろいろのことを調べてみましょうということで、さっそく十四行を呼んで、順次聞き取りをしてくれたわけでございます。  そこで、わかりましたことの報告がさっそく参りましたが、その為替銀行と顧客の間の取引の大部分は通常の取引であって、違法ないし不当なものはどうも見当たらない。ただ金額が多くなりましたもとには、どうもたとえば輸出手形の上がり方が少ない。これはラッグズでございますが、あるいは輸入については一日決済を早める、そういったリーズ・アンド・ラッグズが見られるのではなかろうかという情報を、私ども耳にいたしました。そこで、日銀のほうでは、その輸入関係のほうのリーズができるということは、すなわち手元の円資金にゆとりがあるということになるのではないかということで、日本銀行は貸し出しの抑制態度をもう少し厳格にやってもらいたいということを銀行に強く要望いたしまして……(武藤(山)委員「だれに、どういう企業に」と呼ぶ)為替銀行でございます。これは日銀としては、それぞれの為替銀行の持っておる顧客に対して、全体として……(武藤(山)委員「顧客の名前を聞いているんだ」と呼ぶ)そこで日銀はそれを促進するために、日銀から貸し出しておる貸し付け金につきまして、そのうちの三行から一部を回収したわけでございます。  また他方、私どもは、このような環境でございますので、何としても市場の安定をはかるのが大事であるということで、輸出手形が上がってきやすいように、すぐ為替管理の見直しに取りかかりまして、御案内のように、居住者の外貨預金の持ち高の残高を規制するという方法をとりました。おかげをもちまして、その後為替市場は非常に平穏に推移いたしまして、たとえば本日のクロージングでございますと、翌日物の平均値が中値が二百九十八円六十銭である、三カ月の先物は三百八円三十銭である、六カ月物は三百十四円五十銭であるというように、為替市場は非常に平静に落ちついてまいりまして、私ども期待しましたように、相当程度の輸出手形が回ってくるという状況になってまいりました。  そこで、その為替銀行からの聞き取りがそのときどういうふうになっておるかということでございますが、これは日銀のほうが本来調査いたしますときにも外に使わないからというお約束で話を聞いたということもあり、私どものほうにその点は外部へ漏らしてもらいたくないということを強く言っております。そこで私どもといたしましては、至急為替検査官をそのうちの一部の顧客に対しまして派遣いたしまして、これは通産省の為替検査官と一緒になりまして、特に扱い高が多かったのではないかと推定される顧客に対して、一月二十九日から裏づけの実態調査をいたしております。ただ、これはそこに不正があったからというのではなくて、今回このように取引がふえたのはいかなる事情によるものであったか、それから将来このような事情の再発を防ぐにはどうしたらいいか、そういうデータを求める意味でいろいろな情報を集めてこいということで、ただいま調査をやっておるところでございます。
  94. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 局長、ちまたの話によると、やはり商社が買った。しかし、あなたのいまの説明では、通常の取引だった、輸入決済資金だった。通常なら、何も隠さずに大口の順に五社ぐらい出したらいいじゃないですか。通常なら、何も発表したってけしからぬことないじゃないですか。
  95. 松川道哉

    ○松川政府委員 先ほども申し上げましたが、都銀十四行を通じて聞き取り調査をしたものでございます。したがいまして、ここから出します数字が完全なものかどうか、それは私どもも自信がございません。私どもが現在入っております調査、この結果がわかりますれば、その段階で大臣の御指示を得たいと思っております。
  96. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それではいつごろわかりますか。
  97. 松川道哉

    ○松川政府委員 これは調査の項目をしぼって調査しました。一月二十三日、この日の取引はどうであったか、そのときのドルのポジションがどうであったかということでございます。したがいまして、現地調査はもうきょうぐらいには大体終わりまして、計数の整理にかかることができるだろうと思います。
  98. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、いまの調査の結果がわかれば、大蔵委員会の質問にお答えして発表しますか。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 これを公表するかどうか、あるいは秘密会でどうとか、あるいは秘密理事会でどうとか、まあいろいろ方法はあろうと思いますが、調査の結果が出たら何らかの形で申し上げたい、こういうふうに思っております。
  100. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国際金融局長までどうも企業者側にきがねしていて、あなたは政治献金もらってないのだから、ほんとうのことを言いなさいよ。これはやっぱり大臣の手前、こわいからうっかり言えないという気持ちはわかるにしても、もうちまたでは、三井物産だ、三菱商事だ、そういう連中がかなりかけ込みをやったといううわさが流れておるのです。石油じゃなかったんだ。石油も幾つかはあったかもしらぬが、大部分は商社だということは、もうちまたに流れていると新聞記者が言っているんだ。それを大蔵省が、二十三日のできことを一週間もたって——銀行というのはあなたたちが認可しておるのでしょう。大蔵大臣の認可業務ですよ。休業を命令することもできれば、資格を取り上げることもできれば、生殺与奪の権を大蔵大臣は持っているんだ、金融業は許可制なんだから。その機関が、一週間たってそんなのがわからぬなんてちょぼけた話がありますか。
  101. 松川道哉

    ○松川政府委員 一月二十九日から調査にかかりましたと申し上げましたのは、二つの理由がございます。  一つは、私どもの検査官は二十人足らず、実員十七人でございますが、これは一定の検査計画を持ってみんな各地に出ております。これをまず呼び返して、この調査に当たる体制をつくるのに若干の日時を要したということが一つ。  それからもう一つは、調査項目ないしはどのような商社に取りに行ったらいいか、これのあらごなしをしてかかる、これに若干の準備的な日にちを要したということでございまして、調査自体に取りかかりましてからは、できるだけ早くその結論を出すよう急いでやっておる次第でございます。
  102. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間がありませんからこの論争はもうやめて、あとでわかったらただいまの企業の名前については、ひとつ理事会で取り計らい願いたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  103. 安倍晋太郎

    安倍委員長 ようございます。
  104. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、最後に、金融問題であります。  総需要抑制という見地から、昨年中は二月ごろから五回にわたる公定歩合の引き上げ、窓口規制、あれやこれや金融面でやれる手段はほとんど講じたやに見受けます。そこで、いま金融引き締めの状況というものがどういう状況になってきていて、大蔵大臣の判断で満足すべき事態を推移しているのか、それともまだ事足りぬという感情なのか、少々行き過ぎたかなという感覚なのか、ひとつ金融引き締め、総需要抑制の立場から、あなたの現時点における状況についての認識のほどを聞かしていただきたいと思います。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 金融引き締め政策は昨年の春から進められておりますので、逐次浸透してきております。今日の段階ではかなりのところまで来ているのではないか。日本銀行券の発行高を見ますと、昨年の夏ごろは前年比二七・九%というところまで行っておるのです。それが暮れには二五%ぐらいまで、それが一月になりましてとみに引き締まりまして、今日この時点では二一%というところまで来ておる。(「二三%じゃないかな」と呼ぶ者あり)今日この時点と申し上げたのです。二一・七%というところまで来ておるわけなんです。それから企業の手元の状態かなり窮屈になりまして、過去数回の引き締め時に比べまして、これは最も引き締まったような状態になってきております。このいまの引き締めの姿勢を堅持してまいりますれば、量的には、私は引き締め政策というものはまずまず所期の目的に到達するというところまでいくのじゃないか、そういうふうに見ております。  問題は、その質的の面に来ておる、そういうふうに見ておりまして、不要不急というか、そういう方面に金が流れないように、そういうほうの施策をこれからは進める。もうすでにそういう考え方を出しておりますが、その考え方が浸透するための施策を進めていく、こういうふうにいたしたいと思います。
  106. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いま大蔵大臣がおっしゃるように、日銀券の通貨量の推移は、なるほど十月ごろから少々減り始めておりますね。それから当座預金も定期性預金も、ピーク時と比較して一〇%、一二%、あるいは六%というように、増加率はずっと低下しております。手元流動性も大体この見込みどおりいっていれば、昭和三十九年の不況時の状態あるいは昭和四十四年の状態ぐらいの状況に相なる。  そこで銀行局長、この十月−十二月の一という見込みは、はたして見込みどおり推移しただろうか。一−三月の予測〇・九三という手元流動性もこのようにいくのか、あるいはこれより落ち込むのかどうなのか。一月の段階になっての見通しはどうですか、前と変わりませんか。
  107. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 御承知のように、正確な数字はまだ手元にございませんが、いまお話しのように、十二月にかなり預金が落ち込んでおります。したがって、そういう法人預金の取りくずしという状況からいたしますと、おそらくいまお話しのような十二月の場合に一カ月分という感じになっております。それから、一−三についても大体それよりさらに落ち込むであろうということは、日本銀行の短期経済観測等を見ても大体言えることからいたしますと、いま先生御指摘の〇・九三という水準を下回ることはあっても、それより上になることはないのではないかと思っております。
  108. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 全国の各種金融機関の貸し出しの状況を見ると、都市銀行あるいは中小金融機関はおしなべて前年比ずっと減になっておりますか、特に農協系統資金が−農協の場合はたいへんなあれですな、信連の場合は前年比一〇〇九、それから農協の場合は二八四・一、三倍近くですね。こういうふうに期別の貸し出し額が増加をしている。残高で比較しても、前年比で農協系統は五九・九伸びている。それから信連は七八、十、十一月の数字ですね。これじゃほかの金融機関が引き締めをだあっとやっても、農協系統資金はそのまま総需要抑制にはならぬ方向に作用していく心配があるのですが、この辺についての指導というのはいまどういうことになっていて、この農協系統の資金というものがずっと締まっているのかどうか、これはどうですか。
  109. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 お話しのように、去年の秋、非常に農協系統資金が出されておりました。これの原因は、もうお話しのように、引き締めのしりがそちらに回ってきて、いわば一般企業がそこに金を求めてきたということがおもな原因だろうと思います。それの実態が主として民間金融機関が保証するというような形で貸し出されておるというようなことから、まず金融機関の保証を全部ストップするという措置をとるということを去年の秋からやってまいりました。しかし、それでもなかなか思わしくございませんので、具体的にはいわゆる県段階の信連についてワクをつくり、それから農協についても最初は一億以上の大きな貸し出しについて規制をしてまいりましたが、十二月に入りましてから、さらにこれを資金量三千万以上の貸し出しについて報告を求めるということで現在やっております。それから金融機関の場合の保証についても、これは貸し出しと同じように扱うということで、全部の民間金融機関にいま指導をいたしておりますので、一−三につきましては、いま御指摘のような傾向が改まってくる、かように考えております。
  110. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 四十分までにあと五分しかありませんから、これははしょって要点だけお尋ねしますが、大臣は国会答弁の中でも、あるいは新聞記事の上でも、オーバーキルを覚悟の上で、あるいは摩擦や反動の現象は覚悟の上で勇往邁進するんだ、そして短期決戦物価問題を片づけるんだ、そういう一億一心、国民もそれにひとつ協力してくれという、かつての戦時中を思わせるようなことばがあちこちに散らばっているのでありますが、大臣考える、オーバーキルを覚悟の上でも、あるいは摩擦や反動を乗り越えて重大な決意でこれは取り組むのだ、こうおっしゃるそのオーバーキルというのがどの程度のものならやむを得ない、放置する、そうして総需要抑制は続けていく、あなたが考えている頭の中には何か基準があって、こういう要因がこうなったときには考えなければならぬ、まあこのくらいならこのまま押し通していくのだ、そういうオーバーキルの限界というか、内容というか、あなたの想定している中身はどういうことなんですか。
  111. 福田赳夫

    福田国務大臣 武藤さんは私の言っていることを正確に聞いておられないようだが、私はオーバーキルと言ったことはいまだかつてありません。政治家としてキルとは一体何だ、そんなことは私は考えたことがない。摩擦やきしみがあるということを言っている。私は摩擦やきしみがありましても、それに対しましてはそれ相応の手当てはします、しかし基調の転換物価の騰勢の鎮静、それが定着するまでは総需要抑制、この姿勢は断じて変えぬ、こういうことを私は申し上げておるわけなのですが、摩擦、きしみといえば、武藤さんも大体おわかりだろうと思う。これは一定の基準があって言っているわけじゃないのです。私が判断いたしまして、こういう事態には手を打たなければならぬ——一番大きく私が心配しておるのは中小企業の問題でございます。
  112. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 オーバーキルということばを言ってないけれども、不況ということばを使っているのですが、どこが違うのですか。不況をおそれていては難病の手術はできない——これはキルとは言ってないです。オーバーキルと不況ということばとどこが違うのですか。
  113. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ世間の人は同じような意味で言うのでしょう。言うのでしょうが、政治家福田赳夫はちゃんと区別して言っています。人を殺すようなことはいたしません。その辺はひとつ区別してお考え願いたい。
  114. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いま大蔵大臣は、一番心配しているのは中小企業影響だ、そのとおりです。私、いまこれから聞こうと思ったのですが、時間がありませんから、答えだけ聞きますが、いま歩積み両建てが中小企業にたいへん重くのしかかってきている。銀行はどうしても預金を集めるために、これだけひとつ預金をしてくれなければ貸せない、あるいは手形を割れない、かなりきつくなってきている。これが一点。  もう一つは、期限が来ていないのに、新しい高い金利に切りかえてくれという要求、これがかなり中小企業にやはりおおいかぶさっている。こういうような金融機関の姿勢について、やはり監督の任にある大蔵大臣として、この辺で実態をひとつ調査して——私らのところにもたいへん不満の投書が来ておるのであります。銀行局にはそれをお見せしてありますが、そういう中小企業の悩みを大蔵大臣としてきめこまかにひとつ状況を把握して、中小企業に対しては万々遺漏のない措置をとるのだ、こういう姿勢が明らかにできますか。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは明らかにできます。私は着任するとすぐ、とにかく不況をあえて招来しても物価を鎮静させなきやならぬ。そうなれば中小企業という問題がある。歩積み両建て、この問題が不況時にはすぐ問題になる。そういうことで、直ちに銀行局長にも注意をするように申しつけてあるのであります。  それから、いま期限の切りかえの問題を私は初めて伺いますが、そういうことがありますれば、これは妥当なことではありませんから、注意するようにいたします。
  116. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 約束の時間でありますから、これをもって質問を終わります。(拍手)
  117. 安倍晋太郎

  118. 増本一彦

    増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。  いま金融の引き締めの実態についてお伺いしましたけれども、それにもかかわらず、流通在庫、流通過程の在庫を中心にしてやはり在庫投資がふえているような傾向もあるわけですね。こういう事態に対して、いま大臣はどういうように考えておられるか、そのことをお伺いしたい。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 まさに、私は数字を調べたわけじゃありませんけれども、しかし、このごろの経済界の動向としますと、そういうことになっておるのじゃないかと思います。そこが問題なんです。つまり、みんな屯積というか、売り惜しみをしましてかかえておる。そして将来の値上がりを待つ。みんな国民が投機的心理になってきておるというところに問題がある。この投機的心理を断ち切らなきゃいかぬ、投機的社会風潮、この流れを転換しなければならぬ、これがこれからの課題である、こういうふうにいま思うのです。  いまそういう流通過程に滞積しておる物資、これは相当あるのじゃないかと私は思うのです。これは経済の流れが変わってきて、どうも先高見通しは持ち得ないということになれば、これは続々とそれを吐き出していくという状態になる、こういうふうに見ておりまして、四十九年度においては、在庫投資というのはさま変わりの大変化をいたすであろうというふうに見通しております。
  120. 増本一彦

    増本委員 このような在庫投資がふえているという状況は、数字の上では手元資金が窮屈になっているといいながら、実際には手元資金がいろいろな形でまだある、それが在庫投資の積み増しに回されて、物価の先高を見越していろいろ投機的な活動に出ている、こういう認識を持つわけですけれども、この点はそのとおりですか。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりだと思います。そこで金融を詰めまして、それを持ちこたえられないような状態をつくる。また見通しとしましても、持っておっても得にならぬという状態をつくる、こういう努力をしておるわけであります。そう遠くない機会に、そういうふうに流れが変わってくると思います。
  122. 増本一彦

    増本委員 ところで、この在庫投資に振り向けられる手元資金ですが、これがどこから生まれてきているのかという問題が一つあると思うのですね。これはやはり、いまの状態を見ていますと、特に価格をつり上げて、そうしてもう価格つり上げの競争をずっと大企業を中心に現にやっているわけですが、そういうところでたくさんの金を持ち、それをまたさらに投資に振り向けて価格のつり上げをはかっていく、こういう事態なんだというふうに思うのですが、その点はいかがなんでしょう。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう資金は、まあ個人的な手持ち資金なんということもありましょうが、主としてそれは利潤と銀行その他の金融機関からの借り入れ、そういうことだろうと思います。
  124. 増本一彦

    増本委員 一つは利潤、一つは銀行からの借り入れだ。そうしますと、銀行から借り入れている金がそういう物価をさらにつり上げていく、先高を見越した投資のために使われる、そうして現に物価をつり上げていく元凶になっているということになると、まだまだ引き締めは、結局、肝心のところではきいていないというように、大臣みずからおっしゃっているようにも思うのですが。  それから、もう一つは利潤ですけれども、利潤は、結局、価格をどんどんつり上げて、卸売り物価でもここへきて二九%をこえるというようなぐあいに、価格をどんどん上げるような競争をやって、そういうものが利潤の大きな中身になっている、こういうように思いますけれども、その点はいかがですか。
  125. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりだと思いますね。それであればこそ、金融を詰めているわけなんです。だんだんもう持ち続けにくくなってきておる状態である。私が先ほど、金融引き締め政策ももう一歩のところでその効を奏するだろうと申し上げているのは、まさにそのことなんです。  それから利潤のほうは、お話しのとおり価格の面から出てくる。つまり、量的な面からはもうそうは出てこないと思うのです。むしろ量的には取引量が減る。それにもかかわらず利潤があがるというゆえんのものは、価格の面からきておる。
  126. 増本一彦

    増本委員 そうなりますと、特に今日価格をつり上げていくその中心は、まあ大企業、中小企業、いろいろある中で、どこがそういう価格つり上げの推進力になっているとお考えなんでしょうか。
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ推進力といえば、とにかく国民全体の気持ちが、先は物価高だというようなことであったと思います。もうみんながそういう気持ちになっちゃった。このインフレムードというものがそういう事態をつくり出した、こういうふうに思いますが、そういう結果、価格のつり上げが行なわれて利潤があがるというのは、これはメーカーの段階でまずあると思うのです。  それから特に大きいのは、私は流通段階じゃないか、そういうふうに思います。たとえば、まあ丸棒、メーカーから出るのは幾らぐらいか、五万円はしないのじゃないかと思う。四万四、五千円ぐらいで出るのじゃないかと思う。それが末端では十万円だ。去年の暮れあたりは十一万円だという。それは一体どういうことなのだというと、流通段階かなりのものがもうけておる、こういうふうに見られるわけであります。やっぱりこれは、先は下がるという見通しがみんなの胸にしみつくという状態になりますれば、情勢は一変しちゃう。ことに在庫投資が相当ある今日におきましては、それを吐き出すということになると、さなきだに需給のバランスは大体とれている、そういう状態でありますので、これはもう非常な勢いで鎮静化というものが進んでいくのじゃあるまいか、そういう見方であります。
  128. 増本一彦

    増本委員 先月の二十五日に総理府が消費者物価のまとめを出しましたけれども、これを見ますと、中小企業の製品と大企業の製品と比較すると、いまでは大企業の製品のほうが価格の上げ率が高くなっているという事実があるのですね。だから、メーカー段階ということで一緒くたにしてしまっておられるけれども、まずやはり生産の基礎資材とか、そういうところからの値上げがどんどん出てくる。それからまた、いまお話があった丸棒を例にとりましても、流通段階できっちり握っているのは主として商社ですね。これも大手の商社なんかのシェアが非常に高い。だから、平電炉メーカーから出るものは、小型丸棒の場合に価格が、実需者ですね、大口の利用者の場合には、おっしゃるとおり四万二千円から四万五千円ぐらいですけれども、しかし商社が扱って中小企業建設業者に行くときにはものすごい値段で、全くさま変わりした値段で売られる。こういう面を見ますと、どれをとらえても、今日の段階は、いわゆる大手の企業、大企業が価格つり上げ競争の先頭を切っているというようにいわざるを得ないのですけれども、その点はいかがでしょう。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はいま、メーカー段階でもあるし、また特に流通段階で価格をつり上げているという面が非常に多いというふうに思うのですが、それが大企業がどうの、中小企業がどうのという区別はなかなかつけにくいんじゃないか、こういうふうに思います。大企業でも値上げはせぬというようなものもありまするし、小企業でもかなりはでなことをやるという企業もありまするし、その辺区別して調査はしておりませんけれども、どうも、私ども日常いろいろな人につき合っておりますが、そのつき合った感触からいいまして、その二つをせつ然と区別して考えるということは妥当でないように思います。
  130. 増本一彦

    増本委員 たとえばナフサがあの石油危機以降五〇%、特に十二月の段階でぽんと上がる。これは石油化学の大手のメーカーですよね。それからつい最近ですが、きのうあたりから、新日本製鉄を中心にして薄板とか大型形鋼とか、こういう高炉メーカーが、四月から大口の需要家に向けてのいわゆるひもつき価格を上げるというようなことも発表しているわけですね。洗剤にしましても、同じように、いままで大箱五百円であったものを、もう花王石鹸とかライオン油脂とか、そういう企業が、値上げを公正取引委員会で認めてくれないというので再販の届けを撤回して、もうどんどん値上げしている。これはいわばマーケットプライスのメーカーですね。文字どおり製品のメーカーであるだけじゃなくて、プライスメーカーにもなっている。ここのところにメスを入れるかどうかということが、物価を鎮静させていく上で私はきわめて重要なポイントであると思いますが、そういう御認識はお持ちにならないのでしょうか。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 増本さんは、大企業、中小企業にえらいこだわるようですが、これは両方ですよ。ただ大企業というものは、中小企業に比べると、企業としての社会的責任は私は重いと思います。そういう意味において、私は、大企業のマナーというものに対しまして非常に反省を求める、こういうような次第でございますが、いずれにいたしましても、大蔵省が担任するのは、これは総需要抑制なんですね。それだけじゃ網の目が荒過ぎてどうにもならぬ、景気鎮静対策の大綱はできますけれども、もう少しきめこまかくやらなきゃならぬというので、物資三法、これなんですが、まさにいま物資三法のほうがどっちかといえば、法もできたばかりなものですから手おくれになっている、私はこういうふうな認識であります。私は、所管外でありまするけれども、私も協力いたしまして、そっちのほうの施策が促進されるように努力いたしていきたい、かように考えております。
  132. 増本一彦

    増本委員 くどいようですけれども、もう一つお伺いしますが、四十九年三月の決算の予測がいろいろ出ているのですけれども、いま国民の一番うらみつらみに思っている、そして日本経済の中でも渦中にある石油会社八社が、四十九年三月の決算だと、前年同期比で三八%増で、二百十億である。この前は為替差益が大部分であったけれども、今度はそうじゃない、ドル高円安ですから。そういうもののショックを除いても、二百十億も利益を持つんです。これはもうけ過ぎているというようにお考えになりませんか。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も、物資官庁じゃございませんものですから、的確な、責任のあることを申し上げることはできませんけれども、通産大臣は、石油業の今日のあり方につきましては相当きびしい見方をしております。そして石油の価格につきましては、何とか通産省がこの値上げ抑制ということにつきまして努力をいたしたい、こういうようなことを申しておりますが、私も関心を持ってまいりたいと思っております。
  134. 増本一彦

    増本委員 これまでの大臣のお話を伺っていても、先高を見越した値上げや便乗値上げ、こういう問題に対して、やっぱりきっぱりとした手だてをとらなくちゃならぬという、そういうお気持ちはあると思うんですね。しかし、具体的な手だてとなると、それをおっしゃらないのですけれども、いまこういう状態ほんとうにずばり押えていく手だて、緊急対策といいますか、こういうものをいま国民は求めているのだというように思うのですが、緊急にすぐ手を打ってこの物価を鎮静させてくれという、そういう意味での手だてというものはお持ちなんでしょうか。
  135. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が進めておる総需要抑制というのは、私が短期決戦だと、こう言っておるんで、これなんかは緊急対策と言っていいんじゃないでしょうか。とにかく過去数回の金融引き締めよりももっと引き締めていこう、引き締められておりますが、もっとこれを強めたいというくらいの考え方。また財政につきましても、昭和四十八年度の予算につきましても新規に着工するものはもう認めない、こういうくらいなきびしい姿勢をとっておるわけなんです。これが一番のあれだと思うんです。  それから新しくできました三法、これは初めて一種の統制的なことをやるものですから、なかなか人もそろわぬし、なかなか準備も整わぬというのでまだもたもたしておりますけれども、これもだんだんと緒につきつつある。  そういうようなことで、所期の効果は必ずあがってくる、こういうように思っています。
  136. 増本一彦

    増本委員 そこでひとつ、こういうような便乗値上げをしてきた企業の製品の価格ですね、こういうものを凍結して、もうこれ以上値上げをさせない、特に流通段階で問題が大きいというようにおっしゃったんですが、そうなると卸、小売り、こういうことになりますが、この流通段階での市場の中で大きな役割りを果たしているのは、何といっても商社と百貨店ですね。特に、いま商社の悪というものが問題になっている。こういうものについて、大企業製品の価格を凍結する。そして、そういうものに対して政府がそういうことで要請をし行政指導する、それに対してもし言うことを聞かない場合には、これは大蔵省のほうでも、輸出入銀行でお金を貸していたり、あるいは大企業ですと開発銀行からお金を貸して、その他税制上もいろんな優遇措置がある、こういうような優遇措置はもうとらないぞというような手だてまで含めて、緊急に国民が要求しているこの物価を、値上げを鎮静化するというような手だてはおとりになれないのでしょうか。
  137. 福田赳夫

    福田国務大臣 それらを含めましていろいろ考えております。しかし、私のねらいは、いまのこの高くなった価格をそれで凍結しようと、そんなことじゃないのです。そうじゃなくて、もっとこれは下げなくちゃいかぬ。そういうことですから、その辺も含めまして御理解のほどをお願い申し上げます。
  138. 増本一彦

    増本委員 私が先ほどから大臣に伺っているのは、その下げる手だてなんですよ。これを短期決戦で総需要抑制だ、こういうようにおっしゃいますけれども、総需要抑制というのは網の目が荒い、だから、それはもっとこまかく押えていかなくちゃならない、その突っかい棒が三法だということになると、大蔵省のほうとしては、ただ大きい網の目でかぶせていくだけだと、こういうことになって、下げるための具体的な手だてというものは、大臣自身としてはお持ちになっていないようにうかがえるのですが、どうなんでしょう。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまの物の価格には、水ぶくれの、その水の部分が非常に多いのですよ。これは総需要抑制されて、もうこれは非常に売りにくいという状態になれば、価格はずっと落ちてきます。そういう状態を私はねらっておるわけなんです。しかし、物によっては、コストの問題とかなんとかで、値上げをしたいというような気持ちになる企業も出てくるだろうと思います。そういう際に、それは待ってくれ、いま非常な事態である、ひとつ協力してくれ、こういうようなことは当然考えております。
  140. 増本一彦

    増本委員 ですから、その水ぶくれを押える。水ぶくれと言う以上、先ほどのお話に戻りますけれども、幾ら金融を引き締めていても、価格が上がって、そうして膨大な手元資金をまた手に入れて在庫投資をやる、こういうところでだぶついているお金を、細い管で吸い上げるのじゃなくて、もうバケツでかい出すくらいな気持ちで、こういうものはかい出さないといかぬと思うのですね。そういう意味で、手元資金を在庫投資や何かに向けたりいろんなことをやっておる会社、あるいはここで八つの会社で二百十億も、一年前と比べると三七%も利益をあげるというような石油会社や、いろんな会社があるわけですね。新聞をにぎわしている、経常利益が三月末の決算では膨大になるというような会社がたくさんある。こういうところからも金を吸収していくような手だてというのはお考えになっているのでしょうか。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 それが金融引き締め政策なんですよ。これはかなりきいてきているのです。もう銀行からは金が借りられない、先はどうも高く売れそうもないということなら、みんな吐き出しちゃいます。そういう状態の一刻も早く来るようにということをねらいながら、いま、一方においては需要抑制する、一方においては金を詰めちゃう、こういう政策をとっておる。そういう状態になりますよ。
  142. 増本一彦

    増本委員 昨年暮れの異常な事態を見てみましても、いまでもその影響が大きいのですけれども、たとえば洗剤なんかそうですね。あれは、洗剤のメーカーのほうでは出した出したといいながら、中間の段階でそれがとまっちゃっていて、そうしてどこの倉庫にも隠されて、何万ケースというのが積まれている。そして価格の値上がりを待ち、パニックのような状態をつくったところで小出しに出して、利益をあげているわけですね。そういうところで在庫投資に積み増しされている金が、これは銀行から出ている金だったら、それを押えていくということで、出なくなればできなくなるかもしれない。しかし、価格をつり上げて握ったお金ですから、これは銀行に関係ないところで、どんどんまたさらに次の投機や買い占めをねらって動く。ここのところをどうやって縛るかということも、引き締めと同時に大事な問題だというように思うのですね。ですから、銀行の金融以外でのそういう流れている手元資金や投機に向けられるような資金を、思い切って吸収するような手だてというのはないのか、こういうことを伺っているのです。
  143. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはまさに物資三法の発動によるわけです。この物資三法を発動しまして、近く一千カ所に及ぶ倉庫の調査をする、こういうこともいま計画されておるわけでございますが、そういうことでもしやり玉に上がったというような企業がありますれば、その企業に対する融資を考えなければならぬとか、いろいろなその融資面でも考えることができると思いますが、そういう個別対策もまた、物資三法を軸としていまスタートにかかった、こういう段階でございます。
  144. 増本一彦

    増本委員 税制の上でこういうものをもっと、たとえば法人税率を高度累進に向くような構造にして税負担を重くしていく、そうして吐き出させるような手だてをとっていくとか、あるいはいまいろいろ論議されている超過利得に対して課税をくふうするとか、そこの辺の手だてはどうなんでしょう。ただ一律、今度まだ法人税率もようやく四〇%になったというだけですけれども、これをさらにもっときびしく取っていくとか、あるいはいまこういう事態ですから、さらに法人税に付加税を課して、その付加税については累進構造にして、一定の基準よりも、たとえば昨年、四十七年と比べて五〇%以上も法人所得をあげているような企業に対しては、さらに三〇%、四〇%ぐらいまでの上限で、段階的に、累進的に、これはもう国庫に吸収しちゃう。そういうようなところで政策的に、実質的、あばれ回っているそういう在庫投資なんかに向けられる資金を吸い上げる手だてというのが必要なんじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ在庫投資もさることながら、国民感情として、そういう不当なというか、困難なる時局にかかわらず、それにつけ込んで利得をする、こういう行為は許されざることである、私はこういうふうに思うのです。ですから、何か制裁の手段があればといって、いま考えておる段階である、そういうふうに御理解願いたい。
  146. 増本一彦

    増本委員 大臣の先ほどからのお話の経済見通しでいっても、短期決戦ということになりますから、これは三月期の決算でばっちり押えなければ時期を失してしまうということにもなるわけですね。それ以降でもさらに膨大な利益をあげることのできるような異常な経済環境というものをおつくりにならないというたてまえであると思うのですよ、その短期決戦ということの意味は。だとすれば、もう具体的な手だてなり方向というものは、本来、政策の面でその方向が出ていなければいけないというように思うのですがね。  そこで、もう一度お伺いするのですが、その方向は、税制の上でもさらに法人税の付加税としてやるなり、いろいろな税制面でも重課をしていくという方向はお考えなのかどうか、その点はいかがですか。
  147. 福田赳夫

    福田国務大臣 もちろん、私が大蔵大臣として考えておるということはそういうことですよ。しかも、何も先々のことを考えているのじゃないのです。三月期をねらっておるわけだ。もう九月決算などというときには、そういう問題はそう問題にはならぬという事態を早くつくり出したい、こういう考えでございます。
  148. 増本一彦

    増本委員 それでは次に、先ほど日銀券の発行の増加率がずっと落ちてきているというお話がありましたけれども、先に伺っておきたいのは、日銀券の増加率は大体どのくらいが適正であるというように大臣はお考えになっていらっしゃるのですか。
  149. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはむずかしい問題ですが、過去の実績では、大体、国民の消費と一緒に連動しながら動いておる。ですから、傾向線をとってみますと、百貨店の売れ行きですね、そういう指数と非常に近似してくる傾向を持っております。私は、経済が鎮静し落ち込みますれば、これはいま何%と申し上げることは非常に無理かもしれませんが、かなりの落ち込みをしてくるだろう、こういうふうに思っております。  こういう事態になる前の二年ぐらい前の状態では、前年比大体一五%前後の増加を示しておりますが、しかし、ああいう経済状態にはなかなかもう復元せしむることはできないし、それは妥当ではない、こういうふうに私は考えておりますけれども、安定した時点におきましては、もっと下がってくべきものであろう、かように考えます。
  150. 増本一彦

    増本委員 五回にもわたる公定歩合の引き上げで、非常に高金利の時代になってきているわけですね。あとで若干触れますけれども、これが中小企業にとってはたいへん大きな問題になってきている。  いまここで、資金需要をやはり押えていくという点で、準備率の引き上げについてはどういうようにお考えになっているか。特に先ほども例に出されましたけれども、外国為替銀行が二十三日には七億四千万ドルのドル買いをやって、六百億円日銀から吸い上げられる、こういうこともあったわけですけれども、もっとそういう面ではシフトを高くしてもいいのではないか。それが、大企業中心の設備投資、巨額の資金を借りてあばれ回ることをもうひとつ押えていく手だてになるのじゃないか、この辺のところはどういうようにお考えでしょうか。
  151. 福田赳夫

    福田国務大臣 大商社の問題ですが、これは対外活動を相当やっておりまするから、これができないような状態に持っていくということは妥当じゃない。自分で自分の首を締めるというような事態になりますので、その辺は気をつけなければなりませんけれども、しかし、商社が国内活動をしている面もあるわけなんです。そういう面も考えながら、商社につきましては日本銀行がこれに貸し出しをいたすワクを設定いたしまして、そして厳重に規制をいたしておる、こういうのが現状であります。
  152. 増本一彦

    増本委員 預金準備率の引き上げについてはどうなんでしょうか。
  153. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 預金準備率、すでに御承知のように、いままで全部で一兆七千億という金を積ましております。これは一兆七千億のうち一兆が都市銀行で、残りが地方銀行四千億といった形でやっております。ということは、都市銀行あるいは地方銀行、主として都市銀行でございますが、都市銀行の手元を締めることを通じて貸し出しを抑制するということでございまして、先生の御趣旨が大企業中心の貸し出しをそういう形で締めていけということでございますと、もちろんこの準備率操作というのはそういうことがねらいではございませんが、結果的には、都市銀行が比較的大企業を相手にしているということからすると、準備率操作というものはやはり直接的には大企業のほうにかかってくる。また、相互銀行、信用金庫といった中小金融機関についてはきわめてわずかの準備率しかかけていないというところからいたしますと、中小金融については、準備率操作の上でも配慮しておるということが言えるかと思います。  今後なおかつこれを上げていくべきではないかというお話もあろうかと思いますが、その辺のところはやはり金融政策の今後の問題でございまして、その点につきましては、先ほど大臣がお答えした考え方で臨んでいくということだと思います。
  154. 増本一彦

    増本委員 時間があまりありませんので急ぎますが、一兆七千億を預金準備率の引き上げで凍結している。しかし、その一方で、四十八年には日銀の国債買い上げが二兆九百八十六億円の買い超になっているのですね。これは御存じだと思うのです。こういう問題については、やはりこういういまの時期だけに、日銀の長期国債の買い受けを停止するという措置もとる必要があるんじゃないでしょうか。ここらのところはいかがですか。
  155. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 確かに日本銀行の貸し出しという問題が一方には行なわれておるわけでございます。ただ日本銀行の操作、貸し出しあるいはオペレーションといったものは、季節的な金融の繁閑を調整していくということが主体で行なわれていくわけでございます。その結果、必要な通貨量をどれだけ供給していくかということとの兼ね合わせの結果においてどれだけの通貨供給が行なわれたか、それがマネーサプライなりの形となってあらわれてくるわけでございます。準備率を一方で上げておきながら、一方で貸し出しをしておるのはおかしいではないかということは、確かに両建てになっておる、それは本来、伝統的な準備率操作ということからすると、やはり非常におかしな姿だろうと思います。しかし、これは日本金融構造といいますか、あるいは産業構造といいますか、ということとどうしても切り離せない過程の上での現象でございまして、これをもって金融引き締めがしり抜けになっておるというようには必ずしも考えておりません。
  156. 増本一彦

    増本委員 時間がありませんので、突っ込んだ議論はもうこれで打ち切ります。  最後に一つ、これは大臣にお願いですけれども、中小企業金融の問題、いただいた資料によりますと、一−三月の政府系の三つの金融機関、国民金融公庫中小企業金融公庫、商工中金、これは合わせて三千七百二十三億円の貸し出し計画になっておるのですね。しかし、いまもう二月危機、三月危機というようなことがいわれ、そして中小企業は、もう資材を買うにも手形サイトは短くされてしまう、現金決済を迫られる。中小企業の健全な発展をはかるということをお考えになっている大臣として、昨年の暮れに緊急融資をおやりになりましたけれども、この政府金融機関に対する出資をもっとふやして、そして中小企業金融を円滑にやり、十分に中小企業をこの危機から守っていく、こういう手だてをとるべきではないかというように思いますが、その点についての方策だけを伺って終わりたいと思います。
  157. 福田赳夫

    福田国務大臣 中小企業については特別に配慮しているということは重々御承知と思いますが、市中銀行におきましても、各種の金融機関におきましても、中小企業のことをたいへん心配しておるのです。  それで、自主的な動きでございますが、都市銀行、それから地方銀行、信託銀行、そういうところで三千二百億円の金を用意いたしまして、これは政府金融のほうは金利でいいますと、三機関のほうが八分九厘くらいになりますが、それよりはかなり下回る率で、景気が沈滞過程に入り、そして中小企業にしわ寄せがいくというような事態があれば、それも一助にしたい、こういうようなことも考えておるくらいなんです。年末に三機関による貸し出しの準備はしましたが、これからの情勢の推移を見まして、適時適切に善処してまいります。
  158. 増本一彦

    増本委員 それでは時間ですので、終わります。(拍手)
  159. 安倍晋太郎

  160. 田中昭二

    田中(昭)委員 初めに、大臣財政演説並びに本会議等におきます政府答弁を聞いておりますと、今般の異常な事態を招いた政府の政治責任について、政府にみじんも反省の色がうかがえないということを、私非常に憤りをもって感じておるのでございますが、時間も少ししかございませんから、一、二の点について御質問申し上げます。  本国会が再開されましてきのうまで、また当委員会におきましても、最近の異常事態につきましてはいろんな論議がかわされてきましたが、この現在の経済の混乱の状態政府のその施策の失敗の数々は、さらにここでいろいろ繰り返すまでもございません。この政府の失政の結果は、いわゆる弱い立場の人々の賃金収入や、また一般消費需要にまでその責任を転嫁しようとしております。  そこで、大臣所信表明の中で特に注目されますことは、物価の安定の問題でございます。このむずかしい問題は、国民も非常に疑問に思っておるのでございます。大臣は、総需要抑制が肝要、その一点の施策は、国民生活安定緊急措置法などに基づく個別物価の対策の強力な推進とも相まって、現下経済動向鎮静化し、物価問題を解決する、そのように言っておられますが、これでほんとう物価が安定するでしょうか。私は物価の安定どころか、逆に所得の再配分と資源配分の不公正の拡大をもたらし、国民生活はさらに重大な影響を受けるのではないかと思いますが、大臣の御所見を伺います。
  161. 福田赳夫

    福田国務大臣 田中さんはどうも私の施策にあまり御理解がないようですが、私は、とにかく財政面で財政需要をありったけ切り詰める、それから金融政策では産業需要を切り詰める、この二つの政策が並行していくのですから、これはもう数カ月のうちに様相が一変してくる、こういうふうに確信をいたしておるのです。ただ、これはいわば大謀網みたいなものですから、もう少しきめのこまかい施策も必要である、こういうので物資三法も活用しなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、これは私は自信を持っておるというか、確信をしておるのです。この道を少し続けていけば、必ずさま変わりの経済情勢に非常に近い機会になってくる、こういうふうに思っているのです。まあ見通しのことですから、見解の相違ということもあろうかと思います。
  162. 田中昭二

    田中(昭)委員 しかし、大臣のお話をずっと承っておりますと、これは過去のことになりますけれども、高度成長のひずみによってもたらされております根強いわが国経済構造、その中に実在しております社会的不公正、その不公正要因をそのままにしているように思えてならないのです。また、むしろそういう意味では、不公正を促進しているように思えるのです。その点について若干例をあげまして、今後どう対処されるか、お伺いしていきます。  まず、政府は昨年十二月に公定歩合を二%引き上げ、引き締めを強化する一方、預金金利は最高一%の引き上げにとどまってしまった。その結果、一年定期で七・二五の預貯金金利となったわけでありますが、諸物価の中には、ここ二、三カ月で二倍、三倍も値上がりしている状況であります。このインフレによる大衆の預貯金の減価は避けられないのであります。一方では、資産所得者優遇の土地税制など、手つかずに終わっております。そのほか多くの社会的不公正が見受けられます。  また、石油危機に便乗した企業のもうけ過ぎに世論の批判が集中しておりますが、政府も超過利得税の導入等を検討しているとのことでございますが、最近の報道によりますと、便乗利益を得ました大企業が、三月期決算を間近に控えて表面を減益となるようにするためにいろいろな名目で操作し、内部留保をふやし、利益計上を押えるのにやっきとなっているということであります。  すなわち一昨日の新聞報道によりますと、新日鉄など大手鉄鋼三社は、固定資産償却を定額法から定率法に切りかえ、約二百五十億円の利益を圧縮する。また化学会社は、東洋曹達工業などがやはり定率法に切りかえるほか有税償却をたっぷり見込む、またベースアップに伴う退職引き当て金を大幅に積み増すなど、各種引き当て金を増額計上する。石油精製や商社などは、円の実質切り下げに伴い為替差損を目一ぱいに落とすなどして、利益計上を押える見込みだというのであります。超過利得税をもって対処されるのに別に反対するわけではありませんが、利益隠しができる現行の税法にこそ問題の焦点を合わせるべきではないかと私は思うのであります。  このような現状は、国民から見れば、その実態にそぐわない大企業に有利な各種引き当て金、準備金、償却方法など租税特別措置法の規定、これに対しましては、わが党もその徹底的洗い直しを要求してきましたが、それにもかかわらず、本年はさらに新たなその適用限度の引き上げや適用期間の延長、この中には、技術等海外取引に係る所得の特別控除制度のほか、多くの大企業への恩典を新設して、世論の批判に逆行するような租税特別措置を温存しておる政府の責任は重大であります。さきに報道されておりますように、大企業だけは逆粉飾決算とか過剰利益の隠し合いというものをやっており、そういうものを見ておりますと、その与える国民的感情への影響ははかり知れないものがございます。このようなことこそ社会的不公正の増長であり、インフレに悩む国民の怒りに、大臣、いかがお考えになり、どのように対処されるおつもりですか。責任ある御答弁をお願いします。
  163. 福田赳夫

    福田国務大臣 こういう異常な物価高というものは、それ自体が社会的不公正を招く。私は、それがゆえにこのインフレ社会に早く終止符を打たなければならない、こういうふうに考えているのですよ。そのためにあらゆる施策を講ずるというのが、いまの私の立場でございます。  預金金利の問題だとか、土地税制だとか、また租税特別措置の問題、超過利得の問題、まあいろいろの御指摘はありましたが、とにかく一番何といったって社会的不公正の源泉は何だといえば、これは異常な物価高、この状態がとにかく一番そういうものの元凶である、そういう認識で、何とかして一刻も早くその事態を遮断してまいりたい、これが私の基本的な考え方なんです。いろいろの御指摘はありましたが、私どものとっておる施策、そういうものは決していま私が申し上げた考え方と矛盾するものはありません。いろいろの立場からそれぞれの施策はとっておるわけでございますので、とにかく物価の安定を早くやるということに全精力をあげてまいりたい、かような考えです。
  164. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま物価の安定に努力されているということは、それなりのおことばを信じろということでございますから、それはもう今後の経過を見てみなければわかりませんけれども、私は現在の税法の中からとりましても、このような不公正があるからこそ、新聞報道等に出るように、大企業が利益隠しに四苦八苦しておる、そして内部保留にやっきになっておる、超過利得税なんか肩すかしだと。そしていま言いましたように、大企業にだけ有利な海外投資等の特別控除制度まで新たに設けるというようなことについては、あまりお答えがなかったようでございます。その辺のところのお考えを、また責任ある答弁をひとつお願いします。
  165. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど御指摘がありましたのは、土地税制がまず第一ですね。この土地税制につきましては、税制調査会でもたいへん議論があったんです。しかし、結論としては非常に明快な結論が出ているわけです。つまり長期保有の土地に対する分離課税、分離定率課税ですね。この問題でありますが、これはやっぱり総合所得課税に復元するというようなことになりますと、これはもう土地が出てこない。出てきても切り売りになっちゃうんです。そういうようなことを考えると、いまこれを撤廃するということは、また住宅対策というような方面から支障があるんじゃないか、こういうことになるわけです。住宅対策も、これは重視しなければならない問題です。そういうようなことから、あれはいずれにしても昭和五十年末までの措置でありますから、この次の通常国会のときにはこれにかわる考え方を御審議願わなければならない、こういうことになろうかと思います。  それから、特別措置を全廃せよというお話でございますが、これはもう田中さんがよく御承知のとおり、特別措置にはそれぞれみんなそれ相応の事情がありまして残っておるような次第でございまして、そういう政策目的を達したというようなものにつきましては、もうこれは当然改廃ということをいたしていい、こういうふうに考えておるわけであります。今後ともそのようにいたしたい。  それから、超過利得の問題で、合法的というか、いろんなくふうがこらされて、隠匿して少なくしようという傾向が見受けられるというお話でございますが、確かに私はそういう傾向があると思うのです。それはなぜかというと、超過利得税説が出てきたからであろう、こういうふうに思うのでありますが、しかし、それにしましても、やっぱり社会正義というような考え方、そういう国民感情、そういうものから見ますと、どうしても、まあこれをどういう形にいたしますか具体化するというような考え方、これは私は政治の判断の問題だろう、こういうふうに思うのです。これは私、まだ具体的な方法につきましては考えてはおりませんけれども、皆さんの御意向等も広く伺いまして結論を出すべきであろう、こういうふうに考えておるのです。  それから逋脱、利益の隠匿というか、そういうような行為が不合法な方法で行なわれるというようなことがありますれば、これはわが有能なる税務官庁としまして、これを見のがすわけはございません。もう叱咤勉励をいたしておるわけでございますから、その辺は御理解をいただきたい、かように考えております。
  166. 田中昭二

    田中(昭)委員 くどいようですけれども、いま土地の問題と超過利得の問題と租税特別措置の問題をお話しいただいたわけですけれども、それは不法があればちゃんとやることはやられるわけですけれども、私は、税法でいろいろきめてある特別な優遇措置が悪用されている現実があるじゃないですか、こう言ったわけです。それは、特別措置の中には、中小企業にも恩典があるような項目もございます。しかし、私も知っておるつもりですけれでも、まだ私も知り得ないような、最近もうとにかく込み入ったいろいろな軽減措置が見られます。それをなぜ今度の改正でもまたふやして、いわゆる利益を隠すというよりも、まあ結局は隠すことになりますが、減益させるというような、ここにも報道が出ておるのですよ。そういうものに悪用されるような特別措置をなぜ期間延長したり限度額を引き上げたりしなければいけないか、こういうように言っているわけですけれども、主税局長でもいいですけれども、お答えいただきたい。
  167. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 本年の改正におきましては、一方において引き当て金あるいは準備金の整理を一部やっております。まだまだ不十分だというおしかりを受けるかとも思いますが、延長したものもございます。しかし、それはまた詳細に御審議を求めたいと思っております。何か最近の企業の実態との関連において、非常に現在のような状態のときに、いわゆる利益の調整に好都合のような制度が新しくできたというような御発言でございますけれども、私どもとしては、こういう状態のときにちょうど好都合に働くような制度を今回設けたというふうには考えていないのでございまして、詳しくはまた細目を伺いましてお答えをいたしたいと思います。
  168. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に、大臣、それは簡単なことで、重複することでございますけれども、お聞きいただきたいと思います。  総需要抑制策でたいへん影響を受けまして、原材料の価格の異常なこういうような急騰、そのために資金繰りに困っておる中小企業がたいへん出ておるわけでございますが、このことについては、特にわが党も昨年の年末も政府に強く要望してまいりました。このままでは、たいへん多くの休業者や倒産者が出てたいへんな状態に追い込まれるのではないか、このような声をたくさん聞きます。  そこで、まず、引き締めは今後とも続けていかれるお考えなのか、これが一点。  二点目は、今後の事態を見ながら緩和せざるを得ない時期が来ると思いますが、大臣はどのような事態をもって緩和の時期とお考えになりますか。これが第二点。  最後に、年度末にはかなりきびしい情勢になると思いますが、中小企業に対する運転資金の緊急融資について、具体的にどのようなお考えをお持ちになっておりますか、お聞かせを願いたいと思います。
  169. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず、引き締めを続ける考えかということでありますが、この体制は堅持してまいるという考えであります。  それから、どういう事態になったらこれを解除するかというお話でございますが、これは経済鎮静化し、物価が安定するというその時期におきましてはこれを解除する、さように考えます。  それから緊急融資、そういうようなものについて考えておるかというお話でございますが、こういう私の考え方を進めますと、これは景気は沈滞をしますし、そしていわゆる不況状態が出る。そのしわ寄せが中小企業に片寄らないように、これはもう最善の努力を、万般の努力をいたします。  それから、融資等につきましても、即時即応の臨機の措置をとりたい、かような考えでございます。
  170. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで、私は、具体的なこまかい問題をひとつ取り上げて大臣に聞いてもらいたいわけですが、昨年からの石油危機、それに伴う電力の規制、そこである業界の人がこういうことを言っております。これは政府大臣なり通産大臣なりがおっしゃったことをテレビなんかで聞きまして、それをそのまま要約して言っておるわけですが、私は、この言われたことは、おそらく大臣もその本意は御賛成だろうと思いますが、ちょっと読んでみます。  「政府は、一方で大儲けをする大企業、大商社、他方で谷間にしずみ飢えになく中小企業や零細企業、」こういうものがあるというわけですね。「こうした跛行的な現象は絶対におこさしてはならない、総ゆる施策で之を防がねばならない。」こういう発言を政府大臣、いろいろな方がいろんな場所でおっしゃっておるというふうにある業界の中で言っておるわけでございますが、この本意は間違いございませんでしょうか。
  171. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは間違いございません。
  172. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこでお尋ねします。はっきり具体的に申し上げます。  これは大蔵大臣の所感の部分もありますし、通産大臣の所感の部分もございますが、いま申し上げましたこの零細企業の中に、全国のネオンサインのネオン業者というのがございます。この人たちは、この電力規制によりまして多大な打撃を受けております。その実情に対しいかなる救済策をとってこられましたか、いままで、きょう現在まで。また、きょう以後、今後の見通し、どういうものをお持ちになっておられますか。こまかい問題ですけれども、お尋ねしておきたいと思います。
  173. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま、一般的に中小企業に対しては、その不況のしわ寄せが片寄らないようにという政策をとっておるわけなんです。そこで、どこの業種がどうだというような業種別の統一した施策、こういう段階とはまだ考えておりません。
  174. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、大臣が抽象的なことを言っても、いわゆる大臣のずっと下の行政がそれに対応していないのですよ。だから私は、こういう具体的な問題を申し上げた。具体的な問題を申し上げても、そういう抽象的な、そういう固定の業種に対しては考えていないというようなことですか。問題ですよ、それは。
  175. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう問題につきましては、中小企業庁にひとつお聞き願いたいのです。私どもとしてはそこまで考えておりません。
  176. 外山弘

    ○外山政府委員 中小企業全体に対しまして、昨年来の物不足、金融引き締めの状況がどういう状態で推移していくか、どういう事業活動に対して影響を持ってくるかということに対しては慎重に注意しておりますが、ただいま先生が御指摘のようなネオンのような業種、これは実を申しますと、物不足と申しますか、電力制限という具体的な行政措置によって急速に、しかも大きな影響がはっきりと出てくる業種でございます。ここにも資源エネルギー庁の公益事業部の方が見えておりますが、その実態はそちらでよく承知しておるわけでございますが、私どもの聞いた限りにおきましては、ネオンに関する限り、やはり非常に大きな影響が具体的に急速に起きたというふうな判断に立ちまして、実はとりあえず政府系三機関に対して、その実情をよく見て適応するように指示するとともに、現在大蔵当局と、それに対する融資条件の弾力化等を含めまして、どういう緊急措置をとったらよろしいか、いま打ち合わせをしておるところでございます。
  177. 田中昭二

    田中(昭)委員 そういうことでは、この人たちは食うことにもいま困っているのです。まあどういう融資をされるか知りませんが、そういうことでお茶を濁されたら困りますといって、業者の人たちはデモをやったり何かして大騒動になっているのです。大臣は御存じなかったのは事実だろうと思います。だけれども大臣が知らないでも、そういう業界の方は、もうはっきりいいまして、九州でも十一月、十二月の収入は七〇%、八〇%の落ち込みなんです、十一月、十二月の水揚げは。中にはゼロの人もいるのです。そういう人も、税金の納期が十二月にくれば払わなければならないのです。そうでしょう。一月なんか、全然注文もないし、お金も入ってこない。しかし、一月の末には税金を納めなければならぬ。こういう問題が起こってきますと、出先の税務署に何とか税金を待ってくださいということがもう起こっておるのです。その起こったときに、私も陳情を受けまして、中に入っていろいろ話をしてあげました。国税庁のほうもたいへんそれに応ずるような態度をとってくれました。  そういうふうに、行政がほんとうに困った人たちに対して——先ほど大臣に私確認しました、そういう谷間に落ち込むような人、そういうあす食う米がない、金が入ってこないという者に対しては、絶対そういうことのないような施策を講じますということについては、御賛成いただいたじゃないですか。こういうことだからいろいろな騒動が起こってきて、結局、最後はほんとうに——年間一千万か五百万ぐらいの収入しかない人もネオン業者の中におるのですよ。そういう人が月に百万の収入が入らなかったら、ゼロになったらどうなるかということを、電力規制をやる場合に事前に考えるべきが行政府の当然の責任じゃないですか。そうでしょう。  中小企業庁は、まあ中小企業庁も取り上げておるでしょうけれども、去年の十月からこの業者が何回役所にお願いに参っておりますか。十月二十八日、十一月八日、十一月九日、だれだれに会った。これは役所だけでなしに、自民党のおえらい方たちにも−このネオン業界の顧問には通産大臣もなっておられますからね。十一月十五日、十一月十九日、十一月二十七日。これで六回です。十二月に入って十二月一日、二十七日、二十八日、年の迫った中にも、収入が一銭も入らなくなった業者を代表して役所に会いに行って、この救済方をお願いしておる。まだ何も手が打たれていない。そして明けまして一月に、さらに四回も五回も役所に足を運んで、ようやく、いま中小企業庁がおっしゃったように、一月の二十四日に国の三金融機関に対して特段の配慮をしてくださいという通達を出されただけなんだ。私はおこりたくないのですけれども、こういう電力規制をやることによって百%の落ち込みをするような業界に対しては、もう少し親切な立場をとるのが行政じゃないかということを叫びたいわけです。これはひとつ、時間もございませんから、きょうはエネルギー庁の方も来ておるが、いろいろそのときのいきさつのことを私が申し上げても、これは解決するものじゃありません。私は、いままでそういう手をとらなかったことについてはたいへん不親切でありましたというくらいな気持ちをあらわしていいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 早急に結論を出します。
  179. 田中昭二

    田中(昭)委員 中小企業庁。
  180. 外山弘

    ○外山政府委員 私どもが具体的な事情を承知したのがことしに入ってからという点もございまして、気がついたときの措置は一番早くやったわけでございますけれども、そういう意味で、御指摘の点はよく頭に入れまして、今後も状況の把握を十分慎重にはかってまいりたい、こう考える次第でございます。
  181. 田中昭二

    田中(昭)委員 これはちょっと大事なことですから言っておきますが、いま中小企業庁は、ことしに入ってから具体的なことを聞いたと言いますけれども、私、先ほどから十月、十一月、あなたたちの役所の人が会っているということを申し上げたじゃないですか。それだったら名前を申し上げて——あなたのいまのお話では、いまになってようやく実情がわかったと言いますけれども、去年のうちにあなたのほうはちゃんと指示していますよ。そういうことを言うからだめなんですよ。
  182. 外山弘

    ○外山政府委員 それは資源エネルギー庁のほうが原局でございますから、そこが直接お目にかかっていろいろ指導をしていたと思います。つまり所管原局が資源エネルギー庁の公益事業部でございまして、そこを通じて私どもは承知するわけでございます。
  183. 田中昭二

    田中(昭)委員 了解。
  184. 安倍晋太郎

    安倍委員長 次回は、来たる八日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時五十二分散会