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1974-03-29 第72回国会 衆議院 商工委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十九日(金曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員   委員長 濱野 清吾君    理事稻村左四郎君 理事 左藤  恵君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 武藤 嘉文君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君       天野 公義君    浦野 幸男君       小川 平二君    越智 通雄君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       島村 一郎君    田中 榮一君       丹羽喬四郎君    橋口  隆君       松永  光君    保岡 興治君       岡田 哲児君    加藤 清政君       上坂  昇君    佐野  進君       山崎 始男君    渡辺 三郎君       米原  昶君    松尾 信人君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         通商産業政務次         官       森下 元晴君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         資源エネルギー         庁石油部長   熊谷 善二君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岸田 文武君         中小企業庁次長 小山  実君  委員外出席者         環境庁企画調整         局公害保健課長 竹中 浩治君         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 遠藤  茂君         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         大蔵省主計局主         計官      禿河 徹映君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮澤  香君         農林省農蚕園芸         局農産課長   工藤 健一君         通商産業省機械         情報産業局次長 野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         運輸省鉄道監督         局総務課長   西村 英一君         日本国有鉄道事         業局次長    武藤  格君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   島村 一郎君     保岡 興治君 同日  辞任         補欠選任   保岡 興治君     島村 一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件   私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。質疑申し出がありますので、これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 岸田部長おられますね。  先般私は、当委員会において電気工事保安に関する問題について質疑をいたしまして、十分検討するように申し上げておいたわけですが、その後、電気事業法改正の問題、保安協会強化の問題、電気工事業者に対して保安義務を負わせる問題等々いろいろ調査研究に当たられたと思いますが、結果がおわかりでしたら、結果というのか、考え方ですね、それをお聞かせいただきたいと思います。
  4. 岸田文武

    岸田政府委員 たしか、前回指摘いただきましたのは昨年の九月であったかと思っております。中村委員から一般用電気工作物保安体制あり方いかんという問題を御提出いただきまして、私ども非常に大きな問題というふうに考えまして、さっそく電気事業者それから保安協会電気工事業者関係の団体及び事業者を呼びまして、それぞれいままでどういうことをやってきたか、どういう問題をかかえておるのか、また今後の改善方向はどうかというような点について調査をいたしました。三者ともいろいろ立場が分かれておりまして、これをどういうふうにまとめるかというようなことで、この調整のために実は三者合同懇談会というようなものを企画いたしまして、今年二月に実施をいたしました。特に、先回指摘ありました工事業者のこれからのあり方いかんというような問題につきましては、工事業界の中でもいろいろ意見があるようでございます。むしろ定期検査体制の中にみずから入っていくというような方向がいいのではないかという意見もあれば、他方そういうふうにするとかえって過重の責任を負う、むしろ自主保安体制を応援するというような方向がいいのではないか、また、各地で設けられております保安センター強化するというようなやり方で実際上の処理を能率化していくというような方向に当面の課題を見つけるべきではないか、さまざまな意見が私どもの耳に入っておりまして、これらの問題を踏まえながら先ほどの検討会実施した次第でございます。  その合同検討会におきまして、今後詰めるべき方向という問題点がかなり列挙をされまして、目下この列挙された問題点について具体的な解決策を私どもの部内で検討しておる段階でございます。おそらく近々のうちにその検討結果がまとまると思いますので、これで第二回のおさらい会をやりまして、このおさらい会一つの契機として、今後定期的にそのような会合をしながら保安体制強化を進めるという方向をいま考えておるところでございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 いま検討している中身ですね、私が冒頭申し上げました電気事業者がかつては保安検査をし、その検査に基づいての保安責任というものを持っておった。ところが、電気事業法改正に基づいて、屋内工事に対する保安責任というものから除かれることになった。そこで、自主保安体制ということから保安協会検査をする、その検査に基づいて——もちろん送電者であるところの電気事業者検査はする、しかし、たてまえとしては検査に対する責任は負わない、そういうことになっているんですが、前回も申し上げましたように、保安協会保安体制というのが必ずしも十分ではないというところにやはり問題があるように思うのです。そこで私は、電気工事業者にこの検査業務を担当させるということにしたらいかがなものであろうかといったことも申し上げたのであります。みずから工事をしたことに対して検査をする、そのことが結果的には保安義務を負うという形にもなってまいりましょうから、これは検討に値するのではないかという感じがいたします。需要者と申しますか、電気に原因する漏電等による火災発生といったようなものについてたいへん不安を持っているわけです。それから増改築なんかが絶えず行なわれてまいりますが、そういった場合等は当然電気工事が伴ってまいりますから、はたして保安の面においては十分であろうかという不安もある。それから、やはり災害防止といったようなことを強く考えている方々は、保安協会にはどうも期待が持てないので、電気工事業者検査をやってもらいたいというような希望も相当ある。しかし、電気工事業者検査業務というものをやることにいまたてまえ上なっておりますから、それを引き受けるわけにはまいらないということになっていくのではないかというように思うのであります。何よりも大切なことは、形式ということよりも、できるだけ——できるだけじゃない、全く漏電等に基づいての火災発生を防止する、このことが私は最大の目的でなければならないというように考えるわけであります。したがいまして、ただいま私が申し上げましたようなことが検討の対象になっているのかどうか、その点いかがですか。  端的にもう一度私がおさらいのように申し上げますが、電気事業法改正して、もとのとおりに電気事業者屋内工事に対する保安責任を持たせる責任所在をはっきりさせるというようにしたらいかがなものであろうかということが一点。それから保安協会にもっと十分な保安体制を確立するという方法は考えられないか。第三点は、電気工事業者検査業務を行なわせるということはできないものであるかどうかという三点に対してお答えをいただきたい。
  6. 岸田文武

    岸田政府委員 先回御説明いたしましたように、電気事業法改正いたしました際には、電気事業法がそもそもできました当時と客観情勢が違ってまいりまして、家庭内の配線等施設需要家所有に移行しておるというような背景を受けてそのような改正が行なわれたと私どもは承知いたしております。  そこで、先回いろいろの御指摘をいただきましたので、特にこれからの責任体制あり方いかんというような点につきまして、先ほど御報告いたしました関係業界からの意見聴取に際しまして、この点を特にそれぞれの立場からの感想を聞いてみたわけでございます。御指摘問題保安責任のこれからのあり方いかんというような点につきましては、確かにいろいろの御意見がございまして、先生指摘のような御意見もございましたが、ただ、私ども体制的に見てみますと、いまの段階はどこが責任というような分担論を議論するよりは、実質的に保安体制強化するという方向に向かってどうしたらいいのかということがむしろ中心の問題ではないかという感じで受け取っておられる向きが多いような感じがいたしました。  この背景には、前回法律昭和三十九年にできまして、それからかれこれ十年たっておりますが、その十年の間に電気事業者とそれから工事業者ユーザーとの間に、いわば一つ慣行が生まれてきておる。その慣行自体を変えるというよりは、いまの慣行の中でそれをさらに円滑に動かしていくにはどうしたらいいのかというような点が一そう問題なのではないかという意見が大体おもであったかと思っております。ただ、私どももまだこの問題に取り組みましてから日が浅うございますので、もっとさまざまな意見を聞きながら、この問題については対処いたしたいと思っております。  そこで、具体的にどういうことがいま検討課題になっておるかという点でございますが、たとえばこれからの工事適正化、それから能率化、それから安全の促進というような点についてどういう問題があるのか。特に自主検査の徹底について具体策はないか。それから材料、機器等の質的な向上の面でもっとくふうの余地はないか。それから建築工事業者との連携をもっと密接にしていく方法はないか。こういったことが工事適正化に関する問題として検討されております。  それから保安設備強化の問題が第二の問題としてあがっておりまして、漏電遮断器設置等につきましてもっと促進する方法はないか。あるいはアースつきのコンセントの取りつけをもっと普及させる方法はないか。こういった現実の施設に即した改善策を取り上げまして、これを普及する方法いかんという点をいま取り上げております。  さらに、いま御指摘ございました中にも触れられておりますが、定期検査業務自体についてももっとくふうの余地があるのではないかということを私どもとしては考えておるところでございます。二年に一度の定期検査実施し、その際に、絶縁抵抗を測定する、あるいは目視によって安全性確認をするというやり方であります。先回かなり形式的に流れているのではないかという御指摘がございましたことを頭に置きながら、これをもっと効率的にするのにはどうしたらいいのか、それから一度見にいって、それで不良が出たというときのアフターケアをどうやってやっているのか、もっと改善する点はないのか、こういった点につきまして私ども検討いたしておるところでございます。  これらの諸問題は、先ほど申しましたように、三つの関係のグループからそれぞれ問題を持ち寄って集めた課題でございまして、この課題もとにそれぞれの立場からいま勉強をし、私どもも私どもなりに勉強して、その結果を再度持ち寄って詰めていこう、いまこういう段階でございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 真剣に取り組んでおられるということについてはけっこうだと思います。私ども電気事業法改正にあたっては、おっしゃるように十年くらいになろうと思うのですが、屋内工事からこの電気事業者——検査そのものは当然やらなければならないわけですが、その責任が除かれるということも、自主保安体制強化という形によってカバーされるであろう、その利益は十分守られるであろうという確信もとに、この法律案審議にあたっては賛成をしたという経過も実はあるわけであります。したがいまして、提案をいたしました政府としても、十分これでいけるのだという確信をもって御提案になったことでございます。しかし、十年間の運営にあたっていろいろと問題点が出てきていることは事実でございます。したがいまして、すみやかにいま検討の結果をまとめられて、改める点はこれを改めるということにしていただきたいと思います。  現実問題といたしまして、この保安協会検査ということだけではやはり問題があるということは、いままでの経験からして明らかになっているわけであります。また、電気工事をやりました工事業者が、みずからの工事は十分やったという確信を持ちながらも検査をやることができない。しかしながら、その工事もとであったということにおいて火災発生等の場合にその責任を追及されるという事実もあるわけでありますから、したがいまして、この保安協会と並行して電気工事業者検査業務を担当させるということは重要な問題として検討に値するであろうと私は思います。したがいまして、それらの点も前向きで十分検討して結論を出していただきたい。この点に対しては政務次官からひとつお答えをいただきましょう。
  8. 森下元晴

    森下政府委員 電気エネルギーは、エネルギーの中でも一番家庭では特に便利に使われております。過去におきましては、明るさを得るのみでございまして、まことに単純な使用であったように思いますけれども、近年に至りましては、電力そのものを食っておるクーラーから洗たく機、また、熱に直接電力から変える暖房器等、非常に多種多様に電力が使われておることは先生指摘のとおりでございます。この業法が三十九年、ちょうど十年前に改正されまして、電気事業者から直接工事業者にその責任を負わされているようなかっこうに実はなっております。家庭における電力また電力使用、またその知識というものは、工場等における技術責任者を置いての仕事とは全然違いまして、そのためには人命に影響を及ぼすような感電事故があったり、また、それが原因で火災まで発生しておる。電力は非常に便利でございますけれども、非常に危険の伴うエネルギーでもございまして、この点、安全、保安ということが一番大事だろうと思います。  そういうことで、事業者責任を持たすか、また直接工事をやった工事者責任を持たすか、また保安協会責任を持たすかというような先生の御発言でございました。いろいろその特徴がございまして、やはり工事業者等工事をして、配線等一番よく知っておるし、また常にその土地におられる方が多いわけで、なじみも深いし、お考えにおきましてわれわれ非常に賛成する点もございます。いわゆるその電気製品等が個人の所有でもございます。また、いつまでも電気工事業者責任を持たすことの点におきましてはなじまない点もございまして、それぞれ長短ございまして、将来の問題としてこの問題は考えていかなければいけない。現在の方法でも十分とはいえませんし、また工事業者に直接責任を持たすことにおいて、これが工事等において必要以上の保安ということを考えますと、やはり経費高になったり、いろんな問題点も生ずるような感じがするのです。ですから、工事する者と検査する者を別にするというのも私は一つ方法でもあるし、いろいろ実は将来の問題として前向きで検討をしていきたい、このように思っております。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 政務次官お答えはわかるのです。問題は、検査はするが、責任所在がはっきりしていないという点が問題なんですよ。災害防止ということが大前提でなければならぬということは、もう何人といえども異論がないところですね。それからユーザーに不安を持たせない、またユーザーの利便というものを十分考えていく、その基本の上に立って取り組んでいただくことです。そのことを申し上げておきます。政務次官の答弁もそういう意味でのお答えであったというように理解をいたしますから、それはそれですみやかに結論が出ることを期待をいたします。  次に、東邦亜鉛のその後の調査結果と対策についてお尋ねをいたしたいのですが、まず最初に環境庁からお答えをいただきましょうか。
  10. 遠藤茂

    遠藤説明員 対馬東邦亜鉛関係事件について、その後どのような対策を講じているかという御質問でございます。  長崎県では、対馬土壌汚染対策で農用地の買い上げということを方針として進めてまいりました。現在、このような事件が起こりましたために、とりあえず土地買い上げという問題を取りやめるということにいたしております。さらに事件の究明を急ぐということで、三月二十四日に県知事が対馬へ行きまして、地元関係者及び被害住民話し合いをいたしております。被害住民からは大項目で六項目ばかりの御要望が出ております。それらの結果を踏まえまして、現在長崎県では、基本的に根本的な土壌汚染対策というものを再検討いたすという方向でやっておるところであります。  その中身としましては、まず土地買い上げはとりあえずやめる。しかし、いままでに買い入れた土地費用負担検討を今後さらに進める。特に青峰報告の中に四十三年以降の調査が引用されておりますので、その部分について検討し、場合によっては費用負担の割合を検討するということでございます。さらに休廃止鉱山鉱山が休止をいたしましたので、そういう事情変化があります。したがって、農民の生計を維持するというたてまえから申し上げますと、やはり土地改良問題を中心にこの対策計画を立てていく必要があるであろうということで、土地改良事業実施ということを前提としましていろいろと諸調査を行なう、さらに転作等についても検討するということで、現在、県が地元関係者話し合いをしながらこの計画をつくっていくということでございます。  そういうことで、環境庁としましては、県からそういう計画があがってさましたら、関係省庁十分協議をしまして、住民の福祉と生活が守られるような対策検討してまいりたいと思います。  なお、その場合に、費用負担でございますが、これはやはり事業者負担の原則に従って厳正に行なわれるように、県のほうを十分に指導してまいりたいというふうに考えております。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 健康調査についてはどうなんでしょう。この地元方々は、萩野先生に見てください、やせて、右手は変形、不安を訴える厳原の婦人、こういうことで、汚染地域で新たな動きが出ておるわけですが、これらの点に対しては、いまどのような検討を進めておりましょうか。
  12. 竹中浩治

    竹中説明員 健康調査の問題につきましてお答えを申し上げます。  御承知のように、対馬カドミウム汚染につきましての健康調査につきましては、長崎県におきまして、昭和四十年以来、四十二年を除きまして、毎年実施をいたしてきておるところでございます。私どもといたしましては、この従来の健康調査につきましては、東邦亜鉛の作為の問題と直接の関係はなかったと考えておるわけでございますが、今回の事件にかんがみまして、長崎県におきまして、昭和四十九年度にはひとつ心を新たにいたしまして徹底的な健康調査に取り組むということで、現在その実施計画検討を進めておる段階でございます。長崎県におきましては、新年度早々にもこの四十九年度の健康調査に着手をいたしたいということで進めておるわけでございます。  それから、その際におきまして、先ほど先生がおっしゃいました、地元萩野先生その他の方々にぜひともおいでをいただきたいという御要望があると私ども聞いております。萩野先生は、御存じのように、私ども国段階におきますカドミウム鑑別診断研究班というのがございますが、そこにも御参加をいただきまして、従来から対馬に限らず、イタイイタイ病の最終的な判定にあたっての検討をこの鑑別診断研究班でやっておりますので、その討議に萩野先生にも御参加をいただいておるわけでございます。しかし、そういう地元住民方々の御要望がございますし、また長崎県からもこの萩野先生その他の方々の派遣につきまして、その具体化について私どもに対しまして協議がすでに寄せられております。そこで、環境庁といたしましても、そういう方向で現在細部の検討に入っておるという段階でございます。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、地元住民希望があり、萩野先生が再健康調査について受け入れてくれるならば、萩野先生に委嘱をして健康調査をしてもらう、そういう考え方であると理解をしてよろしいですか。
  14. 竹中浩治

    竹中説明員 先ほど申し上げましたように、地元から萩野先生その他の方々おいでをいただきたいという御要望がございますし、県でもその具体化について、ぜひとも環境庁として力をかしてほしいというお申し出がございました。私ども、いつごろどんなときに行っていただけばいいのか、どういうことをお願いすればいいのか、それから実はまだ御本人には接触、お願いしておらない段階でございますが、具体的に、どういう方法でどういうときにお出かけをいただくかという点をいま詰めておりまして、基本的な方向としては県の要望に沿って私どもも努力をしたい、そういうことでございます。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 できるだけ早く地元の不安をなくするために萩野先生に要請をして、健康調査を徹底的にやってもらうということを望んでおきたいと思います。  それから、通産省の調査結果と対策はどういうことですか。
  16. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  所管の福岡監督局から二度にわたりまして監督官現地調査を行なっております。同時に、東邦亜鉛傘下の他の三製錬所に対しましても、それぞれの監督部から監督官が数名検査に参っております。  検査のポイントといたしましては、現在の排水の状況がどうなっているか、それから新聞に指摘されましたような事実があるかどうかということ、それからそういった事実が本社との関連で連絡があったのか、あるいは合意されて行なわれたかどうか、こういった点に着眼点を置きまして検査を進めてまいっております。現在までのところ、三製錬所につきまして、水は基準に合格いたしております。  それから、指摘されましたようなことについての類似の件でございますが、安中につきまして、一部道義的に問題と思われるような節が事実確認をされております。  本社との関係におきましては、三製錬所の場合には一切ございません。  一番問題の対州でございますが、まず注水、水増しでございますが、これは四十三年八月から四十六年十二月まで行なわれたと判断されます。十三回になるわけでございます。現在の排水でございますが、沈でん槽、第一ダムに抗内水をずっと集中しておりますが、そこで処理して流しておりますその直下の水が現在の排出基準を少し上回っております。現在の排出基準は、一般排出基準の十分の一に上のせしてございます。環境一般に悪いものですから、排出の段階で通常の基準よりははるかにきつくしております。それに対しまして、ただいま申し上げましたように、一カ所不合格、直ちに改善の指示を出しておりますが、第二回目の検査の際にも同時に水をとっておりまして、その水の検査は四月十日過ぎには出る予定になっております。  それから、本社との関係は、文書、往復書簡等で確認をいたしましたけれども、そういった事実はいまのところ確認できておりません。  それから関係者もとの社長あるいはもとの副所長あるいは現在の所長、それから行為をやった、現在おります担当の課長、それから新聞に告発したと思われますもと保安企画室長、現在大阪におりますが、そういった多くの関係者から事情聴取をいたしておりまして、新たな事実もございまして、その事実は現場において確認をするという調査を進めております。  それから、これに関連いたしまして安中の関係でございますが、地元の県の副知事が参りまして、安中製錬所の監督は引き続き通産省のほうの監督部体制でやってほしいという申し入れを受けております。それからなお安中の地元方々、あるいは安中関係の国会の諸先生方からも、従来どおり監督部で厳重な監督を継続するようにというふうな要請を私ども受けております。  大体以上でございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 法務省の根岸刑事課長が御出席ですが、法的制裁として、刑事事件としてこれを追及しているのかどうか。
  18. 根岸重治

    ○根岸説明員 まだ確定的な事実を承知しておりませんので、具体的事実につきまして法律的な見解を述べることは適当ではないと思われますので、一般的、理論的な問題としてまずお答えするわけでございますが、新聞等に伝えられておりますような、水等を採取した後にそれを水増ししたり入れかえたというような事実がかりにあったとした場合に、まず考えられますのが鉱山保安法の違反でございますが、ただこれにつきましては、その調査が「鉱山及び鉱業の附属施設」に対して、鉱山保安法の三十五条の規定によってなされたという前提がまず必要であると思います。  それから、その水に細工を加えられましたものが立ち入り検査の際に行なわれたということになりますれば、鉱山保安法の五十七条違反になるというふうに考えます。もちろん時効等の問題がございますが、時効は三年でございますので、時効にかからない新しい事実が出ておれば、そういうような罪名に触れると思います。  刑法の関係につきましては、いわゆる公務につきましては、暴行、脅迫で公務執行を妨害した罪はございますが、いわゆるだましたようなことに対する公務の執行の妨害はございませんので、刑法においては取り締まることはちょっとむずかしいのではないかというふうに考えております。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 通産省としては、今回の隠蔽事件が起きたあと、直ちに調査をやった。ところが排出口の水が基準をこえているのが一カ所あったというお答えがいまあったわけです。通産省が考える鉱山保安法違反としては、このことだけが問題であるというようにお考えになっていらっしゃるのかどうか。その前に神出の指示によって、これは本社の指示であると私は思うんだけれども、神出の指示によって隠蔽工作を行なったわけですね。いまの水を薄めるための注水、川に水を流す、川洗い、それから土砂の散布等々いろいろやっている。私は、このことは刑法の問題も起こってくるのではないか、このことはあとでまた根岸課長にお答えをいただきたいと思うのですが、それらの一連の鉱山保安法あるいは刑法といったような点から、刑事局あるいは警察庁と話し合いをしているという事実はないのかどうか、その点いかがです。
  20. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。調査いたしまして事実が明らかになりまして、そのつど現地の鉱山監督局のほうと現地の警察、地検のほうとの連絡は緊密にやっております。  それから法の適用につきましては、私どものほうが刑事局あるいは法制局等に解釈、適用について見解を求めております。事実が逐次明らかになってまいっておりますので、そのつどその事実を連絡をして判断を受ける、そういうことでいままで進めてまいっております。  ただいま御説明がございました注水の問題でございますが、鉱山保安法の三十五条によります立ち入り検査でございます。問題は五十七条の検査を妨げたかどうかというその解釈の問題でございますが、私どもがいままで一般の解釈の形として聞いておりますところでは、水をとるさなかに妨害をする、妨げるということであれば五十七条の適用はある。ただし、一たん水をポリバケツにとりまして事務所に置くわけでございます。置いた場合に夜間あるいは昼間それに対して注水が行なわれるというふうな場合には五十七条の検査を妨げるという行為にはどうも該当しないというふうな解釈だと聞いております。そういたしますと、問題は、ただいま先生が御指摘になられましたように、今回の検査によりまして、第一ダムのオーバーフローしております排水基準違反でございます。これは明らかにこの事実を見ますと基準をオーバーしておりますので、純粋に法を適用するということになりますと、一年以下の懲役または十万円以下の罰金という直罰になるわけでございます。ただ、これをどう扱うかということは、測定技術の問題あるいは改善の難易あるいは当時の状況等々がやはり問題だというふうな現地での打ち合わせの状況を私どもは福岡のほうから聞いております。  なお、二回目の検査の結果及び第一回目のサンプルをとりますときに県と一緒にやっております。県のほうの結果もまだ出ておりませんので、その結果も聞きまして、その結果をもとに地検あるいは刑事局のほうと打ち合わせしてまいりたいというふうに考えております。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 私は、人権尊重という点から法律をいたずらに拡大解釈をするということを決して望むものではありません。ありませんが、いまあなたが検査を妨げたかどうかという問題について、水をとるときに妨害したらば検査を妨げたということになるのだけれども、一応とった水を薄める、それは検査を妨げたことにならない。ところが、水をとって、そうしてその水が、まあ何というのか、薄められたり何かしなければ完全な検査ができるけれども、薄められたり何かするということは検査そのものが妨げられた、正確な検査ができなかったということになるのだから、当然検査を妨げたということになるのではありませんか。非常に狭く法律を解釈をしているということにはならないんですか。
  22. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま中村先生から御指摘のような疑念を私どもが持ちまして、法制局、刑事局と打ち合わせをしましたところ、法の解釈として、検査行為中に妨害をしなければこの五十七条の検査を妨げということには該当しないというふうな解釈であるというふうな連絡、意向を受けております。置いてあったものは、もうそれは検査を妨げということには該当しないということでございます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 それから、今回のその調査によって基準をこえておった。一回でも私は処罰に値する、こう思う。もちろん善意の企業であれば話は別です。まことに悪質な企業、いまあなたが例をおあげになりましたが、会社の小西社長、これもかつて公害隠しの数々の悪事を働いた、そういう前歴を持っている。今回の対馬における公害隠蔽だって、これは神出がやったというように判断すベきではない。本社の指示によって——私は本社と申し上げますが、本社の指示によってやったとということだけは間違いはない、断定してもよろしいと思う。ならば、一回なんだから、これは処罰に値しないんだなんというような、そういう扱いをすることは適当ではないのではないか。二回目は四月の十日ごろになると結果が出る、あなたの気持ちとしては一回では無理なんだから、二回やってみなければ、二回やってまた基準をこえているということであれば処罰に値するというようなお気持ちでおられるような感じがいたします。しかし、この公害隠蔽工作をやったというこの事実の上にのっとって、そして一回であっても厳重に処分するという態度をとるべきじゃありませんか。  またもう一つ申し上げますが、新聞で私は読みますと、十三回水をとって、それに注水をして公害隠蔽をやっている。しかし十一回分はもう時効になっているということが報道されているわけですね。そのこともお答えをいただきたいのですが、それらの点等々を考えてみると、私は一回といえども厳重にこれを処断するという態度が当然であるというように感じますが、いかがでしょう。
  24. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  東邦亜鉛という会社は、数年前の安中問題をはじめといたしまして、何度となくこういった問題が起きております。特に今度の対州の公害隠蔽の事実はまことに悪質でございまして、私ども監督者の立場にある者としては許すべからざるものだという見解は、先刻来大臣もはっきり意思表示をしておられるところでございます。したがいまして、一回の違反といえども、これは通常の会社の初犯というふうな見方はできず、むしろ東邦亜鉛の会社の体質の反映であるというふうな解釈を通産省としてはとっております。したがいまして、そういう姿勢で長崎地検あるいは法制局あるいは刑事局と徹底的に糾弾する、厳正に法的な措置を適用するという方向、気持ち、意思で交渉中でございます。  特に注水の件につきましては、十三回のうち十一回はもう三年時効になっておりまして、あと二回は時効が成立しておりませんが、この二回分につきましては、実は先ほど説明がございましたような鉱山保安法の適法な法的検査という形をとったものではございませんで、環境水に対して参考調査をしております。環境からの調査試料、要するにサンプルをとっての検査に対してなされておりまして、排出水、これが鉱山保安法に基づきます検査なのですが、この排出水については注水の事実がございません。これは現地で入手いたしました試料に、会社側で、一回ごと県なりあるいは監督局が検査をいたしました際に、とった水について、どこをどれだけ薄めて、それでその結果、どれくらいにカドミの量が下がっておるはずだというふうな、非常に詳細な偽装した姿が紙で残っております。それによって確認をし、かつ実施者である現在の保安課長に確認をした結果でございます。そういたしますと、時効が成立しておりません二件につきましては、法的な検査でないというふうな形になってまいります。そういたしますと、厳正に法を適用するといいましても、なかなかやりようがない。そうなりますと会社の体質、反道徳的あるいは反社会的な、こういった東邦亜鉛の体質に対しまして、やはり私ども通産省といたしましては、社会的な責任もあわせて追及するという姿勢をはっきりとるべきだという立場にあるわけでございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 局長、いまの排水ではなくて、鉱山保安法違反でないところの環境水であった、それはいろいろなデータによって明らかである、こう言われたわけです。そうすると、汚染の濃度は、排出水よりも環境水のほうが注入したのだから低かったということになっておるわけですか、その点どうなんですか。
  26. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  通常に行なわれております場合には、排出水の濃度が環境水よりも高いのが通常でございます。ただ、参考調査でやりました従来の検査の中には、環境水のほうが高いというふうな事例も出ております。これは朝日新聞に告発されましたあの中で、御案内のように、日見川の上流に汚染物質を持っていった。そういたしますと、鉱業所に入る前の環境水がすでに高度にカドミに汚染されておるというふうな結果になるわけです。そういたしますと、事業所の中を通りまして、また環境に出ます排出水の濃度よりも、鉱業所に入るところでの環境水の濃度が高いというふうな事実も初期のデータの中には散見されます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 あなたは専門家、私はしろうとだからわからないのだけれども、排出水は薄めてなかった、参考調査であるところの環境水が薄めてあった、しかし、これは鉱山保安法違反じゃないのだ、だから法的に追及はできないのだ、こういうことになる。そういう答えがなされると、データには、そういうふうに何かこう書いておったという——そうすると、薄めたのと薄めないのとでは濃度というものは違わなければならないというようにしろうとである私は考えるわけです。ですから、排出水のほうは薄めてないのだから汚染の濃度が非常に高くて薄めたところの環境水は非常に濃度が低かったというふうな、そういうことによって排出水は薄めてなかった、環境水は薄めたということを確認をしたのか、そこらが事実関係が明らかではないですね。ただ単に何かデータがあったから、それによって確認をしたのだということになると、どうも私は首をかしげたくなるのだが、いかがですか。
  28. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  水の検査は再現できませんので、現在どうかということが一番私どもとしては的確に現物に即して確認でき得る唯一のものでございます。現物の確認によらないで判断しようといたしますと、やったという現在の保安課長の説明と、それから会社に残っております試料、ただいま御説明申し上げましたような細工をした詳細なデータがございます。その二つで判断するしか方法かないわけです。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 どうもあなたのほうは企業に身びいきだね。それは環境水は鉱山保安法違反ではない、排水を薄めたら鉱山保安法違反になる。だからいろいろな試料は、排出水を薄めたということは書きませんよ。罪をのがれようと考えているのだから。隠蔽工作なんだから。それは向こうの保安課長手か——だから企業の側の言うこと、企業の書いておったことだかり取り上げて、罪にはならないのだという言い方は、どうもあなたのほうは依然として企業の立場にばかり立って問題を処理していこうとする態度を変えておりませんね。それではだめなんですよ。あなたのほうは十一回時効になったのを拍手かっさいして喜んでいるのではないですか。どうもそういったようなおなたのほうの答弁を聞いていると、そんな感じがしてならない。信頼することができませんよ。それはいかがですか。なおお答えがあれば……。
  30. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 再三申し上げておりますように、いま先生が御指摘のような姿勢では断じてございません。たとえばこの試料でございますけれども、排出水について注水したという事実は、十三回のうちに何回もございます。ただ、四十六年六月、四十六年十二月の二回の分については、とりましたデータでそういう形になっていない、そういうことでございます。したがいまして、いろいろ推定するといたしますと、当然先生のような形の推定は、私ども全く同感でございます。ただし、法に照らして厳正に処分するといたしますと、はっきりした物証をあげませんと、地検あるいは刑事局等では相手にしてくれないという、こういう姿勢になるわけでございますから、そういう物証を明らかにしたということでございますから、御了承願いたいと思います。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 いまの最後の答弁、検察庁と相談をすると、どうも物証がないとこれは犯罪行為としては成立しないということが前提にあってのあなたの答弁ならいいのだけれども、それが前提になっているいままでの答弁ではなかったわけなんだ。排出基準を越えたということだってその一回なんだということで、どうも処罰に値しないという気持ちがあなたの頭の中にあるのだ、答弁を通じて私が受ける印象は。それから十一回はもう時効になっておる。それからどうも薄めたのは鉱山保安法違反になる排出水じゃないのだ、鉱山保安法違反にならない環境水なのだということで、これは罪にならないということをあなたはさっき断定した。私に追及されて初めて、いや物証としてこれが必要なんだからというので、いまそういう答弁をした。私にけしからぬじゃないかということで指摘されて。それはよほどあなたのほうも反省されて、ほんとうに国民の信頼を得るという態度で、そういう反社会的な——あなたが反社会的、反道徳的ということばを使ったのだ、東邦亜鉛に対しては。それはことばだけではなくて、あなたのからだ全体でそういうような憤りをもって臨むという態度でなければだめなんですよ。  それから根岸課長、どうなんでしょうか。この鉱業所側は、注水をしたり、それから土砂を散布したり、公害隠蔽工作をやったわけですね。これは偽計を用いて他人の業務を妨害した刑法二百三十三条を適用できないのかどうか。ところが、偽計を用いて他人の業務を妨害するということは、いわゆる公務の場合は、これに当てはまらないのだというような判例も出ているように実は伺うわけですが、どうなんでしょうか、この解釈は。
  32. 根岸重治

    ○根岸説明員 実は先ほどの鉱山保安法の検査拒否がどの範囲かとか、あるいは偽計業務妨害にならないかというようなことにつきまして、あまり明確なことを申し上げるのは非常につらいのでございます。といいますのは、事実はなお可変であると私は思いますので、したがいまして、ある条件が満たされれば、刑法のある条文に触れる場合もあり得るということを申し上げることも可能かと思うのですが、それを申し上げますと、その条件を否認されればだめになります。したがいまして、私としては、いろいろなことを申し上げたい点はございますけれども、いまお尋ねの点だけに限定して簡単に申し上げますから御了承いただきたいと思うのですが、伝統的な解釈としましては、いわゆる公務の執行妨害は、暴行、脅迫によらなければ成立しないのだという解釈がそもそもの解釈であると思うわけです。といいますのは、公務員は、だまされたり、ちょっとした威力を用いられたぐらいで公務の執行がじゃまされるような変なことはしないという前提で刑法はつくられておると思うわけでございます。ことに偽計の業務妨害の成立につきましては、いわゆる公務につきましては、消極的な見解のほうが強いというふうに私は考えております。したがいまして、公務を偽計によって妨害する、いわゆる公務は業務かという問題に関しまして、いろいろな説がございますけれども、はっきりそれは先生だいじょうぶなんです、偽計業務妨害に当たるのですということを私はここでいまちょっと申し上げにくい、こういうことでございますので、御了解いただきたいと思います。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、あなたのほうがこの問題に対して重大な関心をもって対処しておられるであろうということが十分理解できます。したがって、あなたに対するこれ以上の質問はいたしません。  農林省にお尋ねをいたしますが、この汚染農地の買い上げというのは、法的根拠に基づいて行なわれていないわけですね。土地改良ということになってくると、これは土壌汚染防止法に基づいた事業という形になってまいりますから、これは法的根拠に基づいてやる。ところが、私はこの間の委員会でも申し上げたのですが、あなたのほうの考え方ではないのかもしれませんけれども地元に伝えられているのは、土地改良をやると三億ないし四億ぐらいの投資が必要なのだ、そうなってくると、その経済的な価値がない。だから、農林省みずからも金を負担しなければならない。国としても費用負担をしなければならないような土地改良工事というものを経済的価値もないのにやるべきではないということから、実は県は、この法的根拠に基づかない土地買収という形になった。しかも、その費用の負担に至っては、青峰報告に基づいて県が五五%、それから企業が三〇%、町が一五%という割合になって、こうした公害企業に対してはきわめて甘い扱いに実はなっておる。この点は絶対に改めなければならないということに対しては、先般の委員会においてPPPの原則に基づいて企業に補償をさせるという方向で対処していくという明確なお答えはあったわけですが、その後の調査によってどういうことにいまなっているのか。農林省に関係することについては工藤課長から、それから環境庁に関することについては先ほどお答えがありましたが、なお補足する点については環境庁からお答えをいただきたいと思います。
  34. 工藤健一

    ○工藤説明員 農林省に関連ある部面をお答えいたします。  長崎県の佐須川、椎根川流域につきましては、土壌汚染防止法に基づきまして、昭和四十七年の五月に地域指定がなされたわけであります。ところがその後、地域指定がなされますと、通常の場合、対策計画をつくるということになっておりますが、先ほど来お話が出ておりますように、対策計画自体がなされてまだ検討中、こういうことでございますので、農林省といたしましては、なるべくすみやかに客土事業を中心にします対策計画を進めていく、その準備を進めていくということで、現在のところ三つほど方針を立てまして、長崎県といろいろ折衝いたしております。一つは客土の厚さとか、あるいは転作物の選定等のために、昭和四十五年度から五カ所ほど長崎県に国庫助成をいたしまして、現地試験、栽培試験をいたしております。これを継続拡充をしていくという方向長崎県と話をいたしております。現在まで一千百五十万くらい助成をいたしておりますが、これも助成額をふやしていくという方向検討しております。  第二の問題は、いままで客土の土が得られるかどうか、こういうことが一つ問題であったわけです。近隣の土地を、採土地調査長崎県がいたしておりますが、三十立米等の客土になりますとかなりの量が要るということで、近隣だけではなくて、かなり遠距離のところもいい土が得られるかどうか調査を進めていくということが第二でございます。  第三は、当面営農問題が出てきますので、たとえばベニバナとかハッカ、ゼラニウム等のいわゆる稲作転換の転作をする場合の奨励金の制度がございますので、これは先生御存じと思いますが、この地域の三十二ヘクタールのうちの約二十二ヘクタール、いわゆる二号田相当のところがございます。これは企業からそれと同じような趣旨の奨励金が出ない場合には、奨励金が出せるという制度がございます。十アール当たり三万五千円、それから集団の場合四万円という転作奨励金がありますので、そういう奨励金を交付するという前提で、長崎県と具体的に転作の作物とかあるいは地域、面積等について現在打ち合わせている、こういう段階でございます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 そうしますと、当然なことですが、この問題に対して被害農民にできるだけ有利になるような配慮をしていこうというお考え方だということが、いまの御答弁からはうかがえたわけです。土地改良というものを農民が望む以上は被害農民の望む土地改良をやるが、同時に転作奨励金の関係もあるので、転作奨励の問題と組み合わせてこの問題の解決に当たっていきたいという考え方であると理解をしてよろしいでしょうか。もう一度お願いします。
  36. 工藤健一

    ○工藤説明員 先生おっしゃられる趣旨のとおりでございまして、いままでのような買収方式ということが再検討されるという事態になりましたので、われわれとしましては、そういう土地改良を中心にしました抜本的な対策をなるべく早く進めるという方向で至急検討はいたしたいと考えている次第でございます。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、そういうことで土地改良、同時に転作奨励金が支給される転作の問題と組み合わせてやるように、少しでも農民に有利になるようなことで、被害農民に有利になるような方向で進めてもらう、こういうことを要請しておきます。  それから通産省、この青峰報告というものは当然私は改められるであろうということを期待をいたします。  伺うところによりますと、青峰報告の中に四十三年の調査の部分がどの程度取り入れられているのか、その点取り入れられていることは事実でありますから、これを再検討する方向であるということを伺っているわけです。したがって改められるであろう、こう思います。改められるということになりましても、あるいはならないにいたしましても、当然いまの協定になっております県の五五%、町の一五%、それから企業の三〇%という法律に基づかないところのこの負担割合というものは解消されなければならない。当然法律に基づいて、土壌汚染防止法に基づいてやる場合は四分の三は企業が負担する、残りの四分の一に対して国が五五%、県が三〇%、市町村が一五%ということになります。これが当然実施されなければなりません。これらの問題の解決についてはどういう方向で進めていこうとしているのか、これは環境庁関係がありますからお答えをいただきます。  それだけではなくて、このような反社会的、反道徳的な公害隠蔽工作をやったこの企業に対し、さらに大きな不安を被害者だけではなくして対馬全土に巻き起こしたこの企業に対しては、私は、断固たる、法的な制裁は言うまでもなく経済的な負担が要求されなければならない、法的な負担だけではなくて企業自体のもっと大幅の補償というものがなされなければならないと考えます。  この点について、事務的な問題については局長から、また環境庁からもお答えをいただきまして、そしてあとで政務次官からお答えをいただきます。
  38. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  青峰報告につきましては県が責任をもってやっておりまして、私どもは直接云々する立場にはございませんが、問題の性質上、ただいま先生が御指摘になりましたような基本的な姿勢を私どももとっております。  それで、この中にうたわれておりますいろいろな数字等々もございますけれども、私どもといたしましては、まず鉱業法にいいます百九条、これは無過失賠償の責任がはっきり規定されております。したがいまして、いろいろな法規の関係で、土壌汚染防止法、費用負担法等の趣旨でおやりになろうと、あるいは鉱業法のこの規定でおやりになろうと、とにかく企業としては、全面的に県あるいは環境庁等が補償等について指導あるいは監督されるその際に協力するということは当然だと判断いたしております。また、そのように強力に企業に対して要請してまいりたいというふうに考えております。もし鉱業法によりまして損害賠償の処置をつけたいという地元の被害者の方々の御意向であれば、私どものほうは、鉱業法によります規定、手続に従いまして公正、迅速に、かつただいま先生から御指摘されましたような企業が行ないました反社会的な行為に対する償いも含めてやるような指導、扱いを強力に進めてまいりたいというふうに考えております。
  39. 遠藤茂

    遠藤説明員 環境庁といたしましては、昨日、県の公害担当の責任者を呼びまして早急に計画を作成するということをお願いをしてございます。それに従って計画が出てきた段階関係省と御協議をいたしまして、十分農民が安心して耕作をできるような、そういう基盤をつくっていくような努力をいたしたいと思っております。  なお、費用負担につきましては、費用負担法に基づきまして厳正に県が費用負担の割合をきめるように指導をいたしていきたいというふうに考えております。
  40. 森下元晴

    森下政府委員 東邦亜鉛の対州鉱山の公害隠蔽問題は、まことに反社会的な、まことに言語道断で、通産省といたしましても、法的責任はもちろん社会的責任をあくまでも追及していきたい、そういう所存でございます。  経過等につきましては局長からるる述べましたし、また、通産省にいたしましても、この運搬等についていろいろ事情もございましたけれども、十分監督を行なう立場として配慮が欠けておった、この点は深く反省もいたしたい。また、この事例にかんがみまして、ただ対馬だけの問題ではなしに、全国的に監督また機器の整備等を充実し、また人員面においても増員をはかり、その監督体制強化していきたい。なお、全国の鉱山保安監督部に対しましては、採水とか分析、そういうふうな問題につきまして今後十分監督を厳重にするように、こういう事態が二度と生じないようにしていきたい、そういう非常に強い決意で臨んでおります。  補償の問題につきましても、法的な問題また経済的な問題を含めまして前向きで対処していく、そういう所存でございます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 最後に林局長お答えをいただきます。  東邦亜鉛対馬におけるところの亜鉛採掘の意欲はやはりまだ十分あろうと思います。そこで対馬鉱業所は閉山をいたしましたが、新たに探鉱を継続していくために新対州開発株式会社を設立したわけです。ところが、この設立によって東邦亜鉛が新会社に鉱業権を譲渡してしまう、こういうことになってまいりますと、鉱山保安法の適用からはずれることになる。したがって、県の監督になるわけであります。県の監督になりますと、人的にあるいは設備の問題等々において不十分な点があるだろう。したがって、今後の指導でございます。これは全面的に新しい新対州開発株式会社に鉱業権を移すのではなくて、必ず鉱業法に基づいて、今後のその鉱山保安法の適用というものが十分受け得るように、鉱業権を東邦亜鉛に残しておく、そういう扱いをしてもらいたいと思いますが、その点、いかがでございましょうか。
  42. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  現在の監督法の体系から申し上げますと、鉱山が閉山いたしまして鉱業権を放棄いたしますと、その鉱山に付属しております製錬所は山と関係がなくなりますので、鉱山保安法の監督体系から、一般工場監督の公害法規のもとで監督される。したがいまして、県に監督の責任が移る、こういう形になっております。  ただ、東邦亜鉛の場合には、安中製錬所問題がございまして、地元あるいは地元の自治体等からは、いろいろな面で、現在、県に移管されるのは困るという強い要請を受けております。また、実態的にも私どものほうが、施設あるいはスタッフ等において、あるいは伝統におきまして、長年こういった事務に慣熟いたしておりますし、それから、法規そのものが、どちらかと申し上げますと、鉱山保安法のほうが一般法規よりも強くなっております。一例を申し上げますと、施設の場合には、一般法規は届け出で済むわけでございますが、鉱山保安法の場合には認可が必要である、こういうふうな形になっております。したがいまして、私どものほうは、こういう体質の企業でございますので、一般の要請がございますれば、引き続き私どものほうの監督下に置いて監督を続けるほうが妥当かと判断いたしております。ただ、法律関係で、企業が鉱業権を放棄するのをやめるように指示をするということは根拠がございません。  そこで、ただいま先生から御指摘がございましたように、新対州開発株式会社に対しまして譲渡いたします鉱業権は、現在東邦亜鉛が持っておりますものを全部譲渡するのではなくて、一部を東邦亜鉛に残しておく、そういう形がとれれば、形式上安中製錬所は対州鉱山の付属という形が残るわけでございます。これは実体と形式がそごを来たしておりますけれども、法の運用として許されるならば、私どものほうは行政指導の形でそういう運営をやってまいりたい。そうすることによって新対州開発が引き続き地元で探鉱を続け、それとともに、この安中製錬所が引き続き私どもの監督下で厳重に監督を続けていくという要請にこたえ得るかと考えております。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 安中の場合も、県のほうからのそういう要請があったということを先ほどお答えがあったわけです。ですから、この対馬の場合も、長崎県のほうからその鉱業権の一部を東邦亜鉛に残すことの要請があれば、そういう方向で指導をするという考え方だということになりますね。
  44. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 ただいま先生の御指摘のとおりでございます。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 これで終わります。
  46. 濱野清吾

    濱野委員長 上坂昇君。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕
  47. 上坂昇

    ○上坂委員 石油価格の値上げ等によって、またぞろ電気料金の値上げの問題がいま出てきております。そういう点で、この電気料金の値上げとも関連をする問題として取り上げたいという問題があります。それは日本電気計器検定所の問題であります。  第四十六回国会でこの検定所法が提案をされたときに、商工委員会で質問が行なわれておりますが、そのとき、わが党の久保田委員が、特殊法人のメリットについて質問をしておるわけであります。それについて馬場政府委員が答弁をしているのは、国に一元化した場合は能率的、機動的な運営に欠けるところがあると考えられるが、従来の電気協会という公益法人に一元化した場合は、厳正、公正という面で十分な監督がいかないことがある。そこで、効率的運営と同時に、厳正な方法がとれるという特殊法人の形を考えた云々、こう出ておるわけであります。  いま検定所の労使の間で労使紛争の問題が出ております。そこでは、今後のいわゆる合理化の問題であるとか、それから人減らしの問題であるとかいうことで、運営の問題についても、はたしてその効率的な運営ができるのかどうか、あるいはまた厳正ないわゆる検定方法がとれるのかどうか、こういう疑問が出るような状態が出ております。  そこで、少し具体的な面に入って質問をしてまいりたいと思うのですが、いまの検定所の経営というのは、検査手数料だけの収入による経営であるというふうに考えられるのでありますがこの手数料だけによる収入にたよる経営というものにはおのずから限界があるのではないかというふうに考えます。手数料の値上げを行なわないで経営の安定をさせようとすれば、いわゆる人減らしをしなければならないし、機械の合理化、そういうものもやっていかなければならない。そうしますと、人が減ってくればそれだけ検定がなかなかできなくて、厳正な検定というものができなくなる、検査ができなくなる。そのことがずっとどんどん進んでまいりますと、今度は、全個数の検定をしなければならないのをやめて、抽出検査あるいはメーカーによる検査というような方向に進まざるを得ないような状況ではないかというふうに思われます。そういう点で、こうした手数料にたよっていく特殊法人の問題について、通産省としてはどういうふうにお考えになっているか、お答えをいただきたいというふうに思うのです。
  48. 岸田文武

    岸田政府委員 申し上げるまでもなく、電気はあらゆる家庭使用され、また各種の産業で基礎的な資材として活用されております。これらの取引ないしは使用状況というものが的確に把握されるということのために電気計器の役割りというものは非常に大きいと思っております。  この意味におきまして、電気計器の検定というものが十分公正に行なわれるということを保障するために電気計器検定所が特殊法人として発足をしたわけでございます。  ただ、いまお話のございましたように、この収入といたしましては、手数料及びごくわずかな委託収入といったものが財源になっております。他方で、検定の仕事は、事の性質上その費用の八割ぐらいが人件費であるということでございまして、一定の手数料の範囲内で、他方、次第に増加する人件費をどうまかなっていくかということは、確かに御指摘のように問題でございます。この意味におきまして、従来から能率的な経営ということについて検定所自体もいろいろ苦心をしてまいったかと思っております。昭和三十九年でございましたか、当初発足して以来途中で一度手直しをしたほかは、従来の手数料水準を据え置いて昨年まで推移した、その間ここ三、四年ほどは、次第に赤字の傾向に転落していったという経緯のように私ども承っております。こういった経緯を受けまして、昨年の秋、たしか十月でございましたか、手数料の値上げを行ないまして、今後の計器検定所の財政的基盤を強化するという措置を講じた次第でございます。
  49. 上坂昇

    ○上坂委員 手数料の引き上げを昨年の十月に行なって財政の安定化をはかった、こういうことでありますが、このことについてはまたあとでお聞きしたいと思いますが、四十六回のときにやはり問題にされております土地の問題があります。合併のときに土地は出資されていない、そのことについて非常に問題になっております。いまもこの当時の合併条件といいますか、そういう点で、一カ月二百五十万円くらいの土地代を電気協会のほうに払っているということがあると聞いておりますけれども、もしそういうものがあるとすれば、これは検定所の経営に響いてこないのかどうか、その土地代というのは発足当時から全然変わらないものなのかどうか、そういう点についてお答えをいただきたいと思います。
  50. 岸田文武

    岸田政府委員 この検定所の事業用の土地としましては、日本電気協会並びに一部は電力会社、それから計器工業会社等から借地をいたしております。実績を見てみますと、昭和四十八年度で、これらの土地の賃借料が年間四千五百万円程度と報告をされております。ただ、土地の賃借料が検定所全体の総支出に占めます割合は大体一・三%程度でございまして、全般として経営を圧迫する大きな要因とは考えておりません。
  51. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、検定所の経営改善方策についてという検定所の運営審議会の小委員会がまとめたものがございます。それはお持ちになっておりますか。
  52. 岸田文武

    岸田政府委員 いま手元に持っております。
  53. 上坂昇

    ○上坂委員 内容について、大ざっぱにお話しをいただきたいと思うのです。
  54. 井上力

    ○井上説明員 内容について簡単に御説明申し上げます。  本件は、日本電気計器検定所から、その理事長の諮問機関でございます運営審議会に対しまして、日本電気計器検定所の経営改善方策について諮問をいたしたものの答申でございます。  内容的には、当面本件が検討されました際には、先ほど岸田政府委員から答弁がございましたように経営的にかなり困難な状態に立ち至っておる、料金値上げもさることながら、経営についても一段の合理化を考えなくちゃいかぬ、こういう情勢にあったわけでございますが、内容的には、まず組織の簡素化あるいは試験所の集約というようなことがございます。組織につきましては、具体的には管理職がかなり多いのじゃないか、試験所集約の問題につきましては、全国に十七試験所ございますが、いろいろ創設当時と現在では社会的な条件がかなり変わってきておりますので、その辺を検討する必要があるのではなかろうか、こういうようなことでございます。  それから第二番目には、検定の機械化、合理化でございますが、まず検定の機械化あるいは自動化というような問題につきましては、電気計器は御承知のように非常にいろいろな種類がございまして、相線式別あるいは電圧電流別あるいは型式別というふうにいろいろ種類が多く、またその個数も非常に変動いたしますので、全体につきましてなかなか合理化というのはむずかしい面もあるわけでございますけれども家庭用で使いますメーター等につきましてはかなり画一的な構造を持っておりますので、自動化試験台等を積極的に導入する、あるいはロボットによります試験を行なうというようなことで所要人員の節減がはかれるのではないかというようなことが、まず機械化、自動化の問題でございます。それから検定方法の合理化につきましては、これもやはり今後のいろいろな製造、修理等の技術の進歩によりまして、メーターの性能が向上した場合には、その試験方法についてもさらに合理化する余地があるのではないかという点について検討するという問題でございます。  さらに第三番目は、事務の合理化でございますが、事務の合理化といたしましては、事務処理の単純化あるいはコンピューターの使用等によりまして、間接部門、管理部門の合理化をはかるという問題でございます。  それから第四番目が検定制度でございますが、制度につきましては、基本的な制度の改正というのは計量法に基づきます省令の改正等の措置が必要になるわけでございますが、そういった問題の中に、たとえば抽出検定というような問題がありますが、抽出検定につきまして今後やはり長期的な視野に立って検討を行なっていく。それから計量業務の合理化の問題につきましては、現在こまかく検定のやり方がいろいろきめられておりますけれども、それらにつきましてやはり関係者間で検討いたしまして、省力化できるものははかっていく、計器の性能といいますか、精度を落とさないで省力化できるものははかっていく、こういうことでございます。それから新型計器の開発あるいは実用化促進の問題につきましては、現在使われておりますものよりもさらに性能のいい計器につきましていろいろ考えられておるわけでございますが、これらについてやはり積極的に検討を進めるということでございます。  それから五番目に業務の開発の問題でございますが、現在大部分の業務というのは、先ほど来話に出ておりますように、取引用電気計器の法定の検定業務でございますが、そのほかに、この業務に類似いたしましたような仕事で、若干の委託の試験業務等を行なっております。この種の業務で、さらに本検定所において行なうことが適当であるというようなものがいろいろ考えられますので、そういったものについての検討を行なっていくというようなことでございます。
  55. 上坂昇

    ○上坂委員 経営改善の方策についての内容が大体わかりました。  そこで、今度は具体的に手数料のことについてお聞きをしていきたいと思いますが、この手数料は、電力基本料金に含まれているわけであります。昨年三二・六%の引き上げが行なわれました。その結果、経営がどういうふうに安定をしたか、昨年の十月でありますから、そう日にちがたっていないわけでありますが、またいろいろな形で問題が出ているようでありますが、このことについてお答えをいただきたい。
  56. 岸田文武

    岸田政府委員 私、いま手元に正確な数字は持っておりませんが、概算で申しますと、四十八年度は、年度の途中十月に値上げを実施いたしました。それ以前の赤字と相殺をいたしまして、ごく若干の赤字というような決算になるのではないかというふうに予想されます。これに対しまして四十九年度は、いまの収支見通しでは約二億円程度の黒字が計上できるのではないか、大体そのような状況と承知いたしております。
  57. 上坂昇

    ○上坂委員 これは今度の値上げによって四十九年度ば二億円程度の黒字になる、こういうことですね。この引き上げをする際に、通産省としては検定所に対してどういうような行政指導をされたか、お答えをいただきたい。
  58. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほども御説明いたしましたように、電気計器というのは各種の取引の証明に利用される大事な施設であるということから、この検定を厳正に行なうのに必要な経費はやはり料金改定に織り込む必要があるだろうということが基本でございます。ただ、そうは申しましても、これは結果的には電気計器の値段の引き下げの問題につながってまいるわけでございまして、ひいては需要家の負担にもつながってくるという関係にございます。その意味におきまして、やはりユーザー立場を考えてみますと、極力これは引き下げといいますか、値下げを抑制するという配慮もあわせて必要であろうというふうに考えられます。前回の引き上げに際しましては、いま申し上げましたような事情を十分勘案をしながら妥当な値上げ額を査定したというつもりでございます。
  59. 上坂昇

    ○上坂委員 それだけしか指導してないわけですか。たとえばいまの答申に基づいたそういうことをやったほうがいい。たとえば機械の自動化あるいは合理化といいますか能率化、そういうものとか、それから業務の簡素化については、やはり人件費を節約して人減らし、人を削減をしていくというようなことに対するそういう指導ということはなかったわけですか。
  60. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほど御披露いたしました答申でございますが、私拝見をいたしまして、これの中身にはなおいろいろ研究すべき問題が含まれておるけれども、大きな方向としてむだを省き、能率的な経営をしていこうという方向自体はかなり示唆に富んだ幾つかの問題を含んでおるというふうな感じがいたします。  具体的に料金値上げについてどういう指導をしたかというお尋ねでございますが、私どもはそういった具体的な内容については、いわば検定所のほうで事業計画を組みます際に、よくその内容なり今後の方向づけなりについて慎重に勉強した上で事業計画に組まれるということを一応期待をいたしたわけでございまして、私どもとしては、一般的な言い方としては、なるべく合理化をし、能率的な運営というものをはかった上で必要やむを得ない値上げだけを認めていこう、こういう基本的な考え方を持っておったわけでございます。
  61. 上坂昇

    ○上坂委員 この検定手数料の引き上げを検討している過程で、電気事業連合会のほうから通産大臣あてに検定手数料の改定についての文書が出ているというふうに思いますが、この電気事業連合会ですか、いわゆる電力会社の機関であるそうした団体からそういうものが出ているということになると、これはどういうふうに受け取ったらいいのか。そしてまた、先ほどの運営審議会のいま御説明をいただいた内容をもう少し簡略にしたものが出ているように思われますが、大体内容については同じような形に考えられますが、その辺はいかがですか。
  62. 岸田文武

    岸田政府委員 値上げに際しまして、電力会社でございますか、あるいは電気事業連合会でございますか、これから具体的にどうすべきだというような意見書のようなものを私どもどうも直接に受け取った記憶がございません。なお、私ども帰りまして、よく調べてみたいと思います。かりにその意見の中で、値上げについて少しでも抑制してほしいというような意見があれば、いわばこれはユーザー立場からの意見であろうかと思いますが、私どもとしましては、先ほど申しましたように、公正な検定を確保するということと能率的な経営を極力加味をしていくというような立場から、政府としての態度をきめるという基本的な友針でございます。
  63. 上坂昇

    ○上坂委員 岸田さんはいつから公益事業部長になられたのですか。
  64. 岸田文武

    岸田政府委員 昨年の七月でございます。
  65. 上坂昇

    ○上坂委員 昨年の七月になられて、その間はずっと手数料の引き上げの検討を現実には行なわれてきたわけでしょう。そういう要請は、この検定所のほうからは要請があったわけでしょう。それはどうなんですか。
  66. 岸田文武

    岸田政府委員 検定所自体といたしましては、先ほど申し上げましたように、ここ数年の赤字の累積ということについて今後これをいかにすべきかということを苦慮しておった時期でございまして、適正妥当な値上げはやむを得ないという立場から、私どもにいろいろ実情の説明なりあるいは今後の方向につきまして相談があり、私どももそれにあずかってきたという経緯でございます。
  67. 上坂昇

    ○上坂委員 実は私はその文書を見ているのですけれども、これは通産大臣に出た文書を見ているわけですが、あなた見てないというのはほんとうに見ていないのですか。
  68. 岸田文武

    岸田政府委員 いまこちらに同席しております者に聞いてみましたが、検定所からは意見書をちょうだいいたしておりますが、電力会社からは直接に受け取った記憶がないそうでございまして、なおよく調べてみたいと思います。
  69. 上坂昇

    ○上坂委員 公益事業部長に出てはいないと思うのですね。これは通産大臣に出ていると思うのだね。ところが、通産大臣に出て通産大臣がそれを見たって、これはやはり処理するのはおたくのほうで処理するわけでしょう。そうすると、通産大臣はこれは全然握りつぶしたということになるわけですか。無視したということなんですか。
  70. 岸田文武

    岸田政府委員 どうもあるいは事務的な行き違いかもしれませんのでよく調べてみたいと思いますが、もしお手持ちでございましたら、私拝見させていただきたいと思います。
  71. 上坂昇

    ○上坂委員 検定所法の中に役員の秘密とかなんかの問題が出ていて、これはどこから出たなんてニュースソースの問題になりかねないかもしれない、これを私が出すと。そういうことについて、あなた保証できますか。そういうようなものを私が出してもだいじょうぶですか。あるはずだと私は思うのだけれども、あなたのほうから出したほうがいいんじゃないですか。
  72. 岸田文武

    岸田政府委員 通産大臣あての文書でございますれば、特に問題はないのではないかと思いますが……。
  73. 上坂昇

    ○上坂委員 それなら、ちょっと教えますかね。  事業所の整理統合あるいは管理組織の簡素化を可及的すみやかに計画実施せよ。それから、労働規律の確立をして労働生産性の向上をはかれ。これが第一点。第二点は「検定業務の機械化、自動化、検定事務の簡素化など省力化を推進し、当局査定以上に要員の合理化をはかること。」こう出ているわけです。これは人間を減らせということですね。この次の三番目は「可及的速かに法制上の改訂を行っていただき、工場出張検定、分離検定、抽出検定、検定方法の合理化など検定検査義務の簡素化、合理化方策を早急に実現すること。」これは三項目です。この内容を見ますと、先ほど答申の内容と簡単に書いてあるだけであって、内容は同じですね。それから「試算値として示されている手数料の改定案を最高限度としてその低下に努力されることを期待する」こういう項目が入っています。もう一つ、やはり「新形計器類の省令改正ならびに一部計器の検定期間延長についても促進をされるよう」こう出ているわけです。大体さっきのと同じようなものが出ているわけでありますが、これが出ているということが確認できないということになりますと、次の質問をするのに困るわけです。これは確認できませんか。
  74. 岸田文武

    岸田政府委員 いま電話で調査をいたしておりますので、わかり次第御報告いたします。
  75. 上坂昇

    ○上坂委員 それではその前にちょっとお聞きしますが、省令改正というのはどんなふうな形でやるのですか。簡単にやれるのですか。
  76. 岸田文武

    岸田政府委員 いま御指摘ございました、省令改正とおっしゃったと思いますが、値上げの政令改正のことでこざいましょうか。−計量法に基づく手数料令の改正という形で昨年十月一日から適用になっておるわけでございます。
  77. 上坂昇

    ○上坂委員 実はこの申し入れといいますか、通産大臣に提出した文書が確認されるとすると、電気事業連合会の意見というものが、いわゆる公共料金とも言える検定手数料の決定についてかなり大きなファクターを持つように考えられるわけであります。そういう意味で、はたして検定所の運営の公正中立というものが維持されるのかどうか、ここが非常に疑問なわけです。四十六国会のときにも、どうも今度の問題が、検定所をつくるということが電力会社の利益につながるおそれがあるのではないかということがかなり大きな討論になっているわけですね。そういう面から私は非常に疑問を持っているわけであります。  そこで、いまの確認をしてもらってから質問を申し上げたいと思いますが、もう一つ検定手数料については、やはり長期的な安定をはかるということがどうしても必要だろうと思うわけですね。先ほどのお答えでは、十月の改定でその後ずっと経営がよくなって二億円程度の黒字が出る、こういうふうに言っておりますが、いまの物価の上昇なり経済変動の場合には、これは早晩また赤字に転落せざるを得ないというふうに思います。そういうことが懸念されるわけです。そうしますと、またぞろ手数料の引き上げという問題が起こってくるのではないかというふうに考えられます。その場合に通産省としては、今度そうしたことが起こった場合には、これは絶対やらない、あるいはもう極力これは押えていく、それでも赤字が出たという場合にはどうなりますか。
  78. 岸田文武

    岸田政府委員 昨年私どもが手数料の値上げの申請について審査いたしましたときには、今後数年間にいろいろの物価変動が予想される、これらのことも頭に置いて必要最低限の値上げ率はどのくらいかという算定をした次第でございます。私どもは一たんきめました手数料というものは、いわば取引の安定のために極力長い期間安定をするということが望ましい、こういう基本的な態度を持っておるわけでございますが、今後各種の経済情勢の変動というものがないわけではございません。そういった事情は私ども監督の立場から十分踏まえまして、そのときどきの情勢に応じた措置を講じていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  79. 上坂昇

    ○上坂委員 あの四十六国会でやはり非常に問題になった一つに、検定所の運営審議会の問題がありますが、そのメンバーを見ますと、大体電力資本の実力者といいますか、そういう人によって占められているというふうに私には見られるわけであります。これは受益者のほうですが、使用者側としての代表がはたして入っているのかどうか、そういう点については、通産省では現在のメンバーを見、あるいは当初発足当時の審議会のメンバーを見た場合に、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  80. 岸田文武

    岸田政府委員 いまの運営審議会のメンバーは工業技術院から一名、それから電気協会から一名、それから電力会社から三名、それから計器のメーカーないし修理業関係で四名、それから学識経験者が三名、それから消費者代表が一名、大体このような構成になっておるわけでございます。これはいわば計器のメーカーの立場ユーザー立場と、それを第三者の目から見る学識経験者の立場、それに若干の消費者代表、こういった意味合いで設けられたかと思っております。ただ、私先般いろいろ聞いておりました際に、もう少し消費者代表というものの数をふやしたらどうかというような意見があるようなことも聞いております。私どもも、そのような意見も今後のいろいろな参考にしていきたいと思っております。
  81. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの特殊法人に対する官僚といいますか、役人の天下りの問題が大きな世間の指弾の的になっているわけであります。この検定所の場合には、やはり電力出身の役員が入っておるわけですね。そういう点で、どうも背後に電力会社が糸を引くような状態が看取をされるわけであります。その点については、通産省としてはそういうおそれは絶対にない、だいじょうぶだ、こういうふうに考えられるわけですか。理事長は通産大臣が任命をすることになっているというふうに思いますが、その点でとの役員というのは一番最初から最後までかわらないわけではないと思うのですね。何年かにはかわると思うのですね。それもあまり長い期間でなくて、あきがないとあとから来る人が困るからということでなるべく期間を短くして、そしてかえていくんじゃないかというふうに私は思うのです。そういうのが通例だというふうに考えるのですが、そういう点についてはいまの状況ではどういうふうにお考えになりますか。
  82. 岸田文武

    岸田政府委員 いまお話の中にもございましたように、役員の任命につきましては、理事長及び監事は通産大臣が任命をする、それから専務理事及び理事は、通産大臣の認可を受けて理事長が任命をする、こういうことが法律の中にうたわれてございます。私どもは、先ほど来繰り返し申しておりますように、この検定所の果たすべき社会的な役割りが非常に重要であるという基本的な認識に立って、ここの検定がすべての人に信頼されるということが何よりも大事であろう、こういった考え方は役員の人事についても当然基本的な考え方として尊重されるべきだと考えております。人事の公正という点につきましては、私どもは特に配慮してまいっていきたいと思っております。
  83. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの点は、いまの役員の人をあまり信用しないなんて言われると困りますからこの辺でとめておきますが、これは非常に疑問を持たれる問題だろうというふうに思うのです。そういう点で、十分慎重な形での役員の選考なり、あるいは理事長の諮問機関である運営審議会等については、そのメンバーをきめるときには、ほんとうにいわゆる使用者のほうの立場に立ってそれができるような形の方向に少なくとも進めていくように努力をしていただきたいというふうに思うわけです。  次に、検定方法についてお伺いをいたしますが、一般消費の家庭の計器で、検定の結果の誤差というのですか、いわゆる公差というのがプラスマイナス二・〇から二・五%、大口需要家の場合精密あるいは特殊精密計器の場合はプラスマイナス〇・五から一・五%、こういう差があるわけですね。一般家庭の場合にはゆるめられておるわけであります。検定の結果のデータを見てみますと、マイナスの場合がわりあいに少ないのです。大体がプラスに出ておるわけであります。プラスに出ている場合にはそれだけ電力会社は得をする勘定になるわけであります。ほとんどの計器がプラスになっているということになると、大体その電力会社にプラスになるように、プラスのほうに調整をされてメーカーがつくっているんではないか、こういうふうに考えるわけであります。いままで、前に型式承認をされてつけられている計器に対する追跡調査といいますか、そういうものについてはどんな結果が出ているか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  84. 岸田文武

    岸田政府委員 計器の検定の誤差は計量法で一定の許容範囲がきめられております。家庭用と工業用とで差がある点、どういう理由かというお尋ねでございますが、家庭用で使われております電力用計と申しますか、積算電力計のしかけは、電流が流れると磁場ができ、それによって円板が回転をする、その回転を歯車によって置きかえまして数字を読み取るという形になっているわけですが、いわばその間の材質の不均一性あるいは機械加工の精度によって生み出されるものではないかというふうに思われます。  この誤差を低めるためには勢い機械の価格というものがかなり高くなってしまいます。先ほど調べてみますと、三十アンペア以下の一般家庭の積算電力計ですと、大体千九百円とか二千円程度でございまして、その程度の価格で処理するためには、いま申し上げました程度の誤差はいわばやむを得ないことではないかというふうに思っておるところでございます。  実際の検定の数値もいまこまかく調査をさしておりますが、いずれにせよ検定所といたしましては、出てきた計器をそれぞれ調査をして、その結果を客観的に検定をするという形でございます。その意味において電気計器検定所自体が操作するということはあり得ないわけでございますが、御指摘の中でプラスに一般的に出がちであるというような点、これはさらに私どももいろいる追跡調査をしてみたいと思います。ただ、技術的に申しますと、電気計器の場合には、使用すると次第に回転がおそくなる。したがって、マイナスの方向に作用するというような要素もあるということでございますが、この辺につきましても私ども十分調査をしてみたいと思います。
  85. 上坂昇

    ○上坂委員 いわゆる古い計器は、確かに年数がたつとマイナスになる傾向にある、こういうふうにこれは常識的に思います。  ところで、昭和四十年の型式承認をされたメーターについて、四十七年度に追跡調査をしたデータによると、六千個平均の誤差が〇・四七%プラスに出ているというふうに私は聞いておるわけです。これは調べたところですけれどもね。そうしますと、四十七年度の一般家庭電力使用量というのは四百九十二億六千五百九十一万キロワットアワー、これの〇・四七%といいますと二億三千百五十五万キロワットアワーになります。これに、これは家庭用でありますからいまの電力料金は十一円九十六銭くらいになりますか、それをかけますと約二十七億七千万円という計算が出てきます。そしてこれが電力会社に一般家庭から余分に払われている、こういう計算ができるわけであります。ですから、かなり大きな金額が——たいしたことはないということでありますけれども、これだけ電力会社のほうに電力料金として納められている、こういう結果になるわけでありますね。ですから今度の電力料金の値上げとか何かの問題についても、こうしたものもやはり原価主義というのをとっているようでありますが、問題にしなければならぬのじゃないかと私は考えるわけであります。そういう点で、家庭のほうで払っているものは、マイナスになった場合には電力会社はそうするかもしれませんが、本来ならば返してもらわなければならないものだと思うのですが、そういうことはできないから、一定の誤差を認めて、その分は電力料金として含めて払う、こういうことになっておるわけであります。こういうのを見た場合に、できるだけ厳正に検定をして、誤差をほんとうに少なくしていくということが一般需要家の保護になるというふうに思うのですね。そういう方向に行政も進めていかなければならないし、検定所のあり方としても、やはりそこに大きな重点を置いて運営というものを進めていくということが必要ではないか、こういうふうに考えるわけであります。その点についてどうお考えになりますか。
  86. 岸田文武

    岸田政府委員 検定誤差の問題は、その実態を私どもとしてもよく調べてみたいと思います。先ほど申しましたように、使用の当初から年を経ることに実際にどういうふうな形で動いていくのか、こういったことも調べてみなければいけませんし、また誤差の分布がどういうふうになっているのかという要素も必要であろうかと思います。いずれにせよ、電気計器検定所としては、あくまでも公正な検定ということについて最大限の努力を払うべきだということについては御意見のとうりでございます。ただ、基本的な問題としては、検定所だけではなくて、計器のメーカーの段階からさらに一そう材質の吟味あるいは製造工程の工場等々の面で、合理化努力を続けていくという努力と相まっていくことが必要ではないかというふうに考えられますので、それらの担当部局のほうにも十分連絡をいたしたいと思います。
  87. 上坂昇

    ○上坂委員 先ほどの答申にありました、いわゆる抽出検査についてお聞きしたいと思いますが、年間平均で不合格品は、古い計器で一%、新品で〇・三%程度だ、こういうふうにいわれております。両方平均しますと〇・八%くらいになるわけですが、いま三千万世帯以上に計器が取りつけられておると思うのですね。そうすると、その取りつけられている計器の一%が不合格になるということになりますと、三十万個がいわゆる不良品になるわけです。こういう問題になりますと、三十万の世帯が不良品を使っていて、電力がうんと流れてうんと電気料金を払わなければならないような状況も考えられる。そこで、これを抽出検査をしていった場合に一体どうなのか、非常に疑問に思うわけですね。これはいま全量検査でありますから、その点こういうふうな結果というものが出てくるわけでありますが、これが抽出検査になっていった場合には一体どうなるのかということで非常に不安にならざるを得ない。こういうことについて、抽出検査というものを今後将来にわたって研究をして進めていく方向を要請されている通産省としてはどういうふうにお考えになりますか。     〔田中(六)委員長代理退席、塩川委員長代理着     席〕
  88. 岸田文武

    岸田政府委員 大量の商品を検査する手法としてロット抜き取り検査というようなことが一部では行なわれております。また計量法全体の今後の体系の中でこういったロット抜き取り検査をどう扱うかというようなことも、別の座敷でいろいろ議論がかわされているということをたしか耳にしたことがあるわけでございますので、おそらくは数学的な問題がいろいろあるのであろうというふうに思われますが、電気計器の場合に即して考えてみますと、やはりいまの段階ではロット抜き取り検査に移行するというのはいささか早きに失する、あるいはそれが適当であるかどうかということも、私どもまだ吟味しておりませんが、少なくともいまの段階では全数検査体制というものを維持していくほうが適当なのではないかという感じがいたします。
  89. 上坂昇

    ○上坂委員 通産省は検定所を監督しているのでしょう。そうすると、いろいろなことで通産省は検定所のほうからも相談を受けるわけでしょう。部長の話を聞いていると、何かさっぱりタッチをしていないような感じで、そんなことは多少耳に入っている程度に言っているわけですが、どうもそれはちょっと私はおかしいと思うのです。もう少しこの法の目的にあるような運営をするということであるならば、通産省としては十分監督をしなければならない立場にあるのじゃないかというふうに思うのです。ところが、どうもいま聞いているとそういうふうに考えられない。これではやはりいけないわけです。もっと受益者の負担にならないように利益を保護する、そういう方向で十分ひとつ検定所の運営について監視をし、あるいは指導をしてもらいたいと思います。  次にもう一つ、業務の簡素化あるいは合理化というような問題が出てきておるわけですが、これについては、やはり通産省としても、いまの手数料の収入だけではやっていけないということになれば、どうしてもそういう方向に進まなければならない、こういうふうにお答えになるだろうと私は思うのですが、どうですか。
  90. 岸田文武

    岸田政府委員 検定の方法をどうするかということについては、従来から検定所自体もいろいろのくふうをしてまいったかと思っております。それらの経験を積み重ねて、いま一つ方法実施をされておるわけでございますが、それらにつきましてもなおさらに、むだがないか、もっとくふうはないかというような点について、お互いに勉強をし、それを採用に移していくという基本的な方向としてはけっこうなことじゃないかと思います。
  91. 上坂昇

    ○上坂委員 この間も東京の試験所を私は視察してきたのですが、いろいろ試験台があるわけです。聞くところによると、試験台の改善あるいは新しい機械を入れなければならない、相当な金がかかる、これはいまのあの計器の状態を見ますと、おそらく億の単位でないと設備ができないと思うのです。いま四十九年度で二億程度の黒字しか出ない。こういうことになりますと、計器一つ入れるにしでもたいへんなことになってしまう。それだけでも経営が傾いてします。そういうふうに感じられるのです。そういうようなときに、しかも機械の改善をしたり新しい機械を入れるということになると、そういうものは全部借り入れ金で行なうのか、どういうふうな手当てをしたらうまくいくというふうに通産省ではお考えになりますか。
  92. 岸田文武

    岸田政府委員 いまお話のございました機械化の問題は、検定所としても考えていかなければならない一つの大きな問題であろうと思います。特に手数料令というような形での一つのワクがある範囲内でいかに検定所を維持していくかということを考えてみますと、やはり機械化の方向について十分な討議が必要であろうというふうに思います。ただし、それは一ぺんに理想を追ってもなかなかいくものではございません。現実の作業の行なわれ方を踏まえながら、また将来の計器の検定予想がどのくらいの伸びを示すだろうか、こういったことについて詰めた勉強をした上で、それらの結果を事業計画に織り込んで実施をしていくというのが筋道であろうと思います。従来は、いわば手数料収入の中でこれはどうやっていくかというような限られたものの考え方をしておりましたが、そういう考え方だけでいいのかどうかというようなことも含めまして、私ども検討してみたいと思います。
  93. 上坂昇

    ○上坂委員 いま現実に労働組合と検定所の理事者側と交渉をやっておりまして、つい最近までストライキが行なわれていた、そのことは御存じだろうと思のです。その内容を見ますと、合理化、機械化の問題、それに基づくところの職員の配置といいますか、そういうものが争点になっているわけです。検定所側では、現在二十個掛けにして計算をしておりますが、四十九年度でそれを四十個掛けにしたい、こういうふうにいっておるわけであります。時間も現在三十分で計算をしているのを二十分にしてしまう、いわゆる自己加熱時間ですか、それを二十分にする、こういうふうにいっておるわけであります。そのことを三十アンペア以下の計器について実施したい、そこが一つの大きな焦点になっております。扱い量も現在ペアで二百個のものを二百四十個にする、そこにまた一つの問題が出てきている。実は検定所の発足当時には年間四百五十万個ぐらいの扱いだった。それがここ八、九年の間に八百二十万個扱うところまで来ている。倍になっているわけですね。これはもちろん機械化がたいへん行なわれてきたと思うのですが、扱っている人の労働条件の問題から見るとかなりシビアになってきていると考えます。私、はかってきたのですが、そうしたら二十から三十アンペアで大体一・六五キログラムの計器ですね。それから少し大きいのになりますと三キロから五キロぐらいです。これを女の人がかけたりはずしたりするわけです。これはたいへんな労力です。それがどんどんふえていくということになれば、二十分でヒートしてそしてそれをやるとなると、その間のあげおろしはたいへんな問題だというふうに思うのです。かなりの労働強化になるだろうと私は考えるわけです。しかし、そういうこともやらなければ経営の安定ができない、こういうふうな形になると、労働者を犠牲にして経営の安定をはかっていく方向にならざるを得ない。御承知のように、電電公社等でも最近頸肩腕症候群というようなものが出て、あの交換手が線をさす、それだけでたいへんな病気が出て自殺者まで出ているというような状況であります。それに二百個の機械、今度は二百四十個になって、それを毎日二キロも三キロもあるものを取りかえていくというようなことになると、これはたいへんな問題だろうというふうに思うのですね。そういうことを含めますと、私は、検定所の運営そのものについても、これは通産省としては抜本的に考えていかなくちゃならない問題が出てくるのじゃないかと思うのです。単なる特殊法人で独立採算をやればいい、こういう形だけで突っ放してしまったのではほんとうに厳正ないわゆる電気計器の検査というものはできなくなる、そういうふうに考えるわけであります。そういう点について通産省としてはどういうふうにお考えになっているか、お答えをいただきたいと思います。
  94. 岸田文武

    岸田政府委員 先般来労使の間でいろいろ紛議があったということを私どもも耳にし、またそれぞれの当事者から若干の意見の聴取も行なったわけでございます。組織をこれからどう持っていくのか、あるいは検査方法改善余地がないかどうか、さらには新規業務分野というものをどう考えていくか、これらの点がおもな問題点であったかと承知をいたしております。その中でいま御指摘ございました検定方法の問題につきましては、いままでのやり方と新しいやり方、どちらのほうがより合理的であるか、むだが省けるかというようなことを中心にしていろいろの話し合いが続けられ、私の承知しておりますところでは、いわば段階的に実施をするというような方向で一応の答えが出たということではないかと思っておるところでございます。  いずれにせよ、電気計器検定所は、繰り返し申しておりますようにたいへん公共的な仕事をし、またその結果について信頼を得るかどうかということが非常に大事な仕事でございます。その意味におきまして、私どももこの検定所の運営については従来以上に注意をし、また監督をしてまいりたいという所存でございます。
  95. 上坂昇

    ○上坂委員 時間が来たということですから、またあとでこの問題でやる機会があるだろうと思いますが、ただ、時間が来ちゃったというのも、私が一番先に質問した文書の確認についておくれているからで、その点は委員長のほうでも少し考慮をしていただきたい、こう思います。  そこで、その文書はあったのですか。
  96. 岸田文武

    岸田政府委員 ただいまのところまだ確認できておりませんので、確認でき次第あらためて御報告することで御容赦をいただきたいと思います。
  97. 上坂昇

    ○上坂委員 それじゃ、その文書が確認できないのでは質問ができませんから、質問を保留いたします。  終わります。
  98. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時九分休憩     —————————————     午後一時五十二分開議
  99. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。板川正吾君。
  100. 板川正吾

    ○板川委員 今回、政府の行政指導という方式できめられました石油製品の値上げの問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一に伺いますのは、今回の行政指導といわれる価格決定は、通産省が個別業者に対して個別的指導方式をとって行なわれたものかどうか。新聞では、この行政指導が独禁法に抵触しないのは個別業者に対して個別的指導をしたからである、こういう主張が行なわれておりますが、そういう方式でおやりになったのかどうか、これをお伺いいたします。
  101. 山形栄治

    ○山形政府委員 今回の値上げの実際の取り扱いにつきましては個別に指導をしたわけでございます。具体的に申し上げますと、三月十六日に閣議でこれをきめましてから、三十数社の石油、特に元売りにつきまして全部別個にこれを呼びまして、夜の相当おそくまでかかりまして、個別にこれを通達指導いたしたわけでございます。  ただ、この際先生に申し上げておきたいと思いますのは、値段の上げ幅そのものにつきましては、これは一つのマクロ的なモデル計算をいたしまして、全体に一律の形を一応はじいたわけでございますが、指導につきましては個別に行なったということでございます。
  102. 板川正吾

    ○板川委員 個別的に個別業者に指導した、こういうことです。これは確認して進みますが、今回キロリットル当たり平均八千九百四十六円、石油製品の価格の引き上げをいたしました。実はこれは何を根拠に八千九百四十六円という数字が出たのか、消費者、国民側にはさっぱりわからないのであります。わかっているのは政府と個別に指導を受けた石油業界だけじゃないか。一体この八千九百四十六円というのは何を根拠にして値上げをしたのか、値上げの理由と、その根拠を数字をあげて説明していただきたい。国民だれもがこれを聞けば、あるいは速記録を見ればわかるように、値上げの根拠を示していただきたい。
  103. 山形栄治

    ○山形政府委員 数字をあげまして具体的に御説明申し上げたいと思います。  御存じのとおり、OAPEC及びOPECの値上げといいますのは今回非常に大幅な値上げでございまして、一月以降、大体それまでのベースに対しまして二・三倍の値上げが実行されたわけでございます。しかし、われわれといたしましては、一月以降みだりにこれをすぐ便乗的に上げるのは国民生活の観点からもおかしいということで、大臣から特に発言をいたしまして、いわゆる値上げの凍結をはかってまいったわけでございます。しかし、全体の諸外国の事情を見ましても、一月十日ないし二月の初旬にかけまして先進諸国は全部値上げに踏み切っておる事情でございまして、東南アジア諸国におきましても、日本より早くこれが値上げを完了しておるわけでございまして、日本とベルギーだけが値上げしない状態で残っておったわけでございます。こういうことでございますと、諸外国とのバランスからいいましても非常におかしなかっこうになるのと、長期的に言いますと、こういうアンバランスのかっこうで日本の省エネルギー産業構造の進行ということも妨げられるわけでございますし、もっと現実的に申し上げますと、やはりいつか値上げせざるを得ないのであるなら、これを妥当な幅で上げまして、早く新価格体系に移行するということが一つ経済政策の根幹であろうということで値上げを計算いたしたわけでございますが、この際あくまでできる限り低位にこれを押えるということでございまして、一つ考え方は、幾ら上げるかということに最後はなるわけでございますが、ベースのとり方を十二月にとりますと、十二月は元売り段階でいわゆるもうけ過ぎというのが行なわれたことは確かでございますので、ベースのとり方をまず四十八年上期までさかのぼりまして、そこをベースにものを考えたというのが一つの大きな考え方でございます。したがいまして、原油の価格で申し上げますと、四十八年上期の平均が五千百九十二円、これはキロリットル当たりでございますが五千百九十二円であったわけであります。これは実績でございますが、これに対しまして四十九年の上を一万九千二百八円と見込んだわけでございます。これは私のほうと大蔵省と資料を集め合いまして、ほほ一カ月間のインボイスを全部地域別、船別に当たりまして、それを全体を出しまして、それの総平均のところをつかんだ数字でございます。キロリットル当たり一万九千二百八円が原油代であるわけでございます。この開きが一万四千十六円であるわけでございます。ただし、われわれの計算は、先入れ先出しでございませんで、期中総平均法をとっておりますので、古い油と新しい油を混在して評価する、できる限り値上げの幅を小さくするということも含めてそういう評価方法をとったわけでございまして、その評価後で申し上げますと、四十八年上の原油代が五千三百二十八円、これに対応いたします四十九年の上が一万七千八百十七円ということに相なるわけでございまして、この差額が一万二千四百八十九円であるわけでございます。この一万二千四百八十九円の原油代の増は認めざるを得ない。これはカットをいたしませんで、そのまま値上げ要因に組み入れたわけでございます。  これと直結いたしました部分が二つございまして、原油が上がりましたのに関連して、原油の輸入代金の支払い金利が非常に上がっております。これは自動的に上がるわけでございます。これは油と直結した部分ということで、この部分の金利増、一年前に比較しまして六百四十円を認めたわけでございます。  それから同じく油を日本まで運んでくるバンカーオイルの価格が上昇いたしておりまして、これも実績を勘案いたしまして、バンカーオイルの運賃上昇分というものを、一年前に比較しまして二百三十円認めたわけでございます。  原油代とユーザンス金利とバンカーオイルの代金、この三つがいわゆる原油上昇に直結した値上げ要因でございまして、これの合計が一万三千三百五十九円と相なるわけでございます。実はこれに、一年前に比較しました人件費とか副資材費とか国内輸送賃の値上がりを当然見込まざるを得ない。これは石油業界からは非常に大きな金額の要望があったわけでございますが、この際これをできる限り圧縮していただくということで、キロリットル当たり四百円を認めたわけでございます。この合計が一万三千七百五十九円というふうに相なるわけでございます。  ところが、先ほども言いましたように、われわれは十二月にはもうけ過ぎておるということを把握いたしておりますので、元売り仕切り価格の上から見まして、十二月の元売り仕切り価格の一万四千三百五十七円と四十八年度上期の元売り仕切り価格の九千七百九十四円との差額が四千六百円ぐらいになるわけでございますが、これを原則的にすでに値上げを先取りしておるという考え方から、以上申し上げました要値上げ幅からその四千六百円ぐらいを引くという考え方に立ったわけでございます。ただし、石油産業も一つの企業でございますので、利潤がゼロということで今後長期にわたって経営を行なうということは非常に過酷である、むしろ最小限度のマージンといいますか、利潤は見込むことによりまして、日本に原油の安定供給をはかるべきであるということで、キロ二百五十円分の利潤をそこに認めたわけでございます。  数字の問題でございますのでわかりにくいのでございますが、結局原油に直結した値上げ分が一万三千三百五十九円、その後一年間における人件費、副資材費、国内輸送費等の値上げ分が四百円、それをベースにいたしまして、そこから四十八年十二月の元売り仕切り段階の、いわゆるもうけ過ぎ分に見合う四千八百十三円を引きまして、そういたしまして、結局、ベース上から利益を吐き出さして、そういうことで計算いたしましたキロリットル当たりが八千九百四十六円、こういうことに相なるわけでございます。
  104. 板川正吾

    ○板川委員 いまの値上げの説明を国民の皆さんが聞いたら、おそらくなるほどそういう数字で、したがってこの数字がほんとうだなという気持ちにはならないんじゃないかと思いますが、まあその次を伺います。  値上げ後の平均価格が幾らになったのか、それは昨年の上期なりに比較いたしまして何%のアップになったのか、それを説明してください。
  105. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 値上げ後におきましては、昨年十二月の元売り仕切り価格一万四千三百五十七円に、八千九百四十六円という今度の値上げ幅をプラスいたしました合計二万三千三百三円が平均価格になりまして、昨年の十二月に対しまして六二%の上昇率でございます。
  106. 板川正吾

    ○板川委員 昨年の上期に比較しますと二三五%、昨年すでに先取りしている値上げの分から、そちらの数字でいいますと六二%、こういうことになるのでしょう。  次に伺いますが、この価格をきめる前に、バルクラインを引くと言われておったのが、バルクラインをとらずに総平均方式をとったのはどういうことですか。四分の三のバルクラインを引いて、そこで価格をきめるというようなことも前に言われたと思うのだが、しかしいまの説明は総平均ですね。総平均をとったのはどういう理由か。
  107. 山形栄治

    ○山形政府委員 バルクラインは、先生御存じのとおりいろいろなやり方があるわけでございますが、われわれが当初考えましたバルクラインは低いほうから四分の三までの数量が確保できるところの価格ラインということであったわけでございます。その趣旨は、石油というのはやはり産業の米みたいな感じもございますので、価格をきめますときにできる限り数量を確保できるというのが前提でございます。ただ安ければ幾らでもいいというものではございませんで、できる限り数量の確保に配慮するというのが、バルクラインを当時採用しようとした趣旨でございます。  それはもう少しこまかく申し上げますと、当時、一月二十五日から二月六日までのインボイスを全部調べましたところ、非常にばらつきが多く出ておりまして、これはおそらくDDオイルを引くのがある一社、二社等に集中したということもあるのかとも思いますけれども、そんな関係で、バルクラインを引きましても当時としては四社がバルクラインからはずれるというようなことであったわけでございます。ところが、この数字のとり方が少し短過ぎるのではないかということもありまして、大蔵省税関当局とも相談をいたしまして、二月一日から二月二十日までのインボイスを全部洗い直したわけでございます。その結果は、各社別の原油の輸入価格が相当程度ならされたかっこうも出てまいりまして、御存じのとおり、バルクラインと総平均でいえば、必ずバルクラインのほうが高く出るわけでございますので、この際、物価政策上のことも配慮しまして、できる限り低い形にするほうが望ましい、かつ、あまりばらつきが出ておらぬというような感じもございましたので、総平均にいたしたわけでございます。ちなみに総平均にしました結果、総平均からはずれるものが十二社ということになります。これは数が多くなっておりますが、価格上のばらつきにおきましてはわりあいにならされたかっこうになっておったわけでございます。
  108. 板川正吾

    ○板川委員 この価格の中には利潤というのがキロリットル当たり二百五十円見込まれておるが、間違いありませんか。
  109. 山形栄治

    ○山形政府委員 計算上そのとおりでございます。
  110. 板川正吾

    ○板川委員 それからこの指導価格なるものは、価格決定した諸要因が変動があった場合には変更するつもりですか。
  111. 山形栄治

    ○山形政府委員 これは閣議了解になりました文章にも書いてあるわけでございますが、基礎的な要件、特に原油価格それから為替レート等が、これは上下両方あると思いますけれども、著しく変動いたしましたような場合には、これはいろんな意味でやはり改定、見直しをするべきであるという考え方であるわけでございます。
  112. 板川正吾

    ○板川委員 最初に通産省は、個別業者に対する個別指導方式をとる、こう言われておったのですね。ところが、実際価格をきめる段階になると、マクロ的な総平均、マクロ的なモデル計算によって、結局個別的な原価というのをはじき出さないで、総平均でやったのですね。そして総平均によって統一価格をきめた。そして総平均で出して統一価格をきめて、その統一価格を各社に指導価格として要請した。これは話をしたのは個別かもしれませんが、この価格決定の方式は個別的じゃないですね。これは考え方によれば、通産省指導によるカルテル料金ということにも逆な立場から見ればなると思うのです。個別方式で個別的な業者に指導すると言ったことが実は総平均で、そして各社に同じものを押しつけた。この行政指導というものは、再三いわれているようにカルテル料金と全くうらはらの関係になるわけでありますが、この点について通産省はどういうふうにお考えですか。
  113. 山形栄治

    ○山形政府委員 先生御存じだと思いますが、たとえば電力会社等は一つの地域独占でございまして、それぞれの地域を一つの会社が供給独占をいたしておるわけでございます。したがいまして、電灯料金、電力料金の額及びその立て方も各社別に非常に違っておるわけでございます。石油につきましては、これは非常に数多くの精製及び元売りがおりまして、一つの一物一価的な色彩の強い、極端に言うと流通で交錯輸送が行なわれるぐらいの商品でございます。われわれは、先ほども申し上げましたように、なるたけ低く経費を押えて、しかも一方安定供給が最小限はかられるようにということでマクロ的に八千九百四十六円をはじいたわけでございますが、その個別的と申し上げますのは、一応値上げのベースが十二月の元売り仕切りになっておりますが、これは各社によってみんな違うわけでございます。これが全部同一でございませんで、平均が一万四千三百五十七円となっておりますが、これは各社別に元売り仕切り自身が違うわけでございます。また、各社別にその中の油種別が相当違っておるわけでございます。われわれといたしましては、この各社別に違っております十二月の元売り仕切りの上に、原則として八千九百四十六円が集計して加重平均して実現できるように各社を指導いたしたわけでございまして、近く各社からこれがとういうふうに——この八千九百四十六円を油種別にばらしたらどういうことになるのか。これは先生御存じのとおりガソリン、ナフサというふうに、ある数量と価格の掛け算を全部足し算して集計して平均しましたものが元売り仕切りの平均でございますので、各社別にいろいろと営業上の作戦もこの中に入っているわけでございます。したがって、これが近くわれわれのほうに届け出てくるわけでございますが、一物一価とはいいながら、こういう情勢でございますので、おそらく油種別には相当違った価格の立て方がそこで出てくるのではないかと私は考えております。いやしくも八九四六という数字は一つのガイドラインでございますが、これの実現におきましては、問題は油種別でございますので、油種別におきましては各社が相当違った形で出てくる可能性がある。かつ、これについて各社の談合ということは、こういう情勢でもございますし、絶対行なわれておりませんので、その点は、不十分かもしれませんけれどもわれわれとしては各社別に指導したという形は今回貫けたのではないか、こう考えておるわけでございます。
  114. 板川正吾

    ○板川委員 そこで伺いますが、政府が今回八千九百四十六円ときめたものを、なぜ国民生活安定緊急措置法による標準価格制度をとらなかったのか、これをひとつ伺いたいのであります。  とにかく今回の行政指導による価格決定の方式というのは、憲法上にも問題のある方式だと思う。しかも通産省は、執拗にこれを固執してきたわけであります。生活安定法の標準価格は、これは多数の取り扱い業者がおる、だからあれは総平均的な方式で価格をきめる。しかし、通産省の行政指導は個別業者に対する個別指導なんだから標準価格をとるのは妥当でない、こういう考え方であります。  生活安定法の第四条の三項では、標準価格は標準的な生産費、輸入価格または仕入れ価格に標準的な販売費用及び利潤を加えて得た額を総合的に勘案して定める、こういうことになっておるのですね。だから、生活安定法の四条の三項で標準価格をきめるきめ方そのものは、いまエネルギー庁長官が言ったきめ方と内容はちっとも変らない。これは平均的に数字を出してそして生産費あるいは輸入価格、これは原油の値段とこう置きかえてもいいのですね、そして標準的な販売費、これまた各社の個々ばらばらじゃなくて、これをトータルして平均を出した標準的な販売費、それに標準的な利潤、こういうものを加えて総合的に勘案する。これは外国の例もあるかもしれませんし、今後の政策上の考慮もあるかもしれません。そういうことを考慮してきめるというのがこの安定法第四条の三項による標準価格の決定方式なんです。だから、その決定方式をとらないで、なぜ行政指導によるガイドラインをつくって新しい石油価格をきめたのか。行政指導によるこの価格の決定は個別方式をとるのだから、個別に業者にきめるんだから、したがって通産省の権限でできるんだ、こう言うなら、それはそれで私は一つの筋であろうと思う。しかし、個別方式をとり、個別業者に指導したといっても、内容的にはこの標準価格の決定方式とちっとも変わらない。だから、モデル計算などといったって、結局総平均法なんですね。だから私は、一体なぜ安定法による標準価格制度をとらなかったのか、どうして通産省はこれに非常に固執して指導価格というものを強行したのか、わからないんです。この理由を説明してください。
  115. 山形栄治

    ○山形政府委員 最初に申し上げますと、個別企業に指導しておるから、したがって標準価格にしないんだということはございません。それは、そういう理屈は私は成り立たないと思います。  それから、先生のいま御指摘のとおり、今回の石油の価格計算のしかたが、国民生活安定法のいわゆる標準価格と非常に同じようじゃないかということは、私は全くそのとおりだと認めるわけでございます。  私のほうでこれを直ちに標準価格にしないという理由は二つございまして、一つは、非常につまらぬことでございますが、この元売り仕切りというのは、これは法制局の見解でございますが、国民生活安定法のいわゆる標準価格にはできないところである。これは、私も法律にちょっと弱いのでございますが、標準価格というのは、店頭に幾らで売るかということを表示するというようなことが一つの形式的な要件にも相なっておりまして、元売り仕切りというのは集合概念で、かつ元売り段階で次の卸にいく段階のものでございますので、その部分だけを取り上げて標準価格にするというのは非常に無理ではないかという見解だそうでございます。これは法制当局の見解でございます。  それから、それは元売り仕切りの段階の問題でございますが、ほかの油種別の末端価格等につきましては、実は原油のいまの価格が非常に流動的でございまして、一部にはクウェートのDDの入札のように、えらい高値で出したのが成立しませんで、現在再入札になってなおかつこれが実現しないというような動きもあります。これは、それだけ見ますとだんだんとDDが下がってくるのではないかというようなこともいえるわけでございますが、また、本日の新聞にありましたように、 ○APEC当局は、現在の公示価格の十一ドル六十五というのを十四ドル以上に近く引き上げるというようなことを非公式にまた言明いたしたりなんかしておるわけでございまして、今後の原油の代金がどういうふうに動くのか、これが非常に流動的で見当がつかない。インドネシアのミナスの原油も非常にいま値上げの動きもあるやに聞いております。そういう原油代の流動性というのが一つでございます。  それからもう一つは、為替が最近非常に円が強くなってきておるわけでございますが、しかし先物を見ますと、非常にまた円は安くむしろ評価されております。現物が二百七十八円とかいうときに、同じ時点の三月先物が二百九十八円といわれているように、非常に為替レート、為替相場がいま変動でございます。  それからもう一つは、今回の値上げというものに対して、需要面、供給面がどういうふうに動くのか、これがわれわれ初めての経験なものでございますので、にわかに見通しがつかない。一部には、上げ切れなくて、いわゆる想定された値上げが実現できない油種が出てくるのではないかということもいわれておるわけでございます。この辺、需給の動きが皆目つかないときに、直ちにこれを標準価格にいたすということで——標準価格ということは結局各都道府県を全部動員して全国体系をつくるわけでございますが、そうしましてこれが万が一にも下ざさえになるというようなことが非常に大問題であるというような感じもございまして、しばらく情勢を見させていただきたいということでございまして、ある需給の安定がはかられますれば、ガソリン、軽油、A重油については、当然標準価格への移行をわれわれは考えたいと思っておるわけでございます。なお、灯油とLPGにつきましては、いまやっております標準価格をそのまま維持続行するということでございますので、決して標準価格のほうにこれを移行しないわけでございませんで、しばらく情勢を見たい、こういうのが基本的な姿勢でございます。
  116. 板川正吾

    ○板川委員 第一点の最初の問題は、個別方式をとると再三言われておったから、行政指導というのは個別方式をとるんだ、そうして個別業者に指導するのだ、だから独禁法に抵触しないのだ、こういう論理が政府側から言われておった。この価格決定の際には、標準価格というのは大ぜいの人がたくさん小売り店や何かで売るわけですね。だからその場合には、それを平均した価格で標準価格というものをきめなくちゃならない。標準価格というのは、どうも今度の場合、行政指導による価格決定の場合には合わないから、個別方式には合わないから、行政指導によって新しい石油価格を個別にきめるのだ、こう言うなら一つの理屈はありますと言っているのですよ。それなら政府側の議論として一つの筋は通っていると言うのですよ。だけれども、実際に指導価格といってきめた内容を見れば、全部平均じゃないですか、標準じゃないですか。だからそれなら、この安定法の四条の三項なりでいう標準価格決定方式とあなた全く同じだと言うのだから、同じならこれを使ってもいいじゃないかというのが二番目の議論です。  それから次に、標準価格制度は元売りの場合に適用できるかどうか疑問だ、法制局の見解だそうですが、間違いないですか、エネルギー庁長官。それならば、石油業法第十五条に「販売価格の標準額」というのがありますね。石油業法第十五条に「通商産業大臣は、石油製品の価格が不当に高騰し又は下落するおそれがある場合において、石油の安定的かつ低廉な供給を確保するため特に必要があると認めるときは、石油製品の生産費又は輸入価格を基準とし、石油製品の国際価格その他の経済事情を参酌して、石油精製業者又は石油輸入業者の石油製品販売価格の標準額を定めることができる。」とありますが、これは元売りの仕切り標準価格、これはすでに一回発動してやっておった時期があります。だから、生活安定法の標準価格になじまないというならば、石油業法という法律がちゃんとあるのですから、十五条でこれはすでに前にも一回やったことがある。私の発言で石炭対策上のこともあって標準価格を設定したことがある。だから、ちゃんと法律にあるのですから、この法律を使っておやりになったらいいじゃないですかと私は言いたい。法律があるのに行政指導といって法律の存在を無視してかってにやられるのは、われわれ立法府からいえば困る。そういう立場で主張しているわけなんです。  それからいまのお話で、原油の値段が振幅をするかもしらぬ、為替レートも動くかもしらぬ、こういうお話でありますが、先ほど伺ったように、原油の値段や為替レートが著しく変動した場合には標準価格も変更できるんですね。いまは為替レートや原油の値段が上がったり下がったりする不安定な時期だから標準価格制度をとれない、こう言っておるわけですが、しかし生活安定法の第五条では、「主務大臣は、標準品目の物資の標準的な生産費輸入価格若しくは仕入価格又は需給状況その他の事情に著しい変動が生じた場合において、」「標準価格を改定するものとする。」こう規定しておりますね。だから、原油の価格がさらに上下したりあるいは為替レートに大きな変動があったり、こういうような場合には、安定法五条によって当然標準価格というのは変更できるということになっている。だから、生活安定法による標準価格制度を使ったのではぐあいが悪いという理由がないんですね。価格の決定方式も四条三項の標準価格の設定要件と全く同じじゃないですか。そして、条件が変われば変更するということもちゃんと五条に規定してある。だから、そちらがおっしゃることはこの法律に全部ある。なぜ生活安定法による標準価格制度をおとりにならなかったのか、これはわれわれわからない。どうしてでしょう。
  117. 山形栄治

    ○山形政府委員 先ほども申し上げましたように、客観的な前提条件の変動というのが一つの要因でございますが、もう一つは、これだけの大きな値上げでございますので、われわれもその需給がどういうふうに動くのか、実は自信がない点があるわけでございます。四月一日からはレギュラーガソリンがリットル百円、百円ガソリンということになるわけでございますが、こういうものが出現しましたときに、はたして需要がどういうふうに動くのか。オーナードライバー等がこれを非常に強く拒否してガソリンを買わないようになるのか、どっちの方向に動くのかというようなことにつきましてもちろんまだ見通しがつかないわけでございますので、しばらく情勢を見て、その実態がわかりましたらば標準価格のほうに移行いたしたいということでございます。  なお、先ほどちょっと誤解がございましたので、私申し上げますと、法制局の非公式見解でございますが、元売り仕切りそのものが標準価格になり得ない。いま先生のお話しのように、業法十五条等に書いてございますのは元売り仕切りそのものでございませんで、たしかガソリンについて十五条で一回実施したことがございますが、これは元売り仕切りを油種別にばらした油種別元売り仕切り価格、製品価格といいますか、そういうところでつかんでおるものでございまして、くどいようでございますが、今回の八千九百四十六円というのは、ガソリン、ナフサ、重油、灯油等々の元売り仕切りを数量と価格で全部加重しました総平均のある概念でございまして、そういう意味での元売り総平均の仕切り価格は標準価格になじまない。ちょっとよけいなことを申し上げたのかもしれませんが、そういう意味でございますので、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それから業法の十五条につきましては、確かにそういう条文があるわけでございますが、これは何ぶんにも非常に古い三十七年のときの立法でございまして、今後も使われる可能性もあるわけでございますが、そこに条文にも書いてございますように、著しく価格が高騰し、または下落するおそれがある等、安定供給上問題があるという、上下で考えておったような状態でございます。なお、それは元売り段階といいますか、むしろ元売りをはずれておりまして、輸入業者と精製業者だけをつかんでおる段階でございまして、今回のように元売り段階をつかんで、かつその下の末端の価格まで抑制的に一つのガイドラインを出そうという目的からいいますと、業法の十五条というのはその点でも若干法域が狭いということもございまして、われわれといたしましては、いま国民生活安定法がございますので、その世界でものを考え、今後の推移を見ながら標準価格への移行も考えるということで、緊急的に国民生活安定法の法域で考えるほうが妥当だという考え方を持っておるわけでございます。
  118. 板川正吾

    ○板川委員 私は国民生活安定法でやれというたてまえをとっておるのですから、すみやかに移行するというなら、それはそれでいいのですよ。移行しようというのだけれども、あなたのお話では、この八千九百四十六円、元売りから値段を出すものをきめることは、この標準価格制度では法制局がなじまない、こういうようなことを言うから、それならば、かつて精製業者、元売り、これの一キロリットル当たり標準価格として当時一万三千二百円だったか、そういう一つのポイントをきめて、それで他の価格の標準的な価格の設定のポイントにしたことがあるので、その十五条でやれないはずはない、こっちでやれないというから、じゃ、こっちにあるじゃないかという議論をしたのであって、標準価格制度でやるべきだと思うから、それはやってもらいたいと思うのです。価格の決定も、生活安定法は主務大臣が決定するという形で、電気やガスと違って認可制度をとっているわけじゃないのですね。認可制度をとって、電気料金やガス料金の場合には、標準的な経営のもとにおける標準的な利潤を確保して値段をこれこれにすべし、高くても悪いし、安くても悪い、こういうたてまえで、どんぴしゃりの値段が出るわけです。しかし、行政指導といい、この標準価格の価格決定方式といい、これは主務大臣が主務大臣の権限できめられるのですね。別にややこしい手数がかかるわけじゃないのですよ。だから、万が一それをやってみて妥当でなければ、初めてのことであろうし、それを妥当な方向に修正することはだれも文句はないんじゃないですか。大臣だってそれをやる権限はありますよ。だから、生活安定法による価格決定方式をとらなかった理由がわれわれはわからない。しかし、こういう行政指導方式できまったんだからいたし方はないが、なるべく早い機会に標準価格制度に移行すべきだ、こう思います。いまのお話ですと情勢を見て移したい、こう言っておりますが、一体いつごろまでに標準価格制度に移行されるつもりですか。
  119. 山形栄治

    ○山形政府委員 これは先ほど来申し上げておりますように、三つの要件といいますか、原油価格を取り巻く国際情勢、それから為替の問題それから私が一番重視しておりますのは、やはり今回の価格改定といいますか価格の値上げがどういうふうに各油種ごとに現実が動くのかという見定めの期間ということでございます。したがって、いつということはちょっと私とても申し上げる立場にないのでございますが、その需給の情勢を見定める期間がほしいということでございまして、そうこれが長いというのもおかしなものだと思いますが、おのずからな一番早い時期に需給の情勢を見定めまして前向きに考えていきたい、こう思うわけでございます。
  120. 板川正吾

    ○板川委員 需給の情勢を見るとはどういうことなんですか、それがわからない。では、需給の情勢がどう変わったらいまのままでいくのか、需給の情勢がどういうふうになったら標準価格に移行するのか、分かれ道の基準がさっぱりわからないじゃないですか。
  121. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 油種別に八千九百四十六円を展開をいたしまして、引き上げ限度幅をきめて、現在指導価格で指導しているわけでございますが、本来、価格につきましては、市場での自由な形成ということでまいっていたものにつきまして、ここに行政介入という形で指導をやっておるわけでございますが、価格の相互間の問題は、需給によってかなり影響が出てまいるわけでございます。価格の設定のしかたによりまして、たとえば極端な例かとは思いますが、油種間の移動が行なわれることもございます。相対的に割り安な油種のほうに転換をするとか、そういった油種間の変動という問題が予想されますので、この需給の状況と価格の相互関係ということにつきまして、私どもとしては自信を持って今度展開をしたわけでございますが、情勢をもう少し見定める必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  122. 板川正吾

    ○板川委員 この指導価格というのは、別に公定価格でも何でもないのですよ。また、これを守らなければならないという強制力を持った価格でも何でもないのですよ。だから情勢によってはそれは多少動くんじゃないですか。動いてはぐあいが悪いという考え方なんですか。多少は動くでしょう。動いてもいいじゃないですか。しかし、それが石油政策に重大な影響がなければ、それは多少お互いに高低があったってしかたがないんじゃないですか。それを何か強制価格のようにすべてが一本でなければおかしいという気持ちを持ったらおかしいんじゃないですか。大体、行政指導による価格決定というのはそういう性質のものじゃないと思うのですが、どうなんですか。
  123. 山形栄治

    ○山形政府委員 御説のとおりでございまして、これは公定価格でもございませんので、きちっとこれを一銭一厘オーバーしてはいかぬというものでないわけでございます。ただ、今回の価格の値上げにつきまして、なるべくこれを低位にいたしたいという大きな目的、それからこれをできるだけ長く保持したいという目的、それからもう一つの目的は、油種間におきまして国民生活または農漁業等との関係で、油種別の価格体系につきまして一般の等価比率に開いた場合よりも政策的な配慮を加えるべきであるというような三原則みたいなことが私なりの考えにあったわけでございまして、特に一番最後の点につきましては、灯油とLPGの当面の据え置き、それから軽油とA重油につきましては、等価比率で開きますと元売り段階で一万四百円の価格のアップということになるのでございますけれども、それではあまりに高過ぎるということでこれを八千九百円の値上げ幅に押えたわけでございます。これをもっと低くするという考え方もあったわけでございますが、そうしますと、たとえばA重油で申し上げますと、A重油とC重油の品質上のバランスがくずれまして、いいものが著しく安くなるということでA重油が姿を消すということも考えられたわけでございます。あれこれ考えまして、いまの油種別の開きも行なったわけでございます。私のいまの感じは、これはしばらく情勢を見てそういう目的に即応した今回の元売りの油種別及び末端の価格というのがはたして実現できるのかどうか、またしなければいかぬわけでございますけれども、各社がらの報告等も徴し、かつ実際の末端の動き等も見て、そういう政策目的がどのぐらい実現できるのか、実現できないときにはどこがどういうふうに直せばいいのか、そういう行政指導も含めてある姿を確認いたしたい、そこでもって標準価格に移行いたしたい、こう思っているわけでございます。標準価格というのは、先生のお話にもございましたように、これは変動要因がございますれば変動すればいいわけでございますが、一たび大きな制度といたしまして標準価格にいたしますと、全国の都道府県全体がいわゆる取り締まり体制に入るわけでございまして、これは当然のことでございますけれども、それを年がら年じゅう変えるということは、むしろ取引及び国民生活に非常なる不安定要因を残すわけでございます。ある程度の期間これが保持できることによって標準価格のほんとうの立法の意味というのが私あるのだと思うのでございまして、しばらく需給の安定の度合いというものを見定めませんと、標準価格への移行というのはかえって裏目に出て非常におかしなかっこうになる可能性もあるという感じで、いま猶予期間をほしいという意味で申し上げているわけでございまして、決して永遠にこれを標準価格にしないで行政指導のままで最後まで持っていくという考えはございませんことを申し添えておきたいと思います。
  124. 板川正吾

    ○板川委員 どうもこの前からその点わからない点があるのですが、標準価格というのは、とにかくある程度期間を長期的に変えることはできるけれども、そうしょっちゅう変えるべきじゃない。ところが、行政指導による価格は、その点ではある程度フリーに動ける、こういう差があると言っているのですね。そうでしょう、いま言ったことは。標準価格制度は法律によってきめるのだから、きまったらある程度固定化するようにできるだけしていきたい。しかし、行政指導による価格は、いずれにしても情勢に対応できるようにしようという特徴があるからこれをやった。こういう考え方でしょう。それじゃ近いうちにこの行政指導による価格決定をさらに行政指導で値上げをするという考え方なんですか。近いうちに値上げしようという考え方なんですか。ということは、値上げをしようという情勢がたくさんあるから、しなくちゃならないから、行政指導によってとりあえずきめたのだというなら、いい悪いは別として、それは一つ考え方ですよ。しかし、これから下がる傾向が強いというときに——行政指導でやるということはすぐ上げようという気持ちじゃないと思うのですね。下がるというときは、あるいは行政指導のほうがぐあいがいいということもあると思うのですが、行政指導でどうしてもやらなくちゃならないという、それに固執する理由が私にはどうしてもわからない。いずれにしても、近いうちに上げたいということじゃないですね。近いうちに上げたいということでなければ、できるだけ維持したいということならば標準価格でも同じじゃないかなという感じがするのです。どうもこの間から私、その点がわからぬのですがね。
  125. 山形栄治

    ○山形政府委員 近く上げることがあり得るから標準価格にしないんだということは絶対ございません。これは、先生のお話のとおり、標準価格自身の中にも著しく客観情勢が変われば四条で変え得るということでございます。その辺同じでございますが、先ほどちょっと言いましたように、閣議了解になりましたところでも、為替レート、原油の輸入価格等変動があれば見直すことがあるということで、それに関連いたしまして、田中総理も、予算委員会で、下がるような場合には直ちにこれを変動させたい、また可能性としては原油価格なんか上がる可能性もあるのでございますが、そういう場合にはできる限り上げさせないようにいたしたいという趣旨であるというようなことも御答弁になっております。いずれにしましても、指導価格にいたしております精神は、将来標準価格に持っていくつもりでございますが、くどいようでございますが、いまわれわれのほうで総平均でモデル計算でやりましたこの価格体系がはたして現実に実現できるのかどうか、万が一下ざさえのような効果が出る可能性もなきにしもあらずだということも考えられますので、しばらくの間この動きを見たいということでございますので、どうぞ御理解を願いたいと思います。
  126. 板川正吾

    ○板川委員 この段階では若干の時間はやむを得ないとしましても、とにかく早急に法律による価格決定の方式、標準価格制度の方式に乗りかえてもらいたいということを要望いたします。これは公取委員長もしばしば言っておりますが、一月も二月もじゃ困る。ある時期、緊急避難的にやったことは、こちらもとやかく言いたくないが、しかし長くこの方式でやることは独禁法上困る、こういう発言等もございますから、可及的に標準価格制度に移行するように要望いたします。  次に、先ほどの説明の中で、価格決定をするにあたって、業界の十二月における先取り値上げした分を今度は吐き出させる、こういうことを言っておられたのでありますが、この資料によりますと、先取り分が四千八百十三円ということになる。なぜ三月十八日に値上げをすることによって先取り分を吐き出させたか。三月十八日から値上げしたのでしょう。その計算が出ていないですね。四十八年上期と四十九年上期を想定して総平均によって計算したことはわかります。その計算はこれでわかるが、三月十八日にこの値上げを認めて決定した、そうしたらどれくらい先取り分を吐き出さしたか、こういう数字はこの説明ではわかりませんね。われわれも、原油の値段が昨年から見れば四倍にも上がっておりますから、価格は昨年並みでいいということは言っていない。適正な経営下における適正な利潤はしかたがないだろう。しかし、とにかく石油業界というのは諸悪の根源の本山ですから、これはもうよっぽどまゆ毛をしめして計算しないとごまかされてしまうと思うのです。  私の計算からいうと、これは三月十八日じゃ先取り分を吐き出さしていないですね。三月十八日に値上げをして先取り分を吐き出さしたという、その説明はどこにありますか。
  127. 山形栄治

    ○山形政府委員 今回の石油価格の引き上げはいろいろなやり方があったわけでございます。私のほうといたしましては、日本の石油企業の大部分が採用いたしております平均法、これは期中平均と移動平均とございますが、在庫評価のしかたについていろいろな方法がございます。その大部分を占めております平均法を採用してやったという点が一つの前提でございます。  私のほうは、先ほど言いましたように、諸外国も相当早くに上げておりますので、ずらせばずらすほど値上げ幅が計算上大きくなる、むしろなるたけ早く上げたほうがいいんじゃないかということで計算をいたしておったわけでございますが、前提としまして、四月から九月までの収支がどういうふうになるか、それを見込んで一つの値上げ幅を計算いたしまして、八千九百四十六円というものを計算いたしたわけでございます。それを前提にいたしまして、ことしの十—三期が業界が四千百億円の赤字といっておったわけでございますが、これをわれわれのほうで査定いたしまして、その結果これが二千八百数十億円ということに相なったわけでございます。その赤字を八千九百四十六円で消すという計算をいたしますと、これはこまかいことでございますが、実は二月十八日に値上げするととんとんになるということであったわけでございます。ところが、先生指摘のとおり、昨年石油産業はいわゆる先取りでもうけたということでございますので、これを別途計算いたしますと、私のほうの計算でございますと六百五億円がはじかれたわけでございます。この六百五億円は当然吐き出すべきであるということで、これを計算いたしますと、先ほど言いました二月十八日というのが二月二十六日でいいということに相なったわけでございます。ほぼ三月一日に値上げすればけっこうだ、こういう計算に相なったわけでございます。ここでもって去年の暮れのもうけは全部吐き出さしたということになるわけでございます。  しかしながら、別途、石油産業に対しましては、いま、もう少しきびしい態度で臨むべきであるという世論及びそういう考え方もありますので、内部留保の吐き出し、配当性向の変更、それから役員賞与の辞退というような形を当然それに付加して三月決算は行なうべきであるという形で、実施時期の選定をそこの辺で最大限ずらせるまでずらしまして三月十八日にこれを実施したということでございます。本来二月二十六日の六百五億の吐き出し後にとんとんになるべき石油産業の収支というものが、十八日までずらしました結果千三百数億円の赤字計上を余儀なくされる、私のほうのモデル計算ではそういうことになるわけでございます。くどいようでございますが、六百五億は日にちの計算、実施期日の計算でこれをわれわれのほうではやったということでございます。
  128. 板川正吾

    ○板川委員 十ドル原油になった以上はある種の値上げはやむを得ない、われわれもそう思っているんですよ。だからそのことを否定しているんじゃない。過去のもうけ過ぎ、十二月の先取り値上げした分のもうけ過ぎを吐き出させなくちゃいけない、これもわれわれ意見は一致いたしております。そのためには値上げを幾らにするかということと、いつからやるかということが問題なんです。確かにあとから値上げをすれば値上げ率が高くなるということもわかるのだけれども政府の計算では、どうもそういう関係の説明があなたのほうの資料にはない。だから、ひとつ精細な資料をあとで出してください。これはおそらく十月、上期の決算をやったころにははっきりわかりますから、いかに甘かったかということが証明されるから、いまのうちに証拠として出しておいてください。  私の計算では、今度の決定は高過ぎたという計算が出るのです。これは説明しますから聞いてみてください。四十八年八月現在で原油のCIF価格がバーレル当たり三ドル二十五セント。これを当時の為替レートで計算しますと五千四百十七円。そして関税が六百四十円もありますし、これは安いものもありますから平均いたしまして六百十八円。ですから原油の着値は関税を入れましても六千三十五円になります。昨年八月の元売りの平均仕切り価格というものは、公取で例の調査をしたときに入手した数字でありますが、ガソリンが一万七千円、ナフサ八千五百円、ジェット燃料一万五百五十円、灯油一万二千五百円、軽油一万一千円、A重油一万一千円、B重油八千五百円、C重油八千円、これにそれぞれの得率をかけて平均した石油製品の価格を割り出してみましたならば一万七十六円ということになりました。これはそちらと得率等が若干違っております。そちらの計算は上期の平均で、私のほうは八月現在ですからね。あなたのほうの計算の上期の平均ですと九千七百何十円になりますね。その差はありますよ。九千七百九十四円というのですから差がありますが、私の計算では、こういう計算をしますと一万七十六円である。これは数字が真理である限り間違いありません。  それで十二月の、いわゆる石油連盟が中心になって値上げをした、実際は十一月二十日ごろから物統令が出るというので値上げをしたところもありますが、あのやみ協定によって値上げをしたのは、ガソリンが二万七千円、ナフサが一万三千五百円、ジェット燃料が一万五千五百五十円、民生用灯油が一万三千五百円、工業用灯油が一万八千五百円、軽油が一万七千円、A重油が一万七千円、B重油が一万一千五百円、C重油が一万一千円。これを同じ通産省で四十八年度にきめられた得率をかけ脚計算しますと一万四千六百九円となる。一万四千六百九円というのを前の一万七十六円で割りますと四五%の値上がりである。通産省が計算したのは、もとの金額が九千七百九十四円という、ベースが低いから、通産省のほうではこの間の値上げを四七%というふうにいっています。四五%と四七%、違いますが、これまた私の資料でいうならば、これは通産省とそう違わない。若干もとのベースになる数字が違っておるために差があるけれども、四五%の値上がりをした。一方、通産省が御承知のように産業連関表を用いて原油価格の上昇に伴う各産業の価格への影響を計算したものがあります。それによりますと、四十八年八月は三ドル二十五セントであり、四十八年十二月は五ドル十三セント、こういうふうにCIF価格が値上がりをいたしておりますが、この場合に、石油製品は平均してどのくらい値上がりの影響を受けるだろうかというのが計算をされておりますが、これは値上げ率が二九・八%、約三〇%という計算が出ております。この三〇%という数字を出したのは、産業連関表は四十五年のをとったということ、あるいはその後の操業率の変化、人件費アップ、利益額の変動等の要因は考慮されていない、こういう注釈もござ、いますが、他の学者が計算したのも、四十五年の産業連関表を使ってみると、若干の差はあるけれども、数字はこれとそう違いはありません。ですから三割といたしますと、三割値上げしても、三割はしかたがないと思うところへ四割五分、十二月一日から値上げをした。一割五分すでに先取り値上げをしたということになる。どさくさにまぎれて石油業界がやみカルテルで一五%も値上げをした。この一五%は八月現在の一万円の平均価格から計算しますと千五百円になる、こういう計算になります。ここまでは数字のとり方に多少の異論があっても私は文句はないと思う。千五百円先取り値上げをした。十二月に販売しました石油製品の総販売量二千二百五十八万キロリットル、これを千五百円先取り値上げをした分を計算しますと三百三十八億七千万という数字が出ます。これはもう通産省では、さっき言った先取り値上げ分を認めておりますが、とにかく十二月分で三百三十八億円の先取り値上げをしておったという計算になります。ところが、この十二月現在で在庫は原油が二千五十八万キロリットル、製品が二千三百二十三万キロリットル、合計しまして四千三百八十一万キロリットル、日数換算で五十四日分、これが十二月末の在庫であります。この十二月末の在庫は、すでに過去二カ月近く、五十四日分の前からあったものですから、安い原油の値段です。ですから、この四千三百万キロリットルにすでに値上げした分の千五百円をかけますと、これは一応端数を切り捨てて六百四十五億円になります。安い在庫による値上げ分の先取り分を計算すると六百四十五億円になります。それから一月一日から確かに九ドルから十ドル近く原油が十二月に比較して倍に上がりましたけれども、一月二十日ごろまでは、中東から船積みして到着する船は、すなわち四十八年十二月三十一日に出帆した船は、少なくとも五ドル前後の安いものであります。これは一月二十日ごろまでに入ってくるわけでありまして、中東から入る日本の原油は約八割ですが、これを概算いたしますと、一月分の二千二百万キロリットルの三分の二が安い原油が入ってきたものと計算をいたしますと、二百二十億円であります。したがって、この二百二十億円と六百四十五億円と三百三十八億円をプラスしますと千百九十八億円七千万円で、約千二百億安い原油を買っており、それを高値に先取り値上げをしてもうけたという計算になります。ところが、この一月から原油の価格が十ドルに上がったといたしますと、今度は逆にいままでの値段で売った場合にどのくらいの損をするかということを計算いたしますと一キロリットルについて六千二百円赤字を出すわけであります。その六千二百円という数字はどこから出したかというと、これまた通産省で産業連関表によって試算してくれましたものによりますと、ケースCというのであります。四十八年八月から四十九年の平均の上昇率が、バーレル当たり三ドル二十五セントから十ドルになった場合にどのくらい石油製品価格に昇響を及ぼすかというと二〇七・二%という計算になります。二〇七・二%ということは、すでにこの中で十二月までに四五%値上がりをしておりますから、その分を差し引きますと六二という数字が残るわけであります。私の計算による八月の平均一万円に対して六二%ですから六千二百円。実はこの十ドル原油になって十二月に先取り値上げした分の価格で売っておれば六千二百円分が一キロリットルについて赤字になる、こういう計算になります。  この六千二百円は、そうしますと一日当たり一体どのくらいの損失になるかという計算をいたしましたら、石油製品一カ月二千二百万キロリットルと計算して、これは三十日で割りますと一日平均七十三万キロ、この見当でございましょう。この七十三万キロに六千二百円をかけますと四十五億二千六百万という数字が出ますが、これは十二月上げた分でその後値上げをしないでいくと、一月以降高値の十ドル原油が入ってきてそれを使われる場合には、こういう一日当たり四十五億円何がしの赤字になりましょう。この四十五億円の赤字で千二百億の先取り値上げの分を割りますと二十六・四八、二十六日分値上げをしないことによって先取り値上げを吐き出させるということになります。一月二十日を安い原油が入ってくる最後の日といたしますと、五十四日分の安い在庫がこの場合にはあるはずでありますから、五十四日目の三月十六日まで安い原油が使われているはずである。もちろんこれは先入れ先出し法によるものである。三月十六日まではとにかく安い原油だから、四五%値上げしている分で十分間に合うわけでありますが、その後、高値の原油を使うようになりますと赤字になり、それを吐き出させるためには二十六日かかる。三月十六日から二十六日を足しますと四月十一日ということになるわけであります。だから四月十一日までは値上げをしなくても先取り値上げを吐き出させる日にちである、こう思います。  ところが、私の計算と通産省の計算では、私のほうは単純な計算でありますが、通産省のほうは、先ほど言いましたように、支払い代金の金利で六百四十円ばかりかかります、あるいは舶の燃料が値上がりしたために二百三十円ばかりかかります、精製、管理販売費と人件費、国内運賃、修繕費こういうものがキロリットルについて四百円ほど値上がりをしておるのだ、こういう計算をしております。だからその合計、合わせて千二百七十円ということになりますが、この千二百七十円を計算しましても——こういうことになるのです。十ドル原油になった場合に石油製品の平均価格は、昨年の八月の一万七十六円に二〇七・二%をかけますと二万八百八十円という見当になります。だからこれは政府が指導価格によってきめられた二万三千三百三円よりも二千四百円ほど安いということになります。要するに、政府の指導価格による値上げが二千四百円ほど高いじゃないか。その高いものに、いま言った、政府の案の中にあって私の案の中になかった金利や舶用燃料や精製、管理、人件費値上がり分、この合計千百七十円を差し引いたとしても、キロリットルについて千二百円高過ぎておる、こういう計算になります。しかも、私のは四月十二日以降値上げすればよろしいことになっておるわけですが、私の計算によれば、とにかく今度の行政指導価格はあまりにも高過ぎるではないか。だから、業界と癒着しておるのではないか。しかも、この決定が密室できめられて、国民や消費者にはわからぬ。こういうところに問題があるわけであります。不明朗なきめ方である。行政指導などというものに固執をして、ガラス張りの中でオープンにやらないというところが、われわれは不明朗なきめ方だと思うし、第一、こういう値上げをしたのは、われわれの計算からいえば高過ぎたじゃないかと思うのです。行政指導は行政処分じゃありませんから、政府の価格決定方式に反対して、裁判に訴えて争うというわけにはいかない。実際は高過ぎた。国民は、通産省が出しゃばりをしてわざわざ高い値段をつけてやったのは困る、こういう気持ちになるのです。私の計算で落ちていたところの千百七十円というキロリットル当たりの要素は、通産省で言っているものは入れても高過ぎるのではないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  129. 山形栄治

    ○山形政府委員 ただいまの先生の分析は非常に詳細をきわめておりまして、私のほうでも寄り寄りお聞かせ願って、各要因ごとの分析の方法論及びその数字のとり方等につきまして検討いたしたわけでございます。非常に詳細であり、かつ方法論的にも非常に正確な分析だと思うわけでございますが、一つ私のほうで言わしていただきますと、いま最後にちょっとお話が出ましたように、先生の分析の根幹が在庫評価の場合の先入れ先出しを原則といたしておる点が、われわれの方法とのほとんど唯一といっていい大きな違いでございます。先入れ先出しで全石油産業をやれば、方法論的にはほほそういうことになるわけでございますが、これは先ほども申し上げましたように、企業会計原則及び徴税技術等の点からいいまして、期の途中で評価方法を変えるということは、これは悪いときばかりではありませんけれども、利益を隠す手段にも使われるわけでございまして、従来の慣例は、決算期の始まる前に所轄税務署に事情をよく話して、決算方法といいますか、評価方法を変えるのが慣例になっております。われわれは総平均法を前提としてとった点が違うわけでございます。  なお、若干コメントいたしますと、先ほど来先生のいろいろな伸び率で出ておりましたところで非常に違いますのは、IO表でも違うわけでございますが、輸入価格をドルベースでそのままおきまして、そこの伸び率でやっておるわけでございます。実はIO表も為替換算を同一ということでやっておりまして、そこが非常に大きな違いでございます。  具体的に申し上げますと、四十八年八月のときの円と四十八年十二月のときの円相場ですが、八月ごろは二百五十六円ぐらいだったと思うのですが、十二月にはすでに三百円近く、二百八十九円とか三百円とかいう感じになっておりまして、実際の輸入価格を評価しますときには、これを円換算して所要の金額をはじくわけでございまして、先ほど来出ました一〇七・二%アップというのは、為替のレートであれしますと一三九・一%ということに相なるわけでございます。  この辺で、計算上で非常に違ってくる点が一つと、それから四十九年度の上期の原油を、いま先生のほうではバーレル十ドルでございますが、私のほうはこれを十ドル五十三セントでインボイスから一応はじいておりますという点が一つ計算上の違いかと思うわけでございます。  この計算の問題でございますので、前提のとり方はいろいろございますが、大きくいいまして、先入れ先出しはとらなかったということと、ドルベースでなくてこれを円換算して計算したということでございまして、いま先生のお示しのことをわれわれのほうなりにやってみましていろんな試算もしておりますが、もし先入れ先出しをとり、ドルを円ベースに切りかえて行なうということになりますれば、やはり四月にはなりませんが、三月の相当終わりのほうということになります。これは先入れ先出しをとればそういうことになる。しかし、先入れ先出しを全部とるということは、逆に将来OAPEC等が値下げを行なった場合でも値下げを実行できませんで、また一カ月間ぐらいむしろ古い油の入っておる限りは値下げはできないという不合理も生じますので、われわれとしては、今後も総平均法的な考え方のほうが日本の実情には合うのではないかと考えておるわけでございまして、一応先生の先入れ先出しを前提にしましたお考えであれば、そういうことに相なるかと思いますが、われわれはそのほうをとっておらないということを申し上げまして、答弁にかえるわけでございます。
  130. 板川正吾

    ○板川委員 時間がちょっとオーバーしたようですから、もうきょうは打ち切りますが、いずれにしましても、今度の行政指導による価格決定というのは、密室の中で政府と業界だけの話し合いで行なわれたのであって、ぜひ明細な資料を出してもらいたい。これは委員長にお願いします。あとでまた、それを基礎に議論いたしたいと思います。  それから、きのうの新聞ですが、通産省が石油業界の資金繰りのために市中銀行から特別ワクで五千億ほど融資ワクを設ける、そういう報道があります。困るのは、私は石油業界ばかりじゃないと思う。ガス業界でも電力でも、公共料金的なものはほとんど困っておるんだろうと思う。石油業界だけ五千億も融資ワクを特に設けるというのは、どうもこれは通産省が、今度の価格決定は非常に安くきめて業界が困っておる、業界が困っておるということは安くきめたことだ、決して癒着して高目にきめたのではないということをPRするための一つの宣伝じゃないかという勘ぐりがされるわけであります。どうもそんな感じがしますが、私は、こうした特別ワクというのは金融引き締めがしり抜けになるおそれさえある、こういうことも指摘しておきたいと思います。値上げをするときだけ行政指導が実は入るのです。行政指導のパターンというのは、大体業界が高目のことを宣伝する、通産省が入っていって、それは困るからこれとこれは切って幾らにせい、これならわれわれは行政指導でいい、こういう形ででき上がっておりますから、業界も心得たもので、値上げをしようと思うときは、大体何割かかけて高目な宣伝をする。通産省が入ってある程度下げられてもだいじょうぶだという形になる。本来なら、行政指導でそのとおり価格に介入したかったら、たとえば昨年十二月一日にカルテルで値上げをしたので公取がそれを摘発をしたらすぐ通産省が入って、これは明らかに先取り値上げだから値下げをしなさいというような、こういう行政指導なら国民に喜ばれますよ。ところが、そういうやみカルテルで値上げをして見つかっても価格の値下げをさせようという行政指導はなさらない。そうして値上げの合法性を与えてやるような形のときだけ通産省は行政指導権を振り回すのですが、ここに私は問題があると思います。  きょうは行政指導の問題と憲法の問題とをやりたかったのですが、時間がオーバーいたしましたので、あとの質問者のお都合もあるようですから、以上をもりて一応私の質問を終わります。
  131. 濱野清吾

    濱野委員長 左藤恵君。
  132. 左藤恵

    左藤委員 いま板川委員から、石油価格の問題について御質問がありました。  実は、日本経済の二月二十三日に「教えて欲しい七つの疑問」というコラムの欄がありまして、ここに、まずその第一に、原油一バーレル、これは百五十九リットルでありますが、この一バーレル二ドルの原油が八ドルになっても、円換算にすると千八百円上がっただけになるわけだから、リットル当たり十一円くらいの値上がりにすぎないはずである。そのほか、タンカー運賃、原油を送ってくる運賃がそれほど上がるとも思えないし、また精製コストが急上昇するとも思えない。そうして原油から同じ量のガソリンはとれないとしましても、ガソリンを抜いた残りは、先ほどのいろいろなお話の中にありました重油とかそういった形で売れるわけであります。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕 政策として、油種別の価格のいろいろな問題はあろうと思いますけれども、ガソリンの値段は、たとえばリットル当たり二十円も値上げをすれば十分だと思うが、実際石油ショックと同時に四十円上がった、そうしてまた近く値上げされるが、こういうことにしないと赤字になるというのはどういうことかというようなことがありまして、先ほどお話しのような三月十八日からまた上がっている。  こういうことについて、結局石油業者と通産省の間では、いまお話があったようないろいろな分析をされ、行政指導をしておられる価格というものが出てきましても、国民が実際消費者として油を買います場合あるいは石油からできる製品、そして一般物価へのはね返り、こういうことにつきまして、どれが一体正しいのか、何を信じてやればいいのか、場合によっては便乗値上げがあると思うけれども、これは通産省は一体どういうふうにわれわれに教えてくれるのだ、こういうように、国民に、非常な素朴な、またそれが非常に大切な日常の物価の問題とからんだ意味において知らせてほしいという要望があろうと思いますが、こうしたものに対して通産省はどういうPRをなさろうと考えておられるのか、この点が非常に徹底していないと思います。新聞紙上で見ただけでは国民はわからないと思いますが、こういったものを積極的にPRされるお考えがあるかどうか、まずそれをお伺いいたしたいと思います。
  133. 山形栄治

    ○山形政府委員 今回の石油の値上げにつきましては、これは額が大きかっただけでございませんで、いま先生の御指摘のとおり、元売り仕切りというような非常にわかりにくい概念、かつこれを油種別に開きまして、またそれの末端価格をきめるというような手順を踏んだわけでございまして、特にその末端の価格のときの場合には、いわゆる流通マージンというものが入っておるわけでございまして、この辺、一番末端での消費者の方々には、中間での流通マージンの動き等がからんで非常にわかりにくいことかとも思います。  われわれは、いまお話しのとおり、PRが足りないというお話につきましては深く反省をいたしまして、今後もつとめてまいりたいと思うわけでございますが、ここで若干お話し申し上げますと、ガソリンに即して申し上げますと、ガソリンは特に最近、流通マージンが非常に高くなってきております。これは四十八年三月ごろでございますと、流通マージンが、これは卸と小売りを含めまして十五円七十五銭。このころのレギュラーガソリンの末端小売り価格が六十一円のときに十五円七十五銭、これは比率でいいますと二五%ないし二六%ぐらいの流通マージンであったわけでございますが、四十八年九月にいきますと、この流通マージンの比率が二十八円九十銭と上がりまして、元売り仕切りのほうは、そのままガソリンは据え置かれております。したがいまして、小売り価格が三円ぐらい上がりましたのは全部流通マージンの上昇であったわけでございます。これが昨年の十二月に入りますと、そのときには流通マージンの全体に占める比率が三四%に上昇いたしまして、実額で小売り価格八十五円の中で、二十九円六十銭、約三十円の流通マージンということに相なったわけでございます。  この辺はいろいろと批判をされておる点でございますので、今回、ガソリンにつきまして指導価格を設定いたしますに際しまして、本来ならば元売り仕切り価格の上昇が十七円十銭あったわけでございますが、これを七円九十銭カットいたしまして、その分を全部流通段階で吸収していただくということで卸、小売りの方と了解を得たわけでございます。したがいまして、ちなみに流通マージンだけで申し上げますと、四十八年十二月の、いま申し上げました二十九円六十銭が二十一円七十銭に下がるわけでございまして、流通マージンだけでいいますと、本来、二七%の油の価格が上がるべきだったのを流通マージンのカットをむしろ二七%いたしまして末端価格を押えたというかっこうでございます。  この辺は非常にわかりにくい点も含めまして、われわれこれから、そういう点でのPRといいますか、そういう御理解を得るようにますます努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  134. 左藤恵

    左藤委員 ぜひその点は国民にわかりやすくPRというものを常に心がけていただきたいと思います。  それから石油開発公団法の改正との関連がございますので、その点はお許しをいただいて、若干石油開発公団について御質問申し上げたいと思います。  本来、石油開発公団は、石油の探鉱などを民間が行ないますのにあまりにリスクが大き過ぎる、そういうものに対して公団というものをつくって積極的に援助推進させようというのが設立の目的であったと考えるのですが、その後の運用を見てみますと、何か法律に縛られ過ぎておる、ことばが悪いかもしれませんが、あまりにも、けがをしないようにというような配慮のほうが先に立っているような気がするわけでありまして、本来の目的が十分果たされていないというふうに考えるのであります。その一つの例になると思うのですが、輸出入銀行から貸し付けを受けたものに対して公団が保証をするというような制度があるわけです。これを従来そういうふうにやっておりましたけれども、最近これも何か問題があるということで大蔵省のほうがお認めにならない。輸出入銀行は、一部、開発する会社の株主に保証を転嫁しているというようなことがあるようであります。かりに百億円の融資を受けようとする場合には、輸出入銀行から八十億円で、それから市中銀行から二十億円融資を受けるということになるわけでありますが、この輸出入銀行の八十億円のうち、十六億円については市中銀行からまた保証してもらう必要がある、こういうような金の借り方をしておるわけです。市中銀行の二十億円だけについて公団が保証する、こういうようなシステムになっておると聞いておりますが、どうしていままでのような輸銀から貸し付けを受けたものに対して公団が保証するということをやめられたのか、大蔵省にこの辺をお伺いいたします。
  135. 禿河徹映

    禿河説明員 先生指摘のとおり、私どもいろいろ通産省とも相談してまいったわけでございますが、従来輸出入銀行が開発資金を融資いたします場合に、それの全部ではございませんけれども、相当のものについて石油開発公団が保証するというケースがございました。しかし、私ども考えてみますと、石油開発公団も輸出入銀行も、これはどちらも同じく政府関係機関でございます。もしその貸し付けにつきまして事故が発生するという場合には、融資をしたほうがその責任をかぶるのか、あるいは保証したほうがかぶるのか、そういうことになろうかと思いますけれども、そのどちらも実は政府関係機関でございまして、どちらがその辺を負担するかということは、財政的には、全体から見ました場合には実は全く同じようなことになるわけでございます。やはり政府関係機関の機能といたしまして、融資をした、それを他の政府関係機関に保証してもらうというふうなことはあまり意味がないのではないかということで、実は石油開発公団ができましたときからそういう問題意識は私どもあったわけでございますけれども、やはり輸出入銀行がこの案件に融資をするのがいいということならば、石油開発公団の保証がなくては貸さないとか、そういう姿勢でなしに、自分の責任で貸すというほうが筋が通る話ではないかということで、大体昨年あたりから石油開発公団の保証なしで輸銀が金を貸しましょうということになったわけでございます。  ただ、その場合におきましても、実際問題といたしまして、輸銀のほうが石油開発公団の保証がなければなかなか貸さないとか、あるいはそれにかわる保証を開発担当の民間の企業に求めるとかいうことになりますと、いままでより以上の負担をそういう企業にかけることにもなりますし、ひいては石油開発の案件の進捗を阻害するということになりかねませんので、この点につきましては、従来以上に企業に負担をかけることがないように十分弾力的な運用を輸銀のほうでやるようにということで、最終的な姿におきまして、民間のほうがいままでより以上の負担をこうむるということがないように実は配慮してまいっている次第でございます。
  136. 左藤恵

    左藤委員 いまお話がありましたけれども、現実問題としては、結局やはり輸銀がそういうふうな、何といいますか、これも一つの安全を考えたようなことと、それからもう一つ、そうしたいろいろなこういう石油探鉱という本来非常に技術的できわめて専門的な調査、準備をして、そして初めて融資をされるべき性格のもの、すなわち精度の高いような仕事につきましてあちらこちらで調査することになれば、たとえば技術者もよけい要るだろう、それから資料も膨大なものをつくらなければいかぬというようなことがあるので、何かそういう点についてはむだのないようになお一そう配慮をしていただきたい。そうしてあちらの窓口でも同じような資料をこちらの窓口でもというようなことで、二重、三重の資料作成とかいうようなことのないように、特に運用面で、先ほど申しましたような法の精神、すなわちこのリスクが大きい仕事を思い切って援助し推進していこうという仕事ですから、そういう意味の立法の原点に立ち返って指導していただくように強く要望申し上げたいと思います。  それからもう一つは、石油開発のことに関連いたしまして最近メジャーズがどういう動きをしていくかということが非常に大きな関心事であろうと思いますが、アメリカは、ナショナルセキュリティーというふうなことから考えても、アラブとの関係でいままで中東に対して膨大な投資をしているが、こういったものを少しずつ転換して、むしろメジャーズのほうは、たとえばこういうふうに油の値段が上がりますと採算がとれてくるアメリカ国内のオイルシェールとか、そういったものの開発に精力を注ぐようなことになっていくんじゃないか。そういたしますと、今度は中東の場合では当然DD原油というもののワクが増大してくる、こういうことが考えられると思います。そうした場合に、一つの合理的な取引——競争で殺到しないようにとかいうようなことで、一つの取引秩序を確立するといいますか、円滑な処理体制の整備ということで石油開発公団をもう一回考え直してみたらどうかというような意見があろうかと思います。これにつきまして、私は、たとえば油が入ってくるルートを一本化するために石油開発公団を石油公団に改組する、あるいはまた日本が全体としまして一つの大きなメジャーズを石油公団をもとにしてつくっていこうかとか、こういうような考え方も出てくるのじゃないかと思いますが、こういうことは、私は、ひとつ慎重に考えていただかないと問題があるような気がいたします。これはたとえば、先ほどお話し申しましたように、本来思い切ってやろうということについても、いろいろな法律的な規則に縛られることによって思い切ったことができないようなことがあると申しましたけれども、そういった官僚的な運用と申しますか、そういうようなことが公団の場合行なわれやすい。そういうことであれば、ほんとうに国民の期待するような形で油を持ってくることができないのじゃないかというような一つの心配も持ちます。そういたしますと、政府政府といいますか、GGベースでいろいろな話し合いが行なわれるということになれば、国と国との外交関係というものにもどうしても非常にかかわり合います部面が大きくなる。そういう点で、かえって非常に活動がしにくい、そしてまた少しでも安い条件で油を持ってくることができないような心配があると思いますので、この辺でこういったものについては安易に考えていただきたくないと思うのですが、この辺のお考え、いま私が申しましたことに対します何か御意見があれば伺いたいと思います。
  137. 山形栄治

    ○山形政府委員 いまの先生の御意見に私は同感でございます。公団は民間の活動を助成するという目的でつくられた機構でございます。もちろんいま先生のお話の中にもいろいろと出ておりましたように、国際情勢が、特に産油国の動きが非常に変わってまいりまして、これからいろいろな方法の形というのが考えられることも確かだと思うわけでございます。すでにフランス、イギリス等はGGベースで相当大量のサウジアラビアの油を引くという話も出ておりますし、日本もイラクで一応GGで話をつけたということでございますが、いずれの場合にも、これは原油を一本で統括的に輸入するということでなく、話しやすいところで話をつけて、実際の値ぎめなり引き取りなり、それの精製、販売につきましては民間の力といいますか、バイタリティーといいますか、活動を期待しておるのは同一でございます。現在日本の置かれております立場は諸外国よりきびしいものがございますので、諸外国のとおりでなく、もう少し強い形というのも考えられないではないわけでございますけれども、いずれにしましても、それは政府だけが独自にやるというのでなく、民間の活動と政府ないし政府機構の活動との有機的な調整をはかってこれを行なうということでなければいかぬわけでございまして、その辺につきましては現在総合エネルギー調査会で検討中でございます。六月をめどに中間報告を出していただくように相なっておりますが、その辺の御報告の結果、答申の結果も受けまして、日本の総力をあげて目的が達成できるような、そういう形での仕組みといいますか、活動のあり方をわれわれのほうも考えていきたいと思っておるわけでございます。
  138. 左藤恵

    左藤委員 要は、石油開発公団というものの最初に設置された意味を十分考えられた上で、そしてまたわが国の海外石油資源開発体制をどうすべきかということをしっかり立てた上の論議というものを強く要望いたしたいと思います。  それから、石油の問題と離れますが、もう一点だけお伺いしたいのは、実は防火体制強化を内容とする建築基準法の改正案が今国会に提出されております。人命を守るという見地から、たとえば前に千日デパートの火災だとか、そういった非常に痛ましい災害の経験からこうした改正というものが必要であることは申すまでもないわけであります。百貨店のような場合は、こうした法の改正に伴いまして施設改善していかなければならない、こういったことも行ないやすい条件にあろうと思いますが、たとえば地下街の商店街のように管理会社の規模が非常に小さいものでありまして、そしてそこで定められる施設改善を全部やろうといたしますのにはあまりにも金がかかり過ぎる。そうした負担増はすべて個々のテナントに転嫁せざるを得ないというものについてどういうふうな対策を考えておられるか。私は、今度の改正はたいへんな負担になるということは予想されると思います。そこで、たとえば補助金を出すとか長期低利の融資を行なうとか、そういったことがこの施行に対して当然配意がなされていなければならないと思いますが、その辺について、現在通産省中小企業庁ではどう考えておられるか、この辺をお伺いしたいと思います。
  139. 小山実

    ○小山(実)政府委員 御指摘のとおり、建築基準法とか消防法の改正によりまして、従来からございます店舗ビルとか地下街が消防とか避難等、顧客の安全を確保するための設備を設置する、あるいは改造を行なわなければならないというようないろいろ義務が生じてまいります。これによって中小小売り商にどういう影響が生ずるかというのをやはりよく調査をする必要があるだろうと思いますが、その結果非常に大きな負担が出るということになります場合には、中小企業庁といたしましては関係省庁とも十分協議をいたしまして、たとえば中小企業金融公庫等の制度融資の活用、充実をはかるというような方法によりまして、中小小売り業の経営に支障が生ずることのないようにできるだけ努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  140. 左藤恵

    左藤委員 ちょっとおかしいと私は思うのです。というのは、こういった法律案を提出するということは政府としておきめになって、そして国会へ提出されたわけですから、その段階で、当然建設省と通商産業中小企業庁との間で十分話し合いが行なわれておらなければならないと思います。こういう点について、法案を作成する段階で建設省だけのベースで進まれておって、中小企業庁は何かあとから施行に伴う施策を考えておられるような気がするわけです。実施時期が三年というような問題がありますけれども、三年はまだ先の話だというような話じゃなしに、提出されるときに当然そういう調査をやっておかなければならないと思うのですが、この辺のお考えはいかがでしょうか。
  141. 小山実

    ○小山(実)政府委員 御指摘のとおり、本来でございますれば、法改正を提出しますときに対策を同時にということが理想であろうかと思いますが、先生よく御存じのように、毎年度予算なり三機関の要求をいたしますのはかなり早い時期でございましたので、今回いろんな店舗ビルの火災等から、建築基準法、消防法の改正をやるというのはそのあとから出てまいりましたものですから、こちらが後手になっておるという感はあるわけでございますが、私らといたしましては早急にその辺の調査をいたしまして、五十年度の予算なり三機関の財投の要求をする場合に十分その辺を盛り込んで配慮してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  142. 左藤恵

    左藤委員 いまの点について、特に補助金なり長期低利の融資という点、配慮をお願いいたしたいと思います。  なお、そのほかに、非常に古い施設で緊急に施設改善をしなければならないもの、たとえば比較的新しくできた施設、それも同一に考えることじゃなくて、まず一番危険なところから手をつけていくというような計画的な推進というものもあわせて考えていただきたい。それによってこうした災難が起こらないような配慮を十分実施段階においても考えていただきたい、このようなことを強く要望を申し上げておきたいと思います。  終わります。
  143. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 米原昶君。
  144. 米原昶

    ○米原委員 私は、本日は財団法人鉄道弘済会の問題についてお聞きしたいと思うのです。というのは、各地から鉄道弘済会が中小零細企業を圧迫しているというようなことで陳情を受けておりますので、その問題について若干お尋ねしたいと思うのです。  鉄道弘済会の基本規程を読んでみますと、その第三条の「目的」の項のところで、「この法人は、国有鉄道の公傷退職者、永年勤続退職者、その家族又は遺族及び殉職者の遺族並びにその他一般の援護を要する者に対し、必要と認める社会福祉事業を行なうとともに、鉄道従業員の生活の向上と鉄道利用者に対する便益の増進に資することを目的とする。」こう書いてあります。     〔稻村(左)委員長代理退席、左藤委員長代理着     席〕 つまり、民法三十四条で定められたように、営利を目的とせざる限りにおいて主務官庁の許可を得て設立された公益法人である、こういうふうに理解するものでありますが、それでいいわけでございましょうか。これをまず答えていただきたいと思います。
  145. 西村英一

    ○西村説明員 御説明させていただきます。  財団法人鉄道弘済会は、ただいま先生がお読み上げになられましたような寄付行為を持っております。第三条にそのような目的が書いてございまして、弘済会は、そのような目的のために、第四条各号に掲げておりますような事業を行なうことになっております。
  146. 米原昶

    ○米原委員 そこで、最初に申しました中小零細企業が圧迫を受けているというような話を聞くものですから、いま聞いたわけなんです。つまり公益法人でありますから、営利を目的とせざる法人、もちろん鉄道弘済会が収益事業をやることは私は差しつかえないと思います。しかし、それがいわれるような社会福祉事業とか、あるいは鉄道従業員の生活の向上とか、さらに鉄道利用者に対する便益の増進ということも目的に書かれているわけですが、実際に弘済会が社会福祉事業の点とか、鉄道従業員の生活の向上の点とか、そういう点でかなり大きな成果をあげてこられたし、現在もあげておられるということは私は率直に評価するものなんです。そして鉄道利用者に対する便益の増進ということも一定の役割りをしておられることも率直に認めるものなんです。しかし問題は、これが収益をあげるという点で、どう見てもこれは営利事業としか思えないようなところに及んできているのじゃないか。弘済会の出された昭和四十七年度の事業報告書というのを拝見しました。これを見ましても、一年間に四十七年度では四百五十億円の収益をあげられておる。これは国鉄というものをバックとしておりますから、それだけにこういう収益をあげるだけの便益が得られているわけだと思うので、それはそれとして、しかし、それがさらに事業拡張のほうに仕事が進みまして、いま問題になって私が話そうとするのは、たとえば最近では駅ビル、そういうところにどんどん進出して、そして収益事業の拡張が目ざましいと思うのですが、それが何か他の中小零細企業を圧迫するというような事態になればこれは問題だと思う。これはあくまで営利を目的としないところの法人として認められていると思うのです。それが何か営利を目的としているとしか思えないようないろいろな事業が行なわれている。この点についてはどう理解されているでしょうか。監督官庁のほうはこれで一体いいのかどうか、この点なんです。この点について監督官庁の見解を聞きたいのです。
  147. 西村英一

    ○西村説明員 鉄道弘済会が社会福祉事業部門を持ちまして、年間二十一億ほどの経費を使ってこれの運営に当たっておりますことは先生も御承知であろうかと存じますが、実はその財源につきまして、弘済会といたしましては非常に苦慮するような事態になっているわけでございます。その一端は先生がたただいま御指摘なさいましたような点であるわけでございますが、今日の経済情勢からいいまして、社会福祉的な事業を固有の財源だけで、公益的な部門の収入だけでまかなうということはほとんど不可能でございます。現に四十七年度の鉄道弘済会の決算報告によりましても、収益的な事業部門から約十五億円ほどの繰り入れを公益的な部門にいたしておるような状況でございます。そういう意味におきまして、現在は、年間十五億ほどの財源を公益部門以外からどうしても調達をしなければいけない、こういうような状況であるわけでございます。そこで弘済会といたしましては、収益的部門にある程度熱心にならなければいけない。しかしながら、これは本来の公益的な目的を著しく越えるようなことがあってはならないことはもちろんでございます。やはり公益法人としてふさわしい収益的な事業でなければならないと私ども常々考えておりまして、そのように指導をいたしておるつもりでございます。
  148. 米原昶

    ○米原委員 弘済会の目的のところに出ております鉄道利用者に対する便益という意味で、いろいろな売店なんかが鉄道利用者に利用されている。これは非常に大きい役割りを果たしているので、だれしもこれは認めるところなんです。ところが最近では駅ビルというのが方々にできまして、駅ビルは、全体としては駅の構内と見られているわけでしょうが、現実には百貨店と何ら変わりないわけですね。ですから、駅ビルに来る人は、必ずしも鉄道の利用者じゃないわけです。だから、鉄道の利用者という概念も、鉄道を利用しない日本国民はほとんどいないでしょうから、非常に広くとれば幾らでもとれます。しかし、これが駅ビルというような形になってきたために——私は、駅ビルを一定の範囲に利用することが悪いというのじゃありませんが、本来からいって、大体駅の構内、その部分に近いところに限るというようにしないと、至るところに駅ビルができて、そうすると、もう百貨店に店を持つような形になるわけですね。そうしますと、元来の鉄道弘済会がやってきた営業の様式とはかなり違ったものにいまなってきているわけです。そのあたりが、他の中小業者や零細業者を圧迫するといって問題になっているので、実際のこのやり方は、弘済会が本来いっておられた鉄道利用者に対する便益という範囲を越えているのじゃないか。少なくとも監督官庁の運輸省は、それが他の中小の経営者や零細業者を圧迫するようなところまでくるならば、そこまでいくことは押えるべきじゃないか、こういうふうに私は考えるわけでありますが、監督官庁はどのように考えられるでしょうか。
  149. 西村英一

    ○西村説明員 鉄道弘済会が、駅ビルまたは鉄道施設の高架下でございますが、そういうところに投資をいたしまして子会社を持つということが最近行なわれておることは事実でございます。ただ、この駅ビルに投資をいたしますにつきましては、日本国有鉄道のほうも、最近は通常投資をいたしておりまして、駅に付随して駅の用地を立体的に活用する。その際には、当然のことながら、鉄道利用客を中心といたしましたお客さん方に食事施設だとか、あるいはみやげものを中心とするようないろいろな売店施設とかいうものが随伴されてくるわけでございまして、これは従来から、鉄道弘済会がその職域と考えられていたようなところでございますから、どちらかと申しますと、私どもは親近感といいますか、親近性を持って認められるというふうに考えております。  ただ、御指摘のように、その際に、周辺の中小企業方々に御迷域をおかけする、著しく不当に営業を圧迫するというようなことがあってはならないことは申すまでもございません。そういうようなことのないように、常日ごろ指導をいたしておる次第でございます。
  150. 米原昶

    ○米原委員 ただいまの答弁だと、たとえば駅ビルの中に、駅ビルといいましても、最近できている駅ビルにいろいろなのがありますが、常識的にほとんど駅の構内と見ていいようなものとか、それに連なった広大なデパートに類するものとか、いろいろありますが、そこで弘済会のやられる事業というのは、少なくとも鉄道利用者の大体利用する範囲に限定するというような営業のしかたをとるべきじゃないか。そうしないと、駅ビルは、中小業者にとってもそこに入るから入らぬかというのは大問題であります。それを圧迫して、弘済会が前から持っていた特権のようにやっていくということは望ましいことじゃないじゃないか。少なくとも鉄道利用者が望むような範囲ということに事業の範囲を限定すべきじゃないか。この点は厳重に監督して、いやしくも一般の民間の企業を圧迫するようなことは許さないというような態度をとるべきだと思いますが、監督を強化するという点について見解を聞きたいと思います。
  151. 西村英一

    ○西村説明員 鉄道弘済会は、その名の示すとおり、鉄道と非常に密接なつながりのある存在でございます。したがいまして、その主たる活動範囲は、当然のことながら鉄道と非常に近い範囲内のものになってくるはずでございます。そういう点で、特に先生御懸念のようなことが起きるようなことはない、私どもはそのように考えております。
  152. 米原昶

    ○米原委員 私は繰り返しますが、民法第四十三条に定められたように「法人ハ法令ノ規定ニ従ヒ定款又ハ寄附行為ニ困リテ定マリタル目的ノ範囲内ニ於テ権利ヲ有シ義務ヲ負フ」というのが公益法人の性格だと思うのです。鉄道弘済会が、その設立の際に許可の条件であった営利を目的とせざる公益法人の範囲を逸脱するというようなことは絶対許されない。ましてや民間の中小企業の経営と競合したり、またその経営を圧迫するような事業進出は、明らかに民法四十三条に定められた目的の範囲の逸脱であります。監督官庁は、もっとその順守を厳格に指導すべきだ、こう考えるわけであります。もしもこれが守られないならば、当然監督官庁の許可を取り消すべき性格のものになってくるということを考えるわけであります。この点について私は、もっと厳重に警告を発すべきだと思うのです。まだ、あとでたくさん例をあげますが、私は逸脱行為がかなり多いと思う。こ  の点について、もう一度答弁をお願いします。
  153. 西村英一

    ○西村説明員 先ほど申し上げましたように、鉄道弘済会が駅ビル等に出資するにつきましては、私どもは一応それなりに合理性がある。鉄道弘済会の寄付行為に定められておりますところの目的にかなうものであるというふうに考えておるわけでございますけれども、その過程におきまして、実際に今度は、たな子さんといいますかテナントを入れるときに、いろいろ中小企業の商業関係の方と摩擦を起こすという実例があるやに聞いております。現にそうでございましょう。そういう際には、弘済会が大きな資本の力をもって中小の方をゴリ押しをしたりするようなことのないように、十分注意をしてまいりたいというふうに考えております。また、駅ビルの中にいろいろテナントを入れるにつきましては、各方面からの御注文を取り入れまして、公正に選考させていただいており、私どもも、その辺についてはきびしく監督をすることにいたしております。
  154. 米原昶

    ○米原委員 一つ私は例をあげますが、これはいまおっしゃった鉄道弘済会がゴリ押し的な行為をとって、他の業者を圧迫している非常にはっきりしたもので、これは全国的な問題になっております。それは鉄道弘済会の直営の売店が、全国的に抜けがけ的に雑誌の早売りをやっておるわけであります。週刊雑誌を駅で売っておりますが、これが全国的な協定を破って約束の期日より早売りをやっている。これは雑誌発売日励行に関する協約というのがあるわけであります。それはどういう協約かといいますと、版元としての日本雑誌協会と取り次ぎとしての日本出版取次協会、それから小売り店としての日本書店組合連合会その他のものが、つまり版元と取り次ぎ店と小売り店、これが全国的に雑誌発売日を励行するという協約を昭和四十六年の八月一日に実施されておるわけであります。ところが、この協定を破って、協定された日より早く雑誌の早売りをやっておるわけです。これが全国の中小書店から非常に問題になっているわけです。とにかく弘済会に行きさえすれば早く買えるということが例になってきますと、せっかく結ばれた全国的な協定が全部これで破られてくるわけです。こういうことに対する不満が強いようです。こういう点は、絶対に私は守らせなくちゃいかぬ。そうしないと、公益法人と称しながら実際にはこれは営利団体じゃないか、こういう批判が出てくるわけであります。この点、御存じなかったかもしれませんが、こういうことはまず第一に許してはならぬじゃないか、もうこういう協定違反はやめさせるべきだ、こう思うわけですが、これはどうでしょう。
  155. 西村英一

    ○西村説明員 先生いみじくもおっしゃいましたように私初耳でございまして、実は存じておりませんでした。ただ、いまお話にございましたような行為が、そういう協約と申しますか申し合わせが、今日の情勢下におきましてほんとうに妥当なものかどうか、その辺、私もちょっと判断いたしかねる次第でございますので、結論的には直ちに申し上げにくいのでございますが、しかしせっかく一種の商慣習として成り立っているものがあるとするならば、私は、一がいにいかぬとすぐに言いにくい面もあるように思うわけでございます。その辺のところは、実態をよく存じませんものですから、非常に個人的な見解ということでお許しをいただきたいと思います。
  156. 米原昶

    ○米原委員 何か現在の実情に合うか合わぬかというような議論が出ましたけれども、少なくともいま言ったように、日本雑誌協会、それから取り次ぎ、それから小売り業者、この間に結ばれた全国的な協定なわけです。週刊雑誌なんというのは、確かに早売りを一定のところでやられると混乱が起こるわけです。そういう点で結ばれた協定なので、これを弘済会だけがかってに早売りをやるということになると、これは業者の反発を受けるのは当然なんです。この点は十分調査して、しかるべき措置をとっていただきたいのです。  もう一つは、弘済会が直接の事業というのじゃなくて、弘済会自身が出資されていろんな関連事業を持っておられますね。たとえば書店でいいますと、弘栄堂という書店ができている。これが東京でも吉祥寺に本店があって、千葉とか本八幡、船橋、市川それから岡山にも弘栄堂の支店があるようですが、こういうのができておる。鉄道弘済会が直接経営している駅ビルの中にあるようですが、今度は弘済会とは名のらないで弘栄堂というが、ほとんど弘済会の全額出資でしょう。そうして役員も弘済会の役員が同時に弘栄堂の役員になっているというような直系の会社ですね。こういう会社がかなりたくさんあるようだし、この報告書を読みますと、昭和四十八年三月末現在における関連事業、関連会社は六十三社である。そして投資額が九億六千万円だと載っておりますが、こういう関連事業、本来の公益法人が関連事業をたくさん持って、こっちのほうは営利会社のようなことだけやっているような関連事業です。公益法人の目的とはちょっと違うような、そういう営利会社を持つことが一体法規上許されるのかどうか、この点をお伺いしたいのです。
  157. 西村英一

    ○西村説明員 鉄道弘済会寄附行為の第四条第十一号を先生ごらんいただきたいのでございますが、鉄道弘済会がその公益目的を実現するためにいろいろこれこれの事業をやりますということが第四条に列挙されているわけでございますが、その第十一号に「前各号に掲げる事業のほか、この法人の目的を達成するため必要と認められる事業」こういう項目があるわけでございます。実はこれによりまして、ただいまのような子会社を持ってそこに投資をして事業をやる、こういうことに相なっているわけでございまして、その意味では、定款寄付行為の上でやっていることは一応合法的と申しますか、妥当なことであるわけでございます。  ただ、それではその投資をいたしました先の事業が何をやってもよろしいのか、営利事業なら何でもいいのかということにつきましては、そうではなくて、やはり私どもは、弘済会の本来の公益目的の範囲内といいますか、そういうものにとどまるということが当然のことであるというふうに考えておる次第でございます。
  158. 米原昶

    ○米原委員 おっしゃったように、確かに第四条の中の十一のところに「この法人の目的を達成するため必要と認められる事業」こういう関係でいろいろな関連事業が行なわれていると思う。しかし、これでたとえばかなり大きな収益をあげるような事業があったとしても、そのことは否認しても、しかし法人の目的を達成するためですから、そのために公益法人の目的であるこの項目と矛盾するようじゃおかしいと思う。もしもこの事業が、この十一のところが悪用されますと、公益法人でありながら、実際はある意味ではこれを無制限につくれる。幾らつくっても事業ならよろしい。そして結局入ってくる金は社会福祉事業とか、そういう公益的に使うんだという理屈が成り立てば、ある意味では無制限に幾らでも営利事業に出資する。そしてそこに役員を送り込む。そういう子会社の関係になるわけですね。こういうことになっていくと、これは当然おかしいことになるんじゃないか。公益法人の性格と矛盾する行為が実際には次々と行なわれることになっていくと思う。これはかなり大きな問題だと思うのです。私は、あくまでも問題は第三条のところでうたわれた目的の項と矛盾するようになってはいけないということだと思うのであります。特に弘栄堂の問題ですが、聞くところによると、今度は駅ビルの範囲に進出するのじゃなくて、駅ビルとは別に駅前ですが、札幌の駅の近くに新しく建つビルですね、ここに弘栄堂が進出するということが、札幌の書店関係の人にもたいへんなショックになっているわけです。駅の範囲でもないし、駅の構内の範囲でもない、駅ビルの範囲でもない、それとは別に一般市街地に弘栄堂という形で進出してくる。実際は国鉄を背景にした大きな力で、いままで育ってきたこれを基礎にしながら進出してくる。これでは他の中小零細企業と競合して圧迫することになるのは当然であります。一体こういうことを許していいのか。これは駅ビルの範囲じゃないのです。それから外に出た一般の市街地にそういう形で進出しよいとしておる。こういうことが一体許されるのでしょうか。
  159. 西村英一

    ○西村説明員 札幌におきます弘栄堂という書店のお話が出ましたので、ちょっとそれに触れさせていただきたいのでございますが、札幌の弘栄堂は、実は鉄道弘済会の子会社に東京の弘栄堂というのがございます。それは先ほど先生もおっしゃいましたあの弘栄堂でございます。それのまた子会社でございまして、鉄道弘済会から見ますと、これは孫会社に相なるわけでございます。しかしながら、孫会社とはいえ鉄道弘済会の出資にかかわる会社であるということは事実でございますので、私どもといたしましては、札幌の弘栄堂とはいえ、その性格上鉄道弘済会の本来の事業目的を尊重して行なってほしい、こういうふうに考えるわけでございます。  ただ、一般的に申しますと、先ほども申し上げたことで重ねて恐縮でございますが、鉄道弘済会系統のものが鉄道の構内とか、あるいは駅ビルを一歩たりともそれでは出てはいけないんだろうかということになりますと、それは必ずしも直ちにはいけないとは私は言い切れないのではないか、こういうふうに思う次第でございます。しかしながら、鉄道弘済会の系統のものでございますから、従来そうあったように、今後も鉄道の関連の範囲内で、それを大宗の仕事として子会社であってもやってほしい、こういうことで私どもは指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  160. 米原昶

    ○米原委員 札幌の弘栄堂の問題では、いまのお話では何らか善処するような意味を持っているようでありますから……。  問題は、札幌の場合も、一方で大型の書店が、たとえば東京あたりの大書店が進出するという問題が、一方で中小零細を圧迫しているわけですね。書店というのは大体零細業者が圧倒的に多い。これを圧迫するという面が出ていたところに、今度は弘栄堂が駅前の西村国際ビルというのに出てくる。しかも、七百五十平方メートルの大型店を出すということで大問題になってきたわけです。書店というのは零細業者が多くて、最近の経済情勢の中では相当参っているところが多いのです。このときにこういうことを安易に認めちゃならないと思うのです。少なくとも監督官庁のほうで、絶対にほかの業者を圧迫するようなことにならないような措置をとってもらいたい。そしていまおっしゃいました、確かに駅ビルとか駅の構内とかに一般的に全部限るということはどうかと言われましたが、ものにはいろんな例外があります。ですから私は、必ずこの範囲に限るべきだなんては言っていたい。言っていないけれども考え方としては少なくとも駅の構内に限る。駅ビルにもいろいろなのがありますから、ほとんど駅の構内と変わりないような範囲の駅ビルの概念もあります。これは常識の範囲でやはり本来の駅の構内及びその延長、つまり鉄道利用者が利用する範囲というところを考えて処置すべきだと思うのです。  鉄道弘済会のやっているその他の傍系企業について、実は事業内容についていろいろ問題があることをほかにも聞いておりますけれども、私は現在あまりこまかい材料を持っておりませんから、ただ運輸省のほうに要求したいのは、鉄道弘済会の関係会社、これでは六十三社と出ておりますが、一体どういう企業があるのか、この資料を一ぺん提出してもらいたいのです。それで大体どういう規模でどういうことをやっているのか、これはこのまま放置するといろいろな摩擦を起こすんじゃないか。私は鉄道弘済会が一定の大きな役割りを演じてこられたことは率直に認めるのです。しかし、これがはみ出して他の民間企業を圧迫するようなことは許されない、こういう観点から、やっておられることを検討したいので、ぜひ弘済会の関連事業の資料を出していただきたいということをひとつ要望します。そうして監督官庁として、この鉄道弘済会だけでなく、傍系企業の事業内容を調査して、絶対に民間企業を圧迫したり、ことに零細中小企業を圧迫することのないような指導を強めていただきたい。  それから、さっき言いました雑誌の早売りというような協定ですね。一般的に行なわれている、雑誌は同一地区で同時に発売するという協定でありますが、こういうようなことを破っているのが現実なので、この点はやはり弘済会としてもこの協定は厳守するように、監督官庁として指導していただきたいのであります。  それから、札幌弘栄堂だけでなくて、弘栄堂の書店というのは——札幌の場合はそれのまた下の子会社になっているようでありますが、東京にある弘栄堂、これが各地に直接出ておりますが、これがやはり特権的な事業経営をやらないように、その点も監督官庁が適切な指導を行なうことを要望したいと思うのであります。  この点について、総括的にひとつ答弁していただきたいと思う。
  161. 西村英一

    ○西村説明員 まず資料要求の点でございますが、さっそく調査をいたしまして提出させていただきたいと思います。その辺のところは事務的にいろいろ詰めさせていただきたいと思います。  それから、中小企業を圧迫しないように指導せよ、こういう御指摘でございますが、再々申し上げておりますように、私ども常日ごろそのように指導しておるつもりでございます。今後もそのようにしてまいりたいと思います。  それから、雑誌発売に関する協定の順守のことにつきましては、私どももまだ実態をよく存じておりませんので、実態を調べまして、しかるべく対処をさせていただきたいと思います。  また、最後に、要するに鉄道弘済会は公益法人でございますから、その公益目的に反しないように、いたずらに収益的部門で特権を振りかざすことのないようにという御注意は十分私ども承りまして、鉄道弘済会にそのようなことのないように指導をしてまいりたいと思います。
  162. 米原昶

    ○米原委員 公益法人でありますから、これが民業を圧迫して損害を与える場合はということで、これは民法上にもはっきり規定があります。これは民間企業を圧迫したりしたような場合に、当然公益法人の目的に反した行為によってこれが行なわれた場合には損害賠償を請求する権利があるわけであります。こういう問題になろうとしていると私は思いますので、その点について、正確にひとり本来の趣旨を弘済会に守らせるような監督を強化されるように希望いたしまして、私の質問を終わります。
  163. 左藤恵

    左藤委員長代理 松尾信人君。
  164. 松尾信人

    ○松尾委員 国民生活を守るという観点でありますけれども、これは何としてもまず住みよい環境をつくらなければなりません。そういう立場からわが党といたしましても、公害の総点検、こういうことを最初にやりまして、これはあなたのほうにもそのような資料を差し上げて非常に喜ばれた、こういうことでありますが、このようなことで、この公害という問題が国の非常に重要な課題となった。また、国民の関心もいま十分に高まってきておるわけでありまして、あわせてこの公害の規制も逐次きびしくなってきておる。ですから、どうしてもいままで引き延ばしがちであった企業も公害の防除というものを真剣に今回は取り上げてやっていかなくちゃいけないということで、ようやく力を入れ始めてきたわけであります。これはまことにいい傾向である、このように私は高く評価します。でありますから、きょうは主として公害防止の産業という点にしぼりまして私は質疑を続けていくわけでありますけれども、昨年一年間の公害防止機器の受注の状況、こういうものがあなたのほうでわかっておるかどうか、その実態はどうか、こういう点から始めていきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  165. 野口一郎

    ○野口説明員 お答え申し上げます。  御指摘の公害防止機器産業は、実は非常に新しい産業でございまして、最近に至りまして非常に発達を遂げてきております。新しい産業でございますので、何が公害防止機器であるかというような範囲も公式にはまだ定まったものがございません。したがいまして、生産あるいは受注につきまして、公式の統計というのが実は現在のところございません。本年の標準分類の改定のときからこういう範疇を設けようということで、これは現在作業中でございますが、そんなことで、非公式な数字しかございません。この非公式な数字によりますと、私が先ほど申し上げましたような趨勢を如実にあらわしているわけでございまして、たとえば生産を例にとりますると、昭和四十五年には約二千億程度でございました。それが毎年、大体年によって違いますが、四割、五割というふうに生産が伸びてまいりました。昭和四十八年度はまだ年度は終わっておりませんけれども、大体生産で約五千億くらいに達するのではないかというふうに考えております。五千億と申しますと、御参考までに申し上げますが、大きな機械の分類で産業機械という分類がございますが、この中でトップクラスに位するほどの地位でございまして、たとえば、土木建設機械がこれは大体五千億くらいと考えられておりますが、二番目か三番目に位するくらいの大きな産業になっていると推定されております。これは大体において受注産業でございます。したがいまして、もう一つの参考資料としての受注の状況でございまするが、昭和四十七年、八年を例にとってみますると、昭和四十七年には二千七百三十億円の受注があったというふうに報告されております。これが推計でございますが、歴年の話でございます。それから四十八年、この歴年の数字をとりますと四千八百五十億円ということになっております。ですから、対前年比七七%という飛躍的な受注になっております。もっともこれは昨年の数字でございますが、月別に見ますると、これは景気の動き等がございまして、アップ・アンド・ダウンがございまして、昨年の月ごとに見た場合の最高の受注は十一月でございまして、約七百三十億円の受注があったことになっております。これは対前年同月に比べますと約四倍、こういう大きな数字になっております。その後、十二月、一月と、若干減ってきてはおりますが、月ごとに見ましても、対前年同月比大体四〇%ないし五〇%、こういう高水準にございます。それが現状でございます。
  166. 松尾信人

    ○松尾委員 いまお答えの中で非常に気になりますのは、通産省関係の中でもこういう公害防止機器に対するものはあなたのほうが専門でありまして、ほかはもうさっぱりわからぬわけでありますが、専門であるあなたのほうで、いまだにこのような重要な、国民の生命に関係する、そしてこれだけ世論も高まってきておる、そういう公害防止、そうしてようやく企業もその気になっていま防除をしっかりやっていこうというこの発注産業、そういうものの実態を公式につかんでいない、ある統計によればとか、よその統計によればというようなことで、また聞きではいけないと思うのです。いいですか、そういうまた聞きとかなんとかでなくて、政府のきちっとした公式のものをそろえておって、われわれの質問に対してもいつでもぴしっと答えられるものでなければいけない、こう思うのでありますけれども、この点は次官、どうです。まず最初にぴしっとこういうものを固めていきなさい。これだけまだ政府のほうも関心が薄いのじゃないか。せっかくのものがそこからつぶれていく、こういう懸念で聞いておるわけであります。
  167. 森下元晴

    森下政府委員 先生のおっしゃいますように、企業活動については生産性もさることながら安全、特に公害防止、その公害防止のためにはやはりそういう実態を他の統計にたよらずに通産省自身でつかむように努力をしたいと思います。
  168. 松尾信人

    ○松尾委員 当然であります。ですから、これは来年どのように伸びていくか、こういう点も聞きたいのでありますけれども、前年に比べて幾らだ、四十八年度が五千億円の産業になったというようなことでありますと、来年一兆円の産業にこれは伸びていくのだというようなことがいろいろ推測されておる、そういう統計もある。そういう中からあなたに幾ら聞いても、また聞きのそういう集計になっては同じでありますけれども、四十八年が五千億円、来年はさらに飛躍的に倍増という一兆円の大きな公害防止産業になっていくわけでありますから、関心を深めていただきたい。ぼくがなぜこんなことを言うかといえば、そういうものがきちっとわかっていなければあなたのほうの指導行政ができない。発注した、それを受けてつくりましたという関係だけでありまして、どういう面にどういう公害防除が進んでおるのか、どういう面が足らぬのか、足らないものを促進していこう、それでどういうところにいろいろな問題点があるのか、そういう問題点をつぶしてそうしてりっぱに環境というものをよくしていこう、こういう基本的な態度が当然通産省の中で必要である、こういう観点から言っておるわけでありますから、ひとつ十分注意してもらいたい。そうして来年度に対しましても、いろいろそのような問題が起こってまいりますので、これはくどくなりますので省きますけれども、公害防止機器の受注額は産業機械全体の受注額の約二割で、これは化学機械に次ぐ有力な部門に成長しておるわけであります。こういうことでありますから、ひとつ大いに関心を高めて、そうしてその指導行政というものをやっていく、そうして足らない分をそこで助長していく、どこに何が足らぬのか、こういうことを明確にしてもらいたい、こういうことを強く要望しておきます。  さらに、なぜ一兆円になるかというような問題は、大気汚染だとか水質汚濁等の規制がだんだんきびしくなっている。そうすると公害防除のために何としても企業というものに発注せざるを得ない、これは来年もそうだし、再来年もそうだし、ずっと続いていけば、大きな日本の喜ぶべき傾向の産業として助長、助成していかなければできないわけです。くどいようでありますけれども、ひとつもう一回政務次官の決意を聞いておきたいと思います。
  169. 森下元晴

    森下政府委員 宇宙開発とか海洋開発とともに公害防止産業は未来産業、成長産業として非常に嘱望されております。また、近代国家としては当然そういう方向にいかなければいけない。また、通産省としては、金融措置また税制措置等を通じましてこの産業育成のために全力をあげなければいけない、そういう強い決意でやります。
  170. 松尾信人

    ○松尾委員 これは念のためでありますけれども、公害防止の成果というものですが、これはいま公害防除のどういう部門で大いに発注が行なわれておるのか、どういう部門がいま公害防除がどんどん進んでおるのかというような成果の出どころですね、ここのところがよく出ておるようだ、ここはまだまだだ、ここは中間だ、そういう見分けなんかもわかるわけなんですか。これは五千億の産業で、やがて一兆円に伸びていく。そういうもので 成果がどういう部門に出ておるのか そこの点を聞いておきたい。
  171. 野口一郎

    ○野口説明員 お答え申し上げます。  まず公害防止機器の使われている分野を業界、業種と申しますかユーザーのサイドからながめてみますると、この公害防止機器は小さいものは単体から大きなものはシステムまでいろいろございますので、それぞれの用いられ方というのは非常に多方面にわたっておりますので一がいには申し上げにくいわけでございますけれども、われわれのほうで考えております公害防止機器の一番の使用者は実は官公需でございます。     〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕 ちょっと数字が古いのでございますけれども、四十六年の数字によりますと官公需が三四%を金額的に占めるということになっております。官公需を別にしていわゆる産業の分野をながめてみますると、これは非常に多方面にわたっておりますが、数字的にどこが一番使っているかというような感じで二、三上のほうから申し上げますると、第一は鉄鋼業でございます。これは大気汚染防止を中心としていろんな機器が使われております。これが約一一%。第二番目には、これも当然考えられますが、電力でございまして、これが一〇%を占めております。次に石油精製でこれが一〇%。その次が石油化学工業を含めました化学工業になりまして、これが約八%。まあ大どころの業界はこんなところになっております。  一方、それではどういう機械が使われておるか、その機器の分類で申してみたいと思います。私どものほうの分類ではやや大分類になりますが、大気汚染防止機器と水質汚濁防止機器と産業廃棄物処理装置、それからその他といたしまして、これは騒音防止関係になりますが、四分類に分けているわけでございます。この中で一番金額的に使われておりますのは水質汚濁の関係でございます。金額で申しますると、これは四十七年度の数字でございますが、これが約半分の四九・八%を占めております。その次が大気汚染防止の機器でございまして、これが三五%強、産業廃棄物処理が一四%ちょっというようなシェアの割合になっております。大気汚染の中で何が一番使われておるかと申しますと、これは統計のとり方によりますが、産業排水処理設備が約一九%、その次が大気汚染防止のほうの集じん装置が一七%、その他重油の脱硫装置あるいは排煙の脱硫装置等々がございますが、それらは大体一けたのパーセントの数字でございます。大体使われ方はこんなような状況でございます。
  172. 松尾信人

    ○松尾委員 いまそのような使われ方の説明がございましたが、要するに、大気汚染の関係なり水質汚濁の関係なり騒音なり粉じんなり、そういう関係でありますけれども、問題は政府の指導監督です。鉄鋼業また電力等が公害防除のためにやるというのはあたりまえでありまして、いままでやり方がおそい。これはしょっちゅう早くつけなさいといっている。それで、電力関係でも電力立地の問題等でやんやんいいますけれども、結局環境問題で反対される。そしていまだに排煙脱硫装置なんかはうんとおくれているではありませんか。五十年度にはこれこれいたしますと計画だけは膨大にありますけれども、現実には少しも着手していない。そういうところの指導監督というものをもう少し厳然とやってもらいたい。やらなくちゃいけません。やらないで、発電所を早くつくらしてくれ、そういう態度では納得できない面が一ぱいあるわけであります。でありますから、要するに公害防止の産業、そういうものの発表の状況、いまおっしゃった鉄鋼だとか電力だとか、これはあたりまえのことです。おくれておるわけですからね。むしろそれを促進してあらゆる部面においてそういう成果があがっていくような監督指導をいままでどうされたか、今後それをどのようにしていくか、この点で局長答えてください。あなたのほうが一番責任者だ。でなければ政務次官でもけっこうです。これははっきり答えてもらわぬと困る。
  173. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  公害防除は人の生命、健康にかかわる問題でございますので、企業の採算を度外視してでも世界最善の知見を採用いたしまして所要の設備を極力事前にやるということがたてまえでございまして、私どもは、こういう姿勢で無公害工場あるいはその集団としての無公害社会の建設の目途に行政を行なってまいっております。したがいまして、本来排出基準環境基準ができるのを待つまでもなく、企業が積極的にただいま御指摘のような脱硫装置あるいは排煙脱硫等々の施設を単に電力、鉄鋼、石油、石油化学等のみならず他の一般産業分野においても設置されてしかるべきかと考えております。  ただ現実は、御案内のように、排煙脱硫一つとりましても、中規模以下のものは各産業でかなり普及いたしておりますが、大型のものになりますと、主としてこれは電気がその設置を必要とするわけでございますけれども一般の中規模以下の排煙脱硫装置の各産業における普及状況と比べてみますと、まさに御指摘のように電力ではずっとおくれております。この辺は、ただいま御指摘のような電源開発の促進という見地からも、これに先行いたしまして排煙脱硫をつけるという姿勢が緊要かと考えております。  そういう意味で、ただいま私どもの手元で持っております計画によりますと、来年、再来年と相当ピッチを高めて排煙脱硫装置をつけるというふうな計画になっておりますので、徐々ではございますけれども、ただいま御指摘のような方向に接近していくだろうと判断いたしておりますし、私どももなお一そうそういう方向で強力に指導してまいりたいというふうに考えております。
  174. 松尾信人

    ○松尾委員 大企業の分さえもそのようにおくれておるわけでありますから、その他の中小企業になってまいりますと、もう隣近所で騒いで立ちのきを要求されたり何なりするまでなかなかつけない。それがやっといまこのような機器を備えつけていこうという機運になっておりますから、これをやはり促進していくというのが政府の大きな責任であります。ですから、そういう責任を十分感じて生活環境を守るという点での監督指導というものを十二分にやってまいりませんと、これはもう常に後手後手でありまして、そういう中からも、もうやむにやまれず五千億の産業に伸びてきて一兆円の産業に伸びていこうとしておるわけですよ。ですから、それをひとつ指導をし、監督をしていくならば、そしてあなたのほうで促進していくならば、これは早く環境がよくなっていくであろう、こういう面でくどく申しておるわけであります。ですから、これは政務次官からもはっきりとした答えをひとつ聞いておきます。
  175. 森下元晴

    森下政府委員 わが国は世界的にもトップの水準をいく環境保護の姿勢を示しておりますし、環境基準におきましても非常にきびしく規制されております。生産大国であってまた消費大国であるし、また資源多消費型産業でございますし、また、エネルギーを多量に使用する産業を持っておりますわが国の産業としては、やはりこの環境対策ということが将来の産業の育成、また国民福祉のためにも最大の使命である、こういう観点から、先生指摘のように強い決意でこの問題と取り組んでいかなければならないし、また、この助成措置のためには、金融措置また税制措置その他指導面におきましても意を用いなければいけない。と同時に、大企業は自力でそのような施設をつくる力がございますけれども、中小零細企業の公害対策に対しましてはきめこまかい配慮による助成措置をすることによって万遺憾なきを期していく、こういう強い決意でおります。
  176. 松尾信人

    ○松尾委員 いまちょうど次官からお話が出ましたが、問題は、中小企業関係ですね。発注するほうも資金繰りで困っておるわけです。そして、そういう中から発注している。そしてこの公害防止産業の中には中小企業もあるわけです。受注側にも中小企業が相当あるわけです。その受注側の中小企業がいまどういう点で困っておるかということは御存じですか。
  177. 野口一郎

    ○野口説明員 公害防止機器産業は新しい産業でございます。それから需要も非常に伸びてきておる関係上、業者の数も相当な勢いでふえております。そこで、どういう企業が公害防止産業にいま参入しているかということになりますと、これは大体もちろん機械工業、機械器具の製造メーカーでございます。総合機械メーカーもあれば、専門の機械メーカーもあるという状況でございますが、この専門の機器メーカーの中にはかなり中小企業もあろうかというふうに考えられます。ただ、  一般的に申しますと、統計のとり方にもよりますが、比較的中小企業のウエートの低い業界と私聞いておりますけれども、それはそれといたしまして、かなり数多くの中小企業がいるということは存じております。この中小企業の公害機器メーカーをいかに助成するかということは、先生の御指摘のように非常に大事なことだろうと思います。これはもちろん多方面にわたる施策が要るというふうに考えられますが、特に中小企業に重点を置いて考えますと、一つは、やはり技術開発、機器開発、これのお手伝いをいかにするかということだと思います。このために金融上の措置、先ほど政務次官からもお話がありましたが、いろいろの機関、もちろん開発銀行あるいは公害防止事業団等ございますけれども、金融の面では中小金融公庫がこの面に力を入れて資金を準備しております。  それから技術開発の問題でございますが、これはいろいろな制度がございますが、私ども中小企業に光を当てて考えますると、中小企業メーカーの技術開発を促進するために中小企業技術改善費補助金という制度が特にこのためにございまして、中小企業者のために補助金を出しております。そのほかいろいろな施策を講じておりますけれども、こういう場合には、やはりその力の関係を考えまして、われわれとしては中小企業の育成に力を注いでまいりたい、この方面にウエートを置いてやってまいりたいというふうに考えております。
  178. 松尾信人

    ○松尾委員 いろいろおっしゃいましたが、どうもやはりそういう中から、実態はよくつかんでいないなと思うのですよ。ですからやはり問題は、大きな公害防止機器をつくるところは力があるんですが、注文をいま受けて、そうしてその注文もつくり出せないように追いまくられておるようなところが中小企業の中にあるわけですよ。そういうような新しい問題点があるわけです。そういうところにおける、やはり資材の面なり、そういう資材の調達の面等をやはりきめこまかくいまからよくやっていくように、実態の掌握をまず基本的に私はきょうは望んでおく次第であります。  それはこのくらいの注意にとどめておきまして、その中でも、先ほど次長から廃棄物の再生利用の問題がありましたね。こういう面にも大いに発注があるということでありまして、これは非常に重大な問題であります。これは厚生省とも次にいろいろお話を私伺っていくわけでありますけれども家庭廃棄物の中で非常にあきかんが出てくる。汽車の中では、要するにいろいろビールのあきかんなり、そういうものがたくさん出てくるわけでありまして、汽車の中でいろいろ買ったり、また家庭で飲むジュース等のあきかんには、汽車の窓から拾ててくれるなというだけの注意が書いてありまして、そういう廃棄物という、一たん使用済みのあきかんというものはどのようにしたらいいのかというようなこと、そして、そういうものを今度は再生処理する、廃棄物の処理という体制が整っていかなくちゃできない。そういう注文というものもどんどん出るし。どんどんといっていいかどうかわかりませんが、相当起こってきておるし、必要性は十分にあるわけです。でありますから、問題をたった一つのあきかんにしぼっても、これをどのようにそのような廃棄物というものを集めて、そしてまたそれをどういうふうに家庭から集めて、また汽車の中の分をどういうところで取りまとめて、回収業者に渡して、そしてそれをどのように再生処理するかというような一貫したものがなければ、廃棄物の処理についてもまだ政府としての指導体制はなっていないんじゃないか、このように感ずるわけでありますが、いかがですか。
  179. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  環境の汚染を防止し、資源の有効利用をはかるという見地から、通産省といたしましても、産業廃棄物の資源化あるいは有効利用を非常に重視してまいっております。省内に資源再生利用研究会という組織をつくりまして、ずっと勉強いたしております。一般的に申し上げますと、今後ますますこの廃棄物の量、質ともに増大あるいは多様化してまいりますので、この処理がたいへんでございますが、基本的にどういう形でこれに対応するかということでございますが、まず減量でございます。二番目に回収を合理化する、あるいはシステム化するということでございます。第三番目に資源としていかに再生利用するかということになろうかと思います。四番目に技術開発、それから五番目に専門業者がございまして、大中小、特に最近は新たに起きておりますから中小が多いのでございますけれども、こういった専門の処理業者の育成といった五点に問題がしぼられるかと考えております。  御指摘のあきかんの問題でございますが、あきかんには、御案内のようにスチールのカンとそれからアルミのかんと二通りございまして、スチールのかんにつきましては四十八年に十七万六千トンの生産でございまして、これが全部廃棄物になるわけでございます。これの処理でございますけれども、捨てられたものが市町村の清掃事業あるいは観光地等で特別な形で収集されましたものが、結局処分されるか再生利用に回るということでございますが、発生量が最近急増しておりまして、特に観光地あるいは市街地で環境を汚染するというふうな問題にまで展開しております。したがいまして、たとえば東京都の町田市ではあきかん回収条例を制定いたしまして、事業者の回収責任あるいは市長の事業者に対する指導勧告あるいは市民の協力というふうなことが規定に入ってまいっております。これは非常に進んだ市町村の例でございますが、一般的にはなかなかそういう状態にまでまいりませんで、なお私どもは、今後の回収再生利用のシステムの確立あるいは再生利用技術の開発あるいは専門回収業者の責任の位置づけ、あるいは一般消費者の回収に関する協力あるいは分別回収への協力というふうなことを今後の施策の方向として検討しておる状況でございます。  それからオールアルミかんのほうでございますが、ほぼ同様な状態でございますが、数字で申し上げますと、生産が四十八年で一万四千五百トンでございます。本数にして六億二千万本というふうな膨大な数になっております。流通経路、回収状況あるいは今後の施策のあり方等はただいまこのスチールかんについて申し上げましたのと同じような状況にあるわけでございます。
  180. 松尾信人

    ○松尾委員 アルミかん自体でも、そのように原料としてのアルミの使用量、アルミ自体というのは電力のかたまりでありまして、大きく電力消費量に、これは相当の部分をアルミ製造で食っているわけですよ。ですから、石油もうんと輸入を抑制する、消費を抑制するという段階でありますから、やはり政府の指導行政というものが、もう少しそういう面にきめこまかにされませんと、今度はアルミかんが出てきた、今度ば何かんだというようなかっこうで、どんどんどんどん業者の思ったとおりで容器が変わっていく。どんどん使い捨てですからね。それは困るというようなことにいまなっているわけであります。やはり資源を大事に使う。使い捨てをなくしていく。産業廃棄物はいいんですよ。厳然と法律がありまして取り締まりができますからね。問題は家庭廃棄物で、家庭は非常に困っている。それをどこに持っていけばいいか。だからやはり主婦にもある程度利益を与えて、買った店にあきかんを持っていく、そこで適正な値段で買わせる、そういうものがすぐ回収業者の手に渡る、回収業者はそれをとってメーカーで再生処理するというように、むだのないようにする。かりに今後とも使うとすれば、あきかんに関する分だけでもけっこうでありますから、速急にひとつ通産省としてその再生処理までの分、家庭から出る分、そういうものをひとつ指導要綱をつくって、これをお見せ願いたい。そういうところから一つ一つきめこまかに、お互いに環境をりっぱにし、資源を大事にしていくという方向に進みたい、このように私は思うわけですが、いかがですか。
  181. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御提案でございますが、私どもは趣旨に全面的に賛成でございます。ただ、所管が厚生省中心になっておりまして、私どもは資源の再生利用という観点で一般廃棄物にタッチをしておるような状態でございますので、厚生省が中心になっておやりになる分について、全面的に私どものほうもただいま先生の御趣旨に沿って指導要綱をつくるなり、その他の技術開発をやるなり、あるいは専門業者の育成なり、あるいはこの事業メーカーの協力なりを指導してまいりたいというふうに考えております。
  182. 松尾信人

    ○松尾委員 その点について厚生省はどうですか。
  183. 三浦大助

    ○三浦説明員 私、食品衛生課長でございまして、主管の課が違いますけれども、聞いておることをちょっとお答え申し上げますが、清掃事業といたしましても、かなり前から処理効率という面を重点にそういうものは分別収集したほうがいいのじゃないかということで長いことやってきたわけでございますが、なかなか回収方法その他採算が合わぬという問題もございまして、かなりむずかしい面もあるようでございますが、しかし、こういう時代ですから、資源利用あるいは再生利用、こういう点も各市町村とも一緒に検討はしておるということを承っておるわけでございます。
  184. 松尾信人

    ○松尾委員 では厚生省のほうはそこまではきょうは責任ある答えができる人が来ていないわけですから、局長のほうでひとついろいろ厚生省のそのような責任ある人と速急に打ち合わせをされまして、厚生省の段階の分、通産省の処理段階の分と、このようにお分けなさいまして、ひとつ速急にこれは対策を立てていかれるように強く要請しておきます。  これで通産関係は終わります。  今度は消費者行政の立場から食品添加物の問題について二、三私は質問していきたい。  ほんとうに家庭で消費される各種の食料品でありますけれども、これは防腐剤と着色剤でかたまっておるといわれるぐらいあらゆる食品に防腐剤と着色料というものが使われているわけですよ。あなたのほうも大いにそういう点を考えられまして、そうして四十七年の十二月十三日の告示で一部使用禁止の措置をとられておるわけであります。詳しく聞きたいのでありますけれども、きょうは時間の関係でその要点、そうしてどのような効果を及ぼしておるかということを簡潔にお答え願いたい。
  185. 宮澤香

    ○宮澤説明員 お答え申し上げます。  食品添加物につきましては、特に安全性とその有用性というものが世界的な関心事でございまして、昭和三十年ごろからWHO、国際機関でございます世界保健機構あるいは食糧機関等で私ども加盟国が検討してまいったわけでございますが、四十七年のその改正は、そういった安全性の評価と必要性の評価をこういった面から検討してまいりまして、必要もないのにいたずらにむだな着色をすることによって欺瞞食品等横行させるというような節も見られましたので、そういう着色料等について、こういう食品、たとえばカステラに色をつけるとかいうようなことはやめろというようなことで、色素につきまして着色を認める食品を制限していったとか、あるいはまた、その他可塑剤についても一部使用禁止していくとか、こういうような措置を講じたわけでございます。
  186. 松尾信人

    ○松尾委員 いいことをやったあとには、その効果というものをやはり確認しなくちゃいかぬと思うのですよ。でありますから、せっかく一部の使用禁止をした、消費者行政に一歩前進したという評価はあるわけでありますから、その効果についても、厚生省の目ざしたとおりに実効をあげておるといわれるように、あなたのほうは掌握できますか、その点いかがです。
  187. 宮澤香

    ○宮澤説明員 こういった消費者をだますようなむだな着色を禁止、つまり使用してはならないときめられたような食品等につきましては、私ども、各都道府県に食品衛生監視員がございまして、そういうものについて、はたして厚生省の定めたとおりに行なっておるかどうか、これはきびしく監視しておるわけでございます。
  188. 松尾信人

    ○松尾委員 だから、都道府県にあとはお願いしておるわけでありますから、うまくいっているだろうというだけの話じゃなしに、ほんとうに効果があがったということをやはりあなたのほうでも掌握していないと、今後のいろいろな行政についても締めにくい。都道府県にまかしたから安心しているというんじゃなくて、もう少しその効果がどうかという、都道府県に対する指導というか、アフターケアですね、使用禁止法律を出したアフターケアとして、やはり効果を確認しておくということは必要だと私は思うのですけれども、今後の心がまえとしてはどうですか。やはりいまのままで都道府県にまかせっぱなしで、うまくいっているだろうということだけでいいでしょうか。
  189. 三浦大助

    ○三浦説明員 食品監視の問題でございますけれども、食品衛生行政というのは都道府県知事に機関委任をしておるわけでございますが、先生おっしゃいましたように、まかせっぱなしということではなしに、平素監視員がやっておりますけれども、なお私どもは、それを確認する意味と、特に夏の一番暑い盛りの食中毒問題、それから年末に非常に大量の食品が出回る時期がございますが、この年二回につきましては、特に都道府県にお願いしまして一斉監視をやっておりまして、そういうものに対する効果はみんな私どものほうでチェックをして報告を受けておるわけでございます。そのときに特に問題になりますことは、その次の年にこれを行政に反映させるというふうにやっておるわけでございまして、都道府県にまかせっきりというわけではございません。
  190. 松尾信人

    ○松尾委員 年二回ぐらいということでありますけれども、この禁止の措置をとった、その効果はどうかということぐらいはやはりつかんでおったほうがいい、こういうことを私は言っているわけですよ。  それからなお、一部食品の着色剤の使用禁止がなされたわけでございます。なお、現在は、いろいろ防腐剤なり、着色剤というものが使用されておる食品が相当あるんじゃないか、こう思うのですが、それば相当あるかどうか。いや、もうほとんど使用禁止になって、いま御心配のようにはございませんというようにおっしゃるか。かりに相当部分というものがいまだ多数の食品に、防腐剤なり、着色剤というものがあるとするならば、今後やはり考えていかなくちゃいけないと思うんです。数代にわたってこのような食品というものは食べていくわけですから、長い間には、あなたたちが安心しているような安全性というものが、数年、数十年の間に人体の中でどのようになっていくかわからない。そういった点からいえば、やはりこの余分の防腐剤、着色剤、商品価値を高めるようなもの、そして物価をさらに上げていくような関係のもの、これはやはり流通過程の中でそれだけの工程が要るわけでございますし、それだけの原材料が使われていくわけですから、一言聞いておくわけでありますけれども、四十七年、四十八年で着色料としてどのような数量というものが家庭食品に対して使われたか。こういう問題もありますから、お答えと同時に、今後のあなたたちの考え方というものもあわせて聞いておきたい。
  191. 宮澤香

    ○宮澤説明員 お答え申し上げます。  食品添加物につきましては、先生ただいま御指摘のように、私どもとしましても、生体にとってこれは異物である、非常に危険なものというふうに考えてもいいと思うわけでありますが、そういう意味で非常に慎重な安全性の点検と、それからあわせて必要性の点検とを行なってきておるわけでございます。  いま先生指摘の着色料の生産量をちょっと申し上げますと、四十六年には二百七十トンぐらい、四十七年には三百九十五トン、四十八年には四百四十八トンというふうに若干ふえておりますが、それは調べてみますと、四十四年にサイクラミン酸ナトリウムを削除したことがございまして、これはその当時消費者が食品添加物というものについて非常に不安を抱いたということで、それまで四十三年当時四百トンをこえておった生産量ががたっと落ち込んだ、それが若干ずつもとに戻ってきた、こういうような状況でございます。  しかし、ただいま先生指摘のように、こういった食品添加物については、私ども毎日摂取するのでございますので、その安全性はもちろんでございますが、必要最小限度にこれをとめるということで、私どもはその必要性の面もあわせて、新しい視点から今度予算を計上いたしまして、その使用の実態等を調査した上で、食品加工技術の進歩などから見て使う必要がなくなってきたようなものとか、あるいはその他の技術を駆使して着色料を使わなくても十分魅力のある食品ができるようになったものについては、工場等の実態を十分調査した上で逐次削除していく、あるいはその使用量を規制していく、こんなふうに考えております。
  192. 松尾信人

    ○松尾委員 方向はいまお答えになったのでわかりますけれども、梅干しまで着色していますよ。それからメンタイ。これは非常に見かけがいいし、そういうことで結局四百トンだとか、そのようなもので年々この着色料の使用量がふえていますし、そうして消費者の目からするときれいだということですね。そこで価格が若干上がっても、消費者はよくわからぬ。これはむしろ自然色といいますか、少々見かけは悪くても——つけものまで色をつけるとか、その他一ぱいあります。いまはもうそういう着色のないものはないといわれるくらいありますので、原則は、近いうちに何年間の計画を立てまして減らしていく、そしてできるだけ自然にまかせていく、妙な人工を加えないというようにしませんと、これもやはりそれだけの分は資源がむだ使いでありまするし、どうしても消費者のために必要な防腐剤、どうしても必要な着色剤というものがあるならば、それはその根拠をあげてお残しなさってけっこうでありますけれども、そうでないというものは、それが一つの製造過程を複雑にし、見かけをよくして消費者を引きつけ、そして物価高というものに役立っていっておるということは、やはり消費者を守っていく立場の厚生省本来の行政——その名前も厚生省と、明らかでありますから、福利厚生ですよね。そういう面からいっても、ぼくはやはり基本的にはこれはきちっと態度を固めてやっていくべきであろう、こう思うのですけれども、もう一回念のために聞いておきたい。
  193. 宮澤香

    ○宮澤説明員 ただいま先生の御指摘になったことはまことにそのとおりでございますので、私どもも全く同じような方向で現在年次計画の策定を準備しておりまして、まずとりあえず防腐剤につきまして、三カ年計画をもちまして、新しい年度から工場の使用実態を調査して、そして必要なものであっても量が少なくて済むようなものはそういうふうに押えるし、あるいは先ほども申し上げましたように、加工技術が進んでもはや必要でないというようなものにつきましては削除していくというようなことで、とりあえず防腐剤から始めておりまして、逐次着色剤等についても綿密な調査をした上で、先生の御指摘のような、国民の健康に合うようなそういう行政を展開していきたいと考えております。
  194. 松尾信人

    ○松尾委員 これで最後にいたしますけれども、消費者にもう少しわかりやすくいろいろな表示をしたほうがよかろうという問題であります。かん詰めなんかを見ておりますと、あの製造年月日なんかは符牒になっておる。ぼくはほんとうに、ここの皆さん方に、厚生省の方以外のお方に、かん詰めなんかを持ってきて、塩川さんなんかにも左藤さんにもかん詰めを渡して、この製造年月日をあなた読めますかと言いたい。委員長にもぼくはひとつかん詰めをぽんと持ってきて、この製造年月日をあなた読めますかとこう聞きたいようなものです。要するに製造年月日、家庭で知りたいのは、いつできたのであろうか、これは新しいのか古いのか。かん詰めば少々古くてもかえって味がいいとかかんとかおっしゃる方もありますけれども、いずれにしましても、やはり製造年月日というものは国民にわかるようにしたほうがいいというのが私の意見です。現在は一つの符牒でありまして、これはなかなかわかりにくい。そういう点でひとつ思い切って消費者のサイドに立ちまして、何か考えを固めていくべきでないか、こう思うのでありますけれども、いかがでしょうね。
  195. 三浦大助

    ○三浦説明員 食品衛生法では、原則といたしまして、昭和何年何月何日とか、あるいは四十八・何・幾つと、こういう表現をするようになっておりますけれども、ただかん詰めとかびん詰めにつきましては、表示面積とかあるいは表示技術の問題がございまして、略号を用いてよろしい、こういうことになっておるわけでございますが、私どもといたしましても、できれば消費者にわかりやすいような方向で表示をすべきじゃないかというふうに考えておりますが、現段階では、ただいま申し上げました面積あるいは技術の問題もございますので、なお今後とも先生のおっしゃる方向で、内部で検討は進めておるわけでございますが、なお一そう努力してまいりたいと思っております。
  196. 松尾信人

    ○松尾委員 方向はそういう方向で、あとは実現してああよかった、近ごろ出たかん詰めばはっきりよくわかるわいと、このようなかっこうをつけていったほうがやはり厚生省らしいですよ。その方向でとおっしゃいますけれども、まあ前向きというようなことばと一緒でありまして、やるかやらぬかさっぱりわからぬ。やるならやる、時間をかけてもやる、小さなやつで表示がむずかしければそれはひとつかんべん願ってでも、表示のやさしいかん詰め類からでも実行していくならいく、こういうやはりはっきりした答えがなくてはいかぬのじゃないですか。
  197. 三浦大助

    ○三浦説明員 先ほど表示面積あるいは表示技術と申しましたけれども、解決のつく問題から私どもやるつもりでおりますので、ひとつ御了承をいただきたいと思います。
  198. 松尾信人

    ○松尾委員 質問を終わります。
  199. 濱野清吾

    濱野委員長 次回は、四月二日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会