○板川
委員 十ドル原油になった以上はある種の値上げはやむを得ない、われわれもそう思っているんですよ。だからそのことを否定しているんじゃない。過去のもうけ過ぎ、十二月の先取り値上げした分のもうけ過ぎを吐き出させなくちゃいけない、これもわれわれ
意見は一致いたしております。そのためには値上げを幾らにするかということと、いつからやるかということが問題なんです。確かにあとから値上げをすれば値上げ率が高くなるということもわかるのだけれ
ども、
政府の計算では、どうもそういう
関係の説明があなたのほうの資料にはない。だから、ひとつ精細な資料をあとで出してください。これはおそらく十月、上期の決算をやったころにははっきりわかりますから、いかに甘かったかということが証明されるから、いまのうちに証拠として出しておいてください。
私の計算では、今度の決定は高過ぎたという計算が出るのです。これは説明しますから聞いてみてください。四十八年八月現在で原油のCIF価格がバーレル当たり三ドル二十五セント。これを当時の為替レートで計算しますと五千四百十七円。そして関税が六百四十円もありますし、これは安いものもありますから平均いたしまして六百十八円。ですから原油の着値は関税を入れましても六千三十五円になります。昨年八月の元売りの平均仕切り価格というものは、公取で例の
調査をしたときに入手した数字でありますが、ガソリンが一万七千円、ナフサ八千五百円、ジェット燃料一万五百五十円、灯油一万二千五百円、軽油一万一千円、A重油一万一千円、B重油八千五百円、C重油八千円、これにそれぞれの得率をかけて平均した石油製品の価格を割り出してみましたならば一万七十六円ということになりました。これはそちらと得率等が若干違っております。そちらの計算は上期の平均で、私のほうは八月現在ですからね。あなたのほうの計算の上期の平均ですと九千七百何十円になりますね。その差はありますよ。九千七百九十四円というのですから差がありますが、私の計算では、こういう計算をしますと一万七十六円である。これは数字が真理である限り間違いありません。
それで十二月の、いわゆる石油連盟が
中心になって値上げをした、実際は十一月二十日ごろから物統令が出るというので値上げをしたところもありますが、あのやみ協定によって値上げをしたのは、ガソリンが二万七千円、ナフサが一万三千五百円、ジェット燃料が一万五千五百五十円、民生用灯油が一万三千五百円、工業用灯油が一万八千五百円、軽油が一万七千円、A重油が一万七千円、B重油が一万一千五百円、C重油が一万一千円。これを同じ通産省で四十八年度にきめられた得率をかけ脚計算しますと一万四千六百九円となる。一万四千六百九円というのを前の一万七十六円で割りますと四五%の値上がりである。通産省が計算したのは、
もとの金額が九千七百九十四円という、ベースが低いから、通産省のほうではこの間の値上げを四七%というふうにいっています。四五%と四七%、違いますが、これまた私の資料でいうならば、これは通産省とそう違わない。若干
もとのベースになる数字が違っておるために差があるけれ
ども、四五%の値上がりをした。一方、通産省が御承知のように産業連関表を用いて原油価格の上昇に伴う各産業の価格への影響を計算したものがあります。それによりますと、四十八年八月は三ドル二十五セントであり、四十八年十二月は五ドル十三セント、こういうふうにCIF価格が値上がりをいたしておりますが、この場合に、石油製品は平均してどのくらい値上がりの影響を受けるだろうかというのが計算をされておりますが、これは値上げ率が二九・八%、約三〇%という計算が出ております。この三〇%という数字を出したのは、産業連関表は四十五年のをとったということ、あるいはその後の操業率の変化、人件費アップ、利益額の変動等の要因は考慮されていない、こういう注釈もござ、いますが、他の学者が計算したのも、四十五年の産業連関表を使ってみると、若干の差はあるけれ
ども、数字はこれとそう違いはありません。ですから三割といたしますと、三割値上げしても、三割はしかたがないと思うところへ四割五分、十二月一日から値上げをした。一割五分すでに先取り値上げをしたということになる。どさくさにまぎれて石油業界がやみカルテルで一五%も値上げをした。この一五%は八月現在の一万円の平均価格から計算しますと千五百円になる、こういう計算になります。ここまでは数字のとり方に多少の異論があっても私は文句はないと思う。千五百円先取り値上げをした。十二月に販売しました石油製品の総販売量二千二百五十八万キロリットル、これを千五百円先取り値上げをした分を計算しますと三百三十八億七千万という数字が出ます。これはもう通産省では、さっき言った先取り値上げ分を認めておりますが、とにかく十二月分で三百三十八億円の先取り値上げをしておったという計算になります。ところが、この十二月現在で在庫は原油が二千五十八万キロリットル、製品が二千三百二十三万キロリットル、合計しまして四千三百八十一万キロリットル、日数換算で五十四日分、これが十二月末の在庫であります。この十二月末の在庫は、すでに過去二カ月近く、五十四日分の前からあったものですから、安い原油の値段です。ですから、この四千三百万キロリットルにすでに値上げした分の千五百円をかけますと、これは一応端数を切り捨てて六百四十五億円になります。安い在庫による値上げ分の先取り分を計算すると六百四十五億円になります。それから一月一日から確かに九ドルから十ドル近く原油が十二月に比較して倍に上がりましたけれ
ども、一月二十日ごろまでは、中東から船積みして到着する船は、すなわち四十八年十二月三十一日に出帆した船は、少なくとも五ドル前後の安いものであります。これは一月二十日ごろまでに入ってくるわけでありまして、中東から入る日本の原油は約八割ですが、これを概算いたしますと、一月分の二千二百万キロリットルの三分の二が安い原油が入ってきたものと計算をいたしますと、二百二十億円であります。したがって、この二百二十億円と六百四十五億円と三百三十八億円をプラスしますと千百九十八億円七千万円で、約千二百億安い原油を買っており、それを高値に先取り値上げをしてもうけたという計算になります。ところが、この一月から原油の価格が十ドルに上がったといたしますと、今度は逆にいままでの値段で売った場合にどのくらいの損をするかということを計算いたしますと一キロリットルについて六千二百円赤字を出すわけであります。その六千二百円という数字はどこから出したかというと、これまた通産省で産業連関表によって試算してくれましたものによりますと、ケースCというのであります。四十八年八月から四十九年の平均の上昇率が、バーレル当たり三ドル二十五セントから十ドルになった場合にどのくらい石油製品価格に昇響を及ぼすかというと二〇七・二%という計算になります。二〇七・二%ということは、すでにこの中で十二月までに四五%値上がりをしておりますから、その分を差し引きますと六二という数字が残るわけであります。私の計算による八月の平均一万円に対して六二%ですから六千二百円。実はこの十ドル原油になって十二月に先取り値上げした分の価格で売っておれば六千二百円分が一キロリットルについて赤字になる、こういう計算になります。
この六千二百円は、そうしますと一日当たり一体どのくらいの損失になるかという計算をいたしましたら、石油製品一カ月二千二百万キロリットルと計算して、これは三十日で割りますと一日平均七十三万キロ、この見当でございましょう。この七十三万キロに六千二百円をかけますと四十五億二千六百万という数字が出ますが、これは十二月上げた分でその後値上げをしないでいくと、一月以降高値の十ドル原油が入ってきてそれを使われる場合には、こういう一日当たり四十五億円何がしの赤字になりましょう。この四十五億円の赤字で千二百億の先取り値上げの分を割りますと二十六・四八、二十六日分値上げをしないことによって先取り値上げを吐き出させるということになります。一月二十日を安い原油が入ってくる最後の日といたしますと、五十四日分の安い在庫がこの場合にはあるはずでありますから、五十四日目の三月十六日まで安い原油が使われているはずである。もちろんこれは先入れ先出し法によるものである。三月十六日まではとにかく安い原油だから、四五%値上げしている分で十分間に合うわけでありますが、その後、高値の原油を使うようになりますと赤字になり、それを吐き出させるためには二十六日かかる。三月十六日から二十六日を足しますと四月十一日ということになるわけであります。だから四月十一日までは値上げをしなくても先取り値上げを吐き出させる日にちである、こう思います。
ところが、私の計算と通産省の計算では、私のほうは単純な計算でありますが、通産省のほうは、先ほど言いましたように、支払い代金の金利で六百四十円ばかりかかります、あるいは舶の燃料が値上がりしたために二百三十円ばかりかかります、精製、管理販売費と人件費、国内運賃、修繕費こういうものがキロリットルについて四百円ほど値上がりをしておるのだ、こういう計算をしております。だからその合計、合わせて千二百七十円ということになりますが、この千二百七十円を計算しましても
——こういうことになるのです。十ドル原油になった場合に石油製品の平均価格は、昨年の八月の一万七十六円に二〇七・二%をかけますと二万八百八十円という見当になります。だからこれは
政府が指導価格によってきめられた二万三千三百三円よりも二千四百円ほど安いということになります。要するに、
政府の指導価格による値上げが二千四百円ほど高いじゃないか。その高いものに、いま言った、
政府の案の中にあって私の案の中になかった金利や舶用燃料や精製、管理、人件費値上がり分、この合計千百七十円を差し引いたとしても、キロリットルについて千二百円高過ぎておる、こういう計算になります。しかも、私のは四月十二日以降値上げすればよろしいことになっておるわけですが、私の計算によれば、とにかく今度の行政指導価格はあまりにも高過ぎるではないか。だから、業界と癒着しておるのではないか。しかも、この決定が密室できめられて、国民や消費者にはわからぬ。こういうところに問題があるわけであります。不明朗なきめ方である。行政指導などというものに固執をして、ガラス張りの中でオープンにやらないというところが、われわれは不明朗なきめ方だと思うし、第一、こういう値上げをしたのは、われわれの計算からいえば高過ぎたじゃないかと思うのです。行政指導は行政処分じゃありませんから、
政府の価格決定方式に反対して、裁判に訴えて争うというわけにはいかない。実際は高過ぎた。国民は、通産省が出しゃばりをしてわざわざ高い値段をつけてやったのは困る、こういう気持ちになるのです。私の計算で落ちていたところの千百七十円というキロリットル当たりの要素は、通産省で言っているものは入れても高過ぎるのではないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。